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第1号 平成16年5月17日(月曜日)

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本分科会は平成十六年四月二十八日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

五月十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      津島 恭一君    萩生田光一君

      松岡 利勝君    森田  一君

      山本  拓君    内山  晃君

      五島 正規君    西村智奈美君

      山名 靖英君    古賀潤一郎君

五月十四日

 山名靖英君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十六年五月十七日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 山名 靖英君

      津島 恭一君    西村 康稔君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      松岡 利勝君    森田  一君

      山本  拓君    石毛えい子君

      内山  晃君    五島 正規君

      末松 義規君    辻   惠君

      西村智奈美君    増子 輝彦君

      松野 信夫君    古賀潤一郎君

   兼務 城内  実君 兼務 城井  崇君

   兼務 中根 康浩君 兼務 平岡 秀夫君

   兼務 馬淵 澄夫君 兼務 赤羽 一嘉君

   兼務 大口 善徳君 兼務 高木美智代君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   会計検査院事務総局第四局長            友寄 隆信君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   山木 康孝君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 鈴木 直和君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         井口 直樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (農林漁業金融公庫総裁) 高木 勇樹君

   決算行政監視委員会専門員 熊谷 得志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  松岡 利勝君     葉梨 康弘君

  森田  一君     西村 康稔君

  内山  晃君     末松 義規君

  西村智奈美君     辻   惠君

同日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     森田  一君

  葉梨 康弘君     松岡 利勝君

  末松 義規君     松野 信夫君

  辻   惠君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  松野 信夫君     石毛えい子君

同日

 辞任         補欠選任

  石毛えい子君     増子 輝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  増子 輝彦君     内山  晃君

同日

 第一分科員大口善徳君、高木美智代君、第二分科員城内実君、平岡秀夫君、赤羽一嘉君、第四分科員城井崇君、中根康浩君及び馬淵澄夫君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十四年度一般会計歳入歳出決算

 平成十四年度特別会計歳入歳出決算

 平成十四年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十四年度政府関係機関決算書

 平成十四年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十四年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)


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     ――――◇―――――

山名主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十四年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 おはようございます。

 平成十四年度厚生労働省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明を申し上げたいと思います。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額が二十兆三千四百三億円余、これに対しまして、支出済みの歳出額が二十兆五百五十七億円余、翌年度繰越額が二千四百三十五億円余、不用額が四百十億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算について申し上げます。

 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額が四十兆三千五百二十二億円余、支出済みの歳出額が四十兆五千九十七億円余、翌年度繰越額が三千七百九十四万円余でありまして、差し引き額が一千五百七十五億円余になっております。これを事業運営安定資金から補足するなどといたしまして、決算をいたしました。

 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済みの歳入額が七百五十二億円余、支出済みの歳出額が七百九十四億円余でありまして、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引きといたしまして四十二億円余をこの会計の積立金から補足することとして、決算をいたしました。

 第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済みの歳入額が一兆三百三十八億円余であり、支出済みの歳出額が九千九百三十一億円余、翌年度繰越額が三百七十億円余でありまして、差し引きいたしまして三十五億円余をこの会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。

 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済みの歳入額二十二兆六百八十六億円余、支出済みの歳出額が二十兆七千二百九十三億円余、翌年度繰越額が六十七億円であり、差し引き額が一兆三千三百二十六億円余を翌年度の歳入へ繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、労働保険特別会計につきましては、収納済みの歳入額が八兆八千七百三億円余、支出済みの歳出額が八兆一千三億円余、翌年度繰越額が二十九億円余、未経過保険料相当額が二百七十一億円余、支払備金相当額が千九百十億円余でありまして、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引きといたしまして五千二百十億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に関します平成十四年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げたいと存じます。

山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。

増田会計検査院当局者 それでは、平成十四年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百七十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況六件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号五一号及び五二号の二件は、虚偽の勤務実績によって給与等を支出しているものであります。

 同五三号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたものであります。

 同五四号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。

 同五五号は、厚生年金保険の老齢厚生年金の支給及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったものであります。

 同五六号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。

 同五七号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。

 同五八号は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。

 同五九号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。

 同六〇号は、医療施設等施設整備費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。

 同六一号は、緊急雇用創出特別基金事業における新規・成長分野雇用創出特別奨励金の支給が不当と認められるものであります。

 同六二号から八六号までの二十五件は、介護円滑導入臨時特例交付金が過大に交付されているものであります。

 同八七号から八九号までの三件は、社会福祉施設等施設整備費補助金が過大に交付されているものであります。

 同九〇号から一一三号までの二十四件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。

 同一一四号から一二五号までの十二件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。

 同一二六号から一三三号までの八件は、精神保健対策費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。

 同一三四号及び一三五号の二件は、介護保険事務費交付金が過大に交付されているものであります。

 同一三六号から一五五号までの二十件は、介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるものであります。

 同一五六号から一六七号までの十二件は、国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるものであります。

 同一六八号から二一四号までの四十七件は、国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。

 同二一五号から二二〇号までの六件は、水道施設整備費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。

 同二二一号は、技能向上対策費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。

 同二二二号は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。

 同二二三号は、介護給付費に係る国の負担が不当と認められるものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、診療報酬における基本診療料等の届け出の受理に関するものであります。

 基本診療料等の届け出の受理に関する取り扱い通知が入院基本料の減額を定めた通知と混同されやすいものとなっているなどのため、受理することのできない届け出が受理され、その結果、誤った基本診療料等が医療機関において算定されておりましたことから、厚生労働省に対して、是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、調剤報酬における調剤基本料の請求に関するものであります。

 調剤基本料につきましては、多数の薬局において、一カ月当たりの処方せん受け付け回数等の実績を把握していなかったなどのため、過大に算定して請求しており、その結果、医療費が過大に支払われておりました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 平成十四年度の決算検査報告におきまして掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。

 毎年いろいろの御指摘をいただいておりまして、さまざまな分野がありますことも事実でございますけれども、しかし、それに対しましても多くの御指摘をいただいているところでございますので、その御指摘の一つ一つを踏まえて、毎年そうした御指摘をいただかなくてもいいようにどうしていくかということも内部検討をいたしているところでございまして、御指摘に対しまして、私たちも全力を挙げてこれを解消するように努力をする決意でございます。

山名主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山名主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山名主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松分科員 民主党の末松義規でございます。

 きょうは、フリーターといいますか、現在、より自由な労働形態が本当に一般的になってきた。フリーターと言われる人々は、日本で今、民間の研究機関によれば、四百十七万人もいるそうであります。数万人とか数十万人だったら、そこは例外的なという形で済ませられるかもしれませんが、五百万人弱ぐらいになってきますと、これまた大きな社会的な現象と言えますし、また、これはどんどん伸びていっているという状況にございますから、これについて、私の方できょうは質問をさせていただきたいと思います。

 特にフリーターの場合、ある日は働いてある日は働かない、そういう極めて柔軟かつ自由な勤務形態でございます。そういったところで、私の方がまず第一に質問させていただきたいのは、例えば賃金払いにしても、月払いではなくて週払いあるいは日払いといったさまざまな給与システムが出てきておりますけれども、一方、これはITの普及なんかによって、今度はサービスの提供者としてこういった方々に対して、最近非常に大きくなってきたんですけれども、給与支払いの代行ニーズというふうな需要が高まってきています。

 どういうことかといいますと、実際に給与を計算してあげて、代行をして、つまり、フリーターという方々に一応登録をしていただいて、さまざまな職業あるいはその日その日に合った仕事をマッチングさせるという、職業紹介の一種なんですけれども、そういった中で、給与の支払いも代行しよう、そういうサービスも出てきているんですけれども、このサービスの中で、実際に給与の計算もしてあげて、さらに給与の代行もという、これをもっと一般的な位置づけをしてほしいというニーズも出ております。

 そこで、労働基準法を見ますと、実際に賃金の支払いは直接でなきゃいけないというような形が書いてございますけれども、こういう新しい現象に対して、給与を代行する、そういったことを規制緩和という観点から認めていいと思うんですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 末松委員から、いつでございましたか、質問主意書でも一度お出しをいただいたことがありまして、私もそのときにそれを拝見して、こういう考え方もあるのかなというふうにそのときに思った次第でございます。

 今までの考え方でいきますと、もちろん正規の方でありますと言うに及ばずでございますけれども、雇い主と雇われている人、この間で、賃金の場合には、それはもう対でお支払いをするというのが原理原則になっているわけでございます。そうしませんと、いろいろの問題も過去に起こってきたという経緯もあるものですから、そういうことになっております。

 今のお話は、今お聞きをいたしますと、フリーターの皆さんがおみえになって、そしてそのフリーターの皆さん方の中の、それは日当の方もあるし週幾らの方もあるし、そういう計算を代行してちゃんとしてあげるという人があるという。この計算をするというものは、それはそういう職があって私はいいんだろうと思うんですけれども、計算をして、お金も雇い主の方から預かってきて、そしてその人が雇われている人に渡すというところまでいきますと、またいろいろの問題が生じてくる可能性がある、心配をしなきゃならないことになる。いい人ばかりだったらいいわけですけれども、そこはなかなか今の制度の中では難しいと私は思うんです。

 計算をしてもらうというのは、私はそういう職業というのはあるだろうというふうに思うんですが、そこは先生、いかがでしょう。

末松分科員 私に質問されても、私が質問するんですからあれですけれども。

 質問主意書の中で大臣の方から出てきたお答えが、中間搾取とかあるいは賃金の支払い代行者が倒産した場合、こういう事例について問題があるんじゃないかという御指摘がございました。

 私も、いろいろと事情を聞いておりますと、給与の支払いの計算をしてあげている。さまざまなフリーターの方が登録されて、そして給与計算なんかも任せておる。そういった中で、サービスとして、ではそのまま払ってよ、そういうふうなサービスをぜひお願いしますよという、そういった声が非常に高いのも事実であります。

 そういったときに、例えば、もともとの二十四条の趣旨、中間の搾取というものをやるという話になるのかな、あるいは、なった場合に、防護的な措置がとられれば問題ないんじゃないかというのがまず第一の質問なんですね。

 例えば、直接支払いといっても、今は実際には支払いは銀行決済というか、銀行から振り込みでやっているわけですよ。そういった意味で、直接支払っている例はない。だから、二十四条のただし書きにも書いていますように、実際に労働協約の中で、例えば給与計算をやっておる会社に給与代行をお願いしますよ、それは受諾しますよという労使の間で話し合いがなされていれば、そこは別に圧力の中で決めさせるというような状況が認められない限り、そこは解決されるんじゃないかなという気がしているわけであります。

 と同時に、例えば、給与支払い代行者が倒産するケース、そういったのも問題じゃないかと御指摘をいただきましたけれども、この場合も、例えば給与支払い代行者のところには実際にさまざまな企業が登録しているんですね。こういった人がいたらぜひ一時的に雇ってくれというような、日払いでいいからとか、そういったニーズがたくさん企業からも来ている。それをマッチングさせる事業形態が非常に今伸びているんですけれども。

 そういった中で、例えばもしその給与計算の会社が仮に倒産するという話になった場合には、再度、このバイトといいますか、そういった方々に改めて支払うんだよという決めさえやっておけば、そういう一時的な不払いということが避けられるんだろうと思うんですね。

 ですから、そういう非常に大きな社会的ニーズが生じてきているということは、この二十四条を実際変えなきゃいけないということじゃないと思うんですよ。労働協約の中できちんとそれを位置づけられれば問題ないと思うんですね。そこをぜひ御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 今のお話は、今までのように、正規の雇用が当たり前で、企業とそこで働く人たちとの雇用関係がちゃんとでき上がっていた、そういう時代ではなくて、新しい時代を迎えて、フリーターの多さがいいか悪いかの問題は別途ありますけれども、そういう雇用形態をみずから選ぶ人たちもあることもまた事実でございますから、そうした新しい働き方、生き方というものに対して、それに対応できるシステムをどうつくるかというお話なんだろうというふうにお聞きをしたわけでございます。

 労働基準法にいたしましても、その他の法律にいたしましても、きちんとお勤めになっている皆さん方を中心にして、今まで、中間搾取があったりした、そういう過去の経緯もあるものですから、そうしたことが全くできないように、そこは厳正に基準を決めてやってきているというのが現在までの姿であります。今までのそうした法律に照らして言いますと、今御指摘になりましたことはなかなか難しいということだというふうに、この前も御答弁を申し上げたとおりでございます。

 しかし、新しい生き方が生まれてきて、個人個人でなかなか経理も十分にできないという人も中にはあるでしょうし、そうした人に代行して経理を行うという人は、それは出てくるだろうというふうに思いますが、今度は、その人たちにお金そのものも、日当ですか週なのかよくわかりませんけれども、その賃金をそこを通してもらうということまで広げていいかどうかのお話だと思うんです。現在の法律では、そこはだめですよということに私はなっていると思うんですね。労使の間で契約がちゃんとできればいいではないかと。労使と申しましても、これは、個人と雇い主との間の契約がちゃんとあればいいではないかということなのかもしれません。しかし、現在の法律は、そこはできるだけ厳しくするように私はできていると思っております。

 しかし、時代の変遷もありますから、時代の変遷に合ったように、改善するところは改善をしなきゃならない点もあると思いますし、検討しなきゃならない点も、それは私はやはり出てくると思っております。したがって、その辺のところは、これは、それこそ労使の皆さん方の、それぞれの立場の皆さん方の御意見も聞かなきゃいけないというふうに思いますが、そういう事態がどう起こってきているのかということも、よく私たちももう一度整理をさせていただいて、先生の御指摘になっていることにどう私たちがお答えができるのか、あるいはまた、一般に今働いておみえになりますフリーターの皆さん方のような人たちの要望というものに対して、それに対してどう私たちが対応できるのか、どうしたらその皆さん方に御迷惑をかけないようにすることができるのかといったようなことも、それは少し整理をしなきゃいけないと思いますから、少し整理させてください。

末松分科員 ぜひ早急に整理をしていただきたい。私も、中間搾取とか、それはもうないという中で、二十四条の、法律自体の違反じゃないと思うんですよ。これは柔軟な解釈の中で可能だと思います。そういった、ちょっと行政規則的なところを早くまとめて、整理していただきたいと思います。強く要望させていただきます。うなずいていただいているんで、ぜひお願いします。

 それから次は、例えば週払い、日払いの賃金労働者、こういった方々は社会保険制度がないというのが現状なんですね。実際に、若干柔軟な形で厚生労働省も対応されたという事実は知っております。例えば、正規の、正社員の四分の三の労働日数がある場合とか、あるいは正社員の給与の四分の三が支払われている場合は、これは社会保険、特に健康保険とか厚生年金保険ですか、同じような形で取り扱うという話になってきているんですけれども、これはやや重い問題なんですけれども、実際にこういった四百十七万人のうちの大半の方がそうじゃないケースの場合、ぜひこれも御検討いただきたいと思うんですが、いかがですか。

坂口国務大臣 フリーターの四百万か二百万かという話はいろいろございまして、失業者をその中に加えるかどうか、派遣業の人たちを加えるかどうかということによってその数字は変わってくるわけでございますが、確かに、フリーターと言われている皆さん方の中でパートの皆さん方がかなりおみえになって、パートの皆さん方の保険が十分でないことは私たちも非常に気にしているところでございます。

 今回の年金改正のときにも、二十時間ぐらいまでは何とか引き下げて、そして二十時間ぐらい働いておみえになる皆さんであれば年金にもお入りをいただけるようにできないかというので、いろいろ御相談を申し上げたわけでございます。これに対しまして、経営者の皆さん方は、この経済状況のところでそれは困るというふうにおっしゃるのは私もわからないではないわけでありますけれども、今パートで働いておみえになる皆さん方から随分反対が実はございまして、それで反対の署名がどんと寄せられたということがあって、私もここは予想外と申しますか、意外だったわけでございます。

 それで、少し検討させていただく時間をつくろうということにさせていただきました。それにはやはり、年金制度の中でいわゆる三号被保険者という制度があることも私は影響していると思うんですね。パートで働いておみえになりますけれども、しかし、三号被保険者の範囲の中で、百万少々の年間の所得の中で働いていこう、そうすれば三号被保険者になっておれるではないかという御趣旨も私はあるのではないかというふうに思っておりまして、これは年金制度全体にかかわる問題かなということも思ったわけでございますけれども、しかし、これは捨てておくわけにはいきません。早く決着をしなければいけないというふうに思っております。

 五年以内にひとつもう一度御相談を申し上げてということに今なっているわけでございますが、一刻も早くここの問題、解決しなければいけないと思いますし、それで、正社員並みの保険料ですとかいったものを初めからつくっていくというのも一つの方法ではありますけれども、もう少し段階的に進めていくというようなことも私は一つの方法ではないかというふうに思っているわけでございます。

 特に、そうしたパートの皆さん方を多く雇っておみえになりますような企業に、今度は企業の負担もふえるわけでありますから、影響を与えることも事実でございますので、その辺のところもあわせて今後検討していきたいと思っております。

末松分科員 海外の事例もそのとき、お調べになっているとは思いますけれども、早急にお調べいただいて、そして早急な結論を出すということで、ちょっと決意のほどをお願い申し上げます。

坂口国務大臣 海外の諸情勢もかなり調査いたしておりますし、今後ももう少しまた調査もさせていただきまして、日本に最も適した形で早く決着がつけられるように努力したいと思っております。

末松分科員 あと、副業の問題についても関連してお話をさせていただきます。

 今、多くの企業で、労使契約、就業規則の中に副業を禁止する規定というのがございます。

 パート労働者、フリーター等の方々、あるいは今大臣が言われた失業者の方々が非常にふえてきている。リストラをすればするほど、みんな失業者になるんですね。その方々は、正規の雇用がなければ、やはりパートで食いつないでいかなきゃいけない、こういう事情が今極めて深刻な状況であることは大臣が一番御存じだと思うんですけれども、そういった中で、稼がにゃいかぬという、食わにゃいかぬという実際のニーズがあるわけですよ。家族を養わなきゃいけない。そういったときに、いろいろな企業で副業を禁止するという。

 正規の雇用をされている方々も、非常に不景気なために給料が少なくて、もっと副業で生活を安定させたい、そういうニーズもございます。そしてさまざまな、私アラブに行ってもよくわかるんですけれども、大学教授が、昼間は学生に教えていて、夕方からタクシーの運転手をやっているなんというケースも結構たくさんあるわけですよね。さまざまなケースがありまして、日本の場合、職業選択の自由ということから考えると、副業という、例えば夜は夜で働く、雇用時間が過ぎたものをさらにほかのところで働いちゃいかぬというのは憲法違反、職業選択の自由を害するものであると思うんですね。ただ、そのときに唯一制限ができるのは、例えばトヨタで働いていた方が、実は深夜、日産で働いていた、これは問題だろう、それはわかるわけですね。

 そういうのはわかるんですけれども、そうじゃないようなケースも多々あるわけですね。そういったことについてまで副業は禁止だというふうに言われてしまうと、非常にこれは勤労者の立場からも問題だというふうに思うんです。

 そこを、一律に副業はだめだというようなことではない形を、これは労使だけで決めればいいという話であると、今までの形態であれば、それは専属で、そして年功序列制度があって、そういったエレベーターの中でやっていけたんですけれども、さまざまに今非常に経済が厳しい中、そういう厳しさの中でやはり生活を安定させていかなきゃいけませんから、そういった観点から、副業を禁止ということは、これにやはり一定の制限をかける必要があるんじゃないかと思うんです。法的には副業は何ら制限されていません。労使の協約の中でやっているんですけれども、そこを、やはりそういう時代の流れに応じた形での措置をとっていかなきゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 おっしゃるように、ここは法律の上では別に制限はしていないわけでありまして、お話ありましたように、大きい企業で労働組合がしっかりしておるところは、労使の間でよく話をしてください、こういうことになっているわけでございます。中には労働組合のないところもございますし、それからパートの場合等は、それこそパートを幾つかおやりになっている方というのは、これはあるわけでございます。

 正規の雇用をされますときには、やはり労使で、これは労働条件にもよるんだろうというふうに思いますけれども、お話し合いをいただくということが一つの大事な通過点ではないかというふうに私たちは思っておる。通過点という言葉は余りよくありませんが、労使でよくお話し合いをしていただくのが、そこが大事というふうに考えているわけでありまして、こちらでそこを制限するとかどうするとかというようなことではないんだろうというふうに思っております。

 皆さん方も、できれば一カ所で、それで十分の賃金があれば、それが一番望ましいんだろうというふうに思いますけれども、現実問題として、そうもいかないような現実もあることも、これもまた事実でございまして、正規ではなくてパートでもう一つ何かをなさってつないでおみえになるという方も、私も何人かおみえになることもよく存じているわけでございます。

 その辺のところは、しかし、正規に雇われている皆さんの場合には、そこのいわゆる事業主とよく御相談をしていくというのが私は出発点だと思うんですね。それは、いわゆる労働条件、賃金をどれだけにするかという話ともかかわってくる話でございますから、そこがしかしスタート点だというふうに私は思っております。

末松分科員 使用者側に対しても、勤労者の方々の方は、レジスターといいますか、一応明らかにして、こういう形で働くんだよという位置づけ、みんなクリアになった上で、そこで、副業ということについては経営者側もそれはわかりましたよというような形であれば、それは問題ないということですね、大臣がおっしゃることは。

坂口国務大臣 雇用している側がそれはいいよというお話ならば、それはいいと思うんです。

末松分科員 確かに、今、労働時間というのは一つありますけれども、ただ、生活もかなり厳しいというような一般的な事情がございますので、そういった中で、労使の中で、しかも無理がないという形であれば、そこはいいではないかというお話をいただきました。

 一応フリーターについての関係のお話を終わりまして、最後に、ちょっとこれは突然の質問になりますけれども、大臣、私もこの前、連休にアメリカに行って、非常に異常肥満の方が物すごくふえているというのを、私びっくりしたんですね。非常に太っていらっしゃる方が多い。

 そこで、アメリカもそうですけれども、日本も、駅前で元気なのは薬屋さん。アメリカも薬屋はでっかいのがありますよね。昔は栄養失調で死んでいたんですけれども、今は栄養過多で、生活習慣病によって亡くなる方が多い。それに対して医療保険の額も年々非常に大きな額で増大していっている。

 こういうことを考えると、単に、例えば太ったから、肥満になったから、だから対応措置でどうするというんじゃなくて、むしろ、肥満の原因となる食事について、その食事についても、ある意味じゃガイドライン的な、厚生省の方でやっておられるのも存じ上げているんですけれども、そういった中で、例えば日本の伝統食が非常に効果があるんだということで、アメリカでマクロビオティックという、日本の伝統食を中心とした食生活が今非常にファッショナブルな形になっています。久司道夫先生という方がやっておられて、今、クリントン大統領とか、私もゴア副大統領に久司道夫先生の御紹介で会わせていただいたんですけれども、そういう指導者の方々、カーター大統領とか、例えば玄米食、ブラウンライス、そういうのを中心とした食事療法が非常にはやっている。そういうことがございまして、そういう食事療法、そういった言葉、御存じですか。ちょっとお聞きしたいんですけれども。

坂口国務大臣 申しわけないですけれども、正式な名前ですとか詳しい内容のことは、全く私存じません。ただ、最近、玄米食を中心にした新しい療法があります、いいですよというようなことをおっしゃる方がちょいちょいあって、そして、そんな本も出ていますよというようなことをおっしゃる方がありましたので、何となくそういうことが広がっているんだなという印象は持っておりましたけれども、正式の名前でありますとか、そうしたことは存じませんでした。

末松分科員 このマクロビオティックというのは世界で四百万人ぐらいやっていて、アメリカで二百万人ぐらいやっているんですね。ちょっと、今、本を私持ってきていますので差し上げますので、ぜひお時間のあるときにお勉強いただきたいと思うんですけれども。

 西洋医学的には対症療法というのは一つ重要なんですけれども、その前に、食育というのが今非常に大きな問題になっています。食育法案が今出ているというのもわかっていますけれども、そういう食に対する教育というのは、実は私も受けたことがなかったし、自分の好き勝手なものを食べていた。しかも、ファーストフードとかジャンクフードと言われる食事内容を日本もかなり謳歌してきている。アメリカなんか、今マクドナルドに対して訴訟が起こっていまして、こんなに異常肥満になったのはマクドナルドのせいであるということで、訴訟でやられているというような状況にもなってきています。

 特に異常肥満とかあるいは生活習慣病の原因となるこの食生活について、ぜひ大臣にも、そういった研究を厚生労働省としてもしっかりやっていただきたいという思いで、ぜひお願いしますということで、ちょっと大臣の御決意を最後にお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 わかりました。生活習慣病というふうに言われております部分の大半は、やはり食べ物からきているというふうに言わざるを得ません。肥満は、肥満だけではなくて、それによって多くの病気を引き起こすことは事実でございますし、それがまた医療費に大きくはね返っていることも事実でございます。

 食べるものだけは、食べなければいいというふうに言いますけれども、これほどまた難しいものはございませんで、私自身も、だれかが周辺にいるときには控えるんですけれども、一人だけになってしまいますと、どうしても抑制がきかないという悩みを抱えておるわけでありまして、そうした意味で、ぜひひとついい方法があれば、できるだけそれは多くの皆さん方に取り入れていただければ幸いだというふうに思います。

末松分科員 この本を提供させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山名主査 これにて末松義規君の質疑は終了いたしました。

 次に、萩生田光一君。

萩生田分科員 おはようございます。自由民主党の萩生田光一でございます。

 マクロビオティックの話題の後に出てくるにはいささか心苦しいわけでございますけれども、せっかくの機会をいただきましたので、質疑をさせていただきたいと思います。

 ちなみに、私たちは党内にヘルシーフード研究会という議員連盟を発足いたしまして、もちろん、お隣の津島先生も主要メンバーでございますけれども、つい先日、第一回目の会合を開きました。広尾のレストランで、野菜だけを食べて、これからの食生活の改善を図ろうという、一応自意識は持っているわけなんですけれども、結果として、二次会でみんなスパゲッティやラーメンを食べていたようでございますので、余り意味がなかったかなと、今末松先生のお話を聞いて反省をしていたところでございます。いずれ大臣もゲストとしてお招きをしたいと思っておりますので、その節にはよろしくお願いしたいと思います。

 我が国において、がんは、一九八一年、昭和五十六年以来、死亡原因の第一位となっており、疾病対策上の重要課題であることは、ここにいらっしゃるすべての皆さんが承知をしているところだと思います。この間、がん研究についてはさまざまな取り組みがなされて、発生原因の解明や臨床耐用研究が進められてまいりました。また、その予防医学も進歩をして、がん検診は、特に一九八二年、昭和五十七年から実施をされた老人保健法に基づく医療等以外の保健事業として全国的に体制の整備がなされ、少しずつ普及はしてきたというふうに認識をしております。

 しかし、一九九八年の平成十年から、国からの補助金は廃止をされ、市町村がみずから企画立案をし実施する事業と位置づけ、地域における適切ながん検診の実施を目指してまいりましたが、もとより医療圏をさらに細かくした自治体単位では、公立、私立を問わず、医療施設や検査機等の地域インフラに大きな格差があり、また、財政力の違いによっておのずと検査内容や検査制度が異なるといった問題が発生をし、地方自治体の担当者は戸惑いを感じているのが実態であります。

 そこで、今回私は、がん検診の中でも、女性のがん患者の罹患率が第一位、年間約三万五千人が発症し、残念ですけれども約一万人が死亡をしている、乳がん検診のあり方についてお伺いをしたいというふうに思います。

 既に参議院でも公明党の浜四津先生が熱心にこの問題には取り組んで、大臣も答弁をされているようでございますけれども、その後、厚生労働省は、本年四月二十七日付で、老人保健課長通達という形で「「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の一部改正について」を発し、この中で、乳がんについては、乳房エックス線検査、マンモグラフィーを原則実施とすることとし、年齢による乳腺密度やマンモグラフィーによる検診体制の整備状況を考慮して、当分の間は視触診もあわせて実施をすることとしたところであります。

 マンモグラフィーの有効性については、既に専門家の間でもさまざまな意見があるようですが、触診のみに頼るよりは数段に発見率が上がることは確かであります。しかしながら、その整備状況は、国全体でもわずか三千台、しかも、放射線学会の仕様基準を満たすのはわずかに半数の千五百台ということであります。そのほとんどは診療用に設置をされたもので、加えて、熟練をした撮影技師や、あるいはそのフィルムを読み取る読影医師の確保は、現状では困難な地域も多々あります。

 そこで、厚生労働省は、今回の通達を出すに当たり、増加傾向にある死亡第一位のこの乳がんの全国の検診状況をどのように理解をし、課題をどのようにとらえているのか、マンモグラフィーの導入状況も含めて、お尋ねをしたいと思います。

中村政府参考人 乳がんの件についてでございますが、先生からかなり詳細に今経過も御紹介いただきましたけれども、おっしゃるとおり、乳がんは女性のがんの罹患率の第一位というふうになっておりまして、しかも年々増加する傾向にございます。四十代、五十代という比較的若い世代の女性のがん死亡の第一位になっているということで、乳がん対策は大変大事だというふうに認識しております。

 こういう状況でございますので、今御紹介にありました老人保健事業で行われております早期発見、早期治療につながる乳がん検診、これをもっとしっかりしたものにしていかなければならない、こういうことで、昨年十二月にがん検診に関する検討会を設置して、今のがん検診の状況の問題点も含めまして検証を行っていただきました。

 そこで指摘されたことをまず御報告申し上げますと、受診率が低いということで、対象年齢の女性の約一二%の受診にとどまっている。それから、私どもこれまでやってきましたがん検診の基準では、最も罹患率が高い四十歳代の女性に、今先生から御紹介がありました有効性の高いマンモグラフィーの導入がされていないこと、五十歳代以上の方にはやるようにと言っておりましたけれども、四十歳代が抜けているじゃないかと。それから、今まさに御指摘がございましたとおり、マンモグラフィーを導入した検査をやっている自治体、これは平成十二年ころは三割弱でございまして、現在、四八%までは上がってきておりましたけれども、まだまだ半数行っていないということで、大変問題である、こういう御指摘をいただきました。

 そこで、三月三十日にこの検討会で提言いただきましたことは、乳がんの検診につきましてはマンモグラフィーを原則とする、その対象については、これまで五十歳以上とされていたことを四十歳以上に拡大する必要がある、こういう報告書をいただきましたので、この提言を受け、御指摘ありましたように、四月二十七日にがん検診の指針の改正を行ったところでございます。

 このように、改正を行ったばかりでございますけれども、何しろ、全市町村においてマンモグラフィーの導入が可能になるようにということの体制整備を図っていくことが最大の課題だというふうに考えております。

萩生田分科員 局長、私は地方議員の経験が長かったので、その立場で申し上げますと、国の省庁の課長通達あるいは局長通達というのが、各自治体にどれだけ真摯に受けとめられ、重く認識をされているか、そのことをよく認識をしていただきたいというように思うんです。

 普通の市町村であるならば、この課長通達あるいは局長通達一枚で、年度途中であってもその自治体の政策が途中で変わるということも十分あり得るぐらい、普通の自治体はですよ、重く受けとめています。この課長通達を全然言うことを聞かないのはせいぜい教育公務員ぐらいでございまして、普通の自治体の公務員は、真摯に受けとめて、さあ、国がそういう方針を出したんだから、うちの市としてはどうしようか、うちの町としてはどうやって対応していこうかということを本当に真剣に考えるんです。

 ですから、四月二十七日という年度がわりの直後にこういう課長通達を出して、それぞれの全国の自治体が今どういう状況にあるかといいますと、地域事情を考えないで、あるいは承知をしていたのかもしれませんけれども、通達だけを受けた自治体は、言うならば、マンモグラフィー検診をやりたくてもやらない、あるいはできない、こういう状況にあるわけです。そうしますと、それを新聞が書き立てて、市民は不安だけをあおられているというのが今日の状況であります。

 私の地元は八王子市でございまして、人口五十三万、東京都下最大の都市であります。にもかかわらず、この乳がんについて、老人保健事業に基づいて、昭和六十二年から三十歳以上の女性市民に対して、視触診による検診をずっと実施してまいりました。

 実施主体としては、地元の社団法人格を持った医師会の先生方にお願いして、加盟医師のうちの大体百病院・医院でそれぞれ御協力をいただいて、昨年度、平成十五年度の実績でいいますと、対象者が十四万三千百八十四人に対して受診者が一万五千三百七十四人、一〇・七%の受診率です。そのうち八百六十九人が要精密検査となりまして、結果として二十四名のがん患者が発見をされている、こんな状況にあるんです。

 国が出した指針どおりに市がハンドルを切りかえるとすると、まず第一に、これまで三十歳から実施をしておりましたので、この三十代の皆さんが対象外になるという問題があります。

 また、マンモグラフィーを備えている医療機関は市内で七病院だけでありました。五十三万都市、東京にある自治体であっても七病院だけであります。しかも、七病院のうち、言うならば基準を満たしているものはわずかの六病院。すべてが診療用に設置をしておりますので、例えば、一度に大量の検診をするような、人が歩く導線ですとか、あるいはたまるスペースというものは全然考えておりません。また、マンモグラフィ検診精度管理委員会の認定読影医師は、六病院のうち一名だけでありました。

 受診率が今後上がることが予想されるわけですけれども、例えば一〇%上がるだけで三万人を超えるわけですから、これを既存の六病院で対応しろといっても、いささか不可能だというふうに思います。

 現在、視触診の場合は単価約二千九百円で対応しているわけですけれども、併用した場合には八千円ぐらいが予想される、こういうことでございます。

 御説明にはございませんでしたけれども、平成十年度以降、補助金はカットしたけれども、実際には一般財源化をして自治体の支援をしているというのが国の姿勢だというふうに思うんですけれども、私の住む東京都は不交付団体であり、私の住む八王子は不交付団体なんです。すなわち、国からの補助を一銭ももらわない状況の中で、自治体独自の乳がん検診というのに今まで取り組んできた。

 さあ、ここで、国が大きな指針を出した、大臣も明確な答弁をされた。ところが、結局、インフラ整備は十分にない。ですから、残念でございますけれども、平成十六年度からの導入は早々にギブアップしました。これを新聞に書き立てられて、市民の皆さんにしてみれば、なぜ国が示したマンモグラフィー検診を自治体はできないんだと。これは、私、いささか自治体が気の毒だというふうに思うんです。

 やはり、課長通達、局長通達というのはそれだけの重みがあるわけですから、もう十分全国の状況を把握しているんだとすれば、そのすき間をどうやって埋めていくかも含めて、自治体と相談をしながら通達を出してさしあげなかったら、自治体はただ戸惑うだけだというふうに思うんです。国策としてこのがん撲滅に立ち向かう以上、政策的に必要なインフラ整備は、新たな支援メニューを構築してでも対応すべきだと私は思います。

 地域格差を払拭するために、少なくとも二次医療圏に一カ所の検診可能施設の整備、加えて、地域によっては循環検診車の配備など、マンモグラフィーを有効に活用する環境整備が必要だというふうに思います。

 この際、この乳がん検診については、地方との連携のもと、国が真正面から取り組む姿勢を国民に示すことによって、受診率も上がり、早期発見による死亡率の減少につながるものと信じますが、地域事情をどのように把握されているのか、お尋ねしたいと思います。

中村政府参考人 今先生から、八王子の事例を中心にして御紹介があり、乳がん検診の基準の見直しということと、実際に事業を実施されております市町村との関係についてどう考えているのかという御指摘でございましたので、私どもも、背景なり、考え方を少し御説明させていただきたいと思います。

 まず、老人保健事業でございますけれども、計画的にやっておりまして、老人保健事業の現在の計画は今年度いっぱいまで実は続いており、十七年度以降、新たな計画を策定するということで、がん検診の基準の見直しについても、十七年というふうに当初予定していたわけでございますけれども、先ほど来申し上げましたとおり、乳がん検診につきましてさまざまな問題が指摘されておりますので、我々、昨年十二月に検討会を設置したと申し上げましたけれども、少し作業を前倒しにして、乳がん検診の現在の状況について検討をお願いしたところでございます。

 その結果、今先生から、現在、乳がん検診については、三十代以上の方についてこれまで視触診の検診をしてきたということを御指摘ございましたけれども、そういったことも含めまして検討していただきましたところ、三十代の視触診による検診については死亡率を改善するという根拠が全くない、こういう結果が出ました。

 他方、四十代以降について、マンモグラフィーを導入した検診については死亡率を改善する確かな根拠があるということがあり、このがん検診の基準の見直しの検討会におきましては、これからのがん検診のあり方、今、乳がんと子宮がんをまず二つ見直しをしていただきましたし、十七年度に向けて、その他のがん検診についても順次見直しを行っていただくことといたしておりますけれども、まず、本当に効果のある検診をきちんと実施し、また、今検診を実施されておりますけれども、受診率を高める努力をすべきだというのが、総論としてはこの検討会の基本的な方針でございました。

 また、基準の見直しについては、地域の実施体制について問題はあるかもしれないけれども、まず基準としては早期に見直しをし、その基準に合った実施体制の整備についてはできるだけ行政の方にお願いしたい、こういうことで、昨年度末ぎりぎりでございましたけれども、三月三十日に基準の見直しを、乳がんと子宮がんについて出していただいたというところでございます。

 率直に申し上げまして、私ども、それを受けて通知の見直しということで、四月二十七日、約一月弱でございましたけれども、そういうことで急遽通知を出させていただきましたので、確かに、通知を見直すということは年初めの部長会議や課長会議でもお話、予告はしておりましたけれども、実際に事業を実施されている市町村にとりましては大変急な話だということは、よく認識いたしております。

 ただし、先ほど申し上げましたように、女性の四十代、五十代の死亡率の一位のがんでございますので、やはり国として基準を改めるのはできるだけ早く、実施体制については大変御迷惑をかけるところがあるかもしれませんけれども、順次やっていくということ。

 それでは、実際今、どういう指示をしているかということですが、四月二十七日、基準の見直しとともに、都道府県の担当者に集まっていただきましてお願いをしていますことは、五月中に私ども調査票を発出いたしまして、今、八王子の例は先生から御紹介がありましたけれども、実際のマンモグラフィーによる検査の実施状況、これまでも五十歳以上の方についてはマンモグラフィーの併用もお勧めしてきたところでありますので、そういったこれまでの体制を含め、どの程度カバーできているか、四十歳以上をきちんとやっていくためにどれだけの整備が必要かということを六月中に回答いただく。

 私ども、それを踏まえまして、七月以降、予算のこともございますので、残念ながら対応としては十七年度以降になろうと思いますけれども、今先生からお話がありました体制の整備について、私どもも国としてもきちんとやっていけるように体制を整えたい、こういうふうに考えているところでございます。

萩生田分科員 死亡率一位の乳がんの対応として迅速な対応をした、この厚生労働省の対応というのは、私も一定の理解もできますし、評価もしたいというふうに思います。問題は、この後のフォロー、自治体の不安を払拭してどうサポートしていくかということを同時に見せていくことだというふうに思うんですよね。

 確かに、大事なことですから迅速に対応した、そこまではいいけれども、実際に、国の調査で全国に三千台あるマンモグラフィーというんですけれども、今私が申し上げたように、ほとんどが診療用で設置をしているものですから、それを検査に転用しろといきなり言われても、民間病院は、意地悪くじゃなくて、対応できないという病院がたくさんあるというふうに思うんです。

 しかも、三千台のうち千五百台は、もう基準よりおくれてしまっている古い機械だ、入れかえが必要だ、こういう状況の中で、しかし、国が明確な方針を出すんだったら、やはりそれはセットで、これからどういう支援をしていくかということを示していかなきゃいけないというふうに思います。

 この間、国が胃がん検診やあるいは子宮がん検診に、検診主体を住民に身近な市町村で実施されるがん検診として定着させたこと、そのことによってがん予防の啓蒙に努めたこと、地域医療の向上に期したことなどは、その成果は大きいものがあるというふうに私も思います。一定の検診技術や実績をもって、さらに精密な検査結果によって乳がんの抑制につながるのならば、ここはまさにその第二ステージ、地方任せではなくて、ボールはまさに我々に返されたというふうに思います。

 今後は、デジタル通信の普及で、鮮明な画像を遠隔地で読影することは決して難しいことではなくなるというふうに思うんです。全国を走る検診車から送られる画像を、どこかのセンターに集う専門的なドクターが読影をし、それも一人ではなく複数で読影できるシステムができ上がり、町のお医者さんが行う視触診と、あるいは医療機関が行うエコー検診とを組み合わせれば、強力な体制ができ上がると思うのは素人の私だけではないというふうに思います。問題は、だれが責任を持って取り組むかということだというふうに思います。

 大臣、私ごとで大変恐縮なんですが、三年前、私は義理の姉を四十歳で乳がんで亡くしました。学生時代からバレーボールをずっと行っておりまして、二十前後のときにはオリンピックの強化選手にも選ばれたような、大変活発な女性でありましたけれども、発症からわずか二年間で命を落とすというのを目の当たりにしてまいりました。三十代後半での発症でありました。

 千葉の田舎と言ったら怒られるかもしれませんが、千葉の田舎町におりましたので、エコー検診がせいぜい、マンモグラフィーというのは町の中にも多分なかったんだというふうに思います。国立のがんセンターに入院して初めてマンモグラフィー検診というのを行って、明確にその進捗度がわかったときに、こういう機械が全国に普及していればもっと早く発見できたのになと、どこの家族でも思うのは当たり前だというふうに思うんです。

 それだけ専門家から認識が高まっているわけですから、この機会に私は、国として市町村に対してどのような支援を行っていくのか。既に対がん十カ年計画等々でその必要性は十分声高に叫ばれているわけですけれども、問題はそのすき間をどうやって埋めていくか、これがまさに厚生労働省であり、国の責任だというふうに思います。

 市町村に対して今後の支援をどのように取り組むのか、最後に大臣の決意をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 一昨日でございますが大阪に参りまして、大阪でこのマンモグラフィーを初めとして乳がん予防に取り組んでおみえになります先生のお話を、実は私も聞かせてもらったところでございます。その先生もやはりお姉さんを若くして亡くされた、そういう経験から、ぜひそうしたことがないようにしていきたいというお話でございました。

 確かに、だんだんと日本の中で乳がんになられる方がふえている。昔から、子供さんの少ない人は乳がんになりやすく、子供さんの多い人は子宮がんになりやすいという話を私も聞いたことがございますが、最近のように、子供の数がだんだんと減ってくるということになってまいりましたし、また、お子さんのない方も、産まない方もふえてくるということになってまいりますと、これからもさらに一層これはふえていくということを考えざるを得ないというふうに思います。

 したがいまして、乳がん検診の体制を早く全国的に展開するということは大事なことでございますから、まず、これはマンモグラフィーの話もございますけれども、マンモグラフィーだけではなしに、やはりいわゆる触診といいますか、外から専門医がさわってやるのも、私は、全然これは効果がないというのではなくて、それは発見が多少遅いかもしれません、ある程度のところまで大きくなった人しかわからないかもしれませんけれども、それでもしかし、ある程度そこを発見することはでき得るわけでありますから、私はそれなりの意義があるというふうに思います。

 マンモグラフィーができる体制をどうするか、機械器具と、それからそれに携わる技術者をどう育てるか、両方あると思います。機械の方は、これは予算措置でありますから、無理をしてでも購入すればそれはできるわけであります。人の方はそう簡単にできるわけではありませんので、そこをどうするか。これはもうことしじゅうに結論を出さなきゃいけない、早く出さなきゃいけない。

 マンモグラフィーの機械の購入につきましては、来年度予算でどこまで頑張れるかという話になってくるだろうというふうに思っております。こういう事態でございますから、少しここに特化をしてでも、この購入数というものを、やはり支援体制を大きくして、そして全国にそれが配置できるようにしていかなきゃいけない。

 一昨日も私お話を伺ったのですが、小さな町村に行きますと、やはり検診車の形で、車で巡回をするというのが非常に効率的だというお話もございました。それによって、それが一日も休むことなくそれぞれの地域へ行けるというので、特定された病院へ全部来てくださいというのではなかなか進まないということもありますので、そうしたことも念頭に置きながら、今御指摘をいただきましたことを、市町村との関係の大変重要なポイントでございますので、よく理解をさせていただいて、取り組みをさせていただきたいと思います。

萩生田分科員 大臣が心を込めて御答弁いただいたように、ハードの面は、予算措置さえできれば来年からでも、あるいは極論を言えばあしたからでもできると思うんですけれども、その読み取りをだれがするか、専門的なドクターたちをどう育成していくか、あるいはどこに集まってもらうか。

 実は、私は東京都議会にいたときに東京都の外郭の財団の評議員を務めておりまして、その財団がマンモグラフィーの検診車を持っておりました。もう率直に申し上げて手いっぱいであります。手いっぱいでありますし、検診をした後も、そのフィルムをどこの先生に読んでもらうか、これでまた時間がかかってしまう。

