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第1号 平成18年6月5日(月曜日)

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本分科会は平成十八年四月十四日(金曜日)委員会において、設置することに決した。

六月二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      浮島 敏男君    北村 誠吾君

      土屋 正忠君    平田 耕一君

      広津 素子君    岡田 克也君

      田名部匡代君    松本 剛明君

      東  順治君    古屋 圭司君

六月二日

 平田耕一君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十八年六月五日(月曜日)

    午前十一時開議

 出席分科員

   主査 平田 耕一君

      阿部 俊子君    浮島 敏男君

      北村 誠吾君    土屋 正忠君

      中川 泰宏君    泉  健太君

      市村浩一郎君    郡  和子君

      田名部匡代君    松本 剛明君

      森本 哲生君    吉田  泉君

      井上 義久君    高木美智代君

   兼務 矢野 隆司君 兼務 滝   実君

    …………………………………

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  田口 義明君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   舟橋 和幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 鳥生  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中谷比呂樹君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           川本正一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     阿部 俊子君

  土屋 正忠君     中川 泰宏君

  岡田 克也君     森本 哲生君

  田名部匡代君     吉田  泉君

  松本 剛明君     郡  和子君

  東  順治君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     浮島 敏男君

  中川 泰宏君     土屋 正忠君

  郡  和子君     市村浩一郎君

  森本 哲生君     岡田 克也君

  吉田  泉君     津村 啓介君

  高木美智代君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     松本 剛明君

  津村 啓介君     泉  健太君

  漆原 良夫君     井上 義久君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     田名部匡代君

  井上 義久君     東  順治君

同日

 第一分科員矢野隆司君及び第二分科員滝実君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計歳入歳出決算

 平成十六年度特別会計歳入歳出決算

 平成十六年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十六年度政府関係機関決算書

 平成十六年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十六年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

平田主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十六年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。川崎厚生労働大臣。

川崎国務大臣 平成十六年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十兆九千六百三十三億円余に対して、支出済み歳出額二十兆七千六百十九億円余、翌年度繰越額七百十億円余、不用額一千三百三億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十二兆六千五百十二億円余、支出済み歳出額四十二兆二千七百七十三億円余、翌年度繰越額五百八十二万円余であり、差し引き三千七百三十九億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七百二十四億円余、支出済み歳出額六百六十八億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き五十一億円余をこの会計の積立金として積み立てて、決算をいたしました。

 第三に、国立高度専門医療センター特別会計につきましては、収納済み歳入額千四百九十六億円余、支出済み歳出額千四百七十七億円余であり、差し引き十八億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十三兆三千百二十七億円余、支出済み歳出額二十一兆九千百七十一億円余であり、差し引き一兆三千九百五十五億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆一千六百九十五億円余、支出済み歳出額六兆八千八十六億円余、翌年度繰越額十三億円余、未経過保険料相当額二百三十億円余、支払備金相当額千八百六十八億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き九千九百八十九億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成十六年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

平田主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院千坂第二局長。

千坂会計検査院当局者 平成十六年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百八十一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二三号から二九号までの七件は、旅費が過大に支給されていたものであります。

 同三〇号から三六号までの七件は、庁費、謝金、旅費等を不正に支出するなどしていたものであります。

 同三七号は、委託費の支払い額が過大となっているものであります。

 同三八号及び三九号は、保険料の徴収が適正でなかったものであります。

 同四〇号から四二号までの三件は、保険の支給が適正でなかったものであります。

 同四三号及び四四号は、医療費の支払いが適切でなかったものであります。

 同四五号から二〇一号までの百五十七件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 同二〇二号は、現金が領得されたものであります。

 同二〇三号は、介護給付費の支払いが適切でなかったものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、データ通信サービス契約に係るソフトウエア使用料のうちの利子相当額に関するもので、社会保険庁では、社会保険オンラインシステムについてのデータ通信サービス契約に係るソフトウエア使用料の毎月の支払い額を算出するに当たりまして、元金と利子がそれぞれ一定の額となるアドオン方式を採用し、また、ソフトウエア使用料のうちの利子相当額を算出する率として長期プライムレートの平均値を採用しています。アドオン方式を採用した場合、借入利子率と同一の率を用いて利子を計算しますと元利均等返済等の方式に比べて利子負担が割高となるため、利子分の計算に当たっては、借入利子率を一定の算式により変換して算出した率を用いる必要がありますが、同庁では、その率を用いることなく長期プライムレートの平均値をそのまま採用して利子相当額を算出していまして、適切を欠く事態となっておりましたことから、社会保険庁に対して、是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 その二は、国民健康保険組合の組合員の被保険者資格手続の適正化に関するもので、健康保険の適用資格のある国民健康保険組合の組合員は、健康保険の適用を受けないこととする手続をとることにより組合の行う国民健康保険の被保険者になることができることとなっておりますが、検査いたしましたところ、健康保険の適用を受けないこととする手続をとっていない国民健康保険組合の組合員が見受けられましたことから、厚生労働省に対して、改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、医療施設等施設整備費補助金等における消費税の取り扱いに関するもの、その二は、保育所における保育士の配置に関するもの、その三は、生活保護費に係る国庫負担金の算定に関するもの、その四は、国民健康保険における退職被保険者の適用の適正化に関するもの、その五は、職業訓練等に係る訓練延長給付の支給に関するものであります。これら五件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十一年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国民年金の第三号被保険者に係る種別変更の届け出の適正化について意見を表示いたしましたが、これに対する厚生労働省の処置状況についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

平田主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。川崎厚生労働大臣。

川崎国務大臣 平成十六年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

平田主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平田主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

平田主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森本哲生君。

森本分科員 おはようございます。民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 きょうは、委員長も大臣も三重県というようなことでございまして、平素大変お世話になっておりますことを御礼申し上げる次第でございます。どうぞ、きょうは私、午前と午後、ダブルヘッダーになっておりまして、いろいろな意味で前向きな質疑になることをよろしくお願い申し上げます。

 通常国会も間もなく会期末ということでございますが、医療制度改革について、政府案、民主党案がそれぞれ、本籍地である厚生労働委員会において、大局的な観点から精緻な議論が積み重ねられてきたものと承知をいたしております。したがいまして、本日の質問は、医療、介護の予防という観点を基本に、分野を固定せず、政策各論から質疑に入りますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、地域医療の確保ということでございますが、出産から子育てまでの安心、高齢者の健康、元気な暮らしを守るため、医療サービスは地域に必ず存在しなければならないことは明白であります。当然、医療へのアクセス権の保障は政府の責務であるというふうに考えます。

 しかしながら、医師、それから看護師、薬剤師などのコメディカルの確保をどのように達成していくかという問題は、短期的にはなかなかハードルが高いというふうに思っております。とりわけ、僻地医療の実態は大変深刻なものがございます。先日、質問通告の際に資料もいただいておりますが、二〇〇四年現在の無医地区は七百八十六、人口ベースでは十六万人となっておるわけでございます。町立、村立の診療所を確保して、安定経営を国としてサポートしていくという政策が中心になろうかと思いますが、医師不足の地域はまだまだ厳然として存在して、困っている方が多いわけでございます。

 この点について、大臣から認識をお伺いいたします。

川崎国務大臣 森本委員からの質問、初めて受けるわけですけれども、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 社会保障全体の切り口といたしまして、年金、医療、介護、どこが受け皿になりながら責任を持ちながらやっていくかという議論の中で、私よく申し上げて、今大変皆さん方からいろいろ御叱責いただいておりますけれども、年金問題については、やはり国が基本的に責任を持たなければならないだろう。介護保険という一番身近なものにつきましては、市町村が中心になりながら基本的なものを立てていただいております。そういった意味では、医療というものはどういうふうに考えていくかということになります。

 そういう意味では、サービス分野でございますから、意思決定はなるべく近い部分でされた方がいい。しかしながら、今、医師不足等の問題を調整するとなると、なかなか市町村でやり得るものではない。しかし、国では各地域まですべてを知り得るかということになると、これもまたなかなか難しい話になりますので、そういう意味では、県の役割というものがだんだん大きくなっていく時代であろう。

 したがって、今回は、県が医療の対策協議会というものを、例えば三重県でいえば、三重大学、それから公立の病院、医師会、それから住民の皆さん方と一緒に立ち上げていただきながら、三重県の医療はどうあるべきか、これは森本議員おわかりのとおり、そこはかなり集約化が進んでうまくいっている部分だろうと思いますけれども、最近、志摩の話、産科の問題、それから尾鷲の話、そして私の伊賀地域に行きますと小児科の問題、やはり各市とも自分の地域に置きたい、しかしながら一方で、医療圏ということを考えると、もう少し大きくしないとならない。したがって、やはり県のリーダーシップという時代を迎えているんだろう、私はこのように思っております。そういった意味では、権限も含めてできるだけ県へ移行する方向づけをしていくのが、これから医療については正しいやり方であろう。

 最終的には、今回の改正におきましても、診療報酬自体も、知事がまず意見具申ができる。そして、自分の県のところについては、将来的には、場合によっては、自分のところの県の診療報酬、特別のものもつくることができるという仕組みになっている。今まで診療報酬については知事は何も意見が言えなかった。国が決めること、中医協で決めるんだという時代から、少しずつ変化の時代、そういうふうにお受けとめいただいたらいいんだろうと思います。

 その中で、僻地医療につきましては、やはり国、県、市、重層的に、お互いに役割を担いながらやらなければならないだろう。離島等の僻地における医療の確保について、昭和三十一年度から僻地保健医療計画を策定し、順次の施策を進めてまいりました。現在、無医地区等に整備される僻地診療所の数は全国で千九十四カ所、このうち国保が直営で診療所としているところは六百一カ所でございます。この中で、また四百八十カ所につきまして国保の方から手当てをさせていただくことで、十八億四千三百万円の予算立てをさせていただいております。

 そして、税を使う部分、ここにつきましては、先ほど申し上げたように、国、県、市が重層的に担っていくべきだろう。僻地診療所運営費としては八億一千五百万を計上させていただきながら、地域と連携しながらやっていくという形で政策を進めているところでございます。

 そういった意味では、大変大きな金額でないんですけれども、国の八億の金額と、交付税というものがうまくかみ合いながら、地方の声を聞きながらしっかりやっていかなければならない、このように思っているところでございます。

森本分科員 御丁寧に説明をいただきましてありがとうございます。

 それでは、あと少し、関連もしてまいりますので、その都度お伺いさせていただきますが、続きまして、若手の研修医を僻地に定着させる制度的工夫などはされておるのかどうか、具体的な効果を上げているのかどうかということ、答弁よろしくお願いします。

松谷政府参考人 若手の研修医、医学校を卒業して二年、初期の研修というものをいたします。臨床研修と申します。実は、平成十六年度から、この二年間、研修につきましては医師法の改正によりまして必修となったところでございまして、ちょうどその必修となった第一期生がこの三月で二年間を終えたという状況にございます。

 必修とした趣旨は、先生御指摘の僻地等も含めまして地域医療に携わるためには、単に狭い専門を目指すだけではなく、その前に幅広く臨床の基本的な能力を身につけていただくということがその考え方でございまして、そのプログラムの中におきましても、必ず地域医療保健の研修を義務づけているところでございます。

 これによりまして相当幅広い研修が行われてきたということでございますが、この間、研修医というのは、必修以前と比べますと、従前、大学病院に七割ぐらいの方が集中していたものが、地域の病院に半分ぐらい出ていくようになったということでございまして、これも、都道府県別に見ますと、東京、大阪といったようなところよりも、各県、特に東北等に、満遍なく研修の場を求めてきたというところでございます。

 一方で、大学の方が減りましたので、大学が従来派遣してきたところについて手薄になったという別の面もございますけれども、全般といたしましては、プログラムに沿って研修が充実されたというふうに認識をしてございます。

 また、これを終わった方々がどこへ行ったかにつきましては、今調査をしているところでございますが、先般中間的な御報告をいたしましたけれども、これにつきましても同様の傾向にあるということで、それなりの成果はあったものと考えております。

森本分科員 この問題は、深く突っ込むと時間が私の方もございませんので深く突っ込みませんが、研修医制度があり、大学病院、後者で言われたことについては、かなり地域に深刻な問題も出ておる部分は十分認識していただかないと、いいところだけということではないというふうに御指摘だけさせていただいておきます。これはまた後で、別件の方でいろいろこういった問題についてはもう少し突っ込んだ質問をさせていただきたいと思います。

 それと、僻地医療は、市町村合併が問題をより深刻にしている側面があるのではないか、私はそのことを指摘させていただいておいて質問させていただくのですが、地方交付税の算定に関する話でございます。

 厚生労働省でなく総務省マターになるというふうに思いますが、合併前の市町村で、非常に小規模な診療所であって、自治体からの財政援助を得ながら予防医療などを含めた包括的なケアが実践されているというケースがあります。ところが、こういった小さなコミュニティーで合併話が持ち上がって、今後の地域医療をどうするかという議論になったときに、例えばですが、旧態依然たる診療を続けている国保病院があって、このベッド数が地方交付税算定の基礎となることから、現状は一ベッド当たり六十万、交付税減額をしたくない、減らしたくない合併後自治体が、地域医療を地道に続ける診療所よりも既存の病院を中心に据え置く傾向があるということは否定できないと思うんです。

 今申し上げたような話は、全国幾つかの地域で起こっていると私は認識をしておりますが、事実、これは地方交付税制度のもとでの自治体の医療施策のスタンスにかかわる問題であります。

 きょうは、総務省の関係とかいろいろなことで水かけ論になりますので、あえて総務省の政府参考人は出席を求めておりませんし、通告もいたしておりませんので、参考人で結構でございますので、このあたりの見解をぜひお伺いしておきたいと思います。

松谷政府参考人 それぞれの地域における病院のベッドが交付税の算定基礎になっているということで、それぞれの地域の首長さんとしてはそのベッドをなかなか手放しがたいところもあるという御指摘でございまして、そういう面は確かにあろうかと思います。

 御存じのとおり、今の医療法の中で、医療圏、二次医療圏と申しますが、これを定めまして、それごとに整備すべきベッド数というのを基準病床として定めてございます。

 これの運用につきましては、昭和六十年以降こういう体制でやってございますが、既にあるベッドについて既得権となっているのではないか、新しく参入するときの障害になっているのではないかというような議論もございました。

 これは引き続き検討しているところでございますけれども、今般の制度改正の中では、特に自治体病院等につきまして、実際に利用されていない、利用率の極めて低いようなベッドにつきましては、知事がこれを返還する、ないしはほかと一緒にするといったようなことを勧告できるような仕組みも入れまして、先生御指摘の部分を、できるだけ地域の医療がより有効に機能できるような体制といたそうという改正を盛り込んでいるところでございます。

森本分科員 この部分は、補足給付の制度と全体を絡めて後でお話をさせていただきたいと思っておるんですけれども、例えば、大きな町を中心に周辺過疎地域が合併された場合に、どうしても診療所を切っていかざるを得ないような状況に現実なっていくわけです。ですから、合併をしたけれどもサービスがますます悪くなっていくというような、地域の方々の不安というものは、合併とともにあえて医療にも増していくというような現実が起こり得る可能性十分ですので、これは後でもう少し、三番目の項で議論させていただきます。

 もう一つは、在宅医療の推進のために二〇〇四年度から訪問看護師の研修制度が始まっておるわけでございます。

 説明資料の内容を確認させていただいておりますが、研修は二つあります。訪問看護ステーションと医療機関に勤務する看護師が、人工呼吸器をつけた患者のケアの技術習得を図る相互研修、末期がん患者のケアを学ぶ在宅ホスピスケアの研修であります。

 朝日新聞が先月独自に調査した結果でありますが、四十七都道府県のうち、二つの研修を実施しているのは十二県、どちらか一つを実施しているのが二十府県、何と十五都道府県はどちらも実施しないということであります。まず、この事実確認ですが、その調査に誤りはございませんか。

松谷政府参考人 訪問看護推進事業の実績でございますが、これは十六年度から始まっているものでございますけれども、朝日新聞の調査の、相互研修が十七年度二十一県、在宅ホスピスケア十一県となっておるのは間違いございません。

 十六年度、相互研修は六県だったものが十七年度二十一県に、在宅ホスピスケア研修は、十六年度、スタートのとき三県だったものが十一県ということで、まだまだ少ないのでありますが、増加の傾向にあるということでございます。

森本分科員 かなり以前から、ターミナルケアの必要性、重要性は社会の共通認識になっておるわけでございます。

 医療と介護のまさに重畳部分として、訪問看護師に期待される役割が大きいんですが、研修がなかなか進展しない理由というものは予算的な問題があるのか、そのあたりをぜひよろしくお願いします。

松谷政府参考人 御指摘のとおり、今後、医療の中では在宅における医療というのが大変大事になってくるというふうに考えております。

 特に、今、八割以上の方が病院で亡くなるという状況ですけれども、これから団塊の世代が高齢世代になってまいりまして、亡くなる方もたくさん出てまいります。そういう中では、在宅の医療というのが大きな比重を占めるようになるだろうというふうに考えておりまして、御指摘の訪問看護というのはその中でも大きな役割だと思っております。

 そのため、こういった事業をスタートしているところでございますけれども、コメディカルの代表として看護師が在宅でのホスピス、みとりをするため、あるいは、相互研修ということで、病院の看護師と訪問をする看護師とが技術的なレベルを高めるという観点から連携強化をしていこうということでございます。

 都道府県に訪問看護の推進協議会を置きまして、これらを積極的に取り上げていただいて、この事業を促すように努めてまいりたいと思っておりますが、予算上は実績があれば必ず対応するようにいたしておりますので、予算がネックになっているというよりも、その地域での看護師の意識等、あるいは、それを取り巻く、在宅医療に対する地域での専門家の意識がまだいま一つであるということではないかと思っておりまして、この推進協議会あるいは医療の対策協議会等を通じまして、今申し上げました今後の在宅医療あるいは在宅でのみとりの重要性にかんがみて、これを進めていきたいと考えております。

森本分科員 このあたりが、これからやはり施設介護から在宅への移行がどうしても進む、しかし、これはいろいろ難しい問題があるんですけれども、このあたりでそこのところをしっかりやっていただかないと、地域で本当に不安感が増すということになりますので、これについてもよろしくお願いをいたします。

 ここのところが、一応、重要な部分としてきょうはお願いをしたい部分でございますが、補足給付制度の改革についてでございます。

 介護保険制度の二〇〇五年十月改正、それで介護保険三施設における居住費と食費が自己負担となったことに伴う低所得者対策、いわゆる補足給付でございますが、利用者負担に係る旧制度下の第二段階が、現制度下の第二段階、第三段階に分類されているわけですが、対象者分布データの最頻値がここにあろうかと思いますので、議論のピントをここに置く必要があるというふうに思っております。

 第四段階は対象外であります。個別契約になりますが、とりわけ第一、第二段階の方の自己負担が大きいことは事実でございます。地域ごとに年金収入の差がありますし、生活費のすべてを介護に費やしているわけではありませんので、利用者負担についてももう少しきめ細やかな配慮がなされるべきではないか、それは反射的に補足給付の額を柔軟にすべきではないかということを意味しますが、いかがでございましょうか。

 それと、時間が少し限られておりますので、同時にあわせて質問いたしますが、現在のような制度になってから、いわゆる低所得者の方が自己負担分を弁済することができず、退所をやむなくされたという事例が全国にどれだけ起こっておるのか。この二点についてよろしくお願いします。

磯部政府参考人 補足給付につきましては、委員御指摘のとおり、今回の介護保険の見直しにおきまして、所得の低い方々にとって過重な負担とならないように、施設等の食費、居住費に係る低所得者の方々の負担限度額を定めまして、全国一律に設定されます平均的な費用、これを基準費用額と申しておりますが、その基準費用額と負担限度額との差額を施設に対しまして保険給付として支払うということになっております。

 したがって、所得の低い方々、具体的には、委員も御指摘のとおり、所得段階三段階以下の方々につきましては基準費用額までの収入が施設には確保されますし、それぞれの入所者の方々につきましては、その所得段階に応じまして利用者負担の限度が定められておりまして、これらの方々はその額で施設にそのまま入所し続けることができるということで、昨年の十月の改正を行ったところでございます。

 それから、御指摘の、それによって退所せざるを得ない方々が出たのではないかということでございますが、今申し上げましたように、低所得者の方々につきましては基本的に保険給付によって補われておりまして、特に、第二段階などは負担額が従前と比べて下がっているというようなこともございまして、基本的に、低所得者の方々で退所せざるを得なくなったということはないというふうに考えております。

森本分科員 今の回答では、そういう事例がないと。私は、全国的にそうではないというふうに、顕著にあらわれていないということがあるかもわかりませんが、やはりこれは、給付に頼れなくて施設から出ていかざるを得ない方は全国にあるというふうに思っておるんですが、これはここで議論をいたしません。

 特に、私は今ここで少し申し上げますが、私自身が施設を見て、いろいろ介護、社会福祉の施設はございます。しかし、この中で、特に特養を中心にやられておるところですが、私は、非常に優秀、モデル的な例の施設で、評価もさせていただいておるところを例にさせていただきますと、田舎の方では第二段階の方々がほとんど、この施設では、大体八十名のうちの六十四名、大方八〇、ほとんどが第二、第三段階で入られておるわけですね。三重県でも北西の方へ行くと、都市部へ行くと第四段階がかなり多くて、ホテルコストについては少し上がっていく。

 ですから、これから過疎の町とか田舎、地方は、だんだんそういうところからトータル的に非常に収入は少なくなっていくと同時に、今回、退職手当がこれからなくなる、人材育成のための退職手当もなくなるというふうなことから、施設に対する費用も非常に少なくなる。そうしたことから、非常に人材の確保ができなくなる。いい職員さんがお見えにならなくなるというところから、介護が低下していく。

 私は、このことは、医療だけ、介護だけでなしに、例えばJAさんがどんどん金融関係で地域から引き揚げられる、郵便局も引き揚げられるというような実態。ですから、合併で、今ずっと議論してきたような実態、これが重なっていったときに、地方は壊滅的な状態に陥ってしまうということが危惧されるわけです。

 ですから、こうした問題については、もう少し補足給付の検討、そうした優良な施設をしっかりとチェックされて、そこで働いてみえる方を余りにも安く、ほとんどパート的に使ってしまうような状況にならないようなことを考えていただかないと、私は、大変な事態を地方に及ぼしていくというようなことを心配いたしております。

 そのことについて、これはそちらの方に通告はいたしておりませんが、今のお話を聞いて、大臣なり局長なり、お答えいただければ大変ありがたいんですが。

川崎国務大臣 介護保険制度が始まって五年、そして、昨年見直しを行いました新しい制度の中で動き出して、まだまだ十分御理解いただいていない部分もあると思いますので、しっかり周知をしなきゃならぬだろう。

 一方で、前からやられている施設、最近新しく施設の運営を始められた、いろいろなところの問題が出てきておって、その一つの問題として、職員の質の担保という問題が、今森本委員御指摘いただきました、大きな課題だと私自身も思っております。特に過疎地域、私のような伊賀地域もその一つですけれども、そういうところへ行けば、地域の人たちの勤めるウエートも高くなってきておりますので、そこが経営難に陥って、今言われたような安易な方向に走るということがあってはならないんだろう。そういうものはやはりしっかりウオッチしなきゃならぬな。

 研修の問題も含めて、全体的に、五年たった中で、全体を見ながら直すべきところは直していかなきゃならぬ、こういうときを迎えておるんだ、こう思っております。

森本分科員 その地域も私もよく存じ上げておりますので、大臣がそこまでお話をされたら、それ以上は突っ込むというようなことはさせていただきませんが、やはり人の力というもののエネルギーのすごさというものは、今地域を回らせていただいて私は非常に強く感じます。

 ですから、それはやはり、ある程度いい方にはある意味では所得保障もしっかりしていくようなところをつくっていかないと、その方がまたその地域をほかの意味でも盛り上げてくれるというような、そういった町づくりをやっていかないと、これからはなかなか地方は昔のように輝いていかない、そんな心配をしています。頑張っていただいている地域もございますので、我々もエールを送って一生懸命これからも努力をさせていただきますが、ぜひそういう観点を忘れないで改革に取り組んでいただきますことを切にお願い申し上げまして、時間もございませんので、もうわずかでございます。ちょっと用意した分、あと残してしまうようなことで大変申しわけなかったのでございますが、最後にさせていただきます。

 地域格差の問題でございますが、これは見解をお伺いします。

 二〇〇〇年の制度導入により、今回二度目の介護保険料改定が行われたわけですが、既に公表されておりますように、市町村格差は二・七七倍、沖縄県の与那国町が最高で、月額六千百円という状況です。地域格差は依然として大きいわけですが、これを肯定的に評価するか、否定的に評価するかは見解が異なるところでございます。

 時間の関係で、論点を先取りするようでございますが、自治体裁量、努力にゆだねられるといっても、必ずしも妥当とは言えない面があるとするならば、介護発生率と介護コストを抑制する努力を促すとか、そもそもサービスが不足して保険料が下がるという事態を回避することが求められるわけでございますが、この辺について、前段で大臣からこのことについてはお触れいただいたというふうに私は思っておるのでございますが、参考人の方から具体的によろしくお願いします。

磯部政府参考人 今委員も御指摘のとおり、先ほどの大臣のお話でも、介護保険制度につきましては、基本的には、保険者である市町村が、それぞれの地域住民のニーズを踏まえまして、提供するサービスの水準と保険料の設定を行う仕組みとなっております。

 ただ、各市町村の高齢者の人口構成や被保険者の所得水準の違いなど、市町村の責めに帰すべきでない事由につきまして、保険料格差を一定程度調整するために、給付費の五%の部分につきまして財政調整を行っているということでございます。

 それらもございまして、委員も御指摘のとおり、本年からの第三期におきましては、市町村レベルでの格差は最高と最低が二・七七倍でございまして、第二期の三・三三倍から若干縮小した。また、都道府県別に見ましても、最低と最高の都道府県の保険料の平均の格差が、二期の一・九倍から一・四一倍に縮小しているということでございまして、特に、沖縄県が最高だったわけですが、これは第二期よりも保険料額を抑えたというようなことで、全体を見まして、それぞれの市町村が制度の趣旨にのっとって運営されているのではないかというふうに思っております。

森本分科員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、私は、今ずっと申し上げてきたところは、この日本をまじめにこつこつと努力をされてここまで支えてこられた先輩の皆さんが、少なくとも地域で安心して暮らせるような、私たち政治家がやはりその役割を担っていくのが私は政治の大事な役割だというふうに思っております。

 どうぞ、そういう意味から、いろいろな思いも酌んでいただいて、これからそうした方々に御恩返しという意味でも、やはり安心して地域で一生を送っていただける、そういった政治をぜひこれからも、私自身も努力いたしますので、何とぞよろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

平田主査 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田泉君。

吉田(泉)分科員 民主党の吉田泉です。よろしくお願いします。

 私は、地元が福島県のいわき市というところなんですが、まだまだ涼しいものですから、今週もネクタイ姿でやってまいりました。ひとつ御了解いただきたいと思います。

 私の方からは、職業訓練施設におけるコンピューター関連のリースの契約について何点かお伺いしたいと思います。

 昭和六十三年から平成の三年にかけて、全国各地十五カ所にコンピューターカレッジというのができました。正式には情報処理技能者の養成施設ということであります。十五で始まって、今現在は十三になっているようですけれども、まず最初に、このコンピューターカレッジの全体の仕組みについてお伺いをいたします。

 設置する、運営する、そして機器類を整備する、一体その主体はだれなのか、どなたが責任を持ってやっているのか、教えていただきます。

上村政府参考人 今委員から御指摘のありましたいわゆるコンピューターカレッジでございますが、御指摘のとおり、昭和六十三年度、当時、情報関連分野の人材不足が見込まれるという時代背景がございましたが、六十三年度から設置されており、現在十三校が運営されております。

 このコンピューターカレッジにおきましては、求職者等を対象に情報処理技術関連の職業訓練が実施されておりますが、この施設の設置につきましては、独立行政法人の雇用・能力開発機構が行っておりまして、その運営は、委託を受けた、業界団体や市町村等から構成される職業訓練法人などが行っているところでございます。

 なお、そこに整備されております機器類等につきましても、訓練を行う上で必要だという判断をした上で、独立行政法人の雇用・能力開発機構が整備をいたしているところでございます。

吉田(泉)分科員 最後の、機器類の整備、独立行政法人が主体となってやっている整備の問題ですけれども、この機器の整備をリース契約でやっております。五年のリースということでやっていますが、なぜ買い取りではなくてリース契約にしているのか、お伺いします。

上村政府参考人 整備されております機器類でございますけれども、訓練のカリキュラムを踏まえまして、必要な機能を有するものを整備するということで整備されているところでございます。

 今委員から御指摘がございましたように、この関連機器等は、耐用年数などを考慮の上、五年間のリース契約で行われているものでございます。

 その理由でございますが、リースによれば多額の初期費用が不要となりまして、また、管理事務につきましても支払い管理だけで済む、そういった事務管理の省力化やコストの削減が図られる。それから、買い取りの場合ですと、一定の年数が経過した場合には部品等の調達に支障が出るようなおそれもある、特にIT機器等につきましては技術進歩が激しいということもございました。それから、技術革新が激しいIT機器等につきましては、その中にインストールされておりますソフトの改変等が頻繁に行われておる。買い取りの場合には、そういったいわゆる陳腐化に対しまして機動的な対応ができないのではないかなど、そういった理由によって、リース契約で機器等の整備をすることが通例であることから、コンピューターカレッジにつきましてもその通例によったものというふうに聞いております。

