衆議院

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第2号 平成19年4月24日(火曜日)

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平成十九年四月二十四日(火曜日)

    午前十時三十分開議

 出席分科員

   主査 古川 元久君

      石原 宏高君    浮島 敏男君

      桜井 郁三君    冨岡  勉君

      平田 耕一君    茂木 敏充君

      渡部  篤君    石関 貴史君

      岩國 哲人君    大串 博志君

      玄葉光一郎君    高山 智司君

      平岡 秀夫君    三日月大造君

      横山 北斗君    田端 正広君

   兼務 岡本 充功君 兼務 篠原  孝君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   防衛大臣         久間 章生君

   財務副大臣        田中 和徳君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   文部科学大臣政務官    水落 敏栄君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       佐野  洋君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       金刺  保君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   会計検査院事務総局第五局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松山 健士君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  務君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 椎川  忍君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (消防庁次長)      大石 利雄君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           勝 栄二郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    丹呉 泰健君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    篠原 尚之君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省河川局次長) 日比 文男君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 原田 保夫君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  伊藤 盛夫君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     石原 宏高君

  桜井 郁三君     渡部  篤君

  岩國 哲人君     大串 博志君

  玄葉光一郎君     平岡 秀夫君

  遠藤 乙彦君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     浮島 敏男君

  渡部  篤君     桜井 郁三君

  大串 博志君     石関 貴史君

  平岡 秀夫君     高山 智司君

  田端 正広君     遠藤 乙彦君

同日

 辞任         補欠選任

  石関 貴史君     三日月大造君

  高山 智司君     横山 北斗君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     岩國 哲人君

  横山 北斗君     玄葉光一郎君

同日

 第一分科員岡本充功君及び第三分科員篠原孝君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書

 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行及び文部科学省所管〕


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     ――――◇―――――

古川主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 平成十七年度決算外二件中、本日は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。尾身財務大臣。

尾身国務大臣 平成十七年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十八兆一千五百九十一億円余となっております。

 このうち、租税等は四十九兆六百五十四億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十一兆一千八百二億円余でありまして、支出済み歳出額は二十兆八百八十五億円余、翌年度繰越額は四十七億円余でありまして、差し引き、不用額は一兆八百六十九億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十八兆七千三百五十九億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百二十三兆六千四百九十五億円余、支出済み歳出額は百八十九兆一千四百三十四億円余であります。

 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承いただきたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は千七百五十億円余、支出済み額は千二百二十七億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十七年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

古川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十七年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。

 検査報告番号一六号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもので、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集・活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどにより生じていたものであります。

 同一七号は、相続税に係る連帯納付義務者の財産調査等が十分でなかったため、租税債権が消滅したもので、滞納者以外の相続人が連帯納付義務を履行できる財産を有しているかなど十分に調査、検討をしないまま滞納処分の執行を停止し、その状態が三年間継続したため租税債権が消滅したものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

古川主査 次に、会計検査院増田第五局長。

増田会計検査院当局者 平成十七年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 引き続きまして、平成十七年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

古川主査 次に、会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十七年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

古川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。尾身財務大臣。

尾身国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、すべての事案について見直し、適切な徴収決定等の措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めたいと存じます。

古川主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)分科員 自由民主党の石原宏高でございます。

 本日は、決算行政監視委員会の第二分科会で質問の機会をいただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 本日は、平成十七年度の特別会計の決算について、特に資産の圧縮についての考え方について質問をさせていただきたいと思います。

 資料を委員長の御承諾を得まして配付させていただいているんですけれども、資料の二枚目、実は特別会計に関する法案の質疑のときもつくらせていただいたんですけれども、そのときは平成十六年度末の特別会計の資産、負債の数字でありましたが、平成十七年度に改めまして、この数字を中心にちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 ばっと見ていただきますと、特別会計の資産、負債の額が載っておりまして、一番端に資産と負債の差額という欄がございます。その中でマイナスになっている部分が幾つかあるんですけれども、公会計でこういうふうにバランスシートをつくって、資産、負債の差額というのは、通常、企業会計でいえば資本勘定部分になっていて、マイナスになると、資本勘定がマイナスということは企業が赤字というような形でとられて、よくないというふうに判断をするんですけれども、公会計でありますから、果たして本当にマイナスであることが問題があるのかどうか。

 さらに、もちろんプラスであっても、例えば、よく話題に出ます航空整備の関係の社会資本整備事業等で、実際には資産、負債の差額がプラスになっていても、資産の部分の飛行場は他人に売ることができないわけでありますから、逆に負債額が多くて、その負債を国が今後どうしていくかというような問題があって、決して資産、負債の差額がプラスだから全く問題がないということではないと思うんですけれども、一般論として、マイナスの部分またプラスの部分等について財務省としてどういう御見解を持っているのか、教えていただけますでしょうか。

鈴木政府参考人 御指摘の資産と負債の差額についてでございますが、こうした省庁別財務諸表の作成基準をつくるに当たりまして、財政制度等審議会におきましても種々御議論をいただいたところでございます。

 その結果、やはり国の会計においては、資産と負債の差額について企業会計の資本の部と同様の位置づけを与えることは適当ではない、また、国の会計では、企業会計と異なり、資産と負債の差額自体について必ずしも積極的な位置づけが見出しにくいというような御指摘もいただいております。そうしたことから、資産と負債の差額については、特別の名称を与えることなく、資産・負債差額の部として表示しているということでございます。

 具体的に申し上げますと、例えば、資産・負債差額が大きなプラスになっております国債整理基金特別会計というのがございますが、これは実は将来の国債の償還に備えるため、あらかじめ一般会計から繰り入れを行っておりまして、これが資産の部に立っているわけですけれども、他方で、国債の残高自体は一般会計に負債がかかっておりますので、そういう意味で非常に大きな資産超過になっている。他方、大きなマイナスになっております交付税及び譲与税配付金特別会計、これは非常に大きなマイナスに立っているわけなんですが、これは、地方の財源不足に充てるために、この特会で借り入れを行って交付税を配付したという経緯があるということでございます。

 このように各特別会計によっては事情が非常にさまざまでございますので、ある時点での資産・負債差額をどのように評価するかについては、個々の特別会計ごとの性格に応じて、財務状況を分析の上、判断する必要があるのではないかというふうに考えております。

石原(宏)分科員 わかりました。ありがとうございます。

 特別会計の理解というのは、国民の理解というのがなかなか難しいものですから、こういう場で質問させていただいて国民の理解を深めたいということで質問をさせていただきました。ありがとうございます。

 続きまして、個別の特別会計についてちょっと質問させていただきたいと思います。

 よく話題に上る外為特会でありますけれども、平成十七年度末で百九兆円、平成十六年度が百兆円ですから、ちょっとふえていると思うんですけれども、それで、この中身を見ると、有価証券という形で七、八十兆円の規模で有価証券が保有をされているんですが、恐らく大半は米国債であると思うんですけれども、この資産規模、外国有価証券全体でありますけれども、この規模というものが果たして適正なのかどうか、また、財務省として外為特会の外国の有価証券の保有規模というのは何か基準があるのかどうかというところを私はちょっと質問させていただきたいと思います。

 今、確かに、米国債と日本の国債の金利差、米国債の方が高くて、日本が為替のヘッジをしないで持っていることによって、かなり、年間三兆円ぐらいの金利差を稼いでいる。そのうちの一・六兆円を一般会計に投入しているということで、一般会計を助けているということは確かに言えると思うんです。それで、日本の国債残高の状況を考えると、日本の長期金利が急に上がるということはやはり望ましくない。その中で、米国債との差がある中で、確かに利益を、運用益を得ることができるわけでありますけれども、その金利、長期金利がだんだんだんだん縮まっていく危険性もあるわけですし、適正規模というものを何かしら考えていらっしゃるのか。上限で、これ以上は米国債、外国債を持たないというような基準というのを考えていらっしゃるのか。

 また、将来的に、私は、今、産業構造が変わって、日本の輸出というのは、部品をかなり海外に輸出してその部品を海外で組み立て加工している、最終製品を輸出するのは減ってきていますので、多少円高に振れても日本の輸出業が影響を受けるということはないと思いますので、今の為替がかなり円安に振れている中で少し米国債を売却しても構わないのではないか。もちろん売却してしまえば運用益が出なくなってしまうわけですけれども、しかし、七十兆円、八十兆円という規模が果たして適切なのかどうか。

 また、よくこのごろ言われているファンドがやっている円キャリー取引、言い方は悪いかもしれませんけれども、日本の政府が外国の有価証券を持っているのは、まさに円キャリー取引を日本の政府自身がやっているんじゃないかというようなうがった見方もできるんではないかと思いますけれども、適正規模の考え方、また上限等あるのかどうか、あと今後の外国有価証券の保有をどういうふうに考えていらっしゃるのか、財務省の御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

篠原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問ございました外為特会で保有している外国有価証券等、いわゆる外貨準備に係る適正な規模という御質問でございました。

 外貨準備の適正規模につきましては、それぞれの国の輸入額の何カ月分かであるとか、あるいは短期債務残高に対する比率でございますとか、マネーサプライに対する比率とか、さまざまな考え方が言われておりますけれども、御承知のように、外為市場を含む世界の市場が国際化いたしまして、短期の資金移動が拡大しているという中で、こうした適正規模について関係者間において意見の一致が見られていないというふうに承知しております。

 また、外貨準備は、御承知のように、これまで必要に応じて実施してまいりました為替介入の結果、保有するに至ったものでございまして、今後必要とされる為替介入に備えるという目的で保有しているものでございます。為替市場が非常にグローバルな市場になっておりまして、かつ短期的に巨額の資金移動が起こり得るという市場になってきているということにかんがみますれば、外貨準備につきましては十分な額を保有しておく必要がある、こんなふうに考えておるところでございます。

石原(宏)分科員 ありがとうございます。

 今、為替も円安に振れていますし、なかなか言いづらいところはあると思うんですけれども、将来的な金利のリスクを判断しながらうまく対処して、オペレートしていっていただきたいというふうに思います。

 次に、財務省所管の財政投融資特会について、今回の特別会計の見直しの前の三十一あったときの特別会計の名称で、財政融資資金特別会計の平成十七年度の水準についてちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 財政融資資金特別会計について、平成十七年度末での資産規模が三百四十兆円と大変大きいわけですけれども、ただ平成十六年度は三百七十二兆円ですから、三十二兆円ほど、十六年度の末から比べれば圧縮をされているというわけですが、引き続き大変大きな資産額になっているんですけれども、貸し手先の内訳、まさに独立行政法人の中で最大の貸し手先をまず教えていただきたいということと、今後、財政投融資特別会計の規模をどのような方向で見ていくのか、どの程度が適正規模といった認識があるのか、財務省の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

丹呉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、財政融資資金特別会計が収支を経理いたします財政融資資金の平成十七年度末におきます資産残高は三百四十兆円となっておりました。

 財政融資資金は、公共の利益を増進する観点から、基本的には財投債により調達した資金を貸し付けにより運用することを業務としており、貸し付けの主な対象は政策金融機関や独立行政法人、地方公共団体等でございます。平成十七年度末におきます独立行政法人等の貸付金残高のうち、最も大きいものは住宅金融公庫でございまして、その残高は四十五兆円となっておりました。

 なお、住宅金融公庫について申し上げますと、毎年のフローであります財政融資資金からの貸し付けは個人向けの住宅ローンに対応するものを中心としておりまして、ピーク時の平成九年度には十兆円を超える貸し出しをしておりました。しかしながら、その後、住宅金融公庫の見直しで個人向け住宅ローンの廃止などの事業の抜本的見直しが決められました結果、十七年度、単年度では災害復旧融資向けの三百億円に限定しております。こうした結果、住宅金融公庫に対する財政融資資金の貸し出しの残高は、ピーク時、平成十二年度、七十三兆円でございましたが、今申し上げましたように平成十七年度末には四十五兆円まで圧縮されたところでございます。

 それから第二点目、先生からの、今後の財政融資資金の資産残高をどのように圧縮していくかという点でございますが、財政投融資は、平成十三年度の財政投融資改革以降、民業補完性あるいは償還確実性について厳格な審査を行い、貸し出しに当たりましては、財投対象事業の重点化、効率化を図ってまいりました。

 さらに、昨年成立いたしました行政改革推進法におきまして、政府は平成二十七年度末に国の資産規模の対GDP比半減を目指すということが定められておりまして、これに基づきまして閣議決定されましたいわゆる基本方針二〇〇六におきましては、財政融資資金貸付金残高を今後十年以内で百三十兆円超圧縮するということになっております。これを踏まえまして、平成十九年度の財投計画は十四・二兆円ということで、ピーク時、平成八年度でございますが、四十・五兆円の約三分の一の水準にするなど、大幅な縮減を図ってきたところでございます。

 財政融資資金貸付金残高の百三十兆円超の圧縮につきましては、まず、平成十九年度並みの貸付規模を今後とも継続すれば、平成二十七年度末までに約百十兆円程度の圧縮ができる見込みでございます。さらに、残りの二十兆円程度の圧縮につきましては、政策金融改革あるいは独立行政法人の業務の見直しなどが行政改革推進法に掲げられておりまして、その改革に適切に対応することなどして、まず、財政投融資事業の一層の重点化、効率化を図る、それから第二番目に、財政融資資金貸付金の証券化を実施する、さらに、政府保証の一段の活用といったような手法を適切に組み合わせることによりまして、確実に実現させたいと思っているところでございます。

石原(宏)分科員 ありがとうございます。

 特別会計に関する法律の議論の中でも、民主党の馬淵議員の方から、例えば交付税及び譲与税配付金の勘定について。済みません、西村議員ですね、民主党の西村議員から、借入金を平成三十八年までに償還する計画について意見が述べられまして、最後、その償還が加速して大量に返済しなきゃいけないので、本当に返せるのかというような質問が出ておりました。また、私が、質問はできなかったんですけれども、農林省の国有林の借入金についても返済計画をお聞きしたわけであります。

 各特会について資産圧縮の計画があるわけでありますが、ここでちょっと御質問をさせていただきたいんですけれども、もしその計画が順調にいかなかったときに、この資産圧縮がいかなかったときに、果たしてだれが責任をとるのか。大変難しい議論なわけですけれども、計画は立てました、しかしこれから毎年毎年決算委員会の中でもそのフォローをしていくという形になると思うんですけれども、実際に計画が達成できないような形になったときにだれが責任をとるのかということを、大変難しい質問だと思うんですけれども、私は、大臣に所見をお伺いできればと思います。

尾身国務大臣 この資産・債務改革につきまして、財務省といたしましては、行革推進法あるいは基本方針二〇〇六を踏まえまして、二十七年度末における国の資産規模の対GDP比を平成十七年度末の約七七%から半減するということを目指しているわけでございます。このために、財政融資資金貸付金の圧縮あるいは国有財産の売却、有効活用などによりまして、国の資産を約百四十兆円規模で圧縮することとしております。

 既に、十九年度予算編成におきまして、財政融資資金貸付金残高を二十三兆円圧縮するほか、国有財産につきましても、未利用国有地等の処分に係る歳入二千百六十五億円及びアルコール産業の株式売却収入に係る歳入百四十億円、計二千三百億円余りを計上するなど、着実にその第一歩を踏み出しております。

 このような取り組みにつきまして、先月の二十七日に、財務大臣といたしまして、改革の今後の道筋を明らかにする観点から、工程表として取りまとめまして公表したところでございます。

 この資産・債務改革は、簡素で効率的な政府を実現するという観点から極めて重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、これからも引き続き、経済財政諮問会議等とも緊密に連絡をしながら、民間の知見も十分に活用しつつ、工程表に沿って、財務大臣として責任を持ってしっかりと改革を進めていきたいと考えております。

石原(宏)分科員 力強い財務大臣の御答弁をいただきまして、本当に心から感謝を申し上げたいと思います。

 特別会計は大変わかりにくくて、地元なんかでも説明してくれなんというふうに言われて、私もちょっとホームページに自分なりの問題意識、問題点をまとめたりしているんですけれども、やはり継続的に、こういう決算委員会の中で、実際に行革推進法の計画が進んでいるかということをしっかり我々議員が責任を負っていかなければいけないのではないかというふうに思っております。

 私は、自分自身が政治家を目指す大きな一つの要因となったのが、日本の財政が破綻してしまうのではないか。私は銀行員だったものですから、銀行自身が、日本の企業を支えてきたわけですが、支え切れなくなって公的資金を注入しなければならないような状況になって、まさに銀行自身が破綻しそうな感じの局面を迎えたものですから、まさにそれが国家単位で起こってしまったらだれも助けてもらえないということで、特にそのときに特別会計の無駄遣いじゃないかという批判が多かったものですから、この特別会計の問題に対して大変関心を持っております。

 亡くなられた民主党の石井紘基議員もこの特別会計について本を書かれていて、それも私は落選中、浪人中読ませていただいて大変参考にした書物だったんですけれども、しっかりと今尾身大臣の方から強い御決意をお聞きしたので安心しているんですが、我々議員の方もしっかりと政府の計画がちゃんと進んでいるかどうかをフォローしていかなければいけないと思います。そして、もしそれを怠る、もしくは実際にそれが実現できなくなったときに、そのときの財務大臣が責任をとるというのはなかなか難しいし、責任問題が起こるかもしれませんけれども、私は、やはり国会議員、国民に選ばれた国会議員がそれは選挙で責任をとらざるを得なくなっていくのではないかというふうに思います。

 そういう意味で、財務省の方々も、我々もそういう自分の政治生命にもかかわる大きな問題であるというふうに考えてこの問題を注視しているということをぜひとも御理解いただきまして、何よりもスリム化した簡素でそして効率的な政府をつくるためにも、この特別会計の資産の圧縮についてしっかりと計画を達成していただきますよう心からお願いを申し上げまして、時間が十分ほど早いんですけれども、これで私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございます。

古川主査 これにて石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 次に、大串博志君。

大串分科員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは三十分の時間をいただきまして、財政問題を中心に議論させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 私は、予算委員会でも財政問題を大臣ともいろいろ議論させていただきました。この国の財政、国と地方を合わせて非常に厳しい状況にございますので、これを何とかしていかなければならないという政策論議をきちっと積み重ねていかなければならないというふうに痛切に感じております。今回のような決算行政監視委員会の場もいただきまして、政策論議を深めさせていただければなというふうに思う次第でございます。

 まず第一に、私は、予算委員会でも取り上げました夕張の問題を一つの契機として、地方財政の健全化の問題について議論させていただければと思います。

 御案内のように、夕張市は財政再建団体の適用を受けました。三百数十億に上る負債を抱えて、二十年近い再建期間の非常に厳しい内容でございます。この点について、予算委員会でも私の方から、これは国の責任がどうなのか、地方の責任がどうなのかということを議論させていただきました。きょうは、この点につきまして、地方財政、特に借財、借金を行っている地方財政がいかに健全性を維持するかという点において、貸し手責任のことも含めてちょっといろいろ議論させていただければと思います。

 まず一つに、今般、地方自治体の再建制度をいろいろ検討するということで、総務省の方でも検討を受けました。これは地方公共団体の財政の健全化に関する法律案としてまとまってきておりまして、今後議論が行われることになろうと思います。

 ここに至る過程におきまして、総務省の方においてもいろいろな検討が行われ、昨年においては新しい地方財政再生制度研究会の報告書が十二月八日にまとまっておりますけれども、ここにおいて提言が行われているわけでございます。この中で、今回、いろいろな再建制度の議論がありました、再建に至る過程においていろいろな新しい指標を取り入れていくこと、早目早目に地方の財政再建ができるようにしていくこと等々のいろいろな有益な提言もなされていると思います。

 その中で、一つ将来の課題として先送りされたものが、債務調整という内容でございます。これは、民間金融機関等を中心に地方に資金を貸しているわけでございます。民間金融機関を中心として、地方債等々を通じて地方に貸しているわけですけれども、この貸しているお金、これを、将来的に財政再建が行われる過程において貸し手責任も問うていくべきなのかどうかという論点でございます。

 この論点に関しては、去年の十二月八日に出ている研究会の報告書においては、いろいろな将来検討課題があるということで、例えば、既発債それから新発債、この取り扱いの違いをどうするかとか、あるいは経営責任、責任問題をどう追及していくのか等々、こういう問題も含めて検討していかなければならないということで、将来的な検討課題とされています。

 私自身は、大臣、やはり地方の財政健全化、規律の強化ということをきちっと確保していく必要があると思うんです。新しい再建法制、こういうものをつくっていく、これは非常にいいことだと思います。いろいろな指標を新しく入れて、早目早目に財政のたがが緩まないようにしていく、これは非常にいい方法だと私は思うんですが、一方、やはり借金を行っているわけでございますので、借金を行っている方々にもしっかり市場監視という形で市場の目を地方自治体に入れていかなければならない。もちろん、過度になってはいかぬわけでありますけれども、適切な市場監視の目も入れていかなきゃいかぬというふうに思います。

 大臣に所感をお伺いしたいんですけれども、貸し手責任も含めまして債務調整を将来的に検討していく、これは方向としてあった方がいいんじゃないかと私自身は思うんですが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 現在の財政再建制度のもとでは、赤字が一定限度を超えた団体が財政再建を行うためには、その団体によります歳出削減、歳入確保の努力を前提とした財政再建計画を策定いたしまして総務大臣の同意を得る必要があり、地方団体の不適切な財政運営の結果を国が負担する仕組みとはなっていないと承知をしております。

 夕張市のように財政状況の悪化が深刻化することを未然に防止して、早期に財政健全化を進めることができるように、地方団体の財政情報開示の拡充や財政の早期健全化のための新しい制度を整備する法案が既に国会に提出されているところでございます。

 地方団体への金融機関側の貸し手責任を問ういわゆる債務調整の問題につきましては、総務省において研究会が設置され、論点の整理が行われていると承知しておりますが、研究会の結果等を踏まえまして、総務省において適切に検討がなされるべきものと考えております。

 このように、地方団体の再建、再生の制度につきましては、制度改正及び制度の検討が進められているところでございます。

 いずれにいたしましても、地方団体の財政運営はそれぞれの団体の責任において行うべきものでございまして、再生制度を考えるに当たりましては、不適切な財政運営の結果は各団体の自己責任により対応する仕組みにすることが財政規律維持の観点から極めて重要であると考えております。

大串分科員 今、財務大臣の方から、基本的には各自治体の自己責任を強化する方向でと。私は、それは賛成なんです。非常に必要なことだと思うんです。きちっと自分のところで完結するような財政運営を行っていただく。

 そのためには、地方自治体それぞれが借り入れを行っているのであれば、それは貸し手責任も含めて。民間企業であれば当然行われていることでございます。民間企業と地方自治体を全く同列に扱うことはできませんが、地方の場合は財政調整制度というものもございます。そういうところでの手当てもできますので、その上で、ある程度の貸し手責任を求めていかなければならないと私は思うんですね。

 夕張の問題に関してちょっと戻りますと、今回、夕張市の三百数十億に上る借入金の問題はどこから生じてきたかというと、これは一時借入金でございます。一時借入金という、私の目から見ると非常に問題の多い取り扱いを通じて借財が膨らんでいったわけでございます。

 総務省の方にきょうも来ていただいていますけれども、ちょっとお尋ねしたいんですが、今回、夕張市、一時借入金というものを使って、地方自治法では一時借入金は可能となっております。二百三十五条の三、一時借入金は可能なんですが、それはあくまでも予算で最高額を定めた上で、かつ、「会計年度の歳入をもつて償還しなければならない。」こういうふうになっております。すなわち、一年間のうちに資金の入りと出があります。その中で、短期的にちょっと資金繰りが足らないところがある。それを一時的に金融機関等から補うために、つなぎの資金として、恐らくそんなに多額ではない一時借入金というものがこの中に想定されていたんだと思うんですね。だからこそ、この「会計年度の歳入をもつて償還しなければならない。」という一項が入っていたんだと思うんです。

 こういう観点からすると、今回の夕張市の一時借入金の取り扱い、これは地方自治法の観点から見ると違法というふうに言わざるを得ないのではないかと私は思いますけれども、総務省の方に御所見を伺いたいと思います。

藤井政府参考人 御指摘の点でございますが、夕張市の会計処理について北海道庁が調査されておりまして、その調査によりますといろいろな問題点が指摘されているところでございます。

 その中には、委員御指摘のように、一時借入金というものを使って本来できないものをやっていたというところもあるんですが、私どもとしては、基本的には、いわば夕張市は会計年度をまたがる会計間の貸し付け、償還が行われてきたということ、これは、地方自治法二百八条第二項に「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。」こうなっているわけですが、これにやはり基本的に違背していた。であるがゆえに、非常に透明性がむしろ失われたというところに問題があるというふうに認識しているところでございます。

大串分科員 まさにおっしゃったとおりでございます。私が指摘する前に今おっしゃっていただきましたけれども、先ほどおっしゃった、会計年度をまたいで支出、歳出を行ってはいけないという条項に抵触して会計のやりくりをして、かつ、そのツケがどこに回っていたかというと、一時借入金に回っていたわけでございます。

 こういうふうに、非常に違法である財政運営がなされている、そういう中での夕張市に対して、銀行は一時借入金に対する貸し出しを行い続けてきたわけでございます。その額は、全体、ネットの額をあらわしてみると、三百数十億に至っています。これは総務省からいただいた資料でございますけれども、夕張市の一般的な財政状況というのは地方税で約十億弱ぐらい、地方交付税で五十億程度、そういうふうな大きさのオーダーのところなんですね。そこに、一時的に諸収入という形で百億円近いお金が入ってきている。これは一時借入金のやりとりの中で膨らんでいるお金なんです。

 こういうふうに、一見してみて明らかに不適切で、かつ、先ほどおっしゃったように違法な財政運営をやった上で、このような非常に財政の厳しい状況になっている。そういうところに銀行は貸し付けていたわけでございますけれども、この違法な財政支出運営をやっている地方公共団体に対して、それを知った上でか知らなくてか、一時借入金という形で貸し付けを多額に行っていた銀行、この銀行のコンプライアンス上の問題はないのか。この点に関して金融庁の方の御所見をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 個別金融機関の個別の融資につきましては、コメントを差し控えさせていただきたいと存じます。

 あくまで一般論として申し上げますと、既往貸出先が法令違反を行っていることが明らかになった場合には、金融機関は、当該法令違反行為の軽重や、それが解消に向かいつつあるか否か等の各金融機関の経営に与えるリスクや地域経済に与える影響等を勘案し、最も適切な対応を行うこととなると考えております。

 なお、当庁としては、例えば金融機関の融資の管理につきましては、与信先の財務状況、資金使途、返済財源等が的確に把握される等、適切な審査管理を行っているか、与信先の業況推移等の状況等について適切な与信管理が行われているかなど、具体的な監督上の着眼点を主要行等向けの総合的な監督指針等において明らかにしているところであり、このような監督当局の取り組みも踏まえ、各金融機関がリスク管理体制の整備強化に努めることが重要であるというふうに考えてございます。

大串分科員 銀行に対する監督というのは、基本的に二種類あると思うんですね。今その話の中でもおっしゃいましたけれども、リスク管理も含めて財務面での不適切等々に関する監督、もう一つは、法令遵守、コンプラ、そういう面について体制がきちっととれているか、この二つの面があると思うんです。

 今回の夕張市の問題に関して言うと、銀行に関しては両方とも問題があるんだと思うんですね。一つは、財務面、財務的に夕張市に貸し出すのが大丈夫だったかどうか。ただ、これは国が一時借入金の貸し出しも含めて保証すると言っているので、ひょっとしたら問題ないということになるのかもしれません。ただ、二番目のコンプラの問題は、私は非常に大きな問題だと思っているんですね。今おっしゃったように、法令遵守体制等々の問題で非常に大きな問題があるとすれば、それは監督上の措置につながっていくわけです。銀行法二十四条報告あるいは業務改善命令といったところまでつながっていくわけです。

 例えば二月には、金融庁は三菱東京UFJ銀行に対する行政処分ということを発表されています。これは、不公正な勢力に対して、長年それを知りつつお金を貸し続けていたということ、三十年近く社会的に問題のある勢力に対してお金を貸し付けている、それを経営陣も知っていたということを含めて、これは法的に問題あり、コンプラ体制に問題ありということで業務改善命令が打たれているわけです。

 この夕張市の問題に関して、金融庁は、各銀行に対してコンプラ上の問題がなかったかどうか、個別行の監督に関してコメントは差し控えますとおっしゃっていましたけれども、ヒアリング等々のチェックはなさったのかどうか、その点に関してお答えください。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 個別行の問題でございますので、ヒアリングしたかどうかということにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に、金融機関に対して必要がある場合には適時適切にヒアリングをしてございます。

 それから、これも一般論として申し上げますが、金融機関が取引先の法令違反行為に加担しているなど、金融機関の法令等遵守体制や信用リスク管理体制に問題が認められる場合等については、適切な監督上の対応を行うことになると考えられます。

大串分科員 おっしゃるとおり、適切な監督体制をとるということだと思いますけれども、今のところ、何か行われたということ、金融庁としてのアクションを公表されたことは私も聞いておりません。

 一つお尋ねなんですけれども、もし仮に業務改善命令が打たれたとして、これがコンプラ、法令違反、法令遵守の体制が悪かったということであれば、これは公表されますね。そうすると、今公表されていないということは、まだそういうふうな業務改善命令は行われていないという理解でよろしゅうございますか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、業務改善命令等に関する不利益処分につきましては、財務の健全性に関する不利益処分等を除きまして、原則としてすべて公表するということになってございます。

 以上でございます。

大串分科員 そうなんですね。コンプラ問題、法令遵守の問題に関して体制が整っていないという場合においては、それに対する行政処分、業務改善命令等々については発表することになっているんです。ですから、それがまだ発表されていないということは、まだそこまで至っていないということだと思うんですね。ですから、これに対する、銀行に対してどのような対応を金融庁が行ったか、業務改善命令まで至ったかどうかということに関しては、それがそのうち発表されるかどうかということでわかるんだと思うんですね。そこは私もしっかりフォローさせていただきたいと思います。

 もう一点述べさせていただきますと、先ほど、各行等に対してヒアリング等々を行っているかどうかに関しては、個別行のことなので述べられませんとおっしゃいましたけれども、過去の答弁等をよく見ていただきますと、いろいろな問題事例が明らかになっている場合、国会等々で具体的な問題事例、こういう問題があるじゃないかということの指摘があったときに、基本的に、全く個別行に対する監督のことなので答えられませんという答弁のみならず、個別具体的にこういう問題があったじゃないですかというふうに明らかになっている場合には、ヒアリングをやっているか、やっていないか、こういうヒアリングをやってきているというふうなことは、これまでも答弁をいただいたことがあります。かつ、もちろんそれによってどういう行政対応をしようと思っているかとか、そこまでは踏み込んではありませんけれども、少なくとも金融監督当局の責任として、例えばこういうふうに問題が明らかになっている場合にどのような監督を行っているか、すなわち、ヒアリングを行っているかどうか等々に関しては、実はもう国会でも答弁されているんです。

 ですから、そこのところはきょうはこれ以上お問い合わせしませんが、また国会の場でも、どのような行政対応をされていますかというコンテクストの中で、ヒアリングはされたのかどうか、その結果どういうふうな考え方をお持ちなのかどうか、ちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。

 この夕張市の問題は、明らかに違法な行政運営、財務運営に対して銀行が知り得る立場にあったと私は思うんです。知り得る立場にあったとして、これは地方自治法違反だ、地方財政法違反だ、それを知った上で貸し込んでいるんであれば、これは非常に大きなコンプラ問題だと思うんですね。だから、そこをどういうふうに監督されているのか、よく確認いただいて、またこれは機会をいただいて国会の場で議論させていただければというふうに思います。

 こういう議論を聞いていただいて、大臣、今金融機関がどういうふうなビヘービアをとるかというのはよくおわかりになったと思います。

 私は、この問題に対して言うと、金融機関としてかなり多額の額を夕張市に貸しているわけですから、どういう財務状況にあるのか一目瞭然だったと思うんですね。先ほど申しましたように、税収で十億、交付税で五十億、そこが結局、一時借入金を含めた貸し付けで三百数十億借りていたわけですね。それは銀行から借りていた。それは地方自治法等々の法令違反の財政行為であった。ここに銀行は貸し込んでいるわけです。

 こういうことも含めて考えると、やはり私は貸し手責任の問題をしっかり議論していかなければならないと思いますけれども、議論を聞いていただいて、もし財務大臣の御所見があればもう一度いただければと思います。

尾身国務大臣 パブリックセクターが、いわばいろいろな意味で放漫財政というようなことでこの種の問題を起こしたときに、それに対する貸し手の民間銀行が貸し手責任を全く問われない、そして、例えば国とかあるいは都道府県とか、そういうところから債務を全部カバーするというようなやり方は、現実の問題としてこれからは必ずしもよくない。そういう意味での貸し手責任ということも、民間銀行にもとっていただかなければならないような状況になっているのではないかと私は考えております。

 具体的な方法につきましては総務省で御検討いただいておりますが、これからの時代、そういう意味で、地方自治体のいわゆる財政運営も、そういう観点からもそれぞれの地方自治体が責任を持っていくということが大変大事なんじゃないかと思っております。

大串分科員 ありがとうございます。財務大臣から今、非常に責任を地方自治体に持っていただかなければならないという、私としては非常にいい答弁をいただいた、ありがたい答弁をいただいたと思っています。

