衆議院

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第1号 平成21年4月20日(月曜日)

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本分科会は平成二十一年四月六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

四月十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      石原 伸晃君    杉村 太蔵君

      寺田  稔君    中川 昭一君

      矢野 隆司君    渡部  篤君

      岡田 克也君    寺田  学君

      横光 克彦君    前田 雄吉君

四月十七日

 横光克彦君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十一年四月二十日(月曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 横光 克彦君

      寺田  稔君    林   潤君

      矢野 隆司君    渡部  篤君

      黄川田 徹君    高山 智司君

      長島 昭久君    前田 雄吉君

   兼務 上田  勇君 兼務 富田 茂之君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   財務大臣         与謝野 馨君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   財務副大臣        石田 真敏君

   会計検査院事務総局第一局長            鵜飼  誠君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長            金刺  保君

   会計検査院事務総局第五局長            真島 審一君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           門山 泰明君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 團藤 丈士君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   中尾 武彦君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    荒井 英夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  岡  誠一君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官)    惣脇  宏君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           坂本 森男君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大下 政司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           内田  要君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           長田  太君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁)    安居 祥策君

   参考人

   (株式会社日本政策投資銀行代表取締役社長)    室伏  稔君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事長)        緒方 貞子君

   参考人

   (地方公営企業等金融機構理事長)         渡邉 雄司君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  石原 伸晃君     林   潤君

  岡田 克也君     黄川田 徹君

  寺田  学君     長島 昭久君

同日

 辞任         補欠選任

  林   潤君     石原 伸晃君

  黄川田 徹君     高山 智司君

  長島 昭久君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  高山 智司君     岡田 克也君

同日

 第一分科員富田茂之君及び第三分科員上田勇君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

 平成十九年度特別会計歳入歳出決算

 平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十九年度政府関係機関決算書

 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行及び文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

横光主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました横光克彦でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本分科会は、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、文部科学省所管及び防衛省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十九年度決算外二件中、本日は、文部科学省所管、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

塩谷国務大臣 平成十九年度文部科学省所管一般会計及びエネルギー対策特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額五十九億四千五百五十二万円余に対しまして、収納済み歳入額は百八億四千四百二十二万円余であり、差し引き四十八億九千八百七十万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆四千八百十億二千八百五十三万円余、前年度からの繰越額二千七百二十七億六千四百五十八万円余、予備費使用額四億六千七百九十九万円余を合わせた歳出予算現額五兆七千五百四十二億六千百十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆四千四百五十七億一千二百四万円余であり、その差額は三千八十五億四千九百七万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は二千八百三十億八千七百二十万円余で、不用額は二百五十四億六千百八十六万円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計のうち、電源開発促進勘定の文部科学省所掌分歳出決算について御説明申し上げます。

 歳出予算額一千四百八十三億三千三百三十三万円余、前年度からの繰越額六十一億二千九百八十万円余を合わせた歳出予算現額一千五百四十四億六千三百十三万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千五百十八億四千三百六十七万円余であり、その差額は二十六億一千九百四十六万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は四億一千七百五十万円余で、不用額は二十二億百九十五万円余となっております。

 以上、平成十九年度の文部科学省所管一般会計及びエネルギー対策特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院金刺第四局長。

金刺会計検査院当局者 平成十九年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十七件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号三七号は、地域教育力再生プラン等及び家庭教育支援総合推進事業を委託により実施するに当たり、再委託先において、事業に従事していないのに謝金を支払ったこととするなどしていたため、委託費の支払い額が過大となっているものであります。

 同三八号は、科学技術総合研究業務に係る委託費の経理が不当と認められるものであります。

 同三九号は、情報の整理、解析等に係る委託業務の実施に当たり、部分休業制度を利用した職員の給与の減額分を委託費に含めていたため、委託費の支払い額が過大となっているものであります。

 同四〇号は、政府開発援助ユネスコ活動費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 同四一号から四九号までの九件は、公立学校等施設整備費補助金等の経理が不当と認められるものであります。

 同五〇号及び五一号の二件は、私立高等学校等経常費助成費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 同五二号は、私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)の経理が不当と認められるものであります。

 同五三号は、研究拠点形成費等補助金(研究拠点形成費)の経理が不当と認められるものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、日本語教育機関の質的向上の推進に資する事業の実施に当たり、日本語教育機関の審査を行う審査委員会の実施経費について、審査料収入で経費を賄えることから、補助対象経費から除外するよう改善させたものであります。

 その二は、アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業の実施に当たり、事業の実績額により契約金額の精算を行うこととするよう改善させたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

塩谷国務大臣 平成十九年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成十九年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 御指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富田茂之君。

富田分科員 公明党の富田でございます。質疑の機会をちょうだいいたしまして、感謝申し上げます。

 私の方からは、塩谷大臣また関係の皆様に、教育無格差立国の実現に向けた教育費負担軽減策ということで、二十一年度の追加経済対策に盛り込まれています施策について、ちょっと確認をさせていただきたいというふうに思います。

 二月の衆議院の予算委員会で、自民党の小野寺先生とか共産党の石井先生からも同趣旨の御質問がありまして、私の方も、締めくくり総括質疑の際に大臣に何点かお尋ねしました。

 最後に、総理に、学ぶ意欲のある子が経済的理由によって修学を断念するなんて、この日本の社会にあってはならない、内閣を挙げて、そんな子はもう一人も出さないぞという決意を述べてもらいたいというふうに総理に尋ねたんですが、残念ながら総理は、そのとおりだとは言ってくれませんでした。私は、そのとおりだという一言を期待して質問したんですが、今いろいろなことをやっているということを言われた上で、まだ完全ではないというところでもあろうという御指摘がありましたので、検討させていただきたいというふうに答えられたので、ちょっと残念だったんです。

 ただ、大臣の方は一生懸命この問題に取り組んでいただいていまして、やはり、修学困難な生徒に対するいろいろな制度がある、そういったことをまず周知徹底しなきゃいけないということで、文部科学省の方では二度にわたって通知を発出していただいて、現場の学校ではかなりその点で意識を持っていただいて、新入生たちにも相当説明をしていただいている学校もあるというふうに聞いております。

 ただ、去年の秋以降、やはりこの経済状況の中ですから、親御さんの収入減あるいは急に解雇された等で、せっかく入った高校をやめざるを得ない、授業料も払えない、そういったお子さんが本当に多く出ていると思うんですね。

 十年前、全く同じような状況があったときに、予算委員会の中でもお話しさせていただきましたが、当時、我々公明党は野党でしたけれども、自民党の先生方と毎日協議をさせていただいて、やはり緊急の奨学金制度をつくるべきだということで奨学金制度をつくっていただいて、そのときに私立の高校に通うお子さんたちから助かったという声をかなりいただいたんですが、十年たって、状況がもっと深刻なんじゃないか。

 十年前は、私どもの党、地方議員が三千人以上いますので、その地方議員の皆さんに物すごい相談がありました。私自身もいろいろなところで、お母さんたちから、子供をこれ以上学校に通わせることができない、そういう具体的な陳情を受けましたし、今回はそこを飛び越えて、もうそういう相談にも来ない。通えないからやめちゃう。要するに、食べていくのも大変だというような状況なんだと思うんですね。

 そういう中で、今回、追加経済対策の中に、授業料減免に関する緊急支援を含めて、かなりの規模の経済対策を文科省の方でも考えてくれたということで、私は本当にいいことだなというふうに思っています。

 ただ、現実の認識として、当時、二月の予算委員会でも中途退学者等については把握していないというようなお話がありましたし、授業料滞納がどんな状況になっているのかというのも、文科省の調査ではなくて、中高連ですかね、中高連の方の調査で、十九年度末より二十年度末が約三倍になっているという調査があると、その数字が出ていただけで、残念ながら文部科学省本体としては把握していないというようなお話でした。

 今回、こういう追加経済対策の中に教育費負担軽減策を設けるに当たって、授業料滞納の状況とか、また、そのときにも問題になっていましたけれども、中途退学者が現実に一体どれだけいるんだというようなことを文部科学省として把握されているんでしょうか、その点、まずお尋ねしたいと思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 私立高校の授業料滞納状況については、先生が今二月の調査のことを引用されましたけれども、これは日本私立中学高等学校連合会が行ったものでございます。結果を二月に取りまとめました。

 その結果は、平成二十年十二月末の時点のもので、滞納者数が二万四千四百九十人、全生徒数に占める割合が二・七%です。また、比較の対象が、平成十九年度、前年度の年度末、三月末の時点で、滞納者数が七千八百二十七人、全生徒数に占める割合が〇・九%となっておりました。

 これは、調査時点が年末と年度末ということで少し異なっておりますので、単純比較はできませんけれども、私ども、この数字を拝見して、滞納者数は大きくふえているというふうに存じます。

 この調査では、加えて滞納の理由というものを実は聞いておりませんでしたので、日本私立中学高等学校連合会に状況判断をお聞きしましたところ、授業料の延納や奨学金の相談というものがこの時点でも前年度より増加しているということでしたので、やはり、ふえている滞納者の多くは経済的理由によるものであるものと私どもも考えております。

 そこで、文部科学省としての調査ということでございますが、現在、私立高等学校の年度末、この三月末時点の授業料滞納状況について調査を行っている最中でございます。できれば五月下旬ごろには結果の取りまとめを行いたいと考えております。

富田分科員 昨日、ちょっと打ち合わせで現場の方に来ていただいたんですが、今河村さんがおっしゃった、調査しているという書面をいただきましたけれども、その書面の中にも、新年度を迎え、今後とも引き続き、各学校法人及び学校が、経済的に修学が困難な生徒に対して、奨学金、授業料減免や授業料納付の猶予等の既存施策の適用についてきめ細かく対応いただくよう周知と支援施策の一層の充実強化をお願いいたしますというふうに書いてありました。

 これは本当に大事なことだと思うんですね。これを本当に現場できちんと話していただかないと、困っている親御さん、また子供さんたちというのは、どこに行ってどういうふうにすればいいのかというのが本当にわからない。そういった意味で、こういった調査をきちんとしていただいて施策に反映するというのはすごくいいことだと思うんです。

 その中で、今回、授業料減免に対する緊急支援ということで、まだ確定的ではないんでしょうが、四百八十六億円を計上して、経済、雇用情勢の悪化に伴い、授業料を滞納したり、学業の継続が困難となる高校生が大幅に増加することが見込まれる、これらの高校生が学業を継続できるように、都道府県による授業料減免補助や奨学金事業の今後の増加分について、国が都道府県に対して新たな交付金により緊急支援を行うということを決めていただきました。

 これまでは、国の補助というのは、都道府県補助のうちに生活保護及び家計急変を要件としたものに対して補助をしていて、その補助率も二分の一だったということなんですが、今回、新たな交付金で緊急支援を行うという制度設計のようなんですけれども、今までの制度にただ金額的な上乗せをするというだけなのか、新たに補助対象とか補助のあり方を変えてやるということなのか、そのあたり、ちょっと教えていただきたいと思うんです。

河村政府参考人 先般取りまとめられました経済危機対策において、教育費負担への支援として、経済情勢の悪化により修学が困難な学生生徒に対する授業料減免、奨学金事業等への緊急支援が盛り込まれております。

 先生おっしゃいましたように、現下の経済情勢からは、今後三年程度、授業料を滞納したり、学業の継続が困難となったりする高校生がこれまでより増加するのではないかというふうに見込みまして、多年度を視野に入れた支援策が必要と考えている次第でございます。

 詳細についてのお尋ねなんですが、現在、平成二十一年度補正予算案に盛り込むべく政府部内で調整中でございます。すべての都道府県で現在私立高校生の授業料減免措置への補助や奨学金の事業について実施しているところですので、国が都道府県に対して新たな交付金を措置することによりまして、一人でも多くの高校生が学業を継続できるように緊急支援を行うということでございまして、先生がおっしゃいました趣旨も体しての検討を進めたいと存じます。

富田分科員 今検討中なので確かなことは言えないということなんでしょうけれども、これまでと同じ枠組みだったら、ただ金額がふえたというだけで、本当に大変なお子さんたちというのは救えないと思うんですよ。都道府県もみんな財政的には苦しいですから、二分の一の負担があるということだと、ちょっとそこまでできないというふうになってしまうと思いますので、せっかくこれだけの額を三年度を見越してやるということですから、ぜひ新しい基準で、全額国が補助するとか、対象も限定しないで、本当に大変なお子さんに、経済的な理由で修学をあきらめるなどということのないように、そういう方向に持っていくようにぜひ制度設計をしていただきたいというふうに思います。これは特にお願いをしておきたいと思います。

 もう一つ、交付対象となる数字もいただいたんですけれども、授業料減免の補助で毎年三万八千人ぐらい、三年間で約十一万三千人という数字をいただいたんですが、これで本当に足りるのか、算出の根拠になるような何か数字が出ているのか、その点、ちょっと教えてもらえますか。

河村政府参考人 現在検討中ではございますが、その検討の過程での数値といたしまして、国庫補助の対象となっている人数が、昨年度と比べての伸び率として、二十年度は一〇%相当ぐらいの方々がおられます、それがさらに二十一年度以降はもっとふえるであろうということを基礎数に置きまして、それから類推をいたしました数字でございますので、今のままの傾向よりはさらに支援を必要とされる方がふえるであろう、そういう方々に手を差し伸べられるようにということでの算出でございます。

富田分科員 ぜひ、足りなくなるようなことのないように、しっかり対応していただきたいというふうに思います。

 授業料減免とか奨学金事業の相談を受けていて、実際に授業料減免措置を受けられた、あるいは奨学金の受給が可能になったといっても、現実問題として、例えば奨学金を受け取れるというのは三カ月とか四カ月先になるので、当座の入学金とかあるいは滞納していた授業料をいついつまでに払えというのに対して結局間に合わない、せっかく制度があって、その制度で救われるのに、期日までに間に合わなかったから退学を余儀なくされたとか、そういった相談、具体的に私の事務所も受けました。

 私の事務所が受けたのは私立大学でしたけれども、授業料が払えなくて一たん退学になったんですが、奨学金をお願いしまして、奨学金が受けられるようになったということで、さかのぼって授業料を納めさせていただいて、復学を認めてもらいました。

 これは大学だからできたのかもしれないんですが、私立高校で一たん退学してしまうと、基本的には高校中退あるいは中卒という形で社会に出されてしまうわけですから、もし授業料減免とか奨学金が受給可能になるのであれば、さかのぼって納入できるように文部科学省の方で指導するとか、先ほどの通知の中にも猶予をきちんとしてくれというふうにありましたけれども、そういったことをもう少し徹底して、何とか一たん入った高校をやめなくて済むようにできないのかどうか、そのあたり、今の制度でそんなものはないんでしょうけれども、もう少し突っ込んでそういうふうに指導していくことができないかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。

塩谷国務大臣 授業料減免や奨学金の充実について、私どもとしても何とか一人でも多く救えるようにと努力をしているところでございまして、特に都道府県等直接担当する部署に対して、きめ細かな対応ということで今までもやってきたわけでございます。

 今委員おっしゃったような状況で、期間的に間に合わないとかそういう点も含めて、今後も、まずは迅速な奨学金支給のための手続とかあるいは授業料等の納付期間の猶予、これもあわせて徹底して、きめ細かな対応をするようにということで、適切な対応がとられるようにより一層また努力をしてまいりたいと思っております。

 また、さかのぼって遡及的にというお話がありましたが、予算的にいいますと、今年度新たに措置するものを昨年度の分にというのはなかなかこれは現実難しいものですから、それは今の制度だと無理だということを申し上げざるを得ないんですけれども、いい方法があればまた検討してみたいと思いますが、いわゆる年度がかわって予算が今年度に対するということになりますと、やはり遡及的な面というのはちょっと今の制度では難しいものですから、そういうことが現実に多く発生してきた状況の中で、また今後としては制度的に考えていかなければならないことになるかもしれません。またその節にはしっかり検討させていただきたいと考えています。

富田分科員 遡及的なのは単年度主義なので無理だという今の大臣の御答弁でしたけれども、予算委員会のときも、要するに授業料を滞納していると卒業させてもらえないというような質問もありました。その子たちがどうなったかという検証がまだされていないんですが、せっかく三年間勉強してきて頑張ったのに、最終的に親御さんの家計急変によって卒業資格が取れないというのは、これはおかしいと思うんですよ。

 確かに、予算は単年度主義で遡及というのはあり得ないと思うんですが、考えてみたら、お子さんにとっては、きちんと履修すべきものは履修して、授業料だけが払われていないという状態だけが残っているだけで、二十年度の授業料分が二十一年度も払われていないという状況があるんですね。その分を二十一年度の予算で埋めて何が悪いんだというふうに私は思うんですが、遡及的にその予算を使うというのは無理だと思うんですけれども、そのときの状態を穴埋めする分に使うというのは、何か知恵を出せばできるような気がするんですね。

 この三月の年度末に結局授業料が払えなくて退学扱いになってしまった子たちがいるとしたら、その子たちを救うための何か手だてはやはり政治の方できちんと準備してあげないと、日本の将来にとっても損失になると思いますので、ぜひ大臣のところで引き続き御検討いただきたいというふうに思います。

 また、先ほどもちょっとお話ししましたが、さまざまな修学支援制度がある。ところが、それを知らない生徒学生、保護者が本当に多い。大臣の方でも、事務方にお聞きしましたら、「学生・児童生徒等の修学等の支援に向けた主な施策について」というペーパーをつくって、あらゆる機会に、いろいろな段階でこういう修学支援がありますよということの広報をしていただいているというお話を伺いました。幼稚園段階、義務教育段階、あるいは高等学校段階、本当にいろいろありますし、私立、公立でまた違っている。また、社会福祉協議会の方でもいろいろな支援をしていただいているということで、困ったというときにどこに行けばいいかわからない、そういった意味でも、現行制度の周知徹底をもう少しきちんとやっていく必要があると思います。

 実際に、教育費で困ったときに一番相談しやすいのは学校だと思うんですね。本当は担任の先生に、うちの親が首になっちゃってちょっと授業料が払えないかもしれないと相談するのが一番いいと思うんですが、プライバシーの問題もあるし、子供さんにしてみたら、親御さんのことをそういうふうに言うというのはなかなか難しい。でも、本当は学校でそういう相談に乗ってくれれば、いろいろなところへわざわざ行かなくても、どういうふうにすれば子供が修学を続けられるかというのは親御さんの方も知ることができるわけです。

 そういった意味で、現行制度の周知徹底をもう一歩どうやって進めていくかという点と、また、学校できちんと相談体制がとれるようにすべきだというふうに思うんですが、そのあたりはいかがでしょう。

塩谷国務大臣 まさに御指摘のとおりだと思っておりまして、私どももできるだけいろいろな機会を通じてこの制度の周知徹底等を行ってきたところですが、やはり実際に相談に行くとなったら学校が一番だということでございまして、その相談体制を整えることが必要だと考えておるわけでございます。

 高等学校については、都道府県の教育委員会を通じてその相談体制を整えるようにということで要請をしておりますし、大学については、直接我が省から、そういった相談体制を整えるということで、今年度、二十一年度に学生相談体制を充実する予算ということで新たに計上をして、今、積極的に大学に取り組んでもらうように要請しているところでございまして、なかなか、プライバシーの問題もあるという今のお話がありましたので、何か具体的な方策等も考えていかなければならないと思っておりまして、また就職関係のこともあるものですから、いずれにしましても、相談体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

森口政府参考人 委員から二つの御質問がございまして、前半の部分でございますけれども、どういう形で周知徹底をしているかという点でございますが、文部科学省といたしましては、経済的理由によりまして修学困難な生徒に対する支援策の周知、大学、高校等によるきめ細かな相談体制の充実につきましては、先ほど委員からも引用がございましたけれども、通知を発出し、また各種会議の場での依頼等を行っているところでございます。通知としては、今年二月十三日と二月二十五日に二度にわたって出してございます。

 また、文部科学省あるいは地方公共団体等が講じております各種支援策につきまして、保護者あるいは生徒への一層の周知を行うべく、大臣の御指示を受けまして、去る三月十三日には各種支援策につきまして分類整理をした資料をホームページにおいて公表しております。このホームページにはその施策を行っております担当についても明記してございます。また、記者会見におきまして、大臣から直接マスメディアにも協力要請を行ったところでございます。

 また、今般、政府・与党において取りまとめられました経済危機対策に、授業料減免、奨学金事業等への緊急支援等が盛り込まれたことを踏まえまして、現在補正予算案を検討しているところでございますが、この点につきましても、今後とも、国民に対する施策のわかりやすい広報、周知に努めて、一人でも多くの生徒等が施策を活用して学業を継続できるように取り組んでまいりたいと思っております。

富田分科員 ぜひ、事務方の方でも、大臣の意を体して、頑張って現場におろしていっていただきたいというふうに思います。

 二十一年度の追加経済対策ですのでちょっとさかのぼれないというようなお話もありましたけれども、今年度は少なくとも親のリストラ等で修学をあきらめるというような生徒がないように、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今回の追加経済対策でなかなかいい政策だなと思うのは、大学の行う学生への経済支援等に対する無利子融資の創設というものを百十億円規模でつくっていただきました。これは、私は千葉ですので、千葉で幼稚園から大学まで経営されている理事長さんとお話ししたときに、自分のところは一生懸命子供たちがやめなくて済むようにやっているけれども、いろいろな形でバックアップしているが、なかなかそこの分の援助をしてもらえない、結局経営母体の持ち出しになっているというような御相談もありました。

 そういうところにやはり生徒さんは集まってくるんでしょうけれども、やはり国全体として考えた場合に、私立大学が頑張っているのであれば、そこに何らかの補助もきちんとしていくというのが教育政策のあるべき姿だと思いますので、この無利子融資制度というのはどんな形で今考えられているのか、教えていただきたいというふうに思います。

河村政府参考人 現在、具体的な制度設計に向けて検討を行っているところでございますけれども、日本私立学校振興・共済事業団の融資事業を拡充するということでございます。新たに、授業料減免や奨学金事業など学生への経済支援を行う私立大学等や、経済情勢により資金繰りが一時的に悪化してしまう学校法人に対する無利子の融資というものを創設いたしたいということで検討しているものでございます。

 授業料減免については、補助の仕組みはございますけれども、一部しか補助ができませんので、その余の部分について大学あるいは学校法人が負担しているところについての融資でございますけれども、これは無利子で融資を行いたいということもこの中に含まれております。

富田分科員 これは、せっかくこういうものをつくっても、私立大学がそこへ融資申し込みするときに、何かいろいろな条件がついたり、利用しにくい。これまでもこういった制度をいろいろつくっていただきましたけれども、なかなか利用しにくいんだという声もありますので、せっかく新たな追加経済対策ということで考えていただくわけですから、そのあたり、本当に困っていらっしゃる、また一生懸命学生の応援をしている私立大学の現場の声をきちんと聞いていただいて、どういった制度設計がいいのか、ぜひ検討をしていただきたいというふうに思います。

 残り時間も少しになってしまいましたので、スクール・ニューディール構想の中の耐震化について、今回前倒ししようというような話が出てきました。

 実は、この学校の耐震化については、衆議院の予算委員会でもいろいろ話題になりまして、民主党の皆さんの方から、もっと前倒しでやれ、特に菅代表代行なんかは質問の中で、定額給付金は無駄だから一兆円ぐらいそっちに使えというようなお話がありました。私がやじりましたら、やじり返されましたけれども。

 二十三年度までにIs値〇・三未満のことはきちんとやっていこうということで制度設計していたわけですが、今回そこの分も前倒ししようということでこのスクール・ニューディール構想の中に入れているというような理解でよろしいんでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 スクール・ニューディール構想でございますけれども、学校施設の耐震化の早期推進、太陽光パネルを初めとしたエコ改修、そしてICT環境の整備というものを一体的に実施していくことが大きな課題と受けとめ、構想をさせていただき、経済危機対策において盛り込まれているところでございます。

 先生御指摘の耐震化につきましては、Is値〇・三未満の一万棟につきまして、できるだけ早期に耐震化を図ろうということで取り組んでまいりました。平成二十年度の補正予算一次、二次、そして二十一年度本予算で、〇・三未満の耐震化を加速化させ、全体で五千百棟分、二千八百億円近く予算を計上させていただきました。

 そして、先生御指摘のとおり、今回の補正予算におきましては、ぜひ、Is値〇・三未満の公立小中学校施設についての予算措置を完結したい、その方向で耐震化を進めるという努力をさせていただきたいと思っておるところでございます。