吉田(泉)分科員 この主体の問題とリース契約の問題、ここが私はポイントだと思っておりますので、一番最後にまたお伺いしたいと思います。

 さて、その契約の実態について何点かお伺いしたいと思います。

 平成十七年度、八つのコンピューターカレッジでリース契約が行われたわけですが、一台当たりの平均金額が幾らだったのか、お伺いします。

上村政府参考人 リース料金につきましては、一般的に、個々の物品の価格、今回の場合ですと、コンピューターの価格、あるいはリース会社が調達に要するコストの金利、それから税や社会保険料、それからリース会社の管理費、そういったものが含まれるわけでございますが、契約におきましては区分はせずに一括してリース料が決められておりますので、具体的にそれぞれについての額がどうかということは明示されているわけではございませんが、単純に、そのときの契約金額をリースを受けたパソコンの台数で割っていった場合の額で算出いたしますと、パソコン一台当たり一年間で約七十四万九千円ということでございます。

吉田(泉)分科員 ただいま一年当たりの約七十五万という数字が出ましたが、五年ですと三百七十五万円ということでしょうね。パソコンだけですとせいぜい二十万、三十万の世界ですが、その十倍以上の金額を一台当たり払っているわけです。

 今、金利とか保険料とかおっしゃいましたけれども、十倍以上の単価になっている契約において、一体全体何が含まれていて、それぞれの金額はどの程度なのか、教えていただきたいと思います。私の地元のいわきのコンピューターカレッジを例にして示していただければと思います。

上村政府参考人 今委員からお話のありましたいわきの例で御説明をさせていただきたいと思いますが、いわきのコンピューターカレッジにおきましては、平成十三年度にリース契約が締結されたところでございまして、これはいわきのパソコンとしては百二十台程度だったと思いますが、この契約の中身は、一つはパソコンそれから周辺機器等のハードウエア、二つ目がソフトウエア、それからOAデスクやOAチェアなどの什器と言われるもの、それから機器やあるいはソフトウエアの保守料、そういったものが含まれておりまして、契約金額につきましては、総額で約四億七千万というところでございました。

吉田(泉)分科員 先ほどそれぞれの金額についてお伺いしたわけですが、それぞれは出ませんか。

上村政府参考人 失礼いたしました。

 契約につきましては、先ほど申し上げましたように、個々の物品等について金額の内訳が明示されて契約をされているわけではなくて、一括してリース契約がされておるわけですが、リース契約に際して提出をいただきました定価証明、これによって個々の物品の定価を計算しますと、まずパソコンそれから周辺機器等、これはサーバーやプリンター等でございますが、そのハードウエアが一億九千万、ソフトウエアが一億一千万、什器が千八百万、保守料が、これはハードウエア、ソフトウエアの保守、それからシステムのサービス、それから導入時の教育、そういった訓練等の料金が含まれているということでございますが、これが一億八千万でございます。

吉田(泉)分科員 そういうものが含まれているわけです。

 五年間の期間が満了すると、ハード、ソフトそして什器、どういうことになりますか。

上村政府参考人 ハード、ソフト、什器、いずれにつきましても、契約期間満了後におきましては、結ばれたリース契約に基づきまして、リース会社が引き取るということになっております。

吉田(泉)分科員 契約、私も拝見しましたけれども、五年たって業者が引き取るということですが、引き取るということは、荷づくりをしたり運搬をしたり、費用がかかるということであります。業者は独立行政法人に対してそれを請求できるという契約になっておるんですが、伺ったところ、その条項が実行されたことはかつてないということであります。そうしますと、今、業者が引き取るんだとおっしゃったけれども、私は、どこまで業者が引き取っているのか、その契約の条項を実行していないわけですからね、甚だ疑問があるなというふうに感じているところでございます。

 次に、入札の実態について伺っておきます。平成十七年度、八つの学校で入札が行われたわけですけれども、平均の落札率は幾らだったでしょうか。

上村政府参考人 落札率、予定価格に対する落札価格の比率でございますが、平成十七年度に入札が行われました八件の平均落札率は九八・六%でございました。

吉田(泉)分科員 九八・六ということですよね。先ほどのお話を聞くと、ハードがあり、ソフトがあり、什器があり、保守のサービスがあり、金利があり、保険料があり、いろいろなことを積み重ねて予定価格をつくって入札すると。結果的に九八・六と恐るべき数字が出たということは、私は予定価格が漏れている心配をせねばいかぬというふうに思います。

 もう一つ。十三の地域があるわけですが、地域ごとに見ると、この十五年余り、どうなんですか、契約業者の変更ということはあったんでしょうか。

上村政府参考人 契約期間が満了いたしました際には、透明性それから公平性を踏まえまして、官報に公告の上、一般競争入札によって業者を決定されているところでございます。

 なお、委員御指摘の、業者の変更ということにつきましては、八施設中二施設で契約業者が変わっているということでございます。

吉田(泉)分科員 過去十五年でどうでしょうか。

上村政府参考人 申しわけないんですが、関係書類の保存期間が五年なものでございますから、確認ができませんでしたので、今、十七年度の八施設について御説明させていただいた次第でございます。

吉田(泉)分科員 事前に事務の方から聞いたところによると、実はほとんど、余り業者の変更ということはないんだというようなお話を聞いていたところでございます。

 ちょっと視点を変えて、もう一つの施設でありますポリテクセンターについてお伺いします。

 こちらの方は非常に数が多いです。全国六十二カ所あります。職業能力開発センターというのが正式な名称でありますが、こちらは昨年度やはりリース契約をしているわけですが、一台当たり幾らぐらいのリース契約だったでしょうか。

 そして、違うんでしょうけれども、コンピューターカレッジとこのポリテクセンターのリースの契約の中身の違いについても教えてください。

上村政府参考人 職業能力開発促進センター、離職者等の短期間の職業訓練を実施しているところでございますが、いわゆるポリテクセンターでございます。ここのリース契約の内容でございますが、先ほどと同様に、リース契約そのものは、個々の物品等についての積み上げはしておらないところでございますが、平成十七年度に更新を行ったリース契約について額を算出いたしますと、十七年度のリース契約、更新を行ったリース契約は十七件でございましたが、単純に、契約金額をリースを受けたパソコンの台数で割っていった場合に、その額は、パソコン一台当たり一年間で二十八万二千円ということでございます。

 それから、ポリテクセンターとコンピューターカレッジの契約内容の相違点でございますけれども、主な相違点は保守要員に関する点でございます。

 ポリテクセンターにおきましては、リース契約においては、保守要員は常駐させずに、職員である訓練指導員が生じましたトラブルに対応することとしておりまして、指導員で対応が困難な場合にのみリース会社で対応するという契約となっているところでございます。

 これに対しまして、コンピューターカレッジにおきましては、契約当事者である雇用・能力開発機構が職員を常駐していないこともございまして、保守要員を常駐させる契約としている点が主な違いでございます。

吉田(泉)分科員 そうしますと、二十八万円を五年間にしますと百四十万円ですよね。ですから、コンピューターカレッジと比べますと、コンピューターの方は三百七十五万ですから、大体四割ぐらいということだと思います。

 いろいろ先ほど内訳を聞きました。保守の費用が大変多い。先ほど四割近い数字だったと思います。ですから、その分がないだけ安くなっているということだと思いますが、それ以外は、什器のリースを含めてほとんど同じ内容だという答弁だったと思います。

 今までいろいろお話を聞いて、私は、このリース契約、バブル時代にできた学校ですけれども、バブルの時代を引きずった恐るべき肥満契約じゃないかというような感想を持ったところでございます。それが、全国十三のコンピューターカレッジばかりじゃなくて、六十以上あるポリテクセンターにおいても、保守要員を除いたら大体同じようなことがされているというのが実態だと思います。

 そこで、今後の方針についてお伺いしたいと思います。

 私は、ちょっと地元から今度そういう話が出たものですから、この問題をきょう質問でしようかと思ったんですが、実は同じようなコンピューターのリースの問題が、去年の十月に東京の都立高校でも同じようなことがあるということで発覚したということであります。それを受けて、厚労省では見直しを今検討していると。要するに、デスクとかいすとか半永久的に使えるような機器類を五年でリースして、あとは廃棄するというような非常に無駄なやり方を見直そうということだと思いますが、今検討されているその中身についてお伺いしたいんですが、リースから買い取りに変更しようと考えている対象はどういうものでしょうか。そして、その結果、どのぐらいこのリースの契約というのは減るものなんでしょうか。

上村政府参考人 委員からお話のありました見直しの内容でございますが、OAデスクやOAのチェア等、そういった什器につきましては、五年がたちましてリース契約の更新のときが来た際に、その損傷状態等を勘案して、買い取りまたは新規購入により対応するのが適当ではないかというふうに考えているところでございます。

 なお、コンピューター本体あるいはインストールされておりますソフト等につきましては、変化が激しいというようなこともございますし、民間の一般企業においてもリース契約により行われているのが通例でございますので、今後とも、やり方は一般競争入札を実施して適正にやるということになりますが、リース契約を続けていくことになろうかと思っております。

 なお、リース契約はシステム全体で契約額が決定されておりますので、委員から御質問のございました、対象から外した場合の減少額、これを具体的に把握するのはなかなか難しいところがございますが、先ほど御説明させていただきました額、什器類が約一千八百万というふうに御説明させていただきましたが、この額で総額に占める割合を計算いたしますと約三・七%ということでございまして、これが契約額にそのまま仮に反映されるとすれば、三・七%程度減ることになるのではないかというふうに思います。

吉田(泉)分科員 大変不満ですね。今、もう半年近く見直しをしていて、その結果が三・七%ぐらいしか変更しないということですか。

 例えば、先ほど中身をちょっと大ざっぱに教えてもらいましたが、ハードウエアの中に空調機なんというのがありますよね。一台五百万円の空調機、ダイキンの空調機ですが、やはり五年たつとこれをオシャカにしているわけですけれども、そういうことを今後もやろうということになりますと、これはちょっと私は引き下がるわけにはいかぬような気持ちになってまいりますが、先ほどの答弁によりますと、什器類、四%弱ですが、これについては見直しを今しているということであります。

 例えばいわきの場合は、ことし、五年たって契約更新、新しい入札をやる予定なんですけれども、例えば、什器類なんかは、契約が終わった段階で独立行政法人が買い取るということは契約上可能なんでしょうか。

上村政府参考人 什器で、具体的に空調の話もございましたが、これも額としては先ほどの一千八百万円の中に入っている額でございます。

 それから、買い取りについてでございます。リース契約が終了した際のお話だというふうに思いますが、リース契約していた什器等の買い取りにつきましては、現行の契約、現在結んでおります契約では何ら規定はされておりませんが、什器等の損耗状態、それからコストパフォーマンス、そういったことを勘案して判断することになろうとは思いますけれども、リース業者と協議の上、購入するようなことも検討することにしたらどうかというふうに思っております。

吉田(泉)分科員 検討したらどうかということですか。可能かどうか。

上村政府参考人 リース契約を具体的に結びますのは独立行政法人雇用・能力開発機構でございますが、その機構に検討させることにしたいというふうに思います。

吉田(泉)分科員 先ほどの御答弁で、五百万円の空調機は一千八百万の中に入っているということですが、それは違うんじゃないでしょうか。私も定価証明書をいただいて、今一千八百万の中身を見ているんですが、そこには入っていないですよ。これは細かいことですから後で。

上村政府参考人 申しわけございません。

 入っているというふうに私理解していたものですが、正確に確認をした上でまた御説明させていただきたいと思います。

吉田(泉)分科員 それから、一番最初に聞いたときの数字で、大変大きいのは保守費用ですよね。これが四割近く契約の割合を占めております。いわきの場合は、ハードとソフトを合わせた部分が大体三億円、保守費用が一億八千万だったですか、半分以上を占める。ちょっと民間の常識では考えられないような巨額の保守費用が契約に入っているわけなんですが、それについては何か合理化を考えているんでしょうか。

上村政府参考人 コンピューターカレッジ、これは、先ほど御説明させていただきましたように、昭和六十三年から逐次スタートしたものでございますが、当時の状況等が正確にはわかりませんけれども、訓練の実施に支障を来さないようにということで、メンテナンスやその修復を迅速に行う必要がある、さらに、機構の職員が常駐していない、そういったこともあって、保守要員を常駐させることが必要だったのではないかということでやってきたんだというふうに思っております。

 ただ、今現在におきましては、今委員からお話がありましたように、そういったことがどこまで必要なのかといったことを再検討する必要があるというふうには思います。

 今後につきましては、運営の委託先と協議した上で、保守要員を常駐させることなく、トラブルが起きたような場合にリース会社に保守を依頼するようなことも含め、適当な方法を検討させるようにしていきたいというふうに思っております。

吉田(泉)分科員 去年から同じような問題が都立高校の方で出て、半年検討された割には、私、ちょっと今までの御答弁は大変不満足なんですが、時間ですので、最後に川崎大臣の御見解をちょうだいしたいと思います。

 こういう契約、私に言わせれば非常にぜいたくな、ぜいたく過ぎる契約だと思っているんですが、これが延々と、少なくとも十五年続いてきた。ポリテクの方はもっと長いかもしらぬ。

 やはり原因は仕組みにあるんじゃないかと思います。つまり、一番最初の御答弁にありましたけれども、お金を払うのは独立行政法人が一〇〇%面倒を見る。このお金は、労働保険料の特別会計から丸々来るお金ですが、結局、現場の学校の先生方、校長先生初め、それから運営法人、全く関係ないんですね。自分の懐が痛まない。独立行政法人とリース会社が契約して、お金も国のお金がそっちに真っすぐ行くものですから、現場で見て、非常に無駄なことをやっているな、何でこの机を五年でオシャカにせないかぬのかという気持ちは、恐らくほとんどの先生方にあると思うんですが、延々とこれが続けられてまいりました。結局、現場で改善しようというインセンティブがわかない仕組み、私はそこが一番問題だというふうに思ったわけでございます。

 今現在行われているこの機器類整備については一〇〇%運営交付金で賄うという制度を見直して、一部であれ自己負担分を入れる、高い契約をしたら自分のところの懐も痛みますよという工夫などをして、何とか財政規律を取り戻すという方向を検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 予算におきましても決算におきましても、一般会計がこれほどの巨額な赤字を抱えていて、極めて厳しい財政状況で一つ一つ進められているのに、特別会計の方は余りにも甘いのではないか。これはもう二、三年ずっと御指摘いただきましたし、ことしもこの議論が多かったように思います。

 六十三年当時に、情報関係の勉強をさせて、そして仕事に役立てていく、この切り口はよかったんだろうと思いますけれども、多分、そのときの機器の感覚と今の機器の感覚はまさに大きな飛躍の時代を迎えているんだろう。そこに努力してもらっている職員も、当時あれでよかったんだという惰性で走っていないかという委員の御指摘だろうと思います。聞いていて、私も惰性だなと思います。

 やはり、改めるべきものは改めなきゃならぬだろう。そういう意味では、事業全体の目的、特に雇用保険を使ったさまざまな問題については、根本的に全部見直すという作業を今大号令を出しているところでございますから、そういった中で、この問題も、当時の原点、しかし今の情勢の変化というものをしっかり頭に置きながら、そして、我が国全体として極めて厳しい財政危機の中にあるという中で、しっかり見直しをさせたいと思います。

 また来年御質問いただいたときには、きちっと前進できるようにしたい。去年もしていただいて、進まぬじゃないかということについては、しっかりやらせていただきたい、こう思っております。

吉田(泉)分科員 ありがとうございました。

 結局、私は、国が関与している契約の実態が、こういうことがずっと行われているとなると、納税者の不信感というのはやはり募るばかりであると言わざるを得ません。いずれ消費税増税という時代が来る可能性がありますけれども、これを改めない限り、私は、納税者に消費税増税はお願いできないという気持ちでございます。

 ぜひ、今大臣おっしゃったような方向で見直しをしていただきたいとお願い申し上げまして、終わります。ありがとうございました。

平田主査 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部俊子君。

阿部(俊)分科員 自由民主党阿部俊子でございます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。安全で安心な医療制度の確立という観点から、質問をさせていただきたいと思います。

 現在、参議院で審議中の医療制度改革関連法案に関しまして、医療従事者の資質の向上がうたわれております。医師に関しましては、平成十五年度より二年間の卒後臨床研修制度が制度化され、歯科医師に関しましても、本年度より一年間の卒後臨床研修制度が開始されるなど、医療従事者の資質向上は大きな課題となっております。特に、医療従事者の中でも最も大多数を占める看護職員の資質向上に関しましては、医療安全確保の観点からも極めて重要な課題と考えます。

 また、質の問題だけではなく、看護師の偏在も問題となり、看護師獲得に困っている医療機関も多くあることが実態でございます。

 ある調査によりますと、病院に就職した新人看護職員の就職後一年以内の離職率が九・三%と言われておりまして、これは看護職の十一人に一人でございまして、看護師学校、養成所百四十校分に相当すると言われております。新卒看護職員の職場定着を困難にしている要因といたしましては、配属部門の専門的な知識、技術の不足、さらには医療事故への不安などが挙げられておりまして、看護基礎教育終了時点の能力と実際の医療現場で求められる能力にギャップがあるということが指摘されております。

 こういうことからも、看護職の資質向上のための卒後臨床研修制度が、質の向上、離職防止の観点からも不可欠であるということが議論されております。

 看護職員の臨床研修に関しましては、平成十七年度の社会保障審議会医療部会報告におきましても、安全、安心で良質な医療の確保に必要な基盤整備と人材の確保、必要財源確保への配慮が提言されており、看護職員の研修につきましては検討を要することが明記されていますが、法的な位置づけは現在ございません。安全な医療、看護を提供できるようにすることが今回の法案の趣旨であるということでございましたら、看護職員につきましても、医師、歯科医師と同様に研修の制度化が必要であると考えます。

 そのためには、予算措置、制度の法制化を含めた国の方針を具体的に示していただきたいと思うわけですが、看護職員の臨床研修制度については、具体的に、いつまでに、どのような計画を持って制度化実現を目指していらっしゃるのか、ぜひとも大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

川崎国務大臣 今、阿部委員から御質問いただきましたように、医療従事者の資質の向上が現在求められております。一方、看護師について、看護師学校、養成所終了時点の能力と看護現場で求められている能力の間に乖離があり、必要な能力が必ずしも身についていないのではないか等の指摘がございます。その資質の向上を図っていくことが重要であると認識いたしております。

 昨年秋の医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会の報告の中で、看護師の資質を確保し向上させるためには、新人看護職員に対する研修について何らかの制度化をすることが必要だという指摘がなされました。それを受けて、私ども、来年どうするかということを決めるための予算要求をして、制度化へ向けて動き出したいと考えております。

 したがって、来年きちっとした議論をさせていただいて、なるべく早くその方向へ進めたい、このように考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 これまでも検討の余地があるという答弁が何度もされておりまして、今非常に力強い大臣のお言葉をいただきまして、そこのいわゆる計画が待たれるところでございます。

 看護職の場合、人数が多いことが課題であると思いますので、助産師で取り組まれているように、まずモデル事業から始めていただき、検討会を開催するなどの具体的な取りかかりをしていただけたらというふうに思います。

 次に、医師不足の問題についてお伺いしたいというふうに思います。

 医師の需給見通しに関しまして、医師の需給に関する検討会報告書、これは平成十年五月十五日のものでございますが、現在の医師数は全体として過剰な状態に至っていないものの、将来的には供給医師数が必要医師数を上回るというふうにされておりまして、現在、新たな需給見通しの検討が行われています。

 医師数に関しましては、毎年四千人程度が養成されているものの、昨今、特定の分野、これは特定の地域とか特定の診療科、特定の時間帯における医師の不足感が非常に強く、現場では、患者さんと医師の双方から見て不足感が大きいということが言われております。

 医師の偏在に関しましては、過疎地などの地域的な偏在と、診療科ごとの医師数、人口に対する医師数などの数的な偏在があるというふうに考えられます。

 診療科ごとの数的な偏在におきましては、原因として、勤務医から開業医を志向する医師が増加していること、さらには、医師の間に特定の診療科や地域に行くことを避ける傾向が強まっていること、また専門医制度の弊害などが指摘されておりまして、まず、この専門医制度についてお伺いいたします。

 日本の専門医制度に関しましては、これまで各学会が個々の専門医認定基準に基づきまして認定を行ってきたために、学会によって認定基準が異なるほかに、学会によって専門医と会員比の差が大きいこと、診療科を標榜するために専門医志望が多いことなどが指摘されております。

 実際に、必要な診療科別専門医数については全く日本で検証されておらず、脳外科や循環器など、明らかに専門医が過剰な診療科が存在するなど、我が国の疾病構造に合わせた専門医のバランスが考慮されていないという指摘もあるところでございます。

 やはり、我が国でも、日本人の疾病構造がどのようなものであるかということに基づきまして、真に必要な専門医数を算出した上で専門医の養成を進め、必要な専門医を確保していく必要があるというふうに考えます。また、専門性の高い医師の養成を進めていくと同時に、地域医療を担う総合診療科医いわゆる家庭医などの、広い診療科を診察できる医師の育成についてもあわせて進めていくような政策が必要であるというふうに考えますが、これについてどのようにお考えか、教えていただきたいというふうに思います。

松谷政府参考人 専門医の関係でございますけれども、先生御指摘のとおり、今、医学会のもとにあります専門の各学会でそれぞれ進められてございます。

 医療法の中では、広告をする際に専門医を称することができるものとして一定のものについて決めてございますけれども、それ以外につきましては、そういった自主的な取り組みということになってございます。

 これから、それぞれの専門についてどのようにしていくかということについては、これらの取り組み、それから、それらの学会が集まって、専門医認定制協議会というものを発足させて深い検討をされている、あるいは、日本医師会においてもいろいろな提言がなされているというふうに伺っておりまして、私どもとしても、それらの方向を見定めた上で、これからの専門のあり方ということと相まって検討してまいりたいと考えております。

 もう一つ御指摘の、患者を総合的に診療できる医師の必要性でございますが、これは、申すまでもなく、国民が身近な地域で日常的な診療を受けたり、あるいは、健康の相談ができる医師としてかかりつけ医を持つということは極めて重要でございまして、かねてより、その普及、定着に努めているところでございます。

 専門性の高いお医者さんばかりでなく、患者さんを総合的に診療できる医師について、これを養成し確保していくということから、将来専門とする分野にかかわらず、医学、医療の果たす役割を認識しながら、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるような、いわゆるプライマリーケアの基本的な診療能力を身につけることを目標として、平成十六年から医師についての臨床研修も必修化されたところでございます。

 今後、これからさらに求められます患者さんの視点に沿って、期待されるかかりつけ医の役割、その機能を発揮するために必要なサポートの体制、あるいは、各地域での医療連携が適切に行われるためのかかりつけ医のあり方について、今年度、検討会を開催して議論をしていく予定としてございます。それらの推移を見守りながら、さらに進めていきたいと思っております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 ぜひとも、国民が求める医療ということで、プライマリーケアを進めていただきまして、国民が必要としているかかりつけ医のサポート体制を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、僻地、離島を含む過疎地の医師確保対策についてお伺いいたします。

 医師の偏在に関しましては、都心では、医師数が多過ぎて手術をする機会に恵まれず、内科治療や検診を主な仕事とする外科医もいる一方で、過疎地を中心とした地域では、小児科、産科などの医師不足が顕著でございまして、病棟閉鎖や、激務に疲労いたしまして、やめていく医師も後を絶たない深刻な現状にございます。

 医師の偏在を是正するには、人員の過剰な診療科の医師数を抑制しながら、医師不足が深刻な産科、小児科などでは、その診療科を志望する受験生に大学入学試験で優先枠を設ける、奨学金制度の充実や、さらには、医師の賃金を優遇するなど、各診療科や地域の実情に即した方策を検討するなど、各地でいろいろな取り組みが行われているところでございますが、いずれも即効性は期待できない方法でございます。

 都道府県がつくっております医療計画に関しましても、地域の医療資源について、住民にわかりやすく保健医療計画を立てるものとし、現在審議中の医療制度改革関連法案に関しましても見直しが図られたところでございます。しかしながら、この医療計画は、具体的な数値や目標設定がほとんどないものでございまして、いわゆる国民衛生の動向のデータに少し地域事情が入っただけというものになっております。これで地域の医療計画ができるとは余り思えない実態でございまして、この医療計画が絵にかいたもちにならないように、実効性を高めていくためには、さらなるこの医療計画のあり方の再検討も必要だというふうに思いますが、このことに関してはいかがお考えでしょうか。

川崎国務大臣 医師不足問題、今いろいろな角度からお話ございましたけれども、私も、いろいろな角度から議論していかなきゃならないのだろうと思っております。

 まず第一に、十万人当たり平均二百十一という数で医師がいるわけですけれども、一番多いのは徳島の二百八十二、埼玉が百三十ぐらいでしょうか、したがって、各県によってかなり事情が違う。その事情の中で、例えば東北の方の県では、百名の医師の卵、要は、国家試験に通る、大学を卒業する、半分東京へ帰ってきちゃうんですね。やはり、地域の医療にしっかり貢献してもらう人材を育てていかなければならないだろう。そういう意味では、奨学金とか地域枠というものをつくったり、一方で、この間文科大臣が発言しましたのは、自治医科大学のように、例えば青森なり岩手で十年は必ず勤めるという前提条件で支援をしていこうと。いずれにせよ、枠組みをつくりながら、各地域に医大があるわけですから、卒業した百人がある程度定着できるような方向にしていかなければならないだろう。

 しかしながら、今委員が言われましたように、これは即効性がないんですね。最短でも六年、来年の入学者から始めましても六年かかるということになる。したがって、そういう意味では、中期的に、これをもう進めなきゃならないところに来ているだろうと思っています。

 片一方で、短期的に見れば、例えば徳島県のように、多いと言っても少ないと言っているところはあるんですね。京都のように、お医者さんがたくさんいても、丹後の方にはいないと言っているんです。そういう意味では、やはり、知事が中心になりながら、大学の関係者、病院の関係者、医師会、それから住民の方々と話し合いをしながら、全体の回しをしていかなきゃならぬだろう。

 例えば私の県ですと、大学を卒業して、百人卒業しますね、大学に残る人は三人しかいないんです。九十七名はよそのところへ研修に行っちゃうんです。ですから、大学にもう医師を派遣する機能はありません。

 したがって、やはり、大学病院、それから病院、医師会、そういうものと協調し合いながらやっていかないと、なかなかできない。したがって、そういうものを今度の医療改革の中で大きく位置づけをさせていただいているところでございます。

 先ほどお話ありました看護師も同じことで、私どもの組織として、ハローワークがありますね、それから看護協会があります、医師会、それから病院関係者、こういうものがそろっていろいろな協議へ入っているところは、実際問題、一番最初、一年でやめちゃったとか、子供ができたからやめちゃったとか、そういう人たちがだんだんだんだんまた職場に出てきてくれます。しかし、その掘り起こしをやりませんと、今、五十五万人でしょうか、看護婦の資格を持っているのに仕事をされていない。

 したがって、各地域とも、いろいろな声をかけながら、しかし、やはりその中心は、県というものが中心になりながら計画を書いていかなきゃならぬだろう。何とかその方向へ今度の医療制度改革で進めていきたいということで、私自身もいろいろな知事さんと話し合いをしながら、最近、来る方、来る方、やはり私がやらなきゃいけませんねと、知事さんが最後、言っていただけるので、大変喜んでいるところでございます。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 やはり、大学病院などが、必要な医師の派遣とか、当該県の計画に沿った行動を求めるということが非常にこれから求められると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 また、平成十七年八月の医師確保総合対策におきましては、診療科偏在への対応として、看護師による夜間の軽症小児救急電話相談、さらには、麻酔科医の業務の効率化、産科医と助産師の役割分担、連携などが、診療科と地域に共通する対応といたしまして、医師の業務の効率化、在宅、終末期における看護師の役割の明確化が明記されています。

 過疎地の医師確保対策として、地域医療を守るためには、医師に集中し過ぎている業務をチームで担うことが大切だというふうに思います。例えば、小児を初めとした、救急医療における、看護師の電話によるトリアージ機能、さらには、救急外来でトリアージを専門的に行う看護師の配置など、麻酔科医不足への対応としては、麻酔管理を行う看護師の活用、僻地における医師不足への対応としては、住民の健康に携わる看護職の活用など、既存の保健師、助産師、看護師を活用して、医師でなくても担える役割、機能を他職種と連携して行っていくことが、医師不足の問題を少しでも速やかに是正する方法の一つであるというふうにも考えますが、このような対策をどのように進めていくおつもりかをお聞かせいただきたいというふうに思います。

松谷政府参考人 今御指摘のとおり、昨年夏の医師確保総合対策の中におきましても、医師の業務の効率化という観点から、医療関係職種あるいは事務職員との役割分担と連携ということが述べられてございました。その中での看護師の役割は非常に大きいと思っております。チームを組んで医療を提供するということは、これからの医療の本来のあり方にも沿うものというふうに考えてございます。

 幾つかの例がございました。

 救急について、ナースがトリアージをするということでございます。これにつきましても、既に先駆的に取り組んでいるところもございまして、これを進めているということでございます。

 また、麻酔につきましては、看護師に麻酔を取り扱わせてはどうかという議論があることは事実でございますが、この総合対策における議論でも、まだそこまで結論を得たものではございません。これは、まだいろいろな面での検討を要する段階ということでございます。

 あるいは、電話相談等におきましては、特に小児の救急電話相談、全国統一の短縮番号、シャープ八〇〇〇番でやってございまして、各県でそれぞれ取り組んでいただいてございますが、もちろん、地域の医師会の協力をいただいておりますけれども、その中で、看護師が担当しているような例もあるというふうに伺ってございます。現在、三十都道府県で行ってございますけれども、これによって、軽症患者さんが病院へ足を運ぶことなく適切な対応を行うことができますし、それから、小児救急を担っている病院側にとりましては、重症な患者さんにその労力を集中することができるといったように、患者さんの症状に応じて迅速な対応が可能になるというような効果も期待できるところでございます。

 これはさらに、未実施の県についてふやしていく、あるいは、今当たり前になってございます携帯電話からのアクセスにきちんと対応できるようにする、あるいは、地域の実情に応じて深夜電話相談の体制を整備していくというようなことで、さらにこの改善も進めていきたいと思っているところでございます。

