衆議院

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第3号 平成15年4月23日(水曜日)

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平成十五年四月二十三日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 水島 広子君 理事 山口  壯君
   理事 福島  豊君 理事 達増 拓也君
      小野 晋也君    太田 誠一君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      倉田 雅年君    河野 太郎君
      阪上 善秀君    保利 耕輔君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      肥田美代子君    山元  勉君
      石井 郁子君    保坂 展人君
      山谷えり子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   法務副大臣        増田 敏男君
   内閣府大臣政務官     阿南 一成君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        田中壮一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十三日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     倉田 雅年君
同日
 辞任         補欠選任
  倉田 雅年君     小渕 優子君
    ―――――――――――――
四月二十二日
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案(内閣提出第一〇三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案(内閣提出第一〇三号)
 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎さん、内閣府男女共同参画局長坂東眞理子さん、法務省民事局長房村精一さん、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司さん、文部科学省初等中等教育局長矢野重典さん、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎さん、文部科学省スポーツ・青少年局長田中壮一郎さん、厚生労働省職業安定局次長三沢孝さん、厚生労働省職業能力開発局長坂本由紀子さん、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝さん、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長上田茂さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
青山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日は、二度にわたって質問をさせていただきますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、先日、官房長官の所信を伺いまして、早速、私も、官房長官が主宰される青少年の育成に関する有識者懇談会報告書を読ませていただきました。ざっと一読させていただきまして、率直に申し上げて、大変よい内容であると思いました。青少年の現実をよくとらえ、理解している人たちがつくっているなと感じたわけでございます。まずは、報告書をまとめられた御努力に心から敬意を表したいと思います。
 ところが、きょうはこの報告に基づいて質問をさせていただこうと思っていたんですけれども、その議論の前提として非常に信じられないことが起こっております。
 私は常々、子供たちのモラルを育てるためには大人がどう行動するかが重要であるということを申し上げております。政治家の不祥事というのも、子供たちに大きな影響を与えるわけでございます。直近の例では、松浪議員の問題がございます。私も、選挙区の方たちに、なぜあの人はやめないのかとか、なぜみんなはやめさせないのかとか、子供たちに聞かれて困っているんだということを言われまして、本当はきょうは、ぜひ官房長官にそういうときの答え方を教えていただきたいなと思って来たわけでございます。
 そうしましたら、きのう官房長官は、これは記者会見ででしょうか、暴力団も有権者だと言って、それを正当化するような発言をされているということでございまして、これも正直に言って、もう信じられないという感想でございます。
 折しも、これは私の地元の下野新聞なんですけれども、きのうの新聞なんですが、今、栃木県内は暴力団抗争が相次いでいまして、十八日だけでも六件、二十一日には二件と、この選挙をやっているさなかであっても人が殺されたり、そんな状況になっておりまして、ここに「恐怖に震える住民」、こんな大きな見出しがございます。先日は、産業廃棄物関係で市の職員が殺されたりですとか、そのとき私は環境大臣に質問をさせていただきまして、やはり産廃の問題というのは暴力団絡みのことが多いのでというような、そんな答弁もいただいているわけです。
 今、非常に地元で恐怖心が高まっている中、あの松浪さんの問題がございまして、ただでさえ説明に困っていたところ、きょうはぜひ官房長官に伺いたいなと思って来たところ、官房長官御自身がきのうそんな発言をされているということなんですが、まず、ちょっとこの発言の真意を、本当にこれは、私、選挙区に戻って子供たちに説明をしなければいけない立場でございますので、お願いいたします。
福田国務大臣 マスコミというのは、書いて関心を引くようなことを、その部分だけを誇張して書くということはよくあることなんですよね。昨日でしたか、記者会見でそういうような質問がございました。要するに、松浪議員と暴力団とのかかわり合いということで、これが政治的にどういうことかといったようなことですけれども、私も正直申しまして、このかかわりについては、松浪委員もまだ十分説明していないと思うんですね。ですから、政治倫理審査会でこれから説明しよう、こういうふうにも言っているわけですから、それを見ないと何とも言いようがない。
 ですから、私は、前提として、このことについては、そういう質問は出るんじゃないかと思ったものですから、ちょっと昨日の記者会見のやりとりを持ってきましたけれども、新聞に書いていないところについては、全くこの内容についてはわからぬと。わからないんだけれども、しかし、そういうふうな関係がもし政治家としてあるということであるならば、それは明らかにしなければいけないということは前提。そして、その関係がどういう関係なのか、そのことがわからないと評価しにくいじゃないかと。
 ということは、私どもも経験があるんですけれども、暴力団と知らないで、我々は来るもの拒まずですからね。ですから、そういうふうなことで、つき合いじゃないけれども、来る人に対して接遇するとか、そういうことはあるわけですよ。それだけの関係ではないようでございますから、それはそれで、問題はそんなことで済まないかもしれませんけれども、ただ、そういうことをすべて明らかにした上で評価すべきことであるということであって、それだけのことで今結論を出すのは早いんじゃないかというふうに私は言った。
 私も、実は、新聞記事をよく読んでいるわけでもないんです。ですから、私は全然知らないんだということを前提にしてそういう話をした。暴力団も有権者の一人であることは間違いないでしょう。それは事実なんです。だから、そこのところだけ取り上げるとそういうことになってしまうけれども、前後を見てもらえばよくおわかりになることであって、マスコミのいいところ、悪いところはございますけれども、そういうつまみ食いをして評価をしようということは実にけしからぬところだと思いますよ、そういうところは。そういうことによって国会議員を傷つけるとかいうようなことはあってはならぬと私は思っております。マスコミも十分気をつけて、公平に、公正に書くべきであると思っております。
水島委員 私自身もマスコミに傷つけられたこともございますし、おっしゃることを理解できないでもないんです。
 ただ、今回の松浪さんの問題というのは、官房長官がおっしゃったように、たまたま一緒に写真を撮った相手が暴力団員だったということが後でわかったとか、そういうレベルの話ではなくて、松浪さん御本人みずからが、結局、相手が暴力団だということがわかってからも関係を続けていたということも認めているわけですし、少なくとも、私が今まで報道などで追っている限りでは、御本人が認めている。
 事実がそこまで明らかになっているんだからというのが私たちの立場であるわけでございますけれども、私のような一国会議員というか一市民として知っていることを、官房長官が全くわからない、事実がよくわからないとおっしゃるのもまた変な話でございまして、同じ政権与党の中の話でございますので、ちょっと明らかになっていないと思ったら――それが連日報道されているわけでございます。
 政治への関心の低下がこの報告書でも指摘をされているわけですし、メディアでも、政治への関心のなさを正当化するような記事が書かれていて、政治に関心がある方がむしろおかしいというような風潮があるのは、私は大変危機的なことだと思っているわけですけれども、そんな中で、連日、この問題が報道されていて、それに対して、官房長官ならきちんと事実を早く調べて、そしてきちんと今のこの状態を何とかしなければいけないという立場であると思うのです。その辺については、与党内の危機管理ができていないんじゃないんでしょうか。
