衆議院

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第2号 平成19年10月12日(金曜日)

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平成十九年十月十二日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 枝野 幸男君

   理事 木村 太郎君 理事 坂本 哲志君

   理事 平田 耕一君 理事 福井  照君

   理事 松野 博一君 理事 前田 雄吉君

   理事 横光 克彦君 理事 上田  勇君

      あかま二郎君    麻生 太郎君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    木原  稔君

      木挽  司君    坂井  学君

      杉村 太蔵君    高市 早苗君

      とかしきなおみ君    冨岡  勉君

      西本 勝子君    林   潤君

      平口  洋君    広津 素子君

      福岡 資麿君    御法川信英君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      与謝野 馨君    市村浩一郎君

      金田 誠一君    小宮山泰子君

      田中眞紀子君    高山 智司君

      津村 啓介君    寺田  学君

      松木 謙公君    松本 大輔君

      松本  龍君    大口 善徳君

      坂口  力君    東  順治君

      福島  豊君    鈴木 宗男君

      玉沢徳一郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   増田 寛也君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   国務大臣

   (行政改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      大野 松茂君

   財務副大臣        森山  裕君

   国土交通副大臣      平井たくや君

   会計検査院長       大塚 宗春君

   会計検査院事務総局次長  増田 峯明君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           本田  勝君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  西銘恒三郎君     とかしきなおみ君

  西本 勝子君     平口  洋君

  御法川信英君     石原 伸晃君

  山本  拓君     木挽  司君

  金田 誠一君     田中眞紀子君

  松本  龍君     市村浩一郎君

  坂口  力君     東  順治君

  谷口 和史君     福島  豊君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  木挽  司君     高市 早苗君

  とかしきなおみ君   西銘恒三郎君

  平口  洋君     西本 勝子君

  市村浩一郎君     松本  龍君

  田中眞紀子君     金田 誠一君

  東  順治君     坂口  力君

  福島  豊君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  高市 早苗君     山本  拓君

  大口 善徳君     谷口 和史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書


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     ――――◇―――――

枝野委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度決算外二件を一括して議題といたします。

 本日は、各件について締めくくり総括質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局和泉洋人局長、国土交通省自動車交通局本田勝局長の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

枝野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

枝野委員長 質疑に入るに先立ちまして、質疑者各位に申し上げます。質疑時間は申し合わせの時間を厳守されるようお願いいたします。

 また、政府におかれましても、各質疑者の質疑時間は限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平田耕一委員。

平田委員 自民党の平田耕一でございます。

 まず、総理にお尋ねをしたいと思いますが、すべての改革のもとになります財政健全化につきまして、小泉・安倍政権下での財政健全化路線はしっかり引き継ぐと明言をされておられます。しかしながら、参院選後の政治状況や景気の動向を見ますと、非常に難しい状況になっているとも思われるわけであります。

 総理の御見解なり御決意、まずお尋ね申し上げたいと思います。

福田内閣総理大臣 私の基本的な考え方というのは、今の内外の情勢を考えますれば、いろいろなことをしていかなければいけない、今までやってきたことがすべていいというわけじゃないんで。それを改革と称して今までずっと続けてきた、そういう改革の方向性そのものは基本的に間違っているというふうには思っておりません。ただ、問題は、その結果、また、その改革のことだけでなくて、内外情勢の変化に伴う必要な措置というものも当然時間がたてば必要なんでありますので、そういうことをあわせて、今後もいろいろな政策を組み立てていかなければいけないと思っています。

 その際には、財政ということがありますので、財政について、これはやはり財政を少しでも健全化していきたいというような考え方を持って、そういうふうな政策、改革を進めてまいりたいと思っております。

平田委員 ありがとうございます。さまざまにフォローをする部分もあるだろうという御発言でありますけれども。

 景気が確かに回復をしてきたと言われております。しかしながら、それは今日、本当の正念場を迎えておるという現状であろうかと思います。

 景気の回復につきましては、数字の上では、緩やかですが息の長い景気回復が続いてきたようであります。そして、確かに、例えばすべての法人企業とそして個人事業の総売り上げ、GDPではむしろわかりにくいという御指摘もございました、総売り上げというのは、製造、卸、販売、重複ございますけれども、総売り上げで、最悪期にはこの国は約一千四百兆円ぐらいにダウンいたしまして、それが現在では一千六百五十兆円を超えるぐらいにまで売り上げの面では回復をしているわけであります。

 ところが、その売り上げの中から支払われるべき人件費総額、これが実はほとんどボトムに、底に張りついたままで、今現在、約二百二十兆円だと思われますけれども、低迷したままであります。単純に統計上の労働者数で割りますと、一人当たり年間三百六、七十万円になるわけであります。バブル崩壊の後、長い不況が続きまして、そしてそこへ御承知のようにすい星のごとくに小泉政権が誕生して、気持ちは引きつけられていくけれども、どうも改革ということで切り詰めばかり強いられたと。景気が回復したといえども、なかなか給料は上がっていかないな。国民の皆さんは、実際には今現在我慢のきわみという状況にあるのではないかと言って過言ではないんだろうと思っております。

 そういう世情の中で私たちは参議院選挙を迎え、そして示されましたのが、実は魅力にあふれる民主党マニフェストであったわけであります。私もそのことは、中身自体、項目を見ますと、すばらしいことが書いてあると実感する部分もございます。例えば、現行消費税を据え置いての基礎年金の税方式化、それから、農業への戸別所得補償、これだけで心が動く、ぐらっとくる項目であります。ところが、高速道路の無料化という項目もございました。ここまで参りますと、さすがに少し懐かしい思いがしてまいります。かつての列島改造論、ああ、何か似ているなということも感じるわけであります。

 こう申し上げてまいりますと、大体国民の皆さんはお気づきだと思いますけれども、これは私たちが、我が国がわずか二十年ほど前に一度通ってきた道かもしれないなと。借金よりも、いつか株や土地が値上がりしておつりが来る、そして、少々の財源不足は大丈夫だ、私に任せなさい、そういうバラ色の政策が示されたかに思える感もいたします。

 バブルのその後の状況というのは先ほど申し上げたとおりでありますが、そして今、申し上げたように、社会にはインフレマインドというのが充満しているんだろうと思うんです。だからこそ、私たちは、歴史、それもまだ記憶に新しい歴史を繰り返すわけにはいかないと考えているわけであります。したがいまして、私は、福田政権の仕事は大仕事だなと思います。そういうバラ色の政策を横目にしながら、実直な、しかも、時間はかかるけれども階段を一段一段踏み締めて上るような道を国民の皆さんに示していかなければならないというふうに考えるところであります。

 年金にまつわる整理がつき次第、そのことも含めまして、国の将来像をしっかり示すとともに、ぜひ、消費税増税が必要であれば、それを含めた抜本的な税制改革につきまして、オープンな議論をスタートするべきではないのかなと考える次第であります。

 そのことにつきまして、総理の御決意なり御見解をお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 いろいろな政策、改革を進めていく中で、いわゆるアンバランスが生じてきている。例えば、都市と地方とよく言われますけれども、そして、大企業と中小企業のギャップも出てきた。いろいろなところでそういう格差と言われるような現象が起きている。これは私は事実だというふうに思います。

 それは、この五年間で経済成長をしてきた、その経済成長の恩恵が、大都市中心だとか、それから大企業中心だとかいったようなことで見られているということもあろうかと思います。これは、経済回復する過程の中でそういう現象が起きてきたということでありまして、まずは経済回復する、そして、経済が成長する分野に力を入れて、本当に力を持った分野がまず立ち上がって、そしてだんだんとその恩恵が周辺に及んでいくといったような構図を描いていたことも事実でございまして、そういう結果、もうかなり景気は回復してきた。

 しかし、実際問題言って、景気が本当に回復したというのは、今申しておりますおくれた部分、この景気が回復して、本当によくなったなというふうに思えるような実感を持てるような、そういうものを求めていかなければいけないだろうというように思うんです。経済成長力も、これからもいろいろな面において対応していかなければいけないけれども、当然のことでございますけれども、しかし、そういう過程において起こってきたその格差の問題とかひずみとか言われるようなものは、でき得る限り、手直しと申しますか、対応していかなければいけないということも当然あるわけでございますけれども。

 ですから、成長は追求する、しかし、そういう手直しもしながら追求していくということが今言われているんではないかというふうに思っております。そういう中で、経済成長しながら財政再建をいかにして果たしていくかということになります。なかなか難しい問題でありますけれども、今の財政状況を考えれば、これは手抜きはできないだろうというように思います。

 過去においても、ここ数年、五年、六年、財政再建という方向に向かってやってきたわけでございますけれども、そういう路線は継続していかなければいけない、二〇一一年の基礎的収支の黒字化、これは是が非でも達成したい、こういう思いでございますので、財政面においてなかなか窮屈な政策実行を迫られるということはあるわけであります。

 しかし、なるべく公平感を持ってもらえるような、皆さんが満足してもらえるような結果になるように努力をしていかなければいけないと思います。そのために、冗費の節約はもう当然でございますけれども、いかにして無駄を省いていくかということがこれからも大事になってくるということであります。

 ただ、無駄を省くために本当に必要な、国民生活にとって必要な部分まで削ってしまうということがあっては、何のための政策か、実施かということになりますから、そういうことが起こらないように努めていくというのが我々政治家の務めだろうというふうに思っております。

平田委員 ぜひ税制改革論議も、必要であれば、的確な時期にスタートしていただきたいというふうに思う次第でございます。

 申し上げました人件費、なかなか上がらないということですが、経産大臣にちょっと御見解をお伺いしたいと思います。

 やはり生活の向上感こそ政治の目的だと思います。会社がもうかっているけれども給料は上がらない、これが続くようであれば、これは経営の問題だとして放置できないと思います。成長を実現するためには大いに政治的な課題だと思われますので、そのことについての経産大臣の所見と、それからもう一点、外国人労働者、国内における外国人労働者の存在は今や無視できない状況になって、もしかしたら日本人労働者の給料というものの圧迫要因になっているのではないかなという懸念も私は感じているところであります。その点で、外国人労働者の受け入れについてのあり方というか、御見解がございましたら、その二点、手短に御返答いただければと思っております。

甘利国務大臣 低迷している経済から成長経済に移行する際に、全体がきれいに底上げできれば一番いいんですが、伸びるところから先に伸ばしていくということがありますから、一時的にばねが伸びるように、利益を上げるところはいきなり上げていく、取り残されているところは取り残されていく、これが格差につながるわけでありますが、最終的には成長の成果が均てんされるように、各種施策を講じていかなければならないと思います。人件費でいいますと、まだ十分にそれが行われていないという御指摘があります。

 一方で、団塊の世代が退職をしてくる、つまり、比較的高い給料をとっている層が退職してくる。それから、正規雇用が伸びますけれども、非正規の方が伸びが大きい。そうすると、非正規は給与体系が全体的に低いですから、トータルとして、なかなか人件費に回っている金額が伸びていかないという点はあろうかと思います。

 しかし、これは、成長の果実をしっかりと均てんさせていく、従業員にもそうですし、中小企業、下請企業にも均てんをしていくように今取り組んでいるところであります。

 それから、外国人労働者の問題でありますけれども、政府の基本方針は、技能、技術の高い部分については、つまり日本にないものについては取り入れる、しかし、単純労働については慎重な対応を行うというのが政府の姿勢であります。日本経済の生産性を高めていくためには、高度の技能、技術をどう取り入れていくかということが成長に資することでありますし、単純労働に頼った経済はやはりどこかで国際競争に負けていくということになりますから、そこは慎重に行うべきだというふうに思っております。

