衆議院

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第5号 平成24年6月11日(月曜日)

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平成二十四年六月十一日(月曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 新藤 義孝君

   理事 岡島 一正君 理事 玉木 朝子君

   理事 向山 好一君 理事 森岡洋一郎君

   理事 木村 太郎君 理事 平  将明君

   理事 遠山 清彦君

      石原洋三郎君    磯谷香代子君

      稲富 修二君    小野塚勝俊君

      奥野総一郎君    金森  正君

      神山 洋介君    熊谷 貞俊君

      黒田  雄君    斉木 武志君

      阪口 直人君    平  智之君

      高橋 英行君    野木  実君

      初鹿 明博君    樋高  剛君

      松岡 広隆君    村井 宗明君

      森本 和義君    柳田 和己君

      山崎  誠君    吉田 統彦君

      小泉 龍司君    古賀  誠君

      坂本 哲志君    下村 博文君

      中村喜四郎君    永岡 桂子君

      細田 博之君    村上誠一郎君

      赤松 正雄君    鳩山 邦夫君

    …………………………………

   参考人

   (東海大学海洋学部教授) 山田 吉彦君

   参考人

   (富山大学理学部准教授)

   (富山大学大学院理工学研究部准教授)       横畑 泰志君

   参考人

   (石垣市長)       中山 義隆君

   参考人

   (東京都知事)      石原慎太郎君

   決算行政監視委員会専門員 平川 素行君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  岡田 康裕君     磯谷香代子君

  初鹿 明博君     山崎  誠君

  伊吹 文明君     下村 博文君

  細田 博之君     永岡 桂子君

  石井 啓一君     赤松 正雄君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     金森  正君

  山崎  誠君     初鹿 明博君

  下村 博文君     伊吹 文明君

  永岡 桂子君     細田 博之君

  赤松 正雄君     石井 啓一君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     岡田 康裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件(尖閣諸島における諸問題)


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     ――――◇―――――

新藤委員長 これより会議を開きます。

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件、特に尖閣諸島における諸問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として東海大学海洋学部教授山田吉彦君、富山大学理学部准教授・富山大学大学院理工学研究部准教授横畑泰志君、石垣市長中山義隆君及び東京都知事石原慎太郎君に御出席を願っております。

 なお、石原参考人は、公務のためおくれて御出席になりますので、御了承願います。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、大変御多忙のところ、また遠方からお出ましをいただきまして、まことにありがとうございました。

 この尖閣諸島の問題は、我が国の領土に関する取り扱い、とりわけ国境を形成する離島をどのように管理し活用していくか、こういう我が国にとって極めて重要な課題である、このように承知をしております。

 そして、私ども行政監視委員会では、一年以上にわたりまして、この尖閣諸島の問題に取り組んでまいりました。

 きょうは、それぞれの分野で極めて知見をお持ちの参考人の皆様方から有意義な御意見を頂戴して、そして、しっかりとした私たちの委員会の審議が進められるように図ってまいりたい、このように思っておりますので、どうぞ参考人の皆様方には忌憚のない御意見を御自由にお述べいただきたい、このように思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度御意見をお述べいただいた後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず山田参考人にお願いいたします。

山田参考人 東海大学海洋学部の山田と申します。

 本日は、私、この場にお呼びいただきまして、私の今までやってまいりました研究の成果につきまして御説明させていただく機会をいただきましたことを心から感謝いたします。そして、名誉なことであると感じております。

 日本は、四方を海に囲まれ、四百四十七万平方キロメートルの領海及び排他的経済水域を有します世界六位の海の広さを持つ海洋大国でございます。私ども、日本の海という表現をいたしますとき、通常、領海プラス排他的経済水域、そして、今後は恐らく大陸棚も含めてのことになるであろうと思います。

 この排他的経済水域と申しますのは、他国を排して経済的な権益を認められた海域、簡単に申しますと、海底資源の開発、そして海中の利用、実は海中にあります海水には、金を初めウランなど、非常に貴重な金属類も入ってございます。そして、漁業管轄権、私ども日本人の食を満たします漁業、水産業の管轄権もこの海域では持っております。

 そのようなことから申しまして、日本の海といいますのは、未来の日本を支える非常に重要なものである、そして大事に守っていかなければいけないものであると感じております。

 日本は、この広い海の中に六千八百五十二の島を持っております。この島は、周囲が百メートル以上のもの、これを海上保安庁の方で一つ一つカウントした結果、六千八百五十二あるということが言われております。そして、実にこの六千八百五十二のうち六千八百四十七が離島という扱いになっております。離島以外の島といいますのは北海道、本州、四国、九州、沖縄本島、それ以外は全て離島。実は、この離島に住んでおります人口というのは、一億二千万人のうちの七十万人にしか及びません。しかし、この七十万人が住みます離島が、国家を形成する、そして国家を支えるであろう領海、排他的経済水域の基点となり、そこに住む人々が生きることによって、海を守り、海を支えております。

 その中で、昨今特に注目されておりますのが、今回議論いただきます尖閣諸島の問題でございます。実に尖閣諸島、東シナ海が今どれだけ脆弱なのか。

 今この時点でも、日本と中国の中間線、国際的には、排他的経済水域が重なる場合には、一般的に中間線をもって両国の境界線とするということが定められておりますが、特殊な事情がある場合には両国が協議するということになっております。日本は、特に特段の理由は感じられないということから、中間線をもって日中間の真ん中のライン、境界としております。中国側は、大陸棚が続くという主張から、より沖縄諸島に近い沖縄トラフ海域までを自国の管轄海域と主張しております。

 この点に関しましては、近々国連からも結果が報告されることになってこようかと思います。ただし、原則論、やはり国際的な判例から見ますと、中間線というのが一般的でございます。

 実に、この中間線付近に、あるいは中間線を越え、日中漁業協定というところで暫定水域、両国がお互いに管理をする海域の中には、既に今現在、二百隻を超える中国漁船が入っております。過去には、最大四百隻にも及ぶ中国漁船が入ったという事例がございます。もう既に、本来日本の海である海域に中国漁船が入り、乱獲を進めております。

 昨今の中国の情勢を見ますと、海洋進出を甚だしく進めております。特に南シナ海におきましては、常時、ベトナム、フィリピン、そしてインドネシア、マレーシア等と紛争に近い状態になっております。ベトナム、フィリピンとの間ではもう明らかに紛争状態に突入しております。そして、東シナ海におきましても、私ども日本の領域に侵入いたしまして、彼らの主張を一方的に繰り返すという状況になっております。

 中国の侵入に関しまして、中国は、かつては人民解放軍の艦船を中心に展開しておりましたが、現在では、警察権を前提にいたしまして、五つの海上警備能力を持ちまして海洋進出を進めております。特に東シナ海におきましては、まずは漁政、農業部漁業局の漁業監視船をもって領海侵犯、そして漁船団のコントロールをしております。

 私が石垣島を中心にしまして現地で幾つか調査をしてまいりましたところによりますと、東シナ海を航行する外航船の船長からの報告によりますと、無数の中国漁船がこの海域に侵入し、AISといいます、自動船舶識別装置と言われる、船の所属や船のナンバーなどを発信する機械を中国漁船は搭載しております。簡易型のものを搭載しております。それを、他国の船が近くに寄ってくると全て消してしまう。これはなぜか。そのデータ、情報というものは、監視すべき中国の漁業監視船に対して情報を提供している。そして、漁業監視船の従うままに中間線を越え、あるいは一部領海侵犯を行い、漁業をやっているというのが現状でございます。

 二〇一〇年九月七日、中国漁船による衝突事件がありました。皆さんも御存じのとおり、海上保安庁の巡視船に対して体当たりをするという事件でございます。この後、中国はどのような行動をとってきたのか。

 漁船の体当たり事件は、まずは漁船による領海侵犯、不法操業であったわけですが、その次には漁業監視船による領海侵犯を行い、そして、本年に入りまして、中国国家海洋局の管理いたします海監という海洋調査船、海洋監視船による領海侵犯を行い、しかも定期的、恒常的な警備活動であるということを言っております。中国は、一つ一つ段取りを踏み、日本の島に近づいてきております。

 では、これからどのようなことが考えられるかといいますと、フィリピンの例をとります。かつて、フィリピンが領有権を主張しますミスチーフ岩礁におきましては、漁船が緊急避難という名目で入り、あっという間に人民解放軍が入り、ミスチーフ岩礁自体を要塞化してしまい、中国の領土であると主張し始めております。

 そのようなことがこの尖閣諸島ではないということは全く言えません。今までの流れを考えていきますと、当然、次のステップは島に上陸するということになります。

 尖閣諸島は、日本の海、東日本の多くを囲む黒潮の起点になっております。東京の沖を通る黒潮、そして一部は対馬海流となり、日本海を抱き込むように流れております海流、黒潮の起点になっております。この海域の海洋汚染、そして海洋環境というものは、非常に日本に影響を与えるものでございます。

 そして、尖閣諸島海域は、漁業資源にも恵まれております。クロマグロ、ホンマグロの産卵地として知られております。この産卵地のクロマグロを守るということは、日本のマグロを食べる文化、そしてマグロの流通にとっても非常に重要なことになっております。

 昨今、中国では、魚があればあるだけ売れる、とればとるだけ売れるという状況におきまして、乱獲が進んでおります。私が福建省、現地を取材してまいりました、調査してまいりましたときには、尖閣諸島近海に出ている船は月に大体五百万円近い水揚げがあると。それが二百隻も入ってくるわけです。

 日中漁業協定では中国側が中国の法のもとに管理をするということになっており、その乱獲に対して日本側は歯どめがかけられない状況にもなっております。

 また、尖閣諸島の近海には、石油初め海底熱水鉱床という海底資源があることが言われております。将来的には、この資源の開発ということも、日本にとって非常に重要なことになってくると思います。

 今、尖閣諸島を守るに当たりまして非常に重要なことは、この領海、排他的経済水域の基点になる島を守らなければいけないということでございます。

 現在、無人島になっているこの島の現状、非常に脆弱であるとしか言いようがありません。特に、今回国会に上がっております海上保安庁法の改正がまだ進まない中で、あくまでも警察、沖縄県警によりこの島々は守らなければいけない。上陸された場合、沖縄県警により警察権が執行されるという状況におきまして、先ほど申しましたように、中国の漁民が上陸した場合どのような手が打てるのか。

 実は、東京都が売買の対象としております島は三つの島プラス一つですが、この周辺海域には、岩礁と言われる飛瀬を初めとした岩もございます。海上保安庁が四隻から六隻、そしてそれ以上の巡視船を割いたとしても、二百隻あるいは四百隻という漁船団が侵入してきた場合、どのように排除することができるのか。それは、上陸した場合、速やかに逮捕し、身柄を拘束し、難民であるか、緊急避難であるか、そして意図を持った侵入であるのかということを判断しなければいけない状況になると思います。

 仮に、一つの島に中国人が上陸し、実効支配をした場合、日本と中国の間の中間線の意味がなくなってしまいます。そして、尖閣諸島に一つでも中国が領土と主張し実効支配するような島ができた場合、そこを基点に、中国の通常主張しております沖縄トラフ理論というものまで発展しかねない。そうなりますと、東シナ海を日本が失うことになりかねないわけです。そのような状況で、海を守っていくということは極めて重要な意味を持つ、私はそのように考えております。

 このような海を守るためには、まずは、島に人が出入りできる環境を持ち、そして、しっかりと人の力で開発し、島を有効に利用することで生活空間をつくっていくことが重要であると考えています。島に生活空間をつくることこそが、島の管理、国連海洋法条約上全く異論のない、排他的経済水域も十分に主張できる島であるという管理になってこようかと思います。いち早く、この尖閣諸島に人が出入りでき、居住できる空間というものが私は必要であると考えております。

 以上でございます。(拍手)

新藤委員長 参考人、大変ありがとうございました。貴重な御提言をいただいた、このように思います。

 それでは、続きまして、横畑参考人にお願いいたします。

横畑参考人 今御指名にあずかりました横畑でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、このような機会を与えていただきました皆様に深くお礼申し上げます。

 私は、一九九七年より尖閣諸島魚釣島の野生化ヤギ問題について関心を持ち、いろいろな研究活動を続けてきました。近年、この島々に関する関心が非常に高まり、このようなところで発言させていただくようになったというふうに承知をしております。

 配付資料がお手元にございますことと思います。六枚つづりのものですが、その最初の三枚を用いまして発表いたしますので、見ながらお聞きください。「尖閣諸島魚釣島の自然の価値とその現状について」というタイトルでございますが、今申し上げました野生化ヤギの問題が最も大きなポイントになりますので、主にこのことについてお話しさせていただきます。

 まず、魚釣島の自然の価値について申し上げます。

 私はさまざまな生物を研究しておりますが、この島の特徴は、何といいましても固有種、すなわち世界じゅうどこを探してもこの島にしかいないという生物が多いことにございます。

 この島は三・八平方キロメートル、東西にわたり三キロメートルという非常に小さな島でございますが、現在、十三種類の固有種と、植物におきまして二つの変種が知られております。ある資料におきましては十種類の固有種というふうに記したものもございますが、これは、表一の上から五番目のオキナワクロオオアリと、その二つ下の等脚類の二種類、これがまだ正確に学術的に新種として記載されていない、報告書などで報告されているだけの段階のものですから、それを除くと十種類ということになりますが、ここでは、いることは間違いないので、十三種類とさせていただいております。

 このように、多数の固有種がいるだけではなく、文中にありますように、国内では魚釣島だけにしかいないものというふうになりますともっと、七つほどふえますし、それから、魚釣島が分布の北限である植物が四種、三変種ございます。これは、黒潮という大変暖かい海流の影響であるというふうに言われています。

 また、ここは大変離れたところであり、渡航が難しいことから、昔から断片的な調査しか行われておらず、実際に本当にいる固有種はもっと数が多いと考えられています。

 そして、特定の種を余り取り上げるつもりはないんですけれども、天然記念物に指定されたアホウドリがかつてはこの島でも多数繁殖しており、後にいなくなってしまうんですけれども、現在でも隣接する南小島等では繁殖しておりますので、今後、環境が安定してくれば、魚釣島でも再び繁殖が見られるようになることが期待されておるということでございます。

 ちなみに、私の最も主たる研究の対象にしておりますのは小型哺乳類、わけてもモグラの仲間でございまして、この表の一番上に載っておりますセンカクモグラというのが、私がこの仕事を十何年やってきた一つの動機づけになっております。

 次に、なぜこのように固有種が多いのかということについては、括弧二番目の地史的特異性というところに若干の答えがあります。

 図の一番で二つの地図が載っております。(一)の更新世前期というのは、百五十万年前という大変古い時代ですけれども、このころには尖閣諸島は、この図でわかりますように、独立していたというふうにずっと考えられてきておりまして、多くの固有種はこの時期に隔離効果によってもたらされたものじゃないかというふうに歴史的には言われてきました。

 また、括弧の二番、これは約二万年前ぐらいから始まる最終氷期、一番新しい氷河期ですけれども、氷河期ですから寒くなりまして、海の面は低くなります。そのときに、発達しておりました大陸棚との関係で、中国大陸と独立を失い、政治的じゃないですよ、生物地理学的に独立を失い、このようにつながり、多数の新しい種が入ってきたんだけれども、この最後の氷河期が終わって現在までの一万数千年の間に急速に種分化を遂げたものもあるのではないかと言われています。センカクモグラなどはこの部類に属するのではないかと私は考えております。

 そのような、一万数千年というと長いようにお感じになると思いますけれども、生物地理学的には極めて短い時間でありまして、この間の種分化がこんなに起こるということは大変珍しいことでありますので、生物進化の実験場というふうに私はよく申し上げているところでございます。

 また、ごく最近は、沖縄トラフが沈降した時代がもっと新しいのではないかという説も出ており、そうしますと、実は、もっともらしく言っておりますけれども、こういう説を根本的に考え直さなければならないという状況も現在では発生をしており、大変謎の深い、広い、多様な謎がある島であると言えます。

 したがって、もしここの生物が皆絶滅してしまうということになると、その謎を解く手がかりが一切合財失われてしまうということで、大変影響の大きい島、人類にとって共通の財産、共通の宝とすべき島であると考えられるのであります。

 では、二枚目をごらんください。

 二枚目は、自然の現状でありますが、ほぼヤギの話です。

 大変毒々しい赤い写真が二つありますけれども、これは、きょう都知事もおいでだと思いますけれども、東京都の中にある小笠原諸島、とりわけ媒島という、昔からヤギのいる島がこのようになっているということで、森林が消失し、ヤギの食べない灌木のみが残り、下の赤土がむき出しになり、地上のどれだけいたかわからない固有種は皆消え去ってしまった、多大な犠牲を払った悲しみの島であります。この赤土は海の中にも流出し、このように海が真っ赤に染まり、海底は赤い土で埋め尽くされ、海中の、ベントスといいますか、砂や泥の中に住んでいる生物も皆死滅してしまう。

 このように、陸域、海域の生態系にヤギというものは致命的なダメージを与える、人によっては、史上最悪の生物であると言われることもあるようなところがあります。

 幸いに、媒島は東京都の努力でヤギが取り除かれましたけれども、魚釣島も、現状を放置すれば、地質的に性質が違うので真っ赤っかにはならないんですけれども、このような生物の大半が絶滅してしまうようなことになりかねないということです。周辺漁場に与える影響も見過ごせないのではないかと思います。

 魚釣島のヤギと申しますものは、一九七〇年代に日本の民間政治団体が、日本の領土を持っているということの一つのあかしとして、日本人の関与を示すために放したというふうに言われております。したがって、これを取り除くのは私たち日本国民の責任ではないかと考えます。

 現在、この島は、ヤギは何頭いるかわかりません。わかりませんが、九一年の洋上からの視察によりまして、約三百頭のヤギが確認されております。そのときは、出てきたヤギだけを数えたので、また南斜面だけを数えたので、実際にはその何倍もいた可能性もありますし、その後、また長い年月がたっております。このヤギの影響は非常に激しいものと考えられ、私たちは人工衛星や航空写真を使った調査をしてきました。

 図三をごらんください。

 魚釣島はこのような形をしておりますが、この緑色のところは、木がまだ上に残っていて、地上の様子がわかりません。そして、この黄色のところは、もう木も草も生えていない裸地です。茶色のところは、もともと裸地であった海岸の岩場などであります。この黄色の部分と、一部の赤い部分もそうなんですが、両方合わせると一三・五九%。これの大半はヤギによってできた裸地と考えられますし、こうなってまいりますと、木が残っているものも、木の下はどうなのか。

 これはリモートセンシングによってはわかりませんけれども、さっきのモグラも含め、多くの固有種はまさにその部分が大事なんですね。ここは上陸調査してやってみないと、見てみないと、できれば動物を捕まえたりして生息をきちんと確認しないと現状はつかめません。もしかしたら、幾つかの固有種は、最悪の場合、もう既にこの世から消えているのかもしれませんが、まだ十三全部滅びてはいないと思いますので、まだ、早く手を差し伸べれば、救えるものは救えるかと思います。

 今の図三は二〇〇〇年の状況ですが、その真下に二〇〇六年の、これも人工衛星画像を加工したものですが、ちょうど空から見たように加工したものがあります。

 南斜面にたくさんの薄茶色の裸地が見えます。この中には図三にないものもありまして、二〇〇〇年から二〇〇六年の間にも相当崖崩れが発生していることがわかります。最近、この魚釣島を空から報道したニュースなどを見ておりますと、この剥げた部分が一回りも二回りも大きくなっていますね。このままいくとどんどん裸地は進んでいきますし、リモートセンシングではわからない林床の様子も、どんどん荒れ果てていくのだと思います。

