衆議院

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第1号 平成25年6月21日(金曜日)

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本分科会は平成二十五年六月十八日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

六月二十日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      大岡 敏孝君    熊田 裕通君

      笹川 博義君    田畑  毅君

      福田 達夫君    武藤 容治君

      柚木 道義君    田沼 隆志君

      三谷 英弘君    小泉 龍司君

六月二十日

 柚木道義君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十五年六月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 柚木 道義君

      大岡 敏孝君    熊田 裕通君

      笹川 博義君    田畑  毅君

      福田 達夫君    武藤 容治君

      田沼 隆志君    三谷 英弘君

      小泉 龍司君

   兼務 渡辺  周君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         新藤 義孝君

   文部科学大臣       下村 博文君

   防衛大臣         小野寺五典君

   内閣府副大臣       寺田  稔君

   総務副大臣        柴山 昌彦君

   財務副大臣        山口 俊一君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       村上 英嗣君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       河北 公郎君

   会計検査院事務総局第二局長            藤崎 健一君

   会計検査院事務総局第五局長            太田 雅都君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            吉崎 正弘君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   阪本 泰男君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   岡本 薫明君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   西田 安範君

   政府参考人

   (国税庁次長)      西村 善嗣君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁)    安居 祥策君

   政府参考人

   (株式会社国際協力銀行代表取締役副総裁)     渡辺 博史君

   総務委員会専門員     阿部  進君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

   安全保障委員会専門員   湯澤  勉君

   決算行政監視委員会専門員 平川 素行君

    ―――――――――――――

分科員の異動

六月二十一日

 辞任         補欠選任

  三谷 英弘君     林  宙紀君

同日

 辞任         補欠選任

  林  宙紀君     三谷 英弘君

同日

 第三分科員渡辺周君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十一年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十一年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十一年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十一年度政府関係機関決算書

 平成二十一年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十一年度国有財産無償貸付状況総計算書

 平成二十二年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十二年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十二年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十二年度政府関係機関決算書

 平成二十二年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十二年度国有財産無償貸付状況総計算書

 平成二十三年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十三年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十三年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十三年度政府関係機関決算書

 平成二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (総務省、財務省所管、株式会社日本政策金融公庫、文部科学省及び防衛省所管)


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     ――――◇―――――

柚木主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました柚木道義でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、総務省所管、財務省所管、株式会社日本政策金融公庫、文部科学省所管及び防衛省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成二十一年度決算外二件、平成二十二年度決算外二件及び平成二十三年度決算外二件中、総務省所管、財務省所管、株式会社日本政策金融公庫、文部科学省所管及び防衛省所管について審査を行います。

 これより総務省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。新藤総務大臣。

新藤国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 最初に、平成二十一年度総務省所管の決算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額七百二十七億三千二百三十三万円余に対し、収納済み歳入額は六百九十五億六千百二十万円余であり、差し引き三十一億七千百十二万円余の減少となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額二十三兆一千百七十八億七千二百五万円余に対し、支出済み歳出額は二十一兆七千百六十八億六千百五十三万円余、翌年度繰越額は一兆三千三十二億八千五百九十一万円余であり、不用額は九百七十七億二千四百五十九万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は五十二兆一千三百四十五億二千四百三十三万円余、支出済み歳出額は五十一兆三千六百八億四百万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は七百九十八億七千六百二十二万円余、支出済み歳出額は七百四十三億六千四十五万円余であります。

 続きまして、平成二十二年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額七百八十億一千八百七十五万円余に対し、収納済み歳入額は七百六十六億二千二百二十五万円余であり、差し引き十三億九千六百五十万円余の減少となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額二十一兆六千三百九十三億七千四百二十六万円余に対し、支出済み歳出額は二十一兆二千百六十一億五十八万円余、翌年度繰越額は三千六百四十六億二千五百九十七万円余であり、不用額は五百八十六億四千七百七十万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は五十五兆二千三百九十四億四千八百五十二万円余、支出済み歳出額は五十三兆三千四百九十四億一千三百十八万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は七百五十八億七千八百四十四万円余、支出済み歳出額は七百十一億六千五百二十七万円余であります。

 最後に、平成二十三年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額七百四十八億二千三百六十七万円余に対し、収納済み歳入額は八百十億二千八百九十四万円余であり、差し引き六十二億五百二十七万円余の増加となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額二十兆八千八百八十七億四千九百七十八万円余に対し、支出済み歳出額は二十兆七千二百八十五億九千九百三十万円余、翌年度繰越額は一千百三億五千七百九十五万円余であり、不用額は四百九十七億九千二百五十一万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は五十七兆四百十二億五千九百七十八万円余、支出済み歳出額は五十四兆九千七百七十五億一千百十九万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は七百四十五億六千二百七十五万円余、支出済み歳出額は六百九十三億九千七十三万円余であります。

 以上が、平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

柚木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院太田第五局長。

太田会計検査院当局者 平成二十一年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費等を支払っていたもの、市町村合併推進体制整備費補助金が過大に交付されていたものなど計四十九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、国会議員の選挙等の執行経費の適正化に関するもの、地域情報通信基盤整備推進交付金等により整備した情報通信設備の利用率の一層の向上に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、平成二十二年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、市町村合併推進体制整備費補助金が過大に交付されていたもの、地域情報通信技術利活用推進交付金等の交付を受けて実施する事業の計画が適切でなかったなどのものなど計二十件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、地上デジタルテレビ放送送受信環境整備事業のうち辺地共聴施設整備事業の実施に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 次に、平成二十三年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金が過大に交付されていたもの、情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金の交付を受けて実施する事業の計画が適切でなかったものなど計十六件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構における利益の処分に関するもの、電波資源拡大のための研究開発に関する契約等における額の確定のための検査の実施状況等に関するものなど計五件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

柚木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。新藤総務大臣。

新藤国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、総務省のとった措置について御説明申し上げます。

 最初に、平成二十一年度に御指摘のありました事項について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適切な執行を図るよう常に心がけているところでございますが、会計検査院の検査の結果、情報通信格差是正事業等の実施及び経理が不当と認められるもの等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体等から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところであります。

 続きまして、平成二十二年度に御指摘のありました事項について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、地域情報通信技術利活用推進交付金等の交付を受けて実施する事業の計画が適切でなかったもの等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところであります。

 最後に、平成二十三年度に御指摘のありました事項について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、無線システム普及支援事業等の実施及び経理が不当と認められるもの等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体等から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところであります。

 以上が、平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度の決算に関する会計検査院の指摘について講じた措置の概要であります。

 内容を真摯に受けとめ、今後なお一層事務の改善を求めるとともに、厳正な態度で事務の執行に努める所存でございます。

柚木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柚木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柚木主査 以上をもちまして総務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三谷英弘君。

三谷分科員 おはようございます。みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、総務省の放送通信事業というものに関連して質問をさせていただきます。

 今までも何度か新藤総務大臣には質問させていただいたことがありましたけれども、その際は一票の格差について質問させていただいておりました。そればかりではなんだなというふうに思いましたので、ちょっと違う観点から、違う分野について質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは、地デジへの移行に関して質問させていただきたいというふうに考えております。

 日本における地デジへの移行というものは、二〇〇三年の十二月に開始いたしまして、東日本大震災の影響もありまして若干延びたということはあったかと思いますけれども、二〇一二年三月三十一日に完了したというふうに理解をしております。

 この地デジへの移行というものにつきましては、我が国のICTの成長戦略において大きな貢献を行ったと私は理解しておりまして、それに関係する方々の多大な努力というものには、まずもって敬意を表したいというふうに考えております。基本的に、私自身も、弁護士といたしまして、今までずっとコンテンツの振興という観点で仕事をさせていただいたということもございましたので、こういった努力には本当に敬意を表したいというところをまず述べさせていただいております。

 それに関してというところであるんですけれども、実際、ではそれを具体的にどういうふうに今生かされているのかということで質問させていただきたいというふうに考えておりますけれども、この地デジ化の目的、それから、この地デジへの移行というものに要した、それに関連して支出した金額の総額について、まずお答えいただければというふうに思います。

吉崎政府参考人 地デジ化の目的についてでございますけれども、これは、電波の有効利用、そして高精細、きれいなテレビ視聴、またそのほかにデータ放送とかいろいろございます。

 この地デジ化の関連事業に要しました費用ですけれども、平成二十年度から二十五年度までの間で、累計で約二千三百六十億円でございます。

 その内訳でございますけれども、コールセンターの運営ですとかあるいは受信相談といったことに約七百八十一億円、それから低所得世帯へのチューナー等支援につきまして約四百五十一億円、それから中継局、共聴施設の整備支援などに約千三十三億円でございます。

三谷分科員 今おっしゃいました電波の有効利用ということについて、もう少し詳しくお答えいただければと思います。

吉崎政府参考人 アナログ放送の場合には、一秒間に三十枚の絵を逐次送るということでございますけれども、デジタルになりますと、前の画像との差分だけを送っていくということで、極めて情報量を少なくして送ることができる。その結果、今まで使っていた帯域よりも狭くできるということで、あいたところに、ほかの、携帯電話ですとか新たなサービスを提供することができるというのが、電波の有効利用ということでございます。

三谷分科員 つまりは、電波を圧縮して、場所をあけて、新たなビジネスチャンスを生み出していったというふうな理解をしてもいいのかなというふうに思っております。

 二千三百六十億円、これは決して少なくない金額だというふうに理解をしております。ぜひとも、この二千三百六十億円をまず使ったということで、それに見合うだけの結果、電波の有効利用を含めて出していただければというのを、これはまず心からお願いさせていただきます。

 それでは、続きまして、地デジへの移行というものと切り離せないコピーコントロール、いわゆるB―CASシステムについて伺いたいと思います。

 地デジへの移行をするということで、今までアナログで放送されていたものがデジタルで放送されていくということになりますと、当然ながら、デジタルだと、それを何回複製しても同じものが生まれていくということになりますので、複製をどうやって制限をかけていくかということも、コンテンツの保護という意味では重要になるということは理解をしております。

 今、デジタルテレビを見るには、一台に一枚、B―CASカードが必要となっております。私の議員会館の事務所にも三枚のB―CASカードというものがございまして、これを使って今テレビを視聴しているというような状況になるんですけれども、このB―CASカードというものが導入された経緯、そしてそれに果たした国の役割というものがもしあるとすれば、それについてまずお答えいただければと思います。

吉崎政府参考人 B―CASカードにつきましては、特にデジタル放送になって、コピー保護といったようなことで重要だということでございます。

 B―CASカードにつきましては、有料放送のスクランブルを解くという機能と、それからコピー制御、無料放送についてもコピー制御をやっていくという、その二つが大きなカードのテーマになっております。現在、約一億八千万枚出回っております。

 これを運営しておりますのは、B―CAS社という、放送事業者、受信機メーカーの出資によって設立、運営されております一つの民間企業でございます。総務省の監督下にあるというようなことではございません。また、財政支援とかも国としては行っておりません。

三谷分科員 今お答えいただきましたこのB―CAS社ですけれども、民間事業として、民間のいわゆる普通の法人として、株式会社として運営されているということではございますけれども、その株主構成というものについては、一番大きな株主がNHKということでよろしかったでしょうか。

吉崎政府参考人 株主につきましては、NHKあるいは株式会社BS日本、BS―TBS、ビーエスフジ、ビーエス朝日というキー局系のBS会社、BSジャパンもそうです。それから、WOWOW、スター・チャンネル。そして、メーカーとしましては、東芝、パナソニック、日立などがございます。

三谷分科員 ありがとうございます。

 今、一億八千万枚、このB―CASカードが発行されているというお答えをいただきましたけれども、B―CASカード一枚当たり幾らで取引されているのか、そして、わかるのであれば、その粗利が幾らなのかということをお答えいただければと思います。

吉崎政府参考人 B―CAS社からヒアリングをしましたところ、コストは一枚当たり約四百円ということでございます。

 また、経営状況につきましては、私どもオフィシャルに知り得る立場にはございませんけれども、ホームページ上で公開されている情報によりますと、平成二十四年三月期の経常利益は七億九千九百万円ということでございます。

三谷分科員 ありがとうございます。

 この七億九千九百万円、ほぼ八億円余りの利益を出しているというような会社が、今、この地デジのテレビを見る際に必要な部品を一社で受けている状況にある、そういうような状況だというふうに思っております。

 それでは、次に移らせていただきます。

 二〇一二年初頭から、B―CASカードシステム、このシステムの不正使用というものが表沙汰となっております。いろいろなカードリーダーというものを使って、参照用のバックドアを使うと、何かその鍵をあけて、プロテクト等がかかったそういった番組を見放題になってしまう、いわゆるブラックCASみたいなことを言われる、そういうカードが広く流通していたということも報道等でいろいろ言われていたわけでございますけれども、このB―CASシステムの不正利用に対して、B―CAS社、そして国としてどのような対応を講じているかというようなことについてお答えいただければと思います。

吉崎政府参考人 模造カードが出回りまして、不正な視聴があるということについては認識しております。

 ただ、現時点では、出回っている不正なカードがどれだけあるのか、あるいは使用実態の全貌が把握できていないというのが現状でございます。

 この対策につきましては、一義的には、当事者であるB―CAS社あるいは有料放送事業者が対応するということになりますけれども、総務省におきましても、これまで、警察庁、あるいは不正競争防止法を所掌する経済産業省と連携を図りながら、関係者に法的措置を講じるよう促してきているというところでございます。

三谷分科員 一応、念のため確認させていただきますけれども、これは、単に見ているだけの人も検挙されているということでよろしかったでしょうか。

吉崎政府参考人 そのとおりでございます。

三谷分科員 ありがとうございます。

 実際、これを流通させ、販売するという人だけではなくて、ブラックCAS、そういった模造カードを使って見ている人だけでも、具体的に検挙されているということですから、そういう意味で、今、ユーザーに対しては、大きな、そういう各社の御努力があって、いわゆる模造カードの流通というのがある程度は防げているというような状況にあるのではないかというふうに思っております。

 ただ、先ほどお答えいただいたとおり、全貌が見えないというようなことでございますけれども、そうだとすると、このB―CASシステムの不正利用によって、例えばWOWOWですとかスカパーですとか、そういった事業者の逸失利益の総額というのは全くもってわからないということになるのかということをまずお伺いしたいと思います。

吉崎政府参考人 先ほど御説明しましたように、使用実態の全貌が把握できておりませんので、逸失利益がどの程度あるかというのは算出できておりません。

三谷分科員 ただ、少なくとも、ヤフオクですとかそういったところでどれぐらい流通しているのかというのはある程度はカウントできる部分もあるんだろうとは思っているので、そこについて、どれぐらいの枚数が過去、以前に取引されたのかということは、恐らく、ヤフーですとかそういった事業者に問い合わせをすれば、そういった情報を全部削除して証拠、痕跡を残さないというような対応はとっていないと思われますので、少なくとも、そういったことでわかる限度の被害の把握というのはしていただければというふうにはお願いをさせていただきます。

 続きまして、このB―CASシステム、いわゆる模造カードが出回ったということによって、例えばWOWOWですとかスカパーというのは、もちろん、プロテクトがかかったもののプロテクトが解除されて幾らでも見放題になってしまうという意味では損害になるわけですけれども、一方で、地上波のチャンネルを放送する放送事業者にとって何らかの損害というものが出ているというような状況でしょうか。

吉崎政府参考人 先ほど御説明しましたが、B―CASカードには二つの機能がありまして、一つは、有料放送のスクランブル解除、もう一つが、無料放送につきましてもそのコピーライトを守るということでございます。

 したがいまして、不正カードにつきまして、このコピー制御の面でも影響があるとは考えられますけれども、繰り返しになりますが、現時点でどの程度出回っているかというのが把握できておりませんので、地上放送における損害につきましても把握できておりません。

三谷分科員 今お答えいただきましたが、コピー制御の点で影響があるというのは、済みません、実はちょっと初めて伺ったものですから、それは具体的にどういうことを意味されておりますでしょうか。

吉崎政府参考人 アナログのときには、コピーをすると、だんだんだんだん画質が劣化していくということでございましたけれども、デジタルになると、そういうことはないということでございます。したがいまして、なるべく一定のルールに従ってコピーをしていただこうということで、コピー制御信号、ダビング10と言っておりますけれども、十回録画が可能であるという信号がつけられております。そういう意味で、十回可能であるという信号をコントロールしているのがB―CASカードの一つの機能であるということでございます。

三谷分科員 とすると、今のその模造カードを使えば、その十回のコピーの限度回数というものが、これはある意味無制限になってしまうとか、そういうような影響があるということでよろしいでしょうか。

吉崎政府参考人 技術的にはあり得るということでございます。

三谷分科員 そうだとすると、やはり今のB―CASカードというものが、WOWOWですとかスカパーですとか、そういったところではなかなか使い勝手が悪いというか、本当に、自分のビジネスモデルの根幹を脅かす存在になっているということはもちろん言えるでしょうし、地上波の事業者においても、何とか、著作権保護という観点から、少なくない金額を出してB―CASというシステムをつくったということにもかかわらず、今の、模造カードが出回っているということによっては、そのコピープロテクトというものがある意味外される可能性があるということで、やはりその投資が無駄になってしまうというような状況にはあり得るんだろうというふうに思っております。

 そこで、今、B―CASシステムの後継といたしまして、これは二〇一二年七月末から関東近県で開始されて、本年四月には実は全国運用が開始されたTRMP方式というものがあるということなんですけれども、こちらについて伺いたいと思います。

 このTRMP方式というのは具体的にどのような方式、どのようなプロテクトでしょうか。

柴山副大臣 今御質問いただいた、B―CASの後継として採用されておりますTRMP方式なんですけれども、これは、受信機のチップに内蔵されたソフトウエアを利用いたしました新しい方式であります。今のB―CASカードと違って市販のカードリーダーで読み書きをできないということから、物理的により堅牢なシステムであるというように考えております。

 また、暗号鍵もB―CAS方式よりも強化をされておりますので、セキュリティーは向上しているということで、暗号鍵の長さを非常に長くすることによりまして解読に要する時間が大幅にふえるということで、セキュリティーが大幅に強化をされるシステムであるというように説明できると思います。

三谷分科員 ありがとうございます。

 こちらについて、カードという物理的なものを配布するというものではなく、そういったソフトウエア、プログラムを組み込むことになっているというふうな話ですけれども、プロテクションというのは以前のB―CASのものに比べて強くなっているという御説明を今いただきましたが、そうはいっても、イタチごっこの部分というのはあろうかと思います。

 これは、一旦またハックされた場合への対策というのは講じることはできるんでしょうか、このTRMP方式は。

柴山副大臣 これは、今委員御指摘のとおり、イタチごっこの部分というのは当然あるんですけれども、例えば、カードの情報を改ざんするというより、内蔵されたチップについて暗号を解読してハッキングをするということであれば、それに対応する新たな捜査手法というのを、当然、警察当局等と連携をし、あるいは事業者と連携をしてとっていくということになっていこうかと思います。それは、当然、技術の進展に伴って、私どもも所管省庁と連携をして対応していきたいと思っております。

三谷分科員 ありがとうございます。

 TRMP方式というものができている、これも最近私は勉強して知ったんですけれども、本当にこれで、費用も四百円もかからない、もっともっと安価で対応できるという話も伺っております。B―CASカードの今のシステムよりも何かすぐれているような印象を受けるんですけれども、このTRMP方式というものについて検討が始まったのはいつぐらいだったというふうに御認識されておりますでしょうか。事前の通告はなかったので、できれば参考人の方に答えていただければと思います。

