衆議院

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第2号 平成21年4月21日(火曜日)

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平成二十一年四月二十一日(火曜日)

    午後二時三十分開議

 出席分科員

   主査 横光 克彦君

      寺田  稔君    矢野 隆司君

      石関 貴史君    寺田  学君

      古本伸一郎君    和田 隆志君

      鷲尾英一郎君    前田 雄吉君

   兼務 広津 素子君 兼務 平岡 秀夫君

   兼務 古屋 範子君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   内閣官房副長官      松本  純君

   財務副大臣        石田 真敏君

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       太田 雅都君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長            金刺  保君

   会計検査院事務総局第五局長            真島 審一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  櫻井 修一君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            岳野万里夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  久保 信保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            山川 鉄郎君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       吉良 裕臣君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            桜井  俊君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   戸塚  誠君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中村 明雄君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          藤本 栄助君

   参考人

   (日本放送協会理事)   日向 英実君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

   安全保障委員会専門員   金澤 昭夫君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  岡田 克也君     石関 貴史君

  寺田  学君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石関 貴史君     和田 隆志君

  鷲尾英一郎君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     寺田  学君

  和田 隆志君     岡田 克也君

同日

 第一分科員平岡秀夫君、古屋範子君及び第四分科員広津素子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

 平成十九年度特別会計歳入歳出決算

 平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十九年度政府関係機関決算書

 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行、文部科学省及び防衛省所管)


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     ――――◇―――――

横光主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 平成十九年度決算外二件中、本日は、文部科学省所管、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、総務省所管、公営企業金融公庫及び防衛省所管について審査を行います。

 昨日に引き続き、文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。石関貴史君。

石関分科員 民主党の石関貴史です。

 お時間をいただきまして、ありがとうございます。私、文部科学委員会の常任委員会には所属をしたことがないんですが、分科会等で必ずこちらを希望いたしまして質問をさせていただいております。初めて塩谷大臣に質問できますので、大変喜んでいるところです。

 早速ですが、今、経済として、世界各国、そしてまた我が国も大変な状況にありますが、こういうときだからこそ、将来への、我が国の未来への投資として教育の分野には特に予算を配分して、有為な人材を育成するということをやはりやらなければいけないと特に強く思っているところであります。

 そこでまず、我が国が先進国の中で、わかりやすい指標として対GDPの比較の中で、教育関係の予算というのは何%になっていて、先進国の中ではどのような位置を占めているのか、お尋ねをいたします。

清水政府参考人 OECDの調査によりますと、二〇〇五年における我が国の学校教育費に対する公財政支出の対GDP比は、OECD各国の平均が五・〇%に対して三・四%という状況でございます。その順位は、データを提出しているOECD加盟二十八カ国中二十八位という状況でございます。

石関分科員 大変残念なことでもありますし、大臣としてもぜひ、さらに頑張っていただいて、この予算をふやしていただいて、日本の将来、礎をしっかりと固めてもらいたいというふうに思います。

 さて、きょうの質問は、主に奨学金についてお尋ねをしたいと思っています。

 こういう経済の大変な状況だからこそ、いろいろな意味での格差が広がらないようにする、格差を是正する、そういう意味で、経済的に困難な家庭の子弟でもちゃんと教育が受けられる、こういう機会を確保しなければいけないというふうに思っております。

 そこで、我が国における主な奨学金にはどのような種類のものがあるか。これは、できるだけ幅広に教えていただきたいと思います。

徳永政府参考人 我が国の奨学金事業には、国が教育政策の一環として日本学生支援機構を通じて提供している奨学金事業、これは無利子及び有利子の貸与事業でございますが、全体の八割を占めております。このほかに、地方公共団体あるいは公益法人あるいは学校法人等が実施をしている奨学金事業もございまして、それぞれシェアは六%強という状況でございます。

 こういったような各種奨学金事業を通じまして、毎年、大学の入学者の約三五%、約二十四万人の学生が奨学金を受給しておりまして、私どもといたしますれば、教育の機会均等を実質的に確保することに貢献しているというふうに認識しております。

石関分科員 そこで、近年、ここ数年間でこの奨学金全体の利用の状況というのは、どのような変化をしているか。変わっているのか、いないのか。あとは、事前に通告はしておりませんが、諸外国、先ほどのOECDを主に対象としたときに、大学生が奨学金を利用して修学をしている、大学、高等教育を受けているという割合というのは、日本はどのような位置になっているか。これについてもあわせて教えてください。

徳永政府参考人 奨学金の利用状況でございますが、残念ながら、日本学生支援機構以外の状況については、私どもは近年の状況は必ずしも明確に把握しておりません。

 日本学生支援機構の奨学金事業だけで申しますと、十七年度の実績が九十八万人、十八年度の実績が百一万人、そして十九年度の実績が百四万人という状況でございます。それぞれ貸与金額につきましても、十七年度の七千二百五十億円から十九年度には八千二百五十億円という形で、一千億円強はふえているわけでございます。

 こういう中で、近年の状況におきましては、無利子奨学金事業、有利子奨学金事業を合わせまして、事業全体としては、貸与基準を満たす希望者ほぼ全員に貸与できていると思っております。

 それから、先進国の状況でございますと、私どもが把握しておりますのは、アメリカの例を見ますと、連邦政府の給付型の奨学金受給者が約三割、そのほか連邦政府の貸与型の奨学金を受けている者が同数、約三割程度、合計で六割でございます。そのほか、州政府の支援を合わせると七六%となっております。これ以外は、いわゆる民間団体だろうと思っております。

 また、英国等につきましては、民間団体の奨学金は残念ながら把握をしていないわけでございますが、英国におきましては、給付型の奨学金が五五%、貸与型の奨学金は八〇%の者が受給をし、フランスでは給付型奨学金を二九%の者が受給しているという状況になっております。

石関分科員 今挙げていただいただけでも、我が国は奨学金を利用して勉強できるという方々の割合が非常に低いという印象を受けます。

 今、イギリスの例が出ましたけれども、以前、私は役所に勤めていて、役所からロンドンに留学をさせてもらいました。今も変わっていないと思いますが、当時、基本的に大学は無料、留学生については学費をいただくということでありました。我が国もぜひそういう方向にしなければならないということは強く思っているわけですが、少なくとも、その前段階として、学費については、好奇心と向学心があって、やる気のある人には何とかこういう機会を与えたいというふうに思います。

 そこで、先ほど、我が国における奨学金の利用の大宗を占めているという日本学生支援機構、これは、旧日本育英会の事業を引き継いで独立法人となっているというものだと思いますが、そもそも、言い方が適切かどうかわかりませんけれども、元手というか資本金のようなものあるいは年度ごとの予算というものは、どのように、だれが拠出をして、政府の関与のもとに設立をされたというふうに思っていますが、その予算の内容について、少し詳しく教えていただけますか。

徳永政府参考人 日本学生支援機構、先生が御紹介のように、日本育英会を継承した、そして、その上で留学生事業もあわせ行っている独立行政法人でございます。その資本金は、全額政府から出資をされておりまして、一億円でございます。

 また、毎年のいわば奨学金事業の原資というものでございますが、無利子奨学金事業につきましては、二十一年度の例を申しますと、学生からの返還金が一千七百九十八億円、政府貸付金が七百四億円で、計二千五百二億円により実施をしております。

 また、有利子奨学金事業につきましては、学生からの返還金等が八百六十一億円、財政融資資金が四千九百四十二億円、また、日本学生支援機構がみずから債券を発行して資金を調達して行う、財投機関債によるものが一千百七十億円で、計六千九百七十三億円ということで実施をしております。

石関分科員 その貸与の奨学金についてなんですが、今お話がありましたけれども、随分、延滞や、滞納というか滞っている方、それから、払う気がないのではないかという方々がふえていて、このまま続いてしまうと、新しく奨学金の支給が困難になってきてしまう、こういうことが報道されておりますが、事実としては、文部科学省としてはこのことについてどのように把握をされておられますか。

徳永政府参考人 残念ながら、延滞金というもの、私どもは、現実に返ってきていないという意味ではなくて、一定期間以上いわば返還されていないものの将来分も含めまして、全体として二千億円以上になっているわけでございます。

 ただ、このうち、大学、大学院生分というものがおよそ千六百億円だと思いますが、そのほか、いわばかつての高校分、十七年以前は高校生のものにつきましても日本学生支援機構が実施をしておりました。こういったものがおよそ六百億円ございまして、全体で二千億円以上の延滞、いわば将来的な分も含めて延滞債権があるという状況でございます。

石関分科員 そこで、先ほどお尋ねしたように、こういう状態が続いていくとすると、これは本当に、この奨学金事業が機構として成り立たなくなってしまって、せっかく勉強したいという方々に奨学金の貸与をする事業が立ち行かなくなるということでよろしいんでしょうか。それと、なるということであれば、このペースでいくと、どれぐらいの期間で非常に危機的な状況になるのかということについて詳しく教えてください。

徳永政府参考人 私ども、基本的には、先ほども言いましたように、財源的には学生からの返還金というものが事業の原資の過半を占めているわけでございますから、きちっとそこは確実に返還をしていただく、返還金を確実に回収することによって次の事業につなげていきたいと思っております。

 現在、大学院生につきましてはおよそ九七%が返還をしておりますし、大学生分については九五%という返還率となっております。

 その意味では、今回、日本学生支援機構の次の中期目標、計画を定めたわけでございますが、こういったものについて、先ほど申しました大学、大学院生に係る延滞債権については、これの回収を強化して、この次期中期目標期間中には、こういったものの半減を目指すというようなことを考えております。

石関分科員 今、大学生については九五%ということですから、ちゃんと返してくれているということですね。ちょっと私の印象ですけれども、報道等で目にする限りは、何かもっとどんどんふえていって、みんな返さなくなっているような報道がされているように私は受け取っていたんですが、意外とちゃんと返してくれているのかなという印象を受けたんです。

 この九五%という返還率は、やはりここ数年、特に景気がこういう状況になって、これは去年から特に悪くなったわけですが、しかし、実質的な可処分所得が大方の家庭では上がらないというのがここ数年続いておりますので、そういった状況の中の変化、現状が九五%であるということですが、その前から比べるとこれは悪くなっているんですか。

徳永政府参考人 先ほどちょっと言葉足らずで恐縮でございますが、いわば新規の返還者の返還率が九五%でございます。全体として見ますと、いわば総回収率全体は、先ほどの高等学校分等も含んだ形ではもっと低いわけでございますが、新規の大学生、大学院生につきましてはそれぞれ九五、九七という形で、それは、私どもとすれば、全体としての回収率は上がってきているものと考えております。

 しかしながら、一方で、毎年毎年の事業規模全体が大きくなっておりますので、その意味では、回収率自体は改善をしていても、いわば事業規模が大きくなることによって、延滞債権額そのものの解消ということが大きな課題となっているというふうに認識しております。

石関分科員 報道によると、返さない人がふえてしまっているということなので、こういう状況を受けて、この機構が個人信用情報機関に登録する制度、いわゆるブラックリスト化というそうでありますが、二〇一〇年度からこれを開始するんだということが報道されておりました。これは事実ですか。

塩谷国務大臣 奨学金の返還を滞納した場合に個人信用情報機関に個人情報を登録するということにつきましては、学生支援機構が設置した有識者から成る奨学金の返還促進に関する有識者会議が昨年六月に取りまとめたものでございまして、この奨学金の返還を促進する策について提言をしたわけでございます。

 具体的には、滞納者の情報を個人信用情報機関に提供することにより、滞納者への各種ローン等の過剰貸し付けを抑制すること、そして、多重債務化への移行を防止することとなるため、延滞者の返還可能な能力を確保することにつながるということが期待されておりますので、一定効果があると考えておるところでございます。

石関分科員 今の大臣の答弁を受けて、具体的には、どれだけ延滞すると、どのような段階でブラックリストというものに載せられてしまうのか、事務方で結構ですので教えてください。

徳永政府参考人 私どもとすれば、三カ月延滞した方について対象とするというふうに承知をしております。

石関分科員 三カ月延滞してしまうと自動的にブラックリストに載るということですか。

徳永政府参考人 これにつきましては、新しくこの二十一年度から貸与をする方につきましては、いわば同意書の提出ということが貸与の条件となっております。また、それ以外の既に貸与を行っている方につきましても、同意書を提出していただいた方につきましては、三カ月以上延滞をした場合には情報機関に提供するとなっておりますが、一方で、この奨学金事業につきましては返還猶予制度というものがございます。御本人が大変厳しい経済状況にある場合につきましては、返還猶予手続をとっていただきますと、これは延滞者にはなりませんので、その場合には情報を提供するということにはならないわけでございます。

石関分科員 過去には、これまでの実績として、この延滞の手続をとって、どうしても払えないんだということで理解がされれば待ってもらえるということだと思いますけれども、こういう人たちというのはどれぐらいの割合いるんでしょうか。

 というのは、今お伺いをしましたので、そういう手続があるということがわかりましたが、だとすると、このブラックリスト化というのが開始された場合には、自動的に、どれぐらいの割合の人がこのブラックリストに載る可能性が多いのか、大体予想がされると思うんですね。

徳永政府参考人 先ほど、返還している方の新規の方のパーセントは申しましたが、これまで返還猶予ということ自体も、例えば、平成十八年度の状況でいいますと四万五千四百九十件、平成十九年度で四万八千三百十五件、平成二十年度で四万五千六百八十五件、それぞれ二%弱ということになっております。

 私どもといたしますれば、現在、日本学生支援機構を通じて、延滞債権の回収を強化する際には、一方で、必ずこういう形で返還猶予制度があるんだということを周知いたしまして、御本人が非常に経済的状況、失業、生活保護、災害あるいは病気等によりまして返還できないといった場合には確実にその手続をとっていただく、こういったこともあわせて返還強化の中で行っていきたいと思っております。

石関分科員 しっかりそういうことはやってもらわないと、払いたくても払えないという人についてはこのブラックリストに即時載せるということではない手続がしっかりと設けられていないとおかしいと思いますけれども、ただ、傾向として延滞がふえているということは、先ほどからの御説明を聞いても事実のようであります。

 ただ、この延滞や滞納の理由というのが、文部科学省が把握している限りでは、借りたものだけれども返さなくていいやという、何かこういう世の中の風潮がもしかしたらあるのか、あるいは、本当に困ってしまって今のような延滞の手続をとるべき方々がふえてしまっているために、こういった滞納なり延滞というのがふえているのか、どちらの割合の方が多いというふうに把握をされていらっしゃいますか。

徳永政府参考人 私どもが日本学生支援機構を通じて調査をしたところによりますと、延滞理由の上位三つの理由としては、低所得という方が四〇・八%、それから、親の債務を返済するためという方が三七・三%、奨学金以外の借入金の返済という方が二三・八%ということで、経済的な状況ということに相なると思います。

石関分科員 割合としては、経済的な事情が非常に多いということですね。そうすると、では、ブラックリストに載せられそうな人というのはそんなに多くないというふうに考えてよろしいんですか。

徳永政府参考人 先ほど申しましたように、返還猶予という制度がございますから、返還猶予手続を確実にとっていただくということになりますと、それは延滞ということではございませんので、そういう手続をとっていただければ、そういった方々はかなり少なくなると考えております。

石関分科員 そうすると、私の印象ですけれども、最近の報道だけを見ると、何か先ほど私が伺った中では、怠慢で、借りたものも返さなくていいんだというような何となく世の中の風潮が広がって、返さないけしからぬ人がふえているので、こういったブラックリスト化という手段も講じなければいけない、私が目にする限りはこういう報道が多いような気がするんですが、大臣、事実は必ずしもそうではないということでよろしいんでしょうか。

塩谷国務大臣 今答弁をさせていただきましたが、事実はそのとおりでございます。

 ただ、こういったリストを上げるということもかなり慎重に検討した結果であって、本当は、できればそういうことはしないで返還がされれば一番いいんですが、今後の将来を考えた中で、やはり一部そういったことに踏み切らざるを得ない状況があってやることでございますから、その点は、ある面では、今委員のお話があったように、返さなくてもいいんだというような中で返さない人も一部はいると思います。そういったことのないように、いわゆる返還を促進するような意味でこういうことをやっておりますので、できるだけその意思を理解していただいて、返還していただきたいと思っております。

石関分科員 私がこの奨学金制度に執着というか、一生懸命これは取り組まなきゃなと思っているのは、私自身の実感がございまして、私が生まれてすぐ両親が離婚しましたので、そういった家庭の事情で、私は祖父母に育てられたんですね。私の祖父が小さい自営業をやっていましたから、高校を卒業して大学に入るまではおじいさんに面倒を見てもらって、学費も全部出してもらっていたんですが、大学を卒業する前の年にこの祖父が亡くなりましたので、大学の奨学金をもらって最後の年は卒業ができました。これは大変ありがたいことだなと思っております。

 今、大学の方も、全入にはなっておりませんけれども、学生が大変減ってきているという時代で、いろいろ知恵を絞って、成績優秀な人は無償にしますよとか、いろいろふえていますが、私の場合は特に成績が優秀でもなかったので、ここに私の出た大学の関係の記事がありますけれども、修学上、特に経済的に困難な学生に支給をするというものをいただいて卒業ができたということがありますので、ぜひこういう機会をより多くの向学心のある皆さんには与えてもらいたいという気持ちでこういう質問をさせていただいております。

 そこで、先ほどよく説明を聞いてみると、まじめに返す人というのが必ずしも減っているわけではなくて、本当に一部のけしからぬ人が、かなり少ない割合だけれども、そのことによって、何か返せなくなったら即ブラックリスト化されるような、奨学金を借りて何とか学校に行きたいな、勉強したいなという人を萎縮させてしまうような報道がされているんだなということを、私、今、質問それから皆さんの答弁を聞いていて思いました。

 大臣、こういったことはなくて、我が国に生まれてまじめにしっかりと好奇心と向学心を持ってやっていこうという子弟には、こういった奨学金の制度もあるし、ちゃんと頑張れば勉強を受けられますよ、こういうメッセージをぜひ発していただいて、こういう制度もあるよということについてはさらに普及に努めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 おっしゃるとおり、特に最近の経済状況から、授業料が払えないで退学をしなきゃならぬとか、卒業できないような状況が出てきておりますので、ここは奨学金制度も充実させ、また、それを周知徹底させることについては、我々としても直接大学等にも連絡をとって、そして、今年度としては、相談窓口を学校で充実させてほしいということで予算もとっております。

 その点で、やはり何か自分が困難な状況になったら、学校にいつでも相談できるような場所があることが一番学生にとってプラスになると思いますので、内定取り消しとか就職の件もありましたので、したがって、もろもろの相談窓口という点でことしはその点を充実させて、やはり周知徹底する中で大いに活用していただくように考えております。

石関分科員 奨学金を充実させると。先ほどから答弁をいただいておりますと、しかし、諸外国と比べては残念ながら貧弱だなという、これもちょっと残念な印象を強くいたしました。

 そこで、少なくとも我が国の中で高等教育までしっかり受けたいという方々について充実をさせるというのがまず当たり前のことだと思いますが、あわせて、これはいろいろ調べましたら、留学する方についての奨学金というのは非常にまた枠が少ないですね。

 私、おかげさまで役所の方から行かせてもらって、全然違う仕事じゃなくて、また国にかかわる仕事をさせていただいていますので、私なりには恩返しをさせていただいているかなと思いますが、我が国の人材に世界じゅうで活躍してもらうのに、あるいは外国で活躍した人がまた我が国に貢献する機会をふやすという意味でも、こういった奨学金、それから、貸与だけではなくて無償で提供するという奨学金、これは私は日本というのは非常に少ないというふうに思います。先ほどの諸外国何カ国かいただいても、全然違いますから。