 また、産科の関係では、助産師さんは正常産を取り扱うことができるわけでございまして、助産師さんを活用するということは非常に大事なことで、指摘されているところでございます。このため、地域の助産所と、それから一般の産科医療機関との連携を推進するとともに、助産師資格を有しながら看護業務等に従事している方々もいらっしゃいますので、こういった潜在助産師さんの就業を促進するといったような事業も行っているところでございます。

 助産師さんにつきましては、妊婦さんや退院後の産婦さん、新生児に対する日常的なケアを家庭に訪問して実施する例、あるいは、施設の中に助産師外来を開設して、医師と役割分担しながら健診あるいは保健指導を行う例といったような先駆的な例もございます。これらについても、それを紹介しながらさらに進めていきたいと思っております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 今、全国で出産難民と言われる、いわゆるお産を待つお母様方が非常に多くなっているところで、ぜひとも安全、安心のお産を提供するために、そのような産科医師の不足しているところでは、助産師が法律で許可されている正常のお産を積極的に引き受けて、医師との緊密な連携、協働体制を進めていくということが非常に大切かというふうに私どもも思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 また、産科医不足に関しては、どうしても、分娩に医師は不要という医師のイメージもあり、産科医のなり手が少ないということが、平成十七年度の小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究でも報告されているところでございます。先ほどおっしゃいました院内助産院などの活用から、正常の分娩はいわゆる助産師が、医療処置が必要な部分だけ産科医が受け持つという役割分担をぜひとも定着させていただきまして、助産師の活用を促進していくということをお願いしたいというふうに思います。

 最後になりますが、医療安全確保の観点から、薬剤師の問題に関しまして質問させていただきます。

 薬剤師の配置に関してでございますが、医療機関における人員配置に関しまして、病院は二十四時間機能している中で、看護職員は、入院基本料の算定要件として定められて、唯一夜間体制をとっておりますが、急性期病院を対象といたしました調査によりますと、医師は当直制というのが九二・四%で、圧倒的に医師は当直体制になっております。これは、労働基準法からいいましても、当直期間中に仕事をするということは、本来、医師の業務には余りにも負担がかかっているというふうに考えられますが、薬剤師に関しましても、夜勤・当直なしという夜間体制が四六・六%の病院でございまして、オンコールというのが三一・二%で、半数近くが夜勤をしていないのが実態でございます。

 すなわち、救急体制をとっている病院ですら、医師を初めとするほかの職種はオンコールもしくは当直制であるため、夜間には他職種の機能が期待できない状態にあり、これが看護師の負担になっているわけでございますが、急性期病院においては、重症患者さんを抱えて病院全体がICU化している中で、夜間の緊急入院の受け入れ、夜間も昼間同様の薬剤や医療機器の供給、検査など、昼間と遜色ない治療が続けられているのが今の病院の実態でございます。

 厚生労働省がまとめていらっしゃいますヒヤリ・ハットと言われる、事故に近い形の報告でございましても、夜間の薬剤投与エラーの報告が圧倒的に多く、医療職の配置に関しましては昼間と同様に手厚い体制をとる必要があるというふうに思います。これでは医療事故が起きてもやむを得ないような体制に病院そのものがなっておりまして、まさにこれは、人が間違えたというよりは体制そのものがいけないという、システムエラーだというふうに思います。

 臨床薬剤師に関しましては、高度な薬学知識の必要性や実務実習を重視する観点から、教育年限が今六年に引き上げられたところでございますが、病棟での日常的な薬剤のミキシングに加えて、例えば、非常に注意力が必要とされ薬剤も非常に複雑な中心静脈栄養、高カロリー輸液の無菌的な調合、がんの化学療法に用いられる作用の強い抗がん剤の安全ないわゆるミキシング業務は、やはり専門的な知識を持っている臨床薬剤師が安全、正確に行うべき業務として期待されております。米国などでは、御存じのように、このような中心静脈栄養、さらには、抗がん剤は、薬剤師以外はミキシングをしてはならないということになっております。

 日本の病院における薬剤師基準の配置に関しましては、平成十三年の病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会、この報告書におきまして、病院における薬剤師の役割の重要性が高まっていることから、「「病棟単位に薬剤師一人を配置すべき」という意見にも配慮し、今後、薬剤師の需給、薬剤師の業務内容や配置の実態、薬剤師養成における臨床教育の充実等の進展を踏まえ、三年後を目途に人員配置基準の検討を開始すべきと考える。」とされたところでございます。

 薬剤師の配置に関しましては、特に救急医療を担う急性期病院については、夜間も、オンコールや当直でもなく、最低でも夜勤として薬剤師の配置を施設基準として義務づける必要が、いわゆる国民の医療の安全、安心の、事故を起こさない体制では必要だというふうに考えますが、これについて今後の具体的な検討の方針をお聞かせください。

川崎国務大臣 急性期医療の患者に対して、安全で質の高い医療を提供するためには、患者の容態変化に応じた最適な薬物療法を夜間帯を含め提供することが重要であると考えております。このためには、医薬品に関する専門家である薬剤師が、医療の担い手としてチーム医療に参画し、調剤のみならず、病棟における患者への服薬指導など、臨床現場で積極的にその役割を担っていただきたいと考えております。

 今回の医療法改正においても、医療安全の確保のため、医薬品の安全使用体制を整備することを病院等の管理者に義務づけることとしており、夜間帯も含めた急性期医療において、薬剤師が病院等の規模や機能に応じた適切な形態で一層活用されることを期待いたしております。

 薬剤師の業務のあり方及び配置標準のあり方、急性期の病院も含めて、本年中に検討会を立ち上げて検討したいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 適切な配置基準ということでございますが、大臣には、今年度検討していただきまして、ぜひ施設基準として、努力目標ではなく、必ず達成することが国民が安心して医療を受けられるんだということで、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。大変ありがとうございました。

平田主査 これにて阿部俊子君の質疑は終了いたしました。

 次に、矢野隆司君。

矢野分科員 自由民主党の矢野隆司でございます。

 きょうは、午前中より厚生労働大臣には御出席を賜り、御苦労さまでございます。また、きょう、この発言の機会をいただきましたこと、改めて御礼を申し上げます。

 どれだけの国民が認識をしておるかわかりませんけれども、我が国の近代水道は、発祥以来百年を超えております。安定供給、そして高度な水質、価格の低廉性などが相まって、他国と比較いたしましても極めて優秀なシステムになっていると思っております。これは、幾多の災害や戦火をくぐり抜けてこられた我が先人の労苦、それがまさに培ってきたものであると思いますが、一方で、現在も水道が通っていない未普及地域の人口がざっと三百九十万人いらっしゃるということでございまして、これは四国四県にほぼ相当する数字だと聞いております。

 折しも、六月一日から、第四十八回水道週間が始まっております。そこで、きょうは、水道を取り巻く問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。

 本年四月二十七日の経済財政諮問会議におきまして、竹中平蔵大臣は公共事業に触れて、前からよく言われる無駄な公共事業というのは一体どうして出てくるのかというと、これは需要予測、どういう需要が出てくるかという予測が非常に過大に見積もられて、結果的に後から見ると無駄だというものができていると思うとの発言に続いて、ある市町村の水道の水源開発に関する例を引き合いに出されております。

 国民のライフラインというものは、水道、ガス、電気などございますが、わけて水道はその第一に掲げられるものだと思いますが、その水道の行政施策に疑義があっては国民の理解も得られないと思います。まず、この点について、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

中島政府参考人 ただいま御指摘いただきましたことでございますけれども、経済財政諮問会議におきまして、過大な需要予測があるのではないかということにつきましては、国土交通省が建設中で本年度完成予定の忠別ダムを旭川市の水道水源とする事業に関しまして、平成十六年度に旭川市が実施をいたしました政策評価、これは前回の評価後五年を経過した時点における再評価でございますけれども、これに対しまして、昨年の十二月、総務省より、給水人口の推計が過大であるという指摘を受けたものでございます。このため、厚生労働省で再検討いたしましたところ、水需要予測の根拠となります旭川市の人口推計の根拠に適切でない部分が認められましたために、旭川市に対し、人口推計及び評価の見直しを求めているところでございます。

 社会経済情勢の変化を直視いたしました再評価を実施すべきという総務省からの指摘は重要であると考えておりまして、国民に対する説明責任をより一層果たすためにも、所管の事業における適切な再評価の実施に努めてまいりたいと考えているところでございます。

矢野分科員 ありがとうございます。

 的確な需要予測というのは当たり前といえば当たり前だと思いますし、一方で、行政評価という点ではしっかりと厚生労働省もやっていただきたい、こう思います。しかし、何もかにも行政評価を厳密にして、本来要るものまで要らないとされるのもいかがなものかと思いますし、そのあたりの非常にバランス感覚のとれた行政施策の運用といいますか推進をお願いしたいと思います。

 次に、平成十六年につくられました水道ビジョンについて伺いたいと思います。

 水道ビジョンというものは、これは厚生労働省がおつくりになったと思いますけれども、その政策目標として、安心、安定、持続、環境、国際の五項目を軸にいろいろと盛り込まれておりますけれども、何といっても国民に直結する最大の部分としましては、水道施設を、おおむね十年との表現ながら、要は平成二十五年には一〇〇%施設を耐震化しよう、こういう方針であると思います。

 この水道施設という概念といいますか法律で言うこの書きぶりは、いわゆる水道法の第三条八項で言うものと同じであると理解いたしますが、その耐震化達成に向けての進捗率、どのぐらい進んでいるのかということと、あわせて、国内で最も進んでいる県、あるいは、なかなか言いにくいことかもしれませんが、とりわけおくれている県といったものを、あれば教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 平成十六年度に全国の水道事業体を対象に調査をいたしました結果によれば、浄水場、配水池等の主要な施設の能力について見た場合に、耐震化がなされている浄水場が二〇・四%、配水池が二九・八%となっております。また、基幹管路の耐震化率につきましては、一三・八%という状況でございます。都道府県別にこれを見ますと、浄水場について最も耐震化が進んでおりますのは山形県でございまして、六九・六%、最も耐震化がおくれておりますのは鳥取県でございまして、これは〇%ということになってございます。以下同様に、配水池につきましては、大分県が七三・八%と最も進んでおりますのに対して長崎県が二・六%、また、基幹管路につきましては、青森県が三六・四%であるのに対して宮崎県が四・五%というような状況でございます。

 水道施設の耐震化はまだ十分とは言えない状況にございまして、引き続き、関係施策を推進してまいりたいと考えております。

矢野分科員 済みません、ちょっと聞き漏らしたんですが、鳥取の〇%というのは、何に関して〇%だったんでしょうか。

中島政府参考人 鳥取の〇%と申しますのは、浄水場についての耐震化ということでございます。

矢野分科員 これは質問の通告にはないんですが、今の鳥取のことに関しまして、これは例えば、厚生労働省として指導といいますか助言といいますか、そういったことは何かされておられるんでしょうか。

中島政府参考人 私どもの方でも、鳥取県とお話をさせていただいて、指導はさせていただいておりますけれども、まだ具体的な計画はいただいていないという状況でございます。

矢野分科員 それぞれ地方自治体の財政事情もおありだと思いますので、これ以上深くこのことについてお伺いすることはもうしません。

 水道予算のうち、施設整備費というのが八百四十九億円ですか、このうち、耐震整備補助金というのが六十八億四千万円と伺っております。個別自治体の各事業計画のうち、この六十八億四千万円が、ざっとおおむね三分の一から四分の一の額で補助されるという実態から計算いたしますと、六十八億四千万円掛ける四で、二百七十三億六千万円が年間に水道予算の中で耐震整備されることになると思うわけです。加えて、東京都や横浜市などのように、自前で一〇〇%手当てできる事業体もございます。

 年間の更新需要というものは、ざっと五千億円とも言われており、さらに、平成三十年にはこの更新需要が七千五百億円に膨れ上がるとも言われております。先ほど、最初の経済財政諮問会議のときに伺った需要予測ではございませんけれども、この需要予測、今の五千億あるいは平成三十年の七千五百億という需要予測がおおむね妥当であるとして、大臣の前で大変失礼ですけれども、果たしてこの程度の補助金量で、水道ビジョンに言う、最終目標である十年目に一〇〇%耐震化するんだ、こういう所期の目標が果たして達成できるのか。

 一方で、厚生労働省は、平成十七年十月に「地域水道ビジョン作成の手引き」というものをまとめておられます。その中の「基幹施設の耐震化」という項目の中で「耐震化率を一〇〇%にすることを目指しつつ、計画期間内における適切な目標を設定する。」と、地方自治体向けの目標設定ではやや弱含みの書きぶりになっているようにもお見受けするんですが、そのあたりの見解といいますか、改めてお考えをお示しいただきたいと思います。

中島政府参考人 上水道事業におけます施設の整備については、水道料金による整備を基本とした上で、政策的に特に推進が必要と認められる事業を対象に、その整備に要する費用に対して国庫補助を行っているということでございます。

 水道施設整備費の平成十八年度予算は、対前年度五・九%減の一千百六十億円となっておりますけれども、地震等の災害に強い上水道の整備につきましては非常に重要な課題というふうに考えてございまして、水道管路の耐震化等を行いますライフライン機能強化等事業費につきましては、対前年度八・三%増の六十八億円を確保し、重点的に推進しているところでございます。

 御指摘をいただきました水道ビジョンでございますが、我が国の水道の将来像について水道関係者の間で共通の認識を形成することを目指して作成をされたものであるために、やや理想的な目標を設定しているというところはございます。

 一方、各水道事業者が地域の実情を踏まえた今後の経営戦略として作成をいたします地域水道ビジョンにおきましては、現実的、具体的目標設定を求めているところでもございます。

 いずれにいたしましても、今後、施設の更新需要が増加することが見込まれる中で、各水道事業者が計画的に財源を確保し、適切な更新を進めていくことが重要であると考えておりまして、厚生労働省といたしましても、的確な指導や支援に今後とも努めてまいりたいと思っております。

矢野分科員 現在、水道の整備資産といいますか、各都道府県全体の投入したこれまでの施設への総投資額といいますか現在の資産、大規模施設から主要な管路まで含めまして、全部で三十七兆円というふうに聞いております。これはいわば国民共有の資産だと私は思うんです。

 一方で、諸外国の例を見ますと、先般もNHKのテレビが特集をしておりましたけれども、水道を民営化するという国が幾つか出てきておるようでございます。老朽施設の更新などに対応できなかった事業体ほど経営破綻にさらされ、民営化やユーザーへの負担増を強いる結果になっている証左だというふうに私は思うんです。例えば、家でも、一回マイホームを建てたら建てっ放しでは、いずれどこか傷んでくる。かわらを直したり塀を直したりしなきゃいけない。それと同じことで、修繕することによって長もちをするというふうに思うんです。ですから、この三十七兆円の資産というものは、国民共有の財産としてやはり長もちさせなきゃいけない、私はこう思っております。

 先ほど局長の方から、ライフラインの機能強化については対前年八・三%増、重点的に今推進をしておる、こういう御答弁をいただきましたけれども、果たして、私としては、まだまだ、非常に不十分ではないかと。その程度の整備進捗状況では、まさに日本の水道は、諸外国でいう破綻のシナリオとまでは言いませんけれども、そういった道を今歩みつつあるのではないか。しかも、施設整備費という全体像でとらえるならば、予算要求につきましては、ずうっと財務省からカットされ続けております。厳しい表現かもしれませんけれども、これが日本の水道行政の本当に歩むべき道なのかなと、私は大変疑問に感じておる次第でございます。

 このあたり、水道行政の目指すゴールといいますか、道筋といいますか、どうなっているのかということを伺いたいんです。

中島政府参考人 我が国におきましては、高度成長期に急速に水道施設の整備が進められまして、資産については、先ほどもお話がありましたように、約三十七兆円に達したところでございます。こうした施設が次第に更新時期を現在迎えつつありまして、今後、それらの更新需要が増大をする見込みとなっておるわけでございます。

 御指摘のような経営破綻を防ぐためには、各水道事業者におきまして中長期の財政見通しを立て、適切かつ効率的な施設更新計画を作成し、施設更新のための投資を行っていくことが必要であると思っております。

 また、水道事業者においては、水道施設について施設基準への適合性を検査することとなっておりまして、その検査結果を踏まえて、計画的に施設の更新を行っていく必要があるわけでございます。このように計画的な施設の更新が必要なことは、先ほどもお話しの水道ビジョンにも明記しているところでございます。

 全国の水道事業者に対しましては、昨年の十月、各事業におけるこうした観点も含めた今後の経営戦略となります地域水道ビジョンを作成するよう要請をしたところでございまして、今後とも、国民生活に不可欠なライフラインとして、安全な水を安定して供給するということができる水道の構築に努力をしてまいりたいと考えております。

矢野分科員 ありがとうございます。

 どうしても三十七兆円という数字にこだわりたくなるんですけれども。

 次に、政令都市及び全国の主要な都市で、戦後の戦災復旧も含めて、いろいろ水道管の管路網の整備あるいは施設の建設、そういったものがたくさん経年化しておる。いわゆる管路の更新時期を迎えるといいますか、あるいは既にそういう時期が到来しておるといった都市があると思うのでございますが、現在の厚生労働省の方で把握されておられる毎年の進捗率といいますか、その数字があれば教えていただきたいということと、そのうち、厚生労働省の予算の水道管路近代化推進事業に言いますいわゆる老朽管路というものはどのような管を指し、その老朽管路というものはどのくらい残っているのか、教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 給水人口が百万人以上の大規模な水道事業者の水道管路の総延長につきましては、平成十六年度の末現在で、約九万四千キロメートルでございます。このうち、約八百二十キロメートル、水道管路総延長の約一%が平成十六年度に更新をされております。

 また、老朽管路と申しますのは、一般に、布設後に相当年数が経過をいたしまして、管路更新が必要となっている水道管路のことをいいますけれども、老朽化の度合いは管の種類や埋設場所の土質等によりまして異なるために一概には申し上げられませんけれども、更新の必要性を判断する一定の目安といたしまして、布設後二十年以上経過ということで見ますと、塩化ビニール管、鋳鉄管、コンクリート管等が該当するというふうに考えておりまして、国庫補助に当たっては、これらを基準として考えているところでございます。

 給水人口百万人以上の大規模な水道事業者の老朽管路の総延長につきましては、平成十六年度末で約八千百キロメートル、水道管路総延長の約九%となっているところでございます。

矢野分科員 確認ですが、老朽管路というのは、おおむね布設以来二十年以上の塩ビ管、それからいわゆる昔の鋳鉄管、それからコンクリート管であると。それが現在八千百キロ残っておって、これは九%である、こういうことでございます。

 これは、正確に八千百キロと、正確かどうかは別としまして、おおむねの数字を把握されておられる中で、地震多発国で大規模災害も想定されるこの日本におきまして、事故があってからはやはり手おくれである、何事もそうでしょうけれども。この九%に相当する八千百キロについて、厚生労働省としてはどういう手当てといいますか、進捗率も含めて、どういう指導、施策をとられるのか、教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 水道は国民生活に欠くことのできないものでございまして、老朽管の更新等によりその耐震化を図り、地震等の災害時においても断水を生じることなく水道水を供給できる体制を整備することが大変重要であるというふうに認識をしてございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、平成九年一月に通知をいたしました水道の耐震化計画策定指針におきまして、地震に弱い石綿セメント管や老朽化施設につきまして優先的に耐震化を進めるよう指導をしております。

 また、昨年の四月には「水道施設機能診断の手引き」を全国に送付いたしまして、老朽化等に伴います水道施設の更新の必要性を客観的に診断、評価した上で、計画的に更新を進めるよう求めているところでございます。

 ライフライン機能強化のための国庫補助による支援も含めまして、これらの施策を推進することにより、今後とも、各水道事業における老朽化施設の適切な更新を推進してまいりたいと考えております。

矢野分科員 同じく厚労省の予算では、水道管路近代化推進事業の中に、老朽管とともに、昨年大変日本を騒がせましたアスベスト、石綿ですが、アスベストを材料とするアスベストパイプ、アスベスト管も入れかえの対象というふうにされております。

 このアスベストのパイプラインの、現在、残存と申しますか、残っておる総延長、それから、それらの入れかえの更新事業の進捗率、これについて教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 まず、アスベスト管の残存総延長でございますけれども、この石綿セメント管につきましては、平成十六年度末において約二万キロメートル使用されておりまして、これは我が国の水道管路の約二・八%に当たるものでございます。

 平成十六年度中には約二千五百キロメートル更新をされまして、これにより、全水道管路に占める石綿セメント管の割合は〇・四ポイント減少したところでございます。

 平成十六年度のペースで石綿セメント管の更新が進むといたしますと、十年以内には更新が完了をするという計算になるわけでございますが、近年は次第に更新のペースが落ちてきているところでもございます。しかしながら、できるだけ早い時期に更新が完了するよう、立入検査の際等に指導をしてきているところでございまして、今後とも適切に取り組んでまいりたいと考えてございます。

 それから、石綿セメント管の影響についてでございますけれども、これは呼吸器からの吸入と異なりまして、石綿セメント管を通って供給をされます水道水を飲用することについては、特に問題はないものというふうに考えてございます。

 世界保健機構、WHOにつきましては、飲料水中のアスベストについて、人にがんを起こしている証拠はないとする疫学調査等の結果を踏まえまして、健康影響の観点から飲料水中のアスベストのガイドライン値を定める必要はないというふうにもしているわけでございます。

 また、我が国におきましても、審議会における検討の結果といたしまして、アスベストに関する水質基準の設定の必要がないというふうに判断をされているところでもございます。

 以上でございます。

矢野分科員 アスベスト管路が人体に有害であるのかないのかということをお尋ねする前にお答えをちょうだいしました。ありがとうございます。

 ということは、アスベスト管路二万キロ、そして先ほどの老朽管が八千百キロ、アバウトに言いますと、ざっと二万九千キロぐらい残っていることになるんでしょうか、日本の水道管路の総延長の約一割になるんでしょうか。

 やはり、これは我々国民の安全、安心という点からも、非常に速やかに、速やかにといいましても、今のような財政状況でございますから速やかにいくかどうかは別としまして、最優先で取り組むべき課題であると私は思っております。

 今のアスベスト管路に関しましてですが、局長さんの方からは速やかにいろいろ指導してまいりたいということでございますが、今ここでお答えできるのであれば、ざっと、大体何年にはアスベストパイプラインはもう日本からなくなりますよというようなことを御答弁いただけますでしょうか。

中島政府参考人 今後の諸般の状況もあり得るのでなかなか確定的なことは申し上げられませんけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、平成十六年度のペースで石綿セメント管の更新が進むとすれば十年以内には更新が完了する計算になるということで、そのあたりが一つのめどではないかというふうに思っております。

矢野分科員 しっかり指導していただきたいと思います。

 それから、続きまして、ちょっと違う質問をさせていただきます。

 さきに厚生労働省では、水道施設整備事業費用縮減新行動計画というものを策定されております。設計方法の見直し、積算の合理化、入札契約制度の検討、こういったものがいろいろ盛り込まれておりまして、要は、コストを削減しよう、こういう計画でございます。一方で、ごく最近なんでございますが、調達方法等をめぐって、いわゆる安かろう悪かろう、こういったものを排除しようということで、水道の資材、機材を含む総合評価調達という考え方がいろいろ民間や外部の方から生まれてきておりまして、日本水道協会が手引書の作成を始めると聞いております。

 厚生労働省としては、さきの新行動計画をつくられておられる関係からも、この総合評価調達という考え方に対してはどのような内容を期待しておられるのか。また、調達という点では水道法第五条の二項の規定とも大きく関連があると思うんですけれども、本来ならば、これは厚生労働省がそういうものをつくってもよさげに思うんですけれども、そのあたり、いかがでございますか。

中島政府参考人 国民の安全な飲料水の供給に使用されます水道施設の工事に関して、その品質が確保されることは大変に重要なことでございます。

 公共事業の品質確保の促進に関する法律、これは品確法と言われているものでございますが、におきましては、公共工事の品質確保のため、発注者に価格と品質が総合的にすぐれた内容の契約がなされることを義務づけておりまして、個々の工事における技術力の評価、活用を適切に行うことを求めているものでございます。

 実際の工事の発注を行います水道事業者がこのような考え方による発注事務を円滑に実施するためには、発注仕様書の作成方法や技術提案の審査、評価の方法につきまして、水道工事の内容、特性を踏まえて解説をした手引書が有用でございます。

 このような手引書の作成に当たりましては、実際の工事の発注を行っております水道事業者を構成員といたします社団法人日本水道協会が水道事業者の経験を集大成し作成することが適切であると考えてございまして、厚生労働省といたしましても、これに対して必要な指導、支援を行ってまいりたいと考えております。

 厚生労働省としては、手引書が品確法の趣旨を十分に踏まえるとともに、実際に発注事務を行う水道事業者がすぐれた技術の活用を図る上で役に立つものとなることを期待しております。

矢野分科員 ありがとうございます。

 時間が迫っておりますので手短に御答弁いただきたいのですが、団塊の世代が大量に卒業する二〇〇七年問題というものは水道界にも迫っておりまして、現在、全国で六万人の職員が水道事業に携わっておると聞いております。

 具体的には、水道事業体における専門技術が担当者の定年などで継承が困難になっていたり、あるいは民間に委託したために途絶したりするケースが出てきているようですが、水道法では第十九条で水道技術管理者の設置を義務づけるなどしておりますので、同法を所管する厚生労働省としての、そういう雇用対策といいますか定年対策というものに対する指導はいかがなものかということを、あれば教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 いわゆる二〇〇七年問題でございますけれども、水道においてもそういった技術の継承等は重要な課題であるというふうに認識をしております。

 水道事業におきましても、団塊の世代を含む五十五歳以上六十歳未満の職員が占める割合は約二〇%と高うございまして、四十五歳以上の職員が全体の半分以上を占めているということで、今後、多数の職員が退職をしていくものと見込んでおります。

 とりわけ、運営基盤の脆弱な小規模な水道事業者におきましては、施設管理に必要となる技術者の確保が特に困難な状況にあるということから、平成十三年の水道法改正で導入をされました技術業務の第三者委託の活用でありますとか、退職した熟練技術者のさまざまな形での活用を含めまして、水道界全体の技術力を有効利用して、技術水準の確保を図っていく必要があると考えております。

 また、水道事業体におきましては、現役職員に対してさまざまな研修事業を実施し、適切な技術の継承を図ることが重要でございまして、厚生労働省としても、全国の大臣認可の水道事業体を対象として、現場の技術業務の総責任者であります水道技術管理者の研修を毎年行い、知識や経験の共有を図っております。

 今後とも、国、事業体、民間機関など水道界が一体となりまして、水道分野の技術継承のための取り組みを進めてまいりたいと思います。

矢野分科員 最後に、川崎大臣は、御尊父とともに二代にわたっての厚生労働大臣と承っております。わけて、お地元の三重には、特に津には片田貯水池という貯水池がございまして、日本の近代水道百選に選ばれているというふうに伺っております。

 現在、小学校などでは蛇口の水を飲むなという指導をしているところがあるなど、水道離れというものがとまりません。ペットボトルの水がやはり売れておる、こういう中で、国民の水道水離れへの対応、あるいは水道回帰の施策、そういった取り組みを、ひとつ大臣の御決意を承ればと思います。よろしくお願いいたします。

川崎国務大臣 矢野委員には水道行政を取り上げていただいて、いろいろ御質問いただきました。今国会では二人目でございます。心から感謝申し上げておきたいと思います。

 今、この水はと聞いたんですか、間違いなく水道水でございます。予算委員会中もずっと大臣はこれを飲んで、まさにこの水だけで答弁に立たせていただいておりますが、そういう意味では、何も問題はない、飲んでいただいたと思いますけれども、においがない。

 ただ、十六年度に東京都が実施したアンケートによりますと、大都市を中心に半数程度の方々は水道水に対して不満を訴えており、その原因として味が筆頭に上げられております。しかし、現実に、アンケートなどを見ますと、異臭とか味がする、こういう人が、平成二年のときは二千百六十三万人、今は二百八十六万人ということでございますので、そういった意味では随分改善がされてきたということは事実だろうと思います。

 また、水は、まさになくてはならないもの、ライフラインでございますけれども、まさに手近にありますとその大事さがわからない。水道水の供給に取り組む自治体では、水道水のペットボトルを配布、販売する、水道水のおいしさをPRしている自治体もございます。

 一方で、御指摘の東京都のような場合ですけれども、貯水槽の管理が必ずしも適切でないために悪化するのではないか。そういう意味では、一つの対応として、貯水槽を介さずに水道水を直接蛇口まで送ることが有力な解決策の一つであると考えております。直結給水方式は、技術の進展等によって近年広く導入可能となっており、私どもとしても、やはり一回ストックするということになると、そういう御批判をいただくことになると思いますので、直結給水方式についてしっかり指導を強化してまいりたいと考えております。

 きょうは水道週間であるようでございます。ことしの標語は、安全とおいしさごくり水道水、ぜひ委員もお試しいただきますようお願いして、私どももしっかり頑張ってまいりたいと思いますし、現実、財政が大変厳しい中で、水道を含む公共事業の関係は厳しゅうございますけれども、一方で、先ほど申し上げたように、まさに国民のライフラインでございますので、しっかり発言をしながらやってまいりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

矢野分科員 大臣、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

平田主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

 次に、滝実君。

滝分科員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 本日は、医療、介護、障害者福祉、こういう三点につきまして御質問をさせていただきたいと存じます。

 時間は多少ありますので、ひとつ政府参考人の方から丁寧な説明をしていただいても結構かと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。要所要所で大臣に御見解を賜れればと思います。

 今、この三点の、医療、介護、障害者福祉、いずれも大きな制度改正の進行途中でございますけれども、関係者の立場から見ると、本当に目まぐるしく制度改正が続いている、こういう印象でございますから、各施設とか実際に小さな作業所を立ち上げている人たちから見たら、そういう改正に対応していくだけで大変だ、こういうようなことではないだろうかと思います。