富田分科員 この耐震化の促進の議論のときに、耐震化の工事というのは、耐震診断してから実際に工事の施工が終わるまで今まで三年ぐらいかかっていた、それを二年半なり二年に前倒ししてもらってやっていくんだ、なかなか簡単にできない、耐震診断は二回やるし、実際の工事は学校が休みの夏休みしかできない、また、きちんと耐震診断をできる建築士さんの数も少ないので、一挙にばっと広げることはできないんだという説明を文科省からずっと我々はもらっていたんですね。

 二十年度の一次補正、二次補正できちんと予算をつけて、できるだけ早期にということでやってきて、ここでまた二十一年度の補正でつけて、実際に現場でこの予算を使い切ることができるのかという懸念を持つんですけれども、そのあたりはどうなんですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学校施設の耐震化については、加速化をすべくということで、予算措置を努力いたしております。

 実際、市町村において耐震化を進めていただく際に、技術者不足の問題ですとか、判定委員会でどうしても時間がかかってしまうという実態がありますので、文部科学省におきましても、国土交通省と連携をさせていただきまして、技術者の情報を市町村の枠を超えて提供したり、あるいは判定委員会の開催回数をふやす、そういう地道な努力を重ねていただきまして、耐震化の工事ができるだけ早急に進みますよう、重ねて市町村ともども努力をさせていただきたいと思っております。

富田分科員 このスクール・ニューディールというのは、耐震化にあわせてエコ改修とか太陽光パネルの設置等が計画されているようですが、太陽光パネルの学校への設置というのは、昨年、公明党の経済産業部会で赤羽議員が中心になって提案させていただいて、できれば全学校にというような提案でしたけれども、今回はとりあえず一万二千校を目指してやっていくというようなことですので、ぜひ積極的に進めていただきたいと思いますし、その際にエコ改修もあわせてやっていただいて、子供たちのエコに対する取り組みという、勉強にも役立つ、環境教育という意味でも役に立つと思いますので、トータルとして、きちんとした改修工事が行われて、税金の無駄遣いにならないように、文科省の方でもぜひきちんとしていっていただきたいというふうに思います。

 時間も参りましたので終わります。ありがとうございました。

横光主査 これにて富田茂之君の質疑は終了いたしました。

 次に、寺田稔君。

寺田(稔)分科員 自由民主党の寺田稔でございます。

 四月六日の総括質疑でも、さまざまな宇宙政策をめぐる諸問題、大臣とも質疑をさせていただきました。きょうは分科会ということで、さらにその議論を深め、前回論点として惹起をさせていただいたJAXAの効率化の問題、あるいはGXロケットの必要性の問題、また予算の質的改善の問題等々を深めてまいろうと思うわけですが、何分時間が大変に限られております。

 こうした諸問題も残余の時間にさせていただくとして、まずもって、前回も予告をさせていただきましたが、人的問題、すなわち、今回もあらかじめ通告をしておりますところの研究開発局長の問題行動について、そしてまた研究開発局長みずからの宇宙政策に対する認識についてお伺いをしなければなりません。

 当然のことながら、公務員、これはしもべであります。そこで、まず藤木局長にお伺いしますが、憲法遵守義務のある国家公務員、しかもあなたは幹部公務員であるわけです。公務員の規律について、憲法の規定があります。憲法第何条に一体どういうふうに規定をされているか、お答えをください。

藤木政府参考人 今詳細な文章は手元にございませんので、詳細な文章をお答えすることはできませんが、公務員は、国民全体への奉仕者として、特定の個人、組織に偏ることなく、全体の利益のために奉仕するものというふうに認識しております。

寺田(稔)分科員 これはイロハのイですよね。私も、二十四年間大蔵省に勤め、公僕として仕えてまいりました。憲法第十五条第二項です。まずもって、このことの条文も知らない。しかも、局長みずから言われているとおり、すべて公務員は全体の奉仕者であり一部の奉仕者ではない。すなわち、偏屈な、偏狭な、省益に基づく行動というのは強く憲法上も戒められております。

 この宇宙開発特別委員会の重要な組織論あるいは体制論についての決定を前に、みずから決して根回しを行いません、まないたのコイは決してみずから包丁を持ちませんと明言をされた方が、その信義を破り、そしてまた禁反言の原則をも覆し、そうした問題行動に出たことは極めて重篤な憲法違反であると言わざるを得ないわけであります。

 私は、当然、政策論議は幾らけんけんがくがくやってもいいと思います。これは大いに結構。しかし、およそ人を出し抜く、うそをつく、あるいは信義を破る、これは人としての道にもとることであります。およそ教育をつかさどる文部科学省の公務員、しかも、あなたは単なる一公務員ではありません、幹部公務員です、として、極めてこれは問題であり、青少年の健全育成上も大変に大きな問題を投げかけております。

 そこで、局長に引き続きお伺いをしますが、宇宙政策を担う文部科学省の最重要局長の一人として、当然この宇宙政策については十分な造詣を持っていただき、そして確たる信念のもとに、国益のために政策を推進していただかなければならない立場であります。そこでお伺いをしますが、アメリカの宇宙政策、これは御承知のとおり、国家戦略としてとり行っているわけであります。これは大統領みずからも発表を行い、そして政府の公式の文書としてアメリカの宇宙政策の七つの原則というものが明確に掲げられております。この七つの原則、お答えをいただきたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 事前の通告にございませんでしたので、今、その七つの項目、詳細に承知しておりませんけれども、オバマ大統領の宇宙政策、新大統領の宇宙政策につきましては、NASAの長官がいまだ指名されていないという状況の中にあって、これから明確に示されていくものというふうに認識しております。

 しかしながら、宇宙は米国の大変重要な基本政策の一つであるということで、オバマ大統領は大統領府の中にいずれ国家宇宙会議といった全体戦略論を議論するような、そういう組織を立ち上げてというようなことを認識しております。

寺田(稔)分科員 これはイロハのイですよ。アメリカの七つの原則をあなたは知らないと言いましたね。これはもう本当に無知蒙昧。しかも、宇宙政策を担う担当局長としては失格と言わざるを得ません。

 平和主義、そしてまた主権不可侵、国際協調、そして宇宙アセットの自由、活動の自由、惑星ガバナンス、商利用の推進。こんなのは私もそらんじて言えますよ。多くの人が知っていますよ。あなた、担当局長で、これすら知らない。全くもって驚きであります。

 次にお伺いします。

 国内の宇宙政策、これはもち屋のもちの分野で、答えられないということは許されないわけですね。私も、局長が去年の夏の就任のときに、宇宙基本政策委員会の報告はちゃんと読んでくださいというふうに申し上げました。当然のことながら、読んでいただけていると思います。この中に、宇宙基本計画に盛り込むべき三つの分野が明確に書き込まれております。宇宙科学の分野です。局長の担当分野です。その三つをお答えください。

藤木政府参考人 大変恐縮でございます。今、その文章を正確に記憶してございませんが、宇宙科学の分野においては、もちろん宇宙探査、太陽系探査の部分、そして宇宙工学、すなわち、新たな考え方に基づく宇宙推進系等の研究開発、そういったものが重要であるということと認識しております。

寺田(稔)分科員 通告していないとか、失礼なことを言わないでくださいよ。私はちゃんと局長の宇宙政策の基本認識について問うと通告していますよ。前言をまず訂正してください。

藤木政府参考人 基本政策についてお聞きになるというふうに承知してございます。

寺田(稔)分科員 これはこういうふうに書いてあるわけです。全く局長の言ったことと違うことが書いてあります。

 まず第一に、ロボティクスなど我が国の持つ世界的な比較優位のある技術の積極的な活用が第一点ですね。二点目は、アンカーテナンシーの推進といった宇宙産業の活性化策に努めることによって宇宙科学も進行すべきである。そして三点目が、デュアルユースを初めとした外交、防災、環境等、また国際協力の推進等、実利用の推進と、惑星ガバナンスの確立。こういったイロハのイの基本文章も御存じのない局長であることが判明をいたしました。

 次にお伺いをいたします。

 今、JAXAが極めて最重要分野の一つだと推し進めているSSPS、これをあなたは知らないとは言いませんよね、このマイクロウエーブのスペックとレーザーウエーブのスペック、お答えください。

藤木政府参考人 今、宇宙航空研究開発機構がSSPS、すなわち宇宙太陽光発電につきまして設計あるいは要素技術等、さまざまな観点から、年間二億円程度の予算を使いまして研究開発をしているというふうに認識しております。

 主にマイクロウエーブが中心というふうに認識はしておりますけれども、レーザーについての基礎研究も行っておるというふうにも承知しております。ただし、その技術的スペックについて、詳細に今ここで存じ上げておりません。

寺田(稔)分科員 全く驚きですね。あなた、担当局長ですよ。このスペックを知らない。スペックを知らずに、あなたはよく担当局長が務まりますよね。

 マイクロウエーブであれば、各直径二キロメートル、そして三万六千キロメートルにおけるマイクロウエーブの観測。そして、レーザーの場合は、百掛ける二百メーターの反射鏡約百個の設置によるレーザー機能の確認ということであります。

 これは、局長、私、地元の一般人向けの講演資料なんですよ。一般人も知っていますよ、SSPSの話、本当に。これは何も特殊なエキスパートに対する講演資料じゃありません。ことしの二月二十三日の月曜日につくり、そしてこのSSPSの話も紹介をさせていただきました。私の地元にも百人を超える宇宙少年団がおります。既にこのSSPSの話、そのスペックの話も知っています。一般人が知っている話を担当局長も知らないという驚きの事態も判明をいたしております。

 では、次に、宇宙の政策を進めるに当たって大変重要な予算についてもお伺いをしたい。これは知らないでは済まされませんよね。準天頂の予算額、そして先進的宇宙システム研究開発費の予算額、そしてGXロケット関連の予算額、二十一年度政府予算額でお答えください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 準天頂衛星、すなわちG空間行動プラン関連施策でございますけれども、これにつきましては、平成二十一年度予算、前年度十九億円増の九十三億円を本年度予算に計上しているというものでございます。それからGXロケットにつきましては、前年度五十一億円増の百七億円を計上しているところでございます。また、高度先進技術化、すなわち産業振興基盤の強化につきましては、先年度倍増以上の、九億円を二十二億円というところに増額しているというふうに認識しております。

寺田(稔)分科員 まさに今の答弁を聞き、木を見て森を見ず、すなわち省益しか追求していない姿が浮き彫りになったわけでございます。全く数字が違います。

 準天頂の予算額は百二十億六千九百万であります。文科省予算だけでないでしょう。ちゃんと全体を見てくださいよ。あと、先進的宇宙システムの予算、六十二億一千万であります。そしてまたGX関連の予算、これは文科省予算と経産省予算、両方またがっているんでしょう、百十三億二千万です。こういった基本的なことも、予算すら御存じない。

 大臣、ちょっと今のやりとりをお聞きになって、この研究開発局長の人格、識見、資質についていかに思われましたか、お答えをください。

塩谷国務大臣 当然、私の所管の局長ですから、そのために仕事をしていると私は認識をしておりますが、宇宙基本法ができて、これからいかに宇宙政策をやっていくという宇宙戦略本部ができたわけでございますから、今まで文部科学省のもとでJAXAがその具体的な研究開発をやってきた、その点については私は高く評価されていると思っております。

 これから、産業政策、あるいは防衛等の政策を含めた宇宙戦略としての政策をどういうふうに基本計画を立ててやっていくかということの議論が今始まったところでございますので、そういう点で、今後、文部科学省、そしてJAXAの役割等はどうなるかということで、私どもとしては改めて検討していく必要があると思っております。

 したがって、今局長のいろいろな質問がありました、まだまだその全体を見ていないという話が、それは御指摘のとおりかもしれませんが、だからこそ戦略本部が立ち上がって、今後どうしていくかということ。ただ、今までの政府の方針に従って、文部科学省あるいはJAXAがそれなりのしっかりとした仕事をしてきたと思っておりますし、いろいろな衛星の打ち上げ等も、国民の理解を得ている、成果を出していると思っておりますので、今後の宇宙政策は、戦略本部において、そして基本計画において行われるわけですから、十分に議論していかなければならない。省益ということではないと思っておりますし、我が省が国家の政策に基づいてしっかりと行動してきたと私は認識しております。

寺田(稔)分科員 政策はけんけんがくがく議論していいですね。しかし、私の質問に対して、何一つまともな答えが返ってこない。しかも、担当局長としての、担当局長の分野についてもそうですけれども、全体の分野についても正しい答えが返ってこない、憲法の規定も答えられない。こういった研究開発局長としての資質について、いかがお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 資質としては、今までの仕事ぶりからしては、私どもとしては局長にふさわしい仕事をしてきたと思います。

 今、御質問のあった点について答えられるから、資質としてはそれは当然、認められるところはありますが、仕事としての評価も私どもはしてきたわけでございまして、大事なところの答えられない点は、それはやはり私の責任だと思います。

 いずれにしましても、私ども文部科学省の、国の方針に従った今までの仕事の内容等は高く評価されていると思っておりますので、資質の面がどうかということであれば、そういった点で、できればそういった質問に対して答えられることがより望ましいと思っておりますが、私ども、そこら辺のところは必ずしもチェックしていたわけではございませんので。ただ、今までの省内での、あるいは経歴の中での仕事の評価として、今現在、局長として具体的に働いている内容としても、私どもは局長にふさわしい仕事をしていると認識しております。

寺田(稔)分科員 私は、何も重箱の隅のような質問をしているわけじゃないです。すべてイロハのイの質問ですね。基本政策委員会のこの報告の中身にしても、あるいは今現在JAXAが進めているSSPSの中身にしても予算にしても、これだけ議論になり最重要な予算項目についてまともなお答えがないということはまことに残念でならないわけでございまして、この問題については、引き続き当委員会としても議論を継続し、そしてまた、当委員会のみならず、その他の関連委員会も多々ございます、文部科学委員会、安全保障委員会、そういったさまざまな委員会でも取り上げてまいりたい、このように考えております。

 大臣、前回、大臣の御答弁で、私、JAXAのさまざまなプロジェクト実施に関連する諸問題について御質問をいたしました。すなわち、今、議事録を持っておりますが、JAXAのいわゆるプロジェクト実施の費用に対する運営費の割合、これが異常な数字だと。普通、プロジェクト実施機関の場合は、百の事業を実施するときは約二〇、二割がランニングコストの部分、JAXAは、それが百に対して五〇、二・五倍である、いかがお考えかというふうにお尋ねをしたところ、大臣の方から、JAXAの予算につきましては今委員がおっしゃったような状況は把握をしております、そういうお答え。その後に、人件費について五%以上の削減、さらには光熱費等の一般的管理費についても五年で一五%以上の削減というふうに、この議事録にも明確に残っております。

 ただ、これはよく考えてみますと、一般に対して二・五倍という数字ですから、当然、二・五分の一にするというのが正しい処方せんではないかと思うんですが、大臣が言われた五%とかあるいは一五%というのは、当面の目標として言われたのか、あるいは最終的な目標として言われたのか、最終的にはやはり他のプロジェクト実施機関あるいは研究開発機関同様のプロジェクト運営費実施比率にしたいというふうな意味でおっしゃられたのか、確認をいたしたいと思います。

塩谷国務大臣 まず、一点目ですが、先ほど五〇%というお話がありましたが、その点については、プロジェクト経費あるいはプロジェクト関係経費、これが、寺田委員の、どういうふうな仕分けで五〇%かということは、改めてまたもう一度しっかりとお伺いしたいと思います。

 御案内のとおり、宇宙あるいは衛星を打ち上げる、そういったことに対して、プロジェクトの費用、あるいは打ち上げ射場や大型試験設備、あるいは衛星等の運用のための経費、あるいは基礎的、基盤的な研究経費、そういったことを考えますと、そういったものとは別にした管理運営費用につきましては、そういう計算でいきますと、その割合が約一六%ということで、私ども省庁としては今認識しているところでございます。

 その中の人件費については、先ほどお話あったように、前回答えましたように、五年間で五%、あるいは光熱費については、一般管理費について五年間で一五%、これは当面の目標として考えておるわけでございます。将来的な、最終的な目標というのは、まだ今後のいろいろなプロジェクトの計画もあり、また、どういった戦略本部での今後の計画になるかということによるものと思っておりますが、基本的には、この削減目標は、今申し上げました五年間で五%、一五%の目標を持って、今効率化に努力しているということでございます。

寺田(稔)分科員 引き続き、この効率化に努力をしていただきたいと思います。

 次に、データ処理費の問題についても指摘をさせていただきました。すなわち、衛星運用、データ処理等経費が百九十億と非常に多額であるという問題。前回も申し上げましたように、五万人の職員のいる財務省全体のデータ処理費も二百億弱という中で、本当に巨額のデータ処理経費が使われている。しかも、そのデータの成果物について、何ら有効活用の開示もない。

 この百九十億というデータ処理費が非常に多額なわけですが、これについては削減をされていかれる、あるいはこれについては適正であるという御認識なのでしょうか。

藤木政府参考人 事実関係でございますので、私の方から説明させていただきたいと思います。

 このデータ処理経費という額が百九十億円という御指摘でございます。実際には百八十六億円であると思いますけれども、これはJAXA全体の、打ち上げた衛星を軌道上で機能させるための追跡、運用、そして運用から、データをおろしてきてそれを処理、分析する経費、そういったものをすべて合わせて百八十六億円ということでございます。

 このうち、いわゆるデータ処理に係る経費、これは衛星からのデータ処理提供、あるいはデータ処理技術の高度化のための研究を若干含んでおりますけれども、これについては四十七億円ということで承知しておりまして、その他、百三十九億円に係りましては、これはデータ処理ではなくて、衛星の追跡、運用に係る経費であるというふうなことでございます。

 当然のことながら、これらすべての経費につきまして、全体の合理化を考えていくということは当然のことだと思っております。

 また、データ処理の結果である画像データが成果物として全く見えていないのではないか、説明責任も果たされていないのではないかという御指摘を前回の御質疑でいただいたと思います。これにつきまして、もちろん、これから努力をしていかなくてはいけないという面は多々あろうかと思いますけれども、例えば、現在、平成十八年の一月に、陸域観測技術衛星「だいち」というものを打ち上げてございます。

 この「だいち」の画像データというものの利用状況をちょっとだけ御紹介させていただきますと、現在、国土地理院による二万五千分の一地形図の修正あるいは海上保安庁の海氷観測などで大変多く利用されているというほかに、国際貢献といたしましても、アマゾンの違法伐採の監視、あるいは海外における大地震の災害状況の把握等々でも利用されておるというところがございます。

 また、この衛星に限らず、例えば、月周回衛星の「かぐや」、あるいは小惑星へ行ってまいりました「はやぶさ」、そういったものが撮像した画像データについては、大変広く世の中で紹介され、宇宙に夢を与えているというふうなものになっていると認識しております。

 今後とも、説明責任あるいは成果物をきちっと世の中に出していくという努力は続けてまいる必要があるというふうには思いますけれども、こういった実態で、従来からもしっかりと努力しているというふうには認識してございます。

寺田(稔)分科員 十分な開示に引き続き努めていただきますとともに、百八十六億という数字はありますけれども、そのうちのデータ処理経費は四十三億であるというふうに私は認識をしております。またその数字の詳細についてはすり合わせをさせていただきたいと思います。

 次に、予算の質的改善についてお伺いをします。

 前回の総括質疑でもそうした議論もさせていただきましたが、研究開発予算全体について、特に二十一年度の質的改善の具体的な中身についてお伺いをいたしたいと思います。

泉政府参考人 文部科学省におきます二十一年度の科学技術関係予算でございますけれども、これにつきましては、まず、世界的な経済危機の状況の中で、日本が底力を発揮して国際競争を高めるために、成長力の基盤となる基礎科学力を強化するといった将来に向けた研究開発が重要である、こういう観点に立ちつつ、現在の科学技術政策の基本でございます第三期の科学技術基本計画、平成十八年の三月に閣議決定されておりますものでございますけれども、この中で、科学技術の戦略的重点化あるいは科学技術のシステム改革を進めることとされてございます。

 文部科学省といたしましては、これを踏まえまして、科学技術人材の育成、確保、活躍の促進、それから、基礎研究の充実とイノベーションシステムの強化、国家基幹技術などの戦略重点科学技術への重点投資、さらには、科学技術の国際活動の戦略的な推進、こういうふうな柱のもとに予算の重点化を図ったところでございます。

 科学技術関係人材につきましては、理数好きな子供のすそ野の拡大のための地域における理数教育の中核となる教員の養成等の予算の新規計上、それから、基礎研究に関しましては、我が国の基礎科学力の一層の強化ということで、科学研究費補助金を対前年度三十八億円増の千九百七十億円としたこと、それから、戦略的重点科学技術につきましては、再生医療の実現に向けたiPS細胞の関連研究の支援などで十五億円増の四十五億円を計上したこと、科学技術の国際活動では、日本のすぐれた科学技術とODAの連携によります地球規模課題の解決に向けた科学技術協力の実施等に七億円増の十二億円等々を計上いたしまして、基本計画に定められました政策の重点的な資源投入を図っているところでございます。

 これらの科学技術関連施策の実施に当たりましては、みずから事業評価あるいは実績評価を行うとともに、科学技術・学術審議会あるいは総合科学技術会議などの第三者による厳格な評価も踏まえまして質的な向上を図っているところでございます。

 これからも、こういった日本の強みを生かしながら、社会の変化に適応していけるような重点分野を適切に設定した上での選択と集中を図りながら、科学技術関係予算の充実に努めてまいりたいと考えております。

寺田(稔)分科員 今、いろいろ質的改善あるいは重点化の話も泉局長はされたわけでありますけれども、iPSだって、きょうの報道にも出ていたとおり、日本はもはや最先端でなくなってしまったわけですね。諸外国と比べても非常に劣後している。また、ミクロの羽根つきポンプにしても、途中の研究開発段階におけるタイムラグの影響というのが極めて大きいわけであります。

 ぜひとも、質的改善を図り、予算の有効活用を図っていただきたいというふうに思います。

 次に、関連する特別会計改革、特にエネルギー特会の文科省所管分についての改革の中身を御教示いただきたいと思います。

塩谷国務大臣 エネルギー特会については、御案内のとおり、文部科学省としては、経済産業省と財務省と共管で、かつて電源開発促進対策特別会計を所管していたわけでございます。平成十九年度に、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律を踏まえて、この電源開発促進対策特別会計を石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計と統合しまして、経済産業省、環境省との共管でエネルギー対策特別会計としたわけでございます。

 同時に、同特別会計において、財源である電源開発促進税の収入を特別会計に直接入れる仕組みから、一たん一般会計の歳入に組み入れた上で、毎年度、必要な金額を特別会計に繰り入れる仕組みに改めたわけでございます。

 その後、二〇〇六年の骨太方針に従って、歳出の水準と税収との乖離幅の圧縮をして、予算の適切な支出のための、公益法人に向けた支出の見直し、あるいは随意契約等の見直し、さらには公法の事業見直し等の改革を実施して、毎年、各事業の必要性や優先度に厳しく精査を行った結果、特別会計改革前の平成十七年度の予算に比べて百五十七億円の削減、約一〇%の削減を図っているところでございまして、今後とも、厳格な精査を行うとともに、国民の説明責任を十分に果たしてまいりたいと考えておるところでございます。

寺田(稔)分科員 時間が参りましたので終わりますが、やはり、宇宙政策、宇宙の開発利用の分野というのは非常に夢と希望を与える分野でございます。特に、次世代に対する夢と希望を失わないためにも、担当局長、もっと御勉強していただき、そうした期待にこたえるだけの責務そして資質を養っていただきたいと思います。

 また、大臣におかれましても、十分、そうした幹部公務員の指導の徹底のほどをお願い申し上げまして、質問を終わります。

横光主査 これにて寺田稔君の質疑は終了いたしました。

 次に、林潤君。

林(潤)分科員 自由民主党の林潤です。

 このたびは、質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 本日は、日本の国策の根幹をなします歴史認識や教育問題について質問をさせていただきます。

 まずは、歴史認識の件でありますが、さきの大戦を侵略と断じました村山談話について質問をいたします。

 戦後五十年の節目となった平成七年、当時の村山富市総理が出しました談話が十三年経てなぜまた注目されるのかといえば、それは、自衛隊の当時の田母神俊雄航空幕僚長が発表いたしました論文をめぐり、昨年十月に更迭されたことに端を発します。

 田母神前幕僚長は、「我が国が侵略国家だったというのは濡れ衣」とする論文を発表いたしました。そして、参議院外交防衛委員会で参考人招致された際にも、「村山談話を公然と批判したことはないが、自衛官にも当然言論の自由は認められているはずで、それが村山談話に制約されることはないと思っていた」と答えております。

