衆議院

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第6号 平成17年6月22日(水曜日)

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平成十七年六月二十二日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 細川 律夫君

   理事 後藤 茂之君 理事 菅  義偉君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 津島 恭一君

   理事 長浜 博行君 理事 前田 雄吉君

   理事 松本  龍君 理事 山名 靖英君

      井上 喜一君    石田 真敏君

      遠藤 武彦君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    岡本 芳郎君

      左藤  章君    斉藤斗志二君

      柴山 昌彦君    谷川 弥一君

      中山 泰秀君    橋本龍太郎君

      平沼 赳夫君    福井  照君

      藤井 孝男君    増田 敏男君

      武藤 嘉文君    山本  拓君

      石田 勝之君    内山  晃君

      岡島 一正君    岡田 克也君

      岡本 充功君    加藤 尚彦君

      橋本 清仁君    伴野  豊君

      平岡 秀夫君    古本伸一郎君

      松崎 哲久君    東  順治君

      古屋 範子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  石野 秀世君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          林  幹雄君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   決算行政監視委員会専門員 奥村 卓石君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十二日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     岡本 芳郎君

  藤井 孝男君     左藤  章君

  山崎  拓君     大前 繁雄君

  河村たかし君     伴野  豊君

  末松 義規君     平岡 秀夫君

  樽床 伸二君     岡田 克也君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     山崎  拓君

  岡本 芳郎君     今村 雅弘君

  左藤  章君     藤井 孝男君

  岡田 克也君     古本伸一郎君

  伴野  豊君     河村たかし君

  平岡 秀夫君     末松 義規君

同日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     樽床 伸二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十五年度一般会計歳入歳出決算

 平成十五年度特別会計歳入歳出決算

 平成十五年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十五年度政府関係機関決算書

 平成十五年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十五年度国有財産無償貸付状況総計算書


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     ――――◇―――――

細川委員長 これより会議を開きます。

 平成十五年度決算外二件を一括して議題といたします。

 本日は、各件について締めくくり総括質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房政府広報室長林幹雄君、法務省保護局長麻生光洋君、法務省入国管理局長三浦正晴君及び財務省大臣官房審議官青山幸恭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

細川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

細川委員長 質疑に入る前に、質疑者各位に申し上げます。質疑時間は申し合わせの時間を厳守されるようお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。

菅(義)委員 自由民主党の菅でございます。

 平成十五年度の決算の締めくくり総括といたしまして、港における規制の緩和と治安対策、この二点について総理並びに関係大臣に質問をいたします。

 まず港の問題でありますけれども、日本の港に船が来なくなってきている。日本の港は、東アジアの港と比較して、著しく地盤沈下をしている、ここ数年来こう言われ続けております。実態としてどんな状況であるかといえば、二〇〇四年の世界の主要な港のコンテナ取扱量、一位が香港で、二千百九十三万個なんです。以下、シンガポール、上海、シンセン、釜山、高雄、東アジアの主要な港が上位六港まで名を連ねています。日本はどうかといえば、東京が二十位です。三百五十八万個なんです。横浜は二十九位。そして、名古屋や神戸に至っては三十番には入っていないんです。さらに、これは残念なことでありますけれども、日本から欧米諸国に輸出入される貨物がわざわざ釜山だとか高雄を経由している。いわゆるトランシップですね、これが約一五%なんです。

 なぜこんな状況になったかといえば、余りにも厳し過ぎる規制と、そして煩雑過ぎる書類の手続、こうしたものによって日本の港は高いコストの体質になってしまいました。取り扱いの料金でありますけれども、東アジアの港と比較をすると、約五割高いんです。そしてまた、港に船が着いて輸入の許可がされるまで、所要時間は、東アジアの港というのは、大体一日か、どんなにかかっても二日です。しかし、日本は三日もかかるんです。

 私は、港湾の手続というのは、まさに縦割り行政の弊害の象徴であるというふうに思っています。いかに多くの同種の重複する手続と項目をそれぞれの省庁が要求しているか、私、パネルにしてみましたので、ぜひ総理にごらんになっていただきたいんです。

 これは、余り多過ぎて、細か過ぎてなかなか見えないのじゃないかなと思いますけれども、例えば、この縦の一列が項目、これが手続書類なんです。色を分けていますけれども、これは省庁ごとの色であります。何と、項目だけで百四十五項目もあるんです。それで、省庁のすべて合わせたのを黒丸で書いていますけれども、六百五十もあるんです。これを提出しなければ、船が日本の港に入港することができないんです。これは、余りにもひど過ぎると思っています。細か過ぎてカメラには映らないと思いますけれども。この書類が省庁ごとに全部別々だったんですね。

 私は、昨年の九月まで小泉内閣で経済産業大臣政務官をさせていただきました。余りにひど過ぎたものですから、実は、私ども関係する七省庁の政務官で集まりまして、政治の主導でこれを解決しようという話をしました。そして工程表を私どもはつくりました。とにかく、昨年のことですから、十二月いっぱいまでは書式をまず一枚にする、統一書式をつくるのは当たり前のことですから、まずこのことを決め、そして、四十年前にこうした港湾の輸出入の手続を簡素化しようと締結したFAL条約、百カ国が批准しましたけれども、日本は批准していませんでしたから、これを今度の通常国会。

 さらには、港湾管理者というのは地方自治体ですから、地方自治体が管理しますから、港によってまた書類が違うんです。これも港湾法を今度の通常国会で改正する。あるいは、入港手続をわざわざ船長が署名しなきゃだめ、これも実は関税法を改正する。こうした三つの法律を今度の通常国会で改正することができました。

 これは全体の政務官会議でも、全部工程表をつくって、節目節目に全部報告させたんです。さらに政府でも、規制改革・民間開放推進計画、ここでも閣議決定をしてくれましたから、そうした力が相まってこの通常国会で法律が成立をしましたから、この十一月ごろから実はこの三分の二が要らなくなるんです。

 それで、私どもは、さらに政務官会議の中で国土交通省と財務省に要求したのは、まさにインターネットで対応すべく、簡単で早くて便利な電子申請システム、このことをいち早く実現するように要請をしました。国土交通省の港湾NACCSは、ことしの十一月から電子申請できるシステムを稼働する、このように言われております。

 まず総理に、この今のパネルを見た感想をお尋ねしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 かねがね日本の手続は煩雑過ぎる、複雑過ぎるという苦情が出ておりましたので、ただいま菅議員お話しのとおり、各省連携して、一度で済むような、あちこち役所を回らないで、できるだけ速やかな時間で対応できるような措置が必要だということで御努力いただいてきたことに対しましては敬意を表したいと思います。

 しかし、そういうワンストップサービスに持っていこうという努力をしている中にも、まだまだ不十分だという御指摘を受けております。

 今提示されましたパネルにおきましても、改めていかに日本の手続が複雑かというのがわかりますけれども、かなり前進した中でももっと改善すべきだという声をしっかりと受けとめて、ワンストップサービスの実体に近づけていかなければならないと思っております。

菅(義)委員 財務大臣にお尋ねしますけれども、税関の輸出入手続でありますけれども、この十七年度中に、いわゆる簡単で早くて便利な最適化計画、そのことを決定するということになっています。

 まさに国際競争の激しい時代でありますから、私は、そうした計画を前倒ししてほしい、そして十八年度中のできるだけ早い時期にこの税関システム、NACCSを稼働させてほしいというふうに思います。そしてまた、それと同時に、関税法を改正していただいて、セキュリティー対策に十分な荷主や船舶に限って入港前に入港許可ができるようにしてほしい、こう思いますけれども、大臣の見解を伺います。

谷垣国務大臣 菅委員が政務官に御在籍中、大変この問題に意を払われて、政務官会合というようなものもできまして、推進に大きな力を発揮されましたことに心から敬意を表したいと思います。

 それで、さっきおっしゃった、我が省の税関の方のNACCSのシステムと、それから国土交通省のシステムがシングルウインドー化したわけですけれども、その中でも、さっきお示しのように、手続が煩雑で、せっかくのシングルウインドーが十分使えていないというようなことで、その御努力によって、それもだんだん簡素化する方向に進めてきた。そこで、今おっしゃったように、平成十七年度中に最適化計画というものをつくるということで、今鋭意作業をしているところでございます。

 それで、私どもとしては、この最適化計画を踏まえて、仕様の検討、それからシステム開発、それぞれの作業をできるだけ促進して、早期に次期NACCSが稼働できるようにしていきたいと今作業を進めているわけでございます。

 それから、最適化計画の内容につきましても、実現可能なものからできる限り早期に実施していくことが必要だと考えておりまして、船舶の入港時の港湾手続の見直しについては、先ほどお触れになったFAL条約の締結にあわせまして、ことしの十一月一日からNACCSでシステム対応を行うということで予定をしております。それから、入港前の手続については、これは国土交通省関連のものでございますが、国土交通省と協議しながら、年度内を目途に、NACCSを通じて行うことができるようにシステム対応することを検討したいと思っているわけでございます。

 それから、次期NACCSの稼働が平成十八年度中に前倒しできないかということでございました。

 そこで、十七年度中に最適化計画をつくった後、競争入札による開発業者の選定後にシステム開発を開始する。それから、民間業者も次期NACCSと接続する自社システムをつくっていかなければならないというような問題がございまして、これはなかなか時間もかかることでございますが、次期NACCSができる限り早期に稼働ができるように、私たちとしても最善の努力をしていきたいと考えております。

 それから、関税法を改正して、セキュリティーが確保できるものについては事前に輸入可能となるようなシステムをつくるべきだという御指摘でございます。

 これにつきましては、できるだけ迅速にやっていくということは、日本が港湾において立ちおくれないために必要なことだろうと思います。平成十三年度に、輸入車については、コンプライアンスのすぐれたものについて、納税申告前の貨物の引き取りを認めるような簡易申告制度を導入しました。それから、平成十五年には、本邦到着前に税関の予備審査を受けて、問題がなければ本邦到着後直ちに輸入許可を受けることができる到着即時輸入許可制度、これは海上貨物にも導入した。これは委員がよく御承知のとおりでございます。

 そこで、御指摘の、入港前に一般的な輸入許可が可能となるような制度につきましては、輸入の場合、貨物管理を外国の業者等に、輸出者に依存する面が大きくて、現時点においては、なかなか貨物の確認等の点で困難があるのではないかと考えております。

 いずれにせよ、財務省は、今まで導入したような、申し上げたような制度を活用して、利用の拡大も図って、入港からコンテナヤードを出ることが可能となるまでの時間を、先ほど日本はほかの国に比べて長いという御指摘でございましたが、二〇〇七年度までに二十四時間以下に短縮するということを目指す。これは七省庁でそういう方針を立てておりますが、これを何とか実現しようと、関係省庁と十分連携をとりつつ進めていきたいと思っておりますので、また菅委員のいろいろ御指導をお願いしたいと思っております。