 もちろん、地方自治体によって財政力の格差が非常にありますので、貸し手責任を問うていくということになれば、恐らく民間金融機関等々が自治体に対して直面する貸出金利、これもかなり変わってくると思いますので、財政力の弱い自治体によっては厳しいと思われるところもあるかもしれませんけれども、それは貸し手責任を問う、問わないの問題ではなくて、むしろ交付税等々の財政調整制度を、しっかり財政力の弱い地方に対しても適切な財政運営ができるように手当てを手厚くしていくということによって対応していくべきだろうと私は思うんですね。そういうふうに借り入れというものの役割と交付税、財政調整制度の役割をしっかり分けて議論することによって、適切な責任を負ってもらい、かつ適切な財政手当てができるようなそういう体制をつくっていくべきだろうというふうに思います。

 そこで、地方の話が続きましたので、通告の順番を変えて、地方消費税に関する最近の議論に関してちょっとお尋ねしたいと思います。

 総務大臣の方から、最近報道等でもよく見ますけれども、消費税に関して、地方の財政力の偏在が大きいということから、地方消費税部分、現在一%ですけれども、この部分の割合を上げていくべきなんじゃないか、そういうふうな意見がありました。これは記者会見でも述べていらっしゃいます。さらに、総務大臣の御発言では、このことを今般、夏前にまとめる方向になっていると思いますけれども、骨太の方針の中で国と地方の消費税部分の割合みたいなものをどうするのかということを打ち出していきたいというふうにおっしゃっています。

 総務省の方にきょう来ていただいていますので、ちょっとお答えいただきたいんですけれども、これは総務省として、地方消費税問題、地方と国の財政力の格差をどうこの消費税を通じて是正していくのかということも含めて、骨太の方針の中に書き込んでいくという方針で考えていらっしゃるのかどうか、この点について総務省の方の御所見をいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 地方消費税についてのお尋ねでございますが、今後、地方分権を支える地方税を充実させるということが総務省としては何よりも必要であると考えております。当面、税源移譲を含む税源配分の見直しなどを通じまして、国と地方の税収比一対一を目指して、地方税の充実を図ってまいりたいと存じております。

 その際、地方税の充実を図る中で、税収が安定的で地域間の税収格差が最も小さな基幹税目であります地方消費税などを充実することを基本にして、全体として、できる限り偏在度の少ない、偏在度の小さな地方税体系を構築していくということが極めて重要であります。今後、税体系の抜本的改革が想定されますし、また地方分権改革も予定されておりますので、こうした過程を通じまして、地方消費税の充実という方針のもとに、地方税についても総合的に検討してまいりたいと考えております。

 なお、今後の骨太の話がございましたが、税収の偏在問題などについては、総務、財務両大臣の御指示によりまして、今般、両省の事務次官で話し合いを始めたところでございます。今後どういうふうに進めるかにつきましても、大臣の御指示をいただきながら検討してまいりたいと思っております。

大串分科員 そうすると、ポイントは二つなんですけれども、骨太に書き込む方向で総務省としては考えていらっしゃるのかということと、あともう一つ、地方の財源をならすという観点からすると、地方消費税ということが明確にポイントアウトされていくのか。この二点はいかがでしょうか。

岡崎政府参考人 総務大臣は、骨太にしっかり位置づけをしてという御発言をしております。今後、具体的によく財務省とも実務者協議をする中で、大臣の御指示もいただいて検討してまいりたいと思っております。

大串分科員 財務大臣に御所見をいただきたいと思います。

 今お話がありました。私が今聞く限りにおいては、骨太に位置づけるということは明言されなかったように思います。かつ、地方消費税部分をどうするかということに関しても、特出しするような御発言はなかったかと思いますけれども、地方の、地方消費税も含めた税源のならしの問題、骨太に書くかどうかということも含めて、今財務大臣としては、どういうスケジュール観で、かつどういう内容のことを決めていこうとされているのか、この点について財務大臣の御所見をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 財政力格差ということで、先ほど国と地方の財政力の格差という表現を使われましたが、現在の状況は、国と総体としての地方の財政力の比較を見ますと、一般会計のプライマリーバランスは十九年度で、国が四・四兆円の赤字であるのに対して、地方は五・四兆円の黒字というふうになっております。

 それから、債務残高の税収に対する比率も、国が債務残高六百七兆円、地方交付税等を地方に移転した後の税収が三十九・八兆円ということでございまして、その意味の収入と債務残高を比べますと、十五・三倍になっているということでございます。他方、地方は、債務残高が百九十九兆円で、地方税に地方交付税を加えた収入五十六・四兆円と比較いたしますと、三・五倍ということになっております。したがいまして、債務と収入の比率で見ると、十五倍対三・五倍というふうになっているわけでございまして、国と地方の財政力の格差という意味からいうと、地方の方が財政状況がよくて、国の方が地方総体よりも財政状況が厳しいということになっております。

 ただ、格差という点から見ると、地方公共団体の間での格差が物すごく大きくなっておりまして、例えば、かねがね申し上げておりますが、東京都は、基準財政需要と基準財政収入の差が一兆四千億ある、つまり、財政収入の方が基準財政需要よりも多い。他方、例えば幾つかの財政力の悪い県がありますが、そういう県の、八つの県の合計と同じ額の黒字になっている。こういう状況でありまして、地方の自治体間の財政力格差という問題は、抜本的な見直しが必要であるというふうに考えております。

 そういうわけで、これについてどう対応するかということを、財務省担当官と総務省の担当官の間で率直な意見交換をして、地方と地方の間の財政力の格差を解決していきたい、解消していきたいという方向で今検討を進めておりまして、そういう意味で、偏在度の少ない税をもっと地方に回すというような御意見も他方ありますが、国全体と地方全体の財政の格差は、むしろ国の方が厳しいということでありまして、私どもとしては、国の方の財政状況が地方全体よりも厳しいという状況を踏まえて、その問題の解決もしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

 そういうわけで、これは両方とも非常に密接に関係があるといえばありますが、問題が二つあるということで、国と全体としての地方、それから地方の間の格差という点で二つあって、これをどういうふうにしていくかということは、これからいろいろ相談をいたしますが、この問題を何らかの形で解決する方向に行きたい、こういうふうに考えております。

 そういう中で、これは税制の具体的なあり方にもかかわるものですから、いわゆる経済財政諮問会議で検討している骨太二〇〇七でこれをどう扱うかということは、秋口に検討を進めようとしております税制の抜本改正、その問題との関連もございまして、内容を具体的にどうするかということについては、今いろいろと関係方面と相談をしながら検討中ということでございます。

大串分科員 秋口の税制抜本改正も含めて、今関係者と検討中ということでございました。

 私、骨太についてもう一つお尋ねさせていただきたいんですが、去年の秋から一月の末にかけて、いわゆる骨太で示された、二〇一一年のプライマリーバランス達成に向けた取り組みの中で、これは一月二十九日に諮問会議に出されたペーパーですけれども、「制度改革工程表」という言葉がありました、「五年間の歳出改革を実現するための制度改革工程表」という言葉がありました。

 内閣府の方にちょっと御確認しておきたいんですけれども、これは制度改革工程表ですから、恐らく、社保、社会保障費の一・六兆円、特に国分一・一兆円、これから一年当たり二千二百億円、これをどういうふうにしていくかというふうなこと、これは制度改革を伴わないとやれませんから、そこを議論していくんだろうと理解しています。

 確認なんですが、この制度改革工程表、これをことしの骨太に盛り込んでいかれるということなんですけれども、これは、特に社保に関して言うと、毎年二千二百億円、どうやって国分をこれから削減していくかということに関して、この制度改革工程表の内容をもってして、額も年額ごとにどれだけ削減していくかということがわかるようなものになっていく方向なのかどうか、その点についてお答えください。

松山政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘の基本方針二〇〇六、昨年の骨太方針でございますけれども、社会保障費を含めまして、各歳出分野につきまして具体的な目標を盛り込んだところでございます。

 社会保障に関しましては、国の一般会計ベースで一・一兆円の伸びの抑制ということを踏まえまして、今後五年間においても改革努力を継続するということにされたわけでございますけれども、今後は、社会保障を含めまして、基本方針二〇〇六に示されました歳出改革全体の内容を計画的に実施していくことが必要であるというふうに考えておりまして、現在、まず、高コスト構造の是正ということで諮問会議では議論がされておりますけれども、そういう歳出改革の達成度、それからまた今後必要となる改革、そうしたものについて随時点検をしながら議論をしていくという予定でございます。

 今、先生が御指摘、御質問のありました、骨太二〇〇七の中で具体的に二千億円をどのように達成していくのか、また、来年度、再来年度以降どういうふうにしていくのかということにつきましては、現時点では必ずしも決まっていない、そういう状況でございます。

大串分科員 時間が来ましたのでここでおしまいにしますが、この地方消費税の問題、それから社保の問題、財政再建の問題も含めて、また財金等々の場で議論させていただきたいと思います。

 きょうは、日銀の問題ももう一度確認的にお尋ねしたかったんですが、時間の関係で質問できなくて申しわけございませんでした。またこれも財金の場で議論させていただければと思います。

 ありがとうございました。

古川主査 これにて大串博志君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。久間防衛大臣。

久間国務大臣 平成十七年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆二千九百四十六億二千百万円余でありまして、これに予算補正追加額四百八十九億六千六百万円余、移しかえを受けた額六十三億三千五百万円余、前年度からの繰越額百四十三億二千七百万円余、予備費を使用した額百五十九億二千二百万円余を加え、予算補正修正減少額百八十二億七千五百万円余、移用減少額八千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千六百十八億千六百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆三千百十九億六千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は二百七十三億六百万円余でありまして、差し引き不用額は二百二十五億四千五百万円余であります。

 次に、防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は五千六百十三億八千四百万円余でありまして、これに予算補正追加額九十三億千七百万円余、移しかえを受けた額七十九億四千四百万円余、前年度からの繰越額五百三十一億二千七百万円余、移用増加額八千二百万円余を加え、予算補正修正減少額六億五千九百万円余、移しかえをした額十億六千六百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千三百一億三千百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は五千七百六十六億九千七百万円余、翌年度へ繰り越した額は四百五十四億八千百万円余でありまして、差し引き不用額は七十九億五千三百万円余であります。

 以上をもちまして、平成十七年度防衛庁関係歳出決算の概要説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

古川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院千坂第二局長。

千坂会計検査院当局者 平成十七年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一号から八号までの八件は、会計経理が適正を欠いているものであります。

 同九号は、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、任期制自衛官に係る退職手当制度に関するものであります。

 防衛庁では、防衛庁の職員の給与等に関する法律に基づき、二年または三年を任用期間として任用される任期制自衛官に対して、任期満了時に退職手当を支給しており、この退職手当は、国家公務員退職手当法に基づく退職手当と同様に勤続に対する報償としての性格を基本的には有するものの、短期任用という極めて特殊な任期制自衛官の任用形態を考慮して任期満了時に所定の額を一律に支給するものとなっております。

 そこで、退職手当の支給を受けた任期制自衛官の職務への従事状況を検査したところ、任用期間中に育児休業等により職務に従事していない期間のあった任期制自衛官に対しても、所定の額の退職手当が減額することなく支給されておりまして、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官との間に不均衡を生じている事態が見受けられました。

 このため、防衛庁に対し、任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、陸上、海上、航空各自衛隊が使用する食器の調達に関するもの、その二は、部隊輸送の経費に使用する旅行券に関するもの、その三は、インマルサットサービス使用契約における割引サービスの適用に関するものであります。

 これら三件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

古川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。久間防衛大臣。

久間国務大臣 平成十七年度決算報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。

 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、まことに遺憾であります。今後、このようなことのないよう会計法令の遵守を図る等再発防止に万全を期する所存であります。

 次に、任期制自衛官に係る退職手当制度につきましては、指摘の趣旨を踏まえ、育児休業等により職務に従事していない期間を退職手当の算定上適切に取り扱うよう措置を講じてまいる所存であります。

 次に、陸上、海上及び航空各自衛隊が使用する食器の調達につきましては、各自衛隊の統一的な仕様書を作成し、一括調達する処置を講じたところであります。

 また、部隊輸送の経費に使用することとして購入した旅行券の購入状況及び使途につきましては、今後は旅行券の購入を行わないこととしたところであります。

 さらに、インマルサットサービスの通話等料金につきましては、使用実績等を勘案し、割引サービスを受ける処置を講じたところであります。

 以上、これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層努力する所存であります。

古川主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川主査 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古川主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。平岡秀夫君。

平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。

 防衛庁、防衛施設庁の決算についての質問、何か私一人しかいないということなので、しっかりと答えていただければというふうに思います。

 まず最初に、昨年の十一月七日に安保委員会で例の官製談合事件について審議をした際に、私からもいろいろと質問させていただきました。その際、公正取引委員会に対して質問させていただいたところ、当時の公正取引委員会の方からは、防衛施設庁が発注する建設工事の入札談合事件については現在調査をしているところだというような答弁があったわけでありますけれども、あれから約半年がたとうとしているという状況にあるので、今、公正取引委員会としてはその調査がどうだったのかということについて、ここで確認を求めたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 本件につきましては、現在、公正取引委員会としての最終的な措置をとるための事前手続の段階にあります。現在、関係人に対しまして、今後予定される排除措置命令及び課徴金納付命令の内容を通知したところでありますが、今後、関係人からの意見の提出を受けまして、公正取引委員会としての措置について決定することとしているところでございます。

平岡分科員 今後というのは、最終的にはいつごろの予定なんですか。

山田政府参考人 最終的な措置の時期につきましては、今、事前手続におきまして、関係人からの意見提出の状況等にも関係しておりますので、具体的な時期についてはちょっと差し控えさせていただければと思いますけれども、速やかに手続を進めてまいりたいと思っているところでございます。

平岡分科員 そのときの私の質問の中でも、入札談合等関与行為等の有無についてもちゃんと調べるんですねということで指摘させていただきまして、当時念頭に置いていたのは、防衛施設庁の調査報告書の中には、関係職員からの聴取では、予定価格に関する情報を外部に漏らしたとの調査結果は得られなかったというふうな内容になっていたということで、どうも常識からすると、なかなかそんなことを素直に受け取れないなということもあったので、それについてもちゃんと調べるんですねということを確認したわけでありますけれども、公正取引委員会との関係で。その点は、今どういうふうに事実関係を把握しておられますか。

山田政府参考人 本件につきましては、御指摘がありました入札談合等関与行為の有無についても調査を行っているところでございます。この関与行為の判断につきましては、独占禁止法違反行為が前提となっておりますので、最終的には、その結論を踏まえて公正取引委員会としての判断をしたいと思っているところでございます。

平岡分科員 今のお答えだと、今までの事実関係の調査の中では、入札談合等関与行為等、特に予定価格に関する情報の漏えいについては、調査をした結果としては、あったんですか、それともなかったんですか、どっちですか。

山田政府参考人 その関与行為の有無につきましては、現在調査中で、最終的な結論が出ておりませんので、その結論について今お話をすることは差し控えさせていただければと思っております。公正取引委員会の措置を最終的にとる段階で、関与行為の有無については対外的に御説明できると思っております。

平岡分科員 調査の性格上、ある意味では今のような答弁でやむを得ないところもあると思うんですけれども、それにしても、この前委員会で審議してからもう半年近くもたっているという状況の中で、いまだにこれについての最終的な調査結果が出てこないというのは、幾ら何でもちょっと遅過ぎるという気がしますね。

 何かまた例のパターンで、よくあるんですけれども、国会が終わったらそういう調査結果が表に出てくる、それで何か我々が質問しようとしてもその機会を失ってしまう、こんなことがたびたびあるわけですよね。まさか、公正取引委員会は国家行政組織法第三条の独立性の高い委員会ですから、そんなこそくなことはされないとは思いますけれども、やはりできるだけ早く調査結果を明らかにできるようにしていただいて、我々の国会審議でしっかりとこういう問題についても議論ができるようにしてほしい、してほしいというのはちょっと変かもしれませんけれども、ちゃんとやるべきだということを重ねて私の方から要請しておきたいというふうに思います。

 その問題は、また公正取引委員会の調査結果が出たところでしっかりと、新しい組織になった防衛省に対して質問していきたいというふうに思います。

 そこで、次の話題に移っていきたいと思います。

 SACO関係経費というのが、予算の説明の中で、いろいろ防衛庁が作成した資料の中でも出てくるわけでありますけれども、SACO関係経費というのは一体どういうもので、どういう根拠に基づいて予算手当てされているのかという点について、ちょっと大臣の理解をここで示していただければと思います。

久間国務大臣 SACOで合意しました内容を実施していくために、実行するためには地元にいろいろな負担を強いることにもなるわけでありますから、そういった流れの中で、その市町村当局、地方自治体のいろいろな必要とする事業について助成していく、そういうような必要とする経費をSACO関連予算として掲げているわけであります。

平岡分科員 その予算措置をすることの法的根拠というのは何かあるんですか。

久間国務大臣 これは法的根拠ではございませんで、予算を国会で審議していただいて、その中で実行していく、そういう仕組みになっております。そういうところが、やや、今までは法律に基づかないでやっておりましたので、今度の米軍再編の問題についてはきちんと法律で位置づけた方がいいんじゃないかということで、そういうような手法をとったわけであります。

平岡分科員 この質問は、今から四年ぐらい前に予算委員会の第一分科会で私もさせていただいておりまして、SACO関係経費というのは、生活環境整備法の第八条に直接基づくものではないけれども、その趣旨に準じて補助するものだということで、いわゆる予算補助だという位置づけになっているというふうに伺っています。

 そういう状況の中で、私は、選挙区の中に岩国市というところがあるわけでありますけれども、たびたび指摘をさせていただいておりますけれども、岩国市の新しい市役所、新庁舎の建設経費補助というものが、平成十七年度、十八年度に予算手当てされているというふうに伺っております。これもSACO関係経費ということで行われているというふうに聞いておりますけれども、SACO関係経費の中でも幾つか事業というものが分類されているようでありますけれども、これはどの事業で、平成十七年度、十八年度、幾ら予算手当てされているのかということを答弁いただきたいと思います。

北原政府参考人 平岡先生に御答弁申し上げます。

 今の御指摘の点につきましては、平成十七年度が約二億九千六百万円、これは庁舎の本体工事でございます。それから、十八年度が、同じく庁舎の本体工事でございますが、約十一億三千万円でございます。

 なお、それに先立ちまして、十五年度に敷地調査あるいは基本設計等五千九百万円、十六年度には実施設計として九千九百万円を支出しているところでございます。(平岡分科員「SACO関係経費のどの事業なのか」と呼ぶ)

 先ほど大臣からも御答弁させていただきましたけれども、SACO事業の円滑な処理に資するため、そういった観点からやっておるものでございます。

平岡分科員 これまで、平成十七年度、十八年度については、岩国市の新庁舎の建設経費補助として約十五億円程度ですか、手当てされているというような状況にあるようでありますけれども、この岩国市新庁舎の建設経費補助についての考え方というのは一体どういうものだったんでしょうか。特に、どのように補助額というものを算定してきたのかという点について、御答弁をいただきます。

北原政府参考人 私ども、補助額の算定に当たりましては、先ほど先生からも御指摘いただきましたけれども、この補助金につきましては、環境整備法第八条の考え方を使用して補助をしてきたところでございまして、大きく三つ考え方が言えるかと思います。

 まず、補助対象の面積につきましては、総務省の起債許可標準面積の算定方法を使用しております。それから二番目に、補助対象事業費は新営予算単価をそれぞれ参考として算出をいたしております。そしてまた三番目の補助額でございますけれども、これは、岩国市の建設工事の工程あるいは当庁の予算の状況を踏まえまして、各年度ごとに定める額ということできておりまして、なお、ちなみに、その今私が申し上げた旨は、岩国市にも御説明をいたしまして、理解をいただいているところでございます。

平岡分科員 今御答弁いただいたように、その問題も二年前の予算委員会の分科会で、どういう考え方で補助しているのかということで説明をしていただいて、その考え方はしっかりと岩国市当局とも協議の中で示してきているんだというようなお話であったというふうに思います。そういう意味では、ある程度の信頼関係に基づきながら、予算という形での国会での議決を経なければなかなか最終的な額は決定しないという事情の中ではあるけれども、考え方についてはしっかりと示してきたというようなことで御説明をしていただいておりました。

 ところが、ことしの予算審議の中でもちょっと議論したかったんですけれども、平成十九年度予算については、これまで計上されてきた建設経費補助については予算措置されなかったというような事態が発生したようであります。

 岩国市側の説明によれば、平成十九年度には三十五億円程度補助してもらえるのではないかというふうに期待をしておったと。この期待というのは、先ほど来から説明していただいておるように、防衛施設庁の方から、どういう考え方に基づいて、どういうふうに算定をして補助額を決定するのかという、その考え方に基づけば、当然三十五億ぐらいのものは来るというふうに思っていたわけでありますよね。

 そういう意味でいくと、今回、平成十九年度予算で、この岩国市新庁舎建設経費補助が予算化されなかった理由というのは一体何なんでしょうか。

久間国務大臣 これは、先ほど話しましたように、SACOの関連事業として予算で補助を措置してきたわけでありますけれども、SACOの事業で予定しておりましたKC130を岩国に移すという計画が今度変わりまして、米軍再編問題を中心に議論しましたときに、厚木におります艦載機を岩国に持ってくる、KC130については、岩国にずっと常駐して、そこでオペレーションその他、ローテーションもあったわけでございますけれども、それを新田原とかあるいはグアムへ持っていく、そういうようなことになりましたので、その分が、事業が変わってしまいましたので、今度は、新たな事業に基づく、米軍再編に基づく事業として取り組むということになったわけであります。そういうことで、予算の申請を、予算の概算要求の段階でこれを外して様子を見たということでございます。

 そのときに、岩国市の方からは、これは受け入れられないというような市長さんの話が出てまいりましたので、そうなってまいりますと、今度の米軍再編の問題については、賛成してもらって円滑に実施するための事業として、法律までつくってやろうと思っているときでございますから、反対と言われますと、これはどうしていいのか、とにかく予算上は計上しない、そういうようなことを夏の段階でとったんだと思います。

 私が就任しましてからその辺の経緯を聞いてみますと、そういうようないきさつだったようでございまして、今から、これは新しい米軍再編の事業の一環として予算づけができるように、そういう方法をいろいろと講じたいと思って、今、岩国市当局と協議をしているところであります。

平岡分科員 今大臣が新田原とか何とかと言いましたけれども、ちょっとそれは訂正の文言が入っているんじゃないかと思います。

 米軍再編の中で、KC130の運用とか訓練というものについて、鹿屋とかグアムというのを、一部変更したというのは、確かにそうかもしれませんけれども、それを変えたのは、別に岩国市がそう変えてくれということで要請したわけじゃないわけですよね。それは、日米間が勝手に自分たちの防衛のあり方の視点から変えたのであって、岩国市に責任がある話じゃない。そのように自分たちで変えておいて、事情が変わったから、今度は、今まで期待されていた、お互いに信頼関係を持って進めてきたこの三十五億円にも上る建設経費補助をしないという判断をするというのは、私は、これは幾ら何でもひどいんじゃないかというふうに思いますね。

 私も、この前、予算委員会の分科会の議事録をちょっと読み直してみたら、まさに私が心配していたことがもろに起こってしまったという感じがするんですよね。こんなふうに私は言っていますね。「この段階になっても、」これは二年前ですけれども、「まだ具体的な補助額というのが決まらない、大体の建設規模というのがわかっているにもかかわらず決まっていないということで、どうも地域の人たちの中には防衛施設庁に対する不信感みたいなものもちょっと出てきているわけでありますね。」というのがあって、「例えば、厚木のNLPを受け入れなければ補助額が少なくされてしまうのではないだろうか、もっと何か防衛施設庁の、あるいは防衛庁の方からいろいろな条件が出されて、それを受け入れなければ補助が少なくなってしまうのではないかというような危惧があるんですけれども、そんなことはないですよね。」と私は聞いておるんですよね。

 それに対して答えている中身は、例えば補助対象面積であるとか単価が変わるかもしれないというような不確定要素、変動要素というのはあるというような説明はちょっとありますけれども、まさに米軍再編の中で位置づけが変わってしまってこうなるかもしれないというようなことは、一切説明もなかったというわけですよね。

 そういう状況の中で、先ほど言ったように、日米政府で自分たちの都合で変えていた事情を、これまで受け入れを政府の方針に従って表明してきていた、KC130について受け入れを表明してきた地方公共団体に対して非常に厳しい措置を講じているというのは、私はどうも納得がいかないんですよね。

 大臣、どうですか、おかしいと思いませんか、こんなこと。

久間国務大臣 答弁する前に、先ほど新田原と言いましたけれども、これは鹿屋でございますので、訂正させていただきます。

 これは、確かに、国の事情で変わったのは事実でございます。しかしながら、米軍再編という大きな動きの中でこれをすべきである、そして、厚木が非常に過密といいますか、今、密集地でございますので、それを国内のどこかでやるということになったときに、岩国が沖合に飛行場をつくって、比較的岩国の場合は受け入れてもらえるんじゃないかということから、そちらの方に、国全体のバランスを見たときに、そういう決定をさせていただいたわけでございます。

 それは、岩国市から見れば、うちの事情じゃないじゃないかというおしかりはあろうかと思いますから、私も、内心、そういう点については非常に気になるところでございますが、国のそういうような方針等に基づいて、今度、米軍再編の事業としてやるわけでございますから、そこのところは、どうか岩国市においても理解していただきたい、そして、ほかのそういう形で受け入れる市町村等と同じように、何とか受け入れてもらいたいということで、今お願いしているところでございます。

 平岡委員のおっしゃるのは、よく気持ちとしてはわかるわけでございますが、ただ、うちの方は、その都度その都度、予算の編成によって、予算状況によって補助はいたしますということをかねてから言っておりますので、では、予算を計上するのに、昔のSACOで決めたから、今度の米軍再編には反対だけれども、そういうことに関係なく予算をつけていいかとなりますと、これまた国民の税金でございますだけに、そこはまた何かの方法を考えなきゃならない。

 そういうことを考えますと、とにかく岩国市に御理解をいただいて、先ほどNLPとおっしゃいましたけれども、それはやらないということだけははっきりしておるわけでございますので、そういう中で折り合いをつけたいものだと思っているところでございます。

平岡分科員 気持ちはわかるというふうに言われたのですが、政治家ですから、気持ちをわかっていただいただけで、はい、そうですかというようなことではなくて、気持ちがわかるのなら、それを具体的な政策なり、あるいは予算手当てなりするというところまで言っていただかなければ、政治家としての役割を果たせないというふうに私は思います。

 そういう今までの説明を聞いておって非常に思うのは、ああ、そうか、KC130の受け入れそのものは、もういろいろな形で米軍再編の中に取り込まれてしまったのか、米軍再編の中で考えていきたいというふうに言われるのであれば、逆に、岩国市側の立場に立てば、KC130の受け入れそのものについても、この話はもうなかったことにしたい、我々はKC130の受け入れそのものに反対であるというふうに態度を変えても、政府との関係では何の問題もない、政府との信頼関係を傷つけるものでもないし、政府から今仕掛けられているものについて、同じようなレベルでこれは返答していくということもできるんだろうというふうに私は思うんですね。

 そういうことで、KC130の受け入れそのものについても認められないというふうに岩国市が方針変更しても、国は文句を言わないということでよろしいですね。

久間国務大臣 岩国市、市民の皆さん方にも御理解をいただいて、また市議会にも御理解いただいて、市長さんにもまたお話しして、そういうふうなおっしゃり方じゃなくて、何とかKC130も見ていただいて、そのかわり、また一部は自衛隊機を厚木の方に移すというようなこともしながら、とにかく、沖合に飛行場ができて、ここならば、バランスとして、厚木に今非常に集中している騒音等をもう少し緩和することができるという国家的見地からも御理解いただいて、我々としても、先ほど岩国市のお立場もわからぬでもないと言ったのはそうですけれども、また、現在の状況下で全国を見たときには、岩国で引き受けてもらうしかないんじゃないかというこちらの立場もひとつ理解していただいて、何か折り合いをうまくつけてもらえないものかなと思って、今お願いをしているところであります。

平岡分科員 まだいろいろと議論したいんですけれども、時間が余りないので、最後、ちょっとこの問題に関連して言うと、この岩国市新庁舎建設経費補助について、これから、特に平成十九年度ですけれども、平成十九年度中にはほとんど新庁舎が完成してしまうわけでありますから、どういう対応が考えられるのか、この点についての大臣の見解をお示しいただきたいと思います。

久間国務大臣 最近、市議会等でも、KC130だけではなくて艦載機の問題等も含めまして、国との関係について折り合いをつけよう、そういういろいろな意見等が出ておりますし、自治会等でもそういうふうな話も出ておりますから、市長さんの個人的な見解というのもさることながら、地方自治体としてどういうような態度をとっていただけるか、その辺も見ながら判断していきたいというふうに思っているところでございます。私たちの希望としては、新しい米軍再編のそのシステムに乗っかっていただけたらというふうに思っているところであります。

平岡分科員 ちょっと気になる発言がいろいろあって、時間がないのであれですけれども、市長の個人的見解というふうに言われても、市長は、基本的に言えば、住民投票も行い、それから市長選挙の中でも、受け入れ容認というような立場に立っている候補者との間で市長選挙を戦ってきたわけですよね。そういう立場にある市長の考え方を個人的見解ということで片をつけられるのは、これは住民無視の発言だというふうに私は強く抗議をしたいと思います。

 それはそれとして、十九年度、新しい米軍再編の枠組みの中で考えていきたいと言われたんですけれども、では仮に、岩国市新庁舎の建設経費補助をするとした場合、どういう枠組みでやるんですか。今参議院に回っている米軍再編円滑化実施のための特別措置法、その中でやるということですか。どういうことですか。

久間国務大臣 我々の考えとしては、その中でやりたい。といいますのは、中身につきましては、厚木の艦載機が岩国に移っていくという計画をロードマップに載せておりますので、そのロードマップが円滑に実施されるべく法律をつくっておりますから、あの中でやっていきたいというふうに思っているわけであります。

平岡分科員 ちょっと今、私、手元に法案を持ってきていませんけれども、第何条のどこの規定に基づいて、この岩国市の新庁舎の経費補助ができるんですか。

北原政府参考人 大臣が御答弁申し上げましたのは、今、衆議院を通過し、これから参議院で御審議をいただく特措法については、いわゆる交付金の話があるかと思います。

 御承知のように、これから参議院で御審議をいただく交付金にあわせまして、いわゆる私どもが今までやってきております環境整備法等がございます。そうしたものを、私どもといたしましては、先ほど来御議論が出ておりますけれども、予算の範囲内において適切に判断をしていく、そういうことになります。

平岡分科員 大臣、違うんですよ、特措法の枠組みの中でやるんじゃないんですよ、もし仮にやるとしたら。今までのSACO関係経費と同じような枠組みの中でやるということなんですよ。ということは、この米軍再編の円滑化特別措置法とは関係ない枠組みでやるということなんです、あくまでもこれは。そこのところを、何もかもその再編特措法の枠組みの中あるいは再編の枠組みの中でしか考えられないんだということとは違うんだということをまず理解していただきたいというふうに思います。だから、そこは事務方ともよく詰めてくださいね。

 ちょっと時間がないので、次の質問に移ります。

 これに関連して、きのうも、国土交通省所管の関係で愛宕山地域開発事業の話についてちょっと触れたんですけれども、大臣、報告を受けておられるかどうかわかりませんけれども。

 今、この開発事業が非常に厳しい状況になっているということで、地元の方では、場合によっては米軍住宅として利用するということも考えてもらえるのではないだろうかというふうなことを言っているようでありますけれども、防衛省としてはそういうことを考えているんですか。

久間国務大臣 これもまた、地元との、市長、市当局とのいろいろな話し合いもしなければなりませんけれども、場合によってはそういうようなこともあり得るんじゃないかというふうな感じもいたしております。

 ただ、その場合も、行き詰まっているからとおっしゃいましたけれども、国であるいはまた米軍の住宅として提供する場合には、やはり適正な、時価でないといけませんので、その辺の問題については、差額が生じた場合には、それはこちらの、国の方で処置するということはできないという、そこは御理解賜りたいと思います。

平岡分科員 大臣、ちょっと先走って答弁していただいたのでありますけれども、米軍住宅利用することについて言えば、もともと都市計画法上の問題もこれはありということで、もしそういうことにするということであれば、都市計画の変更を伴う可能性もあるということで、もう一度住民縦覧といったような手続も必要になってくるという大きな手続があるわけでありますから、方針を示されるのは結構でありますけれども、まだまだ住民との関係では大きな問題が残っているということをまず理解していただきたい。

 それから、先ほどどういう価格で購入するかという点については大臣として概略示されましたけれども、そこのところをもうちょっとしっかりと答弁してもらいたいと思いますので、これは大臣じゃなくて事務方で結構でございますから、仮に米軍住宅として利用するという形で宅地を購入する場合、一体どういう価格で購入することが可能なのか、その点についての制度をちょっと説明していただきたいというふうに思います。

 地元の方では、もともと計画されたのが坪当たり三十三万円であったものが、地価がちょっと下落している関係上で、坪当たり二十二万というような状況になってきている、それで赤字がふえてくるわけですね、その意味で、この赤字を解消するためにも、ぜひとも坪当たり三十三万ぐらいで買ってほしいという要望がかなりあるのではなかろうかというふうに私は思いますけれども、そういうことは可能なのかどうかという点について、大臣は先ほど概略答えられましたので結構でございますから、ちゃんと正確に、事務方の方から、どういう仕組みになっているかということについての説明をお願いしたいと思います。

