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第1号 平成14年4月8日(月曜日)

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本分科会は平成十四年三月二十六日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
四月五日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      土屋 品子君    中川 秀直君
      御法川英文君    武藤 嘉文君
      森岡 正宏君    平野 博文君
      山田 敏雅君    山口わか子君
      中村喜四郎君
四月五日
 御法川英文君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年四月八日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 御法川英文君
      土屋 品子君    中川 秀直君
      中野  清君    森岡 正宏君
      武正 公一君    中村 哲治君
      平野 博文君    山田 敏雅君
      山花 郁夫君    原  陽子君
      山口わか子君    中村喜四郎君
   兼務 石井 紘基君 兼務 木下  厚君
   兼務 後藤  斎君 兼務 細野 豪志君
   兼務 上田  勇君 兼務 一川 保夫君
   兼務 塩田  晋君 兼務 小沢 和秋君
   兼務 春名 直章君
    …………………………………
   国土交通大臣       扇  千景君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   国土交通副大臣      月原 茂皓君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   会計検査院事務総局第三局
   長            白石 博之君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (総務省大臣官房審議官) 藤井 昭夫君
   政府参考人
   (公正取引委員会審査局長
   )            上杉 秋則君
   政府参考人
   (外務省大臣官房外務報道
   官)           服部 則夫君
   政府参考人
   (中小企業庁事業環境部長
   )            久郷 達也君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 風岡 典之君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局長)         澤井 英一君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  大石 久和君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   政府参考人
   (住宅金融公庫総裁)   望月 薫雄君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   参考人
   (都市基盤整備公団理事) 中臣敬治郎君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
四月八日
 辞任         補欠選任
  武藤 嘉文君     中野  清君
  平野 博文君     武正 公一君
  山田 敏雅君     永田 寿康君
  山口わか子君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  中野  清君     武藤 嘉文君
  武正 公一君     中村 哲治君
  永田 寿康君     山花 郁夫君
  阿部 知子君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     平野 博文君
  山花 郁夫君     山田 敏雅君
  北川れん子君     金子 哲夫君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 哲夫君     原  陽子君
同日
 辞任         補欠選任
  原  陽子君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  北川れん子君     植田 至紀君
同日
 辞任         補欠選任
  植田 至紀君     重野 安正君
同日
 辞任         補欠選任
  重野 安正君     山口わか子君
同日
 第一分科員石井紘基君、木下厚君、第二分科員細野豪志君、一川保夫君、塩田晋君、第三分科員後藤斎君、上田勇君、小沢和秋君及び春名直章君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔総理府(国土庁)、運輸省、建設省所管及び住宅金融公庫〕


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     ――――◇―――――
御法川主査 これより決算行政監視委員会第四分科会を開会いたします。
 本分科会の主査を務めることになりました御法川英文でございます。よろしくお願いいたします。
 本分科会は、総理府所管中北海道開発庁、北海道東北開発公庫、総理府所管中国土庁、法務省所管、運輸省所管、建設省所管及び住宅金融公庫についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたしております。
 平成十年度決算外二件及び平成十一年度決算外二件中、本日は、総理府所管中国土庁、建設省所管、住宅金融公庫及び運輸省所管について審査を行います。
 これより総理府所管中国土庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 おはようございます。
 国土庁の平成十年度歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 平成十年度、支出済み歳出額は三千六百六十四億六千九百万円余となっております。
 引き続き、国土庁の平成十一年度歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 平成十一年度の支出済み歳出額は四千六百三十一億二千百万円余となっております。
 なお、詳細につきましては、お手元に配付しました平成十年度決算概要説明書及び平成十一年度決算概要説明書をごらんいただきたいと存じます。
 何とぞ御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
御法川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院白石第三局長。
白石会計検査院当局者 平成十年度国土庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続きまして、平成十一年度国土庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上でございます。
御法川主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
御法川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
御法川主査 以上をもちまして総理府所管中国土庁の説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、総理府所管中国土庁については終了いたしました。
    ―――――――――――――
御法川主査 これより建設省所管、住宅金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 建設省所管の平成十年度歳入歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計につきまして申し上げます。
 収納済み歳出額は九百三十一億六千五百万円余、支出済み歳出額は八兆三千三百二十二億九千三百万円余。
 次に、特別会計について申し上げます。
 建設省所管の道路整備、治水、都市開発資金融通及び大蔵省と共管の特定国有財産整備の四特別会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳出額は八兆三千九百七十八億五千七百万円余、支出済み歳出額は七兆六千百三億九千八百万円余となっております。
 引き続き、建設省所管の平成十一年度歳入歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計につきまして申し上げます。
 収納済み歳入額は六百八十億九千七百万円余、支出済み歳出額は八兆三千九十三億六百万円余。
 次に、特別会計について申し上げます。
 建設省所管の道路整備、治水、都市開発資金融通及び大蔵省と共管の特定国有財産整備の四特別会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は八兆五千二百二十七億二千二百万円余、支出済み歳出額は七兆七千三百四十七億七千五百万円余となっております。
 なお、詳細につきましては、お手元に配付いたしました平成十年度決算概要説明書及び平成十一年度決算概要説明書をごらんいただきたいと存じます。
 何とぞよろしく御審議のほど、お願い申し上げます。
御法川主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院白石第三局長。
白石会計検査院当局者 平成十年度建設省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしたものは、不当事項九件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号二一〇号は、道路災害復旧事業におきまして、施工が設計と相違していたため、ブロック積み護岸工事等が工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号二一一号は、公営住宅整備事業において、補助金の交付額の算定が適切でなかったため、補助金が過大に交付されているものであります。
 検査報告番号二一二号は、公共下水道改築事業において、補助率の適用を誤ったため、補助金が過大となっているものであります。
 検査報告番号二一三号は、公共下水道事業において、安全な施工を確保するため義務づけられた土どめ工が施工されていなかったものであります。
 検査報告番号二一四号は、道路改良事業において、施工が設計と相違していたため、橋脚の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号二一五号は、道路改良事業において、施工が設計と相違していたため、路面の明るさが照明の基準を満たしていないものであります。
 検査報告番号二一六号は、公共下水道事業において、土地取得費の算定を誤ったため、補助金が過大に交付されているものであります。
 検査報告番号二一七号は、公営住宅整備事業において、補助金の交付額の算定が適切でなかったため、補助金が過大に交付されているものであります。
 検査報告番号二一八号は、道路改良事業において、土砂の掘削運搬費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定に関するもので、建築物の設計業務に要する費用につきまして、その類別を美術館、博物館等が属する第三類とするなどとしておりましたが、その多くは第三類ほど複雑な設計を要しない第二類に該当するものであるなどの事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、歩道の車両乗り入れ部における、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行の確保に関するもので、歩道の整備工事におきまして整備した車両乗り入れ部の半数以上が横断勾配二%の平たん部分が幅一メートル以上確保されていない構造となっており、車いす利用者等の通行に支障が生ずるおそれがあるものとなっておりました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。
 その三は、下水道整備事業における水道管等の移設補償費の算定に関するもので、その算定に当たり、既存の水道管等の財産価値の減耗分を控除していなかったなどのため、補助対象経費が過大となっていると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
 引き続きまして、平成十一年度建設省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号二三〇号は、道路改良事業において、人工張り芝工の施工が粗雑であったため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号二三一号は、公営住宅建設事業において、補助金の交付額の算定が適切でなかったため、補助金が過大に交付されているものであります。
 検査報告番号二三二号は、道路災害復旧事業において、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号二三三号から二三五号の三件は、街路事業において、設計が適切でなかったため、橋台、橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号二三六号は、道路災害防除事業において、ポケット式落石防止網工の施工が粗雑であったため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号二三七号は、道路改良事業において、のり面工の中詰め工費等の積算を誤ったため、工事費が割高になっているものであります。
 検査報告番号二三八号は、準用河川改修事業において、ブロック積み護岸の施工が粗雑であったため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号二三九号は、公共下水道事業において、設計が適切でなかったため、放流ポンプ施設の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、公営住宅家賃対策補助金に係る近傍住宅家賃の算定に関するもので、この算定に当たって、容積率等の取り扱いや共同施設の範囲を通達等で明確にしていなかったことから、容積率の算出が誤っているなど、本件補助制度の執行上適切でないと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、土地開発公社等が先行取得した土地を事業主体が取得する場合の国庫補助基本額の算定に関するもので、この算定におきまして、利子支払い額の限度を定めた限度利率等の趣旨が明確に示されていなかったことなどにより、国庫補助基本額が過大になっていると認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
 引き続きまして、住宅金融公庫について申し上げます。
 平成十年度住宅金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度住宅金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。
 これは、宅地造成資金の貸し付けに係る再申し込みの取り扱いに関するものであります。
 住宅金融公庫では、宅地造成資金の貸し付けに係る再申し込みの取り扱いにおいて、宅地造成事業者が既に交付された資金を含めて再申し込みを繰り返して行うことにより、実質的に貸付金利の大幅な引き下げを受けることとなるなど、著しく有利な貸し付け条件の変更をもたらす結果となっておりました。
 したがって、このような再申し込みの繰り返しを防止するため、宅地造成資金の貸し付けに係る再申し込みの取り扱いの制度を抜本的に見直す要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、住宅金融公庫では、十二年十月に各支店に対して通牒を発し、宅地造成資金の貸し付けに係る再申し込みの取り扱いを廃止する処置を講じたものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
御法川主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 平成十年度決算における会計検査院の御指摘に対して建設省のとった措置について御説明を申し上げます。
 地方公共団体等が施行する国庫補助事業につきましては、その適正な執行を図るように常に指導しているところでございますけれども、平成十年度の決算検査報告におきまして、工事の施工が設計と相違しているものなど、御指摘を受ける事態を生じましたことは、まことに遺憾でございます。
 御指摘を受けました事項につきましては、国庫補助金を返還させ、または事業の目的を達成するよう手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであり、さらに指摘に係る補助事業者に対しまして、関係法令の遵守、設計審査の徹底、施工の厳正な監督、検査の実施等になお一層努めるよう通達を発するなど、注意を喚起したところでございます。
 今後とも、このような御指摘を受けることのないよう指導を一層徹底し、事業の適正かつ効率的な執行を図ってまいる所存でございます。
 引き続きまして、平成十一年度決算における会計検査院の御指摘に対して建設省のとった措置について御説明申し上げます。
 地方公共団体等が施行する国庫補助事業につきましては、その適正な執行を図るよう常に指導しているところでございますが、平成十一年度の決算検査報告におきまして、工事の設計が適切でないものなど、御指摘を受ける事態を生じましたことは、まことに遺憾でございます。
 御指摘を受けました事項につきましては、国庫補助金を返還させ、または事業の目的を達成するよう手直し工事を施工させる措置を講じたところであり、さらに指摘に係る補助事業者に対しましては、関係法令の遵守、設計審査の徹底、施工の厳正な監督、検査の実施等になお一層努めるよう通達を発するなど、注意を喚起したところでございます。
 今後とも、このような御指摘を受けることのないよう指導を一層徹底し、事業の適正かつ効率的な執行を図ってまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
御法川主査 次に、望月住宅金融公庫総裁。
望月政府参考人 平成十一年度の決算検査報告におきまして、処置済み事項として掲載されております宅地造成資金の貸し付けに係る再申し込みの取り扱いにつきましては、御指摘の趣旨を踏まえて所要の措置を講じたところであります。
 今後とも、住宅金融公庫業務の適切な運営に努めてまいる所存であります。
御法川主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
御法川主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
御法川主査 以上をもちまして建設省所管、住宅金融公庫の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
御法川主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井紘基君。
石井(紘)分科員 御苦労さまでございます。住宅金融公庫について、私、質問をさせていただきます。
 政府の金融事業というものの中で、特に住宅金融公庫だけが特殊法人の改革の対象になったわけでございますが、これは実は政府の金融事業の大規模化ということが問題なんであって、その中で、ただ住宅金融公庫だけが改革の対象になった。私は、公庫が改革されることはいいんですが、そういう意味では非常に不満なんですけれども。
 この改革の趣旨、何のために住宅金融公庫を改革するのかということについてもう一度振り返ってみたいと思いますので、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
三沢政府参考人 住宅金融公庫につきまして、今先生御指摘のように、昨年の特殊法人の整理合理化計画の中で、三点ほどございますが、一つは、住宅金融公庫については五年以内に廃止する。二番目に、民間住宅ローンの証券化支援に係る業務については、住宅金融公庫が先行してこれを行うとともに、公庫の廃止の際、これを行う新たな独立行政法人を設置する。それから、融資業務については、民間金融機関が円滑に業務を行っているかどうかを勘案し最終決定するという方針が示されました。
 この基本的な考え方でございますけれども、住宅ローンの中でも、民間でできることは民間にゆだねていくということが基本原則だろう。そういう中で見ますと、現在、いわゆる長期固定の住宅ローンというのは、民間においては供給されがたい状況にあるということはございますけれども、ただ、これにつきましても、証券化支援ということを通じまして民間住宅ローンの長期固定のローンを伸ばしていくという方向性で、もしこれが伸びていけば、公庫の直接融資というのはそれに応じて段階的に縮小していくべきであろうという観点で、基本的な考え方は、民間にできることは民間にゆだねるという観点からこういう方針が示されたというふうに理解しています。
石井(紘)分科員 民間でできることは民間でとおっしゃいますけれども、その言葉は実はこれまでもう十年も二十年もずっと言われてきたことなんですね。そうじゃありませんか。今まで公庫は、なぜあなたたち、やっているんですかというふうに聞きますと、民間でできないからやっているんです、こういうふうに言ってきませんでしたか。ちょっと答えてください。
三沢政府参考人 おっしゃるとおり、今までの住宅ローンを過去にさかのぼりますと、公庫の融資の目的でございます長期固定の住宅ローンというのは、現実に民間において供給されていなかったということは事実でございます。そういう意味で、今まで公庫が住宅ローンの融資を行ってきたわけでございます。
 ただ、ただいま申し上げましたように、今後の問題として、これから証券化支援というのを始めまして、それに応じて証券市場が成熟するに伴って、民間においてもそういう長期固定のローンを供給するような条件がだんだん整備されていけば民間の住宅ローンも伸びていくだろう、こういう前提のもとに、今回、こういう方針が示されたという理解でございます。
石井(紘)分科員 それは大分違うんだと私は思いますよ。
 というのは、住宅金融公庫は廃止するということを決めたわけでしょう。証券化というのはまだこれからやろうかどうかという話でしょう。それは論理的にもおかしいのですね。まだやっていないことを、やるから、そうすれば民間にもできるようになる。それは将来のことなのであって、今、住宅金融公庫は廃止になったわけですから、それじゃ説明がつかない。
 そうではなくて、なぜ住宅金融公庫が廃止になったかということは、今まで民間でできることは民間でと言ってきたことが実は間違いだったんだ、民間にやらせなきゃならないことを、政府が法律をつくって予算措置をして、そしてやってきちゃったから、民間でできなくなっちゃったんだ、民間でできない状態をつくっておいて、政府でなければできないから政府がやるんだということでやってきたところに間違いがあるんだということなんですよ。
 こういう金融事業、その他の投資事業もそうですが、お金を借りてきて投資をする、そしてそれを回収して返済する、こういう投資事業というものは、経済がやることなんです。行政がやることじゃないのです、基本的に。
 だから、そこを率直に認めないと、この特殊法人改革というのは、大臣、スタートしていかないのですよ。こういうあいまいな形でやりますと、名称は特殊法人であれ独立行政法人であれ、必ず実体はそのまま残っていくのです。必ずそうなるのです。そこのところをはっきりしないとだめですよ。
 長期固定のローンというけれども、長期固定のローンは今まで全部失敗してきたじゃありませんか、政府がやってきたのは。その都度特別損失を出して、何回出しましたか、特別損失を。そして、膨大な特別損失をずっと昨年度まで処理し続けてきたじゃないですか。政府の交付金というものを新たにつくって、補給金以外に交付金というものを、莫大なものを設定して、そしてずっと、基本的には昨年よりことしの方が、ことしより来年の方がたくさんの金をつぎ込んで、ずっとそうやってやってきたんじゃありませんか。そんなものは、市場がやっているんじゃないのだから、成り立たないのですよ。市場ではそんな二十年も三十年もの固定の金利なんということは成り立つことじゃないのですよ。
 そういうことをいかにも経済的に成り立つかのごとくごまかして、そして、これまで住宅金融公庫というのを無理やり存続させてきた。その結果、戦後つくられた全住宅の三分の一以上もの融資を、ローンを、ひとり政府の機関であるところの住宅金融公庫が独占してきたということが起こって、そして、これは経済、金融に対しても大きな市場のデメリット、市場に対してこれは大きな打撃を与えてきたわけですよ。
 今や金融そのものが、日本経済の中の金融部門そのものがにっちもさっちもいかなくなった。そこで、政府系の金融を見直そうじゃないかと。
 私が計算したところでは、この間、本にも書いて出しましたけれども、民間の貸出高、サラ金も含めた全金融機関の貸出高の総額は五百二十・四兆円です。それに対して、公的金融機関、政府系金融機関の全貸出高は六百四十八・六兆円です。これは全部政府にいろいろな資料を出していただいて、それを集計したものですよ。
 こういう状態になっているから、日本の金融が不良債権処理だなんて一生懸命やったって、あんなものは飛行機が下へ向かって一生懸命エンジンを吹かすようなものですよ。市場が破壊されているんだから、利子はつかないし、金融機関はこういう状態だからですよ。全部政府系の金融機関が仕事をやっちゃって、経済を壊している。市場のものを奪って、市場を壊してしまっている、市場経済じゃなくしてしまっているんです。日本は市場経済の国じゃなくなったんですよ。そういう状態の中で、不良債権処理だなんてばかなことを一生懸命、逆噴射をするようなことをやっている。市場じゃないところでそんなことをやっているわけですよ。だから、あらゆる問題を解決するには、政府の経済活動というものをやめなきゃいけない。その一環がこの住宅金融公庫の廃止でなきゃならないわけです。
 住宅金融公庫は、私は、議事録を調べてみましたら、ちょうど五年前、平成九年の三月に、この委員会だったかあるいは建設委員会だったと思いますが、住宅金融公庫を廃止しなさい、廃止して、住宅ローンの証券化を実現し、公庫を保証機関にしなさい、そういうことを五年前に提言して、五年たってようやく、今そういう案が出てきましたよ。出てきましたけれども、中身は、先ほど申し上げましたように、これではいつまでも、ずるずるやはり政府の事業としてやっていこうということになってしまう。したがって、この内容について少しやり取りをさせていただきたいと思うのですね。
 特殊法人整理合理化計画の住宅金融公庫関連部分というところでもって書いてあることを幾つか取り上げてみたいと思いますが、「融資業務については、平成十四年度から段階的に縮小するとともに、利子補給を前提としないことを原則とする。」融資業務は段階的に縮小するというのですが、縮小計画というものはあるのですか。何年間で融資業務を一切なくしてしまうとか、あるいは、なくすということはないんですか。
扇国務大臣 事務局から答弁をいたします前に、今の石井議員のお話の中で、住宅金融公庫そのものを否定するかのごときお話がございましたけれども、私は、五年前に御指摘なすったことが現在やっとなったという、そのことに関しては否定はいたしません。前向きに、住宅金融公庫が世の中の役に立つようにと姿勢を改めることは、私は常にあってしかるべきだと思っていますから、その点はおっしゃるとおりだと思います。
 戦後、今おっしゃいましたように、低所得者の人ほどマイホームを持つ夢を、普通の、通常の金融機関に行きますと、あなたはどこの会社で、どんな役で、年収幾らですかと、事細かに聞かれて、金融業界から資金の融資が受けられないという実情がございました。その中で、私どもは、金融公庫というものは、政府が、戦後今日まで千八百五十九万戸でしたか、約三割、今石井議員がおっしゃったとおりです、それだけ低所得者に対して職業も役職も年収も聞かないで、低利で借りられたということが、多くの低所得者、御存じのとおり、八百万以下の低所得者に対して金融公庫というのは八一・九%融資しているんです、普通の金融機関は、八百万以下ですと五〇%しかありません、そのように、普通の金融機関では融資できない、夢を達成できないものを、住宅金融公庫が今日まで多くの役割を果たしてきた。
 ただ、現段階で、民間にできるものは民間にという小泉内閣の提案ではございますけれども、つい最近まで、長期、低利、固定の金利をするところというのは、城南金庫以下二カ所しかありませんでした。しかも城南は地域が決まっています。そして五年後に廃止すると言ってから、今金融機関では一般の金融機関が九行ぐらい、既に長期低利の商品を開発し始めました。
 そのように、歴史は変わってまいりますけれども、今回五年後に廃止ということで準備しているわけですけれども、今までの住宅金融公庫の果たしてきた役割だけは、私は、戦後日本の経済あるいは国民の夢、そういうものに役立ったことだけは少しは認めていただいてもいいのではないか、そう思います。
 それと改革するところは別でございますけれども、中低所得者に対する住宅金融公庫の役割というものは、私は、今日まで多くあったということだけはぜひ石井先生も御確認いただいて、今後住宅金融公庫が変わっていくということに関しては仰せのとおりでございますので、その一点だけ私から報告させていただいて、事務的に局長から答弁させます。
石井(紘)分科員 今、そういうもとの議論に大臣が戻りましたので、その点で私も申し上げたいことがございます。
 私は、当初から全く要らなかったと言ったことはありません。ただ、もう相当前から要らなくなっていたんです、これは。扇大臣も、大臣になられて、担当のところから相当いろいろとレクを受けられたか何か知らないけれども、よく勉強されたようですが。
 最初は、さっき言った低所得層、最初はそうだった。これは大昔のことです。百平米以下の家を建てるときに資金を貸すということで発足したんです。特殊法人ですから、そのときに当面の期間として発足した。
 ところが、そうしたものを満たして、そうした政策を満たして、本当はそこでもって終わらなきゃいけないんだけれども、どうなったかといいますと、一九七五年には、今度は、新築だけじゃなくてリフォームにもお金を貸そう。八五年になりますと、高規格住宅なんていう定義をつくり出して、そして八七年には、セカンドハウスにも貸しますよ。九四年には、床面積二百八十平米まで広げた。そしてその後は、もう無制限にしてしまった。いいですか。
 そして、高度成長からバブルに来て、今度は、注文住宅であろうが、ビルであろうが、マンション経営のためのマンションであろうが、建て売り住宅、財形住宅ですよ、市街地再開発まで、みんな全部、不動産事業は今の都市基盤公団と住宅金融公庫で総ざらいしてしまうというんですね。そういうことになってきているということも、これは担当の国土交通省の人からだけじゃなくて、やはりそういう側面もよく勉強してもらわないと実態がおわかりにならないというふうに思いますね。
 そこで、さっきの答弁をしてください。
三沢政府参考人 まず、先ほどの融資業務についての段階的縮小についてのお尋ねでございます。
 特殊法人整理合理化計画に基づきまして、まず、平成十四年度におきましては、今まで融資限度額につきまして、融資率でございますけれども、住宅取得価額の十割まで融資可能となっておりましたけれども、これについて見直しをいたしまして、年収八百万以下の方は八割、それから年収八百万を超える方は融資率を五割にするという見直しをする。それから、今まで経済対策で上積みされてまいりました特別割り増し融資額については、これを約半分近くに縮減する、こういうことを通じまして、事業費のおおむね約四分の一の削減等の措置を講ずるということにしております。
 ただ、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、今後証券化支援を公庫が始めた場合に、民間の長期の固定のローンが今後どういう形で伸びていくかということについて、まだなかなか見通しがつかない段階でございまして、これを見きわめつつ、毎年度の予算の中で具体的にどういう形にしていくかということを決定していくというふうに考えております。
 それで、いずれにいたしましても、この特殊法人の整理合理化計画の中では、五年以内に公庫を廃止というときに、その廃止の段階で、民間の融資業務が円滑に行われているかどうかを判断してその取り扱いを決定するということになっておりますので、その中で、当然、民間でどのくらい長期固定のローンが伸びてきているかということをよく見きわめていくということになろうかと思います。
石井(紘)分科員 そこに相変わらず非常にずるい論理があるわけです。そういうふうにごまかしちゃだめですよ。私はちょっと口が悪くて申しわけないんだけれども、ごまかすことがあなた方は非常に習性として身についているという気がしてならない。いいですか。もし違っていたら議論しましょう。言えばいいんですよ、あなたの方でも。
 民間で長期固定のローンが伸びていくか伸びていかないかということを見て、その上で融資業務を最終的にどうするかということを判断するんだ、一つそのことをおっしゃった。それから、融資業務そのものについては、民間金融機関が円滑に業務を行うかどうかということによって判断しよう、そういうこともおっしゃった。
 これまで民間ができなかった。それは、政府が潤沢な資金を持って、しかもそれを裏づける法律をたくさん持って、長期の固定のローンができるという状態は政府しかできないということにしておいて、財投との関係でそういうことにしておいて。そうしたら、長期の固定のと、民間はできないじゃないですか。法律も財政も、そして政策も、全部が政府を支えているわけですよ。いいですか。
 それで、そこのところはそのままにしておいて、政府からの金は入れないということだけですよ、違うところは。あとは法律も全部そのままですよ。財投も、名称は変わったけれども、財政融資資金ということで、今度は財投債ということですから同じですよ。いいですか。条件は全部同じ。
 そこで、民間が伸びてきたらそれに応じて手を引きましょう、これは大変なごまかしじゃないですか。ごまかしですよ、それは。だめですよ、そんなこと言っていたんでは。何か言いたいことあったら言ってください。
扇国務大臣 私は、石井先生のは逆だと思うのですね。私は、石井議員がもっと一般の皆さんの立場に立ってくだすっているんだと信じたいと思うんですね。
 なぜかといいますと、住宅金融公庫が五年後廃止ということになってから、私のところへも多くの投書があったり、御説明をくださいというようなことをおっしゃいます。
 それは、皆さん方が、住宅ローンを借りていたけれども、住宅ローンが五年後に廃止になったら私はどこへどう振りかわるんでしょうか、そして皆さん方が、金融機関に借りに行ったら、民間金融機関は今みんな合併したり何かして不安でしようがない、しかも条件が厳しくて貸してくれない、私たちはどこへ行けばマイホームの夢ができるんでしょうと、こうおっしゃるので、私は、住宅金融公庫があることが、政府の保証があるからみんな住宅金融公庫に借りに行くので。それと、民間の金融機関では今皆さん自身が信用していない、しかも、十年間は安いけれども十一年からどっと上がっているというようなことも、ぜひ、石井議員がおっしゃる限りは、皆さんを理解してあげて、どちらがいいかと判断できるようなところまで御議論いただければありがたいと思います。
三沢政府参考人 民間で何で長期固定の住宅ローンが十分供給されてこなかったかという点でございますけれども、民間は、基本的には短期の資金調達で、これを三十年というような長期の運用をするということについては、非常に大きな金利リスクなり繰り上げ償還リスクをこうむるということから、一般には、やはりこれは長期固定のローンを出すことは非常に難しいと言われています。
 ただ、これは証券化という形で、そういうリスクを市場に転嫁することによって可能であるということで、現実にアメリカでも、そういう市場に転嫁する形で証券化が行われまして、その結果として相当長期固定のローンが民間に出ているわけでございます。
 したがいまして、今回、条件整備ということで、証券化支援業務に乗り出すということが今回の特殊法人整理合理化計画の内容でございます。
 それからもう一点、公庫自身の資金調達でございますけれども、これにつきましては、財投改革の中で、市場からの自己調達という観点から、公庫自身もいわゆる財投機関債を相当大きく伸ばしておりまして、今年度は昨年度の約三倍の六千億発行するということで、資金調達についても多様化を図っているということでございます。
石井(紘)分科員 まず、住公が融資をやめて、そして今まで住公が持っていたさまざまな有利な条件というものを民間に提供するということを考えて、そして民間が貸し出す。今、アメリカの話を言われましたけれども、アメリカは民間が貸し出して政府が保証しているんですよ。あなた方のやっているのは、政府が貸し出して、それをまた政府が保証しようという話で、この点も非常につじつまからいうとおかしいんですよ。
 民間に貸し出しをやらせる、そして政府がそれを保証する、そのためには政府の融資というものをどんどん減らしていかなきゃいけないんですよ。同時に、民間に対しても、長期のローンが組みやすいようにするにはどうしたらいいのか。住公が持っているさまざまな法的な特典あるいは財政的な特典、そういったものを手放して、民間にそうした有利な条件を提供するなり、あるいは民間が少なくとも自由に競争できるように、そういう方向に持っていかなきゃいけないわけですよ。
 そういうことは言えばわかるはずなんだけれども、ところが、そうやらないんですよ。それは、この組織を維持することだけが至上命題で、一番大事なことということになってしまうから。だから、とにかく、融資業務を何年たったらやめるということを少なくともはっきり言わないとだめですよ。今そんなことを聞いても言えないだろうから、また別の機会に私はしつこく言っておきます。この証券化だって保証機関化だって、五年間言い続けてきてやっとなったわけですから、これはずっとこれからも言い続けていきたいと思います。
 それから、もう時間がないから最後に一つだけ言いますが、独立行政法人というこの形態を、これもまたいつまでもやっていくのか。保証機関というものもできるだけ民間化していくということもまた大事なんですよ。これは若干長期にかかるかと思いますけれども。ですから、独立行政法人だって永久にそうやっていくというものじゃないんです。
 それからまた、今、職員が千百何十人かおるようです。それから、後楽園のところに地上十二階建ての大ビルが、本社ビルがありますが、そうしたものについてもだんだんと軽量化していかなくちゃいかぬわけですよ。そういうこともきちっと、今すぐ答弁は要りませんから、早急にこうしたものについても検討して、将来計画を出す。将来、本当に廃止する。
 今回のものは、廃止といったって名前だけなんですから。名前だけで、別のものにかえるんですから、本当は廃止じゃないんです。だから、本当の廃止計画というものを出さなくちゃいけない。大臣、今回のものは、廃止といったって廃止じゃないんですよ。いわば言葉を非常にあいまいに使っているわけなんです。
 時間が参りましたから、融資業務を早くやめるということと、それから民間に貸し出しはゆだねるということを至急出す。今回のものは計画にも何にもなっておりません。これを読んだら全くあいまいで、一般常識からいったら、こういうものでは一般の人は全然理解できません。ですから、もう少しちゃんと改革なら改革ということをはっきりしなければ、小泉内閣もこれはだめですよ。金融機関の中で住公だけしか取り上げない。その取り上げた住公だって何だかちんぷんかんぷんな方針しか出していないということではだめであります。
 以上申し上げまして、終わります。
御法川主査 これにて石井紘基君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。
武正分科員 おはようございます。きょうは、国土交通省さん、そしてまた防衛庁さんに御質問をさせていただきます。
 大臣には、早朝から御苦労さまでございます。昨日朝六時から、あのTBSの番組も拝見をさせていただきました。いろいろと大臣のこともより詳しくわからせていただきました。連日、早朝から御苦労さまでございます。
 きょうは、まず新宿雑居ビル事件についてお伺いをさせていただきます。
 既に消防法改正ということで、消防庁としては、九月一日、四十四名の犠牲を出したこの雑居ビル事件について、二度とこうしたことのないようにという取り組みを今回の法改正でしたわけでございますが、附帯決議もつき、特にまた国土交通省さんにおかれましては、建築基準法との関係で、こうした小規模雑居ビルへのより強い取り組みが必要と考えております。
 それにつきましては、まず平成十二年度の建築確認、完了検査、確認変更、定期報告の件数、これを行わなかった違反件数、それに対する罰則件数、まずお答えをいただきたいと思います。政務官、お願いします。
高木大臣政務官 平成十二年度の確認申請件数についてのお尋ねがございましたけれども、平成十二年度の場合には、確認の件数は約八十二万件ございます。確認変更の件数は約八万件で、完了検査件数は約四十六万七千件に及んでおります。また、定期報告件数が約七万一千件となっており、違反件数は、確認に係るものが約五千件、完了検査に係るものは約三十五万件、定期報告に係るものは約七万件と推定されております。
 なお、罰則の適用件数に係る統計的な把握は行っておりませんけれども、極めて件数は少ない、そのように認識をしております。
武正分科員 完了検査を五六・九%が行っている。それは、同じ年度で単純に比較した場合でございます。また、定期報告につきましては、平成十二年度で五一%でございまして、定期報告は半分といったことでございます。今回の当該ビルも、定期報告もしない、完了検査もしないといったことが指摘をされておりました。また、用途の変更されたことも、当然のように報告がなかったわけでございます。
 昨年十二月、国土交通省さんの検討委員会では報告書をまとめまして、その中では、小規模雑居ビルに対する重点査察で、約一万一千六百棟の建築物の査察、うち四千五百棟、三八%で建築基準法に係る防火・避難安全上の違反が把握された。特に、定期報告の対象と指定されたのが三千棟、七割の建築物には指定がされていなかった。三千棟についても、直近の報告が行われたのは二五%と、先ほどの定期報告の五一%の半分といったことでございまして、その理由として、小規模雑居ビルの所有者、管理者の定期報告制度への認識の低さ、所有者などの把握の難しさが根底にあるものと考えられるとされております。
 また、理由としては、制度を知らなかったからというのが最も多いけれども、それ以外では、今までも報告していなかったから、調査に費用がかかり過ぎるから、報告するような催促を受けなかったからというようなことを言われております。
 実際にこの実をやはり上げていかなければならないと考えるんですけれども、これは副大臣さん、この点についても再度御答弁をお願いいたします。
月原副大臣 お答えいたします。
 ただいまの検討委員会の内容についてもお話がありましたが、完了検査等については、各都道府県ごとに建築物安全安心実施計画というものを策定して、そしてそれに基づいて検査体制を強化しているところでありまして、確認とか検査情報の積極的な開示とかパトロール、そういうものを実施しているところであります。
 その結果、今、率を申されましたが、過去と比べると数段上がってきておるわけで、これからもこの点で努力していきたい、こう考えているところであります。
 そして、計画の変更について、ただいまのお話では、認識していなかったとか、そういうのを知らなかったとか、こういうお話が検討委員会であったということを御披露されましたが、そういう点も踏まえまして、当初の建築確認の際に建築主に必要性の周知を徹底するというようなことも進めております。
 そして、今お話しの、検討委員会において制度の周知徹底とか、運用の強化というものをさらに強化せいということのお話があったわけでありまして、定期報告制度についてはそのようなこともさらに強化していきたい、こう考えておりますが、地方公共団体の関係の例えば警察とか消防とか、そういうところの連携を深めて、今までの制度でさらに進めていきたい、検討委員会の趣旨を踏まえて一層進めていきたい、こう考えているところであります。
武正分科員 建築確認の当初の段階が大事だというような副大臣さんの御答弁がありました。まさに私も同感でございます。この点については、後でまた大臣とも意見交換をさせていただきたいと思います。
 この報告書の中でも、やはり関係の部局、団体との連携の強化ということも挙げていますが、新宿区役所の建築課さんに行きますと、実際のところは、許認可のやりとりで手いっぱいだ、なかなか現場への立ち入りは手が回らないというのがこの特定行政庁の悲鳴でございます。その中で、今回は警察、消防そして保健部門と合同で査察をしたことが大変よかったというふうに言っておりますので、またことし、九月には防災週間がありますので、そうした関係部局との取り組みということは、既に通達等出ておりますが、国土交通省さんとして、消防庁さん、警察さん、そして保健担当部局とのさらなる連携をお願いしたいと思います。
 そういった意味では、ここで建築士ということが出てまいります。建築士さんの協力をもっと仰ぎ、先ほどのような、まだまだ建築主の意識がそこまでいっていないところをさらに強める、あるいは建築主さんの協力をもっと仰ぐような仕組みができないか、この点について、副大臣いかがでしょうか。
月原副大臣 お答えいたします。
 この制度そのものが、先生も御承知のように、定期的に建築士等に調査させて地方公共団体に報告するという制度であります。そこで、建築士の積極的な協力が、おっしゃるとおり必要不可欠なものであります。
 そこで、建築士等の関係団体に、相談に応じる体制を整備していただくとともに、こういうことの調査に応じられる建築士の名簿を備えるなどして進めていきたい、こう考えているところであります。
武正分科員 続いて、今回の明星56ビルは、二方向避難についても、これは違反といったことが言われているわけです。ただ、それぞれの床面積が百平米以下でしたので、二つの階段を設けなくてもいい、バルコニーでいい、バルコニーが設けられていなかったといったことでありますが、この二方向避難について、国土交通省さんの調査では、キャバレー、カフェ、ナイトクラブまたはバー、約三千百棟のうち千三百五十棟、四三%が違反ということでございました。
