衆議院

メインへスキップ



第1号 平成18年6月5日(月曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十八年四月十四日(金曜日)委員会において、設置することに決した。

六月二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      今津  寛君    鈴木 馨祐君

      西本 勝子君    安井潤一郎君

      吉田六左エ門君    太田 和美君

      玄葉光一郎君    松本  龍君

      亀井 久興君    鈴木 宗男君

六月二日

 松本龍君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十八年六月五日(月曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 松本  龍君

      鈴木 馨祐君    西本 勝子君

      橋本  岳君    安井潤一郎君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      太田 和美君    玄葉光一郎君

      近藤 洋介君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    糸川 正晃君

      鈴木 宗男君

   兼務 坂井  学君 兼務 福島  豊君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   財務副大臣        竹本 直一君

   文部科学副大臣      馳   浩君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       斉藤 邦俊君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第四局長            帆刈 信一君

   会計検査院事務総局第五局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  安藤 友裕君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           荒木 慶司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房技術総括審議官)         松本 正夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 大谷 泰夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  高部 正男君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          小笠原倫明君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  小室 裕一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            須田 和博君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   清水 英雄君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           小林 恭一君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    竹内  洋君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   政府参考人

   (公営企業金融公庫総裁) 渡邉 雄司君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   元女 久光君

   参考人

   (日本郵政公社常務執行役員)           塚田 為康君

   参考人

   (日本郵政株式会社代表取締役)          高木 祥吉君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白川  均君

   参考人

   (日本放送協会理事)   小林 良介君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     橋本  岳君

  太田 和美君     小川 淳也君

  玄葉光一郎君     鈴木 克昌君

  亀井 久興君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     西本 勝子君

  小川 淳也君     近藤 洋介君

  鈴木 克昌君     岩國 哲人君

  糸川 正晃君     滝   実君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     玄葉光一郎君

  近藤 洋介君     田島 一成君

  滝   実君     亀井 久興君

同日

 辞任         補欠選任

  田島 一成君     太田 和美君

同日

 第一分科員坂井学君及び福島豊君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計歳入歳出決算

 平成十六年度特別会計歳入歳出決算

 平成十六年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十六年度政府関係機関決算書

 平成十六年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十六年度国有財産無償貸付状況総計算書

(総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行及び文部科学省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

松本主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 本分科会は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十六年度決算外二件中、本日は、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 平成十六年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計について申し上げます。

 総務省主管の歳入につきましては、歳入予算額五百八十六億九千六百三十万円余に対し、収納済み歳入額は六百五十五億千四百八十九万円余であり、差し引き六十八億千八百五十八万円余の増加となっております。

 次に、総務省所管の歳出につきましては、歳出予算現額十九兆二千三百六十九億七千七十一万円余に対し、支出済み歳出額は十九兆千九百六十五億二千六百五十六万円余、翌年度繰越額は二百二十九億五百六十五万円余であり、不用額は百七十五億三千八百四十九万円余となっております。

 次に、交付税及び譲与税配付金特別会計について申し上げます。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は六十九兆七千八百四十一億九千五十六万円余、支出済み歳出額は六十八兆二百八十八億千六百八十一万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は九百九億六千二十二万円余、支出済み歳出額は七百九十五億五千三百十八万円余であります。

 以上が、平成十六年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

松本主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第五局長。

増田会計検査院当局者 平成十六年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号五号から九号までの五件は、電気通信格差是正事業費補助金等の経理が不当と認められるものであります。

 このうち、検査報告番号五号及び八号は、地域イントラネット基盤施設整備事業の実施に当たり、補助対象事業費に補助の対象とはならない、情報端末等の機器が設置されていない施設の工事費、ソフトウエアの購入費等を含めていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 検査報告番号六号、七号及び九号は、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の実施に当たり、補助対象事業費に補助の対象とはならない、リースで設置しているのに購入して設置したとする設備費、申請書の作成費等を含めるなどしていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、新世代ケーブル施設整備事業における光ケーブルの敷設に係る補助対象経費の算定に関するものであります。

 総務省では、地域における情報基盤を整備し高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、地域住民に映像情報等を提供するための施設及び設備を整備する新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業を行う市町村または第三セクターに対し、電気通信格差是正事業費補助金を交付しまたは無利子貸付金を貸し付けております。

 この補助事業を検査いたしましたところ、将来、より高品質なサービス等を事業主体が独自に提供するために整備する心数と補助事業で整備する心数を合わせた心数の光ケーブルを敷設する場合の光ケーブルの敷設に係る補助対象経費の算定において、独自に整備する心数と補助事業で整備する心数の割合等で実際の敷設費を案分することなく算定していたため、補助金が過大に交付されていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、十七年九月に総務省では案分することを周知徹底するとともに、交付申請書等に書類を追加して十分に審査を行えるようにするなどの処置を講じたものであります。

 その二は、地上デジタルテレビジョン放送の開始に伴うアナログ周波数変更対策業務に関するものであります。

 総務省では、社団法人電波産業会を指定周波数変更対策機関に指定して、アナログ周波数変更対策業務を行わせており、電波産業会では、同省から交付される特定周波数対策交付金を財源として、受信対策等について、アナログ周波数変更対策給付金を支給しております。また、調査業務等については、これらを委託して実施しております。

 これら給付金等を検査いたしましたところ、調査業務のうち事業所等目視調査及び受信対策のうちチャンネルプリセットの変更に係る労務単価の算定において、作業の実態を調査するなどして、これを適切に見直していなかったため、これら労務単価が割高なものとなっていて適切でないと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、総務省では十七年九月に電波産業会に対し通知文書を発し、労務単価の見直しを行うことを指示し、これを受けて電波産業会では、実態を反映した単価に改定するなどの処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

松本主査 次に、会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十六年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

松本主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、総務省のとった措置について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適切な執行を図るよう常に心がけているところではございますが、会計検査院の検査の結果、電気通信格差是正事業における補助対象事業費が過大に精算されていた等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところでありますが、内容を真摯に受けとめ、今後なお一層事務の改善を求めるとともに、厳正な態度で事務の執行に努める所存でございます。

松本主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。

    ―――――――――――――

松本主査 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松本主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋本岳君。

橋本分科員 おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会の第二分科会のトップバッターとして質問をさせていただきます。竹中大臣にもお越しいただいておりまして、ありがとうございます。総務省さんに対する質問ということでさせていただきます。

 さて、最近、いろいろな形で子供が事件に巻き込まれるということが大変多くなって、報道をされております。

 けさ方も、ある事件の容疑者が逮捕されたけれども、それがお母さんであったという、ある別の事件というか事故というかまだよくわからないわけですけれども、驚くような展開を遂げて、そういう報道もあって、改めて驚いているところでありますし、また、地域の子供の安全を守っていくということが、改めて本当に政府として、国として取り組まなければいけない喫緊の課題であるという思いを新たにしたところであります。

 そこで、きょう、この質問の機会を与えていただいたわけですけれども、主に総務省さんに対しまして、地域の子供の安全、安心を守るということにつきまして、特に、総務省さんは情報通信分野も所管をされておいでですので、ICTを使った取り組みについてお伺いをしていきたいと考えております。

 まず、昨年度の取り組みについてお伺いをしたいんですけれども、ちょうど私、昨年夏の総選挙で当選をさせていただきまして、それから落ちついたところで地元の方に、子供たち、家内も連れて家族で引っ越しをいたしました。引っ越したところが岡山県の倉敷市というところでありますが、その倉敷の転入した小学校、大高小学校におきまして、たまたまだと思いますけれども、総務省さんがICタグを使った学童の安全確保のための実験を行われているということを伺いまして、私もモニターとして参加をさせていただきました。

 要は、子供が何時何分に学校に着きましたとか、出ましたとか、どこを通りましたというようなことが、毎日この実験期間中、私の携帯電話にメールが飛んでくるということでありまして、本来でしたら、例えば近くにいるお母さんなりお父さんなりがそれを見て、ちゃんと無事に行っているな、帰っているなというのを見て、もしかしたら何か遅いなと思ったら自分で捜しに行くとかそういうこともできる、そういうような目的なんだろうと思っているわけですけれども、私は国会の会期中でもあったので遠くにいましたけれども、ちゃんと朝、子供が学校に行っておるなとか、帰ってきておるなというようなことを眺めて、子供が転校した早々でしたから、ちゃんと動いていってくれているなということを見ることができて、本当に安心することができたと思っております。

 本当に励みになりましたし、私の地元でもあります倉敷でこういった実験を行っていただいたこと、それに参加させていただいたことにこの場をおかりして御礼を申し上げたいと思っております。

 また、別の機会に、あるベンダーさんに街角見守りセンサーシステムというもののデモも見せていただきました。これは大阪の方で昨年度やはり実験をされたものと。お話を伺っていると、やはり子供にICタグを持たせて、どこにいるか、ある地点を通過したら、そこを通過したというのがわかるというような実験だと伺っています。こちらについても、六月一日ですか、公表されたu―Japanベストプラクティスというもので大賞をとられた実験であるというふうにも伺っております。

 そういうような実験をあちらこちらでされているということですけれども、まず、この二つの件につきまして、その概要と、概要は本当に簡単で結構でございますけれども、どんな成果が得られたかということを教えていただきたいと思います。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの実証実験、本年四月それから三月に倉敷市及び大阪市でそれぞれ実施されたものでございまして、これは総務省から研究委託を行いました企業と地元の自治体との協力により実施されたものでございます。

 倉敷市におきます実証実験では、カード型の電子タグを児童の方に携行していただきまして、それを市内の幾つかのスポットに設置された読み取り装置の前でかざしていただくことにより、その情報を読み取りまして、その場所、時刻などの情報を保護者の方あるいは学校の先生方に通知するシステムというものでございます。

 大阪の方は、電子タグとセンサーネットワークという新しい技術を活用した実証実験でございまして、センサーを自動販売機に取りつけまして、その販売機の前を通過した時刻、映像をそれぞれ保護者等に通知するシステム、そういうものについて実証実験を行ったものでございます。

 いずれの実証実験におきましても、電子タグやセンサーネットワークの技術を用いたわけでございますが、その中でのセキュリティーの技術が大変有効であるということを今回の実証実験で確認をいたしております。これらのシステムの構築が、児童の安心、安全の確保にとって大変効果的であるという結果が得られたところでございます。

橋本分科員 ありがとうございました。

 今、概要等、成果ということで、大変有効である、成果が得られたということで教えていただいたわけですけれども、今御説明の中では少し技術的に、倉敷の方では電子タグを使って云々、大阪の方ではセンサー前を通過したら云々ということで、技術的にはそこに違いがあるんだと思うんですけれども、利用する側からすると、要するに、具体的に言えばモニターとして参加している子供の親という立場からすると、そういうICTを使って子供の安全を守るという目的では軌を同じくしている、共通しているものなんだろうというふうに感じるわけであります。

 別々の地区で、技術的には恐らく別々の目的を持ってされた実験ではありますけれども、子供の安全を守るという観点において、二つの実験の間でその成果を共有していくだとか連携をしていくとかいうようなことがこれまで、昨年度実施をされた実験ですけれども、その際にはそういうことを考慮されていらっしゃったか、あるいは今後、そういういろいろな実験をされていることの連携についてどうお考えか、教えていただけますでしょうか。

松本政府参考人 先生のお尋ねの二つの実証実験でございますが、倉敷市の実証実験、平成十六年度から当省が推進しております電子タグ高度利活用技術に関する研究開発の一環でございます。また、大阪市の方の実証実験につきましては、十七年度から実施しておりますユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発の一環として、研究開発の大きな目的というものに多少の違いはございますが、いずれの実証実験におきましても、電子タグという共通の媒体を活用しているというものでございます。

 その中におきまして、プライバシー保護の手法等、倉敷市で開発いたしました電子タグの技術の成果を大阪市の実証実験において活用いたしておりまして、それぞれの実証実験の間には共通の技術、要素もございまして、連携を進めているところでございます。

 今後とも、こういったいろいろな研究開発を実施する中で、お互いの連携を一層強めまして、効率的な研究開発を推進してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

橋本分科員 ありがとうございました。

 そういった実験をしていただいたわけですけれども、最初に申し上げましたように、やはり子供の安全、安心を守るというのは、今本当に社会的に重要なテーマとなっているところでありまして、今後の展開といいますか、どうこれから広げていくか。今モニターとして一部の地域で実証の実験をするということだと思いますけれども、どうこれから発展をさせていくのか、その方向性について教えていただけますでしょうか。

松本政府参考人 総務省におきましては、子供の安全確保というのは大変大きな政策的な課題だという認識を有しております。

 そういう中で、電子タグあるいはセンサーネットワークの技術というものが大変有効であるというふうに考えておりますので、今後とも、技術の早期確立といいますか、実用化に向けて、研究開発あるいは実証実験等を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、これに加えまして、新しく開発されたシステムにつきまして、地方自治体の方々や支援関係の方々と情報についての共有を図りたいということでございます。昨年の十二月から一カ月間、子供の安心、安全の確保のためのシステムに関する情報収集を行いまして、寄せられた情報が二百十九件でございますが、その情報を整理、分析いたしました事例集を本年三月に法務省のホームページで公表いたしますとともに、文部科学省などの関係省庁にも御連絡をいたしまして、情報提供したところでございます。

 今後とも、こういった実証実験でありますとか、このような情報共有の仕組みを推進して、子供の安心、安全の確保のシステムの普及に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

橋本分科員 済みません、これは通告していないので少し意地悪な質問かもしれないんですけれども、今、いろいろな技術的実証実験をされているということで、かつ、もう既にいろいろな事例もあるということで、これはお答えになれる範囲で構わないんですけれども、ニーズとしては既に今現実のものとしてあるわけですから、どのぐらいの実用化のめど、見通しみたいなものをイメージしていらっしゃるかというのは、もしお答えいただけるようでしたらお答えいただけますでしょうか。

松本政府参考人 研究開発の技術的なレベルからいいますと、もう既に実証実験のレベルに入ってきていると言ってもいいということは、逆に言いますと、大変実用化に近い段階に来ているということだと思います。

 ただ、電子タグを用いましたこういったシステムにつきましては、プライバシーの問題でありますとか、一種の監視システムみたいなものでございますので、その地域あるいは社会においてそのシステムを導入していただけるかどうかという社会的な受容性の問題でありますとか、そういった観点の議論も今後また少し必要になるんではないか。そういう意味で、新しいシステムのPRを十分に行って、皆様方にその有効性を十分理解していただく、そういったことが大変重要ではないかというふうに考えております。

 そういった意味で、もう少し時間をかけてやる必要もあるんではないかというふうに考えているところでございます。

橋本分科員 ありがとうございます。

 もう事例集もつくっておられるということですし、PRもこれからされていくということで、普及に向けての取り組みというのはぜひ続けていっていただきたいと思っております。

 さて、昨年度、やはり総務省さんがなさったもう一つ別の実験について、次はお伺いいたします。

 こちらの方は、ICTを利用した住民参画というものに関する実験を千代田区と長岡市においてされていたということを承っています。自治体の政策形成だとか、自治体に限らずいろいろな住民活動にいろいろな方がネットを使って参加しやすくということで、SNSと呼ばれるコミュニティーシステムみたいなものをつくったりされたということでございます。本来の趣旨としては、そういう一般的にいろいろな形で使えるものだと思うわけですけれども、今申し上げているような、地域あるいは子供の安全、安心を守るといったことにも使えるものではないかなと思っております。

 そこで、まず、この実験をされた成果についてお伺いをしたいということと、あわせて、地域の安全、安心という観点で特にどうだったかということを教えていただきたいと思っているのと、ちょっと時間も限られているので、既にこんな形で立派な、すてきな報告書をつくっていただきました。内容を拝見しましたけれども、とても充実していると思います。せっかくされた実験ですから、やはりこれもどんどん全国的に普及していくといいなという思いがあるわけでございますけれども、そういった、せっかくつくったこの手引というものをどう普及させていくのか。ただつくりましたで終わってはもったいないわけですから。それから、今年度以降、今申し上げたテーマにおいて、どう進められて発展をさせていこうとされているか。その点を教えていただけますでしょうか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘ございましたように、総務省では、平成十七年度、ICTを活用した住民参画を促進するといった観点から、地域SNS等のモデルシステムを開発いたしますとともに、これを活用した実証実験を東京都千代田区と新潟県長岡市において実施し、その成果をもとに、今お示しいただきました「住民参画システム利用の手引き」を取りまとめたところでございます。

 御指摘ございました地域の安全、安心という観点から、ちょっと例示でございますけれども、例えば千代田区の例で言いますと、千代田のSNSにおきまして、地域で発生いたしました事件、これは何か刃物を持った男による刺傷事件というのがあったようでございますが、これに関する情報提供をいち早く実施したといった事例がございましたし、また、長岡市のSNSにおきましては、公園の木が倒れかかっているという情報伝達が市民からなされまして、市が迅速に対応したといったような事例も報告されたところでございまして、ICTを活用した住民参画というのが、地域の安心、安全に関しても有効なツールだというふうなことが実証されたと思っているところでございます。

 それから、次の点でございますけれども、どういうふうに活用し、これからどうするかということでございますけれども、総務省のホームページ等におきまして地域SNS等の取り組みについて紹介いたしますとともに、ただいまの手引につきまして、地方公共団体等の関係者に配付するなど、成果の積極的な周知、広報に努めているところでございます。

 十八年度は、昨年、十七年度のモデルシステムにつきまして、さらに広げまして、十一カ所におきまして実証実験をするといったことを含めましてさらに普及を促進してまいるというふうに考えているところでございます。

 さらにまた、本年度におきましては、パソコンの利用率が低い高齢者等の利用の拡大を図るといった観点から、テレビ端末の活用に関する実験といったものも取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。

橋本分科員 今、例えば手引についてはいろいろな自治体に配付をされている、あるいはホームページなどで見られるようになっている、私も拝見しましたけれども。そのほか、いろいろな広報もされているというふうに承りました。

 ちなみに、これもまたお答えいただければでいいんですけれども、自治体の配付、自治体、合併したので二千とかそういう数になっておりますけれども、どのぐらい配付されたというか、その報告書を何千部もつくられたのか、どこまでかというのを教えていただいてもいいでしょうか。

高部政府参考人 今、過程でございまして、各都道府県には既に配っているところでございます。それから、都道府県におきまして各市町村の需要等も取りまとめながら、さらに必要なところには配付してまいるというふうに考えているところでございます。

橋本分科員 ありがとうございます。全部というのはなかなか難しいかもしれませんけれども、昨年度、実証実験をして、せっかくのいい成果が出たというものでありますから、できるだけ多くの自治体の方々に、あるいは地域の方々に見ていただきたいと思いますし、それこそ予算をかけて実験をした、その成果ですから、それは広げて有効に活用していただくということを、取り組んでいただいておるとは思いますけれども、ぜひ意識をして、さらに取り組んでいっていただきたいと思います。

 今、少し私の存じ上げている範囲で、総務省さんでいろいろな実験をされていることを子供、地域の安全、安心という切り口で取り上げさせていただいたわけでありますけれども、今、総務省さんでも幾つかある。例えば部署も、最初の方の実験は技術政策課さんだし、住民参加のシステムの方は自治政策課さんですね。そういった形で、いろいろな部署で、でも同じ目的に使えるものを、それは社会的ニーズによって実験されているわけですから、されていたりするということがあるんだろうと思います。技術政策課さんの方の二つの実験は連携もされているというふうに教えていただいたわけですけれども、総務省さんの中だけ見てもそんな形になっていますし、もちろん、ほかの省庁さんも、社会の安全を守るというのは共通をして問題意識として持っておられますし、いろいろな取り組みがあるんだろうと思うわけであります。

 あるいは、総務省さんがされている事業というのは、目的論、本当に予算を確保した目的からいうと、技術的な検証であるとか、その技術的検証はもう済んでいるのでそれを社会的に受け入れられるか、先ほどプライバシー云々という話がありましたけれども、それを実際やってみて、皆さんが受け入れられるか受け入れられないのかということを判断されるための実験をされている。そういう技術的あるいは社会的な課題を検証するという目的でされている事業ですから、私たち国民というか利用者からすると、せっかくそういういろいろな取り組みをされている、これが全国に広がっていったらいいなと思うわけですけれども、多分、全国に広げるのが総務省さんの仕事ではないという側面も、正直言ってあるんだろうと思います。

 それをだれがやるのかというのは少し議論が要るかもしれないんですけれども、何と申しますか、やはり少しばらばらに行われていて、私たちとしては、もちろん技術が使われるのはいいことですけれども、やはり地域や子供の安全を守ってほしいというニーズはあって、それにこたえるべく努力をされているんだと思いますけれども、そのニーズというかテーマ、そこに沿って、やはり政府として、どこかがまとめるのがいいのか、どういう方法がいいのか、それは議論が要ると思いますけれども、各地で実験をした成果、それがきちんと全国に広げられて、生かされていくように取り組んでいく必要があるのかなと思いますし、せっかくの実験ですから、そういった形で全国に広がっていってほしいと思うわけであります。

 今、今後の普及とか、皆さんに使っていただくというような視点から、きょうは内閣官房さん、文部科学省さん、もちろんあと総務省さんもお越しをいただいておりますので、それぞれにお伺いをしていきたいと思うわけであります。

 まず最初に、内閣官房さんにお伺いをいたします。

 きょうの私の質問は、IT、ICTを使ってということでございます。政府の方では、IT新戦略というのを策定されまして、重点計画というのもつくっておられる。その中において、今取り上げましたような、ITを使った地域だとかあるいは子供の安全を守るというものがどう取り上げられているか、取り扱われているか、そちらについて教えていただけますでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、政府のIT戦略本部では、本年の一月に、新たなIT戦略といたしまして、IT新改革戦略というものを策定しておるところでございます。このIT新改革戦略におきましては、ITの構造改革力の追求による安全、安心な社会の実現というものをIT戦略上の一つの重要な政策課題として位置づけておりまして、そうした中で、子供の安全確保につきましてもITの活用を推進していくこととしておるところでございます。

 これを受けまして、これも先生御指摘ございましたけれども、IT戦略本部では、本年六月一日に、重点計画―二〇〇六のパブリックコメント案を策定したところでございますけれども、このパブリックコメント案では、文部科学省さん、総務省さんが協力いたしまして、全国各地で実施されております子供を見守る活動に関する情報をできるだけ多くの方々に共有していただく、ベストプラクティスみたいなものを共有していただくということを目的とした事業でございますとか、地域において、ITを活用した子供を見守るモデル事業等の施策を推進することとしているところでございます。

 今後とも、関係省庁が緊密に連携する中で、子供の安全確保に向けたIT政策を推進してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

橋本分科員 では、続きまして文部科学省さんにお伺いをいたします。

 今申し上げたいろいろな実験などもございますけれども、その成果なども受けて、例えば、いろいろなシステムを開発された、あるいはいろいろなノウハウ、成果みたいなものが得られた、こういったものを学校を通じて多くの地域に普及させていただくようなお考えをお持ちでしょうか。あるいは、そういった具体的な方策などありましたら、教えていただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 子供の安全を守るために新しい情報技術を活用するということは、御指摘のように、有効な方法の一つであると考えておるところでございます。また、これにつきましては、関係省庁と連携を図りながら行っていくということも大事なことだと思っております。

 私どもにおきましては、本年度から新たに、ITもしくはICTを活用して子供の安全に関する情報を共有する取り組み、これを支援するための実践的な調査研究事業を実施することにしております。これは技術的な面というよりも、むしろ、実際、自治体とか学校で導入する場合、活用する場合のいろいろな課題とかということについて調査研究をしようというものでございますけれども、こういう事業の実施に当たりましては、総務省さんの御協力をも得ながら、連携しながら進めていきたいと考えておるところでございます。

 新しい技術を実際に現場で運用するためには、いろいろな、コストの面などさらに考慮すべき点はあると思うわけでございますけれども、私どもとしては、このような事業を通じまして、子供の安全を確保するための有効な手段、取り組みについて広く普及するように努めてまいりたいと考えております。

橋本分科員 ありがとうございます。

 それでは、総務省さん、これは要するに、自治体を担当されて地方自治を担当されているという立場での総務省さんに、今、学校を通じてということで文部科学省さんにお伺いをしましたけれども、自治体を通じていろいろな地域にそういった取り組み、システムなどを普及させていただくようなお考えがあるか、その方策などを伺えればと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、地域において子供を含めて弱者の安全を確保するというのは、住民に身近な地方公共団体の役割として非常に重要だというふうに思っているところでございます。なおかつ、また、住民に身近なところの行政でございますので、住民の動向を反映したいろいろな取り組みを、各地域の状況に応じて各団体が工夫しながらやっているというのが実情だろうと思います。

 我々もいろいろな事例を把握しているところでございますけれども、私どもいたしましては、地方自治という観点からしましても、地域の連帯感といいますか、地域コミュニティーというのは非常に重要な面があると思っております。そういう施策の中で、IT、ICTを活用していくという視点が、今までもいろいろやってきているわけでございますけれども、なかなか決め手になるもの、これがあればというのがなかなかない状況の中でいろいろな取り組みが必要だろうと思いますが、ICT技術の活用というのは非常に重要な視点だろうと思っております。

 そういう観点から、我々といたしましては、いろいろなモデル事業等々を通じましての支援とあわせまして、地域での取り組みの事例というものを各地方公共団体にいろいろ情報提供するという形の中で、こういういろいろな取り組みが広がっていくということに寄与していければなというふうに思っているところでございます。

橋本分科員 ありがとうございました。

 今、自治体の自治、地方自治の観点で、コミュニティーというものを運営する中でICTの活用というものも今後重要であろうというようなお言葉をいただきました。

 確かに、自治だとかコミュニティーというものを考えたときに、一番いいのは当然ながらフェース・ツー・フェースであって、わいわいがやがやすること、そこから始まるだろうとは思います。しかしながら、例えば、仕事をお持ちでなかなか参加できない、あるいはお子さんをお育て中でなかなかその集まりに出ていけない、いろいろな方々がいらっしゃいますから、そういった方々を支援する、サポートするとして、あるいはもっとほかの意味でも、ICTの活用というのはいろいろ考えられることがあるだろうと思っておりますし、そういった方向での御答弁をいただいたものと承りました。ありがとうございます。

 きょうは総務省さんへの御質問ということで、地域のそれこそ子供たちの安全、安心を守るというテーマに沿って御質問させていただいた。いろいろな取り組みをされているし、前向きにもっと進めようとされているということも伺うことができて安心をした次第でありますけれども、まず一つ申し上げたいのは、決算行政監視という立場から見ますと、予算を費やしていろいろな実験をされた、その成果、効果みたいなものを普及させる取り組み、今、官房の方から、ベストプラクティスを広めていくようなというお話もありましたけれども、ぜひそういった視点にも留意をして、その普及をさせるんだと。その技術的な検討が目的という側面もあるとは思いますが、それはそれとして、せっかくの取り組みですから、生かしていっていただきたいと思います。

 また、総務省さんというのは、名が総務というとおり、それこそ情報通信の関係があり、地方自治、地方財政みたいなものもあります。行政監視もあるし、例えば消防庁さんだって管轄であるわけで、ある意味、多様な所管をお持ちですから、その組み合わせ、つながりというのをうまく生かしていっていただくことができるんじゃないかなということを思っておりますし、きょう、今いろいろな事業をされていることを教えていただきましたけれども、その中でもそれぞれ連携をして、総務省さんとしてのいろいろな力を発揮して、その成果を上げていくことができるんじゃないかなと思っております。

 そういった期待を申し上げまして、それからさらに、今、地域とか子供の安全、安心というのは本当に重要なテーマとなっておりますので、倉敷でも実験をしていただきましたけれども、今後さらに、その実験の成果が全国に普及することを願いまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて橋本岳君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂井学君。

坂井分科員 自由民主党の坂井学でございます。本日は、この決算行政監視委員会第二分科会で、総務省さんに質問させていただく機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 初めに、二〇一一年、地上波がデジタル化するということで、その対応について、特に電波障害を起こしている地区への対応についての質問を最初にさせていただきたいと思います。

 国の政策として地上波がデジタル化されるということで決められておりまして、今、準備が進められていると思います。先日、私の地元神奈川の神奈川新聞にも、まだまだこのデジタル化は一般の国民の認知度が低いという記事が載っておりましたけれども、これが実際の変化の日に近づけば近づくほど、さまざまな問題が出てくるかと思います。

 とりあえず、今回、電波障害を起こしている地区への対応ということで質問をさせていただきますのは、たまたま私、地元横浜市の戸塚でございますが、そちらの柏尾町という地区がございますけれども、そこで今電波障害があるということで、ディベロッパーさん、要は、Aというあるマンションが建ちまして、マンションが建ったことによって電波障害が起きる、そのディベロッパーさんが今その補償を行っている、こういうような事情がありまして、そこの件で御相談を受けた。こういうところから、なるほど、これは今後ますます、二〇一一年が近づくにつれて大きな問題になってくるんじゃないかなと思いましたので、質問させていただきたいと思います。

 というのは、今御説明させていただきましたように、その地域は電波障害があってディベロッパーさんが補償している。つまり、電波障害を起こしている各家庭までケーブルを引いて、要は、テレビが見られるように今段取りをしているわけでありますが、これが、デジタル化することによりまして、一切その補償を打ち切るというような話を今しているということであります。

 この前提というのが、当初その前提から始まりまして、今は住民といろいろ交渉をやっておりますので、かなり進んではおりますけれども、当初の話のきっかけは、デジタル化になれば電波障害を起こす地区はなくなるんだというのが、ディベロッパーさんから住民への説明でありました。デジタル化すれば一切電波障害がなくなる、だから補償は一切必要ないんだ、我々もこれで打ち切るんだというのが住民への説明であったということであります。

 ここで、最初に確認ではございますけれども、デジタル化した場合、電波障害というのは一切なくなるのかどうか、それともある地区においては残るのかどうか、まず確認でお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 先生御指摘のように、デジタル放送にしますと、今のアナログに比べて受信障害には非常に強い状況が生じます。

 ただし、これは地区ごとの状況によりますので、必ずしも全部なくなるかどうか、簡単に学問上みたいな形でいくわけにはいきませんが、私ども、現在の時点では、今までアナログの障害対策が一千百万ぐらいございましたが、それが多分、全国的な障害世帯数はおよそ十分の一程度まで縮小されるのではなかろうかと思っております。

 ただし、これは、その地区の状況、それから具体的なその受信地区に出た建物による電波障害の状況等によりますので、完全になくなるということではなくて、減るという形になるかと思います。

坂井分科員 わかりました。

 まず、十分の一までに縮小はするといっても、残るということであるのであれば、今回、ディベロッパーさん、例えばそういう、ないという前提のもとで住民の方々に話を始めたということでございますが、今後そういった事例がもっと本当に頻繁に起きてくる場合に、住民の方々が、これは残る場合もあるんだという知識を私はやはり知っておくことが大変必要だと思いますので、総務省さんに、あくまで電波障害は完全にはなくならないんだということを一般の国民の方にもやはりわかってもらうような対策は必要ではないかな、こう思っております。お願いをしたいと思います。

