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第4号 平成14年7月23日(火曜日)

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(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第三分科会議録第2号」のデータです。)
平成十四年七月二十三日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 山名 靖英君
      江藤 隆美君    北村 誠吾君
      桜田 義孝君    中川 秀直君
      森田  一君    石毛えい子君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      小沢 和秋君    穀田 恵二君
   兼務 田端 正広君 兼務 黄川田 徹君
   兼務 山田 正彦君 兼務 山内 惠子君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        鈴木 孝之君
   政府参考人
   (文化庁文化財部長)   木谷 雅人君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (水産庁資源管理部長)  海野  洋君
   政府参考人
   (経済産業省産業技術環境
   局長)          日下 一正君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君
   政府参考人
   (国土交通省河川局砂防部
   長)           岡本 正男君
   政府参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   政府参考人
   (中小企業金融公庫総裁) 堤  富男君
   参考人
   (中小企業総合事業団理事
   長)           見学 信敬君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十三日
 辞任         補欠選任
  中川 秀直君     北村 誠吾君
  手塚 仁雄君     石毛えい子君
  穀田 恵二君     瀬古由起子君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     中川 秀直君
  石毛えい子君     手塚 仁雄君
  瀬古由起子君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  小沢 和秋君     穀田 恵二君
同日
 第二分科員田端正広君、黄川田徹君、山田正彦君及び第四分科員山内惠子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団)


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     ――――◇―――――
山名主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。
 平成十二年度決算外二件中、本日は、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団について審査を行います。
 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。武部農林水産大臣。
武部国務大臣 平成十二年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。
 最初に、一般会計について申し上げます。
 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千六百二十億六千三百二十七万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千二十四億九千百九十三万円余であり、差し引きいたしますと五百九十五億七千百三十三万円余の減少となっております。
 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額四兆四千五百三十一億三千二百六十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆七千八百九億千五百六十万円余であり、この差額六千七百二十二億千七百四万円余につきましては、五千八百二十四億七千七百十三万円余が翌年度へ繰り越した額であり、八百九十七億三千九百九十一万円余が不用となった額であります。
 なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成十二年度農林水産省所管(一般会計及び特別会計)決算に関する概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は四兆千四百七十七億千四十二万円余、支出済み歳出額は四兆千三百四十五億五千四百九十六万円余であり、差し引き百三十一億五千五百四十六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。
 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。
 以上をもちまして、平成十二年度における農林水産省の決算の概要に関する御説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院重松第四局長。
重松会計検査院当局者 平成十二年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十六件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号一八〇号は、かんがい排水事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八一号は、保安林管理道整備事業の実施に当たり、コンクリートブロック積み擁壁の施工が著しく粗雑となっていたため工事の目的を達していないものであります。
 同一八二号は、かんがい排水事業の実施に当たり、設計及び施工が適切でなかったため、水路トンネル出入り口部の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八三号は、ため池等整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、水路トンネルの所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八四号は、漁業集落環境整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、汚水処理水槽等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八五号は、条件不利地域農業生産体制整備事業等の実施に当たり、補助事業で導入した自脱型コンバイン等の農業機械に係る事業費を水増しするなどしているものであります。
 同一八六号は、中山間地域総合整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八七号は、経営基盤強化林業構造改善事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、重力式コンクリート擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一八八号は、農業経営育成生産システム確立条件整備事業の実施に当たり、補助事業で設置していた精米施設を処分制限期間内に無断で解体撤去するなどしているものであります。
 同一八九号は、護岸の災害復旧事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、タイロッド工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一九〇号は、水産業地域改善対策事業により漁業者のために設置した荷さばき施設が、遊休化しているものであります。
 同一九一号は、農地情報管理システム整備事業の実施に当たり、補助対象である電算システムの入力ソフトの購入及びデータの初期入力を行っていないものであります。
 同一九二号は、漁港改修事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、護岸等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同一九三号から一九五号までの三件は、農業改良資金の貸し付けが不当と認められるものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、農用地の流動化を推進するための事業の実施に関するものであります。
 この事業については今後の農用地の利用計画の意向を把握するために行う農業者の意向調査が適切に行われていなかったり、経営面積を拡大または縮小する農業者の掘り起こしなどの利用調整活動を実施する態勢が十分でなかったりなどしている事態が見受けられましたので、農林水産省に対して、改善の意見を表示したものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、米麦に係る共同乾燥調製施設等の施設の規模に関するもので、施設の計画時点における規模及びその決定過程において、施設の利用に関する農業者の意向が適切に反映されていないなどしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、エゾシカ対策として設置する防護さくの設計に関するもので、外力に対し十分な抵抗力を有しているコーナー部の支柱についても控え柱を設置する設計としていたため、防護さくの設計が過大となっているなどしておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その三は、農業近代化資金の利子補給に関するもので、この資金により導入された高性能機械の利用面積が導入計画で定めた利用面積の下限に満たないものに利子補給補助金が交付されている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その四は、林業改善資金の資金規模に関するもので、資金の繰越額が貸付額を大きく上回る都道府県が増加したりなどして、資金が効果を発現することなく滞留している事態となっておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その五は、現場吹きつけのり枠工の積算に関するもので、のり枠表面の仕上げの要否に応じた歩掛かりが定められていなかったため、のり枠吹きつけ工費の積算額が過大になっている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
 次に、平成十二年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、林業基盤整備資金の貸し付けに当たり、担保不動産に対する抵当権の設定を怠ったため、貸付金債権の回収が不能となったものであります。貸し付けに当たっては、借入者が所有する山林等に公庫を第一順位とする抵当権を設定して登記すること、その登記簿謄本を提出することなどが約定されていたにもかかわらず、取扱支店の貸し付け及び払い出しの事務手続に過誤があったこと、また、公庫における抵当権設定登記の確認に関する事務手続に十分でない点があったことにより、抵当権が設定されず、その後借入者が破産したことにより貸付金債権の全額が回収不能となり十一年度決算において償却していたものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。武部農林水産大臣。
武部国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十二年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。
 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。
 不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであります。
 農用地の流動化を推進するための事業の実施に当たり、農用地の利用集積という目的を実現するため効果的な実施を期するよう改善の意見を表示されたものにつきましては、今後実施する事業について、その効果的な実施を図るため、事業対象地区の重点化及び具体的な集積目標の設定など所要の措置を講じたとともに、都道府県及び市町村に対する指導の強化に努めているところであります。
 以上、会計検査院の御指摘に対しまして、農林水産省が講じた措置の説明を終わらせていただきますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。
山名主査 次に、鶴岡農林漁業金融公庫総裁。
鶴岡政府参考人 ただいま会計検査院から御報告のありましたことにつきまして、御説明いたしたいと思います。
 当公庫の業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用につきまして鋭意努力してまいりましたが、平成十二年度決算検査報告におきまして、林業基盤整備資金の貸し付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に思っております。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに所要の措置を講じましたし、また、今後このような事態が発生しないよう、我々役職員一同きちんとした対応をするとともに、支店に対しまして、今後このような事態の発生を防止するための措置につきまして指示したところでございまして、私ども公庫に与えられました使命を果たすべく今後とも努めてまいる所存でございます。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎欣弥君。
楢崎分科員 おはようございます。民主党の楢崎です。
 きょうは、有明海問題に絞ります。
 朝一ですので静かにいきたいんですけれども、どうも腹の立つことがありまして、先月、六月二十日、福岡県の有明海漁連の方々が諫早干拓工事中止の要望書を渡すために農水省を訪れられました。ところが、その農水省の対応は、本庁舎の正面玄関以外の四つの玄関を閉鎖して仮庁舎で応対、さらに警視庁丸の内署にも事前連絡する異例の厳戒態勢をとったとあります。これは何ですかね。無礼じゃないでしょうか。有明海異変で苦しんでいる漁民の陳情ですよ。余りにも過剰反応だと思われますが、いかがですか。
武部国務大臣 要請等のお申し込みを受けた場合には、円滑に要請が受けられるように考慮して対応するということが大事だ、このように考えておりまして、六月二十日も、福岡県有明海漁連より円滑に申し入れ書を受け取ることができたと認識しております。
 なお、これまでも、多人数での要請行動がある場合には、その円滑を期する観点から、一部の入り口を一時的に閉鎖する等の庁舎管理を行ってきたところでありまして、当方の対応が不適切であったというふうには考えておりません。
楢崎分科員 どこが円滑なんですかね。まことに不誠実な対応と言わざるを得ませんよ。
 このところの九州農政局に対する陳情対応もそうですけれども、農水省の意に沿う団体、意に沿わない団体と区別するんですか。そう思われても仕方ないですよ。差別ですよ、これは。もう一度お答えください。
武部国務大臣 差別など毛頭考えておりませんで、特別、農水省の意に沿うもの、そうでないものというのは区別などはしておりません。大勢でおいでになる場合には、これまでもいろいろなことがあったこと等を踏まえまして、仕事中でもありますし、円滑にその要請にこたえるといいますか、それをお受けするというようなことでありまして、庁舎管理というようなことも十分踏まえまして、冷静に、なおかつ丁寧に対応している、私どもはこのように考えております。
楢崎分科員 これまでもいろいろあったと言われましたけれども、やはり不誠実な対応に対する怒りをあらわした行動であって、原因はやはり農水省の姿勢にあると思いますよ。もう少し漁民の心情を理解する対応をすべきだと私は思います。農水省の偏見に強く抗議しておきます。
 そこで、この申し入れに対する拒否回答が六月二十七日、文書でなくて電話で伝えられた。これも、無礼といえば無礼。内容は、方針に沿って事業を進める、つまり二〇〇六年度の工事完了方針に沿ってということでしょう。どうも農水省は、四月十五日の会合の合意、これをよりどころにしてあるようですね。この合意は重たい、それを連発してある。
 私も、この件については六月五日、農水委員会で質問しましたから、大臣の答弁を再検証しました。大臣は、この四月十五日の会合について、出席者は長崎県知事、長崎県議会議長、長崎県漁連会長で、福岡、佐賀、熊本の各県知事と漁連会長が同席された、長崎県との間に十二月に交わした見直し案による六年度の諫干工事の完成に協力してほしい、そういうことに対して双方合意したと答弁されております。ちなみに、そのとき宮腰政務官は、御理解をもらったと答弁してありますが。
 この四月十五日の会合ですけれども、非常に評判が悪い。夜の十時から始まった密室協議ということになっておりますね。何でこんな遅い時間になったんですか。
 実は、大臣が答弁された出席者の中に漏れがあるんじゃないですか。その人は自民党の古賀誠前幹事長で、前幹事長のスケジュールに合わせたために夜の十時という遅い開始になったんじゃないですか。どうですか。
武部国務大臣 古賀先生にも陪席いただきました。それから久間先生にも陪席をいただいたわけでございますが、遅くなったということにつきましては、私ども、皆さんがおそろいいただけるときということで、特に意図的に遅くしたわけではございませんで、今までもこういうことについては、皆さん方がおそろいになるということに合わせてやるという考え方でいろいろ行ってきていると思います。別に他意はございません。
楢崎分科員 なぜ私に対する答弁から両代議士の名前が漏れていたんですか。やはり後ろめたいものがあるというんですか、あるいは問題があると認識されたから故意に言われなかったんじゃないですか。いいですか、国の政策が個々の政治家によって左右される、いわゆる鈴木宗男的手法、つまり政と官のあり方が今問われているんですよね。ましてや古賀前幹事長はこの有明新法与党案の筆頭提出者にもなっておられる。私は、この四月十五日の会合そのものに不信感を持っているんですよ。この会合で古賀前幹事長が果たされた役割も含めて、もう一度答弁いただけますか。
武部国務大臣 私どもは、地元の議員の皆様方にはいろいろ相談を申し上げ、御協力を願ってきているわけでございます。特に、今委員御指摘のように、古賀先生については、与党のノリ対策本部の本部長でもございますし、いろいろ御協力をいただいてまいりました。久間先生はまた長崎県の、御当地の御出身でもございますし、ほかの先生方にもいろいろ御協力いただいてまいりましたが、このお二人の先生にとりわけいろいろ御協力、御指導をいただいてまいりましたので、代表して御出席をいただくということでございまして、特別な発言があったわけではない、このように承知しております。
楢崎分科員 今大臣のお言葉を聞いても、やはり密室協議による不信感、その域を出ないと思います。大体、合意の重たさを連発されるにしては、合意文書も覚書もない。結局、重たい合意と言われるのは、政府の思い込みの激しさ、これをあらわす一方的な解釈にすぎないんじゃないですか。現に、そういう政府の解釈とは相反する福岡、佐賀、熊本各漁連の、工事を一時中止して中長期の開門調査を求める行動が起こっているではないですか。こういう密室協議による決まり事よりも組合員のそういう総意の方がよっぽど重たい、そのことを申し述べて、次に移ります。
 そこで、昨年の十二月十九日、ノリ不作等調査検討委員会、いわゆる第三者委員会が、堤防が締め切られたことによって干潟が消失し水質浄化機能が失われた、こういう指摘のもとに、有明海全体の環境に影響を与えていることが想定される、その上で、排水門の開門調査、まずは二カ月程度の短期調査から、半年程度、最終的には数年にわたる常時開門調査へと進めることが望ましいと提言されたんですね。生物の働きというのは季節によって変動があるし、干潟の浄化機能も夏と冬では大きく異なるわけですから、そしてまた、何よりも潮流、潮汐の状況を見ないと調査にはならないわけですから、この第三者委員会が中長期の開門調査が必要と言われたのは、僕は当然だと思いますよ。
 結局、今言いましたこの四月十五日の合意によって、長崎県もその短期開門に同意をされて、四月二十四日には本当に五年ぶりに有明の海が湾内に流れ込んだわけです。しかし、結果的に、海水導入の実施日が少ない、そしてまた、このときに限って予想を超える降雨量があった。そういうこともあって、水質としては不安定な状況が続いたんですね。私は、このままでは水質の悪い値しか出ない調査結果になって、それが海水を入れるとよくないという逆宣伝に使われるんじゃないかという危惧を覚えているんですけれども。要するに、短期ではあっても門をあけて調査した、そういう世論向けのポーズ、セレモニーで終わってはいけないと思うんですね。やはりきっちりとした調査のためには中長期開門調査が必要だと思います。これ、やりますね、大臣。どうでしょう。
武部国務大臣 いつも申し上げてきておりますように、中長期の開門調査につきましては、現在進められております有明海を再生するための新法制定の動きもございます。また、今お話がありました短期開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点等を踏まえまして総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける予定にしております有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経まして、農林水産省において判断するということにしているわけでございます。
楢崎分科員 どうもちょっとはっきりしないんですが、その新法問題も先行き不透明ですよね、今。
 いずれにしましても、この諫干問題は政治が解決しなくちゃいけない問題ですよ。ですから、民主党が主張する、工事を一時中止して中長期の調査をやる、その決断のときが来ていると思いますよ。BSEで批判された大臣が、今度は歴史に残る名大臣になるかどうか、その瀬戸際だと私は思っています。
 それで、この短期開門調査をやる前の事前説明時に、九州農政局が各漁協に平成十四年度の工事の工程表を渡されたんですが、その中に、今年度から前面堤防の工事を全体工期五年間で開始すると。その工事の入札が十五日に実施されて、熊谷組と清水建設が入札された。特に熊谷組さんを見ると、諫干事業受託企業として自民党長崎県連に献金されたのはベストスリーに入っていますね。この熊谷組は、さらには、経営不振によって公的資金を投入された銀行から免責、債務免除などの金融支援を受ける会社となっている。
 ちょっとこの問題は後でこれだけでやりますけれども、この前面堤防の工事を着工するということは、干潟の再生を視野に入れた中長期開門調査をやる、これが事実上不可能になるということですね。これは第二のギロチンですよ。これで漁民が納得するわけないでしょう。ですから、反対行動が起こるのは当然だと思いますよ。要するに、中長期調査はいろいろな状況をもとに最終的に判断するということですが、もう一度答えていただけませんか、中長期調査、やるんですか、やらないんですか。矛盾しますよ、そうじゃないと。