福田国務大臣 まず、官房長官であれば政治家一人一人のことについてよく知るべきだ、これは違うんじゃないでしょうか。立場は全然違いますよ。私は政党の役員にもついているわけでないし、協力をしていただいている他の政党のことについてとやかく言うべきものかどうか、それも、事実関係が明らかになっているという段階ではないんですから。それは政倫審で自分から説明をしたいと今言っているんじゃないですか。ですから、そこでよく聞いた上で判断できるんじゃないでしょうか。だから、慌てて決めつけることはよくない。
 それから、私がそういうことをどうこう言う立場にはないかもしれぬけれども、私が言えば、それはそれでやはり影響は大きいというように考えます。私は慎重ですよ、そういうことについては。政治家一人一人の、それも、選挙民が選んできているものを、他の選挙民と関係ない私が何で言えるんですか、そんなことを。失礼じゃないですか、選挙民に対しても。そういうことも全体的に考えていただきたいと思います。
水島委員 それでは、ちょっと最初の質問に戻らせていただいて、また、今、官房長官だから一人一人の議員のことを知るべき立場ではないというお答えでございますけれども、とにかく政府・与党内の議員の問題であって、これは、一般の国民から見れば政府・与党の問題として見えているからこそ、与党内の各党の方たちが対応を問われているんだと思いますけれども、それを、党の役員についていなければ、官房長官だったら何でもいいのかというのは、私、ちょっと違うのではないかと思います。
 では、最初の質問に戻りますけれども、いずれにしましても、今の官房長官がおっしゃったことを百歩譲って、きのうのこの一連のことに対して、私、選挙区に戻りまして、子供たちに、松浪さんのことというのはどうなっているの、何でやめさせられないの、暴力団と関係があるんでしょう、官房長官が何かそれを正当化しているようなことを言っているけれどもと言われたときに、どのように説明したらよろしいかというのを、ちょっとわかりやすく言っていただけますか。
福田国務大臣 それは、国会議員のことは非常に重要なことである、まず、選挙民が選んだ選ばれた人なんだということ、ですから、その人のいいとか悪いとかいうようなことについては、これは慎重であるべきであるということ、そして、本人が国会で説明するというのであれば、その説明をよく聞きましょう、その上で判断しましょう、それからでも遅くないでしょう、そういうように言われたらいいんじゃないでしょうか。
水島委員 官房長官がそのようにおっしゃるということ、今記録はさせていただきましたので、また、これは私以外の方たちもいろいろなところで御質問になると思いますので、本日は貴重な青少年の問題についても質問したいと思いますので、この程度にとどめたいと思いますけれども、党の役員にもついていないと官房長官がおっしゃったのであれば、逆に言えば、今度は保守新党の、同じ党の方たちの責任が重いのかなというふうにも思います。
 今、うなずいていらっしゃいますので、ぜひ、この官房長官のうなずきをごらんになった保守新党の方は、本人にこれ以上政治不信を長引かせないようにということをアドバイスする立場でもあると思いますし、本人から事情を真っ先に聞くべき立場であるとも思いますので、本当に一刻も早く、連日、新聞にこのようなことが載るような事態で、ますます政治離れが進んでいくような事態を避けるために、今本当に一人の国会議員として何をすべきかというのを、これは保守新党の方だけではなく与党の皆様にもぜひお考えをいただきたいと思っております。
 さて、こちらの報告書の方に戻りますけれども、まず、私、この報告書は非常によくできていると思ったんですけれども、官房長官は、この報告書についてはどのように受けとめられておりますでしょうか。
福田国務大臣 やっとまともな質疑に戻りまして、ほっとしておるところであります。
 懇談会におきましては、多様な論点があります青少年の育成について、一年間にわたって熱心にしてまた精力的な審議をしていただきました。先般、先週でしたか、報告書を取りまとめいただき、そして御提出いただいたわけでございます。この間、大変いろいろな角度からいい提案をしてくださったと思って、私からも感謝をしているところでございます。
 報告書におきましては、まず第一に、多くのデータに裏づけられた青少年の現状について分析する、それから第二に、年齢期ごとの特性に着目した重要課題、それから第三に、今後の青少年育成の基本的な対応の方向、これらが盛り込まれております。
 今後、政府としては、この有識者懇談会報告書で提言された内容も踏まえた幅広い検討を行い、本年夏ごろまでに、青少年育成の基本理念や中長期ビジョンなどを示す青少年プランを作成することといたしております。そのプランに基づいて、青少年の育成のための諸施策を、関係府省が協力して政府一体となって推進してまいりたいと考えておるところでございます。
水島委員 まともな議論に戻られて安心されているところを、ちょっともう一言言わせていただいて申しわけないんですけれども、私、決して、先ほどの議論がまともじゃなくて今度の議論がまともだという認識は持っておりませんで、どちらも極めてまともな議論だと思っております。
 といいますのは、子供たちが何で大人を信用できないかというと、特に政治家をなぜ信用できないかというと、子供のことになると何だかきれいごとでいろいろ押しつけてくるけれども、では我が身はどうなんだということを見たときに、自分は日ごろすごいことを言っていても、急に、自分のぼろが出てくると、いや、これはいいんだとか、これは後で説明するからとか、こんなことはだれにでもあるんだとか、責任をとるべきところできちんととらない、そういう態度が子供たちには非常に、大人というのは結局身勝手なんだ、自分たちのことを真剣に考えているわけじゃないんだというふうに映るのではないかと思います。
 私自身も余り偉そうなことは言えませんが、少なくとも、子供を育てている中で、子供にこうしてほしいと思うことを自分も実践していこうとすると、これはかなり大変なことですけれども、やはり努力をしなければいけないなと思って、あいさつをする子に育てたいと思えば、自分はだれを見てもあいさつをする。子供をちゃんとありがとうと言える子に育てたければ、子供が何かしてくれたときに自分もちゃんとありがとうと言うとか、みんな家族がそろって食事のテーブルに着いているべきだと思えば、私も急いでいても子供が食べ終わるまで一緒にテーブルに着いているとか、一応そうやって忙しいながらも努力をしているつもりなんです。
 やはりそういう中で子供はいろいろなことを学んでいくんじゃないかというのを、かつて子供だった立場としても、また、いろいろ子供たちの問題を見てきた立場といたしましても痛感しているわけなんですけれども、何か発言されたいようですので、どうぞお願いいたします。
福田国務大臣 おっしゃっていることは私もよくわかります。また、謙虚に申されているな、こういうふうに思います。
 先ほど来の質問は、これは新聞報道を見て、その部分、囲み記事ですか、それを見ておっしゃっていることで、あの囲み記事を見ておっしゃれば、御質問されるのは当然だという感じもしないではありません。ですから、そういう誤った報道をする報道の方の責任も大きいというように思っています。そういうことが政治不信につながるとかいうことであるなら、報道はもっと気をつけなければいけないということです。
 いずれにしても、政治家は、やはり一人一人が自分のことについて十分気をつけるということが大事だと思います。他からとやかく言われてどうこう、こういうことは何も暴力団に限るわけじゃありません、すべての行動においてそういうことを言われる。そうすると、政治家というのは極めて窮屈な存在である。常に人から見られて、模範的なことをしていなければいけない。そういうことであってもいいのかなという感じもしないでもないんですがね。
 そういうことが求められているということになると、やはり選ぶ人も、選挙民の方もそういう人を選ぶべきだというように思うんですね。それは、その時々、国民の価値観というのは変わりますから、いつの時代もそういうことであるのかどうかわかりませんけれども、そういうことを求めるというんだったら、選挙民にも求めなければいけないということは言えるんじゃないでしょうか。
水島委員 選挙民がきちんと選ぶべきだというところは同感でございます。
 ただ、選ぶための情報が余りにも少ない今、何か問題が起こったときに、余り味方同士でかばい合いをするという体質ではなく、情報をすべて公開して、きちんと次の選挙で選ぶ基準となる、そのような情報を公開すべきだと思いますし、くれぐれもきちんとした目によって選ばれていくように、選挙の本質をもう少しきちんとわからせるために、ぜひ公職選挙法全般も見直していく必要があるんじゃないかなと思っておりますが、きょうはちょっと選挙法について話をする場ではございませんので、またこちらの議論に戻らせていただきます。
 この報告書の「はじめに」に書いてあるように、今まで、青少年に関する問題は縦割り行政の中で扱われてきておりまして、その反省の中でこの報告書がまとめられたと理解をしております。
 報告書には、「青少年の育成にかかわる知見には、ある分野の専門家にとって常識でありながら他の分野や一般の人々には知られていないものも多いことも明らかになった。」とあります。これは大変重要な指摘だと思います。
 私は、今まで、教育改革国民会議ですとか中教審の議論を聞いておりまして、本当にこの人たちは現実がわかっているのだろうかと首をかしげざるを得ない体験が多くございました。これは恐らく、私は精神科という領域にいましたので、その分野の専門家から見れば当たり前のことが教育の分野の専門家という方たちにはわかっていないんじゃないかという実感だったわけでございます。
