衆議院

メインへスキップ



第2号 平成18年6月6日(火曜日)

会議録本文へ
平成十八年六月六日(火曜日)

    午後三時三十分開議

 出席分科員

   主査 斉藤 鉄夫君

      大野 松茂君    柴山 昌彦君

      冨岡  勉君    若宮 健嗣君

      川内 博史君    福田 昭夫君

      馬淵 澄夫君    保坂  武君

   兼務 赤池 誠章君 兼務 柚木 道義君

   兼務 伊藤  渉君 兼務 高木美智代君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       佐野  洋君

   会計検査院事務総局第三局長            高山 丈二君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田 康敬君

   政府参考人

   (総務省大臣官房技術総括審議官)         松本 正夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡本  保君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 春田  謙君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     柴田 耕介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大森 雅夫君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局長)         柴田 高博君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  谷口 博昭君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  岩崎 貞二君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 杉山 篤史君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  金田 誠一君     川内 博史君

  福田 昭夫君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     馬淵 澄夫君

  長妻  昭君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  神風 英男君     福田 昭夫君

  馬淵 澄夫君     金田 誠一君

同日

 第一分科員赤池誠章君、高木美智代君、第三分科員柚木道義君及び伊藤渉君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計歳入歳出決算

 平成十六年度特別会計歳入歳出決算

 平成十六年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十六年度政府関係機関決算書

 平成十六年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十六年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (法務省、国土交通省所管及び住宅金融公庫)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

斉藤主査 これより決算行政監視委員会第四分科会を開会いたします。

 平成十六年度決算外二件中、本日は、国土交通省所管、住宅金融公庫及び法務省所管について審査を行います。

 昨日に引き続き国土交通省所管、住宅金融公庫について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。

川内分科員 民主党の川内博史でございます。

 まず、道路特定財源についてお伺いをさせていただきます。

 今国会で成立をいたしました行政改革推進法第二十条「道路整備特別会計等の見直し」というところでございますが、第二十条第三項第三号に「特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成十九年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成するものとする。」というふうに書いてございます。あるいは、この第二十条三項の前書きの部分には、「特定財源制度に係る税の収入額の使途の在り方について、納税者の理解を得られるよう、次の基本方針により、見直しを行うものとする。」というふうに書いてございます。

 今読ませていただいた中で、私の問題意識は、この「納税者の理解を得つつ、」あるいは「納税者の理解を得られるよう、」という文言についてでございます。この文言の解釈を政府にお尋ねさせていただきたいというふうに考えております。

 まず、「納税者の理解を得られるよう、」あるいは「納税者の理解を得つつ、」の「得られるよう、」と「得つつ、」は同じ意味かということをお答えいただきたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 道路特定財源は、道路の整備とその安定的な財源の確保のために創設されたものであり、受益者負担の考え方に基づき、自動車利用者の方々に利用に応じて道路整備のための財源を負担していただいている制度でございます。

 道路特定財源の見直しにつきましては、今委員の方からお触れいただきましたように、今国会において行政改革推進法が成立したところでございますが、同法第二十条第三項におきましては、特定財源制度に係る税の収入額の使途のあり方について、納税者の理解を得られるよう見直しを行うこと、また、納税者の理解を得つつ具体的な改正の案を作成することが盛り込まれているところでございます。

 ここで言う納税者とは、道路特定財源の財源となっている揮発油税、自動車重量税等を納めていただいている自動車利用者の方々のことを意味していると考えておるところでございます。

川内分科員 揮発油税、それから、等という言葉が入りましたけれども、自動車重量税等、この納税者というのは、等を含めて何税を納めている納税者かということを、すべて、ちょっと限定的に列挙していただけますか。

谷口政府参考人 国税は三税ございまして、今お話しさせていただきました揮発油税、自動車重量税のほか、石油ガス税、この三税が国税三税ということになっております。

川内分科員 その揮発油税、自動車重量税、石油ガス税を納めていただいている皆様方の理解を得られるよう、あるいは理解を得つつというのは、どうやって理解を得るのか。その具体的な方法、あるいは、どういう状態になれば、政府としてこれは理解が得られたんだというふうに御判断をされるのかということについて教えていただきたいと思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 道路特定財源につきましては、先ほどお話しさせていただきましたとおりでございますが、重なっての答弁になりますが、受益者負担の考え方に基づき、自動車利用者の方々に利用に応じて道路整備のための財源を負担していただいている制度であるということでございます。

 まさしくこれから見直しを行うということでございまして、さまざまな意見があるわけでございますが、行政改革推進法に沿って、納税者の理解が得られるよう、しっかりと知恵を出していかなくてはならないと考えておる次第でございます。

川内分科員 ですから、私がお聞きしているのは、納税者の理解が得られるというふうに政府が判断をする、その根拠となるものはどういったものがあるんですかということをお尋ねしているわけです。

 というのは、揮発油税にしても自動車重量税にしても、本則に上乗せして道路利用者あるいは自動車利用者の皆さんに税金を納めていただいているわけでございますが、それらの上乗せを国民の皆さんに御理解いただくときにも納税者の理解を得つつという言葉が使われていて、その理解が得られることの範囲は、道路に使うんだと、受益と負担の関係というものを明確にしていくからこそ、上乗せの税金を道路利用者の皆さんにいただくことができるのだという議論があったというふうに、私は過去の議事録等で確認をさせていただいております。

 であるとするならば、今回、一般財源化をするに当たって、納税者の理解を得られるように一般財源化をするというのは、果たしてどういうことが納税者の理解が得られる状態であるのか、そして、何をもって納税者の理解を得たというふうに政府として御判断されるのかということに大変関心を持っているわけでございまして、その辺、もうちょっと具体的に、詳しく御答弁をいただければというふうに思います。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 法解釈につきましてお尋ねが一点ございましたが、道路特定財源制度は、受益者である自動車利用者が道路整備の費用を負担する制度であることから、その見直しに際しては、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得ていく必要があるというのが法の精神かと思っております。

 第二十条第三項一号から三号までに規定される基本方針により見直しを行うこととしており、同項本文における「納税者の理解を得られるよう、」の文言は、その際に配慮すべき事項として規定されたものでございます。また、同項第三号の「納税者の理解を得つつ、」の文言は、特定財源制度に係る税の収入額について具体的な改正の案を作成するに当たって、納税者の理解を得ることについて入念的に規定されたものであるということで法的には成っておるわけでございます。

 これからまさしく具体案を策定するということでございますので、これからしっかりと知恵を出させていただくという答弁をさせていただきましたので、幅があるかと思っております。

 例えば、過去のことで申し上げますと、今の地下鉄なり公共交通機関に道路特定財源を活用しているのも行き過ぎであるというような意見もございますし、もう少し環境的なものに使ってもいいのではないかというような意見もさまざまあるわけでございますので、まさしく、これから骨太の方針等にどう書かれるかということもございますし、予算の枠組みもこれからでございます。そういうような周辺の条件をもとに、納税者の理解が得られるように、関係省庁ともども協議をしながら具体案を策定するということが私どもの務めではないかと思っておる次第でございます。

川内分科員 では、今後、納税者の皆さんにしっかりと理解をしていただけるようにこれから議論をするという意味が、「納税者の理解を得られるよう、」という言葉の意味であるという御答弁であったかというふうに思います。

 その際に、受益と負担の関係。かつて、この道路特定財源を創設するに当たって、納税者の理解を得るために受益と負担の関係というものを明確にしていくのだという政府の説明に関して言えば、その方針は変わりがない、受益と負担の関係については、政府としても今後見直しの一つの大きな柱になるというふうに私どもは理解をしておいてよろしいかということをお聞かせいただきたいと思います。

谷口政府参考人 私どもはそういう考え方を主体にして具体案を詰めさせていただきたいと思っておりますが、一方、国全体では財政状況が非常に厳しいというようなこともございますので、そうしたことを含めて、両極端の考え方があるかと思いますが、そうした中で具体案を得ていく、その中で納税者の理解が得られるように案を詰めていくということではないかと思っております。

川内分科員 きょうは分科会でございますので、余りここでやりとりをする時間はないわけでございますが、私ども地方に住む者は、道路がまだまだ未整備な地域あるいは区間というものが数多く残されているわけでございます。

 一方、一世帯当たりの道路財源の負担割合、あるいは負担の金額というものを考慮するときに、東京にお住まいの方などは車を利用することがそもそも少ないわけでございます。

 他方、私ども地方に住む者は、家に二台、三台車があって、距離も長い。したがって、結果としては、一世帯当たりの道路財源の金額というものを見ると、大体東京の倍とか三倍とかいう金額を地方に住む我々は負担をしているということでございます。

 そういう意味では、政府の部内で、もう地方の道路の整備は終わったんだというようなことを経済財政諮問会議などで発言をされる民間議員の方々もお見受けするわけでございますが、決してそのような情緒的な議論にくみすることなく、そもそも道路をつくるためにこの道路特定財源あるいは道路のための税というものが設けられ、それは国民が理解していたことであって、それが、状況が変わったから、財政状況が厳しいからということで他の使途に使われるというのは、私としては、地方の皆様方の、それこそ納税者の理解はそういうことでは得られないというふうに思いますので、しっかりと今後の交渉に、あるいは議論に臨んでいただきたいということを、これはお願いを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、公共事業の労務単価についてお伺いをいたします。

 平成十八年度の私の地元鹿児島の労務単価表、公共工事にかかわる労務単価というのが各職種ごとに細かく出ておりますが、それを見ますと、電気工事をやっていただく電工の方々、あるいは鉄筋工の方々、あるいは塗装工の方々など、技能者あるいは資格者の労務単価が普通作業員の労務単価よりも低くなっているという実態がございます。

 普通作業員というのは、私などでも、あるいは斉藤委員長も、その日に日雇いで、現場に行って、例えば斉藤さんの日当はこれだけねということで見積もられる金額、要するに、何もできなくてもこの日当が見積もられるというのが普通作業員の日当なんですけれども、その普通作業員の日当よりも、電工、鉄筋工、塗装工、技能者、資格者の労務単価が低くなっている。

 これはなぜそのようなことが起こるのか。市場実勢としてはそれはいたし方のないことであるという御答弁なのかもしれないですが、しかし、そうであったとしても、技能者、有資格者の方たちは適正に評価をされなければならないのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

大森政府参考人 先生御指摘のように、平成十八年度公共工事設計労務単価におきまして、鹿児島県の普通作業員の単価は一万三千九百円、同じ電工は一万三千八百円ということで、幾つかの職種で普通作業員を下回る単価設定となっていることは承知をしているところでございます。

 公共工事の設計労務単価は、建設労働者の賃金支払い実態を調査し、その結果に基づき設定しているものでございます。それぞれの職種の単価も、当該地域の建設労働者の賃金水準の動向によるものと考えているわけでございます。

 一般論として申し上げれば、先生御指摘のように、労働者の賃金水準は、技能や一定の資格を有する職種において高くなる傾向にあると考えられるわけですが、地域における建設事業の傾向、具体的には、どのような分野の事業にどれだけのものが投資されるか、そういったことでございますけれども、そういった建設事業の傾向とそれに応じた労働力の需給関係によって、技能などを必要とする職種すべてが技能などを必要としない職種よりも高くなるとは必ずしも限らないというふうに考えているところでございます。

川内分科員 発注者としての国土交通省の御説明としてはそういう御答弁になるのかもしれませんが、一方、建設業にかかわる技能者あるいは資格者の能力を高めていくことも、国土交通省としてのある一つのお仕事ではないかというふうに思います。技能者、有資格者の皆さんがさらに能力を高めていく、そのためのインセンティブというのは、どうしても、適正かつ正当な賃金あるいは労務単価というものが確保されるべきだというふうに思います。

 もう一度、建設業にかかわる技能者、資格者の能力を高めていくという観点で、普通作業員の設計労務単価の方が電気工事の人や鉄筋工あるいは塗装工の皆さんよりも高いという実態に関して、これは調査の方法をもう少し考えた方がいいのではないか、あるいはサンプルのとり方を考えた方がいいのではないか、そのような工夫ができないのかということを含めて御答弁をいただきたいと思います。

大森政府参考人 今申し上げましたように、賃金に関しましては、具体的な実態調査に基づいて客観的に整理をさせていただいているということでございます。

 ただ、先生御指摘のように、建設業は人が重要な役割を果たす産業であるという認識をしているところでございまして、技能労働者を初めとする建設労働者の処遇や雇用条件の改善についても、建設業の健全な発達を図る上で不可欠の課題と考えているところであります。

 今、先生の賃金の調査の話でありますが、我々の調査の意図は、もちろん直接担当する方には十分伝えているつもりではございますが、そのあたり、より一層正確を期するようにやってまいりたいと考えております。

川内分科員 それでは、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、公共工事からの暴力団の排除について質問をさせていただきます。

 昨年六月二日の通知以来、国土交通省の「公共工事をめぐる暴力団対策及び建設業からの暴力団排除について」の取り組みについて、私は率直に評価をさせていただきたいと思っております。目に見える形での効果があらわれているのかというと、まだまだというところもあろうかと思いますが、まず取り組みの第一歩が踏み出されたということで、高い評価をしたいというふうに思います。

 そこで、幾つかの点について確認をさせていただきたいと思います。

 この昨年に出されたペーパーでございますが、「公共工事をめぐる暴力団対策及び建設業からの暴力団排除」「発注工事等において指名を行わない業者の対象を明確化」と書いてございます。その中に、どう明確化していくのかということについて、「暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者に準ずるもの」、これらも指名を行わないということになっているわけでございます。

 では、「暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者に準ずるもの」というのはどういうものかというと、一、二、三、四と項目があって、その中に三番として「暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有しているとき」という項目がございます。この「社会的に非難されるべき関係を有しているとき」とは、どのような状況にあることを、どのような関係にあることを「非難されるべき関係」というふうに私どもは理解すればよいのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

春田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員の方から御指摘がございましたように、公共工事からの暴力団関係者の排除、非常に重要な課題でございます。

 この課題につきましては、国土交通省といたしましても、従来から警察当局ともよく連絡をとりながら対応してきたところではございますけれども、手続の面でありますとか対象の事業者の範囲、こういったことをやはりできるだけ明確にしていくということが、委員御指摘のとおり非常に重要なところでございます。今委員が御指摘されましたように、昨年の六月に、警察庁の方とも協議の上、排除業者の明確化、あるいは手続関係、特に警察当局からの排除要請に対する手続の明確化、こういうことで、私どもも、各地方整備局に通知を発出いたしまして相互の連携強化を図っているところでございます。

 具体的に今、先生、その通知の中における文言を拾い出した上で、「暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者に準ずるもの」、この一つの形態といたしまして、先ほどの一から四というところの三に当たるわけでございますけれども、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有している業者というところを挙げられているところでございます。

 この具体的内容といたしましては、警察当局とも、どういう事例であるかというようなことについていろいろと照会等をしているところでございますが、具体例といたしましては、暴力団が介入あるいは関与する賭博、のみ行為、無尽などに参画、参加している場合、それと、暴力団等と妥当性を欠く内容の関係、こういったものが該当するというように考えられるところでございます。

 具体的にどういう関係を有しているかという判断につきましては、暴力団排除の合意書に基づきまして警察当局において判断をしていただくということになってございまして、地方整備局は必要に応じて警察当局に協力するということになっているところでございます。

 私ども国土交通省といたしましては、警察当局と連携をいたしまして、情報交換を密にしながら、公共工事からの暴力団関係業者の排除に取り組んでまいりたいと考えております。

川内分科員 「暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有しているとき」というのが、賭博、のみ行為、無尽などという、それは何も言わなくても非難されるべき関係であって、私が警察の方に確認をしたところでは、一緒にゴルフをするような関係、あるいは会食をするだけでも社会的に非難されるべき関係であるというふうに警察の方から教えていただいたんですけれども、国土交通省としては、賭博、のみ行為、無尽じゃなきゃ非難されるべき関係じゃないということなんですか。ゴルフをする関係とか一緒に飲食する関係というのは十分に非難されるべき関係であるというふうに私は思いますが、もう一度御答弁いただけますか。

春田政府参考人 これは、確かに具体的な事例がどういう事例かというのは、いろいろな形態があろうかと思います。

 私ども、確かに典型的な例として、暴力団が介入、関与するところの賭博、のみ行為、無尽などということ、そういうものに参加しているというケースと、少し一般的ではあるんですが、暴力団等と妥当性を欠く内容の関係を持つ、こういうことでございまして、では具体的にどういうことになるのかというのは、先ほどもちょっと申し上げたところでございますが、よくその辺の内容についての判断を警察当局の方からも教えていただく必要があるというふうに考えておるんです。