 したがって、その改正も、いろいろな角度から改正されていると思うんですよね。例えば、今まであった規制を緩和するとか自由にさせるんだとか、こういうようなことも理由としてあるだろうと思いますし、財政的な観点からの大きな理由もあるだろうと思うのでございます。

 どちらかというと、厚生省関係のいろいろな政策というのは、最初は、厚生省当局も、どれほどの政策に関係者が参加してくれるかというのが、どうもおっかなびっくり。したがって、多少は事業がしやすいような仕組みをお考えになるんだろうと思うのでございますけれども、ところが、軌道に乗り出した途端に、これは恐らく財政当局からの圧力があるんだろうと思うんですね、財政的な総量規制というのがすぐに始まる。数年たつと、そういうふうな事態に必ずなってくる。そうすると、せっかく事業者が数年先を見越してやったいろいろな事業が、たちまち経営的に見直しをしなければいけない、投資したものも回収できないままに、新しい事業に対応した変更をしなきゃいかぬ、こういうようなことが目につくことじゃないだろうかな、こう思います。

 そこで、まず、病院の問題について伺いたいと思うんです。

 病院の、例えば病床の区分なんかは、もう既に十年前からいろいろなことが言われてきたわけでございますけれども、特に、介護保険が入ってから、区分の仕方も大分精緻になってきましたよね。病床の区分からいえば、一般病床がある、それから、一般病床に対応して療養病床があるということでしょうか。しかも、療養病床も二つに分かれておって、医療療養病床と介護療養病床、こういうように大変精緻な区分になってきているわけでございます。したがって、この区分がある以上は、当然、保険の適用も医療保険なのか介護保険なのかという区分がありますし、区分に応じて医師とか看護師の配置基準も変わってくる、こういうようなことでございます。

 問題になるのは、地方の、人口の比較的少ない地域のいわば拠点的な病院。というのは、どうせ小さな病院なんですけれども、大体それは、厚生省の指導で、一般病床ではなくて療養病床群というふうに切りかえるということでずっとやってきたと思います。したがって、そういう病院では医療療養病床と介護療養病床が併存している。併存するけれども、厚生省の指導で、病棟を分けなきゃいかぬとか、少なくとも一階と二階とに分けなきゃいかぬ、階を分けなきゃいかぬとか、そういうようなことをやってきているわけでございます。

 この療養型病床群、療養病床は、押しなべて、例えば、診療報酬の立場からいえば、検査とか手術をしても診療報酬がほとんどふえない、こういうようなことであることは申すまでもないのでございますけれども、問題は、そういうことになってきますと、療養病床として厚生省の指導、国の方針に従ってやってきたところが、ここへ来て、今後五年間に大きく変わってくるというと、せっかくの投資が生かされないうちにまた何か考えないかぬ、こういう事態になるのだろうと思うんです。

 そこで、まず基本的なことを伺いたいと思うんです。一つは、余り一般病床の方は考えなくていいのだろうと思うんですけれども、これも九十万床を五年間で半減する、こういうことが言われています。それから、療養病床は、介護療養病床、現在十三万ありますし、医療療養病床も二十五万病床あるんですか、合わせて三十八万ぐらいの病床があるわけでございますけれども、これが、療養病床三十八万病床のうち残るのが十五万病床、こういうふうに言われています。あとは、療養病床を中心にして、例えば、老健施設であるとかケアハウスであるとか地域の在宅療養の支援拠点にするんだとか、こういうようなことが厚生省の資料では見られるわけでございますけれども、一般病床を合わせて六十八万からの病床を、めどとしては五年間でいわば廃止するような、転換を促すようなことになっているんですね。

 それが、そんなことをやっていって、では一体どうなるんだろうかな、こういうふうに思うのでございますけれども、その辺の大体の見通しというのはどういうふうにお考えになっているのか、まずお伺いしておきたいと思います。

磯部政府参考人 若干、委員の数字的なものが、御訂正させていただきたいという点もございまして、今御指摘のとおり、医療療養が二十五万床、介護療養が十三万床でございますが、その中で、医療の必要度の高いものを十五万床、これを引き続き医療療養病床として残す。医療の必要度の低いと思われる二十三万床、その差の二十三万床を今後再編して老人保健施設等に転換していくということで進めようとしております。したがいまして、介護療養病床から医療の必要度が高いということで残るものもございますし、医療療養病床の中で必要度が低いということで老健施設等に移るものもあるという状況になっております。

 そして、この再編に当たりましては、療養病床が老人保健施設等へ転換していくために幾つかの円滑な措置を講じようとしておりまして、一つには、既存の施設を活用いたしまして、大きな改修をすることなく老人保健施設に転換できるように、今、床面積等の基準を経過的に緩和しております。

 また、医療、介護両方におきまして、医師、看護職員の配置を緩和したような形の類型を設けるということも、二十三年まで緩和的に設けようとしております。それから、医療保険、介護保険双方の療養病床につきまして、転換支援のための助成を実施するということも考えております。

 またさらに、療養病床の再編につきまして、介護保険事業計画だけでなくて、医療計画あるいは医療費適正化計画とも関連をいたします。

 そして、今御指摘のとおり、いろいろな各都道府県の状況もございますので、健保法等の改正が成立いたしました後、都道府県の協力を得まして、地域ごとの施設ニーズやあるいは関係者の意向を把握したいと思っておりますし、また、来年の夏を目途にいたしまして、各都道府県において、療養病床の再編に伴う受け皿づくりも含めた地域ケア体制の計画的な整備を行うための、仮称でございますが、地域ケア整備構想といったものを作成していただく。そのために、厚生労働省といたしましても、その作成支援のための、地域におけるケア体制の整備の方針あるいは配慮措置などを盛り込んだ、これも仮称でございますけれども、地域ケアの整備指針といったものを策定して、できるだけ円滑な転換が図られるようにと考えておるところでございます。

滝分科員 今、療養病床について転換の考え方をお述べいただきましたけれども、結局、療養病床、二十三万病床を何とかしないといかぬ、こういうことですよね。そうすると、厚生省の資料を拝見いたしますと、先ほど申しましたように、主体は老健施設だ、いや、ケアハウスだ、在宅の支援拠点にするんだとか、こう言っています。

 ところが、常識的に考えて、老健施設なんというのは、現在目いっぱい、あちらこちらに建っているんですよね。二十三万病床を老健施設に持っていくといったって、恐らく常識的にはほんのわずかな病床しか転換できないのじゃないかな、こういう感じもあるんです。

 その辺の数字は、厚生省の資料では何も言っていませんから、恐らくまだ発表していないのだろうと思うんですけれども、どんな感じなんでしょうか。

磯部政府参考人 老健施設の今後の造成につきましては、介護保険事業計画の三期ということで、十八年度から二十年度まで、三年分につきまして全国から集計をしたところでございます。それによりますと、ちょっと手元にございませんが、二万数千床の増床計画があるということが一つございます。

 それから、それ以外にも、介護の療養型が、例えば先ほど申し上げました医療の療養型に変わったような場合にあきができるといったこともございまして、もちろん、しかもこれは六年かけてでございますので、この三期だけでなくて、次の第四期にもかけまして円滑な転換が図られるようにしたいというふうに考えております。

滝分科員 今、希望をとると、今後、二十年までの予定は二万何千床かの予定があると言うていますけれども、それはもともと老健施設としてねらっているところがそれだけであって、現在の療養病床を持っているところがどう転換するかなんという数字はまだ出ていないんでしょう。

 その中で、二十三万病床があるんですよね。それが全部が全部、老健施設に希望するかどうか知りませんけれども、仮に希望したところで、できないでしょう。できないのに、今の地方の療養病床群を前提にしながら、横目で見ながら、新しく老健施設をつくるところだけ先行しちゃったら、転換のしようがないと思うんです。

 要するに、その辺のところの時間的な仕組みとかそういうものを考えないでやっていったら、結局は今やっているところがどうしようもないという問題が出てくるんですよ。しかも、現在の療養型病床群だって、病院をつい最近改築しましたというところがたくさんあるんですよ。

 そういう単純なことで、老健施設の入所者一人当たりの基準面積が八平米あったのが、いや、七平米前後にするんだとかいったって、たかだかその程度のことで経過措置なんかになるわけがないんだと思うんですけれども、どう考えているんでしょうか。

磯部政府参考人 全国的な転換につきましては、先ほど申し上げましたのは第三期、二十年度まででございますが、この転換につきましては、五年、六年をかけまして第四期の終わります二十三年度までの転換を考えておりまして、御指摘のとおり、転換の主体は恐らく第四期に入るということで、そこにつきましては、今後国が示します参酌標準等におきましてそうした配慮あるいは転換を進めていく方針を示したいというふうに考えております。

 それから、既存のものの建てかえでございますけれども、先ほども申し上げましたが、委員御指摘のとおり、六・四平米を八平米にしなくて済むというのは六年間でございますが、その後につきましても、いろいろなシミュレーションがございますが、介護療養施設が大きな改修をせずに老健施設に変わっていくことも可能だというふうに考えております。

滝分科員 いずれにいたしましても、療養病床群といっても既に地域の医療を支えているんですね、医療療養型の病床を持っている病院にしろ、あるいは介護療養型の病床にしろ。

 ところが、今でさえも、診療報酬四%の削減じゃないんですよ。そういう病床でも、ことしの秋から大体二五%ぐらい収入減になるんです、病院の、そういう療養型病床群の収入を細かく計算しますと。今までは、小なりといえども地域を支えてきた、あるいは患者さんもいる病院ですから何がしかの運転資金はあると思いますけれども、ことしの秋からは、少なくとも、そういう、一般病床じゃない病床を持っている小さな病院というのは二五%も収入が減るんです。四月から七月までの間は大したことはないんですけれども、それを過ぎると物すごい激減するんです。

 実際に、生きた経営を病院はしているわけですよね、経営という立場からすると。そこへそういう計画どおりにはめ込もうとすれば、いわば建築で例えれば、実際に使っているビルを使いながら改築するような話なんです。第四期の病院計画でいけるんだとか何かと、そんなことじゃなくて、個々の病院ごとに、将来設計ができるような時間的な間隔を置いてもらわないと転換のしようがないと思います。

 今の地方のちっちゃな病院は、いろいろな診療報酬なんかの関係でも、いや、検査はできません、簡単な手術もできませんというと、診療所よりも劣るんですよ。全く余裕がないんです。その割には、医者の数、看護師の数、介護職員の数が限定されていますから、要するに、普通の地方の病院は人件費が六〇%ぐらいあるんですよ。人件費が六〇%。幾ら医療は技術だといったって、医療機材が発達した世の中で、今の診療報酬は一般病床じゃない病院は人件費が六〇%なんです。やっていけるはずがないですよ。それが地域の医療を支えているんです。そういうことについて、もっときめ細かい配慮をしてもらわないといかぬと私は思うんです。

 どうも最近、この一年ぐらいの間に、そういう療養型病床群の病院でも、やると診療報酬の加算が少しはあるとか、あるいは特殊の指定をされると多少は加算があるとか、そういうことが出てきましたよ、それは。ですけれども、実際問題として経営できないんですよ。

 経営できないものを転換しようといったら、結局、それでは、今までの基準に従って新築した、厚生省の補助金だとかあるいは日本財団の補助金をもらって新築しましたというところの投資が無駄になって、実際問題として、収入が二五%も減ったら経営できないのは当たり前なんですよ、既にできないんです。

 それをやはり真剣に考えてもらわないと、国の財政だけで考えてはいかぬと思うんです、厚生省の方針に従って地域医療を支えてきた病院の経営も考えてもらわないと。自由なら自由でいいんですよ、まるっきり自由なら。しかし、一々細かいことまで基準をつくって検査をする、診療報酬がある以上はしようがないんでしょうけれども。そういう中で、私はもう少し考えてもらいたいという感じがありますので、それだけ希望意見として申し上げておきたいと思います。

 これは最後にまとめて大臣からも御見解を賜れればと思うのでございますけれども、とにかく、病院は毎日毎日患者さんを抱えてやっている、その中で四苦八苦してやっているということを前提にして、どうやって厚生省の考える理想的な姿に転換していくかということだろうと思うんです。

 中医協の調査では、療養型病床群なんというのは、半分ぐらいは医療の介護を必要としない、こういう数字が出ているというから、厚生省もそのデータに基づいておやりになっていると思うんです。私は、それに対しては、まあまあそういうことがあるのかなとは思いますけれども、しかし、実際に上手に転換していく方策を考えてもらわないといけないように思います。

 次に、これは診療報酬だけの問題じゃないんですけれども、そのほかにも、制度設計にどうも混乱が多く見られるというのが最近の問題で、やはり何とかした方がいいというふうに思うんです。

 細かいことで二、三点例を挙げて申しますと、例えば、病院と診療所の関係のために、紹介患者の加算金を今までは見ておったのに、今度の診療報酬改定では加算制度が廃止されました、こういうことですよね。そうすると、病院と診療所の連携を重視するんだ、こう言いながら、制度化した途端にその加算がなくなってしまう、こういうようなことですね、細かいことですけれども。

 それから、これは既に済んだ話ですけれども、昨年の、特別養護老人ホームで個室ユニットの介護報酬を大幅に引き下げましたよね。これはえらいこっちゃというので関係団体が大騒ぎした。大騒ぎしたら、何とかそれをクリアするために、今度は厚生省が音頭をとって補助金制度をつくりました。地方にも相談なしに、地方の補助金制度をつくったんですよね。ことしからまた診療報酬改定をやりまして、介護報酬を改めてもとへ戻したようなんですけれども。

 そういう細かい話ですけれども、具体的に実施するときに、やはりいろいろな関係者の意見を聞かずに突っ走っている。だれが突っ走っているのかは、それはいろいろなケース・バイ・ケースでしょうけれども、もうちょっと私は、現実に施設や病院を運営している人たちの意見を十分に念頭に置いた上で改定をしてもらわないと、余りにも手戻り、ロスが多過ぎるんじゃないかな、こういう感じがします。これは介護と医療にまたがる問題ですけれども、まとめてだれか答弁してください。

水田政府参考人 私の立場で申しますと医療保険の関係でございますが、紹介率の加算についてのお話でございます。

 まさにこれは委員御指摘のとおり、医療機関の機能の分化と連携、これを推進することをねらいとして設けられたものでございますけれども、なかなかこの紹介率の計算というのが厄介でございまして、救急医療に積極的に取り組みますと紹介率は下がってしまうとか、あるいは外来について申し上げますと、紹介状を持っていきますと、持っていった場合でも、病院全体の紹介率が高いと結果として自己負担が高くなってしまうとか、あるいは入院の医療につきましても、外来の紹介率でその患者の自己負担が異なったりする。こういうさまざまな不合理があるという指摘がかねてなされてきたわけでございまして、この不合理を是正しようとすると、複雑な算定式がまたさらに複雑になって、患者にわかりにくくなってしまう、こういうなかなか難しいものがございました。

 それから、こうした加算が必ずしも本来の目的に十分に寄与せずに、紹介率を上げんがための努力、こういったことも見られるんじゃないかという指摘もございまして、昨年から中医協には病院の意見を反映できる医師という方も委員として加わってくださったわけでありますけれども、そこでの議論を経まして、この各種の加算、これを廃止することになったものでございます。

 この加算の廃止によりまして、医療機関の機能の特化、分化と連携というインセンティブが失われるんじゃないかということでございますけれども、これにつきましては、本来の急性期入院医療の評価あるいは救急医療、在宅医療の評価、こういった病院、診療所が本来有する機能について適切に評価を行うことによって、それぞれの推進が図られるものと考えてございます。

 ただ、いずれにしましても、この廃止が決まった際に、中医協からも、今回の影響につきまして継続的に検証を行い、その結果を踏まえて対処するように、こういう御指摘もいただいておりますので、そのように対処したいと思っております。

滝分科員 私どもから、国民から見ると、中医協というのは物すごくこの世界の権威者が入っていると思うんです。ところが、今の御答弁によると、まるっきり素人がやっているとしか考えられないじゃないですか、専門家を新しく導入しましたなんと言うと。中医協の意見をまともに受けて厚生省がおやりになるということは物すごく危険だということを、今の御答弁で初めて知ったような感じがします。

 私は、これは細かい話ですからどうでもいいのですけれども、そういういろいろな試行錯誤があると思うんですよ。ところが、実際、病院側にとってみると、そのためにやはりスタッフも抱えるんですよね、紹介システムをつくるために、それからコーナーもつくるんですよね。したがって、ただ単に診療報酬だけで数字を動かせばいいという話じゃないんです。病院としては、せっかくスタッフを抱えて、特別な部門を少し強化してやろうか、それから医師会とも連携してやろうかなと思ったら、それで歩き出したらだめと言われたのでは、これはどうしようもないんです。

 そういう、少なくとも審議会ですから、細かいことを議論しているとはだれも思いませんけれども、それをまともに厚生省が受けるということ自体が私はどうかしているんじゃないかなという感じを、今の御答弁を聞いて、何か納得させられたような感じがするんです。

 それから、三番目に、時間がありませんから、これは大臣に最後にまとめてお答えをいただきたいと思うんですけれども、例の小規模作業所、全国に六千カ所ある、こういうことで、ことしの四月からの障害者自立支援法の問題に絡んで、いろいろな賛否両論がございます。私も、とにかく、当時の自民党の部会の中では、デメリットもあるけれどもメリットがあるんだ、そのメリットの部分を評価して新体系に移すべきだという議論があったことは承知をいたしておりますし、そのとおりだろうと思います。できるだけデメリットを抑えながらとにかくやっていきたい、こういうことについては私は賛成でございます。

 しかし、実際にその中で影響を受けるところを何とかしなきゃいかぬという思いも、これは実際の現場を預かる社会福祉法人とか小規模作業所の人たちはみんなそう思っているんですよ。

 そこで、時間がありませんから一つ二つ例を挙げて申し上げますと、例えば、施設で六日以上自宅に戻るようにして自立の訓練をさせるんだとかいうことになると、これは収入が減ってしまうんです。六日以上自宅に戻ってやっておりますと、授産施設だって作業施設だって収入が減っちゃう。

 要するに、日中は作業所で、夜は自宅でという方針はいいんですけれども、まともに、自立のために一日出てこない、月に六日間も出てこないと収入が減ってしまう。そうすると、収入が減るのはいいんですけれども、その間、施設側としては、スタッフはやはり維持しなきゃいかぬわけですよ。スタッフをパートタイマーで雇うわけにいかぬから、入所者は自宅へ帰って、その間収入が減るにしたって、施設としてはやはり人件費は維持しなきゃいかぬ、そういうところまで画一的に収入を減らされたらたまったものじゃない、こういうことですよね。

 それから、その場合に、例えば障害の軽い人たちはできるだけ授産施設から退所してもらって自立してもらうんだという方針も結構でございますけれども、実際問題として、障害が軽くたって、障害がある以上はなかなか民間の事業所に採用されないというと、やはり何とか支えなきゃいかぬという問題があるんですよね。要するに、その辺のところの割り切り方というのは簡単にできるものじゃないと思うんです。

 それから、例えば、ある社会福祉法人ですけれども、自立の一つのシステムとして、実際に社会福祉法人としてはきちんとした大きな施設を持っているんだけれども、念のためにグループホームを二つばかり新しくつくって、そこでもって自立への本当の訓練をやりたいと思っていたんですけれども、こうやって個人負担が出てくると、予定していた入所者が腰が引けてしまって、社会福祉法人としては、それが生かされなければ、せっかく投資したって結局経営に狂いが生じる、こういうような事態もあるわけです。

 ですから、基本的な原則は原則で結構なんですけれども、何とかそこのところを上手に持っていくだけの配慮がないと、結局、現在、何か小規模作業所とかを中心にして、この障害者自立支援法、実際の関係者には、せっかくのものが初めから間違っていたような印象で受けとめられている。大変おもしろくないようなことになりかねないと思いますので、その辺のところも含めて、時間がありませんから、できたら大臣にお答えをいただきたいと思います。

川崎国務大臣 社会保障全体の問題についてお話をいただきました。

 お話がありましたとおり、一昨年、年金、介護保険、それから秋に障害者自立支援法、今、医療制度改革、ある意味ではスピードが速過ぎると言われるぐらいの御指摘をいただきながら改革をやらせていただいております。

 これは、根本的に、経済が大きくなり、労働人口がふえてくるという社会から、労働人口が減り、受給者の数が、特に私団塊の世代ですから、来年六十です、一挙にふえるときを迎える、そういったものにどう合わせるか。総理自身も、社会保障を減らすということは無理だ、しかし、その伸び率についてはやはりみんなが負担し得るものに変えていかなきゃならぬという中で、今日取り組ませていただいております。

 一方で、この間、小沢党首が党首討論で発言されましたけれども、いろいろな改革が進む中、例えば医療制度改革の内容も事細かに我々は説明したいと思いますけれども、しかしながら、まだ法律は通っておらぬ、法律が通っていないときに役人が動いて、あたかも法律が通ったような仮定をしての説明はいかぬ、そういう時代じゃないよと小沢党首は御発言していたんですけれども、まだまだ、実は余りフライングしちゃいかぬということで、しっかり自治体等に説明し切れていないということも事実だろうと思います。しっかり説明をさせていただきますと同時に、あわせて、その場で検証しながら、改めるべきものは改めていくということでやらせていただきたい。

 いずれにせよ、かなりのピッチでやっておりますので、また法案が急でございますので、なかなか御理解をいただけない、まだいただいていないんだろうと思いますけれども、少なくとも低所得者の方々にしわ寄せが行かないようにしっかりやらせていただきたいということは変わりはございませんので、どうぞ御理解をお願い申し上げます。

滝分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、いずれにいたしましても、医療、介護、障害者福祉、いずれも、そこに入っている人たちの幸せを願ってやっているわけでございますけれども、施設側あるいは作業所側としては、極めて、いわば柔軟性の乏しい、財政的にもぎりぎりの人たちがやっている、こういうことですから、そういうことを前提にして、ひとつ制度の切りかえを考えて設計していただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

平田主査 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本来であれば厚生労働委員会の一般質疑におきましてさせていただければよろしいのですが、法案の数が多く、なかなか一般質疑までたどり着かないようでございますので、このお時間をいただきまして質疑をさせていただきたいと思います。

 私は、糖尿病腎症につきまして質問をさせていただきます。

 今我が国の糖尿病患者及び予備軍は、生活習慣と社会環境の変化によりまして急速に増加をしております。二〇〇二年、厚生労働省が行われました実態調査におきましては、我が国の糖尿病有病者として強く疑われる人は約七百四十万人、また糖尿病の可能性を否定できない人を合わせますと約千六百二十万人と推定をされております。発生すると、治癒することが困難であるだけではなく、網膜症、また腎症といった糖尿病の合併症によりまして生活の質が低下することや、我が国において主要な死因となっております心臓病や脳卒中の発症、また進展を促進することが知られております。

 この状況を踏まえまして、既に健康フロンティア戦略が策定され、二〇〇五年より十年間で糖尿病発生率を二〇%改善すると目標が定められたことは承知をしております。

 そこで、本日は、この生活習慣病から移行すると言われております糖尿病腎症につきまして質問をさせていただきます。

 まず初めに、人工透析の患者数と人工透析にかかる総医療費につきましてお伺いをいたします。

中島政府参考人 我が国におけます透析医療の現状についてでございますが、日本透析医学会による二〇〇四年、平成十六年末の時点での調査の結果では、慢性透析患者総数は約二十五万人、それから新規透析導入患者数については年間約三万五千人、導入時の原因疾患の約四〇%が糖尿病ということでございまして、この患者数と比率は年々増加の傾向にあるということでございます。

 また、人工透析導入患者の医療費についてでございますけれども、一定の仮定のもとで推計をさせていただきますと、透析患者総数約二十五万人に対しまして、総額で、非常におおよそでございますけれども、一兆円程度というふうに考えております。

高木(美)分科員 この一兆円という規模の医療費でございますけれども、本来、生活習慣病由来は、防ごうと思えば防ぐことのできる病気であると思います。

 この説明ありました患者数につきまして、諸外国に比べてどうなのか、お伺いをいたします。

中島政府参考人 諸外国の人工透析の患者数でございますけれども、OECDのヘルスデータ、各国の二〇〇二年度のデータでございますが、これによりますと、人口十万人当たりということで算定をいたしますと、日本が約百八十人に対しまして、米国は八十五人、ドイツでは約七十人、英国では約三十五人ということでございまして、我が国の人工透析の患者数は、その人口に占める割合が他の先進国に比べて高くなっているという状況がございます。

高木(美)分科員 この分析につきましては、恐らく、腎移植を積極的に推進する国もあり、また、お隣の韓国のように人工透析が九五%という国もあり、それぞれの国、そしてまた習慣に対する考え方で大きく違うところと思います。ただ、この百八十人というのが多いというのは、これは認識をはっきりとできると思います。

 我が国の糖尿病腎症対策につきまして、どのように行われておりますか、赤松副大臣に伺わせていただきます。

赤松副大臣 先ほど来高木委員が御指摘のように、糖尿病を原因とする人工透析の患者の皆さんの数が非常に近年ふえているということで、これを踏まえた対策が非常に大事な課題になってきております。

 このため、生活習慣の改善や薬物治療などにより、腎臓疾患も含めた糖尿病の合併症の進展を抑制することを目指して、平成十七年度から五カ年にわたって糖尿病予防のための戦略研究、厚生労働科学研究補助金として、この戦略研究を五カ年の期間にわたって約八億円の予算をかけて今取り組んでいるところでございます。

 ちなみに、これだけではなくて、少し規模は小さいんですけれども、糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療、こういった約一千万かけての研究も、平成十六年から三カ年かけて、ことしが最終年度になるわけですけれども、同時並行で進めているところでございます。

 こうした研究を推進することによりまして、人工透析の原因となる糖尿病性腎症についての予防や治療法についての新たな知見を得て、今後の腎臓疾患対策にしっかり活用してまいりたい、こんなふうに厚生労働省としては考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 人工透析を開始する基準ですけれども、これはそれぞれ大差があると伺っております。今この基準がどのようになっておりますのか、伺わせていただきます。

中島政府参考人 人工透析の導入につきましては、その基準について、平成三年度の厚生科学研究で、透析導入ガイドラインの作成に関する研究というものがございまして、ここにおいて報告をされております。

 この基準は、一つは腎不全に基づく臨床症状、それから二つ目は腎機能障害、そして三つ目は日常生活障害の、三つの項目につきまして、それぞれ評点を与えて、その合計で総合的に判断をしようということでございます。

 臨床の現場におきましては、この基準を踏まえつつ、それぞれの患者の状況をも勘案して、人工透析の導入を判断しているものというふうに理解をしております。

高木(美)分科員 この具体的な数値というのはお手元にお持ちでしょうか。もしございましたら、重ねて御説明をお願いできればと思います。

中島政府参考人 それぞれの症状の点数化ということでございますけれども、まず、臨床症状について申し上げると、高度、中度、軽度と分かれておりまして、それぞれ三十点、二十点、十点というような点数がございます。それからまた、腎機能につきましては、血清クレアチニンという物質の量ではかりますけれども、八以上が三十点、それから五から八未満が二十点、三から五未満が十点というようなことでございます。

 それからまた、日常生活の障害度につきましては、これも高度、中度、軽度と分かれておりまして、それぞれ三十点、二十点、十点というような形で点数評価した上で、総合的に判断をするということでございます。

高木(美)分科員 わかりました。これにつきましては、また後ほど重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

 この腎症につきましては、食事療法また栄養指導が有効であると聞いております。食事療法、栄養指導につきまして、現状をどのように認識され、どのように評価しておられるのか、伺いたいと思います。

中島政府参考人 糖尿病の腎症が重症化をいたしまして人工透析が必要な状態になるのを防ぐというためには、初期の腎症を早期で発見いたしまして、糖尿病をコントロールするということが重要でございます。そのためには、薬物治療だけに頼るのではなく、栄養の指導でありますとか運動の指導などを適切に組み合わせた対応が必要であると考えております。

 これは、診療報酬の方におきましても、糖尿病や腎臓疾患に対する治療の手段といたしまして、医師の食事せんに基づいて提供をされます糖尿病食それから腎臓食につきましては、従来より特別食加算の対象として、基本食事療養費に加えて高く評価をしているところでございます。また、医師がこれらの食事に関する特別な管理を必要とすると認めた患者に対しましては、管理栄養士が医師の指示に基づいて、患者ごとに指導を行った場合は外来栄養食事指導料、入院栄養食事指導料ということで、また複数の患者に同時に指導を行った場合については集団栄養食事指導料ということで、それぞれ診療報酬上、評価が行われているということでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 今回の改定で温食、食を温めて出すという補助がなくなったというふうに聞いておりまして、病院は減収につながると心配をしているようです。患者六百人に対して管理栄養士が二、三人いたものを、一人に減らそうとしているような病院の動きも漏れ聞こえております。

 そこで、私も、この食事療法、栄養指導、大変大事であるということできょう質問に立たせていただいているわけですけれども、大事なことは、食事療法、栄養指導を行いまして、果たしてそれが患者の方の行動変容につながっているのかどうか。この数値の計算も難しいようでございますし、また、このような生活習慣病、糖尿病腎症についての細かいたんぱくの計算、そしてまたでん粉等をどこまでとるか、カリウムがどうなのか、こうした内容というのは、一回、二回ではなかなか理解できない、そういう話もあります。

 やはり、まずわかる、そしてそうすればいいのか、またその中から意欲を駆り立てて、そして人工透析に一気に進むよりも、むしろ、納得をした上で、もう少し食事療法また栄養指導で頑張ってみよう。当然、人工透析が始まりましてもそのようなことは必要なわけでございまして、そのためには、管理栄養士の方たちのスキルアップがなされなければならないと思っております。人をどのように大事にしながら、その方の行動変容をどのように変えていくことができるのかどうか、このような現場での力が要求をされるようになると思います。

 このことにつきまして、どのように今後行われていくのか、質問をさせていただきます。

中島政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、生活習慣病の発症の予防、そしてさらに重症化予防の観点から効果的な栄養指導が提供をされるという上では、その中心的な役割を担っていただきます管理栄養士の資質の向上というのは大変に重要な要素であると考えております。