 例えば、今取り上げられている教育基本法の改正の問題につきまして、この報告書を踏まえて先日、中教審から出されました「改正の方向」という中で、矛盾する内容はないと官房長官は考えられますでしょうか。
福田国務大臣 懇談会報告書の内容は、教育を含めて保健、福祉、労働、非行対策など、多岐にわたっております。一方、中教審の答申は、教育振興基本計画の策定及び新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方についての諮問を受けて審議されたものでございまして、検討の対象とするものは異なっているところがございます。
 しかし、両者の内容を見ますと、まず、社会全体が大きく変化していることを踏まえた取り組みの必要性とか、また、職業に役立つ知識・能力の教育の重視など社会的自立に向けた知識や能力の習得の必要性、そして公共へ主体的に参画することの必要性、そういうような多くの点において共通する課題が提示されておりまして、特に矛盾する、そういうふうには考えておりません。
水島委員 検討の対象が異なるとはいっても、相手は一人の子供であって統一された人格でございますので、それは同じ理念に基づいていないとまた問題ではないかと思いますけれども、今、矛盾はないという御答弁でございまして、青少年の問題というのは重要ですので、少し細かく伺わせていただきたいと思います。
 まず、教育基本法の「改正の方向」の中で述べられている「社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養」というところがございますが、これは懇談会報告書の中の「公共への参画」とか「他者の認識と自己の形成」などで述べられている内容と同じような意味であると考えてよろしいと思われますでしょうか。
福田国務大臣 懇談会報告書におきましては、大人への移行があいまいになって自立が困難になった現在の状況を踏まえて、基本的な対応の方向の一つとして、社会的自立の支援の必要性が提言されているところでございます。このためには、乳幼児期からの連続性ある社会的自立の促進が重要であるということが強調されておりまして、学童期における他者の認識と自己の形成や、青年期における公共への参画も社会的な自立のための課題である、こういうふうにされております。
 中教審の答申で言われております「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養につきましても、社会の形成に主体的に参画する意識や態度を涵養することを目指す内容となっておりまして、方向性としては、そごがある、そのようには考えておりません。
水島委員 ということは、個々がきちんと自立をする中で相手のことも考える、どうすると相手の迷惑になるかを考えながら公共心を養っていくという方向でよろしいのかなと今確認できまして、少々安心をいたしました。
 次に、「改正の方向」の中で述べられております宗教の部分なんですが、宗教の持つ意義を尊重することが重要であることを適切に規定するというところがございます。こちらの報告書の中では「自分たちとは異なる価値観への寛容さと多様な価値観を持つ集団が共存する一般社会の規範の習得が必要となってくる。」と書かれております。
 これに基づいて考えますと、宗教の持つ意義を尊重すると同時に、宗教を持ちたくない人の気持ちも尊重する必要があると思いますけれども、一方のみを書き込んだというのはちょっとバランスがとれていないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 中教審の答申におきましては、「憲法に定める信教の自由を重んじ、宗教を信ずる、又は信じないことに関して、また宗教のうち一定の宗派を信ずる、又は信じないことに関して、寛容の態度を持つことについては、今後とも教育において尊重することが必要」というふうにされておりまして、宗教を信ずることに対してのみ一方的に尊重する内容とはなっておりません。
 また、中教審の答申におきましては、二十一世紀の社会の最も大きな課題の一つとして、「様々な文化や価値観を持つ多様な主体がこの地球に共生すること」を挙げております。
 こういうことから、異なる価値観への寛容さなどの点も含めまして、懇談会報告書と矛盾するとは考えていないところでございます。
水島委員 確かに、中教審の答申そのものを見ますと、今おっしゃったように、「信じないことに関して、寛容の態度」というのが書いてあるんですけれども、なぜかこれが、概要版の囲みになりますとそこの部分が落ちていまして、私はこれは非常に見やすいなと思って愛用しているんですが、中教審が出している教育基本法と教育振興基本計画になりますと、宗教のところは、信じないことを尊重するというようなところは完全に抜け落ちておりますので、どうしてそうなってしまったのかなと思っているのです。
 とりあえず、内容としては、それでは宗教を信じないことに関しても、もちろん尊重されるという内容でよろしいと、官房長官はそう理解されたので、矛盾がないと思われているということでよろしいんでしょうか。
福田国務大臣 今ごらんのパンフレットにも宗教に関する寛容の態度、知識、こういうふうに表現しているところでございまして、これはそもそも、先ほど私が申し上げました趣旨と同じであるというふうに考えていいと思います。
水島委員 私が中教審のものに何もとやかく言う立場ではないのかもしれませんが、それだったら、私は、宗教に関する寛容の態度や知識を適切に規定するぐらいで十分であって、その後に、殊さらに、宗教の持つ意義を尊重することが重要であることをというところだけ書き出しているというのはちょっとバランスがとれないと思いますので、これはまたぜひ御検討いただきたいと、きょうは指摘をさせていただきたいと思っております。ただ、官房長官がそうではないとおっしゃってくださっているので安心をいたしまして、次に進ませていただきます。
 今回の報告書は、先ほど官房長官もおっしゃったように、根拠となる調査結果を資料として添付しておりまして、データに基づいた議論であることが明らかになっております。これは私がかねてから求めてきたことであって、大変結構なことだと思います。
 一方、中教審の答申などにはこのような資料が添付されておりませんで、一体何を根拠にそのような結論が出ているのかわからないのですけれども、官房長官は何か御存じでしょうか。
福田国務大臣 詳しく知っているわけじゃありませんけれども、中教審におきましては、文部科学大臣の諮問を受けまして、必要な資料などを参考としつつ審議が進められた、こういうふうに考えております。
水島委員 その資料が一体何だったのだろうというのが大変気になるわけですけれども、ちなみに、これが中教審の答申、そしてこれが今回の報告書。厚みがこんなに違いますが、本文の部分というのはほとんど同じ厚みで、こちらの報告書は、残りは全部資料でございます。これらの資料に基づいて結論をまとめたと。ほとんど同じ厚さのこちらの中教審の答申にはそのような部分がないんですけれども、これは本当にそのような資料に基づいてつくられたものなんでしょうか。これは、きょう文科省に来ていただいておりますので、お答えいただきたいと思います。
近藤政府参考人 お答えいたします。
 中央教育審議会におきましては、教育現場の実情に詳しい教員、校長を初め、いろいろな方々、有識者に、委員として審議に参画をしていただきました。また、教育や教育を取り巻く現状に関する資料等、各種の資料、データをもとに、また、教育関係者からのヒアリングですとか国民からの意見も参考にして、答申を取りまとめていただいたところでございます。
 なお、そういった資料、データがついていないではないかということでございますけれども、審議の経緯、現状分析の際には、常に大変多くの資料、きょう一つ持ってまいりましたけれども、教育の現状をめぐる資料でありますとか、その他各国の教育基本法に関する資料、あるいは、これまでの各種審議会等の提言、報告、こんな分厚い資料でございますけれども、審議会では常に卓上に置きまして、そういったものも参考にしながら審議をしてきたわけでございます。
 なお、中間報告では、第一章の「教育の課題と今後の教育の基本的方向について」は、答申よりもかなり詳細に記述をしていたわけでございますが、答申につきましては、多くの国民に読んでいただくために、中間報告を要約し、重複を整理して、教育基本法等のあり方をできるだけ簡潔でわかりやすくしたい、こういう方針で答申を取りまとめていただいた、こういったことから、最終的には現在のような記述になっているというふうに承知をいたしております。
水島委員 今の中で資料としてお挙げになったものは大体、人の意見、いわゆる経験者の意見とかそういうものが主であって、一方、こちらの報告書の中では子供そのものの実態を資料として挙げておりまして、なぜ一人で食事を食べなければいけないのかとか、そういう、子供がなぜ今のような状況に置かれているかという現状をきちんとデータとして並べているわけでございます。データとしての信頼性はこれからきちんと検証されなければいけないと思いますけれども、では、これと同じような資料を文科省は出せますか。
近藤政府参考人 出せますかという御質問があれでございますが、そのときには大変多くの資料を配付いたしまして御議論いただいたわけでございますし、それから、確かに答申にはそういったものは添付しておりませんが、近々、中央教育審議会で実際に配付されました資料を資料集として文部科学省において取りまとめて、これまた国民の皆様方に見ていただきたい、そういう努力はしてまいりたいと思っております。
