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第2号 平成21年4月21日(火曜日)

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平成二十一年四月二十一日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 谷川 弥一君

      阿部 俊子君    赤池 誠章君

      秋葉 賢也君    坂井  学君

      棚橋 泰文君    額賀福志郎君

      福田 峰之君    安井潤一郎君

      市村浩一郎君    金田 誠一君

      川内 博史君    北神 圭朗君

      後藤  斎君    松木 謙公君

      松本  龍君    森本 哲生君

      山井 和則君    吉田  泉君

      伊藤  渉君

   兼務 冨岡  勉君 兼務 赤羽 一嘉君

   兼務 高木美智代君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       石破  茂君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働副大臣      渡辺 孝男君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官 平川 素行君

   会計検査院事務総局第二局長 小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長 金刺  保君

   会計検査院事務総局第五局長 真島 審一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐藤 文俊君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長) 吉良 裕臣君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 西村 善嗣君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官) 倉持 隆雄君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官) 惣脇  宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 北村  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 坂本 森男君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 榮畑  潤君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 尾澤 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長) 太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長) 村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官) 實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長) 町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長) 竹谷 廣之君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長) 吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長) 佐々木昭博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      内藤 邦男君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長) 谷津龍太郎君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁) 安居 祥策君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     赤池 誠章君

  棚橋 泰文君     福田 峰之君

  額賀福志郎君     阿部 俊子君

  金田 誠一君     森本 哲生君

  松木 謙公君     後藤  斎君

  松本  龍君     川内 博史君

  坂口  力君     伊藤  渉君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     額賀福志郎君

  赤池 誠章君     坂井  学君

  福田 峰之君     棚橋 泰文君

  川内 博史君     仲野 博子君

  後藤  斎君     市村浩一郎君

  森本 哲生君     吉田  泉君

  伊藤  渉君     坂口  力君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     松木 謙公君

  仲野 博子君     松本  龍君

  吉田  泉君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  山井 和則君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  北神 圭朗君     金田 誠一君

同日

 第一分科員冨岡勉君、赤羽一嘉君及び高木美智代君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

 平成十九年度特別会計歳入歳出決算

 平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十九年度政府関係機関決算書

 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)


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     ――――◇―――――

谷川主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 平成十九年度決算外二件中、本日は、農林水産省所管、農林漁業金融公庫及び厚生労働省所管について審査を行います。

 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。石破農林水産大臣。

石破国務大臣 平成十九年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は三千五百五十六億千百九十万円余に対しまして、収納済み歳入額は三千八百五十五億八十二万円余であり、差し引きいたしますと、二百九十八億八千八百九十一万円余の増加となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は三兆二千九十二億五千六百六十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆七千八百十七億六百六十八万円余、翌年度繰越額は三千三百二億八千七百十九万円余、不用額は九百七十二億六千二百七十四万円余となっております。

 次に、各特別会計の決算について御説明申し上げます。

 まず、食料安定供給特別会計につきましては、農業経営基盤強化勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆六千百七十二億九千五百九十一万円余、支出済み歳出額は二兆五千四百二十三億千八百五十六万円余でありまして、歳入歳出差し引き七百四十九億七千七百三十五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところにより、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、食糧管理勘定の損益計算上の損失は千五百十九億二千百八十五万円余でありまして、この損失は、法律の定めるところにより調整勘定に移し、調整資金を減額して整理することといたしました。

 このほか、農業共済再保険特別会計、国営土地改良事業特別会計、森林保険特別会計、国有林野事業特別会計及び漁船再保険及び漁業共済保険特別会計がございますが、これらの特別会計の概要につきましては、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。

 以上をもちまして、平成十九年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

谷川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院金刺第四局長。

金刺会計検査院当局者 平成十九年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項三件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項八件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号七一四号は、設計が適切でなかったものであります。

 同七一五号は、工事の施工が設計と相違しているものであります。

 同七一六号は、事業の一部を実施していないものであります。

 同七一七号、七二四号、七二五号、七二七号、七二八号及び七三〇号は、工事の設計が適切でないものであります。

 同七一八号は、補助の対象とならないもの及び補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 同七一九号及び七二六号は、補助対象事業費を過大に精算しているものであります。

 同七二〇号から七二三号までの四件は、補助金を過大に受給しているものであります。

 同七二九号は、事業の一部を実施していないもの及び補助の対象とならないものであります。

 同七三一号、七三五号、七三六号及び七三八号は、補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 同七三二号は、補助の目的を達していないものであります。

 同七三三号、七三四号及び七三七号は、補助対象事業費を過大に精算しているもの及び補助金を過大に受給しているものであります。

 同七三九号は、補助金の交付額の算定が適切でないもの及び補助対象事業費を過大に精算しているものであります。

 同七四〇号から七五一号までの十二件は、不適正な経理処理を行っていたもの及び補助の対象とならないものであります。

 同七五二号から七五六号までの五件は、貸し付けが適切でないものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、林業・木材産業改善資金貸付事業の運営に関して意見を表示いたしたもの、その二は、新農業水利システム保全対策事業における農業水利システム保全計画の策定に関して改善の処置を要求いたしたもの、その三は、農業集落排水事業の計画及び実施に関して改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業等における事業実施の確実性に係る審査等に関するもの、その二は、森林環境保全整備事業等における受託造林の採択に係る判断基準に関するもの、その三は、沿岸漁業改善資金の貸し付けにおける審査、確認等に関するもの、その四は、国営土地改良事業所等において使用する固定電話の通話料に関するもの、その五は、農林水産省所管の委託事業の実施に当たっての区分経理に関するもの、その六は、政府所有米穀の委託変形加工における基準変形加工単価の算定等に関するもの、その七は、牛に係る家畜共済事業における共済金の算定に関するもの、その八は、被災職員に対する離職後における休業補償等の支給額の算定に関するものであります。

 これら八件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十八年度決算検査報告に掲記いたしました農業災害補償制度(農作物共済)の運営について意見を表示した事項につきまして、その結果を掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

谷川主査 次に、会計検査院真島第五局長。

真島会計検査院当局者 平成十九年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。

 これは、統合して株式会社日本政策金融公庫となる三公庫における職員住宅の管理運営に関するものであります。

 平成二十年十月一日に統合して株式会社日本政策金融公庫となりました国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫は、それぞれの住宅規則等に基づき、所有住宅または借り上げ住宅を職員住宅として、業務上必要と認められる職員に対して貸与しておりました。しかし、職員住宅の管理運営及びその必要性の検討が各公庫によりそれぞれ別に行われていることなどのため、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫の所有住宅に一年以上の空き室があるにもかかわらず、別途、借り上げ住宅を職員に貸与している事態が見受けられました。したがいまして、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫において、所有住宅に空き室がある場合は、当該所有住宅への入居を最優先することとして、借り上げ住宅の速やかな削減を図り、また、各公庫において、職員住宅の入居状況等の情報を共有するなどして各公庫が現在保有する所有住宅を全体で有効活用することを検討して、統合の効果の発現を期するよう適宜の処置及び是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

谷川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。石破農林水産大臣。

石破国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十九年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。

 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、会計検査院の平成十九年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、直ちに補助金返還、手直し工事の実施等の是正措置を講じておりますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。

谷川主査 次に、安居株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁。

安居政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、御説明申し上げます。

 旧農林漁業金融公庫において、統合前に他の二公庫との職員住宅の相互利用につきまして処置要求を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾でございます。

 御指摘の点につきましては、今回の統合後、日本政策金融公庫全体としての観点から、各事業本部間の職員住宅の相互利用を実施しており、今後とも適切な運営に努めてまいる所存でございます。

谷川主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷川主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

谷川主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池分科員 自由民主党の赤池誠章です。

 きょうは、農林水産省の政策について質問をさせていただきたいと思います。

 日本は、太古の昔から、木の国、木の文化、森の文化ということが呼ばれておりまして、山は、木は信仰の対象でもございました。日本人の暮らしの中には、まさに木、森というものが創意工夫されて取り込まれてきたわけであります。

 現在でも、国土の三分の二が森林であり、山菜、野草などの食料であったり、家や家具などの木材を提供したり、洪水や土砂崩れの防止など、生命や財産を守ったり、たくさんの動植物にすみかを提供したり、おいしい水をはぐくみ、地球温暖化防止など、公のためのさまざまな働きがあることは周知の事実ではないかと思っております。森林を適切に整備保全することは、まさに国づくりの基礎の大事な部分だと思っております。

 その森林を守り、育ててきたのが林業ということになるわけであります。しかしながら、近年は、御承知のとおり、採算性が非常に悪く、山村の活力低下など、間伐などが行われないで、先ほど述べました森林の公のための機能が低下をしてきているのではないかという懸念が言われております。

 このような中で、森林の公的機能、公のための機能をしっかり働かせていくということが国政の重要な課題ではないかと考えております。特に、森林の四割を占めると言われる育成林、人工林について、適切な間伐の実施、広葉樹林化など、多様な森林をつくっていくということが言われているわけであります。このことは最近の花粉症の問題からも大事だというふうに言われております。

 そのような中で、森林資源は、戦後築き上げてきた育成林を中心に利用可能な状況に一面ではなりつつありながらも、国際的には大変木材需要が増大している今が、適切な整備保全の、まさに森林そして林業の再生を図っていく上でも絶好な機会ではないかと思っております。

 そのためにも、林業の人の問題、担い手の確保ということが大変重要になってくるわけでありまして、林業への担い手対策について、当局から政策、見解をお聞かせ願いたいと思います。

内藤政府参考人 林業の担い手をいかに確保していくかというのは非常に重要な課題でございまして、現在、緑の雇用担い手対策事業を通じましてその確保を図っているところでございます。

 具体的に申し上げますと、森林整備の担い手として必要となる基本的な技術、技能の習得を一年目の研修で行います。それから二年目には、かかり木あるいは風倒木処理等の高度な技術についての研修を行い、三年目には、低コストで効率的な森林施業に要する技術についての研修、こういう形で、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングということで研修を行っております。

 その実績でございますけれども、平成十五年度から十九年度までの研修修了者は、合計で約七千二百人となっております。二十年度は千三百人程度と前年度より増加するという見込みでございます。

 これらの者は継続して林業に従事しているのかどうかについて調べましたところ、平成二十年四月現在で、平成十七、十八、十九の三年間の研修修了者の約八割が継続して林業に従事しているという状況になっております。

 以上でございます。

赤池分科員 そういう面では、農水省、林野庁の政策が、経験のない方でも、オン・ザ・ジョブ・トレーニング研修を踏まえながら実施をされて八割の定着率ということでありまして、非常に政策の成果があらわれているのかなというふうに聞いております。

 そういう面では、改めて、森、山、木というものに対して、当たり前過ぎるんですが、ぜひ、そういった担い手に関して、そういう新しい雇用もあるんだ、働き口もあるんだということでの広報、普及も力を入れていただきたいなというふうに思っております。

 あわせて、林業だけではなくて農業についても、担い手対策についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 特に、新規就農を促進させるために、林業と同様に、担い手対策、雇用対策という側面から、特に農業というのはどうしても自営または個人経営というのが中心になる中で、なかなか直接自分が経営者になるというのはどの分野でも難しい話の中で、農業法人へ就職するということであればぜひ農業をやってみたいというニーズは相当大きいのではないかというふうに思っておりまして、そういう面で、農業法人への支援策というものをぜひお聞かせ願いたいと思います。

高橋政府参考人 委員御指摘のとおり、農業法人等への雇用支援というのは、今後の担い手対策上も非常に重要な手段だというふうに私どもも考えております。

 最近の状況でございますけれども、平成十八年では六千五百人、平成十九年には七千三百人ということで、農業法人におきます雇用就農者というのは近年増加傾向にございます。

 このようなことから、平成二十年度の二次補正予算におきまして、農業法人などが就農希望者を雇用し、実践的な研修を行う費用といたしまして、一人一月当たり最大九万七千円を支援いたします農の雇用事業というものを創設したところでございます。

 本事業につきましては、この三月に募集を行ったわけでございますけれども、当初、千人規模で事業を実施するということを予定しておりましたけれども、実際の応募の人数が千八百人を超えるというような非常に多数の応募がございました。この結果、千五十七法人、千二百二十六人につきまして事業を行うこととしたところでございます。

 このような状況でございますので、今後さらに二千人規模で事業を追加実施する、あるいは、今申し上げましたような研修費のみならず、住居費等、雇用環境の整備に要する経費についても新たに支援ができないかということで、これらにつきましては、先般総理から御指示のございました経済危機対策の中に盛り込んでいるところでございます。

赤池分科員 林業も農業も、これはすべての産業に共通するわけでありますが、やはり担い手というのが一番大事だというふうに思っております。

 経営の神様の松下幸之助翁の言葉に、不況またこれもよしという言葉がございます。好況はもちろんいいわけですが、不況だからこそ、今だからこそできることというのがたくさんあるという教えであります。世界同時不況の今だからこそ、逆に改めて農林水産業に人材確保ができるという側面があるのではないかというふうに思っておりまして、そういう面では、林業、農業、ぜひ担い手対策に力を入れていただきたいと思いますし、まだまだ規模が少ないというふうに思っておりますし、ニーズがあるのであれば、こういうときのための補正予算ということでありますから、総理の御指示の中で最大限そういった形での支援をお願いしたいと思います。

 その中で、一点、これはどうしても縦割り行政になるのでしようがない部分があるとはいえ、人の問題、雇用の問題というのは今一番最大の喫緊の課題である中で、仮に広報、普及をもっとしてほしいという中で、端的な例、農水省のホームページをぽんと開いたときに、そういった問題がどこに書いてあるのかが全くよくわからない。当然、それぞれの団体に委託してあったり、ハローワークとの連携というのも聞いてはいるわけでありますが、やはり農水省として、トップに、自然の懐に抱かれて、あなたも林業や農業や水産業を含めて働いてみませんかというような形で、きちっとだれが見てもアピールできる、そんなちょっとした工夫も、せっかくいい事業をやっているわけですから、広報の面も力を入れていただきたいというふうに思っております。

 そんな中で、前向きな話ということで、植物工場の話を聞かせていただきたいなというふうに思っております。

 昭和六十年、二十四年前に、つくばで万博が開かれまして、そのとき、トマトがたくさんなるというようなシーンが大変話題にもなりましたし、私も相当、四半世紀前の話にしても印象に残っております。ああ、これからの農業はそういう道筋が開けてくるのかなという、まさに万博ならではの未来に希望を持たせるシーンではなかったのかなというふうに思うんですが、残念ながら、それ以来、そういったものはやはり夢物語だったのかということで、一向に進展しない中で、最近、マスコミやテレビ、また農水省の方でも関係者、有識者を招いたフォーラムを開くなど、また経産省の場でもそういった実験的な部分を開設する、大臣も参加をしたというのも聞いておりますが、改めて、補正予算の中にも盛り込まれた植物工場というものに対して、意義そして支援策についてお伺いをしたいと思います。

石田(祝)副大臣 植物工場につきましては、季節や天候に左右されずに計画的、安定的な生産が可能である、こういう利点があるわけであります。また、民間企業による農地以外への立地も可能である、こういう特徴も有しております。新たな農業生産の形態として期待が高まっていると思っております。

 農林水産省では、従来より、植物工場の基礎となる環境制御技術について研究開発を進める一方で、十五年以上前から補助事業でその整備を支援してきたところでございまして、現在、約五十カ所の工場が稼働中でございます。

 さらに近年は、LEDやロボット技術等が目覚ましく発展をし、このような新しい技術の活用によりまして、植物工場における農産物の生産性や品質がより一層向上することが期待されております。

 こういう中で、農林水産省といたしましては、当面の目標として、一つは、三年後までに植物工場における野菜の重量当たりの生産コストを三割縮減しよう、そして第二点目に、植物工場の設置数の三倍増、今五十でありますから、これを百五十程度にまでふやしていきたい、このように考えておりまして、本年度から新たに、外食や加工向けの原料を安定的に供給するために植物工場を整備する取り組み等に対しまして支援を講じております。

 また、今般の経済危機対策において、生産コストの縮減を図る技術実証拠点の整備、植物工場の導入支援策を盛り込んだところでございまして、今後ともその普及拡大に向けて支援を行ってまいりたいと思っております。

赤池分科員 非常に不況で、さまざまな問題が言われる中、やはり人間は前向きな希望がなければ進んでいけないという中で、大変いい事業ではないのかなというふうに思っておりますし、何といっても、いわゆる初期コストまた運営コスト、やはりこのコストというのが通常よりも高いという課題がはっきりしているわけでありますので、そういうときだからこそ、ぜひ農水省の積極的な支援をいただきたいなと。

 あと、ネーミングですね。食べ物を扱うのに工場というのは、もちろん工場でつくるので工場なんですが、もっとソフトでわかりやすくて、いいイメージもあるようなことも、順次普及するためには大事かなというふうに思っておりますので、御検討いただきたいなというふうに思っております。

 続きまして、昨年度、耕作放棄地の全国調査が実施をされたところでありまして、その実態調査の結果が公表されたところであります。今までは、自主的な耕作をしているかしていないかということであって、本当にそれが耕作放棄地かどうかということがはっきりわからなかった中での全国調査ということで、助成も行った中での調査が進められたということは、実態がわからなければ対策の打ちようがないわけでありますから、大変よかったなというふうに思っております。

 そんな中で、耕作放棄地の活用、さまざまな政策がある中で、一つのアイデアとして、企業が農業参入をする、福利厚生の面とか社会貢献の面で、もっと一般の企業が耕作放棄地を活用して、企業の農園づくりみたいな発想で使っていくというのも一つの活用策になるのかなというふうに考えておりまして、そういう面での支援策はどういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞かせ願いたいと思います。

吉村政府参考人 耕作放棄地を活用した、特に企業が参入して福利厚生目的で活用するというようなことについての取り組みでありますけれども、まず企業参入の方から参りますと、企業も含めて、農業生産法人以外の法人につきましては、現時点におきましても、市町村等から農地を借り受けるリース方式によって農業参入が可能になっております。このリース方式で農業参入している法人は、平成二十年九月時点で三百二十法人ということになっております。

 また、企業やNPOなど多様な担い手が農地の貸借を通じて地域と連携した取り組みを行うこと、こういった取り組みを一層促進していくということで、農地の貸借に関する規制を見直すことを内容とする農地法等の一部を改正する法律案を今国会に提出して御審議をいただいているところでございます。

 次に、耕作放棄地の再生利用でございますけれども、今申しましたような制度面の措置に加えまして、平成二十一年度予算におきまして、新たに、耕作放棄地再生利用緊急対策、約二百六億円でございますけれども、これを創設いたしまして、貸借等によって耕作放棄地を再生利用する取り組み、それから、これに附帯する用排水施設等の整備、農地利用調整、営農開始後のフォローアップなど、耕作放棄地を活用して農業参入する企業も活用できる支援策を総合的、包括的に講ずることとしております。

 また、委員御指摘のような福利厚生目的ということになりますと、余り大きな面積を必要としない場合もございます。そういった意味では、農用地区域の中の農地だけでなくて、農用地区域外の農地を活用するということも考えられると思っておりまして、先ほど委員御指摘になりました調査の中でも、農用地区域の外で、草刈りや抜根などの作業を行えば耕作可能になる耕作放棄地が六・六万ヘクタール程度あるというふうに推定をしております。これを活用していく上で、御指摘の、企業が福利厚生目的で利用するということも一つの有効な方策であるというふうに考えております。

 このため、耕作放棄地対策を進める地域の協議会、ここがこういった耕作放棄地に関する情報を提供する、また貸借のあっせんを行うということが考えられますので、そういった取り組みが円滑に進むように支援をしていきたいというふうに考えております。

赤池分科員 そういう面では、多様な担い手に耕作放棄地、貴重な農地を守っていただくという面の中で、企業の農園づくりへの支援を引き続きお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、果樹に関してお伺いをしたいというふうに思っております。

 果樹経営の農業の部分というのは、今までは米中心の農政の中で、フルーツというのはどうしてもマイナーな部分があったのではないかというふうに思っておりますし、またそのフルーツの中でも、ミカンそれからリンゴが中心でありまして、私の地元である山梨などのブドウ、桃、スモモ、サクランボなどというのはどうしても、そのフルーツの中でもマイナーフルーツと言われていたわけであります。

 そんな中で、平成十九年から、構造改革の農政という形の中で新しい農政が進んでいるということがあったわけで、大変、政策としては転換を歓迎するところであります。

 改めて、果樹の経営支援、特に果樹産地の生産基盤整備に際して、長期間未収穫で収入が減少する農家の費用負担の軽減措置を含めて、現状と課題を簡単に教えていただきたいと思います。

本川政府参考人 御指摘の果樹につきましては、十九年から果樹経営支援対策事業において支援を行ってきております。内容としましては、優良品目や品種への転換、あるいは園地整備、こういったものを支援しておりまして、これまで二年間で約四千件、千六百ヘクタールの果樹園で事業が実施されております。

 この事業を実施する過程でいろいろな運用の見直しの要望がございます。そういうものにも私ども適切に対応しておりまして、例えば昨年秋には、これまでは同一品種への転換というのはなかなか難しいということでお断りをしておったんですが、新しい技術を導入することを前提にして、同じ品種への転換をお認めするとか、あるいは、管理されていない園地、従来は管理がきちんと行われている園地の改植のようなものを支援しておったわけでありますが、放任をされている園地についても改植を支援するとか、このような見直しを行ってきているところであります。

 そういう中で、御指摘の未収期間への対応でございます。改植をして収入が得られるまで何年かかかる、それへの対応でございますけれども、これに対しましては、今説明申し上げた事業の中で、大苗を供給するための育苗圃、苗をある程度大きくして改植をして、できるだけ園地における未収期間を短くする、そういうような取り組みに対しても支援をするということを用意いたしております。

 このような事業を活用して、今後とも支援をしてまいりたいと考えているところであります。

赤池分科員 ぜひ引き続きお願いをしたいというふうに思っております。

 そして、果樹に関連すると、これは果樹に限らないんですが、やはり天候に左右される、これが農業の特徴でありまして、そういう面での共済ということに関して、これは大変重要な政策だというふうに思っております。

 そういう面では、十九年度から運用を改善して、さまざまきめ細かくニーズに合わせて転換をして、できるだけ加入率を上げていこうということでの取り組みに関して大変評価をする一方でありながら、これもなかなか、全国的に言うと、上がったところもあれば、また逆に落ちてしまうところもあるということで、一進一退の状況というのも聞いております。

 そういう面での果樹共済についての、二十年産の加入状況及び課題についてお伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 二十年産の果樹共済の加入状況でございますけれども、委員御指摘のとおり、全国では四万五千ヘクタール余ということで、ほぼ対前年同様ということでございまして、樹種ごとについて、地域ごとに見ましても、加入率について全樹種平均で二五・三%、これも前年並みになっております。

 ただ、全国的には以上のような状況でございますけれども、地域ごとに差がございまして、例えば山梨県におきまして、二十年産の加入面積については千八百九十五ヘクタール、一〇一・三%という形で若干伸びております。これは、樹園地単位のひょう害などを対象といたします特定危険方式の加入面積が前年に比べまして三十ヘクタール増加し、それで、これは主流でございますけれども、千四百四十八ヘクタールになったということによるところが大きいところでございます。

 十九年産からは、御指摘のとおり、果実の減収あるいは品質低下を伴います生産金額の減少を補てんする方式についての見直し、あるいは地域別危険段階別掛金率について、個々の農業者ごとに掛金率を設定するような改善、あるいは選果場単位で組織化を図りまして、大規模な経営体と同様に、小さな規模の農家でありましても、選果場単位でまとまることによりまして、低い掛金率を行うような見直しということの運用改善を実施しております。

 これらを全国的に推進しておりまして、例えば今申し上げましたような選果場単位での組織化ということで、小さな規模の農業者でありましても、大規模農業者と同じような形で低い掛金率を適用するということで、加入面積をふやしているところもございます。

 ただ、山梨の場合、先ほど申し上げましたように、それ以前の段階で、いわゆる特定の損害を対象といたします共済掛金の樹園地単位の特定危険方式、これでまず加入を推進したということでございますので、次は、今申し上げましたような全国的な改善というものを、さらにこれを紹介しながら加入促進に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

赤池分科員 人間というのは、何かあったときにはありがたいなと思う反面、災害がなければ逆にコストが高いのでそこから削りたい、これはしようがない部分がある反面、いざ何かあったときにこういったものは大変重要だと思っておりますので、引き続き普及、広報をよろしくお願いしたいと思います。

 あと、攻める農業ということの中で、輸出振興ということに大変力を入れているわけでありますが、そんな中で、山梨を初め、まさに手塩にかけた農産物をきちっと輸出していくということが大変重要になってくるということでありまして、徐々に成果はある反面、まだまだ課題もあるということの中で、今後の対策について改めてお伺いさせていただきたいと思います。

本川政府参考人 果実の輸出でございますが、日本の果実は非常に品質がいいということで、海外でも御好評いただいております。

 現状、輸出振興に本格的に取り組み始めた十八年と比較いたしまして、金額でありますけれども、七十七億円だったものが平成二十年では約百二億円ということで、三二%増しになっているという状況でございます。

 今後とも、高品質な日本産果実の特徴を生かして、他国産の果実との差別化、こういったものによる販売活動を引き続き展開していくことが重要であろうと思っております。

 そのための対策といたしましては、高品質をイメージさせる日本産果実というものを売り込んでいく、そのために私ども、山梨県に所在しています富士山をイメージしたマークをつくりまして、こういったものを見本市やらあるいは販売促進活動に活用していく、こういったものへの支援を行っていきたいと思っておりますし、それから輸出に向けた施設整備、そういうものにつきましては、強い農業づくり交付金という支援策の中に特別の輸出枠を設けまして支援を行う、そういったことを行っております。

 それから、輸出をするということになりますと、植物検疫をクリアしなければならないということで、それの協議の加速化、こういったことに取り組んでいるところでございまして、今後とも、このようなことを通じて、果実の輸出振興への取り組みについて支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

赤池分科員 地元の方々に聞くと、検疫というものに対する情報がまだ少なくて、もっと簡単にやってもらってもいいじゃないかというような、国際的な情報も不足しているのかなということもありますので、ぜひ広報、教育も含めて、情報提供をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、輸出する面においては、商標の問題が問われます。特に最近「山梨勝沼」という地名が中国で登録をされていたということで、地元でも問題になっておりますし、それ以前は「青森」という商標もですし、特許庁に聞きましたら、全国各地の地名が有名なところはほとんど商標登録がされているなんという話まで出ている中で、今後、地名ブランドが輸出したときに大変問題になってくるということになるわけであります。

 これが都道府県、地域で頑張れというのはもちろん簡単なんですが、これだけ国で攻める農業、輸出振興をする中で、特にこれからは農産品というのがある中で、きちっと国全体として取り組む姿勢が大事ではないかというふうに思っておりますので、農水省としての商標問題に関する取り組みについて、お伺いをさせていただきたいと思います。

石田(祝)副大臣 全くそのとおりだと私も思います。

 近年、中国におきまして、日本の地名が商標出願されている、こういう問題がございます。今、委員もお触れになりました「青森」、また委員の御地元の「山梨勝沼」、これが実は昨日中国で商標として公告をされた、こういうこともございます。

 こういう問題につきまして、我が国の地名が海外で商標登録されてしまうと、日本産農産物の輸出促進を図っていく上でもこれは大きな障害となる、このように考えておりまして、全力でこの問題について取り組んでまいりたいと考えております。

 具体的には、中国の商標法では、一般に知られた外国地名は商標とすることができない、このようにされておりますので、私たちとしても、日本政府として、中国政府に対し、外国地名の公正かつ適正な審査の実施について、今までも機会をとらえまして申し入れを行ってきております。

 この中で、本年二月に、中国の副大臣級であります副局長より、外国の地名の商標出願問題については厳正に審査することを約束する、こういう回答も引き出したところでございまして、一定の前進と考えております。

 また、農林水産省におきましては、今年度から、中国等の海外における商標出願状況を地方自治体や農林水産業の関係団体が一体的に監視する体制を整えまして、疑義のある出願を発見した場合は、関係者に速やかに通知される仕組みを整備することといたしております。これによりまして、通知を受けた関係者が直ちに異議申し立てや無効取り消し請求を行う、こういうことが可能になってまいります。

 こういうことを通しまして、しっかりと知的財産面での保護強化に取り組んでまいりたいと考えております。

赤池分科員 これは各地方の問題ではなくて国家的な問題だというふうに思っておりますので、農水省が取りまとめてやっていただけるということでありますので、引き続きぜひお願いをしたいと思います。

 時間がそろそろなくなってまいりまして、最後に、ワインの振興についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 ブドウからつくるワインということでありまして、このワインをつくる上での農水省等の取り組み、品種改良などの取り組み状況についてお伺いをさせていただきたいと同時に、ワインといえば、当然、本場EUのワイン市場におけるラベル表示の問題も、実は地元から具体的な要望として出ております。

 甲州種、甲州ブドウという日本独自のブドウが、OIVという葡萄・ワイン国際機構でブドウ品種、この甲州を登録しないと、これがなかなかワインの表示で使えない、そういった具体的な輸出振興においても課題も出ておりますので、農水省と、それから輸出の問題に関しては国税の問題だということになると思いますので、それぞれお伺いをさせていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 品種開発の件についてお答えをいたします。

 ワイン産業の振興を図るためには、我が国に向いた栽培特性を持ち、高品質なワインを生産するための品種を育成していくことが重要でございます。このため、農林水産省では、山梨県に育種試験を委託し、栽培適性とワイン醸造適性をあわせ持つ専用品種を育成しているところでございます。

 これまでに、白ワイン用品種として、豊産性で、ワインの香り、味のバランスともに良好なサンセミヨン、赤ワイン用品種として、着色にすぐれ、酸が少ないビジュノワール等を育成しております。さらに、最近では、色づきがよく、冷涼な地域でも糖度が高い赤ワイン用品種、アルモノワールを育成したところでございます。

 今後も、ワイン産業の振興を図るために、新しいワイン用品種の開発に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁といたしましては、EU向けの国産ワインの輸出促進に取り組んできたところでございます。

 御指摘のEUワイン市場におきますブドウ品種のラベル表示問題につきましては、関係団体等を通じまして承知しておりまして、この問題を解決するためには、現在、ブドウ品種のOIV等への登録が必要であると理解をしております。

 国税庁といたしましては、現在、ブドウ品種である甲州のOIVへの登録につきまして、関係省庁と連携して情報収集するなどいたしまして、対応方を検討しておるところでございます。

赤池分科員 以上で質問を終わらせていただきたいと思います。引き続き、農水省初め関係省の御努力を期待いたします。

 どうもありがとうございました。

谷川主査 これにて赤池誠章君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 おはようございます。民主党の森本哲生でございます。

 決算行政監視委員会の質疑の機会をいただきましたので、ただいまより、農林水産、特に林業を中心に質疑をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。大臣には初めての質問でございますので、よろしくお願いします。

 それではまず初めに、二十一世紀の森づくりについて質疑をさせていただきます。

 私がこの委員会で質疑の機会をいただいたということもあろうかと思います。その関心もあるということから、ここ数日間、新聞紙上で林業、森を取り上げる記事が非常に目についたわけであります。思いというのは私も同じ思いをしておりまして、そしてまた、私自身が、今の林業、森林を非常に危惧しておるということも一致をいたしている。また、私自身はこうした記事は非常にありがたいというふうに思っておるわけでありますが、そうしたことを含めてきょうはお話をさせていただきます。

 森林・林業基本法で言うところの二十一世紀の森づくりと、そして林業に欠かせない視点とは何か、簡潔にそのことについてお伺いをいたします。よろしくお願いします。

石破国務大臣 林業の果たす役割というよりも、国土の三分の二を占める森林の果たす役割ということが、これがなかなか多くの方々に御理解をいただけないところがあります。

 よく、国土の保全、水源の涵養、林産物の供給、こう言われます。また、あるいは災害防止、温暖化の防止への寄与、生物多様性の保全、そういうような役割についてなんでありますが、実際、町中に住む人が、そうはいっても、そういうような林業の必要性、森林の重要性と言われてもなかなか理解できないねと、ここに問題があるんだろうと思っております。

 そういうような森林の持つ特性というものはほっぽっておいたらよくなるかというと、そういうものでもない。世界全体で見れば木の切り過ぎというのが今問題になっているわけですが、日本の場合に、ある意味で、変な言い方ですけれども、木の切らな過ぎというのか、森林が整備されていないというのか、森林をきちんと整備をすることによって、今申し上げたような多くの機能が発揮されるということなんだと思います。

 私自身も、選挙区は地方なんですが、市内に住んでいますので、子供のころ、その辺のことがよく理解できていませんでした。そのあたりをきちんと理解させる、そして、どうすれば日本の森林がきちんと守られるか、整備をされるかということがきょうの御議論の中心かなと思っております。

森本分科員 大臣、ありがとうございます。

 林業基本法のいろいろな基本理念を並べられるのかと思いましたが、的確にそうした現実をよく感じておられるというようなことで、私自身も大変うれしく思います。

 特に、木を切らなさ過ぎるという視点から、やはり我々は、この私も、十五歳ぐらいから実は組の出合い等で植林をさせていただいて、こんなところまで歩いて植えるのかな、一時間以上あったと思いますが、そこへ二百の苗を運んで、一日で植え込んでくるということ。ただ、そのときは、単価が抜群に、例えば一ヘクタール一千万、六十年ぐらいのヒノキになりますと、もう宝のような山、その思いで植えられたと思います。そして国の方も、そうした経済発展、それは日本の国土を守るという意味も含めてこの政策はとられてきたというふうに思っております。

 しかし、経済価値、余りにもそこに力を入れ過ぎて、必要でないところにも植林をしてしまった。これは少し間違った森づくりだし、森というのは、私は森と森林とは別個に考えておりますので、林業の経営をやってしまったというところ、ですから、ここのところは、誤った政策とは申し上げませんが、自分たちがそうして税金を使ってやったことに対して、きっちりと国が責任を持って管理する義務があるということをしっかり認識していただきたい。

 それを国民の皆様にもPRをしていただかないと、例えばきょうの取引を聞いておりますと、一ヘクタールが何と五十万円です。ですから、一ヘクタールを十年間植え込んで、そして下刈りをして枝打ちをして除伐をして、恐らく十数年で三百万以上の費用がかかっておるわけでありますから、ここのところの、森林、林業をやられておる方々の生活というものが今どういうことかということは、これは理屈ではわかりますが、現実、そういう地方を見ていただいておらない東京の方ではわかりません。わかりませんから理解が薄いということもわかりますが、ここのところをもう少し林野庁の皆様も深刻に受けとめていただかなければならない。

 一方、東京でこういう議論をしながら、山村では疲弊をして生活ができないところの地方があるということ、ですから、地方頑張る応援プログラムとかいろいろなことで力を入れていただいておりますが、ここで生活のなりわいが成立していくという、これはお茶の問題でもそうです、米の問題でもそうです、ですから、いろいろな政策よりも、第一次産業が食べていけるような産業に少なくとも政治誘導していくということが今の日本にとって大事だということ、私はそのことを強く感じておりますので、きょうあえてこのような、本当に素人っぽい、大変失礼な今のお話ではありますが、そういう認識を持っていただきたい。

 その中で、確実に生態系が崩れてしまっておるということがあります。これは、当然、低い杉、ヒノキでしたら確実に直射日光が入る。これはもう、ほっておいても入るわけであります。しかし、今の間伐をされない、大木となって、恐らく昭和四十年当時よりは立米が倍の蓄積になっておる森林で間伐がされない状況は、畑化されていくというような状況の中で貴重な財産が今随分失われておるという現実を踏まえたときに、何としてもここのところの間伐をしっかりやっていかなければならないというのは当然の課題でありますから、ここのところはまた議論をさせていただきます。

 そんな中で、木材の利用を高めていく、その中で木造住宅の復活こそ私は一丁目一番地の政策だと。政府の今回の税制の関係もありますが、まだまだここのところは思い切って予算を投入していかないと大変だという認識を私は持っておるのでございますが、そのところは大臣、いかがお考えでございますか。

石破国務大臣 全くの同感で、あれこれやるんです。委員が冒頭おっしゃったように、何でこんなことになっちゃったという検証はしていかなきゃいかぬでしょう。国産材の、仮に自給率という言い方をするとすれば、今、食料で言えばカロリーベースで四〇%という話ですが、木材の場合には二〇%なんですよ。これはやはり、何でこんなことになったか、高コスト構造はなぜ改められないか。

 日本の木材の問題点というのは、ずっと昔からそうなんですけれども、品質が一定しない、あるいは金額、価格が一定しない、そして出る量が一定しないということがある。使う側からすると、値段が上がったり下がったり、品質が上がったり下がったり、あるいは量が出たり出なかったりということは、非常に困るわけですよね。そういうところを直していかないと、そしてコストを下げていかないと、国産材の需要というのはなかなか上がっていかないだろうとは思っております。

 しかしながら、おっしゃいますように、まず国産材の需要というのを上げていかなければそれが産業として成り立たないわけであって、今、例えば二百年住宅と申しております。世界で一番最古の木造建築というのは法隆寺に決まっているのであって、千四百年あるわけですよね。やはり、三重県なら三重県の木を使うのが一番いいに決まっている。鳥取県なら鳥取県の木を使うのが一番いいに決まっている。それが長い間もつんだよということの一番の理由なのであって、長もちしますということ。

 もう一つは、今、省エネということが言われていますが、南極の昭和基地、あれは二階部分、三階部分は木造なんですよ。断熱効果が非常に高いということで、暖かい空気が外へ出ない、冷たい空気が中に入らない。断熱構造という意味で言って木材が一番いいのだということで、省エネあるいは長い期間もつ、それは木なんでしょうということなんですが、それを進めていくためにはいろいろな方策をやっていかねばならぬだろうと思っています。

 私どもが今始めましたのは、例えば三重県産材で三重県の方がおうちをつくりたいと思ったときに、どこに相談に行けばいいんだ。県庁なのか、市役所なのか、あるいは役場なのか。そこへ行くとどんな情報があって、どの人に頼むとどんな家ができて、それはどれぐらいのお金がかかって、どれぐらいの期間であって、そしてまたどういうようなローンがあってというのが、国産材でおうちを建てようと思うと、そういう情報がなかなか入らないわけですよ。マンションとかあるいはプレハブとか、そういうものであれば、テレビを見ようが新聞を読もうが雑誌を読もうが、わあっと広告があふれているが、国産材の場合になかなかそういうものがございません。そういうシステムをつくっていかなければいかぬということで、今スタートをさせております。

 私の危機感というのは、大工さんにしても左官さんにしてもそうですけれども、国産材で建造物を建てるという人たちが本当に少なくなっている。こういう人たちが本当にまだ現役で立派な仕事をしておられるうちに、そして森が本当にだめにならないうちに、そういうことを集中してやっていって、やはり日本の建物は日本の木で建てようということが実感として感じられるような、そういうような施策を集中的に打っていく必要があるねというふうに私は思っておるところでございます。