 このため、平成十四年に施行されました栄養士法の一部改正におきまして、管理栄養士国家試験の受験資格を見直しまして、専門の知識や技能の一層の高度化を図るとともに、これにあわせまして、個人の栄養状態等を評価し、評価に基づく適切な指導を行うための高度な専門知識や技能が習得できますよう、管理栄養士の養成カリキュラムを改めております。法改正に基づく国家試験が本年度初めて行われたところでございます。

 さらに、管理栄養士による効果的な栄養指導が広く提供をされますよう、着実な教育、養成の推進あるいは研修の充実を図るなど、関係機関、関係団体とも連携を図りながら、今後とも管理栄養士の資質の向上に努めてまいりたいと思います。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 少し話がかわりますけれども、栄養指導に関しまして、これは入院時が主と聞いておりますけれども、NST、栄養サポートチームを取り入れる医療機関がふえていると聞いております。三百八十施設というデータも拝見をいたしました。臨床面の効果、そしてまた医療費のコスト削減、また平均在院日数の短縮にも大きく連動をしていると承知しております。

 このNSTの重要さ、そしてまたそこに伴います栄養指導の重要さをどのように認識しておられれ、また診療報酬上での評価を行っておられるのか伺いたいと思います。

 これは、やはりこれから生活習慣病対策で、さきの医療制度改革の法案の中にも盛り込まれておりましたけれども、ハイリスクの患者の方たちへの健診そして指導の義務づけが盛り込まれておりますが、入院されたときに患者の方たちに食事療法であるとかまた栄養への意識を与え高めていくことは、一つの関所のような役割として効果的ではないかと思われます。こうしたことにつきまして、伺います。

中島政府参考人 食事療法においては、管理栄養士だけではなく、今お話がございましたように、医師、薬剤師、看護師等の医療従事者が、それぞれの知識あるいは技術を持ち寄りまして、患者に対して最適な栄養管理、評価の上での栄養管理というものを行うことが重要と考えておりまして、お話にもございましたように、NSTというようなチームで対応するという体制が次第にとられてくるようになってきておるわけでございます。

 こういったことを踏まえまして、平成十八年度の診療報酬改定においては、入院患者ごとの栄養状態の評価を行い、医師、管理栄養士、薬剤師、看護師その他の医療従事者が、共同して、栄養状態、摂食機能及び食の形態を考慮した栄養管理計画を策定いたしまして、当該栄養管理計画に基づいて栄養管理を行うとともに、栄養状態を定期的に評価いたしまして、必要に応じてその計画の見直しを行った場合に、栄養管理実施加算ということで診療報酬上の評価が新たに行われることになったわけでございます。

高木(美)分科員 そこで、お伺いいたしますが、食事療法のガイドラインの数値でございますけれども、平成四年に策定されたものと伺い、また今もそれが使われていると聞いております。

 多くの医師が、その間、平成四年、今から十四年前でございますので、生活習慣病、糖尿病腎症等々、現場で取り組みをされながらデータを蓄積されているのではないかと思います。そうした成果の上から、またこの十四年間食生活も大きく変わっております。子供たちの食も変化し、大人の食も変化をし、そうした外食産業等の増加もかんがみた上で、私は再度この食事療法の数値のガイドラインを策定すべきではないかと思っております。

 今の時代に合ったガイドラインを策定して、管理栄養士そして医師の取り組みに資するべきではないかと思っておりますが、この点につきまして答弁をお願いいたします。

中島政府参考人 ただいま御指摘をいただきました糖尿病腎症に対する食事療法のガイドラインについてでございますが、これは、当時の厚生省の糖尿病調査研究事業において、糖尿病腎症の食事療法に関する国内外の知見をもとに、平成四年に取りまとめられたものでございます。

 このガイドラインにつきましては、我が国において広く用いられている状況でございますけれども、関係学会においても、ただいま御指摘のような、新たな知見を集積してさらに検討してはどうかというような御意見もあるというふうに伺っておりまして、厚生労働省としても、今回の糖尿病予防のための戦略研究などの研究を推進いたしまして、糖尿病腎症などの合併症の進展を抑制するために新たな知見を得て、今後の対策に活用してまいりたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 ぜひお願いをいたします。

 今お話ありました数値でございますけれども、例えば、第一期、腎症前期という、このときのたんぱく質というのは、国、当時の厚生省が定めていらっしゃいますのは、ここは全く空欄になっております。第二期に入りまして一・〇から一・二という数値が順次書き込まれているわけですけれども、当然、これは患者の方たちの、御自分がどこに目標を定めるかという、まさに患者の方の意思を考えなければならないことでございますけれども。

 当然、今までの数値の中におきましても、適切な食事療法が行われた場合には人工透析をおくらせることができるという、このような数値を現実にされている方も多くいらっしゃいます。今御答弁ありましたように、そうした方の知見をまとめていただいて、その上で、ぜひ、国としての新たな数値の発表のお願いを重ねてさせていただきたいと思います。

 そこで、今お話し申し上げました食事療法につきましては、低たんぱく食が大変有効である、こういう話も聞いております。例えば、たんぱく制限を何もされない場合二年ぐらいで人工透析に踏み切らざるを得ない、こういう患者さんの場合、これをいろいろ実験された方がいらっしゃいまして、それをさらに二年おくらせて人工透析を導入することができる。そしてまた、さらに努力をされた方、人によりましては七年か八年ぐらい人工透析をおくらせることができる、こういうデータを提供していらっしゃる医師の方もいらっしゃいます。

 これは、現実、平成八年に、今の日本学術会議の会長であられます黒川先生が中心になられまして、厚生省特定疾患ということで進行性腎障害調査研究、こういう研究もなされたと伺っております。こうした一つ一つのデータをぜひ大事にしていただきながら、再度、この数値の決定をお願いしたいと思います。

 今申し上げた、たんぱく制限がない場合、本来であれば二年後ぐらいに人工透析に踏み切らざるを得ない、こういうデータの方が、七年、八年長くできるという、その場合には、例えばもう最初に、第一期の段階で、たんぱくの数値目標なしではなくて、もう既にここで〇・七から〇・九という枠をはめながらそれぞれに努力をしていただく。ただ、これはあくまでも数値でございますので、お一人お一人がこれをどのように御自分で毎日毎日の食事の中で計算をされながら努力をしていかれるかという、最終的には患者の方のまさに意思に帰結をするわけでございますけれども、このようなまず基準となる数字が、何となくやわらかい、そしてまた、まだまだいいではないか、そういう医師の方の判断につながる場合もあります。

 よく腎臓病患者の方にお会いしますと言われるのですが、突然人工透析と言われました、そういう方に多く出会います。当然ながら、この数値といいますのは、いつ急性期のような症状を示してそこで病院に担ぎ込まれるかという、個々の状況にもよるかと思いますが、やはり、できる限り、このままいったらあなたはこのような形になり、人工透析というのはこういう事態を引き起こすのですよという、そうした指導というものが適切になされていくということも大事なのではないかと思っております。当然、数値の策定、そしてまた低たんぱく食の取り組み、これをぜひとも推進していただきたいことをまた重ねてお願いいたします。

 また、そのときに、特殊食品、たんぱくを大変抑えて、そしてでん粉質、そうしたものを適切にとるという特殊食品等も、低たんぱく食品、欠かせない材料であるとも聞いております。こうしたことがまた安価に手に入りますように、御努力、また推進をお願いしたいと思います。

 そこで、食事療法に関します医師の認識というのがこれからさらに大事になってまいると思います。早い段階から食事療法を行っていく。人工透析をおくらせるということは、本人の生活のQOLの上からも、医療費抑制のためにも大事なことであると思っております。

 こうしたことを、今後どのように努力をしていかれるのか、また医師の認識をどのようにおつくりになっていくか、この点につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。では、これは大臣にお願いいたします。

川崎国務大臣 今、ずっと高木委員から、糖尿病腎症の問題について御質疑をいただきました。

 人工透析を必要とする程度まで糖尿病腎症が重症化した場合、患者御本人にとっては高額な医療費の負担が生ずる、生活の質の低下に苦しまれることになる、一方で国民医療費も一兆円ほどかかる、こういう御質問をずっといただいてまいりました。

 糖尿病の重症化を予防するためには、治療とあわせて食事療法や運動療法を適切に組み合わせて行うことが効果的であり、医療関係者にその重要性を広く普及していくことが必要であると考えております。

 生活習慣病の発症予防、さらには重症化予防の取り組みを推進するため、国としても、適度な運動やバランスのとれた食生活といった生活習慣の改善の重要性など、国民や医療関係者に対する正しい知識の普及啓発の取り組みを積極的に進めていかなければならない、このように考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。ぜひともお願いをいたします。

 少し話が戻るのですが、中島局長に伺わせていただきます。人工透析を開始する基準につきまして、先ほど来、お話をちょうだいいたしました。例えば、日本の場合はそうした点数を総合的に評価してその上で決定されるという、大変すばらしい方向性であると思っているのですが。

 例えばアメリカでは、クレアチニン、そしてまた腎尿素等々を含めまして決定されているようでございまして、日本は、先ほどお話ありました、クレアチニン等々の数値は八以上が三十点という評価を伺いました。ところが、アメリカ等では、こうした数値につきましては、十・八プラスマイナス四・五という、大体この辺の幅で導入時という策定がされているのではないか。また、ヨーロッパに至っては十五から六ぐらいで人工透析。

 そして、日本におきましては、いろいろな患者さんたちのお話を伺いますと、先ほどありましたように、八以上、また五から八、三から五というところですが、四から五ぐらいで導入されているという患者さんもいらっしゃる。これは、相当個人差もあり、生活習慣の違いもあり、合併症等々の状況もあるかと思いますけれども。

 ぜひとも、こうした欧米等の例も参考にされながら、再度、数値につきましても御検討をいただければと思いますが、その点につきましては御見解はいかがでしょうか。

中島政府参考人 ただいまの透析の導入についての基準でございますけれども、私どもも、欧米での導入基準について詳細は存じ上げませんけれども、数値の面では、一応、標準とされるものが我が国よりもやや高いところに設定をされているというようなことかと思いますが。

 一方で、むしろ透析を実際に導入すること自体は、欧米の方が日本よりも遅いのではないかというような話も聞いておりまして、透析患者の遠隔、長期の成績でいえば日本の方がいいというのが関係者の一般的な評価だろうというふうにも聞いておるところでございます。

 ただ、これはいろいろな要素が絡みますので、ただいま御指摘のありましたように、どういった基準が妥当なのかということについては、いろいろな知見を集めまして、再度、私どもとしても検討してまいりたいと思いますし、また学会の方にも意見を伺ってまいりたいというふうに思っております。

高木(美)分科員 そろそろ時間がなくなってまいりました。やはり、病気になりましたら医者に治してもらうという、こうした依存体質をお持ちの方が大変多いと承知をしております。病院に行ったら治る、そういう幻想ではなくて、むしろ御自分で御自分の健康をどのように管理していくか、この最たるものが生活習慣病であり、また今まで答弁いただきました糖尿病腎症であるのではないかと思っております。

 その意味では、この数が健康フロンティア戦略のように十年間で二〇%減っていくという、この数値につきましては、これはまさに、日本の国民の健康に対する意識の改善ぶり、そしてまた食事に対する意識、運動に対する意識等々、総合的な状況を示す目安ではないかとも思われます。

 ぜひとも、その意味で、先ほど来申し上げておきました低たんぱく食であるとか食事療法であるとか、このことをぜひ医師も、そしてまた管理栄養士の方たちも、そしてまた政治も、総合的に、お一人お一人が安心して長生きできる、そしてまたQOLが保障される、このような状況をぜひともつくらせていただきたい。また、そのために私も努力をさせていただきたいと申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平田主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、郡和子君。

郡分科員 民主党の郡和子でございます。

 このところ、小泉さん、間もなく任期が終わるというところで、ポスト小泉をめぐってのいろいろ報道もなされているところであります。

 安倍官房長官が靖国神社の参拝については明言を避けられました。小泉さんが靖国神社参拝をするということをめぐって、日中また日韓の外交が大変冷え込んでいるということは皆さんもよく御認識のとおりでありまして、ここをいかに解決していくのかというのが、次の総裁・総理に求められる重要な課題だと思っております。そこの説明責任を果たされないというのは大変残念だなと、この報道に関して実は感想を持たせていただきました。正しい歴史認識を持って、そして周辺の各国と仲よくしていくというのが外交の第一であろうと思います。

 きょう、実は厚生労働大臣にお尋ねしたいなと思いましたのは、先日の厚生労働委員会の中でも、戦傷病者等の妻に対する給付金の法案等に関しても大変前向きの御答弁をされていました。また、ハンセン病問題の解決にも前向きに御検討されるということ、それから、戦時中徴用されました朝鮮半島出身者の戦死者に対しての遺骨の返還にも大変前向きに努力される、そういう答弁をされていて、大変心強く、私も強く共感するというふうに思っているところです。

 そこで、きょうは、私はもう一つの遺骨問題について取り上げさせていただきたいと思っております。

 これまで実は我が党でも何度か質問させていただいた件でございますけれども、それは、国立感染症研究所のございます戸山研究庁舎内に保管されております人骨の取り扱いについてでございます。

 納骨から四周年に当たりました三月の二十七日、私もその施設にお参りをさせていただきました。お花をお供えいたしまして、本当にどういうお気持ちでいらっしゃるんだろう、そういう追悼の誠をささげてきたわけでございます。

 百体以上と言われる大量のこの人骨というのは、研究所の建設中に発見され、そしてまた新宿区が行った鑑定や厚労省の調査で、旧陸軍軍医学校時代の標本ではないかというふうなことを聞き及んでいるところです。

 そこで、最初に、厚労省がこの人骨を保管することになった経緯につきまして、簡単にお尋ねしたいと思います。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 平成元年七月に新宿区戸山にある戸山研究庁舎の建設工事現場で発掘された人骨につきましては、墓地、埋葬等に関する法律の趣旨を踏まえ、新宿区が当初保管しておりました。

 平成四年に、国会におきまして人骨の由来等について調査すべきとの議論がございまして、土地の管理者の立場から、厚生省、当時でございますけれども、としても、その由来について調査をすることとなりました。

 人骨の由来調査につきましては、当時の陸軍軍医学校関係者等に対して面接による聞き取り調査や質問票等によるアンケート調査などを行いまして、平成十三年六月にその結果を公表いたしました。この報告におきましては、発掘された人骨が旧陸軍軍医学校が処分した人体標本に由来すると一応推測されるとしており、この結論を踏まえれば、国が埋葬及びそれまでの間の保管に当たるべきものと考えられます。

 このため、政府として人骨を保管することとし、担当省庁を決定するに当たり、人骨が発見された土地を管理し、長期間にわたり調査を実施してきた厚生労働省が、平成十四年三月に新宿区から人骨を引き取り、人骨が人体の一部であることを踏まえて弔意を示しつつ、保管に当たることとしたものでございます。

郡分科員 今御答弁いただきました軍医学校時代の標本類、あるいは標本製作用の医学教育用に集められた死体の一部であったろうという調査結果が出たわけでございます。

 きょう、実は川崎大臣に事前に写真をお見せいたしているかと思います。私もこういうふうに提示をさせていただくのが大変つらい思いもいたしますんですけれども、これが当時発見された骨の一部でございます。十数個の頭骨に脳外科手術の跡、あるいは中耳炎と同じような、大変類似するような、そういう人為的な加工の痕跡があった、あるいはまた、ここに銃創の跡がありますけれども、こういうようなものがあったということでございます。

 今し方報告がありましたとおりに、陸軍軍医学校の標本ではないかということですけれども、通常、大学の医学部などで病院などにございます病理標本というものは、これは死体解剖保存法で、遺族の承諾を得るというのが基本原則となっております。今お見せいたしましたこの人骨というのは死体の一部でございまして、倫理上から見て適切な管理がなされているとは到底思えないわけですけれども、大臣の所見はいかがでございましょうか。

川崎国務大臣 遺族の承諾について申し上げれば、この死体解剖保存法自体が昭和二十四年制定でございますので、この法律と照らしてということでは遡及するのは無理だろうと思います。

 ただ、人骨が遺体の一部であり、尊厳を持って取り扱う必要がある、これは当然のことで、保管施設を設け弔意をあらわしておるということで、厚生労働省として保管をさせていただいているということでございます。

郡分科員 これらの骨の鑑定結果では、顔面等の人種特徴から、大部分がモンゴロイドに属すると推定されるが、モンゴロイド中の特定の人種に同定することは不可能であるなどとございまして、日本人が含まれていることもあり得るが、少なくとも一般日本人集団の無作為の標本ではない可能性が大きいというふうにされております。要するに、この人骨というのは日本人以外のアジア系の人々が含まれているという鑑定の結果でございます。ですから、これは戦時中に、関東軍の防疫給水部、いわゆる満州にございました第七三一部隊に送られて人体実験された人々の遺族の方々から、これは自分の肉親ではないか、そういう訴えも寄せられていると聞いております。

 厚生労働省としてはこういう方々に対してどのような対応をなさっているのか、お尋ねをいたします。

外口政府参考人 厚生労働省におきましては、平成十三年に公表いたしました人骨の由来調査では、この人骨の由来につきましては、ただいま御指摘の関東軍防疫給水部、第七三一部隊との関連を含め、明らかにすることができなかったところであります。

 厚生労働省としては、御家族からの申し立てにつきましては、申し立て書を持参された方々と面会し、当該文書を受領いたしまして、後日、申し立て書を持参された方々との面会の場を設けまして、長い時間をかけて関係者の聞き取り調査を行ってきましたが、人骨と七三一部隊との関連は確認できなかったこと、これ以上の調査が困難であること、人骨は土地の管理者として丁重に保管することをお話ししてまいりました。

郡分科員 鑑定の結果では七三一部隊との関係は確認できなかったということではありましたけれども、全く関係がないという鑑定結果ではなかったわけで、関係もあり得るということであろうと思います。

 実は、夫ではないかという申し立てをされておりました敬蘭芝さん、夫を七三一部隊に送致された敬蘭芝さんは、一九九一年のことですけれども、この人骨の中に実は夫の骨が含まれているのではないか、日本政府に対して、事件の真相を明らかにしてほしいというふうに申し立てを行っております。日本政府からはこの敬さんに対して何の連絡もありませんで、大変失意のうちに、ことしの五月四日に亡くなられました。

 厚生労働省の調査報告の中でも、これらの骨というのは、戦場から集められた戦死者らから作製されたものが含まれていた可能性があるというふうにされているわけでございます。厚生労働省が行った陸軍軍医学校の関係者へのアンケート調査におきましても、戦場に遺棄されている多数の中国兵の戦死体の中から、主として頭部戦傷例を選別し標本として持ち帰ったものと聞いている、あるいはまた、教官が卒業生に研究に必要な戦死体を軍医学校に送ってもらいたいと頼んでいたので、送った卒業生がいたのかもしれないというような回答も寄せられていると承知しています。

 もし、これほど多くの日本人以外の方々の人体を戦前の陸軍軍医学校が入手しているとすれば、これは、一九〇八年に我が国が批准しております傷病者の状態改善に関する第二回赤十字条約に違反しているものと思われます。この条約は、戦死者を略奪や虐待から保護するために、その氏名を伝えて遺留品を返還するように定めているからでございます。また、同じように、戦死者の人道的な扱いを定めましたジュネーブ条約、この精神にも反していると言わざるを得ないわけでございます。戦時国際法におきましては、死者がだれであるのかしっかりと識別した後に、その後でなければ埋葬も火葬もしてはならないというふうになっております。また、死因が不明の場合であれば、その死因について公に調査するということが定められているわけでございます。

 国際法、国内法が求める、死者と遺族に対する人道的、倫理的な取り扱いの趣旨に沿って、身元の確認や死因の究明をする公の調査を可能な限り尽くすことが誠意ある対応だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

外口政府参考人 戦時国際法等についてお答えする立場にないかもしれませんけれども、人骨につきまして、やはりそれが医学の標本として軍医学校に保有されていたという可能性があるわけでございまして、こういったことにつきまして、私ども、その土地の管理者の立場からいろいろな調査をしてまいりました。先ほど申し上げましたような面接調査あるいはアンケート調査、それから軍医学校関係の資料の調査等を行ってまいりました。ただ、そこからはなかなか手がかりがつかめなかったわけでございます。

 いずれにいたしましても、そういった人骨の由来ということについて大変関心があるわけでございますので、そういったことも含めまして今その人骨を保管している、こういうことになっているわけでございます。

郡分科員 保管をしているというふうな御答弁でございました。これは、新たな調査の手がかりが得られることもあり得ることから現状のままで保管をするというふうな御説明であったかと思います。そういう御説明がなされてから、もう既に四年経過しております。このままですと、もう半永久的にあの施設のままに、確かにあの骨の方々、それぞれお名前があって御家族もあった方々だろうと思います、そういう方々の骨がそのままずっと、調べることもせずそのまま置かれるということになりはしないかと、大変心配しているところです。

 最近では、この種の調査におきまして、DNA鑑定やそれからミトコンドリアDNA鑑定、またスーパーインポーズ法など、新しい科学的知見に基づく鑑定手法が開発されて、これは確立しつつあるというふうに伺っています。シベリア抑留者の身元の調査や、また北朝鮮の拉致被害者の調査でも、政府がDNA鑑定に基づいて遺骨の身元確認を行ったというのは記憶に新しいところです。

 また、二〇〇三年のことでございますけれども、沖縄戦におきまして戦死された方々の遺骨の身元調査に、このスーパーインポーズ法という方法が使われました。頭蓋骨を生前の写真とコンピューターで合成いたしまして、目とか鼻とか口とか耳などの位置、そしてまた頭蓋骨との一致状況を見て、その身元を特定するというものだそうですけれども、これでぴたっと身元が特定されたと。

 中国の方からの訴えにありますように、皆さん、生前のお写真も政府の方にお渡しされているわけです。これらの骨とその写真とを合わせてみれば、その人なのかどうかというのはすぐさまわかることだと思うんです。なぜ、こういうような調査をされて、中国からのお訴えをなさっている方々を安心させてさし上げることができないのでしょうか。

外口政府参考人 個人の識別につきまして、DNAを使った鑑定、あるいは同じDNAですけれどもミトコンドリアを使った鑑定、それから写真を使ったスーパーインポーズ法というのがございます。

 ただ、いずれの方法につきましても、例えばDNA鑑定の方法は、サンプルの採取の方法とか、それから、例えばホルマリンを使っている場合にはこれは変性して、なかなか難しゅうございますし、それからミトコンドリア法も、ヘテロプラスミーとか、技術的には、それだけやればすべてわかるというのじゃなくて、これもどちらかというと補助的に使う方法でございます。

 また、スーパーインポーズ法も、技術自体はだんだん進歩しているようでございますけれども、スーパーインポーズ法だけで個人を特定するようなそういった、ある程度もうちょっと手がかりがある中で、絞り込んだ中でということはあるかもしれませんけれども、まだ手がかりが不足している中で、スーパーインポーズ法とかそれからミトコンドリア法などで、それだけで個人を特定することはなかなか困難ではないかと考えております。

 また、私どもも、そういった技術革新の方法については十分意を用いてまいりたいと考えております。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

郡分科員 今、まだスーパーインポーズ法についても確かな技術法ではないというような御発言もありましたけれども、なぜやってみないのかということの方が私にとっては疑問であります。

 確かに、七三一部隊に送致されていって、私の夫ではないかという申し立てがあるわけです。御遺族の方は、写真もあわせて出されているわけですね。そういう中で、この頭骨があって、では、これと合わせてみれば済む、あるいはまた、この頭骨自体の写真をしっかりとデータベース化してとっておけば、さまざまな申し立てがある人たちに対して、それを照合してお答えもしやすくなるのではないかと思うんですが、それについて何ら行動を起こさないというのは、かえって調べたくないのではないかというようなうがった見方もできるんだろうというふうに思いますが、いかがでしょう。

外口政府参考人 確かに、御家族のお気持ちを考えれば、何とか自分の肉親を捜したいというお気持ちであろうかと思います。

 ただ、現状におきまして、今の技術のレベルでは、ある程度絞り込めるような情報がないと、結果として、肯定もできなければ否定もできないという結果に終わる可能性が多いと思います。そういったことも含めまして、私どもとしては、今の技術、さらなる技術革新が必要ではないか、あるいはもっと手がかりが必要ではないか、かように考えておる次第でございます。

郡分科員 それでは、ちょっと質問を別の方向に持っていきたいと思います。

 実は、陸軍軍医学校に勤めておられました看護婦さんが、現在の国立国際医療センターの宿舎付近に敗戦直後多くの標本を埋めたと聞かされたという証言をなさっておられます。この土地というのは東京都に売却する方針だというふうに伺っておりますけれども、人骨標本があるのではないかというようなことをめぐりまして大変交渉が難航しているというふうに聞いています。

 そういう中で、ことしの一月に開かれました第一回国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議に出された資料、これを見させていただきました。これによりますと、その地域というのは、戸山三丁目二の四、戸山五号宿舎ということになりますけれども、「既存宿舎の現在地建替」というふうにこの配付資料ではございました。東京都に売却する計画というのはなくなったのでしょうか。

松谷政府参考人 戸山五号宿舎地の周辺一帯の約一万平米につきましては、関東財務局から平成二年度に、非効率に土地を利用している旨の指摘を受けてございまして、平成五年度より、東京都に公園用地として順次売却を行っているところでございます。平成九年度までに約六千六百平米の売却を完了しているところでございます。

 残る戸山五号宿舎地につきましても、財務省による平成十年から十二年度にかけて行われました行政財産等の使用状況実態調査において、売却するなど有効に利用する必要がある財産と指摘されたため、引き続き売却を検討してきたところでございます。

 しかしながら、この土地の売却については、東京都と折衝を続けてきたわけでございますけれども、周辺施設から今御指摘のように人骨が発掘されたこと等から、現在この折衝が中断しているという状況でございます。

郡分科員 都の方は買いたくないということなんでしょうか。これは、その標本があるのかないのかしっかり調べて、なければそれで売れるわけでしょうし、そういう調べもせず、そのままその土地を宙ぶらりんの状態にしておくというのは大変、どんなものなのかというふうに思います。

 厚生労働省としては、この地域の発掘調査の必要はないというふうなことをこれまでおっしゃられているようですけれども、売却するのか、あるいは宿舎を建てかえるのか、そのいずれにしましても、この際、調査をしっかりとされるべきだと思います。ぜひこの点についてお答えください。

松谷政府参考人 戸山研究庁舎建設時に発見されました人骨の由来につきましては、先ほど答弁がございましたように、厚生労働省が発見場所の土地管理者として実施した調査結果が平成十三年六月に取りまとめられているところでございます。

 その調査結果によりますると、標本が近隣にも埋められたと聞いたとの回答が得られたが、伝聞による一名からの回答にとどまり、遺骨が埋まっている可能性のある場所も特定されていない、このため、厚生労働省が管理する土地を含め、現に得られている情報からは、発掘調査の必要はないと考えられると報告されているところでございます。したがいまして、御質問の人骨発掘調査の実施につきましては、現時点におきましても行う必要はないと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、この土地の売却につきましては引き続き検討していきたいと考えております。

郡分科員 今局長から御答弁ありました、たった一人の伝聞にすぎないということでございましたけれども、そういうふうな話を聞いていると。そして民間のこの問題を追及している団体がいらっしゃるわけですけれども、この方々の調査では、その場所というのも特定されております。こういうことを考えますと、ぜひここの発掘調査をしていただいて、本当に標本類が埋められているのかどうなのかということを明らかにされるべきだと思います。

 この人骨につきましては、その由来、中国の戦死者の方々によるものではないかという見方があるということですけれども、今申しました、国が処分した人体標本に由来するというふうなことでございますし、戦時中に集められた遺体ではないかという疑いも濃厚でありまして、本来は丁重に扱わなくてはならないものだと思いますし、それを無造作に捨ててしまっている。八九年に発見された人骨についてでございますけれども、無造作に捨てられているのを、建築をするときに新たに発見されたわけです。さらに、そこの場所というのは、陸軍軍医学校という国の機関であったわけでして、これは国の責任は免れないものだというふうに思います。

 大臣、これまでのやりとりをお聞きになって、いかが感想を持たれましたでしょうか。お答えください。

川崎国務大臣 今二つの御意見があったと思います。一つは、DNA鑑定等科学的知見が上がってきているのだから、それによってできるのではないか。一方、答えたのも医療の専門家ですけれども、まだ難しいと。ただ、今フィリピン等戦没者の遺骨収集の中で、DNAの鑑定の技術者と我々の接触も多うございますので、もう一度その人に問うてみよう、第一番目は。これはどちらが正しいか、できるんじゃないか、いや、こちらの側は難しいという話でしたから、私の方から専門家に聞いてみましょう。

 それから、二番目の話は、今郡委員が特定できるという話でございましたので、特定できるならぜひ教えてください。それは私どもも、そうしたものが埋められているということになれば当然掘り出して、そして、どなたにしても、日本人であっても中国人であっても、丁重に埋葬はしなきゃならない、こう思いますので、ぜひ教えていただきたい。

 また、郡さんじゃなくてもその関係者の方が知っているというんだったら、第二の証言者になりますので、第一の証言者がいることは事実です、しかし、その方がどこだという特定ができなかった、埋めたらしいという話は言っているわけですから、第一の証言者はいる。第二の証言者として、いや、私はいるところは知っているという方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。善意で申し上げているんです。できればそういうものを解明していくのは当たり前のことだろう、こう思いますので。

郡分科員 今川崎大臣から大変力強い御答弁をいただきました。NGOの方々が、本当に一生懸命一生懸命調査を続けられております。その結果、埋められたというふうにされる地域の特定を既に行っております。これは、住宅地図と、それから航空写真でもしっかりと確認できるものでございます。ぜひ、大臣の今の御答弁にございました、この場所で調査を進めていただきたいというふうに、重ねてお願いを申し上げます。