武部国務大臣 これはもうただいまお答えしましたとおり、今進められております有明海新法の動き、また短期間の開門調査の成果及びその影響、そのほか各種の調査の動向、ノリ作期の関係との観点等を踏まえまして総合的な検討を行った上で、また新たに今年度中に有明海の再生方策を総合的に検討する場を設けるわけでありますが、そこで議論をいただいて、農林水産省として判断するということにしているわけでございまして、今、やるやらないというようなことを申し上げるべきときではない、このように思います。
楢崎分科員 何度聞いてもはっきりしないんですが、私どもはこの前面堤防工事着工には断固反対を表明しておきたいと思います。
 そういう中長期開門調査をやるのかやらないかはっきりしない、それと関連があるのかどうか知りませんけれども、今、佐賀の鹿島で類似干潟の調査をやっておられますね。どうもわからない。これは諫早から何か目をそらさせるんじゃないかという気がしているんですね。
 つまり、海は生き物ですよね。特に諫早干潟というのは有明海の子宮と言われたぐらいに、生物生産力それから浄化能力があった。また、地理的にも差異があると思うんですよ。私は、シミュレーションとかやっておられるみたいですけれども、やはり第三者委員会の提言を素直に尊重すべきだと思いますよ。
 それで、BSEで退職された熊澤事務次官も、この有明海問題については、第三者委員会の提言は尊重するのが基本的な考えですと言ってこられたんですね。この第三者委員会の清水委員長も、谷津前大臣のセリフを引用して、この委員会は最大限に尊重されると聞いている、それを期待すると発言されているんです。
 いいですか。そういう第三者委員会の提言を受けながら平気で六年度の工事完成を口にする、そういう農水省の姿勢というのは第三者委員会に対する侮辱ですよ。この提言を尊重しないと第三者委員会の存在意義そのものが失われると思いますよ。また、そのことに対する農水省の責任は非常に重たいものがあると思いますが、いかがですか。
太田政府参考人 現在の調査とも関係しますのでお話し申し上げますと、農水省といたしましては、見解にもありますように、短期の開門調査で得られる知見は限られたものとなるということが言われておりますが、そういうことであるからこそ、諫早湾干潟に類似した現存干潟における実証調査、それから開門調査により得られる情報も活用しましたコンピューターによる水質、流動等の解析調査、これを含めてこの短期の開門調査、三つの手法を総合的に組み合わせて実施するということで、諫早湾干拓事業の有明海の環境への影響をできるだけ早期に把握したいということで実施しているものでございまして、決してその見解を、ないがしろということよりむしろこれを尊重しながら実施しているという立場でございます。
楢崎分科員 役所の言い分として聞き及んでおきましょう。
 これに関して、ことしの四月ですか、九州農政局内に、諫早湾干拓事業開門総合調査運営会議なるものが設置されましたね。これは六月六日の農水委員会でも同僚委員から質問されていましたので私もしつこくは言いませんけれども、やはり私だって、開門調査を提言したノリ対策第三者委員会がこの短期調査の内容も精査されると当然思っていました。新たにそういう運営会議を設置した理由がわからないんですね。なぜその開門の提言をした第三者委員会ではいけなかったんでしょうか。
太田政府参考人 ノリ不作等第三者委員会は、有明海沿岸四県におけますノリ養殖の不作等に対する調査及び研究の計画の樹立、適切な実施等を図ることを目的に設置したものでございます。一方、開門総合調査運営会議は、調査の実施主体であります九州農政局が、地域の状況に精通した委員によりまして、専門的な立場から助言指導いただくために設置したものでございます。
 具体的には、短期の開門調査におけます海水導入に伴い、背後地の塩害の問題とか諫早湾内の漁業への影響が生じないようにという事前の影響予測や対策、あるいは不測の事態への対応などにつきまして助言指導いただくことといたしまして、これまでこの会議の指導助言のもとに調査を進めてきたところでございます。
 さらに、この短期の開門調査を中心に、先ほど申しましたように、これと関連して、諫早湾干潟に類似した現存干潟における実証調査と、開門調査により得られる情報も活用したコンピューターによる解析調査を組み合わせた開門総合調査について、具体的な調査手法あるいは調査の取りまとめに関して助言指導いただくこととしております。
 なお、この開門調査の結果につきましては、前回もお答えいたしましたように、ノリ不作等第三者委員会には報告を行うことといたしております。
楢崎分科員 なぜ第三者委員会ではいけないのか、今の答弁はその理由になっていない。
 それから、そのメンバーの人選もそうですよ、おかしいですよ。まず、ギロチンのボタンを押した人もさることながら、八六年に、有明海に干拓事業の影響はない、このような環境調査結果を出した人がこの運営会議の座長ですよ。何ですか、この人選は。これではもう今から結果が想像できるじゃないですか。そういう不信感を呼ぶ人選ですよ。
 私は、これは、所管の委員会にこの座長である先生を参考人として今度呼んでいただくつもりですので、そのことを申し述べておきます。
 そこで、この諫早干拓事業の費用対効果についてお伺いします。
 八六年の事業開始の際の指数が一・〇三。九九年の計画変更では、事業費が千三百五十億円から二千四百九十億円に膨れて、指数を一・〇一に修正したわけですね。それが今回の規模縮小に伴って指数は〇・八三。つまり、百円の税金を使っても八十三円の効果しかない。これは事業官庁がそのことを認めておられるわけです。やはりこれは土地改良法上の違法になるんじゃないですか。
太田政府参考人 諫早湾干拓事業につきましては、本年六月に計画変更を決定し、そのときに算定いたしました費用対効果は、先生御指摘のとおり、〇・八三となったところでございます。
 一般的に、国営土地改良事業につきましては、事業の開始に当たっては、土地改良法上、費用対効果が一・〇以上であることが求められているところでございますが、計画の変更に当たりましては、法文上、必ずしも費用対効果が一・〇以上であるということは求められておらない状況でございます。
 これは、国営土地改良事業は事業規模が非常に大きいために一般に工期が長期にわたるということ、あるいは事業を取り巻く社会経済情勢の変化が生ずる可能性が大でございますけれども、こうした場合には、事業規模を縮小して、これに伴う附帯的な工事を実施して早期に事業を完了させることがより公益にかなうと考えられる場合もございまして、このために、総合的な価値判断により、費用対効果が一・〇以上であることを求めないこととされているものと考えております。
 諫早湾干拓事業につきましては、新たな干陸は行わないことといたしまして、干陸面積を約半分に大幅に縮小するなどの、現状を生かして効果を発現するための必要最小限の事業内容として取りまとめたものでございまして、やむを得ないものというふうに考えております。
楢崎分科員 公共事業の効率性が求められていることに変わりはないんですよ。一・〇を下回っていいという話じゃないでしょう。そういう今のようなあなたの話というのは、国民に通用しないんですよ。
 そこで、やはりもう一つ大事なことは、干潟の効能が入っていないんですよね。干潟を考慮すれば悲惨な数値が出てくる、〇・三という数値も今言われているようですけれども。私は、昨年の五月十七日にも農水委員会で、干潟の浄化能力の経済価値をカウントすべきだと言ったんですけれども、そのときの政府の答弁は、干潟の水質浄化機能については、貨幣評価による手法が確立されていないと。
 どうも私はわからないんですけれども、農業白書は、我が国の農業、農村の多面的機能を年間六兆八千七百八十八億円プラスアルファと評価というんですか、計量しているんですね。全森林の公益的機能は三十九兆二千億円。農業、農村、森林の多面的、公益的評価はできて、なぜ干潟の評価ができないんですか。やろうとしていないんじゃないでしょうか。
太田政府参考人 前回のお答えに関連してでございますが、委員御指摘のとおり、現時点では貨幣評価する手法が確立されていないということから、外部不経済を反映させることは適当でないと考えているという答弁とあわせまして、マイナスの効果と言われておりますこの干潟の水質浄化機能だけを計上していないのではございませんで、農地造成によります食料の安定供給、あるいは調整池の淡水化によります淡水系生物の生息などのプラス効果についても、これも同じように手法が確立されていないという理由から、プラスについても計上していないという状況でございます。
 それから、先ほどの森林あるいは農業全体に対する評価の問題、これにつきましては、御指摘のとおり、一定の評価数字が出ておりますけれども、これにつきましては、ある意味ではマクロ評価でありまして、その地点地点に応じた評価の計算手法については、現在のところも確立されておらないという状況にございます。
 今後は、効果算定に当たりまして、貨幣化、定量化が可能となりますような手法の検討を引き続き行いまして、多面的機能の効果等を含めて総合的に評価する手法を検討してまいりたいというふうに考えております。
楢崎分科員 時間が来ましたけれども、こういう文書もあるんですよ。干潟は、水産生物の産卵等資源生産の場としての機能や、有機物の分解、窒素、燐等栄養塩の取り込みによる水質の浄化等さまざまな機能を有している。これは水産白書ですからね。これもできるわけですよ、やろうと思えば。
 それで、ちょっとラムサール条約に関して聞こうと思いましたけれども……
山名主査 時間ですので、簡潔に願います。
楢崎分科員 時間が来ましたので、次に回します。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次に、黄川田徹君。
黄川田分科員 自由党の黄川田徹であります。
 通告に従い、地域課題も含めまして、順次質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 さて、去る七月十一日、台風六号は、梅雨前線の活動とも重なりまして、広い範囲で、豪雨を伴い、河川のはんらんやがけ崩れが相次ぎました。今回の台風は、三陸沿岸に沿って北上したために、私の地元にも大きな被害をもたらしたところであります。北上川は一関近辺で、カザリンあるいはアイオン台風に次ぎ戦後三番目の出水量になったところであります。
 河川の改修が進んでいる現在においても、台風の来襲のたびに市街地の水没あるいはまたがけ崩れ等の大規模災害が繰り返されるのはなぜか、この点をちょっと考えながら、その根本原因と対応等についてお聞きしていきたいと思います。
 私の地元の岩手県においても、木材価格の長引く低迷や、あるいはまた存立基盤である山村地域の活力の低下などによりまして、森林を支える林業、木材産業は本当に厳しい状況にあります。加えて、地方財政、大変厳しいわけでありまして、これが増す中で、間伐等の手入れが行き届かない、不十分である人工林、あるいはまた伐採した後の植林がなされないというような跡地が見られる、こういうことによりまして、県土の保全や水資源の涵養はもとより、地球温暖化の防止など、森林の多面的機能の低下がますます懸念されるところであります。
 そこで、このような水土保全機能あるいはまた地球温暖化防止機能の向上など、森林の持つ多面的機能を持続的に発揮させるためには、水土保全林あるいはまた森林と人との共生林、資源循環林など、重視すべき機能区分に応じた森林の整備を着実に進めるということが大事だと思っております。
 そこで、最初に農林水産大臣に簡潔明瞭な見解を求めておきたいと思います。
 とりわけ、地球温暖化防止の森林吸収源対策を積極的に進めるためには、大幅な予算の拡充など、政府全体の取り組みとして森林の整備を強力に推進していく必要があると思いますが、これについてどのようにお考えでしょうか。
 そしてまた、あわせて、こうした森林整備に伴い生産される間伐材等の有効活用も含めまして、再生可能な資源である木材の循環的な利用を推進することによりまして、求められている循環型社会、この構築を図っていく必要があると思いますけれども、この二点についてお尋ねいたします。
武部国務大臣 京都議定書におきまして、森林の吸収源の保全及び強化が地球温暖化対策として位置づけられておるわけでございます。森林整備を通じて森林吸収源の確保に努めることは大変重要な意味を持っている、このように私ども考えているわけでありまして、さらにまた、木材は人や環境に優しいすぐれた資材でありまして、その利用を推進することは、林業の活性化、森林の適切な管理につながるとともに、循環型社会の構築に大きく貢献するもの、このようにも考えているわけでございます。
 このような中で、森林整備等が現状程度の水準で推移した場合には、森林による二酸化炭素の吸収量の目標値を大きく下回るおそれがあるということは委員御指摘のとおりでございまして、関係府省と連携を図りつつ、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策として検討を進めておるところでございます。健全な森林の整備、保全や木材利用の推進等を強力に進める必要がある、かように考えております。
 先般明らかにされましたいわゆる基本方針第二弾におきましても、このことが明記された次第でありまして、農林水産省のみならず政府全体としてこの問題に真剣に取り組んでいくべきであろう、かように考えております。
 さらにまた、間伐材の利用の問題でございますけれども、地球温暖化防止上、山村の新たなる可能性の創出ということを図る観点から、私どもは、木質バイオマスエネルギーの利用促進ということに今取り組んでいるわけでございます。これは木質だけでありませんで、農林水産省に先般バイオマス・ニッポン戦略本部というものを設置いたしまして、七月中に、アドバイザリーグループによります御議論を踏まえて大綱をまとめることにしているわけでございます。
 こうした中で、山村の新たなる可能性の創出を図るということと同時に、木質バイオマス等未利用資源の発電、熱供給等への利用方法の検討や利用計画の策定、かさが大きく取り扱いが不便な木材をガス化または液化し、燃料としての利便性を向上する技術の開発、木材乾燥等の熱源等として利用するための熱供給施設の整備、こういったことも含めまして、私ども農林水産省を、生産振興から農林水産資源といいますか、生物系資源の利活用ということに重点化させていきたい。そういった中で、間伐材等の新たなる利活用の可能性というもの、これは間伐材ばかりじゃございませんで、そのような決意で臨んでいる次第でございます。
黄川田分科員 木質バイオマスについては後で長官からお聞きしようと思いましたけれども、大臣からお話がありましたからなんでありますが、本当に、私の地元の岩手県でもこの木質バイオマスの有効活用を一生懸命勉強しておりますので、特段の御指導をいただきたいと思っておりますし、そしてまた新エネルギーの利用に関して、発生する電力を電力会社に一定量の買い取りを義務づける法律が今国会で成立しまして、公布されております。そしてまた、木質バイオマスをエネルギーとして利用する事業形態の出口の環境といいますか、法律で制定されたということで整備されつつありますけれども、先ほど大臣もお話しされましたけれども、間伐材の、廃材と言いませんね、林地残材といいますか、そういうものの有効利用を特段、本当によろしくお願いいたしたいと思っております。
 それからまた、台風災害の現場を私も見て、国土保全にかかわる森林の整備、本当に大事だなと思っております。昨年林業基本法が改正されまして、新たな多目的機能といいますか、いろいろなことがあるんでありますけれども、これまた水害防止のための具体の施策もその中にきちっと位置づけて対応していただきたいと思っております。
 それでは次に、台風災害の具体的事案の対策について幾つか伺っていきたいと思っております。
 私のところは、急峻な山並みが海に複雑に入り組む三陸沿岸の海岸線の美しさ、これを持っておりまして、これが貴重な観光資源でありますが、その反面、急傾斜地の崩壊事故をたびたび引き起こしております。
 崩壊対策を必要とする危険な急傾斜地でありますが、岩手県内で八百カ所近くにも及びます。そのうち、三陸沿岸が多いわけでありますけれども、釜石市というところがありまして、百三十八カ所を筆頭に、大船渡市、宮古市など、沿岸部が県全体の六〇%を占めております。しかしながら、崩壊防止工事が完了したのは、最近の公共事業の抑制の影響もありまして、二百十八カ所と全体の約二七%にとどまっておるところであります。そこで今回も釜石市で、土石流の影響によりまして、土砂崩れによりまして、ひとり暮らしの高齢者二人のとうとい人命を失ったということであります。
 そこで、急傾斜地崩壊対策事業が進められている箇所は、傾斜度が三十度以上で高さが十メートル以上の人家近くの急傾斜地でありまして、周辺の人家がおおむね十戸の密集地は国庫補助事業、そして五戸未満は県が単独事業で行うこととされておりますけれども、今回の緊急性と安全確保にかんがみまして、国庫補助事業の採択の増強等の対策について、国土交通省の見解を求めておきたいと思います。
岡本政府参考人 急傾斜地崩壊対策事業の採択基準につきましては、緊急性、重要性の観点から、例えば災害のあった箇所の緊急対策事業や、あるいは避難場所、それから老人福祉施設等の災害弱者関連施設を保全対象に含む箇所の対策事業につきましては緩和措置が行われてきたところでございます。特に、がけ崩れが発生した箇所につきましては、保全人家戸数が五戸未満でも、一定の要件を満たす場合のがけ崩れ防止工事につきましては、平成元年度から、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業として対応できることとしております。
 いずれにしましても、予算や整備状況等を勘案しつつ、こうした制度を活用するとともに、がけ崩れ災害から人命を守るために、ハード、ソフトをあわせた総合的な事業の推進に努めてまいりたいと思います。
黄川田分科員 国の財政、そして地方の財政、大変厳しいわけでありまして、その中で、計画的に順次やるということも厳しいところであります。危険なところにはもともと住宅をつくらないということが一番でありまして、お話のとおり、危険箇所への住宅の立地の抑制等のソフト対策といいますか、そういうものも重点的にやっていただきたいと思っております。
 それでは次には、山の関係が海に関係する、川上から川下へということでちょっとお話ししたいと思います。
 御案内のとおり、我が国の林業、安い外材の影響をこうむりまして、事業経営が非常に厳しくなってきております。そしてまた、国の新たな基本理念は、先ほどのお話のとおり、設定されましたけれども、具体がなかなか進まない。進まないといいますか、進めたくても、本当に農林水の中で林が一番厳しい状況にあると思う状況であります。
 岩手に限らず、日本の山はどこも荒れ放題であります。そしてまた、どうにか手入れをした後も、利用価値の低い間伐材やあるいはまた下枝等は、例えば産廃処分にもトン当たり一万六千円から七千円かかることもありまして、至るところに野積みされたまま放置されるということもあります。それらが今回の集中豪雨で、山間の川をせきとめ、橋を破損し、そして海岸に大量流出するなど二次的被害を及ぼし、災害の規模を大きくしているようにも思われます。
 もちろん、日本じゅう全国至るところ、間伐材が散らばっている、それが橋を全部ふさいだということではありませんが、今の林業政策からすると、このままではさらにそういうものが多くなるんではないかというおそれもありまして、話しているわけなんであります。
 そこで、浜のある市町村は、漁港あるいは海岸に大量に流木が流れてきて、この回収、処分に頭を痛めておるわけであります。我が県でも、一部申請しておるわけでありますけれども、このような災害復旧事業、海岸に打ち寄せられる流木等の復旧、回収事業にどのような仕組みがあるのでしょうか。私も国会議員一回生でありまして、経緯の中でそういうものも災害対象として、具体、国庫補助事業であるとか、いろいろな政策があると思いますので、その仕組みをお尋ねいたします。
 そしてまた、その制度の適用範囲ですね、補助事業でありますからある一定の基準があると思うんですが、その拡充等々、お聞きいたしたいと思います。
木下政府参考人 流木等によりまして被害を生じた場合の対策でございますけれども、一つが、漁港内での流木が堆積した場合の措置といたしまして、公共土木施設災害復旧事業の中で、そのような流木等を除去するような対象事業がございます。
 また一方で、海岸でございますけれども、災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業ということでございまして、この中で、同じように流木等の処理を実施しているという段階でございます。
 それぞれにつきまして、採択限度がございますけれども、私ども、これにつきましては、これまでの事業の中で十分対応できているというふうに思いますし、今回の岩手県に起きました、台風六号に起因いたします事業につきましても、先ほど申し上げました公共土木施設災害復旧事業の中で対応していきたいというふうに考えているところでございます。
黄川田分科員 それでは次に、河川の関係でさらにお聞きいたしたいと思います。
 最近では、国管理の一級河川は整備、改修が充実されてきておりますけれども、その上流の都道府県が管理する二級河川のはんらんが圧倒的に多く、そのための水害対策が求められているところであります。
 今回の台風六号による集中豪雨では、私の地元の北上川本流に関しては、一関遊水地全域一千四百五十ヘクタールが水没しまして、市街地への流入を食いとめ、宮城県の被害も食いとめたと思っておりますし、本来の調整機能を果たしたとも思っております。
 しかしながら、その支流の砂鉄川であるとか、そのまた支流の二級河川の猿沢川等の影響で、東山町を主体に大規模な浸水被害が発生いたしました。特に最近、温暖化なのでしょうか、時間当たりの雨量が多くなっているということ、そしてまた、七月に東北に台風が正面から襲うということはなかったわけでありますが、気候変動の影響だと思っております。
 そして、災害が、浸水被害が発生したわけでありますけれども、この浸水区域内における砂鉄川の延長は約六・一キロでありまして、このうち二・八キロ区間は県において広域一般河川改修を進めているところでありまして、来年度の完成が予定というところでありまして、今年度に完成しておれば被害もそれなりに多くはなかったのかという状況でもあります。
 そこで、この台風六号の洪水対策といたしまして、砂鉄川を初め猿沢川など、支川の早急な災害復旧及び未改修区間の河川整備を進めることが重要であると考えておりますけれども、これに関して国土交通省の見解を求めておきたいと思います。
岡本政府参考人 台風六号の対策といたしましては、河川、道路等の公共土木施設の災害復旧につきましては、被災箇所の復旧を可能な限り迅速かつ円滑に進めております。当該地域におきましても、各施設管理者から国庫負担が申請された段階で速やかに災害査定を実施しまして、早期復旧に努めてまいりたいと思います。
 また、砂鉄川につきましては、今回の出水を踏まえまして、再度災害防止のための対応策につきまして、現在、岩手県が国土交通省の東北地方整備局とも調整を図りながら鋭意検討を進めていると聞いております。対応策がまとまるのを受けまして、関係機関とも協議しながら、効果的な対策に取り組んでまいりたいと思います。
黄川田分科員 河川の管理でありますけれども、国あるいは都道府県、市町村ということで、ややもすると国と自治体の縦割り行政といいますか、そういうものがありますので、それを排しまして、要は流域住民にとって最も危険な箇所はどこか、そこを重点的に改修していくような、そういう仕組みづくりをお願いいたしたいと思います。
 それでは、災害から離れまして、視点を変えまして、私の地元の平泉の文化遺産のユネスコの世界遺産登録についてお尋ねいたしたいと思います。
 平泉の文化財については、一昨年、文化財保護審議会のもとに設置された世界遺産条約特別委員会におきまして、昨年四月に日本の世界遺産暫定リストに登載されました。この暫定リストに登載されたことを受けまして、構成資産の文化財保護法による指定や、あるいはまた条例によるバッファーゾーンの設定等、本登録のための推薦に向けて平泉町を中心に現在準備をしておるところであります。ここで一番大切なのは、住民の理解と協力と、そして町当局のやる気であると私は理解しております。