 ここで問題になりますのは、閣僚はもちろんのこと、政府高官がこうした歴史認識に関する発言をするたびに、村山談話に沿った見解かどうか検証をし、そのかけ離れた程度によって厳重注意やあるいは更迭、罷免といった事態に発展しなければならないのか、そして、それらが招く混乱が日本の政治にとって本当にプラスであるのかという点であります。

 そして、今回の田母神前幕僚長の更迭の根拠となった村山談話そのものも検証しなければなりません。

 そこで、まずお聞きしたいことは、村山談話は日本国政府として一貫した見解なのか、それとも村山内閣のみ有効な見解なのかという点であります。お答え願います。

小原政府参考人 お答えいたします。

 御質問でございました村山談話でございますが、戦後五十年という節目におきまして、閣議決定をした上で内外に示された談話でございます。

 歴代の内閣によりましても踏襲されてきたものでございまして、現内閣におきましても、さきの大戦にかかわる我が国政府の歴史認識がこの談話や平成十七年八月十五日の小泉内閣総理大臣談話で示されたとおりであることは、これまでも機会あるごとに明らかにされてきているところでございます。

林(潤)分科員 もちろんそれは理解はできるんですけれども、村山談話というものは、その後の橋本龍太郎総理以降、先ほど御答弁ありましたとおり麻生総理大臣に至るまで、すべての総理が談話を踏襲するということを国会答弁で明らかにしています。もし日本国政府の見解だとするならば、なぜ内閣ごとに談話を踏襲するか否か確認しなければいけないのかということをお聞かせ願います。

 同時に、これからの内閣の方針によっては、村山談話に拘束されない歴史観を打ち出すこともできるのか、その可能性についてお聞かせ願います。

小原政府参考人 村山談話、これは政府として慎重な検討を重ねて閣議決定をした上で表明した談話でございまして、ただいま申し上げましたように、同談話につきましては、歴代の内閣によって踏襲されてきたものでございます。そうした談話でございまして、先ほども申しましたように、麻生総理におかれましても、私の内閣において引き継いでまいりますと答弁されております。

 そうしたことでございますので、我が国としましては、まさに閣議決定をした上で内外に示された談話ということで、政府の公式見解ということでこれを内外に表明してきているということで理解しております。

林(潤)分科員 今の答弁の内容でちょっとお答えになっていただいていない部分がありますけれども、これからの内閣の方針によっては村山談話に拘束されるかされないかということは、これは日本国政府の見解だから、されるということでよろしいんでしょうか。

小原政府参考人 御質問でございますが、お尋ねの点につきまして、これは外務省としてお答えする立場にはございません。

 繰り返しになりますが、村山談話、これは政府として慎重な検討を重ねて閣議決定した上で表明した談話でございます。そういうことで、先ほども申し上げましたように、歴代総理としてそうした談話を引き継いでいくということで答弁してきたというふうに理解しております。

林(潤)分科員 ここで、村山談話によりますと、その一文、我が国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた、改めて痛切な反省の意を表し、心からおわびの気持ちを表明するとあります。

 日本が戦後、国際社会に復帰してからも、憲法の戦争放棄並びに専守防衛、非核三原則を堅持し、世界に対して平和と民主主義を基調に歩んできたことは疑う余地もありませんし、紛れもない事実であります。その意味では、談話の、国際協調への路線を明確にしたこと、アジアに対して国家としての謝罪の明文化をしたことで一定のけじめをつける意味はあったと考えます。

 しかし、本文では、主語は我が国、そして続くのが、侵略によって苦痛を与えたと断定しています。私個人は、アジア諸国に対し侵略的要素はあったと考えておりますが、はっきり侵略であると断定することが妥当か否かについては、日本人の中にも見解の違いがあると考えております。

 また、いずれも、さきの大戦が不幸な戦争であったことは間違いありませんが、談話に「とりわけアジア諸国」とありますけれども、以外の人々をどう扱うのか、また、アメリカやイギリスなどへの交戦も侵略と断定するかは、明文化されていないにせよ、あいまいな点が数多くあります。歴史観をはっきりしなければ、田母神前幕僚長の更迭騒動を繰り返すような、日本の今後にも混乱を来すおそれがあり、国益を損ねます。

 私個人としては、当時の軍部による中国大陸への進出は侵略的要素があったというふうに考えますが、対米英への宣戦布告、つまり真珠湾攻撃やマレー沖海戦などは侵略とは言いがたく、通常の交戦であったと考えております。

 そこで、政府が考える国際法上の侵略の定義についてお答えください。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 国際法上、侵略とは、一般に、他国に対する違法な武力の行使を中心とする行為であると考えられておりますが、侵略の定義に関しましてはさまざまな議論が行われておりまして、確立された法的概念としての侵略の定義はないと承知しております。

林(潤)分科員 確立されていないにもかかわらず、こうやって談話が政府の見解としてずっととどまってしまう、そして、その後の発言に影響を与えてしまうということは、私は、やはりまだまだ議論が必要なのではないかというふうに思います。

 最後に、確認ですけれども、日本国政府が村山談話を基本的に踏襲するならば、すべての政府高官は、歴史認識について公に発信をする場合、その発言はこの談話に制約されるという考え方でよいのか。また、そうした発言によってアジア諸国からの反発があれば、これからも内閣として辞任を促したり、更迭、罷免したり、責任をとるという姿勢でよいのか。お答えください。

小原政府参考人 ただいまの御質問でございますが、外務省として、お尋ねの質問にお答えする立場にございません。

 ただ、ここで申し上げたいと思いますのは、さきの大戦に関する政府としての認識、これはもうこれまで答弁させていただいたとおりでございますが、村山内閣総理大臣の談話及び小泉総理大臣談話等によって示されてきているとおりであるということでございます。

林(潤)分科員 政治的に極めてナイーブな問題でありますから、お答えするのは非常に大変だと思いますけれども、村山談話については、アジア諸国に対してけじめとしての謝罪を明文化したり、核廃絶など平和国家に向けた国際協調路線を改めて打ち出したことなど、プラスの部分もあると思います。

 しかし、侵略をめぐる定義の問題、先ほど、違法な武力の行使というのが一般論で使われるとおっしゃいました。しかし、一般論ではなくて、談話の中の侵略という定義がどういうものか、それが同一かどうかということも明らかにされておりません。

 そして、国策を誤った時期について、これについても村山総理自身もはっきりとしていないわけであります。そしてまた、侵略の対象国がどうだったのか。「とりわけアジア諸国」とありますけれども、では米英に対してはどうなのか。

 こうした全体の歴史観があいまいな部分もありまして、これからも国益のためには検証が必要だと考えております。内閣、そして国会、各政党間や民間でも、さらに歴史観に関する議論が活発になることを私は望みます。

 次に、教育問題について、国語政策を中心に質問をいたします。

 さて、国語をめぐりましては、昨年の五月、乱れた日本語を正そう、まずは母国語の教育が大切であると、国語を考える国会議員懇談会、通称国語議連が超党派による六十四人で発足いたしました。平沼赳夫衆議院議員を会長に、私が事務局長を務め、自民、民主、無所属など、現在、所属議員八十一人となっておりますが、第一に、穴あき五十音図のわ行の「ゐ」と「ゑ」の是正、第二に、国歌君が代表記の是正、第三に、次代を担う若者が、日本の誇る古典や、漱石、鴎外といった美しい作品を原文で味わうことができるような社会の実現を掲げております。

 そこで、政府といたしまして、こうした古典を初めとした美しい日本語に親しむことができる社会を是とするのか非とするのか、また、国語議連の運動方針についてどのようにとらえているのか、お聞かせください。

塩谷国務大臣 ただいまお話ございました国語を考える国会議員懇談会の考え方については、基本的に私どもも同感だと考えておるわけでございます。

 特に、学習指導要領を改訂いたしまして、これは御案内のとおり、教育基本法も改正した、その理念に基づいて改訂したわけでございますが、小学校の低学年、中学年及び中学校の第二学年の国語の時間数をまずふやすということ、そして、古典、漢字の指導あるいは文学教材の充実を図っている。

 そして、具体的には、小学校中学年で新たに、易しい文語調の短歌や俳句の音読あるいは暗唱を位置づけておりまして、また、現行に比べて、歴史的な仮名遣いの、今お話ありました「ゐ」や「ゑ」に触れる機会をふやしております。

 また、中学校において、今お話ございました、代表的な近代以降の作家としての夏目漱石や森鴎外などの作品を取り上げることについても新たに規定をしましたし、言葉の決まりや敬語の指導については、社会生活で適正に使えるようにということを重視して改善を図ったところでございまして、国語科における指導内容の充実をしているところでございます。

 この指導要領につきましては、小学校は平成二十三年、中学校は二十四年からの完全実施を予定しておりまして、今現在、準備の段階でしっかりとこれに対応してまいりたいと考えております。

林(潤)分科員 この学習指導要領は本当にかなりの前進がありまして、私どもといたしましても期を同時にして、この文語の問題、原文を英語と違うような形で、英語と同じような形で古典をとらえていたら子供たちもなかなか接することが難しくなってくると思います。原文をそらんじて、後で意味や、あるいはそうした書きの方がわかってくるんじゃないかなというふうに思います。

 先ほどありました、わ行の「ゐ」と「ゑ」についても触れる機会をふやしているというふうにおっしゃいましたけれども、今後、穴あきの五十音図と私どもは言っておりますけれども、この五十音図を、「ゐ」と「ゑ」を正式に学校指導の中で取り入れる意向があるのかないのか。ない場合は、なぜそれを取り入れないのか、これをお聞かせ願います。

金森政府参考人 教科書に五十音図を掲載するかしないか、また、掲載する場合に歴史的仮名遣いを含めるかどうかは、各教科書会社の判断によるところでございますが、小学校や中学校の教科書の中には、五十音図への歴史的仮名遣いの記載といたしまして、「ゐ」や「ゑ」を記載しているものもあるところでございます。

 私どもといたしましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、小学校中学年で新たに、易しい文語調の短歌や俳句などの音読や暗唱を位置づけているところでございまして、教科書の中にも、そういったものを歴史的仮名遣いを用いて表現しているものもございます。

 したがいまして、今よりも歴史的仮名遣いの「ゐ」や「ゑ」に触れる機会、こういったものはふえてくるだろう、こんなふうに考えているところでございます。

林(潤)分科員 大変によい取り組みだと思いますし、これまでの国語行政を考えると、この学習指導要領の改訂から非常に進むんじゃないかと私どもも期待をしております。原文、それから音質の問題もあると思います。こうした、わ行の「ゐ」と「ゑ」にもしっかり使う意味があるんだということを、授業でもぜひ文科省の指導のもと教えていただきたいなというふうに思っております。

 次に、我が国の法律、法令や公文書におきます国語表記の基準について質問をいたします。

 昭和五十六年の十月一日付内閣訓令第一号の、「政府は、本日、内閣告示第一号をもつて、「常用漢字表」を告示した。今後、各行政機関においては、この表を現代の国語を書き表すための漢字使用の目安とするものとする。」とあります。昭和六十一年の七月一日付の内閣訓令第一号によりますと、「政府は、本日、内閣告示第一号をもつて、「現代仮名遣い」を告示した。今後、各行政機関においては、これを現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころとするものとする。」とあります。

 しかし、すべてを一律に常用漢字、現代仮名遣いで表記をしてしまいますと、弊害も出てしまいます。例えば、国旗国歌法別記第二につきましては、君が代の歌詞、「いわお」という文言がありますが、正しくは「いはほ」と表記をしなければなりません。君が代は和歌であり、意味をしんしゃくした上で原文に忠実に従うなら、当然、わ行の「いわお」では間違いであり、現代仮名遣いで表記すべきではない例だと存じます。

 先ほどの「ゐ」と「ゑ」のこともありましたけれども、小学生が親しむような小倉百人一首の中でも、声という文字ですけれども、表記に、わ行の「ゑ」が出てきます。本来の意味や音質を知るならば、わ行の「ゐ」と「ゑ」というのも五十音図に、すべての教科書にやはり載せるべきではないかなというふうに思っておりますし、使うべきとき、使わないとき、その区別をやはり知ってもらう必要があると思います。

 また、改正教育基本法には「涵養」という言葉が出てきますが、私、確認したところ、衆議院と参議院で表記が違っておりました。いただいた資料では表記が違っておりました。「涵養」にルビを振るならば結構ですが、「涵」の字が平仮名というケースが出てきて、非常に間が抜けたばかりか、法律の文章の部分で最も肝となる部分でありながら、意味が薄まってしまうのではないか、こんな懸念をいたしました。

 このように、口語表記によりまして言葉本来の意味が失われたり、常用漢字にないから平仮名と漢字をまぜることで熟語本来の意味が薄められてしまうようなケースがあっても、行政機関がこうした訓令を金科玉条のごとく大切にして、絶対的、盲目的に現代仮名遣い、常用漢字にこだわって表記するのはどうしてでしょうか。

 そして、あくまでも目安という文言があるわけであります。目安というのは、通常、絶対的な基準ではなく、例外かどうか照らすべき表記については個々に判断し、そのように表記した理由を明らかにしなければならないと考えます。

 目安やよりどころの定義について、さらに、例外かどうか検討すべき表記についてはどうするのか、お聞かせください。

高塩政府参考人 先生お話ございました漢字及び表記の問題でございますけれども、現在の漢字表につきましては、昭和五十六年に内閣告示、訓令として告示したものでございますけれども、この中では、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活におきまして、現代の国語を書きあらわす場合の漢字使用の目安を示すものであるというふうに考えております。したがいまして、この表につきましては、科学、技術ですとか芸術その他専門分野の個々の表記まで及ぼそうとするものではないというふうに理解しております。

 ただ、先生お話のございました法令、公用文書におきましては、各行政機関が法令や公用文書におきまして、漢字使用につきまして、常用漢字表を踏まえるよう求めているところでございます。

 こうした点は必要だと考えておりますけれども、ただ、先生から例示のございました漢字の「涵養」という文字でございます。「涵養」の「涵」、この漢字は現在常用漢字表にはございませんけれども、「かん養」、こういう漢字仮名まじりで書きますとかえってわかりにくいということがございまして、必要に応じてルビを振るなどの配慮をして常用漢字表以外の漢字を使用するということは認められているところでございまして、現実におきましても、文字・活字文化振興法などにおきましてルビつきの「涵養」というものが使われているというふうに理解しております。

 また、先生お話のございました現代の仮名遣いの話につきましても、これも昭和六十一年に現代の仮名遣いという内閣告示を行っておりまして、これに基づいて、法令や公用文書においては使用することを原則とする、こういう形で今日とり行われておりまして、こうした形の中で例外というものはあり得ると考えておりますけれども、基本についてはこの内閣告示等に沿うものだというふうに考えているところでございます。

    〔主査退席、寺田(稔)主査代理着席〕

林(潤)分科員 例外があり得るということを先ほど答弁でおっしゃいましたので、この例外のことについてはきちんと議論をしていただいて、先ほどの「涵養」をルビを振っていただいたことは例外に当然当たるんでしょうけれども、やはりそうした言葉の意味を失わないような形での表記、これを大切にしなければいけないと思います。

 そして、先ほどの質問に関連いたしまして、そもそも常用漢字表というものが必要かどうかについて質問をさせていただきます。

 例えば、乖離、間隙、拉致、よく使う言葉でありますが、常用漢字のみで表記するとなると漢字と平仮名をまぜて表記をしなければなりません。かなりぱっと見た印象は間抜けな感じがいたします。本当にこれでいいのかと思います。

 私も新聞記者の出身ですが、新聞の表記は、義務教育を終えた人にはすべて理解できるようにと、できるだけ平易な表現に加えて、固有名詞などを除いて、原則として現代仮名遣い、常用漢字に表記を統一しております。こうした中、常用漢字が新たに追加されたことは悪いことではないでしょう。しかし、こうした法令、公文書や新聞の表記こそが、むしろ国語に親しむ機会、美しい日本語に親しむ機会を抑制しているのではないかとも考えます。

 そこで、常用漢字表は国語施策として必要であるのか、その意義とメリット、デメリットについて簡潔に御答弁願います。

塩谷国務大臣 ただいまの常用漢字表が必要かどうかという御質問でございますが、先ほど来答弁の中でもお話ししておりますように、また委員からもその内容に触れておりますが、やはり一般社会生活において、現代の国語を書きあらわす一つの目安というものが必要だと思っておりまして、これは時代の流れの中で見直しをして、現在も本年三月十六日から四月十六日、この試案の意見公募を行っているところでございまして、やはり一つの社会の中で、社会生活に必要と思われる漢字を明確にして、それを基本として、特に公文書とか法令とかあるいは新聞、雑誌等に使っていただくということで、しかしながら例外を認めているところでございます。

 こういった国語の問題、特に今その見直しがされているような状況にもなってきておりますので、我が国としても、そういった状況を踏まえて、今後この常用漢字をまた拡大していく、あるいはこの必要性も今後また議論しなければならないと思っておりますが、今の段階でこれを一遍になくすということは、やはり基本的な教育の面も、どこまでそれでは漢字を教えたらいいかということも実はかかわってくることでございますし、そういった点で、国民の言語生活の円滑化とかあるいは漢字習得の目標等を明確にするためにも、一定の常用漢字のあり方というのは評価されるべき、また必要であると考えております。

林(潤)分科員 大臣御答弁なさったように、書きあらわす目安は私も必要だと思っています。もちろん、すべて歴史的仮名遣いでやって旧漢字にせよと言っているわけでも全くございませんし、ルビを振るなりして、適材適所に応じて、これからさらにこれは弾力的にやっていただきたいなと思います。先ほど言った三つの言葉なんかは、私はやはりこれは漢字にした方が意味がきちんと通りやすいのではないかなと思っています。

 国語分科会の漢字小委員会でも、常用漢字表の見直しは必要であるという共通認識があります。漢字表が必要かどうかも含めて、政府として大いに参考にしながら今後の国語政策に生かしていくことを期待いたします。

 もう時間が迫ってきましたので、最後、端的に伺わせていただきますけれども、世田谷区の日本語の教育特区について質問させていただきます。

 国語議連でも、特区で使われている教材を題材にして、実際に子供たちに教えている先生を講師に招いて、教材の内容や授業について意見交換をいたしました。今週も区内の小学校の日本語授業を視察に訪れる予定であります。

 小学校の学習指導要領も改正され、古典についても高学年から低学年も親しめるようになったと聞いています。小学校の方は早くとも平成二十三年の学習指導要領実施だとお聞きしましたが、政府としてこうした世田谷区の教育特区の取り組みをどのようにとらえているかという点であります。

 私が見たところ、特区の子供たちは日本語の授業が本当に好きだということであります。また、子供たちは和歌や漢詩を原文のままそらんじ、意味や書けるように徐々になっていくと聞いております。また、古典に親しんでいる子供を見ることで、保護者たちもまた古典に対してもっと理解を深めようと啓発されて、こうしたことをきっかけに美しい日本語も覚えたり親子のきずなも深まったりするなど、プラスの連鎖反応が報告されています。

 私はこうした特区の現象を全国的に広げたいと考えておりますが、政府としては、こうした世田谷区日本語特区の成果をどのようにとらえ、ほかの自治体にももしも波及をさせるにはどんなことが障壁になっているか、課題だと認識しているか、お答えください。

塩谷国務大臣 世田谷区の日本語の授業については、私も昨年七月に実際に視察をしてまいりました。

 まず、教科書自体が古典も含めて大変な充実した教科書で、これは教育長が一生持てる教科書をつくりたいということで、まことにすばらしいものだと思っております。また、小学校の低学年から俳句や論語や、大人の内容のそういったものを暗唱することによって、すばらしい日本語の美しさや響きやリズムをしっかりと習得するようなことを意欲的に取り組んでおるわけでございまして、古典の指導やあるいは日本の伝統文化の学習については大変すばらしいものと認識をしておるわけでございます。

 この日本語の授業については特区という形で行われておりますが、実際に全国的にという点については、これはなかなか、そうはいっても簡単に先生方が教えられるものではないということで、世田谷区の方も相当訓練もしたわけでございまして、今後そういったこともあわせて一気に全国的にということはなかなか難しいと思いますが、この中で教えられている学習の内容については、今後まずは新しい学習指導要領の中で徹底すること、そういう中で、当然、日本語という教科について、大変この世田谷区のものは評価もされていますので、また今後検討していく必要があると考えております。

林(潤)分科員 ありがとうございます。

 今後、こうした世田谷の特区の例を参考にして、ほかにも取り入れられるように、美しい日本語を子供たち、大人たちみんなが親しんで、日本を、そして日本人を好きになれる方向性をぜひ導いていただきたい、このように要望して、質問を終わらせていただきます。

寺田(稔)主査代理 これにて林潤君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田分科員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、文部科学省所管の幾つかの項目について質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 初めに、高等学校等におけるクラブ活動の意義と役割についてお伺いしたいというふうに思います。

 私は、こうしたクラブ活動、部活動というのは大変重要な役割を果たしているものだというふうに考えております。運動部、文化部とも、生徒の関心や趣味を生かして、学校の授業だけではなかなか開発をされないいろいろな能力もそこで開発をされていきますし、心身の健全な育成にも重要な役割を担っているものだというふうに考えております。

 そこで、文部科学省に、教育行政の立場から、こうしたクラブ活動の意義についてどのように位置づけておられるのか、お伺いしたいと思います。

金森政府参考人 部活動でございますが、部活動は、主として放課後や休日に生徒の自主的、自発的な活動として行われる任意参加の教育活動でございますことから、すべての生徒に履修をさせるものかどうかという点から申し上げますと、教育課程外の活動ではございますものの、各学校におきましては、学校教育活動の一環として、高等学校教育において大変大きな意義や役割を果たしているものと考えております。

 このことを踏まえ、ことし三月に改訂いたしました新しい高等学校の学習指導要領におきましては、部活動について、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであることを明記したところでございます。さらに、学校教育の一環として教育課程との関連を図ることなどの留意点や、地域の人々の協力や各種団体との連携などの運営上の工夫を行うなどの配慮事項を新たに規定したところでございます。

上田分科員 大変にありがとうございます。今御答弁にもあったとおり、部活動は大変大きな役割を担っているということであります。

 本当に、クラブ活動に参加をしている生徒、学校の授業のときとはやはり打って変わって、すごく自分の関心のあることでもあって、好きなことでもありますので、非常に一生懸命取り組んでいる生徒も多い。大変大きな意義があるものだというふうに認識をいたしております。

 今おっしゃったとおり、すべての生徒が参加をする、必ずしもそういうものではありませんけれども、ぜひ、そういった意味では、長所を伸ばしていく、特に関心のあるところを伸ばしていくという意味では、非常に大きな、重要な役割を持っているものだというふうに思っておりますので、引き続き積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、この部活動に関して、一つちょっとお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 都市部の高校などでは、野球とかサッカーなど、比較的広いグラウンドの必要な運動部の活動を行うに際して、グラウンドが授業を行う校舎からかなり離れた場所に設置をされているという事例も最近ふえてきております。校舎の周辺が市街化されて、近隣になかなか用地の手当てが難しくなっているというようなこともあります。

 また、私の地元などでは、今まで女子高であった学校が共学校に移行した、それに伴って、従来はそれほど大きな運動場とかが必要とされていなかったんだけれども、やはり男子生徒が入ってくると、野球とかサッカーとか、広いグラウンドが必要な部活動もぜひ活発にしていきたいということから、新たにちょっと離れた場所にグラウンドを手当てするという事例もふえてきております。

 ところが、運動部員が校舎とグラウンドの間を練習のために毎日のように移動するわけでありますけれども、これは相当な費用がかかるんですね。自宅と校舎との間の電車やバスの利用については通学定期券の対象になりますので、大幅な割引が適用されているんですが、グラウンドとの間というのはその対象となっておりません。そうした負担を軽減するためにも、そのグラウンドで練習をしている運動部員、毎日練習をしている運動部員であるというようなことを学校が証明するとか、そういった一定の要件が満たされれば、校舎からグラウンド、そしてグラウンドから自宅、この経路についても、これは通学定期券の割引の対象にしてほしいという要望が非常に強くあります。

 クラブ活動を活性化していく、そして同時に保護者の負担も軽減をしていくためにも、ぜひとも御配慮を願いたいというふうに思っておりますが、ここは文部科学省とそれから国土交通省、それぞれ御見解を伺いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