 今、どんなうちを建てたいですかといったときに、消費者の八割は木造で家を建てたいんだ、その三分の一は国産材でやりたいんだという需要はあるわけです。それに供給がマッチしていない。ここのミスマッチを埋めるということが国産材の需要を喚起するということにとって肝要なことだと思っておる次第でございます。

森本分科員 大臣、よく勉強もされておりまして、そういう面では非常に敬意を表する次第でございます。

 今、木造の関係から国土交通省の長期優良住宅のお話も出ました。確かに、こうした連携というものは今までなかったことです。

 ただ、今、大臣が言われた工務店の関係の相談窓口をつくろうということは、もう十年前からこれは議論をされておりながらなかなか進んでいかないというところに、私はむしろ、今おっしゃられたハウスメーカーの皆さん、この木造住宅とあわせて林業の関係者の皆様が少し熱意も足らなかったんだろう。それに対して、その中心を受け持つ林野庁のこうした姿勢の打ち出し方というものも非常に弱かったということを素直に反省していただかなければならない。かなり厳しい御意見でありますが、戦後、日本の国が植林を進めてきて、ここまで木材の利用がなくなって、単価が生活の糧にならないような状況に落ち込むまで来てしまったということは、これは海外のいろいろな経済状況の問題もありますが、しかしそれにしても、ここまで山村の生活が困窮するところまで今日迎えているということは、税金の使い方をどういう使い方にするかということを抜本的に考えていただかないと。

 ですから、今、木造の話もありましたが、木造の乾燥の度合いなんかも私は異常な状況だと思います。今おっしゃられたような、保温、人間の体にいいというようなそうした木のよさというものを少し無視して、品質ベースにばかり、経済流通のそこのところにばかりとらわれてしまって、集成材がだめだと申しませんが、本来のあり方を私は少し見誤ってしまっているんじゃないかという、ここのところを原点に返っていただきたいということも一つ強く要望をさせていただきます。

 これは政治の責任でもありますので、ほかにもいろいろ申し上げたいところもありますので、こうしたことは後でも議論をさせていただきたいと思っておりますが、やはり木造住宅に尽きるというふうに思っております。

 それとともに、今申し上げた、森林を守る、林業を守っていくためには、担い手の育成というものが、ここのところは大臣、地方へ回ってみて、林業家の関係の方に、熱心に、特に前向きにやっていただいておる方々にお話を聞くと、かなり担い手対策については国は面倒を見ていただいておるんだなということを今ようやく感じていただけるようになりました。ここのところはしっかり今後も続けていただきたいと思いますが、ややもすると、私も森林組合の方々とも共通のベースで仕事をさせていただいておりますが、やはり、優良地帯と言われるようなところの素材生産業者の方々がもう少し国の制度にのっかった事業を展開されないと、日本の三分の二を占める林業地帯は私は守れないというふうに思っておりますので、そのことについては強い決意をお願いしたいのでございます。森林組合、そして素材生産業者の関係をこれからどう育成していくんだということ。

内藤政府参考人 森林、林業の担い手づくりというのは重要な課題でございまして、私ども、御案内のとおり、緑の雇用担い手対策事業という形でその確保に努めているところでございます。

 その就業状況でございますけれども、緑の雇用の実施以前は年平均二千人弱でございました新規就業者が、緑の雇用実施以降は、年平均三千人強にまで増加しております。

 それから、その方々がどこに就業されているかということにつきましても調べておりますけれども、森林組合ばかりではなくて、素材生産業者等の民間事業体にも就業されております。平成十九年で、全体で約三千人ほど新規就業者、これは緑の雇用の人も含みますけれども、全体で三千人ほど新規就業者が出ておりますけれども、半分以上は民間の事業体の方に就業されております。

 それから、まず何よりもこういう林業従事者が安心して就業するためには、その形態がしっかりしないと給与が払えませんので、そういった経営基盤を強化するという意味から、集約施業のためのプランナーを育成したり、それから、作業路網と高性能林業機械を組み合わせた低コスト作業ということも支援をしておりますが、これについても、当然のことながら、森林組合ばかりでなく、素材生産業者等民間の事業体も対象にしているところでございます。

 こういった形で、私ども、民間事業体も含めまして、そういった林業経営あるいはそれに携わる方々の経営基盤の強化を図っていきたいと思っております。

森本分科員 大体、京都議定書の森林吸収目標、これに対して、十九年から六年間で毎年二十万ヘクタールということなんですが、ここのところは、急激に補正予算でこれが追加になったんですよね。ですから、ここのところの担い手、作業班と申しますか、森林組合と民間がいかに有効にここのところで頑張っていただくか、このことについては順調に推移をされておるということで、達成は十分いけるというような感じをしておるんですけれども、これはどうでございますか。

内藤政府参考人 京都議定書の森林吸収目標一千三百万炭素トンということで私どもその責を担っているわけでございますけれども、毎年、従来の三十五万ヘクタールに加えまして追加的に二十万ヘクタールの間伐が必要になってまいります。この二十万ヘクタールの追加的な間伐を行うためにも林業労働力の確保等の対策が必要なわけでございますけれども、先ほど申しました緑の雇用等も通じましてその確保を図りながら、今実施をしているところでございます。

 実施状況は、追加対策を行いました初年度が平成十九年度でございますが、五十七万ヘクタールを目標に取り組んでおります。そのうち、五十二万ヘクタールは十九年度中に実施いたしましたけれども、残りの五万ヘクタールについても、平成二十年度に完了したところでございます。

 今後とも、五十五万ヘクタールを超える間伐の実施を確保して、森林吸収目標を達成できるよう頑張っていきたいと考えております。

森本分科員 長官、ここのところはしっかりと、森林組合中心にいかなければならないところはもちろんそうなんですけれども、やはり、優良な素材生産業者の方々、そういう方々のところを少し力を強くしていく。やはり、一つだけの組合ではいろいろな問題もこれからは発生するかと思いますので、そうしたある意味では競争もしていただきながら、基本的な中核は森林組合ということで結構でございますが、そこのところはしっかりとこれからも考えていただいて、対処いただくことをお願いしておきます。

 それでもう一つ、今、マスコミ関係の報道もあります、きょうは通告もしておらないんですけれども、実は、相談事業の中で、何百ヘクタールという森林を買いたいんだけれどもなというようなお話が最近たまにあるわけであります。どうも聞いておりますと、優良と言われる企業の方が、この京都議定書の取引の関係で購入を検討されておる。これは、国内の法の網にかかるところは非常に私は大事だと思うんですが、こういう話があるんです。

 安い労働力を使ってとにかく切りまくる、それを輸出する、そして後は放置するんだという話。そんな中で森林を購入したいんだというような、そこのところは表面的には申されませんが、どうも裏にはそうした余り好ましくない経営、もうけ主義の方も、これは確かにそうです。今ほど山が安いということは、ただ同然です。そのただ同然の山を切り出して、しかも一日数千円の日当でもって切り出して、そしてやるとこれはかなり利益になります。

 今、杉材の並が、きょうも調べてみますと、私の飯南という町は九千円します。九千円ぐらいです、杉の並。隣の飯高というところは少しいい町ですから、ここは一万三千円ぐらい。ここのところは搬出が立米一万円ぐらいかかりますから、ここのところは黒字。私の町では、そればかり切っておると、もう切らない方がいいということになりますから、補助をもらって間伐した方がいいということになります。

 こういうことを考えたときに、確実に今の計算からいくと、日当をぐっと落とせば利益が出るという、こうしたところを防止するというようなことは考えておかないと、これから大変なことになる。これは、今は大変な経済状況の中ですから、好ましくない方に売却をされていくという可能性は地域でもありますから、こうしたところの対応は早急に考えていただきたい。

 きょうは、コメントができましたらいただきたいのでありますが、ここのところは非常に難しい問題でもありますので、ちょっと待ってほしいということでございましたらこのことは結構でございますが、いかがでございますか。

内藤政府参考人 御案内のとおり、林地については、権利規制についての法規制がございません。たしか国土利用計画法だったと思いますけれども、一定面積以上の土地取引については都道府県への届け出ということが義務づけられておりますので、そういった形で情報は入っておりますけれども、これまた、今、個人情報の保護ということがございまして、どんな土地取引があったのかについては、私ども、十分県から情報を得られていないという状況にございます。

 しかしながら、当然、余りまじめに林業経営する気持ちもないまま林地取得をされますと、これは大変なことになります。当然のことながら、森林法では伐採跡地については植栽が義務づけられておりますので、皆伐した後には植林をしていただく必要があるわけでございますが、そういうのがきちんと守っていただける方に林業経営をやっていただけるような、そういうことをやはりどうやって担保していくかということについては大きな課題だと思っておりますので、ちょっとこれから検討をしたいと思っております。

森本分科員 このことは突然のことで無理でしょうから、しかし、個人情報の保護というような問題が余りにも最近こうした問題を見過ごしてしまうということがありますから、これは地域がすべてそうです、年金の問題でもそうです。ずっとさかのぼってくると、地域である面ではまとまっておったものを、公的に全部押しつけていく時期があります。そこで地域のつながりも崩壊していくという、このことは議論するつもりもありませんが、もう一つ申し上げておきますと、今、皆伐をして、長官、植えられませんよ。その現実を踏まえたら、そういう考え方は法的な理屈であって、なかなか現実とマッチしない説得力になっていきますから、ここのところを十分今後検討をしていただきたいし、私たちもその情報には敏感に対応させていただきます。そのことをお約束をさせていただきます。

 もう一つ、今やはりこういう事態になってくると、林道という観点もいいんですけれども、これは難しい問題かもわかりません。やはりヘリコプターの集材に対して、すべてとは申しませんが、そうしたところに対する支援というものも考えるべきではないかなということでございます。私は個人的に思っておるんですけれども、そのことについても、簡単にコメントだけで結構でございますので、無理なら無理で結構でございますし、しかし、考えるということであれば考えるということで結構でございますし、いかがでございますか。

石破国務大臣 同じことを私も考えておりまして、ところがここを計算をさせてみると、非常に高いんだ。高い木でなければ合わないのであって、一般の木には合いません、こういう話なんだそうです。ですが、林道をつくるよりもそれは割安な場面もあるのではないのということでありまして、また、ヘリポートを常設するかしないかでも違うわけですね。

 私はこのお話を等閑視をするつもりはございませんで、そちらの方がいい場面というのが仮にありとせば、今は非常にコストが高いのでだめですよという話なんですが、そういうことがいい場合もあるのではないか。ないならないでそれはそれで構わないのですが、それはきちんと検討はしなきゃいかぬことだと思っております。

森本分科員 ありがとうございます。長官は、ちょっときょうの答弁は、もう長官に答弁させません。これは大臣が答えましたから、ここのところはやはり検討をいただくというようなことできょうは私は引き取らせていただきます。感覚的に今までの感覚をやはり変えていただかなければならないというところを指摘もさせていただきますので。

 それと、きょうは時間がなくなってしまいましたが、割りばしの話についても、ここのところはきょうはもう質問しませんが、このところはしっかり押さえてくださいよ。割りばしは悪ではないんですよ。ここは環境問題で、そこで生きて、山を守って、それ以上の効果が出る。マイはし、これは否定はしません。しかし、こういった方向で世の中が流れていくところに日本のおかしな議論になっていくというところがありますから、ここのところは林野庁がもう少ししっかりPRしておらないからこういうことになる。ここは厳しく長官に申し上げておきます。

 そして最後になりますが、きょうはごめんなさいね、ちょっときつい質問、こういう質問は余りしないんですけれども、私はそれほど情熱を持って農林水産省の仕事については、農山漁村については思いがありますから、きょうはお願いをさせていただいたわけであります。

 最後に、これはころっと変わりますが、食料供給力の向上緊急機械リース事業について、これは補正、補正で追っておるんですけれども、農家の方々が、何じゃこれはというような非常にがっかりするような方向にはならないんでしょうねということを確認させていただきますが、いかがでございますか。

本川政府参考人 この食料供給力向上機械リース事業につきましては、二十年度の補正予算で五十億円の事業費を計上いたしまして、リース費に対しまして二分の一の補助をするということでスタートをしたわけでございます。

 ところが、募集をしましたところ、非常に旺盛な投資意欲がございまして、百九十億円の要望が寄せられております。その段階で、対象を絞って補助率を維持するか、あるいは、全部の方々を対象に採択をして補助率を一〇%台まで引き下げるかというようなところで選択を迫られたわけでございますが、一応、経済対策というものが先に見えておりましたので、対象者を一応限定をして、二分の一の補助率を維持するということで今は対応をいたしております。

 ただ、今、経済危機対策におきまして本リース事業は盛り込みをいたしておりまして、対策額二百五十億円で調整を進めております。したがいまして、前回、百九十億円御応募いただいて五十億円採択いたしましたので百四十億積み残しておりますが、そういう方々について十分対応できるようなものとしたいということで取り組んでおるところでございます。

森本分科員 これで終わりますが、一〇%なら、もうしない方がいいですよ。

 ですから、頑張っていただいて、あくまでもこれは補正ということでございますから、これから審議ということになりますね。そういったことできょうは議論する時間はございませんので、このことについてはしっかり対応をいただくということでお願いを申し上げて、きょうの質問は終わらせていただきます。

谷川主査 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)分科員 大臣、出張から御帰国されてお疲れさまでございます。後半ですから、大臣、席を外していても結構ですから、十五分くらいで帰ってきてください。

 冒頭、幾つかの問題について御質問をしたいと思います。

 一点目は、郵政民営化が実施をされてちょうど一年半ちょっとが経過をしているわけでありますが、この間もいろいろな議論があり、その前もいろいろな政党、党派を超えた動きがありながら、結局、法律が決定をされて民営化をされたものの、利用者の方から見れば、やはり使い勝手が悪いなというふうな声が非常に多く聞こえます。

 これは多分、今の森本さんの最後の議論の中でも、一〇%の対象しかいない事業であるとか一年ぽっきりの事業であるというのは、ある意味では非常に不合理性が働いています。特に、郵便事業の一番のキーの問題というのは、郵政事業の中で、全国津々浦々、都市でも田舎でもということでネットワーク機能がきちっとあるということであります。

 それが大前提になって百三十年間存続をしたものでありますから、やはり利用者のために非常に使い勝手がいいということ、これは郵政民営化委員会の三月の報告書にも、利用者へのサービスが落ち込んでいるよねという指摘や、さらにはそこで働く局長さんや職員の方々のモラルや士気低下というのがあって、特に三事業が分断をされているということで仕事の連携が十二分にできないといういろいろな指摘があります。やはり、働く人がまず一生懸命やって、それが利用者のためにプラスになっていく、その正しい循環になければいけないというのが私の思いであります。

 この郵政民営化委員会の意見、指摘も踏まえた中で、今後、職場環境の改善やさらには利用者利便の向上という点についてどのようにお考えなのか、総務省にまずお尋ねをしたいと思います。

吉良政府参考人 答弁申し上げます。

 平成十九年十月の郵政民営化後、特に地域住民との接点になります郵便局の職員につきまして、フロントラインである現場の職員の意見が経営陣に伝わらないだとか、あるいは分社化の準備不足から過剰な業務負担や要員不足が発生したというようなことなどから、職員の士気の低下につながる指摘があったことから、平成二十年二月に、郵便局会社において郵便局活力向上宣言というものを作成したところでございます。

 この宣言の中におきましては、経営陣がフロントラインである郵便局の社員の意見等を聴取するための郵便局活力会議の設置、それから業務フローの見直しや点検、報告項目の削減など、業務改革や働きやすい職場づくりを行うこととしたところでございます。

 それから、今先生から御指摘のございました地域住民へのサービスの関係でございます。

 具体的には、郵便局長に集荷の制限がございまして、これにつきましては、郵便局長の地縁を生かした営業活動と郵便事業会社の機動力を生かした集荷活動という役割分担のもと、共同営業の積極的な推進を図るとともに、先月の末からは一部の郵便局におきまして、郵便事業会社からの委託を受けまして、軽四輪自動車による集荷を開始しているところでございます。また、窓口の待ち時間の増加につきましても対応しているところでございます。

 総務省としましては、今後とも、利用者利便が低下することがないように、地域住民等からのさまざまな指摘も踏まえまして、引き続き、日本郵政グループには運用上可能なものについては積極的に対応していくことを期待するとともに、運用では解決できないものがあれば、民営化を前提に、改善すべき点は改善していきたいというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)分科員 部長、前向きにということで、そこの部分は評価をしますが、郵便局活力向上宣言についても、昨年の二月の二十九日に出されたものであって、ある意味では郵政民営化委員会の一カ月前に出されたもの。これも含めてやはりもう一度見直すべきだと思いますし、さらには、郵便局株式会社だけではなく、現場の三事業の分も含めて連携をとりながらやっていただきたい。

 これは、まさに郵政民営化委員会の「郵便局における一元的対応」という部分で、「郵便・銀行・保険のサービスが一体感をもって提供されることは、利用者利便に資するだけでなく、経営上の要請でもある。」という指摘もあります。幾らフレームをいじっても、やはりきちっと法的な担保をしなければいけないというのは私たちの政党の思いでもありますし、私の地元でいた個人の思いでもありますので、その点について、今どうこうではありませんが、ぜひ、郵政民営化委員会の分も含めて、さらなる活力向上についての指導を総務省の方へも要請をしておきたいと思います。

 それでは、次に移りたいと思います。

 もう一点、これは地元の思いと、ある意味では環境行政全体の思いというものが違う事例として、処分場の問題がございます。今、我が国では、一般産業廃棄物を含めて四億トンから五億トンというふうな大量な廃棄物が発生をするというふうに言われています。当然、経済活動ですから、ある意味ではやむを得ない部分があるかもしれませんが、ただし、大量生産、大量消費、そしてなかなか循環をしないという仕組みをやはり基本的に変えていくという発想から、平成十二年、今から九年前に循環基本法という法律が制定をされ、翌年の十三年の一月から完全実施という形になっています。

 二十億トンを超える物資を投入し、そして経済活動をしている大前提で言えば、ぎりぎり資源化をしたり、またどうしても埋め立てをしなければいけないものは最終処分ということで対応されなければいけないということは当然理屈としてはわかるんですが、その点についても、法の形というのが、基本的には都道府県知事が、民間事業者を中心とした最終処分をする事業者の方に、事前の安全性を確保したガイドラインという形を、テキストをつくりながら、大丈夫だよということでやっておりますけれども、そうはいっても、やはり地下水の汚濁の問題とかさまざまな問題で、本当に大丈夫かなというふうな思いが地域の方にあるのも当然であります。

 ですから、当然、完全無害化というのが最終的な技術開発の方向性になるとは思うんですが、それが一〇〇%できない中ではそれに準じた形、国も当然法律をつくり緊急的な場合は立入検査等をする権限は法的な担保を与えているものの、ほぼ都道府県知事が、つくる前の、建設する前の審査をし、建築許可を出し、そして運営をスタートしてからも、その部分の立入検査や安全、例えば汚濁がないかどうかというチェックをします。やはり国としてやるべきことは、大きな流れとして完全無害化というのができない前の段階では、どうしても、立入検査やチェックをきちっと都道府県がやっているかどうかというものを今よりももっと積極的にやっていかなければいけないというふうに私は思います。

 これも、例えば最終処分場がある地域とない地域があって、ない地域は、もういいや、全然関心もないや、ある地域は、いやいや、本当にこれから運営してからが心配でと。やはりそこの、地域によって不公平感があってはいけない。ただ、冒頭申し上げたように、今の状況では、経済活動をし、そこで所得を得、生活をするという大前提があるわけですから、当然私も完全ノーとの立場には立っていませんが、やはり安全性確保というものを大前提にし、これからも必要な部分は対応していかなきゃいけませんし、また安全性から、後のチェック体制をきちっとしていただきたいと思います。

 その部分で環境省はもっと積極的に対応していただくべきだというふうに思いますが、その点についてどのようなお考えを持っていますか。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 廃棄物の最終処分場の安全性に関するお尋ねでございます。

 産業廃棄物の最終処分場の残余年数でございますが、平成十八年の四月一日現在、全国で七・七年、短うございます。また、首都圏では三・四年ととりわけ厳しい状況にあるわけでございまして、そのために、御指摘のとおり、さまざまな安全対策を十分講じた上で、地域、地元関係者の信頼を得ながら、最終処分場の確保を進めていく必要があると思っております。

 この最終処分場につきましては、廃棄物処理法によりまして、安定型、管理型、遮断型、この各方式ごとに施設の構造に関する基準や維持管理に関する基準を国において設定し、その具体的な運用は都道府県知事あるいは政令市長にゆだねている、こういう体制でございます。

 御指摘の地下水等の問題でございますけれども、瓦れき類とか廃プラスチック類、性状が安定している五品目を処分いたします安定型最終処分場につきまして、廃油等が混入をすることによって地下水が汚染されるというような指摘がございます。このため、環境省では、安定型処分場の適正処理を確保する観点から、今さまざまな検討を進めておりますし、また中央環境審議会においても所要の審議が今進んでいるところでございます。こうしたことを受けて、より一層の適正処理の体制確保に努めていきたいと考えております。

 それと、無害化という御指摘がございました。例えば、健康被害が懸念されている石綿を含む廃棄物につきましては、廃棄物処理法に基づきます無害化処理認定ということで、国が直接関与する形で処理体制が今整備されつつございます。また、私どもの循環型社会形成推進科学研究費補助金などによりましても、無害化技術の開発ということに努めているところでございます。

後藤(斎)分科員 谷津部長、ぜひそういう無害化技術の研究促進についてさらに徹底していただきたいと思う反面、現在、全国で二千三百を超える最終処分場があるという現実の中で、当初設定をしたいろいろな安全基準であるとかそういうものが、ある意味では都道府県知事がきちっと、それぞれの管理部局がチェック、検査をされていると思うんですが、その実態調査というのも、部長ぜひ、定期的にできるかどうかというのはいろいろな、人的、予算的な部分がありますけれども、やはりその指導の徹底というのはきちっとやらないと、今二千三百あるところは、全国的に言っても、地域的、都道府県的に言っても、ある意味ではつくりやすいところからつくっているという部分が多分あると思うんです。

 これからは多分、ますますつくりにくいところにつくらざるを得ないという現実をどうバランスをとるかということがあるので、そこは必要があれば、今都道府県知事に法令委託事務で任されていますけれども、国、環境省もきちっとそこの事前の審査並びに建設の後の、運営の後の安全性のチェック体制をしますよという意思表示がないと、やはり不安な住民感情を抑えることがなかなかできないということになるので、その点についてぜひもう一度御答弁をお願いします。

谷津政府参考人 御指摘のように、特に安定型の最終処分場をめぐって今検討を進めているところでございます。そうした観点で、地方公共団体が具体的にどういう指導をしているのか、あるいは具体的な管理体制はどうなっているのかなどにつきまして、より一層調査検討を深めたいと思っております。

後藤(斎)分科員 対応せざるを得ない案件でありますし、これからも必要性が当然あるわけですから、ぜひきちっとした体制の中で環境省も積極的に対応していただくことを御要請します。

 それでは、次の課題に移らせていただきます。

 いろいろ公立病院の問題が、これからどんな形で存続をさせるかどうかというのが、国でいえば総務省や厚生労働省や、またJA関係の病院もありますので、今いろいろな省庁が議論をされていて、やはり地域の医療、今存在をするものですから、当然ぜひこれからも存続をしてもらいたいと。これも、先ほどの環境の問題ではありませんが、地域住民から見れば同じように存続してもらいたい、ただ、経営形態から見ればなかなか同じような組織体系で進められないというものの一つの象徴として、社会保険病院があるというふうに思っています。

 ことしいっぱいで社会保険庁自体がなくなっていくというふうなことの中で、過去八年近くにわたって、全国に五十三ある社会保険病院をどうするかという議論が政府の中でもされてきました。しかしながら、例えば私の出身の山梨でも、二つの社会保険病院がありますが、これからどうなっていくんだろうという、患者さんや、中で働くドクターやナースの皆さんも含めて、では市町村に、これから組織を変えていくからおたくの方でどうですかみたいな話も含めてあるような話はお聞きをしておりません。

 いずれにしても、ことしいっぱいで社会保険庁がなくなる際には、今までもいろいろな組織の変化はしているようでありますけれども、やはりきちっとした住民合意というものをしながら、組織のあり方というものをきちっと検討し、そして、時間もあと七カ月くらいしかないわけですから、判断をしていくことが必要だと思うんですが、今までの経過について、どのような検討の経緯になっているのか、まずお答えをいただけますか。

薄井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございました社会保険病院、それから厚生年金病院というのもございまして、これらにつきましては、先ほどもお話ございましたように、平成十四年の医療保険制度改革あるいは平成十六年の年金制度改革のときに、整理合理化についての議論がそれ以降行われているわけでございます。

 一方で、社会保険庁改革というのを進めてまいりまして、実は昨年の十月に、政府管掌健康保険が全国健康保険協会という新しい組織で運営することになりまして、社会保険庁が社会保険病院を引き続き保有することができなくなる、こういうことになりました。また、御指摘ございましたように、社会保険庁、二十二年の一月からは日本年金機構になっていく、こういうことでございます。こういう状況のもとで、社会保険病院と厚生年金病院につきましては、昨年の十月に、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構、通称RFOと呼んでおりますけれども、こちらの方に出資をいたしたところでございます。

 出資後の各病院の取り扱いについてでございますけれども、先般、整理機構の方に対しまして、整理機構の中期目標に基づきまして、譲渡の進め方についての指示というものをいたしたところでございます。その指示の中では、年金資金等の損失の最小化を図る、これは整理機構の目的でございますけれども、それに加えまして、地域の医療体制を損なうことのないように十分配慮することを基本として、地域の意見も聞きながら適切な譲渡先や受け皿を確保すべく対応していく、こういうことを指示いたしたところでございます。具体的には、地域からの御要望がございました社会保険浜松病院というのがありますけれども、これにつきましては、具体的に譲渡を進める施設として選定をし、RFOの方に対して通知をいたしたところでございます。

 今後でございますけれども、RFOの存続期限まで譲渡を進めることに努力をしてまいりますけれども、結果的に決定しない病院の取り扱いにつきましては、引き続き運営形態を検討することといたしております。

 いずれにいたしましても、地域の医療体制というものを損なうことのないように十分配慮しながら取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

後藤(斎)分科員 今、薄井部長がおっしゃっていただいたとおりだと思うんですが、さっきもちょっと触れさせていただいたように、この二十一年の三月六日に、舛添大臣からRFOの水島理事長に、社会保険病院の譲渡等についてという指示文書が出ています。その一の基本的な考え方で、地域医療の体制が損なわれないよう十分配慮ということがあるんですが、二番目の譲渡先の選定ということで、その所在する地域の公共団体の意見を十分聴取、ここがまだ実際にはやられていないという中で、おしりが区切られているのにどうするんですかという答弁がちょっとなかったんですが、その点について、薄井部長、どういうふうにこれからお考えなんでしょうか。

薄井政府参考人 先ほどお答え申し上げました指示文書の中で、基本的には、さまざまな形で所在地方公共団体の意見を聞きながら進めるということを指示いたしたところでございます。

 それで、地元から譲渡に向けての非常に強い要望がございます社会保険病院、具体的には浜松病院というのが第一号になったわけでございますが、これについては先行して譲渡を進めるということにいたしているところでございます。それ以外の病院につきましても、地元から御要望があるところも一、二ございます。そういうところにつきましてはまず先行してということでございます。

 いずれにいたしましても、これから残された期間、限られておりますけれども、地元の御意見をよく承りながら進めるということと、それから、最終的にRFOの存続期限内に対応できなかったものにつきましては、新しい運営形態を引き続き検討することといたしておりますので、いずれにいたしましても、地域医療という観点で問題が生じないように私どもとして取り組んでまいりたいと考えております。

後藤(斎)分科員 これは薄井部長だけに答えていただくのは酷かもしれませんが、冒頭もちょっと触れさせていただいたように、例えば県立病院、市立病院、組合立病院を含めたほとんどの公的病院というのは、経営からいえばかなり真っ赤っ赤の状態で、どうしようかな、みずからの部分をどうするかなというところがありますから、ある意味では受け身ではなくかなり積極的に、RFOや厚労省全体で自治体と協議や調整をしなければ、多分浜松病院のような形態というのはないと思うんですよ。

 それは皆さん御専門ですから、当然今、薄井部長もほかのことも含めたくさんお忙しいとは思うんですけれども、やはりこれは地域の医療の部分ですから、厚労省、社会保険庁は受け身だけではだめであって、積極的に地域の部分で協議をする、相談をする、それでどうしてもだめだったらどうするかということがないと、ではRFOの存続期限が切れたらまた違う受け皿を、今社会保険病院だけでも五十三あるものがほとんど残って、ではまた次にという形ではなく、ここに少なくともきちっとした厚労大臣の指示文書があるわけですから、それに基づいて積極的に関係自治体と調整をしていただく。要するに、少なくとも受け身ではなく意見を聞くということは大切だと思うんですが、その点についてもう一度答弁ください。

薄井政府参考人 RFOに対しましてこの指示をいたしましたときに、関係の所在市町村にはこの趣旨をお伝えしているところでございまして、今後とも、該当市町村の御意見、これは市町村もございますし県もございますけれども、よく承りながら進めてまいりたいと考えております。

後藤(斎)分科員 それでは、大臣、済みません、お待たせしました。お疲れのところ、大変恐縮でございます。

 きのうお帰りになって、非常にお疲れだと思いますけれども、G8農相会合ということで、いろいろな積極的な合意が共同声明で発表されたということであります。

 これについてはあえて触れませんが、その点にもかかわるんですが、大臣に二点、少し時間がなくなって大変恐縮なんですが、お聞きをしたいのは、一点は、林業の整備ということです。

 木材と特用林産物、二つの部分から林業所得というのが多分大きく分けて成立をし、その林業、木材の部分は、バイオとか新しい国産材の需要拡大ということで対応が進められておりますが、それも、対外的な関係も含めて、また新築着工件数もこれから多分減っていくということがあって、なかなか難しい面もございます。あわせて、特用林産物というのは、今しゅんですけれども、例えばタケノコであるとかそれを使った副産物であるとか、例えばシイタケみたいなキノコ類、これも林業所得全体の半分を超える部分がございます。

 要するに需要拡大の努力、これは本来であれば行政が積極的に関与しなくてもいいかもしれませんが、どうしてもやはり農林水産業は、公の部分、農林省の部分が間接、直接含めて関与をしなければ、需要拡大ができないというふうに思います。その需要拡大についてどのようにお考えなのかというのが一点。

 あわせて、大臣、輸出拡大ということで、二〇一三年までに一兆円という目標がございます。大臣の御地元のナシも、伝統的に、かなり何十年も前から輸出化ということがされていた品目であります。去年の秋以降の世界同時不況というので、多分、果物や高いお米みたいなもののマーケットというのが、アジアを中心に急速に失われているというふうに見なければいけないと思っています。〇九年、ことしは六千億というのを一つの目標にしておりますけれども、多分去年の水準を維持するのもかなり厳しい。二〇一三年というのはあと四年ぐらいですから、それもどうするか。

 そういう意味での需要拡大というものを、今までのターゲットというのは、一億人を超すと言われているアジアの富裕層がターゲットでありました。植防という科学的な問題を当然クリアしなければいけませんが、輸出というものを考えるときにも、マーケットの対象を富裕層から一般のところに広げていくという輸出戦略の変化というか、戦略の考え方の理念を少し変えていく、拡大をしていかなければいけないんです。

 ぜひその辺について、大臣のこれからの農林水産物の輸出戦略というものを、私は、この円高とか、余り長期に景気が低迷すると困るんですが、低迷するのを前提として、やはり輸出戦略の変化というものをここである意味では踏まえながら検討していくべきだと思うんですが、林産物の需要拡大とあわせて輸出戦略の今後の考え方について、特に秋に向けて果物、お米も、もし輸出戦略が変化するのであれば、これからが非常に重要な時期であると思うので、お答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 林産物の需要拡大というのは本当に大変に大事で、まさしく委員御指摘のように、それは自然に、ほっておいても需要が拡大すればいいんだろうということなんですが、そうならないのが農林水産物の特色でもございます。

 委員の御地元もそうかもしれませんが、私の地元なんかでも農山村という言い方をしますよね。そこに兼業機会がちゃんとあったのが、いろいろな理由があって兼業機会が激減している。建設会社も少なくなりました。あるいは、繊維の加工とかそういうものも外国へ行ってしまいました。そうすると、これから先農山村を支えていくときに、この兼業機会が喪失されるのを林というものでどうやって埋めるかということを考えていかなきゃいかぬのだろう。

 特に、バイオマスの利用などというものは、諸外国に比べてけた違いに低いわけですね。これを喚起していかなきゃいかぬ。あるいは、竹の需要というものを考えたときに、これから先、消臭効果とか抗菌効果とかあるいは紙おむつに使えるとか、そういういろいろな需要がありますよというのを、私は官の側という言い方は好きじゃないんですけれども、政府の側でいろいろなことを考えて、需要を喚起するためにやっていくことはたくさんあると思っています。これをやっていかないと農山村というのはもたないと思っていますので、それが一つ。

 もう一つ、需要の拡大は、まさしく私、G8でいろいろな国の農林水産大臣といろいろな話をしておって、日本の物が売れるなという感じはすごく持っているんです。

 特にアジアなんですが、どこにターゲットを絞るかというのは、向こうの貧しい人というのは、日本の貧しい人どころの騒ぎじゃなくて、本当に食べることすらままならないという人に日本のものと言っても、それはなかなか難しかろう。そうすると、どの層に何を売るのかということについて、もっとさらにきめ細かい戦略というものを立てていかねばならぬ。富裕層だけに限っていると、どうしてもマーケットの制限がありますので、どの層に何を売るか、そこにおいてきめ細かい輸出戦略というものが必要じゃないか。

 民間の方々がどこに何を売るかということについて、民間の小さな農家にそんな知見があるわけはないので、我々はそういう知見をつくるということと、それをどうやってフェアみたいな形で地域においてエンカレッジするかということ、そういうことで輸出を拡大したいと思っております。

 目標は、なかなか達成は難しいところもありますが、しかしそれを下げることなく、さらに努力をしていく。やはり日本の農業を考えるときに、自給率の計算のときに、輸出というのはかなり大きな意味を持ちます。そうでなければ、アメリカ、オーストラリアがあんな自給率になるはずがないのであって、そこは十分配意をしていきたいと思っておる次第でございます。

後藤(斎)分科員 時間が来ましたので、以上です。ありがとうございました。

谷川主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内分科員 民主党の川内でございます。

 G8農相会合で石破大臣は大変お疲れであろうと思いますが、よろしくお願いをいたします。余り疲れていないかもしれません、体力は十分にあるということかもしれません。

 昨日の日本農業新聞に、石破大臣がイタリアのG8農相会合で初めてアメリカのビルサック農務長官と会談をされた、そこで米国産牛肉問題について、アメリカ国内での飼料規制の強化を石破大臣が強く要望されたという記事が出ております。

 この問題については、私は、昨年十一月十九日の衆議院農水委員会で石破大臣に質問をさせていただきました。

 二十カ月齢以下の米国産牛肉の輸入再開については、平成十七年十二月の我が国の食品安全委員会のリスク評価の際に、結論への附帯意見として、米国での飼料規制の強化と、検査、サーベイランスの拡大、継続などが指摘をされております。

 米国での飼料規制については、米国では脳や脊髄などの特定危険部位、すなわちSRMがレンダリングによって豚や鶏のえさになり、それが牛にまた戻ってくる交差汚染のリスクが指摘をされていたわけでございまして、そこで、飼料規制を強化すべきであるということを食品安全委員会も指摘をし、私どもも、この食品安全委員会の二つの指摘を再三国会で取り上げさせていただいておりました。

 日本政府として、平成十八年と十九年、米国政府へ対する年次改革要望書に、この飼料規制の強化とサーベイランスの強化については、日本政府から米国政府に対する要望として政府間の交換文書に正式に記載をされたわけであります。ところが、昨年秋の平成二十年版からは、この二つの規制強化の要望が抜け落ちてしまっておりました。

 そこで、私が昨年十一月十九日にこの問題を質問させていただいたわけでありますが、ちょうど政権がかわった、福田内閣から麻生内閣にちょうどかわったそのかわり目で、農水大臣も石破大臣が就任をされたちょうどその時期でございまして、びっくりしたんですけれども、大臣へ報告をせず、相談をせず、農水省の事務方が勝手に削除をしたということが判明をしたわけでございます。

 そのときの石破大臣の答弁では、事後報告ではあった、しかし、その事務方の判断は、日本政府として妥当なものである、なぜならば、アメリカの政府が、ことしの四月から飼料規制を強化しますよと官報で告示をしているからである、合衆国政府というのはその辺はきちんとやる政府なんだ、長いつき合いで自分はよくわかっているというふうにおっしゃられました。

 しかし、残念ながら、アメリカ政府はブッシュ政権からオバマ政権にかわり、ことし四月からの飼料規制の強化を実施しなかったという状況に今なっているということでございます。

 石破大臣、初の日米農相会談でこの問題をどのようにビルサック農務長官にお話をされ、そしてまた、先方からはどのような御返答があったのか、御説明をいただければと思います。

石破国務大臣 私の方からは、米農務長官に、米国政府が昨年四月に公表した飼料規制の強化案について速やかに実施されることを強く期待しているということを申し上げました。

 委員御指摘のように、四月九日、農務省ではなくて米国食品医薬品庁、FDAですが、FDAは、飼料規制強化案施行を六十日間延期するとともに、延期の是非についてパブリックコメントを実施する旨官報記載をしているのは、委員が御指摘のとおりでございます。

 それに対して、ビルサック長官が申し述べましたのはこういうことです。

 日本がフラストレーションを感じていることはよくわかる、まず最初にそう言いました。フラストレーションを感じていることには理解をする。私は、今回、FDAが追加的な猶予期間を設けることにしたのは、その規制強化案を実施に移す気がないわけではない、そういうことではないんだ、きちんと実施をするための時間を与えるものであるということを言っておきたい。日本語に訳すと保証するという訳になりますが、そのことはきちんとここで申し上げておきたいとかなり強い調子で言っておったということでございます。

 きちんとした規制を実施したいというふうに思っているからそれなりの期間が要るんだ、そこは間違いなく信じてくれということでありました。向こうもそう言うので、こちらとしては、強く要請しますよということには変わりがありませんよということを申し上げておいたものでございます。

川内分科員 きちんと実施するための時間が必要なのだということを先方から話があったと。どのくらいの時間が必要なのだという具体的な言及はあったんでしょうか。

石破国務大臣 具体的に数字を挙げては申しておりません。ただ、本飼料規制強化策の施行を六十日延期するということでございますから、これは、そのために適切に実施することを確保するためなんだということでございました。具体的に何カ月とか何日とか、そういうことを申したわけではございません。