 そこで、歴史的背景を再確認しながら、そして国民の共有財産としての意識を持って、一日も早い世界遺産登録に向けて取り組んでいかなければならないと考えておりますので、文化庁の強い支援を期待いたしますとともに、今後の準備作業の留意点は一体どこにあるのか、主な点を伺いたいと思います。文化庁にお尋ねいたします。
木谷政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国の文化財が世界遺産に登録され、人類全体の遺産として価値づけられることは、大きな誇りであるとともに、我が国の歴史や文化に対する諸外国の理解増進や国民に対する文化財保護の普及啓発の観点からも極めて有意義なものと考えてございます。
 平泉の文化遺産につきましては、議員御指摘のとおり、我が国を代表する文化遺産の一つでございまして、平成十三年四月に日本の世界遺産暫定リストに記載をされてございます。これを具体的に世界遺産登録をいたしますためには、当該文化財が顕著な普遍的価値を有するとともに、国内において保護のための万全の措置が講じられるということが必要でございまして、文化庁といたしましては、こうした条件が整ったものから順次推薦を行うことにしてございます。
 現在、平泉の文化遺産につきましては、岩手県及び平泉町において世界遺産登録推薦に向けての準備を進めているところでございますが、具体的な準備のポイントといたしましては、中心となる資産の史跡の追加指定等のための準備、それから周辺の景観保護のためのバッファーゾーン、緩衝地帯の設定に係る条例の制定準備等がございます。そのためには、地元住民の理解、協力が不可欠でございます。文化庁としても、こうした条件整備に向けて積極的に支援をしてまいりたいと考えてございます。
黄川田分科員 お話がありましたが、町当局、そして町の議会の方も一生懸命汗をかいております。しかしながら、どういうふうな形でやれば日本全国隅々に訴えられるのかなということで悩みを持っておるようでありますので、個別具体の指導を重ねてお願いいたしたいと思います。
 それでは、最後になります、ガス供給の規制緩和と地方経済の活性化について伺いたいと思います。
 先般の石油公団改組にかかわる経済産業委員会におきまして、我が党の達増議員は、石油公団は独立法人化されるが、本質は何ら変わらず、単なる看板のかけかえにすぎないと主張するとともに、我が国の石油、ガス等にかかわるエネルギー戦略の積極的な展開の重要性、特に、中東偏重を和らげロシア等へシフトしていくことの重要性を示唆いたしました。
 御案内のとおり、我が国のガスの供給価格は欧米先進国に比較して二から三倍高いのが現実であります。釈迦に説法でありますけれども、その主な理由は、第一に、LNGは長期供給契約に基づきまして電力・ガス会社に安定的に供給されているものの、それらの大手企業が独占的に貯蔵、供給していること。第二に、我が国はガス供給パイプラインのネットワークが極めて未成熟であり、特に地方都市においては、LNG及びLPガスを小規模ネットワークで寡占状態で供給する特異な構成であること。第三に、大口需要家に対しては徐々に緩和されつつあるものの、自由な価格競争を促進するエネルギー政策の展開がおくれていること、及び供給、貯蔵にかかわる安全規制、設備規制等が厳しく、先進諸国に比べて設備投資コストが極めて割高であること等が挙げられると思っております。
 過般、私は運輸委員会で、エクソンを主とするサハリンから我が国へのガス供給のパイプライン問題に関しまして、海底パイプライン方式に比較しまして、ガス需要をにらみつつ、地上方式で北海道、あるいは東北、そして首都圏へと逐次展開することが安全上、環境上からもすぐれているのではないかと主張いたしました。また、自分が所属する総務委員会では、地上幹線から小規模で地域分散型の電熱併給、コジェネ方式等へ安価なガスを供給することによりまして地域経済の活性化を図れるのではないかと主張いたしました。
 そこで、質問でありますけれども、サハリンから天然ガスを我が国へパイプラインで供給する計画についてでありますけれども、サハリン・パイプラインのような幹線パイプラインは、地域経済活性化の観点からも重要な事業でありまして、広い視点で見れば、新しい公共投資ととらえるべきであると私は考えます。
 したがって、サハリン・パイプラインプロジェクトに関しては、地域開発の視点からも、国が積極的に関与し、地上方式の検討も含めて主導的役割を果たすべきと考えますが、いかがでしょうか。そしてまた、同プロジェクトの現状と実現の見通しはいかがでしょうか。あわせて資源エネルギー庁長官の見解を求めておきたいと思います。
河野政府参考人 今先生御指摘になりましたように、サハリンからの天然ガスの導入、エネルギー政策上も大変強い関心を持って見ているところでございます。
 おっしゃいましたように、近年、サハリンでは大規模な天然ガス田が発見されておりまして、二つのプロジェクトがございます。一つのプロジェクトは、LNGという形で日本に運ぼう、あるいは日本以外にも運ぼうということのようでございますが、一つのプロジェクトは、国際パイプラインによりまして天然ガスを日本に供給するということが検討されているわけでございます。これは、日本側の企業が調査会社をつくりまして、同時に、先生も御承知の、国際石油資本パートナーと共同調査という形で、今、フィージビリティースタディーが行われております。この結論もそう遠くない将来出るというふうに思っておりまして、その結論によってこの実現可能性がさらに前進するのではないかという期待を持って見ているところでございます。
 ただ、これが実現いたしますには、このFSの結果が大変重要でございまして、結局は、価格競争力という点でユーザーに十分納得をしてもらう、これが経済性判断として必要でございます。その提案をするに当たって、パイプラインのルートなどにつきましても、やはり基本的には経済性を考慮した民間企業が中心となって決定していくということになると思います。
 この共同調査の結果を待ち、また、政府といたしましても、これまでも関係企業からいろいろな意見を伺っておりますが、特に、例えばパイプラインの安全基準の設定などの環境整備に努力してほしいという要望もございますので、こうした環境整備については積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。
黄川田分科員 国土の均衡ある発展という言葉も死語になりましたし、そしてまた、経済成長がとまりまして、そして東北あるいは北海道への国土軸という言葉もどこかへ行ったような気がします。そして、国の財政、地方の財政、借金が七百七十七兆円ですか、昨年は六百六十六でしたか、百兆円もまたふえるという状況の中で、本当に北海道、東北が生き残れるかという気がいたしております。ですから、いろいろな大きなかかわりの中で地域活性化の中にどうにか取り組めないものかということでお話しさせていただきましたので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それから、せっかくですので、農林水産大臣、改めてまた要望を申し上げます。
 先ほどのバイオマスの関係なんでありますけれども、ペレットを岩手でもつくったり、いろいろのことをやっておるんですが、残材等を山の集積地からプラントを設置する里まで運ぶ運送費等といいますか、そういうものが多大でありまして、これが具体の事業化の支障になっているというようなところが大いにあるわけでありまして、その支援策も含めて、バイオマス・ニッポン、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。要望であります。
 時間でありますので、終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。
 次に、田端正広君。
田端分科員 大臣には、大変御苦労さまでございます。
 きょう、私は、カネミ油症の問題をちょっとお尋ねしたいと思います。
 昭和四十三年、大変な大きな事件として、PCBが原因という形でこのカネミ油症事件が起こりました。しかし、その後ずっと、いろいろな研究者等の研究により、カネミ油症事件は、主な原因はPCBじゃなくてPCDFというダイオキシンではないか、こういうことがずっと言われてきたわけでありますが、ポリ塩化ジベンゾフランという、ダイオキシン類の一つであるPCDFということで、その後ずっと、学者の間でもそういう主張に変わってきました。
 それで、昨年十二月に我が党の参議院議員の山下栄一、今環境副大臣ですが、参議院の決算委員会でこの問題を取り上げ、坂口厚生労働大臣から、私もそういうふうな文献等を調べた結果そう思う、こういう回答がありまして、ことしの三月、私が予算分科会で同じ問題を指摘して、きちっと厚生労働省の対応について尋ねたところ、これはダイオキシン類、PCDFであるということに基づいてもう一度対策を立て直すべきだ、こういう回答がありました。
 それで、厚生労働省の方では、油症診断基準を再評価するとか、油症治療指針を検討するとか、こういう動きに入っておりまして、例えば、患者の血中におけるPCDF濃度の測定も全国規模で、今、患者の皆さん、全国に散らばっておりますが、この対象を全国に拡大してきちっと調査しようとか、あるいは、婦人科の専門医による問診等が非常に大事なんですが、今までなかなか婦人科等の専門医がこのグループに入るということもなかったんですが、研究班の中にも入っていただき、また、そういう問診も行われる、こういう流れも出てきました。
 そしてまた、こういう油症患者が相談する窓口がないということなので、長崎県に二人、福岡県に一人、たしか今月からだと思いますが、油症相談員制度というものが取り入れられまして、これは看護師の資格を持っている方か何かだと思いますが、いつでも相談できる体制もできました。
 あるいは、油症研究班の中に疫学の専門家が二人追加されたり、厚生省としては大変抜本的な見直しに今踏み切りまして、PCDF、つまりダイオキシン類の大変な被害であった、そういう認定のもとに対策が進んでいるわけです。
 この問題について、農水大臣は、そういった流れが今大きく変わっているということについて御存じなんでしょうか。
武部国務大臣 カネミ油症の患者の皆様方が健康面、精神面で大変苦しんでおられることは、察するに余りあるものがあります。
 このカネミ油症は、当初、今委員御指摘のとおり、PCBが原因と考えられていたのでありますが、その後の厚生労働省の研究によりまして、ダイオキシン類も大きな原因であることが判明いたしまして、厚生労働省において、PCDF、ポリ塩化ジベンゾフラン等のダイオキシン類による健康影響に関する研究が進められているということは承知いたしております。
 救済対策の詳細な実態までは承知しておりませんが、厚生労働省において、油症相談窓口の開設や検診体制の充実、さらには研究予算の増額等、カネミ油症の被害者に対する救済対策の強化が図られているということも承知しているところでございまして、私どもも、患者の皆様方ができる限り早く元気を取り戻されるということを心から望んでいる次第でございまして、私自身も、この問題について十二分に注意を払って見守ってまいりたい、このように感じているところでございます。
田端分科員 大臣、大変御理解いただきましてありがとうございます。
 実は、私、ことしの二月に福岡へ、そしてその足で五島列島の玉之浦町へ行ってまいりました。つまり、ここは集中的に発生しているところなんですが、約五十人ぐらいの患者の方から直接面談して、聞き取り調査といいますか、そういったことをさせていただきましたが、何しろ三十四年も前のことでありますから、皆さん大変高齢化になっておりまして、もう定年退職とかそういう、多くの方はなっておりますし、また、三十年前と同じような健康被害状況がそのまま続いているわけでありまして、したがって、生活も大変、収入の道も閉ざされて厳しい、こういうのが実態でございます。
 一人一人、初めて私たちに口を開いてくださって、例えば頭痛がずっと治らないとかあるいは皮膚病とかあるいは肝臓とか腎臓等の障害とか等々、人によってさまざまな症状の違いはありますけれども、大変な御苦労をなさっている。しかも、そういう、田舎でありますから、やはりいろいろな意味で、差別の目で見られるとか就職とか結婚とかにも大変大きな影響をしている、こういうこともわかりました。
 その中で一番患者の皆さんが悩んでいるのが、実は、大臣のところに関係あるんですが、裁判において仮払金として支払った二十七億円、つまり、一人一人にとれば三百万円ぐらいの賠償金の仮払いなんですが、これが今返還しなければならない、こういう差し迫った状況にあるわけであります。
 この仮払金は、第一陣の福岡高裁の判決、五十九年三月、第三陣の福岡地裁、六十年の二月、つまりここで、PCBによるカネミ油症事件の前にダーク油によるブロイラーが大量に死亡するということがありまして、もしそこをきちっとフォローしていれば米ぬか油によって人体に被害というものを食いとめられたんではないか、こういうことであります。そういう意味では農水省の、油症被害を拡散防止できたにもかかわらず、それに対する責任というものが問われ、これらの裁判において、最初は、第一次では、仮執行の賠償金ということを、国の過失を認めたことによって、八百二十九人に二十七億円総額の賠償金の支払いということが命ぜられて、農水省からこれらの人に支払われた、こういうことであります。
 ところが、これがその後、高裁等、上告がずっと国の方からされまして、そして結局、昭和六十二年三月に原告と鐘淵化学工業との間で和解ということになり、これは最高裁の勧告によるわけでありますが、そういうことで原告が提訴を取り下げるわけであります。したがって、それに伴って、国の責任が、一たんは敗訴になっていたんですがなくなる、こういうことになります。そこで、一たん支払った仮払金を患者の皆さんが返済しなければならないという事態に陥るわけであります。
 まず、この問題について、先般私が三月にお尋ねしたときに、梅津畜産部長の方からこういう答弁がありました。「調停以後において、生活諸条件の変化などのやむを得ない事情により調停合意内容どおり履行できない特別な債務者につきましては、例えば再調停を早目に行うなど適切に対応してまいりたい」さらに「債権管理法上、履行延期後十年を経過した後において、無資力かつ弁済することができる見込みがないというような場合には、債権を免除できる旨の規定があります。その時点において、個々の方の状況に応じ、関係省庁とも協議の上、適切に対応してまいりたい」こういう非常に理解のある答弁をいただいたんですが、その後、この問題に対して農水省の方はどういう状況になっているのか、経過説明をお願いしたいと思います。
須賀田政府参考人 仮払金でございます。先生御指摘のように、平成八年から十一年にかけまして、債権者の事情を十分考慮しながら、国にとっては債務者となるんでしょうか、国との間で、例えば五年間履行を延期する等の返還方法の合意がなされておりまして、基本的にはこの合意に基づいて、債権債務関係でいえば返還を求めていくことになるんでありますけれども、一方におきまして、やはり調停以後、所得でございますとか健康状態でございますとか生活諸条件の変化のやむを得ない事情によって、五年間履行を延期するというその合意内容どおり履行できない特別な事情のある方に対しましては、その状況に応じた再調停を行う、これは前回畜産部長が答弁したとおりでございますけれども、農水省の担当官が直接相談に応じたり、現に先週、七月の十八、十九でございますけれども、長崎県の福江市で現地説明会を開催するということで、最大限の債務者への配慮を念頭に置きまして対応を開始しているという状況でございまして、今後、十四年度、十五年度、計画的に対応していきたいというふうに考えております。
田端分科員 大臣、ぜひちょっと、人間味豊かな武部大臣としてお気持ち広く受けとめていただきたい、こう思うわけでありますが、実は、この第一次訴訟を取り下げたのが昭和六十二年六月の二十七、二十八、それから第二次の取り下げが六十二年の十一月の六日等々に、農水省が原告に対して、裁判を取り下げたんだから返還する必要が生じましたよということを通知したというんですね、通知したと。ところが、先月二十八日に、私は被害者の方と一緒に農水省の実務者との交渉の場に同席いたしましたが、国のその債権管理法に基づく返還通知書というものが、そのときに患者のだれ一人として受け取っていないというのが患者側なんです。それで、いや、九州の農政局にその控えがあるんだとかというお話でしたが、いまだに御回答いただけないんですけれども、要するに私は、ここのところはちょっと、当局がきちっと患者に連絡したかどうかというのは非常に疑問を持っているところであります。
 それで、もし患者側が主張するように昭和六十三年十月ごろに通知書が届いたということであれば、これは国に対して訴訟を取り下げてから一年も放置してから連絡が来ているわけであります。そうしますと、これはやはり患者側にとれば、農水省に手落ちはなかったのか、こういう理屈になるわけでありまして、非常にそういった意味で、私は対応にちょっとまずい点があったんじゃないかな、こういうように思います。
 実は、それからその後の、つまり昭和六十二年のこの第一次、第二次の取り下げから十年間放置して、今も答弁ありました平成七年、八年、ここから個々の人に対しての調停手続に一人ずつ入っていくわけです。平成十一年九月にすべての対象者との調停が終わって一人一人の返還請求、こういうことになっているようでありますが、これは、平成九年にはもう時効になる話だった。時効になる直前に個々にお話ししていって、患者の皆さんに、あんたは幾らですよ、あんたは幾らですよ、返してくださいということで農水省がやっていった。
 こういうことになりますと、患者の皆さんからすれば、もう忘れている人もたくさんおりますし、そういった意味で、全くそういうことは寝耳に水みたいな形で請求が来た、こういうことであります。だから、もう本当に健康で働いて、どんどん、元気ならばいいんだけれども、もう体は悪い、年はとってくる、しかもいろいろなことで、もう本当に生活的にも大変な、苦渋に満ちた現状にある。しかし、いきなりぼんと三百万円返せ、こういうことになれば、戸惑うのは当然だと思います。
 だから、私は、そこのところをもう少し何とかならないのかと。これは政治的判断で、法律的にはもうこれは決着ついた事件かもわかりませんが、当時はPCBということで判断していた、しかし、今はPCDFが主犯であった、ダイオキシンであったということになってくれば、やはり、さらにもっとこれらの人々に対して国としての救済というものをしていかなきゃならないんじゃないか。
 そういう意味で、厚生省は治療の方で今動き出しましたが、仮払金の問題は農水省でございますので、ひとつ大臣の非常に懐の深い判断で何とかならないのか、こういう思いでありますが、どうでしょうか。
須賀田政府参考人 納入通知書の件について御答弁申し上げます。
 先般、二十八日でございましたか、先生も参加されまして、油症被害者代表者の方々と我々の事務方がお会いいたしました。そのとき、先生の方から、納入告知書と、それから昭和六十三年から平成八年までの毎年の督促状と、発出をしたその写しを、プライバシーに留意しながら見せてほしいということがございました。
 現在、非常に数多くに及びますので、九州農政局において納入告知書と督促状の確認作業というのを行っておるところでございます。先ほども申し上げましたように、開示に当たっては、個人のプライバシーに関する事項もございますので、慎重にその取り扱いを検討しておるところでございますけれども、できるだけ早く、プライバシーに影響のないような形で整理した上で提出申し上げたいというふうに考えているところでございます。
田端分科員 一生懸命やっていただくよう、それはそれでよろしくお願いしたいと思いますが、私の申し上げたいのは、やはり政治は結果責任。だから、武部大臣そのものは今責任はありませんが、しかし、農水省として、さっき申し上げたように、ブロイラーが、百七十万羽の鶏が変死するというそのときにチェックできていれば、一万何千人という油症患者が発生しなかったと思うんですね。
 しかも、認定患者だけになって、今いろいろなことになっていますけれども、しかし、今申し上げたように、これはもう本当にずっと、ダイオキシンというのは、一たん入ってしまうと、これはもうなかなか出ないわけでありまして、例えば、コーラベビー、黒い赤ちゃんということがあの当時問題になりました。それで、患者の一人の由香理さんという方ですが、この方は今三十四、五歳だと思いますが、当時お母さんのおなかの中にいて、黒い赤ちゃんで生まれた。ところが、この由香理さんが産んだ今度の赤ちゃんもまた黒い赤ちゃんというふうに、やはりダイオキシンの健康被害というのはずっと続いていくわけですね。それほど、体の中に一たん入ったダイオキシン類というのはなかなか取れない。だから、大変な健康被害、苦労をなさっているわけですから、ここはもう政治的な判断で何とかならないんだろうか。
 今晩、夜七時半からのNHKの「クローズアップ現代」でこの問題を取り上げて、三十四年目の証言とかというので、未曾有のダイオキシン被害ということで特集されるそうなんですが、ぜひ大臣にも見ていただきたいと思いますけれども、そういうことでもあるわけでありまして、ここは、法律的にいけばああだこうだということになり、書類を出したか出していないか、通知したかしていないか、いろいろなことはあると思います。しかし、結論として、この人たちがずっと三十数年間苦しんでいることの、この現実というのはぬぐえないわけですから、ぜひこの人たちの気持ち、また生活というものをお考えいただいて、そこをもう少し、何かいい知恵が出ないかどうか。これはもう大臣のお心に決まってくるので、ぜひ、そういう温情味ある御決断をお願いできないか、こんな思いでございますが、いかがでしょうか。
武部国務大臣 私も、このカネミ油症の問題を過去にさかのぼって少し調べてみたところでございますが、患者の皆様方の健康面、精神面、生活面における苦しみというものは、言葉にはなかなか言いあらわすことのできない、まことに痛ましいことだ、このように考えております。
 私としては、スケジュールさえ許せば、直接お会いしてその実態や心情等についてもお聞きしてみたい、このように今考えているわけでございまして、仮払金の返還は、国の債権確保という問題ではありますけれども、患者の皆様方の生活事情等に十分配慮していくということはこれまた政治として重要である、このように考えておりまして、委員のただいまの言葉を重く受けとめてまいりたい、このように考えます。
田端分科員 大変ありがとうございます。
 先月でしたか、坂口厚生労働大臣と患者代表の方と初めて会いました。患者の方も大変喜ばれて、今までなかったことだということで、そして、今また大臣の方からは、一度直接お会いしたい、こういうお話をいただきました。恐らく、もう本当に患者の皆さんは喜ばれることと思いますので、ぜひ一度会っていただいて、直接に現状、実情を聞いていただいて、その上でまたいろいろと御配慮をお願いしたい、心からそう思うわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 あと、全然話は変わりますが、京都議定書の発効ということがこれから大きなテーマになっていくと思いますが、この問題で、森林に対する整備というものが大変大きな問題だと思います。
 それで、実は、今のままでいくと森林吸収分の三・九%はとても達成できない、今の現状でいくと二・九ぐらいしかいかない、一%足らないと言われておりますが、その一%積み上げるためには、一兆数千億のお金、手間暇かけないとできないだろう、こう言われています。
 そういう意味でも、十年後、第一約束期間終了に向けてこの森林吸収分をどう達成していくかということは大変なことだと思いますが、農水省と環境省との間で、今、地球環境保全のための森林保全整備に関する協議会あるいは有識者による懇談会、こういうものが設置されているというふうに伺っております。環境省とタイアップして、京都議定書の達成に向けてぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 それで、大臣、先般総理にも、ヨハネスブルク・サミットに総理絶対行ってくださいと言ったときに、日本がどういうメッセージを発するかが大変大事です、こういうことを申し上げました。