 これは大臣、我が国は、有為な子弟にただでお金をやって頑張ってくれ、こういうのが極めて小さな割合でしかないと思いますが、いかがですか。

塩谷国務大臣 確かに、貸与型あるいは給付型と比較すると、我が国は全く給付型がゼロと言ってもいいような状況でございまして、ここら辺は今後の一つの課題であります。特に今、教育費全般の問題と、そして家庭の家計負担、そういった問題をどうするかということ、これが、この経済が厳しい中、改めて検討しなきゃならない材料として出てきたわけでございまして、この奨学金もそのために充実させようと。

 もともと、学費等のあり方とか家計負担のあり方とか、教育費全般におけるその位置づけ等を検討する時期に来ているんだと思っておりますので、諸外国の例とあわせて、奨学金、そしてもともとの学費のあり方、国公私の格差のあり方、そういうことをぜひ今後検討していきたいと考えております。

石関分科員 大臣も頑張っていられると思いますし、役所の皆さんも同じ気持ちで頑張っていられると思いますけれども、ただ、そういう機会を何とか得たいと思っている皆さんからすると、何かけちくさい国だなと。何か外国に行ったら、私よく知りませんけれども、フルブライト奨学金で日本人の人がアメリカに行って、日本に戻ってきて活躍している人がいっぱいいるとか、こういう記事をよく読みますよ。日本では余りそういうのを聞いたことがないですね。激励を申し上げますので、ぜひさらにしっかり頑張ってもらいたいというふうに思います。

 そこで、今のは高等教育を主に質問させていただきましたが、地方レベルの奨学金、いわゆる高校奨学金事業について、分科会ですので、特に、私、群馬の選出でありますから、地元の群馬県の今の状況というものがどうなっているか、高校奨学金事業ですか、これについて今の状況を教えてください。

金森政府参考人 経済的理由により修学困難な高校生に対する奨学金事業につきましては、日本学生支援機構、旧日本育英会が実施してきました高校奨学金事業が、平成十七年度の入学者から順次都道府県に移管され、従来から各都道府県で実施している事業もあわせて、全都道府県において奨学金事業が実施されているところでございます。

 貸与状況につきましては、各都道府県の事業の合計で申しますと、平成十九年度実績の貸与人員が約十五万人、貸与総額が四百三十四億円でございます。また、群馬県におきましては、平成十九年度実績の貸与人員が約三百人、貸与総額が約八千万円でございます。

 なお、群馬県では、従来からの奨学金と移管分の奨学金をそれぞれで実施しておりまして、移管分の奨学金の貸与基準につきましては、移管前の日本学生支援機構の基準と同等の基準となっているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、各都道府県の状況を把握し、必要に応じ、適切に事業が行われるよう促してまいりたいと考えております。

石関分科員 済みません、群馬の今の例ですけれども、新規の採用というのは何人になっているんですか。今のは新規の採用が三百ということですか、じゃないですよね。新規採用は何人ですか。

金森政府参考人 ただいま申しましたのは、平成十九年度、高等学校の一年生、二年生、三年生合わせての数字でございます。

石関分科員 全体の事業が今どうなっているかというお尋ねをしたのでそういうお答えになったかもしれませんけれども、私が知りたいのは、こういう状況にあるので、新規でふやしている、そういう行政の姿勢が見えるかどうかということをお尋ねしたかったんですが、いかがですか。

金森政府参考人 新規でふやす努力を行政としてどうしているかということについて申し上げますと、先般取りまとめられました経済危機対策におきまして、教育費負担への支援として、経済情勢の悪化により修学が困難な学生や生徒に対する授業料減免、奨学金事業等への緊急支援等が盛り込まれたところでございます。

 現下の経済情勢からは、今後三年程度、授業料を滞納したり、学業の継続が困難となる高校生がこれまでより増加することが見込まれますため、多年度を視野に入れた支援策が必要と考えております。

 詳細につきましては、現在、平成二十一年度補正予算案に盛り込むべく政府部内で調整中でございますが、すべての都道府県で実施している私立高校生の授業料減免措置への補助や、また奨学金事業について、国が都道府県に対して新たな交付金を措置することによって、一人でも多くの高校生が学業を継続できるよう、緊急支援を行うことを検討しているところでございます。

石関分科員 今私は野党にいますけれども、こういうものについてはどんどん出してもらいたいと思うんですよ。地元紙にもいっぱい出ていますし、私も実際、よく地元の方から聞きます。私が出た高校でも何人の方が学費が今払えない状況になっているか、これは確実にふえているんですね。それにしては、やはりちょっと取り組みが遅々たるものかなというふうに思います。日本全体のこれからの人材育成というものも大事ですし、一方で、今の経済状況を受けて、今いる人たちを何とかしてあげたい、こういう部分は、国からぜひ強いメッセージを、メッセージだけじゃなくてお金もつけてあげて頑張っていただきたいと思います。

 ただ、大臣よく御承知だと思いますけれども、ここ数年の各省庁の予算の割合を見ると、ほとんど変わっていないですね。厚労省だけがいろいろな要因でふえていますけれども、ほかの役所は変わっていないですよ。文部科学省も残念ながら変わっていない。ということは、ここ数年間で、こういう状況になってもなかなか予算配分が変えられないというのが今の政治の現状でもあります。

 これは、役所の方だけに任せておくと、どんなに頑張っても役所の比率は変わらないんですよ。私も役所にいましたし、立派な、大蔵省にいらっしゃった先生もいらっしゃいますから、よくわかっていると思いますけれども、これは政治が何とかしなきゃいけませんので、ぜひ大臣、在任中に最大限のリーダーシップを発揮していただいて、文部科学省の予算をぜひふやして、奨学金の事業もますますふやしてもらいたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて石関貴史君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 昨日に引き続き、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。広津素子君。

広津分科員 御質問の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 まず、予算の審議をするに当たりまして、我が国の現在の財政状態及び前年の歳入歳出、対象となる年の歳入歳出予測を国会議員が知ることができるか否かについて、お尋ねしたいと思います。

 我が国は、現在の最新の財務諸表である平成十八年度の貸借対照表によれば、国全体で九百八十一兆円の債務があり、純債務は二百七十七兆円となっております。また、独立行政法人、公庫、国立大学法人などを連結した連結財務諸表では、千九十三兆円の債務があり、純債務は二百六十一兆円となっております。

 そして、昨年来、燃油価格高騰によるコスト高とリーマン・ショックによる売上高の減少により、我が国の経済は不況に突入し、政府は景気対策として七十五兆円の経済対策を行い、さらに十兆円規模の補正予算を組もうとしております。

 もちろん景気対策は必要ですが、私たち国会議員が予算に関する審議を行うに当たっては、国の財政状態を知り、前年の歳出歳入及びことしの歳出歳入に関する予測を立てた上で審議する必要があります。民間会社では必ずこういうふうにしております。

 そこで、現在、どの資料を使うとそれが可能かについてお伺いします。

香川政府参考人 予算審議を行うに当たりまして、決算書や財務書類は重要と考えております。

 決算の国会への早期提出につきまして、参議院の方で御議論がございまして、平成十五年以降、従来、通常会の冒頭に出しておりました決算を秋の臨時会に出すようにしております。

 決算の十分な審議をお願いし、決算結果を予算編成に反映させるために、決算書でありますとか財務書類の利用が重要だと思っておりまして、十九年度決算については昨年十一月二十一日に国会に提出しておりますし、国の財務書類につきましては、十八年度決算分につきまして、昨年八月に公表をしております。

 なお、十九年度決算分につきましては、本年夏ごろに公表を予定しておりまして、現在作成中であります。

広津分科員 ありがとうございます。

 平成二十一年度の予算審議をするに当たりましては、本当は平成二十年度の決算を見ながら予算を審議したいわけですが、最新の財務諸表が平成十八年のものですので、それが不可能となっております。その点について、まだ国のやり方は不十分でございますので、ここを改善していきたいと思っている次第でございます。

 次に、我が国における公会計制度導入の進捗状況について、お伺いします。

 我が国においては、平成二十一年四月二十日現在において利用できる直近の財務諸表は平成十八年度のものです。これは、ソニーなどの国際的な大企業である民間企業が、世界に何百もの子会社を持っているにもかかわらず、決算を三カ月程度の短期間で終了して、財政状態、経営成績、収支の状況、次年度の予算を投資家に開示しているのと比較して、かなり遅いと言わざるを得ません。

 同じ国であるニュージーランドでは、公会計制度を導入しており、決算に要する期間は約六カ月弱で一般に公表しております。そのほか、欧州各国、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの多くの国が公会計制度を使って有価証券報告書を公表しておりますが、日本はそうではありません。

 我が国は、国際的に認められた公会計基準により、迅速に財政状態、収支の状況を広く国民に開示できるようにするシステムを導入する必要があります。そうすることによって、納税者である国民や国債購入者に情報提供を行うとともに、決算の結果を次年度の予算に反映して予算審議をすることが可能になると思いますが、いかがでしょうか。

香川政府参考人 国の財政状況の報告につきましては、決算を国会に提出しているところでありますが、それに加えまして、企業会計の慣行を参考とした財務書類についても、財政制度審議会において取りまとめられた基準に基づきまして、情報開示の観点から公表をしてきております。

 財務書類の公表時期につきましては、現金ベースの決算の計数を事後的に加工して作成しているということもありまして、現在、相当の時間を要しております。

 議員御指摘のとおり、財務書類の一層の活用を図るため、その早期化を図ることが重要だと考えておりまして、現在、公表早期化のためのシステムの開発に取り組んでいるところでございます。これらの取り組みによりまして、今後とも、可能な限り財務書類の作成、公表の早期化に努めてまいりたいと考えております。

広津分科員 やっているというようなお答えでしたけれども、現在やっていらっしゃるのは、統計的手法で数字を集めて、差し引き残高として純負債を出している方式でございまして、複式簿記ではありません。そのため、網羅性や検証可能性が担保されていません。ぜひ、国際会計基準にも認められた公会計基準を導入されることをお勧めします。そうでないと、他の国との比較可能性もありませんし、検証可能性もないので、なかなか正確であると証明できないということになります。ぜひそういう方向に行っていただきたいなと思っております。

 次に、我が国の負債を少なくする方法について提案をいたします。

 平成二十一年度の一般会計歳入歳出概算を見ますと、歳出八十八兆円のうち二十兆円を国債費が占めており、このうち債務償還費が約十兆円、国債利子が約八・六兆円ですが、これは、社会保障のうち年金、医療、介護を合わせた十九・六兆円と同じくらいです。

 もし国債利子がなければ、消費税増税を行わなくても、年金、医療、介護などの社会保障を充実させることができそうですし、将来、市場金利が上昇したときにも、国債費の増加により国の財政が破綻するのを防ぐことができます。

 そのため、国債を無利子国債に置きかえていくことを御提案します。無利子であるかわりに、相続税を免税する国債はいかがでしょうか。外国のファンドからも購入されると思います。そうすれば、富裕層が無利子で相続税免税の国債を買うことにより、一般の人の年金、医療、介護などの社会保障を充実させることができます。

 相続税を免税にすればもちろん相続税収入は減少しますが、現在では相続人のいない固定資産も多くなっておりますので、三年程度の一定期間相続人があらわれない場合には、その財産を国に収容するということを徹底すれば、相続税を免税にした分くらいは取り戻せるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石田(真)副大臣 ただいま御指摘をいただきました無利子国債についてですけれども、これは国と購入者の双方にメリットがある、そういう仕組みにするということについて、なかなか難しい課題があるわけでございます。

 また、一部の富裕層に相続税負担を軽減する手段を与える、これは公平性の問題でもございますし、またマネーロンダリング対策という問題もございます。さらには、税体系全体の改革の方向性との整合性ということもございますし、株式や土地が売却されて購入される場合の市場経済への影響、こういうようなことを十分検討する必要があるというふうに考えておるところでございます。

 今般、経済危機対策におきましては、住宅取得のための時限的な贈与税の減税、これを図ることといたしておりまして、厳しい財政状況のもとで、生前贈与の促進によりまして高齢者の資産を活用した需要の創出を図ってまいりたい、そのように考えているところでございます。

広津分科員 双方のメリットを出すという点で問題があるというふうにおっしゃいましたが、それに関しましては先ほど私が申し上げたとおりでございます。

 また、金持ち優遇という批判が出る可能性につきましては、金持ちの方のお金で年金、医療、介護を充実するということですから、一般の方のメリットの方が大きいので、私はそれは余り問題はないのではないかと思っておる次第でございます。

 次の質問に行きます。

 また、有形固定資産につきまして現在どう考えていらっしゃるでしょうか。

 私は、国が使っていない財産、遊休資産は、二束三文ではなくて、できるだけ高い時価で処分するのがよいと思います。それが、国民に負担をかけずに、既につくってしまった負債をできるだけ小さくする方法の一つだからです。

 現在、国有財産はどのように管理されているのでしょうか。そして、そのうち売却可能なもの、売却不能なもの、売却価値のないものはどれだけあるのでしょうか。そもそもしっかりと管理されて、時価がついていないとこれが答えられないと思いますが、この答えを言ってみていただければと思います。

中村政府参考人 まず、国有財産の管理について申し上げますと、国有財産につきましては、その性質に応じまして適切な方法で管理を行っております。

 例えば、現に行政の用に供されている庁舎とか宿舎のような財産につきましては各省各庁において管理していますのに対し、それ以外の財産につきましては財務省が管理し、財産的価値を維持しつつ管理処分を行っております。

 それから、次に、国有財産の中身を分けてみますと、例えば国有地について申し上げますと、道路とか公園とか河川とか、そういった公共用財産を除きまして、先ほど先生がおっしゃいました十八年度の国の財務書類におきましては、有形固定資産十八兆円余り、それに、棚卸資産の中に実は土地も入っておりまして、それを加えてトータルで十九兆円程度でございます。

 この中身でございますけれども、一つは、役所の庁舎やそれから防衛施設等として直接行政の用に供されている財産、公有財産が約十四兆円ございます。

 それから、公園用地等として地方公共団体に貸し付けた財産、例えば東京でいいますと代々木公園、大阪でいいますと大阪城公園、それから先生の御地元でいいますと舞鶴公園、これは国有地を無償で自治体に貸しております。そうしたものは二兆円余りございます。

 それから、在日米軍施設として提供している財産、例えば横田基地であるとか横須賀基地とかこういったものが二兆円余りということで、ほとんどが今申し上げたように行政その他の公の用に供されておりまして、現実問題として売却することはなかなか難しいのではないかと考えられます。

 残りのものの中から、山林原野のように、売却が現実的には難しく、仮に売却できてもほとんど収入が見込めない財産等を除きますと、現実に売却処分が比較的容易と考えられる国有地といたしましては、物納された土地などを中心といたしました未利用国有地、これは三千億円余りございます。

 そうした中で、その今申し上げた未利用国有地や、それから庁舎なんかも、移転、再配置等をやりまして不用となった跡地というのが出てまいりますので、そういったものにつきましては不動産鑑定評価を徴した上で原則時価で売却するということとしておりまして、これらの国有地の売却収入の目安といたしましては、平成十八年度から二十七年度までの十年間で、約三・六兆円の売却を見込んでおるところでございます。

広津分科員 丁寧な御説明ありがとうございました。

 無償で地方自治体に貸していらっしゃるものもあるようですけれども、無償である必要はないのではないかと思います。これはそれぞれの資産について一つ一つ見直して、リースするもの、売却するもの、このままにしておくもの、見直したら何か出てくるんじゃないかなと今印象を受けましたので、これをしっかりやっていきたいと思います。

 次に、国有財産の六一・三%を占めております有価証券、出資金について御質問します。

 国有財産の内訳を見ますと、政府出資が六一・三%となっております。有価証券、出資金は、例えばNTTの株式やJRの株式のように、経営主体が国である組織を民営化すると、創業者利益を得て現金化できるものも多いと思います。

 具体的にはどのような組織に対する有価証券や出資金を持っており、売却可能性のあるものがどのくらいあるかについて、お伺いします。

中村政府参考人 先生おっしゃいました数字は平成十九年度決算における数字でございまして、国有財産の総額は百五兆一千六百七十六億円、そのうち政府出資等は六十四兆四千八百三十九億円ということで、割合にいたしますと、先生おっしゃったように六一・三%になります。

 この内訳といたしましては、国際通貨基金や世銀グループの国際開発協会等、国際機関に対する出資、これが六兆五百五十七億円。それから、東京大学等の国立大学法人に対する出資が六兆七千百六十七億円。それから、いわゆる日本学生支援機構とか、それからJICA、国際協力機構、それから宇宙航空研究開発機構、要するにJAXAという、ロケットを打ち上げる、ああいったものの、独立行政法人に対する出資が二十兆二千七百億円。それから、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民政策金融公庫等の政府関係金融機関に対するものが十五兆千二百七十八億円。それから、いわゆるNTT、JT、日本郵政といった特殊会社に対するものが十四兆七百二十五億円。その他、例えば中央競馬会なんかを含めまして、その他のものは二兆二千四百八億円となっております。

 これらのうちの、民営化されて株式会社となった法人以外の独立行政法人等への政府出資につきましては、これはそもそも国の政策目的の実現の観点から、当該機関、法人等の事業の的確な遂行及び経営基盤の安定を図るために行われているものでございます。

 また、こうした法人は、利益を上げることを目的としておらず、またその持ち分を譲渡することも法律上想定しておりませんことから、法律上も利益配当請求権、要するに配当請求権がない。それから、実は残余財産分配請求権もございません。議決権もございません。そういった形で、民間の投資対象とはなり得ないことから、要するに、独立行政法人等という形態のままでは売却にはなかなかなじまないものと考えております。

 一方、民営化された法人に係る株式、いわゆる政府保有株式でございますけれども、これらにつきましては、NTTやJTのように政府保有義務がかかっているものもございます。そういったものは法律上売れませんので、そういったものを除いたものにつきましては売却を進めていくこととしております。平成十九年三月に工程表をつくってお示ししておりまして、日本郵政や日本政策投資銀行等、売却対象となる法人の株式につきまして、平成二十七年度までの十年間の売却収入の目安を八・四兆円と見込んでいるところでございます。

 なお、先生御存じのように、現在の株式市場の状況を踏まえまして、こうした政府保有株式につきましては、昨年十月三十日の生活対策の中で市中売却を一時凍結しているところでございますが、今後、株式市場が回復し売却を行うとなった際に、売却時期を逃すことのないよう必要な準備は行ってまいりたいと考えております。

広津分科員 どうもありがとうございます。

 例えば例を挙げますと、東京大学のような国立大学も一工夫すると全額国費でなくてもいいのではないかと思うんです。例えば、施設に関して財団のようなものをつくりまして、産学共同研究をやっている会社も多いですから、そういうところから施設費を一部出してもらうとか、いろいろ考えると方法はあるんじゃないかと思うんです。役に立つこともたくさん大学はやっておりますので、役に立っているところから応分の負担をしていただくというのはいいと思うんですよね。なるべくそういうこともやりながら国費を減らしていきたいなと思っているわけです。

