衆議院

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第13号 平成14年7月10日(水曜日)

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平成十四年七月十日(水曜日)
    午後五時十五分開議
 出席委員
   委員長 渡海紀三朗君
   理事 岩屋  毅君 理事 桜田 義孝君
   理事 御法川英文君 理事 持永 和見君
   理事 木下  厚君 理事 松崎 公昭君
   理事 山名 靖英君 理事 塩田  晋君
      相沢 英之君    逢沢 一郎君
      石田 真敏君    江藤 隆美君
      上川 陽子君    小西  理君
      橘 康太郎君    谷  洋一君
      土屋 品子君    中川 秀直君
      額賀福志郎君    武藤 嘉文君
      村上誠一郎君    森岡 正宏君
      森田  一君    井上 和雄君
      金子善次郎君    今野  東君
      手塚 仁雄君    永田 寿康君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      山田 敏雅君    神崎 武法君
      大森  猛君    穀田 恵二君
      山口わか子君    中村喜四郎君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣         石原 伸晃君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十日
 辞任         補欠選任
  岩永 峯一君     上川 陽子君
  手塚 仁雄君     永田 寿康君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     岩永 峯一君
  永田 寿康君     手塚 仁雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 分科会設置に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 分科会における政府参考人出頭要求に関する件
 分科会における参考人出頭要求に関する件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書


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     ――――◇―――――
渡海委員長 これより会議を開きます。
 平成十二年度決算外二件を議題といたします。
 総括質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣府男女共同参画局長坂東眞理子君、総務省自治行政局長芳山達郎君、外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房審議官佐藤重和君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、厚生労働省老健局長提修三君、林野庁長官加藤鐵夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
渡海委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 それでは、冒頭の質問になりますが、何点かの質問をさせていただきます。時間の制約もございますので、どうか答弁は簡潔にお願いいたします。
 まず最初に、御承知のようにサッカーワールドカップが終了いたしました。日韓共催というまさに史上初の試みであったわけでありますが、私も、日本・ロシア戦、横浜の方に行かせていただきまして、直接会場で、サポーターの一人として大変興奮して応援をさせていただいたわけでありまして、貴重な体験をいたしました。韓国でもそうでありますが、日本でも、まさにこの一カ月、熱く燃えた、こういう時期でもあったわけでございます。横浜では、六万六千人というサポーターの応援がございました。本当に、大変日本のチームも頑張っていただき、ベストシックスティーン、こういうことになったわけであります。
 我が国の景気、経済情勢がこういう中で、何となくうつむきかげんで自信を失った、そういう中での今回の国際的なワールドカップ、これを機に何とか自信を取り戻し元気になってもらいたい、こういう思いを持ったのは私一人ではなかったと思います。
 そういう意味では、いわゆるW杯効果、サッカーのもたらす経済効果というものに大いに期待をしたわけでありますが、若干聞いてみますと、むしろ、サッカー観戦はチケットに制限があるわけでありますから、家庭でテレビ観戦ということから、結局は、家に閉じ込められた形で外出しない、その結果として、百貨店やレストランやあるいはタクシー業界や、今まで以上に売り上げは落ち込んだ、経済効果どころかマイナスのそういった現象もあったようでございます。
 ともかく、現時点でこの経済効果について数値的なことを云々することはできないかと思いますが、とりあえず予測として、景気ウオッチャーも含めて、今回のW杯がもたらした経済効果についてどのような御見解を持っているのか、お聞きをしたいと思います。
竹中国務大臣 ワールドカップがもたらす経済効果につきましては、民間のシンクタンク等々で以前からさまざまな試算がございました。これは、私自身は、余り大きなものと考えない方がいいのではないかということを申し上げてきたのでありますが、それこそ、サッカー場の建設から考えると、それもまた含めて効果があったということも事実であったと思います。
 現実に、短期の指標で何が観察されるかといいますと、五月ぐらいのテレビの売り上げが非常にふえたというのはあるようでございます。特に、新しいタイプのテレビが売れた。しかし、その反面、今御指摘がありましたように、景気ウオッチャー、街角の景気観測によりますと、むしろ、試合のある日は余り人が町に出なくなったということもありまして、売り上げが減ったところもある。
 これは大変難しい問題であろうかと思いますが、トータルで見てマイナスということはないのだというふうに思いますが、そんなに目立って、五百兆円のマクロ規模を誇る日本に対して、そんなに大きなインパクトがあったということでもないだろう。ただ、なかなかやはり、国民を元気づけてもくれましたし、そのような意味ではそこそこのプラスがあったという総括が現時点ではできるのではないかなというふうに思っております。
山名委員 さて、先ほども申しましたように、我が国の経済は大変な低迷を続けておりましたが、一―三月期の実質経済成長率というのは、前期比一・四ポイントふえました。年率換算で五・七%と、一年ぶりにプラスに転じたわけであります。しかし、その内容というのは、アメリカやアジアの好況に後押しされた、輸出中心、輸出好転の結果であって、我が国の自律的な回復ではない、こういうことが現状ではないかと思います。
 最近は、その景気を誇っていたアメリカで、相次ぐ粉飾決算、あるいは経営者幹部によるインサイダー取引、こういった疑惑が発覚をいたしました。企業会計への不信というものが市場に蔓延いたしまして、株式から預金や債券に資金が移動する、そういう事態が起きております。そうなりますと、ある面でアメリカ頼みであった我が国の経済の足をさらに今度は逆に引っ張るんではないかということが懸念をされます。
 いずれにしましても、月例経済報告を見ましても、依然として消費は低空飛行でありますし、企業の設備投資についても、まさに景気回復のエンジン役ともいうべき設備投資は低迷を続けている。明日発表される月例経済報告でも、景気認識を上方修正という形をとっていますけれども、依然厳しい状況であるという認識には変わりはないわけであります。
 そういった状況の中で、今、中小零細企業の皆さん、あるいは国民の皆さんを含めて、一体この景気はいつになったらよくなるんだということがやはりこの数年来の大変な関心事でもあるわけでありまして、マクロ的に見て、今後の景気見通しについてどういう分析、どういう認識を持っているのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 景気認識でございますけれども、委員御指摘のように、ことしの一―三月期は一・四%のGDPの増加がございました。このうち、〇・七が外需によるものであって、残る〇・七の分が内需によるものであるということで、外需に支えられながら、内需にも、在庫調整の進展、生産の持ち直し等、それなりの動きが出始めているというのが現状であろうかと思います。
 今後の動向でありますけれども、外需に関しては、御指摘のように、アメリカに関するリスク要因がございます。この点は非常に注意深く見ていくつもりであります。
 総じて、今申し上げているのは循環的な動きでございますから、循環的な動きに関してはよい方向を目指すことを期待しているわけでありますが、何といっても、ファンダメンタルな成長力のところで日本経済はまだ大変弱いものでありますから、その意味では構造改革をしっかりやっていかなければいけない。その意味では、今後どのぐらいで本格的な経済再生がなされるかということに関しては、引き続きあと二年ぐらいは集中調整期間として厳しい、その中で循環的な持ち直しを期待している、しかし、構造改革を進めることによって、その後に関しては、本来の成長力である二%近い成長に回復できるように持っていきたい、そのように考えているところでございます。
山名委員 我が国のこういう景気、経済状況が低迷している最大の要因、特にいわゆる消費、設備投資等の内需といいますか、この決定的な阻害要因、自律的回復を阻害している最大の要因は何なんでしょう。
竹中国務大臣 これは、やはり複合的なものであろうかと思います。
 一つには、金融部門、金融システムがなかなかうまく機能しない部分が残っている、したがって、日本銀行がベースマネーをふやしてもマネーサプライが十分にふえないという金融的な要因があろうかと思います。加えて、既に一九八〇年代から日本の根本的な競争力に陰りが見え始めていた。これは、規制改革のおくれ等々が主な問題であると思いますし、民間にできることを民間に任すということに関してもまだ十分に行われてこなかった、そういう問題もあろうかと思います。さらには、財政の赤字が肥大化して、将来に対する不安が消費心理を圧迫しているという点もあろうかと思います。
 これは、結局こうした問題を解きほぐすのが構造改革ということになろうかと思いますが、今申し上げたような要因を複合的に要因として認識することがやはり重要であるというふうに思います。
山名委員 確かに、そういった複合的な要因が折り重なって今の事態を招いている、こういう認識は私も共有をしているわけでありますが、もう一方で、やはりデフレの問題、これがいつまでもつきまとっておりまして、当然、これは複合的な要因のまた一つでもありますし、いろいろな形でリンクをしている問題であるわけで、単独要因ではないと思いますが、このデフレに歯どめがかからない、こういう事態の中で、やはりきちっとした対策というものを講じていく必要があるんではないかというふうに思います。
 政府・与党として、第二次デフレ対策というものを提言いたしまして、当面の経済活性化策の推進を図っていこうということで、都市再生あるいは規制緩和、こういったことによる経済活性化策、あるいは研究開発、投資促進税制の構築等の税制改革、あるいは不良債権処理の着実な実施による金融システムの対策、こういったことを柱にしまして提言をしたところでございます。
 前回の委員会でも、私は、いわゆる経済特区といいますか、規制緩和特区、それぞれの地域のニーズなり実情に合わせながら、規制緩和を図りながら一つの元気を取り戻す施策というものを今考えているわけでありますが、その質問もさせていただいたわけですけれども、こういう事態ではもう何でもありきで、どんどんやはり推進を図っていかなきゃいけない。そこに一歩引くようなことであってはならないし、私は、そういう意味でも、この特区構想は、しっかりと前を向いて、早期にこの体制を整える必要があるんではないかというふうに思っておりました。きょうはちょっと、特区のその後の進みぐあいについてお聞きしようと思っておったのですが、時間もございませんので、それはそれとして、また、ぜひ推進をお願いしたいと思います。
 もう一つ、金融政策の一つとして今問題となって、論点になっているのが、ペイオフの問題でありまして、特に来年の四月に、普通預金あるいは当座預金などが対象となりまして、この全面解禁ということになるわけであります。
 既にことし、定期預金等は実施をされておりますが、今、その定期預金のペイオフ解禁の中で問題が起きているのは、地域金融機関から大手銀行に資金シフトが起きている。当然、経営体力の弱い地域の金融機関においては、預金者の不安が大手にシフトされまして、預金流出という、こういう事態が起きているわけですね。日銀のマネーサプライ、この間発表されましたけれども、定期性預金が前年同月比で一三・九%減少し、逆に普通預金などの流動性預金は三七・八%増と過去二番目の高い伸びを記録している、こういう発表もございました。
 したがって、こういう状況の中で、普通預金等、この解禁については、地域経済、地域金融の経営に大きな打撃を与えますし、当然、決済性を持つ、こういう普通、当座預金でありますので、公共料金の引き落とし等のそういう決済性を持っているわけでありまして、それなりに国民生活に大きな影響も与える、地域の金融機関にも大きな打撃を与える、こういう中で、この来年のペイオフについての論点がいろいろと取りざたされているわけであります。
 私も、そういう意味では、今のこういう金融、経済情勢の中でそれを実施するのはどうなのかなというふうに思っておりました。やはり、そこは慎重に見きわめなきゃならないだろう。一方で、不良債権処理のめども立っておりませんし、なかなか自律的回復への兆しも見えてこない、こういう中での来年のペイオフ全面解禁、こういうことに対する御所見をお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 私も、ペイオフにこれを、いわゆる流動性の預金に対してまでこれを取り入れていくということについて、各方面からいろいろな御意見があることはよく承知をいたしております。
 ただ、ここでお考えいただきたいなと私が思っているのは、やはりペイオフというのは構造改革の一環でございまして、預金者までが金融機関の経営に対して厳しい目を向けるということの中で、経営者がそうした預金者に対して、その信頼にどうこたえていくかということの中で懸命な努力をすることがまず望ましいことで、我々が今回、四月から定期性の預金についてペイオフに踏み切ったのも、そういうことを展望してのことであったということでございます。
 したがって、これを、自分が厳しい目にさらされるのが嫌というか、それを避けたいので国が保障するというのを続けてくださいというような安易な道をたどったのでは、これは何のために我々が構造改革に踏み出しているかというのがわけがわからなくなってしまうではないか、私はそのように考えております。ですから、この厳しい預金者の目にどうこたえていくんだということが経営者に鋭く問われているんだということを金融機関の経営者たる者、まずよく考えてもらって、そのことにこたえていくという方策をそれぞれが努力して打ち出していくということが何よりも大事である。それを、すぐおしりを、親方日の丸ということでは、これは安易に過ぎる、こういうふうに私は思っております。
 ただ、そういうことを、私は自分のある種確信というか、そういうことでずっと金融行政を展開させていただいてきておりますけれども、ただ金融の場合に、それはペイオフであろうとなかろうと、ペイオフでなくても同じなんですが、金融システムの安定ということは常に頭に置いておかなければならない、これはまた金融の特殊な性格だろうと私は思っております。
 ですから、私は、まず経営者の皆さん、もうとにかく最大の努力をしてみてくださいよということでございまして、ただ私ども、金融当局者としては、金融システムの安定ということは常に念頭に置いて、その預金の動向等についてきちっとした目を向けているということを申し上げておきたい、このように思います。
山名委員 当然、金融システムの安定ということについては、基本中の基本にならなければ、それだけ国民の信頼性はかち得ないわけでありますから、それは当然必要だと思います。