川内分科員 この米国の官報に告示されている飼料規制の強化でも、実は交差汚染の可能性というものはまだ残るわけでございまして、そういう意味では、私は、日本政府から米国政府に対して、飼料規制の強化と検査体制の強化については、やはりこの年次改革要望書において、しっかりと日本と同等のレベルになるまで要望をし続けるべき事柄ではないかということを従来から主張しているわけでございます。

 昨年の大臣の御答弁でも、米国が「仮に実際にやらなかったということでありとせば、何でやらなかったのということは、それこそぎりぎり詰めなければいけません。官報にまで載せて、来年の四月からちゃんとやると言いながらやらなかったとすれば、何でなんだということはまさしく検証しなければなりませんし、年次改革要望書においてもう一度要望しなければいかぬということだと思っております。」というふうに昨年十一月に御答弁をいただいております。

 そこで、やはりこの飼料規制の強化、それからサーベイランスの充実強化については、日本政府としては、年次改革要望書にしっかりと記載をするということは、米国が実施するしないにかかわらず、しっかりとやるべきではないかというふうに思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。

石破国務大臣 日本として申し上げるべきことはきちんと申し上げておかねばならない。そうでなければ、この日本の主張というものが、取り下げたのかねみたいなことになってしまいますので、必要なものはきちんと記載をするということだと思います。

川内分科員 では、よろしくお願いします。

 続いて、同じく牛のことなんですけれども、クローン牛について質問をさせていただきます。

 クローン牛、最近は体細胞クローン牛というものが話題によく上るわけでございます。そもそも、受精卵クローン牛はもう既に市場にも出回っているのではないかということが言われているわけでございますけれども、このクローン牛というのは、一体何のために研究開発をされていらっしゃるのかということを教えていただきたいと思います。

石破国務大臣 研究の目的ですが、家畜改良の効率化ということが挙げられる。つまり、今種牛の能力を調べるためには、調べたい牛の成長を待って、その子供をとって、子供を使って検定するしか方法はない。しかるに、この体細胞クローン技術を使えば、調べたい牛が生まれた直後に体細胞を採取し、クローンをつくる。そのクローン牛を検定に使えるので、検定にかかる期間が三割縮まる。よって、改良のスピードアップが期待される。

 また、遺伝的にばらつきの少ない実験動物をつくるとか、絶滅が危惧されている希少な種の再生、増殖、こういうことにもこの技術の応用が可能であるということでございます。

 クローン牛研究の目的は、私が今承知しておるところ、そのようなものだということでございます。

川内分科員 大臣、私も、研究開発の成果を否定する気は全くございません。研究者が一生懸命研究をされて、クローン牛なりクローン豚なりを開発しましたよということに関しては、それはすばらしいことですねというふうに評価をいたしますが、他方で、日本が世界に誇る数々のブランド牛というものについては、これは、実際に畜産に従事をされる、長年の経験を経た農業者の方々が、丹精を込めて肥育、成長したものがブランド牛として評価をされるわけでありまして、これと全く同じコピー商品、体細胞クローン牛なり受精卵クローン牛、そのコピー商品がこれと一緒ですよ、しかもこっちは全然クローン牛だと表示しませんよということは、日本政府が掲げているジャパン・ブランド戦略に私は反するのではないかと。

 今後、日本の農業が、先ほど後藤委員の議論の中にもありましたけれども、世界に打って出ていくのだ、そしてまた日本政府としても金額的な目標を、具体的に数値目標を掲げてやられているときに、今のところ農水省は、クローン牛について表示をするというようなことは一切考えていないと、私はずっとしつこく聞いているんですけれども。消費者行政推進担当大臣であった岸田文雄さんとか、あるいは町村官房長官の時代には、いや、消費者の選択は大事だ、それはやはり消費者にとってわかるようにしておく方がいいんじゃないかと思うよという御答弁があったんですが、当時の農水大臣は、いやいや、そんなことはもう全然考えていないという、非常に、何でこの人はそんなことを言うのかなみたいな御答弁が続いているんです。

 私は、繰り返しになりますが、農業者が丹精込めた自然の牛と、薬品をかけたり電気的なショックを与えたりして、ある種の工業製品として産出されたクローン牛とはやはりちゃんと分けないと、これは消費者も納得できないんじゃないかというふうに思います。

 せめて、その表示を考えるということぐらいは農水省としても今からきちんと、体細胞クローン牛については食品安全委員会で普通の牛と同等だよということで評価されちゃっていますから、まだ市場には出回らないとはいっても、それは農水省として、表示はきちんとしますよぐらいはやらなければならないんじゃないかというふうに思うんですが、石破大臣、御見解を。

石破国務大臣 当時の若林大臣のおっしゃったのは、表示をしないよ、こういうことを言っているわけではなくて、JAS法では難しいよということを言っておられるのではないかと思います。

 つまり、JAS法というのは、「農林水産大臣は、飲食料品の品質に関する表示の適正化を図り一般消費者の選択に資するため、」云々、こういうことになっているわけで、クローンというのは、品質、つまりプロダクトとしての品質という意味でいえば、違うのかというとそうではないのだということになって、それをさらに申し上げれば、成分的に違うのかといえばそうではないんだということで、JAS法では難しいねということにはなるんだろうと思う、この法律のつくり方からいって。

 では、そうするとどうなるんだ。消費者の選択に資するための情報の提供というものは、では一体どのような仕組みでやるべきなんだろうか。今ある法律でいえば、不当景品類及び不当表示防止法というのがあるんですが、強いて言えばこれなのかねということでありますが、では不当なのというと、それもまたいかがなものかねということになるわけで、あるいは新法をつくらなきゃいかぬのかもしれません。

 いずれにしても、選ぶのは消費者ですから、それにどのような情報が提供されるかということは政府として考えておかねばならないことでございまして、農林水産省がどうのこうのというお話ではなくて、政府としてどうなんだという考え方はきちんと持つべきものだと思っております。

川内分科員 政府としてどういう考え方を持つのか、私も非常に大事だと思うからお聞きしているんですけれども、JAS法上は、品質という言葉の中に名称も含まれるんじゃないですか。事務局、どうなの。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 品質表示基準におきましては、その農産物なら農産物の名称というものももちろん含まれているわけでございます。

 ただ、この場合、体細胞クローン牛あるいはそれに由来する畜産物ということになりますと、牛肉なら牛肉という意味におきましては同じものでございますので、そこにおいて違いがないわけでございますから、それをJAS法の品質表示基準にのせていくということにつきましては、なかなか難しい技術的な面があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

川内分科員 今の御説明は、国民の皆さんに説明したときに、なるほどね、農水省の言っているとおりだねとは、とてもだれも言わぬと思いますよ、国民の皆さんは。体細胞クローン牛に由来するクローン牛肉と自然に生育をしたブランド牛の牛肉というものが品質的には一緒なんですということは、国民の皆さんは、ああ、そうですかとはとても言わないと思いますよ。

 品質という言葉の中に名称も含まれるというふうにおっしゃられたわけですから、品質という言葉の中に名称も含むのであれば、体細胞クローン牛と普通の自然に生育した牛というのは、名称は明らかに違うわけです。今だって、そもそも違えて使っていらっしゃるわけですからね。

 だから、体細胞クローン牛に由来するクローン牛肉であって、これは明らかな違いがある。JAS法でしっかりと規制することができるというふうに考えるのが、私は政府としての考え方ではないかというふうに思いますが、石破大臣、どうですか。

石破国務大臣 そこは、何の法律でやるかはきちんと決めます。

 ですから、私が聞いている範囲では、JAS法に言うがところの品質なるものは、それは成分的にどうなんだということであって、クローン牛とそうじゃない牛と成分的に違うのかといえば、違いは出てこないわけですよ。そうすると、では名前をどうするんだと。では、名前がJAS法のテリトリーなのか、法目的に合致するものなのか、それとも、さっきの景表法という法律でどうなのか。とにかく、どの法律を使うかということは、私は所管大臣としてJAS法はもう一度よく読んでみます。もう一度よく読んでみて、委員がおっしゃるように、JAS法にそういう余地ありというふうに読めるのであれば、それはそういうこともあるでしょう。

 もう一度、ちょっと預からせていただけませんか。これは、私ちょっと法律をもう一度よく読み直してみます。

川内分科員 JAS法の名称は、食品の表示に関するでしょう。表示に関するですからね。私は、名称という言葉の中でしっかり読み込めるのであるというふうに思いますし、読み込めるのではないかだ、私は政府じゃないですから、提案する立場ですから。読み込めるのではないかというふうに考えておりますので。

 いずれにしても、大臣、これは消費者の選択、消費者が自分が今購入しようとしているもの、あるいは欲しいと思っているものがどういうものであるか、どういうつくり方に由来するものであるかということについては、情報をしっかりと与えるべきであるということについては、要するに表示についてはきちんと分けるべきだよねということについては賛同していただけますよね。

石破国務大臣 これは、政府としてこうだという考え方をまとめたわけじゃありません。統一見解を言えと言われるとなかなか難しいのですが。

 それは、消費者の側からいって、そこはきちんと表示してよという消費者のニーズがあるということは確かですから、そのニーズにどういう形でこたえるかという答えを出すのも政府の責任だと私は思います。

川内分科員 それでは、今の大臣の発言を受けて、消費・安全局としてきちんと検討されますね。

竹谷政府参考人 今、大臣から御指示がございましたので、私ども事務方といたしまして、しっかりと整理をいたしまして、また大臣に御報告を申し上げていきたいというふうに考えております。

川内分科員 それでは続いて、これもJAS法のことなんですけれども、自由民主党の先生方の議員立法で、JAS法に直罰規定が設けられる。本日、参議院の本会議で可決、成立をする予定であるというふうに聞いております。私も、JAS法には直罰規定を設けるべきであるということをずっと前から、五年ほど前から申し上げてまいりましたので、自民党の先生方の議員立法については、私、野党の議員が申し上げるのもなんですが、高く評価をしております。

 要するに、何でかというと、農水省が食料品を第一義的に所管する役所なわけですけれども、しかし、偽装表示などがあった場合に農水省として、指示、勧告、罰則ですか、という流れでやられるということで、今まで、JAS法上罰則を受けた企業とか人というのは、JAS法ができてから一社もない状況なわけで、そういう意味では、まず第一義的に、所管する役所がしっかりと罰則規定を持って、食の安心、安全に取り組むよという姿勢が大事なんじゃないでしょうかということで、直罰規定がJAS法に必要であるということを申し上げてきたわけでございます。

 今回の議員立法によるJAS法の改正と従来のJAS法の指示、公表、命令あるいは罰則との関係はどうなるのかということについて、法的な切り分けをちょっと御説明いただければというふうに思います。

竹谷政府参考人 現在の仕組みといたしましては、委員御案内のとおり、立入検査をし、あるいは報告徴収をいたしまして、問題がある事案であるということになりますと指示という形で、その問題事業者に対しましてこういう改善を行うべきというふうに申し伝える、あるいは指導という形で、もう少しマイルドな形でやる場合もございます。その指示に従わなかった場合に命令をかける、そして命令に従わなかった場合に罰則が適用になる。罰則の適用は、当然、司法当局の方から起訴をする形で罰則の適用という形に移っていくわけでございます。

 ただ、現在司法当局は、通常、今委員御指摘のように、一般的には不正競争防止法の方の罰則を使う場合が多くて、JAS法の罰則は使われていないという状況にあるわけでございますが、今回、議員立法で、衆議院の方で御議決をいただきまして、今参議院で御審議いただいている法案におきましては、産地の偽装に限定をいたしまして、直罰規定といいましょうか、先ほど申し上げましたような手順を経ないで、産地偽装の行為がある方について罰則を直接かけていくことができる規定を設けたというふうに理解をしている次第でございます。

 したがいまして、そこも司法当局の御判断で、容疑が固まった時点において、その罰則の適正を考えて捜査に入っていく、そして起訴されるという形になるという。それは、対象は、今申しましたように産地偽装に限ってというふうに承知をしている次第でございます。

川内分科員 このJAS法の表示について、新たに設置されるであろう、そしてまた、私どもも修正提案をさせていただき、与野党合意で消費者委員会等の設置について修正をさせていただいた消費者庁、このJAS法と消費者庁との関係について、何回も多分いろいろなところで御説明をされていらっしゃると思いますが、どういう分担になるのか、あるいは警察に告発する場合に、消費者庁がやるのか農水省がやるのか、それとも協議をするのか、ちょっと具体的な事務の流れなどを教えていただければというふうに思います。

竹谷政府参考人 先ほどは現行のシステムを申し上げましたけれども、消費者庁及びその関連法案ができました場合のことを申し上げさせていただきたいと思います。

 現在、品質表示基準の企画立案の権能はもちろん農林水産大臣が持っておられるわけですが、これは、企画立案につきましては全部消費者庁の方に移ってまいります。そして今度、実際の取り締まりなどの執行面でございますけれども、先ほど申し上げました報告徴収なり立入検査の権限につきましては、消費者庁と農林水産省がそれぞれにおいて行うという形になります。

 したがいまして、事業者が偽装表示をしているのではないかという疑義のある事案があった場合に、先ほどの直罰との関係について申し上げれば、その疑義のある事案について、やはりこれはどうも偽装であるという事実がかなり固まってまいりますと、それぞれ、そういった調査を進めた消費者庁あるいは農林水産省が司法当局に告発をするわけでございますけれども、もちろん、双方でよく連絡をとり合いまして、お互いが持っている情報の一元化ということも消費者庁の重要なことに入っておりますから、情報連絡をとって、連携をとって、そして、実際に調査を主として行った方から恐らく告発をする形になるのではないかというふうに考える次第でございます。

川内分科員 ちょっともう一度よく説明をしていただきたいんですけれども、企画立案については消費者庁である、取り締まりについては消費者庁と農水省で共管してやる、協力していくよということでございますが、責任はだれにあるんですか。

 要するに、今の御説明では、詳しく調べた方が主導権をとりますよというような、詳しく調べている方が主導権を握りますよというような御説明であったと思うんですけれども、どうもそれでは、ちょっとお互いに、例えば、消費者庁は手足はないわけで、消費者庁から農水省に、こういう事例があるんだけれども調べてもらえないかというときに、農水省は、いや、それはそっちでおやりになられたらどうですかというようなことになっては困るわけでございまして、その辺の具体の仕事というのは、全国に手足を持っているという意味において、農水省がやはりしっかりやるしかないと私は思うんです。

 その辺について、どういうふうにお考えになられていらっしゃいますか。

竹谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 具体の取り締まりに当たりましては、先ほど申しましたように、消費者庁と農林水産省とでそこは両方とも持っている、いわゆる共管的に持っているわけでございます。それぞれ単独で執行しても、あるいは一緒になって執行してももちろん可能なわけでございますけれども、共管でございます。

 ただ、今委員御指摘のように、農林水産省におきましては、いわゆる食品の生産、流通、加工の業界について専門的知識を持っておりますし、また、地方組織に食品表示Gメンというものを配置したりしておりますので、そういった知識なり組織なりを活用して、個別の事案において取り締まる場面は、私ども農林水産省の方が多くなるのではあろうというふうに考える次第でございます。

 他方におきまして、やはり消費者の声をしっかりと受けとめるという意味合いにおきまして、消費者庁の方に国民生活センター等から情報が入っていった場合には、消費者庁が対応するという場合がございます。

 ただ、具体的に、報告徴収などにつきましてもお互いの情報をシェアいたしますし、また、次のステップの指示という段階に行く際には、規定上もあらかじめ、お互いにこういう指示を出し合いますよということを連絡し合いながらやるということを、改正後の新しいJAS法においては手当てをいたしているわけでございます。そういった形で、よく連携をとって進めていくというふうに考えているわけです。

 ただ、それぞれの指示という行為あるいは報告徴収をするという行為は、それぞれの大臣名で出させていただく、それぞれの責任において出していくということでございます。

川内分科員 時間が来ましたので終わりますが、お互いの情報をシェアして連絡をとり合うよということは、消費者庁と農水省の消費・安全局との間で常設の連絡会議みたいなものを設置するのだという理解で、大臣、よろしいですか。ちょっと最後に。

竹谷政府参考人 必ずしも、常設の会議ということまでは今具体的に想定していませんが、日常的によく担当者間でしっかりと連絡をとってやっていきたいと思っておりますし、また、消費者安全情報総括官会議というものが関係省庁全体で設けられておりますから、そういう場でも情報交換はできるというふうに考えている次第でございます。

川内分科員 終わります。残りはまたあしたやります。

谷川主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、秋葉主査代理着席〕

秋葉主査代理 次に、吉田泉君。

吉田(泉)分科員 民主党の吉田泉です。

 きょうは、花粉の発生源対策ということで何点かお伺いしますので、よろしくお願いします。

 ことしも今がちょうど杉花粉のピークということですが、ことしは大分症状の重い人が多いというような新聞報道もなされているところでございます。

 もう三十年ぐらい、この花粉症が社会的な問題として注目されているわけですけれども、せんだって、もう二年前、三年前になりますが、林野庁は、二年間の調査期間を経て、二十年度から杉花粉に関する花粉発生源対策プロジェクトというものを立ち上げたところであります。

 そこで、最初に、なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか、その背景をお伺いします。

内藤政府参考人 花粉症は、まず、原因究明、予防、治療、発生源に関する取り組みを総合的に推進しなければいけないということから、平成二年に、関係の厚生労働省、文部科学省、農林水産省、気象庁、環境省で花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議を設置いたしました。各省連携を図りながら対応してきたところでございます。

 林野庁としましても、その間、少花粉杉品種等の開発普及、広葉樹林化あるいは杉花粉発生源調査等に取り組んだところでございます。さらに、その問題が深刻化するということから、その発生源対策の充実強化の要請が高まっているということを踏まえまして、平成十九年に、庁内に花粉発生源対策プロジェクトチームを設置いたしました。そこで発生源対策について検討を行いまして、平成二十年度から花粉発生源対策プロジェクトを立ち上げたところでございます。

 本プロジェクトの内容についても若干触れさせていただきますと、平成二十年度から、首都圏等への杉花粉の飛散に強く影響を与える杉林について重点的に広葉樹林化あるいは少花粉杉林への転換を促すということとともに、少花粉杉等の苗木の供給量を大幅に増大させるための取り組みを実施しているところでございます。

吉田(泉)分科員 対症療法だけじゃなくて根本療法も必要である。私も、発生源対策は大変重要で、一番重要だと思いますので、このプロジェクトの立ち上げを高く評価しているところでございます。

 今御答弁にありましたけれども、平成二年から連絡会議を続けてきているわけですが、政府として、国全体の患者数及び経済的な損失、例えば医療費、それから薬代、マスク代、労働損失等が考えられますけれども、そういうものをどう推定しておられるのか、お伺いします。

内藤政府参考人 まず、杉花粉症の患者数でございますが、林野庁として把握しておりますのは、二〇〇八年の一月から四月にかけまして全国の耳鼻咽喉科医とその家族の方々を対象に馬場先生ほかが実施されました「鼻アレルギーの全国疫学調査二〇〇八」でございます。その調査では、杉花粉症の有病者というのは、調査の解析対象者約一万五千人のうち約四千人、有病率にいたしますと二六・五%というふうな報告がされております。

 経済的損失でございますけれども、これは古うございますけれども、平成十二年の八月に、当時の科学技術庁の研究開発局が公表しました「スギ花粉症克服に向けた総合研究」というものがございます。これによりますと、受診者が約九百六十二万七千人おられて、それから受診されていない患者の方が約三百四十六万二千人おるだろうと推定をいたしまして、医療機関への受診料、それから薬局での薬の購買等に係る年間医療費を推定いたしております。その額は二千八百六十億円でございます。

吉田(泉)分科員 馬場先生の学会報告によると、二六・五%の方が花粉症であるということですね。そうしますと、全国で大体、これは四分の一ですから、三千万人ということになると思います。

 さらに、科技庁の損失推計額も今いただきましたけれども、これはちょっと古い九年前のデータですので、その後患者さんもふえていると思いますが、三千万人がお一人一万円年間治療費にかかっても三千億円ですか。最近出た新書で、ジャーナリストの奥野修司さんという方の花粉症に関する新書が出ておるんですが、その人の推定ですと、国全体としての損失は一兆円を超すであろうという試算もございます。

 結局、ここをよく押さえないと、政策の優先順位というのを私は判断できないんだろうと思うんですね。ですから、この数字も今後ひとつ確度を上げていただきたいと思うところでございます。

 ちょっと話はかわりますけれども、地球温暖化の京都議定書の約束期間が始まっているわけであります。この森林対策というのも、炭酸ガス三・八%削減という役割を担っているわけでありますが、そのために年間どのくらいの面積の森林整備をしていくことになっているか、そして、そこにこの杉林というのはどの程度含まれているものか、伺います。

内藤政府参考人 森林吸収源目標三・八%の達成のため、平成十九年度から第一約束期間の最終でございます平成二十四年度までの六年間でございますが、毎年二十万ヘクタールの追加的な森林整備が必要となっております。これまで毎年三十五万ヘクタール整備しておりますので、合わせますと年五十五万ヘクタールの間伐というものをやっていかなければいけません。

 この追加的な整備を行う森林面積を計算する方法でございますけれども、私ども、杉とかいろいろな樹種がございますが、樹種それから齢級によっても出す量が違ってまいります。そういう樹種、齢級等を勘案して、平均的な面積当たりの吸収量をもとにこの面積を算定してございます。したがいまして、間伐対象となる森林について、樹種ごとの目標面積というのは設定してございません。

 我が国の人工林のうち、約四四%が杉でございますので、仮に、樹種を面積割合で平均的に間伐するということとして試算をいたしますと、五十五万ヘクタールの四四%に当たる約二十四万ヘクタールが杉林での間伐となろうかと思います。

吉田(泉)分科員 五十五万ヘクタールの四四%が二十四万ですか。そうすると、これから温暖化対策でふやそうというのは二十万ヘクタールですから、その四四%だと八万八千ヘクタールぐらいを杉林でふやしていこう、こういう理解でよろしいですね。

 そうしますと、本プロジェクトの中身にちょっと入りたいと思いますが、このプロジェクトは、先ほど御説明ありましたけれども、関東圏と関西圏で発生源になっている杉林を伐採しようということでありますが、その実施面積がどのぐらいか、そして予算はどのぐらい見ているのか、お伺いします。

内藤政府参考人 本プロジェクトにおきましては、まず事前に、四大都市圏にどれくらいの杉が飛散するか、その影響度合いを調査いたしまして、そのうち杉花粉の飛散に強く影響を与えていると推定される杉林を特定したところでございます。首都圏と京阪神において約九万五千ヘクタールということでございます。ここにおきまして、針広混交林への誘導あるいは少花粉杉への転換というものを進めまして、十年間でおおむねこの面積の五割を減少させるということを目標にしております。

 さらに、目標といたしましては、少花粉杉苗木の供給量の大幅な拡大というものが必要になってまいりますので、この苗木の供給量を、平成十九年度の四十万本から平成二十四年度にはおおむね百万本に、そしてさらには平成二十九年度にはこれをおおむね一千万本に増大するという目標を掲げているところでございます。

 予算措置でございますが、このプロジェクトを立ち上げました平成二十年度の予算におきまして、まず針広混交林への転換を促進するための資金を造成いたしました。それが二十二億円でございます。それから、無花粉杉品種等の開発、無花粉、少花粉苗木の生産供給体制の整備が四億円、合わせまして二十六億円の予算で対応しているところでございます。

吉田(泉)分科員 そうしますと、十年間で九・五万ヘクタールの杉林を対象に整備していくんだと。というと、一年間で大体一万ヘクタール弱ぐらいを対象にするんだと……(内藤政府参考人「半分にするんです」と呼ぶ)それを半分にする、五千ヘクタールということですか。では、五千ヘクタールを一年間で対象にするというふうに理解いたします。

 そして予算は、今二十六億円というのは、これは三年間の予算ですか。(内藤政府参考人「資金です」と呼ぶ)資金とおっしゃいましたけれども、基金ということでしょうから……(内藤政府参考人「三年分」と呼ぶ)三年間ですね。そうすると、大体一年間に十億円という予算規模だというふうに理解をしたところでございます。

 先ほど、被害総額三千億円、場合によっては一兆円という話がございましたが、この額と比べると、この発生源対策の費用が一年間十億円というのはちょっとけたが違い過ぎるなというのが私の感触であります。それから、面積も非常に少ないなというのが感触であります。

 といいますのは、要するに、このプロジェクト、いろいろな柱がありますけれども、大きい柱は、杉を抜き切り、これは間伐ということだと思いますが、間伐して広葉樹にするという大きな柱があるわけですね、混交林化というんですか。そうすると、これは京都議定書の森林吸収源対策にカウントされる政策だと私は思うんですね。つまり、温暖化対策と花粉症対策が重なるちょうどいい分野だというふうに理解するんです。

 先ほど、温暖化対策で毎年二十万ヘクタール間伐するんだと。大体その半分ぐらいが杉林の可能性があるということは、十万ヘクタールぐらいは温暖化対策でこれはやることは決まっているわけですね。それにもかかわらず、花粉症対策の杉林というのが、先ほどのお話ですと、年間五千ヘクタールですか。ちょっとけたが違い過ぎると思うんですが、この発生源対策というのは温暖化対策にならないという御理解なのかどうか。その辺をちょっと、改めて追加でお答えいただけますか。

内藤政府参考人 温暖化対策としましては、森林を良好な状態に保つということでございますから、間伐等やっているわけでございます。

 そういう意味では、杉林におきましても、杉林を良好な状態に保つということは、我々も温暖化対策にも十分貢献するものであると考えております。

吉田(泉)分科員 そうだと思うんですよね。ですから、ぜひこの花粉症対策を温暖化対策にカウントされるように何とか持っていってもらいたい。この問題はちょっと後でまた触れたいと思います。

 続いて、このプロジェクトは十年続けてやろうということでありますが、そうすると、十年後に対象地とされております東京駅周辺、大阪駅周辺の花粉量は一体どのぐらい減ると見込まれるか。それから、東京、大阪以外の地方は全くこれは関係ないものかどうか。さらには、そうしますと、日本国全体として花粉症の患者さん方の症状緩和というのがどのぐらい効果があるものなのか、教えてもらえますか。

内藤政府参考人 私ども、十年間でおおむね五割減少させるという目標を設定する際に、試算をしております。

 首都圏と京阪神への杉花粉の飛散量でございますけれども、このシミュレーションによりますと、対策を講じなかった場合と比べまして二割程度減少するものと試算してございます。

 ただ、御案内のとおり、花粉症については、ほかの植物からの花粉、あるいは大気汚染、食生活等の関連など未解明の部分もございますので、一概には言えないわけでございますけれども、我々は花粉の発生の減少によりまして症状の軽減には寄与できるものというふうに考えております。

 ほかの地域でのお話でございますけれども、私ども、平成十八年度から十九年度には、首都圏、中京、京阪神を対象に飛散の発生度合いについて調査を行いまして、二十年度には福岡・北九州地区を対象に調査を行い、これで四大都市圏の発生源の調査をしたわけでございます。その結果、首都圏、京阪神におきましては、杉の花粉飛散量に与える影響は非常に強いと推定される杉林が推定できたわけでございますけれども、中京地区、福岡・北九州地区では、そういう推定ができるようなものがなかったということでございます。

 それから、それ以外の大都市におきましても、今後、杉の発生源の推定のための調査を行う考えでございまして、その結果を踏まえまして、今後対応を考えていきたいと考えております。

吉田(泉)分科員 結局、三千万人の患者さんにとっては、この十年間かけるプロジェクトでもほとんど関係ないというか、若干症状が緩和されるかという効果だろうというふうに今受けとめたところでございます。後でまた申し上げますが、私はこの実施量を一けた上げたらどうかなというふうに思っているところでございます。

 次に、まず初年度、二十年度のこのプロジェクトの事業が一応一年間完了したわけです。その実績をちょっと伺いたいと思います。この転換事業、花粉の少ない森林、混交林も含めて、まだ今集計中だとは思いますが、この一年間でどの程度の実績が見込まれるか、伺います。

内藤政府参考人 このプロジェクトでは、転換のほかに、少花粉杉の品種改良とか苗木の供給等あるわけでございますけれども、まず転換につきましては、実施主体が全国森林組合連合会となっておりますので、私ども、関係の地方公共団体からの報告とあわせまして、これらの実施団体からの報告をもって取りまとめたいと考えております。まだ取りまとめはできておりません。

 ただ、その状況を聞いておりますと、初年度ということもあったというふうなことではございますけれども、まず森林所有者の理解と協力というものがなければ転換、伐採というのはなかなか難しいわけでございます。その森林所有者への説明、それから理解を得るということで、現場で大変御苦労されているというふうなことを聞いております。

吉田(泉)分科員 現場で所有者の理解を得る苦労があるというのが一年間やってみた感触だと承りましたが、転換に際して所有者には協力金というのを払うことになっております。三十年生の杉を切る、そうすると成木になってから売る場合とこれはお金が違いますので、価格差額、大体一ヘクタール当たり二十万という計算でそれを協力金として払うということですが、一年やってみてこの二十万という額が適正かどうか。どうでしょうか、感触は。

内藤政府参考人 正直に申しまして、初年度でございますので、この二十万というのが適正かどうかということの判断についてはまだ早いかと思いますけれども、やはりこの額ではなかなか理解と協力を得るのは難しいなというのが私が今受けている実感でございます。何らかの工夫をしなければということでございます。

吉田(泉)分科員 せっかく発生源対策という根本的な対策を立ち上げたわけですけれども、なかなか今のままでは実施が困難というのが現状だろうと思います。

 花粉情報協会というNPOがありまして、そこに小笠原寛さんという理事長さんがおられるんですが、その人と今回もちょっと書類のやりとりをしたんですが、こういう話を聞きました。

 この協会で山で花粉の調査をしている、そうすると、所有者の方が、いやいや皆さん方、我々もなかなか手入れができなくてごめんなさいね、こういうことを言われることがあるらしいんですね。所有者の方も、先ほどのお話ですと二六%の国民にある意味じゃ迷惑をかけているということに対して、そういう気持ちがあるということだろうと思います。

 小笠原理事長は、やはりそういう認識をまず所有者に持ってもらうということが大事だ、所有者の良心に訴えるという政策も必要だ、その良心にこたえていただくためには協力金をもう少しふやせ、そういうお互いのやりとりが必要ではなかろうかというふうに思って、私もそのとおりじゃなかろうかなというふうに思ったところでございます。

 ちょっと話はかわりますが、今回政府は、真水で十五兆円という追加経済対策を発表したわけですが、その中に一つの目玉として杉伐採事業も入りました。それによると、この追加分として伐採面積は一体どのぐらいふえるものか、伺います。

内藤政府参考人 御指摘の経済危機対策の中に入れてございます花粉症対策としての杉の伐採、植えかえの促進でございますが、これはまさに委員御指摘のように、もっと強力に花粉発生源対策を行わなければいけないという認識のもとで我々は取り組もうとしているところでございます。

 後の植栽等も含めまして全体で百億円という予算を今考えており、それを検討しているところでございますけれども、面積換算につきましては、三年間で三百万本がどれぐらいの面積になるかということについては、御案内のとおり、地況それから森林の状況によりまして立っている立木の数というのは当然違ってまいりますので、一概には申し上げられませんけれども、ヘクタール当たりの立木本数が四十年生ですと大体千本ぐらいということでございますので、仮に千本程度というふうに仮定しますと、対象となる面積は三年間で三千ヘクタール程度ということになります。

吉田(泉)分科員 追加経済対策によって三年で三千ヘクタール面積がふえるということは、一年間で一千ヘクタールふえるということですよね。追加経済対策の前のもともとのプロジェクトでは、大体一年間五千ヘクタールですか。ですから、五千ヘクタールがこれによって六千ヘクタールになるという理解をしたわけでございます。

 いずれにしても、五千が六千になった、そういうレベルの話なんですね。片一方で、温暖化対策として毎年二十万ヘクタールふやそうというときに、五千とか六千とかそういう扱いをしているというのは、ちょっと私、余りにこの杉花粉の問題というのを軽く扱い過ぎているんじゃないかというふうに感じているところでございます。

 まだまだこれはけたが違う。このプロジェクトをもっと本格的にやって、国民の三千万人が毎年一カ月ぐらい苦しむわけですから、一兆円の損失が出ているというような事態ですから、本腰を入れて、このプロジェクトの面積それから先ほど申し上げた協力金、こういうものを拡大すべきじゃないか。

 私は、この事業規模を十倍にしたらどうか、こういうふうに思っているところでございますが、どうでしょうか。

内藤政府参考人 先ほど面積は、ヘクタール千本であれば三年で三千ヘクタールと申し上げましたけれども、今まで、九万五千ヘクタールを十年間で半分、約四万七、八千やるとすると、年間五千ヘクタールに相当するわけですけれども、それをより強力にやるためにこの経済危機対策の措置をしておるので、単純にプラスアルファということになるかどうかということについては、今後どういうふうな執行をしていくかということにもかかわってこようかと思います。

 額を、事業規模を大きくすべきとの御指摘でございますが、私ども、いろいろな現場の声を聞いておりますと、まず森林所有者にきちんと丁寧に説明をして、どれくらいの収支になるのかということについても個々の所有者ごとに丁寧に説明しないと、なかなか理解、協力が得られないということを聞いております。

 そういう意味からすると、私ども、今回の経済危機対策で、今後詳細は詰めるわけでございますけれども、考えております百億円をまず重点的に京阪神それから首都圏で措置いたしまして、やはりモデルをきちんとつくらなければ、それをどういうふうにしてほかの地域に普及それから波及させていくことができるかということは、正直言ってなかなか難しいのではないかと思っております。

 したがいまして、私どもは、この措置を有効に活用して、どうすれば森林所有者の理解と協力が得られて杉の転換ができるかということについて、早急にそのやり方を確立していきたいというふうに思っております。

吉田(泉)分科員 私は、このプロジェクトの目標、目的も、今長官がおっしゃった考え方も大変いいと思うんです。ただ、三千万人の人が苦労しているわけですので、モデルをつくるにしても、なるべく短期間で、事業費を十倍にして期間を半分にするとか、何かもう一工夫、もう一検討していただきたいと思いました。

 最後に、杉林も含めた人工林の長期的な考え方について、大臣にお伺いしたいと思います。

 戦後の日本の林業政策の基本は拡大造林。これで各地の天然林が急激に杉とかヒノキの人工林になっていったわけであります。今も再造林という名前で人工林の維持が図られている。例えば、政府の森林目標を拝見しましたが、杉林を含めた育成単層林、人工林のことですが、この面積が今は一千万ヘクタールくらいありますが、二十年後も大体一千万ヘクタールを維持するというような目標、数字になっておりました。

 一方で、きょう取り上げたように、人工林の急増というのが基本的な原因だと思いますが、花粉症という国民病が発生したところでございます。そこを認識するというのが私は一番大事かなと思うところでございます。

 大臣、この花粉症の現実を踏まえて、杉林を含めた人工林を長期的にどうしたらいいものか、御見解をお伺いします。

石破国務大臣 花粉症対策は、今委員のお話を聞いて、また認識を新たにしたところでございます。いろいろと考えを改めるべき点は改めていかねばなりません。

 例えば、これは余談で恐縮ですが、花粉症緩和米なんというお米を今開発いたしておりまして、お米を食べることによって花粉症が緩和される、そういうやり方も私ども今研究をいたしておりまして、農林水産省として、いろいろな花粉症対策というものを早急に、まさしくこれはなった人でないとわからないお話でありまして、早急にやっていかねばならぬことだと思っております。

 今委員から育成複層林についての御指摘がございました。おっしゃいますとおり、そのような育成複層林への誘導というふうなものを図りまして、多様な森林を整備していかねばならないわけでございます。

 では、具体的にどうするんだということでございますが、いわゆる単層林、同じ年数の針葉樹のみでできている単層林、こういうものであって、土砂の流出などの防止に特に留意をしなきゃいかぬ、あるいは野生生物との共存、自然との調和、そういうことで活用していかねばならないというものについて、委員が御指摘もありました抜き切りを繰り返すことなどにより育成複層林に誘導していかねばならぬということでございます。

 現在、針葉樹等の単層林は一千万ヘクタール造成されておりますが、このような育成複層林は九十万ヘクタールでしかございません。今後、この面積は二十年で約二倍の百七十万ヘクタール、百年後、やはりこれが森林のすごいところで、百年後には六百八十万ヘクタール、そこまで拡大をさせていきたいということでございます。

吉田(泉)分科員 方向は私も賛成です。ひとつ、過去の反省を踏まえて、発想の転換をして新たな林業政策に取り組んでいただきますようにお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

秋葉主査代理 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田峰之君。

福田(峰)分科員 よろしくお願いします。きょうは、都市農業について幾つかお話を伺いたいと思います。

 私の住んでいます横浜市は、人口が三百六十万人を数えていまして、臨海部では港湾経済、そして、内陸部を中心とした都市農業が存在しています。私の選挙区である横浜市の青葉区、緑区というのは、都市農業が盛んな地域でもありますし、あるいは会社員の方も住んでいまして、一世帯当たりの平均所得が実は一千十三万円という、極めて高い所得階層が住んでいる地域でもあります。

 平成十一年施行の食料・農業・農村基本法第三十六条二項におきまして、都市における農業が明記をされまして、平成十七年に閣議決定を見た食料・農業・農村基本計画にも、農地の多面的機能や都市における農業の振興が明記されています。

 しかし、都市農業振興の関連予算を見ても、農業体験あるいは交流、あるいは、緑地や防災空間としての機能というものが重視されていまして、農産物の生産自体が中心となっているとは私は残念ながら思いません。

 そこで、この市街化区域内農地の中でも、特に三大都市圏特定市における農業振興をいかに考えるか、総論で結構ですので、まず副大臣にお伺いしたいと思います。

石田(祝)副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 三大都市圏特定市も含めた都市部における農業は幾つか特徴がございまして、一つは、消費地に近いという利点を生かして、新鮮な農産物の供給といった生産面での重要な役割を果たしていただいております。また、身近な農業体験の場の提供、災害に備えたオープンスペースの確保、潤いや安らぎといった緑地空間の提供、こういう多面的な役割を果たしていただいている、このように認識をいたしております。

 その上におきまして、食料・農業・農村基本計画におきましても都市農業をこうした役割を果たすものとして位置づけておりまして、その振興を図ることといたします。

 一つは、都市農地を保全していくための取り組みや都市農業の振興に必要な市民農園や直売所等の整備への支援、これは、広域連携共生・対流等対策交付金という形で、平成二十一年度は六億三千八百万円の予算をつけております。

 また、相続税の納税猶予制度を初めとした都市農地の維持に必要な税制措置、このようなものについても措置を講じております。

 都市農業の振興施策は、都市政策や税制などとも密接に関係していることから、国土交通省などの関係府省とも連携して、都市農業の持つ重要な役割が発揮できますよう、必要な施策を講じてまいりたいと考えております。