 いわゆる形式的に、外形的にどういう関係であるかということにとどまらずに、関係を有するに至った原因でありますとか、あるいはその関係を通じて暴力団が実質的に経営に影響を与えているというようなことであるとか、あるいはそういう経営の関係で関与をするといったような、暴力団員との実質的な関係、一体的な関係というのがどういうものであるかというのが考慮されて、これに当たるかどうか、非難されるべき関係を有していることに当たるかどうかということになろうかと思いまして、それはまさに個別具体的にそのような関係を有しているか否か、こういう判断になることでございます。

 私ども、暴力団排除の合意書に基づきまして、警察当局においてその辺の関係の判断ということをお願いいたしまして、必要に応じまして、私ども地方整備局の方でも警察当局に協力するという形で、具体的内容につきましては、そういう関係の中で特に非難されるべき関係であるかどうかということを確認しながら運用してまいりたいと考えているところでございます。

川内分科員 ちょっと今の御答弁では納得できないわけですね。なぜかならば、「国土交通省では、従来より、建設業からの暴力団排除の徹底を図ってきたところであるが、」という言葉で書き出しが始まっておりますし、さらには、公共工事とは税金を使う工事であると。

 私は、暴力団員が全部だめだ、よくないと言っているわけじゃないですよ、誤解を恐れずに言えば。それは暴力団員の方たちだって生きる権利はあるし、生活をしていく権利はあるでしょう。しかし、少なくとも税金を使う公共工事からは暴力団並びに暴力団と密接に関係のある業者は徹底的に排除されなければならない。要するに、李下に冠を正さずであるというのがこの通知の趣旨であろうと思うのですね。

 であるとするならば、警察からお聞きした、一緒にゴルフをする関係とか飲食をする関係というのは十分に社会的に非難されるべき関係に当たるというふうに私は思いますが、国土交通省さんがきょう、そのように御答弁されなかったのは非常に何か、ちょっと不可思議ということを最後申し上げて、終わらせていただきます。ありがとうございます。

斉藤主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤池誠章君。

    〔主査退席、柴山主査代理着席〕

赤池分科員 私は、山梨県の第一選挙区を地盤といたします赤池誠章でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会の分科会ということで、国土交通省の施策に関しまして質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、短い時間ですが、大きな四つの柱、航空分野、中心市街地の活性化、それから、既に話が何度も出ていると思いますが、建設業の問題、そして最後に観光政策について、大きな四つの柱の中で質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、航空の話をさせていただきたいと思います。

 実は私は、昨年初当選をさせていただくまで、山梨県にあります学校法人日本航空学園、昨年までは日本航空総合専門学校、ことしになりまして名前が変わりまして日本航空大学校山梨という、そういった名称の専門学校長を務めておりました。

 山梨に航空学園ということで、なぜ山梨で航空学園が、それも私学としてあるのかということをよく聞かれます。

 実は、航空学園の歴史というのは、昭和七年、一九三二年という非常に、七十四年目の歴史を持っております。歴史をひもとくと、在郷軍人会の航空研究会が母体ということで、戦前から在郷軍人の皆さんが、言ってみれば民間の方々が中心になって航空研究会を組織して、その中から、現在所沢に発祥記念館、管制官の拠点がございますが、当時は基地、空港があって、そこから飛行機を払い下げをもらって、双発のいわゆるプロペラ、当然複葉機ですね、その分解から教育が始まったという歴史を持っております。

 いろいろ調べてみますと、戦前はまさに航空というものが独立国家としての一つの柱だったんですね。さらに、子供たちにとってもそして若者にとっても、今も航空分野というのはあこがれの部分があるんですが、我々が今考える以上に、戦前というのは本当に花形であり柱であったということで聞いております。

 そして、各地の旧制中学、今のナンバースクールと呼ばれている戦前から続く古い高等学校には必ず部活動として航空研究会とか航空部があって、滑走路があるわけじゃありませんから、いわゆる初級グライダー、プライマリーと呼ばれておりますが、言ってみれば、手で引っ張ったり、ロープを引っ張ったり、パチンコのようにゴムで飛ばして、聞きますと本当にたかだか一メートル、二メートル程度のものであったとしても、我々が考える以上に航空というのは本当に身近な存在であり、国もまた民間も、日本が世界に伍していくために航空というのが大事だ、そんなことが官民一体となって進んでいった。そんな時代背景の中で、山梨が独自だというよりも、全国各地でそういった形で生まれた中で、たまたま山梨が現在まで残っていたということではないのかなというふうに聞いております。

 その中で、聞きましたら、当時は逓信省所属ということの中で、半官半民で全国から二千名の航空整備士を既に戦前から養成をしていた。残念ながら、御案内のとおり、昭和二十年、敗戦と同時にGHQが占領し、そして航空学園の機材も一切接収をされて燃やされて、当時の校長、現理事長のおじいさんに当たられる方は戦犯容疑で逮捕される。そんな時代の中で、戦後十五年間航空学園ができずに、昭和三十五年から再び私立学校として、高校からスタートしたんですが、航空従事者の養成、特に整備士養成ということで、高校と専門学校、山梨だけではなくて、北海道にも千歳、白老と専門学校をつくり、さらに、平成十五年からは、石川県能登半島の能登空港沿いに、日本航空第二高等学校、航空大学校、そんな形で広がっていったということでございます。

 そんなところで私も仕事をさせていただいておりまして、改めて、現状から将来に向かって、これからの日本の航空分野というのを、戦前とはまた時代背景は違うにしても、国の独立の基礎、柱としてきちっと位置づけていくということが今後の日本の発展にとっても必要ではないかというふうに思っております。そういう面で、国土交通省、当然航空局というものが、現在一部局とはいいながら、ぜひ精いっぱい頑張っていただきたいというふうに思いますし、私も一生懸命支援、努力をさせていただきたいというふうに思っております。

 そんな認識の中で、現在、私も国土交通委員会の中でさまざまな議論、審議の中に加わらせていただいているんですが、御案内のとおり、これは航空分野に限らず、団塊の世代が大量に定年退官を迎える中で、大量に技術者が退職をする、そして航空界も新しい需要というものが相当ふえてくるというふうにも言われております。

 まず、そのような現状を国土交通省としてどういうふうに把握なさっているか、ぜひお聞かせください。

岩崎政府参考人 先生に航空整備教育の歴史を教えていただきまして、ありがとうございました。

 航空会社の整備部門、これは大変重要だと我々は思っております。今、エアラインの航空整備士は、大体五千三百人ぐらいの方が資格を持っておられますけれども、特に今後十年間の間で三〇%ぐらいに当たる方が退職年齢に達せられるということで、それとあわせまして、これはもう先生御案内のとおり、羽田空港再拡張の工事も進められておりまして、そういう意味で、航空需要の拡大も考えております。そういう意味で、整備士の必要性というのは一層拡大するものでございまして、その育成というのは重要な課題だ、このように認識しているところでございます。

赤池分科員 事前にいろいろ打ち合わせをさせていただく中で、具体的に数量的な把握というのは国土交通省としてはなさっていないということでありますが、その必要性というのは、今局長が御指摘になったように大事だということでお伺いをしているところです。

 その辺の具体的に、不足をするということがもう、それも大量にという形で、当然航空会社としても、定年の延長であったり再雇用であったりさまざまな対策をとるというのは、もちろん航空会社にとっては死活問題につながるわけでありますから。その一方で、国の指導また支援というのはどのような形でなされているか、お聞かせください。

岩崎政府参考人 先ほども申しましたように、整備士の方が不足していくという事態が予想されます。

 今先生おっしゃいました、定年を迎えた航空整備士の再雇用を図っていくというのが一つの柱でございます。もう一つの柱は、やはり新規の方をどんどん育成していくということでございまして、そのためには、特に整備の部門では、航空技術に関する専門学校等の教育機関、こういうもので充実していただくのが重要だろうと思っております。

 少し細かくなりますけれども、一つは、今、専門学校、指定養成施設、全国で四校ございますけれども、この四校で指定養成施設を卒業された人に与えられる資格は、大型機の整備の資格ではなくて二等航空整備士、小型機の整備の資格でございます。そのために、卒業されても、エアラインに就職されても直ちに戦力にならない。エアラインに就職された後OJTで、働きながら次の一等航空整備士の資格を取るのに時間がかかりますので、大型機の資格を航空養成施設で取ることができないかというのが一つの課題だろうと思っております。

 もう一つの課題は、航空養成施設の数が四校でございますので、そのすそ野を広げていけないか、このように思っておりまして、昨年度からそうしたことを中心に関係の方々と私どもで勉強会をやりまして、そういう方向で頑張っていこうということで一つの方向を出したところでございまして、この具体化に向けてこれから作業をしていきたい、このように思っているところでございます。

赤池分科員 先ほど、五千三百人で三〇%の中で四校という、そういう面では非常に少ないということで、現指定養成施設の充実、さらに拡大ということを協議しながら当然進めていっていただきたいというふうに思っております。

 そういう面では、私もかかわっておりましたけれども、機材とか特に大型機になれば大変、大臣は以前、日本航空第二高等学校、石川県能登空港沿いに見学に来ていただいたということは聞いておるんですけれども、YS11を三機とか、私学、民間としては相当の負担があるわけですね。それは私学で、自分たちがやるので当然その部分はやらなきゃいけない反面、さまざまな、人材の問題とかノウハウとかという形で、指定養成というのは本来、国の指定という形の中で国ができれば一番いいわけなんでしょうけれども、それができない中で教育機関と合同してやっていくということですので、ぜひそういった安全の確保。

 それから、先ほど冒頭、歴史もひもときまして、釈迦に説法みたいな話になって恐縮だったんですが、航空分野はまさに独立国家の基盤として、より一層の国土交通省の支援、指導を指定養成施設にもお願いしたいというふうに思っています。

 そして、私が教育でかかわらせていただいたときに、技術教育というのはどこの指定養成施設も当然やっていたと思うんですが、その一方で、実は、安全は規律から生まれるというのが、昭和七年から、日本航空学園ができて、一つの考え方がずっと今でもつながっていくんですね。そういう面では、戦前の教育のいい部分が現在にも残っているのではないかというような気がしておりまして、技術教育はもちろんやっていく。そのために、指定養成施設として国土交通省が指導していくというのは当然なんですが、その一方で、やはりやるのはすべて人間です。その人間をどう鍛えていくかという人格教育、人間教育、規律教育みたいなものを、私がかかわっていた日本航空学園は本当に一生懸命というか、正課の中に入れてカリキュラムとしてやっておりますし、現在もやっているわけなんです。

 そういう面では、ちょっと事前に打ち合わせさせていただいて、指定養成のカリキュラムの中にそういった人格教育みたいな部分は入れられませんかと言ったら、これはなかなか評価としては難しいということはお聞かせいただいてはいるんです。

 これは、航空機の安全、運輸の安全、生命に直結する問題でもありますし、技術教育はもちろんなんですけれども、その一方で、人間がやる以上、人格教育、道徳教育、規律教育みたいなものも、これは文科省だとか各学校にお任せすればいいというのは当然なんですが、残念ながら現状、それだけでは十分とは言えないという現実もございますので、ぜひその辺、国土交通省としても、航空局としても、研究、検討をしていただければなというふうに思います。局長、いかがでしょうか。

岩崎政府参考人 私も整備の現場を何回か見せていただきましたけれども、確かに技術も大事でございますけれども、整備はどうしても、先生おっしゃるとおり人がやっておりまして、その人が手抜きをするか聞き違うかによって随分違ってくるんだろう、このように思っております。

 この間の航空のいろいろなトラブルを見ましても、やはりヒューマンにかかわる部分がかなり多うございますので、そういう安全とヒューマンのかかわり合い、こういうことについて、やはり教育レベルからちゃんとやっていくことが重要だろうと思っております。

 具体的なカリキュラムでどう生かせるか、現在知見を持ち合わせておりませんけれども、勉強させていただきたいと思います。

赤池分科員 ありがとうございました。

 それでは、航空分野は終わりまして、続きまして、中心市街地の活性化についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私の選挙区は山梨県甲府市、県都を中心とする甲府市でございます。御案内のとおり、来年はNHKの大河ドラマ「風林火山」ということで、山本勘助がメーンとなって取り上げられるということもありますし、ちょうどJR東日本も、デスティネーションキャンペーンということで、あわせてやっていただけるということで、そういう面では非常にありがたいというふうにも思っております。

 山梨の甲府、私の生まれ育った町なんですけれども、歴史をまた勉強しているとなかなかおもしろいなと思うのは、江戸時代は甲州勤番と呼ばれる直轄地として、歌舞伎の小屋が建っておりました。江戸の歌舞伎の給料定めは甲府の町からというぐらいに、江戸歌舞伎、初代市川団十郎さんなんかは山梨県出身ということもありまして、まずは甲府でやって、それが全国の相場になって歌舞伎が全国行脚していったということで、相当文化レベルが高かった、経済レベルも高かった。

 明治時代は養蚕、生糸ですね。そういった、長野、岐阜、三大拠点として相当文化力も経済力もあったということなんですが、残念ながら戦後、高度経済成長の中で、東京に、大都市圏に人材が流出して衰退をした中で、逆に中央自動車道ができて、ハイテク型の工業が立地をして、内陸型工業地帯として、また地場産業も、ジュエリー、全国の宝飾業の三分の一は実は甲府の町でつくっているという、ほとんどこれは余り知られていない話なんですが、特色のある地場産業もあるんです。

 残念ながら、バブル崩壊以降、地価下落率日本一なんというありがたくない数字が躍るという状況の中で、全国の地方都市すべて当てはまる部分だと思うんですが、まさに中心市街地活性化というのが大きなメーンテーマになっていて、今回、国土交通省、大臣が中心になっていただいて、都市計画法の改正という、これは地元に話をすると、すばらしいという面と遅かったという話もあるんですけれども、それでも、きちっとやったということで評価が高い中で、その次の問題ということで、現在自民党の中でも、地域の公共交通機関をどう充実させるかということで、部会を中心に議論をしているところでもございます。

 そういう面で、地方都市はすべて車社会の中で、地方公共交通機関をどう充実させるかというのは、超高齢化社会の中であったり、またバリアフリーとかいろいろな中で大事なことだというふうに思っておりますので、その辺の国土交通省としての支援策をお聞かせいただきたいと思います。

柴田(高)政府参考人 中心市街地の活性化の関係につきましては、委員の方から御指摘いただきましたように、今国会におきまして都市計画法の改正及び中心市街地活性化法の改正につきまして二法を成立させていただきまして、まことにありがとうございました。我々といたしましては、中心市街地活性化のための枠組みをつくっていただいたものというぐあいに考えておりまして、大変感謝を申し上げております。

 この中心市街地活性化のためには、現実的には、都心部にさまざまな都市機能をコンパクトに集積した快適で歩きやすいまちづくりを実現するとともに、中心市街地への良好なアクセスを確保することが必要であるというぐあいに考えております。自動車に過度に依存することなく、多くの人々にとって利用しやすい公共交通機関の整備というのが重要であるというぐあいに考えております。

 中でもLRTにつきましては、次世代型の路面電車として、従来の路面電車の車両、走行環境等を大幅に改善した機能的で新しい都市内公共交通システムでございまして、上下移動なしで乗降できることから、高齢者や障害者にも優しく、事業費も比較的低廉といった特徴を有しております。

 一方で、LRTの整備に当たりましては、道路空間の再整備が必要となることや、採算性の確保、地域住民を初めとした関係者間の合意形成が課題となっております。

 このため、国土交通省では、計画の策定段階から事業の実施までさまざまな支援を行ってきたところでございますが、昨年度、平成十七年度から新たに、関係部局が各種補助事業を一括採択するなど、総合的な支援を行いますLRT総合整備事業を創設いたしたところであります。

 ところで、LRTの実際の運行状況について申し上げますと、本年四月に、富山市で我が国初の本格的なLRTが運行開始をされました。これは大臣も私も視察をさせていただいたところでございますが、多くの市民の皆様に御利用されておりまして、大変好評を博しておるところでございます。今後とも、LRTなどの都市内公共交通機関の整備推進に向けまして、国土交通省が一丸となって積極的に取り組んでまいる所存でございます。

 また、現在、社会資本整備審議会の中でも、公共交通機関、都市交通のあり方について御審議をいただいているところでございまして、これらの結果を踏まえまして適切な対応をしてまいりたいというぐあいに考えております。

赤池分科員 国土交通委員会の中でも富山の市長さんにも来ていただいて、あのときは話がそこまでいかなかったとは思うのですが、実は、私の選挙区に帰っても、そういった話をすると、先ほど甲府の歴史も若干お話しさせていただいたのですが、城下町というのは御案内のとおり、空襲に遭って七、八割方甲府の町も焼けたのですが、なかなか道路が、最初から計画はあったのですが、やはりどこの地域もそうなんですが、道路幅がメーンでも大きくない。ちょっと入ると、いわゆる城下町特有のかぎ形になったような道があって、先日もそんな話を地元でさせていただくと、それは無理だと。