 ただ、さっき言いましたように、競争力にさらして競争力に打ちかつだけのそういう自力というものを一方でつける、こういう癖をつけていくことは私も共感をするのですけれども、現実問題として、このペイオフの事態がどう地域経済に影響を与えるのか。一層中小零細企業に対する影響が厳しく出はしないのか、ここに一抹の憂いを持っておるわけであります。
 今、金融システムの問題が出たわけでありますが、当然これからの金融システムのあり方は、地方の、地域の金融機関にとっても、そういう競争原理の中で、いわゆる統廃合といいますか、合併を含めたこういう事態にも当然なろうかと思いますし、そういう点に対して、地域金融機関に対する金融システムのあり方を含めてどういった方向性を政府として考えているのか、これについてお聞かせいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 私ども、何か再編を頭から考えているかというと、そういうことは考えておりません。考えてなくて、それぞれの金融機関の個別の経営判断として一体ここをどう生き抜いていくのか、あるいは収益性を高めていくのかということを考えたときに、一つの選択肢として、やはり経営の形を、他の金融機関との連携なりあるいは合併なりというようなことを考えるということも十分あり得るでしょう。
 そういうときに、合併というのは必ずしもプラスの面ばかりあるわけじゃないということもあるし、また業務の再編というようなことになると、例えばシステムについても統合するということになると、またそこにコストがかさむというようなことがありますから、やはりそこに支援をする環境づくりというか、そういうものが必要でしょうということで、今その内容を検討させていただいておるということでございます。決して、頭から、何か再編が必要なんでしょう、そこに行くためにはということではなくて、個別の金融機関の経営判断として、そういう合併等を考える場合にはそれに対して支援をする、あるいはそれが容易にできるようなそういう環境づくりをしよう、こういう考え方を持っているということでございます。
山名委員 政府・与党の第二次デフレ対策の提言の中にもうたっておりますが、要するに、土地減税を含めた税制改革、年度内にそういった減税を実行する、こういう提言をしていますが、当然、年度内減税ということになりますと、やはり大きな壁として立ちはだかっているのが、常に小泉総理がおっしゃっているいわゆる国債発行三十兆円という枠ですね。これが大変なハードルになるわけでありまして、その点、この三十兆円という枠、これはいつまでも金科玉条のごとく持つべきものなのかなと私は思っているんです。
 そもそも、三十兆円というその枠の根拠もいま一つ私には理解はできていないんですが、この三十兆円という枠に対して、むしろこの枠があるがゆえにデフレを深刻化させた、そういう声も一方であるわけでありまして、今後、来年度予算等の問題もあるわけでありますが、三十兆円枠にこれからもこだわるのか、これについて財務大臣、いかがですか。
塩川国務大臣 失礼いたしました。
 三十兆枠にこだわらず年度内に減税したらどうだろうという御意見でございます。
 私たちも、でき得ればそういう事態に早く持っていきたいと思うておるんですけれども、三十兆円の枠というのは、やはり予算編成いたしますときの、現在の財政構造改革の一番バックボーンになっておる考え方でございますので、できるだけこの趣旨、精神は生かしていきたい、こう思っております。
 それに対応して、それでは減税でどう対応するかということでございますけれども、減税は、今この法案をまとめましても、どうせ実施は来年にならざるを得ないということになってまいりまして、法律の成立とかいろいろございますから。したがいまして、来年度において、十五年度において税制改正いたしましても、例えば研究開発であるとか投資減税とかいうのは、あるいは相続税もそうでございますが、一月一日にさかのぼって実施するということはできると思っております。そういう対応をすることによって、要するに年度にわたる減税を実施したい、そういう計画を今持っておることは事実でございまして、もう少し法律的にこれは検討してみたいと思っております。
山名委員 ぜひ御検討をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、小さな問題かもわかりませんが、図書館行政についてちょっとお聞きしたいと思っているんです。
 今、全国に公立、私立等図書館がたくさんありまして、それなりに図書館行政というのが充実をしているわけでありますが、自分が知りたい文献、資料が地元の図書館にない、検索して他府県にその蔵書があった、こういう場合、当然地元の図書館を通じて申請をするわけでございます。そこで、他府県の図書館から図書が送られてくる。その費用は自己負担になりますが。これが到着をして行きますと、地元の図書館のその場でなければ見られない、閲覧できない、そして複写もできない、当然貸し出しもできない、こういう事態が今あるんですね。
 これはかなりの専門書だと思うんですけれども、他府県の図書館でお借りをして、送られてくる、それをまた地元の図書館で閲覧をして、コピーしたいけれども、複写したいけれどもできないからもう一遍送り返して、もともと蔵書の図書館にコピーをお願いして、費用を払って送ってもらう。非常に手間暇かけたこういうやりとりが現実に起きておりまして、この問題は、IT関連のこういう時代に、本来の図書館のあり方そのものがまるで博物館的に硬直化しているんではないかという思いを私は持っております。もっともっと知りたい情報、文献が簡単に手に入り、著作権等の問題も一方でありますけれども、貸し出しも可能になるような、こういうシステム化を図っていかなきゃ図書館行政のあり方が問われていく、こういうふうに思っております。
 したがって、今後こういった問題にどういう対処をし、図書館行政の一層の充実を図っていくか、このことについて御所見を伺いたいと思います。特に、これからは子供の読書運動という形で、本を読む子供がだんだん少なくなってきた、そういう中で、学校の図書館を含め、地域の公立図書館等の一層の充実が求められている段階でありますので、図書館行政の今後のあり方について御見解をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 国民がいろいろな興味、関心を持って情報を集め、図書も読みながらみずからの知に対する欲求を満たしていくということは、成熟した社会にとって大変大事だと思っております。その意味で、今山名委員の方から問題提起されました公立図書館につきましてもできるだけ、これは地方公共団体において連携をとったりすればできる話でございますので、そのような話が進めばいいと思います。
 私どもとしましては、公立図書館につきましては、図書館法に基づいて、文部科学省において「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」といいますものを平成十三年七月に告示いたしました。この基準におきまして、これからの住民の高度あるいは多様な要求に対応しますために、資料の相互利用等の協力活動の積極的な実施に努めること、それから、その際には公立図書館の相互の連携等に努めるということもきちっと明記してあるわけでございます。
 お尋ねの貸し出しにつきましては、その基準の趣旨を踏まえて、各公立図書館が判断をしてネットワークをつくったりして、現に京都府のように、府段階と市町村とがきちっとネットワークをつくって、中での貸し借りが非常にやりやすいように工夫しておられる地方公共団体もございます。そのようなことを大いに各地でやっていただけたらと思っております。
 また、複写につきましては、著作権法の規定では、図書館はその図書館が所蔵する資料についてだけ利用者の求めに応じて複写できるわけでございまして、他の図書館から取り寄せたものについては複写をすることはできないわけでございますが、もとの図書館に複写を依頼したり、あるいは取り寄せた図書館から貸し出しを受けた利用者自身が私的利用のために、みずからの家とかそういう私的な利用のために複写を行うことはできるわけでございまして、この面は著作権法との関連がございます。
 いずれにいたしましても、今後、市町村立図書館のネットワークの構築はもとより、都道府県立の図書館につきましても、そういう情報ネットワークを構築して、情報の円滑な流通に努めるような方向で私どもの図書館行政も前進させてまいりたいと考えます。
山名委員 今後、ネットワークシステムを含めて、一層の図書館行政の推進を図っていただきますようお願いを申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
渡海委員長 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 石原大臣が六時半から急用がございますそうで、先に質問させていただきますことを委員の皆様にお許しをいただきたいと思います。
 私の方からは、公務員制度改革について御質問をさせていただきます。
 国家公務員に対する信頼と評価は、最近では落ちるところまで落ちたという感がいたします。逮捕された鈴木宗男衆議院議員と外務省官僚の癒着、あるいはBSE発生問題、二十年や三十年も放置してチェックしていなかった食品添加物違反事件、エイズ薬害事件であれだけ大事件を起こしたにもかかわらず、またもC型肝炎でもチェックしていなかったなど、市民の命の安全を無視した不詳事件は最近も枚挙にいとまがないという状況です。人事院が公表した国家公務員白書は、こうした厳しい現実を直視し、国民全体の奉仕者という原点を再確認するよう訴えています。
 そこで、私は、公務員制度改革について、大綱の言う改革の基本的視点とは何かということについて具体的に御質問申し上げたいと思います。
 まず最初に、この公務員制度改革について、私ども社民党は、先日、国家公務員の採用試験制度の改革について行革事務局と人事院からそれぞれお考えをお聞きいたしました。私も出席いたしましたが、その中で、合格者数を大幅に増加するという行革事務局の方針が議論の焦点となったわけです。
 昨年十二月に閣議決定された公務員制度改革大綱では、1種試験の合格者数を採用予定数のおおむね四倍程度を目途に増加させる、そして、2種、3種試験についても必要に応じて合格者数を増加させるとしています。しかし、私は、このような方針については賛同できません。その理由は大きく二つあります。
 まず第一に、合格者数を大幅に増加させる場合には、合格者の採用に政党、政治家が介入する余地が広がったり、縁故採用や情実採用につながるおそれがあると思っています。これは大変問題であると私は考えています。
 実は、私も自治体に働いていた経験もございますし、採用試験を実際に行った経験もあるわけですけれども、やはり、役所に口ききをしたり圧力をかけたり、特に政治家が自分の支持者のお子さんを採用するように働きかけるような場面は、聞いた話がたくさんございます。採用をめぐってわいろが飛び交うようであれば、やはりこれは役所も大変困難ですし、市長自身も迷惑をするのではないかというふうに思っています。まして国家公務員、特に1種職員となると、さまざまなところから各府省への依頼が行われ、情実任用の温床となるおそれが高いのではないかと思っています。
 したがって、合格者をふやすことについて私はもっと慎重であるべきだと考えておりますが、この点につきまして、最初に人事院総裁の御見解をお聞きしたいと思います。次いで、石原大臣の御見解をお願いいたします。
中島政府特別補佐人 その点につきましては、今回の国会でもいろいろな議員の方から御質問がございました。今先生がおっしゃるような問題の指摘もございます。
 それ以外に私たちが今まで拝聴した意見としては、一つは、地方大学といいますか地方に所在する大学、地方に在住しておる受験者というのが不利益をこうむることに結果的になるんじゃないかということを、地方大学の教授の人たちが言っております。結局、中央省庁に先輩が少ない、あるいはまた中央省庁の採用に関する情報が少ないということが、今でも苦痛の種になっておる。にもかかわらず、四倍ということになりますと、東京在住の学生というのがさらに多く合格して、地方の方にしわ寄せが来るだろうということを言っておるのが第一点でございます。
 第二点は、結局、四倍にいたしますと、四分の三の合格者が採用されないということになりますから、地方の方におる方は、どちらかといいますと採用されない可能性が高い、そういう試験にチャレンジしなくなるおそれがあるなという話を聞きます。
 私たちは、特定の大学に入学し特定の大学を卒業する方が公務員の中で多くを占めるというよりも、むしろ、いろいろな大学、いろいろな地方から出てこられる方に公務員になっていただく、そしていろいろな価値観、いろいろな経験をお持ちの方が公務員になっていただく方がいいだろうということで、地方の大学の先生方には、1種試験にチャレンジしていただくように学生に言ってくださいというお願いをしておりますけれども、そういう採用されない方が四分の三も出てくるということになると不安だという声を聞きます。
 それから、現在でも、1種試験に合格して、結局1種で採用されなくて、その方が2種試験に合格しているから2種で採用されたという方が出てきております。四倍ということになりますと、さらにそういう方が多くなるということになりますので、これは中央官庁の人事管理としてはかなり難しい問題を抱えることになるなというような話を現在聞いております。
 そういうことを集約いたしますと、やはり四倍への増加というのは、相当慎重に検討して取り組まなきゃならないんじゃないかというふうに現在考えております。
石原国務大臣 山口委員にお答え申し上げます。
 現在の採用試験、もう委員御承知のことだと思いますが、試験自体が知識を非常に偏重したもの、あるいは試験に受かるために予備校がはびこって、大学二年、三年のときからその勉強をしなきゃいけない、すなわちテクニカルになっている、こういう批判があることは御存じのことだと思います。
 この結果どういうことが起こっているかというと、今人事院総裁が地方大学の方々の受験のお話をされましたけれども、せっかく大学に入って勉強しようと思っているのに、次は公務員になるためにまた受験勉強にかなりの労力がかかってしまう、そしてその結果、それだったらというようなこと、そしてまた、委員御指摘のように、最近とみに公務員の方々に対する信頼感が欠落しているということで、では受験するのをやめようというような事実があるんだと私は思います。
 そして、筆記試験中心の試験では必ずしも今の行政ニーズに適した人材というものを確保できなくなった、言葉をかえますと、民間企業にこれだと思う人間をとっていかれるというような懸念が示されているんだと思います。そして、これまでは前例を割と見習って判断をしてきたわけですけれども、複雑多様化しているような行政課題に対応していくためには、意欲と能力を持った有為な人材を広いすそ野から公務部門に積極的に引っ張ってくるということが喫緊の課題となっているんだと思います。
 新規学卒者の採用に当たっては、従来にも増して多様で質の高い人材を確保して、そしてその方々に、本当に公務員であるならば国家国民のために奉仕するんだというような観点をしっかりと持っていただいて育成していくということが重要だと考えております。
 このため、試験内容を改善させていただくとともに、各府省が、より多くの候補者の中から、試験だけではなくて総合的な人物評価に基づいて主体的に採用者を決定できるよう、試験合格者の数を増加させるというふうに整理をさせていただいたわけであります。さらに、新人事制度におきます位置づけや、今度法科大学院、いわゆるロースクールが新設されます、こういうものでの対応など、採用試験制度の抜本改革のあり方について、現在内閣を中心に検討をさせていただいているところでございます。
山口(わ)委員 ただいまの大臣の答弁ですと、ますますわかりにくくなるのではないかというふうに思っています。それだけ大変な試験制度でしたらなおさら、四分の三も受からない人が出るということでは、やはり国家公務員に対する学生の信頼感というのはなくなってしまうんじゃないでしょうか。むしろ、優秀な人材を集めるんだったら、私は、1種、2種、3種と別々に採用試験をやるとか、四分の三も落としてしまうような試験をやるということではなく、本当に優秀な人材をどう集めてくるのかという視点に立って考えるのであれば、こういう採用試験は私はむだであるというふうに思っています。