福田(峰)分科員 都市部における農業生産は、今、副大臣の御指摘もありましたけれども、土地に対する資産価値が高いがゆえに、固定資産税あるいは相続税といった税制との関係抜きに語ることはできないと思います。

 農地は、一般的には先祖から受け継いだものであり、みずからが例えば努力をしてその資産価値を高めたわけではありません。国や地方公共団体が都市計画を定めて、そして開発を認めたがゆえに、資産価値が必然的に高まってしまったということにすぎないんじゃないかと私は思うんです。そこで、三大都市圏特定市は特に資産価値が高い土地になってしまうわけです。

 固定資産税は、一般市街化区域農地では、宅地並み評価、そして農地に準じた課税であるのに対しまして、三大都市圏特定市の市街化区域農地は、宅地並み評価、そして宅地並み課税になっています。これはなぜここで差があるのか、お答えいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 市街化区域農地は、都市計画法上、おおむね十年以内に優先的にかつ計画的に市街化を図るべきものとされておりまして、届け出だけで宅地転用が可能でございます。したがって、宅地として売買することが可能であるなど、資産価値としては宅地と同等でありますことから、課税の公平、適正化の観点から、宅地並みに評価を行うこととしております。

 この宅地並み評価につきましては、三大都市圏の特定市もその他の市町村も同様でございます。

 その上に、さらに課税についてでございますが、これは御指摘のとおり、三大都市圏の特定市以外の市街化区域農地においては農地に準じた課税とする一方で、三大都市圏の特定市においては宅地並みの課税としております。これは、三大都市圏の特定市におきましては、住宅事情などを踏まえた土地政策上の必要性、緊急性が特に強いというようなことですとか、周辺宅地との税負担の不均衡が著しいというようなことによるものでございます。

 なお、市街化区域内において営農を継続される場合には、生産緑地地区の指定を受ければ、固定資産税も農地として評価、課税されるということになっております。

福田(峰)分科員 平成三年のバブルの時代、土地の価格が上昇した際に、今御指摘がありましたように、宅地を供給させる目的で高い税金をかけたと思うんです。今は、バブルの時代も過ぎ去って、住宅地の供給がそれほど必要とは思われない時代になっていると私は思いますし、ましてや、食料・農業・農村基本法において都市農業を推進するということが明記をされて、あるいはまた、食料の自給率も上げていこうという新しい時代背景になっていると私は思うんです。

 そこで、一般市街化区域農地と三大都市圏特定市の市街化区域農地の固定資産税の賦課のこの違いを、なぜ都市農業を推進しようとする農水省が変更を求めてこなかったのか、理由を伺いたいと思います。

吉村政府参考人 まず、市街化区域農地に係る固定資産税の取り扱い、特に三大都市圏特定市のものと一般の市街化区域内農地の問題につきましては、先ほど総務省の方からもお答えがありましたように、平成三年の地方税法の改正によって、宅地化促進という観点から、宅地化するものと保全するものの区分の明確化を図るということ、そして、保全する農地については生産緑地制度の活用を図る、宅地化する農地については宅地並み評価、宅地並み課税が実施されたものというふうに承知をしております。

 そういったことで、一般の市街化区域内農地と三大都市圏の特定市の市街化区域内農地に関する固定資産税の取り扱いの違いは、住宅政策の観点から行われたものというふうに考えておりまして、農林水産省としてその点についてお答えするのは難しいわけでございますけれども、ただ、実際にその平成三年、四年当時に、農家の意思を踏まえて、生産緑地とするか宅地化する農地とするかという判断が行われて、実際に生産緑地となった場合には、これまで転用ですとか売却についての規制に服してきたという経過があるわけでございますので、そういう意味では、生産緑地と宅地化農地の間で固定資産税の扱いに違いがあるということは、それなりに理由があることではないかというふうに思っております。

福田(峰)分科員 市街化区域における住宅供給という、これは当時の政策ですよ、今とは若干違うと思うんですが、逆に都市農業の推進という立場に立つのが私は農林水産省だと思うわけです。例えばそういう立場に立った場合は、これはその当時を総括する必要があると私は思うんです、時代背景が違うわけですから。その意味では、私は、ある意味ではこれはバブル時代の忘れ物じゃないかというふうに思うんです。

 そこで改めて聞きますけれども、この平成三年、バブル時代の市街化区域内農地を宅地化すべきという政策が当時は推奨されたわけです。これは農林水産省がやったのじゃないかもしれませんが、振り返ったときに、これは実際農林水産省はどんな思いを持っているのか、伺いたいと思います。

吉村政府参考人 平成三年の経緯は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、繰り返しになって恐縮なんですけれども、やはり、こういった政策は住宅政策の観点から行われたものであるわけでございます。

 その当時も、農林水産省といたしましては、関係する農家が生産緑地を選択するのか宅地化農地を選択するのか、制度をちゃんと理解をして判断できるように、農業委員会なり農協などの関係機関と連携して制度の周知に努めたわけでございますし、また、生産緑地となった場合には、そこでは長期にわたり営農が行われるということで、必要な農業支援が行われるように措置をしたところでございます。

 評価ということなんですけれども、市街化区域内の宅地化を推進するという政策の流れがあったわけでございまして、その中で、生産緑地制度によりまして保全する農地の区分を明確化することによって、それぞれの農家の営農に関する意向に沿った形で都市の中で農地を保全する、そういう一定の効果はあったというふうに評価をしております。

福田(峰)分科員 三大都市圏で農業生産を続けていこうとすると、先ほど言いましたように、固定資産税だとか相続税というのは抜きに考えられないんです。

 今、生産緑地の話がありましたけれども、三大都市圏特定市は四・九万ヘクタールの農地があるんです。その中で生産緑地は一・五万ヘクタールにしかすぎないんです。その一・五万ヘクタールというのは、当時から変わらないでずっとそのままなんです。例えば、もしもさらに農家の人たちが農業生産を一生懸命やっていこうと思えば、この申請が多くなったっていいと思うんですけれども、なぜ農家がそれ以降も含めてこの生産緑地への申し出をしないのか、理由等を実際に農家に調査したことがあるのか、伺いたいと思います。

吉村政府参考人 生産緑地に指定をするかどうかについてでありますけれども、包括的な調査をしたことはございませんけれども、さまざまな形で意見を聞いてきております。

 やはり、生産緑地に指定されますと、固定資産税の農地課税などのいわばメリット措置が受けられるわけでありますけれども、一方で、地区内での農地としての利用、これを継続する、また、建物の新築等の行為制限、それから、生産緑地地区の指定後三十年またはその所有者が死亡するまでの間の所有義務といった規制も課されているということでございます。

 そういうことで、市街化区域内農家は、固定資産税等のメリットのある生産緑地内に農地を保有する一方で、不測の事態が生じた際や、転用や売却することも念頭に入れて、一定の農地については生産緑地の指定を希望していないものというふうに認識をしております。

 先ほども申させていただきましたが、農林水産省といたしましても、生産緑地制度が改正されてスタートする際に、この指定を受けるかどうかの区分を進めるときに、関係農家が生産緑地制度や関係税制について十分理解した上で判断していくことが重要と考えて、農業委員会や農協などの関係機関と連携をして制度の周知を図ったところでございます。

福田(峰)分科員 例えば横浜市は、三百四十ヘクタールの生産緑地が存在しているんです。横浜市独自で農業振興策として、農業専用地区制度、こんなものもやったりしているんですけれども、これ、大都市と思われていますけれども、例えば、農業産出額約百億円、神奈川県内で実は一位、二位を争う農業産出をしているんです。例えば生産量で見ますと、コマツナは全国二位、カリフラワーは全国八位、キャベツは全国十位。都市部においても、実は農家の農業生産というのは活発に行われているんです。

 そこで、三大都市圏特定市及び域内の生産緑地の専業農家はこの中に大体どれぐらいいるのか、教えていただきたいと思います。

吉村政府参考人 二〇〇五年の農林業センサスによりますと、三大都市圏特定市の販売農家数は十三万七千戸となっておりまして、このうち専業農家数は、販売農家数の二〇%に当たる二万八千戸というふうになっております。

 なお、特定市の中でも特に生産緑地地区内の農家ということではデータがございませんので、御理解いただきたいと思います。

福田(峰)分科員 この専業農家の数をどう見るかというのは、いろいろな議論が私はあると思います。逆に言えば、専業では生活できないから兼業という場合もありますし、農業以外の仕事をしたいから兼業という場合も実はありまして、兼業も理由はさまざまなんですね。基本は、農業をやられている方というのは、ぜいたくしなくても、少なくとも居住地域において普通の生活ができるということがやはり前提になるんだと思うんです。

 そこで、この三大都市圏特定市の農家の世帯当たりの平均所得、あと、耕地面積はどれくらいなのか、教えてください。

吉村政府参考人 これも二〇〇五年の農林業センサスによりますと、三大都市圏特定市の一戸当たりの経営耕地面積は、販売農家で〇・九六ヘクタールというふうになっております。

 なお、特定市の世帯当たりの平均所得についてのデータは持ち合わせてございません。こういうものはとっておりませんが、例えば、農業経営統計調査によりデータがある県別の農家所得で見ますと、三大都市圏特定市を含んでいる神奈川県、先ほど、委員の御地元の地区の話もありましたが、神奈川県全体では七百七十万円、埼玉県が四百七万円、千葉県が四百十五万円というふうになっております。

福田(峰)分科員 世帯当たりの耕地面積は地方に比べれば当然これは小さいわけで、小規模農家がどうしても中心になってしまうのは土地の事情上いたし方ないんですが、逆に言うと、農業所得だけで生活が保障できるかというと、できるところもあれば、できないところもあると思うんです。例えば、企業で働いて週末農家という場合も兼業としてあって、所得の補てんをかけているというところもあるでしょうけれども、農業を真剣に取り組もうとすると、働きながらやるというのは実際に難しいので、不動産所得というのがやはり必要になってくるんです。

 それで、三大都市圏特定市の世帯当たりの所得のうちに、例えば農業所得と不動産、アパートを経営するとか駐車場を経営する、こうした所得の比率というのはどうなっているのか教えてください。

吉村政府参考人 先ほど御説明させていただきましたが、三大都市圏特定市に着目した世帯当たりの所得というデータはございませんが、平成十八年の農業経営統計調査による販売農家一戸当たりで、農家所得に占める農業所得、これは県別のデータはございます。農家所得に占める農業所得は、全国では三七%、神奈川県では二八%というふうになっております。

福田(峰)分科員 この数字を見ても、農業の所得だけというのはなかなか厳しいんですね、これだけというのは。そうは言う一方で、地産地消を目指して消費者に安心、安全の農作物を提供しようとすれば、手間もかかれば時間もかかりますし、そのために、先ほど申しましたように、企業に勤めて週末農家というわけにはなかなかいかないんです。そうしますと、農業を維持、推進していくためには、不動産所得というのがこれはやはり不可欠なんですよ。それで、逆に申し上げれば、不動産所得がなくて農業が営めないという状況が発生しているのじゃないかなと私は思うんです。

 そこで、今までは農業をやっている農業所得と、あと不動産管理をやってトータルの所得であったものが、これで例えば相続になったときに、不動産所得を生み出す例えばアパートだとかそういう方は、相続で持っていかれてしまうと所得を生み出すものがなくなってしまいますから、農業をするのもこれは大変だということになりかねないんですよ。

 そこで、農地と不動産所得を生み出す宅地を合わせてトータルで例えば相続税の納税猶予制度をつくって、相続が発生しても実際に永続的に農業生産を行うようにする、そういう考え方自体は農林水産省として考えられるのかどうか、教えていただきたいと思います。

吉村政府参考人 まず、農地についての相続税納税猶予制度ですけれども、これはまさに、一定の要件のもとに相続税納税猶予制度が設けられておりまして、農地の保全、農家の営農継続に資しているところでございます。

 不動産所得についてこれを合わせてというお尋ねでございますけれども、不動産所得に関する施策について農林水産省としてお答えするのは、これはちょっと難しいかと思います。

 ただ、農地に関する相続税納税猶予制度は、農地法上の農地の位置づけや、農地の転用、譲渡が法律上厳しく規制されていることを踏まえて認められた措置だというふうに理解をしております。

福田(峰)分科員 先ほど副大臣のお話もありましたように、都市だから、消費者が多く存在する、都市だから、例えば新鮮な顔の見える品物が届くとか、都市だから、実は若者も故郷から出ていかないで、そこで生活してもほかのライフスタイルも楽しい、だからそこで営めるとか、そういう農業が実はできるんですね。市民農園だとか緑地保全、災害空間といった生産体としてのいわゆる農地ではなくて別の役回りを担わせるというのは、結果的に生じることだと私は思うんです。それが本質だとは私はどう考えても思えないんですよ。

 そこで、税金の話というのは、これは財務省の部分もありますから財務省の見解もお伺いしたいんですけれども、農業所得を生み出す農地と不動産所得を生み出す宅地を合わせて相続税の猶予制度ということをつくったりすることは、これはできないんでしょうか。

古谷政府参考人 お答え申し上げます。

 農地に対する相続税の納税猶予制度は、租税特別措置法に基づきます政策税制ということで仕組んでございます。先ほど、農林水産省の方から御答弁ございましたように、農地法上の農地の位置づけですとか、農地の利用、転用、譲渡が法律上厳格に制限されているといった農地法の政策体系を踏まえまして、農地に限って認められている特例措置でございます。

 御指摘のような賃貸用の不動産ということになりますと、こうした農地と同じ事情にはございませんので、こうした財産にまでこの特例を適用することは、課税当局としては適当ではないと考えているところでございます。

 なお、賃貸用の宅地ということで申し上げますと、小規模宅地についての相続税の課税価格の減額という特例がございまして、御指摘のような貸し付け地の場合には、二百平米までのところを半分に評価額を下げるという特例は別途ございます。

福田(峰)分科員 相続税の基本的な概念というのは、持つ者と持たない者の不公平感を取るということですから、これを例えば担保するというのは、私も否定はしません。

 しかし、農業を営みながら、そして居住地域での一般的な生活を過ごしたいと思えば、先ほど言いましたように、例えば農業経営を行うための、例えば宅地も、両方ともセットで所得になっているわけですから、片一方がなくなると生産財がある種なくなってしまうんですよ。生活をある意味補てんする上での不動産所得と、あるいは農家によってはべらぼうな財産を持っている部分もありますから、それは別建てで私は考えているんです。

 そうじゃなくて、やはり一定のものというのは、農業を営む上での補てん部分というのは、仕組みとしては農地の相続猶予とセットで一定の所得の保障ということを考えないと、都会では、不動産所得が得られるところはそれでがさっと持っていかれちゃうと、農業ができない、働きに行かなきゃいけないという事態が、例えば私の選挙区ではよくよく起こっているんです。

 例えば、先ほど申し上げましたように、私の選挙区は所得階層が高いところだと思うんですけれども、一千十三万円が平均所得なんですよ。だから周りの物価も高いんです。そうすると、農業所得と不動産所得を合わせて一千十三万円までは、例えば、そこを生み出すまでの不動産所得というのは、あくまで農業をやることとセットですけれども、ある種の猶予、そういうことも現実的に考えていかないと、農業をやりたくても代々にわたって継続できないという現実があるということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

 こうした議論をいつか考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、一方で、今、農水省からいろいろな御答弁を聞いていますと、三大都市圏の都市農業を本格的に議論していくための、例えば今言った所得の割合がどうだとか、例えば神奈川県といっても、神奈川県の中には大都会もあれば田舎もあって、一緒にされてしまうと実態がこれは見えないんですよ。ですから、都市農業を推進しようとせっかく農水省も頑張っているわけですから、まずこの基礎データをもうちょっとしっかりと集めていただかないと、なかなか実態が見えてこないんじゃないかなと私は思うんです。

 そこで、この三大都市圏特定市のデータ集積をもうちょっとしっかりと行う必要性があると思うんですが、これについてはどう考えますか。

吉村政府参考人 まさに委員御指摘のとおりでございまして、三大都市圏特定市を初めとする都市部の農業に関するデータにつきましては、都市の農業政策の検討に当たって必要なものだというふうに考えております。農林水産省で調査をしている農家数、耕地面積などのデータのみならず、国土交通省で把握をしている生産緑地面積等のデータをこれまでも収集しているところでございます。

 ただ、委員御指摘のありましたようなさらに詳細なデータにつきましては、私どもの力だけでこれを収集していくことはなかなか難しいところもありますので、関係省庁、それから、特に地方自治体の方でもいろいろなデータをとっておりますので、そちらとも連携をしながら必要なデータの集積を行っていきたいというふうに考えております。

福田(峰)分科員 食料の自給の拡大とか、安心、安全な食料の提供、地産地消の推進、私は、身近にいて、まだまだ都市農業は進化する可能性は十分あると思っているんです。ただ、そのためには、この税の問題を抜きには都市部の農家は本当に考えられないんですよ。

 例えば、先ほど、農林水産省としては答えることが難しいと言っていた税との関係をそういうふうに断ち切ってしまったら、少なくとも私の周りの横浜の農業は、しっかりとした政策の組み立ては、残念だけれども私はできないと思います。ですから、まずは、データの集積、そうした点も含めてぜひ考えていただきたいし、それで都市の農業をさらに進化させてもらいたいなというふうに私は思っているんです。

 そうした中で、与党の税制大綱におきまして、今後、都市計画制度の見直しの中で、農地の制度上の位置づけや保全、利用のあり方を検討し、必要な見直しを検討するという税の話がこれは出てきているんです。

 そこで、私が今いろいろなお話をさせていただきましたが、そうした点を踏まえて農水省としては、この見直しの中で、三大都市圏特定市では実際にどんな形で農業があるべきかということを最後に副大臣に伺いたいと思います。

石田(祝)副大臣 今、私もるるお話を聞かせていただきまして、都市農業に対する委員の思いもよくわかったところでございます。

 これは答弁と直接関係ありませんが、私も世田谷にしばらくおりまして、つい最近もちょっと行く用事がありまして、いろいろ農家の方とも直接話すことがありました。自分の次の代の農業がどうできるのか、こういうことを大変心配されておりまして、これは大事な問題ではないのか、このように私も改めて感じました。

 それで、都市の農業につきましては、最初に御答弁申し上げましたように、いろいろな役割を持っていただいているということを思っておりますけれども、やはり農業というのが根本だというのは、私は委員のおっしゃるとおりだと思っております。

 そういう前提に立ってこれから見直しもしていかなきゃいけませんが、都市部においても一生懸命頑張っておられる農業者の皆様の実情もよく踏まえまして、国土交通省とも十分連携しながら、今後の都市計画制度等の見直しの中で、都市農業の持つ重要な役割が発揮できるように、農地にかかわる制度上の位置づけや保全、利用のあり方、こういうものの検討をしっかりと行ってまいりたいと思っております。

福田(峰)分科員 ありがとうございました。ぜひ、そうした点でこれから議論していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

秋葉主査代理 これにて福田峰之君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

谷川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 昨日に引き続き厚生労働省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤渉君。

伊藤(渉)分科員 公明党の伊藤渉でございます。

 きのうに引き続きの厚生労働関係の質疑ということで、冒頭の質問をさせていただきます。

 以前から私は、まず食の安全、そして健康、長寿ということで御質問を重ねさせていただいております。きょう、まず冒頭、副大臣の方に、食を取り巻く環境、そして国民の意識の変化、こういう観点から御質問を申し上げます。

 健康、長寿というのはだれもが望むことでございます。こうしたことに向けて、国においては、国民一人一人が食生活、運動、休養、喫煙、飲酒といった生活習慣の改善に対する自覚を持ち、健康づくりを積極的に実践できるよう、具体的な目標を盛り込んだ二十一世紀における国民健康づくり運動、健康日本21というものを推進しております。

 また、平成十五年には、この健康日本21を推進するための法的基盤として、健康増進法が施行をされております。

 またさらに、国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにということから、食育の推進に取り組むという趣旨で、平成十七年には食育基本法が施行をされております。

 こうしたさまざまな取り組み、もちろん、保健医療、こうしたことの充実も相まって、我が国の平均寿命は平成十八年で男性が七十九歳、女性が八十五・八一歳と伸びてきております。この中の一つには、当然のことながら、これまでの取り組みも含めた食生活の改善ということが大きいというふうに考えております。時代に合った食生活の改善を図るために、食の安全そして安心の推進、これをさまざまな立場の方々と協力をして取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えております。

 そういう意味で、最も我が国の今抱える人的財産という意味で、調理師と呼ばれる皆様方にもっと光を当てていくべきじゃないか、こういう趣旨で以前質問させていただいたことがございます。きょうもそれに類する形で、関係の法律もさまざまな角度から整備をしていく必要もあると思いますし、諸施策を実施することが国民の健康を増進するために大変に重要である、こういうふうに考えておりますけれども、改めて、冒頭申し上げました、我が国の国民生活で食を取り巻く環境、そして国民の意識の変化、これに対する認識を副大臣の方にお伺いをいたします。

渡辺副大臣 健康、長寿を目指すに当たって食生活の改善が大変重要な課題、そのように認識をしております。近年の我が国の社会経済を取り巻く環境が大きく変化をしていることに伴い、食を取り巻く環境も大きく変化をしており、例えば、日々忙しい生活を送る中で食の大切さに対する意識が希薄になってしまっていたり、あるいは健全な食生活が失われてしまっているといった懸念すべき状況が起こっている、そのように考えております。

 具体的には、野菜の摂取不足、そしてまた朝食をとらないという朝食の欠食などの問題、また栄養の偏りや食生活の乱れが見受けられまして、そのほかにも肥満や生活習慣病の増加、あるいは反対に過度の痩身、ダイエット等の問題がありますけれども、過度の痩身等の問題も生じているところであります。

 食生活の改善は、国民の健康づくりを図る上で重要な柱の一つでありまして、今後とも、食を取り巻く環境や国民の意識の変化を十分に踏まえながら、食生活の改善に向けた取り組みを推進していきたい、そのように考えているところであります。

伊藤(渉)分科員 先ほども申し上げましたとおり、特に男性は、忙しい仕事になればなるほど外食というものがふえてきます。外食は余り体によくないなどと余り理屈もなく以前からよく言われているわけですが、やはり塩分が高いとか、そういう食事もあるのかもしれません。そういう意味では、正しい食の知識を身につけた方、例えば先ほど申し上げた調理師の方、こういった方により一層光を当てていくということが重要である、これが私の視点でございます。

 それに関連することで、先日、こういうニュースがございました。調理師などを養成する京都の専門学校でございますが、「土地や校舎の所有権を失い、京都地裁から立ち退きの強制執行を受けた問題で、学校側が生徒や保護者の問い合わせに応じる窓口を設けず、事実上「音信不通」状態になっている。授業料が返還されないために転校を決められない人もおり、不満の声が強まっている。」四月十五日、京都新聞で配信をされたニュースでございます。

 今申し上げたとおり、正しく食というものの知識を身につけている、その資格の一つが調理師でございます。こうした調理師等を養成する養成の施設において、この運営については、調理師養成施設指導要領、こういうところで、当時保健医療局長から各都道府県知事に向けて周知徹底をされている。その第十三という中に「財政に関する事項」とあり、財政上、経理上の健全性というものがうたわれております。もちろん、このほかにもさまざまな視点で適正な運営への配慮があることも承知をしているわけでございます。

 将来の我が国の食を支えていく有為な人材、これを輩出していく礎でもあるこの学びや、法的に言うと養成施設ということになるのかもしれませんけれども、ここにどう力を入れていくのか、今まである人的資源をどう生かしていくのか、また光を当てていくのか、そういう観点で、今や世界を視野に人材を育成すべき時代だと思います。非常に重要な施設だろう、こういうふうに思います。

 そういう意味で、食を支える人材の育成機関についての認識と、今後の課題、そして取り組みについて、副大臣に御答弁をお願い申し上げます。

渡辺副大臣 食の安全を守り、国民の健康づくりを図る上で、調理師等の食の専門家を育成する養成施設の役割は大変重要なもの、そのように考えております。

 特に調理師につきましては、飲食店営業者等に対して、施設ごとに調理師を配置するよう努めるとされていること、それから、平成十八年に策定されました食育推進基本計画においても、食育を推進する担い手として位置づけがされていること、さらに、平成二十一年二月に開催されました世界料理サミットにおいて調理技術の国際交流が図られるなど、食の専門家として、その役割に期待が寄せられているところであります。

 こうした状況を踏まえまして、調理師等の食の専門家の資質のさらなる向上を図るため、今後とも、その養成施設の適正な運営の確保に向けた指導及び支援に厚生労働省として努めてまいりたい、そのように考えております。

伊藤(渉)分科員 食の世界を目指す若者もたくさんおりますので、その辺は、行政の方からの支援という形もぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、児童手当の話、少し細かいんですけれども、お伺いをしたいと思います。これは、実は細かい話ではありますけれども、大変厳しい経済の状況の中で、私のところには幾つも実は声が寄せられている話でございます。

 通常、今の児童手当は、一月から五月、この支給は前々年の所得で決まります。また六月からは前年の所得で決まります。これで支給の可否が判断をされます。今のこの急激な景気の変動を考えると、果たして前々年で決まるとか前年で決まるというふうに言っていて本当にいいんだろうか、そういう声もいただき、私もそう思いましたので、きょう取り上げさせていただきました。

 なぜなら、今、中小企業の雇用を維持するために大変好評をいただいている雇用調整助成金にしても、企業の売り上げ、直近の三カ月と今を比較すれば調整助成金が出るとか、もちろん仕組みのいろいろな違いはあると思います、どういうふうに所得をとらえるのかという技術的な問題はあると思いますけれども、それを乗り越えていくのが行政の仕事ですから、今の景気の状況を考えたときに、ちょっと判断の所得の時期が前過ぎる。

 ですから、非常に厳しい生活の状況になっているにもかかわらず、児童手当をいただくことができないというのはいかがなものか、こういうふうに思いまして、この児童手当について、例えば直近の一年でもちょっと前過ぎるのじゃないかという気はしますけれども、所得という意味では一年単位で捕捉をすることになろうと思いますから、例えば直近の一年、もしできることなら例えば半年とか、そういう極めて近い時間、変化の中で厳しい家庭状況に追い込まれている皆様へきちっと児童手当が支給されるような判断をすべきじゃないかと思いますけれども、これは厚生労働省の方にお伺いをいたします。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 児童手当の所得制限につきましては、支給事務を担う市区町村の実務面の負担、また所得を明らかにしていただくという受給者の手続面の負担、こういったことにかんがみまして、市区町村が地方税法上の所得情報を活用いたしまして、それを基本に、受給者の扶養親族の状況も踏まえまして、市区町村で判定する、そういう仕組みとしているところでございます。

 今委員御指摘のように、現行の仕組みを見直して、直近の一定期間の所得状況を把握して判定する仕組みということにつきましては、地方税法上の所得情報の活用ができないことになるために、一つには、支給事務を担う市区町村におきまして、児童手当の支給時期の都度に、約八百五十万人ほどの受給者について独自に所得を適正に確認して、手当の支給の可否を判定する必要が生じることになり、多大の事務負担が発生することにもなります。また、受給者につきましても、児童手当の受給時期の都度に、児童手当のためだけに所得状況の適正な申告が必要となってまいります。

 昨今の諸情勢を踏まえての委員の御指摘ではございますけれども、現在行っておりますような課税情報の活用以外の方法での受給者の直近の一定期間の所得を簡便かつ的確に把握する適切な方法が見当たらないという現状におきましては、直近の所得を正確に把握し、簡便かつ適切に支給の可否を判定する別の仕組みを取り入れるということにつきましてはなかなか困難でございまして、御理解を賜りたいと存じます。

伊藤(渉)分科員 なかなか難しいのは承知をしていたので、この場で取り上げさせていただいたんです。

 例えば、これは通告していないんですけれども、六月以降は前年の所得で支給できるんですよね、六月以降は。ということは、あと一月から五月も前々年じゃなくて前年にするためには、例えば雇用調整助成金なら、企業は計画といって休業計画を出してもらう、実績が確定したところで給付がされる、こういうことをやっているわけですね。では、前年の所得をある程度推測で出していただいて、一月から五月まではもらえないという可能性が出てくるわけですけれども、確定した時点でその分ももらえるとか、それは住んでいらっしゃる方の選択にして、前々年の所得でいいから一月から五月きちっともらいたいという場合もあれば、やはり非常に急激に変化しているので、前年の所得で一月からもらいたい、その場合は六月まで待ってもいいから支給をされたい、こういうことは僕は技術的に可能じゃないかなと思いながらきょうここに来たんですが、もし可能なら答弁いただけますか。

北村政府参考人 例えば、今おっしゃられましたように、申告をするというふうなことによりまして所得の把握をし直す方法、こういうやり方でございますと、対象となる受給者も限定されまして、市区町村の実務面の負担という意味でも、すべての受給者を対象とするよりも負担が小さくなるということも考えられるわけでございますけれども、他方、今おっしゃられたような方法では、やはり市区町村が独自に所得を確認して手当の支給の可否を判定する必要が生ずるという点で、市区町村のこちらの方の負担は解消しないものでございまして、なかなか困難ではないかというふうに考えられるものでございます。

 また、所得の増減につきましてはさまざまな事情で生ずるものでございまして、所得の低下局面にある方につきましては、直近の所得に基づきまして児童手当の支給の可否を判定するとした場合に、逆に、所得の上昇局面にある方につきましては直近の所得に基づきまして支給の可否を判定すべきという逆の議論、指摘が起こることが想定されます。こういったことにつきましても、自己申告にゆだねるとか、例えばそういう仕組みにつきましての是非が問題になってくるものでございますから、なかなかいろいろ難しい問題点を踏まえているということも御理解いただきまして、私どもでも慎重に検討させていただきたいと思います。

伊藤(渉)分科員 難しいのは百も承知で聞いておりますので、その市町村の負担ということも、私も皆さんにお任せするだけじゃなくて、きちっと検討を重ねさせていただきたいと思います。

 もちろん、景気、経済がもとに戻ってきて、基本的に、また少しずつでも成長局面に入れば、こういうことを聞かせていただく必要もないとは思いますけれども、今、直近の問題としてこういうことが実際に現場で発生しているものですから、やりようがあるのであれば何とかしたいな、こういう思いで御質問を申し上げました。

 次は、難病の対策のことで御質問申し上げます。

 これもなかなか難しいということは承知をした上で質問をいたしますけれども、そんな中で、今回の追加経済対策の中の一環で、十一疾患を新たに医療費助成の対象としていただき、また、数疾患もさらに追加を検討されている、こういうようなことを聞いております。対象となった方々にとっては本当に喜ばしい話でありまして、省の皆様の日々の取り組みに改めて御礼を申し上げる次第でございます。

 一方で、いわゆる難病、不治の病、こういうものを抱える方、いまだ研究すら行われていない方もたくさんいらっしゃるわけでございます。これも私が申し上げるまでもないかもしれません。

 私が一年間政務官をさせていただいたときも、皆様にも大変お世話になりました。この折に署名をいただいたいわゆる難病という中には、混合型血管奇形と呼ばれるものもございましたし、私の事務所の方にわざわざお運びいただいた方の中には、慢性疲労症候群というもので苦しんでいらっしゃる皆様もいらっしゃいました。

 まず、お伺いをいたしますけれども、医療費の助成あるいは調査研究、こういった形で何らかの公的支援を受けられる難病は何疾患あるのか。また、そこに投じられている予算の実績、直近の確定したもので結構でございますので、厚生労働省にお伺いをいたします。

上田政府参考人 難病対策につきましては、難治性疾患に関する調査研究の推進により、治療法などの確立と普及を図るとともに、地域における難病患者の生活支援などの推進を図っているところでございます。

 具体的には、患者さんの医療費の負担軽減を図るための特定疾患治療研究事業として、四十五疾患を対象に約二百二十九億円、それから、難病に関する研究の推進のための難治性疾患克服研究事業につきましては、これまで百三十疾患を対象として臨床調査研究を実施してまいりましたが、さらにこれまで対象となっていない疾患について診断基準の作成や病態の実態把握などを目的とした新たな研究を進めることなどにより、前年度比四倍増の約百億円を計上されているところでございます。

 このほかにも、難病患者に対する相談支援を行うための難病相談・支援センター事業や、難病に関する最新情報を提供するための難病情報センター事業などを実施しているところでございます。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございます。

 研究の方は四倍になったんですね。本当に、それによって研究がされる、また、その名前が行政で取り上げられる、これだけでも本当に病気で苦しんでいらっしゃる方にとっては大きな光になると思います。

 そういう意味では、厚生労働省が今把握しているいわゆる不治の病と言われるそういう意味での難病というのが、では世の中にどれぐらいあるのか。少なくとも、それらに対する研究というのも、これはどうしても公的支援がないと、お医者様もただでお仕事をしていただくわけにはいかないものですから、研究というか、そういうものに取り組んでいただけるお医者さんもなかなか出てこない、そういう意味があって、ある意味、公的支援は避けられない。そのための予算を確保していくのは私どもの仕事だろうと思うんです。

 そういう意味で、今どれぐらいのいわゆる不治の病と言われる難病があるのか、また、それらを少なくとも研究だけでもしていくためには、もうオーダーでも結構でございます、どれぐらいの予算が、ざっくりでもいいので、必要なのかということを、省の方で把握していただいているレベルで結構ですので、御教示をいただければと思います。

上田政府参考人 不治の病という意味での難病はなかなか定義が難しゅうございます。疾患の病態とか治療法などについては多種多様でございまして、そのうち不治とされる疾患すべてについて把握しているわけではございません。

 私ども、いわゆる難病、これは患者さんの数が少ない、原因が不明、あるいは治療法が未確立、長期にわたる生活への支障、こういうことを条件とされるいわゆる難病の方は、研究事業等の対象になっております百三十疾患以外にも相当数あるのではないかというふうに考えているところでございます。

 この原因が不明で治療方法が未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾病については、難治性疾患克服研究事業において実態把握や病態解明などの研究を行っております。

 この事業につきましては、平成二十一年度から、先ほど申し上げましたように、これまで研究が行われてきました百三十疾患に加えて、約百疾患程度を目標としてふやしまして、診断法の確立や実態把握のための研究を行う研究奨励分野を設けて、研究内容の大幅な拡充を行うこととしたところでございます。

 また、全体としてこのような難病に対する費用というものは、先ほど申し上げましたように、不治の病という意味で難病の把握全体が難しゅうございますので、ちょっと我々として今のところ積算はしておりません。

伊藤(渉)分科員 多分、担当の方のところにはもう山ほどそういう声が届いていると思います。なかなかお忙しい中かもしれませんけれども、目指すべき予算規模というのはどういうものなのかというのはぜひ把握をしていただきたい、こういうふうに思います。

 最後に、副大臣にお伺いしますけれども、そういう意味で、これはもう立法府が総力を結集して応援をしていかなきゃいけない話だと思います。そういう意味では、難病対策の基本法といったものの制定も視野に入れて取り組みを加速していかなければならない、こういうふうに私は考える一人でございますけれども、副大臣の認識と御決意をお伺いいたします。

渡辺副大臣 いわゆる難病の対策の法制化につきましては、難病対策が明確な根拠に基づき安定的に実施できるという考え方もあるわけでございますが、一方で、法制化によって対象疾患や施策の固定化が生じてしまう、そういうことで柔軟な制度の運用ができなくなる可能性がある、そういう面もありまして、これまで関係審議会や患者団体においてもさまざまな御意見があるという状況であります。

 難病対策の法制化につきましては、こうした状況を踏まえ、関係各方面の御意見を伺っていく必要があると考えておるわけでありますが、難病の方々への支援につきましては、調査研究や生活支援など、今後とも必要な施策を推進していくという対応をとらせていただきたいと思っております。

伊藤(渉)分科員 ぜひ、立法府の一員としては、それを後押しするような形で全力で取り組んでいきたい、こういうふうに思います。

 次に、ガラス外装クリーニングの安全管理ということについて御質問を申し上げます。

 ちょっと新聞を配ってあるんですが、これは要するに何のことを言っているかというと、私ももともと建設関係で仕事をしていたこともあり、いわゆるビルの外壁及び窓、これを掃除するという仕事があります。よく見るのは、箱の中に乗って掃除をする人たちなんですが、その箱が上からつり下げられる仕組みになっていないビルは、ほとんど人間がロープにぶら下がって、俗称ブランコといいますけれども、小さな板に座って上からずっとおりながら掃除をするという物すごい危ない作業があります。

 まず一つ目は、このブランコ作業のいわゆる墜落事故というのがどれぐらいあるのか。これは省の方に聞きます。

 ちょっと時間がなくなってきたので、二つ続けて質問しておきますが、どれぐらい事故があるのかということと、この作業は、安衛法の第五十九条及び施行規則の第三十五条で雇い入れ時の教育、これが義務づけられています。さらに、今言ったような箱に乗ってビルの外装を掃除するゴンドラとか、あと下からぐっと消防車みたいに、大きくはありませんが、いわゆる高所作業車というものに乗って掃除をする、このゴンドラとか高所作業車の使用は安全を期するために政令や省令で個別具体的な対策が講じられている、こういうふうに承知をしています。

 であれば、見るからにより危険なこのブランコ作業というのに個別の安全対策、これが法的に要求をされていません。この記事、ちょっと時間がないので紹介するのをやめますが、だから、見よう見まねで危ないのにできてしまいます。そして、いろいろな掃除の発注関係の中では最もすそ野に近いものですから、安全管理に支払われるだけのお金がないという多分実情もあります。

 こうした状況を放置し続けると非常に危険だと思いますし、そういう意味で、私、今現状把握に努めていただいているわけですけれども、もう一つ、これは副大臣にお伺いしたいのは、こういう危険な作業ですから、ゴンドラとか高所作業と同じように、特別教育の実施ですとか就業制限というものも入れていくことを検討すべきだと私は考えておりますけれども、副大臣の見解と今後の取り組みをお伺いしたいと思いますので、まず省の方から事実関係をお願いします。

尾澤政府参考人 お尋ねのビルのガラス清掃作業中等のブランコ作業におきます労働災害の状況でございますが、直近の過去三年間におきます死亡災害の状況を見ますと、平成十八年で二名、平成十九年で一名、また平成二十年におきましては、まだ確定しておりませんけれども、二名の死亡災害が発生している状況でございます。

 以上でございます。

渡辺副大臣 労働安全衛生法におきましては、クレーンの運転など危険な作業であり、また、これが適切に行われない場合に、当該労働者のみならず周囲の労働者にも被害が及ぶような重大な災害が起きる作業については、免許を有することを条件とする等、就労制限の対象とするとともに、これに準ずるゴンドラの運転等については特別教育の実施の対象としているところであり、先ほど委員がお話あったとおりであります。