    〔寺田(稔)主査代理退席、主査着席〕

長田政府参考人 先生御指摘の通学定期券の問題でございます。

 これは、学校におきます通常の教育課程に在学をして、その教育課程を履修するために、自宅の最寄り駅と学校の最寄り駅の間を通学するために発売されるということでございまして、先生御指摘のように、通常の通勤定期券などと比べますと、かなり一般的に大幅な割引になっておるわけでございます。

 クラブ活動の関係でございますが、通常の教育課程に係るもの、例えば体育の授業等で鉄道やバスを利用してグラウンドまで移動が必要となるというような場合につきましては、例えば鉄道では、実習用通学定期券というものを発行しておりまして、通学と同じような扱いになっておりますし、またバスの場合におきましても、通常の通学定期券において対応しているわけでございます。

 ただ、一方、単位取得とか卒業に直接関係のないクラブ活動等につきましては、例えば一部の事業者におきましては、これは学校長からの申請があれば対象としている場合もございますが、基本的には通学定期の発売の対象外となっているというふうに聞いております。

 この通学定期の割引を拡大するということにつきましては、これは基本的には交通事業者の判断にかかわる問題でございますが、例えば通学定期券は、先ほど申し上げましたように、高い割引率が設定をされております。これを拡大しますと、その分は結局他の利用者の方の負担になるということでございますので、基本的に一定の制約があるわけでございますが、具体的にどのようなニーズがあるのか、この辺は文科省とも連携をしながら、今後把握をしてまいりたいというふうに思っております。

金森政府参考人 部活動に係る通学定期の問題につきましては、ただいま御答弁があったとおりでございます。

 私どもといたしましても、こうした状況を踏まえ、生徒、保護者の負担軽減の観点から、国土交通省とも連携を図りながら、対応を検討してまいりたいと考えております。

上田分科員 ありがとうございます。ぜひとも、ここは前向きな御検討をお願いしたいというふうに思っております。

 今、国土交通省からの方の答弁にもありました。最終的には、これは鉄道やバスの事業者の判断ということでありまして、そこは理解ができるところなんですけれども、ただ、私も学校関係者や父母会の皆さんとともに、鉄道関係者に対しても、これまで要請も行った経緯もございます。趣旨はよく理解をしていただけるんですけれども、今おっしゃったとおり、なかなか、ここもうひとつ決断をできないという現状にあります。

 先ほど文科省の方からも、部活動は学習指導要領の中でも位置づけられた教育の一環としての意義が大きいということの御答弁がありましたので、教育上の意義を勘案していただいて、今、両省で協力をしていただけるというようなことでございました。ぜひとも、この前進に向けて御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 特に、本当に最近、結構、グラウンドの所在するところが学校舎から相当離れているところがあるんですね。電車やバスを乗り継いでいく、そうすると、毎週練習をするという場合には非常に負担になっていることがありますので、ぜひそうした点、ニーズも十分勘案していただいて、取り組みのほど、よろしくお願いをいたします。

 次に、先般、内閣、与党で決定をいたしました経済危機対策の中に盛り込まれている施策につきまして、何点かお伺いをしていきたいというふうに思っております。

 まず、経済危機対策において、今、経済情勢が急速に悪化をしていることに伴いまして家計が大変圧迫をされてきている、そうした家計の急変などにより修学が困難になった高校生に対する授業料減免や奨学金給付の緊急支援を行うことが対策の中に盛り込まれておりますが、私は、大変時宜にかなった対策だというふうに評価をいたしております。

 経済危機の中で、生徒が学費を払えないために、やむなく修学を断念しているというケースも多く報道されております。また、そこまではいかなくても、授業料などの負担が家計の中の相当な部分を占めておりますので、所得が減少する中で家計が一段と厳しくなっている、授業料の負担が生活を著しく圧迫しているのが現実だというふうに考えております。

 今回の対策は、こうした家庭にとって、とても有効な対策だというふうに考えております。そこで、事業の仕組み、また支援の内容について、どういうことを考えているのか、お伺いしたいというふうに思います。

河村政府参考人 先生からお話がありましたように、先般取りまとめられました経済危機対策において、教育費負担への支援として、経済情勢の悪化により修学が困難な学生・生徒に対する授業料減免・奨学金事業等への緊急支援等が盛り込まれております。ただいまの経済情勢からは、今後三年程度、授業料を滞納したり学業の継続が困難となったりする高校生が今の状況よりも増加するということが見込まれますために、多年度を視野に入れた支援策が必要というふうに考えている次第でございます。

 詳細については、今、二十一年度補正予算案に盛り込むべく政府内で調整中でありますけれども、現在、すべての都道府県で実施をしております私立高校生の授業料減免措置への補助や奨学金事業について、新たに国が都道府県に対して交付金を措置するということによりまして、一人でも多くの高校生が学業を継続できるような緊急支援、こういう趣旨で検討を進めているところでございます。

上田分科員 ありがとうございます。

 今、御答弁にありましたように、各都道府県に対して交付金を交付する。それで、多分、積立金という形で都道府県に積んで、それを、各生徒の方に支援をしていくというようなスキームになるのではないかというふうに思っております。

 そこで、その点について、一つだけお願いがございます。

 これも、これまで事務局の方には何回かお話もさせていただいたところなんですが、私立高校の生徒の場合には、私は地元が神奈川県なんですけれども、神奈川から東京に通学をしているというふうに、県境を越えて就学しているというケースが決して珍しくありません。これは、神奈川に限らず、首都圏では共通しているんじゃないかというふうに思います。都道府県が事業主体となると、その支援というのは、学校の所在地で行うことになるのか、生徒の居住地の県で行うことになるのか、その辺がはっきりしなければいけない点であります。また、都道府県によって対応に著しい差が出ますと、同じ学校に通う生徒の中でも、受けられる支援に格差が生じるというようなことも懸念をされますし、また、生徒や父母が支援を受けたいと思っても、では、それはどっちの県の方に話を持っていけばいいのかというようなこともあります。

 そういった意味で、そうした県境を越えて就学をしている生徒にとっても、そういう支援の申し出がやりやすい形にできるように、また、同じ学校に通っていながら大きな差が生じることがないように、できるだけ公平な支援が行われるよう文部科学省としても御配慮をお願いしたいというふうに思いますけれども、いかがでございますでしょうか。

河村政府参考人 私立高校生の授業料減免に対する補助や、私立高校生を含めました高校生に対する奨学金の事業というものは都道府県において行われるものでございまして、基本的には、その地域の実情に応じて都道府県が仕組みを設定するということでございますが、私どもとしては、今検討中の平成二十一年度の補正予算の事業も含めまして、先生の御指摘の点に十分留意をしながら、これからの制度設計を行ってまいりたいと思います。

上田分科員 ひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、この経済危機対策の中に盛り込まれておりますスクール・ニューディール構想についてお伺いをいたします。

 小中学校の耐震化、学校の情報通信環境の整備、省エネ改修事業などを積極的に推進することとしております。これらの対策は、当面する景気浮揚策としての効果というだけではなくて、将来の我が国の経済や社会の発展にもつながる効果的な投資だというふうに考えております。

 将来の経済、社会を担っていく次の世代を育成していくためには、やはり教育に対する投資というのが一番大切なわけでありまして、もちろん、設備だけが教育の内容を向上させるわけではありませんが、教育のレベルを維持向上させていく上で、やはり一定のレベルでの施設を整えていくことは重要なことだというふうに考えております。そういう意味で、今回のスクール・ニューディール構想に基づく事業というのは大変有効な対策だというふうに考えております。

 そこで、事業の内容について御説明をいただきたいというふうに考えるとともに、また、各種事業を実施するに当たって、これはどうしても地方公共団体が事業主体になりますので、地方公共団体の負担に対する支援策について、お考えを伺いたいというふうに思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の教育環境の整備についてでございますが、二十一世紀の学校にふさわしい教育環境の抜本的な充実を図るため、学校施設におきまして、学校耐震化の早期推進、太陽光パネルを初めとしたエコ改修、ICT環境の整備等を一体的に実施していくことが重要な課題と認識しております。

 これまでも学校施設の耐震化、エコ化、ICT化に取り組んできたところでございますけれども、より積極的に教育環境の整備を図るため、四月十日に政府・与党で決定いただきました経済危機対策におきまして、これらの一体的な推進を図るためのスクール・ニューディール構想を盛り込んでいただいたところでございます。

 具体的には、耐震化につきましては、Is値〇・三未満の公立小学校施設につきまして予算措置を完結する、それとともに、Is値〇・三から〇・五の施設を中心に、Is値〇・五以上の施設も含めた耐震化を推進していくこと。

 また二点目に、エコ化につきましては、公立小中学校施設への太陽光パネルの設置につきまして、早期に、現在の十倍となる一万二千校への設置を目指すなど、省エネ改修等を含むエコ改修をあわせ推進すること。

 また、ICT化につきましては、デジタルテレビの整備、教育用、校務用コンピューターの整備、校内LANの整備等を進めていくということにしており、平成二十一年度補正予算案に所要の額を計上するよう、財務省を初め調整をさせていただいているところでございます。

 また、先生御指摘いただきました地方負担の件でございますけれども、公立学校の設置者である地方自治体がこれらの事業を実施するに当たりまして、財政負担の軽減が図られるよう、地方向けの臨時交付金という制度の活用につきまして検討をしていくということを今行っているところでございます。

 文部科学省におきましては、経済危機対策を踏まえ、スクール・ニューディール構想の着実な実施に向けまして、必要な予算の確保や地方自治体の取り組みの支援に最大限努力させていただきたいと思います。

上田分科員 ありがとうございます。

 まだ具体的な施策は、これから補正予算の編成ということになりますので、これから決まっていく部分も多いというふうには理解をしております。

 ただ、今御答弁にありましたとおり、この計画どおりに事業が実施できれば、いわゆる学校の耐震化についても、Is値〇・三未満のところ、これはすべての校舎について改修が終わるということであります。これによって学校の安全がかなり向上するということでございますし、またさらに、もう一歩進んだ〇・五までのところについても今回改修に含めるということでございました。

 また、今お話があったように、学校のICT環境の整備、これも、今の本当にこういう情報通信革命と言われている時代に、やはりどうしても小中学校はまだまだそういう環境がおくれてきた面があるというふうに思います。今回、この景気対策の中で、そういう将来に本当に生きていく投資をしていく必要というのは私も強く感じているところでございますので、ぜひ、なるべく有効にこの対策が実施をされるよう、これからよろしくお願いをいたします。

 最後に、この経済危機対策の中において、先端技術開発、人材力強化等に積極的に取り組む方針が打ち出されております。すべてが文部科学省所管の予算ではありませんけれども、新エネルギーや医療分野での実用研究の促進、また、基礎研究、先端研究を促すためのインフラの整備、世界最高レベルの研究者との交流の促進など、この分野において九千億円が計上される予定というふうに聞いております。

 経済が大変厳しいときである、そういうときには、どうしても目先のことにばかり目が行きがちでありますけれども、こうした長期的な視点に立って将来の日本の経済の競争力を高めていく、そのための投資を行うことは非常に重要なものだというふうに考えております。こうした投資というのは、未来の日本の経済成長力を高めていくための、まさに種を植えていくことだというふうに思いますので、その政策の意義は極めて大きいというふうに考えております。

 改めて、こういう研究開発に今回特に力を入れていこうという意義、それから、文部科学省として、科学技術の分野で特に重点を置いていきたい、そういう分野について御見解をお伺いしたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 四月十日に政府・与党として取りまとめた経済危機対策について、我が国の経済の底割れを防ぐということ、同時に、中長期的な成長を図るための未来への投資、これが必要であり、我々文部科学省としては、特に教育もそうだし、あるいは科学技術も、今お話があったように、将来への投資としてしっかりと充実をさせていきたいという考え方から、今回の補正についても、その点をしっかりと獲得をするべく努力をしてきたところでございます。

 特に、研究開発の推進や人材の育成の強化は、経済成長のかぎを握るとともに、我が国の将来を切り開いていく国の力の基盤となりますので、この点について特に力を注いでまいりたいと考えております。

 一つは、基礎研究から出口を見据えた研究開発までの、世界をリードする成果の創出を目指した研究開発の推進、それから二つ目は、すぐれた研究者や留学生が最大限に能力を発揮し活躍するための環境整備、そして、学習指導要領を改訂したわけでございますが、この指導要領に対応するべく、教育環境の整備等々、文部科学省としては、多くの事項が、この研究あるいは研究開発、人材育成について中に含まれておりますので、この補正予算をしっかりと獲得して、今後、危機克服と国力の発展の実現をするために、政府全体として総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えているところであります。

上田分科員 ありがとうございます。

 再度申し上げますけれども、やはり、こういう経済が大変厳しいときであるからこそ、将来のための種をちゃんとしっかりと植えておくことは非常に重要なことだというふうに思っております。企業経営などでも、経営が厳しくなると、研究開発の分野は削減しやすいので、どうしてもそういったところを減らしがちです。しかし、そういう企業は、どうしても将来になると、技術の蓄積がなくなってきて経営が衰えてしまうというようなことが企業経営の面でもよくある事例でありますので、我が国においては、たくさんの技術力、科学技術、先端技術も持っているわけでありますから、これをしっかりと開発し、さらに進めていくこと、それが将来の日本の国力の発展にもつながるものだというふうに思っております。ぜひよろしくお願いをいたします。

 どうもありがとうございました。

横光主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

横光主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前中に引き続き文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田徹君。

黄川田分科員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問していきたいと思います。

 まず初めに、基礎研究の重要性ということでお尋ねいたしたいと思います。

 金融工学の知識を駆使してレバレッジをかけて巨額の富を得る、こういう虚構は今回の世界同時不況を目の当たりにしまして崩壊しつつある、こう思っております。そのために、我が国のすぐれた物づくりの原点、これに立ち返り、長期的な視野で、視点で、日本のすぐれた科学技術、それに支えられた固有の産業技術の育成を考えること、この重要性がますます高まっている、こう思っております。

 そこで、平成二十年度、二十一年度の予算、それから二十年度の補正予算、そして今検討中の二十一年度補正予算を総括しまして、高度な未来志向の研究・技術開発の動向、それからそのための予算額、この概略を、まず最初に大臣にお尋ねいたします。

塩谷国務大臣 基礎研究の重要性は、昨年ノーベル賞を日本人が四人も受賞したことも含めて、また、これからそれらの研究者の支援も含めてしっかりと推進していかなきゃならぬし、また、経済がこういう時期でありますから、より将来への投資という点でしっかりと充実をさせていきたいと思っております。

 基礎研究の予算につきましては、一つは、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科学研究費の補助金、これが一千九百七十億円に拡充をされています。また、基礎研究からイノベーションの種となる技術シーズを創出するための戦略的創造研究推進事業として四百九十八億円。さらには、世界の第一線の研究者が結集するすぐれた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点を形成するための七十一億円を計上しているところでございまして、特に本年を私どもとしては基礎科学力強化年と位置づけて、また、総合戦略の構想も改めて固めて、その推進に努めてまいりたいと考えております。

黄川田分科員 大臣から簡潔に御答弁をいただきました。

 それから、お話しのとおり、日本の素粒子分野ですか、その中で三氏がノーベル賞を昨年受賞した、このことは、大変厳しい日本の経済環境、この閉塞感の中で明るいビッグなニュースだ、こう思っております。

 また一方、長さ四十キロもある直線の地下トンネルで、光速近くまで加速した電子と陽電子を衝突させまして、そして宇宙誕生のビッグバンを再現することにつながる国際リニアコライダーは、世界の素粒子物理学者が構想する次世代の大型加速器、こうだと思っております。

 そこで、この線形衝突型加速器、リニアコライダー研究所の我が国への誘致活動の状況であります。これは、このための事前調査活動等についてさまざま行っていかなきゃいけないと思うのでありますけれども、これは関連予算も含めて最新の状況を文科省の事務方からお願いいたします。

磯田政府参考人 委員御指摘のとおり、我が国の素粒子物理学は世界でもトップレベルの水準にございまして、湯川秀樹博士以来、我が国の自然科学系のノーベル賞受賞者の約半数となる六名を輩出しております。

 文部科学省では、これまで素粒子物理学に必要となる粒子加速器の建設、これを着実に進めてきており、現在稼働中の高エネルギー加速器研究機構のBファクトリーの成果は、御指摘の二名の、小林、益川両博士の理論を裏づけることとなりました。

 また、世界最高レベルのビーム強度を有し、ニュートリノなどの研究を行う大強度陽子加速器施設、J―PARCが本年中に本格稼働し、今後多くの世界的な成果が得られることが期待されております。

 加速器の開発につきましては、御指摘の線形衝突型加速器、リニアコライダーと称しておりますが、本加速器につきましては、これからの先端加速器の先に来る、人類にとっての究極の加速器とされているものでございます。

 ただし、現時点では、各国の研究者レベルでの設計活動等は行われておりますが、政府レベルでの建設に関する検討はいまだ行われていない状況であると承知しております。

 ILC計画、リニアコライダー計画は、巨額の経費を要するものでございます。また、先進的かつ高度な技術を必要とするものでございますので、国際的な連携協力が不可欠であると認識しております。特に、リニアコライダーに必要となる超精密な超電導加速空洞を大量に生産する技術が現時点ではまだ未確立の状況にあるため、まずはこの技術開発の動向を見きわめることが重要であると認識しております。

 このため、文部科学省におきましては、現在、リニアコライダー計画を含めた素粒子物理学分野の発展等のために重要な最先端加速器技術等の要素技術開発を着実に進めているところでございまして、このための経費として平成二十一年度予算におきましては総計約二十八億、前年度比八億増を計上しているところでございます。

黄川田分科員 今お話しいただきましたけれども、米国、欧州、アジアの中でも日本ということで、国際研究所でありますからどこか一つということになるんでしょうけれども、国内の候補地、こういう点については今お話がなかったんですが、その部分はどうなっているでしょうか。

磯田政府参考人 今御説明した中で不十分な点を補足させていただきたいと思いますが、まずは国際的な連携協力が不可欠であるということで、その辺の議論を見据える必要がございますし、また、大型ハドロン衝突型加速器というものが現在ございまして、これがどのように素粒子物理学に貢献するかという議論がございます。

 また、我が国の素粒子物理学を含めました科学技術界全体での御議論等があるということでございまして、現在、そのような議論を踏まえて今後の対応を考えるということでございまして、我が省としてはそういう要素技術の開発をまずは最優先するという状況にございます。

黄川田分科員 くどいようですけれども、どうもこの話は、官房長官から話が最初にあって、後追いで何か文科省が認識したみたいな感じで、なかなかしゃべってしまうと前に進むのに障害があるみたいな形であれなんですが、新聞報道によると、何カ所か国内にも候補地があると。

 私の地元は岩手でありまして、北上高地があるわけでありますけれども、ここは強固な花崗岩の岩盤でありまして、安定した地盤で構成されておるということです。実は、あさって四月の二十二日には、東北経済連合会が中心になりまして、東北大学、東北各県を含めて産学官で、東北加速器基礎科学研究会の設立総会、これを開催される予定になっております。

 もちろん、巨額な税金を投入するプロジェクトでありますし、国内の中で我田引水みたいな形になっては変なことになりますし、国内の環境を整えていく、これが一番大事だ、こう思っております。

 ただ、やはり国民の、社会の広い理解でありますとか、それからまた国家としての戦略、これが不可欠だと思いますので、この点は指摘しておきたいと思っております。

 それでは次に、私学教育の重要性についてお尋ねいたしたいと思っております。

 我が国は少子高齢化の時代を迎えておりまして、高校、大学の高等教育も本当に厳しい競争環境にありまして、特に私学教育は学校法人の格差が拡大し、選別、淘汰のあらしにさらされている、こう認識しております。

 そこで、高等教育における将来の私学教育のあり方に関して、基本的にどのような方向を目指そうと指導しているのか。そしてまた、あわせて、経営の苦しい私学に対してどのような基準で助成を行うのか、その仕組みの概要をお尋ねいたしたいと思います。

塩谷国務大臣 私立大学につきましては、建学の精神をもって自主自律に運営されているものでございまして、我が国においても、国立大学と同様に、大変なその社会的責任にふさわしい健全経営に努めているということで、その指導をしているところでございます。

 特に、少子化等厳しい環境になってきておりまして、現状でも、その経営改善を促すために、定員を充足していない大学につきましては補助金を減額するという方針で今行っております。ただ、その定員の規模の適正化あるいは経営効率化など、自主的に経営改善に取り組んでいる大学に対しては、改めて特別に支援するという基本的な方針で今援助をしているところでございます。

黄川田分科員 大臣からは私学の自主自律という話でございますけれども、どうも最近の私学教育を見てみますと、利益の追求を第一主義として経営を行って、自由闊達あるいはまた独立独歩など建学の精神が片隅に追いやられているようなところもやや見られるところもあるのではないかとちょっと感じておるところがあります。私学助成を行う国の指導方針ですか、この重要性、本当に大事だと思っております。

 そこで、実は、藍野学院、東北文化学園大学、健康科学大学の三つの大学のほかに、二つの短期大学、二つの高等学校などの学校法人を経営する藍野グループというものがあります。また、この同グループは、医療法人恒昭会、社会福祉法人藍野福祉会のもとで幾つかの病院経営をも行っております。この藍野グループは、今まで幾つかの不祥事がありまして、補助金の削減あるいは停止などの措置が講じられていると聞いております。

 そこで、まず最初に、それら藍野グループの大学、短大に、補助金がいつからどのような目的で幾ら交付されていたか、この事実関係をお尋ねいたします。

河村政府参考人 私立大学等経常費補助金は、私立学校振興助成法に基づいて、私立大学等の教育条件の維持向上、学生の修学上の経済的負担の軽減、私立大学等の経営の健全性の向上を図るために、教育または研究に係る経常的経費について、その二分の一以内で補助を行うものです。

 いわゆる藍野グループと呼ばれる、学校法人藍野学院、学校法人東北文化学園大学、学校法人第一藍野学院の設置する大学、短期大学のそれぞれについて交付いたしました補助金の額を申し上げます。

 藍野大学については、平成二十年度から補助を開始しておりまして、平成二十年度の補助金額は一億六百十四万円。

 藍野学院短期大学については、昭和六十三年度から補助を開始しており、平成二十年度の補助金額は四千十三万円、昭和六十三年度からの総額で申し上げますと、十三億六千百二十一万円です。

 東北文化学園大学については、平成十一年度から補助を開始していますが、平成十一年度から十五年度に交付した補助金については全額返還となっております。平成十六年度、十七年度は申請を辞退しております。平成十八年度は、一部減額処分を経た結果、七千五百三十二万円を交付しております。平成十九年度、二十年度は不交付です。

 健康科学大学については、平成十九年度から補助を開始しており、平成十九年度は一部減額処分をいたしました後の交付額が三千七百四十万円、平成二十年度は申請を辞退しています。

 修紅短期大学については、第一藍野学院が設置者となる前の昭和四十五年度から補助を開始しておりますが、第一藍野学院が設置者となった平成十三年度からの総額で申し上げますと、五億七百八十二万円となっています。平成二十年度は申請を辞退しています。

 以上でございます。

黄川田分科員 有意義な私学振興ということで、国として経常的な運営費を総額で三千億ぐらい各学校法人に補助していると思っております。

 ただ、この藍野グループのように不明朗な会計処理で多額な目的外使用金や使途不明等と思われるようなさまざまな問題が生じて、マスコミに報道されておるわけでありまして、ただいまの答弁で、東北文化学園大学から経営が苦しいグループ内の医療法人恒昭会に七億八千万もの不適切な融資があったと。これに関しては、補助金の関係ではしっかりと処分しているということでよろしいんでしょうか。

河村政府参考人 御指摘のありました東北文化学園大学への補助でございますけれども、平成十八年度に医療法人恒昭会への不適切な融資というものがございました。この不適切な融資に関しては、補助金は使用されていないというふうに認識をいたしております。

 一方、私学振興助成法においては、学校法人の管理運営が適正を欠く場合は、補助金を減額または不交付とすることができるとされております。この学校法人東北文化学園大学については、先ほどのその融資というものは、理事会の議決を経ることなく、学校法人の財産を理事長本人ですとか理事長の親族の運営する病院、法人等に明確な理由なく貸し付けを行うなど、法人としての管理運営が適正を欠いていることから、平成十九年度の私立大学等経常費補助金は不交付という扱いになっております。

黄川田分科員 この藍野グループの学校経営は、理事会議事録の改ざんであるとか、あるいはまた二億円と称される使途不明金があるなど、本当に不明朗な経営状況がたびたび報道されるわけであります。