 三枚目をごらんください。

 これは、ヤギの対策について若干申し述べたものでございます。対策といっても、ヤギですからとればいいんですけれども、これは放したときの頭数がわずか雄雌二頭でありました。ということは、それほどわずかな個体数からでも数百頭に増加してしまう。近親交配などの影響を余り受けないと考えられますので、効果的に対策を施すには、やはり一匹も残さず取り除くというのが一番かつ唯一の方法ですね。そのためにはシステマチックな除去が必要ですので、まず現状をきちんと把握するための上陸調査が必要と考えられます。

 リモートセンシングでは、モグラのこととかはよくわかりません。当たり前ですね、土の中に入っているんですから。それで、それには、そこの上から二行目にありますように、小型哺乳類、昆虫、甲殻類等々の専門家が入るということ、それからヤギの影響を評価できる植生学などの専門家が入るということ、それから土壌学などの物理的環境の専門家も必要ですし、ヤギを取り除くというのはそれ自体専門的なことですので、その専門家も必要でしょう。かなり大きな組織が必要だと思います。どういう形でこういうことが実現されるのかは皆さんの御議論をいただきたいと思います。

 ヤギの除去につきましては世界各地で実例がありますが、特に画期的な成果を上げているものは東京都でございまして、小笠原諸島の、先ほどの媒島を含む七島嶼で完全にヤギを除去しております。これは九七年以降の、比較的近年のことであります。

 この写真にありますように、ヤギがいっぱいいるところ、森がなくなっちゃって、幸か不幸か見通しがいいものですから、この図の五の上の写真にあるように柵を張りめぐらせて、そこに、白い三角の下のところにもやもやとしているのがヤギの何百頭の大群であります。これをこの写真の左側から大勢の勢子さんが追い込んで、この下の二つ並んだおりの中へ追い込むんですね。その結果が下の写真です。このようにしてヤギをとるわけであります。

 銃器を持ち込めるとまた違うんですけれども、魚釣島のようなところに銃器をたくさん持ち込むというのはなかなか難しいのではないかと思いまして、このような柵をうまくコントロールに使って、ヤギを誘導していって一網打尽にするようなことは、魚釣島におきましても、森がまだ残っていますので容易ではないと思いますけれども、やればできると思います。

 いずれにしましても、上陸調査とヤギの除去に向けて、皆さんの御議論をいただきたいと思っています。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

新藤委員長 大変専門的な御意見をありがとうございました。

 それでは、続きまして、中山参考人にお願いいたします。

中山参考人 皆様こんにちは。沖縄県石垣市の市長の中山義隆でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日、このような場所で私の尖閣諸島に関する見解を述べさせていただく機会をいただきましたこと、心より感謝を申し上げます。

 御存じのように、尖閣諸島は石垣市の行政区域であり、あわせて、日本固有の領土であります。その尖閣諸島が今大変な危機に瀕していると認識しております。私どもは、石垣市として政府に対して再三上陸の申請を行ってまいりました。ただ、きょう現在、この時点において、まだそれは認められておりません。

 なぜ尖閣諸島上陸にこだわるのかということをまずお話しさせていただきたいと思います。

 御存じのように、一昨年の九月七日、中国漁船の領海侵犯による衝突事件が起こりました。その際、政府は、逮捕をするということになりましたけれども、私どもは、そのときに、ようやく日本政府も尖閣諸島に対する実効支配、そして主権を行使し始めたのではないかというふうな安心感のようなものがありました。ただ、その後、現実問題としては、その中国漁船の船長は処分保留のまま釈放され、中国に帰国するという状況に至ったわけであります。

 さらに、最近におきましては、中国の公船が領海侵犯を堂々としてくるという状況になりまして、行政区の中に尖閣諸島を預かる市長としては、自分たちの地域に堂々とそういう外国の船が入ってくるという状況は、とても許される状況ではないと認識しております。

 そして、政府に対して要請しています上陸の内容を御説明させていただきたいと思います。

 まず一点目は、固定資産税の評価のための上陸であります。

 これはかねてより申し上げておりますけれども、地方税法四百八条に基づきまして、行政権を預かる者として、固定資産税の調査のために年一回の現地の調査を、実地調査を行うことができるわけでありますが、それが今現在、認められていません。

 理由としましては、実際にこれまで調査をしないまま課税してきたので、そのままの状態でいいのではないかというような意見をいただいておりますけれども、では、これまでと状況が変わっていないというのを誰がどの時点で判断しているのか。政府の関係機関が上陸して調査して、現状、変更ないということを判断しているのかどうかということすら回答をいただいておりません。

 私どもは、我が国の領土である尖閣諸島において、その地方の行政区域の長が、もしくは市の職員が上陸することは何ら問題のないことだと考えておりますので、政府に対しては、固定資産税の調査のための上陸については早急に認めるべきだと考えております。

 そしてもう一点が、自然環境の調査であります。

 これは、先ほどの参考人の方からもお話もありましたように、かつて尖閣諸島に放たれたヤギが野生化して繁殖し、島の生態系を壊しているという状況になっております。尖閣諸島には、御存じのように固有の種が非常にたくさん残っておりますし、世界的に見ても、この保全、保持は必要だと考えております。ただ、そのために被害を及ぼしているヤギを駆除することは、当然、環境を守る意味で大変重要なことだと考えております。それらのことを踏まえて、自然環境調査のための上陸を行うべきではないかと思っております。

 実際に、沖縄県が、復帰前ではありますけれども、尖閣諸島に対して調査をしておりました。これは琉球大学の高良教授を中心とした高良学術調査団という名目になっておりますが、一九五〇年、そして一九五二年、五三年、六三年、六八年と五次にわたる調査団で、それぞれの専門家、例えば鳥類の専門家、地質学の専門家、それらの専門家の皆様方が入れかわり立ちかわり調査に入っておりました。しかし、六八年以降、我が国は公式な形での調査は行っていないというふうに認識しております。

 なぜ、六八年以降、調査しなくなったのでしょうか。国連のECAFEによります海洋調査の中で、尖閣諸島周辺に海底資源があるのではないかというような話が出て、近隣の台湾そして中国が自分たちの領土だと主張し始めて、それからこのような状況になっているのではないかと認識しております。

 しかしながら、我が国の領土であるということは常々政府が述べてきているわけでありますので、早急に学術調査等の名目で上陸することは、当然、国際的に見ても何ら問題ないことだと思っております。この点についても、ぜひ上陸調査をすべきだと考えております。

 もう一点、これは慰霊祭での上陸を求めております。

 慰霊祭と申しますのは、終戦間際、昭和二十年の七月三日、石垣島から台湾に避難するための疎開船ですが、二隻の疎開船、島の住民約百八十人を乗せた船が出港しました。途中で米軍機の機銃掃射を受けまして、一隻、第五千早丸が爆発炎上し沈没、その時点で約七十名近い方が負傷し、または溺死する等、死亡しております。

 もう一隻の船もエンジン停止等により漂流し、尖閣諸島の魚釣島に漂着いたしました。当然、そのときには魚釣島は戦時中でありますので、かつて行われていたカツオ工場とかそういった生活の基盤がないところに漂着したわけでありまして、当時の方々は、水の十分に得られない状況、食料を十分に得られない状況で餓死者が出たと聞いております。

 その後、その島から決死隊が組まれ、いかだを組み、石垣島の方を目指して出発し、その方々が石垣島に着いたことで、尖閣諸島で漂流し遭難している人たちがいるということが確認され、その方々を救助に向かいました。助かった方々もいらっしゃいますけれども、多くの方々が犠牲になられました。

 そして、その犠牲になられた方々の慰霊を行うために、石垣市は昭和四十四年、当時の石垣喜興市長が尖閣諸島で初めて慰霊碑を建立し、慰霊祭を行いました。それが最初で、現時点では最後であります。それ以降、尖閣諸島への上陸はかなわず、尖閣諸島での慰霊祭も行われておりません。

 当時の遭難された方々の遺族の方々は、今現時点では石垣島の方で慰霊碑をつくって慰霊祭を行っている状況です。ただ、その方々も非常に御高齢になってきておりますので、何とか元気なうちに一度、肉親が亡くなられた魚釣島で、現地で慰霊祭を行いたいという希望を持っている方もたくさんいらっしゃいます。

 行政を預かる者として、かつて石垣市がつくった慰霊碑があるのであれば、石垣市として再度、市の主催で魚釣島で慰霊祭を行いたいというふうに考えております。なぜ、北方領土での墓参ができるのに、我が国の領土として明確に位置づけられている尖閣諸島で慰霊祭が行えないのか、これは非常に疑問を感じますし、ぜひ、委員の皆様方にはそのことを強く認識していただいて、慰霊祭での上陸についても御理解をいただきたいと思っております。

 この三点、私は、どれをとっても尖閣諸島に上陸する理由としては十分なものだと認識しております。

 そして、上陸する意義につきましては、行政の機関もしくは国の機関、公的な機関が尖閣諸島を実効支配するという意味においては、上陸することが一番の現実的な話ではないのかなと思っております。たとえこれが常駐する人がいなくても、数を重ねて合法的に上陸できることが、我が国の領土であるということを強く世界に知らしめることになると思っています。

 単に実効支配している、領土問題がないということを幾ら声高に唱えても、その場所での調査活動や上陸など、また周辺での経済活動が行われていなければ国際的なPRにはならないと思っておりますので、このあたりがこれからの課題じゃないかなと感じております。

 尖閣諸島に対する上陸に関しては、行政としての考え方は以上でありますけれども、実は尖閣諸島周辺は非常に優良な漁場であります。かつては、昭和五十二年の数字でありますけれども、当時で十五億程度の水揚げがあったというふうに聞いております。

 最近は、燃料の高騰等により漁に行く方が大分減っておりまして、それとあわせて、中国漁船、台湾漁船の領海侵犯、不法操業にあわせて海上保安庁の臨検が厳しい中、国内の船でさえその場所に行くときにはいろいろな調査を受ける、取り調べを受けるということで、なかなか行かない状況ではありました。

 最近は、いろいろなところからの御支援をいただきまして漁に行くことができるようになっておりますが、現実問題、石垣島から五時間も六時間もかけて漁に行って、その場所で天候が荒れた場合にはすぐ引き返してこないといけない。高い燃料費を払って、そしてまたそれに必要な餌も積んで氷も積んで漁に行って、その場所で漁ができないということですぐ返してくる。これはもう漁業者にとっては大変なリスクを負うわけであります。

 きのう、委員の皆様方、理事の皆様方、また下村先生も初め、実際に尖閣諸島の漁場調査も兼ねて行かれたということを聞いております。天候も急変したりとかして大変厳しい中で、なかなか思うような漁もできなかったと聞いていますが、それが今の尖閣諸島での現実であります。

 私どもが常々、上陸とあわせて要請していますのは、尖閣諸島の実効支配のために、そこに灯台をつくる、もしくは漁業者向けの無線施設をつくる、さらにはこういう天候が荒れたときに少しの間だけでも避難できるような、簡易な形でもいいですから避難港をつくってもらいたい。そうすれば、そこで一時的に避難をして、天候が回復すれば漁をして帰ってこられる。その安心感があれば、八重山の漁民、石垣島の漁民も尖閣諸島の豊かな漁場を求めて漁に行くことができます。

 その周辺でしっかりと漁をしてその魚を出荷しながら島の経済を整えていく、これこそが真の意味での実効支配につながると思いますので、これらもあわせて皆様方の御理解をいただきたいと考えております。

 古賀氏が当時の日本政府から島を譲り受けて経済活動を行ってきました。カツオの加工場をつくったり、また羽毛を採取したりする等、経済活動を行ってまいりました。つい百年ほど前の話であります。

 実際に、今石垣島の漁業者では、自分のおじいさんは古賀商会のカツオ工場で働いていたというようなことをお話しできる人もいますし、また、先ほどお話ししました学術調査に一緒に私も携わって島に何回も上陸したという方もいらっしゃいます。こういった方々が歴史の証人として今現在自分の口で語れるうちに、尖閣諸島をしっかりと我が国の領土としての実効支配を行わなければ、今後、これが長引けば長引くほど問題はこじれ、さらにややこしくなり、解決の糸口が見えなくなるのではないかと認識しております。

 先ほど山田先生の方からもお話ありましたように、今尖閣諸島と中国の本土の間に日中中間線があるわけですが、尖閣諸島を仮にとられた場合、尖閣諸島と石垣島、百七十キロ離れている間に日中中間線が来る。しかも、その日本の領土である尖閣諸島を自国の領土と言い張って奪いに来た国がそこに何らかの軍事施設や軍事力等を置くと、私たちの住んでいる石垣島のわずか百七十キロのところに、他国を侵略してでも領土を拡大しようという意識を持った国が押し寄せてくる。これは、四万八千の石垣市民、そして八重山郡合わせて五万五千人の住民を預かる首長として、到底認めるわけにはいきません。

 ぜひ皆様方には、この尖閣諸島の現状を御理解いただいて、そして早急に、行政機関である私ども、そしてまた国、さらには研究機関等が上陸できることを速やかに認めていただきたいと思っております。

 今、尖閣諸島については、一昨年の中国漁船の衝突事件以降、大変国民の注目を集めているところであります。さらには、きょうお越しの石原都知事の東京都での購入のお話がありまして、大変関心が高まっているところでありますが、私は、今回の購入に対しては大変ありがたいことだと思っています。

 これは、個人所有の島がいつどこで誰に買われるかわからない状況よりも、国や都や行政機関など公的機関がしっかりと管理することが今後必要だと思っておりますので、ぜひ、都知事の行動に対しては賛意を持って、ともに行動させていただきたいと考えております。

 日本の一番南の島々を抱えております私たちが住んでいることによって守られる排他的経済水域、この排他的経済水域を通って、東京都民、そして全国の都会で住んでいる皆様方のエネルギーや食料が運ばれているわけであります。尖閣諸島を含め、この小さな南の島々を仮に失うことがあれば、今普通に生活している日本国民のエネルギーや食料が危険な状態の中で運ばれてくるということを御認識いただいて、島を守るということがどれだけ大切なことか、やがては日本国民全体の命と生活を守るということになってくるということを御認識いただいて、私どもの活動に御理解をお願い申し上げたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

新藤委員長 尖閣を所管する地元の市長さんとして大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、続きまして、ようこそおいでをいただきましてありがとうございます。石原参考人に陳述をお願いいたします。

石原参考人 皆さんこんにちは。石原でございます。

 時間が限られておりますので、後に質問があるそうでありますが、言い足りないことは多々あると思いますけれども、たまたま、昨日ほど出版されました文芸春秋本誌に、私は割と長い論文を書きまして、尖閣諸島と私の個人的なかかわりも含めて述べておりますので、足りないところがあったら御参考にぜひ御一読願いたいと思います。

 事は、沖縄返還にまさにかかわっておりまして、沖縄返還交渉のときに、佐藤総理は、いかなる国会議員の随伴も許さなかったんですが、なぜか私と竹下登さん、参議院から私、竹下登さんが衆議院から一人、どこか外国を経由してワシントンで落ち合えということで、正式なメンバーではありませんが、間近で推移というものを傍聴しておりました。

 たまたまそのときに、外務省の役人が条約の正文をつくるときに、沖縄県というのは、海上の突起物、無人の大きな岩礁もありますが、これも非常に大事でありまして、そういったものを一々条約に明記するのは非常に煩雑、大変なんだということをぼやいておりまして、私はそのときに、私が年じゅう行っております、多いときは太平洋を渡ってきましたが、そういういわゆるビッグオーシャンでのヨットレースで、海上保安庁に私たちは定時にロールコールをして自分の船の位置を報告します。それで全体のレースの動向というものを保安庁は保持するわけでありますけれども、それと同じように、全ての突起物というものを記述するのは大変だろうから、それが全部入る線を引いたらいい、北緯何度何分何秒、東経何度何分何秒というポイントをたしか七つか八つ指定しまして、それを結んだ線から南に入る突起物は全て、つまり沖縄県としてアメリカは返還する、そういう条文にしたんです。明らかにその中に尖閣諸島は入っております。

 ですが、面妖なことに、この問題に対して、シナや台湾は、事前になってあそこは自分たちの領土であるということを言い出して、特に厄介だったのは、日本と比較的、心理的には友好関係にあった台湾が領土の主張をし出した。

 ということは、その原因は、あそこの近海での漁業操業にありまして、アメリカはあの尖閣その他を爆撃演習のターゲットに使うことには関心がありましたが、その周辺の漁業については全く無関心でして、爆撃の実施の日にちを布告することで漁船はその危険を感じて退去しますが、その他のときはあそこの操業は野方図にさせた。

 先ほど講師からも指摘がありましたが、非常に豊穣な漁場で、台湾や特にシナの漁民にとっては、これは大変な収穫なんです。それに味をしめて、彼らは一種の漁業の既得権をさらに拡大解釈して領土権というようなばかなことを言い出しましたが、彼らがもともとあの領土がシナのものであり、台湾であるというなら、何で要するに自分たちの領土を爆撃演習のターゲットに使うなという抗議をしなかったんですか。

 その後も延々問題がありまして、日本は、非常に面倒くさいので、ハーグの国際裁判所にこの問題を提訴して事を決着しようじゃないか。竹島もそうでありますけれども、これは、原告側が幾ら出席しても、被告である相手側が出てこなかったら裁判にならないんだ。

 アメリカも非常に微妙な言い方で、何に遠慮したか知りませんが、とにかく、我々が返還したのは領土じゃなしに沖縄県の施政権であるという微妙な言い方をして、結局、いいかげんにふたをされたんですけれども、いずれにしろ尖閣は、沖縄返還の条約の中の、あのトリーティーの中の、八つか九つの線を結んだ中に入る歴然とした日本の領土であります。

 シナが今日に至って、あれは核心的な国益であるとかなんとか言っているけれども、彼らの国境線の版図というのはだんだん政権によって変わってきまして、かつては彼らの版図というのは万里の長城より以南、以西だったんでしょう。ところが、今日では、内モンゴルも外モンゴルもそうだと言い出して、外モンゴルは一応独立を得ていますけれども、内モンゴルは併合され、かわいそうなのはチベットですよ。

 私はダライ・ラマと親友ですけれども、とにかく、彼が日本にやってきても、政治行動するなということで外務省が茶々を入れて、ろくに彼に会うことができない。そして、チベットは結局、要するに、民族の改良までされて、本当の純粋のチベット人はインドに逃げて、あそこに臨時政権をつくっていますけれども。

 私たちは、やはりこういう事例というものを考えて、シナのわけのわからぬ覇権主義というものをマークしなくちゃいけないです。

 とにかく、ことしの二月ですか三月ですか、人民日報というのはどれほど権威があるか知らないが、一応向こうの代表的な新聞で、政府の代弁者でしょう。これが、とにかく、尖閣は核心的な中国の利益である、それから、日本の実効支配を我々が破壊するためにもっと果敢な行動に出る、それで、そのための機材も準備するとちゃんと宣言したじゃないですか。

 これは、いよいよおまえの家に強盗に入るぞということを宣言したんです。しばしば家を侵されて、物をかっぱらわれて、今度は強盗に入ってそっくりそのまま頂戴すると言われて戸締まりをしない国というのは私は間が抜けていると思いますな。

