衆議院

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第4号 平成19年5月25日(金曜日)

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平成十九年五月二十五日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 仙谷 由人君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北村 誠吾君

   理事 柴山 昌彦君 理事 渡海紀三朗君

   理事 平田 耕一君 理事 古川 元久君

   理事 松本 大輔君 理事 古屋 範子君

      赤池 誠章君    浮島 敏男君

      江藤  拓君    佐田玄一郎君

      坂井  学君    桜井 郁三君

      杉田 元司君    杉村 太蔵君

      鈴木 馨祐君    玉沢徳一郎君

      とかしきなおみ君    冨岡  勉君

      西本 勝子君    広津 素子君

      福岡 資麿君    藤井 勇治君

      古屋 圭司君    保坂  武君

      茂木 敏充君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    赤松 広隆君

      岩國 哲人君    枝野 幸男君

      金田 誠一君    吉良 州司君

      玄葉光一郎君    小宮山泰子君

      武正 公一君    鉢呂 吉雄君

      松本  龍君    遠藤 乙彦君

      鈴木 宗男君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務副大臣        浅野 勝人君

   財務副大臣        田中 和徳君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   会計検査院事務総局第三局長            高山 丈二君

   会計検査院事務総局第五局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  勝則君

   政府参考人

   (国家公務員倫理審査会事務局長)         大村 賢三君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局次長)            阪本 和道君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  石田 直裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    原田 親仁君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    丹呉 泰健君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    篠原 尚之君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       西山 正徳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮坂  亘君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (社会保険庁社会保険業務センター所長)      皆川 尚史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (林野庁長官)      辻  健治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           稲垣 嘉彦君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松井 哲夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        藤田 伊織君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 谷津龍太郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   西川 善文君

   参考人

   (独立行政法人国立病院機構副理事長)       河村 博江君

   参考人

   (独立行政法人労働者健康福祉機構理事)      坂本 哲也君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  玉沢徳一郎君     とかしきなおみ君

  金田 誠一君     枝野 幸男君

  武正 公一君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   杉田 元司君

  枝野 幸男君     金田 誠一君

  小宮山泰子君     武正 公一君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     玉沢徳一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書


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     ――――◇―――――

仙谷委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度決算外二件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本郵政公社総裁西川善文君、独立行政法人国立病院機構副理事長河村博江君及び独立行政法人労働者健康福祉機構理事坂本哲也君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

仙谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官原勝則君、国家公務員倫理審査会事務局長大村賢三君、総務省人事・恩給局次長阪本和道君、総務省行政管理局長石田直裕君、外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、外務省大臣官房審議官佐渡島志郎君、外務省大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省欧州局長原田親仁君、外務省領事局長谷崎泰明君、財務省主計局次長鈴木正規君、財務省理財局長丹呉泰健君、財務省国際局長篠原尚之君、文部科学省研究振興局長徳永保君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮島俊彦君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官西山正徳君、厚生労働省大臣官房審議官宮坂亘君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、厚生労働省保険局長水田邦雄君、厚生労働省政策統括官薄井康紀君、社会保険庁社会保険業務センター所長皆川尚史君、農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、農林水産省総合食料局長岡島正明君、林野庁長官辻健治君、経済産業省大臣官房審議官稲垣嘉彦君、中小企業庁経営支援部長松井哲夫君、国土交通省大臣官房官庁営繕部長藤田伊織君、国土交通省住宅局長榊正剛君、環境省大臣官房審議官谷津龍太郎君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛省防衛政策局次長金澤博範君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君及び防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

仙谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

仙谷委員長 これより、各件に関し、国の財政等の概況について重点事項審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広津素子君。

広津委員 最初に、我が国の財政状況、収支の状況の開示について御質問します。

 実は昨年も似たような御質問をいたしましたが、その進捗状況をお尋ねする次第です。

 資料の表紙の次のページをごらんください。

 我が国は、最新の貸借対照表である平成十六年度の貸借対照表によれば、平成十七年三月三十一日現在、九百七十六兆円の負債があります。しかしながら、負債のみを認識して、国民一人当たりの負債が大きいというようなミスリードをしてはいけないと思います。

 その理由は、我が国には、負債と同時に、同じ平成十七年三月三十一日現在で七百兆円の資産があり、その結果、純債務は二百七十六兆円だからです。資産といっても売れないものもありますので考えることは必要なんですが、負債全部が全部借金ということでもないということです。

 このように、公会計による財務書類が整備されていると、国の財政状態について、国民やその代表である国会議員に適時の開示を行うことができ、過度の不安や楽観をしなくて済むわけですが、現在、公会計による財務書類の整備についての進捗状況がどうなっているのか、お伺いします。

尾身国務大臣 財務省といたしましては、国の財政状況を国民にわかりやすく説明するとともに、財政活動の効率化、適正化に資する財務情報を提供するために、企業会計の考え方を活用した公会計の整備を進めてきているところであります。

 具体的に言いますと、まず、十年度の決算分から国の貸借対照表を作成いたしましてストックの財務状況を開示してきたところでありますが、さらに、財政制度等審議会におきましても公会計整備の方向性について検討が行われ、平成十五年の六月に「公会計に関する基本的考え方」が取りまとめられました。

 その後、この基本的な考え方で示された方向に沿いまして、平成十四年度決算分から省庁別の財務書類を作成、公表し、さらに、十五年度決算分から国全体のストックとフローの財務状況を開示する国の財務書類を作成、公表してきたところでありまして、こうした取り組みによりまして、国の会計に関する財務書類が一通りは出そろったところでございます。

広津委員 はい、わかりました。

 次に、我が国における公会計情報の公表の早期化について御質問いたします。

 我が国においては、平成十九年五月二十五日、きょう現在において利用できる直近の財務諸表が平成十六年度のものであり、二年以上前の会計情報です。これは、民間企業が決算を三カ月程度の短期間で終了して、財政状態、経営成績、収支状況などを投資家に開示しているのと比較しますと、かなり遅いと言わざるを得ません。

 ちなみに、同じ国であるニュージーランドは、平成十七年七月一日から平成十八年六月三十日の有価証券報告書を平成十八年十二月二十一日にEDINETというホームページで公表しており、決算に要する期間は六カ月となっております。

 我が国でも、迅速に現在の財政状態、収支の状況を広く国民に開示できるようにして、決算の結果と行政評価の結果を次年度の予算を審議する際に参考にできるよう、公表時期を早めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 現在の財務書類は、現金ベースの歳入歳出決算等の計数を事後的に加工して作成しているわけでありますから、その作成、公表までには相当の期間を要しておりまして、省庁別の財務書類の公表が次の年度の末ごろ、また国の財務書類の公表も、省庁別財務書類を公表してからさらに五カ月後ということに現在なっております。

 財務書類の一層の活用を図るためには、その作成、それから公表を早めるということが大変重要であると私ども考えておりまして、こうした観点から、新たなシステムの導入についても検討を進めてまいりたいと考えております。

広津委員 現在、人の手作業で集計しているということで、大変まだまだということなんですが、コンピューターによる会計システムというのはどこの会社でも入っていることでもありますし、一番高いのは人件費なので、コンピューターによる会計システムの整備など、必要なことは早急に行って、一般企業並みもしくはニュージーランド並みの迅速さで我が国の財政状況、収支状況の開示が行われることを期待いたしております。

 次に、我が国の負債をより少なくする方法について御質問いたします。

 既にある国の負債をできるだけ小さくする方法の一つに、インフレを起こして負債の価値を減らす方法や消費税を上げて税収をふやすという方法もあります。しかしながら、そういう方法をとりますと、働く場がないために蓄えを切り崩して生活している人や少額の年金で生活している人などの弱者に負担がかかり、その人たちが生活できないということになります。そのため、インフレ政策や消費税の安易な引き上げ政策をとるのではなく、まず売却できる国有財産をなるべく高い値段で売却して、売却益を出して国民に負担をなるべくかけないという方法をとっていきたいと思います。

 この点につきまして、昨年の質問のときに谷垣財務大臣は、未利用国有地など売却可能な国有財産は、原則、一般入札で最も高い価格で申し込んだ人に売却すると述べられています。

 場所によりましては計画的に売らなければならないところもあるので、それだけではないとは思いますけれども、資料の最後のページをごらんください。

 ちょうど先日、財務金融委員会で民主党の古本委員の御指摘がありましたように、市谷の防衛省近くの国有地を一部売却して、三十八階建てのマンションが建つような売り方、これは適切でないかもしれないと思いますが、適切でない売り方があるから国有地の売却そのものがよくないということにはならないと思います。なぜ適切でないかといいますと、三十八階建てのマンションから防衛省が丸見えということで、それでいいのかと。余りにも平和ぼけしているんじゃないか、そういうようなことは考えられます。

 しかし、例えば、現在は人工衛星から一メートルの精度でどこに何があるかを判別できる時代ですので、防衛省がこの市谷という都心の真ん中の地上にあることが必要で、また適切かどうかも考え直した方がいいのではないかと思います。また、都心にこれだけのまとまった土地があれば、民間が再開発をして他の用途に使えばかなりの付加価値がつくであろうとも思われますが、いかがでしょうか。例えば防衛省は郊外に引っ越して必要な重要な施設というのは地下に置くとか、そういうようなことが現代では考えられるのではないかと。この市谷に防衛省を持ってきたときというのはかなり昔で、なおかつ市谷が田舎だった時代だったと思います。

 ということで、また、国有財産のうち売却可能なものにはどういうものがあり、現在どういう方針でいらっしゃるのかもあわせて教えてください。

大古政府参考人 まず、防衛省の方から市谷に防衛省の中枢部がある理由についてお答えさせていただきます。

 防衛省の本庁につきましては、御案内のとおり、従来六本木におりましたけれども、その地区の商業地化が著しく進んだということから、当時市谷にございました東方総監部とか普通科連隊とかを朝霞とかそういう駐屯地へ移しまして、そこに平成十二年に防衛省が移転してきたものでございます。

 先ほど防衛中枢ということを申しましたけれども、具体的には内局、それから陸海空の各幕僚監部、それから防衛施設庁、それから装備本部、技術研究本部、情報本部というふうにございますけれども、これらの組織につきましては、官邸、他の中央官庁、それから国会から離れた場所に置きますと、日常の行政事務等に支障が及ぶというふうに考えております。

 それから、大規模災害等がございましたときに、防衛省として緊密な連携に支障が生じます。各省との調整とか、いろいろございます。そういう意味で迅速的確な対応もできなくなるというふうに考えているところでございまして、このような観点から、現在の市谷地区に引き続き防衛省の中枢部が所在することが必要であるというふうに考えているところでございます。

広津委員 平成十二年度に移転したということであれば、事前に質問通告しておりますので、そのように言ってくれればよかったなというふうにまず思いますのと、あと本当に、事務の連絡というのは合同庁舎に入ればいいのではないかなと、その他の部分はこんな町の真ん中にこんな広い面積をとっている必要があるかなというのは素直に思っております。

 次に、国有財産である有形固定資産の状況について御質問します。

 まず、有形固定資産の売却についてですが、国が使っていない財産、遊休資産は賢いやり方でなるべく高い価格で売却するのがよいと思いますし、未利用となっている国有地の売却についても何らかの取り組みを進めるべきだと思います。そこで、国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律ができていますが、それによりどのような具体策が講じられてきたのか、教えていただければ幸いです。

丹呉政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生がおっしゃられたとおり、現下の厳しい財政状況を考えれば、売却可能な国有財産をできる限り売却して財政健全化に役立てるのは重要な課題と思っております。

 そこで、売却可能な未利用の国有地につきまして、できるだけ資産価値を高め速やかに売却すべきとの御指摘はおっしゃるとおりでございます。そのため、先生今御指摘の国有財産の改正法が平成十八年四月二十八日から施行されておりますが、その中で、例えば隣接の地主との土地の交換により売却対象の国有地の道路へのアクセス条件を改善する、あるいは国有地を貸し付けている場合、借地人の借地権の一部と底地権である所有権とを交換いたしまして、売却すべき国有財産の上にある借地権を消滅させて完全に所有権化して売却するといったような取り組みによりまして、処分困難でございました未利用国有地の資産の向上、また売却促進を図っているところでございまして、法律施行後、平成十八年度に十三件の実績を上げております。

 このほか、入札参加者の利便性を向上させるために、電子入札の導入、あるいは財務省のホームページにおきまして売却可能な未利用国有地に対する情報をタイムリーに提供するなど、未利用国有地の売却促進に取り組んでいるところでございます。

 こうしたような取り組みも一因といたしまして、平成十八年度予算では千八百十六億円の売却収入を見込んでおりましたが、それは達成できる見込みでございまして、さらに十九年度におきましては二千百六十五億円の国有財産の売却収入を見込んでいるところでございます。

広津委員 どうもありがとうございました。何か進んでいるような感じがいたしましたけれども、ちょっと数字を羅列されたのでよくわかりませんけれども、多分進んでいるんだろうと思います。

 次に、国有の有形固定資産使用の効率化についてですが、庁舎や土地に空きスペースがある場合や容積率に満たない建物が建っている場合、現在、どのように対応される方針でしょうか、教えてください。

丹呉政府参考人 お答えいたします。

 庁舎等の空きスペースの問題につきましては、まずは庁舎等の使用状況を監査いたしまして、余剰と認められる面積があった場合には、省庁横断的な調整を行いまして、他の省庁を入居させるというようなことをしております。それでもなお余剰がある場合には、売却あるいは民間への貸し付けを行って、有効活用を図ることとしております。

 それから、土地の経済的な有効活用を図る観点から、おっしゃいましたように、法定容積率に対する利用が低い庁舎、宿舎につきましては、廃止、集約化をして余剰地を捻出して、積極的に有効売却活用を進めております。

 具体的には、例えば、二十三区内の宿舎につきましては、法定容積率の利用割合が五〇%未満の宿舎については、老朽あるいは狭隘な宿舎とともに廃止、建てかえをするという方針を昨年六月に取りまとめ、移転・再配置計画を現在実施しているところでございます。

 それから、庁舎につきましては、現在、財務省に有識者会議を設けて検討しておりますけれども、やはりできるだけ、土地の有効活用の面から庁舎を高層化して、あわせて他の省庁も入居勧奨をさせて、できる限り余剰地を出し、そこで余剰地を売却するというようなことを行っておりまして、庁舎の移転・再配置計画が近々取りまとめられる予定でございます。

 財務省としては、御指摘のように、できるだけ庁舎や国有地についても有効活用に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

広津委員 詳しい御説明、どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 また、庁舎の新設に当たりましては、容積率の無駄をなくし、かつ建物の効率的な使用を行い、余った土地は再開発して別の用途に使用するというような目的から、単独庁舎ではなく合同庁舎化を積極的に推進していらっしゃるとのことで、納得いたしました。

 次に、国有の有形固定資産の耐震化についてでございますが、庁舎等の耐震化につきましては、阪神・淡路大震災から既に十年たっております。いまだ耐震化に取り組んでいない庁舎も多いと思われますが、現在、どういう取り組みをしていらっしゃるのか、教えてください。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 官庁施設の耐震対策につきましては、従来から何とか取り組んでまいっているところでございますけれども、先生御指摘のとおり、いまだに耐震化されていない庁舎が数多くあることも事実でございます。

 そこで、昨年八月二十五日に官庁施設の耐震診断結果の公表を行い、取り組みを強化することといたしました。昨年の公表におきましては、災害応急対策活動に必要な官庁施設、それから危険物を貯蔵、使用する等の官庁施設で、ある程度規模の大きいということを考えまして、三階建て以上、それから延べ面積が千平方メートル以上の三百九十三棟につきまして診断を行った結果を公表いたしました。

 その結果を申し上げますと、官庁施設の耐震性の基準を満足する施設は二百十七棟、五五%で、満足しない施設が百七十六棟、四四%という現状でございました。

 今後のことでございますけれども、耐震改修の実施に当たりましては、官庁施設の耐震性の基準を満足しない施設のうち、特に耐震性が低い合同庁舎とか気象台とか警察関係施設につきまして耐震化を進めることといたしまして、その発表後、平成十八年度の補正予算におきましては、約二百億円、四十六施設分の予算をいただきまして、また平成十九年度、今年度の予算におきましては、前年度三割増しの六十億円、十二施設分の耐震改修費を計上させていただいたところでありまして、今後も官庁営繕の重要課題として、官庁施設の耐震化を積極的、計画的に進めてまいる所存でございます。

 以上でございます。

広津委員 よくわかりました。官庁だけでなく、その他のビルの耐震化も進んでいくといいなというふうに思っております。

 最後に、我が国の有価証券、出資金につきまして御質問いたします。

 有価証券、出資金は、例えば郵政公社やJR、NTTなどのように、経営主体が国である組織を民営化すると、創業者利益を得て現金化できるものも多いと思います。現在、具体的にどのような考え方で取り組んでいらっしゃるのか、教えてください。

丹呉政府参考人 お答えいたします。

 民営化法人の株式の売却等の基本的考え方につきましては、本年三月二十七日の経済財政諮問会議におきまして、尾身大臣から、行革推進法に基づきまして、国の資産・債務に関する工程表を報告したところでございます。その工程表におきまして、日本郵政株式会社など民営化法人の株式につきましては、政府保有分を除きまして売却を進めることとしておりまして、十六年度決算ベースでは約八・四兆円の売却収入を見込んでいるところでございます。

 政府といたしましては、今後、日本郵政など民営化された法人及び民営化が予定されている法人の株式については、売却準備が整い次第、順次売却することとしております。売却価格につきましては、売却時の法人の財務状況、あるいは投資家の評価等、株式市場の状況等もございますので一概に申し上げられませんが、政府といたしましては、いずれにいたしましても、国の資産・債務に関する工程表に基づきまして、民営化法人の株式の売却を着実に進めてまいりたいと考えております。

広津委員 丁寧なお答え、本当にありがとうございました。

 これで私の御質問を終わります。どうもありがとうございました。

仙谷委員長 次に、安井潤一郎君。

安井委員 おはようございます。自由民主党の安井潤一郎であります。

 先月、四月四日の地元の早稲田商店会の総会で、丸十四年、足かけ十五年務めさせていただいた地元零細小売業の集まり、商店会の会長職を退任させていただきました。

 一昨年九月の総選挙で国会議員にさせていただくまで、その前五年間、七百カ所、全国の商店街、商工会、商工会議所の視察、見学をさせていただくという機会を持ちました。いわば私にとっては大変な財産。この全国のお仲間から、今いろいろな声が寄せられております。その声をもとに本日は質問をさせていただきたいと思います。

 商店会の活動は、現在、物を売ったりサービスを提供することだけではなくなりました。消費者、生活者、いわば地域の住民の安全、安心を担保することも商店会の大きな活動だということになっております。このような地域活動、まちづくり活動を行っていない組織に入れというのはいかがなものかとは思いますが、そういう活動を活発に行っている、具体的に言うと、東京都の世田谷区の商店街のように、世田谷区と一緒に条例をつくった、その地域のような、そのような活動のところに、なかなか大手の量販店、チェーン店が加入されない。このようなまちづくり活動が商店街の動きの中に位置しているということを、中小企業庁は、もしこの活動が必要であるとお認めいただけるならば、加入促進について国としてはどういうような方策をしていただけるのか、お聞かせいただきたいと思います。

松井政府参考人 今、委員御指摘がございましたように、商店街は、その地域の多くの人が集まります地域コミュニティーの核として大変重要な役割を果たしているわけでございます。商店街に来られる方々や地域住民の方々にとって安全で安心な商店街を実現するために、商店街組合等がいろいろな立派な取り組みをしておられるということは我々としても認識をいたしているところでございまして、そういった活動をより活性化していくことは大変意義があることだと認識をいたしております。

 また、そうしたことにつきまして、取り組んでいないところももちろんあるわけでございますけれども、かなりそういった形のところ、取り組んでおりますところにつきましては、我々としてもまちづくりの重要な担い手ということで考えておりますので、そういったところにチェーン店や量販店等、そうした活動に参画されないでいるということは必ずしも望ましいことではないというふうに考えておりますが、そういう意味で、そうした立派な活動をしておられるところにつきまして、自主的にいろいろな形で積極的に関与していくということが我々としても重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 そうしたことに関連しましては、昨年の六月以降、日本チェーンストア協会を初めといたします小売りの業界団体におきまして、まちづくりへの貢献に関しますガイドラインというのを策定いたしたところでございまして、自主的な取り組みということも進みつつあるわけでございますので、我々としても、そうした自主的な取り組みが進んでいくように引き続き促してまいりたいというふうに考えているところでございます。

安井委員 商店街の地域にありますアーケードだとかカラー舗装、商店街地域にあるすべてとも言ってもいい街路灯、この電気代を実は我々商店街が支払っているということをなかなか御存じない。ぜひこのあたりのところもお知らせいただきたい。そして、大きいところ、いわばナショナルチェーン、全国展開のチェーンに地元の零細小売業の集まりが幾らお話をしてもなかなかその声が通らない。ぜひ行政のお力添えをいただきたいと思っております。

 安全、安心を担保するということになれば、当然のように、今切迫しているとまで言われている首都圏直下型地震であります。

 先般、私ども自民党も応援をさせていただいた東京都知事選、石原知事は、当選の次の日に、基礎的自治体、いわば神戸市がもっと動きがよければあと二千人助けられた、そういう御発言をされました。一九九五年一月の十七日、朝五時四十六分に発災したあの阪神・淡路の大震災、犠牲になられた方は六千四百人、そのうちの五千八百人が五時四十六分から六時までの間、いわば即死の状況であります。五千八百人のうちの八割が圧迫死、圧死、窒息死、そして一二%が焼け死んだと言われております。いわば即死の状況の九〇%以上が、家が人を殺したんだということであります。

 大変圧勝したその知事の情報、どのような情報が入ったのか、ちょっといかがなものかと思うんですが、私どもは、この安全、安心ということでいえば、震災対策、防災の取り組みを、優先順位のトップは間違いなく耐震補強工事であると思っております。

 耐震補強工事が進まない理由は三つ。まず、どこに頼んでいいかがわからない。二つ目が、幾らかかるかわからない。三つ目が、その工事の間、自分の生活がどんなふうに圧迫をされるのかがわからない。いわゆる悪徳リフォーム業者と町場の大工、工務店さんの区別がつかないというところであります。いわば悪徳リフォーム業者ではない町場の大工、工務店さんに、この町で生まれ育ち、この町で商売をさせていただいている我々商店街がその信用を付与することで、耐震補強工事が進むと考えております。

 商店街、地域NPOがベースになった耐震補強推進協議会の開設や活動の周知、啓蒙、徹底について国のサポートが必要だと思いますが、中小企業庁としての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答えいたします。

 地域コミュニティーの場といたしまして多くの人が来街します商店街というのは、震災対策に地域の人々と一体となって取り組むということが、商店街の活性化の観点からしましても大変重要でございますし、安全、安心という観点からしましても大変重要であるというふうに認識をいたしております。

 また、そういったことへの取り組みというのは、もちろんその商店街の置かれた状況によっていろいろ取り組みがあろうかと思いますけれども、私ども経済産業省といたしましては、商店街組合等が、今先生がおっしゃったような形でいろいろな取り組み、震災対策の周知啓発などソフト的な事業も含めまして取り組むような場合につきまして、少子高齢化等対応中小商業活性化補助金などによりまして支援をしてまいりたいと考えております。

安井委員 国会議員にさせていただく前、五年間で全国七百カ所の商店街、商工会、商工会議所を視察、見学させていただいたと申し上げましたが、各地域に行くと必ず言われるのが、畑のど真ん中に大手量販店がどかんと山ほど金かけてでっかいものをつくってくれた、おかげで駅の前はがたがただ、こういうふうによく言われます。果たしてそうなのか。その畑のど真ん中に今まで雇用の場はなかったのか。そこに給料が出ているんだとしたら、なぜ、その給料を自分の店に持ってくる、引っ張り込んでくるという気概を町場の商人はなくしてしまったんだ、こういう話をよく仲間内の中でさせていただきます。ただ、残念ながら、我々町場の零細小売業は、自分の業態を変えるパワーがなくなってしまいました。