 そして、次に行きますけれども、こういう形で、ないというところからスタートいたしましたが、実際に可能性があるということで今話が進むわけでございます。しかし、今までアナログ放送のときには、マンションがないところに建った、建ったことによって見えなくなったということで原因が明らかに特定されているわけでありますが、今度デジタルに変わる場合には、既にもうマンションがそこに存在をしているわけでありまして、例えば、万一電波障害が起こって、アナログ放送だけ一切見えないというようなときに、そのマンションが原因かどうかということを特定することが大変難しくなるのではないかな、こう思うわけであります。

 これがマンションが原因でなければ、例えばもともとの地形なのかどうなのか、こういう話になってまいりますと、当然、住民側と今回のディベロッパー、この後管理組合にまた移ると思いますが、そちらの方との話は水かけ論になってしまうと思いますけれども、この障害の特定というのは実際問題としてできるものなんでしょうか、可能性があるものなんでしょうか。

清水政府参考人 先ほど申し上げましたように、デジタル放送が障害に強いということで、範囲は縮小するようになりますが、やはり建築物の遮へいでは受信障害が発生する場合がございます。

 具体的に、どの地域がどの程度デジタルの場合には障害になるかというのは、現地に直接測定の機器を持っていって、現実に測定調査する、そういうことが必要でございます。

 だれが行うのかという形になりますと、現実には、これは建てておられる管理組合あるいは建築主の方々が、受信障害が大体予想される地域に参りまして、そこの受信状況を調査して実態を把握するよう努めていただきまして、その結果を踏まえて、今度は実際に見えなくなる方々との当事者間の協議で、できるだけ客観的かつ合理的に特定するということが望ましいと考えているわけでございます。

 具体的に建築主の方や何かも、みずから機器を持っていって測定する形になりませんので、多分そういう場合にはアンテナメーカーの人ですとか、あるいは、そういう受信障害の状況を把握するのに既になれておられる方々に依頼してやっていただくような形になるのが一般的だと思っております。

坂井分科員 実際に調査を行うのは、例えばディベロッパーさんであったり、管理組合であったりということはわかりましたけれども、そのときに、例えば管理組合が調査をする前段階として、Aというマンションが原因であるという想定のもとに管理組合が動くわけでありますけれども、その時点で、そこのマンションがテレビが映らないことの原因なのかどうかということで、かなりやはり現場では議論になると思うんですね。それが原因だという想定ができるということであれば、もちろん動いてもらうことができますけれども、そのマンション自体が原因なのかどうか。

 ないところに建てば、おかしくなれば原因だとわかりますけれども、既にもうある中でアナログからデジタルに変わる。そうなって変わったときに、そこのマンションが本当に原因なのかどうかといったことがある程度論理的に確証が持てないと、管理組合が動くことも、住民の側からすると動いてもらうこともできないのではないかと思うんですが、その点、特定というのはできるものなんでしょうか。

清水政府参考人 受信障害の特定はなかなか困難でございまして、例えば、ビル一つだけでなくて、幾つかのビルが建って受信障害が現実に生じているときには、最後に、主たる一番大きな影響を与えた人に負担していただくというのが今までの大体のやり方でございました。

 これは先生御承知のように、法律上、だれが何をしなければならないの形になっておりませんでして、いわば民法上の一般不法行為の原則に基づいて、だれが影響を及ぼして、その結果どうなっているのかという形での解決になりますので、だれが負担するということは、法律上、その最後の人だとかそういう定めにはなっておりません。

 ただし、どこに、どういう影響でどう及んだかは、一応推定はできる形になろうかと思います。

坂井分科員 わかりました。今のお話もまた後で改めて質問させていただきたいと思いますが、そういう形で電波障害が起きるという状況があった場合に、今住民の方々が、例えばそのマンションが原因だとした場合、そこの管理組合の方々とその後やりとりをするようになると思うんですね。

 今、例えば戸塚の現場ではちょうどディベロッパーさんが責任を持ってやっておりましたけれども、開発が終わりまして、そうすると管理組合さんの方に要は権限が移る、義務が移るということになりまして、これからは、住民の方々とそのマンションの管理組合の方が話をするということになってまいります。

 しかし、住民もよくわからぬ、また管理組合の方も、電波障害の有無さえも恐らく入居の段階で詳しく知っているわけではない方々が、かわりばんこに組合長になって出てくるわけであります。今度はこういった管理組合と住民が話をするときに、管理組合が、わかりません、できないという話で、もしこれをわからないというままで終われば、住民は、ある種やはり泣き寝入りをしまして、ケーブルテレビに加入をするとか、代替の方法、かわりの方法をとっていくしかないというようなことにもなりかねないのではないかと思っておりますが、実際、管理組合における当事者能力といいますか交渉能力というか、そういったものは十分あるということでお考えになっているんでしょうか。

清水政府参考人 先生御指摘のとおり、分譲マンションのケースですと、受信障害が発生する場合、普通、建築中のときにはディベロッパーさんというんですか、建築主の方が大体それまでに協議をして、地域を特定してその負担分を、マンションの価格にどう反映されるかはわかりませんけれども、それで決めていくような形になりますが、仮に、区分所有者全体で構成される管理組合に移ってしまった場合には、やはり当事者は、その時点では管理組合の方が中心にならざるを得ないと思います。

 実際上、マンションの管理組合がそういう共聴施設、そういうものを所有したり維持管理しているケースもたくさんございまして、決して当事者能力がないわけではなく、それぞれ、さまざまな状態になるのかもしれませんけれども、管理組合と建築主の方の間にそこの部分の移行についてどういうふうな定めがあるかとか、その辺のところを総体的に見ながら行いますが、基本的には、移ればやはり管理組合の方に当事者になっていただくのが基本だろうと思っております。

坂井分科員 この戸塚の例でいきましても、たまたまここは電波障害を起こす地域に町の電気屋さんがおりまして、自分でテレビを設置したり何したりできるものでありまして、自分でテストをいたしまして、それで映るとか映らないとか、例えば自分の屋根から七メーター、アンテナを延ばすと映るようになるとか、そういった細かい実験をしている関係上、いろいろな話が詳しく出てくるわけでありますが、例えばわからない場合は、管理組合それから住民の側、それぞれ全くわからない状況の中で、しかし実際に映らないという現実の中でやりとりを、もしくは答えを探していかなきゃいけなくなってしまうわけであります。当然、こういったもめごと、もしくは紛争というのはあちらこちらで、恐らく私の選挙区におきましても出てくるのではないかな、こう想像されるわけであります。

 これは、今おっしゃいましたように民と民の関係ではありますけれども、国の政策としてデジタル化ということがスタートで原因を発している以上、そこにはやはり、幾ら民と民の関係とはいえども、紛争が起きることも想定できるわけですから、紛争した際の一定の調停のあり方もしくはスキーム、手順といったようなものを、これは今から具体的に想定をして、ある程度決めておく必要があるのではないか。

 また、そのときには、やはりその調停をする中に一定の、行政がある程度の役割を果たしていかなければ、これは民と民で、その地域と地域で、住民同士がやり合うようなことで決着がなかなかつかないということになれば、地元の問題として決して好ましい状況ではないと思いますので、このあたり、ぜひともその手順を示してほしいと私は思っているんですけれども、その点に関してのお考えをお聞かせいただければと思います。

清水政府参考人 先生御指摘のとおり、テレビが見えなくなるというのは、住民の方々にとっても大変大きな影響があるものでございます。

 現在の時点で、総務省の方では各地方の総合通信局、関東ですと東京にございます関東総合通信局、そういうようなところに受信障害対策官というものを設置してございます。この方が中心になりながら、今までの経験を踏まえて相談、対応をしてまいります。

 具体的に、またそこから必要に応じまして、関係各官庁ですとか、あるいは県中心に地方自治体、あるいは放送事業者等々で構成する受信環境クリーン協議会というものも、これも全国、ブロックごとに作成して、ここで周知ですとか、あるいは事前の対策ですとか事後対策ですとか、そういうようなところも相談するようにしてきているところでございます。

 御指摘の件につきましても、それぞれ、関東総合通信局で建築主の方と地元の方からお話を伺いながら、現在相談を受けているというような状況を承知しておりますが、なるべく解決に参考となる事例の提供等、こういうようなものを各総合通信局から情報提供なりいたしまして、協議が円滑に進められるような環境の整備に努めたいと思っております。

坂井分科員 必ずこの問題は近くなると出てくると思いますので、そういったときに余計な紛争が起きないように、また延びないように、感情的にもなってくる問題でございますから、対応をお願いしたいと思います。

 次に、郵政民営化に関しての質問をさせていただきたいと思います。

 私は昨年九月に初当選をさせていただきました。すなわち、郵政民営化の問題もしくは民営化の論点の選挙で、要は、小泉総理と竹中大臣に代議士にしてもらったようなものでもございますけれども、逆に、その郵政の選挙で、私たちは有権者に、民営化をすれば必ずや今までの郵便局よりもよくなるんですよ、便利になりますよ、使い勝手がよくなりますよ、安心してくださいとお話をさせていただきながら選挙をやってまいりました。

 結果として、やはりよりよい郵便局、そして、それは決して郵便局のための郵便局、もしくは郵政のための郵政ではなくて、実際に国民のための、使う側の立場にとってよりよい郵便局を目指していかなければいけない、私はこう思っておりまして、そのためには、私たち政治も、そして国民も、また現場の職員の皆様方も総力を挙げてやっていかなきゃいけないな、こう思っております。そして、その点に関して幾つかの視点から御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお聞きをしたいと思いますが、分社化ということで、今まで一つでやってきたものが、会社がかわったことによって、特に、貯金や保険の会社から郵便局会社に業務委託する際の手数料ということで、ここに消費税がかかるという問題が昨年も議論をされたと思います。私は、参議院の特別委員会で議論があって大臣も答弁をされているのを読ませていただきましたけれども、あれから、例えば税制の会議もありました。そしてまた、今ここまで民営化が進んできた中で、今現在七百億という新たな負担になるわけですが、この負担に対して、例えば消費税の減免を初め、またその他の代替手段も含めて、とる必要があるのか、もしくはどうかといったお考え、今の大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 坂井委員が御指摘くださいましたように、この問題に関しては、これまでもいろいろな議論がございました。思い起こせば、ちょうど一年前の六月、七月というのは本当にこの問題一色だったというふうに覚えております。

 この消費税の減免の問題については、ここの審議の中でも御議論があり、具体的に参議院の附帯決議がございました。附帯決議の中で、「消費税の減免などを含め関係税制について所要の検討を行う」というふうにされたところでございます。

 その後、我々はこれを踏まえまして、昨年の末にこれは与党にお願いをしまして、消費税の取り扱いについても御検討をしていただいたところでございます。

 その結果として、これは平成十八年度の自民党の税制改正大綱でございますけれども、税に関しては、移行期間内の各事業年度において、例の社会・地域貢献基金を積み立てる場合については積立金額を損金算入することができる、いわゆる準備金制度を整備する措置がとられております。

 その上で、これは消費税の問題を含めてでございますけれども、民営化委員会における三年ごとの見直しに当たり、郵政民営化に係る新事業会社の経営状況等を見きわめ、必要に応じ所要の検討を行うというふうにされたところでございます。

 この問題は、税の論理と、税の論理というのはやはり整合的でなければならないという問題、それと、民営化の経営の現実がどうなるかという問題、それを判断していかなければいけない問題であろうかというふうに考えておりますが、現時点では今申し上げたような形に、政府として、そして与党として考えているところでございます。

坂井分科員 どうもありがとうございました。

 次に、昨年のその時期にやはり議論があったと思いますけれども、郵政民営化という形で民営化をする際に、そのシステムの構築が間に合わないのではないかというような意見がありまして、そしてその当時には、私もシステムの問題を詳しくは存じ上げないのであれなんですが、三分の一暫定システムというような言葉も出てまいりまして、いわば完全でない形で平成十九年十月スタートとしなければならぬ、こういうような議論があったかと思います。

 実際、メガバンク等でも、合併後新たな業務を開始したときに、システムがダウンをして一時使えなくなったというような事例もございまして、システムの問題は、専門家の方々のお知恵を拝借してしっかりとやはり対処しなければいけない問題だな、こう思っておりますが、今時点で、郵政民営化スタートという十九年十月、このスタートの日程に間に合うのかどうか、そのとき、十分この信頼性はあるのかどうかといったことをお聞きしたいと思います。これは郵政公社さんですかね。

塚田参考人 十九年十月の民営・分社化に向けまして、現在、鋭意準備作業を進めているところでございまして、現時点では全体的に大きなおくれというのは発生しておりません。残り一年四カ月となりましたけれども、お客様に御迷惑をかけないよう、しっかり進捗管理し、混乱なくスタートをさせたいと考えております。

 特に、主要なシステムにつきましては設計を終えまして製造に着手しておりますし、また一部のシステムではテストがスタートしているという状況にございまして、現在のところ、システム開発に大きな問題は発生していないということでございます。今後とも、進捗面、品質面のリスクを見きわめ、管理を徹底していきたいと考えております。

坂井分科員 わかりました。

 そうしたら、次はかなり細かな質問になってしまうんですけれども、これは、実際にちょっと地元の方からも御相談を受けたり、またお話をいただいたことなので、お聞きをしておきたいんです。

 民営化になると便利になる、こう言われたけれども、実際はそうじゃないじゃないか、こういう声がございました。それは、簡易保険の加入者が団体をつくりまして、団体の払い込み手数料が、一人五百円だか二百円だかちょっと忘れましたけれども、そういった額になるそうでありますが、その額を積み立てて、例えば自治会の運営費にしたりとか、子供会の活動に使ったりとか、趣味の方々は旅行会の費用にしたりとかというような、要は、地元活動をする際に大いに利用してきたというのがこの団体払い込み手数料の使用方法だったというようなことで地元の方が言われました。

 しかし、これが今、公社になりましてこの制度を廃止する、廃止されたんだ、こういうようなことを地元の方が言ってまいりました。聞くところによると、廃止じゃないというような声もございまして、ここのところの現状がどうなっているのかといったことを御説明いただきたいと思います。

 同時に、この払い込み団体、簡易保険の加入者の団体の増減がわかれば、そしてまた、その後の簡易保険の加入数の増減等も今お持ちであれば、そこまで通告のときにお願いしていなかったわけでありますが、もしわかれば教えていただきたいと思います。

元女参考人 簡易保険の保険料団体払い込み制度の御質問にお答えさせていただきたいと思います。

 公社化になりまして、この払い込み制度がなくなったということではございません。

 制度の概要を申し上げますと、まず、団体払い込みという名前のとおりでございますが、官公庁、会社、町の自治会といったような団体に属する方の保険契約が十五件以上あること、それから、団体代表者を通じて保険料を取りまとめていただきまして郵便局に払い込んでいただく、これが団体の払い込み制度の概要でございます。条件と言い直してもよろしいかと思います。

 これは、団体代表者の方が肩がわりして集金していただきますので、そういう集金手数料が要らないとか、それから、もちろん団体という組成の中で維持管理ができるものですから、そうした効果を考えまして保険料の一定分を割り引いております。今先生おっしゃられたとおり、その割引額についていろいろ自主的に活用されているんだろうというふうに思っております。

 ただ、今いろいろな声が上がっているというお話でございましたけれども、今日、コンプライアンスの徹底とか事業の透明性確保が強く求められております。そういうふうに、団体制度の適正な運用という中で加入者間の公平性を保つということが、ひいてはお客様の信頼を保つということになろうかと思っておりまして、保険料団体払い込み制度に関しては、今申し上げたような利用要件が正しく守られているかどうかというのをチェックさせていただく、これはもう、かねてよりずっとやってきたものでございます。もし、その利用要件を満たさないような団体がありました場合には、その団体代表者の方に対しまして、利用要件を満たすような改善を要請させていただいている。もちろん、適正な団体は継続して御利用いただけるものでございます。

 それで、数の点ですが、やはり適正化の中で減っている、数字はちょっと今は手元にないのでございますが、減っていると思っております。済みませんが、数字の件はちょっと御勘弁いただきたいと思います。

坂井分科員 全体の数字は私もわかりませんけれども、私の選挙区の隣の選挙区ですね、横浜市のある区は、百三、四十ありました団体が一けたになったというようなところもございまして、これはもう制度として、要は破綻をしている制度だ、こう言わざるを得ないと思うんですね。

 今までこれが、要は、地元の方々に利用してもらうことによって、郵便局なり簡保なりというものに大変親しい思いを持ってもらう、それから当然、加入者の数もふやすための一つの営業のツールだったり、また道具だったりして使ってこられたのかと思いますが、これはコンプライアンスの面から、お話あったように、的確に適用した結果、今まで百幾つもあったものが一けたになってしまう、もしくはそれに近くなるということになってしまうと、この制度自体がすなわち破綻をしているということになるので、もし同じように、今後も地元の方々、もしくは地域の方々、国民の方々が利用しやすい、もしくは同じような利用ができるというような制度をお考えいただけるのであれば、ぜひとも、利用者が今までと同じ程度には利用できるような制度設計をもう一度やり直していただきたい、このように希望をさせていただいておきます。

 最後に、民営化後の各郵便局、また、今は特定局と言われておりますけれども、郵便局の経営のあり方について、一言だけお話をさせていただきたいと思います。

 先日、ある特定郵便局の局長さんから、今度民営化になったら、新しい窓口、新しい支店を出したいんだ、こういう質問をされました。ただ、今自分のところは昼休みもないくらい忙しくて、五十人、それは本当かどうかまだ確認していないんですが、五十人ぐらい並んでいて、局舎の外まで行列ができると。東戸塚の郵便局なんですけれども、それだけ込んでいて、それでお客さんを待たせて、我々は毎日文句を言われているんだと。これを解消するために、近くにもう一軒私は郵便局を出したい、そうしたことによってお客様の混雑も緩和するし、何よりも、民営化後、自分自身の経営戦略として、二つ持っていることによっていろいろな展開が可能になるだろう、こういうことで御相談を受けましたけれども、今、公社になってから一つも郵便局をふやしていないということで、まず、それはだめだ、こういうお話をいただきました。

 しかし、当然、民営化になればそういった新しい支店を出すとか、それから例えば、去年いろいろ議論もありましたけれども、コンビニを併設するとか、レンタルビデオをやるとか、花屋を併設するとかいろいろな展開が考えられるわけで、こういった展開、新しい支店はいつから出せるようになるのか、もしくは、そういった新しいビジネスモデルはどういうふうなものを検討されているのか、実際にできるのかというようなことをお聞きしたいと思います。

 また同時に、ちょっともう時間がないので一緒に話を聞かせていただきますけれども、そういった今の郵便局長さんが、例えば新たなコンビニをつくりたい、新たなものをつくっていきたい、こういった場合に、当然、初期投資が必要であります、お金が必要になってくると思いますが、この融資の制度等はお考えになっているのかどうかということですね。もちろん今までは、民間の会社ですからそれは民間でやるのが当たり前かもしれませんけれども、ある種、国の制度によって状況が変わってきた。こういう論点から、そのあたりも含めて、新しいビジネスモデルもしくは民営化後の局長さんたちのあり方に関して、ちょっとお話をいただければと思います。

白川参考人 お答え申し上げます。

 郵便局の支局の問題でございますけれども、郵便局会社におきまして郵便局をどのように設置するかという問題は、先生御指摘のように、郵便局会社の経営における重要な課題だというふうに認識しております。

 お尋ねの件につきまして、郵便局の設置については、これを定めた郵便局株式会社法第五条の法律がございます。そしてまた、そのもとに今、総務省令が定められようとしている。こういう法律、省令、そういうものの規定の範囲内で、地域のお客様のニーズにこたえるとともに、効率的な設置を行ってまいりたいというふうに思っております。

 そして、その具体案、どういうような基準でというようなことにつきましては、今後、これから検討してまいりたいというふうに思っております。

 よろしくお願いいたします。

坂井分科員 新しいビジネスモデルで、例えば郵便局のほかにコンビニだとか、そういった新たな、業態を一緒にするようないろいろなビジネスモデルの検討、もしくはそういうものを周知徹底するような、こういったお考えというのはあるんでしょうか。

白川参考人 先生御指摘のように、新しい窓口会社におきましては、従来の公社と異なりまして、会社の経営判断に基づいて、主務大臣にお届けをするということをしまして、従来よりも幅広い業務が行えるようになるということでございます。

 したがって、そのもとでどういう新しい業務をやっていくかということにつきましても、現在検討中でございます。また明らかになりましたら公表したいと思います。

坂井分科員 早急にそういうものをまとめていただいて、お示しいただきたいと思います。

 時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

松本主査 これにて坂井学君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川(淳)分科員 民主党の小川淳也でございます。

 竹中大臣には本当に予算委員会以来いろいろとお世話になりまして、ありがとうございました。大変勉強になりましたし、今国会最後にこうして竹中大臣と向き合わせていただきますことを、本当に光栄に存じております。

 また、この五年間を振り返りますと、小泉内閣、小泉改革とよく言われておりますが、実質は竹中大臣のさまざまな思いとか手腕が存分に発揮された五年間ではなかったかという気がするぐらい、大変大きな存在感をお示しいただきました。時に大きな発信力、それ以上に大変大きな忍耐強さといいますか、辛抱強さ、後に続こうとする者にとっては本当に勉強になる姿勢を拝見させていただきました。その上で、幾つか総括的にお尋ねさせていただきたいと思います。

 その前に、きょうは決算監査委員会でございますから、ちょっと監査報告に関してお尋ねを申し上げます。

 ことしも会計検査院から全部で三百六十四件、一千億円近い不当事項等の指摘がございました。このうち総務省が七件、一億五千万円、これをいかに評価しておられますか。

竹中国務大臣 会計検査院から不当事項の指摘があったわけでございますから、この点に関してはまことに遺憾である、真摯に受けとめなければいけないと思っております。

 とりわけその一つの中心になったのが、いわゆる通信関係の事業であった。過去を振り返りますと同じような例が何回か起きていた、同じことを繰り返したという意味で、これは二重に私たちは反省をしなければいけないというふうに思っております。

 どのように対処をするか等々また御質問があるかもしれませんですけれども、しっかりと受けとめまして、会計検査院の御指摘を重く受けとめて対応しなければいけないと思っております。

小川(淳)分科員 大臣、御指摘になられましたとおり、各省ごとのシェアというのは例年ほとんど変わっていないんですね。大体、毎年三百件から四百件の指摘事項があります。

 総務省は、十五年も五件、今回が七件。これはちょっと不思議なんですが、十二年、十三年、十四年、全部四十件台なんですが、十四年から十五年にかけて何か大きな取り組みはございましたか、おわかりになればお答えください。

清水政府参考人 先生御指摘の件数の減でございますが、具体的に何がどうこうというのはちょっと存じ上げておりませんが、いろいろな指摘の中での補助対象の問題ですとか、あるいは実績報告書の確認だとか、あるいはそれぞれの事項について具体的な、これはいい、これはだめというような、そういうようなところはなるべく細かく指摘するようにしてきておりますので、その結果があらわれていたのかもしれません。そのあたりはちょっと明確には分析しておらないところでございます。

小川(淳)分科員 ぜひこれは一回分析してみてください。十四年まで四十件台でずっと来ている。十五年になっていきなり五件、劇的な変化です。ぜひこれは分析をしていただきたいと思います。

 これを見てみますと、一番ひどいのが、ひどいというのはちょっと言い方があれですが、厚生労働省なんですね。毎年百五十件前後、つまり三百件から四百件のうち半分近くが毎年厚生労働省。これは風紀の問題もあるんだと思いますが、御存じのとおり、社会保険庁を初めとしたさまざまな不祥事、こうした風紀の緩み等もこういったところにあらわれているんじゃないかと思います。

 会計検査院が検査をするのはここまでだと思いますが、そこからやや突っ込んで、二点お伺いをいたします。

 そもそも不当事項の指摘をされた内容を見ますと、例えば、大分県大分市で対象外のリース設備が入っていた。あるいは、富山県の情報発信拠点施設で図書コーナーとか図書用の倉庫の整備費用が紛れ込んでいた、備品の購入費に充てられていた。大阪府の阪南市、データベースの管理用ソフトに使われていた、マニュアル作成費に使われていた、運用指導に係る経費に使われていた。これは、使ったらだめなんですか。

清水政府参考人 例えば、先ほど大分のケースがございましたけれども、インターネット設備を一たん購入して、それをリース会社にまた売却して、今度はそこで新たなリース契約を結ぶというやり方をとっております。しかし、今回の設備対象施設というものは、リースは不可能、設備としては入れませんので、こういうものは当然対象にならない、そんなようなケースもございます。

 阪南のケースの場合も、話を確認してみますと、実行の実施マニュアルのところで若干その定義が不明確で、一部自治体の方の拡大解釈みたいな形で行ったものでございまして、このあたりは、対象とする設備をしっかり押さえた上で、だめなものはやはり対象外とせざるを得ないと思っております。

小川(淳)分科員 おっしゃることはわかりますよ。通知どおりに、規則どおりにやらなきゃいかぬということなんでしょうが、会計検査院としては、規則どおりにやられているかどうかを見る権能しかないわけですね。

 しかし、それを受け取った側の判断、発想としては、そもそも何でリースはだめなんだ、事業そのものを推進させるに当たって、リースが便利ならそれでいいじゃないか、図書用のスペースだっていいじゃないか、マニュアルをつくるのだって必要じゃないか、データベースの管理用だって要るじゃないか、運用指導にだって費用をかけないといけないじゃないか。本来、やはり事業そのものを自治体なり事業主体が進めやすいように運用規則をむしろ改めること、柔軟にすること、こういう発想を持つべきだと思いますね。これは強く指摘をさせていただきます。

 こういう現場に合わない細かさ、事業を推進する上でかえって邪魔になっている細かさ、これが、裏から見れば不当事項を多発させる一つの要因ということだと思います。

 もう一つ、やや突っ込んで申し上げます。

 今回対象になりました、例えば地域イントラネット基盤整備事業、それからケーブルテレビ施設整備事業、これは、例えば年間四十億円近いお金を使って、学校と図書館と公民館と市役所を専用で結ぶ回線は必要ですか。年間三十億から四十億。それから、年間二十億円使ってケーブルテレビを施設整備する補助金は必要ですか、今の時代。いかがですか。

清水政府参考人 先生御指摘のとおり、やはり地域におけるいわばIT革命の時代におけるそれぞれのケーブル等々のイントラ部分につきましては、各事業者等が整備するもののほかに、やはり公的な立場としての地方公共団体、あるいはCATV、これも、ある意味では難視のところも含めながら総合的な情報の確保という視点で本来助成の対象としているところでございます。

 これに伴って、例えば、いろいろな設備の接続ですとか、あるいはその設備のあいている部分の活用とか、そういう面では非常に情報化に効果的であろうと思います。そういう意味で、こういうような助成金等々を現在工夫したり、実施しているところでございます。

小川(淳)分科員 もちろん、そのようにお答えにならざるを得ないと思いますが、これは平成十年に創設されて八年間たっている。その間、民間ベースでさまざまな基本的なインフラというのがどんどん進んでいる。これを、こういう時代ですから、やはり事業の存在意義そのものを厳しく見直していくという視点が必要だと思いますよ。

 竹中大臣、申し上げたとおり、会計検査院の検査には限りがあります。その検査の及ばないより深い価値判断といいますか、より上位の価値判断をぜひ政治の現場からお願いしたいと思います。

 次に、同じく通信放送分野で少し私気になっておりますのが、やはりNHKさんの契約受信料等々、一昨年の混乱以来どういう状況かお尋ねをしたいと思うんですが、どういう状況ですか。

清水政府参考人 先生御指摘のように、NHKの方のいわゆる番組制作をする人の不祥事等々もろもろのことがございまして、平成十八年三月末の契約数で、いわゆる支払い件数が七〇・七%ございますが、一方で、未契約の件数が二一・五%、未収が七・八%、そのほかに、支払い拒否あるいは支払いを保留するというものが二・六%ございまして、全体のいわば三割の、総契約対象の三割の方が実際上支払いをいただけていないという現状になってございます。

小川(淳)分科員 これは、契約は義務なんですね。契約は義務であり、支払いは義務でない、そこの矛盾、これはどう説明すればいいんですか。

清水政府参考人 法律上、NHKの番組が映る受信機を購入した場合は、契約の義務という形になっております。これは先生御指摘のとおりでございまして、支払い義務までは書いてございません。

 これは、いわばNHKの運営に係る経費を国民の皆様方に負担していただくという形での負担金、そういうような制度の設立に際して、いわゆる契約の義務化というような形での法定をされたものと思っております。必ずしも、世界的に見ましても、この制度、いわゆる受信料制度であって、それをその機器の設置した者の契約の義務化というふうに限られているわけでございませんでして、いろんな中で、比較的日本人の当時のいわば感覚に合った形でこのような法律が定められたものと承知しております。

小川(淳)分科員 大変苦しい御答弁、感情的にはよくわかります。わかりますが、法的にきちんと整理しないと、契約は義務なのに支払わなくていいということ自体の矛盾、これはNHKさんが信頼を取り戻していく過程と多分歩調を合わすんだと思いますが、私も、いろいろ御取材をいただくに当たって、やはり民間放送の方が焦点を置いておられる価値観とそれから公共放送が置いておられる価値観、やはり焦点の当てどころが違うなということをよく感じます。その意味でも、両輪必要だと思うんですよね。引き続きしっかりと取り組みを進めていただきたいと思います。

 これに関連して、通信・放送の在り方に関する懇談会、竹中大臣の私的な懇談会だとお伺いをしておりますが、この中で、NHKのチャンネルの削減について触れられているくだりがございます。これは大臣、趣旨、真意を御説明いただけますか。簡単で結構です。

竹中国務大臣 放送と通信のあり方を根本的に議論する中で、一つ個別の問題として特にやはり我々重視しなければいけないのは、今のNHKの不祥事の問題、ガバナンスの欠如の問題であるということだったと思います。

 NHKがこれだけいろんな批判を受けているということの裏には、それだけ国民の皆様のNHKに対する非常に強い期待があるということだと思います。現に、これまでNHKは非常に重要な役割を日本の社会の中で果たしてこられたし、今も果たしていると私は思います。

 放送そのものは、民放を含め、公共性を持っています。しかし、その中でNHKという公共放送、公共放送と民間放送の二元体制は維持すべきものであるということを前提にしながら、では、その中の公共放送の役割というのをどのように考えたらよいのだろうか、そういうことを考えた上で、一方でガバナンスの問題を考えて、やはり資源を集中、特化していただくということが一つ重要なのではないだろうか。

