衆議院

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第4号 平成14年5月29日(水曜日)

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平成十四年五月二十九日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 赤城 徳彦君
   理事 亀井 善之君 理事 細田 博之君
   理事 望月 義夫君 理事 茂木 敏充君
   理事 中山 義活君 理事 堀込 征雄君
   理事 井上 義久君 理事 東  祥三君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      金田 英行君    小西  理君
      坂井 隆憲君    竹下  亘君
      野中 広務君    林  幹雄君
      平井 卓也君    松野 博一君
      柳本 卓治君    阿久津幸彦君
      佐々木秀典君    佐藤 観樹君
      手塚 仁雄君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    山花 郁夫君
      山元  勉君    福島  豊君
      山名 靖英君    佐藤 公治君
      中井  洽君    大幡 基夫君
      木島日出夫君    中西 績介君
      保坂 展人君    西川太一郎君
    …………………………………
   議員           亀井 久興君
   議員           保利 耕輔君
   議員           町村 信孝君
   議員           中山 義活君
   議員           堀込 征雄君
   議員           山花 郁夫君
   議員           白保 台一君
   議員           西  博義君
   議員           中井  洽君
   議員           木島日出夫君
   議員           保坂 展人君
   議員           西川太一郎君
   政府参考人
   (総務省自治行政局選挙部
   長)           大竹 邦実君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   衆議院調査局第二特別調査
   室長           牧之内隆久君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  高鳥  修君     岡下 信子君
  中井  洽君     佐藤 公治君
  吉井 英勝君     木島日出夫君
  北川れん子君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     高鳥  修君
  佐藤 公治君     中井  洽君
  木島日出夫君     吉井 英勝君
  中西 績介君     北川れん子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(保利耕輔君外六名提出、衆法第一六号)
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(岡田克也君外九名提出、衆法第一四号)


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     ――――◇―――――
赤城委員長 これより会議を開きます。
 保利耕輔君外六名提出、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案及び岡田克也君外九名提出、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長大竹邦実君及び法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
赤城委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小西理君。
小西委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の小西理でございます。
 ただいま、政治また政策の実行に当たりましては、国民の政治への信頼というものが欠かすことができないというのは、ここにおられる諸先生方皆様同じ意見であろうかというように思います。しかしながら、残念なことに、国民の政治への信頼を裏切るような事態が幾つか起こっており、我々政治を預かる身に対していろいろ国民の間から批判が噴出している、これもまた事実であるところでございます。一刻も早く国民の信頼を回復してしっかりとした政治を行っていくというのが、我々にとっての急務であるというように思います。
 折しも、与党、野党、それぞれからいわゆるあっせん利得処罰法の改正案が提出されたことは大変意義のあることであり、また、与野党、この提出に御尽力された先生方に心から敬意を表する次第でございます。
 それでは、それぞれの法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、与党案に対しまして、幾つかのポイントを質問させていただきたいというように思っております。
 まず一点目に、今度の改正案では、公設秘書に加えまして私設秘書がこのあっせん利得処罰法の対象として新たに加えられたわけでございますけれども、この私設秘書、いわゆる私設秘書を指す表現として、使用される者で政治活動を補佐するもの、こういう表現になっております。これは公職選挙法第二百五十一条と同様の表現と思いますけれども、実際にはどういう肩書、これが、実態が、使用される者で政治活動を補佐するものと言えるのか。我々、実際、政治をやっている者としまして、例えば事務局長であるとか党支部の職員であるとか、また反対に、選挙のときのみに秘書の名刺を使う者とか、いろいろな形態がございますけれども、このあたりの線引きはどうなっているのか、どうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
白保議員 小西先生にお答えいたします。
 今回の改正で加える国会議員の私設秘書の定義は、「衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」としております。これは公職選挙法の連座制における秘書の定義と同様であります。その意味は、国会議員の指揮命令に従って労務に服し当該国会議員の政治活動を補佐するものということであり、このような実態があれば、事務局長、党支部職員の肩書の者でも本法の私設秘書に該当することになります。
 また、選挙のときのみ秘書の名刺を使用する者が本法の私設秘書に該当するか否かについては、実態として国会議員の指揮命令に従って労務に服し当該国会議員の政治活動を補佐しているか否かで判断されますが、仮に、選挙時のみに短期間労務に服し、その後継続して労務に服することが予定されていない場合には、通常、国会議員の指揮命令に従って労務に服し当該国会議員の政治活動を補佐しているとは認められないため、本法改正案の私設秘書に該当しないことが多いものと考えております。
小西委員 どうもありがとうございました。
 次の質問をさせていただきます。
 野党案では処罰の対象に親族、いわゆる親族を加えておりますけれども、与党案にはこの親族は加えられておりません。この点について、どのようなお考えでこうなっているのか、お伺いしたいと思います。
白保議員 本法の罪は、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を保護しようとするものであるところから、このためには、国会議員の私設秘書に対象範囲を拡大することで十分と考えております。
 一方、親族を処罰対象に含めるべきとする立場は、国会議員等の公職にある者の政治活動に全く関与しておらず、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得ない親族まで処罰の対象としてしまう反面、親族以外の公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得る立場の者をすべて処罰の対象とはしていないのであるから、要するに、公職にある者の政治活動に全く関与しておらず、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得るか否かにかかわらず、親族という身分にあることのみを理由に犯罪主体とすることになり、相当ではないと考えます。
 なお、与党案では、親族であっても、「衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」に該当する者には、新たに私設秘書としての独立の犯罪主体となると考えます。
小西委員 わかりました。
 もう一点質問させていただきたいと思います。
 与党案の要件の中に、「権限に基づく影響力の行使」という要件があるわけでございますけれども、この中に、いわゆるあうんの呼吸というような暗黙のものも含むものなのか、それともこう質問するとかいろいろな、そういう明言するという要件が必要なのか、このあたりのお考えについてお聞かせいただきたいと思います。
白保議員 御質問の件については、本法制定時の質疑の中で提案者が答弁したとおりであり、今回、特に変更することはないというふうに考えております。
 なお、本法制定時におけるところの質疑の中で提案者は、「影響力を行使して」とは、公職にある者の権限に基づく影響力を積極的に利用すること、換言すれば、実際にあっせんを受ける公務員、以下、被あっせん公務員と言いますが、その判断を拘束する必要はないものの、態様として、被あっせん公務員の判断に影響を与えるような形で被あっせん公務員に影響を有する権限の行使、不行使を明示的または黙示的に示すことである、どのような態様の行為が被あっせん公務員の判断に影響を与えるような形での行為に当たるかは、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題であるが、あっせんを行う公職にある者等の立場、あっせんの際の言動、あっせんを受ける公務員の職務内容、その他諸般の事情を総合して判断されることになるという旨の答弁をしていることを承知しております。
小西委員 ありがとうございました。
 それでは、野党案に対しての質問の方に移りたいと思います。
 一昨年のあっせん利得に係る法案の審議過程でもこれは議論されたことでありまして、また、現行の与党案もそうでありますけれども、先ほど御答弁をいただきましたように、いわゆる法の目的といいますか、保護法益、何のためにこの法律を制定するかというところの目的に、公職にある者の政治活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼、これを保護法益としているところであります。
 一方、野党案を読ませていただきますと、刑法のいわゆるわいろという表現が使われている、また同様の表現として、刑法のいわゆる収賄罪の延長上の表現を使っておられるように思います。
 刑法の収賄罪の場合の保護法益というのは、公職にある者の政治活動の廉潔性とは多少異なり、公務員の職務自体の性質であるいわゆる公正性や中立性を保護法益にしている、こういうように理解しておりますけれども、このあたり、野党案の保護法益、またその保護法益と法文との関係でどのように考えてこういう表現をとられておるのか、まずお伺いしたいと思います。
 また、具体的に、このわいろという言葉の中に、選挙運動を助けるとか、役務、労務を提供するとか、現行法に言いますいわゆる財産上の利益の収受、これとの違いについてお教えいただきたい、このように思います。
山花議員 お答えを申し上げます。
 まず、質問、二点ほどあったかと思いますけれども、保護法益に関して、刑法の第二十五章「汚職の罪」、百九十三条以下の保護法益について、公職にある者の廉潔性ということが保護法益だという御指摘がございましたけれども、わいろ罪のケースですと、正当な職務をやった場合についても違法であって処罰されることがあります。したがいまして、説明の仕方としては、廉潔性だけではなくて、それに対する国民の信頼ということも入っているというふうに認識をいたしております。野党案のあっせん利得処罰法でありますけれども、この保護法益については、公職にある者の廉潔性及びこれに対する国民の信頼ということ、そして被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する信頼ということが入っているわけであります。
 恐らく質問の御趣旨としては、保護法益が異なるのであれば、その態様も構成要件として異なってくるのではないかという趣旨かと思いますけれども、その保護法益において重複するところがございますので、刑法の規定を参考とさせていただいたという趣旨だと御理解いただきたいと思います。
 二点目でありますけれども、財産上の利益ということと、わいろということについて御質問がございました。
 本法におけるわいろと申しますのは、公務員等の職務に対する不法な報酬としての利益を申します。この場合の利益というのは、財産上の利益だけにとどまらず、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものであれば、非財産上の利益であっても入るということになってまいります。これは刑法の解釈で、判例上もそのようになっているわけであります。
 先ほど申しましたように、本法の罪は、公職にある者の廉潔性及びこれに対する国民の信頼ということとともに、被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼ということも保護法益といたしておりますので、公職にある者の廉潔性と被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼という点から考えますれば、あっせん行為の報酬として収受するものが財産上の利益であるか、非財産上の利益であるかということによって特段の差異を設けるべきではない、このように考えた次第であります。非財産上の収受であっても本罪の保護法益は害し得るわけでありますから、したがって、非財産上の利益を含むわいろという形で規定をいたしました。
 問題は、選挙運動などのようなこと、労務についてもいかが考えるかというような御質問だったかと思いますけれども、選挙運動のような労務がわいろに当たるかどうかということでありますが、選挙運動というのは公職選挙法上無報酬を原則としております。したがいまして、公職にある者が選挙運動の提供を受けることによって本来であれば必要とする労務の対価の出捐を免れているというような場合になれば、その選挙運動の労務の提供があっせん行為の報酬となり得るケースもあろうかと思います。