 昨年九月に、山梨県にある同グループの健康科学大学の運営資金約二億円が同グループの関連病院に融資されたと会計報告にあるとのことでありますが、実体のない融資であるのではないか、こういうふうな報道もされておるわけであります。

 そこで、この実態を解明するために、当初は弁護士とか公認会計士が入っていなかったのでありますけれども、文科省も多分指導したんでしょう、弁護士、会計士二名にグループ内関係者六名を加えた学内調査委員会が設けられまして、調査を開始し、最近になって報告書が出たようであります。

 現時点で、報告書や関連調査に基づく結果の概要はどのようなものであるのか。そしてまた、今後、文部科学省は、責任の所在の明確化、これなどをどのように指導していく方針か、重ねてお尋ねいたします。

河村政府参考人 今月ございました第一藍野学院からの報告について、概要を申し上げます。

 平成十四年、健康科学大学の設置認可申請に際し、五十億円の設置財源について、借入金を寄附金と仮装した申請書類を文部科学省に提出した。文部科学省の認可後、初年度経常経費が確保されていなかったため、会計帳簿上工面する必要が生じ、平成十六年度末までにわたり、期末に資金を一時的に借り入れ、翌年度期首に返済するという会計操作や、実際には資金の動きのない架空取引を行うなどの会計操作を行い、帳簿上の資金と実際の資金の差を、当初の六億円から二億円に縮小させた。平成十七年度においては、その差二億円を個人への貸付金として計上するなどしたが、平成十八年度末にこの貸付金を実体のないものとして会計上の修正処理をしたため、平成十七年度に貸付金として処理されていた二億円があたかも使途不明金とみなされる状況となったとのことでございます。

 今回の調査結果報告では、資金の流れなどについては一定の解明がなされたとされていますけれども、健康科学大学の設置認可申請に際し、借入金を寄附金と仮装し、また会計帳簿上の操作を行った事情の詳細やこうした行為に関与した者などは明らかになっておりません。

 このため、文部科学省としては、第一藍野学院に対して、事実関係のさらなる解明と責任の所在の明確化、会計処理、監査の充実等につき諸規定の整備、見直しなどを図るといった組織的な再発防止策の策定、一連の不正に関与した者の今後の学校法人運営への影響力の排除を行うように指導いたしました。

黄川田分科員 お話しのとおり、調査報告書ですか、健康科学大学の平成十四年の設置認可申請に際して、見せ金でもつくったんでしょうか、五十億円の設置財源について、借入金を寄附金と仮装した申請書類を文科省に提出し、それで認可を受けたということであります。

 この五十億円の巧妙なやりくりや、期末に資金を一時的に借り入れて即刻期首に返済するという会計操作だと思うのでありますけれども、悪質な行為だと私は思っておりますし、まだ調査しなければならないところもあるということでありますけれども、これは文科省として司直の手にゆだねるということも視野に入れておるのでしょうか。

塩谷国務大臣 現時点におきましては、事実関係も十分まだ明らかになっていない点がありますので、第一藍野学院に対しては、さらなる事実関係の解明と責任の所在の明確化を求めてまいりたいと思っております。

 その上で、今後、事実関係を踏まえて適切な対処をしていきたいと考えております。

黄川田分科員 なお、確認でありますけれども、この二億円の使途不明金は、結局、実体はなかった、こういうことでよろしいんでしょうか。報告書には載っていたけれども。

河村政府参考人 委員御指摘のように、その二億円の使途不明問題といいますのは、資金的裏づけのないまま過大な設置経費によって健康科学大学の設置認可申請が行われ、その後、その経費の不足分を一時的な資金融通や架空取引といった会計操作で装う過程で、その一部の二億円が使途不明問題として表面化したものでございます。すなわち、現実にあった二億円の現金が使途不明になったものではないというふうに承知しております。

黄川田分科員 また、最近は、日清医療食品の所得隠し、税務調査が入ったということで、この日清医療食品と、藍野グループ傘下で、藍野病院を運営する医療法人恒昭会の関連法人との間の所得隠しというものが明らかになったということでありまして、医療法人と取引先との不明朗な、不透明な関係、これが浮き彫りになったということであります。

 最初お話ししたとおり、学校も経営する、病院も経営するということで、もともと志は多分、学校をつくり、そして看護師やらあるいはまた介護とかさまざまな人材を育成して、その人たちが勤める場所をということで、それらが医療法人、学校法人、しっかりとした連携が成っていれば、それこそ私学の振興として、地域の雇用の場とかいろいろなことに地域住民も賛同するような学校法人になるんでしょうけれども、次から次とさまざまな問題が出てくるみたいなのであります。

 法人には理事会であるとかあるいはまた評議員会というものがあると思いますし、その理事の皆さんすべてがというわけじゃないと思いますけれども、特別にそれぞれの法人にかかわって、はっきり言えば、理事会のあり方とか、さまざまな議論なしに理事長のワンマンであるとかあるいはまた独断であるとか、さまざまなことがあったのではないかと推察されます。その都度その都度適切な指導助言があれば傷も大きく広がらなかったと思うのでありますけれども。最近の財団法人日本漢字能力検定協会ですか、文科省のかかわり方も、何度か指導、調査、臨時調査とかやられてきたんでしょうけれども、どうも後手後手に回っておるような気がいたします。

 私学の振興、あるいはまた医療法人を経営するということは、とても志が高くていいことではありますけれども、一歩間違えれば大変なことになるというふうな状況になっているのではないか、こう思っております。いずれ後手後手にならないような対応をお願いするわけであります。

 実は、この問題は地元の課題でもありまして、藍野学院、法人がやっている、経営している高等学校が、地元、一関修紅高校という学校でありますけれども、同校は、明治二十二年に創立されまして、県内でも十指に入る歴史を持ち、そしてことしで百十周年を迎える。これまで岩手県南、宮城県北の私学教育を支え、既に一万二千名を超える卒業生を輩出している学校であります。

 しかしながら、平成十三年の四月に、藍野グループの第一藍野学院が同校の経営を承継いたしました。そして、第一藍野学院の理事、監事十一名のうち地元出身理事は一人もおりませんし、また藍野グループの中で組合組織があるのは一関修紅高校だけであります。

 そこで、地元にあるのでありますけれども、修紅短期大学で大幅な賃金が削減された、修紅高校の不当な解雇、停職、また地元出身の理事が一人もいないということなど、本当に地元では大きな問題になっております。

 また一方、高等学校の所掌は都道府県ですか、医療法人の関係、例えば恒昭会の関係は厚生労働省だとか、さまざまなセクションがあって、一体どうなっているのかということがあります。

 すべての問題の根源は藍野グループの不明朗な学校経営によるものであると思っておりますので、学校教育の原点に立ち返り、生徒、OBに限らず、地元住民の不安を解消していただくべく、大局的な視点を持っていかなきゃならないと思っておりますけれども、これについては大臣の所見をお尋ねいたします。

塩谷国務大臣 まず、我が省としては、第一藍野学院の管理運営上の問題については、事実関係をしっかり踏まえて厳正に対処してまいらなきゃならぬと思っております。

 現時点で、第一藍野学院から一関修紅高等学校の廃止を予定しているとは聞いておりません。

 今後、対応においては、特に生徒、在学生が修学機会の確保をするために最も重視すべき事柄の一つであると考えておりますので、最初に申し上げましたように、事実関係を踏まえて、しっかり対処してまいりたいと考えているところでございます。

黄川田分科員 地元一関における、教職員組合の労働争議ということで裁判にもなっておりますし、そしてまたそれ以前に、このような紛争が起きないような教育環境を醸成する、これが一番大事だと思っております。

 それからもう一つは、高等学校は都道府県ということで、さまざまな指導助言もやはり文科省、国の顔を見ながらということが間々起きるわけなのであります。

 あと、補助の関係でも、私学事業団に私学経営の監視とか運営を丸投げといいますか、そういうのをすることなく、直接文科省が、危ない芽は早期に摘み取るといいますか、そういうふうな思いでしっかりと対応していただきたいと思います。

 本当は物づくりでもう一、二問聞こうと思ったんですが、終了時間が来ましたという紙が来ましたので、これで終わります。よろしくお願いいたします。

横光主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、矢野隆司君。

矢野分科員 自由民主党の矢野隆司でございます。

 きょうは、我が国に幾つかある国立博物館の中で、九州国立博物館についていろいろと伺いたいと思います。

 なお、塩谷大臣には、途中でひょっとしたら御感想を伺うかもしれませんが、よろしくお願いをいたします。

 早速ですが、九州国立博物館の展示品の収集について、そのコンセプトというものを教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 九州国立博物館は平成十七年十月に開館いたしました国立博物館でございまして、国立博物館としては約一世紀ぶりに設立された博物館でございます。

 この博物館におきましては、国際社会におけるアジアとの位置づけの重要性が強まる中、アジア諸国との相互理解を深めるという考え方に基づきまして、日本文化の形成をアジア的視点、観点からとらえるというコンセプトのもとに設立し、収集を行っているということでございます。

矢野分科員 きょうは理事会に資料のあれをしていませんから、示すことができるのかどうか。月刊文化財という平成十七年十月号の雑誌がございます。この中に、九州国立博物館の当時の文化財課長がこういう文章を書いています。

 「九州国立博物館の収蔵品 オンリーワン、さもなければベストピース」、これが題名で、中身の文章を一部紹介しますと、既にすぐれた先行コレクションが形成されている分野については、借用を念頭に置いて、あえて手を出さない、むしろ、どこにもないもの、よそにもある場合は最もできのよい品に限って作品を収集していこうというのがその方針です。言うは易し行うは難しですが、九博のコレクションの特色となるよう努力していきたいと思います。

 こういう文章がありますが、次長さん、これもコンセプトでよろしいですね。

高塩政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、この国立博物館は一世紀ぶりにつくったということでございますけれども、基本的に、新しく設立した国立博物館ということでございまして、その展示する品物につきましては、多くを東京国立博物館からの借用という形にいたしております。

 その中で、さらに、当然、アジアとの交流の中で収蔵品を集めるという際に、今先生から御紹介のあったような考え方もあったというふうに伺っております。

矢野分科員 そこで、九州国立博物館において高額な作品を購入する際の一般的な手続過程、選定方法、購入費用の予算措置の流れを端的に教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 九州国立博物館におきます収集品の購入手続につきましては、他の国立博物館と同様でございまして、まず最初に所有者の方から申し出を受けまして、最初に館内の鑑査会というのがございます。これは館長を議長といたしまして、博物館の学芸員、研究員などで構成されておりますけれども、館としてそれを購入するという意思を固めた後に、外部の有識者から成ります買取協議会におきまして、博物館の収集品としてふさわしいかどうかを判断していただきまして、その上で、案件ごとに委嘱しました五名から六名の評価員が独立して価格の評価を行う、その価格評価の決定を踏まえましてその所蔵品を購入することを締結する、こういった手続になっておるところでございます。

矢野分科員 そこで、今、九州国立博物館にはたくさん目玉展示品があると思うんですが、その一つと言ってもいいんだと思いますが、麻布山水図という作品がございます。

 これは、東京の地名の麻布と書いてマフと読むんですが、麻布山水図の場合は、だれから幾らでの購入打診があり、結果、幾らで購入をされたのか。また、今高塩次長が御説明になった買取協議会ではどういう議論があったのか。重ねて伺いますが、この作品の美術的な価値というものを教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 お尋ねのございました麻布山水図につきましては、東京都の古美術商でございます瀬津雅陶堂から売り渡しの打診がございまして、外部有識者によります買取協議会及び評価会を経まして、平成十七年九月に三億一千五百万円で購入をしたということでございます。

 買取協議会の内容でございますけれども、買取協議会については議事録というものは作成しておりませんけれども、九州国立博物館から伺ったところによりますと、この麻布山水図は、明治の初めに東大寺の東南院から明治天皇に献上された正倉院中倉宝物の二点と非常によく似ており、また、中国唐時代の山水画表現を伝える奈良時代の絵画であって、それに続きます平安時代に発達します我が国の大和絵における先駆的な絵画としてもとらえることができる貴重な作品であり、九州国立博物館として購入することは大いに意義があるという議論があったというふうに伺っております。

 私ども文化庁といたしましても、こうした九州国立博物館の判断を踏まえまして、この麻布山水図につきましては、現存作品が極めて少ない奈良時代の絵画作品であること、また、平安時代に成立する我が国独自の大和絵表現の先駆的な存在であること、さらには、唐代絵画様式の影響を受けて成立した山水画としても大変貴重であるというふうに認識をいたしておるところでございます。

矢野分科員 ありがとうございます。

 では、この麻布山水図については都内の古美術商から買われたということですが、要は、先方が買ってくれと言ってきたのか、あるいは、九州国立博物館の側あるいは独立行政法人国立文化財機構が売ってくれというふうにお願いをしたのか。それはどちらですか。

高塩政府参考人 確実な詳細は伺っておりませんけれども、所有者からの売り渡しの申し出があったというふうに伺っております。

矢野分科員 それと、もう一点、今の次長さんの答弁で確認をしたいんですが、買取協議会というのは、買うかどうか、持ち込まれた文化財といいますか、その作品が展示するのにふさわしいかどうか、国が買い取るのにふさわしいかどうかの判断をする協議会であるという御説明でした。

 この協議会の議事録がないということですが、これは、要するに、この作品だけなかったのか、それとも実はずっとつくっていないのか。それから、東京、京都、奈良、ほかの三国立博物館でも同じような手続の中で、買取協議会的なものがあって、そこにおいてもやはり議事録はつくっておられないのか。ちょっと教えてください。

高塩政府参考人 買取協議会につきましては、ほかの博物館も含めて、議事録の作成は行っていないということでございます。

矢野分科員 では、麻布山水図に話を戻しますが、この麻布山水図と同種の作品というのは、九州国立博物館が買われたもの以外に、国内では、正倉院に二張り、それから東京の世田谷の五島美術館に一幅、加えて、私は大阪と聞いていますが、某所、某氏が二人おられて、その方が別に二点持っておられる。要は全部で五つあるということを聞いています。

 では、その九州国立博物館が買われた麻布山水図の来歴について、先ほど簡単に次長からお話がありましたが、改めて、九州国立博物館に入るまでの経緯を教えてください。

高塩政府参考人 これも九州国立博物館などに照会をいたしました経緯でございますけれども、この九州国立博物館で購入いたしました麻布山水図の来歴につきましては、私ども確認できる資料も含めますと、これは、明治中期に古美術商から柏木貨一郎氏が購入をした、その後すぐに益田孝氏、この人は三井財閥の設立者の一人だというふうに伺っておりますけれども、益田孝氏にその麻布山水図が移ったというふうに聞いております。

 そして、最終的には、先ほど申し上げましたように、九州国立博物館がこれを買った相手先は株式会社の瀬津雅陶堂でございますけれども、この益田氏から瀬津雅陶堂に渡った経緯につきましては、照会をいたしましたけれども、大変古い時代のことなので、現在記録がないのでわかっていない、こんな来歴というものがあるというふうに承知しております。

矢野分科員 今回の件でいろいろと文化庁の方ともやりとりしましたけれども、要するに、九州国立博物館に売った業者が、その作品をいつどこから手に入れたか。どこというのは、恐らく益田孝さんの御遺族からなんでしょう。益田孝さんは昭和十三年の十二月に亡くなっておられます。その御長男といいますか、跡をとられた、相続された方も昭和二十八年の五月に亡くなっておられますから、恐らくその後に都内の古美術商が手に入れたんでしょう。それから、いつその古美術商が手に入れたのかということすら実はわかっていなかったんですね。

 では、買取協議会というのは一体何を議論するところなんですか。それをちょっと教えてください。

高塩政府参考人 買取協議会につきましては、その作品を個別に子細に調べまして、それの作品としての価値、これの中には、それのまさに真贋といいますか、そういったものも含むと思いますけれども、その作品を見て、来歴につきましても、当然、九州国立博物館の場合には、九州国立博物館の方で調べた鑑査会の結果というものを買取説明書という形で示しますけれども、そういう資料ももとに、買取協議会の学識経験者が、これが博物館資料として適切かどうかというものを判断して、館長に意見を具申する、こういった機関でございます。

矢野分科員 ただ、要は、議事録がないから、どういう議論をしたか、あるいはどういう意見が出たか全くわからない、こういうことだと思います。この点についてはいかがですか。

高塩政府参考人 議事録の作成をしていないということは、そのとおりでございまして、先ほど申し上げたことも、その当時おります九州国立博物館の関係者から事情を徴したところでございます。

矢野分科員 では、最初の質問と関連して戻りますが、九州国立博物館の収集のコンセプトはベストピースもしくはオンリーワンだと、当時の宮島副館長さんが立てたコンセプトというふうにこの月刊文化財の中には書いてあります。

 そこで、現在、正倉院にも一連の作品と同じような麻布山水図が二点あります。この正倉院の宝物というものは、戦後、日本の国有財産に大前提として位置づけられておるわけですね。もちろん皇室用財産ではあるんでしょう。しかしながら、日本の国のものだという位置づけは私は変わらないと思います。

 そこで、では、なぜ正倉院に二つあるものを新たに九州国立博物館が買わなきゃいけなかったのか。しかも、ベストピースという意味でいえば、正倉院のものが一番ベストなんでしょう。それをあえて三億二千万近くの金で買われた。しかも、この骨とう品屋さん、昭和四十年以前にこの絵を入手したと私は文化庁から説明を聞いています。

 では、四十年間も、たなざらしになっておったと言ったら語弊があるかもしれませんが、民間にあったものを、四十年たってばたばたと、あたかも九州国立博物館の開館に合わせるがごとく、三億二千万近くの金を使って買われたその理由、そこを教えてください。

高塩政府参考人 九州国立博物館におきましては、先ほども申し上げましたように、アジアとの文化的な視点からの交流から、その作品を集めて展示していくということがコンセプトでございます。

 確かに、先生おっしゃいますように、正倉院の御物として麻布山水図二点がございますけれども、これらの作品については、毎年奈良の国立博物館で展示をいたしております正倉院展に平成七年に一度出品をされた経緯はございますけれども、余り国民の目に触れる必要はないというような事情がございます。

 したがって、新たな国立博物館として九州にアジアとの交流の歴史をまさに展示するための博物館を設立したという中で、当時といいますか奈良時代の唐の時代との交流を示す資料として、九州国立博物館の方では購入をすることが非常に適当であるというふうに考えた結果だというふうに承知しております。

矢野分科員 多分そうだと思います。しかし、それもこれも、次長さん、議事録がないから、どんな議論になってどういう経緯で買ったかわからないんですよ。

 ここまでで、大臣、議事録がないということについて、率直に何か御感想を。

 三億二千万足らずといいますと、この間、国民の皆様にようやく支給を開始した定額給付金でいいますと、二万六千人分に相当する金額でございます。しかも、この平成十七年度の文化財を買った全部の予算の大体八%ぐらいを占めるのが、この絵一つ。ですから、これに限らず議事録をつくっていないということは、十億円のものを買おうが、極端に言えば三十億円のものを買ったって議事録をつくらぬということなんですよ。

 その辺の、今の文化庁のそういう制度というか仕組みについて、急な質問で申しわけございませんが、大臣、もし何かあればおっしゃってください。

塩谷国務大臣 この協議会等の議事録は今作成していないということでございますが、いろいろな観点から透明性を図るためにも、その後、その委員の氏名等は発表することになっております。

 今後、いわゆるそういったものが適正だったかどうかとか、いろいろとその議論の中で示すべきことが検討されれば、今後そういったことも検討していきたいと思いますが、しかしながら一方で、議事録がそのまま出るということは、仮にその中で議論されて、そのものがこうだああだということが専門家から言われた後の評価というものが表へ出てしまうということも、これもまたいろいろ問題があるということでございますので、今のところ、事後の氏名の公表ということ、そういうことだけにとどめております。

 また、多分、最近の世の中の状況というものが、委員も大変詳しいわけですが、文化的なものに対して社会全体が非常に関心を持ってきたような時代かなと私も受けとめておりますので、今後いろいろな問題点というか案件のことも含めて、検討していかなければならないという段階が来るのかなという感じは受けております。

矢野分科員 この麻布山水図についてもう一つ二つ伺いますが、これは実は正倉院にそもそもあったものじゃないのかという議論があります。ちまたでは、いわゆる流出という言葉を使われていますが、ありていに言えば、正倉院から無断で持ち出された作品の一つじゃないのかな、こういう議論がございます。

 しかしながら、文化庁の方は、明治四十一年の正倉院御物目録に麻布山水図二張りの記録があり、今も二張りが現に残されておるから流出はしていない、こういう御説明を私はいただきました。

 しかし、一方で、奈良国立博物館の仏教美術資料研究センターの中島博資料管理研究室長、当時ですね、この人が正倉院で所蔵されておる同じ作品を鑑定した論文があります。これは正倉院年報というちゃんとした雑誌ですが、この中に、正倉院にある二張りと一連のものとされる断片がちまたに伝わっている、もとは二張りにとどまらなかったと考えられるが、断片については調査が行き届かないということとあわせて、世の中に流通しておる四点は正倉院のものと一連と認めてよいかと思っておると書いておられます。これは平成七年です。

 一方、平成十九年、これは九州国立博物館が買った麻布山水図を鑑定した論文、九州国立博物館購入のものを指して、これと一連とみなされる完形品が正倉院に二点収蔵されておりと、一連という言葉で、この一連という言葉をどう見るかというのはあるんですけれども、極めて、正倉院から出たんじゃないかということを文脈でにおわせた文章の書き方になっております。

 そこで、要するに、買取協議会を含めて、九州国立博物館ではこの麻布山水図を買うときに、正倉院の所蔵品と一連のものかどうか、あるいは正倉院から過去に流出した品なのかどうか、そういった点について検討、考慮したのかどうか、教えてください。

高塩政府参考人 九州国立博物館では、この麻布山水図の購入に当たりまして、現在正倉院に所蔵されております麻布山水図と比較検討したというふうに伺っております。

 その結果、買取協議会に出されました文化財の買取説明書というのがございますけれども、その内容をお読みいたしますと、もともと東大寺東南院伝来で、明治初めに明治天皇に献上され、以後、正倉院南倉で保管されている麻布山水図二張に酷似する本図は、奈良時代の絵画と考えられ、極めて貴重であるという物の言い方をいたしております。

 この麻布山水図につきましては、正倉院に所蔵されております二点は、先生からもお話ございましたように、これは奈良時代に東大寺に献上された聖武天皇の遺愛の宝物でありますいわゆる正倉院御物ではなく、明治初年に明治天皇に東大寺から献上されたものでございまして、それとは違うということ。それから、正倉院の二点につきましては、九州国立博物館のものよりも非常に大きなものだということでございます。

 したがいまして、九州国立博物館においては、この購入したものについては、どの時点かははっきりしませんが、東大寺の方からいずれかの時点で流出した可能性が高いものと考えたというふうに聞いておりまして、正倉院からいわゆる流出したものではないというふうに考えているということでございます。

矢野分科員 しかしながら、文化庁文化財部美術学芸課、平成二十一年二月十三日の私がいただいたペーパーでは、この九州国立博物館への売り主、都内の美術商にさらに売った益田さんという人、これは三井財閥の総帥だった人ですけれども、益田孝氏が大正十五年に展観を行った際には、資料に正倉院伝来と記載されているが、そのことについては九州国立博物館は当時認識していなかった、こういうことが文化庁のこの資料に出ていますけれども、これはどういうふうに説明されますか。

高塩政府参考人 今先生御質問があったとおりでございまして、私ども、九州国立博物館に確認したところ、益田孝氏が大正十五年に行った展覧会のことについては購入した時点では知らなかったということを聞いているところでございます。

矢野分科員 それでは、昭和五十八年、畠山記念館での益田鈍翁遺愛名品展、ここにも九州国立博物館が買われたのと全く同じ麻布山水図、同一の品物が展示されておりますが、この益田鈍翁遺愛名品展での日本経済新聞社から出版をされておる目録、カタログの出品解説にも、正倉院伝来と書いています。これはどう説明されますか。

高塩政府参考人 その正倉院伝来という意味をどういうふうにとらえるかだと思っております。

 先生は一連というお言葉も使われましたけれども、また、九州国立博物館では正倉院のものに非常に酷似しておるというふうに言っているところでございまして、いずれも、今正倉院にある二張とかかわりの極めて深いものであるということは認識をしているわけでございますけれども、それがどういった経緯でその二張から分かれて現在のような形になったかというところは必ずしも明確ではないということで、所蔵者によりましては伝来と言い、また、学者によりましては一連という言葉を使い、九州国立博物館では酷似しておるという言葉を使っているものだというふうに理解しております。