柴山副大臣 検討が始まった時期というのは、今、ちょっと調べなくてはいけないということで事務方の方に検討してもらいますけれども、実際にスタートしたのが二〇一一年の六月、二〇一二年の七月末から関東広域圏において、そして二〇一三年四月から全国において運用開始ということで、非常に新しいシステムであろうというように思っております。

吉崎政府参考人 検討を開始しましたのは二〇〇九年からでございます。

三谷分科員 ありがとうございます。

 二〇〇九年から、実際、B―CASカードの不正利用というものが始まるはるか前からTRMP方式の検討が始まってきたということは、正直なところ、B―CASカードというものは最終的な手段ではないということは当時から恐らく認識されていたのかなというふうには推察しております。

 TRMP方式というものは、現時点では一般社団法人が運用しているというふうに理解をしております。総務省といたしまして、運用しているというこの一般社団法人に対して、何らかの財政的な支援または行政的な施策を講じているということはありますでしょうか。

柴山副大臣 お答えいたします。

 今申し上げたTRMP方式は、放送事業者によって自主的に設立された一般社団法人である地上放送RMP管理センターによって運営をされているんですね。それで、総務省として、これに対して指導監督をしているという事実や、財政支援をしているという事実はございません。

 もちろん、放送コンテンツの保護の方式につきましては、先ほど私が申し上げたとおり、公益上の問題が絡んできますので、総務省として非常に関心を持っているわけですけれども、基本的に、この法人に対する監督あるいは支援ということは、今申し上げたように行っておりませんし、私どもの職員のOBが再就職をしているというような実態もございません。

三谷分科員 ありがとうございます。

 もちろん、このB―CAS社というもの、そして、一般社団法人である、TRMP方式を運用している法人に関して、理事等々を確認すると、総務省の方々がいらっしゃるということはないということは存じ上げておりますけれども、ただ、総務省という立場において、もちろん、放送というものをしっかりと、全体を所管していらっしゃるということですから、より権利保護、そして利用者の便宜というものを両方理解されて、両方の利益に資するような仕組みをつくっていただきたい。それに向けての何らかの方向づけなり意見の交換なりは事業者の方とされているのかなというふうに思っております。

 特に、B―CAS社の大株主というものはNHKでございますから、そこに対しての何らかの、B―CAS社に対しての直接の監督というのは難しいというふうな状況であったとしても、NHKに対する何らかの指導監督というのはあり得るところなのかなというふうに理解をしております。

 先ほど申し上げたとおり、B―CAS社が八億円足らずの利益を生み出しているという状況、そして、このB―CAS社が提供しているB―CASカードというものが、システムの根幹が揺るがされるような事態になってしまっていて、次のものがいろいろと模索されているというような状況で、B―CAS社が今まで上げてきたそういう利益というものをどうされていくのかというのも、当然ながら、利用者、視聴者としては気になっていくところではございますけれども、ぜひとも、今後の展開について、できれば新藤総務大臣に伺いたいというふうに思います。

 今後、新しい、そういったTRMP方式ですとか、B―CAS社が提供するシステムにかわるような、もっともっとシステム的に堅牢なものをつくっていくという場合には、B―CAS社が提供したシステムが過去の遺物になっていくというような事態もあろうかというふうに思うんです。その場合において、ぜひとも、B―CAS社が上げてきた利益ですとかそういったものを有効活用していくということについて、総務省なりの何らかの見解を示していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 まず、このB―CASカードの不正改ざんといったものについては、これは看過できない問題だということでありまして、我々としても、警察庁や不正競争防止法を所管する経産省、こういったものとの密接な連携を図っております。

 一義的には、B―CAS社及び有料放送事業者が行うわけでありますが、我々としても、放送コンテンツの保護、それから、有料放送に対する公平性というものがありますから、こういったものの観点から、しっかりと法的な措置をきちんととるように促してもおりますし、また、適切な対策を講じるように、我々としても機会を捉えて促してまいりたいというふうに思います。

 それから、B―CASの販売によって得られた利益の使い道という観点の御質問がございました。これは、私たちが関与している会社ではないということがあります。そして、これは民間の株式会社として、B―CAS社及びその株主が責任を持って対応していくということだと思っております。

三谷分科員 ありがとうございました。

 もちろん、総務省として関与している会社ではないということではあるとは思うんですが、ただ、現実問題として、一社でB―CASシステムを取り扱っている、そういった、ある意味独占的な地位にあるということを国全体として黙認しているというような状況でもありますので、そういう意味では、ぜひとも何らかの監督を及ぼしていただきたい。

 国民が支払う、一枚に対して四百円、私の家にも二枚、事務所にも三枚あるわけですから、五枚で二千円払っているわけです。一人一人がそういったものを払っているというような状況、これは払わないとテレビが見られないというような状況ですから、そこの、出したお金は有効に利用するよう指導監督を及ぼしていただきたいというのは、これは一有権者としてのお願いにさせていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

 それから、通信・放送行政ということで、次に通信の部分、スマートフォンについて、若干の残りの限られた時間、伺っていきたいというふうに考えております。

 昨今ではスマートフォンの普及が著しく、とある調査によりますと、現在、いわゆるガラ携とスマートフォン、この割合はほぼ拮抗している、あと一年もすればスマートフォンの方がガラ携よりも多くなっていくというような予測もあるところではございますけれども、スマートフォンは、むしろコンピューターというような性格が強いものですから、当然ながら、パソコンと同じように、セキュリティーについてしっかりと対応していかなければいけないということは、多くの方々が最近認識されていることではないかと思います。

 そこで伺います。

 二〇一一年十月に立ち上がりましたスマートフォン・クラウドセキュリティ研究会、この最終方針に基づいて注意喚起が行われて、二〇一三年三月二十九日、つい先日、フォローアップが行われました。中身を見ると、セキュリティー対策をしっかりしていきましょう、そういうセキュリティーの対策のアプリをちゃんと入れましょうみたいなことがされておりますが、実は私、これを見るまで、スマートフォンにおいてそういうセキュリティーのアプリがあるというのは知らなかった。実際、現時点ではまだスマートフォンの中にそういうアプリを入れていないという状況ではありますが、もしお答えいただけるならば、大臣か、スマートフォンをお持ちであれば、セキュリティー対策のアプリを入れているかどうか、お答えいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

阪本政府参考人 先生おっしゃるとおり、最近のスマートフォンというのは、いわゆるフィーチャーフォンですか、携帯電話というのはセキュリティーについてはほとんど心配なかったわけですね。いわゆる携帯電話事業者がほとんど責任を負っていたということなんですけれども、先生おっしゃるように、スマートフォンになると、もうパソコンと同じ機能を持ってきているというようなことで、だから、今までの携帯を使っている方は本当はセキュリティーは全く心配ないんじゃないかと思われているんですけれども、スマートフォンになった途端に、従来の携帯の考え方では対応できないということで、まだまだ、スマートフォンがパソコンとほぼ同じ機能を持っているということについての認識が非常にやはり乏しいということで、最近、ウイルスベンダーなどもスマートフォンのセキュリティー対策ソフトをかなり開発しておりますし、周知もしておるということで、まだ割合的にはかなり低いんですけれども、徐々に、まずはスマートフォンのセキュリティーソフトを入れていただくということに対応していかないといけないというふうに思っております。

三谷分科員 本当にそのとおりだと思います。

 先日、このフォローアップとして、政府広報の中で、そういったセキュリティーソフトをちゃんと入れましょうというのがあったんですけれども、政府広報として果たしてそれがどこまで機能しているのか。国民に対して、本当にそれはセキュリティー上重大なリスクを伴っているんだということを知らしめているという意味では、まだまだ足りないのかなというふうに思ってはいるんですけれども、この点について、スマートフォンの重要性がますます今まで以上に強まっていく中で、セキュリティー対策に向けて政府としてどのような対策をこれから講じていかれる御予定なのか、お答えいただきたいと思います。

阪本政府参考人 私どもといたしましては、研究会の報告書を踏まえましてフォローアップをちゃんとやっていくということであると思うんですけれども、特に、先生おっしゃっていただいたように、普及啓発、これは大変重要でございますので、まず普及啓発に力を入れていく必要があるだろうと思っております。

 それから、ちょっと別の視点では、やはりワールドワイドにスマートフォンというのは使われていますので、国際連携というのが非常に重要だ、日本だけではなかなか解決できないというような問題もございます。事業者さんもいろいろな取り組みをしておりますので、我々としては、やはり事業者さんがそういうセキュリティー対策を強化するような環境整備というものをさらに強めていく必要があるだろうと思っておりますし、さらにはその研究開発、そういったようなことにも重点を置いていかないといけないというふうに思っております。

 日々、この脅威というのは変化をしておりますので、そういったことにきちっと対応できるように、情報収集とかあるいは共有をちゃんと行いまして、官民連携して積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

三谷分科員 ありがとうございました。

 これはもちろんスマートフォンに限った話ではありませんが、最近はいろいろなアプリがあって、そのアプリの中では無料で通話ができたり、無料でメッセージのやりとりができたりというものが数多くあるわけです。その中には、利用約款で、必要に応じて中身を見ることができますよというような約款になっているものもあるんですね。

 ただ、もちろんそれが、憲法上保障された通信の秘密というものがある中で、利用約款の中にそういった文言を入れる、そこに同意をするということで、憲法上の保障というものを放棄することを認めてよいのかという観点も、当然ながら、問題認識としてあってよいのかというふうに思っておりますので、ぜひとも、そういった点も含めて、これからいろいろと検討いただければというふうにお願い申し上げます。

 時間になりましたので、終了させていただきます。ありがとうございました。

柚木主査 これにて三谷英弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきましたので、二十一年度から二十三年度までの決算という中で、私がその間に総務省で副大臣を政権交代発足時に務めました、そのときに取り組んだ幾つかの事業がありまして、今、その成果、結果がどうなっているかということに焦点を当てて、ぜひお尋ねをしたいと思っております。

 私ども鳩山内閣が発足をしまして、原口総務大臣のもとで私も約一年、副大臣を務めさせていただきました。最初に手がけましたのが、いわゆる今後の世界の水需要を考えたときに、我が国の持っている技術の蓄積を海外展開すべきではないかということで、省内に私を座長としまして研究会を発足させました。

 ちょうどそのときに大変意欲を示していらっしゃったのが、当時の東京都の副知事だった猪瀬さんでございました。猪瀬さんのところにも、東京都庁に私は会いに行きまして、さまざまな業界紙等で意欲を表明していらっしゃったこと、何がネックかということも意見交換をしながら取り組んでまいりました。

 その結果、実現の運びに至ったんですけれども、地方公営企業法という法律の解釈を拡大したといいましょうか、柔軟にしたといいましょうか、そこから、省内で検討会を立ち上げてスタートしたわけでございます。

 ちょっと申し上げると、例えば、東京の水道というのは、水源から蛇口までの漏水率が三・一%。世界の主要都市であるロンドンやパリが二〇%の水準だったんですね。日本の東京の水道の料金徴収率というのが九九・九%。ちなみに、埼玉県の資料を見ますと、大臣のお膝元であります埼玉県では九九・七%の徴収率である。

 しかしながら、世界の中で、民間がノウハウを持っているんじゃなくて、自治体がノウハウを持っている。

 これまで、部品であるとか素材であるとかインフラを整備する方は日本はやるけれども、システム全体を管理運営するということについてはなかなか海外に打って出ることができなかったということで、これから日本が世界に打って出るための世界への成長戦略、我々がその年にまとめた、日本に輝きを取り戻すというようなサブタイトルがついていたと思いますけれども、成長戦略の中で、この水ビジネスの海外展開というものも織り込んだわけでございます。

 これはもう大臣御存じと思いますけれども、世界の水ビジネスの市場というのは、二〇二五年に八十六兆円、将来的にはこれは百兆円に至るのではないかというふうに指摘をされております。

 例えば中国、インドというところで、両方合わせると人口は大体世界の三分の一を占めるわけでありますけれども、しかし、三分の一を占める人口の大きな国家でありながら、そこの水源というのは実は世界の一〇%しかない。

 これから、衛生観念の向上とともに、当然、良質な水を提供するということも含め、そして、いわゆる無収水率ですね、盗まれたりあるいは水漏れすることによって確保できない水を、どのようにして世界で最も漏水率の低い日本の技術を導入していくかということで検討会を立ち上げまして、今日に至っているわけでございます。

 そこで、まず冒頭お尋ねをしたいんですが、こうした取り組みをやってきた中で、今現状はどのようになっているか。その点について、現状の進捗につきまして、大臣の口から、今こうなっているということをお答えいただければと思います。

新藤国務大臣 まず、総務省において大活躍をいただいた当時の渡辺副大臣のそういったリーダーシップには敬意を表したいと思いますし、私も、政党がかわっても、政権として国家を担う、こういう思いはいつも同じでなければいけないと思いますし、同じであります。ですから、今までにやっていただいたことを、よいことはきちんと引き継いで、またそれをさらに展開していく、これが私の基本姿勢であります。

 その中で、水のビジネスというのは、もう世界規模の課題であるというふうに思います。そして、世界で降る雨が、地球の中にある水のうち、我々人類が使えるものというのは実は非常に少ないわけであります。ですから、それを効率よく、しかも産業用や家庭用に展開していくというのは極めて重要だ、そして、その技術を、世界一の水準を持っているのは私たち日本だ、この思いは私も共有をしております。

 そして、この平成二十二年の総務省の検討チーム、これは非常にいい仕事をしたと思います。課題を整理して、そして海外展開も促していこうということでありまして、既にそれは東京都、大阪、それから北九州市、さらには横浜や神戸というようなところで技術協力や調査事業等が実施されているということでありまして、順次、着実な進展というのは進んでいるのではないか、このように思っております。

 それから、実は私たちも今、政権の中に、経済協力とインフラ輸出をパッケージにして進めていこう、こういうチームをつくりました。その中で、一つのカテゴリーとして水部門というものもつくろうではないかと私もこの間提案をしたんです。

 安倍総理が過日ミャンマーを訪問いたしましたが、そのときにも、実は東京都の水道関係者が御一緒させていただいております。ですから、自治体が直接出ていくもの、それから民間企業と一緒になってセットでやっていくもの、また三セク方式もあると思います。いろいろなパターンがあると思いますけれども、いずれにしても、日本の技術で世界に貢献する、その中で、水というのは非常に重要な分野、それから浸透膜も含めてそういった関連技術で極めて高いものを持っていますから、こういう日本の潜在能力を生かした海外展開というのはしっかりと進めていきたい、このように私は考えております。

渡辺(周)分科員 引き続き取り組みをいただいているということで、期待を申し上げたいと思います。

 また、ぜひ、この日本の、世界の中で類いまれなる質の高さ、技術の高さを誇る蓄積ノウハウを、これは特にアジアの盟主として我々の国がまさに生涯にわたって役に立てるような支援をしながら、あわせて、私は、日本の利益にも、商売をするという言い方は嫌らしいですけれども、これからいろいろな、少子化も含めまして、国内の水需要というものはだんだんだんだんと頭打ちになってくるであろう。そうした中で、そこまでノウハウを重ねてきたそこで働いている方々も、その技術を持ったままリタイアをされてしまう年代に差しかかっております。

 それだけに、これから私どもは、水を最初の突破口として、いわゆるシステムの輸出、これは我々の国家戦略の中でも考えましたし、恐らく自民党の国家戦略の中にもありますけれども、水のみならず、さまざまなインフラの輸出という、セットで、パッケージで輸出するという、この大きな大戦略の中の先駆けになるのではないかというふうに考えているわけでございます。

 その上で、これは埼玉県が出したレポートをもとに、せっかくですから、大臣の御地元の埼玉県で水ビジネスについて可能性を調査した報告書があります、それに沿ってちょっとお尋ねをします。

 これから、では自治体が展開していく上において、さまざまな課題もある。

 一番進んでいる東京都で、五一%東京都水道局が出資をして東京水道サービスという会社をつくり、横浜市では横浜ウォーターという会社をつくり、既にもう東京都の場合は二十三年五月にバンコクで実地試験をやって、漏水率が二八%から三%に劇的に改善をした。二十四年九月に東京都が現地の合弁企業を立ち上げて、二十五年度中、今年度中には、無収水対策のパイロット事業をタイに次いでマレーシアでも契約をしようということで動いているわけでございます。

 こうして着々と成果を上げている自治体もあれば、これから参入してこようという自治体もあるわけなんです。

 この経済協力あるいは技術支援という形から一つのビジネスモデルとしてやっていく上で、では、どれぐらいこれから可能性があるかということを考えますと、やはり自治体あるいは自治体の傘下にある公営公社がやっていく上で、例えば海外での情報収集であるとか、相手国の求めるニーズであるとか、事業費をどう把握するかということ、それから、先ほど申し上げましたような、例えば合弁会社をつくるような、提携して事業を行う場合は、民間企業の選定を自治体が行えるのかといったら、行えない、また、その情報もない。あるいは事業費の調達方法とか、そうしたいろいろな課題があるというのは、これは、今取り組もうとしている埼玉県のレポートの「課題」というところにあるわけでございます。

 総務省がこれを主管するということよりも、外務省であったり経済産業省であったり、あるいは、上水道となると厚生労働省、下水道となれば国土交通省、いろいろな役所にまたがっていることは大臣もよく御存じのことと思いますが、こういう地方自治体が、あるいは中小の自治体が連携をしてやるというような場合、あるいは、地元のそうしたノウハウを持っている民間企業とセットになって官民共同で打ち出していく場合、私は、ぜひ総務省に、地方におけるそうした取り組みを後押しするために、縦割りの各省庁の役所に対してどのような形でリーダーシップをとっていかれるかということが大きな一つの成功の秘訣になると思うんです。

 総務省として、地方のニーズを組み入れる、あるいは、自治体の成功例を幾つか紹介しながらそのノウハウを伝えることによって、積極的に意欲を持っていただくために、どのようなことを旗振りをしていくか。我々の政権が続いていたらいろいろなことを考えられたんですけれども、政権が再交代して、どのように今引き継いでいかれているのか、その点について、意気込みがあれば伺いたいと思います。

新藤国務大臣 これは極めて重要な御指摘だと思います。そして、当時の渡辺さんが中心となっておやりになったチームの中で、問題点、また課題というのは整理をしていただいているわけであります。ですから、これから私たちは、そういったものをベースにしていかに展開していくか、それから実行していくかということが重要なんですね。

 今、私の方では、実は総務省の中に、ICTに関する戦略研究会というのを私が大臣になってつくりました。そのICT戦略の研究会の中で主要なテーマの一つになっているのが、水の展開であります。

 この水を、地方自治体の持っているノウハウ、それから日本が蓄積した高い技術、加えて、こういったものを、上水から産業用水まで含めて、一度使ったものをもう一度また再利用する、こういうことも含めまして、ICTによる管理が有効ではないか、そういうビジネスモデルをつくろうというのが今私が行っている研究であります。

 それから、水ビジネス協議会という民間の研究会もございます。ですから、自治体の持っている技術プラス、それぞれの各企業が持っているすばらしい技術もあるんですね。さっきも言いましたけれども、浸透膜も含めて、あるんです。

 ですから、こういうものをパッケージにして日本として海外展開する際には、ぜひこのICTも絡めた上で、私たちとしては、そういった応援をできるようなものをしていこうというふうに思っています。

 さらに、委員も関係の深いモルディブにおいては、海洋深層水を引き揚げまして、その温度差を利用して空港の空調に使う、これは全くのCO2ゼロなんですね。水を吸い上げるのも、電気を使わない仕組みで、サイホン方式でやります。このサイホン方式のコアの技術を持っているのは、実は、私どもの地元の埼玉の鋳物屋さんがその部品を提供しているんです。