 一方で、NHKに対しては別の期待があるわけです。つまり、国際放送をもっとやってくれ、これは総理からも直接お言葉がありました。また、NHKが持っている非常に大きな良質のコンテンツを将来的にはブロードバンドビジネスとしてやっていただいてもよいのではないか、むしろそれが重要なのではないか。そうすると、広げていただく分野がある。そういうことも含めると、さらに公共的な、公共性について、それを選択して集中的に資源を投下していただく必要があるのではないか、そういった議論を踏まえて、現在のチャンネル数の削減の話が出てきているわけでございます。

 これはまだ具体的には議論の途上でありますけれども、基本的な考え方としては、以上申し上げたような考え方でございます。

小川(淳)分科員 ありがとうございます。

 確かに、新しい役割を担うためにもリストラしていくという価値観は大変大事だと思うんですが、NHKさんというのは言うほどチャンネル数が多岐にわたっているわけでもなくて、例えば、地上波は総合放送と教育、それからラジオが第一、第二とFM、それから衛星が第一、第二、ハイビジョンですか、それぞれやはり割と個性がはっきりしているわけなんですよね。ですから、新しいところに出ていくという価値観は、私はそれはすごく大事だと思うんですが、一方で、民間に開放すればいい、NHKのチャンネルを閉鎖して民間にその電波を開放すればいいという議論だとすると、先ほど申し上げた観点から、少し慎重さが要るのかなという気がいたします。

 この懇談会の議論なんですが、非常に乱暴ですよね。難視聴者対策としては衛星放送一チャンネルで十分である、なぜ十分なのかわかりません。ラジオについては「公共放送として現行の三チャンネルを維持する必然性は薄れていることから、」これはなぜ薄れているのかわかりません。等々、非常に根拠のないままに結論が来ている。こういう乱暴な議論というのは非常に危険だと思います。大事な話であるだけに、しっかりとした議論をぜひお願いしたいと思います。

 それから、次に地方自治制度全般、お伺いをしたいんですが、竹中大臣、お答えになれる範囲で結構です。

 竹中大臣ほど小泉内閣で重用され、さまざまなポスト、重要ポストで御活躍をいただいた大臣はおられないと私は思いますが、これまでお務めになられた経済財政担当大臣、金融担当大臣、そして郵政改革担当大臣、この三つと比較をして、総務大臣というお仕事、何か勝手が違うなとか、あるいは勘どころがひょっとしたら異なるのかなというような点を、この八カ月、九カ月ですか、お感じになられたかどうか。新しいお務めだと思いますが、いかがですか。

竹中国務大臣 そんなしっかりとしたお話ではなくて、印象的なお話になることを御容赦いただきたいですが、特に二つ、今までと違うなと感じたところがございます。

 一つは、やはり総務省という役所の間口の広さでございます。

 地方財政の話は地方財政で大変重要で、かつ深い。放送・通信に代表される、また旧郵政関係の話も非常に広くて深い。加えて、旧総務庁等々の、政府の中を相手にした行革の話がある。これはやはり、自分自身、頭を切りかえするのが結構大変だなと思うところがございます。

 かつ、幅広いということで申し上げますと、いろんな表彰とか許認可等々のような、ちょっとこれは言い過ぎかもしれませんが、イベントが非常に多い大臣ポストであるなというふうにも感じます。これは、とりもなおさずそれだけの幅の広さをあらわしている、これが一つの点でございます。

 実は、もう一つあります。それは、問題そのものが極めて重要であるというふうに私自身は思うんですが、一般の方になかなかわかってもらえない。

 地方財政の話しかり。これは、地方の仕組み、重要だとだれでもわかりますけれども、今の仕組み、これは本当にわかっていただくのは大変なわけですね。通信・放送のように、極めて技術的な問題もございます。

 たまたまきのう、タウンミーティングがございました。これは道州制のタウンミーティングで、非常に多くの方々に集まっていただいて議論が活発だったんですが、質問者の三分の二が公務員の方でした。こんなタウンミーティングは初めてです。これは、とりもなおさず、やはり地方財政の話というのは皆さん関心はあって、聞きたいんだけれども、質問できる、そういう問題意識を持っておられる方は、やはり非常に限られた、国家公務員と地方公務員とその周りの方々。

 そういう点、間口が広いということと、非常に重要であるにもかかわらず一般の方になかなかわかっていただけない難しさがある、そのように感じております。

小川(淳)分科員 率直な御感想、ありがとうございました。

 その上でお尋ねに入りますが、大きく二つお尋ねします。

 まず、十六年から十八年にかけて大変大きな動きがあったといえば、三位一体改革だと思いますが、三位一体の三位、つまり補助金と交付税と税源移譲、この三つについて、これは政府の御担当の方でも結構です、どう総括、評価しておられますか、その成果について。

竹中国務大臣 三位一体の改革が始まるとき、私は経済財政政策担当大臣でございました。当時、財務大臣が塩川大臣、総務大臣が片山大臣、そして官房長官が福田官房長官、その四人で、どのようにこの問題を取り扱ってよいかということを何度も話し合いをいたしました。

 私は、十五年に始まる段階で、三兆円の税源移譲ができるとは実は思っていませんでした。財務省はとても税源を出さないだろう、一兆円までいかないんじゃないか、しかし、一兆円ぐらい税源移譲しないと成果にならないな、そういう思いでいろんな議論をしていって、それで、とにかくまず補助金の削減、税源移譲、そして交付税の改革ということを一つまとめて土俵に乗せるのに、大変難しかったという思いがございます。

 そういう意味では、四兆円を上回る補助金改革、三兆円の税源移譲、そして交付税についてもインセンティブを入れる等々の改革ができたということに関しては、私はやはりそれなりの進歩であるというふうに思います。

 ただ、改革というのは、ある一定まで行くと、まだこれだけしかやっていないのか、もっとやらなきゃいけない、そういう、これはいい意味での欲が出てくるものだと私は思います。

 そういう観点で言うならば、まだ地方の自由度は十分増しているとは思えません。これは、補助金のカットのとき、やはり各省庁がはっきり言ってどこも反対して、自分の仕事を失いたくない、そういう思いだと思います。それで大変難航した結果、地方の皆さんには、やはりもっと自由の権限を与えてほしかったという思いがあろうかと思います。今申し上げたような総体として三兆円を税源移譲して自由に使える一般財源がふえているわけですから、それなりの大きな評価だということは六団体も表明してくださっています。

 しかし、その上でさらにやらなきゃいけない、そういう思いが地方にも強まっているし、私自身もそのように思います。実は、そういう思いで今回の地方分権の懇談会を立ち上げております。

小川(淳)分科員 ありがとうございます。私も、これはまずボリューム的には大変大きな一歩だという点、全く同感であります。

 ところが、大臣もおっしゃいましたとおり、やはり、質的に本当に自治体の自由度を増したものなのか、そういうかぎのかけ方においては課題が残った手法だったな。特に、教育費、教員の給与に関する補助金が一番にやり玉に上がったこととか、それから生活保護費に関する補助金が上がったこと。やはり、私なんかの発想ですと、最初に公共事業だとかそういったところにもっとメスを入れるべきだったと思いますが、こういう勢い弱い方、声の小さい方、しわ寄せの行きやすい方、取り上げやすい方へしわ寄せが行ったこと、しかも、その結果が補助率の二分の一から三分の一への引き下げという形で、結果として自治体の自由度を増すことにつながらなかったこと、この二つは大変大きな反省点だと思います。

 三兆円、四兆円という規模は大きいわけですが、それよりも、一千億でも二千億でも結構です、やはりこの改革がどういう姿を目指しているのかというのは、本当の一歩であるなら、質の部分で問われる。やはり最初の一歩をこういう形でやってしまうと、次、五兆円議論しても、六兆円議論しても、この延長線上じゃないかという失望が広がるんですね。たとえ一千億でも二千億でも、本当にあるべき姿が描けていれば、次の一兆円、二兆円、三兆円には大変大きな展望が開けたんじゃないかと。

 やはり量よりも質、そこを、小泉改革全般を通してそういう思いがぬぐい去れません。その点だけは指摘をさせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 小川委員の御指摘は、私ももっともだと思います。だから、まだまだやらなきゃいけないことがあると思います。公共投資についても、公共事業についても、三年目にしてようやく門戸が開かれまして、施設費について、それが補助金削減の対象になりました。これも、非常に強い抵抗の中、何とか門戸は開いたということなんだと思っているんです。

 要は、問題を議論すればするほど、国と地方の役割分担、権限、負担、そういう問題が、現状、やはり非常にあいまいであるということに行き着くわけです。義務教育の話も、生活保護の話もお出しくださいましたけれども、今の制度というのは非常に多層的になっていて、複雑な地方自治だと私は思います。

 これは懇談会のメンバーになってくださっている小早川先生の言葉なんですけれども、単純な地方自治、つまり、これは国の仕事、これは地方の仕事、そのかわり、地方の仕事は自由もあるけれども責任もある、そういう形にやはり持っていくことが私は本当の分権だと思うんです。

 今回の懇談会の中で、であるからこそ、地方分権一括法をもう一度新しく議論しよう、定め直そうということを非常に重要なテーマとして掲げております。これは私たちが掲げていますけれども、各省庁、大反対があると思います。しかし、何とか地方分権一括法を新しくするということに一歩を踏み出したい。

 ちょっとここから先は言いわけかもしれませんが、私は、三年前にそういう議論をしても全く歯牙にもかけられなかったと思うんです。まず土俵をつくって、限定された土俵ではあるけれども、三位一体の土俵をつくって動かしてみて、これは少し動いたけれどもやはり大変だ、だからこそ国と地方の役割分担を根本的に見直さなきゃいけないということに対して、今、やはり一つのモーメンタムができつつあるのではないかと私は思っています。

 白地のキャンバスに絵をかくように改革はなかなかいかないわけでございますけれども、今の第一次の三位一体を生かして、今申し上げたようなもっとスケールの大きい地方分権改革にぜひ持っていきたいと考えております。

小川(淳)分科員 ぜひお願いをしたいと思います。

 足早に申し上げますが、交付税改革、これは、本当にすべての矛盾を解消してきたのが特会の借り入れだと思います。それから、国の借金もそうですね。あらゆる国家の矛盾を借金という形で解消してきた。これが本当に懸念材料。これは、それこそすさまじい覚悟で真っ正面から議論しないと、いつまでたってもこの状況、日本人として国家の経営に自信が持てません。ぜひこれは指摘をさせていただきます。

 それからもう一つ、これも指摘にとどめさせていただきますが、税源移譲、三兆円の大きな成果でした。しかも、住民税の比例税率。これは、私も担当していた経過から言って、夢みたいなことでした。当時、口では言っていましたが、できると思っていない。ところが、これが本当に実現した。しかし、必然的に住民税を納める方の数ももちろんふえますし、額が圧倒的にふえる。これは、必然的に前年課税の問題が出てくるわけですね。年収二百万程度から年間十万円近い負担増になるということですから、所得がなくなってから課税が来るこの住民税の仕組みがそろそろ限界に来るんじゃないかと思います。これは、ぜひとも御検討をいただきたいと思います。

 あわせて、もう一つの大きなテーマは市町村合併です。十八年の三月までで大きな成果がおありでしたが、この点も、総じていかに評価されますか。

竹中国務大臣 市町村合併、民間でできることは民間で、そして地方でできることは地方で、自由と責任を持ってやっていただこう、そのためには、やはり基礎自治体がある一定程度の財務的な基盤を兼ね備えていなくてはいけないのではないだろうか、それがまさに市町村合併の一つの考え方であったと思います。

 これは、平成十一年の三月末には三千二百あった、それが十八年には千八百二十になったということでございます。これは相当程度進展したと申し上げてよいのだと思います。そこで当事者は大変御苦労なさったと思いますけれども、それぞれにしっかりと話し合いをして、地元でここまで成果が上がったということは申し上げてよいのだと思います。

 先般、平成十一年四月から十八年三月までの合併した五百五十七団体を対象に試算を行いまして、おおむね二〇一六年度以降、年間で約一・八兆円の効率化効果があるという試算をまとめたところでございます。しかし、まだ進捗状況には差異が見られます。特に地域別の差異も相当ございます。また、人口一万未満の市町村も、三月末で五百四存在をしています。そういう意味では、引き続きこの努力は続けなければいけないというふうに思っております。

 ただ、その場合に、やはり地元の自由な意思に基づいて、みずからが必要性を認めてそのような形になっていくというそのプロセスを、ぜひ私たちとしては大事にしたいと思っております。

小川(淳)分科員 本当に、おっしゃるとおり、数の上では、もともと明治時代に七万あった市町村が三十年かけて一万に減って、昭和になって三千、これがいよいよ千八百と。劇的な変化を推し進められたその実績というのは、本当に大きいことだと思います。

 しかし、今、一・八兆円の削減効果とおっしゃいましたが、地方財政の規模が全体で百兆円を超える中での一・八兆円、これが本当にどれほどの意味を持つのか。やはり、御当局、みずからに厳しくとっていただかなければなりませんし、数が減ったことの成果をいかにあらわすかはこれからなんだと思います。その意味でも、先ほどの権限の振り分けの話も含めて、議論を一つに統合していくような作業が必要なんだと思います。

 その延長線上でお聞きしたいんですが、二十一世紀ビジョン懇談会の報告書を拝見しますと、道州制についても触れられているんですね。十年後の姿として、道州制への移行の検討を進めるということでございますが、道州制については、竹中大臣、いかに、どんな評価をお持ちですか。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、基礎自治体がある程度の財務的基盤を持たなければいけない。今、千八百ぐらいありますけれども、これは専門家のいろいろな御意見があります。では、最低どのぐらいの人口規模が必要かということに関しては、ある研究者は最低十万人ぐらい、ある研究者は最低三十万人ぐらい、いろいろな見解がございます。

 いずれにしましても、それだけそういうふうに今後も合併が進んでいくとなると、私はよく例で申し上げるんですけれども、例えば人口三十万の都市が一つ基礎自治体としてできると、私の生まれ故郷の和歌山県というのは、県の人口から考えて市が三つできたらそれで終わりだ、人口百万程度でありますので。

 そうすると、その場合、県というのは一体どういう役割を担うのか。やはり、より広域の行政体を考えなければいけないであろう。ただし、現実問題として考えると、アメリカの連邦制のように、そこが立法権や司法権を持つというのは、これは現実には考えがたいのではないだろうか。行政の権限を国から道州に、広域自治体に大胆におろして、今の県の行政の権限を大胆に市町村におろしていただく、そういう形を目指すというのは、私はこれはある意味で自然な姿であると申し上げてよいのだと思います。二十八次の地制調は、そういう観点に立って、これが適切な方向であるという答申を出された。これも画期的なことだと思います。

 我々の今の務めは、地制調は同時に、これはしかし国民的議論をしてくれということが答申に書かれておりますので、総務省の当面の役割としては、この国民的議論をしっかりとしていただくようなプロセスをつくっていくということであろうかと思っております。

 実は昨日、これをテーマとした第一回のタウンミーティングを開きました。実質的なキックオフであると思っております。その場でも、まだまだ、もっともっとよく中身について知らせてくれ、なかなかわかりにくいという御要望もありましたので、そういう広報、ディセミネーションを含めまして、ぜひしっかりと対応していきたいと思っております。

小川(淳)分科員 ありがとうございました。

 道州制の議論に関して、ぜひ一つ価値観をねじ込んでいただきたいんですが、市町村合併が多分広域化なり効率化というキーワードだったとすれば、例えば私は四国なんですが、四国四県を合わせますと人口四百万人、これは北欧諸国に匹敵する人口規模なんですね。ですから、広域化、効率化、市町村合併の延長線上の都道府県合併ではなくて、やはり国家像そのものにかかわる話、画一的で均質的な国づくりを目指した戦後五十年、六十年から、もっと多様でもっと本当に異質なものが織りまざるような、そういう国家像にかかわる話としてぜひ道州制をお考えいただきたいと思いますし、その意味で、今提出されている北海道の特区法案、これは一里塚になっているのかどうかすらも非常に疑問だなと思わざるを得ません。本当にそういった面からも、九月以降どうなるのか私も想像の限りではありませんが、ぜひお願いを申し上げたいなと思います。

 本当にこの国会ではいろいろお世話になりました。ありがとうございました。

松本主査 これにて小川淳也君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川分科員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日の決算行政監視委員会のこの分科会では、大きく、地方財政と情報通信のこの二点についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、地方財政についてお尋ねをしていきたいというふうに思うんですが、竹中大臣の私的諮問機関であります地方分権二十一世紀ビジョン懇談会、ここから五月二十六日に最終的な報告書(案)が取りまとめられているというふうに思います。

 今、変革の時代でありまして、政治家である大臣がリーダーシップを発揮されて、外部の意見を聞きながら世の中のこの仕組みを変えていこう、こういうことは大変重要なことであるというふうに思います。これは、大臣の御努力に対しまして敬意を表させていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 ただ、物事を決めるときは、現場の意見とかそれから実務家の意見をよく聞くということも大事ではないのかなというふうに考えるわけで、一部の学者や知識人の考えが実務の場で検討されないで政府の最終決定になっていってはいけないのではないかなというふうに考えるわけでございます。それで、この地方分権二十一世紀ビジョン懇談会がどうこうということではございませんけれども、一般論として、最近、外部の意見ばかりが重視されるようになってきまして、現場で汗をかいている人の声というものが政府に届いていないんじゃないかな、こういう向きがあるとすれば、これは問題であるというふうなことを一言申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、この地方分権二十一世紀ビジョン懇談会ですけれども、昨日も私は地元の福井に帰っておりまして、そこの首長さんたちからよく聞かれるんですけれども、自治体の財政というのは今後どうなっていくのか、こういう不安の声が聞こえてくるわけでございます。これは、ビジョン懇談会のメンバーの中に地方の現場をよく理解している方がいらっしゃらないということが一因ではないのかな、こういうふうに考えるわけでございます。

 今後、骨太方針の二〇〇六の決定に向けて地方の意見をしっかりと聞いていかなければならないわけでございますが、竹中大臣はどのようにこれを進めていくお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 地方で不安の声がある、それにしっかり対処しなければいけない、糸川委員の御指摘、これはもう我々は常に肝に銘じなければいけないと思います。特に、今のように制度をしっかりと変えていこうというときには、当然のことながら、やはり私たちが東京で想像している以上に地方の方は不安をお持ちだ、私も、それはいろいろな地域の方とお話をしていて感じています。本当に注意をしてしっかりとやっていかなければいけないと思います。

 ただ、その上で、二点ぜひ申し上げたいのでございますが、まず、懇談会の位置づけでございます。

 この懇談会は、別に物を決める場所ではありません。あくまで、私に対して一つの専門家としての考えをインプットしてください、判断は私がやります、総務省が行政の責任において行います、そのための一つのインプットをしてください、そういう場でございます。

 一方で、例えば私は、地方六団体との懇談の場を、ほとんどこれは就任してから月に一回は必ず持っておりますし、いろいろな地方関係者のイベント等々に出席して、むしろ私は、地方の方とほとんど接する機会が多いわけでございます。

 そういう意味では、この懇談会は、そのうちの一つのインプットをしていただきますけれども、判断者である総務省ないし総務大臣は常に地方の現場の方と接している、そういう状況であるというのがまず第一点でございます。

 それと、懇談会そのものに地方の現場の方が入っていただくかどうかというのは、これはいろいろな考えがあるんだと私は思います。実は別の委員会で、これは通信関係だったですけれども、現場の人が入っているのはけしからぬ、これは利害関係者が入っているのはけしからぬじゃないかという御指摘をいただいたこともございます。そこは大変難しいところなんだと私は思うんです。

 私なりの頭の整理としては、大きな方向を議論するときは、できるだけ利害関係者でない方で議論をしていただいて、それで、ヒアリング等々でしっかりと現場の意見を聞いてもらうというのが一つの方法なのではないか。そして、具体的な制度づくり等々、制度設計になりますと、これはやはり現場の方でないとわからないことがたくさんありますから、そこは積極的に専門委員として入っていただくというやり方がよいのではないか。私自身はそのような頭の整理をしております。もちろん、そんなに単純ではないと思います。ケース・バイ・ケースだと思います。

 そして、懇談会においても、とりわけ地方の声、ヒアリング等々、機会をしっかりと持っていただいたつもりでございます。御指摘の点は十分肝に銘じてやってまいりたいと思っています。

糸川分科員 通信のときに私も座っておりまして、確かに、そのときの指摘というものが、現場の人の声が余りにも入り過ぎているんじゃないのかというような声があったというのも私はそこでも聞いてはおるわけでございますけれども、ただ、どうしてもこれだけは感じてしまうのは、地元の福井などに帰りますと、本当に総務大臣の意見なのか、懇談会の中から出てきた意見なのか、どうもこれがわからない、わかりにくい、だから、だれが主導をとって言っているのかというのがわかりにくいという声が上がっているのも事実なのかなというふうに思いますので、それだけはまた今後考えていただければなというふうに思います。

 次に、この懇談会の報告書(案)、こういうものにある新型交付税についてお尋ねをさせていただきたいんです。

 報告書では、平成十九年度予算から人口と面積を基本とする新型交付税というものを導入するというふうにされておりますが、過疎地では人口が少なくて、この新型交付税の導入によりまして大幅に交付税が減るのではないか、こういうような危惧の声があるわけでございます。

 そこで、新型交付税が導入された場合の都道府県への影響額、こういうものを和歌山県が独自試算をされているというふうに思いますが、その結果では、不交付団体の東京都を除く四十六道府県のうち三十県で交付税額が減少する、こういう非常にショッキングな内容になっているというふうに思います。面積が飛び抜けて大きい北海道が千六百八十七億円の大幅増、こういうふうになる一方で、人口が八十二万人で面積が四千百八十九平方キロメートルの福井県、これは百一億円の減少となる、こういうふうに言われておるわけでございます。

 なぜ、今までの算定を変えて新型交付税というものを導入する必要があるのか、総務大臣にお答えいただきたいなというふうに思います。

竹中国務大臣 私は、新型交付税の問題というのは、これから地方分権を本格的に進めていくに当たって、パッケージで、全体として幾つかのことを同時並行的に行わなきゃいけない、そのうちの重要な一部であるというふうに思っております。

 同時に、もう一点申し上げておきたいのは、やはり一部に、この仕組みを変えるという話と、それと交付税全体の総額をどうするかという話が少し混同されているという懸念をしております。

 交付税総額の話というのは、これは、まさに国も地方も歳出を一生懸命できるだけ減らさなきゃいけない、一方で、経済を活性化して税収を上げていかなければいけない、そのときに交付税がどうなるかという全く別の次元の問題であって、総額が決まった中でその配分、仕組みをどうするかという問題とは、これはやはり基本的には切り離して考えていただかなければいけないと思います。地方の方の不安を聞くと、この新型交付税の導入というのは、総額を削るために何かやっているんじゃないか、そういうことをおっしゃる方がおられるんですが、それはそういう問題ではないということをまず申し上げておきたいと思います。

 では、委員御指摘のように、仕組みの上でなぜこれが必要なのかと。

 先ほどちょっとこの場でも御議論させていただいたことなんですが、我々が目指す分権というのは、国がいろいろ基準づけをするのをやめてくれ、国がいろいろな基準づけを地方にして、事細かく地方を縛るというのをやはりやめてもらわなきゃいけないんじゃないか、そのために分権一括法の見直しをもう一度して、できるだけ国の基準づけ、関与を少なくしていくということが重要になります。

 その上で、今の仕組みというのは、国が基準づけをしている、その基準づけをしていることに基づいて、一方で、だから基準財政需要で財政の需要をはかって必要なお金を措置しましょうということに実はなっている。国が関与しているということと、一方で基準財政需要で最終的に国が面倒を見るということが、実は表裏一体のような関係として今の地方財政の制度には存在してしまっているわけです。

 ところが、我々としては、この国の基準づけをどんどん減らしてください、そして、基準づけがない部分について、それをできるだけシンプルな形で地方の歳入を保障するような形に持っていこうではないか、これがまさに新型交付税なんです。

 しかし、今でも国が基準づけを行っていない部分があります。これは、どのぐらい行っていないかについてはいろいろな意見がありますが、一割という意見、二割という意見、いやもっとあるという意見、いろいろありますが、当面、この基準づけが行われていない部分については、これはまさに今申し上げたように、非常にもっとわかりやすい明快な形でお配りすることができる部分であるから、その部分から新型交付税を入れていこうではないか。でも、新型交付税を入れていくだけではなくて、重要な点は、その一方で国の基準づけをもっと減らしていくような分権一括法のようなものをやっていこうではないか。これは全部パッケージになっているわけですね。そういう中でこの新型交付税というのは、これはもうぜひとも導入をしていきたいと思っております。

 そして、最後にもう一点、こういう話をすると必ず、当然ではあるんですが、うちの県はどうなるんだ、うちの市町村はどうなるんだ、やはりそういうお話になります。面積と人口だけでどこかの県がやられたような単純計算をしますと、当然のことながら、面積が広いところにたくさん行く、人口が多いところにたくさん行く、その中間的なところに余り行かないという基準になりますが、それは基本的には、制度設計をどうするかという次の時点での問題です。私たちは現実に、これは行政ですから、そういう混乱が生じないように、きちっとした現実的な制度設計は必ずできるというふうに自信を持っております。

 具体的に言いますと、人口当たりといっても、人口一万から十万の間のその一人当たりのウエートと、人口百万から百十万までの人口のウエートは、これは当然違うべきです。面積についても同じです。そういうことで、これは一種のウエートづけ、カーブをつけるということになりますが、そういうことは当然に行っていかなければいけません。そういう中で、今の行政が、困らないような仕組みづくり、これは制度設計の段階で必ずきちっといたします。また、必要なら経過措置もとるということも考えなければいけません。

 我々は今、新型交付税という方向についてぜひ明確にして、そして、その方向について政府・与党で合意が得られるのであるならば、その次の段階としては、制度設計はきちっと今申し上げたようなお約束のもとにやっていく、そういう手順が必要であろうというふうに思っております。

糸川分科員 大変御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 実際、私も、いろいろな首長さんですとか知事さんとかと話をしていると、どうしてもそういうところに声が、うちの県は減らされるんじゃないかなとか、そういう声があるということを御理解いただいていると思うわけですけれども、ということは、当然、総務省のアナウンスがまだまだできていないんじゃないのかなと。やはり、その辺をしっかりと今後制度をきちっとしていく、整えていくということであれば、これは、大臣がリーダーシップを発揮されて、こういうふうにしていくから大丈夫なんだというところをぜひアナウンスをしていただきたいなというふうに思います。

 この新型交付税の導入というものは交付税の算定方法の変更であるというふうに思いますが、一方で、現在、政府・与党では、地方交付税の総額、これもどうも大幅に削減しようとする動きがあるように思います。

 この地方交付税の総額の削減と新型交付税の導入というのは関連があるのか、今後、総務大臣としてこの地方交付税の総額というのをどのように確保していくつもりなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 今の糸川委員の御質問も、実は大変重要な御質問でございます。

 私は、総務大臣に就任したときから、交付税というのは中間的支出である、それをターゲットにしてそれを抑制するという議論は、そもそも政策論議としておかしいということをずっと閣内で伝えてまいりました。最初はほとんど理解してくれませんでしたが、さすがに最近は、八割方御理解いただけているのではないかというふうに思っております。

 申し上げたいことは、これは、地方には地方の歳出があります。しかし、その歳出は国と同じなんです。社会保障の歳出であり、公共事業の歳出であり、そして人件費であり、その他の歳出である。地方にあるのはそれだけの歳出であります。その歳出と、一方で地方税等々の差額を埋めるものとしての交付税があるわけですから、当然のことながら、歳出については、国と歩調を合わせてしっかりと地方もやはり見直すところは見直していただかなきゃいけないと思います。しかしそれは、国とのやはりバランスの問題です。

 一方で、地方経済を活性化して、地方税が上がるようなそういう経済運営をしていかなければいけません。その結果として交付税の額を減らせるということが実現するならば、それはそれで悪いことではございません。しかし、この中間支出を最初から目標にするというのは政策論としては誤っている、そういう立場をずっと主張して貫いているわけでございます。

 つまり、社会保障と地方財政とそれと人件費が重要だというふうによく言いますけれども、地方財政という歳出項目なんかないんです。地方財政の中には、社会保障があり、人件費があり、公共事業がある。そのことはしっかりとぜひ申し上げていかなければいけないと思います。

 これまでもそういうことを主張してきまして、そして今、与党を中心に、その歳出の削減がどこまで可能かということもいろいろ議論していただいておりますが、それに当たっても、私からこれは政調会長にもよくお願いしまして、地方は地方の社会保障なんです、地方の人件費なんです、地方の公共事業なんです、それを国とのバランスにおいてしっかりと御議論いただきたいということを主張しております。そういう中で、国と地方が納得できる形での、プライマリーバランスの回復はそれはそれで重要でありますから、一つのシナリオをつくっていきたいと考えております。

糸川分科員 ぜひ、地方が納得できるようなやり方そして説明をしていただければなというふうに思うわけでございます。

 時間がもう余りありませんので、地方債のことについて少しお尋ねをさせていただきたいんですが、この懇談会の報告書(案)というものでは、地方債の完全自由化、これが提言されておるわけでございます。これは、地方の自主性の拡大に資する一方で、地方公共団体の資金調達に著しい格差を生むおそれがあるのではないかなというふうに思うわけでございまして、特に、過疎地などにおきまして、財政力の弱い団体においては、資金調達に支障が生じるのではないかなというふうに考えるわけでございます。

 そこで大臣にお尋ねさせていただきたいんですが、これらの団体における資金調達の円滑化にどのように取り組んでいくお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 地方債の問題というのは、実は非常に重要な二つの側面を持っていると思っております。一つは財政手段としての地方債という側面、もう一つは金融手段としての地方債という側面、これは、現状ではなかなか切り離せない重要な役割を担っているわけでございます。

 しかし、今後、地方の自由と責任を、そして自立を確保していく。これは一体改革です。税源移譲も含めて、しっかりとその税源も入ってくるように、そうする中で、私は、地方債というのは金融手段としての側面を強くしていかなければいけないというふうに思っております。それが、地方債の自由化、金融市場においてきちっと評価をしてもらう、これは地方団体にとってもよいことだと私は思います。よい行政をしているところはきちっと評価をされます。そういう仕組みを取り入れていくというのが、真の地方分権のために必要な方向であるというふうに考えているわけでございます。

 もちろん、必要不可欠な公共投資ができなくなるということがないように、投資的事業についての国、地方の役割分担、必要な事業量の設定方法、財源措置のあり方について、これは抜本的な議論を並行して行っていかなければ当然ならない問題であるというふうに思います。ただ、地方の自由、責任、自立、そういう観点から金融市場と非常に正面から向き合った地方債のあり方というものを考えていかなければいけない、そのような強い思いを持っております。

