衆議院

メインへスキップ



第2号 平成20年4月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月二十二日(火曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 木村 太郎君

      赤池 誠章君    岩屋  毅君

      坂井  学君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    松野 博一君

      矢野 隆司君   山本ともひろ君

      逢坂 誠二君    北神 圭朗君

      古本伸一郎君    三日月大造君

      渡辺  周君    玉沢徳一郎君

   兼務 安井潤一郎君 兼務 前田 雄吉君

   兼務 赤松 正雄君

    …………………………………

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   厚生労働副大臣      岸  宏一君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   経済産業副大臣      新藤 義孝君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   会計検査院事務総局第五局長            高山 丈二君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)      上西 康文君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 榮畑  潤君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 川北  力君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 西村 善嗣君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           土屋 定之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       鶴田 憲一君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐々木昭博君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局企画部長)         飯高  悟君

   政府参考人

   (林野庁長官)      井出 道雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           鈴木 英夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           伊藤  元君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           橘高 公久君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           内山 俊一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 平工 奉文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      西山 英彦君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    長尾 正彦君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    福水 健文君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            高原 一郎君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (農林漁業金融公庫総裁) 高木 勇樹君

   政府参考人

   (中小企業金融公庫総裁) 安居 祥策君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   経済産業委員会専門員   大竹 顕一君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     赤池 誠章君

  坂井  学君     山本ともひろ君

  西本 勝子君     長崎幸太郎君

  小宮山泰子君     逢坂 誠二君

  松木 謙公君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     岩屋  毅君

  長崎幸太郎君     西本 勝子君

  山本ともひろ君    坂井  学君

  逢坂 誠二君     北神 圭朗君

  三日月大造君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  北神 圭朗君     古本伸一郎君

  渡辺  周君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     小宮山泰子君

同日

 第一分科員前田雄吉君、赤松正雄君及び第四分科員安井潤一郎君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計歳入歳出決算

 平成十八年度特別会計歳入歳出決算

 平成十八年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十八年度政府関係機関決算書

 平成十八年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十八年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管及び中小企業金融公庫)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

木村主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 平成十八年度決算外二件中、本日は、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、厚生労働省所管、経済産業省所管及び中小企業金融公庫について審査を行います。

 昨日に引き続き農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。逢坂誠二君。

逢坂分科員 民主党の逢坂誠二でございます。お世話になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 きょうは私から大きく二つについてお伺いをしたいと思っておりますが、最初は食料の関係についてお伺いをして、その後、地元の漁港のことについてお伺いをしたいなというふうに思っております。

 最近、中国からの冷凍輸入ギョーザの問題などに端を発しまして、日本の食料確保あるいは安全、安心、大丈夫かなというような声が随分多方面から聞かれるようになっております。

 たまたま手元で新聞をめくっておりますと、例えば、これは四月十三日の日本農業新聞ですか、「食料価格高騰続く」というようなことで、国際食糧農業機関、FAOが調査したところによれば、三月の指数は総合で二二〇となっている、一年前に比べて食料の価格が五七%も高いというような、こういうデータが出ております。酪農品も穀物も、あるいは砂糖も食肉も、ほとんどのものが価格が上がっているというような実態があるわけでございます。

 それからもう一方で、これは四月十八日の同じく日本農業新聞でございますけれども、この一面トップには、「アジア激震 米がない 配給に殺到 やまぬ高騰、買い占め…」というようなことが見出しに載っているわけですね。こういう世界的な食料の不足、そして価格の高まりがあるというような中で、日本の食料自給率が三九%だというようなことになっているわけです。

 そしてまた、これもちょうど偶然でございますけれども、この質疑を決めてから、きのうの四月二十一日の読売新聞も「世界的食糧不足 決して対岸の火事ではない」というような社説も出されているわけでございまして、こうした食料問題に日本としてどう取り組むのかというようなことが非常に強く求められる状況になっているわけです。

 まず、日本の食料自給率が下がっているということと、世界的な食料不足、これに対する御認識をお伺いしたいというふうに思います。

今村副大臣 お答えいたします。

 今委員が申されたとおり、食料の確保の問題、これは量的な面でも、それから安全、安心といった面でも大変今大きな政策課題になってきております。

 これにつきましては、かねてより、ぜひこれを上げたいということで頑張ってまいっておりますが、中身を見ますと、やはり昔と違って、非常に外国の原料、例えば牛肉一キログラムつくるのに、カロリー換算でいうと、トウモロコシが十一キロ要る、そういった消費が随分ふえておりますので、相対的に国産で賄えるもののシェアというものが下がってきている面が大きいわけでございます。

 今後はそういったアンバランスをできるだけ解消して、とにかく日本の食べ物はすばらしいんだ、そしてまた、将来にわたって、いざというときにも食料を自前で供給できる、そういった体制をしっかりこれは守っていかなきゃいけないということで、農地と農家がしっかり維持できるように、そういった政策を今進めていっているところでございます。ぜひとも、そういったことで、我々もこの問題については大変な問題であると認識をしておりますので、また御理解のほどをよろしくお願いいたします。

逢坂分科員 これは、多分、いろいろな混乱が始まってしまうと、昨今の世論の動向といいましょうか、マスコミの動きなども見てみますと、一たび何かが始まると、集中豪雨的にそこに目が行って、また必要以上の混乱を来すというようなことも懸念されるわけであります。

 例えば、平成五年、米が不足をして、海外から米を輸入したというようなこともございました。あのときも、実態は本当にどうだったのかというのはいろいろ議論しなければいけないんですけれども、本当に必要以上の過剰反応もあったのかなというふうにも思うわけですので、ぜひ農水省におかれましては、副大臣もこの食料の問題、国を挙げて取り組むべき課題ということで、政策の大部分をそこへつぎ込むというような気持ちでやはりやっていただかなければいけないのだろう。最終的に、これで国内で暴動が起こるなどということがあれば、これもまた大変なことでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 そうしたことの一方で、今我々の食料は海外のものに随分頼っているという側面はあるのでありますけれども、実は、国民の中に、地域の食べ物、地域でとれたものを地域で食べようというような動きも非常に多く広がっているのも現実でございます。地域の直売所の売り上げみたいなものが、農産物、海産物を問わず、随分上がっているということがございます。

 私がかつて仕事をしておりました北海道のニセコというところも、地域で農産物の直売所をつくりました。そうしたところ、最初は、こういうものをつくっても今の時代に合うのかなというふうに言われたわけですが、六十軒の農家で二億以上の売り上げを上げるというまでに、これは日々の現金収入でございますから、農業経営の面においても非常に意味のあることかなというふうにも思っているわけです。

 かつて私がいたニセコに限らず、今全国にこういうのが非常に多く広がっているというのが現実ではないかなと思っているわけですが、こういうような中で、ちょっと順番が変わって大変恐縮でございますけれども、お手元の資料の四枚目をごらんいただきますと、財団法人の都市農山漁村交流活性化機構というところが調べたところによりますと、「直売所の活動で、今後、力を入れて欲しいことはなんですか」というようなことを聞いたら、「食育活動」というようなものがトップに上がっていますが、二番目で「伝統食や地域食文化の保存・復活」なんということも、これはユーザーの皆さんの要望として上がっているわけですが、こうした動きについて、副大臣、どのように見ておりますでしょうか。

今村副大臣 ただいま委員がおっしゃっていましたように、直売所等々は、本当に消費者の皆さんと生産者の皆さんをしっかり結びつける、非常にすぐれた仕組みだと私は思っております。

 私の地元でも、きちんとつくった人の名前をつけて、そしてそれを売る、そうすると、それが非常においしいということになると、あの人がつくったこの豆腐を下さいとか、そういうことになってきておりまして、これは大きな力になっていくということで考えております。

 そして、今おっしゃられましたように、日本のあちこちに本当においしいものがあるんですよ。そういったものをなかなか売り出すチャンスといいますかツールが今まで少なかったような気がいたしますが、今言われるような仕組みをもっともっと活用して、そしてやはりおいしいものをしっかり食べてもらって、そしてまた、つくる人もそれによってつくる喜びを感じてさらに頑張っていただくという、いい回転になっていくんじゃないかなというふうに思っておりますので、ぜひこういった仕組みにつきましては、しっかりとまた我々も応援をしていきたいというふうに思っております。

逢坂分科員 こうした中で、日本のこれまでの農業の方向といいましょうか、ある種のトレンドが、いわゆる世界的な市場競争に打ちかっていくというような側面がございまして、大規模で集約化していくということが、ある種、日本の農業の大きなトレンドだったかというふうに思います。特に北海道におきましては、経営面積を広くしていく、大きくしていくということがある種のトレンドだというふうに私自身も感じておりますし、それは必ずしも間違った方向ではないだろうというふうに思うわけです。

 しかしながら、今の、地場のものを愛する、地場のものを食べたいというようなこと、あるいは直売所などを経営するというような観点で見ますと、これは割と手間のかかることでありまして、大規模集約型の経営の中でいうと、見落とされがちなある種の経営手法でもあるかと思っています。

 一方で、今地域の高齢化が進んでいます。あるいは大規模集約化できない農家もたくさんあるわけでございまして、高齢化だとか、あるいは集約化できない農業、あるいはまた、地域の中では、これも残念な事実ではありますけれども、負債を多く抱えて従来型の農業経営ができないという方もいらっしゃるわけですが、そういう方々にしてみますと、自分の庭先、そんな十ヘクタールも二十ヘクタールもなくていい、一反か二反、三反ぐらいの面積で野菜をつくって、それを地場で直売で販売をするなんということは、これは非常に有効な手段だというふうに思うわけですね。

 現に、かつて私がおつき合いをしておりました農家の方、たくさんの負債を抱えたのですが、最終的に農業を離農したけれども、自分の持てる土地の中で直売所をやったところ、実際、大規模に農業をやっているときよりも、いや、逢坂さん、変な話なんだけれども、今、小規模にやった方がかえって実入りがよくて、暮らしも結構いいんだよね、うちの女房も、いや、これなら年をとってもできるねというような話をしていると。

 そんな実態があるわけでございまして、農業政策も、大規模集約化だけではない、多様な展開が必要になってくるのだということをぜひ副大臣にも御認識いただきたいなと思います。

 そうした中で、こうしたいわゆる地産地消のようなものだとか産消協働のようなものというのは、マクロで見た場合の食料自給率の向上には余り寄与しない、数としては少ないんじゃないかというふうに言われる部分もあろうかと思いますけれども、でも、長期戦略で見た場合に、地域のものを愛するとか、地域のものが好きだ、国内のものを大事にしようというような点でいうと、食料の自給率の改善にも下支えをするという意味で寄与をしていくのではないかというふうに思うんですが、こういう観点について、副大臣、いかがでしょうか。

今村副大臣 私も先ほど申しましたが、委員もおっしゃいますように、やはり規模の競争だけでは、これは海外のものにはなかなか太刀打ちできないと思います。しかし、海外ではできないやはり日本ならではの本当においしいもの、そういったものをしっかりつくっていただき、そしてまたそれを皆さん方にアピールして食べていただく、こういったことは、現に、今言われたような直売所の実績等々で非常に効果があるということがはっきりしてきておりますので、日本人に合った食べ物の生産、あるいは販売、流通、そういったものにさらに力を入れていくということが、やはり地域の活性化にもつながっていくというふうに思っております。

 ちなみに、今、農商工連携といった形でも、そういった大きな結びつきをして活性化を図ろうじゃないかといったことも進めておるわけでございます。

逢坂分科員 ぜひその方向で政策の展開もしていただきたいというふうに思います。

 こうした中で、最近、いわゆる御当地検定というようなものが随分全国に出ているようです。観光に関するものでありますとか、歴史に関するものでありますとか、地域に根差した御当地検定みたいなものが多いわけですが、その中でも、地域の食に関する御当地検定というのも結構あるようでございます。

 お手元の資料の四枚目でございますけれども、うちの事務所で見ましたら、北海道においては、北海道フードマイスターですとか、はこだてイカマイスター、福井では越前カニ検定、明石のタコ検定、それから、副大臣の御地元でしょうか、佐賀にもイカ検定というようなのがあるということで、こうした検定制度というのは、これはやはり、直接食べるということ以上に、そこの地域のことを理解し、食べ物に対する知見を深める、愛着を高めていく上で、あるいは全国の皆さんにその地域を知っていただく上で、非常に意義の深いものかなというふうに思っているところでございます。

 もう一枚めくっていただきますと、実は、私の地元の「函館イカマイスター認定制度 公式テキストブック」というのがございます。これはなかなかすぐれたものでございまして、奥付もあわせてコピーをいたしましたが、大学の先生が、まさに日本のイカの分野のトップの先生たちが執筆をしたものでございまして、極めてすぐれた検定の公式テキストブックです。今、たまたま実物も持ってまいりましたが、本当に、大学の教科書よりも、これ一冊読んだらイカについてはエキスパートになれるというようなものだと思うんですね。

 そこで、副大臣にお伺いしたいんですけれども、こうした御当地検定、特に食に関する取り組み、こうしたものというのはやはり非常に有効だと思われるんですが、実際、運営している中身を見ると、結構、地域で皆さん、ノウハウの問題だとか資金の問題だとか、あるいは、一回目や二回目はいいんだけれども、三回目、四回目になると話題性が若干乏しいとか、でも、私は、これは永続的に継続してやっていくというようなことも必要になるのかなと思っているわけです。そういう観点において、これは農林水産省としても、こうした取り組みに対して何らかのバックアップ、支援というようなものをしていく必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

今村副大臣 これは、まさに地産地消、あるいは地域のこういった農林水産物を大いに宣伝していくという意味でも、大変な力になるというふうに思っております。

 マイスターという言葉はいろいろな意味に訳されているわけでございますが、イカならイカのことについて本当によくわかって、そしてまたそれをいろいろなところに発信していただく、こういった取り組みが大事なことでありまして、本当に灯台もと暗しといいますが、まず、日本の国にある、あるいは自分たちのふるさとにあるこういったいいものをしっかり勉強していただいて、それを大いに発信していただくということは大切だと思います。

 これが、役所を余り組み込むと、またいろいろかたい仕組みになって、その制度が、仕組みがうまくいかない面もあるかと思いますが、いろいろな形で、間接的でもいいですから、こういった取り組みについて私たちの方もいろいろな支援をしていきたいなというふうに考えているところでございますので、またいろいろお知恵をかしていただきたいと思います。

逢坂分科員 副大臣の方から、今、いろいろな形での支援ということがございましたけれども、こうした取り組みをやっていくことが、実は最終的に、地域の食料、そして日本の食料自給率を上げていく、これは直接的ではないけれども、間接的にはやはり効果のあることであり、やはり国内のものを食べたいよね、地場のものを食べたいよね、それがいいんだよねというような文化をつくっていくことになると思っています。

 宣伝になりますけれども、函館はイカが市の魚になっておりまして、いか踊りというのもございまして、夏のお祭りにはみんなでいか踊りをするということもございますので、佐賀のイカとあわせて函館のイカもぜひよろしくお願いしたい、副大臣もぜひ踊りに来ていただければというふうに思うわけです。そんなことを含めて、ぜひさまざまな形でのバックアップをお願いしたいなというふうに思います。

 さて、それで、きょうの二つ目の話題でございますけれども、実は、地元の漁港のことについてお伺いをしたいんです。

 全国にたくさん漁港がございます。その漁港では、まさに地場のものを収獲して皆さんに楽しんでいただこうというような取り組みが行われているわけですが、きょうちょっとたまたま一つの例として問題にしたいのは、お手元に資料を用意いたしました。一枚目のカラー写真をごらんいただきたいと思います。

 北海道に松前町というところがございまして、そこに静浦という漁港があるんですが、松前はちょうど今桜が開花をいたしまして、北海道は例年にない早い桜の開花でございまして、札幌なんかは観測史上初めての早さだというふうに言われているわけです。この静浦漁港、完成された漁港でございます。下に、上から見た写真がございます。

 ところが、この漁港、完成された漁港ではあるんですが、二枚目をごらんいただきたいんですけれども、一部、堤防が低いところがあるわけですね。さらにまた、完成された漁港であるにもかかわらず、波消しブロックが一部入っていないというようなところがございます。こうしたことによりまして、次の三枚目をごらんいただきたいんですけれども、悪天候になると、当然、この堤防の低いところから波が入ってくる。これは、まさに波が入ってきている写真でございまして、三枚目の下の方の写真は、人家、そばにある作業小屋なんかにもこういう、もう石ころだらけになってしまって、大変な影響が出ているというようなところなわけですね。

 そして、こういうようなことについて、地元の皆さんも、これは何とかせないかぬということで、いろいろな関係方面へお願いをしているそうです。国の方では補助事業があるというふうに聞いておりますが、ただ、事業規模が非常に大きいというような側面もあると聞いております。それから、費用対効果というようなものもクリアしなければならないというふうにも伺っているわけです。

 ただ、この漁港を大きな規模の事業でどうこうするというようなことではなくて、現に使用している漁港を多少の手直しの範囲でその機能を高めていくというような取り組みが私は必要なのではないか。何でもかんでも大規模な採択要件で、費用対効果というようなものを見なければいけないということであるならば、例えば、一直せばいいのに、そういうような考え方でいくと、あえて十の資金を投入しなければいけないというような、逆の側面も出てくるのかなという気がするわけでございますけれども、まず、政府参考人の方に、こうした実態、現状についてどう認識をされているか、お伺いをしたいと思います。

山田政府参考人 ただいま委員からお話がありました既に整備が終わっている漁港でありましても、委員からお示しがありましたように、波消しブロックが一部入っていないですとかあるいは堤防の一部が低いなどによって実際に利用上の問題が発生しているような場合には、施設改良等の事業を行うことがもちろん可能でございます。

 その場合に、事業規模のお話がありましたけれども、通常の場合ですと、三億円以上の漁港漁場整備がこの補助対象となっておりますけれども、特に漁村など、生活の場であるということもありまして、そういった漁村を総合的に整備する事業というのを平成十七年度から創設いたしております。この事業で実施するということにした場合には、事業費五千万の規模から補助対象になるということで、比較的小規模なものが準備されております。

 それで、今申しました小規模な事業、これは漁村再生交付金事業と呼んでおりますが、これにつきましては、今申し上げましたように、生産の場と生活の場としての漁村というものを漁港を中心として整備していこうというものでございますので、それなりに一定の要件はあるわけでございますが、今言いましたように、かなり小規模なものでも対応できる、しかも、既に整備したものであっても対応ができるということになっております。

 なお、そういった場合に費用対効果などを見なくていいのではないかというお話がございましたが、いずれにしましても、事業でございまして、公的資金も投入されるということでございますので、やはり、事業目的あるいは事業の規模等の要件のほかに、費用対効果等の件についても妥当性があるかどうかというのは総合的に判断をしていく、評価をしていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

逢坂分科員 制度の概要についてはわかったわけでございますけれども、その費用対効果のところでございますけれども、いわゆる全くゼロのところに新規につくるのとはやはり若干違うのかなというふうに思っているところでございます。

 それから、防災上の観点というようなことも考えますと、そのことによって、災害で失われるもの、そうしたことも十分に配慮をして、その費用対効果というものも考えられなければいけないだろう。あるいは、仮に災害で失われていないとしても、そこにお住まいになっている方々が日々不安を抱えて暮らしているというのは現に事実でございますので、そういった点も、災害が起きれば費用対効果の算定になるけれども、起きなければならないというのであるならば、危機管理上、それは決して褒められたことではないのではないかなというふうに思うわけですので、まさに、政府参考人の方からも総合的にというお言葉がございましたけれども、そういう総合的な観点から見て小規模な事業も考えていただければなと思うのですが、政府参考人、いかがでしょうか。

山田政府参考人 具体的に、委員からお話がありました地区がどういうことで該当するかどうかについては、ちょっと資料もございませんのでお答えできないわけですけれども、今申しました漁村再生交付金事業につきましては、今言いましたような漁村の特徴に着目した事業でございますので、それぞれ事業の実施についていろいろな面で、先ほど言いました、生産と生活環境を一緒に整備するといいましても、それぞれ地域ごとに整備の状況は異なるわけですから、一律にやるということではなくて、地域の実情も見ながら対応するということとしております。

逢坂分科員 副大臣、これからの日本の社会は多分、漁港に限らず、道路もそうですし、それからさまざまな箱物施設もそうだと思います、既存のストックを上手に活用していくということが非常に大事なことではないかなというふうに思っております。

 かつて私が仕事をしておりましたニセコという町でも、分野は違いますけれども、古い郵便局舎を譲り受けまして、郵政省としては、もうそれは耐震上、さまざまな観点で使えないということだったんですが、地元では、それを譲り受けて改修をして図書館をつくりました。これは通常つくると五億、六億かかるものでありましたけれども、改修によって、規模は小さいけれども、一億程度でやれたというような実績がございます。

 あるいは、公営住宅などについても、基本的には、古くなれば解体、除却というのがこれまでの普通でございましたけれども、それではやはり、資源の有効利用の観点からいっても、あるいはお金の観点からいっても、そういう時代ではないだろうということで、全国で初めて公営住宅の既存ストックの活用というような事業もかつてやらせていただいたことがございます。

 漁港についても、やはり同じように、すべて大規模な事業というようなことでやるのではなく、先ほど政府参考人からも話がありましたけれども、さまざまな地域の実態、実情に応じて、本当は大規模にやらなければいけないものはちゃんとやらなければいけないですし、そうじゃなくても対応できるというものは現場の状況に応じて臨機応変にやっていくということが、これは今たまたま北海道の例を出しましたけれども、全国的にも必要なのかなというふうに思っておりますけれども、副大臣、いかがでしょうか。

今村副大臣 先ほど資料等を見させていただきました。名前は静浦ということらしいですが、このあらしの状況を見ると、名前とは違って、とても大変な状況だったなと今察しているところでございます。

 昔は、台風といえば九州の方が、台風銀座と言われるくらいで、九州、四国はいつも大変だったんですけれども、最近はやはり非常に、異常気象といいますか、北海道等々で冬の低気圧が大変な暴れぶりといったことをよく耳にします。そういう意味で、やはりこういった、今言われた既存施設も、従来の一つのレベルなり常識でつくっておった施設がなかなかそれに対応できなくなってきているという面もあるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 この港も、要するに、北西の方からの風が強いとこういう大変なことになるわけでございまして、今後は、気象状況の変化等々、そういったものに対応して、できるだけの防災措置等を考えなければいけないのではないかなというふうに思っているわけでございます。

 しかし、何せ限られた予算でございます。まだまだあちこちでこういった措置をしなければならないところもございますので、そういった点につきまして、少しずつ、緊急を要するところ等々を見ながら、しっかりと予算もつけていきたいと思います。それから、どうしてもこれは、国だけじゃなくて地元の自治体の負担も要るわけでございます。そういう意味では、やはり、限られた厳しい地方財政の中でそういったものをどのように確保していくかということについても、また地域の皆さん方の御努力も必要かというふうに思います。

 そういった総合的な観点から、予算は少ないんですけれども、できるだけ効果が上がるように進めてまいりたいというふうに思います。

逢坂分科員 ぜひ、地域の実態、実情に合う形で有効な税という資源を使っていただきたいと思います。

 繰り返しますが、これは災害が起きてからではまずいわけでございまして、どんな状況になったら危ないかということは、やはり地域の皆さんが、まさにそこに生活している人がその現実を知っているわけでございますので、そうした声も踏まえて、ぜひ適切な対応をお願いしたいと思います。

 若干時間は残っておりますけれども、以上で質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

木村主査 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤池誠章君。

赤池分科員 自由民主党の赤池誠章です。

 決算行政監視委員会分科会で質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、農林業ということで、特に地元、私は山梨一区を選挙区としております、果樹、ワイン含めて質問をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、日本は古くから豊葦原瑞穂の国というふうに呼ばれておりました。これは、意味するところは、御承知のとおり、水などの自然環境に恵まれて、アシが生い茂って、みずみずしい稲の穂が実っている国という意味であります。まさに、日本の伝統文化の美しい名称であると同時に、日本列島の歴史、風土、状況というものを端的にあらわす言葉ということで理解されてきたわけです。しかし、実際のところどうだったのかということを考えてみると、本当に農業に恵まれた自然環境だったかというと、これは決してそうでもなかったなというふうに思っています。

 第一番目は、やはり、一年間の中で日照時間というのはどうしても限られている、しかし、その反面で、日照りなど、災害も、干害ということが非常に多かった。第二に、雨季が短くて、必要な用水をどうやって確保するかということが非常に不安定であったこと。第三番目は、収穫期に台風が多くて壊滅的な風水害に見舞われたこともあったということであります。

 以上のような厳しい自然環境の中で、冒頭お話をしましたとおり、豊葦原瑞穂の国という名称は、単に天から与えられたものではなくて、まさに古代から今に続く、私たち日本人の知恵と努力の結晶があってこそ、初めてそういう言葉が実感を持って語られるのかなというふうに思っております。こういった言葉は、神話の一フレーズではなくて、まさに日本の歴史、伝統、文化に基づいた農林水産業の理念であり、また政策的なスローガンでもないのかなということを感じております。

 古代から赤米の神事とか、神道の儀式には米、水、酒、塩、海の幸、山の幸をささげるとか、地域の年中行事、宮中祭祀の中で一番大事なものが十一月二十三日の新嘗祭ということでもあります。そういった形での、まさに農林水産業というのは、宗教であり、信仰、思想ではなかったかなと思っています。

 そして、その一方で、古代からは、国家のプロジェクトとして、班田収授とか条里制、またはため池のかんがい整備とか荘園開発、また石積みの棚田など、これはまさに国家の威信をかけた、総動員をした国家プロジェクト、国家政策でもあったということではないのかなと思っています。

 しかし、近代以降は産業構造が大きく変化をして、農業国家から工業国家へ、さらに都市化が進んで、現在は、商業サービス業、情報産業が急増しておりますし、世界に類を見ない少子高齢化、人口減少時代を迎えているわけで、改めて日本の国家ビジョン、国家理念の確立が求められている中で、私は、もう一度、この神話の言葉、豊葦原瑞穂の国という言葉が、今後の日本の進路、ビジョンを示唆しているのではないかと思っております。

 豊かな環境の中で、農工商、バランスのとれた産業構造の中で、歴史、伝統、文化のある地域に支えられて、先祖を敬い、家族を大事にして、勤勉に働いて、子孫繁栄に思いをいたして、国際社会の中で生き生きと暮らしていく日本人の姿というものであります。そのために、日本人の伝統文化である、生きるための基礎的な食料を供給する、産業の基盤、きょうのテーマであります農林水産業の活性化というものが不可欠ではないかと思っています。

 御承知のとおり、過去十年、農家人口は一千二百万人から八百万人ということで三割減少してしまいました。基幹的な農業従事者も約一五%に減少をし続けている。その一方で、農業就業人口に占める六十五歳以上の方の割合が六割を超えて高齢化が進んでくる。今後、昭和一けた世代、私の親の年代でありますが、引退が本格化、加速化すると、農業従事者が大幅に減少することが予想されております。そういう面で、担い手対策というのは待ったなしであります。

 今、私の生まれ育った、選挙区でもあります山梨では、桜の花が咲いて、その後、四月には桃の花が咲き乱れまして、甲府盆地は桃の花のじゅうたんが敷き詰められたような景観になります。これはまさに、農家が農作業をなさっているたまものであるわけでありますが、この景観も、十年後になるとどこまで残っているかというような状況ではないかと思っております。

 農家の方々にいろいろな形で意見を聞いてみますと、同じ規模でも以前より経費がかかって売り上げは高く売れないとか、息子さんが何人いても、朝早く夜遅く労働時間が長くて厳しくて、その割には所得が見込めない農家はとても継がせられないというような状況であります。

 そこで、今後の農業構造を展望して、他の産業と同じような労働時間で同様の所得を確保できる農業経営、また、意欲と能力のある担い手というものが大事なわけでありますが、農水省としての担い手対策の取り組みについて見解をお伺いしたいと思います。

高橋(博)政府参考人 農業の担い手対策でございますけれども、委員御指摘のとおり、現下の農業、特に、米、麦、大豆などの土地利用型の農業でございますとか、あるいは中山間地域における農業につきまして、農業の従事者減少あるいは高齢化、そのような生産構造の非常なる脆弱化が進んでいる、まさに待ったなしの状況であろうというふうに私どもも認識しているわけでございます。

 現状のままの状態でこれを自然体で見守っていくということであれば、今のさまざまな食料をめぐる状況の変化の中で、再生の機会を逸してしまうということでございます。御指摘のとおり、意欲あります効率的、安定的な農業経営が、一生懸命我が国の農業をやっていただく、そういったような望ましい農業構造を構築するのが待ったなしということでございます。

 農林水産省では、このような認識のもとで、関係の農業団体等と連携、協力をいたしまして、経営改善に取り組んでまいります認定農業者あるいは集落営農組織について、その育成確保を図るための全国的な運動を展開しておるところでございます。

 具体的には、例えば認定農業者などに対しましては、土地利用型農業の場合には、水田・畑作経営所得安定対策というような対策を十九年度から実施しているわけでございますし、一方で、果樹とかあるいは野菜、畜産などの対策につきましては、新たな果樹対策等の品目別の経営安定対策も講じているわけでございます。

 そして、このような対策の中で、さらに個別の農家を支援する措置といたしまして、農林公庫のスーパーL資金等について、これを集中期間中は無利子化にしていくというようなこと、あるいは、従来、融資と補助というものが分かれておったわけでございますけれども、融資を主体として機械、施設を導入いたします際に、融資残の自己負担部分については補助措置を講ずるというような新たな事業でございますとか、あるいは農地の面的な利用集積に対します経費補助、あるいは準備金制度等の税制措置というような各種施策をこのような担い手の対策として集中的、重点的に実施しておりまして、これらの施策を総合的に進めることによりまして、担い手の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。

赤池分科員 各種施策の中で、いわゆる認定農業者、集落営農組織という形で、順次、その方々が、認定がふえているということを聞かせていただいております。

 これは差別的な名称、表現になってはいけないと思うんですが、一般的に認定農業者とか集落営農組織といっても、農家の方はわかっても、社会的な評価としてはもう一歩ぴんとこないという側面があるのかな。

 何が言いたいかというと、実際、それを認定するということは、もちろんそれで結構なんですが、やはりそれだけ改善意欲、能力があるんだという形で、ある程度社会的にも誇りが持てる仕事の位置づけということで、名前だけ変えればいいという単純なものではないにしても、もう少し世間にも通じてわかりやすい、これだけ頑張っている農家の方が誇りを持って、対外的にも通用するような名称というものも若干考えていただいた方がよりいいのかなということを感じております。

