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第1号 平成20年4月21日(月曜日)

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本分科会は平成二十年四月九日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

四月十八日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岩屋  毅君    木村 太郎君

      坂井  学君    西本 勝子君

      松野 博一君    矢野 隆司君

      与謝野 馨君    小宮山泰子君

      松木 謙公君    玉沢徳一郎君

四月十八日

 木村太郎君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十年四月二十一日(月曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 木村 太郎君

      岩屋  毅君    坂井  学君

      西本 勝子君    松野 博一君

      矢野 隆司君    与謝野 馨君

      岩國 哲人君    末松 義規君

      高木 義明君    森本 哲生君

      玉沢徳一郎君

   兼務 谷口 和史君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  西山 正徳君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局勤労者生活部長)      氏兼 裕之君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          長   清君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (林野庁長官)      井出 道雄君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           北村 隆志君

   政府参考人

   (農林漁業金融公庫総裁) 高木 勇樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     末松 義規君

  松木 謙公君     高木 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  末松 義規君     森本 哲生君

  高木 義明君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     松木 謙公君

  森本 哲生君     小宮山泰子君

同日

 第二分科員谷口和史君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計歳入歳出決算

 平成十八年度特別会計歳入歳出決算

 平成十八年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十八年度政府関係機関決算書

 平成十八年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十八年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)


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     ――――◇―――――

木村主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十八年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 平成十八年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十一兆四千二百五十二億円余に対して、支出済み歳出額二十兆九千二百八十億円余、翌年度繰越額千四十億円余、不用額三千九百三十一億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十五兆三千八百三十一億円余、支出済み歳出額四十四兆千百六十九億円余、翌年度繰越額四千六百七十六万円余であり、差し引き一兆二千六百六十一億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額六百八十九億円余、支出済み歳出額六百三十四億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き五十三億円余をこの会計の積立金として積み立てて、決算をいたしました。

 第三に、国立高度専門医療センター特別会計につきましては、収納済み歳入額千九百六十九億円余、支出済み歳出額千八百四十二億円余であり、差し引き百二十六億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十五兆二千三百九十八億円余、支出済み歳出額二十三兆九千四十億円余であり、差し引き一兆三千三百五十八億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆九千八百三十九億円余、支出済み歳出額七兆千九十七億円余、翌年度繰越額十六億円余、未経過保険料相当額二百二十三億円余、支払備金相当額千八百七十八億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き一兆五千三百五十一億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成十八年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

木村主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院小武山第二局長。

小武山会計検査院当局者 平成十八年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百八十一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号三〇号及び三一号は、保険料の徴収が適正でなかったものであります。

 同三二号から五三号までの二十二件は、会計経理が適正を欠いているものであります。

 同五四号は、委託費の支払いが適切でないものであります。

 同五五号から七三号までの十九件は、委託費の支払いが過大となっているものであります。

 同七四号から七七号までの四件は、保険の給付が適正でなかったものであります。

 同七八号及び七九号は、医療費の支払いが適切でなかったものであります。

 同八〇号から二〇五号までの百二十六件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 同二〇六号から二〇九号までの四件は、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 同二一〇号は、介護給付費の支払いが適正でないものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、健康保険・厚生年金保険適用関係届書に係るデータ入力等業務委託契約の予定価格の積算に関するものであります。

 社会保険庁では、健康保険事業及び厚生年金保険事業を運営する際に必要な各種届書等のデータ入力等業務を外部の業者に委託して行っております。その委託契約の予定価格の積算に当たり、データ入力経費の算定が、データ入力装置の有する効率的な機能を活用するようになっていなかったり、届書等の搬送経費の算定が経済的な配送業者を活用するようになっていなかったりしている事態が見受けられました。

 このため、社会保険庁において、予定価格の積算を適切なものとするため、同一のデータを入力する項目については固定項目の設定を行うことにより再度入力しないこととして入力文字数を定めたり、委託業者の車両で搬送した場合と配送業者を活用した場合の経費を比較検討したりするなどの是正改善の処置を求めたものであります。

 その二は、国民健康保険広域化等支援事業費等補助金に関するものであります。

 市町村の国民健康保険事業の運営の広域化、財政の安定化を図ることを目的として、四十五都道府県が国民健康保険広域化等支援事業費等補助金の交付を受けて、国民健康保険広域化等支援基金を設置、造成し、保険者に対する貸付事業を実施しておりますが、貸し付けの実施状況について検査したところ、基金を設置した都道府県の三分の二において貸付実績がなく、貸付実績がある他の都道県においても基金の造成規模に比して利用が十分でないなど、多額の補助金が有効に活用されないままとなっている事態が見受けられました。

 したがいまして、厚生労働省に対して、貸し付け条件を見直すなど基金の有効な活用を図るとともに、都道府県ごとの保険者の状況に応じて事業内容を見直すよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、労働関係調査委託事業の会計経理に関するもの、その二は、生活保護における介護保険料等の代理納付の活用等に関するもの、その三は、不払い賃金の是正情報の活用に関するものであります。これら三件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十七年度決算検査報告に独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された物品の時価評価額の算定について是正改善の処置を求めた事項を掲記いたしておりますが、その結果についても掲記いたしました。

 以上、簡単ではございますが、概要の説明を終わります。

木村主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 平成十八年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

木村主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

木村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂井学君。

坂井分科員 自民党の坂井学でございます。

 前回、予算の分科会で質問させていただきました。二カ月近くたつのですが、検討結果の報告がなかったので、残念ながら、改めて質問という形でお聞きをしたいと思います。

 お手元に資料をお配りしておりますけれども、歯科、歯医者さんの問題で、査定の点数、神奈川のものが大変多いということで、これは飛び抜けて多いわけであります。裏の資料を見ていただけば、これは歯医者さんが多いから多いだろう、こういうことでありまして、一万点当たりの平均をとりました。平均をとっても、一番少ない新潟と比べると十四倍程度、平均から比べても四、五倍という、大変に大きな格差がここにあると私は思います。これは、全国公平にやらなければいけない審査の状況、査定の状況の中で余りにもおかしいのではないかということで、質問を局長にさせていただきました。

 前回の議事録を見ていただけばわかりますが、局長は、査定が多いのは承知をしている、分析をしていないので理由はわからない、算定ルールの解釈に各県ごとの違いはない、こういう答弁をされました。私はこれはちょっと納得できないもので、それで、予算の分科会のときも分析していないということなので、私が分析をしまして、ちょっとお示しをさせていただきました。

 次のはアンケートでございまして、これは裏表で今刷ってありますが、これがいわば、医療機関、歯医者さんの側が行ったアンケートでありまして、細かくはちょっと説明しませんが、一から裏十五まで項目があって、そのうち、神奈川だけの独自の解釈が十五のうち十ありました。これは余りにも多いんじゃないか。しかも、その十が全部厳しい解釈です。

 これを受けて、いわば役所の方もアンケートをしてくださいまして、これは各県の支払基金の事務局が答えていると思いますが、これも結果を教えていただきました。私、わざわざ丸を左の数字のところにつけておりますのが、この下に棒線を引っ張っているところが神奈川のルールなんですが、この順番の中で、これは厳しい順にちゃんと並んでいないものですから、見ていただいて、厳しい順になるとどうか、こういいますと、丸がついているものは最も厳しいルールの解釈だということらしいわけです。

 そうすると、丸がついている、要は神奈川が一番厳しい解釈をしているのが少なくとも十三、はてながあるのは、もう少しどういうことか中身を聞いてみたいということでありましたが、少なくとも十三。そして、右に星マークがついているのは神奈川だけの独自ルール。これは、役所が、支払基金の事務局でやった調査においてもこれだけの違いがあるということがわかりました。

 これはやはり、もう同じにやっているとは言えない、違いと認めていいんじゃないかなと改めて思いまして、きょう質問をさせていただきました。

 それからもう一点、前回指摘をさせていただきましたのは、こういったことがないように、各県におきましては、保険者の代表、それから医療機関の代表、それから学識経験者で審査委員会というのをつくっておりましてやっているそうでありますが、これがこのままほったらかしになっているということは、審査委員会が機能していないからじゃないかということを質問させていただきました。これは、内容を検討する、こういう御答弁だったと思います。私は、この改まらない理由は何かということを改めてお聞きをしたいと思います。

 前回にもう一つつけ加えまして、一番最後の資料でございます。これは、査定となった事例に対する返戻の扱いです。返戻というのは、治療をして書類を社会保険に出したけれども、要は、軽微な記入漏れ等があって書類として完璧じゃなかったものに対しての扱いでありますが、一から十二の項目、これは神奈川では全部査定ということで、保険からお金が一切歯医者さんにおりておりません。もうこれはおりませんということで決着済みになってしまったものであります。

 ところが、他都県の取り扱い、これは関東甲信越でありますが、これも役所の方が各支払基金に調べていただいたものですけれども、見ていただけばわかりますように、請求どおり、それから返戻、ほとんどこの二つですね。返戻というのは、書類を戻して、また出してくればこれは請求どおりにお金がおりるわけでありますから、神奈川のように、お金をおろさない、要は渡さない、査定ではじくというのはほとんどないというのがわかります。

 この返戻の取り扱い一つ見ても、神奈川は、十二、この項目すべて査定の件数が上がるわけですから、この取り扱い一つ見ても、査定が多くなるという理由が私は明らかではないかなと思っておりますが、この三点、まとめて局長から改めて御答弁いただきたいと思います。

    〔主査退席、松野(博)主査代理着席〕

水田政府参考人 お答えいたします。

 まず、歯科診療報酬の算定ルールの解釈に関する調査の件でございます。

 前回の質疑におきます委員御指摘の事例に関しまして、神奈川県における算定ルールの解釈、他県の解釈の違いにつきまして社会保険診療報酬支払基金に調査をさせましたところ、一部の事例につきまして、神奈川県の解釈が他県とは異なっているということが認められました。

 こうした差異は、算定ルールの解釈が十分に認識されていないことや、審査運用上の取り扱いにつきまして支払基金の支部間の差異の解消を図るための取り組みが必ずしも十分でなかったといったこと等が原因でないかと考えてございます。

 こうした状況を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、算定ルールの解釈に誤解が生じている、または生じるおそれのあるものにつきましては、できるだけ早く算定ルールの疑義解釈に関する文書を関係機関に発出する等、適切に対処してまいりたいと考えております。

 いま一つお尋ねの、神奈川県の社会保険診療報酬支払基金における審査委員会の委員の選任についてでございますけれども、これは、先生御指摘のとおり、社会保険診療報酬支払基金法第十六条等の規定に基づきまして、診療担当者代表、保険者代表、学識経験者各十六名の三者構成となっておりまして、診療担当代表者につきましては神奈川県歯科医師会に対しまして、また、保険者代表につきましては、社会保険事務局、健康保険組合、共済組合等に対して推薦依頼を行いまして、各団体から推薦された者に対して委嘱をしていると承知してございます。さらに、学識経験者につきましては、学識経験者審査選考委員会における選考を経て委嘱されていると承知をしております。

 こうした手続を踏んでおりますので、神奈川県における社会保険診療報酬支払基金におきます審査委員会の委員につきましても、適正に任命されており、御指摘のような、審査委員の選任経緯が原因で審査委員会の運営が不適正になっているという結論には至ってございません。

 それから、三点目、査定と返戻の扱いでございますけれども、神奈川県の審査におきまして査定となっている主な事例の他県での取り扱いにつきまして、社会保険診療報酬支払基金を通じて調査をいたしましたところ、神奈川県におきましては、主に治療を行った部位や治療を行った月日の診療報酬明細書への記載漏れにつきまして、返戻とすべきと考えられるものが査定となっていることが認められました。

 この原因といたしましては、社会保険診療報酬支払基金が各都道府県の支部に対しまして返戻と査定に関する基本的な考え方を示しているところでございますけれども、この審査運用上の取り扱いについての周知が必ずしも十分ではなかったこと等が考えられるわけでございます。

 こうした状況を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、社会保険診療報酬支払基金等関係機関に対しまして適切な審査の徹底について指導を行う等、適切に対処してまいりたいと考えております。

    〔松野(博)主査代理退席、主査着席〕

坂井分科員 ありがとうございました。

 解釈のルールは、一部違いをお認めいただきまして、ありがとうございました。また、返戻に関しても、はっきり言えば、これは、違うところと認められたところは直すということでよろしいわけですね。それから、返戻の取り扱いについては、他都県と同様の取り扱いに今後周知徹底をさせていくということで、局長、よろしいんでしょうか。

水田政府参考人 まさに、この返戻と審査に関する基本的考え方を徹底したいということでございます。

坂井分科員 そうしたら、最後というか、間にお話をいただきました審査委員会の件ですが、その選任の件はともかくとして、結果として違いがある、そして、この返戻の取り扱いに関してもこういう状況であったということは、審査委員会が機能していないということは私は明らかだと思うんですね。その理由は何かということを私はお伺いをしているんですが、局長は、その理由は、何で機能しないんだ、その機能しない理由はどうお考えですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この点につきましても、私ども、神奈川県の社会保険診療報酬支払基金に尋ねたわけでございますけれども、この基金におきます審査運用上の取り扱いは審査委員会の合議によって決められることになっていることから、一部の審査委員の意見により左右される仕組みにはなっていないということでございます。支払基金からも、現にそのように聞いているわけでございます。

坂井分科員 そういったことで神奈川の支払基金さんの方にも十分な調査を前回の分科会のときに私お願いしまして、今回、調査をいただいていると思いますが、局長は、昨年の秋から、神奈川の診療機関、要は歯医者さん側が、支払基金に対して申し入れを行っているのを御存じですか。それは、私が今指摘したような申し入れを何回行ったか御存じですか。

水田政府参考人 そういった申し入れの回数につきましては、承知はしてございません。

坂井分科員 では、その申し入れがあったことは御存じですか。

水田政府参考人 そういった申し入れ、内容を私個々に知っているわけではございませんけれども、そういった御意見があるということは承知をしております。

坂井分科員 これは結構大事な問題だと私は思っておりまして、一つは、支払基金の件、また審査委員会の件に関して調査をお願いしてはいますが、こういうこともちゃんと御存じないということは、ちゃんと本当にこれを調査しているのかなという気がいたします。恐らく、支払基金の事務局に話を聞いて終わりじゃないかな。審査委員会の各先生方に話を聞いているとは到底思えない調査結果であります。

 昨年の秋から三回にわたりまして歯医者さんの側は申し入れを行っています。そしてその答えは、ここにありますけれども、これはもう簡単に述べさせていただきますと、今も局長がおっしゃったように、審査委員会というのがあって、合議制で行われているので適正に行われているということ、それから、審査上問題になります事例は、今後とも、審査委員会に諮りながら、監督官庁であります社会保険事務局の御指導、御助言を受けながら適切に行っていく、いわば、社会保険事務局の御指導、御助言を受けながらやっていたということを言っているわけです。

 そうすると、私これを聞いたら、この査定の状況は、ことし、去年の話じゃなくて、もう数年前からこの状況は続いているということですよね。御存じですか。数年前から続いているのをそのままにしておいたということは、神奈川というのは、担当の指導医療官というのはいないんですかね。指導医療官の仕事というのは、さっき局長がおっしゃったように、こういうことがないように、周知徹底していないということがないように、他府県と比べて神奈川が特別不利なことがないように、しっかりとこれを指導するのが指導医療官の仕事じゃありませんか。

 この点、指導医療官の仕事、これは大変に職務怠慢じゃないかと思いますが、その責任についてはどうお考えでしょうか。

水田政府参考人 先ほど申し上げましたように、その算定ルールの解釈について他府県の場合と解釈に違いがあったことは事実でございますので、先ほどの委員の構成のことにつきましては、やはり、まずはその解釈がきちんとなされれば、おのずと公平と申しますか、他府県とかなり近くなってくると思われるわけであります。

 ただ、個々人がそこでかかわったことかどうかというのは、まず、どうしてこの解釈が徹底しなかったかということについて、今この時点ではよくわかっておりません。

 したがいまして、お求めでございますので、どういう経緯でこのような事態に至ったのか、もう少し調べてみたいと思います。

坂井分科員 それはそれで調べていただいて、今度はほったらかしじゃなくて、報告をちゃんといただきたいと思います。

 それと、私が申し上げたのは、この指導医療官が仕事していないんじゃないですかということを言ったんです。個人の影響力がどうのじゃないんですよ。指導医療官というのはこういうのをちゃんと是正するのが仕事じゃないですか、神奈川では医療指導官が仕事していなかったんじゃないですか、その責任があるんじゃないですかと聞いたんですが、それはどうですか。