 ですから、こういう水ビジネスを展開させていくことは、製造業の新たな需要にもつながっていく、そういう観点も私はあると思っています。ですから、今、水一つをやっているわけではありませんが、ICTというものを使って、ぜひこのすばらしい技術をさらに拡大展開するような、そういう取り組みを現在やっております。

渡辺(周)分科員 大変具体的な例を挙げて御答弁をいただきました。

 我々も、政権をとって、やり残したことがいっぱいあるもので、悔いみたいなものがございます。あるいは燃え尽きていない感がございまして、それだけに、正直、悔恨の念みたいなものをしょいながら今野党に身をやつしているわけではございますが、ぜひ、こうした日本の技術を生かして、世界のためになる地方の取り組み、また、一つチャンスを与えれば、それが大勢の人間の命を救うことになる、あるいは大勢の人間の衛生的な環境を向上することができるということで、ぜひ積極的なお取り組みをいただきたいと思います。

 ちなみに、今現在、地方自治体の水道事業の海外展開の例を資料として出されたものを見ましたら、タイ、サウジアラビア、ベトナム、カンボジア、そこに、東京、横浜、大阪、神戸、北九州、いろいろな自治体が積極的にかかわろうとしている。

 残念なことに、この間、総務省の役所の方が来られたので、今どうなっているんだと言ったら、いや、地方に聞いてみないとわかりませんみたいなことを言っていましたので、そこはやはり国家戦略として、日本のパッケージの輸出、インフラシステムの輸出という中で、国が主導して、地方にやらせてあとはもう眺めているのではなくて、ぜひ積極的に関与をしていただいて進めていただければと思います。

 次の質問に移ります。

 政権交代直後に取り組んだ事業の中に、そのほかにも、実は、宝くじの改革であるとか、まさにICTを利用した地域の活性化とか、いろいろなことがあったんですが、全部挙げるわけにいきません。

 私、後半の方に、総務省の行政評価局にお願いをして、行政評価局でまとめるその年の行政評価のテーマの中に、検査検定、資格認定に係る利用者の負担軽減、これを調べてほしいということでお願いをしまして、大変な時間をかけて当時の行政評価局の方々が取り組んでくださいました。

 これはなかなか、もしかしたらアンタッチャブルなテーマだったのではないかと思うんです。なぜなら、自分たちの上司が行っている、OBが行っている公益法人、天下り団体、ここに、あなた方のそもそも会計はどうなっているんだ、あるいは、ここで資格を取らないと仕事ができないのではないか、講習会やら検定やらを受けている人たちに過剰な負担になっていないかというのを全部一回調べてくれということで、あまたある公益法人を調べてもらいました。

 分厚い、こんな結果報告書というのが二十三年の十月に出てきたんですが、これも当時の方にお話を伺うと、まとまったときに私のところに届けてくださいまして、そのときに、やはり中には、おまえはどっちの味方なんだと言われたところもあったそうでございます。消防庁やその他総務省が所管をしている、いわば自分たちのOBが行っているところに行って、あなたのところの受講料は高過ぎないか、あなた方のところは高いテキストを買わせているけれども、このテキストのそもそもの算定根拠はどうなっているんだということを、随分言われながらも、調べていただきました。

 そうしたら、またその方が言っていました。本当に、私も役人をやっているけれども、同じ役人でもこれはひどい、こんなのがあったと。キリの箱に何かテキストを入れて売って、何万円ものものを買わせていた。こんなキリの箱の中に立派な装丁本が、キリの箱とは言いませんでしたね、何か装丁をした、こんな立派な装丁のテキストを買わせる必要があるのかと。そういうことも、調べてみてよくわかったと言っていました。

 幾つか、手数料の適正化、あるいは会計処理の適正化、申請手続の負担軽減等々を勧告されたと思いますけれども、その中で、これは確かにこういう成果があったということがございましたら、ぜひ今の、その後の総務省の行政評価局の勧告がどのように反映されたかということについて、御答弁をいただければと思います。

    〔主査退席、武藤(容)主査代理着席〕

新藤国務大臣 検査検定、資格認定の利用者からの手数料の引き下げ、それから申請手続の負担軽減、これは、国民の声、利用者の声としてたくさんあったわけであります。そのことを踏まえまして、平成二十二年度から行政評価局の調査として取り上げました。御指示いただいた当時の渡辺副大臣以下、この問題意識というのは非常に重要だったと私は思っています。

 結果として、公益法人が実施する百三十九の検査検定、資格制度について調査をいたしました。まずは、手数料を適正化せよ、それから申請手続の負担軽減をできるところは何かというものを調査いたしまして、平成二十三年の十月に関係十三府省に勧告をいたしました。

 そして、改善状況といたしましては、手数料の適正化は、まず、指摘した五十一事業が全て見直しをするということに、結果、なりました。

 特に、過大な積算の見直しという意味におきましては、消防用設備等の更新認定料、これは我が総務省でありますが、三十一万五千円だったんですけれども、二十五万二千円へと、六万三千円引き下げることができたということであります。

 それから、受験科目を免除したにもかかわらず受験料を徴収していた、こういうものもございました。公害防止管理者試験の受験料、これは環境省でありますが、六千八百円あったんですけれども、これは無料になりました。

 それから、講習で使用しないテキストの全受講者への有償配付も、水道技術管理者講習テキスト、これは厚生労働省でありますが、三冊で二万三千四百四十円買っていたんですね。これは、購入は任意にするということにいたしました。具体的な改善がなされたわけであります。

 それから、申請手続の負担軽減におきましても、不必要な資料の提出を求めているとされた十八事業、これは全て見直しをいたしました。

 そして、厚労省の関係でありますが、食鳥処理衛生管理者講習、これは中学校の卒業証明書の提出を不要にするということをいたしましたし、浴槽用温水循環器等の適合性検査、これは経済産業省でありますけれども、一度提出した図面、書類の再提出はもう要らない、こういうような目に見えた改善ができたわけであります。

 そして、これは当然のごとくその後のフォローアップを続けておりますから、必要に応じて適切に見直しが図られるようにこれからも取り組んでまいりたいと思います。

渡辺(周)分科員 ありがとうございます。

 これも、その当時の行政評価局の方々、担当された方々の血と汗と涙の結晶みたいなところがございまして、幾ら三役からの指示とはいえ、自分のOBや自分の関係者がいる団体にまで行って、お仕事とはいえ、そこまでやってくれました。官の世界の中でひょっとしたらタブーだったことを、あえて外に出したわけです。

 正直、やってみて、公益法人の、国民に対してさまざまな負担を課しているのではないかということは、これは私、一例だと思うんですよ、全部が対象にできたわけじゃないので。これから将来的には消費税も上げるという、当時、このころにはまだ消費税を上げるなんという決断はしていませんでしたけれども、消費税のことであるとか、さまざまなコストアップ、今は、この後円安基調になっていけば、いろいろな事業者の方々からも悲鳴が聞こえてまいります。

 そうした中で、まさに資格や検定を受けるときに、小さな零細の水道屋さんが、そこにいる若い職人を連れて、社員を連れて、静岡県だったら東京や横浜まで講習を受けに行ったりするわけですね。さまざまな地方が所管しているような団体の会費を払ったり、テキストを買ったり、講習を受けている。こういうものがたくさんあるわけですよ。

 こうしたことが本当に適正な価格なのかどうかということについてさらにフォローアップをしていただいて、少しでもそうした負担を、金銭的な負担、零細企業が苦しんでいる、さまざまなお上からの無言の圧力のもとでやはり負担をしている、本当にこれが適正な値段なのかと。

 天下り団体のトップは随分高い年収をもらって、それが実は、いろいろな検査検定の中での手数料とか申請手続とかという、根拠がよくわからない費用のもとで負担をさせられている。ここをぜひメスを引き続き入れていただきますように、これで終わりとせずに、どうぞ大臣には問題意識を持ってそのことに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 最後、数分時間がございますので、ちょっと話題をかえまして、ネット選挙のことについて大臣の所感を伺えればと思います。

 いよいよネット選挙運動がこの参議院選挙から解禁されるわけでありますけれども、さまざまな細かい、こういう場合はどうなる、ああいう場合はどうなるということは、倫選特の委員会等でももう随分議論をされております。

 政治家として、この選挙が解禁された後、我々はネット選挙というものを試行錯誤しながらやっていくわけですが、将来的に、このネット選挙の利点として、今まで、これは大臣もそう、私もそう、衆議院選挙あるいは参議院選挙を戦う者の膨大な事務作業、例えば法定ビラに証紙を、シールを張る、何万という数、選挙区によって違いますけれども、法定ビラのための証紙を張ったり、はがきを割り当てが何万枚あって書いたりするわけなんですが、こうした選挙におけるこれまでの制度、例えば、もっと言えば個人演説会のちょうちんの大きさとか、いろいろなことが公選法に書かれていますけれども、こういうことが、ネット選挙解禁によって将来柔軟に見直されていくことになるんじゃないだろうか。

 どういうふうな影響があるというふうにお考えか、あるいは、現状の問題点等を大臣はどうお持ちかということを伺いたいと思います。

 それから、ぜひ、この選挙、初めてネット選挙運動が解禁される中で、やはり総務省としても関心をずっと払っていただきたいと思うんですね。今回特に、一つの最初のケースですから、それは地方の選管からも問い合わせが来るでしょう。あるいは警察庁とも、公職選挙法に抵触するかどうか、どこまでが違反か、どこからがどうなるかということも含めて、かなり徹底していろいろな事例を選挙期間中も対応しなきゃいけないと思います。

 それについて、従来の選挙にも増して、人員の面であるとか、それから、さまざまな問い合わせに対するクイックレスポンス、素早く対応できるということについて、今回の選挙、トップとして、選挙を所管する総務省の大臣として、今どのような指示を出していらっしゃるか。

 この二点についてお尋ねをしたいと思います。

新藤国務大臣 まず、このインターネットの選挙活動の解禁、これは、我々の、国民の基本的な権利である選挙権の行使に対する極めて革新的な改善だ、このように思います。そして、むしろネットを使わないことの方が不自然な世の中になっている中で、法律が追いついたということであります。しかし、公選法をつくったときにはインターネットというのはありませんでしたから、そういう意味においては、我々は新しい時代を本当に迎えているんだということであります。

 最大の利点は、インターネットによって政治と有権者が近づいていく、距離が縮まるということだと思っているんです。そして、有権者は、より個人の判断で、どの政治家が、どの政党がどんな主張をして、その中身、また情熱、こういったものを選挙中の行動を通して直接知ることができる。

 私は、選挙運動が新しい形になるということもありますけれども、何よりも重要なことは、自分で、個人が政治家の資質を確かめることができる、これが最大のよいことだと思うし、自分の責任で自分の一票を入れるということが重要なんですね。組織ですとか集団にあって誰かに頼まれたから入れるのではない、自分の考えで入れる、こういう選挙をやることは望ましい、このように思っております。

 そして、今お話がありました、その中で文書図画に対する制限です。これは、ルールを守っていただかないと有名無実化してしまいます。禁止していますけれども、ホームページ上に載せた選挙中のビラが勝手にダウンロードされてしまえば、どうにもならなくなるわけであります。ですから、むしろ、この制限が意味がないのではないかという意見もございました。

 しかし一方で、選挙は金をかけずにやる、また、物量で、資金のある方に有利な、そういう選挙になってはいけない、こういう観点もあって、ここをどうせめぎ合っていくか。これは今後のバランスをとらなければいけない重要検討課題だ、このように思いますし、今度の国政選挙においてどのようなことがなされるかによって、また変わってきます。

 ですから、私、心がけているのは、すばらしい権利を得たんですが、このときに、よし、この権利をもっと膨らませていこうと世の中が思うためには、やはりルールに基づいて、皆さんが善良にそれを使っていかなければならないということでありまして、それを期待しています。

 私としては、それをまず訴えるためにどうするか。周知、広報、啓発、これをやらなければいけないわけであります。それについては、実は、ネットで選挙できるようになったんだから、その広報を、新聞やポスターや今までの既存ツールで広報したのでは片手落ちだと。ですから、ネットの中で徹底的にそれをPRできるようにしようじゃないかということで、ネット選挙啓発動画コンテストというのを今やっています。

 先週実は締め切りまして、全国から百四本、皆さんが応募をしていただきました。それを、審査委員会を設けまして、慶応大学のこの分野の専門の先生に委員長になってもらいますが、俳優の別所哲也さんとか、それから歌手、タレントの中川翔子という、しょこたんという人だとか、そういう人たちにも入ってもらって、動画をコンテストしているんです。

 それで、絞り込んだものを、今度、来週から国民投票、人気投票をネット上でやろうと。そして、専門家が絞り込んだ動画の中で最大得票を得たものが総務大臣賞として選ばれて、それは全国のパブリックビューイング、例えば商店街のところに大画面とかありますね、ああいうところに、無償で提供するから無料で映してくれないかと。それから、ユーチューブにはもちろん、見放題ですから。そういうような展開をしています。

 それから、その国民投票というか人気投票に参加するためのインセンティブとして副賞を設けまして、応募者に対する優秀作品賞にも副賞を出しますけれども、人気投票に参加してくれた人にも副賞を出す。これは、中川翔子の特別イラスト、世界で一枚、プライスレス、こういうものをやりました。ちなみに、最優秀作品賞は、「社長島耕作」の弘兼憲史さんのオリジナル原画、これも世界で一枚のプライスレス、こういうものでございます。そういうものもつくって、とにかく国民の皆さんに関心を持ってもらおう、見てもらおうということをやっています。

 最後に、これだけやって、今までよりも物すごいPRをしながら、予算的には信じられないぐらい安い。予算をカットしろと、我々が手当てした予算を物すごい勢いで今削っているんです。それがネットの、電子利用というのはそういうことだと思います。

 ですから、媒体で、例えば新聞広告などでいえば、一面でやったら三千万とかかります。そうではなくて、ユーチューブで、ただで、何千万人の人に見てもらうか。それをきちんと整理しようと思っていますけれども、そういう中でつくって、これだけの騒ぎをやったが、経費は、えっという経費にしようじゃないかと。今どのぐらいまで削るかは、削れと言っている最中ですから、後で御報告いたしますが、そんなことで、ネット選挙の広報そのものが話題になるような、そういう形のものも工夫しながら取り組ませていただいている。

 いずれにしても、新しい取り組みですから、しっかりと定着できるように努力していきたい、このように思います。

    〔武藤(容)主査代理退席、主査着席〕

渡辺(周)分科員 ありがとうございました。

 もう時間が随分超過しました。大変たくさん答弁をいただいたんですが、最初の質問で、民主党政権の時代というのは、ほとんど今になって批判されることばかりなんですけれども、そればかりではなくて、先ほど申し上げた水ビジネスの展開も、実は資格や検定の見直しも、総務省の皆さんと一緒にやったという、評価されてもいいことはあるんだろうということをぜひ御認識の上で、いいことは引き続きやっていただきたい。

 リーダーシップに期待して、終わります。

柚木主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして総務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより財務省所管及び株式会社日本政策金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成二十一年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明させていただきます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は百五兆七千三百三十一億円余となっております。

 このうち、租税等は三十八兆七千三百三十億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十三兆三千七百七十九億円余でありまして、支出済み歳出額は二十二兆二千七百三十二億円余、翌年度繰越額は二十五億円余でありまして、差し引き、不用額は一兆一千二十一億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十八兆四千四百四十八億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げさせていただきます。

 国債整理基金特別会計におきましては、収納済み歳入額は百八十六兆三千三百二十九億円余、支出済み歳出額は百六十五兆六千二十三億円余であります。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務の決算におきまして、収入済み額は一千六百九十五億円余、支出済み額は一千二百六十一億円余であります。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成二十一年度における財務省関係の決算の概要であります。

 次に、平成二十二年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計の歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は九十八兆六千六百四十九億円余となっております。

 このうち、租税等は四十一兆四千八百六十七億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十二兆八千八百八十七億円余でありまして、支出済み歳出額は二十一兆九千九百三億円余、翌年度繰越額は四十一億円余でありまして、差し引き、不用額は八千九百四十二億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十九兆五千四百三十九億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、収納済み歳入額は二百一兆九千三百四十一億円余、支出済み歳出額は百七十一兆二千三十六億円余であります。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務の決算におきまして、収入済み額は一千六百二十六億円余、支出済み額は一千百八十七億円余であります。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成二十二年度における財務省関係の決算の概要であります。

 次に、平成二十三年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は百七兆三千二百五十六億円余となっております。

 このうち、租税等は四十二兆八千三百二十六億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十三兆五百八十四億円余でありまして、支出済みの歳出額は二十二兆百九十三億円余、翌年度繰越額は六十億円余でありまして、差し引き、不用額は一兆三百三十億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十九兆六千二百二十二億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百十二兆六千二百九十六億円余、支出済みの歳出額は百九十兆九千五百四十九億円余であります。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務の決算におきましては、収入済み額は一千六百三十八億円余、支出済み額は一千八十一億円余であります。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成二十三年度における財務省関係の決算の概要であります。

 以上三決算、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

柚木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院村上審議官。

村上会計検査院当局者 平成二十一年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの、不正薬物に係る簡易試薬の購入契約において、必要がない耐冷保存用収納ケースの価格を見込んで積算していたなどのため、支払い額が過大となっていたもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、中小企業者に適用される租税特別措置に関するもの、中小企業者に対する法人税率の特例に関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、消費税の還付金等が支払われた場合の所得税の課税に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十二年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの、査察事案の事務処理が適正に行われなかったため、重加算税等を賦課決定できなかったり、延滞税を過小に徴収決定したりしていたものなど計六件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、社会保険診療報酬の所得計算の特例に係る租税特別措置に関するもの、特定国有財産整備特別会計の貸借対照表に計上されている資産のうち剰余となっている不動産の有効活用に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、国有財産である畦畔を時効取得した者に係る課税に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十三年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものにつきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、輸入事後調査によって非違が判明した場合における修正申告等または更正等による税額の確定に関するもの、租税特別措置の適用状況等に関するものなど計七件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、麻薬探知犬訓練センターの敷地内にある訓練場等の有効利用に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

柚木主査 次に、会計検査院太田第五局長。

太田会計検査院当局者 平成二十一年度株式会社日本政策金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、事業資金が貸し付けの対象とならない不正な借入申込者に貸し付けられていたものにつきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、長期出張者が他の法人の海外駐在員事務所で行っている情報収集活動の根拠となっている当該法人との業務協力協定に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 次に、平成二十二年度株式会社日本政策金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 次に、平成二十三年度株式会社日本政策金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要について御説明いたします。

 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、赴任旅費の支給に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

柚木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度に関し、ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につき、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったことなどの御指摘を受けたことは、まことに遺憾であります。これらにつきまして、徴収決定等適切な措置を講じるなどの対応をしておりますが、今後一層事務等の改善に努めてまいりたいと存じます。

柚木主査 次に、安居株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁。

安居政府参考人 平成二十一年度及び二十三年度決算検査報告について会計検査院から御指摘のありました事項に関し説明申し上げます。

 二十一年度の、貸付審査につき、不当事項として指摘されました事態を生じましたことは、まことに遺憾であります。既に改善しており、その効果が出ておりますが、今後さらに再発防止に万全を期する所存でございます。

 二十三年度の、処置済み事項としての御指摘の着後手当の支給内容につきましても、そのような事態がありましたことは、まことに遺憾であります。今後とも適正に運用するよう努めてまいります。

柚木主査 次に、渡辺株式会社国際協力銀行代表取締役副総裁。

渡辺政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のございました、平成二十一年度株式会社日本政策金融公庫の国際協力銀行業務関連部分について御説明を申し上げます。

 財団法人国際金融情報センターとの業務協力協定につきまして御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。御指摘を受けました事項については、直ちに適切な是正措置を講じましたが、当行といたしましては、今後なお一層業務の適切な運営に努めてまいる所存であります。