菅(義)委員 今大臣からいろいろな答弁がありました。

 確かに、十八年度については検討するということでありましたけれども、民間の業者の人たちは早くしてほしいんです。民間の業者の人たちでおくれることはあり得ないんです、これは。それと、あれだけ膨大な郵政民営化の情報システム、これだって約二年でできると言っているんです。これをやはり、NACCSが時間がかかるというのはおかしいと思いますので、大臣、ぜひもう一度事務方に指示してほしいと私は思います。

 それと、事前の輸入許可でありますけれども、これは改正しないとできないんです。今やっていますけれども、現実的に利用しているのがなかなか難しいんです。これを改正して、輸入許可を事前にできるようにしなければ、いわゆる東アジアとかアメリカのように一日前後でできることになりませんので、そのことも大臣から強く事務当局に指示をしてほしいというふうに私は思います。

 総理にお尋ねをするわけでありますけれども、まさに税関と港湾、これが一体となって、先ほど総理が言われましたワンストップサービス、これが実現して初めて日本の港の国際競争力復活につながるわけであります。韓国でもいろいろな問題があって、最後は大統領が決断をしてこれを行ったという事例もあるわけであります。

 最後にもう一度、総理の決意を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 このワンストップサービスの問題については、港の税関手続のみならず、かねてから、外国政府並びに外国企業が、日本に参入する場合に各役所間でたらい回しされるというような批判を浴びておりましたので、この問題については、日本は努力してきたところであります。

 かつて、OTO、オフィス・トレード・オンブズマンというんですか、日本に参入したいという貿易関係あるいは投資企業、そういう方々の苦情を各省別に伝えるということでは非常に手間がかかり過ぎているということで、外国関係者の要請なり苦情については一つのオフィスで用が済むようにしよう、一つのオフィスにすれば、各省連携をとって、あっち行ったりこっち行ったりしないで済むような対応をしようということでやっていまして、それが改善してきているのも事実であります。

 しかし、今御指摘のように、港、税関、これは物流の点で、今後日本経済の活性化の意味においても、どんどん外国にお客さんがとられている。観光客を誘致するのみならず、やはり外国の企業も日本に参入しやすいように、日本が魅力ある市場である、だからこそ日本にいろいろな物資を運んできたいという気持ちを持っている点を損なわないように、意欲を損なわないように、日本として今御指摘の点、具体的な点は菅議員一番よく御存じだと思います。各省連携して、さらに、今は三分の二近く減ったと言っておりますけれども、まだ三分の一残っているということであります。

 そういう点、もっとワンストップサービスの実を上げるような努力をしなきゃいけないと思いますので、どうか、今足らざる点はどういう点か、どこが問題点かというところを整理して、大臣クラスまで上げるような整理もぜひしていただきたい。ここをこうやれば直るんだというような具体的な対応策を、政務官同士でも、各党の、自民党議員の間でもよく協議していただいて、問題点を大臣の方まで上げていただきたいと思います。

 そうすることによって、どこを押せばこの改善は進むという点がわかりますから、そのような具体的な努力もお願いしたいと思います。

菅(義)委員 ぜひ、総理の指導力に期待したいというふうに思います。

 貿易立国の日本にとって、まさに港というのは生活の基盤であり、経済の基盤であります。港の復活なくして日本の経済の再生はない、そう思っておりますので、ぜひこれからも全力で取り組んでいただきたいと思います。

 次に、治安に移らせていただきます。

 今日の日本の治安の状況は、極めて憂慮すべき状況であります。総理は、就任以来、世界一安全な国日本、この復活を掲げて治安対策に全力で取り組んでこられました。そしてまた、みずからも歌舞伎町を視察するなど、非常に関心もお持ちであります。

 そんな中で、外国人の犯罪対策でありますが、実は昨年、入管が強制退去手続をとった五万五千人、このうち、驚くことに、過去に強制退去させられて、本来であれば日本に入国をすることのできないはずの外国人が、偽変造旅券等で入管の目もくぐり抜けて日本に入ってきて、入管に摘発されただけでも九千人もいるんです。五万五千人強制退去したうちの中で九千人が日本にそういう形で再入国、来ているわけです。これは氷山の一角であると私は思いますので、実際はこの何倍もの強制退去されていた外国人が犯罪目的で日本に毎年入ってきているだろう、こう思うのは自然だと思います。

 そこで、不法入国者やテロリスト、こうした犯罪者等の入国を水際で阻止する、このことが極めて大事なことになってくると思います。私は、水際で指紋を採取して、現在入管が所有している約七十万人の強制退去をした指紋と照合する、このことが物すごく大事だというふうに思います。

 外国人犯罪から国民を守るためには、政府として一日も早く、水際での外国人からの指紋採取、このことを決断していただいて実行に移すべきであると思いますけれども、総理の見解を伺います。

小泉内閣総理大臣 不法外国人の滞在に対してしっかり対応せよということでありますが、御指摘のとおり、まず、どのように不法に入ってくるか、これを阻止することが大事なんですけれども、せっかくそれを見つけて強制退去、そこからまた入ってくるという、その偽造技術というんですかね、これについては深刻に受けとめております。

 今、これを阻止するためにどういう対応がいいか。指紋採取も一つの方法であります。これは、指紋までとっているのは、今、全世界でアメリカだけだと思うのでありますが、こういう点については一部に抵抗もありますけれども、やはり、犯罪を阻止する、世界一安全な国日本を復活しようということについては、多くの国民の理解を得ながら、そのような偽造を見抜くような、あるいは身分を隠して潜入することを防ぐような措置は何が有効かということを現在も検討しておりますので、この点については、十分御指摘を踏まえて、さらに不法潜入を防ぐような措置を講じていきたいと思っております。

菅(義)委員 昨年の外国人犯罪の六割が不法滞在者でありますから、不法滞在者を強制退去させるということが外国人犯罪の減少につながるわけでありますので、ぜひ指紋の採取というものを決断していただきますように強く申し上げます。

 次に、犯罪者の再犯防止についてであります。

 このところ、青森県の保護観察中の男が東京で少女を監禁した事件、あるいは、愛知県の安城市では刑務所から出所したばかりの者による乳幼児殺傷事件、奈良市では性犯罪常習者による小学生の女の子誘拐殺人事件など、再犯者による一連の事件は国民に大きな不安を与えております。

 そこで、この再犯防止のために何がいいのか。これはいろいろ政府でも検討されると思いますけれども、法務省の資料によれば、出所して仕事についていない人の再犯率は、仕事についている人の実に五倍にもなっているということであります。こうした状況を見ても、保護観察対象者に雇用を確保するための政策というのが極めて大事なことであるというふうに私は思います。

 過去に犯罪を犯した人を雇う場合、雇う側もちゅうちょするのは当然であるというふうに思います。やはり私は、国として、保護観察対象者等の就労支援策に積極的に取り組んでいく、そして、雇用に協力をしてくれる会社には何らかのインセンティブを与えるなど、省庁の枠を超えて雇用システムをつくることが極めて大事なことであり、再犯を防ぐ方法でもあるというふうに思います。

 最後に、このことについて総理の見解を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 犯罪防止という観点から、保護観察中の者が再度犯罪を起こすという事件が随所で起こっておりますので、先般も閣僚懇談会等におきましてもこの点が問題になりました。

 情報をしっかり管理するということ、それから、必要な情報を各省が連携をとっていかなきゃならない。警察と法務省あるいは各省の連携というのは十分じゃない点があったのではないかということで、それぞれの捜査当局が活用しやすい情報は共有していこうという点も必要だと思います。

 同時に、犯罪を犯した者が社会に出てまた犯罪を犯さないで済むように、罪を犯さないで済むように、仕事ができる、そういう対策も必要だ。私も刑務所を視察いたしましたけれども、いろいろな仕事をされておりますが、農業というものをもっと活用したらどうか。非常に健康的にもいいし、多くの、老いも若きも、農業については特別な技能がなくても、好きだという人は教えていただければできる産業ではないかということで、私は、農業という面ももっと今後生かしていったらどうかという点も考えております。

 保護観察中の者が再犯を起こさないような対応、そして社会に出てから犯罪者が仕事につけるような対応、両面が必要だと思っておりますので、そういう両方の観点からこの犯罪対策を進めていかなきゃならないと思っております。

菅(義)委員 以上をもちまして終わります。

細川委員長 次に、山名靖英君。

山名委員 公明党の山名靖英でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会、十五年度決算の総括質疑でございます。総理に出席をいただいておりまして、大変いいチャンスでもございますので、私の方からは、郵政民営化と並んで今ホットな話題として、いわゆる日韓、日中関係の問題、なかんずく靖国参拝問題が横たわっているわけでございまして、そのことについて絞って総理に質問をしたいと思います。

 まず総理、さきの日韓首脳会談、大変御苦労さまでございました。今回の日韓首脳会談は、シャトル外交ということで、昨年からそれぞれ首脳が真摯な対応の中で将来に向けての交流を図っていこうというねらいがあるわけでございますが、特にことしは日韓国交正常化四十周年、そして日韓友情年、こういうところから、対韓国との交流、将来への相互の発展が大いに期待をされておりますし、韓国側も、今回の首脳会談は大変期待して受け入れをしてくれたと思っております。

 そこで、今回の日韓首脳会談における成果、これをどのように総理として認識され、どのような成果を得たと確信をされているのか、まずその辺からお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日韓両首脳が一年一回ずつ相互に訪問して意見を交換しようということで、昨年の十二月に盧武鉉大統領が鹿児島県指宿に来られて私と会談をする、今回私が韓国に行く順番だったものですから、私が昨日行ってきたわけでございます。

 私は、今、日韓の間で問題があったとしても、問題があるから話し合わないんじゃない。問題があっても、話し合って、率直に意見交換して、相互の理解、交流を深めていこうという姿勢が大事だと思っております。

 そういう意味において、意見の相違や課題はありましたけれども、日韓友情年、この交流を今後とも活発に展開していこう。そして、これからの日本と韓国人との交流というのは、かつて年間一万人だったのが、数年前には三百六十万人を超えた。ということは、年間一万人から一日一万人の日韓両国の国民が交流をしている。それが今四百万人を超え、将来五百万人を超えるのも夢ではないということで、航空便を含めて日韓両国民が交流しやすいような事業を展開していこうと。特に、日韓の交流というのは、最近、かつてなく、文化面においてもスポーツ面においても経済面においても拡大してきておりますので、これをさらに進めるような事業を展開していきたい、そういう話し合いを率直にすることができたと思います。

