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第6号 平成15年6月4日(水曜日)

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平成十五年六月四日(水曜日)
    午後零時一分開議
 出席委員
   委員長 山口 俊一君
   理事 浅野 勝人君 理事 宮路 和明君
   理事 持永 和見君 理事 森田 健作君
   理事 奥田  建君 理事 木下  厚君
   理事 山名 靖英君 理事 塩田  晋君
      石田 真敏君    植竹 繁雄君
      江藤 隆美君    大木  浩君
      小西  理君    河野 太郎君
      橘 康太郎君    谷  洋一君
      津島 恭一君    中村正三郎君
      永岡 洋治君    西川 京子君
      額賀福志郎君    水野 賢一君
      宮腰 光寛君    村上誠一郎君
      渡辺 博道君    赤松 広隆君
      上田 清司君    北橋 健治君
      鈴木 康友君    中川 正春君
      葉山  峻君    古川 元久君
      松崎 公昭君    神崎 武法君
      大森  猛君    穀田 恵二君
      山内 惠子君    山口わか子君
      山谷えり子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第三局
   長            船渡 享向君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  畠中誠二郎君
   政府参考人
   (総務省郵政行政局長)  野村  卓君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   政府参考人
   (財務省理財局次長)   楠  壽晴君
   政府参考人
   (国税庁徴収部長)    立川正三郎君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           山田 修路君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局長)  石川 裕己君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   決算行政監視委員会専門員 小林 英紀君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月四日
 辞任         補欠選任
  江藤 隆美君     西川 京子君
  橋本龍太郎君     渡辺 博道君
  武藤 嘉文君     水野 賢一君
  赤松 広隆君     鈴木 康友君
  山口わか子君     山内 惠子君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     江藤 隆美君
  水野 賢一君     武藤 嘉文君
  渡辺 博道君     橋本龍太郎君
  鈴木 康友君     赤松 広隆君
  山内 惠子君     山口わか子君
    ―――――――――――――
六月三日
 平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書(承諾を求めるの件)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 平成十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十三年度政府関係機関決算書
 平成十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書(承諾を求めるの件)


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     ――――◇―――――
山口委員長 これより会議を開きます。
 平成十三年度決算外二件及び平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書(承諾を求めるの件)の各件を一括して議題といたします。
 まず、平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について議事を進めます。
 財務大臣から本件について説明を求めます。塩川財務大臣。
塩川国務大臣 平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十三年度におきましては、予見しがたい租税収入の減少などにより、一般会計の歳入歳出の決算上、五億円余の不足が生ずることとなりましたので、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定により、その不足を補てんするため、決算調整資金から同額を一般会計の歳入に組み入れております。
 この決算上不足額は、決算調整資金に関する法律施行令第一条の規定により計算しました額でありまして、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定の適用前における平成十三年度の一般会計の収納済み歳入額八十六兆九千二十四億円余が、平成十三年度の一般会計において財政法第六条に規定する剰余金を全く生じないものとして算定した場合に得られるべき歳入の額に相当する額、すなわち八十六兆九千三十億円余に不足する額に相当する額であります。
 また、この決算上不足額の補てんにつきましては、決算調整資金から一般会計の歳入に組み入れる際に決算調整資金に属する現金がなかったので、決算調整資金に関する法律附則第二条第一項の規定により、当該決算上不足額に相当する額を国債整理基金から決算調整資金に繰り入れた後、同資金から一般会計の歳入に組み入れております。
 なお、この国債整理基金から決算調整資金に繰り入れた額五億円余に相当する金額につきましては、決算調整資金に関する法律附則第二条第三項及び第四項の規定により、平成十四年度補正予算(第一号)に計上して一般会計から決算調整資金に繰り入れた後、同資金から国債整理基金に繰り戻しております。
 以上が、平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書の事後承諾を求める件の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾いただきますようお願い申し上げます。
 ありがとうございました。
山口委員長 これにて説明は終わりました。
 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時開議
山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 ただいま議題となっております各件について議事を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、参考人として日本道路公団総裁藤井治芳君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
 引き続き、お諮りいたします。
 各件審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長畠中誠二郎君、総務省郵政行政局長野村卓君、消防庁長官石井隆一君、財務省理財局次長楠壽晴君、国税庁徴収部長立川正三郎君、厚生労働省健康局長高原亮治君、厚生労働省健康局国立病院部長冨岡悟君、厚生労働省社会・援護局長河村博江君、厚生労働省年金局長吉武民樹君、農林水産省大臣官房審議官山田修路君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、国土交通省鉄道局長石川裕己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
山口委員長 これより平成十三年度決算外二件の全般的審査及び平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書の質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 きょうは、坂口大臣に御質問させていただく初めての機会ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 大変古い話なんですけれども、元官房長官であり、元私の出身の旭川の市長でもあった五十嵐広三議員が、今から十六年前、一九八七年の五月十五日に、沖縄及び北方問題に関する特別委員会で、アイヌ共有財産問題で質問をなさっています。この中のすべてを御紹介するわけにいかないんですけれども、例えば、釧路管内の厚岸で、厚岸小島それから門静など、アイヌ共有地が点在していると。しかし、これが個人に売却されたり、鉄道の用地となったり、道路の用地になったりというような状況があって、明治三十三年にアイヌの土地を払い下げ反対運動とか、昭和七年のアイヌ地返還運動だとかが起こっていたわけです。
 その意味で、この古い問題を今回掘り起こしているという趣旨は、いろいろな問題がありましたけれども、このとき、五十嵐委員が、調べてほしい、このアイヌ共有地についての追跡調査をしてほしいんだとおっしゃっているんですね。そのときに、後藤田大臣が、「これは政府内で検討をいたしたい、こう思います。」とおっしゃっていらしたんです。
 それで、坂口大臣は、このようなアイヌの共有地問題が現在もあるということ、それから、後藤田内閣官房長官でいらしたんですけれども、回答されていましたので、このような問題があったということを御存じだったでしょうか。また、その後、政府はどんなことをなさったのか、お聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 五十嵐議員は先輩で、大変私もお世話になりましたし、よく存じておりました。
 それで、ただ、このアイヌのお話はきょう初めてお聞きするわけでございますが、アイヌのこの共有財産につきましては、その管理につきましては、御承知のように、北海道旧土人保護法によって定められておりました。いわゆるアイヌ新法ができまして、この北海道旧土人保護法は平成九年に廃止になりましたけれども、この法律の所管は厚生省でございました。そのため、このアイヌの共有財産に関する御質問につきましては、厚生省が答弁すべきものであったというふうに思います。ただし、そのときに厚生省は呼ばれていなかったものですからお答えをしなかったということでございまして、官房長官がお仕切りをしていただいた、こういうことであったというふうに思っております。
 そのような経緯を経て今日を迎えているわけでございますが、担当は厚生労働省でございますし、その当時そういう御発言があったということも存じ上げている次第でございます。
山内(惠)委員 ありがとうございました。
 きょう、わざわざ大臣にお越しいただきましたのは、アイヌの問題について、ぜひ改めてこの機会に受けとめていただきたいなという願いも込めて来ていただいた次第です。
 今回、私は、このアイヌ共有財産問題につきまして質問するに当たりまして、担当の方々は、大変丁寧な資料、本当に大変だったと思います、十六年も前ですから。北海道庁に調査もしてくださって、いろいろな形で御回答された努力に対して、私は大変感謝をしているところですが、実は、先日というか、私は一月に質問主意書を提出いたしました。この質問主意書の回答をいただいて、もう一度改めてここのところを丁寧に読んで、ちょっとがっかりしました。
 それはなぜかというと、質問の趣旨の方では、後藤田長官が答えられた後、十六年間何をなさっていたかをこの質問主意書でお答えいただきたかったにもかかわらず、この五十嵐議員が質問されたその日のことを、今大臣もお答えになったんですけれども、その日担当者がいなかったのは、質問も提出していなかったわけだから、委員も知っているんです、そのことは。でも、政府として今後検討していく、政府内で検討いたしたい、こう思いますと後藤田内閣官房長官がお答えになっているので、その後どんな調査をしたのかということを質問主意書でも聞いたにもかかわらず、また、当日そういう質問がされるとは思っていなかったので配置していなかったんでわからないという。
 これって、私は本当に茫然としました。私は小学校の教員をしていましたが、質問と回答にこんなずれがあることを担当者の方たちは何と思ってこんな答弁をなさったんですか。今回は誠意を本当に感じておりますので、この質問するのもどうかとは思いますけれども、質問主意書に二カ月以上かけられてこの回答しかないというのは、私は、アイヌの方々の共有財産に関しての納得いかない思いが十六年間ずっと続いていたからこそ、私にまた託されて、質問主意書を出すということを私も引き受けたわけですけれども、このようなことで担当者は情けないと私は思っている部分なんです。
 こんなことでお答えをいただいたというふうには私は思っていないということを申し上げまして、次の質問に入っていきたいと思います。ここで本当は、担当の方、どう思いますかともう一度聞きたいんですけれども、次の質問に入ります。
 北海道庁が当時の厚生省の事務等の委任を受けていたとすれば、アイヌ文化法に基づく共有財産の返還手続の前に、同庁は厚岸町のそれを含め十八件の実態調査をしたのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 ところで、このアイヌ新法は、先ほどおっしゃいましたように、五十嵐議員がこのときにこの問題を提起して、実現に最大の努力を払われて実現したというふうに思っています。その意味で、今回の資料を見ましたら、金銭的な数字と土地の数字とがありますが、土地の測定をしたのか、また、金額については、現金の原資は何であったのか、利子分だけが記載された合計なのか、ちょっとそのことをお聞かせいただきたいと思います。担当の方で結構です。
河村政府参考人 いわゆるこのアイヌ新法の附則に基づきまして返還の対象となりました十八件の共有財産につきましては、同法の施行時点であります平成九年七月一日においてすべて現金として管理されていたものでございます。さらに、その共有財産のほとんどが共有財産の指定の当時から現金及び債券等として管理されていたものでございます。また、そのうち二件につきましては、土地であったわけでございますけれども、それぞれ昭和二十年代に共有者に返還されたというふうに承知をいたしておるところでございます。
 また、この共有財産につきましては、北海道知事において北海道旧土人保護法に基づき適切に管理がされているものと考えております。
山内(惠)委員 政府の方々は共有者に返還したとおっしゃって、今回の質問主意書にもそのようにお答えくださっていますが、この数字で、私は、例えば河西郡芽室村旧土人共有、旧土人法はもう廃止になりましたからこの言葉がなくなったんですけれども、こんな言葉が平成九年まで残っていたということ自体、本当に少数民族というか、先住民族の方に申しわけなかった日本の歴史だったと私は思っています。
 その意味でなんですけれども、昭和二十年に共有者にお返しになったというのですけれども、この千三百円、芽室村、千三百円、ずっと十八件について金額が書いてあるんですけれども、この明細はおありなんでしょうか。それから、これは金銭化しているので利子分だけなのか、もとはどういう数字だったのかという明細がおありなのか、お聞きしたいと思います。
河村政府参考人 この共有財産の管理につきましては、北海道庁がこれまでの経緯に関して相当の期間が経過しておるというためにその収支の記録をすべて保存しているわけではないというふうに聞いておるわけでございます。
 アイヌの人々の生活の安定を図るために、土地なりあるいは現金なりそういったものを運用して、その収益をアイヌの方々の生活の安定なりあるいは教育の援助、そういうものに充ててきたという経緯があるわけでございますけれども、戦後に至りまして、生活保護法等が整備されたことによって、その後は現金のみを管理してきたというふうに聞いておるところでございます。
 昭和二十年代に、残っておった土地についてはアイヌの方々に返還をしたというふうに承知いたしております。
山内(惠)委員 返還された土地というふうにおっしゃっているんですけれども、それは実測されたんでしょうか。二点について、実測したのかということと、金銭になっているもの、平成九年の前の話ですけれども、この金額の根拠はなんだったんですか。
河村政府参考人 先生の御指摘のいわゆる厚岸町の小島のことだと思いますけれども、これは昭和二十六年に北海道知事の管理の指定が解除され、二十七年に引き渡し書というのがアイヌの代表の方と当該北海道の釧路支庁の方との引き渡し書、署名捺印をして、そこで確認されて引き渡されたというふうに承知をいたしております。
 それからもう一点は……(山内(惠)委員「実測はなさったんですか」と呼ぶ)そのときに実測者、引き渡し書には実測者という形で実測者も署名捺印をいたしておりますが、当該厚岸小島の共有地につきましては、海に没しておったというふうな記載がなされておるところでございます。
