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第2号 平成14年3月26日(火曜日)

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平成十四年三月二十六日(火曜日)
    午後四時開議
 出席委員
   委員長 赤城 徳彦君
   理事 亀井 善之君 理事 細田 博之君
   理事 望月 義夫君 理事 茂木 敏充君
   理事 中山 義活君 理事 堀込 征雄君
   理事 井上 義久君 理事 東  祥三君
      逢沢 一郎君    太田 誠一君
      小泉 龍司君    小西  理君
      小林 興起君    坂井 隆憲君
      高鳥  修君    竹下  亘君
      林  幹雄君    平井 卓也君
      松野 博一君    山本 明彦君
      阿久津幸彦君    佐々木秀典君
      手塚 仁雄君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    山花 郁夫君
      山元  勉君    福島  豊君
      山名 靖英君    中井  洽君
      大幡 基夫君    吉井 英勝君
      北川れん子君    西川太一郎君
    …………………………………
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      滝   実君
   参考人
   (衆議院議員選挙区画定審
   議会委員)        内田  満君
   参考人
   (衆議院議員選挙区画定審
   議会委員)        塩野  宏君
   衆議院調査局第二特別調査
   室長           牧之内隆久君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月二十二日
 辞任         補欠選任
  井上 喜一君     西川太一郎君
二月八日
 辞任         補欠選任
  茂木 敏充君     鈴木 宗男君
同月二十二日
 辞任         補欠選任
  鈴木 宗男君     小坂 憲次君
三月十一日
 辞任         補欠選任
  小坂 憲次君     茂木 敏充君
同月二十六日
 理事茂木敏充君二月八日委員辞任につき、その補欠として茂木敏充君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
二月六日
 十八歳選挙権の早期実現に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一七号)
三月六日
 十八歳選挙権の早期実現に関する請願(石井郁子君紹介)(第六七一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する件(衆議院議員選挙区画定審議会の「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告」について)


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     ――――◇―――――
赤城委員長 これより会議を開きます。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤城委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に茂木敏充君を指名いたします。
     ――――◇―――――
赤城委員長 この際、総務副大臣及び総務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、これを許します。総務副大臣若松謙維君。
若松副大臣 去る一月八日に総務副大臣を拝命いたしました若松謙維でございます。
 片山大臣を補佐して、全力を尽くしてまいりますので、赤城委員長初め、理事、委員の皆様方の格段の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げます。よろしくお願いいたします。(拍手)
赤城委員長 次に、総務大臣政務官滝実君。
滝大臣政務官 同じく一月八日付をもちまして総務大臣政務官を拝命いたしました滝実でございます。
 若松副大臣とともに片山総務大臣を全力を挙げて補佐してまいります。どうぞ赤城委員長初め、理事、委員の諸先生方には御指導、御鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
赤城委員長 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として衆議院議員選挙区画定審議会委員内田満君及び衆議院議員選挙区画定審議会委員塩野宏君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
赤城委員長 両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 それでは、衆議院議員選挙区画定審議会の「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告」について、内田参考人から説明を聴取いたします。