 そんな中で、山梨でも、農業地域といいながら、新しく農業に従事なさる方が年間五十人台、特に、学校を出て、若く、農業をやろうという方が昨年だとわずか一名ということを聞いて、本当に驚いている次第であります。

 そういう面では、今なさっている方をさらに認定農業者、集落営農組織という形で強化していくと同時に、やはり産業として新規に参入をしていかなければ、その産業というのは衰退をしてしまうわけでありますので、まずは新規学卒者にどうやって農業についていただくか。

 また、普通の産業ですと、いきなり経営者になるというのはすごいハードルでありまして、お金を借りたりという、補助金があってもお金を借りるというのは物すごくリスクなわけですね。自然環境にも左右される、知識も技術も要る、なかなかハードルが高い産業の分野だと思っておりますので、普通であれば、サラリーマンをやって、なれてから独立するという、そういった意味での、まずはサラリーマンとして、リスクが少なくて、でも農業をやりたいという方をもっと受け入れるような、法人、それから、農事組合法人を含めて、集落営農組織にもなると思うんですが、そういったところの視点での農水省の支援策、政策をお聞かせください。

高橋(博)政府参考人 農業が産業として魅力あるためには、農業の内外からチャレンジ精神を持ちました新規就農者が育つことが非常に重要だということはもとよりでございます。

 今委員がおっしゃられましたように、特に農業の外から、農家後継者ではなくて、新たに農業に入ってくる場合に、農業法人に就業することが非常に重要だということを私どもも認識しております。これらの農外からの就業者に対しましては、さまざまな段階があろうかと思っております。

 最初に、例えば情報提供あるいは収集段階。こういったところの場合には、例えばキャンペーンを行いますとか、インターネットで各種の農業関係の情報を提供するシステムを構築していくとか、そういうようなことが重要でございます。

 次の段階では、体験でありますとか、あるいは研修段階になります。こういったところでは、学生あるいは社会人向けの農業就業体験でございますとか、あるいは、農業法人におけますオン・ザ・ジョブ・トレーニングみたいな実践的な研修、あるいは農業大学校、こういったところで、農業高校からの卒業生だけではなくて、農外からの技術習得が学べる、あるいはEラーニングみたいな形で、インターネットを使ったような研修を行うということになろうかと思います。

 さらに、その次の段階で、具体的な参入段階ということになってまいりまして、これも、直接農業経営に入る者、それから、農業法人に雇われ、農業法人である程度経験を積んでから実際に参入をする場合、そういった者に対します必要な農地情報の提供あるいは資金の初期投資の軽減化みたいなことが重要であります。

 それから、これは最近、十九年度あるいは二十年度から始めておりますけれども、現場でそういう即戦力となるような方かどうかを、農業法人として、この方は農業の技術のレベルがどうであろうかというようなことの判定も重要でございます。そのためには、農業技術検定というような形で、実技試験の導入なり活用方針ということも進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 そのようなさまざまな施策を講じて、内外からの農業への参入ということを私どもとしても積極的に推進してまいりたいというふうに思っているところでございます。

赤池分科員 各種段階に沿ったきめの細かい施策ということの御説明をいただきました。

 ここでやはり大事になるのは、すべての行政全体が言われていることですが、いわゆるワンストップサービスという形で、一体どこに行ったらどれだけのものが、A窓口、B窓口、C窓口ではなくて、本当に一カ所でそういったすべての問題が解決できるというような形での取り組みも現行行われているのかどうか、その一点、ちょっとお聞かせ願えればと思います。

高橋(博)政府参考人 担い手の育成に関しましては、今委員おっしゃられましたような、いわゆるワンストップサービスという形で、地域の担い手協議会の中で実施をしております。これが十分かということはあるわけでございますけれども、これはさらに推進をしてまいりたいというふうに思っております。

赤池分科員 農水省のさまざまな施策の中でも、農水省のトップに農林水産業に従事しようみたいな、ぜひインターネットの窓口にもつくっていただきたいなと思います。

 それから、地場産業の中で、今、私の山梨もそうですし、全国的に公共事業の減少の中で、最大の地場産業の一つである建設業の方々が非常に厳しい状況であります。私のところでも、大手建設業が倒産をする、事業再生ができないという状況の中で、新たに建設業の方が農林水産業に進出するというような事例も全国的には出てきた。その中で、具体的にどのような形で農林水産省としての支援策があるかをお聞かせください。

高橋(博)政府参考人 農業への建設業等の一般企業の参入でございます。

 施設型の、ハウスをつくるとかそういったところはちょっと別にいたしまして、通常、土地を使うような場合には、主に、市町村と協定を結んで、農地を借りながら農業に参入するという例が多いわけでございますが、これにつきましては、直近のことしの三月現在の数字で、全国で二百八十一法人ほどが参入をしております。そのうち建設業者が九十四法人ということで、三分の一近くがこのような建設業者になっております。また、営農類型を見てまいりますと、二百八十一のうち、果樹を営農類型としているものが大体四十九ということで、さらにこのうち建設業者によるものが十六というような状況でございます。こういった形で、地域で、建設業者あるいはNPOを初めといたしまして、農業参入が進んでおります。

 私どもといたしましても、このような参入に対しましては、それに必要な広報・相談活動、これは当然のことでございますけれども、実際に参入する際の農地の利用調整についての実施、あるいは、市町村等が企業参入に当たりましてさまざまな条件整備を行いますけれども、測量調査あるいは簡易な土地基盤整備、あるいは借り手、これは参入でございますので、地主さんに小作料を一括して前払いするような、そういったようなものについても支援をしております。さらに、営農に関しましては、営農計画あるいは生産技術に関しまして普及センターが濃密指導を行いますとか、あるいは機械、施設のリースということで、初期投資の軽減策を講ずるということでございます。また、農林公庫の低利資金の融資ということも活用が可能になっております。

 私どもといたしましても、このような施策を集中的に行って、こういう企業の参入は地域の活性化につながるということでございますので、支援してまいりたいというふうに思っております。

今村副大臣 ちょっと私の個人的な考え方になるかもしれませんけれども、今、農地の維持の問題で、中山間地をどう守っていくかということが非常に大きな課題になっていきます。これは、畑の面積も小さいし、高齢化が進んでいる、そういったところにやはりぜひ建設業の力をかりて維持していく必要もあるんじゃないかな、そういった方策を今後少し検討してみようかと思っておりますので、補足しておきます。

赤池分科員 副大臣からも御発言いただきました。

 特に、地域にはそれぞれ、中山間地域であったり特色のある農産品、山梨であったら桃であったりブドウであったり、ところが、やはり品目によっては、なかなか技術力からいうとハードルが高い。山梨でも、県の方がやろうとしても、やはりなかなか知識、技術が追いつかなくてちゅうちょする業界の方々もいらっしゃると聞いておりますので、そのハードルをぜひ国の支援の中で越えられるような形での指導も引き続きお願いをしたいと思っております。

 続きまして、遊休農地、いわゆる耕作放棄地の問題を一問お聞かせ願いたいと思います。

 私の山梨県を調べましたところ、長崎県に次いで全国ワースト二位の耕作放棄地で約二三%ということであります。全国は約一割の部分なんですが、これは、今回初めて全国の実態調査を農水省でやるということを聞いております。農業委員なり市町村が中心になるということなんですが、実施に当たって、今まで以上に、パトロール以上に農業委員の方々や市町村に負担がかかると思うんですが、支援策、地域の負担軽減策がございましたらお聞かせ願いたいと思います。

飯高政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のように、耕作放棄地の問題というのが最近非常に大きな問題になっておりまして、私ども、マクロの数字はつかんでおりますが、その実態というのは地域によってさまざまであろうと思います。

 そこで、先生お話しのように、ことしから市町村、農業委員会の方々に一筆ごとに調査をしていただくことにしております。これは何といっても、地域、現場に近い、そういった方々にやっていただくのが一番正確であろうということでお願いするわけですが、これはなかなかやはり大変な作業になろうと思います。そこで、私ども、国と県が一体となりまして、市町村、農業委員会を支援することといたしております。

 具体的には、市町村単位に設置されます調査チームの打ち合わせに国と県の職員が参加をいたしまして、国の方でいろいろな地図を持ってございますので、そういった調査に必要な地図なども提供いたします。それから、調査方法につきましては御助言もいたしたいと思います。さらには、現状がよくつかみ切れていないというような地域を中心に、一部の地域におきましては、実際に国の職員が現地調査に参加するというようなことも考えてございます。

 また、調査や調査結果を取りまとめるのに必要な経費の一部を助成する予算措置といたしまして、担い手アクションサポート事業あるいは農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、こういったものも活用できるわけでございまして、これらの事業も活用いただきながら、調査を進めてまいりたいと考えてございます。

赤池分科員 やはり実態がわからなければ的確な対策が打てないわけでありますので、その辺を、実情調査はすばらしいことだと思うんですが、そのときにぜひ、それでなくても負担が大きい中で、地域には軽減策、国のサポートを引き続きお願いをしたいと思います。

 続きまして、私の選挙区、日本一の桃とブドウとスモモの産地であります。果樹振興ということでありますが、今までは果樹振興というとどうしてもリンゴとミカンが中心でありまして、それがメジャーフルーツと言いますと、ブドウ、私のところのものはマイナーフルーツと言ってしまうとちょっと卑下し過ぎかなとも思うんですが、平成十九年度から新しい果樹振興対策ということで、経営支援の対策事業、産地が計画をすればそれに補助をしましょうということで、品目を選ばないという形での新しい事業が導入をされたということで、私どもの地域にとっても果樹振興にとっても非常に画期的な政策の展開かなということで、高く評価しているところであります。

 そんな中で、具体的に計画が出て、地域の方々に聞いてみると余りぴんときていないんですね。一体何に支援がされているんだろうかということでありまして、計画をつくってまだ実施がこれからということもあるんですが、具体的にこういったところに支援をしていますよということをわかりやすく御説明いただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、十九年度から新たな果樹振興対策を、名前は果樹経営支援対策事業と言うわけですが、始めました。これは、これまでのが温州ミカンそれからリンゴというものが専ら中心の対策であったわけですけれども、より幅広い品目を対象にその振興を図っていこうということで行っているものでございます。

 具体的には、まず、産地が構造改革計画をつくっていただきます。そして、それに基づいて、それに位置づけられた振興品目というものを対象に、まず、優良品目・品種への改植それから高接ぎ、あるいは園内道の整備や傾斜の緩和等、これは小規模でもそういう整備ができるような小規模な基盤整備、それから、担い手への園地集積や労働力調整のためのシステムの構築、大苗育苗圃の設置に対する支援あるいは高品質、省力化のための新技術実証圃の設置に対する支援など、こういったきめ細かな支援を行っているところでございます。

 山梨県の場合も、十九年度、本事業を活用して桃、ブドウ等の優良品種への転換等が行われておりますが、委員御指摘のように、私どもの目から見ましても、なかなか取り組みがいまいちではないかと思っております。いろいろ説明会等をやっておるんですけれども、やはり今までが、果樹対策といいますと温州ミカン、リンゴ中心だったものですから、なれていないということもあろうかと思います。これまで以上に一生懸命、地域、産地に説明をしまして、果樹産地の育成が図られるよう努力したいと考えております。

赤池分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、果樹の共済についてもお伺いしたいと思うんです。

 共済制度というのは、自然災害に遭ったときに補てんするということで、農業者の経営安定に非常に寄与してきたわけなんですが、残念ながら加入率がいま一歩ということもありまして、なかなか、それでなくても売り上げがないのに、こういった果樹共済にお金を出すのはどうかなという声も聞いておりますが、新たなる対策を平成十九年度から打っているということを聞いております。その効果と今後の加入見通しをお聞かせいただきたいと思います。

高橋(博)政府参考人 果樹共済でございますけれども、自然災害を受けやすい農業の特質ということで、セーフティーネット機能を整備するということで経営安定のために非常に重要な措置だと思っております。しかしながら、御指摘のとおり、果樹について見てまいりますと加入率が低い。この要因は、基本的にやはり事故率が高いということで、はっきり言いまして保険料が割高になってしまう、したがって、そこまで掛け切れないというところが大きな議論だったろうと思っております。

 今回、十九年産から新たな果樹対策を講ずるということで、その際に、果樹農家の経営安定を図るために、気象災害によります減収補てんの果樹共済への一層の加入促進という観点から運用改善を行ったところでございます。

 具体的には、果実の減収または品質低下に伴いまして生産金額が減少した場合に支払う補てん方式がございますけれども、従来、これについては、農協に対します系統出荷によりまして生産金額を確認するという手法でございました関係から、農協出荷でないと対象にならないということでございましたけれども、これにつきましては税務の青色申告関係書類等を用いることができるということで、系統出荷以外の方式でありましてもこの対象にするということで、要は補てんの範囲が広がったということがまず第一点でございます。

 次に、掛金率の問題でございますけれども、基本的に、事故率の低い方にはなるべく掛金率を低くしよう、あるいはそういった地域は掛金率を低くすることによって加入の促進を図りたいということで、地域別の掛金率あるいは危険段階別の掛金率を設定するということをやってきたわけでございますが、今回、まず地域別に掛金率を設定した上で、さらに個々の農業者ごとに、技術も優秀で、基本的によっぽどのことでないと災害を受けない、通常きちんとやれば被害を受けないというような方については、地域一律の共済掛金率ではなくて、さらに個人ごとに掛金を設定できるというような方式にした。技術の優秀な農家に対しては、それに応じた掛金率を設定するということ。

 それからもう一つは、小規模な農家でありましても、今回は選果場単位で共済を受けることができる資格団体としようということでございます。大規模な経営体であれば、当然のことながらリスク率が減るというようなこともあって、掛金率は低くなるわけでありますけれども、小規模な農家であっても、このように共同して選果場単位で組織化を図ることによりまして、大規模の経営体並みの低い事故率に見合った掛金率を設定できるというようなことをしたところでございます。

 これについて、十九年産からこれを周知徹底して加入促進を図っておりまして、全国ではかなり、今四万五千ヘクタールぐらいになりまして、前年産に比べて千三百ヘクタール弱ふえております。ただ、これは浸透はまだまだだと思っておりますので、今申し上げましたようなこと、特に、きちんとこれから意欲あるような果樹農家に浸透を図ってまいりたいというふうに思っております。

赤池分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 時間がなくなってまいりましたが、攻める農業、輸出振興策も聞かせていただきたいと思っておりまして、山梨県もブドウ、桃を台湾中心に輸出しようということなんですが、特にこれから市場が見込まれる中国大陸であったりオーストラリアであったりということで、その辺の輸出先の輸入解禁とか検閲の規制緩和の交渉状況もお聞かせ願いたいと同時に、ワインの産地でもございます。農水省としてのワイン振興策も、続けて二問でありますが、御質問させていただきます。見解をお願いいたします。

内藤政府参考人 果実の輸出振興でございますけれども、御案内のとおり、アジアを中心に、新興国、富裕層が大変ふえております。アジアの場合、贈答文化というものがございますので、高級果実としての大きなマーケットが期待できるわけでございます。

 そのため、我々として、支援策としては、まず、高級果実、高級品のイメージが浮き出るような日本産果実マークを導入したいと思っております。それから、見本市とか販売促進活動に対する支援も行っておりますし、輸出用に新たに選果場等が必要になってくる場合もございますので、そういった選果場に対する支援も行っております。

 それから、検疫の件でございますけれども、私ども当然、植物検疫の協議をきちんとやっていきませんと輸出ができませんので、今できないところについては、いろいろな国に対して重点品目を決めながら、優先的にそういったところに対する植物検疫協議を加速化していきたいと思っております。ただ、あわせまして、当然、病害虫の防除技術というものを開発しなければいけません。そういったことをあわせて行っているところでございます。

 それから、ワインの振興でございますけれども、私ども、ワインの原料となるブドウの産地の支援のために、果樹経営支援対策におきまして、品質のすぐれたワイン用品種への改植、高接ぎですとか、作業の効率化を図るための園内道の整備とか傾斜の緩和等の取り組みを助成対象にしてございます。それから、新しい品種、そういった栽培環境に適しましたすぐれた品種改良を進めるという観点から、山梨県に育種試験を委託してございまして、栽培適性それからワイン醸造適性をあわせ持つ専用品種の育成に取り組んでいるところでございまして、例えばサマーブラックですとかビジュノワール、こういった新しい品種もできております。

 以上でございます。

赤池分科員 ありがとうございました。

 時間になりました。豊葦原瑞穂の国という言葉に代表されます理念としての農業、それから国家プロジェクトとしての農業、引き続き農水省の力強い施策推進をお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて赤池誠章君の質疑は終了いたしました。

 次に、三日月大造君。

三日月分科員 おはようございます。民主党の三日月大造です。

 決算行政監視委員会、私は、本日、造林公社問題、林業公社問題について質問をさせていただきます。今村副大臣と私はともにぽっぽ屋、鉄道員出身でありますけれども、きょうは、森林政策、林業政策について意見交換をさせていただきたいと思います。

 まずその前に、私は滋賀県から選ばれておりまして、二つのことについてお話ししたいと思うんです。

 この週末、土曜日、十九日に、林野の所管ではないんですけれども、公園緑地の方の部類になるのかもしれませんが、びわこ地球市民の森というのをつくっていまして、一級河川野洲川の廃川敷に四十二・五ヘクタール、これまで八年間で市民、県民二万四千人が参加をいたしまして八万本の木を植えて、森をつくろうという壮大な取り組みを今させていただいています。ようやく半分の植樹が終わったということで、これから数十年間、数百年間かけて森をつくっていくことの、ある意味とうとさ、そして大変さも実感をしてまいりました。

 またもう一つ、その中で、近畿の一千五百万人の水がめとしての琵琶湖をたたえ、その水源、上流に多くの森林を抱える滋賀県として、二つの造林公社を持っております。昭和四十年に設立されました社団法人滋賀県造林公社、そして、昭和四十九年に設立されました財団法人びわ湖造林公社ですね。これはともに債務が非常に膨らんでおりまして、これは十八年度末の数字なんですが、滋賀県造林公社は三百六十一億円、そして、びわ湖造林公社については六百九十六億円、合計千五十七億円もの債務を有しておるという状況なんです。

 それで、まず林野庁長官にお伺いをいたしますが、現在の全国の林業、造林公社の経営状況についての評価をいただきたいと思うんです。

 森が緑の社会資本として重要な役割を果たしていること、国土の保全や水源涵養、いわゆる公益的機能を有していることは異論ございません。さらに、雇用や地域振興といった面での役割も持っている。その中で、いわゆる林業公社、造林公社ですね、森林所有者による整備が進みにくい場所、奥地を中心に、いわゆる分収方式で森林の造成を図ってきた。公的分収林と呼ばれているらしいんですけれども、その担い手として公社が設立されて、現在、三十六都道府県に四十公社がある。その公社が三十九万ヘクタールの分収林を持っている。

 ここまで基礎的なことは申し上げましたので、基礎的なこと以外の、現在の全国の林業公社の経営状況についての評価をまず林野庁長官にお伺いいたします。

井出政府参考人 今、全国の林業公社の状況について委員の方から御説明をいただきましたので、端的に申し上げます。

 林業公社の経営状況でございますが、御承知のように、長期的な材価の低迷といった全国共通の条件に加えまして、森林整備の原資として国庫補助金をできるだけ活用されて、借入金に依存しないように努めた公社も一方でございますが、借入金から国庫補助金への原資の転換を積極的に行われずに、借入金に継続的に頼ってきた公社もございます。

 また、一方では、債務残高の増加を避けるために、低利の資金への借りかえを機動的に小まめにやってきたという公社がある一方で、そういった措置を積極的に講じなかった公社もございます。

 さらに、利子負担につきましては、設立に大きく関与しております都道府県がしっかり支援をしてきた公社と、そうでない公社があるということでございまして、一ヘクタール当たりの債務残高を見ますと、約七十万円程度のところから約七百万円程度のところまでということで、その公社によりまして大きな差異が見られるところでございますけれども、借入金残高といたしましては全体で約一兆円ということでございまして、総じて経営は厳しい状況にあると考えております。

三日月分科員 ありがとうございます。

 今、長官から、合計で一兆円を超える債務があると。お手元に資料を配らせていただきましたが、全四十公社の分収林の面積と、そして長期借入金残高、及び、それがどこから借りられているのか、利息が幾らかということの、これは、最新の十九年三月三十一日現在の数字をお配りしています。合計一兆一千百二十四億円という債務の状況になっていて、この中には、いろいろと支援措置をやってきたけれども、それを講じた公社とそうでない公社、また、その背後にいるというか、バックにいる都道府県のかかわり方によって公社の財務状況に差異があるということなんですけれども、ではお伺いをいたします。

 この一兆を超える債務のうち約一割の債務を有する滋賀県の二公社については、今、長官が御説明いただきましたさまざまな支援措置や都道府県とのかかわりにおいて、不十分であったと評価をされていらっしゃいますか。

井出政府参考人 不十分であったかどうかということについてはなかなか難しい問題でございますが、滋賀県の公社が、今委員がお配りになった資料の二ページ目にもございますように、いわゆる補助事業の活用をされた比率としては、他県の公社に比べるとかなり低いということは数字が示しております。

 これは、設立当初に、補助事業を活用してということは県も負担をするということでございますので、そういう道をとらずに融資という形でやっていこうという判断をされたのだと思いますが、それが、その後のやはり材価の低迷やコストの増嵩によりまして、非常に大きな負担になっているというふうに考えております。

三日月分科員 農水副大臣にお伺いをいたしたいと思うんですけれども、こういう状況下にあって、確かに都道府県のかかわり方、それぞれの公社の独自の経営責任があろうかと思うんですけれども、これまで国策として公社による造林政策を進めてきた経緯、経過があるわけでございまして、この状況下で国の責任をどのようにとらえていらっしゃいますか。

今村副大臣 先ほど長官の方からもお話ししましたが、国としても、こういう林業政策につきましては、本当に厳しい予算の中でそれなりにしっかり取り組んできたつもりでございます。

 しかしながら、非常に材木の価格が下がったということがやはり一番のこの経営悪化の原因であるというふうに思っておりますし、そしてまた、今話が出ましたように、それぞれの公社の経営の姿勢といいますか取り組み方、それによって随分と差異が出てきた面もあるかと思っております。

 しかしながら、今後は、地球環境問題等々を含めて森林の新たな役割といったものが大きく評価され、また、CO2をお金に換算するという考え方も今出てきているわけでございますので、そういった観点を入れながら、今後ともしっかりとした林業施策を推進していきたいというふうに思っております。

三日月分科員 今の基本的認識に加えて、具体的にどのような方針でこの造林公社支援対策を行っていかれるのかということについてお伺いをしたいと思うんです。

 確かに、地球温暖化の状況下で、森林によるCO2吸収という非常に重要な役割が森林にあり、その森林をもちろんそれぞれの森林所有者が持ち、育て、管理することに加えて、それがなかなか至らない地区の造林をこの公社が担ってやってきた。しかし、さまざまな状況下で、背景もあり、それぞれの公社が大変厳しい経営状況になっている。この状況をかんがみて、国としてどのような対策をとられるおつもりなんでしょうか。

井出政府参考人 利用可能な森林資源が非常に充実してきている、国産材に対して需要が高まる兆しが見えてきている、近年のこういう状況の中で、先ほど副大臣も申されましたけれども、林業と木材産業を、やはり今まさに産業として再生していくことが重要だというふうに考えております。

 このため、施業しましても、その結果、森林所有者、あるいは分収の場合には、分収した結果お金が残るということが大事でございますから、いかに森林施業の集約化や林業生産コストを下げていくか、あるいは、品質、性能の確かな木材製品をどうやって安定供給していくかという、これが林政の今の最重要課題であると思います。

 それから、こういう林業の再生という中で公社の問題でございますが、これまでも、例えば、森林整備に対しては高率の助成措置をつくったり、あるいは低金利の借りかえ措置をつくりましたり、都道府県が林業公社に対して助成する場合には地方財政措置の対象にするとか、やってまいりました。

 さらに、平成二十年度、今年度からは、新たに既往の農林公庫資金の償還期間を大幅に延長しまして、いわゆる主伐期、本当に木を切れるときまで元本は払わなくていいよ、その間利息だけ払ってくださいというような、新しい利用間伐推進資金というようなものもつくっております。

 そういったことで、本当に木が切れるときまで十分時間的猶予を与えながら、公社についても健全な経営に復帰できるように支援していきたいと思っております。

三日月分科員 今、長官が、これまでやってきたこと、そして今やっていることについて御説明をいただきましたが、しかし残念ながら、例えば平成元年末で公社全体の債務は五千二百億円、五年には六千八百五十九億円、十年末には八千九百九十七億円、そして十五年には一兆六百八十三億円と、いろいろな措置を講じているにもかかわらず、公社全体の債務は膨らんできている状況下にあるわけですよね。

 この状況下、これまでやってきたことの対策をどのように評価され、そして、それをさらに改善していくための方策としてどのようなものをお考えなんでしょうか。

井出政府参考人 先ほど申し上げました対策につきましても、造林公社がやっております森林造成事業については、まだ残念ながらいわゆる木の主伐期を迎えておりません。そのために、現在までのところは収入がほとんどなくて、木を育てるためにお金を投入してきたという経緯がございますので、毎年の債務額がやはりどんどんふえていくという状況にあります。

 先ほど申し上げましたようなことで、いろいろな融資制度とか借りかえ措置とか地財措置とかを講じてまいりましたのも、こういったまだ収入にならない木を育てていくために、その間の負債がふえるのをどうやって抑制していくかというための対策でございます。

 今後も、現在は木材をとるにいたしましても、今のような林齢で切りますとかなり価値が低いということになりますので、さらに長伐期化をする。そのため、長伐期化していくためには、その期間は収入がございませんから、先ほど申し上げましたように、債務を最長で二十年間繰り延べるというような措置も今年度講じたところでございます。

 こうやって、実際に収入があるまでの間は、できるだけコストを下げ、あるいは債務がふえないように、今まで申し上げたような措置でつないでいくということになるかと思っております。

三日月分科員 一点、お伺いをいたします。

 そういう状況下で、今、滋賀県の二公社と公庫等との関係で特定調停が行われております。特定調停が申し出されて、この事態をどのようにとらえて、この事態に至ったことに対する責任をどのようにお考えでしょうか。

井出政府参考人 滋賀県の二公社につきましては、先ほど委員からもお話がありましたが、両公社合わせて二万ヘクタールの森林を造成してきております。

 これも御指摘のありましたように、二公社合わせて一千五十七億円の借入金を抱えておりまして、裁判所に特定調停の申し立てをなされました。

 この滋賀県の二公社が特定調停の場で債権者に債権放棄の負担を求めるような状況に立ち至っているわけでございますけれども、このようなことについては、二公社及び滋賀県と、その相手方であります下流域の自治体及び農林公庫との間で調停の場で議論がされることでございますので、林野庁としては、こういった事態の推移をしっかり見守っていくということだと考えております。

三日月分科員 えらいつれない答弁ですね。

 副大臣、どのようにお考えでしょうか。

今村副大臣 基本的には、先ほど言いましたように、いろいろな公社はそれぞれ状況が違っております。ですから、この二公社につきましても、正直申しましてもっと早く手を打つべきだったんじゃないかなということは、非常に私もここは痛感しているところでございます。

 今後の一つの考え方としては、やはり、今長官も申しましたが、今どんどん木が大きくなってきているわけでございます。これを将来どういうふうに価値を見るか。主伐期の資産価値を算定しながらバランスシートをもう一回将来に向かって検討してみて、そういったものをベースにしながら、今後、自治体等でもどういう支援の措置があるか。

 特にこの森林公社は、琵琶湖という大きな水がめ、これの維持、またきれいな水を生む、そういう機能も果たしているわけでございますので、単に木材価格が下がったから云々だけじゃなくて、そういった公益的機能といいますか、そういったものもある意味ではこの資産評価の中に入れて、そういうことで今後の将来の対応を含めて当面の措置をどういうふうにやっていくか、そういった長期的、短期的な措置をしっかりと取り組んでもらうところが必要じゃないか。

 国としても、制度の面でできる範囲では、これは当然しっかり支援もしていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。

三日月分科員 今、副大臣から御答弁をいただきましたが、林野庁長官にお伺いをいたします。

 今、もっと早く手を打つべきではなかったかという副大臣の御見解が示されました。十七年に設立された林業公社等にかかる金融問題検討会、これは、きょう御出席いただいています農林漁業金融公庫の方と、あと二十府県ですか、それぞれの府県も加わって検討会をつくられて、そして政策提言もされております。これは、平成十七年の末に共同アピールを出され、その後、繰り返し、平成十九年にもさらに提言をまとめていただいていて、今副大臣が御答弁されたような、例えば、経営する森林の伐採時期に合わせた償還とする選択肢を持った資金制度をつくってくれ、伐期の長期化などに伴って償還期間を延長した場合に、増加する利子負担を軽減する措置を講じてくれ、さらには、将来の利子負担軽減のため、伐採収入や新たな支援措置等を財源とした公庫資金の繰り上げ償還が随時実施できる仕組みをつくってくれ等々の、特に金融支援の改善についての政策提言がなされておりますが、この提言はどのように具現化をされてまいりましたでしょうか。

井出政府参考人 金融問題検討会から、今委員御指摘のような提言が行われました。

 林野庁としましても、この提案を踏まえまして、農林漁業金融公庫とも十分協議、調整をいたしまして、伐採時期に合わせた償還とする選択肢を持った資金制度の創設、あるいは、増加する利子負担を軽減する措置の要望に対しまして、償還期限を延長することが可能となるとともに、利子負担に間伐材の販売収入を充てるための利用間伐を円滑に実施するための利用間伐推進資金というものを、先ほど来御説明をいたしましたが、平成二十年度に創設をいたしております。

 この資金は、先ほども申し上げましたけれども、償還期限が二十年ということで、据え置きも二十年ということですので、結局二十年後に元本を返してくださいということで、二十年たてば、長伐期化しても主伐期が訪れて実際に収入があるだろう、その収入の実際にあるときに返していただければ結構ですという制度をつくっております。

 さらに、利子負担の軽減についても、都道府県の利子補給に相当する経費について特別交付税措置を講じておりますし、任意の繰り上げ償還につきましても、農林公庫におきまして、利子負担の軽減につながるようにということで、三・五%以上の金利の資金につきましては、平成十九年度までの三年間、任意の繰り上げ償還を認めてきたところでございます。

三日月分科員 きょうは公庫総裁にも御出席をいただいておりますが、今の特定調停、個別事案ですので踏み込んだ御答弁はいただけないかもしれませんが、その状況について、また、今御答弁いただきましたが、公庫総裁も加わっていただいてこの金融問題検討会で政策提言を行っていただいておりますが、その評価を含めて、現在の状況についてお伺いをいたしたいと思います。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問ありましたように、私どもとしては、政策金融機関として制度の枠組みというものがございます、その中でできることをこれまでやってきております。