 それから、残った現金がどういう性格のものであったかというのは、先ほど申し上げましたけれども、戦前はそういう土地なりあるいはもともと現金であったものを運用して、収益を上げて、その収益をアイヌの方々の救護の費用に充てておった。戦後は、生活保護法等が完備されて、その必要がなくなったということで、ひたすらその現金を管理し続けてきたというふうに理解しております。
山内(惠)委員 私が質問したのは十八件についてだったので、厚岸小島に関しては後ほどお聞きしようと思っていた件なんです。
 ここで金額がずっと出ているんですけれども、明細がおありかということについてはまだお答えいただいていないんですけれども、きっとないんでしょう。ないと確認させていただいてよろしいですか。
 これは十八件なんですけれども、十八件印刷物になっていますが、その明細があるかということについても今お答えいただいていないんですけれども、時間の関係上、次に進みます。
 これは十八件となっているけれども、実は道庁は共有者を三十八人と認定をしています。その事実は御存じだったでしょうか。このことはお一つ、後でお答えください。
 そして、この三十八人は一九九七年九月五日付で、共有財産に関する公告の内容に根拠がないとして道庁を追及したという歴史がございます。このとき、今お答えくださった言葉の中に、「相当期間が経過しているため記録がありませんので、お示しすることができないことをご理解願います。」とおっしゃっているんです。
 北海道に現存する土地です。この土地について、記録がありませんのでお示しすることができないことを御理解願いますと言われて、アイヌの方が納得できると思いますか。私は、このことは納得できないと思います。だからこそ、十六年もたって、その間にアイヌ新法ができてさまざまなやりとりがあっても、なおかつ納得をされていない方がいるのです。
 その件については、大臣にもそういう状況があるんだということをしっかりと受けとめておいていただきたいというふうに思います。
 そのことが、お役所として、道庁、全く無責任な回答をしてこの場を越えているということについて、どう思われますか。
河村政府参考人 収支の明細等について、北海道庁の方がこれまでの経緯について、相当の期間が経過しているために細かい記録がありませんという答弁をなさっておられます。
 先ほど来申し上げておりますが、北海道知事が指定したアイヌの共有財産につきましては、明治三十二年に成立した北海道旧土人保護法に基づいて北海道知事によって管理をされていたわけでございますが、管理の具体的な状況につきましては、既に相当な期間が経過しておるということで、文書の保存期間が過ぎておるということなども想定されるわけでございまして、北海道庁にすべての記録が残っているわけではないということもある程度やむを得ないのではないかというふうに思っておるところでございます。
山内(惠)委員 本当に共有財産に関する公文書はないのかということに、今、なくなっても当たり前というふうにおっしゃっているんですね、やむを得ないとおっしゃいましたか。でも、その土地を持っていたアイヌの方たちにとって、やむを得ないで済まされる話ではないということを改めて申し上げておきたいと思います。
 例えば、エイズ関連で、公文書がないとおっしゃったけれども、菅直人さんが厚生省の大臣におなりになったときには後から出てきたということがあるわけで、やはりアイヌの皆さんも、ないと言われてもあるだろうと思いますし、北海道は、歴史のある土地、古い古い歴史がある地とは違うんですよ。北海道庁の歴史というのは、本州から比べれば本当に限られた年数なんです。百年を超えて何年ということですから、私も今数字で申し上げられなかったのはちょっと残念に思いますけれども、そんな歴史の中で、相当の時間がたっているからなくなりましたなどということが、この土地を持っていた人に許されるものでは全くありません。
 それで、この共有者たちは、その資料を何とか出してもらいたいということで、札幌や釧路で共有財産をめぐる裁判を闘っています。共有者の道庁への不信感は大変根強いものがあります。
 その意味では、本当は行政監察を強力に実施すべきと私も考えていますけれども、きょうはその担当者の方をお呼びしていませんので、改めてここのところは別にただすといたしまして、実測もされていない共有財産について、土地などについて実測をすべきだというふうに思いますが、そのことだけ短く、よろしくお願いいたします。
河村政府参考人 この厚岸町のアイヌの共有地について、共有者の代表との間で厚岸町旧土人共有財産引渡書というものを作成して、その代表者が押印をした上で返還手続が行われたというふうに承知をいたしておりまして、北海道庁長官による共有地の管理について、特にずさんな点があったというふうに思っているわけではございません。
山内(惠)委員 印鑑の問題は、実はきょうの毎日新聞に、「ハンコが凶器になる」ということで民訴法の改正を求めるシンポがあったというふうに、新聞記事にもなっているんですけれども、「「ハンコさえ押してもらえばこっちのもの」という悪徳商法をなくそう」というのがこの集会であったと書いてあるんです。そのことを私は本当に、判こさえ押せばということについて、今改めてここのところは疑問に思うところです。
 なぜかというと、この引渡書は、釧路国支庁長、当時、釧路国と言ったんですね、この釧路国支庁長の方の判が押されています。そして、このアイヌの方の代表は三田良吉さん、既に亡くなった方ですけれども、この方が判を押しています。しかし、この土地を処分するその他、手渡すなりの管理責任は道庁が持っていたのに、なぜこれは釧路国支庁長の印鑑なのかということが、アイヌの方たちにとっての、これは許せない印鑑なんです。
 それから、このとき三田良吉さんが押した判はどういうことだったかというと、代表として押されてはいるんですけれども、ちゃんと実測をしてからしてくれと言ったら、後でするとおっしゃったというようなテープなども残っていたり、息子さんがその証言を聞いたりしているというふうに言われています。
 その意味で、十六年たってもなお納得をしていない方たちがいるという意味で、この判さえ押せば、しかもアイヌの方たちにとっては本当に長いこと、北海道に住んでいた方たちの文化は、私も後からあの土地に住んだ者として大変胸が痛みます。持っている文化も違う。その意味では、この方たちに何というひどい仕打ちをしたんだろうというのがこのことです。
 それで、そこのところは次に行きますが、共有者の管理権を返還し、共有者の共有権が回復したということは、本当にそうなったとお考えでしょうか。
河村政府参考人 これは、質問主意書に対する政府の答弁書でもお答えいたしておるわけでございますけれども、厚岸小島のアイヌ共有地につきましては、北海道旧土人保護法に基づきまして指定が廃止されたということをもって、それに伴って北海道知事の管理権限がその時点で廃止された。管理権限が廃止されたということは、その土地に対する制約が解除されたということでございまして、共有者の共有権が回復しているものと認識をいたしております。
山内(惠)委員 この釧路国支庁長が判を押したのは、昭和二十八年ですから、一九五三年ということです。そのときは、知事の権限が廃止されたときではありません。そのことは御確認ください。
 それで、納得をしていない方たちは、一九八五年八月二十六日付の厚岸町長の公文書で明らかなように、この土地は実測するべきだというふうに思っていたんですが、この土地は実測が難しいという意味で、文書も、担当者は御存じだと思うんですけれども、実測できないというふうに言っているんですよ。実測できないと言っていることを真に受けてよいのでしょうか。
 その意味で、この土地が実測されていないまま、第三者にこの土地を販売する、この土地を手放す、そういうことができるのかという疑問も皆さん持っていらっしゃいます。特に、これは学校用地として転売をしているというのがあるんですけれども、実測もできないと言ったところで、アイヌの方たちの土地がどこなのかもしっかりすることもできないまま転売していいものですか。私は、それは全く問題だと思います。
 その意味で、実測困難なのに共有権を返還したなどとおっしゃる言葉も、それは間違っているんじゃないでしょうか。
河村政府参考人 共有権がもとに復したというのは、先ほど申し上げたような指定が廃止されたということをもって、この土地に対する制約がなくなったわけでありますから、共有権が回復しておるということでございます。
 それから、厚岸町の実測が困難であるということを表明したのが一九八五年だと思いますが、境界が不明確につき実測の実施は困難であるということをお答えになっておる。その時点で、つまり昭和六十年の時点で実測が困難ということでございますから、今から五十年前の状況がどうであったかというのを実測により推定するというのは、さらに困難だろうというふうに私ども思います。
 先ほど来申し上げている引き渡し文書によりますと、当該共有地は海に没しておるということで、引き渡し文書にそういう形で署名捺印がされておるという状況も一方にあるわけでございます。
山内(惠)委員 実測もしていない、それからアイヌの方たちの土地がどこなのかも確認されていない、しかし学校用地としては転売をする、そしてアイヌの人たちが持っていた土地については波浪により海に没したと。こんな説明で納得されると思われますか。私は、納得なんかできるわけがないと思います。
 しかも、最初、この釧路の行政監察局は、測点がなかったので、技術もなかったし、測定は困難だったと言っていますが、その後、やってやれないことはない。それなのにもかかわらず、これは一九三六年の段階で、測量すればできないことはないのに、漁民の証言のみに基づいてこの地図をつくっているんですね。それで、この地図に信憑性がないというのを判決の中で言われているんですね。それで、その後も、やろうと思えば、今なら正確な実測は島の皆さんと共同でやることができるとおっしゃっているんです。
 その意味で、それでは、今改めて実測しようと思ってくださるのかどうか。私は、今、ここに裁判で信憑性がないと言われた地図もあるんですけれども、その後、厚岸町の歴史、町史には、学校は東北の隅にあると言っている証言があるんです。厚岸町なりに測定したのかもしれません。それともこの地図は全く違うという意味で、これは漁民の言葉に基づいてつくった地図だったからそのように言われたんではないかと思います。
 時間はこの三分の一も質問しないまま過ぎておりますので、このような状況ですから、私はアイヌの皆さんの気持ちが本当に痛いほどよくわかります。大臣にもきょうここのところをお聞きいただきましたが、きょうのやりとり、ほんの短い時間でしたが、お聞きになって、大臣はどう思われたかをお聞きしたい。また、今後どうなさろうと思われたか、感想だけでも結構です。本当に前進回答がいただきたいところです。
 私は、一九八七年、ニュージーランドに夏冬十五日間ずつ、計三十日全く観光目的で行ったんですけれども、大変驚きました。あの国には先住民族マオリの方が住んでいるんですけれども、一日のニュースの、十七時といえばゴールデンタイムです。そこで一時間マオリ語でニュースが放映されていました。
 また、国会の議席の中には、パーセントはしっかり覚えていませんけれども、アファーマティブアクションというんでしょうか、積極措置で、マオリの方の議席数が確保されているんです。ですから、マオリの方たちの中から代表を送るという選挙の仕組みを考えられていらっしゃいます。
 日本では、平成九年にやっと旧土人という差別的な法律がなくなり、言葉もその言葉を使わないようになりましたけれども、今なお、この厚岸小島のみならず、実測がされないまま、自分たちが持っている土地は海に没したなどということで納得できるとは思えませんので……
山口委員長 時間が経過していますので、御協力をお願いします。
山内(惠)委員 では、最後に一言、大臣のお言葉をいただいて、きょうは私は終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 今先生のお話をずっと聞いて、そしてまた局長からの答弁を聞いておりまして、かなり先生の御発言と答弁と違うものですから、海に没したと一方は言うし、一方は小学校に売ったというふうにおっしゃるし、なかなか今聞いただけで私もその全貌をつかみ切れないで聞いておりました。
 もう少ししっかりと、先生がおっしゃったことと、そして、それがどこが一体問題点で、そして何をすればいいのかということを整理いたしまして、一度また御答弁を申し上げたいと思います。
山内(惠)委員 今後その精査をすることを、私も努力したいと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
山口委員長 次に、大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 先月、読売新聞で、日本道路公団幹部と自民党など国会議員及び秘書との間で酒食を伴う会議が開かれていたことが報道されました。会議は、二〇〇一年から二〇〇二年度の二年間にわたって二十二回、報道では十七回でありますけれども、総額百六十六万円の経費が支出されていたことが発覚いたしました。
 道路公団民営化議論の大変シビアなそういうさなかに、国会議員との間で酒食を伴う会議が開かれていたこと、しかも、酒食に伴う費用は道路料金収入等々の経費から支出されていることなどから見ても、道路公団の行為がいかに国民やユーザーの常識からかけ離れているか、こういう点がはっきりあらわれてきたのだと思います。
 きょうは、道路公団のあり方などが取りざたされている中で、過去の酒食会議問題を含めてお聞きをいたします。
 最初に、道路公団に伺いますが、一連の会議を行った目的はどのようなものだったでしょうか。
藤井参考人 私ども道路公団は高速道路等の仕事をさせていただいているわけですけれども、大学の先生であるとか、ジャーナリストの方々だとか、あるいは地域の経済人であるとか、あるいはその地域の代表の政治家のお立場の方々だとか、幅広くいろいろな御意見や御示唆をいただきながら、国民、利用者に喜ばれるようにつくっていかなきゃいけないという視点から、つくったものについては、また利用の面で御指導いただかなきゃいけないということで、会合を持ち、そしてそういう意味の御指導をいただいているというのが実情でございます。
 そういう一環で、国会の先生あるいは地方の政治家の先生方等々からも御指導いただいているというのが実情でございます。
大森委員 今回報道された会議が実際にそういう会議であったかどうか、これは後ほどまた伺いますけれども、会議の経費はどういう費目から出されたでしょうか。
藤井参考人 私どもには会議費というのがございます。この会議費は、そういう意味の有識者や関係機関との打ち合わせや意見交換、情報交換に伴ういろいろな経費を支出する項目としてございます。
 なお、それ以外に実はもう一つ別の経費がございます。それは、大雪が降ったとか、あるいはいろいろな状態が起きたときに、緊急に、そこで動きがとれない方々に、例えばお弁当、おにぎりを提供するとかいったようなこともございます。そういうような費目というのはこの会議費以外で支出することはございますが、大体そういう食べ物類の支出はこの二つの項目から成っております。
大森委員 公団としての費目の説明としては随分抽象的で、かなりいいかげんな御説明だと思うんですね。
 それで、予算事務提要、これは平成十四年度でありますけれども、財団法人大蔵財務協会、道路公団ではどういう事務提要でやっているかということについて資料要求をしたところ、これが出されてきました。
 この中で、会議費というのはこういうようになっているわけですね。「会議用、式日用の茶菓弁当、非常炊出賄等の食料の代価」、こう規定されているわけですね。これで間違いないはずですね。今回の一連の会議が、「会議用、式日用の茶菓弁当、非常炊出賄等の食料の代価」、こういう趣旨に沿ったものになっているかどうか、お答えいただきたいと思います。
藤井参考人 先生今言われましたのは予算事務提要の内容でございますが、「職員基本給」というところの中で調整手当等々がずっと書いてあるわけですが、その中の一項目に「会議費」という項目がございます。その「会議費」の項目は、「会議用の食料の代価」、こういうふうな項目がございますので、それをもって私どもは充てている、こういうことでございます。
大森委員 それはごまかしですね。会議費としては、「会議用、式日用の茶菓弁当」ですよ。食料というのは「非常炊出賄等の食料の代価」、明らかにこれは違うんじゃないですか。
 それで、酒食問題が報道されたとき、公団の方では、事前に、公団業務に必要な会議か、常識の範囲内の出席人数、金額なのかなどをチェックしているということを述べておられます。具体的にどういうチェックの方法をとられたんでしょうか。
藤井参考人 私どもは、この会議を開催する場合の手続でございますが、日本道路公団の会計規程というのがございます。その中で、会議の開催決議、会議費用の支出決議、会議費用の出納決議というような段階を経て執行しております。
 なお、この会議の開催決議に係る決裁権者というのは、本社、支社、事務所でそれぞれ違ってございまして、本社の場合には、金額によりますけれども、総務担当の理事及び総務部長、支社では支社長ないし総務部長、事務所では事務所長、かようになっております。
