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第1号 平成19年4月23日(月曜日)

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本分科会は平成十九年四月十日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

四月二十日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      浮島 敏男君    桜井 郁三君

      冨岡  勉君    平田 耕一君

      福岡 資麿君    茂木 敏充君

      岩國 哲人君    玄葉光一郎君

      古川 元久君    遠藤 乙彦君

四月二十日

 古川元久君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年四月二十三日(月曜日)

    午後二時開議

 出席分科員

   主査 古川 元久君

      浮島 敏男君    遠藤 宣彦君

      小川 友一君    桜井 郁三君

      冨岡  勉君    平田 耕一君

      茂木 敏充君    石川 知裕君

      岩國 哲人君    赤羽 一嘉君

   兼務 西本 勝子君 兼務 斉藤 鉄夫君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       佐野  洋君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       金刺  保君

   会計検査院事務総局第五局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            鈴木 明裕君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  石田 直裕君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            森   清君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           高橋 正樹君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局水道課長)           山村 尊房君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (公営企業金融公庫総裁) 渡邉 雄司君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           白川  均君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役員)           伊東 敏朗君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  桜井 郁三君     遠藤 宣彦君

  茂木 敏充君     小川 友一君

  玄葉光一郎君     石川 知裕君

  遠藤 乙彦君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     桜井 郁三君

  小川 友一君     茂木 敏充君

  石川 知裕君     玄葉光一郎君

  赤羽 一嘉君     福島  豊君

同日

 辞任         補欠選任

  福島  豊君     遠藤 乙彦君

同日

 第一分科員斉藤鉄夫君及び第四分科員西本勝子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (総務省所管、公営企業金融公庫及び文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

古川主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました古川元久でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十七年度決算外二件中、本日は、総務省所管、公営企業金融公庫及び文部科学省所管について審査を行います。

 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。菅総務大臣。

菅国務大臣 平成十七年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額六百三十三億三千三百五十七万円余に対し、収納済み歳入額は六百九十八億三千百二十四万円余であり、差し引き六十四億九千七百六十六万円余の増加となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額十八兆九千八百二十一億九千四十八万円余に対し、支出済み歳出額は十八兆九千四百二億八千四百八万円余、翌年度繰越額は百六十億一千五百三十五万円余であり、不用額は二百五十八億九千百四万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は七十二兆七千七百八十二億六千三百五十二万円余、支出済み歳出額は七十兆七千六百億七百六十万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は九百七十八億九千三百六十四万円余、支出済み歳出額は七百九十八億五千百六十三万円余であります。

 以上が、平成十七年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

古川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第五局長。

増田会計検査院当局者 平成十七年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項六件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 これは、検査報告番号一〇号から一五号までの六件で、情報通信格差是正事業等の実施及び経理が不当と認められるものであります。

 このうち、同一〇号、一一号、一二号及び一四号は、地域イントラネット基盤施設整備事業の実施に当たり、交付決定の内容に含まれていないシステムの整備費を補助対象事業費に含めていたり、補助対象経費を単独事業との割合で案分して算定していなかったりなどしていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 同一三号は、情報通信システム整備促進事業の実施に当たり、企画・開発行為を加えていないため補助の対象とならない市販のアプリケーションソフトウエアの購入費を補助対象事業費に含めていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 同一五号は、加入者系光ファイバ網設備整備事業の実施に当たり、必要のない試験費を補助対象事業費に含めていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、市町村合併により遊休化している、地域イントラネット基盤施設整備事業等で整備した設備等の効率的な利活用に関するものであります。

 総務省では、地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、LAN等の施設、設備及びソフトウエアを整備する市町村等に対し、情報通信格差是正事業費補助金等を交付しております。

 この補助事業を検査いたしましたところ、合併前に旧市町村でそれぞれ作成、管理されていたホームページが新市町村で一つに統合されたり、市町村におけるイントラネットの方式が合併の前と後とで異なったり、旧市町村の議会が廃止され議会中継用の装置が不要となったりなどしたことから、補助事業により整備した設備等が使用されなくなり、他の公共または公用の設備等に転用するなどして効率的な利活用を図ることが可能であったのに、その後も利活用が図られていない事態が見受けられましたので、当局の見解をただしましたところ、総務省では、十八年十月に、遊休化した設備等について、具体的な利活用の範囲や利活用する際の手続等を明確に定めるとともに、事業主体に対して周知徹底する処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

古川主査 次に、会計検査院佐野審議官。

佐野会計検査院当局者 平成十七年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

古川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、総務省のとった措置について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適切な執行を図るよう常に心がけているところではございますが、会計検査院の検査の結果、情報通信格差是正事業における補助対象事業費が過大に精算されていた等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところでありますが、内容を真摯に受けとめ、今後なお一層事務の改善を求めるとともに、厳正な態度で事務の執行に努める所存であります。

古川主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川主査 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)分科員 自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 私自身は、御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、郵政省の出身であります。本日、郵政関連について質問をさせていただく理由は幾つかございますが、一つは、郵政特別国会で麻生総務大臣あるいは竹中大臣に質問をさせていただいた、その後についてお尋ねをしたいというのが一点。もう一つ、私自身が、郵政省時代に横浜市役所に出向させていただいて、今の菅総務大臣とお話をしたときに、将来、郵政の担当大臣になられて私が質問に立つことがあるかもしれませんねということを今から十二年ほど前に冗談半分で言ったことが実現したという喜び、このことを込めて、きょうは質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 御存じのとおり、ことしは郵政の事業にとって非常に重要な年であります。郵政民営化が成功と評価されるのか、あるいは失敗とされるのかの分水嶺、そういったことの中で、菅総務大臣もお目にかかったと思いますけれども、特定局長会の会長だった大樹の田中会長とか、あるいは西川社長と意見を交換させていただく機会を持ちました。そしてまた、在職中から局長会の方で勉強会も随分重ねてきました。今まで国営維持、三事業一体、そして独立採算という呪縛があった中で、これから解放された、このことをこの民営化の中でどうやって生かしていくのか、非常に重要なことだと思います。

 しかしながら、今民営化に向かっているとはいえ、まだまだ官の要素が極めて大きい。これを、いい部分を生かして悪い部分を捨てる。今の流れは、民間にできることは民間に、そしてまた、官の無駄を省く、民間の創造性を発揮すると同時に官であったことの信頼を生かす、特定局に見られるように地域の安定に資する形での民営化にする、そして無駄な資産を売却して、三位一体の改革の中で地方の無駄を解消していく、おおむねこういうことだと思います。

 そこで、まず大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 いわゆるワンストップ行政サービスといいますか、地域に必要な公共機関という位置づけにおいては、郵便局はいささかも変わるところはございません。こういった中で、今、一方において、地方には、こんなところを置いておくよりも郵便局をちゃんと置いておいてくれた方がありがたい、出張所でも、一日に何人かしか来ない、住民票も一日二、三通とられればいいぐらいの出張所もあって、その一方で膨大な人件費や施設費がかかっている。

 今、地方の無駄を省くという三位一体の改革の中で、公共性の高い郵便局と、そういったものを大胆に統合していく、あるいは事務委託をどんどん進めていくという時期ではないかと思います。とりわけ、今、省庁再編で自治省と郵政省が一緒になった、六年たって、縦割りがスムースに解消されつつある中で、今後の見通しといいますか、大臣の基本的な御所見をいただければと思います。

菅国務大臣 私も、市会議員当時、遠藤委員から、当時横浜市の課長で出向してこられて、郵便局の利活用についてさまざまな意見交換をしたことをいまだに鮮明に記憶いたしますけれども、まさか私がこうして答弁に立つとは全く予測もしておりませんでした。当時よく、特定局を役所のさまざまな事務の手続等に利用するべきじゃないか、そうすることが、いわゆる地域住民の皆さんにとっての利便性を極めて向上することができる、そういう議論をしたことを今考えております。

 今のお話の中にありました、出張所などその組織のあり方というのは、まさにこうした行革の時代でありますから、これは当然取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

 こうした中で、郵便局への業務委託、私は一つの考え方だというふうに思っております。行政の効率化、住民サービスへの対応、そしてまた、特定局が果たしてきた役割、地域の皆さんから非常に信頼をされる、そういう中で、いよいよこの十月一日から民営化になるわけでありますけれども、地域の事情を踏まえて、そうしたこともさまざまな考え方の中で判断していくことも一つのあるべき姿ではないかなというふうに私は思います。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 自治省と郵政省が一緒になった、そしてまた、この縦割りが解消されて、地方の改革の流れの中で郵政の民営化が生きていくという非常に重要な時期に菅総務大臣がいらっしゃる。私、昔から存じ上げている立場としては本当に心強い限りでありますので、この郵政の民営化が成功に終わりますよう、どうか大臣におかれましてはお力添えをいただきますように心からお願いを申し上げたいと思います。

 さて、次の質問に移らせていただきます。

 郵便局というのは、施設の部分だけではなく、郵便局員という資産を持っておると思います。これは、郵政特別委員会のときにも、麻生大臣にも質問させていただいたんですけれども、郵便局職員というのは、地域の信頼が相対的に非常に高い。田舎に行けば行くほど、顔見知りの人が郵便を配達している、あるいは貯金を集めている、保険の勧誘をやっている。あなた最近はどうみたいなよもやま話から始まって、極めてほのぼのとした信頼関係の中でやっている。これは非常に、郵便局関係の要素としては重要なものではないかというふうに思っています。

 そしてまた、内部の人間から実はよく出ていた話。国勢調査とかあるいは選挙事務で、地方自治体が非常にお金をかける。私自身も、先ほど、冒頭申し上げたように、横浜市役所にいて、いろいろな地方自治体の悩みを聞きました。国勢調査は国の話ですけれども、選挙事務でも膨大なお金がかかる。国勢調査でも、ピンポンと鳴らして、あなただれ、うちはあなたなんかに話したくない、そういうような話になってしまう。

 そこで、人的資源を持っている郵便局というものを活用するときに、皆さん一生懸命、寒い夜空にブースで切手を売っている、年賀はがきを売っている、それも大事なことなんですけれども、実際に地域の信頼があるのであれば、例えば選挙事務にしても、あるいは国勢調査の下請けにしても、そういった公的な、公共性の高い仕事を、公共性そして地域の信頼が高い郵便局員が請け負うということは、そんなに違和感のあることではないと私は思っています。こういったことをまず検討できないか。

 そしてまた、昨日、後半戦の地方選が終わりましたけれども、投票率が高ければ高いほど信憑性が高いということですから、投票率を上げるために期日前投票というものが定着をしてきました。しかし、さらに広げて、今やっているかもしれませんけれども、郵便局でもっとできるようになると一層効果があると私なんかは思ってしまうのですが、そのあたりの現状、基本的考え方、こういったものについてお伺いできればなというふうに思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 国勢調査につきまして、国勢調査員は市町村長からの推薦に基づきまして、総務大臣が任命する非常勤の国家公務員でございます。市町村においては、町内会や自治会、一般からの公募などを通じて候補者を選考しているところでございます。

 このような仕組みの中で、郵便局職員が国勢調査員に任命され、調査員事務を担うことにつきましては、制度上は可能と考えております。

 以上でございます。

遠藤(宣)分科員 いずれにいたしましても、せっかく長年培ってきた地域の信頼を人的資源として生かせるようなもの、そして、一方において、コストが高いとか、あるいはなかなか人が見つからないみたいな、そういったものとのマッチングをしていっていただくことによって、この郵政、今いろいろと収支の部分でも苦しんでいるかもしれない郵政事業自体が、持っている資源を生かして、本当に地域に役立っているなというふうに評価されるような形になることを私自身は願ってやみません。

 よく思うんですけれども、本当に、十二月に入って、年賀状とか売れるのかなと。私も郵便局長をやらせていただきましたけれども、そういうところで頑張ることも大事だと思います。お祭りで記念切手を売ることも大事だと思います。しかし、この郵便局の人がやったらもっともっといろいろできるだろうという部分に、勇気を持って進出をしていっていただきたい。特に、自治省と一緒になった現在、地方のコストを下げるという意味でも活用していただければいいのかなというふうに思います。

 そして、三番目の質問でありますけれども、今度は本体の営業力。

 これも西川社長とか田中会長とお話をしたときに出たんですけれども、基本的に、今回の民営化が縮小再生産になることだけは避けなければならない。もちろん、無駄を省かなければならないんですけれども、一番の営業力の基本というのはどこか。これは、決して味方をするわけではないんですけれども、やはり一万八千五百ぐらいある特定郵便局じゃないか。

 つまり、個人的な郵便局の人たちの信頼、局長さんたちの信頼というものも含めての営業力でありますから、従来言われているように、日本の地域社会のかなめと言っても過言ではないような特定局、ここのところの間違ったスリム化をしていくと営業力が低下する。そして、縮小再生産に陥っていく。

 これは、私も郵政省にいた人間ですけれども、むしろ最前線を切っていくよりも、中間の部分をどうやってスリム化していくか、あるいは中間管理部門と関連の団体、支社等の管理部門のスリム化、こういったものについてむしろ進めていく必要がある。

 あるいは、一部取り上げられているように、この地域に根ざした特定局長の転勤という問題があります。これも、一律かどうかよくわかりませんけれども、この管理部門のスリム化についての現状と今後の見通し、そしてまた特定局長の転勤ということについて、現状と見通しをお伺いできればと思います。

白川参考人 まずお尋ねの、管理部門のスリム化についてお答えを申し上げたいと思います。

 郵便局株式会社の郵便局の基本的な考え方といたしまして、それぞれの郵便局が自律して活動できるような体制を構築する必要があるとまず考えております。

 その一環といたしまして、管理部門となる御指摘の支社につきましては、現在の日本郵政公社の支社のように郵便、貯金、保険がそれぞれ営業業務を担当するような大きな組織とするのではなくて、民営化時に強化を図るコンプライアンス部門等を除きまして、スリムな組織とすることを今考えております。

 そして、具体的には、現在の縦割りの事業別の組織から営業業務といった機能別の組織といたしまして、重複部分の無駄を省いて、おっしゃいますように郵便局の活動を直接サポートする部分を逆に充実いたしまして、より郵便局の活動を効果的に支援できる支社をつくり上げていきたいというふうに思っております。

 次にお尋ねの、特定局長の転勤の問題でございます。

 これにつきましては、一つは、平成十八年十一月三十日に公表させていただきました郵便局株式会社における郵便局のあり方についての基本的な考え方、新・郵便局ビジョンというふうに申しておりますけれども、これにおきまして、郵便局長の転勤については必要な異動を実施する旨記載いたしております。これは、現在、日本郵政公社におきまして、郵便局人事制度改革、これは平成十七年十一月二十八日から行われておるものでございますが、これにつきましても、転勤制を原則とされておりまして、これにのっとって行っていくものでございます。

 しかしながら、転勤の実施に当たりましては、まず転勤ありきというような機械的な考え方で実施するのではありませんで、郵便局長から提出されます勤務希望調書によりまして、転勤希望を参考に、業績への貢献度合いとか地域密着性に基づく、先生のおっしゃいます営業力などを総合的に勘案しながら、実施していくことを今考えております。

 以上でございます。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 特定局長も一生懸命やっている人とあぐらをかいている人と、本当に郵政事業というのは分母が大きいものですから、一部を見て全部を語るのはなかなか難しい、ある種の意見が、ある地方では妥当だけれども、こちらの方ではちょっとなということもいっぱいあるかと思います。いずれにせよ、角を矯めて牛を殺さないようにした方がいいんじゃないかというふうに思います。本当に何十万という大きな世帯ですから。

 私は、長野県の方で一年間郵便局長をさせていただきました。現場にいると本当に、昔の労働組合との闘争の拠点で、百三十年たった野沢郵便局というところだったんですけれども、百三十年で初めていわゆるキャリアが行ったというようなところで、現場に行って、なかなか口をきいてくれないんですけれども、しばらくすると、こんなことなんだよ、こんなことなんだよと話が来る。

 今申し上げた話に関連していいますと、例えてみると三本の川がある、貯金と保険と郵便と。それぞれの部門からいろいろな通達文書が流れてくる。現場に来ると、それがあたかも河川がはんらんするがごとくいつも管理職の机の上には山積みになって、こんな文書いつ読めると思いますかという話になる。初めは労務管理が一番だったのが、次は数字管理になる。毎回サラ金から督促があるように郵政局から電話がかかってきて、あれのノルマが達成されていませんね。そしてまた、特定局に行くと、昔ながらの五人組制度みたいな部会というのがあるんですね。行くと、ノルマが達成されないと本当に針のむしろなんだと。

 そういったものの中で、本当の現場の話が、声が上がらないんだよ、遠藤さん、何とかこういう声というのを届けてあげなきゃ本当に我々の組織というのはつぶれちゃうよ。そんなことを随分話をして、菅大臣にも、横浜市にいるときに、特定局長を交えてそんな話をした覚えがあります。