 もちろん、大手量販店に売ってあるものと同じものを置いていれば、お客様はこちらには来ません。うちはねという、いわば新しい業態、新しい商品を販売する、その新業態の開発、いわば新しい地域ブランドの商品化というのが大切だと思うんですが、町場の零細小売業者が過疎の地域の特産品、安全、安心のすばらしい品を仕入れようとしてもスケールメリットを受けられない。過疎の産地にとっては配送費、物流費がいかにも重荷になっております。過疎の町や村との連携を進めていくためには配送費、物流費のサポートが一番効果が出やすいということは、今までの活動の中で明確になってまいりました。

 オンリーワンをつくれ、よくそういうふうに御指導いただくんですが、オンリーワンをつくることにもなる地域との連携、その一番の障害になる物流費について、中小企業庁のお考えをお聞かせいただきたい思います。

松井政府参考人 お答えいたします。

 過疎地域を含めまして地域経済の活性化を図る、そうしたものを手法といたしまして、私どもとしましては、別途、地域資源活用法ということを提案させていただきまして、先般成立したところでございますけれども、そうした、過疎地域といいますか、地域の経済の側の努力というのももちろん必要でございますけれども、そうしたものと、消費者といいますか、商店街とを結びつける取り組みということもまた非常に重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 とりわけ、今おっしゃられたように、過疎地域を含めましてさまざまな地域と商店街が連携をして、全国にありますそういったすばらしい地域資源を消費者の方に提供するという取り組みは、商店街の活性化という点と特産品側の方の地域経済の活性化という観点から大変重要な取り組みであろうというふうに考えているところでございます。

 それにつきまして、物流の問題ということが大変大きな問題であるということは今委員が御指摘いたされたとおりでございますけれども、これについて、個店としての取り組みについて個別に取り組むというのはなかなか難しいとは思いますけれども、私どもといたしましては、商店街が地域の中小企業と連携をいたしまして、例えば、空き店舗にアンテナショップを設置する取り組みなどを行うような場合に、そういったような場合のその家賃とか運送費などにつきまして、先ほど申し上げました少子高齢化等対応中小商業活性化補助金という制度がございますので、こういったものにおいて支援をするということも一つの方策ではないか、こういうふうに考えている次第でございます。

安井委員 安倍内閣の重要な方策の中に、地域商業の活性化というのが位置されております。空き店舗対策、空き店舗対策とよく言われるんですが、空き店舗の対策というのは、あいた店舗の対策ではなくて、空き店舗にしない対策というのが現実だというふうに我々は思っております。

 空き店舗対策の中の一つとしてアンテナショップ事業、今般、私の地元にあります早稲田の商店会ではアンテナショップ事業を始めようとしております。各地との連携ということなんですが、あの楽天、今TBSと問題になっている楽天、ここはインターネット上に仮想商店街を構築した。ここの一番の長所は、店が要らない。ただ、一番の弱点は、店がない。それでしたら、我々商店会は店がある。有店舗による無店舗販売をテーマにしたアンテナショップ事業、いわばお取り寄せ、このようなことを始めようとしております。各地域との連携の中からお取り寄せ事業、空き店舗対策、産地と消費地との交流、そして障害者の就労の場をつくる、高齢者のコミュニティーの場づくり、また子育て支援サークルの拠点づくり、地域情報の発信基地等々が目的となっております。

 この地域商店会、NPOとの連携活動など現場の動きをごらんいただき、政策立案の御参考にしていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

松井政府参考人 お答えいたします。

 今委員が御指摘になられたように、商店街の側とバーチャルなものとの連携ということは、一つの有効な取り組みではないかというふうに考えている次第でございます。

安井委員 ありがとうございます。

 今申し上げました空き店舗対策というのは、あいた店舗の対策ではなくて空き店舗にしないための対策だということなんですが、このあいた店舗の件について一点お聞かせをいただきたいんです。

 私どもの商店街の中に、いわゆるシャッター街、シャッターを閉めて、もう商売はやめた、もう自分の代でやめたんだ、人に貸すのも面倒だというふうにして、いわば人に貸さない商店があります。集合力、総合力が商店街の大きな力であったはずなのに、シャッターを閉めて、もう人に貸さない、もうおれの代でいいんだ、やめるんだというような、そういうところに対しては更地並みの課税をしてもらいたいというのが、全国から要望として来ております。そのかわり、二階に住んで、一階の部分を人様に貸すなり、また工場等々でやるなりしたら、固定資産税の軽減というのも考えてもらえないだろうかと。全国のお仲間から、ここで生まれ育って、ここで住んで、ここで商売をして、ここで育ててもらった者が、もう自分の代で商売はいいんだというならば、もう地域から出ていけ、ここはいわば町場のお客様の、消費者の安全、安心を担保できる場なんだということであれば、当然の話なのかなというふうに思います。

 固定資産税の軽減等々ということになれば総務省ということもわかっておりますが、我々商店街、これを監督されているのは中小企業庁でございますので、中小企業庁としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答えいたします。

 商店街の活性化を図る際に、先生御指摘のように空き店舗対策に取り組むということが非常に大事でございまして、まさにその点が、各地において非常に頭を悩ませながら取り組んでいるところではないかというふうに考えているところでございます。

 そういう際に、店舗オーナーあるいは地権者など幅広い関係者の協力が大変大事でございまして、そのための、そういった方々との一体感の醸成、あるいは意識のすり合わせということが大変重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 例えば、御存じのように、改正いたされた中心市街地活性化法におきましては、中心市街地活性化協議会におきまして、地権者を巻き込んだ空き店舗対策などのコンセンサス形成などを促す仕組みというものが整えられたところでございます。そうしたものも活用しながら、空き店舗関連の地権者などを巻き込んだ取り組みということが進んでいくことを期待いたしているところでございます。

 今委員御指摘がございました、そういった場合の空き店舗になるところについての課税、更地並み課税といいますか課税の引き上げであるとか、あるいは逆に減免をする、反対に、取り組むところには減免する、こういったようなことにつきましては、基本的には、固定資産税の問題ということで、市町村において判断をされるべきものと考えております。

 そういう場合、一般論といたしますと、減免につきましては、一方的な税収減になりますことから、市町村においての政策判断としてはなかなか踏み切れないというのも一方で実情でございますし、引き上げについては、実施に当たって、その効果についてどういうふうなものがあるかということが検討されることも重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 いずれにしましても、市町村におきまして、地域ぐるみでのどういう取り組みが一番いいのかということについてのコンセンサス形成がまず第一ではないかというふうに考えている次第でございます。私どもといたしましては、そうしたことにつきまして、コンセンサス形成がやりやすいような支援であるとか、あるいは、空き店舗対策についての商店街全体としての取り組みについてさまざまな支援策を駆使しまして、活力向上ということに力を入れてまいりたいと考えている次第でございます。

安井委員 どうもありがとうございました。

 実は、昨日、全国商店街振興組合連合会、全振連の第三十九回の総会が開催され、日本じゅうから商店街のお仲間、いわば県商連の理事長さんたちがお見えになりました。皆さん異口同音に、我々の活動は物を売ったり買ったりサービスを提供したりするだけではない、まちづくりなんだということを申されております。その発言を皆様にお伝え申し上げまして、私の質問を終わりにさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

仙谷委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 本日は、お忙しい日銀総裁にも御出席いただきまして、心より感謝しております。

 まず財務省にお伺いいたしますけれども、日本政府が円安介入を始めた時期はいつだったのか、今日に至るまで円売りの累積総額は幾らなのか、その二つをお答えいただけませんでしょうか。局長からの御答弁でも結構ですが。

篠原政府参考人 お答え申し上げます。

 為替介入の総額でございますけれども、一九九八年からの介入の総額でございますが、円売り・ドル買いの介入が五十二兆二千二百二十三億円、ドル売りの円買い介入が三兆四百七十億円、それから円売り・ユーロ買い介入というのをやっておりまして、これが一兆七百五十三億円でございます。

岩國委員 こうした巨額な円売り介入を行ったわけですけれども、これに匹敵するほどの自国の通貨の売りという形で介入した先進国の例はほかにございますか、尾身大臣。

篠原政府参考人 お答え申し上げます。

 すべての国についてつぶさに数字を持っているわけではございませんが、先進国に関しましてこれだけの規模の介入を行ったという例は、私ども承知しておりません。

 ただ、途上国、例えば中国でございますと、御承知のように、最近、非常に巨額の介入をしているということでございます。

岩國委員 私が調べた範囲でも、G8のメンバーである先進国の中でこれだけの巨額の円売り介入をやった例はないのではないかと思います。

 その結果として、円は今百二十円で推移しておりますけれども、この円売りがなぜ中止されたのか、他国からのどういう批判があったのか、その批判に配慮した結果として円売り介入はとまったのか、これは尾身大臣からお答えいただきたいと思います。

尾身国務大臣 私どもとしては、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映すべきであり、その具体的な水準は基本的には市場にゆだねるべきであるという基本的な考え方のもとに為替政策を行っているところであります。

 過去において為替介入を実施したケースが先ほどのお返事のとおりございますが、これは、市場に過度の変動や無秩序な動きがあり、経済活動に大きな悪影響がある場合に実施されたものであると認識をしております。

岩國委員 ファンダメンタルズを反映するというのであれば、介入すべきではないと思います。しかし、それだけ先進国に例がないほどの介入をされたということは、それほどの、経済の実態を反映していないという判断があったからではありませんか。

 逆に、いつからそれを中止されたのか。その中止された時点で、政府の日本経済のファンダメンタルズに対する考え方は大きく転換した、このように解釈すべきではないかと思いますが、そのとおりでよろしいですか、大臣。

尾身国務大臣 二〇〇四年の四月以降現在まで、いわゆる為替の介入を行っていません。これは、市場に過度の変動や無秩序な動きがあり、経済活動に大きな悪影響があると判断されるような局面が見られなかったことによるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後とも、先ほど申し上げましたような基本的な考え方に基づきまして、適切に為替政策を行ってまいりたいと考えております。

岩國委員 さらにこの点についてお伺いしたいと思いますけれども、今の百二十円という為替レートが、仮に円売り介入がなく、百円でずっとこの十年間推移しておったとすれば、日本の企業利益にはプラス効果だったのかマイナス効果だったのか、その点を端的にお答えいただけませんか。

 百二十円ではなくて百円であったならば、今の企業の利益水準というのはあり得たのか、あるいは、もっとふえておったのか減っておったのか、端的にお答えください。

尾身国務大臣 財務省といたしましては、今御指摘のような試算は行っておりませんで、また、そういう試算に基づいて為替政策を行うという考え方はとっておりません。

 先ほど申し上げたとおりでありますが、我が国といたしましては、特定の企業あるいは産業を念頭に置いて為替政策を行っているわけではございませんで、為替相場は経済ファンダメンタルズを反映すべきであり、その具体的な水準は市場にゆだねるという基本的な考え方のもとに、今後とも引き続き適切に為替政策を行ってまいりたいと考えております。

岩國委員 特定の産業を意識しない、また特別な目的もなしに、なぜこれだけの円介入が行われるんですか。為替レートの百二十円と百円では、日本の輸出企業に対するインパクトは非常に大きな違いがあるんじゃないんですか。また、それを政府は意識して、政策目的を持ってそれだけの円売り介入をされたんでしょう。政策目的もなしにただマーケットに介入する政府がどこにありますか。

 日銀総裁にお伺いいたします。

 一般的に、金利を下げることは為替レートにどういう影響を与えますか。二%の金利を仮にゼロ金利に下げた場合には、一般的に為替レートはどちらの方に作用いたしますか。お答えいただけませんか。

福井参考人 お答え申し上げます。

 為替市場は金利だけに反応して相場が決まるというものではありませんので、お答えがなかなか難しいわけでございます。

 基本は、大臣がお答えになられましたとおり、経済ファンダメンタルズを反映して動く。ただし、最近のように、世界的にすべての市場の相場変動あるいは為替相場の変動、金利の変動、このボラティリティーが非常に下がっているという状況のもとでは、各国間の金利差が為替相場により影響をしやすいという状況になっていることは確かでございます。

岩國委員 一般的に言われていることは、金利を下げれば、その国の通貨の価格は為替レートで下がる。そのような動きをしているのが一般的ではありませんか。

 今、ゼロ金利政策に対する海外の批判にはどういうものがありますか。つまり、この為替レート、円安の水準に放置しておくことは、米国その他の先進工業国から批判が出ているのではありませんか。全くそういう批判は出ておりませんか。総裁、お答えください。

福井参考人 私も、たびたび国際会議に出まして各国の金融政策について綿密なる議論を交わしております。

 現在の各国中央銀行の共通の理解は、世界経済の順調な状況をできるだけ長く維持する、それは、それぞれの国の金融政策よろしきを得て、物価安定のもとでの持続的な経済成長が続くということの合わせわざとして出てくるという認識でございます。

 したがいまして、各国の金融政策は、それぞれの国の経済実態、それから物価の動向、その先行きいかんということを基軸に判断するということになっておりますが、グローバル化の時代ですので、やはり相互に、自国の経済政策運営、金融政策運営が他国あるいはグローバルな経済に同時に影響を及ぼす、この面も十分視野に入れながら金融政策を行うということになっています。

 したがいまして、為替相場への影響等、あるいはそのほか資産価格への影響等を十分に念頭に置きながら金融政策を行う、こういうことになっております。

岩國委員 そういう御答弁をいただきましたけれども、昨年、アメリカの選挙において民主党が勝利をおさめた。その後、アメリカの産業界を中心として、日本の今の為替レートに対する批判が起きております。また、現に、そうしたゼロ金利政策に固執し、今、円売り介入がとまった、その辺からゼロ金利政策がフルに適用されている。円売り介入することなしに、かわってゼロ金利政策という異常な金利政策をとることによって、結果的に百二十円という円安を維持することができた。ゼロ金利政策は、円売り介入の代理人として、為替政策の上では結果的に百二十円という円安の水準を維持するのに効果をもたらしているのではありませんか。だからこそ、今アメリカの自動車産業を中心とする批判が起きているのではないんですか。

 また、この円売り介入、それに続くゼロ金利政策の結果としてもたらされた今の円安水準というものが日本の輸出企業を中心として大きな利益をもたらしているということは、いろいろな統計を見ても明らかではありませんか。

 関連して、ゼロ金利政策についてもう一つお伺いします。

 この十年間にゼロ金利政策によって失われた家計利子収入は幾らですか。以前、もう五年前になりますか、福井総裁に非常に丁寧に答えていただき、計算していただき、百五十四兆円という、家計が得るべき、得たであろう利子が失われたという、その百五十四兆円という数字をちょうだいいたしました。その後、衆議院あるいは参議院でも同じような関連質問があって、その金額は二百兆円であるとか三百兆円に膨らんできております。この十年間に失われた家計利子は幾らになっておりますか。

福井参考人 ちょうど十年間ということになるかどうかわかりませんけれども、出発点を例えば九〇年代の初め、九一年とか九三年あたりから計算いたしました場合に、家計の逸失金利額が非常に大きいということがわかりやすいということでございますが、私どもの一つの計算では、例えば、一九九一年の受取利子額が最近まで続いた場合、こういう計算の仕方をいたしますと、累計の家計部門の逸失金利額が三百三十兆円ぐらいでございます。もう少し基準時点を下げて九三年ぐらいをスタート時点にいたしますと、百九十七兆円と随分下がりますが、大体二百兆から三百兆ぐらいというオーダーで御理解いただきたいと思います。

岩國委員 我々国会議員に、いつもこのように、日銀の政策委員会のいろいろ議論された議事要旨というのを届けていただいております。

 一番最近のものを見ましても、こうした家計へどういう影響が出ているかという議論がなされていないように思います。企業収益の動向あるいは海外金融情勢、そういったことについてはいろいろな議論がなされておりますけれども、今のゼロ金利政策がどれだけ大きな損失を家計にもたらしているか、個人消費がGDPの六割にも達するというぐらいの大きな存在になっているときに、その個人消費を支える家計というものに対する日銀の政策委員会での議論が非常に少ないように思うんです。

 もう一つ関連して意見として申し上げたいのは、我々のところに届けられるこの議事要旨が少し時間がかかり過ぎるんじゃないかと思うんです。きのう届いたものは四月九日、十日のものです。もう一カ月以上もたっている。なぜそんなに時間がかかるのか。いろいろと、文章の修飾だとか、まあ書きかえということはないと思いますけれども、なぜもっと迅速にこういったものが我々の手に届けられないのか。その二点をお伺いいたします。

 この政策委員会で、なぜ、失われた家計利子収入、失われた十年という言葉はよく使われますけれども、まさにこの家計利子について言えば、二百兆円、三百兆円という大きな金額が失われているんです。まさに、失われた十年というのは家計利子のことを言い、預金利子がそれだけ家計の収入に入ってくるものが失われた、この大きなインパクト。

 一方では、資料一をごらんいただきたいと思いますけれども、これは日本銀行がおつくりになった資料であります。

 この日本銀行がおつくりになった資料を見ますと、国民経済計算の中で、部門別利子所得、企業の方はどんどん支払い利子が低下し、家計の方では利子収入がどんどん減っている。そして、今数字をいただきました二百兆円、三百兆円、そういう家計に入るべき預金利子が企業の方に移転している。これだけ巨額な所得移転が行われた例を私は先進国の中で見たことがありません。総裁、御存じでしたら教えてください。あの時期にあの国が同じようなことをやっている、これだけの大きな所得移転が行われたという例を御存じだったら、教えていただきたいと思います。

 そして二番目、先ほど申し上げましたけれども、こうした政策委員会の議事要旨というのは、我々国会議員にもっともっと早く届けていただきたい。これは、なぜそれができないのか。

 この二点をお願いいたします。

福井参考人 日本銀行の低金利政策は、いわゆる量的緩和政策を続けた時代を含んでおります。したがいまして、非常に低金利の期間が長かったという意味では、歴史的に見ても極めて異例なケース、恐らく国際的に見ても異例なケースでございます。

 一九三〇年代の大不況のときに、米国もかなり長期の低金利をやりましたから、先生のおっしゃるような所得移転と申しますか、家計部門と企業部門との間の利子のやりとりとの関係の大きな変化というのは、米国においてもあの大不況のときには、スケールが同じかどうか計算しておりませんが、やはりあっただろうと思います。

 経済が非常に停滞状況にあるときには、やはり前例のない緩和的な金融環境を用意することによってマクロ経済を救出する、救い出すというのは金融政策の使命でございます。日本銀行も、過去かなりの時間をかけて日本経済の救出作業に貢献してきたというふうに思っています。

 最近は、物価安定のもとでの持続的な成長軌道に次第にしっかりと日本経済は乗ってきていると思います。議事録をごらんになられましても、利子所得という形では議論しておりませんけれども、企業部門が立ち直った場合に、家計部門にどういうふうにメリットが均てんしつつあるかということにかなり神経を払って議論しているということをお読み取りいただけるのではないかと思います。

 なお、議事要旨は、次回金融政策決定会合において確認の上公表するということになっておりまして、法律で定められましたとおりの手順で公表しているということでございます。

岩國委員 そうした議事録要旨が一カ月以上たつという、今の非常に変動の激しい経済の中で、私はぜひ、総裁の立場からもこれを変える御努力をしていただきたいということを申し上げたいと思います。

 次に、我が国のトップクラスの銀行が、預金に対する利子をほとんど払わない、最高水準の利益を上げながら法人税も払わない。そして、ゼロ金利政策の結果として株高の現象も起きている。企業に対しては、金利安、それから税金が免除されている、そして株高、これは非常に異常な状態ではありませんか。これが百年前の鎖国経済のときならともかく、今の開かれた経済の中で、世界の先進国の中でトップクラスの銀行が、利子も払わず、税金も払わず。そのような国が世界のどこかにありますか。私は探してみたけれども、見つかりません。尾身大臣、御存じだったらお答えいただけませんか。

尾身国務大臣 現在、非常に低金利でございますし、そういう中で、銀行が税を払っていないのは、過去の累積債務、いわゆる繰越欠損がございまして、これは銀行業に限らずすべての企業、産業に共通するわけでございますが、過去の累積債務は、これがなくなるまでは利益があってもその分が消えるまでは税を払わないという共通ルールになっておりまして、その結果として税を払っていないものと認識をしております。

岩國委員 今共通ルールと申されましたけれども、G8の国を対象にして、その中で、利子も払わず、税金も払わず、そういうトップクラスがどこの国に存在しておりますか。お答えいただけませんか。

尾身国務大臣 利率については日銀が金利政策を決定しているわけでございまして、私どもとしては、物価安定のもとで順調な経済回復を続けていることを金融面からサポートしていただきたいというふうに申し上げておりますが、水準をどうするかという金利の具体的なあり方については日銀にお任せをしているということでございまして、その結果として現在の金利が存在している、その水準が決まっているというふうに理解をしております。

 ほかの国については、現在のところ、日本ほどの低い金利の国は私は存じませんが、これは、日本の経済全体を判断した上で金融当局がその決定をしているというふうに理解をしております。

岩國委員 私は、金利政策は日銀の専権だとおっしゃっておりますけれども、金利政策も、大きな意味で見れば内閣の責任の中に入ってくるんじゃありませんか。国民の暮らしを守る、仕事を守る、それが内閣の責任でしょう。

 こういうゼロ金利政策の結果として、企業から見れば、金利は少なくなる、そして円安で輸出利益は大きくなる、株高で株式発行も助かる。金利安、円安、そして株高、このトリプルの追い風を吹かせているのは今の金利政策ではありませんか。その追い風は企業にばかり吹いておって、国民の家計にはさっぱり追い風は吹いてこない。この現状に対して、それでもまだ、金利政策は日銀にお任せと言い切れるんですか。それは内閣として余りにも無責任ではないかと思います。どうぞ御意見、お聞かせください。

尾身国務大臣 私どもとしては、経済のファンダメンタルズ、現在の日本の経済の全体的な状況は、物価安定のもとで順調な回復を遂げている。そして、それが雇用の拡大につながり、順調な消費の拡大もいずれ見込まれるだろうという考え方のもとに政策を進めているわけでございまして、そういう中で、金融面から経済の順調な回復を支えていただきたいということはかねがね日銀に申し上げているところでございますが、具体的な金利水準につきましては、金融当局の判断で現在のような状況になっているということでございます。

岩國委員 ことしから税金が変わりました。大企業の税金は下げる、国民の税金は上げる、これはあべこべじゃありませんか。こういう三重の追い風、三重の利益を何年も大企業中心に吹かせておいて、その結果として、国民に対して御苦労さまでしたという感謝の言葉とともに減税が行われるならばともかく、苦労をさせられ、そして十年間にわたって預金利子が失われた結果、さらに今度は税金を上げる。これが本当の政治のあり方でしょうか。

 私は、一日も早く、今のような、減税、増税も含めて、このゼロ金利政策の結果というものを、家計を中心にもう一回見直していただいて、経済政策あるいは金利政策の再検討をしていただきたい、そのように思います。

 先ごろ、G8の財務相会議で、尾身大臣出席されまして、いろいろなファンドに対する規制というものが問題になりました。このヘッジファンドの規制というのは、大臣は、ドイツに対して、むしろ反対の立場から、慎重論をおとりになりました。

 ヘッジファンドは、日本が十年前からゼロ金利政策に入ってから、件数が三倍、金額は五倍にふえています。明らかに日本の低金利が、こうした円キャリーその他の手段を用いて、どんどんヘッジファンドの数はふえるは、金額は膨らむは、世界的なヘッジファンドの増加をもたらしている源泉は、日本のゼロ金利政策にあるんじゃありませんか。大臣の所感を聞かせてください。

尾身国務大臣 ここ数年間におきましてヘッジファンドの活動がだんだんと大きくなってきているということは事実であると思いますが、これは、世界経済全体の構造変化の中で、いわば世界経済が非常にグローバル化しているといいますか、相互交流が盛んになっているということもございます。それから、全体として順調な回復過程にあるということもございまして、日本の固有の事情から世界のヘッジファンドの活動が大きくなったという特別な因果関係は必ずしもないと思っております。