 御指摘のブランコ作業につきましてはこれらの対象となっていないわけでありますけれども、ブランコ作業に労働者を従事させるときには、作業内容に即して、一つは取り扱う器具の危険性やその取り扱いの方法、二つは保護具の取り扱いの方法、三つ目には作業手順、四つ目には作業開始の点検などに関しまして安全衛生教育の実施を義務づけておりまして、また作業に当たっては安全帯の使用を義務づけているところであります。

 今後、これらの措置の徹底を図るとともに、ブランコ作業に伴う労働災害の発生状況を踏まえ、必要な安全衛生教育のあり方などを精査しつつ、その災害防止対策に努めてまいりたい、そのように考えております。

 また、特に安全衛生教育に関しては、関係業界団体が自主的にブランコ作業に係る安全教育を実施していると承知をしているところでありまして、当該団体から要請等があれば、その取り組みに協力するなど連携して、ブランコ作業における労働災害防止対策に努めてまいりたい、そのように考えております。

伊藤(渉)分科員 そのものを見ていただければ、いかに危険なものか、一般的な教育だけでは非常に難しいということもわかっていただけると思いますので、またぜひ取り組みを進めていただきたいと思います。

 あと、医療の関係と年金の関係をお伺いしたかったんですが、質問の時間が来てしまいましたので、また改めてお伺いをしたいと思います。きょうは大変にありがとうございました。

谷川主査 これにて伊藤渉君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、渡辺副大臣に、NICU、そしてまたその後方支援策、それにつきまして質問をさせていただきたいと思っております。

 昨年十月に東京墨東病院で、妊婦が七病院から診療を断られまして、出産後に残念ながら亡くなったという事件がございました。私は地元が墨東病院でございまして、二人目の娘も実は墨東病院で出産をいたしまして、ここに関係している五の橋病院も日ごろからよく存じ上げております。双方ともに懸命に周産期医療に取り組んでいるところであり、大変私も残念な思いでございましたし、その後、この関係者の方たちからお話を伺ったときに、今回、メディカルクラーク、この導入をしてくださったというこのことが何よりうれしかった、こういうお話もいただいております。

 既に舛添大臣のもとにも、その後すぐに申し入れをさせていただいたところでございますが、厚生労働省におかれましても、周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会を設置されまして、この三月に報告書を取りまとめられたと承知しております。この報告書に基づきまして本日は質問をさせていただきます。

 まず初めに、妊産婦の死亡データの正確な把握の方法につきましてお伺いをいたします。

 この報告書の「はじめに」というところにも、「妊産婦死亡率も戦後劇的に改善した。」中略いたしますが、「日本は現在国際的にも妊産婦死亡率の最も低い国の一つに数えられている。」私はこの一言に若干の違和感がございました。妊産婦の死亡データのとり方が、WHOが一九九〇年に定めたこの定義、妊娠中から妊娠終了後四十二日未満の外因死を含むすべての原因による死亡、このような見解を出しております。ここと少し違うのではないか。

 一方で、我が国で二〇〇〇年に策定されました健やか親子21、この目標の一つに、二〇一〇年までに妊婦死亡率や乳幼児の事故死亡率を半減を目指す、また、妊産婦死亡率については事故などの不慮または偶発の原因は除く、こういう書きぶりになっております。

 先日、厚生労働科学研究、その資料の中に、国立循環器病センター周産期科部長池田智明氏の乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言という研究を拝見いたしました。そこでおっしゃっていることは、死亡診断書に妊娠チェック欄を加えるなど、妊産婦死亡とその状況について正確に把握してもらいたい、これが提言の一番一項目めになっております。

 妊産婦死亡は、新生児死亡と異なりまして、実数よりも少なく公表されるという問題もあります。死亡診断書の記載を行う医師が、妊娠と死亡というここの関係性を、医学的に深い見識があり、関連づけることができなければ、妊産婦死亡として登録されないという可能性もあります。しかしながら、脳血管障害とか、さまざまそうした障害また疾病を持たれる妊婦が妊娠によってどのような影響を受けているのか、その発生例、死亡例などを究明することがこれによりまして可能になりますし、そこで蓄積されたデータをもとに医療レベルを上げるなど、再発を防止することもできると思っております。

 また、一方でこれは、交通科学、法医学の専門家の団体の方たちから私は同様の要請を受けたことがあります。その内容は、交通事故における妊婦の死亡数統計が諸外国にはあるけれども、我が国にはないんだ。外国のデータを使って分析、研究をしている。したがって、交通事故、また、死に至るほどの大きな衝撃が胎児にどのような影響を与えるか、それも解明できず、それでは的確な政策や安全確保のための取り組みなどをなかなか講じることはできないんです。こういうお話でございまして、その方たちからも、死亡診断書の様式に妊娠欄を加えてもらいたいと。死亡原因究明の際、これは、例えば亡くなった後、さまざま検視等もされますけれども、そのときにキットをプラスするだけで妊娠の有無はすぐにわかるんです、それは本当に一つの手間をふやすだけですという専門家の話も加えられておりました。

 周産期における疾病による影響とか交通外傷による影響など研究を進めまして、母子の安全対策を講じるためにも、まず正確な統計の把握が必要であると考えます。

 この死亡診断書に妊娠欄を加えることにつきまして、副大臣の御見解を伺いたいと思います。

渡辺副大臣 委員御指摘の死亡診断書及び死体検案書につきましては、人の死亡に関する医学的、法律的な証明であり、死亡に関する医学的、客観的な事実を正確に記入する必要があること、また、我が国の死因統計作成の資料となることから、死亡の原因等を記載することとなっているところであります。

 御指摘の件につきましても、死亡診断書記入の様式を定めている医師法施行規則において、「発病(発症)又は受傷から死亡までの期間」の欄に、妊娠中の死亡の場合は妊娠満何週、また、分娩中の死亡の場合は妊娠満何週の分娩中と記入するよう、「記入の注意」として明記しているところでありまして、今後も、医師に適切な死亡診断書及び死体検案書を書いていただけるよう対応してまいりたい、そのように考えております。

高木(美)分科員 よくわかりました。

 しかしながら、これはそのように注意、徹底をされているという御趣旨でございますが、やはりここに欄があるのとないのと、これは取り組みは全く異なることと思っております。したがいまして、今後、このような死亡診断書の記入のあり方、そしてまたわかりやすいこのような記入、また、死亡診断書のこの記入項目の変更自体も含めまして、ぜひとも検討をお願いしたいと思っております。

 やはり、ほかの国にはあってうちの国にはない、しかも、ここから親子の、母子の安全対策をどのように講じていいかわからない、それはあくまでも医師のそうした自覚にかかっていると言えばそうでございますが、それではやはり、今医師も大変多忙でございますので、そのようなわかりやすい制度としていただきますように、重ねてお願いをさせていただきます。

 次に、懇談会でまとめました報告書に戻りますが、この中に、NICUの後方支援施設につきましてこのようにございました。「周産期救急医療における「安心」と「安全」の確保に向けて」というサブタイトルになっておりますが、母子の受け入れが困難になっている、このことについて、主因はNICUのベッド不足、こういう指摘が行われまして、救急搬送の受け入れ拡大のためには、長期入院される重度心身障害児を後方支援ベッドに移してNICUをあける必要もあるのではないか、後方支援策として地域での一時預かりサービスの充実とか訪問看護ステーションなどを活用、推進するとか、さまざまな例も挙げていらっしゃるわけです。

 恐らく、そうしたことを踏まえて、今回の経済危機対策の中で、NICU、救急救命センター拡充、また、NICUや回復期治療室の後方病床としての重症心身障害児施設等の整備と盛り込まれたと承知をしております。

 しかしながら、分娩施設が減少している状況、ハイリスク出生児が増加をし、また、医師、看護師不足とあわせまして、やはりこうした流れ、システムを整備しないと解決しない、この点は私も全くそのとおりであると感じております。現在、NICUの病床数は約二千三百から二千四百床、このように承知をしておりまして、今回は三百から五百ぐらいNICUをふやしていきたい、このようなお話も少し伺いました。

 そこで、この根拠になる数字なんですが、これは、平成十九年厚生労働科学研究、子ども家庭総合研究事業、この中で、低体重児の出生率はやはり大変ふえている、そういうことからこのNICUについては、平成六年に定めた出生数一千人に対しまして約二床という話でしたが、今それはもう既に三床平均にしなければ間に合わない、したがって、一・五倍に当たる約七百床から千床の増床が必要である、このような研究も出ております。しかし、さらにこの研究の中で、人的要員確保の問題もあるので、短期対策として二百から五百床を速やかに整備すべき、このように結論づけられております。

 今回の報告書の中でも、「都道府県は、出生一万人対二五〜三〇床を当面の目標として、地域の実情に応じたNICUの整備を進める。」というふうにございます。

 またもう一方で、NICUから移すのはいいんですが、その移られる側の方にも退院できない理由として、重症である、また不安定な病状もある、療育施設にもまた空床がない、しかも、重症心身障害児施設、全国に七十四施設あり、七千五百人近くの障害児者が入所しております。当然、ここの高齢化も問題になっているわけですが、超重症児また準重症児が年々増加している現状から、なかなか在宅まで移れない、こういう状況も多くございます。

 そこで、当然のことながら、GCUとか一般小児病床等へのさまざま手厚い看護配置など、対応能力の強化、また、地域の実情に応じてこうした後方病床をどのように整備をしていくのか、これを進める必要が当然のことながらあると思っております。

 今回盛り込まれたこの経済危機対策を踏まえて、今後、NICUの拡充また後方病床の整備を具体的にどのように進めていかれるおつもりなのか、その内容をお伺いいたします。

渡辺副大臣 政府・与党としましては、委員御指摘のとおり、経済危機対策において、都道府県が地域の医療課題の解決に向けて策定する地域医療再生計画に基づいて行う、医療機能の強化、医師等の確保等の取り組みを支援することとしておるわけであります。

 この地域医療再生計画の事業例として、新生児集中治療室、いわゆるNICUでありますけれども、この拡充や重症心身障害児施設等の整備を盛り込んでいるところであります。

 厚生労働省としましても、NICUや、その後病床を出る場合に大事な後方病床の整備についても、地域の実情に応じて、各都道府県の地域医療再生計画に積極的に盛り込んでいただきたいと考えておるわけでありまして、今後、都道府県が関係者と議論、調整し、地域医療再生計画を作成することができるように、いろいろ連携をとりながらやっていきたいと考えております。

 それから、先ほども御指摘がありました目標値でありますけれども、NICUの後方の目標値の方も答弁しますか。(高木(美)分科員「そうですね、NICU自体をどのような形に」と呼ぶ)NICUの後方病床の目標増床数でありますけれども、先ほど委員の方からも、これまでの厚生労働省の関係の資料等の御説明がありましたけれども、このNICUの後方病床の目標増床数を示すことにつきましては、地域医療再生計画が地域の実情に応じて作成をしていただくという性格のものであるということと、地域によってやはり後方病床に充てる病床の運用や種類がさまざまであるということから、現時点では考えておらないということであります。

 しかし、都道府県が地域医療再生計画を作成する際の参考となるように、厚生労働省としましては、都道府県に対しまして、計画の作成指針やモデル事業例をお示しすることを検討しているところであり、例えばその一つとして、先ほどお話しありました回復期治療室、GCUでありますけれども、そういうもの、あるいは一般小児病床、あるいは重症心身障害児施設等の整備なども含めたモデル事業例をお示しすることも検討したいと考えております。

 また、GCU、一般小児病床、重症心身障害児施設等の整備につきましては、都道府県に対しまして、その不足が明らかになった場合は、長期入院児の適切な療養、療育環境を確保するための計画を策定し、必要な対策を講じるよう求めるとともに、厚生労働省としてその整備に対する助成を今行っておりますが、そういうものを引き続き続けていくということと、さまざまな取り組みを通じて、地域で必要な後方病床の整備に努めてまいりたい、そのように考えております。

高木(美)分科員 副大臣、一点お願いなんですが、私は障害者自立支援法の改正にも携わらせていただきました。その中で障害児の入所支援の強化ということが盛り込まれまして、在園期間の延長措置を見直し、満十八歳以上の入所者については、児童福祉法を当てはめるのではなくて自立支援法で対応するように見直す、こういう中身が入りまして、当然、厚生労働省の方は、今の支援されているメニューがそのまま継続されるように、しかも、今入所している人が退所させられるというようなことがないように、こういうことをきちんと盛り込むというお話をいただいているのですが、ともすれば、今八七%が十八歳以上の入所者になっておりますので、当然、この高齢化した人たちを地域で受け入れるべきだとか、また家庭で見るべきだとか、そういう論議になりかねないと私は大変危惧しております。

 これが追い出しにつながりませんように、厚生労働省としても十分な対応をしていただきますように、副大臣に要望をさせていただきたいと思います。その点、いかがでしょうか。

渡辺副大臣 今、与党の方でいろいろ協議をされておって、そういう御指摘をいただいておるわけでありますけれども、そのようなお考えをしっかり政府としても受けとめて、検討を進めていきたいと思っております。

高木(美)分科員 NICUの数値目標をこれからどのように拡充していくかということにつきましても、先ほど副大臣が御答弁されましたように、いずれにしても、そういうNICU自体、そしてまた、それを支える後方支援のさまざまな病床数も含めて、総合的に都道府県が地域医療再生計画、これをきちんと盛り込んで、例えばそれを厚生労働省に提示をする、申請をする、それに対して、今回のこの経済危機対策に盛り込まれた三千百億円を受け取ることができる、こういうシステムであると理解してよろしいでしょうか。

渡辺副大臣 今お話しありましたとおり、NICUあるいは後方ベッド等、大変不足をしているという御指摘をいろいろいただいておりまして、そのような対策として、新しい経済対策の中には予算が案として盛り込まれるというふうに考えておりまして、そのような都道府県でのいろいろな計画に基づいて、厚生労働省としても都道府県を支援する対応をとっていきたいと考えております。

高木(美)分科員 恐らくこの三千百億円につきましては、申請をする、そして都道府県が国から受け取る、受け取ってこれを使える年数というのはたしか五年ぐらいというふうに聞いているのです。

 その上で一つ私はお願いなんですが、いつも拙速に、計画を早く出しなさいということが多くございます。しかし、事はもう今まで何回も、何年も前から、NICUが足りなくなる、また、医師不足、看護師不足、ずっとさまざま指摘もされておりまして、やはりこれは、都道府県としても区市町村と打ち合わせをする十分な時間、三次、二次、一次、それぞれのこういう周産期医療、そしてまた救急医療体制とも連携をするとか、いろいろなそういう調整をしっかりした上で計画が提出できますように十分な時間を与えていただきたいということをお願いをさせていただきたいのですが、副大臣の御見解はいかがでしょうか。

渡辺副大臣 先ほども少し触れたわけでありますけれども、現在、都道府県の方で、先ほどの地域医療再生計画に積極的にこれから取り組んでいただくことになりますが、都道府県が地域の関係者と議論、調整し、地域医療再生計画を作成する時間を確保できるようにしたいということと同時に、できるだけその計画を速やかに実施できるよう、厚生労働省としてはその両面を踏まえて対応していきたい、そのように考えております。

高木(美)分科員 もう一点、私は、よく後方支援施設という言い方をされるわけですが、大体、メニューは小児病床であったり重症心身障害児施設であったりというわけですが、もう一つ新たな提案をさせていただきたいと思います。

 それは、国立成育医療センターの成育医療研究委託事業、事業の名前がいつも大変長くて恐縮ですが、その研究報告、それからあともう一つは、日本産婦人科医会の関係者の研究、またもう一つは、国立病院の院長、またさらには、お子さんを現実にNICUに入れていらっしゃるお母様たち、その方たちから先日、全く違うときだったんですが、同様の提案をいただきました。

 その中にお母様たちがおっしゃっていたのは、NICUが足りないという話を聞いて、そこに入れている自分たちはすごく心苦しい。しかし、呼吸管理等が必要な我が子を在宅で見る勇気はない。何かあったときに緊急入院とかレスパイトできるところがあれば、また、短期入所できるそういうところがあれば、本当に喜んでそちらの方に進ませていただきたい。こういう御要望もありました。

 関係者の研究されている方たちがおっしゃるのは、一つは、呼吸管理が可能であること、またもう一つは、親子同室または付添人の宿泊場所が完備されている、また、在宅医療支援、リハビリ、さらには再入院の受け入れがスムーズである、短期入所もできる、こういうメニューを提案していらっしゃいます。

 当然のことながら、人工呼吸器が外せないために退院できない子供たち、この受け皿をどういうふうにしていくか、これが不可欠なわけで、小児病床がある、それから重心施設がある、さらには、在宅と小児病床を結んでいくその中間的な施設ということ、これをぜひ御検討をいただきたいと思います。

 新しい概念の施設の提案をそれぞれから同じようにいただいているわけで、これは、従来の保険制度の枠組み内では恐らく運営は困難であると思っております。恐らく採算もとれないのではないかと思います。そのような新しい枠組みを、これだけの研究者の方たちの内容もあるわけですから、国としても、もう一つこういうクッションになるような、独自の取り組みもできるよというこういう内容を検討いただきまして、地方自治体に提案をしていただくなり働きかける必要があるのではないかと考えます。

 例えばそのモデル事業として、国立成育医療センターとか全国の独立行政法人国立病院機構の中からピックアップして働きかけて、お始めになってはいかがかと思います。今の小児病床を少しそういうふうに改善するところがあるかもしれませんし、敷地に余裕のあるところは新たに施設をお建てになるとか、そのようなところを一カ所でも二カ所でも新たな試みとして始めていただければと思いますが、その点につきまして答弁をお願いいたします。

渡辺副大臣 貴重な提言、ありがとうございます。

 NICUを退院した重症児の在宅移行への支援につきましては、本年三月の周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会の報告書におきましても、地域における一時預かりサービスの充実、あるいは、訪問看護ステーションの活用促進、緊急入院に対応できる病床の確保、家族に休息をとらせるレスパイトケアのための短期入所病床の整備等が提言をされているところであります。

 厚生労働省としましては、これらの提言を踏まえまして、一人一人の児童にふさわしい療育、療養環境を確保するため、現在の制度の活用や充実を図るとともに、その課題をさらに分析し必要な施策に結びつけていくことにより、退院した重症児やその親の方々が安心して在宅療養ができるよう全力で取り組んでいきたい、そのように考えております。

高木(美)分科員 ぜひとも、副大臣のもとでこの新たな枠組みづくりが実際に始動できますように、お取り組みを重ねてお願いいたします。

 今、母子の支援というお話もございました。先日、私は板橋の心身障害児総合医療療育センターへ行かせていただきました。そこは、母子入院事業というふうに銘打ちまして、二カ月をめどに具体的なケアの仕方を学ぶという、母子で一緒に入院をされるという内容です。親御さん同士の交流も図れると大変好評でございまして、家族をサポートする取り組みを広げ、また、施設を支援する、そういう事業をきちっとやるような施設には何らかの支援が必要でもあると思いますので、そういう支援の仕組みをつくっていただければと思っております。

 また、そのような支援が、二カ月間入院され、また、在宅でお子さんを見るために一生懸命勉強していらっしゃる親御さんにとりましてそのまま利用者負担の軽減にもつながると思っております。

 この母子入院事業を行う施設につきましての支援をしていただきたいというお願いでございますが、副大臣のお考え、いかがでございましょうか。

坂本政府参考人 ただいま、母子入園についての御質問がございました。

 母子入園による療育につきましては、適切な療育効果が期待されることから、従来より、その実施について通知を出しまして依頼してきたところでございます。

 この事業は、機能訓練等の実施に当たって、母子ともに入園していただくことによりまして、対象児童の意欲を助長するとともに、家庭復帰後においても一貫した適切な機能訓練等の指導方法を確保することを目的としまして、おおむね二歳から六歳の児童を一カ月から三カ月間程度、その母親とともに入園させて療育を実施するものでございます。

 この障害児の支援につきまして、子供とともにその保護者が行います養育を支援していくことが重要でございまして、昨年の七月の障害児支援の見直しに関する検討会の報告書におきましても、その重要性が指摘されたところでございます。

 こうした指摘を踏まえまして、障害児支援施設における保護者が行います養育の支援が進むよう取り組んでまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 しっかりとお取り組みをお願いいたします。

 最後に副大臣に、報告書の中にありました救急医療体制と周産期救急医療との連携、これは大変喫緊の課題であると思います。医療計画に関する基本方針の改正に着手する、こういう報告もございますが、今後の取り組みにつきまして最後に質問をさせていただきます。

谷川主査 渡辺厚生労働副大臣、時間ですので手短にお願いします。

渡辺副大臣 救急医療と周産期医療の連携を強化するため、本年三月の周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会の報告書におきまして、委員御指摘のとおり、医療計画に関する基本方針を改正するよう提言をいただいたところであります。

 厚生労働省としましては、この提言を踏まえまして、周産期救急医療を救急医療対策の中にしっかり位置づけまして、両者の連携が進むよう、できるだけ早期に医療計画に関する基本方針を改正していきたいと考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。

谷川主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部俊子君。

阿部(俊)分科員 このような質問の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。自由民主党の阿部俊子でございます。

 今回、医師不足対策について、まず質問させていただきたいというふうに思います。

 二十一年度補正予算案の概要につきまして、先般、政府・与党が検討している追加経済対策のうち、都道府県の、地域の医療課題の解決のための一環といたしまして、地域医療再生計画一兆円が提案されたところでございます。

 これは、深刻な医師不足に対応するための一兆円規模の基金を創設し、都道府県ごとに地域医療再生計画をつくりまして実施する事業が柱となっているところでございますが、地域医療再生計画は、医師の事務作業を補助する職員を配置し、三年間で二万人程度の雇用創出を見込むほか、女性医師の確保に向けまして、病院内の保育所整備の推進、さらには医師派遣を行う大学病院への財政支援を通して医師派遣システムを強化することとされているところであります。

 しかしながら、現場の医師たちの声を聞いてみますと、財政支援も重要でございますが、これまで大学の医局が慣習的に行ってまいりました、いわゆる医師派遣制度の代替となる制度の創設が必要であるとの意見が多く聞かれるところでございます。実際に、地元の岡山県の中規模病院で医師を公募いたしますと、かなり高額な賃金を提示いたしましても、医師はなかなか来てくれない。頭数としてカウントはできても、そういう形で来てくださった医師はなかなか臨床での機能が難しいということも聞いております。

 こういう現状を受けまして、医局が研修医を地域に送り続けてきた背景には多くの問題があるところでもございますが、医師の技術的なバックアップという保障が本当にありがたかったと改めて思っているということが地元から聞かれているところであります。しかしながら、地元のある病院では、大学の医局ではなく、近隣のいわゆる国立医療センターなど、研修制度が非常に充実し、研修医が余って困るぐらいのところの病院から医師の派遣を受けているというところもございまして、非常に優秀な医師が集まっているというふうに、地元の中でもかなり両者に分かれるところでございます。

 これまでの大学の医局にかわって、研修と医師派遣の中核となる拠点病院、いわゆるマグネットホスピタル、医師が集まって磁石のように吸いついてくる、そういう病院を指定いたしまして、地域の基幹病院が責任を持って研修医を地域に送るという制度が、大学の医局制度をまたもとに戻すよりは重要ではないかというふうに私は考えているところでございます。

 医師派遣につきまして、現場に対する財政支援だけではなく制度としての、マグネットホスピタルのような、地域の医療を担う仕組みが重要である。この観点から、政府側がどのようにお考えであるか、見解をお聞きしたいというふうに思います。

榮畑政府参考人 地域医療における課題はさまざまなものがございます。これらに対応していくために、今般の政府・与党による経済危機対策におきまして、都道府県の策定する二次医療圏を基本とした地域医療再生計画に基づきまして、医療機能の強化や医師等の確保等の取り組みを支援するということにしておるところでございます。

 この地域医療再生計画の具体的な内容につきましては、現在、詳細は検討中でございますけれども、例えば医療機関の機能強化であるとか、勤務医とか看護師さん等の勤務環境の改善であるとか、拠点病院や大学病院を通じた医師派遣機能の強化であるとか、またNICUとか救命救急センターの拡充等が挙げられるのだろうと思ってございます。

 いずれにいたしましても、この地域医療再生計画につきましては、今後、各都道府県において、地域内の医療機関とか医療従事者の連携のもとで、その地域の実情を踏まえた再生計画を策定していただきまして、それに沿って必要な事業を進めていただくことになると考えてございます。

 その中で、先生御指摘の拠点病院等を通じた医師派遣機能の強化に関しましても、今申しましたような、各都道府県における地域の実情を踏まえた医療再生の中で取り組んでいただくようなこともあろうかと思いますが、いずれにしましても、この地域医療再生計画の具体的内容につきまして現在検討しておるというところでございます。

 以上でございます。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 今、医療計画では、日常生活圏としていわゆる二次医療圏というのが定められておりますが、これが非常にばらつきがあって、三万規模から三十万規模まであると私は聞いているところでございます。これは、地域の人口、年齢構成、疾病構造に合わせていわゆる基準病床数を算定することとされているわけでありますが、地域によって、二次医療圏の大きさ、そのばらつきの部分で必ずしも疾病構造を反映した計画になっていないという現状に関しまして、ここは早く、しっかりと二次医療圏を仕切り直さないと、この範囲で計画を立てていくことが、私は将来的に非常に不安を感じる部分でございます。

 これに関しましても、新たに策定する地域医療再生計画、さらには従来の医療計画、この整合性をぜひとも図っていただきまして、将来的には、地域の疾病構造を踏まえた現実的なものになるようにお願いしたいというふうに思います。

 次に、放課後児童クラブの環境整備について質問させていただきたいと思います。

 学童保育に関しましては、学童期の子供たちに遊びや生活の場を提供いたしまして、保護者の仕事と子育ての両立を支援するという重要な役割がございますが、特に、働く女性の増加、さらには放課後の子供たちの安全確保という観点から、その役割がますます大きくなっています。

 しかし、保育所と違いまして、学童保育の運営には法的な拘束力がなく、各施設に任せられている現状にございます。利用児童の増加による施設の大規模化や、指導員の不足による指導体制のあり方など多くの課題がございました。

 こういう中、平成十九年十月に、クラブとして望ましい運営内容を目指すための放課後児童クラブガイドラインがようやくつくられたところでございます。ガイドラインに法的拘束力はないが、今までなかったものが国のいわゆる指針として明確に出されたということでは一定の評価をするものでございます。

 このガイドラインにより、文部科学省の実施する放課後子ども教室との連携や、子供の安全を配慮した、学校内の教室を利用した学童保育の設備がふえてきていると聞いていますが、ガイドラインがどの程度遵守され、実際に環境整備がどのぐらい進められているのか、クラブへの周知やクラブ側の認識に関して今後調査すべき課題と考えていますが、これらに対して現状をお伺いしたいというふうに思います。

北村政府参考人 お答えを申し上げます。

 放課後児童クラブにつきましては、地域の実情に応じた柔軟な取り組みを推進するという観点から、保育所のような最低基準を定めていないところでございますが、今委員御指摘がございましたように、厚生労働省といたしまして、平成十九年十月に、放課後児童クラブガイドラインを策定いたしまして、児童一人当たりの面積あるいは指導員の役割、そういったものにつきまして、各自治体に対してその望ましい方向を示しまして適切な運営を促しているところでございます。

 質の向上に向けました自治体の取り組みがこのガイドラインに沿ってきちっと図られるように、引き続き自治体に働きかけを進めてまいりたいというふうに思っております。

 放課後児童クラブ、おっしゃられたように、保護者が働いている間など、子供が安全に暮らせる場として、子供を預かり、健全な育成を図るものでございまして、今後、質の確保を図りながら量的な拡大を図っていくことが重要であるというふうに、ことしの二月、社会保障審議会の少子化対策特別部会の第一次報告でも指摘されているところでございます。最低基準の必要性、あるいはそのあり方といった制度上の位置づけなども含めまして、財源のあり方も含めましてですけれども、今後、具体的な検討を進めていくことにしたいというふうに考えております。

 なお、先ほどの調査の関係でございますけれども、今年度実施予定の放課後児童クラブに関する調査研究におきまして、例えば大規模クラブの分割のあり方なども含めまして検証を行うこととしておりまして、その結果を踏まえまして、さらに必要な措置について検討することとしているところでございます。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 一つは、放課後児童クラブ、幾つかお伺いしたところ、やはり設置場所の状況が私はかなり問題だと思っておりまして、特に、余裕教室、学校敷地内でやっているところは全体で今五割ございませんで、その他、もしくは児童館を使っているところが半分以上である。特に、今、子供が移動するということに関しましては、見守り隊とかさまざまな方が本当に苦労されているところでございますので、ここのところもしっかりと、ぜひとも、敷地内もしくは空き教室ということをもっともっと促進していただけたらなというふうに思うところでございます。

 また、地元の岡山県で、県の協議会と指導員、学識経験者で連携いたしまして、特に学童保育の指導員資格プロジェクトというのを今つくっているらしく、指導員の資格認定に向けた検討が行われています。この指導員の方々の処遇が非常に悪いということに関しましては、やはりそれぞれの方々のバックグラウンドが非常にばらつきがあるということが私は大きく影響していると思います。

 この指導員の方々がしっかりと質の向上を図っていくということが大切でございますし、これが全国的なモデルになりまして、学童保育の質の向上、指導員の資質の向上、処遇の改善につながっていくことをぜひともお願いしたいと思うわけであります。ぜひとも、国としても、この取り組みのバックアップをお願いしたいというふうに思っているわけでございます。

 それにつけましても、私は、今回補正予算も出たところでございますが、いわゆる国の方向性がどうしても子供に手薄であるということを非常に懸念しております。特に、子供たちは選挙権を持たない、若い親御さんたちは政治に興味がないということを考えましたときに、子供にかける予算が高齢者の数十分の一とも言われている中、やはり少子高齢化の中、もっともっと子供に予算をつけていく。

 しかしながら、ある意味、省庁の縦割りで、例えば放課後子供クラブ云々に関しましても、文部科学省と厚生労働省がなかなか手をとり合ってやっていただくということが、少しずつでありますが、もっともっと進んでいただきたいということを考えますと、私は、子ども庁、これを設立いたしまして、子供に関連することは政策も財源も一元化していく。子供をいわゆる縦割りにしないということがもっともっと重要ではないかということも含めまして、先日、河村官房長官ともお話をさせていただいたところでありますので、日本の国の宝である子供たちをやはり大切にするという観点からも、ぜひとも御一緒に頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 高齢者の居住の安定確保の推進についてでございますが、高齢者が安心して生活できる居住環境を実現するために、二〇〇一年に施行されました高齢者居住安定確保法の改定が先般行われたところでございます。

 これまで国土交通省が管轄しておりました高齢者住宅政策につきまして、今後は、国土交通省と厚生労働省が連携して高齢者住宅や老人ホームの供給目標を定めることとされ、両者が定めた基本方針に従って、都道府県は高齢者居住安定確保計画を策定することになります。高齢者にとっては、住まいである住宅という側面と、老後の介護、福祉という側面から、このような一体的な整備が図られることは本当に悲願でございましたし、非常に重要であるというふうに私は思っています。

 この法律の施行によりまして、どれだけの住宅の整備が見込まれて、福祉という観点からどういう充実が期待されるのか、お伺いしたいというふうに思います。

坂本政府参考人 高齢者居住安定確保法の改正についての御質問にお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の法律の改正によりまして、国土交通大臣及び厚生労働大臣の両大臣によりまして基本方針を策定し、それに基づきまして都道府県が策定いたします高齢者居住安定確保計画に係る規定を盛り込むことといたしております。これによりまして、自治体の住宅部局と福祉部局が連携をし、総合的かつ計画的な施策展開を行うことを促す仕組みを設けたところでございます。

 厚生労働省としましては、引き続き、介護保険制度の着実な運営等によりまして、介護サービスの適切な供給等の確保がされることが重要だというふうに考えておりまして、これに努めることに加えまして、都道府県の福祉部局に対しまして、住宅と介護サービス基盤を一体的に整備することの有用性について周知を進める、それから、国土交通省とも連携をとりながら、住宅部局と連携をして計画を策定するなど、地域において高齢者が安心して暮らし続けることができますような、そういった取り組みを進めていけるよう、十分働きかけていきたいと考えております。

阿部(俊)分科員 高齢者優良賃貸住宅、いわゆる高優賃に関しまして、都市部ではかなり進んでいるというふうに聞いているところですが、財政の厳しい地方で非常に立ちおくれているということを聞いております。

 特に、厚労省の特養と国交省の住宅整備を一体的に進める必要があるんですけれども、私は、やはりこれを考えるに当たりまして、いわゆる高優賃をつくっていくことが地方自治体にとってどれだけの介護負担の軽減になるかということが横断的にわかるような仕組みができていかないと無理ではないかといつも考えております。ニーズはあるんだけれども、これをやってどうなるかということをもう少し地方自治体が理解できる方法が必要ではないかと思うのですが、これに対してもしお取り組みをされていることがございましたら、多分これからつくっていく説明資料も含めてお聞かせいただきたいというふうに思います。

坂本政府参考人 公的な賃貸住宅を活用しました安心住空間創出という観点で、国交省と連携をとってまとめていきたいと考えておりますが、例えば公営住宅の敷地でありますとかそういったものを活用して、一緒になって取り組んでいく、そういう取り組みをまだ始めたところでございますので、今後、一生懸命取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 高齢者の住まいづくりを、今、五人に一人が六十五歳以上、さらには十人に一人が七十五歳以上と言われる世界一の高齢社会において、やはり箱物に入るだけではない、しっかりとその方の老後が居住空間として整備されていくということは、社会的入院、これはひいては現役世代に負担をかけることであると思いますが、これも整備がされ、現役世代に負担をかけない形で社会保障制度をしっかり整備していくためには必要だと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後になりますが、介護従事者の処遇改善について質問させていただきたいと思います。

 現在検討されております平成二十一年度の補正予算におきまして、介護従事者の処遇の改善のために、いわゆる介護職員処遇改善交付金というのが創設されまして、今後三年間、介護職員一人当たり月額一・五万円の賃金の引き上げが予定されているということでございます。

 これは、介護報酬の引き上げが三%決まったものの、実質、加算ベースのものであり、実際には職員の給与を上げるほどの収入増加につながらないということが各地の事業者から指摘をされまして、今回、このような基金という形で、確実に介護職員の手元にお金が残る方法が検討されたということは、私は本当に評価されることであると思っています。

 党の中でも、こんなに景気回復対策、雇用対策を行っている中で人手不足の介護職員の部分に人が集まらないのは、これは本当に給与の部分がかなり大きいので、ぜひともお願いしたいということを申し上げてまいりましたが、今回の形で、特に経営者の方々に御迷惑をかけない形で、しっかりと介護職員の方々の給料が引き上げられるということは非常にうれしいことであると同時に、実は、現場ではかなり混乱もしているところでございます。

 それに関しまして幾つかお聞きしたいところでございます。

 今回の基金は平成二十三年までの三年間という取り扱いになっているところでありますが、給与アップが暫定的なものになる、さらには、その後の取り扱いがどうなるかという懸念があるところであります。この財源確保も含めた今後の取り扱いについて、今のところの見解をお伺いしたいというふうに思います。

坂本政府参考人 介護職員処遇改善交付金についてお答え申し上げます。

 介護保険制度は、平成十二年に施行されまして、ちょうど十年目に入りました。この間、財政規模は三・六兆円から七・四兆円と約倍増、それによりまして、介護にかかわります職員数も五十五万人から百二十万人程度、また事業所の数も七万事業所から十三万五千事業所ということでおおむね倍増いたしておりまして、こういう状況でございますので、現状としましては非常に急速に成長している行政分野でございます。

 現状では、介護職員の平均勤続年数は五年程度と、他の産業に対しても短いものとなっております。こういった介護職員の定着そして確保を図りますためには、能力、資格、経験等に応じました処遇を行うことが重要であるということを指摘を受けているところでございまして、今般の経済危機対策に盛り込まれた介護職員処遇改善交付金におきましては、平成二十二年度以降につきましてはキャリアパスに関する要件を加えることを考えておるところでございます。

 その具体的な内容としまして、現在検討中ではありますが、例えば、まず介護職員についてどのようなポストや仕事がありまして、そのポストや仕事につくためにはどのような能力、資格、経験等が必要なのかを定めまして、それに応じた給与の水準を決めていくなどということを要件にすることも考えておるところでございます。

 今後、多くの事業所がこうした要件を満たすことによりまして、介護職員の確保、定着、促進が図られることが重要であると考えております。特養や訪問介護などの事業所の特性に応じましたモデルについて、事業者団体の協力を得ながら具体化をしていきたいと考えているところでございます。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 また、地元の施設からの意見では、今回の処置では本給を上げるのは困難なので、措置時代における一六%特別手当というのが前にあったらしいのですが、その形やボーナス支給という形態の対応も検討されているというふうに聞いているところであります。

 介護職員の方の給与が改善されたという実態をしっかりと把握するためには、各事業所の収支報告などにおいて、特別手当としての収支を明確にしていくことも必要、これは給与明細で本人がわかるということを含めてでもございますが、それについての御見解をお伺いしたいというふうに思います。

坂本政府参考人 この交付金につきましては、介護職員の処遇改善に取り組む事業者への資金を交付するということで処遇改善を進めることにいたしております。

 ただ、処遇改善計画につきましては、当該交付金を申請する際に事業者から提出していただくことを考えておりまして、その内容については現在検討中でございます。しかし、例えば、介護職員処遇改善交付金の交付を受けまして、事業者が賃金改善を具体的にどのように行うのかという内容の記載はきちんとしていただこう、そして、その内容を職員に周知した上で提出していただこう、こういうようなことは考えていきたいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。ここはぜひともしっかりと、よろしくお願いいたします。

 もう一つ、最後になりますが、今回の基金の対象について地元の方から、介護職員のほかに、例えば事務員の方、生活指導員などを雇用しているんですが、この対象からは外れるんだろうか、また、対象施設というのは、いわゆる介護職員と言われる方がいるところならすべて網羅されるんだろうかということも質問されているわけでございますが、これに関してはいかがでしょうか。

坂本政府参考人 今回の介護職員の処遇改善につきましては、介護報酬の二十一年度以降の改定が三%という、介護報酬全体の改定を行ったところでございますが、介護職員の処遇が非常に劣悪である、そして一番戦力になっている職員であるということを考えまして、介護職員のさらなる処遇の向上ということで、今回の基金の交付に当たりましては、介護職員の人件費の比率に応じまして交付することを考えておりまして、原則といたしまして介護職員に充てられるべき交付金として組み立てられているところでございます。

阿部(俊)分科員 すなわち、今回、例えば生活相談、生活指導員、そういう方々は該当しないということでしょうか。

坂本政府参考人 該当しないというふうに考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございます。

 実は、生活指導員の方々は社会福祉主事の資格を持っている方々で、こういう方々もなかなか定着しなくて困っているところでございますので、今回は該当しないということでございますが、今後、ぜひともお願いしたいというふうに思います。