 つまり、道幅が狭くて車が通れなくなるじゃないかという、言ってみれば、感覚としては確かにいいかもしれないけれども、実際、自分の町に当てはめたときに、なかなかそういうのは道幅も狭くて難しいじゃないかというような、どうしてもそういう、いいのはわかるけれども、具体的に町に落としてくることは最初から無理じゃないかというような、ちょっと否定的な声も出ている。そういう面では、先ほど局長の方で、総合策定事業ということで、計画段階、調査という形で、すべての町に全部LRTがいいとは思わずに、当然バスもあり、さまざまな手法があると思うのですね。

 ですから、地元のことは、住民であり基礎自治体であり、県がそういった指導するというのはもちろんなんですが、本当にこれからの地方公共交通機関の充実といったときに、特に、なかなか今までの発想ではない、路面電車というと昔ながらのああいった発想しかない中で、そういうことに関して相当専門的な知見、それもわかりやすく御指導いただかないと、我々も一生懸命、地元に帰りながら啓発させていただいたり、いろいろ勉強しようということでこれから呼びかけたいと思っているのですが、そういった最初の感覚というのはなかなか難しい部分があって、従来の感覚からなかなか抜け切れない部分があるので、ぜひその辺、調査研究もそうですし、地域公共交通機関をどうしていくかということを、専門家派遣も含めて積極的にきめ細かく御指導をいただきたいと思っておりますので、ぜひお願いをいたします。

 時間が本当になくなってきて申しわけないのですが、三つ目に関しましてはいろいろなところで話が出ていると思うのですが、実は、私も本当に前からよく知っております建設業の方が、ある建設の一つの協会の会長をなさっていたのです。六月というのは御案内のとおり総会シーズンでして、先日、協会の総会があって、総会を終えられた次の日に、新聞に取引停止、いわゆる倒産というのが出て、その方の話を聞くと、とにかく会長としての責任を総会までは全うして、次の日に自分の会社をつぶしてしまったなんという、そんな身近な事例がございました。

 そういう面では、地場産業そして地域にとって、国も、景気対策のときに相当、公共事業を中心にして、建設業の方々にお願いをするということもあったと思います。しかし、残念ながら現在、財政難、公共事業の削減というのは当然私もよくわかっているんですけれども、本当に地域で頑張っていらっしゃって、いいかげんな方が市場から退場するというのは資本主義の原理とはいいながらも、まじめに地域のために頑張ってこられた方がこの時世の中でやむにやまれずそういった目に遭われるということも、本当につらいなというふうに思っております。

 そういう面では、これは当然国土交通省一省の問題ではないのですが、やはり国全体として、地域に根差した地場産業でもあり基盤でもある建設業をどう振興していくかということに力を尽くしていただきたいと思いますし、その辺の対策をお聞かせ願いたいと思います。

大森政府参考人 先生今御指摘なさったように、地域の中小建設業は、社会資本整備の担い手であるだけでなく、基幹産業として多くの就業機会を提供するなど、地域の経済社会の発展に欠かすことのできない役割を持っているというふうに認識をしております。

 また、これも先生から御指摘ありましたが、建設投資の額は、十八年度の見通しで、平成四年のピーク時八十四兆円に比べまして、約六割、五十二・九兆円になるなど、急激な減少になっておりまして、そういう意味では、建設業は過剰供給構造ということになっております。特に、公共事業への依存度の高い地域の中小建設業は厳しい経営環境にさらされているという認識も持っているところでございます。

 このため、国土交通省としては、中小建設業者などの経営の効率化また合理化等、経営革新の取り組みを促進するとか、また、入札契約制度の改革によって公正な市場環境を確保していくことを通じて、技術と経営にすぐれた企業が伸びる環境整備というものを進めているところでございます。

 なお、中小企業の受注機会の確保につきましても、官公需法に基づく契約目標の設定とともに、コスト縮減等の要請を踏まえながら、可能な限り分離発注、分割発注等を行いまして、受注機会の確保に努める等の施策を行っております。

赤池分科員 経営ですから自助努力が第一というのはもちろんなんですけれども、政策的な手段そして政策的な一環として、言ってみればパートナーという部分もあるわけでございますので、ぜひ引き続き格段の御支援と御指導をお願いしたいというふうに思います。

 時間がだんだんなくなってきましたので最後の問題に行きたいのですが、観光についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 小泉内閣のさまざまな成果の中で、私は、観光政策を国の重要政策に位置づけた、言ってみれば歴代初の内閣ではないかと思っております。山梨というのは、御案内のとおり観光というのが一つの産業の柱にもなっておりますが、そういう面で、ビジット・ジャパンというような政策に取り組んでいただいたということは、日本の政治の歴史でも画期的なことであり、高く評価をさせていただいているところでございます。

 そんな中で、一千万人ということを目標に掲げておやりになっていらっしゃるということも当然よく承知をしておりますが、観光の意義と、それから、具体的には観光ルネサンス事業ということで取り組まれていて、それも、ソフト、プラスまちづくり交付金というハードということで、これも組み合わせとして非常に、それも民間主導でやっていただくということで、すばらしい成果のある政策ではないかと評価をしております。

 ただし、残念ながら、昨年から始まって今年度ということなんですが、予算が昨年度より今年度ふえているというのは聞いているんですが、私の選挙区の市町村でもやりたいという声があったんですが、非常に競争率が高いということもあります。

 よく見てみると、もともと既に成果が出ている観光地の方が、これ幸いとばかりに手を挙げてとっている場合がともすると多いのじゃないか。そういう面では、この政策がなくてももともと伸びていたところを逆に政策として伸ばしていて、本当にこれからやらなきゃいけないところはまだまだまごついている状況というのが現実ではないかというふうに思っておりまして、その辺のこれからの観光振興の政策について、ぜひお聞かせ願いたいと思います。

柴田(耕)政府参考人 お答え申し上げます。

 観光立国政策につきましては、地域経済に与える影響、また、地域の方々が地域の魅力を発掘する、また、地域の歴史や文化に対する理解を深めるという意味で大変大きな役割を担っているというふうに考えております。

 そうした意味で、私どもとしては、日本及び各地域の情報発信というものを極めて重要視するとともに、あわせまして、美しい観光地づくり、国際競争力のある観光地づくりということで、観光ルネサンス事業といったことを進めております。

 また、先ほど先生からも御指摘ございました、まちづくり交付金というような形で、地方公共団体がする事業との連携をとりながら進めているということでございます。

 また、先生先ほど御指摘がございましたけれども、観光ルネサンス事業の対象でございますが、こういうものの選定に当たりましては第三者委員会の審査を受けるというようなこともやってございますが、地域地域によって、意欲は持ちながらも、まだまだどうしたらいいかよくわからない、どういうところとコミュニケーションし、どういうところの協力を得ればいいルネサンス事業という形の案に仕上がるかというようなことについて悩んでおられる地域がございます。

 そういうこともございまして、私ども、これまでも、観光カリスマの方々、地域で観光にかなり成功しておられる方々、こういう方々に御参加いただきまして観光カリスマ塾というのを開催いたしましたり、また新しく、ことしの五月でございますが、報告書をまとめまして、地域の方々と旅行業者または運輸関係の事業者、こういうものをミックスいたしまして、まちづくりコンサルティング事業、こういったものも進めようとしております。

 したがいまして、そういう形において、いろいろな方々にいろいろなノウハウを提供し、また意欲ある方々の活動を支援できるような体制を組んできておりますので、そういう中で、いろいろなところの意欲というものを十分に生かしていけるように対応していきたいというふうに考えてございます。

赤池分科員 時間が参りました。

 観光ルネサンス事業は市町村の計画が前提になるということで、私もちょっと地元でいろいろ聞きますと、合併があってまだそこまでなかなか行き着いていない合併市町村があったりということもございますので、そういう面では、民間が幾ら頑張っても、市町村の計画が前提にあるということでありましたら、その辺もぜひ、地方の運輸局中心に市町村、当然市町村がやる気がないと仕方のない話なんですが、ぜひそういった、やる気があるけれどもわからない市町村、そして民間の方を引き続き御指導賜りたいというふうに思います。

 きょうは、航空分野、それから中心市街地の活性化、地域公共交通の話、それから建設業、そして観光ということで御質問させていただきました。引き続き私も、国土交通委員会のメンバーでございますので、一生懸命地域のために頑張らせていただきたいと思います。

 御清聴本当にありがとうございました。

柴山主査代理 これにて赤池誠章君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)分科員 公明党の伊藤渉でございます。

 本日は、モーダルシフト、この問題について、特に鉄道貨物輸送という観点から何点かお伺いをしていきたいと思います。

 モーダルシフト、この言葉が使われてから久しいわけでございます。最近では、京都議定書によるCO2の削減の目標、この達成のためにもモーダルシフトが一層意識されている、そのように認識をしております。トラック事業から内航海運、鉄道貨物事業へのシフト、まず初めに、このモーダルシフト化はどうなっているのか、その輸送実績、モーダルシフト化率についてお伺いをします。

 また、あわせて、このモーダルシフトですけれども、政府が主導をしておりますけれども、なかなか進んでいないといった印象も持っております。その上で、モーダルシフトが進まない原因の分析、どのようにお考えか、また国土交通省としてどのような対策を今後講じていこうとお考えか、この点についてお伺いをいたします。

杉山政府参考人 モーダルシフトについてのお尋ねがございました。

 モーダルシフトの現状、課題、それから今後の対応ということでございます。

 まず、現状でございますが、先生御指摘ございましたように、昨年、京都議定書が発効いたしまして、政府全体で今CO2排出削減に取り組んでいるところでございますが、運輸部門におきまするCO2の排出量は、京都議定書目標達成計画に基づく排出抑制の目標値を大きく上回っている状況でございます。したがいまして、地球温暖化対策の一層の充実強化が必要となっているということでございます。

 国土交通省では、物流分野での地球温暖化対策につきまして大変重要な問題と認識しておりまして、まさにお話がございましたように、モーダルシフトを初めといたしまして、さまざまなCO2排出削減対策に取り組みをしているところでございます。

 先生御承知のとおりでございますが、トンキロ当たりのCO2の排出量をモードごとに比較いたしますと、鉄道はトラックの八分の一、それから内航海運は四分の一となっておりまして、モーダルシフトは、環境対策や省エネルギー対策として極めて有効であると考えている次第でございます。

 しかしながら、モーダルシフト化率、これは輸送距離五百キロメートル以上の雑貨輸送のうち鉄道、海運の輸送量の占める比率でございますが、このモーダルシフト化率につきましては、算定対象となる輸送距離五百キロメートル以上の雑貨輸送の最近の実績を見ますと、鉄道、海運による輸送量は増加しているわけでございますが、実は、それ以上にトラックの輸送量が増加しているということから、モーダルシフト化率という率で換算いたしますと、平成十四年度で三二・一%ということで、低下傾向にあるわけでございます。

 この原因でございますが、やはりトラック輸送の増加ということが非常に顕著でございますが、これは、荷主側のニーズが高度化している。例えば、多頻度小口輸送の増加、あるいはジャスト・イン・タイムの要請、さらにはインターネット販売でございますとか通信販売などに見られるように、消費者物流の増加といった、大変小まめで、また在庫をできるだけ持たないというような、荷主さんの物流をめぐる状況の変化が挙げられるわけでございます。

 このような物流の状況の変化に対応いたしましてさらにモーダルシフトを促進していくためには、機動性や利便性にすぐれているトラックによる一貫輸送に比べまして、いかにサービス水準、例えば、リードタイムでございますとかコスト、輸送品質、輸送の安全性等を低下させないで鉄道や内航海運への転換を図っていくかということが大きな課題であると思っておる次第でございます。

 対策でございますが、このような課題に対応いたしまして、モーダルシフトを含む環境負荷の小さい物流体系を構築していくためには、まずは物流事業者みずからが努力をしていただく必要があるわけでございますが、なかなかその単独の取り組みでは限界がございます。したがいまして、荷主企業と物流事業者が相互に知恵を出し合いまして、連携して取り組むということが大変重要になっていると認識しております。

 このため、国土交通省といたしましては、昨年四月でございますが、物流関係団体や経済産業省とともにグリーン物流パートナーシップ会議というものを設置いたしまして、ともに両者が連携をしてCO2排出削減に取り組んでいこうということで、補助事業等を今行っているところでございます。

 ちなみに、平成十七年度の取り組みといたしましては、モデル事業といたしまして二十一件を補助対象としたわけでございますが、このうち鉄道へのモーダルシフトが四件、海運へのモーダルシフトが四件ということで、一生懸命このモーダルシフトに対する支援というものをやっているところでございます。

 さらに、十八年度におきましては、経済産業省と連携いたしまして、この補助金の枠を昨年度の八億円から約五倍の四十億円に拡充をいたしまして、先進性のある取り組みとしてのモデル事業、あるいはすそ野を拡大するための普及事業に対しまして引き続き支援をすることといたしております。既に五十件の事業を推進決定いたしておりますが、このうち鉄道へのモーダルシフトが十二件、海運へのモーダルシフトが八件ということで、一層のモーダルシフト化を支援しているという状況にあるわけでございます。

 この十八年度につきましては、さらに現在、二次募集を行っております。したがいまして、事業者の皆様にさらに多くの提案をいただくことを期待している次第でございます。

 今後は、こうした取り組みを進めるとともに、グリーン物流推進のためのマーク、スローガンなどを活用しながらPR活動に力を入れまして、より多くの皆様の理解をいただきながら、モーダルシフトの促進も含めまして、グリーン物流の取り組みのさらなるすそ野の拡大を図ってまいりたいと思っている次第でございます。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございます。

 るる御説明いただいたとおり、さまざまな施策は打ちつつも、なかなかモーダルシフトが進んでいかないというような状況を認識させていただきました。

 次に、世の中のニーズとして、トラック輸送、これがどうしても主流になっているということは私も理解をしますけれども、デメリットの方も目立ってきているのではないかなと思います。当然、環境に対する配慮もさることながら、交通渋滞や交通事故などもやはりトラック輸送にはつきものであると思います。

 そんなところで基本的なデータをお伺いしますけれども、交通事故に占めるトラックの件数等を御教示いただきたいと思います。

宿利政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年の事故でございますが、全交通事故件数が九十三万三千八百二十八件でございました。このうち、自家用トラックによります事故が十四万一千七百三十件、一五・二%であります。それから、営業用トラックの事故件数が三万六千七百八十二件、三・九%ということでありまして、合計いたしますと十七万八千五百十二件、全体の一九・一%がトラックによる交通事故でございます。

伊藤(渉)分科員 約五分の一がトラックによる事故ということで、それをもって一概にトラック輸送に問題があるということを言うつもりはございませんけれども、そういったリスクもはらんだ輸送形態であるというふうに考えます。

 トラックによる重大な事件、我々の記憶にも新しいさまざまな事故があるわけでございます。七年前、一九九九年十一月に発生をしました、飲酒運転のトラックが普通乗用車に衝突をして幼い姉妹が亡くなられました、いわゆる東名高速飲酒運転事故でございます。この痛ましい事故がきっかけとなって、二〇〇一年六月には道交法が改正をされて、十一月には刑法改正法案が全会一致で国会を通過しております。最高刑を十五年として、危険運転致死傷罪が刑法に新設される契機にもなっております。

 また、本年四月には、山陽自動車道で、これもやはり飲酒起因の事故を起こした運転手が勤務する鹿児島県日置市内の運送会社について、職務についている運転手の飲酒を黙認した疑いがあるとして、兵庫県警が家宅捜索を実施しております。事故を起こした男性は、以前からも仮眠をとるためにしょうちゅうやビールを飲んでいたなどと供述をされているわけで、この方の飲酒が常態化し、このことを会社側も黙認していたという、こんな事件も起こっております。

 トラック輸送は、運転手の方々の過酷な勤務状況で、ぎりぎりのところで支えられているのではないかという懸念も私は持っております。トラック貨物にももちろんメリットはたくさんありますけれども、その分環境への負荷がかかる。あるいは、コストが安いといいましても、そうした過酷な賃下げあるいは過酷な労働に支えられているという現状があるのではないかなと思います。

 殊に、昨今の原油高一つとりましても、モーダルシフトが我が国にもたらす環境への影響、経済的な影響を初め、よい意味での影響ははかり知れないわけでございまして、今後とも、引き続きこのモーダルシフトを進行させていかなければならないことは論をまたないと考えます。