内田参考人 衆議院議員選挙区画定審議会の内田でございます。本日は、発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。
 本来であれば、石川会長が参りまして御説明を行うべきところでございますが、体調を崩されておられますので、かわって私から御説明いたします。なお、石川会長から、委員の皆様方によろしくお伝えくださいとのことでございますので、申し添えます。
 さて、衆議院議員選挙区画定審議会は、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の定めるところにより、昨年十二月十九日に内閣総理大臣に対して、「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告」を行ったところであります。
 本日は、審議の経過と勧告の概要について、御説明を申し上げます。
 まず、当審議会におきます審議の経過について、御説明いたします。
 一昨年十二月二十二日に平成十二年国勢調査人口の速報値が官報公示されたことを受けまして、同月二十五日に会議を開き、この国勢調査人口に基づく衆議院議員の小選挙区の区割りの改定の審議を開始いたしました。
 当審議会といたしましては、まず初めに、全国すべての選挙区について人口の状況や前回、平成六年の区割りに際して用いた基準への適合状況等のレビューを行ったところでございます。
 次に、各都道府県知事から、前回の区割り基準や現行の区割り等について意見を聴取いたしました。
 さらに引き続いて、今回の区割りの見直しに当たって、区割りの基準や作業手順等をどのようにするかについての検討を行い、昨年九月二十七日に、具体の区割りの改定作業の指針となる「区割りの改定案の作成方針」を取りまとめ、公表いたしました。
 当審議会では、引き続き、この作成方針に基づいて具体の区割りの改定作業に入り、合計で三十回の審議を経て区割りの改定案を取りまとめ、昨年十二月十九日に、内閣総理大臣に対して区割りの改定案の勧告を行ったところであります。
 今回は、現行の衆議院議員選挙制度が施行されて初めての小選挙区の区割りの改定でありますが、改定案の作成に当たりましては、投票価値の平等という要請を実現するため、選挙区の安定性を考慮しつつ、最大限の努力を行ったものであります。
 続きまして、当審議会が具体の区割りを検討するに当たって、昨年九月に作成いたしました「区割りの改定案の作成方針」について御説明申し上げます。
 「区割りの改定案の作成方針」は、区割り基準と作業手順とで構成されております。
 まず、区割り基準ですが、これにつきましては、当審議会が前回、平成六年の区割りに際して用いた区割り基準をおおむね踏襲することといたしました。
 したがいまして、原則として、全国の議員一人当たり人口四十二万三千六十四人の三分の二、二十八万二千四十三人から三分の四、五十六万四千八十五人までに各選挙区の人口をおさめるという偏差方式をとることとしております。この偏差方式につきましては、前回の区割りに際して十分に議論をして定められたものであり、今回の区割りの改定に際して行った都道府県知事の意見聴取におきましても、特段不都合とする意見はなかったこと等を勘案して、今回の基準でも採用することとしたものであります。
 ただし、福井県、徳島県及び高知県の三県につきましては、県の議員一人当たり人口が全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回るため、不可避的に全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る選挙区が生じることになります。したがいまして、このような県については、前回の区割り基準と同様ですが、できる限り全国の人口格差を抑えるため、各選挙区の人口をできるだけ均等にするものとするとしたところであります。
 市区町村の区域についても、おおむね前回の区割り基準と同様に、原則として、市区町村の区域は分割しないこととし、一、市区の人口が全国または当該都道府県の議員一人当たり人口の三分の四を超える場合、二、当該都道府県の人口最大の市の人口が当該都道府県の議員一人当たり人口を下回る場合を除き、その市の区域をもって単独の選挙区としたときに全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る選挙区が生じる場合、これには高知市が該当いたします。三、選挙区が飛び地となることを避けるために必要な場合、この三つに限りまして市区の分割ができることといたしました。
 郡の区域についても、前回の区割り基準と同じく、一定の場合に限り分割することとしております。
 続いて、改定案の作成作業に際しての具体的な作業手順ですが、まず、定数が増加する県におきましては、投票価値の平等を図る観点から、人口が最も多い選挙区、すなわち、一票の価値が最も軽い選挙区を手がかりとして改定案を作成することといたしました。一方、定数が減少する道県におきましては、人口が最も少ない選挙区、すなわち一票の価値が最も重い選挙区を手がかりとして改定案を作成することといたしました。また、定数に異動がない都府県におきましては、区割り基準に照らし、必要な場合には所要の改定案を作成することといたしました。
 以上が、「区割りの改定案の作成方針」の概要でございます。