 いずれにいたしましても、郵政事業は、皆さん、それぞれのつかさつかさで本当に一生懸命やっている。しかし、合成の誤謬といいますか、一生懸命やっていればやっているほど何かおかしな方向に行っちゃうということがありますので、いわば兵たん線が長過ぎるといいますか、トップが考えていることと地域の現場のところの意識がちょっと乖離してしまうことがある。

 そういった意味で、ユニバーサルサービスをやっていて、しかも非常に大世帯である、この欠陥を克服しつつどういうふうにするべきか。

 この一つの考え方が、今までは労働組合あるいは局長会と郵政の経営側が交渉して要望を聞く、話し合いをする、そういうような形だったと思うんですけれども、この際、花よりも実をとるということを考えて、例えば地域の局長会とかそういうところから経営の側に参画してもらう、その道を開くとともに、例えば予算権限を下部組織へ大胆な分権をしていったらどうか。本当に豪雪地帯と太平洋側では全然ニーズが違いますし、山間地とほかのところでは違う。さまざまなニーズに対応していくためには、今の世の中の流れと同じように、大胆な分権、その地域地域のニーズに合わせるような権限の移譲というものをするべきだというふうに思いますが、そのあたりについて基本的な考え方をお伺いできればと思います。

白川参考人 お答え申し上げます。

 まず、郵便局長の経営への参画に道を開くという点でございますが、昇任や支社での活躍につきまして、意欲と能力を持つ局長には、人事の適材適所、それから現場の活力を支社等の間接部門に導入するなどの観点から、その道を開いていきたいというふうに考えております。

 次に、下部組織への分権問題でございますけれども、郵便局会社におきましては、郵便局の拠点数が非常に多いことから、民営化後は各局に局別損益を明示することで、各局がみずから置かれている状況を認識して、自律的に損益の改善に向け努力するような経営管理手法の導入を検討しているところでございます。

 そして、例えば新施策を実施することによりまして、費用を上回る収益が見込まれる場合には費用を増額することを認めるなど、予算の使用につきましても従来と異なって弾力性を高めていきたいと思います。その結果は損益率の改善という指標によって測定されていくことになるというふうに考えております。

 以上でございます。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、せっかく民営化になったんですから、大胆に、今まででは考えられなかったような柔軟な展開をしていただいて、実をどんどんとっていただきたいというふうに思います。

 恐らく民営化になっちゃったとアプリオリにがっかりしている内部の人間にとって、ここから自分たちが直接経営に携われるんだという道があるかどうかで日常の意欲は随分違ってくると思います。私なんかは、もっと極端な話、社員の持ち株をやってもらって、自分で意見が言えるぐらいにまでなってもらえば、それぞれで本当に役に立つような話が出てくるんじゃないかなと思います。

 そして、今申し上げたように、国営維持、独立採算、三事業一体、この呪縛に非常に縛られていた。私自身が郵政研究所というところで、特定局のことについても勉強させていただいた。この三つを全部、経済社会が変わってくる中でどうやって守り通すんだろうということを今から十年ぐらい前に本当に頭を悩ました。しかし、それから逆に解放された部分があると思います。言ってみれば、日本の近代の夜明けのときに尊王攘夷から開国和親、転換をするのは日本人の得意なところですから、独立採算じゃなくても、本当に地域に役に立つ郵便局を維持するためには何が必要かということを堂々と言えばいい。

 今までは自分たちの内部でほかに御迷惑をかけないで、独立採算だからどこからも助けを求めないでというところでこだわってきた。しかし、私は、内部にいるときから思っていたんですけれども、本当に必要な機関だったら、それこそ補助金をもらってもいいんじゃないかな、あるいはもっと減免してもらってもいいんじゃないかな、そんなような思いがあったんですけれども、いろいろな現場の方々と意見を交換しているうちに、こんな話が出てきました。

 例えば、過疎地等を支える郵便局に対して過疎債や辺地債の対象として支援をするとか、豪雪地帯や離島について、さまざまな地域事情に応じて特別な配慮をしている法律がいっぱいあると思います。こういった地域の特性に応じた支援の対象として、郵便局が、今回の民営化の結果、今までの収益本位、そして独立採算だからというところから、やむを得ずここはもう閉鎖するんですよということよりも、本当に必要なところであれば、冒頭申し上げたように、地方のほとんど人の来ない町役場の支局を統合するとか、あるいは業務を引っ張ってくるとか、さらにそれでも間に合わないのであれば、ここは豪雪地帯だから特別に配慮するとか、過疎債、辺地債の対象にするとか、こういった複合的な支援をすることによって、とにかく大事なのは、結果として地域に最も大切な郵便局が残るという形をどうとるか。

 さらに申し上げれば、地方自治体においても、本当に必要だったら、私なんかは、自治体に働きかけて条例を制定するとか、そういったことも考えたっていいんじゃないかなというふうに思います。

 いずれにいたしましても、必要なものを残すという観点から、過疎債とか辺地債とかさまざまなツールを利用して、結果として地域の利便性が低下しなかったというような形にしていただくべきじゃないかなというふうに思いますけれども、このあたりについての考え方をちょっとお聞かせいただければと思います。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 過疎債などは、過疎市町村で、その市町村の計画に登載された事業に対して起こすものでございます。ただ、その対象事業は、法律に列挙、限定されている事業に限られておりますので、そういう事業については発行できるわけでございますが、郵便局の庁舎といったものについては直接的には法の規定に当てはまらないものでございますので、直接過疎債の対象にするということはできないわけでございます。

 ただ、委員御指摘のように、やはり郵便局は地域の中心的な資産でもありますし、地域の中心的な位置にあることも多いということでございますので、例えば郵便局に隣接あるいは併設して、公民館でございますとか地域集会施設でございますとか、あるいは産業おこしの施設でございますとか、過疎債の対象になるような地場産業の振興施設を併設するというようなことは過疎債を使って可能でございますので、そのことによって互いに効果を高め合うということはできるのではないかというふうに考えております。

久保政府参考人 過疎債、辺地債以外のことについて、私の方から答弁させていただきます。

 郵便局と地方公共団体の連携でございますけれども、御案内のように、住民の利便の増進などを目的として制定されました地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律がございますけれども、これによって、地方公共団体が住民票の写しや戸籍の謄本といった六種類の証明書の全部または一部につきまして、交付請求の受け付けや交付の事務を郵便局に行わせることができるということになってございます。現に、北海道の深川市や青森県黒石市といった豪雪地帯でありますとか、新潟県の佐渡市や鹿児島県の長島町といった離島におきましても、この法律に基づいて郵便局への事務を取り扱わせております。

 さらに、こうした法律に基づきますもののほかにも、公営バスの回数券や指定ごみ袋などの販売でありますとか、あるいは高齢者の方々の生活状況の確認などの事務を郵便局に委託している地方公共団体もございまして、御指摘にございましたように、マンパワーが不足しがちで孤立しやすいといいますか、特に豪雪地帯とか離島といった地域におきましては、今後とも郵便局の活用は大いに期待されるというふうに私ども考えております。

遠藤(宣)分科員 いずれにいたしましても、イギリスのことわざに、国会というのは男を女に、女を男にする以外すべてが可能だと。日本においてはそこまで言い切れるものではありませんけれども、ようやく省庁再編の効果が出てきた。大事なのは結果であります。結果として利便性が保てるか、向上するかということですから、今の現状は現状として承っておきますけれども、将来においてどういったことが可能なのか、今までの発想の枠を超えて、どんどんいい形で考えていっていただければなというふうにお願いを申し上げたいと思います。

 そして、最後でありますけれども、かつて新日鉄とか鉄鋼会社がそうであったように、一時不況になっても内部の資産がいっぱいあるというようなところがいっぱいあります。御存じのとおり、昔は鉄道輸送が主流でありましたから、鉄道郵便というものがありました。駅前の一等地に郵便局がある。東京駅の駅前にもありますけれども、私の地元、福岡一区の博多にも、博多駅前に立派な郵便局がある。今回、博多駅の駅前は地価の上昇率が全国で三位、四四・一%というんですね。今、駅前の再開発で移転が決まっておりますけれども、このあたりの話についてはちょっとまた別の機会に伺いたいなと思っております。

 郵政事業自体は、含み資産が極めて大きい。また、今働いている方々にとっては嫌な話かもしれませんけれども、郵政宿舎なんかも極めていいところにあるんですね、青山とか赤坂とか。こういったものもひっくるめて、郵政事業の持っている含み資産、これをどういうふうに今後扱っていくか、そして郵政事業の財政の好転にどういうふうに資していくべきなのかということをお伺いしたいと思います。

伊東参考人 お答えをいたします。

 御質問のありました日本郵政公社の保有する不動産等の資産につきましては、民営化後の日本郵政グループ各社がそれぞれの業務を行うために必要と認められるものを承継することと考えております。

 これらの不動産につきましては、御指摘のとおり、資産価値が高いものも含まれておりますことから、まずは持ち株会社である日本郵政株式会社におきましてグループ各社が承継する不動産の活用等について企画立案を行い、郵政事業の本来業務の機能維持に十分配慮しながら、企業価値を極大化することを目指してまいりたいと考えております。

 具体的には、喫緊に再開発の必要のあるものあるいは可能なものにつきましては、郵便局会社に承継させまして、都市部の郵便局等の再開発など不動産の有効活用を行うことにより、お客様の生活や地域社会をより豊かなものとするとともに、経営基盤の強化を図ってまいりたいと考えているところでございます。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、本当に今までの呪縛から解放されて、この郵政の民営化というものが、後世の人たちから見て、あのときに余力があるうちにやってよかった、そのときにいた郵政の関係の人間の経営姿勢が極めて柔軟だった、そしてまた、我々政治の側も、この結果がいい形になるように、その後のフォローもしっかりしたという評価を受けられるようにしたいと思います。

 国営維持、三事業一体、独立採算、本当に厳しい方程式だったと思います。こういった中で、今、政治もそうですけれども、一番やはり耳を傾けなきゃいけないのは、利用者である地域の方々、こういった方々の評価を適正に受けるような耳をまず持つということが極めて大事だと思います。そして、繰り返しになりますけれども、今や省庁の縦割りとかこういったものはもう意味をなさなくなってきた。我々政治家の役割でもありますけれども、利用者本位、そして国民本位という形で、この郵政の民営化の行方というものもじっくりと見守っていきたいなと思いますので、どうか関係者の方々におかれましてはぜひともお力添えをいただき、そしてまた、この歴史的な場面といいますか、重要な分水嶺に菅総務大臣もいらっしゃるので、ぜひとも十二年前にお話ししたことをこのまま今の調子で進めていただきますよう心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

古川主査 これにて遠藤宣彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川友一君。

小川(友)分科員 自由民主党の小川友一でございます。

 今まさに、小泉構造改革をしっかりと継承して、安倍政権下でさまざまな分野で改革が取り組まれているところであります。私は、地方自治の現場で、国の要請、通達に基づいて長年行財政改革に取り組んできた一人として、素朴な疑問を感じた部分に関連してきょうは何点か質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 まず、五年ごとに総務省の方から、行財政改革大綱を策定しなさいとか、人事院勧告でラスをもっと下げろとか、通達、要請が国の方から地方自治体に投げられるわけでありますけれども、現実的に、その改革大綱を策定して、その大綱に沿った改革がどの程度進んでいるとか、いないとかというチェックをする国の制度が十二分に果たされていないように私は感じておりまして、その辺、どのように取り組んでこられたのか、まずお答えをいただければと思います。

藤井政府参考人 お答えします。

 私どもも、地方行革を進める上でそのフォローアップを推進するということは、極めて重要な課題というふうに認識しているところでございます。

 最近、集中改革プランというものを、先生御指摘のように、各地方公共団体にお示ししてさらなる行政改革を進めるようお願いしているところですが、特に集中改革プランにおいては、まず、目標なり、あるいは実績を住民にわかるように公表するということ、それから私ども総務省の方にも御報告していただいて、総務省としても、全国の状況をできるだけ各地方公共団体の間でもわかりやすく、あるいは国民にもわかりやすく、そういうわかりやすいような形で公表するというような、今説明責任という言葉がはやっておりますけれども、私どもは、やはりそういう透明な形で地方行革を推進していくということは極めて重要な課題と認識して、そういう考え方で進めさせていただいているところでございます。

小川(友)分科員 私がただいま質問させていただいたのは、基本的に今までの国のありようというものは、地方公共団体に対して要請や通達は出すけれども、その結果がどうなっているかの査定が十二分に行われていないために、そこの首長がやる気でやっているのかやっていないのかの把握もできないというふうに思います。五年たって、また五年のスパンで新たな二次の大綱をつくりなさいという指導だったわけであります。

 今回の集中改革プランは、職員の定数の目標を定めてそのフォローアップをしていくということでありますけれども、地方自治体は、まさに都道府県や国に対して、なるべく財務諸表を見てくれのいい形に整えて、実態とは違う形で上位に示しているケースが多々あるわけですね。

 再度お伺いします。

 職員数等は、人件費の中に含まれている部分と委託料として物件費の中に含まれている人件費見合いとをどのようにこれから精査していくのかというのが大きな課題だと思うんですね。そういうふうな部分は、数値の中で国の方として把握をしていくということがこれからの改革を進める中では必ず必要になってくると思うんですね。その辺を国としてはどういうふうにとらえようとしているのか、お伺いをさせていただきたい。

藤井政府参考人 お尋ねの地方公共団体の定員の管理目標については、今集中改革プランで、一応五年間で五・九%純減するということになっているんですが、この定数はあくまで、先生の御指摘でいったら正規の職員である定員でございます。それ以外の、いろいろ非常勤の職員とかを雇っておられるところもあると思います。その数値については、ある程度把握をしておりますけれども、そんなに正確には把握をしてはいないというのが現状でございます。

 いずれにしましても、定員の分については今の集中改革プランにおいて一応五カ年の計画で純減するということになっているわけですから、それは毎年毎年フォローいたしまして、公表しまして、着実に推進していくということで推進していきたいと思っておりますし、それ以外の非常勤の職員の数字についても、これはある意味では全体が厳しい財政状況でございますので、そういう財政の合理化、効率化の中で推進していただくことになってくるのではないかというふうに考えているところでございます。

小川(友)分科員 御答弁をいただいたわけでありますけれども、再度関連してお伺いをさせていただきます。

 さきの夕張市の破綻に伴って、地域住民の皆様の地方公共団体、自治体の財政運営がどうなっているのかなというふうな思いとか関心度というのは以前よりも増していることはもう言うまでもないというふうに感じます。

 今お話がありましたとおり、国がある程度の数値、財務諸表を含めてさまざまな数値を把握することによって、その自治体がどういう状況にあるのかということは、総務省はまさに英知を結集した皆様でありますので、すぐわかるというふうに私は思うんですね。その辺をしっかりととらえながら、いわゆる情報を提供していったり、他の類似団体との比較をしていく、それをまた公表することによって自治体が努力をする、そういうふうな制度設計を図っていかないと、地方自治体は、まさに自分の失政でありますから、みずからの失政をみずから公表するということはなかなかできないというふうに考えますので、どうぞその辺も留意しながら取り組んでいただければありがたいなというふうに思います。

 菅総務大臣におかれましては、まさに今私がお話しさせていただいたとおり、私たちのこの日本の国で、今破綻寸前の、経常収支比率が一一〇とかを超えているような自治体が多々あるわけでありまして、破綻に至るまでの段階でまさに財政の健全化に向けた規律が働くような仕組み、そういうふうな仕組みを構築していかなければいけない時期だというふうに思いますが、総務大臣の御所見をいただければと思います。

菅国務大臣 先ほど来、小川委員の発言を私は聞いておりまして、私ども総務省に一番欠けている、それぞれの地方自治体が例えばどれぐらいの人員が適当なのか、そういうものが類似の団体で一目でわかるような、やはりそうしたものをつくるべきである、私もこう考えておりまして、私は大臣になりましてそのことの指示はさせていただきました。今、できるだけ透明に、オープンにすることによってこうした改革も進んでいくだろうというふうに私は思っております。

 今御指摘をいただきました問題でありますけれども、実は今度の国会におきまして、そこの地方団体の連結ベースの指標を明らかにするような法律を提出させていただいております。

 と申しますのは、夕張がいい例でありましたけれども、普通会計だけでありますと、陰に隠れている分、公社の部分だとか第三セクターの部分だとか、そういうものについて表に出ておりませんので、結果的にはあのように三百六十億円近い債務を負うようになったわけであります。

 その中間でそうしたものがわかるような仕組みが今必要であろうというふうに私も思っておりまして、地方公共団体が毎年度、実質的な赤字や公社、第三セクターを含めて将来の負担増、そうしたものも含めて全体像がわかるような仕組みを今度の国会に提出させていただいていますので、それを成立させていただいて、サッカーでいえばいきなりレッドカードにいくんじゃなくて、イエローカードの段階でさまざまな対策が練れるような仕組みを考えておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

小川(友)分科員 同じような感覚で国のかじ取りをしていただいているように今感じました。期待をさせていただきたいし、しっかりと取り組んでいただければというふうに考えます。