水田政府参考人 その点につきましても、社会保険事務局の職員でございますので、確かめてみたいと思います。

坂井分科員 こういった形で今回ちょっと質問をさせていただきました。この指導医療官の制度、神奈川でもどうもちゃんと機能していないようでありますが、実は、昨年には東京で、この指導医療官が余りにも高圧的に、また強引に、脅迫的なものもあったのではないか、こう言われておりますが、そういった形で歯医者さんが自殺をするという事件が起きておりまして、この指導医療官の制度自体、一回しっかり見直していただくことが必要ではないかなということを提言させていただきます。

 そして、舛添大臣にお伺いをしたいんですけれども、今までこういう経緯をお話しさせていただいて、聞いていただきました。私は、やはりこの査定の点数、場所によってこれだけ差があるということは、どこで開業するかによって大変に不利にもなります。それから患者にとっても、歯医者さんがこの治療をしても保険がおりないと思うと、患者に今一番いい、最善の選択肢を提供できない、提案できない、こういう悩みもあるし、また、当然一回で済むものを二回、三回と必要になる場合もございまして、入れ歯の問題とか、それから、スケーリングといって歯垢を取るような話にしても、神奈川は一日で口の中が全部できないというようなことがありますと、二回、二日にわたって来なければいけない。

 そのようないろいろなことがありますと患者、県民にも不便がかかるということで、私、これはぜひとも全国公平になるように御指導いただきたいな、こう思うわけですが、御意見をちょっとお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 委員のお示しいただいた資料を見たら、神奈川だけが極めて異常ですね。こういう診療報酬を適用するときに、全国一律で決まったものが現場でこれまでの違いがあるというのは、これは公平ではない、公正ではない。

 したがって、なぜそういうことに立ち至ったか。今、返戻、査定といった専門的な言葉も出ましたけれども、いずれにしても、もう一度、個々の事情をつまびらかにすべく調査をさせたいと思います。

 その上で、解釈の幅はそれは一定程度あるかもしれないけれども、ここまで開くというのは極めて異常だと思いますので、そういう認識のもとにきちんと指導をし、是正すべきは是正する、それからまた、委員に対しても、またこの委員会に対しても必要な報告はするということをお約束したいと思います。

坂井分科員 どうもありがとうございました。

 それでは局長、今後またしっかりとこれは対応していただきたいと思っております。よろしくお願いをいたします。

 次の質問に移ります。きょうは私二つしか質問しないので、もう一つは、新型インフルエンザの対策でございます。

 私、新型インフルエンザの対策の視察に、横浜の検疫所に先週の水曜日にお邪魔をさせていただきました。国会の答弁でもよくありますように、国、県、市の連携が必要だということでございまして、私は、横浜市議会の危機管理担当の丸山委員長、この委員会の委員長と、また、その委員数名と一緒に視察に行かせていただきました。これは当然事前にお伝えをしておりましたので、国会議員と、また市会の特別委員会の委員長、その他委員が来るということでありますから、恐らく十分準備をされて所長はお出ましいただいた、こう思いますが、この市議会の先生方、帰りに何と言って帰ったかというと、これはがっかりした、残念だ、そして、危機感がいっぱいになったと言って帰られました。

 これはどういうことかといいますと、所長に質問をしてもまずはしどろもどろでございまして、きっちりと説明ができません。それで、例えば新型インフルエンザの可能性がある患者を乗せた船が横浜港に入ってきた場合、どうしますかと聞いたら、小さな船は沖で、要は海上で検疫をします、大きな船は着岸します、こう言います。では、大きな船というのは要は何人ぐらい乗客が乗っている船ですかと言うと、行ったり来たり、いや、大きな船です。大きな船ですと話をしていて何人ですかと聞いているのに、はっきりおっしゃらなかった。最後、百人とおっしゃいました。

 しかし、実際に横浜検疫所の検疫艇という小さな船で海上に行って、何一つ装備がついていない船でございまして、これは百人を相手に海上で検疫することは不可能なんですよ。おかしいなと思って、私、この質問をするのにやりとりしました。そうしたら、本庁の方に聞いたら、一言、着岸ですとおっしゃいました。

 要は、最前線の現場の所長が海上でやりますと言うものを、私、本庁に確認をしたら、一言、着岸です、検疫艇は小さいんですから海上では無理です。私、乗せてもらいましたからよくわかります。小さいんです、ひどいんですよ。これで百人を検疫できるはずがない。これが現場で今平気で通っているというのが、今の横浜検疫所の状況です。

 それだけじゃありません。着岸をするといった場合の着岸の場所もまだ決めていないんです。それから、患者を搬送するということになった場合、救急車を使うのか、民間の救急車を使うのか何を使うのかということも決めていない。それから、どこの施設に行くか、病院も数床しか決まっていない。あとそれ以上ふえたら、十人いたら、もう行き場所が決まっていない。これは何一つ決まっていない。

 その状況で今横浜港というのは、新型インフルエンザの患者、東日本で起こった場合はすべて横浜に集まってくる集約港になっているというじゃないですか。これは、到底このままでは横浜は危なくてそのままじゃいられないと思います。

 そして、それはそのとおりでありまして、実は、平成十九年の一月十七日だと思いますが、検疫所を中心に訓練をやっています。その訓練をやっているときどうなったかというと、横浜市が着岸をしての訓練を拒否しているんですよ。拒否している。どうしてかといったら、ちゃんとその後のマニュアルができていない、どうなるかわからないものを着岸させられない。要は、船が来て着岸拒否を前提に訓練をしているのが平成十九年一月です。

 私は行って話を聞きました。そうしたら、その平成十九年一月から私が行った先週の水曜日まで、横浜検疫所はこの件に関して地方自治体と何の打ち合わせもしていないんですよ。港湾局と打ち合わせをしていないんです。こんなばかなことがあるかというのが私の大きなきょうの質問です。

 それともう一つ、大変ひどいのは、その平成十九年一月に行われた平成十八年度の訓練でそれだけ大きな課題が見つかったわけですけれども、平成十九年度、昨年度は訓練していないんですよ。訓練していない。要は、着岸をしての訓練さえできていないのに、横浜検疫所は訓練をしていない。しかも、水上警察は訓練をしましょうと参加の意向を示してきているのに、これは、横浜検疫所がやりませんと断っているんです。

 これは何で断ったんですかと私は所長に聞きました。所長に聞いたらこの答えが、人員不足ですと言った。私はとんでもないと思った。現場は大事でしょう。現場は大事ですから、何で勝手に人員を減らすんだと私は本庁に言いました。そうしたら本庁が言いました、人員減らしていません。では、何で所長は減らしたと言うんですか、私はそのまま話を聞きました。そうしたら、人員不足というのは、定員を減らしたんではなくて、人数を減らしたんではなくて、担当のお医者さんが介護休暇を要は結構とっていたので、休みがちだったので、そして人員不足でしたと。私は聞いたんですよ。では、ほかにお医者さんというのはいないんですか、担当課長はだれですかと聞いたら、その担当課長は所長が兼任しているわけです。お医者さんいませんかと聞いたら、お医者さんいたんです。その所長がお医者さんなんです。

 これは自分でやればいいじゃないですか。どうしてもできないと私は話を聞いてきたけれども、自分がやると言ったらできている話でしょう。要は、これは何でこんなことが平気で起こっているか。

 この間も私は、予算の分科会で新型インフルエンザの対策をちゃんとやってくださいと言った。国、県、市で連携しますと言った。その国が、内部の出先の機関でこんなことになっているということは、これは大きな問題だと思いますが、これについてちょっと御意見をお願いします。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 新型インフルエンザが発生した場合の検疫の重要性につきましては、もう先生御指摘のとおりでございます。

 御案内のように、発生国からの航空機、客船を四空港、三港に集約をしてやっていくということを私ども考えておりますので、そのための体制整備、これを鋭意やっていかなければいけないということで、これまで、四空港につきましての応援態勢、どのような人員をどこの検疫所から充当していくのかを初めとして、いろいろ対応をとってまいりました。

 また、回航につきましても、私ども、この間、そのような体制整備について指示はしてまいりましたけれども、ただいま先生がおっしゃられましたような事実があるということであれば、これは、私どもある意味で十分にその点を把握できていなかったということになろうかと思いますし、また、現場は現場としての努力が私はあるんだろうとは思うんですが、それが、自治体の関係者との連携のあり方の問題でありますとか、それから、机上の観念的なものではなくて、個別の具体的なオペレーショナルな事態を十分に想定をした上で一つ一つの問題に対応できるのかどうか、こういうことがなければ、あしたにも起きるかもしれない新型インフルエンザの対応が十分ではありませんので、今の先生の御指摘を十分に受けとめさせていただきまして、そして、横浜検疫所並びにそのほかの集約、回航の方につきましてもきちんとした対応をとるように、私は食品安全部長ということで検疫所の組織、人員等々の責任を負っておりますので、そのような指示をきちんとしてまいりたいと思います。

 また、ただいまおっしゃられましたような自治体の関係者との密接な連携でありますとか、あるいは自治体の方に限らず、関係省庁あるいは検疫所を含む関係の国の機関、こういったところの連携のあり方等につきまして、改めてきちんとした点検をして対応してまいりたい、このように考えております。

坂井分科員 こんなことで、封じ込めというのを第一義的に持ってきていますけれども、これは不可能ですよ。実際に、SARSのときもアジアの空港で三千五百万人か何かスクリーニングやったけれども、結果として一人も患者を発見できなかったわけで、今回の新型インフルエンザというのは、もっといろいろ複雑な、また難しい状況がある中で封じ込めをやろうと言ったって、現場がこういう状況では、封じ込めはもう無理だと考えて計画をつくってもらった方がいいんじゃないかと私は思っています。

 それと、今現場のお話ですが、横浜市議会の先生方と一緒に行ったものですから、まず横浜の市会ともきっちりと話をしてください。それから、警察とか消防署とも話をしてください。それはもう早速今週中に申し入れをしてもらって、今までほっておいて悪かった、これからちゃんとやろうということで、とにかく申し入れをして進めてください。

 それと、私は今回大変危機感を持っています。要は、彼らが何をしなきゃいけないか、そして何が足りないかというのをわかっていないんですよ。自分が何をここでやらなきゃいけないかということを十分認識していない。だから、まずやらなきゃいけないこと、そしてその関係機関、どこと協議をしなきゃいけないか、私が質問したときにこれは関係機関だって出てこないんですから、ですから、何が必要で、どんなことを決めていかなきゃいけなくて、その相手方はどことしなきゃいけなくて、何よりも、いつまでにそれを決めるという目標をしっかりつくったものをちゃんとペーパーにして、私や、私はそれをやはり見たいので私のところにも欲しいし、それから、もちろん市会の方は、港湾局にもやらせるとか、いろいろ消防署にもやらせると言っている、その危機管理の担当の委員長のところにも持っていってもらいたいし、それから、関係のそういったところに持っていって、とにかく計画をつくってもらうことをまず第一に私は要望をしたいと思います。

 それをしなければ、集約港だなんて言って、どこかでそういった患者が出た場合、横浜に持ってくる、連れてくるのはいいけれども、横浜を中心に今度は横浜の町がそういった形で感染者がふえてしまうということになりかねないので、その点を強くお願いしたいと思います。

 最後、通告はないんですが、大臣、感想があったら、ひとつ何かいただければと思います。

舛添国務大臣 今、国会でこの感染症の法案を与野党協力して改正しよう、つまり、いつどこで来るかわからない、そのときに、六月でその法改正間に合わないということになると、国民の命は守れませんですから、そういうこともやりますし、それから、パンデミックワクチンを事前にできるだけ多くの方々に打つような体制をスタートさせたところであります。

 今、現場を御視察になって、そういう横浜の港の寒々しい状況というのは、これは何とか是正をする必要があると思いますので、現場をきちんと調査をした上で、これは国だけではなくて、国、都道府県、市町村、これが連携してやらないといけないので、いろいろまたそういう御指摘をいただいて一つ一つ着実に改善していって、危機管理の体制を整えたいと思います。

坂井分科員 これはもう、やはりある種の国防の意識を持ってやってもらいたいと思います。

 最後、言い忘れました。今年度は横浜検疫所を中心に国防のための大規模な訓練をもう一回やっていただいて、訓練をやれば必ず課題が出てまいりますから、それをお願いしまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

木村主査 これにて坂井学君の質疑は終了いたしました。

 次に、末松義規君。

末松分科員 民主党の末松でございます。

 今、大臣におかれましては、年金問題あるいは後期高齢者医療問題ですか、いろいろな形で大変だと思いますが、末松が質問に立つならば、また鳥インフルエンザかという話になるかもしれませんが、またきょうはよろしくお願いを申し上げます。

 きょうは最初に、私は、鳥インフルエンザH5N1につきましてきょうも三十分間質問させていただきますが、まず、国会の対応が一体何なんだというようなところから、ちょっと危機意識を議員の皆様を含めて持ってもらうということが重要かなということで、衆議院の事務総長をお呼びしております。

 先ほど、あす来るかもしれない、こういう形で、かなりもう全世界的に共通認識になってきた鳥インフルエンザH5N1、これはひょっとしたら一年後か、あるいは二年後かもしれないし、あす来るかもしれない、そういう点で、できる限り、先ほど坂井議員も対応についてはこれはもう国家危機管理という話、当たり前の、本当にそうだと思いますし、これは今、WHOのウイルス協力センター長の日本人の田代先生に言わせると、戦争の対応と一緒だ、こういう感じで非常に重い認識を持っておられますので、その観点から、まず国会なんですけれども、例えば衆議院でパンデミック、大流行が起こったらどうなるんだ。

 今、本会議でも、いろいろとやじもたくさん飛んでいます。つばきも飛びますよね。そうすると、飛沫感染、空気感染になって、患者が一人いたらみんなやられてしまうんですね。そういったところで議論もなかなかできない、こういう状況になってまいりますが、まず、衆議院として緊急時計画、今いろいろなところで計画をやっているんですよ、企業も緊急時計画を。アメリカなんかでは、全米五十州で各学校、各企業、各団体あるいは各自治体、みんな今持ってきているんですけれども、まず、日本の最高峰の議会と言われる国会はどういうふうな状況になっておりますでしょうか。

駒崎事務総長 お答え申し上げます。

 先日、予算委員会におきまして、末松先生の御質疑を拝聴させていただきまして、新型インフルエンザについての危機意識を持ち、また、その対策の重要性につきまして改めて認識いたしたところでございます。

 その対応策でございますが、現在のところ、タミフル等を若干備蓄しており、また、感染予防物品の購入等を考えておりますが、対応策としては十分とは言えないと思っております。

 今後、厚生労働省の新型インフルエンザ対策行動計画等を参考にいたしまして情報収集及び周知に努め、衆議院といたしましては、必要に応じまして議院運営委員会理事会等で御協議いただいた上で、危機管理体制の確立や業務の継続等の対応策を検討していかなければならないと考えてございます。

末松分科員 そこを、多分、議院運営委員会が中心になるかと思いますので、そういった形で、省庁的には全省庁で連絡協議会というのをやっていますので、そことも連携を密にしながら、ぜひ早急にこれも進めていただきたいと思います。国の司令塔がいなくなるという話だと、これまた大変な話になってまいりますので、どうかそこはよろしくお願い申し上げます。

 それでは、舛添厚労大臣にちょっと質問をいたします。

 今、鳥の世界でも、四月十七日付の朝日新聞なんかにも書いていますけれども、これは鳥の世界ですけれども、ソウル近郊でまた鳥インフルエンザが起こって、鳥の世界では今パンデミック状況が続いている状況でございます。これが人間にかなり飛び火するというようなことで、ずっと数年来言われているところなんですけれども、鶏やカモ類がソウル近郊で三十万羽殺処分することになった、こういう状況でございます。

 さらに、本年の四月十七日の毎日なんですが、こういう社説が書いてあるんですね。「さらに真剣に検討すべきなのは、こうしたメリットとデメリットを十分に勘案し、情報開示した上で、希望する国民全員にプレパンデミックワクチンを接種することの妥当性だ。国はパンデミックワクチンを全国民分用意する方針だが、全員分を作るには一年半かかるといい、大流行が起きたら間に合わない。」