北原政府参考人 私どもがいわゆる施設区域として買収する場合には、一般論でございますが、国の基準に基づいて価格を算定いたします。そしてまた、その具体的な買収に当たりましては、国の基準に基づきまして、近傍類似の土地の価格に不動産鑑定士によります評価、売買実例、土地の形質、環境などを勘案した上で算定し、買収することになっているところでございますので、今御指摘の点について、今この段階で具体的に御答弁することはできません。考え方は今申し上げたとおりでございます。

平岡分科員 時間が来たのでこれでやめますけれども、今説明されたことは、どこでどういうふうに決まっているんですか。

北原政府参考人 今私が申し上げました点は、大変古いものでございますが、昭和二十七年の閣議了解、駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償等要綱といったものが出されておりまして、そこで基準が示されておりまして、それに基づきまして買収価格を算定することになるわけでございます。

 その具体的な価格を算定するに当たりましては、先ほど申しましたように、第三者の不動産鑑定士等による評価などを参考にしているところでございます。

平岡分科員 時間が来たのでこれでやめますけれども、大臣、おわかりになるかどうかわかりませんけれども、本当に今岩国市は大変な状況になってきておって、住民間で物すごく、ある意味では亀裂が生じてきている。お互いに、受け入れ容認、反対ということで署名運動まで開始しようというようなことになっているということで、このままいったら、私、これは大変なことになるんじゃないかと。今まで非常に基地問題に対しては寛容であった市民が、一気に逆の方向に行ってしまうという可能性すら私は感じるという事態になっていることを大臣にお伝えして、しっかりと大臣に現地の状況を踏まえて適切な対応をされることを要請して、私の質問を終わります。

古川主査 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

古川主査 昨日に引き続き文部科学省所管について審査を行います。

 この際、会計検査院から発言を求められておりますので、これを許します。会計検査院鵜飼第四局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十七年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一八号は、公立学校等施設整備費補助金の経理が不当と認められるもので、耐震補強工事に使用する無収縮モルタルの所要量を過大に計上したため、補助対象事業費が過大に算定され、国庫補助金が過大となっていたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報に関するものであります。国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報として開示されている業務費用、業務収益及び帰属資産の計上内容が国立大学法人ごとに区々となっているなどの事態が見受けられ、国民その他の利害関係者に対する説明責任を果たすため会計基準等が求めている財務情報の比較可能性が十分に確保されていないと認められましたので、文部科学省に対して、実務指針等の整備を行うことも含め、統一的な取り扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、各国立大学法人がセグメント情報に実態を反映した額を計上することなどにより、各法人における経年比較を可能とするほか、各法人間における財政状態及び運営状況の比較可能性を確保するとともに、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進するよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、私立高等学校等経常費助成費補助金の算定に関するものであります。私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の算定に当たり、都府県において特別な助成をしていない私立学校の生徒等数や、加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っていない私立学校の生徒等数を加算単価の対象となる生徒等数に含めて報告していたり、文部科学省において都府県から報告を受けた加算単価の対象となる生徒等数を、配分のための基礎資料に誤って転記するなどしたことから生徒等数が過大になっていたりしていたため、加算単価が過大に算定されていて、補助金の算定が適切に行われていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部科学省では、十八年九月に都道府県に対し通知を発するなどして、加算単価の対象となる各事由の内容を明確に示したり、加算単価の対象となる生徒等数の確認が適切に行えるよう事業計画書の様式を見直したりするなどの処置を講じたものであります。

 その二は、科学研究費補助金の経理に関するものであります。この補助金の管理を行っている研究機関において、研究用物品の購入に当たり、業者が保管している納品書等の日付と研究機関が管理している納品書等の日付とが三十日を超えて乖離していたり、中には、補助事業の期間外に納品されていて補助の対象とならない研究用物品も見受けられたりしていて、事実と異なる会計経理が行われており、補助金が適切に管理されていなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部科学省では、十八年九月に研究機関に対し通知を発するなどして、研究用物品の納品検査を確実に実施する事務処理体制の整備を行うことなどを具体的に明示し、各研究機関における事務処理体制を見直させるなどの処置を講じたものであります。

 なお、以上のほか、平成十六年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理について意見を表示いたしましたが、これに対する文部科学省の処置状況についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

    ―――――――――――――

古川主査 質疑の申し出がありますので、これを許します。篠原孝君。

篠原分科員 民主党の篠原孝でございます。

 今、教育問題に関連していろいろな議論が行われております。私から見ますと、大事な議論ですけれども、どちらかというと、何か雲の上の空中戦のような気がいたしまして、あればっかりやっていたんじゃ進まないんじゃないかと思っております。

 それで、きょうは、二つの観点から教育問題をちょっと掘り下げてみたいと思います。一つは過疎地における教育問題、もう一つは学校給食についての問題でございます。

 過疎地、中山間地域を振興しなければいけないという声があちこちにありまして、これに反対をする人はいないんだろうと思います。なぜ中山間地域あるいは離島等から人がだんだんいなくなるかというのは、鶏が先か卵が先かという問題があるかと思います。農林水産業がうまくいかないというのがあるかと思いますけれども、一つの理由として、子供たちがいなくなると子供の教育がうまくいかなくなるという実態が見られます。

 長野県の場合、私の選挙区なんかは、あちこちに山の中の分校とかがいっぱいあるわけです。現実にどうなっているかというと、だんだん子供がいなくなる悪循環なんです。そうすると、分校が廃校になる。そこから、ひどいところは例えば六時半にスクールバスが迎えに来る。お父さんやお母さんもくたびれ果てている。だから、コンビニのおにぎりで朝御飯を食べさせて、学校に送り出さなければいけないというふうになっているんです。教育環境が非常によくなくなっている。これでは大変だからといって、では、子供たち、若いのだけ里の方へおりるかと。子供、孫がいなくなっちゃうと、じいちゃん、ばあちゃんだけになってしまうというようなのがあるわけです。これは、どっちが先かというのがあるんです。

 それから、お医者さんがいなくなっている。困っているんです。今はもう全国的な問題として、産科医、小児科医、麻酔医とかいうのがあります。長野県の場合などは、平地の長野盆地のところですらいなくなってきている。そして、いろいろ優遇しているんです。例えば二千万円ぐらいの手当てしかないのに、四千万円出すから来てくれと言っても、お年寄りしか来ていただけない。まあ、ベテランのお年寄りのお医者さんでも、来てもらえればいいんですけれども、子供がいる若手のお医者さんがなかなか来てくれない。理由の一つとして、子供の教育がままならない、友達もちょっとしかいない、社会性も育たない、あるいは先ほど申し上げましたように、スクールバスで里に行かなくちゃならないというようなのがあるわけですね。

 これは問題でして、予算委員会でも私ちょっと地域間格差ということで三月一日に質問させていただきましたけれども、そのときも申し上げました。同じ条件でいったら、個人の力量、努力の差によって差が生まれるのはしようがない、だけれども、地域によって格差が物すごくあるわけですね。先ほど申し上げましたが、分校が廃校になって、六時半に学校に出なくちゃいけないというような子供たち、こういう人たちがふえているわけです。これを何とかしてやるのが政治であり行政だと私は思うんです。

 過疎地と都市部の教育における地域間格差というのは余り問題にされていないようですけれども、文部科学大臣、この点についてどのようにお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 難しいですね、これは。先生おっしゃったように、どちらが鶏で卵かということだと思いますよ。もっとさかのぼっていけば、我々の使っている社会システムによってこの社会を動かしていくのがいいか悪いかということにまでなりますよね。あるいはまた、私たち自身がいわゆる市場のメカニズムを超える価値をどのように政治の中で位置づけていくかということにもかかわってくることで、簡単には答えは出ないと私は思います。

 私の立場からいえば、やはりできるだけのことをしてあげるというのは、これは文部科学大臣としては当然のことだと思います。しかし同時に、地方の分権を一方で推進しろと言う、そして財政の再建を言う、やはりいろいろなバランスをとって考えていかなくちゃいけないことですから。

 しかし、工夫はあると私は思うんですね。やはり、教育という観点だけからいえば、ある程度の子供がやはり集まっている学校でないと学校としての機能が果たせないんですよ。ですから、先生が今中山間地のお話をされましたが、私の地元の京都という百五十万都市でも、中心部はみんなドーナツ現象で、五つぐらいの学校が統合しているんですね。しかし、ここは比較的距離が近いから通いやすいわけですよ。

 必ずしも数が少なくなった山の中の学校を廃校にするのではなくて、いろいろ試みを各教育委員会の自主的判断でやっておられますが、むしろ山の中の学校を残して、自然の価値を大きく見る御父兄がそこへ通わせておられるという学校もあるんですよね。

 ですから、これはやはり知恵の出し方だと思いますので、今の過疎現象を前提に、すべてそれを解消しますということを言うと、日本の社会システムと全く違うことをやらなければなりませんので、どこかで折り合いをつけながらやはりやっていかないといけませんから。

 スクールバスというお話がありましたが、スクールバスの補助を出しているだけで事済めりというわけでもありませんから、いろいろな成功事例をお話しして、やはり市場経済を超える価値、環境問題もそうでしょうし、自然の中で人間がゆったりする気持ちを持つということもそういうことなんだと思いますから。それは、私どもとしては、必ずしも中山間地の学校をすべて廃校にするということじゃなくて、こういう成功事例もあるから、地方分権の中で、地方自治体の教育委員会の判断で、むしろ町から中山間地へ通わせるという学校のあり方も考えてほしいとかということをやってみたいと思います。

篠原分科員 大臣、私の次の質問の答えをもう先取りして言っていただきました。

 いつも私は表をつくって皆さんにお配りして質問をさせていただいているんですが、きょうも六種類ほど、皆さんのお手元にお配りしたので見ていただきたいんです。

 一枚目、二枚目は今の過疎地の教育の問題について。ちょっと見ていただきたいんですが、最近十年の「長野県の廃校施設現況一覧」、ちょっと字が小さくて済みませんが、これはもっと前の方が物すごくあったんです。

 私も分校が二つある小学校で教育を受けました。ただ、私の場合は本校でした。一年、二年の複式学級のところで、三年になると山を越えて本校に来る。もう一つは、四年まで分校にいて、自転車に乗れるようになると、自転車に乗って五年、六年で来る。もちろん今は、当然ですけれどもスクールバスができましたから、その分校は二つとも廃止になっておりますけれども、非常に遠くから通ってきたりしていた。そういうのが軒並みこの二十年、三十年、がたがたになっている。最近は少ないんですけれども、これだけあります。

 これをちょっと見ていただきたいんですが、長野県から取り寄せた資料でございますけれども、右側の方は現況、廃校になった後、どうしているかというもの、校舎として利用、ほかの施設に転用、取り壊し、古いから仕方がないんですけれども。

 今大臣がお答えいただきましたけれども、気のきいた人というのはわかっているわけです。ですから、山村留学があって、山村留学は長野県が一番受け入れています。しかし、これがだんだんままならなくなってくるわけですね。お年寄りで、とても朝飯をちゃんとつくれないとかというふうになったりしてきているので。これは公的な施設なんかつくってやったら、大都会の真ん中で全寮制の寄宿舎スクールなんて考える人はいないと思います。田舎でそういうことをやったら非常にいいんじゃないかと思います。

 それで、今大臣が触れられましたとおり、僕は逆転の発想に立っていいんだろうと思うんです。いい環境なんです。ですから、スクールバスは逆に走らせる。平地部、長野ですと長野盆地の小学校、中学校の生徒がスクールバスに乗っていって、山の中の環境のいいところで勉強し、そして遊びも川や山を走り回って、四時半になったら、お父さんやお母さんの帰ってくる時間に合わせてスクールバスで帰ってくる。サラリーマンの家庭の子が多いわけですから。そういうようなセットが考えられるんだろうと思います。

 そういったことをなかなか考えられる人がいない。お金はそんなに出す必要はないと僕は思います。今大臣が触れられましたとおり、優良事例を示す、こうやったらいいですよと。これをやったら、気のきいた父兄ですと、そっちの方がいいんじゃないかと。二時か三時に帰ってきちゃう、すぐ隣の小学校だったら。ところが、自分が帰ってくるまで田舎で遊んでいて危険もない。どこかへさらわれる危険もない。ただ、クマが出てきたりするおそれはあるんですけれども。そういう心配はありますけれども、自然の中でよく育つ。こういったことをやっていくべきじゃないかと私は思います。

 これはもう大臣お答えいただいたので、ここの点はいいです。

 それで次、二ページ目のところを見ていただきたいんですが、これももう悲惨でして、小中学校だけじゃなくて、今や、長野県の場合は高校に波及しているわけです。今までずっとあった高校がつぶれるんです、人口が減っていったりするからしようがないといって。私は長野の北の端です。ここの、二番目にある長野県中野市というところなんです。中野高校と中野実業高校というのがありました。これが統合されて、中野立志館高校というふうになるんです。名前は立派、志を立てる。愛唱曲「故郷」のところに出てきますけれども、私のところは中山晋平の生まれたところでありますし、作詞家の高野辰之、「春の小川」「故郷」それから「朧月夜」ですね、この二人の生まれたところでして、日本のメロディー、日本の童謡、私の地元ででき上がっているという、ちょっと自慢話でございますけれども、そういう環境のいいところでございます。しかし、その高校が一つになって、八十人減らされる。

 それより一番最北の市が飯山。その上です。二つあった高校が一緒になって、四十人減らされる。それから、これは南西の方ですけれども、木曽でも同じようなことが行われている。これをほっておくと、どんどんこうなっていってしまうわけです。

 これも一工夫ありまして、文部科学省の方でこういうふうにした方がいいというのを言っていただきたいんです。

 どういうことかといいますと、高校なんか、古い高校も、どこにできているかというと、町の真ん中にはできていないんです。大体外れにできている。真ん中にある必要はないんです。それが、自転車かバスぐらいでしか通えなかった。今電車があり車がある、スクールバスもある。相当遠くから行ける。だから、これも逆転の発想で、今スクールバスを平地から中山間地域と言いましたけれども、ここのところでいいますと、飯山です。飯山線というのは、鉄道マニアには、私はよく知りませんけれども、只見線と飯山線が車窓のきれいな二大ローカル線というので有名なんです。菜の花が咲いてきれいで、千曲川の沿川を走っているわけです。ところが、全然乗る人がいなくなって、あと何年もつかと、一生懸命地方自治体がバックアップして支えているわけです。

 ちょっと逆転の発想に立てば、こういうことができるわけです。長野市の人口はふえているわけです。みんな山からおりてきて、県庁所在地の里に来ている。だけれども、飯山線があるんです。だから、つぶさずに、長野市の人たちが飯山線に乗って飯山の高校に通ってくる。逆の人もいたりするわけですから。そういうことを奨励して、高校になると、もう通える能力があるわけですから、電車に乗っていく、あるいはバイクじゃ危険かもしれませんが、電車があるわけです。電車に乗ってもらうのもいいわけです。電車の中でべちゃべちゃ話して、友好関係も生まれる。

 最近、コミュニケーション能力に欠けた人たちがいっぱいいますけれども、私なんかは、実は一時間かけて電車で通ったんです。長野電鉄、もう一つの方です。今、気がついてみると、だれが一番親しいかというと、クラスの者も親しくないというわけじゃないんですが、一番親しいのは、電車の中でべちゃべちゃしゃべっていた友達なんです。非常にいいことなんじゃないかと思うんです。ですから、そういうことをやっていただきたい。

 そういうのをだれがねじをかけ直すか、これは長野県が工夫してくれればいいんですけれども、なかなかそういうことはしない。先ほどの例もありますけれども、学校を、幾らでも利用できるのに、利用しないで取り壊しちゃったり、何とか施設やスポーツ施設とかにしちゃっている。立派な建物があるんです。高校も同じなんです。これもやはり学習環境がいいわけですから、こういったことを文部省の方から、こういうのは地方分権に反しないと僕は思う、いいことなんですから。

 それで、ここで大事なのは、教育行政というところで見たときに、やはり教育だけのことを考えるのじゃなくて、これは次の学校給食の問題にもかかわってくるわけですけれども、教育行政をやりながら地域全体の振興を考えていく、こういう環境も入れていただきたいんです。

 これはどういうことかというと、環境省が、環境を守る、環境を守る、環境を守ると。悪い例でいいますと消防庁、安全、安全と。農家民宿をやると、いろりは危険だから、いろりがあるところで農家民宿をやっちゃいけないんだ、こんなとんちんかんなことを言い出す。地域の振興ということを全然考えない。

 教育行政も、この地域間格差が広がって困っている、中山間地域が人が少なくなって困っている、田舎の市町村は人口が減っているというのを幾らでも覆すことができる。前は工業立地とかいうのでやりましたけれども、工場も行かなくなりました。しかし、教育は何も都市部にある必要はないと思う。観光もありますが、教育が最後ではないかと思いますが、教育が、地域の振興に役立つということ、地域に人を置いておくということが忘れられているんじゃないかと思います。

 剛腕の伊吹文部科学大臣の間にぜひこういう指令を出していただきたいんですが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 先生の御質問があるので、少し事務局に尋ねてみたんですが、例えば高等学校でも、山の中に一貫校をつくったり特色のある学校をつくりますと、結構人は集まるわけですね。しかし、総じて言えば、一番、学校へ通う時間が短いことをだれも望むわけですよね。そうすると、我々の社会の意思決定の仕組みとして、大体多数を占めている者が必ず勝つ仕組みをとっているわけですから、山の中の人は非常に不利になるわけですよ。

 その山の中へ行くことに魅力を与えなければならないですね。だから、一貫校の進学校のようなものをつくれば、意欲に駆られた人はみんな行きますよ。そういう発想をするか、あとは、言葉は悪いですが、やはり昔流にいえば、補助金とか何かで有利な扱いを与えなければならないんですよ。

 ところが、有利な扱いを与える手段をほとんど三位一体でとられちゃっているわけですね。地方に税源を渡している、税の税目を渡しているわけですよ。そして、必要最小限のことをやってもらわなければいけないところを、基準財政需要というのを積み上げて。東京都は、渡した税目だけでしこたま税が入ってくるわけですよ。長野県は、失礼だけれども、多分、基準財政需要に満たないわけですよ。この差を交付税で補てんしているわけですね。

 ところが、地方分権ということはどういうことが起こるかというと、そういう算定基準でやっているんだけれども、その算定基準どおり予算編成をするかどうかは首長の権限なんですよ。今度、それをきちっと審査して見きわめるのは地方議会なんですよ。算定どおり渡しているのにどこへ消えたのかなということが結構起こっているんですね。

 ですから、金でインセンティブを与えるという政策で格差を変えていくというのであれば、昔のように、補助金を印籠がわりに使って上意下達のようなことをやることは別としまして、やはりある程度の政策手段が国にありませんとできないんですよね。

 ですから、今、私どもができる最小限のことは、やはりアイデアを渡すということだと思いますね。今、中学校についても高等学校についても、先生から御発言になったようなことを、全国の教育長会議、これも勉強の会ですよ、実質的には渡すべきお金はほとんど文科省はありませんから、この勉強の会議でアイデアを渡して、創意工夫をしてみてくれ、そして、乏しい中で持っている補助金を使ってそういうところを助けることができるのなら、刺激を与えていくということだと思います。

篠原分科員 意識の違いというのはあるんだろうと思いますが、イギリスのグラマースクール、チャータースクール、あれらは都会にあるところはないわけですね。今、大臣が触れられましたとおり、全寮制の寄宿舎スクール、そこでジョンブル魂をつくって、イギリスを愛する立派な国民をつくっている。日本もそういう発想に立つべきだと思う。

 ですから、今、大臣、アイデアというふうにおっしゃいましたけれども、国立大学に運営費交付金がいっぱいある、独立行政法人になりましたけれども、行っている。筑駒というのが東京では超名門校ですけれども、中学、高校、あんなのは東京に置かずに全寮制にして山の中に置いて、できる範囲でやるんだという見本を示して、今おっしゃった、中高一貫教育で寄宿舎制というのが山の中ですと、当然教育環境はいいわけですから、そういったものにアイデアとインセンティブを与えたらいいんじゃないかと私は思っております。

 これは大学も関係していまして、アメリカなんかは、カレッジタウンと言われるように、全体が大学で、ど田舎に、ど田舎なんて言っちゃ悪いんですけれども、ランドグラントカレッジというのがあって、自然科学系というものはほとんど田舎にある。これはもう理にかなっているんですね。教育というのは大都会にある必要はないというのは、高校、小学校、中学校にはもっと言えることですから、このことをぜひ進めていただきたいと思います。

 大学でも、中山素平さんが新潟に国際大学をつくられているので、インターナショナルな人たちが育っていますけれども、ああいうのをどんどんやっていったらいいんじゃないかと思います。

 それから次に、学校給食の問題ですけれども、これは資料を説明いたしますので見ていただきたいのですが、まず、学校給食会というのがある。これは天下りの問題がいろいろありますけれども、どういう人たちが常勤役員になっているかというのを文部科学省で調べていただきました。校長先生、県の職員。校長先生が半分以上役員になっていっています。学校給食会というのをちょっと見ていただきたい。

 次に、学校給食。食育基本法ができたりしているんですけれども、先割れスプーンの使用状況。大臣は、学校給食にもありつけなかった世代だろうと思います。(伊吹国務大臣「いやいや、そんなことはない」と呼ぶ)ちゃんとありつけたんですか。そうですか、京都市はあったんですね。僕は小学校二年のときからです。

 それで、日本の伝統文化を守っていこうとか日本人の心をとか言っているときに、もう信じがたいですね。先割れスプーン、フォークとナイフともったいないと。僕は、二、三年前に、国会議員になる前まではよく知りませんけれども、もうとっくにそんなのは批判されてなくなっていると思ったら、はしも使わずに先割れスプーンのみでやっている小中学校がこんなにある。こんなところを何でけちっているのか。幸いにして、ちょっとずつ先割れスプーンはやめるというふうになってきていますけれどもね。こういうのが一つ。

 それから、次、これはちょっと時間がなくなったので後で触れますけれども、学校給食。センター方式と言われていますけれども共同調理と、単独調理という名前になっていますけれども自校方式、これも、私が申し上げることは大体おわかりだろうと思いますけれども、その辺でどさっとつくって持っていってというんじゃなくて、自校方式で。これも、お金の問題があるからだと思いますけれどもね。

 そして、その次のページには地場産物の活用、利用状況というのがございます。これは、ちょっとこの数字を見ながら聞いていただきたいんです。

 食育基本法というのが鳴り物入りでできました。私は、学校給食会に気のきいた人がいると、地場産品を使うようになっていると思うんです。ところが、不満として出てくるのは、学校給食会の人が頑としてずぼらな、その辺の市場からどさっと買ってきたものでやれというルートができている、それで地場のものを使うのを嫌がってストップをかけているということ。これは、もってのほかだと思うんですね。

 先ほど申し上げましたように、学校給食で地場産品を利用する、エコマネーとか言われて、経済も循環する、地元にお金が落ちるわけですから、だれも文句を言わない。それを、そんなことを考えたことのない校長先生や何かが、そんなの面倒くさいからいいやということを言っている。これは、けしからぬ話だと思うんですね。

 大臣は、日本の食の代表のところですよ。京野菜があって、繊細なもの、これは外国人はわからないと思いますよ。僕も、せっかく案内したのに文句を言われたことがあるんです、もっと食べたいと。全部食べ終わって、もっと出ないのかと。あの味やあの繊細なのがわからないんです。腹でもってしか食べない、胃でもってしか食べないアメリカ人なんかわからない。我々はこんなにおいしい料理にありつけて喜んでいるのに、彼らにいきなり説明したって無理です。

 しかし、日本の食も教えようとしない、外国から入ってきたのを、外国にもない先割れスプーンなんというへんちくりんなものを編み出して学校給食に使用するなんというのはもってのほかだと思うんですけれども、こういう伝統文化の地で育たれて、そういうマインドを非常にお持ちの大臣は、この点についていかがでしょうか。これも、大臣の在任中に、先割れスプーンなんてもうやめろと、これをやめろと言ったってだれも文句を言わないと思いますよ、ぜひ言っていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 確かに、この表を見ると、先割れスプーンのみを使っている学校がまだ一・三ですか、小学校、中学校合計してありますね。おはしを配っているのはもう九八%、みんなおはしは配っているわけですよ。だから、おはしだけでやっているところと先割れスプーンとおはしを使っているところ、おはしも配っていないところが多分一・三ということですから、もうそろそろそれはやめたらいいでしょう、大したお金じゃないのでね。これは、地方の当然単費の中でこれぐらいのことはやれると思います。

 それから、産地でつくったものを産地で食べるというのは、これはできるだけその比率をふやすように学校給食の場で、文科省も努力をしているようです。単に産地でつくったものを食べるだけじゃなくて、それこそ今評判の悪いゆとり教育と言われる総合学習の中で、農業の実地の体験をするとか、学校で生き物を飼うとか、そうすると、食事をするときに、植物であれ動物であれ、ともかくその命をいただくことによって自分の命をつないでいるということがわかるわけです。そういう教育というのは食育の中の非常に大切な部分なんですよ。

 だから、学校教育法を今御提案していますけれども、今度これの改正ができましたら、それを受けて学習指導要領をずっと直していきますので。今先生が御提案になったようなこともかなり書いてあるんですよ。かなり書いてあるんだけれども、もっと鮮明に書くということを中教審にお願いするというのか、審議会ですから、私がこういうことをとは言えませんが、国会でこういうお話があったということは間違いなく伝えますから。

篠原分科員 私は、この点については、文部科学省は非常に意欲的に取り組んでいただいておると思います。

 学校給食甲子園というのを始めまして、これは私の選挙区じゃないんですけれども、長野県の長谷村という南の方の村がその第一回目のコンクールで優勝しています。当然ですけれども、地場産品を使っているんです。いろいろな出品がありますけれども、パンをメーンにしたものは一つもないんですね。第一回目の一次選考通過校というのを見ているんですけれども、先ほど岩國さんがおられましたけれども、岩國さんのところは江津市、平田さんのところの三重県は鳥羽市で、海と山の幸包み、メヒビ汁。メヒビって何ですかね。御存じですか。ちょっとわからない。(発言する者あり)海藻。果物ゼリーとかなんですね。見ると、明らかに地場産品を使ったものがコンクールに出されているんです。

 これは非常に大事なことでございまして、どういう人たちがこういう発想をするかというと、有機農業とかそういうことをやっている人たちなんですね。後で戻られてから調べていただくとわかると思いますけれども、文部科学省から文部科学大臣賞をもらわれた木次町というところがあるんです。今、雲南市になりましたけれども。そこは農林水産大臣賞ももらっておりまして、今度、森まゆみさんという方が佐藤忠吉さんという人にずっとインタビューして、非常に立派な本ができています。ここの最後に「目指すは「地産地消」」と。そこでできたものをそこで食べる。手前みそになりますけれども、この言葉は私がつくった言葉でございます。そこでできたものをそこで食べる。もう一つぜひ覚えていただきたいんですが、旬産旬消。食べ物は、そこでできたものをそのときに食べる、これが基本である。これから外れるようなEPA、FTAでアメリカからオーストラリアから、これは邪道である。これは環境に優しい生き方の基本であるということなんです。

 これは、学校給食の場で、おっしゃいましたけれども、つくっている現場を見たりすることが非常に大事ですし、いろいろなことにつながるんですね。そのときに、子供の教育というのもありますけれども、露骨に地域の振興のためになる。過疎地の。食べ物ができているんじゃないか。ところが、これを妨げている行政のシステムが学校給食であり、学校給食は絶対きちんと指導をしていただきたいんです。

 食育基本法の中に、学校教育基本法の中にも、露骨に地場産品率を何%というふうに書く、何%と書くかというのは現地に任せればいいんです。六ページ、一番最後の表を見ていただくとわかると思いますけれども、東京都とか、そういうところはだめですよ。下の方、三角の地場産品率。地場産品率が高いのは、熊本とか北海道とか田舎の島根とか和歌山とか高知とか、田舎の県ですよ。こういうのがあるんです。ですけれども、やろうと思ったら幾らでもできるわけですから。

 それで、長野県なんというのは地域食材の日というのをつくったんです。これはいいんですけれども、一カ月に一回だけ地域食材だけでやるというのを田中康夫知事は私に自慢しておっしゃるんです。篠原さんの本に書いてあることを私がやっていますからと得意になっておっしゃったので、私は、褒めつつ、嫌みも言ったんです。知事、何で二十分の一が地域食材の日なんですか、二十分の十九がそれになって、一カ月に一回どこか変わったものを食べてみようというふうにしなくちゃいけないんだと言ったら、いや、僕が考えたのは三年前です、三年たったらそうしなくちゃいけないのに長野県の職員はそういうのを考えないとか、人のせいにされていましたけれども。

 地場産品を利用するということについてだれも文句を言わない。地方分権というのがありますけれども、文部科学省がそういう観点からも学校給食できちんと地場のものを使えということをいろいろな場で言い、通達で出していってもだれも文句を言わないので、ぜひそういうことをしていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

古川主査 これにて篠原孝君の質疑は終了いたしました。

 午後三時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

古川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部篤君。

渡部(篤)分科員 自民党の渡部篤です。

 大臣に、イノベーションとオープンという今、安倍総理が各地で演説している内容についてお伺いしたいと思いますが、五月を目途に、二十年後の二〇二五年の日本の社会のイメージを描くイノベーション25を策定中ということでありますが、このイノベーションとかオープンと言われる中で、人材育成というのが私は最大のかぎだと思いますが、高等教育についての具体策の検討はどのようになっているのか、お伺いいたします。

伊吹国務大臣 先生がおっしゃるとおり、イノベーションのかぎは人材が握っている、これはもう間違いのないことですが、イノベーションというのは、例えば研究開発、技術というものだけではなくて、そういうものを一体的に動かしていくシステム、そしてそれを包括的に管理できる人材、こういうものによって成り立っているわけで、単に技術開発ができる頭の人をつくればいいというだけのものでもないと私は思います。

 そこで、先般、教育基本法の改正をお願いして、新しい時代にふさわしい教育の理念を国会でお認めをいただいたわけですが、この改正教育基本法に従って、実は、小学校から大学に至るまで、あるいは社会人に至るまでの新しい日本人をつくっていくための、今、作業に入っているわけです。その緊急を要する三本の法律をこの国会にお願いしている。その上に実は高等教育というものがあるということをまず申し上げたいと思います。

 高等教育は、もちろん研究開発ということも大切なんですが、改正教育基本法には同時に、立派な教養のある人材の育成、つまり教育としての大学、それからイノベーションに直結する研究開発としての大学、それから、社会に貢献していく大学、つまり、研究成果、人材あるいは大学施設の社会還元、この三つのことを大学の目的としてうたっているわけです。

 したがって、具体的には、大学を抜本的に強化していくために世界的な研究拠点をつくっていく、大学の国際化を進めていく、地域振興の核となる大学のあり方を構築していく、そしてイノベーションの源泉となる学術の研究を進めていく、この四つを中心にイノベーション25の中に人材育成を位置づけたい、こう考えて今進めているところです。

渡部(篤)分科員 イノベーション、いわゆるシュンペーターの言う創造的破壊とか新しい産業をつくる、そのとおりだと思いますが、私は、アメリカのすごさというのは、新しい技術を発明するだけではなくて、それが多面的な形になって国家を強化していく、やはり教育力をきちんとしていわゆるイノベーションとかオープンな体制をつくっていくべきだなと思います。

 それから、二〇〇〇年代に、いわゆる日本の経済が厳しくなったときに、雇用の拡大と新産業創出のために産学官連携強化というのがうたわれてきましたが、そういうことを十年間くらいやってきましたが、その成果がどうなのか、私、疑問に思っています。

 景気がある程度回復した現在では、大学や法人化された旧国立研究所への産業界の積極的なアプローチがなくなっているのではないか。つまり、TLOとか大学の技術移転本部とか、企業に対する大学の窓口が一本化されているわけですが、産学官連携というのが今こそ必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 手綱を緩めてはいけないと思いますけれども、先生がおっしゃっているほど産学官の連携は、今、少しなおざりになっているということは私はないと思います。ちなみに数字で申し上げますと、平成七年には千七百四件の産学官の連携の共同研究がありましたけれども、平成十七年では、これは一万一千三百六十二件と大体約七倍になっているということですね。

 それで、問題は、企業側はどうしてもやはり損益計算書の利潤、利益を大きくしたいという本来の行動パターンがありますから、ねらっているところは当然そういうところなんですね。大学の方は基礎研究の上に応用研究というものがあるわけですから、この両方のニーズをマッチングさせていかねばなりませんので、昨年九月に、大学の研究成果と企業のニーズのマッチングのための展示会をやりましたが、このときは約三万人の人が集まりました。そのとき、引き合いに出て交渉が成立したのが四百六十件あった。これは多いと考えるか少ないと考えるかなんですが。ですから、着実に成果は上がっております。

 ただ、大学を所管している私の立場からいいますと、もうけ仕事にだけ大学を利用しないでもらいたい。基礎研究だとか大学でつくったいろいろな研究成果の結果、企業も大いに潤っている場合は、直接もうからないけれども将来のために大切な基礎研究について、諸外国のように、もう少し企業も、研究成果から生じた利潤の大学への還元を私は促していきたいと思いますし、ぜひ先生方にもお願いしたいのは、そのような税制上の特例を企業にやはり何らかの形で与えていくということも必要じゃないかと考えております。