 次に、勧告しました改定案の概要について、御説明申し上げます。
 まず、都道府県別定数の異動ですが、この都道府県別定数は、審議会設置法第三条第二項により定まるものであります。これによりますと、定数が一増するのは、埼玉県、千葉県、神奈川県、滋賀県及び沖縄県の五県、定数が一減するのは、北海道、山形県、静岡県、島根県及び大分県の五道県で、この定数をもとに審議を行いました。
 最大人口格差は、今回の改定案により二・〇六四倍となりました。最大選挙区は兵庫六区、五十五万八千九百四十七人、最小選挙区は高知一区、二十七万七百四十三人であります。現在の最大格差は二・五七三倍でありますので、格差は大幅に縮減するとともに、前回、平成六年の区割り時の二・一三七倍をも下回っております。
 今回の改定案により、人口最小選挙区との格差が二倍以上の選挙区の数は、兵庫六区、静岡五区、東京六区、千葉四区、静岡六区、北海道五区、北海道六区、東京十九区及び福島一区の九選挙区で、現行の九十五選挙区を大きく減らしております。また、前回区割り時の二十八選挙区よりも下回っております。
 なお、このうち静岡五区、静岡六区及び北海道六区につきましては、静岡県及び北海道の定数減により今回新たに設けられた選挙区であります。
 分割市区の数は十六市区であります。いずれも区割り基準に基づいて分割されたものであります。
 なお、現在の分割市区のうち、新潟市及び大分市は分割が解消され、新たに相模原市が分割されております。さいたま市は、昨年五月に合併してさいたま市になった時点で分割された状態となっており、今回の改定案におきましても引き続き分割されております。
 また、選挙区間の比較ではなく、都道府県間の議員一人当たり人口の格差については、審議会設置法に基づいて各都道府県に配分された定数により、議員一人当たりの人口を算出して比較した結果であり、最大格差は東京都と高知県の間で一・七七八倍となっております。
 今回の区割りの改定案により、現行選挙区でその区域が変更される選挙区の数は、二十都道府県で六十八選挙区となります。この二十都道府県の六十八選挙区の内訳を説明いたします。
 まず、定数増に伴うものとして、定数一増の埼玉県、千葉県、神奈川県、滋賀県及び沖縄県の五県で十七選挙区の区域が変更されております。
 定数減に伴うものとして、定数一減の北海道、山形県、静岡県、島根県及び大分県の五道県で十九選挙区の区域が変更されております。
 定数増減のない都府県では、均等化に伴うものとして、徳島県及び高知県の二県六選挙区の見直しを行いました。区割り基準におきましては、先ほども申し上げましたように、「都道府県の議員一人当たり人口が全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る都道府県にあっては、各選挙区の人口をできるだけ均等にするものとする。」とされておりますので、これに該当する福井県、徳島県及び高知県につきましては、各選挙区の人口をできるだけ均等化するための検討を行ったものであります。
 なお、福井県につきましては、現行の区割りにおける県内格差は一・〇一八倍と全国最小であり、また前回の区割り時よりもさらに格差が縮小していることから、これをさらに縮小するための見直しは行っておりません。
 次に、全国の議員一人当たり人口の三分の四超選挙区、三分の四を超える選挙区の改定に伴うものとして、このような選挙区を有する東京都、神奈川県及び愛知県の三都県八選挙区についても見直しを行いました。
 続いて、全国の議員一人当たり人口の三分の二未満選挙区の改定に伴うものとして、秋田県及び佐賀県の二県五選挙区の見直しを行いました。
 そのほか、人口基準に基づく見直しには該当しませんが、市町村合併等により、現在の行政区画と選挙区の区域が合致していないものについて調整を図ったものがございます。その内訳は、合併に伴うものとして、新潟市の編入合併に伴うものが二選挙区あります。また、分割市区内での調整に伴うものとして、千葉県、東京都、静岡県、三重県、大阪府、熊本県の六都府県十一選挙区において、住居表示の実施等に伴う境界部分の調整を行いました。
 以上が、改定案を作成した二十都道府県六十八選挙区の内訳であります。
 なお、結果として、格差が二倍を超える選挙区が九つ残ったわけですが、これらの選挙区につきましては、個々にその縮減が図れないかの検討を行ったところであります。しかし、市区等は、基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けるべきであること、仮に分割するとしても、これらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく、かつ困難であると考えられること、市区の分割を避けようとすれば、近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となること、最大格差二・〇六四倍、二倍以上の選挙区が九つという結果は審議会設置法の許容するものと考えられたことから、今回は、あえてそれ以上の見直しは必要ないと判断したものであります。
 以上で、私からの審議の経過と勧告の概要説明は終わらせていただきます。何とぞ、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
赤城委員長 以上で説明は終わりました。
    ―――――――――――――