 今回の報告書では、同様に避難上の支障の大きい新たな形態の風俗関係用途についても、二以上の直通階段の設置などを義務づける検討を行う必要があるとされております。具体的には、今回のビルでは、三階がゲームマージャン、四階がキャバクラということで、これがいわゆるキャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バーに近いものだろう、ただ、今までの四つの分類には入っていないんじゃないか、こういったところが指摘をされているわけです。
 ここで大臣にお伺いをしたいんですが、竣工後、用途というものは変更する可能性が大いにある。でも、変更しても確認変更を申請しない。ですから、やはり最初の確認申請のときが大事だと私は思うんですね。そういった意味では、やはり用途が変わる可能性は十分考えられるわけですから、用途について余り制限を設ける必要はないんじゃないか。それからもう一つは、五階以下の場合、百平米以下のものは屋外避難階段及び避難上有効なバルコニーなどの設置でも可としておりますが、今回のこともありますので、やはり用途とか、百平米以下は除外規定というようなことはこの際除いていくべきではないかと考えるんですが、大臣の御所見をお伺いいたします。
扇国務大臣 今御指摘の昨年九月の雑居ビルの火災、これによって多くのものを私どもは知ったといいますか、調査の結果というものが出てまいりました。
 御存じのとおり、先ほども政務官、副大臣から御答弁申し上げましたように、建築基準法にのっとって許可をしていても、途中で用途変更するんですね。今おっしゃった以外にも、私もよくわからなかったんですけれども、テレクラはわかりますけれども、イメクラというのもあるそうでございまして、そういうものに用途変更しまして、そしてそれを届けていない、こういう風俗営業的なものが、雑居ビルの中でしょっちゅう人が変わるんですね、持ち主が。
 こういうことを一々登録していないということで、用途にかかわりませんけれども、少なくとも一般の事務所等々でも、私は、店舗まで一律に強化するということは過度の制限になるということで、規制緩和とこの現状との間に挟まって、やはりこういう災害があったらある程度厳しくせざるを得ないなと。
 また、今おっしゃったように、建築の確認が終わらなければ工事というものは着手することができないわけですから、その許可をするときに、確認をするときに、確認を受けた後の事情変更、例えば予定されていたテナントが変わりますとか、あるいは急に子供部屋が欲しくなったとか、いろいろな事情がもちろんあることはあるんですけれども、計画の変更部分については改めて確実に建築確認を受けるようにするということを私たちはしなければならないと思っています。
 最初の建築確認の際の建築主に対する必要性の周知ですとか、あるいは、平成十一年から導入しました中間検査の際に変更確認を指導する、そういうようなことを実施してまいりたいと思っております。平成十二年度におきまして、先ほど副大臣から言いました、少なくとも約八万件に増加しているわけでございますので、今後は、少なくとも建築主に対する指導徹底、これが重要なことであると認識しております。
武正分科員 規制については社会的規制と経済的規制がありますので、こちらの安全面というのは社会的規制ということで、これについてはやはり徹底をすべきだろう。ただ、経済的規制でいえば、例えばスプリンクラーの設置などは、例えばこのようなビルですとスプリンクラーを設置すると二千万とか三千万かかるんですが、アメリカではもう四、五十万の簡易なスプリンクラーがある。こういったものには逆に緩和をしていくべきだろうというふうに考えるわけであります。
 確認した後もいろいろ変更があるよ、確かにおっしゃるとおりなんですが、後で触れます中城村のごみ焼却場など、ある面、意図的に変更をしていくといったケースもありまして、私はやはり、まず最初の建築確認の時点での取り組み、これが一番大事ではないかなと思っています。
 もちろん、その後の定期報告などで、先ほどの建築士につきましては、費用の面とかいろいろな面で、やはりある面、確認変更届け出、定期報告しやすいようなことも同時で必要だと思うんですが、大臣、この建築基準法は最低限の基準なんだと。確かに、最初の計画について特定行政庁が確認申請を受理するんだという法体系になっているんですが、どうも一度受理しちゃうと、後で幾らでも変更可能なんだ、最初でうまくやっておけばいいんだよというようなことがないのかなと。あるいは、そういった意味で、では後でのいろいろな確認の変更、定期報告などをどうやってやりやすくしていくのかといったことを考えると、やはり最初が大事だ。
 重ねてこの点について、建築確認時点で、まず最初が大事だということを再度徹底が図れないものか、大臣にお伺いをしたいと思います。
扇国務大臣 先ほども申しましたように、少なくとも、建築確認の際の建築主に対する必然性、必要ですよという認識が甘いといいますか、ですから途中で変更してしまうんだろうと思いますけれども、そういうときがないようにということの指導。
 そして、先ほどちらっと申しましたけれども、十一年から導入した中間検査の際の変更の確認ですね。十一年でさえ少なくとも、これは実施徹底に努めておりますけれども、変更の確認件数が十一年では約六万五千件、そして十二年度では約八万件というふうに増加しているということは、いかに皆さん方が途中で変更しているかという事実でございますので、そういう点については確実に建築主に周知徹底、これがやはり大事だろうと私は思いますので、事件が起こらなければ気がつかなかったというのは残念ですけれども、今後周知徹底を図りたいと思っています。
武正分科員 続いて、今触れました中城村のごみ焼却場の件に移らせていただきます。
 お手元の方に資料を配付させていただきました。ごらんをいただきたいのですが、二枚図面がありまして、小さい方のA4サイズは防衛施設庁さんで、那覇防衛施設局で四月一日にいただいた資料です。もう一枚の大きい図面は、地元の中城村のごみ問題を考える会が沖縄県に情報公開請求をして得た、建築確認を沖縄県が受理をしたときの申請者から出された図でございます。
 見ていただきますと、小さい方の防衛施設局には、大きい方のS字形の取りつけ道路がないのですね。つまりこれは、建築確認を受理したときにはこのS字形の道路があったんですけれども、防衛施設局さんが把握をされている図はそのS字形のカーブがないというものであります。
 これについて、その考える会では既に三月付で沖縄の県会議長に陳情書を出しておりまして、その中の抜粋でありますが、まず都市計画決定の見直しをしてほしい、なぜならば、面積が当初計画決定のときは〇・九ヘクタール、九千平米だったのが、実際の面積は一万二百二十五平方メートルと相違のまま違法状態が続いている。二点目が、建築確認において全体配置図に記された搬入路、防衛施設局さんの持っているA4の図ですね、右側に道路が伸びておりますが、沖縄県に建築確認を当初持っていったときに、これは要は都市計画決定の範囲外だから審査外とされて、設計図面さえ沖縄県にはないのですね、この図は。沖縄県が持っているのは、このS字形の図でございます。
 建築主がこれまで使用してきた搬入路というのは、実は防衛施設局さんが示した、この横に東に伸びている搬入路なんですね。一部事務組合、村長さんがこの建築主なんですけれども、議会でもS字形の搬入路はつくらないというふうに明言しておりまして、この搬入路の予算措置はされていません。私も現地を見てまいりましたが、搬入路が担保されていないのに、このごみ焼却場の建築は進んでおります。このまま建物が完成しても同施設は搬入路がないまま、これでは稼働できないんじゃないかということなんですね。
 ですから、先ほど、これは善意か悪意か議論は分かれますが、建築確認のときはこういう図で受理をされる、でも申請した当事者はこの道路をつくる予定ないよ、どんどん建築だけ進んでいる、こういったことが起きているわけなんですが、まず、これについて防衛施設庁さんの御見解をお願いしたいと思います。防衛庁さん。
木村長官政務官 お答え申し上げます。
 今、武正委員御指摘のとおり、私ども防衛庁に対しましては、同組合から那覇防衛施設局に対しまして、平成十三年六月の敷地造成の交付申請においては、現存の搬入路を使用するということで申請がなされております。
 本件につきまして、私どもの方で同組合に事実関係を確認しましたところ、新設する搬入路、つまり沖縄県に提出した、搬入路を計画したものがありますが、これは膨大な経費と期間がかかるため、現時点では当初の計画どおり、つまり私どもに申請があった計画どおりの搬入路を使用する方向で検討しているということでありました。
 防衛庁といたしましては、当該ごみ処理施設完成までに、搬入路につきましては所要の手続がきちっととられまして、ごみ処理施設の稼働、これが最も大事なことでありますので、このことに支障が起こらないように同組合を指導してまいりたいと考えております。
武正分科員 お金がかかるから変えたんだということなんですが、建築確認のときにはこれでいきまして、防衛施設局さんにはこれですよ、お金がかかるからだというような形なんですね。実際、では、これでいきますよといっても、ここの搬入路の地主さんたちは反対をしているわけなんですね。そのやり方などいろいろやはり問題ありということで、工事差しとめの提訴もされております。
 そういったことも踏まえて、国土交通省さんとして、これは特定行政庁の建築確認の受理の件でありますけれども、先ほど来こうして、建築確認のやり方なんですね、やはり最初が大事なんだ。後で変更すれば何でもいいじゃないか、あるいは、建物が建っちゃったからもういいじゃないかというのをよく聞くんですよね。どうもこれはおかしいんじゃないかなと思うのですが、この件についての御所見を、副大臣、お願いいたします。
月原副大臣 今委員御指摘の点は、うなずける点がたくさんあると思います。
 ただ、現段階、この問題について申し上げると、今防衛庁の方からの御説明がありましたが、我々は、このような措置がなくそのまま進んだとすれば、沖縄県が使用禁止を命ずることもあり得るものと考えております。しかし、使用するためには、今防衛庁そのものが見解を述べられたことですが、搬入路ですね、それを村道としてするか私道とするかは別として、そういう点についてしっかりして、要するに確認の変更というものを行わなければならない、そういう手続が必要だ、こういうふうに考えているところであります。
 ただ、今お話を聞きながら思ったのは、相当の金がかかるということですが、これは一部事務組合というものを、しっかりしておる、こう信じておったんだと思いますが、これからもそういう点、だれが見ても不可能なようなことを受け付けるようなことはしないように、さらに指導せぬといかぬなということを強く感じたわけであります。
武正分科員 沖縄県の方に地元のその会が問い合わせると、ある面、国土交通省さんの御意見を承るような形で、げたを国土交通省に預けるような感じの答弁も続いておりますので、ぜひしっかりとした御指導をいただいて、またいろいろ不明な点も地元でうわさをされておりますので、この点についても、防衛施設局さんも施設庁さん、防衛庁さんも、確かにこの瑞慶覧のSACOの関係もあることも重々承知しております。日米安全保障条約上大変重要な地域であることも重々承知していますが、であるからこそ、不明な点はただし、そしてやはり国土交通省さんとの連携をしっかりとっていただきたいとお願いをするところであります。
 さて、きょうは、地元のことも触れさせていただきます。
 地下鉄七号線について、もう開業一年たっておるんですけれども、地下鉄についてもなかなか運賃が高いといったこともあります。
 また、同様の第三セクターが、東葉高速鉄道、次期繰越損益六百十三億、北総開発鉄道四百四十三億、横浜新都市交通百十八億。経常がそれぞれマイナス百七億、プラス四億七千万、マイナス六億円ということで、埼玉高速鉄道は、まだ開業一年ですので収支状況が明らかになっておりませんが、利用見込みの十万四千五百人に対して四万七千人から五万人で推移ということでございます。
 今後、平成十二年答申で認められた蓮田延伸も踏まえますと、運政審の一九号答申で、第三セクター方式による現行の整備に関する支援制度の適切な見直しといったことも出ておりますので、この点について大臣から、こうした鉄道の整備、延伸について、特に第三セクターでございますが、さらに力強いバックアップをお願いできるかどうかということ。
 もう一点は、ちょっと一緒に聞かせていただきますが、都営三田線も埼玉への延伸ということが言われていたんですけれども、これは昭和六十年答申でなくなってしまいました。埼京線に振りかえられたのかなといったことが言われるわけなんですけれども、地元では、昭和四十七年答申に書かれたものですから、当然地下鉄が延びてくるということで住宅を購入された方も多数おりまして、埼京線も実際、混雑率は緩和してきたのですが、平成十二年度ではまたちょっと上昇に転じているということでございますので、この都営三田線の延伸のことも含めて、大臣から御答弁をお願いいたします。
扇国務大臣 事務局から細かく御報告した方がいいのかもしれませんけれども、あえてお尋ねでございますので、地下鉄の七号線のことでございますけれども、御存じのとおり大体二千六百億円という巨費を投じてやっとできたという現状でございます。昨年三月に開業したというのは御存じのとおりでございますけれども、初乗り運賃が二百十円、そして赤羽岩淵から浦和美園までが四百六十円と約倍近いわけですね。
 けれども、鉄道運賃につきましては、御存じのとおり、建設費あるいは運営費等々の原価を賄う水準としておりますので、事業者の自主性とそれから主体性、そういうものを市場原理のもとで競争を促進して事業活動の一層の効率化、活性化を図ろうということで、平成九年ですけれども、事業者の判断で、認可を受けた運賃より低廉な運賃の設定というのは届けで足りるということで、ただ届け出でいいことになっております。
 そういう意味では、国による鉄道事業に対します運賃補助については、このような運賃設定に対する事業者の自主性を逆に損なってしまうのではないか、自主性としての皆さん方の努力というものを、国が逆に楽をさせてしまって営業努力をしないということもあり得るということで、これはちょっと難しい。どちらがいいかというのは問題ですけれども、今御指摘のように、今後どのようにするかということですけれども、埼玉の高速鉄道については、今おっしゃいましたとおり、まだ開業して間もないということもございますので、まず鉄道事業者の経営努力あるいは地方の皆さん方の鉄道の利用の促進、そういうものを私たちも見守って、今後、沿線の開発等あらゆることで着実に進展していくように、せっかくつくったんですから、私たちは育っていただきたいと念じております。
 また、続いて三田線についてのお話がございましたけれども、JRの埼京線の混雑が今大体二一〇%ぐらいですね。だから、当面の目標でございます一八〇%というのを大幅に上回っているという現状でございます。
 そういう意味で、JRの東日本におきましても、これまでも埼京線の輸送力の強化に努めておりますけれども、現在まで池袋駅の構内改良工事、これは御存じの埼京線と貨物線が平面交差になっておりますので、そのために本数がふやせないんですね。改良工事は何をするかというので、立体交差にします。これを立体交差にしますということは、埼京線の本数増が見込めるということで、これは立体交差しよう、そういう改良工事によって、平成十六年度にはさらに輸送の増強を図っていけるという見込みがついておりますので、今後混雑が緩和されるのではないかと思っております。
 御指摘の三田線の大宮方面への延伸につきましては、これは十二年の一月に運輸政策審議会で、東京圏の鉄道整備計画に関する答申、これで、今御指摘のとおりでございますけれども、収支は採算性や費用対効果が極めて厳しい。なぜ厳しいか。三田線の延伸というのは、埼京線とほとんど並行して走ることになっておりますので、その結果、並行線に走るだけということで、費用対効果というものが上がるかどうか、これはクエスチョンマークにせざるを得ない、そういうこともございますのでこの答申には盛り込まれなかった、そういう理由でございます。
 今後、地元におきましても、この三田線の延伸については、収支の採算性とか費用対効果等々の諸課題についてさらに検討を進めていただいて、現段階では効果が上がらないのではないかとは思われておりますけれども、検討してまいりたいと思っております。
武正分科員 ありがとうございます。
 時間になりましたので、最後、芝生の質問を用意しておりましたが、これはちょっとまたにさせていただきます。
 校庭の芝生化議員連盟、一生懸命やっておりますので、これまでの公園管理者、芝生には立ち入ってはいけないよという、日本の法律で立入禁止区域、こういったものを指定しておりますが、やはり芝生は楽しむものという形に国土交通省さんとしての考え方の御検討をお願いしたいと思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
御法川主査 これにて武正公一君の質疑は終了いたしました。
 次に、春名直章君。
春名分科員 日本共産党の春名直章でございます。
 愛媛県の肱川町山鳥坂地域、肱川上流の一つの支流に国直轄の山鳥坂ダム計画がされています。このダム建設の最大の目的は中予分水事業でありましたが、これが中止になりました。私は、この地点に立って、既に建設の合理的根拠がなくなった山鳥坂ダムそのものも、国の責任で直ちに中止をし、白紙の上に再検討していくという立場から質問させていただきたい。国土交通大臣と河川局長にお伺いしたいと思います。
 当初の工事実施計画の段階で、中予地域、愛媛県は御存じのように東予、中予、南予と分かれていまして、山鳥坂ダムをつくるのは南予の地域、そしてそこでダムをつくって下流で分水をして中予の方に水を回す、こういう計画が一体になっているわけですね。中予への分水計画が山鳥坂ダム建設とセットになって計画されておりました。もっと言えば、分水のためにダムを建設するという計画だったと私は認識をしております。分水が中止になったんですから、直ちに山鳥坂ダム本体そのものもまず白紙に戻すということが筋ではないでしょうか。この点をお伺いしたいと思います。
竹村政府参考人 多目的ダムの複数の目的につきまして、一つの目的がなくなった場合等についての御質問がございました。
 ダムは、御承知のように、治水、洪水調節のためにだけやるダムもございます。あと水資源、飲み水を開発するためだけのダムもございます。その両方の目的を一緒にした多目的ダムもございます。本ダムは、平成四年度に山鳥坂ダム建設事業に着手したものでございますが、今委員御指摘の中予への水の分水、そして肱川筋、ダムをつくる川筋の流域の方々の安全を守る治水目的、この二つがございました。
 そして、中予分水は分水をする方と受ける側が完全に合意をしなきゃいけませんので、この合意が得られませんでした、御指摘のように。そのために中予分水、松山へ水を送るということはもう愛媛県としてはできないという判断でございまして、現在、私ども、それでは残された肱川筋の治水上のためにどういうやり方がいいのか、ダムがいいのか、河川改修がいいのか、遊水地がいいのか等の代替案を比較検討する計画を再構築する作業に入ってございます。
春名分科員 今再検討の段階に入っているということでありますので、その議論を実りあるものにする上で、きょう議論を深めておきたいと思います。
 まず、もう一点聞きますが、二〇〇〇年の八月二十八日付の例の与党三党の、公共事業の抜本的見直しに関する三党合意というものがなされています。「採択後五年以上経過して、未だに着工していない事業」、これに山鳥坂ダム中予分水事業は該当しておりました。なぜこの時点で白紙に戻すということをしなかったのでしょうか。なぜそうしなかったのか、この点いかがでしょうか。
竹村政府参考人 与党三党の見直しの基準に合っておりましたが、愛媛県から強い要望がございまして、流域分水がありますので、その件に関して時間を一年いただきたいというような申し出がございました。そして、当時は四国地建でございましたが、四国地方整備局の判断によりまして、分水に関しての最終的な県内調整、合意調整をとりたいということもございまして、この中予分水をするかどうかに主に焦点を合わせて、現地で関係者で話し合いが行われていたというために、その与党三党の見直しのときには対象としない、そして、引き続き検討しようと。
 そして、平成十一年の四国地方整備局主催の事業評価監視委員会におきまして、肱川流域の治水、河川環境等の課題解決のために計画を再構築して、肱川流域の合意形成を図ることということで、分水をなくし、肱川流域だけでもう一度考えてみなさいという段階に至ったわけでございます。
春名分科員 県から強い要望があったので、それをしんしゃくしたということなんですが、そして、一年たちまして議論をした結果、見直し案が出されて、その見直し案がまただめになったんですよ。その見直し案の中の、大事な中予分水事業とおっしゃる部分が受け入れられずに中止をする、そういう経過をたどっているわけなんです。
 したがって、この本体ダム建設そのものの意味が、見直し案は出たけれどもそれもだめというぐらいまで、合意ができない時点まで来ているわけですから、白紙に戻す以外に、そこから出発する以外に進みようがないんじゃないかと私は思うんですね。河川局長、そう思いませんか。
竹村政府参考人 ただいまの私の答弁の中で、平成十一年と申しましたが、平成十二年から十三年にかけてでございます。最終的には十三年の十一月でございまして、間違えましたので訂正させていただきます。
 それでは、御質問にお答えしますが、現在、この肱川流域は大変危険な川でございまして、大洲という大きな盆地がございます。盆地から下流は十五キロ区間、先生御承知のように、長浜にかけて渓谷でございます。広い大きな、ヤツデの葉っぱのような形から、非常に狭い狭窄部を通って海に出る川でございます。この肱川流域は、大洲を中心として過去大変な被害に遭っておりまして、昭和十八年、二十年、そして近年では平成に入ってから七回、一番大きなところでは平成七年七月洪水では、東大洲の大半が水没しまして、九百五十七ヘクタール、千二百戸の浸水を生じたわけでございます。
 この地域の安全を守るために、どうしても洪水調節が必要だということでございますが、それでは河川改修でやればいいじゃないかということがございますが、現在、この大洲市の旧市街地の中には高さ二・三メーターから三・五メーターのコンクリートの壁が、二・三メーターから三・五メーターというと大変な高さでございますけれども、そのような壁が長さ八百五十メーターに及んで建っております。
 これは旧市街地を洪水から守るということでございますけれども、私も全国広しといえども、このように中間部で、このように悲惨な、町を守るためといえども、コンクリートの壁でこのような形で地域と川が分断した地域は承知しておりません。それほどこの地域は、洪水に対して危険なところだという認識でございます。
 このような状況におきまして、そして一言、下流についてもお話しさせていただきますけれども、下流は、先ほど言いましたように非常に狭窄部でございまして、堤防をつくる余地がございません。そのために、ダムにおいての洪水調節、これは非常に効果があるということでございます。ダムにこだわらずに、ダムも含めまして、山鳥坂ダムの効果をもう一度再評価し、河川改修の手法、先ほど申しました遊水地の手法等を含めまして、現在、案を提出して、地域の方々が、みずからの地域を安全にするためには何がいいかということを議論していただくための用意をしている最中でございます。
春名分科員 治水対策について私は否定するものじゃありませんし、重視をしなきゃいけないわけですが、その点は後でちょっと少し議論したいと思うんです。
 もう一点お聞きしておきますが、私どうもわからないのは、建設費用のことなんですね。山鳥坂ダム本体事業費が、ダムの堰堤ですよ、これが千七十億円でしょう。中予地域の三市五町への分水事業に千三百億円でしょう。二千数百億円という大変膨大な事業なわけですね。
 問題は、このダム本体の事業費千七十億円の工事費の中に、分水を受けることになっていた中予地域の自治体の水利権設定に伴う費用負担がかなり含まれているということです。その金額は、今おわかりになればお答えいただきたいんですが、本体事業費一千七十億円の中でどれぐらいになりますか。
竹村政府参考人 先ほど御説明しましたが、中予地域へどの程度水を分水するのか確定しておりませんでした。そのために、その事業費全体、またダムの規模も最終的な形状は決まっておりませんで、私ども、ここで先生に、今利水と治水の費用の割り振りの御質問があったわけでございますけれども、この国会の場できちんとしたお答えをする資料は、現在時点ではまだ持ってございません。
春名分科員 それはちょっとおかしいんで、見直し案によって、山鳥坂ダム事業は千七十億円から千三百三十億円にはね上がったんですね。そのうち中予水道企業団、この水利権設定に伴う費用負担を主体に担う三市五町の中予水道企業団が負担する金額は、千七十億円のときには二百十八億円、そして、千三百三十億円になったときに二百四十億円にはね上がっているんですね。これは、もう現地でそういう議論をして、既に二十億円以上のお金を三市五町で負担しているわけですよね。
 今、それを返してくれと言っているんですよ。中予分水がなくなったのに、なぜ二十億円もただ金で渡してしまったという話になっているわけで、それはきちっと言ってくださいよ。そういうことはもう議論されているわけです。ダム本体事業費の約二割が、分水を受ける三市五町の中予地域の自治体の負担ということになっているわけですよ。一体どうやってダム本体を建設する費用を捻出するんですか。お答えください。
竹村政府参考人 平成四年にこのダムが建設事業をスタートしたときには、中予分水の量がしかるべきの量でございました。ただし、それは水をお分けする方の肱川の方々の了解を得られないということで、私ども、計画の見直しをして流域の方々と議論しておりました。その見直したときには、あくまでも肱川を最優先、肱川の治水を最優先にする、そして、肱川の環境保全を最優先にするという条件でございまして、その分水量が減っていくという状況になっております。
 肱川の分水量が減っていくということは、当然、原水単価と申しますか、単位水量当たりの開発水量は高くなる。つまり、開発水量が多くなるということは、ちょっと専門的になって恐縮でございますが、分水の量が多くなるということは、水の単価が安くなる。分水の量が低くなるということは、単価が高くなるということでございまして、委員御質問の指摘は、そのことを指摘されたと思います。
 そのように計画がまだ流動的でございまして、水をもらう方、もらわれる方が最終的な形としての水の量が確定しておらず、さまざまな案を提案した中で、試算として、私ども皆様方に、情報公開の時代でございますので、その段階その段階では、すべての数字は出してございます。ただし、最終的な確定した数字は決まらなかったというのが現状でございます。
春名分科員 水をもらう、もらわないという話はされたんですが、もらう、もらわないという話がもう既に中止されたんです。中止されたんです。したがって、分水の量が減ったら単価が高くなって、二百四十億円に負担する金額が上がっているわけですね。この上がった二百四十億円の負担金が今雲散霧消しているわけです。だから、本体をつくることができないじゃないですかと聞いているんです。
 大臣、聞いていただいていて、山鳥坂ダムをそのまま選択肢にして、いろいろな選択肢を議論するというふうに言われているんだけれども、やはり筋として、今の時点の話も聞いていただいて、山鳥坂ダムそのものを白紙に戻しながら、本当に住民の立場で一番いい治水対策も含めて検討する。あくまで山鳥坂ダムにしがみつくという必要がなくなっているんじゃないかと私は思うんですよ。その点、どうお考えでしょう。
御法川主査 最初、局長。竹村河川局長。
 その後、大臣にお願いします。
竹村政府参考人 中予分水がなくなりました。関係者の了解を得られないことでなくなりましたが、残った目的として、大洲、長浜の方々、あの肱川に住んでいる方々六千八百戸、二万一千人の方々が住んでいるということは事実でございまして、激特が終了したとしても十五分の一の安全性しかない、つまり、十五年そこに住んでいたら必ず一回は水につかってしまうという悲惨な状況になってございます。どうしてもその悲惨な状況を改良したいということで、河川改修、ダムまたは遊水地等のさまざまな手法をこれから検討していきたいという段階になってございます。
扇国務大臣 この件に関しましては、私のところへいろいろな方が実情を御報告においでになりまして、水をもらう側、差し上げる側、両方いらっしゃいました。
 今も私、おっしゃるとおり、水をいただく側と上げる側とずっと両方見ていたんですけれども、もともとは、やはり水が欲しい、水が足りないんだからとおっしゃったことから事は始まり、また御存じのとおり、平成七年のあの洪水がございまして、東大洲の大半が沈没してしまったという大変なあの被害、はんらん面積が九百五十七ヘクタールでしたか、床上浸水七百六十八戸という大変大きな、少なくともこの被害をなくそうということも、両方含めてもともと始まった計画であるし、そしてお互いがうまくいくのであれば万々歳という話で進んできたと私は思うんです。
 ところが、欲しいと言っていた方の水がもう要らないということになったので、それでは用途変更ではないかと。単純なことなんですね。けれども、今おっしゃったように、水をもらうということで三市の皆さん方は金を積んだ、その金がどこへ行ったんだと。どこへ行ったというか、もともと欲しいと言ったから始めた事業なんで、どこへ行ったかというのは、私は、事務的に今後よく御説明すると思いますけれども、当初の計画のときにみんなが賛成なすった、そして協力しようと。それが今の、先ほどからの、変な話ですけれども、御質問がございまして、さっきも武正さんから雑居ビルの建築の用途変更の話をなさいました。それと同じで、少なくとも必要不可欠のものを、洪水の治水の面と、それから水が足りないとおっしゃった利水の面と、治水、利水が両方相まってこの計画が始まった。
 ところが、治水だけで利水が要らないとおっしゃった点では、四国の地方整備局がこれを担当しておりますけれども、少なくともこの現状を、さっき局長も言いました、すべて情報公開しておりますというふうに申しましたけれども、今後は、河川の改修ですとか、あるいは山鳥坂ダムの遊水地などの代替案を比較検討するということは大事なことだと私は思っておりますので、これを比較検討して、流域の皆さん方の御意見も聞きながら早急に計画の再構築をするということは、私は、地方整備局で局長が指導すると思いますので、そのように進行していきたいと思っております。
春名分科員 今大臣が大事なことをおっしゃったと思います。代替案の検討は大切なことであるとおっしゃいました。その代替案を検討する際に、前提として山鳥坂ダムは先にありきというふうにしないでほしいということを私が言っているわけなんですよ。なぜ中予分水というもう片っ方の大変大事な事業は中止されて、そのために、その目的が多数であった山鳥坂ダムがそのまま残ってしまって最初にありきになっているのかということを今問題にしておるわけですよね。
 そこで、河川局長もおっしゃっていましたが、まだ山鳥坂ダムに未練を持っていらっしゃるその理由の一つに、治水の問題があると思います。この点を少し私なりに議論してみたいと思います。
 山鳥坂ダムのパンフレットがございます。これを私も何度も見ているんですけれども、このダムの中には、百年に一度の洪水に備えるというのが現在の肱川の治水計画なんですね。ピーク流量六千三百トンのうち千六百トンを上流ダム群で調整し、四千七百トンを下流の堤防で防ぐ計画になっているということだそうです。上流の野村ダム、鹿野川ダム、上流に既に二つダムがあるんですね、大臣。野村ダム、鹿野川ダム、建設しようとしている山鳥坂ダムで、千六百トンの必要調整量のうちこの三つのダムで八百十トンを当面賄うという計画でして、そして、あと残りの七百九十トンを賄うためには「まだ数ダムが必要ということになります。」要するに、山鳥坂ダムをつくってもあと三つ、四つダムをつくらなければこの百年一回の洪水にはたえられない、こういう計画になっているわけなんです。
 これもまあ驚きなんですが、ところが、昨年の五月の見直し案では、この百年確率の洪水に備えるという計画が当面放棄されまして、既往最大級の洪水、これは一九四三年なんですが、既往最大級の洪水の流量毎秒五千四百トンに対応する計画に変更されました。上流のダム、山鳥坂を含めた三つのダム群で洪水調整を毎秒千トンに引き上げる、下流の堤防による洪水調整毎秒四千七百トン、合計毎秒五千七百トンの治水能力を持つ計画へと変更された。
 これは確認だけで結構です、間違いないですね。
竹村政府参考人 間違いございません。私ども、百年に一回の洪水対応から、昭和十八年のあの大洪水、既往最大でございますけれども、それに対応する計画に今変更してございます。
春名分科員 ところが、この五千七百トンの治水能力のうち、山鳥坂ダムが受け持つのは毎秒二百四十トンにすぎないわけですね。もともと山鳥坂ダムの集水面積というのは六十五平方キロしかないんですね。支流の支流の小さいところにつくるんですね、まあ深いわけですけれども。肱川流域全体の集水面積はわずか五%なんですね。
 ですから、ある試算によりますと、下流の大洲市での洪水調整効果はわずか数センチしかないだろうという、もともとそういうものなんですね、このダムの治水効果というのは。この毎秒二百四十トンを除きますと、毎秒五千四百六十トンを他の二つのダムと下流堤防などで受け持つという計画になります。
 つまり、この見直し案によりますと、山鳥坂ダムがなくても、率直に言いまして、既往最大級の洪水、つまり五千四百トンのことです、山鳥坂ダムがなくても五千四百六十トンの治水効果がある、こういう計画になっている。つまり、あなた方が出した見直し計画そのものが、山鳥坂ダムはその意味では必要ないよと言っているようなものじゃないかと私思うんですが、いかがですか。
竹村政府参考人 先ほど申しましたように、この流域はヤツデの葉っぱのような形をしておりまして、各支川が多く広がっていて、そして大洲で合流して長浜に一気に流れていくという形をとってございます。ですから、この流域での治水は、各支川でやれる範囲で水を、洪水をためて、そして大洲で河川改修で守っていく、そして下流では宅地のかさ上げ等やれることをやっていくという総合的な治水、上流から河口に向かっての総合的な治水が必要かと考えております。
 なお、今、ダムの効果についてお話がございましたが、架空の話じゃなくて具体的な話をさせていただきますと、平成十年十月に大きな洪水がございました。平成十年に三千三百九十トンという大きな洪水がございましたが、そのうち約三〇%が既存の野村ダムと鹿野川ダムでカットされまして、二千四百二十トンに低減して大洲を流れたわけでございます。もしこれがダムがなかりせば平成七年以上の大洪水になったと私ども考えておりますが、私ども、ダムというのは、上流で一時的に水をためて、それぞれのダムがみんな協力し合って水をためて、そして下流に安全な水を流していくという基本的な形は何ら変わっていないのかなと考えてございます。
春名分科員 私の質問に答えてもらいたいんですけれども、既往最大級の洪水に備えるということを指定すれば、山鳥坂ダム計画そのものがこのあなた方の計画では必要ないということになっていませんかと問うているわけです。
 それで、肱川の治水計画の推移を見てみたいと思います。
 一九五三年に三千五百トン対応の堤防整備計画が立てられております。次に、一九六一年、肱川治水計画で五十年確率に高められまして、毎秒五千トンに対応できる対策になっています。その前年に完成をした鹿野川ダムで七百五十トン、堤防で四千二百五十トンという計画でありました。さらに、一九七三年、三回目ですが、新たな治水計画ができております。それに沿って、一九八二年に野村ダムが完成しています。
 ちなみに、今まで肱川流域で記録に残っている洪水を調べてみますと、一九四五年の枕崎台風の毎秒五千トンが最高です。それ以外は、三千トン台が四回、二千トン台が十八回、一千トン台が六回、こういうふうになっています。つまり、五千トン対応の治水対策があれば、戦後の洪水はすべて防ぐことができたというのが数字上明らかになっています。つまり、一九六一年の治水計画、毎秒五千トンに対応できる一九六一年の治水計画ですべてを防ぐことができていました。
 もっと言えば、一九七三年以後の場合は、その洪水は、いずれも最高が、先ほど局長おっしゃいましたが、三千三百トン前後であります。にもかかわらず、残念ながら被害が出ている。なぜかということです。ダムは計画どおりにできました。しかし、はっきり言って、下流の堤防の補強等が計画どおりに全く進まなかったからではないでしょうか。せめて一九六一年に立てた治水計画、もっと言えば、一九五三年、最初に立てた三千五百トン対応の堤防整備等の計画を実行していれば、戦後の洪水はすべて防げた、こういうことになります。
 この歴史から見て、今最も大切なことは、何よりも現地の人が要求しているのは、六一年計画どおりの堤防の早期完成、もちろん遊水地ということもあるでしょうし、そういうところにもっと力を注ぐということが今問われているんじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
竹村政府参考人 今委員は戦後の数字を言いましたが、もう一つ私言わせていただきますと、一九四三年の、つまり昭和十八年の洪水、これが五千四百トンでございます。今委員は戦後、二十年以降の最大が五千トンと申しましたが、私はそれはそのとおりだと思いますが、昭和十八年に五千四百トンが出ています。つまり、五千トンというのは、確率でいうと五十分の一でございます。五十分の一というのは、そこで五十年間住んでいたら、間違いなく一回は水につかるという確率でございます。その確率の数字が二年、間一年置いて発生しているわけです、昭和十八年と昭和二十年。つまり、確率論というのはこの程度の信用性でございまして、私ども、自然を相手にしていますので、つまり、昭和二十年の五千トンが来て、五十年に一回というのは大体感じで合っているわけです。五十年間生活していて、昭和二十年に一回やられたということですから。
 つまり、私どもの自然を相手にしているというのはそういうことでございまして、その五十年に一回の洪水があした来るのか、あさって来るのかわからないというところで私ども計画を立てているというのが、自然を相手にしている事業でございますので、昭和二十年以降のデータだけでもって、五千トンでもって、そして、この地域の方々は、五十年に一回、つまり五十年間そこに住んでいたら一回水につかっていいじゃないかという概念は、私ども、現在とってございません。
春名分科員 だから、私は、戦後立てた三つの計画の中の堤防の計画が、全く遅々として進んでいないということについて責任を感じてもらいたいということを言っているわけですよ。
 この計画見直し案には前提がある、これは愛媛新聞の十二月三日付の記事ですが、この見直し案には前提がある、下流の堤防がすべて完成し、ダムの洪水調整ルールを大規模洪水に変更できた上での話である、下流の具体的な河川改修やその予算が未提示の現状では説得力は薄い、ダム建設によって堤防整備がおくれてきたとの不信感もある。こういう愛媛新聞、地元の厳しい指摘も受けとめていただきたいというふうに私は思います。
 そこで、最後に、時間が来ますので申し上げますが、なぜこういう事態になっているかということです。
 つい最近、下流最大の町の大洲市が、二万人、人口三万九千人の町で二万人のダム建設の可否を問う住民投票の直接請求署名が集まっております。実に五割を超える方々、有権者比では六割以上の方が署名に応じるというすごさであります。
 中予地方では、松山の水を考えて中予分水は必要ないという市民団体が十六ですか、生まれまして、全市民的な運動となって広がりました。あなた方が利水や治水のために山鳥坂ダムが必要と長年言い続けてこられましたが、現実には、首長も納得しておりませんし、その上、住民のレベルでは、今申し上げたような大きな亀裂、反対の声が広がっている、この現実を私は国土交通省として真摯に受けとめるべきだと考えます。
 なぜこういう事態になっているのか、私は二つあると思うんです。
 一つは、国土交通省、あなた方が、確かに県知事や首長の動向は聞いていると思います、また一部の学識経験者の意見も聞いていると思います。しかし、大多数の住民の声に耳を傾けていない。もう一つは、初めに山鳥坂ダムありきという姿勢が一貫している。愛媛新聞の社説でも「建設以外の選択肢はないのか」ということが載るぐらいです。こういう姿勢を改めて、新しくできた新河川法に基づく新河川整備計画を、新しい整備計画をきちっと住民参加でつくり直すという姿勢でしっかり臨むべきではないかと私は思います。
 国土交通大臣に最後にその決意をお伺いしておきたいと思います。
扇国務大臣 平成十三年十一月十六日ですけれども、御存じのとおり四国地方整備局の事業評価委員会が開催されて、平成十五年度の概算要求の前に再審査を行うことというふうに言われておりますので、私はそのように運ぶと思っておりますので、今御議論がありましたようなことを勘案しながらこれは審査するものと思っております。
春名分科員 ぜひ、大臣のイニシアチブを期待しておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。
御法川主査 これにて春名直章君の質疑は終了いたしました。
 次に、木下厚君。
木下分科員 おはようございます。民主党の木下でございます。
 扇大臣には、きょう、あすと大変な日程でございますが、ひとついろいろよろしくお願いしたいと思います。
 まず、私自身、道路公団の問題について質問をさせていただきます。
 小泉構造改革の大きな柱、これは特殊法人改革であり、その中でも日本道路公団を含む道路四公団の改革、これが最大の柱であろうと思います。民営化につきましてはもうさまざま議論されておりますので、これについてはまた別の機会に質問させていただきますが、昨年十二月に小泉首相が、新たな発注工事について国費三千億円カットするという発表がございまして、それを受けて道路公団が、新たに発注する十三件について見送り、凍結を発表した。ところが、それからわずか一カ月ぐらいの後、ことしの一月二十三日、突然その十三件の高速道路建設の発注先送りを撤回し、年内に発注再開という経過がありました。
 この件については、予算委員会その他でももう随分質問がありましたが、なぜ急にわずか一カ月で先送りが撤回されて再発注になったのか、改めてその点をお伺いしたいと思います。
藤井参考人 御説明いたします。
 先生御指摘のとおり、昨年の十二月に緊急的に発注延期をいたしました。この段階では、財投機関債千五百億円、外債千二百億円を含む資金確保の問題が非常に不透明になりました。そこで、十三年度の工事であっても三月末で資金ショートする可能性があるということで、そうなりますと、十四年度に発注する予定の予算というのを十三年度の方に回さなきゃいかぬかもしれぬ、こういうような状況が出ましたので、急いで十三年度の支出について検討するためにとめたわけでございます。
 しかし、先生御承知のとおり、その後、一生懸命、十二月の二十五日に、財投機関債につきましては機関投資家への説明会をやっとやれることができました。そして、一月の上旬から中旬にかけて、いわゆる金融関係者といろいろと調整をいたしました結果、一月の末に至りまして、財投機関債の発行が可能な見通しが出ました。その結果が、一回目、御承知の六百五十億でございます。
 さらにその際に、民間資金の確保についてもいろいろと検討いたしました。といいますのは、金利の問題がこれに絡んでまいりますので、厳しい財投機関債のマーケットの状況から、多様な資金でもってこれをカバーしていくべきかなということをいろいろと検討いたしました。その結果、私どもとしては、資金の確保の見通しができましたので、一月の二十五日に、発注延期を行った十三件を含めまして、十三年度に発注すべく予定していた約一千億円、この中に十三件の二百億円も含まれますが、公表して発注を完了したわけでございます。
 なぜ一月の末になったかといいますと、もし、もっとおくらせますと、十三年度中に、工期の関係からいろいろと手続がございますので、発注できなくなります。ということで、先生御指摘の十三件については、およそ三月の末に全部発注させていただいた、こういうことでございます。
木下分科員 今、民営化議論がされております。しかも、小泉さんが国費投入を中止した。本来ならば、やはりここはきちんと工事そのものを当初のとおり凍結してあるいは先送りして徹底的に見直す、これが本来の姿であろうと思います。しかも、この工事は何も今年度だけではない、継続して続けられるわけですから、あえて無理をして借金に借金を重ねる必要はない。
 あえてその再開に踏み切った背景には、これも予算委員会その他でさまざま議論されてきましたが、ある政治家の強い働きかけがあったんじゃありませんか。その点はいかがでございますか。具体的に言えば、青木幹雄参議院自民党幹事長の強い働きかけがあった、このことはいかがでございますか。
藤井参考人 予算委員会でも御説明申し上げましたが、今先生が御指摘の政治家の先生を含めて、質問が十二月にあったのは事実でございます。電話でもってどうなっているんだという御質問でございました。いわゆる発注延期をした経緯についての御質問でございました。
 そこで、私どもは、十三件という多量の、本数が多うございますから、個々に細かく説明することはできませんので、資料でもってお届けをしてその御説明にかえさせていただいた、こういうことでございます。
 なお、先生が今、見直しをすべきではなかったか、こういう御指摘でございますが、私ども、全体的に見直しをさせていただきました。その結果、十三年度、債務として発注する予定だった七千三百四十億円を、最終的には五千六百億円ということで、千七百億円は十三年度に執行いたしませんでした。そして、十四年度に行う四千五百億円の債務の執行の中にこの千七百億円を入れて今後検討させていただく、こういうふうな措置をいたしまして、千七百億円は十三年から十四年に送った、こういう事実はございます。
木下分科員 今、電話があって、どうなんだと、言葉を聞いていると非常に優しく言われたような印象を受けますが、私がいろいろ調査したところによると、相当激しい調子で言っているんじゃありませんか。これは雑誌にもはっきり出ていますが、何でおれのところなんだと。要するに、青木さんの選挙区である仏経山トンネル西工事、これを名前を挙げて強く迫ったんじゃありませんか。名前は挙がっていませんか、具体的に。
藤井参考人 これも予算委員会で御説明申し上げましたが、電話の内容としては、質問ということではございますが、質問もいろいろとそのときのやりとりで、比較的きつい状況から優しい状況までございます。そういう意味で、唐突だったと思いますので、そういうふうな御質問内容ではございました。
 これらについて、私ども、新聞紙上、いろいろな新聞、地元紙もございますし中央紙にもございますが、いろいろな新聞紙上でもそういういろいろな方々が、特に青木先生を初めいろいろな方々がいろいろな御発言をしているというのは、新聞紙上等では仄聞しております。
木下分科員 そうすると、テレビあるいは新聞等に、私も随分テレビ、新聞も見ました。相当激しい調子で、中止になったことに対して青木さんは怒りを持って発言しています。これが影響を与えたことはありませんか。