大森委員 事前の会議費を支出する際のチェックもされておる、それから今の答弁ですと、あれほど報道されているにもかかわらず、会議目的に沿ったもの、あるいはこの予算事務提要の趣旨にも沿ったものというようなことの答弁になるわけでありますけれども、具体的に伺いますが、総裁は、二〇〇一年、平成十三年七月六日に行われた会議について、一年後の十一月に、一年数カ月後、経費の戻し、戻入をされております。戻入された理由はどういう理由でしょうか。
藤井参考人 その会議に私自身が出席したわけでございますが、いろいろな、これからの高速道路をどういうふうに考えていったらいいのか、一万一千五百二十キロであるとか一万四千キロとか。それで、これから、まだまだ足らざるところもたくさんあるわけでございます、要望の多いところもあるわけでございます、そういうところをどういう形で、道路公団としても、コスト縮減等々をするだけではなくて、どういうふうな形でやっていったらいいかといったようなものを含めて御指導をいただいたわけでございますけれども、たまたま道路公団の人間が非常に多かったわけでございます。
 それで、やはりその状況から見て、ちょっと私、そのときの判断でございますから、今から思えば、会議そのものは普通の会議でございますから問題ないのでございますが、少し多いかな、これではちょっと私が少し持った方がいいんじゃないかなというふうに判断いたしまして、会議が終わった後で、たまたまやった場所が東北支社管内だったと思いますけれども、東北支社長に、おい、きょうの会議は私が個人的に支弁するよ、だからそういうふうにひとつよろしく処理してください、こういうふうに申したのを覚えております。
大森委員 これはマスコミなども指摘しておりますように、昨年の十月一日から特殊法人の情報公開が始まった。実際に戻入手続が行われたのは十月の十六日であります。マスコミ等がそういう情報公開の手続を行ったということで、慌ててやったというのが真相じゃないかと思います。これは、だれしもそう考えるのが自然ではないかと思います。大体、公団業務に必要な会議か、常識の範囲内の出席人数なのか、金額なのか、事前にチェックしているのであればそういうことは起こり得ないわけであります。したがって、先ほどのチェックをしているという答弁とも矛盾をしていると思うんですね。
 それで、JHの職員の出席が多かったということがその唯一の最大の理由になっているようでありますけれども、一連のこの間の酒食を伴う会議にJH職員が多い、そういう会議が幾つもあるわけですね。
 例えば、二〇〇一年九月六日の会合。相手方は三人でありますけれども、JH側は八人。しかも会議費は十五万二千四百三十五円ですよ。JHが八人、しかも会議費は十五万を超える。今の総裁の答弁からいうと、これは当然戻入の対象にならなくてはならないと思いますが、いかがですか。
藤井参考人 会議そのものは、それぞれそのときの状況で判断すべきものでございますので、今先生がおっしゃったケースについては、ちょっと私、何とも、どういう状況でそれが行われたかわかりませんけれども、正当なものなんだろうな、こういうふうに思っております。
 なお、私どもそういう会議をやるということについては、会議をやって、絶えず、何も国会の先生だけじゃございません、国会以外の先生の方がはるかに多いわけでございますから、そうやって情報を得ない限り、世間から遊離してまいります。やはり我々は利用者のために仕事をしているわけでございますから、絶えずそういう情報をいただくことが必要なんで、そういう意味で御理解をいただければありがたいと思っております。
大森委員 日本酒二十本とかビール十一本、そういうものを飲む、飲食する会議を行って、それで平然としている、それ自体が世間からもう大幅に遊離しているんじゃないですか。
 今の件については、今、初めて聞かれたと言われました。あなたの先ほどの答弁では、JH職員の出席が多かったということが最大唯一なんですよ。これは戻入すべきだということに、当然措置をとるべきではないですか。
 この件と加えて、二〇〇三年三月十一日の会合、これは相手方一人であります。JH側が五人、会議費は五万五千五百十円ということですね。総裁が戻入したケースは、相手方は二人、JH側が八人、会議費は十四万三千五百三十五円。この二件について、きちんと調べて、必要であれば戻入するという措置をとりますか。
藤井参考人 今先生がおっしゃった具体的な例としては、十一年の三月十一日の、私どもの芝分室というのがございますが、そこでやったものではなかろうかと思うんですが……(大森委員「もう一つ、九月六日です、二〇〇一年」と呼ぶ)二〇〇一年。十一年のでございますか。――ちょっとここに今すぐ、九月六日というのが、表に出てきておりませんけれども、私は、いずれにいたしましても、私が戻入の判断をいたしましたのは、そのときの状況を見て、私自身が判断したものでございます。
 なお、何で一年後というふうに言われたかと思いますが、私は、そのときに、そういうことを支社長に言いまして、ただ、多分私の想像でございますが、年度末だったと思いますけれども、そういうこともあって、先に事務処理が先行して、趣旨が十分伝わっていなくて、その結果、要するに戻入というやり方というのは余りなれていない会計上の処理でございますが、そういうようなことで、結果的に延び延びになって、現在そういう状況になったものと理解をいたしております。
大森委員 これはもう潔くきちんと認めるべきだと思うんですよ。戻入、余りないどころか、ほとんどこういうことはやられていないわけですよ。それをあえて一年数カ月後に、第一、その間、何もしなかった、当然、請求書も来ないのに、それについて何も言わないという、そういうこと自体が、そういう矛盾が次々と出てくるわけですよ。やはり事実関係を率直に認めて事を改める、そういう立場に立つことが第一に必要ではないか。それを言いくるめると、いろいろな矛盾が次から次へと吹き出てくるということになると思います。
 そこで、戻入したのは総裁だけではないですね、東北支社長も戻入されています。二〇〇一年、平成十三年の七月二十三日、十一月八日、十二月二十八日の三回の会議の経費について、これまた翌年の十一月に戻入されております。
 東北支社長は、どんな理由で戻入されたんでしょうか。
藤井参考人 私の知っている限りにおいては、私と同様な趣旨だと聞いております。
 いずれにいたしましても、そういうことがありましたので、私ども、一層、こういった会議の趣旨を十分誤解のないようにするために、会議の開催については、真にやむを得ない場合とか、あるいは必要最小限の費用であるとか、あるいは場所とかそういうことについても、相手方のお立場もございますけれども、厳正に判断して処理するように現在指示をし、至っております。
大森委員 戻入した以上、する以上、公団の業務に必要な会議になっていなかったということをみずからこれは認める、証明したようなものだと思うんです。
 そこで、これは、出席をした国会議員も経費を返金したと伺っておりますが、どなたが返金をされたんでしょうか。
藤井参考人 ちょっとお待ちください。正確を期するために、ちょっと個人的なお名前を、国会議員が、最初三名、やはり個人負担したい旨のお申し出がございまして、返納していただいております。村岡兼造議員、それから、ちょっとお名前が読みにくいんですが、菅義偉議員、それから衛藤征士郎議員でございます。
 なお、その以後、自見庄三郎議員からも同様のお申し出がございました。
大森委員 公団側も戻入し、そして国会議員の側も返金をするということで、これはもうそのこと自体が、これらの会議そのものが問題があったということに当然なると思うんですね。
 会議の日程も、これを調べますと、日曜日が二回、土曜日が一回、年末の御用納めの翌日二十八日に一回、こういう状況であります。それで、これは報道によれば、出席した国会議員の人々は、会議なんというものではないと言っておられます。公団側は、公団業務に必要な会議と強弁しても、実際に会議に出席した人たちはそういうふうに受けとめていないわけですね。
 さらにお聞きをしたいわけなんですが、報道で明らかになった会議、二〇〇一年と二〇〇二年、十三年、十四年ですね。それで、会議費、先ほどお話がありました。では、この五年間で会議費は全体で総額どのぐらいになるのか、各年度ごとにお答えいただけますか。
藤井参考人 平成十年度一億五千四百万でございました。十一年度一億四千百万でございました。そして十二年度八千三百万円、十三年度五千万円、そして十四年度は二千三百万円、かようになっております。
 以上でございます。
大森委員 減ってはおりますけれども、しかし、五年間で総額四億五千百万円、これは相当な額だと思うんですね。平成十年度は一億五千万。大変な会議費となっております。
 平成十年といったらどういう年であったか。これは道路公団としては忘れることができない年だと思うんですが、井坂武彦公団理事が逮捕される、収賄容疑。特捜部は、日本道路公団本社家宅捜索、同時に財団法人道路施設協会も家宅捜索をする。さらに、この井坂理事逮捕からすぐの一月二十九日には、ファミリー企業の一つである道路施設サービスの社長さんが自殺をされました。さらに、同じ平成十年の九月一日には、ファミリー企業の一つである日本ハイカの元取締役が、同社に五十億円の損害を与える、特別背任でこれまた逮捕。その前には、日本道路公団第一管理局課長が収賄で逮捕される。
 本当に、大変なことが次々と引き起こされた年に、会議費として一億五千万円を超える金額が使われていたということで、これは、今その経費を減らしてきているということだけで済ませるわけにはいかない大変重大な問題で、洗いざらいこれを明らかにすることが必要だと思うんです。
 そこで、今申し上げた平成十年、十一年、十二年、この国会議員を含む会議の開催状況はどうですか。酒食会議の件数、支出管理金額を各年度ごとに明らかにしていただきたいと思います。
藤井参考人 国会議員との会議開催状況について申し上げますと、平成十年度は二百九万円、十一年度は二百九十万円、十二年度は百七十万円、十三年度は百十五万円、十四年度は二十七万円。
 以上でございます。
大森委員 件数が明らかにされませんでしたけれども、それと、国会議員の出席しない国会議員事務所がありますね。それはどのぐらいですか。
藤井参考人 議員事務所との開催状況でございますが、平成十年度は五十三万円、十一年度は十一万円、平成十二年度は三万円、平成十三年度は十五万円、十四年度はゼロでございます。
大森委員 件数は私の方から申し上げますと、国会議員を対象にした会議が、九八年度、平成十年で二十三回、うち二十二回が料理屋であります。九九年度が二十六回、すべてがこれは料理屋。十二年度は十五回、うち十四回が料理屋となっております。秘書を対象にした会議、これは三年間で十二回、うち十一回が料理屋。料理屋が圧倒的に多いわけですね。
 今の件数の中で、出席した国会議員は何人ぐらいですか。
藤井参考人 まことに申しわけないんですけれども、今、そういう御質問があるというあれで、ちょっとお時間をいただければまとめられると思いますけれども、今すぐに申し上げるわけにいきません。申しわけありません。
大森委員 では、後ほど、ぜひそれを御報告いただきたいと思います。
 この九八年度から二〇〇〇年度、二〇〇一年度から二〇〇二年度の会議開催状況を見て、大変驚くようなことが幾つもあるわけですね。例えば九八年の六月五日、秘書を対象に料理屋で開いた会合でありますけれども、総人数は七名、十一万八千十三円についてでありますけれども、これは議題が秘書業務打ち合わせ、こういうことになっております。
 こういう秘書業務打ち合わせというのが、公団業務とどういう関係があるのでしょうか。
藤井参考人 事務所ないし秘書の先生とさせていただいたのは、結果的に事務所ないしは秘書の方となった場合もあると思います。
 それから、秘書の先生はやはり国会業務と地域のいろいろな情報を幅広く、地域の住民の方々のお考えだとか情報をお持ちでございますので、そういうものを幅広くお教えいただくという趣旨であったと思っております。
大森委員 秘書業務打ち合わせと公団の業務とどういう関係があるか、皆さんが提出された資料でそういうことになっているから、これは大変驚きであるわけでなんですが、先ほど来言われている地域の政治家ということの関係でも、問題があるケースがあるわけですね。これは大体、確かに支社管内の政治家が対象になっておりますけれども、支社管内以外の議員を対象にしているというケースもあるわけですね。
 二〇〇一年の九月五日の会合であります。これは静岡建設局主催で、議題は第二東名事業計画に関する打ち合わせ。国会議員側は、高知一区選出の福井照衆議院議員と第一秘書、第二秘書の三名であります。JH側は、静岡建設局長や本社保全交通部長など八名。場所は掛川市の割烹旅館真砂館、会議費十五万円余りになります。しかも、これは高知一区選出の議員が第二東名の、そういう支社管内以外の議員が参加しているということに加えて、東京の秘書がこういうのに参加している。
 しかも、さらに翌九月六日にも同じ福井議員と第一秘書、第二秘書を対象に会合を持っているわけですね。連続して持っている。議題は第二東名防災に関する打ち合わせということで、これには掛川市の助役が加わっている。JH側は先ほど申し上げた三名であります。これは、場所は同じ掛川市の日本料理屋寅や、会議費は二万五千円であります。
 二日続けて会合をやっているわけですね。秘書二人、東京の国会秘書が参加している。二日続けて行う会合であったのか、また秘書の交通費なんかは一体どうなっているのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
藤井参考人 この支社等において開催された会議の個々の詳細については承知しておりませんけれども、例えば福井先生の場合は、都市行政、地域行政に非常に堪能な先生でございまして、幅広く日本全国、いろいろな御見識をいわば御指導いただいている先生でございますので、個々の地域というよりも、東名・名神地域という新しい地域の形成に伴う環境問題、あるいはその他幅広い都市形成の問題等、そういう意味合いから御指導いただいたものと推察されます。
大森委員 いずれにしろ、これは皆さんもお聞きになって、高知一区の代議士と国会秘書が三名、静岡県の掛川市で二日連続で十七万円余りを使う、これは明らかにおかしいと思うんです。これは、一事が万事、こういう点をきちんと全面的に国民、そして高速道路、公団道路を利用しているユーザーに明らかにする必要があると思うんです。
 そこで、先ほど御報告があったように、国会議員、秘書を対象にした酒食を伴う会議、五年間で合計しますと九十八回、総額で九百三万円であります。これらはどういうことであるか。それは、お話があったような会議開催伺い、これによって明らかになるわけでありますから、これを全面的に明らかにしていただきたい、提出をしていただきたいと思います。このことを要求しておきたいと思います。
 そこで、監督官庁でもあります国交省の方でも、こういう、国民やユーザーから、とりわけ今、公団のあり方等々をめぐる大きな問題が提起されている中でのこうした事件の発覚であります。こういう点で、国交省としても、これは毅然たる立場で公団に対して何らかの指導なりを行う必要があるのではないか。とりわけこの会議開催伺い、これについてきちんと明らかにさせる、あるいは国会議員の参加者も、これはいつ報告があるんでしょうか。それは後で公団から伺うとして、その点、伺いたいと思います。
山口委員長 大森委員、申し合わせ時間がもう終了しておりますので、新規の質問は御遠慮いただきたいと思いますので、おまとめを。
 では、もう簡潔に。道路局長。
佐藤政府参考人 一般的に、事業を進めるに当たりましては、関係者と十分な意見の交換や情報交換を行う、これは不可欠なことであると考えております。その際、時間帯によって会食を伴う、こういうこともあり得る問題だと思います。ただし、いやしくも国民から誤解を招くことがないように、社会通念上、妥当な範囲で行う必要がある、こういうふうに認識しております。
 データの件につきましては、公団からの相談に応じて適切な対応をしてまいりたいと思っております。
大森委員 終わります。
山口委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 まず、一昨日、六月二日、神戸市の西区におきまして住宅火災が発生をいたしました。そして、大変残念ではありますが、三名の消防士の方々が殉職をされまして、心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、また負傷されました方々に対しても、心からのお見舞いを申し上げる次第でございます。
 災害は、いつ、どこでも起きるわけでありますが、やはり火災という、災害という大変な事態の中で身をもって救助活動される消防士を初め警察官等、皆さんに心から敬意を表するわけでございますが、やはりこの救助活動の中で避けなければならないのは二次災害であろうかと思います。
 そういった意味から、今回の火災事故について、十三名の方々が亡くなりまた負傷されたという事態は深刻に受けとめなければならないし、その原因究明の対応等、十分な調査をしつつ、全力でその対応に当たっていただきたい、このように心から要望するところでございます。