渡部(篤)分科員 六月に京都で開催される内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、日本学術会議主催の第六回産学官連携推進会議の例をとれば、昨年の参加者は三千人を超えましたが、大学にとって技術移転のいわゆるお客様と言われる産業界からの出席は二割を切ったと言われています。つまり、私が大臣に言いたかったのは、経済が厳しいときには産学官連携で大学のいろいろな頭脳を必要としていましたが、だから今、もう一回、手綱を引き締めてそれをやっていかないと、この国は大変なことになると思います。

 特に、地方の中小企業、私、会津大学という、いわゆる地方独立行政のコンピューターの大学がありますが、この大学なんかはベンチャーなんかをいろいろ立ち上げて努力しているわけですが、地方の中小企業の期待が大きいわけですが、実施例を見ていますと、その成果というのがまだ形になっていないのではないか。だから、ぜひ大臣には、産学官連携で新しいものをきちんとつくっていただく、その原動力を文部科学省が持っていただきたいと思います。

 それから、日本の高等教育の問題点、いろいろありますが、ちょっと私考えてみたんですが、大学院といわゆる学部がある、その学部教育というのは四年間ありますが、そのうちの一年間はゆとり教育により学力の低下した学生の補習である、四年になれば四月から就職活動、つまり、学部教育は二年間しかやっていないのではないか。

 あと、研究と教育が大学の使命であることは確かです。旧国立大学は、研究には熱心だけれども、教育についてどうなんだろうか。つまり、海外のいわゆる学部教育に力を入れている大学と日本の国内の高等教育機関である大学に格差が出ているのではないかと私は心配しているのですが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 我が国の大学の学部教育に、先生御指摘いただいたような事柄も含めまして、さまざまな課題があることは事実でございます。学生の多様化への対応や教育課程の体系性をどう確保するか、教員の教育への関心、情熱というものをどういうふうに喚起し、また成績評価の問題をどうするか、こういう課題があるというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、幅広い教養の厚みに裏打ちされた知性あふれる人材の育成、そして社会の信頼にこたえる、国際的にも通用する学部教育をどうやっていくか、これが私どもの課題でございまして、現在、中央教育審議会大学分科会で、まさに学部教育で身につけさせるべきものとして、そういうシステムをどうするのか、あるいは教育内容、方法の改善、評価、高等学校との接続、教員の指導力というものをどう確保していくかということの調査審議を行っております。本年夏ごろを目途に一定の取りまとめをいただく、こういうことになりまして、そういう審議を踏まえながら、学部教育についての取り組みをぜひとも私どもとして促進し、国際的に通用する、そういう意味での学部教育を再構築していきたい、このように考えております。

渡部(篤)分科員 それから、大学教育で、英語のいわゆる共通語としての役割というのがあると思います。大学教育も教室が現場であり、カリキュラムの題目とシラバスという授業内容項目が公開されていますが、大学がどのような授業をして教育しているかというのは、なかなか私たちは現場を見ることができませんが、例えば私のところにある会津大学は、四割の教員が外国籍の先生で、コースウエアという海外の最新の教科書を利用して、教える効果を増大させるためにいわゆる英語教育をやっているわけですよ。日本の教員は、語学力のためか、それができない状態が結構多いのではないかというふうに私聞いたんですが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 大学における日本の教員の語学力という形が統一的にはなかなか把握できない面もございますけれども、十七年度現在で、英語以外の外国語も含めて外国語で授業を実施する科目を開設しているのは三百十七大学、約四四%となっております。また、大学全体の教員に占める外国人教員の比率は三・五%にとどまっており、さらなる大学の国際化の推進というのは課題である、こういうふうに考えております。

渡部(篤)分科員 欧州連合では、学生が国境を越えて特徴ある大学に入学できる制度が進められています。それを実現するために、フランスでさえ英語が大学の共通語として認められていると言われます。他方、日本の大学は英語の授業が極めて少ないと思いますが、この点について文部省の考えをもう一回お伺いいたします。

清水政府参考人 先ほど外国語による授業ということでお答えさせていただいたわけでありますけれども、英語による授業の実施に取り組む大学は近年はふえつつございます。特に英語のみでということは二百三十三大学、先ほど申し上げた数字より若干少なくなるわけでございますけれども、英語による授業のみで卒業できる大学は五大学六学部というふうな状況になっています。

 先生御指摘のように、例えばEU地域では、域内の大学がいわば共同してお互いに教育に取り組むというような動きもあるわけでございますし、私どもとしても、そういう英語教育の充実とあわせて、海外の有力大学との連携の強化ということをぜひとも図り、大学の国際化を推進してまいりたいというふうに考えております。

渡部(篤)分科員 グローバル化した世界でリーダーシップを発揮するためには、英語を共通語として、日本語がわからなくても教育ができる大学をつくることが私は必要だと思います。ただ、日本語もわからなくてと言われるかもしれませんが、国際的な、東南アジアとかアジアのいろいろな優秀な人たちを世界じゅうから集めるためにはその教育が私は必要だと思いますから、よろしくお願いいたします。

 それから、ハイテク分野での人材育成についてですが、産業界は、変化の速い分野で即戦力になれる人材を日本の大学に出してほしいと言っています。ソフトウエアの分野では、中国の国内での雇用が少なくなってきたことから、優秀な中国人が日本にも来るようになって、これは日本の大学教育の危機だとも言えると言う人もいます。本来、技術の変化の激しい分野で活躍できる学生を輩出することは、大学側だけでは私は困難だと思っています。

 そこで、大学の教員に、企業が欲しい人材像を大学に示し、さらに、その教え方の最新の技術を大学と企業が協力して開拓する仕組みづくりを提案したいと思います。海外のすぐれた教科書の紹介、企業人との教え方の工夫と教室での議論を行えるような一週間くらいの講習、セミナーの実施であります。大学のFDはそれぞれの大学で実施していると思われますが、効果をねらったそういう展開が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 先生御指摘いただきましたように、特にコンピューターソフトウエアなど、まさに日進月歩のそういう意味での技術の世界もあるわけでございます。実は、大学と産業界というものが、基本的にそれぞれがどのようなニーズを、どういう求めるもの、どういう内容という形での対話を進めていくというのは、私どもとして非常に重要なことだろうと思っております。

 ただ、ここのところに関しては、ある部分では即戦力を求める声もある一方で、むしろ即戦力ではない、もっと幅広いバックグラウンド、ベースを持った人材を育成してもらいたい、両方の声がございます。いずれにしても、さまざまな経済社会のニーズも踏まえて、大学教育でお互いに協力できるところはどこか、そういうことを模索していくというのが重要なことだろうというふうに思っております。

 例えば、今先生御指摘ございました、我が国のソフトウエアで世界的なレベルのソフトウエア技術者をどう育成するかということで、私ども、先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムというようなプログラムを産学連携によって今スタートしておりますし、また、長期インターンシップを大学院レベルを中心として開始しております。

 先生の御提案いただいたような対応の形も含め、さらに密接にお互いがそれぞれのセクターで連携しながら人材育成を推進していく、こういうことについて私どもとしてもバックアップしていきたいと考えております。

渡部(篤)分科員 そこで、大学の運営交付金についてお聞きしたいんです。

 国立大学が法人化して三年目を迎えましたが、授業料だけでは大学経営は無理でありますから国は運営交付金を配付していますが、運営交付金は年々減額するルールとなっています。そのため、人件費も減額となり、昇給原資もなく、実質、定員は減となっており、一部の流行に乗った研究を進める者を除き、教員のインセンティブが下がりつつあります。

 研究については外部資金として競争的資金が増額されていますが、教育関連の資金が心配であると私は思っています。文部科学省は教育についても競争的資金を準備しているのでありますが、既に資金と人材が投入済みの強い大学に集中して、地方の大学はますます沈下しているように思います。競争で勝つには準備運動が必要でありますから、特に教育について学生が犠牲にならぬように、地方の大学への配慮が欲しいと思いますが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 我が国の大学を考えてみました場合に、やはりそれぞれの機能、特色というものを生かして多様な発展を遂げていくということが重要なことであろうと思いますし、その意味で、地方大学が果たす役割は、地域における知の拠点として、あるいは教育の機会均等の観点からも極めて重要と考えております。

 確かに、教育研究に関する競争的な経費がふえていく中で、その獲得に向けて、都市部の総合大学と比べて地方大学が難しい状況に当面していることは私どもも承知しておりますし、地方、中小の大学が足腰をどうやって強くしていくか、これが喫緊の課題だろうと思っております。

 その意味で、地方大学が、それぞれの大学が持っておる資源を効果的に活用していく、広い意味での、大学間の競争だけではなくて、地域の大学が連携し協力し、あるいは役割分担し、あるいは共同する、こういう仕組みあるいはあり方を模索していくということが重要であると思っておりますし、私どもとしても、各大学のこのような地域における取り組みというものを支援していきたい、このように考えております。

渡部(篤)分科員 私が地方の大学と言うのは、我が会津に地方独立法人の会津大学があります。戊辰戦争から百四十年たって、やっと会津に大学ができました。世界の大学を目指してやっているんですが、これは公立大学ですから、それが地方独立行政法人になっているわけですが、文部科学省からは科研費は来ますが、補助金はない。総務省がいわゆる交付税の中で算定しているということですが、やはり地方のそういう大学についてもいろいろ対応を考えていただきたいというのが私の気持ちです。

 それから、社会人教育の展開と履修証明についてお伺いしたいと思います。

 アメリカでは四割以上の学生は二十五歳以上だと聞いています。日本でも、社会人への単なる公開講座ではなく、しっかりした役に立つスキルと知識を教える教育システムが必要だと思います。その理由は、社会の多様化、それに対応できる社会人のプロの育成をするための多様化した教育システムが私は必要だと思います。

 会津でも司法通訳であるとか医療通訳が必要だとこのごろ思います。だから、その際、履修者に対する明確かつ社会で認知される資格、履修証明が、履修者にとって、ニーズのある社会にとって必要だなと私は思うんです。可能なら、国際的に通用する大学、高等教育機関で履修証明ができればすばらしいと思うんですが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 先ほど大臣からお話もありましたように、教育基本法改正を受けまして、今、国会で御審議をいただいております学校教育法の改正法案百五条におきまして、大学が、当該大学の学生以外の者を対象とした特別の課程を編成し、これを修了した者に対して、修了の事実を証する証明書を交付することができるという規定案を盛り込んでいるところでございます。

 これは、社会人を対象として、まさに先生御指摘のように、さまざまな地域のニーズあるいは高度なニーズというものに対応して、半年から一年ぐらいの程度のまとまりのある学習機会をより多様な形態で積極的に提供していく、そういう取り組みを促進するという観点から、その制度化を図ろうとするものでございます。

 同じく法案御審議をいただいております国立大学法人法の改正では、大阪外語大学と大阪大学の統合で、統合された後の大阪大学では、例えば、御指摘のように履修証明の仕組みを活用した司法通訳、医療通訳の養成プログラムを提供、このようなことを聞いております。

 まさに先生御指摘のように、この履修証明が社会的にも認知され適切に評価されるということは重要でございますし、先生るる御指摘いただいておりますように、この制度化によって大学が、地域あるいは産業界等も含めて、いろいろな職能団体も含めて十分連携しながら、多様なニーズ、多様な要請にこたえた体系的な学習機会の提供ということを期待しておるわけでございます。

 私どもも、こういう取り組みが促進されるように、本年度の予算として、社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムということで、その開発、実施を支援するという予算措置をしているところでございます。

渡部(篤)分科員 次に、ティーチングアシスタントについてお伺いしたいんですが、私が福島県議会議員のときに、会津にコンピューターの修士課程、博士課程の大学院をつくりました。どうやって優秀な人材を集めるのか、そうだ、いわゆる教育補助のアルバイトのできる体制、ティーチングアシスタントあるいはリサーチアシスタント、研究補助、この二つをつくったらどうですかと当時の知事に提案したんです。

 今アメリカでは、TA制度というのが強化されていると聞いています。会津大学ではこのTA制度というのは認められているわけですが、ただ、時給が八百円程度かな、学生がアルバイトをしなくても生活できるレベルまで上げたいと私は思っています。

 日本の大学では余り導入されていませんが、英語で教育するにはティーチングアシスタントが必須であるとか予算が必要だとか、いろいろ言われていますが、昨年終わったいわゆるCOEプログラムの大きな成果は、そのお金を使って一部にTAを導入したことだと思っています。学生は、先輩の教育、アドバイスが有効だと思います。ティーチングアシスタントにとっても学ぶべき点が多いと思いますが、ティーチングアシスタント制についてどう文部省は考えているのか、お伺いいたします。

清水政府参考人 先生御指摘いただきましたように、大学院学生を学部学生に対する助言とか実験実習の教育補助業務を行うティーチングアシスタントとして活用するというのは、ある意味で大学院生のまさに教育力、教育トレーニングでもありますし、また経済的自立の支援、時給の問題はございますけれども、支援でもございます。

 御指摘いただきましたように、例えば二十一世紀COEプログラムでございますとか、魅力ある大学院教育イニシアティブですとか、そのあたりの事業を通じまして、私どもはTAの積極的な活用を促進してまいりました。

 この結果、全国の国公私立の大学で採用数は、平成十二年度、ティーチングアシスタント約六万人ということでございましたが、十七年度には七万四千人、五年間で一・三倍というふうに、TAの活用は進んでいると申し上げてもよろしいかというふうに思っています。

 また、大学院教育を抜本的に強化するというのは私どもの課題でございます。そういう意味で、今後五年間、大学院教育の充実強化に向けた取り組みを進めることとして、競争的資金を活用しながらさらにTAの充実を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

渡部(篤)分科員 それから、高等教育あるいは日本の科学技術の大きなテーマの一つに、ポストドクあるいはオーバードクター問題があると私は思っています。

 現在、一万四千人以上の、定職のない、四年程度の任期つき任用で生活が不安定な研究者がいると聞いています。彼らのわがままも問題はありますが、定員が頭打ちの大学は競争的資金でそれを雇用しています。彼らの職場確保は必須であり、産業界の協力を喚起する国の施策が急がれると思います。そうでなければ、いわゆる優秀な人材が、若者が研究者、技術者を目指すことがなくなったらどうするのか。

 ポストドクあるいはオーバードクター問題での文部省の方針をお伺いしたいと思います。

森口政府参考人 先生御指摘のポスドク、ポストドクターでございますけれども、これはいわゆる博士号取得者、取得した後で任期つきの職員として研究に従事する者、そういうことでございますけれども、この方々も我が国の研究活動の活発な展開に大きく寄与している、そのように今評価をしております。

 しかしながら、先生御指摘のように、その一方で、ポストドクターの期間、いわゆる任期つきが終了した時点で、その先のキャリアパス、どういう進路があるのかということについて不透明感があるということでございまして、活躍の機会が十分与えられていない、そういう指摘もあるわけでございます。

 また、もう一点指摘のございました、博士号取得後に定職につかずにそのまま大学に残っている、これをオーバードクターと言っておりますけれども、こういった存在もございます。そういう点も認識しておりまして、これらの博士号取得者への支援、これは非常に重要だと考えております。

 文部科学省といたしましては、平成十八年度から、二つ大きく施策がございますが、一つは、博士号取得者に対しまして、産業界等の協力も得ながら、大学等の研究職以外の進路、例えば企業等への就職も含めまして多様な職業選択を支援する科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業、こういうことの事業を進めております。

 また、二点目としては、若手研究者が安定的な職を得る前に、任期つきの雇用形態で自立した研究者として経験を積むことのできる仕組み、これをいわゆるテニュアトラックと言っておりますけれども、そういうものを導入する機関を支援するための若手研究者の自立的研究環境整備促進事業、こういったものを実施しておるところでございます。

 このような施策を通じまして、今後とも、産業界とも連携をとりながら、ポストドクター等の若手研究者が社会の多様な場で活躍できる、そういう環境整備に努めてまいりたいと思っております。

渡部(篤)分科員 大臣、私は、日本の高等教育の一つの課題を質問してきましたが、今日本人に一番欠けているのは何か。公的な思想であるパブリックとは何か、あるいは社会とは何か、国は何をやらなければいけないのか、それが問われていると思います。

 もちろん、レッセフェールで市場原理主義、規制緩和、そしてその未来に何があるか。私はそのときに、イノベーションとかいわゆる成長なくして日本の未来はないという一つの理念はいいんですが、教育の原点、文部省はこの新しい社会を、どんな社会をつくろうとしているのか、そういう明確なフィロソフィーというか哲学が必要だと思います。

 私は、伊吹大臣が本会議やあるいはいろいろな委員会で答弁しているのを聞いて、すごい哲学のある人だなと思いますが、どんな考えでこの高等教育に取り組んでいかれるのか、お伺いします。

伊吹国務大臣 日本は法治国家ですから、当然、国民大多数の気持ちを体して国会へ出てきている正当に選挙をされた議員を通じて、その主権が行使されるわけでして、先ほど言ったように、国会でお決めいただいた改正教育基本法には、大学の役割は三つあるわけですね。立派なリベラルアーツの深みを持った教養ある人材を社会に送り出す、もう一つは、先ほど来お話のあったイノベーションその他の基礎にある研究活動、三番目は、大学が自分の場所を社会教育として生涯教育の場に提供する、あるいは立派な人材を社会に還元するという三つの役割を改正教育基本法に書いているわけですが、一番大切なのは、やはり私は、大学の原点というのは教育機関だと思います。

 先般、ある大学の法科大学院へ行きまして、法科大学院というのは司法試験を通ることを目的として法曹人をつくることなんですが、そのときにぜひ一言と言われたので私がお願いをしたのは、法律を勉強しなければ司法試験は通らないから、裁判官や弁護士や検事にはなれない、しかし、皆さんが離婚の調停をやるときに、やはり源氏物語だとか永井荷風だとか瀬戸内寂聴を読んでいることによって男女の機微がわかるので、それがわからないまま、法律万能で離婚の調停をやられてはやはり困りますから、幅広い教養を身につけてくださいということをお話ししたことがあるんです。

 ですから、どういう日本を目指すかというと、やはり世界へ出したときに、その国の歴史も語れ、あるいはその国の由来をある程度わかっている人が本当の国際人だと思いますから、教養厚き日本人をつくるということを大学教育の基本に置きたいと私は思っております。

渡部(篤)分科員 ありがとうございました。

古川主査 これにて渡部篤君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、前回の予算委員会分科会での質疑に続いて、高等教育の問題について私も質問したいと思います。

 教育関連三法などでは、また教育基本法の改正の審議でもそうでしたけれども、初等中等教育に関してさまざまな議論がより交わされている中で、私は、とりわけ高等教育についても、前の発言者も取り上げてみえましたけれども、今後とも大きな関心を払っていきたいと思うわけであります。

 今回、前回の予算委員会の質疑のときにも取り上げさせていただきました、大学病院における今の大学院生のもしくは研究生の置かれている環境について、大臣から「どの程度が本来の大学院の研究あるいは体験ではなく医事、本来の病院の診療業務に携わっており、その人たちの身分保障という、労災その他がどうなっているかというのは、それは調べさせましょう。」と言っていただいたその調査の状況が一体どのように進捗をしているのか、どういったテーマで、どういう問いで調査をかけているのか、まずはお聞かせをいただきたいと思います。

清水政府参考人 先生からの御指摘も踏まえまして、この十九年の三月一日現在、国公私立七十九大学病院に対しまして、一つは診療に従事する大学院生等の状況、二番目は診療に従事する大学院生等の保険加入状況、そして三番目に静脈注射に関する業務の実施状況、これは、前回十八年三月一日、ちょうど一年前と同じ内容のものについて、ちょうど一年後の調査時点で調査を実施したということでございます。

 現在、各大学からの回答を集計中でございますが、データの精査に手間取っていることもございまして、最終的な取りまとめにはいましばらくお時間をいただきたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 前回こんなに時間がかからなかったんじゃないかと思うんですよね。去年は今ごろにはもう持ってきていただいていましたよね。どうしてそんなに時間がかかるのか、いつまでにお出しをいただけるのか、明確な期日を御答弁いただきたい。

清水政府参考人 現在集計中ということでございますけれども、少なくとも連休明けを目途として、完了次第報告させていただきたいと思っております。

岡本(充)分科員 その委員会でも取り上げたんですけれども、この決算委員会に間に合うようにお願いをしたはずでありますよ。決算委員会で取り上げたいということをお話ししているわけでありまして、にもかかわらず、この分科会までに間に合わせていただけないということであれば、ここで議論ができないわけでありますね。

 何にどう手間取っているのか。去年と全く同じ問いであれば、そんなに時間がかからないはずであるのに、今度は連休明けだというふうに言われる。これは大臣、ちょっと責任者として、もう少し前向きな答弁をいただけませんか。

伊吹国務大臣 私が直接調査の文面を書いたり集計をしているわけではなくて、大きなことを指示しているわけですから。昨年と同じ問いを出しているのかどうかということをちょっと答弁させますが、全く同じ問いであれば、去年できて、ことしできないなどということは、私の部下としてまことに恥ずかしいことだと思いますね。

清水政府参考人 今回の調査は、基本的には前回十八年三月の実施した調査を基本としつつ、若干、例えばもう少し詳し目のデータもいただくことにしております。

 具体的に申し上げますと、病院の診療研究、診療技術向上等の目的に加え、診療業務に一部従事させている場合の人数、業務の概要、雇用契約の有無、雇用形態、職名ということでございますし、傷害保険への加入状況等について、学生教育研究災害傷害保険と一応その他のあれと区分けしながら記入していただくというふうなことになっております。

 なお、昨年の調査でございますけれども、昨年の調査結果についても、連休明けに取りまとめて報告させていただいているというふうに承知しております。

岡本(充)分科員 去年はその問いをつくるところからスタートしたんですよ。ことしはもう問いができているんですよね。去年は、たしか四月中に持ってくるようにといって、四月二十八日に私は御連絡をいただいたというふうに記憶をしているわけでありまして、そういう意味でいうと、去年は問いからつくって、同じ三月一日スタートで持ってこれた、ことしは連休明けになるかもしれないと今この二十四日の段階で言っているということでは、大臣が今言われたように、大臣の部下として恥ずかしいと言われましたけれども、これは大臣、もっと責任持って早く事務作業を終えるように、それぞれ指示を出していただきたい。

 もちろん物理的なものがあるから、寝ずにやれとまでは言わないけれども、これに間に合うように、私、ここで議論したかったんだ。だけれども、物が来なくて、これが議論ができない。大変残念だと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。

伊吹国務大臣 先生のお気持ちはよくわかります。しかし、ほかにもいろいろな仕事をしているわけですから。たくさんの仕事があるわけです。

 この前予算委員会で御質問があったことは、結局、六年制を終えて、そして医師試験が終わって、研修が終わった後、大学院へ行っているわけでしょう。その大学院で研究に従事をしている人を、医師免許を持っているということをうまく使ってというのかな、実質的な本来の給料を払ってきちっとさせるべき仕事を、研究の合間という名目でさせているところにいろいろ問題が起こっているわけでしょう。そういう指摘をされているから、それによって例えば労働基準法違反になるのかどうだとかといろいろ細かな問題が起こってきますから、それをきっちりと把握して御報告をするということは、やはり去年とは違うんですよ、その調査の内容や何かが。

 だから、それはもう少しわかりやすく説明をさせなければいけないので、私が先生にあのときお約束をしたのは、まさに私が申し上げたような問題意識を持っておっしゃっているわけでしょう。だから、私は、おかしなことがあれば労働基準署の検査をどんどん入れさせろというぐらいの気持ちでいるわけです。しかし、実態をきっちり把握しないといけないから、それがなぜおくれているかというのは今の答弁じゃ私も聞いていて必ずしも判然としませんから、それはもう少しきっちり説明させます。

清水政府参考人 全体として、調査票の様式、内容について若干の訂正をしたということが一点でございます。また、それに伴いまして、各大学から報告をいただいているわけでございますけれども、その報告自体が、全体のデータが、きちんと整合性のとれたデータを各大学からいただいているかどうかというのをいわば精査するという業務がございますし、また、私ども、担当の職員について、今実はさまざまな業務を抱えておるという部分もありまして、私の方としてはとにかく報告の取りまとめはという気持ちでおりますけれども、全体として今このような状況になっているというふうなことでございます。

伊吹国務大臣 前回、予算委員会で御質問になったことは、私も厚労省の仕事をかなりやっておりましたのでよく実態はわかります。それだけに、きっちりしたことを調べないとだめだよと。研究の部分と、それから本来の大学院生という研究の立場を利用して実質的に業務をさせる、しかも給料を十分払っているのか払っていないのかわからない、そして労災がついているのかついていないのかもわからないというような状況の場合は、これは労働基準法違反とかいろいろな問題が起こってくるからということを私は厳しく彼らに言っているんですよ。だから彼らも、法律的な問題が伴うだけに、相手との確認だとか何かをかなり慎重にやっているという事情だけはよく理解してやってください。

岡本(充)分科員 去年も私は同じことを前任の大臣と議論させていただいたときに、同じ趣旨については大変御理解をいただいたと思っています。しかるに、一年たっても状況がどうなのかなと思うと、私自身が見聞きしている範囲では、実例に枚挙にいとまがない状況がまだ続いているわけでありまして、これを一刻も早く是正をするべきだという観点をこのたびもまた大臣が交代をされて伊吹大臣が思われている。これを私は大切にしたいし、ぜひそれを改善するための取り組みを、わかりました、確実にやっていくというのであれば、それは結果をきちっと出していただきたい。こういう状況でした、終わり、ではなくて、ついては、だから今度はこういう対策をとる、大臣が今言われた、研究にかこつけて業務をさせているような状況、もしくは労災の未加入の問題、こういう法令に触れるような案件についてはきちっと解決をしていくんだという道筋もあわせてお示しをいただきたいと思うわけでありますが、それについてはお示しいただけますか。

伊吹国務大臣 もちろん、大学病院を所管しているんだから努力はいたしますよ。しかし、これは本来、厚生労働省の労働基準の話なんですよ。ですから、今の御質問と同じようなことをなぞれば、経済産業大臣が自分の所管している業種について労働基準法上の違反事項があるかどうかすべて責任を持って処理しろというのは、ちょっと先生、それは無理ですよ。

 我々は、自分の所管している大学病院について、雇用契約をしっかり結べ、そして、そういうことはおかしいということは努力しますよ。しかし、それを担保するのは労働基準法だというのが日本の法制のあり方なんですから、それを、所管大臣がすべて労働基準法の適用だとか保険の加入まで責任を持てとおっしゃるのは少し無理があると私は思いますよ。

岡本(充)分科員 いや、大臣、それは違うと思いますね。私は、大臣が所管をしている部署であり、そこで法令違反が行われているというのであれば、調査が入るまでもなく、法令違反を自分たちで判断して、最終的には労働基準監督署が来なければ法令違反かどうかわかりませんではなくて、法令違反でないかという疑いがあるのであれば、もっと言えば、言いかえれば、例えば今話題になっている、農林水産省の所管の独立行政法人でいわゆる官製談合が行われていたんじゃないかという報道があったとする。実際にそこであるかどうかを判断するのは公取だ、だから公取に任せる話であって、もしそこで農林水産大臣が、私の所管の独立行政法人であったとしても、そこで官製談合が行われているのを是正するのは私の仕事ではありませんというふうに言われては困る。

 だから、やはり、そこで法令違反が行われている可能性があるのであれば、所管の大臣としてその是正を指示するのは、それが法令違反かどうかを判定するのは一義的には確かに労働基準監督署。この前も答弁を求めました。それぞれの個別の具体的な事案を見なければわからないと彼らは言う。しかしながら、彼らが一々来て、一々一件一件見ていくというのも物理的に私は難しいと正直思うわけでありまして、そこはある意味、大臣からの指示、もしくは文科省からの指揮というものを使って、こういうことはふさわしくないから改善をしましょう、こういうことを発していただけるということで一つ問題が解決するのではないかというふうに考えているんです。

伊吹国務大臣 それは違うでしょう。我々は、保険に加入をした方がいいとか、あるいは労働契約を十分結んでやりなさいとかということは、当然、大いにやりましょう。それは当たり前のことです。しかし、向こうが、それじゃ、これは雇用契約が必要なものじゃなくて、研究の学生として受け入れている中で、その研究の一部としてやらせているんですとか、いろいろな議論になってきますよ。

 個々の最終的な判定は、日本の国家で、日本の行政の仕組みを先生も御存じだと思うけれども、それは法律を持っている行政官庁が最終的に判断をしなければならないんですよ。

 だから、こちらは先生と同じ気持ちなんですよ。できるだけのことはやりましょう、きっちりしたことを調べろよと言っているのはそういう趣旨なのであって、心情的にわかりますよ、それは。大変な目に遭った、どうもひどいなという漠然とした雰囲気はわかりますよ、私は。しかし、だからといって、私が労働法規の執行者になるということはできませんよということを言っている。

岡本(充)分科員 ですから、私もそれはそう言っているじゃないですか。だから、最終的には労働基準監督署もしくは労働行政が……(伊吹国務大臣「だから、何も知りませんなんて一言も言っていませんよ」と呼ぶ)労働行政側が判定をする話だけれども、ただ、大臣の持っている指揮権もしくは監督権の中で、例えば通達なり何かなりを出した後に、そこが最終的にどうするか。それでも違反をするか、もしくは、さっきの話で、これは研究の一環なんだからという話が論理的に成り立つというのであれば、それはそういう研究をしているということもあり得ると思いますけれども、今のまま、みんなが開き直って、みんなこれは研究なんだと言われたら何にも変わらないわけでありまして、そこにやはり何らかの指針なり方針なり、こういうものは研究、こういうものはこうだと、何らかの整理を文科省としてしていく必要はあるんじゃないかということであります。これは今大臣もうなずいていただきましたので……(伊吹国務大臣「いやいや、質問にうなずいただけで」と呼ぶ)では、どうぞ。

伊吹国務大臣 それは先生、そこまで先生がおっしゃるんだと、国立大学法人あるいは私立大学、公立大学のどこにまで文部科学大臣が介入できる権限を法律上国会から付与されているかどうかを法制局でしっかりとまず確認しなければできません。日本というのはそういう国なんですよ、法治国家なんですよ。まだるっこいと思われるけれども、逆に大臣が何でも介入できるような国だったら、日本はえらい怖い国になるんですよ。

 ですから、やはり法律的に詰めることをきっちりしないと、心情的なお気持ちはよくわかるけれども、私がこういうものこういうものと言ったって、最終的にそれが雇用契約に当たるのか研究活動に当たるのかというのは一つ一つのやはり事例をもって判断しなきゃいけないわけですから。先生と違うことを言っているわけじゃないんですよ。私は、よく理解して、できるだけの努力をしますと言っているけれども、先生のお言葉をかりれば、それは労働基準署のことだから何も知らないじゃ仕事にならぬじゃないかとおっしゃるから、そういう表現をされるのであれば、私が法律上どれだけの権限を持っているかということを法制局にしっかりと確認してから行使しないとえらいことになりますよ、それは。

岡本(充)分科員 何も大臣が全部介入してくれと言っているわけではなくて、省としての方針を、例えば指針だとか、こういうようなことで、こういうことは改善しましょうだとか、こういうことはある意味、省としての中での、今大臣が言われた、私の問題意識を理解していただいているというわけですから、それに基づいて次はこういうステップをするという対策もぜひ一緒に、アンケートの調査がまとまりましたというのではなくて、だから今度は、こういうことがあったからこういうふうにしていきます、そういう次のステップもぜひお示しをいただきたいということです。

伊吹国務大臣 それはうちの役所だけではできません、率直に言って。個々のケースがみんな違いますから。だから、それは労働基準法を所管している役所、あるいは最終的にそれが、そうじゃないという行政不服を申し出られたり、民事上の裁判になったときにたえ得るだけの前提がなければ基準というのはできないんですよ。

 ですから、できるだけのことはやりますけれども、何か私が万能のようなお気持ちだけはちょっとなくしていただきたいということを言っているわけです。

岡本(充)分科員 次の対策もぜひ、それはそれでまた御検討をいただけるということでありますから、それは御期待しております。

 その上で、きょうは、ちょっともう時間が来てしまって、もう少し聞きたかったんですけれども、この話で大分盛り上がってしまいました。これはまた、今の話は後刻聞くとしまして、私立大学の医学部に限定をした話ではないかもしれませんけれども、高額の学費と寄附金というのが昨今話題になっているわけであります。

 今、実際に文部科学省として、私立大学の医学部にかかる学費については把握をしてみえると思いますけれども、どういうような寄附金の要求をし、実際に個人がどのくらい寄附金を払っているのか、その詳細なデータは把握していないというふうに私は聞いてはおるんです。こういうのに、もしかしたら物すごい寄附金を、普通の理解にはとても及ばないような金額を払っている人がいるのかいないのかもわからないですけれども、そういうものがあるのかないのかも含めて、一体どういう実態になっているのか、それから企業からの寄附金の今の現状についても一回ちょっと教えていただきたいと思うわけなんですけれども、いかがでしょうか。

磯田政府参考人 お答え申し上げます。

 私立大学における寄附金のあり方につきましては、平成十四年十月一日付の文部科学事務次官通知により、入学を条件とする寄附金の収受を禁止するなど入試の厳正公平な実施について指導するとともに、任意の寄附金を入学者、保護者等から募集する場合においても、その額の抑制に努めるよう周知徹底を図っているところでございます。

 私立大学の寄附金につきましては、どの程度の金額をお集めになるかは私学の自主的判断にゆだねられているところでございます。また、金額の多寡よりは、寄附金の任意性、自主的に寄附をするということが重要と考えられているところでございまして、今のところ、調査をするということは考えておりません。