平田委員 ありがとうございます。

 給与の問題、そして、今国民の皆さんの本当に懸案でありますエネルギーの高騰につきまして対策をお聞きしたいと思っております。

 なかなかもう時間がございませんので、そのことについて、実際には石油諸税でもう五兆円を超えるようになりました。そのうちの、道路特定財源の一部一般財源化という議論もあるぐらいなら、それをいっとき免除してもらって助けてほしいなという、それぐらい高騰しておりますので、ぜひその対策もお進めいただくことを要望し、そしてまた、せっかく国土交通副大臣に、平井副大臣に御準備いただきましたけれども、住宅の耐震化、建築の耐震化の問題で、手続の見直しから、夏場、住宅着工量が激減をいたしておりました。住宅産業のすそ野は非常に広く、年率に換算すると経済成長率で一ポイント、二ポイントの影響があるのではないかなというふうに思っておりますので、ぜひ早期にそれを回復し、また来年中にも再度の改正で小規模の建物にまでその見直しが及ぶようでございますので、そのことについてぜひ慎重に対処していただくように御要望申し上げまして、同僚議員に時間を譲らせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

枝野委員長 この際、坂本哲志委員から関連質疑の申し出があります。平田委員の持ち時間の範囲内でこれを許します。坂本哲志委員。

坂本(哲)委員 自民党・無所属会派の坂本哲志でございます。

 平田委員が、国家財政あるいは国の景気という、国の立場からの御質問をされました。私は、関連して地方の立場から、地方財政あるいは道州制の導入、そういったものについて質問をさせていただきたいと思います。

 参議院選挙で、自民党に対して、地方の反乱という形で大変な反発が起きました。農林業を中心といたします第一次産業の低迷、あるいは地方の中小商店街の行き詰まり、そういったものが主な原因でございますけれども、やはり、地方財政が非常に厳しくなった、そして住民のニーズに、厳しくなった地方財政の中でこたえることができなくなった、それに対する住民の方々の不満あるいは将来に対する不安、こういったものが選挙の結果となってあらわれたんだろうと思っております。

 小泉政権のもとで三位一体の改革が行われました。趣旨は理解できます。いいと思います。少しでも補助金をカットして、あるいは地方交付税を改革して、自由に使えるお金を地方に回そうということであったわけですけれども、結果として、やはり地方の財政が厳しくなった、地方交付税が削減された、補助金がなくなった、パイが少なくなった、そのことだけが残るような実態になってまいりました。

 そこで、地方の財政を少しでも潤すためには、やはり税の国と地方の配分、こういったものをもう一回考え直さなければいけないときに来ているというふうに思います。そして、地方に手厚く配分する中で、税の偏在をできる限り是正していくということが大切であります。

 諸外国を見ましても、連邦制をとっておりますドイツやカナダなどは、地方の持ち分、地方の歳出は、そのほとんど一〇〇%近くが地方の歳入で賄われておりますし、単一国家でございますフランスやスウェーデンにいたしましても、六〇%あるいは七五%以上が地方の税収によって賄われている。まさに地方分権というのは先進諸国では当然であるというふうに思いますが、日本の場合には、自主財源三七%であります。地方交付税を加えましても五五%程度であるところでございますので、この配分の是正というのは、ぜひ私は必要であると思っております。

 そして、どこから手をつけていくか。近年言われております法人事業税そして法人住民税、このいわゆる法人二税の配分基準をもう一度見直すべきではないかというふうに思います。平成十七年度の税制改革で一たんこの基準は見直されたわけでございますけれども、やはりそれでも足りない。もう少し切り込むべきだというふうに思います。

 それからもう一つ、自民党の方でつくっておられます、真の地方自治を確立する議員連盟の方で、この法人二税を地方共同税として一たんプールしようじゃないか、そしてそれを各地方の面積や人口に応じて再配分しようではないかというような提言がなされました。私は、これは傾聴に値する提言であると思います。もちろん、そうなった場合に、地方交付税との絡み、そういったものを詰めていかなければなりませんけれども、これから検討をしていかなければならない問題であると思います。

 それから、税の偏在をなくすためには、将来的に地方消費税を拡充させる、このことも大事ではなかろうかと思っております。もちろん、消費税の引き上げというのが大前提になりますけれども、現在、五%の消費税のうち一%が地方に回されておりますけれども、この割合を拡充することによって地方間の税の偏在を少しでも是正する、あるいは地方の財源を少しでも豊かにする、こういう方向で考えるべきではないかと思います。

 この三点につきまして、法人二税の問題、あるいは地方共同税の問題、そして地方消費税の問題につきまして、増田総務大臣に御答弁をお願いいたしたいと思います。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 今、委員の方から、地方税収についてるる御指摘をいただきました。私どもも、地方税収を充実させる、これは今、地方の状況を考える上で一番最優先で取り組むべき課題。そして、御案内のとおり、今地方の税収が歳出に対しまして低いものを、当面、国、地方の税収比を一対一に、これは当面ということでございますが、拡充をさせたいというふうに考えております。

 そして、その際には、やはり地方の税収構成の中で、消費税ですね、今御指摘いただきました消費税、これが一番安定的な税収である、こういうことがございます。偏在性が一番少ないこの消費税を中心に据えて地方税収を構成していくことが一番適切ではないか、このようにも考えているところでございますが、一方で、その中で当然、法人二税というものも地方税収の中では四分の一程度でございますけれども割合を占めている。これは、景気がよくなりますとその偏在度がさらに拡大をしてくる、こういう性格を持っておりますので、地方消費税の拡充とあわせて、この法人二税の偏在度の是正ということにも取り組んでいかなければならないのではないか、このように考えているところでございます。

 今、それに対しましてはいろいろな考え方、案が出てきておりますし、政府部内でもこの問題についての調整を行っているところでございますが、いろいろ御意見はありますけれども、ただ、私ども一つだけ気をつけておかなければいけないと思いますのは、法人二税を、これだけをいろいろな人口なり面積で配分をしていくということになりますと、やや懸念されますのは、応益性について、そこが分断されるところが出てくるのではないか。受益と負担ということの原則、これは税の中でも維持していかなければならないので、地方消費税の拡充とあわせて、この法人二税の是正の問題に取り組んでいきたい、そうしたことを貫いた上で法人税収を充実を図っていきたい、このように考えているところでございます。

坂本(哲)委員 ありがとうございました。

 現在の税の国と地方の取り分は六対四でございますので、今、一対一にしたいということを言われました。ぜひその方向に向かって御努力をいただきたいと思います。

 今言いましたように、税が地方の方へ配分が加重される、あるいは手厚くなる、そうするとどうしても、今度は地方の受け皿の方の取り組みが問題になってまいります。税金を無駄に使わないための取り組み、そして地方の政策能力を引き上げていくこと、財政に対しても厳しく取り組んでいくこと、さらに、地方の自立ということを考えました場合には、やはり政策能力の高い地方政府が必要であると思っております。そして、中央政府と地方政府の間でお互い連携をとりながら、改めて福田首相が言われるところの自立と共生に向けて進んでいかなければいけないと思っております。

 そのためには、最終的にはやはり道州制の導入になるというふうに思いますが、この道州制の論議、長年されてまいりましたけれども、中身は千差万別でございます。準連邦的な道州制もあれば、あるいは東北の、増田知事のときにやられておりました府県連合的な、広域行政的なものもあります。しかし、税の移譲、あるいは地方分権と同時に、やはりその枠組みをしっかりとしたものにするというのはこれから日本を運営していく上で本当に大切なことであると思いますので、道州制の導入について、総理、どのように考えられるか、そのタイムスケジュールも含めて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

 また、増田総務大臣には、大臣が考えられる最高の道州制というものはどういうものがあるか、もし時間がありましたら、それに対しての御意見を開陳していただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 地方と都市がともに支え合うという共生の考え方、地方自治体は自立の考え方を持って努力をされるわけでありますけれども、しかし、地方一自治体だけで解決できない問題もある、そういう問題についてともに支え合う、そういう考え方というのはこれから大変大事になってくると思います。ましてや、今、市町村合併も推進されております。また、都道府県を越える広域の行政課題というものもふえてきている、こういうような現状も考えていくことも必要であります。

 そして今、改革の大きな柱、中央から地方へ、そういう考え方を進めていきますと、地方分権、これを進めていかなければいけない。地方分権の最終ゴールは、やはり道州制の実現ということになるんじゃなかろうかというように考えております。ですから、道州制を視野に置きながら、これから各地域が共生の考え方のもとにいろいろな政策立案を考えていただきたいというふうに思っております。

 具体的には、現在、国民的な合意形成を図るという意味でもって、道州制ビジョン懇談会というものを開催いたしております。今後、その成果を踏まえまして、道州制ビジョンというものを政府としても策定してまいりたいと考えているところでございます。

増田国務大臣 私の考えております理想とする道州制というお尋ねでございましたが、ドイツなどに参りますと、各州政府、今先生お話のございました地方政府がきちんとあって、そこでおおよその仕事はすべてそこの州民との決定の中で決められていく、大変うらやましいことだというふうに思っております。

 これは連邦国家でありますので、我が国でこうした体制を実現しようとすれば、これは憲法とのかかわりも出てきますので、そういったものをにわかに我が国に導入できるわけではございませんが、やはりこの道州制を考えるということも、大前提としては分権をきちんと進める、そしてその上で道州制のような大きな国の体制の変革に結びつけていく、こういうことが必要ではないか。

 したがいまして、当面、分権委員会で今、分権の議論をしてございますが、そうした議論を経た上での分権、これをきちんと進めた上で、道州制の実現に向けて私も担当大臣として全力を尽くしていきたいと考えております。

坂本(哲)委員 ありがとうございました。

 やはり税財源の移譲、そして権限の移譲、同時に、今大臣言われましたところの枠組み、道州制を含めた新たな統治機構の導入、こういったものがぜひ必要であると思います。総理が言われるところの自立と共生は、それなくしてはなかなかでき上がらないものであると思いますので、平成の大改革であるとは思いますが、ぜひそれぞれのお立場で取り組んでいただきたいと思います。

 増田大臣におかれましては、今の時期になぜ知事から大臣に就任されたのか、その意味は大きいと思います。ですから、知事のときに考えておられた地方のあり方あるいは国のあり方、これを大臣としてもぜひ貫いていただきたい。そして、中央と地方、それぞれに連携して、自立と共生ができるような国づくりにしていただくことをお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

枝野委員長 次に、福島豊委員。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 総理、連日御苦労さまでございます。

 まず初めに、ワーキングプアという言葉に象徴される、近年の労働市場改革に伴う所得格差の拡大の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 本年九月に発表されました、国税庁による民間給与実態統計調査によりますと、年収二百万円以下の人は昨年より四十二万人ふえて千二十三万人、ついに一千万人を突破いたしました。また、生活保護世帯以下で暮らしている家庭は四百万世帯、それ以上とも言われております。所得格差をあらわすジニ係数につきましても、当初所得については平成五年の〇・四三九四から平成十七年には〇・五二六三と拡大し、再分配所得でも〇・三六四五から〇・三八七三へと拡大をいたしております。また、若者の三人に一人は非正規雇用であります。

 厚生労働省の本年八月の日雇い派遣労働者の実態に関する調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査では、ネットカフェなど、オールナイトで、住居がなく、寝泊まりするために利用している人は、全国で五千四百人に上ります。その半数は非正規の労働者であります。こうした方々は、アパート等の入居初期費用が蓄積できない、また家賃を支払い続ける安定収入がない、こうしたことを理由としております。

 公明党としては、さきの本会議での太田代表の代表質問におきましても主張しましたように、国民の生活の向上に重きを置いた政策の実現こそが今求められていると認識をしております。そうした意味で、我が国において拡大しつつある所得格差の問題に真正面から取り組まなければならない、特に若い世代が希望を持って頑張っていける社会をつくらなければならない、そのように思っております。

 所得格差の拡大と言えるこうした我が国社会の実態について、まず、総理はどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 この非正規雇用労働者の増加の背景というのは、これはサービス産業化などの経済産業構造の変化とか、そしてまた多様な働き方を望むという労働者側の意識の変化、こういうふうなものがあると思います。

 また、正規雇用者は、これは最近は若干ふえてきているんですね。若干でございますけれどもね。そういうような状況があるということでございます。

 しかし、今御指摘ありましたワーキングプアというような低所得者で非正規労働者、そういう方がいらっしゃること、これも問題でございまして、それが固定化するということは、これは果たして社会全体にとっていいことかどうかというような懸念も持っております。そういうような実態というものはしっかりと見ていかなければいけない、そして一つ一つきちんと対応策を講じていかなければいけない、そのように思っているところでございます。