矢野分科員 ですから、私は何度も言うように、ちゃんと議論したなら議事録を残して、後で後追いができるような形で記録をやはり残していただかないと、多くの美術ファン、あるいは美術の愛好家というのが、あれはやはり正倉院から盗まれたものを国が国費で買い戻しているんじゃないのか、そういうようなあらぬ疑念といいますか、そういううわさが立つということも私はあると思います。

 そこで、一般論で伺いますが、そういう盗まれた御物あるいは正倉院の宝物というものは、完全に盗まれたということは断定はできないけれども、その可能性や蓋然性が高い由来というか来歴のあるものについて、国があえて国費で買い上げる、買い求めるということは、過去には古文書類ではあったと思います。しかし、こういう器物、こういったちゃんとした形のあるものを買うということについて、一般論です、これは別に問題はないんでしょうか。

高塩政府参考人 文化庁及び国立博物館におきましては、文化財の海外流出、それから滅失、散逸のおそれがある場合や、博物館における展示、公開が必要な場合など、文化財の保存及び活用の観点から買い取りを行っているところでございます。

 実際の買い取りに当たりましては、その買い取ろうとする文化財の来歴やその内容をよく十分吟味した上、買っておるわけでございますけれども、こうしたことは、私どもも、十分気をつけながら引き続き行ってまいりたいというふうに思っております。

矢野分科員 ありがとうございました。

 では、次の質問に参ります。

 九州国立博物館では、過去に、業者から購入してくれませんかと持ち込まれた美術品の中で、正倉院から流出したとされる物品、あるいは正倉院に同種のものが所蔵されている物品の調査をされた事実があると思います。もっと簡単に言いますと、貝殻の細工を施した八角形の木箱ですが、この木箱の調査における九州国立博物館での鑑定方法、そして、購入に至らなかった経緯を教えてください。

高塩政府参考人 お尋ねの件は、八角形のタイマイ螺鈿八角箱の件だと思います。

 この文化財につきましては、九州国立博物館の前に文化庁の方に所有者の方からお話がございまして、文化庁の方から九州国立博物館の方にその調査を依頼したという経緯がございまして、調査の方法としては、この文化財を傷つけるわけにはいきませんので、CTスキャンやX線撮影等を使いましてその内容を調べたということでございます。

 そうしまして、その際に、その螺鈿箱の制作の技法や修理の有無について確認をいたしました。その確認の結果、九州国立博物館では、その螺鈿の箱に竹のくぎを使っているということでございますけれども、これについては、正倉院作品では見られないということ、また、板材の使用方法や材質構造がやはり正倉院のものとは異なっているというようなことがわかったということでございます。

 そうした結果を踏まえまして、正倉院事務所の関係者など専門家も交えまして総合的な検討を行った結果、これは正倉院時代のものではないということでございまして、正倉院にあるものにつきましても、明治の時代に大きな修理が行われております。その時代に相当の改変が行われているということでございまして、総合的に判断した結果、正倉院時代のものではないという判断のもとに、購入には至らなかったというふうに承知しております。

矢野分科員 先ほど大臣から、やはり協議会の議事録の作成や公開については、その作品の評価にストレートにつながるので、なかなかちょっと今すぐにはというようなお話だったと思います。

 例えば、今の次長のお話のあった八角形の箱ですが、これと全く同一かどうかは私も断定はできませんが、同じようなものが、つい先日、香港のオークションに出品をされました。落札予想価格は五億円以上だと言われていました。もしこの香港のオークションに出たものが、実は、九州国立博物館で、先ほど次長が御説明になった、これは模造品かな、極めてオリジナリティーに乏しい、国で買い上げる価値のないものだという判定の下ったものであったとしたならば、これは買われた方は大変な損害になったと思うんですね。九州国立博物館だけじゃないでしょう、国立博物館が買わなかったものが今度は民間に流通するというときに、それを博物館の検査結果、調査結果を知らない人がだまされて買うというようなことだって私はあり得ると思うんですね。

 ですから、そういう意味で、先般衆議院を通過しましたけれども、消費者庁、消費者の保護という観点、あるいは公益通報という観点からも、こういう文化財、文化庁が購入に至らなかったものでこれは後々大きな問題になるなというようなものは公表をする、あわせて、その議事録も、ついでの部分ですけれども、ぜひつくって公表するというようなことを私はお願いしたいんですが、いかがですか。

高塩政府参考人 先生のお話のとおり、文化財の購入につきましては、調査等の結果、買い取りに至らないということがあるわけでございますけれども、その理由や経緯につきまして公表ということになりますと、その後のその文化財につきましての市場の取引というものに影響を与えることがある。また、そのことは、当然その所有者の利益を害するということがございまして、確かに、公益通報というお話は先生から承りましてわかるわけでございますけれども、買い取りに至らなかった経緯、理由等を積極的に公表するということはやはり慎重に考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。

矢野分科員 いや、私は、それはちょっと納得いかないんですね。

 というのは、国がこれはよくないものだと検査してわかった、その検査だって国の税金で検査しているわけですね。それで検査して、これはよくないものだとわかって、じゃ、これは買いませんよと言って、それが今度、民間のマーケットに出て売買するのは国は関係ないです、それは商売の邪魔になりますからと言うのは、私はそれはちょっと本末転倒しているんじゃないかなと。むしろ、こんなものは流通させてはいけないということで、国が積極的に情報を公開するということぐらいするのが当たり前だと思うんですけれども、この点。

 実は最後に文化庁を文化省にしたらどうですかという質問をしようと思ったんですが、もう時間がないということなので、今の点についてだけ、大臣、ちょっと前向きに何かお考えがあったら教えてください。

塩谷国務大臣 そういう評価といいますか、国の、ある程度の問題であるというような評価がされて、それは税金で行った調査だということを公表すべきだということだと思いますが、ちょっと私も専門的にはわからないんだけれども、そういったことが、一般に、例えば海外の中でも評価されているのかどうなのか、それがこういった美術品とか芸術品の世界で当たり前になっているのかどうかということも含めて判断しなければならないだろうと思っております。

 しかしながら、今後、私は、時代の流れとしては、先ほど申し上げましたように、大変関心が高いところになりつつあると思っておりますので、そういうことも検討して、何らかの形で示せるような、しかも透明性を確保するようなことは必要なのかなと感じております。

 文化省のことも、まあ、それについては、いわゆる何をすべきかということをまずは議論して、その中で役所の役割としてこうだということで、省にするべきだという話が出てくれば、またその時点で検討しなければならぬと考えております。

矢野分科員 ありがとうございました。

 透明性の確保という観点から、そして、十億円、二十億円、五十億円の美術品を買うのに協議会で議事録すらつくられない体制というのは、やはり私はちょっと考え直すべきだと思いますので、改めてお願いをして質問を終わります。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。与謝野財務大臣。

与謝野国務大臣 平成十九年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十二兆四千二百五十五億円余となっております。

 このうち、租税等は五十一兆百八十二億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十二兆一千九百十一億円余でありまして、支出済み歳出額は二十兆七千八百四十九億円余、翌年度繰越額は六十一億円余でありまして、差し引き、不用額は一兆四千億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十九兆二千九百四億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百五兆一千百二十七億円余、支出済み歳出額は百七十六兆七千七百七十七億円余であります。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は千七百十六億円余、支出済み額は一千二百七十六億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、農林漁業金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十九年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院鵜飼第一局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十九年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項七件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号三〇号及び同三一号は、租税の徴収等が適正でなかったものであります。

 同三二号は、調達数量が適切でないものであります。

 同三三号から三六号までの四件は、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、公務員宿舎赤羽住宅(仮称)整備事業等契約における消費税の取り扱いに関して適宜の処置を要求いたしたもの、その二は、自動車保有関係手続のワンストップサービスの実施状況等に関して意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却または税額控除の適用に関するもの、その二は、合同宿舎における駐車場の使用料の徴収に関するものであります。

 これら二件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十八年度決算検査報告に掲記いたしました独立行政法人国立印刷局における土地及び土地譲渡収入などによる資金について意見を表示した事項につきまして、その結果を掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 次に、会計検査院真島第五局長。

真島会計検査院当局者 平成十九年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。

 これは、統合して株式会社日本政策金融公庫となる三公庫における職員住宅の管理運営に関するものであります。

 平成二十年十月一日に統合して株式会社日本政策金融公庫となりました国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫は、それぞれの住宅規則等に基づき、所有住宅または借り上げ住宅を職員住宅として、業務上必要と認められる職員に対して貸与しておりました。しかし、職員住宅の管理運営及びその必要性の検討が各公庫によりそれぞれ別に行われていることなどのため、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫の所有住宅に一年以上の空き室があるにもかかわらず、別途、借り上げ住宅を職員に貸与している事態が見受けられました。したがいまして、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫において、所有住宅に空き室がある場合は、当該所有住宅への入居を最優先することとして、借り上げ住宅の速やかな削減を図り、また、各公庫において、職員住宅の入居状況等の情報を共有するなどして各公庫が現在保有する所有住宅を全体で有効活用することを検討して、統合の効果の発現を期するよう適宜の処置及び是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、平成十九年度日本政策投資銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 次に、平成十九年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。与謝野財務大臣。

与謝野国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じる等の対応をしておりますが、今後一層事務の改善に努めるとともに、綱紀粛正の徹底を図りたいと存じます。

横光主査 次に、安居株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁。

安居政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして御説明申し上げます。

 旧国民生活金融公庫において、統合前に他の二公庫との職員住宅の相互利用につきまして処置要求を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾でございます。

 御指摘の点につきましては、今回の統合後、日本政策金融公庫全体としての観点から、各事業本部間の職員住宅の相互利用を実施しており、今後とも適切な運営に努めてまいる所存でございます。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)分科員 民主党の長島昭久です。

 与謝野大臣、三大臣兼務、まことに御苦労さまでございます。

 きょうは、もちろん財務省所管の問題についてお伺いするわけですが、実は教育問題でございまして、まず冒頭に、文部大臣もお務めになられた与謝野大臣に、現下の国の情勢下において、これは通告しておりませんが、大臣なりに子供たちの教育の問題というものをどう御認識しておられるか、少し、大臣の教育論の一端でも披瀝していただければと思います。

与謝野国務大臣 人間は、他の動物に比べましてすぐれた脳を持って生まれてきていると思っております。ただし、他の動物の場合は、もともと生まれたときから本能に刻み込まれたいろいろな知識というものがあるんですが、人間は、脳は大変大きく生まれるんですが、全くの白紙でございまして、生まれた後に何をこれに書き込むかということによって人の一生というものは決まると思っておりまして、そういう意味では、教育の重大性というのは極めて大きいわけでして、教育の良否によってその方の人生もまた決まってしまう可能性があります。

 そういう意味では、人間にとりまして教育というのは、本能には書かれていないことを先人たちの経験に基づいてしっかりと教えていくということでして、勉強という言葉は、何か子供が自由に勉強するかしないかということを決めるというような風潮が一時ありましたけれども、勉強というのは、字のごとし、勉むるを強いるということで、やはり早期の段階においては、強いるという、強制という、強制的に教えるという部分はあるんだろうと思っております。

 一定の基礎的な段階を過ぎた後は、これはそれぞれ、人が持っている自由なる意思と自由なる能力でやるわけですけれども、特に義務教育、高校ぐらいまではやはり勉強しろといって勉強させないと、人間には勉強以外にもっと楽しいことがいっぱいあるので、そこのところは、勉強させる、勉強を命ずるという部分がないと教育というのは成り立たないのだろうと思っております。

長島(昭)分科員 さすが与謝野大臣、大変本質的なお話をしていただいたと思います。

 脳に情報を刻み込んでいくという、このことが大切だというお話と、そして、場合によっては強いることも必要なんだと、義務教育の、公教育の非常に大切さを説いていただいたというふうに思います。

 きょうは、実は、その義務教育、公教育の学びやをどうしていくかという、学校施設にかかわる問題について少しお尋ねをしたいと思っております。これは、学校施設への国有財産の貸付制度についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 御案内のとおり、学校施設というのは、その整備、運営というのは学校設置者としての基礎自治体に任されております。戦後建てられた建物は、今耐震化工事を一生懸命やっているわけですけれども、もう耐用年数を超えた施設がたくさんあって、ちょうど今増改築の時期に差しかかって、かれこれ十年ぐらいたっているんでしょうか、そういう状況の中で、今般の大変厳しい財政状況、これは地方自治体を直撃しております。

 私どもの地元の、例えば日野市なんかは、世界に冠たる企業がたくさんあるんですね、集積されていて。富士電機、東芝、日野自動車、コニカミノルタ、こういった企業が。しかし、軒並み減収をしておりまして、地方市民税が、ピーク時には三十億以上入っていたんですけれども、今般のリーマン・ショック以降、十億を切る、こういう状況で、これは、とりもなおさず、学校施設を整備していこうとするそういう予算に直撃を加えている、こういう状況でございます。

 そういう中で、私は非常に不思議な制度に実は気がつきまして、これは、今、財務省が全国の国有地を学校施設に貸し付けているんですね。このことについてきょうはお伺いしたいんですが、まず総論として、全国の国有地、このうち、貸し付けによって税外収入を得ている不動産の件数及び金額、教えていただけますか。

佐々木政府参考人 税外収入に占めます国有地の貸付件数及び貸付金額でございますけれども、十八年度末におきまして、国有地を貸し付けております件数は三万五千四百五十九件、貸付料の総額は百八十七億円となっております。

長島(昭)分科員 このうち、学校施設として貸し付けている件数及び金額は幾らですか。

佐々木政府参考人 平成十八年度末におきまして、幼稚園を除く学校教育法第一条に規定する学校の用地として国有地を貸し付けております件数は六百四十五件でございます。貸付料の金額は二十九億円でございます。

長島(昭)分科員 そのうち、東京都に対する貸付金額は幾らでしょう。

佐々木政府参考人 同じく平成十八年度末の、幼稚園を除く学校教育法一条に規定する学校の用地として東京都内で国有地を貸し付けております件数は百三十九件でございます。貸付料の金額は約十億円となっております。

長島(昭)分科員 そうしますと、全国の学校施設への貸付金額の約三分の一を東京が負担をしているということになります。

 では、ちなみに、私の地元であります立川市、昭島市、日野市、それぞれいかがでしょう。

佐々木政府参考人 まず、件数でございますけれども、立川市に所在しております貸し付けの件数が四件、昭島市に所在のものが四件、日野市に所在しておりますものが三件でございます。

 貸付料の金額は、立川市が四件で五百十七万円、昭島市が同じく四件の合計で八千三百七十八万円、及び日野市が三件で四百万円となっております。

長島(昭)分科員 先ほど、東京都で約十億円と。昭島市一市だけで、今おっしゃっていただきました八千三百七十八万円。昭島市だけで一割弱貸付料を負担している、こういう状況でございます。

 この貸付料、つまり、学校施設が国有地の上にたまたまあった、そのことによってそれを貸し付けているわけですけれども、その賃料を国が取る根拠となる法律は何でしょう。

佐々木政府参考人 貸付料の徴収を行う根拠でございますけれども、財政法第九条第一項がございまして、国の財産は、法律に基づく場合を除くほか、適正な対価なくしてこれを貸し付けてはならないと規定をいたしております。この規定に基づきまして、国有財産の貸し付けにつきましても、適正な対価を貸付料として徴収しているものでございます。

長島(昭)分科員 今、財政法の説明がございました。これで、あらゆる施設について、こういう「適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」という、この財政法の精神が貫徹されていれば、私も何もきょうここでわざわざ質問に立つこともなかったのでありますが、実は、無償貸し付けという制度が一方でありまして、国有地の中で無償貸し付けにしている施設はどんなものがありますか。

佐々木政府参考人 先ほど、財政法第九条第一項で「法律に基く場合を除く外、」というふうに規定されておりまして、無償貸し付けは法律に規定をされております。それは、国有財産法第二十二条あるいは国有財産特別措置法第二条等において対象が定められておりますが、例えば国有財産特別措置法第二条におきましては、国有財産の無償貸し付けができるという施設といたしまして、生活保護法に規定する救護施設等の生活保護施設、障害者自立支援法に規定する障害者自立支援施設等の施設を定めております。

    〔主査退席、寺田(稔)主査代理着席〕

長島(昭)分科員 いや、もう少し細かく言ってください。

 児童福祉法あるいは社会福祉法人、つまり福祉施設、総体的に言えば、福祉施設については無償貸し付け、しかし、学校、教育施設については有償の貸し付け。なぜ教育施設には有償で福祉施設は無償なのか、御説明いただけますか。

佐々木政府参考人 先ほど、社会福祉施設については無償であり、教育施設については有償であるということでございますが、原則そのようでございますけれども、教育施設につきましても、災害の被害を受けた場所とか、児童が急増している場所等の特別の事情のある場所につきましては無償貸し付けができることとなっております。

 そういう違いがなぜ生じているかということでございますけれども、社会福祉施設の無償貸し付けにつきましては、御存じのとおり、昭和三十三年の、社会福祉事業等の施設に関する措置法という、議員立法でございますが、ここで初めて例外的に無償貸し付けが認められたところでございます。その後、昭和四十八年の国有財産特別措置法の改正におきまして、これらの施設を緊急に整備する必要があるという社会的要請、当時、やはり高齢化などを展望いたしまして、寝たきりの御老人とか障害者の施設などの要請が極めて高い時期でございまして、そういう社会的要請にかんがみまして、同法の内容を国有財産措置法に吸収いたしたものでございます。

 他方、一般の学校施設につきましては、このように原則は有償であり、無償貸し付けが例外的な制度であるということにかんがみまして、減額貸し付けの対象といたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、一部、災害とかあるいは児童急増地域などにつきましては無償貸し付けが行われているところでございます。

長島(昭)分科員 今、学校については例外的に無償を認めている場合もあるし、減額貸し付けだ、こういう御説明です。しかし、例えばさっきの昭島市、これは八千万円以上も毎年毎年貸付料を取られているわけでありまして、このことによってなかなか各学校の施設整備がその分進んでいかない、こういう問題も実は指摘をされているんです。

 大臣、ぜひお聞きいただきたいのは、私も今回、ずっとこの件で地元の学校を回りました。例えば、今ICT教育ということで、コンピュータールームをつくる、コンピューターの部屋をつくらなきゃいけない、しかし増改築はなかなか難しい、こういうことで、例えば、図書館のいすと机を全部取っ払って、隣にコンピューターのスペースをつくって無理やりパソコンを置いておくわけです。そうすると、子供たちがこんな斜めになってパソコンを打っているんですよ。こういう状況。なぜこんな厳しい環境なんですかと聞くと、学校を修理したり、そういうお金が全然市の方から来ないと。

 つまり、さっき大臣がおっしゃったような大変重要な学びの現場が、こういう貸付制度によって、福祉施設は一方で無償なのに、ただ議員立法一本ないという、それだけの理由でしか私にはどうしても聞こえないんですけれども、こういうことで本当に子供たちの教育の現場が今圧迫を受けているという、この点だけぜひまず御認識をいただきたい、このように思います。

 加えて、私もびっくりしたんですが、まだあるんですね。まだ取られるんですよ。この貸付料とは別に、たまたま国有地の上に学校が建っているというだけの理由で、学校施設の増改築の際にも増改築承諾料というのを国から取られるんですね。これは自治体が一々納めるようになっていますけれども、これはどういったものか、どういう制度なのか、御説明いただけますか。

佐々木政府参考人 増改築承諾料と申しますのは、賃貸借契約の内容を増改築によって変更する場合に承諾をいただく、承諾を申し入れてもらうということの中で増改築承諾料をいただくという制度でございますけれども、これはもともと根拠は、先ほどの財政法第九条第一項の適正対価ということでございますが、この趣旨を踏まえて、民間取引におきまして、その当該地域においてもそういう増改築承諾料が取られるような慣行がございました場合には、民間と同等の承諾料を徴求することとしているものでございます。

長島(昭)分科員 ここに新聞記事をちょっと持ってきたんですが、「国有地の小中学校、改築足踏み」「地主への」地主というのは国ですよ、「地主への「承諾料」重荷」こういう記事があるぐらい、賃料を払い、しかも増改築をする際には承諾料も払わされる、これは地方財政にとっては非常に厳しい足かせになっているんですね。

 それではお伺いいたしますが、平成十七年度で、学校施設として貸し付けている国有財産における増改築の件数及び金額、これは幾らになりますか。

佐々木政府参考人 平成十七年度におきまして、増改築の承諾を行った件数は全国で十八件ございます。そのうち増改築承諾料をいただいておりますのが一件でございまして、その金額は一億一千四百三十二万円でございます。

長島(昭)分科員 十八件増改築があって、そのうちたった一件だけ承諾料がかかった。それ以外の十七件がかからなかった理由は何ですか。

佐々木政府参考人 先ほど増改築承諾料の御説明を申し上げましたときに、地域において、民間の慣行として承諾料をいただく慣行があるかどうかということを申し上げましたが、いただいておりませんところは、そういう増改築承諾料の授受の慣行がなかったこと等によるものでございます。

長島(昭)分科員 では、たった一件あった一億一千四百三十二万一千八百円、これを承諾料として徴収した、これは具体的にはどこでしょうか。どの学校でしょうか。

佐々木政府参考人 先ほど増改築承諾料を徴収しました一件といいますのは、東京都新宿区所在の新宿区西早稲田中学校でございます。

長島(昭)分科員 今大臣お気づきになったとおりでありまして、大臣のおひざ元でございます。これは新宿区の西早稲田中学校。

 きょう文科省もお見えいただいていると思いますが、なぜこの西早稲田中学校だけ承諾料を取られたんでしょう。

岡政府参考人 取られた理由というよりも、どんな事業をやったのかをまず御説明したいと思います。

 西早稲田中学校は、平成十七年四月に、旧戸塚第一中学校と旧戸山中学校が統合し設置された学校でございます。当該事業は、国有財産である旧戸塚第一中学校の敷地において統合校の校舎等を整備したものでございます。整備自体は平成十八年度から行われた事業でございますが、その前年の平成十七年度に、先生のお話にありました増改築承諾料を納付したと伺っております。

 なお、新校舎につきましては、平成二十年二月に完成しまして、四月から供用を開始しているところでございます。

長島(昭)分科員 これは、大臣、私は別に当てつけてこういう質問をしているわけじゃないんですが、大臣のおひざ元でこういうことが起こっている。るる今このやりとりをお聞きいただいたと思うんですけれども、一方で、保育所を初め福祉施設については、それはもう押しなべて無償。しかし、学校施設については、避難場所だったり耐震工事とかいうことで多少のお目こぼしはあるけれども、基本的には、今、西早稲田中学校の分を取られたように、一億円以上、平成十七年度だけでこれは徴収されているわけですね。

 大臣、率直に、福祉施設と教育施設、このように、同じ国有地の上に建っている施設で、教育と福祉、この二つの間に原則差異を設けるというこの今の制度趣旨については、どんな御所感をお持ちでしょうか。

与謝野国務大臣 学校施設と社会福祉施設を比べるのではなくて、各県、各市町村にあるすべての学校の施設同士をやはり比較する必要があるのではないかと思います。そういうときに、やはり財政法上は、国の財産を貸す場合には有償である。

 福祉施設のような場合、全国に広く同じような施設が点在しているものは無償にするということは、公平性の観点からも可能でありますけれども、学校の場合は非常に例外的になっている。そういう意味では、むしろ無償で貸し付けると、その市町村だけに有利な取り扱いをするということになるわけでして、やはり学校の教育予算というのは、別の形で市町村が用意し、また国も交付税という形で支援する、そういう全体の中でバランスがとれるわけでして、ただ国有地を貸した借料を取るのはどうかという観点からだけでは議論が進まないんじゃないかなという気がいたします。

長島(昭)分科員 大臣、それは私も事務方の方から実は同じような説明を受けたんです。それでは私はとても納得できないんです。今大臣おっしゃった、福祉施設の場合は全国に広く同様の施設があると。学校だってそうじゃないですか。公益性が学校にないというわけではないですね。ですから、そこをなかなか合理的に説明し尽くすのは私は難しいと実は思っているんです。

 もう一回最後に大臣にお伺いいたしますので、もう少しやりとりを聞いていただきたいと思います。ぜひ役人の設定した枠からはみ出た答弁をしていただきたいというふうに思うんです。