 なお、御指摘の、企業からの寄附金についてでございますが、学校法人に対する寄附というものは、その経営基盤の強化等の観点から重要と考えておりまして、文部科学省としても、税制改正等を通じて、個人及び企業等の法人による学校法人への寄附の促進を図っているところでございます。この関連で、学校法人に対する寄附実績というものについては調査を行っているところでございます。

岡本(充)分科員 個人からの寄附の任意性の話、まさにそれは僕も問題だと思っているんです。先ほどもお話ししましたね。大学病院も一応任意で診療していることになっています。建前は任意ですよ。しかしその一方で、例えば、ある一定の最低ラインが、調べてみたら、みんながある一定の、少ない人でも必ず三百万はしているというようなことがあれば、これは何らかの、任意性があればばらつくはずですから。ところが、ある一定の金額だったら、これは本当に任意性があるのかということに疑義が生じるとか、それを調査することで、本当に任意性があるのかどうかについてある一定の傾向が読めるんじゃないかというふうに私は思っていまして、それを問いましたら、今はそういう個人からの寄附のデータがないとか、今答弁があったように、調べる必要がないというような話であるから、私は、今の寄附金、確かに額の多寡も問題だけれども、だからといって、一般社会通念上考えても、ちょっとあり得ないような高額の寄附をしているような人がいるのかどうかも私もわかりませんけれども、そういった部分も含めて、今の大学における学費及び寄附金のあり方ということを一回見詰め直してみる必要もあるんじゃないか。

 つまり、医学部だけが非常にお金がかかるわけではないとはいっても、医学部に関しては非常に高い学費と寄附金が必要だというのが何となく一般常識として皆さんの共通認識になっております。そういう意味では、入試の公平性の確保という意味でも、もう最初から、おれのうちはそんな金がないから私立の医学部には行けないよなという話が出てくることは、公平性の確保という観点から考えても私は大変残念な話だと思うし、一般的にそれぞれの大学が自主的に運営をすることでありますから、さっきの大臣の話じゃないけれども、国が関与して、あなたはこんなにもらっちゃいかぬ、そうやってやれと言っているわけではない。ただ、そこに強制性があってはいけないということは皆さんが認めるところであるから、それがあるのかないのかも一回、そういううわさがあるわけだから、ざっと調べてみることは物理的にも無理じゃないんでしょうし、調べてみられてはいかがか、こう言っているわけであります。大臣、もしお考えがあれば。

伊吹国務大臣 調査をする気持ちは全くないというのも、ちょっと何か木で鼻をくくったような答弁だと思って私聞いていたんですが、つまり、合格をした人、合格の判定が行われた後寄附を募るということは、私はこれは当然あっていいと思います。それに強制性があるかどうか、合格をしてしまっているわけですから。

 どこまで大学に対して今のような調査ができるのか。これは、特に私立大学というのは、私立高校を含めてなんですけれども、未履修の問題から今回の公的関与の法律をつくるときからもう大変な、建学の精神という憲法上の問題があって、難しい問題があるんですよ。だから逡巡したんだと思いますが、まず、法制的にどこまでそういうことができるのかを調べさせてください。

岡本(充)分科員 私が危惧しているのは、今の個人の話は今の観点、それから企業の方は、私は、大学に寄附をしていただくのは非常にありがたいことだし、産学協同研究をやっていただくのも大いに結構だと思う。ただ、研究者個人に寄附をするというあり方は、全部がだめとは言わないけれども、実際にこの前のある医薬品の例でもありましたように、あらぬ誤解を生む、私はそうだったとは思わないけれども、あらぬ誤解を生むだけ損だと私は思うわけなんですね。

 そういう意味で、個人だとか個々の教室を名指しというか、この教室と言って指名をして寄附をするというような寄附のあり方というのは、特定の企業、団体に利便を図っているのではないかという疑義を生む余地が残るという観点で、私はちょっと研究の余地があるんじゃないか。

 とりわけ、今回提案をさせていただいているのは、科研費等を含む研究費なんかでも、一部の研究室ががばっと集めて、もしくは一部の研究室にたくさん集まって、そのほかの研究室、それこそ勝ち組、負け組が極端にできているんじゃないかという思いも今持っていまして、すべての研究室が平等であるということはない。それは結果、安倍総理が言われる話ではないですよね。機会の平等は保障しなきゃいけないというのは安倍総理も言っているわけでありますけれども。

 そういう意味で、今の研究費もしくは科研費を含む研究費の配分のあり方、それから今後国として必要な研究により予算を振り向けるとはいっても、その中でどういう配分をしていくかということについて、もちろん使った使い道は後で報告は受けているとはいえ、そこの部分の公開も含めて、もう少し公平性、透明性が図られるような施策を一回研究してみられてはいかがか、これも提案でありますけれども、いかがお答えいただけますでしょうか。

森口政府参考人 今先生からお話がございました、特定の研究室に研究費が多額に流れるということでございますけれども、今先生もおっしゃられたように、競争的資金ですから、優秀な研究者がより多くの研究費を獲得する、これはある意味ではそういうことも十分あり得るわけでございます。

 ただ、研究費の配分が、不合理な重複ですね、不合理な重複という意味は、同じ研究課題について、同一の研究者に別の複数の競争資金が来てしまう。それから、過度の集中、これは、一人の研究者に課題は別にしても使い切れないほどの研究費が集まってしまう。そういう二つのポイントがあると思いますけれども、そういうことについては排除する、これは非常に重要だと思っております。

 そのために、現在でも、競争的資金の新規採択の際には、府省間で採択を予定しています課題のリストを交換する、こういうことはやってございまして、前者の方の不合理な重複、これについてはある程度確認ができていると思っております。

 しかしながら、過度の集中ということになりますと、これはいわゆるエフォート管理といいますけれども、この研究課題についてこの研究者がどれぐらい時間を割くかとか、そういうのをトータルして見る必要があるわけでございますけれども、この過度の集中の排除ということにつきましては、今内閣府の取りまとめのもとで関係府省と連携をしまして、文部科学省におきまして、府省共通研究開発管理システム、こういったものを今整備を進めてございます。これが本年度に運用開始ということでございますので、こういうことを整備しながら、今御指摘の問題点につきましても解決を図っていきたいというふうに思っております。

岡本(充)分科員 その点についてもまた後刻報告を求めたいと思います。

 これで終わります。

古川主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、石関貴史君。

石関分科員 民主党の石関貴史です。

 見識が高いというふうにいろいろ伺っておりますし、承知をしております大臣に一度接してみたいなと思っておりましたので、こちらを希望させていただきました。

 何点かあるんですけれども、時間が限られていますので、それぞれどんどん質問をさせていただきたいと思います。

 まず、教育の格差ということを念頭に置いて、いわゆる就学援助、このことについてお尋ねをしたいと思います。

 この援助を受ける子弟が大変ふえているということで、これは厚労省の所管の方の、教育扶助と就学援助の受給児童生徒数、私の手元にあるもので、新たに集めたものではないんですが、平成十五年度はこの利用者が全国で百二十五万人にもなっているというデータもあるんです。

 そもそも就学援助の制度の沿革と、それからこれを受ける人たちというのが、戦後とかそういった大変困難な時代、それからその後、高度成長期、現在にかけてどのような傾向にあるのか、まず簡潔にこの部分をお尋ねいたします。

銭谷政府参考人 就学援助について、戦後の動向でございますけれども、実は戦前は就学奨励規程ということで国が補助をいたしておりましたが、戦後すぐは生活保護法による生活扶助費の中に吸収をされております。

 その後、昭和二十年代後半あるいは三十年ごろから、まず教科書につきまして、就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律というのができまして、昭和三十一年ごろから、児童に教科書またはその購入費を給与する場合に補助する制度が創設をされております。その後、学校給食費につきまして補助制度が創設をされたということでございます。この就学援助が逐次拡大をいたしまして、昭和三十三年に医療費、それから昭和三十四年に修学旅行費、それから昭和三十六年に学用品費、通学費と順次拡充をされております。

 なお、教科書につきましては、昭和三十八年度から学年進行によりまして無償給与が措置をされまして、昭和四十四年度に制度が完成をしたことから、この就学援助の対象からは外れております。

 なお、就学援助につきましては、いわゆる要保護者と準要保護者というものが国の補助の対象になっていたわけでございますけれども、三位一体の改革によりまして、国の補助は要保護者に限定することとして、市町村が認定をいたします準要保護者に対する補助については、平成十七年度から廃止をし、税源移譲しているところでございます。

 また、数でございますけれども、直近の数字で申しますと、要保護及び準要保護の児童生徒で就学援助を受けているという数は百三十八万人ということでございます。(石関分科員「推移は」と呼ぶ)推移につきましては、ここ数年ふえているという状況でございます。

石関分科員 もっと聞きたいんですけれども、時間がないのでどんどんやります。

 足立区というのが大変困難な地域であるということで例に挙げられて、ここのところは私自身もちょっと興味を持っていろいろ資料を集めたりしていたんですが、全国的に見て、ざくっとしたとり方で結構ですが、就学援助率が高い地域というのはあるのか、あるいはこれが非常に低いというのはあるのか。今お話があったような二分類に分かれますし、自治体で対応している部分とそれから国でここまで把握しているというのがあると思うんですが、そういった部分で、やはり全国的に見てここが非常に困難と思われる、ここは比較的そういった受給者が少ないという部分が一つ。

 それから、私は選挙区が群馬の二区というところで、特に群馬県全体として、この受給率というのを指標に見たときに全国の中でどのくらいのところにあるのか。それから、私の選挙区ですが、群馬の二区、伊勢崎市、桐生市、みどり市というところですが、ここについても教えていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、平成十七年度の全国の要保護及び準要保護児童生徒数は百三十八万人でございまして、全児童生徒に占める割合は一三・二%ということでございます。これを都道府県別に見ますと、都道府県によりましてやはり差がございまして、大阪府、東京都、山口県、北海道の四都道府県が二〇%を超えております。一〇%から二〇%の県が十八県、一〇%未満の県が二十五県という状況でございまして、就学援助率が低い都道府県としては、静岡県が約四・二%という状況でございます。

 次に、群馬県についてでございますけれども、群馬県における要保護及び準要保護児童生徒の児童生徒に占める割合は県平均では約五・八%でございます。(石関分科員「全国の中ではどれぐらいのところにあるのか」と呼ぶ)全国の中では低い方だと思います。

 それから、お話のございました市について申し上げますと、伊勢崎市が約四・六%、みどり市が約四・六%、桐生市が約七・五%という状況でございます。

石関分科員 事前に経年でということは言っていなかったんですけれども、特に今の三市について傾向はわかりますか。合併したりしていますから、幾らかデータのとり方は難しいかと思うんです。私、自分で各自治体に以前お問い合わせをしたことがあるんですが、もしあれば経年で教えてください。なければ、後で資料をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 大変恐縮でございますが、経年のデータは今持ち合わせておりません。

石関分科員 それでは、後でデータをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それで、就学援助なんですが、例えば足立区ですと、認定の区分、準要保護者については、教育委員会が要保護者に準ずる程度に困窮していると認定した方、こういう基準があるということなんです。ただ、他方、こういうことを言われる教育関係者もいる。生活保護は審査が厳しいんだけれども、就学援助については審査が比較的緩いので、母子家庭などが希望すればほとんどの家庭が受給することができてしまう、このことが就学援助を受ける方がふえている要因でないか、こういう論を張る方もいるんですね。文部科学省としては、どのようにこのことを把握し、考えているか。

伊吹国務大臣 ちょっと政府参考人では答えにくいと思いますから、私が政治家としてお答えしたいと思います。

 二つあると思いますね。一つは、本当に困っておられる方が多いから認定率が高くなってくるというケースと、これは昔は補助事業であったわけですよ。三位一体で地方へ行ってしまっているということが非常に大きな問題で、地方の税源事情が非常に豊かなところは単費でかなりのことができますから、今先生がおっしゃったようなことが比較的起こりやすいというケースもあります。逆に、本当に困っている人がたくさん住んでいるところだからというケースもありますので、一概にこれは言えないんですね。

 ですから、甘いかどうかは、本当はこういうものを申請してきた人の取り次ぎだけを地方議員がするのではなくて、トータルの地方議会の予算審査の中で、本当にそういうお金があるのなら、それこそ選択と集中でどこへ集中すべきかということ、つまり地方自治の力が試されている分野でもあるということだと思います。

石関分科員 大臣の御答弁は、私もそのように思いますし、一々納得できることだと思います。やはり、責任を持ってそれぞれ地域もやらなきゃいかぬということだと思いますし、地域の格差というのはそういったところに起因をしている部分も確かにあろうと思います。

 他方、これはちょっと表現も難しい部分があろうかと思うんですけれども、足立区のデータをいろいろ見たりすると、これは雑誌のデータなんですけれども、車の保有台数とか、メルセデス・ベンツが何台あるか、これを全部東京都内で調べてあるんですね。長者番付の人数がどこが多くてどこが少ないか、それから、生活保護率、新築マンションの坪単価、ラーメンの値段、コーヒーの価格、キャベツの価格、これはコンピューターで大体相関関係をとれば、確かにそういうのが出ます。

 これは大臣に私がこんなことを言うのも僣越な話ですけれども、六〇年代以降、欧米で補償教育というふうに教育の政策がだんだん転換してきたということがあると承知をしています。この中で言われるのが、社会階層と教育の格差は非常に相関が高いだろうというので、どこを政治が底上げしたときに本当にその格差が解消されるかどうかという問題があろうと思います。その中で論じられていることは、学校というのは社会的不平等の是正に対しては無力である、ですから、社会階層間をどうやって政治が手当てすることでその格差を是正できるかどうか、こういった論もあろうと思います。

 私自身の実感として、以前私は市議会で仕事をしていたんですが、そのとき、選挙の前に同級生のうちを全部回りました。これは実感ですが、やはり同級生として友人としてつき合ってきて、学校でしか会っていないという皆さんと、それから各実家を訪れたときの私の実感というのが、このお友達はこういう感じの友達で、家に行ってみるとやはりこういう実家だったかなと。それは、よくも悪くもいろいろなそういう実感というのがあります。

 こういった部分について、漠としたような質問で恐縮なんですが、教育をどうしていくかというのを考えたときに、やはりここまでも考えていかなきゃいけない。これは文部科学省だけの問題じゃないと思うんですが、社会政策全般ということを考えて教育格差を是正するという意味からは、大臣の御見識があれば一言いただければと思います。大変難しい問題だと思いますが。

伊吹国務大臣 私の見識では御質問が難し過ぎますね。

 まず、教育格差というのは一体何だろうという定義が必ずしも皆さんはっきりしないというか、確立した定義がないと言った方が私はいいと思います。所得により、あるいは親の職業により、住んでいるところにより、学力が大数的、統計的に見れば大きく違ってきているということなのか。昔は、家貧しゅうして孝子出づということもありますから、これは一概には言えないと私は思うんですけれども、やはり、学びたい意欲のある人に学べる条件をつくってやる、これが根本、私の責任だろうと思うんですね。しかし、多くは、学ぶ意欲がないのに物をねだるということのために、本当に学ぶ人たちに回るべき国民資源を横取りするという社会的風潮は必ずしもいいことじゃないと私は思っています。

石関分科員 ありがとうございます。私もその点については大臣と同じ考えを持っております。

 そこで、今大臣がおっしゃったように、やはり学ぶ意欲がある人に学ぶ機会を与えるということだと思いますので、奨学金についてお尋ねをしたいと思います。

 私自身、大学四年生のときに自分の保護者の祖父が亡くなりまして、奨学金をもらいました、もらわないとなかなか困難だということがあって。私の出た大学は成績優秀者ですと学費が免除になるということがあったんですけれども、私は全然優秀じゃありませんでしたので、生活困窮者がもらう奨学金をもらいました。

 奨学金の制度、白書にもありますけれども、日本学生支援機構で実施をしているということですが、政府がやっているのがここですけれども、奨学金制度全体でいうと、やはりここの利用者が一番多くて、受給者も多くて、その他いろいろあると思うんですが、そういう認識でよろしいんでしょうか。

清水政府参考人 御指摘のとおり、奨学金につきましては、独立行政法人日本学生支援機構が実施しているのは、百十四万人の貸与規模、事業費で八千五百億円というふうな状況でございまして、無利子、有利子の奨学金が中心となっております。

 そのほか、地方公共団体あるいは公益法人、例えば公益法人で私の所管でございますと、一番大きい規模を持っておりますのが交通遺児育英会、これは事業費で大体十億規模、大学生、高校生合わせて二千名弱というふうな状況であろうというふうに思っております。

石関分科員 これも先ほど大臣が御答弁された、私も同じ考えで、やはり意欲があって、そういう方にしっかり与えるということであるし、意欲がないのに下さい、この国の状況もそんな余裕がないというふうに思います。しかし、意欲があってもなかなか奨学金がもらえないとかそういう人もいると思いますし、格差を是正するというのは、これは政府も各党も共通の今進むべき方向だと思います。

 ただ、他方、奨学金について、お金を返さないという人が結構いるんですね。これはこれで、返す余裕があっても返さないという人に対しては、それはやはりちゃんと返してもらう。これもやりながら、しかし、やはり奨学金をもらえば何とか勉強ができるという人もいると思いますので、奨学金の制度のさらなる充実等について、今大臣のお考えや役所全体の方向性というのがあれば教えてください。

伊吹国務大臣 これは、特に政府を預かっている立場からいうと、つじつまの合わない話はできませんので、必ず財源の裏づけがなければなりませんから。もちろん、充実していけばそれにこしたことはないわけですが。

 まず、今おっしゃったように、返さないなどということがないように、保証人をつけて、どこまでこれをしっかり担保していくかということ。

 それから、日本はいろいろな税制優遇をつけないと寄附をしないという風土がありますけれども、必ずしも諸外国はそうじゃないんですね。随分社会にもうけさせていただいたから社会還元するという富豪が結構おりますから。税制上の優遇もある程度必要だと思いますが、そういう風潮をやはり助長していくというのか、企業なんかもメセナとかいろいろやっていますから、政治家もやめるときは少しは奨学金を寄附するというぐらいの気概があってもいいんじゃないでしょうか。

石関分科員 これは、いただいておいて、余裕があるけれども返さないという人からしっかりそれは返してもらうということは厳しく取り組んでいただきたいと同時に、やはり、本当に学びたいという人にはそれが行き渡るような、財源の裏づけはもちろんのことですけれども、ぜひ御配慮いただきたいと思います。

 ちょっと時間がないので、どんどんやらせていただきます。

 教員の採用についてもいろいろな取り組みをされているということで、学力試験のみならず、いろいろ考えますよ、こういったこともやられているということですが、受験年齢の上限の緩和というのが進んでいるようです。

 白書を見ると、一番多い四十歳未満、都道府県別で見ると、これが十七年度、十八年度で二十五という自治体だということなんですが、私はもっと、社会でいろいろ経験した人をどんどん、一定のしっかりとした選抜をした上で入れるというのがよろしいのかなと思っております。

 私の同級生も教員になったりしていますけれども、これは政治家もある意味そうかもしれないですけれども、学校を出て、すぐ先生、先生と言われる。これは子供たちですから、右向け右と言えば、今いろいろ困難な学級の状況があるにしても、基本的にみんな言うことを聞く。そういう人たちだけが教育の現場で指導するというのも、これはなかなかどうなのかなというのがあります。そういった中に、社会経験を積んだり、四十歳未満に限らず、もっと年齢が上でも、いろいろな社会経験、御苦労されたことが生かされるような人たちが入って、今の教員の方々と切磋琢磨をして教育現場が向上する、こういったことが私は望ましいんではないかと思うんですが、これは大臣にお答えいただくのがいいんですかね。

 ですから、今、四十歳未満が二十五都道府県ということで一番多いんですけれども、もっとこういった部分についてもどんどん、一定の条件はしっかり守りながら緩和をする、こういうのが望ましいんではないかと私は思いますが、大臣はそういったお考えがあるのかないのか、また、そういった方向で頑張られるおつもりがあるのかどうか、お尋ねをいたします。

伊吹国務大臣 先生のお地元の群馬県もそういう試みをやっていますよね。

 だから、我々がやることは、今回、国会に三本の法律を出していますが、あの中で、緊急のときに是正要求をするというだけでも教育の国家管理だとかなんかいって、あれだけ批判を受けているわけですよ。

 ですから、多くは、やはり教育委員会の創意工夫にゆだねられているわけです。一応日本は教員免許法という法律で動いていますが、特別免許状というのがあって、特定の分野だけのことを教えるということはできるわけです。だから、工夫をすればそういうことは大いにできます。

 また、その人をどう使うかというのは、やはり教育委員会の感性と能力なんですよ。それをまた住民の立場に立って見きわめるのが地方議会なんですよ。地方議会がしっかりしているところの教育というのは、手前みそになりますが、京都は非常にうまくいっているんですね。

 だから、やはり地方自治の力というものを、教育は特に地方にゆだねている部分が多いだけに、地方分権とか三位一体とかいう権利を主張する場合は、地方自治の義務を必ず果たしてもらえば、政府が介入する余地なんて全くないんですね。私は大いにやったらいいと思いますが。

石関分科員 これまた私も大臣と同じ考えなんですが、私は、国会へ来る前に市議会と県議会でも仕事をさせてもらいました。全くおっしゃるとおりなんですが、これはみずから大いに反省するところもあり、そうなっているのがしかるべきところなんですが、現状、なかなかそうではない。教育委員会の形骸化というのも大臣よく御承知のとおりですし、現場で見てもそういうことがあるということですので、ぜひ大臣、リーダーシップをとって、望ましいことと、やはりそれについて少し推進力を与えるという意味から、大臣にはぜひその方向で最大限の御努力をいただきたいし、何か鼓舞するというか、そういったような部分は大臣のアナウンスメント効果もあろうと思いますし、現実的にもいろいろな施策がとれるんじゃないかと御期待を申し上げます。

 そこで、今群馬県のお話を大臣からもしていただきましたけれども、群馬の場合は、これは割と全国に先駆けて、さくらプランとわかばプランというのをやりました。小学校、中学校、それぞれ非常勤の講師を配置しているんですね。正規の教員がいて非常勤の講師、実際には二人体制になっているというところがかなりふえております。これは非常に評判がいいんですが、この非常勤で入った人たちは、大体教職課程を通っているけれども正規の教員として採用されないという人たちが多くこの非常勤で配置をされています。

 今、教員の採用の枠というのも狭まっていますからなかなか入れないということもあるんですが、実際、現場でやってみて、非常に子供たちにも評判がいいし、やる気がある、保護者の方からも、もっとやってもらいたい。しかし、非常勤であって、教員になるには、やはりその正規の門をくぐらなきゃいけないということがあります。

 他方、そういった非常勤でやっている間に、だめだという人は、またそれはそれで評価をして、お引き取りいただくということもあろうと思いますし、せっかく現場で、ある意味、見習いのような形でしっかりやった人には、げたを履かせるという言い方が適切かどうかわかりませんが、ぜひ教員になってもらいたいということで、そういった枠なり何か優遇をするとか、それがあった方が現場としては非常に望ましいんじゃないかなというふうに私は思うんです。

 現状、そういうものが、群馬はないということなんですが、全国的に見て、そういう入り口が開かれている制度があるのかないのか。もしなければ、これについてもぜひ大臣から勧めていただきたいと思いますが、是非についてもお尋ねをしたいと思います。大臣の方からちょっと。

伊吹国務大臣 総論的に言いますと、まず行革の法案がかぶっているわけですよね。そこで、教員、教職員の上限、あるいは毎年毎年の扱いについてどうするかということを国会がお決めになっちゃっているわけですよ。これを変えない限りは、教員の枠というのは、これは地方公務員であるんだけれどもふやせない。それはなぜかというと、義務教育国庫負担金のしりがこちらについていますから。ですから、教育の大きな一つのポイントはこの法案をどうするかということにかかっているので、文部科学大臣としては、そこに少し手を入れたいなという気持ちはあるんです。

 しかし同時に、政権を預かっているということになると、総合的なバランスをとらないといけないから、野党から見ると非常に歯切れが悪い、与党から野党を批判すると非現実的だということになるんですが、お互いにそういう非難の応酬をせずに、どこかの折り合いを見つけてやっていくというのがやはり私はあるべき姿だと思います。

石関分科員 これもまた大臣おっしゃるとおり、もう随分改革をされたんですけれども、私は郵政省というところに少し勤めていましたから、大体政府の考え方と、私は今野党に属しておりますけれども、いずれ政権党になれるだろうという期待で今やっているところでありますが、やはり何でもかんでも、財源の裏づけもなしに金をよこせ、これはとんでもないというのは、先ほどから大臣おっしゃるとおり、同じ考えでおります。

 ただ、これについては、教員全体の員数についてはそういうふうに決まっているし、いろいろな裏づけも必要だということなんですが、もう一点お尋ねをした、入り口を少し、現場で見て、やる気があって、その人たちにそういった、優遇というのがいいかどうかわかりませんが、ちゃんとやっている人にはそういう門戸をもう少し広げる、こういったことについてはいかがですか。これも地方がやることだというのはもちろんあるんですが、大臣のお考えなり取り組み。

伊吹国務大臣 それは、教員の質を高めるときにどうするかというので、一般の採用の際も、初任研修期間を六カ月にするか一年にするか、身分がなかなかはっきりしなくなるからやめてくれと連合がおっしゃる、そういうことの繰り返しなんですよ、この部分は。

 だから、初任者の研修期間を少し広くとるのか、あるいは、今おっしゃった、行革の考えている定数の枠外の単費として地方がやった場合には、それは単費職員としてそれを是認するのか、いろいろなやり方があると思います。

石関分科員 現実はそういうことだというふうに思いますが、私は、これをふやすことが教育の現場の底力が上がることだというふうに思いますので、ぜひ念頭に置いておいていただければありがたいと思います。

 時間になってきたので、最後の質問をさせていただきます。

 私は興味を持っていて、大臣のいろいろホームページとかを拝見しているんです。大臣の趣味、テニスが堪能だと私も知っているんですけれども、司馬遼太郎などの歴史物を好む、座右の書は「折々のうた」、私はこれは読んでいないんですけれども、「菜根譚」、これも結構な本で、さすがだなという感じがするんです。

 他方、司馬遼太郎さんを挙げられているんですけれども、国語の教科書を見ると、こういう人がないんですよね。私、ちょっと事前に調べましたら、司馬遼太郎の作品が使われている教科書は、小中学校で見ると、小学校の国語で二点、「小学国語 5」「小学国語 6」、大阪書籍さんが出しているもので、それぞれ、前者は緒方洪庵の話「洪庵のたいまつ」、それから「二十一世紀に生きる君たちへ」というのがあります。藤沢周平さんに関しては、以前「蝉しぐれ」が、抄が少し載っていたというのがあります。

 政治家の皆さんも、例えば「武士の一分」とか、みんな、これはすばらしい、すばらしいと。だめだと言う人は余りいないと思うんですね。これは小泉前総理もそうですけれども、歴史小説が好きだと。結構な話です。しかし、他方、これが教科書には使われていない。これは何なんだと。例えば「坂の上の雲」とか、これは昔、官僚になりたい人間がこれを読んで、おれも官僚になろうとか、政治家もやはりそういう人がいた。だけれども、これは使われていないんです。これは何なんですか。

伊吹国務大臣 これは、この前、御党の菅さんが、沖縄の選挙前だからいろいろ質問をされて、ちょうどテレビが入っていたので。教科書に何を書くか、これを文部科学大臣が要請したり発言できるほど怖い国はないんです。ですから、私は、そのことについてはノーコメントにしておきたいと思います。

 私について言うと、やはり少し年をとったんだと思いますが、「坂の上の雲」はもう卒業いたしました。今は、やはり池波正太郎のように、少しゆっくりと、小体な料理屋で酒を飲んでいる武士の小説を読んでいるということです。

石関分科員 これらも好きなんですけれども、私は山本周五郎が一番好きなんです。そんなに年はとっておりませんけれども、こちらの方が好きだというのがあります。

 しかし、こういうのが載らないということ、これは事務方で結構なんですけれども、何でこういうのは載らないんですか。先ほど申し上げた洪庵の何とかとか、あと「二十一世紀に生きる君たちへ」、これは書きおろしなんですよ、それぞれ。これは司馬先生のものですけれども、小説のように生き生きとしていませんし、ちょっと違うという感じがあります。戦場の場面とか不適切な場面は載せるべきでないと思いますが、しかし、子供たちに、おれもこうなりたいというような気持ちにさせる、そういった部分というのはたくさんありますから、何で載らないのかと。例えば、純文学と大衆文学みたいなので分けて、純文学は載っていますよ、いろいろ。だけれども、いわゆる大衆文学に分類されるようなものはなかなか載っていないし、これはどうして載らないのか。

 もし何か御承知の部分があれば、最後に教えてください。

銭谷政府参考人 先ほど大臣からも御答弁がございましたけれども、学習指導要領の範囲内で、歴史小説に限らず、どういう教材を取り上げるか、これは発行者の判断にゆだねられているところでございまして、私どもがあれを載せろ、これを載せろ、そういう制度にはなっていないということはぜひ御理解をいただきたいと存じます。

石関分科員 ありがとうございました。

 私も、こんなのも載ればいいなと思っていますので、さらに政治家として力をつけて、陰にひなたに、こういったものが採用されるよう、そういった政治の力をつけていきたいなと思っております。

 ありがとうございました。

古川主査 これにて石関貴史君の質疑は終了いたしました。

 次に、高山智司君。

高山分科員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは、文科省の決算委員会ということで、やはりお金の問題で、無駄遣いやら何やら、決算ですからそういうことはいけないだろうと思うんですけれども、まず最初に、サミットの開催地が洞爺湖に決まったということがあるんですけれども、これに関して、これは初めから北海道ありきじゃなかったのか。ほかのいろいろな地域、開催準備やら何やらさせられて、随分気を持たされて、結局、北海道に決まってしまった、おかしいじゃないかという声がよく聞こえてくるんです。こういうのは、首都機能移転のときもそうでしたけれども、誘致合戦みたいな無駄な部分があるなと私は感じているんです。

 大臣、まず伺いたいんですけれども、サミットの開催地が洞爺湖に決定ということがきょう新聞に出ていましたけれども、この件に関して、初めからこれは洞爺湖ありきだったんじゃないのかというふうに思っていますか。また、この決定の経緯に関して、こういう決定の仕方でよかったのかということを伺えますか。

伊吹国務大臣 決定の経緯は、安倍さんの心の中のことですから、私はうかがい知ることはできません。誘致をしたいという各都市が手を挙げられているということは、そのとおりだと思います。

 誘致活動はしておりますが、私の地元の京都でいえば、サミットの受け入れ準備はまだ何もしていないと思います。

高山分科員 どうでしょうか、今回、安倍内閣の閣僚の一員ということでありますけれども、洞爺湖という場所で来年サミットをやる、これは、海外への日本のPRの絶好の機会として、洞爺湖、いいじゃないか、そういう評価ですか、洞爺湖という場所に関しては。

伊吹国務大臣 総理が決めたんだから、サミットは総理がやるわけですから、それはそれで、警備の問題とか何か一つだけのことを取り上げて、トピック的に大向こうに受けるような質問あるいは応答というのは私はなかなかできないので、やはり総合的に警備の問題とか何かいろいろなことを考えて決められたんじゃないんですか。

 私は、日本のためにぜひ、洞爺湖に決まった限りはお願いをしておきたいのは、首脳以外に約三千から四千の人が来ますよね。この人たちが、宿泊等を含めて、日本にどういう気持ちを持って帰るのか。いい気持ちで帰らせてあげないと、報道機関の人たちもおりますから、ここは私も、閣僚の一員として十分意を用いて、いろいろ進言はしたいと思っています。

高山分科員 それでは、きょうは国土交通政務官、吉田政務官にもお越しいただいていますので伺いたいんですれども、サミットの開催地、洞爺湖ということがきょう新聞に出ていましたけれども、これはどうですか、洞爺湖という場所に関しては。

吉田大臣政務官 高山委員にお答えを申し上げます。

 私も、今大臣がおっしゃるとおり、これは総理のそれこそ御専権事項でありますから、ああした形で定められた。それには、外務省や公安関係で随分と調査をされました。

 私たちの新潟も手を挙げていたものですから、可能性、それから資質について大分細かく御調査をいただいた、その総合的なものの評価の結果だろう、こう思っていますので、洞爺湖で定められたのであれば、洞爺湖でひとつ世界の首相をお迎えして、内容のあるサミットになるといいな、そのように思っています。

高山分科員 私も、このサミットの開催に関しては、別に与党、野党ある話ではございませんので、大会の成功は本当にお祈りしたいんですけれども、何かちょっと結論ありきで物事が進んでいたのではないかなということが報道から仄聞されましたので、そういうことであれば、本当に開催地として手を挙げて、何か当て馬的に使われた人たちがちょっと気の毒だなという思いがありましたので、冒頭、質問させていただきました。

 それで、文科関係の質問なんですけれども、まず、この間、米国のバージニア大学で銃乱射事件というのがありましたけれども、この点に関して、今、日本の大学の学内における安全面というんですか、いろいろ、報道によればですけれども、バージニア大学で初めに二人被害者が出てから随分時間があったのに、全然学内で、いつもどおり行われていたがために二次的な被害が出てしまった。特に二番目の被害は、これはだれかが何かをすれば防げたのではないかというような意見も多いものですから、日本では今どういう危機管理の体制をとっているのか、まず教えてください。