 先ほど人事院総裁がおっしゃられましたけれども、やはり地方の大学にいますと、本当に中央の情勢というのは非常に疎くなりますし、四分の三も落ちちゃって、私ももしかしたら落ちちゃうんじゃないかなというふうに思えば、なかなか優秀な人材であっても採用試験にチャレンジしなくなってしまうということもありますので、この辺については、やはり今回のこの採用試験制度については、もう少し、本当に学生の立場に立って、そして国家公務員がこれから住民の皆さんの、本当に全体の奉仕者としてきちっとサービスができるような体制にどう持っていくのかということをやはり議論していただかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。
 二つ問題がありまして、今二つともお答えいただきましたので、三番目に移りたいと思いますが、先日、行革推進事務局と人事院を呼びましてお答えを聴取したんですが、もう一つ私の印象に残ったこととして、やはりキャリアシステムの見直しがございます。
 キャリアシステムにつきましては、二十二歳の時点で一回だけの試験で将来が決まってしまうということは、今の世の中には受け入れられないのではないかというふうに思っています。人事院からは、その場で、キャリアシステムについての見直しの検討を行うとのお考えも示されましたけれども、この点について、改めて人事院総裁の御見解をお聞きしたいと思います。
 また、石原大臣はどう考えていらっしゃるのか、基本的に現行どおり維持するということになっているようですが、私はもっと白紙から議論するべきではないかというふうに思っていますので、お答えをいただきたいと思います。
 まず、人事院総裁からお願いいたします。
中島政府特別補佐人 このキャリアシステムにつきましては、かなり以前から、ジャーナリズムとか、学者とか、その他評論家等、いろいろな方面から指摘されておりました。私もそういう問題意識を持ちまして耳を澄ませておったわけですが、今般こういうような議論が行われるであろうから、私も与野党の国会議員さんの中でかなり政策通と言われる方々にお会いして、御意見を賜ってまいりました。
 そうしますと、私は十人ばかりの方から意見を聞きましたけれども、一人の方を除きまして、ほかの方はみんな、この際、このことについて検討すべきだという御意見でございました。非常に強くそのことを主張された方も何人かいらっしゃいました。したがいまして、これについての再検討というのは、私は皆様方に御報告しなければならないなというふうに考えております。
 ただ、御了解いただきたいのは、中央官庁というのはやはり政策の企画立案というのが非常に重要な仕事でございますので、その政策の企画立案をする中核的な人材というものを選抜してそれを養成するということはやはり非常に重要なことでございますが、現在のキャリアシステムというのは、やはり御本人に特権意識を持たせるような結果になってしまった、そしてまた、2種、3種で役所の中で仕事をしておられる方に不公平感を生むようなことになったというこの二つの点において、非常に問題を多く抱えておる。そして、特権意識を持っておるということによって不祥事の遠因になる、あるいはまた天下り問題がそこに指摘されるようになったということでございますので、この問題については、広くいろいろな方に御意見を伺いながら検討していく必要があるだろうというふうに私は考えております。
石原国務大臣 ただいま委員御指摘されましたように、現行のキャリアシステムというものが私も限界に来ているような気がいたします。
 公務員制度改革大綱の中では、1種職員とあわせて、1種以外の職員も選考による集中育成の対象といたしまして、課長補佐段階まで集中的な育成を行う一方、計画的な育成終了後は能力主義による人事管理の徹底を図り、あわせて本省幹部職員への登用に当たっては厳正な審査を実施するなど、新しい人事制度を導入する中で、キャリアシステムに対して思い切った見直しを行っていこうと考えております。
 参考になりますのは、やはりイギリスのファーストストリームでございますか、あるところまではエリートとして抜てきされた人は昇進していくけれども、そこからは他の人たちと同等の競争をして部長に、あるいは局長になっていく。それによりまして、ただいま委員が御指摘されましたような、1種、2種、3種と言われているような試験区分によって将来が決まっていくような問題に対する弊害を除去していきたいと考えております。
山口(わ)委員 このキャリアシステムにつきましては、先ほど人事院総裁がお答えになりましたように、さまざまな問題があります。特に、役所のセクショナリズムというのはこのキャリア制度と非常に深く結びついていますし、公務員の1種試験合格者を幹部候補生にするというところに特別扱いする問題があるわけですから、その1種試験に合格した皆さんが次長、局長というふうにピラミッド型になるわけでして、そういう制度の中で本当に意欲のある、有能な、実績のある2種、3種の職員がチャレンジできる状況には決してないというふうに思います。
 私は、むしろこういうキャリア制度は廃止するべきであるというふうに思っていますが、大臣の御答弁からは廃止という言葉はちょっと見えなかったように思いますので、引き続きお考えをいただきたいと思います。
 続きまして、能力等級制度についてお聞きをしたいと思います。
 今回の公務員制度改革では、職員を職務遂行能力に応じて等級に格付する能力等級制度を新たに導入しまして、給与や人事配置などの基準をつくるというふうになっています。
 そこで、石原大臣にお伺いいたしますが、新たな制度では給与は何に対して支給されるのでしょうか。給与というのは、言うまでもなく、勤労の対価ですが、この能力等級制度のもとで給与、特に基本給は能力に対して支給されるのでしょうか、それとも仕事に対して支給されるのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
石原国務大臣 これはもう委員も既に御承知なことだと思いますが、現行の公務員制度では、採用試験区分、先ほど来議論になっています1種、2種、3種、あるいは採用年次等を過重に重視した結果、硬直的な任用や年功序列的な、年が上がっていくごとに給与が上がっていくといったような処遇が見られる、そして、それによって競争が阻害されるといったような問題が生じていると思います。
 このため、今回の公務員制度改革におきましては、新たに委員御指摘の能力等級制度を導入いたしまして、これを基礎として任用、給与、評価等の諸制度を構築することとしております。これによりまして、これまで硬直的と言われてきました年功的に昇任したり、給与を決定するのではなくて、個々の職員の能力や業績を適正に評価した上で、真に能力本意で適材適所の人事配置を推進しますとともに、能力、職責、業績を適切に反映した、インセンティブに富んだ給与処遇というものを実現するというふうにしております。
 具体的に申しますと、職員の能力給等に対する基本給、課長等の職責に対応する職責手当、及び民間におきますボーナス、賞与に相当する業績手当などを主な構成要素とする新たな給与制度というものを導入しようと考えております。
 また、事務次官、局長等のいわゆる幹部と言われる方々については、年功的要素を排除いたしまして、職責反映をより徹底させるために年俸制を導入し、個々の職務のその時々の行政課題の重要度、そしてそれがいかに、どのぐらい複雑であるのか、そしてそれを達成するのにどれだけ困難が予想されるのかといったようなことを考慮して、あらかじめ定められました明確な基準に基づいて支給額を弾力的に決定することとしているところでございます。
    〔委員長退席、岩屋委員長代理着席〕
山口(わ)委員 私は給料というのは、基本給というのはあくまでも生活のための給与だというふうに思っています。ですから、能力によって給料を払うということは一体どういうことなのか、理解がちょっとできないわけですね。
 例えば、能力が低ければ課長であっても課長の給料が出ないということになるんじゃないでしょうか。職務を遂行する能力というのは一体どういうところで判断するのかということは、非常に難しいことだというふうに思います。現在は職務給ですから、職務に対して給料が支給されているわけですが、この職務を遂行する能力と職務というのは具体的にどこが違うのか、私は非常にわかりにくい御答弁だったというふうに思います。
 もうちょっと詳しく説明をしていただきたいんですが、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、やはりこのことにつきまして、どういう基準でだれに評価をされるのだろうかということを含めて、人事院の総裁から御意見を伺いたいと思います。
中島政府特別補佐人 現在の給与制度、それが非常に硬直的で年次主義的な運用しかできないとか、あるいは能力に応じた給与の支給はできないとかいう話をよく聞きますけれども、公務員の給与についてかなり詳しい方々は、最近ジュリストでこのことについての対談も出ておりますけれども、その中でも、現在の制度でもそれはできるんだということを言っておられます。むしろ運用の問題といいますか、各省の人事当局の運用の仕方の問題だということが指摘されておりますので、そこらは先生もよくごらんになっていただきたいというふうに思います。
 ただ、今いろいろ議論されておりますけれども、結局、民間企業の中で、先進的な民間企業も能力給ということでスタートいたしましたけれども、その能力の評価というのが非常に難しいと。いろいろな仕事もございますし、いろいろな出先機関もございまして、そこで職務も異なりますので、能力の評価が難しいというので、能力給というよりもむしろ仕事給といいますか、どういう種類の仕事、どういう困難性があるか、どういう責任があるかという、仕事給プラス業績給といいますか、そういうことで現在給与制度というものが定着しつつあるんじゃないかというふうに見ておりますけれども、ただ、いろいろな反省期にございますので、しばらくそれを見てみる必要があるなというふうに思います。
 これはなかなか難しい問題でございまして、能力給というものを本当に定着させるためには、能力評価基準というものをつくって、それがいかなる職場にでも適用される、そして適用される公務員にとっても納得性のあるものであるという必要がございますので、この能力給の定着というのはかなり難しい問題だなというふうに私たちは今見ております。
山口(わ)委員 人事院総裁のお答えなさったこと、本当に私もそのとおりだというふうに思っていますし、能力を評価するということは非常に難しいことなんですね。
 能力というのはプロセスだと思うんです。結果ではないわけですから。その人がどういう仕事をしたのか、どういう成果を上げたのかということを見て、ああ、この人はやはりいい仕事をしてくれるというふうなことで評価をするんじゃないかというふうに思うんですね。
 ですから、職務を遂行する能力を評価するということは、私はどうやってやるのか見ものだというふうに思っているんですが、私は、やはり職員が本当に意欲を持って、そして生きがいを持って、本当に国民のために働くような公務員制度改革をしない限り、再びキャリアがいろいろなことで騒がしていただけるようなことになってしまいますし、やはり評価をするのもキャリアじゃないでしょうか。キャリア自身が自分の職業倫理をきちっとしないで、下の職員を評価するなんということは私はできないような気がしますので、大臣、そこのところはもうちょっとちゃんと考えて、本当に公務員にとって、国民にとっていい制度にしてほしいというふうに思います。
 私もまだたくさん質問がございますが、時間が来ましたので、またの機会にさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
岩屋委員長代理 次に、松崎公昭君。
松崎委員 総務大臣にまずお尋ねいたしますけれども、郵政では随分いろいろやりましたが、今度は住基ネットの問題を少しさせていただきます。民主党の松崎でございます。
 住基ネットは、もうかなり話題にはなっております。私も、実は三年前の、地行にずっとおりましたから、この経過は十分知っております。
 そこで、あのとき、たしか審議を始めたころは公明党さんはまだ野党だったと思います。途中から与党になられたのかなと思っておりますけれども、そのとき、特に公明党さんの、極めて熱心でありました富田議員も先頭になって、この住民基本台帳ネットワークシステムはかなり問題があるんだということで、極めて熱心な審議をしておりました。
 最終的に与党に入られて、たしか与党との中での話し合いの中で、例の個人情報保護、これをしっかりと担保するよということで、十一年の六月十日に小渕総理みずからお出ましをいただいて、そこで、整備をするんだ、これは前提であるということを申したわけでありますね。そういう経過から、しかもいろいろ世間の、各自治体も含めて反対がある。
 それから、我々も審議中に、極めて危険性のある、世界でまれになる、しかもICチップをつけて、個人四情報とはいいながら、さまざまな情報が自治体を中心にして、また中央政府も、中央の各省庁もそういったものを生かしていく。極めてそれは便利だけれども危ない。そういうことで相当の議論があって、我々は最終的に反対しました。
 さて、これが八月五日にスタートだということでありますけれども、私は、この個人情報保護法案、これは、この前、福田官房長官は、既に提出したんだから政府は責任は果たしている、だからこの住基ネットシステムは動かしていいんだ、多分そういう御答弁だったとは思いますけれども、私はそうは認識しておりません。個人情報保護法案は、いろいろな意味で欠陥法案と言われております。ですから、これをつくり直しをして、そして国会で通した後にこの住基ネットは動かすべきである、そのように思いますが、やはりそれでも八月五日にスタートさせるんですか。
片山国務大臣 松崎委員は、私より経緯はあるいはお詳しいと思いますけれども、十一年の八月にこの法案が通りまして、三年以内に政令で定める日から施行、それが八月五日でございまして、その八月五日を目指して全国の地方団体、ずっと準備してまいりまして、もう目睫の間に迫っておりまして、これは法律で決めたことですから、やらないと法律違反になる。
 そこで、今の個人情報保護法との関係ですが、私は、個人情報保護法が通るのがベストだと思います。しかし、まだこの国会は会期が残っておりますし、今後どういう展開をするかわかりませんけれども、個人情報保護法成立のためには全力を挙げますが、仮にそれがそうはならなくても、法律としては別建てでございますし、政府としては最善の努力をしたということだと私は考えておりますから、これはこれでやらせていただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
松崎委員 今さら申し上げるわけでもありませんけれども、防衛庁の個人情報の保護が、まずいことをしてしまった、そういうことがこの前あったわけですね、漏えい問題といいましょうか。そういうことがあって、皆さん国民がやはり非常に心配している。
 しかも、たしか本文じゃありませんよ。附則の第一条第二項かもしれませんけれども、あのとき野田自治大臣も委員会でちゃんと言っているわけですね、法整備を含めたシステムを速やかに整えるんだと。もちろん、これはなかなか難しいですね。法律ではない、大臣なりあるいは総理大臣が来て答弁、国会でよくやる手ですけれども。どちらが重みがあるとかそういうことを言いますと、法制局が出てきて、それは法律ですと言うことに決まっていますから聞きませんけれども。
 私は、それだけ厳しい、危ないよということで、時の総理大臣が個人情報を保護しようという意思をはっきり示した、それはやはり守るべきであろう。これは国民のためなんですからね。であれば、幾ら法律がこうだからといっても、私は、そのくらいの、国民に対する安心感を与えるという意味では、最低限個人情報保護法案ができ上がるまで待つべきだろう、延ばすべきだろうと。
 ですから、御党の前政調会長亀井静香さんも、この前、超党派の議員連盟で、七月四日でしょうか、決起集会がありました。中川昭一元農相、塩崎さん、その他自民党七議員まで、反対するほかの議員さんと一緒に三年間凍結する議員立法に署名した。自民党の中だってそういう、危ないんじゃないかということをしっかり認識している議員がいらっしゃるんですね。また、日弁連も前々から反対しておりますよ。まして、アンケート調査も日弁連はやっています。これも非常に、四分の三が否定的であり懐疑的だと。地方議会も、延期を求めている採択をしているところが二県五十七市町村、まだそう多くはありませんけれども。そういう心配をしているわけでありますので、私はぜひここはしっかりと考えなきゃいけないと思います。