藤井参考人 もともと、この入札を一時延期させた判断は道路公団自体で私がさせました。
 一月になって、やはり、仕事の中には十四年度、十五年度等に開通するようなものに関連するものも出てまいりますし、計画的に仕事をしていかないと、長期的な事業でございますから、非常に支障があるというようなこともありますから、我々は全部そういう工程管理を、全体の事業の流れを管理しながらやっております。
 そういう意味で、もともと十二月には発注すべき問題でございましたが、それを資金という点でとめたわけでございますので、私ども道路公団として判断したというふうに御説明いたします。
木下分科員 実は、工事発注再開になる前に、私ども民主党に内部告発がありました。仏経山トンネル西工事については、既に談合によって青木幹事長の地元の有力後援者であるフクダ組と東亜建設工業、これが談合によって落札決定しているという内部情報がありまして、私が団長になって島根県へ調査に行ってまいりました。これは、平成十四年一月二十九日に島根県へ調査に行ってきました。
 フクダあるいは東亜建設の地元、あるいはいろいろな地元の建設会社等も聞き取り調査をいたしました。その結果、私は、談合の可能性というのを強く意識してきました。その後、予算委員会等で私どもの同僚が、この調査結果に基づいて質問したわけであります。
 我が党も、青木幹事長について、あっせん利得を含む問題等で告発するという騒ぎがありました。それで、この点をさらに私も突き詰めまして、調査を継続してまいりました。
 その結果、実際に――資料をちょっと配っていただけますか。今資料をお配りしていますが、この青木幹雄さんに対しては、資料一にあるように、受注する予定になっていた株式会社フクダですが、平成十年から十二年にかけてこれだけの政治献金がございます。
 それから、これは地元の仏経山だけではなくて、いわゆる青木さんの影響下にある道路公団中国支社、この発注する予定の工事が四件ございました。それも全部調べさせていただきました。そうしたら物の見事に、それぞれの路線に、青木さんの地元の影響力、後援者、中心になっている後援会の中心人物が社長をやっている会社がきれいに一社ずつ入っておりました。
 したがいまして、私、その後、島根からの帰りに、中国支社へ参りまして、おかしいじゃないか、地元ではこれだけの大きな工事であるから、今ゼネコンを含む建設業界が非常に厳しいときなので、約二十五億円と言われている仏経山トンネルについては、地元ではどこの企業も参加したいんだということを言っていました。ところが、地元ではフクダさんだけ。そしてほかの路線についても、島根県の建設業者が一社ずつきれいに配分されていた。だからこれは、だれか地元の建設業者が仕切って、一社ずつ物の見事に当てはめたんじゃないかということを指摘したわけでございます。
 中国支社へ参りまして、私、支社長を含む総勢十人で迎えていただきました。大変な歓待を受けたわけでありますが、強くその点を指摘して、再開になった以上、改めて公募をやり直してほしい、今までの継続した指名業者を再度入札にするのではなくて、再公募してくれということを強く要請いたしました。
 そうしたら、仏経山西トンネルについてだけは、凍結する前の指名業者八グループ、それに新たに二グループを加えた指名業者を選定しています。そして、結果、三月十九日に落札したところ、物の見事に、その談合で私が指摘したフクダと東亜建設工業を外して、新たに加わったところに落札させています。そして、その他三路線については、凍結前の指名業者がそのまま継続したわけでございます。
 その辺をひとつ教えていただきたいと思うんですが。
藤井参考人 先生御指摘の仏経山につきましては、当初八者でございましたが、十者ということで、全く新しく公募いたしまして、最終的に十者を指名させていただきました。
 同じく、久見トンネルというのが中国横断自動車道にございますが、これは、最初八者の指名でございまして、公募型の指名でございます。しかし、これも最終的には九者出てまいりまして、全く新たに公募いたしまして、それで九者出てまいりましたので、九者をそのまま指名させていただきました。
 それから、佐用ジャンクションのDランプ第一橋の工事につきましては、これは指名競争でございまして、それぞれ、指名という確たる、ちゃんと委員会等々で指名したものでございますので、十者そのままさせていただきました。
 同じく、総社高架橋南工事、これについても同様でございます。
木下分科員 そういう意味では、事前に私を団長とする民主党調査団が行って、やはり中国支社に強く申し入れをした、その効果があったのではないか。公平に入札が行われたかどうかは別にして、改めて私が指摘した業者が落札しなかった、そういう面では多少なりとも何らかの配慮が働いたのではないか、そんな思いがいたします。
 それにしても、こういった公共事業に対して政治家の口きき、これが今さまざま問題になっています。例えば、加藤紘一さんの元事務所代表の佐藤三郎さんの問題、あるいは、残念ですが、我が党の鹿野道彦さんの元秘書の問題、あるいは、最近では鈴木宗男さんの問題、さまざまな疑惑があるんですが、こうした公共事業にまつわる疑惑がこれだけ、マスコミを含め国民の間に公共事業に対する根強い不信感がある、これについて扇大臣、どんなふうな印象を持ちますか。お答えいただきたいと思います。
扇国務大臣 もともと、私が一昨年、全く今まで委員会に出ていない建設大臣になぜなったか、しかも、今まで衆議院議員しか建設大臣はなったことがありません。参議院になったこともないし、ましてや女が建設大臣になったこともありませんでした。それがなぜなったかという原因が、国民の目から見て、こういう不信の目を抱かざるを得ない行為が大臣経験者の中であったということから私が就任したわけですから、その中で、私は、公共工事というものは適正でなければならない。
 そのために、当時の森総理が、全省庁に関係します公共工事に対して督励を出していただいて、わずか三カ月、五年かかると言われました公共工事の入札と契約に関する適正化法、五年を三カ月で、全省庁の協力のもとに、しかも、年末の最後の最後に与野党全部の皆さんが賛成していただいて、この法案ができました。
 これは、昨年の四月から施行されておりますから、まだまだ市町村まで徹底されておりません。けれども、少なくとも談合でありますとか丸投げとか、そういうものを一切禁止、しかも、電子入札と法案にも書いてございます。これをしますと、だれが、いつ、幾らで入札したかもわかるようになり、なおかつ、事前に談合ができなくなるということで、電子入札というものを完全に実施しようと努力しております。そういう意味で国土交通省は、電子入札の方法を一番先頭を切って開発をし、今進行中でございます。
 ただ、今おっしゃったように、それは業者間の話であって、政治家が公共工事から政治献金をもらう、しかも、国民の目から見て、例えば月一万円、年間十二万、普通の、正しい政治支援だなと思えるものがずうっと続いていれば私はそれでいいと思うんですけれども、ある年、突然に金額がふえたり、あるいは選挙のときだけ特別お金がたくさん出ていたり、そういうことがるる疑惑を持たれるということは、私にとっては大変残念なことだと思いますし、法律をつくったときの原点、例えば、政治家のモラル、政治家自身の観念としてはこれは許されるべきものではないと私は思っております。
 ついこの間も、予算委員会等々で小泉総理が、公共工事を受けているところからの企業献金を禁止してはどうかと、そこまでおっしゃいました。現段階では禁止するまでも至りませんけれども、業界団体全部に関しては私たちは少なくともきちんと姿勢を正し、なおかつ政治資金規正法に、正規の法規にのっとっているかどうか、あるいは公職選挙法等の遵守をするということは、少なくとも政治家のイロハのイとして私たちはお互いを認識し、みずからも正していかなければいけない、私はそのように思っております。
 きょうの午後、いろいろなことで参考人招致でるる解明されていくと思いますけれども、同じ同僚議員である、バッジをつけている人間が参考人でありますとか証人喚問に呼ばれなきゃいけないこと自体、国民が政治不信を抱くという、こんな情けないことはあってはならない、私はそう思っておりますので、現に、公共工事をする業者に対しても通達を出しました。
 そして二月には国土交通省の事務次官を長としまして、この法律の周知徹底と公共工事の姿勢というものを正すようにというのを、委員会を立ち上げて今周知徹底を図って、昨年の四月以降、公共工事の法案が通って施行された以後はそういうことがあってはならないということを現に今通達しておりますところで、幸い、現段階までは、昨年の四月以降は、現段階はですよ、まだそういうことが起こっていないので、より市町村まで周知徹底を図りたい。
 そして、政治家はみずからの身を正して国民に疑義を持たれないようにするということは、私はイロハのイだということを強調しておきたいと思います。
木下分科員 大臣のおっしゃること、よくわかるんですが、もう一度お配りした資料一を見ていただきたいんですが、島根県の、それほど公共事業が、あるいは建設工事が非常に厳しいところで、これだけの会社が、やはり青木幹雄後援会並びに青木さんが代表を務める自民党島根県参議院選挙区第一支部へ献金しているわけですね。とりわけ平成十二年は、その支部へ軒並み百万円という形で献金しています。
 これだけではないのです。資料二を見ていただきたいのです。これは、同じ島根県の建設会社から自民党の国民政治協会へこれだけ献金しているわけでございます。
 例えば、先ほど問題になった株式会社フクダ、平成七年四百十二万円、平成八年六百十二万円、平成九年七百五十万円、平成十年六百十二万円、平成十一年五百十二万円、平成十二年五百十二万円、合わせて、この六年間で実に三千四百十万円、これだけの献金を自民党、国民政治協会にしています。あるいはその他、松江市にありますカナツ技研工業、これも二千九百万円、中筋組二千九百万円、まるなか建設二千七百万円、軒並みこれだけの献金をしている。
 もし、これだけの献金をして見返りがなかったら、あるいは工事が受注できなかったら会社は破産しますよ。だから、必死になって青木さんは工事再開してくれと言ったのじゃありませんか。
 大臣、この金額を見て、どう思いますか。
扇国務大臣 これは、政治献金は、少なくともきちんと正式に政治資金規正法で届け出てある金額だから一覧表にお出しになったのだろうと思います。ですから、私、これに対して違反であるかどうかということは、きちんと政治資金規正法に届け出てあれば、これは法的には合法だと言わざるを得ませんけれども、今の二枚目の資料二の金額を見ますと、確かに大変な金額だなと思います。
 特に気をつけなければいけないことは、全国のいろいろな地域がございますけれども、ある地域の基幹産業としては公共工事しかないという、そういう県が幾つかございます。ですから、そういうところは、必死になって県自体の経済そのものを公共工事に依存していると言わざるを得ない地方があるということも重視しなければいけない。だからといって、これだけの金額を出していいとは私は言えないと思います。
 ですから、その辺の相関性というものはどうあるのかということも、私は、ぜひこれは業界に対しての姿勢というものを周知徹底さすということをしなければならないと思っておりますけれども、現段階で、これは政治資金規正法に正式に届け出たものであるということであれば、私はそれは論評を避けたいと思いますけれども、今言った基本的な姿勢というものは考慮して、そして指導していくということは私は必要だと思います。
木下分科員 確かに、資料に挙げた数値は政治資金規正法に基づいて記載されています。しかしこれは、政治資金規正法に合っているから適法であるということじゃないと思うのです。やはりこれは、私たちの税金が確実に還流されているということにほかならない、このことを指摘して、もう一度、今度は資料三を見ていただきたい。
 これは大手ゼネコンから自民党の国民政治協会への献金でございます。これを見ると、またすさまじい、私から見るとすばらしくてよだれが出るほどなんですけれども、自民党さんはすばらしい献金額を持っています。
 実は、昨年末の青木建設あるいは佐藤工業、日産建設、いわゆる上場三社が破綻をしました。さらには三井建設と住友建設あるいはフジタの三社が来春には経営統合、あるいは長谷工コーポレーションや飛島建設、その他大手ゼネコンが軒並み厳しい状況の中で銀行に対する債権放棄を求めています。そして、その銀行に対して国民の税金が公的資金として投入される。そうしたゼネコンからこれだけの献金が毎年毎年自民党に献金されているのです。
 しかも、資料二で指摘しましたように、地元から自民党の国民政治協会に献金された金額、例えば島根から国民政治協会に献金されたものは、ひもつきでその政治家に戻されている。私も何人もの自民党の先生方にお聞きしました。恐らくここに出ている、資料三に出ている大手ゼネコン、これはもちろん道路だけではありません、さまざまな公共事業にかかわっている企業です。しかし年間に、平成十二年だけでも、大林組一千九百万円、竹中工務店二千二百万円、清水建設二千二百万円、前田建設工業二千二百万円、その他一千九百万円、軒並みそうです。そして、平成七年から平成十二年、一番多い大林組は一億三千万円を超える献金が自民党になされている。
 これについて、大臣、これはもう明らかに公共事業を食い物にする税金の還流ではないか、その点をもう一度。
扇国務大臣 私、自民党にいた方がよかったかなと思っておりますけれども……。
 私は、大臣をさせていただいて、しかもこれだけの建設業界、公共工事の量が一番多い、しかも、なぜみんなが建設大臣になりたがったり、運輸大臣になりたがったり、大蔵大臣になりたがったりしたか。
 今おっしゃったように、銀行も政府からのお金をもらってなおかつ献金する、しかも不動産業界も債権放棄をしてもらいながら政治献金をする、私は、それは許されないことだと思っています。それから、談合、丸投げをした業者を今回厳しくしたのは、少なくとも次の入札に参加させない、営業停止、入札禁止期間を長くする、あらゆることをしておりますので、そういう意味では私は、今この数字を見せていただいて、国土交通省として、再度業界指導というものを、また政治家の姿勢というものを正さなければならないと思っています。
木下分科員 大臣のそのお言葉を聞いて少しは安心しました。ひとつリーダーシップを発揮して、公明正大な、透明性の高い公共事業にしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。
御法川主査 これにて木下厚君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)分科員 冒頭、国土交通大臣にお尋ねを申し上げます。
 昨年三月一日、予算委員会の分科会で大臣と御議論をさせていただきました。そして、大臣から、昨年はリニアの問題を絡めて御質問したところ、リニアの問題も、全体の明確な二十一世紀型の交通網のあり方、その基本を考えていきたいという御答弁をちょうだいしております。
 今まで交通網、そして社会資本の充実というものは、時代の変遷の中でいろいろなキーワードを持ちながら対応してきたということは言うまでもありません。明治時代の殖産興業、富国強兵、そして戦後の復興、高度成長、安定成長に入ったらゆとり、潤いということで、そして今、三月十九日に閣議決定がされたようでございますが、地球温暖化対策推進大綱が決定をされ、これから環境にもっと配慮をしながら対応することも望まれております。ちょうどこの三月十九日の大綱の中で、「自動車交通対策」、そして「環境負荷の小さい交通体系の構築」という項もございます。
 大臣、昨年、ちょうど一年というか十三カ月がたっておりますが、その後、大臣は総合的な二十一世紀型の交通網のあり方、これをどのように考えて、これからどんな形で推進なさるのか。冒頭、お伺いをしたいと思います。
扇国務大臣 前にも後藤議員に交通問題で御質問をいただいて、私は、そのときにも申し上げたと思いますけれども、二十世紀、国土交通省、旧運輸省、旧建設省等々、少なくとも四省庁に分かれて、それぞれが、運輸省はいや港湾だ、いや空港だ、建設省はいや高速道路だ、あるいは都市づくりだというふうに縦割りでそれぞれが努力、邁進してきた。
 その結果、いざ二十一世紀、最後になって考えてみれば、縦割りであったために、港湾と空港と道路と鉄道との結節、それがうまくいっていなかったというところも多々出てきた。それは縦割りの弊害である、そういうことが二十世紀の総括として私はあろうと思います。うまくいっているところももちろんありますけれども、総体的にはばらばらであったと言わざるを得ない部分が多々ある。
 それを私は、少なくとも、国土交通省になってその縦割りを外し、そして全国を体系的に見たときに、どことどことどうつないで公共工事を促進していけば集中的な投資になり、しかも、今世界的に日本が大変おくれていると言われる一番の問題は、物流コストの高さです。
 それは、今言ったように、結節がうまくいっていないから、港で荷物を揚げても高速道路に乗せるまで時間がかかる。駅へ持っていったり飛行場へ持っていくのに時間がかかる。そのために、物流コストが世界で恥ずかしいぐらい高くなっている。そのことは、私は考慮していかなければならない。
 岩手で百キロのものを横浜まで送って、高速道路を使って千四百九十円。その同じ百キロが、横浜から船で北米へ送ったら千百円。これでは世界に伍していけないということで、あらゆる点で二十一世紀型の国土交通省としての交通体系を図らなければ、世界に取り残される日本になる。
 そういうことで、私どもは、四省庁を統合したメリットを生かした交通体系を構築しようということで、今年度予算等々から集中的にどこに公共工事を入れるべきかということをやっていく。
 そのためには、全国十ブロックに分けて、各ブロックで、一つの県だけではなくて全国の十ブロックで懇談会を開いて、そこの知事さんあるいは政令指定都市の市長さん、財界、そして全部でこのブロックの体系のあり方を提言していただいて、地方の声で、自分たちの地方で物を考えていく。自分のところは飛行場と鉄道との距離があり過ぎるとか、駅をしていくとか、そういうことを地方の各ブロックで出していただいて、それを積み上げていくということが新たに国土交通省としてできました。
 そういう意味では、今回も、例えて例を挙げれば、小さなことかもしれませんけれども、私は国際的には重要なことだと思っておりますけれども、今まで成田から東京中心まで来るのに五十六分かかっておりました、鉄道を利用して。それを今度は三十数分でしようということも、やはりこれは一緒にできることですし、今度の羽田の四番目の滑走路も、国土交通省になったからこそ、運輸と河川、多摩川の河川も一緒にできるというのは、今までの二十世紀の運輸省と建設省ではとても考えられないことが国土交通省になったからできる。
 そういうような二つの例を見ていただいても、私は、国土交通省がどういう方向に向かっていくか、どうしようかとしていることがわかっていただけるのではないか、そのように変わってまいりました。
後藤(斎)分科員 冒頭、今大臣に、その有機的な旧四省庁の連携という中で、個別のことについて御質問をしたいと思います。
 今大臣が話をされたように、我が国の高速道路も含めた輸送費というものが大変高いと言われております。これはまさに、どこの国と比較するのが適切かわかりませんが、通常、欧米の二、三倍というふうに言われております。
 そして、先ほども私からお話をしたように、一方で、交通渋滞で二酸化炭素がたくさん発生をする、環境負荷型の問題もあります。一方で、昨年から公共事業のあり方全体が問われる中で、道路、ややもすればクマしか通らない道路もたくさんあり、そして一方で、首都高のように慢性渋滞のところもあります。
 そんな中で、私は、交通渋滞、それは環境対策であり、そして生活環境の悪化を食いとめ、それをいい方向に行く、そのような視点から、高速道路は確かに利用者の方に払ってもらう、通行料金で維持をしていくというのが基本でありますが、いろいろな別の制度とか工夫はあると思いますが、先ほど大臣が話された視点も含めて、これから高速道路の利用料、通行料、これを引き下げることが、逆に言えば車両も増加をし、そして環境負荷も少なくなるという視点もあると思います。
 その点について、国土交通省、今どのように考え、これからどのような形でその環境の問題、そして利用者の問題を含めて対応なさるのか、御答弁をお願い申し上げます。
大石政府参考人 高速自動車国道の料金についての考え方いかんという御質問でございます。
 高速自動車国道は、供用当初でこそ一般国道を補完する、そういう道路ネットワークでございましたが、現在、供用延長約七千キロ、まだ総延長の〇・六%程度でございますが、走行台キロでは全道路の約九%。それから、貨物輸送という観点で見ますと、全輸送機関の中で国内貨物輸送の二五%弱を占めるという極めて大きな物流機関となってございます。国民生活の向上や、地域活力の社会形成、地域形成を図る上で極めて不可欠な施設でございます。
 したがいまして、こういった道路利用者から料金値下げについて強い要望があるということにつきましては我々もよく認識いたしております。できるだけ低い料金で高速道路のサービスの提供を受けたいという考え方が多くの方面から寄せられてきておるところでございます。
 しかしながら、現在、道路公団の収入は、要償還金額二十三兆五千億、こういう借入金額に対する償還に充てておるものでございまして、管理費を賄いながら金利を払い、償還をしていくという必要がございました。このような認識を持ちながら、どのようにこたえていくのか苦慮いたしておるところでございます。
 しかし、現在では、今委員からも御指摘ございましたように、長距離割引あるいは別納割引、ハイカ割引や、特に最近大臣からいろいろ御指導いただいておりますスーパー割引、これは周遊券のようなものでございますが、こういったものを拡充するといったようなことをやってまいりました。今後も、ETCの導入その他に対しまして割引を拡充していく、このような考え方でございます。
 しかし、全体に料金水準を下げるという話になりますと、これは採算性の確保について極めて大きな影響を与えますことから、若干慎重な検討が必要であると考えてございます。
 今後、道路公団につきましては、道路関係四公団民営化推進委員会におきまして、交通需要の見通しや金利の見通しを御検討いただき、新組織による高速自動車国道の整備の前提となる採算性の確保に関する基準等について御意見をいただくことになってございまして、この意見を踏まえまして、今後の料金制度のあり方について我々としても検討してまいりたいと考えております。
後藤(斎)分科員 今局長から話をいただいたように、先ほども御指摘をしましたように、確かに、現行の車両の通行料、そして料金を掛け算していけば大変難しいという状況、これも当たり前のことでございます。
 逆に言えば、そうではない思想が地球温暖化京都議定書の一連の流れの中で今出てきた。そして、それを解決するためには社会的コストも必要だということは、産業界そして運輸関係者、そして国民全体もこれからもっともっと理解をしていくという視点を私は忘れてはいけないと思うんです。
 そして、その料金で、プール制で今対応なさっている中で、車両が増加したら、逆に言えば、料金を下げても、結果としてのトータルの売り上げというか通行料は増加をするという視点もぜひ御勘案を賜りながら御議論をしていただきたいと思います。
 そしてもう一点、これもよく言われることでなかなか結論ができない問題でありますが、ちょうど政府全体、経済財政諮問会議の中でも税全体の議論が今されつつあります。そして、今、私がこれからお話をするのは、平成元年に消費税が創設をされました。ちょうど十四年たったということですが、そのとき、ほとんどの物品税はもちろん廃止をされております。ただ、自動車を取得する際の税というものは消費税と一緒にかけられている。いわゆる二重課税ということをよく指摘をされております。
 今、大きな税体系全体を考える中で、私はこの問題も、十四年たっていろいろな御議論をされている中で、もうそろそろ結論を出していかなければいけないのかなというふうに思いますが、今の国土交通省として、自動車取得税と消費税の二重課税の問題、この問題についてどう考え、これからどんな形で進めていかれるのか、御答弁をお願い申し上げます。
大石政府参考人 自動車を取得する際に、消費税と自動車取得税という税が二重にかかっているではないかという御指摘でございます。
 確かに、自動車を取得する際にかかる税といたしましてこの二つの税があるわけでございますが、消費税がいわゆる消費一般に広く負担を求めているという一般財源であるのに対しまして、自動車取得税は、受益者負担の考え方から、国民が必要とする道路整備の財源を確保するために導入いたしたものでございまして、課税の趣旨が異なることから、我々といたしましては問題はないのではないかというように考えております。
 自動車取得税は、現在、地方、これは地方公共団体のうち市町村及び都道府県、指定市の特定財源でございまして、現在の地方の厳しい財政事情にかんがみれば、その減免は地方の道路整備に深刻な影響を与えるものと考えてございます。
 我が国の道路整備水準を考えますと、今後なお国民の期待は大きいものがあると考えておりまして、自動車取得税等の道路特定財源により、今後とも着実な道路整備が必要と考えております。
後藤(斎)分科員 それでは、税体系全体を考える中で、その点について触れずに、現行のままでいくという意思を国土交通省として固めたということですか。
大石政府参考人 税制全体に対する大きな議論が、この自動車取得税以外につきましても、道路特定財源全体についていろいろ議論があることは承知いたしております。
 したがいまして、私が今御説明申し上げましたのは、自動車取得税につきましてはこのような考え方で決着済みと申し上げたのではなくて、もしそういう議論をされる場合には、地方の重要な特定財源となっております自動車取得税という税のあり方について、地方の道路整備の観点から御議論をいただきたい、こういう趣旨で申し上げたものでございます。
後藤(斎)分科員 私、今がいろいろなものを新しくするチャンスだと。これは昨年、もうちょうど一年になる小泉内閣の聖域なき構造改革という一年前の思想に戻れば、私は、従来こうだ、地方はこうだということを、ゼロベースというと大変語弊があるかもしれませんが、一回、本当にこれからどうあるべきかということをやはり考えていただかないと、従来の枠に沿った形で考えていけば何も解決はしないし、そして、その負荷をこれから持つのは国民、それも次世代の国民であるという御認識で議論をしていただけるように強く求めたいと思います。
 そして、私がもう三度になります前払い保証会社の問題であります。昨年もこの問題を取り上げさせていただいて、その当時、二社の新規参入について今申請があり、取り扱っているという話であります。
 昨年から大きく公共事業を取り巻く状況は変化をいたしました。昨年まではいろいろな経済対策の中で、かなり大きなウエートで前年を上回る形で公共事業が増大をしてきました。ことしは、昨年に比べると一〇%以上減少になり、そしてその中で、先ほども話がありましたように、たくさんの建設業者が、中堅、中小零細ともども倒産をする、そんな経済環境の中で、この保証料をどうするかという問題を昨年も指摘をさせていただきました。
 三社の独占というのは、もう四十年以上、五十年近くこの保証事業会社、三社体制で対応されております。なぜ新規参入業者が出てこないのか。昨年も、もっとPRを、新規参入というか、保証事業会社、だれでも資格さえ、要件さえ整えばあるんだよということをPRもしていただけるような形で、積極的な御答弁もいただきました。
 現状、今どんな形で新規参入の議論が進んでいるのか、冒頭、御答弁をお願いします。
岩村政府参考人 先生からそういう御指摘がありまして、その後、二社から申請がございました。それぞれ、愛知県ないし中部圏を営業区域とする会社でございますが、昨年の十二月とことしの一月に登録の申請があったところでございます。
 この登録に当たっては、法律に基づきまして、定款の規定または事業方法書もしくは事業計画書の内容が事業の適正な運営を確保するのに十分なものかどうか、この審査をしなければいけないわけでございます。そういうことで、現在ヒアリングを実施する等行っておりますが、実はその間に、本店の所在地の変更、さらには事業方法書、さらには事業計画書について申請者の方から書類の修正が行われたわけでございます。
 そういうことで若干時間を要しておりますが、我々としては、審査した上で、法律の規定に適合する場合、当然登録をするわけでございまして、現在は、法律上の要件を満たすかどうかについての審査は最終的段階にあるというふうにお答え申し上げたいと思います。
後藤(斎)分科員 昨年の三月も全く同じ御答弁をいただいておりまして、それから十三カ月たった中で、その二件、まだペンディングというか審査中であるという結論でよろしいんですか。
岩村政府参考人 申請が出てまいりましたのは、先ほど申し上げたように、昨年の暮れとことしの一月だったわけでございまして、その後の審査について、先ほど言ったような事情もございます。そういう意味で、先生、昨年同じ御質問がありましたが、失礼、済みません、昨年ではございません、一昨年の十二月とちょっと一年ずつ間違っていました。済みません。
 その間に、先ほど申し上げたように、いろいろ申請者の方から中身の修正がございましたこともありまして、ちょっと時間を要しておりますが、審査は今最終段階にあるということでございます。
後藤(斎)分科員 料率を昨年下げられたという話だったんですが、その後どのような形でコストというか削減の努力をし、それを利用者の方に還元されているのか、教えてください。
岩村政府参考人 保証料率ですが、先生よく御承知のように、事業運営に係る経費、さらには保証事故に係る債務弁済の状況、さらには自己資本の蓄積状況等々を総合的に勘案して、その上で中長期的な経営収支を予測してこの料率を決めているわけでございます。
 現在の前払い保証料率につきましては、昨年の二月に東日本保証が平均一六%、そして昨年の三月には北海道保証及び西日本保証がそれぞれ平均一六%、一五%という引き下げを行ったわけでございます。そして、その際に、各社ごとにそれぞれ割引制度というものも導入をしまして、弾力的な料率制度を導入したところでございます。
 さらに、本年二月には、受注者が破綻した場合に損失の大きい大規模な工事につきまして、企業の信用力に応じた料率格差を導入したところでございます。
後藤(斎)分科員 この三社の問題、新規が出てくればまたいろいろな御議論になるんですが、五十年間同じ体制であるという株式会社の形態、これは大変少ないと思います。まあリスクがあるとか、いろいろな御議論がされておりますが、先ほども木下委員の中で大臣がお答えになったと思いますが、いろいろな入札の適正化という形で、金融、財務能力のかなり厳密な審査のあり方、要件の強化をこの数年間やってきたと思うんです。それがこの五十年間続いている法律の体系と合致しているんでしょうか。それを含めてこれから議論するおつもりはあるんでしょうか。
岩村政府参考人 今委員からも御指摘のように、債務保証会社でございますので、その保証会社自身の信用力といいますか、というものがなければ、また不測の事態も生ずるわけでございまして、法律で定められたいろいろな要件、これが債務保証を行うに足るか、十分に足るかどうか、そういったことの審査はきちっと行われないと、また不測の事態があるかと思います。
 そういう意味で、そういうものに合うものが出てまいりますれば、当然のことながら、競争促進という意味で、承認を与えていくことになろうかというふうに思います。
後藤(斎)分科員 最後に大臣、ちょっとまとめていろいろなお話を聞きたいので、幾つか用意をしたものを御質問させていただきます。
 今、環状線、これも環境負荷を軽減する、そして、大臣が冒頭お答えいただいたように、いろいろな高速道路や一般道との連結、上手にしているという部分で、これから推進していくことが旧建設省の時代から決まっております。
 そして、先ほど、地域の声をという話が大臣からもありましたが、私の地元であります山梨でも、県が提唱を、県内一時間交通圏の確立ということで、その実現を新山梨環状道路ということで求めております。現在はまだ開通しているものは二キロ余りでありますが、全線開通がこれからどうなるのか、それを求める声が初めて――環境問題で反対派という方たちが昨年まではいろいろな御議論をなさっておりましたが、北部区間、甲府の北の方でございますが、初めて積極的に推進する住民の方が二千人弱お集まりになってその集会をしたところでございます。
 これから新山梨環状道路、どのような形で進めていかれるのか、現状も含めてお答えを願います。
大石政府参考人 新山梨環状道路についてお尋ねでございます。
 今委員からお話ございましたように、一部、平成十三年十月に供用を開始いたしたところでございます。
 また、北部区間につきましては、国土交通省におきまして調査を進めておりまして、平成十一年には、山梨県が設置いたしました各界各層の皆様から構成されます新山梨環状道路懇話会におきまして、自然環境の保全、遺跡や文化財の保護などの観点からさまざまな御意見をいただいたところでございます。この懇話会などの議論を踏まえまして、平成十二年十一月からオオタカなどの鳥類の調査を、また平成十三年七月からは遺跡や文化財の調査を進めているところでございます。
 環状道路は、環状を形成することによって都市の大災害等大きな障害へのリダンダンシー、あるいはフレキシビリティーの確保ということに大きく役立つものでございまして、山梨という都市の機能を大幅に拡充するものと確信いたしております。
 したがいまして、今後とも、事業中の南部区間につきましては、早期供用に向け鋭意事業を推進するとともに、調査中の北部区間につきましては、地域の方々の御理解と御協力を早期に得られるよう努めながら、計画の具体化に努力してまいりたいと考えております。
後藤(斎)分科員 もう一点、大臣に最後にお答え願う前に、鎌田川という川、一級河川で甲府の南部を流れる河川でございますが、それが大きなもう一つの一級河川であります笛吹川と合流の地点、たびたび浸水被害があるということで、現在改修工事が進行しておりますが、今後、この鎌田川の河川整備につきましてどのような見通しを持って整備をされるのか、御答弁をお願いします。
竹村政府参考人 委員御質問の鎌田川流域は、甲府市のベッドタウンとして大変重要なところでございまして、平成二年度から改修に着手してございます。笛吹川の合流点から甲府市の高室町の中央自動車高速道路までの区間と支川の山王川の約十キロを対象として事業をやっております。
 現在、予算が大変苦しいので、笛吹川合流点から田富町の身延線付近までの約二・一キロの築堤や護岸工事を行っておりますが、また、上流で用地買収も進めております。
 今後とも、公共事業、特に治水事業は大変苦しいわけでございますが、予算を確保して流域の方々の安全を確保していきたいと考えてございます。
後藤(斎)分科員 もう一点、国道五十二号線甲西道路、これももう二十年近くになる昭和六十年から整備が進められております。全体の十八・二キロのうち九・二キロ、ちょうど半分くらいでありますが、これも中部横断道路や、高規格、先ほどの新環状線、これと相乗効果で発展をしていくというふうに、地域から大変強い要望がございます。
 この点、甲西道路につきまして、現状、見通しについて簡潔に御答弁をお願いします。
大石政府参考人 一般国道五十二号甲西道路につきましては、一部、九・二キロでございますが、供用いたしております。しかし、未供用区間九キロメートルにつきましては、平成十三年度末、面積ベースで約九七%の用地買収が完了いたしておりまして、平成十四年度は、残る区間の用地買収を進めるとともに、改良及び橋梁工事を促進する予定でございます。
 今後とも、皆様の御協力を得ながら、平成十六年ごろの供用を目指し、事業を推進してまいりたいと考えております。
後藤(斎)分科員 最後に大臣に御質問申し上げます。
 昨年もお伺いをしましたが、昨年と打って変わって、公共事業が総事業比で、国土交通省ベースで一四%減少した二十三兆円程度の全体の事業、これが中小零細ゼネコンを大きく、特に地方では受けとめており、今後の先行きについていろいろな不安視する声もございます。一方で、大手ゼネコンを中心に海外への進出ということで、平成八年には一兆六千億ほど、海外への進出がありましたが、現状では半減くらいをしているということでございます。
 大臣、これからの国土交通省の問題として、この中小零細をどれだけ地域に根差した形で育成していくかということが必要だというふうに思っております。
 大手の関係では、建設産業再生プログラム等々のプログラムを大きく推進しておりますが、中小ではなかなかその点、大変小さいということもあって、また数も多いということもあって、進んでいないのが現状でありますが、これから受注機会の確保も含めて、中小ゼネコンをどういうふうに育成していくのか、最後に御質問をしたいと思います。
扇国務大臣 もともと、今の工事と建設業界の数、どうあるべきか。公共工事が二〇%減、ところが建設業界はふえ続けているということを考えれば、私は、中小零細だけではなくて、大企業も合併したり淘汰される時代ですから、私は、より中小企業の資金繰りが悪化しているというのは、おっしゃるとおりだろうと思います。
 そういう意味で、未完成工事の代金を保証するとか、あるいはそれを担保にして中小建設業者の資金の調達の円滑化を図るという、いわゆる下請セーフティーネットの債務保証事業、こういうことも私たちはしていかなければいけないと思っておりますし、少なくとも、平成十三年度の第一次補正でこれを充実したというところでございますので、小さいところに仕事を渡せば渡すだけ単価が下がらないという、これも苦しい問題で、今後も、中小企業を育成する上でより充実をしたセーフティーネットを図っていく必要があろうと思っております。
後藤(斎)分科員 以上で終わります。ありがとうございます。
御法川主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)分科員 民主党の山田敏雅でございます。
 午前中最後の質問でございますので、もう三十分お願いいたします。
 きょうは、扇大臣の所信表明を持ってまいりました。私は、きょうは、自然の再生、環境の問題についてちょっと御質問したいと思います。
 大臣はこの所信表明の中で、平成十四年度国土交通省予算につきましては、こう申されております。その配分は特に環境問題に重点分野をシフトしたい、こういうふうに述べられております。また、環境対策について、自然再生事業の推進による自然と共生する国土、これに重点を入れたい、さらに海洋汚染、こういうことでございます。
 私の地元に、日本で最初の河口堰がございます。約二十五年前にできたものですけれども、私は、きょうはこの問題を、この大臣の所信等を踏まえまして御質問させていただきたいと思います。
 大臣、まず、ここに所信表明されましたので、当然強い意思を持っていらっしゃると思います。自然と共生する、あるいは環境の、特に自然再生事業というのですか、これは予算を大体幾らぐらいだと覚えていらっしゃいますか。大体七百億円ぐらいだと聞いておりますが、よろしいでしょうか。
竹村政府参考人 大変申しわけありません。その数字につきましては、後ほどきちんと積み上げましてお答えさせていただきます。
山田(敏)分科員 国土交通の予算の中で、やはり二十一世紀は、環境を破壊するんじゃなくて環境を大切にしていく、自然を再生していくという考えをぜひ進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、広島県にあります日本で一番古い河口堰、芦田川の河口堰についてでございます。
 これは、二十五年前に、工業用水が必要だ、日本鋼管という大変世界的な規模の製鉄所をつくるという経緯でつくられました。当初十七万トン毎日使うということで堰が完成いたしましたけれども、現実には今六万から七万トンしか使われておりません。なおかつ、需要がこれから伸びるというよりは、むしろ下降ぎみになっていく。それから、もう一つ大きな役割でありました渇水について、水をためるということですね、これにつきましては、五年前に上流に八田原ダムという六千万トン規模の非常に大きなダムができましたので、この渇水ということも解決されました。さらに、水不足を反映しまして、隣の岡山県から高梁川の水系を使って水を供給する、こういうことができ上がりました。二十五年前の状況と著しく状況が変わりました。もはやこの河口堰をつくるという当初の目的もほとんどなくなって、重要な役割はもう終わってしまったというふうに考えます。
 それと、もう一つ重要なことは、この河口堰が完成したことによって、二十五年の間に川と海が大きく変わりました。
 川は、せきとめられましたので川と呼ばれなくて、ため池になって、水が腐っていくという現象が起こっておりまして、ことしで二十九年連続、一級河川の中で水質ワーストワン、こういうことでございます。さらに、ヤマトシジミというのがたくさんとれたのですが、これが全滅をいたしました。アユとかアサリとか、淡水漁協の組合長さんに聞きましたけれども、二十五年前にその辺にあった生き物はほとんど死滅しましたと。
 さらに、海側につきましては、干潟がなくなりました。それによってノリがとれなくなったとか、あるいは先ほど申しましたアサリとかシジミがなくなった。さらに、海に砂と栄養が注ぎ込まれなくなったということで、先ほど申しました非常に重要な干潟が全部なくなって、そのかわりに今ヘドロがたまっております。
 この芦田川の河口域は、瀬戸内海の非常に重要な部分でありまして、ちょうど潮の境目になっております。ここが浄化がなされないということで、近年、瀬戸内海の水質も非常に悪くなってきております。
 以上、簡単に御説明いたしましたけれども、大臣、今、この所信表明の中の言葉と、今私が申し上げました一番古い河口堰について、御感想はいかがですか。
扇国務大臣 私の所信表明は二十一世紀の姿を表明したものでございまして、過去に行った公共工事等々も、川も蛇行しようとか土手は木を植えようとか、あるいは都市のヒートアイランド現象に伴って、ビルの上には緑をしようとか、私は、二十一世紀型の公共工事あるいは環境を加味した公共工事をするべきであるということを所信で申し上げましたので、過去に関してもいろいろなことで手を入れなきゃいけない時期が来れば、二十一世紀型に変えていくべきであろうと思っております。
山田(敏)分科員 そこで、この河口堰は重要な役割が終わったと私は認識しておりますけれども、河川局の方ではどういう認識をされておりますでしょうか。
竹村政府参考人 委員御指摘の芦田川河口堰でございますが、日本最初の河口堰というお話でございましたが、日本最初の可動堰でございます。その以前から草戸堰というのが潮どめ堰としてございました。その堰がありますと、洪水のとき、洪水がかさ上げしてしまって非常に危険である、多くの被害を受けたということで、この川の中に固定してある堰を取って、そして洪水のときには堰をあけて安全に洪水を流そうという最初の可動堰でございます。
 現在、全国百八の一級水系がございますが、一級水系の河口には潮どめ堰五十四がございます、利根河口堰だとか。私ども東京都民が飲んでいるのは、江戸川に河口堰がございまして、潮をとめているので初めて金町の浄水場で安全な水が飲めるという状況になってございます。
 ですから、私ども河口に住んでいる人間、私どもの文明は、どうしても海との、潮が上がってくることとの闘いでございました。
 この福山も全く典型的にそのとおりでございまして、一六一九年、水野勝成さんが福山に入府して以来ずっと、穴の海と呼ばれていた、海がずっと奥に入り込んでいたところの干拓の歴史でございました。この地域は、まさに干拓の歴史の中にあったと思っています。
 この低平地につくった福山という非常に水はけの悪いところで大きな文明が今営まれてございます。具体的に申しますと、今委員御指摘のNKKが一万二千人の雇用でもって年間七千五百億の生産をしております。この地域の最も重要な産業としてこの地域に貢献してございます。
 この貢献している工業用水をとるのが実はこの芦田川河口堰でございまして、今御指摘の、現在六万から七万ぐらいしかとっていないんじゃないかということでございますが、日量平均でいいますとそうでございますが、日量最大でいきますと八万から九万六千トンをとっておりまして、九万六千トンというのは現在の芦田川河口堰でとれる目いっぱいでございますが、この九万六千トン目いっぱいとる年もあるということでございます。
 この地域において、水、塩水ではなくて淡水をとるということでは、この芦田川河口堰はこれからもこの地域に寄与していくものと考えてございます。
山田(敏)分科員 これは、私が今せっかく一生懸命説明したことをよくわかっていただけない答弁だったと思うのです。当初予定した十七万トンに比べて、日量平均で六万から七万トンに減ったということ、それから、八田原ダム、六千万トンという大きなダムが上流にできたこと。先ほど、潮どめがあって洪水の問題があると。この問題は大きなダムができたことによってもう状況が変わってきた。それから、工業用水の需要も、十七万トンの予定でできたものが変わってしまったということ、それから、他に水を求める水源があったということ、この三つのことを今申し上げたので、それを全然聞かないで、今でも工業用水の需要はあります、潮どめの重要性はありますという御答弁では、前もって書かれたと思うのですけれども、よく理解して、考えて答弁していただきたい。
 この問題は、今大臣が所信表明を申されたように、海と川を遮断してしまうということは、そこに住む人間にとっても自然にとっても非常に重要な問題でありまして、工業用水をとるため、すなわち必要であるけれども、これは環境にとって非常に悪いことをやってきたわけですから。しかし、今私が申し上げたように、三つの点で今は二十五年前と状況が大きく変わってしまったという状況があるのであれば、河口堰を開放するための検討を始めてもいいんじゃないか。実際、そういうふうにお考えになりませんか。
竹村政府参考人 八田原ダムの関係についてまず一点。
 まず、八田原ダムは福山等の上水道を目的とした、または先ほど申しました福山工水を目的としたものでございますが、工業用水の五万トンはもう既に需要が発生している、上水道の十万トンも福山は発生しており、その他の市町村も、トータル十二万トンでございますが、ほぼ発生しているということで、八田原ダムの水は有効に使われております。
 なお、そういう前提がございまして、芦田川河口堰がトータルで十七万トン、十分水需要が発生していないのではないかということでございますが、現在、芦田川河口堰がしゅんせつの途上でございまして、芦田川河口堰が使える水の量が九万六千トンでございます。その九万六千トンを目いっぱいこの芦田川河口堰では現在水利権の許可をして、この地域の産業に寄与しているということでございまして、これから気象変動が大変激しくなる中で安定的に産業を営むためにも、この芦田川河口堰はこれからもこの地域の産業のために貢献していくという御説明を申したわけでございます。