 ですから、やはりデジタル化の世の中を迎えたわけですから、こういったさまざまなツールを駆使して、これからの予防医学というのはまさに省庁横断的に、総務省の皆さんとも力を合わせて、こういったさまざまな日本の持つ技術を駆使すれば、最小限のマンパワーで十分全国をカバーすることもできるんじゃないか。例えば、国立のがんセンターの中にそういう専門医を集めて、しばらくの間はその読み取りを専門にやってもらうような、そういう機関があるとするならば、おっしゃるような検診車によって幾らでもその補完ができるんじゃないかと思っておりますので、ぜひ前向きな、また速やかな取り組みを期待して、終わりたいというように思います。

 続きまして、若干時間がなくなってしまいましたので、入り口だけ今回は御指摘を申し上げたいというように思います。お母さんの次は、小児の医療でございます。

 私の地元、東京都では、今、医療の役割分担の視点から、都内に三病院あった小児の専門医療施設を一つに統廃合して、より高度で多様な総合的医療基盤に支えられた、心から体に至る小児専門の総合医療センターの計画を打ち出して整備を進めているところです。公立病院としての役割を明確にして、プライマリーケアは地元の病院や医院にお任せをして、高度医療や難病治療、あるいは救急救命の三次医療に特化していこうというのが都の考えでありました。

 ところが、統合される医療圏を中心に反対の声が広がり、さまざまな議論に耳を澄ませてみますと、都が目指す方向は一定理解をしながら、その機能の代替がないということが浮き彫りになってまいりました。すなわち、東京では町の小児科医、あるいは病院の小児科ドクターが圧倒的に減少して、十分な医療体制の構築ができない状況が進んでおります。

 都の改革案も、もともとは、核家族化が進み、若い親たちがやみくもに大型病院や専門病院に駆け込むことによって外来がパンク状態にあり、本来の高度医療や救急医療に専念できないというのが課題であったのですが、その課題は、今後の小児科医の確保、あるいは小児科標榜医の後継問題、ひいては小児医療の体制づくりにと変わってきたところです。

 なぜ小児科医が減少傾向にあるかといえば、対象は少子化の子供たち。開業医の経営の視点からすれば、将来性が厳しく、手間がかかり、危険性が高く、それでいて報酬が少ない。大人に使う、例えば点滴や注射の量等、圧倒的に少ないわけですから、今の診療報酬からすると、点数でいくと、どうしても収入が少なくなってしまう。あるいは勤務医で申し上げると、夜間や救急の負担が極めて大きいということが挙げられます。

 たとえ不採算であっても、将来を担う小さな子供たちの命を守ることは国家の責任であり、我々政治家の使命と信じ、将来の小児医療の不安を解消すべく、国の立場で東京へも手を差し伸べていこうと張り切って実は国政の場に立ったわけですが、この半年間、党の部会や勉強会での厚生労働省の考えは入り口から私とかみ合わず、小児医療の確保についても、余り将来不安は感じていない、ドクターもむしろ増加傾向にあると発言をされます。マスコミも一様にこの小児医療の危機を特集番組を組んで報道したり、あるいは同世代の議員も同様の不安や現実問題を抱えているわけですが、この違いは一体どこにあるんでしょうか。

 私は、厚生労働省は我が国の小児医療の現状をどのようにとらえて、今後問題点をどう据えていくおつもりなのか、将来展望も含めて本当は細かくお聞きをしたかったんですけれども、時間がございませんので、今回は入り口で、現状認識を確認させていただきたいというふうに思います。

伍藤政府参考人 小児医療についてのお尋ねでございますが、御指摘のありましたような小児科の医師の不足、あるいはその不安というようなことについては、私どもも問題を共有しているつもりでございます。

 まずその前提として、どんな状況かという客観的な数字だけ申し上げますと、少子化という傾向でございますから、当然患者数は減っているわけでございまして、過去十年程度見ますと、十五歳未満の入院患者は一五、六%減少、それから外来患者は二〇%減少、数字はこのようになっております。

 これに対して、小児科の病院は、過去五年程度の間に一割強病院が減少しておるということでございますが、診療所の方は逆に一割強増加をしておるという状況にもございます。

 全体として、医師の数でございますが、小児科の医師の数は、十五歳未満の人口に対比をいたした数字を見ますと、一万人あたり六・五四人から七・九七人ということで、対人口比では小児科の医師がふえているということは、これは客観的な数字ではそのとおりでございます。

 しからば、何がこういう社会現象を引き起こしているのか、問題点かということでございますが、大きく四つぐらいに整理をしてみますと、一つは、これは小児科に限らないことでございますが、病気の軽重にかかわらず専門的な医療を受けたいというニーズの高まりといいますか、そういう病院志向というようなことがあるのではなかろうか。そうしますと、今言いましたように、診療所はふえているけれども病院は減っておるという実情の中で、病院に患者が集中をしてしまう。特に小児科の場合には、夜間とか休日がほかの科目に比べて多い、こういう実情が一つあるのかなと。

 それから、ふえておる診療所でございますが、これが……

山名主査 局長、簡潔に。

伍藤政府参考人 はい。ビルの中で診療するというような形態がふえておりますので、これがやはりニーズになかなか対応できない、昼間だけ診るというようなことになっておるのではなかろうか。

 それから、まだ意識はされておりませんが、これから大きく問題になるのは、女性の、特に医師の中でも小児科の場合には女性がどんどんふえておりまして、新卒の五割が女性でございます。行く行くは小児科の半分程度は女性医師になるのではないかということで、このあたりの、今、両立といいますか、子育てといったものを抱えながらどうやって医師の業務をこなしていくか、そういった問題がございます。

 それから、今言いましたように、やはり全体と地域の中で、病院と診療所が連携を組むというところがまだうまくいっていないというのが多いところでございますので、いろいろ問題点はございますが、これから地域医療計画の中に、今必ずしもこういう科目別の問題点が的確にとらえられ計画づくりがなされておりませんが、それぞれ地域の実情に応じた体制をどう組んでいくかということで、これは小児科学会、小児科医の方も今問題意識を随分持ってきておりますので、そういうところとよく連携をしながら、行政の中の医療計画の中にこれを組み込んでいくということをこれからぜひ進めていきたいというふうに思っております。

萩生田分科員 ありがとうございました。

 時間がないのでここで終わりますけれども、また次の機会に議論を深めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

 大臣、ありがとうございました。

山名主査 これにて萩生田光一君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻惠君。

辻分科員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 前回、予算委員会の第五分科会、これは本年の三月一日に行われたものでありますが、そのときに、野宿者の問題について坂口厚生労働大臣を初めとして質問をさせていただきました。本日は、前回の質疑の中で明らかになった点、さらに、今後の課題ということで残っていた点に関連して、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、この問題につきましては、二〇〇二年の八月七日にホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が施行され、これに基づいてホームレスの自立の支援等に関する基本方針というものが二〇〇三年七月に策定されました。この基本方針の中で、ホームレス対策については就業機会の確保をされることが最も重要であるということがうたってあります。ただ、同じ基本方針の中では、このことについては民間団体と連携を図って進めるんだということがうたわれております。

 そこで、国として、ホームレスの就業対策について独自の施策がやはり必要とされるのではないかと思いますが、この点については、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 ホームレスの問題につきましては、皆さんに法律もつくっていただきましてようやくスタートをしたところでございまして、それは雇用の問題、健康の問題、住宅の問題、福祉の問題等々、さまざまな角度からスタートいたしておりますが、いずれにいたしましても、スタートしたところでございまして、まだどの分野におきましても十分といったところは私は存在しないんだろうというふうに思っております。これから引き続き全体的にこれは充実をしていかなければならない。

 とりわけ、今まで雇用の問題もかなり手がけてきているようでございますけれども、それではもうこの人たちの雇用が十分かといえば、一般の雇用がまことに厳しい中でございますから、これはこれからも積極的にやらなければいけないというふうに思っております。

 健康問題も指摘されておりまして、この健康問題も大変大きな問題でございますから、ただ単にホームレスの皆さん方だけの問題ではなくて、例えば結核でございますとか伝染性の疾病というものもあるわけでございまして、周辺に拡大をするということもあり得るわけでございますので、健康診断等につきましてはより積極的に行っていかなければいけないというふうに思っております。

 いずれにしましても、この皆さん方お一人お一人に丁寧に対応をして、そしてお話を聞いていかないと前に進まないんだというふうに思っておりますので、そこのところをこれからどう手数をふやしてやっていくかというところが、課せられた課題として、いずれの問題を解決するのにも大事な問題だというふうに今認識をしている次第でございます。

辻分科員 今御答弁なされましたように、健康の問題とかいろいろ多岐にわたる問題の中でホームレス問題を考えていかなきゃいけないということは御指摘のとおりだと思いますが、やはり就労支援の問題というのも大きな核として重要なのではないかというふうに考えるものであります。

 平成十六年度のホームレス対策予算案の概要を見ますと、三十億一千八百万円でありますが、そのうちで就業機会の確保ということで予算が組まれているのは九億四千八百万円、三分の一弱なのであります。

 この点に関して、前回の分科会では、恒久的な公的就業事業というのは本来国の雇用対策としてはとっていないんだというようなお話があって、それとの関連で緊急地域雇用創出特別交付金事業というもののお話がございました。この交付金事業に基づいて地方公共団体においては緊急かつ臨時的な雇用就業機会の創出の施策を講じている、そういう関連でありますが、この交付金制度が平成十六年度で期限切れになるということに関連して、坂口大臣、前回、交付金制度は今後どうしていくのかが問題である、そして、平成十六年度はまさに移行期にあるんだ、こういうお答えをいただきましたが、この御趣旨はどういうことでありましょうか。どういう状態からどういう状態へどのように移行するということで移行期ということをお述べになられたのか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 今御指摘の緊急地域雇用創出特別交付金でございますが、これは平成十六年度を限りといたしました制度でございまして、失業者が非常にふえておりますときに、失業されている皆さん方にとにかく一時的に職をつないでいただいて、そしてそれを本格的な雇用にどう結びつけていくか、そういうことでスタートしたというふうに思っております。

 経済の動向も若干は変わってまいりましたけれども、雇用全体の状況が必ずしもそれに並行いたしましてよくなってきているというところまでも至っていないというのが現状ではないかというふうに思っております。そうした中で非常に目立ってまいりましたのが、いわゆる地域格差でございます。

 例えば、雇用の問題で非常に失業率が依然として高いのは、北から言えば北海道地域、大阪を中心としました近畿、そして、福岡を中心といたしました九州の地域といったところが特段失業率が高い、そこは依然として変わっていないという状況にあります。地域によりましては非常によくなってきているところもありまして、失業率三%台になっているところもございますし、それから、全体の求人も非常にふえてきている地域もあるわけでございます。

 今後、この交付金をどう、私は、交付金をこのままで今後もまた続けていくということはもうできないというふうに思っております。しかし、今後の雇用情勢を見ながら、これにかわるべきものとしてどうしたものをつくり上げていくかということが大事だというふうに今考えているところでございます。

 それは、今申し上げましたように、地域的に非常に失業が多いといった地域に対してどういう手を打つか、そこにどう手を差し伸べるかということが一つの大きな柱ではないかというふうに思います。それから、もう一つは年齢的なものでございまして、とりわけ高校生でありますとか高校を卒業して間もないお子さん、そういう非常に若い皆さん方に対してどう手を差し伸べていくかというような問題がある、あるいは六十歳代の皆さん方の問題もありますし女性の問題もあろうかと思います。

 そういう年齢とかあるいは地域というふうに特化をして、今御指摘になりましたホームレスの問題等もその中に特化すべき課題の一つかもしれません。そうしたところに特化をして、これからどう手当てをしていくかということに非常に重点的な財源の使い方をしていくということが大事ではないかというふうに思っている次第でございます。

辻分科員 今御答弁いただきましたように、この交付金制度というのは、本来は、財政構造改革の中で失業者が生じる可能性があるということで、その対策として、平成十一年度から三年間、そして新たに平成十四年度から三年間、これは補正予算として組まれたものであるということから、ある意味で暫定的なものであって、これは本来的には失業対策全般の問題であるという性格を持った交付金なわけであります。

 そういう意味で、今大臣がお答えいただきましたように、地域格差の問題に特化した対策とか、あと年齢に特化して高校生の問題とか、そして、あわせてホームレスの問題についても特化した対策を立てなければいけないんだ、こういうお話だと思います。

 これは後でまた少し突っ込んで伺わせていただきたいと思いますが、ホームレスに関して特化したものとしては、先ほど申し述べましたホームレスの自立の支援等に関する特別措置法というのがありますから、本来的には、この措置法の中でホームレスの問題をもっと充実した施策を講ずるように論じられるべきなんだ、こういう理解になるかと思いますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

坂口国務大臣 それはそういうことだというふうに思います。

辻分科員 雇用対策ということで、前回の御答弁では、ハローワーク等の中でホームレスの対策についても特別な対応ができる専門員を養成する等施策を講じなければいけないというこのお答えは、国の雇用対策全般の中で、その一環としてホームレス問題をどう考えるのかという関連で御答弁いただいた、こういう理解でよろしいんでしょうか。

坂口国務大臣 そういう趣旨で御答弁させていただいたというふうに私も思っております。

辻分科員 そこで、今後どうするのかという問題でありますが、一方でこの交付金から拠出される基金の中からの拠出によって、現に今、地方公共団体の雇用創出の施策は講じられている。だから、交付金がなくなると、地方公共団体としては現在ホームレス対策として雇用創出の施策の資金が、ある意味では一時的な交付金の中で手当てしているものが、交付金の性格が先ほど大臣も述べられたような暫定的なものであり、それをそのまま継続するのが難しいということになるのであれば、どこからか拠出する資金が講じられなければ地方公共団体側としても非常に困るわけであります。

 ですから、国の側の施策として、現在地方公共団体が行っているそういう雇用創出の施策とリンクするような予算の措置をどのように講じていくのかということが課題となると思いますが、この点についてはどのようにお考えですか。

太田政府参考人 ホームレスの雇用対策でございますけれども、御案内のように、現在でも求人情報の収集とか求人開拓とか、あるいはきめ細かな職業相談、さらには試行雇用事業あるいは技能講習等々やっているわけでございます。また、今年度からも、新たにホームレスの方々のニーズに合わせて求人が確保できるようにホームレスの就業開拓推進員を配置したところでございます。

 こういう形で総合的な就業機会の確保に取り組んでいるところでございますけれども、今お尋ねのように、交付金事業が大変大きな役割を果たしているということも事実でございますので、これにかわる新たな対策を実施する予定はないのか、どうするのかということでございますけれども、来年度以降、新たな対策につきましては、大阪府や大阪市からもさまざまな御要望をいただいているところでございますので、私どもとしましても、今申し上げました現在の対策に加えてどのような対策が必要なのか、どういうことができるのかということにつきまして、御要望も踏まえまして十分検討していきたいと考えているところでございます。

辻分科員 あいりん地区について、雇用創出として予算として八億五千万ほど組まれていて、このうちの六億六千万が交付金からの基金から拠出されているという関連になっているわけであります。ですから、交付金制度が期限切れで、来年度、平成十七年度からどうなるのかということは、今、例えばあいりん地域で雇用創出の施策を講じている地方公共団体、大阪府、大阪市の側からすれば、非常に重大な関心のある事項なわけであります。

 今、その辺については、前向きに府、市からの要望も踏まえて努力をするというようなお話がございましたが、もう少しその辺について、検討されていること及びどのように努力をされようとされるのか、ある程度概括的にしかお答えになれない面もあるかと思いますが、その辺、少し基本姿勢を伺わせていただきたいと思います。

太田政府参考人 先ほど来お話ございますように、交付金事業につきましては、まさに期間限定の特別事業、それからまた、ホームレスということではなくて一般的な雇用対策事業で、それを大阪においてホームレスにも活用していただいているところでございますので、これを延長することは、正直言ってなかなか困難と考えております。

 その後どうするかということでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、大阪府、大阪市からもいろいろな御要望をいただいておりますので、そういうことを踏まえて、どういうことが必要なのか、何ができるのかということを検討してきたわけでございますけれども、ホームレスの方々の就業ニーズ、あるいは置かれた状況というのも極めて多様でございます。年齢もかなり高くなってきている、平均年齢が五十六歳ぐらいになってきているというような状況もございます。それからまた、健康状態も、健康の不調を訴えている方が半分ぐらいおられるということでございます。そういう中で御要望を聞きますと、なるべく軽く臨時的な仕事が欲しいというような要望もございますので、そういう仕事を何とか確保できるような事業ができないかということも含めて、何ができるかということを十分検討してまいりたいと思っております。

 また、あわせて、健康状況とか生活状況とかいろいろな問題がございますので、仕事の確保も大事でございますけれども、ホームレス対策全体としての対応も必要ではないかと考えているところでございまして、こういうことも、全体、総合的に検討させていただきたいということでございます。

辻分科員 非常に前向きに検討していただくという御答弁をいただいて非常にありがたいことだと思うんですが、やはり予算措置が講じられて現実の施策を行うことができるわけでありますから、先ほど御紹介申し上げたように、あいりん地区では八億五千万円の雇用対策費のうち六億六千万円が交付金から来ている。そうすると、その足りない分をどこで手当てするのかということが当然問題にならざるを得ないわけでありますが、それは厚生労働省の十七年度以降のホームレス対策予算案の中で予算措置を講ずるということを基本と考えておられるのか、それ以外の手段、方法を同時にお考えになっているのか、その点はいかがなんですか。

太田政府参考人 交付金事業そのものは確かにかなりの額に上っておりますけれども、これはまさに臨時、緊急として、補正予算を講じまして基金から講じているということで、特別な枠でもってやったものでございます。

 ただ、今回、新たにホームレス対策を考えますと、そういう特別の事業枠というのはなかなか探すのは困難でございますので、やっぱり一般的なホームレスの対策の中で、予算の枠はございますけれども、考えざるを得ないということであると考えておるところでございます。

辻分科員 各自治体では実施計画というのを具体的に策定して、この四月から具体的に実行しているところであります。

 大阪府におきましても、例えば大阪府ホームレスの自立の支援等に関する実施計画というものを策定して具体的に進めている。その中では、ホームレスの方々を四タイプに分けて、就労を望むタイプ、福祉等の支援で就労して生活を望むタイプ、福祉制度の活用を望むタイプ、社会生活を望まないタイプということで、四つのタイプに類型化できるのではないかということで、それぞれに対して施策を講ずるということを実施計画の中で予定しているわけであります。

 就労を望むタイプにつきましては、職業紹介とか職業訓練とか技能講習とか、就労、自立に向けた施策を講じなければいけない。福祉等の支援で就労して生活を望むタイプにつきましては、生活、住宅等の支援とか仕事で自立できるよう提供するとかいうことが必要である。福祉制度の活用を望むタイプについては、やはり生活保護、社会福祉ということが主要な施策になろうと思います。そして、このままでいい、もう社会生活を望まないんだというタイプについては、社会的な適応をしていただくための相談事業等を充実させていかなければいけないということで、大阪の場合はその実施計画を進めようとしているわけであります。

 現段階でこのような実施計画、これは結局、実施の状況を見て具体的には評価をし、さらに国としてそれとの関連でどういう施策を講ずるのかというお考えになろうかと思いますが、このように四つのタイプに分けて施策を講じようとしているということについて現段階でどのような評価をお持ちなのか、お答えいただければと思います。

小島政府参考人 私どもの行いました実態調査におきましても、ホームレスの方は約半数が就労を望んでおられる、しかしながら、約一割の方は、もうこのままでいいという方がおられるということでございまして、その間に、いろんな考え方なり過去の人生経験等を踏まえましてこれから老後に向かってどうしていったらいいかというふうな考え方は、それぞれかなりばらつきもあろうかと思いますので、大阪府におかれましては、最大の、日雇い労働者が数多く集まっておられますあいりん地区の状況を踏まえて、そういった実施計画を策定されているというふうに認識しております。

辻分科員 時間が余りありませんから先に進みますけれども、先ほど四タイプに分けた、福祉制度の活用を望むタイプという、類型化されている関連でいうと、やはり生活保護の問題にかかわってくるわけであります。

 大阪市の生活保護の予算は約二千億円超であって、受給率を見ますと、市内全体で千分比で三五パーミル、西成地区に限ると千分比で一五〇パーミルということで、非常に高率なわけであります。そういう意味におきまして、生活保護に伴う予算というのは、非常に金額としても巨額に上る形になる。一方で、自立支援、就労を強化すれば、その分、生活保護に依拠する人の割合が減るわけでありますから、生活保護の予算は低減化することができる、こういう関連になるのかなというふうに思います。

 国の立場と地方公共団体の立場でその辺の役割分担という問題は一応ありますけれども、やはりホームレスの自立支援なり就労対策ということを十分に講ずれば生活保護を必要とする層も低減するという意味におきまして、予算措置も非常に講じやすくなる。そういう観点からいえば、生活保護との関連で見たときに、やっぱり国の積極的な施策が要請される、政策的な有効性をそこで確認できるのではないかというふうに思いますが、この考え方についてはどのようにお考えでしょうか。

小島政府参考人 ホームレスの就労対策ということにつきましては、まず、自立支援センターというものが各地域にございまして、そこで、ホームレスの方々が入所していただきまして、四カ月から六カ月間の間、生活相談あるいは就労相談をして、できれば就労していただくということでございます。全国的に見ますと、約半数は就労なさっていますが、約四割弱ぐらいは福祉の措置ということで生活保護の方に来られる方も多数おられます。

 生活保護に来られましても、やはりそこは自立支援、就労ということが大変重要でございまして、生活保護制度のサイドからも、十六年度から自立・就労支援等事業費ということで新たに二十億円の予算を計上いたしまして、自治体に、被保護者の方に対する就労支援というのを行っていくということでございまして、ホームレスの方々につきましては、まず最初に、その地域の自立支援センターにおける就労指導、それから、生活保護になられてからもきめ細かな特別補助制度による就労指導ということを行おうとしておりまして、先生おっしゃるとおり、もし就労して収入を得ていただければその分保護費の支給は減るということですから、財政的な効果はあるということでございます。

辻分科員 生活保護について、現段階では国の負担割合は四分の三である、これが三分の二に低減化するんだということについては、その妥当性については疑問であると私は思いますけれども、生活保護を、とりわけこの西成のホームレス問題を考えるときに、その割合をどのように低減化させていくのかというのは非常に重要な視点であって、そういう意味におきまして、就労の機会を増大させていく、国の施策としてそのことを講ずべき必要性というのはやはり非常に重要なものではないかというふうに思うわけであります。民間施設へ委託するということだけではなくて、国が独自に雇用拡大に向けた施策を講じていくということが要請されているんだろう、このように思います。

 そこで、最後に、ホームレスの自立支援等に関する特別措置法の第三条の二号を見ますと、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われる、これらの者に対する就業の機会の確保、生活に関する相談及び指導の実施その他の生活上の支援により、これらの者がホームレスとなることを防止すること。」というのが法の目的の中に入っているわけであります。ですから、このホームレスの自立支援等に関する特別措置法は、ホームレスだけにはとどまらず、そのようなホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域においては、いわばホームレス予備軍とみなされる人たちに対する施策も同時にこの特別措置法の射程範囲に入っているというふうに理解できますが、これはこういう理解でよろしいんですね。

小島政府参考人 先生御指摘のとおりであるというふうに思います。

辻分科員 この「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域」というのは、全国で寄せ場と称せられるところ、山谷とか寿とか笹島とか釜ケ崎だ、そういう地域がこの法律の三条の二号で言う地域であるという理解でよろしいんですか。

小島政府参考人 必ずしも地域限定をしているわけではございませんが、そういうところが該当するというふうに思われます。

辻分科員 大阪の釜ケ崎地域を考えてみた場合に、大阪市の出身の人が一割、二割で、残りの八割、九割は近畿圏とか西日本から集まってきておられるということのようであります。そういう意味で、寄せ場のホームレスを含んだ日雇い労働者の人たちというのは、その地域の住民だという住民性といいますかその性格が希薄である。したがって、住民というよりは国民ということでくくることがより濃厚なわけであります。

 だから、そういう意味で、寄せ場の問題というのは、地方公共団体のその地域の住民性の問題というよりは、むしろ大きく都市問題という性格を持ってきているものだと思います。そういう意味で、ホームレス及びホームレス予備軍に対する就労支援、就労機会の増大ということを保障するのは、本来、国の施策であるというふうに私は考えますが、この点はいかがですか。

小島政府参考人 今御指摘されましたように、大阪府が、ことしの四月、「ホームレスの現状」といたしまして、他府県出身者が七六・四%、大阪府出身者が四人に一人にすぎない、こういうふうに言われております。

 ホームレスの多くは職を求めて大都市に流入しました地方出身者であるというふうな実態はあろうかと思いますが、しかしながら、ホームレスの方々にとりましては、やはり最も身近な市町村といえばきょう住んでいる市町村だということでございまして、それなりの対応というのをしていただかなきゃなりませんし、国は、厚生労働省といたしましては、引き続き、地方自治体と相協議いたしまして、必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

辻分科員 時間が参りましたから、また改めてこの問題については継続的に取り上げさせていただきたいと思いますが、やはり最後の点が問題だと思うんですね。自立支援法で、ホームレスだけでなくホームレス予備軍についてもこの自立支援法の射程距離に入っている、そして、雇用対策がこの中で重要な問題とされている。だから、国の施策として、ホームレス及びホームレスの予備軍に対する措置を講ずる直接的な責任、義務があると思います。

 ところが、それを、民間団体を通してとか地方公共団体がまずは第一義的な施策の担当であるというニュアンスがどうも御答弁の中では返ってくる。これでは根本的な解決にならない。やはりこれは都市問題であり社会的貧困の問題ということで国の問題であるということで、本当に覚悟を決めてこれをやっていただきたい。この特別措置法は十年の時限立法でありますし、また、実施計画の策定についても、これは五年以内ということになっておりますから、やはり期限がある。だから、五年、十年の間に、このことについて本当に前向きに、国として責任を全うする方向で考えていただきたいと思います。

 最後に、この点についての決意のほどを大臣に伺いたいと思います。いかがでしょう。

坂口国務大臣 大阪におみえになりましても必ずしも大阪の人ではないというお話は、全くそれはそのとおりだというふうに思っております。ただし、どこかで職を求めるということになりますと、やはり大阪なら大阪の周辺で職を求めるということが多くなってくるということも、これもまた事実だというふうに思います。

 地域の協力もそういう意味では得なければいけませんが、国としても責任を持って取り組んでいかなければならないというふうに思っております。

辻分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

山名主査 これにて辻惠君の質疑は終了いたしました。

 次に、葉梨康弘君。

葉梨分科員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。

 大臣初め厚生労働省の皆さん、連日、年金法案の御審議、大変御苦労さまでございます。

 ただ、我が国の人口構造が大きく変化して、財政状況も極めて厳しい中、今、年金問題以外にも厚生労働行政が直面する問題は極めて多岐にわたっているというふうに思います。

 きょうは、私がよく地元の首長さんたちとお話ししている内容をかいつまんで質問させていただきたいと思いますけれども、ただ、地元の要望ということもさることながら、また、一緒にやはりいろいろな制度をよりよいものとするために考えていきたい、こういう観点から御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。

 まず、伍藤局長に質問をいたします。

 いわゆる子育て支援、自立支援ということで、父子家庭の問題ですけれども、よく、父子家庭は、どんなに低所得でも、母子家庭に認められている児童扶養手当が認められていない、そういうようなことが言われ、母子家庭と比べて支援策が少ないんじゃないかということが言われています。ただ、この点については、たびたび国会でも質疑がなされております。一般論として、父子家庭には家計よりも家事への支援だということで、制度の組み立てが違うということだと思います。これはたびたび実は質問もされていますし、また時間の関係もありますので、大分押しているようですから、通告していた冒頭の質問は省略させていただきたいと思います。

 ただ、平成十一年に男女共同参画法が制定されて、そして、平成十四年にいわゆる母子寡婦法が改正になった、そして「母子家庭等」の中に父子家庭が、母子家庭及び父子家庭が「母子家庭等」という形で位置づけられたと聞いています。

 そういった流れの中で、実は、私の地元でも牛久市、あるいは茨城県内でも古河市といったような市がありますけれども、父子家庭についてもそれぞれ家計を助けてほしいというような要望がありまして、市町村独自で幾つか手当をつくるという制度が進められております。

 この関係は、実は厚生労働省の関係ということだけではないんですが、今、実は男女共同参画ということで、ジェンダーフリーの条例がいろいろなところで物議を醸しております。そういった条例をつくるような市町村は、まず先にこういった父子家庭の手当をつくってからいろいろ検討させていただいたらいいんじゃないかなというふうに個人的には思うんですが、それは余談でございます。

 ただ、やはり、市町村でこういったような施策が行われている、そして国として、平成十四年に母寡法が改正になって、父子家庭が位置づけられた。ですから、平成十四年以降、父子家庭についてどのような対策を国として講じられているのか。さらには、やはり、こういった市町村がそれぞれ独自で行っている施策の関係がございます。そういう市町村とは、よく相談に乗っていただいて、そして、実際、市町村でやっているいろいろな施策というのを国としてもいろいろと情報、アンテナを張りめぐらせて把握をしていただきながら、よりよい施策に結びつけるという姿勢が非常に必要だと私は思っております。伍藤局長から、そこら辺のところをお伺いいたしたいと思います。

伍藤政府参考人 父子家庭についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおり、いろいろな各種対策がございますが、経済的支援であります児童扶養手当につきましては、ニーズが、やはり父子家庭の方が母子家庭に対して非常に所得水準が高い、こういう一般的な状況を踏まえて、児童扶養手当については、従来どおり母子家庭を対象にするということでやっているわけであります。

 そのほかの、ニーズの高い家事の分野については、母子家庭と同様の施策を順次講じてきたところでございます。例えば、ヘルパーでありますとか、子供さんを一時的に預かるショートステイでありますとか、あるいは生活の支援のための相談事業、それから保育所への優先入所、こういったもろもろのことにつきましては、既に、父子家庭についても母子家庭同様広く施策を講じるようにしてきたところでございます。

 こういったことを踏まえて、今御指摘のありました経済的支援についても、一部市町村でやっておるということも私どもも今情報を聞いておるところでございます。つい最近始まったというふうに思っておりますので、実態がどんなものか、あるいはその成果がどうかといったことも踏まえながら、よく情報収集をして、いろいろ御相談もまたしていきたいというふうに思っております。

    〔主査退席、五島主査代理着席〕

葉梨分科員 ありがとうございました。

 いずれにしても、国として制度を組み立てるかどうかということもさることながら、国あるいは都道府県それから市町村、それが相まってというような姿勢が必要だろうと思います。ですから、いろいろと相談に乗っていただくということ、非常に大事かなというような感じを持っております。

 次に御質問いたします。社会福祉施設整備に係る国庫補助金、特に民間の保育所に対する補助金を想定して、まず大臣に質問させていただきたいと思います。

 実は、特に保育所の関係の補助金ですけれども、今現在、内閣挙げて進んでいる待機児童ゼロ作戦との関連から、昨年もそうですけれども、特に本年、待機児童があって、定員増を伴う保育所を優先されたというようなこと、これは非常によくわかっております。また、その必要性もよく認識をしております。

 ただ、よく私どもは地元の市町村長さんとも話すんですが、私、きょうも取手から通勤をしてまいりました。毎日、六時三十三分の常磐線に乗って国会に通っておりますが、一時間半かかる、比較的遠距離の通勤です。これらの地域というのは、実は昭和四十年代、五十年代に極めて人口がふえました。今、私の子供が通っている小学校は四百人しかいないんですけれども、昭和四十年代の末には一千人を超えていた、そういう時期もありました。子供が大変ふえた時期。ですから、茨城の南もそうですけれども、あるいは埼玉、そういったところもそうでしょう、昭和四十年代に、しかも、当時はまだまだ経済的に高度成長の時代でしたから安普請が多い、そういうような保育所がたくさん建っているというのが現状なんです。

 それで、ちょっと話が複雑なので、お手元にこの一枚の資料がありますけれども、私がきのう、これはどこの町ということではなくて、理念型として一応つくったようなものなんです。というのは、四十年代、五十年代に幼児数が非常に急増します。そのときは専業主婦も多かったので、保育所の入所要望は二百五十人であった。四十年代に二つできる、五十年代に二つできるという形で、二百人の保育所の定員を確保した。それがずっと来て、今は、実は幼児数というのはぐっと減って四百人。ところが、実際、暗数としての要望というのは二百人ぐらいいるんだろうけれども、何せAもBも古くなっているものですから、余り古い保育所には子供を預けたくないというようなお母さんも非常に多い。ですから、こういう形で、今の定員の充足ですけれども、Aが十人、Bが五十人、Cが五十人、Dが五十人。

 となりますと、どういうことが起こってくるかといいますと、Aについては、一番古くて廃止もしたいんですけれども、あるいは改築ができればいいわけなんですが、これは、いかがいかにも、五十人のうち十人しか充足していないからなかなか認められないだろう。ただ、A、Bを統合してAを廃止するということの場合、Bの増改築というのを先行しませんと、先にAを廃止してしまうと、そこで待機児童を十人実員でもうつくってしまうという問題が出てきます。そして、実は、今の待機児童というのは、どこかにあきがあれば待機児童ではないという定義になっておりますから、Aを廃止した途端に、ああ、みんな新しくなったんだったら保育所にどんどん預けたいよという方もまたふえてくるという可能性もある。

 ただ、これについては、お答えをということじゃなくて、こんな可能性があるということを表にして示した次第でございます。

 ですから、今現在、優先順位として、今の待機児童ゼロ作戦を進めるということで、やはり定員、非常に待機児童がたくさん、多いところを優先する、そしてまた増築、こういったものを優先するということ、これはよくわかるんですけれども、一つは、老朽化というものに対する対策というのは子供の安全確保の観点からも非常に大切なことだと思います。

 そして、今申し上げたのは特に大都市の近郊部、昭和四十年代に人口がふえた地域というのは、実は、この老朽化に対する対策の問題が、待機児童を少なくするということにも、ケース・バイ・ケースではあるんですけれども、非常に絡んでくる。その意味で、一概に定員割れしているから門前払いという対応でなくて、ケース・バイ・ケースでひとつお願いしたいなと思うこと。

 さらには、老朽化施設について、これは、私どもの地元だけじゃなくて、全国的に要望も非常に強いと思います。なかなか財政上厳しいとは思いますけれども、充実方について、大臣から御見解をお願い申し上げたいと思います。

坂口国務大臣 お話ございましたように、保育所に入ることができない皆さんがおみえなものですから、優先順位といたしましては、そうした、入ることのできないようなお子さんのあるところにどうしても優先順位がいってしまうわけでございます。

 これはある意味でやむを得ないというふうに私も思っておりますが、しかし、非常に古くなってきている保育所も確かにございます。私の知っております保育所でも、非常に古くなってきている、お子さん方が本当にけがをしなければいいがというふうに毎日心配をしながらおやりになっているようなところもあります。

 私は、きょうお配りをいただきましたこのペーパーを拝見して、このAというところが非常に古いがゆえに非常に減ってきている、しかし、ここを新しくすれば、あるいは、BとかCとか他のところへ行っている皆さんの中にも、それは古いということで遠くへ行っておみえになるけれども、ここが新しくなればまたこちらに皆さんが帰ってきてくれるということであれば、今十人だからというので、これはだめだということにはならないと私は思っております。

 したがいまして、これから、足りないところを優先しなければならないことは、これは当分続きますけれども、しかし、老朽化いたしましたり、また、とりわけ地震等が起こりやすいような地域でありますとか、そうしたところにつきましてはやはり十分配慮していかなければいけないというふうに、率直にそう思っております。今後十分そうしたことを気をつけていきたいと思っております。

葉梨分科員 ありがとうございました。きめ細かな対応ということを、本当に思いは一つだと思います。本当にありがとうございます。

 ただ、そのきめ細かな対応ということで、ちょっと、これはしようがない面もあるんですが、これからいろいろと改善をやっていかなきゃいけないなということを一つ御指摘させていただきたいと思います。

 実は、例年ずっと補正予算が組まれていたものですから、社会福祉施設整備費については、各都道府県から協議のあった額についてはその要望額が大体充足されるということがずっと続いておりました。ただ、これだけ財政状況が厳しいという中で、どうもことしは補正予算がなさそうだというようなことになったというふうに聞いております。

 そこで、厚生労働省としても各都道府県に対して、ことしは厳しいよ、厳しいよという話を言っていただいたということを、いろいろと御説明を受けたんですけれども、結果として、なかなか、都道府県の対応の問題もあって、一概に厚生労働省の問題というふうに私言うつもりは全然ございません。言うつもりはありませんけれども、結果としては、お聞きしている会議の資料なんかで見ますと、平成十六年度の当初予算額千三百四億円、これが今のところの執行可能額である、そして、平成十六年分に各都道府県から協議が上がってきた補助金の要望額というのが千八百十億円であるということで、相当の乖離が生じたというふうに聞いておりますけれども、この数字で間違いないかどうか、局長、よろしく御答弁お願いいたします。

小島政府参考人 今先生御指摘いただいた数字のとおりでございます。

葉梨分科員 小島局長、ありがとうございます。

 いろいろと、局長もいろいろな会議とかで大分指導されているという話は私も実際伺っているんですが、ただ、結果論としての話なんです。

 というのは、この社会福祉施設については、一般論として言うと、二分の一が国庫補助、それから四分の一が都道府県の補助、それから四分の一が市町村でつけているところもあります。協議に上がってくるという段階では、実は平成十六年度予算として県の予算がもうついてしまっている、市町村の予算もついてしまっている。ですから、これは非常にかわいそうな問題ではあるんですけれども、平成十六年度分については、総事業費約一千億円の事業について、県の補助金が約二百五十億、それから市町村の補助金もそれに近い額が空振りになってしまう。

 よく、補助金はついたけれども補助裏がつかない、今、市町村の財政厳しいからということは聞くんですけれども、この場合は、補助裏はついたけれども補助金がつかない。ですから、この市町村の財政が厳しい中で、これは場合によっては減額補正を都道府県でも市町村でもしなきゃいけないというようなことが起こってきてしまう。

 ただ、だからといって、この補助金を財源移譲の対象とすべきという議論もあるんですけれども、私もそういうことを地元から聞いて、いろいろと厚生労働省の方ともお話をいたしました。そうしたところ、決して、私の感じとしても、厚生労働省としてひもつきで補助金を残したいとかいうことを全然考えていることじゃなくて、やはり、子供たちのために、本当に福祉のベースをちゃんと保持していきたいということを真剣に考えていらっしゃるという印象を受けております。そして、やはり、今さっきお話もありましたように、実際、こういったことを呼び水として小泉内閣において待機児童ゼロ作戦が進んできたわけですから、決して、一概にこの補助金自体が全く不要なものであるというような感じは全然持っておりません。

 ただ、この平成十六年度みたいに、都道府県が予算化しました、市町村も予算化しました、補助裏は予算化したけれども補助金が来ないという状況になりますと、各知事さんとか市町村長さんにしてみたら、ふざけるなという話が上がってくるのは、まあこれは当然のことになってしまいます。そうなりますと、これは財源移譲しろという声もまた大きくなりかねない。

 ただ、ことしの場合は、先ほど私も申し上げましたとおり補正予算の関係、それから例年までの関係ということはよくわかるんですけれども、これからはやはり、きめ細かさという意味では、いろいろな形で都道府県それから市町村とよく連絡をとりながらやっていかなきゃいけないし、特にこの手の施設整備の問題というのは、実際、地元では数年がかりで検討されているのが通例です。もちろん、単年度予算の原則だとか補正があるかないか、こういったものについては政治的な要素というのが大きいというのは思いますけれども、非常に難しい問題だとは思いますが、そこのところをうまくやっていきませんと、いろいろなところからきしみが出てくる可能性があるかと思います。

 例えばできるだけの早目の協議を行うなど、この方面での改善に向けて早急な検討が必要だと思います。その点について、御検討方お願いしたいと思いますが、小島局長、よろしくお願い申し上げます。

小島政府参考人 ただいま先生から御指摘ございましたように、十六年度におきましても、一部補正予算対応というのもございますが、ほとんどの県では当初予算に計上されて、私どもの方に社会福祉施設整備費の協議をされているということでございます。なけなしの予算を予算計上されて、それに補助をつけられないというのは、なかなか、ある意味では非常に残念な状況ではございますが、先生先ほど言われましたように、やはり十五年には補正予算がなかったということで、国も県も社会福祉施設整備費が足りなかったというような経験をお互いに何年か余りしてこなかったという面もございます。

 今御指摘ございましたように、私どもといたしましても、できるだけ早い時期から自治体と十分な意思疎通を図るように努力をしてまいりたいというふうに思います。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 そういうきめ細かな対応、非常に、今時期的に、この制度はすごく大きく変わる時期です。ただし、何か問題があるから制度をすぐ変えればいいということだけじゃなくて、やはり、本当に必要なものは必要なものとしてちゃんと確保していくという姿勢が、私自身も大変必要じゃないかなというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 平成十七年の四月、来年の四月ですけれども、個人情報保護法、これが全面施行になります。この四月には、この法律の第七条一項、これに基づく基本方針、これが閣議決定されました。

 特に医療分野におけるカルテの開示の問題については、これはいろいろな方面からいろいろな意見があって、大臣もお医者さんですから御存じのとおりだと思いますが、一部の方からは、当然、不十分という指摘もあります。あるいは医療の現場からは、私も時々、親戚にお医者さんが多いものですから、どこまでしたらいいんだろうかという不安の声も聞くというのが現実のところです。

 やはり、円滑な制度の実施のためには、分野ごとのガイドラインの策定を急ぐ、これが非常に必要だと思いますし、また、四月二日の基本方針にもうたわれました、ある特定分野、医療も含みますけれども、特別の措置、これの必要性について、やはり各方面から意見を聞いていくということが必要だろうと思います。

 一部関係者から、医療関係についてはそこら辺のところはおくれているという指摘もあるんですけれども、基本方針が四月二日に策定になりました。これからということになるかと思いますが、このガイドラインの策定あるいは特別の措置、そういったものの検討状況について、大臣の方からお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

    〔五島主査代理退席、主査着席〕

坂口国務大臣 医療関係を初めといたしまして、厚生労働省にかかわります個人情報の問題というのはかなり多岐にわたるというふうに思っております。

 だんだんと医療の方も進んでまいりまして、最近のように遺伝子解析というのが進んでまいりますと、その辺のところはきちっと情報管理をしないことには、もうその人そのものがそこに含まれているということでありますから、それがあちらこちらに出回ってしまうというようなことがあってはいけないというふうに思いますから、そうした問題につきましては、がっちりとこれはしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

 医療分野につきましては、個人情報の性質でありますとかあるいは利用方法など、特に適正な取り扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野の一つというふうに位置づけて、ここはしっかりやっていきたいというふうに思っております。

 今お話ございました診療情報の提供に関する指針、これは昨年の九月に策定したところでございますが、医療分野におきます個人情報保護のあり方の検討でありますとかガイドラインの策定等を行うための検討会を、早急にこれは設置いたしまして、今準備を進めているところでございます。できる限り早く結論を得たいというふうに思っております。

 診療報酬につきましては、個人から求められれば全部公開をすべしという御意見と、中には、たとえ個人の問題であれ、やはり、率直にそのことをそのまま申し上げていいこと、あるいは言ってはならないことがあるという御意見もあるわけでございまして、そうしたところを、これはもうどう割り切るかということにもなるわけでございますので、関係者の御意見を十分に拝聴しながら、そして決めたいというふうに思っているところでございます。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 まず一つは、円滑な制度の実施ということ、極めて大切なことだろうというふうに思います。ぜひともそういう姿勢で、いろいろな方面に、まだできていないものですから不安に思っている人もたくさんいるものですから、不安を与えないようによろしくお願いしたいと思います。

 次に、岩尾医政局長に質問通告していたんですが、余り時間押していてもあれなものですから、御要望だけ一つ申し上げておきたいと思います。

 実は、私どもの茨城県で大子という町がございます。医療機関が廃止になりまして、そこで保管していたカルテが第三者に渡ってしまうという問題が新聞報道された。

 厚生労働省の通達では、そういったようなカルテは行政機関が持っていた方がいいよということは言われているという話なんですが、ただし、強制権限がないんですね。ですから、あるいは相続人がカルテの保管、相続人は医師法の適用になりませんから、カルテの保管について何らか、あるいは市町村あるいは都道府県なりがそういったカルテの保管について関与できるというような形で制度をつくるなり、あるいは制度をつくらないにしても、いろいろとそこら辺の事案を収集して、今後また御相談に乗っていただきながら検討していただくなり、切実な問題としてありましたので御要望をここで申し上げておきたいというふうに思います。