 特定調停に至るまでの私どもの対応というのをまず申し上げておきたいと思います。

 一つは、近年、森林の公益的機能を重視しまして、長伐期、複層林施業に転換をしてきております。そういうことからいいますと、なかなか収入が上がらないということになりますから、そこで、借りかえということで、平成九年度、十二年度の二カ年に、私どもはこの両公社に対しての総額で三百四十八億円の借りかえということを実施いたしまして、このことによりまして、平成九年度から十六年度までの八年間で六十八億円の償還金額の低下といいますか、そういうことが実現した。

 それから、平成十六年度に両公社から、公社運営につきまして抜本的な見直しが必要だという申し入れがございまして、そのためには、きちんと精査をした上での経営改善計画、この作成が必要になるわけでございます。そのための必要な期間として、平成十七年度、十八年度の二年間、これは、私どもとしては、そういう抜本的な経営改善計画が作成されるという前提において、本邦初の対応でございますが、元利金の返済を猶予する特別の措置を講じたわけでございます。このことによって、猶予額は元利合わせて二十七億円となっております。

 そういうような状況の中で、返済がない、こういうことに至りまして、私どもとしては、金融機関としてしっかりと対応させていただいている、こういうことでございます。

 そういうことで特定調停に至ったわけでございますが、私どもとしては、特定調停につきましては、基本的に滋賀県が損失補償をなされているということでございますので、そういうことになりますと、損失補償ということの後は、公庫債権を滋賀県に譲渡するということになります。したがって、公庫としては、特定調停におきまして、債務の減免とかそういうことを論ずべき立場にはないということを主張しております。

 そういうこともありまして、私どもとしては、債権を適正かつ合理的に返還していただく、そういうことを前提に、調停外ということで協議を続け、できるだけ当事者間でお話し合いをして、いい解決をしたい、こういうことでございます。

 また、ただいま御指摘のありました政策提言でございます。これは、私ども、これまでも多くの林業公社、全部で三十余になりますが、そういう公社と、今の政策提言をしましたのは二十府県とでございますが、私どもが融資をしております公社の長期収支などについて私どもなりに算定をして、そして、その結果をお示しして、経営改善の参考にしていただく。それから、そのほかの意見交換もしてまいりました。

 そういう中で、やはりなかなか難しい問題が残るということでございまして、しっかりと実態の認識を共有して、それでは、どういうことをやればこの林業公社の経営改善ができるかということで政策提言を行ったわけであります。それを受けられて、先ほど林野庁長官の方から答弁があったというふうに理解しております。

三日月分科員 もちろん、そういう公庫としての債権があるという状況で、借りた金は返してもらわなあかん、しかしながら、置かれている状況、立場を勘案しながら、特定調停についても、調停外交渉をしていただいていろいろな措置を講じていただいているということなんですけれども、切るまで収入にならないというこの林業において、価格が低迷して、さらに長伐期化して木材としての資産を先延ばしにしていこう、その間の金融措置を講じていかなあかんという状況下が今だと思うんですけれども、さらなる金利の減免等の支援措置の必要性について、林野庁としてどのようにお考えなんでしょうか。

    〔主査退席、松野(博)主査代理着席〕

井出政府参考人 先ほどの検討会の提言を受けて、この二十年度から、先ほど来申し上げていますような利用間伐推進資金というものをつくりまして、ある意味では、借金の二十年間の繰り延べという措置に出たわけでございます。

 あわせて、その間、山をきれいに、利用間伐をしていかなきゃいかぬ。それについてもお金がかかるわけでして、それについては、有利子の公庫資金に金利負担を軽減するための無利子の資金を一定割合で貸し付けているわけですが、その貸付割合も今回大幅に拡充をいたしました。

 こういった措置で、ぜひ、各都府県の林業公社においてこの二十年度改正措置を有効に使っていただいて、積極的に取り組んでいただければと思っております。まずは、この二十年度の措置をしっかり使っていただければということでございます。

三日月分科員 先ほど今村副大臣からもあったんですけれども、緊急、短期でやらなければならないことと長期、根本的にやらなければならない措置と、二つに分けて論ずる必要があると思うんです。

 今の林野庁長官の御答弁は、ある意味、長期に向けた取り組みで、二十年度の支援措置を講じてそれを見ていきたいということなんですけれども、例えばこの滋賀県の二公社については、五百億円になんなんとする債務負担が、調停の結果によっては今年度に生じる可能性があるという状況なんです。これは、滋賀県の一般財源の約一割になろうとする金額なんです。

 総務省にお伺いをいたしますが、例えば、公社のこの債務を滋賀県が引き継いで償還していく場合に、これは、地財法の特例として、起債による財源調達が可能になるような特例を設けるべきではないか。先ほど、公益的な機能もあるじゃないかということがありましたけれども、その点についての見解をお伺いいたします。

榮畑政府参考人 ただいまの御指摘でございますが、恐らく、第三セクターの破綻処理をされるときに当面のお金がかかる、それをどういうふうに取り扱うか、資金調達するかということなんだろうと思っております。そういうふうになりますと、破綻処理の際の扱いというのは、結局、まさに今、法律の体系の中では想定されていない。赤字地方債ということになります。

 したがいまして、現行法との兼ね合いをどういうふうに考えていくのか。仮にそういうものを発行するとしたときの返す当てというのは実際あるんだろうか、それからまた、そもそも三セクのそういうような損失を地方債で肩がわりすることがどういうふうな理屈、整理が成り立つのか、それから三セクの経営責任、それをどういうふうに考えるか等々、結構詰めなければならない課題がございまして、私ども、三セク改革をこれから進めていかなければならぬと思っておるところでございますが、現段階ではまだまだ詰めるべき課題が多いかなというのが率直なところでございます。

三日月分科員 時間になりましたので終わりますが、いや、詰めるべき課題が多いのは承知の上で、しかし、この林業公社が持っている公益的機能をどう見て、そして、それを自治体が公社にかわって債務償還していくときの支援措置を、総務省と農水省、公庫、林野庁一体になってどうつくっていくのかということの問題提起をしているわけなんです。

 副大臣、最後にちょっとこの点についての検討の必要性についての御認識をお伺いして、終わりたいと思います。

今村副大臣 先ほど申しましたが、この琵琶湖は近畿圏の大変大切な水がめといった大きな機能を果たしているわけでございますので、そこをやはり下流域の皆さん方も含めて理解を賜って、みんなでそこをどうやって今後この問題の解決を図っていくか、そういう体制でしっかり取り組んでいくことが必要だというふうに思っております。

三日月分科員 ありがとうございました。

松野(博)主査代理 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)分科員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。きょうは、二、三、農林水産省関連の御質問をさせていただきます。

 まず第一点目は、明石海峡の船舶の衝突事故の件を最初に取り上げさせていただきたいと思います。

 三月の五日ですから、もう一カ月半がたちました。民間の船舶同士であったということ、直前に千葉で例のイージス艦と漁船の衝突事故があった、あの辺のことに比べまして、余り世間的には注目をされていない、なかなか事態の深刻さというものが内外にわかっていただけないというところがあるわけですけれども、もう既に一カ月半がたって、関連の漁協の皆さんは深刻な事態が続いているということで、私はそういう地元の瀬戸内の漁業者、とりわけ神戸漁協あるいは明石漁協また淡路漁協、こういったところの漁協の皆さんからさまざまな要望を聞いてまいりました。

 逐次、水産庁の皆さん、また、きょうは直接関連ありませんが、国土交通省あるいは環境省等々、皆さんにいろいろな角度でお願いをしてきたわけでありますが、きょうはこういう機会でございます、ぜひひとつ、中間的な状況の中で、水産庁の皆さん、また今村副大臣にしっかりとこの辺の状況について認識をより一層深めていただくとともに、水産庁としての対応というものを改めてしっかりと確認をしていきたい、こんなふうに思います。

 まず第一点目でありますけれども、先般、特に国会の開かれている状況の中で、参議院で私どもの仲間の議員が予算委員会あるいは農水委員会等で質問をしてまいりました。三月の二十五日ですから約一カ月前に、私どもの谷合議員が、澤大臣政務官に対しましてこの問題について質問をした際に、澤政務官の方から、農林水産省としましても、関係地方公共団体等と連絡をとり、また、関係各省庁と連携をとって対応をしっかりしていきます、こういうお話があって、そんな中で、「漁業共済金の早期支払に努めるとともに、関係地方公共団体と連携を取って、また関係省庁とも連携を取りまして、ノリの色落ち対策などの地域の実情に応じた振興策を積極的に進めてまいりたい」、こんなふうな答弁をされているわけです。

 特に、そんな中で、昨今地元的には一つの期待としてあることは、このとき澤さんも「燃油高騰対策資金、これの柔軟活用についても検討したい」、こんなふうな答弁をされているわけですけれども、こういった答弁を踏まえまして、一カ月たった現状の水産庁としてのこの問題についての対応を、総括的に中間報告していただきたいと思います。

山田政府参考人 ただいま委員からお話がありましたように、今回の事故につきましては、加害者の方がはっきりしているということでございまして、一般的に申し上げれば被害者と加害者の間で解決されるというのが基本でございますが、かねてより答弁をいたしておりますように、漁業者の方々が一刻も早く今回の被害から立ち直って元気に地域の漁業の振興に携わっていただけるように、水産庁といたしましても、漁業共済金の早期支払いあるいは資金の円滑な融通について関係機関に指導を行っているところでございます。

 漁業共済金の支払いにつきましては、仮払いということで、本来まだいろいろな手続が必要なんですけれども、この仮払いにつきまして、三月末に二億四千万円の仮払いを実施しております。また、今後、要件を満たしていく者が出てくれば仮払いを行っていくということでございます。

 それから、燃油対策その他ノリの対策等を活用するということにつきましては、特に燃油対策につきましては、現地の方に入りまして説明会を開いたり意見交換をしたりして、どのくらい取り組めるのかというのをただいま調整しているというようなことでございまして、私どもとしましては、こういった各種のさまざまな振興策の活用について、さらに積極的に進めていきたいと考えております。

赤松(正)分科員 山田長官、今言われた漁業共済金の支払いの件でありますけれども、総理の方からも先般、一番最初に事故が起こったときに、こういった支払いについては早期に届けていただければしっかり対応する、こういう話がありました。今、仮払い二億四千万という話でございましたけれども、水産庁長官の方としては今後どういうふうに、この辺の要求が来て、全体のうちのどれぐらい今済んでいるというか、その辺の感触はつかんでおられるでしょうか。

山田政府参考人 この共済の支払いにつきましては、全国漁業共済組合連合会が実施をするものでございますので、私どもとしては、早期に、また仮払いができるようになったら速やかに、仮払いを行うよう指導をしているところでございます。

 実際にどのくらいの金額になるかということにつきましては、共済連合会の方で判断をすることになりますので、私の方からは控えさせていただきたいというふうに考えております。

赤松(正)分科員 今の件でございますが、燃油対策の資金の高騰対策費をこちらに、澤さんの言い方をすれば柔軟活用という問題につきましては、なかなかこういう場でどうこうというのは言うのは難しいかもしれませんけれども、地元の漁業者は大変に期待をいたしておりますので、その辺については早急に地元との連携をとってしっかりと対応していただきたい、そんなふうに思います。

 今、そういう状況の中で、水産庁の方からも現場に足を運んでおられると思いますが、水産庁長官としては現場にまだ行っておられないと思うのです。その辺、実際に足を運んで、一つは、こういうノリ漁業者、あるいはイカナゴ漁業、こういうことに従事しておられる皆さんは、日常からこういう事故というものを全く想定していないということがあって、余り保険にも入っていないというか、こういう危機的な状況になるということに直接迫られない限りなかなかそういう対応が進まないという部分があると思うんです。

 そういったことも含めて、ある一定の時期、今もう一カ月半ほどたったわけですけれども、ぜひともいろいろな角度で水産庁長官がアドバイスされる必要がある、こう思うのですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

山田政府参考人 今回の事故につきましては、水産庁としても極めて大きな被害があったというふうに認識をしております。

 そういう観点から、水産庁では、本庁の担当課長なりあるいは担当の室長を派遣いたしまして、現場の状況を把握し、また漁業者の方と意見交換を行うなどを実施してきております。

 また、地元の方も随分東京の方に上がってこられて、その都度、私なりあるいは関係の者がお会いをして状況をお聞きしているということでございまして、もちろん現場へ行って見るのが一番いいということであろうと思いますが、私ども、現場で漁業調整事務所という出先機関もありますので、逐次情報を収集しながら、また御意見をお聞きしているというような状況にございます。

赤松(正)分科員 要するに行く用意はないという答弁だったと思うんですが、私、今回だけではなくて、普段から瀬戸内の漁業者にいろいろな角度でお話を聞く機会が多いんですけれども、ノリの養殖という問題については色落ちだとか、なかなか瀬戸内海という海が、余りきれい過ぎてもいけないし、また汚れ過ぎてもいけない、ノリならノリの養殖という部分については、適度な汚れと清潔さと豊かさと、さまざまな観点が必要ということなんですね。

 先般、淡路に行きました際に、いわゆる海底の、農業でいえば畑作、土をしっかり耕すと同じように、海底もしっかり耕していくというか、そういう側面において、ノリあるいはまた漁業全体において大事な、豊かな後背といいますかバックグラウンド、そういうものができていくというふうなこともあって、今、兵庫県としては、県知事を中心に、あるいはまた地元選出国会議員も中心にしまして、瀬戸内のさまざまな、ノリも含めた漁業に対しての対応ということで、いろいろな角度から勉強したり研究したりしているわけです。

 そういう点も踏まえて、ぜひ適切なときに、余り時間がたち過ぎますとこの問題と関係ないという話になっちゃいますから、最先端の室長あるいは課長の皆さんから状況を聞かれた上で、水産庁長官も、この問題だけではなくて、この問題を踏まえて瀬戸内の漁業の進展に向けての課題の事情聴取ということにぜひ足を運んでいただきたい、そんなふうに思う次第でございます。

 私、この問題について当初から強く感じていることは、これは副大臣にお聞きしたいんですけれども、いろいろな関係省庁が絡んでいるわけですね。船が沈んだということで、第一義的には海上保安庁、国土交通省、そして漁業者への影響という部分では、先ほど来水産庁長官にお聞きしました、水産庁がさまざまな対応の部分で関係してくる。あるいはまた、海洋、海上の影響、環境という部分では環境省が関係している。特に、ことしは環境に関するサミットが神戸で開かれるということもありまして、非常に大事な場面だと思うんですね。

 ところが、現場で、事故が起こったときに国に対して要望をするといったときに、非常に縦の系列で、事故そのものに関しては国土交通省、それに対するさまざまな補償だとか保険の話となると水産庁、環境は環境省等々、いろいろ分かれていて、なかなかもどかしいものを、実は漁業者あるいはまた地元の県会議員や関係者と一緒に、私たちは非常に悩んだわけです。

 だから、関係省庁が一堂に会して、この問題の所在どこにありやということについて、的確にしっかりと連携をとり合って、今何が大事なのかということをやればいいのになかなかやらない。本当に怒り心頭に発するという部分もあったわけですね。そういう点で、国土交通大臣は現場にも足を運んでくれましたけれども、先ほど来水産庁長官と申しましたが、ぜひとも農水大臣また副大臣、政務官、政治家がどなたもまだ農水省関係ではいらしていない、これは現場にぜひ来ていただきたい。

 あるいはまた、私は先ほど来申し上げておりますように、こういうケース、今までも随分ありましたし、今回のように瀬戸内の海域、非常に船舶の交通量が激しいところ、こういうところでの事故というのは珍しいんですけれども、こういうケース、これから起こらないとも限らない。そういうことに関して、やはりこれは起こったら直ちに関係省庁の会議をやるということをぜひとも基本に据えていただきたい、私はこう思うんですね。

 私、一番早い段階で農水省にお邪魔したときに、水産庁長官もいらっしゃいましたけれども、ぜひそういうのをやってくれと言ったはずです。あのときは政務官に直接言いましたけれども、なかなかそれが実現しないで、ようやく先週十四日に、これが私が言っているものかどうかは定かじゃないんですけれども、関係省庁の連絡会議的なものが設置された。まず第一に、私は、それは今回の事件に関するそういう会議なのかどうか疑わしいな、それではなくて、今後の、これから未来におけるそういうものをという側面が強いんじゃないかな、こういうふうな懸念を持っているんですが、そのあたり、この十四日に開かれた関係省庁の会議の性格、それについて水産庁長官から答弁していただいて、その後副大臣の御意見を聞きたいと思います。

山田政府参考人 今回の事件につきましては、関係省庁の連絡会議は、事件発生後早い時期から会議をやっております。具体的に言いますと、三月の十二日に第一回の担当課長レベルの会議を開きまして、その後、十八日、二十八日と三回開いておりまして、防除対策、あるいは被害に遭われた漁業者に対してどういった支援が可能なのかといったことについて情報交換を行っているところでございます。

 それから、ただいまお話がありました十四日の会議でございますが、これは海上保安庁さんの方が、特に明石海峡の海難事故を契機といたしましてその安全対策について検討をしようということで、安全対策の観点から会議が持たれたということでございまして、これにつきましては、水産庁も担当課長が参加をしたということでございます。

 いずれにいたしましても、関係省庁の連携を密にして対応していきたいというふうに考えております。

赤松(正)分科員 水産庁長官、それはちょっとおかしいんじゃないですか、私がやれと言ったときにやっていないと言っておいて、今ごろになってやったと言うのは。大体、そういうことをやったという報告もないし。だから、それは私に言わせると、今回のこの事故に対して、何か正確な、きちっとした性格を持った会議とは思えない、そんなふうに思いますね。

 だから、もしそういうふうに今おっしゃったことが真実なんだったら、その都度何回かお会いしているわけだから、そういうときに、どういうことだったのかという中間報告をしていただきたいと思いますよ。

今村副大臣 今委員が御指摘になりましたが、私たちも、この問題については、現地のいろいろな状況等を見る中で、本当に大変な問題だというふうに思っております。

 この問題、事故の具体的な対応、これについても早急にやらなければいけないし、また、この地域は非常に船舶の往来が多いという中で、抜本的な対策といったものも組まなきゃいけないだろうというふうに思っております。そういう中で、今委員が御指摘になりましたように、私たちも逐次状況は聞いておったつもりでございますが、やはり現地に我々が行って、しっかりとやりますからというメッセージをもっと送ることが必要だったんじゃないかなということで、反省をしている次第でございます。

 いろいろな対応は、先ほど長官も申したようにやっておりますが、私はどうかなと思うのが、やはり現地でワンストップでやれる体制ができているのかどうか、そこが、ひょっとすると皆さんが非常に不安に思っておられることじゃないかなという気もいたしておりますので、本省の方だけじゃなくて、現地の対応ということにつきましてももう一度チェックをして、しっかりした体制を組んでやっていきたいというふうに思います。

赤松(正)分科員 ぜひともそういう対応をしていただきたい。そして、できるだけ早い機会に、そういう水産庁長官のもとに集められた情報を持って、大臣、副大臣、政務官、どなたでも、そのお三方のうちのお一方、来ていただきたい、そんなふうに思います。そして、この事故だけではなくて、非常に重要なテーマがいろいろありますので、現場に足を運んでいろいろな意見を聞いていただきたい。それは、みんな地元から来ますけれども、実際に足を運んで行っていただくのはまた全然状況が違うと思いますので、どうぞよろしく対応をお願い申し上げます。

 次に、テーマがかわりますけれども、今から五日前、四月十八日から、私の地元姫路で全国菓子博、いわゆる菓子大博覧会が行われております。これは、約百年目ということで、大変に意義のあるイベントだ、こんなふうに認識をしているわけですけれども、私は、きょう、この場でちょっと、菓子博そのものが姫路という地域で、これは前回は熊本で、その前は岩手でというふうに全国ずっと県庁所在地でやってきて、今回初めて県庁所在地ではない姫路という歴史と文化と伝統の町で行われているわけです。

 それは、兵庫県知事井戸さんを中心に、また石見姫路市長を中心に、姫路、兵庫の町おこし、都市おこし、そういうふうな観点で行われているのでこれはこれでいいわけですが、違う角度からの側面ということで見ますと、まず一つは、私も改めて、当たり前のことですが気がついたのは、このイベントの総裁は農林水産大臣なわけですね。つまり、農水省がしっかり絡んでいるわけで、お菓子が今、現代日本人の生活の中に深く入り込んでいる、ある種、大げさに言えばいわゆる食文化の一つの大きな国民に対するアピール、そういう側面も持っている。

 現地的には多くの人が来られて、楽しい、いい会合だった、それでいいんですけれども、一方で、農水省が主催をするというか、バックに総裁として絡んでいるというからには、やはり単に菓子博がたくさんの人が来られていいイベントだったということで終わるだけではいけない、そう思うんですね。

 一つの角度、幾つか問題があると思うんですけれども、とりわけこの一年、不二家の事件あるいはまた白い恋人あるいは伊勢の赤福とか、そういう特にお菓子の業界、大手のところのいわゆる消費期限の問題、賞味期限の問題、そういったことから、国民生活とお菓子との関係について非常に懸念を持つ、不安を持つ、そういう事件があったわけです。

 こういった状況の中で開かれる菓子博という観点で、地元とは別の角度で、私は、この姫路で開かれるお菓子大博覧会には、農水省としてのある種別のテーマ、これは毎年の菓子博には何か特別のテーマというのはないみたいに受けとめているんですが、農水省としては、こういうイベントをきっかけにして、そういう日本の食文化、お菓子文化というものについての国民とのかかわりの中において、安全性また豊かさ等々について強いメッセージを発信されるべきだ、こう思うんですが、その辺についての認識はいかがでしょうか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お話しいただきましたように、四月十八日から五月十一日まで、兵庫県姫路市におきまして、第二十五回の全国菓子大博覧会・兵庫が開催されているところでございます。明治四十四年に第一回、以降、おおむね四年に一度開催されておりまして、我が国菓子業界最大の行事ということでございます。

 本博覧会におきましては、全国各地の銘菓を一堂に集めまして広く消費者に紹介するほか、菓子の品評会を行いまして優秀作品を賞するものでございまして、菓子産業の発展に大きく寄与するということから、農林省としても、後援名義を発出するとともに、農林水産大臣賞の交付を行っているところでございます。

 今回、姫路市で開催されているわけでございますが、姫路城完成四百年を迎える中、全国有数の菓子どころである兵庫県におきまして本博覧会の開催がされる、こういったことを通じまして、消費者の全国各地の菓子への理解が深まること、また、お話しいただきましたように、昨年来いろいろ安全、安心面で問題がございました。こういった大博覧会を通じまして、菓子の品質と製造技術の向上が図られるということによりまして、一層菓子産業が発展することを私どもも大きく期待しているところでございます。

赤松(正)分科員 一番最後の方に少し述べられて、直接的に私が意図したことについては余り答えていただかなかったという思いがあるんですが、恐らく、今まで約百年間の菓子博の中で余りそういう意識はなかったんだろうと思うんですね。

 やはり、百年たって、県庁所在地からそうでない都市に移るという流れもこれからできていくと思いますので、単に菓子業界のバックアップということだけではなくて、もっと広い意味で、日本の菓子文化というものに対する農林水産省としての強いメッセージもどこか一つぐらい、何かパビリオンをつくるとか、そういう側面もあっていいんじゃないかということを御提起申し上げさせていただきます。

 もう一点、これはきょうの新聞に出ておりました、皆さんの認識もそうだと思いますが、今、李明博韓国大統領が来られて、韓国の大統領夫人とそれから福田総理の奥さんとお二人で茶道を一緒にたしなまれる場面があって、そのときに韓国の大統領夫人が、韓国においても非常に小麦の値段の高騰というものがあってなかなか大変なんです、お菓子なんかについても小麦を使わないでお米を使っているんです、そういうふうな話が出ておりました。

 あわせて、今回このイベントに際して、森永の会長、安倍夫人のおじさんになられるんですけれども、等々といろいろ懇談をしました際に、輸入小麦の値上げ、こういった問題で大変に業界としても苦労している、大変に厳しい状況だ、こんなふうな話がございました。

 これは一つこの問題だけではなくて、食料品全般にわたっての、今申し上げたような生活必需品の値上げという問題なんかもあるわけですけれども、この業界の苦慮、苦悩、厳しさ、こういうものに対して、農林水産省として、消費者に伝わるような、こういう苦慮している、苦悩しているこの大変に厳しい状況の中で、こういう業界、あるいはまたお菓子を愛する国民全般に対して今の状況をどのように説明をしようとしているのかということについてぜひ改めてお聞きしたいと思います。

町田政府参考人 麦の問題でございます。

 麦の国際相場でございますが、中国やインドなどの人口超大国の経済発展による食料需要の増大、世界的なバイオ燃料の原料としての穀物等の需要増大、さらには地球規模の気候変動の影響、こういった構造的な要因によりまして、穀物需給が逼迫しております。また、自国への供給を優先する一部輸出国におきます輸出規制の動き、こういったことがありまして、相場が大変大幅に上昇しております。こうしたことを背景に、輸入麦の政府売り渡し価格につきましても、昨年十月に一〇%、本年四月に三〇%引き上げたところでございます。

 この価格改定ルールにつきましては、直近八カ月の買い付け価格の平均値を踏まえて算出するということで、国際相場の動向をある程度緩和するという仕組みになっております。今期、四月期の改定に当たりましても、現行ルールを踏襲した上で、単純に計算しますと三八%の引き上げになりますところを、国民生活や関係業界に及ぼす影響、こういったことを配慮いたしまして、三〇%の引き上げに圧縮したところでございます。

 こうした状況につきましてしっかり説明せよというもっともな御指摘でございます。

 このような状況につきまして、私ども、消費者団体も含めました関係団体、企業に対しまして、今回の改定の背景、内容等につきまして文書を発送し、また直接説明に動きますとともに、農林水産省内の担当部局に相談窓口を設置いたしまして、個別の消費者や関係企業からの問い合わせに対応しているところでございます。また、テレビ、新聞等への取材対応を通じまして、消費者を含めまして広く国民に理解を得られるように努めているところでございます。

 今後とも、さまざまな機会を通じまして積極的な情報提供に努めてまいりたいというふうに考えております。

赤松(正)分科員 最後に、副大臣にちょっと、全般的なとらえ方でお聞きしたいんです。

 きょうも朝、NHKのニュースを見ておりましたら、きょうの朝のニュースだけではないんですけれども、いわゆる各国におけるさまざまな農業生産品に対する輸出規制といいますか、各国が、囲い込みをするというか、今の世界状況の中でしっかりとその辺、自国防衛というか、そういう側面を非常に強く出してきているということで、日本が非常に厳しい事態に直面する、WTOにおける日本の行動というものは非常に注目される、こういう話がございました。

 今回の例の中国のギョーザ事件の効用があるとするならば、要するに、日本国民がひとしく、日本がいかに食料自給率が低い、外国に依存しているかという状況を非常に広範囲にみんなが改めて自覚したということにあるんじゃないかなと思うんですけれども、これは今に始まったことじゃなくて、ずっと長い間、日本のこういう食料自給率の低さという問題、いろいろな角度で言われてきながら、今こういう事態に直面をしている。

 先ほど言いましたように、各国の自国囲い込みというか、そういう対応をしている中で、日本のかじ取りというものは非常に重要な局面に差しかかっている。こういう状況の中で、今村副大臣御自身の受けとめ方ということについて最後にお聞きして、終わりたいと思います。

今村副大臣 ただいま委員がおっしゃいましたように、やはり、国家国民の安全保障という観点からしても、あるいは国土の保全という観点からしても、食料を量的な面あるいは質的な面からもどのように確保していくかということが大変大きな課題になってきているというふうに思っております。

 特に、先ほど自給率等々の話もいろいろなところで言われているわけでございますが、小麦も、これは実は一三%しか自給率がございません。片一方、米は一○○%以上あるわけですね。だから、これをいかに小麦等の自給率を高めていくか、そういった施策を今展開しております。

 そういう中で、もう一つは、お米についても、先ほどお菓子という話が出ましたが、これは非常に今技術も進んできておりまして、小麦粉と余り変わらない、むしろ内容的にはいいんじゃないかというぐらいの粉をつくる技術も進んできておりますから、そういったものもしっかり食べていただければ、日本の国で外国に頼らずに食料を確保できるという道も開けてまいるわけでございます。

 そういった、とにかく国の安全保障という形の観点からも、今言われましたようなことで諸施策をしっかり展開してまいり、そしてまたそのことを、先ほどもお話がございましたが国民の皆さん方にもよく理解をしてもらって、できるだけ今申しましたような米のパンを食べていただくとか、そういった御理解等々もしてもらいたいし、お菓子も、クッキーよりもはるかに日本の和菓子の方が繊細でいいものがたくさんございますので、そういった宣伝もしっかりやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますので、また御支援のほどをお願い申し上げます。

赤松(正)分科員 ありがとうございました。

松野(博)主査代理 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

松野(博)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 主査が所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。

 昨日に引き続き厚生労働省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。

前田分科員 民主党の前田雄吉です。

 昨今、医療費の増大によって、セルフメディケーション、予防医学という考え方がしきりに使われるようになりました。また、健康21プロジェクトのように、政府、行政の方も、みずからが個人の健康維持に関して積極的に啓蒙を進めている、そうした現状が今あります。

 医療機関においても、従来の、医薬品、手術あるいは放射線治療といった治療だけではなくて、それだけで解決ができない、いわゆる健康な状態とそれから未病、いまだ病気ではないという状態、そのぎりぎりの境目がなかなかわからなくなるような疾患がかなりある。それはストレス性疾患であり、あるいは生活習慣病であるといったものが増大してきているわけでありますね。

 こうしたものの解決には、予防医学の必要性が非常に高まってまいりました。そこで、積極的に代替医療を取り入れていかれるお医者さんもふえておりますし、また、いわゆる西洋医学の限界を感じて、いち早く統合医療に着目し始めた医療機関もふえてまいりました。そこで、私は、もう一度東洋のすばらしい医療を見直すときに来たのではないかというふうに思っております。

 初めに、鍼灸の関連の質問を二問ほどさせてください。

 まず、日本において、鍼灸治療は伝統医療として千三百年の歴史を持っている、律令制下においても、はり博士というものが設置されて以来、現在まで国民の健康増進を非常に支えてきた、一定の成果を上げてきた医療であるというふうに私は思っております。明治維新後、急速に西洋医学の導入がされて、また二次大戦後は、マッカーサー占領統治下でGHQの鍼灸禁止令というのが出されたんですね。この二度の危機に遭いながら、鍼灸治療は現在まで国民の支持を得ているわけであります。