 また、私は、今回の基金が介護職とほかの職種の方々の賃金格差をさらに縮めて、介護が確固とした雇用の場として成長できるようにぜひともお願いしたいと思いますし、二年半しか今回の基金はありませんが、その後は、いわゆる世界一の高齢社会であるこの日本が、介護職員を、特に高齢者を支えてくださる介護職員の方々の給与体系をしっかりしていくんだということでは、消費税に連動する、これがなくては持続可能な社会保障制度はないんだということで、ぜひとも皆様方にも頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

谷川主査 これにて阿部俊子君の質疑は終了いたしました。

 次に、冨岡勉君。

冨岡分科員 長崎の衆議院議員の冨岡でございます。

 きょうは大臣にお越しいただきまして、被爆者対策、そして有床診療所、二点についてお伺いしたいと思います。

 大変お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。また、厚生労働委員会等で話を聞いておりますと、大臣に就任されて非常に積極的に取り組んでおられることを、まずもって感謝申し上げるとともに、敬服する次第でございます。

 さて、第一点目の原爆被爆者対策についてお伺いいたします。

 原爆症認定について最初にちょっとお伺いしますけれども、これはいろいろな地域で、地裁、高裁、いろいろ訴えが出て、今、国は、大きな流れとして十六連敗の、負けているという状態が続いております。この現況と、それからこの判決に対する当局の見解を、まずもってざっとお聞きしたいと思います。

上田政府参考人 原爆症認定訴訟につきましては、現在、七高裁、十二地裁において係争中でございます。このほか、最高裁に対して上告受理申し立てを行っているものが一件ございます。

 また、昨年五月に判決がなされました仙台と大阪高裁、それから本年一月に判決がなされました鹿児島地裁につきましては、上訴をせず確定をしたところでございます。

 また、今後、五月十五日に大阪高裁、五月二十八日に東京高裁において判決がなされる予定でございます。

冨岡分科員 私も与党PTの一員としてこの問題にずっと取り組んでいるんですけれども、時期的にはもうそろそろというんでしょうか、結論を出さなくちゃいけないということで、当局の方々もいろいろ御腐心なされていると思いますので、この点につきましてはどうぞ前向きな、東京高裁の判決も来月にはあると聞いておりますので、ぜひ、できればその前ぐらいに話をまとめていただいて、間髪入れずに対応策等が出てくることを強く望みます。

 さて、そのように、被爆者援護法という、原爆被爆者の皆様方に対していろいろな施策が施される仕組みはできているんですが、どうも被爆者の方たちにとってはいま一つ納得がいかない部分があるように思います。それは、政策的には十分じゃないかなと私は思うんですけれども、どうしてもそういった訴訟が出てくるという後ろには、国の政策に対する不満がやはりずっとあると思うんです。

 そこで、原爆投下から六十四年がたとうとしている昨今ですが、被爆者の方たちは非常に高齢化が進んでいます。そして、がんで亡くなられる方たちが大変多くなっています。一般国民の死因では四割ちょっと切るぐらいで、死因のトップ、第一位でありますけれども、例えば長崎原爆病院に入られた被爆者の死因別で見ると、大体六〇%を超えるぐらいの方たちが何らかのがんで亡くなられているというデータがございました。

 多くの被爆者は、外科的な手術をもうできないような体力、高齢化が進んできております。がん病巣を切除しようとしてもできない。では、そういうときにどういう治療があるかというと、抗がん剤等いろいろな方法があるんですが、一番の治療法が放射線療法になります。切らずに治せる。これは、がん対策で大臣も随分お詳しいことと思います。

 現在、世界的にも放射線治療が注目されているんですが、中でも重粒子線という放射線治療の一種になる、我が国独特というんでしょうか、陽子線、炭素線、いわゆる重粒子線を含めた粒子線の施設は現在七カ所、八カ所目がまた稼働しようとしているんです。

 厚生労働行政における重粒子線の位置づけを、まずちょっとお伺いしたいと思います。

上田政府参考人 重粒子線治療は重粒子を体内のがん病変に照射する放射線療法の一種でございまして、現在、重粒子線治療を行う施設は、国内では二施設において実施をされております。また、その他の三地域においても、現在、計画中または建設中であると聞いているところでございます。

 このような重粒子線や陽子線を用いた新しい放射線療法でございます粒子線治療につきましては、平成十九年六月に閣議決定されましたがん対策推進基本計画において、「既存の診療との比較による有効性や費用対効果等の評価を行っていく必要がある。」と位置づけられているところでございます。

 重粒子線治療には、照射のために一人当たり三百万円かかるというようなこともございまして、重粒子線治療などの適応や経済的評価といった、普及に先立って解決すべき課題も少なくないことから、現在、厚生労働科学研究費補助金による研究班において、既存のリニアックなどの治療法と比較した際の効果に関する科学的検討や費用対効果に関する検討などを行っているところでございます。

冨岡分科員 高価であるという点、それから設備の建設に三百億とか、コンパクトタイプで百五十億かかるわけで、やたらめったらどこにでもというふうにはいかないと思うんですが、被爆者にとっては、六十三年間ずっと、放射線という言葉を聞くだけでトラウマ、PTSDを発症する、そういうデータもございます。それが重粒子線という一つの放射線によって自分が救われるとすると、これは大変すばらしい福音になる、そういうふうに思うわけなんです。

 そこで、この放射線の一種である重粒子線治療というのが長崎あるいは広島にあれば、被爆者の方たちにとっても本当に、政府から今まで痛めつけられたというんでしょうか、訴訟までして、不満の対象になった、そういう気持ちを持っている方も中にはどうもおられるわけなんですが、この重粒子線施設を長崎あるいは広島に設置してほしい、こういう要望が出ているわけでございます。

 この点に関しまして、日本国政府の取り組みというのはどのように考えればよろしいのか、お答え願えればと思います。これは大臣の方に。

舛添国務大臣 まず、粒子線の治療、これは一般的ながん対策として位置づけるということで、先ほど局長がお答えしましたようにかなり費用がかかるというのと、場所が恐らくサッカー場ぐらいの広さのところが要るというように、いろいろな問題もあります。

 そういう中で、これを、特に重粒子線の施設をつくって原爆症に悩む方々に福音を与えられたらどうかということで、これは先生初め皆さん方から私も陳情を受けている件でありますので、引き続き、今研究班二つぐらいで検討しているので、その検討を見ながら、また予算措置も必要ですので、もう少し検討の時間を賜ればと思っております。

冨岡分科員 被爆者援護法というのは、私の気持ちの中での位置づけは、広い意味での平和運動だと認識しています。何で被爆者に対する支援が平和運動なのかということになりますけれども、これは各国から非常に評価されているというふうな認識を持っています。なぜか。

 被爆者は今何人ぐらいおるんだと外人と話しますと、二十三万人と。えっ、そんなにいるのかい、こういうことなんですね。そのうち、健康手帳というんでしょうか、医療費を支給されている方たちでも二十一万人、あるいは手当をしている人たちも数万人おられる。これほど手厚い施策を外国の外交官に言うと、えっ、そんなことをやっていたのというような驚いた目が向けられます。実際、日本の中でも、今もってそういう政策の中で保護を受けている方が二十三万人おられるというのは、やはりびっくりするわけなんですね。

 その数たるや、全部合わせたもの、つまり、アメリカにも数千人、あるいは韓国にも、また北朝鮮にも、これは正確な数がわかりませんけれども、数千人規模でおられるというふうに認識しています。もちろんブラジルとかそのほかの世界各地にそういった被爆者という方が、これは被爆者というのが一つの英語になるというんでしょうかね、和製英語じゃないですけれども、そういうふうに、被爆者と言えば、ああヒバクシャなんだというふうに。

 やはり、こういった方たちにいろいろな施策をすること自体が、日本が長年やってきた広い意味での一つの平和運動、平和活動、これが高く評価され、日本というのは、ああそうなんだ、アメリカにおる、まあ日系人かもしれませんし、いろいろな、今では彼らは帰国をすればいわゆる米国人ですから、自国民に対してもそういった意味で手厚い施策が施されれば、これは日本国にとって大変すばらしいことだというふうに私自身は思うわけであります。

 時あたかも、オバマ大統領が核兵器の廃絶に向けたアピールをされました。その中で、米国は核兵器を使ったことのある唯一の核兵器保有国として核の廃絶に向けて行動する道義的責任がある、こういうふうに四月五日に演説をされたわけであります。我が国政府は直ちにこれをよしとして、安倍前総理、そして麻生総理がそれについての、核廃絶についてのコメントを出されたり、いろいろ話されていますが、私たち厚生労働委員、また厚生労働行政に対する者は、この被爆対策というのは単なる被爆者だけという認識では間違い、大臣、これを十分にお考えいただければと思っております。

 昨年の夏には、大臣も広島、長崎とお越しになられました。来ていただきました。そして、福田総理にも私たちも会い、被爆者の団体の方から重粒子線の要望が出されました。六十三年間の中で、初めてこれが議題というか俎上に上がったわけでございます。また、ことし、先月、長崎市議会からは重粒子線施設の設置を求める意見書が出されております。

 こういった観点から、舛添大臣、もう一つ違った意味で、広島、長崎の被爆地に対するいま一歩の踏み込んだいろいろな政策が私自身必要ではないかというふうに考えるわけですが、その点につきましては私の考えはどうでしょうか。

舛添国務大臣 核のない世界をつくる、そして本当に平和を実現する、そういうところまでこの被爆者施策はスコープを持つべきだとおっしゃって、これは大変私も共感をするところでございます。

 原爆訴訟につきましては、五月に大阪高裁、東京高裁で判決がありますから、官房長官ともよく相談して、どういう対応をとるかということを考えます。

 とともに、重粒子線の治療、こういう施設を、先ほどちょっと私は正確に申し上げたかどうかなんですけれども、これは重粒子を持っている施設が二カ所、それで、研究班は今一つの研究班が、さっき研究班二つと言ったようにちょっと記憶して、それが間違っていれば議事録を訂正してほしいんです。重粒子は今二つしかありません。それで、研究班は今一つ持っていまして、そこが一生懸命研究をしていますから、そういうことを踏まえて、これは長崎市議会の要請も受けております、県や市ともよく御相談しながら、財政的な措置も必要ですので、シンボリックな意味も含めて、被爆者の方々のため、そして世のため何かできるか、そういう観点を入れながら施策は続けていきたいと思っております。

冨岡分科員 正確に言うと、千葉の放射線医学総合研究所、これがオリジナルのものであり、それから兵庫県が県立病院に併用型が一つ、それと群馬に、もうあとちょっとで建設が終わると思いますけれども、これがコンパクトタイプの百五十億のもの。これは、いずれも地方自治体とかあるいは文科省の予算なんですよね。だから、不思議というか、厚労でやっていないんですよ。地方自治体の県立病院とか筑波とかというのはあるんですけれども。

 この点、さらに進める意味で、こういった重粒子線、我が国にとっては切り札ともいうべき施設ですよ。私もいろいろがんを切ってまいりましたけれども、このように切れ味の鋭いものはありませんよ。肝臓がんとか肺がんはもう外科が手を出しちゃいかぬ、そういう雰囲気まで出てきたような代物ですね。だから、これはある意味では世界に向けて、例えば輸出産業にも仕立てられるし、これは早急にやはり厚生労働行政としては取り組むべきだというふうに考えます。

 ただ、高額ですので、これが今後どれくらいコンパクトになるのか、また、技術的な面についてどこら辺までいくのか、もし文科省の方、御見解がございましたら。

倉持政府参考人 重粒子線がん治療装置につきましては、委員御指摘のとおり、独立行政法人の放射線医学総合研究所におきまして、開発、実用化に向けた臨床研究、小型化に向けた研究開発等を行っておるところでございまして、先ほどお話しになりました国立大学法人の群馬大学におきまして、平成十八年より小型実証機の建設が着工されて、平成二十二年には臨床研究が開始される予定、こういうふうに承っております。

 お尋ねの群馬大学の実証機以上の小型化、軽量化に関しましては、現在、放医研におきまして、他の大学あるいは研究機関等と連携をしながら、特に、やはり小型化となりますと、最新のレーザー粒子加速技術を導入した加速器を小型化しなきゃいけないとか、あるいは、超電導技術によりまして超小型電磁石を用いたビームラインを小型化しなきゃいけない、この辺につきましては非常に技術的にもまだまだ基礎段階でございます。今、探索研究ということで実施しておるところでございまして、私ども文科省といたしましても、その可能性につきまして、そういった研究の進捗も見ながら検討していきたいというふうに考えておるところでございます。

冨岡分科員 二十年かけて大体半分の小型化になったというふうに理解していますけれども、恐らく、半分になった実証機というのが群馬大学に設置され、また、そこで検証するわけだろうと思いますけれども、そういう理論からいくと、そのまた半分になるのに恐らく二十年ぐらいかかるのかな、素人考えですけれども、そういうふうに理解してもよろしいんですかね。

 つまり、そうなると、私自身、先ほどちょっと触れましたけれども、外科医が、手術の症例がかなりそちら側に回ってくる可能性がやはり出てきているので、将来の医師数のセッティングに関しても考慮しなくちゃいけないような、そういう状態も考えられるわけなので、その点、技術的な面はどうなんでしょうか。十年後ぐらいには半分化したような、あるいは金額的に五十億ぐらいのができるというような、そういうものはこの時点で考えていいんでしょうか。

倉持政府参考人 お尋ねの、その先の小型化の技術でございますけれども、先ほど申しましたように、今、新しいレーザー技術応用とか、それを使ってイオン源を開発したり、入射部を小型化したりすることがございます。これもまだ放医研におきまして、非常に基礎的な検討でございますけれども、レーザーによる入射器システム、大体やはり十年程度かかるかなということ。あるいは、シンクロトロンを小さくする、高温の超電導の材料を開発する、そういったことにやはり十五年とか十年とか、やはりその程度のオーダーの期間は必要なのではないかというふうに今予想されているところでございます。

冨岡分科員 こういった面が日本では一番力を入れてやらないかぬところですよ。もう医療費は一発で、むしろ抑制、今は高額ですよ、ところが、ミニサイズ化され、そしてコストが下がってくれば、全く入院が要らないんですよね、結局。もう今、過去には十回ぐらいかけなくちゃいけなかったのが五回になり、四回になり、二回になって、一回で一センチぐらいの肺が吹っ飛ぶようなことになるから、外来でがんが治せるという、そんな夢のような機械のようですので、そういった科学研究費をてこ入れするような政策をむしろとるべきだろうというふうに思いますので、舛添大臣を含めて、厚生労働行政として文科省ばかりに頼らぬでやっていただければと思いますので、その点、よろしくお願いします。

 二点目の有床診療所について、ちょっとお伺いします。

 有床診療所というと、一般の市民というのですか国民は、病院とクリニックぐらいの分類しかできません。そして、よく聞くのが、入院できるっちゃろうかい、そういうことで、入院できるかできぬかで病院とクリニック、診療所と区別しているようですね。これが一般の考えですよ、そういうことですね。有床診療所は十九床以下ということで、時間制限とかがなくなりましたけれども。

 何で私はこの問題をよく取り上げるかというと、大臣も御存じのように、大臣が就任されて三カ月目のとき、大臣にこの質問をしました。前向きの御回答をいただきまして、大変うれしく思ったのを覚えているわけなんですが、この有床診療所が無床化するのが毎年一千カ所に及んでいますね。その結果、それだけじゃないんですけれども、産科の妊婦さんが、表現は悪いんですけれども、収容するところがない、いわゆる世間一般の言うたらい回しというのでしょうか、そういう状態になって、収容先でお亡くなりになるという大変痛ましい事件というのでしょうか事象が起こっています。出産のおよそ四七%、半分はこの有床診療所で生まれているわけなんですね。そこがやはり傷んでいるので、非常に国民は不安に思っている。

 そこで、有床診療所について、地域において重要な役回りを負っているというこの施設は、一体厚生労働行政としてはどういう位置づけで臨んで、今こういう現象が起こっているのはどういうふうな原因からだとお考えなのか、まずその基本姿勢についてお伺いしたいと思います。

外口政府参考人 まず、全国の有床診療所の施設の状況でございます。一九八七年に約二万五千カ所でありましたけれども、二〇〇七年には一万二千四百カ所となっており、過去二十年で大幅に減少しております。

 この原因でございますけれども、さまざまな理由が考えられますが、日医総研が実施した有床診療所に関する実態調査によりますと、人件費がかかり過ぎる、入院患者の減少が主な理由であると承知しております。

 そして、この有床診療所の位置づけでございますけれども、有床診療所は、外来を行いながら入院医療も提供でき、地域住民の多様な医療ニーズに対応できる小回りのきく医療施設として、地域で重要な役割を担っていると思います。

 先ほど申し上げました日医総研の調査におきましても、これは地域地域でその特性が違いますけれども、例えば、大都市や郊外、中規模都市の有床診療所においては専門性の高い手術と術後の入院機能、小規模都市あるいは農村、山間部においては地域患者の受け皿、僻地、離島においては地域の数少ない入院施設とする割合がそれぞれ高いという報告をしているところでございます。

 高齢化が進む中で、医療のみならず介護も含めたサービス提供も地域から期待されております。地域によっては、さらに重要な施設になると思います。こういった調査結果も参考にしながら、有床診療所のあり方について、現場の意見をよくお聞きしながら、十分にその機能が発揮できるような施策を検討したいと考えております。

冨岡分科員 答えは立派なものなんですが、結局は地域の医療が今崩れ始めているのは、十年ぐらい前になるんですか、有床診療所はもう要らないという大きな政策の転換がなされたというふうに私は理解しています。そのために、今、後手に後手に、厚生労働行政は何でも後手に回っているような印象を持つわけなんですよね。だから、手を打っていないんですよね、結局は。何か、答弁を聞くといいように聞こえるんだけれども。

 だから、機能分化ができる、大都市では有床診療所は確かに要らないかもしれません。だけれども、僻地とかの医療、人口の構成比でいけば一〇%か二〇%ぐらいしかないかもしれませんけれども、国土面積でいえば恐らく三分の二を占める地域がこの有床診療所を必要としているわけなんですね。そこは外口局長さんも十分おわかりだと思います。

 多様な医療サービスが提供でき、そして、大病院、中病院、有床診療所で満足度を調べてみると、やはり有床診療所が一番、地域に密着しているために、地域住民の評価は高い。これは当たり前かもしれません。それから、医療、介護からリハビリまで、全部シームレスにやれるようなものというのはこの施設しかないんですよ。人口千人ぐらいの小さな町では何でもやらなくちゃいけない時代にやはりなってくるわけなので、そこがやはり何度言うても、わかっておられるんだけれども具体的にないから、あっちこっちで集約化をしてみたり何かするけれども、追いつきませんよ、一回崩してしまったんだから。だから、もうこれ以上崩さないで、やはりきちっとした、資源を有効的に活用するべきだろうというふうに思います。

 そこで、この有床診療所、介護施設とすれば小規模多機能施設というのがございます、小規模多機能医療施設として、せっかくまだ脈があるんですよ、まだ脈が途絶えておりませんので、ぜひこれの医療行政の位置づけをやはりきちんとしていただきたいと思うんですけれども、大臣、これはどうですか。

舛添国務大臣 まさに私のふるさとの北九州でも、私、今は世田谷に住んでいますけれども、いろいろなホームドクター的な方々にお世話になりますけれども、一階が診療室で二階が入院用のベッド、ところが、もう全部がらあきですね。だから、非常に寂しい思いがする。それで結局、一気に大きな病院に行っちゃう。

 だから、やはり各地域でそういう有床の診療所がきちんとあってくれるということが地域全体の医療ネットワークを補完する意味で非常に重要だと思いますので、これは本年度予算できちんとこれを位置づける研究をやることになっておりますので、また冨岡さんの意見も聞きながら、そういう形で、有床診療所の位置づけ、そしてこれの再生、復活、こういうことを図れたらと思って努力をしたいと思います。

冨岡分科員 舛添大臣は本当によくわかっておられると思うので、まさにそのとおりですよ、二階はがらあきなんですよね。壊してしまったんですよ、せっかくでき上がった日本のすばらしいシステムを。そして、介護とかなんとかいってまた集めようとしている。非常に矛盾した医療、介護行政を猛省してください。ぜひよろしくお願いします。

 終わります。

谷川主査 これにて冨岡勉君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、秋葉主査代理着席〕

秋葉主査代理 次に、山井和則君。

山井分科員 質問の時間を三十分いただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、二問ぐらい大村副大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 週刊誌の報道によりますと、大村副大臣の私設秘書の方が、三年半にわたって高浜市の雇用促進住宅に住まわれていたということであります。月の家賃は約二万四千円、現在満室ということでありますが、大村副大臣、この入居の経緯をまずお聞かせいただければと思います。

大村副大臣 事実関係を申し上げたいというふうに思います。

 今から四年前の平成十七年の七月に、私の事務所に名古屋の子が働きたいということで来まして、私が採用いたしました。その後、名古屋から車で通っていたんですけれども、やはり一時間じゃ来れない、一時間半ぐらいかかったというようなことも聞いております。

 そうこうしている間に、自分で、地元で宿舎をといいますか、住むところを探したいということで、うちは事務所の子は基本的には雇用保険には当然入っていますので、雇用保険に入って、その上で地元のハローワークの紹介で本人が探して、雇用促進住宅というのは私の地元では結構たくさんありまして、そのうちの一つの雇用促進住宅に、当時の入居率が七十何%、こういうことでございまして、あいていたということで、紹介を受けてそこに入ったというふうに聞いております。

 雇用促進住宅というのは、御案内のように、炭鉱離職者のための住宅ということで始まって、現在では、所得制限、いわゆる五百六十七万円より下の所得、そして家賃の三倍の月収という条件の中で、ハローワークの紹介で住むことができるということでございます。

 最近までそこに住んでいて、仕事柄夜も遅いので、帰っても暗くなっているということで、普通に手続を踏んで普通に住んでいたということでありますから、そういう意味では、彼自身に落ち度があるということにはならないというふうに私は思いますけれども、それでも、いろいろな御意見なり見方があるということも事実だと思います。事実関係を御存じである方ばかりでもありませんし、そういうことでありますと、そうした意見が、いろいろな意見、いろいろな見方があることはやはり真摯に受けとめるべきというふうにも思います。

 そういうことから、彼から相談がありましたので、そういうことであれば、もともと、どうも別途地元の方から、うちのアパートもあいているからどうだというような声もあったということでございますので、それなら、この際そういったところに引っ越したらどうかということを申し上げて、もう既にこの週末に引っ越したというふうに聞いております。

山井分科員 本人に落ち度があったとは思わないということですが、やはり副大臣の私設秘書の方が、そして、まさに今はもうこれは満室になっているはずなんですね。

 それで、昨年の十二月十八日、ここに資料もありますが、「申し入れ」として、舛添厚生労働大臣あてに、速やかな政策実現を求める有志議員の会が、非正規労働者の、派遣切り、雇用打ち切りが相次ぐ中で、やはり公務員住宅を開放してほしい、そして、それで不十分なときには雇用促進住宅のさらなる開放ということを、大村副大臣も有志の議員の会の一名として申し入れておられますし、まさにこういう非正規雇用の方の住居を手当てする副責任者である方の秘書が入居していたということは、やはりそれによって非正規の方が一人入れないということになってしまうんではないかと思います。

 大村副大臣、この秘書の方が入居されているのをいつから御存じだったのかということと、こういう満室になっているということと、今回の、まさに雇用促進住宅を非正規の方の住まいとして開放するという申し入れをされた立場で、秘書の方に、やはりそれは出ないとだめなんじゃないかということをもっと早くおっしゃるべきだったんじゃないでしょうか。いかがですか。

大村副大臣 この雇用促進住宅というのは、先ほど私が申し上げましたように、私の地元は、もともと高度経済成長時代に自動車初め製造業が結構盛んでありましたので、九州からの炭鉱離職者の方を受け入れるということで、結構たくさんあります。

 そういう意味で、今言われましたようにこの住宅はたまたま今満室ということでありますが、当時、入ったときは七〇%台の入居率であった。それから、要は、この高浜市だけでもあと二カ所、雇用促進住宅があります。そこはあいております。あと、その周りに碧南とか刈谷とか安城、そういったところもまだまだあきがあります。ですから、全体としてはあきがあるということは事実として申し上げたいというふうに思っております。

 その上で、実は、雇用促進住宅も全部に管理人がいるわけじゃなくて、この私の秘書が住んでいたところには管理人はいなくて、隣の碧南の住宅の管理人さんが幾つかを兼ねておられたということでございます。したがって、秘書の仕事柄夜遅く帰ってきて、住宅も真っ暗だ、管理人さんもいないというところで、毎日、いや、うちの住宅今いっぱいですか、どうのこうのと聞くのはちょっと、それもちょっと普通かなというふうに思いますが、そういう意味で、彼自身もあいていたというふうに思っていましたということを私は聞いております。

 その上で、今回のこの件につきまして、私は、そういう意味では、そういう事実経過の中で、それはそれとしても、いろいろな意見、いろいろな見方というのがあるのも事実だと思いますし、これはやはり真摯に受けとめなければいけないというふうに思いますので、そういう意味で、もう既に彼に、相談があったので、それだったら早く引っ越したらどうかということで、引っ越しをしたということでございます。

 それで、彼がここに住んでいるのをいつから知っているかというと、先ほども、私、冒頭申し上げましたが、名古屋の子だったので、ずっと通っていた。ただ、遠いということもあって、自分で探して、当然事務所の中で連絡の名簿をつくりますから、そのときにいろいろな住所を見て、ああ、そうか、何だ、こっちに来たのかと言って、事後的には、そっかそっか、そういうところに入ったのか、そういうところに引っ越したんだということを事後的に知ったということはございます。

山井分科員 一般の議員ではなくて、まさに非正規雇用の問題、派遣切りの問題について、本来先頭を切ってリードすべき方でありますから、私は、今の説明を聞いて、残念ながら十分には納得することができません。しかし、次の質問に移らせていただきたいと思います。大村副大臣、これで結構でございます。

 それでは、舛添大臣にお伺いをしたいと思います。

 まず、配付資料一ページを見ていただければと思いますが、要介護認定の基準の変更によりまして、介護度が軽く出てしまう人の問題、これは以前から委員会で取り上げさせていただいておりますが、舛添大臣にはこの一ページ目を見ていただきたいと思います。

 厚生労働省の担当者の方からもお聞き及びかと思いますが、例えばですけれども、これはあるケアマネの方が、御自分の今担当されている二十六名の方を、今回のテキストに従って、そして発表されている樹形図に従って一次判定をやってみたら、二十六人中十四名が軽くなるという結果が出た。五三・八%ということなんですね。もちろん、これは二次判定でもありませんし、正式なものだと言う気はありません。

 そして、前提としまして、二ページにありますように、判定方法、対象者の現状の状態像から、二〇〇六年の認定調査マニュアルと二〇〇九年の認定調査マニュアルに準じて共通項目六十八項目と、旧項目十四項目、新項目の全八十八項目にすべてチェックをして比較したというような前提を置いてであります。

 そしてまた、三ページ目も見ていただきたいんですが、これももうお一方ケアマネの方が一次判定をやってみられたんですが、多数の方が今回軽くなっている。

 繰り返しになりますが、別にこれは二次判定が出たわけではありませんから、まだわかりません。わかりませんが、現場ではこういう非常に危機感が募っているということなんです。

 それで、質問通告もしておりますが、このお二人の方がまとめられたケース、担当の課の方とも意見交換もされていると聞いておりますので、こういう結果、もちろん二次判定のことはありますけれども、一次判定でこういうふうに、かなり、過半数の方が下がるというようなことになりはしないのか、そのことについて舛添大臣から見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 今、山井委員みずからおっしゃいましたように、一次判定か二次判定かとか、それから市町村が使っているソフトか、試案のようなものか、さまざまな留保条件がありますから、この留保条件を全部クリアすればまた違った結果が出るかもしれません、それが一つ。

 それからもう一つは、やはりこれはきちんと実際に検証してみたいというふうに思っていますので、四月の十三日に検討会を、御承知のように、この問題について立ち上げまして、今鋭意検証を行っております。その結果で、これはまた見直す必要があれば見直していく。

 ただ、介護技術の進歩とかいろいろなものを入れますから、一番大事なのは、介護の手間暇がどれだけかかるかという認定をする必要があって、それを今この要介護認定基準の見直しということでやっているわけでありますから、私はよく言うんですけれども、母親もずっと介護してきた、それは介護度が軽くなるにこしたことはないですよ、よくなっていることですから。介護度が重くなったというのは症状が悪化しているということですから、それは余り喜ぶべきことではない。

 ただ、それぞれのケースでいうと、介護度が逆に重くなって喜ぶかといったら、それは負担がそれに比例してふえるわけですから、ちょっと待ってくれという方もおられるかもしれない。それから、今まさに、介護度が軽くなったために今まで受けていたサービスが受けられない、それはそれでまた問題があると思いますけれども、これはやはり一つ一つのケースについてきちんともう少し検証させていただきたいと思っています。

山井分科員 私の知り合いが認定審査員の会の会長をやっているんですが、先日もその集まりがあったそうで、その審査員の会長の方が二次判定を担当される審査員の方々にどうスピーチをされたかというと、今回の基準の変更によって軽く出る人がたくさん出るおそれがある、これは非常に深刻な問題だから、ぜひとも二次判定で皆さん救うようにしてくださいというスピーチをされたそうです。別にこれは私は偏った方の話をしているんじゃないんです。

 舛添大臣に御理解いただきたいのは、全国でそういう深刻な現状になっているんですね。ですから、私もこれは特別なケースを取り上げていると思っていないんですが、舛添大臣、今後も検証されるということをおっしゃいましたけれども、ここでぜひお願いしたいのは、ぜひこのお二方のケアマネの方と担当の厚生労働省の方、会っていただいて、何が違うのかということを一回調べていただいて、具体的にこういう不安はあるんですから、別にこれはわざと低くされようとしているわけじゃないんですよ。公開されている樹形図を使ってやるとこうなるということを多くの方々がおっしゃっているわけですから、別に私はこのお二方のケースだけを助けようとか思っているわけでは全然ありませんが、具体的な事例として、全国の方々が同じような不安と悩みを抱えておられるんですね。

 ぜひ一度厚生労働省の担当の方は話をして、何が違うのかということを、また私、後日質問しますので、委員会で答弁をしていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 それは広くいろいろな方の意見を聞くのは大変大切だと思いますし、厚生労働省の中だけでやるのではなくて、広く意見を聞く、そのために、実は、先ほど申し上げました検証・検討会を設けて、そこで全員の意見を私も聞きました。本当に千差万別、いろいろな意見があります。

 例えば、そういう中で、いろいろな方を呼んでヒアリングをしていくということも十分可能でありますので、それはぜひ事務方と、今委員がおっしゃったように、どこが、どういう手法が違うのか、もっと詳しく議論するのはむしろ歓迎したいと思います。

山井分科員 また次の質問のときに答弁していただけますか、何が違うかというのを。

舛添国務大臣 事務方と資料を出された方々とよく議論をして、それは結果を報告させていただき、御質問があればそれはお答えしたいと思います。

山井分科員 それで、今回、現場からのこういう苦情、不安の声をもとにして、激変緩和措置、経過措置を講じられたということなんです。しかし、私は一歩前進だと思いますが、大きな問題が残っていると思います。なぜならば、経過措置をされたということは、今回の新しい認定基準で介護度が軽くなって、サービスがカットされる人が出るかもしれないという心配があったからだと思うんですね。これは当然だと思いますが。

 ところが、これは今まで利用していた人にだけ経過措置を設けると、私は新規の認定者に対して不公平になると思うんです。舛添大臣、ここは冷静に考えていただきたいと思うんですが、今まで例えば要介護一だった人が新しい認定で要支援になります、これはかわいそうだからということで、今までの認定の要介護一のサービスは保障しますということをされたんですよね。

 ところが、新規裁定の方は、新しいサービスで受けると、先ほど言ったように、最初から要支援二に出てしまうかもしれないわけですよ。そうしたら、今まで利用していた人は要介護一のサービスを維持されるのに、なぜ新しい人は選択の自由がなく、自動的に、強制的に要支援二になってしまうのか、これは明らかに不公平だと思うんです。

 ですから、今回の検証結果が出るまでは、そういう要介護認定の新しい認定で軽くなるリスクがあるということを、危険性をお認めになるのであれば、新規裁定の方にも、望めば、古い認定でも受けさせてあげて、選ばせてあげるということにしないと、新規裁定の方にとっては明らかに不利益になるんです、これは。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 山井さんのような介護の専門家に申し上げるのは釈迦に説法なんですが、そもそも介護認定というのは何なのか。どれだけの介護の手間暇がかかりますよということをできるだけ客観的に第一次、ソフトでやる、そして、しかし個々のケースがあるから第二次、審査会を経て、かかりつけのお医者さんとかナースとかが判定をするということなんですが、そのことと、では家族の立場で、本人の立場でどういう介護をするかということとは若干のずれがある。

 そうしますと、去年までというか、前回の介護認定で三なら三でやっていた。それで、新しい基準を使ったらどう見ても二ですねということになったときに、急に今まで使っていたサービスを使えない、それはちょっと待ってくださいという話になります。それから逆に、今まで三だと言われていて、あなたもっと重いよ、四だと言われた。四だと言われたって、一割負担ですから、その負担はちょっと嫌だよ、むしろ軽い方にしてくださいという方もおられるかもしれません。それはそれぞれの家庭の事情で、特に過去があって新しいときにはその苦情が多くなると思います。

 しかし、今回は全く新たな人が来ます、新しい基準でやります。それも、前の基準をそのまま使うのだったら、変えていくことの意味がある意味でない。そして、過去がないんだから比べようがないわけです、もし仮に新しい基準でやりました、やったときに、どう考えても要介護度三というのはおかしい、私は四だよというようなことを言う人がいれば、そのときは区分変更の請求がすぐできますから、それは救えますよ。そして、そういう意味で、前のと比較するのと新たなと、新たな場合、最初から要介護度五では来ないでしょう。

山井分科員 舛添大臣の答弁は明らかに不公平ですよ。今まで利用していた方はどちらかいい方を選べるのに、なぜ新しい人は選べないのか、その説明になっていないんですよ。不公平です。

 それで、舛添大臣、きょうの配付資料にありますが、この九ページのモデル事業をされたとおっしゃいますが、その中に、この認定調査員のテキストが昨年の十二月から新しくなっているんですね。この認定調査員のテキストが新しくなった、そういうことはモデル事業に含まれていますか、含まれていませんか、イエスかノーかでお答えください。

舛添国務大臣 モデル事業と研究事業で、研究事業の方に含まれているということであります。

山井分科員 モデル事業の方を聞いているんです。モデル事業はどうですか。

舛添国務大臣 モデル事業には入っておりません。

山井分科員 では、この研究事業は何人を対象に、どういう人を対象にやったんですか。

舛添国務大臣 八十六例を対象にしたということであります。

山井分科員 どういう方ですか、八十六例の方は。

舛添国務大臣 五つの自治体で一定の期間に申請を受けた人を使ったということでございます。

山井分科員 八十六例、もっと具体的な話があるでしょう。施設の方ですか、在宅の方ですか、答えてください。

舛添国務大臣 両方あるそうです。

山井分科員 たった八十六例ですか。何でたった八十六例でこんな大きなことをやるんですか。なぜ私がそんなことを言うかというと、このテキストによって大きく変わるんです。

 例えば、きょうの配付資料にもつけさせていただきましたが、六ページを見ていただきたいと思います。

 六ページ、ちょっと字が小さいですが、このテキストによって、例えば座位の保持、今までなら、十分間座位を保っていたら保てるとしていたのを、こちらが二〇〇六年、右側が二〇〇九年です、新しい方では一分にしてあるんです。どう考えたって、二分から十分間まで座位が保てる人の部分は軽くなってしまうわけですね。

 そして二番目にいきますが、次の七ページ。

 例えば、二〇〇六年のテキストでは、認知症に関して、ひどい物忘れのために日常生活に支障が生じる場合をいうというような書き方だったのに、今回、ひどい物忘れというところの項目では、線を引いてありますが、特記事項、食事をしたことは覚えていないが、しつこく食事を要求するといった行動がないため、「ない」を選択すると。食事したことを忘れても、ひどい物忘れはないでいいとなっているんですね。

 そして三つ目、次の八ページを見ていただきたいんですが、例えば麻痺に関しても、今までは普通に、ある、なしだったのに、新しい二〇〇九年のテキストでは、右下にありますように、異なった選択が生じやすい点として、今までは左上肢に麻痺があると誤った選択をしていた、しかし今回、正しい選択と留意点では、目的とする動作は行えるが、感覚障害として、冷感、しびれ感が左上肢にあるような場合は、何もない、こういうふうに変わっているんですね。

 舛添大臣、私は三つの例だけ挙げましたが、こういうふうに二〇〇九年のテキストと二〇〇六年のテキストと変わっているんですよ。この変わったことに関して、たった八十六例ですか、調査したのは。このことを今現場の人たちは不安に思っているんですよ。これはどう考えたって軽く出るわと。

 改めてお伺いしますが、本当に、二〇〇九年のこのテキストで、去年十二月に発表したこのテキストで八十六例の調査をやったんですか。このことを確認します。

舛添国務大臣 はい。それはやったというふうに報告を受けております。

山井分科員 なぜ八十六例なんですか。舛添大臣、常識で考えてくださいよ。全国の四百万人の介護保険の高齢者がサービスが減るかもしれないということの調査を、たった八十六人で調査する、それはちょっと異常じゃないですか。けたが違うんじゃないですか。

舛添国務大臣 その前に検討会を開きました。あなたの意見に賛成する人が半分、そうじゃない人も半分いる。

 見て驚いたということなんだけれども、より正確に状況をどう認定するか。特記事項を書く。確かにそれは、特記事項を書くのは面倒くさい、その手間暇をどうするかの話はあります。しかしながら、麻痺としびれは違うんですよ、これは分けてやった方がいいですよというような意見があったり、要するに、自立・介助のときに寝たきりをどうするか、ただ、寝たきりはどうなんだ、食べ物にしたって、忘れたと言っただけでいいのか、しつこくおなかすいた、食べたばかりじゃないのと言ってもまたすいたと言うかというのがあって、それを正確に見たままを書いて、その上で特記事項を書きなさいと。なぜそういうやり方が悪いんですかと半分ぐらいの委員の方が言われる。

 しかし、山井さんがおっしゃるように、これを見てびっくりした、本当にこれは不安になりますよという意見もあります。だからこそ、そういう意見を今真摯に聞きながら、もう現に動いていますから、それを検証して、その結果を公開の場できちんと討論し、検証して、じゃ、ここはやはり変えましょう、こういうことをやりましょうという作業を今やっているわけです。