 さて、たまたま、坂口大臣がお見えでございますので、たしかこのとき大臣は政策調査会長でございましたね。ですから、三党合意、これはあったはずです。そのときには当然、政策の責任者として、個人情報保護法案をしっかりつくるんだということを三党合意されたと思うんですが、つい最近は、与党国対委員長会議で、七月八日ですか、通そうということになったそうでありますけれども、私は、責任ある、そして誠実な坂口大臣でありますので、その当時のことを思い浮かべながら、このまま通してよろしいんですかと個人的にお聞きしたい、そう思います。
坂口国務大臣 松崎議員には、いろいろとお世話をかけております。
 この住民基本台帳ネットワーク、そして個人情報保護法の問題が起こりましたときに、私、ちょうど政調会長をやらせてもらっておりまして、それで、そのときに私の方の党内も正直言って意見が分かれたわけでございます。それで、それをまとめるという意味からも、この住民基本台帳ネットワークをつくるに当たりましては、やはり個人情報保護法というのを成立させよう、同時にひとつ決着をしてもらおうということで提案をさせていただいたわけでございます。そうした中で、昨年でございますか、この個人情報保護法も国会に提出をされまして、そういう意味では信義を守っていただいたというふうに考えている次第でございます。
 それで、うまくそれが通過をするのかなというふうに思っておりましたら、いろいろな御議論があって現在に及んでいるということでございまして、願わくばこの法律が一緒に通っていただくことを私も念じております一人でございます。そういたしますれば所期の目的が達するのではないかというふうに思っている次第でございます。
    〔岩屋委員長代理退席、委員長着席〕
松崎委員 なかなかお答えしにくい問題かもしれませんけれども、私は、再々言いますように、与党の中にもやはり非常に心配をされている方々もたくさんいるんだと。そして、国民自身が、まず自治体自身が余りまだ準備されておりませんよね。
 ですから、そういう意味でも、法律ができたんだからもう当然なんだ、しかし、条件をつけたものができていなくて、それでいくということは、私は、やはり国会の場できちっとしたことをやったわけですから、ぜひやっていただきたい。我々はまた、これはまだ八月五日まで時間がございますので、超党派で頑張っていきたい、そんなふうに思っております。
 次に、きょうは、男女共同参画社会という極めて当然、ノーマルな社会を目指している、そういう基本法を踏まえながら今進んでいるということで、それはそれで、私は今までの、非常に日本の、男尊女卑であったとか女性の職場進出がしにくいとか、そういう中で、この男女共同参画社会というのは私も歓迎をする。
 ただ、私は、どうも最近は男女共同参画社会という概念の中に、ジェンダーフリーでありますとかフェミニストの方々、フェミニズムの考え方が少し入り過ぎてきているのかな、強調され過ぎているところが非常にある。
 これから幾つか例を申し上げるわけでありますけれども、結局、大人の社会であれば、いろいろなことで意見があって、ぶつかり合いながらいきますけれども、子供の社会、教育の面にこれがもし行き過ぎたりしますと、いろいろ影響を与える。そういう意味で、男女共同参画社会の、ある意味では、行き過ぎたということもないんですが、その中に入り込んでいるジェンダーあるいはジェンダーフリーの考え方、少し我々はチェックをしなきゃいけないんじゃないか、そういうふうに私は感じております。
 例えば、各自治体で、この男女共同参画社会を普及させよう、考え方を伝えようということでいろいろやっておりますね。この前、「正論」の八月号に「団地妻ユキの闘い」ということで、ある女性が、各地区でやっている共同参画のシンポジウム、これが非常に行き過ぎていると女性が感じると。例えば、日本では非婚母子はやっと一・五%になったばかりだとか、何かいかにも非婚母子を奨励するような内容があったり、それから、いい妻、いい母となるよりも、まず自分が一人の女性として意識することから始めようとか、非常に行き過ぎていると。
 そこで、官房長官でしょうか、各自治体での男女共同参画社会の普及のためのさまざまな行動に対して、少しジェンダーフリーの過度の考え方が入り込み過ぎていないか、そういう心配をしているんですけれども、そういうことは把握されていらっしゃいますか。
坂東政府参考人 地方公共団体におきまして、男女共同参画ということでいろいろな活動を、地方分権の時代ですから、それぞれ工夫しながらやっておられるというふうに私どもは考えております。
松崎委員 何ですか、それ。要するに、そちらでは管理というかチェックもしていないということね。分権だからもう任せっきりということですね。
坂東政府参考人 私どもでは、基本法の精神が十分に理解され実施されるように、いろいろな情報提供ですとか努力はしておりますが、直接事業をするとか、直接の広報活動のための補助金を出すとかということはしておりません。
松崎委員 分権時代ですから、それはそれでよろしいと思いますけれども、後ほどまた、中央省庁も関与しているということでお話しします。
 教育の場所もそうですけれども、男女共同参画のいろいろな書物の中でも、男らしさ、女らしさ、性差を象徴的に扱っています。私は学者じゃありませんけれども、最近の時代は逆に個性を尊重する時代だ、逆に言えば性差を認める時代でもあるんだと。昔の時代に戻すという意味じゃないんですよ。ある意味では余りにも男女平等、平等は結構なんですけれども、それが行き過ぎますと、差別と区別が一緒になっちゃったり、非常にその辺が今行き過ぎているというふうに考えております。
 私は、これからは個性を尊重する時代なんだ、性差を逆に認める時代ではないか、そんなふうに考えて、そういう視点からやはりこれからジェンダーフリーのことも考えていかなければいけない、そんなふうに思っておるんですが、大元締めの官房長官はどうなんでしょうか。ジェンダーフリーを含めて、この男女の性差というものを強く出していく、そういう動きに対して、私は、そうじゃない、これからは逆なんだということを言っておるんですけれども、何かお考えがあれば。
福田国務大臣 そもそもジェンダーフリーという言葉ですけれども、この言葉はくせ者でもあるんだろうというふうに思うのです。この理解の仕方、これは主張する方々により、またそれを使う人、いろいろな場合にその意味が違ってとられることもあり得るんだろうというふうに思っております。
 先ほど地方分権という話がございましたけれども、やはり地方も、地方によってこの考え方が違うかもしれぬということはありますね。私の県だと、かかあ天下なんという言葉、もう最近はそういう言葉は使いませんけれども、そういう言葉もあった。それで、そういう言葉を使わない県もあったわけでございまして、それは女性の立場というか、そういうものについての認識が地方でも違うんだということの一つの証左ではなかろうかな、こんなふうに思っております。
 ただ、このジェンダーフリーということでもって、おっしゃるようにすべてフリーだということで考えるべきかどうかということについては、これはおのずから限度がある分野があるのではなかろうかというように思っております。例えば民族の伝統とか文化とか、そういうものを侵す、もしくは破壊するとかいったような、そういう部分でジェンダーフリーというふうなことで何もかも一緒くたに考えていくということは、これはできないんじゃなかろうかなというふうに思っております。
松崎委員 なかなかこの分野は男性は難しい、発言を気をつけながらやらないといけないとは思っておりますけれども、見ていますと、若干フェミニズムの行き過ぎといいましょうか、今の傾向、女性が社会進出する、それは産業社会からいっても当然なことであります。そして、女性が自立して仕事を持っていく、これも正しいことでしょう。
 ただ、少し行き過ぎているのは、どうも青い鳥コンプレックスなんてあるんですね。母親が日常生活に幸せがないんじゃないかと思ったり、それから、自己実現ができないとどうも阻害されているんじゃないかとか、それで女性はどうしても母を捨てたり妻を捨てて外へ外へというような面も若干あるというふうにも聞いております。
 要するに私が言いたいのは、その影響が、子供の世界、特に母性あるいは、父性はこれから家庭生活、子育てに参加していくんですけれども、そういう母性の問題とか、特に三歳児神話と言われている、神話と言うこと自体が本来おかしいのでありますけれども、そういう部分に非常に強く出過ぎて、そしてそれがいろいろ子供に影響して、今、現代社会のさまざまな子供に対する、子供の上に押しかかっている、キレる問題でありますとかそういう問題に全部影響が出ている、私はそういうふうに思っているんですね。
 それで、実はここにありますように、この前四月に、うちの山谷議員が二回にわたりまして使いましたが、質問しましたね。「未来を育てる基本のき」という、これは文部科学省の委嘱事業でございます。これは社会教育指導者向きのものでありますけれども、この中にはっきり、子育ての、三歳までは母の手でということが神話なんだ、合理的な根拠が乏しい、そういう言い方をしているわけですね。
 こういうのを見ますと、どうも政府が関与しているところで、男女共同参画から始まった話には違いないんですが、このジェンダーフリーという視点から強くその辺を出し過ぎている。本来私どもは、三つ子の魂を言い出すわけではありませんけれども、三歳ぐらいまではしっかりと子供を育てろ、しっかり母親を中心として育てるべきだというふうに教えてもらってきているんですよね。だからそういう意味で、私は三歳児神話というのは神話ではないんだ、そう思っておりますけれども、これは多分、平成十年の厚生白書を中心とした表現を根拠に書かれたのかと思いますが、これは文科省の方でバックアップしたものであります。これに関して、文科省の方の三歳児神話に対してどのように、本当に神話だと思っていらっしゃるのか、お聞きをいたします。
遠山国務大臣 平成十年版の厚生白書におきまして、今お話しのように、「三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。」という旨の記述はございます。子育てにおきまして母親の役割が重要であることは申すまでもないわけでございます。一方で、母親と子供の過度な密着といいますものは、それはそれで母親のストレスになりましたり、育児不安や子供に対する虐待などの問題をはらんでいるという指摘もございます。
 私は、三歳になるまでは子供たちに四六時中母親が密着をしてという説は本当にいいのかなと思わないでもないわけですが、私も子育ての経験もございますが、短い時間であっても十分に愛情をかけて母親が子供と接触することによって、子供は、自分を本当に愛情を持って見てくれている人がいる、そのことが非常に大事であるわけでございます。
 そのために、母親だけに子育てを任せるのではなくて、父親の子育てへの積極的な参加、あるいは地域の子育て支援者等による支援など、母親の重要性は前提としながらも、社会で子育てをしていくことが重要であると私は考えております。
松崎委員 全体的にいきますと、三歳児神話的なものは余りどうかという答えなんでしょう。しかし、愛情のかけ方は大事なんだということなんですね。
 私は、別にべたべたしてというんじゃない。私も四人子供がおりまして、女房が育てているのを見ていますから、もちろん今の女性は四六時中べたべたすることはないんですけれども、やはり子供に対する見詰め方、対峙の仕方という点では、何せ女性というのは、人類始まって以来、哺乳動物の一種でありますけれども、へその緒でつながって、特に母親とのつながりというのはおなかにいたときからちゃんと伝わっているんですね。
 だから、その延長線上でいきますと、やはり母親の存在というのは物すごく大きい。ですから、その辺は、私は、極力子育て、特に幼児期の大事なときはやらなきゃいかぬという立場で今聞いているわけです。
 もう一つ、「はじめの一歩を家庭から」という、やはり男女共同参画の問題で、平成十一年、文部省の委嘱事業で、国立婦人教育会館、これも出していらっしゃいますけれども、この中の表現も、もちろん頭から否定はしておりませんけれども、もう少しこれは、母性だとか人を育てる喜びだとか、そういうことも表現すべきだと思うんですよね。
 どうしても、三歳児神話をベースにしながら、余り女性を縛りつけちゃいけないみたいな、共同参画のレベルでありますから、この内容もそういう書き方をしております。三歳児神話からの解放、三歳児神話からの解放は男女共同参画社会実現のかぎであると。非常にトーンが、もちろんこれは男女共同参画をテーマにしたものでありますからしようがないにいたしましても、非常に誤解を招くというか、ここがオーバーに書かれ過ぎている。
 それから、財務省の印刷局が編集したというのがおもしろいんですね。印刷局が印刷したのかなと思ったら、印刷局が、印刷じゃないんです、編集して、「男社会の常識・非常識」という、これは男女共同参画会議の岩男壽美子さんの監修です。
 これなんかも、これはたしか財務省から資金が出ているのかどうか、後で答えていただきますけれども、先ほどの「はじめの一歩を家庭から」も多分、これは後で言ってください。文科省の委嘱事業ですから、お金が出ているのかどうかですね。「未来のき」は二百四十六万出ていますね。「はじめの一歩」の方は出ているかどうか。
 それから、この漫画の育児と仕事というところ、これなんかも三歳児神話というか、三歳児の、母親が育てた方がいいよというんだけれども、いや、何の根拠もないというようなことを奥さんが書いている漫画なんですね。
 それから、男らしさ女らしさ、これも確かに、男はたくましくなきゃだめだなんということを私は言いませんけれども、女の子もおしとやかで優しくないとだめだというのは普通の常識なんですけれども、これも否定するような、これも含めて、私は、男は男らしくなくちゃだめだというんじゃなくて、男らしさの原点はやはり本来的なものでありますから、そしてそれはかなり多くの人が持っているわけでありますから、これは素直に認めればいいわけであって、それをいかにも否定するような書き方をしています。
 それから、夫婦の別姓の問題、これなんかは、まだ法律が通っていないのにもう別姓がいいというようなことを書いてあるんですね。
 こんなことで、私は、政府がお金を出したり関与しているところで、少しどうも我々の常識では行き過ぎている、そういうところがあるんじゃないかと思うんですけれども、これは、たまたま財務大臣いらっしゃいますので、どうでしょう、こういう考え方。個人としても、どう思われますか。それから、どのくらいお金が出ていますか。
塩川国務大臣 私は、今、これは秘書から預かって、松崎先生の質問があるだろうと三枚ちょっとあったんですが、この程度のことだったら常識的な表現じゃないかなと思うたりいたしております。
 なお、この本につきましては、印刷局へ問い合わせましたら、印刷局の事業としてこれを発行したので、政府としては補助金は一切出ておりません。五千部刷ったそうでございますが、順調に売れたそうでございまして、人気がよかったのかなと思うておりますが、それほど偏向しておるようには思っておりません。
松崎委員 受けとめ方の違いでありますから、それはそれで結構でございますけれども。
 それで、厚生労働省さん、先ほどの十年、ちょっと古い話で申しわけないんですが、三歳児神話、これは母子の問題をしっかりと扱ったなかなかよくできている白書ですよね。ですから、ここの部分だけ取り上げてどうかと言われるんですけれども、やはりその反対側にはちゃんとデータが、既婚女性の八八%は、子供が小さいうちは母親は仕事を持たずに家にいる方が望ましい、有識者でも、四五%が、三歳までは母親は育児に専念すべきだ、反対は三三%、そういうデータを同じページのすぐそばに出しているんですよね。だから、この辺、私はどうも納得のできない書きぶりだなと思うのですが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、平成十年の厚生白書におきましては、「三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。」こういうふうに書いているわけでございます。
 これはかなり年齢によって受けとめ方は違うと思うんですが、先生はまだお若いですけれども、私のような年齢になりますと、私たち、自分の若いころを振り返ってみますと、やはり母親と一緒にいたものですから、何となくそれに引かれるわけでございますけれども、しかし最近は違うということでございましょう。