 つきましては、目下、調査中のこととは思いますが、その辺の今後の対応策等の決意も含めて、まず消防庁長官にお伺いをしたいと思います。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 消防活動中の消防職員が今お話に出ましたように死亡、負傷いたしましたことは、まことに残念なことでございまして、特に、殉職されました三名の隊員の方々、また御家族、御関係の方々には深く哀悼の意を表する次第でございます。
 この火災の発生当日直ちに、一昨日になりますけれども、消防庁及び独立行政法人の消防研究所の職員、都合四名を現地に派遣いたしておりまして、現在まで、火災や事故の状況、原因等について調査を行っているところでございます。また、本日、私どもの岩永総務大臣政務官が現地に入っております。
 国民の生命、身体、財産を守ることが任務であります消防職員でございますけれども、今おっしゃいましたように、活動現場において二次災害が起こらないように安全確保に配慮することが必要でございまして、今回の調査結果を踏まえまして、今後ともしっかりその面での徹底を図ってまいりたいと思っております。
 また、御遺族につきましても、消防の表彰規程にのっとりまして、できるだけの配慮をしていきたい、こういうふうに考えております。
山名委員 ぜひしっかりと取り組んでいただきたいことをお願いしておきます。
 次に、きょうは片山総務大臣にも来ていただいておりますが、住基ネットの問題で若干質問をさせていただきたいと思います。
 昨年八月の五日、この住基ネット、住民基本台帳ネットワークシステム、第一次稼働をいたしました。そして、ことしの八月二十五日にはいよいよ第二次稼働、こういう段階に入ってきておるわけでございます。
 この住基ネットの問題については、国会でも大論議となったところでありまして、個人情報をめぐるセキュリティーの問題等を含めて論議をされたわけであります。そして先般、個人情報保護法が成立をいたしました。
 そこで、最初に、この八月二十五日の第二次稼働に当たって、全国の各市町村における準備状況、この辺どういうことになっているのか、まずお伺いをしたいと思います。
畠中政府参考人 お答えいたします。
 第二次稼働に向けての準備状況いかんということでございますが、その前に、昨年八月五日から第一次稼働がスタートしたところでございますが、不正アクセスとか大きなトラブルもなく、順調に稼働しております。
 第二次稼働は、先生御指摘のように本年八月二十五日からでございますが、この第二次稼働に向けて、鋭意その準備に各市町村は取り組んでおるところでございます。
 なお、この第二次稼働がスタートしますと、八月二十五日からは、例えば全国どこででも住民の住民票の写しがとれるようになるとか、転入転出手続、今、転出時、転入時、二回にわたって市役所等に行かなきゃいけませんが、それが一回で済むようになるとか、それから住基カード、これは電子政府、電子自治体サービスを受けるための機能を持ったもので、身分証明書にもなるのですが、この交付を受けられるとかいうことで、さらに住民サービスの向上が図られるものというふうに私どもは考えております。
山名委員 そこで、先般長野県で、いわゆる本人確認情報審議会、これの第一次報告というのが出されまして、報道されたところであります。
 この第一次報告の中身を見ますと、住基ネットと接続している庁内LANのセキュリティー対策が不十分である、庁内LANがインターネットと接続していると住基ネットはウイルスやハッカー等で侵入を受けるのではないか、こういうような心配、指摘をされております。
 また、その中、いろいろなたくさんの項目があるわけですが、市町村は、コンピューターの専門知識とかあるいは管理能力に欠けている、また財政負担能力も不十分である、そういった中で、この住基ネットというのは市町村にそういう不可能をむしろ強いているのではないか、こういうようなこと等、いろいろと指摘がされているところでございます。
 私は、この住基ネットのセキュリティーについては論議の中でもいろいろな形で指摘もしてきたわけでありますけれども、少なくとも、ファイアウオールが十分に庁内LANの中にもしきめぐらされ、かつ個人情報保護のための二重かぎ等もきちっとある、こういった中で、こういった心配はむしろないではないかという思いを持っておりますが、こういった長野県の審議会の指摘を踏まえて、再度、このセキュリティー問題についてどのように対応しているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
畠中政府参考人 お答えいたします。
 長野県の審議会の第一次報告の点についての御質問でございますが、私どもは、この第一次報告に対しまして、直ちにコメントを出して記者会見もしたところでございます。
 審議会の報告では、先生御存じのとおり、安全対策が不十分で、住基ネットからは離脱を、こう言われておりますが、そもそも住基ネットは四情報を扱っておりまして、これは公開情報でございます。しかも、この住基ネットの安全対策は、この前の個人情報保護法の審議のときの参考人の御意見でも、最高水準のものでございまして、これまでも何ら問題を生じていないところであって、私どもとしては全く理解しがたい内容のものでございます。
 それで、安全対策はどうかということでございますが、全国の市町村のうちで一部の団体について庁内LANがインターネットに接続している事例があることは私どもも承知しておりますが、その庁内LANとインターネット、それから既存のシステムと住基のネット、これについてはファイアウオールが設けておりますので、インターネットから庁内LANを通じて住基のシステムに入ってくるとか、住基のシステムから庁内LANを通じてインターネットに出ていくということは、全くそういうことは起こり得ないシステムになっております。
 また、住基ネットそのものにつきましても、指定情報処理機関がファイアウオールやIDS、これは侵入検知装置でございますが、によって不正な通信を常時監視しておりまして、何かが起これば、すぐ警告を発して所要の措置がとれるというようなこととしておりますし、また、この住基ネットの回線は専用回線を利用しておりまして、しかもデータの暗号化とか通信相手の相互認証を実施しておるところでございます。
 それから、住基ネットを扱う、端末等を扱う操作者はICカードを持っておりまして、それを持っていない人は扱えない、しかも適正な人が扱った記録もとられるということで、極めて堅牢で安全なシステムになっておるところでございます。
山名委員 長野県としては、この答申を受けてどうするのかまだ態度は決めていないようでありますが、少なくとも住民基本台帳法、ここには、市町村長に対して、氏名、住所等、個人情報を都道府県知事に通知する、こういうことを義務づけているわけであります。仮に長野県がこの答申に基づいて不接続を決定した場合、どうするんですか。少なくとも百二十市町村、長野県はあるわけでありまして、地元的にはもう大混乱ということになるわけであります。
 今後、こういった長野県の動向、極めて注目をされるわけでありますが、あわせて、個人情報が成立すれば接続しますという、こういったところで、個人情報が成立したことによって接続を決めた横浜市等もあるようです。まだ態度が保留になっているのが東京都の杉並区、中野区あるいは国立市、福島県の矢祭町ですか、こういったところがまだ明確な態度をあらわしていない。東京都として勧告をされたようでありますが、今後、こういった長野県の動向について総務省としてはどのような対応をしていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。
畠中政府参考人 まず、長野県について総務省としてどう対応するかという御質問にお答えいたします。
 住基ネットシステムは、先生も御指摘のように、地方公共団体のシステムとして全地方公共団体の参加を義務づけておりまして、とりわけ市町村中心のネットワークでございます。それをまとめている県が住民基本台帳ネットワークシステムから離脱するというようなことは、そもそも法が予定しておりませんで、明白な違法となるというふうに考えております。
 仮に県が住民基本台帳ネットワークシステムから離脱した場合、この制度の中心となる県内の市町村が、住基ネットワークシステムに接続を希望したとしても、参加できない、接続できないということになって、極めて問題でございます。
 ということで、私どもとしましては、直ちに県下の市町村に対し説明し、連絡をしておるところでございますが、本日、長野県の市長会から長野県知事あてでございますが、住基ネットの本格稼働の実施に向けた緊急要望書というものが出されたところでございます。長野県においては、法の趣旨を踏まえた適法、適切な対応を強く要請するところでございます。
 それから、不参加団体のことについて触れられましたので、ちょっと補足的に御説明させていただきますが、現時点で五団体が不参加になっておるところでございますが、国分寺市につきましては、先般、五月二十八日に個人情報保護法の成立を受けて参加を表明されたところでございます。また、東京都は、中野区、杉並区、国立市に対して、地方自治法に基づく是正の勧告を五月三十日に行っております。また、本日、福島県知事が矢祭町に対して、東京都と同様の勧告を行っておるところでございます。
山名委員 いずれにしても、まだまだ国民の中には不安が横たわっているようでございます。
 今後、さらに、セキュリティー問題については、国民の皆さんに、住基ネットの安全性、さらには住基ネットの必要性、こういったものはしっかりと説明する責任があるんじゃないか。そして、市町村が取り組むセキュリティー対策については、財政支援も含めてしっかりと、住民の不安を解消するためにも総務省としては支援をすべきではないかと思いますが、この住基ネットの質問の最後に総務大臣としての御見解をお聞きしたいと思います。
片山国務大臣 いろいろ住基ネットで御心配をかけておりましてまことに恐縮でございますが、長野県の場合には、県というのはまとめ役なんですよ。住民基本台帳は市町村の仕事ですよね。その市町村がコンピューター処理しているものを全国のネットワークでつなぐ。ただ、一遍に三千二百幾らもばあっとつないじゃ大変ですから、県ごとにまとめてつないでいるんですよ。県はそのまとめ役なんですね。その県が離脱をするとかしないとかというようなことは、制度的にはあり得ないんですよ、もともとなくてもいいんですから。ただ、まとめるために入ってもらっている。それから、いろいろな仕事をやってもらっているんですよ。そういうことでございますので、長野の知事さんや関係の人にも十分理解を求めたい。市長会は、ぜひ第二次稼働をちゃんとやりたいので、そうやってほしいという要望書を出したようです。
 それから、杉並は、きょう、区長が記者会見をしまして、詳しく聞いていないんですが、横浜方式で入りたいと。段階参入というんですかね。詳しくこれは事情を聞いてみようと思っています。それから、その他のところについては、東京都知事が勧告をやっていますから。それから、矢祭にも、福島県の矢祭という町があるそうで、そこもそうですからね。
 まあ、できるだけ話し合いで、法律に基づく手荒なことはやりたくない、やはり話し合いでやりたい、こういうふうに思っておりまして、ぜひこれに入ってもらおうと。
 住基ネットは四情報なんですよ。山名委員、大変、釈迦に説法ですけれども、四情報に住民票コードと変更情報がついているんです。この四情報は公開情報なんですよ。だから、例えて言えば、一万円のものを百万円の装置で守っているんですよ、今。ただ、いろいろなことをこれからやってもらわないけませんからね。そういうことで、我々はそういう措置をとっているんですが、国民の皆さんにはわかってもらわないけません。技術的にも安全だし、制度的にも法律で決めた機関が法律で決めた手法しかできないんですよ、本人確認しか。そういうことでございますので、これからあらゆる機会を使って広報していくのと、それから、いろいろなフォーラムや講習会や、そういうことをやっていきたいと思います。
 今まで役所というのは、正しいことをやっているんだから国民の皆さんはわかってくれると思っているんですよ。今はそれじゃだめなんですよ。正しいことこそ、大いに声を大にして国民の皆さんに伝えないと。そういうふうに思っておりまして、今後とも、ぜひ御指摘の点、努力してまいります。
山名委員 ぜひ今後とも努力してもらいたいと思います。
 大臣、もう結構ですのでお引き取りください。
 では、きょうは坂口厚生労働大臣に来ていただいておりますので、もう大分時間も迫ってまいりましたが、SARS対策について、若干お伺いしたいと思います。
 大変なSARS問題が出てまいりまして、坂口大臣も、後から後からいろいろなことが出て、御苦労をいただいておるわけでございますが、これはきのう現在で、世界の患者数といいますか、八千三百九十八人、死亡者数が七百七十二人。国によっては死亡者率というのが、香港なんかは一六%、シンガポール一五%、カナダなんかは一四・五%等々、中国が六%でありますが、国によってはかなり死亡率が、当初の見込みといいますか、予想よりも大きく拡大をしておるようでございます。
 そこで、きょうお聞きしたいのは、このSARS対策の問題、実は台湾の医師が日本に観光に参りまして、そして関西圏、特に私の地元である京都を含めて、ずっと観光に回った。そういう中で、この台湾の医師がSARSの感染者であったことが発覚をいたしまして、大変な騒ぎになったわけでございます。
 そのいきさつについては別にいたしまして、そもそもこのときの対応、これはやはり今後の我が国のSARS対策としては極めて参考になるといいますか、やはり大事な部分を持っているんじゃないかと思っております。
 例えば、感染症法第三条では国及び地方公共団体の責務を規定しておりますが、国、地方公共団体の双方の責務ということで、両方、両並びの責務の規定なんですよね。これがもう一つあいまいでして、どっちに責任があるのか、両方責任があるのか、その辺が明確でない、こういったものであります。
 こうした中で、今回の事案は、第一報の報告、それから国内での立ち寄り先の情報、これがなかなか、いわゆる京都なり大阪なり、そういったところに伝わらなかった。当然、市町村等地元への情報提供にも、県としても、府としてもおくれがちで、十分伝わっていない。そういう意味での大変な影響を及ぼしたわけであります。
 原子力災害の場合は、原子力災害対策特別措置法、こういうことによりまして、少なくとも主務大臣が地方公共団体の要請によりまして専門職員を派遣する、こういうこととしておりまして、防災訓練においても、現地にオフサイトセンター、こういうものを設置いたしまして専門職員が対応することとしております。
 感染症法にも同趣旨の規定、第十五条でありますが、設けられているわけでありますが、厚生労働省は都道府県の要請があれば派遣すると、極めて受け身になっておるわけですね。今回のような事案こそ、厚生労働省がきちんと専門職員を派遣して、都道府県との連携のもとに、立ち寄り先の情報の収集、分析、それから情報の共有化といいますか、それから積極的な疫学の調査、消毒の実施、こういった指導助言というものを行うべきであるわけであります。
 そういう意味から、今回、一応の手を打った、こういうふうに認識はしておりますけれども、いま一度、一報後、都道府県に対する通知が大変おくれたり、あるいは、職員派遣があっても翌日にはもう四名中三名が帰ってしまったり、地元にとっては極めて不安の材料を残した対応になったようであります。
 改めて、国及び都道府県、ここにおける行動計画、これをきちっと策定を、この際いま一度すべきではないか、見直すべきところは見直すべきではないか、こういうふうにまず基本的に考えておりますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今回の台湾の医師の問題におきましては、日本にとりましてSARS問題の第一回と申しますか、これほど地域、国にとりまして身近に感じたと申しますか、そうした対応に追われたときはなかったというふうに思います。
 こういう状況でございますので、最初、国とそれから都道府県、それも、今回は一つではなくて三県にも四県にもまたがっていたということがございまして、なかなか対応がうまくいかなかったということは事実でございます。大阪府の知事さんや京都府の知事さんからもいろいろおしかりを受けたところでございまして、私たちも、これからの対応をもう少してきぱきとうまくできるようにやらなければならない、反省すべきところは反省をしている次第でございます。
 そして、地方にお願いをしなきゃならないことはちゃんとお願いをしなきゃいけませんので、国と地方との役割分担というものをより明確にしたいというふうに思っておりますし、また、それぞれの都道府県の意見が相違をいたしましたときにどうするか、とりわけ情報公開をどうするかということにつきまして、もう少し具体的なことを決めておいて、そして都道府県にもお願いすべきことはお願いをするということにしないといけないというふうに考えている次第でございます。
山名委員 そういう意味での行動計画、こういったものをしっかりと国も地方公共団体もこの際作成すべきであるというふうに思っておりますので、ぜひ取り組みをお願いしたいと思います。
 それから、先ほどもありました情報公開、公表の問題ですね。