 戦後六十年を過ぎたわけでございます。川崎大臣も戦後生まれだというふうにおっしゃっておりますが、戦時中のさまざまなことというのを後世にずっと引きずることがないようにしっかりとした調査を行って、そしてまた国の内外にこの調査結果を発表していくということは、政府のかつての戦争に対する責任を果たすことにまさにつながるわけでございますし、そして近隣諸国との友好関係を深めていくというのも、過去の歴史への認識があってこそでき得るものだというふうに思っております。

 厚生労働省は、土地の管理者としての立場からこの人骨の由来を調査してきたわけでございますけれども、新たな調査の手がかりが得られることもあり得るというふうにしておりますので、新しい調査方法がわかっているのであれば、それを必ず実施していただく。そしてまた、その骨が、標本が埋められたのではないかというふうに言われている地域も特定されている。ぜひそこの調査もやっていただきたい。

 先ほど大臣から大変力強い答弁をいただきまして、私もそうですけれども、きょうは傍聴に、その市民運動を長年続けてこられた皆様方もおいでになっておられます。大変心強い思いで聞かれたことだと思います。

 大臣、実はこの人骨が保管されている場所、国会から車で二十分ほどぐらいでしょうか、本当に静かなところで、私も、桜の満開の時期でございましたけれども、伺わせていただきました。大臣もぜひこの施設に視察に行っていただきたいと思います。その上で、ぜひ省内の方々と今後の対策についてお話をしていただきたいというふうに考えております。

 最後に、その点につきましてお尋ねをいたします。

川崎国務大臣 多分、六月の十八日で国会が終わるんだろうと思いますので、時間ができましたらいろいろなことをさせていただきたいと思います。

北村(誠)主査代理 時間です。

郡分科員 はい。

 ありがとうございます。それぞれに名前があった人たち、名前も知らされず、言いたいことも言えないまま、この地に眠らざるを得なかった方々、ある期を経て、この世に再び骨として出てこられたわけであります。その方々の叫びというもの、真摯に耳をそばだて聞いてまいりたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。質問を終わります。

北村(誠)主査代理 これにて郡和子君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉分科員 民主党の泉健太でございます。

 大臣、きょうは本当に長時間御苦労さまでございます。また分科会主査、本当に長時間御苦労さまでございます。

 私は、きょう二点にわたって質問させていただきます。

 一つは、実は先日、青少年の特別委員会で、子供の体力の低下ということについて私は質問させていただきました。その中で、文部科学省の方が子供の体力の低下を指摘し、今全国各地でも、百メートル走を真っすぐ走れない子供たちですとか、ボール投げの距離がどんどん短くなってきているという状況は、きっと大臣も御存じのことかなというふうに思っておりますが。

 実はその中で、子供の体力の低下には三つの要因があるんじゃないのかということを、もう三十年前ぐらいからずっと言われていまして、時間、空間、仲間、この三つの間、最後に間という字がつくからですけれども、この三つの間がないのが問題じゃないかということが言われていまして、私もそれを聞いた瞬間、いいごろ合わせだなと思ったんですが、それが実は三十年前から使われているということを改めて見ましたときに、そろそろ問題点の指摘ではなくて、やはり実際に効果のあることを打ち出さなければならないなということを改めて感じました。

 その中で、文部科学省が体力の低下を指摘しても、それだけで、文部科学省の政策だけですべてが完結できるものではない、目的達成できるわけではないというふうに思いまして、いろいろ調べました。

 そうしたら、学校以外の場所、子供たちが主にどこで遊ぶかといえば、それは公園ということは大臣もおわかりかと思いますが、この公園においては、国土交通省のつくる児童公園、今は街区公園という形に変わってきておりますが、それとまた別に、厚生労働省がつくってこられたというか厚生労働省が基準を定められていた児童遊園というものがございます。私も小さいころ、自分が遊んでいるころは、どれが厚生労働省のもので、どれが文部科学省のもので、どれが国土交通省のものかなんという話は全くわからず遊んでおりましたけれども、そういったそれぞれ施策を打たれているセクションが違うということがわかってまいりました。ぜひ、きょうはそこに注目をして質問させていただきたいわけです。

 その中で、文部科学省の話を聞きましたら、子供の体力をつくる、向上させるために、実は公園の設計あるいは設置基準、こういったものは置かれていないんだということも馳副大臣の答弁であったわけですね。

 ですので、ぜひこれからは、その前回の委員会で私が申しましたのは、やはり子供の体力向上、そして今、大分遊具も硬直化をしてきている現状があるだろうから、ぜひ大胆に見直して、国交省、厚労省、文科省、ぜひ連携をして、子供たちがより親しみやすい、そしてまた体力の向上という観点にも資する、また安全対策や不審者対策、それぞれありますけれども、そういった公園づくりにぜひ取り組んでいただきたいということを私は申しました。そうしましたら、馳副大臣の方は、ぜひ連携をしたいというような答弁をなされました。

 大臣、今少し説明が長くなりましたが、そういった意味で、これからの公園の設置行政、私はぜひ国交省、厚労省、文科省一丸となって、子供に対する視点、これを持っていただきたい、また、情報共有をしていただきたいというふうに思いますが、大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 一カ月ほど前になりますでしょうか、放課後児童クラブというのを私どもの行政が支援をして各市町村で行っている、たしか一万五、六千カ所。対して、文科省が違う切り口で行われている、しかしそのうち四八%が学校を使えているけれども、残りの五二%は学校から外に出た後、小学校、大体一年生から三年生ですよ、それを児童館とかそういうところで受け入れてやっている。

 一方で、そこにいる時間がだんだん長くなってきまして、親が迎えに来るまでですから、六時、七時までなってしまう。すると、二時ごろ終わると五時間いるわけですね。そういう意味では、そこで少し内容も充実してほしい、少し補習みたいなこともできないか、こういう意見も出てきまして、小坂さんと先日話し合いをして、もうこれは縄張りをやめよう、厚生省と文科省で一緒に基本的にはセットして、もちろん我々お金は出すけれども、基本的にはもう地方自治体が責任を持ってやりなさいよと。教育委員会が主体になる、そこへ社会福祉の方が応援をするということで、来年から一本化しようという形でやらせていただいたところでございます。

 この行政も、ずっと私は見させていただいてきて、昭和二十年代は確かに私どもがかなり関与を、児童福祉法の範疇でずっとやってきて、児童遊園設置費補助金制度というものまでつくりましてやってきた時代がございます。それから、四十年からは、今一番評判の悪かった年金の融資制度ということでやってきた。しかし、こういうものはということで、基本的には地方自治体にして、今三千八百二十七カ所運営されておるようでございます。

 流れとしまして、これは一応文科省とも話してみますから、馳さんがそう言われたなら。もうこれは縄張りやめて、市町村で好きなように使いなさいと。そこは余り何をしてということはないにしても、それは市町村が考えたらいいですよ。子供が本当に遊ぶのはどういうものがいいのか。まさかテレビゲームは置かないでねと言いたいけれども。

 やはり、遊ばなくなった理由は、実はテレビゲームだと思っているんですよ。うちも小さな子供、もう大学卒業しましたけれども、十歳ぐらいのとき子供が遊びに来て、うちは広いんですよ、正直言って、二千平米ありますからね、私の家は。だから、子供が遊ぶところは幾らでもあるんだけれども、子供が上がってきて、一人ずつかわりばんつテレビの前に座るんですよ。それで、テレビゲーム、十五分ずつ交代しているんですね。ほかの子はどうしているか、漫画読んだりとか。五、六人友達が来ているのに、外で僕らだったら缶けりやったとかなんとかという話は、しないんですね。テレビゲームの順番待っているというのが、実は子供の遊び方を見て随分変わったものだなという思いを、当時、私の子供が小さかったころ思いました。

 ですから、そういう意味では、一つはテレビゲーム漬け、これをどうやってやっていくのかというのは、本気に大人が考えなきゃいかぬ時代になっているんじゃないかなと思います。

 もう一つは、やはりもう三省の縄張り意識をやめて、なるべく市町村にゆだねて、そこで自由にやっていくという時代でしょうから、馳さん、御提案があったなら少し話してみましょう。いずれにせよ、地方自治体のやりやすいようなものを考えていきたい、こう思います。

泉分科員 非常に前向きな御答弁をちょうだいいたしまして、大変感謝をしています。

 実は、私の選挙区の京都市並びに京都府は、この児童遊園は統計上はゼロということになっております。改めて京都市の方に確認しましたら、二カ所それでもあるというんですね。ここも実は、厚労省の持たれている統計の数と、各自治体の把握している数というのが結構ずれがありまして、東京都なんかでも、厚労省は恐らく百九カ所か何かという数字を持たれていると思いますが、こども未来財団というところが調査をすると、たしか二十一区の合計でも十九カ所ぐらいしかないというような回答が返ってきたりしていまして、かなり実際は、さっき大臣おっしゃられた三千七百という数も、実態は大分変わっている可能性があります。

 その意味で、実はこの児童遊園も、大臣、公園に児童厚生員というスタッフを配置するか巡回させなければならないという制度になったままなんですね。では、実際に、いろいろな連携があって、児童館と一緒に建てられている児童遊園なんかであれば、児童館にそういうスタッフがいますから、子供らを見ることができる。しかし、いわゆる単独型と言われる、公園だけがぽつんと置いてあるところを大人が巡回をするというのは非常にまれなケースでして、残念ながら、児童厚生員、機能している少数の例はあるかもしれませんが、もう今の時代、なかなか現状に合っていないという状況もあるんじゃないのかなというふうに思います。

 その意味では、今、この設置基準とか設置運営についてという、昭和四十年ですとか平成十年でしたでしょうか、いろいろと設置に関する要件が書かれているものがあるわけですけれども、これをもとに自治体が自由に置けるという形はとっているんですが、やはり、滑り台、ジャングルジムだ、ブランコだ、あるいは砂場だ、そして三百三十平米以上とか、そういうような要件がいろいろあるわけですが、これからはもっと自由に、もっといわば地域の子供が自分たちの公園づくりに参画をして、大人と一緒に公園をつくってみる、そんなプロジェクトだってあったっていいんじゃないのかなというふうに私は思っておりまして、今大臣がおっしゃられた方向で、ぜひ、国土交通省もあわせてどうかお取り組みいただきたいと思います。

 この間、実は国土交通省、児童公園から街区公園に変えました。その趣旨というのは、子供がどんどん減ってきている、そして高齢者が公園にもどんどん入っていきたくなった時期だから、児童公園という役割から、全部の世代が入れるような公園にしようというような取り組みなんですね、国交省の流れは。そうなるとどうなるか。

 実は、政令市と東京都、公園にアンケート調査をとりましたら、五二%の公園でキャッチボール禁止というような状況にもなってきていまして、どの世代の子供たちに、あるいはどの世代の人たちに公園に親しんでもらうのかということは、ぜひやはりもう一回整理をし直す必要があるんじゃないのかなというふうに私は思っておりますので、ぜひこのきょうの分科会を機に、大臣、どうかお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 正直言いまして、大臣に非常に積極的な御答弁をいただきましたので、より細かくお話もお伺いをして問題点を追及もしようかなと思っていたんですが、よく官僚の皆さん聞いていただいたでしょうか。もう私はこの大臣の言葉を信じて、また皆さんと細部について打ち合わせをしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 そして、もう一つ、きょうは質問がございます。それは、この四月からいわゆる介護保険法の、かなり細かいところになるわけですが、介護サービス従事者の研修の体系ということが少し変わっていくということであります。それは、介護職員基礎研修制度ですとか、ファーストステップ、セカンドステップ研修とか、いろいろな変更点があるわけですが、やはり全国多くのホームヘルパーさんがおられる中で、そのヘルパー制度も将来的にはこれからなくなっていく方向だというふうに聞いております。そういった意味では、国レベルでは非常に多くの改革がありますけれども、現場レベルでは大変大きなまた動きがあるものかなというふうに私は理解をしております。

 そこで、このことについて本日質問させていただきたいと思いますけれども、ちょうど昨年、一昨年ぐらいからこの研修制度については議論が進められておりまして、そして今年度からいよいよ具体的に介護職員基礎研修というものが始まるというふうに理解をしております。こういった意味でのスキルアップは非常に重要だというふうに思っておりまして、言葉は悪いですが、これまでヘルパー二級あるいは三級というのは、受ければ受かるというようなことも言われてきたのも一つでして、本人のやる気によって、非常に有用なヘルパーさんもおられれば、残念ながらスキルがまだまだ向上されていないというヘルパーさんもおられたというふうに理解をしております。

 その意味で、この基礎研修は非常に重要だというふうに思っておりますけれども、この実施について、研修事業者を指定する都道府県の指定事務の実施準備、これが今ちゃんと進んでいるんだろうかということを多少私は心配しております。

 といいますのも、本来的にはこの四月ぐらいから事業者が指定をされて、学校がスタートをできるぐらいのものでよかったのではないのかなというふうに思っていたわけですが、残念ながらというか、現在のところは、研修事業者の指定に関する規則、この省令がことしの三月三十一日に出まして、そしてまた研修のカリキュラムに関する通知というのが恐らく、今もう出たんでしょうかね、ちょうど近日中というふうに私は聞いているわけですけれども、現状、この作業というものはおくれ、あるいはこのカリキュラムに関する通知、いつぐらいに出されるか、ひとつお伺いをしたいと思います。

磯部政府参考人 委員御指摘のとおり、新しい基礎研修につきましては、三月三十一日に介護保険法の施行規則を公布いたしまして、またその前には全国介護保険担当課長会議等で内容もお示ししているところでございます。

 ただ、残念ながら、御指摘のとおり、その細目を示します通知につきましては、現在発出の準備をしているところでございまして、今年度後半からの研修のスタートを目途として準備を進めておるところでございます。通知につきましては近々に発出したいというふうに考えております。

泉分科員 これは近々、いずれ近いうちということでしょうけれども、もうそろそろの話ですから、具体的に今月中というイメージでよろしいですか。それとも来月にもかかってきますか。

磯部政府参考人 今月中の方向で努力したいと思っております。

泉分科員 規則、省令が出たり、通知が出てくるわけですけれども、一方で、これまでに何度か全国の介護保険の担当課長会議というものが開催をされているかというふうに思いますけれども、では実際に都道府県に通知が行くという段階になれば、私はその意味でもう一度、現場にこれから実施要綱等を徹底していくために、課長会議を開いてもいいのではないのかなというふうに思っておりますが、現在、その予定はありますでしょうか。

磯部政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、本年の二月及び三月に開催いたしました全国の介護保険担当課長会議におきまして、この基礎研修の内容等の周知を図っております。その意味では、基本的な仕組み等については既に周知が行われているというふうに思っております。

 そこで、現在準備をしております通知におきまして、いろいろな細目を定めてそれをお知らせすることにしておりまして、これをお知らせすれば、改めて全国の課長会議をすることもなく、必要な手続が進んでいくというふうに考えております。

泉分科員 細目が書かれた通知が出ますと、今年度後半というふうに先ほど表現をされましたけれども、そこに至るまでの都道府県の作業の仕組み、例えばどういうものが今後都道府県は作業として必要になってきて、それは大体、時期としてはどういった、例えばカリキュラムを策定する、実施要綱を定める、これがスケジュール的には何月上旬、下旬、何月上旬、下旬、そしてやはり指定の事業者にとっては非常に、例えば、日本の通例でいきますと春と秋、いろいろな学校の開校の時期というものが恐らくあるかというふうに思うんですね、そこに間に合うようなスケジュールになっているのかというのが、今全国のヘルパー養成の機関あるいは学校でやはりいろいろと問題になっているところでして、その点、お答えをいただきたいと思います。

磯部政府参考人 その通知におきましては、介護職員基礎研修の各科目の内容でございますとか到達目標、それから指定養成事業者に関すること等をお知らせするという予定でございまして、もちろんそれは都道府県のこれまでの準備状況にもよると思いますが、順調にいけば御指摘の秋には何とかなるのではないかというふうに考えております。

泉分科員 いや、今ちょっと答弁が不安だったような気がしたんですが、順調にいけばと、また、都道府県の準備の状況によるというのは、それで本当によろしいんですか。そうすると、やはり都道府県でこの事業がスタートするものにばらつきができるということを容認されるということでしょうか。

磯部政府参考人 ヘルパーの研修につきましても同様の研修事業をやっているところでございまして、基本的には実施が可能であろうというふうに考えております。

泉分科員 ぜひ、少しでも早く、やはり研修の事業者の側も、今は非常に受講者を集めることにも腐心をする時代になっておりますし、また準備にも、最近、やはり景気が少し回復をしている関係で人材を集めるのがまた非常に大変だということもありますので、その意味で、なるべく早くに事業の細目についてはお知らせをいただいて、そして各都道府県に準備をしていただくように、国の方からも改めて要請をしていただきたいというふうに私は思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 そして、もう一点なんですが、この問題に関しまして、介護職員基礎研修、スキルアップという意味では非常に有効だというふうに理解をしておるんですが、しかし、一方で、モチベーションを高めなければ、ただ単に徒労に終わってしまう。もちろん、社会貢献をするという意味で、介護のスキルアップをすることは非常にすばらしいことなんですが、やはり、せっかく時間をかけて講習を受けた以上は、何らかのメリットがあってよいのではないのかなというふうに私は思っているんですが、残念ながら、現段階では余りメリットが伝わってきていないというふうに私は理解をしております。

 訪問介護、ホームヘルパーの資格制度は当面継続をされていくわけですから、ヘルパーの方も新規にまた登録をする人もいるわけですね。一方で、この基礎研修を受けた方が報酬の面で優遇をされるわけでもありませんし、事業者の側が研修を修了した者を一定程度配置しなければならないということも、たしかなかったんじゃないのかなというふうに思っております。

 そうすると、資格として、これは魅力があるんだろうかということにやはりなるわけでして、何人の方がこの基礎研修を受けるかわからないからそれも定められないんだということではなくして、やはり、そういったモチベーションを高めるからこそ受ける人たちもまたふえてくるわけでして、余り鶏と卵のような議論をしていちゃいけないんじゃないのかなというふうに思います。

 そういった意味で、魅力ある資格づくり、一定程度配置をしなければならないとか報酬の面での優遇、これを考えられているかどうか、お答えいただきたいと思います。

磯部政府参考人 介護職員の基礎研修につきましては、まさに今、四月に制度化されたばかりでございまして、実施もこれからということでございますので、もちろん、研修の実施体制を今後整備していくということは非常に重要だと考えておりますけれども、各サービスへの人員配置基準に位置づけるということ、あるいは報酬の方で何らか評価していくということにつきましては、まだ現時点では時期尚早なのではないかというふうに思っております。

 介護職員の質の向上を目指しますこの制度が、キャリアパスを確立していく上で非常に重要ということは思っておりますが、今後、委員の御指摘のようなことについては十分研究していきたいというふうに考えております。

泉分科員 これは十分研究をされたいということで、当初は何もないところからスタートするということで、大臣、ぜひ何らか、私は、やはり魅力ある資格にしていただきたいなというふうに思っているわけです。

 その中でいいますと、いつこの問題について議論をしていくのかということになってくるわけでして、その意味で、一つは、介護福祉士についても、今まで報酬面でヘルパー一級との差がなかったわけですけれども、今回ようやく訪問介護の報酬についての加算制度の要件ということになったわけですね。

 それでいいますと、三年ごとの見直しということで、社会保障審議会の介護給付費分科会、ここで、平成二十一年四月の改定までにこういったところで議論をしていただくということができるのではないのかなというふうに思っているわけですが、この分科会での議論の俎上にはのせていただけますでしょうか。

磯部政府参考人 本年の四月に改定をいたしたばかりでございまして、介護報酬につきまして、本年の分を、ついせんだって御指摘の分科会から意見をいただいたような状況でございまして、また、この基礎研修を受けた方自身につきましては、今後そういう方が出てくるということもございますので、繰り返しになりますが、このサービスが、あるいはこの基礎研修を受けた方の普及、定着を図るというのがまず第一だと考えておりまして、まだ、その次期報酬改定に向けて議論するかどうかということは申し上げられない状況というふうに思っております。

泉分科員 ただ、厚労省が肝いりで、将来的にはヘルパーをなくすということも視野に入れながら大がかりな改革を行うわけですから、どうなんでしょうね、状況を踏まえてというものではないんじゃないのかなというふうに私は思っておりまして、議論は当然していただけるものというふうに思っていたわけですが、やはりそれもまだ答えられないという状況でございますでしょうか。

磯部政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、まだその基礎研修を終えた方自身が出ていないような状況でございますので、その普及、定着を図り、実施体制を整備するというのが第一と思っておりまして、そうした方々の基準を評価するかどうかというものにつきましては、今後、各サービスのあり方や、あるいは研修の実施状況、その研修を終えた方の就労の実態等を見た上で、また検討していきたいというふうに考えております。

泉分科員 もう一つ、基礎研修の受講をされる方に対して、教育訓練給付制度というのがあると思うんですね。厚労省の職業能力開発局の方でされている制度ですが、これは講座として指定をされる可能性があるというふうに考えてよろしいですか。

上村政府参考人 委員ただいま御指摘のございました教育訓練給付でございますが、これは、労働者の自主的、主体的な能力開発への取り組みを支援するものとして雇用保険制度の中で設けられているものでございまして、職業の安定、就職の促進に資するという観点から、一定の基準を満たす講座を指定いたしまして、その講座を受け修了した方々に受講料の一部を給付するものでございます。これまでも、ホームヘルパーあるいは介護福祉士といった介護関係の資格取得を目的とする教育訓練の講座について指定がなされてきたところではございます。

 委員御指摘の介護職員基礎研修につきましても、今後、指定された介護職員養成研修事業者、そこから講座指定の希望が出てまいりまして、基準を満たすものであると判断された場合には、指定するということになろうかと思います。

泉分科員 今もたしか四〇%あるいは上限額二十万のこの給付制度があるわけですから、ぜひ、こういったものも利用できるようにしていただきたいというふうに思います。

 ちょっと通告にはないんですが、もしお答えいただければ、わかればで結構なんですが、さまざまな指定事業者から御質問等々、詳細、これから出てくると思うんですね。これの窓口というのは都道府県にもあるというふうに思うんですが、国の方でも、そういった質問にお答えをいただけるような窓口ということはあるんでしょうか。

磯部政府参考人 はい。当然のことながら、我が局、厚生労働省の老健局の方で対応したいと思います。

泉分科員 大臣に、前半、児童遊園について本当に気持ちのよいお答えをいただきましたので、私の質問はこれで終わらせていただきたいというふうに思います。

 本当にありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。

 三十分いただきまして質問をさせていただきます。

 今、泉委員の方から、大臣が大変すばらしい答弁をされたということでありましたけれども、実は私も、ことしの三月一日ですけれども、予算委員会の分科会、第五分科会だったと思いますけれども、大臣と議論させていただいたことを覚えています。

 そのときに、私は、社会的入院のこと、療養病床のこと、いろいろお尋ねしました。また、介護三施設のこともお尋ねして、そのときに、大臣の方から率直に、多少もごもごしたこともあったというようなお話もいただいて、私はあのとき、いや、すばらしいな、こういうことを素直にさらっとおっしゃる大臣はすばらしい、このように思ったことをよく覚えています。

 そのときにいろいろ積み残した課題もありまして、きょうはそのことについていろいろ議論をしたいと思いますが、きょうはこうやって近いから私は本当に言いやすいんですが、あのときに私は高優賃というものを議論したのを、大臣、覚えていらっしゃいますか。

川崎国務大臣 ちょっと、はっきり聞き取れなかったな。(市村分科員「高優賃でございます。高齢者優良賃貸住宅について議論したのは覚えていらっしゃいますか」と呼ぶ)

 しっかりとは覚えておりません。当時、十四、五人、質問を三十分置きに受けたと思いますので、しっかりは覚えておりません。

市村分科員 そうですよね。ですから、多分、高優賃も覚えていらっしゃらないと思いますので、しばらく、大臣、事務方の皆さんと議論させていただきますので、よく聞いてください。私は大変怒っておることがありまして、その怒りをぜひとも大臣にも共有していただきたいと思っています。

 と申しますのも、ことしの三月三十一日になりまして、突如として、厚生労働大臣の告示の特定施設の中で、高優賃ならぬ高専賃というのが出てきました。よくよく調べますと、これは去年の十二月ぐらいからこの議論をしていたんですね。どう考えても、私がこの間の質問の趣旨から考えたら、高優賃のことを議論していたら、実は高専賃という議論をしていますということが当然出てこなくちゃいけないんですよ。にもかかわらず、一言も高専賃のことを何にも言わない。事前の、あれだけたくさん官僚の方が来られて、毎回毎回あんなにたくさん私は来なくていいと思っているんです、来られて、いろいろ議論させていただいて、こっちも時間をかけた、官僚の皆さんも時間をかけている、お互い貴重な時間です、そのときに何で高専賃のことが一言も出てこないんですか。御答弁お願いします。

磯部政府参考人 委員と私どもの職員のやりとりは、ちょっと十分承知していませんが、確かに、高専賃の中に高優賃があって、基本的に多分、類似と思ったんではないかというふうに思います。

市村分科員 いや、そういう、だから私は、言い逃れするんだったら、もう徹底的にやらなきゃいかぬかなと思いますね。

 私は真摯に議論をしているんです、真摯に。真摯に議論をしたら、真摯に答えてくれるべきじゃないですか。それを、真摯に議論をしているのに、そういうはぐらかすようなことをされたら、じゃ、もう泥仕合になりますよ。やはり真摯に質問をしたら真摯に、いや、実はこういう制度もあるんですよ、実は十二月ごろから検討していますよと。

 しかも、この高専賃という制度、実は私も二年半ぐらい、このようなことで介護保険に関していろいろ議論をしていますが、実は、その議論の中で私が言ったアイデアにそっくりなんです、これ。似ているんですよ。この間で、療養病床にしても、大臣ももごもごということを認めていただきましたように、結構、私がこの二年半言ったような方向で実は進んでいるので、私としては評価するものがたくさんあるんです。高専賃だって、決して悪いとは思っていない、これ自体は、コンテンツ、アイデア自体は。

 しかし、高優賃の議論をしたときに、いや、実は今度高専賃というのもいろいろ制度をつくろうとしていまして、こういうのがありますからということも、なぜ一言ぐらい言ってくれなかったのか。だから、そういうことが議論なんですか。そういうことが真摯な対応と言えるんですか。

 局長、ちょっと一言。まあ局長としたら、余り御存じないかもしれませんけれども、少なくとも私のところへ来られた厚生労働省の役人の方は一言もおっしゃらなかったんですが、いかがでしょうか。

磯部政府参考人 繰り返しになりますが、ちょっと、どういうやりとりがあったか、十分承知しておりませんので、戻ってよく調べたいと思います。

市村分科員 また、局長としては御存じないかもしれませんけれども、老健局の有料老人ホーム担当の役人の方というのは四代にわたって実は国土交通省から来られているということ、これは御存じですか。

磯部政府参考人 有料老人ホームをすべてやっているわけではございませんが、そういう出向者がいることは存じております。

市村分科員 決して私、厚生労働省だけの問題だとは思っていません。むしろ国土交通省、きょうは国土交通省からもいらっしゃっていると思いますが、国土交通省にも今の質問をもう一回お聞きしたいんですけれども、なぜ、あのとき、私に高専賃のことを教えてくれなかったんですか。

和泉政府参考人 私の記憶違いだったら申しわけないんですが、たしか三月ごろ、先生から御質問いただいたときに、高専賃、そのとき、高優賃という言葉を使ったのか、高専賃という言葉を使ったかはちょっと……(市村分科員「高優賃と言ったんですね」と呼ぶ)高優賃。そのときに、特定施設の検討はなされておるのか、こういう質問をたしか受けたような気がありまして、そのとき、まだ決定したわけじゃございませんが厚生労働省において検討しているはずでございますということを答弁したことだけは、ちょっと記憶に残ってございますが。

市村分科員 ですから、高専賃という概念も今国土交通省でわき上がっているんですよということを、なぜ国土交通省の担当の方は私に伝えなかったんですかね。どう考えても、私とあの議論の流れにおいては、高専賃という言葉が出てこなくちゃおかしいんです、あの議論の流れからすれば。なぜ一言も出てこないんですか。

和泉政府参考人 三月の時点でどういったやりとりがあったかは、大変申しわけございませんが、つまびらかに知っておりませんが、恐らく、今回御質問をお伺いに行ったときに先生から直接御指摘がございまして、したがって、今私が持っている答弁も、高専賃を中心に答弁を準備してございますので、御指摘がございますれば、ぜひ御質問いただきたいと思います。

市村分科員 いや、だから、今質問したいんですよ。質問したいんだけれども、何で真摯に聞いているものに対して真摯に答えてくれないのかということを私は言っているんです。

 大臣、このままだとちょっと見えないと思いますけれども、じゃ、もうちょっと議論させてください、この高専賃について。

 磯部局長、きょういらっしゃっていますけれども、そもそも、有料老人ホームに対して厚生労働省もしくは厚生労働大臣はどういう権限を持っているんでしょうか。お答えください、そもそも有料老人ホームに対して。

磯部政府参考人 有料老人ホームにつきましては、老人福祉法の規定に基づきまして、いろいろな権限がございますけれども、行政の関与といたしましては、届け出を受けまして、また、必要に応じ、立入検査あるいは改善命令をかけることができます。また、情報の開示ということで、従業員の人数、資格等、あるいは一時金の内容等について、情報の開示が必要だというようなことでございます。

市村分科員 磯部局長が、これは共産党の小池委員の質問に対して、結局、私は一時金のことを問題にしてまいりました、一時金に関して、九十日以内の退去について全額返還するような、こうした通知をされるのか、こういう質問に対して、あす付ですがと。つまり三月三十日にお答えになられているんですね。三十一日付で通知を発出しようと思っていますということで、確かに通知は発出されているんです。

 この中で、最後なんですが、「なお、本通知は、地方自治法第二百四十五条の四第一項に規定する技術的な助言に該当するものである。」とわざわざ書かれているのはなぜですか。