福島委員 政府におきましても、再チャレンジ支援として、フリーター二十万人常用雇用化プラン、それに引き続くフリーター二十五万人常用雇用化プランなど、さまざまな施策を立案し、そして実施してきております。そうした施策や景気の回復もありまして、フリーターの常用雇用化も着実に進んできている、これも事実でありますけれども、さらに強力な取り組みが必要であると考えます。

 前提となるのは、経済成長であり、企業の競争力を維持強化する、これがあることは間違いがありません。しかし、一方で、安定した内需の拡大も経済成長には不可欠であります。働く者の生活の安定を同時に確保しなければならない、私どもはそう考えております。

 近年、企業の競争力を強化する、また財務体質を強化するという観点から、労働市場改革がさまざまに行われてまいりました。しかし、若者の三人に一人が非正規雇用である、こういう実態を踏まえると、こうした労働市場改革について、いま一度立ちどまって、生活する者の視点、また働く者の視点から再考する必要があるのではないか、そのように考えております。

 公明党が昨年公表しました少子社会トータルプランにおきましても、働き方改革を少子化対策の一つの柱として提案をさせていただきました。安心して生活ができ、子供を産み育てることができる社会でなければ、長期にわたっての我が国の発展はない、そのように考えております。そうした意味からも、近年の労働市場改革について、私どもは、再考すべきではないか、そのように考えております。

 経済財政諮問会議では、直近の十月四日の会議におきまして、労働市場改革については、専門調査会報告を受けて議論を進める、このようにされております。

 労働市場改革については、このように経済財政諮問会議、また厚生労働省における労働政策審議会で議論されておりますけれども、今後どのような考え方で取り組みを進めるのか。公明党としては、高齢者の雇用の拡大、また女性の就労の拡大、若者の安定した雇用、こうした点について、より積極的に政府としては検討していただくべきではないか、そのように考えますが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 これからは日本も人口減少社会ということでありますし、また高齢者がふえてくるということであります。労働人口が減ってくるということですね。今までのままでは、それは対応し切れないということであります。

 そういうことから、働く意欲のある方々、そういう方には高齢者でも働いていただくということも必要ですし、また女性が積極的に仕事をしていただく、そういう環境づくりも必要です。男女共同参画社会の実現というようなことをこれから一生懸命やっていかなければいけない、こう思っております。

 あわせて、若者がみずからの能力を生かして安定した仕事について、将来に希望を持って暮らせるように、正規雇用への転換促進も図らなければいけない。

 また、少子化への対応ということが求められている中でもって雇用の施策を進めていく、こういうふうなことも必要でございます。仕事と家庭生活の調和、すなわちワーク・ライフ・バランスというふうに言っておりますけれども、こういったような観点から、あわせて育児休業の取得の促進、長時間労働の是正といったようなことにも取り組む必要がある。

 また、こういう問題認識に基づいて、現在、厚生労働省で労働政策審議会が取り組んでおります、また経済財政諮問会議も取り組んでおりますけれども、また、ほかに、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議、こういうふうな場もございまして、働き方の改革について検討が進められておるところでございます。

 さまざまな場において今後議論を深めながら、政府一体となって、生活者の観点から、働く人たちの雇用の安定、そして生活の向上に向けて取り組みを進めてまいりたいと思っております。

福島委員 ワーキングプアの問題で取り上げられる中で、日雇い派遣ということが大変クローズアップされたと思います。単純作業や製造業の現場に携帯電話やメールで送られてきた指示で出かけていって働く、賃金水準は最低賃金を下回る場合も多く、一月働いても収入は十数万円にしかならない、アパートに入居するための初期費用もたまらないという悪循環に陥っている事例が存在することは事実であります。

 前述の厚生労働省の調査におきますと、短期派遣労働者において、一日単位の日雇い派遣労働者が八四%を占めております。平均月収は十三・三万円であります。そうした方々は、今後どういう働き方を希望するか、現在のままでよいという方が四五・七%存在することも事実でありますけれども、正社員になりたい、こういう方が二九・六%、三分の一おられます。特に、正社員として就職できないため、または正社員としての就職先が見つかるまでのつなぎで短期派遣として働いている場合には、正社員を希望する方はそれぞれ六九・七%、八一・六%と非常に高い比率になっているわけであります。また、世代的にも、二十五歳から三十四歳までの男性では、正社員を希望する方は半数を超えております。

 政府としては、こうした登録型派遣における短期派遣労働に対して、九月には一定の条件を満たせば失業手当を給付することを決定していただきました。また、労働政策審議会におきましても、日雇い派遣の規制強化などについて検討が始まっている、そのように伺っております。こうした派遣の業態に対して、まずは禁止すべきではないか、こういう意見があることも事実であります。また一方で、こうした働き方を希望する人がいるのではないかという指摘もあります。

 こうした考え方に立つと、労働者派遣法にこうした日雇い派遣、短期派遣について明確に位置づけ、当局による実態把握を行い、これは十分に今行われておりません、適切な賃金水準が守られているのかどうか、また、不適切な給与天引き等も指摘をされてまいりました。そういうことが行われていないかどうか監督を強化するとともに、失業給付などのセーフティーネットの強化、また、直接雇い入れを促す仕組みを構築するなど、包括的な対策を講じることが必要になろうと考えております。

 いずれにしましても、早急に検討を進め、規制の強化を行うべきではないか、このように思いますが、厚生労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 今、福島委員おっしゃったように、各種アンケートを見てみますと、こういう日雇い型を続けたいという方もおられますので、これは労働者側のニーズもある。ただ、非常に不安定であることは確かでございます。

 それで、そういう御意見も踏まえた上で、今御指摘ありましたように、この九月から労働政策審議会において、日雇い派遣とか登録型の短期派遣、これの現状をしっかり認識した上で、どういう手が打てるかということで今検討を進めているところでございますので、今の貴重な委員の御意見を参考にしまして、ぜひこの不安定な状況を改善したい、そういうように思っております。

福島委員 大臣には、国民の期待におこたえいただけるようぜひ頑張っていただきたい、そのようにお願いを申し上げる次第でございます。

 また、さきの通常国会におきましては、最低賃金の引き上げを図るための最低賃金法の改正案、また、残業手当の引き上げを図るための時間外労働の賃金割り増し率を引き上げる労働基準法改正案等が提出をされ、そして継続審議となっております。民主党からも対案が提出をされているわけでありますけれども、働く者の生活の安定を図るために、与野党間の協議を進め、早期に成立を図るべきである、このように考える次第でございます。

 労働市場改革、近年進められてまいりましたが、それ以外にもさまざまな分野での規制改革、規制緩和が進められてまいりました。労働市場改革と同様に、改革の影が生じている、このことを率直に認識すべき時期に来ているのではないか、私はそのように考えております。

 本年五月に取りまとめられました規制改革推進のための第一次答申におきましては、規制の横断的評価、見直しを進めることが盛り込まれております。また、需要拡大効果、生産性向上効果、雇用創出効果、物価引き下げ効果等の経済効果について効果分析を行うこと、こういったことも盛り込まれておりますけれども、同時にまた、改革の影の部分について、これも横断的に適切な評価を行うべきではないか、そのように私は考えております。

 本日は、規制改革の影という問題で、具体的にはタクシーの問題を取り上げさせていただきたいと思っております。

 先日の朝日新聞、十月十日付の朝日新聞でございますけれども、このような記事が載せられておりました。「規制緩和で新規参入やタクシーの増車が容易になり、多様なサービスや料金体系が生まれた一方で、安全面のひずみも生まれている」、このように指摘されております。「〇二年二月のタクシーの規制緩和以降、タクシーが人身事故を起こす割合が首都圏より宮城、福岡といった地方の大都市でより増える傾向にある」と。

 その要因を朝日新聞は分析しております。規制緩和後のタクシーの人身事故と実車率の関係、二〇〇一年と二〇〇五年を比較しております。

 例えば、宮城県におきますタクシー、ハイヤーの事故件数は、二〇〇五年では四百八件、走行距離当たりの事故件数の増加率、三二%にも上ります。そして、それと相関するように、実車率は三五・九%と、二〇〇一年度と比較すると三%、これは決して小さな数字ではありません、減少している。福岡県においても同様の事例が指摘されております。事故件数は二千百十八件で一八%増、実車率は二・四%減の三七%。

 こうした数字からうかがえることは、規制緩和によって新規参入、増車が行われ、競争が激化をいたしました。そして、競争の激化とともに売り上げの大幅な減少を来す。そして、売り上げを維持するためには長時間労働をせざるを得ない。あるタクシー運転手の発言が紹介されておりました。無理してでも出勤回数をふやさないと食べていけないんだと。月三百五十時間の勤務をしている。大変な勤務時間であります。

 これは、私の地元の大阪におきましても、つとに指摘されているところであります。タクシーの運転手をしていても飯を食べていくことはできないんだ、こういう指摘があります。大阪におきましても、新規参入の増加や増車に加えて、また、自動認可運賃を下回る運賃、下限割れ運賃による低賃金競争が激化をし、安全を初め乗務員の労働条件に悪影響をもたらしている、これは事実でございます。

 タクシー事業者の増加は、大阪におきましては、平成十三年の百五十一社から平成十七年には二百三社、三三・六%もふえました。台数につきましても、一万五千百十二台から一万八千三百五十七台、二一・五%もふえたわけであります。こうした増加によりまして、タクシー運転者の賃金というものは下がってきております。

 タクシー運転者と全産業男性労働者の賃金格差、平成七年、これはまだ日本の経済がよかったころと言っていいのかもしれませんが、長期不況に突入した最初のころであります。そのころには、格差は百七十五万五千八百円でありました。これが、平成十七年、十年たった今では、二百七十七万六千五百円の格差にまで拡大をいたしております。平成十三年は二百五十三万九千四百円、そこから規制緩和が行われましたけれども、さらに拡大をするということになったわけであります。

 本年の通常国会におきましては、タクシー業務適正化特別措置法が改正をされまして、タクシー事業者、運転手に対して、輸送の安全及び利用者の利便の向上という観点から規制強化が行われました。しかし、過当競争、低賃金による長時間労働がひずみをもたらしているという現実を直視して対応すべきではないか、そのように考えるわけであります。

 平成十二年四月の道路運送法の改正に当たっての附帯決議、衆議院におきましては、「需給調整規制の廃止後においても、公正競争確保及び道路運送に関する秩序確立のため、輸送の安全等確保命令、事業改善命令、許可取消処分等について、基準を明示し、行政処分の点数制を導入する等、厳正かつ機動的に行うこと。」また、「輸送の安全確保と適正労働条件の確立を図るため、自動車運転者の労働時間等改善基準の遵守について、指導監督を徹底」する。また、「人件費等費用について適正な水準を反映させるとともに、他の事業者との間で不当競争を引き起こす恐れのある運賃を排除するため、具体的基準を設け、厳正に運用すること。」

 道路運送法の改正当時にも、こうした事態に対しての危惧があり、さまざまな附帯決議がなされている。これは、衆参両院におきましてそうでございます。

 こうしたことを踏まえて、具体的には、タクシーが公共交通機関として利用者に安全と良質なサービスを提供するため、また公正な競争を構築していくためにも、国土交通省が規定している自動認可運賃に下限割れ運賃を収れんさせる措置が必要である、このような指摘があるわけでありますけれども、国土交通大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

冬柴国務大臣 自動認可運賃というのは、例えば、六百円から五百四十円の間で十円ずつ刻みまして、この間で初乗り運賃とかをする場合には、財務諸表等を提出しなくても自動的にそれを認可するということになりますが、五百四十円を切って、いわゆる下限割れですね、申請してきた場合には、厳格な審査を、財務諸表等も提出させ、労働条件等も提出させて、慎重に審査をするということでございます。

 下限割れが直ちに悪いとは言えないと思います。これは、乗客にとって安いわけですから。しかしながら、それが運転者の労働強化につながったり、あるいは低廉な所得しか確保できないとか、ひいては安全が脅かされるということもあるわけです。