柚木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柚木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柚木主査 以上をもちまして財務省所管及び株式会社日本政策金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡分科員 滋賀一区、大津市、高島市から選出いただきました大岡でございます。

 本日は、麻生大臣、そして山口副大臣に謹んで質問させていただきたいと思います。

 まず、予算執行調査関係の質問をいたします。

 財務省として独自に予算の執行調査を行っているとのことでございますが、今回対象となりました平成二十一年度から二十三年度まで、どのような調査を行い、どのような効果を出すことができたのか、まず御説明いただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から今御指摘のございました財務省の予算の執行調査でございますが、これは財務省におきまして、財務省主計局の予算担当職員や、日常的に予算執行の現場に接する機会の多い財務局の職員が、予算の執行の実態を調査して、改善すべき点等を指摘し、予算の見直しや執行の効率化等につなげていく取り組みを、平成十四年度以降、毎年実施しているところでございます。

 この予算執行調査の結果につきましては、翌年度の予算の編成作業に適切に活用しておりまして、先生からお尋ねのございました、例えば二十一年度予算につきましては三百二十四億円、二十二年度予算には三百八十億円、二十三年度予算には三百九十八億円をそれぞれ反映しておりまして、予算の効率化につなげているところでございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 そこで、お尋ねしたいんですが、当該期間の中に、話題となった復興関連予算の流用問題というものがございました。具体的には、平成二十三年度三次補正、そして、今回の審議対象外ではありますが、平成二十四年度という部分につきまして、財務省としてどのような対応を行ったのか、教えていただきたいと思います。

山口副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。

 今御指摘の、平成二十三年度第三次補正予算及び平成二十四年度予算における御指摘の不適正な使途の問題につきまして、これは、昨年十一月の復興推進会議におきまして、東日本大震災から、被災地域の復旧復興及び被災者の暮らしの再生のための施策のみを計上する、そういった観点等を踏まえまして、三十五事業、百六十八億円について執行を見合わせたところでございます。

 なお、これもお話がございましたが、政権交代後の平成二十四年度補正予算及び平成二十五年度予算につきましては、本年一月の復興推進会議におきまして、流用等の批判を招くことがないように使途の厳格化を行うとの総理の指示を踏まえまして、全国向けのそういった予算というのは、原則全廃をしておるところでございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 既に対応を進めておられるということで、これは一旦安心をさせていただきました。

 あわせてなんですが、最初に申し上げた予算の執行調査、これも非常に重要な調査であると思っておりますし、この復興関連予算に関しましては、多くの国民が、これは復興増税も伴うものであったことから、関心が高いと考えています。

 そこで、今年度の予算執行調査において、この復興関連予算、やはり精密に調査するべきだというふうに考えておりますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

山口副大臣 先生御指摘のとおりでございまして、二十五年度予算執行の調査におきましては、被災地方の公共団体の事務負担等はしっかり配慮しながらも、復興関連予算に係る調査を実は二件実施することにいたしております。

 具体的には、東日本大震災における女性の悩み・相談事業、あるいは災害廃棄物処理代行事業等につきましてやらせていただくというふうなことでありますが、こういった調査を適切に実施するとともに、調査結果を二十六年度予算、あるいは今後の予算執行に的確に反映をしてまいりたいと考えておるところでございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 ちょっと予定したより早いので、もう一問、関連で質問させていただきます。

 先ほど、山口副大臣から、二件の調査ということでございますが、二件で十分と考えておられるのか、これは代表的なものを取り上げているので、あとは、よく類推して各所管大臣は対応すべしと考えておられるのか、そのあたりのこと。

 あわせて、財務大臣、御存じのとおり、包括的な予算の執行管理権限を持っておられるわけでございますが、そうした中で、この復興予算の執行について、大臣から、そのほかの各大臣に対して、具体的にどのような指示を出されたのか、あるいは今後どのような指示を出されるお考えなのか、そういった部分、わかる範囲で結構ですので、お答えいただきたいと思います。

山口副大臣 予算執行調査というのは、もう先生も御存じと思うんですけれども、網羅的に全部やるというわけではなくて、ピンポイント的にずっとやっていくわけでありますが、御指摘の復興関係予算につきましては、確かにいろいろと話題になっておるというふうなこと等ございますので、そこら辺も、復興庁ともしっかり連携をしながら、やはりいろいろな事例につきまして、必要とあらばやっていくというふうなことで検討しております。

麻生国務大臣 今副大臣から申し上げましたとおりなんですが、基本的には、復興予算、事を急いだ、いろいろな事情があったにしても、何となくちょっとおかしいんじゃないかという疑惑を持たれるところが問題なのであって、そういったところをきちんと踏まえて、今後疑念を持たれないようにするのが大切という点はやくやく、各大臣というか、各省庁にも伝えてあるところであります。

大岡分科員 ありがとうございました。

 それでは、次に、国税庁関係につきまして質問をさせていただきます。

 先日のG8の主要議題ともなりましたけれども、グローバル企業、とりわけ、金融系とかIT系とか言われるなかなか実態を捉えにくいグローバル企業にどのように正しく課税をしていくかというのが、一つの大きな話題であり、問題であり、課題というふうになっております。

 そこで、今回審議対象となっております平成二十一年から二十三年度まで、税務当局としまして、どのような課題があると考えて、どのように取り組んできたのか、また、仮にグローバル企業に対して正しく課税ができていた場合、どの程度の税収増加が見込めたというふうに見ておられるのか、この点について教えていただきたいと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 経済のグローバル化が進展する中で、税務当局が取り組むべき課題の一つとして、近年、一部のグローバル企業が、各国の税制優遇措置や租税条約等を複雑に組み合わせて所得を軽課税国、無税国に移転し、グローバルに租税の軽減を図っているといった国際的な租税回避にどう対抗していくかという問題があると認識をしております。

 この問題に対応するため、国税局などに国際課税問題を専門的に担当する国際税務専門官を多く設置するほか、人材育成に努めるなど、調査体制の整備を図るとともに、各国の税務当局と租税条約等に基づく情報交換の積極的な実施に努めるなど、各国の税務当局と密接な連携を図り、国際的租税回避に関する情報収集や実態の解明を行っており、適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。

 参考までに申し上げますと、平成二十三会計年度におけます我が国からの情報提供件数と外国当局からの情報入手件数との合計件数は、約五十六万件となっております。

 なお、税収増加についてお尋ねがありましたが、グローバル企業の事業形態は多岐にわたることから、仮定の税収増加については試算をすることは困難であり、お答えできないことを御理解いただきたいと思います。

麻生国務大臣 補足をさせていただきますが、これは、大岡先生、一国じゃできません。したがって、こういうのは主にOECD加盟国ぐらいの経済水準というものを対象にやるべきであって、これを脱税とよく書いてありますけれども、それは間違いです。合法的にやっていますので、これは節税であって、脱税ではありません。

 したがって、過日イギリスで行われたG7の蔵相・中央銀行総裁会議では、日本から提案をして、こういった税金を、みんな各国、税収不足に悩んでいる最中に、こういうような、我々の持っているインフラがいいためにディストリビューション、配送がうまくいっているような企業は、しかるべき国にしかるべき税金を払って当然ではないか、それを黙って認めているのは、これは各国の財務大臣が悪いのであって、中央銀行総裁には関係ない、したがってOECDやらこの中はやるべきではないかと。加えて、こういったことがどんどんどんどんいくと、まともに税金を払っている人の、納税者のモラルが低下する、この方がもっと問題ということを申し上げて、それが話題になったんですけれども、今回のG8の首脳会議においてもこれが主要議題に取り上げられております。

 ちなみに、OECDのこの種の税を担当します委員長というのは選挙で選ばれるんですが、それは日本の大蔵省の役人が務めております。

大岡分科員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。

 まさに大臣がおっしゃるとおりでございまして、正しく課税をする、それを集めるというのは、これはまさに国の根幹にかかわる業務でありまして、これができなくなると、さらに言うと国の存亡にかかわる。私は、極めて重要な問題だと思っております。

 ただでさえ企業数がふえて、また取引の数というのは膨大になって、さらに複雑化が進んでいる。こうした中、正しく課税をし、正しく徴税をしていくためには、やはりスタッフの充実というのは欠くことができない課題だと思うんですね。

 税務当局の定員のあり方につきまして、現在どういう考え方で取り組まれているのか、あるいは見通しはどうなのか、このことについて教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 税務行政を取り巻く環境というのは、言われたように二点。件数がふえた、二つ、国際化している、その二点が一番問題なんだと思います。思いますけれども、質、量ともに極めて厳しい状況になりつつあると思っております。

 こういった中にあって、定員という面からいきますと、これはほかの役所と同じように少しずつ少しずつ減ってきておりますので、そういった意味では人数は減った。では、人数だけいればいいのかというと、この種のことを扱えるというのは、これは公認会計士とか税理士とか、特殊なことを勉強したり学習していない限りは何の役にも立ちませんから、そういった意味では、私どもとしては、定員の確保プラス教育と二つ要りますので、そういった意味では、必要な定員確保とその質の確保というのは、今後とも、これは国税庁というか財務省としては、人材の確保に努めていきたいと思っております。

大岡分科員 では、大分深く答えていただきましたので、関連してお尋ねをいたしますと、まさに麻生大臣はこういう経営の感覚も極めて強く持っておられるわけでございまして、正しく課税できていない金額が大量にあるわけですね。よくニュース等では、OECDだけで百兆円を超えているとかいうような報道もあるわけでございまして、とすると、いたずらに定員を減らす、減らす、公務員を減らせ、減らせということばかり言われているわけでございますが、これは、ふやしたらふやした以上に正しく課税ができているとすれば、ふやした分の人件費は十分過ぎるほど元が取れるわけでございまして、まさに税務署の部分というのは、民間企業でいえば営業力の強化、収益力の強化につながってくるわけでございます。

 そういう観点からいいますと、では大臣としまして、予算をつける権限も持っていながら国税庁も見ている、両手でこれを管理されているわけでございますが、税務署の定員については、こういうことを踏まえて、ふやせばふやした以上に効果が出るとすればふやしていくという考えなのかどうか、これを確認させていただきたいと思います。

麻生国務大臣 スズキ自動車というのはいい会社だと改めて、おちょくっているわけじゃなくて、やはり民間のああいった会社にいるとなかなかのものだと思いました。

 それは、今言われたのは全く正しいのであって、税務署というのは、余り好かれる職業じゃありませんから、無理してなりたいという方は余りいらっしゃらない職業なんだそうですけれども、しかし、こういうのをきちんとやらない国は国家がもちませんから、そういった意味では、それを確保した上に正しく処遇されてしかるべきなんだ、私はそう思っております。

 加えて、今言われましたように、これは投資効率というか、人件費をかけた分だけ、見合った分だけの税収が上がればそれでトータルということになりますので、私どもとしては、今言ったように、インターネットなどいろいろな電子化によってかなりの部分は削減できるところは確かなんだと思いますけれども、やはり、一対一で顔を見ながら、これは怪しいやつだなと思って取るのと、インターネットを見ながらだけでできるのでは、大分感じが違うのはもう御存じのとおりなので、きちんとした見る目、目ききというものを育てない限りはだめなのであって、今後とも、税務署の職員というものに関しましては、今言われましたように、この点は今後ともと思っております。

 ちなみに、減らしている真っ最中にふやした例というのは、二〇〇二、三年、役人をどんどん減らしている真っ最中に警察官を一万人増員し、三年後にもう一万人増員し、合計二万人、警察だけは増員していると思います。結果として犯罪が減ったことは確かですから、新宿でもどこでもはっきりしています。昔はやばい町でしたけれども、最近は軽くやばい程度な感じになってきたとみんなが言いますので、これは間違いなく、新宿署に大量の警察官と、あの装置がついたおかげだと思います。

 こういったものは例としてありますので、しかるべき納得を得られる増員というのはいいことだと思いますが、少なくとも、ただ税務署員をふやすというのは、お巡りさんをふやすのに比べて、理解を得られるのはなかなか難しいかなという感じがしないでもありません、率直なところ。ただ、これはきちんとやらない限りは国家がもたぬ、私どもはそう思っております。

大岡分科員 わかりやすい答弁をありがとうございました。

 私も、これは、やはり正しく課税をする力というのは国家の存亡にかかわると思っておりますので、しっかりと説明できる材料をそろえて、課税力というものを充実させていただきたいと思います。

 あわせて、先ほど西村次長から御答弁いただきましたが、人材の能力の確保に努めている、人材力の確保に努めているということでございました。これは本当に、グローバル企業は経済取引を非常に複雑化させておりまして、いわゆるタックスヘイブン等を上手に使いながら租税対策をしているというか、そういう状況でございますが、これを正しく把握するためには、最初から国税庁に入って、ずっと国税庁にいるというのでは、やはり企業の取引の実態というのはわからないと思うんですね。

 そこで、例えばグローバル企業の出身者、あるいは金融関係の出身者、あるいは会計事務所の出身者等を中途採用して、これまでのノウハウを今度はむしろ国税庁の方でいただく。あるいは、国税庁の職員をしかるべき企業に出向させて、言ってみれば向こうのノウハウを見てくるというようなことをやって、グローバル企業の時代を追っての進化に国税庁はしっかりとついていける体制をつくるべきではないかと考えますが、この点についてはどうでしょうか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、多国籍企業などによります経済取引の複雑化、国際化が進展をする中で適正な課税を実現していくためには、国税職員の一層の能力の向上が必要であると認識をしております。

 このため、国税庁におきましては、経済取引の国際化の進展等に適切に対応するため、国際的な租税回避スキームの解明やデリバティブ等の複雑な金融取引の調査に資するための国際化関連研修を実施しておるところでございます。

 加えまして、民間企業における取引の実態等に関する理解を深めるため、国税庁におきましては、外資系金融機関での勤務経験を有する金融専門家や、公認会計士、弁護士等の外部人材を任期つき職員として登用しております。これらの高度に専門的な知識、経験を有する民間人材を活用しているところでございます。

 なお、税務調査に従事をしております国税職員を民間企業に出向させることにつきましては、例えば、秘密漏えいや利益相反となるリスクをどう考えるかといった課題などもあることから、これまで民間企業への出向は行っておりません。

 いずれにいたしましても、専門的能力を有する人材の育成及び確保など、国税職員の能力の向上のためにどのような方策が可能か、先生の御指摘も踏まえつつ、引き続き幅広く勉強してまいりたいと考えております。

大岡分科員 ちょっと御答弁いただいたんですけれども、若干私、納得できない部分がございます。

 というのも、秘密漏えいを恐れるのであれば、任期つき職員の方が恐ろしい。だって、任期が終わったらまた戻るわけでございまして、この人の今後の最終身分がどこなのかということが、私は一番大事なことだと思っているんですね。

 したがって、私が申し上げたのは、民間からの出向を受け入れろということではないんです。この人はまた民間に戻る。そうではなくて、国税庁の職員を出向させれば、彼は最後まで国税庁の職員ですから、もし彼が仮にちゃんとした忠誠心を持っているとすれば、戻ってきてノウハウを生かしてくれるわけでございまして、そういう考え方からすると、任期つき職員よりも、民間に対して自分のところの職員を出向させる方がずっと安全だと思いますが、この点についてはどうでしょうか。

西村政府参考人 国税職員を民間に出向させる場合には、典型的なケースといたしまして、官民人事交流法に基づく交流派遣という形が考えられますが、この法律につきましては、例えば、処分等の権限を有する相手先企業には派遣が制限されていること、加えまして、職務に復帰する際には、派遣先企業に対しまして権限を有する職階、官職にはつけないこと等の制約があることも事実でございます。

 加えまして、民間企業全般に対しまして租税の賦課徴収という処分権限を持っております当庁の場合には、現実的になかなか難しい問題があるということも御理解いただければと思います。

 加えまして、先ほど申しました課題もあるところではございます。

 こういう状況であることではございますけれども、専門的能力を有する人材の育成、確保と国税職員の能力の向上のための方策を引き続き幅広く検討してまいりたいと思っております。

大岡分科員 ぜひ検討していただきたいと思います。

 結局、リスクとベネフィットの関係だと思うんですね。本当にグローバル企業は、手のうちというのは常に変化をしておりますから、これを正しく捕捉していくことが、数兆円の課税漏れを回避するということを考えますと、十分大きなベネフィットがあるというふうに考えております。

 ちょっと時間もありますので、もう一点、大臣に伺いたいんですけれども、ちょうどこの前のG8で、税率引き下げ競争をやはりやるべきではないということを安倍総理がおっしゃいました。その一方で、自民党のマニフェストには大胆な法人税減税ということが盛り込まれているわけですね。

 一方で、G8が行われましたイギリスでそういった声明が出されたわけでございますが、このイギリスこそ、タックスヘイブンを山ほど持っていて、日本も、この国会でも、ジャージーとガーンジーでしたか、イギリスのタックスヘイブンとの投資協定を結んでいる。いわば、この金のやりとりをフリーにしようという協定を結んでいる。

 これは非常に、片方ではアクセルを踏んで、片方でブレーキを踏んで、進めるのか抑制するのかがよくわからない形でごちゃまぜになってしまっているんですが、ちょっとこのことにつきまして、大臣としてどのようにとられておるのか、分析をしていただきたいというか、わかりやすくお話をしていただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、各国、特に先進国は税収減に悩んでおりますので、税収増を目指すためには、少なくとも、今税を納めていない、利益を出している企業から税を取りたい、これが基本です。

 それに当たりまして、各国、ケイマン諸島とかバミューダとかいろいろありますけれども、そういったところに対してかなりの企業がバイパスをつくって、自分の会社からそこに一回納めて、百万円のものをここへ百十万円で売って、このケイマン諸島のある会社からこちらに二百万円で売りますと、この利益の九十万円、この税でしか取られませんから、税率一〇%ということになる。そうすると、ここに金がたまって、ここの間はほとんど利益が出ないから、こちらとしてはというようなやり方。それに幾つも通して、あっちゃこっちゃバイパスさせて、わけがわからぬような形に、これはインターネットを使うと、かなり、難しい操作ではないということになっているのが現実だと思っております。

 そういったものを私どもとしてはどうやっていくかというと、これは、多分それらの企業も膨大な利益を、隠匿しているは聞こえが悪いですね、合法的にしておられますから隠匿しているわけでも何でもないので、そういったものはもう少しきちんと税を納めてもらう方向で各国動いております。まだG8でやっと始まったばかりですから、今、いろいろ、これまでの経緯等々で、政策が何となく二律背反みたいなところはあろうかとは思いますけれども、方向としては、今申し上げたような方向で事は進みつつあると御理解いただければと存じます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 また私も、ちょっとこの分野、しっかりと研究をしてまいりたいと思います。

 最後に一問、国有財産関係についてお尋ねをいたします。

 国有地の処分というもの、有効活用という視点から一生懸命やっておられるというふうに承知をしておりますけれども、一方で、地方公共団体からは、国有地の処分について余りにしゃくし定規に過ぎるのではないかという意見があるんです。

 例えば、市町村で使いたい国有地がある。しかし、現在の地方公共団体の財政状況からすると直ちに予算化というのはなかなか難しいんだけれども、五年ぐらいのスパンで考えれば、やはり町づくりの観点から非常によい土地であるので有効活用したい、ただし予算の確保はすぐできませんという場合に、どうしても、理財の皆さんからすると、もうこれは三カ月間だけ市町村の話を聞いて、二年以内に処分をしないといけないということになっておりますということで、なかなか聞き入れていただけないという場合が多いと伺っております。