 私は、昨年ですか、たまたまかかわりもあるものですから、元自民党議員だったので、自民党の今の総裁の谷垣君に、とにかく国政調査権というのがあるんだから、石垣の市会議員諸君が行こうと思ってもこれはなかなか国はリラクタントでしょうけれども、国会議員が国政調査に行くんだから、君は、恐らく民主党にも同好の士がたくさんいると思うし、超党派でグループをつくって、あの石垣に国政調査権ということで上陸して滞在したらどうだと言ったら、ああ、結構ですな、わかりました、考えましょうと言ったんだ。

 返事が来ないので、どうしたと言ったら、理事会にかける、委員会の。そんなところにかけなくたって、国政調査権でそれを宣言していけば通ることじゃないですかと。いや、一応委員会にかけたらスムーズにいきますからと、委員会にかけたそうですよ。それで理事会にも通ったそうですよ。

 半年たっても全然行動がないので、一体何をしているんだと言ったら、国会議員の諸君が、自民党、民主党が、超党派の議員諸君が国政調査権で尖閣に上陸して調査しようと言ったら、国がストップをかけた。どうやってストップをかけたんだと言ったら、足がない。その足を提供するのは保安庁でしょう。その保安庁が船を出さないと言ったと。

 これは面妖な話ですな。私、その報告を谷垣君から聞いてびっくりしたんですが、何で君、それを問題にしないんだ、国会で。国会議員が国政調査権を国家のために、国民のためにしようとしている、その行動を、その足を阻害することで、保安庁が反対することで、いや、政府が反対することで保安庁を潰したわけでしょう。だったら、東京都はたくさん船を持っていますから、いつでも提供しますよ。皆さん、有志が行ってください、東京の船を提供しますから。行ってくださいよ。国会議員が行ってくださいよ、あの国に。

 そして、さっきの話の続きだけれども、私がもういささか国会に愛想を尽かしてやめた後、おもしろいことが起こった。不愉快なことが起こった。

 香港の活動家と称する一部の連中がおる。これは明らかに特殊部隊でありまして、アメリカのDIAなんかちゃんと把握しています。その連中があそこに上がって、あそこにシナの旗を立てた。保安庁が慌てて行って追っ払ったら、一人が逃げ損なって船のロープに引きずられて溺死した。自業自得でしょうけれども、向こうは大騒ぎになった。片っ方で、沖縄でアメリカの黒人の海兵隊員が小学校の五年生の女の子を輪姦して家をめちゃめちゃにした。それは沖縄の人は激怒するでしょう。一方では尖閣でそういう問題が起こった。

 そして、あれはワシントン・ポストでしたか、ニューヨーク・タイムズでしたかな、アメリカの有力な新聞の日本の特派員が、時のモンデールという大使に、あそこでこれ以上ホットフラッシュ、紛争が激しくなったら、結果として日米安保は発動するんですかと言ったときに、モンデールは言下にノーと言った。その理由は、尖閣は台湾と同じように、台湾と同じようにですよ、日米安保の防衛の対象に入っていない。

 これは全く無知蒙昧な話で、そんなことを大使が明言するのは非常に危ない話ですから、私は議員をやめていましたけれども、自分の担当しているコラムでこれを書きました。こんな人間が日本の大使を務めている限り、危なくて私たちはアメリカの関係と一緒に行動もできない、信用するわけにいかない、こんな大使を許しておいていいのかと言ったら、あのときはクリントンの民主党政権でしたけれども、共和党の友人の議員たちや学術スタッフ含めて、ああいう要するにシンクタンクは、石原の言うとおりじゃないか、こんなことを言わせておいて、日米関係が危なくなるぞと言って、モンデールは五日後に更迭されましたよ。

 その五日前に、私は多分日本の議員で一人だけ外人記者クラブのメンバーだから、あそこへ、ケント・カルダーという、アメリカの大使に初めて補佐官ができた、そのケント・カルダーが日本にやってきて記者クラブで講演をしたので、私も聞きに行きました。その後、アメリカ人の記者が、あなたの任期は何年ぐらいですかと聞いたら、ケント・カルダーが、私はモンデールさんがいる限りはずっとおりますから、多分二、三年はいるでしょうと言ったんだけれども、その五日後、首になった。

 それからこの日本に、この大事な大事な日本に、アメリカは大事かどうか知らぬが、一年半アメリカの大使は来なかった。フォーリーは来なかったんだ。そして、まあ何とか一年半おくれて大使がやってきましたが。

 これも実は面妖な話で、私もワシントンに議員や軍事に非常に詳しい親しい友達もいますが、彼らから、特に向こうの新聞記者や情報通は、私が怒りっぽいものだから、嫌な話をすると、おもしろいもので私にいろいろな話をしてくるけれども、ワシントンのコンフィデンシャルな実態というと、日本の外務省は何と言うか。東京ブランチと言っていますよ。日本の外務省が東京ブランチですよ、東京支店ですよ。

 皆さん知っているだろうけれども、私たちは反対したんだが、毎年毎年、年次改革要望書というのがアメリカから来る。読んだことありますか、皆さん。毎年来ているんだよ。日本からは送ったことがない。アメリカのめかけのままでずっと日本は来たわけだ。そのアメリカさんも頼りなくなってきて、尖閣がこういうふうになったときに、一体誰がこの島を守るんですか。政府にやってもらいたいよ。東京がやるのは筋違いだという。筋違いだよ、これは。筋違いだけれども、やらざるを得ないじゃないですか。自分たちの大事な家に強盗に入るぞと宣言されていながら戸締まりもしない国というのは世界じゅうどこにあるんですか。

 だから東京はあえてああいうアナウンスをして、これに応える国民が、きょうの時点で寄附金がもう十一億を超えましたよ。これはありがたい。日本人はまだ捨てたものじゃないと私は思いますね。中には、私ら貧乏で、家族三人で、とにかく貧乏だけれども一人一万円ずつ三万円を送りましたという人がある。あるいは、ある田舎のおばさんは、私のところは村で不便で、東京に行っているみずほ銀行がないから、一時間バスに乗って町まで出かけてみずほに入れましたけれども、田舎の仲間でもたくさんそういう人がいますから、どうかその人たちの便宜のためにゆうちょに口座を設けてくださいということで、これは設けました。

 そういう国民の意思というものを、何で歴代の政府は無視してきたんですか。原因は外務省でしょう。

 しかし、外務省だけに責任をなすりつけるわけにはいかない。石垣市の市長さんもいらっしゃるけれども、あの不法な衝突をあえて行った。保安庁の船は穴があいて、引っ込んだ。相手の船は船首の装甲が厚いから、突っ込んできて、かすり傷を受けただけ。この船長を捕まえて、即時釈放でしょう。誰が釈放したんですか。沖縄県の地検の検事、冗談じゃない。では、その検事を、皆さん、ここへ呼びなさいよ。誰がやらせたかよく考えれば、当然外務省でしょう。

 何をやったかといったら、それは市長さんはよくわかっているけれども、石垣の空港を夜中の三時にあけさせて、あの船長を向こうのある高官が特別機を仕立てて迎えに来て、空港の使用料を一文も払わずに連れて帰って英雄扱い。こんなばかな目にさらされる国がどこにあるんですか。あなた方の責任だよ。過去の自民党の責任だよ。政府の責任は国会の責任ですよ。しっかりしてもらいたい、私は、本当に。

 声を大きくして言いたいけれども、本当にどなりたくなる。だから、東京があえてしなくてもいい筋違いのことをしているんですよ。本当は国がやるべきですよ、こんなこと。相手の財政事情もあるでしょう、そんなものしんしゃくして、売買の話をしたらいいと思う。

 とにかく外務省というのは、私は、このことでも驚いたんだけれども、あそこの島に最初に灯台をつくったのは、私たち青嵐会です。それで、学生を使って非常に粗末な灯台をつくった。ポールを立てて、その上に裸の電球つって傘をかけて、夜だけバッテリーをつないで明かりをつける。それでも随分漁民に感謝されたんだ。その後、それを聞いて日本青年社が、お金を持っているから立派な灯台をつくってくれた。感謝しました。

 私も運輸省にいましたから、運輸省の水路部に、これをちゃんと調べて、正式な灯台として海図に載せるために注文があるなら出してくれと言ったら、二点指摘されて、彼らはちゃんとそれに従って立派な灯台をつくってくれた。

 あれは非常に峻険な地形のところですから、疲労こんぱいして、中で、青年社の社員の一人は、恐らくあれは石垣か何かの支部長だったけれども、死亡しましたよ、疲労で。

 それで、つくった灯台を、注文に応じて直すところを直して、正式に海図に載せてくださいと言ったら、待ったがかかった。どこから待ったがかかったかといったら、外務省だ。時期尚早と。何で時期尚早なんですか。正式につくった、運輸省の水路部がちゃんと認可して、これでいいと言った灯台を、何で時期尚早で海図に記載させないんですか。

 これは非常に危険なんだ。私は世界じゅうの海で荒天の中でもヨットレースをやってきた人間だから、そういうときには頼りになるのは、要するに、このごろみたいにGPSが発達していなかったから、灯台なんですよ。その灯台を目安に自分のポジションをはかる。それを無視して、灯台というものがちゃんとありながら、それを海図に記載しないということは生命の危険につながるんだということを外務省に言ったら、全然無視されて、二十年間近く、とにかく灯台は記載されていなかった。

 私の息子が国交大臣になったときに、厳に言いまして、命がけでやれよと言ったら、時の小泉総理も、小泉君も、結構だ、やろうじゃないかということで、これは記載されて、初めて海図に載ったんだ。私は、それを本当にうんざりしたまま見たんだけれども。

 たまたま横田の返還問題でアメリカに行ったときに、九・一一の前日でしたな、くしくも。ウォルフォビッツ国防副長官ですか、あいつに会ったときに、昔からちょっと知っているので、どうも外務省が横田の問題でなかなかリラクタントで動かないので愚痴を言ったら、情報が全然通じていない。それで、ウォルフォビッツにその話を愚痴まじりに言ったら、彼もちっちゃな船をやるんですな。石原さん、それは危ないんじゃないですかね、光っている灯台が海図に載っていなかったら、かえって危険でしょうと。まさにそのとおりだと言ったんだけれども、依然として動かずに、やっと、息子が国交大臣になったときに、日本国の保安庁これをつくるというプレートを張りましたね。これはどういう神経なんですか。

 私が運輸大臣のときに、こういう事例があった。あるとき保安庁の救難部長が顔色を変えて私の部屋へ来た。とんでもないことが起こりましたと。何があったと言ったら、本にも書いてあるけれども、保安庁の船が、要するに遠くから帰って日本の領海に入ってきたら、突然、船から五百メートル離れたところへ水柱が上がった。大砲の弾が飛んできた。何だろうと思っていたら、遠くにアメリカの軍艦が見えた。あいつが撃ったんだなと思ってよく見たら、水柱が上がった近くに日本の遊漁船が四隻いた。

 これはとんでもない危険な話で、帰ってきて、領海内で実弾の要するに射撃演習するなんてとんでもない、協定違反ですから、抗議をしてくれと言ったら、こう言われました。そんなことは沖縄で年じゅうあることじゃないか、一々何でそれを問題にするんだというのが官邸の意向だよと言われた。救難部長は困惑して帰ってきた。

 だから、私は言ったんだ。官邸の意向というのは総理大臣か官房長官の二人の意向だ、どっちか聞いてこい。言ったのが竹下総理だったら、おれは辞表を書いてやめる、記者会見してやめる。言ったのが小渕だったら、私、小渕と非常に親しかったけれども、小渕君をとっつかまえて非難して、竹下さんにあんな官房長官、やめなさいと言うけれども、どっちか聞いてこい。

 答えるわけがない。その間、私は小渕に電話したら、小渕がかんかんになって怒って、とにかくすぐ外務大臣に電話した。外務大臣の宇野宗佑さんはかんかんになって怒って、当事者を呼んで、きさまら木っ端役人、何をばかなことをするんだと言って、すぐ抗議した。

 外務省に抗議したって、いつまでかかるかわからぬから、私はある人を通じて、アーミテージに電話して、とにかくこの人間を処分しろと言ったら、わかった、必ずしますと言って、首にしましたよ。一日おくれて、その報告に来たときに、アーミテージが、石原さん、首にしたけれども、これでこらえてやってください、あいつはあいつでよく事情があったんですよと。何だと言ったら、あれは実はギリシャ系のアメリカ人で、たまたまギリシャ系の大統領候補のデュカキスがレーガンに惨敗して、とにかく頭へきたんでしょうと言うから、そんなの言いわけにならぬわなということで笑って終わったんですが。

 私、時間が来たからやめますが、質問があったら言いますけれども。

 最後、大事なことを言われたんです。要するに、中間線の問題。

 これは、過去に社会党のばかが余計なことを言って、大変苦しい思いをしたんです。社会党はどこにいる。いないだろうけれども、今ごろ。

 貝殻島近くで、要するに、日本の漁船が操業する。あそこは非常に海流が激しくて、浅瀬が多くて危ないんだ。何か日本の社会党のばか議員がモスクワに行って、北方四島の話のついでに、あそこの海峡、とても危ないので、貝殻島に灯台があったら助かるんですけれどもねと言ったら、ああ、すぐつくります、ロシアはつくっちゃったんだ。途端に、貝殻島はロシアの領土になって、貝殻島から納沙布岬の間に中間線が引かれたんだ。だから日本の漁船の操業区域というのがぐっと縮められたんです。

 こういうことはやはり、過去に忌まわしい事例としてあった。変な形で領土が侵食されますと、その先に中間線を設けられたら日本はとんでもない国益を失うことになる。これはひとつ、皆さん、銘記して、この問題を考えていただきたい。

 よろしくお願いします。頼りにしていますよ、国会を。(拍手)

新藤委員長 大変思いのこもったお話をありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

新藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡洋一郎君。

森岡委員 民主党・無所属クラブの衆議院議員森岡洋一郎です。

 本日は、御多用の中、お越しいただきました参考人の皆様に、まず心より御礼申し上げます。ありがとうございます。

 昨日、一昨日と尖閣近海へと行ってまいりました。下村先生、平先生、向山先生、諸先輩方と一緒に伺ってまいったんですが、沖縄そして石垣で、環境調査の専門の研究家の方やあるいは近年上陸したことのある方、そういった方にお話を伺った上で出航いたしました。

 石垣から九時間、船に乗り、朝、目にした光の中での尖閣諸島は、ただただ、その峻厳な自然の大きさに畏敬の念を感じました。そこに小さな灯台がありました。しかし、その灯台が、我が国の国土を守る先人たちの大きな努力の結晶としてでございます。我々の世代がしっかりとその責任を引き継いでいかなきゃいけない、その思いを強くして帰ってまいりました。

 さて、我が国は、地下資源の少ない国であります。その弱点が、我が国の経済、そして安全保障を歴史的に規定してまいりました。そんな我が国の将来を託すべき希望の光、それは海であります。世界第六位の面積を誇る領海と排他的経済水域を合わせた日本の海は、多くの天然資源に恵まれております。

 しかし、それゆえ、この海はさまざまな危機にもさらされ続けてまいりました。特に近年では、二〇〇四年前後から海洋進出を強めた中国が、東シナ海を手中にしようと迫ってきております。

 今、尖閣諸島の周りの、島ではなくて岩を一つとられただけで、それだけで、日中の中間線の問題、先ほど石原都知事からございましたが、これにも大きな変更を及ぼすかもしれない危機があるわけでございます。その結果、中国が、海底熱水鉱床等の鉱物資源が豊かな沖縄トラフまで含めての、この権益を主張させるような余地をつくってしまうかもしれない大変重大な問題であります。

 そこで、まず山田参考人にお伺いいたします。

 この尖閣諸島近海が今どれほど切迫した状況にあるのか。

 先ほど山田参考人からもありましたが、今国会にかかっている海上保安庁法等の改正、今のままですと、不法侵入者が離島に来た場合に、そこに派出所がなければ、海上保安庁が海を守りながら島の治安も守らなきゃいけないんですが、これが通らないと、それすらもできないという状況にあります。これがもし通らないまま国会が閉会してこの夏を迎えたらどういうことになるのか。どうか、山田参考人から、専門の見地から尖閣の現状をお伝えください。

山田参考人 現在も、昨日時点でも、およそ二百隻の中国漁船が中間線付近で行動しているということを御報告いたしました。この船団、およそ三千人、中に漁民がおります。

 今までの経緯を見ますと、順次、中国がステップを踏んでまいりました。先ほど石原都知事からもお話がありましたように、中国はもう宣言をしているわけです。次のステップは何かということを考えますと、上陸以外は考えられない。恐らく、この島、尖閣諸島、五つの島プラス岩礁のいずれかに漁民が上陸し、それを漁政、漁業監視船なりあるいは海洋調査船が人民の保護という名目で侵入してくる。

 島を一つとられても、先ほども申しましたように、中間線がなくなりかねない状況にあります。これがまんざらうそかといいますと、かつて、一九九〇年代には、日本の無人島に頻繁に中国漁民が上陸していたというケースがございます。

 これを一つ一つ排除する。近場の、例えば五島列島の、間近に警察がいる島であれば排除することもできますが、尖閣諸島は、近い石垣島からも百七十キロもございます。ましてや、三千人の漁民。一体、何隻の巡視船があれば阻止することができるのか。現在の海上保安庁には、それだけの侵入者を全て阻止するだけの体力はまだございません。

 私は、二〇一〇年の九月七日以降、四回中国に行きまして、関係者とヒアリングをやってまいりました。一部の地方の官憲及び軍部は統率がとれていない状況にもあります。端的に言いますと、点数稼ぎ。こうすれば自分は評価されるんであろうということで、かなり過激な行動をとる者も含まれております。

 そして、もう一つ問題となっておりますのは、韓国と中国の間でもあります漁業トラブル。海上保安庁に当たる機関の者が漁船員によって刺し殺されるような事件があり、また、ことしに入っても暴力事件が発生している中で、漁民がかなり過激になっている。そして、収入に目を置く場合、過激な行動をとることも考えられます。

 私は、この夏、極めて危険な状況にある。これはどういう意味かといいますと、中国漁民が上陸してもおかしくない状況になっていると考えております。

 また、先ほども申しましたように、海上保安庁の今の現状勢力で、海から守るだけでは、大型巡視船のすき間をつき、漁船団が走り回り、島に取りついてしまう。一斉に魚釣島を目指したように見せかけておきながら、数隻は別の島に向かう。それを全て排除できるのかといいますと、かなり難しい。しかも、上陸されてしまったのでは、海上保安庁がすぐ手を打つことができないということになります。

 それを阻止するためにも、上陸した中国漁民あるいは不法侵入者を海上保安庁が速やかに退去できるように、それ以前に、怪しい漁船に対しては退避勧告を出せるような状況をつくらなければいけないと考えております。

森岡委員 山田参考人、具体的な御提言をありがとうございます。

 この尖閣諸島は、本来ならばもうとっくに国有化をしていなければならないものであります。そんな中、今回の東京都の呼びかけであります。これに応じて多くの寄附が寄せられた。国民の皆さんの心意気に、大変うれしく、心強く感じております。

 尖閣諸島は古来より我が国固有の領土であり、そこに何ら領土問題は存在しておりません。このことを国際社会に十二分に認識していただくことが必要であります。海や島の治安を維持し、防衛するのは国であり海上保安庁と自衛隊でありますが、そこを管理運営するのは、ひとえに所有者や借り主であります。大切なことは、いかに内外に、我が国が尖閣諸島を経済的にも国土の一部として管理運営しているかということを示すことが必要でございます。