 あと、現在の株価では売れないというのはそのとおりだろうと思いますが、ぜひ、株価が回復したときには、国民の利益になるように高い価格で売っていただきたいと思います。

 これで私の質問は終わりです。どうもありがとうございました。

横光主査 これにて広津素子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

横光主査 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

横光主査 昨日に引き続き、総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋範子君。

古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。きょうはよろしくお願い申し上げます。

 私は、テレワークの取り組みとそれから今後の新たな電波利用について、鳩山総務大臣にお伺いしてまいります。

 初めに、テレワークについてお伺いをいたします。

 多様な働き方の確立という観点で、私は以前よりこのテレワークの働き方に着目をしてまいりました。働きたいという意欲を持った人に仕事を提供できる、また在宅で、情報通信技術を活用して、場所を選ばない、また通勤時間もとらないというのがテレワークの働き方でございます。時間もとられませんし、また仕事削減にもつながろうかと思います。

 このテレワークが普及することによりまして、母子家庭のお母さん、子育て中の母親、また高齢者、障害者の方々への雇用の機会の拡大が期待をされております。そして、長時間通勤からの解放、それによって、子供と過ごすといった育児時間、また自分自身のキャリアアップのための学習機会の創出、労働人口が都市部に一極集中することを分散するというような、さまざまな利点があると考えられます。

 三年前になりますけれども、私が総務大臣政務官を務めさせていただきましたときに、郵政・情報通信担当でございましたものですから、子供の安全なネット利用、メディアリテラシー、そしてこのテレワークを強く推進しようと取り組んでまいりました。そして、平成十八年五月にテレワーク推進会議を設置いたしまして、少子高齢社会対策の一環として、また仕事と生活の調和、両立する、それを可能にするテレワークの導入の準備を積極的に進めてまいりました。そして、今でも、未来に向かってよりよい社会をつくっていくために、情報通信技術の利活用を積極的に進めたい、このように考えているところでございます。

 先日発表されました総務省の通信利用動向調査によりますと、平成二十年度末でインターネットの利用者、これが九千九十一万人、人口普及率が七五・三%になるということでございます。我が国のICTの利用も非常に進んできている、このように感じます。

 この情報通信技術は、単に普及が進めばよいというだけではなくて、生活の向上、暮らしの充実のために利活用を進めるべきであると考えております。その方法の一つがテレワークでございます。障害者、母子家庭、また子育て中の女性などの働き方また勤務形態として、少子化対策またワーク・ライフ・バランスの実現の観点からも、一層推進を図るべきだというふうに考えております。

 ワーク・ライフ・バランスの実現につきましては、二〇〇七年十二月にワーク・ライフ・バランス憲章が策定をされました。あわせて定められました行動指針におきまして、多様な働き方の選択を進める方策の一つとしてこのテレワークが掲げられました。また、テレワークについては、二〇〇七年にテレワーク人口倍増アクションプランが策定をされまして、二〇一〇年にテレワーク人口を倍増するとの目標を立てておりますけれども、まだまだ普及が進んでいないという実感を持っております。

 このテレワークの普及促進については、少子化対策やワーク・ライフ・バランスの実現の観点から、また内閣府、厚労省も含めて政府全体でしっかりと取り組んでいかなければならない、このように考えます。

 初めに、通信利用動向調査などが公表されましたけれども、テレワークの現状についてお伺いをしてまいります。

    〔主査退席、寺田(稔)主査代理着席〕

戸塚政府参考人 お答えいたします。

 平成二十年の通信利用動向調査によりますと、平成二十年末でテレワークを導入している企業は、前年から四・九ポイント増加いたしまして一五・七%となっております。また、導入していないが、具体的導入予定がある企業も、前年と比べますと一・七ポイント増加の五・二%となっております。また、テレワーク人口につきましては、国土交通省がテレワーク人口実態調査を実施しておりまして、最新の調査結果によりますと、就業者に占めるテレワーカーの比率は二〇〇八年で一五・二%となっておりまして、二〇〇五年の一〇・四%から四・八ポイントの増加となっております。

 このように、最新の調査結果でもテレワークは増加傾向にございます。二〇一〇年二〇%という目標の達成に向けて、さらに取り組みを進めていく必要があると考えております。

 以上でございます。

古屋(範)分科員 今お答えいただきましたけれども、テレワークの導入企業数、またテレワーク人口は増加をしているということでございます。しかし、単に数がふえるだけではなくて、よりよい働き方につながっていくことが大事なのではないか、そのように思います。テレワークの人口実態調査につきまして、担当は国土交通省ということでありますけれども、その実態をよく分析していただきたい、このように思います。

 また、このテレワーク、増加傾向にあるということでありますけれども、まだまだ導入していない企業は多いわけでして、子育て等で利用したくても、そこで働く人にとっては利用できない状況にもございます、もちろん職種にもよるわけでありますけれども。

 導入が進まない原因といたしまして、そもそもテレワークについてよく知らなかったり、雇用管理の方法がわからなかったりするのではないかと思います。また、技術面でいえば、テレワークの機器やシステムの導入方法や使い方がわからないということも考えられます。また、情報漏えい等セキュリティー面での不安が強かったり、技術を上手に活用すれば可能であるにもかかわらず、職種や仕事の内容によっては初めから技術的に難しいというふうに考えているという傾向もあるかと思います。さらに、導入のコストも課題になってくるかと思います。

 テレワークの普及促進のためにはこうした問題点を解消していくことが重要であると思います。テレワークの推進について総務省はどのような取り組みを行っていらっしゃるのでしょうか。

 また、総務省では、官公庁で初めて、平成十八年十月に、育児期間中の職員などに対して、週一回以上、部分的な在宅勤務、テレワークができるよう、本省、この霞が関で先駆的に本格的実施を進めてこられました。それから二年半が経過をしておりますけれども、その後の状況についてもあわせてお伺いいたしたいと思います。

鳩山国務大臣 事務方から詳しい御説明をいたしますが、古屋先生のお話を承っておりまして、先生が総務省におられて大臣政務官をなさったときにこのことを大変強力にお進めになって、その後のテレワークの推進に非常に先駆的な形でお力をちょうだいいたしておりますことについては、心から感謝申し上げなければならないと思っております。CO2の削減という問題もあります。

 ですが、私は、みずからの思い出を語りますと、十四年か五年ぐらい前に労働大臣を務めたことがあります。御党からは浜四津先生が環境庁長官をなさったときで、一緒の内閣におりました。そのころ、育児休業問題というのはまだ始まったばかりで、とても一般の企業に広げるということではなくて、せめて国家公務員から始めようかというか、始まっていたかもしれません。そういう状況のときに、私は、例えばこの育児休業という制度がオール・ジャパンになるのはいつぐらいなのということを随分尋ねますと、まだまだ時間がかかるのではないでしょうかというような、そんな答えであり、そんな議論を随分労働省の中でした記憶がございます。

 この育児休業の問題というのは、今でも実際大きな問題だろうと思います。問題が完全に解消したわけではない。そうなりますと、やはり、それは、ジェンダーフリーという考え方は、私は、基本的には間違っていないと思いますが、行き過ぎたジェンダーフリーはどうかなという思いはあります。そうした中で、やはり男女の本質的な違いというのは、一番違う点は、男は子供を産むことができないということだろう、育てることはできますけれども。そう考えた場合に、女性は子供を産む、その子供を産んだときに職場を去ることがやむなしという状況になる。

 したがって、テレワークが推進され、さらに一層推進されると、育児休業問題のかなりの部分が解決をするのではないか、私はそう思いまして、このことについては総務省として一生懸命取り組んでいきたい、こう思っております。

戸塚政府参考人 それでは、お答えいたします。

 総務省の取り組みでございますが、総務省では、技術的な課題の解消を中心といたしまして取り組みを実施しております。

 具体的には、テレワークについて、先生の御指摘のとおり、導入方法がわからない企業だとかセキュリティーの面での不安を持つ企業がございまして、こういった企業に対しまして、テレワークの理解を促進するという観点から、セミナーの開催等を通じましての啓発活動でございますとか、安全で簡易なテレワークシステムを実際に体験していただくという観点からのテレワークの試行・体験プロジェクトの実施といったことをやっております。

 また、技術面では、先進的な技術やシステムを用いた実験を行うということで、技術的にテレワークの導入が難しいと思われているような職種への適用の問題でございますとかさまざまな効果の検証等を行うテレワークモデルシステムの実験の実施ということもやってございます。

 また、テレワークの設備投資に伴うコストを軽減するという観点からのテレワーク環境整備税制といったようなことにつきましても実施してございます。

 平成二十年度につきましては、ワーク・ライフ・バランスの観点ということも考慮いたしまして、家族の生活空間と隣接した環境下での短期移住型のテレワークモデルシステムの実験というものと、また、出産、育児等のために在宅中の医師の方、女性の医師の方が多うございますが、このテレワークを支援するためのモデルシステムの実験というのも実施しておるところでございます。

 また、先生、大臣からのお話もございましたが、総務大臣政務官の当時御指導いただきました総務省職員のテレワークにつきましては、平成十九年五月から本省に勤務する全職員を対象に実施しておりまして、平成二十年度における登録者の延べ人数は八十名ということになっております。今後とも、その拡大に努力してまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 大臣、労働大臣当時のことも含めまして、ありがとうございます。

 子育てと仕事を両立する、これには、育児休業も当然必要ですが、やはりテレワークというような働き方改革も大変必要である、そこに着目を既にしていらしたのかなというふうに思っております。ありがとうございました。

 また、総務省では、八十名まで増員をテレワーカーはされているということで、かなり頑張って取り組んでくださっているのだな、そういう印象を持っております。これが全省庁に広がっていくことを私も期待しております。これが先駆けとなって広がっていってほしい、このように思っております。

 今御答弁いただきましたように、ワーク・ライフ・バランスの観点からいろいろなモデル事業を行っていらっしゃるということで、非常にすばらしいと私も思っております。子供の夏休み期間中に都市圏の社員が地方でテレワークを行って家族と生活するモデルシステムの実験、あるいは、育児中の女性医師が現場復帰するときのための、医師の業務負担軽減等の観点からの医師分野でのモデルシステム実験などが実施をされておりまして、ぜひすぐにでも全国に広げてほしいなという取り組みだと思っております。

 特に勤務医、小児科医、産婦人科の医師不足が非常に深刻な問題となっているわけなんですが、出産、育児などで病院での過酷な勤務との両立ができない、やめていかなければいけないという女性医師、非常にもったいないわけなんですね。この就労継続のための支援が必要であるかと思います。そこで、現在、信州大学医学部で、附属病院で実証実験が行われていると聞いております。これも、テレワークシステムが円滑な職場復帰に貢献できるのではないかということも注目をしております。

 ほかにもあるかと思いますけれども、特にこの二つのモデル事業について具体的に御説明をいただければと思います。

鳩山国務大臣 これも事務方から御答弁申し上げますが、今先生のお話を伺っておって、すばらしいなと思ったのは、周産期医療の問題がここまで問題になって、産科、婦人科不足、これは、こういうことを言ったら怒られるかもしれませんけれども、やはり女性は子供を産み育てますから、より周産期医療については、こう言っては怒られるかもしれませんが、男性医師以上にみずからの経験をもとにして親身になれる。そういう女医さんが、まさに自分が出産をして、そしてそのために全く職場に出られないというようなときに、テレワークでいわゆる御自身が担当する妊産婦の方と連絡がとれたら、これは最高にすばらしいだろうなと、今感動して聞いておりました。

戸塚政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘の二つのタイプの実証実験でございますが、まず短期移住型のテレワークモデル実験でございますが、この結果といたしまして、仕事に偏りがちな現代社会におきまして、家族とのつながりの強化や心身の充実といったワーク・ライフ・バランスの健全化が図られたというような面での効果でございますとか、短期移住の受け入れ地域、これは北海道でございますが、こちらとの交流といった面での、地域との交流の面でも効果が実証されたというふうに考えております。

 また、医師の分野の方でございますが、これは先生の御指摘のとおり、現場の医師の業務負担軽減の観点から、育児期の在宅の女性医師の活用や、一たん休業された方の将来の現場復帰を実施するためのモデル実験でございましたが、これも、在宅医師の医療業務の支援といった意味での効果でございますとか、円滑な現場復帰の効果というのが検証されたというふうに考えてございます。

古屋(範)分科員 大臣、ありがとうございました。

 これは、女性の患者の側からいたしましても、調査をいたしますと、やはり特に産科などは女性医師に受けたいという希望が非常に強いんですね。検診も女性医師なら行ってもよいというようなお答えも多く、その女性医師が出産、育児を経て職場復帰をするために、その円滑な手だてとして、このテレワークというのは非常に有効だというふうに考えております。

 また、このたびの追加の経済対策、経済危機対策と銘打たれておりますけれども、この中に、一人親支援、母子家庭の支援といたしまして、この在宅就業支援、いわゆるIT、テレワークのこうした就業への支援というものも盛り込まれております。

 総務省では、今までもこうした形でさまざまなモデル事業等を行いながら推進をしてこられているとは思いますけれども、厚生労働省あるいは内閣府等々、関係省庁とぜひ連携をして、このテレワークの普及を推進していただきたい、このように思います。

 大臣にもう一度御決意をお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 先ほどいろいろ申し上げたとおりで、先生のテレワーク推進の御努力に感謝申し上げながら、そういった意味で、幸せ増進のために、また働く方々、とりわけ女性の方のためにテレワークを推進していきたい、こう思っております。

 テレワークなどというのは、それこそ我々の子供のころには夢のような話で、テレビ会議とか、テレワークという言葉はありませんが、自宅で仕事をして、それがまたテレビを通じて職場と結ばれるなどというのは、まさに夢のまた夢であったことが実際に現実のものになってきているわけですから、これはもう大いに進めていきたい、こう思います。

 子供のころ、ぜいたくな話で申しわけないんですけれども、私ども、祖父以来、軽井沢に別荘がありまして、小学校のころは一月以上、我々家族は軽井沢生活をいたしておりました。父親が大蔵官僚でありまして、大体金曜の夜遅くやってきて、夏休みですから土曜日はとれたんでしょうね、土日と軽井沢にいて、日曜の夜には帰っていく。実際にはゴルフばかりしておりまして、余り子供の面倒を見る父親ではありませんでしたけれども、それでも、寝食をともにするというのかな、そういう充実感がありました。

 だから、毎週そういうことが繰り返される。もし父親が土日月火ぐらいいてくれたら、やはり私ももっと品格のある政治家に育ったのではないかとみずから思うわけです。ですから、それこそそういうときにテレワークがあったら、ぜいたくな話で本当はよくないかもしれませんが、夏休みの別荘生活なんて全然違ってくるわけですね。先ほどの例で、例えば北海道で夏を過ごす、そのときにテレワークができれば家族一緒に暮らせるなんというのは、本当にすばらしいことだと思いますね。ですから、そういう意味で頑張っていきたいということが一つでございます。

 それから、私は、以前から環境のことが一番興味があるものでありますから、ICTを使った環境問題への対処、とりわけ地球環境問題への貢献というものを考えた場合に、やはりこのテレワークによって通勤というものが不要になる。フードマイレージとよく言われますけれども、実は人間にもマイレージがあるわけですね。通勤マイレージというのがあるわけで、通勤マイレージが高いということは、それだけCO2が出る。

 例えば、私の地元あたりですと、もうほとんど車、福岡県ですとほとんど車通勤です。一台の車で会社へ行くということは、三百人か五百人ぐらいの大名行列でみんながはあはあ二酸化炭素を出すのと同じだということですから、人間のマイレージというのか、この移動がなくなるということは大変なCO2削減効果になりますので、そういった意味でもテレワークはそれこそ一石何鳥ということではないかと思います。

古屋(範)分科員 大臣御自身の体験も交えながらの踏み込んだ御答弁、ありがとうございました。

 では、次の質問に移ります。

 現在、戦後最大の同時不況の中で、その危機を脱して我が国の経済再生、さらなる飛躍を実現するために、世界最先端の技術力を持つ情報通信技術の活用、特に携帯電話を初めといたしました電波を有効に活用して、新産業の創出や国民生活の基盤を構築していくことが極めて重要だと認識をいたしております。

 これまでも、携帯電話など、我々の生活の利便性の向上に役立つ電波の利用が進んできたものと思われます。我が国が世界で最初に体験すると言われている少子高齢化の問題のほか、地域での医師、医療機関の不足や老老介護などの医療、福祉関連の課題、またCO2排出量の削減などのエネルギー、環境問題といった、ふだんの生活を取り巻くさまざまな社会問題を解決する一つの手段として、無線通信が果たす役割、これはこれまで以上に大きくなるものと期待をしております。

 例えば、出産や子育てに追われて仕事との両立がなかなか難しいと言われていた女性が、無線を利用していろいろな場所から社内の会議に参加したり、あるいは体の不自由な方も自宅にいながら仕事に従事できる、こういった社会参加の機会も増加をする。その上、物理的に移動しなくてもいい。今も大臣おっしゃいましたように、時間の制約またCO2の排出量の削減に貢献したりということも、現実的なものとなってきていると思われます。

 ほかにも、小型の無線チップを使って製品の物流管理ができるようになる。特に食品偽装問題などを解決し、日々の私たちの生活の安心、安全を確保するという面でも貢献が非常に期待をされているところであります。

 そのほかにも、電波の利用分野が広がることで国民生活が豊かになっていくものと思われますが、今後、二〇一〇年代、どのような電波利用が新たに見込まれ、それらが国民生活の向上にどう役立つと考えられているのか、総務省のお考えをお伺いいたします。

桜井(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 電波利用につきましては、先生先ほど御指摘のとおり、従来からの主要な利用形態であります携帯電話ですとか、あるいは放送などに加えまして、さまざまな分野において新たな期待というのが高まっているというところでございます。

 このため、総務省におきましては、昨年十月に電波政策懇談会というのを開催いたしまして、二〇一〇年代に実現が期待される新しい電波利用のシステムあるいはサービスにつきましての将来像について御検討いただいているというところでございます。

 この電波政策懇談会の議論の中では、携帯電話、放送、衛星といった従来の主要なメディアに加えまして、例えばでございますけれども、医療分野においては、ワイヤレス化したカプセル型の胃カメラ、これによります人体内の診察でありますとか、あるいは、先ほど先生も御指摘ありましたような電子タグを利用して、子供や高齢者は外出先でも位置を正確に把握できる、そういった見守りシステム、あるいは見通しの悪い交差点で出会い頭の事故というのを防ぐためにぶつからない車を実現する次世代のITSシステム、こういった安心、安全のワイヤレスシステム、あるいは家庭内のテレビですとか、あるいはパソコンといったものがワイヤレスでつながるというコードの要らない快適な生活環境を実現する家庭内のブロードバンドシステム、こういったいろいろな御指摘がなされているところでございます。

 総務省といたしましては、本年六月にこの懇談会の取りまとめを予定しておりますので、そういった取りまとめを踏まえまして、新しい分野での電波利用の促進ということに努めてまいりたいというふうに考えております。

古屋(範)分科員 幾つかの例を挙げてお答えをいただきました。それぞれ非常に重要な、そして国民生活に非常に役立つ研究開発であると思います。

 携帯電話のさらなる高度化に加えましても、新たな電波利用システム、またサービスを世界に先駆けて実用化していくこと、国際競争力を持つ機器やアプリケーションの開発、製品化を急ぐべきであると考えております。