 私も、予算委員会で舛添厚労大臣に申し上げました。私の場合はプレパンデミックワクチン、大流行が起こる前に希望する国民全員にこれは接種すべきであるということを申し上げましたが、このことに対しまして大臣の御見解をお願い申し上げます。

舛添国務大臣 私、先週、国立感染症研究所に行ってまいって、非常にセキュリティーのレベルの高いところにも入らせていただきました。

 まず、六千人を選んでプレパンデミックワクチンを接種してみて、副作用がないかとかそういうことを調べます。その上で、一千万人分が今ありますから、この一千万人分のプレパンデミックワクチンを医療関係者とか警察とか消防、社会機能の維持を図る方々にまず優先的に接種をする、治験の結果オーケーが出れば。さらに今、それを希望する国民に拡大する、そういう方針で準備を進めたいと思っております。

末松分科員 そうすると、これは今、希望する国民全員に打つ方針であるというふうにとらえてよろしいですか。

 もちろん、それは安全性とか、つまり副作用がないかとかそういうことなんでしょうけれども、ポイントは希望する国民なので、十分な情報開示がしっかりとやられれば、そこでもひょっとしたら百万人に一人ぐらい、いろいろなワクチンというのは、はしかのワクチンもそうですが、死亡するような方もおられることになるかもしれない。でも、本当に緊急時の国民の命を救うというメリットと、それからそういったワクチンで障害が出る方がおられる、このメリット、デメリットを比較していった場合であっても、私はメリットの方が大きいというふうに考えますので、情報開示の上、希望する国民の皆さん全員にプレパンデミックワクチンを接種するということを確認させていただきたいと思います。

舛添国務大臣 基本的にはそういう方向で準備を進め、努力をしたいということなんですが、委員御承知のように、一つは、プレパンデミックですから、今はベトナム株、インドネシア株、中国株で用意していますけれども、全く違うのが来たときにどこまで効くかというのがあります。

 それから、生産能力の問題があります。先般、研究所に行ったとき、先ほどの田代部長を含めていろいろな方と意見交換しましたけれども、例えば鶏の卵、有精卵を使う場合だと一年とかかかる。それを細胞培養でやると非常に短期間でできる。ただ、これの研究開発が十分進んでいないので、これが少し時間がかかりますと。それから、いろいろな医薬のメーカーにも御協力を願うにしても、どこまでその生産能力が高められるかというのがあります。

 それから、委員おっしゃったように、副作用というようなこともありますので、そういうことで情報をきちんと開示した上で、それからもちろん今言った準備をしないといけないです。

 それからもう一つは、注射針で接種、いわゆる予防接種の形ではなくて、鼻から噴霧器で入れる、これの方がはるかに効果が大きい。だから、やり方の問題とつくり方の問題。

 それで、どれぐらいかかるんですかと言うと、今のままいくと、やはり七、八年はかかってしまう。それで、これはやはり何とか、それは予算の問題もありますけれども、国策として少し頑張って予算をつけて、研究開発は半分ぐらいに短縮できないかなというのを実は考えているわけであります。

 そういうことを総合的にしていって、しかも、仮に万が一にも危険性があれば、こういうこともきちんと情報開示した上で、それで国民に希望があればこれは希望がある方に打つ、そういう方向で着実に準備を進めてまいりたいと思います。それが実はこの前の専門家会議の結論でもありました。

末松分科員 私も、全くその方向でお願いしたいという形でこの主張をしてきましたので、そこは非常にいい兆候かなと思っております。

 大臣がいろいろな問題点を先に述べられましたので、一つ一つ私の方でそこはチェックをしていきたいと思います。

 まず、大臣が言われた、予算的なものもあるという話でしたけれども、この前二月のときは、一億人のワクチンをつくるのに、原価が大体千数百円という話だったから、大体一千三百億円、イージス艦一隻分ぐらいですねという話を、私も聞いていたので、そういうふうなことを申し上げたんですが、どうも今原価も下がって、大体六百億円から七百億円ぐらいでできちゃうという話なんですが、もし一億人つくるという場合には大体どのくらいでこのプレパンデミックワクチンの費用を見積もっておられますか。

舛添国務大臣 一千万人分で買い上げ価格が約五十億円なんですね。そうすると日本国民全員で一億二千万人、そうすると十二倍して単純計算で六百億円、そういう数字の根拠はそこにあります。

 ただ、原液で買ってくるのか、どういうワクチンの状況にするのか、それから開発をどうするのか、まだいろいろな変更要因は出てきます。ただ、先ほど申し上げた六百億円というのは、そういう単純計算の上でということであります。

末松分科員 大臣も先ほどおっしゃっておられました、七、八年その準備にかかるかもしれないと言っている間にパンデミックが起こったら、かなりの方がお亡くなりになられるという話でございます。本当にこれはもう笑い事じゃないですね。あす起こるかもしれない、あるいはもう一、二年後にはほぼ確実に起こるんじゃないかと言われているとすれば、一、二年以内にこの体制をどう確立するかというのが多分厚労大臣の腕の見せどころになるだろうと思いますし、予算もそこは、みんなが最近ようやく危機意識を持ってきましたので、国としてもしっかり六百億円ぐらいであればとれ、これが国民の声になっていると思います。

 実は私も国政報告会、最近やってきたときに、この鳥インフルエンザの話をしました。そうしたら、お母さん方が、うちの子供がこのプレパンデミックワクチンを接種できるようになるのはいつごろになるんだと。これは正直な話ですよね。私は、いや、今の状況で進んでいったら数年後ですかね、四、五年後ぐらいかなと言ったんですね。

 といいますのは、今、ことしの三月で二千万人分のプレパンデミックワクチンが備蓄された。ことしの秋からまた一年ぐらい、半年ぐらいかけてこのプレパンデミックワクチン、一千万人分なら一千万人分をつくる。あれは有精卵を準備しなければいけませんので、この予約もしなきゃいけませんよね。そうなると、来年の春までに大体三千万人分、それを一千万人分ずつつけ加えていけば、それは大臣がおっしゃられるように七、八年から十年近くかかってしまいます。こんなことでいいんでしょうかというのが私の大きな疑問でございます。

 大臣に、いろいろと不確定要因があるかと思いますが、できるだけ早くやりたいという大臣の御意向を示されましたが、大体何年後と見積もっておけばよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 何年後ということに関して、何年というようなお答えにならないと思いますけれども、現在、私どもがやっていますのは、新聞報道等ございました専門家会議の御意見を聞きまして、この四月からですけれども、六千人を対象とした臨床研究をやる、これが大体一年程度かかるだろう。

 このときに有効性、安全性、それから免疫の持続性、そういうものを把握して分析した結果を来年度、すなわち二十一年度に生かそうということですから、そのときに出てまいりますのは、当然、委員からの御指摘もありましたように、小児だとか高齢者だとか障害者の方にどうするんだという議論がありますので、現時点でプレパンワクチンを全員分打った方がいいのか、あるいはパンデミックが起こったときに、今大臣もお話がありましたように、型が合うわけですから、パンデミックが起こったときに合う型をなるべくすぐつくれるような体制に持っていくのかというようなことを今、至急検討しているところでございます。

末松分科員 局長、大臣と違うことを言わないでくださいよ。

 大臣はさっき、プレパンデミックワクチンは全員分つくる方向で、それを基本的な形にしたいと。今あなたが言ったのは、プレパンがいいのか、それともパンデミックをつくる方がいいのか、これが実はわかりませんと言ったんですよ。大臣、お聞きになりましたよね。そこはどっちが方針なんですか、厚生労働省として。

西山政府参考人 もちろん大臣の申されたように、現在はフェーズ3でありますから、プレパンデミックワクチンをつくるというようなことで、来年度の補正で含めれば三千万人分になるというようなことで……(末松分科員「全員に打つのかどうかを」と呼ぶ)方向性としては、全員への接種を目指すと。

 ただ、私が申し上げたのは、小児だとか高齢者についてどうするんだ、そういうようなことでございます。

末松分科員 いや、私もパンデミックワクチンをつくるなと言っているわけじゃない。それはそれなりに一番正確な形でのワクチンですから、それはいいでしょう。

 ただし、今なぜ私がプレパンデミックワクチンにこだわるかというと、ここにおられる皆さん御存じのように、ある程度の免疫、基礎免疫ができるから、すぐさま死ぬというようなことは逃れられるでしょう、かなり症状が軽減されるだろうということが重要なので、それが重要だということで私は申し上げているわけですよ。何年かと言ったら、それはそういうふうなお答えをしたから、ちょっと待ってくれ、もう少し具体的に言ってくれよと。お母さんに私は答えなきゃいけない、今度選挙区で。

 いいですか、来年、二〇〇九年の三月までに六千人分のプレパンワクチン接種の結果を出すと言っているわけですよ。とすると、来年の三月までは、まずうちの子供にというお母さんの願いはなくなるわけだ。そうすると、ちょっとそこも疑問なんですよ。治験をやったからこのプレパンデミックワクチンが今二千万人分あるんでしょう。治験はやっているんでしょう。ちょっとそこをお伺いします。これは治験をやっているんですよね。

西山政府参考人 現在のワクチンの治験は、成人を相手に治験したものですから、この四月から小児に対する治験を開始する、こんな状況で……(末松分科員「成人はやらないの」と呼ぶ)小児はやっていません。(末松分科員「いや、成人はやらないの」と呼ぶ)ですから、成人はもう既にやっているんです、治験は終わっています。

末松分科員 六千人分というのは、でも成人の方を対象にしているわけでしょう。

西山政府参考人 現在の二千万人のワクチンでございますが、これは既にもう成人に関しては治験が終わっております。ただ、そのときに小児に対する治験を行っていないということで、小児に関する治験についてはこの四月から開始する、そういうことでございます。

末松分科員 余りここで時間を食っていくとまた時間がなくなっちゃうんですけれども、要は六千人分というのは、基本的には、さっき大臣が言われたように、医療関係者、医療従事者、あと社会機能維持者を中心に打っているということなんです。

 ただ、それに加えて、要するに小児あるいは妊婦さんの治験をやるということなんですか。

西山政府参考人 もう一回詳しく御説明いたします。

 まず六千人分につきましては、成人について安全性の調査、それから交差免疫性、免疫の持続性、こういったことについて、今までの治験とは違って幅広い対象患者についてやる。より高い安全性とかより高い効果について確認する。現在のワクチンは、成人に関する治験は終わっていますけれども、子供に対する治験、いわゆる薬事法に基づく治験を行っていないので、この四月から子供さんに対する治験を始める。(末松分科員「妊婦は」と呼ぶ)妊婦についてはやっていません。

末松分科員 妊婦さんに対してはやるんですか。

高橋(直)政府参考人 現在考えているのは、六千人の対象の中に妊婦は含む予定はまだございません。

末松分科員 ということであれば、本筋に戻しますけれども、来年の四月以降に、もし六千人分の結果がよければ、あなたが言った有効性、安全性、持続性ですか、それがよければ今度は一千万人、つまり医療関係従事者及び社会機能維持者、一千万人以上いると言われる、この人たちに打つという話ですよね。打つとすると、では、これもかなり期間がかかるでしょうから、そうなると一般の国民の方々が打てるというのはいつになるんですか。お母さんの質問はそこですよ。

西山政府参考人 おっしゃるとおりに、一千万人の方への事前接種の検討をしております。

 そのときに、前回、予算委員会でも御議論のありましたように、医療従事者と社会機能維持者のほかに希望する方があれば、その一千万人の中に含めましょうというようなことですから、そのときに手を挙げていただくというふうなことになろうかと思います。

末松分科員 それでは、その希望する方々、それはやはり私の家族も打ってみたいという人はたくさん出てきますよ。だって、一千万人分は基本的にはそういった社会機能とか医療関係の人たちなんでしょう。それで一千万人と言われても、では、今あるのは二千万人分と言われるから、プラス一千万人分はひょっとしたらそれでできるかもしれませんよね、理屈で考えれば。

 そして、ことしの秋からさらに一千万人分を生産するという話がちらほら聞こえるんですけれども、まず、これはイエスですか、ノーですか。

西山政府参考人 ですから、インドネシア株とベトナム株が一千万人、安徽株が一千万人、それからクレード2・2というのを一千万つくる。したがって、そこで交差免疫がしっかりあれば、どの株を打っても効くということです。先生おっしゃるように、ブースター効果はあるということですから、三千万人分になるということは予測されます。

末松分科員 ちゃんと答えてください。この秋からさらに一千万人分つくるということですか。

西山政府参考人 それは、先ほどお答えしましたように、一千万人分について、クレード2・2について補正でお願いできればというふうに考えております。したがって、三千万人分になるということです。

末松分科員 では、それが実現したら来年の春までは、三千万人分は国民の間で希望する人は打つことができるということですね、これはもう算数の話なので。

 それで、私が聞きたいのは、ではそれ以上の人が、四千万人、五千万人とか六千万人の人が、私も私もと言ってきたときに打てないじゃないですかと。お母さんの質問はまだ続くんですよ。うちの子供はできるのかということに対して、いや、あなたの子は大体何年後ぐらいにできますよという話を私もしたいわけですよ。それはどういうふうに、その三千万人に入らなかったらできないわけでしょう。

西山政府参考人 それについては、今申し上げたように、治験をしっかりやりまして、それで安全性、有効性を確認した後にプレパンワクチンの予算を要求するというようなことになると思います。

末松分科員 答えてくださいよ。だから、三千万人から漏れた人はそこではできないんでしょうと伺いたいんですが、どうですか、来年の春まで。

西山政府参考人 そういう意味では、おっしゃるとおりです。

末松分科員 つまり、来年の春から打ち始めてどのくらいかかるのかちょっと私はよくわかりませんけれども、生産が追いつかなかったら結局はできないという話ですから、正直言って、では先ほど大臣が言ったように組織培養という方法、これは有効性を私もよく聞いておりますけれども、これも四、五年もかかると言うじゃないですか。これは、特別に予算をとって人員をふやせば、四、五年なんということを待たずにできないんですか。

高橋(直)政府参考人 細胞培養によるワクチンの製造は、これは世界的にもまだ確立された分野ではございません。そういった意味では、今後日本においてもこれをやっていくということは、まずその基本的なところから始めなければいけないということで、時間的には、専門家の見方では大体四、五年ぐらいかかるのではないかということでございます。

末松分科員 そうなると、四、五年の間にパンデミックが起こらなければそれはいいですよ、それは万々歳ですよ。でも、起こるということであれば、それはそれなりに進めていくにしても、四、五年後にまたひょっとしたらパンデミックが起こったらということは有効ですから、それは対処する必要がありますけれども、その前に起こったら対処できないでしょう。当然、国民一人一人が不安に思っちゃうわけですよね。やはり卵、有精卵でやっていくしかない。それは、やはり今の生産ラインを前提にしていたら年に一千万人しかできないということであれば、まずいわけです。

 それに、海外から輸入することも、これは基本的に見込めません。なぜかというと、大体同時多発的に一挙に、交通網が発達していますから、パンデミックというのは世界レベルで起こるというふうに考えられていますから、そういった場合、年に一千万という話はちょっと少ないんじゃないかと思います。これを大きく、例えばここ二年から三年以内に、年に四千万、四千万とかそういう形で八千万ぐらいつくって、合わせて一億から一億一千万、こういうふうにつくるべきだと思いますが、いかがですか。

西山政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

 私どもとしては、今四社しかない国内のメーカーで生産能力が三千万というようなことでありますから、そのメーカーの強化を図るというようなことが一点。もう一つは、やはりまだパンデミックが起きていませんから、プレパンデミックワクチンについては国外企業からの購入というようなことも念頭に置かなきゃいけないだろうというふうに考えております。

末松分科員 とにかく、私はお母さんに答えなきゃいけませんので、そこはぜひきちんと、もう早急にやってください。今のうちにやれば、そういった基礎免疫がプレパンでつくられた方はかなり症状が軽くなるわけですから。

 それから、最後になりますけれども、ちょっともう一つ申し上げたいのは、パンデミックが起こってから、プレパンデミックの原液から製剤化して、それからワクチンを二回打たなきゃいけないんですね、あれは。一回じゃなくて、抗体価が上がるまで二回打たなきゃいけない。その期間を計算すると、まず、大体ワンボトル七万人分と言われていますね。これから、原液から製剤化するまで大体一カ月半かかって、そして、さらにワンショット、ツーショットというワクチンを打つ、そして抗体価が上がるまで大体一カ月かかると言われている。そうすると二カ月半ぐらいかかるわけですよ。