山田(敏)分科員 日量平均六万、七万トン。今おっしゃったのは最高、一番高いレベルのところの九万トンというのをおっしゃっているんですけれども、いずれにしても、この六万トン、七万トンが重要だという御説明なんですよね。どこかから水を手当てできればこの河口堰は必要なくなるんですね。一番手っ取り早い方法は、この八田原ダムが、常満といって、六千万トンの能力があるのに二千三百万トンしかふだん水をためない、それ以上になると放水してしまう、これをもう少し弾力的に運営して、三千万トン、このぐらいにしておくと、この六万トンから七万トンの水を供給できる能力が生まれるわけですね。
 これについて河川局にお伺いしましたら、水をためる、ふやすということは、水利権というのがあるんだ、それについて新たに百億円出しなさいと。要するに、水を利用する使途に応じてダムの費用を負担しているからだ、こういう御説明なんですけれども、この八田原ダムの弾力的な運営についてどういうふうにお考えでしょうか。
竹村政府参考人 委員御指摘のダムの弾力運用は、現在既に実施してございます。八田原ダムじゃなくて全国で、各ダムで実施しております。
 それはどういうことかと申しますと、ダムというのは、水が豊かなときに水をためて、それを渇水のときに補給するという利水の目的と、洪水が来たとき、その洪水をためなきゃいけないということで空にしておかなきゃいけないという二つの事情がございまして、洪水が来るときにはある程度空にしておいて、そこで洪水をためるというのが洪水目的でございます。そのための費用負担も国、県がしているわけでございますが、今委員御指摘の弾力運用は、その空の部分を少し水をためていいじゃないだろうか、そして、洪水が来たら事前にその水を放流して洪水を待ち受ければいいんじゃないかということだと私は認識してございます。
 全国で行っている二十のダムもそのような経緯でございますが、ここで一番大事なことは何をチェックしなきゃいけないかと申しますと、洪水が事前に来るとわかった瞬間、ダムから放流しなきゃいけません、事前に。そのときは、まさに天気はすっからかんにいいときなんです。いいときに事前に人工洪水を出すわけでございます。私ども、専門用語で事前放流と呼んでおりますが、そういうときに、その下流部で子供たちやキャンプの方々が安全に避難できる体制がとれているかどうかということが一番のチェックポイントになります。そのチェックポイントがクリアさえできれば私どもは弾力運用をやろうということでやっているわけでございますが、この八田原ダムの下流には、有名な河佐峡という大変立派な憩いの場がございまして、多くの子供たちがあそこでプール遊びをし、または水泳をし、さまざまな家族の方が夏はあそこで楽しんでおられるということがございまして、私ども、全く台風が来ない、雨が降らないうちに、天気のときにあの方々が全部安全に退避できるかどうかということが現時点では自信がない、またはできないという認識を今持っておりまして、八田原ダムではダムの弾力運用ということを対象としておらないというのが現状でございまして、今後は、私どもさまざまな情報機器または警報装置等をこれからの課題と認識してございます。
山田(敏)分科員 今の御答弁で、私もキャンプ場に行ってまいりましたけれども、そんなに広いところではなくて、警報をしっかりやれば避難していただくというのはできると思うんですけれども、もしそういうことができるのであれば弾力的運用をするという御答弁だと思います。
 六千万トンのダムに最高二千三百万トンしかためない、ダムへ行くといつも半分以下の水しかない、いかにも非効率なやり方だ。このやり方を、百年に一度、二百年に一度の洪水があったときに備えるんだという御説明なんですね。六千万トンの中にふだん一番最高で二千三百万トンしかためないわけですから。
 この考え方は、気象の予測が非常に進歩した現代において、これはちょっと大分古い考え方じゃないかなと思うんですが、今本当に最先端の気象予測で、百年に一度あるいは二百年に一度の大雨がそんなに予想できないものなんでしょうか。その点はどういうふうに認識されていますでしょうか。
竹村政府参考人 先ほど、私ども全国で二十のダムで弾力運用をやっていると申しましたが、それは、川の長さが長かったり、直下流に大きな都市が展開していないというのが一つの目安になってございますが、この八田原下流は、もう委員御承知のように、大変多くの方々が住み、重要な生活の拠点、産業の拠点となってございます。
 私ども、気象庁と協力しまして事前の気象の予測をやっておりますが、もしこの八田原ダムで弾力運用をやるとすると、約二十四時間前から毎秒百五十立方メートルという人工洪水を出さなければいけないという状況を私どもシミュレーションしてございます。現時点では、毎秒百五十立方メートルの人工洪水を、天気がいい、台風が来るという予測だけでもって出さざるを得ないというのは大変過酷な運用でございまして、この八田原ダムにおいては、こういう下流の状況では、現在私ども弾力運用をやっておらない、または対象としていないというのが現状でございますが、今後とも気象庁と協力しまして、下流に都市が展開しているところの川の管理を一体どうしようかということは、これから重要なテーマと認識してございます。
山田(敏)分科員 一回目の御答弁と二回目と、ちょっと話が変わったんですが、一回目は、キャンプ場の避難がちゃんとできれば弾力的運用をしてもいいと。今御答弁になったら、今度は、下流に人がたくさん住んでいる場合は難しい、こういうことなんですけれども。
 百年に一度、二百年に一度の洪水のために六千万トンのダムに最高で二千三百万トンしか水がためられないということは、ちょっと常識では考えられないと思いますので、今後引き続き検討されるということでございますので、よろしくお願いいたします。
 今国土交通省は、一級河川が二十九年連続で水質がワーストワンということですので、清流ルネッサンスという、そういう計画を立てておられます。今までは行政サイドだけで浄化計画をやろうということであったんですが、どうも地元の国土交通省にお聞きしますと、この中に市民の方の意見も入れてこれからはやろうというところで意見をお伺いいたしました。
 そこまではよかったんですが、また大臣の所信を引用して大変恐縮ですが、最後に、国民との対話を重視しましょう、こういうことなんですが、今この芦田川の河口堰をあけることの問題点、これは今まで一度も検討されたことがない、行政の話題にもなったことがない。あけるためには、今も私が申しましたように、六万トン、七万トンの水の水源をどこかからとってくれば、そしてだれが費用を負担するかということがわかれば、この河口堰はあけて、もとの自然の川と海に戻すことができるわけですね。重要な役割の終わった河口堰でございますので、これについて、じゃ、具体的にいつまでにどんなという検討会が必要なんですね。
 この河口堰をぜひあけたいという市民運動の方がたくさんいらっしゃるんですが、その代表が、私たちもこの清流ルネッサンスの委員会の委員にしてくださいというふうに申し入れをされまして、今のところ、それは拒否された状況なんですが、これについて河川局の方はいかがお考えでしょうか。
竹村政府参考人 私ども、流域の水質の悪さは、川の問題ではなくてその流域の問題だと思っておりまして、流域の方々すべてが参加して河川の水質をよくしようということは、これからの河川行政だと認識しております。
 特にこの芦田川は、支川の高屋川という大変汚い、汚れた川が入ってまいりますので、その高屋川に水質浄化装置を六十四億円かけて私どもは完成しました。その水質浄化装置を完成して、まだ一年間しか運用していないんですが、その効果が大変上がりまして、去年段階では、環境基準五項目をすべてクリアしてしまったということでございます。私ども、この高屋川等の水質浄化は着実に進んでいると認識しております。
 そういう中で、私ども、内水面の漁業関係者、海の漁業関係者、そしてNPOの関係者の方々、そしてもちろん学識経験者、地元の議会の方々のさまざまな意見を聞きながら、こういう川の水質浄化について当たっていきたいと思っております。
 今、委員の御指摘の点は、私ども、だれがどのようなことを言ったか現時点では認識しておりませんが、これから中国地方整備局が幅広くさまざまな御意見を持った方々の御意見も聞きながら進んでいくと認識しております。
山田(敏)分科員 河口堰が長年自然にどんなに大きな影響を与えたかということを、まじめにやっていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいますので、その方をぜひメンバーに入れていただけるというふうに今の御答弁で私は感じましたので、よろしくお願いいたします。
 最後に、費用対効果についてちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども。
 先ほど申し上げましたように、瀬戸内海の干潟というのは、特に備後地区については、今大きな工場ができたということもありまして、昔あった干潟はほとんど埋め立てられてなくなってしまいました。最後の干潟がこの河口域の大きな干潟だったんですけれども、これも今消滅してしまいました。干潟で海が浄化されるんですけれども。
 今、国土交通省もいろいろ研究なさっていて、人工的に干潟をつくろうとかいうことをおやりになっているんですが、莫大な費用がかかる。これを、河口堰をあけることによってまた干潟を再生するということは、非常に国にとっても安上がりだと思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
扇国務大臣 日本列島、周り全部海でございます。そういう意味では、それぞれの日本の地形、そして地域の皆さんの御事情等々を踏まえて、まず私たちは、国民の生命財産を守るという大前提のもとに、今後二十一世紀は環境を加味したものにしていく。そして、安全を図るということでは、一地域だけのことにこだわらず、全国のそういうものを、私たちは改めて、自然を回復するということと、そして自然を今後は壊さない、そういう大事な原点に立って今後の行政を進めていきたいと思っております。
竹村政府参考人 数字的なことだけを御紹介させていただきます。
 確かに、過去四百年来、埋め立てで、干拓で干潟はなくなってまいりましたが、現在、河口堰から海側、百メーターから二百メーターの幅で三十ヘクタールの干潟が残ってございます。そこには、ゴカイや貝などの底生生物がすんでおりまして、トビハゼ等の魚がいます。それをえさとしますアオサギやハジロカイツブリなどの鳥類が観察されておりまして、私ども、ずっとこれを観測しておりますが、大きな変化がなく、この干潟は今大事に守られていると認識しております。
山田(敏)分科員 今残っているわずかな干潟のことを御説明されたんですけれども、私、子供のころからずっとそこで遊んでおりますので、今おっしゃった面積とは比較にならない大きな干潟があったわけですから、それが消滅したことを認識していただきたいと思います。
 時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
御法川主査 これにて山田敏雅君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
御法川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 建設省所管、住宅金融公庫について質疑を続行いたします。塩田晋君。
塩田分科員 自由党の塩田晋でございます。
 扇国土交通大臣にお伺いいたします。公共事業の今後のあり方について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
 公共事業につきましては、最近、とみに縮小論が高まっております。これには、地方財政、国を含めましての財源不足という赤字財政の問題があります。また、もう行き届いて公共事業をやる余地はなくなりつつあるということもありますし、あるいは談合とか話し合いの不祥事もありましたし、また、かつてのような不況対策として余り効果がないというような議論がありまして、消極論が多くなってきておるわけでございます。
 私は、必要な公共事業は審査をして、やらなければならないというものは断固やるべしという考え方でございます。やはり産業なり生活のインフラの整備、いわゆる社会資本の整備はまだまだ我が国においては十分でないという認識でございますし、まだまだやるところは、地方でも、市街地におきましても、かなりのものがあるというふうに認識をしているところでございます。
 また、このような不況のときに、不況スパイラルを起こすような公共事業縮小、減少をやってはならない、このように思いますが、大臣はいかがでございますか。
扇国務大臣 世間の風潮といいますか、野党の先生方も、国会の中で、公共工事のむだ遣い、公共工事不要論等々議論がいろいろ出てまいりますけれども、では、果たして日本全体の社会資本整備というものは確立されたかどうか、私は、その点が大きな問題になろうと思います。
 例えて言えば、塩田先生がおっしゃいますように、社会資本整備一つとってみても、多くの例を挙げると時間をとりますからやめますけれども、例えば下水道事業一つとってみても、日本の下水道の水準はわずか全国六二%でございます。五万人以下の地域ではもっと低いのです。ですから、下水道整備一つとってみても、まだ欧米先進国にはほど遠いという日本の現状。外国ではほとんど一〇〇%です。また、あらゆる意味での道路整備。あるいは、道路がなぜ込むか。この混雑、渋滞。この渋滞による多くの損失、時間的損失、それを時間単位に計算すれば、東京都だけとってみても大変な損失がある。そういう意味で、あらゆる点で日本の社会資本整備ともども日本の水準を世界のどの程度に持っていくのか。経済では先進国と言われますけれども、社会資本では先進国と言い得ない日本の現状、それをどうするかということ。
 まだまだ公共工事は必要な部分が多々ある。ただ、確かに、おっしゃるように、むだはやめて、そして、ばらまきということではなくて、各地方も、二十世紀は均衡ある国土の発展という言葉とともに水準を上げてまいりましたけれども、二十一世紀は、その均衡ある国土の発展を今度は方向転換をして、個性ある地域の発展、それぞれの地域が、それこそ、あめ玉を切ったらどこも同じ顔というのではなくて、個性のある地域の発展をするためには、どの地方にどういう公共工事を、金額を重要視し、そしてシフトしていくか。そういうことも、地域の御意見を踏まえて、今後は、二十一世紀型の公共工事はそのように変化していかなければならない、そういうふうに私は考えております。
 公共工事自体の不要論ではなくて、公共工事を、いかに集中し、なお資金もそこに注入して、短期に仕上げて、そしてコストダウンを図るかというふうに変えていくべきだという観念で、私は二十一世紀の国土交通省の政策を考えているところでございます。
塩田分科員 扇大臣のかたい決意、また構想につきましてお伺いいたしまして、心強く感ずるところでございます。ぜひとも、公共事業について、やるべきものは断固としてやるという態度を持って方針を立てていただきたいと思います。
 国民感情として、よく目にして、いろいろな意見が出てきますのは、年度末が特にそうですけれども、掘り返してはまた埋め、また同じようなところを次の年に掘り返して埋める、こういったことを目にしまして、かなりむだじゃないかという意見がどうしても出てくる。しかも、年度末にどうしてこんなに集中してやるのか、こういったことも言われておりますが、こういった問題に対する対策、もう既にやってこられたと思いますけれども、いかがでございますか。
扇国務大臣 私自身も、国民の一人として、道路を通っておりますときに、年末になると渋滞が起こり、また同じところを、この間やっていたのにまたしている、そう思わざるを得ないことがたくさんございます。そういう意味で、私は、横の連絡をよくしているのかと。きょうは電気工事、あしたは電話工事、あさっては水道工事と、同じようなところを同じように掘っているというようなことがなきにしもあらず。
 そういうことで、工事のあり方、発注する工事の均等化、一年間平均して均等に工事を発注する、また受注するということでなければならないのですけれども、例えば、予算を通していただきましたけれども、大体地方自治体が議会を開きますのが四月、五月で、予算の執行はその議会の議を経てからということで、一年の予算をつけながら四月、五月は空白期になるというようなこともございます。そういう意味では、全体的に予算の均等化、そして発注の均等化。
 季節別でまた工事がふえる。寒いところの地域はそれはしようがないのですけれども、公共工事の発注の均等化、それから予算の配分の公平化という意味でも、私は、そういうむだだと思われることは大いに今後検討し、しかも共同溝というものをつくって、一カ所掘れば全部済むというふうに共同溝構想というものも全国に張りめぐらしていかなければいけない。電柱の地中化もその共同溝に埋める、そういう方向で持っていきたいと思っております。
塩田分科員 扇大臣が以前から言っておられました電柱の地中化、これは諸外国、特に欧米先進国並みにはまだなかなか日本はいっていない。これをつくるときは、やはりいろいろな配線はそこに集中して一挙に行うということもひとつ念頭に置いてこの事業は進めていただきたいと思います。
 続きまして、都道府県、市町村、地方公共団体の公共事業のうち、建設省の、旧建設省ですが、補助事業の実施経理につきまして、平成十年度、十一年度の会計検査院の検査報告によりますと、かなりの数の施工不良、設計不適切、過大交付等の指摘がなされております。これらは既に改善され、今後は、不当な国費の支出、むだといったものがないように努めておられると思いますが、期待をしたいところでございますが、いかがでございますか。
扇国務大臣 今御指摘のありましたように、検査院からの報告等々で、施工不良でございますとか設計の不適切、そして過大交付などについては本当に遺憾なことだと思っております。
 あらゆる点で、補助事業に対しましては、国庫補助金の返還をいたしまして、また事業の目的を達成するように手直し工事を施工させ、あらゆる処置をとっておりますけれども、もともとこういうのは関係法令の遵守、これが原則でございますので、今後は、設計審査の徹底ですとか、あるいは施工の厳正な監督、それから検査をしますときの実施等に一層努力するように通達も出しております。また、全都道府県の担当者会議を開きまして、再発防止に努めるようにということもしております。
 また、昨年の一月の国土交通省の発足に当たりまして、補助事業に関します事務というのを地方整備局に全部なるべく委任しようということで、地方の活力を上げるようにということで、国が全部するのではなくて、各地方整備局にこれも分配をして、なるべく国が関与しないで地方の特性を生かしてもらおうというふうにしておりますので、そういう意味では、今後も地方の整備局に権限が委譲するということ、お金だけではなくて権限も委譲する、お金と権限と両方相まって地方整備局等々に委譲するということをしております。
 そういう意味では、今後も、地方の公共団体との業務とか、あるいはその達成というものは、よりこれから根本的に、地方ですから目配りが細かくいきますので、そういう意味では改善されるものと期待し、また、そのように指導していきたいと思っております。
塩田分科員 ぜひとも今後、そのような指摘がたびたびされないように、十分に気をつけて事業を進めていただきたいと思います。
 次に、国土交通省の直轄事業、これは、競争入札それから指名入札、あるいは随意契約というような形で発注されているものと思います。それぞれの事業主体の規模だとか金額あるいは手続等について定められて、これが公正、自由競争、そして公開といった原則のもとに適正に行われているものと思われますが、これに関しまして、他の省庁で、これも会計検査院が指摘されているところでございますけれども、当然競争入札にすべき大きな事業につきまして、これを分割して、小刻みにして随意契約に持っていっているという例が指摘されておりますが、国土交通省関係ではそのような例はないでしょうか。お伺いします。
扇国務大臣 国土交通省の直轄工事に関しましては、塩田議員既に御存じだと思いますけれども、現在、六億六千万円以上の工事につきましては一般参入の一般競争入札をしております。それから、二億円以上六億六千万円未満の工事につきましては公募型の指名競争入札、そして一億円以上二億円未満の工事につきましては工事希望型の指名競争入札、一億円未満の工事については通常の指名競争入札ということになっております。
 また、随意契約につきましては、契約の性質または目的が競争を許さない場合、また、もう一つ条件として、緊急の必要により競争に付することができない場合等において随意は例外的に実施しているというのが実情でございます。
 大規模の工事を故意に分割しているのではないかというふうに世間でよく言われるんですけれども、そうではなくて、こういう条件をつけて随意はしている、今の二項目でございますので、今後そういうことのないように、特に国土交通省は公共工事等々の受注が多いものですから、その点は気をつけていきたいと思っております。
塩田分科員 これはうわさでございますが、耳に入ってきますのは、何キロという距離の道路工事につきまして、これを何十メートルか百メートルごとに区切って、地方の業者の対策でもあるということで、随意契約的な発注をしてやっているというようなうわさを聞くんです。具体的につかんだ例はないんですけれども、国土交通省の関係では、そういうことは聞いておられませんですか。
扇国務大臣 これは私も疑義を持っております。
 と申しますのは、例えば、百キロあるところを三十キロずつ、大体三分割して地元の業者を入れてくれ、特に工事に関してはなるべく地元を入れてくださいという御要望も、これはあることでございますから、そうすることがいいことか悪いことか、これもクエスチョンマークの部分があります。それと、もう一つ言えることは、百キロ全部一括でやれば安く済むのに、三分割すれば、それぞれコストを出しますから、コストダウンができないというような、コストアップにつながるんじゃないかというそのクエスチョンマークもあります。
 そういう意味では、現段階では、私自身がおかしいなと思ったりなんかした部分はなきにしもあらずでございます。私は、皆さん方がおっしゃるように、地元業者になるべく受注機会をふやすんだということの利点とコストダウンができないというその合間で悩ましいことがあるなと思わないことはございませんけれども、原則的に、それをわざと個別に分けて、そして随意に持っていっているというような事実は現実的には現在ございませんけれども、私自身がクエスチョンマークかなと思ったことは事実あるというのは言えます。
塩田分科員 率直に言っていただきまして、ありがとうございました。
 他の省庁で指摘されたところによりますと、こういった小刻みの随意契約によって大体国費の二、三割がむだ遣いされているという指摘もあるようでございますし、そのようなことの起こらないように、大きな予算を抱えておられる国土交通省でございますから、ひとつ十分に気配りをしてやっていっていただきたいと存じます。
 続きまして、地域の問題でございますが、私の地元、兵庫県の東播地域についてお伺いいたします。
 私は、昭和五十四年十月当選以来、真っ先に南北道路の問題と鉄道の高架事業、そして下水道の問題を取り上げまして、毎回国会に要望し、また追求をしてきたところでございますが、おかげさまで非常に進捗をしておりまして、あの地域、南北道路にいたしましても、鉄道高架連続立体交差にいたしましても、かなり進んでおります。これは感謝を申し上げたいと思います。
 最近の進捗状況について御説明をいただきたいと思うんですが、JR山陽本線の加古川駅周辺の連続立体交差事業、これは平成十五年春に完成ということを前に答弁をいただいておったんですが、その後の状況はどうなっているかということと、それから、駅の西にある大きな幹線道路の跨線橋があるんですけれども、これは高架ができ上がるときに切り落とすわけですね。これは交通遮断になると思うんですが、一日か二日でできるんだという説と、いや、一カ月ぐらい遮断されるんだという説もあるんですが、この辺はどうなっているかということにつきまして、御説明をお願いいたします。
澤井政府参考人 まず、加古川駅付近のJR山陽本線連続立体交差事業の進捗状況でございますが、今仰せのとおりでございまして、平成五年三月に都市計画事業認可を取得して以来、事業が進められてきております。
 山陽本線の部分、加古川線の部分ともに、現在、高架本体工事を行っているところでありまして、山陽本線については平成十五年春、また、加古川線については平成十六年度に本線の高架化が完了する予定でございます。
 それから、その工事に際しまして跨線橋の平面化をする必要があり、その間交通がどうなるかということでございますが、加古川駅の西側でJR山陽本線をまたぎます加古川陸橋につきましては、鉄道高架化とあわせまして、逆に平面化を行う必要がございます。
 この平面化の工事に関連いたしましては、まず、跨線橋の両側の地表面に仮踏切を設置いたしまして、この仮踏切を通すことで工事に伴う通行どめは行わないということが一つ。それから、連続立体交差事業と一体的に現在区画整理事業などが行われておりますが、この区画整理事業などによりまして、この跨線橋の迂回路の機能を有する二つの路線を先行的に整備いたしまして、先ほど申しました仮踏切の方に行く交通量を削減するということで、両方あわせまして工事による渋滞を緩和したいという計画だと聞いております。
塩田分科員 交通遮断が行われるのは何日間ぐらいですか、大体の見通しをお聞きしたいと思います。
澤井政府参考人 実際、工事の段階でいろいろな現場的な微調整があるかと思いますが、今私どもが聞いている限りでは、うまく切りかえることで通行どめがないようにという前提でやりたいというふうに聞いております。
塩田分科員 一日もなし、夜中にやっちゃうということですか。
澤井政府参考人 若干御説明が足りなかったかもしれませんが、跨線橋を壊す前に、跨線橋の両側の地表面に仮踏切をつくって、それが通れるようにしてから跨線橋を壊すというふうに聞いていますので、その前後をうまくやれば通行どめの日にちはないということで聞いております。
塩田分科員 ありがとうございました。
 同じく、隣の土山駅ですが、この周辺の整備につきましてもかなり力を入れていただきまして、進んでおりますので、感謝を申し上げます。
 それから加古川駅の庁舎、これも毎回取り上げてきたのですが、どのような構想で今進んでいるか、お伺いいたします。
澤井政府参考人 お尋ねの、高架化が進んだ後の駅部の利用のことと承知いたしますけれども、この駅部について、高架下をどうするか。
 鉄道業務施設につきましては、平成十四年度から工事に着手をすると聞いております。また、鉄道業務施設以外の残余の高架下の利用につきましては、今後、本線が高架完了するまでに県、市、JRで協議して決定していくというふうに聞いております。
塩田分科員 市内の商業地区との連携、あるいは民衆駅として商店等を入れるかどうか、そういったことについては今の段階ではどうなっているか、お伺いいたします。
澤井政府参考人 御承知のように、現在、高架事業とあわせて一体的に区画整理事業等も行われておりまして、そういう中でかなりいろいろな床の供給がされるということを聞いております。
 ただ、いずれにいたしましても、高架の下のところをどうするかということにつきましては、先ほど申しましたように、県と市とJRでこれから協議をするということで、まだ鉄道業務施設以外の利用のあり方につきましては白紙であるというふうに聞いております。
塩田分科員 この地域の南北道路の整備につきましては、かなり力を入れてやっていただきまして、ありがとうございます。これによって踏切が十数本、遮断されておったのが、なくなるわけでございまして、非常に交通の円滑化に資するものと思います。
 それから、国道二号線の加古川大橋がございますが、再三要望を申し上げました右岸の北の端の隅切りの事業、これも終わりまして、完成をしたわけでございます。また、それとあわせまして、加古川大橋の補修工事も完成いたしまして、地域の人たちは皆さん喜んでおりますので、感謝を申し上げます。
 それから、地域高速自動車道でございますが、これの進捗状況。予定は、加古川から八幡までは十七年度にでき上がるというふうに聞いておりましたが、その後どのような状況になっているか、お伺いいたします。
大石政府参考人 地域高規格道路東播磨南北道路の状況についてお尋ねでございます。
 東播磨南北道路は、加古川市から小野市に至るという主要地方道加古川小野線でもございますが、地域高規格道路でもございます。この地域の南北交通に対処する臨海部、内陸部相互を連絡する主要な幹線道路でございまして、このうち、南側の一般国道二号加古川バイパスから加古川市八幡町までの区間五・二キロメートルにつきましては、全体事業費三百三十億でございますが、平成十一年度以降、国庫補助事業により事業を推進いたしておるところでございます。平成十三年ごろから用地買収に入ったところでございます。
 この当時の供用目標は、今先生御指摘のとおり平成十七年ごろに置いておったわけでございますが、現実に入ってまいりますと、買収予定の筆の二分の一以上が公図混乱を起こしているような厳しい状況でございまして、地元の利害調整に手間取っておるところでございます。
 兵庫県といたしましては、平成十七年度、完成目標時期は若干ずれるものの、整備促進を図りまして早期に供用したいと考えておるようでございますので、国土交通省といたしましても、引き続き支援をしてまいりたいと考えてございます。
 また、北側の区間につきましては、環境影響評価の調査を進めるとともに、都市計画決定を行い、あわせて整備手法の検討を行うと兵庫県から聞いておるところでございます。
 国土交通省といたしまして、兵庫県の要望に沿いながら支援について検討したいと考えております。
塩田分科員 若干工事がおくれているようでございますが、ひとつ県、市等を督励されまして、また御支援方をよろしくお願いいたします。
 それから、南北道路では高砂北条線、これはかなり着々と整備をしていただいておるわけですが、もうちょっとテンポを速めていただけないかと思います。
 それから、前から言っております、山陽自動車道の加古川北インターから西志方というところを通りまして、トンネルでもって阿弥陀町、高砂市に抜けるという道路の新設について、毎回お願いしておりますが、これまた、なかなかいろいろ問題があるようでございますが、そういった要望が出てまいりまして、またそのときには具体的な検討をしていただいて、前向きに取り組んでいただきたいと思います。
 以上、要望を申し上げます。
 それから、この地域の下水道の整備につきましても毎回取り上げまして、お願いしまして、これがかなり進捗してまいりまして、各家庭にも支線が入ってくるようになりつつあります。これは一層進めていただきたいと存じます。
 時間の関係で、ちょっと海運関係について、一問申し上げたいと思います。
 海運関係の人材の確保の問題でございます。もう亡くなられましたが、元神戸商船大学の学長の平勇登先生が悲痛な気持ちで訴えられ、また手紙をいただいておりますけれども、本当に、特に日本の外航海運はどうなってしまうんだ、かつての商船隊が、日本の日の丸を掲げる船は少なくなるし、人材はどんどん外国人に取ってかわられるということで、本当に日本の外航海運の将来は大変だ、何とかしなきゃならぬじゃないかということを訴えておられますので、私もそのことを特に考えておるわけでございます。
 特に、公共部門における人材が現に不足しておるわけですね。海難審判だとか、あるいはパイロットの関係だとかその他、またこれからIMOがいろいろと、日本は東アジアの中心にならないといかぬと思うのですけれども、そういったことの対応にも人材に事欠くんじゃないかというふうにも思われますが、その点についてどう考えておられるかということと、英国でとん税の優遇制度というものを進めつつあるようでございますが、我が国におきましてもこれに対応しての対策が必要ではないかと思うのですが、この二点についてお伺いいたします。
扇国務大臣 先生が日本人の船員の確保、養成というものの重要性を感じていらっしゃいますけれども、私自身も神戸生まれ、神戸育ちでございます。いつも船を見ながら育っておりますので、その必要性は十分に感じております。
 特に、近年に至りまして、外航の日本人の船員が大変減ってきております。船長でありますとか機関長といった基幹職員としての役割を果たしているんですけれども、その中でも、特に知識とか経験を生かして、長年の経験を持っておりますというようなことで審判官などの公共部門において活躍されてはおりますけれども、国際的には我が国の立場を主張するというような際のベースになって、私たちはもっと頑張っていかなきゃいけないと思っておりますけれども、この我が国の外航船員数の推移を見ますと、昭和五十年に約五万五千人いたものが、現段階で、十二年には五千人と減少しています。そういう意味で、私どもも頑張らなきゃいけないと思っております。
 東京と神戸の商船大学については、十五年の十月に、東京商船大学は東京水産大学と合併ですとか、神戸の商船大学は神戸大学と合併というふうに、統合されるということになっておりますので、そういう意味では、今後、こういう合併に伴っても教育の充実を図るということに私は重点を置いていかなければならないと思います。
 まして私たちは、国土交通省が所管いたしております教育機関でございます航海訓練所あるいは海技大学校、そして海員学校におきます日本人の船員の育成訓練につきましても、さらにこの内容を充実しなければいけないと思っておりますし、船に乗ってみたらほとんど外人さんの船員では日本と言えなくなるので、その辺は気をつけていきたいと思っております。
 また、今、続いてイギリスのお話がございました。イギリスで平成十二年度にトン数の標準税制を導入しております。そういう意味では、私たちも、今後は、実際の利益ではなくて、航行する船舶のトン数に基づいてみなし利益というものを算出して課税する外形標準課税、イギリスの法人税というもののあり方と、また、日本の国土交通省としても、貿易物資の安定輸送の確保を図る観点から、その担い手でございます我が国の外航海運企業及び我が国の商船隊の維持確保が重要であるということから、このためにも、従来よりも私たちは、国際海上の輸送を行う上で重要な外航船につきましては固定資産税を十五分の一に軽減していこうというようなことでございますとか、各種の支援措置を講じていきたいと思っております。
 そういう意味では、支援措置のあり方については、今後も検討し、イギリスのものも参考にしながら、そして皆さんの地位の向上と訓練というものを、総合性を私たちは重要視していきたいと思っております。
塩田分科員 ありがとうございました。
 終わります。
御法川主査 これにて塩田晋君の質疑は終了いたしました。
 次に、小沢和秋君。
小沢(和)分科員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 まず、お聞きしたいのは、昨年三月一日の予算委員会での私の質問に対し、扇大臣が川辺川ダムの必要な理由として、昭和三十八年から十年間に洪水による死者が合計五十四名に上ると主張されたことであります。これについては、地元住民から、この数字は全くの誇大宣伝だとの反論が私のもとに寄せられております。その根拠を示したのが、資料の一枚目であります。これは地元の人が図書館などで当時の新聞報道をすべて調べ上げ、それを地図に記入したものであります。
 これを見れば、増水で亡くなったのは昭和四十年の人吉市における二名だけで、あとは山崩れ、山津波、がけ崩れや流木拾いなどでの事故で亡くなっております。これでどうして洪水による死者五十四名などと言えるのか、お尋ねをします。
扇国務大臣 済みません、五十四と言ったのではなくて、昭和三十八年が死者四十六名と私は申し上げて、本当は死者ではなくて死傷者と申し上げるべきところを、死傷の傷が抜けておりまして、大変申しわけございません。これは私の言い違いでございます。四十六名は、死傷者が四十六名で、死者ではございませんので、私、そのとき訂正させていただいたつもりでございましたけれども、改めて訂正させていただきたいと思います。
小沢(和)分科員 私はそういう言いわけは通らないと思うんです。増水による死者は人吉市の二名だけという資料はそこに出ております。死傷者を含めればというようなことではこれは通らない話じゃないでしょうか。要するに、川辺川ダムを建設しなければと思わせるための誇大宣伝だったのではありませんか。
 ついでながら、大臣は同じ答弁の中で、過去三十年間に九回の大水害があったと二度にわたって発言しておられるんですが、このダムに関係する地域の水害は四回だけじゃないでしょうか。あなた自身の発言ですから、ここで訂正をお願いしたいと思います。
竹村政府参考人 細かい数字についてお答えさせていただきます。
 球磨川の水害統計につきましては、私ども、熊本県が作成した熊本県災異史、そして熊本県消防防災年報等に記載されている数字をもとにして資料を作成しております。
 昭和三十八年の水害の記録につきましては、死者等の統計でございますが、死者、行方不明者二十名、負傷者二十一名までは明確に区分できるところまでいきました。ただし、残りの五名の方がどうしても死傷者と区分されておりました。この五名の方が死傷者とありますので、トータル四十六名の、死者、行方不明何名、負傷者何名と言えませんでしたので、死傷者、行方不明者をすべて含めて死傷者四十六名としたものでございます。
 そして、洪水の回数でございますが、私どもの資料でございますが、私ども水害の統計をとってございます。その中でさまざまな全国の川もとってございますが、球磨川につきましては、今手元にあります資料は、昭和四十七年から平成十三年までの三十年間に、各河川の基準地点で危険水位から一メーターまで迫った回数を見たところ、断然球磨川が多くて九回、つまり三十年間に九回、危険水位から一メーターのところまで達しております。あと、ほかの水系はどうかと申しますと、大体一回とか二回とか、そういうオーダーでございまして、球磨川は大変危険だという表現をさせていただいたところでございます。
扇国務大臣 今局長が報告しましたように、過去にわたる水害の大きさ、私はそれを過大にして何とかしたいという、そんな意図は私さらさらございません。
 なぜかといいますと、私、いとも公平に、公正に、中立を保つことで職責を果たしておりますので、それよりも私は、今の局長が申しましたように、過去の数字の中で文献によっていろいろ数字の違いがあったことはあったんだろうと思いますけれども、過去のことでございますので、正確には、時間が急いでいたので死傷者という表現をしたんですけれども、正式に言えば、死者でありますとか傷者でありますとか、あるいは行方不明者とか分類して統計を今後発表するようにしなきゃいけないな。時間が急いでいたので死傷者ということで区切って、そのときそのときの時間でございますけれども、正式に今局長が申しますように、この事件に関しては死者がこれだけ、傷者がこれだけ、行方不明者がこれだけとなるべくは詳細に、史実に基づいて報告をしたい。人の命の重要さはわかっておりますので、軽々に申し上げるつもりは毛頭ございませんし、過大評価しようなんというのはさらさらございませんので、その点だけはお酌み取りいただきたいと存じます。
小沢(和)分科員 実際には死傷者というのと死者というのでは、もう話は大変に印象が違うわけです。いずれにしろ、これはもっと正確にしていただきたいと思うんです。
 次に、人吉市の住民たちがダム反対の最大の理由にしております昭和四十年、四十七年の洪水被害が、球磨川本流の市房ダムの緊急放水が大きくしたとの問題についてお伺いをいたします。
 これについても、昨年の予算委員会で国土交通省は、市房ダムでは極めてスムーズに流況が変化した、むしろ川辺川流域から一気に水が押し寄せたことで人吉地点で大きな洪水になったと答弁し、つまり市房ダムの緊急放水はなかったと主張したわけであります。
 しかし、去る三月二十五日の熊本県土地収用委員会で、球磨川大水害体験者の会の重松隆敏さんは、次のような被害者の証言を紹介しております。
 前日までの雨で既に床上浸水し、腹まで水が来ているときに、市房ダムが放流されますので十分注意してくださいという消防署の広報車の声が聞こえてきました。一瞬我が耳を疑い、消防署に電話をかけ、私たちはもう浸水しているのに、ダムの放水とは何かの間違いではないでしょうかと尋ねたら、間違いではないので十分注意してくださいという答えでした。その後、三十分の間に水位が一挙に二メートルも上昇しました。
 資料の二枚目をごらんいただきたいんですが、これは人吉市の共同温泉の建物の内部で、どの水害のときにどこまで浸水したかが印をつけられてあるものを撮影したものであります。
 昭和三十五年に市房ダムができる以前は、浸水してもせいぜい五十センチ程度でした。右下隅にその高さが書かれております。ところが、市房ダム完成後は、一挙に一メートル前後まで増水するようになり、その最高が昭和四十年七月三日早朝の三・二メートルだったわけであります。当時の新聞報道には、この証言のほかにも、洪水の最中にダム放水の警報が出されたという市幹部職員などの発言も幾つも載っております。
 これでも、一気に洪水が押し寄せた原因は市房ダムの緊急放水ではないと言われるんでしょうか。
竹村政府参考人 昭和四十年の市房ダムの効果についてお尋ねがございました。事実関係をお話しさせていただきます。
 昭和四十年七月の水害につきまして、市房ダムに入ってきた洪水の流量は毎秒八百六十立方メートルでございました。そのうち、ダムでは四〇%の三百四十立方メートルをカットして、いわゆるダムの中へため込んで、下流へ最大放流量を毎秒約五百二十立方メートルに減少させたものでございます。
 ダムというのは、洪水の初期から全部水をためるのではなくて、一番洪水が厳しいときにどうやって有効にカットするか、洪水の一番山のところでカットするのかということが問題でございまして、洪水の最中、よく一番これは下流の方々が誤解される、または私ども説明不足なところでございますが、ダムがあったら下流へ一滴も水を流さないということではなくて、一番厳しい洪水のとき、ダムで有効にカットしていく。ただし、所要の洪水は下流へ流さざるを得ない、すぐいっぱいになってしまいますので。
 そのようなダムの洪水調節が有効に私ども市房ダムではきいておりまして、これは私ども勝手に言っているのではなくて、平成十三年に、五名の大学の教授、助教授から成る球磨川水系の治水に関する客観性検討委員会というのをオープンで開きました。そして、このデータすべてをお見せしまして、この市房ダムが今まで過去にどのようなことをやったのか、四十年も含めて、きちんとした操作をやっていたのかということを評価してもらっています。そして、三十五年以降、四十四回の洪水調節を市房ダムは行って、そのうちいずれも洪水調節の効果ありという評価をいただいております。
小沢(和)分科員 その程度の話は去年も伺っているわけでありますけれども、私は、それでは住民は納得しないと思うんです。実際、天気予報などというのも今では相当な精度で得られるわけですから、大雨が降るということがはっきりしてきたら、ダムをうんと水位をそのときに下げて大雨に備えるというような操作をすることが必要じゃないでしょうか。そういうようなことをやったのかどうかというようなことについては何の説明もない。
 だから、多くの住民は、消防署の広報車による市房ダムから緊急放水があるという話を聞いて、その直後に一気に二メートルも水位が上がった、これは否定できない事実だと思うんです。この体験は打ち消せないんじゃないでしょうか。
 大臣、今私が指摘したような点も含めて、さらに、市房ダムの機能やら、あるいは操作上の問題がなかったかというようなことについて検討すべきだと思いますが、いかがですか。
竹村政府参考人 先ほども申しましたが、平成十三年に、九州地方整備局は、客観性検討委員会、大学の先生だけで構成される、五名の先生から構成される委員会を開きまして、過去に市房ダムがどのような操作をしたのか、どのような効果があったのかということを評価を受けております。
 私ども、これからも必要があれば、そのような客観的な委員会をしていきたいと考えてございます。
扇国務大臣 今お話を聞いておりまして、専門の皆さん方の御検討の中で御論議があったと思いますけれども、今小沢委員がおっしゃったように、当然、常識的に考えれば、雨の予測があれば、改めてそれにたえ得るような対策をとるということも常識的にはあろうと思いますけれども、それも今後、専門家の委員会でそういうことも含めて御検討いただくということがあってしかるべきだろうと思っております。
小沢(和)分科員 次に、この間の議論で浮かび上がった重要な問題であります、八代地区はダムなしで治水可能と国土交通省が認めた問題についてお尋ねをしたいと思います。
 昨年十一月、九州地方整備局は、八代地区は数十億円程度の河川敷掘削でダムが果たす機能を代替できることを認めました。川辺川ダムを考える住民大集会でも、塚原健一川辺川工事事務所長は、確かに、八代地区だけを見れば、あと七十億円で八十年に一度の洪水に対して安全に暮らせるかもしれませんと、このことを確認しております。
 それ以前には、国土交通省は、代替案は費用がかかり過ぎると事実上否定してきたのですから、私は姿勢が大きく変わったと思いますが、このことに間違いないでしょうか。
竹村政府参考人 今委員御指摘の、県民大集会での川辺川ダムの所長の発言でございますが、ちょっとその前段の大事なところを補足させていただきますと、このとき所長は、治水を河川改修だけでやった場合、上流、中流、下流、すべて河川改修でやった場合、上流の人吉地区では千百六十億円、中流部では宅地のかさ上げ、JRの鉄道かさ上げ、国道のかさ上げで八百七十億円、そして下流の八代市で七十億円、トータル二千三十億円ですか、二千億円を超える改修費がかかりますということをお話ししております。
 ですから、あくまでも私ども、河川改修をやるのは上流から中流、下流、すべての方々が安全になるような流域にするべく考えておりまして、川辺川ダムは上流でつくりますと、上流、中流、下流、すべての場所に有効にききます。それと同じように効果を出した場合、河川改修では、そのように上流、中流、下流、すべてのところで実施しなければいけないという御説明をしたはずでございます。
小沢(和)分科員 しかし、はっきりしていることは、この間の河川改修の結果、八代地区では現在でも九千トンの水量を流すことが可能になって、八十年に一度の水量が現に出現したけれども、さばいたということであります。
 球磨川流域の人口の八九%、資産の八五%が集中する八代でダムが不要になれば、川辺川ダム事業の費用対効果は大きく下がらざるを得ません。新聞報道等によれば、八代地区を除くと費用対効果は一を大きく割って〇・七四程度だとされております。今後、このダムを公共事業として継続することが許されなくなったということではないのでしょうか。
 大臣、この際、ダム計画を中止して、河床掘削や流域の堤防整備などを積極的に進める方向に転換すべきではありませんか。
竹村政府参考人 私ども、球磨川が日本で最も危険な川だと認識しております。三百六十度山でして、台風の入り口でございます。台風が来ますと、三百六十度から一気に水が押し寄せてくる危険な川だと認識しています。
 ここで、私ども、治水事業につきましても懸命に戦後やっておりまして、例えば八代地区では川幅を約二倍にもう広げてございます。この川幅を二倍に広げることによって、今委員御指摘の流下能力が確保されたわけでございまして、これから、今までの過去の努力、そして低水路を掘削し、堤防をさらに補強していくということは、これからも未来永遠にやっていかなきゃいけないテーマだと認識しております。