岩國委員 全体的とか相互交流とか、そうした原因を分散して答弁を避けておられますけれども、日本のこうした超低金利、日銀総裁がさっきおっしゃったように、世界に例がない異常な金利政策が、このように、資料二で皆さんにお届けしておりますけれども、十年前からのこの急増ぶりを見てください。決して、景気回復とか相互交流とかいうことだけの原因ではないと思います。日本のゼロ金利政策こそが、ファンドの数が急増し、資産をふやし、その最たる原因ではありませんか。そういう認識なしにヘッジファンドの規制に消極論をとられる大臣の立場は間違っている、私はそのように思います。

 御意見があれば、おっしゃってください。

尾身国務大臣 今のヘッジファンドの資料の表でございますが、これは日本だけのものか、世界全体のものか、お伺いをしたいと思います。

岩國委員 レクでも申し上げておりますけれども、これは、ある調査機関が調べたものを日本経済新聞が最近の記事の中に引用しております。これは世界全体の数であります。

 先ほど申し上げましたように、世界全体のヘッジファンドの規模を膨らましているのは、源泉はどこにあるか。日本のゼロ金利政策、例のない超低金利政策こそが、こうしたヘッジファンドの跳梁を許す、そのヘッジファンドの揺りかごになっているのが日本ではありませんか。そういう認識はありませんか。

尾身国務大臣 我が国としては、我が国のいろいろな経済状況の中から適切な経済運営をしていると考えておりますし、また、日銀は、その御判断で現在の金利水準を決定していると考えております。

 日本の金利水準が世界のヘッジファンドの増大の中の、これをもたらした大きな要因であるというような因果関係は特別にはなくて、いろいろな世界の経済の状況、発展の中でこういうことになっているというふうに考えております。

 ちなみに、いろいろな低金利等についての御批判がございますが、少なくとも、数年前と比べれば、マイナス成長であった日本経済は二%前後のプラス成長に転じ、失業率も、かつて、数年前には五%台でありましたものが四%になっているということから見まして、全体として日本経済は順調な回復過程をたどっている。そしてまた、その回復過程をたどっていた原因は、全体としての経済政策が適切であったというふうに考えております。

岩國委員 先ほどから私が超低金利政策、ゼロ金利政策といろいろな現象との関連について質問しますと、それは因果関係はない、実証できないとおっしゃりながら、日本の経済がよくなった一部の面についてだけは具体的に因果関係はあるとおっしゃる。私は、それは余りにも我田引水ではないかと思います。決して無関係とは私は言いませんけれども、ゼロ金利政策がもたらした光と影、その影の部分が、日銀の政策委員会でもほとんど議論されていなければ、今の内閣の経済政策あるいは税制にもそれが反映されていない、それを私は指摘しております。

 日銀総裁、せっかく御出席いただいておりますので、国際会議でも問題になりましたヘッジファンドの規制について総裁はどういう御意見を持っていらっしゃるか、お聞かせいただけませんか。

福井参考人 まず、ヘッジファンドそのものは、まさに経済のグローバル化、それを金融面から裏打ちするように、国境を越えて資金や資本が自由に移動し、いわゆる信用仲介というものが、従来の金融システムの姿よりもはるかに機能度の高いものとしてグローバル経済を支えなきゃいけない、そういう経済的な要請に従って新しい金融仲介機能を持つさまざまな担い手が出てきた、その有力な一つがヘッジファンドでございます。

 したがいまして、あえてヘッジファンドのプラスの面を言えば、信用仲介機能がより高度になり、市場の流動性がそれだけ深くなっている。かつてであれば市場で売り手が出ればなかなか買い手が出ないというところを、必ず一定の値段のところでは買い手が出てくるという形で市場の流動性が高まっている。

 しかし、デメリットのところは、リスクが限りなく分散され、どこでリスクが本当に集積されているかわからなくなってくるという、したがって、それは、あるとき非常に大きなリスクを爆発させないかという、システミックリスクの存在ということがだんだん強く意識されるようになってきています。したがって、これはしっかりモニターしていかなきゃいけないというのは、各国財務相それから中央銀行も強く意識しているところでありまして、問題は、それをいかにしてというところだと思います。

 従来の金融機関のように、これを、つかまえてという言葉は悪いんですけれども、直接規制するということに本当に適した存在かどうか。ファンドマネジャーの所在と、それからファンドそのものは恐らくタックスヘイブンなんかに多く置かれていますし、また、レバレッジをきかせるための借り入れ主体というのはまた別のところに存在しているというふうなぐあいで、大変バーチャルに近い組み立て方になっています。

 したがって、直接規制でつかまえるのが効率的なのか、やはり中央銀行あるいは財務省のネットワークでモニタリングの力を強めていくのがより現実的か。私ども中央銀行のレベルで議論いたしましても、やはりモニタリングの強化ということが一番有効な方法ではないかということで、今この方向で努力をしていまして、日本銀行もこれに賛成しております。

岩國委員 そうしたモニタリングの大切さということを力説されましたけれども、そのモニターする責任は、財務省の方ですか、金融庁の方ですか、日本銀行ですか。それとも、三者連携してやる体制は今できておりますか。いろいろレクでお伺いしますと、先ほど尾身大臣から逆に質問を受けましたけれども、こうしたいろいろなモニタリング、実態調査というものは、十分に我が国政府の手において行われておりますか。

 特に、こうした開放経済の中で、私も、かつては金融業界の中でこうしたヘッジファンドに類する経験を持っておりますけれども、しかし、今のヘッジファンドの実態というものは、これは民主党の意見というよりも私の個人の意見ですけれども、きれいで健全な資本主義というものをむしばんでいく要素の方が強いんではないか、私はそのように懸念しております。だからこそ、私は、日本の健全な企業と健全な資本主義を守るために、もっとモニタリングの体制が強化されなきゃいけないと思います。

 そのモニタリングも十分できていなくて、調査されたしっかりとした統計を要求しても財務省から出てこなくて、それで尾身大臣、そうした国際会議で、積極意見か、慎重意見か、反対意見か、そういう意見が出てくるはずがないじゃありませんか。まず、しっかりと調査をし、そして日本としての意見をここで確立する必要があると私は思います。御意見があれば、おっしゃってください。

    〔委員長退席、古川(元)委員長代理着席〕

尾身国務大臣 先週ドイツのポツダムで行われましたサミットの財務大臣会合におきまして、ヘッジファンドについての意見交換がなされました。ヘッジファンドは自由経済の促進に貢献しているという積極的な評価がありました反面、潜在的なリスクが複雑化し、大きな問題を引き起こす可能性があるという共通の問題意識から議論が行われました。

 ヘッジファンドの規制のあり方につきましては、当初、ドイツから、業界による行動規範、コード・オブ・コンダクトの自主的な策定の提案がございました。これに対して、自由経済原則に対する大きな制約になるという観点もございまして、我が国あるいはアメリカ、その他のほとんど大部分の国から、実質的な規制強化になる、そのことは適切でないという主張がございまして、最終的には、取引金融機関、いわゆるカウンターパーティーと言われておりますが、それによりますリスク管理や業界団体による実務慣行の見直しを通じて問題を未然に防止する方向でいくべきであるという点で意見が一致をいたしましたところであります。

 ヘッジファンドの実態につきましては、今回の会合におきまして、各国、国際機関の金融の専門家の集まりでありますFSF、金融安定化フォーラムから実態調査の報告がございました。その報告の中では、ヘッジファンドの取引が拡大する中で、金融機関のリスク管理の強化を通じて金融システム全体のリスクは軽減していること、他方、商品内容が複雑化したことで、特に市場流動性の低い商品のリスク評価が困難になっている面もあること等が指摘され、これに基づく提言が行われ、その後の進捗を、本年十月以降、金融安定化フォーラムから報告していただくことになったわけであります。

 さらに、私から、ヘッジファンドの取引の相手方であります金融機関等への資金取引の集中が見られる中で、主要な取引の相手方との……(岩國委員「答弁を読まないで」と呼ぶ)これは私が考えた答弁ですから、別に、書かせた答弁ではありません。正確に申し上げるために読んでいるのであって、事務方が書いた答弁ではありませんから、御理解をいただきたいと思います。

 主要な取引の相手方との大臣レベルで非公式な意見交換を行うことを提案いたしまして、各国の賛同を得たところでございまして、今後とも、ヘッジファンドの問題につきましては、適宜適切に議論をしてまいりたいと考えております。

岩國委員 ヘッジファンドについては、いろいろな企業経営者に無用な、あるいは過大な不安を与えつつあるという現状に絡んで、私は、一刻も早く、我が国政府としても、何らかの規制あるいはルールづくり、あるいは、課税対象になるのかどうか、国籍はどうなのか、ディスクロージャーは十分なのか、そういったことに対して手を打つべきだという意見を申し上げて、この質問を終わります。

 日銀総裁、どうもありがとうございました。どうぞ御退席くだすって結構です。

 次に、サマータイムについてお伺いいたします。

 今、エネルギー問題についていろいろな意見があります。最近、経団連からも意見が出ておりますけれども、この国会の中でも、三年前からサマータイム推進議員連盟というのができていることは御存じだと思います。

 そうしたことについて、政府として、どれぐらいの予算をつけてサマータイムの推進に取り組んでおるのか、この点、官房長官、お答えいただけませんか。

塩崎国務大臣 サマータイムにつきましては、先生今御指摘のように、議員連盟もできて、かねてから導入について検討されてきたと思います。私もそのメンバーの一人だと思いますが。

 制度は、もう皆さん御案内のとおりでありますけれども、やはり、夕方の明るい時間を長くするということで、自分の時間、家庭での時間だったり、あるいはボランティアに行ったり、さまざまなことができるということで、一番は、ライフスタイルやワークスタイルを変えることによっての温室効果ガスの削減ということで、私ども、これは環境省の試算によっても百四十三万トンのCO2の削減が期待できるのではないかというようなこともあって、さまざまな検討が行われております。

 京都議定書の目標達成計画でもサマータイムについて示されてはおりますけれども、また導入についての、ライフスタイル、ワークスタイルのあり方を含めて、国民的な議論の展開を図って、環境意識の醸成と合意形成を図っていくことが重要だと考えておるところであります。

 昨日、総理から、ポスト京都議定書に向けての考え方、そして現在の京都議定書の目標達成への取り組み、そういった中で国民運動を起こしていこうじゃないかということで、きのうも提言をさせていただきましたが、与党や経団連やそういったところからも、今申し上げたように、京都議定書目標達成計画でも触れておりますサマータイムについて改めて導入を考えるべきじゃないかという御意見もあって、私どもとしても、これを正面から受けとめながら、何ができるのか、北海道で今試験的にやってみたりするわけでありますが、今後検討してまいりたい、このように考えております。

岩國委員 要するに、三年前から議員の中でもこういう推進議員連盟ができ、そしてエネルギー問題が叫ばれているにもかかわらず、我が国の予算には一銭も計上されておらなかったということですね。幾ら予算化されておったのかということに対して数字が出てこないということは、今までは全くゼロベースの予算だった。これからやりましょう、私は、それでは遅すぎると思うんです。

 エネルギー小国と言われて、エネルギー問題に一番敏感である、そして京都議定書の、この京都を抱える我が国こそ、こういうことに、もっと先へ進むべきじゃありませんか。世界の七十カ国はもう既に実行しております。そして、サマータイムを実行して、失敗だったからやめたという国は一つもない。

 来年、北海道でサミットが行われる。北海道は、既に一部の地域では実験もしております。そうした地球環境サミットと名づけるならば、我が国が来年の夏はサマータイム元年で迎える、それぐらいの意気込みで取り組むべきじゃありませんか。来年の北海道サミットをサマータイム元年で迎えることができる、これは可能ですか、不可能ですか、お答えください。

塩崎国務大臣 まだ、サマータイムを導入すべきかどうかについて、与党の中でも、それから政府の中でも最終的な結論が出ているわけでもございません。しかし、今申し上げたように、いろいろなところからの御提言もこれあり、その効果をよく見きわめながら正面から議論してまいりたい、このように考えておるところでございます。

 特に、今御指摘のように、サミットを来年、北海道洞爺湖サミットということで、環境問題を大きなテーマとして議論するという中で、これをどう考えるのか、先生の今の御指摘を正面から受けて議論を進めてまいりたい、このように思っております。

岩國委員 ぜひそういう意気込みで、少なくとも国会内のいろいろな手続、時間もかかることとは思います。まず、先ほどおっしゃいましたように、国民運動も必要でしょう、国民世論を結集するということも必要でしょう。一方では、国会内で、やるとするならば手続的にどれぐらい時間がかかるのか、少なくとも来年のサミットは、そのかけ声だけでも、しっかりと第一歩を踏むことができるのかどうか、ぜひその努力をすべきではないかという意見を申し上げまして、この質問を終わります。

 次に、今度は、東京の中で、あるいは首都圏、全国各地でも起きているんじゃないかと思いますけれども、経済産業省がおつくりになった「電磁界と健康」、送電塔、そういった電磁波が健康に被害を与えているのではないか、そういうことが今、日本だけではなくて、世界保健機関、WHOにおいても議論され、そして、その結論が来月、六月にも発表されるというふうに聞いております。そういう動きにあるかどうか。

 そして、我が国では、この問題について、住民との間にどういう話し合いが行われているのか。あるいは新聞にも出たり、あるいは訴訟という段階に来たり、あるいは工事をめぐっていろいろなトラブルが起きている。全国で今、何件ぐらいそういうものがありますか。経済産業省、お答えいただけませんか。

稲垣政府参考人 WHOが電磁界の健康影響についての基準を検討しておるということは聞いておりますけれども、これについてはまだ公表はされておりません。いつ公表されるかについてもまだ明らかになっておりませんが、六月の二十日、二十一日にWHOの国際電磁界プロジェクトのワークショップが開催されるということでございますので、そのころまでには公表されるのではないかというふうに推測をしております。

 それから、二点目でございますけれども、電力会社が、送電線、変電所、配電線の建設等に際して、地域住民などと電磁界に関する健康影響等の理由により訴訟及び調停申し立てがあった件数については、平成九年度から現在まで十八件ございまして、現在も係争中であるものは二件であるというふうに電力会社から承っております。その地域は北海道から九州までございます。

岩國委員 WHOからもこうした報告が出るということを視野に入れて、経済産業省も委員会を設立されておる。私は、特に小さい赤ちゃんを中心としてその影響は大きいのではないかということに対して、できるだけ早く一応の結論を出して、進める工事は進める、とめる工事はとめる、そうしないと、住民の間にも、また電力会社も、あるいは電鉄会社も大変困っている現状にあるのではないかと思います。

 六月にWHOの結論が出る出ないにかかわらず、我が国独自の調査研究も一刻も早く進めていただきたいということを申し上げて、この質問を終わります。

 次に、社会保険庁の行政手続について、行政のあり方について、この行政監視委員会に対していろいろな苦情の申し立てが行われています。これに対しては的確に回答がなされておるのかどうか。ことしの一月、二月、三月、四月、毎月の報告書を見ましたけれども、これに対しては回答らしいものはほとんどなされておらない。ただ受け取ったということが記録として我々の手元に回ってくるだけ。これでは、そうした行政不信あるいは行政に対する苦情を訴えた方々に対して適切な対応とは言えないのではないかと思います。これはどなたが答えていただけますか。

皆川政府参考人 お答えを申し上げます。

 突然の御質問なので手元に今資料はありませんが、私どもとしては、社会保険庁全体として、そういう御指摘が行政監視部門からあれば、期日までに従来から的確にお答え申し上げているということでございます。

岩國委員 私は、この決算委員会が決算行政監視委員会と拡大され、充実された、その意味というのは、こういう行政不信に的確に対応する、そして、必要とあればこの決算行政監視委員会の中でも議論をする、そういうことを視野に入れて、そのような法改正、制度改正が行われたと理解しております。

 にもかかわらず、私の横浜市のある病院からも、一月五日にそのような苦情がされ、そして五月十日、訴訟まで起きております。それは、NHKのニュースでも報道されております。それに対していまだに内容を伴った回答はされず、ただ受け取りましたぐらいの話でいいんですか。行政不信、行政に対する苦情はむしろ拡大するばかりじゃありませんか。出した手紙に対して返事も来ない、私はこういう点はあり方を変えるべきだということを申し上げまして、次の最後の質問に移らせていただきます。

 私は、けさ、横浜市青葉区の青葉台という駅前で駅頭の演説をやっておりました。この青葉区というところは、日本で男性の平均寿命が一番長い、日本一ある意味では男性の寿命が長い。隣の緑区。同じように東急の田園都市線の青葉区、緑区とつながりますけれども、緑区では女性が長生き。長生きしたい女性は緑区に住んで、長生きしたい男性は青葉区に住む。両方、長生きしたい人は真ん中の青葉台に住む。私が言っているんじゃなくて、統計がそのようになっているんです。したがって、こういう地域では、非常に長生きされるからこそ、年金に対する関心が非常に強いわけです。最近の、この年金をめぐる、五千万件の記録が消えたとか、こういうことに対して、不安がどんどん広がっております。特に、私の選挙区はそうだろうと思います。

 けさも、五十代のある部長さんらしい方が、私に質問されました。一体あれはどうなっているんですか。銀行にお金を預けたらちゃんと返ってくる、国に預けたらもっと確実に返ってくると思ったら、銀行よりも国の方がいいかげんだ。銀行と国と、どっちの方が信用が高いんですか。岩國先生、どうなんですかと。

 私は困りました。私は、銀行も安心できるけれども、国の方がもっと安心できるんだ、これが世界の常識、世間の常識、したがって、年金が安心できるように、我々も国会で一生懸命議論しております、きょうも私はそういう関連の質問をすることになっていますと言ってお答えし、民主党のビラを、その方に電車の中で読んでくださいとお渡しし、受け取っていかれました。その方は恐らく、青葉区というのはインターネットの普及率は一番ですから、御家族も今この質問を聞いていらっしゃるかもしれません。

 この年金不安、五年間で二十二万件、社会保険庁。この間我が党の長妻委員の質問もありましたけれども、五年間で二十二万件、これを的確に照合していくためには、五年間で二十二万件というのは、社会保険庁としては通常業務をやりながら、それ以上に頑張って五年間で二十二万件をこなされたんでしょう。大変だったと思います。この五千万件という記録不明、照合しなければならないのは、今の通常業務をこなしながら、あと何年ぐらいかかりますか。

 私の単純計算だと、二十二万件を五年間でということは、五千万件というのは、あと千百年ぐらいかかるんじゃないかと思うんです。千百年も長生きする人はどこにもいないわけです。自分の年金を捜すために少しでも長生きしようと恐らく皆さん思われるでしょうけれども、千百年も長生きするわけにいきませんし、仮に千百年も長生きされるような方がどんどんふえてきたら、年金財政がパンクするでしょう。

 端的にお答えいただけませんか。五千万件について早速調査に取り組むとおっしゃいましたけれども、現体制で通常業務をこなしながら五年間で二十二万件をこなされたように、この五千万件は、最後の五千万番目の人には、いつごろに正確な答えができることになりますか。お願いします。

皆川政府参考人 お答え申し上げます。

 二十二万件と五千万件の数字を挙げての御質問です。二十二万件につきましては、受給権が発生して裁定をされた方が、そのときに記録を補正しながら裁定する時間的余裕がなくて、先に裁定をしてください、それで後から記録を補正いたしますということで、御本人の了解等があって、先に裁定をして、後で補正の申請が出て、私どもが、通常地方の事務所でやるわけですが、後で受け付ける場合は、私どもが再裁定ということで手続をとっている数字が五年間で約二十二万件でございます。

 それから、五千万件でございますが、これは、平成九年に、各制度にわたっていて、年金番号をそれぞれに発行しておりました。それで、そのときに、基礎年金番号ということで導入をいたしまして、それらの番号を統一する、こういう作業を始めたわけでございます。その際に、基礎年金番号は、そのときに御加入の制度であった番号を基礎年金番号といたしましたことから、その前に加入していた番号については、基礎年金番号に統合されずに、そのまま年金番号で管理をされているという場合がございます。ただ、平成九年以来、順次私どもが統合をしてまいりまして、今現在残っているのが五千万件ということでございます。

 ただ、五千万件の中に、今申し上げましたように、平成九年の段階で既にお亡くなりになっている方あるいは整理済みで受給権に結びつかない記録も多々ございますが、一方で、まだ被保険者の方の記録もございますので、私どもとしては、さまざまな手だてを費やして、もちろん二十二万件の忙しい業務の中ですが、これも最優先ということで、加入者に対するお知らせ、あるいは被保険者に対するお知らせ、受給者に対するお知らせを含めて今積極的に推進をしている、こういう状況でございます。

    〔古川(元)委員長代理退席、委員長着席〕

岩國委員 もうほとんどの人が、あるいはすべての人が、恐らく五千万の中に入っていると思っています。そういうことを解消するためにも、信頼度を高め、透明性を高め、記録性を高めるためにも、細田博之議員がこの間提案されました、私の出雲市でささやかながら実行し、実験し、厚生省から予算もいただいて始めましたけれども、こういうICカードを使った年金カードの検討に早く入るべきではありませんか。私はそれを要望して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

仙谷委員長 次に、鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 財務大臣、御苦労さまです。

 お忙しいと思いますから、端的にお尋ねしますけれども、日本の世界戦略の上で、私はODAというのは大事なものだと思っております、平和外交を展開する上でも。ただ、今、毎年減らされている。特に昨年の骨太の策定案でも毎年二から四%下げるなんという数字が出てきて、去年の実績では日本は三番目に転落だと。さらに、ことし、来年を踏まえていくと、四番、五番に落ちていくのでないかというデータもありますね。

 そういった意味で、厳しい財政事情ではありますけれども、必要な予算、特にODAは日本のいわゆる世界戦略にとって大事だという意味で、私は配慮すべき必要があるのでないか、こう思いますけれども、財務大臣の見解はいかがでしょうか。

尾身国務大臣 仰せのとおり、基本方針二〇〇六におきまして、ODA予算につきましては、これまでの改革努力を継続するということで、平成十九年度から五年間の歳出削減の目安としてマイナス四ないしマイナス二と明記されているところでございます。

 歳出改革を通じた財政再建は、我が国にとって極めて重要な課題であるというふうに考えております。同時に、この基本方針二〇〇六におきましては、「供与対象国・分野の更なる戦略的重点化を図る。」ということになっているところでございます。

 今後とも、ODAの実施に当たりましては、この基本方針を踏まえながら、歳出削減の徹底を通じて、財政再建を念頭に置きつつも、ODAの供与対象国、分野の戦略的重点化により、一層効果的なものになるよう留意していくことが重要であると考えております。

鈴木(宗)委員 大臣、特に来年の洞爺湖サミットなんかも踏まえて、地球環境というのが昨年のサミットからも大きな課題になっていますね、あるいは京都議定書の遵守なんというのも。そういった意味で、日本のこの環境に対する技術なんというのは生かされますよ。特に発展途上国等には喜ばれると思うんです。また同時に、地球全体が将来生きる上でも必要な方策だと私は思っているんですよ。そういった意味でも、ぜひとも、新しい分野でのまた日本の貢献がある。

 同時に、私は、これは政治家として、いずれ日本がヨーロッパやアメリカと対立するときがある、アングロサクソンとぶつかるときがある、そんなときだれが守ってくれるかといったら、アフリカしかないと思っているんですよ。だから、私はアフリカをやってきたんですね。

 そういった意味でも、環境の視点からもODAについてはしっかりやっていくというぐらいの世界戦略が必要だと私は思うんですね。この点、私は大臣も理解はしてくれると思うんですけれども、そういった面もあわせて、やはりODAの重要性というものをぜひとも、ODAについて、やってもらいたいし、画一的に削減はしないでいただきたい、こう思うんですが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 先ほど申しましたように、基本方針二〇〇六におきまして四ないし二のマイナスということも決まっております。そういう意味で、ODAの重要性については私自身もよく理解をしていると思っておりますが、同時に財政再建も極めて重要な課題でございまして、今のお話も承りながら、適切に対応してまいりたいと思っております。

鈴木(宗)委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。もう概算要求も始まっていますから、対応していただきたいと思います。

 官房長官、端的にお尋ねしますけれども、エリツィン大統領が四月の二十三日に亡くなりました。夜九時半ごろのタス通信なんかで報道されて、私のところにも、十時過ぎにはロシア側から大統領が亡くなったという連絡も入ってきました。