磯部政府参考人 基本となります事務が自治事務だということでございますので、通例、そういう我が方からの通知は、技術的助言という位置づけでございます。

市村分科員 ということは、例えば、この九十日以内の退去については全額返還するということをもし有料老人ホームが守らなかった場合、厚生労働省としては何ができるのでしょうか。

磯部政府参考人 当然のことながら、都道府県知事がいろいろな命令をかけるということについて努力いただきたいという意味での助言をするということになろうかと思います。

市村分科員 まさにここが本質なんですよ。

 だから、結局、私もずっと厚生労働省さんと有料老人ホームについていろいろ議論をしてきましたけれども、よくよく考えてみると、これからの主流と言われた有料老人ホームについて、実は国でできることというのはそうないということで、それを考えたときに、有料老人ホーム担当はいわゆる住宅政策を担っている国土交通省からの出向の方がやられているというのは、なるほどそういうことなのかということがようやく見えてきたんです。

 厚生労働省さんとしては、介護保険法があるから、そこについてお金をつけるかつけないか、この判断があるわけであって、その質について、また量の拡大についても、ある意味でいえば、厚生労働省としては余りかかわり合いたくないというか、かかわれないという制度になっているということだと私は今ここで強く認識しているんですが、局長、そういう認識で正しいでしょうか。

磯部政府参考人 自治事務でございますので、究極的な限界というものはございますけれども、一般的に申し上げますれば、厚生労働省からの助言について、基本的には都道府県も十分尊重していただけるのが実態でございます。

市村分科員 いろいろ議論がありますけれども、今都道府県が尊重するとおっしゃいました。でも、結局、現場が今混乱しているんです。なぜ混乱しているか。参酌基準、三七%と定めていますよね。

 さて、今度の高専賃ですけれども、これは特定施設の中に入るんですか、どうなんですか。

磯部政府参考人 一定の要件を満たした高専賃につきましては、特定施設に入ります。

市村分科員 いや、だから、結局、特定施設について、三七%という厳しい参酌基準を設けながら、高優賃でも私は問題にしていたんですよ、高優賃ですら。バリアフリー化して、まだいわゆる高齢者がお住まいになられるようなことに近いだろうと思われる住宅ならまだしも、今度の高専賃というのは、これはバリアフリーは別に義務じゃないですよね。どうです、義務ですか、義務じゃないですよね、これは。

和泉政府参考人 義務ではございません。

市村分科員 そうですね。結局、ある意味でいえば、何でもありになっちゃったんです、これで。

 だから、あるアパートに四カ所ぐらい今あいている、もしくは高齢者の方が住んでいる。では、それについて、一定の基準を満たせば、まず高齢者専用賃貸住宅なんですよ。さらに介護のための一定の居住水準を満たすと、これは特定施設になるという話なんですよ。つまり、これはある意味で何でもありになっちゃったんです。何でもありに、事実上。

 結局、都道府県自治事務といいながら、自治体に対して介護計画、介護保険事業計画を十年間立てさせておいて、参酌基準三七%設けさせておいて、施設介護については、そこだ、三七%だと言っておきながら、一方で、高優賃でも私は問題だと思うのに、もっと幅広い、何でもありの高専賃が今度は特定施設に認められて、介護計画をつくった上で、三月三十一日が突如やってきて、さあ高専賃もですよと。

 もちろん、これは基準は都道府県知事ですよ。知事だけれども、有料老人ホームは使い勝手が悪いということで、これはこれから高専賃になっていって、業界も今シフトし始めたんですよ。それで、守ってくれるでしょうと。守ってくれる以前の問題として、もうはっきり言って、老健局に対して不信感が渦巻いているわけですよ。一体何なんだ、これはという話になってきますよ。いかがでしょうか。

磯部政府参考人 ちょっと先ほどのお答えに不十分な点があったと思いますが、お尋ねの三七%の対象につきましては、介護専用型のものの特定施設に限られておりまして、高優賃あるいは高専賃のように要介護者でない方も入居できる混合型の特定施設というものは三七%の対象外でございます。

市村分科員 では、三七パー対象外ということなんですね、なるほど。

 それならば、ある意味でいえば、もう有料老人ホームでやろうという人は多分ほとんどいなくなると思いますね、業界としては。ということは、もうこれは高専賃にだんだんなっていくということなんです。

 では、高専賃にこれからシフトするということを確認した上で、またいろいろ議論を続けたいと思います。

 私は、基本的に、高齢者の大先輩方の住宅、これが不足していくだろう、だから量的にも確保しなくちゃいけない、これについては、行政府の担当者として考えるのはむべなるかなというか、理解できます。

 しかし、このままいくと、余りにも質が問われていないんです、質が。有料老人ホームですら、有料老人ホーム協会という業界団体を持って、だから、いろいろな問題を起こしているわけです、一時金の問題とか、入ってみたら全然違ったとか。高専賃に入った方がもし悪徳業者にだまされていた場合は、どうやってこれは守っていくんですか、いかがですか。

和泉政府参考人 まず、高専賃で特定施設は何でもありということになったとおっしゃっていたのでありますが、厳密に言いますと、先生御案内のように、特定施設の入居者生活介護を受けるためには、単に高専賃だけじゃ不十分でございまして、入居基準とか設備基準、したがって、そういったものをクリアすることが大事でございますので、高専賃であれば何でもいいということじゃなくて、厚生労働省で定めた規模基準あるいは前払い家賃に対する保全措置の基準、あるいは今御説明した人員基準や設備基準等が前提であると。

 その上で、次の質問でございますが、当然、この高専賃も含めて、先生よく御案内の登録住宅というのは都道府県に登録がなされます。そして、登録する際に的確な情報提供を義務づけておりまして、仮にそういったことが不十分であれば、当然都道府県として指導助言をいたしますし、加えて、うその登録をしておれば、そういった登録については取り消しをするというふうなことを含めて、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

市村分科員 今、前払い家賃とおっしゃいましたか。おっしゃいましたね。

 まさに前払い家賃、何でこれは、前払い家賃を徴収する場合は高齢者居住法に基づく保全措置を講じることと、わざわざ特定施設の指定を受けるための要件に書いてあるんですか。磯部局長、お願いします。わざわざ、なぜ前払い家賃という言葉がここに入ってくるんですか、この特定施設になるための。

磯部政府参考人 まさに委員も御承知のとおり、有料老人ホームにおきましても、知事への届け出あるいは一時金の保全措置の義務づけを行わせております。それを、その有料老人ホームの届け出を免除する措置もございますが、その条件といたしましては、まさに高専賃におきましても、この保全措置が講じられていることを満たす必要があるということでございます。

市村分科員 いや、だから、なぜ、高専賃が特定施設の指定を受けるための要件にわざわざこの一文が入っているんですかということをお聞きしているんです。今言葉は入っているということをお答えいただいたんだから、なぜわざわざこの一文が入っているんですかということをお聞きしているんです。

磯部政府参考人 まさに、高専賃のすべてが特定施設ということではなくて、一定の要件を満たし、有料老人ホームにも匹敵するようなものについてということで、その規定が入っているわけでございます。

市村分科員 それはそう、だから私は聞いているんです、わざわざ入っているから。なぜわざわざこの一文が入るんですかということなんですよ。

 それで、私が今まで何を問題にしてきたか、局長、御存じですよね。私は、有料老人ホームの一時金の問題を問題にしてきたんです。

 これについては、きょうは公取の委員長も来ていただいていますが、公取も御努力いただきまして、すばらしい、景品表示法をきちっとしていただいて、かなり厳しい、質を満たすようなものじゃない限りいかぬということをやっていただいております。

 そこで、先ほど申し上げたように、そうした業界団体がある有料老人ホームですら、一時金の問題が大変問題になっている。つまり、返ってこない。ようやくそれが、それこそ、三月三十一日付でまさに助言をされたわけですね。ようやく、これを九十日以内であれば全額返さなければいかぬとなったところなんです。ようやくですよ、有料老人ホームに関しては。

 では、高専賃は、わざわざまた前払い家賃という名のものを入れてあげて、またこれはいろいろ調べたら、百万とか七十五万からとか五十万からとか、いろいろ高額の前払い家賃を払わなければいかぬのですよ、これは。これは費用だ。済みません、前払い家賃の三百万というのがありますね、百四十四万九千円とか。

 公取委員長、済みません、高専賃は、いわゆる有料老人ホームに対するような、こうした景品表示法に基づくような告示の対象になっているんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 現在の有料老人ホームの告示の対象にはなっておりません。

市村分科員 公取さんとしては、今後、きょうのこの議論を聞いていただいて、すなわち、やっとこさですよ、有料老人ホームがやっとここまで来たんです。これからふえていく需要に対してやはり質のよりよいものを高齢者の方々に提供するような、やっとこさここまで来たのに、ある意味で、業界はもう有料老人ホームから高専賃にという流れですよ、今。ということは、つまり規制がきかないというところに、つまり我々の、公取の手が届かないところに行こうとしていますが、今後、これについて公取として議論していただくということでどうでしょうか、おっしゃってください。

竹島政府特別補佐人 告示の対象にはなっておりませんが、仮にその高専賃が一定の基準を満たしていないということで不当表示に該当するというような場合は、今でも景品表示法のまさに規定を発動しまして不当表示として処分することはできるわけでございます。それはこれからも同じでございますし、仮に御心配のような事態が発生した場合には、これは厚生労働省とも御相談が必要だと思いますが、この有料老人ホームの告示の対象を広げるということもあり得ると思っております。

市村分科員 あと、いろいろちょっと細かい質問をしていきます。

 この高専賃は、これは終身利用権設定なんですか、それとも定期借地権設定なんでしょうか。正確にはどっちなんでしょうか。

和泉政府参考人 高専賃で採用できる借家契約のパターンは、通例の一般借家でも結構でございますし、終身建物賃貸借の要件を満たせば終身建物賃貸借もあり得る、こういったことでございます。

市村分科員 あと、きょうは内閣府からも消費者保護の観点から来ていただいています。

 まさに消費者契約法もでき、消費者基本法もという流れの中で、やはり、私はなぜこの議論をしているかというと、これから、ちょうどそこに座っていらっしゃる先輩方が、多分これから一番大変な世代の方が関係してくると思うんですけれども、まさに自分たちの身になっていただきたいんですよ。

 自分たちがもしだまされて、例えば有料老人ホームなんていったら、高い一時金を払って、それこそ貯金をはたいて買ってみたら全然違っていたという話で、守られないと。一時金も返ってこない、それで倒産したら上限五百万だ、その五百万さえ戻ってくるかどうかわからないと。こういう流れの中で、私は、これでいいんですかということをやりながら、公取さんとか、もう本当に一生懸命やっていただいて今ここまでやってきたんです、この有料老人ホームに関しては。

 ところがですよ、今度は高専賃ということで、何でもありじゃないというのは、それは当然ですよ、当然そういう基準だって高専賃にはあるわけです。それでも、ある意味では何でもありになっています。今まで有料老人ホームを見てきた私からすると、これで何でもありの状況になっちゃったんです。なっている、今一時的に。そうすると、ここにシフトしてくるのは流れなんですよ。そのときにどうやって大先輩方の消費者を守るのかというのが大切なんですね。

 そのときに、どうですか、今の議論を聞いていただいて、内閣府の消費者保護の観点から、ぜひともちゃんとこれはやらなければいかぬということを一言おっしゃってください。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者契約法は、すべての消費者契約について一般的に適用されるものでございまして、いわゆる高専賃につきましても、当該賃貸借契約が、この法律に規定いたします消費者契約に該当する限り適用されます。

 この高専賃におきまして、賃貸人が、賃貸借の期間にかかる家賃の全部または一部を前受け金として一括して受領した上、仮に未使用期間に相当する家賃についてまで、賃貸借契約の解除にもかかわらず一切返金しないというような旨の契約条項に基づきまして返金しないというような取り扱いがなされるようなことがあれば、当該契約条項は、消費者契約法第九条第一号によりまして、賃貸人に生ずべき平均的な損害の額を超える部分について無効ということになるわけでございます。これに基づきまして消費者トラブル等については対処が行われるというふうに考えております。

市村分科員 今のお話は、ちゃんと消費者保護の観点から頑張る、やれるんだということですね。それでよろしいですね。

 ただ、この前払い家賃というのが、これは非常に微妙なところですね。一時金じゃないんです、前払い家賃。前払い家賃というのは、そもそも戻ってくるということを想定しているんですか、それとも想定していない、どちらでしょうか。

和泉政府参考人 そもそも、高専賃などで前払い家賃等の概念を導入したのは、高齢者がいわゆる年金生活等に入って余裕があるうちに一時金で払っておきたいというような背景もございまして、そういった制度は準備してございます。しかし、当然のことながら、いわゆる一番広い高専賃の中でも、そういった保全措置の有無等についてはちゃんと登録事項になっております。

 加えて、仮にそういったものについて返金しない等があれば、今内閣府からお答えしましたように、消費者契約法に基づきましてしっかりとした対処がなされるもの、こう考えております。

市村分科員 もう一回明確にしておきたいんですが。ということは、前払い家賃というのは戻ることを前提にしているということですね。いわゆる敷金、英語でいうデポジットですが、これでいいですね。

和泉政府参考人 敷金以上にたくさん払うことがございますので、使っていないときは当然戻ってくることが前提でございます。

市村分科員 今、いわゆる高専賃が四千四百戸ぐらい全国にあるらしいんですが、この前払い家賃というのの中にそれこそ、ちょっと私の調査ですからこれが正しいかどうかわかりませんが、百二十万から三百万とか、百四十四万九千円とか、かなり高額な前払い家賃と称するものがあるんですけれども、これは一体何なんでしょう。こんな前払い家賃というのはあるんでしょうか。

和泉政府参考人 いわゆる今先生おっしゃった一時払いについては、賃貸住宅ですから一般的ではございませんが、私どもが把握している中でも全部で二十七件ほどございまして、まさに今先生御紹介のように、非常に小さな額もございますし、最大が三百五十万だった、こういった事実もございます。

 この中身でございますが、繰り返しになりますけれども、年金生活に入る前に、家賃について、ある意味ではデポジット的に払える余裕があるうちに預けておこうというニーズもあるものですから、そういった制度を設けておりますけれども、もちろん義務ではございませんし、一般論として見れば、これは賃貸借契約でございますから、こういったものは一般的にはないと思います。

市村分科員 いや、でも、一般的になくても、今おっしゃったように三百五十万というのもあるんですよね、現実として。だから、私が恐れているのは、そういう高額な前払い家賃という名の一時金を払わされて、ちゃんとそれなりのサービスを受けられるならいいですよ。ところが、それこそ株式会社ですから、こういうのも。それから個人もいるんですよ、株式会社だけじゃなくて個人もいるわけです。有限会社もある、個人もあるという話の中で、これは、もし株式会社は倒産しました、保全措置を幾らしろと言っても、いや、ないそでは振れませんよ、ありませんよと言ったら、結局これは泣き寝入りなんでしょうか。保護する方法はあるんでしょうか、この高齢者の方は。

和泉政府参考人 おっしゃるように、究極の姿としてそういったようなケースがないとは申しません。ただ、当然のことながら、ちゃんとした民民の契約でございますので、仮にそういった本来の債務が履行されなければ、当然民民の世界でしっかりと請求していくということになります。

 ただし、先生の御心配になっている向きはよくわかりますので、先生も高齢者専用賃貸住宅等の意義については御理解いただいている、そこから先のことを御心配だと思いますので、その辺は、今後、厚生労働省と十分相談しながら、御心配の向きについて十分注視して、必要な改善があればやってまいりたい、こう考えております。

市村分科員 実は、有料老人ホームですら今裁判を起こして、いわゆる入居者が勝ったことがないんです、裁判で。ほとんど最後は和解するんです。しかも、ほとんど泣き寝入りです。要するに、高齢者の方が、もし自分が七十、八十になってあんな細かい裁判をやらされたらどうしますか。はっきり言って嫌になりますよ。そのことを高齢者の立場に立って考えていただきたいんですね。

 大臣、この議論を聞いていて、最後に一言だけいただいて私の質問を終わります。ありがとうございます。

北村(誠)主査代理 簡潔に。厚生労働大臣。

川崎国務大臣 消費者の立場に立っていろいろ御質問いただいて、私も聞いていてある程度わかりました。しかし、それを都道府県にきちっと知らせるということが一番大事なんでしょうね、今の議論を聞いていますと。それは、国土交通省もしっかりやりますでしょうし、厚生省もしっかりフォローアップしたいと思います。

市村分科員 終わります。ありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上義久君。

井上(義)分科員 公明党の井上義久です。

 きょうは、内部障害者に対する施策についてまずお伺いしたいというふうに思います。

 大臣、御案内だと思いますけれども、いわゆる内部障害者の方というのは、外見からその障害がわからないということもあって、例えば、優先席とか、あるいは駐車場、車いすマークがあるんですけれども、内部障害者のマークというのはありませんから、外見上わからないということで、なかなかそういうところを利用しづらいということもあります。

 それから、障害のある臓器、例えば心臓とか肺とか、それだけじゃなくて、やはりそれに伴って全身の状態が非常に悪くなるということなものですから、疲れやすいということで、例えば、長時間集中力を維持することが難しいとか、あるいは根気に欠けるというようなことがあって、就労しても、何か怠けているんじゃないか、そういう職場のトラブルがある。こういうことに皆さんは非常に悩んでいらっしゃるわけでございます。

 そういうこともあって、実は昨年の二月の衆議院の予算委員会で、私は内部障害者の皆さんの状態というものをもう少し国民によく認識してもらった方がいいんじゃないかということで、障害者の皆さんが自主的につくられている、大臣の机の上にも置いてございますけれども、こういうハート・プラスマークというのがあるんですね。これは障害者の皆さんが自主的につくられているものですけれども、例えば、こういうものが車いすマークと同じように普及して、内部障害者の存在というものをよく皆さんに認識してもらった方がいいんじゃないかということを取り上げたんです。

 その後、それをきっかけに、内閣府でも政府広報なんかにも載せていただくとか、あるいは我が党の地方議員の皆さんがそれぞれ地方議会でこの問題を取り上げて、大分普及してきて、内部障害ということについての認識が大分深まってきたんじゃないかな、こんなふうに思っているわけでございます。

 それを踏まえて、まず大臣に、内部障害者の特性とか、あるいは障害者の数の動向とか、また内部障害者施策の必要性と今後のあり方等について、総括的にお伺いしたいというふうに思います。

川崎国務大臣 たしか委員会で二、三の方から御質問いただいたと思いますし、この間、パラリンピックのメダリストと会食する機会があって、これが議論になりました。というのは、車いすの方々はあのマークがついているから車がとめやすい。ところが、他の人たち、内部障害者も含めて、あのマークは何となく、あれは障害者はだれでも車をとめていいですよというマークにもかかわらず、他の障害を負っている方々、内部障害者の人たちが車をとめにくい、何かあのマークに一工夫ないんだろうかと。

 そのときに、このハート・プラスの話が出まして、それではこれと車いすを組み合わせたような看板を立てることによって、もう少し全体的に使いやすくできないものだろうか、あれは、車いすの人の専用の駐車場ではありません、障害者全体の駐車場でございますと。そんな議論をいたしておりまして、実はもう少し検討せいと言って今おろしたところでございます。

 内部障害者とは、身体障害者に含まれ、一定の内臓機能障害がある方、具体的には、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害がある方と承知いたしております。内部障害者は約八十五万人というように承知いたしております。

 これらの内部障害者については、障害の部位や生活状況等に応じ、障害者自立支援法に規定する障害福祉サービスのほか、自立支援医療を必要とする方であると認識いたしております。

 内部障害者については、その障害の特性上、外見からわかりにくいなどの特徴があることから、内部障害についての理解を深めるための普及啓発活動を実施している内閣府等の関係省庁ともよく連携を図りながら、内部障害者に対するサービスの充実にまず努めてまいりたいと考えております。

井上(義)分科員 内部障害者の方なんですけれども、厚生労働省の五年に一回の調査によりますと、例えば平成三年は四十七万六千人で、障害者全体の中で占める比率が一七%、平成八年は六十三万九千人で二一・二%、平成十三年は八十六万三千人で二五・九%、数もふえていますし比率も非常にふえているという実態があるわけです。

 的確な対策を講ずるためにも、やはり内部障害者の実態の把握が不可欠だというふうに私は思うわけです。そういう意味では、ことし、平成十八年は五年に一回の調査の年に当たっておりまして、そこで、内部障害者の障害者数の動向ですとか、発症原因、生活の実態、あるいは福祉サービスの実情、就労、雇用の状況など総合的な実態調査を行って、今後の施策立案の基礎となるようなしっかりした調査をやってもらいたいというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 ただいま委員から御指摘がございました実態調査でございますが、今年度、身体障害児・者等実態調査、これを実施する予定でございます。この中では、障害の種類別、程度別に見た人数、障害の原因と発生時期、日常生活の状況、福祉サービスの利用状況、必要としているサービスの種類、あるいは就業、雇用の状況及び雇用の希望、こういうような項目をとることにしております。

 この実態調査によりまして、内部障害の方を含めました障害を持たれた方々の生活の状況、就業の状況、現在受けているサービス、必要とするサービスの状況、こういうことを把握いたしまして、今後の施策に生かしてまいりたいと考えております。

井上(義)分科員 ぜひ、しっかりお願いしたいと思います。

 そこで、内部障害の方々の、疲れやすいとか、あるいは集中力とか根気が長時間継続できないということがあって、やはりできる限り体力の保持に努めるというのが共通の課題になっています。そういう意味で、例えば電動車いすとか、あるいは電動自転車、最近相当普及していますけれども、こういったものを内部障害者の福祉機器にしてもらいたいという強い要望があります。また、呼吸器障害の方々からは、いわゆるパルスオキシメーター、血中の酸素濃度をはかるものですけれども、これは呼吸器障害の人にとっては必要不可欠なものですけれども、こういったものを福祉用具の対象にしてほしいという要望もあります。

 これらの点について、今厚生労働省はどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 今般成立を見ました障害者自立支援法におきまして、障害者のための福祉用具等といいますと、二つに大きく分かれまして、補装具と日常生活用具、こう二つあるわけでございます。

 補装具につきましては、基本的に、障害を持たれた方に対してテーラーメードをするようなイメージの機器でございます。これにつきまして、この新しい制度におきまして、透明性を持った給付を行うという観点から、補装具の新規種目の追加、あるいは価格改定などを検討するような専門委員会をつくって、しっかり検討していただきたいと思っております。御指摘のございました電動車いすあるいは電動自転車、これも委員会において審議に付して御意見を伺ってみたいと考えているわけでございます。

 次に、お尋ねのございましたパルスオキシメーターでございます。これは、テーラーメードというよりも既存の品物でございますので、日常生活用具という形になろうかと思います。これについては、本年十月から市町村が行います地域生活支援事業の必須事業といたしまして、日常生活用具の給付事業を行うことになっておりまして、その対象になり得るものと考えます。

 ただ、決定者といいますと市町村になりますので、やはり私たちは、市町村がどのような給付をされているのか、国としてもその状況を調べまして、それをいろいろな市町村にお教えすることによりまして、私たちとしても、こういう実態の把握、あるいは皆様の不都合がないような、こういう措置を講じてまいりたいと思っております。

井上(義)分科員 実施するのは市町村ということはそのとおりだと思います。

 ただ、内部障害者の方が住んでいる地域によって受けるサービスが違うというのは、今、横の連携、皆さん特にネット等を通じて情報交換をいつもされているわけでございまして、そういう意味では、市町村にばらつきができないように、できるだけ厚生労働省として配慮していただきたい、周知徹底していただきたいということを重ねて要望申し上げておきます。

 その次に、内部障害者の就労、雇用についてお伺いしたいと思います。

 大臣、先ほどから、外観からはなかなかわかりにくいということもあって、内部障害者の方々の雇用については相当きめ細かな対応が必要だというふうに思うわけでございまして、まず、内部障害者の雇用に関する施策のあり方について総括的に所見を伺いたいと思います。

川崎国務大臣 内部障害者の方々については、身体障害者として障害者雇用率制度による雇用義務の対象になっているほか、各職業リハビリテーションの措置を講じることにより、その雇用の促進を図っております。ハローワークで昨年四千二百五十三名の就職のお世話をさせていただきました。

 しかしながら、内部障害者の場合には、外観からはわかりにくいという障害の特性により、周囲の理解が得られにくいこと、障害の態様がさまざまであり、個別的な対応が必要であること等から、各企業において雇用管理面の配慮が十分に整っていない場合が少なくないと考えられております。

 実は、私も事務所で、透析をしている方々に、一日置きに来てもらうには結構、車の運転なんか随分してくれまして、そういう意味では、そういう一日置きだよという配慮をすればできる、一日五時間までだよ、それ以上身体的に厳しい仕事をしてはいけないと、何か採用する側が少し気をつければ、能力のある人たちは多うございますので、しっかり仕事をしてくれるんだろうと思っております。

 そういう意味では、ハローワークを通じながら、企業に対する働きかけ、それをしっかりしていかなきゃなりませんし、また、一・八が達成されていないところは、実はいい人がいないんだという話を逆にもらいますので、事務的には能力がある人はたくさんいますよということで、私どもが働きかけることが大事だろう、こう思っております。

井上(義)分科員 大臣に御理解いただいているので、大変心強く思いますけれども、内部障害者の労働環境を整えるためには、やはり、雇用者の側、職場の皆さんに障害の特性というものをよく理解していただく必要があるだろうというふうに思います。企業に対して、まず内部障害者に対する雇用管理上の配慮事項について周知啓発するということが必要だと思いますけれども、その取り組みについてお伺いしたいと思います。

鳥生政府参考人 御指摘のとおり、内部障害者の雇用の促進のためには、企業に対して、内部障害の特性や雇用管理上の配慮事項について周知啓発することが重要であるというふうに考えております。このため、雇用ガイドブックや内部障害者の職場環境についての雇用マニュアルを作成いたしまして、長時間労働を避ける、通院機会を確保するなどの労働時間面の配慮、あるいは、健康診断の受診機会の確保などの健康管理面の配慮など、企業が雇用する上での留意する点について、企業への啓発に努めているところでございます。

 また、今年度におきましては、内部障害者の雇用の好事例を募集いたしまして、それによって、収集されました事例を職場改善好事例集として取りまとめ、普及啓発することとしております。

 今後とも、このようなガイドブック等も活用しながら、企業に対する啓発に最大限努力していきたいと思っております。

井上(義)分科員 次に、職業訓練の問題で、障害者の職業能力開発については、一般の公共職業能力開発校で障害者を受け入れる、あるいは、障害者職業能力開発校でも行われているわけですけれども、内部障害に着目した職業訓練というのがなかなか行われていないんじゃないかというふうに思います。内部障害者が非常に増加傾向にあるということと、能力的には健常者と差異はないけれども、長時間労働に非常に不適であるという特性に着目した職業能力開発をやるべきじゃないかというふうに思います。

 本年度、実態調査をやることになっているわけですけれども、その実態調査を踏まえて、例えばモデル事業という形で立ち上げてみたらどうか、このように思いますけれども、どうでしょうか。

上村政府参考人 委員からお話がございましたように、内部障害者が増加傾向にある中で、障害者職業能力開発校、全国に十九校ございますが、そこに入校されております内部障害者の数も増加をしているところでございます。

 そこで、内部障害者の方々が受講されている訓練科目でございますが、経理事務、OAビジネス、そういった事務系や、システム設計、情報処理といった情報系、それから、製版や印刷製本、デザイン、グラフィック系と申しますか、そういった科目を多く受講されているところでございまして、障害の特性や体調、それらを考慮したコースの選択がなされているのではないかというふうに思います。また、訓練する側でも、職業訓練の実施に当たって、必要に応じて休憩時間を調整するとか、定期的な健康チェックを行う等の受講者の体調管理に配慮した運営に努めさせていただいているところではございます。

 ただ、内部障害者に特に着目した訓練という科目を設置しているわけではございませんが、今委員からお話がございましたように、実態を十分把握し、また本人のニーズ、それらも踏まえながら、どういった訓練分野が有効であるか、委員からお話のありましたようなモデル事業等も含め、障害特性に配慮したより効果的な訓練はどういうものがあるのかということについて検討してまいりたいと思っております。

井上(義)分科員 ぜひお願いしたいと思います。

 内部障害者の皆様の意見を聞きますと、どうもやはりミスマッチがあるというふうに感じますので、その辺は、せっかく職業能力開発をやるわけですから、ぜひマッチングするようなことを考えていただきたいというふうに思います。

 先ほど大臣からも御指摘ありましたけれども、内部障害者の人というのは、いわゆる長時間勤務は難しいということがあって、短時間ならできるということがあるものですから、短時間労働に着目した障害者雇用の促進ができないかということなんですね。

 例えば、内部障害者を含む重度以外の身体障害者についても、週二十時間以上三十時間未満の短時間労働者に対して、雇用率制度上算定対象にできないかというようなこともありますし、それから、週二十時間未満の内部障害者の短時間労働についても、これは通常の身体障害者の場合は、例えば補助金なのか交付金なのかちょっとわかりませんけれども、そういう制度があるように、内部障害者についても何らかの措置ができないのかということをお伺いしたいと思います。

鳥生政府参考人 障害者雇用率制度においては、今お話がございましたように、重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者、週二十時間以上三十時間未満につきましては、算定対象となっているところでございます。

 また、昨年の通常国会におきまして成立した改正障害者雇用促進法によりまして、本年四月から、精神障害者保健福祉手帳を所持している精神障害者について、実雇用率の算定対象といたしまして、精神障害者である短時間労働者についても〇・五人として算定対象としたところでございます。

 内部障害者を含む重度以外の身体障害者である短時間労働者について雇用率の対象とすることにつきましては、昨年の改正障害者雇用促進法の審議の際の附帯決議も踏まえまして、今後、関係者の意見も聞きながら検討していきたいというふうに考えております。