赤城委員長 審議会の委員各位におかれましては、前回の平成六年八月の勧告以来引き続き委員をお務めいただき、特に平成十二年の国勢調査の速報値が公表されてからは精力的に御審議を進められ、昨年十二月十九日に選挙区画の改定案を勧告いただいたところであります。この間の御尽力に対し、深く敬意を表する次第であります。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、先ほど理事会において了承された質疑事項について、委員会を代表し、私からお尋ねをいたします。
 ただいまの御説明にありましたように、今回の勧告では、選挙区間の最大人口格差は、現在の二・五七三倍、前回区割り時の二・一三七倍から二・〇六四倍に縮小し、格差二倍以上の選挙区の数は、現在の九十五選挙区、前回区割り時の二十八選挙区から九選挙区へ減少いたしております。これは、格差是正に向けての審議会各位の真摯なお取り組みの結果と存ずるものでありますが、格差二倍未満はなお達成できておりません。また、区割りの見直しの結果、北海道六区、静岡五区及び静岡六区という三つの選挙区が新たに格差二倍以上となったことを疑問視する声もあります。憲法の要請する法のもとの平等との関係において、審議会は今回の勧告をどのように自己評価されておられるのか、お聞かせください。
塩野参考人 先ほど御紹介いただきました塩野でございます。
 ただいまの委員長の御質問につき、お答えをいたします。
 当審議会は、今回の区割りの見直しを行うに当たりまして、まず「区割りの改定案の作成方針」を取りまとめ、これに定める区割り基準に沿って具体的な区割りの改定を検討したものでございます。
 これは、三百選挙区のすべてが適合すべき統一的な基準をあらかじめ設けてこれを公表し、これにのっとって区割りの改定作業を進めることで、区割りの改定作業について客観性が担保される、また、このようにすることにより、恣意的な区割りに陥らないかとの懸念を払拭することができると考えたからであります。
 しかしながら、今御指摘のございました三選挙区は、定数が減少する道県の区割りの改定に際し新たに生じたものであり、六選挙区は現行のまま残ったものであります。
 そこで、当審議会では、これら格差二倍以上となる選挙区について、個々にその縮減が図れないかどうか検討を行ったところでございますが、市区については、基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けるべきであること、仮に分割するとしても、これら選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく、かつ困難であると考えられること、市区の分割を避けようといたしますと、近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となるということから、今回はあえてそれ以上の見直しは必要ないと判断したものであります。
 また、最大格差二・〇六四倍、二倍以上の選挙区が九つという結果は、現行制度のもとで平成八年及び平成十二年の総選挙に関して提起された定数訴訟に係る最高裁判所の判決に照らしても、憲法上も許容されると存ずるところであります。
 したがいまして、当審議会としては、今回勧告した改定案の作成に当たり、投票価値の平等という要請を実現するため、選挙区の安定性を考慮しつつ、最大限の努力を行うことにより、最大格差を縮小し、格差二倍以上の選挙区の数を縮減するなど、審議会設置法で規定されている作成の基準に沿って最善と考える改定案を取りまとめたものと考えている次第でございます。
 以上でございます。
赤城委員長 今回の勧告で、市区の分割は前回区割り時の十五から十六にふえ、地勢、交通、歴史的沿革等で一体性の強かった地域が新たに分断されることになった選挙区もあります。これらの地域では、このことに不満がある一方で、市区や郡の分割をもう少しふやせば格差二倍未満を達成できるのではないかという意見も聞かれます。
 審議会では、区割り基準を検討されるに当たり、例えば、各選挙区の人口の上限を、全国の議員一人当たり人口の三分の四ではなく、人口最小選挙区の二倍、または議員一人当たり人口が最小の県の当該議員一人当たりの人口の二倍にし、それ以上の人口の選挙区は設けないこととすれば、格差二倍未満が達成できるのではないかというような御議論はなかったのかどうか、お伺いいたします。
塩野参考人 ただいまの御質問に関しましても、私塩野がお答えをいたします。委員長の御質問は二つの論点に分かれているかというふうに考えました。
 まず、市区の分割でございます。
 これは、御指摘のとおり、いろいろな議論があると思います。この点につきまして、前回、平成六年の区割りに際しましても、地域の実情に応じて市区を分割することはできるとすべきとの意見がある一方で、市区については、基礎的自治体であるということから、分割には慎重であるべきであり、また、分割に対していたずらに不安、不信を持たれないようにすべきとの意見がございました。結果として、市区の分割は、原則としてこれを行わず、一定の要件に該当する場合に限って分割することとされたわけであります。
 今回の区割りに際しましても、聴取した知事意見では、市区の分割はできるだけ避けるべきであるというものがほとんどでありました。当審議会でもこの点について議論を重ねましたが、前回の区割りにおける市区の分割基準自体に特段の不都合は認められないというふうに考えまして、これを踏襲したところであります。