 そこで、国葬が二十五日に行われた。ちょうど一カ月前ですね。残念ながら日本から特使は派遣されなかった。外務大臣は、公式な各国代表の受け入れはしないというロシア側の通報であった、こういうふうになっていますけれども、私は、弔問というのは頼まれて行くものでもなければ、自発的に行くものだと思っていますよ。

 あれは一九八五年三月、チェルネンコさんが亡くなったとき、国会開会中でも、時の中曽根総理は、すべての日程、国会に了解をとってモスクワへ飛んで、ゴルバチョフ新書記長と会談して大きな弔問外交として注目も集めたし、また信頼関係を築いた経緯がありますね。そういった意味からも、今回の特使を出さなかったことは国益上非常によくなかった、私はこう思っているんですね。

 そのとき官房長官は、足がなかった、いわゆる商用便がなかった、そういう記者会見をしています、後には訂正しておりますけれども。その商用便がなかったという表現は、官房長官独自の考えであったのか、それとも外務省から来たメモで記者会見したのか、お知らせをいただきたい。

塩崎国務大臣 まず第一に、エリツィン初代大統領の御逝去の報は、前の晩の十時過ぎには私の方にも入っておりました。その時点ではまだ葬儀の日程が決まっていないということで、二十四日午前中の十時半ごろに葬儀の通告をロシア側から受けて、二十五日が葬儀だということが入ってまいったわけであります。

 その時点で飛行機が、商用便を見てみると、十二時のアエロフロート、それから十三時のJAL、そして十三時三十五分のコリアンエアー、この三便と、あと夜のエアフランス、こういうことでございました。エアフランスだと、いろいろ移動時間を考えると間に合わない、そしてまた、十時半に来て、それから行くということでは、もう物理的に間に合わないということで、外務省からのこういう情報によって、間に合わないということが私はわかったということでございます。

鈴木(宗)委員 官房長官、私が聞いているのは、経過はいいですから、官房長官が記者会見をした、それは官房長官の頭づくりでやったのか、官房長官の記者会見は各省庁から時の問題についてのペーパーが来るわけですから、外務省からのペーパーであのときの記者会見はそうであったのか、最初の記者会見ですよ、二十五日の日の、これをお尋ねしているんです。

塩崎国務大臣 それは、私が外務省からの情報を見て判断をいたしまして、間に合わないということでありました。

鈴木(宗)委員 外務省からの情報で、商用便がない。そこで、外務省からの情報のもとでの記者会見であったということでよろしいですね、最初の記者会見は。(塩崎国務大臣「うん」と呼ぶ)そうですね。それだと整合性が合うんですね。

 そして、後に官房長官は五月に入ってから訂正しましたね。間に合う便があったけれども、本当は人選が間に合わなかったと、五月十一日の官房長官会見で。

 私は、ここで大臣に言いたいのは、やはりさっき言ったように、弔問というのは頼まれて行くものでなくて自発的に行くんですよ。官房長官だって、選挙区のだれかが亡くなったとき、特別縁がなくても、時間の余裕があればお参りに行くんじゃないんですか。それがまた人としての心構えであるし、常でないでしょうか、立場のある者にとっての。

 特に、エリツィンさんが亡くなるということは大変重いことですよ。少なくとも真剣に領土問題を解決しようとした、ソ連、ロシアを通じての最初のトップリーダーだったと私は思っていますよ。黙っても自発的に、二十三日の夜に入ったら、だれか行かせるという発想はなかったんでしょうか。

塩崎国務大臣 先生おっしゃるように、我々政治家にとってもそうでありますが、弔問というのは、極めて大事な、人の命にかかわることで、大事であることは間違いないと思っております。

 今回の場合は、一報が入って、そして葬儀は追って来るということでありますから、常識的には、我が国から代表を送るというのは当然のことでありますけれども、わかったときにはこれが物理的に間に合わないということで、その以前には当然そういうことを思っておりましたけれども、しかし、葬儀がいつになるのかということを考えることが必要だったものですから、そこで、翌日のわかったときには、もう既に間に合わないというところに来てしまったということであります。

鈴木(宗)委員 官房長官、二十三日に亡くなった、これは前大統領が亡くなったのだから、重いことですよね。日本の例からしても、それは国葬であることは間違いない。日本の総理も、亡くなったらそういう形をとるわけですから、経験者の場合。国葬もしくは国葬に準ずる姿をとるわけですから。当然、日本とロシアには民族の悲願である領土問題がある、どこの国よりもいち早く日本が弔問に行くというのが頭づくりとしてなかったかということを聞いているんですよ。これが戦略的外交でないかと私は思うんですよ。

 さっきの中曽根さんの例を挙げたのは、そこなんですよ。チェルネンコさんが亡くなった、その日程も何も決まらぬうちから、中曽根さんは、すぐ行くと発表しましたよ、哀悼の意を表して。あのとき、総理のコメントもなかった、総理の肉声としての。それはちょっとプレーヤーが存在しない。本当に安倍総理を周りの人たちが支えているのか、このことを私は疑問に思っているんです。

 私は、責めているんじゃない。今回のことを教訓にして、さっき言ったように、外務省の情報が間違っておった、商用便がないなんという話をしている。私の質問主意書、ここには尾身大臣、麻生大臣おられますけれども、閣議決定の質問主意書でも、商用便がなかったということで署名していますよ。しかし、再質問書を出したら、ありましたという訂正じゃないですか。ミスをしたらミスをしたと謝るのが大事だし、そのことが、ロシア側にはいいメッセージとして伝わると私は思うんですよ。どうですか、官房長官。

塩崎国務大臣 商用便がないというのは、葬儀に間に合う商用便がないということを申し上げたわけで、物理的にそれは間に合わないということを、改めて二回目の記者会見で私は申し上げたわけであります。

鈴木(宗)委員 ちょっと、官房長官、それは話が違うと思いますよ。

 二十三日に亡くなった、その夜の段階でも頭づくりがあればすぐ出せるんじゃないんですかということです、私が言っているのは。いいですか。

 そして、国会答弁、記者会見と質問主意書では、商用便はあった、行かせようと思ったら行かせられたけれども、そのとき、人選がまだ検討されない、あるいは間に合わなかったという答弁書になっているんですよ。だから、今の官房長官の答弁だとそごがありますから、そこは正確を期した方がいいし、同時に、私の言っているのは、私、ここに資料を全部持っていますから、私の方が正しいんですよ。

 官房長官、私が言いたいのは、官房長官の詭弁を求めているんじゃないんです、はっきり言って。あなたも記者会見でそのように釈明したわけですから、そこはやはり潔しをもってやらなければだめです。

 そういった意味で、私は、二十三日の夜に、前大統領が亡くなった、すぐ何かしようという発想が起きなかったところが、まずは準備が立ちおくれたもとなんですから、この点は反省材料じゃないですかと言っているんですよ。

塩崎国務大臣 答弁書と私の言っていることとのそごはないと思っております。それは、今先生、弔問にすぐ行くべきだったんじゃないか、こういうお話でありました。その意味では、先生のお考えはお考えとして、そのとおりかと思います。

 私が申し上げたのは、葬儀に間に合うかどうかという話を申し上げているわけであって、その範囲でいけば、二十四日の十時半に葬儀の予定がこちらに入ってきた。そこから一時間半ぐらいしかないわけですから、十二時の便だとすれば。それには物理的に間に合わなかった、人選以前の問題だ、こういうことだと思うんですね。

鈴木(宗)委員 限られた時間ですから。

 官房長官、アメリカは、シニア・ブッシュ大統領もクリントンさんも行っているんですよ。イギリスはメージャーさんも行っている、前の首相も。それはやはり、政治的判断をして、ちゃんと準備したと思うんですよ。いいですか。地理的な問題もありますけれども、近さの問題もあるけれども、同時に、あなたは、二十五日の記者会見では、モスクワにたどり着くときには葬儀は終わってしまっているという言い方をしているんですよ。いいですか。それは、公式の、国葬が決まったことをあなたは前提にしているんですよ。

 私は、外交というのは、戦略的外交というならば、二十三日のうちに決めて、どこの国よりもG8の中では日本が最初に来たというアピールをすることなんかが本来の外交じゃないですかという話をしているんですよ。それがまた判断じゃないんですかと言っているんですよ。何も、いい悪いの議論をしているんじゃないんです。

 今回のことを教訓にして、ここはやはり率直に、手落ちであった、あるいは事務当局を信頼したがゆえに判断が遅くなってしまったと言うのが官房長官の立場でないか。それがまた、ロシア側に対してもいいメッセージになると私は思うんですよ。それを言っているんです、官房長官。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、先生がおっしゃっている、一報が入ったときにすぐ飛んでいけばよかったじゃないか、こういうことで、いわば弔問をすべきだった、こういうことでありました。ですから、今私も申し上げたように、それは一つの考えとしてしっかりと受けとめたいと思うわけであります。

 しかし、質問主意書に対する答弁に関しては、先ほど申し上げたように、葬儀ということで、物理的に間に合わなかったということで、私が記者会見で申し上げたのは、言ってみれば人選以前の問題だということであります。しかし、先生がおっしゃっている、弔問が日本の外交として行われるべきだったんじゃないかという点については、先生のお考えとしてしっかり受けとめていきたい、こう思います。

鈴木(宗)委員 官房長官、私は、安倍総理ならば、新しい安倍総理なりのカードを切れば日ロ関係は動くと思っておりますから、ぜひとも、そういった意味では、重層的、多面的に総理を支えていただきたい。そして、やはり、新しい外交を展開して、日ロ関係を展開していただきたい、こう思っていますね。

 きょうは原田局長が来ていますから、お尋ねします。

 この委員会でもあるいはほかの委員会でも、私は原田局長に言いました、ルーブル委員会ありや否やということで。質問主意書では、ないとは言わないで、確認されていないという表現です。

 そこで、あなたももう既に読んでいると思いますけれども、大宅壮一賞をもらった、外務省の、今休職の人ですけれども、佐藤優さんは、塩尻官房長と国会で刺し違えてもいい、ルーブル委員会はありました、私も裨益しました、あなたからあて名のない領収書もつくらされましたと、月刊現代、日本を代表する出版社である、月刊現代に明確に書いてありますよ。私は、これは事実だと思っていますね。うそを書いておったら大宅壮一賞をもらえませんから。同時に、佐藤さんは、刺し違えてもいいというぐらいはっきり言っていますよ。この月刊現代を読んでいると思いますね、去年の七月号ですから。

 これに対して、原田さん、どうお考えですか。佐藤さんと公の場所で議論するならば私は会合をつくりたいと思いますし、私は、あなたの言っているのと佐藤さんが言っているのとどっちが正しいかというと、文字まで残っている。もし、あなた、間違っているならば、本来、訴えるなり外務省得意のリークするなり、やり方があったはずですよ。この点、どうでしょうか。

 ちょっと、原田局長、担当局長、本の名前も入っていますから、私は名前を言って言っていますから、官房長の出番じゃないです。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 質問書等で何回か答弁させていただいております。それからまた、繰り返しになりますけれども、御指摘の点につきまして、外務省として必要かつ適切な調査を行いました。しかしながら、そのような事実が確認されなかったということでございます。

原田政府参考人 委員御質問のいわゆるルーブル委員会でございますけれども、決算委員会の分科会でも、あるいはほかの委員会でもお答えしたと思いますけれども、そのルーブル委員会なるものについては、私は、これは二十年近く前のことでございますけれども、記憶にないということでございます。

 さらに、今官房長がお答えしましたように、外務省として必要な調査を行って、その答弁でも事実は確認されていないということになっています。

 私が申し上げるのは、先ほど申し上げた以上のことでも以下でもございませんので、御指摘の方とこれについてやりとりする考えはございません。

鈴木(宗)委員 原田さん、私は、うそつきにいい外交はできないと思っています。あなたの答弁、これは委員の先生方も聞いておって、今の、記憶にないという表現で通りますか。証明する人がほかにもいますよ、ルーブル委員会があったということを。

 麻生大臣、今の原田局長の答弁がもし間違っておったら国家公務員として問題だ、私はこう思っていますから、大臣、私はしかるべき処置をとるべきだ、こう思いますし、委員長、少なくとも委員会の場ですよ。本来は自浄能力が発揮されていいべきですよ。ロシア時代はないですよ。ソ連時代にはあったことは皆さん知っているじゃないですか。それを、なぜうそを言うんですか。

 ぜひとも委員長、この点、私は、正確な資料だとか、ぜひともこれは、委員の皆さん方、佐藤さんと原田さんをここに呼んで、どちらが正しいか聞いた方が正しいんじゃないでしょうか。これは与野党の理事さん、ぜひとも検討してもらいたい。委員長、この点を確認してもらえますでしょうか。

仙谷委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、今の点も含んで検討してみます。

 どなたか答弁されますか。(鈴木(宗)委員「麻生大臣から答弁してください」と呼ぶ)

 麻生大臣、コメントされますか。では、極めて簡単にお願いします。

麻生国務大臣 委員会のことですので、委員会の理事で御検討されるのがしかるべきと存じます。

仙谷委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十六分開議

仙谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより全般的審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野隆司君。

矢野委員 自由民主党の矢野隆司でございます。

 去る五月五日、こどもの日に、ジェットコースターの運転中に死亡事故が起きるという大変痛ましい事件がございました。この遊園地は私の自宅からちょうど車で五分ほどのところにございまして、また、私自身が、国会議員になるまでは、この遊園地のございました吹田市の総合計画審議会の委員として、この遊園地を含めた未来のまちづくりについてかかわっておりましたような経緯から、きょうは大臣に御質問をさせていただきたい、こう思う次第でございます。

 発生以来、大阪本社発行分の新聞は連日大変大きくこの事件を報道しておりますけれども、兵庫県御選出の大臣もよく御認識をいただいているものと思います。国会におきましても、国土交通委員会あるいは参議院でもこの問題が取り上げられておりますけれども、私も、各論も含めて幾つかお尋ねをしたいと思います。

 私自身の事実関係を整理いたしますと、四つのポイントがあるのではないかと思っております。一つは、ジェットコースターというものは、昭和三十四年以来、建築基準法で設置を認め、検査を求めている。それから、JISにその検査基準が示されている。そして三点目に、されど、探傷試験、いわゆる非破壊試験ですね、これについての法的な位置づけは不明確である。そして最後に、そういった検査で必要とする書類は、省令で定められた書類を除けば、特定行政庁の裁量にゆだねられている。この四点に論点は尽きるのではないかと思っております。

 そこで、探傷試験という試験が定められているJISですが、きょう持ってまいりました。JISのA一七〇一という、遊戯施設、コースターの検査標準という資料ですが、この中に探傷試験についてこういう文言がございます。車輪軸は一年に一回以上の探傷試験を行うこと、また、調査記録台帳を作成し、当該部品の使用期間中保管すること。こういう記録の管理を命じておるわけですが、その後の二〇〇六年版のJISでは、記録をつくりなさい、あるいは記録を残しなさいというその文言が消えております。

 今回の事件で、当該遊園地では過去の試験結果というものがない、こういう報道もあったわけですが、そこで国交省さんの方にお尋ねをいたしましたところ、実は、JISの二〇〇六年版から消えてはいるけれども、それは、平成十二年ですから、これは今から七年前の建築指導課長さん名の文書で手当てしておるということで、ちょっと長い文書でございますが、「遊戯施設の維持保全計画書及び遊戯施設の運行管理規程の作成手引き」、これはマニュアルですが、「手引きの周知による遊戯施設の安全対策の徹底について」、多分大臣もごらんになったと思いますが、こういう文書がございます。

 それで、私は何が言いたいかといいますと、この文書は今から七年前ですが、その中で、要は、近年、遊戯施設の複雑化や大型化が進み、そしてまた、安全管理体制の徹底がますます重要、そして、利用者の安全確保を図る上でこういうマニュアルをつくるということは極めて有効だ、そして、こういうマニュアルをつくった上は周知を図っていただいて、遊戯施設の安全対策の推進に御協力をお願いしたい、こういう指導課長名の文書でございます。さらに、こういうマニュアルをつくるのは、遊戯施設の所有者等に求められる社会的責任と考えるべきだ。こういったものが七年も前に出ておるのにもかかわらず、全く探傷試験がされていない。そういうデータも、一昨日ですが、国交省さんの方から発表になりました。

 そういったことも含めて、私としては、この文書が七年前にも出ているにもかかわらず生かされていないということについて、大変憤りを覚える次第でございます。緊急点検結果を見ても、完全にこれは無視されているんじゃないか。言葉は関西弁で悪いですけれども、なめられているんじゃないかというような感じさえするんです。

 そこで、こういう文書が七年前につくられたという経緯等を含めて、大臣の御所見というか思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 近年、遊戯施設は複雑化、大型化が進みまして、保守点検あるいは部品交換等の確実な履行や、日常業務における安全管理体制の徹底がますます重要になっていることから、平成十二年、財団法人日本建築設備・昇降機センターにおきまして、「遊戯施設の維持保全計画書及び遊戯施設の運行管理規程の作成手引き」が取りまとめられたわけでございます。委員のおっしゃったとおりでございます。

 国土交通省としても、この手引が利用者の安全確保を図る上で極めて有効であるというふうに評価をいたしましたことから、業界団体に周知し、遊戯施設の安全対策の推進を要請してきたところでありまして、今回の事故を踏まえ、去る五月六日に、コースター等に関する緊急点検の実施にあわせまして、すべての遊戯施設の所有者等に対しこの手引を再度周知いたしまして、遊戯施設の点検整備及び適切な運行管理の徹底を図るよう特定行政庁に対して要請したところでもございます。

 「遊戯施設の維持保全計画書の作成手引き」では、定期点検について、検査項目、点検周期を一覧にした計画表や、検査結果の特記事項、改善措置等を記載した履歴表を作成することとされております。株式会社エキスポランドがこの手引に沿った維持保全計画に従い、適切に検査を行っていたか否かは確認できておりませんけれども、事故を起こしたコースターについては、日本工業規格の検査標準に定められた探傷試験が行われておらず、検査の内容に問題があったと考えております。

 このため、去る五月十日に、社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会というものを開催いたしまして、日本工業規格の検査標準に基づく検査の徹底や、遊戯施設の適切な維持保全、運行管理のあり方などの遊戯施設の総合的な安全対策について検討いただいているところでございます。

 なお、これは、建築基準法、昭和三十四年からですが、の法令と、それからJIS規格による探傷検査というところまで行き着くのに、間に特定行政庁の裁量が入ったりして非常にわかりにくい形になっていたということは、私も反省するところでございまして、今回そういうものを、特に車輪軸というような大事なところについての探傷試験については、建築法令上、明確にこれを規定しなきゃならないというふうに思っておりますし、それから、定期の検査におきましても、過去どうであったか、そしてそれを取りかえて、直してAというだけではなしに、取りかえたものであれば取りかえた、それから次期の一年後まで経時変化をするなど金属疲労を起こすようなことがないかどうかについても検査をしてもらって、その結果がわかるようにしてもらいたいというふうに思っております。

 そのようなことで、大変これは残念な話であったわけでございますけれども、きっちりと、第一次は所有者のいわゆる設置、保存の責任だと思うんですけれども、そういうものが行き届かなくてとうとい人命が失われたということについては、本当に私にとってもざんきにたえないところでありますし、心から亡くなった方に対しては御冥福をお祈りしたいというふうに思っております。

矢野委員 大臣、ありがとうございます。

 今大臣の口から、特定行政庁の裁量が入ることについての、是非と言うと言い過ぎかもしれませんが、御指摘がございました。

 まさに今、これは、大臣、答弁は結構ですけれども、大阪府の知事あてに五月十五日にエキスポランドが出した、「特定設備における事故届出書(第二報)」という文書がございます。実は私、きょうの午前中に国交省さんの方に、この文書は国交省さんのお手元にあるかと伺うと、まだ来ていないということで、十五日の資料なんですね。それに何が書いてあるかというと、エキスポランドとしては事故の再発防止対策についてどうするのかというと、対策を講じる予定はないと。その理由は何となれば、再開の検討はしていないと。要は、事故のあったコースターはもう再開しませんよと。これは再開はしないとは書いていないんですね、うまいこと。再開の検討はしていないと書いてあるので、これはわかりませんけれども、いずれにせよ、当面閉めちゃう、こういうことなんだと思います。

 実はその後、一週間後の五月二十二日に、エキスポランドから吹田の市長さんに別の文書が出ておりまして、エキスポランドの遊戯施設の措置についての御報告、この中に、最後に、「点検、検査を実施し、ご報告の上、エキスポランド営業再開したく存じますので今後とも、ご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。」

 民間の遊園地の業者さんのされることですから、私どもがとやかく言うことではないのかもしれませんが、対策は講じる予定はないと報告して、一週間後に、返す刀で、エキスポランドを再開したいと。原因究明はどうなっているのかな、ここの遊園地さんはどう考えているのかな、こんなものなのかなという感じで、いささか釈然としないというか、大変割り切れない思いできょう私はこの質問に立たせていただいた次第です。

 次の質問に参りますが、今回の事故の定期検査報告書に添付された遊戯施設検査表というのがございまして、これは、JISの中でこういう検査をしなさいとか、細かく取り決めをされております。この定期検査ができる人というのは、国交省さんの外郭団体である日本建築設備・昇降機センター、これはエレベーターの事故でもよく出てきたセンターですが、そこの講習を修了した人も資格が得られる、こういうことで、先ほどに触れた五月二十三日付の国交省さんの緊急点検結果を見ましても、点検対象コースター三百六基のうち、実に七十二基のコースターが過去、探傷試験を一度もしたことがない、こういうデータでございました。ここまでせっかく細かく決めているJISの中身、あるいは先ほどの指導課長さんの文書等々がありながら、全くやはり遊園地の業界の皆さんというのは生かされていないような気がしてなりません。

 そこで、このセンターでの講習というものはどういう内容なのか。遊戯施設に限って言うところの授業内容といいますか、講義内容、これについてちょっと教えていただきたいということと、今後、国交省として、やはり外郭団体でいらっしゃるわけですから、同センターに対して講習内容等について指導あるいは助言をするようなお考え、必要というものはあるのかないのか、これは政府参考人ですか、お願いいたします。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 日本建築設備・昇降機センターが実施いたします登録昇降機検査資格者講習というのは、実は省令に基づいて規定をされておりまして、九科目を受講することになっております。そのうち、遊戯施設関係でいえば定期検査制度総論というのがございまして、これは約一時間でございます。それから、遊戯施設の検査標準につきましては四時間受講するということになっておりまして、この講義を修了した後、必要な知識、技能を修得したかどうかを判定するための修了考査を受けまして、それに合格した者が資格者という方になりまして、定期検査を行う資格者ということになります。

 委員御指摘のように、七十二基が全く探傷試験が行われていないとか、一年ごとの探傷試験、一年以内に行われていないというのが実は四割ぐらいの百十九基ということが判明いたしておりまして、これらすべて、こちらの講義を受けながら、この四割の施設について探傷試験が行われていなかったということが極めて問題だというふうに私ども考えております。

 先ほど大臣も申し上げましたところでございますが、社会資本整備審議会の建築分科会建築物等事故・災害対策部会というところで、実はここの講習内容それから修了考査の内容についてしっかりチェックをしたいと思っておりまして、中身をもう一度やり直そうというふうに考えております。その結論を踏まえまして、講習内容や修了考査の見直しを行いまして、検査資格者の能力向上を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

矢野委員 JISで定めているこの検査標準ですが、七五年版では、民間の遊園地の代表といいますか、委員の方が三社ほどあるんですが、このうちの二社が、この間の探傷試験で、一年以内には実施していないという中に入っておりますね。それから二〇〇六年には、やはり同じく遊園地の委員が三社入っていますが、これが全部アウトといいますかひっかかっておるという中で、やはり、このセンターでの授業内容といいますか講習、それから講師の資格といいますか、そういったことも含めて、ひとつ厳格にあるいは厳密にやっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 残り時間がなくなってまいりましたので、あと幾つかあったのですが、最後の質問に参ります。