 関連して、総務大臣にお伺いしたいんです。

 今地方行革を進めている中で、地方交付税が改革をすると減らされてしまうんじゃないか、普通、一般的に考えれば、義務的経費を少しでも削減して投資的経費をふやして住民ニーズにこたえていこうというのが行革だと思うんですが、改革をすることによって地方交付税が減らされてしまうのではないかというふうな感覚を持っている市の職員や議会人が多々いるように聞くわけであります。

 総務省としては、そういうふうな声を聞いたことがありませんかということをちょっとお伺いしたいのと、あわせて、やはり今総務大臣がおっしゃったみたいに、改革をしっかりしている自治体には、要するに特例債か何かで多少は頑張っているんだからというふうな形を国が示すことも、改革を推進する一つの大きな牽引車になるのではないかなというふうに私は考えているんですけれども、その辺だけ総務大臣にお伺いし、前段を所管の方から御答弁いただければと思います。

菅国務大臣 私も、この交付税のあり方について事務方とも再三議論をしました。私も、基本的には小川委員と全く同じ考えをいたしております。せっかく行政改革をやって浮かしたら、その分だけ交付税が減ってしまう、また、同じような規模の団体で、そうした努力をしないところの方に余分に行ってしまう、これは非常に問題があるだろうというふうに私は思っております。

 そういう中で、平成十七年度から、行政改革努力をした地方自治体に対してインセンティブを与える、そうした算定、若干でありますけれども、そうしたことをやり始めております。

 さらに、十九年度においては、頑張る地方応援プログラムというのをつくらせていただきまして、一定水準の客観的指標を示しまして、全国の中でそれ以上になったものについてはやはり交付税で割り増しの算定をする、そうした仕組みを考えさせていただいております。

 いずれにしろ、交付税というのは、まさに全国どこに行っても安定的な生活ができるためのものであると同時に、やはりそうした行革効果というんですか、インセンティブというものを考えるべきであるというふうに私は思っています。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員御指摘のような地方団体の御意見、私どもも耳にいたしております。

 その際、私ども、交付税の算定、従来としますと、平均的な経費を算入いたしておりますので、平均的な財政需要ということを算定すれば、行革努力等をされて経費が安く済めば、その分、平均的な需要よりもある意味では浮きますので、伸びたものがほかの努力等に回せるというような御説明をしてまいりましたけれども、先ほど大臣からお話がございましたように、よりその地方団体の行革努力のインセンティブを算定する、あるいは頑張る地方応援プログラムの一環としての交付税の算定法を変える等の算定の改革をしているところでございます。

小川(友)分科員 地方自治体の中には、今私が話をさせていただいたみたいな感覚を持っている多くの方が多分いると思うんですね。

 交付税の算定の需要額と収入額のバランスは、あくまでもモデル的なものであって、そこももう少し精査をする必要があるのではないかなというふうに考えます。ただ面積とか人口とか収入とか、部分的なものだけで平均的なモデルをつくって、それを根拠にするという形は、今の時代、余り似合わないのではないかなという感じがするんですが、御検討をいただければというふうに提言をさせていただきたいと思います。

 あわせまして、私もそうなんですが、今団塊の世代に入りまして、地方自治体は、退職される方への手当を支給するのに奔走しているように感じます。私が地方自治体にいたときも、退職手当の基金は、一年度の退職者に払うより少ない額ぐらいしか基金の積み立てがなかったように思います。

 そしてまた、退職手当債に関しては、今まで国の方としては地方債を認めなかったように感じているんですが、新たにここで、今、団塊の世代が多くて、退職者もふえて、まさに経常経費の中から退職金を払うということが困難な自治体に対して地方債を与えるということは一つの方策だと思うんですが、どんな自治体にも地方債を認めるのか、どういうふうな仕組みで地方債を発行するような制度設計をこれからつくろうとなされているのか、その辺をお伺いさせていただきたいというふうに思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 退職手当債の発行につきましては、地方財政法の特例措置といたしまして、平成十八年度から十年間の特例として創設されたものでございます。

 この発想は、委員御指摘のとおり、まさに団塊の世代の大量退職に伴いまして退職手当が急増いたしますので、これを一般財源で払ってまいりますと、他の経費を圧迫していくということもございます。また、この機会に、定員削減等、給与の適正化などのいわば行革の早急な推進を図っていただくということも大きな課題でございますので、この退職手当債の許可に当たりましては、定員管理・給与適正化計画といったものを作成していただきまして、定員や給与の適正化といったものに的確に取り組んでいる団体について、通常の地方債は、今、原則自由、協議制でございますが、この退職手当債につきましては、今申し上げたような計画を見て、それがきちんと適正かということを確認した上で、許可を行うという手続をいたしているところでございます。

 今後、まさにそういう退職手当の議論が出てまいりますので、適切な定員管理、給与の適正化ということを推進してやってまいりたいというふうに考えております。

小川(友)分科員 再建団体になった段階では、退職金に関しては、地方債も一般金融機関からの借り入れも、そこで充当してはいけないというふうな方向で今まで来ていたように私は思うんですけれども、新たにそういうふうな制度設計ができたということは、地方自治体にとってはありがたい話なんですが、野方図に地方債を認めるということになると、今の頑張っている自治体と頑張っていない自治体で、もらえるんだというふうな意識があるんですね。

 地方交付税法三条には、総務大臣が、地方交付税を払うんです、払わなくちゃならないというようなことが明記されている。その条文をとって、国がやってくれるんだというような意識が地方自治体の中には多々あると思うんですね。

 その辺を踏まえて、新たな制度の中で交付をしていただければありがたいなというふうに思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 あわせまして、さきの税制改正で、個人の電子証明書、いわゆる住基カードを使って国税の申告をした場合、五千円の税額控除が受けられる制度が制定されて、新たに十九年度から実施されるように伺いました。

 私は、さきの財務金融委員会で、まさに予算の基本の入りをはかって出るを制するという観点から、ひとつ頭をひねって、入りは少なくても、いわゆる行政コストを削減して歳出を抑えていくというふうな手法もこれからは求められるのではないかなということを感じました。

 というのは、電子申告をすることによって、まさに納税者の利便性を高めるという大きな要因と、行政コスト、まさに人件費の削減や、そしてまた、納税の申告書等の保管とか、あらゆるコストが削減できていくというふうに私は思います。

 今回のその税制改正に伴っての減収額は、大体二十億というふうに私は聞きました。しかしながら、それに見合う財政コストというものはもう膨大な額でありまして、二十億の減収になっても行政コストが何倍もコストダウンできるのであれば、そういうふうな仕組みもこれからは行革の中に取り入れていくということが必要ではないかなというふうに思いますが、どうお考えでしょうか。

河野政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘いただきましたように、地方税の申告手続等の電子化は、一つには、納税者の利便性を向上していくという観点から大変有意義でございますし、また同時に、申告受け付け事務の効率化、行政改革という観点からも大変有効な方策であると考えております。こうした考え方で、総務省におきましては、地方団体と連携をしながら、その推進に努めてまいっているところでございます。

 こうした地方税の電子化につきましては、単独で進めるよりも、地方団体が共同して推進する方がより効率的でございまして、地方団体におきましては、地方税電子化協議会、これは昨年法人化もされておりますけれども、そういった協議会を設立いたしまして、共同のポータルサイトの開発、運営に当たっているところでございます。

 その運用の現状でございますけれども、地方税におきましては、平成十七年一月から、まず、先行の六団体で、これは法人二税についてでございますけれども、申告手続の運用が開始をされておりまして、順次、実施団体は拡大をしてまいっております。現在までに、全都道府県、十五政令市などにおきまして運用が開始されておりまして、対象税目につきましても、法人二税のほか、固定資産税の償却資産の申告が加わっておるところでございます。

 今後の課題といたしましては、こうした地方税の電子申告の利用促進に向けまして、一つには、参加市町村を拡大していくということが大変重要でございますし、それから、対象税目あるいは手続を拡大していくということが大変大事でございます。さらには、利用手続等の簡便化などの措置を講じていくことも重要でございまして、今後とも、地方団体と密接に連携をしながら、こうした取り組みをいたしまして、積極的に推進を図ってまいりたいと考えております。

小川(友)分科員 今回の制度は、住基ネットを使って住基カードを持った方が、個人がみずからの住基カードを使わなければ税額の控除が受けられない仕組みだというふうに思います。地方自治体の長の考えでいまだに住基ネットが導入されていない自治体もありますし、国民の本意ではなくて、地方自治体の首長の考え方で住基カードを持てない国民もいるわけですね。税の公平性からいっても、国としてしっかりとその辺を指導していっていただかないと、ある国民はそれができてある国民はできないという不公平が生じてくる可能性は十二分にあると思いますね。

 まさに、地域住民がそこの首長にどういうふうな手段をとるのかということはさておいて、やはり今、国は電子政府、自治体は電子自治体を目指して、そして、ペーパーレスの時代で効率的に事務事業を進めていこうという方針が出されているわけでありますから、地方自治体でまだ方向が出ていない自治体にはしっかりと指導をしていっていただきたいなというふうに思います。

 あわせまして、この電子申告の関連でちょっとお伺いをさせていただきたいんですけれども、私は、東京の中でも三多摩といって、二十三区外に住んでいる者であります。さきの十九年度の制度設計によって、国税の電子申告がe―Taxでできるようになった。さっきのお話でありますけれども、二十三区は国税も地方税も含めて申告ができるわけでありますけれども、私たちは東京に住んでいながら、東京都民で税も何もすべてイコールでありながら、三多摩、市町村に住んでいるということで、こういうふうな対応がとれていかないのが実態であります。

 今、総務省でこのことをいえば、まだ市町村に対してしっかりと整備ができていない、だからできないんだというふうなお答えだと思うんですけれども、先ほど答弁がありましたとおり、広域的に、包括的に、ある程度の自治体が幾つか一つになって、東京都は都税事務所が区に対しては全部対応しているわけでありますから、地方自治体に、一つ一つの自治体に予算をつけていくということになると膨大な財政負担が必要になってくるわけでありますので、総合的にどこか集中したようなステーションをつくって、市町村に住む市民にもそういうふうな申告ができるような制度を一刻も早く国の方の指導で進めていっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

河野政府参考人 先ほど申し上げましたように、こうした地方税の電子化につきましては、地方団体単独で進めるよりも、共同化して進めるということが大変有意義でありますし、また効率的でもございます。

 その中で、現在運用しておりますのは、先ほど申し上げましたとおり、法人二税と、それから固定資産税の償却資産、主として法人を念頭に置いた申告の手続がこういった電子システムで稼働しておるわけでございまして、個人住民税に関しましては、実は、第二次の取り組みといたしまして、今年度から、個人住民税に関連します給与の支払い報告書等の手続の電子化についてシステム開発をすることにいたしております。

 いずれにいたしましても、こうした個人住民税関連も含めまして、できるだけ早く一般の方が利用できるような体制に持っていくということは大変大事でございますので、今後とも、先ほど申し上げました、地方団体共同でつくっております地方税電子化協議会等との連携を密にいたしまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

小川(友)分科員 今私が話したのは、個人の部分が住基ネットの部分でありまして、後段は、法人、法人市民、固定資産税とか減価償却含めて、区部は対応ができているんですよ。だけれども、そうじゃないところはできていないのが実態でありますから、その辺を整備していっていただけませんかということで、個人のことではないわけでありまして、再度、答弁願います。

河野政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、法人につきましては、現在、全国の都道府県と、それから十五の政令市などでございます。

 東京都の特別区におきましては、法人関係の申告事務、これは都の方で都税として賦課徴収しておりますので、そうしたことで都道府県として申し上げた中に入っておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、一般の市町村におきましては、まだ法人の申告事務は電子化されていない状況にございますので、先ほど申し上げましたとおり、一般の市町村でもできるだけ早くこういったシステムが普及しますように、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

小川(友)分科員 わかりました。そういう答弁であれば私もよく理解をいたしました。

 ともかく、今、地方も国も後年度負担が八百兆と言われているような時代、まさに国を挙げてしっかりと行革に取り組んでいくことが求められるというふうに思います。

 きょうは、総務大臣には貴重な御意見をいただきました。一緒に頑張っていきたいなというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

古川主査 これにて小川友一君の質疑は終了いたしました。

 次に、西本勝子君。

西本分科員 自由民主党の西本勝子でございます。

 質問の時間をいただきましたので、地方分権が進む中での行政改革について、地方自治体の立場に立って質問させていただきます。声をとられてしまってお聞き苦しい点があるかと思いますが、お許しください。

 まず、税と財源にかかわる問題であります。

 私の地元の高知県は、その昔からまさに三割自治と言われ、自治体としての財政力の弱さを指摘されていましたが、現在においても、財政力指数が〇・三以下の自治体が約七割を占める状況で、財源の多くを国に依存している状況を脱却して、地方がみずから地方を治めるまでには相当のエネルギーが必要ではないかと思っています。

 そこで、地方が自立し、責任を持って住民福祉を達成するには、国、地方を通じる行政事務の新たな分配配置と、これに基づく財源の再配分が確実に行われる行財政制度の確立が不可欠であります。

 この視点から、平成十一年七月に公布された地方分権一括法では、国と地方の関係を、対等、協力を基本とした新たな関係が築かれており、地方にとっては自律的に行政運営ができる税財源の確保が期待されていた中で、さきの三位一体改革はどうであったのか、平成十六年度から十八年度の評価を地元首長さんに聞いてみました。

 すると、国が言うように、国庫補助金、税源移譲、交付税の出し入れをしたが、地方一般財源総額は以前と同一基準を確保しているという言い分に対し、国と地方の仕事量と国税と地方税の比率において同率でないこと、また、地方間の財政力格差を埋める交付税制度になっていない、結果、三カ年においては、三位一体改革は、地方分権の推進ではなく、国の財政再建の視点に立った改革であったため、三兆円の税源が移譲されたとはいえ、地方の自由度や裁量は決して高まっていないというのが、いろいろな不満がある中で共通した地方側の言い分であると受けとめているのですが、こういう地方の評価がある中で、地方分権一括法施行から実施してきた税財政改革についてどのようなお考えをお持ちでしょうか、まずお伺いいたします。

菅国務大臣 三位一体改革についてはいろいろな意見があること、私自身も承知をいたしております。ただ、地方税収は、国の財政状況にかかわらず地方の自主財源として安定的に確保されるものでありまして、実際には税源移譲というのが地方税として徴収されるのはことしの六月からでありますので、今後の経済成長だとか、あるいは地方の税源涵養努力によって、地方の増収、自由度が増していくというふうに私は考えております。

 いずれにしろ、今後とも地方分権改革法等を通じて、国と地方の役割を明確に分担して、国から地方へ権限とか財源とか税源、そうしたものを移譲し、地方が自由度を持ってみずから事業を行うことができるような社会を築き上げていきたい、こう考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 大臣からは一定の総括をいただきましたが、交付税は過去三年間、毎年約一兆円が削減されており、国に対して不信感さえ抱き始めたのであります。今年度予算で、頑張る地方応援プログラムなど、希望の持てる内容が織り込まれたことで一定の評価をさせていただきまして、次に移らせていただきます。

 次は、三位一体改革の中で現在進行形の交付税についてであります。

 以前に、離れですき焼きとか、仕送りでうな重という発言がありましたが、これはこれで地方は大いに戒められたのですが、しかし、交付税はあくまで地方の固有の財源であり、今後、地方が自由と責任を持って自立できる財源をつくり出すまでは、財源保障、財源調整として、真に必要とする自治体には道を残しておかなければならないと考えております。

 そこで、検討が進められてきた新型交付税です。基本フレームはでき上がり、各自治体は平成十八年度ベースでの試算も済ませ、減額が想定される自治体は一定の覚悟をしていると思われますが、今後、新型分の導入割合の拡大に当たっては、国、地方の双方が納得できるよう進めていただくことを強く要望いたします。

 この新型交付税を中心とした交付税改革については、三年間の方向は一定出されておりますが、今後の中長期的な展望はいかがなものか、お尋ねいたします。

菅国務大臣 新型交付税というのは、委員御承知のとおり、交付税の算定項目が多過ぎる、地方自治体の長の皆さんにとっては余りにもわかりにくい、そういう中で、簡素化と同時に、やはり一定水準の予見可能性とでもいいましょうか、来年は幾らになるのか、その先はどうなるのか、そういう予見可能性を高めるための一つの考え方ということで御理解をいただきたいと思います。

 いずれにしろ、この四月一日から地方分権改革推進委員会というのが立ち上がりました。そこで、三年以内にこの一括法を提出することになっておりますけれども、そういう中で、国と地方の役割というものを明確に分担して、権限、税源、財源を移譲できる、そうしたものにしていきたいと思いますし、その中でこの交付税についての考え方というものは明確になってくるだろうというふうに期待をいたしております。

西本分科員 ありがとうございました。

 私も大臣の御答弁のとおりだと思いますが、今後の地方分権改革推進委員会の動向を見守っていきたいと思っております。

 次に、今後の地方財政改革については、去る四月二日、第一回の新分権委員会が開かれましたので、今後はこの委員会で、あるべき姿の提言が出されるものと注目いたしておりますが、報道によりますと、委員長は記者会見で、国と地方の役割分担について、自己決定、自己責任、自己負担の三つの原則のもと、地方が主役ということでやっていくと述べております。