水島委員 私が申しておりますのは、例えば、この報告書であることを述べるときに、その根拠となった資料をきちんと肩に引用文献として載せているわけでございまして、これは、何か論文を書くときには当たり前のことだと思うんですけれども、そのような姿勢がこちらにないのではないか。みんな参考にした、参考にしたと言われても、一体どこをどういうふうに参考にしてこういう結論が出たのかということが検証できないようなことではだめではないかということは、私はかねてから、文科省が物を決めるときに言っているわけでございます。
 前半の時間が終わりますので、最後に官房長官に、こういうのは、やはり子供たちの現状やデータに基づいて施策を決めていくことがよいことなんだというふうに、ちょっとその姿勢だけ最後に明確にしていただいて、前半の質問を終わらせていただきたいと思います。
福田国務大臣 特定の審議会などだけでなく、一般に政策の企画立案に関しては、必要に応じて幅広く各種資料等を参考にすることが望ましいと考えております。青少年問題というのは非常に幅の広い分野をカバーしなければいけないということもありますので、特にそういうことは求められていると思っております。
水島委員 データを尊重するという姿勢をおっしゃっていただけたと思いますので、前半の質問はここまでとさせていただいて、また後半、よろしくお願いいたします。
青山委員長 達増拓也さん。
達増委員 青少年の育成に関する報告書を私も読ませていただきました。今度は、それをもとに政府として青少年プランを策定するということで、国としての青少年政策の大きな節目かなと思うのでありますが、改めて、国と青少年の関係、また政府と青少年の関係というのはいかにあるべきか、国や政府が何をすべきかを考える場合に、憲法という要素を捨象するわけにはいかないんじゃないかと思うのです。
 青少年の育成に関する報告書の中で、青少年のあるべき姿、こういう大人になってほしいというところで、自立した個人でありますとか国際化に対応とか、そういうことが書いてありましたけれども、政府が国の施策としてやっていく場合には、やはり憲法の担い手として、主権者として、日本国民として確立していくことが青少年政策の目標になるのではないかなというふうに考えるわけです。
 そこで、質問なんですけれども、憲法の第一条、これは「天皇」という章の冒頭でもありまして、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とあります。「主権の存する日本国民」、これはいわゆる象徴天皇制の根拠であると同時に、国民主権を高らかにうたった、憲法の最も大事な部分の一つでもあるんですけれども、ここで言う「主権の存する日本国民」に青少年は含まれると解されるのでしょうか。
福田国務大臣 おっしゃっておられます憲法第一条には、当然、青少年も対象とされているものと考えております。
達増委員 「国民主権」というときの「国民」には、当然、青少年も入るわけで、いわば生まれたときから国民であり、生まれたときから主権者であり、無論、発達の段階においていろいろな権利義務関係が制限されたり、例えば選挙権、先ほども有権者という言葉が議論されましたけれども、法律で一定の制限をすることはありますが、ただ、憲法で言う主権者は青少年も含まれるわけであります。
 この第一条に関連しまして、天皇のその地位は「日本国民の総意に基く。」とあるわけであります。したがって、もし青少年が天皇というものが何だかよくわからない、青少年という層全体が天皇を知らない、関心がない、何それとかいう状態では、憲法第一条が守られていないことになると思うのです。
 つまり、主権者である日本国民の総意に天皇の地位が基づいている、それを確保していくためには、青少年に対しても、天皇というのがそもそもどういうものなのか、今の天皇陛下がどういう方か、その前の方はどういう方か、さかのぼって、どういう由来あるいは由緒があるのか、そうしたことは政府として青少年に広く知らせていくべき、理解を求めていくべきと思うんですけれども、この点について、どうでしょう。
福田国務大臣 日本国民たる青少年が憲法を理解し、そして、その趣旨にのっとって社会生活を営むということは、これはもう当然であり、また重要なことだと思います。
 憲法第一条を含め憲法全般について、青少年が発達段階に応じて理解を深められるよう、学校教育などを通じまして必要な配慮はなされているもの、こういうふうに承知しております。
 なお、青少年を主な対象としたものではありませんけれども、宮内庁のホームページにおきまして皇室の紹介を行っているほか、政府広報誌においても、皇室の御動静や宮中一般参賀の案内等の情報を掲載するなど所要の広報には努めておるところでございます。
達増委員 憲法一般についてということで全般的な御答弁がありましたが、もう少し一歩ずつ質問をしていこうと思っていたんですけれども、天皇の地位の問題、主権の問題の次は、平和の問題であります。
 憲法九条にも「日本国民」という主語が書かれておりまして、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」この「日本国民」に青少年というのも入るのかどうか、あわせて、そういう青少年にこの憲法の趣旨、平和の趣旨を政府として広報していくことの意義について質問したいと思います。
 これは、特に今、世界各地の紛争等で子供が戦闘員になったりとか、今回のイラクでの戦争の前にも、赤ん坊がおなかに爆弾を巻いた写真が世界に広く流布されたりしまして、こういう青少年と平和の問題というのは、今、極めてリアルな問題であるという背景もありますので、質問をさせていただきます。
福田国務大臣 九条にも青少年は対象となっているものと認識をいたしております。
 今御質問のように、イラクのことを例に挙げられました。我が国も、六十年前にはそういうことがあったんです。私自身も、当時、小学校二年生。でも、やはり竹やりを持って、攻めてきたならば自分たちもやるんだ、こういうようなことを教えられてきたわけですね。そして、それを信じたわけです。ですから、そういう意味においても、やはり教育というものの大事さ、そういうものはつくづく感じておるところでございます。
達増委員 次は、人権について、やはり同様の質問であります。
 第十二条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」この「国民」もまた青少年を含むのかということであります。
 これは、憲法が保障する自由、権利の受け手としての国民が規定されているとともに、自由と権利を保持し続けるための不断の努力をしなければならない主体としての国民、同様に、権利を乱用してはならない、そして常に公共の福祉のために利用する責任を負う、そういう主体としての国民が規定されているのでありますけれども、この「国民」にもまた青少年が含まれるのか。
 特に、受け手としての国民についてはいいんですが、自由と権利を保持し続けるための不断の努力をしなければならない国民、また、自由、権利の乱用をしてはならない、公共の福祉のために利用する責任を負う、そういう国民、もし青少年がそれにも含まれるのであれば、いかにして青少年に対してもそういう不断の努力や責任というものを確保していくのか、政府としての考えを伺いたいと思います。
福田国務大臣 憲法十二条の「国民」には青少年がもちろん含まれていると認識いたしております。ですから、国民としてその責任を、その年齢、また状況によって果たすべきものは果たす、そういう義務を負っているというように考えております。
達増委員 国として、そして政府として、青少年に対していかなる施策を講じていくべきか、これは税金を使ってやることでもありますし、むだなことはやれないのでありまして、やはり憲法という背骨を持って考えていかなければならないんだというふうに考えます。
 今、国民主権、平和主義、基本的人権の三本柱に即して質問をしたんですけれども、もう一つ、二十七条、これは勤労の権利と義務に関する規定であります。ここにも「すべて国民は、」というふうに出てきます。「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」ということであります。
 今、大変な不景気、失業率がどんどん増大しておりまして、なかなか働きたくても働けない、こういう時代でありますからこそ、憲法があえて、すべて国民は勤労の権利を有していると規定していることは、憲法尊重擁護義務を持つ国会議員また国家公務員は改めて肝に銘じなければならないことだと思います。
 そこで、この勤労の権利に関してでありますが、給与労働者、給料をもらって働くことについては、雇用する側の権利でありますとか自由もありまして、いろいろ複雑な問題がありますが、起業ですね、みずから経営者となって働く、そういう権利、これは、やる気と能力のある国民であれば、たとえ青少年であれ、ベンチャービジネスとか起業、経営にどんどん乗り出していくことは広く認められなければならないし、そういうことがやりやすい環境をつくっていく、これも政府として考えていかなければならないことだと思います。
 若者が起業することをよりやりやすくしていくような政府の政策、今、どのような施策をとられているのか、また、方向性を伺いたいと思います。
西川大臣政務官 若者の起業の取り組みについての政府の方針でありますけれども、ことしの二月一日にスタートさせていただきました中小企業挑戦支援法でありますけれども、順調にいっていると私ども受けとめております。
 状況を申し上げますと、先週の金曜日時点で締めてみましたけれども、確認申請件数千七百六件出ています。そのうちの七百六十一件が、もう会社設立手続が完了しました。