 例えば、無線通信技術の最先端の研究開発機関が集積をしております横須賀リサーチパークにおいて、産官学が連携してさまざまな研究開発に取り組んでいる状況でございます。今後、日本の強みを生かした新技術の市場投入を図って、新たな産業を創出していかなければなりません。しかし、なかなかこうした経済危機の中で、各企業ともに研究開発費を捻出すること、これが非常に難しくなってきております。特に、電波利用分野への取り組みは、産業の活性化、国際競争力の強化を図る観点において、その中核となると考えております。そのためには、産官学の研究機関の力を結集して、いわばオール・ジャパンとして無線通信技術の研究開発を加速化すべきであると考えます。大臣のお考えをお伺いいたします。

鳩山国務大臣 私は、恥ずかしいことに、数学は物すごく得意だったんですが、最近の科学技術にはついていけなくて、恐らく古屋先生の百分の一の知識もないと思うんですけれども、今も、ワイヤレス胃カメラなんというのは本当にびっくりしました。私は大病をしたことが一度もないんですが、初めて選挙に二十八歳で出たんですが、そのころ神経性胃炎というのか、やはり選挙というのは体がおかしくなるんですね、それで、胃カメラをのんだときの恐怖は今でも忘れられないですよ。こんなものをのみ込むような感じでしょう。おえっとなって、だから、とにかく生涯二度と胃カメラだけは入れたくないと思っていましたけれども、こういうものができれば本当にすばらしいと思います。

 また、電子タグの利用というのは、子供や高齢者の安全のためにも大切だと思いますけれども、嫌がるけれども、うちの秘書たちにつけたいですね、すぐサボるものですからね。だから、この電子タグをつければちゃんと、町を歩いているとかがわかるんだなと思いますが。ただ、実はこの問題は、私は動物愛護議連の会長をやっておりまして、みずからのかわいらしいペットにこういうのを使って、野良犬、野良猫にならないような利用もできるというふうに考えているわけでございます。

 三月に、デジタル日本創生プロジェクト、ICT鳩山プランということで幾つかお示ししたことがありまして、中長期的には数十兆円規模の新産業だろうと。大体今はこんな、百年に一度という経済の縮小というか、GDPがどうなるかという問題が出ておりますけれども、GDPの成長する部分の大体四〇%はICTと言われておりますから、ICT抜きに日本の経済というのはこれから考えられなくなるんだろう、そういうふうに思っておりまして、私は本当に知識が少ないんですが、いわゆるワイヤレス時代というんでしょうか、ワイヤレスブロードバンド環境の実現ということを努力していきたい。

 それから、私の聞いた話では、ワイヤレスで電力まで送ることも可能になる、何か怖いような気がするんですが、ワイヤレスで電気を送るようなことができればすばらしいな、こういうふうに思っておりまして、ワイヤレスブロードバンド環境のためには百九十八億円という予算、これは今回の補正でお願いをすることに予定いたしております。一生懸命頑張ります。

古屋(範)分科員 テレワークの普及、また無線通信技術の研究開発の促進を求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

寺田(稔)主査代理 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾分科員 民主党の鷲尾でございます。

 きのうは郵政記念の日ということで各地でいろいろ式典が催されている、またきょうも式典が催されているようでございます。そんな忙しい中で、きょうは日本郵政株式会社の藤本常務執行役にもおいでいただいております。大変お忙しい中、何か午前中は四国におられたようでございますが、国会の方に来ていただいているということでございまして、実のある議論をぜひともしてまいりたいと思っています。

 冒頭、私、鳩山総務大臣に大変な敬意を表させていただきたいと思っております。と申しますのは、かんぽの宿のオリックスさんに対する一括譲渡契約、これはある意味、鳩山総務大臣のツルの一声でとまったというところでございます。また、その後、総務省としても、日本郵政株式会社あてに、監督上の命令ということで四月三日に出されております。この資料も拝見をさせていただきましたので、資料に基づいて幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 かんぽの宿についてですけれども、公表されている書類を拝見いたしますと、平成十六年三月期から平成十九年三月期まで四期連続で減損をいたしております。土地で約三百億、それから建物でも約千三百億されております。当然、郵政公社さんが、企業会計原則が適用になってからいわゆる減損の会計というものを適用してというお話の経緯は、今までの予算委員会の議論でも、私、承知いたしております。国有財産が、国民共有の財産が、たった三年で約一千六百億円もいわば滅失してしまっているというのが計算書類上の事実でございますので、果たしてこの処理が適切だったかどうかというところについても、我が党の峰崎委員が国会でやられました議論をベースに、きょうは少し深掘りをさせていただきたいと思います。

 また、国民の共有の財産を守るという立場で、総務省さん、それから金融庁さんも、監督上の責任というのは一体どういうものがあるのか、また、これからどういう方針を持って、こういった日本郵政株式会社などの経営方針に対して、どういった点を留意すべしと言うのかということについて、議論を進めさせていただきたいと思います。

 日本郵政株式会社に対する監督上の命令を読みましたけれども、その中でも、私、特に注目いたしたいなと思うのは、これまでの歴史的経緯を尊重して国民共有の財産に対する認識をしっかりと改めるべきである、また、適正な譲渡価格を実現すべしであると。その中の論点として、入札価格の基準を事業譲渡、社員の雇用継続を前提とした極めて低い鑑定評価を前提に行われた減損処理後の簿価を用いたということや、一括譲渡を前提として鑑定評価額や帳簿価額を大きく上回る入札価格を適当として判断したということについて、これはちょっとおかしいんじゃないかといった点を挙げておられます。

 確かに、平成十九年三月に一括売却した不動産計百七十八物件中、約六八%がその後転売されております。その後転売され、落札業者が当然転売暴利を得ていた、こういう事例が続々と明らかになっているわけですから、これらの事例の責任というのは、当然、資産管理上の責任として日本郵政にあるであろう、また、その一因として減損会計ということがあるであろうというふうに考えております。

 そこで、もともとの減損会計というものは一体どういうものかということを少しおさらいさせていただきたいと思います。

 固定資産の減損というのは、固定資産の収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなった状態であって、減損処理とは、その価値の下落を帳簿価額に反映させる会計処理であるということで、この減損会計というのは、時価と簿価の差額を評価損として計上するいわゆる時価会計ではなくて、将来の収益から回収できる見込みのない投資額を損失として認識していると。この間、金融庁さんもお答えいただいているとおり、これは取得原価会計の枠内の話でございます。

 他国のことを紹介いたしますと、アメリカでは、あくまでもこれは、時の経営陣が短期的な業績のV字回復を目的として一挙に減損を出して、そこから次の期にV字回復させる、そういったような恣意的な減損の計上を防ぐためにこの減損会計が作成されたということを聞いております。

 また、我が国では、バブルの崩壊以前では、固定資産に含み益が発生している、それを企業がため込んでいていいのかという議論、それからバブル崩壊以降では、不動産価格が下落していわば資産に含み損があるであろうけれども、それが財務諸表にあらわれていない、これは投資家にとって投資情報としては余り有効ではない、だから、その含みの部分をしっかりとあらわせる、そういう意味で減損会計を作成したということでございます。

 そこで、この先ちょっと質問に移らせていただきたいと思います。

 資産の時価評価と金融資産の自己評価、それから固定資産の減損というのは、これは全く異なるということは峰崎先生の議論でもあったんですけれども、この中で、国会でお答えをいただいている内藤局長の答弁に、減損会計における時価の算定につきましては、同資産の種類や特性によって方法は異なるものの、資産の営利、非営利により取り扱いの差は設けられていないとあります。

 私、考えますに、資産の営利、非営利というのは経営者の意思に基づくものであります。要するに、不動産を考えて、それを販売するのか、投資用で持つのかということの経営意思が、資産としての種類や特性に含まれるというふうに考えているわけです。

 日本郵政さんにお聞きしたいと思いますが、減損の兆候を判断する基準として、営業活動から生じる損益またはキャッシュフローが継続してマイナスの場合というものを適用しているというふうに御答弁されていますが、これはなぜなんでしょうか。

    〔寺田(稔)主査代理退席、主査着席〕

藤本参考人 お答えいたします。

 今先生のお話にもございましたように、郵政公社の会計は、公社法上、企業会計原則によるものとされておりました。上場企業等に対する減損会計の強制適用に伴いまして、平成十七年度の中間決算から減損会計を導入したものでございます。

 具体的には、固定資産の減損に係る会計基準適用指針に基づきまして、営業活動から生じる損益等が継続してマイナスとなっている場合に該当するということで適用した次第でございます。

鳩山国務大臣 私は、今のは、事実かもしれませんけれども、基本的な間違いを犯してああいう答弁をしていますよね。だって、かんぽの宿は加入者福祉施設であって、これはもうけてはいけないということが書いてあるわけですから。そもそも、それが大体、損が出ているだとか赤字が出ているからといって減損処理をする、そういう考え方自体が、全く郵政文化を理解していない、かんぽの宿の本質を理解していない。そういう今みたいな、今の答弁は仕方がないかもしれませんが、私は認めません。

鷲尾分科員 大臣がおっしゃったとおりだと私も認識をしております。

 かんぽの宿というのは、当然、非営利でやるものだというふうに法律で決まっております。非営利でやるということが法律で決まっているその資産を、減損の兆候を判断する基準として、営業活動から生じる損益、キャッシュフローが継続してマイナスということを基準に判断するというのはやはりいかがなものかと。

 そしてまた、総務省さんが今般お出しになりました監督上の命令の中でも、やはり国民共有の財産、それから歴史的経緯をしっかりと考慮した上で慎重に譲渡価格について考慮すべきだという話がありましたが、当然それは、企業内における資産価値の保全、また、そういう意味では、企業会計の適用にもやはりそういう思考が反映されていかなければいけないというふうに考えております。

 そういうことからすると、私は、この資産の減損の兆候を判断する基準として、当然ほかにも基準があったわけでありますが、今回、日本郵政さんがやられている将来キャッシュフローの現在価値という方法ですけれども、そのほかにもいろいろな方法があったと思われますが、そのほかの方法を考えることはしなかったのかということについてお聞きをしたいというふうに思います。

藤本参考人 お答えいたします。

 今私の方で申し上げましたのは、減損の兆候の判断ということでございまして、将来のキャッシュフローというよりは、過去の、二年間連続しての営業赤字というようなことでございました。

 それ以外について考慮しなかったかという点でございますけれども、郵政民営化法関連法案が可決されまして以降は、この会計基準によります使用範囲または方法について、回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合に該当する、要するに、事業の譲渡でありますとか廃止というものがそれに該当するという判断でございました。

鷲尾分科員 きょう、私、資料をお配りしております。これは、会計監査人が使う監査の小六法というところからとらせていただいております。減損会計の適用指針、実務用の指針でございます。当然、藤本常務もよく御存じのことと思います。

 減損の兆候の判断といたしまして、当然、営業活動から生じるキャッシュフローが継続してマイナスとなっているということも一つ要件として挙げられているわけですけれども、こういう現象があれば減損の兆候だとみなすということになっているんですが、例えば、継続してキャッシュフローがマイナスであるということについては、このプリントの中ほどの矢印以降を見ていただきたいんですが、「ただし、」とありまして、「事業の立ち上げ時など予め合理的な事業計画が策定されており、当該計画にて当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスよりも著しく下方に乖離していないときには減損の兆候には該当しない。」とあるんです。

 これは旧簡易保険法に基づいて、当然、郵政公社時代もそう、それから日本郵政株式会社時代も当然これは承継されているということでありますので、営業活動から生ずるキャッシュフローが継続してマイナスになっていたとしても、これは法律によってマイナスになることが予定されているわけですから、これは、「当該計画にて予定されていたマイナスよりも著しく下方に乖離していないときには減損の兆候には該当しない。」とありますので、当然、著しく下方に乖離していないと私は考えております。というのは、業況が何も変わっていないわけですから、著しく下方に乖離することはないであろうと。ということを考えますと、減損の兆候なしと会計基準上も言えるのではないかという話でございます。

 この点について、藤本常務、せっかくこちらまで来ておられますので、コメントをお聞かせ願いたいと思います。

藤本参考人 お答えいたします。

 この条項の適用される範囲でございますが、あくまでも私どもの理解でございますけれども、一般的に事業の立ち上げに際しましては、最初の数年間赤字になることは間々あることでございまして、そういう場合には減損の兆候に該当しない。それと、それからさらに乖離をした場合どうか、そういった特定の場合に適用される条項ではないかというふうに理解をしておるわけでございます。

鷲尾分科員 この件は、こういう項目があるのはどういうことかというと、実質で見ていただきたいと思うんですけれども、やはり非営利である。非営利であるというのは、それは非営利であっても、事業のキャッシュフローがプラスに転じるものも、もしかしたらあるかもしれません。もしかしたらあるかもしれないですけれども、やはりこういう規定を用いるべきであったというふうな判断をしたいと思うんですね。

 というのは、国民の共有の財産を減損せしめるということは、これは当然、損益計算書上に減損損失が計上されるわけです。これは複式簿記の原理でいけば、貸借対照表上の資本の部を減じるということなんですね。では、日本郵政株式会社の今の資本の部を持っているのは、これは政府です。日本郵政公社時代も政府です。ということは、国民の資産を減じるということにつながるわけですよね。ということは、経営陣の中で国民共有の財産に対する理解がやはり乏しかっただろうと言わざるを得ないと思うんです。

 私、公認会計士なんですけれども、もし私がこの会計監査人であれば、やはり、これをもってして資産の減損の兆候とは、とてもじゃないけれども判断できないであろう、私自身はそう思わせていただいております。

 それで、少し具体的に今藤本常務にもお答えをいただきましたので、話を進めてまいりたいと思いますが、これは総務省さんと金融庁さんにもお答えを願いたいと思うんですが、資産の種類や特性に応じて評価方法が変わるということであれば、国民の共有財産であって非営利事業が義務づけられているという資産の特性からいけば、どういう評価方法が適当と考えられますか。

鳩山国務大臣 私は、先生のような公認会計士さんに立ち向かって物を言えるような、そういう会計についての知識はゼロですから、全く粗っぽいことしか言えませんけれども、ただいまの議論を聞いておりましても、これは国民共有の財産である、その認識が足りなかったということで、私は業務改善命令を出し、十六の問題点を指摘したわけでございます。

 この国民共有の財産というのは、税金という意味ではありません。税金だったらまだしも、税金ででき上がったものも国民共有の財産ですが、それ以上に、簡易保険のお金を積んでいる、メルパルクでは郵貯ということもあるでしょう。簡易保険のお金をみんなが積んでできた共有の財産であって、いわゆる営利事業、もうける事業としてやってはいけないというふうにして営業をされてきたかんぽの宿の場合は、今、いい勉強をさせていただいてうれしいですよ、全くこれに当たりますよ。それは減損の兆候なんて該当するわけがない。

 鷲尾先生から非常にいいことを教えていただいたというふうに思いますし、そういう意味で言えば、私は、減損の兆候と見るのもおかしいし、では評価するならどう評価するかというならば、それは、それをそっくり最も買いたい人に競争入札で売って、少なくとも固定資産税評価額あるいはそれ以上のもので売れなければおかしい、こう思います。

鷲尾分科員 今、鳩山総務大臣は重要なことをおっしゃっていただきました。こういったケースでは、やはり固定資産税評価額が一つの基準であろうということを今おっしゃっていると思っております。固定資産税評価額でまいりますと、二〇〇八年の固定資産税評価額では、今般の国会での議論を見ますと八百五十六億円だという話でありますので、それと大幅に乖離している評価をしてしまっていたというところであります。

 鳩山大臣、ありがとうございました。固定資産税評価額ということが一つの基準になろうということでございました。(鳩山国務大臣「本当ならもっと高くていいんだけれども」と呼ぶ)はい。ありがとうございました。

 それで、ちょっと議論を次に進めさせていただきたいと思いますが、藤本常務が以前、国会で、郵政民営化関係の法令が国会を通りまして以降は、先ほど申し上げました営業活動から生ずるキャッシュフローによる減損の兆候の判断だけではなく、使用範囲または方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合にも該当すると認識しているという御答弁をなさっておりますが、この「使用範囲または方法について回収可能価額を著しく低下させる」ということに、郵政民営化関係の法令が通ったことが関係するのかどうかについて、認識をお尋ねしたいと思います。

藤本参考人 民営化の関係の法令に、民営化後五年間で、かんぽの宿あるいはメルパルク等の旧郵便貯金の周知宣伝施設でございますが、そういうものを譲渡または廃止すべきであるというふうに規定されてございまして、そのことが、きょう先生お配りの適用指針でいいますと、十三でございます。ちょうどお配りいただいた紙の真ん中辺に、適用指針十三という括弧書きがございまして、その下の一行、「資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること」、これに該当するものと考えておりました。

鷲尾分科員 これは、私、わざわざ載せさせていただいたんですけれども、「具体的には、次のケースです」と適用指針十三にあるんですね。これは個別に、「資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること」に当然当たるのかもしれません。これは法律が当然あるわけですから、その法律によって平成二十四年という年限が限られているという意味では確かにそうなのかもしれませんが、これは具体的には次のケースなんですよね。経済実態としては、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは生ずる見込みであるかというところが重要なんですよね。この回収可能価額が重要なんですよね、会計の。だから、事実として事業を廃止または再編成したとしても、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じなければ、当然にして減損の兆候を判定する基準にはならぬわけですね、当然ですけれども。

 では、この回収可能価額というのは、先ほど鳩山総務大臣がおっしゃっていたとおり、固定資産税評価額で評価するべきだという話もございましたが、これが郵政民営化の関係の法案が通ったことをもって著しく低下することなのかどうかというところが私の質問のポイントなんです。どう思いますか。

藤本参考人 どういうふうに回収可能価額を判断するかというお尋ねだと思います。

 五年間で譲渡または廃止ということになりますと、当然、将来キャッシュフローはその間に限定いたします。ただ、その場合、いかんせん、かんぽの宿の場合ですと、将来キャッシュフローはなかなか黒字になりませんので、結局においては、何で評価したかといいますと、回収可能価額は正味売却価額で判断いたしておりますので、結果におきましては、回収可能価額というものは変化がないということでございます。

 ただ、減損の兆候におきましては、事業の譲渡または廃止というもので、この十三項に該当するというふうに考えておったわけでございます。

鷲尾分科員 今ちょっとわからなかったですよね。少し混乱されているのかなというふうにお見受けいたしますが、回収可能価額が著しく変化するかどうかが、この適用指針十三の肝なわけです。その中の具体的事例として、一般企業でいくならば、使用されている事業を廃止または再編成するということになれば回収可能価額は実質的には著しく低下するよねということであって、この具体的な事例に当たるから回収可能価額が著しく低下するということにはならぬわけですね。ですから、そこら辺は実際どうなのかという質問だったわけでございます。

 金融庁さんにちょっとお聞きしたいなというふうに思うんですけれども、例えば、先ほど、非営利で、こういった形で法律で使い方が決められている、また、国民の共有財産であるということを考えた場合に、回収可能価額の評価というのはどんなものを用いるべきなのかとお考えでしょうか。

岳野政府参考人 回収可能価額について、どのような手法が適当かというお尋ねでございます。

 金融庁といたしましては、会計基準という一般ルールがどうなっているかということを御説明させていただくという立場で御説明申し上げます。

 先生はむしろよく御存じでいらっしゃいますので、釈迦に説法のような形でまことに恐縮でございますけれども、固定資産……(鷲尾分科員「非営利の方です」と呼ぶ)

 それで、私どもが申し上げたいことは、会計基準の考え方の中に、明示的に営利、非営利ということは出てきておりませんで、繰り返し御説明申し上げておるところでございますけれども、資産の種類や特性に応じて手法を選択すべきというのが基準であるということを申し上げている次第でございます。