 すなわち、完全なボランティアだけではなくて、選挙運動の中では対価を払っても構わないとされているような行為もあるわけでありまして、本来であれば人を雇って対価を払うべきケースについて、あっせん行為を行ったことの対価としてそれをやってもらうというような関係があれば、わいろの収受ということに当たり得るというような関係となっております。
小西委員 御答弁ありがとうございます。
 今のに関連しまして、二点ほどちょっとお教えいただきたいと思います。
 今、わいろの説明をされましたときに、公務員がわいろの主体であるという御答弁をいただいたんですけれども、今回の処罰法の中に、いわゆる公務員と普通には言われていない私設秘書また親族が含まれている。これはちょっと理屈が合わないように思うのですけれども、どうお考えかということと、私の不勉強で申しわけないのですが、想定されておられる非財産上の利益にはどういうものがあるのか、ちょっとお教えいただければと思います。
山花議員 まず、恐らく私設秘書などについては公務員ではないのだからということであろうかと思いますが、刑法上身分犯と呼ばれるときに、ある身分を持たないとそもそも法益を侵害し得ないという身分犯もございます。例えば強姦罪などのようなケースでは、主体は男性に限るというのは、これは男性でなければ強姦罪における保護法益を侵害し得ないということであって、そういうケースもありますが、間接正犯の場合は女性でもなり得ますけれども。
 今回のこの法案の特にわいろ罪などのケースでは、公務に対する国民の信頼という保護法益は必ずしも公務員でなくても侵し得るケースであります。刑法のわいろ罪であっても同様でありますが、刑法の場合の説明と同様になろうかと思いますけれども、本来、違法なケースであったとしてもどこかで線を引くという政策的な判断があって、一応公務員という形で刑法では仕切られているわけであります。
 今回のあっせん利得処罰法については、野党案でも、例えば政治家に対する信頼、公務の廉潔性という保護法益を侵し得るのは、これは私設秘書であっても保護法益自体は侵し得るわけであります。そうすると、どこで線を引くかという政策的な判断において、ある程度形がはっきりできるものということで、私設秘書であるとかあるいは親族などのところで線を引いたという趣旨でございます。
 二点目の御質問でありましたけれども、非財産上の利益ということですので、必ずしも財産的なものでなくても、例えば、刑法の判例でいいますと、情交を結ぶというのが一つ判例上もありますけれども、このように精神的な欲望を満たすものであっても、非財産上の利益に入ってくるということでありまして、先ほど申し上げました労務なども、ケースによっては非財産上の利益に入ってくるということになっております。
小西委員 ありがとうございました。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 皆さん、多分同意していただけると思うのですけれども、自由な政治活動の保障というのは我々民主主義国家においてはその根幹をなすものである、このように理解をしております。
 したがいまして、だれかに何かを頼まれてその人の利益のためにやるということと、国民や住民の意見をきっちりと吸い上げて、それを国政や地方のいろいろな行政に反映していくという普通の政治活動というのは、ここのあいまいさというのはあるのですけれども、我々としては区別して考えていかなきゃいけない、また、これがこの法案を制定する上での一番の難しさであるというように思っております。
 そのような観点から、野党案が、国等が締結する契約または特定の者に対する行政庁の処分に関してという現行の法案のいわゆる要件を外して、あらゆる行為、無限定ということで広げておられるのですけれども、ちょっと私も想像力が十分働かない部分もあるんですが、この案件が、このような処置が我々の自由な政治活動の妨げにならないのか、また、どういう根拠でそうお考えになるのか、このあたりをちょっとお答えいただければと思います。
木島議員 民主主義社会において自由な政治活動を保障するというのが最も大事なことであるというのはおっしゃるとおりであります。また、政治家が、国民や地域住民の利益を吸い上げて、その実現のために努力するというのも当然のことだと私は考えます。
 野党案が考えていることは何かといいますと、国民、住民全体の利益を図るために行動することが本来的に期待されている公職にある者等が、特定の者の利益を図るようなあっせん行為、いわゆる口きき行為をして、その対価として報酬を得る、そのことがいかぬと言っているわけであります。そして、そういうことが公職にある者の廉潔性及びこれに対する国民の信頼を失わせる、と同時に、あっせんを受けた公務員の職務の公正さにも疑いを抱かせる、これを処罰の対象にしているわけであります。
 ですから、野党案は、明確に、住民、国民の利益のために頑張るということ、それは大いにやるべきだ、しかし、そのことを理由として、それをもって対価としての利益を得るということを、これはきっちりと禁じようということでありますので、御理解いただきたい。
 野党案は、しかし、それが乱用されることのなきように、特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に限って、そういう意味で絞りをかけるために、処罰の対象をその意味で絞っているわけであります。ですから、野党案は、不特定多数の者の利益のために行われる政治活動は、基本的に規制の対象ではないとしているわけであります。
 ですから、野党案では、処罰範囲を不当に拡大したり自由な政治活動を妨げたりすることのないように配慮されている、公職にある者の政治活動の自由の保障に欠けるところはないと確信をしております。
 また、特定の者の範囲についてでありますが、これは、特定の個人または法人、その他の団体をいうものでありまして、企業や同業者組合等もその団体としての実質を備えている限り、特定の者に当たるものと考えております。
 また、本罪、野党案は、いわゆる目的犯であります。特定の者に利益を得させる目的であることの認識やその認容がなければ、そもそも目的がないということになりますから、本罪は成立しないことになります。目的というのは、確かに内心の問題ではありますが、これは、現行法上も背任罪など図利加害目的という文言がありますが、目的犯はたくさんあるわけでありまして、実務上は、それぞれの犯罪における立証は外形的な事実の積み上げによってなされているわけでありまして、立証が困難ということはございません。
 野党案において具体的にどのような場合にこのような目的があるかは、一つ、当該あっせん行為によってだれがどのような利益を得るか、二つ目には、わいろを強要する者とあっせん行為による受益者との関係、そしてまた、三つ目には、わいろを強要する者等以外のあっせん行為による受益者の立場等を総合的に考慮することによって判断できると考えておるわけでありまして、この面でも立証が困難という御批判は当たらないと考えております。
小西委員 ありがとうございます。
 今、立証が困難には当たらない、これは困難ではないということでお答えいただいたと思うんですけれども、「特定の者に利益を得させる目的」という要件というのは、私の個人的な意見かもしれませんけれども、非常にやはりあいまいさを増す。「特定の者」で、またそこで一つの議論が発生しますし、「目的で、」ということで、またこれでもう一つの議論が発生する。これは、やはり実際に裁判等が行われる場で大きな足かせになってくるのじゃないかというように思います。
 同様の趣旨の中で、ちょっと戻りますけれども、収賄罪と同様に要求や約束という要件、いわゆる実際のやったかどうかじゃなくて、約した段階でこの犯罪が適用されるというような野党案になっておりますけれども、いわゆる職分のきっちり決まっている一般公務員と異なり、政治公務員の場合、国民からさまざまな意見、要望などを聞いていく中で、ふんふんとかわかったとか、いろいろな、あいまいと言うとおかしいんですけれども、相づちを打ち、話を聞き、話を引き出すというような局面はあろうかと思うんです。この辺の解釈によって自由な政治活動を妨げることにならないかどうか、お伺いしたいと思います。
山花議員 先ほどの保護法益のこととも関連をいたしますが、本罪の保護法益は、公職にある者の廉潔性とそれに対する国民の信頼、被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼ということでありますから、この保護法益が侵害されるかどうかということで考えてみますと、今のようなケースでも保護法益は侵害する可能性があるというふうに私どもは考えているわけであります。
 ただ、御理解いただきたいのは、結果として特定の者に利益を与えることになったというケースであるとか、あるいは事実上あっせんのような行為を行ったとしても、それだけで犯罪が成立するわけではありませんので、それに対価があるかどうかということがもう一つ要件となっているわけでありますから、対価を伴うような形でそうした行為を規制するということがあったとしても、正当な政治活動が制約されるというふうには私どもは考えておりません。
 なお、要求、約束を要件に加えるということについてでありますが、現行の刑法の百九十七条から百九十七条の四までに規定する罪でも、わいろの要求、約束にとどまる場合も処罰の対象としておりますので、あっせん行為以外の形でいわゆる公務に関連して金品についての要求、約束をした場合、現行のわいろ罪も成立するわけでありますので、御指摘のような懸念は生じないものと私どもは考えております。
小西委員 答弁、ありがとうございます。
 これも私の意見ですけれども、やはり理屈を超えたところで我々何げなく発言していることは多いと思うんです。そういうことが、ずっとさかのぼって、あのときこういうことを言ったとか、それを問われて罪になるというようなことを考えれば、我々はいろいろな方とお話しするときに、物すごく考えながら考えながらしゃべらなきゃいけない。これが果たして本当にいいことなのかどうかというのは、私は疑問に思います。そのことをちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 ちょっと時間がありませんので、二つ一遍にさせていただきたいと思いますけれども、野党案はいわゆる請託の要件を外しておられます。請託というのは普通あると思うんですけれども、わざわざこの請託の要件を外されたというのはどういうところにその意図があるのか、お伺いしたいと思います。
 それと、与党でも、ちょっとお答えいただいたんです。親族を今回、処罰の対象に加えられておりますけれども、私が思うには、いわゆる政治活動にかかわっていない親族というのもたくさんおられると思います。こういう方の経済活動や人権を、いたずらに僕は親族を入れると害することになるのじゃないかというように思っております。実際に、親族の中でも政治活動を補佐されている方、これはいわゆる公設であろうが公設でなかろうが、そういう方はおられるわけで、今回の私設秘書の定義でカバーされてしまうというふうに思いますけれども、そういう中でわざわざこの親族という規定を設けておられる、そこの理由を再度お聞きしたいと思います。
山花議員 請託の要件の部分についてお答えをいたします。
 これもやはり保護法益との関係で申しますと、請託の有無ということは、請託がなかったとしても保護法益を侵害し得るということでございます。請託を仮に要件といたしますと、かえってこの点で立証や認定が非常に困難となるということで、本来処罰すべきものまで立証が困難であるがゆえに処罰できない、つまり、本来は違法であるから処罰すべきであるけれども、訴訟上の技術的なことによって処罰ができないということになりますので、この要件については付加すべきではないと考えております。
 親族の点については別の者が答えます。
保坂議員 親族を加えるに当たりまして、私たちの願いは、口きき政治やあっせん利得政治の一掃であります。公共事業等をめぐって大変な不祥事が続出している、こういう事態を踏まえて、今御指摘のように、例えば親族で、経済活動、さまざまな社会活動、これがいたずらに侵害されるのじゃないかという御心配のようですけれども、犯罪と無関係な親族の経済活動あるいは人権等を妨げるという心配はないと思います。
 本法案の保護法益は、公職にある者の廉潔性及びこれに対する国民の信頼、被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼であります。よって、これを害するおそれがあるものに対してはきっちり線を引いていこう、厳しく対処しようということが国民の要請ではないかと思います。
 前回の審議の中でも、ざる法になってはならないというようなことが与野党通して議論をされましたし、また、私設秘書、公設秘書の線引き、公設のみにするべきだという与党の主張と、やはり私設秘書も入れるべきだという野党の主張で大分時間が費やされたと思います。
 しかし、今回の、親族をあえて入れたということについては、残念なことなんですが、日本の政治風土においては、政治家との接近度を背景にしたいわゆる隠然たる影響力ということが実際にあります。この影響力を行使する立場にある秘書及び親族も、ここはグレーゾーン、あると思いますが、あくまでも犯罪と無関係なところで親族のさまざまな活動が制約されるということはないように限定をして、私たちは今回、このあっせん利得処罰法の中に親族を入れたというわけでございます。
 仄聞するところによれば、与党の中にも親族を入れるべきではないかという議論があったというふうに承知をしております。
小西委員 真摯な答弁、ありがとうございます。
 私、最後に申し上げたいのは、本法案は非常に難しいせめぎ合いの部分というのはいろいろあろうかと思いますけれども、私自身としては、いたずらに網を大きくかぶせればよいというものではなくて、やはり、何のための法律かというのをしっかりと見きわめた上で、刑事法であるという、謙虚さ、さまざまな法益や人権に対する配慮などを考慮しつつ、実効性のある法律であることが一番求められているというように思います。
 このような、非常に、改革の時期にありまして、一刻も早く国民の信頼を回復するということが第一義であり、本審議がその第一歩として機能していくことを切にお願いするとともに、また、今国会で、今申し上げたような趣旨で、与党案が早期に成立することを皆さん方に切に御協力をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。
赤城委員長 次に、福島豊君。
福島委員 現在、政治とお金の問題をめぐってはさまざまな不祥事が続発いたしておりまして、政治に対しての国民の信頼というものが大きく揺らいでいる、この点は否定しようのないものだというふうに思っております。