 地方は、自由、責任、自立の新三位一体に向かっていかなければならないことと同じスタンスであり、委員長の発言を大いに支持するものですが、このような立場から考えるとき、将来にわたって今の制度でいいのか、疑問に感じるのが特別交付税であります。

 御承知のとおり、予期しない災害など、自助努力では対応できないものに対しての交付制度であることから、普通交付税のように需要額が示されているわけではありません。交付を受ける市町村から見れば、少しでも有利になる資料をつくり、各方面に陳情活動をしているのですが、結果としては、算定方法など不透明な要素が多く、交付決定を受けても、何がどのように査定されたのかわからないのが実情ですし、県からの配分についても同様であります。

 中央に裁量権の高い特別交付税は、現在の改革の中で制度そのものの検討が必要ではないかと思うのですが、この点についての御所見をお願いいたします。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、特別交付税は普通交付税と違いまして、普通交付税は、標準的な財政需要を捕捉するということ等を目的といたしております。一方、特別交付税は、災害対策でございますとか、除排雪でございますとか、あるいは水俣病の対策でございますとか、そういう画一的な算定では捕捉できない特定の行政テーマ、あるいは特定の地域に財政需要が偏るといったような、しかし、それをきちんと財政的に手当てしない場合にはその施策の推進に支障が生ずるといったものを対象として算定をいたしているものでございます。

 したがいまして、特別交付税のそういう機能といったものについて、これをなくしていった場合には地方団体の財政に支障が生ずると思いますが、委員御指摘のように、時代の分権、自立という責任の中で、それぞれの果たしていく役割といったものは常に議論をしていく必要があると考えております。

 特別交付税そのものにつきましては、その算定方法について省令で、今申し上げたような項目を初め、個々の項目について明記をするように努めているところでございますが、今申し上げましたように、その機能をきちんと守るという形で、しかし、時代に合わせて算定方法等の客観化、明確化といったものを図りまして、地方団体の財政運営に支障が生じないように対応してまいりたいというふうに考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 特別交付税は、交付税全体の六%とはいえ、これに依存しなければならない自治体が多いのは御承知のとおりだと思います。このような実態でも、胸を張って要求できるものであってほしいと考えております。先ほどの答弁のように、今後とも御努力いただきたいと願っております。

 続きまして、地方の事務についてお伺いいたします。

 地方分権法の施行に伴い、地方自治法では、地方公共団体が処理する事務を、自治事務と法定受託事務の二種類に規定しているのですが、この事務の違いは国の関与の度合いであると私は承知しております。

 分権前の機関委任事務制度は、地方の裁量や国との上下、主従関係などの弊害はあったのですが、地方は、事務の財源には心配がないことから、安心して委任事務を受けていたのであります。しかし、責任の所在などの問題があることから、地方分権の理念に沿って、機関委任事務制度そのものを廃止したことは大きな決断であったのですが、改正後、事務を執行する中で、二つの事務は国の直接執行事務でない以上、事前協議、報告徴収、助言、勧告などの有無で違いはあっても、分権社会にあっては実質的にはどちらも地方の事務であるといった解釈があったりして、どうもわかりにくいのであります。

 今後、さらに地方分権が進む中で、確認しておきたいと思うのですが、この自治事務と法定受託事務の明確な違いがどこにあるのか、お尋ねいたしたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおりでございまして、前回の分権改革のときに機関委任事務が廃止されまして、その中で自治事務と法定受託事務というものが設けられたわけでございます。この区別につきましては、地方自治法第二条第八項と第九項で明記されております。いずれも、自治事務も法定受託事務も地方公共団体の事務ということでございます。

 自治事務とは何かというと、法定受託事務以外のもの、こういう位置づけになっているわけでございます。そこで、法定受託事務とは何かというと、これは、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律または政令で特に定めるものとなっておるのですが、こういう法定受託事務が、国が本来果たすべき役割に係るものという性格上、その適正な処理を確保するということに対しては、やはり国としても、自治事務に比べて高い責任と関心を有するということになるわけでございまして、そこで、御指摘のように、法定受託事務の方が、是正の指示や代執行ができるなど、国の地方公共団体に対する関与につきまして自治事務よりはより強い関与の仕方が許されている、こういう仕掛けになっているところでございます。

西本分科員 御丁寧な御説明、ありがとうございます。でも、これから分権が進む中で、地方が納得のいく形で整理されなければならないと考えておりますので、そういう努力はこれからもしていただきたいと存じます。

 次に、法定受託事務である生活保護法の事務取り扱いについてであります。

 生活保護の実施については、法定受託事務となったわけですが、生活保護法自体が改正されていないことから、国と地方の関係は変わらず、事務の性格は、憲法第二十五条の解釈からも、国の直接執行事務として扱うのが筋が通っていると考えるのですが、それでは時代に逆行しますし、社会保険庁のことからも、法定受託事務として受けるしかないのかと判断しております。

 御存じのとおり、生活保護費の負担割合について現状はどうなっているのかと申しますと、四分の三が国庫負担金、あとの四分の一と事務費、人件費などが交付税の算定となっております。しかし、交付税の場合は、額の算定に当たって基準財政収入額を差し引くことから、地方にとっては不満が残ります。

 このように、法定受託事務であっても実質地方の負担が生じていることについてはどのような御見解をお持ちなのか、お伺いいたしたいと思います。

岡本政府参考人 生活保護の負担の考え方についてのお尋ねでございます。

 生活保護につきましては、現在、委員御指摘のように、国庫負担四分の三、地方負担四分の一という形で、法定受託事務でございますが、国と地方が今申し上げたような割合で費用の負担をしているところでございます。

 この基本的考え方は、生活保護につきましても、地方もその区域内の住民の保護の責任を持っていること、また、地方団体が実施をいたしますので一定の抑制効果が見込まれるというようなことから、現行の制度になっているというふうに考えております。

 また、四分の三につきましては、他の国庫負担制度と比べて最高の水準の負担率という形で設定をされた、整理されたものというふうに理解をいたしております。

 四分の一につきましては、地方交付税の基準財政需要額に算入をいたしているわけでございます。このことは、ほかの、義務教育の給与費といえば三分の二でございますとか、いろいろな法令によって各地方団体が負担すべきと定められているものの経費として基準財政需要額に算入をいたしているわけでございます。

 地方交付税は、法令によって義務づけられている事務を中心といたしまして、そのような地方団体の行う一定水準の行政を確保するために、その財源を保障するということでございますので、税収が一定以下であるところにつきましては、標準的な基準財政需要額から標準的な税収入を引いた、その差し引きの交付税を交付することによりまして財源を保障するという仕組みでございますので、生活保護制度につきましても、一定水準の行政を確保するという制度の一環として算定をされているというふうに考えております。

西本分科員 どうもありがとうございました。

 法定受託事務での財政負担については御答弁のとおりで仕方ないかと思うのですが、あとは事務の所管の厚生労働省との問題だと思っておりますので、次に移ります。

 先ほど、小川先生からも質問がございましたが、地方自治体の退職手当の支給に関して、その財源問題についてであります。

 私の地元の市の実情です。ここ数年の財政のやりくりは大変で、徹底した行政改革は進めているものの、財政調整基金は底をつき、減債基金など目的基金の繰りかえ運用や取り崩しにより綱渡りの財政運営をしてきたところですが、とうとう年度末の退職手当の財源の工面がつかず、退職手当債の発行を認めてもらい、皮一枚で首がつながった状態でした。

 その後の財政状況は好転することなく、その翌年からは早期退職者に対する特例加算の捻出ができず、やむなく整理退職の勧奨ができない状態が続いています。このまま引き続き勧奨をしないとなると、当然、早期退職より定年まで勤めた方が有利になることで、年齢階層がいびつとなり、人事管理や人件費についての弊害が生じてくることは明らかで、できるだけ早く財源を確保して勧奨退職を実施したいとのことでした。

 退職手当の財源はすべて一般の税金で賄われることから、サービスや事業を縮小してこれに充てることは市民の理解が難しく、この市のように基金などに備えのない自治体は、今後見込まれる団塊の世代の大量退職に対して何らかの財源手当が要るのではないかと心配するところであります。退職手当などを含んだすべての給与を支払うのは当然自治体の責任でありますから、どこかに負担を求めるのは筋違いですが、地方の財政難の責任の幾らかは国にもあるとして考えていただきたいのです。

 例えば、財政再建団体にならないよう行政改革に努め、一生懸命頑張っている自治体に対しては、退職手当の財源が確保できる根本的な制度ができないか。一例として、退職手当引当金に引き当てるような制度をつくるとか、工夫ができないものでしょうか。また、退職手当債を発行した場合、団塊の世代が退職するここ数年に限って、交付税での特別措置を適用するなど、特段の配慮が必要と考えるのですが、これらに対する御所見をお伺いしたいと存じます。

岡本政府参考人 お答えさせていただきます。

 退職手当につきましては、従来、毎年に見込まれます退職手当の総額を地方財政計画を策定する際に想定をいたしまして、その総額を確保するという中で全体の財政収支の均衡を、平均的に措置をしてまいったというところでございます。

 しかし、御指摘のように、団塊の世代が大量退職を迎えまして、また厳しい財政状況が続いておりますので、これをそのまま経費を一般財源等で確保するということにいたしますと、従来のほかの経費を圧迫するということ、また一方で、先ほど来いろいろ御議論ございますように、行政改革の推進などの総人件費の削減といったことが求められておりますので、平成十八年度から十年間の特例措置といたしまして、行政改革、具体的に申し上げれば、定員の削減、給与の適正化といったものを計画的に推進をするという団体に限って、退職手当債の発行ということを講じるということにさせていただいたところでございます。

 したがいまして、退職手当債というものにつきましては、退職手当債を発行しない、例えば退職手当組合などをつくりまして財源を積み立ててこられたというような団体もございます。そういうことを考えますと、退職手当債の元利償還金に応じて交付税措置をするということにいたしますと、そのような退職手当組合をつくってやっていらした団体との間で不均衡が生ずるということもございますし、また、退職手当債の償還、今申し上げましたような退職手当債につきましては、将来、そういう行政改革等をして、人件費の削減によってその財源を賄っていくんだ、そういう努力をしているんだから退職手当といったものについての平準化を行っていこうという考え方から講じているものでございますので、具体的なこの退職手当債に着目した支援といったことはなかなか難しいというふうに考えております。

 しかし、その中で、全体として、行革に取り組む団体につきましては、行革団体に対する頑張る応援プログラム等、その努力に対応した、成果に応じた交付税の算定等を講じるということにいたしておりますので、これら行革等に取り組んでおられる団体につきましては、今後の財政運営等、個々の事情もお聞きしながら、よく検討してまいりたいというふうに考えております。

西本分科員 どうもありがとうございました。そのとおり努めていただきたいと存じております。

 次に、今着実に進められています行政改革について、その進捗状況などについて質問させていただきます。

 公務員制度改革につきましては、国家公務員法改正審議の中で、天下り規制を中心とした議論がなされ、改革全体としては、今後に、労働基本権、定年制延長、官民交流拡大など、トータルな形で改革が進んでいくものと考えております。

 このような改革の中にあって、いわゆる行革推進法の第二章第四節に規定されている総人件費改革において、公務員総数の純減につきましては、五年間で総数を五%以上純減する目標を設定し、必要な措置を講じるとして、順次取り組むようですが、行革推進法第四節に定められた改革事項のうち、事務事業や給与制度の見直しの具体的イメージなど、その中身が余り伝わってこないところがあるのですが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

石田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の行革推進法の総人件費改革に基づく国の行政機関の定員の純減につきましては、昨年六月三十日、「国の行政機関の定員の純減について」が閣議決定されたところでございます。この閣議決定におきましては、国の行政機関の定員について、業務の大胆かつ構造的な見直しなど、業務の抜本的な見直しを行うことなどによりまして、今後五年間で五・七%以上の純減をすることといたしております。

 具体的には、農林統計関係につきましては、実地調査の原則廃止、企画、取りまとめ業務の合理化など、食糧管理等関係につきましては、農産物検査業務の国の関与の縮減など、特に十五分野につきまして重点的に事務事業の見直しを行うことが定められているところでございます。

 政府といたしましては、現在、これらの事務事業の見直しを通じた定員純減について取り組んでおるところでございまして、具体的には、平成十八年度には千五百二人、平成十九年度には二千百二十九人の純減を達成したところでございます。今後とも、閣議決定に定める事務事業の見直しなどを確実に進めることによりまして、純減目標の着実な達成に努力してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

戸谷政府参考人 国家公務員の給与制度でございます。

 これにつきましても、行革推進法第二章第四節におきまして、職務と職責に応じた給与の体系、官民の賃金比較方法のあり方等についての人事院における検討の状況を踏まえ、必要な措置を平成十八年度から順次講ずる、こういうことにされております。

 具体的に申し上げますと、平成十八年四月から、人事院の勧告を受けまして法改正もしていただきまして、俸給表水準を平均で四・八%引き下げるなどの地域の民間賃金の的確な反映の措置をとっております。それから、給与のカーブを、角度を下げまして年功的な給与上昇の抑制をする、あるいは、特別昇給と普通昇給を統合して査定昇給という形に変えてございまして、これによる勤務実績の給与への反映拡大等々を柱とする給与構造改革を実施してきております。

 また、昨年の人事院勧告では、比較対象企業規模を百人以上から五十人以上に引き下げるなど、官民給与比較方法を見直しました結果、平成十八年度の俸給、期末手当等の改定を見送るという形にさせていただいたところでございます。

 私どもといたしましては、引き続き給与構造改革の着実な推進ということに努めてまいりたいというふうに考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 この問題については、今国会でしっかり議論されると思いますので、経過を見てまいりたいと思います。

 次に、公務員の職階制についてお伺いいたします。

 地方の行財政改革はかなり進んでいると考えています。それは、財政指標を常にチェックされる立場にあることは言うまでもありませんが、とにかく財政再建団体にだけはならないよう改革を進めてきており、もうそぎ落とすぜい肉は残っていない状態でして、今はやりのメタボリックシンドロームの心配はないのですが、いささか栄養失調ぎみであります。

 このように、大方の自治体は職員削減などで厳しく行革を進めているのですが、残している問題に給与格付があります。いわゆる給与表のわたりを廃止し、職務の級への格付はしているのですが、急激な変革は難しく、年功序列も加味しながら職名を加えるなど、この分野は改革半ばであると感じています。

 そこで、地方としても参考にしたいのが、国家公務員の職階制であります。しかし、どうも国家公務員の職階制に関する法律からは総合的な形が浮かんできません。これからの一連の公務員改革の中で、いわゆる職階制について何らかの手当てをするつもりがあるのか、お伺いいたします。

戸谷政府参考人 現行の国家公務員の制度でございますが、官職を職務の種類及び複雑と困難の度に応じて分類する職階制、こういう法律が昭和二十五年にできております。

 ただ、この職階制につきましては、官職すべてを細分化して分類するということになりますが、実際に我が国の職務の実情を見ますと、細分化され明確に規定された職務をそれ以下でもそれ以上でもなく果たすことが責務、こういう職階制がどうも我が国の仕事のやり方に適合しにくい、分類作業が膨大であるということで、職階制そのものは今日まで実施されていないということでございます。

 かわりまして、これは給与制度の中である部分は実現されているわけでございますが、今回の公務員制度改革におきまして、職階制を廃止して、職員の任用に当たっての基準として、課長、課長補佐といった標準的な官職及びそれらの官職に必要な標準職務遂行能力を定める、こういうことを検討しているというふうに承知しております。人事評価制度と並行して、こういう制度に移ることによりまして、能力本位の任用制度というものを国家公務員の中で実現すべく努力しているところでございます。

西本分科員 職階制は、公務員制度を確立するため長く研究され、我が国の方式として導入されたものと私は承知しております。ただ、日本の特異な公務員制度になじんできたかの検証は必要だとは思いますが、当然、新たな制度に基づいた人事の運用をしなければならないと考えておりますので、遺漏のないようにお願いいたしたいと思います。

 職員の超過勤務削減の対策とか公務員の分限免職についても質問を用意しておりましたが、御答弁を用意していただいてまことに恐縮でございますが、時間が参りましたので、終わらせていただきます。本当に、聞き苦しい質問で申しわけございませんでした。

古川主査 これにて西本勝子君の質疑は終了いたしました。

 次に、石川知裕君。

石川分科員 民主党・無所属クラブの石川知裕と申します。

 せんだって荒井衆議院議員が辞職をしたことに伴いまして、三月二十七日に繰り上がり当選をさせていただきました。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。簡単に自己紹介をしてから御質問させていただきたいと思います。