 もう一つ、私、最近気になる一つの、誤解が結構あるかなと思うのは、弱小団体は地方債債券を発行できないというようなことを言われる方が多いわけですけれども、これは、私は、債券市場というのはそういうものではないというふうに思っております。もちろん、金利の問題が出てまいります。しかし、この金利も、破綻法制のあるアメリカ等々の例で見ても、基本的に自治体の債券というのはソブリン債でありますから、レート、格付というのは決してそんなに一定以上低くならない。なっていないんですね。私は、その意味では、これも一つの誤解の面もあるかもしれませんが、債券市場というものに対して、自治体の皆さんもぜひ正面から向き合っていただきたい。この問題はそういう中で必ずクリアされていくというふうに思っております。

 しかし、当然、移行期を含め、必要な措置は国としてもしっかりと対応していかなければいけないと思っております。

糸川分科員 今大臣が、地方の自由、責任、自立、こういう言葉を発せられたわけで、この自立の部分で誤解を生じてしまうのかなというのが、要は地方切り捨てというふうに、自立しなさいというのは、見捨てられるようなイメージを持たれるところもあるのかなと思うわけで、それは、先ほどからお話ししているように、やはり地方へのアナウンスというものをしっかりとしていただいて、切り捨てるわけではないんだというところをしっかりと御説明いただいた方がいいのかなというふうに感じるわけでして、そういうことから、今度もまたこの懇談会での報告書では、新発地方債に対する交付税措置、これは「全廃すべきである。」こういうふうにされているわけでございます。

 現在、公共投資は地方債に頼っているわけでございまして、過疎地等の財源は、交付税に頼っている地域では、地方債の償還に対する交付税措置がなくなれば公共投資ができなくなってしまうんではないかな、こういうような危惧もあるわけでございますが、御見解をお聞かせいただければというふうに思います。

竹中国務大臣 今の御指摘の問題は、まさに先ほど申し上げたように、地方債というのは、実は、財政措置としての側面と金融措置としての側面があると申し上げましたが、まさにその財政的な措置としての側面、現実にあるわけです。これ、地方債で調達してください、後から交付税でその面倒を見ますということは、実は交付税の先取りなんですね。未来の交付税を担保にして資金調達をしているということにほかならないわけでございます。

 それで、こういう形での措置をやはりもっとすっきりしたものに改めていかなければいけないだろう。そういう交付税の措置とか、そういうことに頼らなくても必要な投資についてはできる仕組みを、だから、それはそれできっちりと議論していかなければいけません。

 その上で、これは将来の措置があるからということで、地方債、ここで金融的な措置が非常にモラルが低下するといけませんから、そういうことを食いとめるためにも、私は、財政の措置は財政の措置でしっかり議論した上で、金融手段としての地方債というものの性格を強めていくことが必要であるというふうに思っています。それがまさに地方債の完全自由化につながるわけですが、これは当然時間がかかります。しかし、やはりそこを目指してやっていく。

 まさに自立とおっしゃいましたけれども、そのためには税源移譲も必要なんです。税源移譲で、しかし税源のないところがありますから、そういうところでは、先ほど言ったような新型交付税等々を含めて、きちっと一定額の歳入が保障されるような仕組みをどうにかつくっていかなければいけない。そういう総合的な議論の中での重要な部分であるというふうに御理解を賜りたいと思います。

糸川分科員 よく理解をしたつもりでございます。

 ただ、本当に大臣として努めていただきたいということは、やはり地方の不安の声があるということで、その声を受けとめて、ぜひその不安を一つ一つ取り除いていただきたいなと思うわけでございます。

 またこれも不安の声がある部分で、情報通信の部分についてお尋ねをさせていただきたいんですが、五月二十六日に総務省が発表されました地上デジタルテレビ放送に関する浸透度のこの調査結果によりますと、地上アナログ放送停波の認知度、これが八五・七%、これは比較的高いんではないかなというふうに思えますが、この地上アナログテレビ放送の停波の時期、これについては認知度が三二・一%、意外と不十分なんではないのかなというふうに思うわけでございます。

 このままでは、二〇一一年の七月二十四日のアナログの停波におきまして、国民の皆様に、テレビの買いかえ等によってデジタル放送の受信環境を整えていただくのは困難ではないのかなというふうに思うわけでして、これはどのように今後総務省が取り組むのか、お聞かせいただければと思います。

清水政府参考人 先生御指摘のように、去年の三月とことしの三月に実施した総務省の調査によりますと、やはり認知度は、かつての六六から八六%へと二〇%アップしました。一方で、二〇一一年までに停波するんだよということについては、まだ三分の一程度でございます。実際上、とにかく一年間でアナログ停波の時期については、昨年は九%程度でしたから、大分上がってはきておりますけれども、やはりこれはもっと上に上げなければいけません。一〇〇%を目指しております。

 現在の時点では、国の方としましても、予算につきまして約七億五千万ほど用意しながら、放送事業者、メーカー、販売店、地方自治体等と連携しまして、ポスター、パンフレット、そういうものを作成配布したり相談センターをつくったり、販売されているアナログ受信機に対するアナログ停波告知シール、こういうようなものをつくりまして、メーカーの人に貼ってもらったりするようにしているところでございます。

 なお、このほかにも、放送事業者の方に御相談をさせていただいて、大体年間で十五秒スポットで各社平均一千本程度出していただこうと。今テレビを見ていただきますと、女子アナからデジアナへというコマーシャルだけやっていますが、あれだけではわからないから、もっと具体的な事実を入れて、もう少し情報を盛り込んだものをことしの夏ぐらいからやるように工夫等をして、なるべく周知に努めたいと思っておるところでございます。

糸川分科員 今のこの周知の部分でいいますと、二〇一一年には恐らくアナログテレビの買いかえというものがピークになってくるのではないかな。

 それで、私の車もそうなんですが、カーナビが今車についていると思うんですが、これも、そのテレビはほとんどアナログであるというふうなところから、今後早期に周知を徹底していくのももちろんなんですけれども、周知をするとともに、なぜか私も疑問なんですけれども、まだ販売をされていて、例えば、車、今現在販売されているもので純正のカーナビなんかがついているものはまだアナログに対応している。アナログのものを売っているわけですね。そうすると、一回車検を通して、通常の人であれば二回ぐらい車検を通すというふうに考えれば、その後の間、二〇一一年は恐らく来てしまうわけですね。そうすると、今現在の、もうこれから販売するものに関しては、メーカーの方に、ぜひそれはデジタルのものにしろというぐらいの話をしていかなければ、どこかで混乱が生じるんじゃないのかなというふうに思うわけで、その辺も周知徹底とともにしっかりと取り組んでいただいて、販売をされているから買った、それは今度チューナーを買えばいいんじゃないですかというただそれだけではなくて、リサイクルですとか環境に優しいということに取り組んでいくんであれば、その辺の取り組みも今後していただきたいなというふうに思うわけでございます。

 また、地元のテレビ局なんかと話をすると、この放送のデジタル化に当たっては、山間部で鉄塔の建設ですとかそういうことに多大なコストがかかっている、こういう現状があるんだと。

 それぞれの地域事情に応じて、国としてこの放送事業者に対する支援を実施していかないと、例えば数千人しかいないような小さな町があったり村があったりすると、その集落にデジタル放送を持っていかなきゃいけないから鉄塔はつくらなきゃいけない、鉄塔をつくりなさいよというふうに言われたんだけれども、そのお金がない。こういうことに対してどういう支援を国として行っていくのか、これは大臣の御見解をお聞かせいただきたいなというふうに思います。

竹中国務大臣 ことしの四月十四日に放送事業者から、例のあのデジタル中継局ロードマップというのが改訂されて公表されています。昨年十二月時点のものでございます。

 それによりますと、デジタル放送のアナログ放送時のエリア世帯カバー率が、これは、昨年に九〇%以上であったものが九五%というふうに向上しております。その意味で、九五%までカバーできる予定である。しかし、これは一〇〇%世帯カバーに向けてやらなければいけませんので、まだ課題は残っているということでございます。

 特に、今委員御指摘のように、まだ明示がない中継局が残っています。山間部の多い地域、離島とか、そういうところに対しては公的支援を求める意見があるということも承知をしているところでございます。まず我々としては、しっかりと手順を踏んで、開局時期の明示がない中継局については、しっかりと事情把握をした上で、自力建設に向けて最大限の努力をやはり事業者にしていただく。このことは、私自身も、民放連の幹部の方にお目にかかるたびにそのことはお願いをしております。

 一方で、もう一つ重要なのは、IPマルチキャストでありますとか衛星の活用であるとか、伝送路が今非常に多様化して技術が進歩しておりますから、そういう視聴者の選択肢の多様化を図る、そして、デジタル全面移行を実現するために必要な措置を考えていくということが、これも重要な手段であろうかと思います。

 現時点で何をどこまでやるというのはまだ申し上げる段階ではございませんですけれども、今申し上げたような形でまず事業者にしっかりやっていただくということに加えて、こういう伝送路を多様に考えていただいて、その選択肢の中で一〇〇%を実現する、そういう方向を我々としては目指すつもりでございます。

糸川分科員 今回のはアナログとデジタルの併用ではなくて、アナログはとまるということですから、やはり二〇一一年に混乱が絶対ないんだ、混乱は一〇〇%あり得ませんというところまで総務省等の力で持っていっていただかないと、今まで見られたテレビが突然見られなくなった、どうしたんだろうとか、それから、買いかえなきゃいけないのにこれはお金がどうなるんだとか、今までのをリサイクルしなきゃいけないからその費用を取られるとか、いろいろなそういう準備もあると思うんです、いろいろなところで。

 ですから、その辺は早期に指針を示していただいて、今後どういうふうにやるからこういう買いかえ方をしてくださいとか、そういうところを取り組んでいただければなというふうに思います。

 きょうはありがとうございました。終わります。

松本主査 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 午後二時十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十分開議

松本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前中に引き続き総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)分科員 民主党の近藤洋介でございます。質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、総務省所管の中でも、とりわけ郵政事業のあり方、さらにはそのトップの適格性について質問してまいりたいと思います。

 御案内のとおり、先週の六月二日に、三井住友銀行は、金融庁に対して、同行が平成十四年度から十六年度にかけての間、中小企業に対する押しつけ販売を組織的に行ったということで独占禁止法違反として摘発をされ、そのことを受けて金融庁から業務停止命令を受けたことに関して、業務改善計画を提出いたしました。その中で、金融庁に対して、責任の所在の明確化ということで、現役の経営陣、そして当時の経営陣に対する処分を発表いたしました。

 この中で、当時の三井住友銀行の頭取、現在は日本郵政株式会社の代表取締役である西川善文氏に対して、役員報酬の月額五〇%分の六カ月間分を返納するよう求めております。西川氏もこの処分に従うということを表明されておりますが、さて、この処分というのは、さまざまな方々が処分されましたが、経営陣の中で最も重い処分でありました。このことは、すなわち、同行が、今回の事件の責任の所在が西川氏にある、最も重い責任があるということを認めたわけであります。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいのですが、あってはいけない中小企業への押しつけという、過去に例のない違反事件を犯した当事者が西川社長であることが今回明確になりました。現時点で、こういった処分が起きた時点で、こうした、行政から不適格だということで摘発をされ、さらには、当該銀行からも処分を受けた人物が、巨大な金融機関として現在も運営されています、また今後も民営化会社として運営されます組織のトップになってしまったこと、このことの、任命をされた責任者、総理大臣と竹中大臣であるわけでありますけれども、その任命した責任について、大臣はどのようにお考えか。

 あわせて、竹中大臣は、法令遵守を金融担当大臣のときに掲げております。そういった法令遵守を掲げてきた政治家のお一人として、今回のこうした事態を引き起こした経営者を日本郵政の社長に任命された任命責任をいかがお考えか、まずお答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 三井住友銀行という日本を代表する金融機関で今回のような事案が発生したということ、今、近藤委員御指摘されましたように、コンプライアンス、法令遵守、私自身やはり大変強調してきた立場でございますので、このような事態に至ったことを大変遺憾に思っております。

 これに対して、今般、三井住友銀行において、金融庁からの行政処分に対しまして業務改善計画を提出したということは承知しております。今御紹介くださいましたように、この計画の中において、三井住友銀行は、西川前頭取に対して、月額報酬の五〇%の六カ月分相当額、これを返上するよう要請することにしている。西川前頭取におかれましては、この要請に対して、これはぜひとも真摯に御対応されるということを期待しております。

 任命の件でございますが、私は、西川氏については、金融の専門家として、これまで民間の大企業を経営されてきた経験、これを大変重視いたしました。また、この郵政民営化そのもの、大変に難しい金融問題の側面を持っております。こうした面での知見を評価しまして、就任の要請をしたつもりであります。

 今回の問題についても、これはぜひ一つの経験としていただいて、公正な立場で経営に臨んでいただきたいというふうに思っております。そして、私、任命させていただいたわけでありますから、ぜひ結果を出していただきたいというふうに考えております。

近藤(洋)分科員 大臣、公正な立場で経営を行っていただきたいという旨の御発言でございましたが、不公正な取引のかどで独禁法違反、摘発をされたんです、西川さんは。もう既に、公正な経営ができないということを公正取引委員会から、不公正な取引ということで責任を問われているのが西川さんなんですね。

 ちょっとお言葉を返すようでございますが、任命した当時は、それはまだ明らかになっていなかったということが言えるから、百歩譲ってよしとしても、もう今の時点では、西川前頭取、現日本郵政社長は銀行経営者として不適格だということが明らかになっているんです。

 不適格だということをお考えになりませんか。もう一度お答えいただきたいと思うんです。

竹中国務大臣 三井住友銀行でこのような事案があったというのは、大変遺憾に思います。およそ組織のトップたるもの、もちろん西川さん自身はこの事案に直接関連はしていなかったというふうに聞いておりますが、しかし、およそトップたるもの、その組織のすべての問題に対して、広い意味での責任は負っているというふうに思います。

 そういう観点から、今回、三井住友銀行からも、月額報酬の五〇%、六カ月分相当の返上をするような要請があったということでありますから、私は、これに対してはぜひ真摯に対応していただきたいと思います。

 一方で、この難しい郵政民営化という金融の問題を含む問題に対して、私は、西川頭取の金融マンとしての手腕に期待をしております。そういう観点から、今回の問題についても一つの経験として、ぜひ公正な立場で経営に臨んでいただいて、その上で、この難しい経営の問題に対してよい結果を出していただきたいというふうに、経営手腕を評価した上で、考えているところでございます。

近藤(洋)分科員 経営手腕に問題あり、こういうことを、もといた古巣から処分をされている方が、西川社長であるわけであります。

 そこで、本日は、日本郵政株式会社の高木代表取締役に参考人として来ていただいております。高木祥吉代表取締役は、平成十四年七月から平成十六年七月まで、金融庁長官として、金融行政を預かる事務方のトップでありました。その直前は金融庁の監督局長でもありましたから、まさに金融行政を知り尽くした方でもあります。

 そこでお伺いしたいのですが、これは通告になくて恐縮ですが、長官をやられた方であればお答えいただけると思います。高木取締役、私の郷土の大先輩で結城豊太郎さんという方がいます。結城豊太郎氏は、日本興業銀行の総裁、さらには日本銀行の総裁、そして大蔵大臣と、戦前、財政金融政策について大変活躍をされた、旧安田銀行の総裁もやられた方であります。この結城豊太郎さんが残した言葉に、銀行の生命は信用にありという言葉がございます。

 そこで、高木取締役、高木取締役は、引き続き巨大な金融を預かる銀行の経営者でもあられるわけでありますが、銀行の生命は信用にあり、この言葉の重さ、すなわち、銀行にとって私は信用というものが最も重要であろうと思うわけですが、高木取締役はどう思われますか。

高木参考人 お答え申し上げます。

 信用という単語にも意味はいろいろあると思うんですが、銀行はそもそも信用事業ですから、銀行にとって信用が大変重要だということは、先生御指摘のとおりだと思います。

近藤(洋)分科員 そうですね。まさに信用事業でございますから、信用は命なんです。

 その意味で、代表取締役、信用を維持するということは、決まったルールを守ること、これが一番大事な根底にあるわけですね。ちゃんとルールを守る。かたいというのは、銀行マン、過去に言われていましたが、まさにそれぐらい、信用を重んずるから、ある意味ではかたいというふうに言われる。ルールを守る、しゃくし定規だ、こういうことは、ある意味では銀行マンにとって、金融マンにとって褒め言葉でもあると思うわけであります。

 そこでお伺いしたいのですが、日本郵政の経営にとって、法令遵守、とりわけ公正な取引を維持することというのは私は経営上重要だと思うわけでありますが、いかがお考えでしょうか。政府出資だから目こぼしがされるというわけではないと思うんですが、いかがでしょうか。

高木参考人 先生おっしゃるとおり、郵政にとりましても、金融事業が非常に大きな事業の一つでございますから、そういう意味で、コンプライアンスといいますか、そういうルールの遵守ということは大変重要なことだと思います。そういうことで、そういった点についてのチームを設ける等、今しっかりその面での検討も進めているという状況でございます。

近藤(洋)分科員 その面で検討をされているのであれば、ぜひ西川さんの適格性を経営会議で議論していただきたいと思うんですね。

 公正な取引違反の責任を問われた方が、先ほど代表取締役のお話しのとおりであれば、信用を重んずる、法令遵守を守るという今の国会での御発言がそのとおりだとすれば、日本郵政のトップにいるというのはいかがなものでしょうか。

 しかも、その違反事件を犯したときの金融庁長官は、取締役、あなたですね。金融庁長官として、そのときに、この違反事件が起こった平成十四年四月から平成十七年三月末までのこの期間丸々、高木長官は金融庁のトップとして、そこに責任者としていらしたわけです。金融行政を守る方が、今まで守れ守れと民間に指導されてきた方が、今度は、その違反を犯した方の下で、事もあろうにその方の下で働いているという、これは非常にこっけいな姿だと思うんですね。

 さらに言えば、そのときの大臣が竹中大臣、高木長官、西川さん、そのままずるっと移って、今度は郵政担当大臣、そして西川さんが昇格をして、高木さん、あなたの上にいるということ、構図がそのまま同じなんじゃないですか。これは、高木取締役、私は、金融機関としての法令遵守の体制として、疑われても仕方がない、日本郵政の体制が果たして守られるのか。

 高木取締役は、今回の三井住友銀行の犯した事件について、大したことないとお考えですか。まずそこを伺います。

高木参考人 私は、金融庁長官をやめてもう約二年になるわけです。また、銀行の立場にあるわけでもございませんので、経緯とかあるいは事案の詳細等々について知り得る立場にないものですから、ただいまの先生の御質問につきましては、大変恐縮でございますが、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(洋)分科員 おかしいですね。それは、コメントを差し控えるというのは、高木取締役、金融行政に精通した方とは考えられない。

 高木取締役は、何で今のポジションにいるのかといえば、金融行政にお詳しいというその知見を買われて、今、日本郵政の代表取締役にいらっしゃるんじゃないんですか。そういう知見を買われて今の立場にいらっしゃる方が、金融機関でもある日本郵政の経営者として、今回の三井住友銀行の事案が、もう既に公正取引委員会、さらには金融庁も指摘をし、当事者も認めているこの事案について、どのように思っていらっしゃいますかという感想を聞かれて、答えられないというのは、私は、自分の金融に対する見識がないと天下に知らしめているのと同義語だと思いますが、もう一度お答えください。

高木参考人 まことに申しわけないんですが、本件につきましては、私は、正直に申し上げて、事案の詳細等存じ得る立場にないものですから、先ほどのような御答弁を申し上げました。

 私が知っていることは、一月二十三日に日本郵政株式会社が設立されて、西川社長と一緒に民営化にしっかり取り組んできているわけでありますが、そういう検討の中で、社長も率先して、そういったコンプライアンス等々の制度整備等にもしっかり取り組んでおられます。そういう意味で、私は、郵政民営化のために、西川社長と一緒になって、しっかりその実現に努めたいと考えております。

近藤(洋)分科員 高木代表取締役、これは私、こっけいだと思いますよ。

 かつて、金融行政のトップとして、そして、竹中当時金融担当大臣と事務方のトップとしてコンビを組まれて、金融再生にらつ腕を振るわれた、銀行監督をされてきた。私は、この五年間の小泉内閣のさまざまな評価がされるかと思いますけれども、個人的な考え方はありますが、金融の再生の道筋をつけたという点においては、さまざまな考え方はあるけれども、一定の評価はあるのだろうと思います。またその反動も今出ていますけれども。それをおやりになった長官が、それだけ見識のあることをやられてきた長官が、独占禁止法違反、五十年ぶりのこの事件について、わかりません、何をされたか私は知り得る立場にないと。

 その下で働くということは、これは金融行政の規律の問題、規律が保たれないと思うんです。要するに、悪いことを犯しても、お墨つきを与えられているわけですから。しかも、その下に、何と今、銀行界が鬼よりも怖い金融庁のトップがおる、下で使われている。このようなことでは、とても法令遵守体制が守られぬ。銀行の、日本郵政の経営としても問題だと思うわけであります。

 代表取締役、もう一度伺います。こういったことから、代表取締役は取締役会のメンバーですから、西川現社長の解任なり退任なりを取締役会で提起するお考えはありませんか。もう一度伺います。

高木参考人 今回の処分につきましては、大変何度もで恐縮でございますが、その内容をよく御承知なのは金融庁それから公正取引委員会かと思います。やはりそういう方たちと処分そのものについてはしっかり御議論いただきたいと思います。

 今の会社のあり方につきましては、私は、先生と同感で、コンプライアンス、法令遵守は大変重要だと思います。西川社長もその認識は十分持っております。そういうことで、今、郵政グループの円滑な民営化に向けてしっかり検討しているということで、私も力を合わせて頑張りたいというふうに思っております。

近藤(洋)分科員 そんなに、日本郵政代表取締役というのは魅力的な、何かいい仕事なんですかね。

 高木代表取締役にお伺いします。月額報酬は代表取締役として幾らいただいていますか。

高木参考人 お答え申し上げます。

 これもまた先生に大変恐縮でございますが、前回も総務省の鈴木局長がお答えしていると思いますけれども、プライバシーに関する個人の問題でもあり、また、特殊法人一般につきまして、こういった個々の人の報酬についてはそれを公表していないという御答弁をされているようでございます。そういうことを踏まえて、私個人としても、ここでのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

近藤(洋)分科員 竹中大臣、何で答えられないんですか。この間、別の委員会で、日本郵政の代表取締役の報酬をお教えいただきたいということ、この問題を伺いました。同じような御答弁でありました、プライバシーにかかわるものだと。

 しかしながら、日本郵政は、国が全額出資の特殊法人であります。株主総会は財務大臣が右代表で出てこられるということでございましたが、株主は国民でありますから、国民が株主の機関の、しかもこれは今も政府機関ですよ、特殊法人。なぜ、この報酬が答えられないのか、不思議でなりません。

 大臣、お答えいただけませんでしょうか、政府として。

竹中国務大臣 まず、日本郵政株式会社は特殊会社でございます、株式会社である。そして、根拠法はありますけれども、これについても、政府が今一〇〇%出資をしておりますけれども、これは民間の会社としてまさに設立をされているわけでありまして、今後さらに、株式も、持ち株会社に関しては三分の二までですけれども、処分をしていくことになっております。

 これは、日本郵政株式会社の役員報酬について同社に確認したところ、プライバシーに関する個人の問題であることから、具体額をお答えすることはできない旨の回答があったということでございます。そのことを先般局長から御答弁させていただいたというふうに思います。

 また、これまでも、特殊会社の役員報酬については、通例、特定の者の個別の報酬額については明らかにされておりません。支払い総額とかそういうものは公表されたことがあるというふうに承知をしております。

 ちなみに、日本郵政株式会社の設立時の総会におきましては、取締役に対する報酬総額については、報酬の支払いを受ける取締役は二十人以内で年額三億五千万以内というふうに決議されているところでございます。

近藤(洋)分科員 ですから、株主総会というのは、財務大臣の名代としての財務事務次官が出席をして、たった一人だけの株主の総会なわけですね。すなわち、政府が公開せいと言えば公開できるんですよ。プライバシー云々の問題じゃございません。政府が株主ですから。

 しかも、今回は、これだけの社会的にも問題となった事件を起こした方が今そこにいるという問題です。こういうことからもかんがみて、公開したらいかがですかということを言っているわけでございます。

 委員長、これは決算の分科会でございますが、私は、やはり国の税金の使い方ということから考えても、また今回の三井住友銀行の事案の大きさから考えても、日本郵政の今後を行政としてチェックするという意味からも、やはり委員会において、国会の名において資料を提出していただきたいと思うわけでございます。

 どうぞお取り計らいのほど、よろしくお願いします。

松本主査 後ほど協議をさせていただきます。

近藤(洋)分科員 非常に不透明な経営の仕方だと思うんですね。これで納得のいくような透明なコンプライアンス経営ができるのかと思うんです。そもそも日本郵政のトップというのは、昔で言えば郵政省の局長さんですよ。ある意味で、郵政省の長の、長官ですよ。その方の報酬がなぜ殊さら明らかにできないのかということ。

 民営化というのは、透明にするというのが、大臣、その趣旨だったんじゃないですか。事業運営を、規律を働かせる、そして透明にする。事業を透明にするというのが、竹中大臣がまさに総理とともに命をかけてまでやると言った郵政民営化だったはずなんです。ところが、民営化ということになった途端に、問題のあった経営者が今まだ居座っている、その報酬もわからない、明らかにしない、プライバシーという名前で。このような不透明なことが実際には行われているということが、今回の、きょうの質疑でも重ねて明らかになったと思います。非常におかしいと思いますし、このことはもう何度聞いても同じ答えしか出てこないでしょうから、本院において、そしてさまざまな場で提起をしていきたいと思うわけでございます。

 そこで、郵政事業でありますが、やはり西川さんの適格性はさまざまな部分で問題にしなければならない。大臣、今回の郵政民営化の後の西川さんは、郵政の事業拡大について積極的な発言をされている。これについては竹中大臣の御答弁も伺いました。御答弁は、郵政民営化委員会が決めるのだから、西川さんがどういうことを発言しても、民営化委員会がチェックをするのだから、そう勝手なことはできませんよ、こういう御答弁だったと思っております。

 しかしながら、これはある意味で、郵政民営化委員会が歯どめになるというのは詭弁でありまして、郵政民営化委員会には決定権はない。決定権があるのはまさに政府なんですね、最終的に。内閣なんです。内閣が、今回、日本郵政の計画について最終的な決定権を持つ。もちろん株主総会でありますけれども、株主総会で議決をされるのも、これも政府が株主ですから、その認可をするのも政府ですから、すなわち内閣が決定権を持つと解釈できるわけであります。

 そう考えますと、全銀協時代の発言と百八十度言葉をかえて、官業の関与が残る間に肥大化路線を突き進もうとしている西川善文社長の経営方針というのは、当初の郵政民営化の考え方からも大きく離れることでもありますし、金融をゆがめるということについては、全国銀行協会、全国地方銀行協会、民間銀行の方からも、理解に苦しむという言葉を受けています。

 竹中大臣、金融を御存じの竹中大臣のお立場からして、西川社長を現在の位置にとどめるということは、そういった観点からも問題だと思います。重ねて伺います。解任するお考えはありませんか。

竹中国務大臣 ちょっと今、委員いろいろおっしゃられましたが、西川社長が実際にどのような発言をされたのか、これは、こういうことも考えられるのではないかとか、西川社長もいろいろな思い悩みの中で言っておられると思います。それについて、どこの発言を指しておられるのか、また西川社長が実際にどのような発言をされたのか、詳細にちょっと私にはわかりかねる部分がございますけれども、これは、今まだ、いわゆる実施計画をつくる前の段階なわけですね。実施計画をつくる中で、どういうビジネスモデルで、どのような形で運営していくのか、そのときに収支規模はどうなるのかということが示されてくるわけでございます。それについては、私は、先般御答弁させていただいたと思いますけれども、しっかりと郵政民営化委員会の意見を聞いて、御指摘のとおり、総理大臣と総務大臣が判断をしなければいけないわけでございます。

 肥大化路線を突き進むというふうにおっしゃいましたが、これは法律の枠組みで決まっている、法律がございます。そして、我々が国会で誠意を持って答弁させていただいた、その答弁の内容と食い違うようなことにはこれはなり得ません。なぜならば、国会で答弁した我々が、最終的にその事業計画、実施計画を認可するわけでございます。そのような意味では、秩序ある民営化の枠組みはきちっと守られていくというふうに考えているところでございます。

 西川社長につきましては、先ほども申し上げましたように、金融の面での知見をぜひ活用していただいて、生かしていただいて、しっかりとした実施計画をつくっていただきたいというふうに思っております。

近藤(洋)分科員 西川さんの金融の知見というのは、法律を犯しても収益を上げよう、こういう営業手法、独占禁止法の摘発を受けた営業手法なんですよ。大臣が西川さんの知見をと言えば言うほど、こうした肥大化路線の、中小企業をいじめてきた、中小企業を踏みにじって利益を上げてきたことを許してきた経営者西川さんを是認することにつながるということなんですよ。まだこの期に及んでも西川さんに固執する理由が本当にわからないですね。過ちを正すことにはばかることなかれだと思う。

 高木取締役、日本郵政の銀行会社、簡保会社の社長は現在決まっていないと思いますが、いつまでに決める予定ですか。

高木参考人 大変恐縮ですけれども、私が新しい四分会社の社長を決める立場にはないというふうに思っております。

近藤(洋)分科員 では、竹中大臣、いつまでにお決めになる予定ですか。

竹中国務大臣 これは持株会社である日本郵政株式会社のトップの意思決定としてやっていただくということだと思いますけれども、我々としてもいろいろな形で御相談に乗らなければいけない問題であるという認識は持っております。

 いつまでか、その辺はまだ明確に判断をしておりませんが、今実施計画をつくっておりますので、その実施計画に何らかの形で参画していただけるのが望ましいと思います。ただ、これは人選を含めて大変難しい問題である、これはもう重ねて私、記者会見等々で申し上げておりますので、今の時点でどのぐらい時間がかかるかということは、なかなか申し上げられる状況ではございません。

近藤(洋)分科員 今の御答弁を聞いただけでも、高木取締役は、私が決める立場にないと言い、竹中総務大臣は、持ち株会社が決めたことに御相談にあずかるということを言い、ここでそごがあるんですよ。

 高木代表取締役、あなた、もっとまじめに経営をするおつもりが本当にあるんですか。西川さんのイエスマンに成り下がっているんじゃないんですか。代表取締役なんですよ。代表取締役なんですから、関係会社がどうなるか、責任を持ってどうするかということを発言しなければいけない。そういう発言が、高木さんほどの方が、金融再生にらつ腕を振るわれた、もう官僚中の官僚、これはいい意味で言っています、ベスト・アンド・ブライテストのお一人の高木さんほどの方が、そう言って、しっかりした言葉も言えない。やはりそこは、西川さんという人をトップにいただいているから、ああいった豪腕な、法を犯してでもどんどん営業へ行けといったことをやってしまった経営者をトップにいただいて、高木取締役も、見識を述べられなくなっているんじゃないか、そういうふうに思わざるを得ません。