 そこで、具体的に、貨物輸送について若干お伺いをしてまいります。

 この貨物輸送、CO2の問題一つとっても、排出量がトラック輸送の八分の一、鉄道貨物輸送が特に持つ優位性は特筆すべきものがございます。環境に優しい輸送機関、省エネルギー、労働生産性が高い、安全、そして道路混雑の緩和にも寄与する、その一方で、長距離あるいは大量輸送に有利、時間に正確である等々、さまざまなメリットがあると思います。

 これをいかにトラック輸送と組み合わせていくかというようなところが腕の見せどころかなと思うわけでございますけれども、まず、我が国の物流における鉄道貨物輸送の位置づけを改めて御説明いただきたいと思います。

梅田政府参考人 鉄道貨物輸送については、先生御指摘のとおりでございまして、鉄道の特性が発揮される長距離輸送の分野、これを中心に鉄道輸送への転換を進めていく必要があるというふうに考えております。

 現実におきましても、例えば、輸送距離が一千キロ以上の鉄道の貨物輸送、これは陸上全体の貨物輸送の三割を占めておりますし、関東と北海道あるいは関東と九州、こういうような輸送を中心に、我が国の物流において極めて重要な役割を担っておりまして、こうした特性を発揮できる分野で今後ともしっかりやっていく必要があると思っております。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございます。

 この鉄道貨物輸送の大半を支えているJR貨物ですけれども、近年、五年連続で経常黒字を達成しておるようですが、その実態は、線路使用料の優遇措置あるいは税制上の恩恵をさまざま受けながら成り立っているというのが実情でございます。要するに、JR貨物の運営実態はなかなか厳しいと言わざるを得ないわけでございますが、この鉄道貨物への優遇措置の概要とその効果を改めて御説明いただきたいと思います。

梅田政府参考人 御指摘のように、鉄道貨物輸送、とりわけJR貨物を取り巻く経営環境というのは厳しいものがございます。競争がなかなか厳しいという点もございますし、災害やあるいは輸送障害などによってネットワークが時々寸断されるというような状況もございます。

 私ども、安全、安定的な輸送を確保するというのがJR貨物の今後の経営基盤の強化に資するというふうに考えておりまして、そのためのインフラの整備あるいは老朽化した機関車、貨車の更新等に対しまして、政策的な支援を行っているところでございます。

 具体的に言いますと、現在、山陽線の鉄道の貨物輸送力の増強につきまして補助をやってきております。また、税制上の支援措置といたしまして、旧国鉄からの承継資産あるいは高性能の機関車、貨車に係る固定資産税の軽減措置等の特例を講じているところでございます。

 こういう面だけではなくて、やはり消費者あるいは荷主から愛好される輸送機関でなければなりませんので、私ども、この鉄道貨物輸送に積極的に取り組む企業あるいは商品、これは一定の比率あるいは一定の数量を鉄道貨物に振り分けているようなものにつきましては、エコレールマークというものをつくりまして、荷主とも共同しながら鉄道貨物輸送への転換を図っているところでございます。

 こういう施策のせいもございますし、またJR貨物自身の営業努力あるいは要員縮減等の努力もございます、また近年の景気の回復の状況もございます。こういうようなこともございまして、最近では、平成十三年度以降五期連続で経常黒字を達成し、黒字基調が定着しつつあるところでございますが、こういうような措置の効果も寄与しているというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)分科員 本来であれば、企業でございますので、自立運営が望ましいところでございますけれども、なかなか厳しい状況がございます。引き続き、可能な限りの援護策は必要ではないかなと私は考えます。

 この貨物輸送、次は、整備新幹線に伴う並行在来線の問題、これとあわせてお伺いをしていきたいと思います。

 整備新幹線計画の進捗に伴いまして、貨物が走行するいわゆる並行在来線、これの問題があるかと私は思っております。これは整備新幹線の枠組みの中から出てきた概念ですけれども、採算がなかなか厳しい在来線のことを指しておりまして、御存じのとおりでございます。これが、いわゆるJR、特に本州三社を含めて経営分離がされている並行在来線でございます。

 この並行在来線は、その後、第三セクターに転換されることがほとんどでございまして、通学の学生や通院の高齢者を中心とした地域の足として、交通弱者の方を中心に、需要そのものが小さくなっているけれども、なくなると困るというようなものだと理解をしております。

 この並行在来線を運営している鉄道本来の役割は地域住民の足ということもありますけれども、貨物輸送という点から見ると、当然、貨物列車が走る、今までどおり線路が必要な在来線の鉄路ということにもなろうかと思います。我が国が人口減少社会に突入をしていって、地方鉄道の沿線人口は一層少なくなっていく傾向があります。ローカル輸送の需要そのものがさらに減少をしていくという中で、果たしてこの第三セクターが将来にわたって鉄路を維持していけるのかという大きな問題がございます。

 並行在来線はその地方が責任を持つという方針で、例えば採算性の極度の悪化あるいは累積赤字の増大等で廃線という経営判断がなされることも第三セクターの方で可能でございます。つまり、物流という目で見ると基盤ともなる鉄路の存在を国から切り離して第三セクターの判断に任されてしまっているというところが、貨物輸送、物流という目から見た場合に問題が少々ないかなというふうに危惧をしている一人でございます。

 日本の物流の動脈の一つである鉄道の貨物輸送のルートが第三セクターの経営判断によって分断をされてしまうという可能性が現実にもありますし、しかも、現状では国はそれに対して何も言えないというような状況はどうかなというふうに思うわけで、この点に対して、国土交通省としてどのように認識をしているか。物流という面と、整備新幹線の並行在来線の運営、このなかなか難しいところについて、ちょっとお伺いをしたいと思います。

梅田政府参考人 整備新幹線の並行在来線につきましては、JRへの過大な負担を避け、第二の国鉄をつくらないという観点から、累次の政府・与党申し合わせによりまして、新幹線開業時に、沿線の地方公共団体の同意を得て、JRから経営分離をするということにされているところでございます。

 並行在来線には、鉄道貨物ネットワークとして重要な路線が含まれているということでございます。これは、並行在来線が経営分離されるに当たりましては、平成十二年の十二月、政府・与党の申し合わせがございまして、新幹線貸付料の収入の一部を活用いたしまして、JR貨物が従来の線路使用料と実質的に同等の負担で並行在来線の上を走行できるよう、国として貨物調整措置を講じているところでございます。この措置によりまして、現実に、十四年度以降でございますが、今先生御指摘の第三セクターの旅客会社に対しまして毎年、ここ三年は大体十七、八億の使用料を払ってきているところでございます。

 鉄道貨物輸送といいますのは非常に重要な役割を果たしていると私どもも考えております。したがいまして、今後とも、JR貨物やあるいは沿線の地方公共団体等と協議しながら、貨物調整措置を活用して、必要な鉄道の貨物輸送の維持に適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)分科員 同じことについて、私も、御存じのとおりもともと旅客の方の会社におりましたので、整備新幹線のスキームというのは非常によくできているなと思いつつ、貨物会社の目から見るとなかなか厳しいなというふうに感じておりました。

 その点について、新幹線の建設のスキームを議論するときに、並行在来線の経営分離に関して貨物鉄道の輸送を考慮に入れて検討されたと思いますけれども、この中身について御説明をいただければと思います。

梅田政府参考人 整備新幹線につきましては、先ほど言いましたように、従来から政府・与党の申し合わせに基づいて整備を進めてきておりまして、並行在来線の経営分離に関しましてもその申し合わせによって決めてきているところでございます。

 これは、平成八年の政府・与党の申し合わせに当たりまして検討が行われました。その際、「鉄道貨物輸送については、並行在来線のJRからの経営分離後も適切な輸送経路及び線路使用料を確保することとし、」「関係者間で調整を図る。」旨定められたところでございます。これは、盛岡と八戸の間が完成する、そうすると、その並行在来線、青い森鉄道とかそういうのができるわけでございますけれども、そういうときに、ここの線路がちゃんと維持できるかどうかというのが目の前の問題でございました。

 これを受けまして、実は、関係事業者あるいは自治体と検討、調整が行われまして、今度は平成十二年の政府・与党の申し合わせでございますが、「JRから経営分離された並行在来線上を引き続きJR貨物が走行する場合には、線路使用実態に応じた適切な線路使用料を確保することとし、これに伴うJR貨物の受損については、必要に応じこれに係る新幹線貸付料収入の一部を活用して調整する措置を講ずる。」ということで、引き続きJR貨物が第三セクターの旅客鉄道の上を走行することができるということになったわけでございます。

 私ども、具体的にこういう検討を進めておりまして、並行在来線の第三セクターに対して、線路使用実態に応じた適切な線路使用料ということ、こういう措置をとりながら、JR貨物に負担がふえないように、また第三セクターとしても引き続きこのために経営が悪化するようなことがないように、国としても必要な貨物調整措置を講じてまいってきておりますし、今後ともそうした措置で対処してまいりたいと思っております。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございます。

 先ほどから何度も言っているように、本来であれば、企業の経営ですので、すべてを市場原理にゆだねて経営が成り立つことが望む姿ではございますけれども、今の時代状況ではなかなか厳しい面も多々あると思いますので、引き続き、そういった物流という観点から鉄道貨物の重要性を認識していただいて施策の展開をお願いしたいと思います。

 そういう意味で、最後に大臣にお伺いをいたします。

 明治以来、先人たちの努力によって営々と築かれてまいりました鉄道網、これはある意味国家の財産であると思います。そして、物流の大動脈として維持発展させることは国の責任でもあると思います。一時期の時代状況に合わせて、将来こういった鉄道輸送がまた脚光を浴びたときにそれができないような状況をつくり上げてしまうことは、やはり避けなければならないと私は考えるわけでございます。あわせて、京都議定書の議長国である我が日本が、環境問題への大きな取り組みとして、モーダルシフトの推進、その中での鉄道貨物輸送の位置づけをすべきであるとも考えます。

 北側国土交通大臣には、これらモーダルシフトに向けた取り組みの御決意について、最後に改めて御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 おっしゃいますとおり、鉄道貨物輸送のネットワークは約九千キロに及んでおりまして、特に長距離輸送を中心に、我が国の物流において極めて重要な役割を果たしているというふうに認識をしているところでございます。

 また、お話がありましたように、トラックに比べましてCO2排出量が八分の一ということでございまして、環境面でも大変すぐれているということでございます。京都議定書の目標達成計画におきましても、CO2排出の二割が運輸部門、なかんずくその二割のうちの大宗が自動車でございます。この運輸部門の総削減目標、二千四百五十万トンあるんですが、そのうちの九十万トンは鉄道貨物輸送の利用で削減するというふうに位置づけをしていただいているところでございます。

 国交省といたしましても、インフラ整備のための補助制度、さらには税制措置等各種の支援措置を講じてきたところでございます。また、本年四月に改正省エネ法が施行されまして、大手の荷主には省エネ計画の作成が義務づけをされました。鉄道貨物輸送は省エネ措置の有力な受け皿の一つというふうに考えているところでございます。

 今後とも、鉄道貨物輸送のさらなる発展に向けまして、積極的に国土交通省としても取り組みをさせていただきたいと考えております。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、少し時間がございますので、全く違うところで、独立行政法人について、今後の参考までに基本的なデータをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

 御省が所管をする独立行政法人、その数と出向されている職員数、そして、全体の職員数から見た割合、及び独立行政法人には運営費交付金というものが支給をされていると思いますけれども、御省が所管をする独法の中で、この運営費交付金が投入されている独法が幾つあって、その交付金の総額がどの程度投入されているか、また、こういった交付金というのは主にどういった費目に充当されているのか、これを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

春田政府参考人 お尋ねの件につきましてお答え申し上げます。

 国土交通省所管の独立行政法人の数は十九でございます。職員数につきましては、十九法人全体で一万一千五百六十七人ということでございまして、このうち国土交通省からの出向職員は一千八百六十一人、率にいたしますと一六%でございます。

 また、運営費交付金でございますが、全体十九法人のうち、運営費交付金を計上しておりますのは十三法人でございます。総額につきましては四百九十五億でございます。

 運営費交付金をどういう費目に充てているかということでございますが、運営費交付金というのは、いわば渡し切りの交付金ということで交付されるものでございまして、主に、各法人の人件費、一般管理費及び業務経費に充当されているというところでございます。

伊藤(渉)分科員 ありがとうございました。以上で私の質問を終わります。

柴山主査代理 これにて伊藤渉君の質疑は終了いたしました。

    〔柴山主査代理退席、主査着席〕

斉藤主査 次に、柚木道義君。

柚木分科員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、大臣初め答弁者の皆さん、一日大変御苦労さまでございます。きょう二回目の質問をさせていただきます。今回、こちらの決算行政監視委員会の方で、国土交通大臣を初めとして御答弁いただけるということで、私は、今日私たちが暮らす町というものに焦点を当てて幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まあ、一口に町といいましても、商店街で商売をされておる方であったり、コンビナートの工場で働かれている方であったり、ひょっとしたら日々治療のために病院に通われている方であったり、学校に通われている子供さんやあるいは親御さん、視点が変われば見えてくる町の姿も当然変わるわけでございます。

 そこで、今回は、そうしたおのおのの視点から、私たちの暮らす、働く、子育てをする、そういった町を、産業振興、中心市街地の活性化、あるいは地域格差の是正、防犯等々といった幾つかのテーマを設定し、地元の事例を挙げさせていただきながらお伺いをいたします。どうぞよろしくお願いをいたします。

 ところで、大臣、私の地元は岡山県の倉敷市というところなんですが、大臣はお越しになられたことがあるでしょうか、また後ほどお答えいただければと思うんですが。

 倉敷市という町は、御承知のとおり、大原美術館という観光資源に恵まれておったり、あるいは物づくりの町と言われる水島のコンビナートがあったり、日本で最初の国立公園、瀬戸内の国立公園があったり、本当に多種多様ないわゆる資源に恵まれた地域でございます。その地域において、今幾つか地元の中でも課題となっていることがございまして、そういったそれぞれの課題についての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、水島のコンビナートについてお伺いをいたします。

 国内、国外のコンビナート間の競争におきまして、流通や運送のコストを当然無視することはできません。私の地元倉敷市にある水島コンビナートでは、しゅんせつ工事を行ったり、あるいは大型のバースをつくったりすることで大型船の入港が可能なように整備を進めてはまいりましたが、船舶の大型化が進み、さらなるしゅんせつや航路整備が求められている現状にございます。

 瀬戸内海は、大臣もたしか堺が御地元でいらっしゃいますから御存じだと思いますが、確かに島が多く、所によっては流れが急であるために、大型船が運航することについては大変な困難を伴うとのことであります。しかしながら、京浜や中京や、あるいはまさに御地元の堺を含む阪神エリアといった大型の港湾はもちろんのことですが、水島港のような臨海工業地帯、幾つか全国にございますが、そういった地域のインフラ整備も、例えば、経済産業省の進める次世代コンビナート形成プロジェクトやリングプロジェクトというのもございまして、そういった取り組みに、より実効性を持たせる意味においても大変重要になってくると思います。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、これからの、そういう内海である瀬戸内海、あるいは私の地元は水島港があるわけですが、そういった地域における航路、港湾整備に対する政府の御見解をお答えいただきたいと思います。

北側国務大臣 倉敷はいいところですね。私、友人が倉敷におりまして、若いころに何度か、最近ちょっと行っておらない、行く時間がないんですけれども、非常にきれいな町だという印象を持っております。

 今委員がおっしゃったように、瀬戸内海は、本当に歴史的に古くから、古代から我が国の海上物流を支えてきた重要な海域であるというふうに認識をしております。

 委員の御地元の水島港においては、背後に水島コンビナートを抱えておるわけでございますが、平成十五年の四月に特定重要港湾に指定をされております。取扱貨物量ランキングでは第四位ということで、横浜港に次ぐ貨物量を取り扱っている我が国有数の物流の拠点であるというふうに認識をしているところでございます。

 船が本当に大型化している中で水深を確保していかないといけないということで、船舶の航行を確保するための航路の保全、水深の維持のしゅんせつ工事、また、水島港では、増大する外貿コンテナ貨物に対応した航路整備、これは玉島地区でしょうか、を進めるなど、物流機能の強化を図っているところでございます。

 これは水島港だけではございませんけれども、我が国の物流を維持強化していくということは、私は、これはもう喫緊の課題であるというふうに認識をしておりまして、私はいつも、物づくりと物流基盤の構築というのは車の両輪だ、我が国産業を発展させていくための大切な車の両輪であると。物流基盤ができていないと背後地の物づくりまで空洞化していくというふうに私は思います。これだけ国際競争が激しいときに、物流が効率化され、コスト面でも、それから時間面でも短縮できるようなことにしていかないと、どんどん海外に置いていかれるわけでございまして、私は、我が国の国際競争力を維持強化していくためにも、物流基盤の構築というのは急がれているというふうに考えております。