 すなわち、固定資産の減損に係る会計基準によりますと、回収可能価額を算定するわけでございますが、これは正味売却価額または使用価値ということでございます。この場合、特に正味売却価額について申し上げますならば、時価から処分費用見込み額を控除して算定、その算定に当たりまして……(鷲尾分科員「オーケーです」と呼ぶ)はい。

 では、さらに一言だけ。その中で、具体的な算定方法といたしましては、先生御指摘の原価法、すなわち、再調達価格をとる、あるいは取引事例比較をとる、あるいは収益還元法によるということで選択肢がございまして、この中から、資産の特性等により、これらの方法を併用または選択し、算定するということが会計のルールでございます。

鷲尾分科員 金融庁さんにお答えいただきたかったのは、確かに非営利、営利ということで、先ほども申し上げましたけれども、非営利というのは、会計基準上は何も別に縛りがあるわけじゃないです。ただ、営利か非営利かというのは、その資産の種類の特質として当然認められるべきものですから、金融庁さんとしては、一般の会計基準には書いていないけれども、では、資産の種類として非営利を見た場合どうかという質問だったんです。恐らく、多分、これからまた答弁をいただくと、岳野さんにまた一般的なお答えをいただくので、お答えいただかなくて結構です。

 それで、つまり、私が申し上げたいのは、結局これは、郵政公社時代、それから日本郵政時代、続けて四期連続で減損を行っているわけですね。減損を行っているというのは、つまるところ、国民の財産の滅失ですから、国民の財産の滅失を、ある意味、恣意的に行っていることにもつながっているんじゃないかなと。大臣が今おっしゃっていたとおり、私の考え方は、固定資産税評価額ぐらいは当然やってもらわなきゃ困る、それぐらいで評価してもらわなきゃ困ると。ところが、日本郵政としては、そうじゃないということですよね。それによって、ある意味、不当に国民の財産が滅失したということになっているんですよね。

 この際の日本郵政に対する経営責任というのは当然感じてもらわなきゃいけない。それがいわば業務改善命令だったと思います。ただ、日本郵政になる前の話も当然あります。そこら辺の責任を大臣はどういうふうに考えておられるのかということについてもお聞かせ願いたいと思います。

鳩山国務大臣 当然、一般的な監督権限があるわけですから、それは総務省としての監督上の責任は免れないというふうに私は思っております。私は、この百九億円での企業譲渡という形でのたたき売りを防ぐ、とめるのが精いっぱいであった、こういうふうに思うわけです。

 私は、減損会計というマジックを使って一生懸命価格を下げてきたようにしか見えないんです。つまり、相続税評価額でもいい、固定資産税評価額でもいい、できれば実勢価格。国民共有の財産なんですから、もし売るのであるならば、それくらいで売っていくように努力するのが当たり前だというふうに思っておりまして、そもそもが赤字という概念が、使っていいのかどうかわからないものにこういう減損処理というマジックをかけた。しかも、それは意図的にかけたとしか思えない。

 ということは、すごく低い値段にしてどこかに利益を移そうとした、たたき売ってどこかに利益を移そうとした、そういうできレースにしか見えないから、日本郵政の今までの態度は間違っていると私は言っているんだ。だから業務改善命令も出したし、それは日本郵政が何にもできなくなっちゃいけないから、三月三十一日までには事業計画の認可はしました。しかし、そこには条件をつけて、かんぽの宿等をちゃんと、メルパルクも含めてでしょうが、民営化したんだから、利益を生むように努力をしろと。それは竹中さんが、ことしまた一年赤字を出したら、あとは僕の責任だ、こう言っていますから、まあ難癖みたいな話ですけれども。

 だから、ちゃんと民営化したんだから経営をして、経営努力をしてください、そうやって業務改善命令も出し、事業計画への条件つきの認可をしたにもかかわらず、何か反省の色の全くない態度を見ると、私は怒りを禁じ得ませんね。

鷲尾分科員 鳩山大臣、本当にありがとうございます。全く認識は一緒でございまして、企業会計原則内における減損会計を適用したという、表向きありますけれども、その減損会計を適用するに当たっての基本的な意識というものがなければ、これは安易に経営側が国民の資産の価値を滅失させ得ることもあるんだというところなんですよね。

 ですから、これから政府側といたしましても、これは日本郵政を奇貨として、国民の共有財産をどう守っていくのかというところについて明確に政府が基準を出すということも、これは経営側に余計なことをさせないんだということにもつながると思いますので、引き続きのしっかりとした監督をお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて鷲尾英一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田隆志君。

和田分科員 民主党の和田隆志でございます。

 鳩山総務大臣には初めて質疑させていただきますが、よろしくお願いいたします。

 先ほどの鷲尾委員の質疑もそうですが、私は、鳩山総務大臣の国会での御答弁をお聞きしておりまして、一つ共感できる点がございます。常に国民の皆様方のための政府であり法律であるということを視点に据えていらっしゃるからこそ、かんぽの宿の問題等であれだけ御奮闘なさるのであろうなと思って見ておりますので、私がこれから申し上げる分野につきましても、ぜひそういう視点を持っていただきながら御検討いただければと思います。

 まず、質疑通告しているものの範囲外でございましたが、先ほど待機している間に見せていただきました。今の会計検査院の指摘事項の中の通信・放送機構、独法になりましたので、ちょっと名前が変わっておりましたが、あの問題につきましては、実は私、財務省に勤務しておりましたときに、私自身が産投特会の予算査定担当者でございまして、大変思い入れが深うございます。

 ごくごく簡単に触れておきますが、あの当時、機構の方々とも、それから総務省の方々とも随分議論させていただきました。独法になるに当たって資産をどのように承継させるか、そして、承継するに当たっては、承継した後、どのような業務を展開していくのか、そうしたことについて随分活発に議論させていただいた覚えがございます。

 その際、私が忘れてはならないと思って再三再四申し上げてきたことでございますが、独法として存続せしめる以上は、その独法としての業務が最も遂行できるように、いろいろなものを考えていかなきゃいけないんだと思います。そういったこともあって、資産は一たん承継することを査定担当者としても同意いたしましたけれども、今指摘事項の文面を読んでおりますと、どうも、その承継したものから投資有価証券などにいろいろなお金が流れているようでございますが、産業投資特別会計というのは、ちゃんと法律に書いてございますが、そんなもののために使うとは書かれておりません。研究開発予算として組まれている特別会計でございます。

 ぜひ、総務大臣におかれまして、特別会計を存置せしめている以上は、その特別会計から流れ出る原資をもとにどのような活動を展開なさるのかということを、しっかりと事務方とお詰めいただければというふうに思います。

 この点は、私の意見として表明しておくにとどめておこうと思います。

 さて、質疑時間が三十分でございますので、今回取り上げるテーマにつきまして、そんなに細部にわたることを申し上げるつもりはございません。ここからは、きょう質疑通告した内容に入らせていただきます。

 総務大臣も政治家でいらっしゃいます。私も、こちらの方に参りまして、とにかく有権者の方々がどんな御意見や御要望をお持ちなのか、自分の選挙区を歩かせていただいておりますが、その中から発見したテーマでございます。

 質疑通告した中には、総務省という役所と、それから、一つの公共機関として成り立っておりますNHKというところに対して、国民の皆様方にどのような情報をお渡しすべきなのかということを、いろいろな法律を使って定義してあるはずでございます。私は、全部おっしゃっていただくつもりは全然ございませんが、その主なところを共通理解した上で質疑に入りたいと思い、まず第一問として設定させていただきました。

 まず、総務省がお考えになっておられるさまざまな所管法律の中で、とにかく国民の皆様方にきちんとお渡ししなければいけない、法律上義務づけられているかどうかも分類しながらお考えいただければと思いますが、少なくとも法律上、総務省が責務として負っていらっしゃる、国民に届けるべき情報について、幾つか例示していただけますでしょうか。これは参考人の方にお願いいたします。

山川政府参考人 総務省は、総務省設置法上、情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通の確保及び増進、それから、電波の公平かつ能率的な利用の確保及び増進といった事項を任務としておりまして、この任務を達成するため、例えば、放送法におきましては、放送の計画的な普及及び健全な発達を図るために、放送普及基本計画を定めるものとされるなどの規定が設けられておるところでございます。

 この放送普及基本計画の中では、例えば、基本的事項といたしまして、「放送事業者の構成及び運営において地域社会を基盤とするとともにその放送を通じて地域住民の要望にこたえることにより、放送に関する当該地域社会の要望を充足すること。」というふうに定めておりまして、原則として、関東、中京、近畿広域圏を除きまして、各県域を放送対象地域と定め、県域ごとに放送局の免許を与えることで、地域ごとの放送事業者がその地域の情報を提供する制度としております。

和田分科員 しかと承りましたが、はっきり申し上げまして、今の御答弁は私のお問い合わせした内容とは全く違うように思います。私は、どんな情報を国民の皆様方にお届けすべきだというふうに法律上決まっているか、もしくは、法律には決まっていないけれども、国の責務としてお考えになっておられるか、その情報の内容をお聞きしております。お答えください。

山川政府参考人 今の御質問は、放送事業者がどのような情報を届けるということを前提にでございますか。(和田分科員「違います。総務省としてです」と呼ぶ)

 総務省といたしましては、基本的には、放送事業者につきまして、お届けするべき情報を放送法によって規定をしておるところでございます。

 その内容につきましては、これは先生の御意図と合っているかどうかわかりませんが、例えば、番組の編集に関する規律でございますとか、災害の場合の放送について定めております。

 さらに、それぞれの法律ではございますけれども、公職選挙法上の政見放送、経歴放送の義務、あるいは、国民保護法や災害対策基本法上の指定公共機関または指定地方公共機関として、所要の規定が課せられているというふうに承知しております。

和田分科員 ようやく最後の方で触れていただきましたね。私が申し上げたのは、どんな情報を国として国民の皆様方にお届けすべきと総務省がお考えかという点でございました。最初の部分はほとんど関係なかったように思いますが、最後の方でお話しになられたのは、例えば、選挙の際の政見放送だとか、災害のときの災害避難情報だとか、そういったものが当たるというふうに今おっしゃられたように思います。

 では、ここの二つを例にとりまして話を進めていきたいと思いますが、少なくとも、今私がお話ししました政見放送と災害情報につきましては、総務省としては、国として国民の皆様方お一人お一人に届けるべき責務を負っているという御認識でよろしいでしょうか。

山川政府参考人 政見放送あるいは経歴放送につきましては、基本的には公職選挙法上の解釈となると思いますので、私の方から公職選挙法の解釈につきましてお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、公職選挙法におきましては、事実として申し上げますと、日本放送協会及び一般放送事業者につきまして、政見放送あるいは経歴放送につきましての放送の義務というものが課せられていると承知しております。

和田分科員 今いらっしゃっているのは情報流通行政局長、山川局長でいらっしゃいますか。私が質疑通告の際に申し上げてあるのは今申し上げたような点でございますが、そこにいらっしゃるのかどうかわかりませんが、総務大臣、ちょっとお聞きになられて、公職選挙法も総務省の所管法でございますね。

 そうすると、総務省として、今の政見放送が国民の皆様方にお届けすべき情報なのかどうかは、最終決裁権限者としては、総務大臣はお答えになるべき範囲であろうと思います。いかがでしょうか。今の災害情報とあわせて、大臣の御所見として、この二つは、総務大臣としては国民の皆様方にお届けすべき責務を負っていらっしゃるという認識でよろしいでしょうか。

鳩山国務大臣 総務省は、確かに、放送事業者というものにいろいろ免許を与えたり、また、電波法上の問題あるいは放送法上の問題があろうと思っております。

 そういうような形で、例えばテレビというものを例にとれば、民法とNHKとあるわけですね。NHKの場合は全国あまねくだ、民法の場合は、対象地域が決まっておれば、その対象地域ということなのでありましょうが、それは例えば、公選法は政見放送や経歴放送を行うわけですから、また、公選法の所管も総務省であるということを考えれば、それは、総務省として、総務大臣として、政見放送や経歴放送が基本的にきちんと届くようにする責務は負っていると思います。

 例えば、国民保護法制というのがあります。私は有事立法を仕上げたときの委員長でした。その後、国民保護法制というのは充実していくわけでありましょう。ですから、一たん有事のときに国民をどうやって守るかというときには、当然放送事業者にこういう放送をやってくれということで、指定公共機関というのか、指定地方公共機関というのか、そういうところにやってもらうということでありますから、これは総務省だけなのか、あるいは、むしろ政府全体の責務なのかと思いますが、いずれにいたしましても、放送というものを通じて、災害対策基本法上の公共機関にも放送事業者はなるわけですから、そういう放送がきちんと必要な国民に届くという責務は、私は総務省というのは負っていると思います。

和田分科員 大臣の御答弁を聞いておりまして、少し安心いたしました。

 大臣、私が今まで勉強したところだけ申し上げておきたいと思いますが、違っていたら政府部内で直していただければと思います。

 政見放送や経歴放送や災害の情報について、幾つか個々の法制の規定上の違いがございますのでバリエーションはございますが、いろいろなものの原理原則論として貫かれているのはこういうことになろうかと思います。

 まず、法制上、いろいろな情報を国民の皆様方にお渡しすることが必要かどうかという判断が法律上行われている。そして、その必要だと判断された法律は、何がしかの手段を使って、政府全体の責任として国民の皆様方にお届けする責務を規定してある。そのときに、先ほどお話に入っておりましたが、指定地方公共機関や指定公共機関、いろいろな用語がございますが、そういったものを使って伝播せしめるんだということが規定してございます。それのどれを使うのかということ、また、どれも使うのかということ、そういったことは恐らく政府の御判断の中で行われるということになってこようかと思います。

 ここまで概念を整理した上で、次に、大臣にもお考えいただきたいことを、実情として今広がっていることを申し上げたいと思います。

 きょう、NHKからもいらっしゃっていただいております。ありがとうございます。

 実は、NHKは、その伝播せしめるための機関として、実態的に最も大きな比重、機能を占めていらっしゃいます。その中で、長年にわたりまして、全国各地のなかなか電波が届きにくいところも含めて、難視聴地域の解消に努めていただいていること、総務省の政策的な指導もありますけれども、それ自体は私も非常に評価いたしております。しかし、私が実際に経験したことでございます。以下、少し申し上げてみたいと思います。

 政治家になりますと、選挙応援も兼ねまして、いろいろな地域に行かせていただきます。自分の地域も歩きます。そんな中で、本当に驚いたんですが、公示期間になりまして、どこかの日にちに何回か経歴放送、政見放送が流されることになっております。番組表上もそう書いてございます。それなので、私自身が行った先で、これからどうも放送が行われるようですので、ぜひ皆さんでごらんになってくださいということも私自身も皆さんに御説明いたしたりします。しかし、総務大臣、実は、そういったところで、県境の地域に行きますと、何と、放送が違ったのが流れているんです。

 私ども、秘書と事務方でやりとりしていただいたときには、電波が重なり合っていて混線してしまうようなことがないのかどうかということをお聞き合わせしたようですが、私がお問い合わせしたいのはそういうことではございませんで、Aという地域とBという地域で、それぞれNHKの電波そのものは流れているのでございます。しかし、実際にあったことです。Aという地域で選挙が行われる規定になっており、公示期間に入っておって、その地域で政見放送が流れる予定表まで新聞に書かれておって、いざ見ようと思ったら、その地域で映っているNHKの電波にはそれが出てこないのでございます。なぜか。B地域の電波が受信されているからでございます。

 私もちょっと目を疑ったのでございますが、正直申し上げて、こういったことは、国民の皆さん、有権者お一人お一人に投票する権利を保障している日本国憲法上も大変問題があるのではないかというふうに思った次第です。

 私、先ほど申し上げたとおり、国民の皆様方が知らなければいけない、政府として届けなければいけないという情報の中にこういった情報がある以上は、どんなことをしてでも何とか届けなければいけないのではないかと思い、ほかの手段があるかどうかもその地域において調べてみました。

 例えば、地方自治体がしっかりと選挙公報を届けているだろうか、また、民放が映るだろうか、もしくは、ほかの手段において候補者が回ってきて、その地域に対しまして、候補者の氏名、いろいろなことをしっかりと情報として渡しているかどうか調べてみたのでございますが、残念ながら、かなりの確率で、そういった地域には何の手段も講ぜられておりませんでした。NHKのラジオも含めてでございます。

 こういったことが私の経験なのでございますが、NHKとして、こういった状況について把握されていますでしょうか。ちょっとお答えいただけますでしょうか。

日向参考人 長い時間をかけまして難視聴の対策、それから、アナログの放送ですけれども、なるべく多くのところに、基本的になるべく多くの方々が地上波を見られるようにとこれまでやってまいりました。その過程の中で、どうしても今御指摘のような、行政区画、行政単位と実際に受信されている電波が違う地域というのは確かにございます。それから、そういう意味で、一〇〇%というふうに今ここで申し上げられませんけれども、かなり細かいところまで、ここについてはどういう電波が届いているかという地図をつくって把握をしております。

和田分科員 そこまでなさっておられるのであれば、ぜひ解消していただきたいと思います。

 きょう、この決算行政監視委員会の分科会でお話し申し上げるのは、理由としまして、こういうことになります。

 今までいろいろ予算を使っていただいて、難視聴地域の解消に努めていただいたんですけれども、その中でも、最も基本的な情報についてまだこのようなことが残っているということは、やはりその部分について優先的にしっかりと予算配分を行った上で解消にお努めになるべきではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 総務大臣、実際にお聞きした有権者のお声ですが、その地域でテレビ画像をそのようにごらんになりながらおっしゃられたことですが、こうやって自分たちは投票所に行けというふうにみんなに言われるけれども、行った先では別の選挙区の名前を書かざるを得なかったんだよ、知ることができなかったんだから、このように有権者の方がおっしゃるわけでございます。これは一〇〇%の中でごくごく〇・一%なのかもわかりませんが、やはりここの部分は、国民の皆様方の大きな大きな権利ではないでしょうか。

 そうしたこともありまして、今まで難視聴地域の解消に向けていろいろな、消費者向けの補助金のスキームだとかそういったものもつくっていらっしゃいます。それは大いに結構なことでございます。しかし、最後、アンテナを何とか設置して、みんなで共同受信して持ってくるときに、どの電波を受信することにするのかということは、きっちりとやはりその地域に必要な電波を受信するというところまで指針でお定めになるべきではなかろうかと思ったわけでございます。

 その点について、大臣、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 先ほどお答えいたしましたことは、例えば、選挙の政見放送と経歴放送を例にとれば、国策として今度地デジへ移行させていくのと同じように、それは電波が、NHKの場合はあまねく、あるいは地域の民放であればその範囲内であまねく届くことが望ましいわけで、それは最終的には衛星に頼らなくちゃならないというところが本当に何軒かは出てくるかもしれないという状況にあります。

 私はそういう意味で、放送全般を監理する総務省としては、電波を監理し放送事業者に免許を与える総務省としては、放送に対する一般的な責任はあるだろうと先ほどから申し上げているわけです。したがいまして、テレビの政見放送が、その地域の候補者の政見・経歴放送がきちんと映るようにする基本的な責任というのはあると思っております。