 そして、ことしじゅう、今度は盧武鉉大統領が日本を訪問するということでありますので、私どもとしては、意見の違いがあるから話し合いをしないということではなくて、意見の違いがあっても話し合いは進めていこう、交流は進めていこうという合意ができたということは大きな成果だったと思っております。

山名委員 確かに、今回の首脳会談の中で、事務合意としていろいろな項目が提案をされ、盧武鉉大統領との間に、いろいろな事業についての検討が開始される、こういうことが決まったことはすばらしいことだと思っております。

 ただ、そういういろいろな合意事項があったとしても、韓国側が最も期待したのは、いわゆる靖国問題に対する総理の発言だと思います。

 この日韓首脳会談の終わった後、翌日の韓国日報は、神社参拝、過去史で合意できず、あるいは、過去史問題、予想どおり接点つかめず、こういう報道をしております。ソウル新聞は、まだ不十分な小泉首相の歴史認識等々、極めて否定的な報道が目立っておりました。一斉に韓国メディアは、失望した、こういう表現ぶりをしているわけであります。

 本来ならば、FTAの問題だとか、あるいは、さっき総理がおっしゃった、一日一万人のそれを拡大して四百万人、五百万人の交流を図ろうとか、従来にない提案もし、また大きな前進を見たということで、そこに焦点が合うわけでありますが、特に靖国参拝問題の総理の発言ぶりが、そういったものをある意味では帳消しにしているというような印象が残るわけでございます。

 特に韓国側が、日韓間の歴史問題の核心、こういうふうに位置づけているのがこの靖国参拝問題でございますが、この参拝問題についてどのようなやりとりが行われ、また、小泉総理が常日ごろおっしゃっている信条、信念ともいうべき思いというのは的確に韓国側に伝わったのか。さらに、今後、日韓関係の修復、こういうめどが今回の会談を通じて十分立った、こういう認識をされているのかどうか。この辺について、次にお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 靖国問題につきましては話に出ましたけれども、日本の戦没者に対する追悼のあり方というんですかね、これは韓国の方に理解できる点と理解できない点があると思います。特に、戦争の被害を受けた国として、日本とは違った理解なり感情なりがあるのは承知しております。

 しかし、私は、靖国神社を参拝するということについて、これは決して過去の戦争を美化するものでもないし正当化するものでもない。特定の人に対して参拝しているんじゃない。多くの方々、やむを得ず、心ならずも戦場に赴かなければならなかった方が多数祭られているわけでございます。そういう方々に対して、敬意と感謝、追悼の念を持って参拝しているんだ。特に日本は、戦後六十年間、この戦争ということを反省して、二度と戦争を繰り返してはならないという気持ちから、国際社会の中でも責任ある一員として今まで行動してきた。日本の今まで行ってきた海外の事業についても、国際社会での行動におきましても、六十年間、日本は一度も戦争を起こしていないし、平和国家として繁栄してきた。この点については、今後も二度と戦争を起こしてはならないという気持ちで平和国家として発展していくという方針は全く変わりないんだということを、私からも盧武鉉大統領によくお話ししたわけでございます。この点については、日本のいろいろな新聞報道も見ておられるようでございます、盧武鉉大統領は。

 しかし、日本というのは民主国家でありまして、どのような発言をしていいとか、してはいけないとかいう国ではない。また、新聞に出てくる記事が政府が進めていることでもない。多くの国民は平和のとうとさというものを十分かみしめている。日韓友好の重要性も認識している。そういう点も十分理解していただきたいというような話をしたわけでございます。

山名委員 この靖国参拝問題については従来からいろいろなことで議論もされているわけでございますが、私は、少なくとも内閣総理大臣として靖国神社へ参拝することについては、憲法二十条の政教分離の規定あるいは八十九条のそういうものに抵触し、かつ、さきの大戦において、この戦争責任の上から、A級戦犯が合祀されている、こういう靖国神社参拝はやはりやめるべきじゃないか、自粛すべきじゃないかということで申し上げたこともございます。

 これは中国側の論法ですけれども、戦争責任は日本の一部の軍国主義者にあるのであって、一般の日本国民にはその責任はない、そう言って、いわば国家賠償を放棄しているわけであります。かつて日本は、日清戦争のときに、その当時で三億二千万円という、当時からすれば相当の多額になるわけですが、国家賠償を取り、そして台湾まで領有している。こういった国家賠償の経緯も我が国にはあるわけでありますが、ともかく、一部の人の責任であって日本国民には責任がない、だから我々は日本の国家賠償は問わないんだと言って、いわば国家賠償を放棄したという経緯もございます。

 しかし、その責任者であるA級戦犯が合祀されている靖国神社の参拝というのは、被害国民の感情を傷つけ、侵略戦争を正当化するものだという思い、これはやはり、ある意味で被害者国としては理解できる心情ではないかと私は思っております。

 総理は、平成十三年八月十三日に参拝された直後、訪韓されまして、当時の金大中大統領と会談をされました。そのときに金大中さんの新しい施設をつくったらどうだという提案に対して、検討しましょうというふうにお答えになったと聞いておりますし、ことしのバンドン会議にも、歴史の事実というものを謙虚に受けとめて、そして痛切なる反省と心からのおわびの気持ちを常に刻んでいきたいというようなお話もされ、日本としての戦争責任の反省、そしておわび、そしてこれからの決意というものをお述べになっておるわけでございます。

 従来から、参拝については総理は、慎重に判断をしたい、こういうふうにおっしゃっておりますが、私は先ほど申しましたように、ことしは日韓国交正常化四十周年、いわゆる韓国側からすれば、敗戦六十年たちました、そして友情年としてさらに交流が広がろうとしている。こういう中であえてこの参拝を続けることについては、また感情的な摩擦、しこりを残す懸念を持っておりますし、お互い未来に向かって前進するためにも、私は、先方に配慮して自粛すべきではないか、せめてことしは自粛すべきではないか、こういうふうに思っているところでございます。

 日本も韓国も、節目の年というのは非常に大事にするわけでありまして、やはり、心のひだのその奧をおもんぱかって配慮していく、こういうことも総理としての大事な責務ではないかというふうに私は思っておりますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 追悼施設のお話でありますが、私は、先ほど申し上げましたように、特定の人に対して靖国神社に参拝しているわけではないんです。心ならずも戦場で命を失わざるを得なかった多くの方々、この方々が圧倒的多数なんです、A級戦犯のことを問題にされますが。私は、そういう戦没者に対して追悼の念を持って参拝している。どの国でも、私は、その国のために、家族のために命を失った方々に対して追悼の念をあらわすというのは自然なことだと思っております。そういう気持ちがわからないと言われますけれども、それは国によって違うと思いますが、その点は、やはり今後よく理解を得られるような努力をしていかなきゃならないと思っております。

 また、追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会についてもお話しされましたけれども、この問題につきまして、検討した事項は、いずれも、国民的な議論を踏まえ、最終的には政府の責任において判断されるべき重要な事柄だという報告書も政府は受けております。よく国民的な議論を踏まえて検討していく問題だと思っております。

山名委員 新しい追悼施設の話はまだこれからなんですよ、ともかくリンクしている話ですが。

 この国立の新たな追悼施設については、先ほど総理もおっしゃったように、当時、福田官房長官のときに在り方懇、懇談会がつくられまして、そこで一年かけて議論をし、そして最終的な答申として、必要であるという結論を出されました。

 ところが、それ以来もう三年近くたっているわけでありまして、やはりここで、さっきおっしゃったように、特定の人に対してお参りしているのではなくて、不戦の誓いといいますか、二度と戦争を起こさない、平和への発信の気持ちを込めてお参りしているということではありますけれども、戦争の犠牲とともに、やはり国家的に働いて犠牲になった方も、それ以後多くの方がいらっしゃるわけです。災害で、あるいはいろいろな海外で国のために犠牲になったという人たちは、やはりこれからも、国として、働いていただいた以上きちっとした追悼をする施設というのは最低必要ではないかと私は思っております。

 総理も、その当時の私の質問で、追悼のための無宗教の恒久的施設を建立することについて、わだかまりなく追悼できる施設は検討してもいい、こういうふうにもおっしゃっておりまして、最近もそういうことで一歩踏み込んだ発言もされておりまして、大いに私どもも期待をしているところでございます。

 ただ、追悼施設ができても靖国にかわる施設はない、こういうふうにもおっしゃっております。要するに併設、両方とも生かしていくという意味でありますが、これはいわゆる在り方懇の中にも、そういう意味で、新しい施設は靖国神社と対立するものじゃないんだという位置づけも明確にされているわけでありまして、そういった意味では、総理の発言は在り方懇のそういう答申に沿ったものである、こういうふうに認識をしているところでございます。

 そこで、やはりさきのテレビの討論会で我が党の冬柴幹事長が、新しい追悼施設をつくる上で調査費も計上していったらどうだ、こういう提言に対して、武部自民党幹事長も、やりましょう、それはいいと思う、こういうふうに発言もされております。公党を代表するそれぞれの幹事長の発言で極めて重い、私はこのように思っておりまして、そういった意味で、さらに一歩踏み込んで、総理の方から、調査費を計上する、こういう答弁がいただければ幸いだと私は思っていますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 この追悼施設に対して調査費云々の話がありますが、この問題について今後、つけるのかつける必要はないのかも含めて、今までの提言を踏まえて、また与党の意見も踏まえて検討していくべき問題だと思っております。

山名委員 今回、日韓首脳会談でいろいろお話し合いをされ、それで一回で終わるわけはありませんで、今度は日本で年内にも大統領に来ていただいて会談をするということでございますし、ぜひとも積極的に真摯な話し合いをやっていただきたいと思います。

 韓流ブームということが言われますけれども、日韓間で民間交流は大変盛んになっております。そういう意味でも、この流れはやはりとめてはならないし、さらに加速していかなきゃならない。特に、韓国や中国というのは我が国にとっても非常に大事な隣国でありますし、経済的な観点から考えても、やはり貿易立国としての日本の存在は、隣国を大切にする、そういうところの関係を友好なものにしていくということは、これは日本の外交上極めて大切なテーマだと思っております。

 特に、北朝鮮問題なんかは、いわゆる核問題だとか拉致問題等の問題が横たわっているし、やはり韓国、中国のそういった意味での協力も必要でありますし、東アジアの平和の確立のための存在としては、私はこれは日本の国益の問題だ、こういうふうに思っております。

 総理は、信条として、信念として、不戦のそういう誓いを、平和の思いを靖国参拝ということにあらわしていらっしゃるわけですけれども、私は、靖国参拝だけが不戦の誓いではないんだろう、こういうふうに一方では思っております。

 特に、最近では、国連改革のための常任理事国入りの問題もあります。ところが、実際、一番協力をしてもらわなきゃならない韓国や中国が日本の常任理事国入りにいわば反対の立場をとらざるを得ないという事態は、私は日本にとっては極めて不幸だというふうに思っております。