 今、官邸の方では、森林対策といいますか整備に関すること、あるいはまた国際協力の中でそういったことをできないかとかいったことも含めて、総理のメッセージの一つの要素としてこういうことを御発言になるやに伺っておりますが、そういったことも踏まえて、ぜひこの問題についての大臣の御決意をお伺いしたい、こういうふうに思います。
武部国務大臣 森林・林業基本法に基づきまして、複層林化や広葉樹の導入など、適切な森林の整備を推進する森林・林業基本計画を策定したところでございますが、森林吸収源目標三・九%の達成については、この計画を着実に推進するという必要性があるわけでございます。このために、関係府省との連携を図りつつ、健全な森林の整備、保全や、木材利用の推進等を強力に進めてまいりたいという考えでございます。
 森林整備の推進に当たりましては、コスト縮減等による事業の効率化を図るとともに、地域住民、NPO等多様な主体の参加による国民的な取り組みが極めて大事だ、私はこう思っておりまして、特に、環境省との間におきまして、今委員御指摘のように、副大臣レベルにおきます地球環境保全のための森林保全整備に関する協議会や、有識者による地球環境保全と森林に関する懇談会において議論を重ねてきたところでありまして、今後とも連携の強化に努めてまいりたい、このように思います。
 また、我が国は、持続可能な森林経営の推進に向けて積極的に国際協力を進めているところでございますが、ヨハネスブルク・サミットに向けまして、違法伐採対策あるいは森林火災対策や、荒廃地の復旧のための植林の推進等の取り組みを中心といたしますアジア森林パートナーシップの形成をインドネシア政府とともに進めているところでございます。
 このヨハネスブルク・サミットには、我が農林水産省といたしましては遠藤副大臣が出席するということを今検討しておりまして、今委員御指摘のとおり、環境省とも連携し、関係府省と連携し、これは政府全体の責任としてしっかりやっていく必要がある、国際貢献を一層進めていくということについても真剣に取り組んでいく必要がある、かように考えている次第でございます。
田端分科員 この京都議定書の中には、クリーン開発メカニズム、CDMというのがありまして、大臣も御承知のとおり、マレーシア、インドネシア、ケニア、モンゴル等々の植林事業を、ぜひこれはまた推進していただきたいと思いますし、それからまた、先進国間における植林事業としての共同実施、JIというのもございますが、これで、例えばオーストラリアとかロシアとか、こういったところともできるだけ目標達成に向けての御努力をお願いしたい、こういうように思います。
 それで、実は、和歌山県、岩手県、岐阜県、三重県、高知県の知事の連名で、地球温暖化防止に貢献する森林県連合というのがございまして、ここで今いろいろと具体的なことを実施されているようでありますが、例えば和歌山県では、緑の雇用事業ということで、森林作業員の新たな雇用創出を県外から募集したところ、百二十五名、平均年齢三十八・七歳、十三府県から集まった、こういうことでありまして、私は、こういったことも雇用創出の一環としてもぜひ考えていただいて、緑の雇用事業ということで、森林の保全事業と同時に並行してやっていくことも大事ではないかな、こんな思いもしておりますが、最後に大臣の御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
武部国務大臣 森林整備は、おっしゃるとおり、直接雇用効果が高く、環境保全等の観点からも重要でございます。
 昨日も厚生労働大臣と、もっと長期的な雇用につながるようなそういう事業にできないかというようなことをお話し合いさせていただいたわけでございますが、緑の雇用を積極的に推進する和歌山県等からも、本格的な雇用に結びつける制度の創設等についての提案もございます。
 農林水産省として今日まで、研修の実施等を通じて、森林整備事業を担う人材の確保、育成に努力しているつもりでございますが、そういった努力をさらに高めていくということと同時に、森林整備事業そのものをやはり拡大していく。この三・九%の吸収源に見合うような事業実施を進めていくということが極めて大事でありまして、これは政府全体としての取り組みが必要でございますし、与党からも強力な御支援もいただいておりますので、今後ともよろしくお願いをいたしたいと思います。
田端分科員 どうもありがとうございました。終わります。
山名主査 これにて田端正広君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田正彦君。
山田(正)分科員 自由党の山田正彦です。BSEの基本計画について、なかなか農水委員会で機会がありませんで分科会まで追っかけてまいりました。申しわけありません。
 早速ですが、実は死亡牛の検査体制、この死亡牛の検査なんですが、これは法律では平成十五年四月一日から実施するということになっています。
 基本計画を見てみますと、平成十五年四月一日から、二十四カ月齢以上の死亡牛全般についてはBSE検査を行うとなっていますが、「特別措置法第六条第二項のただし書に該当する場合であっても、平成十六年三月三十一日まで」というふうに、いわば法文の引用だけに終わっています。
 ところが、条文では、「地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合」となっているわけですが、これは私ども、BSE法案をつくる際に、いわゆる死亡牛検査について、離島とかそういう地理的条件で難しいといった場合の例外的な場合には平成十六年でもしようがない、そういう趣旨だったと思うんですが、どうも基本計画を見ていると後退しているような気を受けるんですが、それはいかがですか。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
武部国務大臣 BSE対策特措法については、山田先生を初め与野党の諸先生の連携的な協力によりまして成立いたしましたことに、まず冒頭、敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 この特措法第六条の二項のただし書きについてでありますが、私ども、地理的条件等から、平成十五年四月一日からの検査が困難な場合も想定される。したがって、例外について農林水産省令で規定をいたしまして、具体的には、畜舎の火災等により死体が損壊、焼失するなど、検査が実施できない場合、第二に、離島であること等地理的条件により検査が困難な場合、第三に、年間の牛の死亡頭数が多いこと等により、これに対応した検査の実施、死体処理の体制の整備に時間がかかるため猶予が必要な場合、こういったことが考えられるわけでございます。
 なお、例外とされた地域におきましても、委員御指摘のとおり、平成十六年四月からは検査が実施できる体制を整備するよう、BSE対策基本計画にて明記する予定であります。
 今後とも、都道府県と連携を図りまして、二十四カ月齢以上の死亡牛の全頭検査の導入の早期達成に向けて努力してまいりたいと思います。
山田(正)分科員 大臣の答弁だとそういう、決して後退しているわけじゃなく、厳しく、十五年の四月一日には原則実施できるということのようで安心いたしましたが、さっき、その三番目の例外、いわゆる死亡頭数が多くて不可能な場合と、ちょこっと言ったような気がするんですが、そういった場合です。
 例えば北海道の場合、へい死牛が四万頭を超えるんではないかと言われておりますが、農水委員会で北海道へ行ったら、そういう処理施設に四十億ぐらいかかる、そういうふうに聞いております。
 そうしますと、その資金なんですが、先般BSE基本計画について畜産部長とお話ししたとき、畜産部長から、いわゆる死亡牛の施設をつくるについての国の助成は二分の一で、あとは自治体が負担しなければいけない、そういう話がありましたが、これだと、私どもの長崎県ですと離島を抱えておりますし、自治体としては大変な状況なんです。
 二分の一しか国が助成しないということは、今回BSEはまさに国の責任でもってというか、調査報告にも重大な失政によってと報告されておりますが、そういう意味からしても、それでは今回の法の趣旨にもとるのではないか。大臣、どうお考えでしょうか。
武部国務大臣 死亡牛検査及び処理体制の整備につきましては、死体を一時保管するための冷蔵施設、家保の焼却施設の整備等への支援、レンダリングにおけるライン分離、焼却施設の整備等への支援をすることとしているわけでありますが、死亡牛の検査に係る費用については、BSEのエライザ検査キットの購入費等、家畜伝染病予防法に基づいて国は応分の負担をするということに相なっているわけでございまして、現在、効率的な検査体制、処理体制について検討、調整を行っているわけであります。
 各都道府県の整備に要する費用については今調査中でありますが、いずれにいたしましても、国としてもできる限りの支援をしてまいりたい。また、地元負担分についても、交付税措置等、総務省、総務大臣にも私から既にこうした状況についてお話をさせていただいているわけでございまして、できる限りの支援は行ってまいりたいというのが私どもの考えでございます。
山田(正)分科員 先般、畜産部長は二分の一しか出せないような話をしておりましたが、大臣としては、二分の一の助成ではなく、国が全額出すおつもりか。
武部国務大臣 これは家伝法等に基づいて、地方と国がそれぞれ応分の負担をするということに相なっております。しかし、北海道の例を出されましたけれども、これも少し精査する必要もあろうかと思いますが、多額な整備費がかかるということでありますので、このことについて、地方財政も大変なときでありますし、地元負担分について、国としても、総務省等にも話をして、交付税措置等もできるだけの支援がなされるように事情をお話ししていこうということでございます。
山田(正)分科員 北海道だけで四十億、北海道が死亡牛数の半分を占めているといいますが、全国、施設をつくるとしても、それからすれば百億ちょっとぐらいじゃないかと考えられますが、それくらいの金額で早く整備するとすれば、ぜひ国の助成をやれないものか。あるいは、予算措置が難しいとなれば、大臣、畜産事業団からの畜産振興のための助成の一環としてできないものかどうか。
武部国務大臣 ただいま申し上げましたようなことで、国として最大限支援をしてまいりたいと思っておりますが、今委員御指摘の畜産振興事業団の指定対象事業というのは、民間において運営され拡充強化されるべき畜産振興のための事業を助成するという基本的な考え方で行われているわけでございますので、地方公共団体に対して直接助成することはできないという考えでございます。
 死亡牛処理関連施設の整備関係の支援に当たりましては、都道府県の施設整備は一般会計支出によりまして行われるのでありますし、化製処理やストックポイント整備等、民間団体が行うべきものは農畜産事業団の指定助成対象事業で助成を行っているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
山田(正)分科員 畜産事業団の業務の範囲等を調べてみて、法律で見ても、畜産事業団法の二十八条の三号、「その他の畜産の振興に資するための事業で農林水産省令で定めるもの」ということであれば、当然――ともかくBSEの死亡牛検査は大臣御承知のとおり一刻も急がなきゃいけない。そうであって、国の予算がなかなか難しい。ところが、各自治体は、整備するに当たって、やりたいけれども、厳しい地方自治体の中では、離島にしても北海道にしても実際にそれだけの余裕がありません。
 国が二分の一しか出せません、予算もこれ以上緊縮財政の中で出せませんとなったら、結局、畜産事業団のこういう事業資金をいわゆる自治体のために、今回、施設整備のために出すということは、法律上は十分でき得ることではないのか。大臣の省令、いわゆる大臣の判断で十分でき得る範囲内ではないのか。大臣、いかがですか。
武部国務大臣 法律にできないというふうには確かに書いていないと思いますね。しかし……(山田(正)分科員「大臣の所存で幾らでもできる」と呼ぶ)私の所存、こういうことでありますので、私は、地方自治体に対して交付税措置等、今般のBSE対策も特別交付税措置で相当な対応をしたわけでございます。そういったこと等で対応するというのが、今私が考えている原則的な考え方でございます。
山田(正)分科員 大臣、副大臣もおられるので、この点は、いわゆる畜産部長のお話だと二分の一しか出せないとかなり強く言っていましたが、これはあくまでやはり政治家が責任を持って、大臣が、副大臣が責任を持って、一刻も早く基本計画の実施に当たっていただかなきゃならない、そう考えますので、ぜひこの面では対応を早目に、そしてきちんとお願いしたい、そう思います。
 それで、先ほど大臣、副大臣にお配りしたと思うんですが、BSEに係る農家所得の推移なんです。私から説明します。
 実は、これ、長崎県の東彼杵郡の肥育農家のBSEマル緊に係る農家所得の表なんですが、これの一枚目を見ていただきたいんですが、平成十四年三月、この中に印をしてあると思います。これは黒の和牛なんですが、一頭平均価格が四十一万六百七十二円。その右の方を見ていただきたいんですが、BSE特別マル緊ですね、BSEの特マル、この奨励金が十六万九千七百円、これだけ出ているんですね。次の月、平成十四年四月なんですが、牛の価格が上がりました、一頭平均四十八万五千三百九十一円になりました。ところが、BSE特マル緊が、前の月は十六万九千七百、十七万出たのが、実は三万一千八百円しか出なかったんです。
 次のページを見てください。次のページ。平成十四年四月ですが、前年同期の販売額、一頭当たり平均です。これが、三月が六十七万二千六百五円、平成十四年四月は六十八万三千八百九十五円でした。
 その次のページを見てください。次のページに、いわゆる平成十三年度の販売金額、前年同期販売金額、それから前年との差というのを書いてあります。BSEマル緊の補助金というのも書いてあります。この表にまとめてみました。これで見ればわかりますとおり、前年から、肥育農家の一頭当たりの手取りですが、大体、平成十四年三月にマイナス二十六万、四月にマイナス十九万、五月にマイナス十三万、六月にマイナス十五万、こういう数字になります。
 実際にBSE特マルの補助金が出ているのが、平成十四年の三月までは十七万近く出たけれども、それ以後は、三万か四万、五万なんです。ということは、農家にとってみれば、価格は上がったとされるものの、実際の手取り、いわゆるBSEマル緊で家族労働費から物財費まで含めて全額補償しますよ、そういったものはかなりの開きが出てきているという実情があるわけです。
 これについて、大臣、事情を知っておられたかどうか、どこまで考えておられたかどうか、その辺まずお聞きしたいと思います。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
武部国務大臣 十三年度は随分高かったという感じを私は持っておりました。したがいまして、委員御指摘のように、今値段は回復し、上がってはいるけれども、対前年と比較すると相当低いじゃないかという御指摘は当たっていると思います。
 しかし、この事業は、平成十三年度の全国生産費調査と導入当時の素畜費をもとに算出した物財費から、当該月の食肉流通統計の全食肉卸売市場の平均枝肉価格に基づく粗収益を差し引くことによりまして、全国一律の補てん金単価を決定しているわけでございます。
 四月以降、肉専用種の補てん金単価が減少したのは、今申し上げましたように、牛肉需要の回復によって肉専用種の枝肉価格が上昇したことによりまして、粗収益が上昇し、物財費との差額が減少したためでございまして、コストについても枝肉価格についても、全国の総平均のコストや価格をもとに算定することによりまして、平均以下の経営をされている農家の方々には、より低コスト化や肉質の向上を目指して経営努力をしていただきたいという趣旨であることも御理解いただきたいと思います。
山田(正)分科員 大臣、今実際の数字を見られればわかりますとおり、平成十四年の三月から四月にかけて、価格は上がったといってもそれほど牛の価格は上がっているわけじゃないのに、いわゆるBSEマル緊が十七万だったのが三万にまで下がった。それで農家はどう言っているかというと、米価と同じように、これは政治加算なんじゃないのかと。いわゆる政治的な形で、もう畜産事業団のお金も底をついてきたんで、価格が上がったのを幸いにして、これ以上出さないように、そういうふうな計算をしているんじゃないかという声がかなりあるということなんです。
 実際、私も気になりましたので、担当者を呼んで一緒に計算もしてみました。確かに、加重平均でやっているので計算においては私は間違いないとは思ったんですが、ただ、そのもとになる素畜費を固定しているのと、体重を固定しているのと、本来ならばA5とかA4とかA3の規格ごとにきちんと計算すべきであるのに、全体の加重平均で出している。そういったところで誤差が出てきている。いわゆるいい人にはいいけれども、中間で大型肥育をやっている農家にとっては、一頭当たり十万からの開き、損が出てきている。
 こういう実態があるわけなんで、大臣、これについて何らかの是正を緊急にこのBSEマル緊制度についてとられる用意はないかどうか。例えば計算の方法をいろいろな形で、やり方はいろいろあるんじゃないか。いかがですか。
武部国務大臣 ただいま申し上げましたように、いろいろ背景があると思いますね。えさ代でありますとかコストの面、それから品質等の価格の面。したがいまして、ただいま申し上げましたように、本事業は全額国が負担していることを踏まえまして、全国生産費調査をもとに全国の食肉卸売市場の枝肉価格を用いまして、事業開始から同じルールで全国一律に実施しているわけでございます。
 等級別の算定とした場合に、一般に、創意工夫をして高い評価を受けた者は少ない額しかもらえないこと、逆に、粗放的に飼養して低い評価を受けた者が多くの補てんをされることから、逆に不公平感が生じる懸念もございますので、私は現行の方式がやむを得ない、このように考えております。
山田(正)分科員 ちょっとこれ以上時間もなくなってきましたので、ぜひ、でも公平に、せっかくの国からの助成ですから、やらなきゃいけないという点では御配慮をぜひするべきだ、そう考えます。配慮していただかなきゃならない、そう思います。
 実は、昨年十月にBSEマル緊の特別融資、いわゆる一頭当たり十万、一年間無利息、無担保、無保証の融資をなされました。それが、一年後に返済ということになっていて、もうことしの十月に返済の時期が来るわけなんですが、なかなか今返せるような状況ではない、先ほどの話のように。そういった場合にどうしたらいいのか。農家は大変困っているわけですが、それについて、借りかえとかあるいは支払いの延期とかそういった方法をとられると思いますが、大臣、それについてお答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 十三年十月に、当面の営農に必要な運転資金を融通する大家畜経営維持資金を措置したところでございますが、十四年度においては、大家畜経営維持資金の借りかえも可能な、新たな運転資金として、償還期限二年のBSE対応畜産経営安定資金を措置いたしました。と同時に、大家畜経営維持資金の二年という償還期限延長を行うことを可能とする措置も講じたところでありまして、借りかえを行う場合、償還期限の延長を行う場合においては、いわゆる二割要件というものは課していないわけでございます。
 委員からの借りかえの問題等については、十二分に対応ができる、そのようにさせていただきたい、このように思います。
山田(正)分科員 BSE対応畜産経営安定資金の貸し付けについてのペーパーがここにあるわけですが、この中に、直近三カ月間の販売額と助成金の合計額が、原則として前年同期間の販売額と比較しておおむね二割以上減少した大家畜経営の場合にとありますが、これは今まで、例えば平成十三年度、昨年度に借りた畜産農家、それについてはその適用がないんだ、適用がないと。(武部国務大臣「はい」と呼ぶ)
 今まで借りた農家は、例えばことしの十月に払わなきゃいけない分を払わなくても、十五年度と十六年度二回にわたって均等に払えばいいし、あるいは十六年度にまとめて払ってもいい、そういう考えでいいのかどうか、それを確認いただきたい。
武部国務大臣 まとめて払えばいいという、危なく先生にひっかかりそうになりましたけれども、十五、十六で払っていただくということは、それで結構だと思います。
山田(正)分科員 十五、十六で均等に払わなきゃいけないということで、例えば、十六年度にまとめて払うというわけにはいかないということ。それでいいんですか。
武部国務大臣 そのとおりです。
山田(正)分科員 それで、大臣、先ほどの話のように、肥育農家にとっては実質、BSE特マルでもって補償されたとはいいながら、なかなか厳しい状況にあって、恐らく十五年度、十六年度に至って払えなくなるんじゃないか。払えない、均等に。払えなくなった場合は、もう倒産するしかない。
 それとも、そういった払えなくなった場合にそれなりの対応策があるのかどうか、大臣、お聞きしたい。
武部国務大臣 払えるように努力いただくということが、第一に大事だと思います。しかし、経営の安定のための諸対策を総合的に活用することによりまして経営の安定が図られるように、私どももそのような指導、助言、支援を考えたい、こう思っておりますが、約定償還が困難となった場合、これは畜産特別資金等によりまして借りかえが可能であります。約定償還日に債務不履行が生じた場合には、融資機関の督促の後、農業信用基金協会から融資機関に対し代位弁済が行われるわけでありまして、この場合、当該農家は、農業信用基金協会に対し返済義務を負うこととなるわけでございます。
 BSEの影響を受けた畜産農家の経営の安定のためには、引き続きいろいろ努力していきたい、このように思います。
山田(正)分科員 大臣、十五年度、十六年度になっても均等の元本返済ができなくなった農家、その農家に対しては、いわゆる借りかえ基金、大家畜経営改善支援資金特別融資助成事業というんですか、この中で、償還を十五年、据え置き三年、貸付利息が一・五%、これに借りかえられる、そう考えてよろしいかどうか。
武部国務大臣 そのとおりでございます。
山田(正)分科員 そうすると、この融資を受けるには、いわゆる信用基金協会の保証が必要である。私自身も畜産をやっていて何度も体験したことがあるんですが、基金協会、なかなか保証してくれない。そういった大変な難問がある。
 それで、保証してくれないとなったら、もう倒産するしかないのかどうか。一体、そうなったら、遅延損害金一四・五%を払わなきゃいけないのかどうか、農家としては。どうなるんだろうか。大臣、お答えいただきたい。
武部国務大臣 仮に約定償還が困難となった場合に、経営収支の改善の見通しがある限り、畜産特別資金、今委員お話しされました大家畜経営改善支援資金、償還期限十五年、うち据置期間三年以内等により、借りかえを行うことが可能という次第でございますし、一般的に申し上げれば、約定償還日に債務不履行となった場合には、融資機関から当該農家に対し、元金及び約定利息のほか、遅延損害金を合わせた額の督促が行われることとなるわけでございます。
 さらに、三カ月以上経過しても返済されない場合には、農業信用基金協会から融資機関に対して保証債務の弁済が行われることになるわけでありまして、この場合、当該農家は、農業信用基金協会に対して返済義務を負うということになるわけでございます。
山田(正)分科員 大臣、そういう債権取り立ての話は私だって、だれでもよく承知している話で、私が聞いているのは、保証協会も保証してくれない、いわゆる借りかえ、三年据え置きの十五年償還、一・五%の金利の融資が得られないようなこと。そういうことにならないように、今回、BSEの問題というのはまさに国の責任なんですから、国が、大臣が責任を持ってひとつ督励、各信用基金協会に、今回のBSEの緊急融資についての借りかえについては優位に取り扱うように指示できないものかどうか。
 私の質問はこれで終わります。お答えいただきたいと思います。
山名主査 簡潔にお願いします。
武部国務大臣 そういうことにならないようにいろいろ指導、助言、支援を惜しまないつもりでありますが、また、生産者の方もさらに努力をいただきたい、このように期待をしているわけでございます。
 いずれにいたしましても、BSEの発生により深刻な影響を受けておられる畜産農家の経営安定を図るためには、その時点時点で柔軟かつ機動的な対応を心がけてまいりたい、このように考えております。