 ただ、選挙に関していえば、ビラとかチラシとか宣伝カーとかポスターとか、いろいろな周知の方法がありますから、政見放送だけではないわけでありますけれども、政見放送に関して言うと、公選法に実際に放送の回数とか日にちその他必要な事項は総務大臣がNHKや民法の方と協議の上定めるということで、精いっぱい、特別の配慮なんという言葉も入っておりますから、それがきちんとできるように特別な配慮が加えられなければならない、こう書いておるわけで、したがって、またこれは総務省告示で具体的にいろいろやっているようでございますが、そういう場所がなくなるようにする基本的な義務というものは我々にはあると私は思います。

和田分科員 趣旨を御理解いただいているようで、ありがとうございます。

 私もいろいろ調べてみましたら、実態上、このようになっておりました。

 今大臣のおっしゃっていらっしゃることは、恐らく総務省に正式にこれらに対する見解を問い合わせれば出てくるんだと思います。しかし、国民の皆様方は、総務省に対して直接アクセスする機会もなかなかございません。大体、実態上は地域のNHKの放送局に行かれるわけでございます。自分のところの地域は映りが悪いんだけれども何とかしてくれ、そういったところからお話が始まって、NHKさんとしても、それをむげに扱っていらっしゃるわけじゃないんですけれども、その放送が映るようにするためには、こうこうこういうような仕組みがございます、こんなお金を使っていただけます、こんなことを地域の皆様方で話し合っていただければ何とかなります、そこまでは来ているのでございます。

 ただ、NHKに法制上課せられているのは努力義務でございます。つまり、NHKが放送しているエリアの中では、できるだけその情報を国民の皆様方にお届けするという責務は確かに負っているけれども、一〇〇%必ず届けるという責務まではNHKは負っていらっしゃらない。しかし、総務大臣がお答えになったとおり、総務省としては、どんな手段かは別にしても、必ず何らかの手段でその情報をお伝えする責務を負っていらっしゃる。そのはざまの中で、国民の皆様方の権利が十分担保できていないというふうに感じるわけでございます。

 くれぐれも申し上げますが、私が見て回りました地域は、ほかの手段によっても候補者の名前は知らされておりませんでした。新聞の折り込みに各地域のものが入るんだけれども、新聞が届いていないのでございます。そういった地域もございます。

 また、ほかの災害の分野の情報につきましては、実際に起きたことでございますが、昨年の夏には集中豪雨がありまして、そのときに、いろいろなところが水につかりました。その水につかるであろうという情報は、ある程度は地元では流されていました。しかし、それが、県境をまたいだところの向こう側の情報しかやってこない地域では、その情報が流れてこなかったがために、そのまま車でお出かけになられて、車がつかった、こんな事態が間々生じているのでございます。

 これは自分の地域のことでもあるんですけれども、実は、選挙応援に行ったところでも、ずっと聞き合わせてみますと、正直申し上げて半分以上の確率で起きている。だから、きょう取り上げようと思ったのでございますが、総務大臣としては、少なくとも何らかの手段を通じて必ずそこに情報が行き渡るという責務を負っていらっしゃる所管省の大臣でいらっしゃると存じますので、ぜひその辺を担保していただければというふうに思っています。

 時間が残り少なくなってまいりました。

 今大臣の御答弁の中にも入っていましたが、少なくとも過去のことをきっちりと検証して、次のよりよい社会を目指すということが必要でございますが、この放送分野については、デジタル化が決まっており、これから要するに随時きちっと整備されてまいります。そのときに、このデジタル化が、きっちりとデジタル放送が受信できる地域地域になっていけば、必ずその固有の地域の情報が手に入るという体制になっているのかどうか。その辺は、総務省の政府参考人とNHKの方からお答えいただけますでしょうか。

山川政府参考人 二〇一一年七月にアナログ放送を終了しますが、それに向けまして、放送事業者とともに私ども、デジタル中継局の整備計画を作成し、デジタル中継局や辺地の共聴施設の整備に対する支援措置も講じております。

 また、先ほど大臣から御答弁差し上げましたとおり、終了期限までにどうしてもデジタル放送を送り届けることができない世帯につきましては、暫定的、緊急避難的に衛星によりデジタル放送をごらんいただく方策も検討しております。

 こうした取り組みによりまして、現在、アナログでテレビをごらんになられていたすべての世帯に引き続きテレビをごらんいただき、生活に必要な情報を入手していただけるよう、放送事業者と関係者とともに全力で取り組んでいきたいというふうに考えておる次第でございます。

日向参考人 二十年度末でカバー率というのは九七%でございます。今、これを終了までに九八%まで持っていくという計画でございます。そのために、約二千二百局の中継局をつくらなければいけないという計画で今進めておりまして、今総務省からもありましたように、その努力は今後続けていくことになっておりますけれども、当面、いわゆる難視対策として、セーフティーネットとして衛星での受信をしていただくという形になるかと思います。

和田分科員 大臣に、今の御答弁を聞いていただいて、ちょっと所感をおっしゃっていただければと思うんです。

 私が今のお二人の答弁をお聞きする限り、デジタル化の移行に当たって、私が最初に申し上げた点、A地域に住んでいらっしゃる方にはA地域に必要な情報、B地域に住んでいらっしゃる方にはB地域に必要な情報が受信できる体制になるという御答弁は入っていなかったように思います。必ず何かが受信できるということについてはお二人とも御答弁いただきました。しかし、私が申し上げているのは、地域にとって必要な情報がきっちりと届く体制になっているのかという点については御答弁がなかったように思います。

 しかし、私は、先ほど申し上げたように、災害に関する実例でも、政治の選挙に関する実例でも、そこの部分ぐらいはしっかりと、そうした体制をしいた上でデジタル化に移行されるべきではないかと。ほかの手段によって実現するとおっしゃるのであれば、それはそれで結構でございます。しかし、実態上、恐らく放送によって解決するのが最も有効ではないかと思いますので、その面について、大臣の最後の御答弁をいただけますでしょうか。

鳩山国務大臣 例えば、デジタル化をしても、完璧にやっても、それは全部ケーブルを引けば別でしょうけれども、費用の問題もありましょう、最後に、例えば本当に山奥のところで衛星に頼らざるを得ないところがある。そういうところは、キー局の放送しか多分入らないんだろうと思う。そういうときに、例えば経歴放送のことでいうと、これはもう選挙公報を特別に、もうとにかく絶対届けるような方法を考えるしかないとか、そんなふうには思います。

 一般的に申し上げて、各地域の放送事業者は、その地域において必要な情報を全部伝達できるようにする義務は課せられていると思うわけで、そういった意味では、みずからの受信エリアについて責任を持っていただきたい、そのことはこれからも指導をしていきたい。

 また、NHKは特別でございまして、全国あまねくということで一段と大きな義務が課せられているわけでございます。ですから、地理的な事情によって、現時点で地上波による受信環境を整えることが甚だ困難な地域等については、これからさらに努力をしていかなくちゃならないというふうに思っております。

 ですが、先生御指摘のとおり、災害の情報とか国民保護法なんて一番緊急事態だと思いますが、そういうものがそのエリアできちんと受信できるように、これはNHKだけじゃなく、全国に極めて数多い民放の皆さん方にも呼びかけていかなければならぬと思っております。

和田分科員 時間が参りました。

 今の大臣の御答弁、心強く思いますので、ぜひ御指導を徹底していただければと思います。

 今回、NHKさんを取り上げさせていただいたのは、先般来、大変な議論になりました、受信料を国民の皆様方がお支払いになるという仕組みが別途あるからでございます。今申し上げたような例の有権者の方々すべてにお聞きしましたら、きっちり受信料はお支払いになっておられました。つまり、その料金を払った国民の皆様方にそれだけのサービスを提供されるのは、普通の商慣習としても責務ではないでしょうか。それをさらに公共的な情報ということにかなり絞り込んで考えた場合に、最もそれをしっかりと責任を果たしていただかなきゃいけない分野じゃないかなというふうに思いましたので、取り上げた次第でございます。

 各方面でのより一層の努力をお願いしまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて和田隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、古本伸一郎君。

古本分科員 民主党の古本伸一郎でございます。

 鳩山大臣におかれましては、連日の御対応、大変お疲れさまでございます。

 きょうは、総務省御担当の事柄の中で、住民税についてまずお尋ねをしてまいりたいと思います。

 このことについては、先般も鳩山大臣に予算の分科会でお尋ねさせていただいたわけでありますが、その後、派遣労働の皆様初め、去年からの雇用情勢の悪化についてはなかなか改善の兆しが見られない中で、相変わらず、大変お気の毒なことでありますが、所得を失っておられる方々が大勢いらっしゃると思います。こういう状況の中で私が課題提起いたしておりますのは、住民税を前年所得課税から現年所得課税に変えるべきではなかろうか、こういう主張でございます。

 こちらにつきましては、財務金融委員会で与謝野大臣には累次にわたりましてお尋ねいたしまして、与謝野さんは、政府の中はもちろんでありますけれども、党にも持ち帰る、御党の方にも持ち帰るということもいただき、随分議論は詰まってきた感じはあるんですけれども、最後に、担当である鳩山大臣ともよくやっておいてくれ、委員会の中でそう言われましたので、きょうはそれではせ参じてまいりましたので、よろしくお願いします。

 委員長のお許しをいただきまして資料をお配りいたしておりますが、A4のペラ一枚でございまして、まず、これは政府税調の資料でありますけれども、昭和四十三年に、税制のあり方についての答申ということで出ております。

 ポイントを読み上げますと、「所得発生の時点と税の徴収の時点との間の時間的間隔をできるだけ少なくすることにより、所得の発生に応じた税負担を求めることとするためには現年所得課税とすることが望ましい」、最後「引き続き検討することが適当である。」というふうに終わっているんです。

 それから三十七年もたった平成十七年六月まで、この間税調で一回も取り上げられていません。そして、これは役所の方で調べていただいたので間違いないと思いますが、三十七年ぶりの平成十七年の個人所得課税に関する論点整理によりますと、こういうことになっています。

 前進したかなと思うのは、本来という言葉がついています。「本来、所得課税においては、所得発生時点と税負担時点をできるだけ近付けることが望ましい。」それから、書き加えられた事柄は、「IT化の進展、雇用形態の多様化等、社会経済情勢の変化を踏まえ、」「現年課税の可能性について検討すべきである。」ですから、可能性という言葉が入ったんですね。

 大臣、それからこれまたはや四年の月日がたっているわけでありますけれども、ちょっと技術的なところを事務方に尋ねてまいりますけれども、ITの進展、これは何ですか。何を想定したら、どういうことが期待できるんですか。

河野政府参考人 予算委員会の分科会でも大臣からお答えしておるところでございますけれども、今、前年所得課税という形をとっております理由といいますかメリットといたしましては、これは所得税の課税資料を活用することによりまして、非常に事務の面で簡素化、効率化が図られているということがございます。あわせて、こういう形をとっておりますので、給与支払い者の側も、確定した税額を徴収すればいいということで、年末調整を行うとかそういった手間暇もかからない仕組みになっているところでございます。それからまた、納税者の側も、基本的に確定申告を独自に住民税について行わずに済む、こういった形になっておるわけでございますけれども、これを現年課税に移行するといたしますと、こういったことについて、例えば給与支払い者の側では、源泉徴収を行って年末調整を行うとか、いろいろな事務負担の増加が大変出てまいります。

 その過程で、かねて懸案ではあるわけでありますけれども、なかなか事務負担の増加を、それも給与支払い者、それから地方団体側、それから納税義務者の側、こういった事務負担の増加というのをいかに解決していくかということで、もろもろの局面におきまして、ICT技術をどういうふうに活用できるかということが一つ大きな検討課題であろうと思っております。

古本分科員 今いろいろと言っていただいたんですが、裏面も参考資料をごらんいただきたいんですが、要はこれの縮小コピーでありますけれども、ちょっと拡大すると、これは確定申告の際の税務署に出す書類です。これをめくりますと、第二表ということで、マル住と書いてありまして、要するに、これが住民税ということで各市町村の住民税課の方に行くわけですね。

 これは、伺えば、国税に市町村の役場の職員がとりに行くそうなんですよ。このITの時代にそんなことを、これは町民の数分ですから物すごい束でしょうね、トラック横づけでとりに行くのかどうか知りませんけれども。

 ですから、今役所の方から御答弁ありましたけれども、これはやはり、ITの進展というのは、実は与謝野大臣の言をかりれば、このITの時代にできないということもないだろうという趣旨のことを御発言されていました、ちょっと正確じゃないですけれども。ですから、このITの進展というのは、まさに、こういう紙台帳で、税務署にとりに行っています、こういうことを一体いつまで続けるんだろうかということが、やはり市町村の役場の皆様自身からも声としては出てきていないんですか。これはどうでしょう。

河野政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、現年課税化の検討ということの中でもICT技術の活用ということは一つの大きなポイントであろうかと思っております。

 現時点ではそれとは別の観点からまたこういったICTの活用に取り組んでおりまして、と申しますのは、今の委員御指摘のように、非常に手間暇かかる、所得税の申告書から、マル住と称しておりますけれども住民税申告用の写しの部分を分離して、それを持って帰って、そこから入力し直して課税事務を進める、さらに必要な課税資料があればコピーまでとってくる、こういったことをやっておるわけでございます。

 加えて、今、国税の所得税につきましては、いわゆる電子申告、e―Taxの仕組みがかなり普及してまいっておりまして、電子申告をされる方もふえておられるわけですけれども、そのデータについても、一たんプリントアウトして、これをもらって帰って課税資料に使う、こういったことをやっておりますので、私ども、現年課税化の問題は、それはそれで検討する必要がございますけれども、それ以前に、国税のそうしたデータについて電子システムを活用した連携といいますか、こういったものに取り組んでいく必要があろうと思っております。

 現在、地方税の申告につきましては、地方税電子化協議会というところでeLTAXのシステムを運用しているわけでありますけれども、現在、そうした仕組みを通じての国税とのデータの連携につきまして、国税庁と総務省そして電子化協議会との間で協議も進めておりますので、そういったICT化にはぜひ取り組んでまいりたいというふうに思っております。

古本分科員 そうしますと、局長、今おっしゃった地方税電子化協議会ですか、その場で、現年所得課税に向けた、こんな紙台帳でやりとりすることから、IT化への検討に着手されていますか。

河野政府参考人 先ほど申し上げましたように、国税とのデータ連携につきましては、これは現年課税化とはまた別の観点で取り組んでおるわけでありますけれども、別途、住民税の現年所得課税化の問題につきましても、これは事務ベースでございますけれども、いろいろな観点から検討を行っているところでございまして、そうした中ではやはり電子システムの活用といったことも視野に入れながら取り組んでいく必要があろうと思っておりますし、検討メンバーにも加わっていただいているところでございます。

古本分科員 そうしますと、政府税調は何なんだという話なんですよ。まあ、すべての税制が税調の答申のとおりにあるわけはありませんので。ただ、これは累次にわたって指摘を受け、何より、では二点目、お尋ねしますよ。

 雇用形態の多様化等というのは、これは何を意味していますか。

河野政府参考人 一つには、かつて終身雇用というスタイルが一般的であったかと存じますけれども、ここで書いてある意味といたしましては、これがいろいろな、転職される方もふえてくるわけでございますので、その間ずっと前年所得課税でやっていくということになりますと、その間の不連続といったことも出てくるわけでございますので、そういったことも念頭に置きながら検討の必要があるということであろうと思います。

古本分科員 今のところは大事ですけれども、ジョブホップ、転職をみずからの意思でやられた方については、前の会社から給料が下がったか上がったかはそれは自己責任ですよ。でも、大臣、今日的課題は、みずからの意思とは別のところで職を失っている方が、払いたくても去年の所得で課税されちゃったら先立つものがないということが、私がずっと課題提起している根底にあるわけですよ。

 ですから、この雇用形態の多様化というのは、まさに終身雇用で、一度就職したらもう最後まで働けますということを前提に、やはりこういう前年所得課税なるものも制度創設時は背景としてあったと思うんですよ、前提与件として。今や、一年、雇用が本当に安定してあるだろうかということでも、一体何万人という方が、まさにきょうの職が、あすの職がという事態を考えれば、これは元来、皆さんも住民税というのはきちっといただきたいでしょう、きちっといただきたいわけでありまして、これはやはり、課税を猶予しているということを与謝野大臣も随分言われたんですけれども、猶予するぐらいなら現年できちっと取ればいいじゃないですか。そうすると、タイムラグもなくなるわけであります。

 この雇用形態の多様化という観点としては、やはりそういう今日的な派遣労働を初めとする非常に不安定な雇用形態も視野に入っていると思うんですけれども、もう一度お願いします。これは視野に入らないとおかしいですよ。

河野政府参考人 大変大事な御指摘でございますし、私どももそういうことは十分念頭に置いて検討していく必要があろうと思っております。

 ただ、最初に申し上げましたけれども、現在の仕組みというのは、特別徴収義務者のサイドから見ても、地方団体の側から見ても、納税義務者の側から見ても、事務負担の軽減という意味ではかなりメリットのある制度でもございます。その中で、例えば特別徴収義務者、現年課税化すれば源泉徴収義務者ということになるわけでございますけれども、その方々の意見を若干聞き取ってみましても、やはり現状でも事務負担が非常に大変だと。加えて、源泉徴収を行って年末調整を行うということになりますと、またこれは事務負担が大変ふえるわけでございますので、いかにしてそういうことの負担の軽減を図りながら検討していくかということもポイントであろうと思っておりますので、そういう観点も含めて検討をしてまいりたいというふうに思っております。

古本分科員 大臣、私もこれは何回も取り上げていますので、結構な方向性を確認したいんです。

 局長、これは例えば、納税者番号制度、納番制度の導入が視野に入っていて、ついては、せっかくモデルチェンジ、システムを一から構築し直しても、またそのときには設計し直すことになってしまうので二度手間である、したがってそれまではちょっと待っているんだとか、ちょっと期限を決めましょうよ。大体いつぐらいまでの相場観で、だって、これは二回にわたり、本来現年所得課税が望ましいとまで答申があるわけですから、大体いつぐらいをめどに検討していくかということを、ちょっと大臣、約束というか、感想じゃないですよ、やはりこれは総務省の責任者なんですから。

鳩山国務大臣 ふだんほどは歯切れよく答弁できないかもしれませんが、確かに税の大原則からすれば、その年に発生した所得に課税をするというのは大原則なんでしょう。したがって、所得税も住民税も、その年の所得で課税すればいいんでしょう。

 ただ、今まで、三位一体のときに三兆円の税源移譲というのがありましたけれども、基本的に我が国は所得税中心主義みたいなところがあったんだろう、所得税、法人税中心主義みたいなところがあって、所得税については、私どもいつもやっておりますけれども、確定申告というのがある、あるいは年末調整というのがある。そして、とにかく正確を期してきちんと計算をするということでみんなやってきた。住民税の方は、その数字をもらって翌年ちょうだいしようということでやってくれば、事務的には極めて簡便である。年末調整もない、確定申告もないということで、費用の節減にもなったということなんだろう。

 あるいは、こういうことを言ってはあれですが、今みたいに経済が激変していると別ですが、総務省的に言えば、地財計画とかありますが、その年の所得税、もちろん減額補正されることもありますけれども、所得税の状況を見ておれば、翌年の住民税というのはほとんど確定的に数字が最初から出てくるというような利点もあったんだろう、こういうふうに思っておりまして、ですから、利点が全くないわけではないわけです。