 きょうは、地方交付税の新たな算定基準についてと、頑張る地方応援プログラムについて御質問させていただきたいと思います。

 私は、北海道は十勝の足寄町というところの生まれでございます。日本一広い面積を持つ町でありまして、足寄町というのは千四百平方キロメートル、キロメートルで言ってもわかりませんので、簡単に申しますと、香川県が千八百平方キロメートルです。統一地方自治体選挙、きのう後半戦が終わりましたけれども、町長選挙と知事選挙が同じぐらいの面積という大変広い町でございます。私の選挙区自体も、岐阜県と同じ広さの選挙区でございます。そういったところから今回繰り上がり当選をさせていただいたわけでありますけれども、私自身、地域が元気にならなければ国全体が元気にならない、そういう信念で今まで政治活動を続けてまいりました。

 地方交付税の本来の目的というものが、第一条で、地方団体の自主性を損なわずに、その財源の均衡化を図り、交付基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することにより、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することとなっております。全国どこに行っても、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、医療や教育、そういったものがひとしく受けられるように、地方団体間における財政力の格差を解消するために、地方交付税の適正な配分を通じて地方団体相互間の過不足を調整している、これが戦後にわたって地方交付税の大きな役割であったと思います。しかしながら、最近、地方交付税の削減によって、地域の自治体というものは大変厳しい財政状況に置かれているわけでございます。

 そうした中、今回、全体の中で一割程度ということでありますけれども、人口と面積を基準とする新しい算定基準について、地方では大変懸念が上がっているわけであります。この人口と面積を基準とした今回の算定基準において、小規模自治体等に今後不利になり、住民に対する行政サービスが低下するのではないかという懸念がありますけれども、このことについて総務省としてはどのようなお考えか、お尋ねをしたいと思います。

菅国務大臣 まず、この新型交付税導入についてでありますけれども、ぜひ御理解をいただきたいのでありますけれども、現在の交付税制度というのは、余りにも複雑でわかりにくいということはよく言われています。そしてまた、予見可能性が非常にない。果たして来年どのぐらいの交付税が来るのかということがわからないから、なかなか財政計画を立てられないという市町村長さんがたくさんいらっしゃいます。そうした中で、国の基準づけがない、あるいは弱いものについて算定をし、導入しよう、そういうことで始めました。当初、約一割であります。

 そういう中で、今石川委員からお話がありましたけれども、小規模団体について不利じゃないかな、そういう懸念も実は確かにあろうかと思いますけれども、この導入に当たっては、地方公共団体の御意見というものを十分に聞いた中で、例えば過疎地、そうしたところは一人当たりの行政経費が非常にかかるわけでありますから、そうしたものも反映をさせる、あるいは離島だとか寒冷地においての特別な財政需要、そういうものにも対応しながら、小規模自治体を初め各地方自治体にとって支障がないように、変動額を最小限に抑える中で導入をさせていただいたところであります。

 いずれにしろ、こうした算定を通じて、それぞれの地方公共団体においては、行政サービスの提供に支障が生じないような形で取り組ませていただいているところであります。

石川分科員 和歌山県の試算で、この新しい算定基準を三分の一の割合にした場合、大変深刻になるのではないかという試算を出したという記事もございました。

 また、この人口と面積の新算定基準、一つは、割合について、今一割ということでありましたが、今後、この部分を拡大していくお考えが大変強いものかどうかということで、私のところ、先ほど自分の町の面積の話をちょっと笑い話も交えながらお話をさせていただきましたけれども、人口と面積、axプラスbyと資料の中には書いてありましたけれども、今後、その人口と面積、どちらを重視するような形でお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

菅国務大臣 交付税を簡素化する、そして予見可能性の高いものにする、このことについては御理解をいただけるというふうに私は思います。そういう中で、最終的には三分の一程度、こういう形にしていきたいというふうに思います。

 ただ、それにつきましては、ことしの四月一日からスタートしました地方分権改革推進委員会、その中で、国と地方の役割というのを明確にして、国から地方へ権限とか財源とか税源を移譲させる、そういう中で、この委員会の中でこのことについては制度設計をしていただきたいなというふうに思っています。

 いずれにしろ、保障機能とか調整機能の交付税制度というのはしっかり確保する中で、どこに住んでも一定水準の行政サービスができるように常に心がけながらこのことについては設計をしていきたい、こう思っております。

石川分科員 ありがとうございました。

 この交付税の問題なんですけれども、先ほど私、きょうから日本とオーストラリアとのEPAの交渉が始まるということで、地域から来ている方々の集会にも参加をさせていただきました。これは、農業の問題のみならず、日本の安全保障の問題だというお話をされている方もいらっしゃいました。

 食料自給率の向上を政府は掲げていらっしゃいます。そこで、農業問題に関して、農業そのものの制度上の問題を議論していくのも大切なんですけれども、それ以上に、農林水産業、一次産業に従事している方々というのは、その土地から離れることができません。

 そうすると、例えば、今、お医者さんの確保等というのは大変問題となっております。私の生まれ故郷でも奨学金制度をつくって、診療報酬の改定によって、看護師さんの確保というものが田舎の方は大変になっている、また、お医者さんの確保等も大変になっているんですけれども、一次産業に従事している方々のことを考えると、例えば食料の自給率だとか環境の保全だとか、これまた複雑になるのではないかという懸念はあるんですけれども、そういうことに対する貢献度というものをより算定基準に反映させていくというお考えがあるかどうか、お尋ねをしたいと思います。

菅国務大臣 いわゆる環境問題というのは、これから私どもが取り組む中で極めて大事な問題でありますし、食料の自給率、今、四〇%のところを四五%にしよう、そういう一つの目標を持って取り組んでいるということも事実であります。

 そういう中で、自然環境を保持し、次の世代に引き継いでいく、現在の交付税の算定についても、環境保全対策のための経費に加えて、例えば、森林保全に要する経費や環境保全に向けた先進的な営農活動の支援経費等も措置をいたしているところであります。

 今後とも、こうした自然環境の保全等について、交付税に算定すべき経費としてどのようなものがあるか、地方公共団体の意見も十分に参考にさせていただきながら検討させていただきたい、こう思います。

石川分科員 ありがとうございました。

 本当に、地球温暖化等環境の問題、また農業の問題、先ほど申し上げましたように自給率の問題、なかなか上がらないという現状の中で、それぞれ、一次産業に従事される方が安心して暮らせるようにするためには、自治体のサポートというものが大変必要でございます。関係省庁と連携をとっていただいて、田舎の人たちが安心して暮らせるように、どうかお願いを申し上げたいと思います。

 次の質問に進みたいと思います。

 頑張る地方応援プログラムについて御質問をさせていただきたいと思います。

 頑張る地方応援プログラムについて、「目的」というところで、「やる気のある地方が自由に独自の施策を展開することにより、「魅力ある地方」に生まれ変わるよう、地方独自のプロジェクトを自ら考え、前向きに取り組む地方自治体に対し、地方交付税等の支援措置を講じる。」こう書かれております。やる気のない自治体というのはないと思うのでありますけれども、このやる気の有無の基準の明確化というのは大変厳しいものがあると思うんです。

 ともすると、申し込まなければやる気がないというふうにとられたら困るということで、とにかく何でもかんでも申し込まなければというふうになって、かえってばらまきのようなことになるのではないかという懸念があると思うんですけれども、こういうことに対しては、いかがお考えでございますでしょうか。

菅国務大臣 実は私も地方の出身でありまして、高校まで秋田で育ったんですが、全国どこに行っても、地方にはそれぞれの特徴があるというふうに私は思います。そういう中で、そうした特徴を生かして魅力ある地方自治体になってほしい、そういう思いの中で、今回、この頑張る地方応援プログラムを設計させていただきました。

 そういう中で、私は、地方にはそれぞれ取り組むものというのは必ずあるというふうに思いますので、そういう取り組みをするところについては支援をさせていただこうという考え方であります。

石川分科員 この頑張る地方応援プログラムについて、市町村が取り組むプロジェクトの経費について、所要の経費五百億円、また、頑張りの成果を交付税に反映ということで二千二百億円程度、今年度は二千七百億円で次年度以降が三千億円ということで拝見をいたしております。

 その中で、地方が取り組むであろうプロジェクトの予想ということで、また、交付税に反映する算定の基準ということで幾つか、八つか九つ、基準があったと思うんです。

 そこでお尋ねをしたいのでありますが、例えば農業産出額について、これは金額でいきますと、高付加価値、高価格のものをつくった方が評価をされるのか、そうだとしたら、商品作物以外の基幹的食料の生産というものが高く評価されないということになるのではないかということも懸念されるわけであります。

 また、出生率、これもまた一つの算定基準になっているわけでありますけれども、菅大臣も秋田の御出身ということで、恐らく大臣の地元も昔、私も自分が生まれたときは自分の地域に産婦人科があったんですが、今は帯広市という大きな都市の近郊以外には実は産婦人科はありません、単科としてはもうやっていけないということで、みんな車で一時間、一時間半かけて産婦人科に通うような状態なんです。なかなか雇用もない中で、若い人たちも戻ってきませんし、また、たまに道路の拡張なんかに当たってしまうと、拡張の金額でそのまま家をたたんで札幌だとかそういうところにやはり行ってしまう、どんどん過疎化が進んでしまう、こういうことが現状なわけでございます。むしろ、それより先に、雇用の拡大、そういったものをする方が求められるのではないか。若年者就業率ということもありますけれども、はっきり言って田舎に仕事がないわけであります。

 この頑張りの成果についてお尋ねをしたいのでありますが、私、先ほどからお話をさせていただいたんですけれども、こういう成果基準では都市近郊市町村でなければ反映されないのではないか、本当に厳しい状況にある離島や中山間地域というのは、基本的な医療の問題だとか教育の問題だとかにどうしても財政的なものをかけざるを得なくなって、なかなか今回のプロジェクトに対して成果が上がらない、それで、やる気がない、そういうふうにとられてしまうのではないかという懸念があるんですが、それについてはいかがでございますでしょうか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今、頑張る地方応援プログラムにつきましては、行革実績、あるいは今いろいろ御指摘ございましたような農業産出額、出生率など、現段階では九つの成果指標を用いて、これらの成果を反映した普通交付税の割り増し算定を行いたいというふうに考えております。

 ただ、今回の成果指標の基本的な考え方といたしましては、それぞれの団体の頑張り度合いということで、直近の変化の指標、いわば変化率といったものを基本として考えていきたいというふうに考えております。したがいまして、例えば、三カ年の平均伸び率が、その団体の伸び率が全国平均と比べてどのようになっているかというようなことを考えるというようなこともございますし、また、それよりも前に頑張ったのであって、現在はもう非常に高い水準にあるので、なかなか頑張る度合いが伸びないんだというような御指摘もございますので、そのような場合は絶対値といったことが議論になってまいると思います。

 また、委員御指摘のように、それぞれの変化率といいましても、大都市近郊の地域でありますとか、あるいは条件不利地域といったものについても、それぞれの状況が異なるということも考えられますので、具体的な算定方法は、現在、各地方団体の御意見を伺いながら検討いたしておりますが、そういう条件不利地域の状況といったものも反映できるような算定にいたしたいというふうに考えているところでございます。

石川分科員 それぞれの地域によって特色が違ってきますので、この基準については、間違えると、省庁のさじかげんによって大変大きな違いが出てくるという懸念もありますので、ここについては大変注意をしていただきたいと思います。

 また、もう一つ関連してお考えをお聞きしたいと思うんですけれども、まずはこれは三カ年ということになっておりますが、成果ばかりを重視して、過程についてどうお考えなのかということをお聞きしたいんです。

 例えば、牛だとか馬だとか動物の品種改良だとか、魚介類の放流事業だとか、教育への取り組みだとか、短期的に結果の出ない取り組みについて評価が大変になってくるのではないかと思いますけれども、そのあたりについて懸念を持っておられるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

岡本政府参考人 全国千八百余の地方団体におきまして、それぞれその地域の魅力を高めるためのさまざまな取り組みをなされているというわけでございます。したがいまして、成果指標を設定いたしますときに、全団体、千八百すべての成果指標といったものを交付税の算定に用いるというわけには、さすがにこれは交付税の算定の複雑化になるということでございますので、なかなか難しいというふうに考えております。

 したがいまして、現在考えております九つの成果指標といったものにつきましては、それらのいわば最大公約数的な反映がされるのではないかということからこの九つの指標を選定しているわけでございますが、現在、各地に大臣を筆頭に赴きまして、いろいろな御意見を伺っているところでございます。そういう中で、いろいろ成果のあり方についても御意見を賜っておりますので、今委員の御指摘の点も含め、また、これから各地方団体の御意見を伺いながら、その算定をきちんと図ってまいりたいというふうに考えております。

石川分科員 どうもありがとうございました。

 次に、頑張る地方事例集の作成と表彰、また、頑張る地方応援懇談会について御質問をさせていただきたいと思います。

 頑張る地方事例集の作成、地方自治体のプロジェクトをもとに事例集を作成し、全国に普及、また、優良な事例を表彰、こうなっております。事例集の作成ということについては、お互い似通った人口規模ですとか財政状況、またそれぞれの似通った特色のある地域が全国どこでどういう取り組みをしているのか、お互いが大変参考になると思いますので、これについては、それぞれの自治体が勉強し合うということでいいのではないかと思いますけれども、ただ、この取り組みを表彰、いわゆる優劣をつけるということについては、若干の懸念が私にはございます。つまり、国の望む政策をやっている自治体は評価されるということにつながりかねないのではないかと思います。

 例えば、初年度で表彰された、そうしたら次にほかの自治体が、こういうことを取り組めばということで、これが普通交付税の算定にも反映されてくるのではないかと思うような政策誘導的なものができてくるのではないかという懸念があるわけでありますけれども、表彰については明確な基準を持って行うのかどうか、また、そういう懸念についてどういうお考えなのか、お聞きをさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 この表彰については、それぞれの地方自治体が頑張っておる中で、明らかにここはすばらしいと思ったものについて、やはり表彰した方が頑張りになるんじゃないかなというふうに私は思います。

 例えば、八十歳を超える人口の中で、その地域の特徴を生かして生産に取り組んで五百万円以上の収益を上げている、そのことによって健康保険料も、皆さん元気なお年寄りがたくさんいて、そういうものを少なくしているとか、いろいろな、だれから見ても明らかに頑張っているというものについては表彰した方が、それはそれぞれの地方自治体の頑張りの一つの尺度にもなるのではないかなというふうに私は思っております。

 いずれにしろ、地域がやはりそれぞれ競って、先ほど石川委員からもお話がありましたけれども、地方の活力なくして国の活力なし、これが私ども安倍内閣の基本的な考え方でありまして、これは全く一緒であるというふうに思います。

 そういう中で、活力ある地方を生み出すための一つの考え方として、全国にいろいろな地方があって、いろいろな環境があるわけですね、そういう中で明らかにこれはというものは表彰した方が、やりがいにつながるのではないかなというふうに私は思います。

石川分科員 私も、地域が元気にならなければ国全体が元気にならない、その言葉自体は同じであります。ただ、安倍内閣と同じかどうかは、自分自身の思いで、今大臣がおっしゃられたようにこれからも頑張ってまいりたいと思います。

 それで、大臣がおっしゃられるように、当然、立派な、だれもが認めるようなことを行って、また、ほかの地域に参考になるようなことを行っている方々、先ほど大臣がおっしゃられたお話というのはたしか私もホームページ上でちょっと拝見をしたと思うんですけれども、もちろんそれはいいことではありますけれども、ただ、その基準については本当に厳正に、明確にしていただかないと、先ほど申し上げたような恣意的なものになると困るのではないかという懸念がありますので、どうかお願いをしたいと思います。

 また、このシンポジウムについて、たくさんの地域で開催されていらっしゃると思います。二月十四日に長野市で行われたシンポジウムでも大変厳しい意見が出たと書いてありました。頑張る地方が格差社会是正のパフォーマンスでは困る、また、交付税とは別財源で行うべきだとか、都市と農村を異なる視点で見てほしい、こういう意見もございました。

 その中で、特に、私の地域と同じなのが、北海道というのは東京に出た大学生への仕送りが年間に六百億円ほどということになっているんですけれども、学校までは地方でお金をかけて、働くようになって都会に出てそこで税金を納める、都会に出た子供への仕送りで地方の資金が大量に都会へ集まっている、この観点で地方への財政支援制度のあり方を考えていただきたい、本当に厳しい地方に温かい目を向けていただきたい、再度お願いを申し上げる次第でございます。

 そこで次に、そのプロジェクトについて、先ほどの表彰についてもう一度お尋ねをしたいのでありますけれども、地方自治体が策定するプロジェクトの例についてということで、地域経営改革プロジェクトで簡素で効率的な行政の実現、こういうことを目指す、また、少子化対策プロジェクトでは離島での産婦人科医の確保等、過疎地域での医療の充実、地域がそういうことに取り組むのではないかという予想なわけでありますけれども、ただ、効率的な行政、そしてもう一方で過疎地域への医療の確保というのは若干矛盾するように思われるんですけれども、このことについてはいかがお考えでございますでしょうか。