 あしたひょっとしたらパンデミックになるかもしれない。成田に一人患者が入ってきた。そうすると、学会でも研究報告がなされていると言われますけれども、大体十日間で十万人ぐらいに広がったとか、そういうふうな報告がなされているやにも聞くんです。そうすると、間に合わないじゃないか、二カ月半も、それからワクチンを打ってどうするんだという話があるわけなんですね。

 そういった意味でも、パンデミックが起こると本当にすぐさま広がってしまいますから、事前に打っておくことというのは極めて重要だと思いますけれども、その辺はいかがですか。

西山政府参考人 先生おっしゃられていることは、ブースター効果だと思います。一回免疫を獲得した後であれば、二回目の接種をするときにより抗体価が高くなるというようなことで、先ほどから議論しています事前接種が非常に有効だというふうに考えております。

末松分科員 もう時間がだんだんなくなってきたので、大臣に改めてお願いしたいのは、ひとえに舛添厚労大臣だけの責任ではなくて、本当に内閣全体として、これは官邸主導で、重要なんだ、大変な重要性があるので、もう予算でも何でも最優先のプライオリティーをつけろということを厚労大臣は叫びまくる方だと思うんですね。私もオオカミ中年と言っていろいろ二年間叫んできたんですけれども、ぜひそこはがんがんに叫んでもらって、そして、国家危機管理、戦争を相手にしているのと同じような感覚で、そこの意気込みを持ってもらいたいと思いますが、最後に大臣の決意をお伺いします。

舛添国務大臣 本当にこのパンデミック、まさに国家の危機でありますし、国民、今六十万人以上が単純計算でも亡くなるということですから、さらにこれがふえる可能性もありますし、そういう意味で、本当に今厚生労働関係予算を厳しく抑えられてはおりますけれども、そういう中で全力を挙げて危機管理を、これは政府全体でやってまいりたいと思います。

末松分科員 どうもありがとうございました。質問を終わります。

木村主査 これにて末松義規君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口和史君。

谷口(和)分科員 公明党の谷口和史でございます。

 きょうは、障害者福祉についてお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 まずは最初に、今、地方自治体を含め、地方の方で、障害者という表記を、その害という字を平仮名にして障がい者というふうに書くという、表記を変更するところがふえてきているようであります。この障害者の害という字ですけれども、かつては、もう御存じかと思いますけれども、例えば礙という字を書いたり、要するに、妨げる、隔てる、こういった意味で使われておったのが、戦後、当用漢字にないということで、それに近いという今の害という字を使った、こういう経緯があるようであります。

 この害という字には、妨げるという意味もあるんですけれども、どちらかというと、悪くするという意味合いが強いということで、自治体等で平仮名にするという動きが広がってきているようであります。私も、地元を回っていると、やはりぜひ平仮名に変えてほしいという声をいろいろなところで伺います。

 そういうことで、私としても、もし障害者の方々が不快に思われるのであれば、これはやはり漢字を平仮名に変えていくということをしていかなければいけないのではないか、こういうふうに思っているわけでありますけれども、内閣府の御見解をお伺いしたいと思います。

柴田政府参考人 ただいまお話がございました障害という表記でございますけれども、この害の字に関しましては、障害者に対する差別とか、あるいは偏見を助長しかねないんじゃないかということで、ほかの表記にした方がいいんじゃないかと求める意見があることは、私どもも承知しております。

 しかしながら、現時点では、やはりこの辺はいろいろ議論がございまして、例えば、御指摘の平仮名表記、これは去年の三月末の時点ですけれども、八都道府県ではもう平仮名「がい」という字に変えておりますけれども、そういう平仮名表記のほかに、別の漢字を使うべきじゃないか。別の漢字というのは、例えば碍の字なんですけれども、これは昔の障礙という字の俗字というふうに言われていますけれども、そういう言葉で使ったらどうかとか、あるいはチャレンジドという言葉にしたらどうかとか、いろいろな意見がございます。

 それと同時に、表記の見直しよりも、差別解消というのをまず優先すべきなんじゃないのかというようなお話もありまして、まだなかなか広く合意を得るというところには至っていないという状況だとは思いますけれども、今後、この件についても幅広い議論が行われることを私どもとしても期待しております。

 いずれにしろ、その問題の根源というのは、こういう表現によって差別とか偏見を助長しかねないんじゃないかという心配があるということでありますから、政府としましても、障害の有無にかかわらずに、国民だれもが相互に人格と個性を尊重し合う、そういう共生社会を実現するために、障害や障害者に対する国民の理解の促進というのを、今まで以上、より一層、その理解の促進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

谷口(和)分科員 今のお話をお伺いしまして、さまざまな意見があるということはよくわかりました。

 ただ、その上で、ぜひこういう平仮名に変えてほしいという意見が、地元、障害者の方々の中にもあるということもよく認識していただいて、今後議論を進めていただければというふうに思います。

 次に、精神障害者の方々への支援についてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 まず、これもやはり地元を回っているとよく要望が上がる点なんですけれども、自立支援法の施行で、身体、知的そして精神と、三障害統一ということで始まったわけでありますけれども、この法律以外のところで、やはり身体、知的と、そして精神障害の方のまだまだ差があるというふうなことを強く伺っております。

 まず最初に、JRとか私鉄、バス、飛行機等の割引なんですけれども、今、身体障害者の方、そして知的障害者の方には、例えばJRや民鉄であれば、介護者を必要とする、必要としないとあるんですけれども、大体五〇%の割引、飛行機ですと三一%から四四%、それから船は五〇%、バスも五〇%、そしてタクシーは一〇%、こういう割引が現在なされているわけでありますけれども、精神障害者の方にもこういう運賃の割引をぜひ導入していっていただきたい、こういうふうに思っております。

 先日お伺いしたところによると、そういう中でも、精神障害者の方への割引を導入するところもふえてきているというふうに伺っておりますけれども、その詳細をまずお伺いしておきたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 現在、障害者の方々に対します公共交通機関の割引につきましては、各事業者の自主的な判断に基づきまして、今先生御指摘のように、身体障害者の方、それから知的障害者の方に対して主に実施されております。

 これは、言いかえますと、各事業者が割引を行うことによって生じます減収、これをほかの利用者の方々によって結果的に補てんをしている、賄っているという構図でございまして、そういうことから自主的な判断になっておるわけですが、このため、精神障害者を割引対象としている事業者などは、現在のところはまだ一部にとどまっておりますけれども、国土交通省といたしましては、従来から、各事業者や事業者団体等の関係者に対しまして、機会をとらえて、割引に対する要望を踏まえて検討することにつき、理解と協力を求めているところでございます。

 現在の実施状況でございますが、平成十八年十月に、精神障害者の保健福祉手帳制度に、手帳に本人の写真を貼付するということができましたので、それ以降、幸いにしてやはり増加してきておりまして、十九年四月では、鉄軌道事業者では三十九社、それから乗り合いバス事業者で百七十四社、タクシー事業者で千二百三社、旅客船事業者で十五社、合わせて全部で千四百十八社ということで精神障害者割引が実施されておりまして、このように増加をする傾向にございます。

谷口(和)分科員 今、詳細をお伺いしました。実施をしているところも増加をしているというお話を伺いました。

 これは、各企業、それから、その主体になる事業者の判断ではあるんですけれども、今後も国土交通省には、導入するところがもっとふえていくようにぜひ努力をしてもらいたい、こういうふうに思っているわけですけれども、今後の取り組みについてお伺いしておきたいと思います。

北村政府参考人 今後の件でございますけれども、我々といたしましては、公共交通機関におきます運賃や料金の割引の実施につきましては、先ほど申し上げましたように、基本的には各事業者の自主的な判断にかかわる問題ですけれども、先ほど先生おっしゃいましたように、例えば障害者自立支援法におきまして、身体や知的や精神や、そういう三障害の制度格差がなくなった等のことを踏まえますと、これらにつきましては、関係者の理解と協力をあらゆる機会をとらえて引き続き求めていって、増大に努めていきたい、かように考えておる次第でございます。

谷口(和)分科員 さまざまな、今後のところも含めて、ぜひこれは精力的にお願いしたいと思います。

 続いて、自立支援医療制度についてお伺いをしたいというふうに思います。

 これも地元からのいろいろな要望があるんですけれども、自立支援の医療制度については、対象者が、更生医療、育成医療、更生医療については、その障害を除去、軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できるもの、十八歳以上、それから、育成医療については、身体に障害を有する児童で、その障害を除去、軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できるもの、十八歳未満ということで、この更生医療、育成医療については、入院費の助成が行われております。

 一方、精神障害者の方については、精神通院医療ということで、精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要するもの、こういうふうになっております。この精神障害の方にも、更生医療それから育成医療で認められている入院費の助成についてもぜひ行ってもらいたい。

 全般的な政策としては、入院から生活の現場に戻っていただいて、そこで治療していただく、こういう流れになっているということは存じているわけでありますけれども、この件についても、入院費の助成ということをぜひ考えていただきたいと思うんですけれども、見解を伺いたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 精神障害につきましては、今お話がございましたように、入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づきまして施策の展開を図っておるところでございます。こうした中で、在宅の精神障害者の医療の確保を図り、通院医療を積極的に進める観点から、通院医療に対する公費負担を行っているものでございます。

 一方、更生医療及び育成医療につきましては、一定の身体上の障害につきまして、これを除去するために必要な外科的治療を公費負担の対象としているため、その一環として、従来から入院医療についても公費負担の対象となっているものでございます。

 精神障害者に対する入院医療につきましては、自傷他害のおそれのある方に対しまして、都道府県知事が行政処分として行う措置入院について、医療保険の自己負担分を全額公費で負担しているところでございますけれども、その他の入院医療費につきまして新たに公費による助成を行うことにつきましては、先ほど御説明いたしました、通院医療を積極的に進める観点や、あるいは更生医療や育成医療の入院とは趣旨が異なることを踏まえますと、なかなか難しい問題ではないかなというふうに考えております。

谷口(和)分科員 今の御説明で、なかなか難しいという御見解でしたけれども、地域の方々は本当に入院費の助成というのを強く望んでおりますので、ぜひ今後御検討いただきたい、こういうふうに思います。

 次に、同じく、自立支援医療の申請については医師の意見書が必要であるということになっております。この申請については、かつては二年に一回でよかったものが、今、一年に一回になっているということで、実質的に負担がふえているという状況にあります。

 これについては、例えば、もとの二年に一回に戻すとか、もしくは二回目を無料にするとか、できればすべて無料にするとか、幾つか案が考えられると思うんですけれども、ぜひそういう形で負担の軽減を行ってもらいたい、こういうふうに思っておりますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 精神通院医療を含めまして、障害に係る公費負担医療につきましては、障害種別ごとに異なる制度のもとで行われていたものを一本化し、あわせて、必要な医療を確保しつつ制度を持続可能なものとするために、障害者自立支援法におきまして見直しを行い、自立支援医療として一元的に提供することとしたところでございます。

 これによりまして、精神通院医療につきましては、受給される方の所得に応じた負担上限月額を設定するために所得確認を行うとともに、診断書についても、支給要件に該当している旨を証明していただくために毎年御用意いただいているところでございます。

 こうした毎年の手続を行うことによりまして、公費負担医療の必要性をよりきめ細かく確認し、適切な認定を行うことができ、ひいては適切な制度運営に資するものであることから、その趣旨と必要性について御理解をいただきたいというふうに考えております。

 なお、更生医療、育成医療につきましては、その治療内容にかんがみまして、支給認定の有効期間は原則三カ月と設定されておりまして、有効期間終了後に新たに申請を行う場合には、制度上、意見書の提出を求めているというところでもありますので、精神通院医療との有効期間は異なるものの、同じような取り扱いかというふうに考えております。

 なお、更生医療、育成医療におきましては、医療の具体的な方針の変更がしばしば行われることがありますので、そのたびに意見書を必要としておりますけれども、そのことを踏まえまして、有効期間内におきましては、二回目以降の意見書を無償としているということでございますので、精神通院医療と取り扱いが異なっていることにつきまして、そんなことがありますので、御理解をいただきたいと思っております。

谷口(和)分科員 この点につきましても、負担軽減の方向でぜひまた御検討いただきたいというふうに思います。

 続いて、地域活動支援センターについてお伺いをしたいと思います。

 自立支援法の施行に伴って、いわゆる小規模作業所、それから精神障害者地域生活支援センター、そして身体障害者・知的障害者デイサービス、この三つが地域活動支援センターに移行が行われているわけでありますけれども、自治体によっては、例えば、移行に伴って補助が減ってちょっと運営が厳しいという声も上がってきております。そういう自治体が実際に出てきている。私も自分の耳で聞いておりますけれども、このことについてどう対応していくのか、見解をお伺いしたいというふうに思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 地域活動支援センターにつきましては、お話ございましたように、小規模作業所や精神障害者地域生活支援センターなどが移行をしてきております。これにつきましては、障害者などに通っていただき、創作的活動や生産活動の機会の提供などの便宜を供与するための施設として位置づけられておりまして、地域の実情に応じて、市町村がその創意工夫により柔軟な運営、事業の実施が可能なものとなっておるところでございます。

 地域活動支援センターの運営費補助につきましては、基本的な部分につきましては、市町村事業といたしまして地方交付税において措置されておりますので、先生御指摘がありましたように、従前の運営費が確保されていない事例も見受けられますことから、私どもといたしましては、全国会議などを通じまして、各市町村に対し、必要な運営費を確保するように指導しておるところでございます。

谷口(和)分科員 これも、私の地元の自治体でもやはり大変困っているようでありますので、趣旨等の徹底をしっかりとお願いしたいというふうに思います。

 それから、引き続いて、同じ件なんですけれども、小規模作業所が地域活動支援センターに移行していく中で、なかなかセンターに移行が難しいというところも出てきているようであります。

 これは質問通告していないんですけれども、最初に、移行状況をちょっとまず確認させていただければと思います。

中村政府参考人 小規模作業所の移行状況につきましては、昨年、平成十九年十月一日の時点で、移行率は四三・四%となっております。

谷口(和)分科員 四三・四%ということで、約半分弱ということですね。

 この小規模作業所から地域活動支援センターへの移行については、障害者自立支援法の抜本的見直しということで、昨年十二月の七日に与党PTが案というか報告をまとめております。その中に、こういうふうにあります。「小規模作業所等については、円滑に法定事業に移行できるよう、コンサルタントの活用など「特別対策」を一層有効に活用するとともに、法定事業に移行する際の基準の見直しなど、更なる移行促進策を講ずる。また、小規模作業所の移行のための新たな受け皿の在り方についても検討。」こういうふうになっております。

 この与党PTの報告書も踏まえて、小規模作業所から地域活動支援センターへの移行をしっかりと促進していくためにどう取り組んでいるのか、ここのところをお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月の与党プロジェクトチームの報告を踏まえまして、小規模作業所の移行につきましては、一つは、新事業体系の事業に移行する際の定員要件の緩和ということを行っております。これは、都道府県知事が認めた場合は、就労継続支援B型などの新体系の事業に移行する際の定員要件を二十人から十人に緩和いたしまして、二十三年度末まで適用することにしております。

 二つ目といたしましては、小規模作業所同士が統合するために、コーディネーターの派遣など必要な調整についての支援を行うこととしております。

 三つ目といたしまして、地域活動支援センターにつきまして、主たる事業所とは別の場所で、一体的な管理のもとでサービス提供を行う事業所であります従たる作業所の設置を認めるというような緊急措置を講ずることとしたところでございます。

谷口(和)分科員 今まで、障害者自立支援法に伴って、身体、知的そして精神、この三障害を統一していくということの中で、なかなか実態的には精神障害者の方への支援がおくれがちだという点をちょっとお伺いしてきたわけでありますけれども、こういう状況について、最後になりますけれども、舛添厚生労働大臣に、今後こういったことに対してどう対応されていくのか、御決意、御見解をお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 今委員がずっと御指摘のように、やはり、その三障害のうちの、身体、知的に比べて精神障害の方は、外から見えにくいというようなことがあって、電車なんかに乗るときにきちんと対応してもらえない。