清水政府参考人 大学におきます危機管理につきましては、今、各大学の自主的な判断によって行われておりますけれども、近年では、大学関係者の間で、危機管理の必要性に対する認識あるいはその取り組みも高まってきているという現状にございます。

 例えば、データがそろっているものとして、国立大学協会が平成十八年度に調査を行ったものがございます。二十二のリスク、そこの中のリスクには、例えば、火災もございますし、あるいは有害物質、バージニア大学の不審者というようないろいろな危機の要因、リスク要因がございますけれども、例えば、そこにおける危機、規程とかマニュアルの策定状況等を調査しております。

 その結果によりますと、リスクの種類、態様に応じた体制が各大学でとられております。例えば、個人情報の漏えいということについては九一%、あるいは有害物質についても九一%の大学でマニュアル化等がされていますが、不審者の侵入につきましては四五%で規定を策定しておる、こんなふうな状況でございます。

 私どもといたしまして、そういう大学の法人の評価というところで、それぞれの年度評価の共通な事項として、例えば国立大学につきましては、危機管理を位置づけて、災害や事件、事故、薬品管理等に関する危機管理マニュアルの策定等を含む全学的、総合的な危機管理の体制の整備条項について評価において取り上げることとしておりますし、また、国公私立大学を通じて実施する第三者評価においても、学生の安全確保を評価基準に位置づけている評価機関の例があるというふうな状況でございます。

高山分科員 これはちょっと大臣に伺いたいんですけれども、以前、大阪の方の池田小学校なんかでそういう危険な人が入ってきてということがありました。それで、それ以来、各地の小学校では、朝、生徒が入ったらかぎを閉めちゃってというようなことがかなり行われております。

 小学生がたくさんいるところに変な大人が入ってきたら確かに危険だなとは思うんですけれども、今回のような銃乱射までいくとさすがに危険ですけれども、ある程度の人が大学の中を出入りしたりというのは、ある意味健全な部分もあると思うんですね。完全な犯罪者は、それはいけませんよ。だけれども、いろいろな人が入ってきてこその大学であって、別に潜りを許すわけじゃありませんけれども、その学校の学生証がなきゃ建物の中に入れない、そんなことばかりで、厳重にする必要が本当にあるのかなという部分も、ちょっと私、思いがあるんですね。

 この点まず、大臣として、大学を、自由闊達な雰囲気を残していきつつ、しかし、こういう事件も起きるし、危機管理というのをどういうバランスでやるのがいいのか。私は、小学校なんかだと、ある意味、小学生がいっぱいいるところに来るんだからしようがないとは思いますけれども、大学生といったら大人と変わりませんからね。そういうことを考えて、どういうバランスでやるのがいいというふうにお考えか、ちょっと伺えますか。

伊吹国務大臣 いや、私も別段、確固たる考えがあるわけじゃないんですが、一般論として言えば、今先生がおっしゃったように、やはり未成年の場合は、これはいろいろ危険なこともありますから、学校の管理というのはかなりしっかりしていないといけないんだけれども、大学の場合は、キャンパスがあって、それから教室や研究施設その他がありますよね。だから、教室、いろいろ危険なものもあります、率直に言って。特に薬学、工学、化学、理学系等は。

 だから、こういうところの建物への立ち入り等についてどの程度の管理をするかということは、今参考人が申し上げたように、大学の自己責任ではあろうけれども、しっかりやってもらいたいという気がある反面、今おっしゃったように、キャンパスの中を、私もよく昔、本郷に下宿をしていたときに、赤門を抜けて不忍池まで歩いていくというのは結構いい散歩道なんですよね。その辺の自由はやはり少しあった方が開かれた大学としていいなという、先生がおっしゃった気持ちもあるんです。

 ところが、困るのは、何か事故が起こると、そういうことをしていたからけしからぬというマスコミ論調にすぐなるし、批判の的になりますから、少し日本人も大人になって、やはり開かれた大学としていい面があるときには、ある程度の事故というのが起こったからといって、すぐに大学の人を居丈高に責めるという風潮がなくならない限りは、この大学の自由往来というのは私はなくならないと思いますね。

高山分科員 私も本当に、大学の中が自由闊達な雰囲気だといいなと思っているんですけれども、やはりこういうバージニア大学のようなすごい事件が起きたときに、私は、バージニア大学でも一番これをやっておけばよかったなと思ったのは、やはり生徒に対する緊急連絡網というんですか、これが何かできてなかったんじゃないのかなと。

 それで、小学生と違って大人ですから、そんなに逐次、毎日のように連絡帳でやったり学校から何か連絡網があるという必要までは私もないとは思います。だけれども、さすがに、銃を持った人間が学内をうろうろしているぞ、これはやはり生徒に周知する必要があるぐらい危険なことだと思うんですけれども、この点に関して、大学の緊急連絡網がどうなっているかとか、こういうことをあのバージニア事件の後に文科省の方で何か検討されましたか。

清水政府参考人 不審者の対応、あるいは、今御指摘がございましたように、例えば凶器等を持って学内の教職員あるいは学生の安全に危害が及ぶような場合というようなことで、先ほど申し上げましたように、各大学でそれぞれのマニュアルを整備しているというようなわけでございます。

 全体として、例えば危害のおそれがあった場合に、隔離、警察への通報等、学生、教職員の安全を守るということで、これはある大学の不審者の対応のマニュアルのあれでございますけれども、例えば、こういうものを私どもとして見せていただいている、こういうことでございます。

 あの事件の後に、私どもとしても、例えばそういう不審者の対応のマニュアルを収集して分析した、こういうことでございます。

高山分科員 やはり、こういう事件が起きて、だからといって壁を、塀を高くしてゲートをきつくしてというよりは、こういう緊急連絡網の体制ですよね。今、もうみんな一人一台携帯電話を持っているかもしれないし、いろいろ考えられるので、ぜひそういうことを検討ぐらいは文科省の方で、各大学に命じるというよりは、サジェスチョンを与えるぐらいのことは、これは大事件ですからね、そのぐらいやっていただきたかったなと思います。

 それで、あともう一つ違う質問に行きます。

 ゆとり教育を受けた高校生に初めて学力テストが実施された。それに関連して、この間の十三日ですか、この内容についての公表があったということですけれども、この学力テスト、これに対して文科省の方でどういうような分析を、どういうふうに受けとめているかという点に関して、副大臣お願いします。

池坊副大臣 文部科学省が先般行いました高校生を対象にした学力テスト、これは、同じ問題につきましては、八割が同一正答率でございました。これだけをもってして、では高校生の学力が改善されたのか、落ちたのか、ゆとり教育はよかったのか、悪かったのか、これを結論づけるのは早急ではないかというふうに思っております。

 ただ、英語の聞き取りが正答率が高かったこと、それから国語の古典が読解力が低かったこと、これはちょっと時代を反映しているのかなという気がいたします。

 OECDの調査によりましても、日本は、学力は決して低くはございませんが、読解力が低いと言われておりますこと、それからまた学習意欲がないということは、私はこれは問題ではないかなというふうに思っております。私は十一年間の政治家生活の中で子供の読書活動推進ということを努めておりまして、読み聞かせ、ブックスタート、そして朝の十分間の読書、これは今、小中高で二万五千校がやっております。こういうものを通しまして、私は、やはり読解力がなければ、二十一世紀、世界の中で生きていくことはできないと思いますので、読書運動とか、また、読書運動などをすることによって勉強することの大切さなどを学んでいくのではないかと思いますので、今回の結果はそのようにして受けとめて、もっとやるべきことがあるならばやっていったらいいというふうに考えます。

高山分科員 副大臣、随分御熱心に読書活動を進められて、非常にすごいな、さすがだなと思いましたけれども、理数系が随分点数が低かったというような報告が出ているんですけれども、この点に関しては文科省はどういう分析をしていますか。

池坊副大臣 理数は、実験を主としてやるとか、少人数の授業というのが必要なんだというふうに思っておりますので、やはり工夫が大切なのではないかと思います。クラスごとで教えますとどうしても楽しむということがなくなってまいりますので、少人数の授業によって実験をしたりすることによって深めていったらいいと思います。

 小学校においては、必ずしも理科とかが嫌いじゃないんですね。統計によりましても、理科は好きというのが出ておりますが、だんだん高学年になると減っていくのは、そういった少人数の授業などが減っていって、どうしても大学入試とかあるいは高校入試などにシフトしていくからだと思うので、授業をもうちょっと楽しくする工夫というのはプログラムも随分つくっておりますので、これから変わっていくのではないかと、高山委員、御期待ください。

高山分科員 確かにそれは期待できるなという御答弁でしたけれども、それはちょっと、小中学生はそうかもしれないんですけれども、これは高校生の学力テストでして、高校生の理数系というのは、どちらかというと、実験でおもしろい、興味を持つというのは小学生ぐらいの話であって、もっと数学的思考でじっくり一人で考えて、表層的に何か覚えて終わるとか、何かあんちょこみたいなものでやるというよりは、じっくり深い思考を要求されているものが数学や理科だと思うんですね。

 この点、やはり落ちついて勉強することが詰め込み教育のいい部分ですよね。詰め込まなきゃならないから、とにかく落ちついてじっくり勉強する。これが失われてきた結果、数学なんかも、ある意味、大学受験までの数学というのは暗記科目的な要素があって、この問題はこういうふうに解いていくんだというようなやり方がよく受験指導なんかでもあるんですけれども、どうもそこが点数が低いというのは、深く落ちついてじっくり考えるということが何か高校生になくなってきているんじゃないか、それがひょっとするとゆとり教育の結果なのではないかという声もあるんですけれども、この点はいかがですか。

池坊副大臣 ゆっくり勉強しない、そういう習慣がないというのは、私は、私の長女の子供が高校に入りましたけれども、やはりテレビゲームが楽しいとかそういうことにもよるのではないかというふうに思います。

 算数に対しては、大学入試などに関係していくので、入試が変われば授業の内容とか自分のモチベーションも変わっていくんだろうというふうには考えておりますけれども、これはゆとりでそのようになったというふうには考えづらいのではないかなというふうに思います。

 今のこの時代の風潮が、落ちついて勉強する、そういうような風土にないということも一つは問題なんだと思います。子供たちは塾に行っておりますと非常に落ちついて集中して勉強するんですね。勉強というのはやはり集中だと思いますから、学校でもその集中をさせるということは習慣づける必要があると思います。

 ゆとりというのは学習指導要領にかかわってきたというふうに言われておりますけれども、基礎、基本をしっかりと学び、知識があっただけでは生きていくことはできませんから、それをどのようにして駆使して応用していくかというのがゆとりなんだというふうに思うんですね。だから、ゆとりというと、何だかきっちり勉強させないのがゆとりというふうにとられがちですが、それは間違っていて、ゆとりというのは、いかに自分が得た能力を、知力をどのように生かすことができるか、活用することができるか、それを養うということであるというふうに思っております。

高山分科員 副大臣のように熱心な指導者に出会えた子供はいいんですけれども、やはりゆとり教育というだけだと、ただ自習しておいてというような教師もいるというふうに私は聞きますので、どうなのかなと思います。

 それと、ちょっとその数学の関連で、国際数学オリンピックというんですかね、こういうのがあるんですけれども、この点に関してちょっと伺いたいんです。

 というのは、今、世界で利益率の高い企業というと、大ざっぱに言ってIT系のグーグルだとかそういう企業なんですけれども、こういうところが今全世界的に、数学のできる子を、というのは、コンピュータープログラムというのは、実社会のいろいろな出来事を、全部、0、1、0、1のプログラムに書きかえていく、そういう数学的思考が非常に必要になるので、全世界から集めている。その際に、日本の子なんか見ていますと、コンピューターを新しいのを買ってやると、その立ち上げか何かですごい集中して小学生なんかでもやるんですよ、本当に半日でも、ずうっと。やはりおもしろいからやっている。だけれども、学校の数学が、高校生のを見てみると、これは二年前のが今さら出てきたような結果なんですけれども、確かに数学は学力が少し落ちているらしい。

 そして、今から聞きますけれども、どうも日本のこの数学の力が全体的に落ちているようだ。しかもそれが、コンピュータープログラムだの何だのを書く人が、日本人の中でずば抜けて優秀な人がなかなか出にくいような背景が社会的にもどうもあるのではないか。それがどんどん進んでいくと、結局、物すごい付加価値の高い産業がみんなアメリカだとかへ行ってしまって、日本ではもう余り利益率の高くないような従来型の家電みたいなのをつくって、下請的な仕事に甘んじなければいけなくなってしまうのではないかなという危惧がちょっとあるので、まず伺いたいのは、この数学オリンピックというのがずっと行われていると思うんですけれども、日本の成績というのは近年どういう感じなんでしょうか。

池坊副大臣 日本は一九九〇年の大会から参加いたしておりまして、昨年の大会では九十カ国・地域中七位ですから、決して、数学は日本はだめだだめだとかいうふうに言われておりますけれども、九十カ国中七位というのはいい成績ではないかなというふうに思っております。そうでもないでしょうか。

高山分科員 ちょっとそれは優しいなという感じがしますね。

 念のため聞きますけれども、これは大体、一位、二位、三位、どういう国が占めているのか。これは細かい話なので、局長の方、お願いします。

森口政府参考人 数学オリンピックにつきまして、中国が一位、そして二位がロシア、三位が韓国、四位がドイツ……(高山分科員「ここ二、三年のことを言ってもらっていいですか」と呼ぶ)はい。

 ここ二、三年については、各国のあれは、済みません、手元にございませんが、日本について言いますと、ここ数年来は成績としては上昇傾向にある、そういう状況でございます。

高山分科員 本気出したら今委員会とめちゃうところですけれども、これはきのうから言っているわけですから。

 これは言いますと、近年、やはり中国とか、割合そういうところは成績が高いんですよ。ところが、日本が近年、今上がっているみたいなことを言いましたけれども、むしろ、大きい枠で見たら下がっているんですよ。そこが私はちょっと問題じゃないかなと思っています。

 それで、まず伺いたいのは、例えば、こういう数学オリンピックや、あと、科学オリンピックはほかのもいろいろあるんですけれども、こういうのに対して、天才児とまでは言いませんけれども、この数学オリンピックに出ている子というのは、大人ではなくて小学生とか中学生の子が割合出ているわけですよ。そういう子に対して国がどういう支援をしているのか。やはりある一部の、エリート教育とまでは言いませんけれども、そういうずば抜けた才能を伸ばす施策といいますか、そういうことを文科省としても取り組むべきだと私は思うんですけれども、今どういうことをやっていますか。

森口政府参考人 先生御指摘のように、この数学オリンピック等において成績を上げるには、二つあろうかと思います。一つは、やはり参加者のすそ野を広げるということですね。参加者を広げることによって優秀な子も出てくるということがあろうかと思います。それから、その中で優秀な子、意欲、能力のある生徒をさらに伸ばす。その二つが重要かと思っております。

 そういうことも踏まえまして、具体的には、まずすそ野を広げるという意味では、やはり参加してもらわないと仕方がないということですので、高等学校等に対するこういうオリンピックがあるんだということの広報活動を充実するということ、それから、予選があるわけでございますが、その予選の会場数をふやして参加者を拡大する、そういうすそ野を広げるということ。それから、その予選の選抜によって代表選手、成績優秀者が選ばれるわけでございますが、そういう子供たちに対して大学教員による通信教育とか強化合宿、こういったものをやるということが重要かと思っております。

 国といたしましては、具体的には、独立行政法人の科学技術振興機構というのがございまして、そこを通じまして我が国の国際数学オリンピックを主催しております団体等に対しまして経費の支援等を行っているところでございます。

高山分科員 本当に、そういうきらりと光る才能に対して、何かもっと国がいっぱいそれを集めてきて切磋琢磨させるような場というんですか、そういうのをつくっていただきたいなと思います。

 それで、今の支援体制というのは他国に比べるとどうも見劣りするなというのが私の印象ですので、それはいろいろなところで使われている無駄な国家予算から考えれば随分後々生きてくるお金だと思います。

 どうも国の予算の使い方を見てみると、そういう特定の個人にお金が行ったり特定の個人だけを伸ばすようなことにはなかなかお金が使いにくいというようなことがあるんだと思うんですけれども、教育というのは、結局、大ざっぱに組織の能力を全部上げるということはできないと思うんですね。その子一人一人、個人個人の能力が上がっていって、とある学校だったり組織の能力が上がるわけですから、結局は、個人の能力を伸ばすためには、ある一時期に特定の個人にお金や資源が集中して、これははたから見たらえこひいきじゃないかと思われてもしようがないようなことなんですけれども、そういうことも必要なんじゃないのかなというふうに思います。

 時間がないので次の質問に行きたいんですけれども、小学生のための公園、今、児童公園というのがありまして、その中の、うちの近所の浦和なんかでもそうなんですけれども、ブランコが危ないから取り外されたりですとか、滑り台のこういうのは手を挟むからとか、結構そういうのがあるんです。

 確かに、すごく危険な遊具が置いてあって大けがになるというのは問題だと思いますし、それによって市や設置者が責任を問われてくるということはもちろんあるんですけれども、ただ、翻ってみるに、では子供をすごく安全なじゅうたんの上でただ遊ばせていて、転んでもけがしない、本当にそれでいいんだろうかというふうに思います。やはり小さいうちは歩いて、ぶつかって、けがして。命を失うような大けがは、これはコントロールしなければいけない危険だと思うんですけれども、ちょっとした、すりむくとか足をくじくとか、こういうのはコントロールしなくてもいいのかな、というよりは、子供自身がそういう危険をコントロールする能力を身につけなければいけないんだというふうに私は思うんです。

 この点、どうも最近の児童公園というのは逆行するような気が私はしているんですけれども、子供がけがをしても大丈夫なような公園づくりというんでしょうか、こういうことに何か取り組んでいる事例というのはありますか。

吉田大臣政務官 今のお話、ごもっともだと思います。子供は遊ぶことが仕事ですから、元気に安全な中で遊んでいただくということに向けて、公園の面積を大きくするというようなことも、それから遊具を安全なものを選びながら拡充していくという方向に向けて、これは国交省の今大事な方針でありますので、進めさせていただいている最中であります。

高山分科員 安全なものを選ぶというよりは、ある程度坂があったり転ぶようになっていたりしても私はいいと思うんですよね。そういう、自然に近いと言うとちょっとありきたりな言葉ですけれども、大人が見守る形で、公園で子供が危険をコントロールすることを覚えていく、世田谷の方ではそういうような感じの公園もあるそうですので、ぜひ参考にして、これから子供がわんぱくに遊べる公園づくりも取り組んでいっていただければと思います。

 質問を終わります。

古川主査 これにて高山智司君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、平田主査代理着席〕

平田主査代理 次に、三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。

 伊吹文科大臣、よろしくお願いいたします。京都と滋賀で隣同士ですので。こうやって質問させていただくのは初めてなんですが……(伊吹国務大臣「そうかな」と呼ぶ)そうなんです。

 ぜひ、私も一親ですけれども、学校の子供たちに、いろいろなことを勉強しようと思ったら国会へ行ってごらん、先生の話を聞くのも大事だけれども、国会議員をやっている人を学校に招いて話を聞いてみようというようなことが言っていただけるような国会審議になるように、自戒を込めて申し上げ、質問に入らせていただきたいと思うんです。

 私、実はきのう、地元の公立の小中学校を数校訪問してきたんです。学校図書館の状況について現場を見に行ってまいりました。図書館ボランティアの皆様方、また先生方、そしてその他部活の指導をなさる先生方や、きょうの学力テストに備えて準備をされる先生方など、大変現場の皆様方は一生懸命仕事をしていただいているな、頑張っていただいているなということを感じたんです。

 まず一つ目、大臣にちょっと御認識をお伺いしたいんですが、学校図書館、図書館教育についてどのような御認識をお持ちでしょうか。読書センターとしてはそうですし、学習情報センターとしての機能も大きく学校図書館にはあると私は思うんです。特に公立小中学校に絞ってきょうは議論したいと思うんですが、伊吹文科大臣の学校図書館、図書館教育に対する御認識をまずお伺いできますか。

伊吹国務大臣 できるだけ児童生徒の自主的な学ぶ態度というんですか、学ぶ気持ちというものを大切にしなければなりませんから、そういうことからすると、教室で教える以外に自分が進んで行ける場所の一つであると。これは、先生がおっしゃった言葉をかりて言えば学習情報センターというんですか、そういう機能の場所であると同時に、そこでいろいろ知識に触れるという読書のセンターであると同時に、また、クラスを超えて、あるいは学年を超えていろいろな人たちが集える場所でもあるということじゃないでしょうか。

三日月分科員 大きく認識を一にするものだと思うんです。

 その学校図書館の状況について、例えば、かぎがかかっている。学習情報センターとして活用したい、本を見に行きたい、いろいろな方々とクラスを超えて触れ合いたい、話をしたい、さまざまな世界の情報、歴史的な情報、興味、関心を持ったから調べてみたい、いろいろと人生、将来、考えるから、そういうものについて触れてみたい、ところが、特に中学校に多いんですけれども、かぎがかかった学校図書館、また、いろいろな陳腐化した情報がまだまだ学校図書館に置いてあったり、かつ、何を読めばいいのかということについてのアドバイス機能がない学校図書館が大変多いという状況について、大臣はどのようにお考えですか。

伊吹国務大臣 それは望ましいことではないでしょうね。

 ただ、一方で、先般来ずっとお話があるように、司書であるとか図書教諭というのは、いることが望ましいことなんだけれども、みんな枠が決められちゃっているわけですよね。

 一方、国会へ来れば、いじめ、未履修、何を調べろ、調べろと民主党からいろいろ御注文も出てくる、それは直接調べられない、いや、注文が出てくることが悪いと言っているわけじゃないんですよ、そのことを調べることによって、随分、教育の大きな流れがよくなったと私は評価しているわけです。だから、野田さんのあの質問は、私は非常によかったと思いますよ。

 だけれども、それは現場ではどういうことになるかというと、子供に向き合う以外の大変な時間をとることになるんですよ。それ以上に多いのが、都道府県教育委員会が市町村教育委員会にいろいろなことを尋ねる。例えば、滋賀県の教育委員会が大津市の教育委員会に尋ねるとか長浜の教育委員会に尋ねる。そうすると、またそれを今度は学校へ言ってくるわけですね。今度は市町村教育委員会が学校へいろいろなことを尋ねてくる。だから、昔と比べると、書類の提出義務が物すごく多くなっているというのはかわいそうな点なんですよ。

 もう一つは、御家庭が共働きになって、核家族になっているでしょう。ですから、本来、基本的なしつけは家でやっていたことが、子供のしつけを学校に期待しちゃっているわけですね。地域社会がかなり壊れてきていますから、これも学校の先生に期待される。だから、図書館の担当の教諭の人が常に図書館におれない状況なんですよ。

 これは、私は三つの方法でしか解決できないと思っているんですね。教育を最優先の課題と安倍さんが言っている限りは、国会のお許しを得て、少し法律を変えてもらう、定員を縛っていますから。こういうやり方も一つあるんですよ。それから、本来事務的な仕事をお金をつけて外へ出すというやり方、いわゆるアウトソーシングと言われる手法ですね。それから、ほんの少しのお金をつけてボランティアの人を中へ入れてくるというやり方によって教師の負担を減らしてやらないと、現実にはなかなか解決できないです。

 かぎがかかっているというのは望ましいことじゃないことはよくわかっています。どう解決するかということがやはり一番大切なことで、当然、先生も批判のために質問しておられるわけじゃないわけだから。その三つの方法のどれをとってもお金が要るわけですよ。

 ですから、お金、教育予算をふやすために、まず、教育について国民が抱いている不満を解消しなければならない。これを今、あっちに頭をぶつけ、こちらに頭をぶつけながらやっているというのが現実です。

三日月分科員 時代の変化の中で、また世の中の要請にこたえるために、学校だとか先生方だとかに多大な要請がかかり、仕事が繁忙になり、本来向き合っていただかなくちゃいけない子供たちに向き合う時間がなかったり、役割として与えられた司書としてのお仕事をしていただけない状況になっている。かぎがかかっている状態は望ましくないと大臣がおっしゃった、その現状に対する認識だとかお考えについては私も共有するんですけれども、一点ちょっと、学校図書の今の蔵書数を含め、どういう状態になっているかということについて確認をしたいんです。

 私、資料をお配りしていると思うんです。五枚物の資料を配らせていただいて、その二ページ目なんですが、学校図書標準というものが決められていて、この達成状況は非常に低位である。大臣の御出身である京都は二五%、二〇%、青森に至っては九・八%、かつ、高いところでは山梨等々、七〇%、八〇%行っているところもある、こういったところで、かなり自治体の認識や取り組み状況によって格差のようなものも出てきているのかもしれません。この状況について、どのように評価をなさいますか。

 当然、今年度から新五カ年計画をつくっていただいて、財政厳しき折、それでも単年度ごとの二百億円ですか、地方財政措置がとられたことは承知の上で、この状況についてどのように考え、どう対応されようとしているのか、お伺いできますか。

伊吹国務大臣 二つあると思いますね。

 一つは、地方交付税の基準財政需要の中に入れている、今おっしゃった、五年間で毎年約百三十億ですか、六百五十億のお金が多いか少ないかということはありますから、これをふやそうとすれば、当然、交付税の総額をふやすか、交付税の中の選択と集中をやらなければならない。

 しかし、もっと深刻なのは、御承知のように、地方財政の仕組みというのは、基準財政需要というもので積み上げた都道府県のシビルミニマムみたいなものがあって、そこでその単費というか、地方の税収で賄えるところまでは賄って、賄えないところを交付税で渡しているわけでしょう。

 それで、東京都や愛知県は多分、基準財政需要を上回る税収がありますから、交付税はもらっていないんですよ。だから、彼らはその上回るところでかなり独自の予算編成をしますよね。今、この数字を私は詳しく見ていないけれども、多分、裕福なところはこの整備の率が高いんじゃないですか。例えば、都道府県別に見ると、神奈川とか東京とか、こういうところは高いですよね。そういう観点が一つあります。

 それから、一番問題なのは、税収が不足しているところは、基準財政需要に入れて交付税の配分をしているんだけれども、今度は、そのもらった交付税と自主的に集めた地方税の合計を合算してどういう予算編成をするかというのは、地方自治体の首長の権限なんですよ。だから、交付税どおりの予算編成をしていない、交付税の基準財政需要どおりの予算編成をしていないところがありますね。

 これは大きな問題で、では、図書整備費として渡している分はどこに行っているんだ。多分、地方公務員の給料だとか何か、なかなか減らないところへ回っているケースは結構ありますよ、それは率直に言って。だから、このあたりを監視するのは、むしろ地方議会なんですね。地方議会が、おかしいじゃないかということをおっしゃらないといけないと私は思います。

 私のやるべきことは、できればこういうでこぼこが生じないように、少し私の判断で配分できるお金を戻していただければ、今、三位一体ということで補助金はみんなやめちゃったわけですから、そして同時に、補助金を賄っていた財源を、所得税を住民税という形で地方へ渡しちゃっているわけですから。交付税の使い道、足らないところは交付税が多く来て、その裁量の範囲が地方自治体の地方自治の力にゆだねられているという現象が多いんですね。だから、そういうところは、どちらかというと、この整備の率がおくれていると私は思います。

 しかし、地方分権という流れが一方にありますから、どういうバランスをとりながらやっていくのか、私も頑張りたいと思うんだけれども、この分野においては、やはり教育を重視するという観点に立てば、地方議会の自治体への事後評価の力というものが試されていると私は思います。

三日月分科員 今言われたように、地方分権の中で、それぞれの地方自治体の議会なり住民の方々の行政監視、チェックの中で、学校図書館の整備についてもどうあるべきなのか、国からおりているはずだけれども、それがきちんと使われているかどうかのチェックをしていくということは重要だと私は思うんです。

 交付税全体のあり方、補助金のあり方についてはもっと大きな枠の中で議論されるべき話でしょうけれども、ちなみに申し上げれば、財政のいい悪いに応じてこの図書標準が比例、相関しているかというと、必ずしもそうじゃないと私は考えています。その辺、事務当局にも確認したいと思うんですけれども、この学校図書標準のあり方について、また、今の現状についてどのようにとらまえていますか。

 もっと詳しく言えば、学級数に応じて標準というのも決めています。ところが、少人数学級の必要性等々で、学級数というのが年度ごとに、地方公共団体ごとにかなり大きく変化する。標準のとり方そのものも、児童生徒数を単位にとってカウントすべきではないかということについても指摘されていますけれども、このあたり、いかがですか。

銭谷政府参考人 学校図書館の充実のために、文部科学省では学校図書館図書標準を決めまして、それに到達するための財政措置については地方交付税措置でずっとやってきたわけでございます。図書標準自体は、学校というのがこれまで学級単位でいろいろと教育活動をしているということで、学級というのを一つの基準として定めているものでございます。

 現在の図書標準への達成状況は、先ほど来先生お話がございましたように、まだ十分ではない状況がございます。ただ、ここずっと取り組んでまいりましたので、小学校でいいますと、図書標準の大体七五%以上達成しているという学校が七割近くに達してきているところでございまして、私ども、さらに頑張りたいなというふうに思っております。

 それで、平成十九年度からは、これまでの額をさらにふやしまして、そして古くなった本をかえる分もきちんと交付税措置しまして、毎年二百億、五年間で一千億という地方財政計画を立てていただいたという状況でございます。ただ、先ほど来大臣と先生とのやりとりの中にもございましたけれども、これは、各地方における教育委員会あるいは学校の姿勢ということも非常に大きくかかわってきていると思っております。

 冒頭、大臣の方から、学校図書館の機能について、読書センターあるいは学習情報センターの機能に加えて、いろいろな交流の場としての機能ということもお話があったかと思います。最近、特に中学校では、学校図書館ということがいわば生徒指導上も大変重要な役割を担っている、特にボランティアの方などが学校図書館の運営に御協力をいただいて、そういう大人の方たちとの交流とか、そういうことを通じて中学生の生活が随分変わってくるといったようなことも、私ども報告として聞いております。

 いずれにいたしましても、私ども、結論として、学校図書館図書標準に基づいた図書整備を進めてまいりましたけれども、十九年度以降、新しい計画に基づいて、さらにそれについて努力をしていきたいというふうに思っております。

三日月分科員 今局長の御答弁の中には、図書標準のとり方についてどうかという部分のお答えがなかったので、今ちょうど新五カ年計画をつくって、これからまた標準を何とか達成していくために頑張っていこうということですので、なかなか基準そのものに触れていくということはできないのかもしれませんが、私、きのう学校図書館へ行って、見てきて、あったことを御報告します。

 図鑑があって、現代の日本と書いてあるんです。現代の日本は、一九七〇年代なんです。新幹線が走りましたといって、ゼロ系の新幹線の絵がかいてある。これまでの日本ということで、一九四〇年代の日本の絵がかいてあるんですね。こういうものが学校図書館にありました。ドイツというところを見ると、西ドイツと東ドイツに分かれていますなんです。果たしてこういう蔵書が小学校なりの図書館にあることがどうなのかということについて申し上げ、支援センターの皆様方や何かも御努力して取り組んでいただいています。

 そのときにどういうことが起こったかということもあわせて報告すると、こういう古い本は教育上よくないから廃棄をしようと行政当局とかけ合ったところ、いや、余りたくさん廃棄をし過ぎてしまうと、もうめちゃくちゃたくさん廃棄しなくちゃいけないから、それを廃棄し過ぎると図書標準を大きく下回ることになるから、低い数字が出てしまうからそれはやめてくれということも実際起こっているんです、現場では。

 このあたり、もちろん図書標準というものをとることによって、どれだけ整備できたかという行政の一つのチェックをすることも大事だと思うんですけれども、とり方、そしてその中身、質の部分についてもしっかりと点検をする、こういうことは学校図書館においては極めて大事だと私は思うんです。このあたり、ぜひ大臣も御認識をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 そのとおりでしょうね。ですから、基準を二つとるということもいいんじゃないでしょうか。全体として図書はどれぐらいあるんだ、しかし何年以降のものはどれぐらいあるんだと。

 だから、先ほど参考人が申しましたように、更新冊数分を整備するということで、従来百三十億だったのが二百億の交付税措置になっているということなんですね。必ずしも財政の事情と比例はしていませんけれども、それは先ほど私が申し上げたことにも関連するんですけれども、地方自治体の首長の判断として図書の充実をしようという予算編成方針を持っている首長は、例えば米百俵的精神を持っている首長のところは高くなるということはあるんですよね。

 だから、形だけつくって、できている、できていると言ったって意味がありませんからね。子供はそんな、ドイツが二つに分かれていたときとか、新幹線が、前の新幹線を見ているような図書を持っていても、そう意味があるわけじゃないから。しかし、古いと思ったものも結構値打ちがあるものがありますから、すべて捨てるのはどうかと思うけれども、全体として蔵書はどれぐらいある、しかし、新しいもの、何年以前のものはどれぐらいあるぐらいの把握はしておく必要があるでしょうね。

三日月分科員 いや、私は、行政がどうだとかということで申し上げているわけではなくて、今学校図書館がそういう現状にあるということについて、ぜひ認識を共有したいんです。かつ、皆さん頑張っていただいていることは、私は多とします。厳しい財政状況の中で、予算を増額してつけていただいていることについても私は存じ上げています。しかし、それを達成しようとするが余り、数字だけをとって、量のカウントだけをして、質の部分まで踏み込めていないという状況もあるんだということをぜひ御認識いただきたいと思うんです。