 それからもう一つ、それが同じ地域で営業している事業者にとって大変激烈な競争を生んで、それ自身がやはり大変不当な競争を引き起こす原因になるという場合には、慎重に判断しなければならないと思います。特に、大阪は、先ほど数も挙げられましたけれども、東京は下限割れは小型車では〇・一%しかないのに、大阪は一七・七%もある。二〇%近い。これはやはり異常だと思うんですね。

 私は、認可する場合に、道路運送法第九条の三の二項第三号で、「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること。」というもの等も考えまして、今後、厳正な監査を行っていきたい。

 それから、あわせて、低額運賃設定事業者に対する監査のあり方と、認可更新の際、一年ずつやっていくわけですけれども、審査のあり方なども一層厳格な対応を図る、そのようなことを検討してまいります。

 御指摘されたとおりでございまして、非常に運転者にとって酷な労働条件になっておりますので、そのようにさせていただきたいと思います。

福島委員 どうもありがとうございます。

 また、最近では、リースというような形態で車両を貸す。ですから、そこには運行管理のようなものがきちっと行われないような労働形態も生まれているようでありまして、この点についてもしっかりと取り組んでいただきたい。

冬柴国務大臣 道路運送法によってタクシーの許可を与えたのは会社に与えているわけでございまして、運転者一人一人に与えていないわけですから、もし会社が従業員に、リースといったら賃貸ですから、そうしたら営業者は運転者になってしまいますよ。そうしますと、これは社会保険とかそういうものを掛けないとか、失業保険を掛けないとかいうようなことも起こってくるし、私は、これは許可要件に反すると思います。厳しく取り締まりたいと思います。

福島委員 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、限られた時間でありますけれども、所得再分配の大切な柱であります年金制度についてお尋ねをいたしたいと思います。

 平成十六年改革におきまして、人口構造の変化、また経済成長の変化に自動的に対応する制度、仕組みが導入されました。大変大きな改革であった、これは間違いがないと思っております。しかしながら、残された課題があるということも事実でございます。

 今、三点ほどが議論の中心になっていると思います。一つは、制度発足当時の議論に戻るような話でありますけれども、税方式か社会保険方式か、こういう議論があります。二つ目は、制度の一元化という問題であります。そして三つ目は、最低保障機能をどうするか。最低保障年金、民主党の皆さんはこうおっしゃっておられますけれども、そうした年金の最低保障機能をどうするか、こういう三つの課題があるんだろうと思います。

 一番目の、税方式か社会保険方式か、これは昭和三十六年の議論に戻るわけでありますけれども、一つ指摘しておきたいのは、税方式ではなく社会保険方式をとったからこそ年金の給付は短期間の間に非常に充実させることができた、これは歴史的な事実だと私は思っております。

 一元化につきましては、被用者年金の一元化、これを進める法案を既に出させていただいております。国民年金をどうするか、こういう大きな課題があることは間違いがありません。この点については、積極的な与野党の協議が必要である、そのように思っております。

 そして、三点目の最低保障年金の問題、これは、どのような制度にするかということによって財源の規模も違います。そしてまた、民主党の御提案のような考え方ですと大変大きな財源が要る。さらには、今まで保険料を納めてきた人と納めてこなかった人の公平性をどう確保するのか、こういう問題があることも事実であります。

 しかしながら、その根底にある、年金が最低保障機能を果たしているんですか、こういう指摘については、政府としても真摯にこたえる必要があると私は思っております。特に、生活保護よりも年金の水準が低いじゃないか、そして、さまざまな高齢者の負担の見直しを行ってきた中で、年金をもっとしっかりしてほしい、こういう要望があることは間違いがありません。

 私は、低所得の方々については、国民年金の給付に加算を設けて最低保障機能を充実させるべきではないか、このように考えております。保険原理を基礎としつつ、公費で最低保障機能を充実させていく。現在の基礎年金における公費負担割合、これは平成二十一年に五割に引き上げる、こういう話になっておりますけれども、低所得者のところについては、さらにこれを五割から六割、また七割五分、こういったところに引き上げて、給付を加算していく、こういう考え方について検討すべきではないか、このように思っております。

 この点について、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 先般の自由民主党、公明党の連立政権合意におきましても、無年金、低年金防止をしようということが盛り込まれております。そういう観点から、大変貴重な御提案であると思いますが、問題は、ではその財源をどうするか。もちろん、生活保護よりも年金の方が低いじゃないか、これは非常に深刻に考えないといけないと思います。

 ざっと試算しましても、国の分が五千億ないし九千億の財源が必要かなと考えておりますので、これはぜひ与党・政府、しっかりと協議をした上で検討してまいりたいと思っております。

福島委員 これは、民主党の提案、非常に巨額の財源が必要とされます。それを果たして調達することができるのか。しかしながら、一方で最低保障機能を拡大しなきゃいけない。ここで議論の余地があると思いますし、与野党超えて積極的な議論をすべきではないか、私はそのように思っております。

 以上で質問時間が終わりました。最後に総理に、新しい年金制度をつくっていく、日本年金機構をつくりますけれども、それに向けての御決意をお聞きしようと思いましたが、時間がなくなりましたので遠慮させていただきまして、以上で質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

枝野委員長 次に、横光克彦委員。

横光委員 民主党の横光克彦でございます。

 まずは、福田総理、総理就任おめでとうございます。

 それでは、質問に入ります。

 私はきょうは、沖縄の集団自決に対しての検定意見についてお尋ねをしたいと思います。

 ことしの三月三十日に、文部科学省は、平成二十年度から、つまり来年の四月から使用されます高校の教科書に検定意見を付しました。日本軍による命令、強制、誘導等の表現を削除、修正させてしまいました。これに対して、沖縄県民は激しい怒りを示した、激しいというよりすさまじい怒りを示しております。

 沖縄県議会では、超党派で二度にもわたる意見書を採択し、決議し、四十一の市町村議会すべてがこの意見書を決議して、そして県民が一丸となって、島ぐるみでこの検定の撤回を文科省に何度も何度も申し入れをしております。しかし、文科省は検定意見の撤回と集団自決に関する記述の回復を拒否し続けております。

 それが、この九月二十九日に開催されました教科書検定意見撤回を求める県民大会に何と十一万人の沖縄県民が参集をして、そして検定結果の、集団自決の事実を正してほしい、事実をゆがめないでほしいと怒りの声を上げ、この検定結果の撤回を決議したわけでございます。政府はここに来てようやく対応策の検討を始めたとありますが、これは一歩前進ではあると思います。

 そこで、総理にお尋ねを申し上げます。この沖縄での十一万人以上の怒りの声があったことから政府の対応が変わったという理解でよろしいんですね。沖縄県の方々に聞こえるように、はっきりとお答えください。

福田内閣総理大臣 この件につきましては、委員のおっしゃる十一万人の県民大会をやったというその事実も、我々として重く受けとめる一つの理由ではあったかもしれません。それ以前にいろいろなお話もございましたので、そういうものを総合して受けとめておるところでございます。

横光委員 それ以前は、ほとんどにべもなく文科省は拒否し続けてきたんですよ。九月二十九日のあの大集会から対応が変わりつつあるんです。総理も今、大体そのことはお認めになりました。

 ということは、逆に言えば、あの十一万人の怒りの声がもしなかったとしたら、予定どおり、検定結果どおり来年の四月から新たな教科書が使用されていたということですね。お答えください。いや、総理にまず聞いておるんです。

福田内閣総理大臣 ちょっと私、この前後関係、もうよく覚えていないので、済みません、文科大臣にお願いします。

横光委員 いや、要するに、今、あの声で対応が変わったとお答えになった。その声がなかったら、では、予定どおり、新たな検定結果どおりの教科書が使用されていたんですねとお聞きしておるんです。

福田内閣総理大臣 ですから、その以前の情報と大会の事実と、両方兼ね合わせてということを申し上げたんです。

横光委員 私は、やはりこの十一万人の怒りというのはすさまじいと思うんですね。これは当然の結果だ、行動だと私は思っております、沖縄県民のあの行動は。仲井眞知事も、想像を絶する人数だとおっしゃっているんです。もしあの想像を絶する十一万人の怒りの声がなかったら、恐らく文科省は動いていないだろう、検定どおり新しい教科書が使われていただろう。つまり、ゆがめられた教科書が使われていただろうということです。だから私は、恐ろしいことだと言っておるんです。

 この十一万人の怒りの声の事の本質は、何も人数の多さではないんですよ。事実の重さだと私は思います。これまで何十年間もずっと何の問題もなく検定を通過してきた教科書が、なぜ今回突然に、まさに突然にですよ、変えられようとしているかということなんです。この根本的な問題を解決しない限り、私は同じことが繰り返される危険性があると思うんです。

 そこで、文科大臣にお尋ねいたしますが、教科書出版会社から検定調査審議会に提出された教科書、この教科書の記述内容を最初にチェックするのは教科書調査官ですよね。この調査官は文科省の常勤職員ですよね、大臣が任命する。この調査官が、今回、一方の著書だけを理由に、あるいは一方の当事者の主張のみを取り上げて、日本軍の強制がなかったという趣旨の調査意見書を作成し、それを審議会に提出した。私は、そもそもここが今回の問題の発端だと思うんです。

 そこで、大臣にお聞きしますが、教科書調査官が意見書を作成するに当たって、実際に沖縄に調査に行って、住民やあるいは戦争体験者の証言を聴取したのでしょうか。どうぞ。

渡海国務大臣 そのような調査はしていなかったというふうに報告をいただいております。

横光委員 沖縄の歴史が変えられるかもしれないような、そういった調査報告書を作成するときに、沖縄に行って戦争体験者の声を聞いてもいなかった。戦争体験者を無視したということです、今の答弁。

 その次にお聞きします。審議会の中にある日本史小委員会、ここに沖縄戦の専門家はいましたか。

    〔委員長退席、前田委員長代理着席〕

渡海国務大臣 今回の検定では、専門家はいらっしゃいませんでした。

横光委員 皆さん、お聞きになったと思います。本当に、沖縄の歴史が変えられようとする審議会の中に沖縄戦の専門家がいなかったということなんです。私は、正直言って、信じられない思いです。

 では、検定意見で、最近の著書等を参考にして、軍の命令の有無が明確でないと記述しておりますが、それでは、最近の著書だけを重要視して、これまでずっと認めてきた沖縄県史やあるいは各市町村史、ここに書かれている事実を否定したということですか。どうぞ。

渡海国務大臣 過去の記述を否定したということではなかったというふうに私は思っております。ただ、最近、新たないろいろな証言なり事実というものが出てきて、すべてにおいて軍が関与したということを断定できないということにおいて、あのような検定意見がつけられたというふうに報告を受けております。

    〔前田委員長代理退席、委員長着席〕

横光委員 それまでの史実を否定していないということですが、では、なぜ今回のような検定結果になるんですか。戦後、住民たちの証言を事細かく、証言をもとにして、そして軍命による集団自決の実相が記録されているのが沖縄県史であり、各市町村史なんです。それはもちろん大事にするというなら、今回のような検定は出ないはずですよ。日本軍の命令の有無が明確でないという著書だけで判断したということになれば、本来、審議会のあるべき、公平公正、中立の立場での判断ではないと思いますよ。

 私は、そういった歴史の見方というのはいろいろあると思います。ですから、そういった本も参考にするのもいいでしょう。しかし、軍の命令があった、そういった歴史書あるいは著書もあるわけですから、それを同時に参考にする。さらには、一番大事なことは、あの不幸な戦争を体験した、現在生存している方々の声を一切聞いていない。審議会のやるべきことはいっぱいあったはずなんです。やっていないじゃないですか、今の答弁では。

 そのやっていない審議会が出した検定が、本当に審議会の役割を果たしていると言えるんですか。この審議会の検定が本当に、大臣、正しい検定意見だと自信を持って沖縄県の方々に言えるんですか。お答えください。

渡海国務大臣 横光議員の質問に率直にお答えをいたしました。今回そのようなヒアリングは行っていないというふうにもお答えをさせていただきましたが、従来からそういった証言等を学術的に、そして専門的に研究をした結果としてあのような判断を下したというふうに思っております。