 一つ一つ写真つきの証明書というようなことをやっていますけれども、一つは、障害者を一元的に支援するという法体系にしました。したがって、法的にはもう差別がないようにやっている。ただ、細かい点について、いろいろ今御指摘のような問題があれば、これはまた前向きに取り組んでいきたいというように思っています。そして、全体で毎年約一割の予算の伸びを確保していって、きめの細かい対応をやりたいと思いますけれども、精神障害者につきましては、平成二十年度から新たに、精神障害者地域移行の支援特別対策事業費を計上することができました。

 さらに、現場でどういうことが起こっているか、そういうことを含めて、精神保健医療福祉のあり方について検討会を今もう発足させて検討させております。そういうさまざまな努力を通じて、精神障害の方々に対する支援をきちんとやってまいりたいと思います。

谷口(和)分科員 精神障害者の方々が、知的障害者の方、それから身体障害者の方への支援、福祉の面で格差が縮まってきたなと思ってもらえるような施策を、ぜひ精力的に取り組んでいただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて谷口和史君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木義明君。

高木(義)分科員 民主党の高木義明でございます。

 大臣は、報道によりますと、みずから後始末専門の大臣だ、こういうことを言われております。年金、医療、介護、障害者、C型肝炎対策等々、御労苦を察します。私がこれから質問をいたします原爆被爆者対策、これも忘れてはならない重要な施策でございます。したがって、私は、改めて、限られた時間でありますけれども、被爆者対策についてお尋ねをしてまいりたいと思っております。

 ことしも、あの日から六十三年目の夏が来ます。舛添大臣は昨年の八月二十七日に新しく大臣に就任された、このように承知をしておりますけれども、広島における慰霊祭、長崎での慰霊祭、恐らく、大臣、ずっと就任されておりますと、現地に赴くことになるんではないかと思っております。

 原爆被爆者の対策については、現在の原爆被爆者援護法によってそれぞれ措置がされておることになっております。平成六年に成立をいたしまして、翌平成七年、この年は被爆五十周年という節目の年でございました。この援護法が運用されましてことしで十三年目を迎えるわけでございます。

 今日まで被爆者対策に尽力をされた方々に心から敬意を表する次第でございますが、しかし、なお、今日に至って、一つには原爆症認定制度の見直しの問題、あるいは在外被爆者対策、そしてまた被爆体験者という新しい課題も出ておりますし、被爆二世、三世の問題もまだまだ取り残されているというふうに私は思っております。

 私ども民主党としましても、これらの問題について新たな観点から取り組むことにいたしておりまして、一昨年の六月十五日には、被爆者問題議員懇談会を立ち上げました。被爆者に対する諸問題について問題意識を共有しよう、そしてまさに政治解決のために活動していこう、こういうのがねらいでございました。

 また、昨年の十一月二十七日には、次の内閣、厚生労働部門の中に原爆症認定制度見直し作業チームができました。不肖私がその座長になっておるわけでございまして、いずれも、今の原爆被爆者援護法の見直し、改正を視野に入れて活動を展開しておりますし、これまでも、大臣を初め関係者に要請、あるいは申し入れ等を行ってきたところでございます。

 今、原爆被爆者対策予算は、十八年度決算規模によりますと千五百三十六億円でございます。これは、平成十三年度をピークにいたしまして、だんだん減少の傾向にございます。もちろん、被爆者の高齢化、あるいは残念ながら亡くなっていく方がおられるという状況の中で、こういうものが出ております。

 私たちは当面何をすべきか、こういうことになりますので、我が国は被爆体験国だ、我が国に原爆が投下された事実、そして悲惨な体験、これが風化をしていくのではないかという懸念もあります。そうあってはならない。今こそ、私たちは、このことに目を向けて、被爆の実相、そして原爆の恐ろしさを国民ひとしく認識していく、このことがまず何より大事ではないかと思っておりますが、まず初めに、大臣のこれまでの原爆被爆者対策における反省といいますか、総括といいますか、この点についてお伺いしておきたいと思います。

舛添国務大臣 私は北九州市の生まれでありまして、実は、小倉の上空で原爆を落とすということでアメリカのB29はやってきた。ところが、雲がかかっていて長崎に行ったわけですね、委員御承知のように。そうすると、もし小倉に落ちていれば私は生まれていないはずですから、そういう意味では、この原爆問題というのは、私もそういう思いが非常にありまして、何とかしたいというふうに思いまして、高木委員初めいろいろな委員の先生方の御紹介もあって、被爆者の方々にもお会いして、直接お話をお伺いいたしました。

 被爆者の援護法に基づいてさまざまな施策をこれまで政府もやってきましたけれども、何とかこれは認定基準というものを見直したいということで、今度新たに、四月からこの専門家の皆さん方の御意見もいただいて、新しい基準で認定をするということで、今までの十倍の約千八百人ぐらいはこれで認定できるのではないかというふうに思います。

 この過程において、新しい基準になったらかえって足切りというかをされる方がいるんじゃないかとか、いろいろなことを思いましたので、一応の基準はありますが、私はできるだけ前向きに、その方々の、一定のこういう疾患があれば自動的にというのに当てはまらなくても、それから、被爆地からの距離についても、全体的に適用するということもその中にきちんとありますので、御高齢になっていますからできるだけ御支援申し上げたい、そういう思いで取り組んでまいりましたし、今後ともそういう方針を貫かせていただきたいと思います。

高木(義)分科員 早速、各論に入ってまいりますけれども、大臣申されましたように、原爆症認定制度、新しい審査方針が決まりました。この審査方針では、これまで裁判によって勝訴した原告さえ救うことができないのではないか、こういう懸念が一つあります。

 今、三百五名の方々が係争中でございます。新基準のまさに柔軟運用が期待されておりますし、何よりも大事なのは、早く認定作業をするということです。被爆者は既に平均年齢七十四歳を超えたと言われておりますので、この点についていかがでしょうか。

西山政府参考人 今回の審査基準、距離あるいは時間ということで、外挿的な基準でございます。今先生おっしゃるように、早くということであります。

 私ども、分科会がこれまで月に一回でしたけれども、今度、現場の長崎、広島のドクター、専門家を追加しまして四つの部会にしております。この部会でかなり多くの方を審査できるのではないかというふうに考えております。

高木(義)分科員 私が申し上げたのは、これまでの裁判で勝訴した人が、新しい認定基準ではこれから漏れるおそれがあるということが言われておるんですが、この点についてどうなのかということです。

西山政府参考人 四月からの審査の基準で、ただいま始まったばかりであります。おっしゃるようなことがこれから審査の段階でどうなるかについては、現時点では明確にお答えできない状況でございます。

高木(義)分科員 従来の支援は、まさに被爆者切り捨てそのものであったということで、被爆者からも不信感が寄せられております。

 私は、ボーダーにある方々、あるいは微妙なところにいる方々、こういう方々はやはり救済する、被爆者の利益になる方向で積極的に救済をするという精神が、今日までの司法判決、あるいは検討会などの議論を通じて私は国民世論になっておると思うんですが、この点についてどうでしょうか。

西山政府参考人 私の方からお答え申し上げますけれども、まさしく、これまで原因確率という手法での審査でありましたけれども、今回の新しい審査の方針については、個々の審査については先ほど申し上げたわけでありますけれども、被爆者団体の御意見を踏まえまして、その前文にでありますけれども、認定審査に当たっては、「被爆者援護法の精神に則り、より被爆者救済の立場に立ち、」というふうな前文が入ったわけでありまして、そういった意味では、審査の先生方に、この文言についてよくまとめていただいたなというふうに考えております。

高木(義)分科員 現実に今認定作業が進められておるわけですが、がんや白血病についてさえ時間や距離の制限があり、問題ではないか、こういう指摘がございますが、この点についていかがでしょうか。

西山政府参考人 申すまでもなく、がん、白血病などについては、放射線との関連に関する知見が集積しているというふうな病気であります。

 委員御懸念のこの五疾病以外の方々にあっても、申請に係るさまざまな要素を総合的に勘案しまして、個別に判断をしていただくというふうなことになっております。

    〔主査退席、松野(博)主査代理着席〕

高木(義)分科員 裁判で判断が確立している疾病、甲状腺機能低下症、肝機能障害、これは私は積極的認定の対象にすべきだと思います。昨年七月の熊本地裁の判決においても、甲状腺機能低下症は認定すべきだ、こういうふうな判決が出ておりました。こういう対応にできるのではないかと思いますが、この点について、どうでしょうか。

西山政府参考人 肝疾患と、おっしゃった甲状腺機能低下症、今のところ放射線影響研究所のデータ等々を見ても、先ほど申し上げた五疾病とはやはり知見の集積が違うというようなことでございます。しかしながら、先ほど申し上げたような、こういった疾患についても総合的に判断を申し上げて、個別に審査するというふうなことにしております。

高木(義)分科員 いわゆる原因確率、これがこれまでの審査の大きな柱でありましたが、今回の新しい審査は、原因確率を改める、こうされておりますが、しかし、被曝線量が総合的判断の考慮要素とされていることは、なお被爆者の実態に即したものではないのではないか。この点についてどうでしょうか。

西山政府参考人 原爆症認定、もう申すまでもなく、法律で放射線起因性を判断すると。私どもとしては、どの程度原爆放射線に被曝したかというような判断が求められています。ただ、先生おっしゃるように、私ども、この被曝線量だけじゃなくて、審査の方針にも明記されていますように、既往歴ですとか生活歴あるいは被爆直後の症状、こういったものを考慮して、放射線起因性と関連する情報を幅広く審査会に上げて、審査の先生方に審査していただく、このようなことにしております。

高木(義)分科員 見直しの経緯、これは、昨年の八月五日に安倍前総理大臣が見直しをするという表明をいたしました。これからがその始まりになったわけでありますけれども、そういう背景の中で見直し論が今かなり進められて、その結果、新しい審査の方針が決まったわけですから、当然、私は今、国が控訴されておる六つの裁判に対しての控訴取り下げをすべきじゃないかと思いますが、この点、どうですか。

西山政府参考人 六つの地裁でございます。これについては、私ども、これまでるる申し上げた、疾患ですとか距離ですとか、あるいは入市の時間ですとか残留放射能、いろいろな判断が司法で分かれておりまして、そういうところで、先生の意には沿わないかもしれませんけれども、既に上級審の判断を仰いでいるというような状況でございます。

高木(義)分科員 この点について、大臣、どうでしょうか。まさにこれは政治の問題だと思いますがね。

舛添国務大臣 六つの判断が全部違う司法判断ですけれども、それと、今大阪高裁でこの審理が行われていますが、四月からの新しい基準、認定基準について、司法がそれを含んで判断するのかどうなのか。実は五月にも判断が下されると思っていますので、それを私はちょっと見ている段階でありまして、この大阪高裁の判断をいただいた上で、今委員がおっしゃったような点も含めて、まさに政治の判断ができるかどうか、やりたいと思います。

 それで、先ほど委員がおっしゃったように、これはもう積極的に救うんだ、その精神を忘れちゃならないと思います。そういう思いで高裁の判断を実は注意深く見守り、その上での何らかの決断なりを行いたいと思っております。

高木(義)分科員 ぜひ積極的認定のスタンスを堅持してお願いをしたいと思います。

 この審査の迅速化は、先ほども冒頭言いましたけれども、やはり早いことが何よりです。大変高齢化されておる方々は御苦労されております。したがって、早く認定をするという審査の迅速化、これについてはぜひお願いをしたい。

 今いわゆる審査待ちの方々が、本年三月三十一日現在、四十二都道府県で約二千七百件あるとされております。医療分科会で具体的に審査をすることが多いんですが、これにかかると大変時間も長くなる。被爆者援護法の第十一条の二項に、ただし書きというのがございまして、条項の積極的な活用を図る、まさに認定作業の迅速化を図るためにこの二項を積極的に採用してはどうか、私はそのように思いますが、この見通しについてお伺いしておきたい。

西山政府参考人 先ほども答弁申し上げたんですけれども、これまでは申請のあったすべての案件について分科会を通していたというようなことであります。

 今後は、処理の迅速化を図るために、これまでの実績に照らしておおむね原爆症の認定を受けることができると考えられる方については、御指摘の条文を活用しまして、原則として審議会にお諮りすることなく事務局において処理をする、このような形で迅速処理をしていきたいというふうに考えております。

高木(義)分科員 審査の見直しについてということだってありますが、審査の方針の中には、新しい科学的知見の集積等の状況を踏まえ、随時必要な見直しを行うものとする、こういうことがございますね。これは何を意味するのか、そしてこの意義は一体何なのか、この点についてお示しをいただきたい。

西山政府参考人 例えば、今回積極認定に入りました心筋梗塞、あるいは先ほど先生が言われました肝機能障害あるいは甲状腺機能低下症、先ほど私の方で放射線影響研究所のデータ等を申し上げましたけれども、そういったことを含めて、世界じゅうのこういった放射線影響に関するデータを見て、新たな知見が得られれば積極認定の方向に向けていく、このような趣旨で私どもは理解しています。また、これについては、審査会の先生方についてもさまざまな立派な先生がおられますので、新たな知見を世界的に集めていただくというようなことを考えております。

高木(義)分科員 時間が限られておりますので、ひとつ大臣、この認定制度の見直しの背景、内閣と国会は不作為ではないか。司法判断がなければ国は動かない、これは私たちも国会議員の一人としてじくじたる思いがいたします。まさに政治決断あるのみ、私はこのように思っておりますので、その点について十分御対応いただきたいと思いますが、この点について再度。

舛添国務大臣 厚生労働行政、さまざま反省しないといけない点はあると思います。そういう中でこの被爆者の高齢化というのが進んで、もう本当に時間を待つことができないという状況でありますので、積極的にこの被爆者援護法の精神にのっとって、まさに先ほど委員がおっしゃったように、疑わしきは排除するんではなくて、この原爆を落とされたことは本人に何の落ち度もないわけですから、そういう意味で、これは政治家としての大臣としてきちんと対応していきたいと思いますし、また、いろいろな法律の制定を含めて、国会の皆さん方とも協力して、この被爆者の支援、あらゆる手を使ってやるということの決意を述べさせていただきたいと思います。

高木(義)分科員 残された時間、被爆体験者の問題についてお尋ねをしていきたいと思います。

 大臣の手元にも資料があると思いますが、「原爆被爆地域図」、これは長崎の原爆であります。これでいきますと、被爆者の要件である地域は、この部分でいけば赤色と、そして今は特例区域になっております黄緑、青色、こういうことになっておりますが、これは東西七キロ、南北十二キロ、こういう、ある意味でいびつな形状になっております。

 普通、原爆が投下されますと、同心円状に被害は及ぶものというのが常識であります。もちろん、当時の風向き、気象状態、あるいは構造物、たくさん要件がありますけれども、これは上空約五百メートルで炸裂したわけです、大体三百メートルぐらいの山が長崎でいえばあるんですが。昭和三十二年、一九五七年にこの被爆地域が確定をされた。これは何かというと、行政区単位になっておるんですよ。だから、このこと自体が、当時の政治状況といいますか、こういうことでありましょうけれども、これに疎外される方々がおられます。この方が今被爆体験者と言われておりまして、このような地域の確定は不合理ではないか、非科学的ではないか、こういうことが今なお一つの問題になっております。

 私は、時代が変わっても、やはり真理を追求しなきゃならぬ、そういう意味で、この問題についてこれまでも、一九八〇年、昭和五十五年に原子爆弾被爆者対策基本問題懇談会、いわゆる基本懇というのが、地域の是正については科学的、合理的根拠がない限りにおいてはできないという答申を出して、これが今の政府のずっと引き継がれた方針になっておるわけですよ。今まだまだこのような問題がある。

 そして、全国被爆体験者協議会は、ついに国を相手取って、被爆者としての認定、そして健康管理手当の支給を求める訴訟を起こしたんですよ。これも原爆症認定制度じゃありませんが、ついにそういう司法の場に出ている。これは、司法の場でいろいろ議論されてどうのこうのというんじゃなくて、やはり科学的、合理的にもう一回改めてこういう方々についての調査をし、裁判を待たずにして解決に動くべきだ、私はそのように思います。

 この点について、大臣、この地図を見てどのような感想を持ちますか。

舛添国務大臣 委員がおっしゃったように、行政区域別じゃなくて、まさに同心円的に被害があるでしょうし、風向きとか山の高さとか、いろいろなこともあると思いますけれども、一々司法の判断にゆだねないで解決できる、それが政治や行政の仕事でもあるというふうに思います。