 そこで、石原都知事からお伺いをいたします。また、ほかの参考人の方にも同じ質問をさせていただきますので、お願いします。

 東京都には多くの島々があり、沖ノ鳥島での漁業や、世界自然遺産にも登録された小笠原諸島など、離島経営のノウハウをお持ちであろうと思います。ただ、今まで経験のある太平洋側の島々は、そうはいっても、基本的には境を接するのは同盟国でありました。今回は、明らかに、領海侵犯や、場合によっては奪取の意図のある国とのさらにシビアな国境線の島であります。いかにしてこの尖閣諸島の実効支配をこれまで以上に高めていくのか。

 私は、本来は国が海上保安庁の拠点をつくるくらいのことをすべきだと思いますが、都としての利用計画を、油田の開発をするのか、漁業基地をつくるのか、避難港をつくるか、観光資源として開発するか、環境調査等、さまざまな案があると思いますが、現時点での東京都の案をお教えください。その後、中山市長、横畑参考人、山田参考人にも、それぞれのお立場から具体的な提案をいただければとお願いします。

石原参考人 既に専門家の両参考人からお話がありましたが、東京は、例えばヤギの駆除とか、あるいは沖ノ鳥島という非常に孤独なままに放置された島に、シナは戦略的な興味があってか、海底資源というのが、あそこは深いからそう簡単に察知できませんけれども、いろいろ探査を入れていましたが、あそこに非常に巧緻な魚礁を構築することで、日本の漁民が漁獲を目指してあそこに頻繁に出航するようになりまして、そのおかげで、それを眺めて、今までやってきた台湾とか韓国とかシナの漁船が姿を消した事例があります。

 これは、国は本当に何もしなかったんです。私、前の国連大使をしていたボルトンと非常に親しくて、彼は私にからかって、おまえ、何であんなちっぽけな岩に執着するんだと言うから、おまえ、世界地図を見てみろと言って見せました。アメリカがこれから先、アジアに関する国際戦略をどういうふうに展開していくかは私はつまびらかにいたしませんが、しかし、彼らは、このシナの動向を放置して太平洋を失うわけにいかぬでしょう。その見地から見ても、アメリカの大きな戦略基地のあるグアムと大きな戦略基地であります沖縄の嘉手納というのを結んだちょうど中間点に、沖ノ鳥島は全く真ん中にあるんですよ。おまえ、こういう地政学的な状況をしんしゃくして、あれをただの岩と言うのかと言ったら、彼はぎゃふんとして、わかったと言いました。

 そういう意味がありまして、東京は、東京ができる限りのこと、つまり、東京の全体の、今の組合長、菊池さんという非常にしっかりした人物がいて、この人が、船をつくってくれるなら自分が責任を持ってやるということで、あそこに魚礁を構えることで実質的に外国の漁船を遠ざけることになりましたが、プラスアルファは当然要ります、これは。要ります。もっと南の南鳥島なんかも非常に大事な拠点ですし、これはあくまでも国がやることで、その先鞭を東京がつけるだけでありますから、本来は、この島もやがては国が取得して買うべきであります。東京はいつでもお売りいたします。

中山参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島につきましては、先ほどもお話ししましたように、経済的な実効支配が必要だと考えております。周辺海域で漁民の皆さんが安心して漁ができるように、尖閣諸島への避難港のようなものの設置を求めたいと考えております。

 この点につきましては、個人所有の現在の状況で、国が借り上げしているという状況、石原都知事が購入後に何らかの動きができるのであれば、そのような体制をとりたいと考えておりますが、国が最終的には持つべきだとしても、ただ持っただけであって、名義が国に変わって現状が何も変わらないという状況では、全くもって意味がないと思っております。

 個人所有から公的機関に移った後には、何らかの形で、尖閣諸島に経済活動を行えるような施設等をつくるべきだと考えております。

    〔委員長退席、平(将)委員長代理着席〕

横畑参考人 現在、私は、尖閣諸島魚釣島のヤギを取り除くことでもう頭がいっぱいでございまして、長期的な魚釣島と人とのつき合いといったことについては余り考えたことがありません。

 現在、尖閣諸島魚釣島は沖縄県によって鳥獣保護区に指定されておりまして、ややこしい問題がなければ普通に鳥獣が保護されて生きていくのかなと思いますけれども、ただ、国立公園などに指定して環境教育等に使っていくということがもし遠い将来可能であれば、それは非常に前向きないいことだと思います。

 特に、一般論的に申し上げますと、そういう場合、オーバーユースの問題がございますので、総量規制といいますか、例えば、ガラパゴス諸島や小笠原、知床などでやられているような、一カ月に何人以内とか一年に何人以内とかいうように限って、そして、十分なレクチャーを受けた人が十分な知識のある人と一緒に行くような形での、少人数での、マスツーリズムに走らないような利用の仕方が今後望ましいのかと。

 しかし、それも全てが全て、ヤギが取り除ければという話でございます。

 以上です。

山田参考人 私は、環境保全という名の開発行為が必要であると。しっかりと、ヤギが侵入あるいは開発する前の自然状態、もともとこの尖閣諸島は、ユクンククバジマという名前で、ビロウが生い茂る魚のとれる島という呼び方をされておりました。自然を再生し、そして、第二の小笠原というような形で、小笠原のようにしっかりと行政が入り管理をする中で自然を再興していく。そして、港をつくり、あるいは高級リゾートをつくる。入島料を取るということも含めまして、島の管理費に充当することができると思います。そして、漁業の基地、海底資源の基地というように、将来的な目標、計画をつくりまして開発することが望ましいと考えています。

森岡委員 どうもありがとうございます。

 今、横畑参考人から、環境保全のためにまずヤギの駆除をということで、また、石原参考人からもそういったお話がございましたが、昨日、洋上から確認したところ、同じ船に乗船しておりました向山議員と高邑議員が発見しまして、十数頭、今でも直接洋上から視認ができるような状況でございましたことも、あわせて報告をさせていただきます。

 参考人の皆様、ありがとうございました。他国がつけ入るすきのない実効支配を我が国が確立するよう、私も国会の立場から精いっぱい力の限り努力することをお誓いいたします。まずは、今国会で海上保安庁法等の改正をすぐにでも通すことを同志、同輩の皆様にお訴えして、私の質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

平(将)委員長代理 これにて森岡洋一郎君の質問時間は終了いたしました。

 続きまして、吉田統彦君。

吉田(統)委員 民主党の吉田統彦でございます。

 大変貴重な時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 尖閣諸島は、明治十八年以降、当時の明治政府が再三にわたり現地調査を行い、単に無人島であるのみならず、当時は第十一代の光緒帝の治世であったと思いますが、清国、清朝の支配が及んでいないのを十年もかけて確認して、そして明治二十八年一月十四日、現地にくいを建設する旨の閣議決定、その後、我が国に編入されたと理解しております。

 つまり、巷間誤って理解されている部分がある、同年五月発効の下関条約第二条に基づいて我が国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれない。まさに我が国固有の領土であり、サンフランシスコ平和条約第二条に基づき我が国が放棄をした領土にも含まれていない。しかし、なぜこのような状況になっているのか。

 そもそも、昭和四十三年、国連アジア極東経済委員会が、東シナ海に石油資源が埋蔵されている可能性を指摘しました。その後、昭和四十五年以降に、中国及び台湾が尖閣諸島の領有権に関して独自の主張を行うようになりました。これは、一九七二年の日中国交正常化より前であります。つまり、このときの政府及び与党の責任は、今なお重大であると思います。この点に関して、石原都知事に御意見をお伺いしたいと思います。

 また、都知事が御寄稿された文芸春秋の記事及び産経新聞に御寄稿された六月四日の朝刊、拝読をいたしました。これは大変名文でありまして、戦後に与党を担当した全ての国会議員が読むべき内容であると私は確信しました。

 その中で都知事は、前者の中で、「こうした外務省の基本姿勢が今日の世界情勢の中での日本への軽侮をつのらせてきたのだ。そして国政を預かる政治家たちはそれを咎めることなくすごしてき、日本の地位の低落を看過してきた。」後者では、「尖閣諸島に関する歴代政府の驚くほどの無為無策は結局相手を増長させ、際限のない覇権主義をそそのかすものでしかなかった。」と、長期間の与党の宿痾として断じておられますが、であればこそ、現在こそ与野党、挙国一致で対応すべきであり、お互いに揚げ足取りなどをしている場合も、一刻の猶予もないと考えます。

 この二点について、先ほど意見陳述の中でも大変御意見賜りましたが、いま一度、簡潔にお答え願えればと思います。

    〔平(将)委員長代理退席、委員長着席〕

石原参考人 全て同感でございます。そういう若い政治家が民主党の中にいらっしゃることに、非常に私は心強い気がいたしました。

 ちなみに、外務省も昔はもうちょっとしっかりしていたんです。青嵐会のときに、私たち、角さんが中国に行って、非常に拙速に国交を回復した。それはそれでいいんですけれども、実務協定を結ぶとき、唯一日本にとって有利な条件を獲得し得る航空協定、これは、当時はロシアは空を開いておりませんでしたから、私たちはヨーロッパへ行くのに必ず南回りでしか行けなかった。これもかなり迂遠な、要するに遠回りだったんですけれども、日中の間が正常化されまして、もしイスラマバード経由の航空路線が獲得されたら、日本の航空会社にとっても、非常に経費の面でも運賃の面でも得だったんだ。ところが、これは全く一蹴されました。

 そのときに、外務省の役人は、田中さんがとにかく向こうでこんなものは二週間で上げると言い切ったんです、それで相手は何も言うことを聞いてくれませんと。そして、周恩来と大平外務大臣が交わされた秘密の電報を私たちに暴露しましたよ。青嵐会の仲間がこれに反対しているので、私たちにそういう情報を提供しまして、一緒に食事をしても、彼らは泣いて、飯も食わなかった。そういう外交官がかつてはいたんだ。

 ところが、そのプロセスの中でだんだん相手の言うことを聞くようになって、今度の丹羽なんて、あのばかな話の典型ですが、ああいう大使でも任命すること自身私は滑稽だと思うんだけれども、そうやって外務省は萎縮している。

 一つ持ってきました。これは、イギリスにいる私の親友の息子が、ロンドン大学で国際法を勉強して、大学院にいる男ですけれども、こういうのを調べたんですけれども、日本の大使館だけが土曜、日曜には国旗を掲げていない。ほかの大使館は全部掲げている。彼らは土曜、日曜は休むんですか。どんな緊急事態が起こるかもしれないのが外交というものでしょう。土曜、日曜に、ここに日本大使館がありますということを表示する国旗を日本の大使館が掲げないというのは、これを参考に置いていきますから、言ってくださいよ。あなた方が言って、日本の大使館は土曜、日曜もちゃんと国旗を掲げろと。特にロンドンはやっていないんだ。そういうていたらくですよ。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では、次に、今回の、現在魚釣島を所有している個人の所有者から都が御購入をされるというお話、東京都と現在の所有者が合意されたとされている額は、都知事の記述から類推しますと、二十億から三十億前後なのかなと私は想像していたんですが、一旦この額で都が保有をした後、最終的に国が保有した方がよいと考えるのか。

 また、自民党は六月一日、沖縄県尖閣諸島など国境にある無人の離島を国が強制取得できるようにする無人国境離島管理法案をおまとめになったと伺っておりますが、このような法案をどのようにお感じになるか。

 この二点に関して、まず石垣市長に御所見を賜りたいと思います。

中山参考人 東京都が尖閣諸島を購入した後、国が所有することについては、私はやぶさかではございません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、国に所有権が移った後に今と同じような管理の状況が続くようであれば、これは意味がないことだと思っております。ですから、東京都が購入した後、国に権利が移った場合は、国としてしっかりと上陸調査を行ったり、また、その島に施設をつくるというような対応をしていただきたい。それができるのであれば、国の所有はいいことだと思っております。

 また、先ほどの法案の件に関しましても、水源地や国境離島で国民のために守らなければならない場所については、個人所有であると第三者もしくは他国が購入する可能性もありますので、そういったことについては、やはり領土、領海、そしてまた国民の命を守るという意味においては、そういった法案をつくるということも十分視野に入れるべきだと考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 石原都知事はどのようにお考えになられますでしょうか、お答えを。今の二問でございます。

石原参考人 全て遅過ぎますな、私に言わせると。ですけれども、やらないよりはやった方がいいので、とっととやってもらいたい。それで、いつでも国が責任を持って管理するというのでしたら、東京がこれからしようとしている以上のことを国がやってもらいたい、国の責任において。

吉田(統)委員 大変力強いお言葉等、ありがとうございました。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 先ほど、尖閣諸島は、センカクモグラ、サワガニ、ツツジなど、固有種をたくさん有しております。そして、アホウドリも、鳥島のものと尖閣のものはDNAが違う、由来が違うんじゃないかという説も私拝見いたしました。つまり、生物多様性や種の保存という上で極めて重要な位置にあります。しかし、一九七七年からヤギが侵入してきた。

 先ほども意見陳述でもございましたので、少し新しい視点から、例えば新しい種が発見されるような可能性というのをどのようにお考えになるか。そして、ヤギの駆除とかそういったものはもう当然必要なんですが、国として、さらに一歩進んで、上陸許可をした後にさらに何を必要とされるのか。学術、アカデミアの意見として簡潔にお聞かせ願えればと思います。お願いいたします。

横畑参考人 まず、今後、新種報告があり得るかということですが、もう幾らでも本当はあり得ると思います。ただし、絶滅速度がそれより上回っていたら絶望的な状況にあるので、一刻も早くヤギを取り除いていただきたい。

 既に標本としてとられていて記載されていないものも幾つもありますので、今後それらはされていくのだと思います。アリに関しては、調べた人が亡くなったということがあって、先ほど申し上げたようにまだ記載されていないんですが、標本が残っていますので、できると思います。もちろん、まだ発見されていない本当の未記載種もございます。

 それから、ヤギを取り除いた後の学術利用ですけれども、これはいろいろな可能性があると思います。上陸調査を一回されれば、例えば昔だったらDNAとか染色体とかはなかなか意識していなかったものですから、DNAはホルマリン標本からは非常に採材しにくいんですね。読めなくなってしまうことがあります。センカクモグラも、それがネックになっていて類縁関係がよくわからないんですが、新しいサンプルがとれれば、例えば台湾や日本のモグラ類との類縁関係がわかる。

 同じようなことが、爬虫類、それから植物でも昆虫でも、何でもそうだと思いますね。まさにこれからの未知の知見の宝庫でございますので、ヤギがいなくなったら、まず今度は、そういうことで楽しく上陸調査をしたいと思っています。

 ありがとうございました。

吉田(統)委員 ありがとうございます。ますます一刻の猶予もないということがよくわかりました。本当に喫緊の課題として対処すべき問題だと確信をいたしました。

 次に、海洋資源について質問させていただきたいと思います。

 海洋資源、特に地下資源、一九六八年以降、大変注目をされております。当時の一千億バレルという埋蔵量の推計はいささか多過ぎるといたしましても、平成六年六月、石油審議会開発部会技術専門委員会でも、三十二億バレルと、日本の一・六年分の使用量に相当する石油が埋蔵されている可能性を指摘されています。

 最終的な試掘権は国の認可が要ると思いますが、現在、実際に帝国石油から試掘の希望が出て、それに関して留保がされています。それに対して、都が御購入された後、この帝国石油の試掘希望等々に関して、海洋資源の開発に関して、最終的にはもちろん国の認可が要ると思うんですが、どのようなスタンスでお臨みになられるのか。

 つまり、これは今後の、領海のはざまにある資源開発の先兵となる可能性もあるので、ぜひお答えを都知事にお願いしたいと思います。

石原参考人 全ての面で協力いたします。

新藤委員長 山田参考人、これに関して、ございますか。

山田参考人 都が購入するのは、あくまでも島の土地ということになります。その周辺海域になるとまた違う視点ということになりますが、ただ、開発の拠点となる港湾整備ということになりますと、最も近い尖閣諸島の利用の方法、そして、特に洋上開発になりますので、そこの人の出入りということ、これは試掘の段階からでも非常に重要になってきますので、そういう面で、尖閣諸島に人の居住空間ができるということは、将来の海底資源開発に向けた布石、しかも試掘に向けた布石にもなると考えます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、重要な課題でもありますので、しっかりと進めてまいりたいと思います。

 次に、戦時中の遭難事件に関してお伺いをさせていただきたいと思います。

 ここはもう先ほど中山石垣市長から意見陳述の中で大変詳しく御説明をいただきましたが、昭和二十年七月三日、住民約百八十名を乗せて石垣島から台湾へ向かった疎開船二隻、これが米軍のB24爆撃機の機銃掃射を受けて、第五千早丸は爆発炎上、沈没、そして第一千早丸は尖閣諸島沖を漂流の上、魚釣島に上陸いたしました。しかし、当然、食料、水不足に途中から悩まされ、また、疫病によって多くの方々が亡くなられました。

 無念のうちに落命されたみたまをお慰めするために、昭和四十四年五月であったと記憶しておりますが、現地に慰霊碑が建立され、慰霊祭も行われました。この慰霊碑も大変風化が進んでいると伺っております。そして、平成十四年以降、政府の方針で上陸が許されず、魚釣島で慰霊祭を行ったり、また遺骨の収集もできなくなっていると思います。

 石垣市長にお伺いいたしたいんですが、この遭難事故では約何人の方々がお亡くなりになったのか、もう一度教えていただき、そして、かつ、その中から遺骨が収集することができたのは何名ぐらいいらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。

中山参考人 お答えいたします。

 遺骨の収集の数については今現在、私、資料を持ち合わせておりませんが、亡くなられた方は百十名前後だというふうに聞いております。

吉田(統)委員 遺骨の収集は、された方は実際にいらっしゃるんでしょうか。つまり、しっかりと御遺骨が御遺族のお手元に戻った例はあるんでしょうか。石垣市長、お願いします、おわかりになる範囲で。

中山参考人 申しわけございません、この部分については、ちょっと資料を持ち合わせておりません、認識もありませんが、ただ、現状から考えると、尖閣諸島から遭難した方々を救助してきて、それ以降尖閣諸島へ渡っておりませんので、当然、その場所で埋葬等をされた方の遺骨収集はされていないと認識しています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 実際、実態も把握が困難というぐらいの理解でよろしいでしょうか。本当に、これは日本固有の領土であるにもかかわらず、何ともやりきれない思いに駆られます。

 次に、東京都知事石原参考人にお伺いします。

 都の所有になった場合、御遺族の上陸許可の要請に対してどのような立場で臨まれるのか、御回答をお願いいたします。

石原参考人 それはもともと日本の領土なんですから、誰が所有であろうと、遺族が遺骨を収集する、あるいは弔いに島に上陸することを禁じるいわれというのは私はないと思うし、人の道にもとるんじゃないんですか。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では、横畑参考人にもう少しお伺いしたいと思います。

 例えば、南米のガラパゴス諸島など、進化を語る上で大変重要な島というのがあります。これは特に、孤立をしていればしているほど、そういった独自の進化をしていきます。例えば南米のテーブルマウンテンなどは、ほとんど人が入り込めないのでかなり独自の進化をしている生態系があると思われますが、例えばガラパゴス諸島、テーブルマウンテン、そういった世界の中で非常に重視される自然、生態系としての価値というのに比べて、この尖閣諸島周辺の価値というのはいかがお考えでしょうか。まさるとも劣らないものであるのか、少し詳しくお話しいただければと思います。