 その上で、格差二倍以上の選挙区については、個々にその縮減が図れないかの検討を行ったところでありますが、市区については、基礎的自治体であることから、できるだけ分割を避けるべきであること、仮に分割するとしても、これらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく、かつ困難であるというふうに考えられることから、今回はあえてそれ以上の見直しは行わなかったものでございます。
 次に、御質問の中に含まれている第二の論点、つまり、区割り基準の上限を、人口最小選挙区の人口の二倍や人口最小県の一人当たり人口の二倍とする議論はなかったかとのお尋ねと心得ております。
 前回、平成六年の区割りの際には、平均人口により自動的、客観的に上下限が定まる偏差方式の方が分割される市区から納得が得られることや、諸外国の事例等も勘案して、十分な議論を経て偏差方式が用いられたものであります。
 その際、お尋ねの全国最小選挙区を基準とする方式、これは当時も大いに議論をいたしました。議論の結果、この方式では、全国最小選挙区の区割りの結果によって基準を設けるような形となり、基準としてふさわしくないと考えられますし、また、全国最小県の議員一人当たり人口を基準とすることについても、格差を二倍未満におさめる決め手とはならないものであります。
 なお、その際にも、格差二倍以上の選挙区は絶対に設けないという厳格な基準論はなかったものと存じております。
 今回の区割りの改定に際しましては、前回の区割りについての全選挙区のレビューを審議会として行うとともに、都道府県知事の意見聴取を行いましたところ、この偏差方式について特段の異論は出されませんでしたので、これを踏襲することといたしました。もとより、この方式をとった場合でも、格差二倍以上にならないことをもって基本とすることは、常に念頭に置かれてきたところでございます。
 以上でございます。
赤城委員長 ありがとうございました。
 次に、選挙区の区域の安定性についてお伺いいたします。
 今回の勧告では、三百選挙区中六十八選挙区の区域が変更されました。選挙区の区域につきましては、候補者はもちろん、有権者にとってもできるだけ安定している方が望ましいという考え方がある一方で、国会議員は全国民の代表であるから、選挙区の区域は、固定的にとらえるべきではなく、人口の増減によって常に異動しても構わないという考え方があります。審議会は、今回の改定案の作成に当たり、この点についてどうお考えになられたのか、若干の具体例を引いてお伺いいたします。
 一つ目の例は、埼玉県及び千葉県の選挙区の変更であります。両県とも、人口移動の結果、定数一増となりましたが、選挙区の数を一つふやし、各選挙区の人口を審議会が定めた区割り基準に適合させるだけであれば、両県とも二つの選挙区を三つの選挙区に再編することで対応可能ではないかとの意見がありますが、なぜ、埼玉県では四つの選挙区を五つに、千葉県では五つの選挙区を六つに再編されたのでありましょうか。
 二つ目の例は、東京都の十八区と二十二区の選挙区の変更であります。勧告では、東京二十二区の人口が区割り基準の上限を超えたため、二十二区内にある府中市と十八区内にある三鷹市を入れかえ、両選挙区とも有権者のほぼ四割が入れかわるという大幅な変更になっています。二十二区の人口を区割り基準の上限におさめるだけであれば、市の分割をもう少し柔軟に行い、例えば、府中市の一部を隣接区へ移動させることで対応可能ではないかという意見がありますが、いかがお考えでありましょうか。
 三つ目の例は、秋田県及び佐賀県の選挙区の変更であります。勧告では、「全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る選挙区はできるだけ設けないものとする。」という区割り基準に従い、秋田二区、佐賀二区及び佐賀三区の見直しが行われております。しかし、山梨一区及び長崎三区は、これらの三選挙区と同じく全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回っており、特に長崎三区は、現秋田二区より人口が少ないにもかかわらず、現行選挙区のままとなっております。山梨県及び長崎県は現行選挙区のままとしながら、なぜ秋田県及び佐賀県は見直しをされたのでしょうか。
 以上、お伺いいたします。
内田参考人 具体の選挙区について御質問がございました。
 いずれの場合も、審議会では、投票価値の平等という要請と選挙区の安定性との調和をどのように図るかという観点から議論をいたしました。
 まず埼玉県につきましては、作業手順に基づいて、人口最大の選挙区である一区が見直しを行うこととなりますが、五区についてもさいたま市の一部をその区域としていることから、あわせて見直しを行うことといたしました。その際、一区に隣接する四区については、朝霞、志木、和光及び新座の四市と戸田市とが荒川を挟んで一つの選挙区とされていることから、従前から批判の少なくない選挙区であること、さらに十三区は人口が五十五万人台と大きいことから、これらの四選挙区を見直しの対象とし、これらの区域に五選挙区を設けることとしたものでございます。