 今回、事故のあった吹田市では、過日大臣にいろいろと御要望を申し上げておりまして、安全装置の設置基準整備や、先ほどから申し上げております探傷試験、それから事故報告の義務化、事故情報の公開あるいは共有化を含めた定期検査の内容及び資格制度の抜本的強化など、割と盛りだくさんなことをお願いしております。

 一方で、そもそもこのコースターの取り扱いというのが、冒頭大臣おっしゃいましたように、やはり建築基準法で本当にいいのかな、本当にいいかという御疑問は呈されませんでしたけれども、一般的にそういう議論がございます。

 平成十二年に、コースターに関しては、落下防止を中心とする政令改正もあったように聞いておりますが、エキスポランドのジェットコースターというのは最速七十五キロでございまして、実は国交省さんに、七十五キロを上回るコースターは全国で何基あるんですかと伺いましたら、五十二台あるんだそうです。そのうち、最も速いコースターが、大臣、これは百七十二キロ。この百七十二キロのスピードに達するのに、スタートから百七十二キロまで、実に時間が一・八秒で行くんだそうです。これはロケット並みというとちょっと大げさかもしれませんが、こんなので、これが果たして建築基準法で手当てできるのかなというのが、私のような素人が思うところでございます。

 先ほど大臣がおっしゃられました部会でございますが、国交省内で十日ですか、開催された。そこでこれからいろいろな御議論があるんだろうと思いますけれども、一昨日発表のあった緊急点検結果を踏まえて、例えば、新たに点検項目をつけ加えるとか、新たに問題を提起していこうとか、もっと言えば、特定行政庁からも委員を出すとか意見を聞くとか、何かそういったお考えがあるのかないのか。そして、これからのタイムスケジュールというのは、なかなか発表しづらいかもしれませんけれども、そういうものがありましたら、総括的な所見を大臣からお尋ねしたいと思います。

冬柴国務大臣 遊戯施設には大きく、コースター以外に、コースターは鉄軌道の上を走るわけですけれども、観覧車というようなものもありまして、このような遊戯施設は昭和三十四年から建築基準法の対象となって、建築基準の中にそういうものの耐力というようなものが決められているわけでございまして、つくるときはその基準に合っているかどうかということを建築基準に照らしまして確認をされる。そして、それが検査を受けてでき上がれば、後はまたそれが経時変化とかしないかどうかということについては定期にJIS規格等に定める検査によってやっていく。

 そういうことで、百七十二キロになってきますとこれは大変で、今のことでいいのかどうか、そういう反省も込めて、吹田市からの要望、大阪府からの要望もいただきましたが、踏まえまして、先ほど申しましたように、社会資本整備審議会の部会に諮りまして、今後の措置について今検討をしていただいているところでございます。

 ただ、もう夏休みも近づいてまいりまして、また子供たちも遊園地で遊ぶということを楽しみにしておられると思いますので、そういうときまでに、少なくともそのとき稼働しているものは安全であるというふうになるように努力しなきゃならないと思いますが、長期的には、探傷試験等の実施を含めた具体的な検査方法及び検査基準の建築基準法令上への位置づけを明確にする。それをすることによって、違反には罰則とかあるいは改善勧告とかいうようなものを行うことができるわけで、そういう位置づけをしたいと思っています。

 それから二番目には、探傷試験データ、写真等の添付を含め、検査結果の詳細な内容について報告を求めることの建築基準法令上への位置づけもしたい。それから、いわゆる検査員の講習内容や修了考査の見直し等によりまして、資格要件の強化あるいは定期講習の実施等についても検討を行っているところでありまして、先ほど局長の答弁のとおりでございます。

 そのようなことで、私どもは、コースター以外の遊具につきましては、七月十三日までに特定行政庁を通じてそれをきちっと検査した結果を報告していただくようにいたしております。その時点でそういうものが済んでいないものについては、利用してもらっては困ると思うわけでございます。

 そういうことで、逐次制度の見直しと具体化を図って、国民の信頼を回復したいというふうに思っております。

矢野委員 大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。質問を終わります。

仙谷委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 きょうは、麻生大臣、久間大臣に御出席をいただき、また岩屋副大臣も御出席をいただきまして、ありがとうございます。私からは、外交、安全保障のテーマに絞ってお聞きしたいと思います。

 まずは、日中関係についてでございます。

 昨年十月の安倍総理の訪中、そしてまたことし四月の温家宝総理の訪日、いずれも大変大きな成功に終わりまして、日中関係、大きく今改善に向けて動き始めたわけであります。安倍総理の訪中は氷を砕く旅であると言われ、温家宝総理の訪日は氷を解かす旅と言われておりまして、今大変いい流れになっていると評価をするものであります。麻生大臣も大変御尽力いただいたと思っておりまして、大変高く評価をするものでございます。

 大事なことは、今後、この日中関係が後戻りしない関係にどうしていくかということだと思います。これは私の持論なんですが、二十一世紀の日中関係は第二次大戦後のドイツ、フランスの関係を参考にすべきというのが私の持論でございます。言うまでもなく、独仏関係というのは伝統的には非常に対立関係にありました。五百年の間に両地域の間で二十七回戦火を交えたと言われておりまして、第一次大戦、第二次大戦、二回の世界大戦も発生したわけであります。

 そういった反省を踏まえて、一九六〇年代、特に一九六二年に行われたアデナウアー、ドゴールの間の首脳会談、これによって大きく流れが変わりまして、その後、劇的な独仏関係の改善があり、御承知のように、今やEU統合の中核となり、またさらには共通通貨が採用され、あるいはまた共通安全保障政策にまで発展するといった劇的な進展を見せておりまして、二十一世紀の日中関係はこの独仏関係を一つの参考にして進めることがぜひとも大事だと思っております。

 そこで、独仏関係がなぜこういうふうに急激に変化、発展したのかということを見ますと、多分、三つの大きな要素があると思っております。

 一つは、歴史対話。歴史問題に対する本当に率直な対話を進めたこと。二つ目に、大規模な青少年交流。いまだに続いております。これがあって独仏間の人間関係が非常に深まったということ。それから三つ目には、資源の共同管理。御承知のように、石炭と鉄が当時の戦略物資で、それの争奪がいわば戦火を引き起こすことになったわけでありますけれども、それの反省から欧州石炭鉄鋼共同体というものがまずスタートして、それから今日のEC、EUへと発展したことは御承知のとおりでございます。

 多分、二十一世紀の日中関係については、これに加えて環境協力という要素も非常に大きな柱になるかと思っておりまして、こういったことも参考にしながら、ぜひとも、後戻りしない、単なる二国間の友好関係のみならず、アジア、世界のための日中関係にどうこれをリードしていくかということが大事な点だと思っております。

 そこで、歴史対話につきまして、既に日中間の歴史共同研究がスタートしておりますので、これは今後見守っていきたいと思っておりますが、特に私は、まず青少年交流についてお聞きしたいと思っております。

 もう既に安倍総理と温家宝総理の間で青少年交流をさらに発展させるということは合意をされておりますけれども、ただ、国の予算だけで青少年交流をやるということは、やはり今の厳しい財政状況のもとで限界があるし、いい呼び水にはなっても大きく発展することはなかなか望みがたいわけでありまして、どうやってこれを大きく発展させるかという一つの重要なテーマがあるかと思っております。

 ちなみに、独仏間の青少年交流は、一九六〇年代からスタートして、さまざまなプログラムが進められまして、何と今日に至るまで七百万人に到達しようと言われております。年間に直すと約十六万人から十七万人がこのプロジェクトで交流をしている。さらに、ホームステイ等を経てお互いの家庭を知り合って、そういった世代が今指導的分野を担っているわけですから、こういった人たちがふえることが大変重要な独仏関係の劇的改善につながったということになるかと思っておりまして、日中についても、こういった例を参考に、質的にも量的にもかなりの規模で青少年交流を進めるということが大事ではないかと思っております。

 その上で、現在の日中間の青少年交流は果たしてこれで十分なのかということについて現状と問題点、またこれで十分なのかにつきまして、まず大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 青少年交流は非常に重要でして、ホームステイ、ロングステイ、交換留学生、いろいろ含めて、極めて、若いときに見るのがいいと存じます。

 昨年でしたか今年でしたか、中国から高校生が、ショートステイでしたか、二週間だったと記憶しますが、東京とかいろいろ行って、終わった後、感想を聞いたことがあるんですが、あなたの見た感想というのを文に書いたり、いろいろしゃべったりする。日本語のうまいのもいるし、英語のうまいのもいるんですが、そういうふうに感想が、中国にいるとき軍国神社、軍国神社と言われて、靖国神社に行ってみたんだけれども軍人が一人も立っていなかった、そんなところが軍国神社のはずがないと。これぐらいわかりやすい感想はないなと思って聞いたことがあるのが私は非常に印象的だったんです。

 やはり、若いときにばっと現実を見るというのは、物すごく、見るというのは読んだり聞いたりするよりはるかに説得力があると思いますので、日本という国の現実を知ってもらうのは非常にいいことだと私は思っております。

 そういった意味で、この数はふやしていかなきゃいかぬと思っておりますが、平成十九年度から、今後五年間で毎年六千名程度の青少年を日本に招く。これは主に中国に絞っているわけではありません、アジア等々から招くことにしておりますので。二十一世紀東アジア青少年大交流計画というのをつくり上げまして、三百五十億円の予算を組んで、一年間じゃありませんよ、これは五年間でやらせていただくことにいたしております。関係省庁、それから地方自治体なんかに、ホームステイをしてもらうとなったら地方自治体にかなりお願いをする部分もあります。そういった意味で、地方の団体として、例えば青年会議所とか、そこそこ人を泊められるうちに全部泊めるというのをやって、確実に今この数をふやしつつあるというのが現状であります。

 こういった流れというのが、将来、二十年後、三十年後に育つ大事な玉だと。私どもとしては、こういったいい企画は継続をしていくというのが必要だろうと思いますので、きっちりこの面はやってまいりたいと思っております。

遠藤(乙)委員 大臣もこの青少年交流の効果が非常に高いということはよく御認識のことだと思っております。問題は、この規模で十分なのか、また今のシステムだけで足りるのかということなんですね。

 先ほど申し上げましたように、独仏間では、毎年十六万人、十七万人の単位で、四十年以上にわたって、もう七百万人に達すると。これぐらいの規模があって今日の独仏関係、そしてまたEUへの発展があるということでありまして、今、中国は日本の十倍以上の人口を持つ国でありますから、日中間において今の規模では多分不十分だろうと私は思っておりまして、確かに一つの呼び水としては非常にいいかもしれませんけれども、どうやってこの規模を拡大していくか。

 特にコストの面が私は非常に大事だと思っておりまして、やはり、政府が丸抱えでは予算もかかります、しかし個人で来るには非常に高いと。どうやってコストを削減して、個人でも来られるような、できるだけ来やすいような、若干の補助でも来られるような形にしていくかという、コスト削減ということと受け入れ体制をどう整備するかということは非常に重要だと思っております。

 その点で一つ参考になるのは、ワーキングホリデー制度というのがございます。

 これは御承知と思いますが、一九八一年、これはちょうど当時の大平総理が豪州を訪問される際に新しい日豪関係を象徴する一つのプロジェクトとして日豪間で発足をしたものでございまして、その後、八カ国に拡大をされております。

 これは、簡単に言うと、例えば半年間の期限を区切って青少年がその国へ行き、労働許可つきの観光ビザということでありまして、アルバイトをしながらお金を稼いで、お金がたまったらまた旅行するということで、自分で稼ぎながら旅行できるという非常にフレキシブルな制度でありまして、これによってかなり多くの青年が日本と他国との間で交流をしております。

 まずこのワーキングホリデー制度に関する現状、評価、それから課題について、これは大臣にお伺いしたいと思います。

岩屋副大臣 政府の予算には限りがあるので、ホームステイとかワーキングホリデーを活用すべしという先生の御趣旨だと思います。

 我が国のワーキングホリデー制度でございますが、相手国の青少年に対して我が国の文化や一般的な生活様式を理解する機会を提供するということを目的にいたしまして、今先生お話ありましたように、昭和五十五年一月の日豪首脳会談における合意に基づいて、日本とオーストラリアの間でスタートした制度でございます。

 また、先生も今お触れになりましたが、その後、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、英国、アイルランドの計八カ国との間で行っております。これまで、我が国から三十万人の青少年がこのワーキングホリデーを活用し、また八カ国から我が国に七・五万人の青少年が滞在をしております。友好関係の増進に寄与してきたところでございます。この制度は、これからイタリア、デンマークと交渉中でございます。漸次拡大をしていきたいというふうに思っております。

 中国との間でございますが、まだ具体化しておりませんので、先生の御指摘も踏まえて、これからの課題として検討してまいりたいと思っております。

遠藤(乙)委員 まさに、私の質問のポイントは、日中関係は今新しい段階に入ってきた、戦略的互恵関係の時代に来た、ここでワーキングホリデー制度を日中間にもぜひ適用を考えたらどうかというのが私の質問のポイントでございます。

 多分、いろいろな意見があるかと思います。しかし、選考のプロセスをきっちりやって、身元引き受けとか、こちら側の体制をしっかりすることによって、これはいろいろな工夫をすれば問題が発生することは抑えられるわけでありまして、やはり青年を、特に中国の今後指導的な分野につくであろう人たちを青少年の時代に呼ぶということは非常に効果が高いと思いますので、日中関係においてこのワーキングホリデー制度をぜひとも実現していただきたい、ぜひ検討していただきたいということが私の質問でございまして、これは大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、古川(元)委員長代理着席〕

麻生国務大臣 今、中国から日本に、いわゆる密入国を含めましていろいろ問題がありますのは御存じのとおり。

 これがすべてというわけではなくて、まともな人の数の方が多いんですけれども、入ってくる絶対量が、十三億ですから、まともな方も多いんですがそうじゃない人もいる。ところが、もともと分母が大きいものですからこれは物すごい比率になりまして、外国人犯罪の半分がとかいろいろ表現があるところで、こういったものに対して反応がなかなか、受け入れる側としてはなかなかおうと言うわけにいかないのが多分背景だと存じます。

 ただ、今、選択をよくして、そして、かつ受け入れるところ、出すところ、双方の管理をしっかりするということを前提にというお話だったんで、いろいろなことが考えられると思いますので、これは今JETのプログラムとかいろいろありますけれども、そういったものを含めて検討する意味は将来的にはあろうと思います。

遠藤(乙)委員 多分、いろいろな反応はもちろん予測されるわけですから、そういったものが起こらないようにどうするかということが大事で、例えば中国側でいえば共青団という組織があります。そういったところときちっと連携をとりながら人の選考を進めるとか、身元がはっきりしていることをしっかり確認してやるとか、数を限ってやるとか、パイロットプロジェクトぐらいは進めていいんじゃないかと思っておりまして、ぜひとも前向きに御検討をいただければと思っております。

 また、ホームステイが非常に有効ということは御承知のとおりでありまして、これもぜひ体制を拡充、あるいはインセンティブを進める必要があるかと思っておりまして、ホームステイを受け入れた家庭には例えば減税措置をとるとか、また、さまざまなネットワークの、インターネットを通じた支援措置をとるとか、いろいろな形で可能だと思います。これからどんどん日本も空き家がふえてくる状況です。住宅事情は逆に余ってくるような場面、特に地方の場合にはそうでありますから、そういったことに対してインセンティブをつける意味からも、ホームステイ減税をさらに強化していくとか、さまざまな支援措置をすることが大事だと思っております。あわせてぜひ御検討いただきたい。これは中国に限らず、アジア全体、そして世界全体に言えることでございますので、ぜひともこの点はお願いをしたいと思っております。

 では、続いて次の質問でございますが、これはちょっと外交というか、農業に関連するんですが、一つ、中国の問題で非常に日本の地域の再生にかかわる話は、ブランド農産物の輸出ということでございます。

 私も三年前の予算委員会で攻めの農業というテーマで当時小泉総理に対してお話をして、総理も大変賛同いただいた点でございまして、その後、大変御尽力いただきまして、例えば米の輸出が来月から中国は解禁になります。また、さまざまな品目ごとに今検討が行われていると聞いておりまして、これは日本の農家、今非常に高齢化とか担い手政策等々で非常に厳しい局面にありますが、このブランド農産物の輸出、特に中国等を中心としたアジア諸国への輸出、これは当然安心、安全のものであり、かつ品質のいいブランド農産物については、今巨大な人口を持ったアジア、また急速に経済発展するアジアに膨大な市場が広がっているわけでありまして、大きな一つの展望が開けているかと思っておりまして、ぜひともこの分野での具体的な促進をさらにお願いをしたいと思っております。

 そこで、まず米の輸出につきまして具体的にどうなっているのか、どれぐらいの展望があるのかということにつきましてお話をいただければと思います。

麻生国務大臣 スタートは、たしか去年の五月のカタールのドーハだったと記憶しますが、遠藤先生御存じのように、お米はその当時、今でもそうですが、その当時、米の輸入を中国は認めておりませんでした。認めておりましたのは、たしか、ナシとリンゴだけだったと記憶をします。

 そのときに、去年の一月でしたか、中国で、イチゴでしたかな、「あまおう」というイチゴだったと記憶しますが、一粒四百円という値段を聞いて、しかも、その箱に福岡あまおうと書いてありましたので、ここは銀座かと言ったのが物すごい記憶があります。向こうもげらげら笑っていましたけれども。一粒かと聞いたら、そうだと。考えられぬ、博多の農協へ行きゃ一箱で幾らという話じゃないのかと言って、さんざん本当に値段はこうかと聞いたときに、付加価値の高い農産物というのは現実にそこで見ましたので。

 その後、五月のカタールのドーハでお米の話をしましたので、すしは好きかと言ったら、好きだと。どこで食べておると言ったら、それは北京だし、おれの郷里で食べると言うから、すしというのは炊いた米を一回酢をかけて冷やす、温かいすしなんかないから、その酢をかけて食べて、中国の米で食べたことはあるか、ないと言うから、今食べているのはうまいと思うよ、それは全部密輸品だぞと。輸入禁止なんだからと言ったら、そんなことはないと言って、それがそもそもの話のきっかけで始まったんですが、間違いなく三回目ぐらいの交渉で輸入は認めるということになっております。それで、温家宝総理の来日のときに合わせて、これは、温家宝の口からこちらの安倍総理の方に向かってこの話の提案があって、でき上がることになったんです。

 御存じのように、日本はどういう状態かと言われると、六十キロ、一俵を約一万五千円。向こうは幾らかといいますと、キロ千円から千五百円ぐらいなんですよね。そうすると、二百五十円ぐらいと千三百円じゃ、これは中国に輸出した方がもうかるというのは、農家で計算したって、だれが計算したってすぐわかる話ですから、農家としてはいい米をつくって中国に輸出した方が国に納めるよりよっぽどもうかるというのはだれでも計算ができますから、そうすると農業にとりましてのインセンティブがふえますし、今七百万トンぐらい消費されていると思いますが、つくっているお米は八百何十万トン、中国は約二億トンぐらい消費しているはずですから、そのうち百万トンぐらい余った、七百、八百万の百万トンが入ったって、それは一部の高級米志向のところに受けるはずですからというような、これは一つの例ですけれども。

 こういったようなものができますと、農家に対してのインセンティブとして、やる気を起こさせる点としては非常に大きいと思いますので、これがこの六月で価格を決めるはずですから、これは農林省の規格だと思いますが、千円から千五百円の間で、どこかで価格を決めてくると思いますが、そういったような形で決まれば、非常に大きな、これは第一歩ですけれども、ちょっとこれが大きくなっていけば非常に農業というものに関しての考え方は変わってくるかなという期待はいたしております。

遠藤(乙)委員 農産物輸出は非常に重要な、農家も期待をするところでございますので、今の中国の場合には、おっしゃったようにリンゴとナシと、米が今度なりますけれども、あとぜひブドウとかイチゴ、それから木材は既に輸出はしておりますけれども、これも非常に有望な、今、中国は森林面積が一三%しかありません。ほとんどはげ山状態でございまして、全国的に伐採禁止令が出ておる。木一本切るにも許可制というような状況でありまして、しかも今、中国の場合には石の文化で、家は石でつくっていたわけですけれども、最近は内装に板を使うということが流行になってきまして、非常に木材需要が急速に発生をしておりまして、間違いなく、中国は今石油輸入大国でありますけれども、木材輸入大国として今登場しつつある。しかも、日本の場合には非常に今森林がほったらかしで、むしろ全く経営感覚なしにやっているわけですから、これはぜひ日本の林業の経営近代化と、かつ中国を軸とする東アジア木材市場、これを結びつけることは非常に日本の林業活性化にとっても大きな意味がありますので、ぜひともこの農産物の輸出、中国を軸とした東アジアへの輸出は、ぜひこれから大臣も特に力を入れてお願いをしたいと思っているところでございます。

 それで、次に安全保障に移ります。

 先般の国会で防衛省への移行が実現し、また今国会でも特に米軍再編法案が実現をして、久間大臣には大変御尽力をいただいたことを多とするものであります。

 やっとこれで日米安全保障関係は新たな協力関係を発展させる重要な基盤ができたというふうに考えているところでございますが、一つ気になる話で、財務省が出した資料で、日本の在日米軍基地、米軍軍人は減ってきているのに日本の従業員はふえつつある、世界的に見ても米軍駐留の地域において、例えば米兵百人に対する現地従業員の比率が圧倒的に日本が高いということで、これを削減すべきだといったような意見が出ているように聞いております。

 ちなみに、その報道によりますと、駐留米軍、一九七八年と二〇〇六年を比較すると、駐留米軍兵数が四万五千九百三十九人から三万三千四百五十三人まで減少している、他方、日本人労働者数が二万一千十七人から二万五千四百三人に増加している。そして、米軍兵士百人当たりのその国の現地労働者数は、日本の場合七十五・九人、それから韓国は四十七・二人、イタリアが四十三・一人、ドイツの三十・八人ということで、日本が突出して高いという指摘が財務省筋からなされておりまして、どうも削減の方向に行くべきであるというような声が強くなっているようです。

 当然、国民の税金を使うわけですから説明責任を果たすことは重要でございますけれども、なぜこういった米軍基地における日本人労働者が、米軍、米兵の数は減っているのに増加しているのか、また、各国と比べてなぜ日本が突出して高いのかという背景、理由について御説明をいただければと思います。

久間国務大臣 これは、日米の地位協定に基づきまして、外務大臣と国務副長官との書簡で特別協定のたびに人数の上限を決めて、そして、予算要求は防衛施設庁の方が財務省とやり合って決定して、その内容を、単価その他を決めていく、そういう仕組みになっております。それで、雇用契約者は今まで防衛施設庁長官、今度は私が雇用契約者になりまして、そして使用者は米軍という、三者契約みたいな非常に珍しいケースの雇用関係になるわけですけれども。

 確かに、おっしゃるとおり、米軍は減っているのに従業員がふえているというのは何でかなと私自身も思っておりますが、それは、一つにはやはり、米軍が減ったうち、やはり仕事を、米軍がやっていたのをだんだん減らしていっている、そういうこともあるんじゃないかなと思っております、例えばレストランなんかの職員なんかも、これはもう全部外注に回すような格好になってきておりますから。だから、そういうようなことじゃないかなと思っておりますから、一概に、米軍が減ったから雇用者数も減るんだということにはならないわけでございます。

 私も、これから先、個別にいろいろと精査してみようと思っております。これはもう、財務省の方からも予算のたびに言われて、最後のいろいろな詰めの中で決めておるわけでございます。

 ただ、これは非常に注意せぬといかぬのは、雇用関係を急激に変化させるということになりますと、安定している今の米軍の労務者と米軍との関係、それから防衛施設庁との関係、こういったところにもいろいろと機微な問題が発生いたしますので、みんなに不安感を与えないようにしながら、やはり減らすべきところは減らさなきゃいかぬ。それは、私も財政再建には協力しなけりゃいかぬと常日ごろ思っておりますので、あらゆる角度からこの問題については取り組んでいこうと思っております。

    〔古川(元)委員長代理退席、委員長着席〕

遠藤(乙)委員 まさに米軍駐留経費の負担の一環として労働者の基本給も日本が見ているわけですから、そういった国民の血税を使っているということであって、ぜひ、そこら辺の説明はきちっとしていく必要があるかと思っております。