 多くの方々が起業に挑戦をしていただくということで支援していこう、こういうことでやっていますが、特に申し上げたいのは、資本金一円でもいいよという話でスタートしたわけでありますが、株式会社の確認申請が、七百五十七件のうち十三件が一円、こういうことです。それから、有限会社が九百四十九件申請がありましたけれども、二十七件が一円ということでスタートした。それで、届け出をやりまして手続が完了したのはどのぐらいあるかといいますと、千七百六件のうち七百六十一件、一応届け出が完了したということであります。
 先生が御指摘のように、それでは若者がうまくやっているかというと、状況を見ますと、なかなかそういうわけにもいきませんで、若い人は確かに多いのでありますけれども、新しいこの挑戦法で多いのは、三十代が一番多い。その次に五十代、そして間をとって四十代で、二十代はその次、四番目、こういうことになっています。
 それで、私どもは、インターネットを通じてこの状況を知らせる等の事業もやっていますが、特に、ごらんになったかもしれませんが、格闘家のボブ・サップ氏を使って、日本の皆さんは挑戦が足りない、こういうことで宣伝をしてわかってもらおう、こういうことでやっておりまして、そのほかにも、国民生活金融公庫から五百五十万、無担保、無保証で貸せるとか、ありとあらゆるものをやって起業家を育てていきたい、こういうことで取り組んでおります。
達増委員 起業については、シルバー起業といって、既に会社をやめられた年配の方が起業するようなこともまた社会に有用ですし、一方では学生ビジネス、そういう若い人たちが、若い人たちにしかないような感性や進取の気性でどんどんビジネスをやっていくということも社会にとって必要だと思います。憲法では、「児童は、これを酷使してはならない。」と書いているんですけれども、酷使してはならないということであって、やる気と能力さえあれば児童でもビジネスをやってもいいんだと思うんですね。青少年の可能性を大きく開いていくような、そういう発想が政府の施策にも必要なんだと思います。
 さて、ちょっと時間がありますので、官房長官に、松浪問題に関するきのうの、暴力団も有権者だというコメントに関して質問をさせていただきます。
 松浪議員について、これも、私も報道ばかりでよくわからないんですけれども、問題となっている人から秘書給与の肩がわりを受けていた、そして、問題になっている人に関する警察の捜査情報を問い合わせていた。
 暴力団員も有権者だと言う場合、政治家と有権者の関係で、そういう秘書給与の肩がわりを有権者から受ける、有権者から頼まれれば警察情報も問い合わせる、そういう有権者という文脈、流れの中で暴力団員も有権者なんだと言っていますと、何か、そういう秘書給与肩がわりとか警察情報取得全体を、政治家というのは有権者とはそういうものなのだと肯定しているようにも聞こえるんですけれども、そういう御趣旨で発言されたのでしょうか。
福田国務大臣 私は、こういうことも申し上げた。私は事実関係をよく知らない、わからない上で申し上げる、相手がだれだかわからない、そんなこともあるかもしれないし、最初から承知した上でそういうことをしていたのかどうか、事実関係をはっきりさせなければいけない、その上で判断すべき問題である、それ以上のことを申し上げるのは困難である、こういうふうに言っているんですよ。
 ですから、正直言って、私も事実関係について、新聞でさっと斜め読みしている程度でございますから、それが本当かどうか、それはやはり本人が弁明する必要があるんだろうと思いますね。その上で判断をすればいいので、一国会議員の身分を、新聞記事でああいうふうに書いたからといって、本人が弁明しないで、そして、記者会見したかもしれぬけれども、十分なことをしていない、だから弁明したいというふうに言っているんですから、それをする機会を与えて、その上で判断をすべき、私は、そのぐらい国会議員の身分というのは重いものだと思いますよ。そのことを我々もよく考えた上でいろいろ評論しなければいけない、こういうふうに思っています。
達増委員 私も、あえて、官房長官のそういうコメントがあったので質問をさせていただいたわけでありまして、国会議員の身分について、また国会議員のあり方については、慎重でなければならないといいますか、これも憲法なんだと思うんですね。やはり法の支配というのを憲法は原則としているわけでありますから、それに従ってしかるべき対応が求められるんだと思いますし、また、憲法の、国会議員は全国民の代表である、国会が国権の最高機関なんだということ、そういったことをやはりマスコミを通じて国民に対して、それは当然青少年も含むわけですけれども、常にそういう憲法の趣旨が政府から国民に伝わっていくような、そういう対応を政府に求めて、私の質問を終わりたいと思います。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 私、きょうは児童虐待の問題で質問をさせていただきます。
 児童虐待防止法が三年前にできまして、関係者の努力は相当進んでいるわけでございます。しかし、一方で、悲惨なというか深刻な事例も後を絶たないわけでございます。
 最初に、この児童虐待問題について、官房長官の御認識を伺っておきたいと思います。
福田国務大臣 児童虐待の動向を示します一つの指標と考えられます児童相談所における相談件数、これは数年、急増しておるのです。虐待の防止対策は喫緊の社会問題である、こういうように考えております。
 政府といたしましては、発生予防から早期発見、早期対応、児童の保護と自立に向けた支援などを柱として、医療、保健、福祉が一体となった施策の実施に努めているところでございます。
 現在、児童虐待防止法の附則において、施行三年後、すなわち本年十一月でございますが、見直しが規定されておりますので、これを一つの契機として、医療、保健、福祉、法律などの専門的見地から制度全般にわたって解決すべき課題の整理を行うために、社会保障審議会児童部会において児童虐待の防止等に関する専門委員会を設置し、昨年十二月から審議が行われているところでございます。
石井(郁)委員 私、最近、家庭裁判所調査官研修所というところからこういう冊子が出されまして、本当にそれぞれのところでいろいろな努力がされているというふうには思ったんですけれども、「児童虐待が問題となる家庭事件の実証的研究 深刻化のメカニズムを探る」ということで、家庭裁判所で扱っている事例を専門家を交えて分析されたということで、その報告だと思うのです。
 その中で、虐待が生じる要因、背景が一番問題ですから、その家族の特徴ということで第一に挙げられていたのが、やはりストレスが多いことだということなんですね。その中身として、経済的に困窮している、家族の成員のだれかに身体欠陥、精神疾患があること、夫婦間や親族間に紛争があることなどが挙げられているのです。
 私は、この点は、虐待防止法のときにもいろいろなことを研究しましたけれども、一九九七年に全国児童相談所所長会の調査というのがございまして、そのときにもやはりこういう指摘があったのです。まず、虐待者の年齢が、二十歳代で三〇%、三十歳代で三八%ですから、六割以上が二十代、三十代だと。比較的若い世代ですよね。これが注目される。それから、就労状況なんですが、七割が無職や転職を重ねる者だと。パートなど不安定就労なんですよ。だから、やはり生活の不安、若年層の失業問題、こういうことを考えないわけにいかないと思うのです。
 私は、たまたまといいますか、昨年の臨時国会でも、この青少年問題特別委員会では、青少年の未就労あるいは不安定雇用問題で、若干、官房長官に質問をさせていただいたところでございますが、引き続いて、この若年層の失業問題も大変重要な課題だと。実際、二〇〇二年平均でも九・九%ですから、一般に言われる失業者五・三%、四%ということからするとはるかに高い。これはもう本当に、日本社会の不安と日本社会の将来にかかわる重大問題なんですね。
 だから、重ねて、この若年者の雇用問題の解決について、やはり内閣府、官房長官としての御決意を伺っておきたいと思います。
福田国務大臣 一言申し上げて、あとは内閣府から対応させます。
 若年者対策、今回、青少年問題懇談会で対象にしたのは三十歳まで、こういうことなんですけれども、ただいまお話のございました中で、三十代も多い、こういうふうな話。三十代というと三十九まであるわけで、これは青少年でもないし、もう立派な大人である。二十から上は成人ということにしているんですけれども、そういう大人、成人になった以降の大人を若年視、青少年視するというのも一つ問題だと思うんですよ。やはり二十になったら、例えば選挙権だとかそういうことも与えられているわけですから、そういうように社会が見ないで、大人として見るということも必要なんだろうと思うんですよね。そういう観点を一言申し上げたいと思います。
 あとは内閣府の方で申し上げます。
石井(郁)委員 きょうは、特にその就労問題で質問を今後続けるつもりはありませんで、ただ一言、長官としての御決意を伺っておきたかったということでありますので、それは結構でございます。
 主題は虐待問題でありまして、次の問題は、そういう生活の不安に加えて子育ての孤立化ということが言われております。
 これは長官の所信でもこのように述べておられました。「周囲や地域からの支援が受けにくい状況の中で、親が子育ての悩みを抱え込んでいる問題があります。」ということがありまして、その点の認識は一致するわけでありますが、それでは、その子育ての孤立化に対してどういう施策が求められているのか。子育ての支援体制ということも言われるようになりましたので、それについての政府としての基本的な考え方と方向性、それをちょっとお聞かせいただければと思います。
福田国務大臣 核家族化が進行いたしまして、また、地域コミュニティーの弱体化もございます。家庭とか地域を取り巻く環境の変化を背景として、子育て家庭の孤立、負担感が増大しておりまして、共働き家庭のみならず、すべての子育て家庭における子育てを地域において支援し、子育てをしやすい環境の整備を図る、これは政府としての急務であると考えております。