 今回も、公表はしたんだけれども、かなりおくれてからしたわけで、関係者といいますか、もうパニック状態で電話等も入っておったようでございます。公開を、公表してから後は極めてそういったものは沈静化しまして、それなりの具体的な相談に応じられるように行政側もなっている、こういうことでありまして、風評被害等のおそれもあることは承知の上でありますけれども、また現場が混乱をしないようにという配慮も当然でありますけれども、現場自治体の生の声も聞きながら、早期の公表というのが必要ではないか、こういうふうに私は思っておりまして、そういった意味での公表のガイドライン的なものもしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 それから、先ほども言いました風評被害、今回も極めて風評被害が多く出されております。ホテルや旅館、あるいは土産店等も、キャンセルが相次いでおりまして、具体的な数字はおいておきますが、風評被害等に対する救済策、こういったものは忘れてはならない、さらに一方で強化しなければならない大事な問題だと思っております。
 そういう意味から、風評被害対策、どのような手を今後打たれようとしているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 情報公開をできるだけやらなきゃならないというふうに私たちも思っていたわけでございますが、しかし、情報公開をやりますと、風評被害あるいはまた個人の情報の問題等もございまして、なかなかここは難しいところだというふうに思いますが、そこは、前もって、どういう場合には情報公開をする、どういうときにはしないということで、あらかじめ、先ほどアクションプログラムとおっしゃいましたけれども、地方にもお願いをいたしておりますし、それから国の方も明確にしておかないといけないというふうに思っております。一応やっておりましたけれども、やはり現実に起こってみますと十分でなかった点もあったというふうに思っております。
 それから、風評被害に対してでございますが、これは本当に申しわけないというふうに思っているわけでございますが、皆さん方に対しまして、皆さん方に対しましてというのは、国民の皆さんと申しますか県民の皆さん方に対しましては、もう心配は要らないものなのだということを徹底しなきゃいけないというふうに思っております。それがまず大事だというふうに思っておりますが、しかし、現実問題として、旅館でありますとか、ホテルでありますとか、あるいは土産物店でありますとか、さまざまなこれは御迷惑をかけているようでございますから、私たちもそれに対してできるだけのことをしなければならないというふうに思っております。
 これはBSEのときもそうでございましたが、国民生活金融公庫などから融資を行うというようなことをあのときにも行ったわけでございますが、今回も、一千万円を一つの限度として、年利〇・四五%の運転資金を融資する衛生環境激変対策特別貸付制度でございますが、これを利用いたしまして、六月上旬を目途に発動したいというふうに考えているところでございます。
 こうした問題だけにとどまらず、他に我々のできることとして何があるかといったことも今鋭意検討を進めているところでございまして、できる限り風評被害に遭っておみえになる皆さん方におこたえをしたいと考えているところでございます。
山名委員 時間が参りましたので、まだまだ質問が残っておりますが、最後に一点、御要望だけさせていただきます。
 それは、いわゆる指定医療機関等へ対する支援策の問題です。
 今回のSARSについては、新感染症というふうに位置づけられて、一類感染症に準じた対応をすることとなっておりますが、現実問題、そういった整備運営費補助、これは年間三百万円なんですね。二類感染症指定医療機関、これに対しては年間百万。こういうことで、いざという、SARSが仮に上陸したというときのための整備支援としては、私は極めてこれは薄っぺらじゃないかと思っております。
 そういう意味では、きちっと、もう少し前向きな形でこういった指定医療機関、これがいざというときに対応できるような積極的な財政支援というものも一方でぜひ考えていただきたい、このように心からお願いを申し上げまして、時間が参りましたので、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
山口委員長 次に、塩田晋君。
塩田委員 自由党の塩田晋でございます。
 現下の日本の最大の課題というのは、御承知のとおり北朝鮮の問題であります。もちろん、経済問題もありますけれども、この北朝鮮の問題というのは、核兵器の問題、ミサイルの問題等々ございますが、国民の生命財産、人権を守る立場におきまして、警察庁が果たされる役割というのは非常に重いものがあると思います。
 国民が安心して生活できるように、防犯あるいは安全等々の職務に専念しておられる警察官の皆さん方でございますが、残念なことに、拉致問題を調べれば調べるほど、警察は本当に十分に日本国民を守ってくれているのかということを痛感するわけでございます。
 昨日、私は、工作船が展示されておりますお台場の方へ行きましてじかに見てまいりました。すごいものを持って日本の近海に出没し、拉致もあの船でやったんだと思われることを考えておったわけでございますが、いや、本当にひどいものですね。
 北朝鮮からの工作員が日本の近海あるいは沿岸にうろちょろしながら、しかも、密入国あるいは密出国を繰り返しておる。警察もやっておられたと思うんですけれども、なかなか見つかっていない。そのいろいろな情報、また書かれたものも最近も出てきておりますが、そういったところから、工作員の動きがこういった工作船と密着してやっておったんだということを感ずるわけでございます。
 警察におかれましては、日本人拉致の事案は十件十五人というふうに今のところ発表しておられると思います。特定失踪者問題調査会という、これは民間の団体でございますが、会長は荒木和博という人です。その発表によりますと、失踪者あるいは拉致されたかもわからないという人を含む三百二十人を把握しておられますが、公開したのはそのうち百四十四人と聞いております。この警察の発表でもない、またこの団体が発表あるいは把握しているものでもない方が三人ほどあるわけですね。そのうちの一人の田中実さんにつきましてお伺いしたいと思います。
 これは既に、兵庫県の神戸の関係でございますので、兵庫県警に救う会の兵庫の方から告発されて、警察、県警もそれを受け取って捜査をしておられると思うんですが、今までわかったこと、ひとつここで御説明いただきたいと思います。
谷垣国務大臣 塩田委員にお答えいたします。
 今委員お尋ねの北朝鮮による日本人拉致容疑事案、これは日本人の生命身体に危険を及ぼす極めて重大な治安上の問題であるというふうに認識しておりまして、今委員御指摘のように、警察として、まさにこれは北朝鮮による拉致であるというふうに判断をいたしましたものは今のところ十件十五名でございますが、そのほかにも、拉致であるということを否定できない事案がございますので、今それぞれのところで、去年の九月以来の情勢も受けまして、いろいろまたあれをきっかけにいろいろな情報もございますので、洗い直しを進めているところでございます。
 そこで、お尋ねの田中実さんの件でございますけれども、これは、これまでの捜査の結果、昭和五十三年六月に成田から出国した後、現在まで行方不明となっていることが判明しているというふうに承知しております。警察においては、御指摘のような北朝鮮による拉致の可能性ということも含めましてあらゆる事態を想定して、関係各機関との情報交換など所要の捜査を行っているところでございますが、現時点では、北朝鮮による日本人拉致容疑事案と断定するには至っていないものと承知しております。
 また、この件につきましては、昨年十月の四日、委員がおっしゃいましたように、兵庫県警に対しまして、同人を被害者とする国外移送目的略取等を内容とする告発状が提出されております。
 警察におきましては、今後とも事案の全容解明に向けて鋭意捜査を進めていくわけでございますが、具体的な捜査の内容につきましては、捜査上の秘密の保持あるいはプライバシーの保護等々の観点から、お答えを差し控えるのが妥当というふうに考えております。
 よろしくお願いいたします。
塩田委員 今申し上げました田中さんのほかに、お二人は、これはもう御承知だと思いますが、福留貴美子さんと小住健蔵さんという方です。きょうは時間の関係で、田中さんに集中して御質問をしたいと思います。
 今、捜査の途中で申し上げられないというような御答弁でございましたが、これはかなり詳しくいろいろな情報が一般世間に出ているわけです。一番はっきりしておりますのは、張龍雲という人、亡くなられたんですけれども、この人が存命中に文芸春秋に書かれた、平成九年に月刊誌文芸春秋に出たわけですが、これが小学館文庫として平成十一年の一月に出版されている。これにかなり田中実さんのことを詳しく、いろいろな人の証言を得て書いているわけです。それから、告発状にもあるいは添えてあるんじゃないかと思うんですが、張龍雲さんの署名による証言もついて行っているはずなんです。
 そして、かなり具体的に足取り、これは今言われましたように、昭和五十三年の六月六日に成田空港を立ちましてウィーンに、ウィーンから陸路でモスクワに入って、それからまた空路でピョンヤンに入っている、こういう足取りもわかっているわけです。それから、ラーメン店に勤めておった、そこの人に誘われて行ったというようなことも出ております。それから、そのラーメン店の経営者を指揮し、指導しておった上司がいるということもこの本には書いてあるんです。そして、田中さんを最初連れていって、ピョンヤンに連れていかれたときは、非常に興奮してというか、かなり反抗した。だけれども、そのうちに日本人の女性と結婚して大分落ちついて、子供もできた、こんなことまで書かれているんです。
 その真偽のほどを今恐らく調べておられると思うんですが、何としても、生きている、だから本当に原状回復のために早く帰すということ、これは外交努力も含めて、ひとつ警察でやっていただきたい。そのラーメン屋の店主さんは今現に青森県の八戸にお住まいであるし、また、その上司の人も山形県に住んでいるというような情報もあるんです。ですから、調べられるはずですね。一説によると、そんなのやっていない、証拠があるのなら出せと言って開き直っているというような話も聞くんですけれども、そのあたり、わかっている限りでひとつ言っていただきたいと思います。
谷垣国務大臣 今委員御指摘の文芸春秋から出ておりました書物について、そういう書物が存在する、またそういう書物が何を書いているかということも当然捜査当局としては承知をしているというふうに考えておりますが、具体的なことについては、大変申しわけありませんが、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
塩田委員 警察はそういう答弁を今の段階ではせざるを得ないということかもわかりませんが、これだけいろいろなことが出ておるわけです。そして、国民は、これは本当かうそか早く知りたいわけです。そして、早く田中実さんを日本に帰したいという、これは国民の大変な気持ちが盛り上がっていると思うんです。やはり警察は、捜査した内容をある段階で、中間段階でも発表してもらいたいと思います。いつまでかかるんですか、その捜査、終わって発表できるのはいつごろになるか。
 この張龍雲さんという人は亡くなられたんですけれども、ずっと祖国の統一のために、あるいは主体思想でもって、抑圧と搾取に対して闘うという、そういう闘士として長年やってきて、その末に、晩年で前非を悔いといいますか、反省をし、本当に命がけで、工作活動をやったことを告白されているわけですね。しかも、最近亡くなられたわけですね。そういうことがあるのに、やはり警察は捜査中でわかりませんということだけでいけないんじゃないかと思うんですがね。いつごろまでかかりますか、これは。
谷垣国務大臣 今、塩田委員のお気持ちは私もよくわかりますし、気持ちは同じであるつもりでございますけれども、これはいつごろまでこの捜査がかかるかということも今ここでお答えする段階ではないというふうに思います。大変恐縮でございますが、御容赦をいただきたいと思っております。
塩田委員 それから、神戸で起こった兵庫県警の問題なんですが、実際にその捜査に、やはり兵庫県警から山形行ったり青森行って、聞き取りをしたり、いろいろな捜査をやっている。証拠集めをやっているということだと思うんですが、これは実際、立件して裁判で争うときに、どういうふうになるのか、どこでやるのか、そういった問題も含めまして、何かやりにくいというか、捜査の壁のようなものが、やはり都道府県警察がやるために起こった問題なのか、アメリカのように連邦警察のようなものがあればあれでしょうけれども、日本の制度自体、やはりそこに問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、この点いかがですか。
谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、日本の警察は都道府県警を単位として活動をしております、権限も持っておりますし。警察庁という組織は調整を主たる仕事としておりまして、執行権そのものはほとんど持っていないという形になっております。
 お尋ねの今の捜査に関しましては、それぞれ所轄の県警が中心になって捜査をしているわけでございますけれども、この辺の連携というのは十分に連携をしながらやっているというふうに考えておりますし、国家公安委員会としても、都道府県警が壁になって捜査が十分に行われなかったということのないように督励をしてまいるのは当然のことと思っておりますので、その点はしっかりやらせていただきたい、こう思っております。
塩田委員 今の拉致問題、今の田中さんの場合は、強制的に捕まえて、袋に入れて、工作船で運ぶとか、そういうことでないケースですね。誘い出して、外国から連れていっている。その先はまた自由を拘束してやっていると思うんですがね。そういうケース、いろいろありますね。
 密入国、密出国がもう頻繁に行われているという今までの状況から見て、これは本当にテロ対策の面でもどんな危険があるかわからない。いつ起こるかわからない。現に今、停電があったり、あるいは新幹線で大事故になるんじゃないかというような危惧もされておりますね。また、サリンだとか生物化学兵器、そういったものを、ミサイルで撃ち込むだけじゃなしに、国内でそういう密入国の人たちが工作をしてやる可能性も、これはよく考えて対策しないといけないと思うんですね。
 それにはやはり海上保安庁はもとより、自衛隊、陸海空ですね、一体となって、やはり合同訓練をやるとか、図上作戦訓練をやるとか、治にいて乱を忘れずということ、本当に起こってからでは遅いので、十分に連携を密にして、治安の維持、国民の安全な生活を守るために、ひとつ万全を期していただきたいということをお願いいたします。
谷垣国務大臣 今塩田委員おっしゃいましたように、テロであるとか、この種の活動に対処するためには事前抑止ということが一番大事だろうと思います。テロリストを日本の国内に入れない、アジトをつくらせない、こういうような形が一番大事だと思います。
 それで、それにつきましては、今おっしゃいましたように、水際の対策というものが大事でございますので、もちろん空港等の出入国管理、こういうところとの連携も非常に大事でございますし、それから、今おっしゃいましたような海上保安庁との連携というのも非常に大事でございます。
 先般、海上保安庁と警察との間で、いろいろな想定をいたしまして共同の訓練を近々実施することとしておりますけれども、防衛庁長官もおられますが、防衛庁ともこういういろいろ協定を結びまして、そして各都道府県でまたそれぞれの地域の協定を結びまして、今までのところ、昨年暮れから六回、共同の図上演習を行っておりまして、いざというときに、こういうところがよく想定していなかったから連携ができないということのないように、今訓練を繰り返しているところでございまして、こういうものを積み重ねて、遺漏のないように対処していきたい、このように考えております。
塩田委員 よろしくお願いします。
 続きまして、石破防衛庁長官にお願いいたします。
 前の委員会で、あれは分科会でしたね、いろいろお伺いいたしまして、その後締めくくりのところができなかったものですから、きょうは短時間ですけれども、よろしくお願いします。
 まず、決算の関係ですから、ちょっとお伺いしたいんですが、予算はふえないで五兆円の手前でとまっているということで申し上げたら、効率的に節約しながらやっているというお話も聞いたんですが、ちょっと、これはお答えは要らないんですけれども、こんな事実があって、食料費なんですね。防衛庁の食料費というのは、三百七十三億六千九百万の糧食費が上がっています。この単価を見ますと、朝昼晩と金額は出ていますが、一日八百六十円なんですね、自衛隊員の糧食費が。一日八百六十円というのは随分節約し過ぎじゃないかなと思うんですね。これで本当に重労働というか、大変な、精神的にも肉体的にも消耗される隊員がもつのかなと心配するわけです。