 千葉県については、人口最大選挙区の九区を手がかりとして改定案を検討いたしましたが、九区周辺の二ないし三選挙区で一増を図るには、選挙区の規模がそれほど大きくないことから、人口規模を調整するため、周辺の三区、六区及び八区、それに加えて、六区に隣接する選挙区で人口五十四万人台の五区を含め、これらを合わせた区域に六選挙区を設けることとしたものでございます。
 東京都については、定数の増加がない中で、区割り基準の上限人口を超える選挙区である二十二区の縮減を行わなければならなかったために、相当議論を重ねたところでございます。
 例えば、仮に分割する場合については、調布市と府中市は同程度の規模であるのにどちらを分割するのか、市のどの部分を分割するのか等の議論があり、他方、この際、広い範囲を対象に幾つかの市区を異動させることにより、二十二区と隣接する大きな選挙区である十九区もあわせて縮減を図るべきでないか等の議論もなされたところであります。
 結論として、定数増減のない中で影響する選挙区を小幅に抑えるのが適当であること、その場合、基礎的自治体である市はできるだけ分割を避けるべきであり、仮に分割するとしてもこれらの選挙区についてのみ異なる基準を設けることは適当でなく、かつ困難であると考えられること等から、二十二区の府中市を十八区に編入し、十八区の三鷹市を二十二区に編入する改定となったものであります。
 次に、いわゆる均等化の対象となる県以外の県における区割り基準の人口を下回る選挙区についての御質問がございました。
 このような選挙区は、秋田、山梨、長崎、佐賀の四県で五選挙区ありますが、区割り基準において「全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る選挙区はできるだけ設けないものとする。」と定めていることから、作業手順に従って改定すべく検討したところでございます。
 しかしながら、山梨一区については、現行の県内格差は一・〇九九倍で各選挙区の人口がほぼ均等化されている状況において、見直しを行うとすれば、大幅な変更を伴うか、郡を分割して町村単位で異動を行う必要があることから、また長崎三区につきましては、郡を分割して通常の交通手段を確保することのできない選挙区を設けるか、あるいは大幅な変更を伴う見直しとなることから、改定は行わないこととしたところであります。
 これに対して、秋田二区については、秋田県の議員一人当たり人口が四十万人近くあって調整の余地があり、県内格差が大きいという状況の中で、郡市単位での見直しを行う条件が整っていることも考慮して、現在一区に属する男鹿市及び南秋田郡の区域を二区に合わせることといたしました。
 佐賀二区、三区につきましては、郡市単位での見直しは困難なものの、そのままでは全国最小選挙区となる可能性があり、全国レベルでの格差の縮小を図る上で見直しは必須であると判断し、改定を行うこととしたところであります。
 以上です。
赤城委員長 最後の質問でありますが、現在、全国的に市町村合併に向けての動きが見られ、国もこれを積極的に推進しております。選挙区の区割りに当たっては、機械的な区割りではなく、このような合併の動向を尊重すべきだという意見がある一方で、人口格差を二倍未満におさめるためには、合併のいかんにかかわらず、市区の分割を行わなければならないのではないかという意見もあります。
 審議会は市町村合併と選挙区の区割りの関係についてどのように考えておられるのか、今回の改定案の作成に当たってはその動向を考慮されたのか、また今後、市町村合併が進み、選挙区の区域が市町村の区域にそぐわなくなってきたときは区割りの見直しを行われるのか、お聞かせください。
内田参考人 市町村合併の動向につきましては、区割り基準に「地勢、交通、歴史的沿革、人口動向その他の自然的社会的条件を総合的に考慮するものとする。」との一項が置かれているところであり、当審議会では、知事意見の聴取を行い、市町村合併の動向についてその把握に努めるとともに、その後も合併協議会の動向をフォローするなど情報の収集に努めるなど、審議に当たっては市町村合併の動向をも十分に考慮したところであります。
 しかしながら、投票価値の平等の要請から格差を縮減するため、やむを得ず郡を分割したところがあり、このことにより、結果として必ずしも地元における合併論議に沿わないところが幾つか生じたと承知しておりますが、投票価値の平等の要請を達成するため、やむを得ないと判断したところでございます。
 また、今後市町村合併が進んだ場合の対応についての御質問がございましたが、審議会設置法第四条第一項におきましては、十年ごとの国勢調査による区割りの見直しを原則としておりますので、その際には、やはり同法第三条第一項に規定してありますように、行政区画等の事情を総合的に考慮して区割りの改定案が作成されるものと考えます。また、全国の極めて多くの都道府県において、選挙区の区域が人口規模、行政区画等の点で実情にそぐわないというような状況になりました際には、同法第四条第二項の規定によりまして、十年後の国勢調査を待たずに見直しが行われることも考えられるのでございます。
 いずれにいたしましても、そのときの審議会において判断されるものと存じます。
 以上です。
赤城委員長 ありがとうございます。
 以上で私からの質疑を終わります。
 内田、塩野両参考人にはまことにありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十七分散会


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