横光委員 学術的に、専門的に全然研究していないじゃないですか、専門家もいないのに。よく言えますね、そのことが。どこに専門的に研究したんですか。専門家、いないじゃないですか。しかも、一番聞くべき人たちには聞いていない。無視している。そして、大きな転換を図ろうとしている。大変なことだと思いますよ。

 先ほど、すべての人が集団自決に追い込まれたと誤解されるおそれがあるとおっしゃいましたけれども、それこそまさに誤解なんですよ。何もすべての人が日本軍が強制したとは、これまでの教科書にも、今回検定を通過した教科書にも、どこにも書かれていないんですよ。書かれていないんです。

 例えばA社では、日本軍によって集団自決に追い込まれた住民もあった。すべての住民だとは言っていません。住民もあった。また、Bの教科書では、その中には日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や集団で自決を強いられたものもあった。Cでは、日本軍に集団自決を強いられた人も多くと。すべてだとは言っておりません。

 これまでずっと通過してきた教科書も、すべてだとは言っていないんですよ。一部に日本軍の強制があったと書いているにすぎないんです。その一部さえも今回削ってしまったんですよ。日本軍という主語がなくなっているんですよ。これで本当に子供たちに教えることができるんですか、歴史の真実を。本当に沖縄県民の怒りはわかりますよ。また、国内の多くの国民も怒っていますよ、こんないいかげんな検定をされて。

 総理、お尋ねします。教科書の主人公はだれだと思いますか。

枝野委員長 もう一度。

横光委員 教科書の主人公はだれだと思いますか。

福田内閣総理大臣 国の検定制度を受けて、そして、それを文部科学省で認定したものです。

横光委員 私は、教科書の主人公は子供だと思います。文部科学省でもない、審議会でもない、教科書の出版社でもない、子供が主人公だと思うんです。しかし、その主人公である子供たちは意見を言えません。意見を言えません。与えられた教科書を信じて学んでいるんです。ですから、大人の、教科書をつくる側の責任がそれだけ重いんですよ。

 もしねじ曲げられた教科書を使用することになれば、被害を受けるのは子供たちなんですよ。私たちじゃない、大人じゃないんですよ。大人の責任で子供たちが被害を受けるんですよ。ですから、大事なことだと言っておるんです。たとえつらい事実であっても、やはり、それを正しく教え、そして伝えていくことが、私は、戦争の悲惨さや平和のとうとさを未来ある子供たちが学ぶことができると思うんですよ。

 だから、私は、今回文科大臣が、教科書出版会社から訂正申請があれば柔軟に対応するとおっしゃった、これはある意味では前進です。しかし、これは教科書出版会社に責任を押しつけて、隠れみのにして、その場しのぎをしようということであって、根本的な解決にはなりません。沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現であるとするこの検定意見が残る限り、私は、いずれまた記述の修復が繰り返されるおそれがあると思うんです。そうなりますと、これでは沖縄の県民の皆さんや国民の皆さんは不安でたまりません。

 今回、九月二十九日の集会では、今回の検定意見を撤回すべきという決議がされておるんです。ですから、私は、非常に今回の検定のあり方、検定制度は必要ですよ。しかし、今文科大臣がお答えになられましたように、こんな大きな転換をするにもかかわらず、実態は、専門的な、学術的な論議をしたと言いながらも、一切行われていない。そういった中でこれだけ大きな転換をされるということは、大変な問題を起こしてしまう、私はこのように思っております。

 今回の歴史教科書の事実をゆがめた責任はどこにあるのか。私は、沖縄県民や国民を納得させ得る決定的な理由もなく、安易に、もっと言えば恣意的に教科書調査官が調査意見を作成し、これを追認した審議会、さらに審議会の決定を認めた文科省にある、このように思っております。きつい言葉で言えば、文科省の自作自演と言ってもいいんじゃないかというぐらいの今回の検定のあり方だと私は思いますよ。

 私たちは、検定制度の必要性を認めながらも、検定過程に疑義が生じた場合にはもう一度審議会に差し戻すことができる、そういった旨の検定規則の改正を行うしかないと思っておるんですよ。我々民主党は、この検定規則を改正する国会決議を衆議院、参議院ともに提出いたしております。これは決して政治的関与ではありませんよ。沖縄の県議会や市議会が決議したと同じように、政治的関与ではありません。なぜならば、国会は民意の場でありますから、政治的関与ではありません。ですから……(発言する者あり)沖縄では超党派で、皆さん方も賛同したんですよ。よく言えますね、あなたたちは。沖縄県を挙げてこの問題に対応しているんですよ。もし歴史の事実をゆがめてはならないと心底思う議員であるならば、私は、民主党が提出している決議に賛同していただけるもの、このように確信をいたしております。

 ここに、おととい発刊されました「沖縄のうねり」という、多くの沖縄の実態が書かれております。今回の検定意見のこと、過去の歴史、すべていろいろ書かれております。

 その中に、この前、九月二十九日に、高校生の立場から意見発表しました照屋さんが訴えた文章の一部をちょっと御紹介します。照屋奈津美さんですね、高校生です。総理も、文科大臣も、財務大臣も聞いてください。肝に銘じて聞いてください。ちょっとだけ読ませてもらいます。「うそを真実と言わないでほしい。あの醜い戦争を美化しないでほしい。例え醜くても真実を知りたい、学びたい、そして伝えたい。」

 終わります。

枝野委員長 この際、田中眞紀子委員から関連質疑の申し出があります。横光委員の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中眞紀子委員。

田中(眞)委員 無所属、民主党会派、田中眞紀子でございます。

 総理、このたびは、背水の陣内閣御成立、まことにおめでとうございます。

 背水の陣といいますと、普通、戦国武将は、追い込まれて、一番土壇場の局面になって本当に最高の布陣をしく。裂帛の気迫を持って、正眼の構えで、そして何としても後に引けないというのが背水の陣でございますが、この閣僚、きょうは、私は総理だけとお話しさせていただこうと思って御出席願いませんでしたけれども、ほとんどが前の内閣の置き土産というか、積み残しといいますか、そういう方々がぞろっとそろっているわけですね。

 この前内閣ではどんなであったかといいますと、本当に不幸にして自殺なさった、私は仲よかったので大変残念ですけれども、そういう方もおられましたし、それから、顔にばんそうこうを張っておられたり、あるいは補助金の不正受給であったり、政治資金規正法の問題があったりして、くるくるくるくる入れかわり立ちかわり閣僚がかわられているという中で、そのほとんどを現在引き継がれておられて、これが背水の陣であるというふうにおっしゃっているんですけれども。

 これは私は、個人的なことですけれども、総理のお父様とか、聞いてくださっていますか、あるいは私の父とか、耳はこちらの方を向いているんですね、そういう時代がございましたよね。そういうころに比べて世の中が変わったのか政治家が小粒になったのか何かわかりませんけれども、やはりちまたの方々も、こんなにトラブル続きで入れかわり立ちかわり政治家がかわるということに、本当に失望もしているというふうに思います。これは政治不信ではなくて政治家不信なんですね。

 そういう中で、この間オーストラリアで、ハワード首相とブッシュ大統領の前で、イラクでの、給油ですね、これについてはもう間違いなくやります、これは国際公約とまで言った方が、帰国したらぽんと内閣を全部投げ出してしまう、こういうふうなことをずっと我々、ここ一年以上見させられていて、実際に何を感じるかというと、もう見たくもないような寸劇、下手な役者が出てきて、出てきたと思ったら、やっと出てきたらかつらが後ろ前だとか、せりふを忘れたとか、家でもって何かトラブルが起こっているとか、引っ込んでいく。最後は主役までがいなくなっちゃうという状態なわけですね。

 本当に、外国からも笑われているし、日本の政治は、例えば、IMDというスイスの研究所がございます。そこが日本の国際競争力というものを発表していますけれども、二、三年前は十七番目だったんですが、今は二十四位に落ちているんです。世界の中で、客観的なデータを見ましても、日本の競争力は非常に落ちている。

 そういう中で、こういう内閣、言ってみれば安倍康夫内閣なのかもしれませんけれども、そういうものをおつくりになって、この難局を十二分にしのいでいけるというような、本当にそういうお気持ちがおありになるか、覚悟のほど、念を押させてください。

福田内閣総理大臣 私は、ただいまの御発言は私に対する励ましの言葉だ、こう受けとめました。しっかりやってまいりたいと思います。

田中(眞)委員 もちろん、励ましております。友情も感じております。何といいましても、この方々は御存じないけれども、親子三代、なぜか御交誼をいただいております関係がございますものですから、個人的には応援もせざるを得ないかなというところもあるんですけれども、余りにちょっと状況が厳しいんですね。

 例えば、ことし十月三日の平壌での南北の首脳会談がございましたけれども、そこで金正日総書記は日本人の拉致被害者はもういないということを盧武鉉大統領に答えたということを、同行しておりました延世大学の教授が発言しております。総理はこのことを受け入れますか。これが質問の一つです。

 それからさらに、日本政府はずっと拉致と核とミサイル、それから過去の清算ですね、いわゆる賠償問題を指しますけれども、これを包括的に、総理は予算委員会でも何度もおっしゃっています、包括的に解決して国交正常化を果たしたいという日本政府からのメッセージに対して、このときに、金正日総書記は、福田総理の出方を見守ると述べたにすぎないというふうに、これも言われておりますけれども、この点をどのように評価されますか。

福田内閣総理大臣 盧武鉉大統領が平壌に行かれて、そのときに同行された先生というのがそういう発言をした、そういう情報は聞いております。

 これは、金正日軍事委員長ですかが言われて、拉致の問題は解決しているという従来どおりのことを言われたということで、これは私どもに直接言ってくれたことじゃないんですね。いわゆる第三者に話をしたことなんですよ。ですから、それがどんなようなニュアンスで、また、どのような前後関係の中でそういうのが出てきたか、それも聞いておりませんので、私どもは、それは、そういうふうな話があったというように受けとめております。

 それから、私は包括的な解決、こういうふうに申し上げていますけれども、これは平壌宣言どおりなんですよ。拉致、ミサイル、核、この三点セットですね。拉致という人道問題を解決し、そして、核、ミサイルという、安全保障の問題でございますから極めて大事なことでございますから、この三つをやはり同時解決していこう、こういうことによって国交正常化への道を開いていきたい。こういうふうなことは平壌宣言の中にございますけれども、それを実行してまいりたいと考えているところでございます。

田中(眞)委員 私のお尋ねは、日本人の拉致被害者はもういないと金正日さんは、小泉さんと当時の安倍官房副長官が初訪朝しました、二〇〇二年九月でしたか、あのとき以来、もう完全に、これは九月十七日でしたけれども、あれ以来、拉致問題は解決したと金正日はずっと言っているわけですね。

 そして、この間ですよ、この話を――このことを認めるかどうかということをまずお答えいただいてからにします。どうぞ。拉致は終わったんですか。

福田内閣総理大臣 今までの交渉の経緯、そして、北朝鮮の方から示されたいろいろな回答があったと思います。そういうものについて日本側としては満足していないということです、これは拉致の問題ですけれどもね。そういう状況でございます。

田中(眞)委員 満足していないとおっしゃることは、あの帰国した三家族だけではない、あれで終わりではないというふうに確認してよろしいですね。もっと帰してもらわなければいけないというふうに政府は当然思っていると思いますし、我々国民も皆そのように考えているわけです。

 総理は、この間の所信表明演説でこうおっしゃっています。拉致問題は重大な人権問題です、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して国交正常化を図るべく、最大限の努力を行うとおっしゃっていますけれども、ということは、まだ拉致は終わっていないと。私どもは、みんな、全員が無事に、安全に一刻も早く帰してほしい、帰ってくるべきだというふうな立場でいるんです。

 そこで、ここでもって所信表明でおっしゃっているんですから、総理も当然そういう思いでいらっしゃると思うんですけれども、この不幸な過去の清算、これは賠償問題ですけれども、これは完全に財政出動を伴う問題、国民の税金を支払う問題ですから、大体どのぐらいのことを言われるというふうに、何度も何度もこのことをおっしゃっているわけですから、大体積算しておられますか。