 高木取締役、経営者として本当に日本郵政をしっかりしたいと思うのであれば、やはり西川社長の解任に向けて働きかけるべきだと私は思います。

 時間が参りました。この五年間の、まだまだ伺いたいことはたくさんありましたが、この問題については、私も引き続き、あらゆる委員会、あらゆる場面で政府の見解をただしていきたいと思います。

 時間ですので、終わりにします。

松本主査 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)分科員 民主党の鈴木克昌でございます。きょうは発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、庶民の夢と申しますか、宝くじについて少しお伺いをしていきたいと思っておるんですが、宝くじとその収益金についていろいろと、ちょっとこれは問題だなというような点が何点かございますので、きょう、限られた時間でありますが、その点をお聞きしたいというふうに思います。

 私はきょう、本年の三月十四日の新聞を持ってきたんです。私は愛知県なんですけれども、愛知県に三好町というところがあるんですが、そこの町議さんたちが、宝くじの収益金について監査請求を出したということが載っておりました。

 実は、私も、かつて地元蒲郡の市長をしておりまして、若干この振興協会にかかわったこともあるんですが、改めて、これはやはりみずからの経験も踏まえて少しお伺いをしておかなきゃいけないなということで、きょうは質問をさせていただきたいというふうに思うわけであります。

 この新聞記事の概要はもう御案内かもしれませんけれども、いずれにしても、一九七九年にいわゆる県市町村の振興協会が、宝くじの収益金を自治体に配分するという目的でつくられたわけでありますが、その中で幾つか問題が出た。

 例えば、利息を取って融資を行うわけなんですが、それは課税対象になるんじゃないかという指摘を国税局がしたとか、それから、その指摘に対して、交付金というところで、いわゆる各年度ごとの各市町村への交付金をそのまま会費に充てるというようなところは、これはおかしいんじゃないか、きちっと実際に帳簿に載せるべきではないかということに対して、総務省が、市町村の予算書には記載する必要がないという判定を下したとか、それから、宝くじの収益金を、自治体に本来は交付されるものなのに内部でため込むのはおかしいんじゃないかとか、いろいろとあって監査請求を出したということであります。

 ところが、これは結果的に、この住民監査請求は却下されたということでありますので、きょうこれをどうのこうのということではなくて、今申し上げた、公益法人である県市町村振興協会が非常に多額の基金を保有しておる、これは問題じゃないんですかということを実は申し上げたいわけであります。

 言うまでもありません、宝くじは庶民の夢、そして、宝くじに当たったとか外れたとかいうのは、本当にこれはだれもが関心を持つところなんです。私も、実は、先週金曜日に売り出された宝くじをずっと持っておるんですが、やはり正直言って当たればいいなと。外れればいいなと思う人はいないわけでありまして、当たればいいなと。ただ、問題は、宝くじを売ったお金、売り出されたお金がどう使われておるかということは、余り国民の皆さん、関心がないというよりも御理解されていないんじゃないかな。したがって、そこにきょうはちょっとスポットを当てさせていただきたいというふうに思うんです。

 まず、ちょっと順番を追って、宝くじを発行するのはだれなのか、そしてまた、それはどういうような目的で発行されておるのか、このことをおさらいの意味でお伺いをしたいと思います。

瀧野政府参考人 お答えいたします。

 宝くじでございますけれども、これは、地方財政法及び当せん金付証票法に基づきまして、全都道府県並びに十五の指定都市が発売する、こういう仕組みでございます。

 宝くじは、法律上、その収益は四割以内でございますけれども、それにつきまして、公共事業その他公益事業の財源に充てるために発売する、こういうことで、地方団体の貴重な財源になってございます。現在、非常に厳しい財政状況でございまして、教育関係、道路、社会福祉施設、そういった施設整備、あるいは国際化なり文化振興、高齢化対策、こういったソフト事業も含めまして、多様な、貴重な財源になっている。

 先生おっしゃいますように、もう一つ購入者の方にPRが行き届いていないんじゃないかという懸念はございますけれども、我々としては、いろいろな機にその広報宣伝には努めてまいってきましたし、これからもそのつもりでございます。

鈴木(克)分科員 今、発行するのはよくわかりました。それからまた目的についても、今お示しをいただいたわけであります。

 ただ、目的で、市町村の振興だとかいろいろ今おっしゃったわけでありますが、いわゆるその仕組み、収益をどのように使っていくという仕組みについて、少し詳しくお示しをいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 宝くじにつきましては、先ほど申し上げましたように、基本的に都道府県なり指定都市が発行いたしますので、そういう県とか市町村の部分というものについてはそれぞれの団体が、それぞれの財政状況を見ながら有効に活用していく、こういうことにまずなるわけでございます。

 一方、一般の市町村についてはどうかということになりますと、もともと一般の市町村も宝くじを発行したいという希望が随分あったわけでございまして、それは先生も御案内のとおりでございます。しかしながら、なかなか、宝くじというのは、全県的に売り出すとかあるいは大きな範囲で売り出すとかいうように、市場を考えながら発売いたしませんと非常に小さなロットになってしまうということもございまして、一般の市町村につきましては、それでは市町村が発行するのではなくて、かわりに県が発行いたしましてその収益を確保する。

 その収益は全市町村に帰属するものではございますけれども、それぞれの団体に配分いたしますと非常に小さな額になって、なかなか思うような事業に充当できないのではないかというようなことが、都道府県、市町村全体の中で議論がございまして、それでは、県ごとの市町村振興協会に市町村分の宝くじ、今、サマージャンボとかオータムジャンボという言われ方をしておりますけれども、そういう市町村分の宝くじは、県の市町村振興協会をつくって、そこへ帰属させようではないかと。そこで、市町村の代表が出てきて、どういう事業に充てるかをよく相談して、そしてそれを有効に使っていこう、市町村全体の利益になるように使っていこう、こういうような使い方になるということでございます。

鈴木(克)分科員 ただいまの御説明で、公益法人である県市町村振興協会の保有する基金の原資は宝くじの収益金だ、こういうことであります。それが、各町村に分けたのでは小さな数字というか額であるから、それを集めて、そしてどういうふうに使うのか協議した上でやっていく、こういうような御趣旨だったわけです。

 では、さらにお伺いしたいんですけれども、この各都道府県の市町村振興協会は具体的にどのような事業をなさっておるのか、その辺のところをお示しいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 各県の市町村振興協会の事業でございますけれども、これにつきましては、主なものとしては、例えば災害時におきまして市町村に対して緊急融資をする、あるいは市町村におきまして公共施設整備のために地方債の原資として貸し付けを行うとか、あるいは職員の研修を全県的に市町村研修として実施する、あるいはその共同利用施設をつくっていく、こういうような仕事を行っておるわけでございます。そのほか、その時々の市町村振興のための調査研究というのもございますので、そういうことも行っているわけでございます。

 愛知県におきましても同じような仕事を行っているというふうに理解してございます。

鈴木(克)分科員 各都道府県の市町村振興協会というのは、災害のときの応援だとか、公共整備だとか、共同利用施設の建設と維持、そしてその他、各問題の調査研究をやっているというような今御紹介がありました。

 そこで、とりあえず、どういう形で各市町村に振興協会からお金が行っておるのかということ、ちょっと具体的にお伺いをしていきたいんです。

 先ほど御紹介をした新聞記事に、各市町村振興協会から各市町村へ貸し出すについて、いわゆる利息を取って融資を行う、こういうことがあった。そして、それは貸金業じゃないかということで、国税局から、課税対象になりますよ、こういう指摘を受けたわけですね。そういう事実はあったわけですか。

瀧野政府参考人 国税の方の基準によりますと、一定の利子を取ってお金を貸すという場合に、貸金業として法人関係の税が課税されることがあるよということが、個別の幾つかの県で国税当局から指摘されたということは聞いておるところでございます。

 そういった中で、それぞれの団体で、そういったことではなくて、先ほども申し上げましたように、このお金は本来、市町村に帰属する宝くじの収益を、便宜、全国団体に帰属させているわけでございますので、これはもともと市町村に帰属しているものを、その形を変えたものであって、言ってみれば会員同士の資金の融通なのであるというようなことで、税務当局に御理解を得るべく努力しているというふうに聞いておるところでございます。

鈴木(克)分科員 ただいまそのような御答弁があったわけでありますが、実際には、例えば愛知県の場合ですけれども、愛知県の市町村振興協会が平成十六年九月から、県内の各市町村を会員として会費を徴収する、そしてその会員だけに融資するという形にした。このことは御存じですか。

瀧野政府参考人 先ほども申し上げましたように、この市町村振興の宝くじにつきまして、市町村全体に帰属する収益であるという中で、従来からそういう全体の、お互いの助け合いの中のものであるという考え方があったわけでございますけれども、先生御指摘のように、国税当局の方から、貸金業との関係はどうかというようなこともございましたので、それでは、従来からそういう考え方ではあったけれども、もう少し現在の法律の体系の中でわかりやすい形にしていこう、従来の考え方をもう少しクリアにしていこうという考えが出てまいりました。

 今までは、市町村を通じないで市町村協会に直接行っていたものですから、市町村との関係がある面ではもう一つクリアでない部分があったので、それでは、市町村振興協会の会員は市町村であり、市町村協会に収益金が帰属しているのは市町村の会費であるということをクリアにするというような方向で寄附行為の改正が行われたと聞いております。

鈴木(克)分科員 そこで幾つか問題というか、だんだん問題になってくるんですけれども、この会費と交付金を実は同額にしたんですね。それで結局相殺されるわけですね、会費と交付金が同額ですから。

 そうすると、これは、いわゆる地方自治法第二百十条の総計予算主義に私は反しておるのではないか。国でいうと、言うまでもありませんけれども、財政法の十四条には、「歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。」こういうことがありますね。私は、これがその総計予算主義の規定に明らかに反するのではないのかなというふうに思うんですが、このことについてはどのようにお考えになっていますか。

瀧野政府参考人 地方団体の予算につきましても、地方自治法の二百十条におきまして、一切の収入支出はこれを予算に編入しなさい、こういうことでございまして、国と同じような考え方でございます。

 その場合の一切の歳入歳出、これにつきましてどういうことが想定されるかといいますと、現金主義の地方団体の会計でございますので、現金の収納なり現金の支払い、こういうことであるというふうに解釈されておるわけでございます。

 翻って、ただいま御指摘の宝くじの収益金を考えてみますと、地方団体としては、現金の収入支出そのものを行っているわけではないわけでございます。先生おっしゃいますように、相殺されるという法的な効果はございますが、実際の収入支出を行っているわけではないという中で、これについては従来から、これは地方団体の総体での収益金ではあるけれども、従来説明しておりましたのは、これは総有的な資産だ、こういう言い方をしているようでございます、例えば入会権のようなものでございますけれども。

 総有的な資産ということになりますと、それぞれ持ち分はあるけれども、その持ち分については処分が自由にはできない、こういうような法的な構成でございます。したがいまして、そういった考え方の中で、一定の財産権というものは地方団体に帰属したとは思いますけれども、先ほど申し上げましたように、実際の現金の収入支出がないという中で、総計予算主義を規定した地方自治法の二百十条との関係でいえば、特に予算に計上する必要はないのではないかという考え方をずっととってきているということでございます。

鈴木(克)分科員 それは私はおかしいと思うんですね。まさにそういうことのないように、これはもう釈迦に説法ですけれども、財政法には幾つかの重要な予算原則が記されていますね、私も首長経験をしてきましたのでよくわかるんですが。まず、例えば単年度予算主義であるとか、それから会計年度独立の原則であるとか、その中に、明らかに総計予算主義というのもあるわけですね。

 だから、まさにそういうことがないようにしていくということが私は大事だと思います。実際の実務では、こちらのお金をあちらに持っていくあるいは振り込む、あちらからこちらへ同額を持ってくるあるいは振り込む、そういうことをしなくても相殺できることは相殺して、実際の金の移動はしなくてもいい、こういうことになるのかもしれません、実際の実務の中では。しかし、私は、予算というのはそれは絶対おかしいと思うんですよ。だって、チェックのしようがないじゃないですか。予算の上にきちっと残して、こういう歳入があった、こういう歳出があったということをきちっと、同じ額であっても、仮にそれが相殺できるものであってもきちっと書く、それが結局、予算執行の責任を明らかにしていくということになると私は思うんですよ。

 これも相殺ですから書く必要はありません、これも相殺ですから書く必要はありません、極端な言い方かもしれませんが、例えばそういうことをやってはならないよというのが、これはもう大原理原則なんですよ。ここを私は、そういういわゆる実務と同じような感覚で、本当にこういう公のお金を処理していっていいのかどうか、これは非常に問題だ。今言ったように、他の経費においても相殺を認めるようになると、財政の姿というものは著しくブラックボックス化して、本当の真の姿というのがわからなくなってしまう。そして財政には、毎年度予算を編成するという単年度主義あるいは会計年度独立の原則がある。

 新聞によりますと、会員制をとることにした際、県の協会では、設立時の昭和五十四年までさかのぼって市町村からの会費を徴収した、こういうことなんですね。こうした会費も交付金も、過去に実際出資したことも、またもらったこともない。したがって、これは三好町ですけれども、三好町の予算書にも決算書にも全く記載がないわけですよ。これは額が幾らか。四億数千万ですよ。これは少額だ、相殺されたんだから仕方がない、そういうことで本当に済ませていっていいんですかね。私は、まさにこれは本当に問題だ、こういうふうに思いますけれども、もう一度御答弁いただけませんか。

瀧野政府参考人 この市町村振興くじの収益について、どのような形でお金の流れをつくっていくか、これは昭和五十四年当時、随分議論をされたわけでございます。そういった中で、県、市町村、全団体の合意として、これは全体のものであるので、そこのところは個別に分けるのではなくて、市町村振興協会という受け皿をつくって、そちらの方でそれを受けて、それで有効に利用していこう、こういう合意ができた中で動いているものでございます。

 そういう中で、全体のものでございますので、なかなか各団体に帰属させることは難しいということで、先ほど申し上げました、総有的資産というような非常に難しい言葉を使って説明をしてきたわけでございます。

 いずれにいたしましても、最初からそういう考え方の中で、最近、租税との関係でもう少し、総有的な資産というだけではなくて、現在の法律の中で一定の位置づけができるような言葉遣いというようなことも必要であろうかということで、そういう会員とか会費とかという形にしたわけでございますけれども、性格は昭和五十四年の当初から同じようなものであるというふうに我々も考えておりますし、また、先生が先ほど御指摘になられました住民監査請求におきましても同じような考え方の、請求に対する判断が示されているのではないかなというふうに考えておるところでございます。

鈴木(克)分科員 全体で合意をしたんだということが一つの根拠ということですよね、今の御答弁だと。

 私は、その総有的資産というのはちょっと勉強不足でよくわからない部分があるんですが、また一遍、調べてきちっと勉強させていただきます。

 いずれにしても、くどくなりますけれども、総計予算主義というのは現にあるわけですよ。だけれども、今のお話は、みんなで話し合って、全体の者で合意ができたからいいんだということになると、では、総計予算主義というのは一体何なんですかね。合意がなされれば、みんなで話し合って意見が合えば、それはいいということですか。私はそうじゃないというふうに思うんですけれども、私の言っていること、違うんですかね。

 総有的資産という見解になるのかもしれませんけれども、なぜ、みんなで話し合ってあれだったらと。こういうことが、例えば拡大解釈をもし仮にされた場合には、本当に法というものは、また議会がチェックをするという機能は出てこないんですから。何遍も言いますけれども、くどくなりますが、そんなことを放置しておくというのは私はおかしいんじゃないかなというふうに思いますけれども、いかがなんでしょうか。

瀧野政府参考人 市町村振興宝くじについては、もともとが、市町村ではなかなか発行できない、発売主体にならないという制約の中で、県がその身がわりをする、しかも、そこで収益を得たものは市町村全体に使うという、普通の財源とは別の特別なものとしての生い立ちがあるというのが、まず前提としてあるのではないかというふうに考えるわけでございます。

 その中で、自治法の二百十条の総計予算主義については、あくまでも、収入支出の現実の支払いあるいは収入、こういうことを前提としておるものでもございますし、一方、先ほども申し上げましたように、収益については全体のものとして、しかも都道府県が第一次的には収入しているというようなこともございますので、そこら辺の中で、一番合理的な方法としてこういう方法がとられたというふうに我々は考えておりますし、これは、一般の二百十条の解釈を拡大するということとはまた別の問題ではないかなというふうに考えております。

鈴木(克)分科員 これは、あしたの朝まで同じことを繰り返してもしようがないので、私はおかしいというふうに思います。

 では先に進めますが、次に、金銭貸付業に当たる、こういう指摘を受けたわけですよね。私は、そういう指摘を受けたなら、その間の収益に相当する税金をきちっと払って、今後、会費を支払うならば、それは予算書及び決算書に記載をし、交付金については歳入に記載をするなど、仮にも住民からの法令違反の指摘を受けることのないようにしていくべきじゃないか、このように思うんですが、いわゆる国税局からの指摘や、それからまた住民監査を受けた、このことについてどのようにお考えになっておるのか、また、どのように直していこう、正していこうとされておるのか、それをちょっと御答弁いただきたいと思います。

瀧野政府参考人 国税当局からの指摘があったことは事実でございます。

 ただ、我々は、先ほどから申し上げていますように、これはこういった制度ができた当初から、市町村全体の収益ということで、お互いのいろいろな公益事業のために有効に活用していこうという意味では、共済的な貸し付けであるという考え方を持っているわけでございます。

 国税当局におきましても、一般の貸付業は課税の対象になりますけれども、共済的なものは課税の対象ではないという見解をお持ちになっているわけでございまして、結局は、共済的な貸し付けなのか一般の貸付業なのかという区分けの問題にこの問題も帰着するわけでございます。

 我々は、先ほど申し上げましたように、お互い市町村の助け合いの中での融通でございますので、五十四年から、これはあくまでもお互いの共済的貸し付けだという考え方でございまして、そういう趣旨を明らかにするために、定款の変更もそれぞれの団体が行っているというふうに考えております。今後も、そういった点については租税当局にきちんと説明をしなきゃいけないというふうに思いますし、また、住民の方でも、住民監査請求を出されている方が確かにおられるわけでございますので、そこの点はきちんと御説明をしていかなきゃいけないというふうに考えております。

鈴木(克)分科員 残り五分になりました。あと二問、どうしてもお伺いをしたいと思います。

 まず、新聞によりますと、愛知県協会の基金が四百五十四億円だ、そして貸し付けをしていますから、それを引いた残高が百五十七億円だ、こういうふうに聞いておるわけですね。

 そして一方では、総務大臣は自治体の破産法制まで考えてみえるというような厳しい財政状況というか現況で、私は、その収益金をきちっと各自治体に配分をすべきだ、この巨額なお金をためておく必要はないんじゃないか、このように思っておるんですが、そのことについての御見解をお示しいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 御指摘のように、現在、非常に地方財政は厳しい状況でありますので、せっかくの宝くじ、県民も含めました国民の方々が宝くじを買っていただいた結果でございますから、有効に活用しなきゃいけないということであろうかと思います。

 その場合に、制度の創設当時、先ほど申し上げましたけれども、やはりそれを細かく配分してしまった場合にはなかなかきちっとした仕事はできないのではないかということがございまして、当面それを基金に積みながら有効活用しようということで、ずっと来たわけでございます。

 しかし、現下の状況を考えますと非常に厳しいということと、基金がある程度積み上がってきた団体も先生の御指摘のとおりございますので、そこのところは、それぞれの団体がそういった基金で対応できる範囲を見きわめながら、有効に、今後は基金に積まないで直ちに配分していくとか、あるいは一定の基金を崩していくとか、そういうことは当然、それぞれの団体で御判断いただければよろしいのではないか。

 実際、愛知県におきましても、十七年度、そういう取り組みが始まったように聞いてございますし、ほかの県でも、静岡県とか大阪府、佐賀県などでも同じような取り組みが始まったように聞いておりますので、それは我々も、そういう方向を十分注意して見きわめてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(克)分科員 最後に大臣にお伺いするのですが、その前にちょっと、全国市町村協会、ここにたまっておるお金がどれぐらいあるのか。そして、いわゆる役員、とりわけ天下りはどんな状況なのか、この二点を先に御答弁いただきたいと思います。

瀧野政府参考人 全国市町村協会でございますけれども、貸付金を除きまして、全国市町村協会の基金残高、十六年度末で約六百九十億という額でございます。

 役員でございますけれども、会長が全国市長会長の金沢市長山出さん、それから副会長が全国町村会長の福岡県添田町長山本さんでございまして、また、理事長は元消防庁の長官がなられております。理事につきましては、理事長一名のほか理事十一名、合わせて十二名でございまして、監事はお二人、こういう状況でございます。

鈴木(克)分科員 最後に、大臣にお伺いしたいと思うんですが、今お聞き及びのような状況でして、私は総計予算主義の問題も、まだまだこれは十分納得したわけではありません。

 とりわけ、今最後に御答弁をいただいたように、全国市町村振興協会、ここに約六百九十億からの巨額なお金がためられておる。しかも、自治省からの俗に言う天下りがずっと続いておるという、この二つの問題を大臣としてどのようにお考えになるのか。そしてまた、仮に問題があるとすれば、これをどのように正していこうとされるのか、それを大臣からお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 いろいろ御議論を賜りまして、特に自治法の二百十条の話等々、私もぜひ、よく勉強してみたいと思います。

 二点御質問がございました。

 六百九十億、やはりこのお金を有効にどのように活用していくのかというのは、言うまでもなく大変重要だと思います。これはもう、このような財政状況であるがゆえに、この有効性、希少性が高いわけであります。

 その使途については、やはり協会と市町村がよく協議を行ってもらって、自主的にいい方向を決めていただく。その意思決定のメカニズムがうまく働かないようだとこれは困るわけであります。そういう点、この協会そのものは公益法人でございます。その目的に沿うように収益が活用されるように、我々としては、必要な助言はぜひしっかりとしてまいりたいと思います。

 二つ目の天下りの問題。これは、天下り全体でございますけれども、決して指定ポストとして役所から人を定期的に送り込むというようなことがあってはならないと思います。ただ、いろいろ事情を聞いてみると、多くの場合、どこかの特定のところから出すわけにもいかないので役所からというようなことも、現実にはやはり出してほしいという要望がかなりあるようにも聞いております。しかし、だからといって、今のままでいいとも思っておりません。こういう協会とかにやはり自主性をしっかり持っていただく、それが何より重要であると考えております。

鈴木(克)分科員 以上で終わります。

松本主査 これにて鈴木克昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島分科員 本日は、総務省の大臣初め皆様に幾つかの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。

 竹中大臣におかれましては、本当にさまざまな改革を推進してこられましたことに、心から敬意を表する次第でございます。

 まず初めに、土地開発公社の問題についてお尋ねをいたしたいと思っております。

 私、国会におきまして何回かこの問題を取り上げさせていただきました。バブルの崩壊後、地価の下落によりまして、自治体の土地開発公社は、保有する土地の資産価値の下落により巨額の含み損を抱えるに至ったわけであります。巨額の借入金の負担、また簿価と時価の差が大きいことから売却も進まない、こういう状況が続いて自治体財政の負担になってきたということは、間違いがないというふうに思っております。特に都市部の自治体において地価の下落が非常に大きかったということもありまして、一つの足かせになってきた。この問題を早く解決できるようにすべきだということを繰り返し取り上げてまいりました。

 結果的に申し上げますと、一昨年、十六年の十二月に新しい健全化対策を取りまとめていただきました。それに先立って、また平成十二年に土地開発公社経営健全化対策、二度にわたって取りまとめをいただいているわけであります。十二年の取りまとめでなかなか進まなかったということで、十六年の十二月の新しい対策では、もう少し動きやすく制度として見直しをしていただいたんだろうと思います。

 そのおかげといいますか、私の地元の自治体も長らく悩んでおりましたけれども、ようやくこうした塩漬けになった土地を目的を変更して有効活用しよう、こういう流れが出てきたわけでありまして、一昨年の方針というものは極めて適切な対応をしていただいたのではないか、私はそのように思っておりますが、現状が一体どうなっているのか、全国的にどうなっているのかということについてまずお尋ねをいたしたいと思っております。

荒木政府参考人 土地開発公社の問題につきまして、総務省の取り組みの状況について御説明をさせていただきます。

 地方公共団体の財政状況が大変厳しい中で、地方公共団体のいわば分身でもございます土地開発公社の財務状況を早期に改善していくということが大切でございます。このため、総務省では、平成十二年度以降、土地開発公社の保有土地の縮減等を通じた公社経営健全化のための対策を講じてきているところでございます。

 具体的には、今お話ございましたように、平成十二年七月に、土地開発公社の土地の保有額が標準財政規模に比べて特に大きい地方公共団体を対象にしまして、経営健全化対策を策定し計画的に土地開発公社の抜本的な経営健全化に取り組む場合には、その推進を支援するための地方財政措置を講ずることとしたところでございます。この第一次の経営健全化対策によりまして計画を策定した団体は七十二団体ございまして、これらの団体におきましては、計画策定後、土地保有総額が四割程度減少するなど、保有土地を着実に減少させているところでございます。

 しかしながら、依然として公社の経営状況は厳しいものがございまして、保有土地が十分に減少していない公社も一部まだございますことから、平成十六年十二月には新たな経営健全化対策を策定しまして、計画的に保有土地の処分を推進する地方団体を幅広く対象にすることとしたところでございます。

 この新たな経営健全化対策に基づきまして、平成十七年度に経営健全化計画を策定しました団体は四十一団体、今年度におきましても百七十団体程度から経営健全化計画が提出されておりまして、経営健全化に向けた取り組みが着実に進んでいるというふうに認識をしているところでございます。

福島分科員 ぜひ着実に取り組みを促していただきたい。

 ちょうだいいたしました、この一昨年十二月の健全化対策についての概要の資料を拝見いたしました。若干感じている点を申し上げますと、第一種公社経営健全化団体を対象として特別交付税措置をする、財政支援をするということで、利子補給をしていただけるわけですね。これはやむを得ない話なんだと思います、処理をするためには。

 ただ、言ってみれば、どういう目的で使うのかということについて非常に具体的なビジョンもなく、と言っては失礼になるのかもしれませんけれども、土地を確保した、購入したところも私は多いんじゃないかというふうに、実はもっといろいろな事情があって。それについて処理するに当たって特別交付税で利子補給してあげるというのは、言ってみれば、自分自身の判断が誤ったことに対して周りが支援をするという話になるのかなという気もいたしました。やはり自己責任というものをどれだけ問うていくのかということが大事だろうと思っております。

 さはさりとて、現に自治体の首長をやっておられる方がその先行取得に当たって責任があったかと言われると、多分責任がない場合が多々あるんでしょうね。その中でどう処分をするのかということを考えた場合に、それを促すためには財政的な支援も必要だ。痛しかゆしのところがあるわけでありますけれども、いずれにしても大事なことは、こういった土地開発公社のような存在が先行して土地を取得する、こういう形態になっていたことが現在のこういう問題を生み出しているんだろうというふうに私は思います。そういう意味では、ガバナンスがききにくい構造になっていた。

 現在、国も地方も、財政状況というのは大変厳しい、当然であります。そしてまた、人口減少社会に入っていく。今後の自治体の社会資本の整備をどういうふうに進めていくのか、これは自治体みずからがきちっと考え直していかなきゃいけない。

 そういう流れの中で、地方分権二十一世紀ビジョン、大臣がお取りまとめになられましたが、自由と責任だ、小さな政府だ、個性の競争、住民によるガバナンス、情報開示の徹底と。特にこの中で、自由と責任、小さな政府、住民によるガバナンス、情報開示の徹底、こういうような視点から考えると、土地開発公社のような制度というのは一体今後どうあるべきなのか。当然、財政的ないろいろなツケはきれいにしなきゃいけませんけれども、そもそもそういうもの自体をどう考えるのかということも問い直されなければいけないのではないかというふうに私は感じております。

 こういった点について、二十一世紀ビジョンでは一番根っこの部分の議論がなされたんだと思います。むしろその上にある、枝葉と言ったら大変失礼なんですけれども、個々のテーマについてもさらに踏み込んだ議論が必要だろうと私は思っておりますが、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。

荒木政府参考人 公共事業を実施いたしますための土地につきましては、適切な時期に計画的に確保するということが大事であろうかと思います。こういった観点から、土地開発公社によります土地の先行取得は、地域の秩序のある整備に今日でも一定の役割を果たしているものと認識をしております。

 一方、多くの土地開発公社が経営環境が大変厳しいことにかんがみ、平成十二年度以降、先ほど申しましたような経営健全化の取り組みを進めているところでございますが、さらに、今国会で成立をいたしました都市計画法等の一部改正法の中に、公有地の拡大の推進に関する法律の一部改正を盛り込みまして、先買い制度によりまして取得した土地の用途制限の緩和を行ったところでございまして、今後、これによりまして、取得後十年以上経過しました先買いの土地の処分が進むことが期待されるところでございます。

 土地開発公社につきましては、平成十一年九月に、これがピークの時点だったと思いますが、約千六百公社ございました。その後、十八年四月時点には、この四月時点でございますが、約千百公社余りと、減少しております。これは、もちろん、背景には、この要因としましては、市町村合併が進んだということがございますが、この減少の中の百以上のものが、事務量の減少等にかんがみまして解散を自主的に決めたというようなものもございます。時代の動きに応じまして、地方団体としましても、公社についてそのあり方を見直しているという状況が、ここからもうかがえるかと思います。

 また、ただいま御指摘ございましたように、住民によるガバナンス、あるいは情報開示の徹底という観点から、土地開発公社の経営状況を住民に明らかにすることは必要でございまして、公社の経営健全化計画の実施状況のほか、財務などに関する情報につきまして、議会に十分説明することはもちろんでございますが、地域住民への情報提供に積極的に取り組んでいただくよう、これからも助言してまいりたいと思います。

 いずれにしましても、公社の経営についての透明性の確保ということが極めて重要かと考えております。

福島分科員 それと関連してといいますか、大臣にもお願いしておきたいんですが、都市計画道路というのがあるわけですね。これもいろいろな意見がありまして、古くからつくられていて、塩漬けの都市計画道路と言うことができるんじゃないかと私は思うんですが、いろいろなところで、一括して見直ししようじゃないかと。本当に、人口が減少していく中で、こうやって道路をつくると決めていたのがいつまで要るのかねと、まあ整備もまだされていないわけですけれども。そのことが、周辺の隣接する土地のいろいろな用途制限につながっているわけですね。こういうものも、一括してどうするのかということが要るんだろう、社会資本整備をどう担っていくのか。