 したがって、先生からいただいた資料は、これは固定資産税が減免されるケースが書いてある、地方税法三百六十七条。ただ、これは一般的に、災害等により納税義務者の所得が著しく減少し、または皆無になったことなどにより担税力が減少した場合には、地方税法及びこれに基づく条例の定めるところにより、一定期間徴収を猶予したりできるということが書いてあるわけですけれども、こういうやり方でしのいでいけていれば、今の状況を直ちに改善しなくちゃならないかどうかということについては、私はまだよくわかりませんね。

 だから、納税者番号制度、これは絶対やるべきですよ。そのときに一気にやったらいいのかなというような思いがあります。

古本分科員 そうすると、納番制度の導入が一つの目安という見解を今いただきました。

 いただいたんですけれども、これは総務省の方ですね、税源移譲のときやらのシステムの設計をし直すのに随分お金がかかったんだろうと思うんですけれども、例えば、現年所得課税に変えるに当たり、大体幾らぐらいかかるかと試算したことはありますか。

河野政府参考人 システムを相当大きくいじるということでございますので、これは地方団体の側もございますし、それから今の特別徴収義務者、源泉徴収を行う方もございます。ただ、具体的な、どのぐらいのコストがかかるかということは試算はいたしておりませんけれども、かなりのコストがかかることは間違いないだろうというふうに思っております。

古本分科員 かなりというのは大体幾らぐらいですか、局長も専門家なんですから。大体、千億のオーダーなのか、兆のオーダーなのか。

河野政府参考人 ちなみに、ちょっとした改修をやる場合でも、例えば十月から公的年金からの特別徴収等の準備を進めておりますけれども、これでも二百億から三百億のオーダーのコストが市町村ではかかっていると思いますので、現年課税化するということになりますともっと大幅なシステム改修が要るわけでございますし、それから、先ほど申し上げましたように、課税庁の側だけでなくて源泉徴収義務者のサイドの相当のコストもかかりますので、こういったことも含めますと、相当多額のコストがかかることは間違いないというふうに考えております。

古本分科員 これはちょっと相前後しますけれども、この確定申告の紙の二枚目のマル住を市町村の役場の職員が税務署にとりに行って、それをまた入力するという御説明がさっきありましたね。全国の千八百の市町村でその業務に携わっている人というのは大体何千人ぐらいおるんですか。

河野政府参考人 ちょっと具体的には把握しておりません。

古本分科員 例えば、その人々の仕事が電子化されれば、これは業務の効率化じゃないですか。

河野政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、私ども、先ほど申し上げましたように、現年課税化の問題はそれとして検討しつつ、所得税とのデータ連携につきましてはぜひ早くやっていきたいというふうに思っております。

 その大きなメリットといいますのは、まさに今おっしゃったように、非常に手間暇かけてやっている事務の効率化が図られるということと、もう一つ大きいのは、紙でもらってきて入力するということになりますと、どうしてもその過程でいろいろなミスも起こり得るわけでありますけれども、正確性の面でも非常にメリットが出てくるということでございますので、ぜひそういう方向でこれは進めていきたいというふうに思っております。

古本分科員 やっと局長から進めたいという話が出ましたけれども、これはいつかはやらなければいけないんですよ。

 むしろ、課題提起として承ったならば、私もなるほどなと思えるのが唯一あるのは、これは実は移行した年だけ、前年課税分の前年分と当年分で、恐らく住民税が二回かかることになるんですね、論理的にいきますと。大臣、いいですか。前年課税ですから、今月の住民税、はい、鳩山邦夫さんは幾らと言われてこの四月の住民税を払うときに、去年の四月の所得で課税される分と、現年課税に移行しますからことしの分と、二回かかるんですよ。

 だから、その問題をどう回避するのか。あるいは少し移行措置で傾斜配分して分割払いにするのかとか、場合によってはその分棒引きにするとか、これこそ究極の経済対策じゃないかなとか思いつつ、例えばですけれども、年間で住民税は十兆強だと承知していますので、実は配るための費用をゼロでできる究極の経済対策かなとか思いながら、いろいろ思いますけれども、そういう具体的な懸念があって、その対策をどうするかということに互いに知恵を出したいですよ。

 ITの話でいえば、大臣、こんな伝票をトラックで受け取りに行って、トラックかどうかわかりませんが、役場の人がまた一から入力しているなんて、その分で何千、大臣は何万と言われましたけれども、恐らく何万のオーダーだと思うんですよ。それだけの方の工数をそういうことに回す暇があるのなら、介護の現場とか本当に枯渇しているところに回した方がよっぽどましですよ。そう思うからこの話を提言しているという側面と、何より、払いたくたって払えない人が今ごまんといる中で、雇用のこういう形態は今後とも恐らく続くでしょうから、いつか判断しなきゃいけないんですよ、現年課税の話は。

 そういうことできょうは課題提起させていただきましたので、この件について最後にもう一度、決意があれば。

鳩山国務大臣 ですから、税の大原則からして、現年課税というんでしょうか、その年に発生したというか、得た所得に課税するのが原則でしょうから、住民税だって、その年の所得に課税すればベターであることは間違いがない。

 一つだけ、前年度の所得に、所得税をもとにその翌年に課税するということの利点というのは、地方団体において地方税収が、住民税収がどれだけ来るかというのが最初からわかっているというのが唯一の利点かな、こう思うわけですけれども、これは全然答弁書にも何も書いていないことですが、私、昔から疑問に思っておったことがあるんです。

 それは、税務署というのがありますね。ここも大変な職員がいるわけですね。それこそ税務署に来られたら、それは中小企業はびびるわけだ。私の父は大蔵官僚だった、いろいろな、関東信越国税局長とかやっておったから、税務署というものは何となく身近なものに感じておった。税務署があって、なぜ税務署が国税と地方税と一緒に取れないのかなと昔から疑問に思っておったんです。地方自治ということでいえば何となくわかるんだけれども、同じ税ですから、これだけの組織があるんですから、それは、国税と地方税と一緒に取って、財務省の方がごまかして多目に取って少ししか地方にくれないなんということが、昔だったらあったかもしれないけれども、今ではもうそんな時代ではないと思っている。

 ですから、私は、納税者番号というものをやって、非常に簡素化した形で税の徴収ができたらいいな、こう思っております。

古本分科員 きょう、やっとちょっと一ミリぐらい前進した感があるのは、答申を受け、いつかはやらなければいけない、現年課税が本来のあるべき姿である、ただ、納番制度の導入など今後のことがあるので、少しそれを一つの目安にしたい、こういう感じで受けとめました。

 もう一点、残された時間で固定資産税について触れたいと思うんです。

 大臣、これも全く同じでして、今、全国のサラリーマンの方あるいは会社、事業経営者の皆さん、夢のマイホームを入手して、それのいわゆるローンを支払いながら、一方で、残業代が減り仕事が減り所得が減る中でローンも返していかなければならない。そういうときに、いわば所得にかかわらず容赦なく課税されるというのがこの固定資産税であります。これは税理論からいって資産課税ですから、そういった資産を持ったということに対しての課税ですから、これはその人の所得の多寡にかかわらずということはよくよく承知していますよ。

 よくよく承知していますけれども、これは、地方の固定資産税への依存度を見れば、多分全国平均で今六割を超えているんでしょうか、何割ぐらいですか。

河野政府参考人 市町村全体で約四〇%でございます。特に町村におきましてはもっと依存度が高くなっておりまして、四八%ぐらいになっております。

古本分科員 失礼しました。では四割。

 四割を依存しているんですけれども、そういう中で、ちょっともう残りの時間になりましたのでピンポイントで行きます、いわゆる前納報奨金という制度があるんですね。

 これは今、全国で千八百のうち、幾つかまだ残っていると思うんですけれども、まだ残っているという言い方をするのは、これは何か総務省が前納報奨金をやめろと指導しているわけではないですね。各市町村の御判断で多分やっておられると思うんですけれども、これは、大臣、年金暮らしのお年寄りが、税は国民の義務である、きっちり払うものであるということで、細々と年金所得の中からかき集めて、例えば十万円とか、地方都市でいけば大体十万円ぐらいのお宅が平均かなというイメージですけれども、それ前後の固定資産税を一括して、まさに納税者としてあっぱれじゃないですか、一括して前納し、それに対し報奨の二千円だか二千五百円だかを楽しみに、年金暮らしのお年寄りは、こつこつと一回も忘れることなく払っていますという人から私に投書が来ましたよ。

 これをなくすということについていろいろ事務方から聞くと、その分前納報奨金の財源が市町村として助かるというのが一つあるんですよ。もう一つは、前納報奨金を払うという仕事がなくなりますから事務の効率化が図れる、そうおっしゃるんですけれども、本当にこれをやめた分の効率化がちゃんと図れる体制になっているんですか。ただやめ得みたいな話だと、これは、徴税率はどうなっていますか。固定資産税のいわゆる納税率といいますか、遺漏なく取れている率というのは何%ぐらいなんですか。

河野政府参考人 固定資産税の徴収率でございますけれども、これは十九年度の決算ベースで現年課税分について申し上げますと、九八・二%というふうになっております。

古本分科員 その数字のうち、個人と法人に分けられますか、所有者が。

河野政府参考人 ちょっと今、データがございません。

古本分科員 もっと言えば、生活困窮者になれば減免の措置があるんでしょうけれども、いわゆる派遣どめに遭って所得がなくなったんだけれども固定資産税を払わなきゃならないという方に、では即減免適用かといったら、即にはなりませんね。いかがですか。

河野政府参考人 地方税法におきましては、一つは、納税が困難な方につきましては徴収猶予等の制度を定めてございます。そういった制度でも対応できないような場合には、天災などの被害者でありますとか生活保護を受けている方など特別の事情がある方について、条例の定めるところによって減免を行うことができる、こういう制度になっているところでございます。

古本分科員 それがさっき大臣が読んでいただいた地方税法の固定資産税の減免、三百六十七条だと思うんですけれども、これはにわかに、ちょっと派遣どめに遭ったからといって申請しても、例えば、そういうあなた自身これだけ立派な資産があるじゃないですかと言われたら、現実的には減免にならないでしょう。

 だから、やはり大臣、そういうときにたとえ二千円でも前納報奨金が出るということにありがたいなと思っているいろいろな生活を営んでいる人からすると、これをやめるはいいけれども、では、それぞれ市町村の行政はどれだけ効率化を図り、その分が目に見えて、それをやめた費用対効果が、各役場にとって効果があったという説明もあわせてしないと、せっかくある制度が、果たしてこれをやめることによって、やめた自治体が、後に徴収率に変化があった自治体はありますか。前納報奨制度の廃止に伴って徴税率が落ちたという自治体はありませんか。

河野政府参考人 ちょっとそういう具体的な状況については把握をいたしておりません。

古本分科員 では、ぜひ、少し定点で観測も含めて、資料の要求をいたします。

 私は、やはり人の気持ちとして、そうやって役場からも評価してもらえるんだという気になるんですよ。市民として、一括で前納で払えば、こうやって市長さんから喜んでもらえるんだなというのが二千円か三千円かなと、税額が十万円ぐらいの場合。そういう制度をやめるという以上は、やはりそれ相応の何かがないといかぬと思うんですが、いかがですか、大臣。

鳩山国務大臣 今、東京都は前納報奨金というのはないらしいんですが、昔はあったのかな。私は、昔はこの恩恵に浴していたかなという記憶があるんですけれども、それは記憶が確かではありません。

 ただ、私は、納税者の意識を高めるということはとても大事ですから、そういった意味でいえば、四回に分けて払うのを、どんと払って、先払いするわけだから、後まで持っていれば金利がつくかどうかは別にして、金利分かどうかは別にして、あなたがおっしゃったように、それはあっぱれな行為だから、あっぱれな行為についてはそれなりの何か褒められることがあってもいいというのは、私は常識的な判断ですね。

古本分科員 ですから、その常識に対し、今後は前納報奨制度をやめていく自治体が実は後を絶たず、そして、そういった自治体は、一括で払おうが分割で払おうが、何もなくなってくるんですよ。

 きょうはもうこれ以上深く入れませんでしたが、これは住民税の前納報奨の問題とも多分に絡んでおりまして、また次回、機会をいただいて議論を深めたいと思います。

 いずれにせよ、大臣からあっぱれだと言っていただいたことで、全国の年金暮らし、あるいは本当に所得がなくなった中でも、固定資産税を払うのは市町村民の義務であるという思いで一括で払おうとしている方が、少し留飲を下げたと思います。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて古本伸一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより防衛省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。浜田防衛大臣。

浜田国務大臣 平成十九年度における防衛省の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省主管一般会計の歳入につきまして御説明申し上げます。

 歳入予算額は五百三十二億五千五百万円余でありまして、これを収納済み歳入額六百六十八億七千六百万円余に比較しますと、百三十六億二千百万円余の増加となっております。

 次に、防衛省所管一般会計の歳出につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆八千十三億六百万円余でありまして、これに予算補正追加額四百三十億五千八百万円余、移しかえを受けた額千九百十九億千三百万円余、前年度からの繰越額千百四十六億五千八百万円余、予備費を使用した額九十四億六千百万円余を加え、予算補正修正減少額三十一億九千二百万円余、移しかえをした額千七百二十五億八千六百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆九千八百四十六億千八百万円余となります。

 なお、移しかえを受けた額及び移しかえをした額のうち、千七百十九億三百万円余につきましては、平成十九年九月の防衛施設庁廃止に伴う所管内の移しかえによるものであります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆七千七百九十五億千七百万円余、翌年度へ繰り越した額は千七百二十一億四千四百万円余でありまして、差し引き不用額は三百二十九億五千六百万円余であります。

 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院小武山第二局長。

小武山会計検査院当局者 平成十九年度防衛省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 これは、会計経理が適正を欠いているものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、廃電池の管理に関して適宜の処置を要求いたしたもの、その二は、部隊発注工事により取得した財産の国有財産台帳等への記録に関して適宜の処置及び是正改善の処置を要求いたしたもの、その三は、専用サービス契約における高額利用割引の適用に関して是正改善の処置を要求いたしたもの、その四は、陸上自衛隊の会計業務システムの運用に関して是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、陸上自衛隊における糧食費の執行に関するもの、その二は、海外を納地とする艦船用燃料油の調達における為替レート等の取り扱いに関するもの、その三は、航空自衛隊が調達している救難機等搭載用の救難火工品等の管理・運用に関するもの、その四は、進展のめどが立たない送信所の建設事業の見直しに関するもの、その五は、住宅防音工事の助成事業の審査等に関するものであります。

 これら五件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十七年度決算検査報告に掲記いたしました任期制自衛官に係る退職手当制度について意見を表示した事項並びに平成十八年度決算検査報告に掲記いたしました着後手当の支給について改善の処置を要求した事項及び営舎内に居住する自衛官が居室内で使用する電気器具に係る電気料金の負担について改善の処置を要求した事項につきまして、それらの結果を掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。浜田防衛大臣。

浜田国務大臣 平成十九年度決算報告に掲記されております事項について、防衛省が講じた措置を御説明申し上げます。

 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、まことに遺憾であり、会計法令の遵守を図るなど再発防止に万全を期する所存であります。

 次に、指摘を受けました事項のうち、廃電池の管理につきましては、指摘の趣旨を踏まえ、速やかに所要の処置を講ずる所存であります。

 その他の指摘事項につきましては、直ちに是正措置を講じたところであります。

 今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層事務の適正な執行に努めてまいる所存であります。

 以上であります。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして防衛省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。平岡秀夫君。

平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。

 最後の質問になっているようでございますけれども、ぜひ緊張感を持って答弁していただきたいというふうに思います。

 まず最初に、北朝鮮の飛翔体発射の問題でありますけれども、政府は、五日の北朝鮮による飛翔体発射に関して、私が七日に防衛省から説明を受けたときには、文書でも、飛翔体発射事案についてというふうに表現しておったんですけれども、十日ぐらいになりますと、記者会見での総理の発言では、ミサイルの発射を強行している、あるいは官房長官の発表の中でも、ミサイル発射というふうに表現が変わってきているわけであります。

 これに関して、まず、いつからどのような手続を経てミサイル発射というふうに表現するようになったのか、この点についてお伺いしたいと思います。

松本内閣官房副長官 お答えをいたします。

 今回の北朝鮮による発射につきましては、内閣官房、外務省及び防衛省を初めとする関係省庁の間で協議を行った結果、発射の事実関係を明らかにするためには引き続き総合的、専門的な分析が必要で、時間を要するとされたところでございます。

 しかしながら、今回の発射の本質につきましては、国連安保理決議第千六百九十五号及び第千七百十八号に違反する北朝鮮の弾道ミサイル計画に関連する活動であり、四月七日及び八日の衆議院、参議院両院による国会の決議においてミサイル発射と表現されたことから、政府といたしましても、北朝鮮によるミサイル発射と呼称することとしたところでございます。四月十日の官房長官記者会見におきまして、その旨説明されたところであります。

 なお、政府といたしまして、北朝鮮によるミサイル発射と呼称していることにつきましては、四月十七日に閣議決定をいたしました衆議院議員岡本充功君提出平成二十一年四月五日に北朝鮮から飛来した飛翔体に関する質問に対する答弁書においても明らかにさせていただいているところでございます。

平岡分科員 今の話を聞くと、何か関係省庁の役人が集まってそういうことにしようと決めたような感じですけれども、これは役人がそういうふうな決定をしたということですか。

松本内閣官房副長官 これは、内閣官房、外務省及び防衛省を初めとする関係省庁が当然協議を行ったところでありますが、それを受けとめまして、政府として、国連安保理決議でありますが、この両号に違反するという、その北朝鮮の弾道ミサイル計画に関連する活動というところをとらまえて、呼称を北朝鮮によるミサイル発射としたところでございます。

平岡分科員 先ほどの答弁の中にも、まだ決まったわけじゃない、引き続き総合的、専門的な分析を行っているんだという話がありますね。まさにミサイル発射という、ミサイルであるのかどうなのかということについては、安保理決議でもまだ決まっていないというふうに私は思うんですよ。にもかかわらずこういう表現を使うということは、私は、ある意味では政府がだらしないという気がするんです。

 国会の決議も、ある意味で私は、決まってもいないことを無理やり言い含めてやるというのは国会の決議をおとしめるものだというふうに自分自身は思っておりますけれども、政府はもっとやはり冷静な、事実関係は事実関係としてしっかりと表現をし、そして、その事実関係に基づいて自分たちの方針を示すことは方針を示していくということをやらなければ、これは相手に対しても、注文をつけられてくるというか、逆に批判をされるようなことにもなってくるというふうに思うんですよ。

 私は、そういう意味において、今回の、政府がこういう表現をとったということについては適当でない、しかも、それが関係省庁の役人で決めてそういうふうにしましょうというふうにして進んできたということも、これは非常に奇妙なことであって、しっかりと政治家がこの点についても判断を示していかなければいけないというふうに思うんです。

 そういうふうな話をすると、次の用意していた質問は、飛翔体がミサイルであると判断した根拠は何なのかというのを防衛大臣に聞くことになっておって、国際的な共通認識と異なっているんじゃないかという質問なんですけれども、念のため防衛大臣に、こういう質問をしてありますから、答えてください。

浜田国務大臣 先生の今の御質問に対しましては、当然、我々とすると、これは人工衛星と言えることでもなく、人工衛星が軌道を周回しているとは認識していないということもありますし、また、先ほど松本官房副長官からお話がありましたように、発射行為というのは、これはもう国連の安保理決議に違反する弾道ミサイル計画に関連する活動であるということを御説明せざるを得ないわけであります。