 何度も申し上げますけれども、本人に全く何の落ち度もないわけですから、それから、科学的な知見とか研究開発、医学の水準について見ても、これは個人差があって、同じ被爆を受けても、それは全く一〇〇%同じ結果が出るとは限りません。そういうことを含めて、これは与党でもPTをつくってやっておりました。それから、民主党の皆さん方も、先ほど委員御自身がおっしゃったように、いろいろな検討の場を設けておりますので、我々もまたどういう形で対応できるか検討してみたいと思いますけれども、ぜひ国会の場で、また政党のそれぞれのプロジェクトチームの場でいろいろいい提案をいただきまして、そしてこれは党派を超えて、こういう方は時間が限られていますので救わないといけないと思います。

 私は、少なくとも、積極的に支援するんだ、積極的に救うんだ、その精神を忘れずに、今のような問題にも対応していきたいというように思っております。

高木(義)分科員 今、こういう裁判の場に出てまいりました。

 したがって、それはそれとしまして、当面の措置として、被爆体験者にとられた平成十四年四月の制度、発足当時の制度、これがその後まさに改悪という状況になっておりますが、当面の措置として、平成十四年四月の措置に戻すべきだと私は思いますよ。この点についてどうでしょうか。

西山政府参考人 この調査事業につきましては、予算委員会でも大臣の方から答弁しておりますように、引き続き、今後検討してまいりたいというふうに考えております。

高木(義)分科員 大臣、ぜひ前向きに検討いただきますように、この場逃れじゃなくて、大事な、それがずっと引き続くことはいいことじゃありません。だから、十分な調査もしなきゃなりませんね。

 最後になりましたが、実は被爆者の方々がよく言われておりますが、原爆が落ちて空白の十年だったと。まさに戦火にまみれて戦後復興の大変なときでありましたけれども、その中で原爆問題、被爆者対策は、まず一つには、追いつかない医療体制、したがって、医療の空白がありましたよ。二番目には、差別、偏見のまなざし、こういう中でやはり生活苦、援護の空白、これがある。三つ目には、調査の結果、当時の軍、政府も、原爆投下後、調査をかなりしておられるようです。ところが、それは軍事機密となって、これがアメリカに渡っておる、つい最近、アメリカのバージニア州のGHQのマッカーサー記念館でその報告書の存在がわかった、こういうことが言われております。これは昨年の八月六日のNHKテレビの特集でも報道されておられます。

 こういう史料をもう一回捜してみる。そして、その後も日米共同の調査があっております。ABCC、原爆傷害調査委員会、放射線の影響についてかなりの調査があるんだけれども、被爆直後から約十年間はほとんど日本においてそういうものが論じてこられなかった、史料は出されなかった、報告書も明らかにならなかった。

 原爆症認定制度もそうですし、あるいは被爆体験者の問題もそうです。今、残留放射能を調べてみても、ないのは当たり前ですよ。だから、私は、国としてきちっと調査機関をつくって、この問題について徹底的に調べる、これが世界から核兵器をなくして、二度と被爆者をつくってはならない、また被爆者の長い長い思いがここにあると思うんですよ。

 どうですか。最後、時間がありませんので、一言、舛添大臣の御決意をお聞きしておきたいと思います。

舛添国務大臣 この被爆の問題を含めて、さまざまな戦後の問題でまだ完全に問題の解決が見られていないものがございます。例えばシベリアの抑留者の問題もそうだし、世界じゅうに遺骨が散らばっております。

 そういうことも含めて、やはりこれまで平和と繁栄を享受してきた、その礎となったいろいろな犠牲者がおられるわけですから、今言った調査も含めて、きちんと私たちはそういうことに積極的に果敢に取り組むべきだと思いますので、これまたどういう形で具体的にできるかを含めて検討させていただきたいと思います。

高木(義)分科員 終わります。どうもありがとうございました。

松野(博)主査代理 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。

    〔松野(博)主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

木村主査 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。若林農林水産大臣。

若林国務大臣 平成十八年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は三千九百億六千三百九十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千二百二十七億三千百四十八万円余であり、差し引きいたしますと、三百二十六億六千七百五十四万円余の増加となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は三兆二千六百四億五千三百三十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆七千五百八十七億六千四百八十八万円余、翌年度繰越額は四千百六億八千六百四万円余、不用額は九百十億二百三十八万円余となっております。

 次に、各特別会計の決算について御説明申し上げます。

 まず、当省所管の七つの特別会計につきましては、特別会計に関する法律により平成十八年度限りで廃止され、新たに六つの特別会計が設置されたところであります。

 食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆二千九百十一億五千七百九十四万円余、支出済み歳出額は二兆二千六百三十八億五千百四十九万円余でありまして、歳入歳出差し引き二百七十三億六百四十五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところにより、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、食糧管理勘定の損益計算上の損失は千七百九十五億二千四百二十一万円余でありまして、この損失は、法律の定めるところにより調整勘定に移し、調整資金を減額して整理することといたしました。

 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これらの特別会計の概要につきましては、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。

 以上をもちまして、平成十八年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

木村主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院鵜飼第四局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十八年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三十件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項九件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二一一号、二一六号、二二三号、二二七号及び二四〇号の五件は、補助対象事業費を過大に精算しているものであります。

 同二一二号及び二一三号は、補助の対象とならないもの及び補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 同二一四号及び二三二号から二三九号までの九件は、補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 同二一五号は、補助の目的を達していないものであります。

 同二一七号及び二二八号から二三一号までの五件は、補助金を過大に受給しているものであります。

 同二一八号及び二二四号は、補助の目的外に使用しているものであります。

 同二一九号は、予算、法令に違反しているものであります。

 同二二〇号から二二二号まで、二二五号及び二二六号の五件は、工事の設計が適切でないものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、農業災害補償制度(農作物共済)の運営に関するものであります。

 農林水産省では、農業災害補償法に基づき、農業災害補償制度を運営しており、農業共済組合等では農作物共済事業を、農業共済組合連合会では農作物保険事業を行っており、国は共済掛金について毎年多額の共済掛金国庫負担金を負担しております。

 組合等及び連合会が保有している共済掛金等から生じている剰余及び不足の補てん等の財源となる特別積立金の取り崩し状況等について検査いたしましたところ、組合等及び連合会において、共済掛金等から多額の剰余が生じていたり、将来不足の補てん等に窮するおそれがあるかを十分に検討しないまま多額の特別積立金を取り崩していたりしている事態が見受けられました。

 したがいまして、農林水産省に対して、農作物共済事業及び農作物保険事業の運営がより適切なものとなるよう、組合等及び連合会が保有している共済掛金等から多額の剰余が生じないよう処置を講ずるとともに、特別積立金を取り崩す際には、将来不足の補てん等に窮するおそれがあるか否かの検討ができるような具体的な方策を示すよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、素牛流通円滑化対策事業の実施に関するもの、その二は、グリーン・ツーリズムビジネス育成事業等における補助対象事業費の取り扱いに関するもの、その三は、水田かんがい用パイプラインの設置工事における給水栓の設置個数の算定に関するもの、その四は、農道整備事業及び区画整理事業における投資効率の算定等に関するもの、その五は、林道工事における植生工の実施に関するもの、その六は、木材需給安定対策事業等における補助対象経費の範囲及び算定方法に関するもの、その七は、木質バイオマス関連事業により整備した施設の運営状況の評価に関するもの、その八は、不要漁船・漁具処理対策事業における助成金の分担及び休漁推進支援事業における助成金の額の算定に関するもの、その九は、配合飼料用米穀の販売における売り渡し評価価格の算定に関するものであります。

 これら九件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十四年度決算検査報告に一般国道の道路敷となっている国有林野の取り扱いについて是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求した事項を、また、平成十七年度決算検査報告に土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模について改善の処置を要求した事項をそれぞれ掲記いたしておりますが、それらの結果についても掲記いたしました。

 以上をもって平成十八年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要の説明を終わります。

 引き続きまして、平成十八年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、都道府県調査委嘱事業における調書作成業務に要する経費の算定に関するものであります。

 農林漁業金融公庫では、都道府県に委嘱して行う調書作成のための経費の算定に当たり、調書作成件数の変化を踏まえた算定方法の見直しを行っていなかったことから、調書作成件数が実際に減少しても調書作成経費はほぼ前年度と同額で算定され、過大になっていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、農林漁業金融公庫では、十九年九月に、調書作成業務の実態に応じた調書作成単価を設定するなどの算定基準を定め、十九年度の委嘱費の算定から適用することとする処置を講じたものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

木村主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。若林農林水産大臣。

若林国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十八年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。

 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、会計検査院の平成十八年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、直ちに是正措置を講じておりますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。

木村主査 次に、高木農林漁業金融公庫総裁。

高木政府参考人 ただいま会計検査院から御報告のありましたことにつきまして、御説明を申し上げます。

 当公庫の業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について鋭意努力してまいりましたが、平成十八年度決算検査報告におきまして、都道府県調査委嘱事業につきまして処置済み事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。

 指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講じましたが、今後も、当公庫に与えられた使命を果たすべく努めてまいる所存であります。

木村主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

木村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。

岩國分科員 岩國哲人でございます。

 民主党を代表いたしまして、平成十八年度決算に関する諸項目につきまして、若林農水大臣に質問させていただきたいと思います。

 今、大臣が十分御承知のように、我が国の農業はいろいろな意味で大きな転機を迎えております。まず、支え手の問題があります。食料の自給体制の問題があります。国際競争力の問題もあります。そういったいろいろな観点から、これからの農業がぜひとも強く健全な農業として再出発してほしいという願いで若林大臣に御質問いたしますけれども、数少ない、御信頼できる大臣のお一人として、ぜひ前向きな御答弁をお願いいたします。

 まず最初に、総理の所信表明におきましても、大臣あるいはその他の閣僚の皆さんからも、我が国の社会において農村社会が今非常に苦況にある、農村社会の活性化が大切である、農村社会を健全にしなければならない。農村という言葉が使われますけれども、しかし、その農村の村という名前がどんどん今なくなっておるんですね。市町村合併で、私の島根県でもそうですけれども、村が次々となくなって、そして市になってきております。農村という言葉そのものが死語辞典に入る時代が来ているんじゃないかと思います。

 私たちのイメージとしては、日本の農業を支えてきたのは、市の商店街ではなくて村の人たち、市長ではなくて村長さんたちが一生懸命に支えてきた。それがイメージとしてすぐ浮かぶわけですけれども、この農村がどんどんなくなっている。今、市の方に村が移っている。環境が大きく変わってきた時代において、大臣としてはどのような新しい農業政策を打ち出そうとしておられるのか。

 それに関連いたしまして、支え手の問題があります。今、後期高齢者医療制度が大変問題になっておりますけれども、この後期高齢者という言葉は、そのまま日本の農業の支え手にも当てはまるのです。この資料の二、村がなくなっている。資料の三、農業の支え手はだれなのか。六十五歳以上の前期高齢者がしっかりと支え、中には後期高齢者もたくさんおられる、それが現状ではないでしょうか。

 こういう認識を持っておられるかどうか、まずこの点を大臣にお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 委員が御指摘になられましたように、町村合併が急速に進んでおりまして、合併の結果として大規模市町村レベルの自治体ができ上がってきておりますから、今、出雲市のお話にございましたけれども、行政区域としてはもう町村というようなものがない県も出てきておるわけでありまして、行政区域のとらえ方とすれば、市が大部分の地域をカバーするといったような状況になってきているのは御指摘のとおりでございます。

 しかし、我々が農山漁村、こう言っておりますのは、これは、地域のコミュニティーとしての機能を持っているような地域的なまとまりを農山漁村、こういうふうにとらえているわけでございまして、いわゆる行政単位としての農山漁村、こういうとらえ方をしているわけではございません。

 その意味で、私の地域、私も子供のころから住んでいたところに今もなお住んでいるんですけれども、合併を繰り返しまして、今は長野市に合併されております。しかし、地域としては川中島平という地域でありまして、旧村で言えば小島田村というところに今なお住んでいるんですね。地域のコミュニティーとしていいますと、その小島田村の中もさらに土地区分がありまして、幾つかの農業地域、農業の特性に着目した地域区分がございます。その中で共同して各種の事業を長い間歴史的にやってきた人のつながりというものがありまして、そういうものが地域を構成しているわけでございます。

 そういう意味では、合併によって新たに大規模な市が誕生しまして市域の面積が拡大をしておりますけれども、しかし、農村集落と中心の市、農村集落内の協働、協同して働くという意味の協働でございますが、農村集落内の創意工夫を生かしたような取り組みが活性化するように、その支援が重要だという認識に立っておりまして、農山漁村活性化法という法律を昨年成立させていただきました。これに基づく取り組みの支援とか諸般の施策を今講じているわけでございますが、そういう場合も、行政単位としての村というものを着目しているのではございません。

 そこで、これらを地域として活性化するために、昨年の十一月に、農山漁村活性化のための戦略というものを立てなきゃいかぬなということで戦略を立てました。そしてそれは、政府全体の活性化策である地方再生戦略に反映したところでありまして、地域の活性化の推進役となる人材の育成に対して直接支援するとか、祭りや伝統文化の保全、復活だとか、農山漁村集落の再生、子ども農山漁村交流プロジェクトといったような、農林水産業に関連した雇用の創出に通じた地域経済の活性化でありますとか、ことしの国会に出しております農業と商工業の連携、これら農商工連携といったようなものの取り組みなど、それらもすべて、その地域の実態に応じた、地域の中の一つの農村集落を基盤にしたものでございます。

 高齢者のことについて申し上げますと、私自身ももう七十三歳でございまして、たまにうちに帰りまして夜電気をつけますと、電気がついたと喜んで、同級生が電話をかけてきます。その同級生もほとんどが実は農業をやっていて村に残った人たちでありまして、元気でやって、自分の体力なり気力に合わせて農業をやっている。しかし、そういうような人たちが、村の活性化のために、今までの知識とか経験とかそれらを生かして、若い人たちにこの地域を守っていくためのアドバイスをしたり、今いろいろな役割を果たしていると承知しているところでございます。

岩國分科員 こうした言葉としての農村、懐かしい響きもあります。私も、農村を愛し、農村で育った男の一人として、消えてほしくない言葉の一つであります。

 行政単位として村が消えてしまった。したがって、そういう農業を支える人たちが、市という行政単位の中で、いろいろな意味で今までと違った環境の中で、市という全体のバランスの中では農業のウエートがまたさらにそこで落ちていくんではないか。行政的な支援とか位置づけ、評価というもの、その点を懸念するからこそ私は、村のないノー村の時代、まさに、農業の農ではなくて、ここに書きましたように、村がないという意味のノー村です。ノー村の時代には、新しい発想で、もっと新しい資金を、新しいメニューを、農業を支えるためには私は必要だと思うんです。

 島村農水大臣のときにも私は質問いたしました。島村大臣、島をどれだけ大切にしておられるのか、村をどれだけ大切にしておられるのか。私は、農水大臣としても非常に御期待申し上げました。しかし、今、島村大臣も閣僚席にはおられません。そのときにおられた町村大臣もおられません。閣僚席から村が消えてしまったのです、行政単位と同じように。

 新しい農業を大臣はどのようにお考えになりますか。私も、小さい小学校二年生のときから母を支えて、寒い寒いときに麦踏みをしておりました。二月、三月、日本海の凍りつくような冷たい風を浴びながら、今でも私は、母の背中を見ながら麦踏みをしておったころの思い出も大切にしております。

 今、新しい時代、新しい環境、長寿社会、健康の時代、そしておいしいものを食べようという時代に、私は、農業に対しては認識を変えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんです。

 私は出雲市長時代も、医職住、医というのは医療の医、お医者さんの医です。職は職業、そして住環境、世界で一番短いマニフェストだと思いますけれども、私は医職住を訴えました。その職という観点から見ても、私は、後期高齢者の方にも十分喜んでいただけるような諸施策が必要ではないかと思うんです。

 農業は、自分が定年を選べる数少ない職業です。トヨタに勤めている人は、自分で定年を選ぶというわけにはいかないでしょう。二番目に、出勤時間が自由だ。朝の痛勤タイムというのもありません。フレックスタイムで選べる。そして三番目、おいしいものは自分が一番最初に食べられる。電気の冷蔵庫ではなく、天然の冷蔵庫から一番新しいものを持ってこられる。これも、食の時代には大変恵まれていると思うんです。四番目、最後ですけれども、家族が一緒に働く場所がある。