 土地開発公社も、今までの改革というのは、どちらかというと今までのツケをどう払うかという話でありまして、将来に向かっていかにあるべきか、こういうことの議論をぜひともしていただきたい、お願いをいたしておきたいと思います。

 次に、僻地医療の問題でございます。

 臨床研修制度がスタートいたしまして、大学医局の人手不足、そしてまた、そのことによる医師派遣機能の空洞化、こういったことが、僻地における医師不足につながっている。また、診療報酬の引き下げも累次やりましたので、これは大臣は引き下げる側でありましたけれども、病院の経営状況が非常に悪化しまして、どちらかというと勤務環境が悪くなって、病院からだんだん医者が逃げ出すという現象が起こっておりまして、そのことがまた医師不足に拍車をかけているわけでございます。

 もともと、医師をどう確保するのか、厚生労働省の役割じゃないか、こういう意見はあるわけでありますけれども、しかし、地域において、特に僻地と言われる地方において医師をどう確保するかということは、国全体の制度も問題なんですけれども、当該自治体が市民サービスとしてどう確保していくのか、そこのところの経営の問題が大変大きいんだろうと私は思っています。

 そういう意味では、厚生労働省の問題だよということではなく、関係各省ということで協議はずっとしていただいておりますけれども、総務省の格段の御努力をしていただきたいというふうに私は思っておりますし、そのことは、言われるまでもなく、今までもしてこられたというふうには認識いたしておりますけれども、きょうは重ねて幾つかお尋ねをいたしたいと思っております。

 まず初めに、現在まで総務省としてどういう取り組みをしてきたのか、簡単に御説明いただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省としての地方の医師不足の対策ということでございますが、まず一つは地域の病院の再編ネットワーク化、それから医療提供体制の抜本的見直し、こういうことを進めていくために、平成十七年度から、自治体病院の医療提供体制を見直して病床の削減が行われた、こういった場合には財政措置を講じる、こういうことをしたわけでございます。この措置が自治体病院の再編やあり方の見直しのインセンティブとして働きまして、ひいては、医師の不足状況に対応した経営の健全化、効率化につながるということを期待している。これが一つでございます。

 それから、より具体的な措置としましては、従前から、僻地における代診、代用診療、あるいは、応援医師の派遣に要する経費や、僻地診療所に勤める常勤医師の研究、研修に要する経費など、僻地における医師確保に要する費用につきまして、交付税措置を行ってきておるところでございます。

 さらに、新しいポイントといたしまして、今回、今国会に提出させていただきまして、五月三十一日に成立させていただきました地方自治法の一部改正の法律におきまして、従来であれば、他の地方公共団体に職員を派遣した場合においても、派遣元の団体が退職手当を全額負担するということとされていたものを、今回の改正で、一定の要件を満たす場合には、関係団体の協議により、派遣先団体がその一部を負担することができるというように改めておりまして、これが、医師の集約、確保等にも大いに活用できるのではないかという期待をしておるところでございます。

 総務省といたしましては、こうした制度改正や措置内容の周知を図りながら、各地方公共団体における積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

福島分科員 いろいろとお取り組みをいただきまして、また、昨年の夏には医師確保総合対策というものを三省でお取りまとめいただいた、よく承知しております。

 今の御説明の中で、医療機能の集約化、医療施設の集約化、統合の問題、これにお触れいただきました。それに財政的な配慮をすることによってインセンティブとしていこう、こういうお話だと思います。しかし、現地といいますか現場に行きますと、なかなかこれが難しいんですね。おらが町の病院なくすのか、やはり、こういう住民の反対とかが非常にある。こういう中で、どの程度本当に医療機能の集約化というのが進んできているのか。こういった実態は総務省さんが一番おわかりではないかというふうに思いますが、そのあたりについて、追加して御説明いただけますでしょうか。

大谷政府参考人 医療機能、病院機能の集約化の状況でございますが、ただいま御指摘ありましたとおり、やはり身近に病院があってほしい、こういった各地域住民や市町村のデリケートな思い、こういった問題もありまして、そう簡単に進展する状況にはないというのも事実でありますが、一方で、一部の地域における先進例なども始まっておるというふうに理解しております。

 しかしながら、自治体病院を取り巻く厳しい環境や経営状況の悪化、あるいは僻地等における深刻な医師不足問題等を考えますと、これは困難な問題でありますけれども、全国の多くの地域で自治体病院のあり方をドラスチックに見直していただいて、医療提供体制の再構築を図る必要があるというふうに考えております。

 いろいろな方法がございますけれども、一つのモデルでということにはなかなかいかないと思いますが、今回国会で御審議いただいております医療制度改正の中に、医療対策協議会、こういったものも盛り込まれているわけでありますが、法案が成立いたしますれば、こういったものを積極的に活用するとか、あるいは、今回の法律の趣旨に基づいて、都道府県の主体的な調整機能の発揮にも期待しながら、関連省庁とも連携いたしまして、各地方自治体における積極的な取り組みを推進してまいりたいと考えております。

福島分科員 いろいろと御説明ありました。

 先日、やはり僻地にお伺いしましたときに、今の退職金の取り扱いの問題、柔軟化をしていただいたということで、大変感謝をいたしておりました。

 また、一方で、県が僻地の病院に職員を派遣する場合に、採用するわけですけれども、そこのところの自由度をもうちょっと増してほしい。特に、女性医師とか高齢のお医者さん、それは、長いことずっと働くというのはなかなか大変だよ、短時間の労働であれば何とかなりますよ、こういうような話もありますし、そこのところは任期つきの採用ということがあるようにも伺っておりますけれども、現にそういったことがどこまで地方自治体で理解しておられるのか、活用されているのか、ここのところは少し疑念があるわけでありまして、こういった制度、そしてまたその活用状況等について、簡単に御説明いただければと思います。

小笠原政府参考人 まず、現行の制度の内容でございますが、特に育児との関係で申しますと、仕事と育児の両立を図るために、平成四年に、職員の方々が育児のため一日の勤務時間の一部について勤務しない、こういったことを可能にするのに部分休業制度が設けられています。平成十四年には、この対象となるお子様の年齢をそれまでの一歳未満から三歳未満へ引き上げまして、制度の拡充を図ってきたところでございます。

 それからまた、高齢者の方々にも関係するようなことでございますが、平成十六年に地方公務員法、それから一般職の任期付職員の採用に関する法律を改正いたしまして、例えば高齢者、先生今おっしゃいましたが、こういった加齢といいますか、お年を召すことに伴いいろいろな事情がございますので、それを、週四十時間の勤務を定年まで継続するのが困難な職員のために、高齢者部分休業制度、こういうものを設けております。

 それから、そうした今申し上げましたもの、例えば育児部分休業でありますとか、高齢者部分休業でありますとか、そういった方々の、そういった取得した職員に代替するということを可能にするための任期付の短時間の勤務職員制度、こういったものも設けております。

 そうしたような、必要なお医者さんの確保に関する制度として例えばこういったものがございますが、私どもとしては、ぜひこういった制度を各地域の実情に応じて適切に活用していきたい。

 ただ、実は、先ほど申しました任期付短時間勤務職員制度ですとか、あるいは高齢者部分休業制度は、平成十六年、おととしの八月から施行されていた制度でございまして、率直に申し上げて、現状において十分な活用が進んでいない面もあるかとは思いますが、私どもとしては、ぜひそうした各地で行われています先進的な事例をいろいろな形で紹介いたしまして、PRに努めてまいりたいと考えております。

福島分科員 よろしくお願いいたします。

 臨床研修制度が始まって地方の大学病院の医師が不足したばかりではなくて、逆に、先日、青森のむつ総合病院に行きましたが、ここは臨床研修に力を入れていて、五人も研修医が来てくれた、こういうことを言っておりました。

 今後の僻地病院の医師不足を解消するためには、都道府県の中核になるような公的な病院が後期臨床研修の制度をしっかりやることによって、そこに医師をプールして、そして、その後期臨床研修の一環として僻地の病院での勤務を位置づける、こういう流れをしっかりとつくっていく必要がある。この公的な病院というのは、県立病院という場合もあるでしょうし、もちろんそこには医科大学が入ってもいいだろうと私は思っております。こういう流れをどうつくっていくかということが大事だと。

 そのためには、例えば県立病院であれば県がどれだけ力を入れるか、こういう話になるんだろうと私は思います。そういう意味では、病院の集約化ということもありますけれども、一方で、自治体病院をいかに魅力のある病院にしていくのか。赤字ばかりで大変だね、こういう話は聞きますけれども、人が集まるように中身の部分でどういういい病院をつくっていくのか、このあたりは総務省の御指導が必要だというふうに私は思いますけれども、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 御指摘のように、地域の医療事情には、県立、公立病院中心の地域もあれば、官民がある意味競合している、いろいろな地域がございます。その地域モデルそれぞれ、一番集約して有効なモデルをつくるということが重要だろうと思いますので、そういうことにつきましては、今回の医療制度改革の趣旨も受けながら、各地方公共団体あるいは厚生労働省と相談して、そういうネットワーク再編、あるいは地域の医療の体制づくりを進めていきたいと考えております。

福島分科員 医療機関の集約化の一方で、身近な病院がなくなる、こういうことの中で、福島県に行きましたときに、ドクターヘリの話と道路の話が両方出てまいりました。青森県ではフライングナース、医師の確保が大変なので看護師さんに乗ってもらっている。ですから、一方で、代替手段としての搬送手段をどういうふうに確立していくかということが大事だと思うんです。

 これは、厚生労働省がドクターヘリということで補助事業を行っておりますけれども、現場でいうと、こういう厚生労働省の行う事業と消防のヘリの事業、ここがうまくリンクするということが本当に大事なんですね。ですから、この決算でも、総務の担当のところでお聞きしようと思ったのは、消防庁の方も、ぜひ、現場、現場のニーズ、そしてまた僻地医療がこうなっているという状況を踏まえ、そのあたりはコラボレーションをしっかりとやっていただきたい、そういうふうに思っておりまして、その点についての御見解をお聞きしたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 消防防災ヘリコプターにつきましては、平成十七年四月一日現在で、四十五都道府県におきまして六十九機が運行されております。これらの活動状況につきまして見ますと、平成十六年中の数字でございますが、全出動件数五千六百九十二件のうち、救急出動件数が二千三百五十六件ということで最も多くて、四割強を占めております。

 総務省や消防庁では、従来から航空消防防災体制の充実を図ってきているところでございまして、特に救急搬送に関しましては、平成十年の消防法施行令の改正、平成十五年六月の消防組織法等の改正によりまして、ヘリコプターによる救急活動のための救急隊員の配備や装備等の基準の明確化でありますとか、都道府県航空消防隊による市町村消防の支援についての法的根拠を明確にするとかいうことで、積極的に実施を促進しているところでございます。

 消防庁といたしましても、今後とも、医療機関との連携を一層強化して、消防防災ヘリコプターの機動性を生かした、より効果的な救急業務の実施を推進してまいる所存でございます。

福島分科員 医療関係では、最後に自治医科大学、これは私立大学なので総務省が直接にお答えするというのはいかがなのかな、こういう話もありますけれども、自治体が共同で出資をしてつくた大学であります。入学定員の枠をぜひとも拡大してくれ、こういう地方の強い要望があります。そしてまた、一律の拡大ということではなく、それぞれの都道府県に割り振られた枠がありますので、医師不足の強いところの枠をぜひとも拡大してほしい、こういう意見もあるわけでありまして、この点についての御見解をお聞きしたいというふうに思います。

大谷政府参考人 自治医科大学の定員の拡大でございますけれども、確かに全国知事会から厚生労働省に対しまして要望がなされているということも、私ども承知しているところでございます。

 総務省といたしましても、その定員の拡大は、自治医科大学の設立の趣旨であります医療に恵まれない離島、あるいは僻地を初めとした地方における医療の確保、それから医療水準の向上を図る見地等から、非常に重要かつ意義を有する課題であると認識しております。大学を所管する文部科学省、あるいは医師の需給を所管する厚生労働省と、鋭意協議を進めているところでございます。

 それから、後半のお問いでございますけれども、自治医科大学の定数の範囲内におきましても、都道府県の定員枠を増減できないかということでございますが、これは、自治医科大学の共同設立者であります各知事会等、今各都道府県の話し合いが進められておりまして、現在その調整を見守っているところでございます。

福島分科員 はい、よろしくお願いいたします。

 最後に、地方分権二十一世紀ビジョン、大変興味深く私も読ませていただきました。お尋ねいたしたいと思います。

 新型交付税の創設ということで、私の地元の自治体も戦々恐々議論をいたしております。面積と人口を基本とする、五兆円規模だと。しかし、大都市の財政需要というのは、都道府県にかわって行っている事務の経費もあります、政令市。昼間人口に対しての財政需要というのも存在する。面積と人口だけではない、移動するものもある。生活保護等の社会的、経済的要因による財政需要も存在する。これも面積と人口だけではない、その質というか特性がある。こういったことをどう考えていただけるんだろうか。

 一方で、大都市地域の税収の八〇%以上は国税、都道府県税として徴収されておりまして、手元に余り残らないわけであります。ですから、仮にこうした新型交付税ということを考えるのであれば、税源移譲も大都市部においては同じように考えていただかない限り、その財政需要に見合うような事業ができなくなってしまう、こういう指摘でございます。

 こうした点について、今後いろいろと議論がなされていくと思いますけれども、大臣の御見解をお聞きして閉じたいと思います。

竹中国務大臣 福島委員からいろいろ御指摘いただきまして、ありがとうございます。

 ぜひ御理解を賜りたいのは、今、委員、最後に税源移譲の話をされましたけれども、今回の地方分権の改革は一つのことをやるだけでは絶対だめで、全体として地方が自由を持って、責任を持って、そして自立できるように、総体としての改革をしなければいけないということだと思っております。

 そのためには、基本になるのは、国の役割、地方の役割を根本的に総点検する地方分権一括法のようなもの、そういうことをやりながら、国の基準づけのない部分については、既に、これは一部でありますけれどもあるわけですから、より簡便なといいますか、明快な方法で交付税のルールをつくってはどうかということでございます。

 福島委員の直接のお尋ねは、大都市には特有の財政需要がある、そのとおりだと思います。一方で、都市における財政需要を賄うための税制としては、人口三十万人以上の都市における事業所税がございますし、また都市計画区域を有する市町村において課すことができる都市計画税の制度が設けられている。その意味では、税源そのものが比較的集中している状況にあるという点もあろうかと思います。

 したがいまして、税源移譲がどうなるかは、財務大臣今そこにお見えになりましたですけれども、そういう全体の中でよくバランスをとっていかなければいけないということに尽きるのであろうというふうに私は思っております。

 もう一つ、新型交付税、部分的な導入は考えておりますけれども、それ以外のところについては、基準づけのあるものについては従来の交付税の制度で、これをしっかり活用していくわけでございますので、そういう中で、財政需要については適切に引き続き見ていくことができるものであるというふうに考えております。

福島分科員 終わります。どうもありがとうございました。

松本主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松本主査 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 平成十六年度財務省主管一般会計歳入決算並びに財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十八兆五百六十八億円余となっております。

 このうち、租税等は四十五兆五千八百九十億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は十九兆九千二百六十七億円余でありまして、支出済み歳出額は十八兆九千五百五十五億円余、翌年度繰越額は四十四億円余でありまして、差し引き、不用額は九千六百六十八億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十七兆五千百四十八億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は百九十三兆六千三百十八億円余、支出済み歳出額は百六十四兆二千一億円余であります。

 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は千九百十一億円余、支出済み額は千四百二十億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十六年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

松本主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十六年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一一号及び一二号の二件は、函館税関及び沖縄地区税関において、航空機を利用した出張等に係る旅費の支給に当たり、旅費請求者が、実際には割引運賃の航空券を購入して出張等しているのに、その支払い額よりも高額の航空賃の領収証を所定の請求書に添付して旅費を請求するなどしていたため、支給額が過大となっていたものであります。

 同一三号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、貸付財産に係る国有資産等所在市町村交付金の交付に関するものであります。

 合同宿舎で、廃止決定され居住者の退去が完了しており交付金の対象から除外すべきものや交付金の対象とならない無料宿舎部分を交付金の対象としていたり、物納財産の引き受け等により管理している住宅用地等について交付金額の軽減措置が適切に適用されていなかったりしていて、交付金が適切に交付されていないと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、財務省では、十七年九月に各財務局等に対して事務連絡を発し、廃止決定された合同宿舎に係る交付金の取り扱いを明確にし、無料宿舎部分についての交付金の取り扱いなどを周知し、また、住宅用地等に係る軽減措置に対する認識と理解を高めさせるとともに、交付金に係る事務処理体制を整備する処置を講じたものであります。

 その二は、源泉所得税の徴収義務者に対する納付指導等に関するものでございます。

 給与所得に係る源泉所得税の徴収義務者に対する納付指導等に当たり、源泉所得税額が長期にわたって未納となっているのに、未納の源泉所得税額の把握に長期間を要し、効率的な納付指導がなされていないなどの事態が認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では、十七年九月に各国税局等に通知を発し、納付指導の効率化を図ることにより未納が長期間にわたることのないよう、未納の早期処理に努めるなどの処置を講じたものであります。

 その三は、確定申告説明会に係る謝金の支払いに関するものであります。

 金沢国税局管内の各税務署の確定申告説明会における指導業務に従事した税理士に対する謝金の支払いについて、単価の検討及び申告説明会業務以外の業務等に係る謝金との比較検討を十分行っていなかったことなどのため、業務従事時間等の業務の実態等に適合した支払いがなされていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、金沢国税局では、十七年九月に業務従事時間を基本として支払いを行うなどとする事務処理要領を定め、管内の各税務署に通知し、業務の実態等に適合した謝金の支払いを行う処置を講じ、また、国税庁では、同月、各国税局等に対して事務処理要領と同様の内容の通知を発して、謝金単価の取り扱いについて周知徹底する処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

松本主査 次に、増田第五局長。

増田会計検査院当局者 まず、平成十六年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、小企業等経営改善資金の貸し付けの審査に関するものであります。

 国民生活金融公庫では、商工会議所、商工会等の推薦に基づき、無担保・無保証人で低利な小企業等経営改善資金の貸し付けを行っております。

 そこで、小企業等経営改善資金の貸し付けについて検査いたしましたところ、浜松支店において、審査が十分でないまま、企業としての実体がない借入申込者に対して貸し付けを行っていたものが見受けられました。

 これは、初回借入申込者に対する企業実在の確認に関する審査の具体的な方法が明確にされていなかったことなどによると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国民生活金融公庫では、十七年四月に各支店長あてに通知を発し、同種事態の再発を防止するための具体的な方法を示すなどして、小企業等経営改善資金の貸し付けの審査が適切に行われるよう処置を講じたものであります。

 次に、平成十六年度日本政策投資銀行の決算について検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

松本主査 次に、諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十六年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

松本主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、函館税関及び沖縄地区税関における航空機を利用した出張等に係る旅費の支給が過大となっていたこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、全額国庫に返還させる等、適切な措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めたいと存じます。

松本主査 次に、薄井国民生活金融公庫総裁。

薄井政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、国民生活金融公庫のとった措置について御説明いたします。

 平成十六年十一月に、袋井商工会議所の経営指導員が、企業実体のない者と共謀して、当公庫浜松支店から小企業等経営改善資金の融資金をだまし取り、逮捕されるという事件がありました。

 この事件にかかわる案件について、会計検査院報告において、当公庫の企業実在確認に関する審査の具体的な方法が明確にされていなかったとの御指摘を受けました。

 当公庫では、直ちに、関係省庁、日本商工会議所及び全国商工会連合会と協議を行い、公庫及び推薦団体の双方で、再発を防止するため、企業の実在確認を厳格化する措置を講じたところであります。

松本主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。

    ―――――――――――――

松本主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松本主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。田島一成君。

田島(一)分科員 民主党の田島一成でございます。

 財務省の所管は私一人だけでございますので、どうぞ前向きな丁寧な御答弁をちょうだいできたらと心からお願いを申し上げたいと思います。

 先ほど会計検査院から報告いただいたのも実にお粗末な事犯であった。このことについては、御答弁にもありましたように、厳格な措置を講じていただきたい、このことは強く要望させていただきたいと思っておるところであります。

 今し方も話に出ました税関について、私、きょうは、大臣以下、財務省の皆さんにお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 今さら言うまでもございませんけれども、税関という仕事は、日本と外国との接点にあって、国際物流の円滑化、そして、関税の徴収であるとか貿易の秩序の維持、経済の発展に貢献している、言ってみれば大きな業務であろうというふうにも理解をしておりますし、その一方では、けん銃であるとか麻薬というような社会悪の物品を、国内へ流入を阻止する水際阻止という大きな使命、そして、治安・テロ対策などへの対応を考えると、国民への安全、安心を守っているという非常に大きな役目を担っているというふうに私は考えるところでもあります。それだけではなく、環境問題、自然保護等々からいくと、生態系の保全という観点からすれば、ややもすれば関心が薄い外来生物の輸入という水際防止等々についても大きな役割を担っていただいているわけでありますから、この重要性はひとしおであろうかというふうに考えるわけであります。

 まず冒頭、この税関という組織は、治安を守るという観点において重要な官庁であるというふうに私は考えるわけでありますけれども、所管いただいている大臣としてどのようにお考えなのかをお示しいただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 今、田島委員から税関の重要性の御指摘をいただいて大変ありがたく思っているわけですが、今もお話がございましたように、まず、適正かつ公平に関税等々を賦課徴収しなきゃいけない。それから、けん銃であるとか麻薬であるとか不正薬物といったような社会悪物品等の密輸取り締まり、こういうものもきちっとやらなきゃいけない。輸出入されるすべての貨物を国境で管理する一連の業務、ボーダーコントロールとでもいいましょうか、そういう役割を担っておりまして、これは、経済の健全な発展に資するという観点と同時に、今御指摘のように、治安や国民生活の安全を確保する上で極めて大事な責任を担っていると思っております。

 特に、近年、大量破壊兵器の拡散防止あるいはテロ対策の強化、それから、これはどちらかというと経済ですが、知的財産侵害物品の取り締まり、そういったものを強化せよという国際的あるいは社会的な要請が高くなってきておりますが、他方、国際物流の高度化、迅速に物が流れていかなきゃならないという面もございまして、税関が果たす役割、また工夫すべき事柄も非常に大きくなってきているのではないかと思っております。

 一方で物流の円滑化、他方で国民の安全、安心の確保、そういったことを十分認識しながら、適切に業務を遂行していく努力を今後とも払わなければいけないと思っております。

    〔主査退席、玄葉主査代理着席〕

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 物流の円滑化、そして治安、安全というのを大きな両輪のような位置づけで考えていただいている、そんなふうに認識をしたところであります。

 治安という問題は、最近、国民も非常に敏感になってまいりました。とりわけ、覚せい剤や麻薬、けん銃などの社会悪物品、また、今大臣もおっしゃっていただいたとおり、知的財産侵害物品、そして、治安、テロなどの取り締まり、やはりこれは水際で阻止、摘発することが何よりも重要であろうかというふうにも考えますし、水際においての取り締まりの有効性、この点を考えると、これからますますその役割が大きくなっていくんだというふうに思いますけれども、この水際における取り締まりの有効性というものについてどのようにお考えか、お聞かせいただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 今おっしゃった社会悪物品あるいは知的財産侵害物品、こういうものをきちっとコントロールするということと同時に、例えば食品とか医薬品、こういうものがまたスムーズに流れていかないと国民生活に障害を与えるということでございまして、こういう実効性、有効性を上げていくには、関係機関との連携というものを強化しなければならないと思っております。

 特に、麻薬等々を初めとする物品は、これは一度国内に入ってしまいますとなかなか取り締まりが難しい。まずは水際での取り締まりが重要であり、かつ有効であるということではないかと思います。実際、過去五年間に、覚せい剤、大麻等、国内で押収した量を見てまいりますと、その中に占めます密輸押収量の割合は大体七割から九割になっているわけでございます。

 こういうことから、税関における水際取り締まりは、今後とも、警察それから海上保安庁等々、そういった関係機関と連携して、強化に努めていかなければならないと思っております。

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 業務指標の方を私も拝見いたしました。例えば出入国者数を見るだけでも、平成十六年が三千八百万人、平成十七年には四千九百万人と一・三倍にふえておりますし、それから、輸出入の申告件数も、これは平成九年の航空貨物と比較すると、平成十七年、七年間で約一・八倍にまで膨れ上がっています。

 そういう中で、知的財産侵害物品の輸入差しとめ、平成十七年の実績を見ますと、前年に比べて何と四七・三%増、数字でいうと一万三千四百六十七件、点数でいえば前年比五・六%増というふうに、大量のコピー商品が国内に流入してくることをとりあえずは阻止してきたわけであります。

 今し方も、麻薬等の密輸の押収が約七割から八割という数字をお示しいただきましたけれども、これ以外に漏れている部分も実際として出てきていることは容易に想像できてしまうわけでありますが、いかに水際で防止することが重要であるかを考えれば、税関業務の困難性、特殊性とでも申しましょうか、このあたりを十分考えていくと、これから先、税関は、機械であるとか麻薬犬等々だけでは十分に水際防止をできるものではない。やはり、人の力、定数をしっかりと確保していくということが何より不可欠ではないのかな、そんなふうに考えるわけですけれども、どのようにお考えなのか、お聞かせいただけますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおりに、私どもの税関におきまして、輸入申告件数であるとか空港出入国者数等、非常にふえていることは委員御指摘のとおりでございます。

 このように税関業務が増大かつ複雑困難する中で、税関におきましては、不正薬物、けん銃等社会悪物品、あるいは知的財産侵害物品、テロ関連物品の水際取り締まりの一層の強化など、あるいは、関税等の適正な賦課及び徴収に努めているところでございます。

 平成十八年度における税関の定員でございますが、国家公務員の定員につきましては、政府全体といたしまして五年間で五%以上の純減に取り組むこととしている中でございまして、そういう中でも、治安など、政府として重要な政策に重点的に定員を配分するという御方針のもと、水際におけるテロ対策、密輸取り締まり強化等のための要員といたしましては、二百二十人の新規増員を確保したところでございます。

 今後とも、極めて厳しい財政事情のもとではございますが、引き続き、業務運営の効率化を図りながら、所要の定員の確保に最大限努力してまいりたいと存じます。

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 本当に厳しい状況の中ではありますけれども、問題の重要性を認識いただいているというふうに思います。これからもその点についての前向きな転換をぜひお願いしていきたいと思います。

 次に、このところ空港が次々オープンされているという話に入りたいと思うんですけれども、本年三月には北九州空港が税関空港として開港いたしましたし、北海道の旭川空港、こちらの方も六月に入って税関空港として開港されます。

 地方の空港がこうして税関空港として元気に頑張っていただいている。このことは非常に喜ばしい、地方経済の活性化にも貢献するわけでありますが、では、実際に、税関空港でどのようなスタッフの配置等々がされているのか、現場の方にちょっとお伺いをいたしますと、近隣の官署から応援体制で出入国する旅客に対応されている、そんなふうに聞いております。チャーター便の発着というのも非常にこのところふえてきているというふうにも聞いていますし、限られた要員で、現場で相当苦労されているのかな、そんなふうにも考えるわけです。

 一方では、成田もこの六月二日に第一ターミナルの南棟がオープンをいたしました。羽田空港も、これは平成二十一年でしたか、国際化になるというふうに聞いておるわけで、これから空港業務がかなり増大をしていくというふうに考えます。

 その点について、この限られた要員の中でどのように対応していこうとお考えなのか、要員の大幅な増、大幅でなくてもふやしていくというようなことも視野に入れていらっしゃるのか、このあたりについてお考えをお聞かせください。

竹内政府参考人 今お話がございました新北九州、旭川あるいは成田の空港とか羽田の再国際化等、予定されているわけでございますが、今まで税関におきましては、地方空港における国際チャーター便への対応を含めまして、必要に応じ、お話がございましたように近隣官署からの応援体制もとりつつ、行政需要に応じまして職員を適切に配置いたしまして、出入国旅客や出入貨物の税関手続に支障を来さないように適切に対応しているところでございます。

 税関といたしましては、先ほども出ました厳しい行財政事情のもとではございますが、今後とも、必要な要員の確保に努めつつ、国際航空機の出入港に伴って発生する行政需要に対しては適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

田島(一)分科員 適切に対応という言葉でいつも締めくくっていただくわけですけれども、いいように解釈していきたいと思っていますので、その点、専門性ということ等から考えますと、近隣の方からの応援体制で十分に本当にいけるのかどうか、このあたりもよく点検、チェックしていただきたい、このことをぜひ強くお願いしておきたいと思います。

 さて、関税の適正な徴収状況についてお尋ねをしてみたいと思います。

 今や、国の債務は七百兆とも八百兆とも言われている。そんな中で公平かつ適正な税を徴収していくこと、このことは冒頭大臣からも御答弁をいただいたところでありますけれども、財務省の関税局による「平成十六事務年度の事後調査事績について」という資料を拝見いたしますと、実は関税局において、五千二百二十三者に対する事後調査で、申告漏れ課税価格が一千百六十二億円を把握していらっしゃる、それに対する追徴税額が百八億円というふうになっております。申告漏れの課税価格が、前の事務年度に比べると二〇・七%増、追徴税額が三十二億円を超えているというふうになっているわけなんです。

 これまで、この税関業務、私も冒頭から、税関という税の部分と関の部分、どちらかといえば関の部分に力点を置いたような形でお尋ねしてきたところでありますけれども、やはり税の部分をこれから相当強化していかなきゃならないのではないかな、そんなふうに考えたりするところであります。

 平成十七年度の関税では、関税に関する除斥期間等を、二年から三年間に延長されました。そういったことから、今後さらに事後調査の充実であるとか強化というものが不可欠ではないかなというふうに考えますが、どのように対応されていくのか、お考えをお聞かせください。

    〔玄葉主査代理退席、主査着席〕

竹内政府参考人 今御指摘がございましたように、税関におきましては、輸入者に対する事後調査を実施しておりまして、平成十六事務年度におきましては、御指摘のように、申告漏れ課税価格で千百六十二億円、追徴税額で百八億円と、過去最高になったところでございます。

 このような事後調査を、限られた人員のもとで的確に行うためには、平成十七年度におきまして、今御指摘のように、関税等の課税処分を行える期間の除斥期間を三年に延長するとか、また、隠ぺい、仮装事案に対する重加算税導入など、制度面における整備を行ったところでございます。

 制度面における整備に加えまして、増加する輸入貨物に対する適正、公正な課税の確保のためには、今お話がございました事後調査の果たす役割は大変重要と考えておりまして、厳しい行財政事情のもとではございますが、今後とも、必要な要員の十分な確保に努めさせていただきまして、さらに、あわせまして、調査手法の向上など事後調査のさらなる充実強化を図っていきたいと考えているところでございます。