 他方、おっしゃるように、雇用不安の問題が起きることもこれは非常に困るわけでありまして、そういった雇用の安定性を守ることも大事な側面でありますので、いずれにしましても、きちっと国民に説明がつくような形で今後きちっと調査をし、また予算要求もしていくということが大事だと思っております。ここは決算委員会でございますので、そういった角度からの指摘をしておきたいと思っております。

 続いて、最後に一問。アフガニスタンへの日本の支援、協力の話でございます。

 先般、安倍総理がNATOも訪問されまして、NATOとの協力関係も強化していくということを表明されました。また、2プラス2においても、日本とNATOの協力関係は日米協力関係の補完的な役割ということも位置づけられておりまして、2プラス2の中でも、日本とNATOの協力を進めるということがうたわれているわけでございます。

 また、久間大臣が先般NATOの事務総長と会談した際にも、今アフガニスタンでNATOが平和維持活動を進めておりますけれども、それに対して自衛隊の協力も検討するといったような趣旨の発言をされたというふうに報道で伺っておりますけれども、それが事実なのかどうか。政府がアフガニスタンの復興支援に自衛隊をもし何らかの形で参加することを考えているとしたら、どういう形で考えておられるのかということにつきましてお聞きしたいと思います。

久間国務大臣 具体的にアフガニスタンで自衛隊を云々という話は出ませんでした。ただ、アフガニスタンのこれから先の復興の場合に、ヘリでの輸送、そういうので、軍人用も必要だけれども民間用も必要なんだと。自衛隊でやることについては日本の国内のいろいろな事情もあるでしょうからというようなことを、向こうの事務総長が言われたのも事実でございます。そういう中で、我々としては、国際平和協力業務が本来任務になりましたので、幅広く本来任務をどういう形でこれからやっていくかは検討しなければならない、そういうことも言いました。そういうことでございます。

 ただ、そのときちょっと頭をかすめましたのは、現在のテロ特措法では、アフガニスタンにおける復興を念頭に置いてはあの法律はできていないので、あの法律で直ちに復興のために何かやるということはできるのかなというようなことを一瞬頭の中で体操をやったものですから。

 あれはやはり、アメリカの武力行使を、国連もそれを認めた上での、それに対する支援を要請したという形で法律がつくられておりますから、戦争が終わった後の復興ということを念頭に置いて法律ができていないので、あの法律だけで復興まで読めるかなというのがちょっと念頭にありましたので、返事も、これから先は我々としては幅広くいろいろな検討をしていかなきゃならないと思っているんだというような、そういうことを述べた次第でございます。

遠藤(乙)委員 私ども、二〇〇一年の三月に、タリバン政権がバーミヤンの大仏を破壊するというときに、与党のミッションの一員として、松浪健四郎、それから熊代昭彦両議員と一緒に行ってまいりました。実は命がけの出張でございまして、カンダハルまで行ってまいりました。ムタワキールという外務大臣と折衝をしてきたわけなんですが、残念ながら、ちょうど我々が話をしているときにどうも爆破のボタンが押されていたような状況でありまして、ちょっと遅かったなということでございますけれども。

 ただ、率直な印象として、やはり日本として、アフガニスタンの復興には、ぜひともこれは支援していかなきゃいけないような地政学的にも大変重要な地域であるし、何らかの形で日本として支援をしていく必要があるということを強く感じた次第であります。

 とともに、非常に政情が不安といいますか、非常にいろいろな武装勢力がありまして、下手をするとすぐに日本も武装攻撃をされるような可能性も非常に高いという面もありまして、相当慎重にここら辺は考えていかなきゃいけないということも感じた次第でございまして、そういった両面から、ぜひ今後、アフガニスタンに対する平和協力を、ぜひとも慎重な上に、かつ真剣に検討していただきたいということを表明いたしまして、私の質問といたします。

 以上です。ありがとうございました。

仙谷委員長 次に、松本龍君。

松本(龍)委員 民主党の松本龍であります。

 今、遠藤委員が、日中の友好に触れて、日本と中国の関係は、まさに二国間だけではなくて、アジアの平和と安定に寄与するという言葉を言われました。まさに私も同感であります。そういう意味では、きょう、アジアというものを頭に入れて、この決算行政監視委員会で質問させていただきたいというふうに思っております。

 決算ですから、お金の使い方、使われ方、これをしっかりチェックしていくのが私たちの仕事であり、国民の税金でありますから、最も有効に使っていくのが我々の使命であるというふうに思っております。さらに、アジアの中で先進国となった日本は、やはり先進国の存在というか、そういうものをしっかり肝に銘じていきながらアジアに貢献をしていく、このことが必要だろうと思います。

 先ほどODAの話がありましたけれども、ODAの問題点はともかくとして、ODAの切り口ではない、もっと多面的な切り口があるのではないかというふうに考えているものですから、質問したいと思います。

 例えば、今アジアで問題になっておりますのが鳥インフルエンザですけれども、いわゆる新興感染症、なかなか知見がない。そういう意味では、知見がないものに対して日本がやはりアジアの一員としてしっかり取り組んでいく必要があるだろうというふうに思っております。

 正確を期すために読みますけれども、本年二月十一日付新聞報道で、インドネシア政府が、検体提供で製造されたワクチンが購入できないので不公平であるとの理由から、WHOへの検体提供を中止しました。このような状況が、鳥インフルエンザの多発地帯で、あるいはヒト・ヒト新型インフルエンザの起点となる可能性が高いアジア諸国で生じたとすれば、いざパンデミックというときに、パンデミックワクチンの製造がおくれをとる可能性が生じる危険性があります。ついては、どう考えるのか。同時に、初の感染例に関する情報の発信や当該国の検疫、特に出国、入国の制限などの対策も後手に回る可能性が高いのではないかと思いますが、御回答をお願いしたいと思います。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいますように、インドネシア政府がウイルスの検体を提供する国ですけれども、実際にワクチンをつくる場合には先進諸国でございますので、値段が高くなるというふうなことをもって、ことし一月からですけれども、WHOのインフルエンザ調査ネットワークに対して検体の提供を拒否しておりました。

 五月に入りましてWHO総会がジュネーブでございまして、インフルエンザウイルスの迅速な検体供与体制を確認し、あわせて、加盟国間で情報やワクチン等が適切な方法で共有されることを目指した決議がなされております。本決議によりまして、鳥・新型インフルエンザ対策の包括的、国際的な枠組みが整えられようとしているわけでありまして、これによりまして、パンデミックが発生した場合でも、そのワクチンの円滑な製造が図れるものと考えております。

 私からは以上でございます。

宮坂政府参考人 新型インフルエンザにつきましての情報収集なり、また検疫の問題についての御質問がございました。

 まず、情報収集でございますが、これにつきましては、アジア諸国等の政府及び研究機関との連携の強化、それからWHOが、国立感染症研究所等関係機関が構築をしておりますネットワーク、情報収集のネットワークがございます。これからの情報収集、それから当然でございますが、外務省を通じての在外公館からの情報収集の体制というものを構築しているところでございます。

 次に、出入国、検疫の関係でございます。これにつきましては、今問題になっておりますインフルエンザのH5N1というウイルスにつきまして、これを検疫法に基づく検疫感染症に指定するとともに、また、十八年度の予備費におきまして、検疫所における検査体制の強化、具体的には携帯型のサーモグラフィー等々の整備を図っているところでございます。さらに、発生時の水際対策をまとめましたガイドラインの作成等を行いまして、万全を期しているところでございます。

 以上であります。

松本(龍)委員 アジアへの貢献ということですが、私はこういう新型感染症、まだまだ未知の領域が物すごく多いということで、例えばアジアの地域、先進国でも構いませんけれども、学者とか科学者とか医者とか、昔の方々の知恵とか、そういったものを集積していく、そして招聘をして、そういったチームをつくって、このアジアに貢献をしていく、そういうことが私は大事だろうと思います。

 それは、もう比較的小さな予算でできます。この小さな予算でしたことが、例えば大きなパンデミック状況になったときに社会的、財政的負担がものすごく大きくなります。ですから、そういう水際で防ぐことを日本が先頭に立ってやっていきたい。そういう意味では、この問題のインパクトを大いに軽減できると思うんですが、その辺のところを御回答願いたいと思います。

宮坂政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、新型インフルエンザ等のいわゆる新興感染症、これが非常に今地球規模の脅威となっております。特に、アジア諸国等との積極的な情報交換なり国際協力というのは、我が国の国民の健康と安全を確保するという観点からも極めて重要であるというふうに考えております。

 具体的に、厚労省といたしましては、これまでもWHOとか国連などへの人的貢献とか、財政的支援、それからアジアに関しましては、アジア諸国の感染症対応能力強化のための専門家の派遣や、我が国への研修医の受け入れ、さらには中国、韓国の政府及び研究機関との連携の強化、さらには先ほど先生御指摘ございましたが、インドネシアにつきましては研究機関との連携の強化ということを通じまして、アジア地域に重点を置いて、情報収集なり知見の集積を図りながら、国際的な感染症対策に今積極的に参画をしているという状況でございます。

 以上です。

松本(龍)委員 新型感染症、まさに新興感染症、鳥インフルとかエボラ出血熱とかHIVとかラッサ熱とかあります。これはまた、とりわけアジアで多発しているものがあるわけですけれども、そういう意味で、今、知見の集積とか言われましたけれども、この病気を克服するんだ、この病気を退治するんだ、知見の集積も私は必要だと思うんですけれども、その辺のところの、病気そのものに対する取り組みはされていますか。

宮坂政府参考人 いわゆる新興感染症について、それぞれどのように研究の充実を図っているかということでございます。これは非常に、一番ある意味では大切な問題であろうかと思います。

 今、具体的には、新型インフルエンザ、いわゆるH5N1につきましても各国がいろいろな知恵を絞り、またどういうところで発生をし、またどういう症状だったか、それからどういう転帰をたどっているかというようなことにつきまして、情報共有、まさに先ほど申し上げました情報ネットワーク等々を通じまして情報の共有に努め、そして随時研究、それぞれの国が一緒に協力をしながら、これはどこかの国だけでできるというものではございませんので、また、一たん起きますとどこかの国だけでとどまるというものでもありませんので、各国がそういう協調体制をとりながらこの研究を全体として進めているという状況であります。

松本(龍)委員 パンデミックの厚生労働省のガイドラインとか、さまざまな意味で、日本はやはり今おっしゃったようにリーダーシップをとって情報の共有、情報の交換、そしてさまざまな知見の集積、これにこれからも先頭に立って取り組んでいただきたいというふうに思います。

 さて、きょう、遠藤副大臣お見えですけれども、次の質問に移ります。

 今、世界には六千から七千の言語があると言われています。その言語は、今急速に消滅の危機に瀕していると言われています。ある人に言わせれば、このまま進めば、世界の言語の半数近くが今世紀中に消滅するであろうと。もっと悲観的な見方をすれば、九五%今世紀中に消滅する可能性があるとも言われています。そういう意味で、目に見えない文化遺産といいますか、言語というのは人の生活あるいはさまざまな問題にかかわる大変大きな課題であります。

 カリフォルニア大学では、アジアの少数言語を研究しているマティソフさんがこういうことを言いました。ある社会の文化を考える上で、言語は最も重要であり、それが滅んでしまえばその文化の固有の知識も独自の世界観も失われてしまうと言っています。

 そういう意味で、日本でも研究は盛んなんですけれども、ドイツではフォルクスワーゲン財団が出資をしてアーカイブをつくっています。つまり、危機言語の音声や映像記録、文法、辞書などのデータを集積しています。英国でもいろいろなことがなされている。そして、アメリカやオーストラリアではいろいろな研究が進んでいます。そういう意味では、アジアや環太平洋地域の我々の多くの危機に瀕した言葉をやはり日本が救っていく、こういう役割を先進国として担っているのではないかというふうに私は思っています。

 一九九九年、今から八年前、文部科学省特定領域研究として、これらに関する助成をされたと聞いていますが、どういう状況であったか、事務方の皆さんで結構ですので、教えてください。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘いただきました、平成十一年から十四年にかけまして、大阪学院大学の宮岡先生を代表者とする研究グループによって特定領域研究として行われました、環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究ということだと思っておりますが、その特定領域研究といいますのは、研究グループがみずから研究領域等を提案しまして、専門家による審査を経て、当該領域についての関連する研究計画の公募を含めて多数の研究者によって研究活動を行うものでございます。

 具体的には、この環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究では、四年間にわたりまして国内の五十六機関の延べ百四十五人の研究者が参加をし、海外の共同研究者を含めますと二百人を超える研究者によりまして延べ六十六件の研究課題が期間中に実施され、これに対しまして、私どもの方から六億四千四百四十万円の助成を行っているわけでございます。

 具体的な研究内容につきましては、研究者から提出されました研究成果概要報告書によりますと、一つは、我が国を含む環太平洋地域における話し手の高齢化や減少により消滅の危機に瀕しております言語、例えば環南太平洋地域におきますパプアニューギニアのパプア系諸言語、あるいは環北太平洋地域におきますアラスカ・アリューシャン列島のアリュート語等、約三十地域の五十を超える言語あるいは方言につきまして、緊急のフィールドワークによって言語資料の情報収集並びに整理分析を実施し、また消滅に直面した言語の調査方法や言語の消滅・維持の動態論的な研究を実施したものでございます。

 二つ目には、そういった調査の成果を辞書あるいは語彙集、テキスト、音声資料、研究論文などの形で刊行することを通じまして、いわばこういった言語が弱化と完全な消滅に至る前に貴重な文化遺産として保存し、活用したということでございます。

松本(龍)委員 今、宮岡大阪学院大学教授のお話が出ましたけれども、私はおととい連絡をとってお話を聞きました。確かに得られるものは大きかったけれども、今四年間とおっしゃいましたが、三年半という期間は短過ぎると。

 私は、日本のコンピューター技術とかさまざまなものを駆使すればそういった失いかけている言語を救うことができるんじゃないか、学術的な要請だけではなくて、アジアに対する貢献という形で日本がもっと積極的に取り組む必要があるというふうに私は思っていますけれども、遠藤副大臣、所見をお願いいたします。

遠藤副大臣 ただいま御指摘いただきましたように、言語は知的活動の基本でありますし、貴重な資産でありますから、そういう意味でも、とりわけアジアの中の日本でありますから、そうしたことを守っていくというのは大変大事なことかと思っております。

 これまでも、東京外国語大学あるいは大阪外国語大学、そうした中で、学部、学科あるいは研究センターを設けて、いろいろな形で、科研費を利用して、そうした研究をしていただいてまいりました。ちなみに、十八年度も、例えばメチェ語とかゴジャール・ワヒー語それからネク語、ティンリン語、いろいろな希少な言語の研究をしていただいておりますが、委員御指摘のように、まさに、先ほど申し上げましたように、アジアの中の日本、そうした位置から考えますと、そうした希少言語を初めとした文化を守っていくというのは日本の大きな役割かと思いますので、科研費等を通じてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

松本(龍)委員 ありがとうございます。

 私は、今二つの事柄しか質問していません。つまり、鳥インフルエンザあるいは言語の消滅等々、日本が先進国としてアジアに貢献できる事柄のたった二つしか述べていませんけれども、そういう意味では、例えば、きのう質問をとりに来られた厚生労働省の方あるいは文部科学省の方々がおられましたけれども、そういった方々が、鳥インフルエンザは農林水産省です、海外で会議をするのは外務省ですと。まさに縦割りの中で、チーム・アジアみたいなものをちょっともう一回、アジアの困難やアジアの危機に対するチーム・アジアみたいなものを結成して、そういう縦割りではない、アジアに貢献をしようという、これは大臣、きょう通告はしておりませんけれども、もっとアジアに対して何ができるか、そしてアジアに対してどういう貢献ができるか。世界で名誉ある地位を築くためには、アジアの信頼、アジアとの共生しかないと私は思っておりますので、その辺のところをもう一度お聞かせ願いたい。

 例えばアメリカでは、ナショナルゴール、国家目標がありました。かつてケネディ大統領は、月に行くことをナショナルゴールとしました。亡くなってから実現をしました。そして、何かと評判の悪いニクソン大統領もがんの撲滅というものをナショナルゴールとして、今となってはやはりアメリカのそういったかつての研究が集積をされて世界に貢献をしてきた事実があります。

 今、この国のナショナルゴールが何なのかというのがちょっと見えておりません。そういう意味では、アジアに対する我々の貢献が一番日本のナショナルゴールだと思いますけれども、その辺の所見もお伺いをしたいと思います。

遠藤副大臣 実は、私も国会議員として、アジアの子供たちに学校をつくる議員の会という会をつくって十年間活動をしてまいりましたが、今八校アジアに学校をつくってまいりました。そういう活動を通じて改めて感じますことは、日本とアメリカあるいはヨーロッパの関係はもちろん大事ですが、やはり改めてアジアの中の日本だな、そして、日本が、経済的だけではなくて、むしろ文化とかあるいは教育でしっかり貢献をしていく、そういう地域の皆様方にしっかりサポートしていくということは、むしろ日本の存在を、いわゆる競争ではなくて、一体となって進めていくという意味では大変大きな効果があると思っておりますし、その意味でもしっかり取り組んでいきたいと思っております。

松本(龍)委員 ありがとうございます。

 アジアの危機とか困難に立ち向かうというのが我々の本当に使命だというふうに思っています。例えば、今二つの事柄ですけれども、もっとたくさんあります。生物の多様性の問題であるとか、あるいはアジアの子供たちの労働の問題であるとか、さらには地雷の問題とか、いろいろあります。埋められた地雷で子供たちが足をなくす、そして命をなくす状況が、十年前に実は対人地雷禁止条約ができまして、そのときに、それに署名をするかしないかという状況の中で、日本はアメリカとの関係があったから及び腰だったんです。ところが、十年前、当時の小渕恵三外務大臣が政治判断でそれに署名をしました。今、十年後、日本はそれに対して大きな貢献をしています。ですから、決断とか政治判断で私はいろいろなことができると思っております。

 今、クラスター爆弾の禁止の会議がペルーのリマでやっておりますけれども、日本はこういう非人道的な爆弾に対してまさに大量保有をしていますし、この会議にも加わっていません。こういうことも、お金の使い方という意味では、こういったものもなくしていく、そして積極的に平和とか軍縮に取り組んでいくということも最後に強く主張して、私の質問を終わりたいと思います。

 以上です。

仙谷委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 郵政公社総裁、おいでいただいておりますね。郵政公社法の五十二条三項では「役員は、在任中、任命権者の承認のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。」となっておりますが、現在、総裁がこうした兼業を行っているのは、松下電器産業株式会社、レンゴー株式会社、第一三共株式会社、株式会社インターネットイニシアティブの各取締役と、南海電気鉄道株式会社の監査役、株式会社東京放送の監査役、以上ですべてでありますか。

西川参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、松下電器産業、第一三共、レンゴー、インターネットイニシアティブ、この四社の非常勤の取締役、東京放送、南海電気鉄道の二社の非常勤の監査役を務めております。これは、一昨年の六月、私が三井住友銀行頭取を退任いたしましたその前後から務めているものでございます。

枝野委員 おやめになる予定はないんですか。

西川参考人 お答えします。

 この社外役員の兼業につきましては、既に、任命権者であります総務大臣の御承認をいただいておりまして、日本郵政公社の総裁、日本郵政株式会社の社長としての業務に支障のない範囲内で今後も継続していく考えでございます。

枝野委員 それぞれ社外役員で非常勤ですが、例えば直近でことしの三月と四月、それぞれの月に、トータルで結構です、各社ごとじゃなくても結構ですが、これらの社外役員としてどれぐらいの時間が拘束されたのか、日数と時間とをお話しください。

西川参考人 お答えいたします。

 民間企業六社の合計で、本年三月につきましては三日間で延べ三時間、本年四月につきましては三日間で四回の会議がございましたが、延べ五時間でございます。

枝野委員 今のは直接拘束された時間だと思うんですが、松下電器産業は、本社、大阪府門真市、レンゴー株式会社は大阪市北区、第一三共とイニシアティブはいいんですが、南海電気鉄道は大阪市中央区でありますが、いずれも平日に東京から出張されたのではないですか。

西川参考人 お答えいたします。

 大阪の会社につきましては、いずれも平日に大阪に向けて出張をいたしました。

枝野委員 今、新幹線、便利ですから、私も半日ぐらいで行ってきたりはしますが、常識的に考えれば、かなり一日に近い。いずれも取締役会等ですから、平日でありますよね。

西川参考人 お答えいたします。

 いずれも、大阪の場合も平日でございます。すべて飛行機を利用しております。先方まで、往復で約三時間半くらいの時間を要するかと存じます。

枝野委員 これら六社合計で結構でございますが、報酬はどれぐらいいただいているんですか。

西川参考人 報酬につきましては、せんだっての週刊朝日の報道によりましてあらぬ誤解を受けておりますので、公社総裁在任期間中は、四月にさかのぼりまして報酬をゼロとしていただくよう各社にお願いをいたしまして、そのように先方にも了解を得ました。したがいまして、報酬はゼロということでございます。

枝野委員 返上を決められたわけでありますが、決められる前の時点で幾らもらうことになっていたんですか。

西川参考人 これにつきましては、相手会社のこともございますので、お答えは控えさせていただきたいと存じます。

枝野委員 私は、あえて六社合計というふうにお伺いをしました。それぞれ上場企業ですから、それぞれの企業のディスクロージャーとして、社外役員に対するトータルの報酬額等については公表しているのがほとんどであります。その中の、例えば三人いる場合の配分等については、それは会社としては余り知られたくないということがあるかもしれませんが、六社トータルでありますから、相手方企業に迷惑をかけることはないと思いますが。

西川参考人 お答えいたします。

 先生のおっしゃるような考え方もあろうかと存じますが、各社によりましては、いろいろと神経質に考える会社もございますので、トータルとは申せ、金額の多寡が若干ございますので、この点は控えさせていただきたいと存じます。

枝野委員 では、総務大臣に伺います。

 幾らもらうことになっていたんですか。

菅国務大臣 兼業先の総額については承知をいたしておりません。

枝野委員 私の手元に兼業承認申請書の写しをいただきました、総務省から。この兼業承認申請書には、兼業に係る承認を申請しますと書いてあって、兼業先とか勤務の形態とか書いてあって、そこには報酬の欄があるんですが、なぜか、兼業先が営利企業の場合は報酬の欄の記載は要しないと書いてあるんですが、なぜですか。

菅国務大臣 この申請書は、特段決まった様式で定められているものではなくて、あくまでも参考までに総務省から郵政公社に様式を例示したものであります。

 いずれにしろ、総裁の兼業については、郵政公社総裁としての業務に支障がないこと、郵政公社の信用を失墜させるものでないこと、こういう観点から承認をしまして、営利企業は通例、報酬を得ることが当然であるのに対して、非営利企業については、さまざまな勤務形態が想定をされ、無報酬の場合も多いので、報酬の状況についてこのように規定しているというふうに私も聞いております。

枝野委員 そもそも、こんな承認申請書のひな形を郵政公社に渡しているとすれば、郵政公社法五十二条三項を総務省はわかっていないんじゃないですか。

 いいですか、「役員は、在任中、任命権者の承認のある場合を除くほか、」これはその承認についての申請書です、「報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。」金銭を得ないで他の団体の役員となることは、二項である政治団体等でなければ問題ないんです、承認要らないんです。金をもらってほかの仕事をやることについて承認を要するというのがこの条文の趣旨なんだから、幾ら金をもらっているのかと聞かなかったら何の意味もないじゃないですか。

菅国務大臣 今委員から御指摘のありました日本郵政公社法第五十二条第三項の趣旨は、公社役員が営利企業の役員等との兼業や報酬を得て他の事務事業へ従事することにより公社業務への取り組みがおろそかになり、郵政公社の信用を失墜させることのないように、営利企業の役員等との兼業等をする場合については任命権者である総務大臣の承認を要するものである、私はこのように理解をいたしております。