柚木分科員 今、本当にそういう整備の重要性について御認識をいただけているというふうに私も理解をさせていただきましたが、当然そういうハード、インフラの整備等含めて、港湾機能というか、使い勝手がいいという形もあわせて機能強化をお願いさせていただいて、次の質問に入りたいと思います。

 冒頭申し上げましたように、倉敷、中心市街地、大原美術館を擁する観光地でもあります。そういった倉敷ではありますが、全国のいろいろな駅前の中心地の空洞化の例に漏れず、大型の百貨店が駅前にあったものが撤収をしたり、商店街の空洞化など、実はさまざまな問題を抱えております。

 そこで、中心市街地の活性化施策について幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 地元の例ばかりで恐縮ですが、倉敷市は、観光資源以外に実は大きな病院、医療機関ですが、たくさんある、集積をしている地域でございます。私の記憶間違いでなければ、大阪、関西より西で病床数千床を超える病院は、たしか私の地元の倉敷中央病院、川崎医大、この二つだったんじゃないかと思います。医療圏としてはそれぐらい大変なインフラが整備されているんです。中四国から大変患者さんも集まる状況があります。

 一方、先ほど申し上げたような駅前の空洞化が進む中で、逆に郊外の大型商業施設に多くの人たちが買い物に行かれる。もちろん、郊外に市街地が発展していく過程で郊外店ができて便利になることは一つのあり方だと思いますが、今回、国交省といたしましてまちづくり三法の改正に当たって、人口減少社会あるいは超高齢社会への適応、中心市街地空洞化の問題解消に向けて、例えば車で移動されないようなお年寄りの方であっても安心して、そして便利で高機能、あるいは多機能型のまちづくりということで議論が進められたものと承知をしております。

 今医療のことを申し上げたわけですが、こういう医療圏が充実した地域というのはたくさんあると思うんですが、この倉敷駅前周辺の中心市街地活性化の基本計画作成の中でということになろうかと思いますが、例えばそういう医療や福祉をテーマにしたいわゆるコンパクトシティー構想というものがもしできれば、これからの高齢社会に一つのモデルケースとなり得るのかなというふうに思っております。

 市といたしましても中心部の容積率の緩和等で大規模病院の建設を後押ししている部分はあるんですが、私、常任委員会は厚生労働なものですから、厚労省と自治体が進める地域医療計画とリンクする形で、今三法の改正、コンパクトシティーを進められている中で、国交省として、そういう施策を、連携というかあるいは後押しをするというか、そういうスキームというのが考えられないのかということを、現段階で答えられる範囲で結構ですから、お答えいただければと思います。

北側国務大臣 これから人口減少また本格的な高齢社会が到来する中で、高齢者の方々が居住している生活空間の中でほぼ必要な機能は備わっている、そういうまちづくりをやはりこれからは志向していかないといけない、過度に車に依存する社会にしてはいけないと考えております。そういう意味で、コンパクトシティー、歩いて暮らせるまちづくりというふうに私ども呼ばせていただいているわけでございます。

 そうしたさまざまな都市機能が集積されないといけないんですが、やはり必要不可欠な機能として、今おっしゃった医療、福祉、さらにはもう少し幅広く健康と言ってもいいかもしれません。そうした都市の機能を中心市街地もしくはその隣接するところで担えるようなまちづくりをしていかねばならないというふうに私も考えております。

 平成十八年度予算で暮らし・にぎわい再生事業というものを創設させていただきまして、基本計画の認定を受けた中心市街地におきましては、公共公益施設を含む建物の建てかえや新規の立地、また空きビルの改修等を支援する、こういう制度も創設をさせていただいたところでございます。中心市街地活性化への基本計画の認定は内閣総理大臣が認定することになっておりまして、縦割りではなくて、今おっしゃったように関係各省、厚生労働省も含めまして、しっかり連携をとってこうした基本計画の認定をしていこうという制度として今回見直しをさせていただいたところでございます。

柚木分科員 今、省庁間の連携等もお触れいただいたと思うんですが、若干、もう少し踏み込んでお尋ねをさせていただきたいんです。

 地域における中心市街地活性化協議会というものが、いろいろな市民団体等に入ってきていただいて、これまでのTMOにかわる位置づけで、ある程度その基本計画策定の中に関与していく。これは自治体がその計画主体であるとは思いますが、やはり地元の、地域の現場で、今大臣がおっしゃっていただいたようなさまざまな、例えばまちづくり団体、医療関係者、あるいは子育てや高齢者のいろいろなボランティア、NPOのグループの皆さんが協議会の中にちゃんと入って、そしてTMOにかわる形である今回の新しい協議会という形の基本計画策定の流れになっていかないと、今御答弁いただいたような形に、そうはいっても地域でそれが実現化していくかどうかというのは、私は実はまだまだこれは疑問があるというふうに正直申し上げたいと思います。

 そういった中で、協議会の位置づけ、どういうふうな形で今申し上げたような市民やNPO、あるいは企業であったりいろいろな団体が入ってきていただくのかというのを具体的に今回の法案の中でお触れいただいている部分があれば、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 シャッター通りという言葉に代表されるように、中心市街地が閑散としている地域が全国にたくさんあるんですよね。今、さまざま各地域でまちづくり、中心市街地を活性化しようという動きが、私は相当出てきているんじゃないかと思っております。

 そういうところの成功例を見ますと、一つ共通しているところがあると思っておるんですが、それは、主体となっているのは地元の方々なんですね。こういうまちづくりというのは、もちろん行政がしっかり頑張らないといけないんですが、地元の市町村が頑張らないといけないんですが、地元の市町村が幾ら笛吹こうが、これはやはり地元の方々、そこにお住まいの方々、商売をされている方々、地権者の方々、そういう方々がその気になっていただかないと、意欲を持ってやろうというふうに、また結集をしていただかないと、成功はなかなかしないと思うんです。行政主導ではなかなかいかないと思います。

 むしろ、まず、地元の方々のそういう強い意思と、時間も労力もかけよう、場合によってはお金も出そう、こういう主体的な動きがあって、それを行政がさまざまな制度を使ってサポートしていく、応援をしていくということでないと、なかなか中心市街地の活性化といっても、おっしゃっているとおり、私はうまくいかないと思います。

 そういう意味で、ここでこの中心市街地活性化が成功するかどうかというのは、まさしくおっしゃっているこの中心市街地活性化協議会、ここが本当に機能するかどうかというところが大切であるというふうに思っているところでございます。

 改正後の中心市街地活性化法におきましては、中心市街地整備推進機構、商工会議所等を中心に、市町村、民間事業者、地域住民など多様な主体が参加する中心市街地活性化協議会を創設いたしまして、地権者などが協議会の構成員として、自分たちはこうやってほしいということを申し出もできますし、逆に、協議会側が地権者の方々等に対して参加を要請するなど、幅広い関係者の参加を促す仕組みを設けているところでございます。

 こういう中で、地域によっては、今委員がおっしゃったように、そういう医療関係者等が参画する道も十分確保されているというふうに思っております。

 全国各地でこの協議会制度が活用されまして、幅広い関係者の主体的な取り組みを通じて中心市街地の活性化が実現できるように、しっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

柚木分科員 今、最後の方におっしゃっていただいた部分、特に重要だと思います。

 今回、そういう参加を促す仕組み、PR、広報だと思いますが、ぜひこの協議会、当然その運営の見直しというのも行われるんだと思いますので、そういった視点というものを、くれぐれも国交省としても主体的に取り組みをいただくことをお願いさせていただいて、次の質問に入りたいと思います。

 今、御答弁の中にもお触れいただいたんですが、当然まちづくりに当たって中心になるのは自治体の存在でございます。ところが、この自治体、私もよく地元の知事さんであったりあるいは市長さんなりにお話をさせていただきますが、このまちづくりもそうなんですけれども、いろいろな施策を地域で取り組んでいこうにも、三位一体改革の影響で、財源削減の中で、ある意味ではその移譲が十分に進んでいない中で、大変に厳しい状況にあるというふうな声を伺うわけです。

 そこで、今回まちづくりについて伺っておるわけですが、こういったまちづくりを充実させるためにも、政府から自治体へ当然今以上のスピードと金額で、税財源を移譲すべきだというふうに考えます。

 これは、御承知のとおり、私たち民主党としても提案していることでございますが、こういった方向性、まずは、国庫補助金を減らすのであれば自治体の一般財源を充実させる、それがパラレルで、セットでやはり進んでいかないと、今回のまちづくりのような事例一つとっても、逆に地域格差につながっていく、そういった側面があろうかと思いますが、これについて、これは総務省さんになるんですか、御見解を御答弁いただけますでしょうか。

岡本政府参考人 近年の地方財政は、国と同様に、巨額の債務残高と財源不足を抱えるという極めて厳しい全体の状況にございます。そういう中から、各地方団体に対しましては、厳しい財政状況の中で、行政改革に努めていただくとともに、事業の優先順位を厳しく精査して事業の重点化を図っていただくことが喫緊の課題だというお願いをいたしております。

 現在、歳入歳出一体改革の検討の中でもこれら各歳出科目についての検討がなされているわけでございまして、こういう歳出の検討を重点的に行っていく中で、その上で、必要な財源につきましては、毎年の地方財政計画を通じて、地方税、地方交付税という一般財源をきちんと確保することによって各地方団体の財政運営の安定を図っていくということが何より大切なことであるというふうに考えております。

 そういう意味で、国の取り組みと、歳出改革あるいは歳入のあり方の見直しというようなものと歩調を合わせて検討していく中で、国、地方が双方納得した形で、今後の財政運営のあり方ということについて検討し、財源の確保を図っていきたいというふうに考えております。

柚木分科員 今の御答弁、竹中大臣がどういうふうに御認識をされておるのかなというのが大変私は気になるんです。今おっしゃっていただいたように、地方の実情、先日も六団体からの要望等も上がっていると思いますが、やはり仕組みですね。確保するということだけではなくて、地方共同税ということも提案されておったようですが、具体的なそういう確保のための取り組みというものをぜひあわせて行っていただくことをお願いさせていただいて、時間もございますから、次の質問に入りたいと思います。

 ちょっと地元の例ばかりになるんですが、先ほど倉敷市の医療圏のお話をさせていただきました。実は、今の三位一体の質問に関連する質問になるんですが、今回、政府案が今参議院で、医療法、健康保険法改正案が審議されておるところでございますが、この法案がそのまま通ると、自治体に医療提供体制の整備の責任がさらに重くのしかかるというふうに承知をしております。

 そこで、引き続き総務省さんにお伺いするんですが、各自治体に対して政府からの地方交付税が交付されておりますが、これは、各自治体ごとの高齢者数なども積み上げられ、病床数も補正係数として交付税の金額が算出されているというふうに伺っております。

 先ほどの質問でも申し上げましたが、いわゆる三位一体改革によって地方交付税が大幅に削減され、自治体財政は逼迫している。これは、厚労省として地域医療計画を進めるというふうなこととは裏腹に、逆に、自治体が医療や福祉について事業を進めなくてもいいというか、切り捨てというか、言い方はあれですが、そういうことを図らずも推し進めてしまう側面が大変危惧されるというふうに思うのです。

 総務省として、地方交付税の大幅減額によって一般財源が減り、各自治体が医療や福祉などを大幅に縮小せざるを得ない、こういう方向性、状況について、どういったふうに考え、また今後どういった施策を講じるおつもりがあるのか、お答えいただけますでしょうか。

岡本政府参考人 医療、福祉、それぞれ地方団体にとって非常に喫緊の課題であるわけでございます。例えば三位一体の改革の中でも、国民健康保険制度の調整交付金等については、税源移譲を伴った形で都道府県が一部その調整を担うということで、都道府県の役割を重視するという形で制度改正が行われております。

 そのような必要なものにつきましては、税源移譲という形での財源措置を行うと同時に、税源移譲がその必要な各地方団体の額とパラにはならないわけでございますので、いわばその差分につきましてはその必要な額を地方交付税の基準財政需要額にきちんと算入するという形で、税と交付税で各地方団体が担うべき額をきちんと確保するという体制をとっておりますので、そのような形で、今後いろいろな制度改正が行われるときに、地方が担うべきとされました必要な需要額につきましては、地方交付税のそういう算定を通じて、地方団体の財政運営に支障が生じないようにしてまいりたいというふうに考えております。

柚木分科員 そういうふうに御答弁をいただくわけですが、総枠としてそういう議論というのは理解できるんですが、これは、多少踏み込んだ質問をさせていただきたいんです。

 医療計画というのは、御存じのように、地域のさまざまな、例えば病床数であったり、あるいはそれぞれの診療科におけるお医者さんの人員配置であったり、看護師さんもありますが、きっちりとその基準を満たす形を整備していく。ところが、実態としてそういうことが全然追いついていない。もちろん、医療分野における交付税というのも拠出されておるわけですが、厚生労働委員会の中での審議では、そういったものが実態で追いついていない、しかし厚労省としては予算がないという議論の繰り返し。

 ここはやはり、総務省さんと厚労省さんと文科省さんでそういう医療の施策についての合同の会議体もあると思うんですが、そういう地域における医療提供体制というものを、私たちはよくエビデンスに基づいたという言い方をしておるんですが、例えば全く地域の小児科や産婦人科が二十四時間対応になっていない、では、そこに何人ふやせば、そのために財源がどれだけ必要なのか。そういった、まさにエビデンスに基づいた形での今御答弁いただいた中身の取り組みを、今後、省庁連携して取り組みをしていただくことをお願いさせていただいて、ちょっと時間がありませんので、次に参りたいと思います。

 まちづくりから若干それてしまいましたが、実は、御承知のとおり、地域おこしの一つとして、地域名表示ナンバープレート、これが実施されて、その一つとして、私の地元倉敷でも倉敷ナンバープレートが十月十日から始まるわけでございます。

 車のナンバープレートを、現状、岡山ナンバーから新しい倉敷ナンバーにかえられるのは、実は条件がございまして、新車を買ったとき、よそから引っ越してきたとき、そしてナンバープレートを破損したときというふうに限られているんですが、実際、以上の条件に当たらなくても、とにかくかえたいんだと希望したら倉敷ナンバープレートにつけかえさせてほしいという要望が、これは地元から大変強い要望がございます。これに関して、国土交通省としてはどのようにお考えあるいは御対応いただけるのでしょうか。ぜひ、できれば大臣にお答えいただきたいと思います。

北側国務大臣 これは、もう既にそのように以前から申し上げておるんですが、現在使用中の自動車につきましても、御当地ナンバーへの変更を希望する場合には交換できるようにしたいというふうに考えております。

柚木分科員 はっきりとお答えいただいて大変ありがたかったんですが、数が想定外だったりした場合に、さまざまな施策を、対応をちょっと考慮する必要があるというふうなことも伺っていますので、そこはぜひ前向きにお願いします。

 最後に、二つまとめてちょっとお尋ねをさせていただいて、もう時間も限られてまいりましたので、終わらせていただきたいと思います。

 まちづくりの中で、冒頭、防犯あるいは安全、そういった観点からも御質問させていただきたいということを申し上げたわけですが、実は、私の地元の小学校で、電子タグ、ICタグという言い方もしておりますが、大変なマンモス小学校があって、そこで実証実験を行った事例がございます。子供たちの安全、あるいはバリアフリーを考慮したまちづくりが求められる中で、具体的に市内の小学校を対象として、安全対策としてタグを使った実証実験が行われました。

 この実証実験を行った後、今後、今回のこういう事例も含めて、どういった安全対策を進めることになるのか。これは総務省さんですか、今後の見通し。

 もう一つ重ねて質問をさせていただきますが、電子タグそのものの活用法というのはいろいろあると思いますので、あわせて御答弁をいただきたいのが一点です。

 そして、活用法の一つとして、私がこの間お話を伺った中で、書籍への電子タグの活用ということも想定されているというふうに伺いました。私は若干出版関係の仕事をしておったもので、これは実はかなり前から期待をされている取り組みであるというふうに思い出しまして、ぜひお伺いしたいんです。

 いわゆる電子タグの高度利活用に関する研究開発について、書籍については図書館の蔵書管理や書籍の万引き防止、そういったことも用途に見込まれているというふうに伺っております。しかし、実用に至るには当然大幅なコストダウンが課題だというふうに伺っておりますが、そういったコストダウンの見通し、あるいは今後の導入の普及促進の見込みについて御答弁をお願いできますでしょうか。