 それで、やはり地方議会に、もしくは首長にもっと学校図書館を充実しようじゃないかということを申し上げるためにも、また、国の調査に応じて、量だけじゃなくて質はどうなっているのかなということをチェック、カウント、管理するためにも、また、ある蔵書を使ってもっと図書館教育をこうやってやりましょう、情報はこうやってとりましょうという総合学習、調べ学習や何かにも活用していただくためにも、私は、一にかかって学校図書館に司書教諭を専任で配置することと、そして、教諭でなくても司書の、学校図書館にいる人の専門的な配置をしていくべきだと思うんです。

 冒頭大臣からあったように、ではお金をどうするんだ、私らもそう思っているんだけれどもお金がないじゃないかと言われると思ったので、きょう私は資料をもう一つ持ってきまして、これは三ページ目のところを見ていただければと思うんですが、今の図書標準の達成状況のグラフなんです。頑張っていただいているんですけれども、残念ながら、なかなか伸びが進んでいかない。

 もう一枚めくっていただくと、これは、e―Japan戦略の中で学校の情報化、教育の情報化を進めてきたという指標です。私がきのうお伺いした学校でも、いや、今年度パソコンが新しくなるんですと。それはそれで私は結構なことだと思うし、いいことだと思うんです。多額の予算を投じていただくことによって、教育の情報化というのはかなり進んできています、一方こちらは。

 もう一枚めくっていただいて五ページ目を見ていただくと、やはりこの一つの根本の要因は、国の方針、内閣、政府の方針もあると思うんですけれども、情報化の関連予算は大きくて、それに比して学校図書整備予算というのがかなり低いという状況にあると私は思うんですね。

 もちろん情報化は大切です、それをやめろとか、一切なくせ、そのかわりに図書だ、読書だと言うつもりはないんですけれども、情報化の時代だからこそ、デジタルで映像の時代だからこそ読書をしようじゃないか、本を読もうじゃないか、そのために学校図書館を充実させていこうじゃないかという取り組み、国からのそういう明確な方針が必要だと思うんです。このあたり、いかがお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 私は、教育の情報化も、それから学校図書館の整備も、そしていわゆる教材の整備も担当させていただいておりますけれども、いずれもこれからの教育を考えるときに大事なことだと思っております。

 情報化につきましては、コンピューターの単価の問題とかいろいろございまして、金額的には交付税措置額が高くなっている、また、計画どおりではないんですけれども、かなりそれに近い水準で今のところ整備が進んできていると思っております。

 一方、教材については、交付税の算定額に比べますと、最近ちょっと措置額が落ちている。学校図書館の図書につきましては、各地方公共団体によって差がありますけれども、努力が徐々に見られている、また、それについて十九年度以降一生懸命取り組んでいくということで、いずれにしても、学校におけるさまざまな教育の手段、こういうものを充実していくということについては総合的に取り組んでいきたいと思っております。

 なお、先ほど来先生のお話を聞いていて、そうだなと思うのは、やはり図書の更新も必要ですし、それを活用していくための人的な措置ということも大事でございますが、これは先ほど大臣からお話がございましたように、定数措置がなかなか厳しい中で、非常勤の活用とかあるいはボランティアの活用とか、そういうところの工夫もいろいろしていかなければいけないだろうと思っております。

 いずれにしても、教育委員会に、学校図書館の支援センターなどモデル的な事業も行いながら、学校図書館の活用のあり方については私どもも引き続き支援をしていきたいというふうに思っております。

三日月分科員 関係者の皆さんが御努力いただいていることは、私は多といたしています。他の教材や情報化等を含めて総合的に考えていくべきだということについても、私はそう思っています。しかし、図書対情報化の予算の比率、ともにこれは地方財政措置なんですが、やはり大きく違うんですね。私は、リテラシーの観点からも、やはりこの部分、国の何か厚い手当てが、地方財政措置の面からも、特に人的配置という点からも思い切った政策が必要なのではないかと強く思うわけなんです。

 学校ボランティアの方々が入ってきていただいています。司書の皆さんも、忙しい中、兼任で一生懸命仕事をしていただいています。公立図書館も、市立の図書館、県立の図書館も、学校図書館のために協力するよということで、いろいろなネットワークで協力していただいている事例もたくさんあります。学校図書館支援センターというものも昨年度から立ち上げていただいて、今年度は、これも財政厳しき折、倍増以上ですか、予算額を措置していただいていることについても承知をしております。

 ただ、これらを生かすためにも、また、ボランティアの方々や公立図書館との連携を強めていくためにも、学校図書館にぜひ専任の人を置きましょう、すべて全国一律に無理であったとしたら、まずはモデル地域からでもいいから置こう、もしくは、小学校と中学校で一遍に置くことができないんだったら、まずはかぎがかかっている図書館の多い中学校から置こうじゃないか等々、何かちょっと一歩先に踏み出した取り組みが必要じゃないかと私は思うんです。

 この点について最後に御見解をお伺いしたいというのが一つと、もう一つは、学校図書館支援センター、私の住む滋賀県草津市も手を挙げ、選んでいただいて昨年度から三カ年の事業をやって、実は半年でもう既に報告書というものもまとめていただいているんです。これは大変中身の濃い、限られた時間の中で実態報告をしていただいています。

 では、市、県、国、研究事業としてやったこの取り組みがフィードバックされているのか、施策に反映されているのかということについて私はぜひ確認をしておきたいと思うんですけれども、この二点、大臣なり局長なり、それぞれからお伺いできればと思います。

銭谷政府参考人 二点お尋ねをいただきました。

 司書教諭の専任化ということは長い間の課題でございますけれども、当面は十二学級以上の学校に教諭をもって充てる司書教諭を発令するということで、これはおおむね一〇〇%近い配置率に今なっているわけでございます。兼任ではございますけれども、司書教諭の活用ということを私ども考えて、あとは今後専任が置けるかどうか、これは私ども今後の大きな課題ではあるというふうに思っているところでございます。ただし、大変厳しい状況があるというのも事実かと思います。

 それから、学校図書館支援センターについては、国としては十八年度から財政的な支援を伴うモデル事業を行わせていただいたわけでございますが、現在、四十カ所でやっていただいておりますけれども、指導主事と学校図書館支援スタッフが配置をされて、成果は上がっていると思っております。それぞれの地域でいろいろな、まさに学校図書館のソフトの改善ということに貢献をしていただいていると思っておりまして、その成果は、私どもとしても、広く情報を皆さんが共有できるように工夫をしていきたいと思っております。

 なお、十九年度につきましては、さらにこれをふやしていくということで予算措置をしているところでございます。

三日月分科員 ぜひこれからも、私も現場をめぐり、実態を見、そして応援するところは応援する、指摘、チェックするところは指摘、チェックをしていくというスタンスでこの問題に取り組んでいきたいと思いますので、大臣、またぜひ省内での御尽力をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平田主査代理 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 次に、横山北斗君。

横山分科員 どうも遅くまでお疲れさまです。私で最後になりますので、よろしくお願いいたします。

 医師不足、とりわけ地方の医師不足が極めて深刻な状況にあるわけですけれども、この点について、改善の方向性というのが十分には示せていないように思われます。

 例えば、先般行われました統一地方選挙、これは青森県のケースなんですけれども、県議会議員選挙で立候補した人たちに、地元の新聞社、東奥日報社が、医師不足に対してどういうふうに解決したらいいかという選択肢でアンケート調査を行いました。そうすると、例えば、医師の絶対数をふやすとか、地方大学医学部の地元の合格枠をふやすとか、あるいは臨床研修制度を見直すとか、自治体病院を再編するとか、その答えも多岐にわたっており、また、党派に関係なくまさにまちまちである、そういう点からも、解決の方法というのが、いろいろあるのか、見出せていないのかということなんだろうと思います。

 そういう状況を踏まえまして質問をしていきたいと思うんですけれども、まず、臨床研修制度、この導入の背景、現在の状況などについてお答えください。

松谷政府参考人 臨床研修制度についてでございますけれども、現在の臨床研修は平成十六年に必修化となったわけでございますけれども、それ以前にも、昭和四十三年に旧の臨床研修制度がございました。

 しかしながら、必修化前の臨床研修は、地域医療との接点が少なく、専門の診療科に偏った研修となっていたのではないか、極論すると、病気は診るけれども、なかなか人を診るというところまでいっていないのではないかというような批判があった。また、多くの研修医につきまして処遇が不十分で、アルバイトせざるを得ない場合も多く、研修に専念できない状況であった。さらには、出身大学やその関連病院での研修が中心となっておって、研修内容や研修成果の評価が十分に行われてこなかったといったようなことが反省点としてございましたし、指摘されていたところでございます。

 このため、十六年に必修となりました臨床研修制度におきましては、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しながら、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身につけることを目的に、診療に従事しようとするすべての医師に義務化されたところでございます。

 この結果、平成十八年度には、約七千百人が大学病院、約八千百人が臨床研修病院で研修をいたしているところでございます。二年分でございますので合わせて一万五千人ほどございますが、これらの方々がそれぞれ研修をされております。平成十八年三月に実施をいたしました臨床研修に関する調査によりますると、研修医の半数以上の方々がこの新しい研修体制に満足しているという結果が得られているところでございまして、今後とも、制度導入の目的に即したものとなるよう努めてまいりたいと思っております。

横山分科員 この臨床研修制度については今大変的確に御説明賜ったわけですけれども、私どもが知っているのは、例えば国民的なドラマとなった「白い巨塔」、見ていない人は何のことかわからないでしょうけれども、教授以外は全員足軽というような描かれ方がされていて、医局に入って、そこで何か自由がないみたいな閉鎖的なものがあるというようなことも言われてきました。

 それから、総合的な診療を学ぶという目的では、例えば子宮の摘出手術を受けて、しかし出血がとまらない、産婦人科医でない人に診てもらったら、別の臓器から出血していたとか、そういうことを見落としてしまわないように、もっと単純に言えば、肩が痛い、腰が痛いといって整形外科で治療を受けていたら、実はそれはがんの転移だったとか、そんなようなことだって現実にあったわけです。

 そういう総合的な診療を学ぶ、そしてまた、よく言われた大学の医学部の閉鎖的な体質を改めるということは、ある意味、それは医学の進歩とかということにも結びついていく問題だと思うんですね。

 ですから、この臨床研修制度にはもちろんそういう意味もありますし、また、そういう制度を導入することによって、その後、要するに医師になった人たちが好きなところをどんどん選んでいく中で、大学の側あるいは各病院に魅力ある病院になってもらうような体質改善みたいなことを促すことにもなっていくだろうという点で、この制度自体を単純にもとに戻せばいいというふうな、例えば県会議員立候補者の中でそんなふうに考えている人もいるんですけれども、私自身はそういう思いはないんです。ただ、マスコミ報道などでも、短期的にこれによって医師不足が生じたという指摘が非常に強くあることも事実だと思うんです。その点についてはどのようにお考えでしょうか。

松谷政府参考人 御指摘のとおり、現在医師数は、マクロでは三千五百人から四千人程度ふえているわけですけれども、僻地など特定の地域あるいは小児科、産科といったような特定の診療科においては医師の確保が大変困難になっているという状況にございます。このような原因の一つとして臨床研修の必修化があるのではないか、こういう御指摘も特に大学関係者等からございます。

 地域的な医師の偏在の背景の一つとして、この研修制度の義務化あるいは大学病院を取り巻く状況が変化をしてきて、特に、必修になってからは市中の病院で研修を受ける方が非常にふえたということで、特に大学病院の先生からは、自分の大学の場合、医局というのが俗に言われてございますが、そこに入る方が非常に減ってきたというようなことから、医師が非常に足りなくなったというふうに指摘されておりますし、また、従前、大学病院は医師派遣の機能を大分担ってきておりましたけれども、その機能が低下してきたというようなことなどが指摘されて、さまざまな要因が重なって医師不足という状況になっているということだと思っております。

 そのため、私どもとしては、都道府県が中心となって地域の医療関係者と協議をして、地域の実情に応じた医師確保対策を検討する仕組みを制度化するとともに、厚生労働省に地域医療支援中央会議を設置いたしまして、これら都道府県において実施されている医師確保に係る先駆的な事例の収集や自治体への助言等も行うことといたしております。

 また、今年度予算におきましても、医師の集まる拠点病院から医師不足病院に対して医師派遣を行う際の財政的な支援、また、臨床研修における医師不足地域や小児科、産婦人科の重点的な支援など、必要な取り組みをあわせて行っているところでございます。

横山分科員 ただいま、結果はまだともかくとして、そういう対策については幾つかお聞きしましたが、同じ内容の質問になるかもしれないんですけれども、改めて。

 この臨床研修制度の導入後に、先ほど大学病院に七千百、厚生労働省が指定した病院に八千百ですか、臨床研修制度で行っていると。もうこの段階で、大学病院よりもそうでない病院の方に行く人の方が多いわけですよね。その理由として、大学病院は雑務が多いとかそういう理由で、臨床研修制度として医師になった人が選ぶ対象として敬遠されているという今現実があります。それが、まさに地方の大学、そしてそれが地方の医師不足となってあらわれているという現実があるわけです。

 例えば、首都圏であれば、国立大学の医学部もあります、公立大学の医学部もあります、私立大学の医学部もあります。そういう国公私立がそれぞれすぐれた医療をして、また学生募集なんかでも魅力ある大学づくりをやっていくという刺激が必然的に首都圏だとあります。だけれども、地方ですと、そういう刺激がないという言い方はよくないんでしょうけれども、どうしても、青森県に来れば、弘前大学という国立大学法人に医学部があるだけで、ほかに私立大学で医学部のあるところはありません。薬学部がある青森大学とか薬学部のある私学はあっても、医学部となるともう弘前大学しかない。

 これまで競争とかいうような環境に近隣の学校等がなく、そして地方から医師がいなくなるという今の現実の中で、大学の医学部に、だからこれからそういう環境の中で改善努力をしていかなきゃいけないんだよということは、それはもちろんそれとして重要なことなんですけれども、結果的に、今患者さんが、それから子供を産もうとする人たちが大変不安な状況の中にいなきゃならないという現実に対して、改めてどのように厚生省としてお考えでしょうか。

松谷政府参考人 今先生御指摘のとおり、臨床研修制度の必修が始まってから、大学病院で研修される方が、従前は七割五分ほどの方が受けていらっしゃったのが、近年は半分を切るというような状況になってまいりました。

 平成十八年三月に臨床研修に関する調査を実施したわけでございますが、それによりますと、研修病院を選んだ理由として、市中の臨床研修病院では、症例が多い、また研修プログラムが充実している、そのほかには実家に近いとか、熱心な指導医が在職しているといったようなことが挙げられております。また、大学病院で研修されている方が大学病院を選んだ理由ということで、一番多かったのは出身大学であるから、二番目には実家に近いから、三つ目に症例が多い、また研修プログラムが充実しているといったようなことが挙げられてございます。ちなみに、大都市圏であるという理由はどちらも一二%程度で、余り多い理由にはなっておりません。

 こういったことから、やはり大学を含めまして、研修病院において、それぞれの病院の特色を生かせるような魅力ある研修プログラムを作成することなど、病院が一体となって臨床研修を行う環境を整備するということが、若い研修医、若いドクターを引きつける最大の要因ではないかと思っておりまして、プログラム作成責任者に対する講習会等を通じてその支援も行っているところでございます。大学病院も大変危機感を持って、今プログラムの改善等相当進んできているというふうに伺っております。

 また、今の理由の中に、実家に近いといったようなことも挙げられてございました。むしろ大都市に集まるというよりも、そういうことがございますので、地元出身の方を入学させるような、地元枠と俗に言ってございますが、そういったことも比較的有効な策ではないかということで、文科省にもお願いをして、これもあわせて進めているところでございます。

横山分科員 わかりました。

 ただいま、地元枠の拡大というのは一つの有効な方法だというお話がありました。

 ほかに、青森県の県会議員の回答で圧倒的に多かったのが、医師の絶対数をふやせばいいという回答なんですね。厚生労働省の方では、医療費の抑制というような観点からも、このことに対してはそう単純にそれでいいというふうには言っておりません。文部科学省もそれに応じてやっていると思うんですけれども、確かに、医師数をふやせばいいというのは医療の質の問題が出てきます。しかし、実際今お医者さんや看護師さんが、過重労働のために点滴をミスしてしまったというような報告も出ていますから、医師の数をふやせば医療の質が全体として上がるというような考え方もひょっとしたらできるかもしれません。

 しかし、医療過誤がこれだけ言われている中で、やはり単純に数をふやせばいいという問題じゃないなと私も思っているんですけれども、このあたりの御見解を、どなたかお答え願えれば。文部科学省の方からでも。

清水政府参考人 医師の総数は、これは厚生労働省で取りまとめられたところでありますが、全国的には毎年三千五百人から四千人程度増加しておるということで、十八年七月の需給検討会報告書の需給見通しでは今後も増加が見込まれるなど、全国的には必要な医師数は充足される見通しというふうなことを聞いております。また一方、御指摘がございましたように、地域別、診療科別の医師の偏在により、一定の地域において必要な医師が確保できない状況がございます。

 このため、入学定員の抑制を前提としつつ、医師不足が特に深刻と認められる県において、大学医学部の期間を付した定員増ということで、これは厚生労働省等と、先生御指摘の青森県を初めとする十県において今取り組もうとしているところでございます。

 私どもとしては、定員増の対象となる大学のみならず、すべての大学において、教育内容の改善充実等、そういう意味で、先ほど御指摘がございました、例えば地域枠というのもございますし、地域枠のみならず、要するに、地域医療への志、いわゆる偏在分野についての医療への志を高めるということを、いわば入学時から、そして六年間の医師養成の教育、そして卒後臨床研修、そしてその後の継続研修というのを含めて、そういうものを基本的にシステマチックに、大学として一体に取り組むというのが、地道な、時間のかかる話ではございますけれども、そういう取り組みの充実を図りたいし、それを支援してまいりたいというふうに思っております。

 また、例えば産科の場合ですと女性医師が近年増加しているわけでございますけれども、そういう方々が、ある時期、出産、子育て等で離職する例がございます。そういう方々の復帰をやはり大学としても支援していく、あるいは退職医師の地域医療への復帰を支援していく、そういうことも大学として取り組んでいくことは必要なことであろうというふうに思っておりますし、それを支援してまいりたいというふうに思っております。

横山分科員 わかりました。

 私も、全くの素人考えで、例えば、中学校の先生の養成のために教育学部に入る学生というのは、今は定員とかそういうのは余りあれなんですけれども、普通、国語科とか数学科とか英語科とか、大体自分がなりたい先生のところにもうはなから入るわけですよね、国語科に合格する、数学科に合格する。やはり医学部は、さすがに入学の段階では、自分は外科医だとか内科医だとか、そういう専門的なことまで決めては入れないのかなという中で、産科医とかを希望する方が非常に少なくなっていくというような現実があるんだろうなというふうに思っておりましたけれども、今のような方法で医師を、要するに専門別の偏在をなくすという努力はぜひ続けていっていただきたいなと思っております。

 その上で、いわゆる国立大学における事務方の削減、これがいわゆる安価な労働力としての医師集約につながったというような指摘もこの文部科学委員会の中でありました。

 これは簡潔にお答え願えれば結構ですけれども、国立大学の事務職員の削減というのは実際どんなものだったんでしょうか。例えば、行革法とか骨太の方針の関係もあるでしょうし、他方、国立大学を法人化したことで公務員の定員枠に縛られなくなったということもありますよね。そのあたりの点から、いかがな状況なのでしょうか。

清水政府参考人 先生御指摘のように、いわゆる国立大学時代、法人化する以前でございますけれども、定員削減を行ってきて、そういう意味で、教育研究の場としての大学の特性ということで、すべての職種についてではございますけれども、主として事務職員を中心に定員削減が行われてきたという実態がございます。

 法人化の後は、職員数は当然国の定員管理の対象外ということになるわけでございますし、また、各法人において、みずからの経営方針、人事戦略に基づき人員管理を行うということでございます。例えば、附属病院に即していえば、特に医療の関係でいえば、いわゆる看護体制の部分で課題があったというのは否めない事実でございますし、そういう意味で、法人化後に看護師の増員を行ったというような例もあるわけでございます。

 そこで、お尋ねの病院における常勤事務職員数でございますけれども、平成十五年度から十八年度、法人化前から十八年度にかけて、四千五百七十二人から三千八百八十一人と六百九十一人減少しております。これは四月一日の数字でございます。

 ただ、各大学附属病院の事務職員の増減の状況は、実は大学病院の規模あるいはそこに置かれた状況、経営の方針等によって異なっているということでございまして、地域の状況によって格差が生じている、あるいは全体としてさまざまな病院の経営体制を見る場合に、どういう形で経営努力を払っていくか、そういう観点の中で、ある部分での事務職員は充実し、ある部分では合理化し、そういう全体の構造の中で行われているということに御留意いただければというふうに思っております。

横山分科員 わかりました。

 いわゆる事務方にできる仕事を看護師にさせているとか、看護師にできる仕事をお医者さんにやらせているとか、カルテを持ってお医者さんが会計課まで歩いていくとか、何かそんなような指摘が、三月、予算委員会かな、何かのときにも文部科学省関連で出ていたように思います。他方、昨年の診療報酬の改定で看護師の増員というのが物すごい規模で行われているわけですよね。

 少し状況の変化もあるのかもしれませんけれども、この定員削減が医師の過重労働をもたらし、その結果、自治体病院からの医師の引き揚げがというような指摘については、文部科学省としてはどういう御判断をされておりますか。

清水政府参考人 大学病院の経営あるいは運営に当たっては、それぞれ病院に置かれているさまざまな職種の職員がおります。医師、看護師もございますし、各種の検査関係の職員もございますし、また事務職員もございます。

 私どもは、御指摘について、そこのところのそれぞれの業務実態分析のところまで、なかなかこれという形で断定的に申し上げることは難しいかなというふうに思っています。要は、それぞれの置かれた病院の状況の中でそれぞれの専門性に沿って適切に役割分担をしていただくということが、いわば効率的な運営がなされる要諦であろうかというふうに思っております。もちろん、例えば、御指摘がございましたような、会計伝票の作成でありますとか検体搬送とか、医師でない者でも遂行可能な作業を医師が担うというのは、全体の効率的な運営から見ると必ずしも好ましいこととは言えないだろうというふうには思いますが、繰り返しになりますけれども、事務職員の削減の結果、医師に行わせているというようなこととはなかなか言い切れないのではないかというふうに思っております。

横山分科員 わかりました。

 私も、国立大学の教員であった時代に定員削減が行われて、その結果、あるときフロッピーディスクを渡されて、このフロッピーディスクの中の枠にあなたの研究業績を入れて持ってきてくださいと言われたことがあって、それまでは、自分で勝手に好きな様式で作成したのをぽんと事務の方に渡したら、事務の方がきれいに作成してそれを文科省か何かに出していたんですけれども、そういうのも自分でやるべき仕事になりました。

 私は、それをやったからその分研究時間がとられたとか、そんなのは言うべきじゃないなと思って、それぐらいは当たり前のことだなと思ってやっていたんですが、それによって医師不足で自治体病院から産科医が引き揚げたなんということになると、これはもう大変な問題だろうと思いますので、そのあたり、各大学ごとにそれぞれの違いがある、それから効率性をもっともっと追求するという御指摘はもっともと思いますけれども、引き続きちょっと御検討くださればと思います。

 その上で、最後、大臣にぜひお願いというかお聞きしたいことがあります。

 医師不足は、もう本当にさまざまなことを理由として生じたと思います。我が党議員が質問した、今定員数が削減されたことが一つの原因じゃないかということもありますし、それから医局の閉鎖的な体質を改めるのがおくれて大学病院を敬遠する医師が出てきたということもあるでしょう。それから、まさに大臣が御懸念していたとおりの状況だと思うんですけれども、国立大学の法人化の影響というのもあると思います。これによって経営面での努力とか競争的資金の導入とかが叫ばれれば、自治体病院にいる優秀な医師を大学の医学部の方に戻すというようなことをやってくるのはもう当然のことじゃないか。大臣は常々、文部科学委員会の中でも、国立大学法人というようなことが果たしてよかったかどうかということをずっと申しておられました。まさに、こういうことがあるからこそいいことだと思っていなかったんだろうなと思います。かといって、ではそれを戻せばいいという問題ではなく、それはもう与えられたものとして事を進めていく必要があるだろうとは思います。いや、もちろん政権交代をすれば別ですけれども、今の現状では、国立大学法人というこの枠の中でどう考えていくかということだと思うんですね。

 そのために、総務省や厚労省や文科省が、地域医療に関しての三省庁の連絡会議を発足させるとか、さまざまに努力をしていることも私は一応理解しております。しかし、それが逆に、悪い言い方をすると、責任のなすりつけ合いにならないように、私はきょうは専門的な知識ということで厚生労働省の方に来ていただきましたけれども、文部科学省の方だけに本当は質問して、大臣だけに積極的な御見解を示していただきたかったんです。

 例えば、青森県の八戸市では、総合病院の産科の閉鎖は医師集約という形でもちろんのこと、開業医も今四つの施設しかない、これも高齢化が進んでいて、あと五年もしたらもう開業医さえゼロになるということが地元新聞の特集の中で取り上げられておりました。

 教育というのは未来への投資で、大臣は今の教育再生の特別委員会でも、私たちが今方向づけをしても、それの成果があらわれるのは自分たちがこの世を去った後だろうなんということをおっしゃっていて、確かに教育というのはそういう面があるなと。しかし、地方から産科医がいなくなっている現実というのは、もう今まさにそこにある危機だと思うんですね。

 きょう、全国一斉の学力テストが行われていて、その予算が九十五億と聞いていますが、それならこの医師不足対策のために百億ぐらいの予算を組まないと、学力テストを受ける子供自体がこれから出てこなくなるような、もう本当に緊急の対策だと思うんですね。

 その百億というのは、例えば、医師一人に対して、特別ボーナスで、地方から地方の大学に就職するという医師に対して特別ボーナスみたいなことを組むような、もうそれぐらいの予算が、予算というか思い切ったことをやらないと、本当にこの五年以内に大変なことになってくる地域がいっぱい出てくる、今ももちろんそうですし。医療機器ですぐれたものがあれば、首都圏の大学に置かないで地方の大学に文科省の方で設置してあげて優秀な学生を集めるとか、何かいろいろな手があって私はいいと思うんですね。

 そうした中で、例えば学問業績の評価なんかでも、今は競争的資金の導入とかで優秀な医師をこちらに集めるというようなことをやっていますけれども……

平田主査代理 質問をまとめていただけますか。

横山分科員 わかりました。

 例えば、派遣医師、医師を派遣したことに対して、それを大学の評価として重点予算配分の対象にするとか、今はそういうことをやっていないわけですよね。そういう方法も一つあると思うんですけれども、どうでしょうか、それだと予算もかからないで、文部科学省として、やろうと思えば簡単にできることだと思うんです。

伊吹国務大臣 いろいろな原因で起こっておりますから、そして、一つはやはり研修医と、それから大学院段階の医師が、医師の免許を持って、研究のために使われているのか、業務のために使われているのか、事務の手助けのために使われているのか、これがわからない。そういうところから大学病院が敬遠されて、結果的に大学病院の穴を埋めるために、特に大学院以上で地方に派遣している人を引き揚げているという現象ですよね。

 ですから、少子化を前提とすれば、小児科、産科の希望者が減っていくというのは、これは市場原理からいえば当然のことですから、今先生がおっしゃったようなやり方でやるのか、あるいは診療報酬の上でやはりしっかりとそれを位置づけていくのか、いろいろなやり方があると思います。ですから、お互いに、三省ですか、責任逃れにならずに、責任を共有するという形で研究をさせていただきたいと思います。

横山分科員 どうも長い時間ありがとうございました。

 大学の質を高めるために医師集約をしているなら、医師を派遣することで大学の評価が高まるようなことも文科省として検討していただければなと思います。

 どうも遅くまでありがとうございました。以上です。

平田主査代理 これにて横山北斗君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平田主査代理 昨日に引き続き、総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。

 大臣、次から次へと委員会、お疲れさまでございます。また、日々の御政務に、御公務に敬意を表したいと思います。

 きょうは、消防、救急に関して大臣初め消防庁の皆様方と議論をしたいと思うんです。

 こうやって、今このときもまた日夜御尽力いただいている消防、救急、団員、署員、そして隊員の皆さんに敬意と感謝を申し上げたいと思いますし、いろいろな現場で残念ながら殉職をなさる、公務の途中で消防、救急に携わられながら殉職される方々に対して哀悼の誠をささげたいと思います。

 その意味で、まず一点目、ちょっとこれは通告にはなかったかもしれないんですが、大臣に御認識をお伺いしたいと思うんですけれども、日本の、我が国の今の消防、救急の現状、課題というものについて、どのようにとらえていらっしゃいますか。

菅国務大臣 さまざまな火災あるいは地震など、規模が非常に複雑化してきているというんですか、そういう中で、消防全体としては、いつどんなときでもそうした火災だとかあるいは災害があったときに対応できる体制をつくっていかなければならないというふうに私は思っています。

 ただ、そういう中で、特に地方において消防団に入団している方が非常に少なくなってきている。その中で、私どもはとにかく、企業における消防だとかあるいは地域の消防団がなかなか少ない場合でも、あるいは女性の皆さんにもそういうものに興味を持っていただくだとか、ありとあらゆることを駆使しながら、国民の皆さんの安全、安心というものをしっかり守っていきたいと思います。

 そういう中で、消防団の皆さんが大変な御努力、御活躍されておりますことに、私も三日月議員と同じように心から敬意を表したいと思っています。

三日月分科員 きょうは具体的に三点確認をしたいと思うんです。消防の広域化というものについて、また救急需要対策について、もう一つは住宅用火災警報器の問題、この三点について確認をしたいと思うんです。

 まず初めに、昨年の六月ですか、消防組織法の改正によりまして進めていらっしゃいます消防の広域化について、まず一点目は、その意義と目的、現在の進捗状況についてお聞かせいただけますでしょうか。

大石政府参考人 消防の広域化の意義、目的、それから進捗の状況でございますが、昨年、消防組織法の改正をしていただきまして、その法律に基づきまして、現在、消防の広域化に取り組んでいるところでございます。

 そもそも何ゆえに消防の広域化を進めるか、その意義、目的でございますが、やはり一定の規模、大きな規模であればあるほど消防活動は効率的に行えるわけでありまして、いわゆるスケールメリットを追求するということでございます。そのことによりまして住民の消防ニーズに対する期待に十分におこたえすることができるであろうということで、現在のところ、管轄人口十万未満の消防本部がまだ全体の六割という状況でございますが、でき得ればこれを管轄人口三十万を一つの目標として広域化を進めていきたいということで現在取り組みを行っているところでございます。

 この進捗状況でございますが、平成十九年度中に各都道府県において広域化の推進計画をおつくりいただくということで、現在のところは、それぞれの都道府県において、各県下市町村、それから消防本部等といろいろ御意見、御議論を重ねていただいておりまして、今年度末までに消防の広域化の計画がつくられるように消防庁としても助言指導をいたしているところでございます。

三日月分科員 今言われた、何とか広域化を進めていこう、それはスケールメリットを生かしていくためだとおっしゃいました。ただ、スケールメリットではなくてスケールデメリットになる場合もこれまたあるということを想定して、以下確認をしたいと思うんです。

 広域化することによる課題、問題点について消防庁はどのように認識をしているのか、また、これからどのように取り組もうとしているのか。具体的に申し上げて、二点。

 一つは、現行、広域化に向けた計画を各都道府県ごとに練っていただいています。それはそれで消防庁のアドバイザーの派遣や指導助言も加えながら進めていただきたいと思うんですが、一方、いつ起こるかわからない自然災害、火災、事故に対応して、何とかそれでも迅速な対応をしようということで、整備計画でありますとか財政計画を立てていただいています。今ある財政計画や整備計画との兼ね合い、ここで新たにつくる広域化計画とそごを来すことがないようにすることが大事だということが一つ。

 もう一つは、こういう行政の広域連携というのは、消防だけに限らず、例えばごみの問題、し尿処理の問題、また二次医療の観点からも進められています。こういう消防だけをとって広域化するということになりますと、行政のつながりというんですか、一部事務組合で行われている行政間の連携というものに、消防だけちょっと特化し過ぎてこれまたそごを来すということになりはしないかという現場の懸念もあるんですが、このあたりについてどのように考え、また対応していかれるおつもりですか。

大石政府参考人 消防の広域化を進めていく場合には、それぞれの地域の実情というものを十分踏まえて、地域の中で十分な御議論をしていただきながら進めていただくわけでありますが、現にそれぞれの消防において中期的ないろいろな施設の整備計画等をお持ちの場合に、それを踏まえた消防の広域化をどういうふうに進めていくのがよいのか、まずそのお尋ねでございます。

 私ども、消防の広域化の計画の中で、これまでの消防のありようについても十分実証、検証しながら、その上で新たな姿を十分御議論していただく中で決めていただくのがあるべき姿だろうと思っています。

 施設整備をやるにしましても、やはり先ほど申し上げましたスケールメリットというものができるわけでございますから、現在それぞれの市町村に消防の交付税措置というのが行われておりますけれども、これをまとめて活用することによりまして企画管理部門は削減できる、経費の上でも効率的に使える、こういう面もあるわけでありますし、それから、車両等の整備に当たりましても、効率的な配置をすれば従前以上に経費も節減できる、こういう面がありますので、十分に御議論を重ねていただく中で広域化を進めていただければありがたいな、このように考えております。