 今回、あっせん利得処罰法の改正を行おうということになったわけでございますが、そもそも、このあっせん利得処罰法制定の際に、公明党としては、私設秘書もその対象とすべきだという主張をさせていただきました。当時の協議では最終的に合意を得るに至りませんで、現在の形となっているわけでございますが、今回、こうした不祥事を契機としたとはいえ、その見直しが図られることはまた大きな前進であり、そしてまた、国民の政治に対しての信頼を回復する一助となる、そのように期待をしておるところでございます。その意味で、早期の成立をぜひとも図っていただきたい。
 まず初めに、与党の提出者の皆様にお聞きしたいわけでございますが、現在、政治に対しての国民の信頼が大変大きく揺らいでいる、この信頼を回復するために今一番何が求められているのか、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
亀井(久)議員 大変重要な御質問をいただいたと思っておりますが、私自身、政治に携わる者の一人といたしまして、一連の不祥事によって政治不信を招き国民の信頼を損ねているという、そのことに対しては大変残念に思っておるところでございます。
 こういうときであればこそ、国家国民のために、私利私欲を捨てて、党利党略に走らず、関係者一人一人が誠実に、まじめに、そしてまた、常に謙虚さを持って政治に取り組んでいくということが今何よりも求められているのではないか、このように考えております。
福島委員 現在、この委員会には、与党の提出された法案と野党の先生方の提出された法案と、二つあるわけでございます。それぞれ、実効性に関してどうなのか、自由な政治活動について妨げにならないのかどうか、こういった観点から適切に評価をされる必要があります。そしてまた、委員会で両案の提出者の皆様から、その点について明確なお考えを示される必要があるというふうに思っているわけでございます。
 具体的な事項についてお聞きしたいと思います。先ほどの小西先生の御質問と重なるところもありますが、お許しをいただきたいと思います。
 まず初めに、秘書の定義ということでございます。「衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」というふうに規定されているわけでございますが、この「補佐するもの」というのはどのような意味なのかということについて御説明いただきたいと思います。
亀井(久)議員 本法における秘書の定義は、まず、国会法第百三十二条に規定する秘書、いわゆる公設秘書でございますが、これに、二つ目に、「その他衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」、いわゆる私設秘書でございますが、本法改正案でこれを追加したものでございます。
 第二条の中の「政治活動を補佐する」ということでございますが、政治活動を行いやすくするために役立つ行為や政治活動の効果をより大にするのに有益な行為など、各種の労務の提供を指すものでございますが、一般的に補佐とは、単なる事務上の手足としての助力ではなく、一定程度の裁量を持って事務を遂行するという意味で用いられておりまして、本法改正案におきましても、このような意味で理解すべきであると思われます。
 したがって、例えば事務所の受付業務のみを行う者のように単純労務だけを提供する者につきましては、本改正に言うところの補佐するものには含まれないと考えております。
福島委員 ありがとうございます。
 この秘書をめぐって、当初のといいますか、現在のあっせん利得処罰法が成立する過程での議論では、なぜその対象に最初含めなかったのか、その理由の一つに、範囲が必ずしも明確ではないではないかという議論があったわけでございます。あっせん利得処罰法というものは身分犯でありまして、罪刑法定主義の観点から、その対象となる身分が明確でなければならないという指摘があったわけでございます。
 ただいま、今回の法改正に当たって、補佐するものの定義を御説明いただきましたけれども、この点についてどのような判断を下したのか、どのような展開があったのかということについて御説明を賜りたいのと、そしてまた、関連いたしまして、この判断を明確にするためにも、秘書の登録制度というものをつくるべきではないかというような議論もあったわけでございます。この点についてどのような検討がなされているのか、お考えをお聞きしたいと思います。
亀井(久)議員 政治活動を補佐するという定義は、公職選挙法の連座制における秘書の定義と同様でございますけれども、最高裁におきましても同定義の明確性が認められております。そのことから、あっせん利得罪における私設秘書の定義としても、構成要件の明確性という観点から、十分に合理性があるものと判断した次第でございます。
 本法改正案の検討過程におきまして、私設秘書の登録制についても検討したところでございますが、次の理由から採用はいたしませんでした。
 まず第一に、登録制とした場合に、登録の対象を明確にする必要があるわけでございますし、また、未登録について罰則の対象とするかどうかという新たな問題が生ずることになります。
 また二番目に、登録制を要件とした場合、登録がされなかった者があっせん利得行為を行った場合であっても、その者が国会議員に使用され、当該国会議員の政治活動を補佐する者である場合には、国会議員本人の政治活動の廉潔性、清廉潔白性及びこれに対する国民の信頼が害されることに変わりはないわけでございまして、これを処罰できないというのは保護法益との関係で妥当ではないと考えます。
 三番目に、登録がされなかった秘書があっせん利得行為をして利得を得た場合に処罰できないということになりますと、あえて秘書を登録しないという脱法行為が行われる場合が出てくるおそれがある。こうしたことを検討いたしまして、採用しなかったということでございます。
福島委員 明確な御答弁、ありがとうございます。
 対象について、野党の提出されました法案では、先ほどからも議論になっておりますように、首長や地方議員の秘書、さらには政治家の活動を補佐していない親族等も対象に含めているわけでございます。
 余り拡大をするということは、かえって人権の観点からいかがなものかということは当然出てくると思うんですが、与党案で、こうした対象を拡大しない、そういう判断を下しました理由についてお聞きをしたいというふうに思います。
亀井(久)議員 これまで国会議員の秘書につきましては、公設秘書のみが国民の税金から給与を支払われる公務員であり、さらに法律上も国会議員の政治活動を補佐する者として明確に位置づけられております。国会議員の権限に基づく影響力を行使し得る立場にあることから、独立の犯罪主体とされてきたところであります。
 本法の性格に照らしますと、基本的には、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体の中核は公設秘書であると考えられます。しかし、最近の国会議員の私設秘書等に係る一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめ、政治に対する国民の信頼を回復するためには、国民の側から見れば公設秘書か私設秘書かの区別は判然といたしません。国会議員の政治活動を補佐するという実態に着目すれば、公設秘書でも私設秘書でも変わりがないということなどから、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体に国会議員の私設秘書を追加する必要があると考えまして、本法改正案を提案したものでございます。
 したがって、公設秘書の存在しない地方公共団体の議会の議員、あるいは長の私設秘書についてまで拡大すべきではないと考えた次第でございます。
 また、親族を処罰対象に含めることにいたしますと、国会議員等の公職にある者の政治活動に全く関与しておらず、公職にある者本人の影響力を借用して行使し得ない親族まで処罰の対象としてしまう反面、親族以外の、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得る立場の者をすべて処罰の対象としないのでございますから、要するに、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得るか否かということにかかわらず、親族という身分にあることのみを理由に犯罪主体とすることになりまして、相当ではないと考えた次第でございます。
 なお、与党案におきましては、親族でありましても、「衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」に該当する者は、私設秘書として独立の犯罪主体となるわけでございます。
福島委員 ありがとうございます。
 また、与党案と野党案の違いということにつきましては、請託を受けてあっせんするということをとるのか、それとも特定の者に利益を得させる目的でという観点をとるのか、ここにも違いがあるわけでございます。
 先ほどの議論で、請託の有無というのは確認が難しいんだという御主張もございましたけれども、目的の有無ということの方が確認はさらに難しいのじゃないかという思いもするわけでございます。この点について与党の提出者のお考えをお聞きしたいと思います。
亀井(久)議員 請託を受けてということを要件とするということにつきましては、請託があったことの立証の難度は具体的事案における証拠関係に左右されるものでありまして、請託を要件としたことによって直ちに立証が困難になるとは一概に言えないと存じます。
 他方において、特定の者に利益を得させる目的を要件とした場合、あっせん行為を行った者が特定の者に利益を得させる目的を有していたかどうかという、行為者の、いわば主観面について立証する必要があるということでございますから、一般的には、請託を受けてという客観的な要件を立証することよりもむしろ困難を伴うものではないか、そのように考えた次第でございます。
福島委員 「特定の者に利益を得させる目的」というふうに野党案では規定されておるわけでございますけれども、この「特定の者」というのは一体何を指すのか。企業ですとか労働組合ですとか同業者組合、NPO、さまざまなものがあるわけでございますけれども、それらすべてが含まれると考えてよろしいんでしょうか。
木島議員 先ほども答弁したところでありますが、「特定の者」とは、特定の個人または法人、その他の団体をいいます。したがって、御指摘にありましたような企業、労組、同業者組合、NPO、地方公共団体についても、それぞれ、法人、その他の団体としての実質を備えている限り、「特定の者」に当たります。
 なお、一昨年の百五十国会で与党から提出をされ、成立をし、現行法になっております公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律第一条の「特定の者に対する行政庁の処分」という言葉になっておりますが、その「特定の者」と同一概念だと考えております。
福島委員 ただいま明快な御説明をいただきまして、ありがとうございます。
 野党案の場合には、現行法の、国等が締結する契約または特定の者に対する行政庁の処分という規定に対して、これを削除して、職務に限定を設けないという考え方になっているわけでございます。また、第三者供与の規定も同じく設けられている。
 これを踏まえて考えますと、例えば請託がないままに、特定の障害者の福祉の増進のために、あるいは特定の産業部門の振興のために、政府に対して制度改正の要請活動を行い、これらの関係団体がこの活動を支援するために、当該政治家の関係団体に政治献金をした場合にも罪に問われることになるのではないか。これはまさしく自由な政治活動というものを妨げることになるのではないかと懸念するわけでございます。この点について与党案は、そうした政治活動の自由を妨げる規定にはなっていないと私は思っておりますし、その両案の違いの最たるところはこの点にあるのではないか、そのように思うわけでございますが、この点について与党の提出者にお考えをお聞きしたいと思います。
亀井(久)議員 今、委員が御指摘になりましたようなケースは、国民の声を吸い上げて政治行為を行うという、本来、公職にある者に期待されているような政治活動のケースだと存じます。このような場合には、本法の保護法益にございます公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を害することはない、このような場合についても処罰対象にするとすれば、委員が御指摘になりましたように、公職にある者の正当な政治活動を大きく制限することになると考えております。
 これに対しまして、与党の案では、本法の保護法益の観点から犯罪主体に私設秘書を加えることにいたしましたが、政治活動の自由を保障する観点から、その他の構成要件については改正をいたしておりません。このように、与党案では、政治活動の自由を保障しながら、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を確保するために必要な規制を行うものでありまして、十分バランスがとれている、かように考えております。
福島委員 中井先生がぎゅっと私をにらんでおられまして、野党の提出者の方もこの点について御意見があろうかと思いますので、どうぞお述べください。
中井議員 福島先生にお答えになるかどうかわかりませんが、先ほどから御議論を聞いておりますと、一年半前に私どもがお答えしたことを与党の方はそっくり答えておるだけだ、一年前から賛成しておいてくれればよかったな、何でもなかったのにな、こう思っています。
 しかし、私どもは今回、今御指摘をいただいたような親族の点とかいろいろな形でまた一歩踏み込んだ法律をつくって提案をいたしました。それは、現実がどんどんと対応せざるを得ないような事件が引き起こされて、国民の政治不信を買っている。県会議員の私設秘書あるいは地方の首長さんの親族が目に余ることをやって逮捕され、法の裁きを受けざるを得ない状況が次から次へと起こっているわけでございます。それらのことに関して、この私設秘書だけふたをしたと、法の裁きの中に、網の中に入れるということだけで本当に済むのかと私どもは考えています。
 先ほど、もう一つ前には、公明党は私設秘書の問題に賛成をしたんだ、こう言われましたが、一年半前の修正のときには残念ながら御賛成いただけなかったわけでございます。そういう反省を込めて、ぜひ今回、私どもの法案に御賛成をいただきますようにお願いを申し上げます。
福島委員 最後に、野党案の提出者の皆さんにお聞きしたいんですが、今までの議論の中で、現行法は実効性がないんだという御指摘が多々あったわけでございますけれども、しかしながら、現に、去る五月九日に和歌山県の橋本市の市会議員の方が逮捕されておるという意味では、実効性がないということはないのではないかと思います。これは罰則を伴う法律でございますから、そういう意味では、自由な政治活動を規制してはいけないという視点、そしてまた、いたずらに広げるということで人権にかかわるような話になってもいけないというところもあるわけでございます。そういうことをバランスをとって考えるということがやはりあくまで必要なんではないかと私は思っております。