松本政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員がお尋ねの実証実験、本年二月から三月にかけまして倉敷市で実施されたものでございます。総務省から研究開発を委託した企業と倉敷市との間で、協力をいただいて実施されたものでございまして、電子タグを児童に携行していただきまして、市内のいろいろなスポットでそれをかざしていただくと、どこを通過されたかということが父兄の方に情報が提供されるというシステム、大変有効なシステムだということを確認できたということでございます。

 こういった電子タグにつきましては、御指摘のように、図書の管理でございますとか万引き防止対策、あるいは食の安全に対する、トレーサビリティーと呼ばれておりますが、そういったもの、さらには医療過誤防止、さまざまな分野でこの利用が効果的ではないかということで今検討されております。

 既にいろいろな分野でこの導入に向けた実証実験が行われているところでございまして、私どもとしても、できるだけ早くその実用化を図りたいということで、今研究開発を進めているところでございます。

 特に、実用化に向けましては、先生おっしゃいましたようなシステムの低廉化が非常に大事だということと、それから、どうしてもセキュリティーの問題でございますとかプライバシーの問題が電子タグの問題とはかかわってまいります。こういったものについて、安心して御利用いただけるような環境の整備をこれから図っていく必要があろうかと思います。

 そういった観点から、総務省としては、今後ともこういった研究開発を推進しますとともに、この成果につきまして地方自治体あるいは関係の団体等に幅広く周知をし、情報を共有することによってこの実用化を推進してまいりたいというふうに考えているところです。

柚木分科員 できれば、ぜひ何年後をめどにというところまで、また今後、取り組みの中でお答えいただけるようにお願いできればと思います。

 るる、まちづくりを中心に質問をさせていただいたわけですが、最後に、私の地元倉敷の、皆さん御存じかと思われますが、大原美術館の創始者である大原孫三郎さんがこういう言葉を言われております。一九三〇年に倉敷の地で日本最初の西洋美術館を設立されたわけですが、その文化芸術の種をまいた大原氏は、わしの目には十年先の未来が見える、そうおっしゃって、倉敷美観地区の美しい町並みを保ちながら、一方で、倉敷紡績を初めとする商業振興など町の近代化を進められたわけです。

 私たちの国のまちづくり行政が見据える十年先というものが、コンパクトかつ機能的であれど風情や情緒のある、今大臣もお答えいただきました、子供から高齢者まで本当に心地よく暮らせるものであるようしっかりと取り組んでいくことを確認させていただきまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

斉藤主査 これにて柚木道義君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして国土交通省所管、住宅金融公庫の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤主査 昨日に引き続き法務省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 公明党の障害者福祉委員会の委員長を務めております。本来であれば法務委員会の中で、差しかえていただき、一般質疑の中で質問をさせていただくところでございますが、そのめどがなかなか立たないようでございますので、この場をおかりしまして質問させていただきたいと思います。法務大臣には初めての質問でございます。

 御存じのとおり、障害者自立支援法が昨年成立をいたしまして、これで初めて、精神、知的、身体とも同等に支援の対象となりまして、地域で障害者がともに暮らすという道が開かれたわけでございます。中でも精神障害者は、一九〇〇年の精神病者監護法、また一九一九年の精神病院法、一九五〇年の精神衛生法を初めとしまして、どちらかというと、隔離そしてまた措置入院という名前の強制入院が行われてきたわけでございます。今回、こうして三障害とも道が開かれ、またさらに発達障害等、今大きく社会に認識を広げているところでございます。

 私は、障害を個性と認め、障害者の持つ温かさ、懸命に生きる力を社会に広げていかなければならない、そのような責任感を持っております。また、そのような大事なときを迎えていると認識しております。しかしながら、現実は、事件のたびに耳にします特性に対する社会の無理解、そしてまた一部マスコミの無認識なセンセーショナルな報道等、変えていかなければならないと思っております。

 そのためには、やはり権利が守られる最後のとりでであります司法の場におきまして障害者の特性が理解され、真に権利が守られる法制度へと進めていかなければならない、この思いも熱くございます。当然、その事件に至るまでの福祉との連携も必要ですし、虐待防止の具体的な施策も必要でございます。

 そうしたことも踏まえまして、限られた時間でございますが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、最高裁に、裁判員制度についてお伺いをさせていただきます。

 特に選任資格につきましては、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の第十四条第三号におきまして、欠格事由として「心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者」とされております。障害者が裁判員になる場合の選任資格の基準と考え方をお伺いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 障害がある方につきまして、どのような基準ないし考え方で裁判員の選定を行うかという点についてでございますが、裁判員制度は、多様な国民の感覚を裁判に反映させるということを趣旨とする制度でございますので、障害がある方につきましてもできるだけ裁判員として参加していただくという基本姿勢で臨むことが重要であるというように考えております。

 ただ、裁判員は、裁判官と同等の権限で、口頭主義、直接主義という原則で運営されております公判手続に参加いたしまして、事実を認定し刑を定めるという重大な職責を負っております。そのために、ただいま御指摘の裁判員法第十四条第三号のように、「心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある」と認められる場合には裁判員となることができないというように定められているわけでございます。

 これがどのような場合かということでございますが、これは、心身の障害の内容、程度、事案の内容等に応じて個々の裁判体によって決められるということでございますので、一概に申し上げることはできないわけでございますが、心身に障害のある方についても特段の支障がない限り裁判員になっていただくというのが基本でございまして、この観点をしっかりと押さえて対処がされるというように考えております。

高木(美)分科員 続きまして最高裁にお伺いいたします。

 それでは、障害者また高齢者配慮の裁判所建物内のスロープ、エレベーター等のバリアフリー化の状況と、現在行われております障害者への配慮につきまして具体的にお伺いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所の庁舎は全国に四百六十施設ございます。これらの施設につきまして、従来から、新築、増改築の機会をとらえまして、鋭意庁舎のバリアフリー化ということを進めてきたわけでございます。

 これまでのところ、すべての庁舎において玄関スロープ等の段差解消の措置を講じておりまして、また、身障者用トイレもほぼすべての庁に整備済みでございます。また、エレベーターは三階建て以上の庁舎の約九割に整備済みでございまして、玄関自動扉それから点字ブロックにつきましては、約八割の庁に整備済みというところでございます。

 今後とも引き続き、障害者あるいは高齢者の方に配慮した施設の整備を図っていきたいというように考えております。

高木(美)分科員 具体的に裁判員制度が始まりました場合、各障害に応じました配慮が必要であると思っております。

 例えば、身体障害者につきましては、自宅から裁判所までの移動に支障がある場合は、移送サービスは国から提供されるのかどうか。また、介助者の入廷、入室の配慮というのは行われるのか。

 また、聴覚障害者の場合は、法廷や合議における手話通訳者の配置や要約筆記、またパソコン通訳であるとかOHP、オーバーヘッドプロジェクターでございます、そうしたものが使用できるのかどうか。

 また、視覚障害者の場合は、訴訟記録の点訳または録音、点字、音声サービス等必要になるかと思います。またさらに、写真、図面、その他の視覚による検証を必要とします証拠に対する対応の配慮が必要かと思います。アシスタントによる説明でよろしいのかどうか。

 またさらに、内部障害者、これは、心臓機能のためにペースメーカーをつけていらっしゃるとか、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸等、そこに機能障害があり、またヒト免疫不全ウイルス等をお持ちであるとか、こうした内部障害者につきましては、やはり裁判所というところは大変緊張する場所でございますので、気分が悪くなった場合の医学的サポートも必要であるかと思います。

 こうした具体的な配慮につきまして必要であるかと思いますが、最高裁の御見解を伺います。

園尾最高裁判所長官代理者 障害者が裁判員に選任された場合に、具体的にどのようなサポートが適切であるかということにつきましては、障害の内容、程度等によって異なるものでございまして、一概に申し上げるということはできませんが、障害者の方が裁判員に選任された場合には、障害の内容、程度等につきましてあらかじめ御本人に事情を伺うというようなことをしまして、裁判員としての職務の遂行に支障が生じないように最大限の配慮を行うことになるという考えでございます。

 例えば、今たくさんの例示がございましたが、一つ、身体に障害のある方を例にとってみますと、裁判所においでいただくのにタクシーやハイヤーの手配の必要があるのかどうか、必要があればそのような措置もとることができるということでございます。介護者の手配の必要の有無、これも、手配の必要があるということであればそのような対処を検討するということでございます。

 また、聴覚障害者の場合には、手話通訳者の手配の必要性の有無、あるいは、ただいま御指摘のような要約筆記の手配の検討が必要なのかどうか、このようなもろもろの事柄につきまして、障害の内容、程度に応じた補助の手段を用意するということを検討しておるわけでございます。

 個別の事例についてはさまざまなことが起こり得るということを予想しておりますが、できる限りのサポート体制をとっていきたいというように考えております。

高木(美)分科員 よろしくお願いをいたします。そして、ぜひとも、あなたが裁判員制度の裁判員に選任をされておりますという通知が行きましたときに、そうした障害があられる場合は、このようなサポートの準備がありますという、先にそのことを明快にお伝えいただきまして、後は、御本人が障害を理由に辞退をされたり、またそれでもやってみようと一歩前へ進まれたり、そこはまた御配慮をぜひお願いしたいと思います。

 次に、法務省にお伺いをいたします。

 日本司法支援センターにつきましては、五月に既に法人登記が終わられまして、十月からの稼働に向けて準備がされていると伺っております。新任の金平理事長が、身近な駆け込み寺のような存在になること、司法が力になってもらえることを一人でも多くの国民に知ってもらいたい、このような希望を述べていらっしゃいます。

 障害者につきましては、知的、精神、身体とも弁護士へのアクセスが困難と言われております。そういう中で、私は、この法テラスといいます日本司法支援センターに期待をするものでございます。日本司法支援センターの運営に当たりまして、障害者配慮を明確に位置づけた運営をお願いいたします。

 そこで、この準備に当たりまして、高齢者、障害者に対する配慮はどのように考えていらっしゃるのか。例えば、そこに行くということはかなり大変な労力もかかります。出張相談などは準備をしておられるのか。それには当然予算化も必要であると思います。御見解をお伺いいたします。

倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、支援センターにおきましては、現在、本年秋に予定されております業務開始に向けて鋭意準備がなされているところでございます。

 御指摘の、障害者の方々に対する特別の配慮ということですが、この点につきましては、支援センター、特に注目すべきところは、法律にその規定があるということでございます。総合法律支援法は、日本司法支援センターは、障害者等法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を求めることに困難がある方々に対し、その業務が利用しやすいものとなるように特別の配慮をしなければならない、こういう規定を置いているわけでございます。

 現在、これからどのような配慮をしていくのかということについては、具体的には支援センターにおいて検討されることではありますが、例えば、ただいま出張相談という御指摘ございましたけれども、民事法律扶助、資力の要件がございますけれども、ああいった要件に該当する方に対しては出張による扶助相談を行うということが、このたび法務大臣が認可いたしました業務方法書にも明記されております。また、全国の弁護士会等でこういう方々のためにいわゆる出張相談を実施しておりますが、新しく情報提供という仕事をする上で、そういう弁護士会を御紹介していくということも考えられると思います。

 こうしたことも踏まえまして、関係する機関、団体と適切に連携しつつ、適切な情報提供業務を初めとする各般の業務に努めていただけるもの、こう考えております。

高木(美)分科員 先ほど申し上げましたように、弁護士へのアクセスが困難と言われる障害者にとりまして大きな希望になりますように、ぜひとも実効性ある取り組みを重ねてお願い申し上げます。

 続きまして、民事訴訟また刑事訴訟上の課題につきまして質問をさせていただきます。

 これから申し上げます質問につきましては、民事においては、訴え提起段階また審理段階、判決段階を含みます。また、刑事におきましては、捜査段階等も含ませていただいた上での質問と御承知をいただければと思います。

 まず一つは、取り調べの可視化につきましては、我が党も漆原法務部会長を中心に強く要請をしておりまして、もう既に準備が始まっていると承知をしております。この可視化につきまして、必要性をどのように認識しておられるのか、あわせまして、今の進捗状況と今後の展望につきましてお伺いをいたします。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 一般国民が参加する裁判員制度のもとでは、審理を裁判員にわかりやすく迅速なものとすることが不可欠であり、自白の任意性の立証についても、効果的、効率的な立証がなされる必要があります。

 そこで、検察庁において、裁判員裁判対象事件に関し、自白の任意性の効果的、効率的な立証に必要かつ相当と判断される部分の録音、録画を試行することにしたものと承知しております。この試行は本年七月から開始される予定であり、検察庁において、現在、試行の実施方法等につき検討を進めているものと聞いております。

 なお、取り調べの録音、録画を義務づける制度の導入につきましては、刑事手続全体における被疑者の取り調べの役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどから、刑事司法制度のあり方全体の中で慎重に検討すべきであると考えているところでございます。

高木(美)分科員 同じ質問を警察庁にさせていただきます。特に警察での取り調べの段階でも可視化が求められているところでございます。警察庁の見解を求めます。

和田政府参考人 取り調べの可視化についてでございますが、警察は、第一次捜査機関として事案の真相を明らかにする、こういう責務がございます。取り調べもその目的のために行っておるものでございますが、取り調べを行う際には、時間をかけて被疑者とコミュニケーションをとり、人間関係、一定の信頼関係を構築して行わなければならないわけです。そういった中で真実の供述というものが引き出されていくわけです。

 仮に録音、録画を行うといった場合には、被疑者にとってはその一言一句というものが第三者に知られてしまう、そういう状況のもとではこういう信頼関係の構築はなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

 そういたしますと、ひいては事案の真相解明も困難になるということから、警察といたしましては、この録音、録画については極めて慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

高木(美)分科員 慎重でありましても、先ほど法務省から、相当また必要と思われる場合はというお話もございました、ぜひとも準ずる形で今後検討をお願いしたいと思います。

 続きまして、これは先日、新聞でも報道されておりましたけれども、例えばわいせつ被害を訴えてきた障害者の少女の事例がございます。

 こうした事例は探せば多くあるわけでございますけれども、これは、千葉県の市立小学校に通っていた知的障害を持つ少女と両親が、五月に、担任だった男性教諭と県、市を相手取りまして、千葉地裁に損害賠償請求訴訟を起こしました。強制わいせつ罪に問われた教諭には、既に地裁と高裁で無罪判決が出ております。それでも家族が民事訴訟に踏み切ったわけです。

 この事件は二〇〇三年の七月に発覚をいたしました。小学校六年生だった少女は、校内で教諭にたびたび服を脱がされ、わいせつ行為を受けました。しゃべったら家族を殺すなどとおどされ、我慢をしていたけれども、ついに母親に告白をし、教諭は逮捕となりました。

 しかしながら、千葉地裁の公判で少女は証言台に立ちました。被害場所を教室内のカーテンスペースの中と証言しましたが、その際、地裁は、関係者により記憶化された可能性を否定できないとこの証言の信用性を認めず、教諭を無罪といたしました。

 さらに、控訴審に進みまして、東京高裁で母親は、そのあいまいとされた証言に触れまして、場所を確認した別の教諭が娘の発言に否定的なことを言ったため、娘が混乱して違う場所を指したと主張をいたしました。

 こうした知的障害の方たちは、他人に否定されると自信を失い、相手に合わせてしまう、これが特性でございます。そしてまた、強く言われると、そのように答えれば相手が喜ぶ、そう思ってそのとおりに答えてしまう、このような特性も持っていらっしゃいます。

 ここでも、当然日時と場所の証明が不十分とみなされまして、結局は無罪となってしまい、また、あえてこうした民事訴訟を起こしたにもかかわらず、最終的にはやはりこのことも受けとめられず、この少女はその後髪を抜くなどの自傷行為を繰り返すようになり、またも家族はそれぞれに痛みを受け、今、家族は引っ越しを余儀なくされている、こうした事例でございます。

 障害者の方の中には、私は障害があってみんなに迷惑をかけているから、こんなことをされても我慢しなければいけないと思っていた、大体このようにおっしゃる方が多いわけでございます。知的障害者の証言が認められなかったケースは大変多いというふうに承知をしております。

 そこで、質問をさせていただきたいのですが、例えば、障害者が今度は被疑者になった場合、知的障害者が黙秘権があるんですよと説明をされましても、黙秘権がどういうことなのか、どういうときにそれは使えるのか、一体何なのかという、言葉の内容が理解できません。また、取り調べにおきまして、強く言われますと、今申し上げたとおり、相手を喜ばせたいという思いでそれを答えてしまう、いわばうその供述をしてしまう。しかしながら、それが自白としてとらえられてしまう。当然そこには特別代理人であるとか弁護士等の立ち会いが必要と考えますが、このことにつきまして見解をお伺いしたいことが一つ。

 またもう一つは、今度は逆に被害者になった場合、今の事例でございます、いつ、どこで、だれからをはっきり記憶できませんし、言うことができません。そのために性的な犯罪の犠牲になった人たちも大変多くいると認識をしております。