 農業というものを職業という観点から見ても、私は、今の時代、もっとこの農業というものに関心を持つ人がふえ、あるいは高齢者でも十分できるような時代になってきていますから、それを支援するような施策というものを打ち出していただきたいと思います。

 村を次々となくしたのは私は失敗だったと思います。日本の農業を支えるためには、村という行政単位は私は非常に大きな役割を果たしておったと思います。大臣の長野県でもそうではありませんか。村を合理化のために市に編入する、そういう安易な発想が、結局は、農業の地盤、基盤、支え手というものに対する熱意を失わせる、そういう懸念が出てきております。

 フランスやイギリスのいわゆる農村地帯が、今でも青々として人が十分に住んで活力のある地域として残っているのは、三つの条件、そこには小学校があって、教会があって、郵便局があって、この三つがそろっていればその農村地域は残る。フランスの隅々、イギリスの隅々もそうでした。

 狭い日本で、そして農業を大切にしてきた伝統のある日本が、この村という行政単位、そういう村落というものを残す努力をなぜしなかったのか、それを残念に思います。郵政民営化によって、さらにこの農村的な集落は崩壊していくでしょう。だれがこれをどういう政策で支えていくんですか。

 資料四をごらんください。これは、各県別に見て、県外にどれだけ若い人が出ていくかという資料です。

 島根県の場合には四三%が出ていきます。長野県の場合には三四%が、若い人は進学、就職で出ていきます。三割から四割の若い人たちは、それぞれ育った地域から大都市を目指して移動していく。民族大移動が毎年四月になると行われているこういう国は、世界でも珍しいと思うんです。規則的に民族大移動、そしてその年代の三割、四割が、そういう農業を支えている地域ほど県外流出率は高いということも視野に入れて施策を打ち出していただきたいと私は思います。

 大臣は、環境大臣として環境省を御担当のときに、私が松岡農水大臣と議論しているのをお聞きいただいておりました。松岡大臣とはそれが最後の私は議論になってしまいました。残念に思います。

 そのとき、松岡大臣と私は何を議論しておったか。最近は農水省という名前が一般用語になってしまいましたけれども、私はあの消えた林の字が非常に好きな男なんです。昔は農林大臣と言っていたんです。このごろはなぜか農水大臣に変わったように思います。なぜ林の字が消えてしまったのか。あの森林の林こそ、今、環境の時代に必要な大きな要素じゃありませんか。松岡大臣と私はそのことを議論したんです。若林大臣は後ろの席でうなずいていただきました。そのことは議事録には残っておりませんけれども、私の目の中にしっかりと残しております。

 森林の大切さを訴え、そして森林を守るためのその林業従事者が、先進国の中で日本ほど急速に減っている国はない。それについて大臣はどのように思われますか。一年前に松岡大臣が十分注意を払ってとおっしゃったが、残念ながらこの世にはいらっしゃいません。しかし、閣僚の一員として大臣はそれを聞いていらっしゃったはずです。

 環境の時代に、CO2の吸収源として京都議定書で三・八%という大きな役割を担わされているこの森林というものの活用について、そして保存について、そして、森林そのものも今高齢化しつつあります。人が高齢化し、森林が高齢化し、この森林の高齢化をどこで食いとめるのか。それはあくまでも、林業従事者の枝打ち、下草刈り、こういう小まめな対策をやらなきゃならない。

 これについて、この一年間に林業従事者の数はふえたのか減ったのか、お答えいただけませんか。

若林国務大臣 私は、今から五十一年前に、志を固めまして実は農林省に就職をいたしたわけでございまして、二十五年間、農林省の職員として勉強をしてまいりました。

 そういう中で、後半部になって農林水産省というふうに名前が変わりました。これは、御承知のような領海というものが画定されまして、日本は、領海も含めますと地球の中で大きくその主権を及ぼす区域が広がってきたというのもありまして、海洋国日本として、やはり水産もそれなりに位置づけていかなきゃいけないじゃないか、そういう意識があったというふうに思うんですね。そして、名称を農林水産省というふうに改めました。

 しかし、長野県は海なし県であるということもございまして、どうしてもつい私は、今、農水省などということがメディアで言われ、あるいは仲間内でも農水省というような話を言われますと、何か違和感を感じるんですね。私の気持ちはグリーンでありまして、農林水産省ということに、とりわけ林には愛着を持っているところでございます。

 林業従事者が減ってきたことをこの短い時間の中でいろいろ申し上げることはできませんけれども、やはり、森林が持っています役割、機能というものが、私ら子供のころは学校林なんかもありまして、暖房は学校林の枝打ちをしたその枝を、みんなでしょいこを持って持ってきたものです。暖房を学校林に依存した。家庭におきましても、おふろをたいたり、あるいは食事をしたりするのもそういう薪炭に依存しておりましたし、また、炭焼きもいっぱいありました。

 そういうようなものが時代の変化の中で化石燃料に置きかわっていく、そういう時代の中で、そういう用途が非常に減ってきてしまったということでございます。おじいさんは山にしば刈りになんというのは、まさに、日本の伝統社会を支えてきた基盤がそこで崩れていったわけでございます。

 しかし、国土の保全でありますとか、林業が持っています水源涵養林機能でありますとか、いわゆる公益的機能というものは毫もこれが減少することはありませんので、そこに住んでいる人だけで山を支えるというのが難しくなってきているというような時代の変化の中で、新しい林業のあり方、そして、その森林・林業を支えるためには、山村というとらえ方をして、林業にかかわらない人たちも含めまして、山村地域がそこで雇用をふやし、そこで生活ができるような条件を整えていかなきゃいけない。単に林業だけで就業するということは難しくなってきていると思います。

 ただ、そうはいっても、新しい技術を持った若い林業従事者がふえていかないことには、高性能の林業機械を駆使し、あるいはまた路網を整備して生産性を上げた林業をやっていくには、どうしても若い人たちが必要になってくる。そういう意味で、緑の雇用促進事業というのを起こしました。

 今、林業に新たに従事をする人の半分ぐらいはその緑の雇用促進事業で就労をした人たちで、高齢者はだんだん減っていくのはやむを得ないことでありますけれども、やはり今大事なことは、そういう緑の雇用促進事業などを活用して、Iターン、Uターン、いろいろございます、そういう若い人たちが、林業にかかわって生涯の生きざまを山村で生きてもらえるように今やっているところでございます。

岩國分科員 今、資料五をお手元に差し上げました。この六万三千人はその後ふえたのか減ったのか。担当の局長、その数字を端的に答えていただけませんか。ふえたか減ったか、その数字、それを教えてください。

長政府参考人 お答えいたします。

 私どもは五年ごとのセンサスで林業就業者数を調べておりまして、現在、直近で二〇〇五年センサスでございますが、林業就業者数が四万六千人ということで、五年前は六万七千人でございましたから、五年前に比べまして、やはり引き続き減少傾向にあるということでございます。

岩國分科員 これは大変なことではありませんか。一九九〇年から二〇〇〇年まで十年間の間に約四割減って、そして二〇〇〇年から二〇〇五年までの間ですか、またさらに三割ぐらい減っておる。約二十年前に比べて、これは六割減って、四割になっているじゃありませんか。先進国の中で、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、オーストラリア、それぞれにふやしたり、あるいは、減っても微減にとどまっているところはある。日本だけは、なぜこの林業従事者をどんどん失うんですか。

 この豊かな森林こそ、国土面積の七割を占める森林こそ、外国がうらやましがっている日本の大切な宝ではありませんか。それを守り、育成し、高齢化を防いでいかなければならない。林業従事者を減らしていろいろな政策を絵にかいてみても、絵にかいたもちになってしまうでしょう。

 農林省の林の字を忘れないと大臣はおっしゃいました。林の字がなくなって、さびしい淋の方だ、淋しいという言葉もお使いになりました。やはり、「林」として日本、凛たる国、林業の国としてしっかりとした政策と、そして予算も私はかけるべきだと思います。私は森総理のときにも申し上げました。森内閣は木という字を三つも使っている、三つも木という字を使いながら、その割には気遣いが足りないんじゃないかと私は申し上げたことがあります。

 ぜひとも私は、この林業従事者の数を、一年後に私が質問に立つとき、必ずふえているような施策をお願いしたいと思います。この十八年度の決算期間においてもこれだけ減っていったわけでしょう。そして、いまだに歯どめがかからない。

 私は、山にも給料を払うべきだと思います。県庁の職員は、給料をもらって土曜日、日曜日は仕事を休んでいます。山の木は、一年三百六十五日、土曜日も日曜日も休みなく働き続けているんです。各県別のCO2の吸収源、これをお調べになるとおわかりになることですけれども、そういう地方がしっかりと守っている山林がどれだけ京都議定書の三・八%を支える基盤となっているのか。そういう努力に対し、一生懸命働いている労力に対して給料を支払うべきではありませんか。その給料が、いろいろな雇用をふやすことに使い、そして、日本じゅうの山林をそういった温暖化防止の先兵として役に立つように山を生かすためにも、山にも私は給料を払うべきだと思います。

 そういう考えに対して大臣は賛成ですか。今までもそういうことをお考えになったことはありますか。長野県の山にも給料を払う、島根県の山にも給料を払う、当然のことではありませんか。ただ働きさせてほったらかしというのは、私は政治ではないと思います。御意見を伺いたいと思います。

若林国務大臣 森林の持っている多面的機能、今委員がおっしゃられましたCO2の吸収を初めとして、先ほど私申しました水源涵養とか国土保全とか、何をおいてもその地域の、そしてまた伝統的な景観を維持しているというような大きな役割を持っているわけでございます。そして、山は、自然の恵みを受けながら、手入れさえすれば成長していくわけで、今も、森林の蓄積というのは毎年毎年膨らんで充実してきております。

 その意味では委員と認識を共有していますが、そういう意味で、林業に対し林業が持っている多面的な役割というものに着目して、最近、長野県もことしから森林環境税という、県民税に上乗せをした負担を市民にも求めております。一般国民が広く森林・林業を活性化させるための費用負担も国民、県民参加の中でやっていこう、そういう流れは大変好ましい流れであり、私もそういう流れをかねて主張もし、推進をしてきているところでございます。

 ただ、そういう意味では、森林・林業が持っている多面的な役割に対して、それを正しく評価しながら、いよいよ国産材時代が来たというふうに私は思っておりますけれども、今がその意味では新しい時代が始まるという認識のもとに、森林・林業の活性化のために取り組んでまいりたい、このように考えております。

岩國分科員 ありがとうございました。

 ぜひ大臣、こういう、山にも給料を払う、だから地方の子供たちが、ああ、僕たちの地域にある、市の中にある、村の中にあるあの山が一生懸命国のお役に立っているんだ、国のお役に立っているから給料をもらっている、給料をもらっているということは国のお役に立っているんだということ、これも大切な環境教育だと私は思うんです。

 人間だけが温暖化に取り組んでいるのではなくて、日本の持っている自然の力が、地球が今病気になっている、病気になっている地球を救うのはこの緑の山なんだ、西洋医学だけではなくて、東洋医学、漢方的な療法で、自然の持っている治癒力が地球を救う。その一番わかりやすい例は、森林であり緑であり、そしてそれにも給料を払うことだと私は思います。

 こうした森林に対する政策にもぜひ新しい観点を、ことしは環境元年と言われる、環境問題に対してみんなが関心を持っているときだけに、ぜひ新鮮な政策を発動していただきたい、そのように思います。

 また、農産物の海外生産についても、日本は農地が狭いというのであれば、日本の持っている農業技術あるいは資金、そうしたものを海外の国と協力して、最近、ニュージーランドと岩手県で、南半球と北半球がそれぞれの時期をかえることによって一つのブランドを共同で生産していく、こういういい話も聞きました。私は、そうした日本のやる気のある農業青年たちが、海外で、そして中国のどこかの地域と協定して、日本の農業技術、日本人がつくっている農産物だから、日本人のつくっている食料だからより安心できる、これも、お互いに相乗効果、お互いのメリットのある発想ではないか、そのように思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 最後に、要望として、提案として申し上げたいのは、私は、そろそろこうした農業の支え手、そして農業を取り巻く環境、多くの要素が変わってきておりますから、小さなところ、農業特区のようなところで実験するときには、日本じゅうで全部森林に給料を払う、日本じゅう全部で何かの仕組みを変えてみる、こういう農地という形でもって生産農家を支えてみよう。日本じゅうでやるというのは大変かもしれません。大きく制度を変えるために小さな地域を限定して、例えば、日本の農業の原点であると言われる島根県のような小さなところ、小さなところだから失敗してもいいというわけではありません、実験地域としてやりやすいところを選んで、いろいろな大胆な、これからの将来を志向した農業政策の実験をそういう小さな地域でやってごらんになってはどうですか。

 まとまりがいい、すぐに効果が見えそうだ、大きな地域から始めるのではなくて、そういう小さな県にこそ大きな挑戦の実験をさせる、そういうようなこともぜひ御検討いただきたい思います。

 大変残念ですけれども、私の予定された時間が終了いたしましたので、ぜひ若林大臣を先頭に、日本の農業に新しい時代を切り開く、強い意欲を持って取り組まれることを要望して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 民主党、森本哲生でございます。

 大臣には初めて質問させていただく機会をいただきました。よろしくお願いを申し上げます。

 私が国会に送っていただいて二年半が経過をいたしました。この間、JA、そして郵便局、今も林業の関係で先輩の岩國委員から質問があったわけでありますが、それと市町村合併、そして今、私が規制緩和の中で気がつかせていただいたのが、酒屋さんが実は地域の大きな担い手といいますか、情報をとるというような、そのような役を担っていただいておった。

 例えば私の町は、今は合併して大きくなりましたが、最高のときで一万二千、今は六千人を切っておると思います。酒屋さんが八軒から十軒、この方々がほとんど地域を満遍なしに、自分たちのすみ分けをされて、みそ、しょうゆと届けておられた。しかし、この姿が最近、市町村合併と同時にこうした動きが全くない。今、多くの農山村を回らせていただいて、この光景を目の当たりに見るたびに、地方が改めて大変な状況になったということを私自身認識させていただいております。地域の情報交換が著しく低下、人との結びつきがここ三年ぐらいで極端になくなってしまったという例は、本当に地域に入ってみなければわからない現実であろうというふうに思わせていただいております。

 ですから、その解決策、仕組みをもう少し考えるということは、これは市町村の大事な使命でもあるわけでありますが、私は、農林水産業の活性化というよりも復興を考えるのが、やはり一番このことに、地域の元気を取り戻すためには必要だというふうに感じさせていただいておるわけであります。そのことについて、簡単にコメントをいただけたらというふうに思います。

若林国務大臣 酒屋さんがそういう地域のコミュニケーションをとる、そしてまた地域の人たちを結びつけるために大きな役割を果たしていたというお話を今伺いました。

 私も農村部で育ったんですけれども、三重と長野はちょっと違うかもしれません。長野は、もっと多様な人たちが、日ごろの結びつきの中で地域コミュニティーを維持、守ってきたと思うんですね。

 やはり伝統とか文化とか、それらの結集としてお祭りなんというのも、昔からのお互いのつながりの中であると思うんです。今でも、神楽を出したり、お祝いのある家には車を引いて神楽舞をするなどというような、そういう伝統は私の集落では残っているんですけれども、それぞれさまざまだと思いますが、そういう地域のつながりが弱くなってきている。これがあながち市町村合併だけとは言い切れないと思いますけれども、意識が薄れてきているというのは本当に問題だという問題意識としては共有していると思います。

 長野市では、そういう意味では、大合併をしたわけですけれども、その中を幾つかに区分して、長野市ではありますが、旧村あるいは幾つかの同質の地域で市内分権といいますか、主要なことを市議会にかける前にそこで大体自主的に決められるような仕組みを市長が提案しまして、それがやっとスタートを切り始めました。やはり身近な問題を身近で解決できることは、そこで自治会、昔の集落の代表が寄ってある枠の中で決めていくというようなこともこれから工夫をしていく必要があるのではないかというふうに私は思います。

 そして、やはり地域が、農山漁村が将来を展望して、そこに活力が生まれる、元気が出なければ、日本全体としては元気にならないわけであります。その意味で、昨年、元気の出る力強い地域を再生する、農山漁村を再生するということのための本部をつくりまして、新しい地域再生、農山漁村の活性化対策というものを打ち出しまして、これをこれから全国的に展開しようというふうに考えております。