 そのため、政府は、平成十三年七月に、「仕事と子育ての両立支援策の方針について」を閣議決定いたしました。さらに、本年三月には、次世代育成支援に関する当面の取り組み方針を取りまとめましたほか、国、地方公共団体また企業等が一体となって集中的、計画的に次世代の育成を支援するというための新法案を今国会に提出したところでございます。
 今後とも、引き続き子育て支援策の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
石井(郁)委員 虐待問題では、発生予防、それから早期発見、それから被虐待児の保護、そういう三つに分けて考えられるようになっているわけですが、本当に虐待に至ったら大変ですけれども、至る一歩手前のところで相当な問題を子育て世代、子育て中の母親は持っているんじゃないかということがありまして、私は、やはりその発生予防の面での施策が非常に大事だというふうに考えているのです。
 そういう点では、やはり子供にも親にも双方にケアしていくシステムということが考えられないといけないというふうに思っております。
 それで、具体的に伺いたいのですが、これは厚労省に伺いたいと思います。
 保健所あるいは保健センターというのがそれぞれ地域にありますから、それが大変大きな役割を果たすというふうに思いますが、その保健所及び保健センターの役割、あるいは、今後、どういう位置づけで考えていくかということで、厚労省のお考えをお聞かせいただければと思います。
岩田政府参考人 委員おっしゃいますように、児童虐待問題について保健センター、保健所が果たす役割は大変大きいものがあると思うのです。
 まず一つには、育児不安といいましょうか、育児の負担感を取り除くために、育児や子供の健康についての相談に乗ってあげるということ、そして二つ目には、潜在的なリスクのある御家庭を早く把握して、そのリスクを軽減するための支援をすること、そして三番目には、万が一、虐待の事実があるときに、それを早く発見できる立場にもあると思いますから、そういった機能を保健の機関というのは担っているというふうに思います。
 今後とも、これらの機能が十分発揮できるように、そのあり方についてさらに考えてまいりたいと思っております。
石井(郁)委員 新聞報道なんかを見ておりましても、今、子育て中の母親というのは、こういうしかり方をしたらこれがもう虐待ではないのかなとか、子育ての中でついいらいらしてしまうだとか、そういうことを全部保健センターに寄せられたりして、大変、保健センター自身もパンク、電話など相談をしているという話も聞きますけれども、今後とも、その辺を充実させていっていただきたいというふうに思います。
 次の問題なんですが、現行法では、子供の保護、特に初期対応に偏りがちではないのか、だから、発生予防から最終援助に至るまで、あるいは再統合に至るまで、全体的な課題というのが十分示されていないんじゃないかという御意見もあるのです。
 その点は、法律の成立・施行への評価のアンケートというのがありまして、これも政府からの調査で見たんですけれども、それによりますと、措置後の保護者への相談所による指導権限が強まる効果があるだろうかという問いに対して、そう思わないという方が、何と、六五%あるのです。それから、措置後の子供への援助・治療システムが発展する効果があるかどうかと聞きますと、やはり、思わないという方が六〇%と、かなり高く出ているんですね。私もなるほどというふうに思ったんですけれども、これは「児童福祉司の職務とストレスに関する研究」ということで出ておりまして、それを見せていただきました。
 一方で、防止法施行後の問題の一つとして言われるのが、虐待死ということで報じられますけれども、児童相談所が関与しても防げていないというケースがあって、大変社会問題にもなった。私、これは決して児相を責めているということではなくて、やはり、全体としてケアするシステムがどう機能しているかという問題だと思うのです。
 だから、いろいろな機関が関与していても、最終、そこまで、虐待死までいってしまうということについては、やはりどこかでそこを考えなきゃいけないということがあるのです。だから、言われているように、発生予防から発見、保護、そして親と子供への全体的な保護のシステム、ケアのシステムというものがどうあるべきなのかということについて考えていかなくちゃいけないんじゃないかと私は思うんですが、そういう点での基本認識がおありかどうか、問題を感じていらっしゃるかどうか、お聞かせいただければと思います。
岩田政府参考人 平成十二年の十一月に児童虐待防止法が施行になりまして、それを契機に、一般の国民の虐待問題についての理解は大変高まったと思いますし、児童相談所、その他の関係機関・施設の関係職員の認識、努力も大変高まっているというふうに思います。
 委員がおっしゃいましたように、この問題解決のためには、予防から早期発見、早期対応、そして保護、アフターケアといういわば三つの段階の課題があると思いますけれども、法律自体も、主として扱っているのは早期発見、早期対応のところでございますし、関係機関が、施行後二年ちょっと経過したこの段階で評価いたしますと、早期発見、早期介入、そこのところは随分経験が蓄積できてきたと思いますが、やはり予防のところと、それから第三の段階といいましょうか、後の保護、ケア、そして自立の支援のところ、これはまだまだ課題があるというふうに考えております。
石井(郁)委員 今後、そういうことをどうしていくかということが共同の課題になるかと思うんですが、この点で一つ参考にできるのは、例えばイギリスなんですね。イギリスで児童虐待防止制度があり、理念があって、かなり先進国の一つになっています。
 そこを見ますと、政府がガイドラインをつくっている。そのガイドラインで進めていっているんですけれども、その中に、視点として、子供と家族への援助、サービスの視点、そういうのが貫かれている。それを進めるのがソーシャルワーカーだ、専門職としてのソーシャルワーカーがきちんと配置されているということですね。そして、子供についても、文書でそれぞれのケースの保護プランが示される。目標、各機関が提供すべきサービスの内容が決められる。それらが法的な義務にもなっているということを知りまして、なかなか、そういった一つの体系を持っているなというふうに思ったのです。
 それで、ソーシャルワーカーという方々が日本の十倍、二十倍といらっしゃるという点でも大変手厚い児童虐待防止の体制、システムになっているなというふうに思うんですね。そういう点は、今後、私たちもいろいろと細かに考えていきたいと思っています。
 さて、そこで、今の流れから人の問題に行くわけですけれども、この問題を考える、あるいは対応する専門職の皆さんがどれだけいらっしゃるか、そこがやはり重要だと思うのです。御存じのように、日本では児童相談所の福祉司の方が主に対応していらっしゃるわけですけれども、大変少ないということは、この防止法ができたときから言われておりました。
 これは、たまたま、雑誌「世界」の二月号がその特集をしておりましたので見ましたけれども、もう心身ともに極限状態だ、もうバーンアウトで気力が出ない、いつまで続けられるか不安だと。だから、児童相談所にどうも、先ほどおっしゃられましたように、通告が本当にウナギ登りというか、相当な数が寄せられていますし、一つ一つの対応で本当に大変になっているという状況があります。
 私は、児童相談所の役割、これは大変重要なことでありますので、防止法施行後、若干増員はされていますけれども、今、この座談会にもあるように、もうパンク状態だということから考えても、本当に抜本的にというか、大幅に増員を図る必要があるのではないかと思うのです。
 地方交付税の積算基礎人口八万人に福祉司一人ですから、これは到底足りない。児童福祉法施行令の第二条、「人口おおむね十万から十三万までを標準」という規定、こういう規定の見直しを含めて、専門職にするという規定ももう一つ問題としてありますけれども、とりあえず、福祉司の増員ということは非常に急がれるし、引き続いてやっていかなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 児童相談所は児童虐待問題についての相談、支援の中核的な機関でございますから、その体制の整備というのは大変重要な課題であるというふうに思っております。
 一つは、児童相談所の児童福祉司の人数でございますけれども、今、議員が言われましたように、平成十二年度から十五年度まで増員を図ってまいっておりまして、大変厳しい諸環境の中で、総務省とも御相談をして、従来は人口百七十万人規模の標準団体では十六人の体制でやっておりましたのが、十五年度には二十三名ということでございまして、この間七名増員をしていただいて、それは相当な体制の強化に役立っているというふうに思っております。
 また、一人一人の児童福祉司の資質の向上、専門性の向上ということも大変重要でございますので、専門研修にも力を入れているところでございます。
 あわせて、児童相談所だけが抱え込むということでは問題の対応ができませんので、都道府県レベル、そして市町村レベルでネットワークをつくっていくように支援をいたしております。福祉、医療、保健、教育、警察、司法、こういったようなところとネットワークをつくりまして、単に情報交換のネットワークではなくて、個々具体的な問題を解決するための行動型のネットワークを今つくっていただいているというふうに思っております。
 さらには、これからの検討課題の一つであろうかと思いますが、市町村の役割をどういうふうにもっと強化するか、そういうことによって児童相談所と市町村の役割分担も考えてみるといったようなこともやってみたいと思います。