 こうした特性を理解し、踏まえて、訴えを受理するあり方を考えるべきではないかと思います。事情聴取、また裁判所における尋問につきましても配慮すべきと思いますが、御見解を、これは警察庁にお伺いいたします。

和田政府参考人 知的障害者の方の取り調べでありますとか、あるいは事情をお聞きするという場合には、委員御指摘のように、その障害者の方の特性というものを十分理解しておかなければならないというふうに考えております。

 したがって、取り調べ、事情聴取に当たって、言葉を平易な形でやるとか、あるいは否定的な形で言わないとか強い口調で言わないとか、あるいは暗示を与えるような形でしないとか、それからまた、供述が得られた場合についても、その信用性を十分吟味して裏づけを十分とる、こういったような形で進めております。

 先ほど、障害者である被疑者の取り調べについて、弁護人等を付き添わせてはどうかということでございましたが、先ほどの取り調べのいろいろな機能の問題から、これを一律に付き添いをするということはなかなか困難であろうと思いますが、個別具体的な状況の中で、必要により福祉関係者の方を付き添いとして取り調べに当たるということはあり得るというふうに思います。

 また、被害者の方につきましても、その障害の程度等に応じて、親族の方あるいは福祉関係者の方を付添人としてその場で事情聴取をするということはこれまでも行ってきておるところでございます。

高木(美)分科員 ただいま、取り調べの際の付き添いに福祉関係者という配慮もいただきました。

 重ねまして、福祉、またこうした障害者の特性を理解している専門家ですと、例えば被疑者となった障害者の方が面識がなくても、コミュニケーションを結ぶスキルをちゃんと持っております。そこも視野に入れていただき、今後の御検討をお願いしたいと思います。

 今、障害者は十人に一人という比率でいらっしゃると伺っております。そういう観点から考えましたら、やはり警察関係また司法関係者の研修の中に障害者の特性を理解するためのプログラムを導入していただきたいと思います。それも、机上の勉強だけではなくて、独学で勉強されたりいろいろな努力をされているとも伺っておりますけれども、やはり直接障害者と触れ合っていく、そこでその反応の仕方、また意思の発し方、その一つ一つを考慮、また肌で知っていただきたいと思います。

 障害者を弁護する方もまた裁く方も、そして取り調べる方も、その場で初めて障害者の特性に触れるのではなくて、やはりその以前、当然司法修習の準備段階になるかと思いますけれども、総合的なこうした理解するためのプログラムの御検討をお願いしたいと思います。

 そこで、最高裁また法務省、警察庁、それぞれに御見解を求めます。

園尾最高裁判所長官代理者 それでは、まず裁判所から御説明をいたします。

 法曹にとって、あるいは法曹になることを前提に研修を受けているという立場にある司法修習生にとって、障害者について理解を深めるということは、法曹が国民の基本的人権を擁護する職責を負っているということからも極めて重要なことであるというように考えております。

 まず、司法修習生について言いますと、司法修習生につきましては、修習期間中に、さまざまな機会をとらえて、障害者についての知見や理解を深めるためのプログラムを実施しておるところでございます。

 実際に行われた事例について御紹介いたしますと、実務修習の中の一つのプログラムに社会修習というのがございます。この社会修習の中で、重度の心身障害児の施設あるいは知的障害者授産施設等の見学を行った上、入園者との共同作業などを通じた体験、座談会等が実施されたという事例がございます。この結果は社会修習レポートとして報告されまして、それをもとにした意見交換会が後期の集合研修のカリキュラムに組まれまして、修習生相互の情報として共有されるというような工夫が行われていっております。

 一方、裁判官につきましては、実務の現場で障害者の事件の審理を担当することによって理解を一層深めていくというのが基本でございまして、その場合の双方当事者との協議やあるいは打ち合わせの場を通じて障害者について事前に十分な知見を得た上で裁判の場で障害者と接することによりまして一層の理解を深めていっておるという状況にございます。

 これに加えまして、裁判官につきましては、司法研修所において障害者の人権問題を含む人権問題一般に関する講演会を実施するなどいたしまして、一般的な知見や理解を深める努力を行っているというところでございます。

大林政府参考人 検察官につきましては、例えば知的障害者の方々につきましては、その特性を十分考慮し、適切な発問を行うとともに、その供述の裏づけ捜査を十分に行うなど、被疑者、参考人等の年齢、境遇等の特性に応じた適正な捜査、公判活動を行うよう、上司による部下検察官への事件指導や各種研修の際などに徹底した指導がなされているものと承知しております。

 これに加えて、障害者の特性を理解することに特化した研修を実施する必要があるか否かにつきましては、状況に応じて検討していきたいと思っております。

和田政府参考人 警察におきましては、警察活動のさまざまな場面で障害者の方と接する機会は数多くございます。したがいまして、警察官に対しましては、一つには、こういった方々との接遇をするための要領というものをハンドブックとして教育に活用しておりますし、また、職場研修の中では部外の専門家の方に来ていただいてお話を聞くとか、あるいは、県によりまして、警察学校で、ちょうど警察官として採用になったばかりの警察官の卵たちが近くのそういう障害者の施設に赴きまして、実際にそういった介護の実習をやっておるというところもございます。

 引き続き、こういった障害者の方々への適切な対応について、都道府県警察を指導してまいりたいというふうに考えております。

高木(美)分科員 最後の法務省そして警察庁の方たちにおかれましては、ぜひ特化した研修、さらに検討を重ねていただきたいことをお願いいたします。

 最後に、大臣の御決意を伺わせていただきたいと思いますが、やはりどうしても冤罪、そしてまた重科等が障害者に対して後を絶たない、このようなことが今言われております。さまざま今質問させていただきまして、ここからさらにまた進めていただかなければいけない点、そしてまた障害者に対する理解を社会に対しても大きく広げていかなければいけない点、社会を挙げて取り組まなければいけない課題であると私も改めて決意をさせていただいた次第でございます。

 最後に、この障害者の司法アクセスの問題につきまして、また、権利が守られる法制度への大臣の御決意をお伺いさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

杉浦国務大臣 先生におかれましては、障害者問題にお取り組みいただきまして、敬意を表する次第でございます。

 司法制度におきましても、障害者の方々の権利は十分に保障されなければならない、当然のことでございます。

 障害者の司法アクセスでございますが、先ほど司法法制部長が御答弁申し上げましたように、司法支援センターを活用するということも一つでございます。出張相談なんというのはぜひやってもらいたいと思っております。金平理事長初め役員の方々が就任のあいさつにお見えになったときに、ともかくお役所仕事では困る、国民のニーズにこたえて、親切、丁寧に応対するようにしていただきたいということを申し上げました。

 健常者に比して不平等が生じることのないように十分に配慮をいたしまして、すべての国民にとりまして身近で頼りがいのある司法制度を実現していくというふうに取り組んでまいりたい、こう思っている次第でございます。

高木(美)分科員 ありがとうございました。以上で質問を終了させていただきます。

斉藤主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵分科員 民主党の馬淵でございます。

 本日、決算行政監視委員会第四分科会にて質疑の機会をいただきました。また、本日は、杉浦法務大臣並びに河野副大臣、お二人にお越しをいただきまして、私は、登記オンライン、この業務につきまして質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、この登記オンラインの問題でございますが、これに関しまして私が、さきに、ことしの四月五日でございますが、行革の特別委員会におきまして大臣には質疑をさせていただきました。私が指摘をさせていただいたこと、この登記オンラインシステムの利用率が極めて低い、これは大変に残念なことであるというお答えとともに、その利用率が低いという理由を二つ挙げておられます。一つは、登記所が限定されているという点、そしてもう一点は、オンライン申請に不可欠である公的個人認証、いわゆる住基ネットのこのサービスが十分に普及していないということ、これが大きな理由であるということを、大臣もこの二点、お認めいただいております。

 そして、こうした状況の中で、オンラインの申請実務をいかに推進していくかということについて、私自身は、このオンラインありきで物事が始まってはいないか、あるいは進められてはいないか。そもそも、こうしたトータルなシステムの構築を図っていく上では、やはり環境が整うことが第一であったのではないかということを指摘もさせていただきました。

 本来ならば、環境が整って、例えば公的個人認証というこの制度の問題が大きな普及のネックになっているのであれば、まずは公的個人認証制度の普及に努めることが大前提となるということが環境の整備ではないのか。あるいは、登記所が足りない、限定されているという状況であれば、このオンライン登記所ということに対しての環境整備を図ることというのがまず第一ではないのかということも含めての指摘をさせていただいたわけであります。

 さて、現行におきましてもまだまだ、私がお尋ねしたのは四月五日でございますから、それほど日もたっておりません。大きな変化があったとは私も思ってはおりませんが、改めて大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますのは、今日において、こうしたオンライン申請、いわゆる証明書の発行等の業務、これは公的個人認証が必要ございません。こうしたいわゆる証明書発行業務、乙号の部分からこれを先行させて、そしてその他の、いわゆる権利の譲渡であったり、権利関係にかかわるこの甲号の部分については、一定期間の、そもそも試行期間というものを設けるべきではなかったのかということについてお尋ねをさせていただきます。大臣、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 先生は工学部の御出身でいらっしゃいますし、この間の質疑を拝聴いたしましても、非常にコンピューターにお詳しいことを知りまして、今後とも、私ども必死になって取り組んでおりますので、いろいろとサジェスチョンいただければありがたいと思っております。

 コンピューター化、登記処理の電算化というのをもう十年以上ですか、ずっと続けてまいっておるわけですが、国費を投じた金額も莫大でございます。概算で約八千億ぐらい、運営経費を含め投入をする。過去十年ちょっとでしておりますし、かなり進んでまいりまして、不動産ではほぼ八六%電算化ができておる、商業登記では九八%電算化が進んでおるということでございまして、商業登記は今年度中に終了の見込みですし、不動産も来年度、平成十九年度いっぱいで電算化完了するというところまで参っておるわけでございます。

 ただ、問題は、もう先生御指摘のとおり、オンライン申請が極めて不十分というか進んでいないということでございまして、不動産登記申請関係は、平成十七年度、九カ月分ですけれども〇・〇三%、登記事項証明書、乙号の方が一〇・八七、約一一%という状況であります。商業・法人登記の申請手続が〇・九一%、登記事項証明書等の交付請求手続が、これは一二・三五%ということでございます。

 ことしの一月に開催されましたIT戦略会議、官邸で、これを二〇一〇年、平成二十二年までに五〇%に上げるという目標が設定されまして、私どももそれに向かって取り組もうとしておるところでございます。

 先生の御指摘の点でございますけれども、乙号の方は、オンライン申請を受ける、出てきた書類を郵送するということで割合に進めやすいわけなんですが、五〇%達成に向けては、これを大いに努力するということが大事だと思います。甲号事件の方では、いずれもそうなんですが、申請人が登記所に出頭しないで、いつでも自宅や事務所にいながらにして登記の申請が可能になる。

 これは甲乙両方そうなんですが、不動産登記についてはパソコンで作成した申請データをそのまま利用して送信することができるために、申請人のコストや労力を省略することも可能でございますし、迅速に権利の確保ができる、権利の保全をより迅速かつ効率的に行うことを可能にするということで、より利用者の利益、利便性に資するというふうに評価できると思うわけでございます。

 先生のおっしゃるとおりにやってこなかった理由の一つを申し上げますと、法務省として、不動産登記行政の効率化の一環といたしまして登記所の適正配置を実施しておるわけでございます。かなりの登記所が廃止されているわけでありますが、登記所が廃止された地域にございましては、利用者の利益、利便性の観点から申しますと、乙号事務のオンライン申請と同様に、甲号事務のオンライン申請も必要不可欠でございまして、それが不可欠だから廃止しては困るという御陳情もかなり多くあるわけでございます。それに個々のケースで対応しておるわけですけれども、そういう意味から、できるだけ早期に、甲号におきましてもオンライン申請を制度的に可能にすることが望ましいと考えまして、オンライン申請の導入に努力してまいった次第でございます。この推進につきましては、資格者、代理人でございます司法書士、土地家屋調査士の方々と意見交換をさせていただきながら、さまざまなとり得る方策を検討しているところでございます。

 幸い河野副大臣が大変熱意を持って、またコンピューターに詳しいということで、ぜひこの目標に向かってPTを立ち上げて努力したいという名乗りを上げていただきましたので、PTも設置しまして、このコンピューター化、オンライン申請を進めるというさまざまな課題に、この省内で人材を揃えまして、検討をしていただいているところでございます。

 私は大変コンピューターに弱いものですから、これからの質問は河野大臣に主になってお答えいただくようにしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

馬淵分科員 大臣、副大臣、御両名にお尋ねさせていただきますが、私が今お尋ねしたのは、一定の試行期間を置くべきではなかったのかと。まず最初に、個人認証をしない乙号を先行させて、そして一定の試行期間を設けて、そして環境整備を整えてから進めるべきではなかったのか。

 そうした効率的な進め方がなぜできなかったかということについて、法務省としてはやはりこの十年間に対しての深い反省を持たなきゃならぬのじゃないかということを御指摘させていただいたつもりなんですが、そこに関しては、私、今お伺いをしていて質問のお答えをいただけたという感じが余りしなかったわけです。今おっしゃるとおり、全国の登記所、今五百八十二カ所ですか、そこまで削減をする中でということが大きな理由だというふうにお話ありましたが、私は、こうしたシステムというものは、とにかく環境整備を整えて一斉に変えていくということが重要ではないかということを申し上げておきます。

 さてそこで、委員長には了解をいただきましてお配りをした資料二枚目に、まず、THINK、これは英語でもっと発音はよく言わないかぬのでしょうが、わかりやすくTHINKと申し上げます。この司法書士会の論文集がございます。この論文集の百四号に、「不動産登記手続のオンライン利用促進に向けて」ということで、九州大学大学院法学研究院の七戸教授の論文が掲載されております。

 この中に、この登記申請、オンラインのシステムの非常に問題だというところをこのような表現で書かれておるわけですね。なぜ法務省の登記申請システムだけが、かくも極端に仕上がりが悪いのかということが、これは不思議だ、このように大学院の教授がおっしゃっておられます。民間が発注するものであれば当然クレームをつけるべきところを、法務省が業者に抗議しないのも合点がいかない。そして、このような形で、導入当初において、オンライン申請に関心のあった司法書士が実験的意味も兼ねて行った数例の登記申請の結果、利便性並びに安全性が従来の書面申請よりも劣ることが判明して、このオンライン申請が早々に手控えられてしまったことが、逆にクレームが少なかったんだ、このような逆説的な言葉を書かれています。

 私は、先ほどなぜ試行期間を置かなかったのかと言ったのは、まさにこの点なんですね。なぜ極端に仕上がりが悪いのかといえば、つまり、現場において使っていらっしゃる方々の意見を取り入れるという最も重要な要件定義ということがなされていなかったのではないか、これがこのような論文の中でも論じられている大きな重要な点だと私は思います。

 そして、現実に、実際にオンライン申請をやってみると、これは、書面申請ならば数時間で行われるものが、終日あるいは数日かけて送信までやっとこぎつけられるというありさま。これは、だれでも本人が行えるんだという、登記申請がオープン化されるということとは全く逆の話じゃないかということを御指摘されています。

 私も、実は、この司法書士さんの事務所を幾つか訪ねました。そして、実際に、その司法書士さんがお持ちのカードをカード入れに差し込んで、オンライン申請をするという手順もすべて見させていただきました。これは、もちろんその通信のインフラの問題、あるいはコンピューターのマシンの性能の問題、多々あるかもしれませんが、一般にはこういったもので使われているんだろうなと思われる規模の司法書士さんの事務所ですら、大変レスポンスが遅い、時間がかかる、そしてそこには書面での申請も混在するという業務の完全な複雑化が起きているわけですね。こうした状況を考えますと、この使い勝手の悪さというのは、私は極めて重大な問題だと感じるわけであります。

 ここで今二点、私はお聞きしたいと思います。

 こうした状況を七戸教授も指摘されておられますが、まず、本当にこういう形で、現場の声を十分に吸い上げることができなかった点であるかどうかも含めて、どのようにお考えなのか。そして、こうしたことが、今後、このオンライン申請を利用促進に向けるといっても、振り返られなければ何にもなりません。それについての取り組みについて。この二点、端的にお答えいただけませんでしょうか。

河野副大臣 システムの使い勝手が悪いじゃないかというのは、まさにそのとおりでございます。

 極端な例が、申請の九割が、資格を持った代理人が申請しているにもかかわらず、本人申請であるかのごときソフトになっているというのは、まったく代理人の方々の意見を取り入れていないと言われても、それはそうですと言うしかない。こういうシステムというのは、あるいはこういう公に使うオンラインのソフトというのは、公のものであって官のものではないという認識が欠如していたと言わざるを得ないと思います。そういう面では、おわびを申し上げて、しっかりと使っている方の意見を取り入れて、改善をしてまいります。