 ただし、この川辺川ダムにおきましては、上流で、市房ダムの約五倍の大きさの川辺川ダムがもう本体だけを残しているわけでございますので、それさえすれば、市房ダムの、トータル合わせますと約六個のダムが洪水調節できくことになります。そうしますと、上流の人吉では二メーター、中流の坂本では一・五メーター、そして八代では八十センチの水位低下が望まれます。この水位低下は極めて根本的な治水の改良と認識しております。
小沢(和)分科員 しかし、事実は頑固なものですよ。過去最大の水量、八十年に一度といって国土交通省が推定している水量も上回るようなものが現にそこで流れて、堤防は切れなかったんですよ。これは川辺川ダムがないときにそうなっているんですから、それなら川辺川ダムは要らないということになってくるんじゃないかと言っているのについては、今の説明は何の説得力もないですよ。
 私は、流域全体の治水というのなら、おくれている坂本村など中流域の河川改修をこそ急ぐべきだと思うんです。この地域は、流域全体の人口の一%、資産の三%しかないために、河床掘削や堤防整備がいつも後回しにされてまいりました。土地のかさ上げや堤防整備の予定事業地が四十二カ所もあるが、終了しているのは七カ所のみで、今後二十年ぐらいたっても十八カ所しか完了しないという。大臣、これでいいんですか。
竹村政府参考人 二点お答えします。
 まず第一点、下流の八代の件でございますが、萩原地区におきまして、もう既に何度も堤脚ブロックが流されております。そして、低水路を拡幅しても、すぐまたそこに州がついてしまいます。大変な努力をしながら八代工事は改修をしているわけでございますが、現在でも、平成十三年度でいえば、約二十五億円の改修でもってこの球磨川を対応しているわけでございます。私どもは、決してダムだけでやろうということではなくて、ダムと河川改修をあわせてやっているわけでございます。
 二点目の中流部のかさ上げでございますが、私ども、現在かさ上げ工事をやっております。この中流部は山間部でもございまして、堤防をつくる余地がございません。約四十二地区、五百三戸の方々を二メーターから三メーターかさ上げしていただいて、安全な洪水、それは実は川辺川ダムができた前提でございますが、そういう安全な洪水の中でこの方々が生活するためのかさ上げをやっております。現在、七地区で二百四十三戸の方々がかさ上げが終了しております。そして、御指摘のように、三十五地区の二百六十戸の方々が残っておりますが、この全体の総事業費は四百億円でございます。四百五十億円の事業費を確保しつつ、平成十三年度までは百四十三億円実施いたしました。
 今後、私ども、苦しい中でもございますが、きちんと確保しながら、この中流部の河川改修を実施していきたいと考えております。
小沢(和)分科員 私は、これまで河川改修に非常な努力が払われた結果、こういうことになったということを評価して物を言っているんですから、勘違いしないでいただきたいと思うんですね。
 大臣は、何かあると流域自治体からの要請ということを口にされるわけでありますが、しかし、きのう行われた流域最大の都市、八代市の市長選挙で、我が党も支持したダム反対の中島隆利候補が当選をいたしました。流域住民の反対の声がどこまで高まっているか、ここにはっきり示されたと思います。こうした中で、国土交通省があくまで強制収用など、ごり押し姿勢を続けることは、断じて許されないと思います。
 大臣にお尋ねしたいんですが、流域最大の都市でダム反対の市長が当選したことをどう受けとめられますか。
扇国務大臣 地方の選挙については国としてコメントしないことにしておりますけれども、今あえてお話しのように、私どもは、すべからく国民の生命財産のために英知を結集して、どの方法をとることが一番国民の生命財産を守れるかということの方策を探っております。
 そういう意味で、たまたま八代のダム反対の市長さんがきのう当選されたということで、市長さんがどの程度八代の国民の生命財産を保障されるのかということも、今後大きな議論になってこようと思いますので、たとえどの党が推薦された市長さんであり、あるいは知事さんであれ、我々は少なくとも政府として、国民の生命財産を守るために真摯な話し合いをするということが、私は多くの皆さんの御賛同を得られると思いますから、たとえ共産党の御推薦であろうとも、私たちはそういうテーブルでお互いに県民、国民のためを思った論議を重ねていくというのは当然のことなので、どこの党の御推薦者でも門戸をあけてお話し合いをするということで私たちは対応しております。
小沢(和)分科員 私は、もちろん、市長と今後も対話をしてもらいたいということは言っているわけですけれども、一番私が強調したいのは、流域住民が、今世論調査をすると、もう六割ぐらいはこのダムは要らないと言っている、それがこういう形で反映したんだということを謙虚に受けとめていただきたいということであります。
 次の質問に参ります。
 川辺川研究会は、一メートル程度の堤防かさ上げと河床掘削を組み合わせれば、人吉地域での治水はダムなしに可能であるというふうに提案をしております。現に、これまでで最大の五千四百トンに達した昭和五十七年七月の洪水でも、人吉地区の現行の堤防で一ないし一・五メートル程度の余裕を持って流下したというんです。あふれたのは、改修がおくれた一部の地域だけであります。
 人吉地区でも、堤防の一部かさ上げと河床掘削を組み合わせれば、ダムなしの治水は十分に可能ではありませんか。
竹村政府参考人 そのような研究会の方々が発表したということは承知しております。
 現在、人吉市では、私、余り事例は知らないんですが、堤防の上にコンクリートの壁、一メーターの壁を立てております。私ども、パラペット、特殊堤と呼んでおりますが、極めて特殊な堤防で地域を守っております。彼らは、それをさらに一メーターかさ上げして二メーターのコンクリートと言っておるのかもしれませんが、私どものコンピューターで計算しますと、二・五メーターかさ上げしなきゃいけません。そうしますと、三・五メーターのコンクリートの壁を人吉の市の、地域のところにつくってしまうということでございます。
 これは、実は二点問題がございまして、第一点、治水の役に立たないということでございます。なぜかと申しますと、治水というのは二つございまして、川の洪水が上がるということと、人々の生活している背後から水が押し寄せてくる。ですから、治水の大原則は川の洪水を十センチでも二十センチでも下げることなんです。そうしますと、後ろから迫ってくる、私どもが住んでいるところから降ってくる雨が一気にはけやすくなるということでございまして、治水の大原則は、堤防を上げていくことではなくて、川の水位を下げることなのでございます。
 ということで、今委員御指摘の、河川のしゅんせつがございます。一度、過去に私ども、人吉でやってみました。やってみたところ、温泉の泉源を切ってしまいました。大反対がございまして、私ども、それ以上しゅんせつができなくなってしまいました。そして、その後、御指摘のあの四十キロの河道、四十キロの岩のところを掘ったらどうかというのでございますけれども、あの四十キロの渓流下りをやるあの景観のいいところを、いわゆるボブスレーのといのような形で、私ども、発破をかけて岩を削るというわけにいきません。
 ということで、さまざまな手法を繰り返しながら、一番よい、環境にもよい、景観にもよい方法は何かということを私ども提案しているわけで、その中で最も根幹的な施設が川辺川ダムだと認識しております。
小沢(和)分科員 今、国土交通省の方は、河川の掘削が難しいとか景観上望ましくないというようなことを言われておりますけれども、これまでも、私、資料の三につけておきましたけれども、「球磨川改修事業における箇所別の主な工事一覧」というのをごらんになっていただいても、人吉の大水害以後、系統的にあっちこっち掘削を行っておるわけであります。人吉市流域の川底は昔より高くなっている、前のように深く戻してもらいたいという川下りの会社の元社長の声なども私は聞いております。
 こういう点を考えてみても、掘削をもっと強めていくということは、これは地元の要求にもかなっているんじゃないでしょうか。
竹村政府参考人 先ほど申しましたように、今委員御指摘の、河川改修の一つの手法として、私ども、メニューとしては持っております。持っておりますが、河床を掘削しますと、先ほど申しましたように、人吉の温泉の泉源を傷めてしまう、またはアユの生息地を傷めてしまう、さまざまな問題がございますので、一番支障のない、州がついたところから、地域の方々と話し合いながら、州を取り除いていっているというのが現状でございます。
 大々的なしゅんせつをやる場合には、いわゆる水位を維持しなければいけない、可動堰を、水位を維持する装置としての堰をつくって、そしてしゅんせつしなければいけないというようなことも、私どもメニューとして持っておりますが、今現在、そのような状況に至っておりません。
 ということで、私ども、現時点で抜本的に考えられるのが川辺川ダムの工事の着手だと考えてございます。
小沢(和)分科員 時間がぼつぼつなくなってきましたけれども、とにかく私が残念に思うのは、国土交通省が、何が何でも川辺川のダムをつくらなきゃいかぬということで、ごり押しをする姿勢を続けていることであります。大臣がみずから現地に足を運び、みずからの目で状況を見、関係者と対話し、決断をするという姿勢が見られない。本当に残念なことです。
 ですから、私、大臣にお願いしたいんですが、三度目の住民集会も恐らく近くあると思うんですが、大臣自身出向いて、そういう話も聞き対話もしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
扇国務大臣 少なくとも、国土交通省といたしましては、私たちは、多くの国民の、地元の意見を聞くというのは、私、これだけではなくて全国それを大事にしたいと思っております。
 何よりも私は、私が現場に行けば済むということではなくて、今まで三十五年間苦労した地元の皆さん方、また、少なくとも、昨年でございますけれども、地方の整備局の局長等々、この経緯を知っている人たちが懇切丁寧に地元の皆さんの御意見を聞くということが、私は、もちはもち屋として、それぞれ分担があってしかるべきだと思っておりますので、地元のことが一番よくわかっております地方ブロックの地方懇談会を開いて、私も全国回りましたけれども、昨年も十二月、私が九州地方整備局の皆さん方に、いろいろなことを伺いました。
 また、ありがたいことには、私が足を運ぶまでもなく、川辺川ダムにつきましても、昨年の十二月には、人吉の市長さんでありますとか、あるいは流域の首長の方々、また流域で農業に従事している女性の皆さんも、私の大臣室までわざわざお出かけくださいました。そして、ダムにより水没することになります五木村と相良村の村長さんも上京されまして、私に、こんなに三十数年間――五木村の方もおっしゃいました。最初は私たち反対だったんです、でも、苦しい中で自分たちは賛成に回っています、どうか早くこれを決着してくださいという御要望も聞いております。
 反対は反対、賛成は賛成、それぞれの意見を中立的に聞くということが、現場に足を運んで、私、川の専門家ではございませんから、素人で、見た目だけで判断できるということではございませんので、私は、賛否両論の皆さんの御陳情と、そして地元の声と、そして地方整備局の熟練したみんなの判断というものを総合的に聴取して、最後に決断するというのが私の役目でございますので、地元に行くだけが全部の判断ができる材料ではない、賛否両論を聞いて、地元の声を聞くということに徹して、私は最大限の配慮をしていきたいと思っております。
小沢(和)分科員 これで終わりますけれども、大臣にぜひお願いしたいのは、来た人たちから話を聞くということもそれは大事ですけれども、やはり現地に行かないとわからないということはたくさんあるんです。だから、ぜひ現地に行って、いろいろ住民の生の声も聞く、現状も見る、そして判断をしていただきたいということを重ねてお願いして、私の質問を終わります。
御法川主査 これにて小沢和秋君の質疑は終了いたしました。
    〔主査退席、森岡主査代理着席〕
森岡主査代理 次に、上田勇君。
上田(勇)分科員 公明党の上田勇でございます。
 きょう、幾つかのテーマについて御質問させていただきますが、若干通告の順番と異なりますけれども、まず、昨年十二月に行われましたマンション管理士の第一回目の試験についてお伺いをしたいというふうに思います。
 この試験、約十万人の方が受験をされて、それだけ非常に関心の高い試験、資格になっているというふうに思います。そのうち七千二百人の方が合格ということですので、合格率七・四%、相当な難関の試験であるというふうに思います。これだけ多くの人たちが受験したことというのは、やはり今、マンションの管理問題に非常に高い関心が集まっているということのあかしではないかというふうに考えております。
 そこで、この試験問題、試験の内容について、一部の関係者から耳にしたことでありますけれども、法令や制度の知識に関するものに相当偏重していて、実務にかかわる問題が少な過ぎるのではないかという指摘がございます。この資格制度が、マンション管理の実務をきちんと遂行できるような能力、それを適切に反映していないとするならば、これはせっかくこの資格制度を設けた意味がなくなるというふうに思うわけでありまして、関係者からのそういうような指摘、意見につきまして、国土交通省としてどのようにお考えなのか、見解を伺いたいというふうに思います。
三沢政府参考人 昨年十二月の九日に第一回のマンション管理士の試験が行われたわけでございます。その試験では、マンションの管理に関する法令及び実務、管理組合の運営の円滑化、それから建物等の形質及び構造等に関する分野から、マンション管理士に必要な知識に関して幅広く、合計五十題という形で出題をされております。
 当然やはり、この出題の中での法令と実務とのバランス、これは大変大事な問題でございまして、第一回の試験においても、試験委員の先生方にはいろいろ御留意はいただいているところでございます。
 ただ、やはり今先生御指摘のような声もあるということを踏まえまして、今年度、第二回目の試験を行うわけでございますけれども、今年、第二回目の試験におきましても、単にその知識だけを問うのではなくて、やはり具体的な実例に当てはめた出題というのをより充実させるというような形で、できるだけ、法令知識だけではなくて実務能力も適切に反映するような、そういうような出題の仕方について、試験委員の先生方ともさらに相談していきたいというふうに考えております。
上田(勇)分科員 今、答弁をいただきまして、ありがとうございます。まさにこれは、今本当に、我が国の特に大都市においてはマンション群が非常に多いわけでありまして、その管理というのが非常に大きな問題になっている。そこで、国土交通省の方でいろいろな検討を重ねていただいて、いろいろな制度を充実させてきたわけでありますので、それが有効に働くように、またいろいろと御検討をお願いしたいというふうに思います。
 次に、今度は、密集市街地の木造住宅等の耐震改修の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。
 私、ここに、国土交通省の方で作成されました平成十二年度の耐震改修推進調査結果の概要というペーパーを手にしているんですけれども、この国土交通省の方の調査の結果を見てみますと、密集した市街地において大地震などが発生したときに、木造住宅等の耐震改修を行っておれば、住宅等の倒壊がなくて、火災の発生や道路がふさがれるというようなことも大幅に減少させることができる、極めて有効な対策であるというようなことが述べられております。
 また、この調査が行われた地区では、耐震診断の結果、倒壊の危険性が高い建物が大体四分の一に上っている、倒壊のおそれのある建物ということになると四割というような結果が出ているわけであります。
 こうした結果が出ておりますけれども、ただ、そこの住民の方々は、では耐震診断を受けたことがあるのがどのぐらいいるかというと、それは三%だということでありますし、実際に改修をした家というのも五%にとどまっている。
 なぜ、そういう危険性があるにもかかわらず着手をしないかといえば、一つには、ここに挙げられている理由としては、問題意識が低いというようなことも挙げられておりますけれども、やはり費用の負担が大きいということも挙げられているわけであります。
 私も、かねてから木造住宅の耐震改修は、これは確かに個人の財産に対する公的な助成になるという面での課題があるわけでありますけれども、ただ、これはそこに住んでいる個人の利益というよりも、先ほど申し上げましたように、やはり地域の防災、そういうような公益的な目的の方が大きいのではないかということから、公的な助成制度をつくっていくことの必要性を訴えてきたわけであります。
 平成十四年度の予算では、密集住宅市街地整備事業の事業地区を対象にするという、そういう意味では限定的なものではありますけれども、そういう新しい事業、制度が発足したわけであります。
 やはりこれから大都市部、密集市街地で大地震などに対する防災、そういう公益性ということを踏まえると、こうした木造住宅の耐震改修などの制度の拡充を今後とも一層充実させていかなければいけないというふうに考えておりますけれども、その辺の国土交通省としての今後の方針についてお伺いしたいというふうに思います。
三沢政府参考人 御指摘のように、密集市街地におきましては、住宅の耐震改修によって地震のときの倒壊を防ぐということが地区の防災性の向上のため大変有効な手段でございます。
 実は、これまで耐震改修を促進するためには、住宅金融公庫による融資という形でいわば耐震改修の促進を図ってきたわけでございます。ただ、これにつきましては、融資だけではなくて、さらに一層補助をすべきではないかといういろいろな御議論がございました。
 これにつきましては、先生御指摘のとおり、個人財産に対してどこまで補助できるのか、いろいろな議論がございましたけれども、十四年度からは、今回新たに、密集市街地で地震時に住宅の倒壊によりまして周辺の道路がふさがれまして、結果として避難とか救助とか消火活動の支障となる、そういうことを防ぐという公益上の観点に着目いたしまして、倒壊の危険性のある住宅の耐震改修に一定の範囲で補助するという補助制度を新たに導入したものでございます。
 したがいまして、今年度から初めて導入するものでございますので、まず公共団体に対しまして、この補助制度をできるだけ積極的に活用いただきたいということを働きかけまして、せっかくできた制度でございますので、普及促進にまず努めていくということに努力していきたいというふうに考えております。
上田(勇)分科員 今、ことしから創設された新しい制度についての御説明もいただいたわけでありますけれども、やはりこの国土交通省の調査結果から見ても、防災上非常に重要な施策であるというふうに思いますので、特に、ことし新しく導入された制度というのは、事業実施地区が対象になっているという意味からいうと、防災上の緊急度、優先度というのは必ずしも違うんではないかというふうに思いますので、さらに制度の充実に向けての御努力をお願いしたいというふうに思います。
 それともう一つ、今、内閣、政府を挙げて都市再生ということで取り組んでいるわけでありますが、この都市再生事業というのも、大きなプロジェクトだけに着目するというよりも、本当に都市の安全、それから都市の住民が暮らしやすい、そういう細かなところもぜひ着目をして事業を推進していっていただければというふうに考えているところでございますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、今度は公営住宅の家賃制度に関しまして何点か御質問をしたいというふうに思います。
 公営住宅の家賃の算定に当たりましては、公営住宅法それから同法の施行令によりまして、応能応益負担を原則として、収入により八つの区分にそれぞれ基礎額が定められております。この八つの区分を見てみますと、入居者のほとんどのというか非常に大半の方、これは私の地元の横浜市などの事例では、収入分位の最も収入の低い分位、ゼロから一〇%の区分に五七%の入居者が属しているということであります。
 もちろん、これは段階ごとに設けられた区分で、それなりの区分ごとの理由があるんだというふうに思いますが、大体五割以上、六割近い方が八つあるうちの一つの中にいるということになると、応能負担という原則だとすれば、そこの部分の区分をもうちょっと細かく分けることの方が応能負担の原則に近づくんではないかというふうに思いますけれども、その辺の御見解を伺えればというふうに思います。
三沢政府参考人 御指摘のとおり、公営住宅の家賃は、入居者の収入とそれから公営住宅から受ける便益に応じて決定される、いわゆる応能応益家賃というのをとっているわけでございます。
 それで、収入の方については八区分ございまして、そのうちの最も収入の低い区分にかなりの方が集中しているという御指摘でございます。
 そこをどこまできめ細かく分けていくかという非常に悩ましい問題でございますが、現行のその区分の考え方を申し上げますと、ここについては、やはり生活保護という別途の福祉政策がございまして、生活保護で受けた場合の保護の基準額というのを勘案いたしまして、その基準額が標準三人世帯で大体二百七十一万円程度でございます。それに対しまして、先ほどの一番低いところの区分が三百二十三万ということでございますので、大体そういうことを勘案いたしまして、収入分位一〇%までを同一の区分にしているというのが現行の考え方でございます。
上田(勇)分科員 私が、ここの第一分位ですか、一番低い分位のところをもっと細かくすべきではないかということを提案させていただいているのは、現実には、実際にこの法律にもあるんですけれども、家賃の減免制度というのもございます。この減免制度で、一番集中している分位のところをもっと細かく実際には負担を分けているところもあるんです。
 まず、この減免制度についてちょっとお伺いをいたしますけれども、今御説明いただいたように、応能負担、応益負担を原則として家賃算定基礎額が定められているとすれば、さらに家賃の減免を設けている理由というのは何なのかということでございます。
 これは、法律を読んでみますと「病気にかかつていることその他特別の事情」というふうに書かれているわけでありますけれども、例えばどういう事情なのか、そして家賃減免措置が設けられている理由を御説明いただければというふうに思います。
三沢政府参考人 応能原則と減免との関係ということでございます。
 基本的には、入居者の収入とその便益に応じて決定するという原則があるわけでございますけれども、減免というのはその原則の例外ということで、ただいま先生が条文を読まれましたけれども、「病気にかかつていることその他特別の事情がある場合に」という、いわば個人個人の特別の事情に着目して減免をするというのが減免制度の趣旨でございます。一般的には応能応益原則でいくけれども、特別の事情がある場合に、条例に基づき減免をしているという制度でございます。
上田(勇)分科員 この家賃の減免制度については、私も地元を中心に幾つか事例を調べてみたんですが、これは事業主体、すなわち自治体ごとによってその対象となる要件だとか内容について、相当異なった内容になっております。
 例えば、私の地元の横浜市などでも、同じ地域にある県営住宅と市営住宅で適用されている方法が違うとかというようなこともあるわけでありますけれども、中には事業主体によりましては、第一分位の収入のところに着目をしまして、さらに、その中の収入額によって自動的に一定の減免措置を設けているというようなところもございます。
 これは、先ほどちょっと触れさせていただきました法律の趣旨、規定を考えると、これはちょっと規定と趣旨とは違うのかなというような感じもするんですが、こうしたいわば自動的に一定の減免措置がとられるような方式をとっているということについて、国土交通省としてはどのようにお考えか、御見解を伺いたいというふうに思います。
三沢政府参考人 その点、先ほども申し上げましたように、家賃の減免については、これは具体的にどういう場合に減免するかというのは事業主体である公共団体の条例で規定されるということになっておりまして、一般的な想定で申し上げますと、例えば、入居者の病気によって著しい支出が必要な場合とか、あるいは災害によってやはり著しい支出が必要な場合とか、あるいは失職等によって入居者の収入が著しく低額である場合、こういったものが想定されるわけでございます。
 ただ、どういうものをさらに条例で具体的に定めていくかというその内容につきましては、これは基本的には、先ほど申し上げましたように、各事業主体である公共団体が判断して条例で定めるということでございますので、それについては先生おっしゃるとおり、いろいろな定め方が現実にあるし、そのこと自体は公営住宅法も許容しているところだというふうに理解しております。
上田(勇)分科員 これは事業主体が地方公共団体でありますので、それぞれが自主的に判断するということは、私は別に反対するものではございません。
 ただやはり、これは国からの補助金の額という問題も出てくるわけでありまして、また、特に同じ地域でいろいろな制度が併存しているというようなことになると、住民からするとわかりにくいというのもあるわけであります。
 それぞれ自治体が、中にはいわば自動的に第一分位のところの方々の減免措置を講じているというのは、これはちょっとさっきの話に戻るんですけれども、やはりそれは応能負担ということを考えていくと、ずっと所得に応じて家賃が決まっていっているんだけれども、最後のところ、半分以上いるところが全部同じ額になっちゃっている。
 そうすると、やはりその中でも、応能、どれだけ負担できるかによって少し差があった方が公平なのではないかという判断が多くとられているからではないのかなというふうに思いますので、これはぜひ、最初にも申し上げました分位の区分けのあり方であるとか、それからその減免措置の、実際、ある程度の見解の統一性などについて、これからぜひ御検討いただければというふうに思うわけであります。
 それでもう一つ、今度は公営住宅のあり方について若干御質問させていただきたいと思うんです。
 公営住宅というのは、大都市には、団地という形でまとまって一つの地域に多くの方が公営住宅に住んでいるわけであります。公営住宅への入居の条件というのは、収入が一定額以下である、一般では、収入分位として二五%以下、あるいは高齢者、障害者などでは四〇%以下というのが一般的にそういう基準となっておるわけであります。実際にいろいろな公営住宅、地元でもお話を聞いてみますと、新たに入ってこられる新規入居者のほとんどが高齢者であるというのが現実であります。
 高齢者の方々に安定した住宅を供給するということは、これは住宅政策として私は非常に重要なことであるというふうに考えておりますので、これ自体を否定するわけではないんですが、実際に、ではそこの団地に行ってみますと、これはやはり、地域のコミュニティーとしてのさまざまな機能が必要なわけであります。地域の中の道路や共有スペースの清掃をする、町並みの保全をする、あるいはお祭りなどの地域行事もやっていく。同時に、地域社会として高齢者の生活も地域社会が協力して支えていくということも重要なわけなんですが、現実にはどんどん住んでいる方も高齢化が進んでいくし、新しく入ってこられる方は高齢の方が多いということになると、こうしたコミュニティーとしての地域活動がなかなか維持できなくなっているところが出てきているというふうに聞いております。
 こうした健全な地域コミュニティーを維持していくという観点から、やはりこれはいろいろなことをちょっと考えていかなければいけない時期に来ているのではないのかなというふうに思っております。
 またその一つは、やはり新規入居者の収入基準の運用のあり方についても、もっと弾力的な考え方が必要なのではないかというふうに思います。ただ、公営住宅というのは、どうしても税金、公的資金でつくられているものでありますので、それだけで、では、収入に関係なくだれでも入って結構ですというわけにはいかないというのはよくわかります。そうであれば、公営住宅以外にも、公団だとかあと県の住宅公社だとかたくさん、いわゆる公共住宅もあるわけでありますので、それぞれの公共住宅への入居者を収入だけに着目して割り振るというようなことではなくて、バランスのとれたコミュニティーをつくる、地域社会をつくっていくという観点からも、こうしたさまざまな形態の公共住宅、これを総合的に活用していくというような発想が必要になってきているのではないかというふうに思いますけれども、国土交通省として、その辺御意見があれば伺いたいというふうに思います。
三沢政府参考人 先生おっしゃいますとおり、やはり年齢面とかあるいは収入面とかそういうことを含めまして、バランスがとれた形でいいコミュニティーをつくっていくということが大変重要なことだというふうに考えております。ただ、公営住宅の収入基準の運用によってこれを実現するかどうかというのは、ここは非常に難しい問題でございますけれども、やはり公営住宅本来の趣旨である、住宅に困窮される低額所得の方に低廉な家賃で住宅を供給するという、本来の制度の趣旨を踏まえた運用が、公営住宅そのものについては必要ではないかというふうには考えております。
 ただ、やはりバランスのとれた良好なコミュニティーをできるだけつくっていくという観点からは、公共住宅について、公営住宅だけではございませんので、そういうものをできるだけバランスのとれた形で供給していくということが非常に大事じゃないかと思っております。
 現在、そういう意味で、公団住宅と公営住宅をできるだけまぜて供給するということを進めております。例えば、公団住宅を借り上げてそれを公営住宅として供給する方式であるとか、あるいは公団住宅の建てかえに際して公営住宅を併設するとか、逆に公営住宅を建てかえるときに公団住宅を導入するとか、それからさらに、高齢者向けの優良賃貸住宅の供給等に当たっても、できるだけ複数の公的な主体による混合供給というのを推奨、指導しているところでございます。
 こういう意味で、バランスのとれたコミュニティーづくりという観点からは、いろいろな形での公的住宅を総合的に活用するということを積極的に進めていきたいというふうに考えております。
上田(勇)分科員 ありがとうございます。
 今おっしゃった趣旨はぜひ進めていただきたいというふうに思うんですけれども、現実にはやはり建てかえのときとかそういったときにしか、なかなかそういう入れかえが行われないというのが現実で、今いろいろなところの公営住宅の地域のコミュニティーとしての健全性というのが本当にもう危機に瀕しているところがたくさんあります。高齢の方々ばかりになって、では一体、その地域の中で、そうした高齢の方々をどういう形で助けてお世話していくのかというと、みんな高齢の方々ばかりで、しかも、いわゆる団地の形が多いですから、階段があって、なかなか介護等も大変だというようなことがあります。
 そういう意味では、やはり健全なコミュニティーというのは、高齢の方もいらっしゃる、青年、壮年層の方もいらっしゃるし、子供もやはりいるようなコミュニティーでなければいけないというふうに思いますので、これは公営住宅だ、これは公団だ、これは供給公社だというようなことではなくて、そうしたそれぞれの地域がバランスのとれた地域社会をつくっていけるように、ぜひそういう検討を進めていただかないと、そんなに長いこと待っていると、非常にもう現実は相当進んでいるということをぜひ御認識いただいて、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
森岡主査代理 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
 次に、原陽子君。
原分科員 社会民主党の原陽子です。
 きょうは、政治とお金にかかわる問題として、談合問題に関する質問を幾つかさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 談合問題は、今非常に国民の注目度も高くて、政官業の癒着の象徴であり、国民からもその解決が待望されている大きな課題であると思います。そこで、まず大臣に一つお伺いをしたいと思います。
 平成十二年度、国土交通省に寄せられた談合情報は五十七件、それによって入札が延期されたのが三十九件、入札を取りやめたのが八件となっております。この数字は、ほかにさまざまな、例えば農水省とか自治体とか特殊法人を含めれば、さらに多くの談合が全国で絶えず行われているということを物語る数字だと思うのですが、大臣のお考えをお聞かせください。
扇国務大臣 きょう、この決算行政監視委員会でされておりますのは十二年度ということで、十二年度はまだ旧建設省でございまして、国土交通省は十三年の一月の六日から発足をいたしましたので、きょう御審議いただいております、この決算行政監視委員会では十二年度でございますので、十二年度の数を言わせていただきますと、これは旧建設省では、談合情報、寄せられたものが五十七件でございます。
原分科員 十二年度の数字でしょうか、今のは。済みません、私、もしかしたら言い間違えたかもしれないんですけれども、私が今お伝えした数字は、平成十二年度に国土交通省に寄せられた数字でございます。入札の寄せられた談合情報が五十七件で、入札延期になったものが三十九件で、取りやめたのが八件。いただいた資料は平成十二年度の資料になっておりますけれども、大臣、よろしいでしょうか。
扇国務大臣 冒頭に私は、十一年度、十二年度のことをきょう御報告申し上げたものですから、最初お聞きになっていなかったのかもしれませんけれども、きょう委員会に御報告申し上げましたのは、十一年度、十二年度の御報告を冒頭に申し上げさせていただきました。
 今、原議員がおっしゃったように、十二年度は五十七件であり、件数としては間違っておりません。そのとおりでございます。
 ただ、私に対して、公共工事というものの談合をどう考えているかというお尋ねでございますので、その件に関しましては、御存じのとおり、私、建設大臣に就任しましたのが平成十二年の七月でございました。それで、談合とか丸投げというものを何とか禁止したいということで、本来は、今日まで日本の中に公共工事にまつわる法案が一本もなかったんです。
 それで就任以来、本来でありますと、公共工事というのは、旧建設省だけではなくてあらゆる、例えば旧文部省で学校を建てましたり、あるいは旧厚生省で病院を建てたり、すべて公共工事なものですから、全省庁に関係がございますので、公共工事の適正化法をつくるには、全省庁で、内閣で提出するには各省の了解を得なきゃいけませんので、通常五年ぐらいかかるんです。
 けれども、それを何とかしたいということで、内閣全員の協力を得まして三カ月でこの法案を提出させていただいて、そして公共工事の入札と契約に関する適正化法、この法律をつくったということが本邦初でございまして、そういう意味では、十二年の十二月の最後の臨時国会でこの法案を通していただいて、しかも、与党野党、全党一致で通していただいたことは、当時から、公共工事に対する、多くの国民の皆さんの注視されているものに対する国会としての姿勢が全会一致であるという形であらわれたことは、私は大変喜ばしく思っております。
 また、その法案が昨年の四月から施行されておりますので、談合とか丸投げとか公共工事にかかわる疑義というものは、昨年の四月以降は、私は許されることではないと。現に通達も出しておりますし、各都道府県、市町村までこの法案の周知徹底を図るために、国土交通省に二月に事務次官を長といたします委員会を立ち上げまして、全国にこの法案の周知徹底を図って、この公共工事の疑惑というものを最小限にとどめたい、もしくはゼロにしたいというふうに頑張っております。
原分科員 大臣がまとめられた入札適正化法ですか、これは私も少し勉強させていただいて、これは私は、本当に大変にすばらしい試みだと思っております。
 さらに加えて言うのであれば、このようなすばらしい法律を大臣がまとめて、そしてこの法律を生かす上で、やはり私は、住民による監視の力というものをかりるべき時代に来ていると思います。住民の力をかりるということの基本は、私は情報公開であると思いますが、大臣はどう思われますでしょうか。
扇国務大臣 私は、情報公開は本当にいいことだと思っておりますし、また、それを進めたいと思っています。その法案を原議員が見ていただいたらおわかりのとおり、電子入札と書いてございます。電子入札は、すべての人がいながらにしてこの情報を得ることができる。しかも、電子入札で、いつ、だれが、幾らの金額で落札したかということが全部公開されます。
 この電子入札ということを少なくとも今、国土交通省が、全省庁の中ではこの電子入札が一番行われている、この手順が完成しつつあるというのが今の現状ですから、原議員がおっしゃるように、電子入札をすることによって、情報公開、多くの国民の目に全部公開できるというふうに考えております。
原分科員 私も、その情報公開というものは、やはりこれからさらにさらに求められていかれるものになってくると思います。
 そこで、一つ事例を挙げて大臣に質問させていただきたいのですが、ここに一部黒塗りをされた行政の文書があります。これは、事前の通告で大臣の手元にも御用意をいただくようにお願いしたものなのですが、岡山県の苫田ダム事業に関する談合情報の報告書と事情聴取書と、それの誓約書で、私の手元にあるのは住民の情報公開請求に対して開示されたもので、大臣の手元にはそのオリジナルのものも御用意されていると思います。ないですか、ございますか。オリジナルのものとこの黒塗りされたものを用意していただいていると思うのですが、これらの三つの文書は、まずどういう性格のものか、国土交通省にお伺いをしたいと思います。
    〔森岡主査代理退席、主査着席〕
風岡政府参考人 御指摘ありました談合情報報告書でございますけれども、これは、発注者の方に談合の情報がありましたときに、各地方整備局の中で公正入札調査委員会というのを設けております。そこの事務局がその内容を取りまとめしまして委員会に報告をし、委員会は、それを見て当該談合情報の信憑性を審議する、そのためにつくるものであります。仮に、工事名等が特定されまして、信憑性ありと判断された場合には、これは公正取引委員会の方にも通報しているわけでございます。
 また、事情聴取書でございますけれども、これは、委員会で信憑性があり、調査に値すると判断した場合に、発注サイドが入札参加者全体について事情聴取を行って、その結果を取りまとめたものであります。これに基づきまして委員会で審議をしまして、談合の事実があると認められる場合には入札執行の取りやめ等の措置を講ずる、こういうものでありますし、また、誓約書は、事情聴取の結果、談合の事実があったと認められない場合でありましても、各入札参加者に対しましては、入札を行うに当たりまして文書で誓約書というのを出させるということでありまして、これらにつきましては、同様、公正取引委員会の方には報告をしている、こういうものでございます。
原分科員 この情報開示の請求をした岡山県の住民の方は、国土交通省と公正取引委員会の両方に開示請求をして、開示の結果はどちらも同じこの一部黒塗りだったわけです。
 そこで、一つの事情聴取書というものに、ちょっと大臣、御注目をいただけますでしょうか。これは事情聴取書を見ていただくと、三カ所、黒塗りの部分があります。それは、事情聴取を受けた者と日時、そして聴取内容というものが黒塗りになっております。まず、これらはなぜ非開示なのかということを国土交通省にお伺いしたいと思います。
風岡政府参考人 御指摘の事情聴取書の非開示の部分でございますけれども、私どもは、本件不開示としました部分がありますのは、その主な理由でございますけれども、それは、国の機関が行う検査、取り締まり、こういったものの事務に関しまして、正確な事実関係の把握を困難にするおそれがあるのではないか、また、違法な行為の発見というのを困難にするおそれがあるということで、これは、情報公開法の第五条の六号のイに該当するということで不開示という扱いをしているところであります。
 特に、これを直接処分しました中国地方整備局がこのような取り扱いをした理由でございますけれども、具体的に申し上げますと、仮に事情聴取の内容を一般的に公開するということになりますと、その影響を懸念した方々から真実の言葉が述べられなくなる可能性があるのではないか、今後、例えば談合情報等について事情聴取をしても正確な情報が把握できないおそれがあるということで、今回のこの扱いにつきましては不開示という扱いをしているところでございます。
原分科員 何だかわかったようなわからないような、納得のいかないような御答弁だったんですが、では、同じ質問を公正取引委員会の方にもさせてください。なぜこの三つの情報が非開示なのかを教えてください。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 私ども、不開示とした部分につきましては、先ほど御答弁があった部分以外にも、個人に関する情報で個人を識別できるもの、それから、法人または個人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものというところにも該当するというふうに判断いたしまして、根拠としましては、情報公開法第五条一号に加えまして、同条二号のイ及び同条第六号のイに該当する不開示情報に該当しているということで、その該当部分について不開示としておるものでございます。
原分科員 個人の情報だからという御説明が今あったのですが、事情聴取を受けた者というものが個人情報だから非開示ということは成り立つかなと思うのですが、私ここで一つ不思議に思うのは、日時の部分が不開示のところなんです。平成十一年二月二十五日木曜日というところまでは出ているのですが、何時から何時まで聴取を行ったのかが非開示になっているという部分が私は納得がいかないんですよね。
 ここがなぜ非公開になっているのかということ、なぜだと思われるか、これはぜひ大臣にお聞きをしたいと思いますが、どう思われますか。
風岡政府参考人 事情聴取書の御指摘の日時のところ、二月二十五日木曜日までは開示をしておりますけれども、具体的な時間につきましては不開示にしております。これは事情聴取の内容全体を不開示にしておりますけれども、この場合、時間の長短というのは、一般的に申し上げますと、時間が長い場合には当然一定の申告があったというふうに判断をされる可能性があるわけです。業者の方から一定の事実関係についての申告があったというふうに判断され、時間が短い場合はそういった事実はないという形で、この時間を表示することが申告内容を類推するおそれがあるということで、一体としてこの部分についても不開示にさせていただいている、こういうことであります。
原分科員 どれぐらい長い時間やったかというのも、やはりそれは国土交通省の内部に設けられたこの審査会のやる気を示すものだとも思いますし、ここは別に、調査内容というものがどうであるか、どれぐらい時間をかけて調査をしたかということは、私は、これは別に非開示にする必要もないとも思います。
 実は、この事情聴取書を専門家の方に見せて、どう思うかということを聞きました。そうしたら、その方は、情報公開法の趣旨が理解されていない、先ほどからおっしゃっているように、もしも企業の利益に影響があるという理由で隠すのであれば、逆に企業名を隠して聴取内容の方を公示すればいいわけであるし、聴取内容を隠すということはやはり情報公開の趣旨をわかっていないのも同然で、意味のない情報隠しだということをおっしゃっている専門の方もいらっしゃいました。
 私、ぜひここは大臣に、答弁を聞いてでの御感想でもいいので、やはりお答えをいただきたいと思うのですが、なぜこの何時何分から何時何分までが非開示になっているのかということ、なぜだと思われるか、これは私、大臣にちょっと感想でも結構なのでお聞きをしたいと思います。
扇国務大臣 不開示になっているか、あるいは公表することで抑止力になるか、私は大きな問題だろうと思うんです。
 それで、あらゆる点で私どもは情報開示をしておりますけれども、正直申し上げて、私のところへも、あなたは素人の大臣だから談合を知らないでしょう、談合の手順を教えてあげます等々、あらゆる、やめた人からです、これは退職者から、こういうことで談合の手順があるんですよ等々の御教授をいただく、お手紙をいただいたりファクスをいただいたり。
 ただ、申し上げられますことは、今まで、少なくとも私が大臣就任以来、これは談合の疑いあるということで入札を延期したり、あらゆる手法をとっております。けれども、審査会を開いて監査官を現地に派遣しますけれども、少なくとも、国土交通省の職員が監査官を派遣して調べた中で、これを談合しましたと言った件は一件もありません。泥棒に泥棒したんですかと聞いたって、だれも言いませんよね。はい、そうでしたと。今も参考人、どこかでやっていますけれども、大体あなたやりましたかと言うと、はい、やりましたと正直におっしゃることはほとんどありません。しかも談合という、人に隠れたところで、そして隠さなければいけないことをしているという、私が教わった分では、新聞等々でここに談合ありと言ったときには、もう全部資料は消滅しているそうです。ですから、談合というものを把握するのはいかに難しいか。
 しかも、国土交通省の中で談合を取り締まる権限というものは、せいぜい次の入札停止程度で、法的に国土交通省に権限があるわけではありませんから、公取にちゃんと通知をして、そして司直の手でするものはするというふうにしております。それぞれ手順がありますから、少なくとも公共工事の大半を預かる国土交通省としては、談合というもの、あるいは談合プラス丸投げという一番悪い手口も順次なくすように私たちは最大限の努力をして、なおかつ、私たちの手でどこまで取り締まれるかという最大限の努力をしているつもりでございますから、私は、そういう意味で、情報公開等々も含めて、多くの皆さんの警告になっていると現段階では思っております。
原分科員 この日時と聴取内容というのは、談合情報に関して、これだけを見ると、黒塗りされている部分が少ないので非常に小さい情報じゃないかと思うけれども、私は、とても重要な情報だというふうに思っています。
 先ほど大臣は、国土交通省に法的な権限でしたっけ、があるわけではないということをおっしゃったのですが、実は、情報公開法の第七条では、大臣の裁量というものを認めているんですよ。この第七条を読みますと、公益上必要であれば、非開示情報が記録されている場合であっても、大臣の裁量で公開できるということが書かれているわけであります。
 この情報公開法を生かすも殺すも、私は国民次第であると思うし、特に、この第七条にかけては、大臣だけが持っている権限なわけですよね。ですから、情報公開にかけて、私は、大臣自身が日本のこの今の状況を変える力を持っていると思うし、官をコントロールする政治家として、やはり公益性を重視して、公開することが求められているものに関しては、大臣はこの権限というものを使っていただきたいというか、発揮をしていただきたいと思います。
 談合をなくしたいと思うのは、大臣も先ほどからおっしゃっているとおり、大臣もそうだと思うし、だれもが思うことだと思います。でも、大きなものを相手にするわけですから、一人の力では非常に変えにくいと考えていることもあると思いますが、知りたい、知るべきだというふうに思う国民と、こういう情報を知らせなければいけないと思う大臣が手を組んでいけば、談合というものもなくしていけると思うのですが、この第七条の大臣の裁量についてはどのようにお考えになられるでしょうか。