枝野委員 もう一つ、確認のために聞いておきましょう。

 郵政公社総裁は、郵政公社総裁に四月一日になる前から、日本郵政株式会社の社長であられました。現状では、事実上の株主は政府であります。つまり菅総務大臣であります。

 西川社長が社長に就任する際に、こうした兼業についてはわかって任命をしたんですか、あるいは黙認をされたんですか。

菅国務大臣 当時、西川総裁を社長にした際は、私は竹中大臣のもとの副大臣でありました。

 郵政株式会社の役員の兼業については法令上禁止をされておらず、特段の問題はないと思っております。

 いずれにしろ、西川社長におかれましては、今回、公社総裁、また日本郵政株式会社社長としての責任を果たしていただくこと、これが使命であると私は思っています。

枝野委員 郵政公社総裁の役員の報酬は、五十一条で、大臣に届けなければならないと。届け出た場合については、審議会に通知しなければならないということになっております。

 公社総裁の報酬は年間幾らですか。どちらからでもいいです。

西川参考人 お答えいたします。

 四月以降、日本郵政株式会社内規に基づきまして同社から報酬を受けておりますが、日本郵政公社からは報酬を受けておりません。

 なお、受け取った報酬額につきましては、四月及び五月分として、二カ月分で約五百万円でございます。

枝野委員 なぜ五十一条で、公社の役員の報酬は総務大臣に届け出なければならないんでしょうか。あるいは三項で、報酬の基準は、国家公務員の給与、民間事業の役員の報酬等、公社の経営の状況その他の事情を考慮して定めなければならないとなっていますが、なぜなんでしょう、総務大臣。

菅国務大臣 公社総裁の報酬は、郵政公社法に基づいて、公社みずからが、国家公務員の給与、民間事業者の役員の報酬、公社の経営状況その他の事情を考慮して定めることとなっております。

 このたび、日本郵政株式会社の代表取締役であります西川社長が公社総裁を兼ねることとなりましたけれども、西川氏が引き続き日本郵政株式会社から報酬を受け取るという事情を配慮して、公社は、西川氏について、公社総裁としての報酬を無報酬とすることというふうに聞いております。

枝野委員 郵政公社の報酬を初めとして、郵政公社に係る審議会として郵政行政審議会があります。郵政行政審議会は日本郵政公社や郵政民営化についてどのような役割を果たしているのか、簡単で結構ですので、総務大臣、お願いします。

菅国務大臣 郵政行政審議会は、日本郵政公社法等の規定に基づいて審議会へ諮問することとされております総務省令の制定、改廃、また、日本郵政公社の中期経営目標の認可、財務諸表の承認等において調査審議をするものでありまして、郵政民営化については調査審議の対象とはなっておりません。

枝野委員 郵政行政審議会の会長はどなたで、どういう経歴の方でしょうか。

菅国務大臣 当審議会の会長は森下洋一氏であります。同氏は、松下電器産業の社長、会長を経て、現在は相談役であります。これまで、日本経団連の副会長等々、数々の経済団体の役員、各種審議会の委員等も務められた方であります。

枝野委員 郵政公社及び日本郵政株式会社の松下電器産業との昨年一年間あるいは直近、統計の整っている直近でも結構ですが、一年間の取引額、その主な内容を教えてください。

西川参考人 お答えします。

 日本郵政公社と松下電器産業の取引実績につきましては、平成十七年度の取引実績といたしまして、郵便局用窓口端末機や書留複写機などの機器購入等で約百三十七億円の取引実績がございます。

枝野委員 今、公社だと思いますが、会社の方はないですね。

西川参考人 日本郵政株式会社と松下電器産業株式会社との取引実績はございません。

枝野委員 同じことをレンゴー株式会社との関係で教えてください。

西川参考人 お答えいたします。

 レンゴー株式会社につきましては、取引実績はございません。

枝野委員 さて、郵政公社の総裁や日本郵政株式会社の社長という仕事はそんなに楽な仕事なんですか。

西川参考人 お答えいたします。

 日本郵政株式会社社長あるいは日本郵政公社総裁の仕事は、特に、十月に控えた民営・分社化という大プロジェクトがございますので、大変重要な仕事であり、かつまた結構忙しい仕事でもございます。

菅国務大臣 今、総裁であり日本郵政の社長であります西川氏からお答えありましたように、私も、この十月一日の郵政民営化にとって二つとも極めて大事な仕事であると思いますし、それと同時に、この二つが一体となるような方向での経営というのも極めて大事だというふうに思っておりますので、そういう意味では、確かに二つでありますけれども、目指す方向というのは、郵政民営化の成功、そういうスタートというのは同じだというふうに思っています。

枝野委員 二つの仕事を兼ねていることについて、私はここで問題にしようとは思っておりません。それは、便宜上、事実上一体で民営化に向けた作業を進めていくのは合理的だろうと思います。

 そして、まさにそういった場合が想定されている。あるいは、日本郵政株式会社に限らず、ほかの新会社等との関係を考えれば、五十二条三項のような規定を置いておいて、公社の総裁が関連する新会社の役員を兼任するというようなことがあり得るということは、これはわかりますが、郵政民営化というのは国家を挙げた大プロジェクトと少なくとも自民党の皆さんはお考えになっているようでございますし、実際に、やるべき仕事というのは、百年余にわたる郵便局ネットワークを一気に株式会社化するわけですから、現場においても相当な混乱をしながら、それを何とか間に合わせるという作業をしているんだというふうに思っております。

 その先頭に立ち、なおかつ、公社総裁と郵政会社の社長を兼ねてまさにその先頭に立つ西川総裁には、まさに職務専念の少なくとも社会的責任があるのではないかと思いますが、総務大臣、これはどう思いますか。

菅国務大臣 私も、十月一日の郵政民営化に向けて極めて大事な使命を帯びて、社長、総裁を務めていただいておるというふうに思っております。

枝野委員 郵政公社の職員も、自分たちとは直接かかわらないところで自分たちの身分や職場が全部変わるということの中で、だけれども、百年余にわたる郵政ネットワークをしっかりと守っていくために、もちろん担当部局によっては違うでしょうけれども、まさに残業をいとわず休日出勤しながら一生懸命やっている方も相当おられるのではないかというふうに思うんですね。

 その先頭に立っている西川さんが、まあ、週刊誌で報道されたから四月以降は報酬は受け取らないとしても、実は、日本郵政株式会社社長としての報酬とは別に、これは御自身でお認めにならないとすると情況証拠から判断するしかない、つまり、各社の公表されている社外役員などに対する報酬を人数で割り算すると、どうも、郵政公社総裁としての、あるいは郵政会社社長としての収入に匹敵するぐらい、つまり、千万単位、二千万円とか三千万円とか、そういう単位のアルバイトを別途しながら片手間で民営化の仕事の先頭に立っていた、そういう指摘をされても仕方がないじゃないですか、総裁。

西川参考人 お答えをいたします。

 私は、二〇〇六年一月に日本郵政株式会社の社長に就任して以来、まことに微力ではありますが、これまで自分が培ってきた経験と知見をフルに発揮いたしまして、何としても郵政事業の民営・分社化を成功させたいと考えまして、努力をしてまいりました。この気持ちは、本年四月に公社総裁の兼務を総務大臣から命じられた後も全く変わるものではございません。

 その間、御指摘の、各社の社外取締役や監査役を続けてまいりましたが、自分といたしましては、この民営・分社化を成功させるという自分に課せられた重大な使命を果たすということを最優先と考えまして、その業務に支障がない限り、社外等のお仕事もさせていただいたつもりでございます。

 この点につきましても、先方はよく理解をいただいていると思います。したがって、先ほどお答えいたしましたように、かなりの回数、このところ会議の欠席をさせていただいているという現状でございます。

 以上です。

枝野委員 まず、そもそも先方先方という話、便宜上使われるのはやむを得ないと思うんですが、西川さんは、例えばレンゴー株式会社の取締役なんです、レンゴー株式会社側でもあるんです。松下電器産業の社外取締役とはいっても、法的には取締役なんですから、先方ではないです、あなた自身が松下電器産業を代表してもいるんです。先方先方というのは、余り西川さんのお立場でお使いになるべきではないと思います。

 総務大臣、前の総裁はどうだったんですか。生田さんは、生田さんも財界出身でいろいろなところの役員などをされていたと思うんですが、兼職はされていたんでしょうか。

菅国務大臣 生田前総裁につきましては、一社の兼業承認申請があり、平成十五年四月一日付で承認をいたしております。

枝野委員 どちらですか。これは公表して問題ないでしょう。

菅国務大臣 株式会社商船三井です。

枝野委員 経緯からすると、その一社だけはという話はわからないではないと思いますね。西川さん、六つもされているんですよ。

 もう一回だけ聞きます。郵政株式会社の社長として、では社長時代、昨年一年間で日本郵政株式会社から幾らもらっているんですか。そして、社外取締役、社外監査役では幾らもらっているんですか。

西川参考人 お答えいたします。

 日本郵政株式会社は、先ほども申しましたように、昨年度、年間約二千九百万円でございます。社外役員につきましては、お答えを差し控えさせていただきます。

枝野委員 本当にそれでいいんでしょうか。形式的には日本郵政株式会社には郵政公社総裁のような兼職禁止規定はありません、形式的には株式会社でありますから。将来的に、本当に民営化したときには、いろいろな経営判断で、社長がいろいろな社外取締役を兼務したりということはあってもいいかもしれません。

 現時点では、まさに国民全体の財産である、現時点ではそうですよね、国有財産である郵便局ネットワークを、いかにその価値を維持しながら、あるいはむしろ価値を高めて民営化をするかという役割を担っている、実質的には公務員じゃないですか。国民に対する責任を負っている立場じゃないですか。

 そして、その給料はどこから出ている話ですか。現状では、郵政ネットワークという国民の財産、これが民営化されることを前提にして、そして総裁、社長に支払われている報酬についてもその原資になっているわけですから、国民の財産じゃないですか。それで、いただいている報酬が非常に少ない、少なくとも、やってもらうんだからほかのところで収入を得てもらおうという物の組み立て方をするなら一つの考え方だと思いますが、二千九百万円の報酬というのは、これ、事務次官の給料より高いですよね、大臣。

菅国務大臣 高いです。

枝野委員 お役人の中で一番給料が高い事務次官の給料よりも高い給料で、まだ海のものとも山のものともわからない、これが国民の財産を本当に大切に、価値を高めてうまく民営化できるのかどうかわからない日本郵政株式会社の社長である西川さんに払っているんですよ。事務次官よりも高い給料を払っているんですよ。その事務次官は、公務員として職務専念義務があって、アルバイトなんかをして別に収入なんか得ちゃいけないんでしょう。

 西川さんだって、道義的には同じ立場じゃないですか。総務大臣、そう思いませんか。

菅国務大臣 ただ、日本郵政株式会社については、そのような規定はなかったと思います。

枝野委員 菅大臣は、もしかすると経済や社会のあり方については意見は違うかなと思いますけれども、大変すぐれた力をお持ちの方だと私も一目置いて見ているので、今のような形式的な逃げの答弁をされるとは大変残念であります。

 私は、法的なことを聞いているんじゃありません。法的なことはわかっています。わかった上で、道義的、社会的責任として、事務次官を超えるような報酬を、まだ利益が上がるかどうかわからない、民営化することによって郵政ネットワーク、ぼろぼろになってだめになるかもしれない、そうさせないために、しっかりとした人についてもらうために、事務次官よりも高い給料を払っているんじゃないですか。

 事務次官よりも高い給料を払って、そして民営化に向けてまさに専念してもらって、それでもだめかもしれないことはあるわけですから、まさに社会的、道義的責任として、そこに専念する、職務に専念するというのが、法律に書いていなくたって当然のモラルじゃないですか。そう思いませんか、大臣。

菅国務大臣 西川氏を郵政の社長にお願いするときに、竹中大臣が当時お願いをしたと思いますけれども、そういう中で、事務次官より高い給料、それのことでお越しいただいたということはないと私は思っております。当時、多分、西川氏がここに来る前の年俸というのは、これはあくまでも推測ですけれども、常識からすれば、これの何倍かいただいていたのじゃないかなというふうに思います。

 そういう中で、これは竹中大臣から私自身聞いたところでありますけれども、まさに十月一日の民営化について、今日までの西川氏の力量、経営手腕、そうしたものの中でお願いをし、この収入をしていただいたところだというふうに、私は経緯というものを聞いております。

 ただ、そのことと兼業が云々ということは全く別だと思いますけれども、そういう経緯があってお願いしたということはぜひ御理解をいただきたいと思いますし、また、この兼業というのは、ここに来る前にかなり整理されたというふうにも私は聞いております。

 また、私自身、郵政公社の総裁を、これは私が任命したわけでありますけれども、そのとき私の判断基準とさせていただきましたのは、新たに取締役をつくることじゃないということ、また、九月三十日までの六カ月間でありまして、西川氏からも、それまでの間に時期が来たら順次整理をしていくということも、実は私、報告を受けております。

 また、郵政公社としての業務に支障がない、さらには、公社の信用を失墜することがない、そういうことを西川氏との話し合いの中で私自身が確認をいたしましたので、総裁を任命させていただいたところであります。

枝野委員 西川さんがこの仕事につかれる前よりも収入が大幅に減っておられるだろうなということは、それはある意味お気の毒だなと見る側面はあるかもしれません。

 だけれども、まさに公務に携わっていただくわけですよ。それは、公社総裁だけでなくて、現時点での日本郵政株式会社の社長というのは、事実上の公務ですよね。それに携わっていただくための報酬というのは、民間人でばりばりやっていただいているときとは相当下がるというのは、これはやむを得ないじゃないですか。

 それでも、やはり公務、要するに天下国家のためという言い方がいいのか、社会のためという言い方がいいのか、そのために汗をかいてくださいというのが公務の役割であるし、多分、菅大臣もそうだと思いますが、国会議員の多くだって、国会議員をやらないで商売をやっていた方がずっと金もうけになるかもしれないと思っていたって、だけれども国会議員をやるんだ、そういう人にこそやってもらわなきゃいけないんだ、そういう世界だと私は思いますよ。実際、例えばアメリカなどのように、民間と政府を行ったり来たりする世界でも、政府にいるときは安い給料でも頑張るんだということが常識ではないかと私は思います。

 そうした中で、事務次官を超える給料をちゃんとお支払いになっているわけですから、むしろそれは竹中前大臣の責任かもしれませんが、就任をしていただくときに、それは、今この民営化という国家的なプロジェクトを先頭に立ってやってもらう以上は、李下に冠を正さずという言葉もあるし、それから、郵政公社などで働いている人たち、あるいは郵便局にお金を預けている人たち、こういう人との責任の関係からも、その職務に専念をして、ほかの、少なくとも、収入を得て、しかも定期的に取締役会に出席しなきゃならない取締役とか監査役というのはその時点でやめていただくというのが、私は、郵政民営化が大事なプロジェクトであるのだとするならば、まさに当然のモラルだというふうに思うんですが、大臣と総裁の御意見を伺います。

菅国務大臣 私も、この郵政民営化というのは一大事業だ、このことは認識をいたしております。

 そういう中で、今報酬の話がありましたけれども、私は、報酬が高い低いじゃなくて、そういう経緯の中で、西川さんにこの十月一日以降をまず託したい、そういう中で、日本郵政株式会社にお願いした、そういう経緯があったということを実は御紹介させていただいたところでありまして、私自身、この四月一日に公社総裁を任命するに当たり、先ほど申し上げましたけれども、この九月までの間に、総裁として整理するものは整理していくということも私と西川総裁の間で話をしてきましたし、また、業務に支障を来さない、そういう判断をさせていただきました。

 それは、すべてそういう状況の中で実はお引き受けをいただきましたので、とにかく郵政民営化のために全力で取り組んでいただきたいというふうに考えています。

西川参考人 お答えをいたします。

 私は、繰り返しになりますが、郵政民営化という国家プロジェクトを何としても成功させなければならないという考えで、公社並びに日本郵政の業務を最優先と位置づけまして、やってまいっているつもりでございます。この間、他社の兼務のために仕事がおくれる、積滞するといったことはまずなかったというふうに考えております。

 兼務しております各社につきましても、一昨年の六月からのことでございまして、かなり期待も大きいものがございますので、しばらくその期待にこたえていく必要があるということで、日本郵政株式会社の社長に指名をされる際にも、竹中大臣を初め関係者にその旨を申し上げ、了解をいただいて、続けてきた次第でございます。

枝野委員 総務大臣、竹中さんが選んだときの問題だなというのを、言える範囲内ではっきりと言っていただいたような気がいたします。

 総裁、業務に支障を与えていないというのは、総裁の主観的な判断なんですよ。何よりも、私はインセンティブの問題だと思いますよ。総裁、社長が、月に三日、本業とは別のところのアルバイトで仕事から抜ける。それで、本業と同じぐらいの、しようがないですよ、教えてくれないんですから。今、情況証拠から判断すると、本業と同じぐらいのアルバイト料を別に取っている、平日の昼間抜け出して。ああ、トップがそういう会社をつくるんだ、民営化というのは、働いている人の中でそう思う人が出てきたっておかしくないじゃないですか。現に、そういう声が聞こえてきているんですよ。社長がアルバイトをして高いバイト代を取っている、それで通用する会社なんだ、この会社はと。

 こういうことだけでも、西川さんのやられていることは、私は経営者の判断として、いや、従来のもともと民間の企業としてはありなのかもしれないけれども、役所から民間にしようというこの民営化の段階として、私は、もしそれで本当に問題ないとおっしゃっているんだったら、それはやはりピントがずれていると言わざるを得ないというふうに思いますし、そういった声を払拭したいんだったら、なぜ四月以降だけ返上されるのかもよくわからない。社長になられた時点から、やはり兼業していたのは間違いでしたということで、おやめになって、全部返上されるべきじゃないかと思う。

 あるいは、関連する会社の株主との関係でも、私は今の答弁は見過ごせないと思いますよ。それこそ、非常勤取締役あるいは監査役ですから、非常勤であるのはいいわけですけれども、まさにそれぞれの役職については、それぞれしっかりとした仕事、役割を果たしてもらうことを、松下電器の株主だって、東京放送の株主だって当然期待しているわけじゃないですか。これも、私は、経済人のモラルとして、何をおっしゃっているのかなと言わざるを得ない。

 さらに申し上げますと、先ほどの話のとおり、松下電器産業に問題があるとは全然思いませんが、郵政民営化などを含めて、郵政行政審議会のトップが、松下電器産業の元社長が会長なわけですよ。そこの社外取締役をされているというわけですよ。そこに百億単位の取引があるわけですよ。これこそ李下に冠を正さずという世界じゃないですか。

 あるいは、郵政民営化については、あれだけ政治的、社会的大問題になったわけですから、これからもメディアは検証していかなきゃならない仕事ですよ。その検証するメディアの東京放送の監査役という話も、これまた李下に冠を正さずという話ではないですか。

 私は、西川社長はこの件についてしっかりとけじめをつけられないと、民営化に対する国民の信頼というものは到底得られないんではないか、そのことを指摘して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

仙谷委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 きょうは、今、枝野委員の質問を聞いておりまして、民間が本業であり、行政の側にアルバイトに来ているという話がありましたけれども、私はその逆で、官業が本業であり、それから、またほかのところで、民間のところでのアルバイトというんでしょうか、収入を得るという、報酬を得るという、その点に関しても質問をしていかなければいけないなと。ある意味、モラルというものが、今、時代によって非常に変わってきているというか、非常に緩んでいるのではないかという思いを、今の質疑を聞いていて感じております。

 今現在は、国家公務員法の一部改正、人材バンクとも言われますけれども、どちらかといえば天下りあっせん法というような、こういった法案の審議が進んでおります。また、収賄容疑で社会保険庁の技官の逮捕、あと、林野庁の天下り先となっている独立行政法人緑資源機構の官製談合など、国家公務員関連の不祥事というものは相も変わらず次々と明るみになっております。この点には、やはり天下りというような問題というのも随分とかかわってくるんだというふうに思えてなりません。

 今回の国家公務員法の改正に関しては、再就職、天下りについては、国家公務員の不祥事を防止する視点というものがないような思いがしておりますし、ないという気がしております。やはり、この点に関しては、国家公務員倫理法また倫理規程とは別に、国家公務員法の一部改正案そのものに、再就職する国家公務員について明確な倫理規定を入れておくことが必要なのではないかというふうに思っております。

 国家公務員のあり方について、先ほどもちょっと触れましたけれども、アルバイトの問題や、独立行政法人をめぐる天下りと渡り鳥や、そして随意契約の問題について質問をしてまいります。

 いわゆる国家公務員のアルバイトというんでしょうか、報酬を別からいただくということについては、贈与等報告書で自己申告をされております。私自身も、先日、厚生労働省に行きまして、四半期ごとにとじてある報告書を見てまいりました。後で述べますけれども、普通に暮らしている国民や、私の埼玉県の、普通の国民の方の平均年収から見れば、驚くべき額を得ているような公務員の方もいらっしゃいました。

 人事院の資料では、国家公務員は全部で九十三万人、この一部の人たちのアルバイトを野放しにすれば、毎日懸命に、まじめに働いていらっしゃる国家公務員の皆様の士気にもかかわるんだと思っております。

 まず最初に、人事院の方に伺いますけれども、国家公務員が受け取りました講演料報酬や贈与に関して贈与等報告を義務づけておりますけれども、根拠法令、制度趣旨について簡単に、手短に御説明ください。

大村政府参考人 贈与等報告書の根拠法令、制度趣旨についてでございますが、国家公務員倫理法は、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招く行為の防止を図り、公務に対する国民の信頼を確保することを目的としており、その第六条第一項において、本省庁課長補佐級以上の職員は、事業者等から一件五千円を超える贈与や報酬等を受けたときは、贈与等報告書を各省庁の長またはその委任を受けた者に提出しなければならないというふうに規定されております。

 この贈与等報告書の制度は、職員と業者等の接触について透明性を確保するということをねらいとしております。

小宮山(泰)委員 その報告書でございますけれども、国会にも提出されておりますけれども、昨年九月発行の平成十七年度版によりますと、贈与等報告書が大変多い省と少ない省があり、各省によっても格差があるんだなというふうに見てとれます。

 最も多いのが厚生労働省で四千三十六件、法務省で二千五十件、約一千件台で文部科学省、国税庁、そして外務省がございます。そのほかの省庁では、社会保険庁は十三件、防衛施設庁と公安審査委員会などはゼロ件という報告になっておりました。

 厚生労働省が群を抜いて四千件と多い。今までもいろいろございましたけれども、国家公務員が講演などで報酬を受け取っても、報告書を提出すれば法的に問題がないとして、何も監督指導がないんじゃないかというふうにも見てとれます。なぜこんなに厚生労働省が群を抜いて、四千件を超すこういった報告書の提出につながっているのか、その理由をぜひ御説明ください。

    〔委員長退席、古川(元)委員長代理着席〕

宮島政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、厚生労働省の贈与等報告の件数、各省の中で一番多いわけですが、贈与等報告書のうち、ほとんどが国立高度専門医療センターなどに所属している専門的知識を有する研究者などからのものであり、そういう専門的知識を持っているので講演等の依頼を受ける機会が多いというふうに認識しております。

小宮山(泰)委員 専門官が多い。確かに、見ますとそうかもしれません。しかし、その中でも、利害関係者が非常に多く講演依頼をしているというのが見てとれます。

 各省に倫理監督官を置いて、職員に必要な指示、助言を行うと決められております。贈与等報告書は講演等の事後の報告ですけれども、相手が利害関係のある業者である場合は、事前に倫理監督官の承認があったかどうかも報告書の末尾に記入するようになっております。

 厚生労働省では、四千件の贈与等報告がありますが、承認を得られなかった例は過去三年間で何件あるか、把握されていらっしゃいますでしょうか。また、承認されなかった具体的な例というのがありましたら、教えてください。そして、利害関係の基準の判断は各省庁で決めることになっておりますけれども、厚生労働省の利害関係の判断基準について簡潔に御説明ください。