久保政府参考人 例示をいたしましたプロジェクトのうち地域経営改革プロジェクトにつきましては、給与の適正化でございますとか民間委託あるいは滞納対策による税収の確保など、行政組織やその運営のあり方を見直すことによりまして、簡素で効率的な行政を実現し、これによって捻出した財源を活用して住民サービスの向上につなげるといったようなことを想定しております。

 したがいまして、地域経営改革プロジェクトの推進は、少子化対策プロジェクトを含めて他のプロジェクトと必ずしも矛盾しているというふうに私ども考えておりませんで、むしろ、御指摘のございましたような、例えば医師の確保など、その地域にとっての重要な政策課題に取り組む上で前提となる取り組みではないかと考えております。

 御指摘にもございました、地方に出向いて、今大臣を先頭に行っておりますけれども、先般、三月三日でございましたか、菅大臣が出席をして、頑張る地方応援懇談会イン岩手というのが開催をされましたが、その開催地でございました岩手県の宮古市では、給与の適正化や民間委託などの行財政改革によって財源を捻出し、保育料の大幅な軽減など、少子化対策に重点的に取り組んでおられました。

 このように、地域の強みや特色を生かした取り組みが全国に広がることを私どもは期待しております。

石川分科員 ありがとうございました。

 私も、岩手県に二年近く住んでおりましたので、宮古市、大変懐かしい名前でございました。

 今、お医者さんの問題のお話をさせていただいたんですけれども、特に大臣にお願いを申し上げたいのは、厚生労働省だけでなく、総務省と連携をして、このお医者さんの確保の対策というのはぜひ取り組んでいただきたい、省庁横断的に取り組んでいただきたいと思います。特に、一定期間過疎地で医療をした方に開業までに何らかの特典を与える等のことをしないと、今、「医療崩壊」という本も出ておりますけれども、本当に大変なことになっておりますので、ぜひ取り組んでいただきたい、こうお願いを申し上げるところでございます。

 そして、今医療のお話をさせていただきましたけれども、例えば定住促進プロジェクトと書いてあります。私は今岩手にいたというお話をしましたが、岩手にいたときに、三組の御家族から、実は岩手に移住をしたいんだけれどもと、幾つかの条件を出されました。定年後に農作業をしながら移住をしたい、こういう相談を受けましたけれども、その中で一番大前提条件として、三十分以内にきちんとした大きな病院に通える場所が欲しい、こういうことでありました。

 やはり、すべてのこういうプロジェクトを進める上で、基本的な医療だとか教育だとか、そういうところをきちんと取り組んでもらいたい、こうお願いを申し上げるところでございます。

 最後に御質問させていただきたいんですけれども、重複をするんですけれども、豊富な自然環境を保有することへの経済的評価というものについて、今後交付税の算定が高まっていくかどうかというのをもう一度お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず医療の問題ですけれども、私どもは、厚生労働省、文科省そして私ども、三省連携の中でこの医療対策のために今全力で取り組んでおります。たまたま私ども総務省に自治医大がありますけれども、十人ずつ定員をふやしていく、とりあえずそういう形にさせていただきます。少しでもそうした医療の安定になればという形で、国を挙げて今取り組んでおりますことは御理解をいただきたいと思います。

 先ほども申しましたけれども、環境問題というのはこれから極めて大事な問題になるというふうに私ども考えておりますので、そうした中で、交付税算定についても、地方団体の意見も十分伺いながら適切に対処していきたい、こう思っています。

石川分科員 ありがとうございました。

古川主査 これにて石川知裕君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。菅大臣には大変お疲れのところ恐縮でございますが、地元の問題を中心に三十分間質問をさせていただきたいと思います。

 まず、実は我が政令都市の神戸市の北区の中にある地域がございまして、その地域は、実はライフラインの上下水道とか交通機関が非常にプアな状況にある、極めて特殊な地域なんですが、そのことについて、まずちょっと御紹介をしながら、総務省だけではないんですが、関係の厚生労働省、環境省も来ていただいておりますので、質問をさせていただきたいと思います。そのやりとりを聞いて、最後に御感想なり総務省としての見解を聞きたいと思うんです。

 実は、私の神戸市北区、六甲山脈の裏側に、北区に所在するんですが、西宮市の飛び地に約五十ヘクタールの開発された地域がございまして、これは実は昭和四十四年に別荘地として許可を受けて開発された。それで、ちょっといろいろな経過がありまして、昭和五十一年から造成工事の完了検査を受けたんですけれども、その完了検査が一部不合格だった。完了検査が不合格、完了していないんだけれども、実は、五十三年の十月に、土地をもう既に買った購入者に対しましては、旧住宅地造成事業に関する法律、いわゆる住造法十三条に基づいて、神戸市が建築承認を開始したんです。それで、別荘地ということでかつて昭和四十四年に開発をどんどんしたんですが、今は四百五十世帯住んでいる、結構な住宅地になっているんですね。

 ところが、住宅地でありながら、神戸市から相当離れているものですから、進入路は西宮の市道になっている。小中学校も西宮市の学校に行っている。電話は宝塚市にお願いしていて、交通手段は実は公営の交通手段はない。

 重要なライフラインである水道に関しては、これはいろいろないきさつがあって、当時は、将来、神戸市もここは水道を開発する意図はないというようなこともかつて開発事業者に言ったんですが、この開発事業者も、結果としては極めていいかげんな、実態としてはもうほとんど、存在はしているけれども機能はしていないようなところでありまして、最初は、自分たちでちっちゃなダムをつくって水道を起こしたんですけれども、水質保全なんかの問題もあって、水道も実は西宮市から分水を受けているんです。西宮市から分け与えてもらっている、それもかなり高い値段で当然分け与えてもらっている。そのオペレーションで専用水道管理組合というのを住民が自分たちでボランティアで運営をしていて、水道の供給を受けているという状況なんですね。

 そこの人たちも、かなり前から御相談を受けているんですけれども、当然、戸建て住宅ですから、年を経過するとともに高齢化してくるんですね。高齢化して、いつまでも自分たちで専用水道管理組合を維持するということはできるのか。真夜中、あるところで漏水があったというと、管理組合の責任者が飛んでいって、漏水を直さなきゃいけないとか、実際、維持管理費や技術的な問題もあるし、経費の問題もある。水道代も、西宮市からもらっているので、西宮市や神戸市の水道代の大体一・五倍ぐらいの値段を払わざるを得ない。

 このまま自分たちがさらに高齢化していくと、今後どうなっていくのかと大変心配をしていて、私も地元の議員ということで何回も御相談をいただいて、神戸市ともいろいろ折衝はしているんですが、なかなか前に進まない部分もあり、神戸市もまじめに考えてはくれているんですが、この貴重な機会なので、きょうちょっと質問させていただくんです。

 まず、一つは、名前は生野高原住宅団地といって、四百五十世帯住んでいる。ただ、これはこういう過去のいきさつがあった、住宅の検査未了地だということをほとんど知らないんです。昨年の秋に、この水道問題で住民のアンケートをしたとき、検査未了地区、完了していないというのを知らない方が八六・二%だったというんですよ。全然知らなくて、環境がいいところなものだからどんどん引っ越してきて、住んでみると、水道代は高い、おまけに水道は自分たちで運営しているみたいな話。私の友人で「大阪で生まれた女」を歌ったBOROさんの御一家も、環境がいいので、スタジオを建てて住まわれているんですが、実際はもう大変なところだ、困ったということで御相談も受けているんです。

 この生野高原住宅団地というのは、現在、神戸市の給水区域外にあるんですが、神戸市の住民が四百五十世帯住んでいるわけですので、本来的にはやはり神戸市の水道事業として行うべきじゃないかというふうに思っております。ただ、地理的な問題がありますので、西宮市から分水を受けているという今の現状のまま考えていかなきゃいけないんじゃないかというのが多分妥当なんだと思うんです。

 ですから、西宮市から分水を受けながら水道事業ということを行えないか。西宮市の給水区域にするということができるようにしてあげないと、このままの形態では、もう早晩限界が来るのではないかというふうに思うんです。

 きょう、厚生労働省、来ていただいていると思いますが、この点についてお願いいたします。

山村政府参考人 お答えいたします。

 生野高原住宅団地の水道は、神戸市の行政区域内に存在していますが、隣接する西宮市から水道水の分水を受ける専用水道として維持管理がなされております。

 水道法上、分水は一時的なものであり、神戸市が分水を受けて継続する水道事業を行うことは適当ではないと考えております。将来的には、当該地域を神戸市の水道事業の区域に位置づけ、既存の給水区域から水道管を延伸する、西宮市の合意が得られれば、西宮市水道事業の給水区域として位置づけるなどの方法が選択肢として考え得るところでありますが、現状では、生野高原住宅団地については、地理的、地形的な条件などから、水道管を敷設して神戸市水道事業から給水を行うことは困難であると考えられており、西宮市から給水を行う方が経済的と考えられております。

 今後の改善方策につきましては、生野高原住宅団地の住民の方々の意向を受けて両市の間で検討を行っていると聞いておりますので、その結論を待って、厚生労働省としても水道法の位置づけ等について適切な指導をしてまいりたいと考えております。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 現実的には今のお答えどおりだというふうに思っておるんです。

 上水道からちょっと外れまして、ここの排水施設について言及したいんです。

 ここは、住民に対し、神戸市の助成制度を活用して合併処理浄化槽を設置するように指導した。下水道もやはり問題がありまして、この周辺の環境問題等々で、合併処理をする、助成金も出す、こういった制度がありますが、現在、この四百五十戸のうち約六十五戸しか設置されていないという状況にある。多分、このままですと、周辺環境上も大変大きな問題になってくるんじゃないか。今でもそういった声もあります。

 より積極的に合併処理浄化槽の設置を促進する対策を何か講ずべきだというふうに考えておりますが、このなかなか進まない理由も踏まえて、環境省からその御見解を伺いたいと思います。

由田政府参考人 御指摘のとおり、生野高原住宅団地におきましては、助成制度を活用いたしまして、合併処理浄化槽の設置の戸数は六十五戸ということであります。

 御指摘のとおり、生活排水対策は環境保全上重要でありますとともに、合併処理浄化槽はその柱の一つであると考えられております。これまでシンポジウムあるいはセミナー等の形で、各地の地域の住民あるいは市町村の関係者に対しましてその普及啓発を図ってきたところでありまして、兵庫県におきましても、平成十七年度にこのような啓発の行事も行っておるところであります。今年度におきましては、今後、環境保全団体等から浄化槽フォーラムを設立しようという話もございます。このようなことを通じまして、さらに浄化槽の普及啓発を図ってまいりたいと思います。

 また、浄化槽設置整備事業につきましては、この助成制度のほかに、計画策定につきましても、それに要する費用も今年度から助成対象にしたところでありまして、引き続きまして、県を通じまして浄化槽の一層の整備について指導してまいりたいと考えております。

赤羽分科員 なかなか進まないのは、やはり費用の問題というようなことが多分考えられるんだろうとは思いますが、今、助成制度、計画策定に対する補助制度等々もあるようですし、ぜひ地元の兵庫県、神戸市とも連携をとって指導を進めていただきたいと重ねてお願いしたいと思います。

 排水の方には今言ったような助成制度があるんですが、実は、生野高原住宅団地の水道については、多分、余りそういったものがないのではないか。何を言いたいかといいますと、専用水道管理組合の、今、実際物すごい費用負担がかかっているわけですね。だんだん水道管自体も老朽化してきたりとかして、ますます自分たちでやらなければいけなくなる。

 ここについて神戸市といろいろ話すと、専用水道管理組合というのは、例えばマンションとか、いろいろなところに専用水道管理組合がある。この生野高原の専用水道管理組合だけ補助制度をつくるということは、なかなか大義名分が立たないというような、実は神戸市からはそういう話があるんです。しかし、私は、その考え方は逆なんじゃないかと思うんですね。

 専用水道管理組合というのは、多分、法律自体はどこかあったと思うんですが、そもそもは水道法上、寄宿舎とか社宅、療養所等における自家用の水道、そういった集合住宅みたいなところを想定してできるものであって、そういったものをあえてここでやっているということは、生野高原住宅のこの地域というのは、本来、専用水道管理組合をつくらなくていいものを、こういった極めて特殊な事情でやっているのではないか、組合を運営せざるを得ない状況があるんじゃないか。

 ですから、私は、合併処理浄化槽の設置について、計画策定の助成もあるし、設置についても助成があるというようなこともあるようですし、先ほど課長に言っていただいたように、中期的にはしっかりとしたスケジュールでやっていくというのは抜本的な対策だと思うんですが、当面、この専用水道管理組合に対して何らかの助成措置というのを講じてもおかしくないのではないかと私は思うんですが、この点について、神戸市とか兵庫県の話ではあるかもしれませんが、厚生労働省の御見解があれば。

山村政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、水道施設の新設または増設に必要な費用の一部について、水道事業を実施する地方公共団体に対して、公共事業関係予算により補助金を交付しております。したがいまして、地方公共団体ではない、住民の方々によって構成された専用水道管理組合が実施する施設整備事業に対して助成をすることは困難であると考えております。

 いずれにいたしましても、今後の生野高原団地の水道に関する改善方策につきましては、生野高原住宅団地の住民の方々の意向を受けて両市の間で検討を行っていると聞いており、両市からの相談があれば適切な助言をしてまいりたいと考えております。

赤羽分科員 おっしゃるとおり、国が住民の管理組合に直接というのは、それはなかなかあり得ない話だと思いますから、今御答弁いただいたように、ぜひ神戸市を通して御相談に乗っていただきたい、重ねて要望したいと思うんです。

 この件について最後に総務省、総務大臣に御答弁いただければありがたいんですが、要するに、一つは、四百五十世帯というと多分二、三千名の人が住んでいる、それも政令都市の中でこういう状況がある。やはり、いきさつはいろいろあったにせよ、私は、この問題を解決する責任の一端が神戸市にあるのではないかと考えているんですね。ただ、これは神戸市だけの問題じゃなくて、西宮市から分水をもらう水道事業を進めるとなると、やはり西宮市の利害関係というのも出てくるし、これは結構簡単じゃないんですね。私たちも、西宮市にも働きかけたりしなければいけない。

 そういう西宮市と神戸市の間、これは多分、全国でもいろいろ似たような事例というのはあると思うんですが、この辺というのは、地方公共団体の話し合いがうまくいくように、多分この水道の問題は厚生労働省が一義的とはいえ、地方自治体をつかさどるという観点で、ぜひ、こういう特殊な地域が政令都市の神戸の中にもあるんだということを御認識いただいて、今後何か困ったことがあれば、神戸市、西宮市に助言、御指導をいただけるようにお願いをしたいのですが、何かあれば一言よろしくお願いします。

菅国務大臣 実は、私もこの問題を聞いたときに、正直言ってびっくりしました。なぜ神戸市にそうした場所があるのかということは、実は考えなかったんですけれども。

 ただ、いろいろな、神戸市には神戸市側の、当時、開発についての同意の条件というのがあったようでありますけれども、しかし、水道というのは、生活する上でまさに極めて最重要なライフラインであるというふうに思っておりますので、私どもとしても、この神戸市、西宮市ですか、そういう中でやはり解決をされなきゃならない問題だというふうに私自身も思っております。

 神戸市においても、地域の方々の意向を十分聞きながら対処していきたいという意向であるということも伺っておりますので、私ども、総務省として何かお役に立つことがあれば、この両市の中については協力させていただきたい、こう思います。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 ぜひ、総務省、また厚生労働省、環境省、恐らく国土交通省なんかも絡んでくる話だと思いますので、連携の上、よろしくサポートのほどお願いしたいと思います。

 厚労省、もう結構でございます。環境省もありがとうございます。

 次に、全然またがらっと違って、電報事業における件について質問をしたいんですが、実は、電報類似サービスを提供している特定信書便事業者からの声が最近幾つかあります。要するに、電報というと、昔は一一五という電話があって、今もあるんですけれども、それが今NTT、あとKDDIですか、NTTがほぼ独占状況にある。今、現実もそういった独占状況があって、電報類似サービスというものを提供している民間事業者からは、やはりこれはちゃんとフェアな、公平公正な競争の土俵をつくってほしいという声が実は届けられております。

 いろいろ調べますと、これは恐らく、父危篤帰れとか、いわゆる公共的な、大昔、電話がなかったような時代に、実際、その時代の名残がまだ残っているのではないか、私はこう感じるんです。我々政治家というのは、政治家だけじゃなくて世の中の人、今、この電報というのは、別に父危篤で電報を打つ人は多分ほとんどいなくて、慶弔、お葬式とか結婚式の電報を、古川さんも含めて我々皆打っていると思うんですけれども、一一五を使っている人は今ほとんどいないと思うんです。そんな採算に合わないことはできないわけですよ。いろいろ考えると、要するに小泉政権から続いている今のあれで、官から民へ、官から民へという中で、相当お目こぼしになっているんじゃないかなと率直に思っているんです。