 これは、実は別に財務省の問題じゃないんです。本来は文部科学省がしっかりやっていただかなきゃいけない問題なんです。国有財産特別措置法、先ほど例外を設けていた規定でありますが、その最終的な改正が去年の十二月三日に行われている。この法改正の際には、何かつけ加える点がありませんかということで、各省に財務省の方から照会をするという慣例があるというふうに聞いておりますが、文部科学省はこういった問題に対して、文部科学省として、実は国有財産特別措置法の中でほかの福祉施設のように優遇してもらえないだろうかというような、そういう問題提起は行っているんでしょうか。

岡政府参考人 お答えいたします。

 国有財産特別法は、昨年、児童福祉法等の一部改正時に、当該改正法の附則において所要の規定の整備を行っているものでございます。このときの改正は、児童福祉法等の一部改正に伴う規定整備にとどまるものであり、無償貸し付けの制度を見直すものではなかったため、文部科学省としましては特段の問題提起は行わなかったところでございます。

長島(昭)分科員 文部科学省がそういう姿勢だと困るんですよ。そもそも、私が最初にこの問題を提起して文部科学省に連絡をしたところ、担当の方は何と言ったと思いますか。うちの所管じゃない、財務省の案件だ、こういう言い方をされたんですよ。だけれども、先ほど来私が申し上げているように、まさにこれは学校の施設、子供たちの学びの中心的な存在であるところの学校施設の施設整備にかかわる問題ですよ。ですから、これはもう紛れもなく文部科学省の所管でしょう。

 しかも、去年の改正はマイナーな改正だったからというような御答弁でしたけれども、これは、毎年のように「公立学校施設等の整備に関する要望」というのが全国市長会から上がっているじゃないですか。それから、全国都市教育長協議会からも、学校の増改築承諾料について、特例法では無償の施設もあるため、義務教育諸学校でもその対象になるように財務省において改善を確立してほしい、義務教育施設用地内の国有地の無償払い下げの制度化及び恒久的な無償貸付制度の創設をしてほしい、これは毎年のように文部科学省に要望が行っているんじゃないんですか。

 私は、これは財務省だけの問題ではなくて、本当は、地主である財務省と、所管である文部科学省がしっかり議論をして詰めていっていただかなければならない、そういう問題だと思いますよ。

 これは、与謝野大臣、例えば与謝野大臣のお孫さんがつくった図工の作品が、学校の改修がおくれて、雨漏りの中でべちゃべちゃになっちゃって原形をとどめないようになった、こういう事例は、今、現に全国の小学校の中で起こっているんですよ。

 そういうことを頭に置いていただいて、ぜひ最後の御答弁をいただきたいんですけれども、今るる私が御説明をさせていただいたように、福祉施設と教育施設というものを分けて、そして、教育施設については原則としては有償化、いろいろな条件、例えば避難所とかそういう条件がついたときのみ無償化をしていく、こういうことでは、全国市長会の要望書にもあるように、先ほどのお地元の西早稲田中学校の件もあるように、なかなか学校施設の整備が進まない、むしろ後退してしまっている、こういう現状があるわけです。

 先ほど見たように、年間の歳入、八十数兆円の歳入に比べたら、三十億ですから、実はそんなに大きな額ではないんですね。私は、国有財産というのは、別に政府の財産でも何でもない、国民の財産だというふうに思いますから、国民の財産であるならば、公教育の振興、公教育を国がしっかり守っていく、そういう観点で、ぜひ財務大臣から、この制度を改善する積極的な御答弁をいただきたい。

 最後に一つ、数字を申し上げます。

 ただでさえ、日本の教育機関に対する公財政支出、GDP比でOECDの平均を下回っている。OECDの中で一番低いと言われているんです。日本は三・四%。平均が五%です。多いところでは、例えばフィンランドは五・九%、フランス五・六%、アメリカでさえと言ったら語弊があるかもしれないが四・八%、お隣の韓国も四・三%。明らかに公財政支出は少ないんですよ。

 こういう状況の中で、今必死に学校の現場で子供たちを育てている。少しでもいい施設にしてあげたい、先ほど最初に大臣がおっしゃったように、少しでも、最善の環境の中で子供たちに勉強を強いていくような、そういう義務教育の重要性にかんがみて、大臣、どうでしょうか、この問題、もう一段お考えいただいて、学校施設についても無償化あるいは無償貸し付けの制度を拡充していく。

 一気に全部無償にしろとは言いません。何かいろいろな理由をつけて、場合によっては、私たち、議員立法でやってもいいと思っています。先ほど御紹介あったように、三十三年に議員立法によって福祉施設については無償化するということが決まった。そんなことを含めて、ぜひ積極的な御答弁をいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 これはむしろ、市町村の責任でどうするかということが一番大事なところだろうと私は思います。

 これでも国は、その土地の時価よりもはるかに低い評価で賃料をいただいているわけでして、既に貸付額が相当低い水準になっていることによって、相当な教育的な配慮をしていると私は思っております。

 しかし、なお先生が問題意識を持っておられるようなので、文科省とも、東京都あるいはその他の関係者とも、どういう方向で物を考えるのか、よく相談をしてみたいと思っております。

長島(昭)分科員 ありがとうございました。

寺田(稔)主査代理 これにて長島昭久君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡部篤君。

渡部(篤)分科員 自由民主党の渡部篤であります。

 与謝野大臣に、国際経済の秩序、金融資本主義について思いのたけというか自分の思いを訴えたいと思いますから、ぜひよろしくお願いいたします。

 昨年の金融危機勃発以来、世界じゅうで金融資本主義にかわる新たな世界経済秩序を構築すべきであるという認識が広がりました。特に昨年秋ごろ、フランスのサルコジ大統領などがニューブレトンウッズ体制の必要性を訴えるなどの動きがありました。主要各国の首脳が一堂に会するG20は、まさにニューブレトンウッズ体制を構築していく場でなければならない、新たな世界経済秩序の理念を問わなければならない、このように思います。

 そこで、与謝野大臣にお伺いします。

 今月初めに開催されたG20では、財政政策の協調や金融監督規制の強化など、重要な点で合意が見られたようですが、より大局的な観点から、新たな世界経済秩序、ニューブレトンウッズ体制がどうあるべきかについては論じられたのでしょうか。お伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 お答え申し上げます。

 今回の首脳会合においては、一つは、危機の原因となった金融市場の規制、監督のあり方、第二は、世界的な需要と雇用の回復に向けた各国のマクロ経済政策のあり方、第三に、国際金融機関等による新興国、途上国の支援策、これらに議論が集中いたしまして、先生が今御質問の中にありましたニューブレトンウッズ体制、すなわち新たな世界経済秩序のあり方が直接議論をされたわけではございません。

渡部(篤)分科員 江戸時代中期の思想家である石田梅岩は、次のように教えたと言います。「二重の利を取り、二升の似をし、蜜々の礼を請くることなどは危うして、浮かめる雲のごとくに思うべし。」これは、暴利をむさぼるような商法を行うことを厳しく戒めた言葉です。現代のヘッジファンドなどは、まさに「危うして、浮かめる雲のごとし」と言うべきでしょう。

 我が国は、梅岩以来の伝統に立ち返り、虚業の金融資本主義ではなく、実業中心の日本型の資本主義を再興すべきだと思います。そして、それを金融資本主義にかわる新たな資本主義のモデルとして、世界に対し積極的に示すべきだと思います。日本が自立した国家として、みずからつくっていこうとすべきものです。我が国は、金融資本主義にかわる新たな理念を掲げつつ、国際ルールづくりを積極的に主導していくべきと考えます。

 そこで、大臣にお伺いします。

 金融資本主義にかえて、どのような経済システムを目指すべきか、また、そのためには、国際金融のルールづくりをどのように主導し、どのように発言力を行使していこうとするのか、お伺いいたします。

与謝野国務大臣 二つに分けてお答えを申し上げます。

 一つは、まず、規制、監督の件でございますが、金融の規制、監督について、我が国としては、これまでの危機の反省に立ち、再び危機を起こさぬよう、国際的な規制、監督をよりきめ細かく実施していくべきであると考えておりまして、こうした考え方のもと、今回の首脳会合では、我が国として、こうした主張をし、その結果、ヘッジファンドに対する規制、監督、格付会社への登録制の導入、タックスヘイブンを含む非協力的な国・地域に対する措置等に合意するなど、具体的な議論の進捗があったと思っております。

 今般の合意を第一歩として、国際的な規制、監督をより細かく実施するための作業を強化すべきであると考えており、引き続き、我が国として、危機後の国際金融秩序の安定等の議論に積極的に参画してまいりたいと思います。

 また、金融資本にかわる、どういう経済のあり方を考えるのかということでございますが、やはり金が金を生むという思想で国が支えられるわけがありません。

 昨年の三月ですが、まだ私が閣僚になる前に、ある金融機関の長とお話をしました。その方がおっしゃるには、実は私はこういう金融危機に世界が、日本が直面をして、これは大変な教訓を我々に与えると実は思っているんです。それは、自分は長い間金融の世界に身を置いてきたけれども、金融大国などというのはお笑いぐさである。やはり、日本人は愚直に物づくりやサービスづくりに汗をかかないと国としては成り立っていかないし、また日本の経済も成り立たない。金融大国などという考え方は捨てるべきものであって、やはり日本は物づくり大国を目指す、この基本に立ち返るときが来た。こういうことを金融機関におられる方ですら考えているわけでございます。

渡部(篤)分科員 ギリシャの哲学者、アリストテレスが、金が金を生むようなことはあり得ない、金は繁殖能力がない、大臣が言われたようなことをまさに古代ギリシャの哲学者が言っています。

 それから、先般のG20では、各国が財政出動を行い、総額五兆ドルの景気刺激策を行うこととされました。つい最近まで我が国は、多くの人たちが、市場関係者も、マスコミも、官僚の人たちも、財政政策は意味がないと声高に主張していました。しかし、今ではそういう声はほとんど聞かれません。ただ、最近では、財政政策無用論のかわりに、従来型の景気対策ではなく、環境への投資を、グリーン・ニューディールをという声を聞きます。

 もちろん、環境やエネルギーへの投資は重要でしょう。しかし、従来型の公共投資は本当に不要なのでしょうか。私のふるさと、会津を初めとして、日本列島には急峻な山が多く、自然災害が頻発しています。しかも、昨今の気候変動によりゲリラ豪雨のような被害もふえてきています。こうした中で、災害防止のインフラは本当に十分なのでしょうか。

 また、地方経済の疲弊が言われて久しいのですが、地方の経済や生活を支えるのに必要なインフラは十分なのでしょうか。さらに、都市圏ですら、例えば環状道路はすべて完成しているのでしょうか。

 国家としての必要なナショナルミニマムすら十分でないのに、従来型の公共事業は必要でないという議論がありますが、国土交通省はどのようにお考えなのか、お伺いいたします。

内田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、公共事業による着実な社会資本の整備、これは極めて重要なものと考えております。例えば、地域の底力の発揮による活力ある地域経済社会の形成でございますとか、安全、安心の確保、少子高齢化社会に対応した暮らし、こういうものを支える大変重要な役割を持つというように考えておるところでございます。

 私ども国土交通省といたしましても、三月三十一日に閣議決定をいただいた社会資本整備重点計画に基づき、重点的、効果的かつ効率的に実施してまいりたいというように考えておるところでございます。

渡部(篤)分科員 公共事業だけではありません。超高齢化社会にあって、いかに充実した人生を過ごしてもらうかは重要なテーマであります。

 私も一昨年、脳卒中になり、現在もリハビリ中です。リハビリをしながら大切だと思うことがあります。特に脳卒中等の疾患により要介護状態になられた方々を日常生活に復帰させるためには、全身的機能訓練のみならず、口腔機能訓練が不可欠であります。さらに、要介護者の重症化に大きな影響を与える嚥下性肺炎の予防のためには、その主たる感染源である口の中を清潔にする口腔ケアの問題も欠かせません。

 そこで、厚生労働省にお伺いいたします。

 口腔ケアの現状と課題についてどのようにお考えなのか、お伺いいたします。

坂本政府参考人 口腔の健康を保つことは、要介護者の自立した生活維持にとってとても重要なものと認識いたしております。

 このため、口腔ケアに係る介護サービスは、居宅、通所、施設のそれぞれのサービスにおいて、口腔ケアを必要とする要介護者に適用しているところでございます。

 居宅サービスでは、居宅療養管理指導費として評価をしておりますし、また通所サービスにおきましては、口腔機能が低下している利用者、またはそのおそれのある利用者に対して行う口腔ケア等を口腔機能向上加算として平成二十一年度の介護報酬改定では増額を図るなど、サービスの提供に係る労力を適切に評価したところでございます。

 さらに、施設のサービスにつきましては、介護保険施設において、歯科衛生士が介護職員に対しまして行う入所者の口腔ケアに係ります技術的助言や指導を評価いたしまして、口腔機能維持管理加算というのを平成二十一年度で新設したところでございます。

 なお、これらのサービスにつきまして、その提供状況等を把握、分析をいたしまして、これらの結果を、関係団体の意見も踏まえまして、今後とも適切なサービスの提供に努めていきたいと考えております。

渡部(篤)分科員 作家の藤沢周平は、人生の愉しみとは何か。食べることだ、人と会うことだ、旅をすることだ。私も今、体はリハビリ中で不自由ですが、なかなか人に会えない、旅をすることもできない、介助がないと。そうすると、食べることです。やはり、口腔ケアについて厚生労働省も真剣に考えていただきたい。

 こういう少子高齢化が進むだけでなく、世界金融危機の激動の荒波から政治は国民を守らなければならない。国の安全、安心を確保することは急務の課題です。

 そういたしますと、例えば社会保障費の伸びを毎年二千二百億円抑制するとした経済財政諮問会議の二〇〇六年の骨太方針も見直す必要があると私は思います。

 そこで、与謝野大臣に伺います。

 我が国の姿を形づくるという観点から、平成二十一年度の財政出動をどのように行ったのか、また、平成二十一年度の追加経済対策はどのように行ったのか、お伺いいたします。

与謝野国務大臣 二十一年度の予算は、世界的な経済危機、金融危機、こういう中にありまして、国民の生活を守る、日本の経済を守る、雇用対策、防災対策、また、人々を守るためのセーフティーネット、成長力の強化、いろいろな政策を盛り込んだつもりでございます。

 また、二十一年度の予算を編成した後、世界経済が大変な状況になりました。日本も一月、二月、貿易統計を見ますと、輸出がほぼ半減をしているという状況でございます。これはやはり国民経済が破壊されるかもしれない、また大量の失業者が出るかもしれない、中小企業の倒産が出るかもしれない。

 我々としては二十一年度補正予算を月内にお出ししますけれども、その中の思想は、やはり日本の経済の底割れを防ぐ、特に雇用とか安心、安全とか、また日本の将来に向かっていろいろな、低炭素社会とかあるいは科学技術とか、考えつくあらゆることを入れております。

 我々は、財政出動をせざるを得ない状況に至った、これは放置しておくと大変な大きな社会的悲劇が起きる、これは何としても防がなければならないということで、新たな経済危機対策というものをつくったわけでございます。ただし、これで全部もとどおりになるかといえば、そこまではなかなか財政は出動できない。成長率にして二%程度だけは何としても戻そうというのが、今回の補正予算の根本的な思想でございます。

渡部(篤)分科員 現在、世界的に巨額な財政出動とともに金融緩和が行われています。それは現下の危機を克服するためには不可欠な措置でありましょう。しかしながら、他方で、そのために金余り状態になり、一時的、局所的にバブルが起きるおそれについても考えておかなければなりません。

 例えば、原油、食糧、鉱物資源の市場にマネーが流れ込んで突然価格が高騰する可能性は否定できないと思います。

 また、今回の金融危機で大損をした投機家たちは、新たなバブルを虎視たんたんとねらっているのではないでしょうか。例えば、最近、中国経済の景気回復が早いだろうといった意見が聞かれますが、これは中国バブルをあおる声なのかもしれません。また、グリーン・ニューディールという言葉が流布していますが、それはグリーンバブルの発生をあおる声なのかもしれません。おぼれる者はわらをもつかむといったように、不況脱出を願う余り踊らされたバブルをつかむといったようなことにならないように、エドマンド・バークが言う慎慮といって、そういう中庸をもって行動すべきだと思います。

 いずれにせよ、グローバル金融市場が規制されていない。放置されていれば、金融危機で鳴りを潜めている投機マネーがまた動き出して、バブルを引き起こすかもしれないのです。

 先般のG20では、国際的な金融規制の強化について合意されました。しかし、具体的にどのように規制していくかはいまだに明らかになっておりません。グローバル金融市場の暴走をとめる規制の強化は急務であります。

 他方、経済や金融市場のあり方は国によって異なります。したがって、世界各国一律にグローバルスタンダードを押しつけるようなやり方は好ましくありません。例えば、我が国は、BIS規制や時価会計などをグローバルスタンダードだと信じ、多くの犠牲を払ってそれらを忠実に受け入れてきました。欧米諸国は、こうした規制を忠実に受け入れるのではなく、実は自国に有利なように弾力的に修正しているようです。例えば、先般、欧州の金融機関は、時価会計の緩和措置により、二〇〇八年通期で二兆円の損失を回避したとのことです。金融規制の具体的なあり方は、グローバルに一律ではなく、その国の経済のあり方や国益の観点あるいは時代の状況によって異なるべきと考えます。

 そこで、我が国は、今般の金融危機を踏まえて、今後どのような金融規制を導入あるいは検討する予定であるのか、与謝野大臣にお伺いしたいと思います。

    〔寺田(稔)主査代理退席、主査着席〕

与謝野国務大臣 二点に分けてお答えします。

 まず、こういう金融危機が来まして、世界じゅうの中央銀行が、ほとんど無制限と言われるほどの流動性を供給しております。そういうお金は市場に残ってしまうわけでして、過剰流動性の問題というのは中期的にはやはり気をつけなければならないというのは、先生のまた御指摘のとおりだと私は思っております。

 それから、次に、規制でございますけれども、今のようにグローバルな金融市場の混乱に対処するため、先般のロンドン・サミット、ここでは、金融の規制、監督の強化が合意され、ヘッジファンドに対する規制、監督の拡大と具体的な進捗が見られました。

 一方、我が国においては、市場の公正性、透明性を確保しながら、多様で利便性の高い市場インフラの整備等の取り組みを行っているところでございます。

 今後も、引き続き金融危機の再発防止に向けた国際的な議論に積極的に参加するとともに、投資家の保護、市場機能の十分な発揮等の観点から金融規制のあり方について検討を行ってまいりたいと思います。

 それからもう一点は、やはりグローバルスタンダードと言われたので、我が国は愚直にグローバルスタンダードというのは一つだと思いましたけれども、各国とも極めてダブルスタンダード、トリプルスタンダードと言われるような柔軟な対応をとっているというのは先生の御指摘のとおりだと思っております。

渡部(篤)分科員 今回の世界金融危機の前まで、しばしば経済の専門家たちが株式市場を活性化すべしと唱えるのを耳にしました。私は経済の専門家ではないのですが、そのたびに素朴な違和感を覚えずにはいられませんでした。株式市場の活性化とは、株の取引量や市場参加者が多いことを意味するものと考えますが、それは、結局のところ、バブルの起きやすい脆弱な市場だということではないでしょうか。また、それが長期的な利益より短期的な利益を優先する、投機を助長する市場だとしたら、幾ら株取引が活発であっても、国の経済全体の発展のためにはならないように思います。

 そこで、最後に与謝野大臣にお伺いします。

 今回の金融危機は、産業の現場を無視し、金融だけで豊かになろうとした経済モデルの破綻であります。金融が産業の発展に奉仕するという本来の姿に立ち返るために、我が国の金融市場はどうあるべきと考えるのか、大臣のお考えをお伺いします。

与謝野国務大臣 金融というのは、多分、産業の附属物であって、主役ではないと私は前から思っております。金融を通じて、特に利子率を通じて資源が適正に配分されるということが、金融がレゾンデートルを持っているゆえんだろうと私は思っております。

 こういうときになりますと、日本の金融機関は、それぞれ健全ですけれども、大変萎縮した行動をとっておりまして、本来果たすべき金融仲介という機能を忘れ去ってしまったような状況でございまして、やはり金融機関は、社会的責任もあり、また金融仲介機能というのは大変大事な機能でございますから、資源が適切に配分されるように、リスクゼロの世界はないので、金融機関もリスクをとるという本来の企業活動をやっていただきたいものだ、そのように思っております。

渡部(篤)分科員 私は、体調を崩して入院しているとき、与謝野先生の「堂々たる政治」を読んで泣きました。政治家の矜持、私は、これだけ大量の財政出動をする、景気対策をする、そうすれば、やはり景気が回復した段階においては、税制改革をして、国民の人たちに、例えばその時代の人たちに批判を受けても消費税をきちんと国民に問う、これが政治家の矜持だと私は思ってベッドの中で泣いて、よし、先生の志に少しでも近づこうと、あの本を読みました。

 あと、エドマンド・バークという人が「フランス革命の省察」という本を書きました。保守主義とは何か、さっき言った、いわゆる本当に伝統の上に創造、秩序の中に進歩、地域、地方を大切にし、家族の絆を大切にして、国家を大切にして、そして世界平和のために保守政治というものは大切だ、そのためには、与謝野先生の訴える「堂々たる政治」というのに私は感銘しています。

 体調を崩してリハビリ中ですが、きょうやっとこうやって立ちながら先生に質問できたことを生涯の誇りにします。きょうは、ありがとうございました。

横光主査 これにて渡部篤君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。鳩山総務大臣。

鳩山国務大臣 平成十九年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額一兆四百二十七億二千九百二十五万円余に対し、収納済み歳入額は一兆四百二十七億六千八百七万円余であり、差し引き三千八百八十二万円余の増加となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額十六兆二千六百六十八億六千八百七万円余に対し、支出済み歳出額は十六兆二千四百十二億一千六百二十七万円余、翌年度繰越額は百三億七千二百四十八万円余であり、不用額は百五十二億七千九百三十万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は五十一兆二千七百七十二億二千三百一万円余、支出済み歳出額は五十兆一千三百九億八千九百五十六万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は八百八十五億八千四百六十六万円余、支出済み歳出額は八百二十九億三千四十七万円余であります。

 以上が、平成十九年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院鵜飼第一局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十九年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十二件、意見を表示しまたは処置を要求した事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二号から一二号までの十一件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 同一三号は、交付税の交付が不当なものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、地域イントラネット基盤施設整備事業等により整備したテレビ会議装置の利用状況に関して是正改善の処置を要求いたしたもの、その二は、市町村合併に係る特別交付税の額の算定に関して是正改善の処置を要求いたしたもの、その三は、自動車保有関係手続のワンストップサービスの実施状況等に関して意見を表示いたしたもの、その四は、独立行政法人情報通信研究機構通信・放送承継勘定における産業投資特別会計からの出資金の規模等に関して意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、年金記録確認第三者委員会の運営経費に係る経理に関するものであり、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 引き続きまして、公営企業金融公庫の検査の概要について御説明申し上げます。

 平成十九年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上です。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。鳩山総務大臣。

鳩山国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、総務省のとった措置について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適切な執行を図るよう常に心がけているところではございますが、会計検査院の検査の結果、市町村合併推進体制整備費補助金が過大に交付されていた等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところでありますが、内容を真摯に受けとめ、今後なお一層事務の改善を求めるとともに、厳正な態度で事務の執行に努める所存でございます。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。高山智司君。

高山分科員 民主党の高山智司でございます。

 きょう、私は、政治活動及び選挙活動のことについていろいろと細かく聞いていきたいと思うんです。

 今御報告いただきましたように、やはり選挙はすごくお金がかかる。そして、公営選挙といっても、やはり結局は国民の税金を使ってやっているわけですので、なるべく安く合理的な方法でやることがよかろうということを私も思っていますし、当然、大臣もそのようにお考えだと思うんです。

 まず、きょう、質問に入る前に大臣にちょっと伺いたいんです。

 政治活動というのと選挙活動というのと二種類あって、それぞれいろいろ規制があると思うんですけれども、政治活動というのは、やはり主役は、政治家が自由に活動する。だけれども、それが行き過ぎてはいけなかったり、あるいは逆にそういう言論は保護されなきゃいけない、そういうことで政治活動の自由というのはいろいろ規制されたり保護もされたりしていると思うんです。