福田内閣総理大臣 それは、今後の日朝交渉の中で話し合われる、日朝交渉というのは、国交正常化交渉の中で話し合われるべき問題だというふうに思っております。

田中(眞)委員 ですが、あの平壌宣言から五年も過ぎてしまっていて、そうあるべきだみたいな話をしていて、拉致被害者の方々は、御家族も、時間との競争じゃないですか。その中で、何でそんな悠長なことを自民党政権が言っているのか。

 特に、ではこれを申し上げますよ。包括的と言っていますけれども、六カ国協議が進んでいます。六カ国協議はよしとします。シックス・パーティーズ・トーク。しかし、この中でもって、日本も、各国が言っている中で共通の問題、六カ国が思っていることは、核でありミサイルであります。ところが、賠償の問題と拉致の問題は、もちろん韓国も拉致がありますが、日本特有の、固有の問題がこの拉致と賠償問題じゃないんでしょうか。

 そして、この間、ウランバートルでもって、美根慶樹大使、それから北朝鮮の代表が話をしましたけれども、新しい進展はなかったと承知しています。それから、金正日体制が自分の体制を保持するためにずっと初めのときから言っていることは、何としてもアメリカとの二国間協議を始めたいということがあったわけですが、この五年間で随分それが実現して、いつぞやもジュネーブで、ヒル・アメリカの代表と北の代表が話をしています。

 そして、数日来、予算委員会を拝見していましたら、総理は、総理就任のときに、ブッシュ大統領から電話が来て、そして、拉致の問題を置き去りにはしないということを、日米同盟があるからと。それは当然そう言うと思います、同盟ですからね、当たり前ですけれども。

 しかし、日本がどのぐらいの賠償金を払う腹があるのか、それがどれだけ本気で拉致を完全に解決しようとしているのかということが、これだけ時間がかかった中で何もはっきり伝わってこないわけですよ。

 そこで申し上げます。

 九月十七日、初訪朝の日のこと、これは大変お嫌かと思いますが、ぜひ記憶を喚起してください。

 朝十一時、ちょうど今ごろ、ちょっと前ぐらいですか、二〇〇二年九月十七日、小泉、安倍初訪朝の日の朝十一時に、小泉さんと金正日の首脳会談が始まりました。そして、日本では、その午後からでしょうか、拉致被害者の御家族が衆議院第一議員会館の大会議室で待機をしていました。午後三時過ぎ、外務省差し回しのバスで飯倉公館に移動しました。

 そして、午後四時三十分過ぎになりましてから、まず、横田めぐみさんの御両親が別室に招き入れられて、そこでは植竹繁雄当時の外務副大臣が死亡情報を伝えました。そして、そのときのお父様の号泣ぶりはその後五時三十分から七時七分までのテレビで放映されて、我々国民は本当に驚愕し、胸のつぶれる思いがいたしました。記憶に新しいと思います。

 四時三十分過ぎから呼び込まれて、その死亡情報がもたらされたんですが、五時三十分になって、平壌では日朝平壌宣言の署名がされたわけですね。

 そして、この御家族が飯倉公館で個別に呼ばれているとき、三人目のときから福田官房長官が官邸から来られて合流したというふうに聞いております。間違いがないと思います。

 そして、八時四十六分、夜になってから、小泉さんと安倍さんは平壌の空港を立って、夜の十一時近くになって日本に帰り着くわけですけれども、一日の、私はこれはタッチ・アンド・ゴーだと言っているんですが、こんなことでもってよくまあ、解決なんかするわけもないのにと思っておりましたけれども、結局はそこでもって、五人生存、八人死亡ということについて、後でいろいろ報道がありましたけれども、実際には午前十一時に、首脳会談が始まる直前に、北朝鮮の馬アジア局長が、日本側からの田中均局長に対して安否リストを手渡した。死亡した人たちの年月日、すべて記入されている。それが、総理が金正日に会う寸前に渡されている。完全に北の土俵に乗っているわけですよ、その段階で。ところが、それをなぜか飯倉公館では発表しなかった。そのことが九月十九日の朝日新聞で、朝刊でスクープされました。

 そうしましたら、それを受けて、当時の官房長官、福田官房長官は、午前の記者会見で、安否リストの存在があったじゃないかと二日後に言われたときに、こうおっしゃっています。御記憶だと思います。家族に連絡した通知文とは別に北側から非公式に死亡年月日の提示があった、私は、官房長官ですよ、官房長官は知らなかった、不確かな情報のため、現場の判断で公表しなかったと説明しています。

 質問の二番目です。現場の判断とはだれですか。このときは高野紀元審議官も行っていますし、当然田中局長も行っています。総理と官房副長官なんでしょうか。どなたのことを現場の判断とおっしゃっているか、明言してください。

 それから、続けてこの件について申し上げます。

 その後、福田官房長官は、一種の非公式情報という注釈をつけて被害者の家族の方に知らせた方がよかったかなと思うと述べて、政府の対応に落ち度があったことを認めておられるということなんです。そして、小泉さんは例の調子で、安否情報は北側の発表なんだ、日本政府が認定したわけではない、日朝正常化交渉を再開していく中で真相解明を求めると言われているんですけれども、言ってみれば、ピッチャー役で小泉さんと安倍さんが平壌に行き、キャッチャーとしては福田官房長官がおられたわけですね。

 先ほどの質問に対してお答えください。

福田内閣総理大臣 九月十七日の事実関係ですね。これは私も、覚えているでしょうねというふうに言われたけれども、正直申しまして、私もいい年ですから、そんな正確に覚えていないんですよ。ですから、もし正確に聞きたいというのであれば、質問を前日に出しておいていただきたいんですよね。そうすれば、ここで正確にお答えすることができたんです。

 ですから、私もいいかげんな記憶でもってお話をしたいと思いません。ですから、その質問にはお答えすることは差し控えさせていただきます。

田中(眞)委員 それは、年をとったということは理由になりませんで、私は、当時の植竹外務副大臣、引退されましたし、お年も召されていますけれども、しっかりとこのことは頭に時系列に入っていました。なぜかといったら、これだけのショッキングな出来事はなかったとおっしゃっているんですよ。

 官房長官だったじゃないですか。官房長官じゃないですか。そして、御自分で手を挙げて内閣総理大臣になりたいといって総裁選挙に出られて、そして結果、所信表明の中でも、先ほど言ったように、速やかに解決するとおっしゃって、拉致の問題が、小泉、安倍、福田内閣と、ずっと横の糸として通っているんですから。おっしゃってください。

福田内閣総理大臣 ですから、何時に現地でもってそういう情報をもらったか、それが何時に私どもに伝えられたか、そういうことは時系列的に今申し上げられないというふうに言っているんですよ。そのぐらいおわかりになるでしょう。

田中(眞)委員 時間を伺っているのではありません。現場の判断、覚えておられるでしょう。あのときは非常にデリケートな状況で、日本じゅうが息を詰めて平壌訪問を見ていたときなんですよ。官房長官も胃が痛むような状態で官邸におられたんじゃないんですか。

 そのときに、この安否リストを公表するかしないかというのは大きな政治判断ですよ。それを、現場の判断だった、だから公表しなかったとおっしゃっているのは、では官房長官の判断ですか。

福田内閣総理大臣 現地に行っている人は、たくさん行っています。そして、外務省の人もたくさん行っているわけです。それが、だれがだれに連絡をするか、そういう事実関係については、私、今申し上げられないというふうに申し上げているんです。

田中(眞)委員 では、情報をはっきり国民の前で、拉致被害者や関係者、皆さんの前ではっきり申し上げられない、五年たっても、そういう政治家であるということがはっきりと証明されたわけでございます。

 そこで、もう一つ申し上げたいことは、このときのですね、このときの……(発言する者あり)質問中なんですけれども。

枝野委員長 質問を続けてください。

田中(眞)委員 はい、質問を続けさせていただきます。

 このときには大きな政治判断があって、よく聞いてくださいね、一つは、安否リストの問題をどうするか、公表するかしないか。マスコミのスクープがあったからフォローしたというのが事実、ファクトでございます。もう一つは、平壌宣言の署名をする時間帯と、拉致被害者、飯倉公館で待たせている方たち、その方たちを呼び込んで死亡の情報を伝える、このことと署名とのタイミングを図る。これは非常に神経がすり減るような作業であったと思います、外交ですから。ところが、結果として、帰ってこられたときはマツタケをしょって帰ってきた。

 それでもって、話はそっちへ行ってしまったんですけれども、当時の北朝鮮、どんなだったですか。当時の北朝鮮は、経済的に非常に困窮していて、そして脱北者もふえていて、アメリカからも悪の枢軸と言われ、そしていろいろな非難を受けている中でテロ支援国家であると言われていたわけですから、金正日体制にしてみれば、何としても金体制を温存すること、持続すること、それ自体が言ってみれば自己目的化していたわけです。

 片や自由民主党の小泉内閣は、五〇%、五一%に、なぜか理由は知りません、多分総理の方が御存じでしょうけれども、支持率が急落したんですね。なぜでしょう。そして、急落して、それを何とか風を起こして、もう一回人気を挽回しなきゃいけない状況だったんですね。この平壌訪問によって、六一%にいっときまた小泉内閣の支持率は上がったんです。

 マツタケも、だれもただとは思っていません。あれほど経済的に困窮している国がただでお土産を出したとはだれも思っていないわけでして、これは決算委員会です、今は外交上の秘匿云々でおっしゃらないでしょうけれども、どのぐらいの税金が使われていたのか、こういうことは、将来、国民の皆様、納税者につまびらかにしなければならないと思っています。

 その中で、先ほどの安否リストの問題と平壌に関係ありますけれども、平壌宣言について、これの履行をずっとおっしゃっていますが、これは非常に有効な、いいものであったと今も確信しておられますか。

福田内閣総理大臣 平壌宣言の有効性ですか。これは大変大事なものだというふうに思っております。

田中(眞)委員 平壌宣言、ここにございますけれども、この平壌宣言の中には、拉致を金正日総書記は謝ったということも書いてありませんし、拉致について具体的に盛り込んでありません。

 強いて言えば、三番目のところですね。四つ項目が大体大きくあるわけですけれども、その中でもって、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、」「このような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」と書いてあるわけでして、ここで、言ってみれば、完全に拉致問題というものはピリオドを打たれてしまったわけですよ。いいですか。それを金科玉条のように見ておられるけれども、現実を見てください。解決していないんです、五年間も、自民党政権のもとで。

 そして、先ほど来のような、言ってみれば、福田官房長官は当時の政府高官、今は御自分から希望してそのいすに座っていらっしゃるから、もっと大きな地位におられるわけですね。その方が、一生懸命口では、安倍さんもそうでした、拉致が解決しなかったら私の内閣では、拉致だ、拉致だ、日本じゅうでそのことを大きく報道するべきだとおっしゃったけれども、小泉さんと安倍さんが行ったことによって、平壌宣言に署名をしたことによって、そして、それ以上、本当だったら安倍さんが、せっかく国費を使って行ったんですから、粘って、泊まり込んで、そこで徹底的に議論をしてみるべきだったじゃないですか。

 マツタケをもらって帰ってきてしまって、そして五年間も、拉致をやります、必ず政権の所信表明になると、一年前も、やります、やります。これでどういう勝算があると、どういうことを国民に対して説得できるのか、具体策をおっしゃってください。

福田内閣総理大臣 過去のことはいいんですね。これから私がどうやって取り組むか、こういう御質問だったというふうに御理解してよろしいですね。

 これは、相手のあることで、交渉事でございます。ですから、相手の出方など見ながらその交渉を進めるわけでございますが、六者協議によりまして、核の問題について、まあ一定の進展があった。これはもう間違いなくということを今の段階で言えませんけれども、今年中にこの核の問題を、要するに、北朝鮮の核の無能力化といったことを実現する、そういう合意ができて、それに向けて具体的な手続が今進行中でございますから、そういう意味においては、核の方は、これはうまくいく。であれば、拉致とかミサイルとか、そういったような問題についてもこれから真剣に取り組んでいく、そういう状況が生まれつつある、こういうふうに考えております。