扇国務大臣 議員に申し上げたいと思いますけれども、現段階では、少なくとも社会情勢、我々は政治家ですから、現在の社会情勢を把握しなければいけないと思います。これだけ不況になり、全国、建設業界だけで六十万業者と言われました、そして、国土交通省だけで一年間に入札案件が四万四千件ございます、一つの役所だけでも四万四千件の入札がありますものを、いかに談合をなくしていくか。しかも、四万四千件を少なくとも電子入札するだけでも大変な努力でございます。
 けれども、私どもは、限られた予算の中で限られた仕事をしていく上に、必ず皆さん方に公正にやっていただきたい。それは少なくとも、今六十万業者と言いましたけれども、六百万従業員、六百五十万ぐらいの従業員が働いているわけですね、六十万業者に。そうしますと、これだけの不況の中で、とにかく従業員を遊ばすことは困るから、損してでも仕事をとってこよう、それくらいせっぱ詰まっている今の日本の社会情勢の中での建設業界の苦しみというものを、我々はそれを何とかしてあげなければいけない。一番バブルで、従業員がもっと欲しい、もっと欲しい、仕事が幾らでもあるというときには、余り談合はないんです。苦しくなれば苦しくなるほど、仕事が欲しくて談合していく、これが今の現状なんですね。
 ですから、本来であれば、私は、国土交通省のみならず、内閣の一員としては、そういう経済状況から脱して、皆さんが悠々と仕事をもらえて、そして元気に働けるという時代をつくるという政治の根本というものを考えながら、せめて国土交通省としては、そういう不正をなくし、そして情報開示をしていくということによって、法律もできたということも御認識賜って、こういう談合をしないような世の中を、社会情勢をまずつくるということも、私たち政治家に課せられた大きな仕事だと思っております。
原分科員 何か今の大臣の答弁を聞いていると、不況だから談合があってもしようがないみたいな感じに、ちょっと私は受けとめたのですが。でも、やはりあってはならないことだと思います。社会情勢がどんなに今不況だということがあったとしても、やはりあってはならないことだと思います。いろいろな法律を生かしていく上でも、やはりこれからは、住民による監視の役割というものは大きくなってくると思います。
 例えば、話題になっていた外務省を見ても、都合のいい情報だけを出して、悪いものをちょっと隠したりという、政治家の力だけではやはり今手に負えないような状況もあるわけですよね、省庁の中で。だからこそ私は、やはり国民一人一人の力を信じて、ある意味協力をしながらやっていくべきだと思いますし、もちろん、今の社会情勢というものも同時に考えていかなくてはならないと思います。私たち政治家というものは、国民が知りたいと思うことをしっかりと助けていって、邪魔をしないような、公開を阻んでいく行政を監視していくということをやはり地道にやっていくことが私は必要だと思っております。
 総務省が情報公開法の施行後九カ月の状況を調べたところ、開示請求に対して出された不服申し立てを、きちんと情報公開審査会に諮問せずに放置しているケースが、七割以上もあるそうです。
 この苫田ダムの件でも、非開示を不服として、審査請求がこれは国土交通大臣に対して出されています。こうした審査請求書が出されていること、そして、それが今もなお国土交通省内に放置されているというこの事実を大臣は御存じだったでしょうか。
風岡政府参考人 御指摘の審査請求が大臣に上がってきております。これは、十三年の十二月二十日ということでございます。
 私ども、確かにちょっと時間がたっていて申しわけないんですけれども、現在、本省におきましては、先ほど来御議論がありましたように、この種のものの情報開示のあり方というのは、やはりいろいろな議論が確かにあります。だから、そういったことも踏まえながら、本件につきましても、不開示部分の範囲が適切であるかどうかも含めて、現在検討している、こういう状況であります。
原分科員 直ちにこういうものにはこたえていただきたいと思うし、例えば、住民側が不服と思った場合には六十日以内に審査請求をしなさいということが決められているのに、何か行政側だけは、大変だからとか、いっぱいやることがあるからといって長い間放置しておくのは私はおかしいと思います。
 私、これは大臣にお願いをしたいのですが、こうした諮問をせずに放置しているというものをしっかりと調べていただきたいし、調査をしていく中で、大臣が、常識と公益性の面からこれは公開すべきじゃないかと。住民が不服に思って請求しているわけですよね。それに対して大臣が、やはり公開すべきだというような行政の文書があれば、ぜひ、先ほど述べた情報公開法の第七条というものを発揮して、積極的に情報公開というものを進めていっていただきたいと思います。
 では、お願いします。
扇国務大臣 今おっしゃったように、第七条、ございますけれども、冒頭からるる局長が言っておりますように、情報公開法の第五条、一から六までございますけれども、その中で、やはり第五条に基づいて、特定の個人の識別をすることができる情報でございますとか、この一から六までの案件、第五条とそれを勘案して第七条に行くという、第七条だけ取り上げて全部しなさいよというのは、これはやはり法の解釈ということでは、私は一方的過ぎると思いますので。
 今申しましたように、第五条の一から六までの条項と、審査請求があったり、あるいは情報公開請求があったものに対しての第七条の決定というふうに順番が来ると思いますので、すべてのことを第七条だけで片づけて公表しなさいよということではなくて、私は、第五条も重視しなければならないということは御認識賜りたいと思います。
原分科員 それはもちろんのことであって、ですから、公益性とか国民からの声にこたえるといった意味で、大臣にはこういう権限があるのでぜひ使っていっていただきたいというお願いです。
 最後、時間も余りないので、私は、このことを勉強しながら一つ思ったことが、こうした事業のところで、予定価格というものがあること自体がもしかしたらおかしいんじゃないかなということを思いました。予定価格があるから談合というものが起こるのであるし、予定価格があるから権力のある人が情報を操って業者との癒着が生まれたりするんじゃないかと。これは私が国会議員になって、短い間ですが、勉強していて思ったことです。
 やはり、一つの目的を達成していくために安くてより高い技術を提供していくことが、ある意味建設業というか業者の使命であるというふうに思うのですが、そのことについて、私が予定価格があることがおかしいと思ったことについて、大臣はどのように思われるでしょうか。
扇国務大臣 あらゆるものには予定価格を積算しなければ予算もとれませんし、発注もできません。ですけれども、私は、今議員がおっしゃるように、予定価格を事前公表したらどうだということも今現実にやっております。予定価格を事前公表すれば談合しないで済む。けれども、国の直轄事業に関しては、予定価格の事前公表は、これは禁止されております。事後公表ということになっています。けれども、法律を変えてしまえばいいということですけれども、今現実的に事前公表というのをやっておりますけれども、その中でメリット、デメリットがあります。
 予定価格を先に言うことは、これが、例えば一千万円ですよと言って事前公表してしまいますと、入札した人たちは積算する努力をしないのですね。入札価格というものを、例えば一千万ですよと言わなくて入札すると、みんなは、これは幾らでできるといって、資料費から材料費から全部計算して、大体一千万くらいだなと思って入札する。けれども、事前に公表してしまいますと、各入札者は積算努力、しなくなるのですね。そうすると、これもコストアップになってしまう、こういうメリット、デメリットがあるものですから、一概に事前公表がいいとも言い切れませんけれども、まず地方公共団体等々では、今、事前公表というものは試験的に実現しております。その中で、我々はメリット、デメリット、これを勘案しながら、かえってコストアップになってしまうのではないか、高値入札になってしまうのではないかということも勘案しながら、今後の勉強に資していきたいと思っています。
原分科員 今国民が一番注目している政官業の癒着にかかわることだと思うので、きょうはもう時間が来てしまったので、これで終わりにさせていただきたいと思いますが、大臣のさまざまな御答弁、積極的に受けとめて、これからも頑張っていっていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
御法川主査 これにて原陽子君の質疑は終了いたしました。
 次に、山花郁夫君。
山花分科員 民主党の山花郁夫でございます。
 長時間にわたりましてお疲れさまでございます。約三十分ほどおつき合いのほど、お願いを申し上げます。
 今の原陽子議員の大変大きな議論に比べると、ややもすると技術的なことかもしれませんけれども、平成十年の建築基準法改正に伴いまして導入されました指定確認検査機関のことについて、何点か質問させていただきたいと思います。
 今、いわゆる民間の主事というふうに言われておりますけれども、これが導入される以前でありますが、建築主事の方の数が非常に少ない、それに比べて、着工件数が大変多いという事情があったと言われております。当時の主事の方、大体一人当たり年間六百件を見ているというふうな状況だったということであります。一人六百件ですから、一年は三百六十五日しかありませんから、休みもあるんでしょうから、一日二件ぐらいはやっていかなければいけないという状況だったと思うのです。
 今回質問に当たりまして、当時の会議録などを読ませていただいたのですが、そのときの議論などを見ますと、例えばアメリカなんかと日本の実力と比べると、一けた多いぐらいの検査体制で実施しているという状況。そういった状況と比べますと、日本の執行体制というのが極めて貧弱であった。貧弱という言い方は適切かどうかあれですけれども、そういった事情があったということのようであります。
 そこで、当面の検査体制としては、建築主事の体制というものは強化したいけれども、建築主事だけではおのずから限界があるということで、そこで民間ということに着目をして、民間に機能の一部を担当していただくという仕組みがつくられたものであると承知をいたしているところであります。
 当時の法律案の趣旨説明、当時は瓦先生ですね、建設大臣の趣旨説明を読みますと、「この法律案は、規制緩和、国際調和、安全性の一層の確保及び土地の合理的利用の推進等の要請に的確に対応し」という形で、規制緩和とかあるいは国際調和の観点があるということ。また、全文は読みませんけれども、「建築確認の円滑化のための新たな手続制度の整備」ということが趣旨説明の中で述べられているわけであります。
 当時の委員会の審議の中で政府は、「民間と建築主事を合わせた総合的な執行体制として飛躍的な強化を図りたい」と述べておられるわけであります。これは平成十年の五月十五日、衆議院の建設委員会で、民主党の樽床委員からの質問に対して政府委員の方が答弁されているものであります。
 この建築主事の制度でありますけれども、現在どういった状況になっているのでしょうか。また、民間の建築主事が入ったことに対して、どういう評価であるとか、あるいは見通しを持っておられるのでしょうか。御答弁をお願いいたします。
三沢政府参考人 今先生おっしゃいますように、民間の指定確認検査機関制度を導入することによりまして、いわば行政サイドの建築主事で行っております建築確認業務、この負担軽減を図りまして、むしろ行政の方は、本来行政でないとなかなかできないような違反の是正とか処分等を重点的に実施する、そういう体制で制度全体の実効性の確保というのを図っていこうという趣旨だったわけでございます。
 それに基づきまして、今現在、民間の指定確認検査機関、これは平成十四年四月一日現在で七十五機関が指定されているところでございます。
 その結果として、建築主事の負担がどのぐらいになったのかということでございますけれども、先ほど、平成八年度で年間六百件という数字がございましたけれども、その数字が、平成十二年度で申しますと年間四百件という形で負担軽減が図られているということでございます。今後さらに指定確認検査機関の増加というのが見込まれておりまして、これに伴いまして、建築主事一人当たりの一年間の建築確認の件数はさらに減少していくというふうに見込んでおります。
山花分科員 当時、年間六百件だったのが四百件ほどということでございますし、またこれから民間のそういった機関がふえてくれば、恐らくその件数も減っていくのでありましょう。また従来、少し時間がかかり過ぎると言われていたこういった建築確認行政についても、スピーディーな形で確認がおりることとなったということは、一定程度評価してよろしいかと思いますが、ただ、その反面、自治体としては少し困ったことが起きているのではないかなということがございます。
 どういうことかと申しますと、例えば自治体としては、独自にまちづくり条例であるとかあるいは開発指導要綱とか、そういったものを定めている自治体が多いわけでありますけれども、例えば民間の方ではなくて、役所の方に来れば建築確認申請というのが出てくれば、それで建築物の建設予定というのを事前に、どこのところにどういうものが建つのかということを知ることができますし、また場合によっては、それによって紛争が生じそうだという場合には、未然にそれを防ごうという努力をすることも可能だったわけであります。
 また、その際に、これは評価は分かれるのかもしれませんけれども、それに伴いまして交通安全の対策であるとかあるいは日照とか日影など、近隣住民との話し合いを求めるためのこういった紛争予防条例などの手続などを行ってきたこともあるわけでありますけれども、これ民間の建築主事の方に行かれてしまいますと、こういったことなしに工事に着工できるわけでありまして、いわば条例とか開発指導要綱というのをスルーしてしまうような形も出てきているわけであります。
 このことというのは、法律改正の際にも懸念する声があったことでありますけれども、実際に、そうした例というのは幾つか出てきているように思われます。これは、ことしの一月十一日に毎日新聞で書かれていた、「住民置き去り「建築確認」急増」というような記事が出ておりました。
 少し御紹介いたしますと、これは新宿の神楽坂で起きていることのようですが、二十六階建てのマンションが建つということで、近くの住民たちが日照が妨げられるということで反対をしているようであります。住民の申し立てに応じて、東京都が昨年の十一月、学識経験者などでつくる建築審査会などを開いたけれども、席上、既に建築確認を済ませた民間の機関は、基準法に適合していた、問題はないんだ、そういう説明をしているということであります。恐らく制度としてはそういうことになってしまうんだと思うんですが、住民側は、行政が建築確認段階で間に入らないと、住民が反対するような建物が次々と建ってしまうということを話しているということ。
 あと、この記事についてでありますけれども、例えば、法政大学の五十嵐先生がコメントしておりまして、都市政策を専門にしている先生でありますが、「神楽坂のような事例は全国に広がっている。このままでは都市景観が傷つき、失うものが大きい」という指摘をされております。
 あと、裁判ざたになって非常に有名な例ですけれども、国立のあのやり方が適切かどうかということは特にここではコメントいたしませんけれども、あれも似たような話ではなかろうかと思うわけであります。
 こうしたことが起こりますと、例えば地域住民が、市であるとか区であるとか都の議会に、市の指導あるいはもうちょっと広げて言えば、要するに自治体の方に指導してほしい、そういうような陳情を出したとしても、場合によっては、議会が開催される前に工事が着工されたりであるとか、あるいは、議会中であっても、民間建築主事と建築主との契約によって議会の意向とは関係なく事が進んでしまうというケースがあるわけであります。そうすると、自治体が条例とか要綱によるまちづくりというのをしようとしても、その担保がなくなってしまうように思われるわけであります。
 こういった懸念が法律の改正時にもありまして、例えば多摩地域、私も選挙区が多摩の地域なんでありますけれども、そこの地域の二十七市でつくる東京都市長会というところが、民間開放の議論にまちづくりの視点を十分取り入れてほしいというような、当時そういった要望というのを出していると思います。
 民間の主事ということは、そこだけ取り上げますと建築基準法の大変技術的な話なのかもしれませんけれども、ただ、こういうふうに見てまいりますと、ここのところ、例えば地方分権ということが言われておりまして、数年前になりますけれども、地方分権一括法で、都市計画に関する事務というものが機関委任事務から地方公共団体の自治事務となってまいりました。そして、都市計画についてもこのように自治体に権限が移されてきているわけでありますけれども、民間主事の問題というのは、こうしたまちづくりの観点から、少し障害になっているように思われるわけでありますが、実際に施行をしてみて、政府側として問題意識は当時とお変わりはないのでしょうか。お答え、お願いいたします。
三沢政府参考人 要するに、建築確認の法的な性格は何かということでございます。
 建築確認は、御承知のとおり、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する客観的な基準に適合しているか否かを審査するというものでございまして、その審査基準というのは、法令で限定的に定められているものでございます。したがいまして、これは指定確認検査機関であろうと行政側の主事であろうと、その基準に適合するかどうかを判断して、適合している場合は確認をおろすというのが制度の趣旨でございます。
 ただ一方、近隣調整、マンション等を建てる場合に、いろいろ周辺住民との調整ということで、例えば自治体の方で、先ほど先生おっしゃいました紛争予防条例等をつくっている例もございます。それから、別途、必ずしも住民同意ということで住民との調整だけではなくて、具体に一定の公共施設等について負担を求めるというようなことから、開発指導要綱というようなものをつくっている例もございます。
 ただ、こういったものは、客観的な建築基準の遵守を目的とする建築確認とは目的を異にするものでございまして、条例であればその条例に基づく独自の手続として、それから指導要綱であれば行政指導ということで、その範囲内で建築者等に対していろいろ御指導していただくという性格のものでございまして、基本的には建築確認と切り離して実施されるべき性格のものでございます。
 それで、今地方分権との関係のお話がございましたが、まさに地方分権で、基本的には身の回りのまちづくりの都市計画の権限は自治体におろされているものでございます。したがいまして、一番大事なのは、その地域の状況を見ながら、あらかじめその地域についてはどういう土地利用をすべきかということを、必要に応じて、例えば地区計画制度とか高度地区等の都市計画制度を活用してきちっと定めていただく、このことが一番、事前のいろいろな意味での紛争の予防に資する、そういうことかと思いますので、こういった手段をぜひ活用していただきたいという考え方でございます。
山花分科員 今、地区計画の活用などというお話がございましたし、目的を異にするのだということですよね、まちづくりという話と建築確認ということとは。それは、一応そういうことなんだろうなという気はするんですけれども。
 ここのところ、一方では、例えば行政手続の透明化ということで行政手続法が制定されたりであるとか、あるいは要綱行政のようなものがどうもよくないのではないかという議論があったことも承知しております。例えば、あるところにマンションができる、市が、どうもそれはけしからぬということで、武蔵野市でしたか、給水拒否をしてという事件があって、裁判で負けているわけです。
 そういったやり方はまずいんだろうなということもよくわかっているつもりでありますので、そういう方向にすべきだとは申しませんが、ただ、実は、この問題に関心を持つようになりましたのは、現在進行形で言いますと、実は私の実家と、私が今住んでいる前のところでマンションが建ち始めているということもあるんですが、それより前に、あるところで少し陳情を受けたところから始まるわけです。
 先ほど、自分の選挙区も多摩の地域ですがと申し上げましたけれども、都心もそうかもしれませんけれども、最近、多摩の地域、マンション建設が大変多うございますね。特に、調布とか府中なんかは、割と昔はそんなに地価も高くなくて、広い土地に住んでいた方がいらっしゃるからかもしれません。恐らく、町並みから見ると、ああこれはきっと相続関係で、いや推測ですのでよくわからないですよ、相続関係で税金が払えないとかでマンションになっちゃったのかなと思えるような、何かそういうマンションなんかも建っていたりするわけであります。
 そのうちの一つなんですが、府中のある場所でマンション計画というのがありまして、それで、このケースなんですけれども、随分長い間やっていたもののようであります。
 これもちょっと普通からすると変わったケースなのかなという気がするんですが、ほとんど戸建ての家が並んでいる地域に六階建てのマンション計画というものが起こりました。そこで反対運動のようなものが起こるんですが、当初はそんなに過激な形の、過激なというのは、要するに看板張って、旗立てて、どこどこ建設とか、どこどこ何とかけしからぬというのではなくて、割と皆さん住民の方々が一カ所に集まって、いろいろここのところを削れないかとか、三階建てにできないかとか、日照がどうだとか、日影がどうだとか、そういった議論をやっておりまして、これは私が知る限りではそう多くはないと思うのですけれども、相手方の会社は申し上げませんけれども、そこのところもかなり折れていきまして、当初六階建ての計画だったのが、四階建てまでに落としていったのですね。ただ、住民の方は三階建てに随分こだわっていたようなんですが。
 この経緯なんですけれども、やはりまだ民間の建築主事が入っていないころですから、市の方が両者に対して、別に何か給水とかガスとか水道とかの威力をちらつかせてというわけではなくて、ともかくちょっと話し合ってくださいという形でやっていたようです。市議会の方にも陳情が出まして、議会の方も、町並みからすると、少なくとも六階建てはいかがなものかというような態度でやってきたと。
 平成十二年の暮れぐらいにその交渉がついにはじけてしまうのですけれども、結局、住民の側が三階建てにこだわったということと、業者の方が四階建て以上はもう折れないということで、とんざするわけです。
 この後どうなったかといいますと、当初いろいろ話し合いに応じてきた業者が、ありがちな話かもしれません、違うディベロッパーの方に売ってしまいまして、今度、転売を受けたディベロッパーは、もうそういう丁寧なことはしない。当初、十二年十二月のことですけれども、建築説明標識を張り出して、その後は、一応何か書類を持って周りに回ったようですけれども、そういう団体での交渉はしませんよというような態度で、実際にそうは言っていないと思うのですが、事実上そういった態度で住民の周りを回ったようであります。
 業者の方が説明終了報告というのを市に提出するのですが、市長はその受理を拒否いたします。市の方が、説明と自主解決をしてほしいという文書を出すわけですが、これは市の方も非常に熱心でして、府中市の指導課長というのが長野県に本社があるディベロッパーのところにまで行きまして、住民との話し合いをしてほしいという要請をしておるわけです。
 結局、十三年の二月になりまして、民間の建築主事事務所の方に確認申請を提出するということで、結局地区計画とかそういうことでやってほしいということで、恐らくお立場としては、最初からそういうところだったら地区計画で何とかしておけばよかったじゃないかという答えになるのかもしれませんけれども。結局、今建物は建っちゃっているのです。
 その後も、市の方もある程度の努力はしているようで、三月に第一回のあっせんを行って、市議会も全会一致で陳情の採択を行って、三月中に三回あっせんを行って、三月の末には調停への移行を勧告するのですけれども、ディベロッパーの方が拒否をするといった経緯があったわけであります。
 こういったものを実際にちょっと体験してしまいますと、今の御答弁のように建築確認という観点からすれば、民間であろうが市であろうが、恐らくそれは適法なんだからそういうものだというお答えになるのかもしれませんけれども、今回のケースで大変不幸だと思うのは、住民なんかが自治体とか市議会とか、さらには今回の民間の建築確認の主事の制度に対して、非常に不信感を持っているわけです。
 つまり、今までいろいろ話し合いをしてきたのに、転売されたら、今度は民間の主事の方にぴゅっと行ってしまったということで不信感を持っているわけですけれども、こうした場合、公共団体とか住民とかは一体どういう手段を講じればよろしいのでしょうか。
三沢政府参考人 お答えする前に、ちょっと先ほどの答弁で若干誤解のないように申し上げますと、まちづくりと建築確認は切り離して考えるべきだと申し上げたわけではなくて、建築確認の中でも、例えば用途規制であるとか容積率、建ぺい率、まちづくりに非常に密接に関係ある規制がございます。そういう法令にきちっと決められたものについては、それを審査するのは当然建築確認の守備範囲であるというふうに考えております。
 ただ、申し上げましたのは、法令に事前にきちっと書いていないことまで、どこまでそれを建築確認で要求するかというと、それはやはり制度の趣旨からいってちょっと超えるものがあるのではないか。
 その場合、ではどうすればいいのかというお尋ねかと思いますけれども、今現実にやはり各地で紛争予防条例等というものが決められておりまして、これに基づきまして、例えばいろいろな住民説明会であるとか、あるいは住民と業者の方の間のネゴシエーションとか、いろいろな手続が持たれているわけでございます。そういう当事者間の話し合いがきちっとされることは非常に大事でございますし、また当事者間の話し合いがなされるように、市が事実上いろいろな形で指導に入っていただく、このことも非常に大事なことだというふうに考えております。
 ただ、申し上げましたのは、最後ですね、こういうことを何か聞かないと例えば確認をおろさないよと、それは建築確認の制度の趣旨に反するのではないかと申し上げたわけでございます。
 それで、ちょっとこれは、さっきお答えしたことと同じになってしまうのですけれども、結局、やはりきちっとした事前のルールが決まっていないと、例えば、業者の方にしても、そういうルールがないという前提で土地を買ってみたものの、買った後で事後的にいろいろなことを言われて、そうしますと、例えば経済活動の上で非常に予測しがたいし、いろいろな大きなリスクを負ってしまう。ただ、一方では住民の方々にしてみると今までの環境と違うものが建ってくると。ここは非常になかなか難しい話でございまして、もちろん明確なルールが事前に地区計画等で決められていれば一番いいわけでございますけれども、それがないときにどうするかということであれば、それはやはりいろいろ条例等に基づいて定められている手続の中で、当事者間できちっと話し合っていただくということが一番重要だろうというふうに考えております。
山花分科員 今の府中の話し合いがやっていたのも、言われるとおり、紛争予防条例などに基づいてということなんです。
 通告をしていないことですが、ちょっと確認をしたいんですけれども、今の真ん中辺ぐらいのところで、要するに建築確認をおろすに際して、こういうことを守らないと出さないよというやり方がまずいということですが、裏を返せば、例えば今、事実上各自治体とかで誘導的な条例、例えば緑をできるだけ残そうとかいうことで、マンションとかをつくるに当たっては、例えば六%から八%ぐらいは緑地帯をつくるようにとか、そういったやり方をしていて、そういうこと自体は別に否定されないわけですよね。それが何か変な強制力とかが伴うとまずいということで、それ自体は構わないということでよろしいでしょうか。
三沢政府参考人 いわゆる開発指導要綱という形で、例えば一定の緑地を要求したり、場合によっては一定のお金の負担をお願いするということはあるわけでございます。
 これにつきましては、一つは、やはりそういうことを指導される合理的な理由なり根拠なり、そういうものをまずはっきりしていただきたい。例えば根拠もわからず、つかみ金で幾ら出せ、そういうやり方は非常にまずいであろうということと、それから、やはり今先生もおっしゃいましたように、何かこれを出さないと確認をおろさないよとか、それは、かつて裁判でも争われたとおり、非常に問題があるやり方である。
 そういうことで、指導要綱そのものを否定しているわけではございませんが、中身、やり方については適切なやり方をしていただきたいということでございます。
山花分科員 それはそうですよね。例えば要綱をつくること自体がいけないであるとか、あるいは背景に強制力を持たずに、協力してくださいと要請すること自体は、恐らくどこの自治体でもある程度やられていることではなかろうかと思いますので、そのこと自体は恐らく否定されないんだと思います。
 今おっしゃったこととも多少関連するのかもしれませんけれども、この法改正の際には附帯決議がついておりまして、地方公共団体に対し、本法の施行に伴う建築行政の執行に適切な指導とか支援を行うことというような附帯決議がついているわけであります。具体的には、この附帯決議にのっとりまして、どのような指導とか支援を行ってきたのでしょうか。あるいは、今お話に出てきたような内容について、例えば自治体などについて、もっと地区計画などで事前にやっておいた方がいいんですよというような指導を周知すべきではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
    〔主査退席、森岡主査代理着席〕
扇国務大臣 るる細かいお話を今お伺いしておりましたけれども、条例もあるいは高さ制限、容積率等々もそれぞれの地域でございますから、その地域地域については私はお答え申し上げませんけれども、今おっしゃった平成十年の建築基準法の改正時、そしてそのときに、地方公共団体に対して本案の施行に関する建築行政の執行に適切な指導、支援を行うことという附帯決議がなされたことは、今御指摘のとおりでございます。
 少なくとも、地方公共団体の実務の参考となるような指定確認検査機関の指定方法、もしくは中間検査の実施方針等を通達するということで、これとともに、法令の改正の内容についてパンフレットの作成、そのパンフレットの配布、そういうもの、地方公共団体の職員に対して講習会を開催、これもいたしております。そういう意味では、今回の建築主事の会議の場を活用した説明会等を行って、その内容も周知徹底するように努めているというのが現状でございます。
 そういう意味では、まちづくりに関しましても、住民の理解と協力のもとに、各地域の実情に応じた取り組みを行っていくということが重要であることは言うまでもありませんけれども、地方公共団体が地区の計画でありますとか、あるいは高度地区を適切に活用するように、国土交通省としては技術的に助言を引き続いて行っていき、また周知徹底と御協力をしていきたいと思っております。
山花分科員 今の指導の中身にも関連することなのかもしれません。法律を改正するときに、この指定確認機関をつくるに当たっては、中立性とか第三者性について多少議論があったと記憶しております。例えば、ゼネコンなんかがリストラをしたような社員を集めてこういった会社をつくるんじゃないかとか、そういった懸念も表明されていたわけですけれども、組織としての中立性であるとかあるいは業務運営の中立性をどのような形で担保されているのでしょうか。その仕組みについて御説明をお願いいたします。
三沢政府参考人 指定確認検査機関の指定に当たりましては、一つは、確認検査員をきちっと一定数以上確保していただいて十分な審査能力を有すること、それから二つ目には、役職員とか出資者の構成が建設業とか設計業等に携わる者が原則として二分の一未満であるなど、業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないこと、それから三点目に、建設業とか設計業とか、確認検査業務の実施に不公正となるおそれのある他の業務を行わないこと、こういった基準に適合しているかどうかを厳格に審査をすることとしております。
 それから、指定確認検査機関の役職員に対しましては、守秘義務が課せられるとともに、みなし公務員規定というものが設けられておりまして、適正な業務実施の確保を図るようにしております。
 仮に、こういう指定確認検査機関が指定基準に違反したり、中立性、公平性を確保できなかった場合には、指定の取り消しとか業務の停止等を命ずることができるという形で中立性、公正性を確保することとしております。
山花分科員 時間が参りましたので、質問を終わりにします。どうもありがとうございました。
森岡主査代理 これにて山花郁夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、中村哲治君。
中村(哲)分科員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。大臣、長時間の審議で本当にお疲れのところですけれども、もうしばらくどうかよろしくお願いいたします。
 大臣、私、きょう議論させていただきたいのは、都市基盤整備公団についてでございます。
 都市基盤整備公団は、特殊法人等整理合理化計画、平成十三年、昨年の十二月十九日の閣議決定によりますと、市街地整備改善事業につきましては、三点方針が出されております。
 「市街地整備改善事業は、都市再生を図るものに限定する。」二番目に、「新規の宅地分譲事業(都市の外延的拡大につながるいわゆるニュータウン開発事業)は廃止する。」そして三番目に、「現在事業を実施中の資産についての時価評価の結果を踏まえ、採算性に問題があるプロジェクトの見直し、既に取得した土地の処分等を早急に進め、含み損の大幅な圧縮を図るとともに、できる限り多くの継続事業を速やかに終了させる。」とあります。
 つまり、今までとは方針を大きく転換するということだと思います。私が特に問題になっているなと思うのが、継続中であるけれども未認可である十八件の事業であると思っております。採算性を考えながら、しかし早期に終了していかないといけない。ある意味では相矛盾する二つの観点を同時に満たさないといけない、そういう難しいことがこの十八地区には必要とされていると思います。
 国土交通省として、三月末までに「見直しの方針」というものを、公団が市町村、都道府県に対して示さないといけないということを公団に指示をしたと聞いておるんですけれども、この点に関しまして大臣の御見解をお伺いいたします。
扇国務大臣 今中村議員がおっしゃいましたように、先ほどもお読みになりましたけれども、改めてこの十二月に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画、今お読みになったとおりでございます。それに基づきまして、国土交通省といたしましては、都市公団が実施しておりますニュータウンの事業、これが今問題だとおっしゃいましたけれども、地価の下落が続いておりまして、御存じのとおり、もう郊外の宅地需要が低迷しているんですね。そういう厳しい事業環境に置かれておりますので、そのために、今申しました十二月に決定されたこの計画によって、新規のニュータウンの事業、これは一切廃止するということが決定したのは御存じのとおりでございます。
 現在実施中の事業につきましても、採算性に問題があると思われるプロジェクトの見直し、そしてまた、できる限り多くの継続事業の速やかな終了を図るということで、国土交通省としましては、これに伴いまして、都市公団に対しまして、ニュータウン事業全般に対しまして事業の計画を厳しく精査して、また早急に見直しを進めるように指導してまいりました。
 その中で、今おっしゃいましたように、継続事業のうちで、特に高山地区を初めとします区画整理事業の中の認可に至っていない、認可していない十八地区、これに関しましては、必要に応じて事業を中止し、または区域の縮小を含めた抜本的な見直しを行うこと。これが具体的に見直しの内容について、平成十三年の年度内、もう過ぎていますけれども、この年度内で地元の地方公共団体との協議に入って早急に成果を上げるように、そして指導するということになっております。おっしゃるとおりでございます。
中村(哲)分科員 大臣の思いと公団の実際の働きがずれているように私はちょっと思うんですよね。
 市町村、都道府県とヒアリングをさせていただきました、具体的にはちょっと申しませんが。そのときに、明確な「見直しの方針」が示されたらよかったんですけれども、なかなかそうではなく、段階的施行も含めてこれを検討していくというようなことが口頭で示されたというにとどまったと聞いております。
 これから大臣にはお話を聞いていっていただくだけで、ちょっと議論の流れだけを押さえておいていただきたいと思うんですけれども、これから公団にお話を伺います。
 これは、こういうふうな今の状況というのは、まだまだ国土交通省の扇大臣が望まれている方針ではなかなか進んでいないんじゃないか、望まれている方針にはまだ至っていないんじゃないかなと思っております。なかなか難しいことだと思います。相矛盾する二つの要件、採算性と早期終了という二つの観点を同時に満たす方針というのはなかなか難しいと思いますけれども、しかし改革の時代ですから、きちんと取り組んでいかないといけないと思います。
 今後、どのように県や市と協議に入っていくのか、具体的にはいつごろ案を示していくのか、そんなようなところのお考えをお聞かせください。
中臣参考人 お答えいたします。
 高山地区の見直しにつきましては、国土交通省の指導もありまして、この三月から、奈良県及び生駒市と協議に入ったところでございます。
 先生御質問の、いつまでに案を示すのかというお話でございますが、見直しの具体案につきましては、私ども公団が一方的に提示をするというものではなくて、見直しの協議を進めていく中で、県、市とともに練り上げていくというふうに考えております。
 それで、具体案の取りまとめにつきましては、早急に行いたいと考えておりますが、できれば一年以内をめどに取りまとめていきたいというふうに考えております。
中村(哲)分科員 一年内にまとめていくということでした。そのまず第一歩として、具体的な案というのがまだまだ文書でも示されていないと思うんですね。そのあたり、まず第一番目の提案というのはいつごろにされるとお考えでしょうか。
中臣参考人 たたき台としての素案は、協議を進めていく中で随時提示してまいりたいと考えております。
中村(哲)分科員 私が聞きたいのは、その随時というのがもう今月中なのか来月中なのか、まず第一弾としていつごろ示されるのかどうかということを聞いているわけでございます。昨年度末までに具体的な案が示されないといけないはずですよね。それは、国土交通省の意向としてはそういうはずです。
 しかし、口頭で、それも段階的に施行をしていくというふうに言い切ったら別ですけれども、それも踏まえて検討していくという段階の回答しか公団からは聞かなかった、そういうのが県や市の言っていることでございます。
 そういうことで、まず、一年内にまとめるのであれば、いつその具体的な案を一番最初にまずたたき台として市や県に持っていくのか、それを聞かせていただきたいわけでございます。
中臣参考人 検討を進めるに当たりまして、見直しの視点とかあるいは見直しの方針といったものを県、市と確認しながらやっていきたいと思っておりますので、今現在、いついつまでにたたき台としての案を示すということはちょっと申し上げるわけにはいきませんけれども、協議の中で検討していきたいというふうに考えております。
中村(哲)分科員 大臣には質問するつもりはなかったんですけれども、ちょっと大臣にコメントをいただきたいんです。
 一年内に取りまとめるというようなことを言いながら、具体的な案が第一弾としていつごろ示されるかわからないというのは、これは国民にとってはよくわからないことだと思うんですよ。扇大臣、このことについてはどう考えたらよろしいんでしょうか。
扇国務大臣 私の手元に、今、この十八地区全部の一覧表がございます。これは、やはりそれぞれの地域の事情もございますし、今、高山地区の予定を拝見しておりましたけれども、この地区に至っては、少なくとも、計画人口が二万三千人、そして地権者が約八百五十人、面積も二百八十八ヘクタール、そういう意味で、地図も全部いただいておりますけれども、それぞれの地域で、たまたまきょうは中村議員は高山地区だけをおっしゃいましたけれども、全国で、東京から福岡まで十八地区あるわけですね。
 ですから、これだけ計画されたことを、その未認可のところを全部十八地区挙げましたから、やはりそれぞれの事情がございますから、より御丁寧に、より地区の皆さん方に理解いただけるように地方公共団体と打ち合わせしていく。何でもかんでもばっさり切ってしまえばいいんだというものでもないと思いますので、私は、少なくとも、都市公団の努力といいますか話し合いの中で、なるべく地元の皆さん方の意見を聞きながら、より軟着陸できるようにという努力のあらわれであろうと思っておりますから、なるべく早くそういう手順をお示しし、地域の皆さんにも不安を与えないように、地方自治体にもきちんとした対処ができるように指導していきたいと思っております。
中村(哲)分科員 大臣のお話というのは、情報公開をきちんとして、住民にきちんとわかる形で計画案の策定、そのプロセス自体もきちんとつくっていかないといけないというお気持ちだと思います。うんうんとうなずいていただいているので、このことについてはお聞きしませんが、そういう流れで、また、より質問をさせていただきたいと思います。
 公団にお聞きします。具体案策定のプロセスについて、地方自治体との協議内容を市民に直接公開することは考えていらっしゃるのでしょうか。
中臣参考人 見直しのプロセスにおいて、市との協議内容について市民に直接公開されるのかどうかという御質問だと思いますが、まず、当公団は、市民の代表であります市と協議を進めてまいる所存でございます。
 当公団は事業の施行予定者という立場もございますので、市民への協議内容の公開については、市の判断、裁量にゆだねるべきものと考えております。
中村(哲)分科員 それなら、なぜ直接市民に対しては公団は開示ができないのか、それについての理由をお示しください。
中臣参考人 先ほど申し上げましたように、私どもはあくまでも事業の施行予定者でございまして、市民の代表はやはり市でございますので、市の方が公開するかどうかの判断をするということでございまして、私ども単独で市民に市との協議内容を直接公開する立場にはないというふうに考えております。
 ただし、土地区画整理法第七十一条の三に基づきまして、区画整理事業の施行規程及び事業計画を公衆の縦覧に供することが定められておりまして、さらに、利害関係者は、縦覧された事業計画等について意見書を提出することができるということがございますので、御承知おきいただきたいと思います。
 以上です。
中村(哲)分科員 中臣理事のおっしゃったことを私なりにまとめさせていただきますと、事業計画案の策定時点においては、公団というのはまだ事業予定者であって、事業者として法的に決定したわけじゃない、だから、ある意味、出したくても出せないというふうな主体であるということだと理解しております。
 だからこそ、事業認可の申請を国土交通省に出した後に、法的手続によって縦覧手続がなされている。だから、市民に対して直接公団の側が――情報公開は、手続としては縦覧手続を設けている。それまでは、正式な工事予定者、事業予定者とは決まっていないわけだから、なかなかそこの過程を直接公開する立場にない、そういうふうに考えていると理解してよろしいですね。
中臣参考人 基本的にはそういうことでございますが、もう一点。
 協議の途中段階の情報、いわゆる審議検討情報と申しますか、それにつきましては、情報公開法ですけれども、法律の趣旨に基づきまして考えますと、実は、高山地区については八百五十人の地権者がおりまして、その方々の間で無用な混乱を生じるおそれがある場合は情報公開できないという判断に私どもは立っておりますので、私ども自身がその情報を、市との協議内容を公開するという立場にはないということでございます。
中村(哲)分科員 それは十分わかっております。地権者にしてみれば、自分たちの土地が具体的にどこに換地されてどうされるのかということを公開されてしまったらプライバシーの侵害になってしまうわけでもありますから、このあたりのところは、市民の代表としての市がそのあたりも配慮して情報公開をしていく、これがスキームの中でのあるべき役割分担なんだろうと思っております。
 そこで、質問を進めさせていただきます。
 市や県との協議のあり方についてなんですけれども、これは、先ほどの御答弁を前提といたしますと、市や県が情報公開をしたいなというふうに思ったときに、しやすいような交渉をしていくということもこれは一つのやり方だと思うんですね。
 例えば、提示をするときに、口頭だけではなくきちんと文書の形で相手に伝えていく、こういうことを考えたり、会議を口頭でやりとりをしたときに、それを議事録にとって、そして議事録を双方照らし合いながらサインして確認していく、こういうふうなやり方も考えられるんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
中臣参考人 昨年十二月に独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律が公布されまして、私ども公団におきましても、法の趣旨を踏まえて、情報の提供の充実を図っていく所存でございます。
 御指摘の点でございますが、まず、公共団体から情報公開についての御要請があれば、それは可能な限り御協力をしてまいりたいというふうに考えております。
 それで次に、今先生が言われました、書面で残すといいますか、そのことにつきましては、例えば、協議内容について、協議を文書で行うとか、あるいは協議結果を文書で確認するというようなことはもちろんやっていくつもりでございます。それと、議事録のお話がございましたが、もちろん必要な議事録につきましては、双方確認の上、つくることになると思います。
 ただ、その議事録を、協議の途中の議事録について公開をするかどうかについて公団にもし言われた場合には、先ほど申し上げたように、権利者八百五十人にもし無用な混乱を招くようなことがあれば、それは公開はできないという判断に立たざるを得ないということを申し上げております。
中村(哲)分科員 ちょっと事前のレクとは違う方向に話が進んできているので、詰めさせていただきたいなと思うんです。
 市がこれを公開したいなと思ったときに、市の判断で公開してくださいというふうに考えていますというお立場だと私は理解しておったわけですけれども、それをもう一段踏み越えて、公団としては、市の判断以上に、やはり自分たちが公開してもらいたくないなといった場合には、公開しないように市に働きかけていくということでしょうか。
中臣参考人 誤解のないようにもう一度申し上げます。
 市との協議内容の公開について、公開をするか非公開かということについての最終的な判断は市の判断、裁量にあるというふうに理解しております。
 ただ、もし市の方から公開、非公開についての意見を求められれば、私ども公団の立場は、先ほどの権利者等の問題がございますので、支障のある場合は御意見を申し上げるということですので、最終的な御判断は市がされるということは先生のおっしゃるとおりでございます。