 片や、警察の関係で調べましたら、被留置者一日一人当たりの食費が、これは十五年度ですけれども、千百八十八円というのが出ているんですね、これは都道府県によって違うかもわかりませんが。こういった状況で、やはりもう少し待遇を食料面でよくしてあげないといかぬじゃないかなと思います。これはお調べになって、また予算のときに頑張っていただきたいと思います。
 それから、大臣にお伺いしたいと思いますのは、よく言っております自衛権ですね、自衛権の範囲内で、「座して死を待つよりは、ミサイルに対しては、敵基地をある時期にたたく」ということについては再確認をしていただきました。それは、今の状況ではアメリカにやってもらうしかない、日本では自衛隊はそれだけの力を持っていないということが現状だと思いますね。
 この前の長官の御答弁では、飛行機は要撃戦闘機、これは一機百億円で、最新鋭、世界の最先端を行っているんだ、それを二百機持っているから、博物館行きのような北朝鮮の多くの戦闘機には絶対負けない、ばたばた落とせるんだというようなことで安心はしたんですけれども、それだけではやはり敵基地をたたく力はないし、といって、航空母艦を持てということをまだ今の段階で言えることではないんですね。
 それから、地対地のミサイルを持ってちゃんと備えるということもなかなか難しい状況の中で、やはり当面できることは、BMDの共同開発をアメリカとやっていますね。これを早く成功させて、一定の段階のところのものでもいいからつくって早く配置する、今いつ飛んでくるかわからないような状況ですから。相手は、北朝鮮はそう言っているわけですからね、飛ばすぞと言っている。また、国内におきましても、暴発させてはいかぬ、そうなった場合にその責任をだれがとるんだというようなことになって、弱腰にすべてなっちゃうという状況の中で、やはり防衛庁としては、自衛権はある、それは実行できるものを備えないといかぬだろう。専守防衛という立場を堅持しながら、いかに我が国の安全を守っていくかということについて、持てるだけのものは持たないといけない。用意すべきもの、配備すべきものはすべきだと思うんですね。例えば、巡航ミサイルあるいはトマホークのようなものとか、あるいは戦闘爆撃機あたりはどうだとか、やれる範囲のものを精いっぱい考えてこれを配置しないと、本当に国民は安心しておれないし、また外交の面でも弱腰になってしまう。
 北朝鮮が言っているのは、力がなければばかにされるんだ、だからばかにされないように核兵器もつくるんだ、ミサイルはどんどんつくるんだ、こう言っているわけですね。それを聞くと、やはり日本が現在ばかにされているような面がありますよね。それはやはり力がないから、言われっ放し、言われても仕方ないというような状況、情けない状況になっていると思うんですね。そこはひとつ、防衛庁長官としては、一番基礎的な力を備えて、有事にちゃんと我が国を防衛できるようにやっていただくその責任があると思うんです。
 これについて、長官の力強い御意思をひとつ発表していただきたいと思います。
石破国務大臣 お答え申し上げます。
 冒頭、私どもの自衛官の糧食費についてお触れをいただきました。御心配いただきましてありがとうございます。
 私どもの糧食費は、今先生御指摘のとおりでございますが、これには人件費、光熱費を含んでございません。また、先生が安保委員長をお務めのときに、私どもの隊員の隊員食も召し上がっていただいたと思います。本当に限られた予算の中で、隊員たちが一生懸命つくっておりまして、私も何度も食べましたが、それほど遜色のあるものを出しているとは思っておりません。また最近、変な話ですが、随分残す人がふえまして、昔みたいにおかわりするという人もいなくなってしまいました。
 いずれにいたしましても、先生の御心配をいただきまして、今後とも、自衛官がその過酷な任に当たるにふさわしいような食事ができるように努めてまいりたいと存じます。
 また、今、トマホークも含めましてそういうような能力を持つべきではないかという御指摘をいただきました。この国会におきましてそういうような御指摘を随分とちょうだいをいたしておるところでございます。
 他方、私どもといたしまして、長い間の御論議を踏まえまして、そのような能力は保有をしない、つまり、敵の基地というものをたたくということは、自衛権の三要件を充足した場合には、それは憲法の許容するところであるというのが政府の立場でございます。しかし、今その能力を我が国は持つつもりはなく、それはアメリカの打撃力にゆだねるのだ、こういうやり方をとっております。その方針を変えるつもりはございません。
 しかしながら、よく、敵基地攻撃能力を持つべきだという御議論があって、そのときに、すぐそんな能力が持てるかのごとき議論をされる方があります。それは、今のF15にいたしましても、先生御指摘のように、一機百億というのを二百機持っております。しかし、それは要撃戦闘機として敵の戦闘機を空中においてたたくという能力は持っておるのでありますが、敵基地をたたくという能力を持っておりません。
 敵基地をたたきますときには、イラク戦争でもそうでしたが、まず敵のレーダーサイトを全部つぶすということをやらねばなりません。それから、それでもまだミサイルは上がってくるかもしれませんから、それを避けて飛ぶという能力を持たねばなりません。そして、敵基地攻撃ができるだけのミサイルを持たねばなりません。そして、それに必要な地図が必要であります。それにふさわしいだけの度量、技量を備えなければいけません。それは、トラックやバスを買ってくるのとはわけが違うのでありまして、それは大変な年月と大変な費用を要すると考えております。
 政府といたしまして、今そのような能力を持つつもりはございませんが、そのために一体どれだけのお金がかかるのか、どれだけの時間がかかるのか。そして、私どもが今とっております、その打撃力は合衆国にゆだねる、それも単にゆだねるとだけ言っておればいいのではなくて、合衆国にゆだねるというその信頼関係をいかにして築くかという議論が必要なのだというふうに考えております。
 私どもといたしましては、今、合衆国とのそういう信頼関係をいかにしてまた向上するかということに努めておるわけでございまして、そのような能力につきましては、国会でまた御論議を賜りたいと考えておる次第でございます。
塩田委員 ありがとうございました。
 ぜひともその能力を持たないと、本当に国民は安心できません。その方向で精いっぱい御努力をいただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
山口委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 前から、早いところこのお二人の顔をそろえて質問をしたかったということでありますが、きょうやっと実現をいたしました。財務大臣そして総務大臣、それぞれ、今話題になっています税財源の地方への移譲というテーマで話を進めていきたいというふうに思っています。
 まず、塩川大臣にお尋ねをしたいんですが、分権推進会議で相当話が混乱をしておるようでありますが、本来は、調査会とかあるいは推進会議のような場で解決をしなければならない、あるいは決断をしなければならないテーマと、政治的に判断をしていかなければならないテーマ、これはやはり本来の議論の中から区分けをしていくべきなんだろうと。私、今の混乱を見ていると、本来は政治で決断をしなければならないところを、さまざまに審議会やら調査会に預けて無理やりけんかをさせているというような形で受け取れるというか、わざとそんなふうにテーマを持っていっているんじゃないかなと思えるぐらいに政治が機能していないということだと思っています。
 その上に立って、改めて塩川大臣にお尋ねをしたいんですが、この税財源の移譲、いつ実現をしていくという見通しを持って今議論に臨んでおっていただけますか。
塩川国務大臣 今、内閣官房が中心になりまして、経済財政諮問会議の本間先生を座長にして、事務次官クラスで調整をしておるところでございますので、その結論が六月じゅうには出るんじゃないかと思っておりますが、それを待って決定すればいいと思っております。
中川(正)委員 これまでの大臣の発言の中から私なりに理解をしている税財源の移譲というイメージ、大きなフレーム、これは、こここそ政治決断なんだと思うんですが、塩川大臣のイメージというのはこういうことじゃないのかなというのを大ざっぱに言いますと、財源移譲をするというその前提は、国にとっても、これまで積み重ねたいわゆる負債を返済していくだけの財源を確保していくという前提がないと税財源の移譲というのは地方にはできませんよと。だから、そこのところを含めた議論で、税財源の移譲というのをトータルで考えていきたい。だから、今、その話を受けてだと思うんですが、推進会議の中で、将来の増税ということをトータルで議論しないことには芽が出てきませんねということなんだろうというふうに思うんですね。
 これで合っていますか。
塩川国務大臣 分権推進会議でございますが、そこの御意見はまだ正式に聞いておりませんけれども、私はそういう考えとは別の考えを持っておりまして、税源移譲します、税源移譲していろいろと税を、自治体自身が課税能力なり徴収能力をしっかりと持ってもらわなきゃいけないと思うんです。現在のいろいろな法規制、規定からいきまして、地方税のいわば制限が、旧自治省、現在ですと総務省で、ある限度額、最低限は幾らです、上限は幾らと押さえておりますし、新しい税をつくろうといたしましても、旧自治省のときにはなかなか許可がおりなかったということがございます。そういうことではなくして、自治体にそういう課税権の強化と徴収権の充実というものをきちっと持たせていくべきだと思っております。
 マスコミは間違ったことを報道しておりますが、私は、税財源を譲ってもいいんだともう前から言っておるんです。そのかわり、もっと本質的な問題として、今、国が全部、中央集権で押さえておりますから、こういうことをできるだけ地方に、自主的に任せたらいいじゃないか、こういうことを言っておるんです。その権衡、そのバランスをとって財源を移したらいいということ。同時に、税源を移譲していくならば、その税の執行について、くどいようでございますが、先ほど言いました、課税権と徴収権は充実してもらわなきゃいかぬ、自分の責任で財源を賄うという、そのぐらいの意気込みがなければだめだよということを言っておるということであります。
中川(正)委員 課税自主権というのを地方へ向いて広げていく、これは私も賛成ですね。それは恐らく片山さんも大賛成なんだろうというふうに思うんですよ。
 その話とは別に、絶えず大臣の話から出てくるのは、例えば、今の所得税の一部、これは総務省の方から具体的に提案もあったような話ですけれども、何%かを地方税に振りかえる、地方住民税に振りかえるというふうなことであるとか、あるいは今の消費税の地方の取り分の割合をふやすであるとかというような、この間、たばこだとか周辺の税についてはというような表現はありましたけれども、基幹税に対して、移転をしていくということについては、どういうお考えをお持ちですか。
塩川国務大臣 これは、私は、行政事務事業分野とか、この移管の状況によって、やはりそういうことも必要な場合があるだろうと思います。
 しかし、ここで非常に大事なことは、所得税を減税してその分を地方へ譲る、これはやれぬこともないと思うんです。けれども、その分割した分をどんな格好で地方が課税されていくのか、ここが非常に問題だと思うんです。例えば、第二の所得税のような査定をしてやられるのか、そうじゃなくて、国税で減税した分、相当額を住民税で埋めていくとおっしゃるんだったら、それはそういうやり方もあるだろうと思うし、そこらはこれから煮詰めた話になったらいいんじゃないかと思いますけれどもね。
中川(正)委員 そこで、きょうは、前に私が質問した同じことを実は大臣に質問しているんですが、そのときの答弁と比べると大分やわらかくなってきた。恐らくそれぞれの議論を前提にしながら考えておられるんだろうと思うんです。
 そのときにいつも出てくるのが、そのように、基幹税を地方へ移したときには、それに伴う補助金なりあるいは交付税なりというのが、削られる分、本当はそのバランスがとれるんですけれども、それでもなお財務省サイドは、では将来の国債に対する償還財源はどうなるんだ、その分確保をしていくということになると、国の方が増税ということに対して責任を持っていかなければならない、これは間違っているんじゃないかと。それよりも、そういう形で移すよりも、さっきの話で、税の自主権というのを広げて、地方が増税すべきであると。これは、いつもここで、具体的な、議論がかみ合わない部分が出てくるわけなんですね。
 そういう意味からいうと、大臣の考え方としては、将来に対する責任というのをどちらが担っていくべきなのかという前提にあるんですか。
塩川国務大臣 私は、今、地方自治体に税源を移譲して地方自治体で増税をやれと言ったってできっこありません。地方自治体が、首長も議員も全部、ポピュリズムですから、そんなことできっこありませんし、ですから、移譲していった分はそれを守るのが精いっぱいだろうと思うんですよ。
 そうしますと、国としては、当然、地方へ移譲していった、今までの補助金なりあるいは交付税に組み込んでおりました相当額、地方へ渡した分だけ、その分だけ、今度は一般歳出を削ったらいいんですから、話は簡単なことになるんです。ですから、一般歳出はそのかわりに辛抱してもらうよということです。一般歳出を従来どおりやれと言ったら、それはとてもできませんし、不可能でございますから、そこらのバランスをきちっと、だからこそ、私は、事務事業の移管がどれだけのものかということが非常に大事だということを言っておるわけなんです。
中川(正)委員 従来の主張と大分変わってきたというように思うので、いずれにしても、私の気持ちからいうと、それは正しい変わり方だというふうに評価を申し上げたいと思うんですね。
 このことに対して、片山大臣、試案も含めて出しておられますね。それは、さっきの基幹税を地方へ向いて移していくということになるわけでありますが、それと同時に、財政調整をどうしていくか。財政調整というより、それぞれの自治体のバランス、この不均衡になっていく流れというのをどうしていくかということに対して、もう一つ踏み込んだ財政調整制度というのをつくり上げなきゃいけないというふうなことだろうと思うんですが、大臣は、今のそれぞれの調査会、それから推進会議の議論を踏まえて、今どのように全体をまとめていこうというふうに考えておられますか。
片山国務大臣 私どもが、三位一体、特に三位一体のメーンは国から地方への税源移譲だと言っておりますのは、現在の改革推進会議の前に地方分権改革推進委員会というのがあったんですよ。これは平成六年か七年にできまして、この後身が今の会議なんですよ。その前は委員会だった。そこでいろいろな案を出されて、それが地方分権一括法ということで平成十一年に通ったんです。十二年の四月からそれが施行されたんですよ。
 その際に、権限の移譲や国の関与の縮小や機関委任事務の廃止はやったんですよ。国会でやったんですよ。そのときに、権限の移譲や事務の移譲はやったな、税財源が残っているなということで、その法律の附則を衆議院で議院修正しているんですよ、院の修正を。それから、参議院では、こっちで修正しましたから、附帯決議をつけているんですよ。分権一括法で権限や事務はかなりやった、税財源が残っている、こういうことなんですね。
 だから、いまだに国と地方の税源の配分が六対四で、地方は四ですよ。ところが、仕事は六三から五ぐらいやっているんですよ。だから、その収入、支出との乖離もある。仕事の割に税源がもらっていないので、その不均衡を少しでも直そうというので、去年の五月に私が出したのが五対五なんですよ。五対五で何をどうするんだというんで、私は、基幹税で、国から地方に税をやるとすれば、税収が安定的で地域の偏在がない方がいいんですよ、偏在性が。
 そこで、そこからいうと、一つは所得税だと。だから、国の所得税を減らして地方の個人住民税を上げる。その際、私は、今の個人住民税は、御承知のように、所得によって五パー、一〇パー、一三パーになっているんですよ。だから、私は、地方はフラットに一〇パーにしてしまえと、税制改革の際に。それで、三兆円ぐらい移譲してもらったらどうか。それから、消費税は、御承知のように、五パーのうちが四対一になっているんだから、国が四で地方消費税が一だから、これを三対二にしてもらいますと、一パーが大体グロスで二兆五千億だから、合わせて五兆五千億をもらうと、五対五にはならぬけれども、五対五にかなり近づくんですよ、まだ国の方が多いんだけれども。そういうことを言っているんですよ。
 そこで、今委員がいろいろ言われておりましたけれども、それだけの税源移譲をするなら国の財政が大変ですから、そこで、同時に、国から地方に補助金を十二兆から十三兆出しているんですよ。昨年で十二兆九千億だったかな、ことしは十二兆二、三千億。だから、せめてその中を見直して、急がぬでもいいものや、もう時代が変わったからやめてもいいものがあればやめたらどうか。国税で取って補助金で出しているんだから、この国税で取るのをやめて、補助金で出すのをやめたら、国税を地方税にすれば、しゅっといくんですから。そういう意味では、国の財政収支にとっては中立だ、国税で取って同じものを出しているんだから、補助金で。それをやめちゃって地方税にしたらどうか、こういうことを言っているんですよ。