 そういう御不満とか不安があり批判がある、そういうことに対しては私は今真摯にこたえようとしているわけでありますから、八十六例どうだというのは、それはいろいろな形で例をとってみてやるというのは一つの結果であって、その結果、一、二割は軽くなる、一、二割は重くなる、六、七割は変わらないというのが一つ出てきた。出てきたからこれを金科玉条にして、だからいいということを言っているわけではありません。より正確に手間暇のかかり方を、どうしたらいい判定ができるか。それは、不断にこの認定基準も見直さないといけない。認定基準の見直しの過程でいろいろ御批判のようなこと等があったことは、今一生懸命改善しているということです。

山井分科員 こちらのモデル事業は一万人以上でやったということが明記されているんですよ。ところが、こちらは八十六人ということは明記されていないんですよ。

 そもそも、今回の問題になった、発覚したデータにもありますが、舛添大臣もお認めになったように、この十二ページにありますように、「介護給付費の縮減効果額」ということで、実際、要介護認定基準を厳しくして八十四億削減するとか、二百億から三百億削減するということを検討していたという内部文書が出てきたわけですよ。だからこそ、現場の人たちは不安で不安で仕方がないんです。

 では、この検証結果はいつ出るんですか。それで、いざ検証した結果、三割、四割の方が低く出るということになったら、その間、新規裁定で裁定を受けた人はどうするんですか。もう一回さかのぼって裁定してもらえるんですか。

 いつ検証結果が出るんですか。

舛添国務大臣 それは四月十三日に検討会を開いて、要するに、三月ぐらいのものが四月に来てそこから検討しますから、常識的に考えれば、それは早くて六月、七月ぐらいになるんじゃないですか。それはしようがないですよ。それできちんと検討しましょうと。

 それから、先ほど申し上げたように、全く新しくやる方については比較の対象がないわけですから。それは、百人要介護者がいれば、百人全部違いますよ。一人として同じのはいないので、全く同じ、クローン人間じゃないけれども二人いて、新しい認定基準でこっち。ならば……(山井分科員「質問に答えてください。委員長、余り時間がないので、もういいです」と呼ぶ)それならいいですけど、質問について言うと……

秋葉主査代理 大臣、簡潔にお願いします。

舛添国務大臣 ですから、区分変更の手続をおやりになればいいんですよ。

山井分科員 いや、私は、今回の要介護認定で今までより軽くなる人がどれぐらいいるのか、その検証結果が出るのはいつですかという質問をしているんです。

舛添国務大臣 先ほど申し上げたじゃないですか。時間がかかるから、恐らく早くて六月、七月になるだろうということを申し上げた。(山井分科員「いつですか」と呼ぶ)わかりません、今やっているところですから。

山井分科員 高齢者の方は生身の人間なんですよ。もしそれでサービスが低下しているんだったら、大問題じゃないですか。年金から介護保険料を天引きされて、もしそれでサービスが大幅に減っていたら、どう責任をとるんですか。何でそんな悠長なことが言えるのか。介護の問題を一番身にしみて感じられているのは舛添大臣でしょう、御経験されて。

 その方々のサービスがカットされるかもしれない。実際、今までホームヘルプが六回受けられていた人が三回になるかもしれない。そういうふうにこれは深刻な問題ですよ。要介護一だったら施設に入れる人が、要支援二になったら施設には入れない。それこそ、家庭崩壊するかしないかの瀬戸際にいる人もいるわけですよ。

 それを検証するんだったら、いつまでにやるということを明確に、せめてここで答弁してください。それが、新しい基準を導入した人間の責任というものでしょう。

舛添国務大臣 ですから、新しいものが出てくるまでは、本人の御希望があって申請があればそれは変えますということを申し上げております。

山井分科員 だから、何回言ったらわかるんですか。新規の方にとっては不利益になるじゃないですか。今までと比べようがないんだから。古い基準だったら要介護一だったのに、新しい基準になると要支援二になるかもしれない。そういうことだったら見直さないとだめでしょう。その見直しをするためには、今までのものと今回とどちらが軽く出るか重く出るかの検証結果が必要なんです。だから、せめて、いつまでに出すかを言ってください。

舛添国務大臣 前提が全然違います。そこは、私とあなたは全く意見が違う。

 だから、何度も言っているじゃないですか。百人百様、違うわけですから、新しい認定基準でやって、じゃ、逆に聞きますけれども、何割軽くなったら変えるんですか。六割ですか、七割ですか、二割ですか。新しい基準でやるというのは、前と比較のしようがないんですよ。だから、今回の認定基準でいいという方が委員の中に半分おられるわけですよ。何で変えるんだと逆に言っていますよ。ですから、今までと比べて、重くなる人だって文句はあると思いますよ、重くなる人、軽くなる人、そういう方は希望を言えばいい。

 新しい人について言うと、そこをどう変えるかということは別の問題だと思います。

秋葉主査代理 山井君、時間を過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

山井分科員 はい。

 ですから、新規の人は比べようがないんですよ。今まで利用していた人が要介護認定が今回下がったか、上がったか、変わってないか、その結果はいつ出るんですか。それを答弁してください。

秋葉主査代理 大臣、簡潔にお願いします。

舛添国務大臣 先ほど来申し上げていますように、四月からの結果を一生懸命集計しても、早くて六、七月になりますということを申し上げているんです。まだわかりません、今やっているところですから。

秋葉主査代理 時間が過ぎておりますので、これを最後の発言にしてください。

山井分科員 はい。

 そうしたら、七月には出してくださるということでよろしいですね。

舛添国務大臣 わかりませんということを先ほど申し上げている。

山井分科員 もう終わりますが、責任を持って物事をやってください。お年寄りと家族の人生がかかっているんですから。いつ結果が出るかわからないようなことは、人体実験じゃないですか。私は個人で怒っているんじゃないんですよ。全国のお年寄りを不安にさせるようなことはやめてください。

 以上で終わります。

秋葉主査代理 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。

 三十分いただきまして、特に介護、それから就学前児童の、これもある種、介護というか見守りということでつながっていると思います。そういうことについて議論させていただきたいと思います。

 私も当選以来五年以上たちますが、きょうこうして質問させていただくのが百回目ということで、こうして大臣と百回目の議論をさせていただくことを大変光栄に存じております。

 実は、私がなぜこうした社会保障の問題、介護の問題に取り組むようになったかといいますと、この本の著者であります滝上宗次郎さん、私にとりまして大学の先輩でありますけれども、この方の御指導があったからであります。

 この方は、高齢者の皆さんのことを本当によく考えられ、厚生労働関係の、特に厚生関係のいろいろな資料も、恐らく日本で一番資料を読み込み、発言をされていた。新聞等々も読んで実態もよくわかる。しかも、みずからが有料老人ホームを経営されていたという方であります。しかも、橋本内閣のときには経済審議会の医療・福祉作業部会の座長、また行政改革委員会の参与、厚生省担当も務められて、実は、今の社会保障の青写真をかいたのはこの方なんです。

 ところが、この方は五十四歳で、二年前他界されました。まさにみずからが高齢者になってこうしたサービスを受ける前に、本当に命を削って、国のためにこの方は社会保障の提言をされた。私はこの方の遺志を継いでやらせていただいているつもりであります。それで、そういう思いも込めて、きょうは百回目ということでもありますので議論させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、大臣、介護保険の導入に当たって、やはり在宅介護ということがメーンだ、在宅介護を前提としてこの制度は導入されているということがあると思いますが、私は、まずこの前提から見直さなきゃいかぬ時期に来ているのではないかという思いであります。

 というのも、この滝上さんの著書にも書いてありますけれども、かつて昭和三十年代というのは、介護の期間というのは、私の祖父のときもそうでしたけれども、横になったら、かなり厳しい状態になって布団に横たわったら、大体一週間ぐらいでお葬式とかいうことになっていたと思いますし、長くても数カ月だった。ところが、今の状況は、医療の発展もあり、これはとてもいいことなんですが、やはり二年、三年、場合によっては十年ぐらい介護を要する。これは舛添大臣も介護の御経験があるということを承っておりますけれども、こういう状況である。

 子育てと違いまして、子育ては、だんだん成長していくわけで希望が持てるわけですね。私も三人の子供がおりまして、かわいらしい。いろいろやんちゃで大変だけれども、だんだん成長して手を離れていくということもあって、いい。ところが、介護というのはますます重くなるだろうということが想像されていく、しかもそれが一年、二年。最初は、自分の家族、親だ、そういう思いで本当に心から介護できていても、これが一年たち二年たち三年とか五年となってくると、やはり厳しい、本当に大変な状況だ。私はまだ経験がありませんけれども、私の母が祖母の最期をみとったときは三年か四年ぐらい、認知症もありましたので大変だったということです。

 こういう状況を考えたときに、まず、こういう状況を軽減していく、つまり社会全体で負担していこうというのが介護保険導入の前提だったと思います。ところが、実際の最近の社会情勢を見ていますと、いわゆる介護心中、介護殺人という事案が後を絶たない。実は、四年ほど前から私はこの滝上先輩に御指導いただきながら、こういった場でも大分議論してきて、どう考えても、これからますます介護については厳しくなります、だからちゃんと手を打たなくちゃいけない。

 一方で、実は今、療養病床の廃止のこともいろいろ問題になっていますけれども、私は、社会的入院についてはやはり問題があったと思います、だから、しっかりと介護の受け皿をつくっておきましょうという議論をしていたんです。ところが、療養病床だけぽんと廃止されたものだから、受け皿がないものですから、ますますこれはみんな病院を追い出されて自宅に戻る、在宅になる。それで、会社をやめたりとかして、ますます介護に専念せざるを得ない状況になる。

 では、サービスがあるのかというと、今は介護保険になりますけれども、例えば二十四時間やる訪問介護センターとかをつくっても、実際に、まだない地域が多いんですよ。結局、お金を払いたい介護の制度があってもサービスを提供する人がいないという状況の中で、ますます介護の現場はひどい状況になっていると私は想像しております。

 だからこそ、今や在宅介護という根本理念がやはり無理だと私は思っているんです。かつてのように一週間、数カ月だったら、それは何とか、お世話になったお母さんだからとか、おしゅうとさんだからとか、しゅうとめさんだからということでやれるかもしれないけれども、もう無理だと思うんですね。私は、もう在宅ではない、施設介護というのを前提にこれからの介護を考えなければならないのではないか、つまり前提から根本的に変えなくちゃいけないのじゃないかという考え方でありますが、大臣の御見解を伺わせていただきたいと思います。

舛添国務大臣 市村委員、非常によくおわかりなので、尊敬いたします。

 在宅か施設か、これは、実はずっと私も悩んできた問題で、私の答えは両方だということなんですね。

 私は母親が八十のときに介護を始めて、八十七で認知症で亡くなりましたから、七年間、しかも東京と福岡、遠距離介護をやりました。これはなぜ可能であったかというと、私がいるときは在宅をする、いないで東京で仕事をしているときは施設が預かってくれる、このインターチェンジャビリティーというか、相互の交換ができたからなので、それぞれのお年寄りの状況も全部違います。家族の状況も全部違います。住んでいるところも全部違います。そこで潤沢な在宅サービスのナースステーションや何かがあれば、それは在宅ということはある。

 普通、皆さんどこで介護されたいですか、それは住みなれたうちでということをおっしゃるんです。それはそれで、そういう方の希望をかなえるためにどうすればいいかの施策もやらないといけない。しかし、私が常に申し上げているのは、この前もどこかの委員会で聞かれたので、介護はプロに任せましょう、家族は愛情だけよと。では、あなたはどこで介護されたいですか、私は自分が苦労しましたから、むしろ施設だろうと思っています。在宅の場合、余りに苦労が多いので。

 だから、やはりこれからの施策としては、ぜいたくかもしれないけれども、在宅を望む人には在宅ができるようにする、施設を望む人には施設ができるようにする。しかし、在宅だけでは家族が大変ですから、簡単にショートステイとか、ある意味でロングステイとか、そういうことができるようにする。そのためには、在宅の介護のインフラもおくれている、施設にしても私はまだおくれていると思います。

 ですから、これは国民の皆さんに御負担を願わないといけない。それは介護保険料とか税金の形になりますけれども、こういうコストは国民で議論をしてコンセンサスを得て、例えばそれは消費税の形になるかもしれません。保険料が、今の五千円ぐらいが七千円ぐらいにアップするかもしれません。しかし、それによって、在宅か施設かというような選択を迫られるのじゃなくて、自分の好きな方を選ぶだけの潤沢な選択肢がある。それは施設でも、グループホームから老健から、今療養型病床群をおっしゃいましたけれども、そういうのが理想だと思いますので、私は、やはりまだまだおくれているので、理想に向かっていきたいと思っています。

 それで、先般、十日にまとめました経済対策の中でも、施設整備について、あの「たまゆら」の例もありますから、少し頑張ってやろうということで予算をつけたいというふうに思っております。

市村分科員 たしか、福岡と往復されているときに福岡空港で一度お目にかかったと思います。

 私も、もちろん、全部施設だという気持ちは全くありません。もちろん在宅でやれるのが一番理想だというふうに思っています。ですから、今大臣がおっしゃっていただいたように、私も、基本的にはショートステイとかデイケアとか、この辺をもっと充実させていけば大分違うかなというのは思っているところであります。

 ただ、大臣、実際に今の厚生労働省の行政の状況への対応でいうと、どうしても介護保険は在宅を基本とするということなものですから、例えば有料老人ホームは居宅介護になっているわけですね。つまり、我々は有料老人ホームはどう見ても施設介護だと思うんですけれども、有料老人ホームにいらっしゃる方は別に介護を必要とする方ばかりじゃなくて、健康な方もたくさんいらっしゃるわけで、むしろ健康な方が多いわけであります。

 ただしかし、結局、三七%の規制があるんですね、御存じだと思いますけれども。そういう何かまやかしみたいなことをやめて、今大臣のおっしゃっていたような発想から、やはり今、それぞれニーズが違うんだというところに焦点を当てて、だから、そのニーズの違う人たちに対して、できる限りそのニーズに見合ったサービスを提供するような制度は一体何なのかという発想からやっていかなくちゃいけない時期に来ているのではないか。

 まず在宅が基本なんだというところからスタートすると、どうしても有料老人ホームは、これは居宅だから三七%に入りませんとか、高専賃というのがありますけれども、これも入りませんとか、こういう話になってしまいます。私は、いわゆるついの住みか、「やっぱり「終のすみか」は有料老人ホーム」ということで滝上さんはおっしゃっているんですが、結局は、こういう民間の有料老人ホームのようなものがしっかりと出てくると、今さら特養をたくさんふやせというのもなかなか難しいと思いますし、ですから私は、今さっきおっしゃっていたような、もっと柔軟な発想に立ってやっていくべきじゃないかと思いますが、大臣にまた御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 日本で病院、英語で言うとホスピタル、これはみんな認識の中にある。だけれども、例えば有料老人ホーム、ナーシングのホームという、この概念が欧米に比べてないんですね。あなたは老後をどこで過ごしますか。病気になったら病院か、ないしは介護でも老健とか特養が思い浮かんで、自宅とは違うところで老後を送るという発想がないので、まずこれが一つだというふうに思います。

 それから、在宅か施設かというときに、もう一つ解決法が、スウェーデンを見ていてあるなと思ったのは、なぜ在宅かというと、私の母親のケースもそうでしたけれども、やはり住みなれたところに住むというのが非常に認知症にとってよくて、環境が変わると、せっかくよくなったら、またそこで変わる。だから、三月ごと老健をかわらないといけないんだよ、せっかくなれたのにと、そういう話がかつてはありました。

 そうすると、環境の激変に対して非常にお年寄りは弱いわけですから、これを緩和するということで在宅があるなら、もう一つの方法は、全く真っ白な部屋があって、おばあちゃんが寝ている間に、一晩のうちに、仏壇からそこにかけている絵から洋服だんすから全部在宅のものを持ってくる。それで、翌朝ないし寝ているうちにおばあちゃんを運んでくる。朝起きたら、前の場所に位牌もあるよ、仏壇もあるよ、洋服かけもここにあるよ、変わっていないじゃないか、これは実はスウェーデンでやっているんですね。

 だから、そうすると、在宅じゃないと環境が変わってだめだということは、こういうことまでやればできないことではないというふうに思いますので、ナーシングホームというか、そういう有料老人ホームのようなものを今後どう育てていくかということも必要で、私は、運営主体はだれでもいいんだろうと思います。結果として、いい結果が出ればいいと思っています。だから、あとは、この前の火事の「たまゆら」みたいに基準を満たしていなくて不幸なことが起こらないような、必要最小限の規制をどうするかということにかかってくるんだろうと思っています。

市村分科員 本当に大臣といろいろ議論したいなと思いますが、三十分しかないので、ちょっと先に進めたいんですけれども、本当にいろいろ議論させてください。

 今、運営主体はどこでもいいというふうにおっしゃっていただきました。私は、本当は、介護の運営主体というのはNPOが一番いいんではないかと思っています。

 お手元にきょう資料を提出させていただいておりますけれども、やはりこれまでの日本は、要するに行政がやるか営利企業がやるか、どっちかしか選択肢がないんですね。結局、小泉民営化というのは、民営化イコール株式会社化に走ってしまったんですね。私は、民営化にはもう一個ある、NPO化があるんだということをずっと言い続けています。

 私は、特に介護とか、ナーシングホームの例も挙げていただきました。まさにこの滝上さんの本、「やっぱり」なんです。あれだけいろいろ資料を読み込んだ人が、これは最後の遺作なんです。だから、これは遺言だと思っています。つまり、最後に「やっぱり」と言って滝上さんは亡くなられているんです。結局いろいろ議論した結果、やっぱり、ナーシングホームを含めて、こういう有料老人ホームがいいんだ、それしかないんだということで、これは遺言です。

 では、その主体は、僕は株式会社よりもNPOがやるべきだ。なぜNPOかというと、利益を分配しないんですね。つまり、どうしても株式会社だと株主に利益を分配しなくちゃいけない、やはり株主の意向もあるということになります。しかし、NPOというのは利益を分配しないで、もし利益が出た場合は、またその組織目的に再利用していく、再使用していくという組織体です。

 こういうものがしっかりと日本を支えて、基盤づくりをして、私はこれを官製土壌から民製土壌にと言っていますけれども、まずこういう土壌をつくったところでNPOが発展させる。こういうところが介護の受け皿、医療の受け皿とか、後で議論したいんですけれども、保育、要するに子供たち、就学前児童の受け皿とかいうふうになっていくべきだ。私はこう思って、松下政経塾、きょう委員長は政経塾の同期でありますけれども、ずっとこれは政経塾時代から訴えてきていることでありますが、大臣の御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 それも一つの考え方だと思いますのは、ドイツなんかの例を見てみますと、参入規制がなくて株式会社が入ると、株式会社とは何ですかと定義すれば、それはプロフィット、利益を出すための組織ですから、利益が出なければ株式会社じゃないんですね、失格なんですね。それで、それがいい方向で努力をして、本当に高齢の方が喜んでいただけるような形で利益を上げる、これがベストなんだけれども、利益を上げることが最大の目的ですから、そのために逆に高齢者を虐待したり、サービスを低下させてコストを下げて悪い結果が出たということであってはいけませんので、NPOというのも一つの考え方であろうかと思います。

 一方、介護事業者、これの中に今株式会社が参入しています。問題があって処分した事業者もいますけれども、ただ、すべての事業者が悪いわけではなくて、やはり一定の競争条件が入ることでプラスになっていることもありますから、そういうことを勘案しながら、これは、委員の御提案、大変貴重な提案だと思いますので、今後みんなで議論していけばいいと思っています。

市村分科員 私も、別にNPOだけでということでもないと思っておりますし、行政がやってもいい部分は一部あるかもしれません。特に重度の場合とか、例えば福祉的な政策で、身寄りがない方の場合は、やはりこれはお金がない、身寄りもないわけですから、それはいわゆる福祉政策としてやるということで、最後のセーフティーネットを張ってやるということもあるかもしれません。ただ、私は、やはりNPOの方がより目的に沿う組織体だろうなと思っているんですね。

 いずれにしても、例えば株式会社にしても、NPOにせよ行政にしても、やはり私は、さっきドイツという例を挙げていただきましたが、ドイツにホーム法というのがあります。ホーム法とは何かといいますと、ホーム法の目的は、入居者の尊厳及び利益を侵害から守ることにある、こういうことであります。

 では、ホームとは何かというと、老人または要介護状態にある成人もしくは障害のある成人を受け入れ、居室を提供し並びに世話及び食事を用意しもしくは確保することを目的とする施設であるということです。ドイツはもともと連邦国家ですから、いろいろ地方がこういうことをやっていたらしいんですけれども、これではやはりいろいろ問題が出てきたということで、連邦が、まずこういう法律をつくってきちっと規制をしたということだと思います。それで、たしか二〇〇〇年の初めぐらいに改正されて、一部、私的契約にかかわる部分以外は、かなり地方、地域にまた主権を与えていったということになっているようであります。

 だから私は、このドイツのホーム法のようなものに学んで、やはり日本もこうした規制をしっかりとしていかないと、この間の「たまゆら」のような件もあって、あれが結局NPOだったものですから、何となくNPOのイメージがとても悪いんですね。あれは私の言っているNPOとは全然違いますので、私の言っているNPOは、民間で公をなす組織のこと全体を言っていますので、例えば、財団法人も社団法人も社会福祉法人も学校法人も全部、私の定義でいえばNPOであります。そうしたNPOが、民間の公を担うNPOが、しっかりとこうしたサービスを提供するということが必要だと思っているわけです。

 このホーム法について、余りまだ御存じないかもしれませんが、ちょっと一言御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 いかに入居者を守るかということでドイツのホーム法はできたというふうに聞いていますけれども、もう少し研究してみて、日本にとって参考になって取り入れるところができれば、それはまた検討させていただきたいと思います。

市村分科員 まず、流れとしては、やはり今の在宅がもちろん理想、居宅が理想。しかし、施設ということもかなり力を入れていかなきゃいけない。しかし、今や特養をふやしていくようなときでもない。そうすると、民間のこうした有料老人ホーム、大臣おっしゃったナーシングホームのようなものをしっかりとつくっていただけるような体制をつくっていく。そのときに受け皿としてNPOがいい。しかし、そのためには、「たまゆら」のようなことが二度と起こらないようにしっかりと規制をしていく。そのためにはルールづくりが必要だ。

 私は、こういう一連の発想の中で、きょうは大臣と議論をさせていただいたということでございます。さっき山井委員もかなりミクロ的観点でおっしゃっていましたけれども、ぜひとも、これは本当に、これから僕は急務だと思っています。

 実は、滝上さんとは一九九三年から、細川政権のときからいろいろこの議論をしてきているんです。あのときから、もう二〇一〇年までしかもたない制度だということを、あの当時の厚生労働省の高官の方はおっしゃっていたんですね、今の制度は。だから、要するに人口動態を考えたら、十六年前からもう今日のことはある程度予測できているのに、私は、実際にしっかりと手を打っていないというふうに評価をしています。別に、きょう、あしたやれということではないんですが、だからこそ、まず根本的な考え方をしっかりと考え直して、そこから、では、どうすべきかという発想に立って議論していかなきゃならないという時期に、本当はもうとっくの昔にそうしておかなきゃいけないんです。そうじゃないと、結局、百年安心といいながらまた揺れるということになるんですね。

 別にやゆして言うつもりはないんですけれども、結局、言葉だけが躍るような議論はもうやめた方がいい。もっと現実を見詰めて、本当に現実に即したところから、要するに、根本的考え方も改めながら議論していくということが必要でないか、こう思っておりますが、大臣、また御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 一つの制度を入れた、私は橋本龍太郎さんが生きておられるときに議論したことがあって、橋本先生、どうですか、介護保険をどういうふうに見ますかと。橋本さんも私も、実を言うと、こんなにうまくいくとは、あの当時、最初の五年ぐらいを見たときに思っていなかった。今、介護保険のことを知らない人はいない。ですから一定の定着はしたと思います。

 しかし、委員おっしゃるように、それに甘んじてはいけなくて、やはり不断の見直しということが必要ですから、先ほど山井さんと議論しましたけれども、あれは一つの認定基準の話ですけれども、もっと大きな点で、医療と介護のすみ分けをどうするんですかというような問題、それから在宅か施設かという問題、税金でやるのか保険料でやるのかという問題、こういう議論をずっと引き継いできているんですね。しかし状況は変わっていく。

 私は、やはり大きな哲学を変更して、社会保障に対するコスト負担というのは、これは単なる負担でどうしようもないということじゃなくて、やはり明るい社会をつくるための先行投資だ、そういう観点からかじ取りを変えないと根本的な問題は解決しないと思っていますので、例の二千二百億円の問題についてもそういう観点から努力をしている次第でございます。

市村分科員 今、大臣、医療と介護のすみ分けとおっしゃっていただいたんですけれども、私は、医療と介護の連携がもっと必要だ、こう思っています。やはりどうしても縦割りなんですね。

 今、厚生労働省の私の友人が千葉で診療所をやっていまして、そこは二十四時間の訪問介護も全部やっているんです。病院ではできないけれども診療所ということで、モデルケースでやってくれているんですね。だから、そういうことをもっと広く広めていって、やはり医療と介護を連携させるということが必要だ。そのために、どう報酬制度を改めていくかとかいうことも議論しなくちゃいけない。しかし、根本は、きょう大臣もおっしゃっていただいた、やはり根本的なところ、理念のところの部分からもう一度見直さなきゃいかぬ、私はこう思います。

 ぜひとも、介護についてはまた改めて議論したいんですが、あと残りの時間、ちょっと保育のこともやらせていただきたいと思います。

 保育についても、幼保一元化という議論が三、四年前にありまして、結局、認定こども園ということで落ちつき、厚生労働省と文部科学省さんが力を合わせて、今いろいろやっていただいているということであります。

 これは親の立場からすれば、ありがたいというか、当たり前なんですね。親からすれば、幼稚園であろうと保育園であろうと別にどっちでもいいんですね。子供をきちっと面倒見てくれて、できればそのときに人間教育というか人格形成に、しっかりとしたいい影響を与えるような場になってほしいということだけの話であります。ただ、今、待機児童も二万人ぐらいいるというような状況の中で、子育てという観点からいろいろ議論されているわけであります。

 そこで一点だけ、まず、いわゆる幼保一元化という話は、今、本当にかなり進んでいるのかどうか、大臣の方から一言いただきたいと思います。

舛添国務大臣 これは、今委員おっしゃったように、子供を預ける立場から見ればどちらでもいいので、私も認定こども園を実際に視察しました。ただ、園長さんと副園長さんがいて、それぞれ幼稚園出身と保育園出身で、言うことが違うんですね。だから、役所の縄張り意識がそのまま来ていて、一応一体化されて、相当よくなったんだけれども、なかなかやはり縄張り意識のところまで変えるのは時間がかかるなというふうに思っていますが、今、施策としてこれを進めるようにしております。

市村分科員 かつて、例えば保育園なら、教育機関じゃないんだから教育をするな、例えば英語教育とかまかりならぬというのがありましたし、幼稚園ならば、その後、幾ら親が大変だから面倒見てほしいと言っても、いや、だめだ、ここは教育の場であって保育の場じゃないんだ、こういう状況であったのが、今大分こうなってきている。ただ現場の声を聞くと、必ずしも、自治体の役人の皆さんがそれをしっかり受けとめているかどうかは別の話であるのではないかと私は思っております。だから、もっとこれを徹底していただきたい。

 今、大臣がまさにおっしゃっていただいたように、まだ縄張り意識みたいなのがあって、しかも自治体の方は、ちょっとそれはいかぬよ、ここは保育園なんだから教育なんかしちゃいけないんだぞとかいうようなことも、どうやら今でもそういうことを言う方もいらっしゃるようだ。全部がとは言いませんが、そういう方も一部いらっしゃるということであれば、やはりまだ徹底されていないのではないか。

 かつての考え方のまま、まだ現場ではいろいろ発言をされている方もいらっしゃるかもしれないということでありますので、ぜひとも大臣、これは違う、そういう縄張り意識じゃなくて、子供の立場に立って、親の立場に立って、就学前の児童をどう私たち社会で育てていくか。これは介護と同じですね。ですから、社会でどう子供たちを見守っていくのか、育てていくのか、育成していくのかというところがやはり観点の基本にないといけないと思うんですね。

 その上で、では施設を充実させるのがいいのか、お金を、例えば子供手当を出すのがいいのかとか、そうした議論にしなくちゃいけないと思っているんですが、また大臣の御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今委員おっしゃったように、介護の社会化とともに、子育ての社会化ということをやらぬといかぬと思います。

 だから、今はもうすっかり変わってもらって、保育所で教育しちゃいかぬということもありませんし、では幼稚園で保育しちゃいかぬのか、そんなこともだれが考えてもあり得ないので、両方の連携に努めて今やろうとしていますので、今後ますますその連携を強化する。だから、教育という発想とか福祉という発想、そういうことはどうでもいいのであって、受益者、国民の方に向いて仕事をすればいいのだろう、そういうふうに思っています。

市村分科員 まさに今大臣におっしゃっていただいたように、国民の方を向いてやるべきなんだと思います。

 私はまた、保育に関しても、やはりこの受け皿はNPOがふさわしいのではないかと思っています。

 市立病院を、いわゆる自治体の管理から、市から例えば民営化するというようなことに平成十三年のころなっているんです。それから、私が住んでいます宝塚市なんかも、結局はもっとどんどん民営化しなさい、公設民営みたいな話になってきて、ありました。

 しかし、では株式会社にするのか。株式会社にしたら東京で起こったような、たしか去年、突然閉鎖するとかいうこともありましたし、本当にこれでは親御さんが安心して預けられないわけであります。突然閉鎖され、行ってみたらいない、どうするんだ、会社は休めないぞ、こういう話になるわけでありまして、そうしたときに、では自治体がまだやり続けるのがいいのかというと、それもまたいろいろ問題があったからこそ民営化という話になるわけであります。

 だから、結局この二元論でやっているから、つまり、行政がやるか株式会社がやるかという二元論でやっているから、政策の選択肢が狭まっているという問題があると私は思います。ですから、やはりNPOが必要だと思いますし、これからの日本を元気にしていくのはNPOだというふうに私は思っております。

 この民間の公を担う組織であるNPO、そして、それから成るNPOセクターというのが必要だと思っておりますので、ぜひとも大臣におかれましても、総理候補のお一人だとお伺いしていますので、そういう観点でこれからの日本の社会の形というのをお考えいただきたいということを申し上げまして、一言いただいて、終わりたいと思います。

舛添国務大臣 今後、ますますNPOに活躍してもらわないといけない場がふえると思います。データを見ても、有料老人ホームも株式会社なんかが多いのは、もともとなかったからなので、今からどんどんふえていく。保育所にしてもそうで、熱意を持って、安定的にやっていただければいいと思います。

 私はドクターヘリの普及というのを一生懸命やっていますけれども、今、沖縄の名護というところで一つ、緊急ヘリをNPOがやってくださっているんですね、一生懸命寄附金を集めたりして。一度経営的に、経営的というのはコストの面で、お金が足りなくなって動かなくなった。それをみんなの寄附で今立ち上がらせているので、一つは、NPOのようなものをきちんと位置づけをするということが必要だということと、もう一つは、やはり寄附。国民がこぞって寄附をする。これを言うと財務省は嫌がるんだけれども、ふるさと納税なんというのをやるんだったら、税金の一部分は、アメリカのように、寄附という形で自分の思った政策にやるということももう議論していいかなと思います。

 きょうは大変役に立つ御質問をいただきまして、それを感謝いたしまして、終わります。ありがとうございました。

市村分科員 ありがとうございました。

秋葉主査代理 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 百回目の質疑、御苦労さまでした。

    〔秋葉主査代理退席、主査着席〕

谷川主査 次に、北神圭朗君。

北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。よろしくお願いいたします。

 私の方はお役に立つ質問かどうかちょっとわかりませんが、まあお役に立つというふうに思います。私の地元の話で、陳情でもあり、かつ、やはりこれは政策議論にもつながる問題だというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 私の選挙区は京都の方でして、市内と農村地帯とありまして、きょうは農村地帯中心の質問をしたいというふうに思います。

 亀岡市というところがありまして、大体十万弱の都市なんですね。その中に山間地域みたいなものも当然たくさんある。そして、きょうは上水道の普及の話をしたいと思うんです。

 我々は、私も四十二歳ですけれども、何となく、ずっと水道というものを当たり前のように思ってきたんですが、亀岡市の畑野町というところがありまして、そこに行くと、まだ実は山水をためて暮らしている人たちもいる。亀岡の中でも、昔は村の連合体だったんですけれども、そういう非常に山間部の地域でありまして、しかも、大阪に近いところもありますので新興の方も結構いて、今、新興の方が六割、七割ぐらい占めている。この辺の温度差がやはりあるんですね。当然、ずっと彼らも地域として水道を要望してきたんですが、ようやく去年ぐらい、これは厚生労働省の皆さんにも非常に協力をしていただきながら、知恵を絞りながらいろいろな案を考えてきたということでございます。

 まず、一種一般論みたいな話なんですが、財政再建ばかりやってきて、確かに、こういう山間地域の話になると、非常に無駄だと。私も昔大蔵省にいましたので、多少そういう考えに染まってしまっていたところもあるんですが、やはり水道というのは本当に生活の基本だなと。そういうところがまだ全国でも一、二%残っているというふうに聞いておるんですが、そういったことを考えると、やはり相当国も支援をしていただきたいというふうに思っております。

 亀岡市について申し上げれば、国、京都府、亀岡市が行政として負担をし、そして地域が、一戸当たり、負担金みたいなものをみんな拠出する。これがやはり大きな金額なんですね。だから、こういったところが、彼らにしてみれば非常に厳しいなというところが本当のところでございます。

 まだ要望は具体的に上がっておりませんので、いろいろ内々に検討されていると思いますが、まずその御認識というか、水道について、こういった未普及のところについてどのように大臣はお考えかということを質問したいと思います。

舛添国務大臣 御縁あって、私もかつて亀岡を訪れたことがありまして、大変、歴史的な遺跡もあるし、すばらしいところだなと。ただ、委員御質問なさって、山間部、亀岡、水道ないんだというのを聞いてショックでして、ああ、亀岡でもそうなのかという気がしました、実を言うと。

 ただ、災害のときに、私も出動するんですけれども、私は上水道の係なんですね、厚生労働大臣というのは。上水道は厚生労働大臣の管轄なんです。だから、非常に水道は大事だ。もう当たり前のように、蛇口をひねればどこでも東京なんかでは出てくる。だけれども、そういう状況で、ちょっと調べてみますと、平成十九年度末で水道普及率が九七・四%で、しかし、三百三十二万人の方がこれがないということで、自家用の井戸なんかに依存しているということなのです。国庫補助も行っておりますので、厚生労働省としても、水道未普及地域の解消のための事業というのを強力に推し進めています。

 個別の件についてどういう御支援を申し上げるか、これは事務的に積み上げていきたいと思いますけれども、先進国で水がない、逆に言うと、我々が発展途上国に出張で行ったときに、水がないことがいかに不便かというのを思って、我が日本国においてまだあったというのは、実は私も非常に、これは一日も早く解消したいなと思っていますので、その努力は続けていきたいと思っております。

北神分科員 ぜひ、それはよろしくお願いしたいというふうに思います。

 まさに、もっと具体的に申し上げると、やはり地域負担のところが一番難しいんですね。

 その地域負担がある程度そろって、それで行政の方が支援をする、これは手順としてそれでいいと思うんです。

 ただ、そうはいっても、さっき申し上げたように、この畑野町というところは新興の方々が六割ぐらいいる。一方で、地の人たちは高齢者が、当然こういうところは高齢化が非常に進んでいる。そういうことはどういうことかというと、今後負担金、全部出すと二百万とかそのぐらいしますから、なかなか一括して出すことはできない、当然分割をして、ある程度の年月をかけて支払っていく、こういうスキームになるというふうに思います。

 しかし、高齢者も、子供ももう町の方へ出ていて、こんなのをまた払うのかと。でも、地域のことを考えると、それは当然欲しいし、郷土愛みたいなものもありますから、畑野にもそういう水道が欲しいという思いもある。新興の方々は、下手すると、大阪に通っているサラリーマンで、二、三年でまた引っ越しする、転勤をする。そういう状況の中で、それでも畑野町の自治会として、必死になって、去年も何人か、ちゃんと払うというようなリストをつくったということでございます。

 それで、万事円滑に、事務的に詰めていけるのかなと思っていたところが、御存じのように、非常に不況になってしまっている、去年の十月から。そういう中で、実は、ある程度集まったと思ったリストから、やはりぼろぼろ抜け出しているんですよね。

 だから、これは本当に陳情みたいな話で恐縮なんですが、ただ、景気対策ということで、今度また十五兆円の補正予算をすると。これは、まさに舛添大臣だから、もっと時間があったら本当はいろいろ議論をしたいところなんですが、いろいろなその中身について、私もそんなに精査をしておりませんが、やはり経済対策というのは、いわゆる総需要管理政策ですか、民間の需要を喚起して、公共事業とか減税とかいろいろありますが、基本的に、これは今までの日本の経済対策、石油ショック以来見ても、公共事業とかそういったものが本当に民間の需要に、民間の消費、設備投資につながったりすることはなかなか見当たらないし、経済学も、これはいろいろな説がございますが、ケインズなんかをもう一回読んでみましたら、やはり彼だって、本当にいろいろな限定された条件の中でしか公共事業というのは景気浮揚につながらないと。逆に、こんな金融恐慌で、バブルが崩壊した後なんかは、何しても、何をやっても無理だということぐらい、要するに彼は投機経済に対して非常に批判的です。

 そういった状況で、皆さんがいろいろ取り組むのは結構だと思うんですが、まさにこういった、先ほど大臣が冒頭答えていただいたように、本当に生活の基本的なところ、要するに、逆に言えば今財政再建というものに対して一種ストップがかかっているような状態でありますから、このときこそ政治というのは、効果のないことをやらない勇気、そして効果のあることにやはり限定してやる勇気、この二本柱が極めて大事だというふうに私は思っております。

 したがって、今申し上げたように、こういったところはほかに全国にもいろいろあるかもしれません。こういう状況の中で、まさに基盤的な水道の整備、先ほども国庫補助の話とかおっしゃっていましたが、さらに追加的に、こういったところを今こそやる大義名分がそろっている、そういう状況の中で力を入れていくべきだというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。

舛添国務大臣 十日にまとめた経済対策の中に、実は、水道の耐震化、これをやろうというのは予算がとれそうなんです。ただ、今の、普及していない地域に水道を普及させるという事業については、亀岡の畑野地域もそうですが、国庫補助三分の一なんですね。だから、その補助率を上げるところまでは今回スコープに入っていません。ただ、これはやはり先進国としてはきちんとやっていかないといけないので、課題としていただいて、今後何らかの財政支援ができるかどうか。