 一九六〇年代に広まりました三歳児神話というのは、これを後でずっと見てみますと、明確にそれを肯定する根拠も否定する根拠も見当たらないというのが事実でございます。母親と子供の関係というのは、お互いに密着しているところに新しい人間性が育つということもあれば、密着し過ぎて弊害を生むということもございますし、そこはなかなか一概に言いにくいことだというふうに、率直に私はそう思っております。
 でありますから、この三歳児神話というのは、合理的な根拠ということになりますと、なかなかそこは明確に言えないというのが現実ではないかというふうに思っております。
松崎委員 ここに「幼児教育と脳」という、沢口さんという北海道大学の教授が、これは認知脳科学の専門家でございますね。ほかにもいろいろ三歳、幼児期の母親のあり方、そしてまた母親が特に幼児育成に与える影響というのはいろいろ学問的にあるんでしょうけれども、これは非常によく分析されておりまして、これは、まだ若い方なんですけれども、結局、結論的に言いますと、成長の、さまざまな知性とか判断力だとか自我だとか、そういったことを頭の前頭部分のところで全部やっていくらしい、そして、それが正常に発達するには非常に普通の環境が必要なんだと。
 その普通の環境というのは、まさにいろいろ、例えば集団の場合でありますと、いじめがあったりけんかがあったりいざこざがあったり、一見ネガティブな関係と思われるけれども、例えば餓鬼大将がいたり、家庭の中では兄弟がある程度いればそういうぶつかりがある。と同時に、協力し合ったり助け合ったりというポジティブな関係もある。要するに、この人は動物園の猿山と言っていますけれども、逆に、ぶつかったりしながら、また協力し合いながら、そういう普通の環境がないと、非常に子供たちに悪影響を与える、そういうことを、まあここは時間がありませんから、非常に学問的に脳科学の分野から分析をしております。
 これは、ここでこの先生の言っているのは、ゼロ歳から八歳までの間のそういうところに普通の環境、もちろんこれは普通の環境ですから、父性でありますとか母性だとか、そういうものもしっかりと入っているわけですね。ですから、絶対八歳までは、特に母親の母性の大切さというところからいったら常にうちにいてほしいというような、まあ皆さんから見たらきっとそれは偏っているというふうに思うかもしれませんけれども、こういう極めて科学的な分析をしている、そういうものもあるんですね。ですから、そういうことを考えますと、やはり三歳児あるいは幼児教育の母性の大切さ、そして母親がしっかりと育てていくということは、私は決して神話ではない、そんなふうに思うのです。
 これはいつまでも論争してもいたし方ありません。ですから、特に公的なさまざまな文章の中で、少し、共同参画社会のゆがみといいましょうか、ジェンダーとかそういう考え方が強く出過ぎますと非常に弊害が出るんじゃないか、そういうことを御注意申し上げたいということであります。
 そして次に、やはり山谷さんがこの前質問しておりましたが、「ラブ&ボディ」というのはこれまた大変問題がある。百三十万部配られたという、財団法人母子衛生研究会、これは厚生労働省の所管でありますけれども。これは実は、ちょっと読み違えますとピルを奨励しているみたいな、思春期の子供たちにピルはほとんどよくないということでいろいろな今データが出ていますね。特にイギリスあたりでは十年間で百人ぐらいピルの影響で死んでいる、そういうデータも出ております。ですから、このピルの問題は、しっかりと研究した上でやらないと、非常に思春期の子供たちに間違った情報を与えるんではないか、そういうことで山谷さんもずっと指摘をしております。
 そこで、私は、このピルの問題を、副作用、危険性、そういったものは、解禁して以来何年かたっておりますけれども、しっかりと検討されているかどうか。また、イギリスあたりでの先進国で非常に今いろいろ問題になっています。結果としては、合成の女性ホルモンですから、今、川に入って魚に影響が出ている、環境ホルモンの一つ、そこまで言われております。そしてまた、乳がんですとかそういうものの原因にも非常になりやすいというデータも出ております。その辺は厚生労働省は検討されておりますか、検証は。
坂口国務大臣 ピルが承認をされます前にもかなりこれは問題になったわけでありまして、そして、ピルを服用することによります副作用というものにつきましても、かなり審査をされたというふうに思っております。かなりな時間、歳月を要しているというふうに思います。
 それで、いろいろの調査をいたしましたその結果、これは使ってもいいということで承認をされたものでございます。しかし、使っておりまして、そしてそれに対する副作用等がありました場合には、製造業者に対しまして報告があり、そこからまた厚生省に報告をするということにしているわけでございます。
 御指摘になりますように、ピルを使用することによりまして、中には血栓が生じますとかそうした副作用があるということは、初めからというかこれを承認するときからいろいろ指摘をされていたわけでございますが、しかし、現在は大丈夫ということで承認になっている。しかし、薬でありますから、非常にこれは効果があるものでありますだけに、やはりどの薬にもありますように若干の副作用というものも考えなきゃならない。そのことは十分に注意をしていかなければならないと考えている次第でございます。
松崎委員 時間ですけれども、最後に、大臣は、この問題、かつて山谷さんからの質問でも、余り好ましくないんじゃないかというような答弁をしていますね。ここに書いてある、一%失敗。これはアメリカなんかでは失敗率五%となっていますね。ですから、どうも厚生労働と文科省が余り連絡はとっていないのかなと。こういうものを一番思春期に使っちゃいけないんですよ、ピルは。そこに、中学生が幾ら今、性が乱れているからといって、知らせることは結構ですけれども、もう少し正しく知らせないと大変なことになるんですよね、逆になるんです。だから、その辺は、どうも文科省は余りこれのことは知らなかったと言っていらっしゃるようですけれども、両省がやはりこの辺はよく連絡し合って、子供に影響を与えるんですからしっかりやるべきだと思うんですけれども、これ、最後、いかがでしょうか。
渡海委員長 時間が過ぎておりますから。
遠山国務大臣 今後、厚生労働省ともこういう問題について事前に話し合いというのを十分した方がいいなと私も思います。
松崎委員 終わります。ありがとうございました。
渡海委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。
 きょうは、去る七月四日処分が発表されました、中国瀋陽の日本総領事館の亡命連行事件についてでございますが、事件発生から処分まで約二カ月近くかかっているわけですが、なぜこれほど処分の発表がおくれたのか、その辺を御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 私は、処分につきましては、事件にめどがついた時点で全体を総括する中で再発防止を考える、その過程で処分をするということを、事件が発生をして記者会見をしましたときに申しておりまして、そういう意味で、ある段階で総括を再度して、そして再発防止策を考えるということが終わった段階で処分ということをいたしたわけでございます。
木下委員 今大臣の方から、きちんと総括をして、その上で処分という話がございましたが、では、総括をしたその中身について、報告書なりをきちんと出されていますか。本当に総括されているんですか。
川口国務大臣 その点につきましては、七月四日に記者会見をいたしまして処分を発表いたしましたときに、資料を二つ、三つですけれども、一つが処分の紙でして、そのほかに二つお配りをいたしております。そのうちの一つが「瀋陽総領事館事件の問題点」という紙でございまして、それぞれ、在瀋陽総領事館そして在中国大使館、外務本省ということで、どういう問題点があったかということを書いた紙を出させていただいております。
木下委員 私が言っているのは、問題点じゃなくて、事実関係についてきちんと報告書を出しているのかどうか。問題点は私も見ています。しかし、総括と言った以上、あの外務省さんが調査をした後、幾つかの新しい事実が出てきた、それに対してきちんと事実関係をもう一度総括する、その上で問題点が明らかになるわけであって、新たに出た事実についてきちんと総括をしていますか。
川口国務大臣 再度、あのときに起こったことを精査いたしました。そして、それを発表させていただきましたのが、「問題点」という形で資料で配らせていただいたということでございます。
木下委員 そうすると、今回の処分を見ますと、国家公務員法の懲戒処分は岡崎総領事だけ、あとは外務省内規による処分だけである。国民感情からして極めて甘い処分になっています。
 国家公務員法第八十二条では、懲戒処分について「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」と規定しています。事件当日、中国武装警官立ち入りに対して、例えば連行を許した二名の副領事、これは職務違反でなくて何でしょうか。職務違反じゃありませんか。違いますか。大臣、答えてください。
北島政府参考人 お尋ねの二人、馬木副領事及び宮下副領事につきましては、厳重注意処分にしたわけでございます。
 まず、馬木副領事につきましては、在外公館警備対策官として在瀋陽総領事館の警備の責任者を務めていたわけですけれども、同副領事は、事件発生の三週間前に着任したばかりでしたけれども、事件発生時に総領事館正門が一メートル程度開放されていたことを初め、結果として、総領事館の警備体制が不十分であったことについて責任があるというふうに認めたわけです。
 それからさらに、宮下副領事でございますが、同じく厳重注意処分でございましたけれども、総領事館の正門付近で女性二名及び幼児一名が取り押さえられた際、査証担当の同副領事は、亡命を試みようとしている北朝鮮関係者であるとは認識しておらず、また、当時の客観的状況に照らして同副領事がそう認識することは困難であったというふうに認めたわけです。
 他方、短時間のうちの出来事であったにせよ、北朝鮮からの男性二名が連行されたということについては、ウィーン条約上の問題点を踏まえ、異議を申し立てるべきであったというふうに考えてこうした処分にしたということでございます。
木下委員 あの日本の瀋陽の領事館で起こった後、中国の韓国大使館でやはり同じ事件がありました。あのとき、韓国の大使館員は体を張って、けがをしながら阻止したんです。ところが、日本の副領事二人とも、口では言ったかもしれない、しかしその事実関係もはっきりしない、帽子を拾ってにこにこしているような雰囲気があった。
 あの韓国の体を張った阻止行動に対して、職務怠慢でなかったとしたら何ですか、あれは。本当に、命からがら亡命を求めてきた人たちに対して、体を張ってでも阻止する。あの韓国の人たちのことを見たら、私は、はっきり言って職務怠慢である。もしこれを職務怠慢だとしないなら、大使館員なんか必要ないですよ。どうですか。もう一度答えてください。
北島政府参考人 あの際の責任につきまして、常日ごろから必要な対応策を講じず、また、問題発生時に適切な指示を部下に与えることができなかった岡崎総領事の責任が最も重いというふうに考えたわけで、二人の副領事につきましては、個別具体的な問題はあったというふうに考えますけれども、同時に、国家公務員法上の懲戒処分の対象となるような職務上の義務違反があったというところまでは言えないというふうに判断しまして、外務省の譴責に関する規則に基づいて処分したということでございます。
木下委員 そんな答弁ないですよ。すべての責任を岡崎総領事に押しつけて、十分な対応が、指導ができていなかったと。だったとしたら、大臣、あなた、責任をとりなさいよ。なぜきちんとした指導をしなかったんですか。あるいは、事務次官、責任をとりなさいよ。現場の人たちだけに責任を押しつけて、あとは傷がつかないように内規だけで済ます、こんなこそくなことをやっているから次々と事件が起こるんじゃないですか。
 去年から、外務省の職員の不祥事、見てくださいよ。二年間、何人処分されていますか。大臣、どうですか、そう思いませんか。きちんと答えてください。
川口国務大臣 今回の処分につきましては、その後のいろいろな方の御意見を伺っていますと、今委員がおっしゃっていらっしゃるように、軽いというふうにおっしゃられた方もいらっしゃいますし、また、法律違反がないのにもかかわらず重いではないかとおっしゃっていらっしゃる方もいらっしゃいます。この判断、処分について重い、軽い、いろいろな考え方が世の中にはあるというふうに私は認識をいたしております。
 それで、お尋ねの、私及び事務次官の件でございますけれども、私は、給与の二〇%一カ月を自主返納いたしました。これは、その組織のトップとして全般的な責任をこういう形であらわしたということでございます。それから事務次官につきましては、内規の中で一番重い厳重訓戒という処分、及び給与の二〇%の一カ月自主返納の申し出がありましたので、それを受けることにいたしております。
木下委員 私は、処分が重い、軽いなんて一言も言っていないんですよ。明確にきちんと、どういう責任があったのか。処分の重い、軽いを私は言っているんじゃない。責任をあいまいにしている、そこを言っているんです。
 ですから、今大臣が、私の給与も返上しました、自主返納しました、冗談じゃない。大臣は事件発生から今日まで、いわゆる在外公館の不可侵権に対して断固たる、あるいは毅然たる措置をとると言い続けてきた。二カ月たって、どのように中国に対応していますか。毅然たる態度、どういうことですか。もうおしまいですか、うやむやにして。これからどうやるんですか。ただ言い続けるだけですか。今何をやっていますか、中国に対して。はっきり答えてください。
川口国務大臣 六月の十九日に、タイのバンコックで、私は、トウカセン外務大臣、中国の外交部長ですけれども、とお会いをして会談をいたしました。そして、そのとき私から、この件、瀋陽総領事館事件をめぐる事実関係、これにつきましては、双方の立場は異なるといたしました上で、特に、中国側により我が国の総領事館の不可侵が侵害をされたということについては、我が国のずっと言っていた立場は依然として変わっているわけでは全くない、変化はない、この点について我が国の国内には強い意見があって、この点については中国もぜひ認識をしてほしいということを言いました。
 これに対しまして、トウカセン外交部長からは中国側の従来の立場が示されたわけですけれども、一方で、両国は、日中の関係の大局を踏まえて、この件については冷静に対処をしていくことが重要であるということを確認いたしまして、その上で、これにつきまして再発防止ということが重要ですので、領事条約、協定の可能性を含めまして、再発防止策について両国の外交当局間で議論をしていこう、協議をしていこうということで合意をいたしました。
 したがいまして、我が国は、中国側によりまして我が国の総領事館の不可侵が侵害をされたということに関する主張は毅然として貫いていくという立場に変化はございません。
 いずれにいたしましても、この件については、両国の関係の大局を踏まえて冷静に対処をしていく考えでおります。
木下委員 冷静、冷静、あるいは友好第一ということで、この問題をうやむやにしようと。大臣は、謝罪を求めると言ってきたわけです。謝罪を求めると国民に約束してきた。これが果たせなかったら、大臣、給与の二〇%を自主返納、そんなものじゃ済まないですよ。やはり大臣みずから、国民に約束したことが守れなかった、力がなかった、責任をとってもらわなきゃいけない。その覚悟はできていますか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、この件についての我が国の立場は変わっていないということでございまして、両国の関係の大局を踏まえて、両国で冷静に対処をしていこうということを話をしたわけでございます。
木下委員 大臣、あなたには心があるんですか、心が。そんな、私、官僚答弁を聞いているんじゃないんですよ。国民の皆さんに訴えてください。もし、謝罪を求めて、謝罪してもらえなかったら、責任をとるぐらいの覚悟でやはりやってほしいんですよ。それが外交じゃないですか。責任をあいまいにしたまま、まあ、あとは仲よくやればいい、そんな話じゃないんですよ。今後同じことがまた繰り返されるんです。
 ですから、国民に訴えるのなら、そんな答弁じゃなくて、心を込めて、私はこうやっている、そしてこれが実現できなかったら、少なくとも大臣の首をかける、政治生命をかけるぐらいの心のこもった答弁をしてくださいよ。どうですか、大臣、もう一度答えてください。
川口国務大臣 この件についての我が国の立場、これに全く変化はないということでございまして、中国と日本両国で、日中関係の大局を踏まえて冷静に対処をしていくという考えでおります。