 まず一つ目に確認したいんですが、NTTに一一五の独占使用権がいまだに与えられている理由というのは何か、御答弁をいただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 現在、国内電報の事業は、電気通信事業法の附則第五条というところに定めがございまして、NTT東西のみが行うことができることになっておりまして、このために一一五番というのは、国内電報受け付け用番号ということで国が指定をしておりまして、NTT東西の提供する国内電報のみが利用可能というふうになっております。

 一方、御指摘の特定信書便事業者が提供するいわゆる電報類似サービスというのは、この電気通信事業法上の電報という位置づけにはなっていないので、一一五番が利用できないわけでございます。

 その理由といいますのは、一一五のような、一で始まる三けたの番号、これは百個しかないわけでございますけれども、現在もう半分近く使われておりますが、非常に個数が限られておりまして、公共性とか緊急性が認められる用途等に限定し、電気通信事業者に使用を認めているというのが根本にあります。

 国内電報について見ますと、国民生活における必要最低限の通信手段だという考え方でNTT東西に独占させる。NTTの、昭和六十年の競争導入、民営化に際しましてもこの部分だけは独占だということで、離島や山間地域を含めた条件不利地域も含めて全国提供を確保しているということでございまして、そうした公共性が認められるということ等を踏まえまして、一一五番の利用を認めているということでございます。

赤羽分科員 それは、そもそも論としてはわかるんだけれども、現状はどうなのかということを質問しているんです。

 いわゆる公共性、緊急性というのは、まさに、父危篤すぐ帰れみたいな時代の話はわかるんです。しかし、今、電報の発信件数の、総務省からデータをもらいましたけれども、もはや九割以上、このグラフのはっきりした数字はわからないんだけれども、これは慶弔じゃないですか。NTTの慶弔は一一五を使えるんでしょう。民間事業者の慶弔は使えないんですよ。今の御答弁、私はやはり破綻していると思いますよ。

 全国あまねくユニバーサルサービスができないというようなこと、もう一つの多分理由があると思うけれども、しかし、それは郵政民営化で出た議論であって、私はそんなことはやはりないと思いますよ。今の六社ですか、電報類似サービスをやっている特定信書便事業者、この人たちはみんな、全国全部提供すると言っていますよ。

 それで、特定信書便事業者というのは、料金的にも千一円以上というたがをはめられているんですよ。安くしたくてもできないんです。NTTのこの一一五は、そういう線は引かれていないんです。だから、今の御答弁はもたないと思いますよ、私の質問に対して。

 かつてはそうだったんでしょう。今はしかし、NTTの一一五だって九十何%慶弔なんだから、慶弔をやっているということにおいては、民間事業者がやっているのは電報類似サービスと呼んでいるわけですよ、NTTがやっているのは電報サービスと呼んでいるわけですよ、しかし実態は差がないんですよ。

 私たちが利用するときだって、慶弔のときには、NTTと何とかというのはやはり同じ土俵で考えるわけです、どこを使おうかと。だから、私は、一一五の独占をNTTがしているという理由は、もはや時代状況としてないんじゃないか。

 冒頭言われた、一番台が公共性の高いものと言うのならば、今や一一六番は使われていないじゃないですか。そういうことと同じようにしないと、やはり官から民にという意味で、フェアな競争条件にしてサービスをよりよくしてもらった方が、利用者たる私たちはそっちの方が大歓迎であって、何でか知らないんだけれども、あれだけ官から民へという大きな流れの中で、ここだけは少し欠落したんじゃないか。

 当時の話は、電報事業は非常に非採算部門で、全国に運ばせているので少し保護をしているというような経緯があったというふうに聞くんだけれども、それも実はもう破綻していて、NTTの努力もあってなんだと思うんだけれども、電報の収支というのも平成十三年ぐらいからずっとプラスになっているんですよね。これは偉いんだけれども、しかし、やはりこの辺はもうフェアに民間開放した方がいいんじゃないか。

 だから、今ここで大臣に答弁しろと言ったって無理なんですが、私は、このことについてはいつも、規制改革会議のあじさいともみじとかという二回あるものに毎回提出しているんですけれども、非常にすげなくだめだと言われているんだけれども、どうも納得がいかなくて、これも菅さんの大臣のときしかできないブレークスルーだと思っているので、官から民へというのをやはり安倍政権も継承しているわけで、ぜひこの御検討をいただきたいと思うんですが、いかがですか。

菅国務大臣 今局長から答弁したように、非常にそうした公共性とか利用者の利便性、全国くまなく、そういう形で今日まで来ているということも、ぜひこれは御理解をいただきたいというふうに思います。

 ただ、今、赤羽委員からいろいろな御指摘もありました。こうしたことも踏まえまして、広く関係者の意見を聞いた上で、私どもは適切にこの番号政策というものを推進していきたい、こう考えます。

赤羽分科員 そんな難しい話じゃないと思うので、ぜひよろしくお願いしたいと思いますし、これをやってくれると、事業者が喜ぶのではなくて、大多数の利用者も非常に喜ぶ話だ、国会の場では少なくとも全員賛成するのではないかと思うような事案なので、よろしくお願いしたい。

 最後に、ちょっと時間がないので余り詰めた話はできないんですが、報道の自由、随分いろいろな委員会でも質問が出ているようであります。私は、もちろん、報道とか表現の自由というのは大変保障されなければいけないことだと思います。

 先日のように、「あるある大事典」のようなものが、私は、何が事実で何が事実じゃないかと判断するのに国家権力が関与するということはいいことじゃないとは思いますが、あのように放送事業者みずからが捏造だったというようなことまでは、それは侵してはいけない一線を越えたから今回行政指導がされたというのは正しかったというふうに私は思っております。

 やはりマスコミの影響力というのは大変なものがありますし、これまでを振り返っても、例えばO157のときのカイワレ問題ですとかBSEの問題ですとか、相当、風評被害の原因になった要因の一つである。この辺の問題というのは発言も非常に慎重にならなきゃいけないんですが、私はそう考えておりますし、放送事業者の方に与えられている言論、表現、報道の自由というのは、当然視聴者にも同じだけのことが担保されることが必要なんじゃないか。

 実は、本当に深刻な問題ではないんだけれども、去年の今ぐらいなんですが、フジテレビの「こたえてちょーだい!」か何か番組があったんです。

 最近、私は問題だと思うのは、報道番組とバラエティー番組の垣根がなくなってきて、非常にそこが世論を、私たちとしては何かちょっとおかしいんじゃないかという世論形成がされてしまっているんじゃないかということについて、どうこうしてくれというのじゃないんだけれども、そういうことが現象としてある。

 この前、その番組を見ていましたら、いかに住宅ローン減税がひどい減税かというのをドラマ仕立てでやっているんです。二月ぐらいですね。どういうことかというと、結論を言うと、ようやく夫婦がためた貯金で家を買って住宅ローン減税の申請に行ったら、築年が三十年か何かだったので、築年の条件が外れていて使えない、それを初めて知って大騒ぎになった、こういうドラマだったんですよ。

 私は見ていて非常に不愉快で、築年の問題は、いろいろ議論があって、その年の四月からもう税制改正で変わるということが決まっていたわけですよ。決まっていたということが多分わかっていた、わかっていなければ相当放送事業者としてどうかと思うんだけれども、そういうことをドラマ仕立てにしていたということと、そもそも、私の個人的な意見で言うと、その制度を知らないで申し込もうとしていた御当人たちの過失については何も言わないような話はおかしいんじゃないかと思って、生番組だったんですけれども、私はディレクターに電話をしたんですよ。余りにもおかしいんじゃないかということを言ったんですが、生番組だから訂正できませんというような話があった。何か最後、テロップが流れたときに、こういう電話がありましたというようなことを言ったみたいな、はっきり聞こえないんですけれども、そういうやりとりがあった。

 私は、国土交通部会長でしたから、ちゃんとしたことを伝えてもらいたいと思ったので、フジテレビに、きのう放送の番組のビデオを見せてくれ、提供してくれと言ったら、それは絶対提供しないんですよ、テレビ局は。

 私たち公明党は、結構、報道による人権侵害というようなテーマでずっと、十年前ぐらいから委員会で、当時、郵政省時代の委員会でも取り上げてきたんですけれども、要するに、訂正放送といっても何が事実かどうかと争うことができないんですよね、証拠の品がないから。自分でビデオを撮っていなきゃいけない。しかし、自分でビデオを撮るというのは、テレビがいつ何を流されるかわからなくて、流された後に知るわけですよね。だから、ほとんどビデオなんか撮れない。映像資料館というのが当然あって、だれもが閲覧できるようなことから始めないと、訂正放送を求めることというのは現実問題としてほとんど難しい。

 訂正放送というのは、放送事業者が事実かどうかを認定する権利も多分与えられていると思うので、この辺というのは、私は言論の自由とか報道の自由を制限するという発想は全くありませんが、受け手となって、それがたまたま自分のことにかかわるというケースもあり得るわけで、大臣なんかだったらなおさらそういうこともあるわけです。

 そのことについて、映像資料館というか、例えば、昔はビデオを置くスペースがないとかいろいろなことがあったんですが、今はもうCD化できるわけですから、そういったものを国立国会図書館に併設するとか、これもぜひ御検討していただけたらな、こういうふうに私は思っております。

 時間がないのですけれども、その点について、御感想で結構ですから。

菅国務大臣 私は、例の納豆事件があったときに、やはりテレビの影響がこんなに大きいとは、正直言って思っていなかったんです。それまで、実は家計に占める納豆代というのは十一円だったんですね。放送された翌日は十九円にはね上がったんですね。しかし、その内容が捏造されたものが報道されたものですから、電波を所管する大臣として、昨年も同じようなことがあって、非常に私自身も深刻に考えました。

 そして、表現の自由だとかあるいは編集の自由だ、これは当然のことであるというふうに私は思っています。そういう中で、放送事業者みずからが捏造したということを認めたもの、そして社会的に影響があるということも放送事業者が認めたものについては、やはり国民の皆さんに再発防止計画というのを約束した方が、私はこれが一番再発防止になるんじゃないかなというふうに実は思いました。

 私は、予算委員会で、法的整備を検討するということを述べ、そして実際に、こういう考え方でやりたいということを民放連に申し上げました。そういう中で、民放連がみずから自主規制に今走り出している。それが機能している間は私は作動させない。しかし、やはりそういう法律をつくっておくことが国民の皆さんに正確な情報を提供するという私どもの役割じゃないかなというふうに今私は思っておりまして、今回提出をさせていただいたということであります。

 そして、だれもが検証できるようにという映像資料館、これは私は一つの提言だというふうに思います。ただ、主体の問題もありますので、検討課題にさせていただきたい、こう思います。

赤羽分科員 ありがとうございました。

古川主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 平成十七年度文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算五十三億三千四百十九万円余に対しまして、収納済み歳入額は七十億二千八百二十九万円余であり、差し引き十六億九千四百十万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆五百十七億二千二十三万円余、前年度からの繰越額九百三十七億六百四十六万円余を合わせた歳出予算現額六兆一千四百五十四億二千六百七十万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆九千八百三十五億八百八十八万円余であり、その差額は千六百十九億一千七百八十二万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は千四百七十六億八千五百六十万円余で、不用額は百四十二億三千二百二十一万円余となっております。

 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、文部科学省所掌分の歳出決算について御説明申し上げます。

 まず、電源立地勘定につきましては、歳出予算額三百七十億九千百八十万円余、前年度からの繰越額四千六百九十九万円余を合わせました歳出予算現額三百七十一億三千八百八十万円余に対しまして、支出済み歳出額は三百十四億九千五百八十五万円余であり、その差額は五十六億四千二百九十四万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越しました額は三億五千八百四十四万円余で、不用額は五十二億八千四百四十九万円余となっております。

 次に、電源利用勘定につきましては、歳出予算額千二百五十二億二百六十一万円余、前年度からの繰越額九億六千四万円余を合わせた歳出予算現額千二百六十一億六千二百六十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千百一億二百八十一万円余であり、その差額は百六十億五千九百八十三万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越しました額は百二億六千五百五万円余で、不用額は五十七億九千四百七十八万円余となっております。

 以上、十七年度の文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算額につきまして、その概要を申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

古川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院金刺審議官。

金刺会計検査院当局者 平成十七年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一八号は、公立学校等施設整備費補助金の経理が不当と認められるもので、耐震補強工事に使用する無収縮モルタルの所要量を過大に計上したため、補助対象事業費が過大に算定され、国庫補助金が過大となっていたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。(発言する者あり)

 これは、国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報に関するものであります。国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報として開示されている業務費用、業務収益及び帰属資産の計上内容が国立大学法人ごとに区々となっているなどの事態が見受けられ、国民その他の利害関係者に対する説明責任を果たすため会計基準等が求めている財務情報の比較可能性が十分に確保されていないと認められましたので、文部科学省に対して、実務指針等の整備を行うことも含め、統一的な取り扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、各国立大学法人がセグメント情報に実態を反映した額を計上することなどにより、各法人における経年比較を可能とするほか、各法人間における財政状態及び運営状況の比較可能性を確保するとともに、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進するよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、私立高等学校等経常費助成費補助金の算定に関するものであります。私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の算定に当たり、都府県において特別な助成をしていない私立学校の生徒等数や、加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っていない私立学校の生徒等数を加算単価の対象となる生徒等数に含めて報告していたり、文部科学省において都府県から報告を受けた加算単価の対象となる生徒等数を、配分のための基礎資料に誤って転記するなどしたことから生徒等数が過大になっていたりしていたため、加算単価が過大に算定されていて、補助金の算定が適切に行われていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部科学省では、十八年九月に都道府県に対し通知を発するなどして、加算単価の対象となる各事由の内容を明確に示したり、加算単価の対象となる生徒等数の確認が適切に行えるよう事業計画書の様式を見直したりするなどの処置を講じたものであります。

 その二は、科学研究費補助金の経理に関するものであります。この補助金の管理を行っている研究機関において、研究用物品の購入に当たり、業者が保管している納品書等の日付と研究機関が管理している納品書等の日付とが三十日を超えて乖離していたり、中には、補助事業の期間外に納品されていて補助の対象とならない研究用物品も見受けられたりしていて、事実と異なる会計経理が行われており、補助金が適切に管理されていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部科学省では、十八年九月に研究機関に対し通知を発するなどして、研究用物品の納品検査を確実に実施する事務処理体制の整備を行うことなどを具体的に明示し、各研究機関における事務処理体制を見直させるなどの処置を講じたものであります。

 なお、以上のほか、平成十六年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理について意見を表示いたしましたが、これに対する文部科学省の処置状況についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

古川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 十七年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、十七年度決算検査報告において会計検査院から指摘を受けたことは、まことに遺憾に存じます。

 指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。

古川主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、文化芸術、また文化財保護ということについて質問させていただきます。大臣がお忙しいようですので、きょうは池坊副大臣としっかり議論を深めていきたいと思っておりますが……(発言する者あり)不規則発言には反応しちゃいけないですね。

 平成十三年十二月に文化芸術振興基本法ができました。六年目を迎えます。憲法の前文にあります、国際社会で名誉ある地位を占めようとする、その憲法の理想を実現するため、日本が文化国家として世界に誇る日本の文化を発信するということは、私は非常に重要だと思っております。これまで経済一辺倒で来ましたけれども、文化国家としての我々の思いを世界に発信するというのは非常に大切だ、また、経済そのものも、今や文化芸術と経済が離れて存在できるという時代ではなくなってきた、その文化や芸術という裏打ちのある経済こそ付加価値の高い経済で、日本が生き残っていく上でこれから欠かすことのできない視点だろう、このような観点から文化芸術振興基本法をつくって、大きく日本の文化政策、芸術政策が変わってきた、このように評価をしております。

 この文化芸術の振興についてはさまざまな視点があるわけですけれども、きょうはその中の一つ、文化財の保護ということについて質問をさせていただきます。

 特に、いわゆる大都市部での再開発、都市開発が進む、その中でのいわゆる歴史的建造物の保存、保護をどうするかという問題でございます。

 東京を例に挙げますと、古くは明治四十四年に指定を受けたものから、新しいものですと平成十七年、二年前に指定を受けたものなど、時を経る中で、その建物の価値が認識され、国宝、重要文化財に指定されている建造物は、この東京で六十あるそうでございます。

 そのときに、その建造物をめぐって大切なのは、再開発、建てかえということで、次々にその周辺部が変わっていく、高層ビルが建てられる、マンションが建てられる、また道路等の建設もあるでしょう、そういう歴史的建造物といわゆる近代的建造物、この両立が非常に重要だと思います。どちらが大事かという話ではなくて、どちらも大事、両方を共存させていくというバランスのとれた政策、方策が文化行政の中で必要だと思います。

 まず最初に、歴史的建造物の保護、保存と都市開発の推進というこの二つの関係性について、文部科学省、文化庁はどのように考えているかをお伺いします。

池坊副大臣 文化芸術振興基本法を斉藤委員の主導のもとに御一緒につくることができましたことは、二十一世紀の国際社会の中に生きていく日本のアイデンティティーを確立することができると私は大変誇らしく思っております。