山田(正)分科員 終わります。
山名主査 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、小沢和秋君。
小沢(和)分科員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 本日は、諫早湾干拓事業についてお尋ねをいたします。
 農水省は昨年十二月、第三者委員会から開門調査の必要性と、短期、中期、長期の調査について見解が示された直後、調査と事業は切り離して考えるとして、工事を強引に推し進める意思を明らかにし、実際にも、沿岸漁民の反対の声を無視して工事の再開を強行いたしました。去る七月十五日には、予定していた場所をひそかに変更するというこそくな手段まで使って、内部堤防準備工事の入札を強行いたしました。
 我が党は、調査を行いながら工事を並行して行えば、調査によってわかることも限られてくるし、何よりも、その調査によって後になって干拓事業を否定するような結論が出た場合に取り返しがつかなくなると憂慮してこの工事の再開に反対してまいりました。大臣はこのままのやり方を続けてよいとお考えでしょうか。
武部国務大臣 諫早湾の干拓事業につきましては、平成十一年三月の潮受け堤防完成後、台風や洪水時だけでなく、常時の排水不良に対しても防災効果が調整池周辺で着実に発揮されまして、地域の住民から非常に感謝されているところでございます。また、地元自治体の農業関係者を初めとする地域住民の方々は、概成した土地の早期利用を強く要望しているところでございます。
 このような中、第三者委員会の意見等を踏まえまして、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守等の観点に立って総合的な検討を行いまして、前面堤防の位置を変更し、干拓面積を約半分に大幅に縮小する見直しを行ったわけでございます。
 また、四月十五日には、私と長崎県知事、有明海の三県漁連会長、有明海の三県の知事等との会談において、短期間の開門調査を実施し、平成十八年度に事業を完了させるとの私どもの方針に対して御理解をいただいておりまして、新たな事業計画に沿って平成十八年度中に完了するよう事業の推進を図っているところでございます。
小沢(和)分科員 農水省は、農業だけでなく水産業についても責任を負っております。宝の海と言われた有明海が今瀕死の状態になっている、これを再生する責任があります。今季のノリは幸い漁民の努力と気象条件がよかったために一応できましたが、魚介類の生産量は昨年よりさらに落ち込み、一万七千トン台と最悪の状況にあります。この一年で有明海がさらに深刻な状況になったことは大臣も否定できないと思うんですが、どうお考えでしょうか。
武部国務大臣 有明海の漁獲量は、平成元年から四年のオゴノリの異常発生による漁獲量の増加を除けば、昭和六十年以降減少傾向にあることは事実でございます。最近の漁獲量は、平成十二年には二万一千トン、平成十三年には速報値で一万八千トンとなっておりまして、引き続き減少傾向となっていることは承知しております。
 この減少について漁獲別に見てみますと、平成十三年の漁獲量は、平成十二年と比較いたしまして、魚類は九二%、貝類は七三%となっているわけでございます。この貝類の減少原因については、有明海のノリ不作の対策等に関する中間取りまとめによれば、底質の泥化、貧酸素水塊などの底層環境の変化等が資源の減少に関与していると考えられるわけでありますが、いまだその原因を特定するには至っていない、このようにされているわけでございます。
小沢(和)分科員 今の大臣の答弁でも、さらに漁獲量が減少しているということ、そして原因も確定できていないということを言われました。
 ノリ第三者委員会は、こういう有明海の環境悪化の原因として、諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動及び負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると推定されるとし、その原因究明のために短期、中期、長期の開門調査を行うこと、その開門はできるだけ長く大きいことが望ましい、できるだけ毎日の水位変動を大きくし、できる干潟を大きくすることが望ましいという見解を示したわけであります。
 これまで政府は、この第三者委員会の意見を尊重すると繰り返し明言してまいりました。ところが、最近になって農水省は、中長期開門調査を行うかどうかは、第三者委員会とは別に新たに設ける場での議論を経て判断するなどとして、にわかに態度をあいまいにしております。大臣、これは事実上、中長期調査はもうやらない、有明海の環境悪化の原因究明は放棄するということではありませんか。
武部国務大臣 工事開始前及び水門の閉め切り後を通じて魚類、貝類ともに全体的に減少傾向が続いているということは先ほど申し上げましたとおりでございますが、有明海のノリ不作の対策等に関する中間取りまとめによれば、主要な漁獲物である二枚貝の減少原因については、底質の泥化、貧酸素水塊などの底層環境の変化等が資源の減少に関与していると考えられると、先ほど申し上げましたとおり、このようにされているわけでございます。諫早湾干拓事業が原因であるとは特定されていない、このように承知しているわけでございます。
 また、開門調査につきましては、ノリ不作等第三者委員会において科学的な検討を行っていただいた結果として諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解が示されまして、その取り扱いについては、委員長発言にありますように、行政に総合的な判断をゆだねられたところでございます。
 農林水産省といたしましては、ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえまして、有明海の再生に向けた総合的な調査の一環として短期の開門調査を含む開門総合調査を行っているところでありまして、これにより諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握することとしているわけでございます。
 また、中長期の開門調査について御指摘ございましたが、これは現在進められております有明海を再生するための新法制定の動き、短期の開門調査で得られた成果や影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点を踏まえまして総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経まして、農林水産省において判断するということにしているわけでございます。
小沢(和)分科員 いや、長々とあなた答弁をするけれども、私の質問に答えていないと思うんですよ。まだどんどん有明海の環境悪化が進み、かつての漁獲量のわずか一三%しかとれない状態になっている。こういうときに、常識的に考えれば、その原因調査をこの機会に徹底して行い、結果を見きわめるまでは一番の環境悪化の原因と疑われている干拓工事は中止しておくのが当然ではないかと言っているんです。大臣はその常識どおりのことを行おうとするのかしないのか。どうですか。
武部国務大臣 何度も同じことを申し上げるように聞こえると思いますが、ノリ不作等第三者委員会におきましては、科学的な検討を行っていただいた結果として見解が示されまして、その取り扱いについては行政に総合的な判断をゆだねられたということでございます。
 ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえまして開門総合調査を行っているところでございまして、諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握しなければならない、かように考えているわけでございます。
 中長期の開門調査については、総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農林水産省において判断をするということでございます。
 四月十五日に、短期の開門調査の実施と、平成十八年度に事業を完了させるとの私どもの方針については、三県漁連会長を含め関係者間で理解をいただいているわけでございまして、双方が合意したということは非常に重いことだ、このように私は認識しておりまして、有明海再生に向けて新たなる第一歩を踏み出したという認識に立って対処してまいりたい、かように存じているわけでございます。
小沢(和)分科員 どういうふうに開門調査をやるかは判断を任せられたので今その調査をやっているというふうに言われたんですけれども、実際にはわずか一カ月、それも、二十センチの幅と言っているけれども実際には十数センチの幅で、ほんのわずか海水を入れただけで、関係者は何にもこんなことではわからないじゃないかというふうに言っている。もうそれで早々とやめようとしているのではないかということをさっきから私は問題にしているわけです。
 それで、次の質問に参りたいと思いますけれども、私は今国会の予算委員会で、全国でもむだと環境破壊の典型として強い批判を受けながら、しかも農水省自身が、今回の事業縮小で、仮に干拓地に計画どおり農家が入植しても四百三十億円もの投資のむだになることを認めながらこの事業をあくまで強行する理由に政官業の癒着があることを指摘いたしました。
 まず、その癒着の第一は、ゼネコンなどからの政界への政治献金であります。諫早湾干拓の工事を受注したゼネコンなどが、自民党本部はもちろん、二〇〇〇年までの六年間に自民党長崎県連に二億五千五百万円、久間章生、松岡利勝、古賀誠などの地元有力議員に同じ六年間に約千二百万円の献金を行っております。
 そのときの予算委員会で、私は、潮受け堤防工事を受注したゼネコンに三十人を超える農水省旧構造改善局及び地方農政局の技官が天下っている事実を指摘しましたが、天下りはこれだけにとどまりません。さらにさまざまなコンサルタント企業などへの天下りがあります。これが政官業の第二の癒着だと思います。
 この機会に改めて、農水省が把握しているゼネコン、コンサルタントなどへの天下りの人数はどれぐらいか、お尋ねをいたします。
太田政府参考人 農林水産省退職者の動向についてでございますが、既に民間人となっておりますことから、農水省としてトータルを把握している状況にはございません。
 なお、農水省退職者の民間企業への再就職につきましては、国家公務員法第百三条等に基づいて承認を行ってきておりまして、保存されております文書に基づき確認いたしましたところ、諫早湾干拓事業の潮受け堤防に係る工事及び設計を受注しておる民間企業には、農水省の退職時におきまして二十一名が再就職しているという状況にございます。
小沢(和)分科員 人事院にそういう手続をしているのはごく一部でしょう。
 私、資料をお配りしておりますが、表の一は、諫早湾干拓事業の工事以外の業務を請け負っているコンサルタントなどに一九九六年から現在まで農水省の技官がどれだけ天下りしているかを私の秘書がまとめたものであります。わかっているだけで百七十六人いる。ゼネコンに天下っているのは、局長経験者など大幹部だった人たちが多いんですが、コンサルタントに天下っているのは、現場の第一線で実務を担当してきた中堅幹部だった人たちであります。
 そのコンサルタント会社が、設計監理や積算工事の計画から施工まで密接にかかわる業務を請け負い、建設工事をいろいろな面から支えている。こういう体制で着工から既に十六年工事を推進してきたから今さら絶対にやめられないということじゃないんですか。
太田政府参考人 工事の契約関係につきましては、あるいはその設計等の契約関係につきましては、会計法令等に基づいて厳正に行われてきておりまして、議員御指摘のような事実はないというふうに承知しております。
小沢(和)分科員 政官業の癒着によって、二千四百九十億円に上る諫早湾干拓事業がいかにゼネコンなどの間で見事に配分され、全部が潤う仕組みになっているかを次に指摘したいと思います。
 表の二と三をごらんいただきたいと思います。農水省から提出された契約調書をもとに、私の秘書が、諫早湾干拓事業を構成する工事と業務千三百十七件の契約状況をまとめたものであります。全体の件数で見ますと、何と一般競争契約はわずかに九件、〇・七%、指名競争契約は五百七十件、四三・三%。驚くのは、随意契約が七百三十八件、五六・〇%もあることであります。
 私の理解では、国の事業は、広く一般競争入札を行い、一番安く落札したところが契約するのが原則であり、技術、資本力などの制約でやむを得ないときには指名競争入札が認められる。随意契約というのは、一件当たりの金額がごく小さかったり、内容が競争に適さないときにのみ例外として認められるものだと思います。
 この随意契約の多さは、だれが見ても異常ではありませんか。これで公平な契約が行われたと言えるのか、公正取引委員会の見解を伺いたい。
鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 発注に当たりましてどのような入札あるいは契約方法を選択いたしますかは、一義的には発注者が会計法令等の原則に基づき判断すべき事項でございます。したがいまして、発注者がそれぞれの性質、目的などを判断して随意契約として特定の者と契約すべきものと取り扱っている個別具体的な案件の状況について、その取り扱いの適否それ自体を独占禁止法の観点から評価することはいたしかねるところでございます。
 なお、一般論としては、公共工事における競争性確保の観点から、一般原則たる一般競争入札の拡大が望ましいことは申し得るところでございます。
小沢(和)分科員 表の三は、特に干拓工事の中心である潮受け堤防と、その関連工事の契約の状況をまとめたものであります。
 これについてはさきの予算委員会でも私は取り上げたんですが、潮受け堤防を大きく九工区に分割発注し、二つの工区を除いては最初の契約だけ指名入札を行い、後は工事が完成するまで毎年のように随意契約を重ねております。見逃せないのは、随意契約による契約変更を繰り返し、契約金額が約五十六億二千九百万円も増額している点であります。内部堤防の契約形態も同じです。
 私の方からの問い合わせに対し、工事が一体不可分だからとか、サンド・コンパクション・パイル工法とかグラブしゅんせつ工法という特殊な工法を行える業者がほかにいなかったとか説明しておりますが、そんなことは何の言いわけにもなりません。その程度の工事ができる業者はたくさんおります。私が得た資料では、国土交通省の工事では、毎年競争契約を繰り返しているため施工業者がその都度変わっておりますが、工事が円滑に進まなかったという事例はありません。
 この諫早の工事のように、最初の入札のときだけ安く落札して工事を受注してしまえば、後は随意契約で幾らでも工事費を高くできる、農水省のこのような契約のあり方について、会計検査院はどうお考えでしょうか。
重松会計検査院当局者 お答えいたします。
 委員御指摘の、当初、一般競争あるいは指名競争で入札させて受注者を決定した後に、その後の工事を随意契約で当初の受注者に発注するという契約形態、これはこの事業だけではございませんで、例えば農水省でのダム工事などでも見受けられるところでありますけれども、このような場合、私ども会計検査院といたしましては、こうした契約方式をとる場合、当初の入札手続が適正に行われているかどうか、それから随意契約を行う理由あるいは根拠というものが適正であるかどうか、それから、随意契約の予定価格が適切に算定されているかといったような点について検査を行うこととしております。こういった随意契約は会計法第二十九条の三等の規定に基づき行われていると承知しておるところでございます。
 また、これまでの検査において特に問題となる点は報告されておりませんけれども、今後の検査に当たりましては、委員御指摘の趣旨も十分念頭に置きまして検査をしてまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)分科員 公共事業というのは、国土交通省が一番、それで、私は農水省がそれに次いでやっているのではないかというふうに考えておりますが、その国土交通省でさえ、毎年、同じ、継続していく工事についてもちゃんと競争契約をやっているのに、農水省はやらない、これは異常じゃないかと私は言っているんです。今の答弁では全く納得がいきません。
 時間もありませんからその先に行きたいんですが、さらに、潮受け堤防工事一件ごとの落札金額の予定価格に対する割合、落札率に着目してみますと、驚くべき結果が出ております。表三の中ほどに落札率を書いておりますが、これだけをグラフにまとめたものをその五ページほど後ろにつけておりますので、これをごらんいただきたいんですが、八十二件の工事のうち、九九%以上の落札率を示すものが何と五十二件、六三%を占め、最高で九九・九%、平均で九九・三%もの値を示しております。
 内部堤防の落札率を見ると、これも最高で九九・七%、平均で九八・七%もの高い落札率であります。
 随意契約ならばほぼ予定価格どおりということもあるかと思い、指名競争契約の分だけ拾ってみても、ほとんどが九九・五%以上であります。一般競争契約だと少し下がるが、それでも最低は九六・五%であります。
 異常に高い落札率は、潮受け堤防や内部堤防だけでなく、農水省がこの干拓事業で予定価格もしくは委託限度額を示した千二百六十九件の工事や業務全体を見ても言えることであります。それを示しているのが次のグラフですが、一〇〇%が百十九件、九・四%。九九%以上が二百四十件、一八・九%。九八%以上が二百七十八件、二一・九%。九七%以上が百九十件、一五・〇%。九六%以上が百六十四件、一二・九%。要するに、九六%以上が実に八割を占めているんです。
 こんなことは、入札が公正に行われていたら絶対にあり得ないことであります。談合が日常的にあらゆる工事で行われていたと断ぜざるを得ません。公正取引委員会はどう考えるか。最近の最高裁判決でも、談合の調査には時効がないとの判断が示されております。談合の事実について、この際徹底して調査すべきではありませんか。
鈴木政府参考人 ただいま個別具体的な事案についてのお尋ねでありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
 なお、一般論として申し上げますれば、独占禁止法に違反する入札談合と言えるためには、事業者の間で競争制限の方策につきまして意思の連絡が行われていることが必要でございまして、その関係にまでは至らず、御指摘のように、落札率が高いという外形的事実のみでは、独占禁止法に違反するという直接的な判断はなお困難なものでございます。
小沢(和)分科員 個別具体的とあなた言うけれども、私が示したのは、千二百件以上を集計したらこういう結果が出ておるというんですよ。これでも個別具体的なんですか。一般論としても、これだけ数が集まったら、だれが考えても談合をやっているとしか思えないでしょう。
 さらに、もう一言指摘しておきたいんですが、今、全国でかなりの自治体が談合の排除に取り組んでおります。小泉首相のおひざ元である神奈川県横須賀市では、資格さえあれば希望する企業すべてに入札を認めております。そして、現場説明会をやめ、だれが入札するかお互いにわからない仕組みに変えたら、平均落札率が九五・七%から八五・七%に一〇%も下がっているんです。
 日本じゅうの公共事業をこの方式にしたら、何兆円もの節約ができるんじゃないですか。公取にはこういう制度改革の取り組みをしてほしいというのが国民の期待だと思うんです。時間がありませんから、もう質問はしません。
 そこで、もう一言言いたいのは、私は、諫早湾干拓の工事については今でも談合が続いていると確信いたします。
 今でもというのは、七月十五日に実施した内部堤防準備工事の入札も全く同じ状況だからであります。ここにその結果をまとめたものを持っておりますが、これを見ると、準備工工事その一は、入札したのは十一社で、落札したのは清水建設ですが、落札率は九八・三%、その二は、九社が入札し、落札したのは熊谷組ですが、落札率はこれも全く同じ九八・三%であります。
 だれが見ても、これも談合の産物ではありませんか。この入札経過を直ちに調査し、それまでこの入札の効力を停止すべきだと思うが、大臣はどうお考えになりますか。
武部国務大臣 地方農政局における工事の発注は、会計法令等に基づきまして、一般競争入札、公募型指名競争入札の導入等によって透明性や競争性の確保を図っているところでございます。
 御指摘の前面堤防準備工事の入札につきましては、九州農政局におきまして、会計法令等に基づく所定の入札契約手続により適正に行われているものと考えます。
 また、地方農政局の発注する工事の入札契約については、第三者から構成される入札監視委員会に指名業者の選定結果等の妥当性を審議いただき、その議事の概要も平成十三年度より公表するなど、透明性、客観性の確保を図っている、かように承知している次第でございます。
小沢(和)分科員 今のような答弁で、二回の競争入札が九八・三%という落札率を示したのはなぜかということについて、だれも納得しないということを私はもう一度申し上げておきたいと思うんです。
 それで、時間が来たようですから、これでおしまいにしたいと思うんですが、今では事業への国民の支持も大きく失われている。このことは、最近の長崎県の県民の世論調査でも、消極論、反対論が半数以上の五六・八%に上っている、このことからも明らかだと思います。漁民の反対行動も日増しに激しくなっているし、先ほど大臣は、三県漁連は合意したというようなことを言っているけれども、最近、三県漁連は改めて工事再開の反対を意思表明しておる。谷津前農水大臣も、減反の時代に干拓なんて必要ない、私の答えはノーなんだと発言している。
山名主査 簡潔に願います。
小沢(和)分科員 大臣、今こそこういう状況を謙虚に考え、これ以上事業のごり押しをやめるべきではないか。少なくとも中長期開門調査を行い、その結果が出るまで工事の再開を中止することを重ねて要求するが、どうか。
 以上で質問を終わります。
山名主査 これにて……(小沢(和)分科員「答弁。質問もしているんですから」と呼ぶ)
 では、もう時間ですので、本当に簡潔に一言。
武部国務大臣 御意見として承っておきます。
小沢(和)分科員 終わります。
山名主査 これにて小沢和秋君の質疑は終了いたしました。
 午後一時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
山名主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について質疑を続行いたします。山内惠子君。
山内(惠)分科員 社民党の山内惠子です。どうぞよろしくお願いいたします。
 武部大臣、私も北海道出身です。大臣に、きょうは北海道の問題を中心に質問をしたいというふうに思っています。
 一つ、農薬空中散布と健康被害について質問させていただきたいと思います。
 農薬の空中散布は広範囲に一度に農薬を空から散布するため、周辺の住民が健康被害を訴えている例が相当あるというふうに私も聞いています。有人ヘリコプター、無人ヘリコプターについて、周辺住民の健康被害調査をしたことがあるかどうかについてお聞かせいただきたいと思います。
武部国務大臣 農薬の空中散布につきましては、従来から、周辺住民への健康被害を生じないよう、毎年策定しております農林水産航空事業実施ガイドラインに従いまして、安全対策を措置するよう指導しているところでございます。
 農薬の空中散布が原因であるとして、周辺住民が健康被害を理由にその中止を申し入れた例があるということは聞いておりますが、平成九年に環境庁の検討会が、空中散布による健康への影響を評価する際の目安として定めました大気中の農薬濃度、いわゆる気中濃度評価値を超えている事例は見られないという報告でございます。
 このような状況から、農林水産省としては、これまでに周辺住民の健康被害調査を行っていないということでございます。
 今後とも、空中散布による気中濃度測定データの蓄積に努めまして、評価値を超える事例があった場合には、ガイドラインの見直しや健康被害調査の実施について検討する必要がある、このように考えております。
山内(惠)分科員 今のお話ですと、大気中の濃度が基準を超えたことがないというふうに把握していらっしゃるそうなんですね。