 最後の質問に移らせていただきたいと思います。

 介護保険の問題です。

 年金問題というのは確実に大きな問題です。ただ、地元ですと、市町村長さんと話していると、地域保険である介護保険の問題というのは極めて切実な問題でございます。

 全体論として、給付の水準というのは水膨れというか、どんどんどんどんふえている、サービスの利用はふえている。ただ、その割に保険料は上がらない。財政的な問題があるだけじゃなくて、地域間の不均衡というのが著しい。

 その中の一つとして痴呆性高齢者のグループホームの問題があります。

 これは資料をつくっております。平成十三年三月から平成十六年三月までの三年間で、全国で痴呆性高齢者のグループホームというのは五・三倍に増加しております。厚生労働省の資料でも昨年末は四千二百、今もどんどんふえていまして、ある新聞社の集計では三月末四千七百五十ですから、この間、ことしに入ってからも一日六事業所ずつふえているというような計算になります。

 ただ、問題は、これはどこが多いかということなんです。上からずっと見ていただいたらわかるんですけれども、百以上のグループホームがある都道府県というのは十七、これは昨年末現在ですけれども、十七ございます。北から言いますと、北海道、青森、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、愛知、大阪、兵庫、岡山、広島、愛媛、福岡、長崎、鹿児島。

 類型を三つに分けられると思います。一つは政令都市を含む府県型です。ただし、見ていただいたらわかるとおり、東京は入っていません。東京は七十九しかございません。それからもう一つは、長崎ですとか鹿児島だとかいった風光明媚型。それから三つは、私どもの茨城も入りますけれども、群馬、岐阜といったように大都市近郊型というところが百以上になっています。

 このように、地域間の偏在というのは極めて明らかでございます。特に私どもの茨城県ではこの三年間で、全国で先ほど五・三倍というふうに申し上げましたけれども、茨城県に関しては、十二だったものが百三十四と、十二倍に増加しております。実は、現実には、東京の御老人を受け入れているということが現実でございます。

 ただ、ここは非常に、言い方が極めて難しい問題なんですが、先ほど言いましたとおり、私ども遠距離通勤圏です。遠距離通勤圏ですと、今若い世帯というのは遠距離通勤を嫌って東京回帰をするので、例えば私の住んでいる取手なんかでも人口減が著しい。ところが、グループホームの御老人というのはどんどん入居してくるというような実態になっている。そうなりますと、市町村から非常に切実な声が上がってきております。

 そこで、市町村からの声ということでは、有料老人ホームの問題も含めて、昨年十二月に、十六市町村から、介護のまちづくり特区構想、これが提案されたわけですけれども、今後の改革の検討の中で、こういった問題については特区じゃなくて全国的に検討されるものであるというように整理をされたと伺っておりますけれども、今申し上げましたような市町村の切実な声に対してどういうふうな形でこたえていくのか、大臣からの御見解をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 これはなかなか難しい問題だと思うんですね。グループホームは、大きな施設ではなくて、家庭的な雰囲気を残しながら、そしてできるだけ十分な介護をしていきたいというようなことで、中間的な施設の一つとして非常にふえてきた。

 全体的に見ればそれは好ましいことだというふうに思っておりますが、それではどこまでふえてもいいのかという話になってまいりますと、今お話ございましたとおり、それは全体の人口との割合もございましょうし、それから、先ほどのホームレスのお話じゃございませんが、地元の人は少なくてよその人が多いということになってくると、さてそのことをどうするかといった問題は確かにあるわけでございますから、その辺のところを無原則にふやしていけばいいということにはやはりならないんだろう。これはすべて財源の伴う話でございますから、その辺のところの整理というものを私たちもしていかなければならない時期に来ているのではないかというふうに思っております。

 よくその辺のところを整理させていただいて、そして現実として高齢者の皆さんあるいは痴呆性老人の皆さん方のためになるということを心得ながら、しかし全体としてどうしていくか、よく考えさせていただきたいと思います。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 本当に介護保険は年金問題に続く大きな問題です。平成十二年―十四年の第一期に比べて、十五年―十七年の第二期では、聞いたところでは、平均一三・一%保険料が伸びただけだけれども、サービスの利用というのは二倍になっている。その中で、やはり保険者、例えば今見ていただいたらわかるとおり、栃木というのは茨城とそれから群馬に挟まれていますけれども、四十と比較的グループホームが少ないというようなこともございます。

 そこで、やはり第三期に向けていろいろな検討を行っていただきたい。その中で、一つ地域からも要望がありますのは、いわゆる住所地特例の問題がございます。住所地特例を適用してほしい。

 これも、ただし、大臣今言われたとおり、私、いろいろな意見はあるのは承知しております。例えば東京都からの反論の資料も見せていただきました。全くある意味でそのとおりと思われることを書いてあるんですけれども、事茨城県についていえば、資料にもありますとおり、高齢者の人口は東京都の二五・三%にしかすぎないんです。ところが、グループホームの数は東京都の一・五六倍ある。

 このような偏在をどうしていくかということを総合的に検討していくことが必要だろうと思います。ですから、例えば保険者の役割強化なども含めて、このような地域偏在、これについての検討をぜひお願いしたいということについて、今後の検討の一つの課題として、今大臣がおっしゃられた中の一つの課題として、今度は老健局長の方からお伺いをしたいと思います。

山名主査 中村老健局長。

 時間ですので、簡潔に。

中村政府参考人 介護保険、さまざまなサービスがありまして、市町村が選んでいただく、あるいは住民の方と御相談するということで、ある程度の地域格差は仕方がないと考えておりますけれども、グループホームの場合、一番大きいところと小さいところで七倍の格差がありますので、やはり計画との整合性ということを重視していく必要があると思います。

 今先生がお話しになりました住所地特例の問題ですとか、計画との整合性の問題ですとか、さまざまな課題、介護保険の見直しの大きな論点となっております。今審議会の方でも議論しておりますけれども、私どもも先生の御指摘を踏まえまして、ということは市町村の声でございますので、よく検討させていただきたいと思います。

葉梨分科員 どうもありがとうございました。

 今後とも、一緒に知恵を出しながら、いい制度をつくっていきたいと思います。よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

山名主査 これにて葉梨康弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村康稔君。

西村(康)分科員 自由民主党の西村康稔でございます。

 本日は、若者の失業者、若者の労働力問題についてお伺いをしたいと思います。

 私の地元、兵庫県の明石でありますけれども、一説には全国で一番不登校が多いところとも言われておりまして、なかなか社会になじみにくい若者がふえている。これは都市部を中心にだと思いますけれども、社会になじめない若者がふえている。それと、職にはつくけれども、なかなか定職につかずに、アルバイト、パートのような形で済ませてしまう。一説には、フリーターと呼ばれる、そんな人たちが二百万人なり四百万人いると言われておりますし、それから、社会になじめない若者、これはニートと呼ばれたりもしていますけれども、二十万人、四十万人、いろいろ言われておりますけれども、この若者の労働者、失業、無業の問題。

 長い目で見ますと、収入も少ないですし、結婚も遅くなりますので、また少子化問題の原因にもなっていく。あるいは、そもそもは、職を身につけて一定の役割を社会で果たしていくということで、社会の発展にもつながっていくということで、本来であると定職につくべきところだと思うんですけれども、企業の側も、アルバイト、パートの方が社会保障料を負担しなくてもいいというメリットもあるのだと思うんですけれども、非常に大きな問題になっているかと思います。

 この現状について、あるいは原因について、坂口大臣、どんなふうにお考えか、御見解をお聞かせいただければと思います。

坂口国務大臣 フリーターと言われている人たち、一概にはなかなか、一言では言いがたい多くの皆さん方が含まれておるというふうに思っております。

 一応、定義といたしましては、アルバイト、パートとして働いている人、それから働くことを希望する人というふうに定義をいたしておりまして、定義の仕方によって、現在失業者の皆さん方でありますとか派遣業の皆さんですとか、そういう人を皆一緒にしていきますと四百万に達するというような話もあるわけでございますが、我々の定義でいけば約二百万、二百九万というふうに思っております。

 しかし、現在のところ、このフリーターの皆さん方が増加してくる傾向にあることも事実でございまして、その中身は、やはりとにかく自分によく合った仕事がないので、それができるまでの間のつなぎとして働いておみえになる方。それから、一度働かれたけれども、うまくいかなくて、そして、次の仕事への腰かけとしてそこで働いておみえになる人。それから、これはまた別に、ほかに自分がなりたい、やりたいということがあって、それをなし遂げるために生活の糧として働いている人。こういうさまざまな人が含まれているというふうに思っております。

 それから、今先生御指摘になりましたように、社会のそれぞれの仕組みに対して反発をしている人たちもいることは事実でありまして、学校におきまして就職の先生がどこどこの会社を受けてはどうかといったようなことをおっしゃる、成績順にどこどこを受けろというふうに言われたりすることに対する反発。そういうことを言われる筋合いはない、自分のことは自分でやる、こういう気持ちでフリーターになっておみえになる方も中には存在するといったことでございます。

 したがって、私たちも、このフリーターの皆さん方に再就職をしていただきますのには非常に気を使うわけでありまして、それで、ハローワークのようなところにもフリーター専門のハローワークもつくりまして、そこでいろいろ御相談に応じているわけですが、御相談に応じますときにも、こちらから、こういうところはどうですか、ああいうところはどうですかということは先には申し上げない。皆さん方にいろいろのパンフレット等を見ていただいて、そこでフリーターの皆さん方同士でいろいろの話し合いをしていただく。そして、その皆さん方からいろいろのお話しかけがあったときに、相談に乗ってほしいということが言われたときにこちらからもその相談に乗る。そういう配慮もしながらやっているというところでございます。

 そうしたことも含めて、今後、この皆さん方に少しでも恒久的な、正規の働き場所を提供できるようにしていきたいというふうに思っております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。

 なかなか難しいのでありますけれども、現状をぜひ分析していただいて、対応していただければと思います。

 既にもう今フリーターとなっている方の対策と、それからこれからの予防と、二つの面についてちょっとお伺いをしたいと思うんです。

 最初に、今フリーターとなっている人に対しては、既にいろいろ、いわゆる日本版デュアルシステムという形で、企業研修と訓練と一体となってやっていく仕組みも組んでおられますけれども、実は先般、横浜のヤングジョブスポットを見学させていただきまして、いろいろ現場を見させていただきました。一方で、ジョブカフェとかヤングハローワーク、いろいろ展開しておられるんですけれども、このヤングジョブスポットというのが、一番若者が入りやすい、相談をしやすい雰囲気であったのかなと私は思いました。

 というのは、まず、運営をNPOに委託されておられて、いわゆるTシャツにジーンズの若いNPOの人たちが相談に乗って、本当に入りやすい雰囲気でやっていまして、我々がこんなスーツ姿で行くと、我々数人だけがスーツであとはみんなTシャツの人ばかりという雰囲気なんです。そこでいろいろ基本的なマナーを教えてもらったり、どんな仕事があるかとか、自分の適職を探して軽く相談に乗ってもらえる第一歩のところで、大変いいと思うんです。ぜひこのヤングジョブスポット、NPOで委託しているところも横浜にはありますけれども、民間団体、NPOを活用したり、あるいは増設をしたり、あるいは、一カ所よりか場所を移動して、例えば渋谷のどこかでテントを張ってやるとか、臨時でそんなこともやるなど、いろいろ広い展開をしていったらどうかと思うんですけれども、厚生労働省、どんなふうにお考えか、お聞かせいただけますか。

上村政府参考人 先生、御視察いただきましたヤングジョブスポットでございますけれども、今お話がありましたように、若年者同士の自主的な活動等を通じまして職業意識を高めてもらうといったことを目的として実施しておりまして、大都市を中心に十六カ所設置しております。

 先生に見ていただきました横浜は、かなりの会員の利用状況、全国十六ですが、兵庫が十六年度末スタートでしたから、十五カ所の実績を見ましても、東京あるいは大阪に次ぐような利用者数でございまして、かなり活発に活動をしていただいているところでございます。

 今後のことでございますが、この事業がより効果的に展開されますように、今先生から御指摘もございましたが、若年者支援に経験とノウハウを有する民間団体等との連携なども強化しながら、多くの若年者が支援を受けられますように、情報提供の方法等、やり方についていろいろ工夫していきたいというふうに思います。

西村(康)分科員 ありがとうございました。

 いろいろ見せていただいた中で、やはりこれが一番入りやすい第一歩のところ。さらにもう少し詳しいことを知りたい、あるいは具体的な企業と話をしたいというときにはヤングハローワークなり次のジョブカフェがあるわけで、この第一歩のところをぜひうまく活用して、社会になじめない人も含めて、いろんな人が入りやすい雰囲気にしてあげればいいな、そんなふうに思います。それから、デュアルシステムも含めて、ぜひ充実をしていただければと思います。

 予防策についてお伺いをしたいんですけれども、きょう、申しわけないんですが、文部科学省にも関連ということで来ていただいておりますけれども、高校生の就職の状況を、事前にデータをいただきましたので、見せていただきますと、普通校、工業高校、商業高校と三つの種類に分けたときに、予想どおりといえば予想どおりなんですけれども、就職率が高いのは工業高校で、十五年度、つまりこの三月末で九五・一%の人が就職が決まっている。商業高校がそれに次いで九〇・五%。普通校が一番低くて八四・一%。

 過去五年間ぐらい見てみましても大体そのような傾向で、工業高校、商業高校は比較的高くて、普通校が就職率が低い。これはやはり手に職、一定の専門的な知識をつけた人の方が就職しやすいということもあるんじゃないかと思うんです。

 そこで、ヒアリングをさせていただいたんですけれども、足立区の足立新田高校で、大変就職率も悪いし中退率もめちゃくちゃ多かった学校だそうですけれども、いろいろ取り組みをされて、放課後にホームヘルパーの資格とかITの資格とか、あるいは近くのゴルフ練習場と連携をしてスポーツインストラクター、ゴルフのインストラクターの資格を取れるような、そんなことを、それも場合によってはというか、生徒だけじゃなくて親御さんも一緒に、その先生の話によりますと、子供のことなんか構わずパチンコばかりしていたお母さんも一緒になってホームヘルパーの資格を取るようになって、大分雰囲気が変わってきた、中退率が激減した、就職率も上がってきたというふうなことを伺っております。

 このような仕組み、足立新田高校のことをどう評価するかも含めてなんですけれども、普通校がより専門的な知識をつけるために例えば専門学校と連携をする、あるいは企業と連携をするといったことで就職率を上げていく努力をしている例もあると思うんですけれども、こんな取り組みはぜひ積極的に支援をしていただいたらいいと思うんですけれども、文部科学省にその辺の評価なりお考えをお伺いできればと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘がございましたように、東京都立足立新田高校におきましては、平成十四年度から、希望する生徒を対象に訪問介護員、ホームヘルパー二級の資格を取得させるための取り組みを実施しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、こういったホームヘルパーに限らず、生徒が学校教育段階においてさまざまな職業に関する資格取得を目指すことができるようにいたしますことは、実社会で求められる職業人としての資質、能力を高めることになりますとともに、将来、自分の進路について考え、学習意欲の向上にもつながるという教育的効果が期待されるところでございまして、大変意義のあることであると考えているところでございます。

 普通高校におきましても、希望する生徒に対して専門的な知識、技能を身につけられるようにいたしますために、例えば単位互換の制度を活用して近隣の商業高校や工業高校が開設する専門科目を履修いたしましたり、生徒の学校外での学習を単位として認定する制度を活用して専門学校の講座を受講した生徒に単位を認定するなど、専門学校などと連携した取り組みを行っている学校もございます。

 文部科学省といたしましては、このような取り組みによって円滑に社会に移行していくことができるようになることを期待いたしておりまして、さまざまな取り組み事例を広く紹介するなどして、普及推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

西村(康)分科員 ありがとうございます。データを見ますと普通校の対応も求められているようでありますので、ぜひ専門的な知識なりをつける学校の取り組みに対して支援をしていただけるとありがたいと思います。

 その場合に、ぜひ厚生労働省と連携をとっていただければと。長い目で見ると、しっかりと就職していただいて、年金も払っていただき、家族も持って子供を持って、社会の中で一定の役割を果たしていくという一貫しての話でありますので、別々に支援措置をとるよりかは連携をしてやっていただけたらと思います。特に、場合によっては厚生労働省の予算も文部省で使っていただくようなことも含めて、いろいろな連携の方法があるんじゃないかと思うんですが、大臣、ぜひ連携して取り組んでいただくことをお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 若い人の就職につきましては、学校を卒業してからの問題も大事でございますけれども、やはり在学中にいかに職業意識を持っていただくかということ、それからまた自身にもいろいろと技術を身につけていただくということ、そうしたことが大事だというふうに思っております。

 したがいまして、ここは文部科学省の皆さんとよく御相談申し上げて、よく連携をさせていただいて、そして、もう高等学校等に在学中の皆さん方におきましても、いろいろの資格をお取りいただくとかあるいはまた卒業したらすぐにでも取れるような状況になっていただくとかといったようなことがやはり大事になってくるんだろうと思っております。そうしたことをこれからも、デュアルシステムをこれから進めていくというようなこともございますし、あるいはインターンシップ制度というのをもっと充実させていくというようなこともございますが、それらのことも含めて、いろいろ多様な取り組みをしないといけないと思っております。

 高等学校で、例えば授業が終わりましてから取り組んでいただくようなことも大変いいケースだというふうに思いますし、そのときに、すべての人が福祉施設で働くわけではございませんから、福祉施設のことも大事でございますし、もっと違った面での働く場所といったようなことについても、もしそこで可能になっていけば、それは大変いいことだというふうに思います。

 デュアルシステムというのは、卒業しましてから実施とそれから勉強と並行してやっていくわけですけれども、もうちょっと前の段階でそれが両方ともできていくということになれば、非常にこれはいいことだというふうに思いますから、積極的に協力させていただきたいと思っております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 今高校の話でありますけれども、小中ですね、中学校で、例えば私の県、兵庫県で、トライやる・ウイークという形で、十一月に中学二年生が一週間、企業に行って実体験をする。これが結構好評でありまして、まだ始まったところですので、その後、その子たちがどういうふうに社会の中で活躍しているか、まだそこまでのデータはないんだと思うんですが、私の地元、近くでも、豆腐屋さんに一週間行くわけですね。朝三時か四時から起きて、豆腐をつくるところから始めて、朝早くから市場に持っていったり、いろいろなところへ運んだりする。そんな経験をして、物すごく生き生きとしてやっている姿が町の中でも好評ですし、その子供たちも物すごく勉強になるというふうなことも私も聞いたことがありまして、大体、豆腐が大豆からできる、そんなところも知らないわけですから、あるいはゆばができたりいろいろなものができるのも知らないわけで、大変勉強になっているわけであります。

 そんな仕組みを、これを全国でやったらどうかと思うんですけれども、まあ予算もかかりますし、企業の協力も要るでしょうし、何か事故があったときの保険の問題とか、いろいろありますから大変だと思いますけれども、こんな取り組みを全国的にやると、中学生の段階で、一回世の中、社会を知るということになって大変いいんじゃないかと思うんですね。

 私なんかも大学を卒業するぐらいまで、大体、アルバイトぐらいは多少しても、世の中がどんな仕組みで動いているかとか、余り関心を持たずに、日本の教育は社会と隔絶していきますので、早い段階で一回社会を知るということは非常にいいことじゃないかと思うんですけれども、文部科学省、そのあたりどんなふうにお考えか、お聞かせいただけますか。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の兵庫県のトライやる・ウイークでございますが、兵庫県内の公立中学校二年生全員を対象に、五日間、地域の商店や農家などで職業体験活動を行うなど、実社会においてさまざまな活動に挑戦し、豊かな感性や創造性を高めたり自分なりの生き方を見つけたりすることができるよう支援する事業でございます。

 この事業は平成十年度から実施されておりますが、その成果といたしましては、参加した生徒から働くことの厳しさや大人の温かさを実感したという声が報告されておりますほか、家庭や地域からは、親子の会話が弾んだとか中学生を見直したといった多くの好意的な感想が寄せられていると伺っております。

 文部科学省といたしましては、このような取り組みが全国各地で展開されることが必要であると考えておりまして、平成十四年度から豊かな体験活動推進事業を実施いたしますとともに、平成十六年度、本年度から全国四十七地域におきまして、地域ぐるみで職業体験活動などに取り組むためのキャリア教育推進地域指定事業を実施し、それらの成果を普及することといたしているところでございます。

 今後とも、このような取り組みを通じまして、児童生徒一人一人の勤労観や職業観を育てるとともに、社会性や豊かな人間性をはぐくんでまいりたいと考えているところでございます。

西村(康)分科員 ありがとうございます。今御報告、御紹介ありましたけれども、本当に中学生が生き生きとしているという姿が町の中で、これは町自体も活性化をしますし、その子たちにとってもいい経験で、その後の自分のまた目標をつくっていったり、キャリア形成の上で非常に役立つと思いますので、ぜひ全国的な広がりに御支援をいただければ、そんなふうに思います。

 小中も含めて、高校も含めてなんですが、いわゆる企業のOBが先生になる、講師として雇い入れるキャリア探索プログラム、これも、今のトライやる・ウイークは自分が町へ出て実際に体験をする、今度は学校に企業のOBの人に来てもらっていろいろな企業の話をしてもらうというプログラム、それから、ジョブサポーターという形で、これは企業のどちらかというと人事担当者のような方だと思いますけれども、就職についてのアドバイスをしていただく、相談に乗っていただくというプログラムを組まれておりますけれども、これも、なかなか社会と接することができない子供たちにとって、高校生になると自分の意識で、大分自分の人生を考えていると思いますけれども、小中の段階でも、これはいろいろな話を聞くと有効だと思うんですね。

 ちなみに、私の先輩であります、ノーベル賞をとられた野依先生は、小学校六年生のときに化学メーカーの展示会にお父さんに連れていかれて、それまで化学は全く興味がなかったのに、そのときに初めて酸素からナイロンができるということを知って、これはおもしろいということで、小学校六年生のときに初めて自分は化学の道に進むんだということを言っておられますけれども、ちょっとしたきっかけでおもしろいなということが大変大事じゃないかと思うんです。このキャリア探索プログラム、あるいは、実際に就職に当たってはジョブサポーター、この制度をぜひ充実させていただければと思いますけれども、実績もお聞かせいただきつつ、今後どういうふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

青木政府参考人 ただいまキャリア探索プログラム、それからジョブサポーター制度についてのお尋ねでございます。

 キャリア探索プログラム、企業のOBの方々等に委嘱をいたしまして、学校とハローワークの連携で、今は主として、就職希望者の多い普通科の高等学校を中心に、職業をめぐるさまざまな働き方、あるいは労働基準法その他法制的な面、多角的な面から教育をする機会を設けておりまして、平成十五年度は全国で千四百三十八回、受講された高校生の方が約二十万人ということになっております。本年度におきましては、むしろ先生が今お話になりましたように、小中学校の段階からそういうベーシックな知識を積み、そしてそれを現場に結びつけていくということで、さらに二十五万人程度を目標に現在事業を進めているところでございます。

 また、ジョブサポーター、これはむしろフリーターに陥る直前にいろいろな御相談をしようということでございまして、高等学校の生徒さんで就職未内定の方、この方に専属でついて、仕事につくといういわば職業意識啓発から具体的な事業所の紹介、そして定着指導まで一貫して行う、こういうサービスでありまして、昨年まで百名を就職の末期の二月、三月に活動をしていただきましたけれども、本年度はこれを六百名に増員をいたしまして、通年的に活動をしていくということで、フリーターになるのを少しでも防いでいくという活動に努めているところでございます。

西村(康)分科員 ありがとうございます。非常に評価されている制度だと思いますので、ぜひ拡充をしていただいて、早い段階、小中の段階からの社会へのかかわり意識を持っていただく、それから高校段階で、さらにそれを自分なりに深めて、いろいろ相談できる仕組みを広げていただければ、そんなふうに思います。

 最後になりますが、文部科学省に、これは都市部の小学生がなかなか自然体験とかいろいろなことができない、どうしてもビルの合間で遊んだり、家でパソコンで遊んだりしてしまうということがあるんだと思うんです。私の選挙区は明石と淡路島でありますけれども、淡路島は、結構いろいろなところから子供たちを受け入れて、個々にですけれども、体系的にではありませんけれども、乳搾りの体験を、牛もおりますし、農家もありますし、魚もありますので、そんな体験をさせるところもあるんです。ぜひ都市部の小学生を、夏休みの一定期間とか、場合によっては一年、二年、一年間とか、そんなこともあり得ると思いますけれども、自然留学というか国内留学というか、そういう仕組み、早い段階でいろいろな世の中の、自然の中のいろいろな営み、特に農業、漁業、そんな営みも含めて知ってもらうことは、大変これまた意義があるんじゃないかと思うんです。文部省もいろいろ取り組まれていると聞いておりますけれども、その辺のお考えをお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 都市部の子供たちが山村など自然環境の豊かな地域で暮らしながら、その地の学校に通学をいたしましたり、農業体験を初め自然体験や勤労体験などさまざまな体験活動をしたりする山村留学につきましては、財団法人育てる会の調査によりますと、平成十五年度において全国で百十六市町村百九十五校において行われているところでございます。

 このような取り組みは、子供たちに多様な自然体験活動を提供する上で大変有意義なものと考えておりまして、文部科学省におきましても、長期にわたる自然体験活動などを推進いたしますために、例えば子どもゆめ基金によりまして、青少年団体で行う長期にわたる山村生活や自然体験活動、また、山村留学などに関する情報提供、相談事業などへの助成を行いますとともに、二週間程度青少年が野外活動施設や農家などで異年齢集団による共同生活を通じた自然体験活動に取り組む都道府県の事業への助成を行っているところでございます。

 自然体験活動などの体験活動は、子供たちの社会性や豊かな人間性の育成を図る上で大変重要でございますので、今後とも、関係機関や団体とも連携しながら、子供たちの体験活動の充実に努めてまいりたいと考えております。

西村(康)分科員 ありがとうございます。若年労働者の失業、あるいはフリーターと言われる問題、あるいは無業者の問題、根が深くて、なかなかこれをやればすぐ解決するという問題でもなくて、中長期的にも考えていかなきゃいけない問題でもあると思います。

 ぜひ、小中学校の段階から社会とかかわりを持てるように、社会に関心を持つように、どうしても教科書だけ読んでおけばいいと日本の教育はなりがちでありますけれども、実際は、自分がいろいろな体験をして、その中で自分のやりたいこと、夢を持てるような仕組みをつくっていただき、また、高校生の段階で、自分の方向を迷っているときに、いろいろなまたアドバイスをしていただいて、そのときに専門的知識が身につけられるように、そんな仕組みをぜひつくっていただければと思います。

 文部科学省、申しわけなかったですけれども、ありがとうございました。ぜひ両省連携をして取り組んでいただければと思います。ありがとうございました。質問を終わります。

山名主査 これにて西村康稔君の質疑は終了いたしました。

 午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

山名主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働省所管について質疑を続行いたします。松野信夫君。

松野(信)分科員 民主党の松野信夫でございます。

 私は、地元熊本の方で二十年以上弁護士をしておりました。熊本ですと、水俣病という大変な悲惨な事件がありまして、私も長らく弁護団で被害者救済に当たってまいりました。それからハンセン病、これも、後に全国で裁判が行われましたけれども、最も早く提訴されまして、ちょうど三年前に熊本の地方裁判所でハンセン病の判決が出されました。これを受けて、厚生労働大臣の方で英断をしていただきまして、控訴しないという形で解決に向けて進んだわけで、この辺の対応につきましては、大変な敬意を表したいというふうに存じます。

 ただ、ハンセン病の問題についてはまだまださまざまな問題が残されておりまして、最近では、地元熊本の方で、ハンセン病の元患者さんが温泉地でホテルに泊まろうとしたところ、拒否されたという大変な事件が起きました。まだまだこれは、ハンセン病の差別については啓発あるいはそういう理解がなされていないなということでございます。あげくの果ては、この拒否をしたホテルは、ホテルを閉鎖するということで、そこの従業員を全員解雇する、こういう措置までして、これは大変な問題だというふうに考えておりまして、ハンセン病につきましては引き続き厚生労働大臣に御尽力いただきたい、このように考えております。

 さて、きょう御質問させていただくのは二点ございます。

 まず第一点、地元の大牟田の労災病院、これが廃止をされるという予定が打ち出されているわけでございます。これは、全国で労災病院が統廃合ということで、そのうちの幾つかが廃止される、その中に大牟田労災病院も入っているということで、地元の方では大変深刻に受けとめているところでございまして、この大牟田労災病院が廃止される理由、そして廃止に当たっての判断、これがいかなるものであるのか、この辺についてまず御説明をいただきたいと思います。

高橋政府参考人 労災病院の再編の問題でございますけれども、労災病院につきましては、平成十三年十二月に閣議決定をされました特殊法人等整理合理化計画、これを踏まえまして、労災病院が労働政策として期待をされます役割を適切に果たし得るよう機能の再編強化を図ろうということで、そういうことのために、本年三月三十日に労災病院の再編計画というものを取りまとめ、公表をいたしたところでございます。

 それで、この再編計画におきまして、労災病院の再編を行うに当たりまして、大きく二つの基本的視点を据えてございます。一つは、労災病院が勤労者医療におきます中核的な役割、これを効率的、効果的に果たし得る体制としていくこと、また、いま一つは、労災病院の運営主体でございます独立行政法人労働者健康福祉機構、これの健全な運営という観点から、労災病院につきまして、診療収入に基づきます独立採算、これを原則といたした経営を確保していくということを基本的視点として据えたわけでございます。

 その上で、それぞれの労災病院につきまして、現に有します診療・研究機能、経営の収支状況、それから地域的な配置状況等々といった点を総合的に評価いたしまして、全国的なネットワークを形成する労災病院の選定を行いまして、これ以外の、ネットワークを形成するに至らないそれ以外の労災病院につきましては統廃合を行うということといたしたところでございます。

 御指摘の大牟田労災病院でございますが、私ども、こうした検討の結果といたしまして、勤労者医療全般につきまして、診療・研究機能、この面での評価が相対的に低い、また大幅な累積赤字でございまして、経営基盤も大変脆弱であるといったことなどに基づきまして、大牟田労災病院を平成十七年度に廃止予定といたしたところでございます。

松野(信)分科員 抽象的な基準、あるいは大牟田労災病院における採算性で赤字が累積をしている、こういうようなお話でございますが、とてもこういう理由では納得できないものでありまして、この大牟田労災病院の特殊性、これをやはりよくよく見ていただきたい。歴史的にも、この大牟田労災病院は非常に特殊な環境に置かれて、いわゆるCO中毒患者さん専用にやってきたわけでありまして、そういう歴史性、特殊性を十分にやはり考慮してもらいたい、このように思います。

 ちなみに、この歴史性を申し上げますと、これはもう御承知のとおり、一九六三年に戦後最悪の炭鉱爆発事故が発生をしたわけです。死者が四百五十八人、CO中毒患者さんが八百三十九人発生いたしました。このうち、重症の患者さんが現在大体四十名程度あるわけです。大体中等度ぐらいの方が約二百名ぐらいで、これ以外の方々、約六百人ぐらいの中毒患者さんはもう亡くなられている、こういう悲惨な状況でございます。

 この三池災害を契機に、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法という特別措置法が制定されているわけで、この制定過程では、最後までしっかり患者さんの面倒を見ます、こういうような話がなされていたわけです。

 ちょっと御紹介を申し上げますと、これは参議院の本会議で、昭和四十二年の六月二十三日ですが、当時、佐藤栄作さんが答弁をされておられました。決議の趣旨によって、医療から社会復帰まで十全の処置をとるよう十分注意をする、こういうような答弁もなされております。それからもう一つ御紹介いたしますと、これは参議院の社会労働委員会、昭和四十二年七月六日ですが、当時の早川崇労働大臣がこのように答弁をしております。労働省としては、そういう業務上労働不能になった人を一生療養を見ていく、そうして家族も食えるという姿の実質的な補償を考えていく、このように答弁をしているわけであります。

 つまり、この特別措置法制定の過程では、言うなら、万全の措置をとります、患者さんが安心して治療できるように、こういうふうにうたっていたわけであります。もう指摘するまでもないかと思いますが、この措置法の十一条には、「政府は、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかつた被災労働者のためのリハビリテーシヨン施設の整備に努めなければならない。」と、これもうたっているわけで、こうした背景から見ますと、政府の方は、こういうCO中毒患者さんが安心して最後まで治療を受けられる、そのために万全を尽くすという責務を負っているのではないか。そうした観点から見ますと、この病院を閉鎖してしまうというのはこの法律に反するのではないか、こういうふうにも考えますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 御指摘のように、大牟田労災病院、この設置の経緯でございますが、昭和三十八年十一月に三井三池炭鉱の三川鉱で発生をいたしました炭じん爆発災害、これで被災をされました多数の一酸化炭素中毒症患者の方々の治療並びに社会復帰を図るための専門病院ということで、昭和三十九年二月に設置をされたわけでございます。

 また一方、御指摘のように、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法も、この三井三池の災害を初めといたしまして当時大変続発をいたしました炭鉱災害に伴います一酸化炭素中毒症の状況にかんがみまして、被災労働者に対して特別の保護措置を講ずること等を目的といたしまして、昭和四十二年七月に制定をされたのは御指摘のとおりでございます。

 私ども、今回、この労災病院の再編ということを考えるに当たりまして、大牟田労災病院を廃止することといたしたわけでございますけれども、ただ、再編計画の中にも、廃止に当たりましては、今申し上げましたような病院設置の経緯、それから、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法、この法律の趣旨等を踏まえた対応を検討していくということを盛り込んでおるところでございます。

 今後、これに沿いまして、一酸化炭素中毒症患者の皆さん方の療養の実態等を十分踏まえまして、患者さんの療養に支障を来すことがない方策につきまして鋭意検討してまいりたい、こう考えておる次第でございます。

松野(信)分科員 今お話がありましたように、やはり、何といっても、現にCO中毒患者として療養を受けていらっしゃる患者さん、そしてその御家族、この人たちが今、この病院が閉鎖されようとするということで、大変な心配、不安を抱えているわけで、やはりこの患者さんを中心にこの問題については対処をしていかなければならない、このように思います。

 どうも、今までの御説明ですと、万全を尽くすような御説明は聞きますけれども、一方では病院は閉鎖するという方針は打ち出されている、そうすると、では、患者さんは一体どうするんだ、こういう点について、やはり具体的に対処を示していただかないと、地元では大変不安がっている、こういうことを指摘したいと思います。

 そして、私も、地元におって、長いことこのCO中毒患者さんを診てこられたお医者さん、三村孝一さんあるいは原田正純さん、こういうお医者さんたちにもお話を聞きまして、入院患者さんたちはかなり重症で、やはり、このCO中毒患者特有のいろいろな難しい問題がある、治療についても相当の専門医でないとなかなか難しい、単純に内科の先生に診てもらうというわけにはなかなかいかない、そして、その患者さんについては環境を変化させるというようなことは余りよくない、こういう指摘も受けております。

 こういう患者さんの現状についてはどういうふうに認識をしておられるのか。それでもこの閉鎖を強行して、患者さんをどういうふうにするつもりなのか。この辺について、明らかにしていただきたいと思います。

高橋政府参考人 この三井三池炭鉱の三川鉱の炭じん爆発によりまして、一酸化炭素中毒症に罹患をされ、被災をされた患者さん、現在、この大牟田労災病院において治療などを受けておられる患者さんでございますが、入院患者さんで三十名、それから、中毒症そのものは一応治癒、症状固定ということでございますが、その後の必要な診察等を行っております、アフターケアで通院されている方も含めました通院患者さんが二十三名という現状になってございます。

 この一酸化炭素中毒症でございますけれども、この中毒症状、特に脳の機能、高次脳機能と言われている機能に障害が強く残るということで、後遺症状としては、特に行為・認識障害、あるいは意欲障害、記憶障害等々の後遺症が大変特徴的であると言われておるわけでございます。

 こういうことで、現在、大牟田労災病院におきましては、主に脳の機能低下の予防あるいは改善といったことを目的といたしまして、音読あるいは書字、それから運動、陶芸等々の作業療法を中心としたリハビリテーションを実施いたしておるわけでございます。

 こうした現在の療養の実態あるいは療養環境の変化の問題点等々も十分踏まえながら、患者さんの療養に支障を来さないような方策について、やはり私どもも真剣に考えて検討していかなければならないと認識をいたしておるところでございます。

松野(信)分科員 採算性が悪くて赤字がずっと続いているというようなお話もありましたけれども、確かに、このCO中毒患者さんに限って見るならば、これは採算性という点ではなかなか難しい側面があることは私も否定できないと思います。

 だけれども、よくよく考えてみますと、例えばこの大牟田の労災病院には、従来、熊大附属病院にこのCO中毒患者さんがおられたのを、最近、大牟田労災病院の方に集めているわけですね。熊大の附属病院だと赤字が出てしようがないというので、大牟田の労災病院の方に言うならばCO中毒患者を集めて専門的にやろう、こういうふうにしているわけですから、ある意味では、赤字を大牟田労災病院に集めているというふうにも言えなくもないわけであります。やはり、そういうような特殊な病院は、これからも必要性があると思います。

 確かに、炭鉱が閉鎖するというようなことになって、炭鉱の爆発による労災でCO中毒患者が今後大量に発生するというのはなかなか考えにくい、そう思いますが、しかし、このCO中毒患者さんが炭鉱以外のことで発生する、労災以外のことで発生するということは十分予想できるわけで、必ずしも労災に限定する必要はないのではないか、やはり社会の需要にこたえられるような専門病院の必要性、これを指摘したいと思います。

 また、この採算性の点については、同じ労働福祉事業団が経営していました、例えば吉備高原医療リハビリテーションセンターとかあるいは総合せき損センターとか、こういうようなところには、やはり特殊性だということで、一定の交付金が出ている。ここも必ず赤字になるんですね。赤字になるけれども、一定の交付金が出ている。最近では、運営交付金というような形で、言うならば赤字補てんのための交付金が出ているわけです。そうであれば、この大牟田労災病院も、CO中毒患者を抱えるという非常な特殊性があるわけですから、言うならば赤字補てんというような形で、先ほどのせき損センターと同じような処理というのは十分可能ではないかというふうにも私は思います。

 また、地元の自治体そして患者団体、さまざまな病院存続に向けての意見書も提出され、恐らく大臣のお手元にも届いているのではないかというふうに思います。地元では大変深刻な問題になっておりまして、こういう要請を踏まえて、ぜひ大臣の決意なり御所見なりをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 この大牟田病院につきましては、非常に歴史的な、労働災害病院としての大きな役割を果たしていただいたことは紛れもない事実だと私も思っております。しかし、全体で見ましたときに、労災病院全体の再編成をしなければならないという事態になってまいりまして、大牟田病院につきましても、地元に御無理をお願い申し上げているところでございます。

 病院全体として、今までのように労災病院として残すことはなかなか難しいというふうに思いますが、全体といたしましては、自治体とよく御相談をさせていただいて、今後、地域の住民の皆さん方の医療問題にマイナスにならないようにどうするかということを真剣に議論させていただきたいと思っているところでございます。

 さて、その中で、一酸化炭素中毒の問題でございますが、これこそこの地域におきます大変大きな問題であったことは事実でございます。国の方が、このことにつきましては、最後までその皆さん方の医療については面倒を見ていくということをお約束していることでございますから、ここは、これからこの労災病院全体がどうなるかは、今後地元とよく御相談をさせていただきたいというふうに思います。

 一酸化炭素中毒の入院をしておみえになる患者の皆さん、あるいはまた通院をしておみえになる皆さん、通院の皆さんの中には重い人も軽い人もいろいろおみえになるんだろうというふうに思っておりますが、そうした皆さん方の治療につきましては、これは最後まで責任を持ってやっていくというのが国としてやはりやらなければならないことだと思っております。ここは責任を持って私たちも対応させていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 ですから、この部分だけ、労災病院の機能としてここだけ残すのか、それとも全体で、もしも地域の病院がそれをお持ちいただくということになれば、その中でこの皆さん方の問題を取り上げて考えていくのか、そうしたことはあろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、入院の皆さん、通院の皆さん方につきましては最後まで国の方が責任を持つということだけはここで明らかにしておきたいと思います。

松野(信)分科員 ぜひ、最後までしっかり責任を果たしていただきたいというふうに思います。

 時間が余りありませんが、次に、荒尾におきます職安の廃止の問題、これも労災病院と同じように、荒尾の方の職業安定所を廃止するという方針が打ち出されて、これまた地元の方では大変な問題になっているところでございます。

 現在、もう言うまでもなく不況下にあって、変な言い方で言うと、ハローワークだけが繁盛していると言っても過言でないぐらい、こういう状況であるにもかかわらず、現に私も地元で、行ってまいりましたし、所長さんたちともお会いしましたけれども、それなりの実績を上げている、数字的に見てもそれなりの要求があるこの荒尾の職安、何で廃止するんだということで地元では大変心配をしているわけで、廃止をして一体どうしようというのか、この辺について、まず基本的なお考えをお聞かせください。

井口政府参考人 御案内のとおり、近年、国の行政組織につきましては、減量、効率化ということが強く求められているところでございますけれども、公共職業安定所につきましても、限られた定員で効率的かつ効果的な業務運営を行うために、廃止統合を含みます再編を全国的に進めているところでございます。

 このような中で、荒尾の公共職業安定所につきましても、もともとは炭鉱離職者対策の必要性を背景に設置された経緯がありまして、同対策がおおむね終了しつつある現状におきましては、その設置の必要性について見直しが必要な状況になってまいったところでございます。

 しかしながら、荒尾地域につきましては、近隣の玉名地域とあわせた全体で見た場合には、熊本県北のかなめとなる地域として、行政サービス自体は強化を図らなければならない地域でございますために、今回、荒尾公共職業安定所につきましては、玉名の公共職業安定所と統合することにいたしまして、組織体制を強化することによりまして、地域や利用者のニーズに合いました、より効果的な行政運営を図ることといたしたところでございます。

松野(信)分科員 そうすると、荒尾を廃止して、近隣でいうなら玉名で対応する、玉名に現在あるわけですけれども。そうすると、荒尾の方で働いている、職安で働いていらっしゃる公務員の人たち、この人たちはどういうふうになるのか。また、荒尾の職安を利用している失業者の人たち、この人たちは、ではどうしたらいいのか。この辺はいかがでしょうか。

井口政府参考人 荒尾の公共職業安定所を廃止するに当たりましては、何といいましても地元の利用者の方々に対しますサービスの低下を招かないということが重要であると考えております。

 このために、荒尾の公共職業安定所の職員、現在十二名おりますけれども、そのうち十名程度を統合後の玉名の公共職業安定所に配置がえをいたしまして、事業所に対するサービスの充実を図るとともに、新たに、就職あっせん上特別の配慮を必要とする求職者の方々に対する窓口を設けるなどの組織体制を強化いたしまして、地域や利用者個々のニーズに合った、より効果的な行政運営を進めていきたい、そのように考えております。

松野(信)分科員 職安の問題については、先ほど申し上げたように、それこそハローワークが本当に今商売繁盛ということで、言うならば希望者が殺到しているわけで、やはり、例えば単に荒尾の職安を廃止して玉名に行きなさいということで簡単に済まされるような問題ではない、こういうふうに思います。

 地元の自治体の方でも大変御心配をされておりまして、市長さんほか市議会あるいは商工会議所、さまざまなところからもう既に、こういう、職安の廃止に反対というような形で陳情もなされているわけでございます。

 ちょっと御紹介しますと、この陳情の内容を見ましても、荒尾地域、大牟田とか荒尾とか、こういう地域は、炭鉱の閉鎖ということで大変失業者も多い、厳しい状況に置かれているという前提がありまして、就業状況というのは大変厳しいわけで、有効求人倍率も平成十五年十二月の時点で〇・三八ということで、熊本県下にあります職安のうち、これは十三あるんですが、そのうち十番目という低いところにあって、非常に必要性は高いのではないか。

 ぜひ、地元の自治体とも十分意見の調整などをしながら、何らかの形で、やはりニーズにしっかりこたえていくというようなことで協議を進めていただきたいと思いますが、大臣、この点についての御決意をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 合併をいたしましたときに、職員の皆さんの問題はいずれにしてもきちんとしなきゃいけないというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、荒尾の、地元の皆さん方の利用がどうかという問題でございます。