 私は、この鍼灸治療がもう少し利用されやすいような医療体制になればいいというふうに思いますけれども、副大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

西川副大臣 お答えいたします。

 確かに、前田先生おっしゃいますように、明治以後、日本の医療というのは、どちらかというと西洋医学の方に傾き過ぎていた嫌いはあると思うんですね。そういう中で、本当に伝統的なはり、きゅうの医学というのは、やはりそれ以前は日本の民衆にとっては一番大切なあれだったんだろうと思います。

 そういう中で、やはり厚生労働省としても、近ごろ、いわば予防医療という方に大きくかじを切っておりますので、これから本当に、本来日本的あるいは伝統的なるそういう治療というものにもしっかり目を向けていかなければいけないという考えを持っております。その中で、現在、国家資格制度のもとで、もちろんお医者様の同意が要りますけれども、医療保険の中で療養費払いとしてしっかり位置づけさせていただいております。

 これは、国民の健康の保持増進を図るという大事な観点からも、これからもきっちりと対応していきたいと思っております。

前田分科員 ぜひ、この保険適用についても簡単にできるようにしてください。とにかく、国民の皆さんが本当に多く使っていらっしゃると思うんですね。ですから、ぜひそれを副大臣にお願いしていきたいと思います。

 また、老人保健法の制定の折に、高齢者などの鍼灸治療が現実として広くある現状があるものですから、私はよく調べてみましたら、昭和五十七年八月九日の衆議院の社会労働委員会において、「老人医療におけるはり、きゆう、マッサージの取扱いについては、その需要にこたえられるよう特段の配慮をすること。」という法案に対する附帯決議がなされております。

 一昨年の六月に、今非常に世間をにぎわせております後期高齢者医療制度、長寿医療制度ですか、これが決定されて、いよいよ高齢者医療制度の新しい制度が創設されるという中で、やはり、先ほど申し上げたように、律令制の時代から千三百年の歴史を持つ、国民に支持されてきた伝統医療である鍼灸治療がなるべく受けやすい措置がとられるべきであるというふうに私は思いますけれども、重ねて副大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

西川副大臣 先ほどの質問でも申し上げましたように、本当に、はり、きゅうの治療については、今までもきちんとした医療保険の中で対応してまいりましたわけですけれども、特に今回の長寿医療制度におきましても、年配の方々というのは、どちらかというと、若い人よりもこの伝統的な治療方法というのがかなり浸透していらっしゃるそうですから、当然、この制度に移られても多くの方が御利用されると思います。

 そういう要望にしっかりとおこたえして、鍼灸師の人たちの施術が今後ともしっかりと受けてもらえるような制度を維持してまいりたいと思っております。

前田分科員 ぜひ、西川副大臣に、国民が使いやすいような鍼灸治療、この制度を目指していただきたいと思います。

 さて、今、西川副大臣も言われましたように、厚生労働省は予防医学にシフトされているということでございますけれども、今、国民の過半数がいわゆる健康食品をとられている。これは三菱総研の平成十七年八月のデータです。この調査によりますと、過去に健康食品を利用したことがありますかという質問で、約八割以上の方が利用したことがある、ほとんど毎日利用している方が三三%あるというのが現状であります。ほかのデータでは、国民の五二%が健康食品を利用されているということであります。

 私は、こうした健康食品、サプリメントは、これから医療費を下げていく上にも、予防医学として大きな役割を果たしていくものではないかというふうに思っております。ですから、サプリメントがきちんと立法化されていかれるべきではないかというふうに思っております。

 今、現状は、国民の皆さんにとって非常に不親切きわまりない状態に置かれていると私は思うんですね。コンビニにも売っています。あるいは薬局にも売っています。売っているものを見ても、何を何錠飲んだら何に効くと書いてない。書けないんですよね。これは薬事法の規制もあり、BSEのときにできた健康増進法の規定もあり、なかなか効能を明示できない、こんな状態にあります。だから特保をつくったじゃないか、そう言われるかもしれぬですけれども、特保も、中小の健康食品企業にとっては、認証をとるのに財力と時間と労力というものをなかなかかけられないといった現状があります。だから、大手の食料会社あるいは薬品会社がとるぐらいしか、まだまだ今現状としてはありません。

 そうしたことで、私は、国民の皆さんに愛用されている健康食品を何とか予防医学につなげたい、また、国民の皆さんに安心して利用していただけるような状態にしたいと思いまして、いろいろ調べました。

 皆さん、きょうは、私は非常に残念なことがあります。四・一三事務連絡、これについてお尋ねしようと思いました。

 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課広告専門官、大川氏、前職でありますので、今はもうどこかほかの部署に行かれたということですけれども。彼が専門官名で去年四月に全都道府県に出しました通達があります。これで非常に、誇大表示をするなというものでありましたけれども、私はもちろんその気持ちはわかりますよ。厚生労働省の方針もわかります。

 しかし、現実には誇大表示という非常にあいまいなもので縛って、健康食品のメーカーは多大な損害をこうむりました。例えば、あるドリンクをつくられているところは、三百円のドリンクを十万本破棄したと言われました。三千万円ですよ。それから、パッケージを変えるだけで四千万円かかった。余りに経団連の方からも抗議が行ったので、厚生労働省はこの通達を撤回いたしました。

 私は、この場で大川専門官を呼んで、どういう思いでこれをやったか、あるいは出た損害をどうするのか、どういう責任をとるんだといったことをきちんと御本人にお聞きしようと思いましたけれども、課長以下の方は委員会にも呼べないというような状況があるそうですので、また別の場で、私も決算の理事でありますので、決算委員会の理事の合意をとって、もう一度きちんとお呼びしたいと思います。

 実際に撤回するようなものを出して、被害も現状出ている。これに対して、厚生労働省の責任者として副大臣はどのようにお考えかということをまず伺いたいと思います。

岸副大臣 先生も当然御承知のことでございますが、職員の処分についてだと思いますけれども、これについては、人事院から示されております懲戒処分の指針というものによってやっております。

 その中で、申し上げますと、非違行為の動機及び結果、故意または過失の度合い、職員の職責及び社会的影響などの個別具体的な事実関係に加えて、日ごろの勤務態度や非違行為後の対応等を含めた総合的な考慮の上で判断する、こういうふうになっております。

 一般的に言えば、国家公務員の非違行為により民間に損害が生じた場合についても、個別具体的な事例について、このような人事院の指針に沿って判断すべきものと考えております。

前田分科員 実際に私が数件調べただけでも何千万円、何億の被害が出ておりますので、今、岸副大臣が言われたように、本当に民間でももちろんそういう被害が出ている現状がありますので、一度これは調査していただいて、私はこれはきちんと、その通達は撤回されたものですから、誤った裁量行政がなされたということでありますので、それでこうした被害が民間に出て、みんな厚生労働省が次に何をやるか怖いからということで、非常に民間の会社は恐れています。だから、泣き寝入りしています、はっきり言って。

 ですから、一度、副大臣、ぜひどのぐらいの被害があったのか御調査いただきたいと思いますが、いかがですか。

高橋(直)政府参考人 昨年の四月十三日の、その通達といいますか、これは事務連絡でございますけれども、その趣旨をちょっと御説明させていただきたいんですが……(前田分科員「時間がない、いいです。委員長、いいです」と呼ぶ)

松野(博)主査代理 答弁中ですので。

高橋(直)政府参考人 これは医薬品に該当するかどうかのその判断基準の例示を示したものでございまして、これ自体が法的拘束性を持つものではございませんし、それから、私どもは別にこれを撤回も何もいたしておりません。これは単にいろいろな例示を挙げただけの連絡でございます。

前田分科員 私が聞いているのは、人の時間を無駄に使わないでほしいね。実際に被害が出ているんだから、これをきちんと調査すべきですよ。その上でどういう対応をしていただけるか。撤回していないと言うんだったら、どうするんですか、この出た被害は。

 だから、まず現状を一回きちんとつかんでください、それで御判断してください。副大臣お願いします。

岸副大臣 被害が出ているという今の御発言でございましたが、被害が出ているかどうか、これについては調査する必要がある、こう思います。

前田分科員 ありがとうございます。

 今、民間のこうした健康食品をつくる産業の皆さんがどういう苦労をなさっているかというのを、ぜひ現状を調べていただきたいと思います。いいお答えをいただいたと思います。

 それで、どんどん進めたいと思いますけれども、今、政府委員の方から問題の発言がありましたけれども、撤回していないぞと言うんだったら、これはまたちょっと問題です。改めて委員会できちっと取り上げさせていただきたいと思います。厚生労働委員会でも、また私がやらせていただこうと思います。

 ちょっと進みますけれども、いわゆる、先ほど申し上げた、いまだ病気ではないという未病な状態にある皆さん、医療の先進国のドイツでは、身近なところに相談窓口があるんですね。ハーブショップ、日本でいうと調剤薬局的存在と言ってもいいほど市町村にありまして、これはクロイターハウスと呼ばれるんだそうで、これはハーブ薬局ですね。ここが、国民の皆さんの相談窓口、ちょっと調子が悪いんだけれども、最近ちょっと何か仕事が忙しくてとか、そうしたことを聞ける、地域の医療機関と連携して予防医学の一端を担っている組織であると言われております。

 我が国の予防医学の現状について少しお聞きしたいなと思いますが、いかがでございましょうか。

    〔松野(博)主査代理退席、主査着席〕

高橋(直)政府参考人 ドイツにおける御指摘のクロイターハウスが、ドイツの中で予防医学としてどういう位置づけになっているのか、ちょっと私どもよく承知いたしておりません。

 ただ、聞くところでは、このクロイターハウスは、ハーブの抽出液類など、ドイツ薬事法上の開設許可が必要な薬局以外の店舗でも販売できるというものでございまして、香辛料などとともに販売などしているところであるというふうに承知をいたしております。

前田分科員 聞き方が悪かった感じがしているんですけれども、我が国の現状を聞きたかったんですけれども、まあいいです。

 今、健康食品については、いわゆる健康食品、こういうふうな言われ方をしているわけですね。先ほどの大川専門官は、いわゆる健康食品はないなんて豪語していたようですけれども、実際には国民の皆さんの口に入っているわけですね。ですから、大きな開きがあるわけであります。

 今、どうしてこんな状況に健康食品があるか。私は、大もとは薬事法にあるのではないか、このように思います。現状として、薬事法のタコ足的拡張解釈、こうやって言うぐらい、薬事法を乱用して規制しているのではないかというふうに思っております。

 去年も私は質問させていただきまして、薬事法には、かつて、ただし食品を除くという定義があったと聞いております。これは本当に事実でありますね。また、食品衛生法にも、ただし医薬品は除く、こちらの定義は今も残っております。

 現在、薬事法に食品を除くの定義がないのは、いついかなる理由でこれを削除したのか。また、当時どのような説明がなされていたのかを簡潔に御説明いただきたいと思います。

高橋(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和二十三年に制定されました旧薬事法では、御指摘のとおり、医薬品の定義におきまして食品を除くことが明示されておりました。

 これは、昭和三十五年八月、現行の薬事法の制定及び旧薬事法の廃止に伴いまして、医薬品の定義におきまして食品を除く旨の規定が削除されました。

 これは、薬事法の方で薬の定義をやって、そこで食品を除く、一方、食品衛生法の方で、飲食物といいながら医薬品を除くということで、両方で削除の言葉が入ったということで、これは解釈上も大変混乱を招くということでこれを除いて、現在は食品衛生法上、飲食物、それで医薬品を除くと書いておりますが、それで解釈上これをきちっと整理したということで、これは解釈上当然のことをやったということになっております。この削除によりましても、旧薬事法と現行の薬事法とで医薬品の範囲が変わるものではございません。

 これらの趣旨につきましては、現行の薬事法が施行されました昭和三十六年二月の通知におきまして、各都道府県知事に対しましてその周知を徹底いたしておるところでございます。

前田分科員 と去年もお答えいただきました。

 アメリカでは、一九九四年、栄養補助食品健康教育法、これが議員立法によって成立しまして、今のクリントンさんのだんなさんが署名したという法律でございますけれども、ここには、ただし食品を除くの定義があるんですね。十年以上前にできた法律で、きちっとこうしたサプリメントを食品と医薬品の間に位置づけることができております。

 この際言わせていただきますけれども、薬事法から、食品を除く、この一項目を消したのは、これは厚生労働省が、健康食品に関しても薬事法を延長して、拡張して適用しますよ、これで規制していきますよという宣言ではなかったかというふうに私は思います。こうした薬事法を拡張解釈して食品の表示に口を挟んで、国際的な機能表示の流れに逆行するような越権行為はすぐやめてはいかがか、そういうふうに思います。

 一方、二十年間にわたってサプリメントについてどういうふうな対策をしてきたか、私ははっきりわかりません。新開発食品保健対策室を中心にサプリメントの法制化を担わせ、薬事行政は薬の部分を、サプリメント行政は対策室を通じ、私はこうやって消費者の利益と保護を図ってはいかがかと思いますけれども、これに関して副大臣のお考えを伺いたいと思います。

藤崎政府参考人 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 いわゆる健康食品のお話でございますが、食生活をどのようにしていくのかという日本人全体の健康にかかわる問題でもあろうかと思いますが、私どもの基本的な考え方は、やはりバランスのとれた食生活が大事であろうというふうに考えておるわけでございます。

 そういう中で、しかし、先生がおっしゃられますように、消費者個々人の食生活が多様化しておりますので、多種多様な食品が流通する今日、有効性、安全性等の確保を図りながら、消費者に適切な情報提供がなされ、個々人の食生活の状況等に応じて選択、活用ができるようにすることが重要である、消費者の利益の保護に資するものである、こういう観点から、私ども新開発食品保健対策室が中心になってさまざまな取り組みを進めてまいりました。

 そこで、先生ただいま御指摘の栄養補助食品の米国の制度でございます。

 これは、私の理解しておるところでは、国等の個別審査を受けることなく身体の構造と機能に関する効果を表示することは可能であるということで理解しておりますが、幾つか附帯条件がついておりまして、製品の販売後にFDAに届けるということと、それからその際に、一定の身体構造、機能に関するものが表示をできるわけでございますが、この記述はFDAによる評価を受けたものではありません、この製品は疾病の診断、処置、治療または予防を意図したものではありませんという否定声明文もあわせて表示しなければいけない、このようになっているというふうに聞いておるわけでございます。また同時に、表示の記述が真実であり、誤解されるものではないという証拠を有していなければならない、こういう内容であると承知しております。

 さて、このような内容の米国の法制度を、現在私がどう考えておるかということでございますが、全く一律のものを同様にできるかというのは、各国それぞれの文化もございますし、さまざまな制度も異なりますので、もちろん一概にはできないわけでございます。

 日本の場合には、先生御案内のとおりに、特保を含めて、既に一定の認知度のあります保健機能食品制度がございますこと。また、我が国の健康食品は通常の食品形態をとっているものがかなりあるということで、必ずしも錠剤とかカプセルとか、米国のような形でないということ。そして、何よりも私が現時点で懸念しておりますのは、健康の保持増進効果の表示につきましては、一定の科学的根拠が必要とされておるわけですけれども、先生御指摘の米国の法律におきましては、有用性と安全性に関する実証法が定められておりませんので、第三者の評価も要求されていないこととあわせまして、消費者の側からして、一体その点をどういうふうにバリデートしてもらえる、確証が持てるのかという点などの問題もございまして、慎重に考慮する必要があるのではないかなというふうに現時点では考えております。

前田分科員 私は、今、藤崎部長が言われた、いわゆるエビデンスの立証への懸念というのがあると思います。これは確かにあると思います。ですから、そうしたものは産学の協同体によって、例えば地域の中核の大学院の研究室にそれをお願いするとか、エビデンスを立証できるような形も含めた上でサプリメントの新法をつくるべきではないかというふうに私は考えております。

 さらに、この話をもう一つ質問させていただきますけれども、先ほどの監視指導・麻薬対策課絡みの医薬品業界や業界団体への天下りの現状について伺いたいと思います。

 大衆薬が売れずにサプリメントが売れていくので、これをたたくことが仕事になっているなんという話も私は内々聞いたことがありますけれども、そのようなことはないと思いますが、この天下りの現況について伺いたいと思います。

岸副大臣 先生御承知のように、国家公務員の退職後における再就職の状況は、公務を離れた個人に関する情報であって、一般に政府が知り得る立場にはないということもございます。

 しかし、平成十二年以降は、公務員制度改革大綱等にのっとりまして、本省の課長、企画官相当職以上の離職者の離職後二年以内の再就職については、営利企業、公益法人等にかかわらず、すべての再就職先の名称、役職等を公表しているところです。さらに、十七年以降は承認制になりまして、一層その対応を明白なもの、こういうふうに進めてまいっております。

 ところで、御質問の、天下りはないのかどうか、こういうことでございますが、まず一つは、これは人事課の方に確認を申し上げましたが、平成十七年より前の記録、これについては保存期間が、これは文書の保存期間だと思いますが、三年であるということで記録は残っていない、こういうふうに言っております。

 なお、非公式な情報としては、退職者は一名、平成十二年度以降ありまして、この方は十六年に退職しておりますが、現在業界団体に再就職をしている、こういう情報がございます。先生の御期待にこたえられるかどうかわかりませんが、ここまで私から申し上げておきたいと思います。

前田分科員 今、副大臣が言われたように、やはりこれは規制する、監督する方が監督を受ける側に天下るという現況は絶対よくない。ですから、これは厳しく見守っていただきたいと思います。

 急でしたので、よく調べなかったというところもあると思いますので、また改めてもう少し資料請求をさせていただきたいと思います。

 時間が来ましたのでもうこれでやめさせていただきますけれども、私は、とにかく、国民の皆さんにとって選択ができるような情報をきちんと開示できるような、そんなサプリメントであるべきである、そしてそれをきちんと所掌するサプリメント新法が必要であるということをお訴えさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

木村主査 これにて前田雄吉君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本ともひろ君。

山本(と)分科員 自由民主党の山本ともひろです。

 本日は、大変貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私、現在、党の方で厚生関係団体副委員長を拝命しておりまして、実際のところは厚生関係のこと、ほとんど門外漢でありましたが、そのようなお役目をいただきまして日々勉強しておるところでございます。その中でいろいろ疑問に思いましたことを、きょうは西川副大臣出席のもと、いろいろ御質問させていただきたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 厚生労働省関係のことといいましても大変幅広くて、いろいろな分野があると思いますが、本日は、我々の健康を維持管理する上で大変重要な部分であります歯の問題に関していろいろ御質問をさせていただきたいと思います。

 自分自身の意識の中では、歯科の先生がそんなに世の中にあふれているような認識はなかったんですが、業界の中では、実は歯科のドクターが大変多いというような話が多々あるようで、その中で、歯科のドクターがたくさんふえていく、それをどうしていくのかといういろいろな議論が今までなされてきたようであります。

 その中で、平成十八年に文部科学大臣と厚生労働大臣お二人で確認書を交わされました。要点としては、歯科の大学、学部に入る学生の定員を少し削ってはどうかということ、それともう一点は、歯科の国家試験を少し厳しくしたらどうかということでありました。では、実際にどうなんだろうと私もいろいろ調べましたところ、学生は余り減っておらず、ただ国家試験は難しくなってきているというような傾向があるようなんです。

 厚生労働の行政として国家試験を厳しくするというのは、その両大臣の確認書からすれば適正なのかもしれません。しかし、学生がたくさん入学してくる中で、厚生労働省だけが頑張って基準を高めても、その二つの要点の一方だけを厳しくしても結果としてはどうなのかなという素朴な疑問があるんですが、副大臣、いかがでしょうか。

西川副大臣 厚生労働省としても、歯の健康というのは今の予防医療という観点からも大変大事だ、そういう思いの中で先生の御質問に答えさせていただきたいと思います。

 やはり歯科の数が多い、そういうのは歯科医の先生方からももちろんお話がありました。そういうお話を受けまして、歯学部の入学定員の削減ということが、平成六年までに二〇%、入学定員自体を下げるということがありまして、これは達成されたところでございますけれども、それでもやはり、余り減っていないんじゃないか、そういう御意見もあった中で、平成十年にやはりその検討会を開きまして、一〇%さらに定員削減ということで提言をされたところでございます。

 その後結局、入学希望者自体は、やはり私立大学が結構多いものですから、一定の入学定員というか受験者をとりたいということで、それはかなりすそ野を広くするわけですね。ですから、そういう意味でのすそ野は減っていないわけです。ただし、入学定員自体は確実にこの二度のあれですごく減ってはきているんですね。

 その中で、さらに歯科医師過剰感というのがありまして、平成十八年の八月に、当時、小坂文科相と川崎厚労相との間で取り決めが行われまして、歯学部の入学定員削減と歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる、この申し合わせが確かにございました。その中で、歯科医師養成数の削減等に関する確認書というものが取り交わされております。

 数の削減ということが大きな目標ではなくて、実はやはりそれ以上に歯科医の資質向上、そのことが一番の目的であるということは事実でございます。結果として数も減るということなんだろうと思います。

 そういう中で、歯科医師の資質向上を図るために、歯科医師国家試験における対応、試験の中にもちろんそういう思いを込めた試験ということですが、それ以上に、大学の歯学部、歯科大学の在学中からの学生に対するきちんとした指導、対応をより徹底させるように、そういう通達を出しております。

 以上でございます。

山本(と)分科員 少し細かい数字の話になってしまうかもしれませんが、まず学生の定員を二〇%削減する、それが達成できて、さらに一〇%削減してみようということになった。しかし、その一〇%というのは恐らくほとんど達成されていないのではないのかなと思っております。そして、合格基準を確かに引き上げておられるようで、合格率も相当下がってきている。

 そもそも、入学をして、歯科ですから恐らく相当な学費もかかるでしょう、その中で国家試験だけ厳しくして試験は受からないよということになれば、これは、言い方はちょっとひどい言い方になるかもしれませんが、ほぼ詐欺なんじゃないのかなというような雰囲気もあるわけですが、このあたりの数字のところはどうなっておりますか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、歯科の大学の養成定員の削減ということでございます。

 今御指摘のように、まず最初の二〇%削減は、副大臣申し上げましたように達成できているわけですけれども、その次の段階、やはりもうちょっと適正化をということで、平成十年に一〇%目標が立てられたわけでございますけれども、この達成はまだ二%弱にとどまっておるというような状況にございます。

 本来は、まず大学に入るときからより適性のある方に入っていただくということが望ましいと思っております。その上で、適正な資質を身につけていただいて国家試験に受かっていただくということだろうと思っております。

 そこら辺につきましては、我々の方で、昨年の末になりますが、歯科医師国家試験今後の試験制度のあり方の検討会というものを設けておりまして、この中でも、歯科医師の資質向上を図る観点から、より適切かつ合理的な基準に改善していく必要があるであろう、大学におきましても、入学時、在学中それから卒業時における各段階で、歯科医師として備えるべき資質をより適切に評価していく、それが不十分な人については、本人の自覚を促す必要があるであろうということも同時にうたわれております。

 このようなもとで、まず大学の入学時からの定員の適正化ということをより一層努力しながら、国家試験につきましても、本来備えるべき資質を問う形にしていくべきであろうというふうに考えております。

山本(と)分科員 御指摘のとおり、入学の段階でも既にある程度素養のある、素質のある、そして知識のある人たちがおよそ入学をされていると思いますし、そしてまた、長年勉学に励まれる、それで国家試験に臨まれる、当然いい歯科のドクターがたくさん誕生するというのが私はいいことなんだと信じておりますが、学生を募集するだけしておいて、試験の基準だけで歯科のドクターの数を調整しようというのは、私は余りよい方法だとは思いません。それであれば、大学の定員というものを今後もしっかりと見直していただくというような方向性で努力をしていただきたいなと思っております。

 次に、レセプトのオンライン化についてお伺いしたいのです。

 レセコンなんというものもいろいろ始まっておるようですし、また、レセプトオンライン化をして、いろいろな利便性を高めようということなんだと思います。医科あるいは調剤、歯科、レセプトのオンライン化が平成二十三年に義務化をされる。その中で、これは素朴な疑問なんですが、平成二十三年に間に合わなかった病院、クリニックにふだんから通っている患者さんというのは、二十三年以降はどうなってしまうんでしょうか。

西川副大臣 おっしゃいますように、これだけのIT社会の中で、行政コスト削減、その他いろいろなあれがあると思いますが、このレセプトのオンライン化が行われております。これは、平成十七年の十二月、政府・与党医療改革協議会の医療制度改革大綱において、平成十八年度からオンライン化を進め、平成二十三年度当初から、原則としてレセプトがオンライン化するようにということが決まったわけでございます。その中で、平成十八年四月にその方針に即した省令改正を行いまして、二十三年度には原則完全オンライン化ということが一応決まったわけでございます。

 その中で、特に医科については、十七年度から、要は五年間のかなりの期間を要して、三百床以上の大きな病院がまずとか、段階的にこれを要求していったわけでございますけれども、やはり歯科は、大きな病院とかそういうところが少なくて個人経営の方が割合多いということで、段階的に導入をしないで最初から、二十三年まで待ちますから、その間に環境整備してくださいねということで、要するに、十七年度から導入ということはしていなかったわけでございます。

 確かに、歯科がレセコンその他の整備がおくれていた状況はあるんですが、今年度中にこれはかなり進むと思います。それが進んでくると、そこまでの御不満というようなものの声は少しなくなっていくのではないのかなと思いますけれども、ただ、先生が御心配していらっしゃいますように、二十三年度過ぎてもまだできないところは当然、小さなところや、こう言ってはなんですが、御高齢で、もう自分の代で、次は続けないというようなところに関してはなかなか、それだけの投資をしてもということもあると思いますね。

 そういう中で、特に、厚生労働大臣が、平成二十三年四月一日からさらに二年間延長を求めまして、その間でできるところはさらにやってくださいと。どうしてもというところは、実は、やはり事務代行ということで、これは歯科医師会なり医師会なりがまとめてこっちに請求する、そういうことでぜひ対応していただきたいと思います。

山本(と)分科員 今、副大臣の方からも、激変緩和措置のようなものもきちっと設けている、どうしてもできないところは事務代行も可能にしているということでございましたが、では、実際、事務代行をしてくださいということになった場合、それには当然人件費もかかりますし、費用もかかるわけです。では、それを一体だれが負担するんですかと。

 レセプトのオンライン化をするのは大変結構なことだと思います。そういうことを望んでいる現場の職員あるいは医師という方もいらっしゃると思います。しかし、私が調べている、勉強している限りの範囲では、医科はたしか平成九年にはレセプトの電算処理を始めている、調剤は平成十三年から始めている。歯科の場合は、そういった時期からまだやっていない。レセプトの電算処理システムを稼働できるのは平成二十一年からである。そうなりますと、歯科の分野にかかわっては、その二十三年という義務化には、およそ二年間しか準備期間がない。そういった中で、果たして本当に間に合うのか。

 短期間で行うということですから、その中で、IT化をやっていこうということであれば、国からも何かしらの援助をするあるいは補助をするとか、私は、そういうこともきちんと検討すべきではないかと。あるいは、オンライン化、いいですよと言っている病院やクリニックはどうぞ参加してください、いや、そういうことに頼らずに、今までどおりでも普通に運営できていますから、それでも構いませんという人であれば、それでもいいですよというふうに、選択の自由を与えるとか、そういった柔軟な対応も必要ではないかと思うんですが、いかがですか。

木倉政府参考人 御指摘のように、歯科の方は、今のレセプトのコンピューター処理ができておる医療機関の数とかレセプトの件数というのは、医科とか調剤に比べますと、少しまだ段階がおくれておるというふうに認識しております。

 その中で、これからオンライン化を進めていただくためには経費が当然必要になってくるわけでございますので、そういうことについては、今も、診療報酬の方でも、電子化を進めていく加算制度は設けておりますが、先ほど申し上げましたように、それを実際に、小さな診療所でありますとか、やはりレセプトコンピューターまではなかなかいけないんだよというふうな、先ほど副大臣もおっしゃいましたようなケースの場合には、代行というようなことも含めてお願いをせないかぬというふうに思っています。

 その代行をされる場合の支援の仕組みというようなもの、これはもう少し、いろいろ工夫の御指摘もいただいておりますので、それを支援していけるような仕組みも今後さらに考えていきたいというふうに思っております。

山本(と)分科員 ぜひ、そういった支援の方法を考えていただきたいなと思います。

 これは、現場で勤務をされている、働いている人たちだけの問題ではなくて、ひいては、私もそうですが、副大臣もそうですけれども、困ったときに我々が病院に行く、クリニックに行く、我々も一患者であります。その患者に結局そのツケが回ってくるようなことになってしまうと、これはどうしようもないわけです。

 かかりつけのお医者さん、あるいは家族ぐるみで診てもらっているホームドクターみたいなところがあって、そこでずっと診てもらっていたにもかかわらず、世の中が、スピード感があってどんどん進んでいきます。ただ、そこの病院、クリニックではそういうオンライン化をしていなかった、そのために保険診療が受けられないなんということになると、では一体、患者さんはどこに行けばいいんですかということになりますので、そういった混乱が起きないように、きちっと政府としても隅々まで、特に歯科の場合は、先ほど副大臣もおっしゃっていましたけれども、大規模なクリニックというのは余りないわけですから、そういった意味合いでは極めて丁寧に見ていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それと、これから日本の人口というのは、人口の分布といいますか、相当変わってくると思います。つまるところは、高齢者がふえていく、年配の人たちがふえていく。そうなりますと、やはり在宅医療というものが極めて重要になってくるのではないかなと思っておりますが、副大臣、どのように思われますか。

西川副大臣 これは、通告していただいていないみたいでしたから、本当に私見ですけれども、厚生労働省の特に今回の長寿医療においても、在宅でのいろいろな医療、在宅介護、これは大きな方向性を出しておりますので、特に、年配になって、住みなれた、周りに友人もいる、そういうところでずっと暮らしたいというのは、恐らく国民だれでも願っていることだと思いますので、そういうものに即した医療制度になるべく持っていきたいと思っています。

山本(と)分科員 副大臣、ありがとうございます。

 ここからは少し細かな話になりますが、その在宅医療、大事だと。副大臣も、そういった環境はこれからも整備していかなければいけないと今御決意を語っていただいたわけですが、歯科の場合でも在宅医療というものがあります。今までは、老人訪問口腔指導管理料というものがありました。それは高い評価を受けていたわけですが、それを一たん廃止して、新たに後期高齢者在宅療養口腔機能管理料というものが新設をされている。これはもう、評価としては半減している。簡潔に言ってしまうと、点数が相当下がっている、四百三十点から百八十点に下がっている。