 一方で、これだけ市町村の町づくりの重要性というものが認識をされ始めると、やはりこの辺は丁寧に、市町村の財政状況も見ながら、市町村の意見も聞きながら、むしろ、処分を急ぐことよりも、町づくりに協力するという観点の方が重要ではないかというふうに私は考えております。

 この点につきまして、理財局として、早急に処分することと町づくりに協力すること、これはどちらを優先してやっておられるのか、教えていただきたいと思います。

西田政府参考人 お答え申し上げます。

 国有地につきましては、厳しい財政事情等も踏まえまして、従来から、国として保有する必要のないものについては売却をして財政貢献に努めていくというのが基本でございます。

 実際の処分に当たりましては、公用、公共用の利用を優先するというのが基本でございまして、先生おっしゃいましたように、地方公共団体からの利用要望の受け付けというのをあらかじめ行い、利用要望があった場合には当該地方公共団体に優先して売却等を行い、ない場合には一般競争入札を実施するというのが基本でございます。

 ただ、廃止が決定をした、例えば庁舎、宿舎の跡地等、大規模な財産を処分していく場合等もございますが、こうした場合におきましては、そういう利用要望の受け付けを行う以前の時期から、各財務局等におきまして、地方公共団体等に対して、将来的に利用可能となる財産の所在等に関する情報提供を前広にしていくなどをしておりまして、事前に地方公共団体において町づくりなどの十分な利用検討が行われるように配慮をしながら行っているところでございます。

 国有地の処分に当たりましては、財政貢献と同時に、町づくりへの配慮など地域社会のニーズに応じていくということも重要な視点と考えておりますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

大岡分科員 ありがとうございました。

 まさに、町づくりに協力をする観点からいいますと、二年と限定するのを、やはりもう少し柔軟にしていただきたいというふうに考えるんですが、その点についてはいかがでしょうか。

山口副大臣 今答弁がありましたが、確かに二年とか、いわゆる三カ月というルールがあるわけですけれども、やはりそういった大規模な国有地を売却等する場合には、しっかり前もって、要するに三カ月というストップウオッチを押す前に、当該市町村あるいは県の方と十分相談をして、しっかりと対応できるようにしていきたい。

 例えば、先生御存じかもわかりませんが、広島の駅前の方は、もう当該地方公共団体としっかり打ち合わせをして、むしろこれは必要なんじゃないですかというふうな話から始まって、今、しっかりと、ある意味で協力し合いながらやっておるところでございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 本日は大変丁寧に、大臣、副大臣、御答弁いただきました。財務省というと、国民だとか市町村からすると若干遠い存在なんですけれども、きょうの答弁で、結構親しいし丁寧だということもよくわかりましたので、今後もこの姿勢をキープしてやっていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

柚木主査 これにて大岡敏孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、小泉龍司君。

小泉(龍)分科員 小泉龍司でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 国債マーケットにおける長期金利の動き、大臣もお気にとめていらっしゃることだと思いますし、おとといですか、財務金融委員会に黒田総裁もお越しになって、議論がありました。四月四日の金融緩和前には〇・五%近辺であった長期金利が、一旦〇・三あたりまで下がったんですけれども、五月下旬にはまた一%をつけて、今〇・八%台で高どまりをしている。まあ、絶対水準から見ればまだまだ低い水準なんですけれども、一方で毎月七兆円余りの国債を日銀が購入しまして、イールドカーブに対して強力な下方圧力をかけ続ける中で、上がってきた、やはりこれは非常に不可解な動きだというふうに私は思います。

 さまざまな要因が指摘はされております。より収益性の高い株式マーケットに資金がシフトしたのではないか。ですけれども、株価が下がってきてもなかなか国債価格は上がらない、金利は下がり切らない。

 期待インフレ率が上がったんだという議論もございます。ブレーク・イーブン・インフレ率なるもの、物価連動債との差額で機械的に計算しますから、これが期待インフレ率だというふうには定められないというのはそのとおりだと思いますけれども、どうもその期待インフレ率というものそのものの実態がよくわからない。上がってはいるんだけれども、定量化できない。本当にそれが長期金利に乗っているんだろうかという疑問も湧くわけでございます。

 また、最終的に、そういう議論を経てだと思いますが、黒田総裁は、おとといは、アメリカの金利が上がったんだ、こういうふうに、私は逃げたんだと思うんですね。ある種、逃げが入っている。

 というのは、アメリカでも同じことが起こっているわけです。アメリカでも、FRBが毎月八兆円の国債購入をする中で国債金利が二%を超えていくということが起こっておりまして、バーナンキ議長は、黒田総裁よりもややストレートに、率直に、正直に、我々は長期金利の上昇に当惑をしている、困っているということを正直に言われたんだろうというふうに思います。日本の金利が上がっているから上がったんだというふうには逃げられませんので、逃げ場がない。アメリカも同じことが起こっている。

 ずっとこう考えていくと、頭では理解できるんですけれども、何か疑問が残る。マーケットの中に内在する力が働いているような気持ちが私はなかなか拭えないものですから、ぜひ長期金利の動向についての財務大臣ないし財政当局の見方を、認識をきょうは伺いたいというふうに思いまして、この問いを立てさせていただいたわけでございます。

 いわゆるマネタイゼーション、日銀による財政ファイナンスに対する、直接的ではないけれども、可能性のようなものに対する疑念がマーケットに首をもたげているのではないかということを財政当局としてはぜひ視野に入れていただく必要があるんじゃないかという意味も込めまして、長期金利の動きについて、大臣の、また財政当局の御見解を伺いたいというふうに思います。

山口副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。

 先生おっしゃるとおり、長期的に見ますと決して急騰というふうな状況ではないわけですが、ただ、お話のように、四月四日の金融政策決定会合後、長期金利が上昇しておるということでございます。

 国債金利、これもお話がありましたが、これにつきましては、経済財政の状況とか海外の市場の動向等のさまざまな要因を背景に、市場において決まるものでありまして、いろいろ申し上げたい面もあるんですが、やはりその動向についてコメントをするということは市場に無用の混乱を与えるというふうなことで、差し控えたいと思っております。

 ただ、最近の金利上昇について申し上げるわけではございません、一般論として申し上げますと、仮に財政の持続可能性への信頼が失われる、お話の財政ファイナンス等の理由によって、国債価格が下落をして、金利が高騰するようなことがあれば、経済あるいは財政、国民生活に重要な影響が及ぶわけでございます。

 政府としましては、そのような事態を招くことが決してないように、国債の安定的な消化が確保されるような、財務省としても、国債管理政策、これにしっかりと努めるとともに、政府と日本銀行との共同声明にもありますように、持続可能な財政構造を確立するための取り組み、これを着実に推進して、市場の信認を何とか確保していくということに尽きるんだろうと思いますし、同時に、日銀の方も、先般、黒田総裁の会見もありましたけれども、やはり柔軟なオペの展開等々しっかりと対応していただけるものと信頼をしておるような次第でございます。

小泉(龍)分科員 足元のクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドも、絶対水準は低いんですけれども、じわじわじわと五月の下旬から上がってきております。財務省としては、金利が本格的に上がってきたときに日銀に切ってもらいたいカードを、日銀が先に切っちゃった。で、金利は上がってしまった。本当に金利上昇局面になったときには、手がないんですね。防衛手段がない。時間稼ぎができないということがあろうかと思います。

 重々その点は御認識されていると思いますけれども、財政規律の確保に向けて、一段の努力をお願いしたいというふうに思います。

 金利が上昇局面に入りますと、最初に苦しくなってくるのは、ゆうちょ銀行だというふうに思います。国内で最大の国債保有機関、まだ日銀には追い抜かれていないわけでございまして、このゆうちょ銀行が抱える、二十四年度末、約百四十兆円弱の国債価格の評価損がどういうふうに出てくるのか、ここが非常に心配になるところでございます。

 ゆうちょ銀行では、バリュー・アット・リスクという、最新のリスク管理手法なんでしょう、これを使って、日々リスク管理はしています、こういう状況にあることは承知をしております。一年間の期間をとって、これをずっと一日ずつずらして、過去五年間にずらしていくんですね。そして、その中でボラティリティーを統計的に処理して、最大損失額を算出して、最大損失額をコントロールする、こういう非常に整合的な説明を受けておりますし、また、リスク管理に向けての組織的な体制、機構もしっかりできているんですけれども、きれいにできているときほど危ないというような気もいたします。

 というのは、金利スワップを使ったヘッジを一切やっていない。ストレステストはやっているんですけれども、金融庁自体が、ゆうちょ銀行のストレステストの中身も把握していない。そんなに詰めて私も議論したわけではないけれども、幾つか問題がやはりあるようであります。

 もし、ゆうちょ銀行の経営が金利上昇局面で最初に揺らげば、これは間違いなく金融システム全体に波及をし、それがまた国債価格の下落に拍車をかけるということでありますので、これは麻生金融担当大臣にお伺いしたいところなんですけれども、ここは財政の分科会なので、大臣には深くお願いを申し上げつつ、寺田副大臣に御答弁をいただきたいと思います。

寺田副大臣 お答えをいたします。

 このゆうちょ銀行の金利リスク、そしてまたリスク管理体制ということは、我々にとっても大変大きな、金融庁の監督上の重要なポイントと認識をいたしております。

 一義的には、ゆうちょ銀行において適切なリスク管理体制をとるという体制のもとで、我々金融庁はその監督をしているわけでありますが、委員御指摘のとおり、リスク管理委員会というリスク管理部門を設置して、極めて精緻に、定量的に、金利リスクに対するモニタリングを行っております。

 バリュー・アット・リスクの手法の一環といたしまして、いわゆるアウトライヤー比率、これはまさに委員がいみじくも言われたとおり、金利の上昇に伴って下落をする価値を分子として、自己資本を分母として、その比率を精緻に見る手法、これを確立いたしておりますし、また、これに加えまして、さまざまなマクロの与件、マクロ経済環境が悪化したときのさまざまな与件を最悪ケースに当てはめまして、ストレステストも定期的に実施をされているというふうにお聞きをしております。

 金融庁といたしましては、監督指針に従いまして、そうしたゆうちょ銀行のリスク管理について、全体のリスク管理の自主的な取り組みを慫慂しつつ、主要行向けと同様の総合的な監督指針に基づきます当局の検証を通じまして、適切な体制構築を促してまいりたい、そのように考えております。

 これは当然、金利の変動リスクによります価値の変動とともに、また、払い戻しに対する流動性リスクの管理でありますとか、あるいはまた信用不安が生じたときの信用リスクの計測、こういったさまざまな市場リスク、これを早期警戒の枠組みとして構築をし、適切なリスク管理を慫慂してまいりたい、そのように考えております。

小泉(龍)分科員 ゆうちょ銀行は、貸し出しのウエートがなかなか上がってこないので、総資産の七〇%弱を国債で運用するしかないという構造がやはり残っているんですね。

 もう一つはやはり、郵政時代、親方日の丸であった時代、今も最終的な株主は国なんですけれども、民間企業としてのリスクに対するセンシティビティーというのが、経営陣を含めて、職員を含めて、本当にあるんだろうかと。

 郵貯は倒れないというのが持ち味だったわけですよね。その延長線上で、一番、国債の塊のようなものを持ってしまっているゆうちょに対しては、マンツーマンで、そこがウイークポイントだというような感覚で、ぜひ、金融庁におかれては、監督をしていただきたいというふうに思います。

 寺田副大臣は、かつて私と一緒に郵貯金利の自由化を、財務省で一緒に担当したことがある、元部下なんですけれども、ぜひ、プロですから、一生懸命そこは乗り込んでいって、もう乗り込んでいるわけですから、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。そこがアリの一穴にならないように、しつこいようですけれども、お願いをしたいというふうに思います。

 また財政の方の問題に戻りますけれども、金利が上昇していく中で利払い費がふえるということは、一般的には指摘をされております。ただ、従来は、金利低下局面がずっと長く続きましたので、より低利の借換債に乗りかえるということで、国債の残高はふえるんですけれども利払いは減るという、非常に幸運な時代を我々は過ごしてきたわけでございます。

 二〇〇〇年度から二〇〇五、六年度ぐらいまでは、十兆円余り、十一兆ぐらいあった利払い費が七兆まで減るという、その感覚の中で、恐らく、プライマリーバランスという財政健全化計画における指標、主たる指標が生み出されたんだと思います。つまり、利払い費のことは考えなくていいよね、当面、利払い費はおいておいても何とかなるよねという感覚の中で、プライマリーバランスというものが生み出されたんだろうというふうに推測をするわけです。

 いよいよ低利の借換債への乗りかえによる利払い費負担の軽減が一巡してしまいまして、二〇〇七年、八年、九年、一〇年、一一年、徐々に増加していきます。増加のテンポがまた速まってきているわけでございます。金利が上昇していないけれども、既に残高効果が出てきたわけでございます。

 これに金利上昇ということが加われば大きな財政の足かせになるということは間違いないわけでございまして、まさに釈迦に説法になりますけれども、イタリアで起こったことは、プライマリーバランスは黒字だったんだけれども、巨額の利払い費を計上したために、プライマリーバランスの黒字を上回る利払い費があったために、国債発行残高が発散する、とまらないということがきっかけになりまして、国債金利が上昇したわけでございます。

 したがって、主要国の財政健全化計画というのは、全てつまびらかにはしておりませんが、利払い費を含めた国債発行残高の抑制ということが財政計画の主な目標になっているというふうにも聞いております。

 二〇二〇年に我が国のプライマリーバランスが黒字化できたとして、そのときの利払い費は、金利動向にもよりますけれども、幅がありますが、恐らく十五兆から二十兆、その間ぐらいなんだろうと思います、感覚的に言って。これは一議員の推測ですが。それを上回るプライマリーバランスの黒字がないと国債発行残高はとまらないわけでありまして、そこでとまらないということは、もしかすると、ずっととまらないかもしれない。国債発行残高がずっと発散するということは、必ず、一〇〇%破綻するということがそこで決まるわけでありまして、もうその時期が来ているというふうに思うんですね。

 したがって、ここで議論している分にはいいんですけれども、マーケットがそういう議論を始めますと、プライマリーバランスを指標とする財政健全化計画でもつのか、信認がつなぎとめられるのか、この国の信認がもつのかという問題がすぐ出てくると私は思います。

 目の前に厳しい現実がありますが、その厳しい現実を表に出すためにも、ぜひここは、プライマリーバランスというわかりやすいけれども中間的な指標ではなくて、いつ日本の国債発行残高は発散を終わらせるのか、残高がとまるのかということを目指す財政健全化計画をつくっていく必要があると私は思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘、まことにごもっともだと思っております。

 基本的に、今言われましたように、二〇一五年とか二〇二〇年という中期的な目標がありますのは、一応、PBを一つの目安にしておることはおっしゃるとおりです。

 それを可能にしてきたのは、間違いなく、金利が高かった、七%だか六%ありましたころに比べて、今、国債の平均残存は七年ぐらいになっていると思いますので、それでいきますと、金利は一・五とか七とか、それぐらいのところまで下がってきております。今はまだ〇・八とかなんとか言っておりますので、まだ差があるとはいえ、その差がずっと下がってきていることは確かなので、そういった意味では、今言われたように、きちんとしたところを考えて、利払いのところを考えておかないとえらいことになるぞというのは、全く御指摘のとおりなので、今後、二〇一五年、二〇年というきちんとしたものができ上がりつつある段階で、もう一回、きちんとした、そういったものを含んだ上でのものを考えないかぬであろうということは、私も全く賛成です。

 もう一点、日本の場合、イタリアと少し違っているのは、あそこは何となく我々と違うのは、何といってもユーロでやっているのであって、こちらは自国通貨でやっておりますのでね。日本、イギリス、スイス、アメリカ、今、自国通貨だけで国債を発行しておりますのは多分その四カ国だと思いますけれども、その四カ国でありますから、事情は少し違うとは存じます。

 いずれにしても、日本の場合は、今後、この三本の矢と言われるアベノミクスで経済が成長することによって、GDPの比率がふえて、今の五百対一千という数が、一千何百対、こっちも七百だ八百だというようなことになってくれば、それは当然下がってくるということになるんだと思います。

 いずれにしても、こういったところは今後十分考えておかないと、今言われたような御指摘が起こるようになりかねませんから、まずは、デフレからの脱却を優先順位の一番に考えて、私どもとしては、今、猛烈な勢いでGDPを伸ばすという方向で事を進めておりますが、それがある程度目安が立った段階では、今おっしゃられましたような、金利のところを考えた上でのものを考えておかねばならぬ、私もそうだと思います。

小泉(龍)分科員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 なかなか難しい分野であるだけに、やはり麻生大臣の力が必要だと私は思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 経済成長、そしてアベノミクス、その問題と、税制、社会保障の関係について、やや回りくどい質問になりますけれども、お伺いしたいと思います。

 日銀の量的緩和政策というのは、マネーが足りないからデフレになったんだという非常に明快な理論でございますが、一方で、賃金と所得が足りないからデフレになったんだという有力な考え方も、わかりやすい考え方もあるわけでございます。財政制度審議会の会長をお務めになっている吉川洋東大教授も、まさにそういうことをおっしゃっておられます。

 賃金が下がるからデフレマインドが生まれる、そして低価格志向が生まれる。一方、企業は、人件費を切ることによって、その低価格志向に対応できる低価格の商品、財・サービスの価格を下げて提供する。そこでデフレが進む。したがって、マネーではなくて、所得と賃金を上げることが必要だという賃金デフレの考え方でございます。

 現実に、我が国では、九〇年代後半をピークとして、世界で唯一の国ですけれども、名目賃金が下がってきた国でありまして、その八割方は非正規雇用の増加によって説明ができるという分析があるわけでございます。

 どちらが主因かということはさておきまして、日銀はマネー主因説なんですけれども、政府におかれては両方見てくると思うんです。大臣も現に経済界に対して賃上げの要請をなさいました。それは、賃上げがなければ、所得が上がらなければ、デフレは完全には脱却できないというコンセンサスが政府にもあるからでございます。

 そこで私はふと気になるんですが、日本の税、社会保障制度の所得再分配機能の低下ですね。これはOECDのレポートが数年前に出ておりまして、ずっと横並びをした結果、実感はないんですけれども、日本の税制は、OECD諸国の中で所得再分配機能は最下位なんですね。相次ぐ所得税減税をやって、そして所得税そのものを小さくして、税率もフラットにした、これがきいちゃっているわけです。社会保障については、日本の所得再分配が、現役世代から高齢者に仕送りをする年金だけが生きておりまして、現役世代に対する所得再分配機能というものは、ほとんど計測されるようなものはないわけでございます。

 したがって、あわせて見ると、日本だけが賃金が下がり、その日本で、賃金、所得の低下を下支えする税、社会保障制度が一番弱い、こう二つ重なってきているわけでございまして、賃金、所得がデフレに何がしかの関係があるとすれば、論理的に、日本の税、社会保障制度の所得再分配機能の低下は、ボディーブローとして、デフレの遠因になっているというふうに私は考えざるを得ないと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 私は、小泉先生、今回のデフレの最初の発端は、やはり資産のデフレーションが一番だったと思っております。

 例を挙げれば、一九八九年十二月末、日経の株式平均価格は三万八千九百十五円だったんです。三万八千円がただの八千円にまで、正確には七千五百、何百円まで落ちましたので、その意味におきましては、四分の三、株という動産が吹っ飛んだわけです。

 不動産につきましても、六大市街化地域の平均市街地価格が、百万円が十六万とか十七万まで落ちたという数字があります。その意味では、早い話が八三、四%、資産がなくなった。それはやはり貧乏になりますよ、気分としては。