 そういった総合的なことを検討する中で、児童相談所の体制をしっかりしたものにしてまいりたいと考えております。
石井(郁)委員 もう一点、同じように職員の問題として、児童養護施設がございますね。そこにも若干の加配的な職員配置ができるような措置があるんですけれども、これは大阪のある児童養護施設ですが、心理療法の対応職員の雇い上げ費加算というので年間二百二十六万四千三百円、これでは、もうアルバイトでしか契約できないということなんですね。
 児童養護施設の職員配置は、そもそも一九七六年から改善されていない、こういう基準ですから、これはもう現状とはまるで合わなくなっているということになっています。最低基準が見直されない限り野戦病院のままだというふうにも聞いています。
 虐待によって施設に入る子供の七割を受け入れているわけですから、その児童養護施設の職員配置体制の拡充、増員、これはやはり真剣に考えてもらわないと困るわけでありまして、最後にそれだけ伺っておきたい。
岩田政府参考人 児童養護施設に入所している子供の中で、虐待を受けた子供の割合が高まっているという事実がございまして、この子供たちのケアというのは難しい仕事になっております。
 そういう中での児童養護施設の体制整備でございますが、児童福祉施設最低基準の水準としましては、従来から、例えば三歳未満の子供については二人に対して職員一人、三歳から就学前は子供四人に対して職員一人、小学生以上の場合には子供六人に対して職員一人とございまして、これは最低基準でございます。
 それ以外に、被虐待児への対応ができるように、今委員が言われましたような心理療法の担当の職員を配置いたしましたり、それから、被虐待児の場合には、本当にマンツーマンの対応というのかケアが必要だということを言われておりますので、そういう個別に対応する職員を追加して配置した場合に、補助金上、そういった加配に対して補助ができるようにいたしております。
 そういう形で、今、体制の整備を進めているところでございますが、さらに、今の施設はどちらかというと大規模施設が多いんですけれども、虐待を受けた子供の生活の場、ケアされる場ということを考えますと、今のような大規模中心のものでいいのか、もう少し家庭に近いような小規模のあり方をどう考えるかとか、さらには、里親制度を使って、専門性のある里親が虐待のお子さんを受け入れていただけるような、そういった制度も昨年度からスタートいたしております。
 そういうさまざまな対応の仕方を考えながら、虐待を受けた子供たちのケア、そして自立の支援ができるような体制をこれからも整備していかなければいけないというふうに考えております。
石井(郁)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、保坂展人さん。
保坂委員 社民党の保坂展人です。
 福田官房長官に伺いたいと思います。
 先ほど、水島さん、そして達増さんと触れられた、暴力団も有権者という発言について、やはりちょっと伺っておかなければならないと思うのです。
 先ほど、同僚議員の質問で、前後関係、前段にお話があったんだ、そういうところだけピックアップされても、むしろ報道の問題であるということをおっしゃいました。
 けれども、小泉内閣というのは、どちらかというと、例えば改革断行とか聖域なき構造改革とか、あるいは私の内閣に反対するのは抵抗勢力とか、何か非常に短い言葉で、それがまたマスコミの見出しになって、いわばその短いところをマスコミが切り取るというのも小泉内閣の支持率浮揚の一つの要素だったというふうに思いますし、また、官房長官として、日に二回、プレスの方と向かい合ってお話しされているわけで、その短い言葉に、どういう部分にメディアは反応するかということも十分おわかりになっていると思います。
 ただ、意図しての発言ではないと思いますけれども、その真意は、政治家はありとあらゆる、見知らぬ人も含めていろいろな人がやってくる、その先がちょっとどういう意味だったのかというのがいま一つわからないんですよ。前段のところはわかりましたから、そのくだりはどういう意味だったんでしょうか。
福田国務大臣 記者会見の議事録を見ていただくと一番いいんですけれども、要するに、松浪議員のことについてはよくわからない、また、一番最初に、所属政党でいろいろな対応を考えておられるということですから、それを見守るということ、それからまた、政府の立場で口を出す問題ではない、こういうふうにまず前提で言っているわけであります。
 そこからは一般論的な感じで受けとめましたものですから、暴力団とのつき合いはどういうふうに考えるかというふうなことがありまして、私の経験からいいましても、最初はやくざだか暴力団だかわからない、だれか紹介してくれるということがありますから、その紹介を信用してつき合う。しかし、そのうちに、これはちょっとよくないよというような話を聞いて、おつき合いを遠慮するとかいったようなこともあるわけですね。その経過的に、例えば一緒に写真を撮ったとか、いろいろなこともあるんだろうと思います。
 ですから、それに気がつく前にそういうことがあったとして、それでは、一体、政治家は悪いのかどうか、こういうことになるんですけれども、政治家としても、全能ではありませんから、そこまでチェックできませんから、ですから、そういうこともあるかもしれぬといったような趣旨の説明をしたわけなんですよ。
 そういうことで、暴力団も日本国民の一人であり有権者であるということですから、政治家というのは、相手をだれかれというようなことで、いいの悪いのとかいうふうなことは評価しないでおつき合いを始めるということはよくあるんですね。そういうものでしょう。やはり、応援しますと言えば、それは政治家というのは、よろしくお願いしますと言わざるを得ないじゃないですか。そういうこともあるんですから。
 ですから、そういうことを踏まえた上で、私はよく説明したつもりだったんですけれどもね。ですけれども、そういう説明の中で、私が今言ったようなことは、文章にすれば一行もないぐらいでございますけれども、それを取り上げて、そこを誇張するのは、これはおかしなことだと。その後でもきちんとそういうことについては説明しておりますので、そういう報道というのは公正でないし、また、先ほど水島委員に申し上げましたけれども、そういうことによって、政治家というのはおかしいんだとかいったようなことを印象づけるような、そういう報道というのは決してよくないと思っております。
保坂委員 今、官房長官がおっしゃったのは、例えばいろいろな地元の会などで、あるいは町を歩いているときにでも、見知らぬ人から、代議士じゃないですかといって一緒に写真を撮ったり、いろいろな会を開けば、写ルンですとかで、では御一緒にということはわかりますよ、それは。結果としてその方がそういう方だったということを後から知るということはあると思うし、それは防ぎようがないかもしれない。私はそこまではわかるんですね。
 ただ、結局、秘書給与の肩がわりであるとか、献金をまとまって受けてしまったりとかいうときには、やはり地元に密着していますから、その地元の方には、やはり良識的な方が支えていらっしゃるでしょうから、各議員とも、ちょっとあの方はまずいですよという声がきっと届くわけです。
 そこで、記者会見で述べられた官房長官の、「そういう方とどういう関係を持っているかについて、その事情や関係の厚みということを勘案して考えるべきだ」とおっしゃっているんですけれども、関係の厚みとかそういうことでいうと、援助を受けた金額や支援の程度問題で考えるべきだ、こういうふうに、何か量の問題で考えるというふうに聞こえるんですけれどもね。
福田国務大臣 暴力団と特定できるかどうか、あの人は暴力団だ、そういうことが明確に言える場合もあるし、暴力団の下っ端の方で、所属のはっきりしないような、そういう人もいるでしょう。いろいろなケースがあるんだろうと思います。それをすべて、あれは暴力団だといって決めつけていいものかどうか。もしかしたら、そういう下っ端の人で、正業に戻りたいということで悩んでいる人もいるかもしれぬ。それを暴力団だといって決めつけて、暴力団に追いやってしまうということがいいのかどうか。そういうことも考えなければいかぬでしょう。ですから、そんなに一概に決めつけることはどうか。
 今回の特定のことについて私は言っているわけじゃない、一般論として申し上げていることであります。
 なお、特定の問題については、先ほど申し上げましたように、これは政党の方で対応を考えているということをはっきり申し上げているわけですから、その辺の誤解はないと思うんですよ。
保坂委員 一般論として、もちろん、そういう世界に入った方も、転換して社会的にきちっとした仕事につくように道を開くというのは大切なことだと思いますけれども、やはり、全体としての文脈の中でこの発言が報道されたというのは、マスコミがちょっとおかしいというふうには私には思えないんですよ。
 官房長官、きのう、ニュースを見ていましたら、千二百名の体制で、警視庁が入管と協力して、歌舞伎町の一斉摘発をしたじゃないですか。これは暴力団関係もフロント企業もあったかと思います。同じ日なんですね、この発言は。
 ですから、それを総合的に子供たちは見ていますので、前回の所信で、官房長官も、青少年をめぐる深刻な問題、児童買春、刑法犯で検挙される少年も高水準という問題は、大人や社会全体のゆがみが投影されているという側面もあり、我が国社会のあり方が問われているものととらえて、不断の対応を行っていかなければなりません、こうやって所信でおっしゃっているんですね。
 つまり、この青少年の問題は大人の問題でもある。大人がどうあるのか、どういうふうに身を処すのか、あるいはどういうふうに物をとらえるのかということを子供たちが見ているということをおっしゃっているので、やはり、官房長官の発言が青少年に与える影響、これは本当にプラスになるのか、そこはどう受けとめられていますか。