 それで、今現在はそうだとおっしゃっているんですけれども、では、健康被害が発生した場合、どのような対処、指導をしようとなさっているのかとお聞きするしかないですね。現在していると押さえていらっしゃらないんでしょうか。
武部国務大臣 周辺住民の健康被害が生じることのないように、十四年度の農林水産航空事業実施ガイドラインにおきましても、都道府県段階では、都道府県の農林水産部局のみならず、河川関係を含む環境部局や水道関係を含む衛生部局等の関係部局の関係者を構成員といたしました対策協議会を置いております。また、実施地区においては、その地区に係る生産関係者、自治体、教育委員会、保健所、水道等の関係者を構成員とした地区対策協議会を置いております。安全かつ適切な農薬散布の実施を図るための計画検討や危害防止対策の徹底を図ること等を、こうしたところを設置しまして指導しているところでございます。
 また、万一の事故に備えてということでございますが、あらかじめ保健所、病院等の医療機関と十分な連絡をとるとともに、緊急時に直ちに対応できるような体制の整備を図ることも指導している所存でございます。
 安全、安心を農政上の最優先の課題としておりまして、引き続き、農薬の空中散布においても安全の確保に万全を期するようにということを強く私から指示している次第でございます。
山内(惠)分科員 そういう健康被害が発症しないように努力をしているということで今の御回答だったと思いますが、私の地元旭川に、化学物質過敏症の発症で苦しんでいる方が何人もいらっしゃいます。
 私も、今回の土曜日、旭川に帰りました折に、最近なおまだ苦しいという方に、三人ほどお目にかかって、実態を聞いてきました。今でこそ、三年間、四年間くらい三人とも苦しんでいらして、少しこのところ落ちつきを取り戻していて、外にも出られるようになりましたとおっしゃっているんですけれども、どういうことでそのようになったかというと、当初は農薬で目がちらつき、ろれつが回らなくなる、また、うつの症状が出てきた、呼吸困難、頭痛、食欲不振、背中の痛み、関節・筋肉痛、ひどいときには吐き気、腹痛、下痢も起こる、そして、もっとひどかったときには気を失って立つこともできなかったと聞いています。
 これは多くの皆さんが言っているんですけれども、化学物質の影響で目がちらついたり何かするということはたびたび起こっていても、このような状況になる、例えば、病名でいえば化学物質過敏症と名づけてもらう状況に自分があるということを自覚するまでの間は微々たるものであったかもわからないんですが、コップに水を入れて、入れている間は入るんだけれども、あふれるときというのがあるんですね、それが気を失った症状のときだったというふうに私は聞いています。一度農薬臭を吸い込むと数時間から数日続くというふうに、この三人の方、皆さんおっしゃっていました。
 彼女たちは今どうしているかというと、情報をだれよりも早く入手し、そして友人にも知らせ、こういう悩んでいる方たちと共通理解をして連絡をとり合って、農薬をまく日にはもう絶対家から遠ざかると言っています。
 実は、このような健康被害ということがもう既に起こっているんですけれども、なかなか病院はこの症状をつけてくれないという状況もあるんですね。なぜつけてくれないかというと、もしかしたら裁判で引っ張り出されてお医者さんも忙しくなるということを想定されるのではないかというふうに勝手に私も思います。今、こちらの方の北里病院では、実情によっては化学物質過敏症とカルテを書いて対策なさっている方がいるんですけれども、このような健康被害に遭って、わざわざ旭川から北里病院まで飛行機代をかけて行って、まさにあなたはそうだと証明された方がいます。
 そういう状況にあるんですけれども、救済措置はどのようになさろうと思っていらっしゃいますか、なさいますか。
坂野政府参考人 御説明いたします。
 先ほど先生のおっしゃいました化学物質の過敏症のことですが、実はいろいろな、先ほど大臣の説明しました気中濃度評価値、それについても、どう反映するかという議論があることは十分承知をしているわけでございます。
 それで、環境省の方で平成十二年に、これはいわゆる化学物質過敏症のことなんですけれども、正式には本態性多種化学物質過敏状態と言うんだそうでございますけれども、そこの調査研究の報告書がございまして、その中で、現時点ではその病態生理と発症機序、メカニズムですか、まだ仮説の段階にあり確証に乏しいというような指摘がありまして、さらに調査研究が必要だというふうな報告書も出ておりまして、こういう問題につきましては、現在までの、科学的には十分と言えないので、気中濃度評価値というんですか、それには反映するのはなかなか困難であるというような状況にございます。
 それからもう一つ、御指摘のありました、しからばそういう補償はどうするかということがございます。これは一般に農薬の事故等の補償でございますけれども、これにつきましては、その状態といいますか、例えば散布者が過ってやったとか、いろいろなケースが、そのケースごとに違いますので、いろいろな事故につきましては、当然、因果関係も前提でございますけれども、事故の実態に応じて対応すべき問題というふうに考えております。
山内(惠)分科員 実態に応じてなさるということであるけれども、メカニズムが解明されていないので、なかなかそのことが対応できないというのが何年も続いているわけです。ですから、もう本当に、苦しいときには窓から飛び出したくなるような症状にもなられているわけですから、そのことについて具体的に、まいたときにぐあいが悪くなる症状もあるわけですから、そこのところはもう少し丁寧な対応をしていただきたいというふうに思うんです。
 少なくとも、救済のことはさておきまして、旭川には忠別川という川、川はたくさんあるんですけれども、この忠別川を挟んで、上川管内の東神楽町というようなところでまくときに、川を挟んでこちらは旭川市なんですね。そうすると、東神楽町で配るチラシも旭川の方には全然手に入らないんだそうです。手に入らないというのは、まいていないんだそうです。
 今の、それなりの規則があるからですけれども、これは東神楽町でまかれたものです。今年度の航空防除散布マップといって、日にちも書かれているし、大変危険なものだ、本当に大変危険なものなんですね。これは東神楽町の方でまいているものですけれども、川を挟んだこちらというのは、二百メートルもあるから大丈夫という発想らしいんですけれども、この地域でまいたもの、有人ヘリコプターそれから無人ヘリコプターが飛ぶわけですから、ここに書いているのは、そういう最中に立ちどまって見学をされている方を見受けるけれども、大変危険なのでそういうことをしないでくれ、ヘリ本体のそばに絶対近づかないでほしいというような注意事項は書かれています。
 でも、こういう状況のときに、隣の町の者たち、それから、私は当日飛行機で旭川に帰ったんですが、これは二十日土曜日ですから、私の地元に帰った日のことなんですけれども、私は一度もその状況を知らないで帰ってくるわけですね。そうすると、本当に近い通りを通ってくるわけです。そうしますと、情報は手に入っていない。でも、私はこのたびはファクスで送っていただいていましたから、どんな状況かと見ましたら、何と同じ地域の中で窓をあけているところがいっぱいあるんです。やはりこの情報をいただいていないからですね。
 そして、二百メートル離れているこの私の知っている方のところにはまかれてこなかったけれども、友人同士の連帯でこれを入手して、自分は、私は前日このことをちょっとお聞きしたかったけれども、携帯は連絡できましたけれども、この今過敏症になっている方は自宅にはもういません、逃げています。
 実は、どういう防御を今までしたかというと、最初のときは、窓を閉めて家から一歩も出ない努力をしたけれども、におってくるんですよね。そうしますと、防毒マスクのようなマスクをして、手足も外に出ないようにいろいろ工夫をしている。でも、近所のところから入ってくるわけですね。そういうわけで、彼女はもう、まくことがわかったらその時間から家に入らないと言っているんです。
 今回の有人ヘリは、朝四時ころから九時半ぐらいには終わっていました。私はお昼ころ飛行機で着きましたから、有人ヘリコプターを見ることはできませんでしたけれども、無人ヘリコプターは、やはり朝早くからするそうですけれども、夕方まで飛ぶんだそうです。しかも、それは前後三日ぐらい飛ぶということですから、土日なら自分のおうちに子供と一緒にいられない状況であり、学校に行くようなウイークデーであれば、子供たちはその通りでないところを通ってしか行けない状況があるんだけれども、旭川市内に住んでいる人にこのチラシが手に入っていないということをどう思われますか。
坂野政府参考人 農水省としましては、農林水産航空事業の実施のガイドラインとか無人ヘリコプターの利用の指導指針におきまして、航空防除の実施区域それから周辺の住民、学校、病院などの公共施設に対して、いつやるかといった予定の日時、区域、そういったものの広報を徹底する、変更があった場合は当然その旨も連絡する、それから地域の住民の皆さんに周知するとともに、通学路だとか通勤路だとか、そういうところに誘導員とか監視員を配置するということを指導しておるところでございます。
 今後とも、危害防止のために、広報についての指導をより徹底していきたいというふうに考えております。
 また、その地域をどこまでやるかということでございますけれども、従来から、例えば先ほどのですと、農協が多分実施したのだと思いますけれども、農協の管轄以外であっても隣接地域には広報をするように指導しておりますけれども、よりその指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
山内(惠)分科員 隣町でも広報をこの後徹底していくというお答えでございますね。とすれば、近隣のところをぜひやっていただきたいと思います。
 実は、旭川市とその間にある忠別川は、水道の水をも取水しているというところなんです。そのことを考えると、では旭川市は知っていたかというと、水道局にはお知らせするのを原則としていますが、ある時点のときに、まくことを知らなかった。では、知らなかったらどうするかと聞いたら、活性炭をふやすだの何だのとおっしゃっているんですけれども、飲み水に農薬が降りかかっている状況を知らせてもいないという状況もありますので、ぜひそこのところは厳しくやっていただきたいと思います。
 実は、旭川で二つ目の問題です。
 永山地区の問題なんですけれども、空中散布用として未登録の農薬二種類、有機燐系の麦用の殺虫剤のシルバキュアとストロビーを無人ヘリコプターで散布したという事件がありました。新聞報道されていまして、質問取りに来られた方にもこの新聞記事をお上げしてありますので御存じと思いますけれども、農水省の無人ヘリコプターの利用技術指導指針の第七、散布の方法ということで考えれば、これに反することをやってしまったわけです。
 指針によると、実施主体の方は、農薬を散布する場合には、無人ヘリコプター散布用として登録を受けたものを、使用上の注意事項を遵守して使用しなければならないとすると書いてあるにもかかわらず、散布されたものは登録のない農薬だったわけです。しかも、ここで有機燐系の殺虫剤と書いてあるんですけれども、有機燐系の殺虫剤というのは、実は戦時中、毒ガスとして採用されたものとほとんど違わないという怖いものだそうですので、このことは本当に大変な問題だったと思います。
 しかも、これはまいてしまった後にこの情報をいろいろ調べたわけですから、中止することができなかったわけです。実施主体であるあさひかわ農協が指針に反することをやったわけですし、またもう一つ、空中散布用として未登録であったものを無人ヘリコプターがまいてしまったことについては、農薬取締法との関係でも問題だというふうに思うんですけれども、この事態についてどう思われますか。
坂野政府参考人 無人ヘリコプターによる空中散布に当たりましては、無人ヘリコプターの利用指針によりまして、使用者に対しまして、無人ヘリコプターに登録のある農薬を使用するというような指導はしております。
 今回、御指摘の北海道新聞の報道でございますけれども、直ちに北海道に事実関係を確認するというのはしました。今後このような事態が発生しないよう農薬の使用方法の遵守の徹底を、より徹底するように指導したところでございます。
 北海道としましては、今回の私どもの指導を受けまして、道内各支庁に対して、農薬の使用方法の遵守を一層徹底を図るというような通知をしたという報告を受けたところでございます。
 それで、では使った農薬についての麦はどうするかという点でございます。
 今回、小麦に使用された農薬は、新聞報道でもございますシルバキュアフロアブルとストロビーフロアブルという二剤でございます。この農薬の毒性は有機燐ということで、かなり、毒ガスのお話もありましたけれども、この薬剤自体はいわゆる普通物、毒物劇物取締法で言う普通物に該当するものでございます。いずれの農薬も地上で、これは小麦の赤カビ病に使うんですけれども、いずれも小麦の赤カビ病、地上で散布するという登録はございます。しかし、無人ヘリコプターでまくという登録はないという事実がございます。
 実際にその農薬の散布量を調べたところ、実際の地上防除と同程度の散布量というふうなことでありますから、その当該農薬の作物に残留問題が起きるのかということについては、ないのではないかと考えております。
 しかしながら、問題となった小麦につきましては、念のため、当該農薬の残留分析を行い、それぞれの農薬については食品衛生法の作物残留基準が定まっております。そういうものに照らしまして、その安全性を確認するということを指導したいと考えております。
山内(惠)分科員 徹底していただきたいと思います。手まきの場合は千倍から二千倍に薄めて使うものを、無人ヘリでやる場合は、この新聞にあるように、八倍から十倍という物すごく濃度の濃い状況でまかれているわけですから、そこのところは責任を持って調査していただきたいことと、通知された文書は後でお見せいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それで、いろいろお聞きしたいことはまだあるんですが、あさひかわ農協はこのような農薬を散布するということを地元、永山地区の皆さんにはお知らせしなかったそうです。そのこともぜひ今後対策をしていただきたいと思いますが、少なくとも農水省は、今は道に対してそういう指導をしたとおっしゃいましたけれども、こういう状況が全国にある心配もありますので、他の都道府県にも周知する必要があると思いますが、ぜひそのことについて、時間がありませんので、後でまとめて、されるか、されたかのお返事をいただきたいと思います。
 今回もう一つぜひ徹底的に皆さんの方向をお聞かせいただきたいのが、先ほど申しましたように、有人ヘリの場合は、時間規制も、上昇気流がどうだとかいうことで評価基準というのがあるそうなんですけれども、無人ヘリにもそれは適用されるのかということを、二つ目に、後でお答えください。急ぎます。
 それで、今回この質問をする前に、昨年の十月の三十一日ですか、農水委員会で大臣がお答えになった中で、有機農業をやっている方に対する心配を大変おっしゃられて、その後それなりの前進がされているというふうに思います。やはりそういうお答えをいただいた後は、皆さん真剣に対応を考えてくださったと思います。
 きょうはさらに、その有機農業に対する心配の件プラス、住民の健康それから財産、有機農家に対する権利の、今回と同じように問題があるわけですから、無人ヘリについてもこのことを規制強化をしていくかどうかについて、していくということで本当は私お答えいただきたいと思います。格段の改善が必要だと思います。
 でき上がった野菜その他、お米がどんな害があるかを検査されるそうですけれども、その食べるもっと以前に、この濃い濃度の農薬で被害を受けている者が実際にいるわけですから、無人ヘリコプターなら無制限に、無制限というのはちょっと、それなりの注意事項があるようですけれども、法律できちっと禁止しているわけではなくて、行政のガイドライン的なものでしかないということが問題だと思いますので、ここのところを、現在ある有人ヘリコプターに対するそれなりの制約は無人ヘリにも該当するかどうかとあわせて、健康に関して規制強化していこうと思っていらっしゃるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
坂野政府参考人 まず第一点目に、御指摘の、北海道のみならず全国に、有人なり、無人ヘリコプターでも周辺地域での周知をさせるという話でございます。
 これは、ガイドラインなどは、今先生御指摘のような有機農産物等も新たに追加したところでございまして、毎年見直しをして、毎年やっておりますので、これらの趣旨の徹底は毎年全国に行っております。
 それから二点目の、多分評価値ということだと思うんですけれども、先ほどの、大気中の評価値は有人ヘリコプターのみならず無人のヘリコプターにも適用されるかということでございます。
 これは、評価値といいますのは、平成九年に環境庁の航空防除農薬環境影響評価検討会、その中で定められている気中濃度評価値でございます。
 この気中濃度評価値は、航空防除農薬による人への健康を保護する観点から、農薬散布後の気中濃度の評価を行う目安として、人体に吸収される農薬の毒性に着目して設定されたものであります。したがって、無人ヘリコプターでの気中濃度の評価にも適用できるものというふうに考えております。
 それから三点目に、無人ヘリコプターについて制限というか安全対策はどうなっているか、こういうことでございます。
 無人ヘリコプターを用いた農薬散布につきましては、平成三年以来、利用の指導指針を定めておりまして、また実際の実施者に対する手引書もつくっております。有人ヘリコプター同様に安全対策をやっております。
 例えば、風が強いときというのは、農薬は流れやすいものですから、無人ヘリコプターの場合、地上一・五メートルの高さが三メートル以下の場合に限って実施しなさいとか、それから……(山内(惠)分科員「その辺の情報は、適用するということで結構です」と呼ぶ)適用するということでございます。
 それからまた、農協等が行う場合は、周辺に、いつやるか等は、内容を周知徹底を図るということにしております。
山内(惠)分科員 健康に関してのことは大臣に後でお聞かせいただきたいと思います。今後、対策を強化しようと思っていらっしゃるかどうかは、後でお聞かせください。
 それで、いろいろお聞きしたいことがあるんですけれども、時間が限られていますので、空中散布、飛散状況の調査をしているかどうかを前日お聞きしましたところ、資料をいただきましたが、何と、農地にまこうと思っているところが、境界線のところから、有人ヘリコプターはゼロから百メートルの間の調査をしている、それから無人ヘリコプターの場合はゼロから五十メートルの間で調査をしているという調査結果をいただきました。
 でも、これでは、被害に遭っている、もう病気を発症している方にとっては全然救いようがない距離です。その意味では、二百メートル離れて、川を挟んでいる方にも被害が及んでいますので、この調査はやはりもう少し丁寧な距離を調査していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それで、次の質問に入ります。
 有人ヘリによる空中散布の場合、空中散布の実施計画を作成するというふうに聞いていますが、都道府県においても、市町村の段階においても、関係者による協議会を設置しているというふうに私は聞いていますが、この協議会に被害を受ける側の住民の代表や有機農業の代表が入っていないんですけれども、ここにはぜひ入れていただきたいと思いますが、そのことについて、済みません、もう一つ質問がありますので、短くお答えいただきたいと思います。それは大臣にお答えいただけるんだったら、大臣に。
坂野政府参考人 協議会には、県段階でやるもの、実施レベルのものもあります。この実施レベルのものは、かなり周辺の地域の代表者の方も入っています。
 それからまた、先ほどから議論されています有機農業の方、その場合はいろいろな地域による形がありまして、その方が入るケースもあるし、また別個、そういう方と打ち合わせをしながらやっていくというふうなケースが、かなり地域ごとの実態にも即して、できるだけいろいろな方とお話し合いをして、こういう問題はそれぞれ納得できないとまずいものですから、よくお話し合いをするように指導しております。
山内(惠)分科員 せっかく規制を強化しようというふうな方向でこの間進んできているわけですから、やはり被害に遭っている人の代表、住民の代表はぜひ入れていただきたいというふうに思いますし、有機農法で私たちの願う野菜その他をつくっている方の声というのも大事ですから、今言われたように、いろいろな方法があるということまではわかりましたが、ぜひその方たちの声を受けとめるような方向で、もっと強化していただきたいと思います。
 最後のところで大臣にもう少し丁寧にお聞きしたいんですが、農薬を散布するということの状況によって、メカニズムが明らかになっていないと言われていますけれども、御本人たちはすべて、まかれている状況のときに具合が悪くなってきているんです、御本人は。
 そのことを考えたときに、この憲法上からも、健康に住む権利のある憲法上からも、住民の健康、財産、例えば、車を置いておいたら、それに農薬がかかったときの問題で、シートをくれるという地域があるんです。でも、それは、まいている地域でシートをくれるということですけれども、隣の町であればもらえないという状況ですね。だから、財産も被害に遭っているわけです。
 被害に遭っている状況があるのに対応されていない、対応できる法律が十分ないという状況について、この健康被害について今後規制を強化していこうと考えられるかどうかについて、ぜひ前向きなお答えをいただきたいと思います。
武部国務大臣 周辺住民への危害、健康被害が生じることのないように、農林水産航空事業実施ガイドラインを周知徹底させるということも大事でありますし、空中散布を実施する場合の安全対策についても、引き続き万全の措置を講じてまいらなければならない、このように思っております。
 また、現行のガイドラインの内容につきましても、やはり念には念を入れてガイドラインの再点検ということもする必要があるのではないか、このように思います。
 それから、万一空中散布による健康被害の問題が生じた場合、これは個々の事例によって、状況を踏まえて対応することが必要だと思いますが、今委員御指摘のとおり、BSEの問題もそうでございますけれども、人の命や健康にかかわる問題、食の安全と安心にかかわる問題というものについては、やはりその危害、リスクに対してどういうふうに立ち向かっていくかということについては、情報が大前提であるわけです。
 その情報が伝わっていくということと同時に、当事者、関係者、そういった方々の意見や実情を把握するということが私は非常に大事なことだ、こう思っておりまして、そういった情報の問題あるいはリスクコミュニケーションの問題、そういったことについて幅広くいま一度点検、検討するように事務当局に指示をして、こういう現実の問題に直面することがないように最大の注意を払っていきたい、このように思います。
山内(惠)分科員 前向きのお答え本当にありがとうございます。ぜひ今後のところでそこは強化していただきたいと思います。
 また、公共的な空間には、低空で無人ヘリコプターを飛ばしてやっているという報告もございました。それは前より前進したかと思いますが、農薬を使わない方法で、公共施設のところで虫の発生を防ぐ方法もいろいろあると聞いていますので、その辺も強化をされまして、特に公共施設の中に学校というのもございますので、きめ細かな配慮をした対策をぜひよろしくお願いいたします。
 きょうは本当にありがとうございました。
山名主査 これにて山内惠子君の質疑は終了いたしました。
 次に、北村誠吾君。
北村(誠)分科員 自由民主党の北村誠吾でございます。
 通告に従いまして、私見を交えながら質問をさせていただきたいと思います。かねて政府委員の方々に御答弁をお願いしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 私は本日、二点、大きく項目を分けまして質問をさせていただきます。
 まず一点は、諫早湾干拓事業のことでございます。二点目は、大中型まき網漁業に関することについてお尋ねをさせていただきたいというふうに存じております。