横畑参考人 ガラパゴス諸島との比較というのは、決定的な違いが一つありますね。

 ガラパゴス諸島は、一度も大陸とつながったことがないがゆえに、生物が独自の進化を遂げた。したがって、海を越えて入ってこれたものだけがそこにいる。ゾウガメなんかも、もともとは小さくて、流木なんかにつかまってきたわけです。

 魚釣島は、大陸とつながったことがあったゆえに、歩いてこれるモグラなんかもいるということですね。魚釣島はむしろ反対かもしれなくて、むしろ例外的で、非常にわずか、先ほどわずかと言いましたけれども、一万数千年前まで大陸とつながってきた。これは日本では北海道と魚釣島だけです。北海道は哺乳類の固有種は一つもおりません。にもかかわらず、魚釣島はモグラなんかがちゃんと種分化している。むしろ、歴史が浅いにもかかわらず速い進化を遂げたという点でユニークであるというふうな見方も一つできるのかなと。実は、同様のところというのは私は知らないですね、私が知らないだけかもしれませんけれども。世界じゅうを探しても非常に少ないところじゃないかなと思います。

 どちらがいいかというのは比べることはできません。それぞれ固有の価値がありますので比べられませんけれども、極めて重要な地域であることは間違いないというふうに認識しています。

吉田(統)委員 引き続きまして、では山田参考人に、海洋資源に関して、石油の試算が、一九六八年、当時の国連の行ったものは一千億バレル、そして、平成六年の報告ではかなり数が少ない評価をされているんですが、実際の量を推測するのは大変難しいと思うんですが、現在の、平成六年の報告でも、国の消費量の一・六年分に相当する分という推測がされております。

 実際のところ、この国連の報告というのは過大に評価し過ぎたという理解でよろしいのか、平成六年の評価が実際の、現時点の学術的な、そして測量の中での評価としては正しいのか、そこに関する評価をちょっと教えていただけますか。

山田参考人 確かに、一千億バレルというのは余りにも過大に評価していた。といいますのは、この一九六八年の段階の調査能力と現在の調査能力は圧倒的に違います。ただし、三十二億バレルというのは、私は、かなり抑えて控え目に言った数字であろうと考えます。その倍以上は恐らくあるということが通説では言われております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 つまり、サハリン油田に匹敵するような量であるという理解でよろしいでしょうか。つまり、海洋資源としても極めて重要な部分に相当するという理解をいたしました。

 本日、大変有意義な質問をさせていただきましたことに、参考人の先生方、皆様に心から御礼を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

新藤委員長 それでは、続きまして、木村太郎君。

木村(太)委員 四人の参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。私からも御礼申し上げたいと思います。

 私、自民党のトップバッターで御質問させていただきますので、これまでの御質問と重複する点があろうかと思いますが、お許しいただきたい。また、この後、我が党からお二人の方がさらに具体的に御質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

 尖閣につきましては、平穏かつ安定的管理のため、政府機関を除き、何人も上陸をさせないというふうに国の姿勢があるわけであります。

 しかし、私どもは、島を取り巻く情勢というのが、先ほど参考人の皆さんからもいろいろ意見の陳述があったように、かなり変わってきたということを考えますと、やはり無人島政策というものを国はちゃんと転換しまして、島の有人利用、海の有効活用というものをいま一度促進していくことが大事だと考えております。これは、私ども自民党の次期総選挙の公約としても、既に党内手続をして公約に掲げていくこととなっております。そういったことを踏まえながら、では、参考人の皆さんに御意見をいただきたいと思っております。

 まず、石原都知事、石原参考人にお聞きします。

 知事の御主張は、私も産経新聞や文芸春秋の記事を一読させていただき、いろいろと勉強させていただいております。先ほど来いろいろ御主張されておりますが、改めて、都が尖閣を購入した場合にどのように有効活用していくのかということをもう一度お聞かせいただきたいと思います。

石原参考人 有効活用云々の前に、まず、やはりしっかりした主体者があの島を保有することが私は大事だと思います。その後、東京にできることは、先ほど専門家の先生もおっしゃっていましたけれども、ヤギの駆除でありますとか、魚礁の創設で漁業の売り上げを図るとか、その他この他、あるいは新種の発見、これは新種の調査というのは南硫黄島でも既にやっておりますし、そういったことであの島の価値を高めることはできると思います。

 ただ、戦略的な展開をするための主要な基地、つまり、インフラの整備、港の整備あるいは飛行場の創設、これは国がやることですよ、誰が所有していようと。やらなかった歴代の政府に責任があるわけで、今からでも、まあ既に遅過ぎる節はないではないけれども、とにかく早くやっていただきたい、プラスアルファとして、ということです。

木村(太)委員 先ほど石垣市長さんからもいろいろ具体的な御要望的な意見の主張がありましたが、私ども自民党としても、この活用方法として、具体的に、いわゆる避難施設の整備とか電波中継管理所とかあるいは気象観測所等を整備して、管理のために人が常駐すべきというふうに公約的にも掲げているわけであります。

 石原知事は空港とかは国がやるべきというような話でありましたが、先ほどの石垣市長のお話や、今私が述べたことも含めて、直接やるのは国とか、仮に都が購入した場合は都だとか、役割分担はあろうとしても、こういったことについて、都としては、購入後、連携できるということで確認させていただきたいと思います。

石原参考人 当然、連携をいたします。

木村(太)委員 ありがとうございます。

 実は、私ども、この委員会の理事会で、尖閣への上陸調査を行うべきであるということで協議をしている最中であります。先ほど民主党のお二人の議員、大変ありがたいというか、考え方としては我々と同じ認識で御質問されていると私は評価しているんですが、ただ、残念ながら、民主党という与党が、この上陸調査についてかたくなに今拒んでいるというのが理事会での現状であります。

 そこで、こういった民主党というか、この姿勢というものを、都知事、石原参考人はどのように認識を持たれますか。

石原参考人 別にここでけんかをけしかけるわけじゃないけれども、とにかく、先ほども言いましたように、自民党の総裁が発議して、うそか本当か知らないけれども、理事会にかけて承諾して、与党、野党の議員が一緒になって、国政調査で、国会議員の義務としても権利としても尖閣に出かけようというときに、保安庁が船を提供しない、足を提供しないという、その裁断はやはり政府がしたんでしょうかね。これはあなた方にやはり責任があると思いますな。

木村(太)委員 引き続き、私ども、この委員会において上陸調査をすべきということで主張していきたいというふうに考えております。

 石原参考人にもう一つお伺いしますが、先般、丹羽在中国大使の発言が大きく報道されておりました。私ども、党の外交部会におきまして、これを問題視しまして、外務省、担当を呼んでいろいろ事実関係を聞きながら議論させていただいたわけです。その際、大使を日本に呼び戻してきちっと外務省として調査をして、その結果によっては罷免させるべきであるというような党の外交部会での議論があったんですが、今回の丹羽大使の発言について石原参考人はどのような感想を持たれますか。

石原参考人 丹羽君の発言の後、官房長官が、これは必ずしも政府の意向ではないと言いましたね。そういう食い違いがある大使を置いておく必要はないんじゃないですか。速やかに政府は、政府の責任で、政府の意向と違う大事な発言をする大使を更迭すべきだ、それが日本の外交の姿勢というものをきちっと示す決定的なよすがであると私は思います。

木村(太)委員 中山参考人にお伺いしますが、先ほど石垣市民を代表していろいろな思いを、御意見をいただきましたが、固定資産税等の課税調査やあるいは自然環境保全の調査、あるいは遭難者の慰霊祭を行いたいとか具体的に述べられておりましたけれども、それ以外に、尖閣を有効に活用するということで、石垣市としてはどういう考え方を持っていますか。

中山参考人 先ほどいろいろな話が出ていましたように、尖閣諸島は非常に優良な自然環境を保持しているところでございます。将来的には、尖閣諸島を周遊するような、観光での周遊ツアーのようなものは十分考えられると思いますし、それ一つとっても、経済的な利用価値は非常に高いと考えております。

 あわせて、先ほど石油の試掘等の話も出ておりましたが、私の記憶している限りでは、新潟市で鉱産税が二億円ぐらい入ってきているというふうに聞いております。新潟市沖の海底油田、海上の石油の産出の部分にかかってきている税金が二億円ぐらい入ってきているというふうに考えていますので、当然、尖閣諸島周辺、どこまで権利が及ぶかは今詳細は知りませんが、石垣市の行政区域内で石油の掘削が始まってそれなりの生産量が上がれば、石垣市にも財政として鉱産税が入ってくるんじゃないかなと期待しているところであります。

木村(太)委員 中山参考人にもう一つ同じ質問をしたいと思いますが、先ほど言ったように、当委員会で上陸調査をすべきであるということを理事会で我々は主張しているんですが、かたくなに民主党さんが拒んでいるというのが現状であります。仮にこの委員会で上陸調査ができるということになった場合に、ぜひ一緒に、共同調査ということで石垣市長あるいは石垣市の関係者の皆さん、同行していただきたいと思いますが、いかがですか。

中山参考人 こちらの方で国に対してそういった上陸を要望しているわけでありますので、あくまでも合法的に、そしてまた政府が認めた形で上陸することが肝要だと思っております。委員会の皆様で決議していただいて上陸するのであれば、ぜひ同行させていただきたい。よろしくお願いいたします。

新藤委員長 石原参考人、どうぞ。

石原参考人 今の件でございますけれども、現政府が何のゆえんでか、国会議員の諸君が国政調査権にのっとってあの島に上陸調査をしたいということを保安庁の船を提供しないという形で阻むならば、保安庁の船ほど大きくありませんけれども、漁船よりはるかにしたたかで耐波性も強い、東京都の持っている、要するに沖ノ鳥島その他で遠隔操業しております船を提供いたしますから、いつでもおっしゃってください。

新藤委員長 ちょっと失礼。

 今の質疑の中で、当委員会のこれまでの理事会に関する協議、上陸視察に関する件について整理をしておきたいというふうに思います。

 昨年の四月以来、この委員会において、尖閣諸島への上陸視察を行うべきだ、こういうことが提起されまして、理事会でこれまで協議をしております。そして、理事の間では、必要性、重要性は共有する、ここまでの整理ができております。

 しかし、残念ながら、それぞれ各党に持ち帰って政党の判断をいただく中で、与党民主党として、これは政府が今認めない限り党としても認めることはできない、こういうことが、民主党側からの、国対を含めての、政党からのお返事でございます。自由民主党は、これはもとより提案者でありますし、上陸しようということで、決議は、これはもう党として了解しているという状態です。一方で、公明党につきましては、内容は了解する、しかし、時期において、よくこれを吟味すべき、こういうことになっております。

 ですから、きょうの議論も含めて、今後さらに理事会の協議を進めていかなければならない、こういうことでございまして、理事会の協議が調ったならば、その後に、政府に、上陸をするための船舶の提供を要求するという現状です。

 ですから、現状においては、政府が拒否しておりますので、海上保安庁が船を出さないというのは間違っているわけではありませんが、まだ委員会として正式な要請ができない状態である、それを、今後皆さんで、また私どもでこの協議を進めていきたい、こういうことでございますから、整理をさせていただきたいと思います。

 それでは、木村太郎さん。

木村(太)委員 きょう御出席の四人の参考人で、石原参考人と中山参考人は政治家でもありますので、中山参考人にも先ほどのお話を聞きたいと思います。

 先ほどの、石原参考人にも聞いた丹羽在中国大使の発言について、今後どう対応すべきと考えますか。

中山参考人 私は、現地を預かる政治家、市長でありますけれども、現地でそれだけ一生懸命尖閣諸島を守ろうという動きがある中で、政府の立場にある方が別の発言をされるというのは非常に遺憾でありますので、石原都知事がおっしゃったような対応を政府に求めることは必要だと思っております。ぜひ、しかるべき対応をしていただくことを望みます。

木村(太)委員 次に、山田参考人にお伺いします。

 先ほど、いろいろ貴重な、先生の、今後に予想されることの意見をいただきました。その中で、次のステップは中国漁民の島への上陸が考えられる、こういうようなお話でありますが、それは、きょうあすにも二百隻、四百隻の漁船が来て、そういうことが考えられるということなのか、先生なりの展開みたいなことを予測しているのか、もう少し具体的にお知らせください。

山田参考人 正直言いまして、きょうあすにあってもおかしくないことではあると考えています。

 ただ、季節的な要因と、今、中国側は漁に対しての自粛をかけておりますので、それの明けた八月ごろが一番可能性が高い時期であると考えております。

 特に、八月の時期は、台風の時期を見計らった形で行う。そしてまた、十月になりますと、北西風が九月の末から吹き始めますと、漁船ではなかなか上陸が難しくなってきますので、本来的には八月前後である、八月から九月の初旬にかけての台風のはざまであると考えられます。

木村(太)委員 ありがとうございます。

 先生も先ほど、上陸調査をすべきだというふうなお話でもありました。

 それでは、横畑参考人にお伺いしますが、先ほど先生の御意見、あるいはいただいた資料を見ますと、比較的限られた調査でさえも、十三もの固有種、それから二つの固有変種があるというふうな御発言でありました。

 ただ、環境省は、環境省のレッドリストを見れば、尖閣固有の種というのは十種であるというふうな位置づけをしているんですね。そうすると、環境省が発表していること自体も、先生から見た場合に、余りにもずさんな調査というか、そういう認識を持たれますか。

横畑参考人 先ほど申し上げましたように、環境省の言っている十種というのは、恐らくまだ未記載の、ここで言いますと、オキナワクロオオアリとトリコニスクスsp.とアロニスクスsp.を意図的にのけてあるんだろうと思われますので、それはそれで慎重な立場かなと認識しております。

 実は、私自身も環境省のレッドリスト見直し委員をやっておりますので、環境省のレッドリストがずさんだと言われると、私がずさんだということにもなりますので、その辺、御配慮いただけると幸いでございます。

 ありがとうございました。

木村(太)委員 我が党内でも何度も議論しているんですが、改めて横畑先生に聞きますが、政府は今まで、調査といっても、航空写真を分析したりとか、こういうような手法しかやっていないわけですが、これでは全くもって不十分である、こういう認識でよろしいですね。

横畑参考人 全くもって不十分でございます。私たちもそれしかできておりませんので、不十分であることはよくわかっております。サワガニは水の中にあり、モグラは土の中にありますので、宇宙からでは全く見ることはできません。ヤギは見ることができるかもしれないのですが、これもまた、森林の中に隠れて見ることができないということ。それと、ついでに言いますと、海岸に真っ白い発砲スチロールのごみがかなりたくさん打ち上がっているそうですので、多分ヤギの場合、それと誤認してしまうおそれ等もあると思います。

 ただ、将来については、樹冠を透視して、どういう原理なのかわからないんですけれども、その下もある程度情報が得られるような高精度のリモートセンシングの技法が開発される可能性はあると伺っております。

 恐らく、その前に多くの固有種は姿を消してしまうであろうと思い、上陸調査はやはり必要でございます。

木村(太)委員 では、当委員会で上陸ができることになったならば、先生もぜひ同行していただきたいと思います。

 以上、私、これで終わります。ありがとうございました。

新藤委員長 それでは、続きまして、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。

 きょうは、四人の参考人の方々、お越しいただきましてありがとうございます。

 先ほどから話がありましたように、私も、昨日、一昨日と、尖閣諸島漁業活動の支援、一員として行ってまいりました。国会議員は全部で六名で参加をいたしまして、残念ながら、国会議員であるにもかかわらず、国会議員ということではなくて、漁業活動をする漁民の補助員という立場なんですね。我々が漁船に乗るときに海上保安庁が臨検に来まして、一人一人チェックをして、間違いないと。我が国の領海に漁に行くにもかかわらず、なぜ海上保安庁に我々も臨検でチェックされるのかという、非常に憤慨する思いでございましたが、行ってまいりました。

 そういう中で、大変に参考になった部分としては、やはり現地に行くことによって改めてこの尖閣諸島の重要性というのがよくわかったということでございます。これは写真や映像で見るのと違って、やはり尖閣諸島というのは大変偉大な、大きな島であって、その存在そのものが、これから我が国にとって大変重要だという象徴のように感じられました。

 ただ、波が高くて、残念ながら十分な漁をすることができず、そういう意味では我々にとって、ただ視察しかできなかった、そんな思いもありますが、非常にこれを有効に生かすべきだというふうに思います。

 まず冒頭、委員長にお願いがございますが、当委員会でもう二回、この委員会として、上陸することによって視察をすべきだ、これを国政調査権を使って行うべきだということを提案し、きょうで三回目でございますが、改めて理事会で協議をしていただきたいと思います。いかがですか。

新藤委員長 理事会で取り上げさせていただきます。協議いたします。

下村委員 その上で、まず山田参考人にお聞きしたいと思うんですが、先ほどから御指摘されていますように、中国の東シナ海進出、これは大きく変わってきた。特に二〇一〇年から方向転換をしたのではないかというふうに思っております。

 もともと、一九七一年の十二月に、尖閣諸島の領有権を中国は公式に表明いたしました。そしてその後、一九九二年に、中国は領海法によって尖閣諸島を領土というふうに、中国国内法によって一方的に法律で定めたわけでございます。さらに、二〇一〇年、海島保護法という法律を制定しました。これは、無名の島を命名し、国家主権を主張する。また海域の管轄を強化し、海洋権益を維持、保護する。そして、堅牢な海上防衛の前線を築く。この目的が海島保護法でございまして、その中に尖閣諸島が入っているわけですね。

 さらに、中国は、二〇一〇年七月に国防動員法という法律も定めたわけです。これは、中国国内だけでなく、海外に在住する中国人も、政府が動員を決定すれば対象となる。ですから、日本国内に在住している約七十万人の中国人もこの動員、徴用の対象になるし、あるいは、中国国内で活動する外国企業、日本企業、それから居留権を持つ外国人、日本人、これも対象になるということで、中国はこの二〇一〇年から大きな方向転換をしてきたということで、このときから尖閣についても核心的利益ということを表明するようになったわけです。

 核心的利益というのは、その存在なしに国家の存立は成り立たないという位置づけの中で使われているわけでございますし、今までの中国の南シナ海の侵略、進出等を考えれば、当然、東シナ海についても遅かれ早かれということで、先ほど山田参考人はこの八月ぐらいという話がありました。

 事実、昨年六月の十七日にも、尖閣諸島周辺を中国漁船千隻が取り囲む。そのうち何十人か何百人かが上陸をして、そして、その漁民の保護を目的として中国軍隊が上陸するのではないかということがありましたが、昨年は三・一一、東日本大震災があったことによって、これは、池に落ちた犬に石を打つようなことを華人、中国人はしてはならないというみずからの表明で延びているわけでありますが、それがこの八月にも起きるかもしれない。こういう状況だというふうに先ほども言われたのではないかと思います。

 この中国の海外進出というのは、東シナ海だけでなく、南シナ海等を含めて、着実な国家戦略として進められていることだというふうに思います。それに対して、我が国としてどんな対応をすべきか、今すぐ着手すべきものとしてあり得るかということについて、冒頭お聞きしたいと思います。