 また、週二十時間未満の障害者につきましても、その雇用の促進を図っていくということは非常に重要でございまして、従来から行っているきめ細かな職業リハビリテーションの措置を引き続き実施するとともに、関係者の意見も聞きながら、必要な支援策について検討を行っていきたいというふうに考えております。

井上(義)分科員 ぜひ、短時間労働の場合、二十時間以上三十時間未満、一、二級の場合、重度の場合は算定されることになっていますけれども、せっかく働けるのに、これが算定されるようになれば企業としても罰金を払うよりよっぽどいいわけですから、そういうことをぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 その次に、高次脳機能障害の対策についてお伺いしたいと思います。

 実は、平成十年に、この高次脳機能障害ということについて私は質問主意書で取り上げて、いわゆる医療、福祉サービスのはざまに置かれているということでこの問題を取り上げたんですけれども、その後、厚生労働省は、平成十三年に初めて本格的な予算を組んで、診断技術とリハビリプログラムの確立、あるいは地域支援システムの確立を目的とする、いわゆる五年間のモデル事業を実施していただきました。これは大変高く評価しております。

 そこで、まず大臣に、この高次脳機能障害ということについて大臣はどのような御認識をお持ちか、ちょっと所見を最初に伺っておきたいと思います。

川崎国務大臣 私も少し読ませていただいたんですけれども、脳外傷や脳血管障害の後遺症として、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害を生じる障害、こう定義づけられておりますので、そういう面では、外見からその障害の特性がわかりにくいということで、診断、リハビリテーション、生活支援等の手法も確立していなかった。今、井上委員の御指摘のように、そのようなことから、十三年度からモデル事業を行って、どういう形でこれからやらせていっていただいたらいいかということで検討してきているところでございます。

 モデル事業の成果を踏まえ、全国に支援手法の普及を図るべく、高次脳機能障害を有する方のニーズにこたえられる支援体制、なかなか、それぞれ本当にわかりにくい課題を抱えておると思いますけれども、しっかり勉強しながらやっていかなきゃならぬ課題、このように位置づけさせていただいております。

井上(義)分科員 高次脳機能障害の人を抱える家族の実態というのはなかなか厳しいのが現状で、ようやく政府としてもこの施策が進み始めたということについて非常に大きな期待があるわけです。

 特に、ことしから高次脳機能障害支援普及事業がスタートするわけです。これは、先ほど申し上げた五年間のモデル事業の成果を面に展開するという事業で、私はポイントは二つあって、一つは、都道府県における地域支援ネットワークのかなめとなる支援拠点の整備と高次脳機能障害に関する専門的人材の育成、それから二つ目が、障害者保健福祉サービスの実施主体である市町村の担当職員の研修じゃないかというふうに私は理解しているわけです。

 しかし、今、障害者医療とか福祉行政の現場は、自立支援法の対応、四月からスタートして、それに相当忙殺されているというのが現状で、よほどしっかりプログラミングをして的確な事業展開をしないと、この支援普及事業の実効性はなかなか担保できないんじゃないかというふうに考えています。

 また、普及事業以前に、診断基準の、医師への、特に精神科医になると思うんですけれども、周知徹底というのもさらに必要なんじゃないか、このように思いますけれども、まず当局の取り組みの方針をお聞きしたいと思います。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘のとおり、地域での展開、それから、マンパワーといいますか人材の養成、これが非常に大切でございます。

 この中身といたしましては、モデル事業で得られました成果というものが多々あるわけでございますので、まず研修でございますが、これは、医師を含めまして、やはりよく理解をしていただく行政官の養成も含めて、国といたしまして、モデル事業により得られた訓練プログラムや支援方法などの習得を目的に、国立身体障害者リハビリテーションセンターにおいて研修を行っておるところでございます。これらにつきましては、ますますそれが充実するように努めてまいりたいと思っております。

 次に、都道府県における展開でございます。

 本年十月から障害者自立支援法の対象となります都道府県の地域生活支援事業、これにしっかりと高次脳機能障害支援普及事業を位置づけまして、各都道府県でやっていただくわけでございます。円滑に現在やっているところが移行できますように、また、今は取り組みがちょっと薄いところは頑張っていただくように、全国主管課長会議の場面などでお願いをしておるところでございますし、また、この事業が適切に実施されますよう、引き続き各自治体に対しまして情報提供する、お互いの交流を促進する、このように努めてまいりたいと思っております。

井上(義)分科員 他の障害については、相当歴史もありますし、積み重ねもあって、そういう関係者の認識も非常に進んでいるわけですけれども、何しろ高次脳機能障害というのは、非常に新しいといいますか、もともとあったんでしょうけれども、認識されてきたのがようやく最近ということでございますので、ぜひ、研修等、しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一点、障害者自立支援法に関連をして、先ほどから申し上げておりますように、この高次脳機能障害の特性というのはなかなかまだ広く理解されていないという現状があります。

 そこで、皆さん非常に心配しているのは、障害程度区分で不当に低い区分になったり、あるいは、支援サービスや施設受け入れで不利な扱いを受けるんじゃないか、こういう不安、懸念があるわけです。患者家族とか関係者からこうした声が多数寄せられています。

 高次脳機能障害の方々の障害程度区分や支援サービス等について、厚生労働省としてどのように対応していくのか、現状認識、また今後の対応方針についてお伺いしたいと思います。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 障害程度区分でございますけれども、身体、知的、精神障害、こういった三障害共通の福祉ニードの尺度といたしまして、千八百例に及びます具体的なケースをもとに開発してきたものでございます。

 そこで、ではどんな項目なのかといいますと、介護保険の要介護認定基準で使っております七十九項目に加えまして、ただいま御指摘がございますような高次脳機能障害、あるいは、知的障害、精神障害の方々の問題になりますのは、話がまとまらないとか集中力が続かないとか、あるいは、交通手段の利用、買い物、掃除や調理などの日常生活、こういうような新しい項目、二十七項目を加えまして、百六項目の項目を定めたところでございます。

 そして、こういう項目を本当に機械的に判定をするというものではありませんで、認定調査におきましては聞き取りなどを行っております。そして、こういう聞き取り、あるいはお医者さんの意見書、それから、もちろん百六項目の認定調査結果、こういうことを市町村に置きました専門家の委員会によりまして総合的に御判断をしていただくという仕組みになっております。

 したがいまして、高次脳機能障害の方を含めまして、障害を持たれた方々それぞれの特性に応じた判定結果が得られるものと私たちは思っておりますけれども、現在のところ、その一次評価といいますか、百六項目をコンピューターで機械的に計算をしたというところでございまして、十月の本格的な施行に向けまして、今後、二次判定といいますか、市町村審査会における御議論があろうと思います。こういうことにつきまして、市町村の行政担当者の方々の御意見をよく聞きながら、適切に対応してまいりたいと思っております。

井上(義)分科員 これで質問を終わりますけれども、障害程度区分でどういうふうに判定されるかということによって支援サービスが決定的に違ってくるわけですので、その障害者が十分支援サービスが受けられるように、本当に適切な障害程度区分が行われるように、念には念を入れて、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて井上義久君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川泰宏君。

中川(泰)分科員 衆議院議員の中川泰宏であります。

 私は、三歳で小児麻痺になり、六歳で両親が手術をしてくれまして、その後厳しい訓練、おやじは青竹でどつきながら私を歩かすようにいたしましたが、おかげで社会参加ができることになりました。

 私は、障害者の社会参加を支える、その中でも身体障害者補助犬法で言う補助犬は、大きな役割を果たしておると考えております。まずお尋ねいたしますが、現在、どの程度の数の盲導犬を初め介助犬、聴導犬が活動しているのでしょうか。また、例えば盲導犬について申しますと、盲導犬を希望する障害者はどれぐらいおられるのですか。まことに申しわけありませんが、時間の都合上、簡略でよろしくお願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの身体障害者補助犬の稼働頭数につきまして、訓練施設の年次報告それから指定法人からの認定報告によりますと、盲導犬は九百五十七頭、介助犬三十頭、聴導犬十一頭、こういうふうになっております。

 利用を希望されている方でございますが、私どもが昨年都道府県に対して行ったアンケート結果によれば、補助犬の使用を希望する障害者の方々はおよそ百三十名程度、盲導犬百二十四名、介助犬四名、聴導犬三名、このようになっております。

中川(泰)分科員 ありがとうございます。

 今のを聞いておると、待っておられる方がもう少しあるのとちゃうかなと思うのですが、一部のあれですが四千名ぐらい待機者があるのではないかと言われておりますが、少しそこに違いがあるのかな。

 まず私は、この大きな役割を果たしておる補助犬について、やはり国においても自治体においても制度の普及及び育成を図っていかなくてはならないと考えております。そこでお尋ねいたしますが、国及び自治体において、身体障害者補助犬法に基づいてどのような施策を講じられておるのでしょうか、お尋ねをいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 身体障害者補助犬に対して国及び地方公共団体の講じている施策でございますが、国におきましては、訓練者に対します研修の実施をさせていただいております。日本介助犬アカデミーの調べによりますと、育成費用に二百五十万から三百万円かかるということでございますので、まず研修の実施、それから、都道府県が実施している身体障害者補助犬の育成に対する費用、これに対します国としての助成を行っております。国、自治体からの助成は、ただいま申し上げました育成経費に対しまして百五十万円ないし二百万円、このように助成が成っているということでございます。

 それから、普及啓発が大事でございますので、毎年、ポスター、パンフレットを作成し配布する、ステッカーの配布、ホームページの公開等の普及啓発活動を行わせていただいております。政府広報といたしましても、テレビのコマーシャル、新聞、週刊誌等への広報の掲載、ラジオ番組の放送、それからホームページの公開などをいたしているところでございます。

 都道府県におきましては、身体障害者補助犬育成事業を実施し、補助犬育成に係る費用の助成事業を行っております。都道府県と市町村におきましては、国と連携し、ただいま申し上げましたポスター等の配布、独自のホームページの作成、公開等を通じた普及啓発活動を行っていただいておるところでございます。

中川(泰)分科員 レストランやいろいろなところに行くと拒否をされたり、まだまだ普及ができていないのかというのと、それから犬をつくるのにもそうしたブリーダーも非常に苦労をしておるということもありますので、私は、現在、身体障害者補助犬法の見直しのため、自由民主党を初め超党派の議員の会が立ち上げられ、検討が行われておりますが、ぜひ前向きに見直しが図られることを願っておるところであります。

 ここで、盲導犬など補助犬の医療費について議論をしたいと思います。

 補助犬の多くの利用者は犬の医療費について困っておられるということを聞き及んでおります。日本獣医師会の調査資料などによりますと、例えば骨折して入院した場合、初診料、レントゲン、手術、注射、入院三日間と想定しただけでも、平均で五万四千円程度、最高で十四万円ほどかかるようであります。このほかに薬代も負担をしなければなりません。

 人間の場合は、社会保険が完備しており、医療費の三割などの一部負担をすればいいのでありますが、動物の場合、全額飼い主負担であります。盲導犬などについて、その医療費は家計に大きな負担となっております。民間会社など、動物に対する医療保険、共済がありますが、まだまだ不十分であり、ほとんどは医療費を全額利用者が払わなければなりません。

 現在、補装具給付事業では、補装具の購入と修理のために必要な費用が障害者に支給されております。補助犬は、補装具ではありませんが、障害者の生活を支援する手段として利用されているのでありますから、補装具に準じた対応が必要ではないかと思います。

 そこで、一つ御提案を申し上げたいと存じます。

 補助犬の医療費は利用者の生活に影響を与えることから、補助犬法の見直しに当たっては医療費の助成を考えてはどうかと思いますが、このことについての御見解をお願い申し上げます。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 補助犬法の見直しにつきましては、まさに超党派の議員の方々も議論をしていただいているというようなところだと思いますが、お尋ねでございますので見解を述べさせていただきますと、まず、先ほど来申し上げておりますように、補助犬の育成の費用につきましては、国と都道府県がその育成についての費用を助成させていただいております。今お尋ねのありました補助犬の医療費を含みます補助犬の維持管理に係ります御費用につきましては、使っておられる方の御負担でお願いをしておるところでございます。

 補装具のお話があり、補助犬は補装具とは違うけれども、身体障害者の方々に対しましていわば仲間として生活を支える大変貴重な存在なのでそれなりの助成をというお話があったわけでございますが、あえて比較をさせていただきますと、補助犬の育成には先ほど申し上げましたように二百五十万から三百万円程度かかるという高額なものでございますが、多くの場合、無料で貸与または給付されている実態になっております。補装具の方は、一件当たり平均八万円程度、基準最高額でも七十万円程度でございまして、お金の話で恐縮でございますが、そういったバランスを考えて、医療費にまでそのような助成を拡大するというのはなかなか困難ではないかというのが私どもの考え方でございます。

 なお、補助犬が骨折というようなお話が今ありましたが、病気等により補助犬として活動するのが困難になった場合には新たな補助犬を貸与または給付される、こういうことになっておりますので、長期的な医療費の御負担にはならず、また、障害者の方の継続的な社会参加は図っていけるというふうに考えておりますことを申し添えたいと存じます。

中川(泰)分科員 御答弁いただきましたが、なかなか難しいようであります。でも、国の予算を見ますと、補装具の給付予算は百六十一億円、これに対して補助犬の予算は、メニュー予算の障害者地域生活支援事業で二百四十五億円のごく一部であります。私は、お金は幾らか負担しておると今言われましたが、でも、犬をつくる中で、ほとんどが民間のボランティアの人や支援で行われておる、犬をそうして訓練する人たちも非常に厳しい生活の中でつくっておられると聞き及んでおりますし、それでいいのかなと。

 それから、今ありましたが、犬が傷んだらすぐかえますよということについて、私は、動物愛護の上からもいかがなものかなと。やはりきちっと、障害者が預かった犬を、確かに次の犬がおろうとも、その犬が骨折するということは、人が、障害者が歩くときに必ず危険な方を犬が歩いて助けてもらっておるんですから、そこは少し私は、愛護のことからもいいのかなと、今の御答弁に疑問を感じる次第であります。もう少し配慮を願うのが正しいのではないかなと。

 そこで、大臣にお尋ねを申し上げます。

 盲導犬を初め補助犬の育成、普及について今後どのようにされていくおつもりか、その御決意をお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 先ほど局長から数字を挙げたとき、委員の方から、少し少ないな、もうちょっとあるんじゃないかという御指摘、確かに、まだまだ普及啓発が進んでいないのかな、ヨーロッパ、アメリカに比べたらかなり数が少ないことだけは事実だろう。

 そういった基本線に立ちながら、補助犬法が施行されて三年が経過し、厚生労働省としては、身体障害者補助犬法の施行状況を踏まえ、どのような取り組みが有効か等について、身体障害者補助犬法の施行状況に関する検討会を本年三月に設置し、検討を進めてきたところでございます。この検討会において、補助犬に関する社会的認識の定着が不十分な状況にある、介助犬や聴導犬の頭数が少ない、ほとんど盲導犬でございます。地方公共団体に相談窓口が必要である、ということは今、余りないということになろうと思いますが、実効性のある普及啓発が必要であることなどの意見を伺っております。

 今後、検討会の結果や、現在御議論されている、委員もお入りだとお話しでございます、超党派による身体障害者補助犬を推進する議員の会等の御意見を踏まえ、障害者を初め広く国民に理解を深めていただくよう、普及啓発の一層の充実に努めてまいりたい。良質な補助犬育成のため、引き続き努力してまいりたい。

 たしか去年かおととし、国会に一度お入りになったんじゃないかな。私、何か議運でやっているときに許可したような思いがございますけれども、社会として、どんどんどんどん認めていくというんですか、みんなで支えていくという姿勢をつくることが一番大事だろうと思っております。

中川(泰)分科員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、引き続いて、バリアフリー化について議論したいと思います。

 私は、すべての人が不自由なく生活ができる社会をつくらなくてはいけないと考えております。障害者基本法の目的とする障害者の社会参加と自立を実現するためには、バリアフリーの社会をつくらなくてはなりません。このため、ハートビル法や交通バリアフリー法を制定し、建築物、公共交通などで高齢者や身体障害者を対象とするバリアフリー化の取り組みを推進いただいておるところであります。この結果、公共施設を中心に、駅やバスなどの交通機関もかなり改善されてまいったと認識しております。

 お尋ねいたしますが、地域の公共施設におけるバリアフリー化のためどのような施策を講じられているのか、その施策の現状についてお尋ねを申し上げます。

川本政府参考人 バリアフリー化の推進についてのおただしでございますが、私どもも、今御指摘ございましたように、障害者や高齢者の方々が一人一人自由に社会参画できるような基盤づくりをしていくということは大変重要な課題であるというように認識をいたしております。

 今、先生の方から御指摘がございましたように、平成六年には、建築物のバリアフリー化を進めるためのハートビル法、平成十二年には、鉄道駅等の公共交通機関のバリアフリー化を進めるための交通バリアフリー法を制定いただいたところでございます。

 建築物や公共交通機関等のバリアフリー化以降、着実に推進が図られておりまして、例えば鉄道駅について申し上げますと、旅客数が一日当たり五千人以上の駅の段差の解消、エレベーターをつけたりエスカレーターをつけたりというものは、今、大体五割に達しております。また、窓口業務を行う国の官庁施設、ここにおきます障害者用トイレの設置などは大体四分の三ぐらいになってきたという状況でございますが、障害者や高齢者の方々が自由に活動できるようにその活動を支えるという意味では、まだまだ不十分であるというふうに私ども認識をいたしております。

 こうした観点から、このハートビル法と交通バリアフリー法を統合いたしまして施策を拡充するということで、今国会に、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案、バリアフリー新法でございますが、御提案を申し上げまして現在御審議をいただいているところでございまして、新たな施策も活用しながら、引き続きバリアフリー化の推進に取り組んでまいりたいというように考えております。

中川(泰)分科員 確かに、今言われるとおり、まだまだだと私も認識しておりますし、地方へ行くほど格差があって、非常に厳しい、障害者の人たちが動きがとれない現状であります。やはり、社会参加や観光をしたり、いろいろと楽しむ権利もありますので、そうした地方にもどんどんとバリアフリー化が進むよう、都会と田舎が同じことになるよう、これについてもお願いをいたしたいと思います。

 特に、車いすを使用する障害者あるいは人工肛門等を装着する内部障害者にとっては、障害者用のトイレはぜひ必要であります。駅舎や公会堂など公共施設について設置が進んでおりますが、いまだ未設置のところもあります。行政側の評価と障害者から見た評価は違う場合もあるかと思いますが、障害者当事者の意見が反映され、よりよいバリアフリー社会を実現しなくてはならないと考えますが、御所見をお伺いしたいと思います。

川本政府参考人 先生御指摘のとおり、バリアフリー化の推進につきましては、まだまだという点があろうかと考えております。

 私ども、先生御指摘の障害者用トイレの設置ということにつきましても、バリアフリー化、この法律に基づきます基準というものの中に盛り込んでおります。さらに、先ほど申し上げました新しい法律におきましては、これまでの建築物や鉄道駅などの公共交通機関だけではなくて、道路でありますとか駐車場でありますとか、あるいは公園といったような施設につきましてもバリアフリー化をしなきゃいかぬ、いわば基準に適合しなきゃいかぬということを定めているところでございまして、面的にバリアフリー化の推進を図ってまいりたいというように考えているところでございます。

 また、市町村が、高齢者や障害者の方々が利用する施設を中心にしまして、地域ぐるみであるいは町ぐるみでバリアフリー化を進めるという場合には、基本構想を策定できるということといたしておりまして、この基本構想に沿って、いろいろな事業者が協議をし、力を合わせてバリアフリー化を進めていくという仕組みを盛り込んでいるところでございます。

 御指摘のございました、高齢者、障害者の方々の意見、御要望という点につきましても、各市町村がこの基本構想を策定するという場合におきましては、協議会をつくりまして、そうした方々の意見を反映する、また、この基本構想に対して障害者や高齢者の方々からいろいろな提案をいただくというような制度というものもこの法律の中に盛り込んでおります。

 当事者であります障害者の方々などの意見を地域のバリアフリー化に反映していきたいというふうに考えておりまして、行政側からの意見というんでしょうか、認識だけではなくて、利用される方々の立場に立ったバリアフリー化が進むように、これからも努力をしていきたいと考えております。

中川(泰)分科員 社会弱者が十分安心できるようなバリアフリー化ができるようお願いを申し上げます。

 次に、障害者がやはり自分で働いて収入を得て、それで自分の生活を支えていく、社会参加は私は非常に大切だと思います。障害者の就労ということを考えたときに、授産施設から地域社会の商店街や工場などへ移行する、一般就労への道をつけることがぜひ必要だと思いますが、どのようにお考えか、お尋ねを申し上げます。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 社会参加、とりわけ自立支援の観点から、授産施設から一般就労に移行していくことが重要だというのは、まさに委員御指摘のとおりでございまして、昨年成立させていただきました障害者自立支援法でも、一般就労を目指す障害者を支援するため、就労移行支援事業という事業を創設したところでございます。

 具体的には、就労を希望する障害者の方に対しまして、施設の方で、就労に必要な知識、能力向上等のための訓練等を行っていただく。その訓練についても、一般就労を多く積めば、その努力に報いる、そういう施設に対しましては報酬の方でも加算をさせていただくということで、インセンティブも高めているところでございます。

 一般就労につながるためには、ハローワーク等々の機関との連携が大事でございます。ハローワークに活躍していただかなければならないわけですが、施設の方でも、訓練の通所の後期には、ハローワークとのマッチングを積極的に行うというようなことで、雇用施策との連携を福祉サイドの方からも図って、就労支援を強力に推進したいと考えております。

 また、今回、市町村で障害福祉計画をつくっていただくということで、今年度を初年度にして、三年ごとの障害福祉計画をつくっていただくことになっておりますけれども、福祉施設を出て一般就労に移行する方の数が、第二期、平成二十三年度には、現在の四倍に当たる八千人、現在二千人程度でございますが、八千人までふやしたい、そういう目標を設定したところでございます。

 こういう取り組みを通じまして、授産施設等の福祉施設から一般就労に移行するための支援を今後も積極的に推進してまいりたいと考えております。

中川(泰)分科員 私は、まだまだできていないんじゃないかなと。私の地元の授産施設の人たちに聞きますと、十分、訓練して働けるのに、商店街へ行っても働かせてもらえない、工場へ行っても働けないというのが現実ではないかなということで、それぞれ地元から意見を聞いておるところであります。現場において、福祉と雇用の連携が必ずしもうまくいっていないのではないかと考えております。

 福祉と雇用の連携を密にして、実効性のある障害者雇用を実現するため、どう考えておりますか。時間もありませんので、簡略にお願いいたします。

中村政府参考人 私どもも、その点、大事だと感じております。従来、福祉行政をやってきた人間と、就労を引き受けていただく企業側との話し合いも足りませんでした。

 昨年の御用納めの日に、厚生労働省で、身体障害者を初め障害者の雇用を担当している一般企業の人事担当の方、五百社以上参加していただきまして、法律の説明をしたり、先月も、文部科学省、厚生労働省福祉部局、労働部局、三者集まりまして、養護学校の先生、福祉関係者、それから企業の就労担当の方々で話し合うことをやったりしております。

 やはり、おっしゃるとおり、施設側が頑張っても、企業側の方の受け入れがうまくいかないと進みませんし、施設の方も、企業の求める人材、どういう仕事なのかということを理解しないと就労に結びつかないと思いますので、そういった点、一生懸命努力してまいりたいと考えております。

中川(泰)分科員 十分、またよろしくお願いを申し上げます。

 そこで、次に大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。

 私は、ちっちゃな町の八木町の町長をしておる時分に、小規模授産施設で、これは民間で、小さな施設でありましたが、そこに通所しておった子供が、駅前で立って箱を持ってカンパ、泣いてお父さんがお見えになりまして、こんなことでいいのかなと。そんなことから、私は、やはりきちっとした公共の授産施設をつくらなくてはならぬということで、あじさい園というのを町長のときにつくりました。

 そのときに、私は、やはり自分たちが楽しんで物をつくり、楽しんで利益を得て、お金を持って帰れるんや、そういうようにしようということで、クッキーづくりやら、さおり織、アルミ缶の回収を行いましたが、先日、そのあじさい園へ伺いますと、子供みんな、あの時分は月七千円から八千円もらってうれしかった、ところが、自立支援法が施行されてから、一割負担させるし、せっかく頑張ったのに何にも持って帰れへんのやというのが、そこで働くみんなの仲間の意見でありました。

 我が国の経済の状況がデフレを脱し、上向き傾向にある中、官民協力して、授産施設の振興、向上を図っていかなくてはならないと思いますが、これについての御決意をお願い申し上げます。

川崎国務大臣 確かにそのとおりで、まず、私自身、一・八という一般の企業に対する目標値、それから、官公庁に対する目標が二・一、中央は大体それの数字になってきておりますけれども、現実問題、なかなか地方はまだついてきていない、地方の団体にもやはり二・一やってもらうように、まず官からやろうと。その後、民は、大企業が随分進んできて、一・六ぐらいまで来ていると思いますけれども、実は、中小企業以下が、経営が今、申し上げると、厳しかったものですから、大変低い率になっています。

 今、給付と納付、要はペナルティーですね、という制度がある中で、少し中小企業の段階まで下げていく必要があるんじゃないかと。要するに、三百人規模をもう少し下げてきて、言われた、近くの工場で雇ってもらえるような形にもう少し持っていかなきゃならぬのじゃないか、こういう議論を今させていただいているところでございます。

 一方で、授産施設における平均工賃は一万五千円であるから、その引き上げが重要な課題だと認識しております。

 地方公共団体の物品調達に当たり、原則は入札制度によるところ、授産施設等については随意契約を可能とするなどの取り組みを行っております。

 また、障害者自立支援法においては、就労継続支援事業、雇用型について、一定割合の障害者以外の方の雇用を可能として生産性を高める、二番目、就労継続支援事業、非雇用型については、事業所ごとの目標工賃水準の設定、公表や、目標を達成した事業所に対する報酬面で評価することなど、賃金や工賃の引き上げを図るための各般の仕組みを設けさせていただいております。

 このほか、地域における共同受注システムの展開や専門家の派遣による経営改善により、現行平均工賃一万五千円の倍増を目指す取り組みを検討するなど、障害者が地域で自立した生活を送ることができるよう、これらの施策に全力で取り組んでまいりたい。

 いずれにいたしましても、みんなでやらなきゃいかぬということで、頑張ろうと思っています。

中川(泰)分科員 ありがとうございます。よろしくお願いを申し上げます。

 また続いて、私は、大臣と一緒にパラリンピックの結団式に行き、激励の言葉を述べさせていただきましたが、選手の皆さん方が何ぼ金メダルをとるのかなと自分も興奮しながらテレビを見ておりましたら、金メダル二個、銀メダル五個、銅メダル二個という立派な成績でありました。

 私は、障害者もいろいろなスポーツに参加をすることは大切だし、このパラリンピックがその勇気となったし、また一般の健常者の勇気にもなったと考えておりますが、この運営する、選手が参加する費用、私も全国共済連の副会長をしておったときに、全共連の中の選手がいたんですが、皆個人負担やと。よその国に行ったらもっともっとしてもらえるのやということでありましたが、一部、国の方の施策でありますが、まだまだ支援ができていない、やはりもっと私は財政支援をするべきだと考えますが、どのようにお考えですか。時間の都合で簡略に。

川崎国務大臣 パラリンピックの壮行会に中川委員も来ていただきまして励ましをいただきまして、ありがとうございました。立派な成績を上げて帰ってもらったものと思っております。

 特に、あのときに、冬季オリンピック、それからトリノ・パラリンピック、それから野球のイチロー以下の活躍がありまして、あの一週間というのは、日本人はかなり力の入った、また、その活躍を見ながら、言われたとおり、みんなが勇気づけられ、力づけられたということは間違いない。

 したがって、スポーツ振興というのは大変大きな柱であろうと思っておりますし、障害者スポーツというものも、そういう意味では、ハンディを乗り越えてやるという面では、より勇気を与えるという意味でしっかり援助をしていかなきゃならぬ課題だろうと思っております。障害者スポーツ支援基金。

 この間、実は選手の方々と、帰った後ゆっくり話す暇があった。彼らが恵まれていたのは、一つは、NHKと日立かな、勤めておったものですから、会社からも十分支援がもらえた。しかし、一般の選手は、ああいう大会のときは皆さん方が援助してくれるし、国の資金も出てくるが、ふだんの練習のときの支援がなかなかできないんだと。そのシステムが何とかできないかと。

 これは実はオリンピックでも課題になっていまして、小泉総理からも、何か考えなきゃいかぬなと言いながら、財政が厳しいものですから、ちゅうちょしておることは事実ですけれども、国全体としてスポーツ振興をどうするかは、ああいう場面を見ながら、やはりやっていかなきゃならないなという形で私どもは考えさせていただいております。

 一方で、小坂文部大臣はサッカーくじを抱えちゃっているものですから、大変苦労されておりますけれども、方向づけとしては、少し財政余裕があればやはりスポーツ振興に力を使うというのは我々理解をしていかなきゃならぬだろう。しかし一方で、企業も少しよくなってきたところでありますので、なるべく企業にも応援を求めたいというように考えております。

 いずれにせよ、できるだけのことをみんなで考えていかなきゃならぬなと思っていますし、閣僚の中の回答の中では、やはりああいう結果というのは日本人に力を与えるなということで随分話題に花が咲いていまして、話題に花が咲いただけじゃいけないので、何とか実が咲くように我々も頑張っていきたいと思います。

中川(泰)分科員 ありがとうございました。

 私も、やはり障害者のスポーツというのは、障害者だけでなく健常者にも大きな勇気を与えると考えておりますし、健康の人たちがするオリンピック選手なら、やめてからでも引退したら五億とか十億入るのやという話があって、結構楽なようでありますし、ところが、障害者の人たちが自分の給料を使って精いっぱい頑張っておるという姿を見たときに、やはり国として、行政として何とかしてやるべきではないかなということを考えますので、今後とも大臣、よろしくお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて中川泰宏君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明六日午後二時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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