 加えて、それが大きな原因で、企業としては、その土地を担保に金を借りておりますから、借りている金の額は下がらず担保の方だけ下がっていきますので、増し担保、追い担保を要求される。それに対応するだけの金がないからまた売る、また下がるというような悪循環がずっといって、多分、それが九〇年に入ってから物すごく顕著になってきたんだと思います。ピークが多分九五、六年で、一斉に銀行に返済をみんな開始して、結果として、銀行はどうしたかというと、金を借りてくれる人より返す人の方が多くなってくると、えらいことになって、御存じのように九七年のあの騒ぎになっていったんだと思います。

 そのとき、やはり企業の方の抱えております問題は、雇用を確保するということは、それは人数を確保するのかといえば、組合と話をしたんだと。これは連合の話だと思いますので、連合が組合員の確保を目指して、賃金が下がるのは容認したんです。多分、僕はそれしか考えられないんですが、結果として、所得は下がって、雇用はある程度維持した。そして、アジアとか特に中国等々から一斉に、安い労働単価というものの攻勢がありましたので、それに対応するためにまたいろいろな方策をやった。それが全部相まっての、今回のデフレの大きな原因だと思います。

 結果としてどうなったかといえば、我々の知らない間に企業はせっせこ借金の返済にこれ努めて、そして設備投資はしない、株主配当もふやさない、そして賃金も上げない。三つ、企業がずっとやり続けた結果、早い話が、内部留保が物すごい巨大なものになって、あんなにためてどうするのと。あれは見るものでもなければ眺めるものでもないのであって、あれは使うものですから、使わないで眺めているだけじゃ、意味がありませんよ。

 僕はそういうことを何回も申し上げるんですけれども、なかなかみんな、デフレのときはじいっとお金を持っておきさえすれば、何もしないで物が下がっていくわけですから、金の値打ちは上がる。早い話が、実質金利は高かったわけです、意外と。名目金利の話ばかりしか出ませんけれども、実質的には高かった。そこが一番大きな問題点なんで、今回は、デフレやめます、インフレですということを政府は宣言して、日本銀行と一緒になって二%のインフレターゲットを決めて、しかも日銀は、達成するまでオープンエンドでやりますと言い切って、そして今回スタートさせていただいた。突如、供給量をふやしておりますので、それはいろいろ摩擦は起きますよ。私は、これがすんなり、すうっと上がっていくなんて思ったこともありませんから、こうなるんだと思っております。

 したがって、今しばらくの間はこういった状況になっていくとは思っておりますけれども、基本的にはやはり政府の、規制の緩和が全てではありませんけれども、いろいろな経済政策によって経済が成長をすることによってのみ、今言われたような問題が根本的に改善できるのであって、そのためにどうするかという税制であり、経済成長を促すためにどうするかというような規制の緩和であったりをしていくのが筋なんだと思いますので、今おっしゃられたようなところを十分に頭に入れておいてやらないと、今後の対策は偏ったものになる。

 規制だけ緩和すればいいというものでもありませんし、プライマリーバランスだけ見ておけばいいというものでもない、全く私もそう思います。

小泉(龍)分科員 ありがとうございます。

 時間が迫ってきていますので、本当に、ごく大ざっぱな、プリミティブな形の質問に、最後は簡潔にしたいと思うんです。

 ヨーロッパでもアメリカでもそうですけれども、経済停滞から脱却するための経済政策パッケージを、それぞれの時代、直近のものを含めて大きく眺めてみますと、新自由主義的な競争政策の部分と、社会民主主義というのはもうないと思うんですけれども、かつての社会民主主義的な所得再分配とか積極的労働政策というような政策と、両輪になっているんですよね。ミックスされているんです。典型が北欧モデルですよね、デンマークモデル、スウェーデンモデル。解雇はどんどんできるんですよ。だけれども、それはきちっと積極的労働政策で次の職場を見つける。再分配もしっかり行う。

 アメリカでもイギリスでも、あの競争主義の国で給付つき税額控除が、日本では見向きもされない給付つき税額控除制度が入っている。イギリスでは、九九年に最低賃金法が復活しまして、それから最低賃金が六割上がったんですね。そういうものと、徹底した競争政策、両方やるんです。

 日本では、小泉構造改革時代は、社会保障はやらない。今度は民主党になると、哲学なきばらまきをするんだけれども成長戦略はない、サプライサイドはない。また今度、自民党に戻ってきて、サプライサイドはやるけれども需要サイドはやらない。相手のやっていたことはやらないというか、間違いだというのが強過ぎていて、両方やればいいんじゃないんですか、両方やればうまくいくんじゃないのかねというふうに、私はすごくプリミティブに思います。

 そこをぜひ、アソウノミクスという形で、そういう政策哲学でやっていただければありがたいと思うのでございますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、小泉政権時代に、サプライサイドに偏った金融政策というのが主な時代でありました。

 私らのように実業界から来た人間から見て、少なくとも、需要がないのに金だけをふやしたって、そんなものは銀行の中に金がたまるだけであって、銀行から先、いわゆるマネタリーベースがふえるのであって、マネーサプライは全然ふえない。そんなの当たり前じゃないかと断固言ったんですけれども、わんわん言われて、日銀はどんどんそれに応えて、二十兆が二十五、三十までふえたんですけれども、結果的に、あのときはマネーサプライはふえなかったんですよ。

 結果としては、もう御存じのとおり、ほら見ろということになって引き揚げた。そのときにいた方が、今の日銀にもついこの間までおられたわけですから、あのときにやられてえらい目に遭ったじゃないかと、白川さんはそう思っていましたよ。だから、いや、今回は違うんですと。

 ちゃんと政府も需要をつくるためには、少なくともGDPをふやすためには、民間の消費、民間の設備投資プラス政府支出、GDPは御存じのようにこの三つが主たるものです。その二つがとまっていますので、政府支出だけは確実にふやせますから、マネタリーベースだけがふえてサプライがゼロだというようなことがないように、こっちも政府需要をつくります。間違えてそれが土地代に消えてまた銀行に戻ってきちゃうことのないように、少なくとも土地代の要らないような補修工事をやります、メンテナンスをやります、そういったものに公共工事を主に集中させます、土地代は要りません、即できます、中小企業でもできます、地方もあります、こういったものに集中させるということで補正予算を組ませていただいて、今、事実、地方に少しずつ出始めたところだと思いますが、今度、本予算が七月以降に出てくることになろうと思います。

 そういったことをやってまいりますけれども、少なくとも、二十五年度の税制を、今既に終わっている分で言わせていただければ、所得税のお話でしたけれども、少なくとも、かつての最高税率四〇%を四五%まで、年間所得四千万以上の方は上げさせていただいたりしております。格差が開いた開いたって、それは中国みたいに開いたわけでもないし、アメリカみたいに開いたわけでもありません。ただ、かつてに比べれば開いたじゃないかという御指摘は、そういうことになっておりますので、それを、少なくとも、所得の再配分のところで言わせていただければ、所得税だけで申し上げれば、そういうこと。

 ほかにも、いろいろなところを少しずつ少しずつ、みんなでバランスを考えてやらぬと、今言われたように、何となくこの国の一番いいところがなくなると思いますので、そこのところを十分に注意して今後とも取り組んでまいりたいと考えております。

小泉(龍)分科員 ありがとうございました。終わります。

柚木主査 これにて小泉龍司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管及び株式会社日本政策金融公庫についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 平成二十一年度文部科学省主管の一般会計歳入決算並びに文部科学省所管の一般会計歳出決算及び特別会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管の一般会計の歳入決算につきましては、歳入予算額百七十七億六千二百八十五万円余に対しまして、収納済み歳入額は二百十三億九千百四十一万円余であり、差し引き三十六億二千八百五十五万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管の一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算額六兆二千二百八十九億七千三百四万円余、前年度からの繰越額三千七百七十一億七千八百七十二万円余を合わせた歳出予算現額六兆六千六十一億五千百七十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆五百九十五億五千四百四十八万円余であり、その差額は五千四百六十五億九千七百二十九万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は四千八百五十四億三千二百九十六万円余で、不用額は六百十一億六千四百三十三万円余となっております。

 次に、文部科学省所管のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の歳入歳出決算につきましては、収納済み歳入額一千四百九十二億三千二百九万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千四百三十七億二千百一万円余であり、その差額は五十五億一千百八万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は三億九千六十二万円余で、平成二十二年度予算に歳入計上した剰余金は二十二億一千五百十一万円余であり、これらを除いた純剰余金は二十九億五百三十四万円余となっております。

 続きまして、平成二十二年度文部科学省主管の一般会計歳入決算並びに文部科学省所管の一般会計歳出決算及び特別会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管の一般会計の歳入決算につきましては、歳入予算額九百三十七億八千九百九十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は九百六十九億六千二百三万円余であり、差し引き三十一億七千二百十万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管の一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算額五兆七千七百三十億六千四百五万円余、前年度からの繰越額四千八百五十四億三千二百九十六万円余、予備費使用額一千二十六億三千六百三万円余、予算決定後移しかえ増額八億五千八百二十二万円余を合わせた歳出予算現額六兆三千六百十九億九千百二十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆九千九百四十九億七千六百五十八万円余であり、その差額は三千六百七十億一千四百六十九万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は二千八百五十八億九千五百九十八万円余で、不用額は八百十一億一千八百七十万円余となっております。

 次に、文部科学省所管のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の歳入歳出決算につきましては、収納済み歳入額一千四百四十九億九百九十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千三百七十二億七千七百七十九万円余であり、その差額は七十六億三千百九十八万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は十四億二千五百七十七万円余で、平成二十三年度予算に歳入計上した剰余金は二十九億五百三十四万円余であり、これらを除いた純剰余金は三十三億八十六万円余となっております。

 続きまして、平成二十三年度文部科学省主管の一般会計歳入決算並びに文部科学省所管の一般会計歳出決算及び特別会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管の一般会計の歳入決算につきましては、歳入予算額二百四十三億一千九百九十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は三百四十一億百九十七万円余であり、差し引き九十七億八千二百四万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管の一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算額六兆五千五百七十九億九千九百十二万円余、前年度からの繰越額二千八百五十八億九千五百九十八万円余、予備費使用額一億三千九百万円余を合わせた歳出予算現額六兆八千四百四十億三千四百十一万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆一千五百五億九千九百四十七万円余であり、その差額は六千九百三十四億三千四百六十四万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は五千二百四十三億五千五百七十一万円余で、不用額は一千六百九十億七千八百九十二万円余となっております。

 次に、文部科学省所管のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の歳入歳出決算につきましては、収納済み歳入額一千四百三十八億九千二百三十万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千三百二十一億七千九百五十万円余であり、その差額は百十七億一千二百八十万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は三十二億四千二百六十九万円余で、平成二十四年度予算に歳入計上した剰余金は三十三億八十六万円余であり、これらを除いた純剰余金は五十一億六千九百二十四万円余となっております。

 以上、平成二十一年度、二十二年度及び二十三年度の文部科学省所管の一般会計及び特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

柚木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院河北審議官。

河北会計検査院当局者 最初に、平成二十一年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、地域子ども教室推進事業等の委託に当たり、支払いの事実のない謝金を再委託費に含めるなどしていたため、委託費の支払い額が過大となっていたもの、科学技術総合研究業務に係る委託費の経理が不当と認められるものなど計二十二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、義務教育費国庫負担金の交付額の算定における休職者等の取り扱いに関するもの、国立大学法人における目的積立金の取り扱いに関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十二年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、地域科学技術振興事業費補助金が過大に交付されていたもの、科学研究費補助金が過大に交付されていたものなど計五件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、在外教育施設派遣教員委託費の算定対象となる経費の取り扱いに関するもの、各都道府県に移管された高校奨学金事業の運営に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、公立の義務教育諸学校等施設の整備に要する経費に充てるための交付金に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十三年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、次世代アスリート特別強化推進事業等の委託に当たり、支払いの事実のない賃金を再委託費に含めるなどしていたため、委託費の支払い額が過大となっていたもの、放課後子どもプラン推進事業費補助金が過大に交付されていたものなど計十七件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、幼稚園就園奨励費補助金の交付に関するもの、スポーツ振興基金の有効活用に関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

柚木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 平成二十一年度、二十二年度及び二十三年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成二十一年度、二十二年度及び二十三年度決算検査報告において会計検査院からの御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 御指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところでございます。

柚木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柚木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柚木主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田沼隆志君。

田沼分科員 日本維新の会の田沼隆志でございます。

 大臣、私はいつも教育問題ばかり質問をさせていただいていまして、きょうもさせていただきまして、ありがとうございます。また、胸をおかりするつもりで決算審査をさせていただきたいと思います。

 過去三年間の決算行政監視ということの中で、逆に、最近、最新のトレンドに関連して、ちょっと御質問がございます。というのは、教育再生実行会議第三次提言についてでございます。

 これは、主に大学教育のあり方についての提言、五月二十八日提出というものでございまして、私も非常に関心を持って拝見したんですけれども、率直に言って、非常に違和感も感じました。

 というのは、特に第一の「グローバル化に対応した教育環境づくりを進める。」という部分が、例えば、世界を相手に競う大学は五年以内に授業の三割を英語で実施するですとか、海外留学生を十二万人に倍増、今は六万ぐらいですか、倍増するですとか、外国人留学生を三十万人に、これも倍増、また、大学入試でTOEFLなどを活用していくということなんですけれども、資料をお持ちでない方にはちょっとわかりづらくて恐縮ですが、4にだけ「日本人としてのアイデンティティを高め、日本文化を世界に発信する。」と。具体的には「国語教育、我が国の伝統・文化についての理解を深める取組の充実。」というふうに書いてあるんですが、非常にグローバル化偏重と言うと言い方はあれですけれども、日本軸が非常に弱いなと感じました。

 我が党ももちろん、日本維新の会としても、世界水準の教育を、かつて誇った日本の教育をまた復活させたい、また、グローバル人材の育成というのも掲げておりますので、大方針としては大いに賛同するものでございますが、やはり、全体の提言を拝見してどうしても感じるのが、車の両輪であるはずの日本人としてのアイデンティティーを確立することについて、極めて手薄であるように感じます。

 この提言書、全体の冊子の方も拝見しましたが、全体の構造、九ページある中で、ページでいうと四ページの一番下の4というところなんですけれども、ここにだけ「日本人としてのアイデンティティを高め、日本文化を世界に発信する。」とございますけれども、ほかはほとんどないんですよね。

 私も外資系の企業に勤めておりましたので、グローバル化に対応するという中で、やはり日本人としてのアイデンティティーをきちんと確立することは物すごく重要であると、多分大臣も同じだと思うんですけれども、思います。と考えたときに、このバランスの悪さ、アイデンティティー確立ですとか日本文化を世界に発信するという提言がございますが、その分量が少ない、また具体性も非常に弱いということに極めて不安を抱きました。聞くところによると、そもそも、この4の項目自体も初めはなかった、素案の段階ではなかったということも聞いておりますので、ここに関しての大臣のお考えをお聞きしたいんです。

 四月十五日の第六回の教育再生実行会議でも、安倍総理の言葉で、何のためにグローバル人材をつくっていくかという視点が大変大事だ、シンガポールは、グローバルな国というアイデンティティーになっていて、それがアイデンティティークライシスになっているという指摘もあり、そういう点も考慮する必要があるというコメントもあったと議事録で拝見しました。

 そこで、お尋ねいたしたいんですが、まず、これまでの日本人としてのアイデンティティーを高めるという教育はどのようにやられてきたのか、そして、それは十分達成されているとお考えなのか、大臣のお考えをお尋ねします。

下村国務大臣 田沼委員が国会で熱心に教育問題の質問をしていただいていることに対して、敬意を申し上げたいと思います。

 今回は、教育再生実行会議の第三次提言に立った御質問がございましたが、これは、これからの大学教育等のあり方についての提言をしているものでございまして、全体的な、例えば第二期教育振興基本計画も先週閣議決定をしましたが、トータル的な部分をぜひ見ていただいて御判断をしていただきたいと思います。

 もちろん、真の国際人になるためには、真の日本人になるということが同時に求められているというふうに思います。ただ、今回は、これからの大学教育のあり方についての、主にグローバル化に対応した教育環境づくりを進めるというところに特化した第三次提言ということでありますから、別に、このことによって、日本人としてのアイデンティティーとかあるいは日本文化の育成をおろそかにしているとかいうことではそもそもございません。

 今、国際社会において、これから真に通用する人間、これはもう国境を越えて、英語というのも、これは世界共通語だと思うんですね。これは一つの言葉、ツールですから、それを学んだからといって真の国際人になるわけではもちろんないわけですけれども、しかし、共通語がしゃべれなければ、国際社会の中でコミュニケーションもとれないわけでございます。

 その辺、そもそも、日本の大学教育そのものが象牙の塔的な部分があって、非常に国内的な視点の中で、今まで、教育においてもあるいは研究においてもややもすると満足してきた部分が多いのだ、結果的に、そのことによって日本の大学教育そのものが地盤沈下をしている部分があるのではないかというふうに思います。

 実際、田沼委員も、例えば外資系等のいろいろな方々とお会いする中で感じられることだと思いますが、例えば外資系なんかでも、かえって外国人が、日本語もしゃべれ、そして母国語もしゃべれ、なおかつ英語も話せるという人の方が、外資系の企業であってもはるかに有為な人材として使えるというような話がある中、これから、国際社会の中で本当に通用する人間というのを日本の大学そのものがしっかりと見据えて対応していく必要があるというふうに思います。

 この教育再生実行会議の第三次提言では、そういう徹底した国際化を断行し、世界に伍して競う大学の教育環境づくりについてバックアップしていこう、個々にそういう大学を目指すかどうかは、それぞれの国立大学や私立大学がどんな教育方針や経営方針を持って臨むかということではありますが、そのためのバックアップとしての提言だというふうに受けとめております。

 具体的に、海外大学の教育ユニットを誘致するとか、あるいは逆に日本の大学の海外展開を拡大するとか、国際化を断行するスーパーグローバル大学を、今後十年間で世界大学ランキングトップ百に十校以上ランクインする、今二校ですけれども、そういうこととか、留学生を倍増するとか、大学入学試験でTOEFL等を活用するとか、そういう具体的な提言をすることによって、各大学が日本の教育の方向性について理解をしていただいて、その方向に進めるような、そういう提言であるというふうに受けとめておりますが、もちろん、それ以前の段階として、日本人としてのアイデンティティーを高めるための教育をするということは必要なことだと思います。

 これまでそういう教育がなされてきたのかということを考えると、私は十二分になされてきたとは思っておりません。ですから、今まで以上に、これは小学校段階から含めて、もっともっと日本のすばらしい伝統、文化、芸術、それから歴史そのもの、そういうものを学ぶ必要があるのではないかと思っておりますし、私が文部科学大臣になってから、例えば高校で日本史を必修にすべきだという提言も随分いろいろな方々から受けております。

 これは、東京都が都立高校における日本史を必修化し、神奈川もそうし、そして千葉もそのような取り組みをするということの中で、我々が学生のころは日本史というのは必修でしたが、今は選択科目という中で、高校生で十二分に日本の歴史を理解していない、そういう学生もふえているという中で、文部科学省としても改めて、トータル的な日本人のアイデンティティーとか視点とか、あるいは、最近では自民党からも公共という教科を新たに導入すべきではないかというような提言も受けておりますが、今までの延長線上ではなくて、真の国際人、真のグローバル人になる、一方で真の日本人になるためのトータル的な教科のあり方、それもしっかり検討する、そういう時期に、グローバル社会であるからこそ求められ、問われているのではないかというふうに認識しております。