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 要員の確保等々を考えるに当たって、先月二十六日に成立した行革推進法を抜きには語ることができないというふうにも考えます。この成立した行革推進法に歩調を合わせるような形で行政減量・効率化有識者会議が開かれ、その場で、事務事業の見直しで三・五%の定員を削減する、そのために議論が進められてきました。

 その結果、先般、五月三十日に「国の行政機関の定員の純減方策について」という最終取りまとめが報告をされたところでありますけれども、この有識者会議の中で配られていた資料の中に治安関係という部分があります。この中に税関というものがしっかりと位置づけられていて、それは、非常に国の前向きな姿勢であるというふうに受けとめているんです。

 治安、徴税、安全、安心を守る治安関係官庁が増員する官庁になっているわけですけれども、税関を含む治安関係官庁について、この先、中長期的にどのようにあるべきであるというふうにお考えなのか、お聞かせをいただけませんか。

竹本副大臣 先生おっしゃったとおり、税関でございますが、治安を守るという意味では非常に重要な役割を果たしております。そういう意味におきまして、不正薬物、けん銃等社会悪物品、それから知的財産侵害物品あるいは爆発物等のテロ関連物品、この水際取り締まりの一層の強化に日々努めているところでございます。

 行政減量・効率化有識者会議におきます最終取りまとめにおきましては、業務の執行体制や運営方法について不断の見直しを行い、業務運営の効率化を一方で図ることとされております。重要ではありますが、やはり効率化は当然のことだ、このように心得ておるわけであります。

 税関におきましても、引き続き業務運営の効率化を図りますとともに、その業務の重要性にかんがみ、税関業務の増大等、税関行政を取り巻く環境に適切に対応できるよう、引き続き体制の強化に努めてまいりたい、そのように考えております。

 国民の安全、安心を守るという意味でも欠くことのできない非常に重要な業務でございます。しかしながら、一方、効率化にも努力する、こういう姿勢でございます。

田島(一)分科員 私が今お尋ねいたしましたのは、中長期的に国の最重要課題である治安を守っていくということについてどのように考えているのかということだったんですね。

 やはり人があっての、この重要課題である治安確保であろうかというふうに考えます。今のお話ですと、何か効率化ということばかりをおっしゃっていて、本当に治安というものを重要課題として位置づけていただいているのかな、そんなふうにちょっと感じたんですけれども、もう一度、言い直しでも結構ですよ、お答えいただけますか。

竹本副大臣 全く趣旨は先生がおっしゃりたいことと同じ意味でございます。

 つまり、治安というものは非常に大事でございます。したがいまして、それに対しては、それをこなし得るだけの十分な体制を組んでいく、こういうことでございます。しかしながら、行政全体の効率化を図るというのが他方の要請でございますので、それにも適切に対応していきたい、こういうことでございます。

 いずれにしましても、行政における無駄を省きつつも重要なものはしっかりと確保していく、こういう姿勢でございます。

田島(一)分科員 やはりめり張りという部分は当然大事なことだと思うんですね。そのあたりで、欠くことのできない部分、それが治安、安全であるという認識だけはぜひ肝に銘じていただきたい。このことだけはお願いをしておきたいと思います。

 先ほど引用させていただいた最終取りまとめ、この中に、国民から寄せられた御意見ということで挙がっていたのをちょっと御紹介したいと思います。「安全・安心が叫ばれる昨今において、治安関係や食・住の安全などは国家が責任をもって取り組むべき事項であって、この分野も対象に含めた定員純減は行うべきではない。」そんな意見であります。

 一国民の意見だと鼻で笑って切り捨てるのも一つかもしれません。しかし、これは本当に素直な気持ちだと思うんですね。安全とか安心を犠牲にしてまでも、行革の中でも議論になりましたけれども、定数を減らしていくことを必ずしも国民は望んでいないんだ、そのことを象徴するかのような意見ではないかというふうに私は考えるわけであります。

 政府として、この国民の意見、安全、安心を守るためにしっかりとした定数を確保してほしい、その意見に対して、素直な気持ちとしてぜひお答えを、できれば大臣からいただきたいと思いますけれども、お願いできますか。

谷垣国務大臣 安心、安全を守れという場合に、今、定員の面に焦点を当てて御議論でございました。もちろん定員は基本的に大事なことでございまして、この数年、ずっと純増を認めてきていただいているというのも、やはりこの水際対策の重要性というのを全体の中で理解をいただいているんだろうと思うんです。

 それで、無駄があってはいけないことは当然でございますから、私たちは、当然のことながら、できるだけ効率的に、めり張りのきいた配分を行っていかなければならないのは当然だろうと思いますが、そういう努力を通じて、必要なところにはきちっと必要な人員が配置されるように私たちも今後とも努力をしたいと思っております。

田島(一)分科員 ありがとうございます。

 実際のところ、密輸事犯等々を考えると、実際にふやしていただいている状況で本当に十分なのかどうかということ、これはまだわからない部分なんですね。実際にふやせば、では全部摘発できるのかといえば、なかなかそこも不確かなところであることも私も承知しています。

 ただ、国内にあって国民の安全、安心というものを守るには、本当に水際が何より重要なんだということを、私もそう思いますし、また、行革の委員会の中で、総理も、やはり安全面においてはふやしていくというふうにはっきり御答弁もいただいています。このことを担保にしていただいて、これから先、どのような事犯が起こってくるやもしれません、そういったことに適切に対応していただくということをぜひ念頭に置いていただきたい、このことは強く要望させていただきたいと思っています。

 さて、この有識者会議の最終取りまとめで、約二万人の純減というものを報告されています。それと同時に、雇用調整本部を設置して府省間の配置転換を進めていくというふうな取りまとめがなされたわけなんですけれども、財務省において、この府省間の配置転換についてどのような対応姿勢をお持ちなのか、お聞かせください。

竹内政府参考人 本年の五月三十日の行政減量・効率化有識者会議におきまして、「国の行政機関の定員の純減方策について」の最終取りまとめがございました。現在、それを受けまして、行政改革推進本部におきまして全体計画の作成に向けて検討が進められておりまして、その中で、今お話がございました配置転換についても具体的計画が示されるものと承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、税関といたしましては、政府全体の方針にのっとり、配置転換について適切に対処してまいりたいと存じますが、仮に税関が配置転換により他府省職員を受け入れる場合には、必要な研修を行うなど、政府全体の方針に沿い、適切に対処してまいりたいと存じます。

田島(一)分科員 まだ時間もたっていない中で、そのあたりのお答えしか多分出ないのかなという気もするんですけれども、専門性ということを考えると、私たち、よく空港も利用させていただく中で、機械等々では見抜くことのできない何か専門性というものをすごく感じたりするところであります。荷物をやたらほじくり返される人もいれば、全くほじくり返されずに素通りされる方もいる。何かこのあたりは、やはり専門性というものが長年の経験の蓄積で行われているんだろうなということを、よく空港を利用するたびに思うところでありますけれども、やみくもな配置転換ということが果たしてこの専門性を高めるに十分にふさわしいのかどうかということも考えると、非常に悩ましい部分ではないかなというふうに考えるんですね。

 いずれにしても、単に人を動かして、それで国の安全が守れるのかという観点、この専門性を維持するということについては、十分に理解とそれから認識をいただいた中で今後御検討いただきたい、このことをぜひお願いしておきたいと思います。

 時間も参りました。最後に、税関の組織再編についてお尋ねをしたいと思います。

 報道によりますと、政府が、二十五日、内閣府で銃器対策推進本部の会合を開き、銃器密輸入の水際防止に向けた税関の組織再編、そしてエアガンの取り締まりを強化するなどとした二〇〇六年度の銃器対策推進計画を決定されたというふうに聞いています。

 この計画をひもときますと、函館であるとか横浜など八つの税関と沖縄地区税関で、現在は各部門に分散している情報分析であるとか取り締まりの担当スタッフというものを再編して専門部門を設けるとした水際対策の強化がうたわれているというふうに聞いているんです。ことしの七月にこの組織再編がされるといううわさもあるんですが、実際のところ、銃器密輸入の水際防止に向けた組織体制の確立、これが本当にやっていけるのかどうか。税関だけの問題ではないと思うんですけれども、このあたり、財務省としてどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

竹内政府参考人 今お話がございました平成十八年度銃器対策推進計画にございますように、税関におきましても、水際取り締まりを一層適正に実施していくために、取り締まり機能及び情報分析・管理機能をそれぞれ一つの部に集約する等の税関の部の再編を行いまして、効率的な取り締まり体制を整備することにしているところでございます。

 この税関機構の見直しでございますが、従来、各部で所掌していた、監視取り締まり、保税取り締まりや通関検査など、取り締まりの機能を一つの部に集約いたしまして、船舶の入港から国内引き取りまでの物流の中で一貫した貨物の取り締まりを行うとともに、各部で所掌しておりました情報分析・管理機能につきましても、一つの部に集約いたしまして一元的に管理、分析することなどによりまして、税関の機能を強化し、一層効果的な取り締まりを行っていくことを目的とするものでございまして、お話がございましたように、本年七月にその実施を予定しているところでございます。

 また、こうした組織の見直しとあわせまして、外国税関当局や国内関係機関との情報交換の促進、情報収集・分析の強化、あるいは、麻薬探知犬、エックス線検査装置の増配備などの取り締まり機器の増強、あるいは、地方空港も含めました広域的な機動的取り締まりや、さらに、警察、海上保安庁等の合同取り締まりの実施など、取り締まり職員の効率的活用等の対策も積極的に講じまして、お話がございました銃器を含めます、あるいは社会悪物品等の流入阻止のため、水際取り締まりの一層の強化にこの組織改革を含めまして取り組んでいきたいと考えているところでございます。

田島(一)分科員 最近の社会悪物品の密輸入等については、その手口も悪質化し、また巧妙な、なかなか素人では見抜けない、そんな話も聞いているところであります。

 ぜひ、安全、治安という観点に立脚された税関業務であるという認識のもと、人員の確保はもちろんのこと、その専門性をしっかりと高めていただきまして、大きな責任と、そして任務であるという自覚のもとに、全職員体制をしっかりと整えていただいて、今後少しでも水際で防ぐことができるような体制整備を心からお願いし、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本主査 これにて田島一成君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松本主査 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。小坂文部科学大臣。

小坂国務大臣 平成十六年度文部科学省所管決算の概要を御説明申し上げます。

 平成十六年度文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額六十九億一千三十四万円余に対しまして、収納済み歳入額は七十八億八千六十万円余であり、差し引き九億七千二十五万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆二千九十九億二千八十万円余、前年度からの繰越額二百五十四億九千八百五十九万円余を合わせた歳出予算現額六兆二千三百五十四億一千九百三十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆一千百五十八億二千百八十五万円余であり、その差額は一千百九十五億九千七百五十三万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は九百三十七億六百四十六万円余で、不用額は二百五十八億九千百七万円余となっております。

 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、文部科学省所掌分の歳出決算について御説明申し上げます。

 まず、電源立地勘定につきましては、歳出予算額三百七十七億八百三十七万円余、前年度からの繰越額一千七百二十四万円余を合わせた歳出予算現額三百七十七億二千五百六十一万円余に対しまして、支出済み歳出額は三百十四億八千八百八十九万円余であり、その差額は六十二億三千六百七十二万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は四千六百九十九万円余で、不用額は六十一億八千九百七十二万円余となっております。

 次に、電源利用勘定につきましては、歳出予算額一千百七十億八千百十七万円余、前年度からの繰越額四十億八千八百八十三万円余を合わせた歳出予算現額千二百十一億七千万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千百五億二千八百八十六万円余であり、その差額は百六億四千百十三万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は九億六千四万円余で、不用額は九十六億八千百九万円余となっております。

 以上、平成十六年度の文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

松本主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院帆刈第四局長。

帆刈会計検査院当局者 平成十六年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一四号から一七号までの四件は、私立高等学校等経常費助成費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 同一八号から二一号までの四件は、科学研究費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 同二二号は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理に関するもので、財務諸表等において、同種、同様の賃貸借契約によって調達されたコンピューター機器の資産計上などについて、計上している国立大学法人がある一方、計上していない法人も見受けられ、各法人間の会計情報の比較可能性が十分に確保されていないと認められましたことから、文部科学省に対して、意見を表示したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、私立学校施設整備事業等の実施に関するもので、私立の高等学校等または専修学校を設置する学校法人は国庫補助金の交付を受け施設の高機能化またはIT教育設備等の整備事業を実施しておりますが、これらの学校法人において補助の対象とならない事業等を補助の対象としたり、補助事業で整備した施設または設備を承認を受けずに処分したり、利用していなかったりなどしているほか、文部科学省において当該会計年度内に既に自力により事業完了等したものについても補助の対象としていたと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 その二は、埋蔵文化財の保存に係る取り扱い及び補助事業の執行に関するもので、埋蔵文化財の発掘調査事業の実施に当たり、事業主体において埋蔵文化財の保存に係る取り扱いが適切に行われておらず、ひいては埋蔵文化財の活用が図られなくなるおそれがあったり、補助事業が適切に執行されていなかったりしていたと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 その三は、国立大学法人に帰属する承継財産の数量及び価額に関するもので、国立大学法人はその成立の際、国から土地建物等の財産を承継しておりますが、国立大学法人に帰属する承継財産に、該当する建物、工作物、物品等が含まれていなかったり、承継財産の価額が過小または過大となっていたりしていたため、承継財産の数量及び価額が適正となっていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十五年度決算検査報告に掲記いたしましたように、教員等個人あて寄附金の経理について処置を要求いたしましたが、これに対する国立大学法人北海道大学ほか八国立大学法人の処置状況についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

松本主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。小坂文部科学大臣。

小坂国務大臣 平成十六年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成十六年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。

松本主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。

    ―――――――――――――

松本主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松本主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。

岩國分科員 民主党を代表いたしまして、小坂文部大臣に、小泉内閣の教育に対する姿勢、また、今審議中の教育基本法についてお尋ねしたいと思います。

 まず最初に、小泉総理は就任当初、米百俵という例えを強調されて、小泉内閣の方針としては教育に重点を置いていくんだというメッセージをお出しになりました。五年前のことであります。

 この五年間に、どういう面で教育行政の実が上がったのか。特に、米百俵という即物的でわかりやすい例えから見ますと、この教育部門における予算が相当ふえていなくてはならない。そういう観点から、この五年間の小泉内閣の教育にかける財政的な意欲というものを評価すると、その通信簿はどういうふうになるのか。小坂文部大臣は五年間責任を持たれたわけではありませんけれども、それを支えて、五年間の通信簿の最後の卒業式を迎えて、これは合格点を与えられる通信簿なのか、そうでないのか。特に、数字的に二つの観点から、それは合格点なのか、全く及ばないのか。五年前の約束とは、全くそれは空手形に終わっているのか。

 一つは、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、こういった国と比較して、いわゆる世界の先進国と言われるところの中で、各国のGDPに対する学校教育の予算というものが何%で来ておるのか、そのパーセントはこの五年間にどれだけ上昇したのか。

 二番目。各国の家計消費の中で、特にアメリカは、家計消費の中で教育費負担が少ない。つまり、両親の負担が教育に関しては少ない。少ないから子供を産みやすい、育てやすい。我が国の場合には、それが数倍に上がっていると言われています。こうした統計で比較して、家計費における親の負担と政府の負担、この比率は五年間でどのように変わったのか。

 その二点から、小泉内閣の教育における通信簿を結論づけていただきたいと思います。

小坂国務大臣 小泉内閣五年間を振り返って、その国際的な観点からの公財政支出のGDP比等、OECDの統計を引いて比較してみよ、こういう御指定でございますが、まずもって、米百俵の精神の故事にありますように、資源の少ない我が国において、人こそ国の宝であり、教育は国政上の重要課題だという認識に立ちましての総理の所信表明演説、それを受けましてスタートいたしました小泉内閣でございます。

 総理は、さきの今国会での施政方針演説におきましても、人材育成の重要性について、「今後の日本を支えていくのは人であります。物で栄えて心で滅ぶことのないよう、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を育てていかなければなりません。」と申されまして、教育の重要性を述べられておるわけでございます。

 これらを踏まえて、文部科学省としては、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成に向けて、人間力向上のための教育改革を推進させていただいているところでございます。

 委員御指摘の教育に対する公財政支出や私費負担につきましては、OECDの調査によれば、我が国の学校教育に対する公財政支出や私費負担の対GDP比は、小泉内閣の二年目、二〇〇二年、平成十四年に当たるわけですが、これが最新のデータでございまして、二〇〇一年、十三年と比較しても変化がないところでございます。また、他国においても大きな変化は見られておらないところでございます。

 なお、この公財政支出等の対GDP比という考え方でございますけれども、国によりさまざまな条件が異なるので、単純な比較が適当かという問題がございます。例えば、GDPに対する公財政支出の割合が日本は小さいということ、また、児童生徒の総人口に占める割合が、少子化ということで小さくなっているということ、また、私立大学等の比率が他国に比して非常に高いということでありまして、大学の約八割、高等学校は約三割ということでございまして、これらは、教育に関する公財政支出に含まれないということになってしまうわけでございます。こういった統計上の問題があることを御認識いただきたいと思っております。

 他方で、初等中等教育における在学者一人当たりの額ということで見ますと、欧米諸国とは遜色がないと言われておりまして、日本は、二〇〇一年から二〇〇二年の変化でございますが、五千六百五十四ドルから六千十六ドルというふうに上がっておるわけでございますけれども、アメリカも同じように七千五百七十四ドルから七千八百三十七ドルと上がり、イギリスも四千六百四十三ドルから五千百八十七ドルと上がっております。同様に、フランス、ドイツ、またOECDの平均も五千三百二ドルから五千六百四十三ドルと、いずれも上昇をしているわけでございまして、同様の傾向値が見られるというところでございます。

 いずれにいたしましても、教育の投資は我が国の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であり、必要な教育予算の確保に今後とも最大限の努力をさせていただきたいと思っております。

 また、小泉内閣の五年間を成果という面で簡単に御紹介をしても、もしよろしければ、させていただきます。

 平成十三年度から十七年度の五年間に、少人数指導や習熟度別の指導を実施できるように、教職員定数を改善してまいりました。改善総数は、二万六千九百人に当たります。また、平成十三年七月に学校教育法、社会教育法を改正いたしまして、奉仕活動、体験活動を促進するようにいたしました。また、平成十四年一月から、指導が不適切な教員の転職を可能とする制度を導入する。また、平成十五年四月には、高度専門職業人の養成のための専門職大学院制度を創設いたしました。また、十六年四月に国立大学を法人化し、合理化を図っているところでございます。あと、平成十六年九月からコミュニティースクール、いわゆる学校運営協議会制度を導入させていただきまして、地域の意見がより反映する制度とし、これらによりまして、財政的な支出を抑えるとともに、効率的な使用に努力をさせていただいたところでございます。

岩國分科員 数字を挙げて御説明いただきました。

 それは大変感謝いたしますけれども、この五年間の成果というときに、もう少し文部科学省としては、内閣が今終わろうとしているときに、私が質問するまでもなく、自分たちの自己点検というのをやってみるべきじゃありませんか。

 米百俵で登場した小泉内閣は、米何俵で終わってしまったのか。百俵ふえたのか、減ったのか。どこかでだれかに食べられたのか。イラクの自衛隊に送られて手元には全く残っていないのか。米百俵の精神というのは、苦しい中でももっと教育にお金をかけようというふうに国民は期待したんじゃありませんか。それがほとんど横ばいの数字。

 そして、しかも、少子化だから、子供が少なくなったから予算も少なくなりました、はい、さようでございますといったような感触ではいけないと思うんです。少子化は、少子化が予算を減らした原因なのか、予算が少ないから子供を産みにくい国になっているのか、そこが問題ではありませんか。

 たとえ子供の数が減っても教育予算を伸ばしてみせる、そういう意欲があってこそ、少子化に歯どめをかける文科省という評価が得られるのではないか、だからこそ米百俵の精神がそこにみずみずしく生きてくるのではないか、私はそのように思います。

 一部、大臣からいただいた数字の中で、アメリカの数字、その数字をもう一度、そこだけ確認していただけませんか。

小坂国務大臣 一人当たりの公財政支出の教育費、初等中等教育の二〇〇一年から二〇〇二年、これが現在ありますOECDの最新統計でございますので、この二年間で申し上げたわけでございますが、アメリカ合衆国、七千五百七十四ドルから七千八百三十七ドルへという形で、二〇〇一年から二〇〇二年の変化の数字を把握しております。

岩國分科員 そういった三十ドル、四十ドル、五十ドル単位の数字でほとんど変化がない、その中で、先進国でやはり、くどいようですけれども、米百俵という、あの非常に鮮やかなメッセージは全く裏づけられてはおらない。よその国も横ばい、日本も横ばいなら、米百俵という言い方は全くなかったんではないか。この五年間は、政策を実施した上で、少なくとも米百俵の精神の成果はなかったものと言わざるを得ないと私は思います。

 そこで、大臣にお伺いいたします。

 内閣は一たんかわるということになるでしょうけれども、この最も大事な時期に教育行政を担当され、そして教育基本法を今審議中の大臣に、これからの負担格差、これから家計の負担をもっと減らして、子供を産みやすく、子供を育てやすく、子供を学ばせやすくする方向に行かなきゃならないという点については、大臣はもちろん同じ御意見だろうと思います。その決意と、そしてその見通しについて簡潔にお答えいただけませんか。

小坂国務大臣 教育の機会均等を図っていくことは私どもの責任でございますし、全国どこに生まれても同じ水準の教育をひとしく受けられる、憲法で保障されたこういう教育の権利をしっかり守っていくのは私どもの責任と思っているわけでございます。

 そのために、義務教育につきましては、国は授業料の無償や教科書の無償給与を実施するとともに、市町村が経済的理由により就学が困難な児童生徒に対しての就学支援を実施しておりますし、また、高等学校におきましては、すべての都道府県において、経済的な理由により就学困難な高校生に対して、公立学校の授業費、入学金等の減免を行うとともに、奨学金事業を実施しているところでございます。

 さらに、大学につきましても、私立大学等の経常費の補助等を通じまして各大学における学費の軽減に努めるとともに、日本学生支援機構による奨学金の事業の充実を図っておるわけでございまして、無利子、有利子を合わせて、貸与基準を満たす希望者のほぼ全員に貸与が実施されているところでございます。しかしながら、一方で、経済的理由により就学困難な学生がおることも事実でございまして、各大学においても授業料等の減免を実施しておるわけですが、文部科学省としては、これらに対しての財政支出を行っております。

 これらの状況から、また私自身としても、全国の各自治体、それから東京の各区の現状というのを踏まえますと、家庭の教育支出が多いところと少ないところがある、これは事実でございますが、これがいわゆる格差という形で、就学困難な格差になっているかといえば、これはそれぞれの自治体の努力によって、生活保護世帯に対する、あるいは準保護世帯に対する支援というのは的確に行われていると思いますけれども、それではその差がないかといえば、差はあるわけですね。ですから、その差を縮める努力は、私どもは常に心がけねばならない、こういう認識を持っているところでございます。

岩國分科員 そうした決意を今拝聴させていただいたわけでありますけれども、いわゆる経済的な格差、それから中央と地方の格差、いろいろな格差がこれから広がろうとしている、そういう懸念が出てきておりますけれども、その格差の中の一つ、中央と地方の格差について、一点お伺いしたいことがあります。

 平均的な地方において、子供を十八歳まで育てて高校を卒業させるまでに、一人の子供を十八歳まで育てて、そして大学へ入らせるまでに、親としてはトータルコスト、概算どれぐらいとお考えですか。簡潔に数字だけお答えください。

田中政府参考人 一人の子供が公立の小学校、中学校、高等学校を卒業するまでの家計におきます学習費の負担は、四百八十四万円と私どもの調査ではなっておるところでございます。

岩國分科員 私が伺ったのは、御飯を一切食べさせないで、この四百八十四万円で十八歳にすることができますか。そんな答弁を私は期待しているんではないんです。子供一人を産んで、下着から、そしていろいろなスポーツをさせることも必要でしょう、学校の教科書は、小学校は無料かもしれないけれども、副読本も読ませなきゃならない、部活にも参加させねばならない。十八歳まで、親のコストは幾らかと聞いているんです。

田中政府参考人 恐縮でございますが、国民生活白書において調査がなされておるところでございますが、この国民生活白書におきましては、ゼロ歳から二十一歳までの二十二年間の子供一人を育てる費用ということで調査しておりまして、これによりますと、二十二年間で一千三百二万円というふうになっておるところでございます。

岩國分科員 その数字を使いますと、十八歳までは約一千万円ということになりますね。一千万円プラス先ほどの五百万円。つまり、島根県でも長野県でも、一千五百万円かけた十八歳を、それから東京、大阪、名古屋へ持っていかれるんですよ、大学がないために、職場がないために。こういう教育赤字というものを、大臣、お考えになったことがありますか。

 三位一体という名のもとに、教育についてはこれからどんどん地方分権が行われる。しかし、十八歳になって、これから大学へお金を払う、そしてそのままその大きな都市で職場を探し求める。そういう地方自治体に、一千五百万円のお返しはどういう形であるのか、こういう視点が三位一体の論議に欠けていると私は思うんです。

 これがこのまま続けば、そして地方分権だ、地方の責任だということになれば、地方は子供を育てるだけ、東京はそれを使うだけ、使うという言い方は失礼ですけれども。そして、六十五歳になったら再び地方自治体の負担になるかもしれない形で返ってくる。負担の一番大きいところだけを地方が負担させられる、こういうことを、大臣、お考えになったことがありますか。

 私は、どちらかといえば、教育における三位一体、地方分権には、はっきり言って反対の立場です。教育こそ全部国が責任を持ってやるべきであって、そして、十八歳になって、それから東京で勉強するもよし、京都で勉強するもよし、あるいは大阪で勤務するもよし。しかし、十八歳までの責任も全部地方に持たせて、負担をさせて、その上、そろそろ税金を払うころになると、東京が税金を受け取る、大阪が税金を受け取る、こういう格差が教育格差をもっともっと深刻なものにしていくんじゃありませんか。

 所得が東京の七割の父兄が、東京の子供と同じ教育を島根県でさせようとすれば、一・五倍の負担がかかる、簡単な計算でしょう。一・五倍、つまり五割増しの負担をしながら、青森県でも長野県でも島根県でも、子供たちを育てて、そして税金を払うころになると、東京、大阪、名古屋、そうしたところへ税金が払われていく。私は、こうした教育赤字、教育黒字、これが今後の大都市と地方との教育格差をますます深刻にするものであるというふうに思います。

 大臣の所感を簡単にお願いいたします。

小坂国務大臣 国の財政の仕組みそのものも、その中には関係してくることと思います。したがいまして、教育の側面だけをとらえて今委員が御指摘なさったことに直ちに賛成せよと言われましても、なかなか直ちに賛成しがたい部分もあるわけでございます。

 税収においても地方と都市の格差があるし、また、地方行政に携わられた岩國委員なら当然のこと、その点は釈迦に説法になると思いますけれども、地方交付税等の措置によってこれまでもその是正を図ってきたことでございますけれども、教育の負担ということにかかわらず、人を育てるということにおいては、衣食住ということも考えれば、これは単に教育だけではないわけでございます。

 これらの支出を地方が負担する、しかしながら、最終的に大都市に働きに行く人の例を考えれば、大都市でその成果を摘み取られてしまうという委員の御指摘は当たっていると思いますが、すべての皆さんが都会に出るわけではありませんし、そういった意味で、委員のおっしゃりたいことの意味合いはわかりますが、それに直ちに賛成せよと言われても、それぞれのお考えだ、こういう認識でございます。

岩國分科員 親それぞれの考えだということは、政府や国の責任をやや放棄していらっしゃるような響きがあって、余りうれしい答弁ではありません。

 明治初期のころ、明治中央政府は全国の県に、各町村に小学校をつくりなさいと。ただし、免除規定を設けました。財政負担でどうしてもできないというところは当分小学校をつくらなくてもいいと。そのときに全国に一番先駆けて全町村に小学校をつくったのは、小坂大臣、御存じでしょう、長野県ですよ。長野県だけは、財政赤字に苦しんでいる町も村も免除規定を全部返上して、小学校を見事に全部つくってみせたんです。私は、それが信州教育、前回にも取り上げましたけれども、その伝統だと思うんです。

 しかし、今の地方自治体にそれを要求するのは酷というものです。三位一体と言い、教育の充実を言うときには、やはり財布と相談をして、財政の支援が十分でなければなかなかやり切れるものではない。それを地方自治体の負担に任せるという時代はもう終わっていると思います。

 次に、教育基本法に関連しまして、その親法である日本国憲法、学校で日本国憲法について当然授業は行われておりますけれども、この日本国憲法の国という字は、公布されたときには今の国とは違っておったと思います。

 旧漢字と言われますけれども、今も常用漢字として使われている、私の名前の國でもありますけれども、私は勝手に國の字を変えられない。しかし、日本国憲法が天皇によって公布されたときには、その国は旧漢字、戈と盾で自分の国を守り、そしてその武器は外国には持ち出さないという、くにがまえでしっかりと囲い込んである。これこそまさに新憲法の、平和憲法と言われる第九条の精神がその一字に、ダ・ヴィンチ・コードではありませんけれども、ジャパン・コードとして封印されているわけです。その國の字が今は変わっておるんじゃありませんか。

 自分の名字を簡単に変えないのが常識であると同じように、教育基本法の親法である、日本の骨格をつくっている日本国憲法の国という字を、だれの許可を得て勝手に書きかえたのか。言ってみたら、夜中に隣の家の表札を勝手に書きかえていると同じじゃありませんか。

 どういう手続を経てあの國が今の国に、今の国は、書いてみてください。銭や金をため込んだら国になる。ホリエモン国家ですよ。村上ファンドを絵にかいたようなものが今の国でしょう。昔の國は、昭和天皇が公布された日本國憲法の國は、自分の国は自分で守る、しかしその武器を外へ持って出てはならない、まさに侍の志の国だったんです。

 侍の国を選ぶのか、ホリエモンの国を選ぶのか。今の子供たちに国を愛しろと、与党も野党も、両方の案が出ています。そのクニというのはどっちのクニであるべきなんですか。ホリエモンですか、侍の國ですか。端的にお答えください。

小坂国務大臣 今おっしゃいました、くにがまえの中に或という字を書くか、玉という字を書くか。

 いずれのクニも同意義でございまして、意味としては同じでありまして、当用漢字表で規定された國という字、またその後の常用漢字表で示された字体である国、その中でどちらを使うかということにつきましては、特に規定が設けられているわけではないというふうに理解をいたしております。