田中(眞)委員 それは、政府としては、当時の担当者であった福田総理にしてみれば、そう答えざるを得ないのかもしれませんけれども、事実を見ますと、金正日という人は、拉致は終わった、そして、先ほど、冒頭言ったように、日本人の拉致被害者はもういないと強気な、拉致についてはもう全部終わったんだ、片づいたんだという言い方を繰り返し繰り返し国際社会に対しても発信しているわけです。

 その理由を申し上げます。解決するすべがあると私は思いますよ。

 それは何かといいましたら、北の通告を、あの日、二〇〇二年のあのときに、北側が言った通告を、政府高官である総理と副長官と官房長官がそのまま受け入れて公式に伝えた。すなわち、小泉内閣のあのことによって、もうこれはコンクリートに、確実に、公式に日本政府も納得したことだと金正日体制は、私は、これは本当に、高らかに快哉を叫んだと思いますよ。

 それで、今になって、六カ国協議があるから、核とミサイルが。全部大事ですよ。しかし、冒頭に言いましたように、拉致の問題と賠償の問題は日本国にかかわっていることですよ。だから申し上げているんじゃないですか。ほかの国の総理に聞いているわけじゃありません。

 もっと言えば、九月十七日の死亡情報、これを撤回するべきなんです。撤回させないと、そこからじゃないと拉致は前に出ないんですよ。今まで認めたまま、いつまでもいつまでも同じことを繰り返していったら、本当にこんなことで救えるんですか。

 この政権は、安倍さんはもう言ってもしようがないですけれども、当事者が政権をとっているから申し上げているんですよ。本気で拉致を解決する気があるなんということは、拉致被害者の家族も、我々国民も、とても感じられません、国際社会も。そのことを申し上げたいと思います。

 次に、総理はこういう名前をお聞きになったことはおありですか。例えば、コンチネンタル・グレーン、ADM、アンドレ、ブンゲ、カーギル。御存じですか。これは農業です。

枝野委員長 もう一回ゆっくり読んでください。

田中(眞)委員 これは農業の分野ですかね。コンチネンタル・グレーン、ADM、アンドレ、ブンゲ、カーギル。政治歴、当選六回やっていらっしゃるわけですから、お聞きになったことがありますかと伺っているんです。

福田内閣総理大臣 最初はコンチネンタル、これは穀物の集荷出荷業者ですね。それからカーギル、これもわかります。それから、何ですか、エーティーエムとか……(田中(眞)委員「だから、それは全部ですね」と呼ぶ)その他はちょっと……(田中(眞)委員「つまり、こういう団体を何と言うか」と呼ぶ)ああ、それは穀物の輸出業者だと思います。

田中(眞)委員 これは多国籍企業の穀物メジャーと言われている業者なわけですけれども、こういう大きな会社、今は、世界の穀物、小麦、トウモロコシ、大豆、菜種、その他ですけれども、お米も含めて、こういうものをこの大手五社がほとんど世界に供給する力を持っている、掌握をしていると言われていますので、世界の食料に関心のある方たちは常識問題なわけでございます。第二次大戦後はずっとこうした会社が、途中でMアンドAなんかもありますから、六社が五社になりましたけれども。

 その中で特筆して言いたいことは、アメリカのカーギル社。これは、私は一年生議員のときに、自民党におりましたときに、カーギルのことは勉強した方がいいと御指導いただいたんですけれども、カーギル社というのは、資産百億ドル、年間売り上げ六兆円、世界の穀物貿易の二五%はこのカーギルが動かしております。世界六十カ国に七百以上の事業所を持っておりますし、カントリーエレベーター、群馬県にも新潟県にもありますけれども、あんな規模ではなくて、実際に見た方に聞きますと、水力発電のダムぐらいの規模のものを八十カ所も持っている。

 ところが、この会社は株式公開をしておりませんで、そして、今いろいろうわさになっている遺伝子組み換えでありますとか、そういう研究とか、生産から流通から販売から、もう鉄道から船から港から全部持っていて、金融にも大きな影響力をもちろん及ぼしている。そして、アメリカの、日本もしょっちゅういろいろ痛い目に遭っていますけれども、通商代表でありますとか農務副長官というポストについたりする方もおられる。

 そういう極めて世界の大きな穀物市場を差配しているグループの名前を申し上げたので、ひょっとしたらば、よくお勉強なさっている総理だから御存じかなと思ったわけでございますけれども、こういう世界の穀物メジャーの中に日本の農業、日本だけじゃありませんが、しっかりと組み込まれているんですね。日本だけが単独で歩いているわけじゃないんです。

 そこで、そういう世界の食料事情の中で日本の農業があるということで、農業問題について伺いたいと思いますけれども、ことし、二〇〇七年を政府は大きな農業改革の年にしようとしている。個人の場合は四ヘクタール、集落営農だったらば二十ヘクタール以上、それには補助金を出す。逆に言うと、四ヘクタール以下の小さな農家に対しては補助金は出しませんよということでもって、言ってみれば、専業で大きいものをどんどんつくっていきましょうということを言っているわけですけれども、日本の農家数が約三百万戸あるわけですね。その中で、本当に専業農家といっているのは二割なんです、二割に満たない。ほとんどが、御存じのとおり、兼業であります。

 そして、その中で、どういう状態にいるかというと、彼らの結論は、とにかく後継者がいない、それから収益性がよくない。

 新潟県のケースで恐縮ですけれども、一俵、六十キロですけれども、お米、これは額、コシヒカリでしたら二万円で売れるんです。ところが、ことしになりましたらば、米余りだと言われて、農協で仮渡金を二千円カットされて一万八千円になってしまった、したがって意欲が低下する。後継者も、後継ぎも見つからないんじゃないかということが言われています。

 さらに、日本の農業は、先ほど言ったような世界の大きなマーケットの中の一部であるにもかかわらず、農地法があったり、農地法も私もよく勉強いたしましたけれども、農村基本法とか食管法とかがありまして、要するに、いろいろな細かい制度が、複雑なものがたくさん入り込んでいる。さらに、猫の目行政でマイナーチェンジがしょっちゅうあるものですから、とてもとても、国、法律の変更に農家はついていけないというところに来ているわけですよ。そこで、もう悲鳴が上がって、日本の農家は火が消えるというところに来ています。

 もう何度もお聞きになっていると思いますが、耕作放棄地というのは三十八万四千ヘクタール、日本全体のいわゆる農地、一般の、野菜も入れて、農地の一割がもう既に耕作放棄地になっています。しかも、過去五年間で完全に二十倍にふえている。すごい速さでもって耕作放棄地がふえているわけですよ。

 耕作放棄地がふえると、洪水とか土砂崩れ、自然災害が起こりやすいという中にあって、食料自給率は、もう耳にたこができるほどお聞きでしょうけれども、四〇%を切っている。フランスの場合は一〇〇%、直近は一二二ですね。アメリカは一二八、オーストラリアは二三七。日本の一戸当たりの農家の面積、日本の農家が一戸当たり一であればオーストラリアは一八〇〇もあるんです。私が理想的だなと思っているフランスの場合は二十五倍あるんですね。

 そういう中で、日本はどんどんと輸入をしているんですが、いろいろ輸入している中で、こういうものを総理は、お忙しいでしょうから、またどれだけ関心がおありかわかりませんが、ごらんになったことはありますか。これはお野菜の種なんですよ。トウモロコシ、ホウレンソウ、大根、ニンジンといった最もポピュラーな、世界じゅうで愛されている、日本人がみんな好きなものですが、これは農家の方たちに聞きますと、種がみんな外国だと言うんですね。

 農協、あらゆるところ、ほかの県から集めましたけれども、一番多いのはアメリカです。次はオーストラリア、デンマークです。私が近くで買ってきたものを見ましても、ニンジン、オーストラリア、大根、アメリカ、ホウレンソウ、アメリカ、トウモロコシもアメリカ。しかも、この大根に至りましては、本種子は農薬メプロニル処理してあります、本種子を食用、飼料には使用しないでください、また、小児、子供の手の届くところには保管しないようにと書いてあるんですね。

 だから食べて毒かどうかわかりませんが、この種を、これで大根をつくっている農家がこう言いました。眞紀子さん、私たちは大根をつくっている、大根おろしやこれからおいしくなるふろ吹き大根にはいいんだけれども、日本古来のたくあん、お好きですか、たくあん。ああいうものにはこれは加工できないそうですよ、幾らつるしても。

 日本古来のものが種からして違ってきているんだ、こういう農林行政をやっているということを御存じでしたか。

枝野委員長 田中委員に申し上げます。

 委員会における物品の提示は、あらかじめ委員長の許可を得ることとなっております。自後、御留意をいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 例えば穀物、小麦、これはほとんど輸入しているわけですね。大豆もそうだし、そういう状況にあるという事実は知っております。

 種がそこまで、それは全部外国産をきょうは特別にお持ちになったんですか。(田中(眞)委員「違います」と呼ぶ)そうじゃないんですか。であれば、それは大変、そういう分野にまで外国産ということで、びっくりいたしております。

田中(眞)委員 私は、農業の問題はもう喫緊の課題だと思っておりまして、最近の新聞を見ましても、オーストラリア、あれだけの食料を供給できる国も、二年間連続の干ばつがあって、そして飼料不足から穀物の輸入に踏み切るという決断をせざるを得ない状況に来ているという報道もありますので、日本がどうしても安全な食料を自国民のためにしっかりと供給できるようにするということが文化国家であって、すべて外国から買っていて大量廃棄をしているような状態は、決して正常でいい状態であるというふうには私は考えておりません。

 ところが、農政について伺いますけれども、何でもかんでも、私はこの国のありようについて総理に伺いたいんですけれども、小泉さん以来、競争の原理、市場開放をする、郵政もそうでしょうけれども、あらゆる意味で競争の原理を導入するということが農業にもふさわしいとは私は思っておりません。

 戸別の所得補償制度、これを言うと、ばらまきだと言う方たちもおられるようですけれども、ばらまきだと言う方のところには補償制度をしなければいいわけですけれども、これは何でもかんでも競争すればいいのではなくて、国が手厚く生産費と市場価格の差を税金で埋めてあげる、そういうふうな面倒を見ていかないと、どんどんどんどんと農村は疲弊していきますよ。アメリカもEUも直接支払い制度があります。そして、成功しているんです。日本も中山間地帯では、デカップリング、御存じですよね、デカップリングをずっとやってきているわけです。今ここで農村を助けるためにはこれをやらざるを得ない。

 ところが、本来は、政治主導であれば、一つの政策目標に対して予算を集中的に投下しなければいけないんですが、この夏の来年度の概算要求のとき、日本の国会はどうでしたか。参議院選挙の後、閣僚がかわる、総理が突然いなくなる、首班指名をやる、その前に総裁選ですか、首班指名をやる。だれが予算を組んでいたんですか。国会が機能していない、ストップして、空転して、総理もいない、閣僚もかわっていない。役人じゃないんでしょうか。

 それでは、政治が今求められていることは、完全に、一番大事なところに限られた予算を集中的に投下することによって活性化すること、これが政治の要諦だと思いますが、それとも、役人が決めたような全部毎年決まり切った予算をすることがいいとお考えですか。いかがですか。

福田内閣総理大臣 自民党政権でいろいろな問題がありまして、その結果、国会審議もできないというような状況もあったということでありまして、その御迷惑をおかけしたことは本当に申しわけないというように思っております。

 しかし、だからといって、政策まで全部お役人にやってもらっているんだということではありません。それは、その間、一時的にお役人が仕事、お役人は仕事するのがお役人ですから、ですから休まず仕事をしておられたと思いますけれども、しかし、これからその辺しっかりと政治主導というような形で政策実現を図ってまいりたいと思います。

田中(眞)委員 少なくとも、今回の予算はもう役人がつくってしまったわけですから、今後とおっしゃっているわけですけれども、私が申し上げたいことは、福田総理は、小泉さんの改革路線、安倍さんが引き継いだものを引き継がれるんでしょうけれども、小泉政治というものは、小泉政治によって地方が疲弊して格差がしっかりとできてしまったんです。大多数の国民が住んでいる地方が悲鳴を上げているんです。そのときにまた改革路線、小泉さんのを継ぐということ、政策転換はないということですね。政策を変えないと、先ほどおっしゃった政治主導なら、農業分野から本当に集中的に予算を投下していかないと、農家はつぶれてしまいますよ。