 今斉藤委員がおっしゃいましたように、文化財保護と二十一世紀にふさわしい都市開発の推進をどうしていくかというのは、これからの日本の課題であると思います。

 都市開発の中で歴史的な建造物が失われていく状況は、昭和三十年代の後半から顕著に見られるようになりました。このため、文化庁では、都市部に残る近代建築や住宅建築について調査を行い、歴史的、学術的価値の高い建造物について、所有者や管理者の同意を得て重要文化財に指定し、保護の措置を講じてきております。所有者や管理者の同意を得ませんと、重要文化財になりますといろいろな規制がございますので、ただやみくもに私どもが重要文化財に指定というわけにはいかないと思います。

 また、平成八年には、近年の都市開発の進展や生活様式の変化等により消滅の危機にさらされている多種多様の多くの近代の文化財建造物を後世に幅広く継承していくため、文化財保護法を改正いたしました。文化財建造物の登録制度というのを創設いたしまして、現在までに約六千件が登録されております。東京二十三区では百七十四件、都市部の歴史的建造物も数多く含まれております。

 さらに、地方公共団体においては、都市開発の中で歴史的建造物の保存や活用を図ったり、景観の保全を図るための独自の取り組みが進められております。私が住んでおります京都では、特に、市民の希望によって、看板の色をきちんと、余りきつい赤は使わないとか、あるいは高層ビルは建ててはならないというようなのが、市の条例で決められております。

 文部科学省といたしましても、関係省庁や地方公共団体との連携協力を一層深め、また民間支援による保護の促進を図り、都市開発の中で歴史的建造物が守られていくよう環境の充実に努めてまいりたいと思っております。これは、行政だけではなく、やはり市民のみんなの願いというものも反映していくのではないかというふうに思っております。

斉藤(鉄)分科員 歴史的建造物の保護、保存と都市開発の推進、非常に両立というのは難しいんですけれども、そこら辺、行政、市民と連携しながら頑張っていくという御答弁だったと思います。

 先日、あるレポートを読みましたところ、東京都心部での事例が掲載されておりました。東京の日本橋にあります三井本館、これは平成十年に国の重要文化財に指定されているんだそうですが、この三井本館周辺に開発計画が検討された際、建物の保存を強く要望する声がある一方、撤去はもう既定路線だということで開発したいという開発業者との間で平行線になっていた中で、三井本館解体を防いだのは東京都が新たに創設した制度であった、このようなレポートでした。

 東京都は、平成十一年に、重要文化財と高層の建物を一体のものと考えて、重要文化財とその周辺の地域を一体のものと考えて、重要文化財を保存する一方で、同じ街区内に建てるビルの容積率の割り増し上限を五〇〇%まで認めるという重要文化財特別型特定街区制度という制度を創設して、この三井本館周辺の再開発がこの制度を適用した第一号となったというレポートでした。周辺も含めて全体で見て、ここの部分、開発できない部分、その周辺で、同じ街区ですけれども、容積率を認めて、高層建築物を認めてここを守る、開発業者さんも納得するというものだったそうでございます。

 このように、地方自治体独自で、文化財や町の景観保護のために、マンションやオフィスビルの高さを制限するなどの動きが広がっております。

 二番目の質問ですが、文化庁としては、東京都のこのような制度は御存じだったでしょうか、また、どのように評価されているか、このことについてお伺いします。

高塩政府参考人 今斉藤先生の方からお話のございました東京都の重要文化財特別型特定街区制度は、平成十一年四月に、それまでの東京都特定街区運用基準を改正したものでございまして、先生から御紹介がございましたように、歴史的建造物を生かした町づくりを促進するため、重要文化財の指定の建造物の保存に伴う特定街区についての容積率の最高限度を引き上げる、これによりまして歴史的建造物が解体、撤去されるのを防ぎまして、新たなビルを建築するよりも近隣に収益性の高い建物を認めることによりまして歴史的建造物を残すということが目的だというふうに伺っております。適用した例といたしましては、先生御指摘の三井本館のほかに、明治生命保険相互会社の本館があるというふうに承知をいたしております。

 この制度によりまして、民間におきます歴史的建造物の保存意欲というものが醸成されまして、先生御指摘のございました、都市の開発と歴史的建造物の共存を図るという方策として評価をいたしているところでございます。

斉藤(鉄)分科員 こういう制度を自治体独自でやっているということですが、ぜひ文化庁としても、いいものは全国に展開させるというようなことを考えていただければ、このように思います。

 文化財保護法第四十三条には、「重要文化財に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。」このように定められておりますが、過去にこの条文が適用された事例があるかどうかをお伺いします。

 問題意識は、重要文化財がある、それが例えばある方の生活の一部になっているという場合に、そこを変更する場合には当然文化庁なり所定の行政の許可を受けなければならない、このように認識しております。

 ところが、そのものではなくて、その周辺で、例えばほんの一メートルも離れていないようなところに高層マンションが建つというような事例もたくさん、たくさんかどうかわかりませんが、あると聞いてございます。その場合は、一応敷地は別。ほとんどの場合は、相続税対策で、昔は一体だったんだけれども庭だけ売り払って、その庭にマンションが建つというようなことのようでございます。しかし、今は一応敷地は別で、重要文化財に指定されている。そこに高層建築物が建つ、そうすると、風が吹く、日照の問題、景観の問題等、非常に大きな影響が出てくるわけです。文化財保護法の条文、「その保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、」と。周辺であっても影響が出てくるわけで、この文化財保護法四十三条の条文が適用されるのかなとも思うわけですが、こういう問題意識でお聞きしているということでございます。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘ございました、文化財保護法の四十三条第一項は、重要文化財に関しましてその現状を変更し、また保存に影響を及ぼす行為を行うときには、私ども文化庁長官の許可を受けなければならないということでございます。

 今、現状変更の許可と保存に影響を及ぼす行為という二つの条文がございますけれども、建造物の場合、現状変更の許可と申しますのは、例えばいわゆる重要文化財の屋根をもともとあったカヤぶきに復元いたしますとか、部屋の間取りを少し変えますとか、また、重要文化財をそのまま活用している例がございまして、その中に必要に応じてエレベーターを設置するなどのことがございます。こういった建造物の重要文化財の現状変更の許可というのは、平均いたしまして年間に約十五件ほど申請がございまして、私どもも、許可をしているということでございます。

 それともう一点、先生から御質問ございました、いわゆる保存に影響を及ぼす行為ということにつきましては、直接建造物に手を加えるものではないものですけれども、やはり経年変化を促進するなど保存上何らかの影響を与える行為ということでございまして、建造物の周辺でいわゆる掘削工事を行うというようなのが一つの大きな例でございます。保存に影響を及ぼす行為の許可につきましては、この法改正は昭和五十年に行われておりますけれども、今日まで必ずしも多くなくて、今まで許可件数は四件ということでございます。

 と申しますのは、この四十三条のただし書きの中で、現状変更、または保存に影響を及ぼす行為につきましていわゆる軽微である場合は、この限りではないということで、多くの場合、そういった開発が隣接地で行われる場合に、事前に所有者側とまさに開発業者、開発側と協議というのを行いまして、いわゆる軽微なものになるようにして、許可が行われなかったということでございます。

 これまであった四件というのは、いずれも重要文化財の近接地域に掘削や地下トンネル、排水トンネルなどを掘るという件につきまして、もう三十年以上たっておりますけれども、これまで四件、保存に影響を及ぼす行為というものの許可を行ったというのが実態でございます。

斉藤(鉄)分科員 文化財が被害に遭うというケース、一つは、自然災害によって被害に遭う。私、広島ですが、国宝厳島神社は台風のたびに被害に遭って、そのたびにすぐ修理をするということを繰り返しておりますけれども、最近、本当に台風の被害も大きくなったり、水かさも増して、被害の度合いも昔より大きいと言われております。これはきょうのテーマではありませんので、ちょっと横道にそれましたけれども。

 もう一つ、人為的な、そういう周辺のいろいろな経済行為や開発行為によって被害が存在するということも考えられるわけでございます。

 そこで、文化庁といたしまして、国宝や重要文化財に指定されているそういう建造物等が、周辺のそういう開発行為や経済行為によって解体の危機、また何らかの外的損傷が想定される、それから何らか保護するというふうな法的な整備が整っているのか、考えられているのかということをお聞きしたいと思います。

 世界遺産の場合は、世界遺産が真ん中にあって、その周辺にバッファーゾーンというのを必ず置かなくてはならない、その外側のいろいろな行為がその世界遺産の価値を減ずることがないように、また損傷等を及ぼすことがないように、こういう考え方にのっとっているというふうに認識しておりますが、いわゆる日本のそういう建造物や国宝等も同じような考え方、そういう法整備がなされているのかどうかという問題意識での質問です。

高塩政府参考人 今先生からお話のございました世界遺産につきましては、御指摘のように、いわゆるバッファーゾーンの維持というものが世界遺産に認定される際の一つの条件のようにされていることはもう御指摘のとおりでございます。そういった世界遺産の多くの場合は、先生、本日の建造物ではなくて、いわゆる史跡というのがございまして、史跡というのも当然指定地というのがございます。その指定地をどの範囲までにするかというのは、当然歴史上、学術上の見地からさまざまに行われるわけで、史跡の範囲を、どの程度まで保護することによってその文化財が守られるかということを、指定の際に逐一判断をしていくわけでございます。

 ただ、先生今御質問のございますのは建造物、重要文化財の建造物につきましては、その建造物本体を私どもは適切に守るということでございまして、その意味におきまして、先ほど先生の方から御指摘のございました、文化財保護法の四十三条の現状変更及び保存に影響を及ぼす行為の制限規定というものを設けておりまして、この規定によりまして国宝、重要文化財建造物を解体や損傷から守るというための法整備を行っているという認識でございまして、私どもとしては、この条文の適切な運用というものに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

斉藤(鉄)分科員 建造物の場合、例えばこういう例があったそうです。すぐ近くに高層マンションが建って、風の状況が全然変わった、いわゆるビル風で、古い、これも国宝級の建造物の屋根が吹き飛んだというようなこともある、このように聞いております。そういう視点も今後文化財を保護していく上で重要なのではないかということを今私は申し上げているわけです。

 文化芸術振興基本法第十三条に、国として、文化財の保存、活用を図るために必要な施策を講ずるものとする、こういうふうに記されておりますし、また、それに基づいて制定されたいわゆる基本方針、文化芸術振興に関する基本方針の中に、建造物、史跡等の文化財の周辺環境や文化的景観などの保存、活用方策について検討を進める、このように書いてございます。ここで言う周辺環境、基本方針で言うところの文化財の周辺環境というところですけれども、先ほど申し上げたような視点での施策の遂行が必要ではないかと思っております。

 ここでお尋ねしますが、独立行政法人文化財研究所というものがございます。周辺にいろいろな建物が建つ、経済行為や開発行為が行われる、そのことによって文化財にどんな影響があるのかということを科学的に立証できれば、また論究できれば大いに役立つのではないか。

 今は、敷地が別であれば何をやってもいいというふうな状況に現実としてはある。世界遺産についてはバッファーゾーンというものが決められておりますけれども、建造物等についてはそういう考え方では行われていないということですので、周辺環境のいろいろな行為が文化財にどのような影響を与えるかということを独法文化財研究所が研究して何らかの方針をつくるということも必要ではないか、このように考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

高塩政府参考人 先生から御指摘ございましたように、去る二月九日に、文化芸術の振興に関する基本的な方針、二次方針が制定されまして、その中で、御指摘ございました第二の基本的施策の文化財等の保存及び活用の中で、文化財研究所のお話がございました。これは基本方針でもございますように、この三月末に法律をお認めいただきましたいわゆる博物館法の一部改正で、文化財研究所は現在国立文化財機構というものに改組、転換をいたしておりますけれども、その中で、御指摘ございましたように、「科学的・技術的な調査研究に基づく保存修復において、引き続き中心的な役割を果たす」ということが明記されているところでございます。

 従来の文化財研究所、現在は文化財機構でございますけれども、ここには東京文化財研究所、それから奈良文化財研究所がございますけれども、主に科学的調査等は東京の方でやっております。こちらの東京の方につきましては、どちらかといいますと、カビの研究ですとか、いわゆる美術工芸品を中心とした研究をやっております。また、奈良の方では、埋蔵文化財を初め、建造物を含めた研究というのもやっておりますけれども、本日御指摘の社寺等の歴史的建造物につきましては、現在のところ、いわゆる大気汚染や酸性雨などの周辺環境が文化財にどういう影響を与えるか、その状況調査や劣化の要因解明などの調査研究を行っているところでございます。

 風の研究というのは、専門家もまだそろっていないということでございます。また、そうした研究につきましては、私どものみならず、国土交通省関係の研究所等との連携も深めまして、私どもは、やはり文化財の保全というものに努めてまいりたいというふうに思っております。

斉藤(鉄)分科員 現在、全国の至るところでとまでは言いませんけれども、かなり多くの箇所で、いわゆる文化財の保護か開発かということで住民が真っ二つに割れていがみ合っているというところがございます。そういう意味では、私、文化という分野でありながら、それが地域の人間社会の一つの分裂をもたらしているというのは非常に悲しい思いをするわけです。オール・オア・ナッシング、AかBかではなくて、文化財を保護し、発展を願いながら、かつ、開発行為も行っていく、その両立というのは必ず人間の知恵としてできる、このように思うわけです。

 文化庁として、このようなイデオロギー対立のような形で住民がいがみ合っているような現状を解決するような何らかの新しい考え方なり、法律というところまではなかなかいかないかもしれませんけれども、文化行政としてそれを打ち出していくような方向性というのは必要だと思うんですけれども、副大臣、いかがでしょうか。

池坊副大臣 開発されることによって周辺の環境が破壊される、これは大きな問題ではあると思います。特に京都などですと、古い建造物がたくさんございますから、日本古来の旅館の横にマンションが建つと、旅館そのものは別に破壊されなくても、その雰囲気そのものが旅館の存在そのものでもあるんだということで、これもいろいろな市民を巻き込んだ運動になっております。また、高層のマンションが建ちますと、その前にございます寺院の何百年と続いたクスノキが枯れるのではないか、枯れたらこれはどうなのか、みんながそれをシンボルとしてそこのお寺にやってきた、それがマンションによって枯れるということを防いでほしいというようなクスノキを守る会などもできまして、いろいろなところでさまざまな問題を提起していることは確かでございます。

 確かに、法律もたくさんあるんですね。先ほど事務局から御説明いたしましたように、例えば文化財保護法においては、重要文化財の現状を変更したり、保存に影響を及ぼす行為を行う場合には、文化庁長官の許可が必要でございます。また、指定された文化財の保護を図るための必要な措置がある。これはそのものじゃないか、周辺には適用できないじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども。

 また、例えば都市開発に関しましては、都市計画法とか景観法などもございます。都市計画法では、「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」公共の福祉の増進というのはどういうことを言っているのか、これの解釈によっても随分分かれてくるのではないかと思います。

 景観法にも、「都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。」では、地域社会の健全な発展というのはどういうことか。経済的な発展だけでなくて、潤いがある古い建造物を大切にするということが地域社会の健全な発展ではないかというような解釈もあったりして、きちんとした、それらを守る法律なり何らかの措置があったらいいじゃないかとおっしゃる御意見もわかります。ですが、今のところ、屋上屋を重ねるようなことがあってはならないというふうに思っております。

 どちらにいたしましても、文化財そのものの保護ということとともに、その周辺も文化財だとして一体的にとらえることが必要だと思いますから、環境の整備が図られていくことが重要という観点から、私どもも、ほかの省庁とも連携をとり合いながら、開発かそれとも保存かというのではなくて、国民のコンセンサスを得ながら工夫をしていく、そういう努力を図っていきたいというふうに思っております。

斉藤(鉄)分科員 副大臣が最後におっしゃった保存か開発か、そういうイデオロギー対立みたいなことではなくて、それを包含した、アウフヘーベンしていくような、そういうリーダーシップを文化庁はもっととるべきではないか。そういう問題が生じているところでは文化庁の顔が見えない、このように言われております。

 文化庁ですと保存の方に偏るのではないかというふうに思われがちですが、いろいろなお話を伺っていると、必ずしもそうではありません。本当に両方の立場から、その両方を満足するようなものを何とか考え出していこうと頭にはおありになるんだけれども、ではそれが世論形成といいましょうか、解決策を住民全体が合意して、その解決に向かって頑張っていこうというリーダーシップはほとんどとられていない、文化庁はとるべきだというような意見もあるということを最後に御紹介させていただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

古川主査 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十四日火曜日午前十時三十分から本分科会を……

平田分科員 主査、よろしいですか。

古川主査 はい。

平田分科員 先ほどの会計検査院の口頭説明は、私は目で追えませんでしたし、速記録も恐らく書けなかったのではないかと思います。恣意的なものであれば、会計検査院の態度としてはあるまじき姿勢だと思いますので、理事会での協議を願いたいと思います。

古川主査 理事会で協議いたします。

 次回は、明二十四日火曜日午前十時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十一分散会


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