木下委員 冷静、冷静という、私も冷静ですよ。みんな冷静ですよ。何もけんかしろと言っているわけじゃないです。言うべきことをきちんと言って、謝罪をかち取る、これが大臣の役目ですよ。こっちから冷静、冷静なんて言っていたら話が進まない。これはまた改めてやります。
 もう一つ、今度はまた、いわゆる国後島のディーゼル発電施設、この建設工事をめぐる不正入札疑惑で、七月三日、偽計業務妨害罪で、三井物産の社員三人、そして外務省の二人が再逮捕された。大臣、改めてもう一度伺います。私も、事件が起こるたびに同じことを何回も大臣の答弁を求めてきました。今回の再逮捕について、一言御見解をいただきたいと思います。
川口国務大臣 この件につきまして、外務省の職員が再び逮捕をされるという事態になったことにつきましては、私は大変に遺憾だと考えております。
 この点につきまして、今、司法当局の手で解明をされているという過程にございますので、外務省といたしまして、この解明に全面的に協力をし、一日も早く事実が明らかになる、このために協力をしていきたいというふうに考えているわけでございます。
木下委員 いつも、処分されるたびに、私、同じことを聞くんです。同じ答弁。何回同じ答弁を聞いたか。少なくとも、相次いだ外務省の不祥事に対して、先ほども言いました、国民の皆さんに本当に申しわけないんなら、やはりもっと心を込めて反省の弁を述べてもらいたい。
 しかも、今回の三つの発電施設、これはいずれも三井物産が受注をしています。しかし、それぞれの落札価格を見てください。色丹島では、予定価格の九五・二%に当たる約十三億八千万円。択捉島の発電施設は九九・六%です。国後島では予定価格の九九・九%。これだけ接近した予定価格と落札価格、これを外務省のロシア支援室の皆さんが見て、おかしい、予定価格が漏れている、もしそう気づかなかったとしたら、これはもうこんな仕事やめたらいい。こんな仕事に手を出さないことですよ、こんなことがわからないようだったら。どうですか、わかっていたんじゃないですか、ロシア支援室の人は。はっきり答えてください。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 国後島のディーゼル発電施設の入札予定価格につきまして、これが漏えいされていたのではないかといううわさが一時ございまして、外務省といたしましては、当時の関係者から事情聴取を含む内部調査を実施いたしました。しかしながら、このような事実は確認できなかったということでございまして、一般論といたしまして、強制捜査権限のない内部調査に一定の限界があることも事実でございます。
 この件につきましては、現在、捜査当局の手にゆだねられているということでございまして、外務省としても、これに全面協力する形で真相の解明にお手伝いしてまいりたい、こういうふうに考えております。
木下委員 捜査に全面協力するのは当たり前の話ですけれども、そうじゃなくて、疑惑があったと思って調査したわけでしょう。そのときに聞き取り調査したわけでしょう。ところが、事実が判明できなかった。
 疑惑があったわけでしょう。疑惑があったなら、なぜ入札をやり直さなかったんですか。まず最初の段階で、色丹島でこれだけの接近した入札価格と落札価格、これが明らかになれば、疑惑があった、しかも全部が三井物産。とすれば、いずれかの段階で入札をやり直す、こういう方法は考えられなかったですか、どうですか。
齋藤政府参考人 事実関係を申し上げれば、その入札、それぞれ完結していたということでございまして、入札をやり直すというようなことは行われなかったということでございます。
木下委員 そういう意味では、いわばロシア支援室あるいは支援委員会、組織ぐるみの犯罪である、私はそう言わざるを得ない。
 大臣、どうですか、お答えください。組織ぐるみでしょう。そう思っているんじゃないですか、どうですか。
川口国務大臣 私は、組織ぐるみであったということはないと考えております。
 いずれにいたしましても、この件につきましては、現在司法当局の手で解明がされつつございますので、外務省としては、それに全面的に協力をし、解明を待ちたいと思っております。
木下委員 それでは、また支援委員会と同じような国際機関についてちょっと質問させていただきます。
 国際機関の日中民間緑化協力委員会、俗に小渕基金と言われておりますが、これについてお伺いしたいと思います。
 この委員会は具体的にどういうような事業をやっておられるのか。簡単で結構です、説明してください。
佐藤政府参考人 日中の民間緑化協力委員会でございますが、これは、平成十一年の十一月、日中両国政府間の交換公文をもって設置をされた機関でございまして、中国に植林緑化協力を行おうとする日本の民間団体、NGOや企業や地方自治体でございますが、そうした日本の民間団体に必要な資金助成を適正に行うという事業を行っております。
 具体的な助成は、委員会の事務局として日中緑化交流基金というものが置かれておりまして、そこで審査を行うことになっておりますが、助成を受けた民間団体は、中国において現地の民間団体等とパートナーを組んで植林緑化事業を行い、その後、事務局に対して事業報告書を提出する、こういうことになっております。
木下委員 この委員会の財務状況、外務省から入手した資料によると、九九年に政府から百億円の拠出を受けたものの、実際に予算を執行したのは、二〇〇〇年、わずかに約一千八百万円、事業が本格的に開始された二〇〇一年でも約二億二千万円、これだけにすぎないわけですね。その結果、二〇〇二年六月三十日現在、委員会には九十八億三千六百万円の資金が余っている。そのうち約七十一億円で事務局長個人名義の国債や社債を購入し、残りの約二十七億円は、同じく事務局長個人名義の定期預金や普通預金になっている。
 こうした資金の管理のやり方というのは、まさに支援委員会と全く同じ。あるいは、先般私が指摘いたしました日ロの核廃絶委員会、これも、二百五十億か何かを拠出しながら、実質的には百六十億そのままプールされている。今回も全く同じなんですね。間違いはございませんか、この数字に。
佐藤政府参考人 本件、緑化協力委員会の財務状況でございますが、この緑化協力委員会、そしてそのもとでの事務局である緑化交流基金でございますが、この事業につきましては、そもそも、平成十一年度に百億円の拠出金を基金として、それに基づいて管理運用して事業を行う、すなわち、この百億円の基金の運用益、果実をもってその事業を行うということで発足をいたしたものでございます。
 したがいまして、基本的にはその百億円の果実が事業費になるということでございますので、財務的に申しますと、その基金にお金が、元になりますその基金の額が基本的に残っておるというのは、当初想定された姿であるわけでございます。
 他方、昨今の経済状況によりまして、運用益だけでは十分に助成を行い得ないということで、多少、運用益に加えまして、一部資金の元本を取り崩すという形で事業を進めてきておるということでございまして、そうした関連で、その資金の残高が約九十六億九千八百二十八万円となっておるというのが現在の状況でございます。
木下委員 今おっしゃったように、本来ならば、基金を百億なら百億にして、本来はそこから取り崩しちゃいけないんですね。運用益できちんとやっていかなきゃいけない。ところが、国債、社債による運用益は、二〇〇〇年度で約一億円、二〇〇二年度で約一億六千万円。これは事業費の半分にも満たない。結局、基金を取り崩しているということ。
 しかも、この資金を提供している民間団体、この中には、私も調べてみましたけれども、よくわからない民間団体がある。大体九百万円から一千万支給しているわけですけれども、私も中国でこういった緑化運動をしている人に聞きました。例えば、一つの民間団体で九百万とか一千万資金を持っていく、そんな事業なんてないですよ。国家プロジェクトになりますよ、中国でやれば。大体五百万あれば井戸を掘れるんです。あるいはポプラを植えるわけでしょう、向こうで。普通の民間団体が行って、そんなに大がかりにやるわけじゃないんです。ですから、四、五百万とかそのぐらいあれば処理できる。
 よくわからない団体に九百万とか一千万、この渡ったお金の全部の事業の中身、これを後で出してください。よろしいですね。
渡海委員長 対応可能ですか。
佐藤政府参考人 事業内容については御報告をさせていただきます。
木下委員 それから、この国際機関が、実は農水省の傘下の社団法人国土緑化推進機構、これと事務局が同じビルに入って、しかも事務局長が兼務しているわけですね、両方を。名称はちょっと違いますが、国土緑化推進機構の方は、これは専務理事あるいは副理事長。社団法人の国土緑化推進機構の副理事長の秋山さん、元林野庁長官。そして、事務局次長は、同じく国土緑化推進機構専務理事の田中正則林野庁OB。両方を兼ねているわけですね。
 農水省の仕事と外務省の国際機関と、事務局長が兼ねていて、どうやって仕切っているわけですか。簡単に答えてください。
佐藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、この緑化協力委員会というのは、平成十一年の日中間の交換公文によって設立をされたわけでございますが、その交換公文の中に規定がございまして、緑化協力委員会は、緑の募金や全国植樹祭の実施をこれまで行っておって緑化事業に専門的な知見を有する社団法人である国土緑化推進機構に支援を要請できる、そのように規定をされておるわけでございます。
 そうした規定を踏まえまして、必要な人的支援を受けるために、社団法人国土緑化推進機構の副理事長、事務局員がそれぞれ、緑化協力委員会の事務局である緑化交流基金の事務局長、事務局の次長を無報酬で兼任をしているということでございます。
 ちなみに申し上げますと、人的支援を行っているということでございますが、緑化協力委員会とこの社団法人とは、組織的にも会計的にも全く別の組織として扱われております。
木下委員 組織的にも非常に不明瞭。
 それからもう一つ。この日中民間緑化協力委員会が設立された九九年十一月、ちょうど同じ時期に、自民党内に鈴木宗男衆議院議員を会長とする日中緑化推進議員連盟が結成されています。
 その会長が、先ほど言いました鈴木宗男さん、そして会長代理は松岡利勝さん、幹事長が松下忠洋さん。もう既に皆さん御承知のように、やまりんから献金をもらった三人が顔をそろえて幹部をやっている。そして、いわば通称ムネムネ会の人たちが六十人名前を連ねている。
 そして、二〇〇〇年十月、第一回目の中国で行った記念式典に、この議員連盟の人たち、鈴木宗男さん、松岡さん、松下さん、あるいはムネムネ会の西川さん、そういった人たちが行っている。そのほかに与党三党の幹事長、野中さん、冬柴さん、野田毅さん、こういう人たちが行ってやっているわけですね。
 まさに政治的に、中国のODAを通じて、ここから何らかのまた利権を得ようとしたんじゃないか。結局、小渕さんがどういう意図でやられたか知りませんが、気前よく百億円、はい、これを基金にして緑化しますよと。そして、その当時の官房副長官が鈴木宗男さんなんです。ですから、そういった形で政治家が中国のODA――ODAがあるんですから、何もこんなものをつくる必要はないんです。新たにまた別枠をつくって、それを利権の温床にしよう、こういった構図が今回にもある。
 大臣、この日中民間緑化協力委員会、これについてどんな感想を持っておられますか。
川口国務大臣 北方四島の支援委員会との関係で、委員がこの委員会のことについて御議論なさいましたけれども、経理的にも事業的にも、私、今話をずっと聞いておりまして、きちんと運営をされている団体であるというふうに私は思っております。
木下委員 何をもってきちんと運営されていると見ていますか。
 では、大臣にお伺いします。
 二〇〇〇年だけで三十二の民間団体に、先ほど言いました九百万から一千万、この基金が投じられています。どんな仕事をやっているか、中身御存じですか。評価していますか。どのような評価をし、中身を知っていますか。
渡海委員長 川口外務大臣、時間が過ぎておりますので、端的に。
川口国務大臣 リストについてはお出しさせていただきますが、私から先ほどきちんと活動しているというふうに申し上げましたのは、助成申請を受けて、ちゃんとこれを審査するということでやらせていただいているということで、委員会も、設立以来、日中双方の委員が参加をして委員会の会合を開いて事業の実施方針等を取りまとめるというようなことを行い、かつ事業の評価を行っているということで、透明性は確保されているというふうに考えるということでございます。
木下委員 そんな答弁ではとても納得できませんので。
 私、そんなこと言っているんじゃないんです。末端の、民間に行ったお金が正しく使われているかどうか、そこまで把握してほしいと言っているわけですので、これは改めて質問させていただきます。
 ありがとうございました。
渡海委員長 次に、塩田晋君。
    〔委員長退席、岩屋委員長代理着席〕
塩田委員 自由党の塩田晋です。塩川財務大臣に一問お伺いします。
 財務省は、国の大きな予算を編成され、この執行について責任を持っておられるわけですが、この執行についての法律は、会計法、予責法、あるいはまた予決令、あっせん利得法だとか政治資金規正法、あるいは刑法におきましても収賄罪等、こういったものがあるにもかかわらず、依然として契約、具体的には、入札の段階におきましていろいろな不祥事が次から次へと起こって、なかなかとどまるところを知らないという状況、まことに憂うべきことが各省庁に起こっておるわけです。
 これを根本的に解決する方法としては、やはり財務省が音頭をとってといいますか、会計法の主管省でありますし、公取の関係もありますけれども、いわゆる談合あるいは丸投げ、あるいは予定価格の漏えいによる偽計業務妨害罪、これに当たるような事件が起こっておるわけですね。まことに遺憾なことでありますが、これを根本的に解決する方法、やはり会計法を見直して、また、各省共通の契約事務取扱規程といったものも含めて、全般的に関係法令を見直す必要がある、それの音頭をやはり財務省がとられるべきではないか、このように考えます。
 これについてお伺いしたいんですが、私は、契約というものは公開競争入札を基本とする。そして、それは何といいましてもフリー、フェア、オープンの原則で行われるということが基本だと思います。ぜひともその点についてお考えをいただきたいということを、強く財務大臣に申し上げたいと思います。
 ただ、私は、この際何でもかんでも一般競争入札が原則だからそれでやらなければならないということでは決してないと思います。
 この予決令の中にも二十五にわたって定性的な、こういうものについては随契といったこともありますし、いろいろな制約等列挙してありますね。例えば文部科学省の関係では、文化財等の修理につきましては、例えば仏師の場合でも、そんなに数は多くない、競争入札にはかけられないものもあります。
 もっと大きいものは、防衛庁の調達の関係ですね。これも、一般競争入札原則といいながら、国防上の観点から、あるいは諸外国との関係、あるいは武器輸出ができないという状況の中で、適正な価格とは何か。そして、従来行われておった防衛庁の調達で、これは会計検査院も慣習的に認めておったという、事前着工を認めるということ、それから、割り掛けを製品に上乗せして長期にわたる、そういった損失というものも見込んで、リスクを見込んでそういった発注をするとか、従来行われておった防衛庁の調達の関係が、やはり一般競争入札をすることによって大変問題が生じ、現にスイスとの間で航空機の発注について問題がありましたように、そういった問題も起こるし、日米の防衛技術協力にいたしましても、採算に乗らないということで、せっかく協力して技術は上げても、それで日本の企業はもうからない、アメリカの企業はそれによって利益を得る、そういう仕組みもありますね。
 そういったことをいろいろ考えますと、防衛関係の調達につきましては、一般競争入札だけではいかないという問題点があります。しかも、予定価格の適正な算定の仕方というのは非常に難しい問題をはらんでいますから、そういったいろいろな要素を加味し、防衛上の観点からも、調達は単に一般競争入札ではいかない、世界の市場で一般競争入札すれば安いということはわかっていますけれども、そうはいかない問題もあるわけですね。
 防衛庁がかつていろいろな問題が起こった際につくりました調達制度の改革以降、いろいろな不都合が起こっていることもありますので、そういったことも含めて、はっきりとそういった問題についてはこうだというものを出して、この入札また契約の制度をはっきりとするような措置が必要ではないかと思うんですが、財務大臣、いかがお考えか、お伺いいたします。――一般的な方針をこの前谷口副大臣に十分聞いたことでございますから、それ以外のことについて大臣にお伺いしておるんですけれども。