山田参考人 御指摘のように、二〇一〇年というのは、中国の海洋政策の、特に海洋進出の大きな転換期に入っていると思います。

 一つには、この海島保護法の中に、これは、この執行主体は基本的には地方行政、そして必ず地方行政は地方の人民解放軍と調整の上計画をつくるということが定められております。その中で、人民解放軍は、地方行政組織を動かす形で、漁政あるいは海監という、警察機構に近い、表立っては非軍事組織をもって進出をしております。

 ただし、漁政の多くは、人民解放軍からの出向組が操船をしております。海監に関しても、もともと国家海洋局は半分が軍人によって成り立ってできた組織でございます。そういう流れの中で、建前上は警察権を行使しながらやっている、動いているという中で、ただ、南シナ海においては漁政も武力を使うケースが見受けられます。そういう観点から、まずは一旦、警察権の強化、海上保安庁の強化に目を向けていただきまして、早々に海上保安庁法の改正、不審船舶の退出を求めること、そして離島を海上保安庁が守ること等、海上保安庁の強化、そしてまた、海上保安庁の能力に関しまして、離島の警備ができる体制、船の装備等あるいは航空機の装備等を検討していただきたいと思います。

下村委員 海上保安庁の領海警備法は、今国会で前田国交大臣の問責決議の問題がありましたからずっと開かれておりませんでしたが、これが解決しましたので、早急に国土交通委員会でこの問題については法案が成立するのではないかと期待をしたいというふうに思います。

 その上で、尖閣諸島周辺の視察というのは、最初、石原知事が随分前に行かれて、そしてことしの一月には新藤委員長等が行かれて、我々が三回目ということでございまして、足跡としては、これを着実に進めていく必要があると思います。

 ただ、我々は、やはり国政調査権を使って正々堂々と上陸もすべきであるということでございますが、石原知事の認識がちょっと違っているかなと思うのは、国政調査権というのは、国会議員が勝手に行くということで行けるわけではなくて、委員会なりあるいは本会議決議がないと、国政調査権を使って、つまり国の機関を活用することができないんですね。

 ですから、国の機関を活用しないで、我々がもし例えば東京都の船をお借りして有志で行くということになると、これは国政調査権ではなくて、勝手に行くということについては政府は認めないという立場なんですね。つまり、政府関係者以外何人も上陸に関しては、地主の意向という言い方をしていますが、平穏かつ安定的な維持管理のために認めないと。ですから、国会議員であろうが勝手に行くなということでございまして、そのために、正々堂々と国政調査権を使って、我が国の領土ですから、当然行くべきであるということでありまして、そのためには、委員会の決議なりあるいは本会議決議なりが必要だ。

 このことについては、委員会決議、国会決議というのは、議院内閣制ですから、当然、海上保安庁や政府関係機関のいろいろな、飛行機やヘリやあるいは船を含めて活用するということが必要になってきますので、その辺でなかなか手続に手間取っているというような状況があります。

 その中で、東京都がこの尖閣諸島購入を表明されたということは、これは率直に言って歓迎すべきことだというふうに我々は思います。本来は国が購入すべきことですが、先ほど山田参考人からもお話がありましたように、もう二カ月後ぐらいのうちに中国がそのような行動に出るかもしれない。これは、周辺状況から考えて、当然予想すべきことだと思うんですね。このことについて、今まで国会の中でも再三再四、政府に対して尖閣諸島の実効支配を含め主張していたのにもかかわらず、中国政府におもねっているのか、全く進んでいないという状況がある中で、今回、東京都が購入を表明されたということは、本当に、我が国の国民の安全また領土問題を考えた場合、これは前進になるかというふうに思います。

 その中で、実際は、今、賃貸契約等で来年の三月までということで、四月以降ということになってくるかと思います。政治状況によっては早目に国が買えるような状況が出てくるかもしれませんが、国への売却についてはやぶさかでないとお話がありましたが、時期を含めて、それについては国に対しては柔軟に検討を考えられますでしょうか、いかがでしょうか。石原参考人にお聞きします。

石原参考人 国と今の個人の地主さんが交わしている賃貸契約ですけれども、これは、やはり事が事でありますし、皆さんの努力で、年度明けじゃなしに一刻も早く、要するに、契約の中では契約中はほかに売買しないことになっているようですけれども、これを解消して東京都に預けてもらいたい。その方が、栗原さんが所有しているよりやはり国民は安心できるし、栗原さん御自身も安心できると思うんですね。

 ですから、詳細な契約内容というのは不明ですけれども、いずれにしろ、年度内には約束に沿って他者に転売しないということになっているようですけれども、相手が相手ですし、その買おうとしているのも東京という自治体ですからしっかりしていますから、何とかそれは、年度内にでも東京が購入できるように、ひとつ皆さん、意欲ある者を応援してくださいよ。

下村委員 もともと、一昨年の中国漁船船長問題があった後、このことについて国会でも再三取り上げました。私も、一昨年の暮れに、尖閣諸島は国有化すべきではないか、国が購入すべきではないかということに対して、当時、菅総理が、国有化することを検討するという答弁だったんですが、検討だけで終わってしまっているわけでございます。

 その中で、後で、私も知事の書かれた月刊文芸春秋を読ませていただきましたが、我が党の山東昭子参議院議員から連絡がありまして、地主さんは、当時の山東さんの話では、今の政府には売らない、政権がかわって自民党になったら売ってもいいということで、外国人にも売らないという非常に国士の発言をされていたと。実際、その後、外国人から三百五十億とかいう話も出ておりますが、それでも売らなかったということは、これは立派なことであるわけでございます。

 そういう意味で、今回の国会の国政調査権を使った上陸視察もそうですが、ただ視察するだけでなく、尖閣諸島について国がしっかりとした管理運営をする、今までのような、事実上放置するような状態ではなくて、今後、地元の要望を受けながらしっかり国が対応するということがやはり問われているのではないかというふうに思うんですね。

 そのことを考えると、東京都の購入する時期と、それから、その後かその前か、もしかしたら衆議院の解散・総選挙もあるかもしれないという状況の中で、状況も違ってくるというふうに思いますし、また、石原知事も、今の国会状況に対して非常に憤りを持っておられ、何とか国を立て直したいという思いを持っておられるということも聞いておりますから、これは先頭に立って、この尖閣諸島の解決を含め国の今の状況について、もう一度国政に戻って解決しよう、そういう思いを持っておられるかどうか、お聞きしたいと思います。

石原参考人 それは秘中の秘でありますから、こういうところで公開はできません。

 その前に、東京が買うことになっていますけれども、その後国が買うか買わないかは別にして、東京の所有が続いているにしろ、国は国で国策として、国費を投じてあそこに何をつくるかということをやはり考えていただきたい、今からでも。

 竹島というのは、堅固な要塞になりましたよ。しかし、あそこは観光地にもなっているわけですからね。国土を守ろうという今度の拠金してくださるたくさんの国民を含めて、あの島の存在に関心がある日本人が、要塞化もされ、しかも観光地にもなっているあの尖閣に上陸されて、海を見晴るかしながら、この向こうにシナというけしからぬ国があるんだという認識を持つことは、私は日本人として正当な国際感覚を養ういいよすがになると思いますよ。

下村委員 何かはぐらかされたような気がいたしますが。

 最初の御指摘については、やはりそのとおりだというふうに思うんですね。地元の中山市長も、我々も実際、きのう、おとといといまして、例えばやはり避難港が必要だと。かつて、ピークのとき人が二百四十八人住んでおられて、そしてそこで生活をされ、また避難港、ちょっとした漁港もあったわけですね。我々が行ったときも、一年じゅうでこの時期は最も穏やかなときだというふうに言われましたが、それでも荒波で、本当に大変でした。

 ですから、何かあったときに、避難港があって漁船がそこに避難できるとか、それから、そもそも、あの周辺は電波が届かなくて、気象観測等が漁民の方々に届かないという部分もありますし、灯台も設置するという必要があると思いますし、現実的な対処の問題と、それから、ほかの参考人の方々からもお話がありましたが、これは、竹島の問題というふうに捉えたら、我が国の領土であるわけですから、先ほども市長からお話がありましたように、あそこを観光の拠点的な部分として、ただ、相当波が荒れていますから、果たして船で行って観光になるのかどうかというのはありますが、それでも、今後の我が国の領土感覚から考えて、何らかのそういう記念的なものを建てるということはすばらしいことだというふうに思います。

 では、知事の前にまず中山参考人から、そういう尖閣の有効活用について、これは沖縄県との関係もあると思いますが、さらにどんなことが考えられるか、お聞きしたいと思います。

中山参考人 ただいま尖閣の遊覧とかの観光ツアーの話もありました。船で厳しい状況も十分承知していますが、現在はもう技術も発達していますので、船の大きさ等によれば十分可能かなと思っておりますし、また、ヘリやセスナのようなものでの上空からの尖閣視察というものに関しても、十分国民の皆さんまた海外の皆さんも関心を持ってもらえるツアーになるんじゃないかなと思っております。

 そして、国の購入の件に関してちょっと意見を言わせていただきたいんですが、東京都が購入するという話のもとで、国も買う意思があるよ、検討しますよという話があるのであれば、今現状、個人の所有であるわけですけれども、国が借り上げしているわけですよね。だとするならば、少しでもそういう国が買い上げするような意思もしくは検討する余地があるのであれば、今すぐに借りている国が尖閣諸島で何らかの施設をつくって、しっかりと国を守る、領土を守ることは何ら問題なくできると思っていますので、そちらの方を先にやってもらいたいと思います。

下村委員 野党の立場ですので厳しい見方ですけれども、表明を国は、国有化することも検討するということを言っていますが、本当に今の民主党政権の中で購入するかどうかと考えると、これは多分そこまでできないだろう、しないだろうというふうに我々は思います。ただ、改めてこの決算行政委員会で、きょうの参考人質疑を受けて政府側にもただしたいと思いますので、そういう機会を早急につくっていただきたいというふうに思います。

 ですから、これはこれとして、やはり東京都は東京都で着実に都民の理解を得ながら進めていただきたいというふうに思いますが、先ほどの石原参考人のお話ですと、きょう時点で一般の方々から十一億円もの寄附が集まったということは、これはすばらしいことだというふうに思うんですね。

 やはり、昨年の三・一一以降、改めて、この日本というのは国家としての体をなしていなかったのではないか、国家の基本要素というのが国民、人口ですね、領土、主権であるわけですけれども、その領土や主権を大切にしてこなかったのではないかということが国家としてのあり方としてこれから問われてくるという中で、今回の、尖閣について東京都が購入するということを表明したということは、そういう国民の方々の、これは多分寄附は都民だけではないと思います、大勢の方々の意識を覚醒させたということでは、すばらしいことであるというふうに思います。

 その上で、先ほどお話があったように、これは本来はやはり国がきちっと対応すべきことですから、国が対処するということの中で、今申し上げたように、今の政権の中ではそこまでやり切れないだろうという中で、実際、いつ解散・総選挙があるかどうかわからない状況の中、秘中の秘ですからこれ以上もう発言はしたくないということだったら別ですけれども、石原参考人として、どんなふうに国政をこれから立て直していくべきか、お考えがあればお聞きしたいと思います。

石原参考人 私、ここに別に講演をしに来たわけじゃないんですけれども、どうも今の日本は、敗戦後六十何年間、結局、アメリカのめかけで来たわけですよ。つまり、我々のイニシアチブというのはどこにあったかといったら、あるようで、ない。

 憲法の問題一つ見ても、占領軍が占領を遂行するために、その地域の統治のためにつくった一種の基本法を憲法としてとにかく今日まで拝受し続ける、こんな事例というのは世界の歴史にないんですよね。改正の問題じゃないんだ。

 つまり、悪い女と手を切るという言い方はちょっと下品かもしらぬけれども、とにかく、この憲法と手を切ればいいんだ、これは要するに政府の主体性、政府の決心があればできることですから。

 結局、憲法のつくり出した、他力本願といいましょうか他人依存といいましょうか、自力で物を処さない、場当たり場当たりで事をする、そういう、本当の国家の主体性というものを欠いてしまった、言いかえれば、一種の平和の毒に毒された、私は国家の末期症状だと思っています。

 これをそろそろ私たちは、今度の東日本の大震災も含めて、この尖閣の問題も含めて、シナという国が一体これからどういう形で日本を、やはりチベットのように併合するつもりなのか何か、やたら要するに露骨な覇権主義で自分たちの版図というものを広げようとするのだと、私たちはこれをやはり体を張ってでも防がなくちゃいかぬと思いますね。

 そのときに、日米安保条約がありますけれども、アメリカが一体どこまでこれにコミットしてくるか。私もアメリカの親しい友人に言っているんですけれども、君らは尖閣の問題で本当に日本に対して共感を示さないと、結果的に君らは太平洋全体を失うことになるぞと警告していますが、そういうことにならないということを私は望みますし、そのためにも、与党、野党、立場を超えて、この尖閣という大事な屋敷に強盗に入るぞと宣言して着々とその準備をしている相手にどうやって毅然と対処するか、ここら辺でやはり決めてかからないと、下手をすると、そのうちに、日本の国旗はシナの五星紅旗の六番目のちっちゃな日の丸になって終わるんじゃないでしょうか。

下村委員 尖閣問題は日米安保条約の中で該当するということであっても、やはり、自国の安全はみずからまず守る、こういう姿勢がなければアメリカも発動するはずがないわけであって、日米安保条約があるから大丈夫だということでなく、まず日本人がみずからいざというときのためにきちっと対応する、日ごろからそのような状況を国としてどうつくるかということが、今回の尖閣問題でも問われているのではないかというふうに思います。

 憲法破棄という話がありましたが、これは政府によって破棄できるのか、ちょっと今よくわからなかったので御質問したいと思うんです。

 普通、破棄にしても憲法改正にしても、衆参三分の二以上、国民の過半数の同意が必要ですよね。破棄というと、明治憲法に戻るのか、どういう意味でおっしゃっているのか、ちょっと確認でお聞かせ願えればと思います。

石原参考人 私も何人かの法歴史学者に話を聞きましたが、これは、この憲法を破棄するか、捨てるか、別れるか、言葉は別にして、決別するということの手だてとして法的な制約はどこにもありません。ないはずです。

 人間の歴史を振り返ってみて、戦に敗れた国が勝者に統治されている間、彼らから与えられた法律の規制を、独立した後も拝受し続ける事例というのはどこにもない。歴史の中にこそ人間の正しい原則というのは含まれているわけでして、これは、ちなみに、あなたも法歴史学者にただしていただきたい。

 とにかく、私の知る限りでは、今の憲法を基本的に否定して新しい憲法を即時つくり直すということを拘束する、そういう法律の体系というのはないと私は思います。

下村委員 今のお話は、私も改めて勉強をさせていただきたいと思いますが、そういうような形で法治国家としてできるのかどうか。

 一方で、我が国の憲法、新憲法と言われていますが、実際、もう既に世界の中で一番古い憲法、六十数年間一度も改正してこなかったということで、一番古い憲法になっているわけでございまして、時代の変化に対応した的確な憲法改正というのは当然必要だというふうに思いますが、改正どころじゃなくて、破棄してもう一度ゼロからつくり直せ、そういう提案だというふうに思います。

 自民党も、憲法改正草案というのは、四月の二十八日、サンフランシスコ条約から六十年たったこの年に改めてつくりましたが、この国にとってあるべき憲法がどうなのかということについては追求をしていきたいというふうに思いますし、今、そういうこともしなければならない時期ではないかというふうに思います。

 中山参考人にちょっとお聞きしたいと思うんですが、先ほどから、政府に対して三つの項目で要望しているという話がありました。

 私もこれについては何度も国会で取り上げさせていただいて、これは中山参考人の言われていることはもっともな話であって、固定資産税の調査、四十七年間一度も実際は調査されていないわけですよね。これについては、ヤギの問題等もありますし、地形も一部変わったという問題があるし、それから、四十七年以前には発見されていなかった東シナ海の海底資源の問題がありますから、当然そのことによって島の価値も大きく変わってきているわけですね。

 それから、あとは、自然環境保全のための環境調査、これも当然のことだというふうに思います。

 それから、三番目が慰霊祭の実施ですね。これは、先ほど政府の答弁でちょっと申し上げましたが、安定的な維持管理のために政府関係者以外何人も上陸を認めないというのが今までの例でありましたが、東京都が購入を表明することによって大分変わってきているのではないかというふうに思います。

 その中で、慰霊祭の実施、これは七月ですね、もうすぐなわけですが、これは私は二回ほど国会で取り上げましたが、これについては政府の方も明確に上陸を認めないとは言っていないんですね、検討しますと。確かに遺族の方々の気持ちもおもんぱかるともっともな主張の部分もあります、ですからこれについては今検討していますということで今日に至っているんですが、改めて、七月というのはもうすぐですけれども、早目にこのことを踏まえてもう一度政府に申し入れをすることによって、ぜひ、まずは来月、この慰霊祭の実施が尖閣諸島でできるように、バックアップもしたいと思いますが、東京都の購入以降の石垣市の政府に対する要請、申し入れについてお聞きしたいと思います。

中山参考人 ただいま御指摘いただいた点につきましては、昨年とことしでは状況が変わっておりますので、ぜひ政府に対しても慰霊祭の実施を再度要求したいと考えております。

下村委員 国会の国政調査権だけでなく、現地実地調査というのはいろいろなレベルで、いろいろな形で行うことが必要だというふうに思うんですね。

 石垣市でもこの三つのことについて要請をしているわけですけれども、これは沖縄県とも連動してされるおつもりがあるか、その場合にはどれぐらいの規模で実際、上陸調査を考えられるのか、それについて具体的なお考えがあればお聞きしたいと思います。

中山参考人 先ほど、現地での調査の件について、学術的な調査ですが、五次にわたって約八十名近い方が上陸したというふうに聞いております。そうなりますと、一部の研究機関そしてまた行政機関のメンバーを入れると、一回で約二十名から三十名ぐらいまでは可能かなと思っておりますので、できればそういった専門的な部分、きょうお越しの先生方も一緒に交えて上陸調査することができればいいのではないかと考えております。

下村委員 ちょっと石原知事に確認をしたいんですが、地主さんの栗原さんにお会いしたということだそうですが、今まで、政府の答弁の中で、地主の意向によって政府関係者以外何人も上陸を認めない、これは平穏な維持管理のために必要なことなんだ、こういうことを答弁で使っていたんですね。

 地主さんが本当にそんなことを言っているのか、つまり、政府関係者以外は上陸してはだめだと言っているのか。それについてお聞きしたことがあるかどうか、ちょっと知事に、直接栗原さんにお会いしたことがあるということですので、そういう話が出たかどうか、お聞きしたいと思います。

石原参考人 その点について話したことはありませんし、彼の意見を聞いたこともございません。

下村委員 わかりました。

 それから、横畑参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、横畑参考人は、日本哺乳類学会、それから日本生態学会の所属でもあるということですね。それぞれの立場から、尖閣諸島の自然というのは大変貴重なことであるというふうに思いますし、世界絶滅危惧種もたくさんある中で、学会で上陸を希望されるとしたら、いつぐらいの時期にどれぐらいの人数で行くことが大体皆さんの研究調査の把握になるのか、それについてお聞きしたいと思います。