 中には、それは、統合してそちらの方に行っていただける人もあると思いますけれども、なかなかそうもいかない人もおみえになるというふうに思いますから、地元におきまして利用していただく皆さん方に対するサービスが低下をしないようにどうするかということにつきまして、地元の市と十分お話をさせていただきまして、そして、そういうことにならないようにどうするかということを十分考えさせていただきたいと思っております。

松野(信)分科員 もう時間がありませんので質問はこれくらいにしたいと思いますが、全国画一的に、一律にやってしまうというのではなくて、やはり地域地域の実情、そしてその歴史性も踏まえてぜひ対応していただきたい、このように申し上げたいと思います。

 特にこの大牟田とか荒尾とかいう地域は、昔は石炭で大変栄えたところですけれども、これは国の政策で、言うならば国の石炭政策で炭鉱が閉鎖というような形で、大量の失業者も出ているし、先ほど申し上げたように大変な労災事故も発生して、そのために特措法やらこういう病院もできているわけです。こういう、地域の実態に合った、実情を踏まえ、そして地元の自治体とも十分に協議しながら慎重に進めていただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

山名主査 これにて松野信夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 私の方からは、喉頭軟化症によりまして気管切開手術を行い、気管カニューレの医療器具をつけておりますお子さんのことで質問をさせていただきます。

 先日お会いをしました三歳九カ月の女の子でございますが、喉頭軟化症によりまして気管切開手術を行い、気管カニューレの医療器具をつけまして、たんがたまりますと吸引しなければならない、そういう状況でございます。

 実は、このお子さんは、二十八週で千四百二十五グラムで生まれまして、呼吸窮迫症候群の治療を行いまして、呼吸状態は改善をいたしました。一歳二カ月でこの気管切開術を受けました。その後、言葉も出るようになりまして、今はスピーチバルブの使用も可能でございます。現在、身障者手帳四級と確定をしております。お母様の付き添いのもとで療育施設に通っております。

 しかしながら、この御両親は、きょうだいが通っております同じ保育園に一緒に通わせたいという、また、将来普通学校に進学させたいという強い希望を持っております。まだ三歳九カ月ですけれども、本人もそのことを強く望んでおりまして、吸引以外のことは、食事にしても、また排せつにしましても、また衣類の脱ぎ着にしましても、普通児と全く変わらない、本当に頑張ってできるようになっております。恐らく、そうしたハンディを持っている分だけ頑張ってきたのだと思います。お会いしまして、大変賢い、また活発なお子さんという印象を受けました。今はピアノ教室にも通っておりまして、しっかり勉強して、大きくなったら看護師になりたい、このように夢を膨らませております。また、このお子さんなら、そのことは恐らく可能であると思われます。

 そのことにつきまして、主治医の所見でございますが、「現在は身体的には呼吸の問題を除き急速な伸びが見られ、知的にも順調に発達しておられます。よって健常児との統合保育が児にとっての発達に極めて有効かつ必要だと考えます。気管内吸引は適切な指導を受けた職員が、決められた手順で行なえば安全に行なえる手技であります。また、気管カニューレが抜けた場合でも気切孔がすぐには閉じることはなく、これも手技を習得すれば安全に行なうことができます。当院では職員の方へのご指導もお引き受けいたしますし、急変時の対応あるいはご相談にも随時応じていける体制をとる予定です。」と、このような所見を述べております。

 やはり、お子さんにとりまして、普通保育園、また普通学級に進むことが、より成長発達を促し、対応する能力が十分にある、このように考えられます。このお子さんのように、気管切開中であるというそれだけで、知的障害もない、また肢体不自由でもない、簡単な吸引をしなければならないという、これだけで、いわゆる養護学校の範囲でもない、普通学校にも行けないという、まさに狭間に置かれている、こういうお子さんの状態でございます。このお子さんの将来にとりまして、やはり同じ年代のお子さんと一緒に同じ教育を受けていくということは、伸び盛りにとって非常に大事な問題だと思います。

 しかも、このお子さんの吸引につきましては、現在は、一時間に一回程度の吸引が必要ですけれども、時には、風邪ぎみのときは三十分に一回、こういうこともございますが、二時間に一回、こういうときもあり、また、小学校高学年になりましたら自分でやがて吸引できるようになるという、こうした医師の見解もございます。また、少し角度は違いますが、子どもの権利条約の中にも、そうした障害児の権利がうたわれております。

 なお、このお子さんが住んでいらっしゃる市は、人口八万人でございますが、ここにはやはり、就学前の同じような状況の、知的障害もない、また肢体不自由もない、気管切開だけ、こういうお子さんが、五歳、四歳、三歳児で約四人いらっしゃいます。恐らく、余り取り上げられていない例かもしれませんが、全国単位で見れば、同じようなケースで悩む御家族も多くいらっしゃるのではないかと思います。

 長くなりましたけれども、こうしたお子さんが、これから普通の保育園に、また、将来普通学校に進みたい、こういう要望につきまして、どのような見解なのか、文部科学省、また厚生労働省の方に御質問をいたします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 呼吸障害などのために気管切開をして気管カニューレを装着するような、日常的に医療的ケアを必要とする重度の児童生徒につきましては、看護師を中心とした、教員などの関係者の連携による安全かつ的確な医療的ケアの実施や緊急時の対応体制の確立など、医療的ケアの体制整備が進められている養護学校において、児童生徒の安全面に万全を期した対応が行われているところでございます。

 こうした児童生徒の普通学級への入学についての御質問でございますが、このように日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒につきましては、その安全に十分配慮した医療的ケアの実施体制が整備されているということが必要でございますことから、基本的には、小学校の普通学級への入学は難しいわけでございまして、養護学校への入学ということになるものと考えているところでございます。

 なお、文部科学省におきましては、養護学校における医療的ケアの対応のための体制整備を図りますために、厚生労働省と連携いたしまして、養護学校における関係者の連携、医療、福祉等の関係機関との連携、また、看護師と教員の連携のあり方などについて実践的な研究を行う、養護学校における医療的ケア体制整備事業を四十道府県に委嘱して実施しているところでございます。

 今後とも、厚生労働省と連携を図りながら、養護学校における医療的ケアのための体制整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

伍藤政府参考人 保育所への入園の問題につきましても基本的には同じような状況でございますが、たんの吸引ということが、これが医療行為とされておりますことから、保育所に看護師が配置をされておるかどうかということが決め手になるわけでございます。

 現在、全国に二万カ所ございます保育所のうち、看護師が配置されておるのが四千四百カ所程度でございます。これは、必ずしもこういったたんの吸引とか障害児のためということではなくて、乳児保育、最近、低年齢児保育等が進められておりますが、乳児保育の一環で、保育士の配置にかえて看護師を配置しておる、その結果が、この四千四百カ所において看護師が配置をされておるという状況でございまして、こういったところでは状況によっては受け入れが可能ではないかと思いますが、どこの地域でも受け入れるというような状況になっていないことは御指摘のとおりでございまして、このあたりを、保育所で一般的に受け入れる体制にすべきなのかどうか、可能かどうかといったようなことも含めて、総合的に考えていくべきことではないかなというふうに思っております。

高木(美)分科員 ただいま医療的ケアというお話がございました。当然、養護学校、そしてまたヘルパーさんにつきまして、見解はいろいろあると思いますけれども、医療的ケアが今認められていると伺っておりますが、この医療的ケアの今の範囲につきまして御質問をさせていただきたいと思います。

岩尾政府参考人 たんの吸引ということでお話をさせていただきますと、私どもが以前、看護師等によるALS患者の在宅医療支援に関する分科会の報告書では、在宅で長期に療養する方で、そのようなケアの必要な方々をどうするかというときに、随分議論いたしました。

 本来ならば病院等で二十四時間の看護、ケアが必要だというもののほかに、どうしても在宅で治療していく必要性がふえてきたときに、在宅で行うべき医療あるいは看護の範囲をどのようにするのか、また、そのような中で、特にたんの吸引というような問題に対して、ホームヘルパーなど医療関係職種でない者が、在宅のALS患者など呼吸に障害を持つような状態の方々に対して、たんの吸引というものは、幾つかの条件のもとに、やむを得ないものとして、当時認めたわけでございます。

 それは、在宅療養に移行する前に、在宅療養にかかわる者の役割や連携体制などの確認ですとか、定期的な診療、訪問看護ですとか、家族以外の者に対して必要な知識の習得ですとか、あるいは文書による同意ですとか、幾つかの条件をそのときつけたわけでございまして、あくまでも緊急時の連絡、支援などもできるようにしようということでございます。医療の延長として在宅の中で行う範囲というものを決めたということで、二十四時間管理がしにくい学校ですとか、そういうようなところで、このような要件が、医療関係職種以外が行ってもよいというような形でまとまったものではないということは御理解いただきたいと思います。

高木(美)分科員 ただいまの医療的ケアの課題につきまして、実は、昨年の六月三日でございますが、大臣が記者会見の折に、これはALS患者の方たちの吸引の問題について報告書をまとめた内容、これを受けられまして、このような発言をされております。こうした吸引の問題については、「本来はALSだけにとどまった話ではないと私も思っております。ただどこかの問題を中心にして論議をして、そして決着をつけて風穴をあけないと全体に広がっていかない」と。

 また、重ねまして、「ALSの場合には非常に難しい」「口腔内に溜まりました痰を取るというだけではなくて、喉のところに手術をされてそしてそこに人工呼吸器等をつけておみえになる」、普通よりも非常に難しいという認識を示された上で、ただ、今は機械も発達をしてきている、できることはみんながやれるようにしていけばいい、ただ、ふだんと違うようなときには、専門家にそのことを報告するといったことも大事ではないかという、このような御見解を示していらっしゃいます。

 この御発言につきましては、ALS患者の方たちは大変大きな希望であるというふうにとらえていらっしゃいまして、さすが坂口大臣である、このようなお声も聞いております。

 そうした中で、先ほどありました重度のALS患者という場合、それから、先ほどから申し上げておりますように、気管切開をしただけで、吸引が必要であるという、まさに知的障害もない、また肢体不自由もないという、恐らくこれは特殊な例に入るかと思いますけれども、そうしたお子さんとはこれはまた少し種類が違うのではないかというふうに思っております。

 教育を受ける権利ということにつきましては後ほどお話をさせていただきたいと思いますが、ただ、このような吸引の問題につきましても、実は私も、かつて弟が交通事故で、付き添って、家族として吸引をしたという、そうした経験もございます。そのときから比べましたら、まさに機械も大変大きく発達をしておりますし、見ておりますと、とても簡単であるという、こういう印象を受けます。中には、迷走神経を傷つけてという、こういう安全性を心配される医師の方もいらっしゃるようですが、ただ、それは何億分の一の確率である、このようにおっしゃる医師の方もまたいらっしゃいます。

 こういう中で、あくまでも、こちらのお子さんのような特殊例の吸引の場合、これをどのように、医療的ケアという範囲を広げて、また広げることが可能なのか、これにつきまして大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 今お話ございましたように、ALSの患者さんの場合に、何とか、家族もたんの吸引をしているんだから、ぜひもう少し施設等でできるようにしてほしいという御要望がございました。

 私は、ALSの患者さんを初めとして、こうした皆さん方のたんの吸引ということは、それは医療従事者がいればそれにこしたことはありませんけれども、看護師さんがいないからといってできないというわけではないと、率直にそう思っております。したがいまして、ヘルパーさんに限ってということで、このときにも一応認めさせていただくことにしたわけでございますが、その周辺に多くの皆さん方がおみえになることも事実でございまして、きょうお挙げになりました喉頭軟化症ですか、大変少ない病気だというふうには思いますけれども、そういう人も確かに、その周辺と申しますか、同じ範疇に入るのかなというふうに思います。

 それで、これはやはり関係者の合意を得ていかなきゃならない問題であります。前回のときにも看護協会は大変な反対でございましたけれども、私は、そんなに反対をされることはないのではないかと看護協会の皆さんに申し上げたわけであります。看護師さんがおやりをいただかねばならない問題というのはもっとほかにあるのであって、たんの吸引に反対をするということは看護師さんとしていかがなものかと私は申し上げたわけでありまして、私個人はかなり積極的に、これはヘルパーさんならヘルパーさんでも結構ですし、一応のそういうことを身につけていただく人がおればできることだというふうに思っている次第であります。

 もう少しこれは検討はしなければなりません。私がここで一概に言うわけにはまいりません。もう少し検討させていただきたいというふうに思いますけれども、ALSはよくてほかのものはだめだというのも、これも理屈に合わない話でございますから、この辺のところは、少し医師会や看護協会ももう少し大きい気持ちで対応をしてほしいというのが私の気持ちでございます。

 こうした関連の人たちともよく話をさせていただいて、そしてもう少し柔軟に対応できるようになるように私は努力をしたいと思っております。

高木(美)分科員 大変力強い御発言をいただきまして、心から感謝申し上げます。

 私も、やはりこうした医療的ケア、特に吸引の問題につきましては、先ほど来、看護師の配置というお話がございましたが、それだけでは問題は解決しないと考えております。そうなりますと、どうしても、それぞれ、実際に運用する市町村におきまして、財政上の理由を課題に入園、入学を断られる、そういうことにもなりかねないと思っております。かといって、家族が付き添えるかといいますと、母親は一緒に付き添ったとしても、ほかに、夫の会社を手伝い、同居の親も病気がちであるとか、またその兄弟の面倒も見なければならないとか、大変母親は疲れ切っている、そういう状況もございます。

 また、先ほどからお話しいただきました、付き添いなしに入園を受け入れる、また進学を受け入れる、そういう場合の問題点につきましては、当然、だれがそのお子さんの吸引をするのか、こういう課題があるわけでございますが、私は、やはりその際に、主治医の先生の指導、これをもっと重要視すべきではないかという思いでおります。既に養護学校でモデル事業を始めてくださっておりますように、主治医の指導のもとに研修を受ける、そしてケアの仕方を取得する、主治医がその教員を認めたという、そういう場合に限りまして行うという、そのようにしていただけましたら十分可能ではないかと思います。また、先ほどお話しいただきましたように、主治医と緊急時に連携がきちんととれるという、そのようにしておくなどの配慮をしていただきましたら、これはかなり進むことができるのではないか。

 やはり、こういう個人差、ここのところをどう配慮しながら一人一人の個性をどう伸ばしていくか。また、勉強したい、将来こうなりたい、そういったお子さんの希望というものをどのようにかなえていくかという、これがこれからの子育てにおいて大事な課題ではないかと思います。その際に、やはり主治医を中心に患者の個人差を考慮していく、そしてそのために主治医の所見をもっと重要視していく、このようなシステムをつくっていただきましたらば、受け入れることも十分可能ではないかと思っております。

 先ほど大臣からお話がございました、吸引のことにつきまして総合的にこれからさらに検討していただくという、このこととあわせまして、主治医を中心にという、このことにつきまして御見解をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 それも一つの方法だと思います。主治医の方の御意見を尊重するというのも一つの方法だというふうに思いますから、少し整理をさせてください、そしてまた、検討させていただきたいと思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 現在、こういうことを、養護学校中心でございますけれども、既に受け入れている自治体も多くございます。例えば栃木の今市市では、こういうお子さんのために、市が二百十万の予算で、普通小学校に看護師を配置するために看護師七人と契約をして、常時一人が教室に同席をしている。ただ、こうしたことは、子供たちにとりましては特別扱いという印象がぬぐえないという、こうした報告も聞いております。また、東村山市では、子供のありのままを受けとめるという方向性で、ここは看護師を派遣しているようですけれども、徐々にきめ細かに体制を整えている。

 また、中には、学校によりまして、また保育園によりまして、こうした基準というよりも、保育園とその地域の教育委員会、そしてまた医師とで相談をしながら、御自分たちでこういう医療ケアが学校内あるいは保育園内でできるという、この体制づくりを既に目指しているということも伺っております。

 このように、先駆的に進めているという例もあるようですけれども、こうした取り組みにつきましては、文部科学省、また厚生労働省でどのように把握をしていらっしゃるのか、見解をお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 医療的ケアに関する取り組みについてでございますけれども、文部科学省におきましては、平成十年度から、養護学校と医療福祉関係機関との効果的な連携方策でございますとか、看護師の配置により対応する場合の教員や医師、看護師、保護者等が連携した対応のあり方について調査研究を行ってきたところでございます。

 これらの調査研究の結果を踏まえまして、平成十五年度からは、厚生労働省との連携のもと、養護学校における関係者の連携や、医療福祉等関係機関及び都道府県の関係部局間の連携、並びに看護師と教員の連携のあり方など、養護学校における医療的ケアの体制整備を図るためのモデル事業を行っているところでございます。このモデル事業におきましては、看護師の常駐など一定の体制のもとで、教員が咽頭より手前のたんの吸引などを行うことが認められているところでございます。

 現在、養護学校における医療的ケアの体制整備を図るということが喫緊の課題となっておりますので、私どもといたしましては、そういった体制整備に力を注いでまいりたいと考えているところでございます。

伍藤政府参考人 全国的に、網羅的に調査したものはございませんし、それから、障害児保育全般につきましても、今一般財源化をして、各市町村で工夫をしてやっていただいておりますから、すべて私ども把握しているわけではありませんが、御指摘のありました東村山市あるいは東大和市における実例につきましては、例えば東村山市におきましては、たんの吸引を必要とする子供さんを受け入れて、これは市が実施をしている障害児保育の単独加算で対応したというふうに承っております。

 それから、東大和市の場合には、これは先ほど来御指摘のあります喉頭軟化症の事例でありますが、この場合には非常に頻回にたんの吸引が必要ということで、保育所での受け入れは困難というふうに地元で判断をして、肢体不自由児通所施設に通われておる、こういうふうに、それぞれの状態に応じて扱いも区々でございます。

 それぞれの実態に応じてどういう対応が可能かというのをやはり当該市町村で御判断をいただくほかはないと思いますが、その大前提として、先ほど来申し上げております、保育所の場合には、看護師がすべてには配置をされておらないという状況と、それから、医療行為として看護師でなければならないのか、こういったところの基本的問題を並行して検討していって、保育所としてどういった対応が可能か、それぞれの市町村で御判断をいただくということになろうかと思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 ちょっと一点訂正をお願いしたいと思いますが、今お話のございました東大和市のたんの吸引が頻繁でなければという、そのお子さんに私はお目にかかってまいりました。ですので、恐らく市からの報告と現実と若干ずれがある場合もあるということを、また今後の参考にしていただければ幸いでございます。

 最後に、医療行為というこの言葉でございますけれども、これはやはり医師の医学的判断と技術をもってしなければ人体に危害を及ぼし、また危害を及ぼすおそれのある行為という、このように私は認識をしております。

 先ほどからずっと申し上げておりますように、機械の発達、また医学の進歩によりまして、こうした障害になるものは徐々に取り除かれているという現実を実感いたします。

 そこで、先ほど大臣が、医者でなければ、また看護師でなければという、こういうお話をしていらっしゃいましたけれども、私は、医者や看護師でなければできないという、何がそうなのか、そしてまた、もっと簡単な日常的なケア、まさに生活行為と言われる、そういう内容につきましては、やはり身近な方たちが行えるように、もっと現実に合わせた形に考えていただければと思っております。

 その意味では、看護師さんは、もっと大きな立場で、できれば教員の方であるとか、またヘルパーさんであるとか、そういう方たちへの指導、研修を行っていく、またこういう医療的ケアに携わる方たちをサポートしていく、こういうまさに大きなシステムにしていかなければいけないのではないか、このように思っております。

 特に、最近はこうした医療的ケアを必要とする障害児が大変増加をしております。これからは、父親といいましても母親といいましても、女性も外に出て働く、こういう傾向が大変強くなっております。そういう中で、やはり医療、教育、福祉という、こういう総合的な面からも子育て支援を総合的に考えていただきまして、またこういうものの検討をお願いしたいと思います。大臣のそうしたお考え、また御決意をお伺いいたしまして、質問を終了させていただきたいと思っております。

坂口国務大臣 何を医療と言うかというのはなかなか難しいことでございますが、昔は保健師が地域で血圧をはかることさえ、これは認められなかったと申しますか、だめだと言われた時期もあったわけでございます。しかし、看護師が血圧をはかることは当然というふうに言われるようになり、そして今や家庭でだれでも血圧ははかることができるということになったわけであります。たんの吸引の場合には、これは若干注意をしなきゃならない点が幾つかあることは事実でございますけれども、それぞれの御家庭におきましては、皆さん、たんの吸引をおやりになっているわけでありますから、その辺のところはもう少しルールをつくって、きちっと対応ができるようになるのではないかというふうに私は思っている次第でございます。

 いずれにいたしましても、関係者ともよく相談をしなければならないというふうに思いますので、よろしくお願いします。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

山名主査 これにて高木美智代さんの質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根分科員 お疲れさまでございます。民主党の中根康浩と申します。

 いつも少し熱くなり過ぎてしまうものですから、きょうは努めて穏やかにやっていきたいと思っております。

 今も高木議員さんから医療的ケアのお話が出ておりましたけれども、先週、五月十四日でしたか、障害者基本法が改正され、まさに障害者の方々にとっては、不十分でありながらも、一歩政治における理念的な部分が前進をした。さらに、そのことをきっかけといたしまして、いわゆる日本版ADA、障害者差別禁止法、こういったものに向けてこれからも前進を図っていただきたい、そんな思い。あるいは、今、年金問題などを初めといたしまして、厚生労働行政、社会保険庁、そういったものをめぐる行政のあり方が国民から厳しく監視をされている、そういったことの中で、まさにきょうは決算行政監視委員会ということでありますので、行政を監視していただいている国民の目線で質問をしていきたいと思います。

 そういった意味で、また報道をもとにということも含まれていきますので、恐縮でございますけれども、一つ一つ、できれば丁寧に説明をしていただければありがたいと思う次第でございます。

 まず初めに、五月八日あるいは五月二十二日号の週刊現代という週刊誌の記事によりますと、今選択エージェンシーの問題のことでも出てくる、国民健康保険中央会の理事長の北郷勲夫さんという方、この方の障害者差別発言が問題として取り上げられています。

 この北郷理事長さんは、国保中央会の理事長であると同時に、平成七年からは財団法人日本身体障害者スポーツ協会、つまりは今の財団法人日本障害者スポーツ協会の会長もお務めです。ここには、国庫から二〇〇三年度で五千八百万円の補助金、福祉医療機構から一億七千万円の助成金が入っている。だからこそ、一つ一つの発言、言動が注目をされるし、特にナイーブな面もある障害者に関する発言には責任ある立場だと自覚していただかなくてはならない、そういったお立場の方だと思っています。

 この北郷さん、若干経歴を拝見させていただきましたけれども、大変すばらしい御経歴の方で、重立ったところといいますか、僕が関心を寄せさせていただいているところだけ取り上げてみても、昭和三十三年に厚生省に入省され、そして四十八年には児童家庭局障害者福祉課長、五十年には心身障害者福祉協会の総務部長、それから六十一年には厚生大臣官房長をお務めで、六十三年には厚生省薬務局長、平成二年には社会保険庁の長官、平成四年、社会保険診療報酬支払基金理事長、七年には財団法人日本身体障害者スポーツ協会の会長になり、そして八年にはあわせて国民健康保険中央会の理事長にもなった。

 まさに、厚生労働行政、あるいはとりわけ障害者福祉、こういったことについては大変影響力の大きい方である、そういった方々から見れば、雲の上の人であり、そしてまた大きな期待を寄せる人であろうと思います。だからこそ、あえて苦言を呈していきたいというふうに思うわけであります。

 記事によりますと、二〇〇二年の八月に行われた、いわゆるもう一つのワールドカップと言われる、知的障害者によるINAS―FID、国際知的障害者スポーツ連盟主催のサッカー選手権大会の開幕日のことであるわけなんですけれども、こういった一連のことについては、既に担当の方にその記事の内容等は通告してありますので、一々ここでは申し上げませんけれども、報道されている北郷さんの一連の障害者差別発言と言われているもの、こういったことについて、厚生労働省としてどのようにお感じ、お考えになっておられるか、お尋ねをしたいと思います。

塩田政府参考人 障害者スポーツというのは、障害者の社会参加などで非常に重要な役割を果たしていると思います。そして、日本障害者スポーツ協会が障害者スポーツの振興の上で大変重要な役割を果たしていることも、先生の御指摘のとおりでございます。その会長というのは、障害者スポーツの振興の上でも非常に重要な役割を果たす立場だろうと思います。

 御本人によれば、週刊現代に報道されたようなことは発言していないということでありますけれども、いやしくも障害者スポーツの中心となる方でありますので、一部の方とはいえ、そういった誤解を招くような発言をすることはあってはならないことだと思いますし、御本人は否定されておりますが、今後とも、障害者スポーツ振興の観点から、適切な発言をしていただきたいと思いますので、私からも直接御本人にそうしたことについてお話し申し上げたいと思います。

中根分科員 こういった発言一つ一つは、まさに水かけ論のようなことになりますし、本人は言ったつもりはなくても、知らず知らずのうちに人を傷つけているというようなことも多々あるわけでありまして、まさに、くれぐれも細心の注意を払っていただかなくてはいけない立場の方である。

 それで、改めてちょっと確認をいたしますけれども、ここに一枚の報告書があります。作成者は申し上げることはできないのかもしれませんけれども、二〇〇二年の八月、国際知的障害者スポーツ連盟主催のサッカー選手権大会のスタッフが、大会終了後、国際知的障害者スポーツ連盟の会長あてに作成、報告したものであります。

 これによりますと、ちょっと読み上げますと、「報告」というふうにありまして、

  平成十四年八月八日、東京スタジアムにて、財団法人アイナスエフアイディサッカー世界選手権大会日本組織委員会が主催する、「二〇〇二INAS―FIDサッカー世界選手権大会」の開会式及び開幕戦が行われた。

  その会場において、財団法人日本障害者スポーツ協会の会長である北郷勲夫氏に、下記に記載する発言があった。

 ・ご臨席された高円宮妃殿下に対して、「あんな者三階(ロイヤルボックス席)に上げておけばいい。急にきやがって」との発言があったので、「何をおっしゃるのですか」と申しあげた所、「君は何者だ。名を名乗れ。」と言われたので、自分の名前と今大会で来日されたINAS―FIDマルダー会長の秘書、通訳をしており、元はJAWOCで長沼副会長と村田局長にお仕えした旨をお伝えしたところ、だまってしまった。

 ・片足の不自由なボランティアの方に対して「びっこ」と呼称。

 ・財団法人アイナスエフアイディサッカー世界選手権大会日本組織委員会のあるメンバーの運営方法に対して、「奴らに何が出来る」

  いずれも聞き苦しく、とても福祉団体の長である人物の発言や態度とは思えず、驚いたとともに、この様な人物が財団法人日本障害者スポーツ協会の会長であることに疑問さえ感じた。

                    以上

として、日付と名前が署名がされているわけでありますけれども、改めて、部長さんで結構ですけれども、この報告書の内容をお聞きになっていかがお感じでしょうか、お尋ねをさせていただきます。

塩田政府参考人 あくまで週刊現代の報道ということで、その方もある方から聞かれて報道されたと思いますが、私も障害保健福祉部長として、北郷会長にはいろいろな形で接触しております。

 平成七年の四月に就任してから、恐らくこれまで四度再任されていると思います。理事長のポストは協会の理事会の互選ですけれども、その中には、障害者団体の方々でありますとか、障害者スポーツの関係の方とか、有識者とか一般スポーツの振興の方々とか、そうそうたる方々の全会一致で四度も互選された方ですので、その立場は非常に重いわけですから、常に適切な御発言を私自身はされていると思いますけれども、一部の方とはいえ、誤解を招くような発言については、先ほど申し上げましたように、立場上、常時適切な、常に模範となるようなことでこれからも頑張っていただきたいと思っております。

坂口国務大臣 今、北郷さんに対するお話がございまして、言った言わないは、先ほど委員もおっしゃいましたように、これはなかなか難しい話でございますが、障害者の問題のトップに立つ方の一人でございますから、それだけにやはり言動は御注意をいただいて、そして、たとえ少数の人といえども、そうした誤解を招かないように、やはり注意をしていただかなければならないというふうに思います。これは北郷さんだけに限ったことではございませんで、上に立つ者は、やはり立てば立つほどその言動は注意しなければいけませんし、そして、謙虚でなければならないというふうに思っております。

 そういう発言、なかったことを私も信じたいというふうに思っておりますけれども、しかし、一部の人であれ、そうしたことが再三出るということは、やはり御注意をいただかなければならないことだというふうに思っております。

中根分科員 あえて大臣からも御答弁いただきまして、本当に大臣のおっしゃるようなことであってほしいというふうに思うわけですが、北郷さん、僕、実はお会いしたこともありませんし、どんな方なのかわからないまま、こうやってお尋ねをしているわけなんですけれども、会ったら、もしかしてすごく好きになってしまうような魅力ある方なのかもしれません。しかし、あえてきょうは、お会いしないまま質問を続けていきたいと思います。

 実は、北郷さんについてはこれだけじゃないということも指摘をされておるわけで、ここに一九九七年の十二月九日付の産経新聞のコピーがあるんですけれども、北郷さんが会長をしていた平成八年に、当時の日本船舶振興会から日本身体障害者スポーツ協会に交付された七百十万円の補助金のうち、約二百十六万円が不正であったとされる問題があったというような内容の記事なんです。約二百九十万円かけて作成される予定だったはずの冊子が、実はつくられていなかったと監査で発覚をしたということであります。

 このようなことがあったがゆえに、その後、日本財団からの協会への寄附が打ち切られたというふうにも聞いていますが、この問題後も北郷さんは会長のまま、そのままお仕事を続けておられますし、この件で、だれがどのように責任をとったかということもはっきりしておらないわけなんです。

 この点について、こういった問題の一連のてんまつと、それから責任の所在といいますか、だれがどのように責任をとったか、あるいはその後の日本財団と障害者スポーツ協会との関係がどのようになっていったかということを、わかる範囲でぜひ教えていただきたいと思います。

塩田政府参考人 先ほど御指摘がありました、日本財団との関係で不適正な事例があったということは、事実でございます。

 平成八年度に日本財団から受けた事業、三つのうち一つの事業につきまして、報告書は完成していないにもかかわらず完了したということで、不適切に補助金を受領したという事例がございました。これはあってはならないことでありますし、日本財団に対しても補助金を返還したということであります。また、おくればせでありますが、報告書自身はきちんと作成したということでございます。

 これについては、実務的な話でありますが、北郷さんも会長という責任者の立場でありますので責任は免れない話だと思いますが、当時の厚生労働省として、財団に対しては厳しく指導して、二度とこういうことがないようにということで厳しく申し渡したと承知しております。

 その後、その報道の中では、知的障害者のワールドサッカーが日本で開催されましたが、これの開催の助成を日本財団に申請したけれども、北郷さんの問題があったので日本財団としては補助金を認めなかったというようなことが書かれております。

 これについては、厳密に申し上げますと、知的障害者のワールドサッカーについて申請を出したのは、会長はアサヒビールの瀬戸会長だったと思いますが、日本障害者スポーツ協会とは別の、そのためにわざわざつくられた財団法人が申請をしたということでありまして、その年の日本財団の助成の採択方針として、こういう大会には助成しないというような方針もあったやに聞きまして、北郷さんの過去のいろいろな補助金の問題、北郷さんが責任者である財団の問題とこれとは直接は関係ないと私ども理解しております。

 いずれにしても、日本障害者スポーツ協会は障害者スポーツの右代表というか、いろいろなことの取りまとめとか調整役という非常に大事な仕事でありますので、その立場をわきまえて、今後ともいろいろな意味で活動していただきたいと考えております。

中根分科員 部長の方から、あるいは大臣の方から、そういう立場でということで何度もおっしゃっていただいておりますので、あえてこれ以上という感じもしないでもありませんけれども、しかし、あえて続けさせていただきたいと思います。ここは一通り全部申し上げて、すっきりしてきょうは帰りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さらに、一九九八年に実施された長野パラリンピックの前の合宿時に、合宿に参加した選手たちが架空の領収書を書かされた。それがさまざまな寄附金への使途報告書に使うための使途として、その架空領収書が悪用されたといいますか使用されたというふうなことも指摘をされておりますけれども、この点についてはどのように把握しておられますでしょうか。

塩田政府参考人 これも詳細は当時の担当者によく聞かないとわかりませんが、財団の常務理事からは、その報道に対する口頭の私とのやりとりの中では、恐らくは、例えばホテルのお金ですと、一括立てかえた分を抜いたとか、そういったたぐいのもの、事務的な扱いが誤解を招いたのではないかというふうに承知しております。

 いずれにしても、細かいことで北郷会長とは関係ない話かもしれませんが、こういうところでも誤解を招かないように、きちんとした事務処理が必要であると思います。

中根分科員 いずれも、違法なこと、あるいは確かに不正なこととは言い切れない部分、あいまいなグレーゾーンである部分もあって、ここで白黒決着をつけていくようなこともないかもしれませんけれども、若干失礼な物言いをさせていただきますけれども、北郷さんという方の存在が余りにも大きいがゆえに、その影響力が余りにも甚大であるがゆえに、一方でそういう発言が誤解を招き、障害者スポーツ、障害者福祉の進展に対してある意味で妨げになっている部分がなきにしもあらずだというふうに感じざるを得ない、そんなことも思わせていただいておるわけであります。

 まだ見ぬ北郷さんに対して、僕も人のことを言ってばかりはいられません、自分自身もそういった他山の石としていろいろ言動には気をつけていかなければいけないわけなんですけれども、とりわけ障害者福祉は繊細な部分があるわけでありますので、ぜひとも慎重な、そして責任ある立場としてこれからも言動をしていっていただけるようにお気をつけいただきたいと、僣越ながら申し上げさせていただきたいと思います。

 もう一つだけすっきりさせていただきたいことがあります。もう一つだけといいますか、さらに、平成十二年七月に設立されている一つの会社があります。日本パラリンピック株式会社というものです。

 この会社の代表取締役の浅生力さんという方は、またここで申し上げなければいけませんけれども、日本障害者スポーツ協会の内部組織であり、ことしアテネ・パラリンピックが行われるわけなんですが、その選手選考を中心的に行っている日本パラリンピック委員会の委員長でもある北郷さんと高校、大学の同級生と言われております。ちなみにこの会社の監査役は元国税庁徴収部長の宮島壯太さんという方だそうですけれども、浅生社長さんは財団法人日本障害者スポーツ協会の参与であり、そして、日本パラリンピック委員会の財務、広報委員長であるとも聞いております。

 この会社は、北郷さんが浅生さんとの交友関係の中で、財団法人日本障害者スポーツ協会の資金調達を目的に経営されているという理解でよろしいでしょうか。

 また、あわせて、日本パラリンピック株式会社という名称自体が、パラリンピックというものと混同して、パラリンピックの広告やロゴやマークなどの権利を独占的に任されているというふうに第三者に対して誤解を与えることになりはしないか。したがって、こういった名称をつけるに際して、何か相談があったり、あるいは協会として、あるいは委員会として、また厚生労働省として、そういう了承をしたというようなことがあったのかどうかということについて、お尋ねをしたいと思います。

塩田政府参考人 一つの障害者のスポーツ大会を開催するとなりますと、莫大な資金と数多くのマンパワー、いろいろな方の協力が必要になります。一般の方の、例えばオリンピックでありますと、入場収入とかいろいろな企業の協賛金が集めやすいということがありますが、障害者スポーツの場合は、企業の協賛金にしろ入場にしてもなかなかお金が集まりにくい、そういう事情がございます。景気が悪くなる中で、障害者スポーツのそういう企業の協賛金が集まりにくいという背景のもとで思いついた構想だろうと思います。

 その際に、いろいろな企業から協賛を得るためには、経済界とのかかわりが深くて財務にも明るい、北郷会長からすれば非常に信頼関係もある方と一緒にそういうものを構想し、障害者スポーツのためにいろいろな企業の浄財を集めるというねらいとか、実際に行った活動については、それ自体は評価するものだと思いますけれども、これについても、やはりこれからの時代というのは、幾ら目的が正しくても、透明な手続をするとか、いろいろな形で誤解を招かないような形で行うことが必要だろうと思います。

 そういう意味では、日本パラリンピック株式会社という名前は私はやはり慎重に使うべきだったと思いますし、この辺についても、せっかくの善意が誤解されるようなことに結果的になっている面があるわけですから、少なくともパラリンピック株式会社という名前はやめていただくよう指導したいと思いますし、財団法人とこの会社との関係についても、透明性を確保するようにきちんと指導したいと思います。

中根分科員 ここに、二〇〇二年の三月八日付の朝日新聞の記事があります。若干関係するところだけ読み上げますと、

  日本では選手を支えるため、日本パラリンピック委員会が〇〇年七月に株式会社「パラリンピック」を立ち上げ、資金集めに乗り出している。

  障害者団体の定期刊行物に認められる安い郵便料金に着目。日本障害者スポーツ協会発行の機関誌に企業広告を掲載し、企業の顧客にも発送する。ダイレクトメールを出すのに比べ、企業は発送コストが抑えられ、浮いた費用の一部がJPCへの寄付に回る。

  同社によると、企業側の反応は良く、春から軌道に乗せ、今年は数千万円の収入が見込めるという。年間予算が五億円規模のJPCには大きな支援になる。

というふうに、これはある意味では好意的な記事として書かれているわけでありますけれども。

 この中で指し示しているのが、協会が発行している、ここにコピーがありますけれども、パラリンピックニュースというものであります。

 このパラリンピックニュース、全部で八ページあるんですけれども、よく見ると、このうちの半分の四ページは、パラリンピックとちょっと余り関係があるとは思えない、学生総合保険センターという保険代理店の広告なんですね。そして、まさにこれがそうなんですけれども、これは封筒の表のコピーなんですが、こういう封筒で、このパラリンピックニュースが八ページあるうちの四ページが学生総合保険センターという広告つきで送られてくる。この封筒にも、学生総合保険センターということの方がむしろ大きく載っていて、パラリンピックの方から送られてきたということは余りよくわからないような感じなんです。

 これがいわゆる第三種郵便物制度、今の新聞にも書いてありましたけれども、福祉目的の低料第三種郵便物のある意味で間違った使い方、言葉は悪いかもしれませんが、悪用にもつながるのではないかというふうに感じます。つまりは、この封筒に入って送ったもののメーンは、実はこの保険の広告であって、パラリンピックニュースの方は、それにつけ足されて送られてきたというふうにとられても仕方のないような内容のニュース、広報紙ということになっています。

 保険の広告物だけを郵便で送ると、大体こういう封筒で送ると百二十円ぐらいかかるところを、パラリンピックニュースを利用すると低料第三種郵便物ということになって八円で送ることができるということで、この制度によって、広告主はダイレクトメールを格安で郵送できる、日本パラリンピック株式会社は広告料が稼げる、財団法人日本障害者スポーツ協会は寄附金を確保できるという、ある意味でとてもうまい仕組みになっているわけなんです。またその一方で、このパラリンピックニュースの印刷は広告主がみずから負担するということで、協賛金は発行部数に応じて百万円から四百万円という設定の契約があるわけであります。

 日本パラリンピック株式会社と障害者スポーツ協会が、まさにある意味ではぬれ手にアワという感じでお金を稼げる仕組みになっている。しかも、みずからの努力ではなくて福祉目的の郵便制度を利用するということ、このこと自体、直ちに違法とはこれまた言えませんけれども、北郷さんと浅生さんの個人的なつながりの中でできた会社が、郵政公社が例外的に福祉増進のために設定している低料第三種郵便物の制度を巧みに利用して、うまいことやって金をもうけて、金集めをしているように思われます。ある意味で、パラリンピックとか障害者が悪用されている、こんなふうにも感じるわけでございます。

 また、日本パラリンピック株式会社では、ジャパンパラリンピックカードという事業の展開も予定しているようで、浅生社長が三井銀行やオリエントコーポレーションで仕事をしていたという経験を生かしてということだと思いますけれども、仕組みとしては、年会費とかあるいはショッピングの利用代金の一部が、自動的に障害者スポーツ協会に寄附をされる仕組みということであるわけであります。

 お金がパラリンピックに本当に必要なんでしょう。でも、必要であれば、例えば今、スペシャルオリンピックの開催に際して、福祉医療機構から三十億円取り崩してということも検討されているようでありますけれども、こういった形で、一つの交友関係の中で特定の会社にお金を調達させるという仕組みだと、どうしてもそこに不正とか悪用とかというようなことが生じかねないということでありますので、正々堂々と、障害者スポーツの振興のために、アテネ・パラリンピックを成功させるために、しっかりと例えば予算づけをお願いするとか、補助金の増額をお願いするとかという形で、さらには広報宣伝活動ももっと政府としてもしっかりやって、広く多くの方、日本パラリンピック株式会社だけに頼るのではなくて、広く一般に御協賛をお願いするというような、そういう姿勢で臨んでいくべきであろうかというふうに思うわけです。

 パラリンピックとか障害者というものを食い物にしているというふうには言いませんけれども、そこで金もうけをしているというふうに思われないように、今のうちから注意していった方がいいのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

塩田政府参考人 御指摘のとおりだろうと思います。障害者スポーツを振興する上でいろいろな財源が必要ですし、民間の浄財も必要でございますが、そういう浄財を集めるにしても、透明性を確保して、国民の理解が得られるような形で今後はやるべきだと思います。

 日本パラリンピック株式会社というようなやり方は今後はすべきじゃないと、御指摘に沿って指導してまいりたいと思いますし、私どもも、民間のいろいろな協賛金の集め方とかいうことについても勉強してまいりたいと思います。

中根分科員 そういう御答弁をいただければいいんですけれども、パラリンピックニュースを利用した低料第三種郵便物制度、これについても、郵政公社、決して経営がよろしいということでもない。だからこそ民営化という話も出ているわけで、こういったことに悪用されて、本来やらなくてもいい費用をかけていくということであれば気の毒なものですから、この郵便制度を利用したこういったことについても、ぜひしっかりと不正が起こらないように監視をしていっていただきたいということをお願い申し上げます。

 そして、最後にちょっと話題を変えます。

 一つだけお尋ねをしたいと思いますけれども、例の選択エージェンシーが事務局を務めているフォーラムで、今まで第一回、第二回と行われてきた癒しと安らぎの環境フォーラムというのがあるのは御案内のとおりなんですけれども、ここに、第一回、第二回は厚生労働省としても後援をしてきたわけなんですね。

 しかし、今そういったいろいろな問題が指摘をされていて、このフォーラムについて、選択エージェンシーが事務局をやっていることを通じて何千万かのお金を横領しているというふうにも言われている中で、この第三回のフォーラムが引き続き行われる。これは情報誌「選択」という本の中で募集広告として掲載されているわけなんです。

 ある意味で、第三回目を引き続き行うということは、非常に何かに対する挑戦のような感じもしないわけでもありませんけれども、このことについて厚生労働省は、引き続き、もし後援申請があったら後援をしていくというふうに思っていらっしゃるのか、あるいはそうでないのか、一つ確認したいと思います。

岩尾政府参考人 第三回の後援申請が出ているという動きは承知しておりません。

 後援名義の使用許可については、もちろんその事業目的、内容等を総合的に勘案して判断することになりますが、仮にこのフォーラム実行委員会の事務局が株式会社選択エージェンシーであった場合には、同社が社会的な批判を受けているわけですから、許可の是非を判断する際には重要な要素になるというふうに考えております。

中根分科員 いろいろと申し上げにくいことを申し上げたわけなんですけれども、ぜひとも、いろいろと不正が起こる前に、問題が生じる前にということで、お立場のある方々はくれぐれも気をつけて、その影響力の大きさを自覚していただいて行政に当たっていただきたいということを最後に申し上げさせていただき、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山名主査 これにて中根康浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、石毛えい子さん。

石毛分科員 民主党の石毛えい子でございます。

 大臣、長時間にわたりまして御苦労さまでございます。

 私は、本日、制度実施二年度目に入っております支援費につきまして、ケアの現場で具体的にぶつかっている問題について、主として通所授産施設につきましてお尋ねをしたいと思います。内容は具体的な事柄でございますが、大臣にはお聞きいただきまして、そして後ほど総括的にお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

 まず初めの質問でございますけれども、通所授産施設を利用されている方、知的障害をお持ちの方あるいは身体障害をお持ちの方など、お一人お一人につきまして、その支援費の決定がどのように行われているか、実施主体の市町村の状況についてお教えいただければと思います。その際に、厚生労働省として適切に実施されているというふうに評価をなさっておられる市町村がございましたら、その自治体のお名前ですとか、あるいはどのようなシステムになっているかというような点をお示しいただきたいと存じます。お願いいたします。

塩田政府参考人 まず、支援費のサービスを受ける際の一般的な手続、手順を申し上げたいと思います。

 サービスが必要とお考えになった障害者御自身とか保護者の方は、まず最初に市町村の窓口、障害福祉の窓口に行かれることになると思います。そこで市町村の担当者から、障害の程度でありますとかどういうサービスを望んでおられるかとか、いろいろな聞き取り調査をしていただきまして、市町村としては、この方には例えば通所授産施設に行くことが必要だとか、障害の程度はこの程度だということで、いわゆる受給証というものを発行されるということでございます。