宮島政府参考人 平成十五年度から十七年度までの間で、倫理規程の講演等の事前承認で承認を得られなかった件数、これは一件ございます。

 この事案は、利害関係のある医療機器メーカーから医療技術に関するインタビューを受けて、同社のホームページへ顔写真が、その記事、資料とともにウエブ上で広く紹介されるということでございましたので、これについては、公正な職務の執行に当たらなければならない国家公務員においては、企業の製品のPRにつながりかねない不適切なものであるというようなことを判断基準といたしまして、承認を行わなかったというものでございます。

小宮山(泰)委員 今のお話ですと、ウエブ上に公開されなければ、大体、そういった利害関係があったとしても、受けるということになるんでしょうか。

 厚生労働省、昨年十月から十二月までの四半期の記録をお出しいただきました。その中で、二万円以上の対象の贈与等報告書が九百十九件提出されておりまして、この中に、三カ月で九百三十三万円もの講演、原稿料報酬をもらっている国家公務員がいます。もし年間通して同じような活動をしていたとしたら、三千七百万円を超す収入を得る。大臣、先ほどの話ではないですけれども、この場合は、国家公務員として、今度は本業以上にもらうような、恐らくはそういったアルバイトですよね。(発言する者あり)自民党の先生はうらやましいと言いますけれども、本当にそうなんでしょうか。

 公に対してしっかりとした告知をしたり、情報提供するのは、公務員としても当たり前のことだと思います。それを、対価をもらってやるということがうらやましいなんて言っている場合ではないですよ。お金だけもらえばいいというものではないと思います。

 その点も、公に対しての思いとか、まじめに働いていらっしゃる公務員の人たちが、本当にこんな人がいるんだということになったら、やはり優秀な人材というものが逃げていってしまうのではないかという懸念も非常にいたしますし、これからも、官製談合や、そうやって情報をとろうとして、裏金であったり、逮捕者というのはなくならないんだという思いをして、今、ある意味、隣からの不規則発言に答えてはいけないとは思いますけれども、私は、非常にこの点の倫理観も疑問に思います。

 さて、その中でですけれども、九百三十三万円も三カ月でもらっている方。ほとんど毎日のような形でいただいていて、すごい日には一日で四回。朝七時から八時十五分、夜は十八時から十九時、場所を変えまして十九時半から二十時三十分、そしてまたもとのところに戻って二十一時半から二十二時三十分、各十万ずつもらっています。こんなことを繰り返している人もいるんですよ。これだけやって全部講演ということになっていますので、スライドを使ったりとかしたんでしょう。一般常識から考えてみても、やはりそんなことも考えていくと、これの準備をしているだけで本業はどうなってしまっているんだろうという疑念だってもちろんあります。

 しかも、この方ですけれども、非常にたくさん受けておりますので、国家公務員法第百三条の規定に基づいて離職後二年以内に営利企業へつく場合の再就職を承認したものについて確認をさせていただきましたら、平成十六年度、この関係においては、全部で三社、OBの方四名が行っていらっしゃるところからの報酬も得ているというようなことであります。実を言うと、大部分は納入業者であったりとか、そういう意味では利害関係者からなんです。こういう非常に高額報酬をここから受け取っているということに、果たして国家公務員の倫理に対して妥当なのか、本当に疑問に思います。

 この点に関しての見解を、ぜひ局長、お願いいたします。

松谷政府参考人 講演等を行いまして報酬を得る場合には、当然ですけれども、国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程に基づいて適正に行わなければならないわけでございます。

 講演等を行う場合は、通常は、勤務時間外など日常業務に支障がない範囲内で行うこととしておるとともに、もし平日の勤務時間内に講演を行うという場合には、当然ですけれども、年次休暇を取得した上で行うということとなっております。

 その報酬の算定につきましても、その基準の範囲内ということで行っているというふうに報告を受けているところでございます。

 今委員御指摘の職員につきましては、特定の医療分野においてトップクラスの専門家の医師であるということから、多くの講演依頼等があったと承知しておりまして、特別な事例であるというふうに考えております。

 この先生は、英文雑誌なんかでも、インパクトファクターという、ほかから引用される指標がございますが、それが一千点を超えるというようなことで、我が国では一千点を超える方はこの先生を含めて二人しかいらっしゃらないというような方であるというふうに伺っております。

 なお、今御指摘の当該職員の一日四回の講演につきましては、いずれも勤務時間外でございまして、業務に支障がない範囲内で行ったというふうに伺っております。

 以上です。

小宮山(泰)委員 時間外なら何でもいいんでしょうか。

 では、通告しておりませんけれども、ちょっとお伺いします。

 厚生労働省では、大体、講演は一時間幾らぐらい、四百字詰め原稿一枚幾らぐらいというような規定を設けていますか。それと見合わせて、この額というのが妥当なのか、そういうことは審査されないのか、ぜひお聞かせください。

    〔古川(元)委員長代理退席、委員長着席〕

宮島政府参考人 講演については一時間約二万円相当、それから、原稿については、たしか、ちょっと私も今手元にないのであれですが、一定の字数について、四千とか何かそんな基準で決まっているという、そういうことでございますが、この御指摘の研究者につきましては、講演及びその原稿について申請をいたしてきておりまして、承認手続を得ているということになっているわけでございます。

小宮山(泰)委員 規定があるんですよ、やはり公務員でありますので。そういう意味では、民間の方が講演料をもらうというのとは、そこは国家公務員としてやはり違うんではないか。高度で専門家かもしれない、日本でも有数の方かもしれませんけれども、そこは、公に所属をし、公のためとしての知識を利用される方であるならば、その規定というものはやはり守られなければ、モラルというものは守られないんだと思います。

 このほか、実を言うと、厚生労働省の上位の方、先ほど話した国立循環器病センターの方でありますけれども、その次の方だと、国立社会保障・人口問題研究所の方、ほとんどが原稿料で、この三カ月間だけで二百万以上を稼いでいらっしゃいます。また、あとの三番目、四番目、五番目と私が計算したところによると、国立がんセンターの方々でございますけれども、皆様全員、三カ月間で百万以上を給与のほかに、先ほどの話でありますと、多分時間外でしょうね、平日の夜も週末も働いて、さらに稼いでいる方々がいらっしゃいます。

 そうやって考えますと、うんうんうなずいていただいておりますけれども、ちょっと大臣、何か感想がありましたら、ぜひお聞かせください。

菅国務大臣 今、私は小宮山委員からのことで初めて聞く話でありますけれども、そうしたことが事実であるとすれば、最初言われた方は、非常識で理解に苦しむ額だなと私は思っています。

小宮山(泰)委員 非常に国民の常識にかなっている答弁だったと思います。

 正直言いますと、どこでどうした、どういった開示をしたということまでは、すべてを調査しては、現地調査までは行っておりません。もしかすると、本当の非常識どころではない問題が中にはある可能性も高いと思います。ぜひこの点は調べられることを願っておりますので、後ほどこの点に関しては質問もさせていただきます。

 この問題において、やはり独立行政法人の問題も当然触れていかなければなりません。

 この中で見ておりますと、国家公務員倫理法は国家公務員の地位を有する特定独立行政法人にしか適用されませんので、現在百一の独立行政法人がありまして、平成十七年度で、そのうち五十六法人が国家公務員と同様、倫理報告書の対象となっております。このうち、九独立行政法人が三けたの報告書を提出し、十八の独立行政法人はゼロ件ということになります。

 この中で特に目につくのは、独立行政法人国立病院機構の贈与等報告書というのは二千八百七十二件ございます。法務省よりも多いし、大臣のいらっしゃいます総務省は四百十五件、二万円を超える報告書になれば三百十六件でありますので、いかに多いかということがおわかりになると思います。

 そして、提出していただきました四半期の中においての、独法の二万円以上の報酬を受けた件数というのは九百九十九件。この案件を見ていきますと、非常にまじめで、地域医療に貢献された上で報酬をいただいているような方という姿も浮き彫りにされますけれども、それとは別に、約六割が薬品会社の依頼による講演収入ということで、どちらかといえば、このことは非常に重たく見なければいけないのではないかと思います。

 具体例でありますけれども、昨年十月から十二月の中において、十九回講演し、講演報酬合計が百八十四万円という循環器科の医長さんもいらっしゃいます。これも、もちろん講演の依頼主はすべて薬品会社であります。

 また、国立病院の医師と薬品会社は利害関係にあると私は考えておりますが、すべて、倫理監督官の事前審査をパスしております。これは本当にこのままでいいんでしょうか。やはり、今までも薬害であったり、いろいろな審査員等にこの人たちはアドバイスしたり、部門会議等いろいろなところでかかわる方々だと思いますが、この点に関して、利害関係ありという判断のその基準について簡単に御説明ください。

河村参考人 お答えいたします。

 独立行政法人国立病院機構は、特定独立行政法人でございまして、国家公務員倫理法が適用になるわけでございます。この利害関係者の判断というのは、国家公務員倫理規程に基づきまして、具体的には、その倫理規程二条で、例えば、許認可あるいは補助金あるいは契約事務をする人と、それから、その相手方との関係を利害関係者として認めるという形になってございます。

 国立病院機構、件数が相対的にほかの人よりも多いのではないかというお話がございましたけれども、やはり多くは、どちらかというと、その道の大家というか、臨床及び臨床研究で名を上げている人が引っ張りだこになってやっておるケースというのがございます。(小宮山(泰)委員「判断基準を聞いています」と呼ぶ)はい。

 判断基準は、先ほど申し上げたように国家公務員倫理法が適用されるわけでございますから、その倫理規程二条で許認可、補助金、契約の事務を行う人と、それから、その相手方との関係を利害関係と認めておるということでございます。

小宮山(泰)委員 先ほどもありましたけれども、利害関係といっても、断られたのは、厚生労働省においては一件。つまり、顔が出たり表に出るものは断ったけれども、そのほかの利害関係、あると報告書に出ておりまして、当然、利害関係のあるところにおいては、各省の倫理監督官の事前のチェックも受けているということになります。そして、これは大抵の場合は、各省庁、大体事務次官が、この場合も、厚生労働省の場合も事務次官が倫理監督官として当然これに関しては決定をする立場にあるわけであります。

 今話を聞いても、どうなんでしょうか、石田厚生労働副大臣にもお出ましいただいておりますけれども、今厚生労働委員会の方においては、社会保険庁の看板のつけかえ、独立行政法人化をする、そして非公務員化ということで話をされておりますけれども、今公務員化であるならば、まだこういう利害関係のあるところというのはチェックをすることは可能ではあると思います。

 また、三年前、監修料の問題で社会保険庁に関しては大きな問題があった。当然、この倫理規程に関しても、社会保険庁だけではなくて、「国家公務員の倫理保持のためのルール」でも、「国民の疑惑や不信を招くような行為を防止するためのルール」ということで、「監修料の受領が規制される範囲」というようなリーフレットまで印刷して、また、これはどこがつくったのかというのも気になるところなんですが、こういったものまでつくっています。

 その結果として、社会保険庁の方に伺いましたら、これは公務員だからできる部分があると思うんですね、純粋な。しっかりと、件数を本当に減らして頑張ってきているんですよ。厚生労働省本体は四千件を超しますけれども、社会保険庁は、全体で九十二件ほどということで、物すごく頑張っているし、そういった報酬とか、疑いを持たれないように、そういう意味では業務としてやりましょうというようなことで頑張っていらっしゃる。これは、純粋な公務員であるからこそこういった頑張りができるんだという、すべてがいいとは言いませんけれども、ある面、私は、日本の公務員の非常に律儀でまじめな一面が出ているんではないかと思っております。

 そこで、石田副大臣にぜひ伺いたいんですが、国家公務員のアルバイトについては、本省にしても所管の独立行政法人にしても、野放しというのはいけないんだと思います。今後、少なくとも、ほかの省庁や独立行政法人のように、アルバイト件数を減らしていくとか、やはりもう少し、せっかく厚生労働省等でつくられた規程があるならば、公務員としての規程の範囲内でやるように徹底をするとか、また、利害関係がある納入業者であったりとか、そこを、書いてあるところに関しては、もっと審査を厳しくするということを徹底することが必要だと思いますが、審査を厳しくすることに対しての見解をお聞かせください。

石田副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 職員が利害関係者からの依頼に応じて報酬を受けて講演等を行う場合は、国家公務員倫理規程第九条の規定に基づき、事前に倫理監督官の承認を得ることとなっております。厚生労働省では、今委員御指摘のとおり、事務次官がその職に当たっております。過去にも、一件ではありますけれども承認しないケースもあり、適切に運用を行ってきている、このように考えております。

 議員御指摘の事例につきましては、高度の専門性を有し、関係者からの依頼が多くならざるを得ない職員に関する特別な事例もあったと思いますので、利害関係についても、事前に届け出をして適切な審査を行っている、このように考えております。

 いずれにしても、これは疑念を抱かれないということが一番大事だ、このように思っておりますし、私は、公務員として、仕事を通して世界でトップクラスのいろいろな知識を身につける、技術を身につけた方が、それをある意味では還元していくということも大事なことではないか、こういうふうにも思っておりますけれども、やはり、規定に従ってこれをやっていくということは当然のことだと思っております。

小宮山(泰)委員 ぜひ、規定に合っているのかのチェックもしていただきたいと思います。

 実際、行って見ると、ファイルして保管して終わりなんですよ。今回も、人事課というんですか、褒賞とかやるところ、ここが大体各省庁を取りまとめて、そこで上がってきた件数だけを人事院の方に届けるという形で、一定以上は内容も人事院の方でごらんになるそうですけれども、やはり、その後の事後チェックで、これはおかしかったんじゃないかと取りまとめるという一覧にもされていない。

 出せばいいということでしょうし、事務次官が、厚生労働省の中で四千件ものチェックを一個一個しているわけですね。恐らく、だれかまたさらに部下とか、そういったところに任命をしてやっているというのが通例であって、やはりこういった責任の所在というものが明確にならないような仕組みというのは、厚生労働省が特に突出しているものですから、ぜひ厳しくした方がいいと思います。これは提案です。

 そしてまた、贈与等報告書の制度を実効性あるものにするということで、下村内閣官房副長官にも来ていただいておりますけれども、国家公務員法及び倫理規程に係る指導監督を行う省庁は、ではどこかと問い合わせましたけれども、判明するのにも時間がかかるという、本当にあいまいな状態が起こっております。結局、人事院に事務局を置く国家公務員倫理審査会、会長は元裁判官の方がなされているというお答えでありました。今日、政治の問題として各省庁を束ねる内閣官房にぜひ伺っていきたいと思います。

 一点目は、贈与等報告書、今話しましたけれども、四半期ごとにとじ込んでありますけれども、各省がどのようにこれを生かし、チェックし、問題があれば指導をするという実効性ある体制にはなっていないと思います。この点に関して見解を伺いますのと、そして、内閣として、国家公務員のアルバイト、特に利害関係業界から報酬をもらって講演を重ねているという実情は改善しなければいけないと考えております。今後の対応についてお伺いします。

 実際には、これは、薬害のときであったり、さっきの社会保険庁の違反の逮捕においては、同窓会で長年積み上げて、十万とか二十万とか渡されて、長年積み重ねた結果であります。やはりこの問題は、一回一回ではなく、トータルで見て、また、しっかりと通年で見て、その人がどうなっているかというのを見ない限りは、もしかするとそこでゆでガエルというような状態もあると思いますが、そういったいろいろな利害関係、そういった温床になってしまう危険があると思いますので、この点について、二点、お答えください。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 小宮山委員が先ほど御指摘をされたことは、ルールの中にのっとったことで、法的には問題がないことだというふうに思いますが、ただ、国民感覚として、本業以外で三カ月間で九百万を超える収入を得るということはいかがなものかということについては、同じような問題意識はあるわけでございます。

 しかし、不正をしているわけではないわけでございまして、そういう意味で、今のルールの中でも、国家公務員倫理法で、職員が利害関係者からの依頼に応じて報酬を受けて講演や著述を行おうとする場合には、倫理規程第九条第一項において、御指摘がありましたが、あらかじめ各省庁の倫理監督官の承認を受けなければならないというふうになっておりまして、既に事前にチェックする仕組みは設けられているところでございます。

 また、事業者等から報酬等を受けた場合には、先ほど御指摘がありましたが、事後に贈与等報告書を提出し、各省庁の長の個別の審査を受けることとなっているということで、そういうルールはきちっとあるわけでございまして、それをいかにどう徹底するかということについての御疑問を先ほど述べておられましたが、それはやはりあると思います。

 ですから、このような事前承認の仕組み、講演や著述等の内容に見合わない高額の報酬、またそれが不適切な形で行われるというようなことがあったとしたら、それは公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれが強い、そういうことから設けられているものでありますから、それをさらに徹底する、まずはそういうことによって、そのような疑問について、疑念に対してクリアすることはできるのではないかと思いますが、各省庁において、講演等の報酬が基準に合致しているかどうか、適切に審査がなされるように、改めて徹底をしていく必要があるというふうに認識をしております。

小宮山(泰)委員 ある意味、徹底されているから、こうやって数字が出てきました。しかし、先ほども官房副長官がおっしゃったとおりに、違法では確かにないとは思いますが、疑念は持てます、疑念は。それを持たないようにするための倫理規程だと思いますので、そういう意味では矛盾があるんです、この制度は。

 提出して、その後、積み上げてというかファイルして、端っこの方の部屋の、私も厚生労働省だけは行かせていただきましたけれども、副大臣、ごらんになりましたか。(石田副大臣「いや」と呼ぶ)ぜひ、一回ごらんください。手前、ちょっと段ボールがあったりとかしてと言っちゃいけないのかしら、非常に狭いところにいろいろな作業をしていますので、一番奥の方のキャビネットのところにざっと並んでいるだけなんですよ。二万円以上であれば、だれでも閲覧ができるというような規定にたしかなっているかと思います。ですので、あの状態で、ではそれをどう活用するんだと聞いても、そのままだとおっしゃるわけですから、今回、非常に残念なんですけれども、実は、社会保険庁の関係で先日逮捕された方の記録を調べたいと思いましたが、捜査が入っている関係で、これは社会保険庁の本体にはないんです、各事務所ごとに全部おりていってしまいますので、東京の方の事務所が担当かな、そちらの方にもう捜査が入っていて、今これは調べられないということで、ちゃんとこの倫理規程にのっとって十万ずつが渡されたことが提出されたのかを確認することができませんでした。

 これは、していなければそれはもちろん問題でありますし、してあったとしても今回の逮捕につながったということを考えれば、どちらにせよ、この規程というものがせっかく出されていて、もしかすると、途中で何か犯罪に流れていってしまうのをとめることが可能だったチャンスもあるんですよ。そのチャンスをつぶしてしまっているのかもしれません。

 ぜひ、この点に関しては考えを改めていただいて、出してもらったこの報告書というものをちゃんと精査し、統計化する、データ化するということをふだんから恒常的にやるべきだと思いますけれども、改めてもう一度御答弁をお願いしたいと思います。

下村内閣官房副長官 小宮山委員が基本的に思っておられるように、公務員の方々は、まじめに倫理規程にのっとって、もうほとんどすべてに近い方々が職務に専念されていることは、これは事実であるというふうに思うんですね。ただ、先ほどのような極めて異例な金額の、ある意味ではアルバイトといいますか、公務員の報酬を超えた、給料を超えたアルバイト料を取っている。これは、利害関係があるなしにもかかわらず、いかがなものかという率直な国民の思いもやはりあるというふうに思います。

 ですから、それはやはり程度問題というのはあるかと思いますが、しかし、今の法律の仕組みそのものは、これは問題があるわけではないと思います、事前チェックも、あるいは事前申請もすることになっておりますから。しかし、その後のさらなる徹底ということについては、改めてこれはきちっと各省庁に働きかけをするようにいたします。

小宮山(泰)委員 ぜひよろしくお願いいたします。やはり疑念を持たれない、そして、どういうときにもきちんとしているんだ、やはり日本の国家公務員というのはすばらしいと思っていただけるように、政治の側も環境を整えるのも重要だと思っております。

 時間がなくなってまいりましたので次に行きますけれども、独立行政法人の関係に関してでありますが、独立行政法人が非公務員化していきますと、この倫理規程等が適用されなくなります。後ほど質問という思いはありますが、独立行政法人労働者健康福祉機構の例をとってみましても、毎年約四百億円の運営交付金、補助金を受けており、随意契約の比率も高く、一般競争入札といっても落札率一〇〇%が大変多い独法でもあります。この独立行政法人の随意契約の割合を低くし、契約の公平さと透明度を高めるということも健全な独立行政法人の運営になるという思いがしております。

 こういったところからまた、緑資源機構のような税金の無駄遣いとか、単価が上がるような、そんなようなところにつながってはいけないと考えておりますが、残念ながら、これは非公務員化してしまったりする、また、あの事例でも逮捕者が出ておりますけれども、運営交付金、補助金の使途は、相手先が公益法人の場合はもとより、民間会社に事業委託などを通じて補助金が流れていく、そういったケースが多々ありますので、やはりこの点に関しても徹底してちゃんと追っかけることができる、きちんと使われるように、わかるようにする体制はとるべきだと思いますが、この点に関して大臣の御見解をお伺いします。

菅国務大臣 非特定独立行政法人の話かなというふうに思いますけれども、そうした、公務員でありませんので、公務員倫理法というのは適用することというのは困難でありますけれども、しかし、こうした非特定独立行政法人のうちでも、政府により、今委員から指摘がありました出資だとか、あるいは補助金、そういう中で、役職員など法令によって公務に従事する者とみなされることについては、やはり国等の施策に準じて職員の倫理保持のために必要な施策を講じることというのは当然必要であると思いますし、そこについて行うべきだというふうに思います。

 そうした非特定独立行政法人につきましても職員の倫理保持に努めることは言うまでもありませんけれども、所管するそれぞれの省庁においても、ここはやはりきちっと指導し、職務の執行に公正さというものを大事にし、国民から疑惑のないようにすることは当然のことだというふうに思います。

小宮山(泰)委員 それでは、もう一点、関連であります。非公務員型になったらきちんとするのは当然であるとお答えいただきましたので。

 今、公務員規程から、こういう意味では報告の中で抜けてしまっておりますが、独立行政法人はまだ民間企業ではありません。そういう意味では非常に半端でありますし、私自身は、この制度というのはある意味余りにもあいまいであり、公務員型、非公務員型ということで倫理規程が出るとか出ないというのは非常に不自然ではないかと。やはり、これは国から予算が行っている独立行政法人であるならば、財団法人の問題もございますが、しっかりとこれは、この規程に見合うように、また、どういうふうに予算が流れたのか、天下り先もそうですけれども、やはり報告は出されるべきではないかというふうに思っております。

 この点に関して、例えば独立行政法人労働者健康福祉機構の関係でいえば、財団法人労働福祉共済会というのがあって、八割、七割という高い割合で業務委託とか随意契約を結んでいるんです。そして、この中で正直びっくりするのが、三十三の労災病院、この中においては、明らかに、プロポーザルといって、企画競争といって、すべて一括してまた随意契約をできる温床を残している。これによって、この労働福祉共済会のホームページには、「この企画競争に参画、激戦の中で勝利し、平成十八年度以降三年間引き続き運営することが決定した。」と、非常に勝利宣言のような事業計画を出されております。

 こういったところから見ても、本当の意味で、まだまだこの分野というものは明確に貴重な税金の流れというものが明らかにならない仕組み、ここからまた、リネンであったりとか食堂であったりとか、いろいろなところが流れていってしまって、どうなっているか知ることができないというのは、非常に税金の無駄遣い、赤字をふやしていくことになるんだと思います。こういった点に関しても今後改めていくというようなお考えはあるか、伺いたいと思います。

菅国務大臣 独立行政法人についても国から運営費交付金だとか補助金が出ているわけでありますから、当然、まず第一義的にはそれぞれの府省庁でしっかりと監督をすることが大事だと思いますし、私ども総務省としても、そうした委員の今主張されたことも当然のことでありますので、それぞれの府省庁にしっかりと対応をとるようにも私ども指導をしたい、こう思います。

小宮山(泰)委員 ぜひ、国民の大切な税金であります。それがしっかりと、どういうふうに使われていくか、それがわかるようなことに対し熱意を持ち改革をしていただきたいと思います。

 以上で質問を終わりにします。ありがとうございました。

仙谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十八分散会


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