 そうなりますと、今まで在宅医療も熱心にやっていた、訪問もちゃんとしていたという歯科の先生方、それだけ評価を下げられるのだったら、何で行かなきゃいけないんだろうかなとなると私は素朴に思うんです。それで、在宅医療が大事だ、高齢者がたくさんふえていく、こういう状況の中で、これは明らかに逆行しているんじゃないのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

木倉政府参考人 御指摘のように、在宅医療を推進する中で、今回も後期高齢者の診療報酬の仕組みの中で歯科の方については見直しがなされております。これまでありました老人訪問口腔指導管理料を廃止しまして、新たに御指摘の後期高齢者の在宅療養口腔機能管理料というものを新設したところでありますけれども、これに限りませず、在宅の、特にお年寄りの場合は訪問をする必要があるだろう、来ていただくよりも、また訪問をもっと充実する必要があるだろうということで、御家庭で障害等を持っていらっしゃって寝たきりとかの場合には、口腔の衛生管理、健康管理というものがなかなか十分できていないという御指摘もあります。そういうものをきちんとやろうということで、在宅の点数、これを幾つか新設いたしました。

 それと、他職種、常に家庭を訪ねていらっしゃる訪問看護師さん、ホームヘルパーさんなんかともいろいろな情報を共有しながら、必要なときに行けるものを設定していこうということで、医療関係職種と連携をとって取り組むことをより重視する評価体系というふうなことでの見直しを行ったところであります。

 その中で、先ほどの口腔機能管理料とともに算定できますものとして、まず、在宅療養を歯科医療の面でも応援をしていきますよという診療所には、これまで医科にあった在宅療養支援診療所の仕組みを歯科の診療所にもこれを導入いたしまして、こういうことでの届け出をしていただいたところが、在宅療養を行っている患者さんに対して、ほかの医師、看護師さん、あるいは福祉の職種さんなんかと情報を共有して共同で在宅での指導をしましょうというときには、月一回の算定で九百点の在宅患者連携指導料というものが算定できるという仕組みを入れました。

 それから、病院に通われている患者さんじゃなくて、入院されて、しかしまた御家庭に戻るんだけれども、御家庭で歯科はどうなるだろうと。病院だったらまだ歯科の先生も時々来てくれたけれども、御自宅に戻ったときに歯科診療所に通えないような場合はどうするんだろうということにつきましても、その退院時の共同指導をする点数六百点というようなものも新たに設けました。こういうふうなもの、あるいは緊急時のカンファレンス料というものを設けておるんですが、このようなものをトータルに算定できることによって、より一層在宅での往診の活動等が歯科の先生方にもやっていただけるように見直したところでございます。

山本(と)分科員 いろいろ工夫をしていただいて、いろいろなところに点数をつけていただいているという御説明でしたが、要するに、今までどおりの訪問をしている医療の体制ではそういった点数はつかないということだと思います。他の医科のドクターであるとかホームヘルパーやケアハウスとか、そういう人たちとも連携をとって初めてその点数が算出されるんだと思いますが、医科にしても歯科にしても、ドクターも大変忙しい、激務の中で仕事をされている。その中で、連携をとっていって在宅医療をよりよいものにしていくというのは、それはもちろん必要だと思いますけれども、ドクターがやはり気軽に在宅医療をできるような、これは医科も歯科もそうかもしれませんが、どちらにしても、気軽に行けるような、余り煩わしい手続をしなくてもそういったものができるような環境整備を私はしていただきたいなと思っております。

 年配の方々がこれからふえていくという関連でありますが、今現在、八〇二〇運動というのはもう政府も挙げてやっていただいていると思いますが、八十歳でも自分自身の歯を二十本維持しよう、持っていよう、これは私は大変意味のある運動だと思っております。

 しかし一方で、考えますと、八十歳になりますと、いろいろなもう持病といいますか、病気をお持ちになっている人たちが、二十代、三十代に比べると圧倒的にふえてくると思うんです。例えば血圧に問題を抱えている、そういった患者さんも当然歯科のクリニックにも歯の治療に来られる。そういった場合、血圧に問題を抱えておられる方が来られて局所麻酔をするというのはややリスキーなものだと思うんです。歯科の問題を勉強していきますと、局所麻酔等々に対して余り配慮がないのではないのかなと思うんですが、このあたりはいかがでしょうか。

木倉政府参考人 御指摘のように、高齢になられますと、高血圧を持っていらっしゃる、あるいは虚血性心疾患を持っていらっしゃるというふうなことで、そういう疾患に配慮しながらの歯科診療、そのときには全身の状態をモニタリング等もしながら、局所麻酔なんかも含めたリスクをちゃんと管理をしながら治療に当たらなきゃいけないというふうに思っております。

 このために、これは一回前の改定、十六年の改定からでございますけれども、この高血圧症、虚血性心疾患等々の疾患を有していらっしゃる患者さんに対しましての歯科治療中の全身状態のモニタリング等につきまして、歯科治療総合医療管理料というものを新たに設けまして、その治療前、治療中におきます全身の管理ということをきちんとやっていただきながら治療をする、それを点数上も評価するというふうにしておるところでございます。

 また、今回の、二十年度の診療報酬改定におきましても、高血圧症等に起因します偶発的な事態、あるいは緊急対応しなきゃいけない、安全性の問題が問われるというようなことにつきまして、その環境整備、安全性をふだんから、AED、酸素マスク等々も備えながらちゃんと対応するということに対しまして、歯科外来診療環境体制加算というふうなものも新たに設けまして、より患者さんの安全面にも配慮しながら診療を行っていただけるような体制を支援していきたいというふうに考えております。

山本(と)分科員 その歯科治療総合医療管理料というのは、局所麻酔だけのことを言うんですか。いろいろなものも含まれているんでしょうか。

木倉政府参考人 局所麻酔もありますし、その他全身状態の管理、心拍の監視、鎮静等を含めて、そういうこと全体を管理していただくことに対する評価でございます。

山本(と)分科員 歯科のクリニックに行って麻酔を使うというのは結構頻繁に行われると思うんですね。そういうものに対する配慮というのは私はあっていいのではないのかなと。医科であれば麻酔科があったり麻酔科医、専門医もいる。それはやはり、極めて重要なパート、パートであるからそういうものが成り立っているんだと思います。

 歯科と医科の初診料、再診料が随分格差があって、歯科の方が実は初診料、再診料というのは低いんですね。それはなぜかというと、歯科の場合は技術的な面を評価しているんですよという恐らく回答になると思うんですが、そういう意味合いでいけば、局所麻酔をするということに対してやはりある種のリスクもあるわけですから、それに対しては個別に私はきちっと手当てをすべきではないのかなと思っておりますが、どうでしょうか。

木倉政府参考人 失礼いたしました。

 歯科の局所麻酔そのものの点数も別途ある上に加えて、そういうふうな全身管理をしながら治療に当たらなきゃいけない、麻酔を受けていらっしゃる、その麻酔の方の点数は別途算定をいただけるわけですが、麻酔をしながら治療を進めなきゃいけないようなことに対する全身状態の管理、そういうことについての評価もやっておるということでございます。両方の評価を、診療報酬上も点数をつけておるということでございまして、両方から高齢者の方々への治療に当たらなきゃいけない、その点数を設定しておるところでございます。

山本(と)分科員 きょうは歯科の問題、さまざまなことを御質問させていただきました。私もいろいろなことを聞きたかったんですが、残念ながら時間が来てしまいまして、次の機会にもっと踏み込んだ議論をさせていただきたいなと思っております。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて山本ともひろ君の質疑は終了いたしました。

 次に、北神圭朗君。

北神分科員 こんにちは、民主党の北神圭朗でございます。

 きょうは、私の地元で大変困っている方のお話を取り上げさせていただきたいと思います。これは、今も年金の問題でいろいろ厚生労働省も大変だというふうに思いますが、私が知る限り、初めて私も知った問題でございます。

 具体的に言えば、平成六年の年金制度改正のときに、今までだったら月給にのみ年金の保険料を課していた、それが、特別保険料というものを、保険料に特別という冠をつけてボーナスに掛けるということになったわけであります。そのことについてきょうはお尋ねしたいというふうに思います。

 まず、今まで月給に掛けていたのが、平成六年にボーナスに広げた、この理由をお聞かせいただきたいのと同時に、一問、二問目と両方つなげますが、給付に反映をしない、つまり、ボーナスに特別保険料というものを課しているにもかかわらず、普通は、保険料というのは、保険料を払う側に当然受給権が発生する、つまり、払う分は当然ある程度の率でもらえるということなんですが、この特別保険料に関しては、給付に反映しないということになっております。これはちょっと不可解だなというふうに思うんですが、この点についていかがでしょうか。

渡辺政府参考人 恐れ入ります、事務方から最初に御答弁させてください。過去の改正の経過の事実関係でございますので、失礼をさせていただきます。

 今先生御指摘のとおり、昔は、厚生年金の保険料は、月給のみを対象として、ボーナスは保険料算定の対象としていなかったところを、平成六年の制度改正で、ボーナスも特別保険料という形で算定の対象となった、そのとおりでございます。

 この背景といたしまして、もう既に先生も御承知の点でもございますが、その改正に先立つ準備の段階で、平成五年の十月十二日に年金審議会というところで御意見をいただいております。審議会の御意見として、「厚生年金の保険料については、月収のみを保険料算定の対象とし、ボーナスは算定の対象としていないが、保険料を徴収する対象を拡大し月収に係る保険料の抑制に資するとともに、保険料負担を逃れるため月収を抑えてボーナスを増額するという現象も見られることから、現役世代内の負担の公平の観点に立って、ボーナスからも保険料を徴収すべきである。」という意見書をもらい、具体案を固め、諮問、答申を得て国会に提案させていただいた、それが国会で御可決いただいて、こういうことになったわけでございます。

 今申し上げました中に含まれますように、月収に係る保険料の抑制と、同一世代内の負担の公平という観点でございます。

 その際、二番目に御指摘ございましたように、この審議会等々での議論も含めて、この特別保険料は直接給付には反映させないという整理をされ、そのように国会にも御報告をし、御可決いただいたわけでございますが、その理由でございます。

 給付に反映させないということの意味合いからまず申し上げますと、ボーナスをたくさん取っているから給付がその分多くなるという人を出すとか、私は中小企業です、ボーナスがもらえない、あるいはボーナスが安いんです、したがって、今までもらえると思っていた給付はもらえないという意味での、プラスマイナス両面における給付に反映させないという意味でございます。

 これは、当時の判断といたしまして、当時の時点の年金制度の給付設計のままでよいのか、こうしたボーナス保険料をいただくときには抜本的な給付設計の変更が必要なのではないかとか、それから、従来の仕組みとの円滑な接続を図って、円滑に実施をできるような仕組みがいいのではないかとか、当時の事務処理の大幅な変更を避けた方がいいというようなさまざまな御意見がありまして、給付と負担の基本関係を変更しないという範囲内でボーナスから特別保険料をいただくという考え方をとってはどうだろうかというふうにとっているものでございます。

 なお、年金保険制度でございますから、御指摘のとおり、保険料負担が給付に反映するというのが大原則のはずでございます。

 ただ、我が国の公的年金制度は、拠出建てではなく給付建てであるというのが基本的な理解の前提となっております。ある給付のためにどのような拠出をいただくかということでございますが、その際、賦課方式をとっておりますので、こうした特別保険料も給付に反映しないといいながらも、いただいた保険料は給付財源としてすべての受給者のために使わせていただく、こういうような形で扱う、そういう意味も含めて、給付に反映させないという表現がとられたものと理解しております。

北神分科員 副大臣、今の話を聞いて、いろいろな理屈が言われておりますが、余りにもたくさん述べられたのであれなんですけれども、要は、暫定的な措置の意味合いもあった、いろいろな事務的な問題とか給付設計の抜本的な見直しとか、そういうものもあったし、もう一つは、給付建てだから給付はもう決まっている、恐らく今の説明だったら、この特別保険料という、ボーナスから保険料を取らなければ月収の方を引き上げなければならなかったという、裏の説明は多分そういうことになるというふうに思います。

 そういうことについてはとりあえず説明として伺っておきますが、問題は、次の平成十二年のときに、今度は総報酬制というものを導入する。それは新しい制度を導入するというような意味合いもあるかもしれませんが、現実に取られている側からしてみれば、今までボーナス、賞与等で取られていた一%の特別保険料率が月収の保険料率と同じになった。つまり引き上げられたということですね。ですから、取られている側からすれば、別に何も制度が変わったという認識はそんなにないと思います。ただ保険料率が引き上がって、当時は、月収の部分も保険料率を多少下げたということで統一をしたということでありますが、そういうことをしておきながら、今度は給付に反映をする。

 今まで、平成六年のときは、同じボーナスから特別保険料率一%を取っておきながら、これはさまざまな理由で給付に反映させない、一方で、平成十二年の年金制度改正においては、今度は反映をさせるということになっているんですが、この理由について、副大臣、どうでしょうか。

西川副大臣 今先生がおっしゃったこと、確かに、給付側からすると、非常に素朴な疑問ととれることはあると思うんですね。今、局長から大変細かい説明がありまして、私の答える部分もかなり入っていたのかもしれませんけれども、そういう中で、いわば、給与のを低く抑えるためにボーナスの方に逃げるということを避けるために、負担の公平性のためなんだということはもちろん最初だったと思うんですね。ですから、給付ということに余り思いをいたさずに、だからこそ、一%程度の料率の上げ幅できちんと一応整理したということなんだ、世代間の負担の公平性をまず期そう、それと、やはり事務的にまだそれだけの対応ができていなかったねということがあると思うんです。

 実は、ボーナスなんかは事業所単位で把握していて、個別の一人一人には把握できていないということもありましたので、まだ事務的になかなか給付には至らなかったという経緯があると思いますね。

 ですから、そういう中で、ボーナスも出たり出なかったりいろいろなところがあった中で、ボーナスということが年収としてほとんど定着してきた、そういう中ではしっかりと給付に結びつけていいんじゃないか、そういうことが平成十二年の改正によってきちんと一つの給付にも結びつけていったということだろうと私は解釈しております。

北神分科員 これはちょっと私の解釈も織りまぜて言いますが、いろいろな諸問題がある中で平成六年で実験的に一%取って、それで平成十二年に、これで大丈夫だろう、給付に反映することはできるだろうということで、平成十二年から本格的に総報酬制に変えていったという副大臣の今の御説明でありますが、実際、実験的にというのは皆さん異論があるかもしれませんが、少なくとも、世代間の公平性の問題がある。これは確かにそうだと思うんです。月給よりもボーナスをふやしたりして保険料逃れをしないようにするために、公平性の観点からボーナスに掛けるというのは、私はそれ自体は全然問題ないというふうに思っているんですが、それを本来はやはり給付に反映をさせるべきだ。

 これは、幾ら特別保険料といっても、やはり保険料であって、当然これは受給権が発生をするものであり、相互扶助の考えからいっても、当然これは、全部とは言わないけれども、取られた分はある一定の率を掛けてもらうべきだ。これを暫定的にやるということ自体が私はやはりおかしいと。

 というのは、その平成六年から、十二年に改正をされて、実際の施行が十五年ですか、ということは、八年か九年ぐらいですか、ボーナスをずっと取られているわけですよ。それで、それは厚生労働省の皆さんからしてみれば、これはどううまくいくかなとか、事業所ごとに大分把握できてきたなとか、そういうふうに見られているかもしれませんが、これは、みんな汗水流して働いてボーナスをもらっている方たちは、一%を実際に払っているんですね。一%というから皆さんにしてみれば大したことないじゃないかと思われるかもしれませんが、これはどんどん蓄積していくものでありますし、ボーナスに応じてお金を取られるということは生活にやはり負担はかかってくるということなので、大事な真剣な問題だというふうに思っているわけでございます。

 ですから、もう一つお聞きしたいのは、これは事務方でも結構ですけれども、平成六年からボーナスから取られるようになって、ずっと平成十五年、申告がおくれた分とかでその後も多少取っておられると思いますが、一体どのぐらいの金額の保険料が納められたのかということと、これは一体何人からこのボーナスの特別保険料というものを取ってきたのか、これをぜひ教えていただきたいと思います。

渡辺政府参考人 私及び社会保険庁の実務の数字につきまして、二人、御答弁をお許しください。

 今、数字について間もなく答えますが、その前に、先ほど先生の方から、この特別保険料は暫定的な性格ではなかったのか、その当時として総報酬制についてどう考えていたのかということに思いをいたした御発言がございましたので、ちょっとだけ正しい理解、質疑にするという意味で、当時の議事録からその部分だけちょっと申し上げます。

 当時の政府委員から、本件につきまして、「このボーナスの保険料のあり方につきましては、給付へ反映させるかどうか、料率をどうするのか、いろいろ問題があろうかと思います。したがいまして、さらに課題を抱えた制度ではございますけれども、制度上は暫定的なものとは考えておりません。」恒久的なものということでございまして、しかしいろいろ検討課題はあるという答弁をさせていただいております。

 あわせて、当時の大臣からも、「総報酬制の導入につきましては、いろいろ現実的には難しい問題もありましょうが、次期改正に向けての重要なテーマとして認識しておりまして、今後十分検討してまいりたい」、こういう答弁もさせていただいた。

 制度としては恒久制度として立法するけれども、課題認識をいただいて、これからさらに検討してまいりたい、こういう位置づけでございます。

 その中でスタートした特別保険料の実績につきまして、今から申し上げます。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 数字の方でございますけれども、この特別保険料の制度が実施されましたのが、先生御案内のように、平成七年度から十四年度までの間でございます。それで、この間に賦課されました特別保険料の総額でございますけれども、累計額で約二兆四千億円という数字になってございます。

 それから、この間におけるその人数それからその件数でございますけれども、そのもの自体は、実は大変恐縮でございますけれども、当時、集計する仕組みというものを持っておらなかったわけでございまして、したがって、直ちにお示しすることは困難ではあるわけでございますけれども、平成十五年度に総報酬制が導入されたということに伴いまして、そこからは関連する数字というものが見てとれます。

 それを申し上げますと、十五年度以降の賞与の支払い状況でございますけれども、例えば十五年度ですと、対象の被保険者数は三千二百十二万人、それから、その中で賞与ありの方が二千四百六十七万人でございまして、割合といたしますと大体七六・八%。この十五年度以降十八年度までずっとこう眺めてみますと、今申し上げたように、被保険者全体のうちおおむね七五%程度の方が各年度に賞与を受け取っておられた、そういう形で割合推移をしていたんではないだろうか、こういうような推察が可能かというふうに思っております。

北神分科員 大体全額で二兆四千億円、そして、いわゆる働いている方の七五%ぐらいがボーナスをもらっていたから、恐らくその人たちはみんな払っていたということです。ですから、これは副大臣、やはり大半の方が納めているということと、二兆四千億円もこれが増収になっているわけです。それで、その二兆四千億円というのは、消費税率一%が二・五兆円ぐらいですから、言ってみれば、この平成七年度から十四年度までに、消費税率一%分の増税みたいなものがこの方たちに課されてきたということであります。

 ですから、私は、恒久的な措置と言っているけれども、結局それは、そうだったら、もともと平成六年の改正が総報酬制度でなければちょっとおかしいと思うんですよ。というのは、平成十二年に総報酬制度というのを導入したわけですから、その恒久的制度というのは、最近ガソリン税でも暫定税率は三十四年間続いて、こっちの恒久制度はたったの七年ぐらい続くという、日本語としては極めておかしな説明だというふうに思いますが、やはり、このお金は一体どうなっているのか、どう使われてきたのか。うまくいきそうだから平成十二年に改正をして、平成十五年施行で、今度は給付に反映しよう、ここはいいですよ。要するに、ここは今までの考え方を変えたんだというふうに私は理解をしております。

 ただ、そこからの方たちはいいかもしれないし、そこからの部分については給付に反映されるから、本来の保険料の役割を果たしている。ただ、この二兆四千億円の消費税率一%分というのは、私は、これはやはり給付に反映するのが普通に考えたら当然だというふうに思うんですよ。

 そこはもう本当に、副大臣も政治家として、役人さんたちは今までの流れとかいろいろあるし、整合性を何とか繕わないといけないからあれですけれども、副大臣としてこれについてはどうお考えですか。

西川副大臣 先生の御質問のお気持ちはわかるような気もしますが、ただ、制度的に、やはり先ほど局長が説明申し上げましたように、個別のボーナスが例えばあれだから、それに連動して給付はしないんですということであると思うんですね。ですから、基本的には、賦課方式をとっておりますので、皆さんからいただいた保険料は当然年金の給付に使われているわけでございます。

 ですから、その間の経過として、厚生年金の方の保険料率を下げる、結果としてそれはなっている、そういう理解を私はしております。

北神分科員 副大臣がおっしゃるのは、賦課方式だから、別に積み立てじゃないから、そんなに取られても、必ずしもその分給付として反映する必要はないということ、ちょっとわかりにくいんですが、もう一度。

西川副大臣 要するに、厚生年金の保険料率を引き下げている効果があるわけですね、その分は。ですから、基本的に増収にはなっていないわけです。

北神分科員 全体の保険料率を引き下げた、平成十二年度の改正の前は一七・三五%だったのを一三・五八に引き下げたということですね。でも、これも私は矛盾していると思うんですよ。

 というのは、さっきの平成六年の改正の説明については、ボーナスから取る、そしてその分保険料の抑制をした。つまり、これも本当に厳密に聞いたらどうかわかりませんよ。本当に財政再計算でどのぐらいの赤字があって、本来は月収の保険料をどのぐらい引き上げるはずだったのが、特別保険料を導入することによって引き上げる必要がなかったとか、ここまで緻密に計算しているのかどうか。これもまたいずれ調査させてもらいますが、そうだとしても、平成十二年のときにも据え置きにはしていない、むしろ引き下げていることもしている、そういうことを副大臣もおっしゃった。でも、一方ではちゃんと給付にも反映をしているんですよね。

 それで、その賦課方式の話、確かに、修正積立方式とかいろいろ言われておりますが、賦課方式ということで、積み立てではない。言ってみれば、今の現役世代が年金をもらっている方たちを支えているという御説明ですが、でも、実際、その具体的な年金額の計算式からいえば、給付のあり方として、報酬比例部分の計算方式というのはちゃんとあって、平成十二年の改正のときも、当然、ボーナスに係る保険料率というものが給付に反映されるに当たって、ちゃんと新給付乗率というものを掛けるわけですよ。給付率をそこに掛けるんです。ですから、賦課方式といいながら、ちゃんとそこで、保険料に給付率という、どれぐらいを給付としてもらえるのかという率を掛けるわけです。ですから、そういう意味でもやはり矛盾がある、平成十二年の改正、平成六年。それはそれで私はお認めになるべきだと思うんですよ。

 つまり、私の地元のその困っている人は、社会保険庁の事務所に行って、この方は非常に綿密に自分の給料の明細書というものをずっと記録されている方で、やはりおかしい、平成七年度からボーナスから保険料を取られているのに、何で給付がその分戻ってこないのかな、説明を聞きに事務所に行ったら、その事務所の人が、そんなのよくわからぬというので帰されてしまって、非常に混乱をしているわけですよ。

 ですから、きょう余り時間がございませんので、まず求めたいのは、やはり社会保険庁の事務所がちゃんとこれは説明できるようにしないといけない。平成七年度から十四年度まで長い間こういうことを経験している人がいるし、いずれこれもまた大きな問題になる可能性もある。そういう意味では、混乱を生じさせないためにも、ぜひ社会保険庁の事務所にその周知徹底をしていただきたいというのが一点。

 もう一つは、いろいろ説明を聞いたけれども、副大臣も、恐らく厚生労働省として一番言いたい、増収ではなかったということを言われておりますが、私はやはり、どう考えてもこれは増収だと思うんですよ。保険料率を上げなかったからいいじゃないか、つまり、本来はもっと高く引き上げるべきところを引き上げなかったんだから、それで年金を払っている人たちは得をしているんだからいいんじゃないかという説明ですが、平成十二年の改正のときにはむしろ保険料率を引き下げている。さらに言えば、給付にもちゃんと反映している。これがやはり、本来の姿に変えている、そう思うんですね。

 ですから、遡及適用でもさせて、これはいろいろ計算式を変えないといけないと思います、特別保険料率が一%でしたから。でも、これはやはり遡及適用をして、平成七年度から十四年度の間にボーナスから保険料を取られている方は、ちゃんと自分の年金の給付に反映さすべきだ、それがやはり私は筋だというふうに思いますが、副大臣、どうでしょうか。

西川副大臣 厚生労働省の解釈としては、今の段階では増収にはつながっていないということでありますので。

 ただ、先生の御意見、参考とさせていただいて、現場にきちんとおろした説明を徹底させたいと思います。

北神分科員 厚生労働省の解釈とおっしゃられるけれども、副大臣ですから、そこはぜひとも指示をして、これは本当に、私も何も揚げ足をとるつもりも全くないし、実際にこういうことで混乱をしたり、はっきり言って取られ損だと思っている方が実際にいるわけですよ。それは私感ですから。

 でも、普通に考えたら、これはやはり、保険料を取られてそれが給付に反映されていない時期があって、平成十二年にいわば本格的に総報酬制度というものを導入して、それで給付を反映させているわけですよね。ですから、私の解釈では、平成十二年のときに、やはりこれは給付に反映させないのはまずいんじゃないか、だからちゃんと反映させるべきだということで、審議会でも、そして厚生労働省さんの方でもそういうふうな改正をしたというふうに私は思っているんです。

 一つだけ、その私の主張を裏づけるためにも、平成十年の十月九日に年金審議会というものがありまして、それはまさにこの平成十二年の年金制度改正のための審議会だというふうに思いますが、そこに「総報酬制」という項目がある。ここに、ボーナスの多い少ない、「ボーナスの多寡による被保険者間の負担の不公平を是正するためには、ボーナスについても保険料賦課の対象とするとともに、」これは要するに、平成六年の趣旨と同じなんですよ。つまり、不公平感があるからこれを是正しないといけない。そういう意味で、「ボーナスについても保険料賦課の対象とするとともに、給付にも反映させる総報酬制を導入すべきである。」ちゃんとこう書いてあるわけですよ。「この場合、総報酬制は増収対策として実施されるものであってはならないもの」であると。やはりここに、増収政策であってはいけない、そして、「保険料総額や給付総額が現行制度に比べ財政的に中立となるよう、保険料率と給付乗率の調整(引下げ)が必要である。」ということであります。

 こういうことから、これは平成十二年の考えの方が筋だというふうに思いますので、実際に平成七年度から十四年度まで取られた特別保険料率の分について、私は、遡及適用すべきか、あるいは取られた分を還付すべきかというふうに思うんです。どうでしょうか、副大臣。

西川副大臣 平成六年度の月収に係る保険料というのは、最終保険料率は〇・四%下げています。ですから、これは明らかに、ボーナス分の方で掛けた分の、結果としてこちらの方では皆さんからいただいていないわけですから、そういう意味で、見合いで増収にはなっていない、そういうことです。

北神分科員 〇・四%、月収の保険料率を引き下げているわけです。それはそれでいいんですよ。でも、またいずれ私は質問しないといけないのは、では、実際に具体的にどういう計算でやっているのかということをまたいずれ質問しますが、きょう申し上げたいのは、平成十二年だって引き下げているわけですよ。つまり、ボーナスから一%だったのを一三・五八%に引き上げている、一方で、全体の、一七・三五%だった分を一三・五八に引き下げている。だから、これは同じことなんです。平成六年度の改正でもやっているし、十二年度の改正でもやっている。ただ、十二年度の改正は、それに加えてちゃんと給付にも反映している。計算式に入れて、ボーナス掛ける給付率というものを掛けて、その給付の額というものをちゃんと計算するようになっている。

 これが私は本来の姿で、そうしたら、平成六年の分は給付に反映されていないということを皆さんも明確にお認めになっているわけですから、ここを何らかの形で手当てをしなければ、私はこの人たちは非常に気の毒だ、彼らも取られ損だと思われてもしようがないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 若干、事実関係に近いところでの御説明を追加させてもらいます。

 今先生御指摘の、平成十二年の改正で保険料率が一七・三五%から一三・五八%に引き下げられた部分というのは、月収総額に対する月収総額と賞与の合計の比率というものを一・三というふうに算出いたしまして、一・三で割ったということで、一三・五八%に名目値が引き下がっているというものでございます。

 それから、給付乗率が十二年改正で千分の七・一二五から千分の五・四八一という、細かい数字で済みません、そういう引き下げが行われておりますが、これも、この月収総額に対する年収の比率というものに沿って係数を改めたというものでございます。

 そういう意味におきましては、同じ保険料率をボーナスに掛けるということにした総報酬制と、一六%だかの保険料率であったところを特別に一%だけボーナスにお願いをするということをお願いした六年改正とでは、もう少し子細に比べてみる必要があるということと、最後に、六年改正はある会派を除いて全会一致で御可決いただき、十二年改正のときに、その六年改正の、今御指摘の点につきましての国会における御示唆、御論議というものは特に見当たらなかったまま御可決いただいた、こういう経緯だろうと思っております。

北神分科員 その最後の点は、私もまだ一期生ですからわからないし、全然この点について議論がないから、それは私もびっくりしたんですよ。一人、二人いましたけれども。

 副大臣、もう時間がございませんので、さっきおっしゃったように、ぜひ今の議論を受けてちょっと考えていただきたいということが一点と、やはり社会保険庁の事務所の方に周知徹底をして、これは全然説明できていないわけですから、これをちゃんとやはり説明してもらうということで、とりあえずきょうはこれで終了させていただきます。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

木村主査 これより経済産業省所管及び中小企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。新藤経済産業副大臣。

新藤副大臣 平成十八年度経済産業省所管の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について御説明いたします。

 歳入でありますが、歳入予算額九百四十一億円余に対し、収納済み歳入額は八百七十二億円余であり、差し引き六十八億円余の減少となっております。

 次に、歳出でありますが、歳出予算現額八千三百十四億円余に対し、支出済み歳出額は七千九百九十一億円余でありまして、その差額三百二十三億円余のうち、翌年度への繰越額は百三十一億円余、不用額は百九十一億円余であります。

 次に、特別会計について御説明いたします。

 まず、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は二兆二千六百六十一億円余、支出済み歳出額一兆九千七百十三億円余であり、その差額二千九百四十八億円余のうち、翌年度への繰越額は千百六十八億円余、十九年度予算に歳入計上した剰余金は千百四十三億円余、これらを除いた純剰余金は六百三十七億円余であります。