中村(哲)分科員 以上の議論を私なりにまとめますと、市が情報公開を積極的にしていきたいというふうにお考えになる場合には、その意向に沿った形でできる限り、言葉だけでなくて、本当の意味でできる限りの協力をしていく。
 例えば、口頭の情報というのは、文字にした方が最終的には情報公開に資するんですよね。だから、できるだけ書面の形で残していく。そして、市の方から、情報公開、尋ねられれば答えることはあるけれども、最終的には市が判断することであるのだから、原則論としては市の独自の判断で情報公開をきちんとしていただきたい、そういうふうに考えていると理解してよろしいでしょうか。
中臣参考人 そのとおりでございます。
中村(哲)分科員 大臣、これから行政はこういうふうにしていかないといけないと思うんです。
 今後のこういったニュータウン型の事業に関しては、どういうふうな観点で公団というのが取り組んでいったらいいのかということを、ちょっと深めた議論をしていきたいと思うんです。
 大臣、先ほどおっしゃられましたように、例えば高山第二工区の場合は、二万三千人の大規模な開発が行われるということです。私もこの開発予定地の生駒市で生まれ育ったんですけれども、私が生まれて育ったこの三十年の間に、生駒市は、生駒町から生駒市になりまして、人口が三万七千人から十一万五千人にふえた町です。二万三千人の町を新しくつくるということは、今の人口の五分の一の新しいニュータウンをつくるということですから、普通、生駒市に住んでいる市民からしてみたら、ちょっと荒唐無稽な話なんじゃないかなという感じがするわけですね。
 大臣、都市計画法の改正のときにも大臣もおっしゃっていたかと思うんですけれども、今もうだんだんと都市回帰の傾向がありますよね。今までは、ニュータウン型で、都市の外延的拡大に従ってどんどん人口が郊外に出ていった。しかし、そのニュータウンを買われた人たちが年をとられて、便利な生活をもう一度求め直すときに、結局、都心のマンションを買ってそこに移られるようなケースもふえてきている。
 そういった時代の流れを考えるときに、やはり都市の外延的拡大というのは、新規事業に限らず未認可地域においても積極的に、大胆に見直していくような方針が必要なんじゃないかなと私は考えるんですけれども、その点、大臣のお考えをお聞かせください。
扇国務大臣 私も何年も大臣をしていたわけではございませんので、私以前の話ですけれども、特にきょう中村委員からこの高山地区に対しての御質問があるということで、私も高山地区を少し見てまいりました。私、関西ですから、奈良県はすぐそばでございます。
 ただ、この地区に、平成六年の二月にこれは決定しているわけですね。その当時はまだバブル崩壊をしていなくて、こういう広大な二万三千人のニュータウンをつくるということが、関西文化学術都市等々の関連から、希望と夢にあふれた計画であったんだろうと私は思います。
 ところが、御存じのとおりの現状でございまして、その平成六年に地区決定をいたしましたけれども、事情をるる勘案して、要するに関西文化学術都市の基本計画の変更もその間ございましたし、あらゆることを勘案して、十二年の十一月に都市計画の決定というものをされたけれども、現段階ではこれを十八地区、御存じのとおり、先ほどから申しましたように事例が挙がっておりまして、私は、十八地区に関しては一応見直すということが決定されたのも万やむを得ないかなと思っております。少なくとも、今、多くの皆さん方が一時は夢と希望に燃えたということだけに対しては、幾ら奈良県、生駒市が決定された、また御要望もあったということを含めても、私は、そういう意味では多くの皆さん方にでき得る限り情報公開をし、その経過というものはお知らせするという義務もあろうと思います。
 ただ、問題は、情報公開法の第五条の一から六にどのように適合するかということは、私は少なくともまた生駒市で御判断もあろうと思いますので、そういう意味では、生駒市、奈良県そして都市公団等々との連携をしながら、住民の皆さんに少しでも不安を与えないような対処の仕方、今も今後の計画というものをなるべく早急に提示して、そして生駒市と入念に話し合っていくべきであろうと思っております。生駒市の皆さん方に対しても、ぜひ早目に、そして綿密な連携をとっていくということ、これは高山地区だけではなくて全国十八カ所あるものですから、十八地区とも私は同様の対処をしていくべきだろうと思っておりますので、皆さん方にぜひ御理解をいただけるような対処法を考えていくべきだと思っています。
中村(哲)分科員 事前の通知よりもちょっと超えて議論させていただきたいのですけれども、今大臣のおっしゃった情報公開をしっかりしていくということに関しては、本当にその方針でやっていただきたいと思うわけでございます。
 そして、さらに私が大臣に先ほどお聞きをしたかったのはこういうことでございます。
 ニュータウン型の開発を新規ではしないということですよね。さらに、継続中の案件というのは、今もう認可されているものと未認可とがある。ある意味、認可されているものというのはもう工事を進めるだけですから、それは早急にやっていくことができると思うのですけれども、未認可の地区に関しては、やはりこれはニュータウンの新規ではやらないという外延的拡大に当たるわけですから、採算性を厳しく判断して、事業を厳しく縮小していく方向で検討しないといけないと私は考えるのですけれども、そのあたりのところを大臣に聞かせていただきたいわけでございます。
扇国務大臣 それは私、先ほどお答えしたと思っております。
 それは、現段階で、全国で未認可の地区が十八、施行中の地区が五十九、法定事業完了地区が四十三というふうになっています。でも、四十三の法定事業完了地区、これは法律上は事業は終わっておりますけれども、公団が買収して売っている分譲地でまだ売れ残っているところがあるのは御存じのとおりでございます。
 そういう中で、未認可の地区等々も含めて、今の厳しい状況の中では、少なくとも私は、公団のニュータウンの事業全般について事業計画を厳しく精査して、そして早急に見直しを求めるようにと冒頭にお答えしました。
 私は、そのことを公団もよくわかっていて、一番慌てて、そして一番今苦労しているのも公団であるということも御認識賜って、正直言うと、公団は、自分たちの存続にかかわる大問題でございますから、そういう意味では、一番頭を悩ませながら、なおかつこれを穏便に、先ほど申しましたように軟着陸でき、地方の公共団体と摩擦を起こさないで、住民の皆さんの御理解をいただけるようにと。八方うまくいくかいかないかは公団の腕次第というところですけれども、私たちもなるべくそういうふうに指導していくということだけは、国土交通省として申し上げておきたいと思っています。
中村(哲)分科員 公団には今の大臣のお言葉を厳しく受けとめていただきたいと思うわけでございます。
 結局、このニュータウン型の未認可事業というのは、採算性が一番の大きなポイントになると思います。これに関してどのように取り組んでいくつもりなのか、最後に理事に確認させていただきたいと思います。
中臣参考人 今、大臣のお話にありましたように、私ども、国土交通省の方から強い指導をいただきまして、一番今、昼夜を問わず見直しの作業をしているところでございます。
 経営改善の問題につきましては、これは私どもは最大限の努力をしていくつもりでございまして、今具体的にお話し申し上げることは、きょうは差し控えますけれども、私どもは最大限の努力を図って経営改善努力をしていくということだけ申し上げたいと思います。
中村(哲)分科員 人口がもうすぐ減り始めます。住宅需要もある意味で非常に大きな転換点を迎えているところであります。今までのような楽観的な需要予測をするのではなく、厳しい需要予測に基づいてこれから事業認可に当たっていくよう、改めて確認させていただきます。
 理事、うんうんとうなずいていただいておりますからもう答弁を求めませんけれども、しっかりやっていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
森岡主査代理 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして建設省所管、住宅金融公庫の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
森岡主査代理 これより運輸省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 運輸省所管の平成十年度歳入歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計につきまして申し上げます。
 収納済み歳入額は千九百四十五億九千七百万円余、支出済み歳出額は一兆一千四百二十五億三千万円余。
 次に、特別会計につきまして申し上げます。
 運輸省所管の自動車損害賠償責任再保険、港湾整備、自動車検査登録及び空港整備の四特別会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は四兆七百八十一億八千七百万円余、支出済み歳出額は一兆七千百五十二億九千四百万円余となっております。
 引き続き、運輸省所管の平成十一年度歳入歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計について申し上げます。
 収納済み歳入額は八十二億七千九百万円余、支出済み歳出額は一兆一千四百五十五億一千百万円余。
 次に、特別会計について申し上げます。
 運輸省所管の自動車損害賠償責任再保険、港湾整備、自動車検査登録、空港整備の四特別会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は三兆九千五百九十一億七千三百万円余、支出済み歳出額は一兆六千八百十三億五千四百万円余となっております。
 なお、詳細につきましては、お手元に配付いたしました平成十年度決算概要説明書及び平成十一年度決算概要説明書をごらんいただきたいと存じます。
 何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。ありがとう存じました。
森岡主査代理 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院白石第三局長。
白石会計検査院当局者 平成十年度運輸省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 これは、第三港湾建設局が実施した閘門築造工事におきまして、設計が適切でなかったため基礎工の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、桟橋等の築造工事における鋼管ぐいの防食対策に関するものであります。
 兵庫県ほか三事業主体が港湾整備事業により実施した桟橋等の築造工事に使用する鋼管ぐいの防食対策の方法の選定におきまして、十分な耐久性が確認されている被覆方法を選定して鋼管ぐいの設計を行ったとすれば、鋼管ぐいの材料費を節減できたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、運輸省では、十一年十月に、桟橋等の築造工事に使用する鋼管ぐいの防食対策は被覆方法によることとし、これによりくいの設計を行うよう事業主体を指導することとする処置を講じたものであります。
 その二は、照明灯工事における共通費の積算に関するものであります。
 運輸省では、空港の照明灯工事を直轄及び補助事業で毎年度多数実施しております。その工事費の積算のうち、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の共通費の算定は、直接工事費等の対象金額に所定の率を乗じるなどして算定していますが、工場で製作される製品であって積算基準等に示す特定材料について、対象金額から特定材料の種別に応じて補正を行うこととされています。この特定材料についてその種別の取り扱いを誤るなどしていた事態が見受けられ、共通費の積算額が過大になっていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、運輸省では、十一年十月に、積算基準等を改正して特定材料に該当する製品名を明確にし、事業主体に対して積算基準等の趣旨等を周知徹底させ、積算業務の適正化を図る処置を講じたものであります。
 その三は、無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計に関するものであります。
 運輸省では、航空衛星システムの構築に当たり、神戸及び常陸太田両航空衛星センターに設置する通信設備は、衛星の打ち上げに合わせて五年ごとに段階的に増設し、無停電電源装置の本体は、当初から、十年後までに増設予定の通信設備三セット分に対応した整備を行うこととし、蓄電池の容量を本体に合わせて三セット分に対応した設計としておりました。しかし、当初から通信設備三セット分に対応した容量としても、蓄電池の性能維持上十年後までに更新しなければならないこと、通信設備の増設計画に合わせて蓄電池の容量を変更することとしても、無停電電源装置の本体に支障は生じないことなどから、当初は通信設備二セット分に対応した容量のものとすべきであると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、東京航空局では、適切な容量の蓄電池とする契約変更を行い、また、運輸省では、十一年十月に、設備を段階的に増設する場合の無停電電源装置の蓄電池について経済的な設計となるよう設計要領を改正するなどの処置を講じたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
 引き続きまして、平成十一年度運輸省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。
 その一は、防波堤等工事に使用する消波ブロックの規格に関するものであります。
 第四港湾建設局及び秋田県ほか三港湾管理者等が港湾整備事業等により実施した防波堤、護岸等工事の消波工等に使用する消波ブロックの規格の選定におきまして、算定式で求めた最小重量を満たす直近上位の規格の消波ブロックに限定しておりましたが、より大型のものを選定すれば消波工等の費用が低減できたと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、運輸省では、十二年十月に文書を発し、消波工等に使用する消波ブロックの規格の選定に当たり、最小重量を満たす直近上位に限定することなく経済比較を行うよう事業主体を指導することとする処置を講じたものであります。
 その二は、自動車事故対策費補助金の交付の対象とする公的病院の要件に関するものであります。
 自賠責保険においては、被害者保護のために医療費支払いの適正化が求められていることから、同保険に対し政府再保険事業を行っている運輸省では、自由診療単価について診療報酬基準案による単価を設け、その実施の促進を図ろうとしております。
 一方、同事業の運用益を財源とする本件補助事業においては、補助対象とする公的病院の要件のうち、自由診療単価について、診療報酬基準案と同程度の単価である十五円を超えている公的病院に対しても補助金が交付されており、施策の整合性及び事業の効率性の観点からの見直しの検討が十分でなかったと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、運輸省では、十二年五月に、補助対象とする公的病院の要件のうち、自由診療単価について十五円以下として都道府県等に通知する処置を講じたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
森岡主査代理 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。扇国土交通大臣。
扇国務大臣 平成十年度決算における会計検査院の御指摘に対して運輸省のとった措置について御説明を申し上げます。
 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ適正な処理に努力してまいりましたが、平成十年度の決算検査報告におきまして、工事の設計が適切でないものなど、御指摘を受ける事態を生じましたことは、まことに遺憾だと存じております。
 御指摘を受けました事項につきましては、所要の安全度を確保するように補強工事を施工させるとともに、指摘に係る事業主体に対しまして、再発防止の周知徹底を図るなどの措置を講じたところでございます。
 今後は、このような御指摘を受けることのないよう指導を一層徹底し、事業の適正かつ効率的な執行を図ってまいりたい所存でございます。
 引き続きまして、平成十一年度決算における会計検査院の御指摘に対して運輸省のとった措置について御説明申し上げます。
 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ適正な処理に努力してまいりましたが、平成十一年度の決算検査報告におきまして、工事の設計が経済的でないものなど、御指摘を受ける事態を生じたことは、まことに遺憾であると存じます。
 御指摘を受けました事項につきましては、工事費用を低減できるよう適切な経済比較を行うこととし、事業主体を指導するなどの措置を講じたところでございます。
 今後は、このような御指摘を受けることのないよう指導を一層徹底し、事業の適正かつ効率的な執行を図ってまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
森岡主査代理 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森岡主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森岡主査代理 以上をもちまして運輸省所管の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
森岡主査代理 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。一川保夫君。
一川分科員 自由党の一川保夫でございます。
 大臣、朝早くから大変御苦労さまでございます。私は、今ほど決算の報告等がございました旧運輸省関係の問題について御質問をさせていただきたい、このように思っております。本日は、中でも整備新幹線の問題、その考え方について国土交通省のお考えを確認したい、このように思っております。
 この整備新幹線については、御案内のとおり、平成十二年十二月に、政府・与党申合せという中で現行整備新幹線が進められております。私自身、実は自民党と自由党の連立時代に、一時期、整備新幹線のプロジェクトチームでかかわったことがあるわけですけれども、あの当時のことを思い起こしても、要するに政府側と与党側との意見がなかなかかみ合わないといいますか、どっちかというと、与党サイドは積極的にやりたいと言いますし、政府の方はそれにブレーキをかけるような、そういうような印象を強く持っておりました。そういう中で、当時も非常に、最終的なフレームづくりというのは御苦労されていたというふうにも思います。
 私自身は石川県に住まいをしていて、北陸新幹線にかかわる地域でございますけれども、これから整備新幹線、新しい新幹線が来るという期待感を持って見ている地域の皆さん方の目線で、きょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、扇大臣に基本的な考え方をお伺いするわけですけれども、我が国のこういった高速交通的な、基幹的な問題というのは、整備新幹線のみならず、航空の問題なり、それから高速道路の問題なり、いろいろとあるわけですけれども、それぞれの特色を生かした役割分担があると思うんです。
 ただ、私は、整備新幹線は、東海道新幹線をスタートしましてから、幹線交通網の中では整備がまだおくれている方だなという印象を率直に持っておりますし、一方では、国民全体というか、それぞれの地域にとっては物すごく期待感の強い、そういうプロジェクトであるというふうに思っております。
 そういう中にあって、今日、公共事業全体の見直し等がいろいろと行われている時代に、こういった整備新幹線をどういうスピードでもって進めていくかというところは大変重要な課題になってきているわけでございます。この与党と政府の申し合わせを見ましても、公共事業のあり方について、効率化や重点化等の観点から見直しが進められているという中にあって、今後、安定的な財源の見通しを確保した上で整備していくんだというような趣旨のことを冒頭うたっております。
 私は、これまでずっと長年整備してきたほかの公共事業よりも、整備新幹線というものは、後発の新しいプロジェクトだという位置づけからして、ほかの公共事業と全く同じような扱いじゃない、若干積極的に進めていくという基本的なスタンスが政府側にあってもいいんではないかなという気持ちを持っております。
 そういう点について、扇大臣は基本的に、公共事業全体の見直しの機運の中で、整備新幹線に対する取り組み、そういったものについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
    〔森岡主査代理退席、主査着席〕
扇国務大臣 一川議員が仰せのとおり、新幹線というものは、国土の骨格としての高速交通機関である大事な、また地域の経済の活性化にも資する、そして二十一世紀の環境ということを考えましても、車から鉄道にシフトするというふうな考え方からすれば、やはりこれは必要なことであるというふうに、環境の面でも言えると思います。
 今御指摘がありましたように、平成十二年に政府・与党申合せ、御苦労いただいた面も多々ございますし、また、必ずしもお互いに平仄がぴったり合ったということではございませんけれども、私は、開業時期が近づいている区間の早期完成や工事短縮を図る、この第一条件というのは私はまさに大事なことであると思っています。また二つ目に、既に着工した区間との同時開業が望ましい区間を新たに着工すること、これが二つ目。そして三つ目には、その際に、収支採算性や投資効果等を厳密に検証すること、この三つ目ですね。
 それと、例えばその中の一つの早期完成という意味では、東北新幹線盛岡―八戸間については平成十四年度末の開業を目指す。確実にこれは着工して、工事が進んでいるということも私は言えると思いますので、これもこの政府・与党の合意に基づいて、この東北新幹線の八戸―青森間も工事が順調に進んでいると。私は、この投資効果ということを考えて、この投資効果と、地域の経済の活性化を図るという意味で、これはしなければいけないことだと思っております。
 また、エネルギーの面で見ても、先ほど申しましたように、今後の環境面では大きな面がございますし、着工前と着工後の経済効果、これもたくさん表がございますので、言っていると時間が長くなりますから、一川議員既に御承知のことだろうと思っております。そしてまた、これができることによって、完成後の人口移動、過疎と言われておりましたところにも、駅ができまして、新幹線が走るようになりますと、人口がふるさとに回帰しております。そういう意味では、私は、人口移動というものも大きな実が上がっていくと思っております。
 また、世界を見渡しましても、一九八二年の時点、今から二十年前、中国はゼロの新幹線でございましたけれども、それも今は北京―上海間を千三百キロつくろうと思っておりますし、また、台湾も、今度新幹線が台北と高雄間三百四十五キロ、これもつくられます。韓国も、ソウル―釜山間もありますし、また、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン各国も新幹線というものの事業を促進しているという点からも、これが二十一世紀型になるのであると多くの期待を抱きながら、限られた予算の中で最大限に効果を発揮していきたいと思っております。
一川分科員 今ほど大臣も御説明されましたように、新幹線が供用を開始することによって、地域に対するインパクトというのは相当大きなものがあるのは今御案内のとおりです。
 私も、今ほどの説明のように、現状の人口配置の中での経済効率云々でいろいろな面の試算をすると、へんぴなところには新幹線が通らないわけですけれども、ただしかし、新幹線が通った暁には、先ほどおっしゃったように人口の移動があるとか、それによって民間の経済が活力を持ってくるということも含めて、我が国の本当の国土の均衡ある発展という観点からすれば、こういう基幹的な交通網というのは、できるだけ計画どおり早期にやるべきだというのが私の考え方でございます。
 そういうことで、ちょっと鉄道局長さんに、具体的なお話でお聞きするわけです。
 といいますのは、私たち北陸新幹線にいろいろと関心を持って取り組んできた中で、整備新幹線を進めようとする場合に、在来線の扱いがどうなるんだということが、常にいろいろな面で一つの大きな宿題としてあるわけですね。その沿線に住んでいる住民の皆様方は従来からずっと在来線に世話になってきておるわけだし、使ってきておる方も多いわけです。整備新幹線ができたからといって在来線がすぐなくなるということでは、生活の上でも、また通勤の上でも通学の上でも大変不便を来すわけでございます。
 そこで、局長に若干具体的な事例を含めてお聞きするわけですけれども、新幹線、長野まで供用開始しておりますけれども、この並行在来線として言われているしなの鉄道ですね、これは、どうなんですか、長野までの新幹線の整備というものに伴って設立されたわけですけれども、その後の収支なり経営の実態というのはどういう形になっているんでしょうか。
石川政府参考人 ただいま御質問のございましたしなの鉄道でございますが、軽井沢と篠ノ井間の第三セクターでございまして、平成九年十月に開業いたしたわけでございます。
 このしなの鉄道の概要でございますが、平成十二年度の概要は、輸送人員が約千二百万人、営業収入が約二十五億円、うち旅客運輸収入が約二十一億円、営業費用が約三十五億円でございまして、経常損失が約十二億円、累損で約二十二億円ということになってございます。
一川分科員 それで、局長、今十二億マイナスだという話なんですけれども、今後の見通しとしてはどういう見通しを持っていますか、このしなの鉄道については。やはりだんだん赤字がふえていくというような見通しなんですか。
石川政府参考人 このしなの鉄道につきましては、開業以来、列車の増発でありますとか駅の新設でありますとか、あるいはCTCの導入による要員の削減、合理化など、さまざまな営業努力をしてきてございます。しかしながら、今御指摘のとおり、単年度の経常損失というのがございますので、現在のところ、単年度で黒字化を目指した抜本的な経営改革案というものを策定しているところと聞いております。
一川分科員 それでは、これから第三セクター方式で在来線の経営をしようとしておるところについての現状についてお伺いします。
 ことしの末、十四年の末に東北新幹線の盛岡―八戸間が開業する予定になっていますね。であれば、この沿線の在来線というのは今どういう状況で物事が進められているかということが一つ。それから、来年、平成十五年の末に九州新幹線の八代と西鹿児島間が開業する予定になっていますね。当然ながら、ここでもそういう在来線の経営の問題がいろいろと議論されているというふうに聞いております。
 それぞれ、第三セクターが設立されたか、あるいはこれから設立されるんだろうというふうに思いますけれども、先ほどのしなの鉄道では大変厳しい現状にあるわけですけれども、こういったところはどういう収支の見通しを持って今後運営に取り組もうとしているのか、そのあたりを御説明願いたいと思います。
石川政府参考人 まず最初に、東北新幹線の関係でございますが、御案内のとおり、ことしの暮れに東北新幹線ができ上がります。それで、東北新幹線盛岡―八戸間につきましては、並行在来線はJRの経営から分離いたしますけれども、昨年の五月に、岩手県区間と青森県区間、それぞれ第三セクター会社が設立されております。
 それで、岩手県区間の会社でございますが、IGRいわて銀河鉄道、こういう名前でございますが、これにつきましての収支見込みにつきましては、平成十五年度に、輸送人員が一日約一万五千人を想定してございます、営業収益は約三十五億円、うち旅客運輸収入は約二十二億円、営業費用が約三十七億円、経常損失は約四億円の見込みでございます。その後、輸送人員の増加等によりまして、開業後六年目に単年度経常黒字が見込まれているところでございます。
 それから、青森県区間でございますが、これにつきましては、青い森鉄道株式会社というのが第三セクターでできておりまして、青い森鉄道株式会社は、列車の運行を行う第二種鉄道事業者として設立をしているものでございまして、鉄道施設そのものにつきましては、青森県がみずから第三種鉄道事業者としてその施設を保有いたしまして、青い森鉄道に貸し付けるという形の、いわゆる上下分離方式というものが採用されております。
 この青い森鉄道につきましては、平成十五年度に、輸送人員は一日約三千二百人程度でございますが、営業収益約五億円、営業費用約五億円ということで、開業初年度から収支均衡という形の見通しとなってございます。
 それから、九州新幹線の鹿児島ルートの並行在来線八代―川内間でございますが、これにつきましては、十五年度に工事が完成する予定でございますが、これにつきましては、本年の二月二十五日に鹿児島県と熊本県の間で、基本的に第三セクターの設立ということについて合意がなされまして、現在、鹿児島県と熊本県が中心になりまして、ことしの秋にも設立予定の第三セクター会社の具体的な内容について検討を行うとともに、関係者との間で鋭意調整をしているところでございます。
 この第三セクターの収支予測でございますが、鹿児島県によりますと、開業後十年間は償却前損益で黒字が見込まれるというふうに聞いております。
一川分科員 ここで鉄道局長にちょっと、確認のためにお聞きするわけですけれども、第三セクターの経営のやり方として、一括方式と上下分離方式みたいな説明が今ございました。第三セクターで経営を行おうとする準備の段階で経営の将来見通し等を立てる場合、どういう場合には一括方式、どういう場合には上下分離方式ということで指導されているんですか。特にノータッチですか。そのあたりは、どういう基本的な考え方でその方式が変わるわけですか。
石川政府参考人 新幹線をつくる場合に、並行在来線につきましては、基本的にJRの経営から分離するということは決まっているわけでございます。分離された後、どういう形態で第三セクターが事業を行うかということにつきましては、基本的にはそれぞれの地域がどう考えるかということだろうと思います。
 そういう中で、青森県につきましては、青森県がその鉄道施設について、みずからそれを保有するという形態の、いわゆる上下分離方式というものを採用したものだと理解しております。
一川分科員 在来線は、第三セクター方式で経営に入っても、相当厳しい現状には変わりないと私は思うんですけれども。
 これまで、在来線を第三セクターに分離して経営を行うに際して、特に国のサイドから第三セクターの事業に対して、経営に対して何か支援策というのは講じられているんですか。一切国は支援をしていないんですか。
石川政府参考人 先ほど御説明したとおり、私ども、整備新幹線を建設する場合に、区間の並行在来線の扱いについて、JRの経営の観点からも、第二の国鉄をつくらないという観点からも、今まで数次の政府・与党合意において、JRの経営から分離するという形でやらせていただいています。そういう意味で、並行在来線のJRからの経営分離後においては、基本的には地域の力でこれを維持するということが必要だというふうに考えております。
 しかしながら、国としては、JRから譲渡される鉄道資産、これについて税制上の優遇措置を講ずる。そのほか、JRに対して要員の派遣や運行面での協力を依頼するというふうな形での指導はしてございます。
一川分科員 今ほど、今後の一つの方式といいますか、これまでもそうかもしれませんけれども、鉄道の資産ですか、それを譲り受ける際の税制面の支援だとか、それから、今の人材派遣的なお話もされましたけれども。
 今後どうなんですか。こういう問題について、これ以上の国サイドの支援というのはあり得る話なんですか。絶対にそういったことはあり得ないのか。それは我々政治家で判断すればいい問題かもしれませんけれども。現行ではどういう基本的なお考えなんですか。
石川政府参考人 答弁としては繰り返しになると思いますけれども、基本的には、並行在来線の維持というものにつきましては、地域の力で維持をしていただくというのが原則だろうと思っております。
一川分科員 今、経済状況がこういう大変厳しい中で、在来線の経営にしっかり取り組んでいくことも大変難しい環境にあるなというふうに思いますので、在来線の運営等について、国サイドの支援ということについてももう少し何か弾力的に考えられないのか、ぜひいろいろな検討をしていただきたいなというふうに思っております。また、我々は我々なりにいろいろな提言もさせていただきたい、そのように思っている次第です。
 そこで、地元の問題で恐縮ですけれども、北陸新幹線の問題についてちょっとお伺いするわけですけれども。
 北陸新幹線は、実は相当古くからいろいろな面で話題にのっている路線でございまして、私が知っている限りでも、東海道新幹線が供用開始するころから東海地震ということが話題にのっていた時代があるわけです。今も東海地震ということが議論になる場合もありますし、それに伴って、その後ずっと続いている対策もございます。
 東海地震、これはあってはならないんですけれども、万一発生した場合に東海道新幹線なり国道一号線が寸断されるかもしれないというようなお話をいろいろと聞いた時期がございました。そういう場合に備えて、北陸回りの新幹線を早急に整備すべきだというお話も、当時いろいろと話題にのっておりました。東京―大阪間をつなぐ新幹線、大量輸送機関を、当然従来の国鉄の路線もあったわけですけれども、今のJRもありますが、そういうものも寸断させてはいけないというようなことで、北陸回りのルートというものは早急に開設すべきだというような意見がかつては相当強かったような気がいたしました。
 北陸新幹線、実はちょっと正確に覚えておりませんけれども、上越と石川県の小松間というのは昭和六十年の十二月に工事実施計画の認可申請を出していますけれども、これは間違いないですかね。
石川政府参考人 今先生御質問のとおり、北陸新幹線の小松までの工事実施計画認可申請は、昭和六十年十二月二十五日でございます。
一川分科員 昭和六十年からもう二十年に近くなろうとしているわけですけれども、そういう経緯というものを踏まえますと、その区間は、一部着工しておりますけれども、まだ新幹線は走ってもいない。そういうことを見るときに、何か新幹線そのものに対する一種の不信感といいますか、また、人によってはあきらめ的なものを抱いている人もいるわけです。
 北陸新幹線の六十年十二月の工事実施計画認可申請の後に認可申請したルートがあったような気が私はするんですけれども、それがもう既に着工して、ある程度完成時期を明記しているところもあるような気がするんです。そこはいかがですか。
石川政府参考人 北陸新幹線それから東北新幹線が昭和六十年に認可申請が出ておりまして、九州新幹線が六十一年に認可申請が出ております。それで、現在まで、新幹線は大変長い歴史を歩んできてしまったわけでございます。
 先生御案内のとおり、整備新幹線計画そのものは昭和四十六年あるいは四十七年、この辺からスタートしたものでございまして、その間、国鉄の財政破綻あるいは民営・分割、そういう問題でありますとか、あるいは財源の問題でありますとか、さまざまな原因によって今日に至っているわけでございますが、そういう中で、平成十二年に政府・与党の申し合わせというものができて、今それに基づいて工事を進めているところでございます。
一川分科員 そこで、局長にちょっと。これは政府・与党の政治家の中でのいろいろなフレームづくりの中で物事が進められておりますから、局長にお尋ねするのもちょっとおかしいのかもしれませんけれども、基本的に北陸新幹線というのは、整備新幹線全体の中で、要するにこれまでの経緯も踏まえて、どういう評価がされているというふうにお考えですか。
石川政府参考人 それぞれの新幹線はそれぞれ重要なものだと思っておりますが、北陸新幹線につきましては、先生御案内のとおり、実は整備五新幹線の中で最初に高崎から軽井沢まで着工したわけでございますし、でき上がっているものでございます。そういう意味で、東北、北陸、九州、それぞれの区間、私ども申し上げたように、財源の問題でありますとかさまざまな問題を克服しながら順次進めているということで、北陸新幹線につきましても、今申し上げたように、まず今長野まででき上がっているということを御理解いただきたいと思います。
一川分科員 北陸新幹線は、ほかの整備新幹線の延長に比べると相当長大な新幹線でございますし、相当難工事区間を抱えているのは間違いないというふうに思っております。
 しかし、私が先ほど触れましたように、もともとの北陸新幹線の役割といいますか、その意義というのは、やはり東海道新幹線の代替的な機能を持たせるというような期待感が当時あったというふうに私は思います。その間、若干、いろいろな政治家の力でもってルートがゆがめられたといいますか、いろいろなことがあったのかもしれません。しかし、現実、今おっしゃいましたように、長野までは確かに供用開始しておりますけれども、今飯山トンネルという大変なお金のかかるトンネルを掘削中でございますし、これからまた新潟と富山の県境付近にも難工事のところがたくさんあります。
 しかし、これから富山の平野部を走るといっても、平野部の用地交渉なんというのは、現実問題、余りなされていないと思うんです。河川なり水路なり道路なり、その地域社会を分断して新幹線が走るわけです。私は平野部の工事も用地補償の段階で相当時間がかかるのではないかな、そういう感じがいたします。
 そういう面では、私はやはり大臣に最後にお聞きしたいわけですけれども、今度の通常国会に東海道新幹線の大改修に向けて引当金を積み立てようという法案が、改正が今出されるというふうにお聞きしています。これから十五年間かけて東海道新幹線の大改修に向けた積み立てを開始する、年間約三百何十億を積み立てる、十五年後には全体で五千億ぐらい積み立てて、それを財源にして東海道新幹線の傷んでいるところをつくりかえるということがもう既にことし話題になるわけです。
 それだったら、東海道新幹線を大改修する前に、北陸新幹線のめどをつけていただきたいというのが私の素直な気持ちでございます。東京―大阪間、こういう長い区間を一気に供用開始するというのはそれは無理かもしれません。しかし、途中段階で幾らでも供用開始できる、そういう考え方が私は成り立つというふうに思います。
 そういう面で、大臣に先ほど、冒頭お伺いしましたように、国土の骨格となる広域的な交通機関でございますし、今後の新しい時代のことを考えれば、当然ながらこういったものを全国土に均衡ある整備を図るという面からしましても、北陸新幹線を、東海道新幹線が改修に入るまでには、少なくとも部分的に供用開始するぐらいの気構えでぜひ取り組んでいただきたいわけですけれども、いかがでしょうか。
扇国務大臣 私のところへも今全国からあらゆる御要望が来ております。これは、ひとえに今世間で言われている口ききですとか陳情合戦とか、ただそういうことのみならず、私は、日本の国土全体がどうあるべきか、二十一世紀の形をどうするべきかという大問題であって、それぞれの先生方からも、そして識者からも、あるいは学者からも、そういう御意見、御要望等々、それを精査しているところでございます。
 現実的に、今おっしゃったように、平成元年に高崎―軽井沢間を着工して、今日までその高崎―長野間が平成九年の十月に先行して開業しておりますけれども、大体、その開業後の利用数は約二五%増という数字も出ております。
 そういう意味で、私は、それぞれのところでそれぞれの活用方法、また地域の活性化というものが生まれてくると思いますけれども、こっちをやめてあっちをしろということではなくて、全体的なグランドデザインというものはしていくべきだ。
 ただ、私が申し上げて警告しておきたいことは、いろいろなところで計算しますと、新幹線が通ったから高速道路の利用者が減った、高速道路ができたから在来線の乗客は減った、そして空港ができたから新幹線の乗客は減った、そういうふうに一つ一つつくっていくたびに今までの古かったものの利用客が減っていく、減収になる、そういうようなことをよく言われますので、私はそういうことのないように、すべてが共存共栄し、より快適な生活ができ、より物流効果が達成できるようにということで、今後改めて、今御指摘のありましたように、東北も北陸新幹線に関しましても、東海道をやめてどうこうということではなくて、それぞれの地域の活性化のために、これは単独で、北陸新幹線に関しては、北陸は北陸としてきちんとした個性を出していくというふうに考えていきたい。こっちをやめてこっちということではなくて、両々相まっていくべきであろう、北陸は北陸の特性を生かすということであってしかるべきだろうと思っています。
一川分科員 これで私質問を終わりますけれども、当然北陸は北陸の特長を生かして頑張るわけですけれども、いろいろな長い歴史、経過の中ではそういう役割の期待感があったということをぜひ念頭に入れていただいて、これからの地域の経済基盤の強化という意味で、やはり約束というか、ある程度目標を定めて、その目標に向かって政府が責任を持って取り組むという姿勢を今出すということが地域のいろいろな民間活力を誘発するそういう大きな力にもなるというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。ありがとうございました。
御法川主査 これにて一川保夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
細野分科員 扇大臣、きょうは早朝から大変長時間の御答弁、御苦労さまでございます。
 私につきましては、今奄美大島沖に沈んでおります不審船につきまして、国土交通大臣としてのお考え、そして今後の取り組みについてお伺いをしたいというふうに思います。
 言うまでもありませんけれども、この不審船の問題に関しましては、今国民の中から非常に大きな不安感が出ておりまして、その中で、今までいろいろな大臣がこれについて御発言をされているんですが、中でも扇大臣の御発言というのは、私は、本当に国益をきちっとお考えになった明快な御発言をされていることに心より敬意を表したいと思います。
 一例を挙げさせていただきますと、三月十三日の参議院の予算委員会では、「国民にとっても明快にしていくのが国としての基本であろうと思っておりますので、一貫して引き揚げる、そして真相を究明するということを明言しております。」こういう御発言をされております。
 たびたびで恐縮ですけれども、もう一度確認をさせていただきたいんですが、不審船の引き揚げについての扇大臣のお考えを改めてお聞かせいただけますでしょうか。
扇国務大臣 戦後の事例としては初めてですけれども、海上保安庁の船と不審船とで銃撃戦を行った。日本海のみならず日本の周辺にあれだけ重装備した不審船が徘回していること自体が私は国民にとっては不安材料であろうと思いますし、何の目的で重装備してまで日本近海に来なければならないのか、あるいは、もう来てしまって何かの目的を達して帰り道なのか、あるいは、これから来るところだったのか、そういうことを一つずつ考えてみても、どれもこれも不審なんですね。だから不審船というわけじゃありません。国民の気持ちが不審なんです。
 そのために、私は、何としてもこれを徹底解明しなければ、海上保安庁が海の警察隊としてこれだけ努力をして、命を賭して今回の対処に当たってくれた。しかも、けが人を三人出し、なおかつ「あまみ」に関しては百十数発の被弾をしている。そういうことの中で、我々は、これを解明し得ないで国民の生命財産を守ることはできない。
 そういう意味で、今回は徹底して解明させていただく二度とないチャンスであるし、二度とあってはならないことの警告のためには、我々は最後まで明快にしていきたい。それが国民に対する我々の責任であると認識しております。
細野分科員 国民の不安にこたえるためには真相を究明する必要があるということ、そのための手段として引き揚げが必要であるという御認識だということでよろしいでしょうか。
扇国務大臣 今申しましたように、どういう目的で、何のために武装してまで来るのかということがわからなければ、しかも、どこの国の船かわからない、まさに不審船ですから、何なんだろうと。
 そして、逃亡します途中にも、中国の国旗を甲板で船員が上げているんですね。だから、その瞬間、中国の船かなと思って射撃をやめたんです。そういうこともあって、私は中国も被害国であろうと思います、中国の船でないのに中国の旗を上げるということ自体が不審でございますので。
 そういう意味でも、今は中国の排他的経済水域、EEZにありますけれども、今後のためにも明快にしなければならないということが、国民の不安だけではなくて、日本の国にどういう目的で来たのかということがわからなければ対処のしようがないというのが現実でございます。
細野分科員 中国の排他的経済水域にあるという難しい問題がありますけれども、真相を究明するために扇大臣が不審船の引き揚げの必要性をお感じになっているという部分に関しては、私は全く意見を同じくするものでございます。
 ただ、一つ、今出ております中国の排他的経済水域という部分でございますけれども、そうなりますと、これは当然、国連海洋法条約というのがかかわってくる。これは、さんざんいろいろなところで議論されております。扇大臣として、これは、当然中国とのさまざまな議論は必要だと思うんですが、この条約に照らして、不審船の引き揚げが可能だというふうにお感じになっているのかどうか、法的な問題についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
扇国務大臣 私は、現在沈んでいる場所が中国の排他的経済水域にありますけれども、明らかに日本の経済水域から出ていった船を追跡したという事実をもってしては、可能であると信じております。
細野分科員 その見解についてぜひ海上保安庁長官に御答弁をいただきたいんですが、今まさに御検討されている最中だということを承知しておりますが、今、扇大臣は、国連海洋法条約上可能であると信じていると御答弁をされました。海上保安庁として今どういう見解を持っていらっしゃいますでしょうか。
縄野政府参考人 まず、この引き揚げを私どもが行うことについての法的な正当性でございますけれども、これは、海上保安官に対する殺人未遂という罪を犯しております。結果は、巡視船という日本の船の中で生じておりますので、日本の警察機関である私どもがその証拠物を押収するということは、法的に正当な行為だというふうに考えております。
 ただ、今御質問がございましたように、日本としても、中国の排他的経済水域として扱っている海域で沈没をしておりますので、海洋法条約での沿岸国である中国の権益、これは天然資源の保護でありますとか、そういうものについての権益がございます。そういうことについて中国の権益を侵さないようにするということ。つまり、それは中国側の主張として出てくるものと思いますので、その点について中国側の権能に私どもが十分考慮を払うんだということを説明して、この引き揚げを行っていきたいというふうに思っております。