 御存じかと思いますが、韓国の言葉で、ナガジャミレロ、タガッチセゲロ、こういう言葉がございます。これはことしの友情年のテーマなんです。要するに、進もう未来へ、一緒に世界へ、こういう意味だそうです。

 そういう意味では、これからの東アジアの平和の確立のためにも、日本の置かれた立場、特に小泉総理の外交にかける闘い、確かに、おっしゃったように、日本はそれなりに平和への発信をしています。もうODAでも世界第二位、国連に対しても二〇%近い拠出をしている。こういう中で、そういう平和の流れはこれからも堅持していかなきゃいけないし、今度は中国との話し合い、首脳会議をぜひ早期に持ってもらいたいし、東アジアの平和にかける決意というものを最後にお伺いいたしまして、本日の質問を終わらせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日韓にしても日中にしても、今後、友好関係を発展させ、交流を拡大させていこうという共通の認識を持って当たっていきたいと思っております。

山名委員 終わります。ありがとうございました。

細川委員長 次に、松本龍君。

松本(龍)委員 民主党の松本龍でございます。おはようございます。

 私は、本決算行政監視委員会の理事として、若干質問させていただきたいと思います。

 実は、きのうまでほかのことを取り上げようと思っていたんですけれども、きょうここに持ってきております「郵政民営化ってそうだったんだ通信」、このところずっと郵政特で議題になっております。話を聞いておりますと、どうも永田町のルールあるいは霞が関のルールと、民間で一生懸命働いている人たちのルールと、大きな乖離があるということを感じまして、急遽取り上げることにいたしたわけであります。

 「郵政民営化ってそうだったんだ通信」という政府広報のチラシが一千五百万部配布されました。事の正確を期すために、一週間前の議事録から、林政府参考人が申し上げた経緯をもとに報告をしたいと思います。

 この折り込みチラシによる郵政民営化広報の経過でございますけれども、昨年十月十五日に、郵政民営化の基本方針を受けまして、国民への説明責任を果たすための効果的な広報を検討するために郵政民営化広報タスクフォースを発足したわけでございます。そして十月から十一月に、タスクフォースのメンバーが手分けをいたしまして民間有識者のアドバイスを求めた。その有識者の中に、有限会社スリードの代表取締役である谷部氏もいたわけでございます。中間を省略して、最後に、そして十二月十八日に、それまでの打ち合わせ等を踏まえまして、私内閣政府広報室長がスリード社と契約を結ぶことを決定いたしましたというふうになっています。

 これが事の経緯であります。契約の金額は一億五千万強。しかも、一般競争入札ではなくて随意契約でありました。

 竹中大臣にお伺いをいたします。

 随意契約になった理由を事務方から聞かれたと思いますけれども、それに対してのあなたの考えと、政治家一個人としてこの成り行きに対して瑕疵はなかったと思われるか、まず一点。二点目は、スリード社の谷部氏とは面識があったかどうか。この二点、お答えください。

竹中国務大臣 契約をどのようにするかということは私の直接所管外のことでございますので、これにつきまして、私としてはその担当部署で適切に対応をしていただいたものというふうに認識をしております。これは、担当者がその後委員会等々でも一生懸命説明しておりますけれども、いろいろな時間、予算、人員、制約の中で一生懸命やる中で適切に対処をしてくれたというふうに認識をしているというのが私の認識でございます。

 今お尋ねのありました、代表の谷部さんとの私の面識でございますが、本年一月八日にこの折り込みチラシの撮影をした際にお会いしたのが初めてでございます。それまでは面識はございません。

松本(龍)委員 契約にかかわっていないという話なんですけれども、あなたの反応がちょっとわからないんですね。普通だったら、何日間もこの問題が郵政特で議論されている、私があなたの立場で、仮に部外者だったとしたら、政府広報室に行ってどなりますよ。何で一般競争入札にしなかったんだ。まずそこから始まります。なぜ一般競争入札にしなかったんだということをまず怒ってから、それから事の経緯、随意契約になった経緯を聞くのが筋だと思います。それが普通のリアクションだと私は思いますけれども、そういうこともなさらない、怒ってもいない、あるいは怒れないのかもしれない。

 いいですか。初めに申し上げます。この経緯であれば逆に随意契約は、このケースでは常識的に考えて普通やってはいけないと私は考えています。通常であれば、こういう契約は、企画コンペの募集から始まって、審査をして採用、発注となるべきものです。しかも、それは企画だけの採用ということになろうかと思います。急ぎの場合は、印刷の見積もりコンペ、つまり相見積もりをして、同時に行うのが私は常識だというふうに思っています。違いますか。

竹中国務大臣 まず、怒れということでありますが、これは繰り返し申し上げますが、私の直接所管外の部署のことでございますから、私は、その事務手続のことも含めて、詳細な事情を存じ上げる立場にもございませんし、ましてや怒ったり褒めたり、そういうことをする立場にはございません。

 ただ、これは政府の中の我々の姿勢として、それぞれいろいろな制約の中で、つかさつかさでいろいろ努力をして一生懸命やってもらっているというふうに私は認識をしております。随意契約、一般競争入札、いろいろなルールのもとでこれはやっているわけでございますので、そうした諸事情を勘案して、適切に担当部署で御対応していただいているというふうに認識をしております。

松本(龍)委員 今申し上げた、民間であるならばそういう手続を踏む、そういう手続を踏まなかったことに対して、所管外だけれども、直接担当はしていないけれども、こういうやり方をすべきだったんだということの注意は、私はなさるのが普通の考え方だと思います。ほかの大臣も恐らくそうなさると思います。

 一般競争入札が本来のあり方であるということは、会計法二十九条の三で規定をされています。まず一点目でありますけれども、公正公平、機会均等のやり方をしなかったこと、これに、理由はいろいろありますけれども、私は瑕疵があると思います。

 二点目、このケースであればこそ随意契約はだめだということを指摘いたします。よく聞いてください。事の経緯は、先ほど申し上げたとおり、政府がアドバイスを求めた人物に結果的に契約が行われました。言いかえれば、あなた方が依頼した人に公の事業を発注したことであります。このことが、この事柄に対して非常に筋が悪いことだと私は思っています。経緯はどうあれ、これは筋が悪い。これは随意契約どころか特命じゃないですか。こんなことはどこの省庁でもやりません。どこの省庁でも今までやったことがないと思います。

 この流れを、よくない、これはちょっと筋が悪いんじゃないかということを、政府広報室おられますか、だれか若い人がそういうことを言ったり、心ある人がこれはちょっとおかしいんじゃないですかという発言をされたことはありませんか。

林政府参考人 お答えいたします。

 今の経緯のことにつきましては、実は、有識者に意見を聞いたこととの関係だと思いますけれども、有識者に、十月半ばからいろいろ学者の方とか実務の方とかと意見を聞いたわけでございます。そのときにおられた方に行ったのがおかしいじゃないかというようなことだと思いますけれども、私ども、有識者に意見を聞いたというのは、個別の企画を聞いたわけじゃなくて全体に、学者の方なんか、そういう切り口、そういうことで聞いておったわけでございます。

 それから、スリード社という会社の企画に対しまして随契をしたということにつきましては、私どもはたびたび述べてきておりますけれども、その企画が斬新であったこと、そういうことでございます。それは全然別のことでございますので、そこは御理解いただきたいと思います。

松本(龍)委員 ちょっとおかしいですよ。私が言っているのは、もしアドバイスを依頼するのであれば、これは企画あるいは立案のみにその代価を支払うことにとどめるべきです、依頼したのであれば。それがずるずるとけじめがつかずに発注まで行ってしまったこと、この行儀の悪さを私はさっきから言っています。

 いいアイデアだったら対価を支払うべきですよ。そして、そこで、依頼したのであれば一たん関係を断ち切って、そこから新たな関係をつくる、あるいは、そこから一般競争入札にする。そういうことをやっていない、そこがこの問題の一番不可解で筋の悪い点で、行儀の悪い点だと私は思います。これは、初めからお手盛りと言われてもしようがないじゃないですか。できレースと言われたってしようがないじゃないですか。

 繰り返しますよ。依頼した人と随意契約はしてはだめです。大臣、どう思われますか。

竹中国務大臣 ちょっと、どういうやりとりがあったのか、事務的にやってくださっていることですので、私は経緯もよく承知をしておりません。事務的には大変、時間、お金、人員の制約の中で一生懸命努力をされて、適切に対応してくださっているというふうに思っております。

松本(龍)委員 一週間前の答弁と全く一緒です。しかし、私が今言ったことが正しいかどうか、正しくないか、それをお聞きしています。どうですか、私が言っていること、間違いですか。

竹中国務大臣 委員の委員としての御見解であろうかと思います。事実については、これは担当の部局の中で、いろいろな制約の中でしっかりと対応をしておられる、そのような答弁を担当部局もしておられると思います。

松本(龍)委員 答えになっていません。私は常識的に今話をしたつもりですけれども、常識的な答えが返ってきていません。

 この問題、永田町とか霞が関から離れて、市民の目で見ましょうや。この時間にも、傘を差しながら、ネクタイを締めて、まさに汗をふきながら、値切られて、十万、二十万契約、そういうのも値切られて、ののしられて、我慢しながら働いているサラリーマンがいっぱいいますよ。そういった人たちがこの状況を見たとき、どう思いますか。市井で厳しい思いをしている人と政治の世界がとても乖離しています。勤労意欲をなくします。政治不信というのは、恐らくこういうことから始まるんだと思います。

 政府広報室もよく聞いてください。公の機関が国民の税金を使って行う事柄は、これでもかというくらいに細心の注意が必要です。一点の曇りもなく、公平、公正、透明でなければなりません。そのことにかんがみれば、このケースは著しくそれから逸脱をしていると思います。

 私が大臣であれば、面識のある人、縁故のある人に、どんな場合であっても公の仕事、随意契約を行うことはしません。秘書官にも事務方にも厳重にそのことを指示します。それが政治のあり方であり、政治家の振る舞いだと思うからであります。李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずという言葉がありますけれども、これは、悪いことをしなさんなよじゃなくて、悪いことと疑われるようなことはしなさんなよと、まさにこのことを肝に銘じていただきたいと思います。

 麻生大臣、わざわざお見えで、民間から政治家になって、私と公の区別をつける作業をずっと続けてこられた。政治家というのは大変窮屈な思いをされていると思いますけれども、私の今言っていることは間違いですか、正しいですか。

麻生国務大臣 社長経験があるからということで御招待いただきましたんだと思いますけれども、事情を詳しく知りませんので、きちんとした答弁というのができないとは思いますけれども、御質問なんで。