 その受給証をもって障害者御本人とか保護者の方が通所授産施設と話し合いをされて、対等な立場で契約を結ぶということで支援費の利用が始まるということですけれども、実際上は、市町村の窓口に行く前に施設とお話し合いをして、こういうサービスを受けたいんですがということでお話し合いをされて進んでいるのだろうと思います。

 このシステムにつきましては、障害者の方の本当のニーズに応じたサービスが適用されているのかどうか、市町村といっても必ずしも専門の方だけではありませんし、施設の数が限られておりますから、どうしても対等の立場での契約といっても、施設の声が強くなっているとか、いろいろな問題が現場ではまだまだあるのではないかと思います。

 制度が始まって一年近くたったわけですが、その中でも非常に工夫を凝らしてきちんとやられている自治体が幾つかございます。

 その一つの例は滋賀県ですけれども、滋賀県は、県を七つの障害福祉圏域に分けまして、それぞれの福祉圏域ごとにいわゆるサービス調整会議という組織を設けておられます。それには、医療の関係者とか福祉の関係者とか学校教育の関係者、県の方も市町村の方も、いろいろな関係の方が、もちろん親御さんとか御本人も参画されるということですが、この方にはどういうサービスが必要であるかということをディスカッションし、討議をして、どこのどういうサービスを受けたらいいかということのマッチングをされているということでありまして、個別のケアプランをつくる会議と月に一回ぐらいは全体の情報交換をするような会議、二層に分かれているということであります。

 こういうサービス調整会議を設けることによって一人一人のニーズに応じたケアを提供できる、また検証もされているということですから、こういう、いわゆるケアマネジメントというふうな考え方だろうと思いますが、まだ、滋賀県でありますとか長野県の北信圏域とか、全国的には非常に限られたところの先駆的な事例ですけれども、こういったシステムを全国各地に広げていきたいと思っていますし、何らかの形でそういうものを制度化できないか、厚生労働省としても勉強していきたいと思っております。

石毛分科員 今、塩田障害保健福祉部長にお答えいただいた中では、利用される施設と御本人、保護者の方が対等な立場で契約を結ばれるけれども、どちらかといえば施設側の声が強くなっているのではないかという御答弁があったと思います。

 きょう私が指摘させていただきたい点は、それとは逆でございまして、役所の方が障害者御本人の方の御家庭に訪問をされて、いろいろとお聞きする項目に沿いながらいろいろなことをお尋ねする中で、どちらかといえば御本人よりも親御さん、御本人がどれだけ意思をお示しなさるかということともかかわりますけれども、親御さんのお気持ち、声の方が強く反映されて、御本人が家庭で過ごされる状況と通所授産施設でいろいろな活動をされる状況とはやはり違うわけですから、そこに通所授産施設の側から見ればギャップがあるといいましょうか、なかなか授産施設の側が望んでいるようなケアのランクが決められていないというような、そういう問題が一カ所だけではなくて少なからず私のところには寄せられているわけでございます。

 厚生労働省といたしましては、受給証を発行して、その中にAランクですとかBランクですとかという具体的な支援費を決定していくわけですけれども、施設の側の意向がどちらかといえば強いあるいはどちらかといえば親御さんの方の意向が強いというような、そうした実情は把握をなさっておられますのでしょうか、そこのあたりをお聞かせください。

塩田政府参考人 支援費制度が始まってまだ一年近く、多分いろいろなケースがあるんだろうと思います。先生がおっしゃったようなケースもたくさんあるんだろうと思いますし、親御さんの気持ちが強く出過ぎて御本人の意向がきちんと反映されていないケースもあると思いますし、逆に、最初私が申し上げましたような、施設の立場からの対応が優先されているケースもあると思いますし、市町村に専門知識がないというようなこともある。私も現場に出ていろいろなケースを聞いておりまして、まだ個別でいろいろなケースがあるということは聞いておりますが、定量的に、構造的にどこにどういう問題があるかというところまでは実はデータとして集まっておりません。いろいろなデータを集めた上で、問題点は改善していくように努力したいと思います。

石毛分科員 もう一点お尋ねしたいと思いますけれども、先ほど滋賀県は圏域をきちっと設定して、多分保健福祉圏域ごとかと思いますけれども、サービス調整会議を開かれていると。その中に、御本人はもちろんのこと、保護者の方、あるいはかかわるサービス事業者の方、実質的にケアマネジャーの役を負っている方も参加をされるんだと思いますけれども、その滋賀県のほかに北信でも始まっているというふうにおっしゃられました。そうした、ある意味では公正さ、透明性を保つ仕組みというふうに言えるかとも思いますけれども、厚生労働省といたしましては、今後、どういう展開を図っていくというふうにお考えになっていらっしゃいますか、そこのところをお聞かせください。

塩田政府参考人 滋賀県の取り組みなども参考にしながら、全国でこういった形のものが広がることを期待しておりまして、本年度予算でもそういったモデル事業ということで何カ所かの地域については助成をしまして、同じような取り組みができるようなことで努力をしているところであります。いい例の、参考になる例の共通的なところを取り出しまして、全国に広がるようにしたいと思っておりますし、将来的には制度的な実現をして、そういうケアマネジメントサービス調整会議の意見を参考にして、市町村が公平かつ透明な手続のもとで障害者の方々の一人一人のニーズにこたえられるような、そういう体制に最終的には持っていくべく努力したいと思っております。

石毛分科員 私が今回問題の提起を受けましたある知的障害の通所授産施設の情報では、非常に具体的になりますけれども、施設の側が、いらっしゃっている利用者本人の方をAランク、Bランク、Cランクというふうに位置づけをしてみますと、施設の側がAランクだというふうに思われる方が十六人に対して、市の側がAランクに実際に位置づけた方は八人ということで半分になっていまして、その分、Bランクは施設側が十六人、市の側が二十一人、それからCランクは施設側が四人で市の側が七人というふうにおっしゃっていました。私は、これが絶対正しいというふうに評価すべきだと言うつもりはありませんし、それぞれにおっしゃりたいことがあろうかというふうに思います。

 支援費の実施主体は市町村でございますけれども、恐らく、たまたま私が問題提起をいただきましたこの施設だけではなく、むしろ全国にこういう課題はたくさんあるのではないかというふうに私は思っているところでございます。実施主体は市町村だから、市町村がうまくやればいいということだけではなくて、やはり制度に責任を持っております厚生労働省として、積極的にいいモデルをお示しいただいて、先ほど部長はモデル事業としてというふうにおっしゃいましたけれども、私は急いでそうしたことを展開する必要があるというふうに思います。

 ケアマネジャーの方も参加をされるということが必要なのでは……。もちろん、一番の基本的な決定権は障害の方本人、そして一番その方を代理する方だと思いますけれども、しかしながら、サービスを提供する側からもきっちりと発言をするという、そうしたパブリックな場が必要だというふうに私は考えるものでございますけれども、大臣、これからの方向としてどのようにお受けとめになられますでしょうか、一言伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 障害者の問題を考えていきますときに、障害者にも知的障害者、身体障害者、精神障害者といろいろ立場はございますが、やはり障害者の皆さん方の御本人の御意見というものをいかに尊重していくかということが一番大事なことだというふうに思っております。

 とりわけ知的障害者の皆さんの場合に、本人の理解度が低いのではないかという、家族でありますとかあるいは施設の人だとかといった周辺の方が、本当はそうではないのに、そういうふうに思い込んでと申しますかそういうふうな態度で接してしまうということが今までもありがちでございましたし、そうしたことが本当は、しかし、御本人たちはもっと違うことを考えているということがあり得るわけであります。

 したがいまして、これから障害者の問題、いろいろさまざまございますけれども、それを実現していきますときに、本人たちが一体どういうことを望んでいるのかということを十分尊重しながら、施設であれ、あるいは地方自治体であれ、厚生労働省であれ、そうしたことを進めていかないといけないというふうに思っております。

 今御指摘をいただきましたこと、大変貴重な御意見だというふうに思いますので、我々もその点を十分誤りのないようにしていかなければならないというふうに思いながら聞かせていただいたところでございます。

石毛分科員 ありがとうございました。大臣がおっしゃってくださいました、御本人の意思の尊重、お考えの尊重という点、私も全く同じ考え方、思いでございます。その尊重を具体的にサービスとして実現していくときに、やはり皆さんが御本人の意思をきっちりと実現できるようなケアプランを立てて、サービスを提供していくというような、そうした丁寧な仕組みが必要なんだというふうに思っております。えてして親が代理したり、あるいは逆にサービスに携わる方が代理しがちであります。それぞれ参加されることは大変重要だと思いますけれども、相互に協力、共同し合えるような、御本人を中心にし合えるような仕組みをぜひとも厚生労働省の方からモデルとして、あるいは全体化するような方向性でお示しいただきたいと思います。

 次の質問でございますけれども、同じく通所授産施設の支援費の算出論拠についてお示しいただきたいと思います。まずはそれでよろしいでしょうか、質問は。

塩田政府参考人 支援費の単価の算定の考え方ですけれども、これは三つの経費を積み上げているということでありまして、一つは直接利用者の方々へのサービスを提供するスタッフの経費、二つ目には食事とかいろいろな間接的な部門のスタッフの経費、三つ目がいろいろな消耗品とか施設の運営に要するような経費、この三つを足し合わせて、そのトータルの額を一人一人の、重度の方、中度の方、軽度の方にどういう経費が必要かということで一応施設の単価を設定して、一人一人の障害の程度に応じた単価に人数を掛けて一つ一つの施設に対して経費を払うという仕組みになっているということでありまして、基本的には、措置費時代の考え方を引き継いで、サービスに合ったコスト負担に一応なっているのではないかと思います。

石毛分科員 現実には通所の授産施設に本当にさまざまなケアを必要とされるケア度の方が通っていらっしゃる、御利用になっていらっしゃるということを、厚生労働省としては、大変率直な表現で恐縮でございますけれども、どの程度把握をしておられるのでしょうか。

 私がたまたまよくお伺いさせていただく通所授産施設は、支援費のランクでいいますと、Aランクの方が三十五人なんですね、Bランクの方が十九人で、Cランクの方が三人、こういう構成といいましょうか利用者の方々でいらっしゃいます。契約ということに変わってきておりますし、そこは知的の通所授産施設ということでございますけれども、実は求められて、あるいは地域の施設の相互利用というような観点などもございまして、身体障害の方が三人いらっしゃっておられまして、お二人は身体障害でAランクの支援費受給なんですけれども、その身体障害のお二人の方の一人は、脊髄損傷の全身麻痺の方で経管栄養の方でいらっしゃるという、ですから全介助の方がお一人。それから、もうお一人は脳性麻痺による全身麻痺の方で、食事などそれこそつかえてしまうような危険のあるというようなことで、やはり全介助の方なんですね。

 ですから、一言で通所授産、また支援費といいましても、私が今御紹介申し上げましたところは、知的の方も圧倒的に六割を超えてAランクの方が多い施設。そして、身体障害の方もむしろ医療ケアを必要とするような身体障害の方なんですけれども、こういうところも、先ほど塩田部長さんが言われましたように、直接的な経費、間接的な経費、また事務的な諸費用を積み上げて支援費を算定しているというふうな御答弁で通るといいましょうか、それでよろしいのでしょうか。

 私の思いの中では、例えばBランクやCランクの方が多いところと、Aランクの方が多いようなところ、ましてやという表現が適切であるかどうかということはあるかと思いますが、医療的ケアを必要とされる身体障害の方、ここのところは、支援費は、特甲地ですとか、地域によったり、通所される人員の方の人数によったりして算出の論拠が、論拠といいますか算出の水準が変わってくると思いますけれども、伺うところによりますと、この通所授産施設の場合は、重度のAランクの方がお一人十六万六千百円という支援費、月額でございますけれども、それに比べまして、重度身体障害者手帳をお持ちの方の支援費が十一万四千三百円、医療的ケアを必要とされる身体障害の方の支援費が十一万四千三百円で、知的の障害の方のAランクで十六万六千百円、お一人で五万一千八百円の差がある。ケアの必要度の高い方が支援費が高いのではなくて、逆に五万円強低いというような実情なんですけれども、塩田部長、いかがでございますでしょうか。

塩田政府参考人 支援費の単価の設定自体は、先ほど申し上げましたように、障害の程度に応じて施設の方で適切なサービスが提供できるような水準で設定されていると思いますけれども、私自身も、これではなかなか経営とか必要なサービスが提供できないという声も聞いていますし、また一方で何とかやっていけますというようなところも、いろいろな声を聞いております。

 支援費制度が発足して一年少したちましたけれども、細かな経営実態調査といいましょうか、サービスに対応しているかどうかという細かな調査を十六年度、十七年度かけてやるつもりでありまして、そのデータと、いろいろな現場の専門家の声も聞いて、必要な見直し、また施設体系全体の見直しとかいろいろな角度から検討して、必要なサービスが提供できるように努力していきたいと思います。

石毛分科員 今、十六年度、十七年度実態調査というふうにお伺いいたしましたけれども、塩田部長、一度でも二度でも結構ですから、私が今申し上げました施設にぜひお運びいただけますでしょうか。私が申し上げたいのは、地域でというふうになりましてからいろいろな取り組み方があるということ、その取り組み方につきましてぜひ厚生労働省として丁寧な視線を注いでいただきたい、そこをよくよくお考えいただいて、支援費についても方向性を出していただきたいということでございます。

 時間もございませんので、おいでいただけますかどうかということを、大変恐縮ですけれども、ちょっとお答えください。

塩田政府参考人 できるだけ早くお伺いして、直接いろいろな御意見を拝聴させて勉強させていただきたいと思います。

石毛分科員 ありがとうございます。大変喜んでいただけると思いますので、ぜひお運びください。

 大臣にぜひとも積極的な御答弁をいただきたいと思いますけれども、今部長が実態調査に取り組むというふうにおっしゃられましたので、それを踏まえてということにもなろうかと思いますけれども、それでは遅いかなという思いも私はしております。今私が御紹介させていただきました施設は、大変ケア度の高い方がたくさんいらっしゃっている、要するに御利用者の方が選択をされたということだと思いますし、そしてまた、近年では、私どもの地域では医療的ケアの必要な方も随分通所授産施設にお入りになっていらっしゃると思います。まさにケア度が大変深い方といいましょうか高い方も、やはり地域で暮らし続けるという方向性を今まさに歩み出しているところだというふうに思います。

 そこで、大臣にぜひとも御答弁いただきたいと思いますけれども、御承知のとおり、障害者基本法の改正案が衆議院では可決ということになりました。これから参議院でございますけれども、いろいろな今回の改正点で評価すべき点、例えば差別を認めないというようなことも新しく盛り込まれましたけれども、きょうの論点に関係して言えば、入所施設、第十条の二の施設への入所というところを、二十四時間施設という意味だと思いますけれども、この項目が削除になりまして、新しく第十二条では、医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるように国、自治体の責務ということを新たに規定をし直しております。

 こうしたケア度の高い方がたくさん通っていらっしゃるようなそういう施設は、国の責任として、国は障害者基本法の改正ですとかあるいは新しく策定いたしました障害者基本計画におきましても在宅の推進を打ち出しているわけでございますから、その国の基本的な方針に沿いまして、例えばケア度の高い方がたくさんいらっしゃっているような施設というようなところ、あるいはグループホームも同様に言えるかと思いますけれども、国として支援費を例えば加算していくというようなことを実現して、希望する方が地域で暮らしていくというシステムを、積極的に責務を果たしていく、そこに国の責任があるというふうに私は考えるものでございます。

 このままいきますと、今の支援費の状況ですと、結果的に、ケア度の高い方が地域で暮らし続けるということが大変無理という事態が生まれかねない。今ちょうど支援費は二年度に入りましてそういう問題がクリアになってきているところだというふうに思って、大変大事な時期を迎えているというふうに私は認識しているものでございますけれども、大臣、国としてケア度の高い方が地域で在宅で暮らし続けられる積極的支援策をどのように講じていくかということに関しまして、ぜひとも積極的なお考えを承らせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 障害者に対します場合に、入所施設等で入所していただいてケアするというやり方もございますけれども、在宅でできる限り多くの皆さん方にお暮らしをいただいて、それを支援していく、そして、雇用も一人一人に合ったようにできるだけしていくということの方がより大事なんだろうというふうに思っております。

 財政的なことを言いますと、入所していただいてケアをさせていただくことの方が財政的には楽なのかもしれない、むしろ在宅でいろいろの御支援を申し上げることの方が財政的には厳しいのかもしれない、私は最近そう思っております。しかし、財政的なことではなくて、その人その人の、その障害者の人権というものを考えていきますと、やはり在宅で地域の皆さん方と御一緒に生活をしていくという選択をしようと、御本人が選択をしていただくにつきましては、私は、それに応じていくような体制をつくらなければならない、それが健常者と申しますか健康に働いている者にとりましても一つの義務だというふうに思っております。

 そうした意味で、これからさまざまな地域でのやり方、まだ十分その点が実ってはおりません、まだいろいろのケアを、いろいろのケースをそれぞれの地域で試みているという段階ではないかというふうに思いますが、それぞれの地域に合ったいいやり方というものをそれぞれお考えいただいて、そして、いいケースがあれば、みんながそれを参考にできるだけさせていただいて、よりよい方向に日本全体を進めていくということが大事ではないかというふうに思っております。そうした方向に行きますように努力をしたいというふうに思っている次第でございます。

石毛分科員 終わりますが、大臣が御答弁をくださいました、御本人がどのようなお考えで、どういう生き方、暮らし方を選ばれるか、そこを中心に据えて、周りも、地方自治体も協力することはもちろんでございますけれども、国として、国が定めました方向性に対しましてきっちりと仕組みをつくり上げていくという、この国の責任というところを再度、私は国だけというふうに申し上げるつもりはありません、しかしながら、国の責務をおいてはないというふうに考えておりますので、そのことを申し上げまして、質問を終わります。

 これからぜひともよろしくお取り組みください。ありがとうございました。

山名主査 これにて石毛えい子君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口分科員 公明党の大口でございます。

 大臣には、連日、年金改革の審議で大変御努力されていることには敬意を表したいと思います。

 私どもは、いろいろ、地域を回っておりますと市民相談を受けます。その中で、特にこれは確認しておかなきゃいけないということをきょうはお伺いさせていただきたいと思います。

 一つは、コンタクトレンズの問題につきまして、これは視力矯正に必要不可欠なものでありまして、現在、国内で千三百万人とか千五百万人という方が利用している、こういうふうに聞いておるわけです。最近とみに使用者がふえているソフトコンタクトレンズ、その中でも使い捨てタイプ、こういうものの中に大変不良品が多い、こういう話を、これを販売しております小売店の私の知人から聞きました。私の知り合いの方、ソフトコンタクト、使い捨てコンタクト、こういうものを使用しておられる方にいろいろと聞いてみますと、やはりそういう不良品がある。こういうことで、これは大臣あるいは厚生労働省の担当者にいろいろと質問しなければならない、こういうふうに考えたわけでございます。

 まず、ソフトコンタクトレンズには、今、ワンデーといって、使い捨てで、一日これを装用して、そしてもうディスポーザルといいますか捨てるもの、それからツーウイークス、二週間装用可能のものなどいろいろな種類があります。

 これらを合わせて、現在、国内で年間どれぐらいの枚数が購入され、使われているのか。そしてまた、その中で国内生産の部分と輸入分、この割合がどうなっているのか、また、輸入分の国別のシェアというようなものも、わかりましたらお答え願いたいと思います。

岩尾政府参考人 薬事工業生産動態統計によれば、平成十四年のソフトコンタクトレンズの生産量、国内生産、輸入合わせて約六億六千百三十一万個であります。このうち国内生産分が約三百四十七万個ですから全体の〇・五%。残りの九九・五%は輸入分で、約六億五千七百八十四万個であります。

 ソフトコンタクトレンズの輸入に限定した国別シェアは統計上把握できておりませんが、コンタクトレンズ全体の輸入数量の国別シェアにつきましては、財務省の貿易統計では、平成十四年、アイルランドが六六・五%、次いでアメリカが二七・五%となっております。

大口分科員 アイルランドというのも、恐らく欧米系の企業がそこに工場をつくって、それでやっているのではないかな、こういうふうに思います。

 圧倒的に輸入品が多い、九九%。特に使い捨てのソフトコンタクトは一〇〇%輸入だ、この五、六年の間に急拡大をしている、こういうふうにも、経産省の人等から聞きますと、そういう話も聞いておるわけです。

 国内メーカーがこのソフト、使い捨ての関係、ほとんど生産していないというのは、国内メーカーというのはハードがあって、また、ハードというのは非常に品質もしっかりとしたものを考えている、目の中に入れるわけですから。それに対して、ソフトというのは、使い捨てというようなことは、大体コンタクトで使い捨てという発想が国内メーカーの場合なかったのではないかな。

 それが、今、非常に便利であるし、一々煮沸したりいろいろしなくてもいいというようなこともあって非常に急拡大をしている、そういうふうな状況のようです。今、国内メーカーも、そういう市場の動向をある意味では予測していなかったということで、慌ててソフト分野、使い捨て分野に参入しよう、こういう動きもあるようでございます。

 私の手元に、これは小売店の方から、いろいろコンタクトレンズについてのクレームの一覧表をいただいております。その中で、例えば、レンズと破片が入っているとか、装着すると目に異物感があり、外すと端が欠けていたとか、あるいは、開封するとレンズが壊れていた、縁に近い部分に気泡があった、レンズの真ん中に破れがある、一日、二日目は違和感がなかったのが、これは二週間物ですけれども、三日目にはレンズに穴があいていた、あるいは、レンズの付着物を洗っても取れない、あるいは、保存液が入っておらないでレンズが乾いていた、レンズの縁が破損していた、装着したらすぐに痛みがあり、外してみたら欠けていた、あるいは、開封すると保存液が白く濁っている。これは、一つの小売店のことで、こういういろいろなクレームがあった。

 そういうことで、国民生活センターの危害情報システムの中でも、コンタクトについては、一九九三年から二〇〇〇年の十二月十五日までで五百十八件苦情があります。特に、九六年以降毎年七十件を超えてここに寄せられておるわけでございますけれども、やはり、その中で、ソフトコンタクトが四一・一%、ソフトの使い捨てが三二・七%、全体のコンタクトレンズの中でソフト関係が七三・八%、こういうような苦情もあって、そして、痛みだとか充血だとか異物感ですとか、こういう危害が報告されているわけであります。

 目の中に入れて使う医療機器であって、また、安易に使うと角膜等に非常に重い障害を引き起こす可能性がある、こういうことでございますので、平成十七年四月から高度管理医療機器というカテゴリーに入るということでございますので、この際、このようなソフトコンタクトレンズの不良品についての情報あるいは実態を厚生労働省としてどう把握しているのか。

 それとともに、不良品が多いと言われるソフトコンタクトレンズについて、新たに総合的な品質実態調査を私は行うべきではないか、こう考えるわけでございます。

 坂口厚生労働大臣、御答弁を願います。

坂口国務大臣 コンタクトレンズの話を私もきょう初めて聞くわけでございますが、そんなにたくさん輸入が占めているというのは私も今初めて知ったわけでございます。

 今、いろいろ不良品があるというお話を聞いて、その不良品の種類をお聞きをしていると、コンタクトレンズそのものに欠陥があるというものもあるし、コンタクトレンズそのものではないけれども、そこに付着物がついている、余分なものがついているといったようなものもあるしということなんだろう。大量生産する中で、一つ一つをチェックしてはやっているんだというふうに思いますけれども、中にはそうしたことが起こり得るのかなというふうに思いながらお聞きをしていたわけでございます。

 厚生労働省として、不良品が多い、そういう確たる証拠と申しますか、そうしたものを十分につかんではいないわけでありまして、一つは、その製品そのもののそうした問題もあるでしょうし、また、使用方法にもあるいは問題があった場合も中にはあるんだろうというふうに思いますが、いずれにいたしましても、これは医療用具の一斉監視指導の対象品目として重点的な監視を行う、その中の一つに入れているということでございますので、少ししっかりと見直しを行いたいというふうに思っております。

 今までのものといたしましては、一日使用ソフトコンタクトレンズの健康被害に関する検討というので、そこで日本大学と順天堂大学において調査をお願いしたケースがあり、この研究結果、調査結果はそれほど悪い結果ではなかったわけでございますので、今お聞きをした場合とかなり乖離があるなというふうに思っております。

 今までにも回収をいたしましたりしたものも中にはございまして、平成十二年から十五年まで、年間二、三百件回収したりというものはあるわけですけれども、しかし、目に入れるものですから、数はたとえ少なくても、これはもう大変でございますから、しっかり監視をすることにしたいというふうに思います。

大口分科員 大臣から、そういう、しっかり監視をしたいという御答弁がありましたので、よろしくお願いをしたいと思います。

 また、コンタクトレンズの我が国の薬事法における位置づけというのが医療用具というようになっているわけなんです。今、私どもも、特にソフトコンタクトレンズについて不良品が多い、こういうことも指摘させていただいたわけでございますけれども、どのような品質基準に基づいてこういうものが製造されているのかということをまずお伺いしたいということでございます。

 そしてまた、使い捨てのソフトコンタクトレンズは一〇〇%、まあ九九%が輸入品ということでございますので、当然、厚生労働省の輸入承認をこれは受けているわけでございます。そういう点で、我が国のコンタクトレンズに関する輸入承認の基準、これがどうなっているのか、そしてまた、海外との比較ではどうなっているのか、そういうことをお伺いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 ソフトコンタクトレンズについてのお尋ねでございますけれども、大臣からもお話ししましたように大変輸入が多いわけでございますが、品質管理につきましては、九九・五%が輸入でございますので、主に医療用具の輸入販売管理及び品質管理規則というものに基づいてやっておりまして、一般的には、いわゆる医療用具のGMPIという、輸入の際の品質管理の基準というのが適用されることになっております。

 それで、GMPI、いわゆる医療用具を輸入する場合でございますけれども、それぞれ品目ごとに、承認した事項とか仕様等を記載した製品の標準書をつくる、それから、輸入販売の管理、品質管理、苦情の処理、回収処理等に関する手順書を作成するといったようなことを規則で定めております。したがいまして、その手順書に従いまして、輸入販売管理でありますとか品質管理でありますとか、あるいは苦情処理、回収処理等を適切に行わなきゃならないということになっております。

 したがいまして、コンタクトレンズのGMPIの適合状況につきましては、それぞれ都道府県において、輸入販売の営業所に立ち入りをしまして確認をしているという実態でございます。

 それから、二つ目のお尋ねの承認の関係でございます。

 コンタクトレンズそれ自体の問題でございますけれども、コンタクトレンズそれ自体の承認に関しましては、厚生労働省の告示として、視力補正用コンタクトレンズ基準というものを定めております。それから、通知のレベルでは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズ、それぞれ承認基準がございまして、委員御指摘のように、ソフトコンタクトレンズについては別途基準がございまして、それに基づいて承認審査を行うということになっております。

 それから、三番目のお尋ねでございますけれども、国際的に見てどうかということでございますが、この承認の基準に使っております告示なり通知、今申し上げましたような基準といいますのは、国際標準化機構、ISOで定めるコンタクトレンズの基準に合致をいたしておりまして、例えば、米国の食品医薬品局、FDAでございますけれども、FDAのコンタクトレンズの基準などとも整合しているということでございます。

 そういう意味では、国際基準にのっとってやっているということでございます。

大口分科員 そういう国際基準にのっとったものであるんですが、不良品がやはり出てくるということで、これは国内の企業等であればまたいろいろと対応もできるのが、外国で生産されているわけですよね。そういう点で、いろいろと、網の目をくぐり抜けるといいますか、不良品が入ってくるということをきちっと阻止できない部分もあるんじゃないかな、こういうふうに思っております。

 そういう点で、今回、平成十四年の薬事法の改正によって、平成十七年四月から、コンタクトレンズについて高度管理医療機器として取り扱われる、こういうふうに承知をしております。クレームが多い海外の製造メーカーということも私もずっと認知しておるわけでございますけれども、そういうところに対して、メーカーに対して、品質管理の指導、それから国内における輸入販売元に対する指導というものをしっかりとやっていっていただかなきゃいけない。どういうふうに進めていただけるのか。

 それから、こういうふうな高度管理医療機器という形で、製造販売に対して、これはカテゴリーとして非常に高い、高度のカテゴリーになるわけですから、こういう改善措置によっていろいろなクレームというものが今後どのように改善されるのかということについてお伺いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 御指摘の点でございますが、まず、このコンタクトレンズの苦情といいますか問題は、段階に分けて整理をしなきゃいけない。大臣もお話がございましたけれども、まず製造段階での問題、それから販売段階での問題、それから使われる場合の、使用の段階の問題と、三つに分けて考えなきゃならないんじゃないかと思っております。

 御指摘のように、まず製造段階の問題でございますが、今回の薬事法の改正によりまして、十七年の四月から実施されるわけでございますけれども、製品の市場への出荷、上市については、一元的な責任を有します製造販売業の許可制度が導入されます。したがいまして、輸入されたものであっても、要するに、従来の輸入販売管理、品質管理というものから一歩踏み込みまして、海外の製造施設における製造管理、品質管理を直接私どもが確認する、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の職員が行って確認をするという形にしております。それから、市販後安全対策につきましても、企業に、その市販後安全対策の部門の設置義務あるいは適正使用情報の収集等をお願いするということにしておりますし、そういうことによって、製造段階では海外の施設に行きますので、相当改善が図られるんではないかというふうに思っております。

 それから、二つ目の販売のところでございますけれども、いわゆる小売店でコンタクトレンズを販売するというケースでございますけれども、これにつきましても、今委員御指摘のように、高度管理医療機器に指定されるものですから、指定されることによりまして、その医療機器を販売されるところの業者さんは、従来届け出でよかったわけですが、今度は都道府県知事による許可制に移行いたします。許可制に移行することによって、例えば、コンタクトレンズを保存する状態、例えば構造、設備についても基準ができるというようなことでございますので、そういう意味では前進が図られるんではないかというふうに思っております。

 いずれにしても、こういうふうな措置を複合的に組み合わせることによりまして、従来の製造段階あるいは販売段階のトラブルよりも、より不良品が減る方向にいくんではないかというふうに私どもは期待をいたしております。

大口分科員 次に、これは公取にちょっとお伺いしたいんですが、今度、そうやってコンタクトレンズの製造、輸入に関して規制強化ということにもなるわけでございます。これに伴って、例えばコンタクトレンズの価格が上昇する可能性があるということがあってはいけない、こう思うわけですね。

 そういう点で、公取が平成九年にまとめました、コンタクトレンズの流通、取引慣行等に関する実態調査報告書において、これは各種の問題が指摘され、関係団体への改善要請もなされたわけでございますけれども、そういう記述もあるんですが、その中に、薬事法上の承認が内外価格差の一因となっていると言われており、規制緩和を含めて、消費者の利益にかなうよう諸制度の運用が適切に行われることが望まれるという趣旨の報告内容になっているわけであります。

 今回、私どもは、ある意味の規制の強化というものは評価をしたいと考えておるわけでございますけれども、平成九年に実態調査が行われて七年経過しておるわけでございます。薬事法の改正に伴って今回新しく、先ほどの厚生労働省からの話がありました、輸入そして製造、販売についてチェックを強化するということでございます。そういうことになりますと、市場の動向も大きく変化することも予想されますので、コンタクトレンズの流通実態について新たな調査を行うことを検討すべきではないか、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

山木政府参考人 お答え申し上げます。

 コンタクトレンズの流通それから取引につきましては平成九年に調査を行ったところでございます。

 公正取引委員会では、コンタクトレンズに限らず、商品でありますとかサービスの流通それから取引慣行等につきまして、定期的に品目をピックアップして、競争政策上の問題があるのかないのか、それから、あるとすれば問題点を指摘して改善を願うといった取り組みをしてきたわけでございます。

 その一環で、コンタクトレンズについても平成九年に調査をしたわけでございますけれども、先生御指摘のように、今回の規制の強化と申しますか、制度が変わりますと市場の状況等についても変化が生じることも予想されるところでございますので、そのような市場の動向を見ながら、調査の必要性の有無についても十分検討していきたいというふうに考えているところでございます。

大口分科員 次に、財団法人日本医療機能評価機構の役割についてお伺いをします。

 一つは、平成七年に、病院機能の第三者評価をするため、日本医療機能評価機構という財団法人が発足しました。これは、医療に対する国民の要望の高度化、多様化、医療の質的な保証への関心の高まりを背景として発足したものと認識しております。

 そして、平成九年度より、同機構は認定証を発行しておって、全国九千百五十一病院のうち、千二百三十四の病院、一三・五%がこの認定証の発行を受けているわけでございます。どのような要件をクリアすればこの認定証を発行するのか。

 そしてまた、この認定の評価項目にあります診療の質の確保ということについては、一般的な受けとめ方としては、いわゆる医療技術面での評価も含まれると考えるのが私は一般的なとらえ方だと思うんですね。もし含まれないとしたならば、一般の方々がこれを見たときに医療技術が高いと誤解しないように、やはりパンフレットあるいはホームページでもここは知らせるべきではないか、こう考えております。これが一点。

 それと、二点目に、この認定証の有効期限は五年となっておるわけでございますけれども、発行を受けている医療機関が有効期限内に認定要件を欠くような、例えば医療過誤事件を起こしたようなときに、この認定証は取り消されるのか。そして、これは、同機構のホームページにも認定病院の一覧というのが掲載されておるわけでございますが、この認定を取り消すべきであると思うし、直ちに削除もされるべきであると考えますが、いかがでございましょうか。

岩尾政府参考人 まず、病院認定の手順でございますけれども、当該病院が提出した書面の審査、それからサーベイヤーという方の訪問審査をいたしまして、その結果をもとに、この評価機構で、評価部会で審議検討いたします。おおむね評価の点数が標準的以上であれば認定証を発行するというプロセスになっております。

 この評価の中身について、お尋ねの診療の質の確保の部分でございますが、具体的には、診療の責任体制の確立、診療録管理部門の体制整備、医師の人事管理、教育研修などを評価するものであって、個々の医療技術の優劣という評価は含まれないものでございます。

 機構のホームページを見ていただければわかりますが、御懸念のような評価内容に関する誤解が生じないよう、情報提供に努めてまいりたいと考えております。

 それから、不適切な事例という病院になった場合どうするかということでございますが、例えば、病院が組織的な不備によって患者に重大な健康被害を生じさせたなど、いわゆる事故事件が発生したことを把握した場合は、改めて事実関係を確認の上、病院の調査をいたします。その時点で認定要件を欠くと判断した場合には認定証の返還を要請いたします。

 その件数、平成七年の制度発足以来、審査対象となったものが二十二件、返還させたもの三件となっております。もちろん、そういう場合には、同機構のホームページの認定病院のリストから削除するという行為をしております。

大口分科員 返還させるというものもあるようでございますけれども、返還に応じないというような場合はあるんですか、どうでしょうか。

岩尾政府参考人 現在のところそのようなことはないと思っておりますが、現在、そういうところを確実にするために、医療事故が、医療過誤事件が生じた場合には認定証の返還が求められることを契約上明確化したいということ、それから医療過誤が生じた場合を取り扱う審査の部門を設けたいということで、機構の中でこの制度の運用の見直しを検討させているところでございます。ことしの六月まで、来月までに結論を得たいと思っております。

大口分科員 そういう形で、拒否する場合もあるわけですから、きちっとここはやっていただかないと、これを一般の方が信頼するわけでございますので、しっかりやっていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、この機構の事業として、本年四月から、医療事故等情報の収集、分析、提供という事業が始まった、こういうふうに聞いております。

 私は、ある方から、これは心臓カテーテルで、治療後、視覚異常が発生したということなんです。それで、あちこちの総合病院、九カ所ぐらい診断を受けたわけでございますけれども、光視症や閃輝性暗点などの症状があって、中枢性の視覚障害などの診断が出ている。それで、この心臓の治療との関係、関連が未解明だということなんです。このような件について、私に、こういう情報を何とかどこかで取り上げて、そして今後の警鐘にしてもらいたい、こういう意向の相談があったんです。

 私の事務所で本年一月に厚生労働省の方に問い合わせをしました。こういうような因果関係がはっきりしないような場合でも事例収集して情報提供することはしないのかということだったわけですが、その時点では、特にそういう情報は集めてはいない、これは日本医療機能評価機構においても集める予定ではないというようなお話であったわけですね。

 私は、今御紹介したように、医療事故だとか手術の後遺症とはっきり断定できない事例も多くあると思うんですが、これらの症例もこの機構で情報収集をして情報提供する必要があるんじゃないか、こう思うわけです。現在の学問水準では因果関係が不明であっても、将来に事例がふえて解明されるケースもないとは言えない。このような事例の集積と医療機関や研究機関への情報提供、集積をしてその情報提供をすべきではないか、こう考えるわけです。

 せっかく日本医療機能評価機構で今年度から医療事故等情報の収集、分析、提供事業が始められたわけでございますので、この事業の内容を広く国民に知らせる広報活動もしていただいて、そして、医療機関やその関係者からの事故報告だけじゃなくて、患者や家族の方々からこういう情報の提供があったことを真摯に受けとめて、そして情報提供に加えていただきたい、こういうふうに考えております。

 厚生労働省はこの機構に対して基本財産の出資者でもありますし、今回のこの医療事故等情報の収集、分析、提供事業に一億一千五百万円の補助金も出しているわけでございますから、きっちりと財団にもこういう点は働きかけていただくべきではないか、こう考えておりますが、いかがでございましょうか。

岩尾政府参考人 先生からの御質問のあったときがちょうどその予算の審議中であったもので、確たることが言えなくて申しわけございませんでした。この四月から、一億一千五百万の予算で、医療機能評価機構において医療事故の収集事業を始めさせていただきました。

 ただ、その際、医療機関より報告を求める事例の範囲でございますが、どのようなものを集めるかということですが、明らかに誤った医療行為それから管理上の問題によって患者が死亡もしくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置を要した事例、それから二つ目として、明らかに誤った医療行為は認められないけれども、医療行為や管理上の問題によって、予期しない形で、患者が死亡もしくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例、そして、そのほか、先生御指摘の、警鐘的な意義が大きいと医療機関が考えた事例を集めるということにしております。

 また、このような医療事故の情報収集とあわせまして、医療安全対策を推進する上で、医療事故防止に有用な事例などについても幅広く医療関係団体、学会から情報収集いたします。

 厚生労働省は、今後とも、医療安全の推進ということで、この事業を運営いたします日本医療機能評価機構に対しまして、適切な運営が図られるよう指導監督に努めてまいりたいと考えております。

大口分科員 では、以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

山名主査 これにて大口善徳君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、五島主査代理着席〕

五島主査代理 次に、馬淵澄夫君。

馬淵分科員 民主党・無所属クラブの馬淵でございます。

 本日、この決算行政監視委員会で、私は医療の質の向上並びに医療事故の防止等々についてお尋ねをさせていただきたいと思っておりましたが、まず冒頭、医療の質の向上、当然これは図らねばならないことでありますが、まずその前に、厚生労働省の所管大臣たる、あるいはその副大臣たる方々に、私はまずお尋ねをせねばならぬことがございます。

 私は、厚生労働省の厚生労働委員会で、四月の十四日の厚労委員会で質問をさせていただきましたときに、森副大臣、国民年金、この年金問題が大変厳しい世間の耳目を集めている中で、この年金に対しての納付状況のお尋ねをさせていただきました。これも私は冒頭にさせていただいた。坂口厚生労働大臣、さらには竹本政務官、また森副大臣、お三方にこのことについて私は確認をさせていただきました。そして、その厚労委員会の場で森副大臣は、私の質問に対して、国民年金への加入さらには納付ということを明言された。しかしながら、五月の十二日、厚労省の記者会見で未納ということをみずからがおっしゃった。

 まず、森さん、あの四月の十四日の答弁、森副大臣は、私の質問に対してはっきりと、国民年金の年金の納付状況に関して、国民年金に加入ということと保険料納付ということをおっしゃっております。これについて、記者会見で言を覆している。これについての、まず、まさに行政官庁としての、その所管副大臣としての質の問題であります。これについて、まず、森副大臣、御答弁をお願いできますか。

森副大臣 確かに、四月十四日の厚生労働委員会におきまして、馬淵委員から保険料についての、私の支払いについての御質問をいただきました。その折は、現在の状況に関する御質問というふうに私は受けとめまして、それは、竹本政務官に対する質問、その前の文脈からそういうふうにとらえまして、現在、国民年金に加入し、保険料も払っておりますというふうにお答えしたところでございます。その後、特段の追加の質問もなかったので、そこで話は終わりました。

 その時点というのは、まだ与野党でこの問題の取り扱いについての協議がされているところでございまして、私は、基本的には理事会の御協議を踏まえてお答えをしたいというふうに思っていたのでございますけれども、馬淵委員から再三の御質問がありましたので、少なくとも現在のことは申し上げようというふうに自分で判断をいたしまして、お答えをした次第でございます。

馬淵分科員 今、森副大臣、現在のことを聞かれている、文脈でそのように聞かれているとおっしゃっておりますが、その私の以前に長妻議員からの質問があり、国民年金の未納問題について取り上げられておりました。そしてもちろん、言葉じりの問題でおっしゃれば、確かに副大臣、そのときには「国民年金に加入しておりまして、保険料も納付しております。」とだけのお答えであります。

 しかし、五月十二日の記者会見におきまして、御自身が、国民年金未納問題、この問題についてはいつごろお気づきになったのかということについて、記者からの質問に対して、江角マキコさんの一件の直後だったと思う、それほど以前に、既に御自身はもう知っておられる。そして、知っているにもかかわらず、そのことに対して国民が今耳目を集めていることにもかかわらず、森副大臣は、その文脈から今現在でしか聞かれていないと理解をしたとおっしゃって、強弁して、この国民年金問題についてお答えをされなかった。

 知っていて言わないということについてはどのようにお考えですか。

森副大臣 私は、公人といえども、そもそもやはり年金のこういったデータにつきましては、個人情報という側面があることも事実だと思います。また、公人といえども、それなりのプライバシーというのはあるというふうに考えているものでございます。この問題ついて、そういったことを含めて与野党で協議がされている時点でございましたので、私は、少なくとも委員の御質問に対しては誠実に現在の状況をお答えしたつもりでありまして、それを意図的に隠したとかなんとか言われることは大変心外でございます。

馬淵分科員 大変心外だとおっしゃいますが、いや、今のお話の中で、意図的に隠していないとおっしゃっておりますが、記者会見の中で、副大臣、どうおっしゃっているんですか。江角マキコさんの一件があった直後にお知りになって、そしてなぜ五月の十二日の段階でみずから御公表されたのか。それは、何とおっしゃっていますか。区切りの局面だった、区切りの局面だったからこれを皆さんにお伝えする、こうおっしゃっているんですよ。区切りの局面とは何かと記者の質問に対して、衆議院での審議が終わり、参議院にお諮りするという一つの局面という認識だとおっしゃっている。

 いいですか。今のお話であれば、個人情報だからお伝えする必要がないという判断、与野党の協議があるという中で。しかし、副大臣は記者会見の中で、この区切りの局面、つまりみずからその立案者となっている政府法案が通過すれば言える、通過する前だから言えない、これは、つまり通過する前に言ってしまえばまさに審議に問題がある、そういうことを御自身が説明しているということにほかならないじゃないですか。

 私が申し上げたいのは、知っていながら衆議院の通過まで隠していた。そして、区切りの局面とみずからその意味合いの重要性を御説明しながら、それをさらに糊塗されようとしている、心外だとおっしゃっている。国民から見れば、森副大臣のその対応、答弁の方がよっぽど国民の意識として心外だということをお感じになっていませんか。どうお考えですか。

森副大臣 私としては、もちろん、もとより芳しい話じゃありませんから。けれども、やはり私の立場もありますし、いずれこれは与野党の御協議が調えば開示をさせていただこうというふうに思っておりましたし、またその用意もしておりました。

 ただ、そういう機会がないままにあの時点に至りまして、それでいよいよ参議院も始まるし、またその前に五月の連休もあったりして、どの時点かということで自分なりに考えておりましたけれども、参議院がこれから始まるその前に、自分なりに誠意を持って記者会見をして御報告をさせていただきました。

馬淵分科員 誠意というのは、私、さっぱりわからぬですね。はっきりとおっしゃっているんですよ、この記者会見の中でも。衆議院の審議が終わって、そして委員会でそういう答弁をして、それ以上のお尋ねがありませんでしたしというのを入れていますね。そして、何もわざわざ皆さんにその時点で御報告することはないという認識である、つまり、それが審議に大きく影響するということを御自身が認識されている。