 この実効性の有無について、野党の提出者の皆様に最後にお聞きしたいと思います。
中井議員 お話しの和歌山の橋本市の議員さんの件につきまして、定かに承知しているわけではございません。しかし、新聞報道等を見ますと、かなりやり方が粗暴と言えばいいのかどうかわかりませんが、露骨というか、事件でありましたし、覚せい剤容疑で別件逮捕されているということもございます。そういう特殊な事件一つだけしか一年間で適用されなかった。そして、世間あるいはマスコミでは、ありとあらゆる国民の政治不信を抱くような事件が続発をして、私設秘書を含めて、親族含めていろいろなかかわりを言われてきた。私どもは、このことを考えたときに、一年半前の法律、これは本当に修正案を通しておくべきだったと改めて思うところでございます。
福島委員 以上で、時間が終わりましたので質問を終わりますが、ぜひ国民の政治に対しての信頼を回復するために早期の与党案の成立をお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
赤城委員長 次に、阿久津幸彦君。
阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。
 本日は、あっせん利得処罰法の改正案について、与野党の提案者に質問をさせていただきたいと思います。
 現行のあっせん利得処罰法が制定された一昨年の第百五十回国会において、与党、野党それぞれが法案を提出し、議論が行われたわけですが、そこでの最大の争点は、犯罪の主体に国会議員の私設秘書を含めるかどうかといういわゆる私設秘書問題でした。当時私もこの委員会の場で質問に立たせていただき、活動の実態において私設秘書と公設秘書の間には区別がないこと、私設秘書を含めなければ法律がざる法になってしまう危険性が極めて高いこと、また法体系の上からいっても、本法律が政治家のモラルを正す倫理法制であることを考えるならば、連座制などと同様に私設秘書を含めるべきであることなどを指摘いたしましたが、残念ながら、そうした私たち野党の主張が退けられて、私設秘書を犯罪の主体に含めない現行法の成立に至ったわけでございます。
 今回、与党は、あっせん利得処罰法の主体に衆参国会議員の私設秘書を加える改正案を提出されました。しかし、こうした経緯を思い起こすならば、与党による改正案の提出には非常に奇異な感じを抱きます。というのは、当時、私たちがあれほど口を酸っぱくして私設秘書問題の重要性を訴えたにもかかわらず、与党の皆さんは全く聞く耳を持たなかったからです。それがなぜ今、改正案を提出されたのか、その点がどうしても納得できません。そこで、本日は、与党による改正案の真意をただす、これを中心的なテーマに質問をさせていただきたいと思います。
 まず、与党案提出者にお伺いします。
 第百五十回国会の質疑の中で、「この法律が成立すれば日本の政治はその質が変わる、こう断言できますか。」と問われて、与党答弁者は、「政治活動の廉潔性、清廉潔白性を保持し、そして国民の信頼を得ていくんだという、まさにこれこそが政治が変わっていく一番の原点になり得るものと確信をしております。」と答えています。今もその気持ちは変わりませんか。現行のあっせん利得処罰法によって日本の政治はその質が変わったと思われるか、そして、今、日本の政治は国民の信頼を得ていると思われるか、与党提案者にお伺いしたいと思います。
保利議員 私も、この法律ができ上がりますときは参画をしておりませんものですから、そのときの事情が必ずしもよくわかりませんが、勉強はいたしておるつもりであります。
 今、本法が施行されて効果があったのかという御質問でございましたけれども、施行されましたのが平成十三年の三月一日、一年少々たったところでございますが、私は、この法律がこの種のあっせん利得行為に対しての十分な抑止力は発揮しているのではないか、したがって、発揮しているがゆえにこれで捕まるケースが少ないのではないか、そんなふうに逆に考えてもおるわけであります。
 日本の政治の質というのは非常に大事でございますが、私は、こういう問題が国民の間にあまねく考え方として広がっていく、あるいはよく承知をしていただくということによって日本の政治の質というのは変わっていくであろう、このように期待をいたしております。必ず次第によくなっていくというふうに考えておる次第でございます。
 しかしながら、昨今、国会議員の私設秘書等が引き起こしました一連の不祥事によりまして、政治に対する国民の信頼が大きく揺らいでいるということは、残念でありますが、事実であります。
 政治に対する国民の信頼を回復するためには規制の拡大を図る必要があると判断いたしまして、私ども独自で考えまして、今回新たに犯罪主体として国会議員の私設秘書、これを加えることがよかろうという判断に立ち至ったわけでございます。
 以上、御理解を賜りたいと思います。
阿久津委員 今苦しい答弁を聞いたところなんですが、続けて野党案提出者の方に同じ質問をしたいと思うんです。
 先ほどの同じ質問に対して、野党答弁者はその当時、「残念ながら与党案では抜け道が多くて政治は変わらない」というふうに答えておりました。
 改めて伺います。現行のあっせん利得処罰法によって、日本の政治はその質が変わったと思われますか。そして、今、日本の政治は国民の信頼を得ていると思われますか。野党案提案者の方にお伺いいたします。
中井議員 お答えを申し上げます。
 残念ながら、一昨年のあっせん利得の法案によって日本の政治の質が変わったとは思っておりませんし、また現実、国民の政治不信、政治家に対する不信はますます厳しいものがあると大変残念に思っています。罰則法一つで信頼が取り戻せるとかそういうことではないんだろうと思いますけれども、政治家みずからがみずからの手足を縛ってでも対応していかなければ信頼というものは取り戻せない、このように考えております。
阿久津委員 与党は、現行法審議の際に私設秘書を加えないと言っていたにもかかわらず、なぜ今回入れることにしたのか、明確にお答えいただきたいと思うんです。
保利議員 前回、公設秘書に限ったということは、犯罪を構成する要件というのを明確にすべきだということに大変大きな執着があったということが背景にあろうかと思います。日本は法治国家でありますから、犯罪を取り締まる、その犯罪とは何かということは明確に定義をされなきゃならぬという頭がありましたから、公設秘書に限るというやり方をしたものであります。
 しかし、残念ながら、私設秘書等によっての一連の不祥事が起こったということは、私どもにとっても極めて残念なことでございまして、これによって政治に対する国民の信頼が大きく揺らぎ始めているということで、国民の信頼を回復するためにはどうしたらいいかと。
 そして、規制の拡大というのは慎重にやらなければならないし、私設秘書に拡大をするということは、公設秘書と比べて大変範囲が広くなる。例えば、地元の秘書も国会議員の秘書でありますから、そういたしますと、非常に幅が広くなるということに対して非常に注意深く議論を重ねていったわけでございますが、今回、一連の不祥事に対しての対策をとるためには、ここをやらなければだめだということを、我が党としても、また与党としても、議論に議論を重ねました上、こういう結論を出すべきだということを決めたといういきさつがございます。
 以上でございます。
阿久津委員 今の御説明では私にはよくわからないんですけれども、与党の提案理由説明によりますと、「「国会議員の政治活動を補佐する」という実態に着目すれば公設秘書でも私設秘書でも変わりがない」、「国民の側から見れば公設秘書か私設秘書かの区別はつかない」、それから「国会議員の秘書の間でのバランスをとることが適当」。これはみんな野党が言ってきたことなんですよ。それでも前回は、私設秘書を加えないと言っていたわけです。
 この法案の審議に入る前に、本来なら、私は、みずからの非を認めて、少なくとも国民にはおわびをする必要があるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
保利議員 先ほども申し上げましたとおり、日本は法治国家であるということから考えまして、犯罪の構成要件というのは明確でなければならないということに執着があったことは事実であります。
 しかしながら、昨今のいろいろな不祥事等を考えてみまして、公設秘書と私設秘書との間に国民の側から見て差があるのかというような、今御指摘がありましたようなことというのは、この不祥事にかんがみて、やはり私どもとしても自主的に、独自に考えついてそういう提案をしたということでございますので、足らざるところを補うという意味でこういう改正案を提出しておりますことをぜひ御理解を賜りたいと存じます。
阿久津委員 独自にこの私設秘書を加えるということにたどり着いたということなんですけれども、まあ、それはそれで私は結構だと思うんですね。大切なことは、「政治不信を重大に受けとめ、」というふうにおっしゃるのであれば、ただ残念だというだけではなくて、やはり真摯な気持ちで国民におわびすることが必要だったのではないか、そこからまず始まるのではないかというふうに私は考えております。
 続けて、与党提案者の方に伺いたいと思います。
 私設秘書の定義について、「政治活動を補佐するもの」というふうにしているわけですが、提案理由説明の中で、
 もとより、罪刑法定主義の観点から処罰の対象となる構成要件を明確に規定するのは当然のことでありますが、この定義は公職選挙法の連座制における秘書の定義と同様であり、最高裁判所におきましても同定義の明確性が認められていることから、議員秘書あっせん利得罪における私設秘書の定義としても構成要件の明確性という観点から十分に合理性があると考えるものであります。
というふうにおっしゃっているんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。これも野党が再三主張していたことじゃないかというふうに私は思うんですが、そこで伺います。
 現行法審議の際、与党の反対論には、罪刑法定主義の観点から公務員ではない私設秘書の定義のあいまいさが挙げられておりました。その主張には根拠がなかったということでしょうか。要するに、罪刑法定主義に反する云々という主張には根拠がなかったということなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
保利議員 端的にお答えを申し上げれば、先ほどから申し上げておりますとおり、法治国家においては、犯罪を構成することについては、法律で厳密に規定をしておく必要があるということでございますので、根拠はあったと御答弁させていただきます。
阿久津委員 根拠があったというふうに言い切ってしまうと、なぜ私設秘書を加えたんでしょうか。これは自己矛盾に陥ってしまうんじゃないですか。
保利議員 世の中の事象というのはそのときそのときにさまざまに変化をいたしておりまして、その変化に対応して我々はどういうことをやるべきかということを独自に考えれば、そこへ結論が至ったということでありますので、御理解いただきたいと思います。
阿久津委員 政治がその時々の変化に対応するということは、私は大切なことだと思っております。ただ、であるならば、先ほどの話ではないんですけれども、まず国民に、あのとき予測がつかなかったのは私たちが悪うございましたとおわびすることから始まらなくてはいけないんだと思うんですが、いかがでしょうか。
保利議員 法律は議会で多数決によって決められておるものでありますので、これは本会議を通じて、あるいは参議院の会議を通じて成立したものでありまして、選挙で選ばれた我々が決定をしたということでありますので、その当時の背景からいって、そこは理由のあったことというふうに御答弁させていただきます。
阿久津委員 「最近の国会議員の私設秘書等による一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめ、」と言いながら、国民へのおわびの言葉はなかったということをここで確認させていただきました。
 少しだけ法体系のことをお伺いしたいと思います。――コメント、ございましたら。
保利議員 国民におわびをということでありますが、やはり足らざるところはあっただろうと思いますけれども、そして、その後の状況の変化というのはあっただろうと思いますが、それに対応していくということでございまして、そのとき国会において多数をもって決められておりますことでございますから、特段、国民に対しては、そのとき私設秘書を入れなくて申しわけなかったということは申し上げる立場に私はないと思っております。
阿久津委員 足らざることはあったという国民へのメッセージはございましたということで、認識させていただきたいと思います。
 それでは、法体系の話の方に移りたいと思います。
 前回の審議で、野党側は秘書の実態面のバランスから公設、私設秘書には区別がないことを指摘したのに対して、与党答弁者は刑法あっせん収賄罪とのバランス論から反対論を行いました。しかし、今回の提案理由説明は、まさに我々が主張してきた実態面からのバランス論に内容が百八十度変わっているというふうに思うのですが、前回の主張は誤りだったということでしょうか。与党案提出者に伺います。
保利議員 先ほどから私が御答弁申し上げておりますとおり、法治国家という言い方で申し上げましたが、それはさらに砕いて言えば、罪刑法定主義である。
 犯罪の構成要件というのは明確になっていなければならないという意味で、罪刑法定主義を引いて説明をしたものだ、このように私は理解をいたしておりまして、その限りにおきましては、罪刑法定主義を用いて答弁をしたということは、私は誤りでなかったと思っております。
阿久津委員 ということは、刑法あっせん収賄罪とのバランス論はどこへ行ってしまったのかというふうに思うのです。
 前回、私設秘書まで拡大することは刑法あっせん収賄罪とのバランスを失することになりかねないとまで御答弁されているのですけれども、これは誤りだったのでしょうか。
保利議員 国会議員の秘書につきましては、公設秘書のみが国民の税金から給与を支払われている公務員でございまして、さらに法律上も国会議員の政治活動を補佐するものとして明確に位置づけられていることからいたしますと、本改正案による改正後においても、本法の議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体の中核は公設秘書であると考えておるわけであります、また、考えられます。
 しかしながら、最近の国会議員の私設秘書にかかわります一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめまして、政治に対する国民の信頼を回復するためには、国民の側から見れば公設秘書、私設秘書かの区別は判然としないこと、国会議員の政治活動を補佐するという実態に着目すれば公設秘書でも私設秘書でも変わりないことから、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体に国会議員の私設秘書を追加する必要があると考え、本法案を提出したということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