 そのことを、今後、内閣としていえば総務省、増田大臣が中心になりまして、地域再生、今まで幾つかありました本部を結合しまして、統合した地域再生本部、その本部の中にこの農山漁村の活性化というものを位置づけまして、両方連携を密にしてやっていこうじゃないかということで政策の展開を始めたところでございます。

森本分科員 大臣、私はかなり厳しく見ています。

 例えば、JAの皆さんが支店をなくされていく、郵便局もしかり、市町村合併もしかり。確実に今、二重、三重にこうした地域、地域の我々の連帯意識の祭りとかそういったものは今何とか頑張ってやっておられますよ。しかし、ここのところの人が、往来がなくなっていく地域というものがいかに大変かということは、改めて長野、三重でもこれは例外ではないというふうに私自身思っておりまして、ここのところは厳しく、もう少しいろいろな仕組みを変えていかなければならないし、新たな方策を考えていかなければならないというふうに私自身の認識としては考えさせていただいております。

 その場合、今、農業でも林業でも、農山村と言われる地域は、大臣、林業は一万円の日当にもなりませんよ。恐らく、食べられるとするならば年金とあわせて細々とやるような、それでも今の山では一日の日当が五千円にもなりません。八十年、百年という大木、大径木を、すごい価値のある木を切り出さない限り、五十年の杉、ヒノキではなかなか生活ができないというのが今の現実。

 これは大臣もよく御認識をいただいておると思いますからこれでやめますが、その場合、今の森林施業の現状を見てみますと、私は、特に間伐施業が林業には大事だと認識しております。事業の計画量、推移について見てみますと、平成十八年までの五カ年で約三十五万ヘクタールが間伐をされておりまして、千七百から千八百億円の金額が投じられております。しかし、これで計画どおり進んでいるのでしょうか、お伺いします。

井出政府参考人 近年の間伐実施面積につきましては、今委員からお話がありましたように、おおよそ年間三十五万ヘクタール程度で推移してきておりますけれども、ことしから京都議定書の第一約束期間が始まりまして、この京都議定書では、森林吸収目標千三百万炭素トンを達成するということになっております。そのため、平成十九年から二十四年の六年間におきましては、さらに二十万ヘクタール追加しまして、毎年五十五万ヘクタールの水準にすることが必要でございます。

 このため、既に二十年度に向けましても、十九年度の補正予算で二百四十億円が措置されておりますけれども、二十年度の当初予算におきましても三百六億円を確保しまして、総額五百四十六億円を投入しまして、約二十一万ヘクタールの追加整備に相当する予算を計上いたしております。

森本分科員 そのことでございますが、そうすると、二十万ヘクタールと三十五万ヘクタールを合わせて五十五万ヘクタールをこれから五カ年でやっていく。局長、これは今の前段の質問にもありましたが、林業の従事者が随分減っている中で、この対策は大変なことだというふうに私は思っております。

 例えば、私の提案でございますが、担い手の確保をするということはもちろん大事なことでありますし、団塊世代をどう、我々が団塊世代ですから活用するという、失礼な言い方になるかもわかりませんが、我々の年代をどのように活用していくか。そして今、建設業の関係の方、この方々の中には過去に林業に従事された方もかなりおありですから、この方々を、今後大事に育てていくというよりも研修をされて、危険が伴いますから、このことは軽々には申し上げることができませんが、軽作業とか若い林分の間伐の施業ならある程度の研修を積めば十分可能ではないかというふうに私は思っています。

 それと、森林組合と認定事業体をどう動かしていくか。このことについては少し後でも触れますが、この担い手対策についてはどのようにお考えをされておりますか。

井出政府参考人 やはり林業就業者の減少、高齢化が進んでまいります中で、今委員からもお話がありましたように、新規就業者をどうやって育成、確保していくかということは極めて重要でございます。

 このため、林野庁では、平成十五年度から、新規就業者に対して研修を行いまして、その技能、能力を向上させ定着を図るということで、緑の雇用という事業をやってまいりました。その導入までは新規就業者が年平均二千人程度でございましたけれども、この事業が始まりました十五年度から十八年度までは、年平均で約三千三百人程度が新規に就業いたしております。

 この緑の雇用については、特段年齢制限も設けておりませんし、あるいは建設業等他産業からの転職者も対象としております。現実に建設業等他産業からの転職者が約半分を占めていると聞いております。ただ、団塊の世代の方については、委員からもお話がありましたように、急傾斜地での作業というようなこともございまして体力的に負担が大きいものでございますので、やはり個々の方の経験や体力を十分見きわめませんと非常に危険が伴うというふうに思っております。

 それから一方、各都道府県では、既に地域の実情に応じまして建設業そのものが林業に参入してくるということについても支援している県も出てきておりまして、これも委員からお話がありましたように、建設業に従事している方々に林内作業の研修等も行いましてその参入を進めているというような状況にもございます。

森本分科員 局長、ここのところの議論は、団塊の世代の、確かに林業の間伐作業といっても、本当に十年ぐらいの間伐でも伐採はかなり危険が伴いますから、そうしたことについては、緑の雇用で非常に雇用もされましたが、一方、やはりけがも多いんじゃないかというふうに私は認識しています。たまたま命を落とされる方がそうたくさん出ておられないということがせめてもの救いでありますが、こうした林業の作業というものは大変危険だということ、そのことは改めて私も認識をしながら、対策を十分やっていただくようにお願いをいたしておきます。

 もう一つ、これは森林組合の方におしかりもいただく、聞き方によっては非常に問題もあるかもわかりませんが、担い手のトップを森林組合が今担っていただいております。ただ、森林組合一辺倒では、私は民間の力が入ってくるということが言えないのではないかということ。

 今、認定事業体にいろいろな発注をされておりますが、ここで一つ、土木建設業関係の国土交通関係では、実績でなしに一般競争入札でかなり入られます。ここはそちらの方にお知らせをしておりませんので、お答えできたらということで結構でございますが、しかし、林業はどうも、認定事業体というのは、これまで素材生産を扱ってこられて十分その実績があるにもかかわらず、そこに参入させることを極めて困難にされているような状態が各県によってはあるというふうに聞いております。

 ですから、ここのところは、今の公共土木の関係とこの林業の公共工事の関係とは、私は一致していないという認識をしておるわけでありますが、こうしたところを積極的にやはり参加もさせていくことをしないと、私は五十五万ヘクタールの間伐の作業はなかなか計画どおりいけないということを申しておきますし、一ヘクタール当たりの単価を余りにも低くしますと、これは働いても保険も十分に出ないというような賃金体系になっていきますので、そこのところは十分な手当てをしていただきたいというふうに、お願いも交えて申し上げましたが、そのことについてコメントがございましたらお答えいただきたいと思います。

井出政府参考人 確かに、間伐については主要な主体は森林組合と言われておりますが、森林組合自体は、従来植えつけとか下刈りとか、そういう森林の育成過程でいうと初期のころの仕事を中心にやっていた森林組合が多うございまして、伐出、造材にかかわれる森林組合というのは、全国のすべての森林組合がそれに対応できるわけでもございません。

 現実には、森林組合が請け負いましても、その実際の作業は林業事業体と言われる会社がみずから雇用した作業班を使って伐出、造材をしている例もございます。それから、森林組合を通さずに、最近では大きな林業事業体も全国各地に出てきておりまして、こういった方々が直接そういう伐出、造材を担っているという例もございますから、森林組合だけを頼りにしているというわけではなくて、その能力に応じてやはりフルに活動していただくことでないと、五十五万ヘクタールは達成できないと私たちも認識をいたしております。

 それから、入札関係につきましても、全部を調べたわけではございませんが、県によっては、既に入札事務の透明化を図る過程でこういう異業種の建設業者等の事業体からも入札ができるようにしたという報告を受けている県もございます。

 そういう形で、やはり入札の透明化の過程で能力に見合った形で参入をしていただくことが必要なのではないかと思っております。

森本分科員 局長、ここのところは事業体の実績をしっかり見るということと、例えば建設業関連でそれに参入するのに簡単に参入できるような方法をとるべきではない、ここのところはしっかり押さえていただいておきませんと大変なことになるということ、そのことを申し上げて、次の質問に移ります。

 これらをしっかり守っていくのは、やはり担い手の育成には社会保障制度、今、林業退職金共済制度というものがやられておりますが、これは私は大事な制度だというふうに思っています。しかし、この制度がうまく機能しているのか、将来に不安はないのか。それと、この制度、二年、二十四月の証紙貼付でその権利が得られるというふうになっております。ですから、二十四月未満で例えば五年―十年手帳が未更新な者や、また一方、二十四月以上で権利が発生する者で実は五年―十年未更新な方はつかまれているのか。

 急なお願いでございましたからなくても結構でございますが、そのことについて三点、続いてお答えいただけますか。

氏兼政府参考人 お答えいたします。

 林業退職金共済制度につきまして、掛金の納付月数が二十四月未満、したがいましてまだ給付資格がないという方で、かつ過去三年以上手帳が未更新の被共済者数、これは平成十八年度末で約一万八千人存在してございます。それから、掛金の納付月数が二十四月以上、したがいまして退職金の給付資格があるという方でございますが、この方で過去三年以上手帳未更新の被共済者数は、平成十八年度末で約五千四百人ということでございます。

森本分科員 それと、一つ漏れていませんか、今の制度がうまく機能しているか。

氏兼政府参考人 お答えいたします。

 林業退職金共済制度の共済契約者数、すなわち事業主でございますが、この数を約五年前の平成十四年度末と直近の平成二十年二月末を比べますと、三千七百二十六事業所から三千四百四十八事業所へと約七・五%減少してございます。

 それから、被共済者数、すなわち勤労者の方々でございますが、これにつきましても同様の時期をとりまして比べますと、四万六千百八十九名から四万一千三百七十六人と約一割減少しているなど、林業を取り巻く環境を反映して非常に厳しい状況にあるということでございます。

 一方、財政状況につきましては、これは資産運用残高、十四年度末でございますが百五十六億円でございましたものが、平成十八年度末では百三十五億円ということで、被共済者数の減少等を反映いたしまして減少しておるということでございます。

 しかしながら、このような状況にありながら、この林退共の制度は、事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって林業における退職金制度を確立して、林業労働者の福祉の増進に寄与するものであるということでありますので、今後とも重要な役割を担っていくものと考えてございます。このため、加入促進につきましては、この三月に策定されました勤労者退職金共済機構中期計画におきましても新規加入者数の数値目標をつくりまして、平成二十四年度までの五年間で一万一千五百名を増加させるという目標をつくってございます。これを達成するため、林野庁と連携いたしまして、緑の雇用の実施に当たり、林退共事業への加入について事業主に指導するよう関係機関に要請を行う等の取り組みを機構において進めることとしているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、機構におけるこれらの取り組みが確実に実施されるよう適切に指導してまいりたいというふうに思ってございます。

森本分科員 そうしますと、では、今の状況でいけば何とかなると。ただ、一万八千人と申されましたね。掛け捨ての可能性がある方でしょう、これは。それと、三年ということで五千四百人、これは急なことで調べていただきまして、ありがとうございました。ただ、資料があったということなんでしょうが、これはなければいかぬのですけれども、五年―十年という資料はないんでしょうね、あるかないかだけ。

氏兼政府参考人 五年―十年については把握してございません。

森本分科員 では、ここのところは恐らく、これが、この方々、皆さんが全部請求されたときには、この共済制度は大変なことになると私は思うんですよ。しかし、私はこういう制度ではやはり問題があるというふうに、まあ、うがった見方ですよ、掛け捨て前提に制度が運用されていくような制度であれば、中身に問題がありますから、もう少しそこのところはしっかり国も支援していくというようなことが大事であるし、このメンバーの方々をしっかりやはり追跡調査していただかぬといかぬということ、そのことだけ申し上げて、もうきょうは議論はいたしません。

 それでは、大臣、担い手のための制度の充実、今聞いておられたと思うんですけれども、これは退職金が大体二十年間で二百万ぐらい出るんですね、今のお話の制度は。しかし、担い手の今後の育成のためには、大臣、こうした制度を農林水産省もやはり応援して、こういうことをやらないと、私はなかなか皆さんは林業に従事してくれないと。

 これは通告をしていませんから、大臣、感想だけ。これは頑張っていただけませんか。こういうところにもう少し、人のために予算を投じていくようなことを、厚生労働省とも相談しながら、頑張っていただかないかぬと思うんですけれども、通告をしていませんから、これはお願いにかえさせていただいても結構ですが。

若林国務大臣 林業整備の担い手対策の基金は大変重要な制度だと認識しております。その意味で、その基金造成についていろいろ経緯がございますけれども、各都道府県も、その基金の造成のための支援もして、それぞれの県の実情に応じて支援をしておりますし、また市町村に対しては普通交付税の措置も講じられていると承知いたしております。

 この基金によります担い手事業が円滑に行われるために、労働安全の問題でありますとか、技術、技能の向上でありますとか、あるいは福祉厚生でありますとか、いろいろな面でこれの加入を促進しながら、加入者が継続してこの基金事業を利用できるようにしていく、そのことによって認識が高まり、この制度を充実していくことが大事なことだと思っております。

森本分科員 これ以上議論しませんが、働く方の立場に立って、やはり社会保障制度をしっかりと林業関係でもやっていただかないとだめだということを申し上げて、次に移らせていただきます。

 林野庁では、いろいろな対策を講じられてまいりました。しかし、厳しいようでございますが、森林・林業の活性化とはほど遠いというのが私自身の現状認識であります。なぜ林家が育たないで、こうしたホワイトカラーと言われる方だけはある程度残れるのか。ここは、やはりこれから国民の皆さんの厳しい目が来るというふうに私は感じさせていただいております。

 その中で、いろいろな施策を講じますが、大臣、木造建築のシェアをとにかく上げるということ、建築基準法の問題もあります、いろいろな問題の中でありとあらゆる分野で努力していただいて、このことについて最大努力をしていただくことが必要だと私は思いますが、いかがですか。

若林国務大臣 森林・林業の対策あるいは山村対策につきましては、川上である山村あるいは森林・林業について対応をするということでは、これは目的が達せられませんで、やはりそこで生育し、そして搬出される木材というものが川下においてしっかりと利用されるということによって、産業としての、経済としての循環が成り立つわけであります。

 その場合の最大の木材の需要というのは、在来工法による木材の住宅の建設だというふうに認識いたしておりまして、その意味で、もう一度在来工法による木造の建築を見直していこうという動きが各地で今非常に芽生えてきております。工夫も凝らしております。私もそういうことを推進する議員連盟の活動に参加いたしてもう長いのでございますけれども、そういう、地域におきます昔からの大工さんとでもいいましょうか、建設業にかかわる皆さん方が木造住宅に積極的に取り組んでいるという事例をいっぱい承知いたしております。

 そのことはまた環境にもいいという評価も出てきておりまして、そういう中で、総理御自身が二百年住宅などという構想も出しております。そういう耐久性とか耐震性を確保したような構造部材というものを開発する、それを支援する、そんなことを通じて、住宅分野におきます国産材の利用を推進していきたいと思っております。

森本分科員 ありがとうございました。

 大臣、その二百年住宅なんですけれども、その中身を見てくださいよ。ああいう政策で二百年住宅、多分絶対無理ですよ。ここのところはもう議論いたしません。

 牡蠣の森を慕う会代表の畠山さんという方が書かれておる、肉とパンの文明は森林が枯渇、米と魚を基軸とした文明、未来永劫続くというような、日本列島の脊梁山脈、太平洋と日本海側に二級河川が二万一千本、これはもう大臣もわかってみえると思うんですけれども、そこで淡水と海水がまじり合う、ここにすばらしい魚介類、海藻類が日本は生まれるということ。

 ですから、流域の認識が、下流の認識が森を育てるということ。私、きょうは割りばしの話はいたしませんが、割りばしでも端材を使って、一生懸命そこで生きていくため、ですから割りばしの議論でも、マイはし、自分のはしをつくろうという認識と、外国産をどんどん割りばしにつくっていくのと、日本の間伐材を、捨てなければならないのを割りばしで使っていく。こうした海と山の連携をしっかりやはりこれから、林野庁ももう少しその辺はしっかりとPRをしていただいて、国民の皆様の認識を高めるような努力をぜひやっていただきたいということをお願い申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十二日午前十時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会


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