 副大臣という、所管のその責任者でありながら、審議にかかわる、大きく影響するであろうことを糊塗して、そしてそれが終われば説明をする、しかも文脈の中で、流れの中で聞かれていなかったと平然とおっしゃっている。これはまさに行政官としての、行政の責任者として、私はそのことの質の問題が大きく問われると思いますよ。これを国民が納得するとお感じですか。

 今回の件で、森副大臣が一生懸命にその中で逡巡されているときに、私は、ひょっとするとこの方はまだ御存じないのかもしれないなというぐらいに思っていましたよ。そして、一生懸命逡巡されている中で、いろいろな方々のアドバイスをお聞きになって、御自身の情報、一部確認できたからやっとお答えいただいたのかと思ったら、そうじゃない。江角マキコさんの一件以来、もう御存じなんですよ。そしてそれがどういう影響を及ぼすかを十分に御認識されていた行動じゃないですか。

 そして、何よりも、与党の官房長官がおやめになっているじゃないですか。官房長官がおやめになるほどの重大事実、この重大事実が起きれば審議がどうなるか容易に想像できる立場にいらっしゃって、それでもなおそういう、今のお話のような、誠意を持って答えたと強弁されるんですか。この百年残る国会の現場の議事録にはっきりとそうだと、所管の副大臣であって、今のような答弁が国民の信頼、納得を得られるものだ、そうおっしゃるならば、はっきりと答えてください。

森副大臣 私は、諸般の情勢をかんがみ、そして自分なりにその折々に誠実に対応してきたつもりでございますし、この事柄については大変反省をしておりますし、おわびを申し上げたところでございますけれども、私のとった行動につきましては、それなりにきちんとやってきたというふうに自分なりに思っております。

馬淵分科員 再度確認します。副大臣として、衆議院の通過を待って、知っているにもかかわらず隠していた。知っているにもかかわらず隠していたのを、衆議院の通過を待って説明した。これはしっかりと誠意を持って対応した、そうおっしゃるんですね。はっきり、その点もう一度確認します。

森副大臣 衆議院の通過を待って説明をしたということでなくて、連休もあり、それが終わった時点で、これから参議院に入る、そういう局面でということであって、別にそれが、衆議院の通過を待ってということではありません。

馬淵分科員 もう私なんて一年生議員でして、国会の運営の一つ一つを本当に先輩の皆さんから学ばなきゃならぬ立場にいます。もう何期も経験をされている森副大臣が、参議院に入る前、これは衆議院の通過を待ってじゃない、そんなばかな答弁をされているというのは、私はこれは甚だ信じがたい光景であります。連休があるから、関係ないですよね。

 今私が申し上げているのは、まさに法案審議を問うているその責任者の立場として隠しておられたということを、あえてまだこの場でも糊塗されるということをしっかりとこの決算行政監視委員会の中で確認をさせていただいたということで、私自身、本来の医療の質の問題、そして事故の問題についての質問に入らせていただきますが、まず、誠意ある御答弁なり誠意のある対応を改めてお願い申し上げます。

 それでは、私の本題であります、この決算委員会におきましてお尋ねを申し上げたい一点目に入らせていただきます。

 まず、日本の医療の質につきましてですが、これは大変世界的に見ても水準が高い、このように厚生労働省並びに多くの関係者の方々が自負をされている、このように思います。そして、あらゆる規制改革や高度医療、また医療費の負担の問題も、すべて医療水準が高いという前提に立って物事が考えられている。

 その水準が高い、質が高いという大前提には、例えば、我々日本人の平均寿命が世界的に見ても長い、あるいは乳児の死亡率が、これも極端に低くなっている、さらには、保険制度によって、フリーアクセス、どこででもだれもが医療を受けることができる、こうした今の仕組みそのものが、非常に医療の質が高いんだ、こう皆さん方もお考えであると私は思っているわけであります。

 そして、こうした医療の質というものに関して考えたときに、果たして本当にそうなんだろうか、医療マネジメントという観点で考えた場合に、本当に私たちは質の高い、その質とはそもそもどういうものなのだろうかということを考えねばならないと思っております。

 まず、現在、医療の質を語るときに、いろいろな問題が出てきます。それこそ、施設基準である病院の問題、いわゆる病院の施設の面積であったり廊下の幅であったりというようなことが出てきたりします。また、さらには、そこにかかわる医師や看護師、こういった方々の人数の問題、こういったものも出てまいります。

 こうした医療の質をいろいろな角度で議論されていくわけでありますが、例えば医療というものに関して言えば、病気にかかって病院でさまざまな治療を受ける、その結果、不幸にも亡くなられてしまう、こうした場合の死亡率、さらには院内における感染率、あるいは予期せぬ再手術等々、あるいは、一度は全快したと思って退院されてもまた再入院となってしまう、もちろん御自身の病がそういった性質のものということがあるかもしれませんが。

 今、果たして日本の医療機関において、今申し上げたような病院ごとでの死亡率であったり、あるいは院内感染が発生する感染率であったり、あるいは予期せぬ再手術やまた再入院、こういったものの頻度等については、現在、厚労省としてはどのような実態把握のことを取り組んでいらっしゃいますでしょうか。

岩尾政府参考人 御指摘のありました各種の数値は、厚生労働省として把握しておりません。

 病院ごとの医療の質に関する情報をできる限り把握するのは望ましいと考えております。ただ、御指摘の各指標については、現時点では、必ずしも定義が明確でなくて統一的なデータを把握することが難しい、それから、病院ごとの患者の重症度とか年齢とか違いますので、そういうものを補正して比較可能なものにする手法が確立されていないなどの問題があるから、こういうことをまず検討しなきゃいけないだろうと思っています。

 ただ、私どもからこの四月に独立行政法人になりました国立病院機構並びに国立高度専門医療センターにおきましては、本年度から、がんの術後の五年生存率とか術前術後の平均在院日数などといった項目を含む臨床評価指標を定めてデータ収集を開始するところでございまして、将来、当該指標の該当性を含めて比較検討し、医療の質を向上させるための評価ができるものと思っております。

馬淵分科員 現在は非常に把握が難しい、このように御答弁だと思いますが、確かにいろいろな取り組みはなされているようですね。

 平成十五年の八月二十一日に、例えば、これは医療事故という形で調査された結果でありますが、「医療事故の全国的発生頻度に関する研究班における調査研究の概要について」、これを厚労省の方からいただきました。医療安全対策を進めるためには、基礎資料としての医療事故の発生頻度を把握することが必要だという御認識を持っていらっしゃる。そして、事実、諸外国では、協力病院などにおいて、診療録、カルテ等ですね、こういったものを抽出調査する方法によって事故頻度の推定を行っている。こうしたことを今後実態把握するためにも調査研究を行っていかねばならぬという御認識はお持ちのようであります。

 しかしながら、それが現実的にはできない。私は、このところでもう一度、この医療の質というものの把握について、根本的な考え方を整理しなきゃならぬのじゃないかと思います。

 お手元にお配りした資料でありますが、これはある医師が、こうした医療の質の向上という部分が実は置き去りにされているということを大変心配し、さまざまな方々との研究の成果として御提示されているものであります。私は、直接お話を聞く機会がございました。そして、こうしたまとめの中で非常にこれがわかりやすいということできょうお持ちしたわけでありますが、私自身が企業経営また病院の経営にもかかわってきたことがございます。その中で、これは本当に実感するものであります。

 「クオリティマネジメントとリスクマネジメント」と書いてありますが、この縦と横の座標軸、その中で「診療サービス」と呼ばれるこの左側の象限、この「診療サービス」は、大きくは横軸の上は「価値の向上」を示すもの、そして横軸から下に関しては「価値の破壊」。これをいかに、いわゆるロスをいかに少なくするか、ロスをこの座標軸でいえばどんどん下げていくか、そして「価値の向上」ですから、これはベネフィット、利益の部分です、これをどう高めていくかということが経営の要諦になります。

 そして、この中に、「診療サービス」と「診療以外のサービス」とありますが、例えば、今厚労省並びにさまざまな医療機関が取り組んでいらっしゃる姿というのは、この「診療以外のサービス」、「顧客満足度の向上」であったり「コスト削減・生産性向上」や「アメニティーの向上」「ファシリティマネジメント」といった事々、こういったことに対しては積極的に取り組んでいらっしゃる事例も私も多々見受けます。

 また、リスクのマネジメント、いわゆるロスを減らしていくという部分においては、「リーガルリスクの防止」「環境リスクの防止」「財務リスクの防止」こういったことを考えてリスクマネジメントという観点で取り組んでいく、これも医療コンサルティングなんかが一生懸命やっておられます。

 そしてさらに、「診療サービス」の方ですね、いわゆる医師の皆さん方が手技なりあるいは問診なりをしながらやっていく、その中で、ロス、まさに「医療過誤・医療事故」「医師の知識のなさ・技術の未熟さによる問題」こういったこと等々については、これをいかに低減させていくかということは、医師あるいは看護師も含めたさまざまな皆さんの意識を変えて、そして質を高めていこうという努力がされなければなりません。

 しかし、実態としてこの診療の質そのものをどのように上げていくのか、これについては、今のお話にありましたように、客観的な、定量的な基準というものが現在ないという状況である。これについて、私は大変危惧をします。この客観的、定量的な基準の把握というものがなせない中で、単に医療の質という、いわゆる診療以外の部分も含めた全体で質というものが語られしめてはいないか。

 これはどういうことを意味するかといいますと、例えば、私も最近、顧客満足度ということで高い評価を得ているという病院の事務局長の方とお会いをしました。その方のお話の中では、顧客満足度、つまり、患者さんやあるいは患者の家族、あるいはまさにそういった病院の御紹介をされた方々、口コミで紹介をされた方々を含めて、その地域でのどれぐらいの貢献をしているかという部分について、このことについての把握をしようとされています。しかし、この顧客満足度というのは、定量的な把握をしないと非常に危険であると私は思っています。

 例えば、今日常的に使われているコンピューター、大変処理速度が速いものができている。しかし、この処理速度が速いものができて、我々が便利だと感じるのは、実は、その次に次世代の新たなCPUを積んだコンピューターが登場したときに、ああ、前のが不便だったんだとわかるわけなんです。つまり、顧客満足というのは、今与えられたサービスのレベルまでしかいかない。それを定量的に把握するという行為をしなければ、これを高めていこうというインセンティブが働かない可能性がある。私自身、この医療の質の把握というものが非常に難しいんだということについても十分理解をします。

 しかしながら、諸外国では、既に取り組んでいらっしゃる、そして、それによって大きな成果を上げているという現実がございます。例えば、ニューヨーク州などにおきましては、冠動脈のバイパス手術の例、これを、それぞれ、先ほどおっしゃった、お話にありました、その患者の状態であったり、さまざまな個別個別の事情があるものを調整しながら、客観的数値で把握していこうという努力をされてきた。そして、ニューヨーク州の中では、こうした情報公開、こうした数値を目標としてやっていこうということをすることによって、全州における病院のレベルがアップしていく。現実には、その州平均のリスク調整後の死亡率というのは実に四割にも低減されたというような実績がございます。

 このように、定量的把握というものに対して、厚労省は、難しいという状況でとどまるのではなく、これは、ぜひ積極的に、まず定量把握ということをどのような取り組みとして始めるべきかということの議論をされなければならないときに来ていると思います。

 さて、今申し上げた私の、この医療の質というもの、施設基準ではない部分でどのように高めていくべきかということについての御所見を願います。大臣、お願いします。

坂口国務大臣 確かに、今お話ございましたとおり、診療の質の向上ということがなければ、本当の向上とは言えないわけであります。質が向上するということを示しますためには、先ほどもお話ございますように、客観的な物差しというものができなければ質の向上ということを示すことができ得ない、もう全くそのとおりでございます。

 客観的な物差しをどうつくるかということにつきまして、現在も、例えば先ほどの死亡率の問題がございましたが、がん患者に対します手術の成功例、五年生存率あるいは十年生存率といったようなものを、データとして解析を行い、それを整理するという作業は進められているところでございます。しかし、そうしたものだけではありませんから、もっと各疾患に対して、主に大きい疾患に対して、どれだけ治療を現実として行ったかといったことについて、やはり明らかにしていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、ここで一つ問題として難しいのは、診療の質の向上というふうに言いましたときに、その質は、これはどういうふうなことによってそれをよいというふうにするか。例えば、がん患者の場合に、人によりまして、手術によってやる方がいいという人もあれば、あるいはまた、痛みを少なくするということを最もいい質というふうに考える人もございますから、そうした場合に、それは、どう評価をするかといったような問題はあるというふうに思いますが、客観的な、本当に比べ得るような物差しを明確にして、御指摘いただきましたように、質の向上を図らなければならないという、その根幹の部分は私も御指摘のとおりと思っておりまして、これは急がなければならない問題というふうに思っております。

馬淵分科員 大臣の方からも、その重要性は十分理解しているという御答弁をいただきましたが、もう既に、医療の現場の中では、看護に対しては極めて具体的な定量把握というものに取り組んでおられます。

 もうもちろん御存じだと思うんですが、平成八年度の厚生省看護対策総合研究事業報告というものがございます。その中で、看護に関しましては評価を定量的に行っていく、ここにも書いてありますよ、看護でも難しいと。しかし、「看護実践を評価することこそ、質の改善につながるものと信じて、あえてこの困難さに挑戦してきた」、このようにその主任の研究者の方が述べられております。

 そして、そこで区分していかれたのが、例えば、看護という行為の中で、構造的な問題、過程の中における問題、結果の中における問題、この三区分をされておられます。そして、これは看護の中だけではあるんですが、構造的な問題というのは、業務規定といったような病院の中での話であったり、あるいは過程の問題というのは、患者の選択というものにかかわっていったり、あるいは結果という部分においては、患者の褥瘡であったり、転倒であったり、転落といった問題、こういったことを、それぞれの問題の、まずセグメントをされています。

 そして、最終的にこの研究レポートの中でどのような結論が導かれていったかというと、結果的には、構造の問題というところから結果の問題というところにその意識が向きまして、客観的な看護の結果を見ることができる指標としては、転倒という部分、この転倒データという部分が非常に重要であるということも一つの方向性として示唆されておられます。これは、アメリカ看護協会においても、同様の転倒データを指標とするという評価方法が非常に信頼性が高い、このように述べられている。

 つまり、医療の横に、看護という現場で、ここまで具体的に、しかも緻密に調査をされ、方向を示そうとされている。私が思うには、つまり、看護という分野においては、いわゆる皆さん方が、知識の共有を一生懸命図ろうとされている、ナレッジを共有しようとする、こういった意識が働いているからじゃないか。ところが、医師の場合は、個人のスキルに頼りがちである、ナレッジの共有というものがなかなかできない。私は、こうした事例があるのであれば、厚労省が率先して、さらにもっと踏み込んだ指導を出していくべきではないか、このように考えるんです。

 現時点で、既に看護の問題でこうした形でその検討の結果が出ているということ、これをごらんになられて、このことを御自身が受けとめられて、大臣、さらに具体的に詰めていくということは、どういう形で進めていくべきかということの御答弁をお願いします。

坂口国務大臣 看護の方の結果というのは、一つ大きな評価をすべきものだと私も思っております。しかし、医療の場合には、こういった段階にとどまってはいけませんので、より高度な、客観的で、どういう成果が出たかということに対する評価というものが必要だというふうに思っております。

 したがいまして、こうした看護の問題で取り組まれました指標等も、これは十分参考にすべきだというふうに思いますけれども、この看護の結果の、これをさらに超えて、どういうやり方でどういうふうにしていけばいいかということは、これはもう現在、全国の医師が、多くの人たちが共通の課題として取り組まなきゃならないという気持ちになってきているというふうに私は実感しているわけでありまして、特に、大きい病院等におきましては、それをやろうという、特に旧国立病院、今度社団法人になりましたけれども、院長はそうしたことをやろうというので提案をしておりますしいたしますので、積極的にひとつやっていきたいと思っております。

馬淵分科員 もう時間もなくなりましたが、今、坂口厚生労働大臣の方からは、とにかくこの看護の分野における成果というものを高く御評価いただいていることの確認ができました。できるんですよ。私はそう思っております。

 そして、このベンチマーキングこそがその質を高めていく、経営、すなわち医療マネジメントとしての質を高めていく、これは本当に確たる方法だと信じております。ぜひ、厚生労働省におかれましては、こうしたベンチマーキングなる数値の公表に踏み切る方向で、そして国立病院だけでなく、これは民間病院にとってもプラスなわけですから、全体の医療の質を高めるためにも、この質の向上のために、定性把握だけでなく、定量把握をするためのベンチマーキング指標なるものを発表していただけるようお取り組みをいただきますことをお願い申し上げ、時間となりましたので、私の質疑とさせていただきます。ありがとうございました。

五島主査代理 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、城井崇君。

城井分科員 民主党の城井崇でございます。

 坂口大臣を初めとして厚生労働行政に携わっておられる皆様に対して、私からは初めての質問ということになりますので、大変長い時間の質疑でお疲れかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回の質疑に当たりまして、冒頭、まずお伺いをせねばならないと思っておることがあります。

 私も選ばれております地元が福岡の北九州市というところでございます。ふだん地元に戻っておりますときに地域で暮らす皆様にお話を伺ってくる中で、どうしても、一つ目をつぶれない部分があります。それは、これまでの厚生労働行政の中で、さまざまな支援のメニューが準備をされてきたというところがございました。しかし、肝心のその仕組みを運用してくる段になったときに何が起こっているかといえば、その準備をされた仕組みと、そしてその仕組みの使われ方というものが残念ながら一致をしない、あるいは、むしろかけ離れていっているところがあるという状況がございます。

 その状況の中で、まず一つ、冒頭に、自治体が行っている子供相談の実態とその把握について、大臣にお伺いしたいと思っています。

 私がおります北九州市、各区役所の一階の部分で子ども相談コーナーというのを設けています。例えば母子家庭あるいは父子家庭の方々の御相談、母子寮へ入寮することのお世話であるとか、あるいはこれまでの厚生労働行政が準備をしてきた各種支援メニュー、支援制度などの活用をどんなふうにしていったらいいかということをそこで御相談されている、ある意味での制度の活用への橋渡しといったことをされているという実態がございます。

 しかし、そういった、ある意味で家庭の状況に踏み込んだ、非常に複雑で難しい仕事であるという部分があるんですけれども、そこに携わっておられる方、例えば元校長先生であるとか、幼稚園の先生をされていたとか、あるいは、それこそ非常に苦労されてお子さんを育ててこられた方がその経験を生かしてという部分で携わられているところがあります。しかし、その待遇といったところで、それぞれの自治体で差はあるわけですが、残念ながら非常に不安定な雇用になっているという部分があります。ある意味での雇用調整に使われているという面が否めないというところもあります。

 しかし、先ほど申し上げました、厚生労働行政を実際に地域に浸透させていこうと思ったときに、その最前線を今まさに担っていただいている方々がどのような状況にあるかというのを、本当に、制度の運用という意味で大臣を含めてきちんと把握をされ、そして、そこにもしそういう不安定な状況があるとすれば改善をすべきではないかというふうに考えておりますけれども、その相談員の方々の勤務実態、あるいはその勤務実態に関しての改善策というものをいかがお考えか。まず、大臣の見解をお聞かせください。

坂口国務大臣 私も、そんなに多くの場所へお邪魔しているわけではございません。特に、児童相談所等、都道府県段階におきます相談所等へお邪魔させていただく機会は多いわけでございますし、私も、地元におきましては市町村へお邪魔させていただきましていろいろ御意見を伺うことがございます。あるいは、他の府県におきまして、大きな市等におきましてはお話を伺うこともございますけれども、その中で、やはり人の不足になってきていることだけは間違いないと私も率直にそう思っております。

 特に、児童相談所等の児童虐待等の数が毎年毎年倍々ゲームでふえてきている。都道府県も頑張っていただいて、その人員をふやしていただいていることも間違いないわけでございますが、その人員増加よりも虐待件数の増加のスピードの方が大きいという実態がございまして、大変御苦労いただいているということを率直に認めなければならないというふうに私も思っております。

 今回、法律も出させていただいておりますが、今後、市町村に対して、今まで児童相談所等でやっておりました問題の中の一部も市町村でもお願いをしたいというふうに思っておりますけれども、それでは、今度は、市町村におきますところの相談体制が一体できるのかということでございまして、先日も省内で話をしたところでございますけれども、これは厚生労働省だけで言っていてはいけないので、市町村にお願いをしますときに、それをどうするかということについて、これは総務省、市町村担当でございますから、総務省の方、あるいは財務省ともお話をしなければならないというふうに思います。そうした人の配置をどうするかということについての検討を早くしなければ、絵にかいたもちになってしまう可能性があるということを先日からも話をしたところでございます。

 多くの市町村におきましては、私も存じ上げておりますけれども、パートのような形で、先ほどおっしゃいましたけれども、経験の豊かな皆さん方に半ばボランティアみたいな形で御参加をいただいて、そしてお手伝いをいただいているというケースが非常に多いことも事実だというふうに思っている次第でございます。

 ボランティアにお願いをしなきゃならない点もこれからもございますけれども、それだけではいけませんので、やはり中核的な役割を果たしていただく人たちに対してどういう教育、どういう対応をしていくかということが今後課せられた大きな課題だというふうに思っている次第でございます。

城井分科員 ありがとうございます。

 まさに、大臣が今おっしゃったように、特に児童虐待の問題を含めて倍々ゲームで進んでいるというところがあると私も感じています。だからこそ、そこにかかわる人間が、いわゆるボランティアに近い形で働いていただく、頑張っていただくということだけでよいかというところ、とりわけ、その方々の心と頭の中に詰まっていらっしゃるノウハウを、それこそ今国会の現場で議論する我々がもっと吸収していかねばならないというところは多分にあろうというふうに私自身も思っています。ぜひ大臣からも、現場につながりを持っている各省員の皆様にそのあたりを重々申し上げていただきながら、今後、各省庁との対応をしっかりと図っていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 ちょうど大臣も今触れられました児童相談所の問題、少し踏み込んだ質問をさせていただきたいというふうに思っています。これもまたある意味で、先ほどありましたように、メニューと実際の仕組みの運用というものがかけ離れている例であるというふうに思っています。

 まず、児童相談所のこれまでの一時保護の状況というものについて、その保護理由別の推移、全国と、そして北九州市ということで結構でございます。お聞かせください。

    〔五島主査代理退席、主査着席〕

伍藤政府参考人 児童相談所の一時保護所の件数の推移でございますが、まず全国で申し上げますと、この四、五年を見ますと、総数としては横ばいでございます。ただ、内訳を見ますと、内訳は、養護、障害、非行、育成それから保健その他と大きく五つぐらいに分類をされるわけでありますが、顕著にふえておりますのは、最初の養護に含まれる、特に虐待でございます。養護の中に虐待というのが含まれますが、これが、例えば平成十年は千六百件ぐらいでございましたが、平成十四年は六千六百件、ここのところが非常にふえておるというのが特徴でございますが、その他のところは際立った傾向は見られないというところでございます。

 それから、北九州だけを取り上げてみても、傾向としては同じでありますが、保護件数総数といたしましても、例えば平成十年が二百三十八件でございましたが、平成十四年が二百七十七件ということで、全国よりも、北九州の場合には一時保護の件数が若干増加ぎみであるというようなおおむねの傾向になっております。

城井分科員 続けてお伺いしたいんですけれども、その一時保護期間における児童相談所の役割というものを改めてお聞かせいただけますでしょうか。お願いします。

伍藤政府参考人 一時保護をする理由でございますが、これは大きく分けて三つぐらいあろうかと思います。

 一つは、虐待等の理由によりまして児童を家庭から緊急に引き離さなければならない、その後どうするか、まだ処遇が決まりませんので一時的にそこで保護をするということでございます。それから、虐待ではない場合でありましても、具体的な処遇指針を定めるために、そこで個人の行動を観察したり生活指導をしてじっくり様子を見る必要がある、こういったことで一時的に保護する場合。それから、短期間の心理療法、こういったものが有効ではないかということで、そこでそういったことを試みて、効果があれば家庭に帰っていただく、こういうことも目的の一つでございます。

 こういうもろもろの理由で、それぞれの個人個人によって違いますが、そういった理由から、必要がある場合に一時保護をしておるところでございます。

城井分科員 そのような役割を担っている中で、今、例えば、今回例を出させていただくと、北九州市の児童相談所の現在の入所率、数字で申しますと、私の手元の資料によりますと、約九九・〇%という数字を厚生労働省の皆様からいただきました。ただ、その数字を見ながらその役割というものを見たときに、一番最初に御指摘申し上げた部分、仕組みはあるけれども、その運用のところに落とし穴があるのではないかというお話、御指摘させていただきたいと思っています。

 それは何かと申しますと、実際に児童相談所がそういう役割を持っている中で、今現場で何が起こっているかといえば、一時保護の期間、先ほどありましたように、行動の観察やあるいは進路指導といった部分で少し時間がかかるところもあるかもしれません。しかし、実際の現実として、一時保護期間、本来ならば二カ月前後というふうなところでおさまるはずのところが、半年を超えるような事例が現場で起こっているというのを私自身が耳にしておるわけですが、この一時保護期間の長期化という点について把握をされていらっしゃるか、お聞かせください。

伍藤政府参考人 全体の傾向としては、一時保護の期間、若干長期化の傾向にあることは事実でございます。ただ、その結果でございますが、保護した児童の約三分の二は、いずれにしても家庭に帰っていただくということでございまして、三分の一が、一時保護から児童養護施設の方へ移行していくというようなこと、こういう大まかな傾向は余り変化がないところでございます。個別の、件ごとのといいますか、細かいデータはございませんが、若干長期化の傾向にあるということは御指摘のとおりでございます。

 その理由でございますが、先ほど来言われております、児童虐待といったような非常に困難な事例が増加する中で、なかなか処遇の方針が決めがたいというようなケースも中にはふえてきております。それから、ケースによりましては、児童養護施設に入所させる場合に親の同意が必要でありますが、同意が得られない場合に、家庭裁判所の承認を得て施設に収容する、こういう手続が必要でございますが、そういった難しいケースもふえておるといったことが全体としての一時保護の長期化につながっているんではないかなというふうに分析をしております。

城井分科員 先ほどの九九・〇%、最終的に児童養護施設に行かれた方の北九州市の入所率でございました。済みません。訂正をさせていただきながら、お伺いを続けさせていただきます。

 長期化の傾向、今難しいケースがというお話でございましたが、逆に、私が今指摘を申し上げたかったのは、児童養護施設が、北九州市だけではありません、九〇%を超える児童養護施設の入所率がある中で、そのしわ寄せが、今御指摘申し上げている児童相談所に来ている。特に、児童相談所の居住環境というものが、児童養護施設と比べたときにその居住環境の差というものがどれぐらいあるかというのは、それまで仕組みをつくってこられた厚生労働省の皆さんがよくよく御存じのはずだというふうに思っています。

 児童相談所の滞在する施設といえば、非常に簡易な施設で、そこに仮に半年、言えば、少し言葉は悪いかもしれませんが、押し込められた状況になる。特に、行動については、出入りは制約があるはずでございます。そういったところに長期間子供さんが置かれることによって、それこそ逆に、その状況によって引き起こされる問題が多々あるのではないか。

 この長期化の部分、実態把握を含めて、もう少し踏み込んだ対応が必要かと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 若干長期化しているということは現実でございますが、その点について、すぐ、どういった問題点をどういうふうに解決しなきゃいかぬかという具体的な現場からの要請なり改善要望といったことは今のところ承っておりませんので、そういったことで、長期化した児童のために処遇面でどういったことが、改善の余地があるか、あるいは必要なのかといったことについては、また私どもも、いろいろな機会がございますので、現場からの要望をよく聞いてみたいというふうに思っております。

城井分科員 現場からの要望が上がってきたときには、既に問題が深刻化しているという状況になって上がってくるわけですよ。今私が申し上げているのは、そういう問題が、例えば地元の地方議会で取り上げられている状況が出てきている、行政がそこで、声が上がってこなければ耳を傾けないというのは若干傲慢が過ぎるんじゃないでしょうか。そこは、今こうして私自身も地元からの声を伺う中でこういう問題があるから、ぜひ耳を傾けてきてくださいということをここで申し上げておるわけです。現場から声が上がっていないということではありません。今私が現場の声を伝えているということをもう少し真摯に受けとめていただきたいというふうに思います。

 今の長期化の問題だけではありません。今、例えば児童相談所の問題の中で、仕組みの中で、なかなかまだ見えてきていないけれども、実際に現場で起こってきた問題というのは、長期化の問題だけではありません。今から申し上げる、るるお聞きしたい問題ですけれども、例えば、保護期間における、施設からの脱走を含めたトラブルの例というものを把握していらっしゃるでしょうか。そういった部分も地域では聞こえてくるわけです。その把握の状況、お持ちでしたら、お聞かせください。

伍藤政府参考人 脱走だけの具体的な数字はございませんが、私どもの委託して行っております調査によりますと、一時保護所におけるいろいろな困難な事例というのは、職員自身がいろいろ感じておるわけでありまして、職員の九割が、そういった児童にかかわる中で、何らかの困難を感じておるということでございます。

 多い順に申し上げますと、一つは、暴力とかおどし、あるいは威嚇的態度が顕著な子供、こういったものの対応になかなか困難をきわめる、それから、多動傾向が強い子供が多くなっておる、それから、自傷行為が強かったり、あるいは自殺願望、こういった子供の処遇がなかなか難しい、それから、無断外出が頻繁に繰り返される子供、こういった幾つかのタイプに分かれるわけでありますが、一時保護所における困難な事例、困難なケースというのは、こういったものがほとんどではないかというふうに思っております。

城井分科員 脱走については具体的な数字をお持ちでないという部分もございました。先ほど来御指摘させていただいておりますように、ぜひいま一度耳を傾けてみてください。私も、調べながら少々驚いておるところがあります。本当に、ある意味で落とし穴だなと思っておるところがあります。ぜひいま一度、実態調査を含めて、お取り組みをいただきたいというふうに思います。

 この児童相談所の問題、続けて、あと何点かお伺いさせていただきたいと思います。

 施設整備のときの施設のあり方についてお聞きしたいと思います。現在、私の地元北九州市の場合、いわゆる中層ビルの中の二階を利用しているわけでございますけれども、この施設整備のあり方、その場所の条件を含めて、その条件について、厚生労働省であり方というものをお考えになったことがあるかどうか。もしございましたら、その内容をお聞かせいただければと思います。お願いします。

坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、そんなにたくさん私もお邪魔しておるわけではございませんけれども、私がお邪魔しましたところの多くでは、やはり、お子さんが大きくなられましたときに、一つの部屋に三人も四人もいるということは、それはもうできない。最低と申しますか、多くてもお部屋で二人、二人以下にしてほしいという御要望がかなりございました。男女はそれぞれ別々になっておりますけれども、できれば、思春期になれば一つの部屋を与えたい、そういうお話がございまして、それに対応できていないということでございます。

 それから、先ほども少し出ましたけれども、多動性のそうしたお子さん等があって、非常に手間暇がかかると申しますか、対応が非常に難しいお子さんがあるといったようなことでありまして、それに対応するためには、やはり、より専門的な知識を持った人がより多く必要になってきている。過去の例の、ただお父さんやお母さんがいないとかいったようなお子さんを預かるというケースとはかなり最近は違ってきているというお話がございまして、お預かりをしているお子さんの質と申しますか、そうしたことにも対応してやはり人の配置というのは考えなければいけないんだなと、私も率直にそれらのお話をお聞きして思って帰ってきた次第でございます。

 それぞれの地域、いろいろ違うと思います。居住空間のとり方につきましても、それぞれの地域でいろいろな差があるものというふうに思いますけれども、そうしたそれぞれの地域の持っておみえになりますところを県なら県の段階でもひとつよく把握していただいて、そして、どういう対応が必要かということを我々の方にもまた教えていただいてということが必要だというふうに思っております。

城井分科員 ありがとうございます。

 一番最初に大臣から出ましたように、地域差もございます。そして、虐待を含めてケースがふえているという中で、さてどう対処していくべきかといったときに、今厚生労働行政の中で一つ準備をされているものとして、地域小規模児童養護施設の積極的な設置というところでこの四、五年取り組まれているということを聞きました。

 ある意味で、数をただそろえていけばいいというふうなところでなかなかうまくいかない。そこで、いかに人として親身に接していくことができるかということまで含めて、大事なところで、小規模で各地域で対応していこうということが一つのかぎになるのではないかと私自身も感じています。

 この地域小規模児童養護施設の今後の増設についての方針がございましたら、お聞かせください。

伍藤政府参考人 地域の小規模養護施設というものは、定員六人程度で、一つの家のような形態で指導員と一緒に生活をするというような形態でございまして、できるだけ家庭的環境でこういった子供さんと一緒に過ごしていただこうということで進めておるものでございまして、平成十六年度予算におきましては四十カ所から百カ所に運営費を増加させるということで、これから格段に力を入れて整備をしていこうというふうに思っておるところでございます。

 それから、この百カ所というのは、従来は運営費の補助ということだけでございましたが、十六年度から、建物とかそういったものを修繕したり新たに建てたり、こういった施設整備につきましても新たに補助の対象にするということで開始をしたところでございますので、こういった両面の措置をあわせてこれをこれから広げていきたいというふうに思っております。

城井分科員 ありがとうございます。

 私も、今後も、この児童相談所あるいは児童養護施設の問題についてきちんと、地域を歩きながら、落とし穴を見つけた場合には逐一指摘をさせていただきながら、ともに改善を図っていきたいと思いますので、今後とものお取り組みをお願い申し上げます。

 さて、時間の許す限り、また別の項目で質問させていただきたいと思います。

 労災病院の改革についてお伺いさせていただきます。

 この問題、私も先日、質問主意書という形で、とりわけ福岡県内にございます九州労災そして門司、筑豊、大牟田の各労災病院の再編計画、そしてその後の行方というものについてお伺いさせていただいた経緯がございました。その中で、ちょうど質問主意書を提出した時期が再編計画を発表する前であったというところで、その答弁を再編計画発表後に延期した経緯がございました。

 その後、再編計画を発表した後に、さまざま、例えば大牟田労災病院についての報道なども耳にしておるところでございます。再編計画発表後の取り組みについて、お聞かせをください。

高橋政府参考人 労災病院についてのお尋ねでございますが、労災病院は、平成十三年十二月に閣議決定をされました特殊法人等整理合理化計画、これを踏まえまして、労災病院が労働政策として期待される役割を適切に果たし得るよう機能の再編強化を図ろう、こういうことで、御指摘のとおり、本年三月三十日に労災病院の再編計画として取りまとめ、公表させていただいたわけでございます。

 この再編におきましては、九州地区におきましては、三つの病院の廃止、それから二つの病院の統合ということを予定いたしておるわけでございます。このうち、鹿児島県にございます霧島温泉労災病院につきましては、四月九日に既に廃止をさせていただいたところでございます。

 この再編計画におきまして述べておるところでございますが、それぞれの労災病院、地域地域の中でそれぞれ地域医療に一定の役割を果たしておる、こういうことで、この点を十分考慮しながら、地元の関係者の皆さん方とも十分協議しながら、地方公共団体または民間への移譲について、廃止対象病院について積極的に対応していこうといたしておるわけでございます。

 この策定後、早速、具体的な再編作業を担います独立行政法人労働者健康福祉機構の方から、地元の自治体の皆様方に対しまして、御説明かたがた意見交換をさせていただいたところでございます。もちろん、策定前には、私どもも現地に参りまして、経緯等について御説明をさせていただいたところでございます。

 今後は、今申し上げました移譲ということを十分念頭に置きながら、地元の自治体と具体的な連絡協議の場を設けるべく、現在準備を進めておるところでございまして、そこには私どもも、厚生労働省も加わる形で、引き続いて地元関係者と十分協議を行ってまいりたいと考えております。

 また、大牟田労災病院でございますが、これは十七年度に廃止を予定してございます。ただ、大牟田労災病院につきましては、その設置の経緯、それから炭鉱災害によります一酸化炭素中毒症に関する特別措置法の趣旨、さらには現在の患者さんの療養の現状を踏まえた対応を検討するということを特にこの計画の中で打ち出したわけでございまして、今後、この患者さん方の療養に支障を来さないような格好での方策について、鋭意検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

城井分科員 大変前向きな取り組み、ありがとうございます。

 今回の労災病院の改革もそうでございますけれども、ややもすると、労災病院の改革はしたけれども地域医療は崩れてしまったということになりかねないというふうに思っています。これまでも、例えば国立病院あるいは社会保険病院といった病院の改革のときに必ずつきものであったのが、縦割りの弊害たる、その病院自体の改革は進んだかもしれないけれども地域はどこかへ行ってしまったと。

 先ほどの御答弁の中で、いわゆる患者の目線という部分、特に大牟田の地で苦しんでいらっしゃる方々にきちんと目が配られているというところ、そして、地域の方々で、今後自分はどの病院に通っていくのか、大丈夫なのかといったところを実際に心配されていらっしゃる方はたくさんおられるということを私自身も耳にしています。その部分を踏まえながらお取り組みいただけるということをお聞かせいただいたと思っています。今後も、その部分をお忘れないようにお取り組みを続けていただければというふうに思います。

 さて、もう一問準備をしておったわけでございますが、お時間が参りましたので、準備いただいた方に大変申しわけないんですけれども、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山名主査 これにて城井崇君の質疑は終了いたしました。

 次に、平岡秀夫君。

平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。大臣もお疲れであろうと思いますけれども、もう少し頑張っていただければと思います。

 きょうは、広島労働局で起こりました不正経理問題について質問をさせていただきたいと思っております。

 この問題については、既に先週の五月十一日、参議院の厚生労働委員会で、民主党の辻泰弘委員の方からもかなり詳しく質問がされておりますので、きょうはできる限りそれを踏まえて、それから約一週間たったわけでございますので、その後の調査状況の進展も踏まえて御答弁いただきたいというふうに思っているわけでございます。

 まず最初に、今回のこの広島労働局の不正経理問題については、発端としては昨年の十月から調査が行われているわけでありますけれども、その後、ことしに入って、一人について一月三十日、二人について三月五日に懲戒免職処分と告発が行われているというふうなことで進んでいるわけでありますけれども、その後の話として、厚生労働省から会計監査に入ったのが四月五日ということで、かなり遅くなっている。この点については既に辻委員も指摘していたところでありますけれども、さらに、この調査結果の発表というのが五月の七日になっている、こういう状況になっています。

 五月七日がどういう状況だったのかと考えてみますと、五月の六日に例の年金問題についての三党合意ができたということでありまして、その後にこの調査結果の発表が行われた。かなり遅くなって発表されているということについて、何かちょっと、政治的な、意図的なものを感じるんですけれども、この辺、大臣、どのような判断でこの時期に公表されたということでしょうか。

坂口国務大臣 この事件につきましては、これは本当におわびを申し上げなければならない事件でございます。私にとりましてもこれは本当に思いも寄らないことでございましたし、主には十年、十一年に非常に多かったわけでございますが、しかし、私が就任をさせていただきました十三年にも行われているわけであります。

 私が一番ショックを受けましたのは、平成十三年の一月からいわゆるKSD事件で、私が大臣に就任をさせていただきましたスタートはKSD事件でスタートしたわけでありまして、公益法人でございましたけれども、それに対する厚労省、旧労働省の会計監査というものが非常に甘いということで、国会の中で連日おしかりを受けた日々でございました。そうした中で、周辺に対する整理をしっかりとやらなければいけないということを言っておりますその中で、厚生労働省、旧労働省の中でこういう事件が同時進行していたということ、本当に、私は愕然といたしましたし、申しわけないことだというふうに思っております。

 昨年の十一月末ぐらいでございましたか、私、この件を聞いたわけでございますが、最初は一件だけということでございましたけれども、それが一つの県だけではなくて、もう一つ、別件が起こってきたということでございまして、それにかかわっている人が一体何人になるかということがよくわからないということで年を越したように思っております。

 一月になりましてからも、その捜査、それに対する対応が続いておりましたが、最初の一件を地検の方に申し出をさせていただいたのが一月の末である。(平岡分科員「短く」と呼ぶ)済みません。そうしたことで、だんだんと日が進んでまいりました。全貌が明らかになりました中で全体の職員に対します懲罰等もしたい、処罰等もしたいということを行ってまいりまして五月の連休明けになってしまったわけでございますが、決してそういう政治的なものはございませんで、四月末に全体ができ上がったところでございまして、そうしたことで五月の、今七日とおっしゃいましたでしょうか、私も六日だったか七日だったかと今思っているわけでございますが、七日になったということでございまして、それ以上の問題はございません。

平岡分科員 大臣の説明は説明としてとりあえずお聞きしておこうと思うんですけれども、ただ、この調査報告書の中身を見てみますと、本当に四月の末まで調査がかかったのかなというふうに逆に思うようなところもあったりします。

 そういう意味でちょっと質問をしてみたいんですけれども、今回、厚生労働省の方で調査結果というのを五月七日に公表しておられますけれども、この中身を見てみますと、三月十一日に逮捕された宮本正道さんとか、あるいは二月の五日に亡くなられた元広島労働局人事計画官、これらの方々は、これらの事件にかかわっていたということが既に新聞報道とかあるいは起訴事実の中で明らかにされているんですよね。それらの人のことが一言もこの中で触れられていない、この調査結果の中に。一体これはどういうことなんだ、この調査結果というのは一体何を調べたのか、私はこんな気がするんですよね。このお二人について、この調査結果の中で全く一言も触れられていない。一体、これはどういうことなのか。これは答弁願いたいと思います。

鈴木政府参考人 調査結果の中で、亡くなられた元人事計画官、それから逮捕された宮本元部長について触れられていないという御指摘でございますが、まず、元人事計画官につきましては、二月五日に急遽亡くなられたということもありまして、不正の事実を確認することができなかったということで、今回の調査結果の中には触れられていないのでございます。

 それからまた、逮捕された宮本につきましては、広島労働局におきまして事情聴取を行っております。ただ、その中で、本人は不正支出への関与を全面的に否認しておりますし、また着服の事実も確認できなかったということで、これについては今回の労働局の調査結果の中には入っていない、そういう経緯でございます。

平岡分科員 この点はまた後で触れるとして、また、疑問点としては、今回の調査結果、平成十年度以降が調査対象になっているということなんですけれども、これは、検察当局が冒頭陳述でこういうことを言っていますね。今回逮捕された人について言うと、寺西被告については、平成九年四月ごろ、前任者の高橋被告から不正経理の引き継ぎを受けていましたということを言っています。今度は、高橋被告は、平成七年三月中旬に前任者に引き継ぎを受け、不正経理に関与した、こういうふうに言っています。つまり、この件について言うと、逮捕された寺西、高橋だけじゃなくて、これはもっと以前からスタートしているということが供述の中でもはっきりしているわけですね。この点についても全く調査がされていない。逆に言うと、調査の対象を平成十年度以降に限定しているということについて非常に違和感を感じる。平成九年度以前についてはこうした不正経理はないというふうに判断しているんですか。それとも、あるけれども何らかの事情で調査しなかったということですか。

鈴木政府参考人 今回の調査、不適正支出、これの実態を解明し、それに基づいて必要な処分なりあるいは刑事告発をするという観点で、この間必要な会計書類等を今まで調査してまいりました。

 なぜ十年度からかというお話でございますが、会計経理にかかる書類のほとんど、これは保存期間が五年と定められております。そういうことで、平成九年以前の証拠書類は全く残っておりません。そういう観点から、事実を確認し、実態を把握し、必要な処分等を行うという観点から、平成十年度以降、必要な会計書類等を調査しながら、またヒアリングをしながら、今回の調査結果に至ったものでございます。

平岡分科員 それは全くの言いわけでしかないですよね。平成十年以降のものしか調べないということの意味が何があるか。

 例えば、これは、国に対して不法行為によって損失を与えたということであるならば、民法の規定に基づいても、二十年さかのぼってちゃんと処理をするということもできるわけですよね。平成十年度以降の分だけで処理したんでは、本当に、国に対して損失を与えたことについての救済もできないし、そして、先ほど私が読み上げたような供述の中で、前任者も関与していた、前任者もやっていたということであるならば、もっともっと幅広い人たちが処分されてしかるべきだ、そういう事実関係が出てくるわけですよね。これが調査できないというのは、書類が残っていないからという理由じゃ理由にならないですよ。もう一遍答弁してください。

鈴木政府参考人 いずれにしても、これは事実を正確に確認しないとしようがないものでございます。ですから、私どもは、今の段階で事実を確認できるものとして十年以降を調査をしておりますが、またその事実を確認できるような新たな事実とか書類等がわかればそういった調査も可能でございますが、現段階では、そういった事実を確認できるに足る証拠書類等、これが十年度以降ということでございますので、それ以前はなかなか難しいのではないかと考えております。