 このほか、電源開発促進対策特別会計、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 以上をもちまして、平成十八年度における経済産業省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要に関する御説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

木村主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院高山第五局長。

高山会計検査院当局者 平成十八年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十五件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二四一号及び二四二号は、委託費の支払いが過大となっているものであります。

 同二四三号から二五二号までの十件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 同二五三号から二五五号までの三件は、貸付金の経理が不当なものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、国庫補助金を原資の一部として造成された産炭地域新産業創造等基金を活用して実施する助成事業における基金の効率的な活用に関するものであります。

 この件について指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 引き続きまして、平成十八年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、信用保証協会に対して行う融資事業の効果等に関するものであります。

 中小企業金融公庫では、信用保証協会の保証債務額を増大するために、信用保証協会に対し長期資金を貸し付ける融資事業を行っております。

 検査いたしましたところ、長期資金の預託先金融機関における保証つき融資の状況については、預託額と保証債務残高の構成割合に乖離が生じていて、預託と保証債務額の増大とに十分な関連性が認められない状況となってきていました。そして、保証債務の額の増大及び政策的保証の促進は、各信用保証協会における保証の推進に対する取り組み姿勢、管内の経済情勢等によるところが大きいなど、各信用保証協会の保証債務残高等を基礎とした現行の貸し付け方法は融資事業の目的から見ると十分な効果が期待できるものとは言えない状況となっておりました。

 また、信用保証協会への貸付利率は、預託の実態が変化したにもかかわらず、平成五年度当時の預託の実態に合わせた方法を継続し、低い水準のままで見直しが行われていませんでした。

 したがいまして、中小企業金融公庫において、信用保証協会への貸付規模、貸し付け方法について、各信用保証協会の保証債務残高等を基礎とする現行の方式等を見直し、各信用保証協会における保証の推進に対する取り組み姿勢等を十分に勘案して行う方式とすることなどを検討するとともに、信用保証協会への貸付利率について見直しするよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、中小企業信用保険に係る保険料の徴収に関するものであります。

 この件について指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

木村主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。新藤経済産業副大臣。

新藤副大臣 平成十八年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。

 これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。

木村主査 次に、安居中小企業金融公庫総裁。

安居政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、御説明申し上げます。

 信用保証協会に対する融資事業につきましては、御指摘の趣旨を踏まえ、貸し付けのあり方を検討するとともに、実態を踏まえた貸付金利の見直しを行うなど所要の措置を講じてまいる所存であります。

 保険事故発生率の通知誤りに伴う保険料徴収の過不足につきましては、御指摘の趣旨を踏まえまして所要の措置を講じたところであります。今後とも、業務の適切な運営に努めてまいる所存でございます。

木村主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村主査 以上をもちまして経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

木村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井潤一郎君。

安井分科員 自由民主党の安井潤一郎であります。

 決算行政監視委員会経済産業の分科会、まずは地域商業の活性化についてお聞かせいただきたいと思います。

 優勝劣敗、強い者が勝ち弱い者が負ける、当然の摂理だと言われ続けてまいりました。しかし、そこに土着している農耕民族の土地に、獲物を追っかけて動き続ける狩猟民族が入ってきたかのような、圧倒的物量による寡占化で構造変化が起こりました。本来、生態系を維持しなければならない地域で外来種のばっこを大店法規制緩和という施策で許し、結果として地方都市での雇用の場が激減し、そして生活保護世帯が激増したように思えます。大型店が諸悪の根源だとは全く思っておりません。本来、環境が変わったときに適合できる能力を持っていた地域商業者、零細小売商業者の意識の中に、品ぞろえ、絞り込み等の大手資本の論理を持ち込んだ中小企業庁を初め、当時の指導的立場の者が大きな責めを負うべきだと私は考えております。しかし、悪者探し、責任者探しをするつもりは毛頭ありません。

 それ以上に、幾ら税金を上げても追いつかない社会保障費の増大は地方都市の疲弊がその大きな原因であると考えられている今日、地域の活性化、とりわけ地域商業の活性化は重要な課題だと思いますが、経済産業省はいかがお考えか、新藤副大臣にお聞きいたします。

新藤副大臣 先生の御指摘のとおり、まず、地域の商業というのはその町の活力の源でございます。また、経済活動の場でもあるわけです。

 しかし、それに加えて、私は、その町に住んで、そしてその地域に愛着を持って、そして地域の人々と一緒に暮らしていく、経済活動を行いながら、それは町をつくり、それから暮らしのコミュニティーをつくる場所だと。ですから、地域の商業が衰退化するということは町の衰退につながっていくという意味において、我々は、経済活動を活性化させるとともにコミュニティーを維持する、町としての一体性を維持するという意味において非常に地域商業の活性化というのは重要だ、このように認識を同じくさせていただいております。

 そういった中で、今、いわゆるシャッター商店街、空き店舗対策、こういったものに、中心市街地活性化のいわゆるまちづくり三法を改正いたしまして、いろいろなてこ入れをさせていただいております。具体的に、特に今年度におきましては、空き店舗の活用によるコミュニティー施設ですとかそれから地域農産品を扱うアンテナショップ、こういったものへの補助、さらにはまちづくり、商店街活性化を行おうとするアドバイザーの派遣ですとか、そういう地域の商店街活性化のためのいろいろな支援策を講じておるわけでございます。

 そして、特に中小商業活力向上事業、こういうものを拡充いたしまして、今までの補助対象者はいわゆる団体、組合だったんですけれども、これにあわせて民間事業者にも補助の対象を拡大いたしまして、先生も既に御実践されている電子マネーだとかポイントカードだとか、そういったようなソフトの事業に対しても支援ができるように拡充をしたところでございます。

 いずれにいたしましても、皆様方がいろいろな知恵と工夫を出して町を元気にさせよう、そういうものに対して経産省としてもしっかりと支援をしてまいりたい、このように思っております。

安井分科員 副大臣からは大変御理解のあるお言葉をいただきました。ありがとうございます。

 私は、昨年の四月までの十五年間、地元、生まれ育ちました東京・新宿区にあります早稲田の商店会の商店会長をやらせていただきました。私たちにしてみると、商店会は組織ではないな、そんな思いがあります。では、商店会は何なんだと。我々は、今副大臣がおっしゃられたように、ここで生まれて、ここで育って、ここで住んで、ここで子供を育てていただいた。我々にとって商店会は場なんだ、我々にとって大事な場なんだ。要するに、町に感謝をする、こういう思いを持てるのは、外から来たメンバーではなくて、ここで生まれ育った我々なんだという思いを日本じゅうの商店主が持ったら町は変わっていくんだろうな、そんな思いを強くいたしているところであります。

 先月三月二十五日に設立総会を開催させていただいた商店街を蘇らせる行動政策研究会、通称あきんど議連、第二回目の勉強会、総会においでいただいた経営コンサルタントの佐藤芳直先生から、商店街の再生、活性化には人に的を絞り込んでくださいと言われました。地域に貢献したいという志を持つ若者に必要な知識と先端的な業態を教育する、そして、事業継承時に資金がないとか手間がかかるとか、借金することに恐怖心を植えつける等の夢やビジョンへの阻害要因を排除してください、職のない人に企画プランつきの空き店舗情報を届けてください、また、専門店、個店の業態モデルを提案してください、こう言われました。

 地域商業の集積の場である商店街には各種の業態店舗がありますが、その中でも衰退著しいと言われている生鮮三品、いわゆる八百屋、肉屋、魚屋についてお伺いさせていただきます。

 八百屋、肉屋、魚屋、いわゆる生鮮三品のモデル店舗づくりに対しての支援はできないのでしょうか。農林水産省にお伺いさせていただきます。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話のございました八百屋、肉屋、魚屋といった生鮮食品等を取り扱う食品小売業につきましては、地域住民への食料の供給や地域の活性化など重要な役割を担っております。これらの食品小売業の活性化を図っていくということが大変重要であると認識しているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、地元農産物などを活用して付加価値のあるオリジナルな商品の開発など品ぞろえの強化に向けた取り組み、廃棄ロスの縮減など店舗運営経費の縮減に向けた取り組み、空き店舗などを活用して近隣の農産物を販売するといった効率的な物流システムの構築に向けた取り組みといったことにつきまして支援を行っているところでございます。

 こうした中で、販売商品を活用したメニューでレストランを経営する鮮魚小売店やクレープショップ等の店舗を経営する果物小売店など、集客効果のすぐれた経営も見られているところでございます。私ども、こうした取り組みをさらに拡大するために、これら優良経営を表彰するとともに、そのノウハウにつきまして全国小売店に対し情報提供を行っているところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、生鮮食料品等の小売店の活性化に努めてまいりたいと考えております。

安井分科員 ありがとうございます。

 私は小さな小さな食料品スーパーを商っておりました。いわゆる肉屋、魚屋の組合員で、野菜も商っておりましたので、自分自身で八百屋、肉屋、魚屋と言うのはそんなに、当たり前のようなんですが、人様から八百屋、肉屋、魚屋と呼びつけにされるといかがなものかなという気持ちが今やっとわかりました。

 商売で必要なものは、人、物、金と言われてきました。その第一に挙げられている人ですが、先ほど申し上げた、数多くの現場を指導されてきたコンサルタントの先生からの御指摘にもあったように、地域に貢献したいという志を持つ若者に必要な知識と先端的な業態を教育するということは、地域商業活性化の中の最重要に位置されているのではないかと思います。

 そこで、地域商業の後継者教育について、中小企業庁、文部科学省、厚生労働省から、現状と今後の支援策、お考えであればその概要をお聞かせいただきたいと思います。

福水政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地域の商業者あるいは商店街は、単に商品やサービスを物販する、売るということだけではなくて、地域の伝統とか文化をはぐくむという貴重な機能を果たしているというふうに私どもも認識いたしております。こういうふうな地域コミュニティーの中核をなす商店街におきまして、経営者の高齢化ということが今非常な課題になってきております。そういう趣旨で、後継者の育成、これは地域社会にとりましても非常に重要な課題だというふうに私どもも認識いたしております。

 私ども中小企業庁といたしましては、先ほど新藤副大臣が申し上げましたような地域商業の後継者育成を支援するために、試験的に商売を行う場を提供するいわゆるチャレンジショップ、こういう事業に対しまして既に支援を行っておるところでございますが、御指摘ありましたような、就業体験を広く提供するような事業等に対して何ができるか、どういう支援ができるかにつきましては、今後検討してまいりたいというふうに考えてございます。

布村政府参考人 お答えいたします。

 就業体験の充実、そして職業選択の多様化について御説明いたします。

 最初に就業体験についてでございますが、文部科学省におきましては、平成十七年度から、公立の中学校において五日間以上の職場体験を推進するため、キャリア・スタート・ウイークとして実施しております。平成十九年度からは、高等学校、特に普通科高校におきましてキャリア教育のあり方についての調査研究を行うなど、キャリア教育の推進を図っているところでございます。

 具体的な例として、東京都の町田市の例でございますが、中学生が衣料品店で体験しまして、感想として、接客はもちろん、品出しや商品管理や掃除などの裏での仕事を経験し、余り目立たないような仕事でも、その仕事があるからこそお客さんに気持ちよく来てもらえるよいお店になる、この経験を生かして将来のことを考えていきたいということも報告されております。

 さらに、商店街の方々での受け入れ事業所、そして家庭、保護者の理解を深めて、職場体験を通した教育活動の一層の推進を図るための職場体験ガイドブックを作成し、全国の公立中学校、関係府省、経済団体の方々に送付し、その職場体験の充実に努めているところでございます。

 もう一点、職業選択の多様化につきましても高校の段階で工夫が凝らされており、具体的な例として、群馬県立の万場高校では、普通科の中ではありますけれども、水産コースというものを設定し、必要に応じて県の水産試験場、地元漁場協同組合の協力を仰ぎ、水産食品の製造に関する知識や技術を習得したり長期の就業体験をすることなどによって、生徒の適性に合った職業選択の支援をしているところでございます。

 これらの中学校、高校の、発達段階に応じました職場体験の充実、職業選択の多様化につながるよう引き続き努力してまいりたいと考えております。

草野政府参考人 地域商店街、地域商業の発展のためには、後継者ばかりでなく、それを担う若者の育成が非常に重要だというふうに思っております。私どもとしては、他方でフリーターの方が百七十万近くいる、こういう中で、どういうふうにそういった方を教育訓練し、地域商業なども含めた適切な分野に誘導するかというのは大きな課題でございます。

 そのため、多様な訓練ニーズがございますので、公共訓練機関だけでなく、幅広く民間教育訓練機関も活用しまして委託訓練というものをやっております。この委託訓練の中には、地域商業のニーズなども踏まえまして、販売実務科あるいは販売促進科等の販売に係る訓練もやっておりまして、大体二百コース、二千人ぐらいの養成をやっておるという状況でございます。

 それから、特に最近は、単に訓練をやるだけでなく、地域の企業と一緒に、実習も交えた実践的な能力開発を行おうということで、デュアルシステムというものをやっておりまして、この中で、やはり同様に販売ビジネス科とかビジネス基礎科というものを設定しまして、販売実務に係る実践的能力、実務経験の付与を行っているというところでございます。

 それからさらに、最近問題になっておりますが、二十五歳から三十五歳の年長フリーターの方でございますが、こういった方に対しても、業界団体と共同開発した再チャレンジコースというものを平成十九年度から実施しておりまして、小売業を対象として、販売マネジメントや接客販売に係るスキルアップを目指した訓練を行っております。九〇%近い就職率ということでございまして、こうした訓練の実施を通して積極的に人材育成を進めていきたい。

 特に、ポイントとしては、地域商業のニーズ等を的確に把握し、不断の見直しを行うことを通じて効果的な訓練内容の充実に努める、それから、訓練修了者に対しましても、商店街など地域商業とも連携したきめ細かな就職支援や実習支援を行うなどに配慮してまいりたいと思っております。

 今後とも、地域商業において、必要とされる人材の供給に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。

安井分科員 ありがとうございます。

 私ども、一九九九年から地元で修学旅行の対応をさせていただいております。いわゆる修学旅行の誘致ということではないんですが、商店街を見に行きたいという修学旅行があります。そこの中で、販売体験をさせていただきたいというのがあります。

 八百屋の店先で前かけ締めて、はい、いらっしゃい、はい、いらっしゃいと言って三十分やっていたら八百屋の気持ちがわかるなんというふうに思われたのでは困るのでありまして、私どもがお願いしたのは、地元の特産品を持ってきてください、自分のところの一番の売り物を持ってきてください、こういうふうにさせていただきました。

 具体的に言いますと青森の中学校、青森の中学生からすると、リンゴなんというのは周りに生まれたときからありますからそんなに、ところが東京でどんなふうな評価を受けているか、津軽のリンゴは東京に持ってくるとこんなにみんな喜んでくれるんだと。それで何ができるかといいますと、自分の土地では何があるんだと、地元の見直しができます。そして、物をいっぱい売るということがこんなに楽しいんだ、そして三つ目が、物を売るということは責任を負うことなんだ、こういうお勉強ができた。

 できれば総合的学習、キャリア・ウイークのお話もいただきましたが、私どものところでもキャリア・ウイークを受け入れている立場でございましたので、どうしてもカリキュラムの中に入ると、かたくなになり過ぎる、なかなかおもしろみが出てこない。ぜひ総合的学習とも組み合わせた、そして修学旅行のときにはこんな形の、行くところに合わせたような対応もしていただければというふうに思います。

 人、物、金の金は、使い勝手のよい融資制度、投資制度と税制だと思っております。現行の再チャレンジ融資制度は、一度店を閉めたり、廃業、倒産しなければ対象にならないように見えます。一度商売を失敗すると人間性まで否定するこの国で、これはいかにもハードルが高い。

 中小企業庁にお聞きします。転業、業態変更にも適用できる融資制度をお知らせいただきたい。あわせて、エンジェル税制を、ベンチャー企業だけでなく、まちづくりや地域商業活性化に資する事業への投資にも当てはめられないか、経済産業省にもお聞きいたします。

福水政府参考人 お答えします。

 中小企業にとりまして、金融というのはまさに生命線、命綱というふうに私ども認識しておりまして、その円滑化のためにはいろいろな手法を用いているわけでございますが、従来、ともすれば手薄だった新たな事業分野にお出になるという方々に対する融資制度、これを充実させてきております。

 このような観点で申し上げますと、政府系金融機関におきましては、例えば、新たに事業を始める方に国民金融公庫が無担保無保証で融資を行う、いわゆる新創業融資制度の充実をやってきております。昨年度は、融資限度額を七百五十万円から一千万円に引き上げておりますし、自己資金要件につきましても、二分の一なければいかぬというのを三分の一まで緩和してきておるということをやっております。また、平成二十年度、今年度四月から対象を拡充するというようなことをやっております。このほかに、経営多角化でありますとか事業転換、いわゆる第二創業でございますが、これにつきましても必要な融資制度を用意しているところでございます。

 他方、委員の御指摘にありましたような、事業転換前の既存事業の債務について金融支援はどういうものが必要かということについて、私ども、いかなる対応を講じることが可能かという点も含めまして、実態を十分把握いたしまして見きわめてまいりたいというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、冒頭申し上げましたように、中小企業に対しまして金融というのは生命線、命綱でございますので、我々、その資金調達に全力を挙げて対応していきたいというふうに考えてございます。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のエンジェル税制は、ベンチャー企業における個人投資家からの資金の円滑な投資を促進するための所得税法の特例措置でございます。エンジェル税制の適用対象企業の要件は、実は昨年から大幅に拡充をされております。

 具体的には、創設十年未満の中小企業で、設立二年以上五年未満の企業につきましては過去の売上高成長率が二五%を超える場合、設立二年未満の企業にあっては商品開発担当者などの新たな事業活動を担当する者が二名以上かつ全従業員の一〇%以上である場合が対象となるということになっております。

 こうした要件に当てはまりますれば、委員御指摘のまちづくりや地域商業活性化に資する事業につきましても、新会社を設立したり増資を行ったりする際にはエンジェル税制を御活用いただけるものと考えております。経済産業省といたしましても、エンジェル税制を十分御活用いただいて、まちづくり、地域商業活性化のために資するベンチャー企業を創出、成長することを期待しているところでございます。

 なお、具体的にこういったエンジェル税制の対象になるかどうかにつきましては、各地域の経済産業局にございます新規事業を担当する課において相談を受け付けておりますので、ぜひともお問い合わせをいただければありがたいと思っております。

安井分科員 ありがとうございます。

 うちの町ではおいしい魚が食べられなくなったねとか、魚屋さんがなくなっちゃったね、でも、あそこの空き店舗だったら、町の中のちょっと余裕のある人たちが百万ずつでも出して五人とか八人でやればできるよな、どんな魚屋にしたらいいんだといったときに、先ほど御答弁いただいた農水省のモデル事業というのが適用できる。これで町はどんどん形が変わっていくのではないかと思います。

 ただ、先ほど福水長官からお答えいただいた政府系の資金、政府系の融資でありますが、やはり、それはこの国で動いているうちのたった一割であります。九割は政府系ではない、いわば一般であります。この部分帯が今非常に厳しい状況になっています。

 破綻懸念先なんという言葉の中で、金融庁が、きょうは金融庁さんお呼びしていませんけれども、いかがなものかと言った一言で、地元の信金、信組が資金を出さなくなる。金融庁はそれほど厳しいことは言っていませんよとはいいながら、二年間赤字だった、それは新しい店をつくったら一年目は赤字ですよ。二年目がとんとん、でも黒字は出ていない。なのに、二期連続で黒が出ていないということで、いかがなものか。そして、金はちゃんと支払いもしているんだけれども、破綻懸念先ということでぎゅっと詰められて、金融庁は、金融が破綻しないとはいいながら、金融機関を破綻させないかわりにこの国を破綻させているのではないのかという話をよく聞かされます。

 ぜひ、中小企業庁が先頭に立って、金融庁さんともお話し合いをしていただければというふうに思っております。エンジェル税制の話も、新たにどんどん変わっていった、やはりもっと広く皆さんにアピールできるような形になっていけばというふうに思っております。

 人、物、金の物は、新しいテクノロジー、いわゆる技術、システムであります。新しいテクノロジー、技術、システムを大胆に導入する勇気と、国内はもちろん諸外国からのその情報も得ようとする進取の精神も必要になりますので、物と人は密接であります。もちろん、その新たな技術、設備を取り入れるための金も重要であります。しかし、なぜ自分の店に投資をして新たな技術を導入するのかというと、店の継続性のためであります。継続していくためには、変革が不可欠であります。

 東ヨーロッパの食肉店の売り上げの八割は、自家製のハム、ソーセージ、ベーコンだと言われております。一割がデリカテッセンで、一割が生肉だと聞かされました。この決算行政監視委員会で昨年派遣していただいたスウェーデン、ハンガリーでも同様だったように思います。

 地域ブランドづくり、一店逸品運動、オンリーワンの店づくり等にもつながる自家製商品について、昨年九月に高崎の全国食肉学校にも御同行いただいた伊藤渉厚生労働大臣政務官にお聞きいたします。ハム、ベーコンを食肉店で製造できるようにはならないでしょうか。

伊藤大臣政務官 先生に釈迦に説法でございますが、まず、改めてでございますが、ハム、ベーコンの製造を行おうとする者については、食肉製品製造業の許可を受け、食品衛生管理者を設置することが義務づけられております。

 このうち、食品衛生管理者については、特に衛生上の考慮を必要とする食品等の製造の管理を行う必要性から、一定の要件を満たす者としているところでございます。ハム、ベーコンなどの食肉製品の製造をしようとする施設において食品衛生管理者がきちんと配置をされるよう、食品衛生管理者が十分に養成されるように私どもとしても取り組んでいるところでございます。

 この食品衛生管理者の資格取得のための講習会は、一定の要件を満たす者が申請をすれば実施することが可能な仕組みとしておりまして、この仕組みを積極的に活用していただくことも必要と考えております。

 いずれにしても、幾つかのハードルを乗り越えていかなければならないと存じますけれども、先生のお知恵を拝借いたしまして、今質問の中でもございましたとおり、オンリーワンの店づくりを目指すためにも、こうしたことに寄与する自家製の商品づくりについて何とか道を開いていきたいと考えておりますので、今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。

安井分科員 大変御理解のあるお言葉を賜りまして、痛み入ります。ありがとうございます。

 地域ブランドづくり、一店逸品運動にも大きくかかわる地方の特産品の販売、いわゆるアンテナショップ事業での一番の問題点は物流費でした。まさに過疎対策、地域の活性化に大きな障壁となっている、アンテナショップ全店で一番の問題点と言われているのがこの物流費についてであります。

 内閣官房地域活性化統合事務局にお聞きいたします。農商工連携で一番の問題点は物流費。物流調査事業を立ち上げることはできないでしょうか。

上西政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、農商工連携、これは農林水産業、商業、工業等の産業間の連携の相乗効果を発揮するということで地域の活性化につなげていく大変重要な課題でございます。私ども、昨年十一月に取りまとめました地方再生戦略の中でも、省庁横断的あるいは施策横断的な取り組みとしてこの農商工連携を位置づけておるところでございます。

 具体的には、例えば、先ほど来お話のございますような特産品、そういった地域の産品に関する新商品の開発あるいはその販売促進の支援でございますとか、そうした新商品を開発するためのさまざまな地域産業におけるイノベーションの促進、あるいは、先ほど来お話のございますアンテナショップなど、それは例えば中小企業関連施策と農業関連施策の連携の推進といったようなさまざまな形での施策を政府一体となって取り進めているところでございます。

 御指摘のとおり、物流コストの問題も大きな課題でございますけれども、今申し上げましたような地方再生戦略に位置づけられております各省庁による農商工連携の具体策等を通じまして、それぞれの地域の実情に応じましたきめ細やかな支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

安井分科員 ありがとうございます。

 そして、システムの中にはボランタリーチェーン理論というのがあります。決して新しい考えでもありませんし、現状でも立派に活動しております。

 地域性と個店の独自性を成長戦略に結びつけ、地産地消と地域の雇用の場にも大きな力を内在していると思われるボランタリーチェーンについて中小企業庁にお伺いいたします。ボランタリーチェーン組織の啓蒙活動に支援はできないものでしょうか。

福水政府参考人 御指摘のありましたボランタリーチェーンでございますが、現在、日本で約三万店の小売業の方々が加盟しておられて活動されていると認識いたしております。

 中小の小売商業者にとりましては、先ほどからありますように人、物、金というのが非常に重要なわけでございますが、小さな商店街の方々が共同で仕入れを図るとか、あるいは効率的な経営を目指して販売をするとか、そういうボランタリーチェーンというのがいろいろな課題の解決のための一つの有効な方策であるというふうに考えてございます。

 私ども中小企業庁といたしましては、ボランタリーチェーンにつきまして、成功事例とか、こういうところで非常に役立っているとか、そういうパンフレットをもう既につくっているところでございまして、全国の関係団体への配布を通じまして、このボランタリーチェーンの有効性というようなものを広く日本の中小小売商業者に啓蒙しているところでございます。引き続き積極的にやっていきたいというふうに考えてございます。

安井分科員 ありがとうございます。実は、あすも日本ボランタリー・チェーン協会の会長とお会いする、福水長官のお言葉をお伝えさせていただきたいと思います。

 商店街の空き店舗対策は喫緊の課題とよく言われますが、現場から多く寄せられるのが、借りに行っても貸さないよという言葉であります。せがれはサラリーマンになって、娘は嫁に行った、もうおれも年だから商売はやめるんだ、人に貸す、面倒でという会話がよく聞かれます。

 確かに、この土地はあなたの土地で、この建物もあなたの建物かもしれないけれども、この地域はあなたのものではないんだ。シャッターを閉めっ放しにしているのは地域を疲弊させている、商店街を傷つけているんだということを、日本じゅうのいわゆるシャッターを閉めて人に貸さないところの店主にはお伝えさせていただかなければならないのではないかと思っております。

 今後は、相続税、固定資産税も含めて、税制を使って空き店舗対策を立てるべきだと御指摘申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて安井潤一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、長崎幸太郎君。

長崎分科員 自由民主党の長崎です。

 きょうは、新エネルギー問題と中小企業問題、二つについてお伺いさせていただきたいと思います。

 先日、アメリカの大阪総領事とお話をさせていただく機会がありました。その際に、和歌山県御坊市にある日高港新エネルギーパークが話題になりまして、こういう施設あるいは取り組みをぜひ本国にも紹介したい、こういうお話でありました。

 総領事のお話ですと、新エネルギーもさることながら、例えば省エネルギー住宅など、我が国の省エネルギー技術はアメリカの目から見ても大変興味深いものがあるそうでして、これを新エネルギーパークのような形でアメリカ人の一般の方々に紹介することができれば、アメリカの一般家庭における省エネルギーの推進あるいはその啓発、こういうものに大いに役に立つのではないか、こういうことでありました。

 御案内のとおり、新・国家エネルギー戦略によりますと、次世代エネルギーパークの整備につきましては、「国民が新エネルギーや省エネルギーなど新たなエネルギーの生産・利用に目で見て触れて理解できるよう、次世代エネルギーパークという形でエネルギーの地域拠点を整備する。」とされておりまして、そういう意味では大変有益な取り組みであると思っております。

 ただ、エネルギー問題あるいは環境問題というものは、我が国だけで完結するものではなくて、これはもう御案内のとおり世界的な問題でありますので、これに伴って、我が国の新エネルギー技術あるいは省エネルギー技術、こういうもののマーケットも世界に広がっていくべきものであると思っております。

 そこでお伺いしたいのは、次世代エネルギーパークのような取り組みをワールドワイドに拡大し、我が国の新エネルギーあるいは省エネルギー技術をアメリカなど海外に紹介し、世界的な環境保持に寄与したり、あるいは我が国の関連ビジネスのビジネスチャンスの拡大に努めていく、こういうような取り組みを図ってみてはどうかと思うんですが、経済産業省の御意見を伺いたいと思います。

上田政府参考人 御指摘のとおり、新エネルギーあるいは省エネルギーの技術に触れたり見たり実感できる、こういうことは非常に重要なことであると考えておりまして、国内のみならず、世界全般でこういうことを展開していくということは非常に重要だと思っております。

 私ども、例えば国内におきましては、ことしの二月にお台場で、国際太陽電池の展覧会、それから燃料電池の展覧会、約五万人、内外の方々の御入場がございました。さらに、去年の十二月には太陽光発電国際会議というものが福岡で開催されまして、その併設の展示会には、海外からの来場者も含めて五千人ぐらいがお見えになっておられます。

 また、海外におきましても、こういう活動はさまざまに取り組みを行っておりまして、ことしの三月にはベトナムのハノイにおきまして、いわゆるエコプロダクツ国際展という、環境に配慮したすぐれた製品を展示する展覧会を開催いたしました。また、去る三月、ワシントンにおきまして国際再生可能エネルギー会議というのがあったわけですが、その際にも、太陽電池メーカー等々、日本の新エネルギー関連産業が製品や技術を展示する、こんなことも行っております。また、現在、たまたまでございますが、ドイツにおきまして、ハノーバー・メッセという世界最大の産業見本市が開かれておりますが、こういうところにおきましても、我が国の新エネ、省エネ関係の企業というのが多数出展をしております。

 こういった取り組みを世界各国のところに広げていく必要があると考えておりまして、私ども、そういった方向に基づいて、引き続き努力をしてまいりたいと思います。

長崎分科員 展覧会、国際会議あるいはメッセ活動ということですが、ポイントは、一般の国民が目で見て触れて理解できる機会というものが多分重要なんだと思います。そういう意味では、今おっしゃられた取り組みも大変重要な取り組みだとは思いますが、聞いていると、日本に来られた外国人の方あるいはその道のプロの方、こういう方々を対象としているということで、これをもう一つ、アメリカの一般国民あるいは海外の一般国民、その人たちが目で見て触れるような取り組みを例えばアメリカ政府と協力してやる、あるいは外国政府と協力してやるようなことができれば、今すぐというのはなかなか難しいのかもしれませんが、より一層効果的ではないかと思います。その点について、いかがでしょうか。

上田政府参考人 おっしゃるとおりだと思います。新エネルギーを一般の人が見て触れる機会というのは非常に重要なことでございます。先生御指摘のとおり、国内でも、新エネパーク、次世代エネルギーパークというものを昨年約六件認定させていただいたということでございます。

 また、アメリカに対しましても、こういった取り組みは非常に大切なことであるということをさまざまな機会に申し上げておりまして、こういった取り組みを、世界各国の共通の財産となるよう、引き続き必要に応じて働きかけてまいりたいと思います。