 それから、御指摘の一部事務組合、消防だけではなく、ごみ、し尿処理とかをあわせてやっている一部事務組合は非常に多いわけでございます。消防だけが広域化して突出するということはあってはならない、御指摘のとおりでございまして、これも、現在の広域圏の中の広域行政との兼ね合いも十分考えながら消防の広域化を進めてください、このように私どもの基本指針の中でもうたっておりますので、現在取り組んでおられる広域行政との兼ね合いを十分考えながら消防の広域化についても取り組んでいただきたい。例えば医療との関係なんかでも、二次医療圏との関係、こういったものも非常に大事だろうと思っております。この辺も踏まえながら消防の広域化に取り組んでいただきたいと考えております。

三日月分科員 今、ちょうどそのあたりのことを各都道府県において議論していただいている段階だと思います。

 次長、今の御答弁の中で大切なことを言っていただいたと思うんですけれども、今ある消防のありようについての実情を検証することが大事で、かつ、そこを踏まえた広域化が行われてしかるべきだということがありましたので、広域化を進めてくれということを決め、かつ、そこに指導助言やアドバイスをする消防庁としても、そのあたり、これから広域化を進めようとする各自治体や事務組合、行政組合がどういう実態にあるかということについてもぜひ把握をする実情調査をしていただきたいと思うんです。その上で、地域の実情に応じた、時には柔軟な対応も必要だと私は思うんです。

 人口おおむね三十万人を目指すと机の上で、霞が関で地図を見ながら言うのは簡単ですけれども、しかし、それぞれの地域ごとに、やはり自治体間のつながりですとか地形ですとか道路の事情ですとか、こういうこともまたあるわけで、このあたり、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 二つ目、救急需要の問題なんです。

 これについてももう既に白書等でお示しをいただいておりますが、十年前、平成七年には三百二十八万件であった救急車の出動回数が平成十七年には五百二十八万件になり、一方、消防隊数の方はその伸びほど伸びていないという状況の中で、救急隊員の方々の現場到着時間というのが六・〇分から六・五分に延びてきているということになっていて、これについては、それぞれ検討会を、平成十七年でしょうか、消防庁の方で設置をされて検討されてきていると思います。特に、民間の患者搬送事業者を活用しようじゃないかということであったり、病院の情報を提供しよう、また、本当にその人が救急車が必要なのかという選別、トリアージというんですか、これを一一九番受信時にやろうということでありますとか、病院の転送については病院の救急車を使っていただこう等々、やっていただいていると思うんです。

 ここで一つ、御確認であり、そして私なりの指摘なんですけれども、こういう報告書の内容を踏まえて、東京都だとか横浜では民間の搬送事業者を使った取り組みが始められようとしています。一部始められています。これはこれで、私はその地域の消防本部の取り組みとして否定するものではないんですけれども、せっかくここまで検討会をされて報告書まで出されているわけですから、全国の救急のあり方、救急需要に対する対応の仕方について、ナショナルミニマムとして、これだけふえている状況の中でどう対応していくべきなのかということについて、法の改正が必要なら法の改正をする、指針なり規約なり条例なりの改正に持っていくということが私は必要ではないかと思うんです。このあたり、どのようにお考えでしょうか。

大石政府参考人 御指摘いただきましたように、救急需要が非常に高まっている中で、救急隊の数がそうふやせるわけでございませんので、現場到着時間が十年間で六分から六・五分にまで遅延を来している、こういう状況になっているということでございまして、私ども、真に救わなければならない傷病者の方を何とか速やかに搬送する、この消防、救急の任務を全うするためにどのようにしたらいいのかということで、十七年度から検討会を設けて検討いたしております。

 委員から御紹介ございましたように、民間事業者の活用であるとか、病院が現在持っております救急車、これを病院間の転院搬送にはちゃんと有効に活用していただく方法でありますとか、いろいろな提言を実は十七年度の段階で出していただいております。

 十八年度におきましては、御紹介ございましたトリアージ、重症度、緊急度に応じましてその搬送のありようというものを考えるということもあっていいのではないかということで検討をやってまいりました。しかし、まだこのトリアージについての検討は中間段階でございまして、今年度も引き続きトリアージの検討をしていくことにしております。

 既に、東京消防庁なり横浜市消防局では、こういう事態を非常に危機的な事態ととらえまして、いろいろな取り組みを試行錯誤的に現在行っていただいております。特に政令市においてこういう状況が深刻であるものですから、私どもの検討会におきましても、東京消防庁、横浜市消防局初め政令市の方々にも入っていただきまして、いろいろと議論を重ねておるところでございます。

 ただいま検討の過程でございますから、もちろんきちっとしたトリアージの手法というのはまだできておりませんが、このトリアージについても十分検討を重ねた上で、全国の問題として、本来救わなければいけない傷病者の方をいかに速やかに病院に搬送するか、その仕組みについて十分に検討し、それを世にまた示していくということをしてまいりたいと思っております。

三日月分科員 全国の問題としてとらえていこうとしているということでしたので、かつ、その実証分析を検証している過程だというお話がありましたので、ぜひそこにゆだねたいと思いますし、それを私なりにも見ていきたいと思うんです。

 大都市は、そういう民間事業者もあり、そういう活用ができるけれども、地方の方に行けば、その選別なり民間の活用なりというものが難しいという状況をぜひ踏まえた上で御対応いただきたいと思いますし、これは緊急に搬送することを要するか否かというのは、試行錯誤とおっしゃいましたけれども、一一九番受信時に選別することはなかなか難しいと思うんです。ですから、かかってきたらすぐに出動してということを今全国でしていただいていると思うんですけれども、一方、そのことによって本当に緊急を要する方々の搬送時分がおくれてしまうという状況、これは私も非常に悩ましい状況だなと思っています。

 消防庁、消防本部、消防救急に係ることだけではなくて、国民のモラルを高めていかなければいけない問題でもあると思いますが、ぜひその検討内容を踏まえた議論を検討会なり省内でも庁内でも進めていただきたいと思いますし、法改正が必要であれば、その提案をきちっとしていただきますように要請をしておきたいと思います。

 三つ目の、住宅用火災警報器についてなんですけれども、これは法改正によって設置の義務化が行われました。個人の私有財産である住宅に住宅用火災警報器を設置しなさいという義務づけが罰則のない形で行われたことになっているんですが、これはどれぐらい設置されているんですか。

大石政府参考人 御案内のとおり、平成十六年の消防法改正によりまして住宅用火災警報器の設置を義務づけたわけでございますが、この適用につきましては、新築住宅については平成十八年の六月から、それから既存の住宅につきましては、各市町村の条例にゆだねられておりまして、おおむね平成二十年から二十三年までの間に条例で定めるところによりまして義務づけをしていただく、このようになっております。

 したがいまして、現在のところ、義務づけておりますのは新築住宅でございます。新築住宅につきましては、住宅をつくる段階で住宅用警報器が必要であることは、これは関係の業界の方々に十分に周知徹底をいたしておりますので、私ども、きちっとそれは守られているものと考えております。

 問題は、既存の住宅にどの程度現在普及しているかということでございます。これについては、私ども、きちっとした調査を個々にやっているわけではございませんが、市町村における設置条例の義務づけの前に、できるだけ速やかに住宅用警報器を設置していただきたいというお願いはいたしているところでございます。そのお願いがどの程度実際にあらわれる形で設置されているか、実情はつぶさにはつかんでおりません。

三日月分科員 それをどのように今後つかまれていく御予定ですか。

大石政府参考人 これは、各戸それぞれに、ついていますか、いませんかということで把握するのはなかなか難しい問題だと思っております。

 お願いをしておりますのは、実は、消防団なり自主防災組織なり、それから婦人防火クラブ、こういう団体がございます。地域に根差した団体でございます。こういった団体で実は現在も地域におけるまとめ買いというものをやっていただいております。まとめて購入していただくことによって普及をさせる、そしてまた安価で安心なものをお持ちいただく、こういうねらいのもとにまとめ買いというものを推奨しているわけでございますけれども、こういう団体を通じて把握していくということが一つあろうかと思っております。

三日月分科員 いえ、私がお聞きしたのは、今のお答えは普及促進に対してどのように取り組んでいけばいいのかということだと思うんですけれども、新築は確認申請段階である程度把握できると思うんです。ところが、既存の住宅は二十三年までに条例化すべきだということなんですが、既存の住宅に火災警報器がついているか、ついていないか、それがきちんと動く状態になっているのか、なっていないのかというのは、なかなかチェック、把握が難しいと思うんです。実は、近々私の住んでいるアパートにもその状態の確認に来られるんですけれども、それはそれで協力をしながら対応していきたいと思うんですが、これは現場の消防本部でも、いろいろな試行錯誤、努力をされながら、大変な思いをしてPRをされたり確認をされたりしています。

 国としては、何か、例えば国勢調査時に調査項目の中に加えるでありますとか、そういう現行行っている調査の中で加えていく等々の検討は行う余地はないんでしょうか。

大石政府参考人 現段階におきまして確たることを申し上げられる段階ではないわけでございますけれども、いわゆる住宅・土地統計調査というものがございます。この調査におきまして、住宅がどのような態様になっているかという項目の中で把握するという方法は検討課題であろうかと思っております。しかし、実際どのように進めるかについては、まだ十分な検討をいたしておりません。

三日月分科員 その義務化したものが、これから各地域の中で、地方の中で義務化されていくものについて、どの程度設置をされているのか把握する方法については現在検討中だということなんですけれども、一体いつまでに、どのような形で検討されるんですか。

大石政府参考人 先ほども申し上げましたように、既存住宅において義務化が進められてまいるのが、ほとんど二十年度からで、そこに始まるわけでありまして、最終的には二十三年度、条例で定めているのは二十三年度としているところが非常に多いわけでございますけれども、そういうことを考えますと、二十年度の段階から、どのような方法でやったらいいかということを十分に検討する必要があるかと思っております。

三日月分科員 ぜひ検討していただきたいと思いますし、その検討に当たっては、各自治体、そして消防本部、それぞれ現時点で取り組んでいるところの実情を踏まえて検討していただきたいと思います。

 それで、先ほど申し上げた軽症救急を初め救急車の活用の仕方もしかり、かつ、今の、住宅用火災警報器の設置義務づけが行われたよ、それをつけてくださいね、住宅火災が起こった場合でも自分の身を守るものにつながるんですよということについてのPR、広報というのは、消防庁なり総務省ではどのような形で、どれぐらいの規模で行われていますか。

大石政府参考人 特に住宅用警報器につきましては、法律改正を行いまして義務づけをした、こういう経緯もございますので、これについてはしっかりとPRを行っていく必要があるということで、現在既に取り組んでおります。各地におけるシンポジウムを初め、それからビデオの作成、その提供、各市町村それぞれに工夫をしながら取り組んでいただいておりますし、消防庁におきましてもブロック会議を頻繁に重ねておりまして、そういう中で普及啓発を図っているところでございます。消防の広報誌、総務省の広報誌においてももちろん取り上げているところでございます。

 それから、救急需要の増大に対応する対策でございますが、各消防局においてはいろいろな工夫をされたポスターをおつくりになったりしておられます。救急車をタクシーがわりに使ってはいけないんだというようなこととか、あなたが使うことによって本当に使いたい人が使えなくなるということを考えたことがありますかというようなこととか、いろいろやっていただいております。

 消防庁としましても、広報誌を使ってこういったことについて啓発をしているわけでありますが、何分この問題は、現在まだ、検討会におきまして、具体的にどのような方法によっていわゆるトリアージというのをやっていくのかということも十分検討している過程でございますので、その辺の経過も踏まえながら今後の広報対策をさらに充実させたいと考えております。

三日月分科員 住宅用火災警報器についても、例えばシンポジウムをやったりビデオをこしらえたり、いろいろな会議の中で普及啓発をなさっている、各地域ごと、各消防本部ごとにもいろいろな努力をなさっているとは思うんです。それは私も、昨日も消防本部にお伺いしながらその状況を確認してきたんですけれども。

 一つの提案は、例えば政府が行う広報、政府広報や何かでも、こういった軽症救急のあり方、また住宅用火災警報器の設置促進等々についても、一定程度、国全体でCMなりPRをすることも検討されてはどうかと思うんです。それぞれの地域でやってください、間接的に会議で周知徹底をやっています、ポスターでやってもらっていますということだけではない、政府としての取り組みも私はするべきではないかと思うんですけれども、そのあたり、いかがお考えでしょうか。

大石政府参考人 いろいろな形での努力が必要であろうと思います。政府広報という手段がございますので、十分に検討させていただきたいと思います。

三日月分科員 そこをぜひ大臣にも御見解をお伺いしたいと思うんです。

 これまでの議論、広域化の問題、そして救急需要増加対策、かつ住宅用火災警報器の設置促進に向けた、また、設置されているか否かの確認手法の検討を含めて、総括的にどのような御見解をお持ちなのかということ、加えて、最後に申し上げました、政府広報にもう少し努めるべきではないかということについての御見解、二つあわせてお伺いします。

菅国務大臣 広域化の問題や救急車の問題、そして警報器の問題、これはそれぞれ国民の皆さんのまさに生命に直接かかわることでありますので、こうしたものについては、やはり私どもとすれば、効率的に、そして緊急に対応できる体制というものにしっかり取り組んでいかなきゃならないというふうに思っています。

 十年間で〇・五分おくれたわけでありますけれども、私は、それによって失われた生命というのも数多くあるのではないかなというふうに思います。そうしたことを常に認識しながら、一人でも多くの方が安全で安心、安定な生活を送ることができるように全力で取り組んでいきたいと思いますし、広報につきましても、これは私、責任を持って政府の広報の中で進めていきたい、こう思います。

三日月分科員 ありがとうございます。

 大臣の方から、政府広報についても、このあたり、ぜひ踏み込んで検討して進めていくという御答弁もいただきましたので、そのことをまた私なりにも確認をしながら、現場の皆様方との意見交換をまた重ねながら、今後とも消防、救急の充実に向けて取り組んでまいりますことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平田主査代理 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

平田主査代理 次に、文部科学省所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。田端正広君。

田端分科員 公明党の田端でございます。

 大変遅い時間まで御苦労さまでございます。また、大臣においては、大変お忙しいところ恐縮でございます。

 きょうは、私、文化財の保存の問題についてお尋ねしたいと思いますが、実は大阪の大東市というところに平野屋新田会所というのがございます。平野屋新田、つまり三百年前に、一七〇四年ですか、淀川水系に流れていた大和川をそのまま大阪湾に、堺市を通して流す、こういうつけかえ工事を行ったことによって、河内一帯の、水害に絶えず脅かされていた問題が解消されて、新田開発が河内平野で大きく進んだという意味で、この平野屋新田だけでも、この辺一帯に三十四カ所ぐらいの新田が形成されて、大阪の歴史、河内平野の歴史というものを非常に大きく変える画期的な新田開発になりました。深野池というのがありまして、これが平野屋新田になり、そして新開池、ここが開拓されて鴻池新田になる。

 日本の歴史上、新田開拓の大きな歴史の中で、今、鴻池新田会所と平野屋新田会所という二つの、会所というのは事務所という意味ですが、そこでお米を出し入れする、取引する、こういう事務所ですが、それが残っているというのは、この二つの会所の間は三キロほどのところでございますけれども、本当に歴史的といいますか、非常に意味のあるものだと思うんですが、この平野屋新田会所、これは私はぜひ残していただきたい、保存すべきだ、こういうふうに思っております。

 まず、文化庁に、どういう歴史的意義を持っているかということ、そして、どう対応すべきか、文化庁のお考えをまずお伺いしたいと思います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、今御紹介ございました大阪府の大東市にございます平野屋新田会所跡は、十八世紀の前半に大和川のつけかえに伴い行われました深野南新田などの新田開発の拠点となった施設でございまして、新田開発を幕府から請け負いました大阪の両替商でございました平野屋が、その出先機関として設けた施設であるというふうに承知しております。

 その敷地は、東西約九十メートル、南北約六十メートルの規模で、屋敷地の西側には銭屋川、残り三方は塀で囲まれ、屋敷内には、会所の建物や米倉、長屋門などの建物、また生駒山を背景としました庭園跡も残存しております。

 同遺跡は、江戸時代の新田開発、新田経営の歴史を知る上で歴史的価値があるものというふうに考えておる次第でございます。

田端分科員 今御答弁ありましたように、学者先生、研究家の間では、やはり、深野池、鴻池の新田開発は、日本を代表する、歴史を知る上でも大変大事な文化遺産であるということも御指摘になっているわけでありまして、特に、これだけの干拓に使った大量の土をどこから持ってきたかとか、その土木工事の技術はどういう技術であったかとか、そういったことを解明する上でも、これはぜひ保存していただきたいという強い願いがあります。

 そして、地元の大東市においても、残すべきだということを過去にも決議をされたようでありますが、つい先月の議会でも決議をされました。そういう意味で、これは地元を挙げてぜひ保存していただきたいということでございます。

 特に、私的に言えば、大阪の歴史にかかわる河内の平野、大阪の平野といいますか、大阪の発展にかかわる大変大きな歴史的意義を持っているのではないかと思っています。つまり、大阪の米どころであり、ここで、お米はもちろんですが、綿、綿製品、あるいは菜種、ここから出てくる油といった、これがつまり、江戸時代における大阪を大きく栄えさせた一つの大きなシンボルにもなっているという新田開発の典型的な文化的遺産だ、こう思っております。

 大臣、先日、私もここを見に行ってまいりましたが、今残っている表長屋門というのがあるんですが、その表長屋門の目の前まで民家が開発されて建ち並んでいるという状況でございまして、そういう意味では本当に残念なことになっています。しかも、実は、この持ち主の方が多額の借金に追われて、ついに競売にかかってしまった。そして、ことしになってから、これが入札にかけられて、宅地開発業者がこれを落札された、こういう形になっています。

 そこで、今、ここで手を打たなかったら、まさに、宅地として開発されて、本当に、歴史的、文化的な史跡に相当すべき遺産がなくなってしまう、消えてしまう、こういう危機に来ているぎりぎりの状況だと思っておりますので、ぜひ大臣の御所見を伺い、そして、何とかこれを救うことができないか、待ったをかけられないか。今後のことについてはいろいろなことは考えられます。しかし、国が、文化庁が、これはもう文化遺産として史跡に値するものだと。もう一方の鴻池の方は、重要文化財にもなっているし、史跡指定も受けているわけでありますから、そういう意味では、これをぜひ守りたい、こんな思いでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 平野屋新田会所の歴史的価値については、先生が御質問の中でもおっしゃったし、参考人からもお話をしたとおりだと思います。そこで、これはぜひ保存することが望ましいでしょう。

 ただ、今の御質問の中にあったように、競売にかかって、不動産開発業者がそれを落としたというんですか、そういう民事上のトラブルというか民事上の取引は、これは我々が介入することじゃなくて、地元の大東市あるいは地元の有志の中できちっと処理をしていただかなければならないことですね。

 その前提で申し上げれば、大東市がこれを史跡として申請されれば、当然、文部科学省としては、文化財保護法の規定に沿って文化審議会にお願いをして、重要なものであるという認定をいただければ史跡に指定することは可能だと思いますので、大切なものであるのに何をぼやぼやしているんだという程度の指導というか、いろいろ助言というか、こういうことは大阪府なり大東市の教育委員会にさせていただきたいと思います。

田端分科員 大臣、大変ありがとうございました。

 大臣のおっしゃるとおりで、これは地元の今後の対応も大きな問題だと思います。しかし、今、大臣から、そういう前提において、これは大切なものだという御認識をいただきましたので、そういうふうに、ぜひ我々も地元の国会議員として応援していきたいな、こう思っております。大臣、どうもありがとうございました。

 それで、文化庁にお伺いいたします。

 今大臣からもございましたが、これは、いかに今後対応するかというのは地元側の問題でもありますが、それを前提といたしまして、この価値について少し、私もこの前行って見てきましたので。

 鴻池と平野屋、この二つの会所があって初めてこの一帯の、河内平野の新田開発に大きくつながったと私は思いますし、また、そういうことも学者の先生方も言っているわけでございます。

 そして、鴻池の方と比べてみて、決して劣らない、むしろこっちの方が非常に大事だというものは、つまり、会所の周りにお堀の跡が三方にあるんですね。南、東、北にありまして、西側に銭屋川という川が流れています。その銭屋川の、今もうコンクリートで護岸をしてしまいましたが、そこには会所の蔵と、その蔵の横に階段がありまして、船着き場があったということが明らかでありまして、その階段を伝ってお米を出し入れしたり人が乗り入れしたという船着き場と、そこに米を収蔵したり道具を置く蔵が連なっている。そういう意味では、大変文化的ないい意義、また、歴史を知る上でも当時のことを知る上でも、大変大事な要素がそのまま残っている。そして、庭には池があり、生駒山系を借景にしたすばらしい景観になっている。そしてまた、その一角には神社があって、それがそのまま今日の地域の神社としても使われている。

 こういう当時の生活なり文化を知る上においての非常に大きな手がかりになる要素、そして、その前が古堤街道という旧街道がそこにつながっているわけであります。銭屋川があり、古堤街道がある。川と陸と両方の交通の要衝になっている、こういうこともうかがえるわけでありまして、そういう意味では、これは大変大事な文化遺産だと私は思いますが、文化庁でも調査員の方に行っていただいて現地を調べたということも聞いておりますけれども、かけがえのない歴史的史跡であるという意味で、もう一度文化庁の方の御答弁をお願いしたいと思います。

高塩政府参考人 今、先生の方から二つのいわゆる会所についての御紹介がございましたけれども、今御質問のございました平野屋新田会所跡に先立ちまして、現在、東大阪市にございます鴻池新田会所というものがございます。これも同じく大和川のつけかえに伴いまして行われた新田開発、新田経営の拠点となった施設でございまして、江戸時代の新田開発の歴史を物語るものとして、往時の敷地、建物が良好に残存していることから、昭和五十一年に史跡の指定、また昭和五十五年に本屋、屋敷跡、米倉などの建物を重要文化財に指定したわけでございます。

 先生御質問のございました平野屋新田会所跡に残る建物につきましては、明治時代以降に改修や建てかえというものを経ておりますけれども、遺跡全体として見ますと、先生から御紹介がございましたような三方に船着き場があるとか、そういったものは、鴻池とまた別の意味の当時の史料として貴重なものというふうに考えておりまして、いわゆる当時の新田会所の基本的な姿をうかがい知ることができる点では同様のものだというふうに考えておるところでございます。

 同遺跡は、やはり我が国の産業、経済活動の歴史を理解する上で価値のあるものというふうに考えているところでございます。

田端分科員 それだけに、文化庁もそういうようにおっしゃっていただいているわけですから、このままで住宅地に開発されてしまってはもう取り返しがつかないと思います。今、この問題について、買い戻すかどうかについて現地でもいろいろされているようでありますが、鑑定額が近々に出るというふうに聞いておりますが、鑑定額が出た段階で地元と業者との間での接点というのが出てくるのではないかと思います。

 再度確認させていただきますが、文化庁としても、きちっとした方向を決めていただいて、地元に対するアドバイスなり意思をひとつ発信していただきたいと思いますが、どうでしょうか。

高塩政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、平野屋新田会所跡の歴史的な価値というものを考えますと、このような文化財が保存される必要があるというふうに考えております。

 開発行為によりましてこうした遺跡が失われるということがあれば、大変残念なことであるというふうに考えておりますので、今後、大阪府の教育委員会とも相談をいたしまして、適切な保存が行われるよう、また大東市の教育委員会に対しましても指導助言を行ってまいりたいというふうに考えております。

田端分科員 大変にありがとうございました。ぜひその線で、何とかこの開発に待ったをかけて、そして史跡指定をしていただけるように、これが文化財として残るようにぜひ御努力をお願いしたいし、我々もまたそういうふうにさせていただきたい、こう思います。大変にありがとうございました。

 続いて、富田林市に重要伝統的建造物群の保存指定地区がございますが、寺内町というところでありまして、ここは、江戸時代を初めとして明治、大正、昭和の初期に至るまでの建造物が約百八十棟、これが特定されているわけでございます。非常にきれいな町並みで、格子戸というんですか、わあっとこうなった家がだあっと続いていまして、私もこの前行って、こんなすばらしい町並みがあるんだということを、大阪に住んでいながら、大阪にあることすら私は知らなかったわけであります。本当に、こういうものがありながら、何で余り知られていないんだろうなというふうに逆に思ったわけであります。

 この重要伝統的建造物群保存地区というのは、例えば、京都の祇園とか、あるいはあそこの産寧坂なんかもそうだと思いますし、白川郷の村落のところもそうだと思いますし、それから岐阜の高山とか、全国、調べてみたら五十三カ所あり、大阪ではたった一つここだけが指定されている、こういうことでありますが、しかし、残念ながら、それらと比べて余り知名度がないといいますか、人気がないというんですか、知られていないという意味ではちょっと驚いたんです。

 私は、こういう文化的遺産というものは、町おこしとしては非常に大事な要素でもあり、文化を大切にすると同時に、それを保存しながらまた活性化につなげていくということが非常に有効ではないかと思っているわけですが、文化庁、いかがでございますか。

高塩政府参考人 先生から御紹介のございましたいわゆる重要伝統的建造物群保存地区、これは国が選定するわけでございますけれども、近年、そういった市町村の申し出に基づきまして申請がふえまして、今現在、全国で七十九地区になっておる次第でございまして、その中に約九千棟の建物が伝統的建造物に特定をされているところでございます。この保存地区におきましては、地元の住民や行政の努力によりまして、歴史的な町並みの保存が図られているというふうに認識をいたしております。

 私ども文化庁といたしましては、重要伝統的建造物群保存地区のパンフレットやガイドブックを作成いたしまして全国に配布いたしますとともに、私どものホームページでも広報を行っております。また、各地区の市町村においては、伝統的な建造物の修理や一般建築物の改修整備を積極的に、また計画的に実施をいたしておりまして、これらの事業に対しまして国としての補助を行っているところでございます。

 国民の貴重な財産でございます歴史的な町並みを保存いたしまして後世に伝えるため、今後とも、関係の市町村等と協力いたしまして、積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

田端分科員 そういう歴史的な町並みの保存については、これは各省が関係していると思いますので、ぜひ各省ともよろしくお願いしたいと思います。

 国土交通省の方で街なみ環境整備事業というのがあって、その適用を受けて、平成二十年度までここのところでもいろいろとサポートしていただいているようでありますけれども、実は、この間行ったときにもいろいろ聞いてみましたら、例えば、この町の中にトイレをつくるとか、イベントをする広場をつくるとか、あるいは何か文化活動をする施設をつくるとか、あるいは休憩所とか、こういうことについてはなかなか困難な問題があるということと、それから、もう一つは、ここに住んでおられる方々の中に、ここを出ていかれて空き家になっているという、空き家になったために、きれいな町並みの一角がそこから崩れるといいますか、何となく不都合になっていく、そういうこともあるということを現場で伺いました。

 せっかくの町並みがあるわけですから、国土交通省から、今、二十年度末までの支援を受けることになっているわけでございますけれども、さらに延長していただきたいことをぜひお願い申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。

和泉政府参考人 委員御指摘のように、現在、富田林市寺内町地区におきましては、歴史的な町並みを生かした整備を図るために、国の補助事業でございます街なみ環境整備事業、これを活用しまして、道路の美装化とか集会所の整備とか住宅の修景等を進めているところでございます。

 一応、現在の案では、平成十一年から二十年度といった計画で地元で行っておりますが、当然のことながら、地元の方でさらなる延長という御要請がございますれば、富田林市と十分連携して対応してまいりたい、こう考えております。

田端分科員 大変にありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 文化庁の方では、いかがでしょう、何かそういうアドバイスなりあるいはまたそういう財政的な支援なり、何かお願いするようなことはできるんでしょうか。

高塩政府参考人 私どもは、重要伝統的建造物の保存地区につきましては、文化財のいわゆる修理、伝統的な建物の修理、それに一般建築物の改修整備、修景と言っておりますけれども、それらにつきまして市町村の事業に対する補助を行っているところでございまして、今年度の予算額は六億五千万円ということになっております。これは全国でございます。

 また、先生から御指摘ございましたように、伝統的建造物群というのをめぐるさまざまな施設の整備につきましては、今御答弁ございました国土交通省とも連携して、こういった町並みを守るためにさらに努力してまいりたいというふうに考えております。

田端分科員 ありがとうございます。

 この富田林というところもそうなんですが、そこからずっと、ここには石川という川が流れています。この石川が大和川に合流しまして、さっき申し上げたように、石川が本当はずっと淀川の方に流れていたのをつけかえて大和川に今入って、大和川が大阪湾に行く、こういうことで、さっきの平野屋新田の話ともつながっていくわけであります。

 実は、この大和川へ行きますと私の選挙区になって、大和川は本当にBODの数値が悪いとか、いろいろな意味で余り皆さんから喜ばれている川ではなくて、何となく嫌われる川になってしまっているわけであります。これはぜひ国土交通省においても頑張っていただいて、この数値も改善していただいて、大分よくなってきたとは聞いております、また、魚も多くなったし、鳥がたくさん来るようになりましたから、そういう意味ではよくなってきているとは思いますが、しかし、全国レベルでいくとまだ、西の大和川、東の綾瀬川、こういうことになるわけでありまして、ぜひ今後とも御努力をお願いしたいと思うんです。

 例えば、この石川の方は、ここはまだ自然がいっぱい残っています。だから、これをぜひ生かしていただいて、この間も、今百匹ぐらいのこいのぼりがずらっと立っておりまして、そこでは皆さんがバーベキューしたりいろいろなことをして、市民の皆さんが川に来て一日を楽しむような、そういうこともやっております。ぜひいろいろもっと知恵をお絞りいただいて、御援助いただいて、例えばゲートボール場をつくるとか、あるいはグラウンドゴルフ場をつくるとか、お年寄りの方も来ていただけるような、そういう親しんでいただけるような石川にし、また、将来は大和川もぜひそういうようにお願いしたいと思います。そういう大和川を親しまれる大和川流域にお願いできるかどうか、ぜひお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

日比政府参考人 お答えいたします。

 まず、大和川の水質浄化への取り組みでございますが、先生御案内のように、大和川につきましては、かつては泳いだりあるいは見たりできるほどの川でございました。しかしながら、流域におきます都市化の進展によりまして水質が悪化いたしまして、昭和四十五年にはBOD値が三十一・六ミリグラム・パー・リットルということになりまして、水質汚濁の進行が非常に顕著でございました。

 こうしたことを踏まえまして、流域におきます家庭での洗剤等の削減の取り組みを進めてまいりました。また、流域の自治体とともに昭和六十年度から大和川クリーンキャンペーンを実施し、さらには平成六年度から、大和川清流ルネッサンス21計画、そして平成十四年度には、平成二十二年度を計画達成の目標年といたします第二期の大和川清流ルネッサンス2計画を策定しておりまして、現在、これに基づいた取り組みを進めているところでございます。具体的には、大和川において十八カ所の河川浄化対策を実施しておりまして、下水道整備の推進と相まって、河川の水質浄化の取り組みを実施しているところでございます。

 こうした取り組みの結果によりまして、近年では、先ほど御指摘ございましたように、BOD値がかなり低下をしてきてございます。平成十六年には四十一年ぶりに環境基準レベルでございます五ミリグラム以下まで低減をいたしました。十七年は、水量の減少が原因の一つと考えられますが、十六年と比べまして若干悪化をいたしました。しかしながら、昨年におきましては、まだ速報値でございますけれども、平成十六年並みの五ミリグラム以下の数値になってございます。また、昨年には大和川におきまして、天然アユの遡上やアユの産卵、ふ化も確認されているところでございます。

 それから、河川の環境整備の点でございますが、これもいろいろな形でこれまで取り組みをしてございますが、本年三月には、堺市側でございますが、浅香山地区が水辺を生かした環境教育の場として水辺の楽校に登録をされました。この取り組みを円滑に実施するために、今後、水辺の楽校の基盤整備を進めていく予定でございまして、関係機関とも協力しながら、一つは左岸側の堺市域で進入路などの整備を行いますとともに、右岸側の大阪市域側でも水辺体験に係る整備を行っていく予定でございます。

 また、先ほど申し上げましたように、天然アユの遡上等が確認されておりますので、今後、柏原堰堤を初めといたします河川の横断工作物に魚道を設置いたしましたり、魚の産卵場や洪水時の避難場所を確保する等、魚がすみやすい川づくりにさらに努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

田端分科員 大変ありがとうございます。ぜひ積極的な対策をお願いしたいと思います。

 この石川をもうちょっと高野街道に沿って上っていったところに富田林市嬉二百八十三番地というところがありまして、ここにすばらしい住宅が、山の斜面のところに桜ケ丘住宅というのが百戸ほどずっと並んでいます。ここは本当にいいところなんですが、しかし、二メートルに満たないような旧街道を行ってようやくそこにたどり着き、そして、そこでもし地震なりがけ崩れが起こったらどうなるかというのが、そこに住んでいる方々の大変な不安でした。横には石川があり、川はあるんだけれども橋がない、向こう側は山手になってしまうという意味で、何かあったときには陸の孤島になる、そんなことで大変不安がっておりましたが、こういったこともまた国土交通省においてもお考えいただいて、これはこの間の能登半島沖のこともございましたので、どうぞ皆さん、そういうことも御配慮いただきたいと思います。

 以上をもって質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

平田主査代理 これにて田端正広君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後七時八分散会


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