塩川国務大臣 入札制度全体をやはりもう少し見直さなきゃならぬと私たちも思っておりまして、私も民間の仕事をやっておりますから、中小企業のおやじさんとして見まして、どうも、やはり役所の発注の仕方もおかしいですね。
 それから、一番問題だと私が思いましたのは、役所のものが全部、普通の基準よりちょっと変えてある。ちょっと仕様書を変えてあるんです。ちょっと仕様書を変えることによって単価がぽんと上がっている。ここが一番問題だと思いまして、私は、やはり公共事業等においてはこれは十分見直すべきだと思うのです。例えば学校の建築一つ見ましても、あんながらんぽの仕事ですけれども、あれは一般の標準じゃないんです。ちょっと天井を高くする、床は厚みを少し厚目にする、それによって、特殊な工事でございますから、一般の常識では考えられぬような単価が出ておるんですね。そういうことから改めていかなければ、私は公共事業の入札が本当に正しいということは言えないような感じがするんですよ。
 これはやはり専門家によってやってもらわないかぬと思うんですが、しかし、これを言いますと、建築とかあるいはまた物品の購入も、官がやっておるものは全部個別の、特別のものばかりだ、こう言いますから、それがそうならそのようなことになるんだろうと思いますけれども、そこがやはり一番問題だと私は思うのです。経費節約のところにはこれが一番。
 二番目は、入札のやり方ですね。これは丸投げが起こるというのは、やはりそれだけの利幅があるからなんですね。その利幅は、民間と比べて何で利幅があるかといったら、いろいろやはり査定が緩いということだと思います。ですから、一度個々の問題について、抜き打ちでもいいから査定をきちっとする方法を何か考えなきゃいけないんじゃないかと思っておりまして、そういう前提、いわゆる環境を整えないで入札の仕方を変えろ、変えろと言ってみたって、それは変わってこない。そういう環境が変わってきますと、入札の仕方も私は変わってくると思っております。
 それから、今会計法上やっておりますのは、建築物は二百五十万円以下のものは随意契約、それ以上は入札にするということになっております。それから、物品の購入も百六十万円までは随意契約、それ以上は入札ということになっております。
 これは会計法上、手続はきちっとやっておりますが、そのやり方の中身については、どういうことになるかというのは個々の場合によって違ってくる。あるいは、競争入札した結果、入札が不調になって随意契約になっておるというものもございますから、これはそれなりの事情があってやっておるんだから、これはあながち間違っておる、こうも言えないと思いますが、問題は、やはり単価の見方というものを、ここをしっかりと押さえなければならないんじゃないかと私は思っております。
塩田委員 ありがとうございました。
 やはり問題は、件数の非常に多い随意契約にあるかと思うのです。それに問題が非常に多いんじゃないかと思うのです。これははっきり言いますと、官と民の癒着、なれ合い、談合というような形になりやすいことでございますので、随意契約といえども、多数の業者から見積もりをとって、その中でやっていく。従来の慣行でずっとなれ合いで来ているという関係ではなくして、そこにも自由競争の要素を入れることも可能ではないかと思うし、その方がより公正、適切な契約ができるんじゃないかと思うんですが、そういったことも含めて、随意契約についてもやはり徹底的に見直してこの制度を確立していただきたいと思います。
 それから、さっきちょっと申し上げました防衛庁の調達実施の関係ですけれども、これは本当に金額的にも大きいですし、我が国の国防上の非常に大きい問題でもありますし、今のままでいきましたら、特に航空関係がそうだと思いますけれども、もうこれに参加する日本の企業がなくなってしまう、どんどん手を引いていってしまうという危険性がある問題でございますので、これも、単価の問題を含めまして、先ほど言ったような問題を含めて、十分に検討してはっきりしたものを出していただきたい、このように思いますが、よろしくお願いいたします。
 以上、要望いたしまして、財務大臣に対する質問を終わります。
 続きまして、文部科学大臣にお伺いいたします。
 ここに私が持ってまいりましたのは、「心のノート」という資料でございます。中学校は一冊、小学校一、二年が一冊、小学校三、四年が一冊、小学校五、六年が一冊でございます。これは全国の小中学生全員に配られるものだと思うんですが、かなり膨大な予算の処理をしておられると思うのです。これは今行われている決算委員会での平成十二年度の決算にはあるのかないのか、これに類したものがあるということも聞いておるんですが、十四年度は実施されていますから、これは十三年度の印刷だと思うんですね。どれぐらい大きい金額になっているのか、お伺いいたします。
遠山国務大臣 これは、子供たちの未来にとって、やはり心を育てるということは非常に大事ということでございまして、戦後初めて文部科学省として、一人一人の子供に使ってもらう、あるいはその両親も先生にも使ってもらうということで作成したものでございまして、この四月からすべての児童生徒に渡るようにしているわけでございます。
 今お話しのように、小学校段階で、一、二年生用、三、四年生用、五、六年生用、そして中学校用ということで四種類つくっております。これに関します予算額でございますが、平成十三年度予算で七億二千九百万円余、それから平成十四年度予算で三億八千二百万円余ということでございまして、合わせて、十三年度、十四年度で約十一億というところでございます。
塩田委員 この心のノート、中を見ますと、道徳、昔の修身にかわるようなものかなという感じを受けたんです、これを全部読ませていただきまして。非常にカラフルで、絵が随分入って、わかりやすい。しかも、生徒児童が書き込むことになっていますね。名前を書いて、自分がつけたこのノートはどういう名前をつけますかとか、いろいろな感想、自分は何になりたいとかそういったことを書かせる、したがってノートになっていると思うんですね。これも非常に結構だと思うんですが、私が読んだ限りでは、道徳、公徳心を育てるのには非常にいいし、国の伝統文化というものにも、あるいは地球環境、自然に対する尊敬というかそういったもの、あるいは友達と友達との関係、心の触れあいとか、そういういろいろなことが書いてありますね。
 非常に結構だと思うんですが、あえて言いますと、非常に抽象的な言葉が多いんですね。すばらしいとか輝かしいとか、そういう言葉が盛んに書いてあって、夢のあるとかそういう言葉があるんですが、これを読んで感動を受けることが本当にあるだろうかという気がします。もちろん、有名な方の有名な言葉が随分中へ入っておりますけれども、昔の修身を見ますと、絵があって、物語がありましたよね。これは後で印象として非常に残るわけですよ。この中には物語が全然ないですね。
 これはこれとしまして、このノートは全国の全生徒に全部一冊ずつ渡っているとお考えでしょうか。
遠山国務大臣 このノートは、ぜひ、すべての児童生徒の手に渡り、しっかりと使ってもらいたいと思っております。私も、四月一日の新しい学期の始まりのときに、小学校に行きまして一人ずつ手渡したわけでございます。それぞれの教育委員会を通じて各学校においてしっかり各児童に渡してもらい、これを大いに活用してもらいたいと思っております。
塩田委員 非常に残念なことですけれども、私がつかんだある事実は、これが学校に配られているけれども積んでおかれている、配られていない。そして、ある市会議員がそれをもらって帰って、教育委員会からもらったと言っていましたね。家に置いておって、こんなのあるんだということを初めて知ったというんですが、学校の先生が家庭訪問で見えてそれを見まして、これは配らないことになっているんだ、そういうことを言われたというんですね。
 それで、調べたところ、配られていない地域が随分あるんですね。せっかく大きな予算をかけて、いいことだと思ってやっておられるけれども、配られていない。配らないことになっていますというようなことなんですね。そういう地域があるんです。
 それで、その市会議員は、おかしいということで教育委員会に抗議に行った。そうしたら、学校教育課長から各中学校、小学校、養護学校への校長あての文書が出ておりまして、これはもう二回目、文書が出ているんです。ということは、言ったけれども配られなかったということを示していますが、ちょっと読んでみますと、「数多くの印刷物を配布しています。各学校園におかれましては、教職員、児童生徒に配布・活用されていることと思います。」それで、「送付した印刷物の内、」云々、「児童生徒用については配布し、教材として学習の場で大いに活用していただきますよう再度お願い申し上げます。」前にもそういう文書を出したけれども、実行されていないからまた再度出しているんですね。そういう事態があるということです。
 この問題、こうしたところは、今時点では八割方配付されるようになった、そして二割はまだ残っている。その周辺の市、地域ではまだ配られていないところがかなりある。私も自分の近くのところをずっと学校ごとに聞いてみたんですね。そうしたら、これから配るつもりです、いずれ近くやります、そういう回答のところもあれば、もう配りましたというところもありました。
 これは実際どう配られているか、全国的に調査をしていただきたい。積んでおかれたままになっている。
 それから、配られたところでもこういうことがあるんです。生徒にうちへ持って帰らせない。学校に、名前を書かせて教室の中に積んである。ノートは自分でつけるようになっていますよね、それではいつどうなるのかわからないんですけれども、どうしてそういうことをやるのかわからないと言う父兄がおります。
 そういうことをお訴えしまして、ぜひとも全国的に調査をしてもらいたい。その報告は、各教育委員長からも来るでしょうけれども、それが、この前ちょっと申し上げたように、うその報告をやっている。それを集計したって本当の全国の集計にならないわけですから、やはりサンプル的に調査をして、直接当たって、全部はできませんから、サンプル的にも確かめてもらいたい、このように思います。
 それから、もう時間がなくなってきましたからあれですが、総合的学習の時間というのができましたね。これは教科書を使わなくても先生が勝手にどんなことでも教えるというか、やっていい。兵庫県におきましては、トライやる・ウイークというような制度であちこち分かれて行っているわけですね。
 神社へ行ったり仏閣へ行って、美術の勉強したりなんかするんだと思いますが、会社に行き、あるいは農場に行き、いろいろな体験をさせているという。非常に効果があって、評判はいいんですが、その選び方が問題なんですね。
 あるところでは、大部分の児童を自習させておいて数人の人を朝鮮学校へ連れていった、こういう事例も報告されています。それはいいか悪いかは別としまして。そして、その先生が教えているというのは、地理の時間に韓国語を教えて試験問題にも出るんですね、韓国語が。こんにちははどう言いますか、ごきげんようというのはどう言いますかとか、そういう試験問題まで出ている。
 そして、歴史の先生の、教科書を使わないで、プリントをつくりまして、自分がかいた絵、ガリ版のようなもので、それを配って教えている。その内容たるや本当に、日本は悪い、日本人は悪いことばっかりした……
岩屋委員長代理 塩田君、時間が来ておりますので、御協力をお願いします。
塩田委員 はい。日本は悪い、韓国は日本に対して非常にいいことをやったのに、日本は悪いことばっかりした、そんなことを一生懸命書いてあるんですね。それを教えている。そういうことが行われているんです。
 これはまた時間がとれましたら詳しくやらせていただきますが、こういったことが本当に放任されていいのかどうか、文部科学省あるいは教育委員会は知っておられるのかどうか、知ったらどうするのか、それがどう是正できるのか、これについて最後にお伺いします。
遠山国務大臣 この四月から新しい学習指導要領に基づく新教育課程で、それぞれの学校で大変努力が始まっていると思います。
 これは、未来に生きる子供たちがどのような能力を持つべきかということをしっかり考えた上で、基礎、基本をしっかり身につけた上で、みずから学び、みずから行動できる、将来生き抜ける、そういう力をつけるということでございまして、総合的な学習の時間も、まさにそのことを体現するために、しっかりした内容のもとにそれぞれの学校において工夫をしながら、そういうねらい、高い目標のために使われるべき時間でございます。
 もしそのような例がございましたら、それは決して許されないことでございまして、私どもとしては、総合的な学習の時間をしっかりねらいに合わせて使ってもらうように指導してまいりたいと思いますし、事例集とか指導集もつくってまいりたいと思います。
 また、周辺の地域の住民の方々あるいは保護者の方々も、学校におけるいろいろな活動の内容についてぜひともフォローをされて、それが正しい方向に行くように、そういう意見を要所要所で上げていただきたいと思います。
 先ほどの心のノートの問題も、私どもとしてはしっかりと責任を持って調査したいと考えております。
塩田委員 ありがとうございました。
 終わります。
岩屋委員長代理 次に、大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 私は、前回に続いて、本日起訴となった鈴木宗男議員のあっせん収賄事件に関連して質問をいたします。
 前回はやまりんと政治家の関係について質問をいたしましたが、きょうは、官と業、林野庁と、あるいは営林署と業界との癒着、腐敗についてお聞きをしたいと思います。
 鈴木議員の逮捕容疑、あっせん収賄罪は、もとはといえば北海道の造材会社であるやまりんが林野庁から受けた行政処分から発しております。その行政処分の対象となったのは、やまりんが国有林で盗伐をしたということでありますけれども、この盗伐とは、いつ、どこで、どれだけ、どのような林産物を盗伐したのか。まず、この点から質問をいたします。
    〔岩屋委員長代理退席、委員長着席〕
加藤政府参考人 やまりんの盗伐事件でございますけれども、平成十年五月に、当時の帯広営林支局でございますが、当時の阿寒営林署管内の立木販売箇所において盗伐があったということが確認され、それが端になったというふうに承知をしております。
 帯広営林支局におきましては、早期に捜査当局とも相談の上調査を行いまして、それぞれ判明した事実に基づいて行政処分を行ったということでございます。
 最初の時点でまいりますと、最初は三百本ほどで、約二百九十立方が判明したところでございますが、その後事実が追加をされてまいりまして、さらに別の場所でも発生をしているというようなことでございまして、合わせますと相当の規模になったというのが実情でございます。そういったものに対しまして、行政処分を行ってきたということでございます。
大森委員 お話のあった最初の盗伐事犯については、白糠、阿寒での盗伐について、裁判では、初公判で、起訴事実の五倍の七千本の盗伐ということで、大変な衝撃を与えたわけであります。
 盗伐は何回となく繰り返し行われております。今、相当数というお話がありましたが、林野庁として、そういう盗伐の全実態についてきちんとつかんでおるのか。この点、お聞きしたいと思います。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、最初阿寒署で、それから白糠署でということで発覚をいたしたところでございまして、箇所が相当多岐にわたるわけでございます。そういったものが、だんだんと事実関係が明確になってきたということでございまして、最終的には、今お話がございましたとおり七千本で、約六千五百立方に上るというような状況になったわけでございます。
大森委員 林野庁として、そういう実態について調査をされたでしょうか。
加藤政府参考人 これらにつきましては、帯広営林支局でこういった発覚をした以降調査をいたしまして、先ほど申し上げましたように、捜査当局とも連携を図りながら調査を局として進めてまいりまして、書類送致を行ったということでございます。
大森委員 それでは、全国で何カ所ぐらいで盗伐の疑いがある地区が出たんでしょうか。
加藤政府参考人 今のお話は、こういった阿寒、白糠の帯広事案が出まして、林野庁として、やはり販売の適正化を図っていかなければいけないということで実は委員会を設けまして、そこで販売の適正化をどう図るかということを詰めてきたわけでございます。