長崎分科員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 新エネルギーの中で、私の地元山梨県におきましては、山梨大学を中心に、燃料電池技術に対して大変力を入れております。この燃料電池技術に関しまして、現在、経済産業省さんの主導で、産総研あるいはNEDOと米国のロスアラモス研究所で共同研究を行っていると承知しております。

 今後、例えば山梨大学など我が国の燃料電池技術の研究開発拠点と海外の研究拠点との国際交流、こういうものをさらに推進していくべきではないか。今、産総研とNEDOだけですけれども、そのほかに山梨大学あるいは九州大学なんかもあるというふうに承知しておりますが、こういうところも含めて、国際交流、研究交流をより拡大していってはいかがかと思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。

新藤副大臣 御指摘いただきましたように、NEDO、独立行政法人産業技術総合研究所は、昨年度から、アメリカのロスアラモス国立研究所との間で、水素貯蔵材料に関する先端基盤研究、こういったものを共同研究で始めております。これは、私どもの前任の二階大臣がロスアラモスを訪問されて、それを契機に昨年度より共同研究が始まったものでございます。そしてまた、今年度から、先生の御地元でございます山梨大学におきましては、燃料電池の劣化解析、それから材料開発等を行う研究拠点の整備を始めさせていただいております。

 まさにこれから、燃料電池、水素分野、こういった分野を、いかにイノベーション、革新的な技術をこの分野で確立できるかというのは、これは我々の地球温暖化問題の解決にもつながってまいりますし、我が国の産業競争力の強化に大きな貢献を果たしてくれるのではないかと期待をしているわけでございます。

 既に、燃料電池自動車というのも各国産メーカーが開発を進めておりまして、これは水素を積んで燃料電池を使って電気を発生させる、こういうシステムですね。それからもう一つ、水素分野におきましては、水素自動車、これは電池を用いないで水素をガソリンのかわりに使ってエネルギーを得よう、エンジンを燃やそう、こういう取り組みも始まっているわけです。

 しかし、これを実用化させるためには、結局のところ、燃料電池だとか水素分野の効率性を上げないことにはまだ実用化に至らない。そうすると、大幅な技術的進展を期待するには、やはり基礎研究に戻らなければならないという意味において、今先生が御指摘いただいたことは非常に重要なことになってくるということだと思っております。

 そして、この基礎研究分野を、我が国だけでなくて、やはり諸外国のすぐれた研究拠点と連携をすることによって相乗効果が発揮されるということでございまして、さらに今後とも積極的に展開してまいりたい、このように思っております。

長崎分科員 今、副大臣からもお話がありましたが、山梨大学もNEDOから、七年間でたしか七十億円だったんじゃないかと思いますが、極めて大きな額の補助金をいただきまして研究を進めているということで、実は今、県を挙げてこの研究を支援したいということで山梨県も取り組んでおります。

 これが実際どこまで役に立つかは別問題として、かつての知事公舎を全部取っ払って、それをぜひ研究施設にしてくださいという、これは大変な熱の入れ方をあらわす事業だと思いますが、これはまさに今、山梨県民の新たな誇りを形づくっているものでもあります。先ほど国際競争力の強化という話もありましたが、実はこれは地域の誇りにも大変役に立っている話でありまして、私としても、ぜひこれは推進をお願いしたいと思っております。

 そういう国際的な交流で、ぜひ山梨大学のやっている分野、これは膜研究ですとか触媒だと思いますが、この分野の海外との交流。例えば、山梨大学の研究者を向こうに派遣したり、あるいは、できれば向こうの研究者を日本に呼び寄せて、山梨なんかに呼び寄せれば、余り外国人の多いところなわけではないものですから、まさに目に見える形で、燃料電池の関係で外国の偉い研究者さんがやってきた、これはもう、まさにまた県民も大喜びするような話で、これぞ、さっきの新エネルギーパークではないですけれども、実際目に見える形で新エネルギーの研究開発拠点をさらに応援していこう、こういうような効果も出てくるのではないかと思います。ぜひとも交流をさらに進めていっていただきたいと思いますが、重ねてで恐縮ですが、ぜひ今の、そういう地域の誇りを増すんだということに対して御感想というか考え方を、副大臣、簡単に。

新藤副大臣 これは、考えられるいろいろな知恵を使って、今先生がおっしゃったような研究者同士の交流というのもまた地域の刺激になる、このように思っております。

 また、研究開発を行ったらば、それをいかに実用化させていくか、これが大事なわけでございます。そして、この分野は非常に先端的ですから、実用化までに時間がかかるじゃないか、こういうことをおっしゃる人もいるんですね。でも私は、これは研究開発を進めていって頑張るんだ、そうすると、将来にわたって大きなチャンスが訪れるということになると、それは、では今の段階からいろいろな投資をしていこうとか、一緒に仕事をつくっていこう、こういうような今の需要が発生すると思っているんです。

 それから、こういう先端分野で突出した強みをもし我が国が持つことができれば、これが産業競争力の強化につながる。しかも、我が国の場合は、一つの企業が成功して物をつくるようになると、その部品の供給からいろいろなものまで、すそ野が広く、中小企業に、国じゅうに経済が行き渡る。だから、私たちの国の強みというのは、技術力があって、しかもそれをネットワーク化している。だから、それは地域のネットワークにもつながっていく。中小企業が元気になってくれればありがたいし、しかも、企業が元気になってくれれば、その地域の活性化にもつながっていく。まさにこれはずっとつながっていくわけでございますね。

 ですから、その大もととして、最先端の研究というものを、ぜひ国民、県民、地域の皆様方にどんどん知っていただいて、そして、今先生おっしゃったように、うちの県ではすごいことをやっているんだ、こういう誇りを持つということを山梨から世界に発信できるかもしらぬ、こういうようなムーブメントをつくっていくのはとても大切ではないか。ですから、私どもも、いろいろな御要望をいただければ一生懸命お手伝いしていきたい、このように思っております。

長崎分科員 どうもありがとうございました。

 エネルギー問題は、大変ありがたいお言葉をいただきまして、心より感謝いたします。

 次に、中小企業問題についてお伺いいたします。

 まず初めに、国税庁さんにお伺いいたしますが、我が国の中小企業の法人税の納税状況について教えていただければと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁が実施しております二〇〇六年分の会社標本調査によりますれば、資本金一億円未満の法人の数は約二百五十五万社でございます。このうち欠損法人は約百七十万社でございまして、その割合は六六・八%でございます。

長崎分科員 ということは、中小企業のうちの約三分の一だけが納税しているということだと思います。

 地元を回りまして、よく中小企業の経営者の方々とお話をすると、一番よく聞く話は、税金を納めたくても納めることはできないよ、赤字だから納められません、そういうことは言わずもがなではあるんですが、頑張って業績を伸ばしているんじゃないかなと思われるような企業であっても、一体納税して何のいいことがあるんだ、納税するメリットは何だ、こういうことをいろいろ心の中で疑問に思われていて、それで、では無理して赤字を出そうかとか、そんなようなことをされているような感じも見受けられるところがあります。

 これは、ある意味当然というか、理解できるような気もする点があります。というのは、税務署は、赤字企業については調査しないくせに、一たん黒字を出して納税すると、翌年はさらに厳しい調査が入るんだ、こんなことだったら赤字を出しておけばよかったと思われたり、頭では、納税義務というのはちゃんとやらぬといかぬ、これはもうだれでもが理解している、これは当たり前の話ですが、心の中で、こういう事例があると、要は、納税しても何のメリットもない、ならば赤字を出して少しでも納税額を抑えましょう、こういうインセンティブが働くんじゃないか。その結果が、六六・八%のうちのある程度の部分がこういう結果になって出てきているのかなという気もいたします。

 これに対して、行政サイドでは、当然、納税に対するあめとむちの世界で、むちはしっかり用意されているわけです。もちろん、脱税とか、要は税法違反に対するサンクション、これは論外だし当然のことではありますが、そのほかに、一般の赤字企業に対して、例えば政府系金融機関では、前年度赤字だった企業に対してはなかなか融資が難しくなったりとか、あるいは公共事業の入札なんかですと、経営審査というところで赤字企業は不利に扱われる、こういうようなことがあるわけです。

 私が思いますに、中小企業の特色というのは、なかなか多角化というのが難しい中で、業績を長い期間にわたって安定させるというのは極めて難しいことなんじゃないか。前の年黒字でも、例えばいろいろな市況の変動があったりなんなりで、次の年赤字になることがあるんだ。その場合、赤字になっちゃえばさらに厳しい税務調査が待っていて、なかなか赤字を出すのも大変なんですが、こういう場合、税金を納める前に損失が発生すれば、それは繰り越しという形で納税額の一部を抑えることができる。ただ、税金を納めた後に損失が発生した場合には、税法の本則ですと繰り戻し還付というものが規定されておりますが、現在、租税特別措置によって凍結されていると伺っております。

 そこで、財務省にお伺いいたしますが、赤字企業に対する繰り戻し還付措置の凍結の趣旨及びこれを凍結することによって得られている法人税の増収額が大体どれぐらいの規模になるのか、これを、わかればで結構ですが、教えていただければと思います。

川北政府参考人 お答えいたします。

 法人の欠損金に対する税制上の措置といたしましては、御指摘ありましたように、欠損金の繰越控除と繰り戻し還付の制度がございます。

 このうち、欠損金の繰り戻し還付制度は、ある年度の欠損金を前年度の利益と通算いたしまして、既に納めた法人税につきまして還付を求めることができるという制度でございます。この制度につきましては、極めて厳しい財政状況等を踏まえまして、一定の場合を除きまして適用を停止しているところでございます。

 御質問の、増収規模の見込みでございますけれども、これは、この制度、繰り戻し還付の停止措置を講じました平成四年度の税制改正におきまして、いわゆる初年度で五百億円程度というふうに見込んで御説明したことがございます。

 他方、いわゆる平年度の増収規模につきましては、この繰り戻し還付の停止措置によりまして増収が発生いたしますが、その反面で、繰越控除の方の利用がふえることになりますので、言ってみればそちらの方の減収効果も発生いたしますものですから、両者の間にいわば相殺の関係があるということで、当時、平年度の方は見込んでおりませんでした。

 そういうこともございまして、現時点でもこの増収見込み額については見込んでいないところでございます。

長崎分科員 ありがとうございました。

 財政事情によってこの繰り戻し還付というものを停止しているんだということであります。

 これを、今度凍結を解除した場合に一体どれぐらいかかるかはわかりませんが、基本的に大体五百億円前後であるということであるとすれば、これだけの財源がかかるということで、この停止は百歩譲って仕方がないとしても、他方、税法上の考え方の問題として、一定期間の中で見れば、損失の発生時期により税負担が変わってくるんだというのは、これは一〇〇%合理的とは言えないんではないか。だからこそ、税法の本則で、繰り戻し還付制度というのが損失の繰り越しとあわせて両面で規定されているんじゃないかと思います。

 そこで、お伺いしたいと思いますのは、還付自体、還付というか、渡し切りのものは、要は真水のお金がかかるので難しいとすれば、還付のかわりに、例えば、本来的な還付相当額について、政府系金融機関あるいは保証協会なんかを通じた貸し出しを行うこととしてはどうか、そういうことを検討されてはいかがかなと考えます。

 融資にすることで、最終的には返ってきますので、財政上の負担は若干軽減される。さらに、必要なら人的保証をつけたり、あるいは、租税債権に準じるような、税金を一時貸すようなところもありますので、先取特権をつけたり、そういう形で制度的な工夫をする中で貸し出しを行う。しかもそれは、例えば、できればコミットメントラインのように、一定額は権利として貸し出してもらえます、こんなようなことができれば、中小企業としては納税意識も向上するんではないか、あるいは経営の安定にも資するんではないか、こういうことが考えられるんではないかと思いますが、経済産業省さんのお考えをぜひお伺いしたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、議員たびたび御指摘のとおり、中小企業の経営の安定性ということは非常に重要な課題だと思っております。このため、政府といたしましても、創業間もない中小企業の資金繰りの安定を図るという観点から、創業五年以内の中小企業者に対しましては、法人税の繰り戻し還付制度の延長というものを決定しているところでございます。

 それから、今委員御提案の、いわゆる政府系金融機関から、いわばこの繰り戻し還付の停止措置との関係におきまして、貸し出しを行うといった制度のようなものを創設してはどうかということでございますけれども、これにつきましては、率直に申し上げて、多くの検討すべき課題があると思っております。

 政策的な必要性がある場合に、中小企業の資金ニーズということに応じるために、政府系金融機関ではいろいろな支援の制度をつくらせていただいております。そういう観点から、この制度との関係で、措置を創設するということは非常に難しい問題があるのではないかと思います。

 いずれにしても、委員の御指摘は、中小企業の資金の円滑化ということについてはやはり十全を期すべきであるという御指摘だろうと思っております。特に、中小企業をめぐる経営環境は、御指摘のとおり厳しさをやはり増しておりまして、政府系金融機関におきましては、委員の御指摘のような点と関連する場合もあると思うのでございますけれども、一時的な資金繰りの問題を含めまして、個々のそれぞれの中小企業の方の御事情というものをよく伺った上で、利用可能な貸付制度というものをお示ししていくというような対応が必要でございまして、中小企業の方の御相談に政府系金融機関で十分におこたえ申し上げていく、御相談に応じさせていただくというようなことを徹底してまいりたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、そういうことを通じまして、中小企業の金融に政府系金融機関の適切な取り組みが行われるということを引き続き一生懸命対応していきたいと思っておりますし、また、委員の御指導などをいただいていきたいというふうに考えておる次第でございます。

 以上でございます。

長崎分科員 ありがとうございます。

 中小企業の資金繰りの円滑化という問題はもちろん大きな一つの要素ではありますけれども、大切なのは、要は、政府は我々中小企業と一緒に歩んでくれているんだ、納税という我々が政府に対してすることをちゃんとやっていれば、政府は苦しいときに助けてくれるんだ、まさに一心同体なんだという政府と中小企業の連帯感を形成すること、これは大変重要な話じゃないかなと思います。

 納税して何のメリットがあるんだという言葉がやはり経営者さんの口から出てくるのは、正直申し上げて、政治に携わる身としては大変悲しい話でもありまして、それは我々がちゃんと仕事をしていないんだというおしかりなのかもしれませんが、ぜひ、そういう中小企業と政府の連帯感を形成する意味で、納税するということは、お国のためにも役には立つんだけれども、何よりも苦しいときに助けてくれる担保になるんだ、こういうようなメリット、これは本当は邪道なのかもしれませんが、六六・八%の企業が納税をしていないという現状を踏まえれば、多少そういうあめというかメリットを付与して、納税のインセンティブをつけるということも私は検討に値するんではないかと思っております。

 通告はしておりませんが、ぜひ副大臣、今の考えについて伺いたい。

新藤副大臣 今の話は、まさにこれは政治が考えていかなきゃいけないことだと思っております。

 私も、自民党の税制調査会、小委員会等々でずっと勉強させていただいております。結局、役所がつくる税制というのは公平中立だ、先生も役所にいらっしゃいましたからよく御存じのことです。しかし、公平中立に加えて戦略性が必要だ、私は税調でずっとそういう発言をさせていただいたんです。

 素朴な疑問で、事業活動を営み、給料を取り、また給料を払い、売り上げがありながら、制度である法人税を、平均でいえば六割とか、中小企業だと七割近くの方が払わないという制度は、制度としてあるのか。過半数を超える人が使わないものが国の基幹の制度としてあるというのは、私は素朴な疑問があります。

 ですから、それは、例えば法人事業税の外形標準化のようなときに議論をしたわけですけれども、やはり納税の率を高めていくというのは大切なことで、そのかわり、やはり納税しやすい環境をつくるということが大事だと思います。

 それは、例えば法人税の税率のことをやはり研究しなきゃいけないんだろうと思うし、今先生がおっしゃったようなアイデアも、これは租特ではなくて、こういう全般的なことで、やはり企業の皆さんにやる気を起こし、また困ったときには、今まさに委員がおっしゃるような、国は中小企業の実情もわかっていて、一緒に歩んでいるんだ、こういうことをメッセージで伝えられるようなものは必要だと思うし、これは政治がやはり研究していかなきゃいけないことではないかな、このように思っております。

長崎分科員 ありがとうございました。

 ぜひ副大臣にも御指導いただきながら、私も研究してまいりたいと思います。

 これで本日は質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

木村主査 これにて長崎幸太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、経済産業省所管のテーマにつきまして質問させていただきたいと思います。

 私も四年ほど前に経済産業委員会におりまして、そのとき、知的所有権の問題につきましては大分勉強させていただいて、委員会でも何回か質問をさせていただきました。当時と状況が違って、ここへ来て、中国でありますとか台湾における日本名の商標登録の問題、これは大変大きな問題になってまいりました。当時はちょっとそこまで想定していなかったんです。

 記憶に新しいところでは、最近、台湾にいらっしゃる邦人の方が讃岐うどんのお店を始めようということで、讃岐うどんのお店を始めたところ、台湾のある業者が、讃岐という言葉がもう既に申請登録されていて、内容証明つきの抗議が来たということで、結果として、この方は看板をおろさざるを得なくなったということが報道されておりました。つい最近、この方が、台湾の知的財産当局に対して商標登録の無効を求める審判を四月にも起こすということを会見されたんです。

 この方は、台湾にいらっしゃる方ですが、香川県で修行をされた方で、一昨年、二〇〇六年の六月に出店したところ、もう既に今から九年前、一九九九年には讃岐という言葉が台湾の冷凍食品会社によって商標登録をされていたということでございました。

 台湾と讃岐というのは一体どういう関係があるのかなと思いますけれども、その後いろいろ調べてみましたら、台湾に限らず、中国でもこうした日本のいわゆる地域特産品の名称が大変膨大な数が申請をされていて、中には登録をされてしまったものもあるということでございました。

 この点について、先日も特許庁の方や農水省の方に来ていただいていろいろレクチャーを受けたんですけれども、これ以外にも、例えば佐賀県の佐賀が昨年九月にもう登録をされている。あるいは、鹿児島県の鹿児島という言葉がもう既に申請をされていて、これについては異議申し立てをしたと。そして、先ほど申し上げた、佐賀県産のイチゴに「ほのか」という名称のイチゴがあるんだそうですけれども、もう既にこの「ほのか」というのも二〇〇四年六月に申請をされているということでございます。

 後ほど申し上げたいと思うんですけれども、日本政府として、特許庁が地域ブランドというものを認定し推奨して、そして農林水産省でも、五年後には一兆円規模の農業産品の輸出を、いわゆる攻めの農政をやるということでここまで非常に輸出を促進する方策をとっているんですが、ここへ来て商標登録というハードルが実はあった。あちこちに時限爆弾のように埋め込まれていて、とにかくこれが、進出してみたら、台湾で讃岐うどん屋さんを始めようとした邦人の方のように、讃岐という言葉は使えません、台湾で讃岐うどんの店を出そうとして、讃岐という言葉をまさか台湾で使ってはいけないと言われるとは思わなかったと。ある意味では降ってわいたような話でございまして、今後、我が国が攻めの農産品輸出というかけ声はかけても、実際こういうことが次々に出てくるんだろうと非常に懸念をするわけであります。

 そこで、まず最初に伺いたいのは、こうした商標の申請をめぐる問題というのは、政府が把握しているだけで一体どれぐらいの数があるんですか。お答えをまずいただけますでしょうか。

    〔主査退席、松野(博)主査代理着席〕

長尾政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 中国、台湾等々におきまして我が国の地名あるいは名産品のブランドが第三者によりまして商標出願されているという問題に対しましては、経済産業省といたしましても、日本国内の利害関係者を支援すべく、農林水産省や自治体とも協力して対応を図ってきておるところでございます。

 現在、この問題につきまして、私ども、ジェトロ北京事務所などを通じまして、中国等におきまして我が国の地名あるいは名産品のブランドの出願登録状況の把握の調査をいたしておるところでございます。まだ調査中ということで、詳細な全体の取りまとめにまだ至っておりませんので、きょうここで御報告することは御容赦いただければありがたいと思っております。

 例えば、議員お話ございました台湾における讃岐、あるいは中国における佐賀などを初めとしまして、それから青森といったもの等々につきまして、かつて登録されていたことを確認させていただいております。この中で、例えば青森などのように、関係者の御尽力、御努力によりまして、それから私どももいろいろ支援をさせていただきまして、問題の解決にようやく至ったという例も出始めておるところでございますけれども、引き続き、私ども実態の把握に努めてまいりたいと思っておるところでございます。

渡辺(周)分科員 いや、私が聞いているのは、一体何件こうした問題が発生しているんですかと。今、調査中と言いましたけれども、わからないということですか。

長尾政府参考人 今申したのは事例でございまして、登録されているものの中でも正当な権利者が申請したものももちろんあるわけでございます。中には第三者が不正の目的をもって申請したものもあるわけでございますので、その辺の精査が必要でございますので、その辺の調査をさせていただいておるところでございます。

渡辺(周)分科員 では、いつまでに調査の報告は出るんですか。

長尾政府参考人 現在まさにこの問題につきましての調査を行っておるところでございます。私どもなるべく早い段階での取りまとめを行っていきたいと思っております。

渡辺(周)分科員 もう既にこういうのが九年も前に台湾で商標登録されているわけですよ。遅いですね、はっきり言って。

 それで、国の方はハッパをかけて、やれ輸出品、どんどん輸出しろ、五年後には一兆円規模にするんだ、今、農産品の輸出は三千三百四十億円ですか、と言っておきながら、では実際どれぐらいこういう件数が起きているのかと言ったら、答えられないわけですね。それについてはどうなんですか。これは国として本当に取り組もうという意欲はあるんですか。悪いけれども、業者なり自治体なりが見つけて初めて事が発覚するわけですけれども、これは結局、国はハッパをかけるけれども、実際、事を見つけて対応するのは地方任せということが、結果的に言えば、国は全然その実態すら把握していないということになると思うんです。

 もう一回聞きます。いかがですか。これはどれぐらい時間をかけているんですか。この実態が何とかわかるようなところまでいけるんですか。

長尾政府参考人 先ほど申しましたように、私ども鋭意実態の把握に努めてきているところでございます。中国などにおきましても、私ども、いろいろ政府間協議を通じましてこういった問題の指摘、あるいは、いろいろ数ある法改正の中での制度の改善といったものを求める作業の中でもこういった問題の実態の把握に努めてきているところでございますので、さらに我々、引き続き取りまとめに当たっていきたいと思っております。

渡辺(周)分科員 結局、そんな答弁なんですよ。全然やる気が感じられないわけですね。

 では、ちょっと聞きますけれども、今既に自治体の名称を使って申請されているのは中国、台湾でどれぐらいあるんですか。そのぐらいの数は把握しているでしょう。

長尾政府参考人 私どものところで、ジェトロ北京事務所におきまして鋭意今調査をさせていただいております。先ほど申しましたように、それが真正な権利者によって出願されたものであれば問題ございませんが、先生御指摘のとおり、中にはそういう問題もあるということでございます。

 まだ内容を精査中でございますので、あくまでも暫定的な段階でございますけれども、例えば中国におきましての数字で申し上げますと、四十七都道府県のうち二十七の名称で、それから二十政令指定都市のうちでは四つの名称で、日本の都道府県あるいは政令指定都市名とほぼ同一の商標出願が確認されております。ただ、この中にも、中国の企業の出願によるもの、あるいは日本企業の出願によるもの等々が見られますので、その辺を含めて今鋭意精査をしているところでございます。

渡辺(周)分科員 確認ですけれども、四十七都道府県中二十七の都道府県の名称と四の政令市の名称、三十一ですよね。こんなもの、三十一でしたらすぐ調べられるでしょう。日本企業によって申請されているものなのか、中国の企業や個人によって申請されているものかというのは。時間のかかることじゃないと思いますけれども、そんなことをまだ時間かけて調べるんですか。いかがですか。

長尾政府参考人 一つ一つ当たっておるところでございますので、いましばらく時間をちょうだいしたいと思いますが、なるべく早いうちにまとめてまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 では、具体的にどうやって調べているんですか。どういうふうな手段で調べているのか、それをちょっと教えていただけますか。

長尾政府参考人 これは、例えば中国の例で申し上げますと、ジェトロの北京事務所におきまして、まず我が国の都道府県名、政令指定都市名、それから地域団体商標、これは今現在日本で三百七十件ほど登録されておるところでございますけれども、その出願登録状況について、中国の担当局でございます中国の商標局がウエブサイト上において提供しております中国商標網という一つの網がございますけれども、これを使用して調査を実施する。これで当たるのはさほど時間がかかりませんけれども、それをどんどんたどっていきまして、その企業が正当な権利者であるかどうかというところは、やはり一つ一つ当たっていかないといかぬものですから、そこに多少時間がかかっておるところでございますので、御理解いただければありがたいと思います。

渡辺(周)分科員 御理解いただけるって、私は別に中国の代弁者でも何でもなくて、日本の政府のやり方が手ぬるいと言っているんですよ。遅いじゃないかと言っているんですよ。何でこれだけのものを調べるのにこんな時間がかかっているんですか。そこが全く納得がいかないわけですよ。こうもしている間に、どんどん使われるわけですね。

 私の地元、静岡県ですけれども、例えば葵の御紋の入った静岡という商標登録は、あの葵の御紋はもう既に商標登録をされておりまして、それで、例えば静岡という地名については、今のところ実害は出ていないというふうに静岡県庁の方も言っておりましたけれども、青森県の例でいえば、四年五カ月かかっているんですよ、異議申し立てしてから。

 青森県の場合だったら、青森というのは、青森県のことを指した言葉ではなくて、青森という言葉なんだということで、結果的に、異議申し立てから四年五カ月たって、やっとこさ決着がついた。といっても、この点についてはまだほかに、全部が認められたわけじゃなくて、お茶だとか米だとかめん類だとかジュースだとか、そういうものについての品目についてはまだ審査継続中なんです。

 静岡県の場合、これから将来的にいろいろなものを輸出する、例えば特産品のお茶であるとか農産物が輸出されるということについて、今のところはビジネスとして確認されていないけれども、将来的には当然新たなそういう紛争といいますか、権利侵害であるということで、もし登録を認められてしまえば、当然そういうことが起きるわけなんです。

 静岡という言葉のみならず、例えば駿河だとか伊豆だとか天城だとか。もう既に富士とか富士山というのは申請されているらしいんですね。富士のふもとだとか、お茶の産地の牧之原なんていう言葉だけでも、今ここでアトランダムに思いつくだけで、連想するだけでもこれだけあるわけですよ。

 とにかく中国では、一件当たり一万五千円ぐらいの申請料でどんどん登録できる。もうその数や膨大な数になっておりまして、特許庁の方からもらった資料によれば、中国への商標出願件数は七十六万六千件、台湾へは商標出願件数が六万五千件、これはいずれも二年前の二〇〇六年の数字なんですけれども、膨大な数の申請がされているんですね。

 もちろん、この中のどれぐらい日本名の商標が申請されているとかというのがわからないんですけれども、当然その中には、考えられる限りの日本の地名をつけた、あるいは旧国名といいましょうか、先ほど言った駿河だとか伊豆だとか、こういう地名も当然使われることがあり得る。特許庁が地域ブランドとして認定をしている岐阜県の美濃の美濃焼というのは、もう既に中国で登録されてしまっているんですね。結果的に、これは異議申し立てをしなかったものですから、もう既にこういうものが実際、登録されてしまったということでございます。

 考えていけば、今後こういうことが起き得るわけでございまして、一応中国の商標法の第十条というところには、県クラス以上の行政区画の地名または公に知られている外国地名は商標登録できないというふうに書かれているんですけれども、ただし、その地名が別の意味を持ち、団体商標、証明商標の一部とするものはこの限りでないというふうに書かれているんですね。

 青森県みたいに、青森県を指したわけじゃない、英語ではブルーフォレストとでも言うんですかね、青い森。静岡だって、静岡県を指したわけじゃない、サイレントヒルだと言われてしまえば、静かな岡をイメージしたんですと言って、中国側が判断をすれば、中国側の商標局の判断によっては登録されてしまう可能性があるんですよ。

 ですから、今もうどんどん中国側では申請をされて、結果として、日本側がまだ、いまだに事実の把握に努めているとか調査中だなんて言っている間に、こうもしている間に、どんどんもう申請されるわけですね。

 ある報道で見たんですけれども、名刺交換をした時点で、その会社の名前とその会社のロゴ、これまでもみんなどんどん登録されるということがエピソードとして書かれていました。

 この点について、日本政府として、この問題に対して、国を挙げてやはりこれ、考えなきゃいけないんじゃないか。自治体が見つけてきて、あるいは出荷団体ですとか生産者団体がホームページか何かで見つけて、それで慌てて県と相談して対応するんじゃなくて、これは、ある意味では商標戦争とでもいいますか、それぐらい大変なことだ。中国はそのつもりで、日本名ブランドの名前を冠にして商品価値を高めようとしているのか、あるいはブローカーが先に全部、考えられる限りの日本名を商標登録してしまって、権利侵害だといって訴えて、その権利侵害をされた側が、本家本元の方が排除されたり、持っているその商標を使いたかったらそれについてのロイヤリティーをよこせと本家本元が言われるという、考えられないことが起きるわけですね。

 ですから、これについて、国としてどう取り組むのかということについて、そんなに悠長なことを言っている余裕はないんです。どうされますか、国として。

新藤副大臣 先生のこの問題意識、これは非常に重要だと思っております。

 それで、実態を把握しているか、こういうことで御質問がございましたので、事務方の方から、今精査中だ、こういうお答えになったわけでございます。

 もう先生御承知のように、中国の場合でいいますと、要するに公知、こういう地名については登録することができないということ、また、商標登録されていても、事後取り消しの制度があるということで、知られたものであれば防御措置があるということです。

 しかし、我が国の場合は、さらにこれに加えまして、不正の目的、商標登録をする場合には、不正の利益を得る目的をもって使用するものは登録を拒絶することができる、これはもう平成八年に既に法改正をしているわけでございます。

 肝心なのは、やはりそれぞれの政府がこういう問題を協議して、知的財産保護それから商標の保護というのは、これは両国にとっても非常に重要なことだと思っております。

 ですから、今政府間では非常に緊密に連携をとって、中国からの審査官を含む研修生の受け入れ、これも中国は非常にふやしているんです。それから、日中の商標の長官会合ですとか、そういういろいろな会合はかなり重ねております。

 そういう中で、技術的に、日本と中国、また台湾、そういったところの商標登録制度を合わせていくということが必要であって、もちろん今目の前で起きている事件について、また事案については、一つ一つ適切に対応していくしかありません。これから海外展開をしようという企業、また、これから日本が国際化という中で、地域のいろいろな産品が出ていく中で、やはり私どもも、自分たちの商標権を保護するための活動も助長していかなければならないだろうと思っています。