 今の話を、この前から郵政特別委員会でもいろいろなやりとりがあったのを仄聞させていただいておりますけれども、契約は正式なものだと思いますので、契約それ自体は有効だろう。私自身は、伺った範疇、受けた方の人も出した方の人も、契約それ自体は有効ということになるんだと思います。

 随意契約がいいかどうかは、これは事情がよくわかりませんのでちょっとわかりかねますが、民間会社だということであえて問われましたので、民間会社であれば、社長の責任でやった結果、よくて安ければ社長は英断ですよ。それでよしということになるんだと、民間会社はそれが普通だと思います。

 ただ、役所の契約の場合になりますと、これは会計法というのが別に出てきますので、これに従わなければならぬということになろうと思いますので、その会計法につきましては、もっと専門家、プロの方に聞いていただいた方がよろしいんだと存じます。

松本(龍)委員 私は、竹中大臣が民間であれば何にも言いません。そして、大臣になられて、去年政治家になられました。この答弁を聞いても、政治家として決意を持って物事に対処されているのか、公と私の区別をきちっとなさっているのか大変疑問が残ります。このことを指摘して、私の質問を終わります。

細川委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。松本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょうは、決算委員会、私は、日韓関係あるいは子育て支援、年金などについて総理と意見を交わしたいと思っております。

 最初に、いつものことですが申し上げておきたいと思います。官房長官、厚生労働大臣がお座りいただきましたが、私は呼んでおりませんので、答弁は総理に求めたいと思っております。

 さて、きょう六月二十二日は日韓国交正常化四十周年、記念すべき日だと思います。四十年を振り返りますと、決して平たんな道ではありませんでした。それは過去の日韓関係、例えば創氏改名、神社強制を初めとする日本の朝鮮半島支配のそういった歴史を考えれば、わだかまりがすぐには解けなかったのはいわば当然だと思います。

 しかし、今、日韓関係は、民間のレベルでは大きく変わってきた。それは、先ほど総理もこの場でお話しになったとおりであります。ワールドカップの日韓共催、我々日本人も韓国の選手のプレーに対して拍手を送りましたし、韓国の国民の皆さんも同様に日本チームに対して声援をしてくれました。あるいは最近の韓流ブーム。日本男子としては、日本の女性が韓国の男性ばかりに関心を持たれるのは少し残念な気もしますが、しかし、韓国でも日本のアニメとかいろいろな大衆文化がもてはやされております。

 私は、大きく変えたのは一九九八年だったと思うんですね。時の日韓のリーダーがやはり大きな役割を果たしたというふうに思っています。小渕首相と金大中大統領です。日韓共同宣言を出しました。そして、金大中大統領の国会における演説を、私は非常に大きな感動を持って聞いたのを今でも覚えております。わずか五十年の悲しい歴史をもって千五百年の日韓間の協調、交流のその歴史を否定するとしたら、それは愚かなことだ、過去を直視しながら、しかし未来志向で行こうと。

 私は、金大中大統領が日本の国会であれだけ言うには、かなり政治家としてのリスクはとったと思います。韓国の国内にはいろいろな意見が当時もありました。しかし、そういう中で、共同宣言を出して、お互いがいい方向に流れをつくった。私は、小渕さんと金大中大統領がリーダーシップを発揮して、そしてこういう流れをつくり出したというふうに評価をしております。

 それと比べますと、一昨日の日韓首脳会談は、私は本当に寒々としたものだったと思います。もちろん、韓国側にもさまざまな問題、責任があるというふうに私は考えております。しかし同時に、小泉総理にも責任がある。日韓首脳会談でいろいろ意見交換できたことはよかったと先ほど言われましたが、実際には、お互い合意したのは、あらかじめ事務方がまとめたペーパー、文書について十分ぐらいかけて確認しただけ、後はずっと、話し合いをしたけれども何も合意がなかった。そういう意味では私は成果がなかったと思いますが、総理はいかがお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、日韓問題について答弁する前に、民主党岡田代表に抗議したいことがございます。

 去る六月十九日ですか、議員小泉純一郎君を懲罰委員会に付するの動議、右の動議を提出する。私、何で懲罰されなきゃいけないのか。

 聞くところによりますと、私が先週の、延長を決める国会の投票において、酒を飲んでいた、酒気帯びだというような理由で、いいかげんだと厳しく批判されているようでありますが、私は先週のあの本会議、八時五十分から、夜始まったんですが、あの日は酒、アルコール、一滴も飲んでいないんですよ。そういう、何も確かめもしないで、でたらめな、無責任な、しかも懲罰委員会に付するというのを、どうして民主党、公党というものがあんなでたらめなことをするのか。強く抗議したいと思います。

 その上で、日韓の首脳会談でありますが、私は、盧武鉉大統領との間で意見の相違もある、歴史認識についても同じ意見とは思えない点も随分ある、しかしながら、そのような相違や一部の対立の問題があったとしても、そこで今までの友好関係、交流関係をストップさせていいのだろうか、そうじゃない。

 去る日曜日、硫黄島に伺いまして、追悼式典に出席して、日本軍兵士、米軍兵士の霊に対しまして追悼の念を持って式典に参加したわけであります。遺族の方々もお見えになっておりました。六十年前に、あの小さな島に、日本軍兵士、二万人以上の兵士が亡くなった。生き残った兵士はわずか千名、そういう激戦地。アメリカ兵も、七千名近くが亡くなり、負傷者を合わせると二万名を超える。両軍四万数千人の死傷者を出した激戦中の激戦地、悲惨な地域であります。しかし、六十年たってみて、お互い敵対をした、敵国であった米国と日本は、今同盟国として友好関係を維持している。そして、日本国民も米国民も、戦争をしましたけれども、遺族の方々でも、二度と戦争を起こしてはいけないということで、友情関係を持って仲よくいろいろな仕事なり交流を深めている。

 そういうことを私は盧武鉉大統領との会談でも申し上げまして、いかに戦争がむなしいものであるか、これから十年、二十年、三十年、日韓の将来を考えてみても、たとえ今の時期において相違や対立が一部にあったとしても、将来、この一部の違いのために友好の流れをとめるようなことをしてはならない。そういう日韓の友好の重要性、そのために、その対立なり相違を乗り越えて、今後も日韓友好交流の発展、拡大のために努力しようという共通の認識を持てて、実りある率直な会談だと私は思っております。

岡田委員 総理、硫黄島のことは私聞いておりません。なるべく簡潔に、聞いたことを答えていただきたい、時間稼ぎをしないでもらいたい、まずそのことを申し上げておきます。

 そこで、先ほど総理が言われたことについて、私から反論しておきます。

 あのときに本会議場で、我が党の議運から自民党の議運に対して、今津議員とそして小泉総理と森前総理の三名が顔が赤く見える、酒気帯びではないか、確認してくれ、こう申し入れたところ、わかりましたと言って一たん引き受けながら、今津議員については確認したけれども、森前総理と小泉総理については確認しなかった。

 だから、確認しないでとおっしゃった、違うんです。我々は確認したけれども、答えを出さなかったわけですよ。そういう経緯があったということ、その上で我々は議運に対して懲罰動議を出したということを、総理はよくその経緯も理解された方がいいと思います。(発言する者あり)

細川委員長 お静かに願います。

岡田委員 ちなみに、我が党の全く関係のない三名の議員に懲罰動議を出したのは、それは自民党なんですよ。本会議場では全く指摘もせずに、後になって出しているじゃありませんか。そういういいかげんなやり方でお互い打ち消してもみ消そうとしている、そういう古い自民党のやり方に対して厳しく抗議しておきます。

 さて、今総理はいろいろ言われましたが、私は予算委員会の場で総理に申し上げました。靖国に行くのは、それは不戦の誓いで行くのであって、なぜ批判されるのかわからないと総理は言われた。だから、私はそれに対して、もし総理が信念としてそう思われるのなら、それは中国や韓国の首脳に対してその信念を述べ、説得する責任があると申し上げました。しかし、結局相手方は全く納得していないわけですよ。歴史問題の核心が靖国問題、こう言っているわけです。つまり、お互いが納得しない状態がまだ続いています。

 総理は、いつまでこの状態を続けるつもりですか。これから総理の任期の一年間、こういう状態で日韓関係が続いていって本当にいいと日本国総理大臣としてお考えですか。述べていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 答弁する前にあえて言いますが、私が酒を飲んでいたなんていうのは全くでたらめですけれども、確認したということも聞いていません。

 当日、私も本会議場に出席しておりましたけれども、全然、小泉さん、酒を飲んでいるかなんて聞かれたこともありませんし、飲んでいると指摘されたこともありません。第一、私は一滴も飲んでいないんですから。そういうことも確認もしないで、懲罰動議を出して、けしからぬ、けしからぬと。どっちがけしからぬですか。これは、実に、確認もしないでこういうでたらめを言うということの方が無責任で、私はけしからぬと思っております。

 今の質問ではございますが、私は、日中関係、日韓関係、私の靖国神社参拝が核心だとは思っておりません。核心は、日中、日韓ともに、未来志向で、過去の歴史も直視しながらいかに発展させていくか、友好関係を重視していくか、これが核心だと思っております。

岡田委員 確認しないというふうに先ほど総理おっしゃいましたが、それは自民党の議運が確認しなかったんです、あなたに。確認すると約束をしながらしていないんですよ。そのことを申し上げておきたいと思います。

 さて、今、総理は、靖国問題は核心でないと。それは総理はそう思っておられるでしょう。しかし、韓国側はそう思っていないわけですね、盧武鉉大統領はそう思っていないわけであります。だから、そういう中で、今、日韓関係がこういう状態を続けていって本当にいいのか、日本国総理大臣としてそれで、そういう状態を放置していいのかということを聞いているわけです。

 あなたは、日本国総理大臣として日韓関係をしっかりつくっていく責任があるわけです。もちろん、相手にいろいろ、非もあるかもしれません。私はあると思う。しかし同時に、日本国総理大臣として、今の状態を放置できない。

 例えばこの前の首脳会談で、大事な話はほとんど何も合意できていないじゃありませんか。六カ国協議について、アメリカと韓国と日本で連携していこうという型どおりの合意はしたけれども、しかし、六カ国協議、間もなく始まるかもしれない。もっと突っ込んだ議論があってよかった。核開発に対してどう対処していくか、そういうことについて議論できていないじゃありませんか。いかがなんですか。

小泉内閣総理大臣 北朝鮮の問題につきましても、熱心に率直な意見を交換いたしました。

 北がどう思っているか、また盧武鉉大統領がどう思っているかということは、相手の立場がありますので公表すべきではないと思いますが、極めて率直な意見交換を行いました。

 そして北朝鮮に対しては、日本と韓国とアメリカが、今後よく協議をし、協力していかなきゃならないという点におきましても一致しております。さらに、この北朝鮮の問題に対しましては、平和的解決、外交的解決しかない、そういう点でも一致していると思います。