 公共事業もそうでしょう。公共事業も予算を削減する。では、地方の農家はほとんど農業か公共事業じゃないんですか、群馬県も。そういった場合に、どうやって彼らを助けていくのかということを申し上げたい。

 JAも介護とか子育て支援をすると言っていますけれども、私は、JAは、金融の仕事以上に実際にスリム化してやるべきことは、労働をする人たちをあっせんすることだと思いますよ。そういう全国農協青年組織協議会、二十歳から四十歳までの若い方たちがいる組織もありますし、本当に人材派遣をする、そして農村で住む人たちのために介護、子育て支援ができるような、金融よりも保険よりも、そのようにつくり変えていくということを政治がやるべきで、自民党ができなければ、民主党政権に早くかわって、そういうことを実現するしかないのではないかと思います。

 最後に、あと一分ございますので、ゆっくり話させていただきますけれども、私は、つくづくこの決算委員会で思っておりますことは、総理は、無駄遣いをやめる、いつもそう言っていますが、どの分野かはっきりわかりませんけれども、インド洋で米軍支援、これで二百二十億円相当の油が日本から無償で提供されている。これが、初めは二十万ガロンだったのが八十万であるとか、アフガンではなくて本当はイラクに行っていたのではないか、いろいろな議論が予算委員会でもされていました。

 私は、そういうことを十二分にこの議論の重要性はわかった上で申し上げたいんですが、この二百二十億円が、もしも、国家賠償訴訟を起こしている二千人の中国残留孤児の方々に支給されたら、今の自民党案では一人六万六千円ですか、プラスいろいろな配慮をすると言っておりますけれども、そんなことではなくて、一人に一千万円支給できるのになと思っております。

 それから、障害者の自立支援、こういう方たちの対象者に配付されたら、いかばかり喜ばれるか。

 それから、中越地震、三年前ございましたけれども、あの地震でもまだ片づいていないんです。仮設住宅に九十七世帯がことしも寒い冬を迎えようとしていますし、私も被災者になりましたけれども、柏崎を中心とする中越沖地震の被災者は九百六十世帯、足して合計千五十七世帯がまだ仮設の中で寒い冬を迎えざるを得ないんです。そこに先ほどの費用を配付すれば、一世帯二千万円のお金が行くんです。

 我々の税金の使い道です。非常に財政が厳しい中で、どこに目配りをするのか。弱い立場の人たち、困っている人たちのために、我々納税者が、なるほどね、決算委員会で、ああ、いい決算報告ができているんだなと思われるような政治を、どこまでおできになるかわかりませんけれども、心がけていただきたいと申し上げまして、質問を終わります。

枝野委員長 以上をもちまして平成十七年度決算外二件についての質疑は終局いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

枝野委員長 平成十七年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 これより議決案を朗読いたします。

    平成十七年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書に関する議決案

  本院は、平成十七年度決算について、予算執行の実績とその効果、会計検査院の検査報告などに重点を置いて審議を行ってきたが、さらに改善を要するものが認められるのは遺憾である。

 一 予算の執行状況などからみて、所期の目的が十分達成されるよう、なお一層の努力を要する事項などが見受けられる。

   次の事項がその主なものであるが、政府は、これらについて特に留意して適切な措置を執り、その結果を次の常会に本院に報告すべきである。

  1 国の財政は、公債残高が年々増加の一途を辿り、非常に厳しい状況にある。二〇一一年度には国と地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する財政健全化の目標に向け、歳出の水準を一層厳しく抑制していくべきである。また、財政融資資金の貸付残高の圧縮及び特別会計等における国の資産の適正規模への圧縮に取り組んでいくべきである。さらに、多額の剰余金が問題となっている農業経営基盤強化措置特別会計においては、農業改良資金貸付金の貸付実績及び見通し等を精査の上、剰余金について一般会計への繰り入れ等の措置を講ずるべきである。

  2 国民の医療に対する信頼確保と良質な医療提供体制の実現に向け、適正な医療費の在り方を検討するとともに、病院勤務医の勤務環境の改善、医師の地域偏在の解消、小児科医や産科医の適正配置、救急医療体制の充実強化等に全力で取り組むべきである。また、看護職員の確保に向けた処遇改善、離職防止、再就業支援等の施策の計画的な実施、助産師の活用促進に向けた対策の充実に努めるべきである。さらに、本年施行された「がん対策基本法」については、基本理念を十分踏まえ、がん予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化、研究の推進等に万全を期すべきである。

  3 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るため、社会保険庁による年金記録の管理実態、納付記録の確認、基礎年金番号を用いての把握がなされていない記録等の調査を徹底して実施するとともに、納付記録の消失や支給漏れの防止に向けた年金記録の管理体制強化に万全を期すべきである。

  4 近年、地域の財政力や家庭の経済力の格差により、子どもの教育環境格差が広がっている。一方、高等教育機関に対しては、質の高い教育研究に向けた適正かつ効果的な財政支援が求められている。ついては、奨学金の充実等へ向けた取組みを一層推進するとともに、これら個人への助成と大学等への助成との適切なバランスによる財政支出に取り組むべきである。また、子どものいじめが原因と考えられる自殺が深刻化していることから、いじめ等問題行動に対し、実態把握に努め、政府、家庭、学校等がそれぞれの役割を果たし、一体となって取り組むべきである。

  5 文化財は、国民の貴重な財産であり、我が国の歴史、伝統、文化等の理解のために欠くことができないものである。経済の発展や開発が進む中で、歴史的建造物・史跡等の文化財とその周辺環境の保存及び活用を図るため、都市行政等他分野との施策の連携を図ることに努めるべきである。

  6 天下りを背景とした官製談合事件が相次いで発生している。ついては、一般競争入札の範囲を拡大するなど、入札・契約手続の透明性・客観性、競争性を確保するための改革を進めるとともに、事実関係について、職員の再就職状況を含め徹底した調査を行い、官製談合事件の再発防止に万全を期すべきである。また、談合等の弊害となる天下りをなくす措置を含む公務員制度改革を実現すべきである。

  7 郵政民営化については、今後、民間の創意工夫による様々なサービスの提供を国民が享受できるよう環境整備作りに努める一方、当面の間、国の出資が残ることに鑑み、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の業務範囲については、他の金融機関とのイコールフッティングの状況や両社の経営状況等を勘案し適切に対応していくべきである。また、地方においてサービスが維持されるよう対応すべきである。

  8 地方自治体が自立し、責任を持って行政サービスを提供するため、地方分権改革推進法等を通じて国と地方の役割を明確に分担し、これに基づき国から地方に事務事業、権限及び財源を移譲するなど、地域格差に留意しつつ国と地方の税財政の関係を根本的に見直す改革を推進すべきである。

  9 公会計制度においては、国民に対して国の財政事情を分かりやすく開示し、財政の透明性・一覧性を向上させるとともに財務情報を予算編成に活用し、予算の効率化・適正化につなげることなどが求められている。また、政策評価制度においては、その充実及び政策への反映を通じて、効率的で質の高い行政を実現させることが求められている。政府は、これら制度の一層の充実を図ることにより、国民への説明責任の徹底など国民本位の行政に向けた取組みを推進すべきである。

 二 会計検査院が検査報告で指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。

   政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講じるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。

 三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。

  政府は、今後予算の作成及び執行に当たっては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、行財政改革を強力に推進し、財政運営の健全化、行政の活性化・効率化を図るとともに、政策評価等の実施を通じた効果的かつ効率的な行政を推進し、もって国民の信託にこたえるべきである。

以上が、議決案の内容であります。

    ―――――――――――――

枝野委員長 これより平成十七年度決算外二件を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決を行います。

 まず、平成十七年度一般会計歳入歳出決算、平成十七年度特別会計歳入歳出決算、平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書及び平成十七年度政府関係機関決算書は、これを議決案のとおり議決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

枝野委員長 起立多数。よって、議決案のとおり議決すべきものと決定いたしました。

 次に、平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書、平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書の両件は、これを是認すべきものと決定するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

枝野委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決定いたしました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

枝野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

枝野委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。額賀財務大臣。

額賀国務大臣 ただいま御決議のありました財政再建につきましては、極めて厳しい財政事情のもと、将来世代への負担の先送りを行わず、金利の急激な上昇などを通じて国民経済へ悪影響を及ぼさない財政運営を行う必要があります。

 このため、まずは、二〇一一年度までに基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するとの目標に向け努力を重ねてまいるところでありますが、御決議の趣旨を踏まえ、歳出歳入一体改革をさらに進めてまいる所存であります。

 また、国の資産・債務改革につきましては、平成二十七年度末までに国の資産を百四十兆円規模で圧縮するとの方針のもと、御決議の趣旨を踏まえ、今後とも積極的に推進してまいりたいと思います。

 公会計制度につきましては、これまで省庁別財務書類、国の財務書類と順次その整備を進めてきたところでありますが、御決議の趣旨を踏まえ、今後とも、国民への説明責任を果たすとともに、財務情報の一層の活用が図られるよう、努力してまいる所存であります。

 以上です。

枝野委員長 次に、若林農林水産大臣。

若林国務大臣 ただいま御決議のありました農業経営基盤強化措置特別会計の剰余金につきましては、平成十七年度の決算剰余金八百十三億円のうち二百九十五億円を平成十八年度において一般会計に繰り入れたところであります。

 引き続き、本特別会計で保有する剰余金につきましては、農業改良資金貸付金の貸付実績及び見通し等を精査した上で、一般会計への繰り入れ等の措置を適正に講じてまいる所存でございます。

枝野委員長 次に、舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 ただいまの御決議により指摘されている点につきましては、先般の医療制度改革や五月末に政府・与党で取りまとめた緊急医師確保対策等を受けて、国民皆保険制度のもとで、地域にお住まいの方が必要な医療を受けられるよう、体制の整備を図ってまいります。

 また、がん対策につきましても、六月十五日に策定されましたがん対策推進基本計画により、各般にわたる施策を総合的かつ計画的に推進してまいります。

 また、年金記録の問題につきましては、基礎年金番号に統合されていない年金記録についての統合を着実に進めるとともに、年金記録の適正な管理に万全を期すことにより、年金制度に対する国民の信頼回復に努めてまいります。

枝野委員長 次に、渡海文部科学大臣。

渡海国務大臣 ただいま御決議のありました高等教育への財政支援につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、奨学金のような個人補助と大学等の財政基盤の強化、教育の条件の維持向上を図ることを目的とする機関補助の適切なバランスを勘案しつつ、一層の充実に努めてまいります。

 いじめの問題につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、実態把握に努め、政府、家庭、学校等が連携した取り組みの一層の推進を図ってまいります。

 文化財やその周辺環境の保存、活用につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、都市行政に関する関係の省庁や地方公共団体とも十分に連携協力しつつ、都市開発の中でも、歴史的建造物、史跡等の文化財が守られるよう努めてまいります。

枝野委員長 次に、冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 ただいま御決議のありました入札契約制度の改善等につきましては、一般競争入札の拡大や総合評価方式の拡充などに取り組んでいるところでございます。

 御決議の趣旨を踏まえ、今後とも、入札契約手続の透明性、客観性、競争性の確保や、所要の調査を確実に進めてまいる所存であります。

枝野委員長 次に、渡辺国務大臣。

渡辺国務大臣 ただいま御決議のありました天下りをなくす措置を含む公務員制度改革につきましては、さきの通常国会で成立した国家公務員法等改正法で導入された天下りを根絶するための各般の措置を実行していくとともに、総合的な公務員制度改革に取り組んでまいります。

枝野委員長 次に、増田国務大臣。

増田国務大臣 ただいま御決議のありました郵政民営化及び政策評価制度につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存であります。

 また、地方分権改革の推進につきましては、国政の最重要課題の一つであると考えており、御決議の趣旨を踏まえ、その推進に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。

枝野委員長 以上をもちまして各国務大臣からの発言は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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