 くにがまえに玉という字の常用漢字表の国という字は、これは釈迦に説法かもしれませんが、昭和五十六年、内閣告示において示されたものでありまして、いわゆる岩國先生の、盾戈の國とおっしゃいましたが、或という字を中に書いた康熙字典体の活字、いわゆる旧字体と言われる國の字は、おっしゃるとおりに、昭和二十一年の日本国憲法公布時においては、当時通用していた旧字体のものが使われたというふうになっておるわけでございますが、常用漢字表は、法令、公用文書、新聞、雑誌など、一般社会において、現代の国語を書きあらわす場合の漢字の使用の目安を示すものとして、現在では一般的に、くにがまえに玉という字体を使うのが望ましいとされておるわけでありまして、また、広く定着をしているとも考えておるわけでございます。

 ただ、常用漢字につきましては、地名や人名など、先生のお名前のような場合、固有名詞を対象とする場合には、その使用者によって指定されたものを通常使用するということにしているところでございます。

 したがいまして、どう違うかということをお聞きになっておられることに率直にお答えすれば、意味は同様であり、今日の法律への使用ということに関しては、常用漢字表を制定したときに、この漢字表に基づく漢字を使うことが望ましいとされているところだと理解をいたしております。

岩國分科員 それを公布された天皇陛下のお許しは、だれがいつ、とりに行ったんですか。

小坂国務大臣 常用漢字表は、五十六年十月一日の制定でございます。内閣告示として千九百四十五字が指定をされております。したがいまして、十月一日以前に、内閣告示の前に陛下に奏上がなされたものと考えております。

 ―――――――――――――

本発言中、「指定をされております。したがいまして、十月一日以前に、内閣告示の前に陛下に奏上がなされたものと考えております。」を「指定をされておりますが、陛下への奏上はなされないものと考えております。」に訂正する。

 ―――――――――――――

岩國分科員 いつだれがその奏上をされたという記録を、必ずこの委員会に提出してください。

 そうした人の名前でさえも、紙一枚の法律で簡単に変えられなかったでしょう、私の名前が変えられなかったと同じように。それが、私の名前を変えられないような法律が、なぜ日本の憲法の字を変えるぐらいの大きな違いがあったのか、なかったのか。

 大臣はなかったとおっしゃる。なかったのなら、なぜ変える必要があるのか。まして、人の名前以上に大切な、国の骨格の代表的な憲法の名前ですよ。こういういいかげんなことをやりながら国を愛しなさいと。一体どっちのクニだかよくわからない。そして、同義語だったら、何も変える必要はなかった。一つ一つの字には意味がある、一つ一つの字は意味が違うというのが文字文化の出発点じゃありませんか。

 大臣の今おっしゃった、両方のクニは同じですと。それでは、日本という国は、日本と書いて両方の読み方があります。大臣は、ずっと答弁はニホンで通していらっしゃる。

 ところが、世の中にニッポンとおっしゃる方がいる。例えば小泉総理大臣。イラクへの兵隊派遣を決議された閣議決定の直後の記者会見。ニッポン、ニッポン国、ニッポン国民、ニッポン国憲法。ニッポン、ニッポン、ニッポンの連発でした。ニホンという言葉は一つも使われなかった。別なところではニホンという言葉は使われながら、なぜ自衛隊絡みの話になるとニッポンがどんどん出てくるのか。この辺も私は違和感を覚えました。

 大臣は、なぜニッポンという言葉をお使いにならないで、ニホンで通していらっしゃるんですか。もう時間がありませんから、簡潔にお願いします。

小坂国務大臣 私はニッポンもニホンも、両方とも使っておりますが、正式な名称のものを使用するときには、国名の場合には、私はニッポンと発音をするのを常としております。また、日本銀行の場合には、ニホン銀行と通称として皆さん呼んでおられますし、日本銀行員の皆さんはニホン銀行と呼んでいらっしゃいますが、紙幣にはローマ字でNIPPONと表記されております。また、NHKのニホン、ニッポンの使用基準というのもございます。

 たしか昭和九年にこれは議論されまして、文部科学省において、臨時国語調査会での国号呼称統一案というのを出したわけですが、国会では審議されずに終わっていると認識をしておりますので、今日、ニホン及びニッポンはそれを自由に使い分けているという形の中で、一つの基準としては、NHKの放送用語の使用基準というものがなされていると思います。これは、インターネットでニッポン、ニホンと表記して検索しますと出てまいります。また同時に、教科書等の両音について、また他の新聞等の記述においても、ニッポンと読む例としては日本放送協会、日本海溝等々、そんなことがございます。

 また、民主党の今回の教育基本法の提出に際しましても、日本国教育基本法とおっしゃっておられまして、国の字は現在のくにがまえに玉の字を使用されておられますので、そういう意味では、日本国憲法とその精神を引き継ぐものとして、日本国教育基本法の字は現在の国を使われているということからも、特にクニの使い分けについて規定はないもの、このように考えております。

岩國分科員 ニホンでもニッポンでもいい。世界の国の中で、先進国の中で国の名前が二通り。人によって、そのときの気分でどんどんと扱われる、そういうことはありますか。

 同じ飛行機の中でもニホン航空と言い、片一方はオール・ニッポンと言い、この辺もまた、同じ空を飛ぶ飛行機もいいかげんだと思います。

 小学校の教科書を見てください。小学校一年生では日本と書いて「にほん」と振り仮名が振ってあります。三年生になると、それが、富士はニッポン一の山と、今度はいきなりニホンはニッポンにすりかわっていく。こういうことは子供の気持ちを混乱させる。

 私は、やはりどこかで、どちらが正しい、そしてどちらが通用語だという基準なりなんなりを示すことが近代国家、成熟国というものではないかと思います。

 答弁は要りませんので、ここで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本主査 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島分科員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。

 きょうは、発達障害に関連したお話をお聞きいたしますが、発達障害者支援法の成立の際には、大臣、副大臣には大変お世話になりまして、改めて御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 きょうは、養護学校、普通学級でもよろしいんですけれども、日本の教育における自閉症児に対しての対応がどうなっているのかということについてお尋ねをいたしたいと思います。

 先般の学校教育法の改正に伴いまして施行令の見直しが行われ、自閉症という障害が知的障害とは分かれた形で規定をされるに至りました。現在、養護学校、知的障害の児童の中で自閉症の者は約半数ぐらいになるだろう、こういうことが言われているわけであります。しかしながら、長年にわたりまして知的障害の範疇の中で取り扱われてきたということもありまして、さまざまな努力がなされてきたわけでありますけれども、必ずしも、自閉症という障害に対して、その特性を踏まえた教育がなされてきたかどうか、いろいろな意見があるところであります。

 先日、私、東京都立の中野養護学校、ここには全国でも非常に数少ない自閉症児に特化をした学級が設けられ、その実践はさまざまな著作で報告されているところでありますけれども、全国的に、こうした専門的な取り組みはどのような実態になっているのか、まずお尋ねいたしたいと思います。

銭谷政府参考人 自閉症児の教育についてのお尋ねでございますが、ただいま先生からお話がございましたように、現在、知的障害養護学校における自閉症またはその疑いのある子供の割合は、全体で約三五%程度で、小中学部では四割を超えているというふうに考えられております。

 自閉症の児童生徒は、対人関係の困難性、言語発達のおくれ、興味や関心が限定されているなどの障害特性がございます。このため、一人一人の障害に応じて、例えば人とのかかわりや集団活動に関すること、視覚的な情報を活用したコミュニケーションに関すること、生活技能を獲得するための体験をふやすことなどを重視した指導が行われている状況にございます。また、周囲からの刺激の少ない学習環境をつくったり、小集団による指導や個別指導を実施するなど、児童生徒の実態によりまして取り組み状況は異なるものの、いずれの学校におきましても、自閉症の特性に応じた指導の工夫や必要な配慮が行われていると考えております。

 自閉症の児童生徒に対する適切な教育の一層の充実を図ることは重要な課題であると考えておりまして、発達障害者支援法の施行等に伴いまして、指導上留意すべき事項について通知により周知するなど、今後とも、自閉症の特性に応じた適切な指導の一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

福島分科員 現在、特別支援教育の実施に向けて、全国的にさまざまな形で研修が行われてきたわけであります。自閉症スペクトラムの中でも特に難しいのは、多分アスペルガー障害、普通学級に在籍するアスペルガー障害のような子供さんに対してどう接するか、教師の気づきということも非常に大事だろうというふうに思っております。

 そういう意味で、こうした特別支援教育に向けての準備作業の中で、一体どの程度の先生方がこうした発達障害についての理解を深めていただけているんだろうか。具体的な数値といいますか、どこまで進んでいるんだ、こういうことについて御説明いただければと思います。

銭谷政府参考人 まず、いわゆる自閉症などを含む発達障害の子供に対する各地域における中心的な先生方の研修ということになりますと、国立特殊教育総合研究所において実施をいたしております。これは、各都道府県の指導者養成のために、発達障害に関する研修ということで、平成十七年度までの総計で、約千二百人が受講をいたしております。このほか、長期、短期にわたる教員研修を昭和四十七年度から行っておりまして、三千七百人以上が自閉症等に関する研修を受講しているところでございます。これらの約五千人の受講された先生方が、それぞれの地元におきまして指導的立場で御活躍をいただき、一般の教員等を対象とした研修の講師なども務めていただいている状況にございます。

 それから、平成十七年度におきまして、いわゆる特別支援教育の充実ということの一環といたしまして、都道府県あるいは指定都市レベルの事業として行われております特別支援教育コーディネーターの養成研修というのがございますけれども、この特別支援教育コーディネーターの養成研修につきましては、平成十七年度、約一万八千人が受講していただいております。

 自閉症や発達障害に関する教員の研修は、今言ったような状況でございまして、まだ十分ではないものと考えておりまして、今後とも、さらに推進をしていく必要があると思っております。

福島分科員 全国で百万人の先生方がおられるわけでありまして、ぜひとも鋭意努力をしていただきたいというふうに思っております。

 引き続いて、先ほど東京都立の中野養護学校の例を示させていただきましたが、東京都では、平成十八年三月、この三月でありますけれども、「自閉症の児童生徒のための教育課程の編成について」ということで、現場の先生方の指針となるパンフレットを作成いたしております。きょう、こちらの方には持ってまいりませんでしたけれども、大変すぐれた内容でございます。

 中野養護学校におきましても、こうしたパンフレットも参考にしながら行っているということだと考えておりますけれども、特別支援教育を進めていくに当たりまして、こうした現場での先生方の指針となるような具体的な資料、こういうものをぜひともおつくりいただいて、全国的に展開をしていただきたい、そのように考えるところでありますが、文部科学省の御見解をいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 自閉症の児童生徒につきましては、障害の状態に応じまして、養護学校に在籍している場合、それから小中学校の特殊学級、今度は特別支援学級という名称に変わりますが、そこに在籍をしている場合、あるいは、通常の学級に在籍をしたまま特別の指導を受ける、いわゆる通級による指導が行われている場合など、いろいろございます。

 私ども、今先生お話しのように、自閉症の特性を踏まえた教育の充実のために、効果的な指導内容、指導方法、あるいは教員の研修といったことについて研究を実施する必要があると思っておりまして、平成十六年度から、筑波大学の附属久里浜養護学校におきまして、自閉症の特性に応じた研究開発を実施しているところでございます。その成果の普及等にまず努めてまいりたいと思っております。

 それから、小中学校につきましては、通級による指導につきまして、今年度から、自閉症の特性を踏まえた従来の対象区分を整理して、新たに自閉症者の区分を設けて、その位置づけの明確化を図ったところでございます。

 今後とも、お話にございましたように、各地域において、自閉症の特性に応じた適切な取り組みが拡大をしていきますように、国立特殊教育総合研究所において、各都道府県において指導的立場に立つ者を対象とした自閉症教育推進指導者講習会等の研修を実施すること、それから、先ほど来申し上げております、自閉症に特化をした研究の成果を、事例集等の作成などを通じまして教育の現場に還元する、そういったことを通じまして、各地域における施策の充実が図られるように努めてまいりたいと思っております。

福島分科員 ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 自閉症の障害の特徴は、先ほど政府参考人からもお話ございましたように、社会性の障害、コミュニケーションの障害、言語の障害、そしてまた行動におけるこだわり、こういったことが特質となるわけでありますけれども、そういう性格をよく理解した上で、適切な対応をすることによって、さまざまな問題行動というものを予防することもできるわけであります。

 特に、自閉症の子供さんたちは、学校教育という一つの環境の中で適応していくというのはなかなか大変なところがあると思いますし、また高学年になったりしますと、そうしたことが引き金となって、いじめというようなことに遭いやすいこともあります。また、いじめというものに遭うことによって、トラウマが生じて、二次的な障害を引き起こすこともある。現場の先生方の適切な理解というのが極めて大事であるというふうに私は思っております。

 具体的なことを言うと、例えばこういう話もあります。一つ指示を出すときも、何々しなさい、何とかちゃん、こういう言い方をするよりも、何とかちゃんと言って、何々しなさいと言う方が入りやすいとか、それはやはり障害の特性によるんですね。そういう意味では、ぜひとも、役に立つものをつくって、広めていただきたいと思っております。

 それから次は、プレスクールというのがアメリカでありますけれども、就学前のアプローチの大切さということについてお話をしたいと思います。

 門野晴子さんというジャーナリストの方が、フリーライターの方がおられますけれども、先日、「星の国から孫ふたり」ということで岩波書店から本を出版されました。お孫さんが二人とも自閉症のお子さんなんですね。アメリカのカリフォルニアのバークレーで育っている孫の姿、そしてまた、アメリカにおけるそうした就学前の教育のあり方、こういうことについて、非常に興味深いお話が載っております。

 カリフォルニアというのは、自閉症の教育の世界では大変有名なロバースという博士が、早期の集中介入というような技法を開発されて、八〇年代から非常に熱心な取り組みがなされているところなんであります。就学前の非常に密度の高い介入によって、そうした自閉症の子供の社会性というものを開発して、そして学童期、学校に入学するに当たってスムーズに運んでいく、こういう流れが実はできております。

 日本においては、どちらかといいますと児童福祉、例えば児童デイサービスでありますとか、児童の障害者福祉の世界で対応されていることが中心でありますけれども、しかし、その比率から考えますと、やはり幼児教育の現場でどう対応するかということも大事なことだろうというふうに私は思っております。

 この点については、文科省においてもさまざまな取り組みが進められつつあるというふうに伺っておりますけれども、幼児教育という現場において、こういう発達障害の児童に対してどういう支援を行い、またそのことによって発達を促していくのか、この点についてのお考えをお示しいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 自閉症児を含みます、障害のある就学前の幼児の指導ということが非常に大事な課題であると認識をいたしております。

 文部科学省では、幼稚園における、障害のある幼児の受け入れや指導に関する調査研究事業というものを全国で十カ所ほど地域指定をいたしまして進めているわけでございますが、それに加えまして、幼稚園から高等学校までを対象とした特別支援教育体制推進事業というものを、全都道府県において実施いたしております。この事業の中では、就学前の子供に対しても、教育の観点からの取り組みを進めているところでございます。

 この事業の実施に当たりましては、厚生労働省とも連携協力をいたしまして、医療、保健、福祉、労働等の関係機関と連携のもと、乳幼児期から就労に至るまでの一貫した支援体制の整備を目指しているところでございます。幼稚園だけでなくて保育所も事業の対象に含めるなど、就学前の取り組みを強化したところでございます。

 ただ、文部科学省としては、先ほど委員からお話ございましたように、教育における自閉症児への対応というのは、いろいろまだ課題があると認識をいたしておりまして、就学前の障害のある幼児一人一人の教育的ニーズに応じた適切な対応ができるように、さらに積極的に取り組みを進めてまいりたいと考えております。

福島分科員 次に、昨年、東京大学で、そしてまた本年度は大阪大学と浜松医科大学が共同しまして、子供の心の発達に関するセンターの整備を進めていただいております。遺伝子レベルでの解析等々、さまざまな研究レベルの話もありますし、そしてまた、何よりも大切なことは、こういうセンターがさまざまな発信機能を持つということなのではないかと思っておりますが、こうした取り組みについて、文科省としてどのような期待を持ち、今後発展させていかれるのか、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

石川政府参考人 まず私の方から、ただいまお話のございました三大学のセンターの教育研究の状況についてお話をさせていただきたいと存じます。

 お話のございました東京大学のこころの発達臨床教育センターにつきましては、発達障害のある子供に教育、医療の現場で対応する専門家を養成すること、これを目的にいたしまして、平成十七年度に設置されたものでございます。本センターでは、最新の脳医学、そして児童精神医学に基づいた人材養成、あるいは教育機関などへの教育プログラムの提供を行うこととしておりまして、文部科学省といたしましても、平成十七年度から、運営費交付金の特別教育研究経費という形で支援をしているところでございます。

 また、大阪大学と浜松医科大学では、本年度、両大学の連携を図る子どものこころの発達研究センター、これをそれぞれ設置いたしまして、地元の自治体等とも連携をいたしまして、教育研究事業を開始しております。この事業は、子供の心のひずみの原因と対策、これを遺伝子レベルでの解析を含めまして科学的に解明をするもの、こういう状況でございまして、これにつきましても、平成十八年度から、特別教育研究経費で支援をしているところでございます。

 このように、国立大学におきましても、子供の心の発達に関しまして、最新の脳科学あるいは児童精神医学や遺伝子の機能解析、こういった科学的な解明への教育研究を展開しておりまして、文部科学省としても、今後ともこれをしっかり支援していきたい、このように考えているところでございます。

福島分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、心の発達ということで、最近、岡田尊司さんという精神科の先生、私の大学の後輩になりますが、今、京都少年院に奉職しておられますが、「脳内汚染」という本を文芸春秋社の方から出版されました。この内容は、さまざまな情報によって人間の脳そのものが汚染されている、環境汚染と同じような話でありますけれども、人間の脳というのは情報を吸収する存在でございますので、ゆがんだ情報、こういうものが悪影響を与える、人殺しなどを主題とするゲームが子供の心の発達に悪影響を与え、凶悪犯罪を起こす原因となっているのではないか、こういう指摘だと思います。

 特に印象的なのは、アメリカの高校で銃器を用いた大量殺りく事件が起こりました。このときの事件をフォローしまして、この高校生は射撃が非常に上手だった。これはシューティングゲームなんですね。シューティングゲームをやっていた、練習していた。初めて自分で銃を撃ったわけですけれども、非常に的中率が高かった。これは軍の話ですけれども、昔は標的を使って射撃の訓練をしていたんですね。これは余り的中率が高くならない。なぜかというと、射的は撃てても、標的は撃てても、人はやはりヘジテートするわけですね、ちゅうちょする。しかし、ゲームの中で人を撃つことを平気になっていると、そういうちゅうちょがないというようなことを解説してありました。こういったことが日本においてもやはり一定の影響を与えているんじゃないか、私はそういう思いがいたしております。

 大阪府さんがこの間来られまして、その中の予算要望で、年齢区分に応じた家庭用ゲーム機ソフトの法的規制の検討をしてほしい、こういう声がやはり大阪府のようなレベルからでも上がってきている。私は、その内容、報道の自由等々、表現の自由等々の話はありますけれども、ゲームを繰り返し繰り返し長時間やることによって、その中で心がはぐくまれている、こういう事態も一方で注視しなければいけないというふうに思っております。

 児童の健全な心の発達を考えたとき、文科省としても、こうした点について配慮いただき、また御指摘いただくことは御指摘いただき、また取り組みいただくところは取り組みいただきたい。所管なのかどうなのか、私は一瞬悩んだのでありますけれども、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 メディア上のいわゆる有害情報、青少年を取り巻く有害環境につきましては、青少年に対する悪影響が懸念されるところでございます。これら有害情報の規制につきましては、先生今お話もありましたけれども、やはり表現の自由とのかかわり合いもあることから、第一義的には、やはり発信者側において、青少年の健全育成の観点に立った自主規制が重要であると考えております。

 家庭用ゲームソフト業界団体におきましては、これまでは、購入の目安としての情報の提供としての年齢別レーティング制度を実施してきたわけでございますけれども、新たなレーティング制度を導入いたしまして、本年の五月三十一日からは、販売店において一部ソフトの十八歳未満の販売禁止措置というものを開始したということでございます。

 このような制度が有効に機能するためには、業界の側における的確な制度の運用が重要であるということでございまして、文部科学省におきましても、この新しい措置の運用につきまして注視し、また支援してまいりたいと考えているところでございます。

 今後とも、実効性のある自主規制、取り組みを関係団体に対して要請を続けてまいりたいと考えております。

福島分科員 これは、ぜひしっかりとフォローしていただきたいというふうに思います。

 脳科学を活用した子供の心の発達についても、文科省で研究を進めていただいておりますけれども、さまざまな基礎的なデータを集めることが必要だというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、話題をかえまして、医師不足の話をちょっとお聞きしたいと思います。

 近年、医師不足が大きく取り上げられております。特に僻地の医師不足、病院の医師不足、診療科ごとの医師不足。一つの原因は、これは厚生労働省が始めたわけでありますが、臨床研修制度が義務化をしたことによって、大学の医局で研修を受ける研修医が非常に少なくなった。今、五〇%を切りました。そのことによって、大学の医局が人手不足に陥り、今まで果たしてきた医師の派遣機能というものを果たせなくなってきた、その結果として、地方の病院が医師不足に陥っている、こういうことなんだろうと思います。それ以外にも幾つもの要因がありますけれども、一つのファクターとしてこれは非常に重要だ。

 大学の医局制度、今までいろいろな批判がありました。「白い巨塔」、随分古い話ですけれども、テレビで再放送もされましたが、そういった閉鎖的な問題等々もあったわけであります。しかし、医師の教育、そしてまた医師の派遣、それによって一定の医療提供を確保する、こういうことで果たしてきた役割というのは非常に大きいんだろうというふうに私は思っております。

 先般、全国医学部長病院長会議が開催をされて、臨床研修制度について見直しを求める要望を取りまとめる、そういう動きにあるというふうに伺っております。これは、医政、厚労省の所管という考え方も当然あるわけでありますけれども、しかし、独立行政法人化した大学の組織の一部でありますので、今までとは随分その経営も変わってきているという観点もあります。文科省としても、この点については、今後の大学医学部、そしてまた医局制度というものがどうあるべきなのかということについて、ぜひともお考えをいただきたいというふうに思っております。

 臨床研修制度、五年後の見直し規定というのがありますけれども、これから、初期の臨床研修だけでなく後期の臨床研修をどうするか、こういう大きな課題もあるわけであります。厚労省と一緒になって、今まで果たしてきた役割をどのように、必要なものはやはり維持していかなければいけませんから、変えていくのか、新しい機能をどう考えていくのか、このあたりについての文科省としてのお考えをぜひともお示しいただきたいと思います。

石川政府参考人 地域における医師不足に関する御質問でございますが、医学教育におきましては、豊かな人間性やコミュニケーション能力とともに、専門的な知識や技能を有し、社会環境の変化や患者のニーズ等に対応した質の高い医療を提供する、こういったことができる医師を養成することが求められているわけでございます。

 先生は御専門でございますので御案内のとおりでございますが、とりわけ学部段階におきましては、基本的な知識、技能、態度を幅広く身につけるための教育、これを行いまして、第一線の医療現場で基本的な医療を行う家庭医ですとか、あるいは地域医療に貢献できる医師、さらには、将来特定の分野において高度の診療能力を有する専門医となる医師などの養成に取り組むことが期待されているわけでございます。

 このため、各大学におきましては、医学教育モデル・コア・カリキュラム、いわゆるモデル・コア・カリキュラムに基づきまして教育を行うとともに、カリキュラムの不断の改善充実に取り組むことが求められている、このように認識しております。

 また、大学病院につきましては、学部教育、基本的な診療能力を幅広く身につけるための卒後臨床研修、そしてまた専門医としての専門的な能力等を身につけるための専門研修など、医師養成の各段階におきます教育研究の場としての役割をしっかりと担っていただく必要があると思っております。そしてまた、先ほども先生からお話ございましたように、こういった教育研究のほか、地域の中核的な医療機関としての役割とともに、医師の派遣など、こういった地域の医療体制の整備への協力、こういったものも強く期待されていると私どもも考えております。

 文部科学省といたしましては、これまた先生からも御指摘ありましたように、厚労省等とも連携をしっかりとりまして、大学または大学病院のこのような役割や機能が十分に発揮されますように、今後とも必要な条件整備とか支援に努めてまいりたい、このように考えております。

福島分科員 ぜひよろしく検討していただきたいと思います。

 その中で、一つ申し上げておきますと、研究と臨床、どうやっていくのか。私は思いますけれども、やはり臨床に特化するような大学医学部のあり方というのが求められているんじゃないか。まさに、例えば後期臨床研修でも、専門性を求める人がふえてきていますけれども、ここの大学病院であれば、自分は医師としてしっかりトレーニングしてもらえる。今、教育もしなきゃいけない、研究もしなきゃいけない、臨床もしなきゃいけない、これで過重労働になっているという話もありますけれども、要するに、すべてをそろえているので中途半端になる。これはある程度のところで、私は、それぞれ大学病院、医学部がみずからの特性のようなものを考えて選択をする必要が恐らくあるんだと思うんです。メディカルスクールに特化する、こういうものが必要だという指摘も専門家の方々からあります。そういうことも含め、御検討いただければと私は思っております。

 そしてまた、医師の需給については、この夏をめどにまとめるということになっております。これは医学部の定員と密接に関係をしているわけであります。地方では、やはり地域枠をもっと拡大してほしいという声が非常にあります。文科省にお願いすると、文科省は、最近拡大してきていますけれども、まだ大変厳しい、こういう意見もあるわけであります。こうした地域の声もよく踏まえて、厚労省とも協議をしていただきたいと思っております。この点については、お願いだけさせていただいておきます。

 また、全体としての数の問題もあるんです、総数の問題。私は、医師の需給見通しでは、例えば、今放射線科医の不足というのが言われているんですね。日本は五百名、アメリカは五千名、十分の一しかいない。こういう専門科目ごとに、どういう医師を育てるのか、どの程度の医師を育てるのか、そういう具体的な目標をやはり盛り込んでいった方がいいんじゃないかと個人的には思っています、ニーズがありますから。内科医のようなものは別に数をつくらなくても、目標をつくらなくても、なる人はなりますから、ほっておいても私はいいんだろうと思いますけれども、総数を示すだけでは、日本の医療の質を高めていくためにはやはり足りない。

 そうしますと、専門的な医師をどの程度つくるのかということは、大学の講座、講座は今度変わるというふうに伺っておりますけれども、大学の組織のあり方とこれはまた裏腹の関係に実はなるわけですね。

 ですから、医師の需給見通しの議論の中で、不足していると言われている分野、放射線科医もそうですし、例えば子供の心の専門医、これも大きく不足しています。幾つか明確に不足している分野がありますので、ぜひそういう議論を厚労省との間でやっていただきたいと私は思っておりますし、また大学も、独立行政法人になりましたけれども、督励をしていただきたいというふうに思っておりますが、この点についての文科省のお考えをお聞きしたいと思っております。

石川政府参考人 実際にどういった分野の医師をどう養成していくか、そういったところまで踏み込んでの検討の必要性、今先生の御指摘、まさにそのとおりかな、特に放射線医師のようなものを考えた場合には、その必要性は私どもも感じておるところでございます。

 もとより、大学におけるそういった教育研究組織の講座を初めとして、つくり方については、これまた大学の自主的な判断、自主性という問題もございます。厚労省とも十分協議をし、また大学ともよく連携をとりながら、そういった体制を強化してまいりたい、このように考えております。

福島分科員 最後に一問だけ、これは大臣、よろしいですか。資料はありますか。教科書の問題なんです。

 社会保障制度、年金で随分おととしは大変な国会になりましたけれども、私は、その根っこに、やはり社会保障制度が国民の間にどれだけ理解されているか、根づいているか、こういう問題があるんだろう。高等教育というよりも中等教育の問題があるんじゃないかというふうに思います。

 大臣、ちょっと資料を見てください。これは、日本の中学校の教科書とスウェーデンの中学校の教科書、両方コピーしたものが入っています。日本の中学校の教科書というのは、二枚ありますけれども、社会保障とは何か、少子高齢社会とは何か、人口ピラミッドとかあります。介護保険の仕組みはどうなっているかとか書いてある。二枚目を見ると、「年金制度ってなんだろう?」、世代間扶養方式とか積立方式、何とかかんとかたくさん出てきまして、あの国会審議を思い出すと思いますけれども、難しいことがとにかくやたらとたくさん書いてあるんです。厚生労働省のパンフレットをちょっとミニチュアにしたような話。

 その次は、「老人になる」というのがありますけれども、これはスウェーデンの中学校の教科書を翻訳した本なんです。あなた自身の社会という、そういうテーマ。これで、要するに老人になるとどんなことが起こるのかということが、るる、とても読みやすく実は書いてあります。

 もう一枚めくりますと、高齢者福祉の現状というのが書いてある。もう一枚めくりますと、「課題」ということで宿題が、左肩のところはおもしろいですよ。今問題になっておりますけれども、「社会保険事務所と社会事務所で、年金の支給額について、またその他の高齢者に与えられる援助について調べましょう。」具体的に自分で調べてみなさい。そしてまた、「二〇四〇年ごろには、あなたも年金者になっています。その時には、年金制度はどうなっていれば良いと思いますか。討論しましょう。」こういう教育をしているんです。

 スウェーデンというのは高福祉・高負担の社会ですけれども、その根っこの部分には、一人一人の国民の立場に立って、どうやって社会保障制度を理解させるかという教育がなされているんだろうと思います。

 最後につけたのは、アメリカの子供向けの年金の説明のホームページなんですけれども、これもなかなか見ているとおもしろいです。

 そういう取り組みというのをやはり小さいときからやるということが、今後、高齢化はさらに進みますし、負担もまたふえていく、日本の社会が健全に支え合っている社会であるためには必要だ、そのように思いますが、大臣の御所見を最後にお聞きしたいと思います。

小坂国務大臣 年金制度のように、制度としての継続性、それから世代間扶養等、それぞれの世代の人が正しい認識を持ってくれること、これが、制度を維持していく上では必要でございます。それに対して、それを教える教科書が非常に理念的、それで制度の詳細を説明するような、制度の説明に余りに深く入り過ぎて、イメージとしてわきにくい、それを把握しにくいという状況にあるようなことを、今委員の御説明を聞きながら見ておって思ったわけでございます。

 今後、もう少しわかりやすい教科書、そして、なぜ制度があるのか、その制度の意義のようなものを理解できるような教育の体制のあり方、そういうものにやはり心がける必要がある。特に、こういった社会の仕組みというものを理解してもらうことが、この社会の形成者、国家の形成者としての国民を育成する上では必要でございますので、御指摘の部分を踏まえまして、しっかり取り組んでまいりたいと存じます。

福島分科員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

松本主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明六日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.