田沼分科員 ありがとうございます。ほとんど全て、もう全く同感でございまして、非常にうれしい御答弁をいただきました。

 もう少し、今度は具体的な、これはちょっと提案的な質問かもしれませんけれども、幾つか思っておるのを御質問させていただきたいんです。

 最近読んだ本で、角川の本なんですけれども、「高校生が読んでいる「武士道」」という本がありまして、新渡戸稲造さんの「武士道」を高校生が読んだものが載っているんですが、その感想が載っているのがありまして、それを読むと、自国の伝統や脈々と受け継がれてきた精神を知らずに世界の第一線に出ていくことは恥ずかしいことだ、「武士道」にはこれまで培われてきた日本人の全てが詰まっている、これは日本人が日本人としての誇りを取り戻し、世界に胸を張って出ていくための必読書だと思ったとか、あと、日本人は「武士道」にある克己を忘れることなく、言葉で自分の意思、考えを表現して伝えていくための新たな伝統を打ち立てなければならない時期に来ていると思う、それによって国際社会での日本の立場を築いていけると信じているということで、非常にうれしい若者の言葉が載っておりまして、そのとおりだなと。多分、大臣も本当に同感いただけると思うんです。

 真の国際人には真の日本人たるべきだという、まさにその思いを若者も共通化してくれているのかなという中で、少し具体的なんですが、グローバル化を進めるというふうに今多くの教育機関で目指していくわけですけれども、と同時に、日本人としてのアイデンティティーも高めるということで、例えばなんですが、グローバル化を進める機関には、同時に日本文化やそのアイデンティティーを養う講座を設置するべきではないかなというふうにも思うんです。

 というのは、この「武士道」も、これはその学校がたまたま取り上げたからいいですけれども、取り上げない学校も、むしろ、そっちの方が多いわけですし、「武士道」でなくても構わないですけれども、やはり今の現状というのは、よく言えば自由ですけれども、言い方を変えれば、日本文化や日本人としてのアイデンティティーを学ぶ機会がない教育機関も随分あるというふうに認識しておりまして、これから、グローバル化、真の国際人を目指すならば真の日本人たらなければならないという中で、講座のようなものを同時に設置するべきじゃないかなというふうに思うんですが、それについて、大臣、お考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 日本人としてのアイデンティティーを高め、日本文化を世界に発信するという意識を持ってグローバル化に対応するためには、初等中等教育、高等教育を通じて国語教育や我が国の伝統文化について理解を深めることは、御指摘のように、大変重要なことであるというふうに思います。

 このために、初等中等教育においては、国語教育や我が国の伝統文化に関する教育の充実を図った新学習指導要領に基づく指導が各学校で実現されるよう、さらに取り組んでいく必要があるというふうに思います。

 また、グローバル化に積極的に取り組む大学において、御指摘がありましたが、例えば日本語教育学などを学んだ日本人学生を海外の大学に派遣し、現地で日本語教育の支援や日本文化紹介を行うプログラムを実施している。これは、早稲田大学など五大学において二〇一二年から五年間で約一千百名を派遣予定でありますが、こういうプログラム。あるいは、千葉大学では、異文化を理解し、日本文化を再確認することにより、国際日本人を目指す国際日本学のプログラムを設置している。また、北九州市立大学では、みずからのルーツである日本について世界で語ることができるための知識と世界情勢についての理解を深めるための日本事情という科目を開講しているなど、日本文化や日本人のアイデンティティーを養う教育内容や活動を行っているところもございます。

 大学の世界展開力強化事業、それからグローバル人材育成推進事業、こういう形で文部科学省としても支援をしておりますが、今後とも、グローバル人材を育成する大学、あるいはいろいろな教育機関で、一方で日本人としてのアイデンティティーを高める教育の充実をしているところに対してしっかりバックアップをしていきたいと考えております。

田沼分科員 ありがとうございます。

 ちょっと千葉大、お膝元にそういうのがあるというのは知りませんでしたので、勉強になります。

 そういった世界展開をしていく講座がどんどんふえていけるようにということがやはり両輪になると思いますので、引き続き頑張っていただければというふうに思います。

 もう一つ、これはもしかしたら局長の方がいいかもしれないんですが、施策の中には「初等中等教育及び高等教育を通じて、国語教育や我が国の伝統・文化についての理解を深める取組を充実する。」というふうにあるんですけれども、そのとおりなんですが、では具体的にどうなるのかなというところが気になるところです。

 私が特に気になるのは、さっき大臣が、日本人のアイデンティティーを高める教育がまだ十分ではないと考えるという言葉もありましたので、やはり学習指導要領自体を変えていく必要があろうかなというふうに思います。

 この我が国の伝統文化への理解を深める取り組みというものの中身として、指導要領が変わる方向で検討いただけるのかどうか。踏み込みはどこまでかという質問かもしれませんが、お答えいただければと思います。

布村政府参考人 平成十八年十二月に教育基本法の改正がございました。先生からもお話がございましたけれども、我が国の伝統文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うということが、「教育の目標」の中の第五号として位置づけられております。

 この教育基本法の規定も踏まえまして、今回の学習指導要領の改訂に当たりましては、我が国の伝統文化を子供たちがしっかりと学び、それを体験的に、みずから担う場面なども体験活動として行い、それらを継承し、また自分たちも次の世代に受け継いでいくことが大事なんだ、そういうことをしっかりと学ぶことが大事だ、そういう観点から学習指導要領の改訂を行いました。

 国語の中でも、これまでの日本のよき文学をしっかり学ぶですとか、歴史においても、我が国固有の文化としての位置づけをより重視する、それから道徳の中でも、伝統と文化を尊重する、そして郷土や地域を大事にする、愛する、そういう態度を養う面をより大事にしよう、そういう観点からの指導要領の改訂を行ったところであり、その指導要領を踏まえた教科書が既に検定を通って学校現場で使われ、教育活動、小中高等学校を通じて、我が国の伝統文化を尊重するという教育に今学校で取り組んでいただいているという状況にございます。

    〔主査退席、武藤(容)主査代理着席〕

田沼分科員 その答弁はそのとおりなんだと思うんですが、そうすると、ちょっと嫌な言い方かもしれませんが、大臣は、やはりまだ十分でないというふうに言われたわけですね。ですけれども、恐らく、今の局長の答弁ですと、きちんとやっていますというように聞こえるんです。確かに、きちんとやられているんだと思います。ただ、それは十分でないというふうにも大臣も言われていると思いますし、私もそう思います。

 なので、学習指導要領を改訂しました、わかります。それに基づいた教科書も使われている、わかります。でも、十分でない現状があるわけですから、実際、これはいろいろな御意見があろうと思いますけれども、みずからの国に誇りを持てるような教科書でないものもある。それがかなり採択されている現状もありまして、もう局長は御存じのはずです、私がいつも言っているわけですから。再質問はしませんけれども、言い方はあれですけれども、官僚答弁的な、そういう答弁というよりは、もう少し踏み込んで取り組んでいただきたいんです。

 やはり、グローバル化を進めていく中においては、アイデンティティーを確立することは非常に重要ですから、本当に。その意味で、今の取り組みのままでいいんですというふうに聞こえるのは、やはり納得いきません。認められません。大臣もそう思っていると思います。なので、ぜひそのことを御理解いただきたいというふうに思います。

 次に行きます。

 同じような話なんですけれども、やはり日本人としてのアイデンティティーをしっかり確立するということに取り組まないと、国益も失いかねないと思っております。たとえグローバル人材を今回の取り組みで育てられたとしても、心までグローバル化してしまったら、国籍にとらわれずに、より高く雇ってくれる国とか企業が出てきたらそっちに行ってしまいかねないわけでして、実際、そういう現象も起こっているやに聞いております。

 なので、きちんと取り組んでいく必要がなおさらあろうと思っておりますが、その中で、この一の2の部分でしょうか、日本人留学生を十二万人に倍増するというところなんですけれども、現在六万人弱で、これは減少していますね。この倍増を目指すということなんですが、ただ、目指すのは結構なんですけれども、まず、何で減少してきているのかなというところに関しての御見解を、これも大臣か局長かどちらでも結構ですけれども、お聞きしたいんです。減少傾向にあるのはなぜか。どうしてこういうふうに減ってしまったのかというところですね、留学政策に誤りがもしあるならば、それは何であろうというふうに考えられるのかも含めて御答弁いただければと思います。

    〔武藤(容)主査代理退席、主査着席〕

板東政府参考人 御指摘のように、海外で学ぶ日本人学生が減ってきているわけでございますけれども、その理由としてはいろいろなものがあるかと思っております。

 一つは、よく指摘されておりますように、日本人全体、特に若者の内向き志向というのがやはりあるのではないかという指摘もございます。これは大学生に限らないところだと思っておりますけれども。

 それから、経済的な問題というのがかなりございまして、特に、例えばアメリカなどですと授業料がかなり上がってきているということがございますので、今までアメリカに留学している学生が多かったというのも減ってきているというような状況がございます。

 また、就職活動の時期とか、就職の中でどう評価されるかといったような、就職問題とのかかわりというのが特に就職が厳しくなっていく中で出てきているということなど、さまざまな原因がございますので、それぞれの課題をきちんと解決していきたいというふうに、施策を進めたいと思っているところでございます。

田沼分科員 そのとおりなんだと思います、三点とも。ただ、相当減っていますよね。この資料ですと、ピーク時が八万二千九百四十五人ですか、ですけれども、今五万八千六十人ということで、これが十年弱の間にここまで減ってしまって、六年くらいですか、二〇〇四年から三〇%減っているという中で、これは内向き志向になったからだけではやはりちょっと人ごと的になってしまうかなと思います。

 ちょっと気になるのが、やはり日本国として、政府として、留学生を、どんどん行ってもらうという中で、どういうふうに活用するのかというのがわからない。

 日本のすばらしさですとか日本の文化を発信、まさにここに発信すると書いていますけれども、そういう役割も留学生には担ってもらうべきなんじゃないか。実際、外国で仕事したり、外国の方と話す中で、私ごときが釈迦に説法ですが、日本人としての自覚を深める方が多いわけですね、若者の中に。

 なので、留学生に対して、留学生をどう活用するかという戦略性がちょっと見えない。ただ単に、減ったからふやそうというふうにも見えかねないんですね、この提言書ですと。これは非常にもったいないというか、わからないので、これもちょっと時間があれなので答弁を求めませんけれども、国家戦略がやはり必要だと感じます。単なるグローバル化への対応という中ではやはりいけない。日本国として、どういうふうに日本の国を引っ張っていくのか。日本国家の国家戦略を実現していく中で留学政策というのがあるというふうに位置づけ直さないと、単にふやしておしまい、やってみたらできませんでしたというのは、それは本当に官僚的な姿勢であって、日本を引っ張るためにはちょっと疑問があるということを御指摘させていただきます。

 次の質問に移りまして、今回の提言で、グローバル化に大きくかじを切るというかなり大胆な内容になっていると思いますけれども、これは大臣にお尋ねした方がいいと思うんですが、グローバル化の中で、国家戦略を実現するにおいて、大学がどういう役割を果たすべきなのかがちょっと知りたいんです。

 大学の機能というのは、世界で戦って勝てる強い日本人を育成することだというふうに明確に定めるべきじゃないかと私は思っていまして、グローバル化は、今後も、日本国として、人口減少社会で、TPPの参加方向ですし、避けられないと思います。それはそれで結構ですが、その中で、文明学者のハンチントンさんが言うように、文明の衝突という側面もやはりどうしてもあるわけでございます。そうすると、文明論的な見地からグローバル化を捉え直して、日本文明としての生き残りをかけて戦っていく時代になったと私は理解をしておりますし、そういうグローバル人材を養成する。

 だから、日本がいかにして世界に対応するかではなくて、いかに世界に日本を理解させるか、日本人の生き方を受け入れてもらうかというふうに、受け身ではなくて積極的に語りかけていく必要があるというふうに考えておりまして、その一環で大学がやるべき役割が見えてくるんじゃないかというふうに思っています。

 繰り返しになりますけれども、世界で戦って勝つ強い日本人の育成こそ、今、日本政府は目指している、それを大学は担ってほしいというふうに定めるべきじゃないかと思うんですが、そういった提言がちょっとこの中には見当たらないものですから、大臣のお考えをお聞きできればと思います。

下村国務大臣 まず、幾つかの御質問の中で、それぞれの局長の答弁は、やはり局長の答弁として今までの行政の一貫性の中での答弁でございますから、さらにどう踏み込むかは政治判断でございますので、これは政務三役等が、日本人のアイデンティティーについてさらにどう踏み込むかということについては、当然、今の段階で決まっていないことに対して局長がそれ以上踏み込める立場でないということについては御理解いただきたいと思いますが、文科省全体としてはそういう方向を目指しているということでございます。

 それから、留学生問題も、実際、田沼委員は御経験があると思いますが、海外へ行って改めて、日本人であるにもかかわらず、実は日本のことを何も知らない。逆に、海外に行って初めて、日本のすばらしさ、文化、歴史、伝統の中で、もっともっと日本のことを学べばよかった、あるいは学びたい、そういう動機づけにもなりますから。

 そういう意味でも、海外留学生を倍増するということは、結果的に、それぞれが、日本人あるいは日本国に対する愛国心なり、あるいは、さらに日本のために頑張ろうというふうに思ってもらうような動機づけにもつながってくると思いますし、それ自体、私は、大変な成果、効果も上がっていくものだというふうに思います。

 もちろん、御指摘のように、留学させる前にもっと日本人としての学ぶべきアイデンティティー等をさらに教えて、そして行かせるということも当然重要なことだと思います。

 それから、大学の国家戦略としてのあり方でございますが、今、七百八十三ある大学の中で、全てをグローバル人材の育成に資する大学にするかどうかということについては、これはやはり役割分担があると思います。そういう、世界に伍して日本人が活躍をするような大学生の数というのは、明確に決めているわけではありませんが、七百八十三ある中で、一割もあれば人材的には十分ではないかというふうに思っております。

 かえって、日本の中における産学官連携の中で、日本の社会や産業を支える、あるいは地方大学においては地域の人材育成としてのニーズ、看護師とか福祉関係とか、そういう教育で求められている部分もありますから、それぞれの役割分担の中で、グローバル人材を目指す大学については全面的に支援をしているということともちろん連動してこれからやっていくということが必要でありますが、それを教育再生実行会議の第三次提言でもなされているというふうに思います。それをぜひ、うちの大学こそそれにチャレンジしたいという大学について積極的に支援する中で、さらなる国家戦略的な連携をとっていきたいと考えております。

田沼分科員 半分も終わらなかったんですけれども、非常に大事な議論だと思いますので、これからもぜひ。

 最後に大臣が言われたように、政治の力が非常に重要な局面になってくると思いますので、日本人アイデンティティー教育に関しても、大学のあり方の改革に関しても、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

柚木主査 これにて田沼隆志君の質疑は終了いたしました。

 次に、熊田裕通君。

熊田分科員 自民党の、愛知県の熊田でございます。

 私も文科委員の所属でございますが、なかなか発言の機会を得られませんでしたが、こうして決算の場で発言できることをうれしく思っています。下村文科大臣、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 私も長く地方議会を経験してまいりまして、同時に、地域のお父さんたち、いわゆるおやじの会というんですが、地域の子供を健全に育成する、スポーツやいろいろなイベントを通じて子供を育てていこうというグループに二十年ぐらい参加させていただいておるんですけれども、たった二十年の間に、子供さん、それに携わる親御さん、かなり変わってきたなということも実感をしながら、今も携わらせていただいています。

 先ほど大臣から、日本人、日本人らしくというお話もありました。私はやはり、昔のよきもの、これは守らなきゃいけないと思いますし、古い時代を美化するつもりはありませんが、特に戦前の社会を私は美化するつもりはありませんが、教育の部分でいうと、六十七年前のあの戦争の後、日本人として置いてきちゃいけないものを、もしかしたら、この六十七年、ぽっかり置いてきちゃったような気がしております。

 ですから、大臣初め安倍内閣で取り組んでいただいておる教育再生、私は本当に期待をさせていただいておりますし、そんなことを踏まえながら御質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、道徳教育について伺いたいと思います。

 先ほど大臣から、高校の授業での公共というお話もありました。私は、社会というのは個人の集合体だと思っています。同時に、個人というのはいわゆる公共の中に存在をする個であると思います。これをやはりきちっとした形で自覚させることによって社会とのかかわりをしっかりと認識させて、社会の中で果たさなければならない義務と主張することのできる権利というのを、きちっと子供のころから理解させる必要があると思っています。

 今、いじめや非行、若年層の自殺など、耳を覆いたくなるような事件が毎日のようにマスコミに取り上げられておりますが、社会の中での自分を認識することによって、相手や周りの人の立場に立って物事を考えられる、思いやりの心を育んでいく必要があると思います。物質中心の社会風潮、知育重視、道徳軽視の教育傾向では、日本の美徳である謙譲の心、また豊かな心は育たないと思っております。

 現在、公民や道徳の時間は設けられておりますが、時には席がえやホームルームに割かれてしまい、本来の道徳教育に充てられないという現実があるということも、現場の先生から聞いたことがあります。社会の宝である子供たちをきちっとした社会規範を守れる立派な人間に育てるためには、幼少期からしっかりとした道徳教育を受けさせる必要が私は不可欠であると思いますが、まず冒頭に文科大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、武藤(容)主査代理着席〕

下村国務大臣 全くおっしゃるとおりでありまして、道徳の教科化とか充実ということを言うと、国家主義的な教育の復活かのように批判する人がいますけれども、それは全く当たらないと思っております。

 国や民族、時代を超えて、人が人として生きるために必要な規範意識や社会のルール、これはやはりあると思うんですね。それをきちっと身につけるということは、一人一人が自分に自信を持って、また、社会の責任ある構成者として幸福に生きる基盤をつくる上で必要不可欠なことであるというふうに思います。

 今、熊田委員から御指摘があったように、これは子供だけでなく、戦後、私たちはそういうことを忘れてきてしまった社会がやはりあるのではないか、大人も含めてでありますけれども。それを、何か拒否反応的に国家主義云々というふうに一言で切って捨ててしまって、実はそのことによって一番、いじめ問題なんかもそうですが、自分の言葉によって人が傷ついている、あるいは傷つけられているということについて子供たちにきちっと教えていない、そういうところから子供がさらに不幸感に陥っている部分というのもあるのではないかというふうに思います。

 ですから、道徳教育は、発達段階を踏まえて、子供たちに規範意識や社会性、あるいは今申し上げたような思いやりの心など、豊かな人間性を育むという意味では大変重要なものであって、こういう教育を学校や家庭において一層充実させることが今の日本にとって大変重要なことであるというふうに思います。

 文科省として、教育再生実行会議の第一次提言で、この道徳教育の充実について提言をいただきました。

 今後の道徳教育の充実方策について検討するために、ことしの三月に、道徳教育の充実に関する懇談会を設置いたしました。この懇談会において、心のノートも今学校で使われていない、学校で道徳の時間はあっても教材もない状況ですから、これをすぐ復活するということですが、印刷等でまだ間に合っておりません。七月か九月ぐらいになると思いますが、しかし、現状の心のノートも十分でないと思っておりますので、これの全面改訂、心のノートという名前も変えることも含めて、道徳の新たな枠組みによる教科化の具体的なあり方について今検討しているところでございます。

 その議論も踏まえまして、今後、全ての学校においてしっかりとした道徳教育が実施されるよう指導に努めていきたいと考えております。

熊田分科員 全く同感、大臣、本当にありがとうございます。力強く、これからしっかり取り組んでいただきたいな、そんな思いであります。

 我々の仲間の先生から聞いてびっくりしたことがありました。給食の時間に、教室で生徒と一緒に手を合わせて、いただきますと。夕方になったら、職員室に親から電話がありました。先生、わしのところは給食費を払っておるけれども、何で、いただきますとみんなでやるんだと。こういうことがあったという話を聞きました。びっくりしました。