 その中で、やはりこの際全国についても調査をすべきではないかということになりまして、全国レベルでの特別監査というものを実施したところでございます。(大森委員「何カ所ぐらいですか」と呼ぶ)
 その結果、全国レベルでいいますと、問題になりましたのはやはり帯広でございまして、帯広管内で三十一カ所ほどの盗伐の疑いがあるということになったところでございます。
大森委員 特別監査を九九年に行って、三十一カ所帯広管内で盗伐の疑いがあった。
 この三十一カ所のうち、やまりん関係、やまりん及びその関連企業、これはどのぐらいでしょうか。
加藤政府参考人 今の三十一カ所のうち、二十六カ所がやまりんでございます。
 あと二カ所が、これはやまりんとは別会社でございますけれども、高谷木材というところでございます。それから、あと三カ所につきましては、起訴猶予になったということでございます。
大森委員 マスコミの報道などでは、監査の対象以外のところでも次々と盗伐と見られる箇所、林班があるというのがいろいろ暴露されております。例えば、十勝支庁の足寄国有林、あるいは陸別町のこれは保安林、こういうところも紹介されているわけなんです。
 そこで、具体的に関連してお聞きをしたいのですが、上士幌営林署三六六林班、ここを受注した企業はどこでしょうか。
加藤政府参考人 今お話ございました三六六林班というのは、平成八年にやまりんに販売をしたところでございますけれども、ここにつきましては、やまりんの無断の伐採があったということでございます。
 しかしながら、当時の現場の状況等から、これは盗伐という判断がされなかったということでございまして、やまりんに当該の立木の代金を支払わせるとともに、文書で厳重に注意喚起をするということで対処したところでございます。
大森委員 私どもも、帯広の造材業者初めいろいろ聞きました。
 これは、今盗伐ではないというような判断をされたわけですが、それは何を根拠にそういう判断をされたんでしょうか。多くのところでこの三六六林班でも盗伐を行っていたという話が聞かれる、新聞報道でも行われております。それを、盗伐ではないという判断をされたのは、どういうことでしょうか。
加藤政府参考人 このときにも現地調査を行っているわけでございますけれども、実は、天然林の択伐を中心として伐採をしていくということでございまして、そういった場合には、木を一本切りますと、それが例えば次の木に当たっていくというような、支障木というようなものがあるわけでございます。我々、伐根の状態でありますとか、その配置の状態ですとか、そういったものを見ますと、それが支障木として切られたのかどうかということはある程度判断ができるわけでございまして、そういった現地の実態から見てまいりますと、それは盗伐というふうには判断できなかったということでございます。
大森委員 盗伐を支障木と認めてもらうというのが一つのやり口なわけですね。
 この三六六林班について、森林法違反事件で新得事務所管内のもので逮捕された田村功・元やまりん常務、その初公判の冒頭陳述、これは当然御存じだと思うんですが、この中でも、同年、これは一九九七年ですね、二月から三月にかけて田村が行った盗伐が同年六月五日に判明したと明確に冒頭陳述で述べられているわけです。
 冒頭陳述というのは、勝手に言うものでは当然なくて、確たる確証を持って検察側はこれを陳述するものなんですよ。明らかにこれは、九七年二月から三月にかけて田村が行った盗伐、それが六月五日ごろに判明したと、日時まで入れているわけですね。上士幌三六六林班で行われたのは、盗伐以外の何物でもないではないですか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、当時の営林支局としては調査を行ったところでありますけれども、現地調査の結果として盗伐ということには判断ができなかったということでございます。
大森委員 天下の地裁でこういう陳述がやられているということに対して、では、林野庁としてこれに何らかの態度をとったわけですか。こういうことが言われている、それは盗伐でないと林野庁は言っているわけでしょう。
 しかも、この陳述書の中では、さらに驚くべきことが書いてあるんですね。「右三六六林班の盗伐については、誤伐で押し切り、同年八月一二日ころ、盗伐木を支障木として買い取るという方法で決着を付けた。」ということで、ここに、業界と林野庁、営林署が癒着してそういうことにしていったということが見事に描かれていると思うんです。いかがですか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、当時の状況の中で現地調査をして判断したということでございまして、局としては、その中できちっと局なりには調査をして判断したというふうに考えております。
大森委員 当時の状況ではそういう判断をしたが、今振り返ってみるとどうも間違っていたということですか、今おっしゃったことは。
 このように、盗伐木を支障木として扱うということは、これだけじゃないんです。この冒頭陳述あるいは判決の中で、至るところでそういうのが書かれているわけですよ。
 例えば、同じ公判で、これは実際に起訴事実にかかわる林班についてでありますけれども、これについても「犯行を隠した状況等」というところで、「盗伐根について、「支障木でお願いします。」などと述べ、当該盗伐木を支障木として扱うよう依頼すると、無条件にこれに応じるなどして、敢えて盗伐を黙認し、跡地検査を終了したため、被告人らは右盗伐行為の発覚を免れていた。」日常不断にこういうことが行われているわけですよ。
 ですから、三六六林班について改めて林野庁長官として、林野庁として、では、これは現時点でどうかということをはっきり判断しますか。
加藤政府参考人 平成八年という状況でございますので、改めて調査をするということが現地の実態等々の中ででき得るのかということがあろうかというふうに思うわけでございます。
 我々としては、先ほど申し上げましたように、阿寒、白糠の盗伐事案を踏まえ、この事案については、もう一度やまりんに販売をしたものについて調査を行い、先ほど申し上げましたような特別監査の結果をもって、調査した結果で盗伐の疑いということで処理をしているわけでございまして、そういった形で、我々としては、林野庁なりに踏まえて対応したというふうに考えております。
大森委員 もう一度確かめますが、現在はこれは盗伐木であったという認識なんですか。
加藤政府参考人 先ほどお答えしましたように、当時の状況の中で、局として判断をしたというふうに考えております。(大森委員「どう判断したのですか」と呼ぶ)それを盗伐だというふうに判断することはできないということで対応したものでございます。
大森委員 関係者のいろいろ供述を聞きながら、地検としてこういう陳述をやっているわけですよ。あなた方は、当時の簡単な調査だけで済ませて、今、改めて調査もしないで、この冒陳で述べている盗伐木を支障木として扱ったということを否定できないはずですよ、それだけの材料では。それだけの重みがこちらの方にはあるはずですよ。今、あなたの方で、これは当時は盗伐木としては扱わなかった、今もそうですということは言えないはずです。
 こういう事実が指摘されている。では、改めてこれは調べるというのが当然の態度じゃないですか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、我々としては、特別監査という形でやまりんに販売をした全件について調査をしたわけでございまして、そういう点では、必要な調査ということについて我々なりに一生懸命実行したというふうに考えております。
大森委員 全く納得できないですね。
 報道では、この上士幌三六六林班、千八百本の売り払いの約束ですよ、契約ですよ。それが、実際に切り出されたのは二千八百本ですよ。一千本、盗伐木を支障木にして、しかも、この地検でこういう形で明確に指摘されていることに対して、一顧だに振り返らないのですか。
 これは国民の極めて貴重な財産ですよ。しかも、これは森林を保護する上でも極めて貴重なもの。今、御存じのように、林野庁が森をつぶすんだ、山を荒らしているんじゃないかという言葉まで出ているのですよ。そういう中で、こういう指摘をされていることに対して、平成八年、恐らく極めて不十分な調査、それを盾に、その後改めて調査をしようともしない。
 しかも、千本もの盗伐木を支障木として扱うということができるのは、これは現場ではできないと思うのですよ。私は、当然ここに政治家の何らかの働きかけがあったと言わざるを得ないと思うのですね。
 私ども、こうやって関係業界、業界の関係の皆さんにいろいろ話も聞きました。その中で、盗伐木が発覚したら、鈴木宗男議員に頼めば何とかもみ消しができる、多くの方がそういうことを述べておられるわけですよ。現にこういう形で進んでいるわけです。業界関係者は、この上士幌営林署三六六林班の盗伐も鈴木議員に頼んだのではないか、こう言っているわけですね。
 今言いましたように、冒頭陳述では八月十二日ごろと、具体的に日程まで入っているのです。相当確証を持ってこれは述べていると思うのですが、九七年八月十二日ごろ、盗伐木を支障木として買い取るという方法で決着をつけたと述べているわけですね。
 そして、私ども、調べてみました。八月十二日の翌日の十三日、鈴木議員の資金管理団体、21世紀政策研究会にやまりんの山田勇雄氏、会長ですね、八十万円、山田哲氏から七十万円の献金が行われております。この両氏からは、九六年も九五年も、そしてそれ以前も全く献金はなかった。突如として九七年の八月十三日付で、この合計百五十万円が献金をされているわけですね。しかも、こういうぐあいに決着がついた、その翌日の日付ですよ。だれが考えても、これはもみ消しを頼み、それがうまくいった、そして、それに対する謝礼じゃないかということにやはりこれはなると思うのです。
 そこで、武部大臣にお聞きをしたいのですが、同じ北海道出身で、鈴木宗男議員についても恐らくよく御存じの大臣だと思いますが、こういう林業に対する鈴木議員の影響力、こういうものもよく御存じだと思います。今、私が指摘し、述べたことについて、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 今、林野庁長官の答弁を私は信頼したい、こう思いますが、鈴木議員のあっせん収賄被疑事件に係る捜査当局の捜査に対しましては、全面的に協力をしている次第でございます。
 このような中で、やまりんの盗伐事件に関する資料については、そのほとんどを既に捜査当局に提出しているわけでありまして、詳細にわたる報告が困難になっていることについて御理解を願いたい、かように思います。
 また、捜査内容にかかわる可能性がありますことから、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたい、かように存じます。
大森委員 この鈴木議員の影響力という点からいえば、私はぜひ調査を行うべきだと思うんですね。今農水省としても特別のチームをつくって調査しているわけでしょう。それは何かといったら、直接には今回のあっせん収賄事件にかかわることでありますけれども、しかし同時に、今私が指摘したように、状況証拠として、しかもこういう形で地検の冒頭陳述の具体的な事実も示して言っているわけでありますから、当然鈴木宗男議員の働きかけがあったのかなかったのかということも含めて、これについて重ねて調査をすべきだと思います。大臣、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
武部国務大臣 私どもの調査チームは、これまでにも申し上げておりますように、行政対応上問題はなかったのかどうかということについて、具体的な突き合わせをしながら調査しているわけでございます。
 しかし、今日的状況を踏まえまして、詳しいことを申し上げることは困難ではございますが、しかし、この調査につきましては厳正に進めていかなければならないということについて、新たな強い決意を今持っているということを申し上げたいと存じます。
大森委員 報道によれば、一千本に及ぶ盗伐木が支障木に切りかえられたという問題でありますから、厳正な決意でぜひこれは臨んでいただきたいということで、深くうなずいておられますので、その方向でぜひ御努力をお願いしたいと思います。
 冒頭陳述によれば、こういう盗伐が、この田村被告の場合は遅くとも、遅くともというのはもっと早いかもしれないということでありますが、一九九二年ごろから盗伐を行っていた。その盗伐を支える手口は大きく言って二つあるわけですね。一つは、森林官など営林職員の懐柔、もう一つが営林署長などのやまりん関係業界への天下りであります。今回の裁判で実刑判決を受けた元常務は、これは元営林署長であります。天下りの点でいえば、元営林署長の権威を同社内外に示し、同社内での自己の地位の強化を図ろうとしていたというぐあいにこの陳述書の中でも指摘をされております。
 さらに、この内外に示すというのは、とにかく電話一本で盗伐を黙認させる、そういう現状があるわけですよ。よろしく頼むよと、それで無言だったから了解したとか、あるいは、これは林野庁の幹部自身の言葉でありますけれども、警察官にとってはピストルと同じだと言われる森林官の極印を簡単に業者に貸し出すというような、文字どおり質的に大変腐敗した、そういう現状がつくられているわけですね。
 それから、もう一つが接待。森林官らに対し、せんべつ等の名目での現金や、酒類、食品等を贈るとともに、飲食等の接待を繰り返していた。この二つの裁判の冒頭陳述や判決に、繰り返しこういうのが出てくるわけですね。
 その結果が、今言いましたような大変腐敗した、森林官としての使命、森を守るべき森林官がそういう状況になるような、本当に嘆かわしい状況までつくられている。そういう天下りとそういう接待等々が癒着、腐敗を生み出してきているということだと思うのです。これは、もう大臣も林野庁長官もよく、恐らくそのとおりだとお思いだと思います。
 そこで、この接待について言えば、もう末端がそういう状況であればトップもまた接待漬けになってしまうということで、これはやまりんによる接待、九七年に鈴木宗男議員の北海道開発庁長官就任祝いの接待、これは山田やまりん会長が会長を務める東北海道造林事業協議会の主催で都内の料亭で開かれたわけですけれども、これに業界代表、そして鈴木議員、当時は長官ですね、そして林野庁長官と当時の業務部長らが出席するということで、末端からトップまで接待漬けになるというような状況だと思うのです。
 こういうような天下りあるいは業界との腐敗、癒着を一切断ち切るためにも、全面的にこれらのことを調査して、国民の前にきちっと明らかにするということが今求められていると思います。上士幌三六六林班について、これはもう新たな宗男疑惑と言ってもいいと思うのですが、この問題を全面的に調査し、報告するよう重ねて求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
    ―――――――――――――
渡海委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。
 平成十二年度決算外二件審査のため、四つの分科会を設置することとし、区分としては
 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府(本府、警察庁)、外務省、環境省所管のほか、他の分科会所管以外の国の会計
 第二分科会は、内閣府(防衛庁・防衛施設庁)、総務省、財務省、文部科学省所管
 第三分科会は、厚生労働省、農林水産省、経済産業省所管
 第四分科会は、内閣府(金融庁)、法務省、国土交通省所管
以上のとおりといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 次に、分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 なお、分科員の配置及び主査の選任につきましては、追って公報をもって御通知いたします。
 次いで、お諮りいたします。
 分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 次に、分科会審査の際、政府参考人の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 次に、分科会審査の際、日本銀行並びに公団、事業団等、いわゆる特殊法人の役職員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後八時二十九分散会


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