 なお、本法制定時に私設秘書を入れなかったことが誤りであるとは考えておりません。そのことをつけ加えさせていただきます。
阿久津委員 次に、私設秘書の定義に関してなんですけれども、一点だけ確認しておきたいことがありますので、伺いたいと思うのです。
 といいますのは、私設秘書の定義については、先ほどの小西委員への答弁で、連座制と同じようにその実態によって判断されるのだということを確認させていただいたわけなんですけれども、もう一つの例に対するお答えの方でちょっと納得がいかなかったもので、私なりに考えた例で、予定にないことなんですが、よく、選挙が近くなると、例えば不動産とか建設あるいは公共事業関係の会社、社長さんが多分支援者なんでしょう、そこの社員さんに私設秘書名刺を持たせて、選挙運動、選挙が近いということですね、表向きは政治活動ということだと思うのですけれども、それをさせますね、社員の人たちに秘書名刺を持たせて。これは私設秘書の対象になるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
町村議員 どういう実態であるかということはきちんと考えてみないと、今一概に言うのは難しいのですが、短期間、選挙期間中に秘書名刺を持って活動をする、そのものが今回の法律で言うところの私設秘書に該当するかというと、それは多分ならないのだろうと。
 ただ、選挙後引き続き、議員の政治活動を補佐し云々という今回の定義に当たるような実態があるならば、それはそうかもしれませんが、限られた選挙期間中に秘書名刺を持っているから、その人が選挙が終わった後、一定のあっせん利得行為をやったからといって、直ちにその人が私設秘書にはならないんだろう、私はそう思っております。
阿久津委員 もちろん、選挙期間中に社員たちが大量に秘書名刺を持ってそういう活動をしてしまったら、それそのものが公職選挙法違反ですからだめだと思うのですけれども、私が質問したのは、選挙が近づいてきた、例えば衆議院であれば解散風が吹くことがあります。そうすると一斉に、ふだんお世話になっている公共事業の関係の会社の社員の人たちが社長に言われて、本人は嫌々かもしれないのですけれども、秘書名刺を持たされて、おまえたち、ここをオルグしてこい、ここを回れ、この名簿をつぶせ、ある者は運転しろとか、いろいろなことを言われますね。
 その中でいわゆるあっせん利得的な行為があった場合に、その私設秘書名刺を持っているゼネコンなりどこかの社員さんは対象となるんですかということを聞いているのです。
町村議員 最終的にはこれは全部事実関係の認定に係る話ですから、余り定義がはっきりしない、あるいは状況がはっきりしないところで、これはこう、本法で言う私設秘書に当たるかどうかというのは難しいところだと思いますね。
 政治活動と選挙運動というのは、一応法律上は、公職選挙法上分かれておりましょう。そこを、公選法上の違いを今ここで私が細かく申し上げるのはまた大変難しいところもありますからそれは避けたいし、もしどうしても専門的にお聞きになりたいのなら、どうぞ関係省庁の方にも聞いていただきたいのですが、今のお話で、おっしゃるとおり買収に当たるかもしれないわけですね。
 要するに、運動員に手当を出した、給料は会社持ちだということになれば、それはまた別途公選法上の違反というケースはあり得るのかなと思いますが、今お話のあったケースで、一体いつの時点でどういう形であっせんをし、また利得を得たかということが、事実関係と時点、どの時点かということがはっきりしないと、今一概にこれは必ず法律違反になりましょう、ならないでしょうということを申し上げるのはちょっと難しいんだと私は思いますね。
阿久津委員 念のため、野党の提案者の方に御意見を伺いたいと思うのですが、もう一度質問しますね。
 よく、選挙が近づいてくると、例えば公共事業関連の会社の社員が私設秘書名刺を持たされて運動にかかわる事例があると思うのですけれども、このような場合、どうなるのでしょうか。
中井議員 お答えを申し上げます。
 まず最初、一つは、選挙運動は、ごく一部のものを除いては、本来ボランティアで行われるものでありますから、先ほど阿久津先生がおっしゃったように、選挙運動に秘書という名目で社員を派遣する、このこと自体が選挙違反だ、私はそう思っております。
 もう一つは、私どもの法律でいけば、何らかの請願をしたか仕事をしてもらった見返りとしてこういうことを、選挙役務を提供する、このことがあっせん利得の対象となる。その会社も、あるいは選挙をやる人も対象になる。こういうことであります。
 それから、三つ目は、肩書を持った私設秘書が選挙期間中にあっせん利得行為をやれば、当然対象となる、私どもはそういうふうに理解をいたしております。
阿久津委員 そもそも公共事業関連企業の社員に、どんな理由があろうとも、社長さんがいいからと言ったといっても、私設秘書名刺を大量に持たせて回らせること自体が、私は倫理にもとるというふうに思っておりますので、そのことをつけ加えまして、今の件については、個々の事例についてお答えいただいたことに感謝申し上げまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今回、せっかく私設秘書を加えられたわけなんですけれども、国会議員の私設秘書に限定したのはなぜでしょうか。与党提案者に伺います。
保利議員 私どもといたしましては、前回の御審議のときにいろいろ御答弁申し上げましたとおり、公設秘書というのが非常に重要な、大きな意味を持っているということから、公設秘書に限定をしたわけでございます。
 国会議員には公設秘書があり、そしてさらに私設秘書が、多い方は十数人持っておられるというような形で存在をしている。そこへ範囲を拡大していくということを今回やろうとするものでありますけれども、この公設秘書という性格に着目をいたしますと、公設秘書の場合はほとんど議員と表裏一体になって活動するのが普通でありますから、それに準ずるものというか、それと横並びで私設秘書まで拡大していくべきだろうと。しかし、それはかなり広い範囲になっていきますから、当初はそこのところは非常に慎重にやらなきゃならなかったわけであります。
 地方の議員あるいは首長等についてのお尋ねでありますが、地方の議員には公設秘書というのがございません。秘書というのがおられましても、これは私設秘書のみであります。したがいまして、地方議員の秘書というのは公的性格がないという、そこのところに着目をいたしまして、地方の議員の秘書までこれを拡大するということは無理ではなかろうかという結論に達しました。
 つまり、国会議員の公設秘書というのが非常に大きな意味を持っている、それの延長線上に国会議員の私設秘書がある。地方議員の場合は、公設秘書がないから、私設秘書にまでそれを適用するのはちょっと国会議員の場合とは違うんではないかという観点から、地方議員の私設秘書については外させていただいたというところでございます。
阿久津委員 私、今の答弁では全然納得がいかないですね。そもそも公設秘書は重要なものだから当然対象にすべきだという考えがまずあって、そこから拡大していって私設秘書という説明ですよね。だけれども、その御説明だと、この与党の提案理由説明と全く矛盾しちゃうんですね。与党の提案理由説明、先ほども私、述べましたけれども、「「国会議員の政治活動を補佐する」という実態に着目すれば公設秘書でも私設秘書でも変わりがない」、これは与党がおっしゃっているんですよ。「国民の側から見れば公設秘書か私設秘書かの区別はつかない」、これも与党がおっしゃっているんですよ。どういうことなんですか。
保利議員 そこは国会議員の秘書について述べているところと御理解をいただきたいと思うのであります。国会議員の公設秘書と国会議員の私設秘書との間では、国民の側から見て実態上区別がつかないということを言っておるのでございまして、そのように御解釈を願いたいと存じます。
阿久津委員 逆に野党の方の御意見を伺ってみたいと思うんですが、野党案の方では、首長、地方議員の私設秘書を加えているわけなんですけれども、それはなぜでしょうか。
山花議員 お答えを申し上げます。
 私どもの考え方といたしましては、本法の罪というのは、公職にある者の廉潔性ということとこれに対する国民の信頼とともに、被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼ということを保護法益としているわけであります。
 公職にある者の廉潔性ということと被あっせん公務員が行う公務の公正さに対する国民の信頼という点から考えますと、あっせんを行ってその報酬としてわいろを収受するのが地方公共団体の議員あるいは長の秘書であっても、国会議員の秘書と同様に本罪の保護法益を侵し得るからである、このように考えているわけでありまして、あくまでも、私設秘書などが入ってくるというのは、先ほども保護法益のことでいろいろとお答えを申し上げましたが、身分に伴って義務があって、その義務の違反があるという考え方ではなくて、そもそも保護法益を侵し得るかどうかということなわけであります。
 公的な身分ということを論理的に一貫させようといたしますと、私設秘書というのは、かつて百五十国会で与党の方が御答弁なさっていたように、私設秘書については義務がないからそもそも論理的に入らないということになってしまうはずでありますので、そのような考え方は、私どもはとっていないということでございます。
阿久津委員 私は、答えを今聞いていただいたと思うんですけれども、今の答えなら説明がつくと思うんです。与党の先ほどの説明では、公設秘書の部分で、それなら何で公設秘書だけにしないんだという話になっちゃうんだと思うんですよ。
 それで、私は、実態面から考えても、首長や地方議員、特にその職務実態を考えたときは、都道府県議の私設秘書というのは、この法律をざる法にしないためにも、絶対に加えた方がいいと思うんです。
 皆さんも自分のお地元の実態を思い浮かべていただきたいんですけれども、中央で、こうして国会で仕事をされている、ある意味では自分の関係の都道府県議が守っているということになると思うんですけれども、いわゆる利権関係の陳情というのはむしろ都道府県議に集中するわけですね。それで、その都道府県議の秘書がその行為を行っているわけです、実質的に。この私設秘書が行為を犯したときに、その対象とならなければ、この法律はほとんど地方では使えないも同然になっちゃうんです。いかがでしょうか。
保利議員 地方の政治の実態というのは、非常に複雑多岐でございますし、多様性に富んでいるように思います。したがいまして、あらゆるものを、地方議員の私設秘書を全部総ぐくりにするということについては、やはり問題が起こるのではないかなという感じがいたしておりまして、そういう意味で外したわけでございます。
 永田町周辺からあっせん利得のいわゆる口ききビジネスと言われているようなものはぜひなくすことが、国民に対しての私どもの努めだということを中心に考えまして、国会議員の公設秘書と私設秘書に限定をさせていただいたということでございます。
 もう少し申し上げれば、やはりこういった問題についての地方の意見というのはどういうふうなものであるか、これはやはり入れるべきであるとか入れるべきでないとか、いろいろな御意見があると思います。我が党の中にもいろいろ意見がありましたが、法律にまとめ上げまして、よりはっきりした形で提出するには、ここのところは差し控えて、国会議員に関連したことだけを入れるというのが妥当性があるのではないかということで、このような提案をさせていただいた次第であります。
阿久津委員 私は、ここの部分については、真剣によく考えていただければ変えられる余地があるのではないかと思うんですね。ぜひこれは各党理事の間でもお話しいただいて、地方議員の秘書も対象にするということについてはぜひもう一回考え直していただきたい。
 先ほどの説明は、何度聞いても納得いかないんです。そうしたら、国会議員の公設秘書だけにすればいい話なんです。私設秘書も加えたということは、国会議員の公設秘書の部分がない形で県議会議員の私設秘書があるわけですから、ただ公設秘書という明らかに特定しやすい存在がないだけで、せっかく御苦労されて、いろいろな説明をされて国会議員の私設秘書まで加えたんですから、地方議員の私設秘書、首長の私設秘書までは無理なく加えられるはずなんです。ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。
保利議員 いろいろな御議論は、当委員会の中で、委員長を中心にした理事会もございますし、いろいろ御議論を賜りたいなという感じはいたしますが、私どもといたしましては、国会議員の公設秘書が非常に公的性格を持っている、それの延長線上に国会議員の私設秘書がある。地方についてはまたいろいろなバラエティーがありますので、それを一括、ひっくるめて対象にしてしまうということは、もう少しじっくり検討をしなければならぬ事項だろうと思っております。
阿久津委員 そうしてしまえば、地方議員の私設秘書はその議員との関連性を打ち消してしまって、それで自分は捕まらないわけですから、やはりこれはざる法になってしまうというふうに私は断言したいと思います。
 続けて、もちろん、成文法が成立した時点以降の事件だったらという仮定の質問をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、もしあっせん利得処罰法に私設秘書が含まれていれば、加藤紘一氏の私設秘書の行為を本法案で処罰、防止する可能性があったのかどうか。同様に、加藤紘一氏も本法律で処罰される可能性があったのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思うんですが、野党答弁者の方に伺います。
中井議員 お答えを申し上げます。
 ただいま脱税事件を中心として調査されておりますから、個々具体的にはなかなかお答えしにくい問題だと思っています。
 ただ、私設秘書だけを対象とするという法改正が成立しておったとしても、契約の締結であるとか行政庁の処分ということに限定がされていますし、請託という一番難しい要件があって、私は、従来の経過を見ても、立件し得たかどうかということについては疑問に思っています。
 今回、御議論の中で、私設秘書の定義、私設秘書を入れる、どうだどうだ、こういろいろありますが、私どもがこの国会に出しております法律の中の請託を外したというところ、それから、公務員の職務全般について対象を広げた、ここの割り切りをぜひ与野党国会議員が御理解いただいて、一歩高い倫理のところへ政治の世界がみずから入っていく、この決意を示さなければならないし、また、そういう改正があれば初めて、お尋ねの加藤さんの事件等は当然対象として処理し得たものだ、このようにも申し上げることができると思っております。