 まず、諫早湾干拓事業の件でございますが、私ぜひ、本日御出席の委員の諸先生方、また国民の皆さん方に御理解をいただきたいと願っておりますこと、私見を交えて申し上げさせていただきますが、有明海におけるノリの不作、これと魚介類の漁業不振ということについては分けて議論をしていく必要がある、考える必要があるというふうに認識しております。
 ノリはもともと、御承知のとおり、アサクサノリで有名な東京湾など、富栄養化の進んだ海域で生産されるものであります。有明海はアサクサノリ生産の南限、南の限度というふうな意味で南限と言われております。
 一昨年のノリ不作は、第三者委員会が指摘しておりますとおり、異常な気象条件が重なって生じたものである。しかも、今期平成十三年の生産量は史上第一位の量となり、過去二十五年間を見ましても、金額においても六位、生産数量としては史上第一位というものであります。諫早湾の締め切り後、平成十年度が五位、平成十一年度は八位であり、平成十二年の不漁を除いて、豊作が続いております。
 これを見ますとき、むしろ有明海におけるアサクサノリの生産については、養殖ノリの求める成育環境などなどを考えるとき、ノリ生産が、ある意味で一定の限界に達しているというふうに考えるべきではなかろうかと考えるものでございます。
 特に、酸処理の導入によってノリの生産は拡大を続けてまいりました。酸処理は、ノリ生産には欠かせない手段になっております。しかし一方、その酸処理は貝類には、ノリ生産と反比例するように減少しております。過去二十五年間のデータを、第三者委員会で検討された中で提出された資料を見ましても、その数字は歴然とデータにあらわれております。ノリの生産は酸処理が始まってからぐんぐん伸びております、上昇しております。一方で、魚介類の特に貝類の生産は、反比例するように急激に低下をいたしております。
 このために、タイラギガイの漁業者とノリ漁業者の間でぜひ議論をし、この対応を詰めていきたいというふうな考え方や意見が地元にはあるということも承知いたしておるわけでございます。
 また一方、諫早湾干拓事業は、既に九〇%近く完成を見ております。既に洪水や高潮といった災害に大きな事業の効果を発揮しております。締め切り以前は、後背地に暮らす人々は、毎年のように長い時間湛水に苦労してきました。他の地域と異なって、有明海の干満の差は、諫早湾で六メートルもあります。そのために、潮位に合わせて樋門を日夜管理しなければならない。
 また、これが諫早湾干拓の特徴でありますけれども、ぜひ御理解をいただきたいのでありますが、有明海の潮流は、言われますように時計の針と反対回りの方向に回っております。この潮流によって運ばれてくる泥、特に諫早湾に参りますときには浮泥、浮き泥と言われるように、極めて粘土質で粒子の細かいものが諫早湾に到達し、それが潮流、潮汐によって湾の奥にどんどん送り込まれて、運び込まれてくるというものでございます。
 有史以来、約四百五十年前から諫早湾周辺に住まう人々は、この有明海から運んでこられる、阿蘇山あるいは久住山あるいは雲仙岳から噴火した火山灰が諫早湾の方にずっと運んでこられるというもの、この極めて粒子の小さい泥を諫早湾に運び込まれますから、かねてから小さな干拓によって、狭い耕地、優良な水田等を、それこそ人海戦術で数百年にわたって干拓事業をやってきたわけです。
 その干拓事業をやらなければ、諫早平野に住む人々そのものが泥にのまれて、泥が湾の外側から運び込まれることによって泥にのみ込まれ、あるいは泥が排水を妨げるということによって水にのみ込まれ、水につかってしまうというふうなことで、排水を確保するために、わかりやすく言うと、まさにムツゴロウのように干潟の中にみずから入り込んで、常に、一年じゅう排水を確保するために日夜干潟の泥との闘いを続けてきたというのが、諫早湾干拓の長い歴史における地域住民の営みであります。これに命がけ、生活をかけてやってきたわけであります。
 今回の諫早湾干拓事業は、昭和二十七年に長崎県知事が発案をして、いろいろな経過を経、政府並びに各政党の努力等々によって、今日、私どもが望むところよりも、どんどんどんどん縮小、変更を重ねてまいりましたけれども、しかし、来るべき営農に希望を持って、これが実現のためにいろいろなことで皆様方に、他の県の皆様方にも御迷惑をかけてはおりますが、ぜひ御理解をいただきたいということで、今日に臨んでおる次第であります。
 ですから、私は、干潟は自然環境保全のために極めてよいものである、干潟は優しいものである、干潟は自然のためにぜひそのまま守らなければいけない、そういう考え方に立つことを決して否定するものではありません。
 しかし、今申し上げますように、諫早湾の干潟につきましては、これは、じっと自然のままにほうっておけばその干潟の泥は、四百何十年かかってやってきた、営々として築いてきた干拓地をのみ込み、水田よりもはるかに高く、干潟は諫早湾の外から泥を運んでこられる潮流によって山積みになるのであります。ですから、それによって排水が妨げられ、干潟がダムになってしまうわけであります。これを排除しないことには、農地も住居も、あるいは生命も財産も確保できない。こういうことから、この諫早湾干拓事業あるいは防災干拓事業というものが計画されたわけでございます。
 私は、このことを国民の皆さんあるいは一部政党の皆様方にもぜひ理解をしていただかなければ、この諫早湾干拓事業が根本的にいかようなものであるかということが御理解いただけないのではないか。したがって、やはり現地に行ってその状況というものをつぶさに見ていただくことが一番わかりやすいことであると思います。
 しかし、一部政党の方々は、現地に数回にわたりおいでになりましたが、なかなか理解が得られないという方々もあります。この不思議を、私は今度一緒に行って、私自身も説明をさせていただきながら、お互い納得のいく意見の交換というものが必要じゃないかと思ったりするところでございます。
 以上、諫早湾干拓につきまして私見を述べさせていただきましたが、これらのことを踏まえた上で、今後、農水省としては、諫早湾干拓においてどのような営農というものを目指していこう、展開していこうとお考えなのか、大まかな答弁で結構でありますから、簡潔にお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
太田政府参考人 お答え申し上げます。
 諫早湾干拓事業につきましては、本年六月、干拓面積を約二分の一に縮小する等の計画変更を行ったところでございまして、現在、この新たな事業計画に沿いまして、平成十八年度中に完了するようその推進を図ってまいっておるところでございます。
 御質問の営農についてでございますが、長崎県の諫早湾干拓営農構想検討委員会というのがつくられておりまして、ここにおいて検討されました内容を踏まえて、一つは、バレイショを中心といたします大規模野菜経営の導入、企業的な組織経営によります花などの施設園芸経営の展開、そして低コスト粗飼料生産等によります安定した畜産経営の展開、こうしたものを軸に、収益性の高い近代的な畑作生産基地の育成を目指すことといたしております。
 これらを進めるに当たりましては、環境に優しい農業を推進するという観点から、畜産と耕種部門の連携等によります、干拓地内の農地に液肥化等によります農地への家畜ふん尿の還元、あるいは飼料作物を組み入れた合理的な輪作体系等を確立して地力を増進するといったことを進めて、営農による環境への負荷を軽減することといたしております。
 今後、これらの考え方に基づきまして、二十一世紀のモデルとなるような営農の展開が図られるよう、関係機関が一体となって推進してまいる考えでございます。
北村(誠)分科員 ありがとうございます。
 それから、諫早湾干拓事業を始めるに当たられて、今、佐賀県、福岡県、熊本県の関係の皆様方にいろいろな形でお騒がせをし、また御迷惑をおかけしておるというふうな状況があり、我々長崎県民の間ですら、これだけ他県の方々にお騒がせをするということであれば、この事業についてやはりいろいろな形で、考えを改めるというか、事業についての考え方を検討すべきじゃないかという、少数の意見でありますが、そういうことをおっしゃられる県民の新聞に対する投書というものもあります。
 もとより長崎県民は、隣県の皆さん方と有明海の漁業において、あるいは、実は、本日七月二十三日は長崎大水害の二十周年の日であります。長崎は、いろいろな形で災害に見舞われ、そのたびごとに、隣県、近県の方々に手助けをいただいておりますことはもちろんですけれども、全国の方々にお力をいただいておる。そういう中で、この長崎大水害、水の害でありますが、これは梅雨の末期に、まさに梅雨が明けるか明けないかというときに集中豪雨が来るという長崎県にまた独特の豪雨というものでありまして、特にこの諫早地区は、こういったときに必ずそういう災害に見舞われるという厳しい天候、気象のところでございます。
 そういう中で、私は、隣県、近県との融和というものは常に今後とも大切にしていかなければならないという視点から考えたとき、諫早湾の干拓事業を進めるに当たって、関係各県の漁業者あるいは長崎県内の漁業者に対して漁業の補償を行ったであろうということを確認の意味でお尋ねしますが、その漁業補償の目的あるいは性格、期待するものはどういうものであったか。農林水産省に確認の意味でお尋ねをしておきたい。
太田政府参考人 諫早湾干拓事業に伴います漁業補償でございますが、環境影響評価結果等を踏まえまして、政府の基準等に従いまして、一つは、漁業権等の消滅及び制限に係る補償、並びに漁業権等の消滅または制限により通常生ずる損失として漁業の廃止、休止、経営規模縮小に対する補償を適正に行っておるわけであります。
 具体的には、昭和六十一年度に、諫早湾内の十二漁協に対しまして漁業権等の消滅補償及び漁業への影響補償を行い、翌六十二年度には、島原十一漁協、佐賀県大浦漁協、佐賀県有明海漁連、福岡県有明海漁連及び熊本県漁連に対しまして漁業への影響補償を行ったところでございます。
北村(誠)分科員 次に、諫早湾干拓事業によって造成をされております調整池の水質について、ある新聞報道によれば、汚水というふうに表現をした新聞報道もありました。
 私は、かねてから農水省の皆様方に御説明もいただき、認識として、こういう「わたしたちの諫早湾」などという資料もあります。これをきちんと読んでいただけば、それこそ日刊紙の社説の中に調整池が汚水であるというふうな記述はまず出てこないであろう。
 この資料でいただくものを見るだけでも、調整池ですから確かに真水がたまってきました、淡水魚あるいは汽水域の魚、あるいはその他の水生生物がふえてきたということであり、驚くべきは、汽水の魚で、ボラやハゼという類がふえてくるのはわかりますけれども、エツという筑後川の極めて珍しい魚、これはある意味では化石だと言われるような魚だそうですけれども、これが調整池の中に入り込んできておるということまで確認をされております。
 この調整池の水質ということについて、事実関係、そして調整池をどのように今後、循環型、環境保全あるいは水質の浄化にできるだけ自然の力を生かすという考え方を持っておられることをかねて聞いておりますが、そこら辺を、確認の意味で簡潔にお答えをいただきたい。
太田政府参考人 調整池の水質に関する御質問でございますが、開門調査を実施する以前の水質に関しましては、季節や降雨の影響等による変動はございますけれども、COD、化学的酸素要求量でいいますと、一リットル当たり七ミリグラム前後、全窒素につきましては一リットル当たり一ミリグラム前後、全燐は一リットル当たり〇・二ミリグラム前後で推移しておりました。
 これらの水質につきましては、本明川等の河川から流入する負荷によって形成されておりまして、基本的には流入河川の水質を反映しているものと考えております。例えば、調整池のCODの値ですが、有明海の奥の方で流入しております六角川等の河川水質とも同様の水準ということでございます。
 いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、調整池の水質を向上させることは重要な課題であるというふうに考えておりまして、今後とも地元市町と協力いたしまして、窒素や燐の高度処理を含む生活排水処理施設の整備等を進めるとともに、干拓面積を約二分の一に大幅に縮小いたしましたが、これを環境への一層の配慮を盛り込んだ見直し後の事業計画に沿いまして、ヨシ等の植生帯の創出とか湿生植物や水生植物が繁茂し、多様な生物が生育する区域の保全を図るなど、環境配慮対策を実施していくことによりまして、調整池の水質浄化対策など環境保全に万全を期していく所存でございます。
 なお、調整池の水の色が白っぽく濁って見えるという御指摘がございますが、成分分析の結果、底の泥に近い組成となっておりまして、調整池の水深が浅いために諫早湾にもともとある潟土が巻き上げられていることによるものだという認識をいたしております。
北村(誠)分科員 引き続きお尋ねしますけれども、諫早湾干拓につきましては最後の質問ということになりますが、冒頭私見を交えて申し上げたので確認の意味で御認識をお尋ねするわけですけれども、諫早湾において干潟が後背地にどのような影響を与えているというふうに認識しておられますか。重複する部分もありますので簡潔に、干潟が後背地にどのような影響を与えていると農水省の方で認識しておられるか、お答えをいただければと思います。
太田政府参考人 先生が先ほどるる御説明いただいたように、もともと潮流によって運ばれてきた潟土が既存の堤防の排水樋門の前面に恒常的に堆積して背後地からの排水不良に悩まされてきたというのが現地の状況でございます。このために、潟土の堆積に対しまして、地域住民みずからが潟土につかりながら、人力によって排水樋門の前面とか、みお筋のしゅんせつを行われて排水を確保されてこられたという認識をしております。
 潮受け堤防の設置後は、潟土の堆積がなくなったためにしゅんせつの作業が不要となりました。そして、潮汐の直接的な影響を受けずに、常時の自然排水ができるようになった、あるいは台風、洪水時におきましても高潮を防止し、湛水の程度や湛水時間が大幅に改善されるようになったといったことなど、防災効果が調整池の周辺で着実に発揮され、地域住民から非常に感謝されているという状況にございます。
北村(誠)分科員 また、諫早湾干拓事業につきましては、内部堤防の工事を着実に進めていく、このことがより濁りを抑えていくことなど、目に見えて効果があらわれるというふうに思いますし、かねて約束のとおり、計画どおりの完成を目指すということのためにも努力をしていただいていることは十分認識をいたしておりますが、今後とも農水省におかれて、また、所管の担当の皆様方におかれても、ぜひとも重ねての御努力をお願いいたしたいというふうに思います。
 次に、まき網漁業のことにつきましてお尋ねをします。
 今日我が国の水産業も、やはり食料生産の産業の分野ということで農業ともどもその位置づけが、きちんと水産基本法等によって国民の期待あるいはその役割というものが明確にくっきりと位置づけを与えられております。そういう中にありまして、食料自給計画の中で大きな生産、あるいはこれまでの経過にかんがみ、大中型まき網あるいは底びきという漁業、遠洋あるいは沖合漁業の分野に対する生産量の確保というものは一定の期待をされておりますが、今日の我が国における大中型まき網漁業の現状を見るとき、大変な漁獲量の減少であります。そして、それに伴って、その船団の減船ということが言われており、実際、不幸にしてそういう状況が続いております。
 このことについて、水産庁御当局の御認識と現状の把握についてお聞かせをいただきたいというふうに思います。
海野政府参考人 お答えいたします。
 平成十二年の大中型まき網漁業による漁獲量は、主要対象魚種であるマイワシ資源の大幅な減少もありまして約九十万トンと、十年前、平成二年の約四分の一程度の水準となっております。
 また、生産額について見ますと、平成十二年一千百十二億円で、十年前の四割減、六割の水準になっており、対前年で見ても一五%の減少でございます。
 大中型まき網漁業の経営について見てみますと、近年の漁獲量の大幅な減少あるいは過去の設備投資による負債の増大などがございまして、漁業経営の維持が困難な経営体がふえる傾向になっております。
 このような状況のもとで、平成四年度から平成十四年度にかけて全国で合計七十二カ統、三百五十七隻の減船を実施してきております。特に、東海、黄海海区につきましては、そのうち三十四カ統、百八十五隻の減船を実施しているところでございます。
北村(誠)分科員 大変な減船の動きであります。これは船団の減少ということはもちろんですけれども、そこには、それに働いていた乗組員の人たち、あるいは、その漁法、魚種あるいは漁業形態によりまして幾らかの地域による違いもあるとはいえ、関連の業界のすそ野の広がり、あるいは地域経済に与える影響というものは大変大きなものがあります。
 特に、減船によって船からおりることあるいは他に転職を強いられる人々、この不況の中で職を求めていくということは、好況の時期でありますならば、あるいは漁業資源に恵まれますときであれば、沿岸の漁業の定置網漁であるとかあるいは一本釣り漁業であるとかいうふうなことで、蓄えを使って独立していくというふうなことができたわけですけれども、今日では非常に厳しい状況にありますので、ぜひ企業による、会社経営によるまき網漁業等の経営形態の始末というものも十分にお考えをいただくことはもちろんお願いしたいことでありますが、働く人々の今後ということにつきましても、また、地域経済、広い地域に影響があり、また、すそ野の広がりがある産業、各種の産業の分野にいろいろな影響があるということを、かねてからお願いしておることではありますけれども、そこら辺を踏まえた上での対応、対策というものを考えていただきたい、これはお願いをする次第であります。
 さて、私ども地元により近い東海、黄海についての関係でございますけれども、やはり資源の減少というものが、あるいは循環で、今例えばこの魚種は循環によって最低の数値しか示さないという魚種もあるかもしれませんが、いずれにせよ、まき網漁業における日本、中国、韓国、三国間における資源の管理体制というものをきちっとつくっていかなければ、これは今後お互いの国のたんぱく資源の、漁業資源の確保という意味合いにおいて、大変難しい状況に至るのではないか。したがって、資源管理体制を日中韓三国で今後どのように詰めていこうと考えておられるか、そこら辺をお尋ねいたしたい。
海野政府参考人 東海、黄海の水産資源の保存管理は、日中韓三国にまたがる問題でございます。日中韓三国間による資源管理体制の構築が重要な課題であると考えております。
 現在までに、日中、日韓、そして韓中の二国間漁業協定ができておりまして、これに基づき資源管理体制について一定の前進が見られたところでございます。また、日中間の暫定措置水域につきましては、昨年末、資源管理措置の枠組みについて合意したところでございまして、これらに基づいて資源管理を一層進めてまいりたいと思っております。
 東海、黄海における水産資源の適切な保存及び管理を推進していくという観点からは、今後とも今申し上げました二国間で、また日中韓三国の間での意見の交換の場を通じて、粘り強く努力をしてまいりたいと思っております。
北村(誠)分科員 時間もないようですけれども、今後まき網漁業について、大変重要な漁業であるということの御認識はもうお聞かせいただきました。これをどのようにやはり維持存続させていこうと基本的に水産庁としてはお考えであるか。
 私、地元でいろいろな声を聞くとき、やはりもう資源が少ないのでなかなかとれない、したがって、幾らとれなければ経営が難しいという、そのラインをもう切っておるというふうな状況もあります。国に頼れば何でもできるという時代ではないということで、地元の方々に、業界の方々にもお話をしておりますけれども、真剣な取り組みがみずから望まれておるというふうに思いますが、それはそれとて、やはり国の力あるいは国の指導というものが的確に行われて、何とか生き残り策あるいはまき網漁業の振興というものを図っていきたいという立場から、基本的にどのようにお考えかお聞かせをいただきたいと思います。
海野政府参考人 大中型のまき網漁業の生産量は、先ほど申しましたように資源の減少に伴って減少してきておりますけれども、平成十二年度の約九十万トンという数字は依然として海面漁業生産量の約一八%を占めておりまして、我が国水産物の供給に重要な役割を占めているというふうに認識しております。
 このために、対象となるマイワシ、サバの水産資源の回復ということを図っていくとともに、多投資、多人数を必要とする経営体質を改善するということが極めて重要であると思っております。
 本年八月、大中型まき網漁業の許可の一斉更新でございますけれども、これに当たりまして、運搬船の共有化など操業形態の合理化を進めるということに努めたところでございます。
 今後とも、資源回復計画を初め資源の適切な保存及び管理に努めるとともに、本国会で成立していただいた漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法による新たな融資制度の活用などによりまして、経営の改善が図られるよう、まき網の漁業者を指導してまいりたいと考えております。
北村(誠)分科員 どうもありがとうございました。終わります。
山名主査 これにて北村誠吾君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 平成十二年度経済産業省所管の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計歳入歳出決算につきまして御説明いたします。
 経済産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額百九十八億円余に対し、収納済み歳入額は二百三十七億円余であり、差し引き三十八億円余の増加となっております。
 次に、経済産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額一兆二千七百七十七億円余に対し、支出済み歳出額は一兆一千二百四十一億円余でありまして、その差額一千五百三十五億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千二百四十四億円余であり、不用となりました額は二百九十一億円余であります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は六千二百七十二億円余であり、支出済み歳出額は三千七百四十九億円余でありまして、その差額二千五百二十二億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は三百十一億円余であり、剰余金は二千二百十一億円余であります。
 第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は一兆九百六十八億円余であり、支出済み歳出額は五千四百九十七億円余でありまして、その差額五千四百七十一億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千九百八億円余であり、剰余金は三千五百六十三億円余であります。
 第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は五百六十七億円余であり、支出済み歳出額は三百十九億円余であります。
 なお、この会計は、平成十二年度限り廃止され、その際この会計に属しておりました権利及び義務は、新エネルギー・産業技術総合開発機構に承継されるものを除き、一般会計に帰属させることといたしました。
 第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千三百九十三億円余であり、支出済み歳出額は四百一億円余でありまして、その差額九百九十一億円余は全額剰余金であります。
 第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千八百二十一億円余であり、支出済み歳出額は九百四十九億円余でありまして、その差額八百七十一億円余は全額剰余金であります。