 もう一点、これが阻害要因になり得るかということでは、なり得ると思いますが、現在オンライン申請が進んでいないのはこういったソフトウエアの問題以前の問題でありますので、この問題もしっかり対応しつつ、根本の問題を解決してまいりたいと思います。

馬淵分科員 済みません、一点。

 こうした、民間企業が発注したならば当然クレームをすぐにつけるところということであるが、これがなかなか法務省は抗議されていないという御指摘についてはいかがでしょう。

河野副大臣 済みません。ちょっとどういうスペックを要求したかを把握しておりません。こちらのスペック要求が悪くてそのとおりにできたものであれば、責任はこちらにありますので、そこは確認させていただきたいと思います。

馬淵分科員 逆に言えば、スペックがやはり十分でないということについては、法務省としてはお認めでしょうか。

河野副大臣 これが法務省の出したスペックどおりのものであるならば、おかしなスペック要求をしてしまったんだと思います。

馬淵分科員 そこで、やはりこうした中で、もう既にある程度でき上がってしまっている、先ほどの大臣のお答えの中にも、不動産では八割、そして商業登記九割というような形で電算化がもうでき上がりつつあるんだというお話でありました。

 ただ、私は、ここは改めて、これについては質問ではありませんが、できてしまったから仕方ないというそうした姿勢というのは、これは私は決して認められるものではないと思います。途中であっても、これはやはり問題がありとなれば、行政の無謬性神話ということではなくて、そこは大きく転換する勇気を持っていただきたい。

 さてそこで、現実にはこの申請手続についての利用率が低い状況の中、インセンティブということが私は極めて重要だと思っています。また、一方でペナルティーという発想もあるでしょう。これは、それぞれ物事の考え方によるのかもしれませんが、極めて高いインセンティブを与えることによって利用度を高めるということは一つの方法であります。

 現在、このオンライン申請におきましては、例えば乙号であれば手数料千円で、これはオンライン申請することによって、自分がみずから時間を使わなくとも、足を運ばなくとも郵送で送っていただける。これはある意味、交通費と時間コストと、そして郵便料という部分のインセンティブが働いているのかもしれません。しかし、もっともっと大きなインセンティブを与えるという方法があるのではないかということの御指摘をさせていただきます。

 三ページ目の、これも同じくTHINKの記事に載っていた論文でございますが、これは韓国の法務士の方の「韓国の登記電算化過程と今後の課題」ということで載せられた論文でございます。韓国のことは私も詳しくは理解をしておるわけではございませんが、この論文によりますと、最高裁判所におけるe―Formという、これはオンライン申請という形だと思いますが、ここでは、「登記申請者にインセンティブを与え、追加的に登記申請手数料を八千ウォンから四千ウォンに下げることを骨子とする準備作業を進めている最中である。」とあります。極めてわかりやすい。半額なんですね、すぱっと半額にしてしまう。これは、インセンティブとしてはわかりやすいと思います。

 先ほどのお話の中で、私が申し上げた、千円の中で、乙号であれば証明書が自宅に届きますよというのは、ある意味、交通費がどれぐらいかかるか、それぞれ個々の事情によって変わるわけです。だから、このインセンティブという部分では、非常にわかりやすいインセンティブを与えるべきではないか。このように、明確に経済的インセンティブを与えるということの一つの方策について、法務省としては踏み込んだお考えをお持ちいただけないでしょうか。いかがでしょうか。

河野副大臣 経済的なインセンティブが何よりも必要だというふうに認識をしております。我々の認識では、本丸は登録免許税、これを一%でも下げることができれば相当な金額になるわけでございますので、ぜひそこまでやりたい。もちろん、法務省内でできる手数料については積極的にやってまいりたいと思っております。

馬淵分科員 手数料、どうでしょうか。半分にできるといった思い切ったお考えというのはお持ちいただけないでしょうか。

河野副大臣 百円下げるのにも大騒動をしたこの数カ月でございましたので、いきなり半分というふうにはなかなかここで言うわけにはいきませんが、これはしっかり検討してやりたいと思います。

馬淵分科員 大変前向きな明確なお答えをいただいたというふうに思いますが、しかし、あえて副大臣、大臣、お二方にお伝えをしたい。

 私は、メーカーの経営をやっておりました。メーカーの経験の中でいえば、コストダウンを半分、半分ということを目標に、五〇%を目標にすることを掲げることによって二割、三割の実現が図られます。五%の目標あるいは一〇%の目標では、これはほとんど下がらない。今回はコストダウンとは意味が違うかもしれないですけれども、目標値というのは大きく踏み出すことに意味があると私自身は思っております。ぜひ先ほどのお話の中で、一%、一〇%を下げていくのは大変なんだという御意見をいただきましたが、そこは勇気を持って踏み出していただきたいというふうに思います。

 さて、オンラインの申請の問題点、私、今幾つか指摘をさせていただいた部分についての質問をさせていただきましたが、もう一つ、登記所の構想についてであります。

 オンラインの登記所、これをつくっていくということで、先ほど申し上げた五百八十二といった箇所数に対して百十五カ所、これは三月二十九日現在でございますが、オンライン指定庁というものができ上がってきた。これが先ほど申し上げたように事務の煩雑化を招く、書面申請とオンライン申請の混在を招いてしまっているわけです。

 さて、このオンライン指定庁、これは、どんどんどんどん進めればいいわけですよね、五百八十二カ所すとんとできれば一番いいわけですが、今百十五カ所、もうちょっとふえたのかもしれませんが、三月二十九日現在百十五カ所。これは、一指定庁当たりどれぐらいのコストがかかり、そしてどれぐらいの期間がかかるものなんでしょうか。端的にお答えいただけますか。

河野副大臣 一庁当たりの導入経費が約百万円と承知をしております。期日については、済みません。

寺田政府参考人 これは、規模によって違いますけれども、一般的に申し上げますと、二カ月ないしは三カ月程度でございます。

馬淵分科員 一庁当たり百万円、そして、一カ月ないし二カ月ということであります。

 もちろん、百万円が高いか安いかというのはそれぞれの受けとめ方によるのかもしれませんが、ある意味、先ほどおっしゃったように、十年かけて、本当に莫大なお金をかけてきた、何千億というお金をかけてきた中で、五百八十二カ所、これが百万円。このことの予算の措置ということが、なぜ今日これを一度に進めるということでできなかったのか。あるいは、私自身はこうした、今日、順次、漸次行われていることによって生じている地域間の格差ということの方がむしろ問題ではないかという気がしております。

 五ページには、この利用実態、職場実態の中で処理が混在するということが、実際には繁忙度を増しているという現場の声のまとめがございます。

 こうやって見ますと、やはり現実には、地域においてはオンラインが進んでいる登記所がある、一方ではないところがある、こういったところでその業務が混在をしてしまう。私は、このような状況を考えると、もっと考え方を変えることができなかったのかと思うのです。それは何か。

 例えば、今回進めている中で、すべてのデータはバックアップセンターに集められますね。このバックアップセンターを、それこそ国の一つのオンライン指定庁とすることによって、オンラインは、全国からこれは通信で行われるわけですから、一カ所で構わないわけですよ。五百八十二カ所ある必要はない。バックアップセンターにすべての情報が集まるのならば、バックアップセンターをオンライン指定庁として一拠点にしてしまうことによって、このように漸次変えていくんだというような煩雑さというのはなくなったんじゃないでしょうか。

 まさに今申し上げた、私がこれまで申し上げた、システムをいわゆるカットオーバーするための、インプリケーションは非常に時間がかかる、このインプリに対して時間をかけて、そしてカットオーバーは一気に行ってしまうという方法がとれたのではないか。今日においてというのも、またお尋ねの部分ではありますが、今私が申し上げるように、全国一カ所のオンライン登記専門の登記所指定庁を設ける、バックアップセンターはそれになり得るという考え方については、いかがお考えでしょうか。

河野副大臣 非常におもしろいアイデアだと思うのですが、現在でもオンラインと紙の申請が混在をしている状況であります。

 そうすると、現場でどういうことが起きているかというと、紙の申請をしていただくと、そこで職員が順番取りをやるわけですね。登記というのは順番が大事ですから、そのオンラインで申請されたものと紙の申請と、どっちが先かということがやはりしっかりできないといけない。そうすると、一カ所オンライン指定庁にしても、紙の申請を受け付けているところに何らかのネットワークを張って、そこで順番取りをやらなければいけないということもありますので、それならば、むしろゆっくりでも現在の方法でやるという選択もそう捨てたものではないというふうに思います。

馬淵分科員 私は、今のお話を伺うと、やはり、だからこそこうしたシステム化というのは一気にやるべきだった、こう思えてならないんですね。混在している状態というのは、これは最もある意味危険な状態なんです。

 私の経験の中では、民間の事業です、小さな会社でありましたが、システムを変えていくときに、並列の期間というのを、これをいかに短くするかです。もちろんリスク管理のために並列作業を行う、併用処理を行うということの期間を、一カ月、いや、一週間と短くしていくことを最大限詰めていく作業を行います。今お話しのように、これがずるずるずるずる並列処理が進むということが、実は私は、進まなくなっていく、あるいは利用が促進されない大きな要因になっているという現状があるのではないかということをお伝えしたいというふうに思います。

 こうした状況を考えると、やはり今日のオンライン申請の仕組みというのはあくまでも電算ありきで進んでしまったのではないかと思えてならないんです。本当に計画的に電算あるいはシステム化ということを考えたときには、まず業務プロセスの見直しから入られる。今やっているのは、要件定義をしっかりやらずに、まさに混乱した状況になっているんですね。私は、システムを導入するのであれば、要件定義というのは、これは現場の声なんです。現場の司法書士さんたちのいろいろな意見を聞いた上で、その仕組みを、業務プロセスをしっかり要件を押さえながらおろしていく、その中で初めて業務の改革ができるんです。このことをなさずして今日のオンライン化を進めていくのには、私はかなりの労力なりコストがかかっていってしまうということを懸念として申し上げますが、これについては御所感で結構です。

河野副大臣 今の法務局の業務を見ておりますと、オンラインに対応したように業務が変わっているかといえば、残念ながら変わっておりません。そこは非常に耳の痛い御指摘であります。

 それと、御指摘の、一気に変えるべきだということは、恐らく企業ならば社長の号令一下、変えられると思いますが、IT格差という言葉がありましたように、すべての司法書士さんあるいはすべての申請人が一気に紙からITへできるかといえば、そこはやはり政府として優しくなければいけないんだろうと思います。

 おっしゃるように、混在するところは危ないというのは現実の問題としてそうでありますが、要するに、オンラインに移行するのは、紙にペナルティーを科すのではなくて、オンラインにインセンティブをつけるというやり方でなければ、全国民を相手にする政府はできないだろうと思いますので、そこは少し違うんだと思います。

 しかし、その前に、オンライン化するならばまず業務を変えるべきだというところはまさにそのとおりでありまして、それができていたかといえば、残念ながらそこまでのオンライン化ではなかったと言わざるを得ません。

馬淵分科員 ぜひ、そこの業務の見直しがやはり私は根本にあるべきだと思います。行革特でもそのことを申し上げたかったわけでありますが、それをなさずして電子化はありません。

 時間も余りありませんので、最後の質問に移らせていただきます。先ほど河野副大臣の御答弁をいただいた部分、私の指摘について受けとめていただいたということで、次の質問に移らせていただきます。

 先ほど杉浦大臣がおっしゃった、オンライン申請については五〇%の実現を図るということで、これはもう資料の九に載せておりますが、法務副大臣を座長とするプロジェクトチームの取り組みが始まったということであります。

 さて、資料十には、河野副大臣のメールマガジン、これをコピーして載せさせていただきました。私も愛読者の一人でございます。その中には、河野副大臣が、登記オンラインプロジェクトチームを立ち上げということで、とにかく、オンライン申請をふやすことを目的として、法務省内でできることは何でもやる、他省庁に迷惑をかけても構わないからやる、こういう御決意を述べられています。これは私は非常にウイットに富んだ御決意を示されたものだと思っております。

 さて、こうしたプロジェクト、今日における実績はいかがでしょうか。これはちょっと端的に、数字のところだけで結構ですので。

河野副大臣 きのう二件目のオンライン申請がございまして、オンライン申請は二件でございます。

馬淵分科員 大変な決意をお持ちで進めてこられたこのプロジェクトであります。このプロジェクトで今日において二件、二カ月ほど発足以来たっているんでしょうか、四月十一日発足ということでございます。二カ月であれば不動産登記は七万八千件ほどになると。こうした中で二件というこの数字に対して、どのように今お感じでしょうか。

河野副大臣 非常にじくじたる思いでございます。

 最大の問題、まあ、問題は幾つかございますが、やはり住基カードの問題が非常に大きい。平塚の場合ならば、紙の証明書、印鑑証明をとるには五分、住基カードは一時間半。一時間半並んで待つインセンティブがあるかといえば、全くない、そういう状況でございます。これは何とか変えなければいけない。

 しかし、このプロジェクトチームをやったおかげでわかってきたことも幾つかございます。このプロジェクトチームには金融機関の参加をいただいている。むしろ、金融機関に積極的に協力していただいているところを指定してやっているわけでございますので、しっかりと準備をして、インセンティブを何とかつけて、一気に数がふやせるようにしてまいりたいというふうに思っております。

馬淵分科員 そのような状況というのは、私は非常に問題だと思うんですね。本当に強い決意を持って臨まれたプロジェクトの中でこういう状況が現状にある。

 そして、今回このプロジェクトの中では平塚と横須賀ということであります。この二つの拠点とされた理由は何でしょうか。端的にお願いできますか。

河野副大臣 法務省の人間に現地に行ってもらわなければいけませんので、東京から行けるところ。それからもう一つ、余り大きかったり小さかったりするとほかの参考になりません。それから、その管内の金融機関が協力をしてくれる。この三点が要件でございます。

馬淵分科員 私は、小泉総理のおひざ元と副大臣のおひざ元でスタートをされたということなのかなと思っておりましたが、今の三つの要件を示したのがこの二拠点である、そしてそこで、残念ながら今日まで二件ということであると。

 私は、このプロジェクトが、やはりある意味これはもう動いていない状況にある。ここは、フロッピーディスク申請というものについてはないという状況でありました。まず、もう一度これは一から考え直すべきではないのか。もちろん、進められるという強い御決意というのは私は十分理解しております。

 ただ、もう一方で、河野副大臣がこの秋に向けての御決意を示されたことによって、法務省内では一瞬このことについては立ちどまったということを見聞きする場面もございました。私は、こうしたことが、行政の手続そのものが、そうした政治のまた一方の別の、その力関係のところとは違うところでしっかり動いていかねばならない、ゴーイングコンサーンでなければならないということを強く思っております。

 ぜひ河野副大臣、このプロジェクトについて、じくじたる思いであるというお言葉はもうお聞きをしましたが、再度、このことに対しての強い御決意、どのように進めていくかという決意と、そして法務大臣、どうか最後に一つだけお聞かせください。法務大臣としても、このオンライン申請に対する今のお気持ちというのをもう一度最後に聞かせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

河野副大臣 このプロジェクトを立ち上げたときには、金融機関の中でこれをサポートする体制のあるところは一つもありませんでした。そういう意味からいくと、とまっているわけではなくて、着実に、指定されたところの金融機関はニーズがあったら対応できるようにはなってきたわけであります。

 九月に私がどこへ行くかはわかりませんけれども、だからといって法務省が特に影響を受けているようなことはないと信じてやりますし、オンライン、半ライン、フロッピー、いろいろなやり方があるわけですから、とにかくありとあらゆる方策をとって前へ進める、そういう決意でしっかりやってまいりたいというふうに思っております。

 次に御質問いただくときには二件というようなことがないように、しっかりハッパをかけていきます。よろしくお願いします。

杉浦国務大臣 私はコンピューターには弱いんですが、しかし、これだけ多額の投資をして準備しているものを、これは国民の負担でございますので、十分に生かすように精いっぱい努力していきたいと思っております。

 河野副大臣が、幸い、大変な熱意でやっていただいておりますので、河野副大臣をバックアップして頑張っていきたいと思います。

 五〇%につきましては、最初の先生の御質問にもっと強くお答えすべきだと思ったんですが、乙号の方が件数も多いんです。これから検討してまいりますが、これにインセンティブを与えて進めていくということが当然先行すると思います。しないと達成できないと思っております。

馬淵分科員 終わります。ありがとうございました。

斉藤主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時三十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.