 マスコミ関係者を含めて、議員の皆さん方の、野党案の根幹に流れる割り切り、そして思い、これらをぜひ御理解いただいて、野党案に近い形で修正、成立をしていただければまことにありがたい、このように思っております。
阿久津委員 第百五十回国会の本委員会において、あっせん利得処罰法に関する私の質問の中で、私は、我が国の政治不信は極限に達し、私たち政治家にとって、国民の信頼を取り戻すための時間はもはやそう多くは残されていないように感じると訴えました。
 その後に起こった鈴木宗男議員にかかわる疑惑を初めとする、政治家がかかわった金銭にまつわる数々のスキャンダルを見るにつけ、国民の政治に対する思いは今どのようなものなのか、想像するのも怖いことでございます。国民はいつまでも待ってはくれません。国民の政治に対する信頼を一日も早く回復するにはどうすればよいのか。抜け道づくりや言い逃れに走らず、私たち政治家が本気になって必死の議論を本委員会で行うことが今求められていると思います。
 そのことを最後に訴えて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
赤城委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 まだふなれな点があり、失礼があったらお許しを願いたい。
 私は本日、資料を配付させていただいております。きのうの晩、私なりに整理をしてみましたことを表にしてみましたが、まだまだ不備な点、わかりづらい点があるかもしれませんが、お許し願えればありがたいと思います。
 この問題点、ずうっと研究させていただきましたところ、非常にわかりにくい、またその大もとになる部分が一体全体どこにあるのかと考えた場合に、私はやはり、その職務権限がどういうものであるのかということが非常に大きな問題の柱となってくるのではないかと思います。
 与党案提出者の方々にお尋ねをしたいんですけれども、私は、国政において、国会議員、衆議院議員、参議院議員、そこに絞った形で聞かせていただければありがたいと思いますが、一体全体、国会議員の職務権限とは何であるか、与党提出者の方にお尋ねしたいと思います。
西議員 佐藤委員にお答え申し上げます。
 国会議員の職務権限について具体的に何と何とがあるか、こういうお尋ねだと思います。
 このことに関しましては、国会法、それから議院規則等の法律の規定によって明確に規定をされております。具体的に例を挙げさせていただきますと、各議員における議案を発議する権利、修正案の動議を提出する権利、それから委員会における質疑の権利、さらには演説、討論権、表決権等がございます。
 なお、国会議員の職務権限については、刑法の収賄罪等においても同様に問題になっておるわけでございますが、これまで特段、その範囲があいまいであるというようなことで支障があったというふうには承知しておりません。
 以上でございます。
佐藤(公)委員 今お答えになられたことは、私も調べてみました。ですが、果たして本当にこれだけが職務権限と言えるのか、いかがでしょうか。もっと広い範囲で職務権限というものは存在するのかどうか、その辺のあたり、いかがお考えになりますでしょうか、与党提出者の方に。
西議員 お答え申し上げます。
 今、代表的な例として申し上げましたが、その周辺のことについても具体的にはあろうかというふうに思っております。
佐藤(公)委員 実際問題、規定された職務権限というのは今おっしゃられたようなことがありますが、問題は、この職務権限というのが一体どういう影響を及ぼし、また、どういう範囲で影響を及ぼしていくのか、こういうところが本当は最も大事な部分だと思います。
 私が言いたいことは、ここの職務権限と今おっしゃられたことが、これはもう大変広い範囲になるようにも思えると思いますけれども、この辺の職務権限がどういう範囲でどういう影響を及ぼす、こんなことをお考えになられたことがあるのか。あれば、その範囲というものがわかれば、わかる範囲でお答え願えればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
西議員 具体的にどうというふうなことについては、その都度その都度の犯罪を構成する要件等にかかわる問題だと思っておりまして、あらかじめこういう場合はこうだということは、私としては今のところは想定しておりません。
佐藤(公)委員 ということは、かなりの範囲でいろいろなことがある意味であいまいなままで存在をしているのじゃないか、職務権限というものが。では、なおさら、この法律をつくる大もとのときに、その職務権限ということを明確に議論し、そして明確にする必要性というのが本来あったと思います。あったと思いますけれども、そこら辺、いかがでしょうか。
西議員 お答え申し上げます。
 この件については、実は、非常に熱心な議論が前回の委員会で展開をされております。その結果について、先ほど申し上げたとおりの一例としての種々の権限を挙げたわけでございまして、そのことについては、前回の議論でほぼ私は尽きているのではないか、こういうふうに考えております。
佐藤(公)委員 議論が尽きているというふうにおっしゃいましたけれども、私が改めて今回の改正案を見させていただく中、尽きているというよりも、あいまいにしたまま、職務権限をそのままにした状態、これが、私は、今回の改正、この法律案がざる法になってしまう一番大きな大もとになると思うんですね。そうはお思いになりませんでしょうか。
西議員 先ほど申し上げましたとおり、今回の職務権限につきましては、国会議員初め公職にある者が法令に基づいて有する権限、先ほど種々申し上げたとおりでございます。これに直接または間接に由来する影響力を行使した場合に明確に限定をしておりますので、そのようなことは御心配には及ばない、こういうふうに思っております。
佐藤(公)委員 では、職務権限の中で、例えば、委員会に属する、大臣になる、政務官になる、そういうきちんとした身分というものが明確になれば、その職務権限というのはより一層明確になると思います。
 そこで、私がお聞きしたいのは、職務権限の中で、党の役職というのが一体全体、職務権限というものを持つのか持たないのか。そんな議論があったのかどうか。また、それがあるのであれば、どういう形であり得るのかないのか。こういうことが議論があったのかどうか、いかがでしょうか。
西議員 お答え申し上げます。
 基本的には、先ほど申し上げました国会議員としての身分に基づく権限というのがベースになっておると考えております。
 ただし、党の役職等に関して、他人に表決権を、例えば何人かの人に賛否について影響力を及ぼす、こういう間接的な権限については、影響力という意味ではあるというふうに議論が展開していたというふうに承知をしております。
佐藤(公)委員 ということは、例えばこれは、与党さんの一つの例をとらせていただければ、自由民主党さんでいえば、三役、政調会長、幹事長、総務会長という役職は、十分職務権限があるということをきちんと明確にされたということになるんでしょうか。
西議員 まず、政党役員の権限というのは、この法律案、先ほども若干基本的なことを申し上げましたが、そのことそのものが直接権限に当たるということにはならない。
 しかしながら、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題を通して、国会議員である政党の役員が、先ほども申し上げました影響力を行使して、そして公務員に対してあっせんをする、こういう場合には、政党の役員としての影響力の行使だけではなくて、みずからの国会議員としての権限に基づく影響力の行使を含んでいるというのが通常であると考えられますので、その場合には、権限に基づく影響力には、他の国会議員に対して法案への賛否を働きかける、先ほど若干触れましたが、事実上の職務行為から生ずる影響力も含まれるので、当該議員の権限に基づく影響力の程度の判断においては、当該議員の政党役員としての立場も考慮されることになるであろう、こういう議論があったというふうに聞いております。
佐藤(公)委員 話がちょっとその話のままの延長線上になるんですけれども、ということは、政府と与党というものが二つございますよね。政府というものと与党というのがあります。こういうものが私どもは一体化しているというふうに思っている部分があるんですけれども、御都合主義でこれを使い分けているように思える。私はそう思うんですね。
 そこの部分で、今のお話からすると、政党の役員、三役等も職務権限があるというふうに今おっしゃったと僕は思います。そうすると、そう思うと、政府と、大臣、閣僚、政務官、役職についているのとほぼ同等の扱いの職務権限を、その範囲、内容は違ったとしても持っているというふうにとらえてよろしいんでしょうか。
西議員 今回のといいますか、このあっせん利得処罰法の基本的な考え方は、あくまでも先ほど申し上げたとおりの国会議員として持っている権限、これがベースになっているということが原則だというふうに理解をしております。
佐藤(公)委員 各役職においての職務権限、権限というのがあるのは、これはこれでわかります。でも、これを今あいまいなままにしていくと、どうしてもそこの大もとになるのは、衆議院議員、参議院議員、国会議員の職務権限というのが一体全体、どういうところでどういう分野に及ぶのか、そこの部分がすべて大もとになって、各役職につく権限というのも出てくると私は思うんです。つまるところ、ここの部分でいうと、この法律の職務権限をなぜもっと明確にしないのかなというのをすごく感じる。
 私はこの表を皆さんに見ていただきたいんですけれども、私は思う、今までの法律というのはここの公設秘書を対象にしていた。そして、今回、いろいろな不祥事があったから私設秘書も入れることになった。そうですよね。そういうことからして、今回、法律改正がある。そして、野党案の提出の方には親族も入っている。
 この表を見ていただければもうはっきりしていることは、まさに、次に親族関係の事件がまた出てくる、そうしたならば、与党さんは、いや、今までのは拡大範囲、いろいろなことがある、身分的なことがある、いろいろなことをおっしゃられてまた追加されるんですか。この表を見ればわかるように、親族、そして、私が思うことは、後援会幹部、元秘書そして企業、こういうのも本来含んだ上で規制をしなかったならば、ざる法になるんじゃないですか。
 私は、こういういろいろな書類を読ませていただいて、頭の中で考えてもよくわからない、だから、こういう図にしてみました。これを見ればだれもが、一体全体、本当に私設秘書だけでいいの、親族だってあり得るじゃないと。後援会幹部だって、私はだれだれさんの後援会幹部ですということが、結果的に心理的効果、圧力となって、口きき行為として役人も役所も動くというケースだって間々あると思います。そういうことからしたならば、まさに後手後手にならずに先を押さえるためには、少なくとも、後援会幹部まではいかなくても、親族は入れるべきなんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
西議員 親族のことにつきましては、先ほどもお話がございましたが、私どもも十分議論をさせていただきました。
 先ほどから繰り返しになりますが、罪刑法定主義といいますか、きちっとした議論の対象としてどういうくくりをするかということで随分議論をいたしましたが、親族という範囲の中でもいろいろな立場の人がいらっしゃいます。実際に政治にかかわっている親族の方もいらっしゃいますし、全く縁のないところで生活をしていらっしゃる人もいらっしゃいます。
 そんな意味では、私たちは、今回のこの保護法益を考えますときに、やはり秘書としての立場を有する親族という範囲の中でくくるのが一番正しかろうと。親族というくくりの中ではどこまでいっても、では、ここまででいいのかということは、それもまた言いにくい面もございますし、私どもが考えている公職にある者の廉潔性、清廉潔白性、それから国民に対する、そういうことに対する清廉性を明らかにするという意味では、今回の法案がいいのではないか、私どもの考え方が正しいのではないか、このように考えております。
佐藤(公)委員 確かに、身分犯、身分ということを明確にしたことであるのであれば、当然、親族等も入れるべきだというふうに私は思います。
 図を見ていただければ、身分というのはこの図でいけば横軸で切っているようなものなのです。でも、実は、本当に考えなくてはいけないのは、縦軸で切っていかなくてはいけない。どういうことかといいますと、やはりこれは関係の強さにもよりますけれども、A代議士の親族、A代議士の公設、私設秘書、A代議士の後援会幹部、こういう肩書、これによって、やはり官公庁、依頼先の方がそれを考え動いてしまうことが多くなる。では、A代議士というのがついていることで何でかといったら、そこにおけるA代議士の職務権限というものがどうなのかということをはっきりさせていかなければ、思惑、推測の中でこの依頼先というのも動いていってしまうというふうに私は思います。
 その中で、ちょっと突然の質問で、中井先生、申しわけございません、一九九八年のときに中井先生が一生懸命やられていた入札干渉罪というのがあったと思います。これは、まさに横軸という区切りじゃなくて縦軸の中で、できる限りの一つの歯どめをかけたんじゃないかと思うと、入札干渉罪の重要性、その見方というのが今本当に問い直されているというふうに私は思います。これに関して、中井先生、こういうものを見ていかがお思いになられるのか、御感想、御意見があったらお聞かせくださいませ。
中井議員 先ほどから興味深く佐藤先生の議論を聞かせていただきました。
 ただいまの親族の問題につきましては、野党間も実はいろいろと論議をいたしました。身分的にどう確定するかというところで、私個人は、公職選挙法にございます二親等まで、こういうことを主張いたしました。しかし、現実に、地方の幾つかの首長さんの贈収賄事件で、義理の息子さんのお父さんの会社とかなんか出てくるものですから、これは、現実対応を考えたときにということで、今回、親族という定義で割り切ったわけでございます。
 今回、私どもの法案には、請託あるいは権限に基づく影響というのを排除して、すべての口きき全体に網をかけてございますが、本来、佐藤さんがまだ御当選をなさってないころの自由党で、今、保守党の党首をされております野田さんが政審の責任者で、公共事業入札干渉罪というのを出しました。これはまた猛烈な、おっしゃる割り切りでございまして、他のことは問わない、一番ひどいのは公共事業の入札に関してじゃないかと。これに関しては、口をきいただけで、物を言っただけで政治家全部だめ、こういう法案でございました。
 しかし、私は、これはひとつ考えるべきだ、これが成立するとなったら、日本は汚職なんというのはあっという間になくなるんだろう、こう思っています。その割り切りの中で、請託の問題やら権限の問題やら、私どもは出してきた。