 こうした考え方で、我々とすれば、ミサイル発射と呼称することというのは、今先生御指摘のように、国民の不安をあおるというふうにつながるとは私自身は考えておりませんけれども、しかしながら、防衛省としては、今般の事案について引き続き着実に分析を進めてまいる所存であります。

平岡分科員 私も、これは、国連の決議からいえば、弾道ミサイル計画を進めてはならないという決議に反しているという評価をすること自体はあり得ることだというふうに思いますけれども、その前提としての話が、ミサイル発射というふうに決めつけて、事実関係が確定もしていないのに決めつけて物事を進めていくというやり方は、私は適当でないということを改めて申し上げておきたいと思います。

 副長官は、もう特になければ結構でございます。

 次は、ちょっと地元的な問題に入っていくわけでありますけれども、今、米軍再編ということで大変大きな問題になっていると思うんですが、先日も、沖縄からグアムへの移転協定の問題についても審議をさせていただきました、特に外務省が中心だったわけでありますけれども。沖縄の普天間基地の問題も大きな問題である。私は地元が岩国でありますけれども、岩国に厚木から空母艦載機がやってくるという問題も非常に大きな問題というふうに思っておりまして、いろいろな課題がほかにもあるんだろうと思いますけれども、この二つの問題、私なりに大きな問題だというふうに思っておりますので、質問させていただきたいと思います。

 そこで、まず、厚木基地から岩国基地に空母艦載機が移ってくるということの軍事戦略上の意味というのがどんなものなのか、ちょっと私もよくわからないということであります。

 そもそも、なぜ厚木から岩国への空母艦載機の移駐が進められていったのかということについては、月刊現代の二〇〇七年十一月号に、有名な守屋前防衛省事務次官が「我が官僚人生に悔いなし」というところにるる語っているわけですけれども、これは要するに自分の発想だということで書いてあるんですね。自分が実際に空母に乗ってみて気がついたということに基づいて提案したんだ、役所の机に向かっているだけでは決して思い浮かばないような提案なんだ、こういうふうに言っているわけですね。そこに書いてあるものは、まさに騒音問題を中心に書いているわけであります。

 そういう経緯があったということで、この厚木から岩国への移駐というのは、日本側が提案して、あるいは要請して決まったという話で理解していいんでしょうか。

浜田国務大臣 在日米軍再編に係る日米間の協議において、抑止力の維持には米空母及びその艦載機の長期にわたる前方展開能力の確保が不可欠であるとの共通の認識に達したところであります。

 一方で、現在、空母艦載機部隊が所在している厚木飛行場は人口密集地域に所在をしておりまして、周辺の住民が長い間担ってきた騒音等の問題を早期に解決することは、日米同盟を安定的に維持していくためにも必要だと考えまして、そしてまた、岩国飛行場については、米海兵隊や海上自衛隊の航空部隊等が所在をして、我が国の安全確保のために極めて重要な役割をしているところであり、現在行われている滑走路移設事業終了後には、周辺地域の生活環境への影響がより少ない形で安全な運航が可能となります。

 これらを考慮して、空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐は、抑止力の維持と地元負担の軽減を図るとの観点から、日米両政府の協議を経て合意されたものであると思っております。

平岡分科員 それは、協議を経て決まったというのは当たり前の話です。私は、だれが言い出したのかを聞いているんですよ。先ほど紹介したようなものを見れば、それは守屋前事務次官が現役だったころに進めてきたんですから、日本側が提案した、要請したということでいいんでしょうね。

浜田国務大臣 先生が今御指摘になった、月刊現代にそういった記述があったことは承知をしておりますけれども、これは、言い出したという話が今先生からありましたけれども、我々とすれば、協議を続ける中で出てきたことというふうに考えておりますので、そこまで、自分で自慢話をしたことに、それが発端であるというふうにはなかなか思えないというか、協議を通じてやってきたことだというふうに思っておるところであります。

平岡分科員 ちょっと、とりあえずはいいですけれどもね。

 その問題について言うと、よく、岩国の方は厚木より北朝鮮に近いから、そこに空母艦載機がいる方が日本の安全保障政策上、軍事戦略的にも非常に有利なんだ、有効なんだというようなことを言う人もいるんですけれども、岩国に空母艦載機を置くことの軍事戦略上の意味、効果というのは一体何なんですか。

浜田国務大臣 今回の移転というのは、米国が新たな安全保障環境に最も適切に対処できるように、軍事技術の進歩を背景に、より機動性の高い態勢を実現すべく、世界規模での軍事態勢の見直しを行っているところであって、空母艦載機の厚木から岩国への移駐を含む在日米軍再編は、米国のかかる取り組みの一環であると同時に、我が国にとって抑止力を維持しつつ地元負担を軽減するものであり、日米両国がこうした取り決めを着実に実施することに、日米安全保障体制というのが一層確固たるものと考えておるところであって、この意義の重さというのはそこにあろうかと思っておるところであります。

平岡分科員 今の説明では、軍事戦略上は何の意味もない、抑止力を維持する、そして地元負担を軽減する、この総合的な観点の中で決まったというだけであって、戦略的には何の意味もない、そういうふうに答弁したように思いますけれども、そういうことですよね。

浜田国務大臣 そのとおりですとはお答えができなくて、我々とすれば、逆に言えば、意義というふうにお話をされましたので……(平岡分科員「軍事戦略上」と呼ぶ)軍事戦略上というか、それを全部の再編によって動かしていくということ自体が、アメリカの軍事戦略上のいろいろな、中心部隊となる陸軍の司令部だとかそういうものを座間に持っていくとか、そういった形の中で全体が動いてきていると思っておりますので、そういう意味では、一義的にその部分だけで戦略上の意義がないというふうには言えないと思っております。

平岡分科員 どういう効果があるんですか。では、具体的に言ってくださいよ、こういう効果がありますと。厚木から岩国へ来れば、岩国でこういうことができるので意味がありますと、それを言ってください。

浜田国務大臣 基本的に、岩国だけではなくて、今回の再編というのは、全体として在日米軍の態勢の強化というものを図ろうとしているところでありますので、そういう意味では、要するに岩国だけの部分でそれを評価するということはなかなかできないので、今先生のおっしゃったように、では岩国の軍事戦略上の意味がどこにあるのかというと、我々とすると、全体でそれを見ていただかなければならないというふうにお答えするしかないと思います。

平岡分科員 要は、ないということで、ただ単に、厚木の人たちの地元負担を軽減するという意味しかないというふうにしか私には聞こえませんでしたね。しっかりと具体的な、こういう効果があるんだということを説明できない限りは、これはもう地元負担を厚木から岩国へ移すためだけのものであるとしか理解ができないというふうに申し上げたいと思います。

 そこで、防衛大臣にお聞きいたしますけれども、先ほど私は沖縄の問題と岩国の問題を冒頭申し上げましたけれども、防衛大臣に就任されてから、この米軍再編の問題に絡んで、沖縄とか岩国に行かれたことはあるんでしょうか。

浜田国務大臣 私が就任以来、このところ、かなりいろいろなことが起きまして、国会等がずっと続いておるわけでございまして、時間的な余裕がなくて、いまだに沖縄そしてまた岩国も訪問することができておりません。知事、市長さんたちがおいでになったときにはお話を伺っておりますが、実際にその場に行って自分の目で見たということはございません。

平岡分科員 先日、七日の日なんですけれども、岩国市の、愛宕山を守る会あるいは愛宕山を守る市民連絡協議会などの地域住民の皆さんが上京されまして、防衛大臣と外務大臣に対して、「愛宕山の米軍住宅化は絶対に許さない!」という請願署名、十一万筆余のものを持ってきたんですけれども、その際に来られた人には、ぜひ防衛大臣にも岩国に来てほしいという声がありました。

 二つ聞きます。この請願署名、ちゃんと受け取られましたか。それから、地元住民の人たちが要望している防衛大臣の岩国訪問、これは行うつもりはありますか。

浜田国務大臣 四月七日に、愛宕山を守る会等から私あてに、愛宕山の米軍住宅それから米軍施設を建設しないでほしいとの請願署名の提出があったことを私は報告を受けているところでございます。

 そして、では、これから岩国へ行くあれがあるのかということであれば、私とすれば、それを追求していきたいというふうには思っておるところであります。

平岡分科員 行けばいいというものでもないんですけれどもね。

 やはり、私が思うのは、これまでの一連の防衛省の対応を見ていると、岩国市の市役所の建設補助金について、三十五億円を約束してあったにもかかわらず、米軍再編を受け入れないからということで無理やりカットしてしまったというようなこととか、あるいは、米軍再編円滑化措置法の中であめとむちの政策がとられているというようなことから、本当にもう住民の皆さんは、防衛省、政府は信じられないというような状態になってきたんです。

 私も生まれ育ったところだからよくわかるんですけれども、基地については比較的寛容な地域住民だったと思うんですね。反対運動をしたこともない。よそから来た人たちが反対運動をしているのを見て、ああ、どこかの人がやっているなという程度の受けとめ方だった住民が、今やもう、訴訟も起こそう、住民運動も起こそう、署名活動もしよう、こんなムードになってしまった。これはまさに防衛省は十分に反省しなきゃいけないことだというふうに私は思います。

 そこで、もう一つ先に進んで、先ほどの請願署名の件について言うと、大臣もよく御存じだと思いますけれども、もともと、愛宕山地域の開発というのがあって、そこの土砂を基地の沖合移設事業に使おうということでスタートしたわけですよ。そのときの気持ちは、やはり、騒音がうるさいから沖に行ってもらいたい、それから、航空機事故が起こったときに被害が大きくならないように沖に行ってもらいたい、そういう思いで市民が悲願となって行った事業だったんですね。

 それが今や、そこに厚木から六十機近い空母艦載機がやってくるというようなこととあわせて、一緒になって進めてきた愛宕山地域開発の土地というのが、当初の見込みに比べて大きく損失が発生するような事態になってしまった。一説によれば、三百億円近いものになると。それは、県が三分の二、市が三分の一債務保証をするというような仕組みで行われているものですから、地元負担が非常に大きくなってしまっている。これは、突き詰めて言えば、国の防衛政策の協力をしたために、地元が自分たちの負担で防衛政策を進めてきたという、こんなことができ上がっちゃっているわけですね。

 そこで、私は思うんですけれども、やはり基地の沖合移設事業というのは本来政府の責任で行われるべき事業であるということからいえば、政府は、この愛宕山地域開発の土地を地元負担が生じないように買い取るべきではないかというふうに思うんですけれども、どうでしょう。

浜田国務大臣 岩国飛行場の滑走路移設事業につきましては、岩国市、山口県等の御要望を受け、滑走路を東側へ約千メートル移設する事業を推進しているところであります。

 他方、また、この愛宕山地域の開発事業につきましては、山口県東部地域の人口定住化と岩国市域の活性化を図るために、山口県住宅供給公社が事業主体となり進めておられたところであります。地価の下落や住宅需要の低迷等によって事業を中止したと承知しているところでございます。

 愛宕山の用地につきましては、平成十九年一月、山口県から同用地の取得と米軍家族住宅の整備について意向確認があり、同十一月以降、山口県や岩国市から国による買い取り要請が累次なされておりますけれども、防衛省としては、その取り扱いについては今検討をしているところでございます。

平岡分科員 今の答弁の中で、県が米軍住宅の要請をしたというような答弁になっていたような気がするんですけれども、平成十九年の一月に、県は買い取り要求と米軍住宅化ということを言ったんですか。

井上政府参考人 事実関係でございますので、お答えをさせていただきます。

 平成十九年の一月でございますけれども、山口県の方から私どもに対しまして、愛宕山用地の取得と米軍家族住宅の整備等についての意向の確認はございました。それを受けまして防衛省といたしましては、家族住宅用地として取得が可能であれば有力な候補地の一つである旨回答をしているという経緯はございます。

 その後、平成十九年十一月に山口県知事が防衛省を訪問されまして、愛宕山用地の約四分の三に相当する部分の国の買い取りを要請されました。これに対しまして、防衛省として検討する旨回答をし、その後、何度か同様の要請があるというものでございます。

平岡分科員 米軍住宅にしてくれというような要請があったというふうに私は理解していませんので、今の答弁もそこのところは余り明確じゃなかったので、そんな要請はしていないというふうに私は思いますけれどもね。

 それで、二月の二十三日に地元の市会議員の人たちが来たときに、北村副大臣が、この愛宕山の土地については、二〇〇九年の補正か来年度の当初予算で盛り込む意向だというふうな趣旨のことを述べたというふうに地元の記事なんかにもあるんですけれども、そういうことですか。

浜田国務大臣 二月二十日、岩国市議会議員の方から愛宕山用地の買い取りについて要請がございました。その際、愛宕山用地の買い取りについては、現在検討を進めており、岩国市や山口県の意向も踏まえつつ、相互によく相談して対応してまいりたい旨を北村副大臣から回答したところであります。

平岡分科員 そういう回答をした結果として、今はどういう状態ですか。買い取るということを方針として決めたんですか、決めていないんですか。決めたとしたら、いつ予算化するんですか。

浜田国務大臣 この愛宕山の用地買い取りにつきましては、山口県岩国市から国による買い取り要請がなされておるところでありますが、現在、防衛省としては、この取り扱いについて検討を進めているところであります。

平岡分科員 その検討を進めている中で、三月十九日に、岩国市の情報公開審査会というのが、ちょっと新聞等でもいろいろ報道されておった文書でありますけれども、岩国市の愛宕山地域開発事業に関する市長協議など二件の文書について、一部開示の答申を出しています。

 その一部開示とされた該当箇所によれば、防衛省の方から、民間空港再開をやるためには、愛宕山地域の米軍住宅建設の了承の意思を明確にしてほしいというふうに要請したと書かれているんですけれども、そのような事実、つまり、防衛省がそういう要請をした、明確にしてほしいというような要請をした事実はあるんですか。どうでしょう。

浜田国務大臣 御指摘の文書については、現時点において岩国市として開示していないことから、防衛省としては、その内容について承知をしておりません。

 愛宕山の用地については、平成十九年一月から、山口県から同用地の取得と米軍の家族住宅の整備についての意向確認があって、防衛省としては、家族住宅用地として取得が可能であれば有力な候補の一つであると回答したところであります。

 また、先ほど答弁がありましたように、同年十一月以降、山口県や岩国市から、愛宕山用地の平地の四分の三に相当する部分について国による買い取り要請が累次なされているところでございますけれども、防衛省としては、その取り扱いについて引き続き検討しているところであります。

 他方、岩国飛行場における民間航空の再開については、地元からの御要望を踏まえ、以前から日米間で協議をしてきたところでありまして、平成十七年十月の日米合同委員会において、一日四往復の民間航空機の運航が合意されました。また、平成十八年五月のロードマップにおいて、民間航空施設の一部を岩国飛行場に設けることが合意され、平成十九年五月、岩国飛行場における民間ターミナル地域の位置等について関係自治体に御説明をし、本年二月には、民間航空施設の整備は国土交通省が主体となって実施すること等について、関係省庁の申し合わせを取りまとめて公表したところであります。

 このように、防衛省として、以前から、民間航空再開に向けてできる限り努力したところでありまして、今先生から御指摘のあったような、岩国市が愛宕山用地での米軍家族住宅について了承することを条件として民間航空再開を進めてきたという事実はございません。

平岡分科員 私は、文書がどうのこうのというのじゃなくて、そこの文書に書かれておったことが、先ほど言いましたように、民間空港再開は愛宕山に米軍住宅を建てることを了承するということが条件だということではない、そういうことをしたことはないという事実関係を確認したのであります。

 今、大臣は、そういうことはない、事実関係はないというふうに言われたので、それは大臣を信用して、何かまたあめとむちみたいな話というか、条件づけみたいな話といいますか、そういうような進め方というのは本当に私は、地元の住民の人たちを非常に逆なでするような話ですから、ぜひやめてほしいというふうに思います。

 そこで、先ほど来から出ておりますこの愛宕山地域の開発土地の話ですけれども、これをどう解決していくかというのは非常に難しい問題だと私も思います。しかし、そこは、これまでの経緯とかも踏まえ、そしてこれからのことも考えた場合は、やはり地元でも反対が強い米軍住宅とかあるいは米軍施設を前提とするという考えではなくて、もっと知恵を働かせて、いろいろな可能性というものを探っていくべきだというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 先ほど来先生にお答えをしているとおりでございまして、我々とすれば、この用地の買い取りについては、当然、これは引き続きいろいろなことを考えつつ検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。

平岡分科員 これは、何も防衛省のためだけに使うという問題でなくて、政府全体として、何に使うかというのはいろいろな可能性をぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 それで、これもせんだって質問した話の関連でありますけれども、ちょっと気になる答弁であったので、確認も含めて質問したいと思います。

 先日、アメリカの在日海軍のケリー司令官の発言に関して質問いたしまして、そのとき、浜田大臣から、例の空母艦載機の離発着訓練施設の関連ですけれども、「現時点で、我々とすれば候補地を特定しておりません。従来から申し上げるとおり、岩国飛行場及びこの近郊をFCLP施設の整備場所とする考えはないということであります。」という答弁をいただいておるんですけれども、この「現時点で、」というのは、「特定しておりません。」ということだけにかかっているんですよね。現時点で岩国飛行場及びこの近郊をFCLP施設の整備場所とする考えはないということではないですよね。後半の部分は、現時点だけじゃなくて将来にわたってということですよね。

浜田国務大臣 先生、それは、特定していないというのと、現時点というあれがありますけれども、我々とすれば、現時点で幾つかの候補地を選定しているわけじゃないということでありますので、先生のおっしゃるように、現時点というところに余り力点を置かないでいただいて、我々とすると、まだ確実に選定をしているわけではないということを御理解いただければと思います。

平岡分科員 いろいろ聞きたいんですけれども、岩国及びその近郊にはFCLP施設を建設することはない、これは現時点だけではなくて将来にわたってもそうだと。これは久間防衛庁長官もそうやって言っているんですから、それをこの前確認したんですよね。ちょっと変な言葉があったんで確認をしたいということで、もう一遍お願いします。

浜田国務大臣 ございませんので、それはそういったことで御理解いただければと思います。

平岡分科員 それで、もともとのロードマップでは、ことしの七月末までにこのFCLP施設の整備場所を決定する、できなかったらその後できるだけ早くということなんですけれども、いまだにどこかという候補地が全然見えてこないという状況なんですね。

 今どこだと言うのも大変厳しい、言いにくい話だと思うんですけれども、恐れているのは、前みたいに、今は決まっていない、それは決まっていません、協議中ですと言っておきながら、最後に、決まった後でどんと押しつけてくるというようなことがあったわけでありますけれども、私としては、地元の意見も聞かないで、結果を一方的に発表して押しつけるということがないということを確認したい。

 岩国及びその近郊でないことは確認できたんですけれども、岩国及びその近郊でないところについても、しっかりとそういう手続を踏んでいただきたいということを要請したいと思います。

浜田国務大臣 この米軍の再編については、先ほど来申し上げていますように、在日米軍の抑止力を維持しつつ、関係地方公共団体、住民の皆様の負担軽減を図るためのよい機会であって、ぜひとも実現しなければならないと考えております。

 当然、今先生から御指摘のあったように、FCLP施設の選定についても、関係公共団体に対して適時適切に説明して、理解を得るように努力をしてまいりますし、先生の今御指摘のような、一方的な押しつけなどということのないように努力してまいりたいというふうに思っておるところであります。

平岡分科員 時間が来ましたので、以上で終わります。

横光主査 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして防衛省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時十一分散会


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