 以上をもちまして、平成十二年度における経済産業省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要に関する御説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十二年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九件であります。
 検査報告番号一九六号及び一九七号の二件は、次世代情報技術開発費補助金及び新規産業創造技術開発費補助金について、補助事業に全く使用していなかった機械装置の購入費及び補助事業に従事していなかった時間に係る技術開発職員の人件費を含めるなどしていたため本補助金の経理が適切を欠いていると認められたものであります。
 同一九八号及び一九九号の二件は、地域活性化創造技術研究開発費補助金について、補助の対象とならない臨時に雇用されている者に係る人件費及び事業主体の給与体系上負担しない超過勤務時間に係る人件費を含めるなどしていたため本補助金の経理が適切を欠いていると認められたものであります。
 同二〇〇号から二〇三号までの四件は、中小企業設備近代化資金の貸し付けについて、借り主が、設備の購入に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸し付けを受けていたなどしたため、本資金の貸し付けが適切を欠いていると認められたものであります。
 同二〇四号は、電源立地促進対策交付金を受けた事業の実施において、新潟県刈羽郡刈羽村の生涯学習センター、ラピカ建設工事等のうち、茶道館については、実際の出来形において特記仕様書、設計図面及び設計書と合わない品質または質感の劣る材料によって施工されているなど事業の実施が不適切であり交付金の交付目的に沿った施設となっていないと認められ、本館、陶芸工房については、施工が竣工図等と相違した安価なものや低品質なものとなっているなどしており、その施行が不適切と認められたものであります。また、これらの施工監理業務委託契約は、その目的を達していないと認められたものであります。
 平成十二年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十二年度中小企業総合事業団信用保険部門の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 平成十二年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。
 これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。石毛えい子君。
石毛分科員 民主党の石毛えい子でございます。
 平沼経済産業大臣におかれましては、私の質問は三十分間でございますが、最後に御答弁をいただけますよう、恐縮でございますが、その時間、どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、本日、容器包装リサイクル法に基づきますペットボトルのリサイクルに関しまして質問をいたします。
 容器包装リサイクル法に基づいて、ガラス瓶ですとかプラスチック製品等々とともに、ペットボトルのリサイクルが行われておりますことはもう周知のところでございます。そして、そのリサイクルにおきまして、指定法人、つまり日本容器包装リサイクル協会でございますけれども、大変大きな役割を占めるようになっていると認識しているところであります。
 いただきましたデータも示しておりますけれども、例えば二〇〇二年度におきまして、ペットボトルを分別収集している市町村、二千八百十市町村のうち、七八・一%、約八割に上る市町村が、指定法人に引き取りをゆだねて再商品化というリサイクルの輪を形成しているわけでございます。
 引き取り量におきますと、十九万九千トンのうち十六万九千四百二十七トン、引き取り市町村の率より超えまして、八五・一%という高い率で指定法人に引き取られて、そしてその引き取られましたペットボトルは、ほとんどすべてが原料として新たなリサイクルに回っていく、再商品化がされている、こういう実情にございます。
 繰り返しますけれども、指定法人の役割が非常に大きくなっていって、したがって、リサイクルの輪、私は、きょうは、その中で再商品化の、後段の方のプロセスについて質問いたしますけれども、それがどのような仕組みで行われているか、大変重要な意味を持つというふうに認識をしております。このような認識に基づきまして、再商品化処理事業に関しまして何点かお尋ねをいたします。
 まず最初の質問ですが、ペットボトルの再商品化にかかわる特定事業者の費用負担、特定事業者の方が、拠出という表現が当たるのかどうかわかりませんけれども、委託料をお支払いになられて、それが再商品化処理事業者の方の費用に充てられている、ざっとそういう仕組みで、特定事業者の費用負担を再商品化単価というふうに記載されてありますが、その単価は一九九七年ですとトン当たり八万九千七十円、これが、二〇〇一年、平成十三年にはトン当たり七万三百八円に下がったという報告を拝見しました。競争がされている結果というふうにもお伺いいたしました。
 この再商品化単価ということですけれども、これは再商品化委託料を再商品化量で除して算定されるというふうに伺いました。それでは、その再商品化委託料というのはどのように決定されるのでしょうか。いただきました文書を拝見しましても説明を探すことはできませんでしたので、それをお示しいただきたい。
 それから、その再商品化単価は、ペットボトルの再処理を委託する特定事業者の方が費用負担されるものですから、この再商品化単価と、再商品化処理事業者の方が処理を受託するその際の落札価格、この相互の関係はどのようになっていますでしょうか。
 そこのあたりをまず教えていただきたいというふうに思います。
日下政府参考人 お答え申し上げます。
 ペットボトル等の再商品化に係る事業は、先生御指摘のように、容器包装リサイクル法に基づいて財団法人日本容器包装リサイクル協会で行われ、ペットボトルにつきましても、九年度に法施行以来、十年度と比べましても昨年度三倍ぐらいと、順調に進んできているところでございます。
 御質問の、この再商品化委託料でございますが、利用とか製造といった業種の違いを勘案いたしまして、事業者の排出見込み量に応じて定められます再商品化義務量というのがございます。これに、協会が前年度の実績を勘案して定める再商品化委託単価を掛け合わせた金額という形になっているわけでございます。
 再商品化単価といいますのは、ペットボトルのメーカーや飲料メーカーといった特定事業者が協会に支払うリサイクル費用の単価でございます。これは、前年度にどのぐらいかかったかという実績を反映して定められているものでございます。
 これに対しまして、落札価格の方は、実際に当該年度におきましてペットボトルのリサイクルを行う再商品化事業者に協会の方が支払うリサイクル費用の単価でございます。これは、御指摘のように競争でございましたり、いろいろ技術面の習熟もございまして、落札価格が前年度より下がってくるということはございます。そうすると、翌年度の再商品化単価に反映されていく、こういう形になっております。
 以上でございます。
石毛分科員 いろいろとリーフレットなどをいただきましたので、今、日下局長がお答えいただきましたことは、私でもこのようなものを拝見すればわかるのですが、これを拝見しまして一番わからないのは、やはり、委託単価をどのように決めているかということだろうと思います。
 落札価格に連動して下がるというのは一般的には言えることだと思いますけれども、必ずしもそれが公開されているというふうにも私の知っている限りでは思われませんし、もう少し委託単価のところを、あとのところは大体、排出見込み量ですとか、そういうことはそれなりに合理性を持って理解できるところだと思いますけれども、あえてきつい表現をしてしまえば、この委託単価というところが私からするとブラックボックスではないかなというふうにも思えますので、再度、そこのところを御説明ください。
日下政府参考人 委託単価という言葉がちょっと私どもとしてもわかりにくいところでございますが、これはあくまで協会の方で定めます予定の価格、つまり義務を負っています特定事業者、ペットボトルのメーカーでございましたり飲料メーカーからこのリサイクル費用を徴収していかなくてはいけないものでございますので、予定として集めてくる費用を徴収するベースになっているわけでございます。
 したがいまして、指定法人から仕事を請け負いまして、市町村などで分別回収したものを再商品化事業者が再商品化していただくわけですけれども、そのときに幾らでしていただくかは、まさに入札で決まってくるということでございますので、指定法人とリサイクル業者との関係は入札でございますし、それから、義務を負っている事業者との関係では、前年度までの実績を踏まえて、見込みで徴収しているのが先ほどの再商品化にかかわる委託料になっているわけでございます。予算のようなものでございます。
石毛分科員 その見込み徴収をする際の算定の基準といいましょうか、本当はそういうことを教えていただきたいわけですけれども、時間の関係もありますので、それは結構でございます。
 再商品化処理事業者につきましては、入札で価格を決めていくということ。恐らく委託単価で委託料を決めていくわけですけれども、委託単価に関しましては、事業者団体、協会の方との協議か何かで決めていくのだろうと思います、これは入札ということではないのだろうと思いますから。そこのあたりの算定のルールがどのようになっているかということをやはり教えていただければよろしかったかと思いますけれども、時間の都合もありますので、それは省いて次に進みたいと思います。
 次に、再処理事業者が登録事業者として確定するには、書類審査と実地の設備調査の二段階を経て行われていると伺っています。その実地の設備調査につきまして、調査項目あるいは調査の内容、それから、再処理事業者として登録が確定されるというその判断基準がどのようになっているのかということをお示しいただきたいと思います。
日下政府参考人 指定法人であります協会におきましては、協会が再商品化事業者の適正性を判断するために定めておりますガイドラインに基づきまして設備調査が行われているものと承知しております。
 そのガイドラインにおける具体的な調査事項としては、処理設備の能力や処理従事者の体制などがありますが、協会におきましては、これらが申請どおりであるかどうかについての調査を実施し、再商品化事業者の処理能力についての判断が行われていると聞いております。
 ガイドラインの主な内容としては、ペットボトルの場合でございますと、フレーク、ペレット化施設の基準でございましたり、ポリエステル原料化施設の基準、運搬と保管の基準、作業環境と安全対策の基準、残渣等の管理及び処理の基準などについてそれぞれ定められているところでございます。
石毛分科員 今御答弁いただきましたそのガイドラインといいますのは、公開されていますでしょうか。
日下政府参考人 毎年、登録を求めるに当たりまして、協会の方から、施設審査についてということで、内容についての説明がございます。その中に、書類選考から始まって、ガイドラインに従って実地の調査も行われるという案内があるわけでございますが、その文書の中に、審査の実施手順と同時に、ガイドラインの方も関係の事業者の方に説明をし、あるいは配付をしているところでございます。
石毛分科員 これもいただきました資料ですけれども、日本容器包装リサイクル協会が再商品化ニュースというのを出していらっしゃいます。ナンバー十六という号を拝見しますと、ペットボトル再処理事業の登録申込事業者は二〇〇一年で百件ということで、そのうち登録の確定した事業者は五十一件というふうに報告されております。約五〇%の確定率ということになるわけです。
 それぞれ、百事業者の方が登録申請をされまして、その登録申請された事業者の方には、今御説明いただきました、入札のときには手順ですとかガイドラインが示されるのでしょうけれども、そのガイドラインで示した処理設備ですとか従事者体制ですとか、それからフレーク化したような、あるいはペレット化というのでしょうか、それを引き取っていただく再利用事業者ですか、その方が幾らで引き取っていただくかというような書類も出すというふうに伺っております。
 その確定の、つまり、申請が百社で確定したのが五十一社ですから、その百社に対しまして、あるいは五十一社に対しまして、確定したかしないか、あるいは確定したという通知が個別に出されていますのでしょうか。そこをちょっと教えてください。
日下政府参考人 再商品化能力の確認につきましては、確実に再商品化を実施できるかどうか、例えば、再商品化事業者が実際に再商品化せずに不適切な処理を行うことがないようにという観点から行われているものでございますが、先生御指摘のように、百社ぐらい応募いたしまして、実際に登録が行われる数はずっと減るわけでございます。
 したがいまして、協会におきましては、実地検査に基づき、また先ほどのガイドラインに沿って能力の確認が行われた上で当該事業者の登録の可否を決めるわけでございますが、登録されました事業者につきましては、官報で公示をするということで明らかになるわけでございます。また、登録されなかった事業者につきましても、問い合わせに基づきまして、その旨を理由とともに個別に連絡していると聞いております。
 このように、当該協会におきましては、事業者に対してその結果について示しているわけでございますが、個別の事業者の再商品化能力の査定結果については、特段示していないと聞いております。つまり、登録をされなかった事業者については、どうして登録されなかったのかということを示し、登録された者は官報に載っかる、こういうことでございます。
 ただ、登録された者について、具体的にどういう審査結果であったかという内容のところまでについては、特段、情報提供はしていないように聞いております。
石毛分科員 きのう担当の方にお教えいただきましたけれども、官報に掲載されるのは事業者名であって、その事業者がどのように、査定という表現がいいのかどうかわかりませんけれども、査定されたかということは、これは企業秘密ということもあるでしょうから、官報にそのまま掲載するべきことなのかどうかというのはちょっとおいておきまして、事業者名だけだという、まあ、住所とかもあるでしょうけれども。要するに、なぜそのように査定をされたかというような情報に関しては、登録事業者に関して一切伝えられていないというふうに私は聞いております。
 そこで、仮に、登録に至らなかった事業者も困るでしょうけれども、登録できた事業者も、なぜ自分のところがこのように判断されたのかということがわからないということで困っているわけですね。
 私が自分の地域で親しくさせていただいておりますその事業者の方は、例えば去年、二〇〇一年の入札で三千六十・九トンの入札をしているわけですけれども、わずかに落札は四百十五トンしかない。まあ、しかないと言っていいんだと思いますけれども。この施設につきましては、東京都の廃棄物処理事業者としての処理能力の認定は千二百四十八トン、時間当たりだそうです。ですから、時間当たり千二百四十八トンということから比べましても、四百十五といいますと三分の一ぐらいの処理能力しか査定されていない、認められていない。
 それから、たまたま私も質問をするのに先立ちましてもう一回訪問をしてきたんですけれども、再処理をしてつくり出した原料を引き取ってくださる事業者の方の示した引き取りの値段というのは一キログラム当たり五十三円で、違う事業者の方も偶然同席されていたんですが、四十円で売れればすごくいいそうです、基準はクリアしていると。ですから、五十三円で売れるというのは非常に処理の質的な力量は高いというふうに判断できるんだと思いますけれども、その事業者に対して認めているのが四百十五トン、落札の量が四百十五トン。
 この事業者の方は、リサイクル協会に問い合わせをしましたらば、協会の査定では二百トンから三百トンという査定ですと言われたそうですけれども、ではその理由はどうかといえば、その理由は教えてもらっているわけでもないということで、いわば、表現を少しきつくすれば、要するに協会の方の査定しか決定因子はないといいましょうか、なぜそういうふうに査定されるのかということを知ろうにもなかなか知ることもできないという状況で、大変これはおかしいのではないか、困っているのも事実だけれども、おかしいのではないか、そういう御意見をいただいているわけです。
 もう一度ガイドラインに戻りますけれども、処理設備、従業者体制、それから残渣の処理の状況ですとか、あるいは商品化した原料の引き取り価格ですとか、幾つか要因があると思うんですけれども、その要因がきちっと項目として公開されていて、どの要因がどのぐらいのウエートを持って、おたくの事業者は、例えば協会の方で何割と査定しました、あるいは処理能力はどれぐらいというふうに査定をいたしましたという、かなりフォーマットとして市場に流通するような様式に整っているんでしょうか、どうでしょうか。
 そこのあたり、どんなものなんでしょうか。
日下政府参考人 先生御指摘の個別のケース自体はつまびらかにしておりませんが、ガイドラインの方には御指摘のように、ハードにつきまして、異物の除去でございましたら、破砕、洗浄、脱水、乾燥その他の処理の能力、工程がちゃんとしているかどうかということでありましたり、再商品化された製品の品質基準が立派かどうか、こういうようなことが書かれているわけでございます。
 先生御指摘の件では、製品としても立派に市場で評価されているということでございました。やはり、当該関係の事業者がなぜそのような査定を受けたかわからないということでは、翌年度にまた入札されるときにも事業者として十分な体制が組めないということも、予測可能性が非常に難しいということもあろうかと思います。
 現在、再商品化能力というのは協会の方で審査しているわけでございますが、やはり、協会と再商品化事業をされる方との間で実際に再商品化に係る契約が行われる際には、先ほどの処理能力についての査定の考え方、どうして本来の物理的能力よりも少なく査定されているのかなどの点につきましても十分に話し合いが行われるべきだと私どもの方も考えているところでございます。
 なお、物理的な処理設備、処理能力だけでなく、再商品化した製品の販路がしっかりしているかどうかもあわせ、当然のことながら協会の方では見ているようでございます。
石毛分科員 話し合いが行われるべきだと考えておられるという前向きな御回答、御答弁をいただいたと思いますが、それをシステムとしてきちっと位置づけていただけますように、所管としての役割を果たしていただけますように私の方から要望をしたいと思います。
 そして、申請事業者からの意見表明の機会を設けるべきというふうにも質問通告をしておりますので、この意見表明の機会ということも受けて、今、日下局長さんから、話し合いが行われるべきというふうに御答弁をいただき、システムをつくるというふうに踏み込んではいただけませんでしたけれども、その検討をお願いしたいというふうに思います。
 時間もありませんので、最後に、落札価格について集積場ごとに示すようにしていただきたいと思いますけれども、この点に関してはいかがでしょうか。
日下政府参考人 現在のところは、落札結果につきましては、再商品化事業者間の競争意識を高めさせる、あるいは集積場ごとで品質が一定ではない、あるいは無責任な安価な入札を行う業者も存在し得ること、こういうような理由で、協会では公開していないと聞いております。
 しかしながら、当省といたしましても、リサイクルの円滑な推進のためには、入札の透明性を図ることが重要であると考えております。協会に対しまして、ガラス瓶でございますとか紙でございますとかPETでございますとか、対象容器包装ごとに落札結果を公表するよう指導してきているところでございまして、この結果、協会におきましては、本年度内にはこのような情報が開示をされる方向で具体的に検討中であるとの報告を受けております。
 しかしながら、先生の御指摘の、全国に千二百五十四カ所あるんでございますが、個別の集積場ごとの落札結果の公表につきましては、特定の集積場ごとに価格の高どまりを招くといった問題が起こり得る可能性もあるというふうに聞いております。
 いずれにしましても、透明性を高める観点から、引き続き協会に対しまして情報公開を指導してまいりたいと考えております。
石毛分科員 価格の高どまりを招くというのは私にはよく理解できないことなのですけれども、仮に、高どまりを招いたというようなことで、そこから余り価格が動かないというようなことになったとすれば、それは例えば公正取引委員会が役割を持って、価格形成のメカニズムというかダイナミズムがどうであったのかというのは公正取引委員会の役割になっていくというようなことではないのでしょうか。
日下政府参考人 今の協会の方の懸念というのは、多分、入札される事業者間で談合があるとかということではなくて、リサイクルは極めて地域ごとに活動が行われている。廃棄物の方もなかなか広域で輸送するのが難しゅうございます。また、収集されたところの状態も違うものですから、地域によりましては本当に一社か二社しか対応する方がいない。また、その商品の特性によりまして、非常に高い結果になっている。ところが、それが出ますと、当該地域においても、昨年度このぐらいだったのだから同じぐらいでいいのではないか、あるいは、ほかの地域もあのぐらい高くてもいいのではないかとか、そういう形になることがあり得るのではないか。
 したがって、全国ベースで、PETでございますとか紙でございますとか、そこの情報公開から今年度始めようというのが今の取り組みの状況でございます。
石毛分科員 時間が終わりましたということですけれども、おっしゃられましたように、地域によってかなり価格が違うのではないかという局長の御答弁を踏まえるのだったら、全国ベースの落札価格というのはそれほど意味がないのではないか。
 少なくともブロックごとに明らかにするとか、もうちょっと狭域で明らかにするとか、多分一自治体で、どこといえばすぐわかってしまうということも、これもリアルな話だと思いますけれども、本当は私は、そこを明らかにして競争を促していく。それがそれほど動かなければ動かないなりに、それはやはり競争の表出結果ではないか。もしそれが談合というような事態によって値動きが固まってしまうということであれば、これはやはりそもそも法違反の問題になってくるわけですから、もっと市場メカニズムが作用するように落札結果も明らかにしていくべきではないかというふうに考えます。
 この点につきましては、実際に落札結果をお示しいただいた段階で、また私の方からもいろいろと意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 質問時間が終了してしまいまして大変申しわけございませんけれども、今までの質疑をお聞きいただきまして、大臣に、財団法人でございますから公益性を持っている、そのリサイクル協会が取り組むシステム、そして、リサイクルというのは大変重要な、社会文明的な意味でも重要な社会的行為でございますから、私は、情報公開を積極的に進め、システムが透明であることが信頼を得る一番のベースだというふうに考えているところでございますが、大臣の御所見を、短い時間で結構ですから、伺わせていただきたいと存じます。
山名主査 では、時間が来ていますので簡略に。
平沼国務大臣 ただいまの議論を聞かせていただきまして、石毛議員の御指摘のとおり、情報公開を推進しまして、容器包装リサイクルシステム、透明性を確保していくことは非常に重要だと思っております。当省といたしましても、審議会等の場を利用しまして、容器包装リサイクルに係る情報公開をさらに進めていかなければならない、こういうふうに思っております。
 協会に対しましても、私どもとして、その事業に係る情報公開を指導しておりますけれども、これからも指導をしっかりやっていこう、こういうふうに思っているところでございます。
石毛分科員 時間を超過いたしまして恐縮でございます。ありがとうございました。
山名主査 これにて石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後三時十五分散会


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