 こんなことを含めて、これから修正、与野党の話し合いが行われることを歓迎はいたしますが、私設秘書がどうだとかこうだとかいうことよりも、根幹、そういうところで割り切っていくんだという発想、これをぜひぜひ与野党共有してお考えを賜りたい、このことを切にお願いを申し上げます。
佐藤(公)委員 もう時間もございません。私は、与党提出の法案に関しては不十分であり、必ず、数カ月後か一年後かわかりませんが、同じような問題で拡大的な事件が起こり、また同じような訂正をするということになれば、ぜひとも拡大して、せめて親族も入れたことでの法案の方に、野党案に協力された方が賢明ではないかと思いまして、私の質問を終わらせていただきます。
 以上でございます。ありがとうございました。
赤城委員長 次に、大幡基夫君。
大幡委員 日本共産党の大幡基夫です。
 この間、政治と金をめぐる事件、疑惑が後を絶たず、とりわけ、鈴木宗男議員の疑惑とそれへの自民党の対応に国民の大きな怒りと批判が寄せられています。
 私は、今、国会が最優先で取り組むべきことは、いわば政治と金をめぐる問題での真相の究明と国会としてのきっぱりした対応、鈴木議員の再喚問と議員辞職勧告決議の採択、そして、口きき政治を根絶するために、あっせん利得処罰法の抜本的改正、また公共事業の受注企業からの献金を禁止する政治資金規正法の改正にあると思います。
 したがって、野党四党は、ただいま審議しているあっせん利得処罰法とともに、政治資金規正法の改正案も共同で提出しています。ところが、与党側は、与党案をまとめていると称して、野党の政治資金規正法改正案をつるしたまま付託さえしていません。私は、国民の期待にこたえるために、政治資金規正法の改正案も直ちに審議することを主張して、あっせん利得処罰法の改正案について質問したいと思います。
 まず、法案の主体となる私設秘書の問題です。
 今回、与党は提案理由で、「一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめ、政治に対する国民の信頼を回復するため、国会議員の私設秘書によるあっせん利得行為についても処罰の対象にする必要があるとの結論に達した」と述べています。一昨年の百五十回国会での、私設秘書を除くという頑強な態度を変えたわけです。一年半前の議論では、この私設秘書を除く理由として三点挙げていたと私、認識しています。
 一つは、法案の保護法益が政治公務員の活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼を保護するところにある、したがって、公務員でない私設秘書まで拡大することは不適当だ。二つ目には、私設秘書については、国会議員との関係の程度は個々さまざまであり、一律に処罰の対象にすることは不適当、つまり規定が難しい。三つ目には、刑法のあっせん収賄罪とのいわばバランスを欠く、こういう説明であったと思います。
 今回、私設秘書を加えたわけですが、このときの私設秘書を除く理由としていた見解が間違っていた、そういうふうに判断して当然いいわけですね、与党案の提案者に聞きましょう。
町村議員 先ほど、阿久津議員と我が方、保利議員とのやりとりの中で、誤りがあったか否かということについてのやりとりがございましたから、余り同じことを繰り返すつもりもございません。
 結論的に言えば、私どもは前回の与党提案のときには当時の考えがあったわけでありますから、当時の考えが誤っていたという見解は有していないところでございます。
 しかしながら、先ほど保利議員も言われたようないろいろな不祥事というものが現実にあった。そういったことを踏まえたときに、提案理由説明に書いてあるようなことから、今回は私設秘書を追加する必要があると私どもなりに独自で考えて、今回、こういう提案をさせていただいているということでございます。
大幡委員 今回の提案理由の中で、「国会議員の政治活動を補佐するという実態に着目すれば公設秘書でも私設秘書でも変わりがない」、これは、一年半前の、公務員でない私設秘書に拡大することは不適当ということとは全く違うわけですね。それから、「国民の側から見れば公設秘書か私設秘書かの区別はつかない」、こういうことも、そういう意味では一年半前の反対理由をいわば百八十度転換させている。私は本当に、この経過に照らしても、深い反省を求めたいというふうに思うんです。
 そして、本当に反省をするならば、あるいは国民に対する政治不信の信頼を回復するというふうに本当に思うんだったら、私設秘書だけの問題じゃなくて、野党案にあるその他の重要な問題点、請託の問題、そして権限に基づく影響力の行使の削除、また、対象となる職務を、契約の締結と行政庁の処分に限るのじゃなくて行政指導も含む問題、あるいは第三者供与の処罰規定を設けることも当然必要であるというふうに思います。この点、野党案の提案者の意見をお聞きしたいと思います。
中井議員 与党さんの今回の対応は、よく言えば改むるにはばかることなかれ、こういうことかと思うんです。でも、悪口を言わしていただければ泥縄で厚顔無恥、こういうところかなと僕は思っておりまして、私設秘書だけ今さら入れられたって、泥縄も泥縄で、いいかげん過ぎる。やはり先ほどからお願いを申し上げておりますような、私どもが、数々の不祥事に対して政界として、また政党として、政治家として、国民の信頼を回復するにはここまで思い切った割り切りをして法の網をかける、この精神をぜひお酌み取りいただきたい、このように思っています。
大幡委員 それでは、この野党案と与党案の違いについて、少し各論に入っていきたいと思うのですが、まず、あっせん対象となる職務の問題です。
 この間、我が国で大問題になってきたのは、口ききビジネスという言葉が生まれるぐらい、公設、私設を問わない秘書による公共事業への口きき不祥事の発覚であります。加藤紘一自民党元幹事長の事務所代表である佐藤三郎氏の場合、公共事業のあっせん行為で何億円もの口きき料を受け取っていた。鈴木宗男議員の問題でも、鈴木議員の政治団体、北海道開発研究会に振り込まれていた口きき料が三年間で三億円もあり、これが裏金としてプールされていたことも判明しています。
 ところが、これらの口ききが、現行法では問題になりません。それは、現行法があっせんの対象を契約の締結と行政庁の処分に限っており、予算措置や公共事業の箇所づけなどは処分の対象にしていないからです。与党が、最近の国会議員の私設秘書による一連の不祥事を重大に受けとめ、政治に対する国民の信頼を回復するというふうに言うんだったら、この抜け道にメスを入れるということがどうしても必要だというふうに思います。
 なぜ、この予算措置や公共事業の箇所づけなどを対象に加えないのか、見解をお聞かせ願いたいと思います。
町村議員 既にこのことについては前回の法案の議論の中で相当の議論が行われているということを私も議事録で拝見をしておりますので、それ以上でもそれ以下でもないと申し上げますが、念のために申し上げます。この契約の締結とか行政庁の処分の段階でのあっせん行為、これが一番特定の者の利益を図るということから、その性格が顕著であろう、そのようなあっせん行為を行って報酬を得る行為は、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性、また、これに対する国民の信頼を失う度合いが大変強いということに着目をしているわけであります。
 これ以外の行為であっせんを行うということ、これは先ほど他の議員のお話もありましたけれども、地元のいろいろな要請あるいは幅広い国民の要請を受けて、それについていろいろな活動をするということ、これは、いわば公職にある者の正当な政治活動の一環でございますから、これをも阻害をするおそれがあるということですから、一定の、そこには明確な線をどこかで引いておいた方がよかろう。今、委員がお話しになった予算措置、例えば道路予算全体で何兆円であるとかいうような措置をすること、これが、道路予算をみんなで頑張ってとりましょう、あるいは狂牛病対策を何かやりましょうということをすべてこの対象にするということになると、およそ我々国会議員の活動というのができなくなってしまう。
 箇所づけという問題もありましょう。箇所づけがあって、そして、例えばどこそこの道路の整備に何億円というのがつくかもしれない。しかし、問題は、その後、その箇所づけをした予算がどこどこの特定の企業、団体に発注をされる、そこから利益を受ける、そこで補助金の契約等が行政庁と企業との間で結ばれた段階で初めてそこが問題になるのであって、予算の箇所づけ、どこどこ高速道路の整備に何百億円ということが直ちにこのあっせん利得罪の対象になるということにはなり得ないと思うんですよね。
 要するに、あっせんを受ける企業といわばそのあっせんをする公職にある衆参議員等々の立場、そこの関係に着目をすれば、今おっしゃった予算措置あるいは箇所づけが直ちにこれは対象にすべきだということにはならないはずであります。
大幡委員 先ほどから、一年半前に議論が尽くされているということを何回か言われていますが、確かに、一年半前にかなりの議論をしました。しかし、一年半前に議論をしてあれだけ頑強に反対した私設秘書の問題というのが、実は野党が言っていた論拠が正しかったということから今回こうなっているわけで、そういう点では、本当に国民の政治に対する信頼性を回復するという謙虚な姿勢に立つならば、あらゆる問題を今起こっている事実に照らして吟味するという態度が私は与党に求められているというふうに思います。
 時間がないので先に進みますが、次に、犯罪要件の問題です。
 一年半前に、これは私も質問したんですが、現行法は、国会議員の権限に基づく影響力の行使を要件にしていますから、公共事業の入札行為に関して、この入札にどこどこの建設会社を入れろ、こう電話で言っただけではだめなんだと。議員の権限、発議権だとか修正動議提出権、表決権、質疑権、国政調査権、こういう権限に基づく影響力の行使がなければ罪に問われない。つまり、質問をやれば罪になる、質問をしなければ罪にならない、こういう仕組みになっているということも前回の議論で明らかになりました。
 今回、鈴木宗男議員の一連の問題で、彼が自民党の部会長や北海道開発庁長官などの地位を利用して恫喝まがいの行為をしていたということも次々と明らかになっています。最近、東京に本社のある建設会社の営業幹部が、我が党の「しんぶん赤旗」の記者に次のように証言しています。
 鈴木議員に何回か公共事業で頼みに行った。この仕事が欲しいとお願いしたら、その場で受話器をとって、入れろと言ってくれた。それで入(はい)れた。後日、お礼のお金を出そうとしたら、秘書は、今は要らない、献金やパーティー券をお願いする、こういうふうに言われた。こういう行為がまかり通っているわけです。かなりの圧力があったと思われても、質問などをしていなかったら現行法では罪に問えない。まさに、野党案のように権限に基づく影響力の行使というのを要件から外す必要があると思うんですが、与党提案者、いかがでしょうか。
町村議員 今、議員が言われたことが本当に事実であるのかどうか確認のしようもありませんから、一方的に言われたことを、それはそのとおりですねと今私がここでお認めをするわけにはまいりません。そういう情報があるんでしょう、私どもはそれは確認をしようがありませんからね。そのことについて、私は今申し上げるつもりもありません。
 また、加藤議員あるいは鈴木議員のいろいろな報道について先ほどお触れになりました。これについても、報道がどう確認をされるのかわかりませんから、これについてあえてまた申し上げることも差し控えたいと思いますが、あくまでも一般論として申し上げるならば、これも前回の質疑の中で随分やりとりがあった、こう記憶をしております。
 いずれにしても、これも先ほど既にどなたかの御議論があったとおりでありますけれども、公職にある者が法令に基づいて有する権限に直接または間接に由来する影響力を行使したときに仮に限定をしないということにしますと、およそありとあらゆる、先ほど申し上げましたさまざまな地域あるいは国民の要望を吸い上げる活動というものが、全部行動範囲が対象になってしまうということになると、先ほど野党の提案者からもお話があった公職にある者の正当な政治活動を萎縮させてしまう、こういうおそれが多分にあるので、やはりそこはあくまでもみずからの権限というものに着目をし、その影響力の行使ということがなければならないんだろう、こう私どもは思っておりまして、そういう意味で、ここは前回、議論をした経緯のままでよろしいのではなかろうか、こう思っております。
大幡委員 与党提案者の提案理由の中に、「一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめ、」というふうに書いているんですが、今の議員の説明だったら、おおよそこの「一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受けとめ、」というふうな印象を私は受けません。
 時間がありませんから続けますが、第三者供与の問題なんです。現行法ではあっせんを行った本人が、例えば議員本人に直接見返りの金品が渡らないと適用対象にならない。口ききが罪に問われないもう一つの要因がここにあると思います。
 鈴木宗男議員の場合、北海道第十三選挙区支部を初め政治資金管理団体である二十一世紀政策研究会のほかに、二〇〇一年に解散するまで北海道開発研究会、東京懇話会、二十一世紀を考える会、未来産業研究会、宗政会、大阪食品流通研究会など幾つもの団体を使い分けて、直接の金の流れがわからないようにしていたというふうに考えられています。全く自由に使える金が第三者供与を抜け道にしてつくられている、ここにも国民の大きな怒りがあります。
 事ここに至って、野党案のように、この第三者供与を処罰の対象にするという点においてもやはり踏み込む必要があると思うんですが、この点は与党提案者と野党提案者の双方にお聞きしたいと思います。
町村議員 私ども、こうした一連の事態というものを真摯に受けとめ、一応、前回の議論をした点も含めてすべて検討をしたわけでございます。その結果として今回の提案に至っているわけでありまして、この一連の事態というものを全く踏まえないで今回の提案をしたというわけではないということは、ぜひ御理解をいただきたい。
 その上で、この第三者供与の問題でございます。
 これについては、前回も既にお答えをしているとおりでありますけれども、外形的には本人以外、全く関係のないように見える人が、あっせん行為との間に対価性があると認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合でも、その財産上の利益に対して本人が事実上の支配力あるいは実質的な処分権を有する、こう認定される場合、それは鈴木さんの何とか何とかという団体がそれに該当するかどうか、これはまさに事実認定の問題であろうと思いますけれども、要するに、実質的な処分権があるという場合には、本人が受け取ったものとして本法の罪が成立する可能性があるということは、既に前回の法案審議で議論をされているとおりでございまして、事改めて第三者供与の処罰規定を設けなくても、現実にその人と処分権があるところに供与されたものについては、本人に供与されたものと考えてこの罪が成立する可能性があるということを既に申し上げていることでございます。