 そこで、課税自主権の問題がありますよ、今財務大臣も言われましたね。今の我が国は、租税法定主義なんですよ。法律で税の税目やいろいろなことを決めているんですよ。そこで、重立った税源というのは全部法定の国税と地方税で押さえているんですよ。自主権でやれるというのは非常に少ない。
 そこで、今地方がやっているのは超過課税というもので、標準税率が決まっているんですよ、上限を制限税率というんですよ。標準税率を超えて制限税率までやって、超過ですよね、超過課税をやっている。それからもう一つは、法律で決まっている以外の税金をつくるということですよ、法定外税。これが、例えば核燃料税だとか産廃税だとかなんですよ。しかし、こんなものはごみ拾いみたいなもので、重立ったのは法定で全部押さえているんだから……(中川(正)委員「まだ質問がありますから」と呼ぶ)そこで、それが合わせますと一・六%でございますので、五千億ぐらいでございます。
中川(正)委員 このさっきの片山試案、原則的に基幹税を地方へ向いて渡す、その分、国から回っている補助金、負担金を中心に削って調整をする。これは、塩川大臣はいいんですか、さっきの話でいくと。
塩川国務大臣 それは、内閣でそう決めれば、私はやってもいいと思いますよ。
中川(正)委員 前に、目をつり上げて議論をしていたころと大分雰囲気が変わってきたということがよくわかりました。
 その上で、もう一つ、さっき、全体の業務をどのように分担を考えていくかという、これが前提にないといけませんねと、まさにそのとおりだと思うんです。その整理ができていない。だから、きょう、実は遠山大臣に来ていただいたのは、具体的にそのことについても現場の立場から議論をしていただきたいということなんですね。
 さっきのような前提で、負担金が地方へ渡されるとすれば、具体的に義務教育に関連する負担金、渡そうということですね。いわゆる一般財源化していこうということなんですが、この流れに対して相当抵抗をしていられるというふうに私は伺っているんですが、その論拠となるところ、何がどう、この流れは間違いなんだということなのか、ちょっと聞かせてください。
    〔委員長退席、森田(健)委員長代理着席〕
遠山国務大臣 現在、三位一体ということで議論がなされているという大きな方向については、これは政府の姿勢でございますので、内閣の一員としてそれは協力をしていくというスタンスは、もちろんとるべきでございます。
 ただ、その際に、補助金、負担金を一般財源化するという話があるわけでございますが、負担金、補助金といいますけれども、その中には、私は、国が将来にわたってきちんと持って、そして役割を果たしていくものとそうでないものとあると思います。
 昨年度、義務教育費国庫負担金制度の一部を見直せということでございまして、私どもといたしましては、義務教育というのは国の基でございます。すべての国民が一定水準の義務教育を受ける、そのために、国がその役割として義務教育費国庫負担金制度というものをしっかりつくっているわけでございまして、他の補助金、他の負担金とは違うわけでございますね、もともと負担金。それで、これは憲法上の要請もあるわけでございまして、私は、この義務教育費国庫負担制度による教員の給与費の二分の一の国庫負担というものは、これは堅持すべきものだと考えております。
 先般、我が省だけが協力をいたしまして、その給与費のうちの長期給付それから公務災害にかかわるものにつきまして一般財源化ということに協力をいたしたわけでございますけれども、国会の御決議によりまして、これは、義務教育費国庫負担の根幹は堅持すべしということで、附帯決議にもなされておりまして、それは、何も抵抗勢力とかいうことではございませんで、日本の未来にかかわることでございます。そういう本当に国で残してやるべきこととそうでないものということをきっちりと議論されるべきものだと思います。
 私といたしましては、財源論としていろいろ御議論になるのはいいと思いますけれども、教育の根幹にかかわるあるいは日本の未来にかかわるものについて、財源論のみで論じては日本の国が危うくなると思います。貧すれば鈍するということではいけないと思います。という角度で、協力の姿勢は持ちながらも、義務教育費国庫負担制度の根幹については、私は、これは堅持していくという姿勢を崩してはならないというふうに思っております。
中川(正)委員 片山大臣、この問題は、本当は小泉さんに直接聞くのが一番いいんでしょうけれども、これはだれが整理していくんですか。
片山国務大臣 これは、補助金、負担金の整理合理化のときに、文部省の方からお話もありまして、一般論は、私の方はもちろん経済財政諮問会議でやりましたよ。固有名詞を出したわけじゃないんで、各省に協力をという中で出てきた話なんですよ。
 それで、二千三百億ぐらい、今の義務教育の学校の先生方の人件費の中で、共済の長期給付と公務災害補償については一般財源にすりかえたんですよ。(中川(正)委員「それはわかっているんです、だれが」と呼ぶ)わかっているでしょう。だから、それはその折衝の中で、我々と財務省と文部科学省の中で、十五年度の二千三百億の一般財源ができたんですよ。
 だから、それは引き続いてこれから協議をして、「改革と展望」の期間内に最終的な結論を出す、こういうことであります。
中川(正)委員 個別論議の交渉でやるという話ですが、私はこここそ地方分権の根幹にかかわるところなんだと思うんですよね。
 遠山大臣に改めて聞きたいんですが、恐らく、ナショナルミニマムというか、それぞれが憲法で保障されたいわゆる権利を、基本的人権というのを有しておる、それに基づいて国が保障しなければならない。そのもう一つ前提は何かというと、国が制度を組み立てて、その制度を満たすための基準というのを国がつくるんですよね。それは政省令で、例えば、三十人学級というものを、あるいは四十人学級というものを基準にするとか、あるいは校舎を建てるときには生徒一人当たり面積はこれぐらいにしていくとか、もう微に入り細に入り、統一基準というようなものをつくる、それをつくった限りはやはり国が保障をしてもらうということが前提でしょうということなんだろうと思うんです、その背景にあるのは。しかし、それを、仮にその基準自体がどうも国民が見ているナショナルミニマムとは違うことになってきているということ。
 もう一つは、その詳細基準というのを、必ずしも国が決めるんじゃなくて、ほとんどの場合地方自治体が決めていって、当然その方が競争力がついてきて、その主体性というのが出てきてという、そういうようなシステムにしていきませんかというのが分権の流れなんだろうと思うんです。
 それを制度として組み立てていくのに、私は今のような、さっきの話でいくと、中で談合をやりますというようなことですよ、国民関係なしに。それぞれが国と地方の分担というのをそんな形で金だけで決めていきましょうというような、そんな議論でしかないんだと思うんですよ。そこのところを、何が一番最低基準として国がその保障をしていくものかという、そこまでさかのぼった議論というのはどうして出てこないんですか。
遠山国務大臣 まさにその点は、例えば教育にかかわる、義務教育にかかわる地方分権はどうあったらいいかという、まさにそのことだと思います。
 非常に誤解が多いのは、国あるいは文部科学省がきっちりとその基準を決めて、一切それに従わなくてはいけないと言っているかのようにお思いになっていらっしゃいますが、実は大きな規制緩和をいたしております。
 例えば学級編制につきましても、国は四十人ということで標準法で定めておりますけれども、それよりもっと小さいサイズでおやりになるのも自由でしょうと。それから、教員の定数配置についても、それは定数についての弾力的な配置を各都道府県においておやりになって結構でしょうと。さらには、平成十六年度からは、国立大学の附属学校の教員の給与表を準拠とする国立大学準拠制度というものを取ってしまうわけです。といいますのは、今、国会にお願いいたしております国立大学法人法、これが成立いたしますと、その準拠制というのはなくなるわけでございまして、各都道府県において教員給与費というのは自主的に定めることができるなどなど、つまり、地方が教育についてさまざまな自主権を発揮して弾力的におやりいただける、そのこと自体が地方分権であるわけでございます。
 しかし、国としては、その最低限度のものは国が守るということでございまして、それに加算する部分にはどうぞという大きな変換を今いたしているわけでございまして、私は、その地方分権改革推進会議のねらいとするところにおきましては、私どもは十分にそれに値する対応をいたしていると考えております。
中川(正)委員 さっきの説明の枠の中であえて言うならば、その最低限度、国がやっていかなければならない最低限度の保障というのは何なのかということにはっきりと言及しないと、そこのところの分権、いわゆる納得のいく分権政策というのは出てこないんだろうと思うんです。
 私たち民主党も、その辺も含めた議論をまとめて私たちの分権政策として発表していますけれども、あえて遠山大臣をお迎えしたのは、これは一つの例でありまして、あらゆる分野で同じ議論が起こっているんです。さっき塩川大臣の指摘のあったように、これは一つ一つさっきのような談合でやっていったら、国民はさっぱりわからない、どこまで国がやってくれて、どこまで地方自治体が責任を持つのか。この政策決定の枠組みが間違っているということを指摘をしておきたいというふうに思うんです。
 その上に立って考えていくと、さっきの一番最初の話に戻るんですが、いつこの分権の整理ができるんですかということになると、なかなかできませんね、これ。どうですか、大臣、塩川さん。
塩川国務大臣 私は、今の事務次官会議でやっておりますことだったら抽象的なことしか決まらぬと思います。そうすれば、これは政治的にどうするかということ、やはり方向だけ決めて、それで工程表をそこへつけて国民に説明するという段取りに入るんだろうと思ったりしますが、何といったって、中央省庁の権限というのはもう物すごいんです。全然譲らない、一銭の補助金も譲らぬというんですから、これはもうどうにもしようがないんです。
 ですから、ここは政治決定をしなきゃならぬと思うんですが、その政治決定の仕方が問題だろうと思っており、研究いたしておきたいと思います。
    〔森田(健)委員長代理退席、委員長着席〕
中川(正)委員 最後に、時間が来ましたので、二つだけ指摘をしておきたいと思います。
 さっき官僚のせいにされましたけれども、これは法律のつくり方にもよるんですよ。大枠だけつくっておいて、細かい基準を政省令で国が微に入り細に入りつくる。この法律の体系というのはやはり見直すというのは私たちの作業だと思うんですね。これを、地方自治体にその基準づくりを任せることによって権限自体が向こうへ向いて、移動をしていくという、このシステムがあるんだということを一つ指摘をしておきたいというふうに思います。
 それと同時に、今市町村合併が進んでいますけれども、この流れが見えてこない。さっきの話で、抽象的なことに終わるでしょう、議論だけに終わるでしょうと。これはまたもとに話が戻っちゃって、大分わかりがよくなったのかなと思ったらまた話がもとに戻って、いつまでたってもこれは実現できませんよというような感じの答弁だったんですが、それがあるから結局は、地方自治体も今の合併議論は、ニンジンをぶら下げてもらって、金をもらうために合併をするんだというふうな議論でしかなっていない、このことに対しても警鐘を発しておきたいというふうに思っております。
 以上です。ありがとうございました。
山口委員長 次に、奥田建君。
奥田委員 中川議員に続きまして質問をさせていただきたいと思います。民主党の奥田建でございます。
 私もなぜか地方自治体の三位一体改革についての質問がございますけれども、それは後半ということで、前半は、ちょっと分科会のときにいろいろな同僚たちが質問させていただいたことの積み残しのところを少し整理させていただきたいなというふうに思います。
 まず、私も前回、やはり財政の再建の中で、税制をいじる前に所得の捕捉率なんかを上げる努力をしていただきたいということを言わせていただきましたけれども、北橋議員の方から、また実調率、税務調査の入っている実調率がここ数年で二%近く低下しているということの指摘がありました。
 きのう、たまたまですけれども、家へちょっと早く帰れたら、NHKの「クローズアップ現代」で、地方税の滞納が多いということで苦労なさっている自治体の紹介の番組がありまして、それを見て、では国の方の徴収率といいますか、あるいは延滞、滞納というものはどういう状況なのかなというふうに思いまして、ひとつ延滞、滞納といったところの現状と傾向というものを御報告いただければと思います。財務省の方にお願いいたします。
立川政府参考人 国税の滞納状況についてお答え申し上げます。
 国税滞納は、バブル崩壊以降、増加傾向にありましたことから、平成十一年度以降、国税庁の組織を挙げて、滞納発生の未然防止と滞納整理の処理促進に努めてきたところでございます。
 その結果、国税の新規発生滞納額は、対前年比で見ますと、平成十一年度一二・六%減、十二年度六・三%減、十三年度九・四%減と三年連続で減少しております。
 また、滞納整理中のものの金額、これは滞納残高のことでございますが、平成十年度末二兆八千百四十九億円をピークといたしまして、十一年度以降、三年連続で減少しております。平成十三年度末では二兆四千八百四十二億円となっております。
奥田委員 ありがとうございます。
 わずかずつであるけれども、滞納がどういうわけか減っている。私の見た地方自治体の番組では、延滞が多くなるのは税の使途に納税者の方々が大きな不満を持っているということが少し調査をしたら出てきたというようなことも出ておりましたけれども、ただ、最後に、二兆四千億ですか、そういった金額というのも出ておりました。大変大きな数字でもありますので、ぜひとも取り組んでいただく価値はあるんじゃないかなというふうに思います。
 あと一つ、お答えはよろしいですけれども、中小企業家同友会などが、毎年いろいろな、税のことなんかで提言をしております。例えば、最近は、その中で事業承継税制というものに、十年来ぐらいの課題に少し手を入れていただきましたけれども、もう一つ、今はなくなったかもしれませんけれども、延滞税率、税を納めなかったら罰則としてちょっと高い税率になるというものがございます。これが、今のゼロ金利時代で、罰則ですから、これは利息じゃなくて、罰則の税金みたいなものなんだろうとは思いますけれども、一四・六%という、非常に、サラ金に近いような金利になっている。これが悪意があってそういう罰則であるならあれですけれども、ぜひともこれは、市場金利の何倍かということでも構わないとは思いますけれども、少しは連動して、善意で納められない人もたくさん世の中にはいらっしゃいます。そういったところの見直しというものも進めていただければというふうに思います。
 延滞率は下がっておりますけれども、アングラ経済、アングラマネーというものを、皆さんが、大きくなっているということは感触として間違いなく持っていると思いますので、ぜひともそこへのメスというものもしっかりとお願いしたいと思います。
 続きまして、厚生労働省に質問いたします。
 岩國議員の方で、政府の資金運用をしている公的資金、そういったもの全体の運用状況あるいは評価損、それがどのくらいかという質問がありました。これは伊藤副大臣も塩川大臣も覚えているかと思いますけれども、郵政の方の答えはいただきましたけれども、ちょっとほかの答えが用意できていなかったということでございますので、私が引き継いで、まず、厚生年金の方の資金運用というところで、直近の報告をいただきたいと思います。報告をいただくと長くなるので、こちらで一応資料もいただきましたので、ちょっと言いますので、数字が間違っていたら指摘していただきたいですけれども、数字を言った後、一問だけ質疑をさせていただきたいと思います。
 例えば公的年金の方、年金積立金百四十七兆、そのうちの年金資金運用基金、二十六兆ございます。これが平成十三年度の累積損で三・一兆、運用損失の累積損です。そして、十四年度では、これは見込みですけれども、二兆五千億以上になるんじゃないかということ。そして、民間の方になりますけれども、厚生年金基金、脱退が多いという現状の問題のある基金ですけれども、こちらが平成十三年度で運用損失は二・三六兆、そして不足金の方が単年度で四・八兆、こういった数字をいただきました。国民年金基金も資料をいただいていますけれども、こちらの方は省略します。
 こういった運用損失、もちろん、国債等の買いでありますから、運用益というか収支は全体ではプラスになって出てきますけれども、こういった状態で、年金業務に対してどのような影響が出てくるのか、あるいは、厚生年金基金の方なんか見ておりますと、脱退ということを企業の選択としてやっておりますけれども、こういった年金の健全性ということに問題がないのか、お答えをいただければと思います。
 それとあわせまして、年金のこれからのあり方を考えるときに、たくさん年金をもらう方がいらっしゃると思いますけれども、たしか、塩川大臣も前、国会で聞かれていたこともありましたけれども、年金の上限カット、今そこがどういう状態になっているかということを教えていただければと思います。