細野分科員 今の海上保安庁長官の御答弁では、私は到底納得できないんですね。天然資源は、確かに五十六条で、これは管轄権が沿岸国にあるというのは書かれておりますが、今回、不審船を引き揚げるのに、この天然資源と一体どういう関係があるのか。もちろん協議は必要だと思いますが、ここの部分に関して、どういう法的な解釈をしたらそういうことになるのか。もう一度御答弁いただけますか。
縄野政府参考人 まず一つは、私どもの引き揚げが、引き揚げに見せかけた例えば海底の探査、海洋調査ではない、これは明らかなんですが、そういうことを説明いたします。
 それから、引き揚げの作業自身、それによって海洋あるいは海底の環境に悪い影響を与えるような方法はとらない、あるいはそのようなことは絶対防止をする、例えば油が出ることによって環境に悪影響を及ぼす、そのようなことのない態勢をとる、そういうことを説明する予定でございます。
細野分科員 私、天然資源とは何の関係もないと思うんです。あえてこの海洋法条約上ひっかかってくる可能性があるとすると、大臣もこれはぜひお考えいただきたいんですが、この「海洋環境の保護及び保全」ですか、ここの部分に関しての中国の管轄権をある程度侵す可能性がある、あくまで可能性ですけれども、そういう部分に対する懸念があるということしかこれは考えられないと思うんですね。
 ただ、これはもちろん、こういうことがないですよということをきちっと我が国として取り組めばいい話であって、私は、この問題に関して、我が国がこの国連海洋法条約にもとるような行動をすることは決してないという解釈をきちっとやはり我が国として確定していく必要があるというふうに思っています。
 これはちょっと別の事例でございますけれども、昨年来、中国のさまざまな調査船が我が国に来て、そして、今までの我が国との契約にもとるような行動がされていた。国会でも質問をされておりますけれども、例えばボーリング調査であるとかエアガンを使った調査なども行われているという事例もございます。それを我が国は、これはあくまで調査であって、天然資源の部分にかかわるものではないということで許してきたわけですね。ただ、私考えますに、エアガンの調査であるとかボーリングの調査が、我が国としては海洋環境の保護及び保全には問題ないという解釈をしているわけですね。
 これは別の事例ではありますけれども、少なくとも我が国として、それはこの中国の管轄権を侵害せずにできるんだということを、明確なメッセージとしてやはり国際社会に発信すべきだというふうに私は考えておりますが、改めて、大臣、この法律上の問題について、今海上保安庁長官にも御答弁をいただきましたけれども、どのようにお感じになるかということを御答弁いただきたいと思います。
扇国務大臣 私は、そういう中国と想像以上の摩擦を起こさないために、今日まで諸般の手続を準備し、なおかつ、海上保安庁は平素からロシアとも韓国とも中国とも海上保安会議というものを定期的に行っております。それは、意思の疎通を図り、今回はたまたま不審船ですけれども、海賊問題等々に関してもお互いに協議しよう、安全保障上もできる限りはやろうということでやっております。
 私は、不審船自体が自爆して沈んだと思っておりますので、どの程度の状況なのか。今海洋法で資源の権限ということが中国にあると言いましたけれども、例えば、沈んでいる船がどの程度海底を掘らなければ引き揚げられないのか、あるいはそんなことをしないでもいいのか、あるいは引き揚げる方法を探査しなければ真っ二つに、あるいは二つ以上に船が壊れるのではないかと、あらゆることが想定されるものですから、私どもは、まずその手順として、海上保安庁の測量船に搭載しておりますサイドスキャンソナーを出して、まず映像を撮ってみて、そして次には人を介して、人海で、人間の目できちんと行ってもらってという手順を踏んで、私たちは少なくとも余分な両国の摩擦を起こさない程度に最大限努力しながら手順を踏んでやっているということで、不審船で私たち迷惑こうむっていますのに、その不審船の始末でまた国際的な紛争を起こしたのでは何にもなりませんので、私たちは順次手順を踏んでいるということで、必ず引き揚げて究明するという究極の目的だけは間違いなく持っているわけです。
 今の位置では、大体四月、五月ごろになりますと波の静まりというものも予測されておりますので、私は、手順どおりのスケジュールで、手順どおりの運びをするということを中国に報告し、中国が黙って見ていてくれればいいと思っています。この間のサイドスキャンソナーのときにも、中国の船は遠くにとまってじっと何も言わないで見ていました。見守ってくれたのか、それはわかりませんけれども、何のあれもしないでちゃんと見守ってくれていたと私は思っていますので、これは余分な摩擦を起こさないで究明したいと思っています。
細野分科員 大臣、私も全く見解は同じにしておるんですが、法律的にこれが可能であるかどうかという問題は、きちっとまず整理をしておいた方がいいと思うんですね、これは可能であると。ただ、実際、引き揚げようと思ったら、例えば途中でぼろぼろになって引き揚げる意味がなくなるとか、実務上の問題が出てくる可能性はあります。だから、これは全く別問題として、法的な問題は、これは日本としてはオーケーだと考えるんだと。それで、実際上できるのかどうかという調査は、別途慎重にやっていただきたい、そういう要望をさせていただきたいと思います。
 一点、大臣から、極めて断定的といいますか、お話がございましたので、これは海上保安庁の長官に確認をしたいんですが。
 大臣はこれは自爆だと考えられている。現段階でこれは海上保安庁としてもそういうふうに考えているということでよろしいんでしょうか。再確認をさせていただきます。
縄野政府参考人 追跡劇のときの私どもの乗組員が見た状況、それからそのときの映像、それから二月末に行いました水中カメラによりまして、完全に自爆であると断定するような状況には至っておりません。その可能性はあるかとは思いますが、断定する状況にはなっておりません。
細野分科員 事務方としての御答弁でございましたけれども、大臣は断定だというふうにお考えになっているということですので、ますます、捜査の必要性という意味からすると、やはり引き揚げが私は求められると思っております。
 次に、警察庁の方にちょっと確認をさせていただきたいんですが、これは殺人未遂ということで捜査をされているというふうに聞いております。その捜査をする上で、引き揚げについて警察庁としてその必要性をどのように考えられているか、簡潔に御答弁ください。
漆間政府参考人 本件の不審船事案につきましては、鹿児島県警察の方も捜査本部を設けて、第十管区海上保安本部と合同で捜査をしているわけでございまして、私どもとしては、捜査で証拠を収集するためにも、不審船の引き揚げは必要であるというふうに考えております。
細野分科員 ただいまの答弁で、国土交通省として、海上保安庁として引き揚げの必要性が確認され、そして警察庁として確認がされたということだと思います。
 ここでやはり聞かなければならないのが、外務省の現在の見解ということになるんですが、私、外務委員会にもおりましたので、いろいろなところで外務大臣の答弁を聞いてきたんですけれども、そこの部分が、まず可能かどうかを調査して、それからその法律的な問題を解釈するのだ、引き揚げるか引き揚げないかは決めるんだというのが外務省の見解のようなんですね。私の印象ですよ。
 これは、これだけ国民的な不安があり、捜査上も必要性をきちっと認めているにもかかわらず、外務省がこれじゃ話にならぬだろうという思いをずっと持って今までまいりました。最近、その見解が少しずつ変わってきたということも言われておりますけれども、きょうは植竹副大臣に来ていただいていますので、改めて現在の段階での外務省の引き揚げについての御見解をいただきたいと思います。
植竹副大臣 今委員お話しのように、また扇大臣の方からいろいろお話がございましたように、これは本当に国民的に非常に重要な問題であります。そして、この不審船を引き揚げるということになりますと、いろいろな引き揚げる前の段階というものがあるわけです。
 ソナーを入れていろいろ状態を見た、ソナーを入れてみて、次に実際にダイバーが入って調査して、引き揚げられるか、られないかということを見るわけです。それは、そうしませんと、もし船体が破損して、例えば油漏れなんかによりまして、その付近の海洋とかそういうものに汚染ができた場合には、いわゆる国際海洋条約による環境の問題が出てまいりますので、まずダイバーで見て、その調査結果に従って、これは中国との打ち合わせによりまして、いわゆる管轄権の問題がありますから、その結果を見て、これを実施に移すということになると思います。
細野分科員 副大臣、今の御答弁は、できるかできないかをじっくり調べて、それから外務省としては判断しますという御答弁ですか。だとすれば、今の警察庁、国土交通省の認識と大臣の御認識とやはりかなりかけ離れます。
 中国は、トウカセン外相が何度もあちこちで発言をされ、いろいろなところでメッセージが出てきているわけですね。これは慎重に対応してほしい、引き揚げに関しては、中国としては、ありていに言うと、これは遠慮をしていただきたいという、そういう話ですね。
 それに対して、日本の外交のメッセージ、余りにこれはかけ離れ過ぎていないか。中国がこれだけ大きなメッセージを発しているわけですから、まず日本としては、何を求めるのかということを意思表示して、その中でやはり円満な解決を図っていくという、先ほど扇大臣がおっしゃったメッセージを外務省は発すべきだと思いますよ。それはどうですか。
植竹副大臣 そういう意味におきまして、トウカセンが三月六日の北京の記者会見で言いました。中国側の海洋汚染に関する管轄権あるいは天然資源に関する主権的な権利等関係権益に言及した上で、問題はこの後なんですが、日本側に対し、状況をさらに悪化、複雑化させる可能性のある行動はとらないように主張したんですが、これはごく一般的なものを言ったものかと思います。
 しかし、四月三日の李鵬全人代委員長と川口大臣の間では、川口大臣から積極的にこれを引き揚げることについて言及したわけです。それに対して李鵬委員長の方から引き揚げについて具体的な言及はなかったわけでありますが、不審船の問題を日中間の、大事なのはここなんですが、政治、外交問題とすることなく、理性的な話し合いを通じて適切に処理していくべきであるということで意見が一致したわけです。
 ですから、それだけに、慎重に取り扱うために、国際海洋条約に抵触していろいろ問題が起きないというのは、先ほどお話があったように、引き揚げるときに、もし船体が切れたり、あるいは一部油漏れが出てきた場合に海洋汚染となるかどうか、仮定の上ですが、そういうことのおそれがないとも言えない。したがって、ダイバーが入ってよく調査していく。しかし、ダイバーが入って調査するためには、専門の人がいないと、例えばダイバーの場合いろいろな問題がありますが、その安全を見た上で外務省としては行動をとる、そういうことで意見の一致を見たわけです。
細野分科員 大体意見の一致を見たという方向が出ていることは承知をしております。
 私、大変残念なことだと思うんですが、前外務大臣は、この点に関してやはり明確なメッセージを欠いてきたと思うんですね。新しい外務大臣になられて、きちっとやはりメッセージを発せられることを心から期待したいと思います。
 最後に大臣、もう一点だけ、不審船に関してなんですけれども、実際に、恐らくこれから引き揚げに向けてのプロセスに向かってくるんだろうというふうに思っております。
 そこで、仮に、引き揚げの作業中にさまざまな不測の事態というのはやはり想定し得るんじゃないかと思っておりまして、海上保安庁として、その辺についてやはりきちっとした対応の準備をしていただきたいというふうに思っておりまして、これはあくまで仮定の質問ではございますけれども、扇大臣に一言、その辺のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
扇国務大臣 私どもは、海上保安庁というものは国土交通省の所管でございますので、海上保安庁というものの役割と、そして今回の果たした職責、そういうもので、今回、今後のあらゆることの想定の上に、内閣官房長官が主体となって防衛庁そして海上保安庁、いわゆる国土交通省ですね、それらの検証を全部作業しまして、そして私は、絶えず防衛庁長官とも、個人的にもあるいは公式にもお話し合いをしておりますけれども、連携を密にして、今回も、人間が実際に潜水してくれるときも防衛庁もきちんと一緒に共同してくれるということをお約束しておりますので、そういう意味では、余り仰々しく、こういうところでどうするこうすると言わないで、静かに、静々と目的達成のためにする方がむしろ中国もいいと私は思いますけれども、先ほどの外務省に対しての御質問も、あれは日本の特定の新聞社がわざと聞いたんです。質問するんです。そういうことがないように静々と目的に向かってお互いに腹芸で了解しながらやる、私はそこまで持っていきたいと思っております。
細野分科員 この問題は与党も野党もございませんので、まさに国益をかけて仕事をしていただくことを心より御期待をしたいと思います。
 やはり、今ほど海上保安庁と海上自衛隊がきちっと協力するということが求められているときもないと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 済みません、時間もなくなってまいりましたので、打って変わってちょっと違う質問で恐縮なんですが、ナンバープレートの活用方法について二、三、今の段階での国土交通省の取り組みについてお伺いをしたいと思います。
 ナンバープレートに関しては、これは平成十二年ですか、今までは陸運局の中に一つのナンバーということで決まっておったわけですが、それを細分化してもいいのではないかという議論があり、報告書が一つ出されております。その報告書によりますと、地元の合意形成や登録台数の規模や費用負担のあり方を勘案してこの問題については検討していこうということが出ておるのを私見ておるんですが、その後の、もうかれこれ二年近くたっておりますので、国土交通省としての現段階でのお考えを大臣に一言お伺いできればというふうに思うんですが。
扇国務大臣 私は、今全く違った意味で国土交通省で研究してもらっています。それは、今はナンバープレートは自分の好きなナンバープレートを登録して、それが競合していなければ自分の好きなナンバープレートをつけられる時代になりました。
 ですから私は、ナンバープレートというものは、例えば一番というものが好きだとおっしゃれば、細野議員が一番をとったら、どこそこの何とかという地域は別にして、例えば細野議員が品川の一番をおとりになったら、終生一番で、この人の持っている車は何か起こってもこれは細野であるということが明快にできるようにむしろできないかと。いわゆる戸籍ですね、車の戸籍、それをナンバープレートであらわせないかということを今研究中でございますので、今細野議員がおっしゃったナンバープレートの感覚と全く別途考えております。
 それは、放置自動車といって自動車をほとんど放置してしまう悪い癖がございまして、自動車を愛する人が、自動車をそこら辺に放置してしまうなんということに大変困っておりますので、やはり責任を持って車を愛するということを私は啓蒙していきたいということで考えているという意味です。
細野分科員 私も大変いい考えだと思います。
 ただ、私の質問はちょっと違っておりまして、要するに、ナンバーが、湘南なら湘南と決まっておるのをエリアの中で幾つか細分化する余地はないかという話に関してで。では、ちょっと副大臣にお伺いをしていきたいと思います。大臣のお考えはよくわかりましたので。
 これは、地元の合意形成や登録台数などさまざまなことが言われておるわけですので、例えば、今コストがどれぐらいかかるのかというあたりについて、これはもう答えは出ておるんでしょうか。副大臣、お願いします。短くて結構です。
佐藤副大臣 ナンバープレート、地元の要望にこたえてするとしましたら、もちろんナンバーを製造する費用が別になってきますし、さらに、今コンピューターで処理するわけですから、そのソフトの変更ですとかシステムの変更があると思います。さらに、変える場合にはユーザーがこれを負担するということになっておりますから、そういう手数料の増しだとかいろいろなことを考えますと、今まで以上に費用の負担という問題をどうするかということが非常に問題になってくる、そう考えております。
細野分科員 済みません、もう時間もないものですから、例えば新しいナンバーを一つのナンバーから分離させる場合に費用が幾らかかるのかという数字が出ているかどうか、数字が出ていれば教えていただきたいということと、あと、どれぐらいの台数であればそういう新しいナンバーを設けられるのかというあたりについても、これも基準がないとなかなか難しいと思うんですが、この二点について、現段階でわかっていることを簡潔に御答弁いただいて、あと、今後の取り組みの見込み、それを最後に御答弁をいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
佐藤副大臣 それは、どういう情報を入れるかによって決まるわけですけれども、ナンバーの中に今も相当たくさんいろいろなことが書いてありますけれども、どういう情報を入れるのか、それによっても決まってくると思います。
 どういう情報をやるかということはちょっとわかりませんけれども、ですから、そういう面で、幾らということはその情報によって決まると思いますから、正式に今幾らと言うことはできないと思います。
細野分科員 もう時間もありませんのでこれで終わりますが、私実は事前に紙をもらっておりまして、五億円と書いてあるんですね。事務方に出していただいたので、きちっと責任をとっていただきたいなというふうに思うんですが。
 これは、国が全部お金を配ってやろうという話じゃないと思うんです。ユーザーの負担という考え方もあります。もう一つは、地方自治体で負担をしていくというやり方もあると思うんですね。これは、地域振興という形で今考えられている問題でございますので、仮に地域でそういうものを合意していけば、そういうものに関しては、むしろ、国としてはきちっとそれにこたえていくということについて、前向きに国土交通省としてこれから取り組んでいただきたい、このことを要望させていただいて、これは地方分権の一つのバロメーターになると思うので、何でもかんでもお金を国から引っ張ってくるんじゃなくて、地方がこれを出しますからこういう施策をしてくださいということに関して一つのバロメーターになると思いますので、一言いただいてよろしいですか。では、お願いいたします。
佐藤副大臣 さっきも大臣も、新しいナンバーのあり方ということでお答えありましたけれども、やはり、今でも相当情報量があって何か覚えにくいという面もあります。ですから、これからナンバーを大きく変えるということも検討しなくちゃならぬと思っています。どういうふうにするのか、今の時代に合わせてICチップを利用したりいろいろなこともしなくちゃなりませんし、そういうものに合わせながら、地方の要望、地方振興、観光、いろいろなことも考えながら、地方にどういう負担をしてもらうのか、国としてどういう負担をするのか、やはり根本的に変えていくことを検討させてみたいと思っております。
細野分科員 どうもありがとうございました。
御法川主査 これにて細野豪志君の質疑は終了いたしました。
 次に、森岡正宏君。
森岡分科員 扇大臣を初め、皆さんお疲れでございましょうけれども、あと三十分おつき合いをいただきたいと思います。自由民主党の森岡正宏でございます。
 私は、選挙区が奈良市を中心とした選挙区でございまして、きょうは、観光の振興についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 大臣いつもおっしゃっているように、毎年千六百万人ぐらいの日本人が外国を訪れる。しかし、日本を訪れる外国人観光客はその四分の一ぐらいだということでございまして、国内旅行も、そして外国からお客さんをもっともっと受け入れたい、そして観光産業というものを二十一世紀の花形産業に持っていきたい、そんな気持ちで私は質問させていただきたいと思うわけでございます。
 観光産業というのは、乗り物も、そして食べ物も、またいろいろなサービスも、いろいろなものが含まれた総合産業だと思うわけでございます。景気対策にもなりますし、また経済的な波及効果が非常に大きいということを考えますと、もっともっと政府も、そして民間も力を入れて取り組んでいかなければならないんじゃないかな、そんなふうに思っております。
 まず、改めて、扇大臣が観光産業の将来をどう見ておられるのか、そしてまた政府としてどう取り組んでいこうとしておられるのか、基本的なお気持ちを聞かせていただきたいと思います。
扇国務大臣 少なくとも二十一世紀、第三次産業の基幹的な産業として観光というものが私は重要視されていくと思っております。それは、諸外国を見ても、また日本の近隣を見てもわかることですけれども、例えば、隣の韓国、今度ワールドカップサッカーで少なくとも四十三万人ぐらいが参りますけれども、韓国の仁川空港をオープンしましたときに韓国へ行って聞きました。みんなが言うんです、扇さん、仁川は二〇〇五年には四千メートル級の滑走路を四本つくるよと。二本つくった上にあとプラス二本。どうするんですか、一年間に一億人の観光客を韓国に誘致するんだと。そういうふうに、観光目標というものが国策として確立されつつある。
 また、今の森岡議員の御説明がございましたように、日本人が多く外国に行くのに、日本に来る客が四分の一しかない、こういう状況では日本だけが、これだけの文化と歴史とそして多くの遺産を持っております。京都だけでも文化遺産が十四でしょうか、十三でしょうか、世界文化遺産に登録されているものだけでもそれだけあるというこの日本へ観光客を誘致しないのは、私は、国策としては欠陥であろうと思っておりますので、そういう意味では、観光にかかわるあらゆることをしていきたいと思います。世界観光機関、この間、WTOを韓国と日本で共催させていただきました。そのときにも、WTOで推計で東アジア太平洋地域の観光客数は二〇二〇年には一九九五年の約五倍の規模に達すると。WTOというのは観光のWTOでございます、この方が古いんですけれども。
 そういう意味で、私は、観光というものを国土交通省の所管の中では最重要視して二十一世紀の観光のスケジュールを立てていきたいと思っております。
森岡分科員 海外から日本に来る観光客の数が少ないというその理由がどこにあるか。欧米から見ますと、遠いだとか、またコストが高い、物価が高いとか、また言葉がなじみにくいとか、いろいろなことを言われているわけでございますが、大臣はどんなふうに見ておられましょうか。
扇国務大臣 まず、日本に対するイメージが悪いということです。
 成田にお着きになって、東京都内のホテルまでまずタクシーに乗ります。これが第一段です。そして、成田から東京の都内の宿泊ホテルの目的まで約一万五千円から、場合によっては、込みますと二万円かかります。それにプラスアルファ、高速代です。高速代はあのタクシーのメーターには出ません。外人が日本に着いて一番最初に払うお金がタクシー代と高速料金。そこでまずけんかになります。タクシーのドライバーはメーターに表示したお金をまず請求します。日本円で初めて財布から出す。それにプラスアルファ、高速のチケットで、これをプラスアルファしてくれと言う。外人は、高速道路はハイウエーでただだと思っていますから、なぜそれをプラスアルファするんだと、まずそこでけんかになります。言葉が通じないから余計不愉快になります。それで、ホテルのポーターが出てきてそれを説明します。
 それを解消しようというので、成田のタクシー乗り場では、高速料金が要りますよと英文で表示したんですね。けれども、外国のお客様は、荷物を持って、そんなものを見ていないんですね。まずそれで第一印象が、日本は高い、そして不親切である、余りにも日本円が、最初に思ったよりもどっと、一泊分だと思った金がまずそこで消える。
 ホテルへ行ってステーキを食べれば、外国で食べられないようなステーキですけれども、一万八千円から高級ステーキコースだと二万円取られる。これは、外国では四人分の最高級料理です。
 ホテル代が高い、そしてどこへ行くにもアクセスが悪い、そして英語で表示していない、あらゆる面で、私は、宣伝も下手であろうと思いますし、そういう意味では、まず外人が、見るものはそれぞれすてきなんです、個々においては。けれども、それの連携ができていない。そういう意味で、私は、残念ながら、まだもっともっと宣伝面においても日本をPRする。
 また、今回は、特別にワールドカップサッカーのときには、日本に飛行機で乗ってきた人たちは全部どこへ行っても六千五百円で行けるようにするとかETCを割引するとか、高速料金あるいは鉄道も全部ワールドカップサッカーで割り引きます。これが絶えず外人に対して割り引くのであれば、日本の観光客は倍増すると思っています。
森岡分科員 大変具体的にいいお話をいただきまして、本当にありがとうございます。
 私も大臣と同じように思うんですね。観光産業というのは、役所でも各省庁にまたがって本当に力を入れてやっていかなければいけないんじゃないかなと。今、国土交通省でも、総合政策局の観光部という一セクションで観光を扱っておられます。
 私は、私の郷里の奈良県でも、観光部というのを、県では部が一番大きいですから、観光課じゃなしに観光部にしなさいよ、そして、奈良県のようなところはもう観光や文化で生きていくしかないんだからそうしなさいよということを強くアピールしている。奈良市に対しても、課じゃなしに部にしたらどうだ、そういうことを言っておるんです。
 政府の取り組みとしても、オーストラリアなんかは観光産業省、ついこの間まで何かそういう名前がついておったようでございますが、一つの省が観光に力を入れて、そして縦割りじゃなしに、各省といろいろな横の連絡、連携をとりながら観光に力を入れていく、先ほど韓国のお話もございましたけれども、私は、そういう取り組み方が日本の場合、どうしてできないんだろうかなというふうに思っておるわけでございます。
 こんなことを申し上げますと大変でかい話になってくるわけでございますが、このことについて、扇大臣、いかがでしょうか。
扇国務大臣 私は、わざわざ観光省をつくらない方がいいと思っています。
 それはなぜかといいますと、私は、国土交通大臣になりまして、初めて四省庁統合して、今ワールドカップサッカー対応等々で、今申しましたように、高速道路の割引、あるいは飛行機の割引、それから鉄道の割引、あらゆる割引をするのにも、今までだったら、運輸省と建設省で、道路を走る割引は建設省、飛行機の割引は運輸省、全部縦割りで統一できなかったんですね。ところが、今、国土交通省になって四省庁統合しましたから、こういう割引政策も、日本全土に、あらゆる機関、陸海空を通じて割り引ける、これも国土交通省だからできるんです。
 しかも、話がワンストップサービスで、そこの窓口へ行って言うと全部済むんです。局長は忙しい、いや、来ていますね、局長は忙しいですけれども、ワンストップで、ここへ行けば全部陸海空が話ができる、私はこれでこそ観光政策というものが、日本がおくれた分を取り返せると思っています。私は、観光省だけ独立したら、もっと縦割りで、もっとうまくいかないと。国土交通省が意地悪するという意味じゃなくてですよ。
 そういう意味で、私は、今大変よくなった第一歩なので、これからそれぞれが発揮してくれると思っていますし、また、発揮しなければいけないと思っています。
森岡分科員 大臣の御見識もよくわかるわけでございます。しかし、私は、海外へのアピール、先ほど日本のイメージが悪いということをおっしゃいましたけれども、海外へのアピールということを考えると、外務省との連携も必要ではないかなというふうに思うわけでございます。
 ちょっと外務省の方にお尋ねしたいと思うわけでございますが、外国語による日本の情報が少ないとか、また、日本の魅力がわかりにくいというような理由から訪日をためらう外国人が多いというようなことを伺うわけでございます。私たちは、日本への外国人観光客をふやすための努力というものをどうやってやっていったらいいんだろうかな、在外公館はどの程度やってくれているんだろうかなというふうに思うわけでございます。私は、もう一つ委員会は文部科学委員会に所属しておるんですけれども、例えば、日本の紹介を外国の教科書がどんなふうに扱っているかというようなところを見ますと、情報が非常に古いということと、例えば私、この間調べたんですけれども、スペインで日本の平均的なインテリアを紹介している絵があるのですよ。そこに、床の間にゴルフバッグが置いてあるのですよ。それが平均的な日本のインテリアだ、そんなふうに紹介しているのですね。イメージがますます悪くなる。
 そしてまた、南米のボリビアでは、私、向こうにしばらく滞在しておられた方に聞いた話ですけれども、日本を紹介する教科書の中に富士山がある。そして、その隣にチャイナドレスを着た女性が座っているというのですね。その程度の宣伝しかできていないんじゃないか。欧米先進国は違うと思いますけれども、その程度の日本についての情報しか外国人に知られていないというようなところがあるんじゃないかな。
 もっとこれは予算の面でも、そしてソフトの面でも、いろいろな面で日本をもっともっと海外へ知らしめる、日本の情報を発信する。ただお能とか相撲とか、そういう特別の文化だけを紹介するんじゃなしに、日本の今の生活文化そのものですね。日本人というのはどんなふうに生活しているんだろう、また、日本というところはどんなきれいなところなんだろうというようなことを、もっともっと宣伝してもらいたいなという気持ちから申し上げるわけでございますけれども、外務省は今どの程度やってくださっているのか、ちょっとコメントをお願いします。
服部政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来先生御指摘になっていますように、我々の立場から申し上げても、やはり日本に対する理解を促進するためには、できるだけ日本に来ていただいて、実際の日本を見ていただくというのが一番手っ取り早いし、効果のあることだと思います。したがって、そういう観点からも、最近は国土交通省を初めとして、いろいろな各方面とも協力をさせていただきまして、我々としてできるだけのことはやっているつもりでございます。
 例えば、国際観光振興会のいろいろな広報資料がございますけれども、そういうものは当然のことながらですけれども、我々自身も、我が国を紹介するいろいろなパンフレット、あるいはビデオなんかも作成しておりまして、そういうものを、在外公館を通じてその国のできるだけいろいろな方面に配布をする。あるいはまた、講演会とかいろいろな行事があるときには必ずそういうものを紹介するというようなこともやっております。
 それからまた、我が国の大使館あるいは総領事館に参りますと、大体外部の方が入ってこられるところには日本の各観光地のポスターがございますけれども、そういうものを必ず張るようにしてございまして、そういう面でもできるだけ広報しているつもりでございます。
 それからまた、本年はワールドカップのサッカーの年でございますけれども、これは絶好の機会でございますし、ことしの通常国会の施政方針演説においても、総理みずから海外からの旅行者の増大が必要であるという点も訴えられております。例えば、そういうものを踏まえまして、ワールドサッカーに出場する、我が国を除く三十一カ国ございますけれども、その国の合計七十六カ所でございますけれども、我が国の在外公館にワールドカップインフォメーションデスクというものを設置いたしまして、いろいろな形でもって広報をいたしております。こういうふうな点は、今後とも国土交通省の協力を得ながら積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
森岡分科員 国土交通省の方にお伺いしますけれども、先ほど大臣もお触れになりましたように、外国人観光客を受け入れるための基本的なインフラが十分整備できていない。私の郷里の奈良なんかでも、本当に未整備だな。例えば外国人向けの表示、道路とか、ここを通ったらあの寺へ行けますよとか、そういう案内が非常にまだまだ未整備だし、外国語によるチラシ、リーフレット、私たちが外国へ行きますと、日本人向けのパンフレットなんかが、どんな国へ行っても出てきますね。それが日本では非常に未整備だというふうに思います。
 そういうことで、今国土交通省で、こういう基本的なインフラ整備について、これも予算措置も含めまして、どの程度力を入れていただいているのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
岩村政府参考人 外国人観光客を受け入れるためのインフラの整備状況でございますけれども、御指摘のとおり、外国人観光客が日本を快適に旅行していただくようにするためには、外国語の表示の充実とか、外国語による観光情報の提供、さらには通訳案内体制の整備等々が必要になるわけでございます。
 そして、外国語の表示の充実につきましては、若干遅いと言われるかもしれませんけれども、昨年の八月に、空港、駅等についての案内表示につきましてガイドラインを策定いたしました。公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドラインというものをつくりまして、その中で、交通事業者に対しまして、案内板にまず外国語を併記すること。それから、外国人にもわかりやすいように標準案内用図記号ですね、字ではなくて図で、トイレの位置だとかインフォメーションセンターの位置だとか、そういうものがわかるような図記号、こういったものの使用を働きかけることをいたしております。そういうことで国際化、欧米だけでなくて、最近特にアジア諸国から大変観光客がいらっしゃっていますので、そういったところの言葉も含めて、国際化へ対応した案内表示の設置を今進めているところでございます。
 それから、観光地での案内標識、これは非常に大事なわけでございますが、これは地方自治体が外国語表記の標識の整備に取り組んでいるわけですが、それに対しまして国としては三分の一の補助制度がございます。
 それから、外国語による観光情報の提供でございますが、国際観光振興会のホームページに、文化、観光情報、地図、こういったものをこのホームページで提供いたしておりますし、また国際観光振興会の海外観光宣伝事務所、また東京、京都のツーリストインフォメーションセンター、さらには、提携をいたしております全国百十一カ所の観光案内所を通じまして、各種パンフレットの配布等により観光情報を提供しているところでございます。
 それから、通訳案内体制については、通訳案内業について国家試験、そして免許制度ということによって、不良な通訳案内業者が出ないように、良質な業者の確保に努めております。
 また、外国人の旅行者に、商売ではなくて善意で通訳を行うグッドウイル・ガイドというものを、現時点で全国で四万七千人ほどいらっしゃいますが、これの普及促進を観光振興会を通じて図っているところでございます。
 そういうことで、外国人観光客の円滑な受け入れが図られるように積極的に取り組みたいと思っております。
 それから、先ほど体制のことがございましたが、先般、扇大臣の方から指示がございまして、佐藤副大臣、そして月原副大臣に、それぞれ外客の誘致面、そして地域における施設の整備面、両面でそれぞれ御担当いただいて、関係各省とも連絡をとるような形をお願いいたしておりまして、我々、今両副大臣のもとでいろいろ勉強しているところでございます。
森岡分科員 政府登録のことでちょっと一言だけお願いしたいのですが、三月二十九日に閣議決定されました公益法人改革の中で、外国人観光客のための受け入れ施設としての国際観光ホテル整備法登録制度の抜本見直しというものが打ち出されました。どんな方向を考えておられるのか、内閣府が打ち出したことでしょうけれども、ちょっと一言、簡潔にお願いいたします。
岩村政府参考人 この登録制度、昭和二十四年という非常に古い時代に制定されまして、その後平成四年に全面改定をいたしたわけでございますが、今、次の三点から見直しを進めているところでございます。
 一つは、訪日の外国人の旅行ニーズの多様化。従来のようにお金持ちだけが観光に来るわけではなくて、いろいろな方がいらしています。それから、国籍も昔に比べて非常に多様化いたしております。そういうことで、多様化への対応。
 二番目は、バリアフリー化への対応、さらには省エネルギー対策の推進、それとやはり一番大事になります消費者保護の充実、こういった視点での見直しをしなければいけないだろう。
 三番目が、インターネットの活用等によりまして、訪日外国人の予約の容易化。最近ですと、旅行事業者を使うのではなくて、直接インターネットなりも使われておりますので、そういったインターネットの活用というような面も入れて、訪日外国人の誘致に一層資する制度へと改めようというふうに考えているところでございます。
森岡分科員 お墨つきというのが今まで果たしてきた役割というものは非常に大きいと私は思うのですね。そういう意味からも、見直しをする際に改革していくのはいいのですけれども、それが改悪にならないような見直しをぜひお願いしておきたいと思います。
 中小企業庁の方、お越しいただいていると思いますが、長引く不況が旅館業の経営にも厳しい影響を及ぼしているわけでございまして、特にバブル期に新増築したものが建設コストが異常に高くて、その借入金がこのデフレ状況の中で返し切れない。非常に重苦しくのしかかってきているわけでございます。
 したがいまして、政府系の金融機関、そしてまた民間の金融機関に対して返済の条件変更を認めてもらっているところが多いんですね。条件変更といいますと不良債権、こういうふうにみなされまして、今後増改築や修繕のために新たな投資をする借り入れがしたいのに融資を実行してもらえない、そういうことが大変多くあるようでございます。
 デフレ下では売り上げが伸びないから約束どおり返済できない、条件変更はしてもらいたいけれども、不良債権ということになってしまうと、新しい金融システムでもつくってもらわないと新しい投資ができない、こういうジレンマにあるようでございますけれども、中小企業庁は、特に政府系金融機関にどのような指導をしておられるか、ちょっとお願いしたいと思います。
久郷政府参考人 旅館を含みます中小企業、非常に厳しい状況にあるわけでございまして、私どもとしましては、こういう中でやる気と能力のある中小企業が破綻に追い込まれるということを回避したいということで、セーフティーネットに万全を期すべく、十三年度の第一次補正予算におきましても二千五百億円の対策費を計上しておりまして、取引先の企業あるいは金融機関の破綻、こういったものに伴う破綻を防ぐといったような観点からも、セーフティーネット保証・貸付制度というのを拡充する等の対策を講じております。
 それで、ことしに入りましても中小企業をめぐる景況は非常に厳しいわけでございますけれども、本年一月から二月にかけまして、私ども中小企業庁の幹部が全国二十五の道府県に出張いたしまして、中小企業あるいは金融機関の生の声あるいは生の情勢というのを把握してきたところでございます。そういう中でずっと、先生今お話ございますとおり、長期にわたって業況が悪いものですから、旅館業を含めまして多くの中小企業の資金繰りが厳しくなっているという状況は、私ども十分認識させていただいております。
 そうした状況を踏まえまして、先般、政府で、早急に取り組むデフレ対応策というのを取りまとめましたけれども、その中で、中小企業金融対策につきまして幾つか施策をとっております。
 一つは、セーフティーネット保証・貸付制度、これにつきまして要件を緩和いたしまして、対象となる中小企業者の大幅な拡大を図っているということでございます。なお、旅館業につきましては、このセーフティーネット保証・貸付制度の対象になっております。
 それから二番目、返済条件のお話もございました。特に平成十年からやりました特別保証制度、これで資金を借りられた返済の返済条件の変更に苦慮される中小企業が多いという話を私どももよく耳にさせていただいております。
 そこで、今回は、セーフティーネット保証の対象になるような中小企業、そういう意味ではこれは旅館業も対象の中に入っておるわけでございますが、申し出があれば、原則、個別企業の実情に即した形で条件変更に応ずるという措置を講じたところでございます。
 こうしたことで、旅館業を含む中小企業につきましては、資金繰りにつきまして可能な限りで支援をしてまいる所存でございます。
森岡分科員 ぜひ万全の策をとってあげてほしいと思います。
 時間もなくなってまいりましたので、最後に大臣と国土交通省の方にお伺いしたいと思うわけでございます。
 先ほど来お話が出ております日韓共同開催のワールドカップサッカー、いよいよ本番が近づいてまいりました。大会開催期間中に日本を訪れる旅行者の増大、そして、経済面での波及効果が大変期待されているわけでございますけれども、二月四日に、小泉総理が施政方針演説の中でも、ワールドカップサッカーに力を入れるんだということをおっしゃっております。扇大臣も、先ほど来お話しのように熱心に取り組んでいただいておる、省を挙げて一生懸命やっていただいているということに敬意を表しているわけでございますが、その受け入れ態勢の一端を伺いたい。
 それから、もう一つは、国内旅行の振興対策として、旅行した経費を一年分所得控除してもらえるようなことを考えたらどうだ、それを景気対策にもできるし、また、個人の金融資産が大きいんだから、個人にもっともっとお金を使ってもらえるインセンティブを与えることになるんじゃないか、そういう考え方があるわけでございますけれども、これについてどう考えておられるのか、二点お伺いしたいと思います。
扇国務大臣 だんだんワールドカップサッカーが迫ってまいりまして、若い人たちはもう浮き浮きしておりますけれども、チケットがないと泣いている人もいます。そういう意味では、今総理の施政方針演説の話もなさいましたけれども、簡単に事例だけ、こういうことをしたという事例をちょっとお聞きいただきたいと思います。
 まず、端的に申します。
 成田空港暫定滑走路をオープンします。これも大きな目標としてやってきたことで、供用開始いたします。四月の十八日でございます。それから羽田空港、現在夜間だけチャーター便をおろしておりますけれども、大会期間中、昼間も十便、チャーター便をおろします。そして、夜間は週七十便でございます。それから、大会期間中に、後でこれは詳細申しますけれども、陸海空の割引をいたします。
 それと、私がお願いをいたしまして、これも世界初なんですけれども、ウォンと円を一枚のICカードの中に入れまして、そのICカードで多機能の活用をする。ウォンと円を同時のICカード一枚に入れまして、例えば、北海道だけ完全にできているんですけれども、空港をおりて会場へ行くまでの運送に関してもこれを使い、また、会場の中での買い物も使いという、複数の、ウォンと円をICカードに導入するというのは世界初でございます。これも無理をしてやってもらいました。
 これも、今後大きく観光業に貢献すると私は思います。なぜなれば、ウォンを日本で両替することがほとんどできない。韓国の規制があるんです。ですから、あらゆるところへウォンを持っていっても両替してくれない。なおかつ、小銭は通常の銀行へ行っても両替してくれません。これがICカードですと、小銭までこれで使えるということで、ウォンと円の導入ということがこれでできるということで、できました。
 それから、韓国の空港、限定空港ですけれども、これをクリアランス制度、これはプレクリアランスといって、日本のICQの、税関の人たちが韓国の空港に行って、韓国で乗るときに既にもう税関を通るということで、日本に渡ってきたら、もうフリーで行きたい目的に行けるプレクリアランス方式というのは、カナダとアメリカでかつてやっておったことを、今回初めて韓国と日本でできるということ、これも大きなことでございます。
 先ほど申しました陸海空の割引がどの程度かということで、事例を挙げさせていただきますと、さっき申しましたように飛行機で日本に来た人たち、その人たちは、外国から入国した旅行者は東京から鹿児島へ飛ぼうが北海道へ飛ぼうが、すべて一律六千三百円、全部利用できます。これはもう大割引でございまして、大サービスでございます。六千三百円で行きたいところ、ワン空路、全部六千三百円。
 それから、鉄道につきましては、二万円少し超えるということですけれども、五日間、全国のJRに自由に乗れる。鉄道につきましては二万円をちょっと超えますけれども、五日間、日本じゅうJRがフリーであるということ。それからまた、六千円で五日間、試合会場であります埼玉、鹿島、横浜、成田空港、東京区間という関東圏の共通フリーパス、これは六千円です。どこまで行ってもいいのです。フリーパスが五日間、六千円で使えます。これが新たにできます。
 それから、船につきましては、博多と釜山間のジェットフォイル、これの運賃を二〇%割り引きます。
 それから、ホテルと旅館につきましては連泊割引、一泊だけじゃだめですけれども、連泊をする場合にはこれを割り引きます。
 それから、成田空港、関西国際空港及び周辺のワールドカップの大会会場の周辺のレンタカー四百台すべてにETCを搭載します。ですから、ETCがその間二〇%割引ですから、レンタカー自体にETCの機械を搭載して、四百台貸し出しをいたします。それから、北海道から九州等の高速道路においての周遊エリア内の乗り放題、スーパー割引チケット、これも発行いたします。
 そのように、陸海空、国土交通省だからできると言われることを目いっぱいいたしまして、皆さん方に、この際、終わった後も日本じゅう旅行していただきたいという宣伝を今しているところでございます。
岩村政府参考人 国内旅行の振興策でございますが、先生よく御承知のように、国内旅行総額で十九兆二千億ということで、地域経済の活性化に非常に役に立っているわけでございます。ところが、ここ数年を見ますと、国内旅行の旅行回数、宿泊回数、そして一人当たりの消費額、ともに減少傾向にございます。そういうことで、国としても国内旅行の活性化に積極的に取り組んでいく必要があると思っております。
 そして、お尋ねの税の問題でございますが、御承知のように、現在、従業員職場旅行非課税制度というのがございます。職場旅行をした場合に、法人そして参加した個人について、それぞれ税の恩典があるわけでございますが、これについて、平成五年に三泊四日を四泊五日ということに延ばした、そんなこともやっております。
 全く別に、今度は個人の旅行について所得控除ができないかということでございますが、役人が答弁すればこういうふうになってしまうのでございますが、旅行経費の範囲の確定等々、いろいろ問題がございます。そういうことではございますが、総合的な国内旅行振興策を推進していく上の一つの課題ということで、検討をしてみたいというふうに思っております。
森岡分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
御法川主査 これにて森岡正宏君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明九日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十三分散会


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