山花議員 お答え申し上げます。
 全く委員の御指摘のとおりでございまして、私どもの法案の方には第三者供与の処罰規定を置いております。特に、公職にある者の場合は、一般の公務員と比べましても、政党本部あるいは支部、政治資金管理団体、後援会、後援団体等、対価としての利益を脱法的に受け入れることの可能な第三者が定型的に存在するわけでありますので、こういった規定を置いた次第でございます。
 後から検討してそのとおりだということが一年後に行われないように、与党の皆様にも御賛同いただけますようお願いを申し上げます。
大幡委員 時間が来ましたので、これで終わります。
赤城委員長 次に、中西績介君。
中西委員 私は、本来ならば、きょう当委員会所属の委員が質問をすべきでありましたけれども、ちょうど個人情報保護法関係と全く同じ時刻に質問が重なるということもございまして、急にこうして代理を務めさせていただきます。
 今までの論議をお聞きしておりますと、大体内容的にはほとんどと言っていいものが出てきたのではないかと思っております。そこで、私は、むしろ今一番問われておる重要な案件についてお聞きをしておきたいと思いますので、総論的なものから二、三お聞きをして、お答えいただければと思っています。
 御存じのように、一九八五年に政治倫理綱領が制定されましてから相当日時がたっておりますけれども、依然として政治構造改革は進んでいないと断言してもいいのではないかと思っています。もともとこの綱領を守れば問題はないわけでありますけれども、そのことが依然として守られていない。しかも、行為規範まで、我々、絶えずこの胸の中には手帳にちゃんと印刷されたものを、みずからがつくられたものを持ち歩いておるというのに、これが守られていないというところに私は今の混乱があるし、不信があるとしか言いようがないと思います。
 そこで、進まないこの政治構造改革、このことを考えますと、小泉総理が当初から言われました聖域なき構造改革だとか、あるいは、失礼ですけれども、自民党政治を破壊してでもということを発言しておられたその一番中核的なものは、私は、この政治倫理綱領をどう具現化するかということでなかったかと思うんです。
 しかし、この点については、もう私がここで申し上げるまでもなく、この一年間に出てまいりました多くの問題がございます。加藤問題あり、あるいは鹿野問題あり、井上議長問題あり、あるいは鈴木問題ありというように、数え上げると数限りない問題が出ています。しかも、それはすべて政官業癒着という構造の中で、まさに金まみれ政治、あるいは口きき政治が依然として横行しておるということを実証しておるのではないか、こう思います。したがって、私たちが今ここで断ち切るべきは、利益誘導あるいは金権腐敗の体質をここで一挙に断ち切るということなしに今の政治不信を払拭することはできないだろうし、私たちが信頼できると言われる政治のあり方というのは出てこないんではないか。
 したがって、先ほどから申し上げるこの政治構造改革、このことがやはり今最も問われておる改革ではないか、こう考えるわけであります。したがって、真の政治浄化を図ろうといたしますならば、政治倫理綱領にもあるように、政治家の良心と責任感をもって、だれからも非難されない法律を制定することが今問われておるんじゃないかということを私は痛切に感ずるわけであります。この点について御同感いただけると思うわけでありますけれども、大変恐縮ですが、自民党の代表でひとつお答えをいただければと思います。
保利議員 大変次元の高いお話をいただきまして、私も大変恐縮しております。
 政治に求められるものは何かということでありますが、先生も長い間政治の世界に携わっておられるわけでありますし、私もまたかなり長くやってきております。常に個人的に頭の中にありましたことは、心の中にありましたことは、いかに高い倫理性を持ち続けるかということ、それが一つの大事なテーマでありました。したがって、いわゆる悪いことをしてはならぬのだ、正しい心を持って政治に当たるのだという気持ちがある反面、憲法にも規定がありますように、国会における、正当に選挙された代表者を通じて行動しというのがありまして、有権者の負託を受けてこの国会に出てきている。そうすると、有権者の負託というのは何だろう、有権者が期待するものというのは何だろう、高い倫理性だけなのか、高い倫理性の反面、強い力で活発な政治活動をやってもらいたいという御意見が恐らく有権者の中にはあるだろうと思うんです。このはざまの中にあって、個々の政治家は、皆苦しんでいるんではないかなと思うわけでございます。
 端的にもう少し砕いて申し上げれば、有権者の期待するものの中には、ずっと次元が低くなるかもしれませんけれども、もっともっと地方には公共事業を持ってきてくれ、そして、公共事業を持ってきたら自分たちに仕事をさせてくれ、こういう有権者のお気持ちがあることは、またこれ、否定できないと私は思っております。そういう中でいかに身ぎれいに処していくかということは、私は大変難しい問題だと思うわけであります。
 我々の身分を確保いたしますためには、選挙に勝たなければなりません。選挙に勝つためには、党としての、あるいは個人としての組織整備を行わなければならない、そこに必要な活動資金のニーズというのが出てくるんであろう、私はそんなふうに思うわけであります。
 私は、昔、経営者をやっておりまして、言われておりましたことは減量経営、できるだけ少ない力で大きな効果を発揮するような減量経営で物事を処置せよということをたたき込まれておりますので、この国会議員としての活動の中でもその考え方を持って仕事をさせていただいておるわけでございます。
 したがいまして、公共事業に対しては、これは必要なものだと私は思っておりますけれども、公共事業に対して特定の人に便宜を与えるというようなことはやってはならぬ。これは、正しい心から、あるいは倫理性のある心から判断していけば、そうなるんだろうと思います。
 いま一つ、ちょっと長くなりますけれども申し上げさせていただければ、政治という、この国会の中では、多数派を占めなければならないという問題がある。多数派を占めていくにはどうしたらいいんだ。それは、やはりできるだけの議員数を集めるということが必要でありましょうし、採決をして多数をとるという形に持っていくために政治集団を結集させていかなきゃならない。そのためのいわば、昔流に言えば軍資金でありましょうし、資金力というのも必要であろう。そういうものが現実の政治の中では求められている局面があると思います。それを合法的に必要にして十分なものを集めるためにはどうしたらいいのか、また、どういうことをやってはならないのかということを考え続けていくということは、国会に課せられた責務だと私は思っておりますので、こうした仕事にも携わらせていただいておるわけでございます。
 お答えになるかどうかわかりませんけれども、倫理性と強い政治力、このはざまでの我々の苦しいところ、ここをどう解決していくか。きれいごとでは済まない問題もあろうかと思いますが、先生の御意見を逆に御開陳いただければありがたいなと。私は私の考え方を申し上げました。
中西委員 時間がありませんので、私、細かくまた触れて、やる持ち合わせはありません。
 ただ一つ、今お答えいただいた中で二つのことを最後に言われました。多数派を占めるための政治集団、そのための軍事資金というようなことまで言われましたけれども、そのことが交付金制度で、これを設置するときに相当論議をされたと私は思うんですね。だから、あのような政党に対する交付金を配置したわけでありますから。
 少なくとも、我々政治集団は政策集団でなくちゃならぬということなんですね。その政策をそれぞれの政党が出し合って、そのことをどう国民に、あるいは市民に理解され、支持を得るかということ、このことがやはり中心的な課題であったからこそ、あのような政党に対する交付金制度が出てきたんだろうと私は思うんです。ですから、まともにすれば、本来ならば、まだ足りないと言うんだったら、それをふやしたらいいし、あのときあのように落ちついたのはなぜかということを考えれば、国民の皆さんの意見だとか批判だとか、そういうものを受けた中で、今とれる体制というのはこの程度なんだということです。
 ですから、我々はそれより以上のことをやる場合には、少なくとも今度は、我々の内部におけるカンパなりなんなりによって、変な金じゃなくて、我々が主張し続けた個人によるカンパによって政党というものをちゃんと維持できる体制をどうつくるかという、その年限がないので、五年間待てとか何年待てとかいうことを今までずっとやってきたじゃないですか。それが今、このように長い間、先ほど申し上げたように一九八五年以来ということになれば、そのころから特にそのことが論議されてきたわけでありますから、そこをやはり忘れたのでは困るというのが私の意見です。
 と同時に、また公共事業にも触れられましたけれども、特にこの公正、公平という、そして政策的にということを、特に地方から出てきておるからと言うけれども、それはやはり少なくとも公平であり、公正な中身で我々が論議をする過程の中で決定づけられていくということにならないと、また政官の癒着だとか業の癒着が出てくるということになるわけでありますから、ここらはまだ言いたいことはたくさんありますけれども、一応そういう、やはり基本的なところをもう少し今お答えになったことにプラスして考えていただかないと、このことは、内部討論なりあるいは皆さんを説得する材料がなくなるんじゃないかと私は思っています。
 したがって、きょう、私、ここに立たせていただいて、こういうところで初めてこういう論議をするんですけれども、そうした問題について、もう一度原点に返った論議をぜひ起こしていただいてこういう法律を決める。本来ならもう法律は要らないのだけれども、皆が守らないものですから一つずつ細かく規定づけていくということになっているわけですから、これを決めるに当たって、もう一度そういう基本的なものを徹底論議をしておいていただかないと、小手先のことだけに終わってしまうのではないか。また誤る、多数で決める、こういうことになってしまうのじゃないかと思いますので、この点だけはひとつ、きょう御出席の、全党いらっしゃいますので、御理解をいただければと思っています。
 それでは、もう一つだけ、国民の期待にこたえるために政治資金もすべてガラス張りにすべきであると思うんです。先ほどもちょっと出ましたけれども、こうした問題について、政治資金問題もこれと同一視した形で論議をされていかないとだめでありますので、この点について、与党側のどなたでも結構ですから見解についてお答えをいただき、そして、野党側のこの点についての見解をいただければと私は思っています。
 以上です。
町村議員 豊富な御経験を有する中西先生からの、また貴重な御意見を今拝聴させていただきました。
 政治資金をガラス張りにすべきではないか。いろいろな経緯の中でその上限が上がったり下がったりしていることがございますが、現在の政治資金規正法、御承知のとおり、入りも出も五万円以上のものについてはその公開が義務づけられている。私どもの政治資金収支報告でも、入りと出について五万円以上のものについては全部領収書をつけて出している、この五万円が高いのか低いのかという議論はまた別途あるのかもしれませんが。私は、そういう意味で、現在の政治資金規正法はガラス張りという観点からするとよくできている法律ではないだろうか、こう考えているわけであります。
 ただ、問題は、表に出てこない形での、巷間言われているところのいろいろな裏金といったような問題、地下に潜った金の移動等々があると、これは幾ら政治資金規正法で、もちろん個々の法律違反ということは当然出てくるんだろうと思いますし、それはもちろん許されるべきことではないんでしょうけれども。要は、いかなる厳しい法律をつくっても、現に刑法でも贈収賄の罪その他いろいろな罪があるわけですけれども、全部それが地下に潜った形で、いろいろな形でまた発覚してくる。所得税法違反もそうでございます。
 ですから、要は、我々国会議員が、先ほど中西議員言われたように、どういう心がけを持って、まさに政治倫理綱領等々で示されているそうした心がけをしっかりと持った上でこの法律を守っていくのか。そうしたしっかりとした考え方があった上で、その上で現在のこの五万円というものは、そういう意味では、私は、ガラス張りという観点からすると、かなりよくできた法律ではないのかな、こんな感じを持っていることだけを申し上げさせていただきます。
中井議員 お答えを申し上げます。
 中西先生御指摘のとおり、私ども全国会議員は、共産党さんは別でありますが、政党交付金を税金の中からちょうだいして、政党活動あるいは議員の活動に使わせていただいておる、このことをもっともっと重く受けとめて、先生のおっしゃるような方向へ努力をすべきであると考えています。
 なお、御承知だと思いますが、今回、私どもは、あっせん利得の改正法案を提出しただけでなく、政治資金規正法の改正また公職選挙法の改正等、四野党共同で提案をいたしました。まだまだまとまらないところ、足りないところもあろうかと思いますが、この政治資金改正法の中で、政治資金の届け出の書類をインターネットで見ることができる、そして現在三年公開ということでありますが、これを五年にする、こういう改正案を提案いたしております。これが成立すれば、先生の御趣旨に十分沿えるもの、このように考えております。
中西委員 時間がもう参りましたので、私は、本来であるならば、具体的な例といたしましても、先ほども論議されておりましたけれども、第百五十国会で審議されました野党案の私設秘書を含む主張に対しまして、与党側は反対をしてきましたね。こういう点について今度追加をする、こういうところまでいったわけでありますけれども、さらにそれを拡大されてやるというこの意味、ここらが、先ほどから基本的な論議を踏まえた上でやっていかないと、ただ法律的にどうだ、制約だとかなんとか細かいことばかり言っておったのではどうすることもできませんので、それを我々が今度、法律的に変える立場にある私たちなんですから、どのようにそこを規制していくかということを、当然、時間をかけてでも私は追及をしていくことが今一番大事ではないかと思います。
 あるいは、あっせん利得処罰法の適用事例を見ましても、わずかまだ一件しかない。では、なぜそうなのかというと、この機能できない理由は何なのかということをここでも論議していただければ、まだまだ多くの問題が次々に出てくると思います。
 ですから、そうしたことを抜きにして、十問ばかりありましたけれども、概略的なものだけで大変失礼でありましたけれども、論議をさせていただきましたことをおわび申し上げて、終わります。ありがとうございました。
赤城委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時八分散会


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