 表に出せない話もいろいろありますが、私は率直に盧武鉉大統領の考えを聞かせていただいたと思っておりますし、私も率直に私の考えを伝えました。

岡田委員 外に出せないということで、本当にそういう話があったのかどうか。私はなかったと聞いておりますが。

 では、常任理事国入りの問題はどうですか。常任理事国入りの問題について、何か韓国側に言われましたか、総理。これは向こうが何か言ったじゃないです。総理はどう言われましたか。具体的に教えてください。

小泉内閣総理大臣 首脳会談の場において、常任理事国の話はいたしませんでした。

岡田委員 韓国が日本の常任理事国入りに対して反対をしている、そのことに対してどうして総理は議論しなかったんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、外務大臣と外交担当者と、それぞれ意見交換をしております。

 限られた時間でありますし、いろいろな問題もありますし、どういう点を話すかということについては、その中でのいろいろな議論の展開次第であります。

岡田委員 総理が日本の常任理事国入りをあきらめたのなら別です。しかし、これを何が何でもやっていこうというのであれば、私はやるべきだと思いますが、やはり韓国に対してもきちんと総理みずからの口で説明するのは当然じゃないですか。

 そして、きょうの報道によれば、昨日、韓国と中国の両国の首相が会って、そしてG4の提案、これに対して反対していこうということをまた確認しているじゃありませんか。

 どうして首脳間でこの問題についてしっかりと議論しなかったんですか。少しでも歯どめをかける、これは総理としての責任じゃないですか。

小泉内閣総理大臣 それは、人それぞれ考えがあります。

 岡田さんが首相ではないんですし、盧武鉉大統領でもありません。何を話せばいいかというのは、私が首脳会談で判断すべき問題であります。

岡田委員 総理、だからその判断が誤っているというふうに私は申し上げているわけですよ。それほど常任理事国入りというのは大事じゃないんですか。私は、日本の国益、国の利益、国民の利益にとって非常に重要な問題だと思いますよ。

 では、東アジア共同体構想については何か話しましたか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 将来、東アジア共同体の話はどうしようかということは、常に話し合っております。

岡田委員 どうしようかとは、具体的にどういうお話を総理はされたわけですか。

小泉内閣総理大臣 具体的に話を申し上げる必要はございません。

岡田委員 想像されるのは、結局、日韓首脳会談は、私の聞いているところ一時間半、それからその後食事で二時間、三時間半ぐらいお話の機会があったと思うんですが、そういう中で、常任理事国入りの問題や東アジア共同体といった前向きの話や日本の国益にかかわる話が全然できていない。

 結局、日韓の間の信頼関係がない中で、そういう話すらできないということに対して総理はどうするんですかと私は聞いているんですよ。このまま一年間こんな状態で、本当に日本の国民の利益、国の利益は、それは損なわれるんじゃないですか、そこを日本国総理大臣としてどう考えておられるんですかということを聞いているわけです。答えていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、国によっては全部意見が一致するものではないと思っています。一部に意見の違いがあったから損なわれているというのは、余りにも短絡的な見方だと思っております。

 一時期の意見の相違や対立があっても、将来、友好発展が大事だという共通の認識を持っているわけであります。韓国の言うとおりに全部しろとか、中国の言うとおりに全部しろというような考えを私はとっておりません。日本には日本の考え方があります。そういう中で、相違なり違いを認めて友好増進を図っていくというのが、国と国として大切なことではないでしょうか。

岡田委員 もちろん、それぞれの国にはそれぞれ利害がありますから、対立点があることは当然です。ですから、そういうものを話し合いによって乗り越えていかなきゃいけないんです。

 今の小泉総理の発言は、私は物すごく最近気になるんですよ。私は、すべて中国の言うことを聞く、韓国の言うことを聞け、そんなこと一言も言っていませんよ。あなたがそういう言い方をわざとして、国民の狭いナショナリズムをあおっているんじゃないですか。そういう手法は、日本国総理大臣として絶対とるべきじゃないんですよ。そういう形で国民のナショナリズムをあおって、みずからの支持を上げようとしている。そういう人が総理大臣になるということは日本にとって大変大きな問題だ、そのことを私は申し上げておきたいと思います。

 そもそもこの靖国の問題は、私は四年前を思い出しますよ。自民党総裁選。たしか、ある討論会の場だったと思いますが、司会者が、靖国神社に参拝するかどうかと質問をしました。当時の実質的な候補者は、橋本さんとそして小泉さんの二人です。

 橋本さんにまず質問が行きました。橋本さんはたしか、私の記憶に間違いなければ、当時は遺族会の会長です。橋本さんがどう答えるか、私は注目しました。口ごもりました。そして、行くとは言いませんでした。それはやはり、日本国総理大臣としての立場の重さというものを考えて、彼は、それは目の前の選挙を考えたら、遺族会会長だし、当然行くと言った方がよかったかもしれないけれども、踏みとどまったわけであります。そしてその後、小泉総理は、私は必ず八月十五日に靖国神社に参拝すると断言されたんですよ。これがこの問題のすべてのスタートなんです。

 私は、日本国総理大臣として、個人の信念も結構です、別に選挙目当てで言ったとは申し上げません。だけれども、やはり日本全体のことを常に考える総理大臣であってもらいたい。国の利益というものをどう考えるのか、そういう視点を常に忘れない総理大臣であってもらいたいと思います。

 今、私は、総理が靖国神社に自分の判断で行かない、こう決断したとしても、変節漢といって批判するつもりは全くありません。どうか総理、勇気を持って決断していただきたい。それが日本国総理大臣としての責任だ、そのことを申し上げておきたいと思います。

 もし総理、何かコメントがあれば、おっしゃっていただいて結構だと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、四年前の総裁選挙のときに橋本元総理がどう言われたかについては、とやかく言うつもりはございません。私は私の考えを述べたわけでありまして、これは自分の信条を申し述べたつもりであります。別に、遺族会の皆さんの票が欲しいとか、そういう目当てではございません。

 そもそも、私ども、日本国民どなたでもそうだと思いますけれども、どこの神社に行くかどうか、人に言われて、行けとか行くなとかいう問題ではないと思っております。一人の人間として、心の問題として、戦没者の皆さん方に対して追悼の念を持つこと、そして、現在我々が平和のうちに暮らすことができるのも、現在生きている人だけでこのような世界が、社会ができたものではない、心ならずも戦場に赴かなければならなかった、命を失わなければならなかった、そういう方々のとうとい犠牲の上に今の社会が成り立っているんだ、平和があるんだということを決して忘れてはならないという気持ちから、私はお参りをしているわけであります。こういう問題に対して、行くなとか行けとか言われて参拝するべき問題ではないと私は思っております。

岡田委員 私は当初から、外国政府に言われて行く行かないの問題ではないということは明確に申し上げております。そして、総理がどう判断するかの問題だということも申し上げております。

 ただ、今のお話を聞いていて、一人の人間としてという総理の心情はわかりますが、総理はその前に日本国総理大臣であるということ、そこをしっかり踏まえて、そして大きな判断をしなければいけないんだ、そのことを私は先ほどから申し上げているということであります。

 次に、先ほど来話に少し出ましたが、国立の追悼施設の問題です。これは、平成十四年に、福田官房長官時代に既に報告書も出ております。

 これについていろいろな議論があるようですが、私は、この問題も外国に言われて決める問題じゃないと思います。それから、靖国神社との関係で決める問題でもないというふうに思います。やはり、国として追悼施設を持つかどうかということは、これは極めて重要な問題ですから、そのこと自身をきちんと議論したらいい、こう思います。

 そして、私はつくるべきだ、こう思っておりますが、総理は、検討に着手するとかいろんな言い方をされているようですが、本当にそれをつくるべきだというふうにお考えなんでしょうか。それとも、今までずっと先延ばしをされました。また先延ばしをされるんでしょうか。どちらなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 検討するということは、今までの懇談会の提言もあります。そして、国会の中でも、今議論されているように、今までの委員会での質疑におきましてもそういうような話も出ましたし、与党、野党、それぞれの意見が出ておるのも承知しております。私としては、それらの過去の経緯も踏まえ、そして、現在出されている各方面の意見を伺いながら今後検討していきたいというのが率直な気持ちでございます。

 だから、岡田代表はつくるべしという観点から検討すべしということのようでありますが、私は、つくるべきかあるいはつくる必要はないか、そういう点も含めてよく検討したいと思っております。

岡田委員 平成十四年にその報告書が出て以来、今日までこれは放置されたままですね。ですから、今総理がそういう言い方をされますと、結局、任期の間に結論を出さないで終わるんだろう、先送りするんだろうというふうに普通は考えますね。

 総理、いつまでに結論を出すということを言われますか、どうですか。

小泉内閣総理大臣 これは、いつまでにという点については、今決めているわけではございません。

 それと、つくるべしという意見とつくるべきでないという意見の中にも、さまざまなんです。今岡田さんが言われたように、靖国神社の関係につきましても、靖国神社と関連づけて考える方もいるし、全く別だという考え方もあるんです。そういう点もありますから、この点につきましてはよく検討していかなきゃならないなと思っております。

岡田委員 私は、靖国神社とは全く別の趣旨のものである、これは報告書の中にも出てきますが、そういうふうに考えております。同時に、靖国神社がつくるなと言う立場にも全くない、これは民間の神社ですから、そういうふうに考えております。

 私がつくる必要があると考える理由は、大きく言って二つです。

 一つは、やはり、広く戦争の犠牲者に対してそれを追悼する施設というのが日本にはありません。沖縄に今度総理は行かれるようですが、沖縄には平和の礎があります。あそこには、戦争にかかわった市民も、あるいは外国の兵士も含めて名前が書いてあります。しかし、さきの戦争あるいはその前も含めて、この前の戦争で八十万人の市民が、例えば空襲とか沖縄の戦いとか、あるいは広島、長崎の原爆投下、いろいろなことで亡くなっている。その大半は女性や子供たち。そこについて、今、国として追悼するものはありません。そして、靖国神社は国ではありませんし、そしてそれは兵士を祭っている、そういう組織であります。私は、そういった戦争の犠牲者を広く追悼する施設は必要だというふうに思っています。

 二番目は、やはりさきの戦争についての思いがだんだん風化してまいります、記憶が風化していきます。そういうときに、あの戦争の悲惨さを思い、二度と繰り返してはいけない、そういう誓いを立てるためにも国としての施設が必要だ、私はそういうふうに考えております。