 選挙活動ということに関して伺いたいんですけれども、選挙活動ということに関しては、ふだんの政治活動のときの政治家だけではなくて、プレーヤーとしてやはり今度有権者というのが出てきて、さらに、その有権者が唯一自分がアクティブに行動できるときがまさにこの選挙活動期間中じゃないのかな。どういう候補がいるんだと吟味して、そして投票するという、有権者団の行動が非常にアクティブになるのがこの選挙活動期間だというふうに私はとらえているんです。

 平時の政治活動と選挙活動というのは、似たようなところもありますけれども、私が今申し上げたように、選挙活動というのは、特にやはり有権者に対しての配慮といいますか、そして有権者の選挙権を行使するということを考えなければいけないと私は思っているんですけれども、その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 簡単な質問のようで、大変高度な質問だと思います。

 まず、日ごろの政治活動と選挙活動の境は、これは厳密に分かれるわけです。厳密に分かれておりますが、似たようなところもあるわけですね。政治家と有権者が接触をする。それは普通、例えば高山智司後援会という形で、後援会活動という政治活動が行われているんだろうと思うわけでございます。あるいは、民主党としての党の活動が行われているのかもしれません。

 しかしながら、後援会活動においては、高山智司さんの次の選挙で、ぜひ皆さん、票を集めてお願いをいたしますということは、これは事前運動の禁止ということで言ってはいけないということになっている。選挙は選挙期間中が定められておって、そのときに初めて事前運動の禁止が解けて、選挙活動が十二日とか、選挙によってはまだ長いのもあるわけですが、二十日とかそういう選挙活動に入る。そこには、有権者、国民が、単に投票で参加するだけではなくて、できる限り選挙活動に参加できる道が開かれている方がいい、私はそう考えておりますが、今の選挙法の中ではなかなか厳しいものがあります。

 例えば、戸別訪問の禁止というようなことが本当にいいのかどうかというような議論はしばしば提言されるところでございまして、インターネットを使う選挙運動についても同様でございまして、今後、時代が変わってきておりますから、選挙活動の中における国民参加の道というのは、いろいろと多方面からの検討が必要だろうと思っております。

高山分科員 ありがとうございます。

 それでは、質疑通告したことに沿ってちょっと質問していきたいと思うんです。

 今大臣のお話にありましたように、政治活動と選挙活動は似ている部分もあるけれども、違う部分もあるということなんですが、実際、私は、ネット選挙運動というのはどんどん解禁した方がいい、選挙期間中においてもそうであるというふうに思っている立場から質問させていただくわけなんです。

 今、ふだんの政治活動においては、皆さんブログを更新してみたりホームページをやってみたり、あるいは有権者の方にメールマガジンを送ったり、実際ネットをかなり利用されていると思うんですね。それがなぜ選挙本番になると制限されてしまうのか。これは非常に、有権者にとっても、さあ、いざ本番だぞとなったら急に情報が少なくなってしまう。むしろ、これは逆なんじゃないのかな、ふだんの方をまだ規制するなら規制するで。それで、選挙活動においてはもっとどんどんやってもいいという方がむしろ普通なんじゃないかと思うぐらい不思議なんですけれども、まず、なぜ、ふだんの政治活動で許されているホームページ、ブログ等の更新、ネット利用が選挙期間中制限されるのか、その根拠を教えてください。

門山政府参考人 お答えいたします。

 インターネットを使いました選挙運動につきましては、公職選挙法第百四十二条の第一項、ここにおきまして、選挙運動のために使用する文書図画というものが、同条に規定します通常はがき、またはビラのほかは頒布することはできない、こういう規定がございます。

 そして、コンピューターのディスプレーに表示された文字などの意識の表示も文書図画に該当するということですので、選挙運動のために頒布できる文書図画に当たらないものは頒布できないということで、メール、インターネットは選挙運動に使えない、こういうことになっているわけでございます。

 今お話ございました選挙運動期間中のホームページの更新の問題でございますけれども、ホームページ更新自体が直ちに公職選挙法に違反するというわけではございませんけれども、記載した内容によりまして、例えば内容が選挙運動のために使用されると認められる文書になる場合、それから、選挙運動のために使用すると認められない場合でありましても、候補者の氏名などを表示したホームページを更新する行為、こういうものが選挙運動に使用する文書図画の頒布の禁止を免れる行為ということで百四十六条に該当する場合があるということから、選挙運動期間前に適法に掲載いたしました政治活動に使用するホームページにつきましては、公示日以後も公示前と同じ状態にしておくこと、更新しないということはできるわけでございますけれども、一般的には、こういった規定に抵触するおそれが強くなりますことから、公職の候補者個人のホームページにつきましては、公示日以後、事実上更新を行っていない、こういう状態にあるものというふうに考えております。

高山分科員 今、随分御丁寧に説明していただきましたけれども、私もう一回伺いたいんですけれども、今百四十二条で規制をされているということでしたが、百四十二条の規制をかけている、この保護法益というのは一体何なんでしょうか。そしてまた、どうしてそれを保護するために文書の種類であるとか数量を制限しているのか、その手段がどうして適当なのか、それを教えてください。

門山政府参考人 お答えいたします。

 選挙運動につきましては、候補者個人の政策ですとか人物を含めまして、有権者にどなたを選択するかという判断材料を提供するものでございますけれども、それを無制限に認めますと、ややもすると、財力あるいは権力などによって選挙がゆがめられるおそれがある、こういうふうに言われているところでございます。

 このため、選挙の公正公平の確保ということから、選挙運動に一定のルールを設けることが必要になってくるわけでございまして、特に、選挙運動に使用します文書図画につきましては、これを無制限に頒布できるということになりますと、不当な競争を招き、選挙の自由公正を害する、あるいは金のかかる選挙の原因になりやすい、こういうことから、公職選挙法におきましては、一定のものに限って可能とするということになっていると承知いたしております。

高山分科員 まず、今のを伺いますと、選挙の公正だとか公平ということが非常に保護法益というか、保護しなければいけない規制の理由だということなんですけれども、これは大臣にちょっと伺いたいんですけれども、私にだけインターネット選挙を解禁しろというのではなくて、すべての候補者にインターネット利用の選挙を解禁だといった場合、どのように選挙の公正と公平が害されるのか、どのようにお考えですか。

鳩山国務大臣 インターネットを用いた選挙運動を解禁すべきだというのは私の考え方と一致いたしております。それは、現在総務大臣だからというのではありませんで、私は自民党の選挙制度調査会長をいたしておりまして、そのときからずっと議論をしてまいりました。既に民主党さんが法案を提出されたというようなときでもあったわけで、非常に悩んだわけでございます。

 ただ、今うちの選挙部長が申し上げたことは、ちょっと話が戻って申しわけないですけれども、私、実は、東京十八区というところで、突然行って、当時の代表菅直人さんに、戦って敗れました。あのときにつくづく感じたのは、当時はまだ法解釈がはっきりしていなかった部分もあって、政党ポスターで菅直人さんのポスターがいっぱいばあっと地元じゅうに張られるわけです。これは本当は選挙違反なのかもしれません。それから、マニフェストで菅直人さんの顔の入ったものが大量に配られるわけです。こちらには何にもそういうグッズがありませんでした。これはもう最初から物量的に勝負にならないということがありましたから、門山部長の今の答弁というのは、そういうものとして解釈をしていただきたいと思うのでございます。

 問題はインターネットなのでございますが、これはどこまで使わせるか、だれまでやっていいかということで、随分議論をいたしました。これはぜひ与野党で折り合って、一定のいいところを見つけてほしいと思います。

 ただ、これは、私どもは、知恵袋は世耕弘成参議院議員でありました。現在でもそうだと思います。一番詳しいんです。彼が言いました。鳩山選挙制度調査会長、インターネットはぜひ解禁をしたい、解禁したいということはインターネットを使った選挙運動規制法みたいなものになりますよ、つまり、全部自由ということにしたらめちゃくちゃになるから、こういうものだけはいいと。では、例えばホームページを使った選挙運動は認めましょう、ただ、ホームページは候補者本人だけじゃなくて、一般の国民もホームページで選挙運動をやっていいことにいたしましょうというようなことで、随分まとまりかけたんです。

 ただ、問題は成り済ましとか中傷誹謗。これは、一般の中傷誹謗であれば、その後それこそ司法手続をとってということもあるんでしょうが、選挙は期間があって終わってしまう。つまり、中傷誹謗されて落選されちゃった、この人の救済の方法というのはないわけでございます。したがって、プロバイダー責任制限法を変えてどうしようとか、いろいろな議論をいたしましたが、結局そこがネックになってまだまとまらないまま、私は選挙制度調査会長を辞任するということになったわけです。

 ですが、非常に健全な方法で、なおかつ、成り済ましや誹謗中傷をはじけるような、排除できるような仕組みもぜひ与野党で考えていただければというのは、現在、総務大臣になった今も強い希望として持っております。

高山分科員 大臣はネット選挙解禁派というふうに私も受け取っておりますので、余りここでがちがち詰めた議論というのもあれだと思うんですけれども、ちょっと私が先ほど伺いたかったのは、選挙の公正公平を害するということでいえば、両方にインターネット選挙を解禁したところで、両方とも同じ武器を手にするわけですから、これは全然選挙の公正公平を害することにはならないんじゃないかというふうに私は思うんですね。それと、例えば誹謗中傷のたぐいのことでいえば、怪文書であるとかそういうのは、これは別にこういう紙であっても怪文書というのは出てきますし、そして、それをまた取り締まるのもなかなか困難な部分とまた容易な部分もあるでしょうから、ある意味同じような扱いだと思うんですね。

 それより、やはり私が一番大事だなと思いますのは、インターネットで非常に安い価格で公開することができる。例えば、もう大臣も御案内だと思いますけれども、私なんかも一々一々ポスターの値段を計算しながら、一回一回、選挙やふだんの政治活動もやっていますけれども、ポスターを一枚つくったら三百円ぐらいかかって、張って、何枚張れたといったってどんどんお金がなくなっちゃうなとか例えば思いますけれども、今私がつくっているブログなんか月々二百九十円で運営できるわけですね。

 そうすると、やはり、むしろお金のかからない選挙をやるんだったらインターネットなんじゃないのかなというふうに私も思っていますし、また選挙以外の、情報処理をしているところ、マスメディアもそうかもしれませんし、金融もそうかもしれません、みんなこれはインターネットの方が安いから、そしてまた、公平にみんなが使えるからということで来ていると思うんです。

 その点、選挙の公正公平を害するという点でもう一回ちょっと伺いたいんですけれども、私は、どっちかにだけ与えるというのではなくて、全員にインターネットを選挙で使えるようにするというのは、全く選挙の公正公平を害さないというふうに思うんですけれども、この点、大臣、もう一度御答弁を願えますか。

鳩山国務大臣 私は、基本的には高山委員とそれほど違わない考え方を持っておりますが、ただ、デジタルデバイドの問題というのは若干あるかなという思いがいたします。それは、今ブロードバンドゼロ地域ということを目指して、今度の補正予算でもお金は組んでくれるんだろうと期待はしておりますけれども、しかし、ブロードバンドゼロ地域といったって、光ファイバーゼロ地域という意味ではありませんから、ADSLだけのところが随分多いんだろうと思います。それから、年齢的なデジタルデバイドという問題もあるかもしれない。比較的御年配の方にはそういうものが行き届かない、あるいは使えないという部分もあるかもしれない。

 でも、そういう事柄は通常の選挙運動だって、選挙活動でも十二分にあり得ることだから、しつこいようですけれども、その辺の垣根を越えて与野党で合意してくれませんかというのが私の基本的な態度であって、武器として持つという意味ではそれは対等だろう。

 ただ問題は、誹謗中傷等のことを考えますと、私はこの道に余り詳しくないわけですが、インターネットというのは世界をめぐっておりまして、では、国内のどこで規制をかけても、外国へ行って、持ってきてというようなルートがあります。現実に私は、自分のこの間の選挙のときに、インターネットでどういうことが書かれているのかと思って2ちゃんねるを見ましたら、ちょうど投票日にめちゃくちゃに悪口をいっぱい書かれておりまして、それはいろいろなことが書かれているんですね、投票の最中に、投票日ですから。

 だから、実際にはもういろいろなことが行われているわけですから、これらをきれいにうまく規制しながら解禁する方法を、私の知恵ではとても無理ですから、あなた方の知恵で、与野党で話し合ってやっていただければありがたいと思います。

高山分科員 先ほど話が出ました世耕さんの話もそうなんですけれども、我が民主党で出しているインターネット解禁の法案も、実際には、ある意味インターネット規制法のような色合いがあるんですけれども、私は、そういう規制はなるべくするべきじゃないというふうに思っていても、何でも自由にしていいだろうという考えの持ち主で、それは党内でもそれほど多数ではないんですけれども。

 そこで、私がちょっと聞こうと思っていたことを今大臣がおっしゃったので、そこを深掘りして聞いていきたいんですけれども、それは今の2ちゃんねるの話です。これは、自分が運営しているのではなくて第三者が運営している、政策論争の場であったり人物の評判なんかを書いている掲示板だと思うんですけれども、これは政府参考人で結構なんですけれども、ふだんも、例えば私なんかも悪口を書かれることもあるかもしれないし、いろいろありますね。それに対して、いや、本当はこうじゃないですよと自分も書き込んで訂正をすることができるわけですけれども、選挙期間中にこの手の掲示板に書き込む行為というのはどのような規制がありますか。

門山政府参考人 個人であります第三者がインターネット上でいろいろ意見を発表するとか、そういったことにつきましては、一般的には、その内容、態様が選挙運動にわたらないというふうに認められる限りにおいては、公職選挙法上特段の規制はないということかと存じます。

 それから一方で、政党その他の政治活動を行う団体になりますと、これは、選挙期間中、この場合には、公職選挙法の二百一条の五から二百一条の十三、こういう政治活動の規制がかかってまいります。こういう違いがございます。

高山分科員 ちょっと今のを政府参考人にもう一回私の方からも質問し直しますけれども、だから、第三者がつくっている掲示板に選挙期間中に、例えば何か自分の、全然誤解されている、私はそんなことは言っていないのにというのを書き直して反論する行為、これがまず公職選挙法上の規定に当たるかどうかということ。あともう一つ、ちょっとあわせて聞いておきたいんですけれども、よく選挙期間中など、メールで、高山さん、どういう考えなんですかと来たりする、それに返事を書いたりする行為ですね。返事を書くときに、応援よろしくお願いしますと例えば書いちゃったりするとか、とにかく選挙期間中に有権者の方とのメールでのこういうやりとり、これはどのような規制になりますか。

門山政府参考人 選挙運動期間中につきましては、基本的には公職選挙法百四十二条の文書図画の頒布の規制に当たるかどうか、それから、それを免れる行為の百四十六条、これに当たるかどうかということになってこようかと思います。

 個別の事案につきましては、具体の事実に即して判断すべきものということでございまして、要するに、ある行為が選挙運動であるかどうか、これが実態に即して判断される結果、セーフ、アウトの問題が出てくるということかと存じます。

高山分科員 さらに、一応伺っておきたいんですけれども、選挙期間中に、四十年前はハイテクだった電話ですね、電話は音声だから幾ら使ってもいいんだということになっておりますけれども、例えば、事務所内の連絡であったり、選挙期間中に後援会の皆さんに、メーリングリストをつくって一斉に、ここでこういうのをやるから来てくださいね、応援してくださいねというのを流したりするということは、選挙期間中じゃなければ私なんかもふだんから使っているわけなんですけれども、それを選挙期間中にメーリングリストをまた使って一斉に配信する、これも公職選挙法上の規制はあるんでしょうか。

門山政府参考人 メールにつきましても、先ほど申し上げました公職選挙法百四十二条の文書図画、これには含まれるということになろうかと思います。したがいまして、そのメールの内容がいわゆる公選法で認められている文書図画に当たるか当たらないか、選挙運動の文書かどうかということが判断基準になろうかと存じます。

鳩山国務大臣 高山委員に、今あなたの質問を聞いて思い出したのでお答えいたしますが、私が選挙制度調査会長のときに、とにかく、世耕さんに、まとめてくれ、それはもう解禁しようや、それは規制法であってもいい、選挙運動に関してインターネット使用制限法だ、それでもいいからまとめてほしい、それで民主党と話し合ってくれと何度も申し上げておって、いろいろ党内にも意見がいっぱいあってなかなかそれがまとまらないうちに、これが携帯の時代にどんどん移っていったんですね。

 結局こうなると、もう机の上でパソコンを開いてという時代でないな、これは携帯が中心になる、メールを一斉にという話になってきて、携帯のメールのことまでまた考え始めなくちゃいけないので、もう少し時間をくださいよと世耕さんに言われたのをはっきり覚えているので、みんながそれこそでっかいパソコンしか持っていない時代と、今の、携帯にもうパソコン機能がついているような時代とでまた考え直さなくちゃいけない点がある、だから、これは私の知識ではどうにもならないから、与野党のそういうことに詳しい若手の方々で話し合ってもらいたいと何度も申し上げているわけでございます。

高山分科員 今、わざわざありがとうございました。

 実際、この間のアメリカ大統領選挙でも、オバマ大統領はそういうモバイルの選挙活動を使って、随分国民を盛り上げていい選挙をやったということで、私もそれはすぐ取り入れたいなとは思っているんです。

 ちょっとそれとは別に、私、この百四十二条の文書図画の制限というのは本当に合理的なのかという観点から今何回も質問させていただいているんですけれども、この点でもう一つ伺いたいのは、今度はインターネットを離れて普通のチラシですね。選挙になると、何か証紙というんですか、切手みたいなものをぺたぺた張る作業があるんですけれども、これが、小選挙区だと何万枚だ、市長選だと何万枚だとありますね。

 衆議院の小選挙区を例に選挙部長にちょっと伺っていきたいんですけれども、衆議院の小選挙区だと、使える文書、つまり、例えばチラシで何枚、はがきで何枚、それはどういう根拠でその枚数というのが決まっているのか、教えてください。

門山政府参考人 ただいま具体例として衆議院の小選挙区のビラの制限枚数についてお触れになられましたので、その点について御説明を申し上げます。

 現行では、衆議院小選挙区で、候補者は、ビラの制限枚数といたしまして、七万枚で二種類以内、こういうことになっております。

 この七万枚の根拠ということにつきましては、当時の御説明でありますが、平成二年度の国勢調査で四千百万世帯ほどの世帯数がある、それを三百選挙区で割ります。それで、当選に必要な得票数というのはその半分以上だろうということだと思いますが、それに二分の一を掛けますと六・八四万枚という数字が出まして、それを丸めておおむね七万枚というふうにされたという御説明がございます。

 そのほかにも数字として、ポスターの枚数ですとかはがきの枚数などいろいろ制限があるわけでございますけれども、ほとんどのものは、結局、各党で御議論になり、国会でこのぐらいの数字というふうに御議論された結果として決まった数字ということでございまして、それぞれについてこういう詳細な説明があるわけではございません。

高山分科員 これは私、きのう、おとといの段階で、選挙部の方に随分話をしておいたんです。

 大臣に伺いたいんですけれども、例えばお互い小選挙区でやるときに、十万票ぐらいとる選挙をやっていると思うんですけれども、そのときに七万枚といったら、一人に渡したら確実に入れてくれるという世界だと思うんですけれども、実際にそんなことというのはあるのかと。要するに、広告宣伝の観点からいえば、百万枚配ってやっと十万票とれるぐらい、いや、もっと少ないというのが本当だと思いますし、しかも、少なくとも今の話を聞いていると、有権者の世帯数の半分になっちゃっているわけですから、なぜ全員に配る分の枚数じゃないのか。私は、この文書図画の制限というのは非常に合理性を欠いている気がするんですけれども、この点、大臣はどのようにお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 私はもう選挙を十何回かやっておりまして、自分で選挙事務をやっておりませんから、余り責任ある御答弁はできないんですけれども、今、四千百万世帯を三百で割ってその半分という話を聞いて、へえと思ったわけですね。

 何でこういう七万枚、中途半端な感じがしますね。十万枚とかという方がわかりいい。五万枚、十万枚、十五万枚の方がわかりいい。なぜこういう数字になっているのか、私は正直言ってわからなかったし、今の説明に合理性があるかどうかというのも検証できる話ではないし、いろいろなものの制限が、とりあえずそういうふうに定めているという数字にすぎないなという感じはしますね、正直言って。私にはそう思えますから、それこそこういうことも与野党で話し合っていけばいいんじゃないでしょうか。

高山分科員 今大臣からも前向きにお話しいただきましたけれども、私は、やはりそもそもこの百四十二条の文書図画の制限というのは、本当に国民の皆さん、特に有権者が主体となって情報を選んで候補者を選んでいくという観点からすると、ちょっと過度な制限になっているんじゃないかな、あるいは制限としての合理性がなかなか少ないんじゃないのかなと思いますが、これは議員立法ですので、そこは本当に与野党間の議論を次の選挙までに進めていきたいと思います。

 ちょっと今時間がなくなってきて、次の質問に移りたいんですけれども、政治家の問題で、特に世襲の問題について、特に政治団体の件で伺いたいんです。

 まず、形式的に伺いたいんですけれども、よく世襲批判とかをされることがあります。例えば、例で、小泉親という人がいて、小泉子供という人がいたとします。これは例です。それで、例えば小泉親後援会というのがあって、小泉子供後援会というのがあったとしますね。このときに、親後援会から子供後援会に寄附をする、これは政治資金上何か制限はありますか。

門山政府参考人 政治団体間における寄附ということになろうかと思いますが、政党、政治資金団体を除きます政治団体間の寄附につきましては、政治資金規正法で年間五千万円以内、こういう制限が設けられておりますけれども、政党、政治資金団体と政治団体の間の寄附については特段の規制がないというのが規制でございます。

高山分科員 そうしますと、もう一つちょっと聞きたいんですけれども、例えば、仮に小泉親後援会という後援会があって、その代表者が小泉親という人だったんだけれども、代表者の変更ということで、その代表者に小泉子供がつくことは可能ですか。

門山政府参考人 政治団体の代表者の変更についてのお尋ねでございますが、政治団体の代表者に異動が生じました場合には、その政治団体は七日以内に都道府県選挙管理委員会または総務大臣に異動の届け出をしなければならないということはございますけれども、それ以外は、政治資金規正法上、特段の制限はないところでございます。

高山分科員 あともう一つ伺いたいんですけれども、今度はちょっとややこしいんですけれども、小泉親後援会という名前で、代表者が小泉子供にかわった。それで、小泉子供後援会という後援会の代表者も小泉子供。つまり、代表者が同じ後援会同士で寄附をすることについて、つまり、小泉親後援会の代表者は小泉子供という人になったんだけれども、その子供が自分の政治団体に寄附をする、これについて何か規制はありますか。

門山政府参考人 ちょっと質問の御趣旨をよく理解しておらないかもしれませんけれども、政治団体間の寄附ということであれば、制限額の範囲内ということでございます。

高山分科員 大臣、これは、私でも、例えば高山智司後援会というのと高山智司東京後援会とか、両方とも高山智司が代表者で、その中で資金のやりとりということは、当然、普通のことで、あると思うんですけれども、今私が言いました例は、それぞれ三つとも、実際には、一般人の感覚からしたら、あれっ、贈与税とか相続税とかを払わないで済んでいて、政治家だけ贈与税、相続税を払わなくていいのかという印象を持たれかねないと思うんです。

 大臣に伺う前に、まず、国税庁に伺いたいんですけれども、これは実際に相続税だとか贈与税を潜脱する行為だということで摘発はされないんですか。

荒井政府参考人 まず、課税関係について御説明させていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、政治団体が所有する資産が他の政治団体に贈与されたとしても、相続税または贈与税の課税対象とはなりません。

 それから、もう一つ御指摘のありました話でございますが、これも一般論として申し上げますと、政治団体が所有する資産であれば、政治団体の代表者がかわっても、相続税または贈与税の課税関係は生じないということになっております。

高山分科員 質疑時間が終了しましたが、大臣、最後にちょっと伺いたいんですけれども、やはり選挙の公正公平ということからいえば、資金の点でどうも政治家が一般人より優遇されているんじゃないかなという印象を持たれかねないと思うんですけれども、この点に関して大臣の考えを最後に伺いまして、終わります。

鳩山国務大臣 私にしても兄にしても、母からの相当な援助でずっとやってきておるわけでございまして、そこのところは、やはり、一般の生活に使うのであればこれは当然贈与税だということでしょうけれども、それを兄も私も政治活動で使っているということでございますから、きちんと政治活動に使っている以上は、これは母の愛を受け入れている、こういうことになるんだろうと思っております。

高山分科員 もう時間になったので終わります。ありがとうございました。

横光主査 これにて高山智司君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日午後二時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十分散会


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