 そういういろいろなチャンネルをつくって、そして、無用なというか、日本の産業に障害が出ないように、これはかなり今努力をしているところだと思いますし、そういったことをまたさらに積み上げていきたい、このように思っております。

渡辺(周)分科員 努力するのはわかるんですけれども、例えば相手方が今、公知ですね、公に知っているかどうかは中国側が判断するわけですよ。だから、青森といったら、青森県なんてみんな知りませんよ、中国で青森といえば青い森のことを指すんです、静岡というのは富士山のふもとの静岡県じゃなくて、静かな岡のことを指すんですと言われてしまえば、中国がそう判断しましたということで、中国側が判断できるんですよね。

 ですから、中国の判断に対して、何らかの形で商標の解釈に日本政府としてもっとコミットするべきじゃないかと私は思うんですよ。これはできないんですかね、今の話し合いの中で。

新藤副大臣 これはかなりやっていると私は思っております。また、実際に、向こうの私のカウンターパートナー、これは中国の国家工商行政管理総局、ここの私のカウンターパートにおいでいただいて、話をしております。

 それで、まさに今先生がおっしゃったように、政府間でもって交渉を行おうと。その目的は、公正かつ適正な審査の実施、それから審判の早期化、知財保護の強化に向けて制度の改善。うちの方でこういうことをやっているんだから、一緒に合わせてくれ、制度を強化してくれ、こういうことをまさに今政府間のチャンネルで行っているところでございます。

渡辺(周)分科員 特許庁は地域ブランドと認定するわけですよね。だったら、これは国の方で、地域ブランドとして日本がもう認めているものだからこれはだめだよ、これがもし申請されたときは、悪いけれども中国に突っ返してくれ、これはもうだめですよ、後で必ずもめるもとになりますよということを具体的に例示して、中国側とその話をすることはできないんですか。いかがですか。

 つまり、相手の恣意的な判断でいかようにも判断されてしまうから青森も四年五カ月もかかったわけでして、だとすれば、これはだめよということを何らかの形でやはりコミットするべきじゃないかと思いますけれども、それはいかがなんですか。

長尾政府参考人 お答えいたします。

 副大臣からお答えいたしましたように、我が国の地名とか名産ブランドが中国において第三者によって商標出願されている問題、非常に重要な課題だと思っております。

 私ども、政府間交渉のチャネル、頻度を上げております。ここ最近でも、十九年、二十年と、長官レベルあるいは実務者レベルというレベルで頻繁に行っております。

 そういったところで、やはり委員から御指摘……(渡辺(周)分科員「時間ないから、できるかできないかということだけ」と呼ぶ)はい。

 データ提供を含めて私どもやっているところでございますので、引き続きやっていきたいと思っております。

渡辺(周)分科員 データ提供というのは、これはもう使っちゃだめですよ、これを出すことは、後で必ず異議申し立てされる対象になるからこれははねてくださいというぐらい具体的に、これはどれぐらいの量になるかわかりませんよ、日本名で申請されているのがどれぐらいの件数か知りませんけれども。どう考えたって、先ほど申し上げたように、何か七十六万もあるのであれば、うちの一割にしたって七万六千ぐらいあるわけです。だとすれば、電話帳の一冊ぐらいの厚さになるかもしれませんけれども、とにかく、例えば、日本としてはこれは認めがたい話だ、そこまで具体的にやっているということですか。そういうふうに理解していいですか。

長尾政府参考人 ありとあらゆるデータの提供になりますと、これは際限なく、限りがなくなりますので、例えば、日本で登録されました地域団体商標ですとか、それから、中国の方ではまだ公知ではないかもしれないけれども日本では公知である県名、政令都市名等々につきましては、可能なデータ提供の中で精力的にやっていきたいと思っております。

渡辺(周)分科員 やっていきたいということであって、やっているわけじゃないですね。それはできないんですか。

長尾政府参考人 今、もう既にやり始めております。

渡辺(周)分科員 それは、もう国の方で地域ブランドとして指定したものというふうに網羅的に、例えばこれは使えないですよということ、これはもう日本でそういうふうに認定されているものだからということで言っているわけですね。そういう考えで理解していいんですね、確認ですけれども。

長尾政府参考人 それは、やはり各国の制度の中での判断が属地主義でございますからどうしてもあります。私ども、参考データという形で提供させていただいているものでございます。

渡辺(周)分科員 では、それに対しての中国側の答えはどうなんですか。

長尾政府参考人 中国側は、データとしては受け取っていただいております。ただし、先ほどからお伝えしましたように、中国では、商標につきましては猛烈な勢いで商標の出願件数がふえております。

 私ども日本の関係者が早期に権利ができるというところも我々協力していかなきゃいかぬと思っておりまして、そういう話も含めて、協力の手段を広めておるところでございます。

渡辺(周)分科員 話を聞いていると、どうも及び腰で、何か、中国側もしようがないんだ、中国側もそれだけたくさん来ているからとても手が回らないと、非常に私は中国をかばっているような物言いをしているような気がしてしようがないんですけれども。日本のやはり知的財産権、日本の商標を守らなきゃいかぬ。それによって、日本の本家本元が中国に行ったら権利の侵害だと言われて、あべこべなことが起きるわけですよ。それを、気がつかなかったあなたたちが悪いと業者に言うんじゃなくて、国としては、やはりこれはある意味で外交問題、国と国の問題だということで、国が先頭に立ってやらないかぬと思いますけれども、どうなんですか、その覚悟のほどは。これは政治家に聞きます。

新藤副大臣 これは、問題意識は先生と共有しております。そして、これを個別具体的にどういうふうに日本の商標を守っていくかということになります。

 しかし、そのためには、まず政府間としては、あくまで個別の商標登録の一つ一つについてすべてをウオッチすることというのは、これはイタチごっこでございます。ですから、まず何よりも、日本の中で地域ブランドがあるものは、これはどんどんやはり外国にそういう商標登録もしていかなきゃいけない。そういうようないろいろな研修や助言、こういったものを我々やらなきゃいけないだろう、国内においては。

 それから、外国の政府に対しては、やはりいろいろ交流を強化して、その中で、実際の話はかなり強く言っていますよ。私も言いましたけれども、きちっと制度を合わせてくれと。それで、こういう不正な目的によって、そして、例えば商標登録しておいて、日本企業が進出したらそれに対して何か金品を要求するとか、こんなものが起きたらこれはけしからぬことでありますから、こういったものについて強く指摘をしているところなんでございます。

 さらに、向こうの事務方の状態でいくと、今八十万件から九十万件になろうとしているということなんですね、中国ですと。そうすると、その審査を早くさせなきゃいけない。しかし、相変わらず紙でやっている。ですから、今の日本の特許庁がやっている特許審査のペーパーレスの電子化、こういったものも我々協力するから、そういう中で審査もきちんと早くやろうじゃないか、そして、お互いに同じような制度にしよう、こういうことを強くやっておりますし、これからもさらに頑張ってやっていきたい、こういうふうに思います。

渡辺(周)分科員 もう時間がなくなりました。もうちょっといろいろ議論したかったんですが、まさにさっきも申し上げた、商標戦争なんですよ。この国は、世界で商標に一番うるさいあのウォルト・ディズニーのディズニーランドだって平気でぱくる国。そんなこと平気でやるんですもの。もっと言えば、歴史だって捏造する国なんですから。まともな性善説に立って議論していたら、とてもじゃないけれども、したたかな中国に全部やられますよ、はっきり言って。

 正直言って、この商標戦争の中で、今まで自治体も生産者も出荷団体も、物をつくって売り込みすればいいやというだけではもう終わらないですね。ある意味では、その平和ぼけを、これはおらが町のブランドを海外に出して、降ってわいたようなまさにこんな商標戦争に巻き込まれるわけですから、この点について、日本の生産者や出荷団体や自治体に対してやはりもっと支援すべきだと思うんですけれども、国としてはどうしていかれるのか、最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

新藤副大臣 これはとにかく、今申し上げましたように、そういう自覚を持つこと。まさに性善説に立つことはできない。それから、厳しいビジネスの中で国際間のそういう商業が行われているということも、これは現実の問題です。

 ですから、やはり日本の国内においても、外国においてこういう自分たちの商標を確立させていくということ、海外に商標展開するということが重要だということを我々はさらに周知徹底を図っていきたいというふうに思っておりますし、特に中国、台湾、こういう問題が顕在化しているところに対しましては、早期の商標登録を進めるように、地域のブランドを権利化する、こういうことについてしっかりと各自治体、各業者に連絡をとっていきたい、こういうふうに思います。

渡辺(周)分科員 時間が来ましたので、終わります。

松野(博)主査代理 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、古本伸一郎君。

古本分科員 民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうは決算行政ということで、経済産業省、それから資源エネルギー庁、環境省と、全般に今、洞爺湖サミットも控えている中で、話題のガソリン関連を中心に、そしてそのガソリンを使って走行させていただいている自動車、その関係諸税という観点から幾つかお尋ねをしてまいりたいというふうに思っております。

 まず、福田総理は随分、ガソリンの値段が下がると消費がふえるというふうに言っておられますが、今、暫定税率というのが日切れになっていますけれども、過去、昭和四十九年、五十一年、それから五十四年と累次にわたる引き上げにより暫定税率というのは刻まれてきているわけですが、当時、絶対量で消費量は減ったんでしょうか。暫定税率を入れたわけですから、消費量が減ったんでしょうか。

平工政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるガソリン税は、昭和三十九年の四月一日に本則税率が一リットル当たり二十八・七円とされた後、昭和四十九年四月には三十四・五円、昭和五十一年七月には四十三・一円、昭和五十四年の六月には五十三・八円の暫定税率が適用されております。

 お尋ねの前後一年間のガソリンの販売量変化でございますが、四十九年の増税に際しましては、直前一年間の販売量が二千七百二十二万キロリットルであるのに対し、直後の一年間は二千七百十二万キロリットルと、約十万キロリットルの減少がございました。また、昭和五十一年の増税に際しましては、直前一年間の販売量が二千九百六十三万キロリットルであるのに対し、直後の一年間は三千三十八万キロリットルと、約七十五万キロリットルの増加でございました。さらに、昭和五十四年の増税に際しましては、直前一年間の販売量が三千四百三十二万キロリットルであるのに対し、直後一年間は三千四百三十万キロリットルと、約二万キロリットル減少しております。

 ただし、燃料の消費量はさまざまな要因によりまして決定されるものでございまして、過去三度の税率の引き上げによる抑制効果の有無、程度について申し上げるのは困難と考えております。

古本分科員 そうなんだと思います。つまりは、車を運転してお出かけになる、あるいはオートバイに乗って通勤か通学に出かけられる、あるいは自動車に依存をしている、病院に行く、あるいは学校に行く、勤めに出かける、これはそれぞれ地域の偏差というのは物すごくあると思うんです。

 これは卑近な例でありますが、例えば東京都の中野区では世帯当たり保有台数は〇・三台です。片や、愛知県飛島村というところでは一家に三・〇台以上あります、三・ちょっとだと記憶しておりますが。つまり、単純に言えば十倍ですね。したがって、そのくらい生活における車への依存度というのが違うわけでありまして、ライフスタイルによっても変わってくると思います。

 特に、四十年代後半からモータリゼーションが飛躍的に伸びた、本格的なモータリゼーションが到来したということを考えますと、今、エネ庁からありましたとおり、単純にガソリンの値段が上がったからといって消費が減るものでもないと思いますし、逆に、暫定税率が切れてガソリンの値段が下がったからといって、これは今が買いどきだぞ、ドライブに行くぞといってみんなが出かけるほど暇ではないと思いますと同時に、むしろ、生活になくてはならないものとして車を運転せざるを得ない中山間地域の方々あるいは郡部の方々、こういう方々が、生活必需品であるガソリンが安くなればむしろ助かっている、財布が助かっている。

 そういうことであって、今、下がったから、さあ使いまくるぞなんという人はなかなか考えにくい中で、きょう、例の総理が根拠にされておられるレポートについて少しお尋ねをしたいと思うんです。

 たしか国立環境研究所ですか、そちらが発表されたレポートに基づいて随分おっしゃっておられるようでありますが、このレポートというのは、ちなみに地域偏差あるいはそういう属性の分析、特に車の依存度の高い低い、はっきり言って、車を持っていなくて、かつ丸ノ内線で通勤している人に、ガソリン下がったらドライブに行きますかなんて聞いたってしようがないわけであります。いいんですよ、持っている人で仮にサンデードライバーならば、せっかくの週末の休みに、ガソリンが下がったから富士山までドライブに行こう、そういう人もいると思います。そういう人が全国七千万人台のドライバーの中で一体何割あって、だからそれだけふえるんだという科学的研究に基づいているのかどうか、教えていただきたいと思います。

西尾政府参考人 国立環境研究所のモデルの分析でございますけれども、これにつきましては、今の点の、地域でございますとかあるいは個々の世帯の分析というようなものを組み込んでいるものではございませんで、全国で見ました場合の燃料とその使用量の弾性値というものを基本にいたしまして全国のCO2の増減を出せるような、そういうモデルで解析しているものでございます。

古本分科員 いや、そうなんです。これは実は私も関心があったので、わざわざ、筑波ですか、そこからその担当された研究員の方にお越しいただいて説明をしていただいたら、本当にびっくり仰天なのが、全国平均で見ているだけなんですよ。

 つまり、多分、先生方が選挙区に帰れば、一家に一台どころか、二台、三台、生活がそもそも車がないとだめなんですという先生もあれば、この山手線管内ですというのであればそれははっきり言いまして車なんて関係ないですよ、電車がありますから。だから、やはり地域偏差、あるいは自動車は、大体乗用車で七千万台のうち半分強、それから軽が大体そのうちのさらに残り半分ぐらいあるんでしょうか。ちなみに、軽自動車なんて、もう地方に行けば行くほど奥様方の本当に生活の必需品ですよね。

 だから、そういう偏差を見た上で、ガソリンが下がったからといってわざわざ、私は出かけます、今度の週末の伊豆旅行、伊豆急で行くんじゃなくて車で行くんです、ガソリンが下がったから車で行くんです、そういう人が一体何割いるかということを調べた上でやはり国立環境研究所のレポートに帰結しないと、全国平均で価格弾力性だけがあるということでは、実は、四十九年、五十一年、五十四年と累次にわたって暫定税率を刻んだときに、結果、絶対量がふえたこともあるんですよ。

 減ったことももちろんある。時々に応じて非常に変わるものでありますから、単なる弾性値があるんだということではなくて、ガソリンというものは、ガソリンが高いからといってほかのものを入れて車が動くわけにいきませんので、代替のきかない非常に希少性のある商品ですから、価格の上げ下げにかかわらず、実は消費量というのはむしろ右肩上がりでふえてきているというのが実態だと思うんです。

 きょうは決算ということですので、ぜひ経産省はここにもっと予算をつけてあげて、そういう誤ったミスリードを総理大臣にさせるようなことのないようなしっかりしたレポートを、もう一度研究して出し直してもらったらどうでしょうか。そういう予算を措置してあげるつもりはありますか。環境省がきょうは来ていますから、環境省ですかね。

西尾政府参考人 個々の家計でございますとかミクロに分析するというのは、なかなか大変難しいことだと思います。今後もそれは研究をしていくということは大切なことではないかと思いますが、現時点で寡聞にしてそのような形でなされた研究成果は存じないところでございます。

 それから、近年、例えば二〇〇五年から二〇〇七年、ガソリン価格が非常に上昇いたしましたが、その間に初めてガソリンの販売量がマイナスになっているということもございます。やはり、基本的には、こういう分析のときに価格弾性値というものはあるということで分析をしていくというのは一つの態度ではないかというふうに思っておりますので、その点を補足させていただきました。

古本分科員 ですから、弾性値がある、ないの議論は、マクロでおっしゃるのではなくて、地域偏差は必ずあるんです。一家に一台なのか、一家に家族の人数プラス軽トラ一台ぐらいある地域かによって、実はそれは、単に値段が上がろうが下がろうが、乗らないと生活できないという人は乗らざるを得ないんです。ガソリンを買わざるを得ないんです。

 そういう人たちに、今暫定税率を廃止することによって、これは下がったぞ、また一山越えてどこか行くかなんて人はいませんよ。自分が本当に、中山間地域からお孫さんを町中のターミナル駅まで毎朝通学でおじいちゃんがかわりに送り届けているとか、それは生活のためにやっているんですから、下がったからといってついでにもう一往復するかなんて、そんな人はいませんよ。

 したがって、価格弾性値だけで、一国の総理をガソリンが下がれば消費がふえるという単純な議論にリードすべきではないと言っているんです。むしろきちっと、四十七都道府県、自動車の保有状況、そして、その自動車を使ってどういう行動をとっておられるかというのはサンプル調査をとれば簡単にわかる話なんですから、それをやったらどうですかと言っているんです。

 どうですか、環境省はお金がないと言うのなら、経産省がつけてあげればいいじゃないですか。

    〔松野(博)主査代理退席、主査着席〕

平工政府参考人 ただいま委員おっしゃりましたように、一般的にガソリンの消費量というのは、価格のほかに所得の伸び、自動車保有台数、燃費向上等さまざまな要因が影響するということでございますので、結果としての絶対量だけを見ましてこれが何の影響かというのはなかなか見きわめがたいところはございますけれども、またガソリンの価格弾性値の程度につきましてはさまざまな見解があるのも事実でございますが、仮に大幅な下落が継続した場合、本来のトレンドに比べてその価格自身の影響はどうかということで見ますと、消費に与える影響は無視し得ないものというふうに考えております。

古本分科員 せっかく決算の場ですから、価格弾性値の哲学論争をここでやるつもりはありませんので、ぜひこういうことにこそ、国交省の例のいろいろな財団に研究と称してお金をあれするのじゃなくて、本当にこれは実のある話ですよ。

 国立環境研究所の方々にしてみれば、時間的な制約、研究費の制約もあった中で、率直に言ってきめ細かな調査という意味では、都道府県偏差、あるいは自動車による生活の依存度といいますか、レジャーで使っているのか通勤で使っているのか、これによって全然違いますね。値段が高かろうが安かろうが、通勤で使っている人は乗るしかないんですから、そういう偏差を調べることなんというのは労力をかければわけはなかったと私は思っていますけれども、残念ながら、今総理がおっしゃっている議論の根拠である国立環境研究所の報告書というのは、実はマクロしか見ていない。なおかつ、価格弾性値というのは、先ほどエネ庁が言っておられるように、商品というのは値段が下がりゃ買うものだし、上がりゃ買わないものだという、そういう思わず苦笑されるぐらい荒っぽい議論なんですよ。

 ですから、一国の総理をしてガソリンが下がれば絶対消費がふえるだなんて断定する前に、再度そういったことを研究したって決して遅くはない、私はそんなことを思っていますので、改めて副大臣、ぜひ研究してみたらどうでしょうか。

新藤副大臣 その政策の裏づけとなる資料を精査して精度を高めていくこと、これは当然必要なことだ、こういうふうに思っています。

 ただ、今やはり福田総理が御心配されているのは、ガソリン価格が急激に、しかも長期間にわたって大幅に下落をした場合に消費に影響というのは出ざるを得ないだろう、こういうことを、国民意識に与える影響というものを非常に心配されているわけでございます。その根拠として今のような値を使っているということでございますので、政策目的として調べるものとそれから政策を遂行する上で判断すること、これは分けて考えなきゃいけないだろう、こういうふうに思います。

古本分科員 私は、国立環境研究所の機能は否定していませんし、むしろエールを送っているつもりであります。ましてや、一国の政策を左右するに資する、実はこれは大変大きなレポートなんですよ。

 そのレポートによると、ちなみに暫定税率が廃止になったら何トンぐらいふえるとおっしゃっていましたか、数字だけお願いします。

西尾政府参考人 国立環境研究所のモデルの計算によりますと、京都議定書の第一約束期間平均では、年間約八百万トンのCO2の増加が見込まれる、こういう計算になっております。

古本分科員 そうなんですね、八百万トン。

 続いてまいりたいと思うんですが、実は、今総理が大変このサミットの年に環境を打ち出しておられるというのは、私はこれは率直に言いまして共鳴するものがございます。

 例の排出権取引の議論もございます。たしか東欧のいずれかの国からその枠を買うんだということも、経産省でしょうか、既に発表されておられるかに思います。でも、実はこれは、原因をもとから絶つのではなくて、対症療法といいますか、日本では吸収し切れない温室効果ガスをどうしても出してしまうので、その分クリーンな国から枠だけ買おうという概念的な話なんですね。決して、この日本の上空あるいはこの東京の都民の皆さんがふだん吸う空気自体が別にきれいになるわけではないんですよ、排出権の枠の取引というのは概念ですから。

 一方、例えばこの二十三区あるいは先生方の選挙区でも、確かに交通渋滞するところとか、いろいろ排気ガスがあるところはあると思うんですけれども、実は車というのは技術が日進月歩で、これは経産省御当局の御指導のもと、さまざまな努力を業界もなさっておられると聞いておりますけれども、ずばり車齢が、新車で登録されてから二けた、十年以上たっているお車というのは全体の何割ぐらいか御存じですか。

内山政府参考人 お答えいたします。

 平成十年以前に新車登録された現存する車は約二千三十万台でございまして、我が国の全台数の約四割を占めております。

古本分科員 四割ということです。実に四割の車が十年以上たっている車ですね。

 特にクリーンな排気ガスといいますか、グリーン税制という税制もあるぐらいですから、吸っても大丈夫とまでは言いませんが、要するにそのくらい本当に日進月歩で、排出ガスというのはより地球の温室効果ガスを排除した、よりクリーンな排気ガスになるようにということでしのぎを削って各社が研究開発にいそしんでおられる、こういうふうに承知しているんですが、実は何と四割も十年以上前のお車なんです。

 このお車が仮に今の基準に適合する新車に切りかわったならば、排気ガスというのは大体何万トンぐらい削減できるんですか。

内山政府参考人 お答えをいたします。

 多様な車種、年式の車がある中で、高年式車をそれぞれどのような新車と買いかえるか、これにより試算結果も異なるため、CO2削減効果を厳密に算出することは困難ではございますが、仮に十年前と現在のガソリン乗用車の平均燃費の差を前提といたしまして大まかに試算をいたしますれば、年間約七百万トン程度のCO2排出削減となります。これは我が国総排出量の約〇・五%に当たります。

古本分科員 副大臣、そういうことなんですよ。

 ガソリンが値下がりしたら、みんな、これで安くなった、車を運転しまくるぞ、そういうことなんでしょう、皆さん方は。そういうことで、仮に運転しまくったとしましょう。私はそんなに言うほど、今日本の皆さん、財布も楽じゃないし時間的なゆとりもないし、そうはないと思いますけれども、仮に百歩譲ってそうなったとしましょう、総理の御懸念どおりに。その場合に、何とふえると言われているCO2が八百万トン。逆に、今言ったように、車齢が十年を超えるような大変高年式の車を新しいものにかえていただくことによって、実はそれ見合い、相当分のCO2が削減できるんです。しかも、永続的に削減できるんです。

 と同時に、東欧のある国から買う算段になっているというそれは、どこから何万トン買うんですか。

伊藤(元)政府参考人 先生御指摘のものは、現在の京都議定書に基づきました、柔軟性の措置としての京都メカニズム、それには三種類ございまして、CDM、JI、それから排出権取引とあるわけでございますけれども、その三番目のことであると思います。

 それにつきまして、現在、いわゆるGISという形で購入することができないだろうかということにつきまして、ハンガリー等の東欧の諸国と検討を進め、あるいは交渉を進めていることは事実でございますが、現段階で、どの国からどの程度の量を幾らで買うかということについては決まっておりません。

古本分科員 これは率直に言って、これまで日本あるいはイギリスが産業革命を経験し、恐らく化石燃料に依存して今日の産業の成果が得られた時代がありました。やがて原子力発電へと移行し、そういう中で、他方、アフリカの皆さんや、あるいはインド、中国の皆さんというのは今、私たちの、先行するいわゆる産業先進国に対し、正直、心の中は穏やかじゃないと思いますよ。かつて自分たちが、おまえたちが百年前やってきたことを今おれたちがやって、何で怒られなきゃいけないんだ、何で石炭をたいちゃいけないんだ、何で石油を燃やしちゃ、重油を燃やしちゃいけないんだと。

 そういう皆様がある中で、地球全体でこういうことをやっていくんだという議論をするときに、私は、枠の取引という概念は極めてコマーシャルベースのにおいがいたしますし、当然にそれをビジネスとされる方々ももう既に登場していますし、いわば排出権取引価格の高騰も今後想像にかたくないわけでありまして、軽々に御当局が幾らでなんて言えるわけがありませんよ、虎視たんたんとみんなねらっている分野ですから。

 でも、これは副大臣、ぜひ御省として御認識いただきたいのは、言っても地球上からCO2が減るわけではありませんから。日本は枠をごめんなさいというペナルティーであれするというだけですから、もとから絶つという意味では、これはすぐれて、本当にはっきり言えば、高年式のお車を例えば新車に切りかえていただく。あるいは新しい車でも、できる限りハイブリッドシステムあるいはプラグインハイブリッド、電気自動車等々、本当に日進月歩で技術開発を進めている中で、どうしても研究開発コストが高くなるんですね。

 当然、産業もそれをより安く消費者にお届けしたい、こういうことで頑張っておられるんだと思いますが、さりとて、これは営利団体ですから、赤字覚悟でやりますというわけにもまいらない。おのずと、依然としてハイブリッド車というのは、排気量、それから車におけるいわゆる車格というんでしょうか、その相場感からいって、私は率直に言って割高に感じておられる方々は多いと思います。これだけ総理をして洞爺湖サミット前に環境だと言っていただいている中で、少なからずハイブリッド車を検討された自動車購入予定者も二の足を踏んだ値段だったかもしれないと思うんですね。

 そうすると、やはりこういう分野にこそむしろきちっとインセンティブをつけて国全体で盛り上げていくみたいなことをしないと、実はもとから絶つということにはできないんですね。やはりそういうことを率先垂範し、また、補助という言い方は余り好きではありませんが、という意味でいえば、現在入っているクリーンエネルギー税制、さらにはハイブリッドの車等々に対する、あるいは電気自動車等々に対するものというものが少なくとも後退してはいけませんし、これで十分かというと、むしろもっとやった方がいいという議論に恐らくなってくるんです。ぜひその辺のところをお伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

新藤副大臣 委員が御指摘いただいていることは非常に骨太の議論であって、私は率直に共感をしております。やはり取引ですとか、それはあなたのおっしゃるように、しょせんはCO2がなくなるわけじゃないですから、それに頼ってはだめだということがあります。しかし、一方で、国際約束として京都議定書を達成する、こういう意味で、なかなか短期的な解決が図れない場合の手段として、いろいろなものを組み合わせしてやっていこうということだと思っているんです。

 ですから、基本は、やはり今我が国で言っておりますように、これから二〇五〇年にどういうCO2の削減がなされるか、これを地球全体で解決の道筋をつけなきゃいけない。これがポスト京都だと思っておりますから、その中で、特に自動車部門におきましては、そういうCO2を出さない車、しかもそれが町の中で普通に手軽に手に入れられるようにしよう、このための技術開発を進めなきゃなりませんし、それの普及のための支援をするのは当然のことであると思っております。

 また、一定の効果、初期のハイブリッドが普及するまでの間の効果は上がったわけでございますから、またその次の新しい取り組みというのを考えていこうというふうに思っております。

古本分科員 力強い御答弁をいただきましたので、ぜひ御省を挙げて御対応いただきますようにお願いしたいと思います。

 最後に、残された時間で、実は今回、閣法で恐らくこれから上がってくるということで、まだ審議に入っていないということで、少し頭出しということでお許しいただきたいんですが、特定商取法及び割賦販売法の一部改正についてお尋ねしたいと思います。

 これは率直に言いまして、いわゆるリフォーム詐欺ですとか、あるいはお年寄りをねらった居座り訪問販売みたいなものですとか、ああいったものを排除するということに関しては、今回の法のたてつけというのはなるほどなと思うんですが、他方で、本当にいろいろとお客様のニーズを聞きながら丁寧に商品を紹介し、理解していただき、それで購入の動機になってくる、そういうきめ細かな販売をしておられる業界もあると思うんですね。

 それが、先ほど来申し上げてきた、例えば自動車なんというのはその代表例の一つではなかろうかと思っておりまして、いわゆる単純に飛び込みでピンポンと押して、車を買いませんかというパターンももちろんあるんだとは思いますが、むしろ、今お求めいただいている車の御用聞きというんでしょうか、調子はいかがですかとか、あるいは、そろそろまた車検ですけれども、どうされますか、通されますか、それとも新しいものになさいますか、こんな車が出ていますよと。それはやはり千差万別の、本当にセールスの方々のノウハウの中でやっておられると思うんです。

 これを一からげにして、とにかくだめだ、こういう動きに対して、恐らく販売の前線に立っておられる方々、自動車に限らず、本当にまじめな訪問販売をなさっておられる方々は、今回の動きというのは注視をされておられると思うんですが、今後の議論の大きな方向性について少し教えていただきたいと思います。

新藤副大臣 今回の特商法の改正、最大のねらいは、要するに、消費者が断っても無理に何度も何度も押しかけていったり、それから居座っちゃって、契約しないとこの勧誘が終わらないから契約してしまうとか、そういうような悪質なケースが大分目立ってきた。しかも、今まではある分野の販売について、これとこれとこれというふうにポジティブリストでリストを挙げて、こういう契約の場合はだめですよと言っていたのを、今度は全般的に、基本的にすべての契約行為にわたって、悪質な勧誘はいけませんよ、そしてこれを除くものを除きます、こういうネガティブリスト化しよう、こういう大転換なんですね。

 その中で、今委員が御心配いただいているところ、善良な契約者、善良な事業者の方には、これは問題にならないようにしなければいけないのは当然のことでございます。

 それで、まず今回、契約を締結しない旨の意思を表示した者、この者に対して当該契約の勧誘を禁止する。これは具体的には、主にはまず居座り、それから何度も勧誘をする、こういう部分について、本人の意思を確認して、私は契約しませんと言ったらそこでやめなさい、こういうふうにしましょうということでございまして、訪問販売を禁止するものではありません。それから、セールスというのは、そんなこと言ったって、最初の一言で、買いませんか、要りません、こんなふうになりません。ですから、いろいろな関係で、お茶でも飲みながら話をしながら、そういう中で善良な、適正な訪問販売が行われるように、これを担保していきたい、このように思っております。

古本分科員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひ経産委員会で審議の際には、また慎重審議、充実審議を期待したいと思います。

 ありがとうございました。

木村主査 これにて古本伸一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後五時四十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.