 総理はいつまでにと言われませんでしたので、このままいくとずっとまた先送りされるんだろうなという気はしますが、私は、これはぜひ必要なものであり、つくっていただく、その決断をしていただきたい。少なくとも政権がかわれば、私たちはしっかりそのことについて実現をさせていただくということを申し上げておきたいと思います。

 さて、話題を変えまして、子育て支援についてちょっと総理のお話をお聞きしたいと思います。

 最近発表になりました平成十六年度の合計特殊出生率は一・八八九ということで、前年に比べてまた下がりました。したがって……(発言する者あり)一・二八八ですね、一・二八八九。したがって、今までの政府の政策が効果を上げていないという、まだ下向きのトレンドが変わっていないということであります。

 私は、もっとそのことについて総理は危機感を持たれるべきだ、そして大きな政策の転換を図るべきだ、こう思っております。いろいろ、十二月には子ども・子育て応援プランなども出ましたが、その中でもまだ抽象的で、具体的な政策は不足している、私はこう考えております。

 この子育て支援策について基本的に総理はどうお考えなのか、余り長くなくていいですから、お答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 少子化の問題、これは今後の日本の発展を考える上でも極めて重要な課題であると受けとめております。

 少子化、子育て支援、どうしたらお子さんをもっと持ちたいなという意欲を若い皆さんが持っていただくかという点からも、子育て支援策というのは、各党も積極的に、関心を持ち、提言をされているということも承知しております。政府としても、少子化の問題というのは一役所の問題ではないということから、先日来から、官房長官を中心にいたしまして、経済界も労働界の代表の方も加わっていただきまして、この少子化問題、深刻に受けとめて取り組んでおります。

 今後、社会保障のあり方を議論する場合にも、少子化の問題は避けて通れない課題だと思っておりますので、政府としても今後、このような少子化傾向にいかに歯どめをかけるかという点について、さまざまな意見を伺いながら、対応策をしっかりととっていきたいと思っております。

岡田委員 今、総理はキーワードとして、日本の発展、それから、どうしたら子供を持ちたいというふうに思ってもらえるかという二つのことを言われたんですが、私、根本が違うと思うんですよ。一番大事なことは、子供を生み育てる意思がありながらそれができないでいる人たちに対してどうやって政府が手を差し伸べていくか、ここがやはり政策として一番大事なところだと私は思うんですね。

 つまり、子供を生み育てたい、そういう人の立場に立った政策というものが大事だと思います。子供を産みたいけれども経済的な理由で産めない、持てない、そういう人たち、あるいは仕事との両立ができない中で子供を産むべきかどうか迷っている、そういう人たち、あるいは不妊治療を受けたいけれども経済的な理由でそれがかなわない人たち、そういう人たちの立場に立って政策をきちんとつくっていくべきだと私は考えております。

 そして、そういう中で、この子育て政策について、これから五年間が極めて大事だ、こう言われておりますが、総理、この五年間、なぜ重要なのか、お答えいただけますか。

小泉内閣総理大臣 今後、少子化の傾向がはっきりしますから、この少子化の問題、子供を育てるという問題は、早く手を打たないと後々深刻な影響を与えるということから、できるだけ早く手を打っていかなきゃならないということであります。

岡田委員 総理、ここもしっかり認識をしていただきたいんですが、例えば、総理が最近内閣府でつくった日本二十一世紀ビジョン、次のリーダーはこのビジョンに従ってやらなきゃいけないと総理言われましたよね、この二十一世紀ビジョンにもはっきり書いてあります。なぜこれから五年間が重要か。それは、団塊ジュニアの世代が今三十代、その三十代の団塊ジュニアがやはり三十代の間に方向転換できないとかなり手おくれになる、そういう問題意識なんですよ。だからこの五年が大事だ、ここに集中的に政策展開しなければいけない、そういうことの中で語られていることですから、余りゆっくりされちゃ困るわけです。大きな政策転換を急がなきゃいけない、そういう観点で私は申し上げているわけであります。

 民主党としては、いろいろな具体的な政策も既に今年度の予算の審議のときにも申し上げております。出産時助成金の創設、出生児一人当たり二十万円の助成、所要額が二千二百億円、それから学童保育施設一万四千カ所を二万カ所に、九百六十億円、小学生までの医療費の窓口負担を一割に、四百五十億円。そういった対策を講じていくことで、私はかなり変わるんじゃないか、こう思っております。

 そして、一番大事なことは、やはり経済的支援ですね。子供を産めないことの最大の理由として、やはり経済的理由を挙げる人が一番多いわけであります。

 きょう発表された政府税制調査会の報告の中で、所得控除制度から税額控除制度にすることも考えられる、こういうふうに子育て支援について述べております。総理は、この税制調査会でそういうふうに述べていることについてどうお考えですか。所得控除制度から税額控除制度に変えていくべきだということについてどう思われますか。

小泉内閣総理大臣 これは、所得控除、税額控除、どちらをとるにしても、財政状況、税収にも影響してきます、財源とのにらみもあります。そして、この点につきましては、今後、政府の税制調査会と与党の税制調査会もあります。その中で議論していかなきゃならない問題でありますが、要するに、児童手当一つとってみても、額をふやすということについては、どなたも余り反対はないと思います、歓迎すべき問題だと思いますが、その給付をするための財源をどう捻出するのかという問題になると、必ず一方では強い反対なり抵抗が出てまいります。

 これは、今も児童手当、第一子と第二子が月額五千円ですか、第三子から月額一万円にしようということについて、民主党はもっとふやせという意見だと思います。そういう点につきましても、ふやした場合には、それじゃ、赤字国債で手当てするわけにいかぬということで、財源というものを考えなきゃならないということから、少子化の問題、児童手当をもっと増額しなければならないという問題が出ると、必ずそれではどこの部分を増税するのかという問題が出てくると思いますので、こういう点については、給付をどの程度増額するのか、そしてその財源手当てをどうするのかというのは、私は、今後、年末の予算編成に向かって、政府においても与党においても、また野党においてもそれぞれ提案なされると思いますので、よく見きわめていかなきゃならない問題だと思っております。

岡田委員 今、政府税調、党税調と言われましたが、まず私が申し上げたいことは、税の世界だけの議論にこれはとどめるべきじゃないということなんですね。もちろん、所得控除より税額控除の方が、税金をより少なく払っている人にとって相対的に有利になる制度ですから、私はその方がいいと思います。しかし、もっといいのは、やはり手当なんです。

 つまり、所得税を払っていない、そういう所得層の人にとっては税額控除も所得控除も意味がないわけですから。やはり手当にして、そして所得税を払っていない層まで、これは子育て世代というのはそんなに所得が多いわけじゃありませんから、そういう層にもきちんと行き渡るようにするためには、私は、むしろそういった所得税の控除制度を整理して手当に振り向けるべきだ、そういうふうに考えております。

 我が党の主張は、配偶者控除や扶養控除を廃止して、これは約二兆円出てきますから、そういったものをもとにして、総理がおっしゃった今、月々五千円を一万六千円、子供一人一万六千円規模の新たな子ども手当制度を創設すべきだ、これははっきり私たちは申し上げているわけですよ。

 そういったことについて、何年もかけて議論するんじゃなくて、先ほど言いましたように五年間がこれは限界ですから、一刻を争う問題ですから、年末までにしっかりと児童手当も含めたトータルの議論をしていただいて結論を出していただきたい、そのことをお願い申し上げておきたいと思います。

 最後に、年金の問題について、私は今非常に危機感を持っております。つまり、国会に設置をした協議会、今まで実質三回、四月から開きました。この協議会の設置は、これは総理御自身も私に対して、ぜひそういうものをやるべきだとおっしゃった。私もそのことに異存はありません。しかし、懸念していたのは、単に協議会をつくるだけで、先送りに使われてしまうのではないか、そのことを懸念しておりました。今、現実に起こっているのはそういうことなんですね。

 つまり、第一回目、私は参加をしましたが、その場で、例えば丹羽さん、自民党の社会保障制度調査会長は、昨年の年金改正は画期的であった、ことしの課題は国庫負担率の引き上げだと。つまり、国庫負担率の引き上げが課題だと。そんなことを議論するために協議会をつくったんじゃありませんよね。あるいは、公明党の冬柴さんは、昨年の年金改正は持続可能ですぐれた改革だ、こう述べられました。そういう状況の中で、本当に年金の真剣な議論ができるのか、私は大変懸念をしております。

 総理に、ぜひ、自民党の議員に対して、与党の議員に対して、この協議にまじめにちゃんと対応するように、真剣に議論するように、郵政のときの総理のかなり露骨なリーダーシップの発揮、その半分でいいですから、それを発揮していただいて、議論ができるような、そういう状況にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 年金の協議会につきましては、去る四月に第一回の与野党協議が行われて、今月に入って一回、計四回ほど行われたということは承知しております。

 そういう中で、それぞれ各党参加しておりますから、各党が一致していないということも承知しておりますが、一致していないけれども、この年金を含めた社会保障制度全体というのは、どの政党が将来政権をとるについても、最も国民の重要な関心事であるから、しっかりした持続できる制度をつくっていこうという趣旨であります。

 私どもとしては、確かに、年金一元化の問題一つとってみても、最初に厚生年金、共済年金、国民年金を一緒にやるという考えを岡田さんは持っているようでありますが、その一元化が将来できれば望ましいということは私申し上げておりますが、その前にも、まず厚生年金と共済年金を一元化する話が先じゃないですかと申し上げているんです。それに対して異議が岡田さんはあるようでありますけれども、それから国民年金をどうするかとやっても遅くないじゃないですか。そういう点も、違うからけしからぬというような場にするんじゃなくて、それでは、まず厚生年金と共済年金を一元化するときにはどういう方法があるんだという議論を進めても、私は決しておかしくないと思うのであります。

 各党がそれぞれ意見が違うから決裂させようというんじゃなくて、違いを乗り越えて、これを持続可能な制度に持っていくというための年金協議会だと私は思っておりますので、その点、ぜひとも御理解、また協力をいただきたいと思っております。

岡田委員 総理は全然わかっておられないんですよ。一元化の問題について、与党が何と言っているかわかりますか。まず共済と厚生年金の一元化が重要であり、その細かい具体論をこの協議会の場で議論しよう、こう言っているんですよ。そんな議論をしていたら秋になっちゃいますよ。

 私が言っているのは、まず国民年金を含めた一元化が可能かどうか、そのことの議論が先だと。それをきちんと見極めた上で、もし可能ということになったときに、では手順としては共済と厚生年金を先に行うということもそれは選択肢ですよ。しかし、まず議論すべきは、国民年金を含めた一元化が可能かどうかのしっかりとした議論なんですよ。それを、目の前の、もう既に閣議決定もされている共済と厚生年金の具体論をあの協議会の場で議論し出したら、それだけで二カ月、三カ月は優にたってしまう、秋になってしまう。それは、総理御自身が秋までに年金改革、抜本改革の骨格をつくると約束したことに反しているから申し上げているわけであります。