横畑参考人 配付しました資料の三枚目になりますが、上陸調査のことについては書かせていただきました。

 固有種のそれぞれのものの専門家、例えばモグラだったら二人か三人ぐらいいないと、ちょっと今の状況では生存確認は難しいかなとか、昆虫もいろいろなものがございます。地表徘回性のものも、空を飛ぶものも、地中にいるものもおりますね。甲殻類は、これは主に土壌中のものなんですけれども、土をとってきて後で調べる、土の中を持って帰って調べる。それは土壌動物もそうですね。それから、甲殻類は、もう一つは水中にいるサワガニですね。それから陸生貝類。動物だけをとってみましても、かなりの人数が理想的には欲しいです。可能であれば、こういった固有種の生息調査だけで十数名。

 それから、未確認生物。これはどういう分類群のものにいるのかわかりませんが、爬虫類とかは上陸して調べるべき点があるというふうに具体的に伺っております。

 それからさらに、ヤギの被害調査。これは先ほども申しましたけれども、ヤギそのものが植物に与える影響も、土壌に与える影響も、それからもっと言えば、水質に与える影響などもありますので、全部合わせると本当に二十人ぐらいになってしまうと思います。

 先ほどのお話で、それぐらいならできるかもしれないとおっしゃられたので、大変ありがたく思っていますが、でも、少なかったら少ないなりにやはり成果も上がりますので、二十人いなきゃだめだということではなくて、五人でも二人でも一人でも、行けば何か多大な成果は上がると考えております。

 時期ですけれども、冬季などは上陸、接岸などは難しいとか、いろいろなことを伺っておりますし、昆虫等はやはり冬季は、まあ亜熱帯ですから、そう極端に減ることはないのかもしれませんが、一般にはやはり生物が調査できるのは春から夏、秋ですね。そういう時期の方がいいと考えております。

下村委員 中山参考人にお聞きしますが、先ほどからお話ししているように、きのう、おとといと行ってまいりまして、尖閣諸島周辺は大変豊穣な海であるというふうに思いました。ただ、相当リスクがやはり高いということで、我々が行ったときも、二回台湾船、台湾漁民に会いました。トラブルにはなりませんでしたが、海上保安庁の巡視船も一緒だったんですね。

 皆さんの御要望の中でも、「尖閣諸島海域に海上保安庁巡視船及び漁場監視船による常時監視体制を強化し、隻数増加など適切な措置を講じていただきたい。」というのがあります。

 豊富な漁場の中で、今まで台湾との関係の中では漁場の問題等があるというふうに思いますが、ただ、きのうも日本の漁民の方々が危惧されていたのは、中国側を含めて大船団で来て、また日本の漁船に比べて大型漁船で、それから、はえ縄式でマグロ等をとる中で日本の縄を切ってしまって、この被害がもう大変だという話がありました。ですから、現段階においても、法律改正をしなくても、海上保安庁等が適切に対応をもっとしなければならない部分というのがたくさんあるのではないかというふうに思いました。

 あわせて、「尖閣諸島並びに周辺海域において、国民が不安なく漁業に従事できるよう港を整備するなど、速やかに適切な措置を講じていただきたい。」とありますけれども、こういうことをすることによって、この八重山地区の漁業関係者、沖縄全体かもしれませんが、あの周辺の漁業が豊富な中で、いかに対応を早くするようにするかということは国の施策でもあるのではないかというふうに思います。

 石垣市にとっても、漁業というのは本来大きな産業になるべきことだと思うんですね。それが今なかなか厳しいという中で、具体的に今すぐに国に対して要望がありましたら、それもあわせてお聞かせ願えればと思います。

中山参考人 御指摘のとおり、尖閣諸島周辺は非常に優良な漁場でありまして、クロマグロも含めて、高級魚がかなりとれる場所であります。石垣は、来年の三月七日に新しい空港が開港する予定でございますので、尖閣諸島周辺でとれた魚を八重山漁協の皆さんが航空便を使って築地とか大阪の大市場に送り出していくことができれば、かなり利益の出る漁業ができるんじゃないかなと思っております。最近は、漁業者も大分高齢化しまして、若手が参入しにくい、入ってこない状況になっていますが、こういう夢のある漁業ができれば、今後とも大きな産業として成り立っていくものだと思っています。

 その意味においては、今でき得る措置としては、尖閣諸島周辺に漁に行くためには、先ほども言いましたように、燃料が非常に高騰しておりますので、燃料費を補助するとか、国の施策として実際に漁に行かせて、そこで実効支配を達成するということを対策としてとってもらえればと考えております。これは本当に、近々の対策としては燃料費補助が適切かと考えます。

下村委員 しっかりそれも対応できるように、我々も頑張りたいというふうに思います。

 この尖閣諸島というのは我が国の領土問題の象徴でありまして、これは確かに、一九九〇年代、日本と中国で事実上の棚上げをしようという話だったわけですが、しかし実際、二〇一〇年、直近になって、中国の方向転換で大きく変わってきて、ここを核心的利益というふうに位置づけて、あと数カ月たつかたたない、先ほどの山田参考人のお話であれば、きょうあしたに来てもおかしくないというような状況の中で、我が国の政府が旧来と同じような延長線上では、これは全く国家の体をなしていないということでありますから、今の国際状況に対応して国が的確にどう対処するかということが今求められていることでありまして、そういう中で、石原知事もやむを得ぬ思いで東京都が購入をするということを表明されたのであろうというふうに理解します。

 ですから、これからしっかりとした、今の民主党政権が対応できないということであれば政権奪還をして、この領土問題、尖閣問題については国家がきちっと責任を持つ体制をつくるということについて我々も努力をするということを表明いたしまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

新藤委員長 御苦労さまでございました。

 先ほどの下村博文君の質問の中で、横畑先生、調査を行うに当たっての人員と時期のことをお答えいただきましたが、それでは、どのぐらいの期間を考えればいいのか、それもあわせてお答えいただけますか。

横畑参考人 ちょっとよくわからないのは、やはり動物や植物で全部調査方法が違うんですね。

 例えば、植物の植生調査とかで、大ざっぱな植生図でしたら、過去の調査では、恐らく島の周りを歩き回って、一回ぐるっと回って、大ざっぱなものはつくられている。そして、それはすごく今でも役立っているんですね。片方で、例えば、三・八平方キロの島の中で、非常に数が少なくなっているモグラがちゃんといるということを捕獲によって証明しようと思ったら、かなり力の入った捕獲調査をしなければいけないと思っています。したがって、時期がどれぐらい確保できるかによって、こちらもやることを考えるのだと思います。

 でも、大体の過去の調査の経験と、それから、実際の資材や食料などを持っていって、ちゃんとマネジメントして、それから、標本を持って帰ることが必要ですが、物によっては冷凍して持って帰らなければならないものも出るかもしれません。そうしますと、一週間を超えるともう難しいだろうなという気はしますし、一回行って、全部が一度に行って帰ってくるんじゃなくて、部分的に早く入る人なども必要なのかもしれないと思っています。

新藤委員長 わかりました。ありがとうございます。

 それでは、続きまして、平将明君。

平(将)委員 衆議院議員の平将明です。よろしくお願いします。自由民主党最後の質問者になります。二十分おつき合いをいただきたいと思います。

 まずは、参考人質疑の実現までの道のりを、今、新藤委員長から御説明をいただきました。

 我々は、かなり早い段階から、尖閣諸島に上陸調査、国政調査権を使って上陸をする必要性があるのではないかという提起をしてきました。そして、参考人質疑という形でこの委員会を開くということも要請してまいりました。これが当時、緊急の課題ではないという与党の認識がありまして、なかなか開催ができなかったわけでありますが、今回、石原知事の購入発言があって前に進んだということで、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 きょうの質疑を通して、大体幾つかの論点が絞られてきたと思いますが、まずは島自体の環境の変化、もう一つは中国を含めた国際的な環境変化、つまり、環境変化という視点と、さらには管理と所有、管理をするということと所有をするということの問題、そして三番目は、この問題がかなり以前から指摘をされているにもかかわらず、なぜ政府の対応が進まないのか、こういったところであろうと思っております。

 まずは環境の変化についてお伺いをしたいと思いますが、下村代議士からも指摘があったように、確実に、急速にフェーズが変わったと思います。それは何かといえば、中国の漁船の衝突の問題を機に、いわゆる漁船監視船が頻繁に入ってくるようになった。さらに言えば、国家海洋局の公船が入ってくるようになった。さらには、領海に入ってきて、魚釣島を含む島は中国の領土であるということを、国家の船が入ってきて、そういう意思表示をするようになったということで、尖閣諸島をめぐるリスクというのは急速に高まっているんだと思います。

 そして、その背景は何かといえば、やはり民主党政権が誕生して、時の鳩山総理が、知事会であったと思いますが、石原知事の問いかけに対して、この尖閣について日本と中国の当事者同士でしっかりと議論して結論を見出してもらいたいという、何かあたかも領土問題が存在するかのような極めて無知、無責任な発言を時の一国の総理がした。総理だけかと思いきや、当時の蓮舫大臣も、領土に関する問題というような発言をして、領土問題があるような発言をしたわけであります。

 このように、領土にかかわること、国防にかかわること、こういうことに対して余りにも意識の低い政権だと恐らく中国は感じたんだと思います。

 そして、それを見ていたロシアの当時のメドベージェフ大統領も北方領土に行った。私は、そのときに、ちょうど朝、NHKのテレビ入りの質疑がありましたから、直接これを菅総理に問いただしましたけれども、こういうのは一連、全部つながっているんだという指摘をしましたが、そういう認識もありませんでした。あげくの果ては、防衛大臣一人自分の党から出せないというていたらくであります。

 このように、一気にフェーズが変わってきた。

 これは中山市長にお伺いをしたいと思いますが、まさに現地の首長として、そういうような皮膚感覚、危機感覚はお持ちでしょうか。

中山参考人 確かに、危機感というものは、大分状況が変わってきていると思います。

 先ほどもお話ししましたように、尖閣諸島をとられることによって日中中間線が変わってくる、自国の、私の預かっている島のすぐ近くに侵略的な思いを持った国が何らかの施設をつくる可能性が出てくるというふうになったときに、石垣島は四万八千の住民ですが、その隣に竹富島や西表島を含めた竹富町、そしてまた、ちょっと離れたところに与那国島があります。その周辺住民を合わせると五万五千人おりまして、その人たちが危機にさらされるという意味においては、首長としての立場としては、非常に危機感を感じております。また、漁民の皆さんも同じような感じをしていると聞いております。

平(将)委員 山田先生にお伺いいたしますが、まさにフェーズが変わってきた。最初は民間の船が入ってきた。何で入ってきたんだといえば、恐らく中国側は、民間ですから、魚を追いかけて、ついついお金もうけをしたくて入ってきたんでしょうという言いわけをしていたと思いますが、今度はもう公の船ですよね。国家の意思として入ってきた。東シナ海の事例を見ても、これからさらにフェーズが進んでいくのは明らかだと思います。次に予想されるフェーズというのは、人の上陸、そしてその後に施設の建設ということになるかと思いますが、大体そういう理解でよろしいでしょうか。

山田参考人 国家海洋局の海洋監視船、海監が動くに当たりましては、必ず外交部の了承があっての動きだということを聞いております。ということは、国家海洋局の監視船が定常的、定期的な警備活動として領海侵犯をしているということは、もう国家の意思として次のステップに入った。ということは、今までの流れ、過去の経緯から見ますと、漁船の上陸という流れが想像されます。

平(将)委員 まさに状況が大きく変わったと認識すべきだと思います。私自身も、国家海洋局の公船が入ってきて、電光掲示板などを使って意思表示をした、この前と後では明らかにとるべき対応が違うんだと思います。

 そんな中で、政府は、平穏かつ安定的な維持管理の方針のもとに、政府機関以外は何人たりとも上陸させませんということを言っておりますが、いよいよ島の管理方針を転換すべき、そういう議論をするときが来たんだと私は思います。

 そういった中で、まさにその突破口を石原知事にはつくっていただいたわけでありますが、二つ問題があると思うんですね、所有の問題と管理の問題。管理がしっかりされていれば、国家がそういうようなフェーズに合わせて、しっかりと領土を守るという意識を持って、管理方針を変えて、必要な調査をする、必要なインフラをつくる、必要であれば人も常駐をさせるということをすれば、わざわざ都が買うことはなかったんだと思いますが、今の管理方針を維持している以上、しかもそれは地主の意向であると政府が言っている以上、地主がかわらざるを得ないということになるかと思います。

 そんな中で、知事の書かれた文芸春秋その他の本を読ませていただきましたが、購入に当たっては、地主さんが石原知事とかなり古い時期から面識もあり、信頼関係もあり、では石原さんならということで話が進んでいたやに聞いております。

 今考えられるベストシナリオとしては、国が買うのか買わないのかといっても、これは簡単に結論が出ることではないと思います。しかも、我々野党でありますので、それは不確定要素が多いと思いますが、まずは都が購入をしていただく。都が購入することに対して、政府は邪魔をしない。それと同時に、政府は、フェーズが進んだことを受けて、島の管理方針、どうやるべきかを転換すべく協議をする。そして、その後に、東京都から国が、必要であれば買い取るというような考え方なのか。知事の御見解をお聞かせください。

石原参考人 まことに理路整然、おっしゃるとおりでございます。

平(将)委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問に入らせていただきます。

 私も尖閣諸島に行ってきました、土日、小さな漁船で。いやあ、大変ですね、六、七時間かけて。それで、非常に感じたのは、やはり豊かな漁場だなと思いました。帰りに台湾の漁船がちょうどマグロを釣り上げているところにも遭遇をしました。また、海に出たら、なぎの状態もあるし、急に波の高さが二・五メートルぐらいになったり、もう瞬時に様相が変わっていくというのもよく体験をさせていただきました。

 そんな中で、漁船の船長さんとお話をしましたが、豊かな漁場なんだけれども、あそこまで行くのに五、六時間かかる。天候が激変をすれば、そのまま帰ってこなきゃいけない。しかし、あそこでもし一時避難ができて、さらに言えば水などの補給を受ければ、その天候が静まるのを待って漁に出て、魚をとって帰ることができるということでした。

 そうなれば、今ある石垣島の漁船の数も余りないようでありますが、新たなビジネスチャンスにもなりますし、島の雇用にもなると思います。まずやるべきことは、緊急の退避所みたいなところの整備、もしくは復旧の整備かなという印象を持ちましたけれども、中山市長の御見解をお聞かせください。

中山参考人 先ほど燃料の補助の件をお話ししましたが、それはそれで、現場に行くための手段でありまして、そこに避難できるような桟橋とか、小さな避難港でも結構ですので、それができれば漁民の皆さんは燃料の補助を受けなくてもそこに行ってちゃんと漁をすることができますので、それができれば十分漁に出漁する数はふえてくると思っています。

平(将)委員 ありがとうございます。やはり島の経済を振興するには一番それが手っ取り早いんだろうというふうに私も直観をいたしました。

 それでは、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 今、国家がやるべきことをしっかりやっておかなければいけない時期だと思います。先ほど言いましたけれども、尖閣諸島を取り巻く環境というのは激変をしています。今、ぐいぐい中国側が出てきているという状況にあります。

 もう少し俯瞰をすると、軍事費、日本はおおむね五兆円です。中国は、発表しているところだけでも今八兆円と言われています。中国の経済成長八%が続くとすれば、十年後には日本のGDPより中国は倍になる、二十年後には四倍とか五倍という想定もされている。それでいけば、多分、国防費、軍事費もそれに比例をしてふえていくんだと思います。中国の国防費が今のペースで伸びていく、そしてアメリカが財政的な問題で余り伸びないということになれば、ある試算では、二〇二五年には中国の国防費がアメリカの国防費を抜くという試算もあります。

 そういった中で、今までは日米がしっかり連携をとれていれば、軍事的には中国を抑え込むことはできたかもしれませんが、そういった物すごい勢いで、数もふやす、近代化も進めていくわけでありますから、我が国はできることはすべてやっていく必要があると思うんですね。状況が変わってから、じゃ、国境、無人離島を守ると言っても、それは時既に遅しなんだと私は思っています。

 そんな中で、先ほど石原知事からも憲法の話がありましたけれども、私は、やはり憲法も変えないと対応のしようがないというふうに思っています。日本国憲法の前文、有名なくだりでありますけれども、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書いてあります。こういうありもしない空想の世界観をベースに前文ができていると、その下にある条文も全部ゆがんでくることになるんだと思います。

 あわせて、集団的自衛権、持っているけれども行使ができないということになれば、我々、国防費をふやすことは多分財政上の制約からできないと思います。であれば、しっかりと連携をとって我が国の国の安全を守っていく必要があるわけですから、ここもしっかり整理をしなければいけない。

 さらには、スパイ防止法のようなものもこの国にはありません。情報がだだ漏れであったら、幾ら国防費をふやしても何にもなりません。

 さらには、我々、党でまとめました国境無人離島の管理を促進する法律。必要であれば調査研究をし、必要なインフラをつくり、国が買うこともする。こういうのをパッケージで進めていかないと間に合わないんだと思っております。知事に御感想をいただければと思います。

石原参考人 全く同感でありまして、さっさと国会でやってください。

平(将)委員 知事の答弁が非常に簡潔なので、大体質問が終わろうとしていますが。

 私は、実は石原知事が衆議院時代に出ていた選挙区から今出ています。私は、石原さんの「国家なる幻影」という本を読んで政治家になろうと思いました。本当に残念なのは、なぜ石原さんが平成七年に国会議員をやめてしまったかということなんです。あれからもう十七年たちました。もし石原さんがやっていれば、国政の立場からさまざま指摘をされたことを解決されたのではないかなと思います。

 と同時に、きょう、さまざまな指摘を知事からされました。石原さんに先頭を切ってほしいという意見もありましたが、私はそうじゃないと思うんですね。もう石原先生は八十歳になられる政治家であります。やはり我々若い政治家が、そろそろ石原さんにも楽をしていただくことが必要なんだろうと思います。

 フェーズが変わったんですよ。これは古くて新しい問題ですが、ここ二、三年で急激に環境は変わっています。ぜひ、委員長におかれましては、国政調査権を使って、我が委員会としてしっかりと上陸調査をするということ。また、与党の理事の皆さんも、本当に真摯に打ち合わせをさせていただいておりますが、もうそろそろ我々の世代で、多分、今ここにいる国会議員はほとんど石原知事が衆議院議員をやめた後の世代だと思います。我々の世代でしっかり前に進めていきたいというふうに思っておりますので、委員長の方でしっかり取り計らいをお願いいたします。

新藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

平(将)委員 終わります。ありがとうございました。

新藤委員長 御苦労さまでした。

 それでは、続きまして、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 今、平委員がおっしゃったことと私が始めようと思うこととちょうどつながるんですが、実は私は、石原現東京都知事が国会で辞任の弁を述べられた、今から十七年前ですか、私は平成五年に初当選いたしましたので、当選してほぼ直後に石原さんの演説を聞かせていただきました。正直申し上げて、今日までさまざまな政治家の演説を聞きましたけれども、あのときの石原代議士の最後の演説は極めて感銘深かった、名演説だった、そんなふうに思います。

 今、改めて読み直してみると、妙に拍手をしている人が多い。一カ所だけ拍手していないところがある。それは、いわゆる宦官発言のところは、さすがに拍手はなかった。まあ、読んでおられない皆さんは何のことかと思われるかもしれませんが、今、平委員も、なぜやめられたのかという話がありましたが、私も非常にそういう思いを強くして聞いた次第でございます。

 私、実は、きょう、この場に来て、演説するつもりもないんですが、少ししゃべらせていただきますと、決算行政監視委員会に初めてこうやって出てきて、まず委員長に深い尊敬の意を抱きます。ある雑誌で委員長のインタビュー記事をしっかり読ませていただきました。なかなか鋭く、現在の日本が抱えている国境問題について深く洞察された上での発言だったと思います。知事ともしっかり連携をとっておられるなという感じがいたしました。