平岡分科員 例えば、今回のこの事件について言うと、菅原氏も高橋氏も寺西氏も銀行に仮名口座をつくっていろいろと不正経理をやっていた。それだけじゃないのかもしれません。この不正経理をした銀行仮名口座について言えば、これは銀行に対して、こういう調査をしているので、ぜひ調査に協力してほしいということもしていなければいけないというふうに思うんですが、そうした事実はあるんですか。

鈴木政府参考人 高橋、寺西が中心となって行った不正支出に係る仮名口座でございますが、これについては銀行に照会すればわかるのではないかというお話でございますが、これについて銀行への照会も行ったところでありますが、守秘義務の関係もあり、お示しすることはできないという回答がございました。

平岡分科員 守秘義務と言われますけれども、寺西、高橋について言えば、これは仮名口座をつくった本人ですよね。本人が自分に見せてほしいとか、あるいは、本人が調査に協力したいので厚生労働省に見せてあげてくださいというふうな依頼をすれば、これは今までの取り扱いからいえば、当然に銀行は見せてくれるはずですよね。そこまでちゃんとやっているんですか。本当に調べる気があったんですか。どうですか。

鈴木政府参考人 高橋、寺西、現在捜査中でございますので、私どもとしては、行政として銀行に照会を行ったところでございます。その照会の結果が、先ほど申し上げたような回答だったということでございます。

平岡分科員 これは金額的に見ると、平成十年度、四千三百万円ですよ。平成十一年度、四千八百万円、平成九年度、先ほどの供述の中では、不正経理が行われたというふうに供述している中で、平成九年度は一体幾らあったのか。場合によっては、四千万円を超えるようなものがあったかもしれない。さらにその前にさかのぼっていけば、もっともっと、高橋さんもその前の前任者から、つまり、平成七年のときに人事異動が起こっているわけですから、平成七年度以前もこういった不正経理が行われていたという可能性が大いにあるという状況の中で、これを調査しないというのはやはり非常に問題だと私は思いますね。どうですか。

鈴木政府参考人 先ほどから申し上げていますように、この問題、発覚してから、膨大な会計書類等を調査してまいりました。その中で、証拠書類として残っているもの、これをもとに事実を確認するということが大事でございますので、現段階では、そういった事実を確認するに足る証拠書類がないということで、九年以前については難しいのではないかと考えております。

 ただ、いずれにしても、公判等の中で明らかになる事実があれば、それについては今後も調べる努力はしていきたいと考えております。

平岡分科員 いや、既に冒頭陳述の中で、こういうことがあるということは言われているわけですよね。それを、新たな事実が出てきていないというふうに言い張るのはおかしいと思いますよね。

 懲戒処分について言えば、これは別に時効があるわけじゃないので、平成九年度であろうが八年度であろうが、そういう事実があるかどうかということについて、ちゃんと部内の職員にも確認をし、そして、寺西、高橋に対しては、厚生労働省としてしっかりと事実関係を明らかにしなければいけないので、銀行への調査に対して協力してほしいという要請をちゃんとして、しっかりとやらなきゃいけないというふうに私は思うんですね。大臣、この点どうですか。

坂口国務大臣 実は、率直に申し上げれば、私も、九年より前はなかったのかということを言ったわけであります。なぜ十年、十一年が多いのか、そして、十二年、十三年とだんだんと減ってまいりまして、十三年が最後で若干になっている、本当に少ない額でございますけれども、十三年もある。

 なぜ十年、十一年が多いのかということを私も何度も言ったわけでございますが、そこで想像されますこととしましては、省庁の再編があって……(平岡分科員「そこはいいですから。答弁で聞いていますから、鈴木さんの御答弁で」と呼ぶ)ということになったということであります。その前のことにつきまして私も聞いたわけでありますけれども、今答弁しましたようなことでありまして、書類がない、こういうことでございました。私も若干、そこは疑問に思って、前からこういうふうなことが行われていたのではないか、また、他の都道府県でこういうことが行われているのではないかといったようなことについても、今回、徹底的に調査をしてくれということを言っているところでございます。

平岡分科員 今、坂口大臣の答弁の中で、徹底的に調査をするということの意味の中に、平成十年度以降に限らず、やはり以前からやっていたんじゃないかという疑惑に対してもちゃんと答えられるような調査をするということだと思いますので、ぜひそれはお願いしたいというふうに思います。

 それで、この調査報告書について、もう一つ、別の観点からの疑問なんですけれども、今回起訴されているものを見ますと、平成十一年度以降のものについてしか起訴されていないということになっているんですよね。この調査報告書を見ると、平成十年度においては、先ほど言いましたように、四千三百万円の不正経理があったということがこの調査報告書の中で確認され、そして、先ほどの厚生労働省の官房長の答弁の中でも、それはちゃんとした証拠書類に基づいて確認できるんだということを言っているわけですよね。それにもかかわらず、どうして平成十年度分について起訴という、立件という形になっていないのか、この点について、検察当局、ちゃんと答えていただきたいというふうに思います。

樋渡政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますことから、お答えをいたしかねるところでございますが、具体的事件の処理は、当該事件において収集された証拠に基づいて判断される事柄でございまして、一概には申し上げられないところでございます。

 なお、一般論として申し上げますれば、検察当局におきましては、常に厳正、公平、不偏不党の立場から、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて適宜適切に対処しているものと承知しております。

平岡分科員 具体的に進行している案件ですから、いつもの決まった言い方しかできないということも、私もある程度は理解しようと思いますけれども、ただ、これは本当に、厚生労働省が調べたことと検察当局が立件したことが、突き合わせてみたら全然違うことになっているわけですよね。こんなんじゃ、やはり国民は納得できないですね。やはり国民が納得できるように、検察当局もそれなりの対応をちゃんととっていただきたい、このことだけは要請させていただきたいというふうに思っております。

 それから次に、この調査報告書に関連してですけれども、関係者の処分についてなんですけれども、この関係者の処分を見ますと、処分された人の名前とかあるいは処分結果が公表されている人と、そうではなくて、何名とかという形で一くくりになっている人たちがいるんですけれども、私は、こういう事件について言うと、やはり組織ぐるみでやっていた、そういう可能性がある話でありますから、当然、ここについては、職務規律の維持あるいは再発防止の観点から、公表されることが原則であるというふうに思っているんですけれども、この点について、大臣はどのように判断してこういう公表をされたのか、お答えいただきたいというふうに思います。

坂口国務大臣 これは、懲戒処分の公表指針というのが、御存じのとおり、ございまして、それに従っているわけでございますが、課長クラス以上のところは氏名を明確にする、責任上もそこは明確にするということで、明らかにさせていただいているところでございます。

平岡分科員 それでいいのかどうかというのはまた別の問題として、いずれにしても、退職者については、当然、何らの処分もできないしということであるんですけれども、退職者の中にやはり相当責任があった人がいるんじゃないかというふうに思うんですよね。こういう人たちに対しては、やはり損害賠償請求とか、あるいは不当利得返還請求とか、そのようなことをしっかりとやるべきだというふうに思うんですけれども、この点については何らのこともしていないというふうに判断していますけれども、どうでしょうか。

鈴木政府参考人 今御指摘のように、退職された方につきましても、この問題につきまして、管理監督責任等、そういった責任を有する者があったことは事実でございます。

 ただ、懲戒処分とか行政上の矯正措置等につきましては、公務員としての身分関係をもとに行うものでありまして、そういう意味におきまして、退職者についてそういった措置が行えない、そのことについては御理解をいただきたいと考えております。

 なお、今回の事案に関しまして、管理監督責任等を有していながら、退職により処分ができなかった者につきましては、不適正支出額の国庫への返還につきまして応分の協力を求めたところでありまして、現実にも各人から御協力が得られたということでございます。

平岡分科員 国庫への返還についての寄附の協力を求めたということであって、非常に自主的なものにとどまっているという点は、本当に責任を追及しているというふうには全然感じられないということで、大いに問題があると思うんですけれども。

 ちょっと参考までに伺いたいんですけれども、ある新聞報道を見ますと、寄附の額というのは、三十万円から五百万円までというような形で寄附がされているというふうに思うんですけれども、五百万円も寄附したというのは一体どんな人か、この五百万円を寄附した人の中にはOBの方もおられるんですか、どうでしょう。

鈴木政府参考人 個別の金額、それから協力した方につきましては、これはプライバシーの問題がございますので、個別的にはちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思うんです。

 ただ、いずれにしても、協力を求めた際に、厚生労働省本省につきましては、一定の役職以上の方に一定の金額、例えば一カ月の報酬額相当というような形で協力をお願いしましたし、それから、広島労働局につきましては、それぞれの管理者につきまして一定の金額をお願いした、その際の基準につきましても、一般的にはこういう形で、あるいは特別にこういう形でお願いするということもあるというふうに聞いていますが、いずれにしても、個別の問題については差し控えさせていただきたいと思います。

平岡分科員 私は何も個々人の名前を言えとか言っているわけじゃないんですよね。ただ、五百万円を寄附したという記事が出ている、その五百万円を寄附した人というのは現役ですかOBですか、そして仮にその人について言えば、どういうポストにある人がこの五百万円を寄附したのか、これについてちょっと答えてください。

鈴木政府参考人 今五百万というお話がございましたが、広島労働局に勤務経験のある方で現職でございます。

 いずれにしても、広島労働局において勤務経験があって、そのときに管理職であったという方については、通常の場合に比べて大きな金額の協力額が得られているところでございます。

平岡分科員 一般的に五百万円の寄附をするというのはちょっと信じられない話であるので、多分、もしかしたら、この人は処分を免れているからこれぐらいは仕方がないかなというふうなことでやられたのかもしれないし、五百万円まで行っていない人の中でも、処分を免れたからこの程度は仕方がないかなという形になっているんじゃないかというふうにちょっと思われるんですよね。

 そういう意味で、私は、もっとこの問題については、しっかりとOBも含めて、本当にどこに責任があったのか、別に具体的な名前を述べろというわけじゃなくて、国民の皆さんに実態がわかるようにしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 それから次に、この件に関連して、新聞報道で恐縮なんですけれども、旧労働省の元課長が広島労働局の不正経理事件に絡んで、これは亡くなられた元人事計画官から不正金の中より三百八十万円の送金を受けていた、ほか、広島、北海道、愛知、京都、大阪、岡山など九県の職業安定部門の担当者からも総額約千八百万円を受け取ったというようなことが報じられているんですけれども、この事実関係については、現在、厚生労働省としてどの程度把握しているんでしょうか。

鈴木政府参考人 今お尋ねの件につきましては、現在、厚生労働省本省におきましてその事実関係を確認している段階でございます。

 なお、広島労働局の元人事計画官との関係につきましては、広島労働局におきまして当該元課長から聞き取りを行ったところ、個人的な金銭の貸借として三百八十万円の振り込みを受けたという供述が得られたところでございます。ただ、これにつきましては、貸した側の元人事計画官が亡くなっていることから、その事実関係については確定ができていないものでございます。

平岡分科員 これは今どんな調査を行っているんですか。これは一週間前も同じようなことを答弁しているんですよね。これは、相手は一人ですよね、聞く相手は。その人に聞けばある程度のことは、もう既にこの程度のことは調査ができている、あるいは九都道府県についてはこれだけだということはちゃんと言えるんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。

鈴木政府参考人 現在、元課長から事情を聞いている段階でございます。現段階の状況につきましては、広島県を含め、複数の労働局の担当者から一定額の金銭の振り込みを受けていたということまでは確認しております。

平岡分科員 九県というふうに報道されている、その九県についてはどうですか。具体的にここでも言えない状況ですか。

鈴木政府参考人 これにつきましては、現在まだ確認中でございます。ただ、いずれにしても、先ほど言いましたように、複数の労働局の担当者から振り込みを得ている、そういうところまではわかっております。

平岡分科員 何か、もうしゃべりたくなくてしようがないというような答弁で、私としても大変憤慨しなきゃいけないんですけれども。

 例えばこの件について言うと、元労働省の課長さんというのは、競馬で借りた借金を返すために借りた、それで、返したのはこの事件が発覚してからすぐに返したというようなことで、全く信憑性のない説明をしている。こんな状態の中で、私は、ずっとほうっておいたらいけないんじゃないか、一刻も早くちゃんと事実関係をつかむための調査をしなきゃいけないというふうに思うわけでありますけれども、この三百八十万円については、既に返還をしたというふうに、返したというふうに言っているんですけれども、これはどこが受けて、その三百八十万円についてはどういう処理がされているんですか。

鈴木政府参考人 まず最初に、この問題については、いずれにしても早急に調査し、その全貌が明らかになった段階ではそれを明らかにしたいと思っております。ただ、現段階では調査中でございます。

 それから、三百八十万円の取り扱いでございますが、現在、この三百八十万円、その広島労働局の元人事計画官から振り込まれたという三百八十万についてでございますが、これについては、広島労働局の方に三百八十万円返還されているというふうに聞いております。

平岡分科員 三百八十万円。広島労働局に返還されているその三百八十万は、今どうなっているんですか、これは。

鈴木政府参考人 この三百八十万、これが純粋に個人的な関係なのか、それから広島労働局で不適正支出がございましたが、それに関連するものなのか、そこの確定ができておりません。そういうことで、現在、広島労働局で預かっているというふうに聞いております。

平岡分科員 そういう問題も含めて、本当にしっかりと調査していってもらわなきゃいけないんですけれども、この広島労働局だけじゃなくて、九県もあるというふうに言われています。先日の辻委員の質問に対しても、大臣は、全県を調査し報告したいというふうに答弁しておられますけれども、いつまでにこれを調査して報告していただけるか、この点について、大臣の見解をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 九県はもうわかっているわけでありますから、これは早く明確にしなきゃいけないというふうに思っておりますが、本当に九県だけなのかどうかということについて、これもおっしゃりますように、聞くのは一人でありますから、その人から聞く以外にないわけで、そこのところは明確にできるのではないかと私も言っているところでございまして、ここの、この人が持っております貯金通帳に振り込まれているのは一体どこからなのかということは、これはそんなに難しいことではないわけでありますから、早く明確にするようにということを今言っているところでございます。

平岡分科員 大臣は積極的に調査をしていただけるような答弁をしていただいたので、いつまでということは言われなかったですけれども、できるだけ早急に調査をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、会計検査院にお聞きしたいと思うんですけれども、こういった事件について会計検査院としてどう事実関係を把握していたかと、私事前に聞くと、厚生労働省全体の金額、予算の規模に比べると金額的には余り大きくないので、それほど事実関係については把握していなかったということだったんですけれども、これだけ大きな問題を起こしてきているという状況の中で、これからのこの不正経理問題についての会計検査院としての検査方針をお聞かせいただきたいというふうに思います。

増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 広島労働局の事案につきましては、私ども従来から重大な関心を持って推移を見守ってきたところであるわけですが、最近に至りまして厚生労働省さんの方の監査が終了したということで、その結果については既に説明を徴したところでございます。

 それから、最近話題になっております、その三百八十万円であるとか、あるいはその九県の事案。これは今事実関係を確認中ということでございますので、これは、私どもとしても早急にその結果を把握したいというふうに考えております。

 今後の検査でございますけれども、広島労働局の事案につきましては、厚生労働本省の方で調査をされたその監査結果を今後十分検討いたしまして、適切に対応してまいりたい。その際には、九年度以前の分についても、果たして不適正な支出があったかどうかも含めて見てみたいというふうに考えております。

 それから、それ以外の労働局の分については、その監査結果を見て、必要があれば検査を行うなど、適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。

平岡分科員 どうもありがとうございました。

山名主査 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、増子輝彦君。

増子分科員 大臣、きょうは朝から長時間、お疲れさまでございます。厚生労働省関係について私が最後でございますので、もうしばらくの間、御辛抱いただきたいと思います。

 大臣、人間、本当に健康ということが何よりも一番幸せなことなんだろうなと、私もつくづく最近感じることが多いものでございます。そういう意味で、厚生労働委員会でも、年金問題初め幅広く、健康あるいは雇用、多くの問題についていろいろと日本のために、国民のためにということでやっていることでございますけれども、きょうは限られた時間でございますので、余りミクロ的なことではなくて、これからのことについてを含みながら、平成十四年度からずっといろいろな施策をやってきたことについて、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、実は、先ほど申し上げましたとおり、健康ということについて、私たちは健康のありがたみを意外と忘れてしまうということがあります。しかし、健康でない方々にとって、難病を持つ方々あるいは障害を持つ方々、大変多くの課題を抱えながら、この社会の中で自立をしようということで一生懸命頑張っているという姿を見ると、まさに政治というものはそういうところにしっかりと光を当てながらやっていかなければならないなと、つくづく、私ども考えていかなければならないことであり、私も強く感じているところでございます。

 まず、そういう意味で、実は、難病という国で指定されているものがございます。これらについて、大変厳しい環境の中でも、皆さんが社会の中に入り込んで、一生懸命仕事をしながら自分の病気を治そうというような形で頑張っている姿を見ると、本当に大変だなと思いながら、私どもしっかりサポートさせていただきたいな、そういう思いを持っているわけでございます。

 これは、十四年度というよりも、十五、十六、十七年度に全国四十七都道府県に県難病相談・支援センターというものを厚生労働省の方でもつくろうということで実はやっておられるわけですけれども、十四年度において当然この問題についても議論をされ、さらにそれが一つの形として十五、十六、十七年度にこの予算化が図られてきたわけであります。

 この難病相談・支援センターというものについて、今後厚生労働省の方として、大臣のお立場も含めながら、どのような形の中でこの難病の皆さんをサポートしていくのか。やはり、難病の皆さんにとっても、いつでも安心して相談できるセンターというものの存在というものが、非常に精神的にもこれは安心することができるわけでありますし、今後我が国において、難病について積極的にかかわっていかなければならないのではないのかというふうに私は考えているわけであります。

 そういう意味で、意外とこの難病相談・支援センターの設置というものがそう速いスピードでは進んでいないような心配をいたしているわけでありますけれども、全体的な形の中で、今後、この難病相談・支援センターについての御見解を、まず大臣にお伺いいたしたいと思います。

坂口国務大臣 平成十五年にこの難病相談・支援センターは三県でございましたが、十六年に十八県、そして十七年に二十県ということで、十五、十六、十七で四十一県、あと余すところ六県というところでございます。残っております六県を見ますと、比較的こういうことに積極的におやりになっておるようなところが残っておりますので、これはもう既にそれにかわるべき何かをお持ちになっているんではないかというふうに思っているところでございますが、大体ことし、来年で各県整うわけでございます。

 こうした中で、この支援センターはつくったけれども、それが十分に機能をしなきゃ何にもならないわけでありますから、その機能をどうさせていくかということをこれから真剣にやっていかなきゃいけない。難病と一口に言いましても、たくさん種類があるわけでありますから、その皆さん方の問題、あるいは中には、難病にまでは至っていないけれどもこのままでいけば難病の中に入るかもしれない、あるいは可能性があるかもしれないという皆さん方もおみえになるかもしれません。少し範囲を広げながらこの皆さん方に対応をしていかなければならない、御家族も含めて対応していかきゃならない、そういうふうに思っております。

増子分科員 これから日本の財政はますます厳しくなってくるわけでありますから、今大臣が御答弁の中で、ほぼ全国にこういう形でいくのではないかということでありますが、大臣の御答弁の中にもありましたとおり、この運営をどういうふうにしっかりとしていくか。やはり国の助成あるいは県の助成という中での財政的なものが厳しくなってまいりますので、これが最初に計画したよりもどんどんどんどん縮小されてしまって、さらに、思ったほどの効果があらわれないということでは、これは大変困るわけでございますので、ぜひこれについては積極的に、大臣、厚生労働省としても支援をしていただきたいと思っております。

 そういう中で、難病の皆さんが、居宅支援事業という国の政策があるわけでありますけれども、これが、大臣、意外と実は活用されていないというものが過去の実績の中であらわれているわけであります。

 まず、在宅福祉事業補助金というものが、十二年、十三年、十四年、十五年と出ているわけであります。例えば十二年度は、在宅福祉事業補助金という形で一千二十八億二千八百万という大変大きな金額が計上されておりますが、交付決定額が八百二十一億六千万、そのうち難病分といたしまして約十九億一千二百万が計上されたわけでありますけれども、実際の交付決定額はわずか一億一千七百万というようなデータが出ているわけであります。

 十四年度は十二年度に比べると大分減りまして、わずかで、九億一千五百万の難病分についてのこの居宅支援事業があるわけでありますが、実際に交付されたのが一億二千八百万ということで、予算化はしたけれども意外とこれが実は活用されていないというデータが、実績があるわけであります。

 これはやはり、これをせっかく国の方としてもつくった割には、実施要綱の中で極めてこれを活用しにくいというような部分が非常に多いということに私は問題があるんだろうと。

 この利用状況をよく調べていただくとわかるんですが、対象者を非常に限定してしまう。これは、いわば障害者手帳や介護保険対象にならないと利用できないという制度でありながら、仮に障害者手帳や介護保険の対象に現実になりますと、そちらが優先されるというような結果になりまして、意外とこれを利用するというものについての限界が実は出てくるということなんです。これは、むしろ介護保険の対象とならない、あるいは障害者手帳を受けられないというような、谷間の、すき間の方々がこの制度を有効に使わなければならないということもこれは当然なんですが、なかなかそういうふうに行われていないという問題があるんです。

 ですから、この問題につきましては、ぜひ今後、実施要綱を改定しながら、必要な患者はだれでも制限を受けることなくこれらの支援活動を利用できるようにしていかなければならないと私は思っているんですが、この件について、どのような見解をお持ちなのか。また、ぜひ、これは残高を、せっかく予算化したものを残さないという形が今後の難病の居宅支援ということについても重要な私は課題だと思っておりますので、この件についての御答弁をお願いいたしたいと思います。

田中政府参考人 難病患者等の居宅生活支援事業の対象となる患者様でございますけれども、これは、特定疾患対策研究事業の対象患者さん、あるいは関節リューマチにかかって在宅で療養中であり、かつ介護保険法、老人福祉法、身体障害者福祉法等の他の制度の給付対象となっていない方々ということでございます。別に制限しているわけではございませんで、ほかの制度でサービスが受けられる方はそちらを選択することもできるという状態でございます。

 それで、委員御指摘のとおり、確かに十分この予算は活用されておりません。それの理由の一つは、今申し上げましたように、ほかの既存の制度を実際問題として利用されている。つまり、患者さんの一割とかそのぐらいの方は既に身体障害者の認定を受けておられるというようなこともございますので、そういうようなことが一つ理由としてあるのかなということでございます。また、難病患者さんに対して、この事業が十分認識されていない、比較的歴史の浅い事業でございますので、必ずしも十分御理解いただいていないというようなこともこれはあると思っております。

 厚生労働省としましては、事業の実施主体であります市町村あるいは難病患者さんに対して、この事業の積極的な周知が大変必要であるというふうに考えております。今後とも、難病情報センターあるいは保健所の活用など、十分な情報提供に努めて、この制度の有効な活用に努めてまいりたいと思っております。

増子分科員 十分周知徹底がなされていないとおっしゃいますけれども、これは、十二年度、十三、十四、十五とずっと来ているんですね。これで周知徹底がされないということであれば、何かやはり問題があるんじゃないでしょうか。せっかくこれだけの予算化をしても、わずか一〇%強しか利用されていないということであれば、これはいかがなものか。しかし、難病の関係の皆さんは、やはりもっともっと活用したいという要望が強いんです。

 その辺の実態を逆に厚生労働省として把握をするという努力が必要なんじゃないでしょうか。周知徹底が十分でないというよりも、むしろ、やはり、それはもう厚生労働省初め市町村がそういう形でしっかりと私はやってもらわなければ、これだけの予算をとっても、現実に使われていないということになれば大変なことになりますから、そういう意味では、今後の問題として、課題として、ぜひ積極的に使っていただくような体制をとっていただきたい、私はそういうふうに思っております。

 大臣、この件はぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 次に、やはり難病の関係になってまいりますと、人工透析患者というのが、日本で非常に多くの方々が人工透析をやっているんですね。これはなかなか大変なんですね、人工透析は。

 私の母親も、糖尿病で週に三度、五年間人工透析をやっていたということで、残念ながら、人工透析五年やったら糖尿病患者はもう命は保証できませんとお医者さんに言われまして、ちょうど五年になりましたら本当に亡くなりました。

 特に、糖尿病である程度の高齢者になりますと、もう血管がぼろぼろになりまして人工透析に耐えられないというふうなことが、実は現実の問題としてあるわけであります。透析をやっている方々が非常に大変だという状況は、私が言うまでもなく御存じだと思いますが、この糖尿病をやはりある意味では予防をしながら少しでも減らしていくということが、これからの日本の予防医学の中でも極めて重要な問題ではないだろうか。これが腎不全対策における予防対策ということで、極めて医療費を引き下げていくということにもつながっていくんだろうというふうに私は強く感じているわけであります。

 全国の腎臓病患者の皆さんの連絡協議会の会合なんかにも私はしょっちゅう行っているんですが、大変厳しい状況の中で、皆さん社会の中でも一生懸命頑張っている、なおかつ人工透析をやる日は仕事を休んで行く、そういう状況にあるわけであります。

 今後、がん撲滅と同じように、私は、やはり糖尿病の予防対策というものをしっかりやれば、毎年毎年ふえてまいります医療費というものはかなりの部分で削減ができるのではないかというふうに思っておりますし、現実、そういうデータも出ているわけでありますから、この糖尿病を予防するということについての、そして人工透析をやる、腎不全対策等についても、予防対策というのは極めて重要だと思っておりますが、これらの対策について今後どのような形で取り組んでいくかという見解をお伺いいたしたいと思います。

坂口国務大臣 よく糖尿病患者八百万、こう言われるわけでありますが、予備軍を含めますとその倍、千六百万ぐらいあるだろう、こう言われております。これはすべての病気のもとになりますから、いわゆる動脈硬化、そして脳出血、あるいはまた今おっしゃいました腎不全、そうしたことに全部かかわっていくわけでありますので、これを予防できるかどうかということは、日本の医療に対して大きな影響を与えるというふうに私も思っております。

 しかし、これは、理屈はわかっておりますけれども実行していただくのがなかなか難しい、もうこの一語に尽きると私は思っております。多くの皆さん方に、これも血糖値が高いということは検査してもらえばわかるわけでありますけれども、痛くもかゆくもないものですから、なかなか、よほど悪くならない限り皆さんが検査をしていただけない。検査をしていただいた後、ちゃんと御養生していただければいいわけですけれども、なかなかそれが難しい。何とかして食べたいという欲望との闘いでございますので、ここはなかなか難しいわけでございます。

 しかし、ここは、きょう午前中にもいろいろの食生活の問題等も出たりもいたしましたけれども、やはりやり方というのはあるんだというふうに思っております。私も予備軍の一人、予備軍か、もうぼつぼつ予備軍というよりも本格的な方に入るのかどうかという限界のところに私もあるわけでありまして、これはそんなに難しいことではない。ただ、何を先に食べるか、食べる順番を考えればかなりこれはいいわけであります。

 しかし、ここはなかなかわかっていても難しいというところがある。私も、だれかがそばにいますときには気をつけますけれども、自分一人になりますとなかなかそれができないというところがございまして、本当にこれは難しいなと自分でも思っているわけでございますが。

 しかし、みんなが食生活にそういうふうに気をつけていくということをし、そして、運動なら運動をもっとやるようにしようといったことを国民運動的に展開していけば、私はかなり減らすことができ得るというふうに思っております。したがいまして、そうした国民運動的な取り組みというのが大事ではないかというふうに思っている次第でございます。

増子分科員 大臣、本当に国民的運動が極めて重要だし、またそれをしっかりと国の対策としてやっていけばかなりの、予防医学という観点からして、医療費の引き下げというのは私は可能だと思っております。人工透析にかかる経費というのは大変な大きな金額になるわけでありますから、ぜひこの点を進めていただきたいと思っております。

 また改めてこういった関係についての質問をさせていただきますが、これは、大臣、甘いものが好きだからといって糖尿病になるとは限らないんですね。私は甘党なんです。もう甘いものばかり食べているんですが、おかげさまで糖尿病とかにはなり得ませんけれども、ぜひ、そういった意味で、総合的な国民運動として取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、臓器移植の問題についても、難病の皆さん、大変御苦労されているわけであります。まさに腎臓の移植等を含め、大変多くの課題を抱えているわけであります。

 残念ながら、臓器移植法が制定されまして六年がたちましたけれども、思ったほどの成果が上がってこない。特にこの問題につきましては、やはり脳死という問題と心臓死という問題にあるんだと思うんです。なかなか、脳死の状態で臓器移植というものについて実行されることが極めて少ない状況になっているわけであります。

 平成十四年度だけを見ましても、心臓死で腎臓の移植というのは、提供者が六十、移植数が百十、これは心臓死の場合でありますけれども、脳死は四件なんですね。そして、実際に移植されたのは八つということになってまいります。これはずっとこの傾向が続いておりまして、なかなか――少し、腎臓をかえる、あるいはいろいろな臓器をかえることによって、延命ができて、健康な形の中でまた社会生活ができるということがあるわけであります。

 ですから、こういったことについてのまた改めて見直しという時期が当然参るわけですから、臓器移植法の改正ということにも積極的にこれは国として取り組んでいかなければならないのではないだろうか。そのためには、情報のネットワーク化とか、あるいは臓器対策の費用を大幅にふやすとかいうことが、今後極めて重要な課題になってくるんだと思います。

 そういう意味で、簡単で結構でございますが、臓器移植についてのお考えの所見を伺えればありがたいと思います。

坂口国務大臣 臓器移植につきましては、ドナー登録のあり方と、そしてどういうときにそれを認めるかということでございまして、そうした問題、これは小児の問題も含めてでございますけれども、もう一度この法律の見直しをしなければならないときを私は迎えているというふうに思っております。

 しかし、国会内におきましても、積極論者と、全く逆の立場で反対をされる方と、両論これはございまして、真向こうからぶつかる話でございます。前回のときにも、もう各党それぞれ、党派の制限を超えまして、それぞれ独自に投票をして賛否を決めたわけでございますから、それぞれの党の中にもいろいろの御意見があるんだろうというふうに思っております。

 しかし、私は、現状を見まして、何とかもう少し変えなければ、これは日本の中で臓器移植というのはだんだん先細りになってしまう可能性すらあるというふうに思っておりまして、私は積極的に何とかしたいという思いの一人でございますけれども、これをやるということは、これは大変な反対にぶつかって、それを乗り切るという決意がなければできないことでございます。そのことを皆が何となくかかりにくいということを思うものですから、どうしてもここが出発しないということがございます。

 しかし、私はもうやるときに来ているというふうに思っておりまして、皆さんにもお願いを申し上げているところでございます。

増子分科員 私もそのとおりだと考えておりまして、やはりやるべきときがそろそろ来ているのではないかというふうに思っておりますので、この件についてもさらに今後しっかりと、私も反対派の方も含めまして議論をしながら、いい形をこの国につくり上げていきたいと思っております。

 次に、介護保険について若干御質問させていただきたいと思っております。

 介護保険も早いものでもう五年目に入りましたし、さらに見直しということがまたすぐやってまいるわけでありますけれども、本当に介護というのは大変なんですね。これは介護を受ける方も、あるいはそれを提供する方も、あるいは家族の方も含めて、まさに高齢少子化の時代の中で、この日本で最も大きな課題の一つであろうというふうに思えるわけであります。

 実は、私ごとで大変恐縮ですが、私のおやじは九十歳になりまして、非常に元気なんです。ただ、アルツハイマーが大分進んでおりまして、苦労を家内がしているんですけれども、五月の連休に九度一分の熱を出しまして、肺炎を起こしました。当然これは入院ということになりました。たまたま連休中だったものですから、私も四日間、夜、泊まり込みました。そうしますと、寝られないんですね。二十四時間、もう本人は眠らないで、延々と点滴を外そうとかいろいろなそれなりの知恵を出しながら、寝ようとしない。やはり介護というのは大変なことだなと身をもって実は私も体験をいたしたわけでありますが、この介護、これからまさに避けて通れない最大の課題の一つであります。

 この介護保険の件についての質問でございますけれども、要介護度が改善をする、例えば五が四、四が三、三が二、それはそれだけのいろいろな介護を提供者の方がすることによって、自立をしながら、寝たきりから立ち上がっていく、あるいはいろいろな形の中で軽度になっていくわけでありますが、ところが、現在の仕組みは、要介護度が改善すればするほど、実はこれを提供する側が収入が逆に減っていくという課題が現実に出てくるわけであります。

 これについては、さらに介護をしていくためにはどうしても、予防医学という形の中でも、これは、大臣、公明党さんでも立派なマニフェストを出しているわけですが、パワーリハビリテーションという形の中で、とにかく少しでも寝たきりでない状況をつくっていこうということが極めて大事な問題になってまいりました。そういう意味では、このパワーリハビリの導入だとか、あるいは介護を改善して自立させればさせるほど、そのサービス提供者の収入が減っていくというような形がさまざまあるわけであります。この辺の仕組みを含めまして、この仕組みをどういう形で見直していくのか、そしてパワーリハビリをどういう形の中で取り上げて、積極的に入れていくのか。

 そしてもう一つは、何といってもマンパワーの活用というものが極めて重要な課題になってくると思うんです。日本ではこのマンパワーの活用というのが、世界の特に先進国と言われるところに比べれば、極めて実は低いんですね。デンマークと兵庫県のデータを見るとよくわかるんです。お医者さんの数はほぼデンマークと兵庫県は同じなんです。人口が大体五百二十万前後で、デンマークと兵庫県は同じ人口構成なんですが、そのマンパワーの、いわゆる理学療法士、作業療法士あるいはホームヘルパー、看護婦さん、これはもうはるかにデンマークの規模には追いつかない、ここのところが非常に重要だと思います。

 時間がないので、今三つのことをまぜて質問させていただきましたが、大臣の御答弁をいただける部分と、それから局長の方の部分と、かえてお答えをいただければありがたいと思います。

中村政府参考人 今、介護保険につきまして先生の方から多岐にわたりまして御質問いただきました。私の方から、技術的な部分について若干御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、介護保険が、要介護度を改善する、あるいは自立支援するというのは介護保険の目的でございますので、まさに先生おっしゃいましたように、サービス提供者の方が高齢者の方の要介護度を改善するように努力する、これに報いるような介護報酬が設定できないかというのはかねてからの課題でございまして、私どももそういったことをよい知恵があればぜひやってみたいというふうに思っております。

 今は、先生おっしゃいましたように、特別養護老人ホームなどに入所された場合でも、介護度が重ければ高い介護報酬でございますので、介護予防やリハビリテーションに努められた施設が収入が減るという、ある意味では矛盾がありまして、ここのところは頭が痛い問題だと思っております。

 しかし、なかなかうまくいく評価の方法がございませんし、また、介護保険がスタートするときにこの点は議論になったわけでございますが、むしろ介護報酬を決める委員会の方では、そういうことはあるかもしれないけれども、介護事業者というのはそういうことを目指してやっているわけだから、成功報酬というのはなかなか取り得ないというような御議論もあり、ずっと宿題のまま今日来ているところでございますので、我々も、二年先にまた介護報酬の見直しがございますので、そのときに、どういう知恵があるか、よく考えてまいりたいと思います。

 二点目の介護予防、先生からお話がありましたいわゆるパワーリハビリテーション、私どもは筋力トレーニング事業といっておりますが、正しく適用すれば非常に効果があるということでございます。

 今、市町村がやる事業に対しまして国の方でも二分の一助成する、この対象にはしているところでございますが、介護保険の中でもっと、要介護度に該当した方に対してもこういうことができないか、これは介護保険の制度の見直しのときの大きな課題になっておりますので、そういったことについても審議会で議論していただいておりますし、この介護予防、リハビリテーションということを介護保険制度の中で積極的に取り入れてまいりたいと思います。

 それから、マンパワーのお話、介護のほとんどの部分はマンパワーによって支えられておりますので、質のよい介護マンパワーの導入というのは大きな課題ではないかと思います。

 今、北欧と比べてというお話がございましたけれども、一九九〇年からゴールドプランを始めたとき、また二〇〇〇年から介護保険をやり始めたときに比べまして、やはり介護保険導入後、相当マンパワーの面では量的な整備は進んできているというふうに考えております。

 ただ、質的な問題もございますし、高齢化が進む中でますますマンパワーの必要性が考えられておりますので、専門資格化や、あるいは施設や在宅の介護サービスをしていく上で、従事されている方が生涯プロとして質の高い介護サービスを支えるのにふさわしい、御自身の教育、研修をしていくプログラムなども開発したいと考えているところでございます。

 技術的な側面について御説明申し上げました。

坂口国務大臣 局長が答弁したとおりでございますが、一言だけ。

 一番最初の問題でございますけれども、確かに、よくすればするほど経営は苦しくなるというのが現実でございます。

 それは、よくするのは当たり前やないかと言ってしまえば、それはまあそうですけれども、しかし、頑張るところにはそれ相応の評価というものも大事でございますから、そこは何とか少しやはり考えていかないと、一生懸命頑張ってくれるところに対して報うことができないんじゃないかというふうに思っております。その辺、よく考えたいというふうに思います。

増子分科員 時間が参りましたけれども、ちょっとだけ、済みません。

 今まさに、自立をさせて寝たきりを起こしていけば、これは医療費が結果的には少なくなっていくんですね。一人にかける医療費は短期間でかけても、長期的に全体的にグロスで見れば医療費というのは必ず下がってまいりますから、ここのところをしっかりやっていかなければいけないと思っております。

 それからもう一つ、グループホームについて、小規模作業所の関係でございますけれども、これはやはり大変皆さん苦しんでいるんですよ。障害を持つ方々が施設から地域社会へ、そして自立へという形にどんどんやっていこうということになっているんですが、現実に、これはグループホーム、もちろん介護の問題も一緒に入ってくるわけでありますが、グループホームを特に障害者の人たちがやる場合に、土曜、日曜にその支援をする方々が極めて実は人手不足で、確保できないんです。

 そしてまた、実は、作業を日中している方々の、障害の方々の作業所での収入は、せいぜい月にどんなに頑張っても一万円から、どんなにいっても二万円いかないんですね。そうすると、補助として一人当たり軽度の障害者で五万から六万もらったとしても、それでは月に、せいぜい一万から二万としても、六、七万円ぐらいしか実は費用が捻出できない。

 そうすると、グループホームで生活をしていくときに、土曜、日曜以外の平日は親御さんたちやいろいろな関係者がやってくれても、やはり土曜、日曜ぐらいは別な方にということになってしまうと、なかなかこういったことが現実にできない。ここに実はグループホームがなかなかそう大きな広がりになっていかない原因の一つがあると私は思うんです。

 そういう意味で、障害を持つ方々がグループホームに入る前に一度、宿泊訓練、そういうものを積極的にやっていく必要があるのではないか。宿泊訓練所的……

山名主査 増子君、簡潔にお願いします。時間ですから。

増子分科員 はい。宿泊訓練所的なものを創設することによって、むしろグループホームがどんどん広がっていくのではないかというふうに思っているんです。

 この辺のところは、これからまた詳しく厚生労働委員会でもやっていきたいと思いますが、この辺について、簡単で結構でございます、最後の質問ですので、よろしくお願いします。

山名主査 では、簡潔に。坂口大臣。

坂口国務大臣 よくわかります。御指摘いただきましたことを十分に検討させていただきたいと思います。

増子分科員 ありがとうございます。

山名主査 これにて増子輝彦君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山名主査 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。亀井農林水産大臣。

亀井国務大臣 平成十四年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千七十七億七千九百九十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は三千九百八十億八千九百五十三万円余であり、差し引きいたしますと、九十六億九千三十九万円余の減少となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額三兆七千四百九十六億四千三百四十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆千七百三十二億七千二十万円余であり、この差額五千七百六十三億七千三百二十五万円余につきましては、五千三百十五億五千八百八万円余が翌年度への繰り越した額であり、四百四十八億千五百十六万円余が不用となった額であります。

 なお、その詳細及びこれらの施策の内容はお手元の「平成十四年度農林水産省所管(一般会計及び特別会計)決算に関する概要説明」に記載いたしたとおりであります。

 次に、特別会計について申し上げます。

 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は三兆九千六百九十三億九千九百九十万円余、支出済み歳出額は三兆九千六百一億九千五十一万円余であり、差し引き九十二億九百三十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。

 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計並びに国営土地改良事業特別会計がございますが、これらの特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。

 以上をもちまして平成十四年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院友寄第四局長。

友寄会計検査院当局者 平成十四年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記したものは、不当事項十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二二四号は、広域営農団地農道整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台の胸壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二二五号は、漁港漁村活性化対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、漁具洗浄用導水路の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二二六号は、農地防災事業の実施に当たり、ため池堤体内の旧底樋の撤去に係る施工が設計と著しく相違していたなどのため、工事の目的を達していないものであります。

 同二二七号は、農地防災事業の実施に当たり、ため池の底樋の基礎コンクリートの設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないものであります。

 同二二八号は、復旧治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、谷どめ工の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二二九号は、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、パイプカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二三〇号は、フードシステム連携強化・循環推進対策事業で設置した原料野菜の貯蔵用プレハブ冷蔵庫が利用されておらず、補助の目的を達していないものであります。

 同二三一号は、予防治山事業及び復旧治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、護岸等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二三二号は、水土保全森林緊急間伐対策事業の実施に当たり、設置された施設が補助の目的外に使用されているものであります。

 同二三三号は、農地防災事業の実施に当たり、ため池堤体内の旧底樋の存置に係る設計が適切でなかったなどのため、工事の目的を達していないものであります。

 同二三四号は、小規模零細地域営農確立促進対策事業の実施に当たり、農道新設工事の入札において高率な最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除していたため、割高な契約を締結しているものであります。

 同二三五号は、漁港公害防止対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 同二三六号は、畜産環境総合整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、一般国道の道路敷となっている国有林野の取り扱いに関するもので、有償による所管がえがされておらず無償のまま使用承認が継続されているなど、国有財産法等の規定に基づいた適正な国有林野の管理が行われていなかったり、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼしていたりする事態が見受けられましたので、林野庁に対して、是正改善及び改善の処置を要求したものであります。

 その二は、卸売市場施設整備事業の実施に関するもので、農林水産省が定めている施設の必要規模の算定基準の中で目標取扱量が過大に見積もられる傾向にあること、中央卸売市場の適切な配置についての検討が十分に行われていないことなどのため、中央及び地方卸売市場の目標年度における取扱量が過大に見積もられていて、必要規模を上回る施設等が整備されていたり、中央卸売市場の目標取扱量が適正な配置を考える上での基準を満たしておらず、施設が適切な配置となっていなかったりしている事態が見受けられましたので、農林水産省に対し、改善の意見を表示したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、農業構造改善事業等により設置した農畜産物処理加工施設等に関するもので、農林水産省及び道県において、事業主体に対し事業の目的を理解させ、地域の農畜産物を積極的に活用させるための指導が十分でなかったり、事業計画において、地域の農畜産物の仕入れ先及び販路が十分確保されているかについての審査等が十分でなかったりなどのため、地域の農畜産物が十分活用されていなかったり、施設の利用実績が計画目標を大幅に下回っていたり、施設の収支が大幅な赤字になっていたりしていて、補助事業の効果が十分発現していない事態が見受けられました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その二は、市場隔離牛肉緊急処分事業における助成金の交付に関するもので、事業の対象となる牛肉の品種・性別の実態と助成単価の算定との整合性について十分検討しないまま一律の単価で助成することとし、また、全箱検品の現品調査表等により品種・性別の確認ないし判定を行うことができるのにその検討が十分でなかったなどのため、助成金が過大に交付されることになっていると認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その三は、南太平洋漁業振興対策事業の実施に関するもので、この事業は、最近の低金利情勢下で漁業者に基金を利用するメリットが少なくなったことなどのため、特別資金の資金残高は、利子補給実績に比べて著しく多額なものとなっており、また、振興資金の資金残高は、貸付実績がないまま多額の資金が滞留しております。このような事態は、国の財政資金がその効果を上げていないもので適切とは認められず、事業のあり方を見直し、国の財政資金の有効な活用を図る要があると認められましたので、これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その四は、漁港利用調整事業で整備した施設の利用等に関するもので、事業基本計画の審査が十分でなかったり、事業の進捗状況を把握していなかったりなどしていたため、国庫補助事業により外郭施設等は完成しているものの、単独事業により整備することとしている係留施設等が未整備であったり、利用隻数が事業基本計画を大幅に下回っていたりしていて、国庫補助事業による施設整備事業の事業効果が十分に発現していないと認められる事態が見受けられました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その五は、政府米の輸出業務の実施に関するもので、港頭倉庫においては、船積みの際に国際検査機関による検定が実施されており、また、精米工場においては、玄米を精米にした生産精米について、会計法に基づく給付完了の確認を行う検収が実施されており、それぞれの検定や検収の実施内容は、入庫検定の検定項目をすべて含んだものとなっていることなどから、入庫検定を省略しても輸出米穀の事後の保管・売却に支障はないと認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上が農林水産省決算についての検査の概要でございますが、引き続いて、農林漁業金融公庫について御説明いたします。