 どうか、総理が、年金改革についてもっと国民の立場に立って真摯に議論していただきますようお願い申し上げて、私の質問を終わります。

細川委員長 以上をもちまして平成十五年度決算外二件についての質疑は終局いたしました。

 総理は御退場されて結構でございます。どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

細川委員長 平成十五年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 これより議決案を朗読いたします。

    平成十五年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書に関する議決案

  本院は、平成十五年度決算について、予算執行の実績とその効果、会計検査院の検査報告などに重点を置いて審議を行ってきたが、さらに改善を要するものが認められるのは遺憾である。

 一 予算の執行状況などからみて、所期の目的が十分達成されるよう、なお一層の努力を要する事項などが見受けられる。

   次の事項がその主なものであるが、政府は、これらについて特に留意して適切な措置を執り、その結果を次の常会に本院に報告すべきである。

  1 国の財政は、公債残高が累増しており、非常に厳しい状況である。まずは二〇一〇年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指し財政の健全化を図ることが重要な課題である。このため歳出の各分野について経費削減を着実に推進し、財政再建に取り組むべきである。また、特別会計についても、区分経理の必要性を吟味するなど厳しく見直すべきである。

  2 最近の合計特殊出生率の低下にかんがみ、婚姻、出産、育児を容易にできる環境を着実に整備すべきである。子育て支援において、各地域における小児救急医療体制の整備充実をはじめ、次世代の育成に向けた積極的な施策を計画的に実施していくべきである。

  3 高齢化の一層の進展に伴い、介護を受ける者の増加による介護保険給付費が増大する状況にある。このため、介護を予防重視に転換し、特に筋力向上運動の推進、地域に密着した予防拠点の整備を行い、また、介護予防サービスの普及を図るなど、介護サービス内容を見直し持続可能な介護保険制度を構築すべきである。

  4 国の内外で大規模な地震の発生により国民生活に多大な影響を及ぼし、国民の防災に対する意識が高まっている。今後も大規模地震が想定される中、建物の耐震化、津波軽減対策等を推進するとともに、特に、災害時における「救命ライフラインシステム」を早急に整備し、人命を最優先とする総合的な地震対策に取り組むべきである。

  5 先般発生した列車脱線事故は、国民に不安を与え社会的信頼を著しく失墜させるものであり誠に遺憾である。公共交通機関は安全輸送が使命であり、安全確保、安全対策の検証を行い、鉄道事業者に対して事故防止対策の徹底を求め、再びこのような重大事故が起こることがないように万全を期すべきである。

  6 近年、犯罪情勢は急速に悪化し、特に外国人犯罪は増加傾向にあり、国民の生命や財産に重大な被害を及ぼす凶悪犯罪が後を絶たない状況にある。このため不法滞在者の取締りの強化、治安関係職員の増員及び国際捜査の体制整備、学校の安全確保のために万全を期する施策など、積極的、効果的な犯罪防止対策に取り組むべきである。

  7 地球温暖化対策の第一歩となる京都議定書の発効に伴い、我が国の数値約束達成のため、温室効果ガスの削減対策や森林吸収源対策をはじめ、京都メカニズムに係る対策とその裏付けとなる施策を推進すべきである。地球温暖化対策は、中長期にわたるため地球温暖化の科学的研究、技術・開発等、そのための社会的基盤の整備や広く啓発活動・環境教育を進めるべきである。

  8 政府開発援助(ODA)は、我が国の国際的立場にふさわしく、国際社会の平和と発展に貢献するため重要な政策である。この開発援助にあたり、二国間の関係、経済状況等を考慮して、経済資金協力については、政策評価を活用・検証して実施状況の改善、被援助国の真に必要な援助を展開するため、現地の非政府組織(NGO)との連携を強化し、有効な外交手段として、一層戦略性を高め効率的・効果的な援助を実施していくべきである。

 二 会計検査院が検査報告で指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。

   政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講じるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。

 三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。

  政府は、今後予算の作成及び執行に当たっては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、行財政改革を強力に推進し、財政運営の健全化、行政の活性化・効率化を図るとともに、政策評価等の実施を通じた効果的かつ効率的な行政を推進し、もって国民の信託にこたえるべきである。

以上が、議決案の内容であります。

    ―――――――――――――

細川委員長 これより平成十五年度決算外二件を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決を行います。

 まず、平成十五年度一般会計歳入歳出決算、平成十五年度特別会計歳入歳出決算、平成十五年度国税収納金整理資金受払計算書及び平成十五年度政府関係機関決算書は、これを議決案のとおり議決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

細川委員長 起立多数。よって、議決案のとおり議決すべきものと決定いたしました。

 次に、平成十五年度国有財産増減及び現在額総計算書、平成十五年度国有財産無償貸付状況総計算書の両件は、これを是認すべきものと決定するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

細川委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決定いたしました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

細川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

細川委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 ただいま御決議のありました財政再建につきましては、まずは当面の財政健全化目標である二〇一〇年代初頭における基礎的財政収支の黒字化の達成に向け努力を重ねているところでありますが、御決議の趣旨を踏まえ、今後とも歳入歳出両面からバランスのとれた財政構造改革を進めてまいる所存であります。

 また、特別会計の見直しにつきましては、事務事業の見直し等の視点から着実な改革を進めてきているところでありますが、御決議の趣旨を踏まえ、今後とも一層努力してまいりたいと存じます。

細川委員長 次に、尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 厚生労働省といたしましては、御指摘の少子化対策につき、昨年十二月に策定した子ども・子育て応援プランに基づき、本年度から五年間、各種子育て支援等に計画的に取り組み、施策の充実を図ることとしているところであります。

 また、地方公共団体と企業では、次世代育成支援対策推進法に基づき行動計画を策定し具体的な取り組みを推進することとされているところであり、今後とも、ただいまの御議決の趣旨を踏まえ、プランや計画に掲げられた各種の施策の着実な実施を図ってまいります。

 また、介護保険制度につきましても、ただいまの御議決の趣旨を踏まえ、持続可能な制度の構築に向け、公民館の改修などによる介護予防拠点の整備を進めるとともに、適切な介護予防サービスの推進、普及を図ってまいります。

細川委員長 次に、北側国土交通大臣。

北側国務大臣 ただいま御決議のありました建物の耐震化、津波軽減対策等の推進につきましては、対策の総点検と新たな施策の検討を行い、可能なものから実施をしているところでございます。

 御決議の趣旨を踏まえ、今後とも、防災、減災の観点から、地震防災対策を強力に進め、地震に強い国土づくりを推進してまいる所存でございます。

 また、鉄道事業の安全対策につきましては、今回の事故を踏まえ、緊急的な対策として、急曲線に進入する際の速度超過防止用ATSの緊急整備を全国の鉄道事業者に指示するとともに、運転士の教育等のあり方につきまして検討を進めているところでございます。

 御決議の趣旨を踏まえ、今後とも、鉄道に関する安全行政について検証し、鉄道に対する国民の信頼回復に全力を尽くしてまいる所存でございます。

細川委員長 次に、村田国務大臣。

村田国務大臣 ただいま御決議のありました大規模地震対策につきましては、建物の耐震化や津波避難意識の向上等による津波軽減対策等により、人的被害、経済被害の軽減に向け、重点的かつ戦略的に取り組んでまいります。

 また、救命ライフラインについてでありますが、これは機能停止したときに人命にかかわるライフラインであると承知しているところであり、その機能の確保は極めて重要であると認識しています。

 また、大規模地震発生時には多数の死傷者が発生するおそれがあり、特に、人口の集積している首都地域では、先般公表した中央防災会議首都直下地震対策専門調査会の被害想定によれば、最大で約二十二万人もの死傷者が発生すると想定されています。

 このため、現在、専門調査会において、人命にかかわる重要施設に対して、人命を損なわないように、電力系統の多重化、自家発電装置や防災水槽の整備など、救命ライフラインの確保という観点からも議論が進められているところでございます。

 今後は、専門調査会で取りまとめられる報告も踏まえ、救命ライフラインの確保を含め、消防力の充実、救助部隊の強化、医療体制の充実など、救助、救命について総合的な地震対策を推進してまいる所存であります。

 次に、積極的、効果的な犯罪防止対策の推進につきましては、不法滞在者の取り締まりを積極的に推進するとともに、警察官の増員や国際捜査体制の強化等に取り組むよう、警察庁を督励してまいる所存であります。

細川委員長 次に、南野法務大臣。

南野国務大臣 法務省といたしましては、御決議の趣旨を踏まえ、不法滞在者の取り締まりの強化につきましては、平成十五年十二月に犯罪に強い社会の実現のための行動計画において決定されました不法滞在者半減の実現に向けて、種々の施策を講じているところでございますが、今後とも、安全、安心な社会を実現するため、これに努力してまいります。

 また、治安関係職員の増員及び国際捜査の体制整備につきましても、引き続き、人的、物的体制の整備に努め、外国人犯罪を含めた各種犯罪に対し迅速かつ適正に対処してまいる所存であります。

細川委員長 次に、中山文部科学大臣。

中山国務大臣 ただいま御決議のありました学校の安全確保のための施策につきましては、学校安全の充実にハード、ソフトの両面から総合的に取り組む子供安心プロジェクト等を推進し、危機管理マニュアルの作成や地域ぐるみでの学校の安全体制の整備の支援、学校安全のための施設整備の支援など、各学校における安全対策の支援を行っているところでございます。

 今後とも、御決議の趣旨を踏まえ、各学校において安全管理に関するさらなる取り組みが行われるよう、学校安全に関する施策の一層の推進を図ってまいる所存でございます。

細川委員長 次に、小池環境大臣。

小池国務大臣 ただいま御決議にありました地球温暖化対策の推進につきましては、京都議定書の六%削減約束を確実に達成し、加えて、地球規模でのさらなる長期的、継続的な排出削減を目指すため、本年四月二十八日に閣議決定した京都議定書目標達成計画に盛り込まれた対策、施策の実行に全力で取り組んでまいる所存であります。

細川委員長 次に、町村外務大臣から発言を求めるのでありますが、出張中で本日は欠席とのことでありますので、理事会の協議により、今回は特に逢沢外務副大臣に発言を許します。逢沢外務副大臣。

逢沢副大臣 ただいまの政府開発援助、ODAのあり方についての御決議につきましては、その趣旨を踏まえ、今後とも一層戦略性を高めることに努め、効率的、効果的な援助を実施すべく努力をしてまいる所存でございます。

細川委員長 以上をもちまして各国務大臣からの発言は終わりました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 本日をもちまして平成十五年度決算外二件の審査はすべて終了いたしました。委員各位の御協力に深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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