 意味がわかっていない。これは親であります、我々と多分近い世代かなと。残念でありますが、最近、学校の教育現場では、こういう当たり前のことのできない子供がふえてきているといいます。挨拶をしない。先生に当てられても返事をしない。本来家庭で行うべき、きちっとしたしつけというのができていない子供たちがふえているということも伺っております。

 教育基本法の第十条にも、子供の教育の第一義的責任者は保護者であり、生活に必要な習慣を身につけさせるとあります。しかし、現実には、子育てに自信がなく、生活の不安やストレスを子供にぶつけている親も多いと伺っています。そのような家庭で優しさや思いやりのある子供は育むことはできません。

 しかし、この子たちも必ず親になります。わからない人がまた親になって子供を教育する、こんなことが本当にできるんでしょうか。私は、人としての最低限の節度やマナーは、家庭の中で、しっかりとしたしつけという部分で教えなきゃならないと思っております。

 教育基本法十条の二項には、国は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、家庭教育を支援するために必要な施策を講じるよう努めなければならないとありますけれども、具体的にはどんなお取り組みをされているのか、お聞かせください。

合田政府参考人 家庭教育の支援策についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、家庭教育は全ての教育の出発点でございます。子供の基本的な生活習慣、社会的なマナーの習得、自立心の育成、心身の調和のとれた発達などに大変重要な役割を担うものというふうに認識をしております。

 文部科学省におきましては、家庭教育の自主性を尊重しつつ家庭教育を支援するための施策といたしまして、身近な地域における家庭教育に関する学習機会の提供でございますとか、地域人材を活用した家庭教育支援チームによる保護者への、相談への対応、基本的な生活習慣づくりのための「早寝早起き朝ごはん」運動といったようなものの推進に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、家庭や学校、地域が十分連携協力しつつ、子供たちが思いやりや規範意識など豊かな人間性を育むよう、家庭教育にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

熊田分科員 いろいろ具体的にお取り組みをされておることは私も承知をしております。私は批判するつもりはありませんが、いろいろなことをやっていただいておるんですが、結局、参加される親御さんは本来必要のない人なんです。必要のない人は参加するんです。本来、その場所に来ていない人が一番必要とされているんです。

 だから、これを呼びつけてやるというのはなかなか難しいかもしれませんが、やはり、いろいろなものを取り組んでいただく中で、手の届かない親御さんの方へ少しでも近づいていくということを期待したいですし、また、いろいろ知恵を出していただいてやっていただきたいなと思っております。

 次の質問なんですが、最近、若者のうつ病がふえていると伺っています。現代型うつ病とも言われ、仕事をしているときやストレスがかかったときにだけ、うつの状態になるそうであります。仕事から解放されて友達と遊ぶときには、何もなかったように過ごすことができる。その症状も従来のうつ病とは若干違いがあるそうであります。

 従来、うつ病の発症年齢のピークは四十代から五十代でありましたが、最近では、二十代から三十代で現代型のうつ病の発症例が多く見られるようになったと伺っています。二十歳未満の発症例を見ると、平成八年には四千人であったものが、平成十四年には一万一千人、平成二十年には一万五千人と、年々ふえてきています。

 これら若年層が発症するうつ病を現代型と呼んでおるようですが、私は、この現代型うつ病は、幼児期から中等教育期にかけての教育、いろいろな意味での教育の方針が影響しているのではないかと考えております。

 つまり、あしき平等教育。私も地元の運動会で先日見ました。男女が一緒に徒競走で走っていました。校長先生、何で男女を一緒に走らせるんですか、全てタイムで、同じようなタイムの人を走らせていると言ったんです。ここでこんなことを言ってはいけないかもしれませんが、その中でもやはり女の子に速い子がいます。男で負けている人たちは非常に悔しいだろうな、そんなことも思いました。

 こういう教育現場で、優劣をつけずに、みんな一緒だという教育方針をとられた時期もございました。過度にそういったものが起きることによって、学生のうちは、周りから非常に、大丈夫だよ、あなたはそれほど立派にやらなくていいんだよ、大丈夫だよ、差はないんだよ、皆と一緒だよと言ってこられた子供たちが、社会に出た途端に、競争、そして叱られるというものを受けたときに、子供のときから練習をしていない、それに携わっていない子供が、突然そういった社会の厳しさを見せつけられてこういった現代病のうつ病にかかるのではないのかな、そんなことも思っております。

 やはり教育現場で、いろいろなことを学ばせることも必要でありますけれども、社会の厳しさ、子供として、人間としての強さ、こういったことも集団の中で、学校現場で学ばせていくことも大切なことだと思っております。こういう子供を育てていくということについて、大臣の御所見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 今、熊田委員のお話を聞いて、なるほどなというふうに思いました。厳しい社会の中において、今、若者のうつ病がふえているということでございますが、これは先進国でも同様の状況がありますけれども、同時に、我が国のやはり問題点もあるのではないかと思います。

 教育において、いい意味での競争は必要であり、子供たちが切磋琢磨し、みずからのいい点に気づき、互いに高め合うということは大変重要なことであるというふうに思います。

 幾つか私も視察に行く中で、小学校まではすごく元気で、快活で、頑張っているのにもかかわらず、中学校、高校になると、もう魚の死んだ目のような、表情がない、受け身の授業をしているというような子供たちも結構たくさんいるなという中で、我が国は、やはり画一、均一教育の中で、ちょっとでもみんなと違ったらそれがまたいじめの対象になってしまったり、横並び的な形で、子供たちも必要以上に、ちょっと自分がずれる、ちょっと違うことをやること自体も嫌がる。

 外国人から見て、日本人は何か軍隊予備軍をつくっているのではないかと思うように非常に没個性的だということを言っていましたが、実際、そういうことではなくて、そもそも、精神性もたくましい、パワフルな子供ではなくて、トータル的に、草食動物という言い方もありますが、おとなしいといいますか、逆に言えば覇気のない、活力のない、それが結果的に、若者になってうつ病予備軍にもなっているというところもやはりあるのではないかということを、今、熊田委員の話も聞きながら感じておりました。

 学校現場は、一人一人その子の個性、能力を認めながら、一方で活力ある環境づくりをすることによって、一方で、かといって、ばらばらになると迷惑ですね、みんなで協調性を持ちながら、同時にそれぞれの個性を伸ばしていく、そういう次のステージに初等中等教育もしていかないと、こういううつ病的な問題について解決できないのではないか。

 その中の一つとして、できるだけ、体験学習ですね、自然体験とか、それからいろいろな環境の中で、都会の子だけではなくて、今、地方の子供も全く外で遊ばなくなったり、外で地域の人たちと過ごすという環境が非常に少なくなっている部分がありますが、あらゆる部分でいろいろなところへチャレンジするような、そういう子供の精神性とともに、そういう場をつくっていく努力をぜひしていきたいと思います。

熊田分科員 ありがとうございました。

 時間がちょっとあれなんです。子供のことばかり質問させていただきましたけれども、今度、先生の側に立ったお話をちょっとさせていただきたいと思うんですが、とかく、先生、まあ不祥事を起こす先生もおられます。それは、私は一部だと思っています。ほとんどの先生は真面目に生徒に向かって、教育に熱心に努めていらっしゃる先生の方がはるかに私は多いと思っています。

 私はやはり、不適格な教師、こんな直球で言っちゃいけませんが、不適格な教師は退場をしていただかなきゃならないと思っています。新しい職をぜひ見つけていただきたいなと思っていますが、頑張って、しっかり子供と見詰め合って、子供のことを思ってやっている先生方にはどうしてもしっかりと頑張っていただきたい。評価をされるということを私はぜひ先生方にやっていただきたいなということを思う中で、ちょっと質問させていただきます。

 平成二十一年度から教員免許制度が改正され、それまでは一旦免許を取ると終身有効だったものが、新たな制度では十年間という有効期限が付され、更新時には三十時間程度の講習を受けることとなりました。

 教員は、特に初等教育を担う教職員の資質は、子供たちの人間形成に大きな影響を及ぼします。多感な成長期にある子供たちの教育が資質に欠ける先生によって行われるとしたら、教えられた子供たちは一生の不幸ではないでしょうか。子供たちは先生を選ぶことはできません。ならば、資質に欠ける先生にはどうぞ早々と退場をしていただきたい。

 そして、こういった制度によって最低限のレベルを保てるということになるならば、これはうれしい限りでありますが、その一方で、頑張っておられる先生たちもたくさんおられます。一日十二時間以上も学校にいて、さらに、土日はほとんど休まずクラブ活動の面倒を見る、自分のポケットマネーで子供たちに飲み物などを世話する、まさにスーパー教師と言ってもいい先生もたくさんおられます。指導困難校などの管理職手当等の増額や部活動手当も増額はされておりますけれども、それとて、本来のその先生の仕事量に比べれば、とても十分とは言えません。

 平成十八年度からは文科大臣の優秀教員表彰も始まりました。しかし、これは教育委員会や知事など公的な立場からの推薦だけによるものであります。実際教育を受けている子供たち、そのそばにおる保護者、そして子供たちのために頑張っておるPTA、こういった現場の方から推薦を受けられるような制度にするのも一つの方法じゃないかなと思っております。表彰を受ける教員の方も、保護者から推薦をしてもらう方が、より御自身の努力が報われる意義深い表彰となるのではないでしょうか。

 この点について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、六年前、第一次安倍内閣が発足したときに教育再生会議ができまして、今は教育再生実行会議をスタートしているわけでございますが、そのときに免許更新制の問題が出ました。

 十年たって、やはり向いていない先生はそこでやめてもらうということが前提であったわけですが、めり張りをつけて、確かに、おっしゃるとおり、大半の先生方は本当に現場で頑張っておられると思います。そういう頑張った先生に対してもっと評価をするということをプラス思考で考えていくという意味で、今御指摘のように、身近な人たちが、先生の、目に見えない部分での苦労なり子供との接し方についてはよくわかっているわけですから、そういうような評価がもっと学校の先生に反映できるような仕組みというのは確かに考えていかなければならないというふうに思いますし、そういう工夫については今後検討させていただきたいと思います。

 いずれにしても、頑張っている先生が待遇面においてももっともっと評価されながら、さらにやりがいを持ってもらえるような教育環境づくり。そもそも、一人一人の子供たちと向き合う時間が、今、多忙化感、非常に教育も多様化する、それからモンスターペアレント等、クレームも処理しなくちゃいけないという中で、子供と向き合う時間が少なくなってきているというようなことがよく聞かれます。ぜひ、もっと学校の先生をいろいろな部分で手当てをしながら、子供の教育に対して専念できるような環境づくりのために努力をしてまいりたいと思います。

熊田分科員 ありがとうございました。

 現場の先生も、特にしっかりやっていらっしゃる先生というのは、わざわざ評価を求めて多分やっておられないと思うんです。だからこそ、そういったもの、御自身が当たり前だと思って努力されることが他人から評価される喜びというのは、またひとしおじゃないのかなというふうに思っています。

 大臣におかれましては、いろいろ知恵を使っていただいて、よりいい形で、また評価という形をきちっと、頑張っている先生方にあらわしていただくことをお願いさせていただきたいと思います。

 時間がちょっとありますので、この中身は余り質問をしにくい話なんですが、今、公務員給与、カットされております。また、特に東日本大震災の復興予算捻出のために、国家公務員の皆さん、そして地方公務員の皆さん、みんな給料をカットして、これから頑張っていくぞと。これは本当に私も、そのとおりであるし、大事なことだと思っております。

 実は、私の愛知県の交付税不交付団体の市、町の人事課の人から話を聞いたことがあるんですが、もう随分前の話でありますが、非常に人件費が高い、改めよといって国から指導を受けたそうであります。そのとき、その人事課の担当の人は、周りを見てほしい、私たちの町はトヨタ関連の大きな会社と戦わなきゃならない、戦う以上、この給料の水準を下げたら、公務員にならずに民間企業にどんどんみんな人が行っちゃうんだと言って、その国の指導をはねのけたという話を聞いたことがあります。

 今の時代、給料を上げるということは非常に難しいことだと思っておりますが、同時に、人材を確保するという観点から見て、私は、もう少し何かしら手だてをとらなければ、特に子供の教育に携わる教員、まあ、民間の企業を滑っちゃったから教員にでもなるか、こういうことでは私は寂しい限りでありますし、給料だけで教員になろうという方は、給料がいいから教員になるぞということはないかもしれませんが、でも同時に、生活がある以上、学校の先生をやっておるよりも民間の企業に行った方がいいというふうになれば、これはその選択肢はどっちかへ転がっていっちゃう、そんな心配もしております。

 今ここで、給料のベースを上げろなんということを大臣に申し上げるつもりはございませんが、人材確保という観点、そして、いい先生にいつまでも学校で、教育現場で携わっていただくために、いろいろな方法があると思います。給料だけじゃなくて、そういった人材確保という観点から今後どう取り組まれるおつもりなのか、大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 ぜひ教員にはいい人材を確保して、いい教育を子供たちに提供するということの中で、そのための一つの目安として、やはり待遇もできるだけよくするということが必要なことだと思いますし、田中角栄総理の時代に、人材確保法をつくることによって一般公務員よりもさらに処遇をよくしたということがありましたが、今は実際ほとんど変わらないという状況がございます。

 現状において、御指摘のように、一律的に給与を上げるというのはやはりちょっと世間の理解を得るのは難しい状況ですが、少なくとも、努力している教員に対して、その処遇をさらに改善するための手だてを行うということ、つまり勤務評価を給料等の処遇で適切に反映する、そういう工夫をすることは必要だと思いますし、各教育委員会に対しても、そういう観点から指導しているところでございます。

 今後、文部科学省として、真に頑張っている教員を支援することにより、教員の士気を高め、教育活動の活性化を図るということは大変重要なことであるという観点から、教員評価の結果を適切に処遇に反映するよう、さらに各教育委員会に対して促していくことによって、めり張りのある給与体系の確立に向けてしっかり検討を進めてまいりたいと思います。

    〔武藤(容)主査代理退席、主査着席〕

熊田分科員 ありがとうございました。

 資源のないこの日本、資源は人材だと言われています。これからも、日本人としてきちっとした誇りを持つ、そして日本人としての立派な子供たちが社会の中でその社会を形成していく、これが、日本のこれからの将来、大切なことだと私は思っております。

 これからも、いい人材、子供たちを、さらなるいい子供たちを社会へ輩出していただくように、文部科学省のこれからのお取り組みに期待をさせていただきながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柚木主査 これにて熊田裕通君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして文部科学省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

柚木主査 これより防衛省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。小野寺防衛大臣。

小野寺国務大臣 平成二十一年度における防衛省の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省主管一般会計の歳入につきまして御説明申し上げます。

 歳入予算額は四百九十三億六千百万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百七十七億七千万円余に比較しますと、八十四億八百万円余の増加となっております。

 次に、防衛省所管一般会計の歳出について御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆七千七百四十一億三千五百万円余でありまして、これに予算補正追加額一千三百十三億六千九百万円余、移しがえを受けた額百六十五億五千九百万円余、前年度からの繰越額一千五百七十三億七千四百万円余、予備費を使用した額十九億一千百万円余を加え、予算補正修正減少額八百五十七億七千百万円余、移しがえをした額十億三千七百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆九千九百四十五億四千万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆八千二百八十億五千五百万円余、翌年度へ繰り越した額は九百六十二億八千八百万円余でありまして、差し引き不用額は七百一億九千五百万円余であります。

 続きまして、平成二十二年度における防衛省の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省主管一般会計の歳入につきまして御説明申し上げます。

 歳入予算額は四百八十七億九千六百万円余でありまして、これを収納済み歳入額四百七十二億一千二百万円余に比較しますと、十五億八千三百万円余の減少となっております。

 次に、防衛省所管一般会計の歳出につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆七千九百二億九千三百万円余でありまして、これに予算補正追加額百四億六千万円余、移しがえを受けた額三十四億五千二百万円余、前年度からの繰越額九百六十二億八千八百万円余、予備費を使用した額百六十九億一千六百万円余を加え、予算補正修正減少額十一億六千二百万円余、移しがえをした額四億八千九百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆九千百五十七億五千九百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆六千七百二十七億一千百万円余、翌年度へ繰り越した額は一千二百四十一億八千九百万円余でありまして、差し引き不用額は一千百八十八億五千八百万円余であります。

 続きまして、平成二十三年度における防衛省の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省主管一般会計の歳入につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳入予算額は四百九十六億百万円余でありまして、これに予算補正追加額二億一千八百万円余を加えますと、歳入予算額は四百九十八億一千九百万円余でありまして、これを収納済み歳入額四百三十一億四千三百万円余に比較しますと、六十六億七千五百万円余の減少となっております。

 次に、防衛省所管一般会計の歳出につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆七千七百五十一億九千七百万円余でありまして、これに予算補正追加額三千九百三十五億六千九百万円余、移しがえを受けた額三十六億六千万円余、前年度からの繰越額一千二百四十一億八千九百万円余を加え、予算補正修正減少額五百五十七億四千六百万円余、移しがえをした額四億四千八百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は五兆二千四百四億二千百万円余であります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆八千二百十四億一千七百万円余、翌年度へ繰り越した額は二千三百七十四億一千二百万円余でありまして、差し引き不用額は一千八百十五億九千百万円余であります。

 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

柚木主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院藤崎第二局長。

藤崎会計検査院当局者 それでは最初に、平成二十一年度防衛省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費等を支払っていたもの、駐機場の整備に当たり、コンクリート舗装工の施工が適切でなかったため、舗装にひび割れが発生していて工事の目的を達していなかったものなど計九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、情報システムの維持整備に関する請負契約の予定価格の積算に関するもの、廃止された自動車教習所における跡地の利用状況に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、特地勤務手当等の支給に関するもの、百五十五ミリりゅう弾砲の長期保管に係る倉庫の活用に関するものなど計四件につきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十二年度防衛省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、給食業務実施要領書等の調達に当たり、契約内容に適合した履行が確保されていないのに、受領検査が適切でなかったため契約金額の全額を支払っていたもの、職員の不正行為による損害が生じたもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、自衛隊病院等における診療料の施設基準等に係る届け出及び労災診療費の算定に関するもの、給食事務を支援するためのソフトウエアの有効利用に関するものなど計五件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、稟議決裁システムに関するもの、学士の学位授与に関するものなど計五件につきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十三年度防衛省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、浮函換装工事の前払い金の支払いに当たり、契約相手方が会計法令等により支払い要件とされている保証事業会社との前払い金の保証契約を締結していないのに、これを看過して支払っていたもの、航空機用補給物品を保管するために調達したパレットボックス等の設置に当たり、アンカーボルトの施工が適切でなかったため、仕様書において求められている耐震安全性が確保されていなかったものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格の算定に関するもの、防衛装備品等の調達に関する契約における制度調査、原価監査等の実施状況等に関するものなど計五件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、東日本大震災等の災害時に災害派遣活動に従事した自衛官等に対する災害派遣等手当に関するもの、電子複写機の保守の実施に関するものなど計四件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

柚木主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。小野寺防衛大臣。

小野寺国務大臣 平成二十一年度、二十二年度及び二十三年度決算検査報告において会計検査院から指摘を受けました事項につきましては、まことに遺憾に存じております。

 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、会計法令の遵守を図るとともに、綱紀粛正のより一層の徹底に努め、かかる事態の再発防止に万全を期する所存であります。

 次に、意見を表示されまたは処置を要求された事項につきましては、直ちに是正措置を講じたところであります。

 今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層事務の適正な執行に努めてまいる所存でございます。

柚木主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柚木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柚木主査 以上をもちまして防衛省所管についての説明は終わりました。

 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、防衛省所管については終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時五十三分散会


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