吉武政府参考人 最初のお尋ねの公的年金の運用でございますが、平成十三年度、一兆三千百億のいわゆる市場運用分、株式でありますとか国債のところでは、評価損、損失が出ております。ただ、従来の資金運用部へ預託しているところの利子が四兆九百億ございまして、両方を足し合わせますと、二兆七千八百億で、一・九四%のプラスでございます。この状態は、賃金がほとんど上がっておりませんので、賃金に対する収益率というのが年金の一番基本になりますので、そういう意味では、この時点までは年金財政に対して悪化は生じていないという状態であります。
 ただ、十四年度は、引き続き市場運用が非常に厳しい状態でございますので、十四年度について申し上げれば、今申し上げたような収益率をとることはなかなか難しいということであろうと思います。ただ、私どもは、この運用は中長期的な運用という観点で実施をしてまいりたいというふうに思っておりますので、できるだけ安全かつ効率的な運用にこれから努めてまいりたいというふうに思っております。
 それから、厚生年金基金の分野でも、先生おっしゃったような評価損が出ております。この問題は、厚生年金基金の場合には、最終的には、企業負担でこれを埋めていただくか、あるいは、企業年金としての給付水準をどういうふうに考えるかということになってまいりますので、労使の中でこれを協議していただいて決めていただくということになるんだろうと思います。
 ただ、現実の状態で申しますと、厚生年金基金の掛金の収入は四兆二千六百億ほどございまして、給付支出は二兆四千六百億という形でございますので、給付にここで支障が生じるという状態ではございません。ただ、積み立て不足という状態がございますので、これを中長期的に解消する努力を積み重ねていく必要があるだろうというふうに思っております。
奥田委員 ちょっと質問の数がありまして、次々と行かせてもらいます。
 次に、郵政の方にお聞きいたします。
 これは一回お答えいただいて聞いておりますけれども、平成十四年九月時点で、簡保と郵貯の寄託金というんですか、株式運用を中心としたものですけれども、こちらが二十六・八兆、全体の中で運用がある。その中で、国内株式の評価損は累積で六・六兆になっている。今言った寄託金の中では七・五七兆の評価損がある。これは評価損ということで、帳簿の上には出てきていないというふうに聞いております。
 さらに、決算書の方で十三年決算を見ておりますと、企業用財産、多分庁舎だとかそういうところの土地だと思いますけれども、この土地で、土地価格改定で一・五兆の減が出ている。こういった損失を、公社化というものとともに、会計を企業会計に準じていくといった作業をしたときに、土地の方はことし変えているのかしれませんけれども、七兆五千億円からの株式運用損が出てくる。
 こういった数字というのは、公社の健全性、そして経営というものにどのような影響を与えるかということを少し教えていただければと思います。
野村政府参考人 先生御案内のとおり、国から公社に移行に際しましては、企業会計原則に基づいて処理するということでございますので、公社の持っている資産、負債につきましては、原則として、時価で評価いたしまして承継するという形になるところでございます。
 今、先生御指摘の株式等の評価損、これはございますので、これを処理しなきゃいけないわけでございますけれども、一方、金利が非常に下がっておりますので、保有債権等の評価益もございます。また、価格変動準備金とか危険準備金、こういったものを積んでおりますので、こういったものを通算いたしまして公社の資本を計算するという形になっているところでございます。
 具体的な数字につきましては、これから評価委員会をつくりましてそこで評価することになりますので、細かいところはまだわかっておりませんけれども、大ざっぱなところで資本を想定いたしますと、一兆円を超える資本は確保できるんではないか、かように考えているところでございます。
奥田委員 新しい公社の出発の資本にも大いに影響してくるということでございます。
 続きまして、金融庁の方に行かせていただきます。
 前の予算委員会でも少しお話がありました。金融の破綻処理、そして健全化対策として、経年にわたって、何年かにわたって大きな資金が投下されています。私も全部をわかるわけじゃないですけれども、ざっと幾らぐらいの資金が投下されたかなということを概算で出しますと、破綻処理関係の金銭贈与、そして資産買い取り、資本増強、そして長銀、日債銀の国有化期間中の損失、瑕疵担保条項の補償分、さらに日銀の株式買い取り、これも一つの健全化に帰する政策投資、政策投下ということでいいますと、大体今までに三十八兆一千億のお金が一つの銀行支援策という中で使われております。
 その中で、回収されたものは、RCCを通じてのもの、そして資本増強分の買い戻しがあったものがありますので、大体四兆六千二百億は回収している。それと、この前、損失確定というもので、大体十兆四千億の損失確定を公表しておりますので、そこを三十八兆から引くと、あと二十三兆強のお金がまだ金融の安定化と後始末の中で政策投下されている。すぐにすることじゃないですけれども、これを何とか時間をかけながら回収していっていただかなければ、国民はいつまでたっても浮かばれない。
 そういった中で、また今回、りそなの資金増強というものが報道に出ております。これは当然、御存じのとおり、これまでに二回、合併前から含めますと、一兆一千億の資金投下をしている。ここでまた、報道ですけれども、二兆円前後の資金投入があるのか。中には、出どころまではわかりませんけれども、債務超過であったというような一つの怪文書まで今は国会内に出ている、怪文書と言わないのかな、告発文書なのかな。
 そういった中で、こういった巨額の、一つの銀行、ここに三兆円も超える資金投下をして、国民の皆さんにそのことを理解いただかなければいけない。ちょっとそのことを、説得といいますか、の言葉をぜひとも竹中大臣からお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 奥田委員挙げられました数字の詳細、ちょっと確認できないところもございますのですが、最終的には、現段階で国民負担として確定しているのは十兆四千億円である、これは御指摘のとおりであろうというふうに思っております。
 そうした中で、さらに資金の負担が、将来可能性があるような公的資金の注入が決定された、それはもう御指摘のとおりであります。これは、総理の意向でもあり、我々としても、金融から経済の底割れを絶対に起こさせないということで、金融の再生に全力を挙げているところであります。これは、債務超過であったというような、そういうこと等が雑誌等で言われておりますけれども、これは、公認会計士がきちっと監査を行った結果として、自己資本比率が、四%の健全基準は割るけれども、二%台、りそなグループ全体では三・八%というふうに数字が出されているわけで、決して債務超過ではない。であるから、預金保険法百二条第一項第一号の過少資本ということで、資本の増強を行うということを決定した次第であります。
 しかしながら、まさにこれも奥田委員御指摘になったように、りそな自身、過去に一・二兆円程度の公的資金を注入しております。過去に注入したにもかかわらず再度注入しなければならなくなったということは、これはまことに遺憾なことである。我々としても、この間の推移をもう一度見直して、反省すべきところはやはり反省して、きっちりとした体制をつくっていかなければいけないと思っております。
 そうした観点から、昨年秋に金融再生プログラムを私自身作成して、その中で、自己資本の充実は必要だけれども、お金を入れるだけではだめなんだ、同時に資産査定をきちっとやる、抜本的にやるという仕組みをつくる、これは、まさにそのような方向で、今回の決算の中にも、ディスカウント・キャッシュフローによる新しい手法に基づく資産査定の方法等々も反映をさせております。
 さらには、やはり何といっても企業のガバナンスをきっちりとさせて、本当に今度こそこの自己資本を生かして経営改革を進めていくような体制をとっていかなければいけない、そういう観点から、危機対応会議を開いた直後から、私としても、このりそなに、新たに改正商法で認められた委員会等設置会社方式というのを採用して、外部からの役員で、監査委員会、報酬委員会、指名委員会、外部からのガバナンスをしっかりと強化するような仕組みをつくっていただくという方向で今調整をしているところでございます。
 御指摘のとおり、こうしたことが繰り返されてはいけないわけで、今度こそこの自己資本を生かしてしっかりとしたガバナンスのもとで経営革新を行って、りそな銀行がしっかりとした金融機関になる、もって、これが日本の金融システムを活性化していく非常に重要なきっかけにしていきたいというふうに思っております。
奥田委員 時間の関係で質問を意見という形に変えさせていただきますけれども、やはり今、私も、金融の健全化というのは当然だれもが必要だとは思います。しかし、早期不良債権処理という一つにとらわれ過ぎて、そしてまた閣僚の皆さんもデフレの状態に入っているということを認めているときに、そういった処理の加速ということを少しとめる、もちろんふやしたりはしませんけれども、今の、これ以上デフレとともに出てくる不良債権をふやすことのないようにというくらいの一つの政策転換というものができないんだろうか。
 あるいは、今のりそなの処理一つでも、繰り延べ税金資産というものが、もう判断一つで優良なところから債務超過まで行ってしまうんだ、そういうものを、やはり銀行からも要求されている損金勘定に入れて、はっきりと、だれが見たって同じ判断を下せるような会計基準に変えることができないんだろうか、そういったことを考えていただければというふうに思います。
 あと、小さな信用組合などからは、金融庁の検査の対象になるのは勘弁して、監督官をまた都道府県に戻してほしいというような話もあります。
 大変アナログな話ですけれども、そういった自営業の人たちみたいなのを相手にしている、そうやって損失を最低限に抑えて成り立っていた信用金庫のオーナーの方たちが、自分たちは何を見て人にお金を貸すか、すごい単純なことで、それで私は失敗していないと。まず家庭が健全であるかどうかを見る、そしてその人が勤勉で正直であることを確認する、それだけで個人の事業に貸すくらいのお金は貸している、これでまず外れることはないと。竹中大臣が聞いたら目をむきそうな話ですけれども、地域の本当に小さな金融機関はこういうことでも成り立ってやっていたんです。金融庁のマニュアルで入ってこられて、帳簿が不備だ、そういったようなことだけで、それがすべてではない世の中で成り立っている。そういうこともぜひ頭の片隅に置いていただければと思います。
 質問時間がなくなって、財務大臣と……(発言する者あり)いや、だめなんです、質問の数は減らしますけれども。
 ぜひとも、地方分権改革推進会議の行方、前の流れの中での分権推進委員会の流れ、そして地方制度調査会あるいは財政制度審議会、地方財政審議会といったところの意見が絡み合って、そしてまた構成員も、そこの中の代表みたいな方たちがぶつかり合っているような報道を見ますけれども、それはそれとして、中川議員もおっしゃっていたように、私どもも党の政策というものを持っております。
 私も、個人的に言えば、前の選挙の前ですから三年半ぐらい前に、リージョン研究会という、地方を活性化させたいという中で一つたどり着いた結論というのは、地方自治体の財源、もっと自由度をふやす、お金をかけないで自由度をふやすというのがやはり一つ行き着いた自分たちの結論でもあります。
 私の願いとすれば、今の推進会議の意見として出ております中で、補助金の見直しの作業、あるいは基準財政需要の標準化、あるいは自治体課税権、課税自主権、この部分は意見として出ていますけれども、本当に実際に取り組もうとしたときに、まだ余りにもぼんやりとし過ぎている。やはりここの部分をしっかりと政府の方も一緒になってつくっていかないと、何か絵にかいたもちみたいな答申が出てきそうな気がいたします。
 一つだけ、両大臣、財務大臣と総務大臣に質問しますけれども、今三位一体と言われている、税財源、国庫補助、そして交付税、地方交付税、これらが、パイの収縮、国と地方の財源の収縮ということを別にすれば、おのおのの三つの財源をどういうふうにシフト、組みかえていきたいのかということを一つ。そして、一言でいいですけれども、市町村合併の推進というのは、先ほどニンジンとかあめとかいう話もありましたけれども、これは、主目的ではないにしても、地方財政改革に寄与するかしないかという思いを伝えていただければと思います。財務大臣からお願いします。
塩川国務大臣 一言で答えろということでございますので、私は、やはり地方が持っております膨大な事務事業、権限と結びついた事務事業をできるだけ地方に譲るべきだ、ところが、中央役人がしがみついてしまって放さない、ここに問題があると思っております。これをやはり解決することから地方分権が進み、財源がそれに移行していくことだと思っております。
片山国務大臣 何度も同じことを言わせていただいておりますが、今の六対四の国、地方の税の配分の割合を五対五にする、そのために国の補助負担金を精査して必要性の乏しいものはやめるあるいは効率化する、交付金化する、それにあわせて地方交付税を見直していく、これが中心でございます。
 それから、合併は財政のためにやるんじゃないんですよ。そのためにやるんじゃないですが、結果として、例えば首長さんが五人おるのが一人になるとか、議員さんが全部合わせたら百五十人が、今のままだと、それが二十人になるということは財政の効率化になりますし、合併の機会に業務全体を見直して、行財政改革、私は思い切ってやるべきだ、こう思っております。
奥田委員 私どもの政策提言の方も御存じかもしれませんけれども、一言だけで言わせていただきますけれども、要は、一括交付金という形で、今の補助金を整理、廃止する部分の予算を一つの目的交付金みたいな形で地方に配分する。その中で二割ぐらいは、削減したものを、国か地方かは別として、一つの財政再建の、残ればですけれども、資金に回してもいいのではないか。そして、片山大臣と同じように、今の六対四の税財源比率は一対一、五対五という言い方でもいいですけれども、そこまで持っていくのが、少なくとも、今でさえ財政計画の中で縮小化が図られている中で何とか自由度を与えることで地方に活力を与えたいという思いで、私どもも政策提言させていただいております。
 ぜひとも、審議会に預けっ放しではなくて、やはり周りからもいい意味でのいろいろな意見と支援の中でこういった答申がしっかりとまとまることをお願いしまして、質疑とさせていただきます。
 ありがとうございました。
山口委員長 これにて平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書についての質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山口委員長 これより平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。大森猛君。
大森委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になりました平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について、不承諾の意を表明します。
 そもそも決算調整資金制度は、予見しがたい租税収入の減少等に備えて資金を積み立てておくというものであります。ところが、現状では、事実上、国債整理基金からの一時流用のための財布がわりとなっているのであります。
 十三年度に歳入不足が起こった原因は、小泉内閣が推し進める構造改革の中で、税収が当初予算の五十・七兆円に比べて二・八兆円も落ち込んだこと、特に、法人税の落ち込みが一・六兆円と大きかったことにあります。
 また、第一次補正予算において、税収を一・一兆円減額したにもかかわらず、一・七兆円の大幅な税収不足となっています。これは、第一次補正予算編成時に、国債発行三十兆円という方針とつじつまを合わせるために税収の落ち込みを少なく見積もった可能性があると指摘されているのであります。
 政府は、大幅な歳入不足を埋めるため、日本銀行納付金、八千八百九十五億円などの税外収入や、金利の低下による国債費の不用額などを集めています。それでもなお五兆円が穴埋めし切れずに残った結果、今回の措置を講じたのであります。
 これは、小泉内閣が強行する構造改革路線が日本経済に与えた打撃の大きさを改めて浮き彫りにしたものであります。
 最後に、日本経済の破壊を推し進めた政府の責任は重大であることを指摘し、私の討論を終わります。(拍手)
山口委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山口委員長 これより採決に入ります。
 平成十三年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について採決いたします。
 本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山口委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決定いたしました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時十分散会


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