 それで、私も少し亀岡の例を調べてみましたけれども、分割するにしても、三分の一国庫補助があり、あとは市と京都府の負担があっても、やはり百二十万ぐらい一つの家庭にかかっちゃうんですね。この状況でそれは非常に重いなと思いますから、今後引き続き検討課題として、何らかの財政的な措置がとれるかどうかも含めて検討させていただいて、今委員がおっしゃったことが少しでも前に行くように努力はしたいと思います。

北神分科員 本当に前向きな御答弁をありがとうございます。

 水道の耐震化、これもよくわかるんです。多分、我々民主党もいろいろ公共事業の批判をしますから、意味のある公共事業ということで、小学校の耐震化とかこういうことだとなかなか民主党も批判できないというところで、それにちょっと便乗して水道の耐震化というのもあるのかもしれませんが、既存の水道の耐震化も別に否定はしませんが、まだそろっていない、整備されていない地域がやはり優先だというふうに私は思っております。

 大臣から、そういう検討もしていただくということですので、また事務方も本当に一生懸命この点についてはやっていただいて、亀岡市の役所の方も地元の人たちも感謝をしておりますのであれなんですけれども、こういった点は事務方ではどうしても踏み越えられない部分もありますので、そこはぜひひとつ大臣のリーダーシップで御指導をお願いしたいというふうに思います。

 水道の件はこれまでにしまして、もう一つ、同じ地元なんですが、亀岡市と、さらに北の方に行くと南丹市、京丹波町というところがありまして、総じて口丹波という地域であります。

 私も、恥ずかしながら余り障害者対策とかいったことについては今まで勉強してこなかったんですが、ただ、障害者自立支援法については非常に問題意識を持っていた。特に、応益負担という考え方が果たして本当に障害者に当てはまるのか。大臣、これは多分いろいろな委員会でもういろいろ議論されていると思います。

 これは社会保障全体について言えると思うんですが、医療だってそうだと思います。何も好きこのんで病気を、大病をしたり、事故に遭ったりしていない。そこで医療のサービスを受けるのを受益者とみなして、それに相応の負担を求められるという考えであります。ましてや、障害者の方なんか本当に何の自分の責任もないのに、言ってみれば自己責任を求めるような発想が出てきてしまっている。

 これも、恐らく一番悪いのは財務省で、予算を削るために何かいろいろな概念をでっち上げるというか、はっきり言ってゆがめて適用している。これはやはりけしからぬ。私は余りそこにかかわっていなかったんですけれども、そういうことを考えると、やはり地元の障害者の方を見ていると、ちょっとこれは本当に気の毒だと。大臣もそれはよくわかっていることだというふうに思います。

 口丹波の方に、丹波養護学校、京都府立の学校がありまして、ここはなかなか立派なところで、そしてそこの先生方も親御さんたちも非常に感謝をしている。教育については予算も非常に重点的に配分をしていただいているし、何の文句も、まあ何の文句もないことはないかもしれないけれども、非常に満足している。ところが、学校から一歩出ると、極端に国の支援の落差が大きい。そこについてちょっと御質問したいんです。

 一つ目の質問としては、まず、いわゆる障害児の日中一時支援というのがありますよね。放課後にちょっと預けてとか、そういった支援の話です。これについても、実はこの口丹波の地域は非常に広い地域で、隅から隅まで行くと一時間、一時間半ぐらいの非常に広い地域なんですが、受け入れ施設が、これは正確かちょっとわかりませんが、彼らが言うには三カ所しかない。そういう状況で、それで厚生労働省さんとしても、この障害者自立支援法の中でまた見直すということで、こういったことにも力を入れるということはうたってはいるんですけれども、なかなか具体策が見えてこない。

 ですから、いろいろな政策を打っても、やはり受け皿というものがないとだめだ。そして、これは当然お金がかかるし、大変なことだと思うんですが、施設が非常に少ない、こういう地域もほかにもたくさん全国にあると思います。まず、その点についてどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、障害をお持ちの子供さんの放課後の問題とか、あるいは夏休み、春休み等の居場所の問題というのは、我々も御指摘を受けておるところでございます。

 今先生御指摘いただきました日中一時支援事業、こういう事業とともに、放課後の児童デイサービスというようなものもございます。これは、今の仕組みの上では、障害者自立支援法、あるいは十八歳未満の場合には児童福祉法というような体系の中で、法律でもって国が二分の一をちゃんと義務的に負担していくものと、それから、その地域地域で工夫を凝らしていただいて、補助事業でもって創意工夫でやっていただくもの、この組み合わせでやらせていただいております。

 日中一時支援事業といいますのは、地域で、親御さんがいらっしゃらない時間帯とかをお預かりするような、そういう補助事業の一つのものでございます。それから、児童デイサービスといいますのは、もう少し専門的な、療育指導といいますか、基本的動作を訓練してもっと動けるようにするとか、あるいは集団生活へ自閉症の子供さんみたいな方々が対応をしやすくするとか、こういうふうな指導をするような場、これを法定事業としてやっている、こういうものの組み合わせでやらせていただいております。

 いずれもまだまだこれからという、全市町村に十分なものが整備されている状況にないわけでございますけれども、まず日中一時支援事業、お預かりのものにつきましては、地域生活支援事業という補助体系の中で、今全国で千五百八市町村までは実施をいただいております。この口丹波の地域につきましても、ちょっと京都府庁の方に聞きましたら、箇所数はより多くふえてきておるようですが、まだまだこれからであろうかとは思っております。

 それから、児童デイサービス事業の方は、全国で、これは箇所数になりますが千百五十九カ所ということでございまして、放課後あるいは夏休み等々の充実が望まれているところでございます。

 このようなものが両方とも相まって、子供さん方のお預かりあるいは専門的な療育指導ができますように、さらに充実を図ってまいりたいというふうに思っているところでございます。

北神分科員 いろいろな施策をやっておられるという話であります。施設がもう少しあるということで、さらにふやすということも視野に入っているということであると思います。それはそれで、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 あと、私が把握しているこの三カ所の施設も、ちょっと実際に現場に足を運んで話を聞いたんですが、一カ所なんかは三人しか受け入れることができない。だから、施設の数もあるんですが、受け入れる数が非常に少ない。

 そしてその理由は、やはり人材がそろっていない。例えば発達障害の方とか、本当に大変なんですね。私は直接は見ていないですけれども、秘書の話とか聞いていると、本当に大変だ。これは、やはりある程度の訓練を受けている方じゃないと受け入れられない。また、これも地元の方の声なんですけれども、そういう発達障害の事例がやはりふえてきている。その辺はいろいろな因果関係があると思うんですが、ふえているから、こういった方を受け入れるための人材育成というものも非常に大事だというふうに思いますが、この点についてどういう施策を打っているのか、聞きたいと思います。

木倉政府参考人 今御指摘の亀岡市等の事例、府庁の方から少し伺いますと、亀岡市の資料もいただいたんですが、日中一時預かりの場ですと、やはり療育的な専門の場ではないので専門の職員がおらない場合がほとんどですということは、コメントをつけて御紹介をされているように伺っております。それから、今御指摘のように、人数的にもやはり非常に少ない。三人とかの事例もあるようでございます。

 お預かりする場自体も少ないんですが、特に、自閉症をお持ちのような方、発達障害というような方々につきましては、より専門的な療育指導ということが早期から非常に重要だと言われております。こういう方々についての対応ができる人材を我々も育てていきたいということで、今は全国にも発達障害者支援センターというものを都道府県単位あるいは地域単位で設置を進めていただいておりまして、京都府全体の中にも二カ所拠点を既に設置していただいていまして、さらにそれのブランチ的なものもふやしていただくようなことも伺っております。

 この人材につきまして、発達障害者支援センターで御家族の方とかそういう方々にノウハウを研修する場を設ける、あるいは、全国的な指導者につきましては、所沢の方にあります国立秩父学園という場で指導者の養成もする、ノウハウをきちんと伝えていくというふうな事業にも取り組ませていただいているところでございまして、さらにそういう人材をより広く確保する努力を続けていかなければいけないというふうに思っております。

北神分科員 施設の数、そして人材、もう一つは、これも地元で言われているのは、やはり施設のスペースがない。さっきの発達障害、自閉症の方が、これは現実の問題として別の部屋で対応しなければいけない場合もあるわけですよね。それが、今までの施設ではなかなか対応し切れない、空間がないという声もございます。

 いろいろ申し上げております。これは非常にお金がかかることですからすぐ対応することは難しいと思いますが、皆さんも聞いていると思いますけれども、やはりこういう声があるということだけはぜひ認識をいただきたい。

 施設の空間についても、もし何か政策とか考えておられるんだったら教えていただきたいと思います。

木倉政府参考人 こういう障害をお持ちの子供さんの療育の場につきましては、日中一時預かりの場は、いろいろな場所を工夫して御利用いただきながら、公共施設等の空き部屋を御利用いただきながらということでやっていただいておるんですが、障害者自立支援法に基づきます児童デイサービスにつきましては、この十八、十九、二十、それからまた二十年度の補正予算で積み増しをしていただきました自立支援のサービスを充実するための基金、この基金を都道府県に積んで応援をさせていただいております。

 その中で、新しいこういう事業に取り組まれる場合に、増築、改築等をやるということで、一カ所当たり二千万以内の補助の仕組みを基金から出していただいておりまして、これを御利用いただいて少し増築をして、児童デイサービスの専門的な場所を確保するというような事例も出てきております。こういうものを御利用いただくようなこともやりながら、我々も努力をしてまいりたいというふうに思っております。

北神分科員 もう時間もなくなってきましたが、今の話を大臣が聞いて、今度の障害者支援のスキームというのは、市町村あるいは都道府県にある程度任せていく方法と、もう一つは、国としてある程度サービスの給付というものを責務として行う、大きく分けたらそういうことがあると思うんです。どうも、今まで見ていると、割と市町村とかに任せたりしている部分があって、これはいろいろな議論があると思うんですが、言ってみれば、ナショナルミニマムの議論にもつながるんじゃないかというふうに思っております。

 今申し上げたことはたくさんあって、きょうも質問できなかったのは、一つは、日中一時支援で、十八時以降になると無料じゃなくて一時間一千二百円とか三百円かかってしまう。これは、障害者の親で、割と母子家庭とかそういうのも多い、仕事もしなければいけない、非常に苦しい立場に置かれている。ぜひ、そういったことも踏まえながら、最後は財政支援の話になってしまうんですが、やはりこれはナショナルミニマムとしてとらえるべきだと私は思うんです、さっきの応益負担の話じゃないですけれども。

 先ほど子育ての社会化とかそういった話を市村先生とされていましたが、これは本当にしっかり国が最後は責任を持たないといけないというふうに思うんですが、その辺のお考え、決意を教えていただきたいと思います。

舛添国務大臣 まず、障害者の自立を助ける、生活支援をやっていく、これは病院の場合も介護の場合も先ほどの保育の場合もそうですが、やはり現場が主導することが必要だ。霞が関の役人が亀岡市のことはわかりません。ですから、やはり亀岡市が一生懸命やってもらう。ただ、そのときの財源の負担をどうするかに尽きるんだろうと思います。

 ですから、今地方の財政も非常に厳しいところでありますので、そういう中で、今、国の事業としては、児童デイサービス事業というのをやっているんですけれども、これは、国が二分の一、市町村と都道府県であと二分の一つまり四分の一ずつ負担するということで、これを今利用していただいている。今回、さらにこれを充実するような形での自立支援法の一部を改正する法律案を出しているところなのでありますけれども、そこの負担をどれぐらい国がやるかということで、ほとんどすべての私が関与している施策について、都道府県知事との定期的な協議もあるんですけれども、必ずその財源の負担の問題が来る。だから、児童デイサービス事業は国が半分持ちますから、これをさらに充実するような形にしたいというふうに思っています。

 それからもう一つは、亀岡で八時から十八時までは例えば自閉症のお子さんは無料だけれども、そこから先の夜は有料だというときに、社会保障自身が非常に難しいのは、要するにモラルハザード。つまり、なぜ亀岡市がそうしたかというと、それは安易に夜使うという面があって、親がいるんだから親が見てくれればというので、亀岡市もそうせざるを得なかった面もあると思う。だけれども、今度は、本当に困って、夜見てもらわないととても体がもちませんというお母さん方もおられるんですね、自閉症の場合物すごく大変ですから。だから、そこの線引きのようなものが非常に難しい。

 しかし、社会保障というのは、モラルハザードを許しちゃいけないけれども、若干のゆとり、つまり、百人必要だったら百人じゃなくて、生身の体ですから施設の職員にしても風邪を引いて寝込むこともあるので、百人必要だったら百二十人ぐらいのゆとりがある、こういうような社会保障政策を目指したいなと思っていますが、そこは先立つものは金であって、やはり消費税を含めての財源議論をきちんとしないといけないというふうに思っています。

 ですから、ナショナルミニマム、かつて私が学生だったころに一世を風靡したんですね。そのときは、公園の率がどれだとか舗装率がどれだとか、そういう数字で言ってきたけれども、もし今ナショナルミニマムということを言うんだったら、そういうハードの側面じゃなくて、むしろ社会保障の水準のようなものでやるというのは一つの考え方なので、これは党派を超えて社会保障制度を構築するということで、国民が最後に納得すればいい話ですから、負担も含めてこの点も今後議論を進めながら、よりよい制度にしたいと思います。

 そして、いたずらに国と地方が相争うのではなくて、お互いの持っているノウハウを生かし合いながら、そして我々も財政的な負担はできるだけやる。そういうことで、一つのハーモニーというか、そういうハーモナイズされながらやるので、対立の図式ばかりを強調する、それは一つ物事を動かす図式かもしれません、あるところの知事さんが今一生懸命おやりになっていますけれども。だけれども、そういうやり方も政治手法にあるにしても、ハーモナイズさせる、調和させるというやり方で政治を動かした方がむしろ国民にとって迷惑が少ないんじゃないかなという考え方もあるのではないかということを思いながら、またこれは委員と今後とも議論を続けたいと思います。

北神分科員 そのとおりで、私も全く同じ考えであります。

 もう終わりにしますが、本当にいい、前向きな答弁をいただいて、ありがとうございます。口丹波の人たちも地域でそういった支援を受けたいという思いでいっぱいでございますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

谷川主査 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 舛添大臣におかれましては、連日、厚生行政と労働行政、多分、何でこんな省庁再編をしたんだろうというふうに恨まれているのではないか、本当にお気の毒というか、御双肩にかかっているのは大変な大きな使命があるというふうに思っておりますし、また、きょうも大変長い時間になりますが、私が最後ですので、前向きなやりとりができるように、よろしくお願いをしたいと思います。

 まず、地元の話なんですが、兵庫県のタクシー協会の厚生年金基金で、兵庫県乗用自動車厚生年金基金というものが実はかつてございました。御多分に漏れず、急速な従業員の高齢化に伴いまして、これはもうもたないということで、実はもう解散をしたわけでございます。解散に際しまして、何度か厚生労働省にも要望する形で、当時、坂口大臣初めとして、大変な御配慮をいただいて、五年間の解散事業も十年間に延期したりとか、負担を軽くするというさまざまな御努力をいただいてきて、大変感謝をしているわけでございますが、何分、この景気の悪い状況の中で極めて深刻な状況になっております。

 といいますのは、解散したときには約五十社あったんですが、私の記録では二十一社は一括で返済をする、こう決めたわけです。自分たちの会社の負担金にプラス一〇%リスク料みたいなものを乗せて返済したというのが二十一社。残り二十九社は分割で返済をしたということでございますが、タクシー業界ですから、規制緩和があって、競争が激しくなり、景気が悪くなる中で急速に、大変に経営が難しくなってくる。

 実は、この厚生年金基金の返済分というのは大変大きな負担になっていって、ある会社が倒産をしまして、その倒産をした会社の分が、これは厚生年金が国に対する債務ということでありますので、残った会社に負担増としてかぶってくるわけです。これは、最初の一社のうちはそんなに深刻ではありませんでしたが、実はもう二十九社のうち八社倒産をしておりまして、現実にはもうにっちもさっちもいかなくなっている。これは恥ずかしい話なんですが、脱法的に、偽装倒産というにはなかなか難しいんですけれども、偽装倒産みたいな形で、今加盟している厚生年金基金から脱退するために会社をつぶすというようなことを半ば計画しているような会社も実はあるということでございます。

 今の厚生年金保険法では、倒産をしてしまえば、そういう意味ではそこの負担にならなくなるということでありまして、これは非常にモラルハザードが起こっているんですね。まじめに一生懸命やろうとすればするほどどんどん負担がふえるというような構造で、沈むとわかっている泥船に最後まで残る、まじめにやっている方が愚かな結果が出るという大変問題の多い状況になってきているということでございます。

 ですから、まず確認したいんですけれども、仮に分割の返済事業者二十九社すべてが倒産した場合に、いわゆる国に対する債務というのはどう処理されるのか。これは仮定の極端な話というふうに思われるかもしれないけれども、実は相当リアリティーあるんです。多分十社を超えたら、払う限度、何億という金ですから、とてもじゃないけれども、私も地元の一員として、そんなに羽ぶりのいい会社ばかりじゃありませんので、そうせざるを得ないというような状況に追い込まれているのでありまして、まず確認として事務方の皆さんから。

渡辺政府参考人 先生、この問題をかねてよりずっと御指摘いただいておりまして、なかなか現場は御苦労が多いところだと承知しております。

 今御質問の中でも触れられました解散の認可、納付計画の承認は、既に平成十八年一月三十日に行われております。既に三年余り前でございます。

 納付計画は、解散後、社会保険庁、国の年金特会に責任上納めていただかなきゃならない準備金の納付計画でございますが、その計画の中身自身は、事情の変化に応じて変更が可能であるという位置づけですので、この兵庫県乗用自動車厚生年金基金のケースでいいますと、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、設立事業所の倒産が続いたことなどを踏まえて、過去に既に五回計画を変更し、直近では昨年の八月に変更を行っておられるわけでございます。

 その際、当面の厳しい情勢に対応するため、二十年度、二十一年度の納付予定額を減額するとともに、今ポイントだとおっしゃっていただいた倒産した事業所の負担分の返済、これを平成二十二年四月分から、つまり、来年以降に延期するという対応もさせていただきました。

 その中で、この基金につきましては、時々刻々情勢が動いているということで、先月にも、また今月にも、地元の地方厚生局、それから私どもの年金局自身も具体的な個別の相談に応じているということで、実情を把握させていただいております。倒産した事業所の負担分の支払い時期の延期ということは今後ともさらに対応は柔軟にできると考えておりますので、十分御相談に応じながら、究極的には、借金の棒引きという手段というのは法律上認められておりませんものですから、法令の定める範囲、趣旨に照らして、基金の事情を十分勘案した弾力的な対応をして、そうした部分は今急に払えというふうには言わないで管理していくというのが基本の処理だと思っております。

赤羽分科員 今、できる範囲で最大限やっていただいているというのはよく承知しておるんですが、経営者ですから、やはり見通しを立てていると、当然払える限界というのは、何十年もやっている会社ですから、収益がどのくらいかというのは当然出てきまして、突然タクシー業界が今の経済状況の中で売り上げが二倍にも三倍にもなるような状況にはないわけですね。

 ですから、現実には、倒産をさせて全く別の新しい形で申請する。タクシー事業は参入自由になりましたので、向こうは向こうで申請をすると、全く別の形で、経営者はかわって、名前も変われば、実は営業ができるんですね。これは国土交通省との問題でもあるんだけれども。

 ちょっと翻ると、一括事業者については一一〇%という上限が決まっているわけですね。債務というのは、私は思うんですけれども、この人たちも、分割事業者も、自分たちが果たさなきゃいけないというのは、自分たちの負担分プラス一〇%のところまでは責任持ってやりますよと。しかし、それの二倍払えとかということに最終的になったり、それはとてもじゃないけれどもできないし、そんなことは子供に代がわりするつもりもないというような話になったりとか、極めて不幸な状況になっているんです。

 これは、まさに立法府の問題かもしれません。今の法制上は今御答弁になったとおりで、最大限そういう話だと思いますが、私は、本来的に言うと、各社それぞれが、厚生年金の全体ということではなくて、参加している会社の負担する上限額、限度額というのはおのずとあってもいいのではないかと。

 ですから、これはやはり法改正をしなければできないことですけれども、そういうことを少し視野に入れて、全く今の法制上はできませんというような話で、とりあえずの当面の手は打っていただいておりますが、本当に、偽装倒産じゃないんだけれども、嫌な言い方ですけれども、ある意味では合法的に、脱法的な行為で二十九社全部脱退する可能性もあるから、あえて、何かおどしみたいな話に聞こえるかもしれないけれども、そうじゃなくて、そういう心配があって、そういうことをすることは本意じゃないんですね、まじめなタクシー会社は。自分たちの一一〇%、最低でもちゃんと払わなきゃいけない。これまで厚生労働省には大変お世話になっているということは皆さん思っているんですが、このことについて、大臣、さまざまな難問を抱えている舛添大臣にまた相当な無理難題を突きつけるのは私の本意ではないんですけれども、何とか、この問題の所在をまず認識していただいて、ぜひいい知恵を出せるようにお願いをしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 恐らく、複数の会社から成るこういう基金というものについて、今のような状況が起こることを想定していなかったと思います。ですから、基本的に、平穏無事に各社がずっと業績を伸ばしていく、一気にこれだけ倒産するということは考えていない。だから、せめて三十社あって一社、それは三十でみんなで負担すればいいだろう。だから、国庫に対する債務負担行為というものをどういう形で分担するかの話になる。

 国庫の側から見ると、では、仮におっしゃるように上限を決めてしまったら、取りっぱぐれるものがある。もっと言うと、今度は、倒産するというときに清算事業をやる、そのときに残された資産を売却する、その売却益の中から取るということは考え得るわけです、残っているかどうかは別として。

 だから、その形で我々は債権を確保するということはできるので、こういう基金の解散のケースが全国各地で起こったらとても大変なことになって、最終的には、年金やいろいろな掛金を払っている国民全体の負担になってしまうわけですから、それはよく考えないといけないですけれども、そういう問題があるというのは認識いたしましたので、ちょっと検討し、いろいろ考えてみたいと思います。

赤羽分科員 大変な難題を突きつけたわけでございますけれども、ぜひ実態をよく見ていただいて、モラルハザードがなるべく起きないように決着をつけていただきたいと思うわけでございます。

 ちょっと順番を飛ばして、外国人看護師、介護士の受け入れについて。一番最後に通告したことですけれども、このことについて前回質問を、大臣はいらっしゃらなかった、副大臣に実はいたしました。私の結論は、外国人の看護師、介護士、厚生労働省として本当に受け入れる気はあるのかないのか、経済連携協定でなっちゃったからとりあえずやろうということなのか、本当に将来的に高齢社会に対応するための人材として前向きに受け入れていこうかどうかということを、私はちょっと厚労省の考え方に対して懸念をしていたわけでありまして、その質問をしたわけでございます。

 たまたま、きのう私、地元で会合をしたときに、私の大学の先輩の女性の、大先輩で高齢者の方なんですが、ちょうど手紙をもらいまして、この前NHKで外国人介護士の、多分インドネシアの受け入れの番組を見た、来日した若い青年たちが連日ハードな研修と日本語の勉強をしていた、しかし、テストの機会は一度だけで、落ちたら帰国なんだ、まるで定着させたくないかのような制度なんじゃないかというふうに疑いたくなりましたと書いてあるんですね。こういったハードルの高さ、これでは、今後高齢社会の助けになると期待していたのに、こういった制度をパスできる人たちが本当に何人いるのかと心配になりますということを、たまたまなんですけれども手紙をいただきましたので、ちょうどきょう質問する予定だったので、持ってまいりました。

 やはり、いろいろな議論はあるかもしれませんが、私は、フィリピンの介護士、看護師、このEPAのことで実はフィリピンにも出張して、世界じゅうで大変高い評価を得ている。私、全国の都道府県の中心病院には英語ができる介護士、看護師さんが少なからずいても全然問題ではない、そうあるべきだというふうに思っておりますし、そこはもう少し前向きにした方がいいのではないかと。

 地元の医師会の先生たちも、民間病院ですと、やはり今、医療スタッフの確保というのが医師不足と同時に大変な問題になっている、本当にこれを定着させる気があるのかなということをちょっと厚労省に確認してくれなんということで前回質問をしたわけなんですが、調べてみると、日本語研修も予算も実は経済産業省と外務省の予算で、厚労省の予算は使われていない。どういうあれかよくわかりませんし、日本で仕事をしているからといって、日本の国家試験を同じように受けさせないと従事できないというのは、考え方が余りにも、少し島国根性過ぎると言っては言い過ぎかもしれませんが、そうじゃないのかな。経済連携協定自体、もうちょっと違う精神なんじゃないかなと思いますし、この経済連携協定を活用して、日本の高齢社会に対する医療もしくは医療スタッフのあり方ということを前向きにとらえるべきじゃないか、こう考えているんですが、どうでしょうか。

舛添国務大臣 これは実は、この国の形をどうするかという議論を国民的にしないとこういうことになるんです。

 というのは、今委員が御疑問のように、今、日系人、ブラジル人、ペルー人その他、帰国させようかどうしようか、もう景気が悪いから、こういう状況になっているでしょう。あれはどういうステータスで入ったかというときに、身分に基づくステータスなんですね。そして、今度一たん帰国したら、同じ身分に基づくステータスで帰ってきちゃいけません。それだけを外国人が見たら、ていのいい外国人追い出しをやっているんじゃないか、ひどい国だというむしろ評判なんです。こっちは一生懸命、帰る切符の援助までやっているのにそう見られるのはなぜかといったら、外国人をこの国はどう受け入れられるかという本格的な議論をやっていない。

 これは我々政治家全部の責任であって、我が党の自民党の中でも、もうとにかく外国人なんて来ちゃいけないというのが片一方にあり、議論にならないんですよ。だけれども、どうすればこの国がよくなるか。それは古代を考えればいろいろなところから来てこの国が成り立ったわけですから。そういうところまでさかのぼる必要もありませんが、私は若いころからずっとヨーロッパにいたので、ヨーロッパは、発端は人手不足で外国人を入れました。今、第三世代まで来ています。さまざまな移民をめぐる問題が起こって、犯罪から何から社会の問題になっている。しかしながら、そういう試練を乗り越えて、異質の文化を入れることによって国が強くなる、そしてやはりEUのような大きな統合体ができる。

 日本もそういうことを考える必要があって、ノーベル賞を四人とって、一人の方はアメリカの国籍を取っておられます。そこがアメリカの強みなんです。では、我が日本で、外国から来た方で日本人に帰化して、その方が、どうですか、ノーベル賞をとられますかと。これは、野球でも何でもどんどん外へ出て活躍している、それで中に入れるときにさまざまな規制がある。いろいろなマイナスもあったり、いろいろな負担はあったり、いろいろヨーロッパ諸国が経験したような負担はあるけれども、入れるんだという決断をするならするできちっとやる。ずっと中途半端で来ているんです。

 ですから、こういう問題についても、悪い言い方をすれば、人手不足の解消、しかし定着してもらっちゃ困るから、追い出すための政策を考えている、外から見たらそう見えますよ。そうじゃなくて、それは頭が下がりますよ、インドネシアから来て、あれだけ一生懸命勉強して、そして日本語も学んで、日本人がやりたくない、日本人の若い人がやらないことを一生懸命たどたどしい言葉でやっているわけでしょう。そういう人たちを受け入れるだけの寛容さと文化的な強さというのがあるのかどうなのか。

 私は、こういうときこそいい機会ですからきちんと議論しないと、それをやるかどうかで、日本国が世界から尊敬される国になるかどうか、人手が足りないときだけいろいろな理由にかこつけて人を入れて、余ったら追い出す、これでは国際社会でやっていけないと思いますから、ぜひきちんと議論をしたい。

 だから、一厚労省の問題じゃありません。厚労省の役人は、全体の政治のかじ取りの中で答えが出ないんだから、その中でやろうとすればこういうことにしかならないんですよ。日系のブラジル人にしてもそうです。だから、我々政治家がやはりここで決断してきちんと議論すべきだと思っています。在日の人たちの問題だって片づいていないじゃないですか。そういうことを、私が偉そうに言うことではありませんが、ぜひ議論をして前に進めたいと思っております。

赤羽分科員 全く私も個人的な意見としては大臣と同じですが、そこにたどり着くまでのさまざまなハードルがあるということも十分承知しておりますので、全く大臣と同じように、しっかりとした議論を、将来を見据えて、我が国がどうあるべきだということを、特に、この外国人看護師、介護士の問題もぜひ厚労省の中でも議論していただきたい、こう強く思います。

 ちょっともう時間がないので、就職問題について。私はずっとこだわりがあるので。

 まず、昨年来の内定取り消し問題の中で、厚労省がやったさまざまな中で、実名を公表する、こういうことが一月十九日ですか、決定をいたしまして、三月二十五日に二社公表した。条件が幾つかありました。

 しかし、これはよく見ますと、四百四社内定取り消しをした、つぶれたのが六十七社ですから、残り三百三十七社あるんですが、そのうち二社しか公表しなかったということは、私は、残りの三百三十五社は内定取り消しやむを得なかったというような判断を政府がしたというふうにとられるんではないかということをちょっと心配しております。

 それで、私は、時間がかかって、発表までにいろいろな検討があったんだろうと思うんですが、結局タイミングがやはり遅かったんじゃないかと。

 というのは、この次、きょうの本題なんですが、三月の最終日、まさに四月一日の入社式の直前に、これは内定取り消しと報道していますけれども、入社取り消しとか、雇用契約の一方的な変更、破棄というような企業が何社も出たわけですね。ですから、実名を出すぞと言って二社出した。これは、結局そうなんだ、相当なことをやったって役所はそんな公表に踏み込まない、こういう結果になってしまったんではないかというふうにちょっと思うんですが、その点について、どのような評価というかな、大臣、よければ。

舛添国務大臣 まず、内定取り消しをやるような会社を公表するというのは、基本的に抑止力、そうならないためにやっているので、結果的にそういうことをやったのが少なくなれば、それは大変結構だということと、公表する時期というのは、次年度の就職活動が始まるときに、この会社はこんなことをやった会社ですよ、ちょっとひどいですよという、抑止力とともに、そういう情報提供をやりたいというのが主なんですね。

 あらゆる抑止政策というのは、核兵器による抑止だって同じでしょうけれども、核戦争が起こっちゃだめなので、抑止のためにやっているので、起こらなかったことがいいことなので、手心を加えてこういうことをやったということではないというふうに御理解いただければというふうに思っています。

 それと、倒産してしまえばもう内定取り消しもない、それはだめなわけですから、そういう学生もおられる、それから、まさに内定取り消しに遭った学生もいる、こういう人たちをいかにして救って、そして一刻も早く再就職させるかというのが、これが一番最優先しないといけないというように思っております。

赤羽分科員 それはおっしゃるとおりなんですが、四百四事業者で、つぶれた六十七社を除いた三百四十社余りの会社が、去年内定取り消しをした事業者が、新年度になったからといって新規募集していいものかどうか。するなら、当然、内定を取り消した学生を優先的にあっせんするというか、受け入れるというのが、企業として道義的な責任があると私は思うんですが、そういった調査はされていますか。

太田政府参考人 まず最初に、公表案件でありますけれども、二社だけ公表したわけでございますけれども、残りの取り消し事案につきましても、今、内容を早急に確認中でありますので、公表となるものにつきましては、四月中にも追加分として公表させていただきます。

 それから、お尋ねの、内定取り消しをした企業で新年度の募集をしている企業があるかどうかということでございますけれども、もしそういうことがあるとしたら大変問題でございますので、事例が確認された場合には、早急に、ハローワークにおいて、この内定取り消しの撤回、または内定取り消しの対象となった学生等の雇用の確保について指導してまいりたいと考えております。

 今、具体的な状況としましては、一社新聞報道等がございましたので、現在、ハローワークにおいて確認中でございまして、もしそういうことがあった場合には、必要な指導を行ってまいりたいと考えているところでございます。

赤羽分科員 それで、次に入社取り消しの方ですね。契約条件の一方的な変更、四月一日直前のドタキャンというものですね。これは私は同じ次元で取り扱っちゃいけないと思うんですね。これは、内定の取り消しというような話じゃなくて、学生はもう大学を卒業してしまっている、いよいよあしたから行こうと思ったときに、電話がかかってきて、来なくていいとか、技術系で採ったけれども事務系なら採ってやるけれどもとか、半年間家で休養しろ、六割は給料払うからとか。これは相当私は悪質だと思うんですよ。このことについて、もう新聞報道でも何社も出ております。

 こういったことについても、まず、そういった会社については厳然と対処してほしいというのが一点と、もう一つ、学生については、本当はもう契約なんですから五分五分の条件なんだけれども、企業の方が圧倒的に強いので、どうしても泣き寝入りしている学生が多いと思うんです。

 これは、今、労働審判というような簡単な手続もありますし、先日、福岡地裁の労働審判で七十五万円の賠償請求という結論も出た。それは、企業側が抗告して民事訴訟に移るという話になったと思いますが、やはりそういった手段があるんだということもぜひ伝えていただきたいということをお願いしたいんですが、どうですか。

太田政府参考人 まず、入社式直前での内定取り消しは、おっしゃるとおり、あってはならないものでございます。ですから、こういうものを確認された場合には、直ちに、ハローワークにおきまして、企業名の公表制度に基づきまして、これを極力回避するよう指導を行うとともに、対象となった学生等の希望も踏まえて支援をしっかりやっていきたいと考えております。

 それからまた、訴訟関係の支援でございますけれども、これは、学生が例えば個別労働紛争解決制度による処理を求めるという御希望がある場合には、各都道府県労働局で設置されております総合労働コーナーを御紹介しておりますし、さらに、その相談コーナーで、相談者が希望する場合には、裁判所なり法テラスなり、弁護士会等の訴訟関係の情報も提供して、しっかりと支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

赤羽分科員 ぜひ、やはり青年の第二の人生というか、社会人のスタートをどうフォローするかというのが一番大事だ、先ほどの大臣の答弁のとおりだと思いますので、よろしくお願いしたい。

 最後に、もう時間がないので、大事なことなんですが、ドタキャンされた人たちというのは、就職活動しなきゃいけないんですね、これから新年度で。実は、私も随分、一部上場とか二部上場の募集要項を見ましたら、来年の三月卒業予定者、新規卒業者の制限を加えているところが相当多いんですよ。これは調べてもらったら、千人以上のところでやはり半数近い、半数前後が新卒制限というのをかけているんです。

 私は、これはおかしな話だと正直思いまして、雇用対策法で年齢制限は禁止したはずなんですよね。年齢制限禁止しながら実は新卒制限をかけているということは、実質的に年齢制限がそこにひっかかっているんですよ。三十歳になって四年生になっている人というのはたまにはいるかもしれませんけれども、本来、年齢制限を外したという趣旨を、各企業は年齢制限を設けていませんと言いながら実は新規卒業という制限をかけていて、骨抜きにしている。これは大臣指針も出ているんですよね、既卒者を排除しないようにと。指針を出していながら、大手企業の大半というか半数ぐらいが守られていないというのは私は大変問題だと思います。

 年齢制限も、実は除外の例があって、ちょっときょうは持ってきていないんですけれども、だれがどう考えてもこれは年齢制限だろうと思うようなことも認められているというような実例を事務方の人は持っていると思いますので、ぜひ見ていただきたいんだけれども、具体的には、ドタキャンされ、もう卒業してしまった。昨年十二月ぐらいのときの内定取り消しですと、大学側がもう一年残してくれるみたいな形で、来年新卒として就職活動ができる、こういったサポートもあったんだけれども、四月一日寸前にドタキャンされた人たちはもう新卒じゃなくなっているんですね。

 その人たちを救済するという、相当大きな人数があるわけですから、私たちは、雇用対策法の第七条かな、年齢制限のところに、及び新規卒、既卒を問わないものとするという法改正を、勝手にしていいものなら本当にするべきだというふうに思いますが、いろいろな審議会もあるんでしょうし、プロセスも踏まなければいけないことはよく承知していますが、このままいくと入り口を閉ざしてしまうわけです。

 企業の相当暴力的な雇用契約の変更で、既卒で就職ができない。そうすると、私たち、本当にそのままいくと若年フリーターの形成をしてしまうという心配もありますし、来年は特に就職は厳しいと思いますので、ぜひ門戸ぐらいはあける。採る採らないまでは、当然それは会社の採用活動の自由ですから、まず入り口は閉ざすようにしないということを、大臣指針を改めて強く出すですとか、法改正も検討させるですとか、そういったことをぜひ配慮するべき。それは、大臣先ほど御答弁いただいたように、青年のこれからの人生を十分サポートするという意味では一番大事なやらなければいけないことだというふうに考えますが、最後、御答弁をいただいて、私の質問を終わりにします。

舛添国務大臣 既卒者に対しても応募資格を開放しなさいというような告示も出しましたし、それから昨年の六月には直接私は経団連にもお願いに行きました。

 これを法的に義務化することは、いろいろな憲法上の制約や何かあるし、難しいと思います。それぞれのやはり私企業が自由な判断でやる面にまで介入することになります。

 ただ、やはり日本社会全体の改革の中で、役所もそうですけれども、何年卒で、何年年次だと、全部年功序列で来ている、だけれども、公務員制度の改革もそうですが、要するに、何年卒であろうと、本人の能力なんですね。ですから、こういうときに、やはりピンチをチャンスにするという意味では、要するに、新卒者よりも一年前に卒業した学生の方がはるかに能力があって、はるかにすぐ使い物になる。我々はいろいろな職業訓練も含めてこれはサポートしますので、そういう状況をつくり出していくことによって変えていくこともできると思いますので、まずは内定取り消しのようなことをやるなということを徹底的に指導する、その上で、内定取り消しされた人を、いや、そういう学生さんはすぐ採ってやるよという方は、これは百万の補助金を与えるというようなこともやっています。

 しかし、最終的には、能力のある人たちをいかに訓練するか、これはもう大学教育を含めての大きな問題なんで、こういう百年に一度と言われているような大変な事態であるからこそ、今の新卒者のみを企業が採るということのマイナス面のようなこと、そしてそれをプラスに変えていくためにどういう施策をやらぬといかぬか、これは十分検討して、未来のある若者たちの夢を閉ざさないように努力をしたいと思います。

赤羽分科員 どうもありがとうございました。

 これもやはり国のあり方というか企業のあり方が問われる大きな問題だというふうに思っております。

 ただ、先ほど憲法の問題に触れると言われましたが、かつては男女差別とか年齢差別もあったわけですね。これが男女雇用均等法とかいろいろなことで変わって、女性の雇用条件は劇的に変化した。ですから、私は、やはり年齢制限を法改正しておきながら、新規卒と既卒のところに制限を加えることが憲法にさわるというのはちょっと私個人として納得できないので、ぜひその点も前向きに検討していただきたいと思うわけでございます。

 ありがとうございます。

谷川主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時四分散会


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