 今、実は、この国会、外務委員会がほとんど開店休業状態。外務大臣の所信演説がつい先ごろようやく終わって、それに対する質問もできていない。全くお恥ずかしい状況であって、そういう状況の中で、この決算委員会では、しっかりとこういう国境の問題について、いろいろ先ほどから聞いておりますと、私、今まで余り直に知りませんでしたけれども、いろいろと理事会等を通じてさまざまな取り組みがなされてきたということは大変に大きいことだと思います。

 そういうふうなことを思うにつけても、まず石原都知事に少しお伺いをしたいんですが、大きい問題で、さっき講演しに来たんじゃないというお話がありましたけれども、おくれて来る後輩の、といっても私も相当の年になってしまいましたけれども、ぜひお考えの一端を聞かせていただきたいと思います。

 というのは、日本外交の厳しい側面であります。先ほどの話で、石原さんは外務省の責任ということにかなりウエートを押さえておっしゃっておりました。もちろん、外務省だけではなくて、私も含めて日本の政治家の責任も大きい、そんなふうに思うんですが、要するに、一言で言うと、事なかれ主義的なるものが外務省を支配している。

 自民党政権の時代は、尖閣列島の問題というのは、トウショウヘイ氏の提案に基づいて、言ってみれば棚上げするということに安堵して、飛びついたという表現がふさわしいと思うんですが、ずっとそれに拘泥してきたというか、そういう状況をよしとしてきたわけですね。

 その後に民主党政権が誕生して、言ってみれば、民主党政権はそうした前政権のものを変えて、前政権とは反対のことをやろうとしているのかと思いきや、何のことはない、例のあの尖閣に対する漁船衝突事件の対応を見ると、まさに腰砕けもいいところで、全くのだらしない対応が明らかになる。

 つまり、自民党政権ももちろん、最終盤は公明党も一緒にやりましたけれども、民主党政権もともに同罪であるということが言えると思うんですが、外務官僚と政治家の弱腰、一体これはどこから来るのかということを、ぜひ石原さんのお考えを聞かせていただきたいんです。

 今まで私なんか昭和四十四年から政党機関紙の記者として国会を見てきた。当時から、いわゆる対中位負け外交、対韓謝罪外交あるいは土下座外交、そして対米従属外交、こういうふうなことが言われ続けてきたんですけれども、この根本の原因というのは、さっきもちらっと知事がおっしゃっていましたけれども、日本が戦争に負けて占領期を過ごして、今日、正直言って今半独立国家ですよね。

 私は、憲法観とかあるいは対中国観は恐らく自民党や民主党の皆さんとはいささか異にする、現時点では、自民、民主じゃない政党で私一人だけこの委員会の所属のようでありますけれども、そういった考え方の違い等があるにせよ、言ってみれば、そういう日本が戦争に負けてからのいわゆる負け犬根性みたいなものが日本人にあるということ、そして、これはよく言ったという言い方がふさわしいかどうか知りませんが、よく言っても、言ってみれば日本は中韓に対しては贖罪意識がある。そういうものがかなりの部分、外務省だとかあるいは政治家というのではなくて、広く日本人全体の国民意識の中に広がっている。そういうものがバックにあって、外務省のていたらく、こういうことが生まれてきているんだと私は思っているんですけれども、石原都知事はどういうふうにお考えでしょうか。

石原参考人 私は、日本の政府、それを支えている官僚たちにシナや韓国に対する過剰意識があると思いませんね。むしろ、例えば河野洋平君のようなああいう非常に慰安婦に関する軽率な余計な発言、そういったものが物事をどんどん要するに肥大化させてきたと思いますけれども、しかし、かつての官僚はしっかりしていると私は思いますよ。それが何でだめになってきたというのは、ちょうどやはりあれですね、田中の角さんというのは非常に個人的に魅力のある人だったけれども、田中内閣の金権性というものは、結局、政治も堕落させたし、官僚も堕落させたと私は思います。

 あのとき、私たちは、若かりしころですけれども、田中金権に反対して青嵐会をつくって、これは、ある意味では反金権でありましたから、金のかからない集団で非常にうまくいきましたね。要するに、日中の国交回復を角さんがやったのは結構ですけれども、実務協定が非常に偏ったもので、これは反対しましたが、あのときに、やはり外務省の役人は、先ほど申したように、密電まで暴露して私たちに加担して、この国の外交というものをもっとまともな国益を踏まえたものにしようと努力していましたよ。それがもろくも崩れてしまったというところから、その後、名前を忘れましたが、日本の外務次官の発言に非常にシナが目に角を立てて怒ってみせて、本来はその人は再任されるはずが一期でやめてしまって、それで非常に外務省の人事というものが萎縮したという現実がありました。

 あえて申しますが、私たち青嵐会は、随分日本の国会ではひんしゅくを買いましたけれども、一番評価したのは誰だと思いますか。周恩来ですよ。周恩来が、実務協定が全部終わって、永野重雄さんが、久しぶりにというか戦後初めてですか、日本の経済界を代表してたくさん人を率いてシナに行って、これから実務協定に沿っていろいろな仕事を展開しようという段に、周恩来が歓迎の挨拶の中で、実務協定がすべて締結したので、これからは完全に確実な国交ができる、我々は今後いかなる日本人も歓迎すると言ったら、財界のばかの一人がおもねったつもりで、あの青嵐会のやつらもですかと言ったら、周恩来が呵々大笑して、いや、当然ですよ、私は昔、日本に長くいたから、昔の日本人を知っているけれども、大分日本人も変わりましたが、青嵐会は昔の日本人たちですなと言った。みんな白けちゃったんですね、日本人の方が。

 その後、それを裏打ちするように、私が運輸大臣のときに、成田の問題で過激派が取引を申し込んできて、非常に怪しげなオファーだったんです。それを取り次いできたのが、もう亡くなりましたけれども、大東文化大学とかいう大学の、これはどちらかというと体制的な方の大学で、そこの学長をしている香坂さんという人でした。この人が取り次いできまして、結局、空振りして、私が行くのは危ないからと、水野清君が二回ぐらい、三回ぐらい出向いていって、あちこち転々しながら、結局最後はすっぽかされたんです。

 そのときにそれを取り次いでくれた香坂さんが、実は私は革命軍と一緒にずっと、シナに関心があったので、周恩来と起居をともにしていましたと。それで、周恩来が中共軍の兵隊を処刑するときに立ち会いまして、目の前で三人、周恩来が射殺するのを見て、私は気持ち悪くて吐いた。そうしたら周恩来に、香坂さんはまだまだ革命には適していませんなと笑われたんですと言った後で、あなた方の青嵐会のうわさが出ましたと。その大分後ですよ、時点としては。それで、あの青嵐という名前は誰がつけたんだろうか、あれはシナ語で一番美しい言葉の一つだと。私は彼らを非常に評価しますが、私が日本の政治家だったら同じことを言ったでしょうと言ったので、裏がとれて、もって瞑したわけですけれども。

 いずれにしろ、つまり、国家の利益というものをしっかり踏まえて絞って物をはっきり言えば、向こうもはっきり答えてくるんです。余計なその場しのぎの妥協をするからこういうざまになったんだ。今の政府も、自民党の過去の政府もそうでしたよ。私は、それがうんざりして嫌になったので国会をやめましたということであります。長くなりましたけれども。

赤松(正)委員 大変に貴重なお話をありがとうございました。

 今お話を聞きながら、さっき私もちらっと申し上げましたが、半藤一利氏が日本社会四十年変換説ということを言っていて、四十年ごとに日本は大きく変化をしてきている、こういう話をして、私も大変に共鳴するところがあるんです。

 ちょうど今から四十年前に中国と日本の間に国交回復、今、周恩来氏の話が出ましたけれども、日中国交回復は昭和四十七年であります。以来四十年。当時の中国と今の中国は大きく違う。日本の方は、あれからだんだんと、今、知事の一連の御発言じゃないけれども、非常に厳しい状況をたどってきている。それに対して、中国はかなり国家として大きな興隆を示している。

 その中国とどう対峙するかというのは、今、石原都知事がおっしゃったように、私は、国境なんという問題については、しっかりと日本が日本の立場というものを強く押し出して、これは真っ正面からぶつかり合うということがあって当たり前の話だと思いますが、それ以外といいますか、国境問題とは違う、さまざまな外交官の交渉という部分においては、何も中国を敵視することなく、中国というものと、都知事の言うところのシナとは、しっかりと、何というか、あらゆる意味で、お互いにその交渉を繰り返す中で、それぞれこの北東アジアにおける平和というものを確立していくためにそれぞれの知恵を出し合う、そういうことは必要かと思うんですけれども、そういう国境問題以外の分野における対中関係の進め方というものについて、石原都知事のアドバイスというか、何かお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

石原参考人 もちろん、国境あるいは領土をめぐるフリクション、摩擦は、毅然として対応していかなくちゃいけないと思いますが、しかし、それ以外にも私はシナには反省すべき問題がたくさんあると思いますね。

 例えば工業所有権。人の発明、発想について評価をせずに、それを非常に一方的に盗んではばからない。日本の新幹線の技術を導入していながら、それを自分の国の発明と称して他国に売る。まあ、確かにあれは中国製なんでしょうな、ああいうばかな事故を起こすんだからね。

 ということで、私は、シナ側に反省すべき点は非常に多々あると思いますし、それをまた彼らが自覚しないと、私はやはり結果としてシナは孤立していくと思います。

 それから、ついでに申しますが、中国というのはどこのことですか。これは岡山県と広島県のことなんだ。シナというのは孫文がつくった言葉ですよ。だから、チャイナ、フランス語でシーヌ、スペイン語でもドイツ語でもチヌですか。

 ちなみに申し上げますが、シナのインテリたちがいろいろ発しているインターネットの英文の論文を見ますと、自分の国のことを全部シナと書いてあります。Sinaです。これは間違いありません。皆さんの目で確かめられたらいい。

 私たちは、殊さらシナを中国と呼び変える必要がどこにあるんでしょうか。また、それが彼らに不快感を与えるわけは毛頭ない。

赤松(正)委員 石原知事、ありがとうございました。

 では、次に山田参考人に少しお話をお伺いしたいと思います。

 去る五月十五日、十六日、二日間にわたって日中海洋協議が行われました。一連の日中間の、石原都知事の尖閣購入発言とか、さまざま、中国の少数民族問題の関連とかがあって行われないんじゃないかという見通しがあったわけですが、これが行われた。その背景には、中国の焦りがあるんじゃないのかという見方があります。というのは、いわゆる二〇二二年以降、今から約十年後、この尖閣の領有権が、中国から言わせると、中国にとっての尖閣の領有権が奪回できなくなる、こういうふうな一種うわさが中国にある。

 それは、要するに、韓国の竹島の方式に中国は見習って、竹島を韓国が自分のものに強引にしてしまうという形態をとって、そういう状況の中でいわゆる実効支配を確立するのに約五十年、そういうことを韓国が言っているのに見習って、中国にはそういうふうな、今、二〇二二年以降そういう主張ができなくなるから、それまでの間に何とか片をつけなきゃいけないという意識に立っている中国関係者が多い、こういう話をある海洋安全保障問題専門家が言っておりますけれども、山田参考人はそのあたりをどう考えられますでしょうか。

山田参考人 私は、その五十年理論に関しましては否定的な見解をしております。

 中国の海洋学者は、かなり海洋法に関する研究、判例についての勉強を進めております。その中で、日本の実効支配が続いていることに関しては、実効支配といいますか管理が続いていることに関しては十分に認識している。ただし、中国の研究者が言うには、ある研究者との直接の話の中で、尖閣諸島のうち、魚釣島を初めとした大きな島は日本人が確かに管理をしてきたということは言えるかもしれないが、付随している岩に関しては管理しているとは言えないだろうということを一回言われたことがあります。

 これは、シンガポールとマレーシアで係争しましたペドラブランカ島の判例というものに基づいて彼らは言っているわけなんですが、ペドラブランカ島自体は灯台を管理しているシンガポールのものになりましたが、そこから〇・五マイル離れた岩が二つ、近いという理由でマレーシアのものになった。それを踏まえて、中国側は、二つの岩は中国のものだというようなことを言う、そういう研究者もおりますので、一概に、この五十年問題ということは中国の中枢の方は考えていないと私は判断しております。

 ただし、確かに日中海洋協議は行われました。内容に関しましては、恐らく国会議員の先生方の方が御存じのように、ほぼ意味のない、意味のないという言い方は非常に失礼かと思いますが、余り突っ込んだものにはなっていない。むしろ、私は、日中海洋協議に臨まなければいけなかったのは、その次に控えていたアジア安全保障会議、これはシンガポールで行われました会議ですが、それの行く末ですね、中国がどういうスタンスをとるべきなのかという、少なくとも日本の感触をつかんでおきたかった。その結果、中国の出た方法は、ほぼ黙殺するという方法になったんだと考えております。中国はかなり戦略的に駒を動かし始めていると私は感じております。

赤松(正)委員 引き続き山田参考人にお聞きしますが、中国における五つの竜、「五龍」ですね、この動きというのがいろいろな意味で、尖閣の問題を考える際、あるいはまた南シナ海の状況を考える際に大事だというんですけれども、この捉え方といいますか、五つの竜というところの問題について簡単に御説明いただきたいと思います。

山田参考人 それぞれの分野を駆使して、それぞれの分野に役割を与えながら、最終的には中央がコントロールしていくという本来の方針は中国は持っております。ただし、それぞれが動き始めてしまう。別の意味で本当に竜の頭になってしまっているのが現状であると。

 私は中国の海洋局の幹部と一度プライベートで話をしたとき、報告が上がってこないのに彼は悩んでおります。動き始める中で、自分たち中枢にまで上がらない報告が事後に上がってくる。それは、具体的に言うと九月七日の事件のことでした。後で幹部に対する報告があったというような状況で、今それぞれの頭が別々に動き始めている、それをどうコントロールするかが中国中枢部の悩みだと思います。

赤松(正)委員 もう一点、山田先生にお聞きしたいんですが、いわゆる津軽海峡を初め日本の五つの海峡に公海部分が残っておりますね。この政策判断、一貫して日本の外務省がとってきている、海峡を自由航行させる、公海部分を残す、この政策判断について先生はどのように考えておられますか。

山田参考人 五つの海域を政府は特定水域という指定をしました。宗谷海峡、津軽海峡、大隅海峡、対馬海峡東航路、西航路、この五つの部分が三海里をもって中央を放棄されている。中央が公海になっているのが現状です。ただし、これから、現在の日本周辺の海の意味を考えますと、私は、全て十二海里まで領海といたしまして、全て日本政府が管理すべきだと考えております。

 その大きな意味の一つは、若干意味合いが変わるかもしれませんが、日本海という意味が、北極海航路が開拓されることにより大きく変わってきております。北極海航路ができますと、ウラジオストクあるいは北朝鮮の清津、羅津等の港の意味合いが全く変わってくる。そうしますと、日本の近海を頻繁に他国の潜水艦が通航するようになってくる。そういうことを正確に政府も把握するためには、公海部分をしっかりと十二海里の領海にすべきだと私は考えております。

赤松(正)委員 この問題はなかなか表には出てきていないんですけれども、外務省の本音というのは、遮断をしてしまうと、アメリカの核搭載艦、そういうものを一々チェックしなくちゃいけない、あるいはまたロシアにしても、あるいは、これからさらに公海部分をなくしてしまうと、中国のそういう航行のたびに一々チェックするのは面倒だ、こういうふうな判断があろうかと思うんですけれども、そのあたりはどう考えられますか。

山田参考人 確かに、一般的にはそのようなことが言われております。今後のことを考えますと、特に潜水艦の問題、潜水艦の管理、どれだけしっかりと自衛隊を初め管理ができるのかという意味合いも含めまして、私はやはり、一度しっかりと沿岸部の航行する船舶は全てチェックできる体制を再構築すべきだと考えます。

赤松(正)委員 石垣市長にちょっとお尋ねいたします。

 私も、今から九年ほど前に、先ほど来お話があったような船ではなくて、いわゆるヘリコプターで上空から尖閣をつぶさに見させていただいて、また海上保安庁の船に乗って近くまで行って、遠くから視察をしたという経験があります。

 そういうこととか、あるいはまた石垣の漁業者の皆さんと幾たびか懇談をさせていただいたことがあるんですが、通常一般に私なんかが思っていたのは、あの海域に結局、台湾とか中国の漁船がいっぱい来たり、あるいは漁船とおぼしき漁船ではないそういう船が来たりしている状況の中で、日本の島であり、その海域にほとんど我が方の漁船がいないという状況は、非常に寂しいというか、非常に残念だなという思いを持っていたんですが、聞いてみると、さっき、下村さんたちでしたっけ、行ったら、国会議員でもかなり厳しいチェックがあったという話がありましたが、なかなか、漁船、漁業者の皆さんがあの海域に行くについては海上保安庁の厳しいチェックがあって、非常にそれは行きづらいということがあったり、あるいは、先ほど来お話が出ているように、一時避難をするそういう船着き場もない、灯台もない、何もその島にないということで、いざ行こうと思っても非常に困難がある。五時間も六時間もかけて行っても、なかなか難しい。

 こういう話を聞きまして、当初私が思った、上から俯瞰した場合に、片方は相手方の船がいっぱいいて、こっちの方の、実際の自分の領土の周辺に我が方の船がいないというのは非常に残念だと思ったんですけれども、この今の事態を打開するために、一番直ちに、先ほどの御答弁の繰り返しになるかもしれませんが、今一番なされるべきことは何か。この点について市長のお考えを聞かせていただきたいと思います。

中山参考人 まず、尖閣諸島周辺をしっかりと警備するために、海上保安部の巡視船等を整備すべきだと考えています。

 昨年、一隻増強されまして、千トンクラスがふえたわけでありますけれども、当然数は足りない状況でありまして、他国の漁船が入ってきて、私たちのところの漁船の、例えばマグロはえ縄を流しておくと、絡まってしまった場合、まあ延々と距離を流しますので、自分たちのロープだけ残してうちのロープを切ってしまう、捨てる。場合によっては、釣れているマグロまで持っていかれてしまう。その高価な漁具をなくした場合でも、漁民に対しては何の補償もないという状況で、漁に行きづらい状況であります。それをしっかりと守ってもらって、日本の漁船が漁に出やすい環境をつくってもらいたい。

 そして、あと、先ほど来申し上げていますように、燃料の補助ですとか、尖閣諸島周辺での緊急的に避難できるような港ですとか、そういった整備をすることによって、日本の漁民がそこで漁をすることが十分可能な環境になると思います。当然、豊かな漁場ですので、環境さえ整えばみんな漁に行くと思いますので、それを早急に国として対応していただきたいと考えています。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 横畑先生には聞く時間がもう一分しかありませんので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

新藤委員長 御苦労さまでございました。

 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 大変御多忙の中、また遠方からお出ましをいただきまして、貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。

 この尖閣諸島の問題は、我が国の領土であり、国境を形成する離島、この管理をめぐる大きな、今、国家運営上の課題でございます。

 きょういただきました御意見を参考にいたしながら、今後またしっかりと委員会審議を進めていきたい、このように思っておりますので、どうぞまた引き続き御協力をよろしくお願いいたします。

 本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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