 平成十四年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上でございます。

山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。亀井農林水産大臣。

亀井国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十四年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。

 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。

 不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであります。

 一般国道の道路敷として使用させている国有林野について早期に有償により所管がえなどをするよう是正改善及び改善の処置を要求されたものにつきましては、国土交通省と協議の結果、早期に有償による所管がえをすることとし、森林管理局等に対し指導文書を発したところであり、関係道路管理者との連絡調整の場において、早期の有償所管がえに係る年次計画を策定するなど所要の措置を講じているところであります。

 また、卸売市場施設整備事業における施設整備を効率的、効果的に行うよう改善の意見を表示されたものにつきましては、現在検討を進めている卸売市場制度の改革とあわせて、平成十七年三月に予定している次期卸売市場整備基本方針の策定とともに施設規模の算定基準等の見直しを行う所存であります。

 以上をもちまして、会計検査院の御指摘に対しまして、農林水産省が講じた措置の説明を終わらせていただきますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。

山名主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山名主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山名主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城内実君。

城内分科員 自由民主党の城内実でございます。

 本日、農林水産省所管の問題について質問させていただきたいと思います。

 私が農林水産省関係の質問をする、その理由についてまず冒頭述べたいと思います。

 実は、私は、外務省というところに十四年間おりまして、社会人になってからほとんど外国あるいは東京におりまして、そして、今回初当選して地元の静岡県に戻って、初めてというか、本当に目からうろこが落ちたんですけれども、やはり何といっても農業というのが大事である、農業というと、とかく工業――産業、外交、新聞紙上でもこういった分野が注目されがちですけれども、やはり何といっても我々の食の安全、生活の暮らしの基本となるものは農業であると。そして、その担い手が一生懸命いろんな厳しい状況の中で生活されておられる。そういうことを目の当たりに見まして、私は国会議員になったら外交問題ではなくて農業を中心に勉強していこう、そういうことで、農林水産部会はほぼ毎回出席しております、外交部会はまだ一度も出席しておりませんが。そういう形で、きょうは、私としては一番関心のある事項、ただ、まだ不勉強でございますので、そういうことを御了解いただきながら質問させていただきたいというふうに思っております。

 私は静岡県と申しましたけれども、静岡県といいますと、お茶の生産では全国一位でございます。また、温州ミカンでも大体二位でありますし、温室メロン、そして花卉ではガーベラが生産高が全国で一位でございます。全国でも有数の農業地域ということが言えるのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、私は、特に最近、食糧自給率の問題について考えなきゃいけないなというふうに、農業県である静岡県に住んでいて感じた次第であります。

 なぜかというと、私は、先ほど申しましたように、外国生活がかなり長く、約十年ほどおったわけですけれども、先進工業国と比べても食糧自給率が余りにも低過ぎる。

 私が十年おったドイツですと大体九九%、ほぼ一〇〇%であります。また、ドイツのお隣のフランスはどうかというと、輸出国ですから、一〇〇%は優に超えている。アメリカもそうであります。そして、産業革命の発祥地であり、伝統的な工業国であるイギリスですら約七割。これはカロリーベースで申し上げているわけですけれども、先進工業国ほど農業、水産業を大切にしている。

 しかるに、日本はどうかというと、残念ながら四〇%そこそこ。農林水産省の方で四五%を目標にして食糧自給率を上げるということで頑張っていただいているわけでありますけれども、私は、日本は島国であるからこそ食糧安全保障の問題を考えるべきではないかなと。戦後、やれ繊維だとか自動車だとかいうことで経済産業省所管のいろいろな分野が注目されて、何となく農業というのがなおざりにされてきたんじゃないかな、簡単に一くくりに言うことはできないと思いますけれども、私はそういう印象を強く受けているわけであります。

 こうした中、食料・農業・農村基本計画、平成十七年に向けて策定を今準備しているというふうに伺っておるわけでございますけれども、その中で、これまでの品目別の価格・経営安定対策から品目横断対策、そして農地・担い手対策等を重点的に検討しながら、そして、さらには食の安全、安心といったことにも十分配慮しながら、この基本計画を策定していくということではないかと思いますけれども、この基本計画の見直しに向けた大臣の御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 先ほども委員から御指摘がございましたが、食糧の自給率への関心、鳥インフルエンザやBSEの問題、特にそのようなことから自給率の問題につきましては本当に国民の関心が強くなっておるわけであります。また、現在、食の安全、安心に対する関心も高まっておりますし、農業構造改革の立ちおくれ、あるいはWTOの国際規律の強化など、いわゆる国民の期待にこたえられる農業、農村の実現に向けて改革が求められている、このように認識をいたしております。

 そういう中で、農業の競争力の強化などに向けて、我が国の農業構造の改革を加速化しなければならない、また、御指摘もございましたが、やはり担い手に焦点を絞った支援策、このことも考えていかなければならないわけであります。また、構造改革が進展をする中で、食糧の供給や、あるいはまた多面的機能の発揮が適正に確保されるよう、そういう面では、農地、水等の資源の保全のための改革の確立も必要であるわけでありまして、こうした考え方のもとに、次世代に対しましてどのような姿の農業を残していくべきか、大きな視点に立って平成十七年の三月に食料・農業・農村基本計画の策定に向けて今取り組んでおるところでもございます。

 また、これは七月までに中間論点の整理をしていただきまして、来年度の概算要求、こういう中で何か反映できるようにスピード感を持って対応してまいりたい、このように考えている次第であります。

城内分科員 御答弁ありがとうございます。

 今大臣の御答弁の中に担い手対策ということがございましたけれども、私は、何といっても、若手で意欲のある、そしてまた能力のある経営者をこれから育てていくことが大事であるというふうに思います。

 そうした中、認定農業者制度というのがございます。実は、私の地元でも、これは大変いい制度であるという声が聞かれておりますが、ただ、もっともっとメリット対策をしてほしいと。現に、農地の利用集積の促進あるいは低利の融資、そして経営相談指導等、そういう政策があるんですけれども、さらなる税制上の優遇措置あるいは担い手経営安定対策をもっとしてほしい、そういうような声がございます。これに対してさらなる拡充の考え方があるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。

川村政府参考人 認定農業者についてのお尋ねでございます。

 認定農業者の制度は、今委員がお尋ねございましたとおり、担い手を明確化いたしまして、この担い手に対しまして支援を集中化、重点化する制度として設けられておるわけでございます。

 これ自体、市町村が地域の実情に応じまして育成すべき農業経営の目標を明らかにいたしまして、この目標を目指して農業経営の改善を計画的に進めようとする農業者を対象に認定をしておりまして、現在、約十八万経営体が認定をされております。

 この認定農業者に対しましては、一つは農用地の利用集積の促進でありますとか、またスーパーLなど低利の政策資金、こういうものを融通しておりますし、経営の相談指導も実施をしてきたところでございます。

 さらなるメリット対策ということで、近年、例えば農業者年金の保険料の助成でありますとか、今年度からスタートいたしました米政策の中で担い手経営安定対策、これもこういった認定農業者を中心に対象にしてきたわけでございまして、今後とも一層の施策の重点化、集中化ということが必要だと思っております。

 この基本計画の見直しの中でも、一層この担い手への施策の集中あるいは重点化を図るための検討をさらに行ってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

城内分科員 ありがとうございます。

 次に、私の地元の静岡県では、先ほどお茶とミカンの有数の産地だということを申しましたけれども、茶業の問題について御質問したいと思います。

 お茶というと、最近健康志向で需要が大変増加しておりますし、また海外からも注目されているというふうに認識しておりますが、静岡県におきましては、全体の農業産出額の約四分の一、二五%を占める重要な作物であります。

 そして、私の地元の選挙区におきましても、これはいわゆる山のお茶ということなんですけれども、天竜市、龍山村、佐久間町、水窪町、あるいは引佐町の渋川茶、山の方でもお茶をつくっている。ちょうど今一番茶の摘み取りが大体終わって、二番茶に向けて準備しているところなんでありますけれども。

 お茶というと、作況は比較的安定しておりますし、他の農産物に比べると経営は不安定というところまではいっていないかもしれませんが、しかし、近年、耕作放棄などによる茶園の減少あるいは担い手の減少と高齢化、さらには土地基盤整備や機械化管理体系のおくれなど、こういった体制の弱体化が進んでいるのではないかと思います。具体的に言うと、例えばレール走行式茶園管理機械とかあるいは乗用型摘採機、こういうのを使うと、どんどんコストが安く、しかも、簡単にとれるということなんですけれども。

 こういった点から、私は、もっともっと茶業の振興、これは外国にも売れる本当に重要な作物であるという認識を持っていただいた上で振興対策を考えていただきたいと思いますけれども、この点について御答弁いただきたいと思います。

白須政府参考人 茶業の振興対策についてのお尋ねということでございます。

 ただいま委員からもお話ございましたが、御案内のとおり、お茶につきましては、大変長い栽培の歴史も有しておるわけでございますし、全国各地での重要な基幹作物になっているわけでございます。特に、今お話もございましたが、静岡県は全国のお茶の生産量の四割以上を生産するというふうなことでございまして、日本一の産地というふうなことで、静岡茶はまさに日本のお茶を代表するようなブランドだというふうに考えている次第でございます。

 そこで、今現在の生産のいろいろな状況につきまして、委員もお話あったわけでございますが、私ども、茶業の振興ということで、一つには、それぞれの産地におきます生産をできるだけ省力化していく、あるいはまた安定化させる必要があろう、あるいはまた、高品質なものあるいは付加価値をつけたお茶の生産、そういう取り組みにつきましてできるだけ支援をしているところでございます。

 具体的に申し上げますと、一つには、高品質な品種の導入でございますとか、あるいは作業の機械化という点、そういったことを目的といたしまして、茶園の植えかえでございますとか、あるいは小規模な基盤整備を行うということ。あるいはまた、委員からもお話ございましたが、複合の機械といいますか、防除をするということとか、あるいはまた収穫、そういった複数の作業が可能になるような機械の導入でございますとか、あるいはまた荒茶に加工いたします工場の整備でございます。そういう点もございます。

 それからもう一点、お茶につきましては、気温の変化、特に春先といいますか、そういったときに霜がおりるというふうなことで影響があるわけでございます。そういう点に対しまして、防霜ファンとか、そういった施設を整備いたしまして凍霜害を防止する、そういうふうな施設の整備も行っているわけでございます。

 またさらに、今委員からも御指摘ございましたが、最近、大変健康志向というふうなことがございまして、特にお茶に含まれますカテキン、そういった有効な成分というものが非常に着目をされておるわけでございまして、そういうところに着目をいたしました新たな製品の開発といったようなことも推進をいたしておりまして、そういったことを通じまして茶業の振興に今努めているわけでございます。

 またさらに、今委員からも御指摘ございましたが、世界的にも健康ブームというふうなことで、お茶につきましても、緑茶でございますが、これまでも少しずつではございますが、年間大体十億を超えるぐらいのオーダーで輸出もしております。これが、最近、世界的に見て健康志向というふうなこともございまして、ジェトロなんかも通じまして、私ども今一生懸命、農林水産物全体の輸出振興ということで意を用いているわけでございますが、そういう中におきましてお茶も一つの大変有望な品目だろうというふうに考えておりまして、私どもも、輸出につきましても、お茶もその中の一つの有力な品目ということで取り組んでまいりたいというふうなことを通じまして、しっかりと茶業の振興に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

城内分科員 今御答弁にありましたとおり、高品質の品種の導入あるいは機械化の一層の促進について茶業振興の一環としてぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 温州ミカンでありますが、静岡県も、全国一位ではございませんけれども、二位、三位につけている大変なミカンの産地でございまして、私の選挙区には三ヶ日町という、これは大変有名なブランドでございまして、高品質の温州ミカンを生産する産地でございます。ほかにも浜松市、細江町、引佐町といったところで私の選挙区ではミカン農家がございまして、そういったミカン農家の方々の声を聞くと、本当にほとんど全員が担い手の減少の問題、そして天候に影響されるわけですから、それに伴う価格の安定の問題、そしてまたコストの割に価格がちょっと安過ぎるんじゃないかな、こういう声がよく聞かれるわけであります。

 戦後、食生活が変わっておりまして、昔、私の子供のころでも果物というと大体リンゴかミカンなんですけれども、今だとさまざまなかんきつ類、あるいは東南アジアから本当に摩訶不思議ないろいろな、見たこともないような果物がどんどん入ってきておりまして、こういった観点から温州ミカンを食べる人たちが少なくなっている。そういうことから、イメージアップ作戦とか、あるいは食生活の改善、今、食育というような話もありますけれども、こういうことをどんどん進めていく必要があるんじゃないか、もっともっとミカンを日本人が食べるようにしてほしいというふうに思います。

 そしてまた、需給の乱れ、価格低下の厳しい状況、そういうことがありますから、私としては、果樹産地の生産基盤を強化するために、農林水産省さんとしてもいろいろな支援措置を講じているとは思いますけれども、どういった支援措置を講じているのか、ちょっと御質問したいというふうに思っております。

白須政府参考人 果樹農業、特にミカンについてのお尋ねでございます。

 委員からもお話ございましたが、最近の多様化をいたしております消費者ニーズ、こういうことにきめ細やかに対応していくということで、消費者のいわば信頼の得られるような、そういう産地を育成していくということが何より重要なのではないかというふうに考えている次第でございます。

 そこで、まずは、高品質あるいはまた安定的な供給でございますとか、安全、安心、あるいはまた手ごろな価格といったような消費者のニーズを十分に踏まえまして、そういった意味での国産の果実の品質面での優位性でございますとか、あるいはまた静岡なら静岡、愛媛なら愛媛、そういったそれぞれの産地ならではの特色を生かしました生産というものが望まれているのではないか。そこで、いわばブランド・ニッポンというふうな形で果実の供給体制の確立ということを目指しまして、私ども支援を行っているわけでございます。

 具体的に申し上げますと、一つには、糖度の高い高品質な品種を導入してまいりますとか、あるいはまた、樹園地、そういうところの基盤整備でございますとか、機械化でございますとか、あるいは省力化、そういった技術を一体的に導入していくということ。

 またさらには、最近、特に光センサーを活用いたしまして糖度を調べる、そういうふうな選果施設というものも出ておるわけでございますが、そういった選果施設の共同利用施設、共同利用の機械を整備していく。

 またさらには、これは静岡の先進的なところでも見られるわけでございますが、園地別の品種でございますとか施肥、あるいは傾斜、そういったいろいろな情報と、できますミカンの糖度といった品質情報、そういうものを組み合わせまして、それぞれ分析あるいは診断をいたしまして、生産地ごとにきめ細やかな営農指導をやっていく。そういうことによりまして、より一層高品質な生産を導入していく、そういった取り組みもございます。そういうところも私どもも支援をしているわけでございます。

 また、委員からもただいまお話ございました経営対策ということでございまして、やはり価格の乱高下というものが大変大きな影響があるわけでございますので、温州ミカンにつきまして、需給調整対策、そういった取り組みが行われました場合におきましてもなお価格が変動した場合には、需給調整対策に的確に取り組んだ経営者に対しまして、基準価格と当該年の価格との差額の八割を補てんする、そういう経営安定対策も講じている次第でございます。

 そういったことを通じまして、こういう取り組みを推進することによりまして、果樹農業の振興に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

城内分科員 御答弁ありがとうございました。より一層の経営安定対策の推進をお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 次の質問は林業ですけれども、今林業というと、環境面から非常に見直しがされておると思いますけれども、私は、何といっても林業という業種を、これは衰退の一途をたどっているわけですけれども、また復活させたいなというふうに思っております。実際、日本の市場におきましては、国産材が二割程度、そして外国からどんどん安い木材、八割程度ですね、要するに日本の国産材の市場は逼迫している。このままだと日本の林業は本当に崩壊寸前であるというふうに思っております。

 そのためにも、私自身、これは各地域で例がもちろんありますけれども、もっともっと公共事業において積極的に国産材を使うべきじゃないか。要するに、地域でとれた地域材を使う。また私の選挙区の例を申し上げて恐縮ですけれども、天竜市というのがございまして、天竜市は、いわゆる天竜材という有名な材がございます。これで天竜市民ホールという市民のホールをつくったわけでございます。また、例えば公立学校に地域材を使って机やいすを供給する、あるいは内装材も地域材にする。こういったことをもっともっと推進していただきたいと思います。

 そしてまた、こういう公共の分野のみならず、やはり私は民需をもっと拡大する必要があるんじゃないかなというふうに思います。というのは、国民の意識が変わらなければ、要するに、日本人は日本の材木を使う、多少高くても、質のいい地域の材を使うんだ、それによって民需を拡大させる必要があるんじゃないかなと思います。

 こういった点に関して、まず一つ、最初の質問は、公共事業等に地域材をもっと使うべきじゃないかという点についての具体的な対策、そしてもう一つは、国民への国産材の需要をもっと喚起すべきじゃないか、それに対する国民への普及啓発を強化すべきじゃないか、こういう質問をしようと思って、私、本日参ったんですけれども、ちょうど一時間ほど前に、林野庁さんの方から「木材みんなで使っちゃおう!」という、これは子供向けの大変わかりやすい「絵でみる森林・林業白書」というのがありますけれども、これは大変私は高く評価します。こういうものを、事子供のころから木材について、あるいは林業について、環境について教えるということを、農林水産省さんも文部科学省あるいは環境省と協力しながらやっていただきたいというふうに思います。

前田政府参考人 林業振興、とりわけこういった中での木材の需要拡大等々のお話ございましたけれども、おっしゃられますように、森林の持っています公益的機能、こういったことを高度に発揮していくためにも、またそれを支えます林業、木材産業の健全な発展を図っていくということで、木材、とりわけ国産材の需要拡大は大変重要な課題ではないかというように考えている次第でございます。

 このためにも、公共事業等におきまして、国産材、特に地域材の利用、こういったものを推進していくことが重要というように考えておりまして、一つには、展示効果ですとかあるいは民間への波及効果の大きい公共施設等におきます地域材の利用の推進、木造公共施設整備事業等々、こういったものも通じながら推進していきたいというように考えている次第でございます。

 また、木材利用推進関係省庁連絡会議等を通じまして、関係省庁に対します公共土木工事等におきます木材利用、こういったものも働きかけておりまして、道路のガードレールでございますとか、防音壁でございますとか、そういったところにもいろいろお使いいただくようになってきているというような状況でございます。

 さらには、森林土木木製構造物の設計指針、あるいは施工歩掛かり、こういったものを作成いたしまして、先般、先週金曜日でございましたけれども、各局、各都道府県の方にも御通知申し上げたところでございます。

 また、農林水産省といたしましても、まず隗より始めよということで、率先して木材利用に取り組むために、昨年八月、農林水産省木材利用拡大行動計画を策定いたしまして、省を挙げて木材利用拡大に取り組んでいるところでございまして、民間部門の先導的な役割を果たしていきたいというように考えているところでございます。

 今後とも、関係省庁との一層の連携を図りながら、公共事業等、地域材の利用が図られるように努めてまいりたいというように考えている次第でございますし、また、お話ございましたように、国民への普及啓発、大変重要な課題であろうかと思います。今、森林・林業白書、お褒めにあずかりましたけれども、それ以外にもいろいろシンポジウムを行ってそういった普及に努める、あるいはマスメディアを利用しまして情報を発信していく、さまざまな運動を今展開しているところでございます。今後とも、これらの施策を一生懸命努めてまいりたいというように考えている次第でございます。

城内分科員 ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私の選挙区に浜名湖がございます。浜名湖といいますと、ウナギの産地として有名なんですけれども、近年、大変安価な中国、台湾産のウナギが入ってくる、それによって国内の養鰻業者の経営が大変苦しくなっているという状況がございます。例えば価格でいいますと、平成四年に一キロ千五百円程度だったものが、平成十三年には一キロ九百三十円と暴落しているわけでございます。最近では価格は多少持ち直しておりますけれども、採算ライン千二百円ちょっと超えているかなという状況のようでございます。

 また、特に外国産ウナギの残留医薬品の問題もありますし、やはり食の安全、安心といった観点からも、私は国内産のウナギの生産をより一層促進すべきであるというふうに考えておりますが、我が国の養鰻業の構造調整対策について、どういった対策をとっているのかということについて御質問したいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 ウナギの関係の数字につきましては、ただいま先生がおっしゃられましたように、中国ですとか台湾といった国・地域からの輸入、これが大体八割から最近では八割五分ぐらいを占めているということで、価格関係も、先ほどおっしゃられましたように、平成十一年ぐらいから十四年ぐらいにかけましては、八百円とか、キロ当たり千円を切るような水準となっていますけれども、最近は若干中国からの輸入が減ってきたということもございまして、キロ当たり千三百円とか千四百円、こういった水準になっているんではないかというふうに思います。

 実は、中国側も、我が国に余り集中豪雨的に輸出しますと値崩れしましてプラスじゃないという点も少しは意識しているようでございまして、私どもといたしましては、まず、関係団体に対しまして、こうした輸出国の事情の聴取ですとかあるいは関係国との話し合いのための助成、こういったことをやりながら、いわば国内の需給規模に合ったような輸出をしてもらうという取り組み、こういったことに対しまして国として助成をしているところでございます。

 また、もう一つは、漁業者の方々が付加価値をつけて出していただく、これがとりもなおさず、みずからの経営にプラスになるんではないかということで、例えば共同しての加工利用施設の整備に対します助成、こういったことをやっているところでございまして、我々といたしましては、今後ともこうした助成を引き続き行いながら、我が国の養鰻漁業の体質強化、こういったことに努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

城内分科員 ありがとうございました。

 時間がないので、最後の質問にさせていただきます。

 WTOの農業交渉の問題ですけれども、現在、七月の枠組み合意に向けて非常に重要な局面にあると思います。そうした中、先般、亀井大臣がジュネーブ、ストラスブール、ベルンに行かれて、スポンハイム・ノルウェー農業大臣ですか、そしてまたグローサー農業委員会特別会合議長、フィシュラー・EU農業担当委員、ダイス大統領兼経済大臣にお会いになられて、我が国の立場をしっかりと述べて帰ってこられたわけでございますけれども、やはり何といっても輸出国サイドあるいは途上国だけの意向でこの枠組みづくりが進められることのないように、ぜひ我が国や、輸入国で構成されるG10、こういった立場を反映するように、これから七月に向けて頑張っていただきたいなと思います。

 どうも私から見ると、輸出国は輸出補助金の問題もありますし、もっともっと輸入国である我が国が攻めてもいいんじゃないかなと。農業交渉で、弱腰とは言わないまでも、我々もいろいろなセンシティブな品目を抱えておりますけれども、もうちょっと攻めていいんじゃないかなと思いますけれども、この点について御答弁をいただけるとありがたいんですが、お願いします。

村上政府参考人 WTO農業交渉関係の御質問でございます。

 カンクンで合意ができなかったWTO農業交渉につきましては、七月の枠組み合意を目指すということで、三月から交渉が再開されてきております。

 我が国といたしましては、多様な農業の共存という基本的な理念の中で、柔軟で継続性がある、あるいはバランスがとれたルールが確立されるように主張しているところでございます。特に、七月までに枠組み合意を図るというためには、各国が抱えるセンシティブな問題に対応できる柔軟性を持つことが不可欠であるというふうに考えておりまして、デルベス議長案にあるような上限関税の設定などの問題のある箇所は是正される必要があるというふうに考えているところでございます。

 先生御指摘のように、先般、亀井大臣、四月二十九日から五月五日まで訪欧いたしまして、ノルウェーやスイスの関係閣僚、それからEUのフィシュラー委員等と、それからグローサー農業交渉の議長と意見交換をし、我が国の立場を力強く主張していただいたところでございます。

 我々輸入国サイドとして、スイス、ノルウェーあるいは韓国などと関心を共有しておりまして、こういう輸入国の立場が十分反映されるように、いわゆるG10諸国と連携をしてやっていきたいというふうに思っております。

 その中で、委員御指摘の輸出国サイドのいろいろな問題、輸出補助金の問題、それからこれと同等の効果を持ちます輸出信用、食糧援助などの問題につきましても、その段階的撤廃を主張しながら、積極的に交渉に参画し、我が国の主張が反映されるように努力していきたいというふうに思っているところでございます。

城内分科員 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。

山名主査 これにて城内実君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 本日は、大臣、また金田副大臣、木村政務官、また山名委員長も、大変遅くまでお疲れさまでございます。こんな遅い時間に質問するのは大変恐縮でございますが、ぜひ、適切な御答弁をいただければ短目に終わりにしたいと思いますので、どうかよろしくお願いをしたいと思います。

 きょうは、実は、この三月一日に予算委員会分科会で質問させていただきましたUSビーフのBSE問題について、引き続き、その後の経過も踏まえながら質問をさせていただきたいと思います。

 三月一日の質疑の最終の亀井大臣の答弁、読み返しておりますと、我が国の食品安全行政なり消費者行政というのは、まさに二〇〇一年九月に発生をいたしました国内初のBSE問題で大変な契機を迎えた、そして組織編成、これは食品安全委員会の設置等々だと思いますが、組織編成も行い、未解明の分野についても新たな研究体制をとった、その中に、世界でも大変まれである、カ齢、二十三カ月とか二十一カ月カ齢の若い牛からの発見もあったりして、そんなこともあって、日本はBSEの問題についての安全の担保として全頭検査とSRM、特定危険部位の除去、この二つが大変大事なんだということで、施策として実行している、今、食品の安全、安心の国民の皆様の大きな前提は全頭検査であり特定危険部位の除去、こういった二つの柱がそれを支えているんだ、こういったような趣旨の御答弁をいただいたというふうに思っております。

 それで、そのことについて、輸入停止後、断続的に日米交渉が行われているわけでございますが、マスコミ報道、また間接的に聞き及ぶところによりますと、アメリカ側は、例えば日本の主張している全頭検査については、これは安全性を担保するという意味で科学的な根拠はない、サーベイランスのためという意味では全頭検査の意味があるにしても、科学的な根拠はないんだと。

 アメリカは、現実には一年間の屠殺量が三千五百万頭で、大変日本とはけたも違いますし、恐らく牛の生育状況も全く異なっておりますし、また、計算のやり方でしょうけれども、全頭検査をもしした場合、その検査費用の方が日本への輸出額の総額よりも高いものになってしまうというような話もあって、なかなかアメリカとしては全頭検査ということを承諾しない。このままいくと、日米交渉、かなり、多分、進展は最近あって、今月十八、十九にもワーキンググループのこういった動きも出てくるんだと思いますが、なかなか、はたから見ておりますと、日米交渉は膠着状態に陥っているんではないか。

 本当にこのままでいいのかどうかということを今回この限られた三十分弱の時間で御質問させていただきたいのですが、一つは、やはり日本が主張している全頭検査について改めて問いたいというのが第一点であります。そしてもう一つは、この輸入再開ができなかった数カ月間で、大変経済的なダメージを受けたところが多いと思うんですね。何しろ輸入の肉の五十万トンのうち、USビーフは約半分。加えて、多分、小腸類の内臓なんかも入れますと、あれも七万数千トンあるはずですから、ここを原材料にしていた焼き肉屋さんですとか牛どん屋さんですとかカレー屋さんですとか、またそういった関係の、いわゆるそんな最高級じゃない外食産業のところは大変ダメージを受けているのではないか。

 ですから、私は、いろいろな質問のやりとりをしながら、やはり、私の結論を先に言わせていただけるならば、安全性とは何ぞやというのは大前提ですけれども、非常にリーズナブルな形で輸入再開を実行できるように、私は前に進めるように努力をしていただきたいというのがきょうの結論であるわけでございます。

 それで、まず一つ目に、昨年十二月の月末に米国産の牛肉輸入禁止措置をとった。ニュースで見ると、仙台の市長が牛タンの在庫が五月でなくなるから何とかしてほしいというような陳情に来られたりとか、町中で牛どん屋さんというのはもう実は実際なくなって、吉野家も一千億の売り上げがこのままですと三割減ぐらいになるとか、いろいろな大変なダメージが想像されるわけです。焼き肉屋も、この前私質問に取り上げましたけれども、全国で約二万軒、年間売り上げ一兆円あるという焼き肉屋の約六割がUSビーフを使われているといったような数字もあるようでございますし、全く輸入されていないということでは、当然大変な打撃をこうむっているんじゃないか。

 この打撃をどのように、数値として認識するというのは大変難しいかもしれませんが、この四カ月の間に日本側の受けた経済的損失、例えば、どうでしょう、数量がどのぐらい減少して等々といったような、そういった数値から農水省としてどのような掌握をしているのかということを御答弁いただければと思います。

白須政府参考人 ただいまの委員の、米国産牛肉の輸入停止以降の日本側に与えた影響というふうなことでございます。

 お話しのとおり、なかなか具体的な金額で申し上げることは難しいわけでございますが、一つ、この一月から三月までの牛肉につきましての、まず輸入量につきまして申し上げますと、九万一千トンということで、対前年同期に比べますと三八%の減少ということになっております。ただ、一方、生産量につきましては八万四千トンということで、前年同期に比べまして八%の増加ということ。消費量は十八万五千トンで、前年同期に比べ一五%の減少。一方、価格でございますが、輸入牛肉価格につきましては、一月上旬に一時六割程度まで上昇したわけでございまして、その後徐々に低下をいたしまして、最近の、先週の調査結果におきますと、輸入停止前に比べまして一二%の上昇というふうになっているわけでございます。

 なかなか、御案内のとおり、どこまで継続するかというのは不透明なんでございますが、実は、ただいま私申し上げました全体の輸入は、そういうことで三八%の減少ということになっておるわけでございますが、その中で、特に豪州、ニュージーからの輸入というのは一月から三月までで前年同期で一二%増加しております。約七万九千トンでございましたのが八万九千トンと、一万トン増いたしているわけでございます。

 さらに、これにつきまして関係者にいろいろ聞き取りを行いますと、豪州、ニュージーからの四月、五月、新年度に入りましてでございますが、前年同期の同国からの輸入量に比べますと、二割から四割増ということで、例えば一月一万トンぐらいは増加するんではないかと期待をされるというふうなことは言われているわけでございます。

 ただ、委員からもお話ございました牛どんでございますとかあるいはまた牛タンというふうなところをとってみますと、これは一番委員がよく御承知でございますが、牛どんはばら肉でございまして、なかなかそこのところは、米国からの牛肉全体の輸入の七割を占めておったわけでございますが、豪州産は御案内のとおりフルセットで輸入をいたしますというふうなこともございまして、なかなかばら肉ばかり輸入というわけにもまいりませんので、なかなか完全な代替というのは難しかろう。

 また、タンにつきましても、年間消費量、日本は五万トンでございますが、うち三万六千トンが米国からでございまして、相当な、米国の屠殺牛の三分の二ぐらいのタンが日本に入ってきておったというふうなことで、豪州で屠畜されました牛の舌が年間大体一万三千トンぐらいで、うち、半分の六千トンを日本が輸入しておるわけでございますが、この一万三千トン全部を輸入したとしても、なかなか三万六千トン全部にはとても代替はできない。当然限界があるわけでございます。

 そんなことで、外食事業者を初めといたしまして、ただいまのような、牛肉を主たる食材としております事業者の方々には、大変、米国産牛肉の輸入停止措置による影響は少なくないというふうに考えておりまして、今後とも、私どもとしては、何とかその需給動向を分析して、国内生産あるいはまた豪州、ニュージーからの輸入といったようなことで安定供給、何とか努めていきたいというふうに考えておる次第でございます。

赤羽分科員 今の御答弁、本当に最後の九割八分ぐらいまではいいんですけれども、最後に豪州産と国内産でカバーしようということ自体が私はそもそも無理があるんじゃないか。マクロの数字として、穴埋めができるような話じゃないと思うんですね。それができれば、今お話ありました牛どん、私がよく聞いているのは、牛どんはやはりああいうショートプレートで、グラスフェッドだと臭くてだめだとか、どうしても代替できない、限界がある。それで、国産牛はどうかというと、これはまた値段の問題がある。

 やはり、そういった数字として、穴埋めとしてニュージーとオーストラリアから当然ふえるでしょうけれども、それでよしということではなくて、やはり現実のものとしてどうなのかということ、今いろいろなヒアリングをしていただいているんだと思うんですが、大臣、副大臣、政務官の、政治家のリーダーシップで、現場の声をぜひ反映させていただきたいというのが第一点でございます。私の思いとしては、数量の埋め合わせじゃなくて、本当の意味での代替というのはなかなか難しいんじゃないかなというのが、私の現場を回った実感だということをまず御発言させていただきたい。

 次に、今、日米間で一番隔たりがある全頭検査について。

 これも、前回も僕も随分やり合っているんですが、日本側が、要するにアメリカが言うようなSRMの除去だけでは安全性の担保としては不十分だ、全頭検査じゃなきゃならぬと主張するというのは、私は、全頭検査というのは、二年前のあのパニックを抑えるためには大変正しかった、結論としては正しかった措置だと思いますが、しかし、本当にそれをずっと続けるのはどうなのかなと私はかねてから思っておりました。

 一つ確認したいんですけれども、全頭検査、本当にそこに、全頭検査こそ安全性の担保だと言われるのなら、一つお伺いしたいんですが、昨年の年末、十二月二十四日ですか、USのBSEが発生する直前に日本が輸入したUSの肉があるわけですね。これは回収しなかったですよね。これはちょっと論理矛盾なんじゃないですか。それは、二十四日以後が危険国になった、そういう整理をされたのかもしれませんが、やはりそれは当然、その発生前に、前後に出ていることについては、私は、そんな危険度、リスクは突然二十四日に大きくなったとはとても考えられないし、なぜそれは回収しなかったんですか。

 私の理解では、それは、SRM、特定危険部位は除去されているから食べても、食しても大丈夫だろうという判断を実は日本政府はされたんじゃないですか、あのときに。その点、明快な御答弁をいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 昨年の十二月二十四日の措置は、その時点で輸入をストップするということであったわけですけれども、国内で流通をしていた牛肉あるいは牛肉製品に関しましては、いわゆる特定危険部位相当のものに関しまして回収なり廃棄なりをするというふうな方針で臨んだわけでございまして、これは日本で第一頭目のBSEが発見されたとき、それからカナダのBSE発生のとき、そのときと同じ考え方で措置をしたところでございます。

 もちろん、肉に関して言えば、二十四日の後と前とでどこがどうなんだといえば、まさに同じようなものであるわけですけれども、そこの中で、特に特定危険部位に関しては回収をしよう、それからそれ以外の部分については、出回ってしまっているものに関しては回収まではしない、それはリスク低減をどこまで図っていくかというふうな考えで、そういった考え方で措置をしたということでございます。

赤羽分科員 ですから、二十四日前に到着した、流通したものについてはリスク低減を考えたということは、SRMの除去はされているんだからリスクは限りなくゼロに近くて低い、食しても大丈夫だ、こういう判断で食肉の部分を回収しなかった、こういう整理をされたということでよろしいですか。

遠藤政府参考人 絶対安全かあるいは危険なのかというふうな、ゼロか一かの議論ではなくて、量の問題として、二十三日までのものに関しては特定危険部位だけを除去しておけばリスク低減措置としては足りるのではないかという考え方でございます。

赤羽分科員 私は、別に神学論争するつもりもありませんし、極めて正しかった措置だというふうに思っておりますし、私なんかは、二十四日前に向こう、アメリカを出た肉についても、そんな廃棄なんかしないで、そういう説明をして流通させてもリスク低減は限りなくゼロに近いんじゃないかというふうに思っております。これは感想であります。

 それで、今、国を挙げて、一応、全頭検査と主張している。これが、先日、四月十五日の食品安全委員会のOIEの名誉顧問でいらっしゃる小沢先生の御発言ですとか、あと、この食品安全委員会の専門委員でいらっしゃる東京大学の名誉教授の唐木先生が「安全の医学」三月号にも書かれているんですけれども、全頭検査に対して大変厳しく、こういう論文が出ていて、日本の政府の主張と随分違うことを言っていて、大丈夫なのかなと思うんですね。

 これは、一つは、小沢先生が言われたように、潜伏期間が二年から八年ですか、御専門家に聞いた方がいいんだけれども、潜伏期間が長いから、十分なプリオンがたまっていない限り、患畜牛というんですか、発症はしていない、感染をしている若い牛がもし全頭検査で検査を受けたとしても、必ずしも陽性にはならない。これは、小沢先生の言ったのは、半分ぐらいしかチェックできないんじゃないか、こういうような御指摘もあり、この唐木先生の論文は、大変厳しく、厳しくというか、私は極めてリーズナブルに書いてあると思いますが、同じようなことが、全頭検査というのはそういった当時の社会状況の中で緊急的に措置されたものであって科学的には根拠がないというようなことがはっきりと書かれているんです。これは、日本政府が交渉している中で、この食品安全委員会の重鎮たる人たちがこういった議論を言われている。

 それで、スイス連邦の元獣医局長ウルリッヒ・キムさんも、日本の講演で、日本が取り組む全頭検査は効果が乏しく、SRMの除去に力を入れるべきだと。何か、報道によりますと、生後二十カ月以上の牛に限った検査を一、二年間の暫定措置として実施するというような、そういったソフトランディングをやったらどうか、こういったような御指摘もあるわけですね。

 ですから、どうも三月のときには、質問をしていたり部会で役所の皆さんと話していても、全頭検査というのは非常に印籠のように、議論で詰めていっても、最後はばあっと印籠が出てきて議論が全然詰まらなくなるという感じがありましたが、どうでしょう、三年前の九月から二年半で三百万頭の検査をされ、それなりの知見が出てくる中で、ある意味では全頭検査というのはもう少し見直してもいいのではないか、こういうような状況になっているのかどうか。

 私は、それは当然なってしかるべしだというふうにかねてから思っておるんですが、先ほど、冒頭の厚生省の皆さんに回答していただいたような、SRM除去をされている限り回収しなくてもいいと判断したというのは僕は極めて正しいというふうに思いますが、この点について、全頭検査について、役所の中、食品安全委員会の中とかいろいろな中で、どのような議論がされているのか、どのような認識の変化があるのかということをお答えいただけますか。

中川政府参考人 BSEの検査あるいは特定危険部位の除去というのは、現実には屠畜場で行われているものでありますので、一義的には厚生労働省の方でお答えいただくのが適当かと思いますけれども、農水省としてどうかということでお尋ねであれば、申し上げたいと思います。

 これまで、先生今おっしゃいました、小沢さん、それから唐木先生ほかそれぞれの方の個人的な見解というものを私どもよく承知しているところでございます。

 ただ、特定危険部位の範囲というものは、なかなか、まだ完全には科学的知見というのは得られていないということで、OIEにおきましても年々その範囲が変わってくるというふうなものでございまして、そういう状況の中で、この特定危険部位の除去と、それからBSEの検査というものをどういうふうに考えていくか、これは、片一方だけでどうと言うというのはやはり少し極端な話ではないかというふうに思います。

 これまでの日本におきます全頭検査の結果、その他BSE対策全体につきまして、このところ二年半という知見の蓄積があるわけでございます。食品安全委員会におきましては、こういった過去二年半のデータの蓄積あるいはまた最近の科学的な知見に基づきまして、現在、我が国がとっておりますBSE対策全般について、プリオン専門調査会において審議がされているというふうに承知をいたしております。

 私どもリスク管理官庁としては、この食品安全委員会の審議を注視してまいりたいというふうに思っております。

赤羽分科員 おおむねこの答弁もよしとしたいんですが、SRM除去だけでは余り極端なんじゃないかと言われるけれども、それは極端なのは日本の方なんですよ、私に言わせると。

 これは前回も言いましたけれども、よく政府の人と話をしていますと、世界じゅうでOIE基準というのは結構信憑性があるということになっていますね。だけれども、この全頭検査の部分だけはOIE基準じゃなくなっちゃうんですよ。

 各国のBSEの検査状況というのは、これはもう何回も言っているけれども、日本だけが全頭検査をやっているというのは改めて言うまでもないんですが、EU諸国は、基本的に三十カ月の月齢以上を対象としている、ドイツ、フランス、デンマークは二十四カ月以上だった、こういう状況の中で、私が認識しているのは、フランスでは、この七月から二十四カ月以上を三十カ月以上に引き上げる、ドイツも同じように三十カ月以上の検査に引き上げを検討している、このようなことをされているというふうに認識しております。イギリスが、一九八〇年代中盤に、このBSEですとか新型のヤコブ病ですとかということですごくある意味じゃ大きくなった。しかし、イギリスなんかでは、毎年千頭以上今でもBSEが出ているけれども、ある意味では、その状況というのは鎮静化している。

 こういった中で、結構リスクマネジメントができつつあるんではないかという状況は出ているんではないかなというふうに思うんですね。

 ですから、当然、二年半前の九月の段階で全頭検査をしたというのは、僕は正しかったと思いますが、二年半の知見の中で、それなりに世界じゅうの状況も勘案し、本当に人への感染の割合なんということまでいきますと、これは危険部位を、SRMの除去をしていれば二百兆分の一とかというような数字も出ていますし、この危険性というのは極めて低いものだというふうに、私は、そう認識するのが別に極端な考え方でもないんではないか。

 局長言われたように、軽々に今すぐ答えを出すということではなくて、食品安全委員会で審議を重ねている、それは大事なプロセスだと思いますけれども、ぜひ、いっときのように印籠はちょっと捨てて、冷静な判断を願いたいな、こういうふうに私は思うわけであります。

 それで、ちょっともう時間もあれですので最後に、アメリカのミートパッカーというか、アメリカからUSビーフが日本向けに輸出されている、多分大手五社ぐらいで大体九割以上が出ているんですよね。私、そちらの話を聞くと、アメリカは三十カ月以上だけがSRMの除去をしているとかというふうな御答弁も実はあったんだけれども、日本向けの輸出についてはもう全部SRMの除去はしているというし、脊髄の飛散があるなんという指摘があったけれども、これはだれに聞いても、何人に聞いても、まだ残念ながら自分では見ていないけれども、そういった危険性というのは全くあり得ないような大手のミートパッカーの現実だということらしいんです。

 ですから、ぜひその辺も踏まえて、私なんかは、丸ごと一遍にオープンにしろというのは難しいと思うので、日本向けの輸出のミートパッカーをある意味では指定化するとか、そこに日本から検査官を送るとか、そういったいろいろなやり方というのは多分あると思うんです。

 これは、あす五月十八日から日米共同のワーキンググループというのも立ち上げて、そういったことも踏まえるのかどうかちょっとわからないんですけれども、メンバーを見るともっと学術的な話に終始するのかもしれませんが、冒頭申し上げた、この輸入停止によって大変な経済状況に陥っている方たちというのは少なくない、外食産業の人たちというのは、相当の件数があるけれども、なかなか政治的な声も弱いわけですし、そういった声を、現実を直視していただいて、ぜひ私は、前向きに、それでむちゃしろと言っているんじゃないですけれども、極めてそんなむちゃなことを言っているつもりもありませんし、リスクマネジメントということを踏まえながら、この夏に向けて、恐らくこの日米交渉、何らかの答えが出るものと期待もしておりますし、そういうふうになるとも確信もしておりますが、その点について、日米交渉について、大臣から最後に御答弁をいただきたいと思います。

亀井国務大臣 この問題、実は四月の二十四日に局長級の協議をいたしまして、日米の専門家、実務担当者、これらによりましてワーキンググループを設置して、BSEの定義あるいは検査方法を初めとする、専門的、技術的な協議を進める、これが明日から、十八、十九日、こういうことになっておるわけであります。

 日米双方、それぞれの国内での議論を深める、また、本年夏をめどに、日米双方が、米国産牛肉及び日本産牛肉の輸入再開、これの結論を出すべく努力をするということになっておるわけでありまして、十八、十九と、さらにその後も毎月一回以上開催するというようなことで、これからどういう協議が展開するか、これを予断することはできないわけでありますが、我が国の消費者の食の安全、安心、こういうことの確保を大前提に、できる限り早期に問題の解決ができるようにさらなる努力をしてもらいたい、こう思っております。

赤羽分科員 ぜひ、二年半前のあの悪夢のトラウマを乗り越えて、OIE基準並みの措置がとられるように御尽力いただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わりにします。どうもありがとうございます。

山名主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明十八日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時五十九分散会


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