福田国務大臣 ですから、先ほど来申し上げているように、これを報道する立場の人も、そういうこともよく考えた上で報道すべきなんですよ、本当に。これは政治家を傷つけることでもあるんですよ。松浪議員もそうかもしれぬけれども、私も傷つけられている、そういう意味においては。そういうことでいいのかどうか。そんなことを言っていたら、いい政治家はいなくなっちゃいますよ、本当に。そうじゃないですか。
 まあ、いろいろ、我々は言動に気をつけなきゃいけません。ですから、前後にきちんとよく説明した上で、その上で言っていることですからね。ですから、誤解は全くないと思うんですよ。もし、そういうことをあえて記事にするということがあれば、これはやはり意図があるというふうに考えざるを得ないですね、本当に。
保坂委員 私は、福田官房長官といろいろ意見とか政治的なスタンスが違いますから。申し入れなどで官邸に行ったときに、比較的いろいろお話しする機会も何回かあって、非常にバランスのとれた方だというふうに実は思っているんですよ。ただ、今、ちょっとバランスを崩されているんじゃないかと私は思うのです。
 というのは、この発言は、こういう報道をされたからけしからぬということになると、どうですか。これだけ、一社じゃないですよ、全部こうやって取り上げるくらいの発言は、やはり説明不足だったということはないんですか。全部、マスコミけしからぬで終わるんですか。
福田国務大臣 これは、一社がきのうの夕刊ですか、早く出していますね。そうすると、報道機関というのは、他社も、あそこが出しているんだからうちも出せというようなことでみんな出すというようなことで、けさは全部そろったということです。
 いずれにしても、バランスがあるかどうか、これはまた別として、そうあるべきであるというように心がけて一生懸命やっているつもりではおります。また、時には報道の仕方について問題があるということは指摘しながら、これもやっておるつもりでございます。率直にそういう話し合いをしているつもりでございますけれども、そういう意味においては、今回の報道はバランス感覚を失している、こういうふうに申し上げたいと思います。
保坂委員 では、この議論はここで終わりますけれども、ぜひバランスをとっていただかないと、お互い胸に手を当てて、福田さんも少し冷静になっていただきたいというふうに思います。
 防衛庁問題で、まず官房長官に伺いますが、これは十八歳の青少年に三十七年にわたって、基本になる四情報ですか、この情報が提供されていた。そして、四情報以外にも健康情報などが漏れていたんですね。
 きのう、個人情報の委員会で、片山大臣は、自衛隊の人は健康じゃなきゃいけないから、必要があって地方自治体が納得するなら、それもまあ真ん中あたりかな、その辺がいいか悪いかのボーダーラインではないかという感じを受けた、こういうふうに、片山大臣としては、健康情報、健康であるかどうかぐらいはあっていいのかなという発言をされているのです。その後、石破防衛庁長官は、健康情報は、これは趣旨からいってもいけないことだと思います、こう言っておられるのです。
 この問題、率直に言って、官房長官、どうお考えになりますか。
福田国務大臣 防衛庁は、今のはセンシティブ情報のことでありましたけれども、適齢者情報として入手すべき範囲というのは、これはもう住民基本台帳で言われている四情報に限定している。これはこういうことが適切であると考えておるわけでございまして、その住基四情報に限定するというような所要の指示を行っている、こういうことであります。
 センシティブ情報ということについては、今御指摘のありましたような疑問点があるというようなことで、今、その点について防衛庁と総務省の間で整理をしているというように聞いておりますので、きょうは副大臣がおいでですから聞いていただいて。
保坂委員 では、続いて赤城副長官に伺いますけれども、今、健康情報はセンシティブ情報ですよということは、これは片山大臣が言うように、とても元気、体力抜群とか健康とか、そういう健康優良児ですというような情報というわけではないですね。健康情報というのは、あらゆるものを含みますから。心身すべてにわたって、どこが調子が悪かったか、あるいは病気だったかということ、あるいはさまざまな、障害のあるなしも含めて、知られたくない部分。それがすべからく、どういうルートか、役所からそういった自分の身体あるいは心身にかかわる情報が出ていたというのは、その情報を持っていかれた側としては大変驚くことです。
 三十七年間ですから、副長官も、ひょっとしたら、そういう情報が地元で、十八歳当時、あったのかなかったのか、そういう年代だと思いますけれども、このことに対する意識ですね、防衛庁の方ではいかがですか。この健康情報を特に私は問題にしたいんです。
赤城副長官 お答えいたします。
 自衛官の募集、そのそもそもの経緯も含めてお話を申し上げたいんですけれども、自衛隊について、人というのは大変大事な基盤でありますから、これは積極的に募集をしていく、広報していくということが大事で、そうでなければ、こういう人材を確保するのは難しいわけでございます。
 そこで、自衛隊の地方連絡部でダイレクトメールとかそういうものを送りまして、関心を持った方に、自衛隊というのはこんなものだよと説明したり、相談に乗るということを行っています。その募集の事務の一部については、法定受託事務で都道府県知事とか市町村長におろされています。
 その都道府県、市町村で適齢者名簿の作成が行われているということでございますが、それについて、適齢者情報として入手すべき範囲としては、先ほど官房長官からありましたように、住民基本台帳法の規定に基づき、何人でも閲覧を請求することができるとされた氏名、生年月日、性別、住所の四情報に限定することが適切である、こういうふうに考えております。
 新聞で報道された、石川県の地方連絡部が石川県と平成十二年十一月に連名で作成した手引においては、適齢者の情報の提供項目に健康状態で判明しているものが含まれているということですが、当庁で全国の地方連絡部を対象に、今、調査を実施しております。なお精査の必要はありますけれども、地方公共団体から提供された情報の中には、適齢者の健康状態に係るものは含まれていなかったということでございます。
 いずれにしましても、情報として入手すべき範囲というのは、ダイレクトメールを送るとか募集の端緒になるものでありますから、その氏名がわかって、ちょうど適齢の年齢にありますね、住所はどこですねというのがわかれば、ダイレクトメールを送ることはできます。応募してきた、ぜひ入りたいということになりますれば、実際に適格性、身体検査等がありますから、そこで健康状態はわかるということでございます。
 そういうこともありまして、この四情報に限定するのが適切だということで、昨年の十一月に、担当者会議においてそういう指示を行いました。
 今後、こういう四情報以外の情報を入手することのないように、指導を徹底してまいりたいと考えております。
保坂委員 本当に少ない時間で申しわけないんですが、官房長官、よろしいですか。
 私も、この有識者懇談会報告書を読ませていただきました。これは大変画期的と言っていいつくり方になっていると思います。大変に新しい、しかも、最新の情報がたくさん入っている。
 ただ、先ほど同僚議員からあったように、我々、この委員会で児童虐待問題をしっかりやっていきたい、また、法の見直しがあるので、この虐待問題に限って見ると、これは別に注文をつけるというわけじゃないんですけれども、もうちょっと配慮してほしかったなというところがあります。
 というのは、本文で虐待ということが出てくるのは、産後のうつ病や育児不安などの母親の状態ですか、その中に虐待ということが出てくるのと、それから、社会的な不適応を起こしやすい状況の中で、虐待や何かの被害者の青少年がいるという二カ所であって、虐待としての柱立てをされていないのです。
 データのところには、児童虐待につながると思われる家庭の状況というのがちゃんと書いてあって、経済的困難や、親族、近隣、友人からの孤立などが挙げられていますし、また、もう一つのデータのところでは、虐待あるいはしつけ、この線引きが難しいんですが、家庭内の暴力がその後の少年非行の根底にあると。
 虐待問題は大変大きい問題なので、厚生労働省もやっていますが、ぜひ内閣として力を入れて、もう一度、こういった虐待に関してもしっかりした取り組みを指示していただきたいということを求めたいと思います。官房長官、お願いします。
福田国務大臣 児童虐待の動向を示す一つの指標と考えられております児童相談所における相談件数、これは数年、急増しているんですね。でございますので、虐待防止対策というのは、これはもう社会問題として喫緊の課題であると考えております。
 そういう意味で、政府としても、発生予防から早期発見、早期対応、児童の保護と自立に向けた支援などを柱として、医療、保健、福祉が一体となった施策の実施に努めておるところでございます。
 現在、児童虐待防止法の附則に施行三年後の見直し、これが本年十一月でございます。それが規定されておりますので、これを契機として、いろいろな見地から、制度全般にわたり解決すべき課題の整理を行い、そのために、社会保障審議会児童部会で児童虐待防止等に関する専門委員会を設置して、昨年十二月から審議を行っている。こういうことで、これは非常に重視しております。
 それからまた、この児童虐待が、今御指摘の母親、家庭の問題、社会の問題、経済の問題、いろいろそういう環境的な問題もあろうかと思いますので、そういうようなことも踏まえた上で、この問題について対応策を考えてまいりたいと思っております。
 いずれにしても、この青少年問題、本当に大変重要な課題になりました。今、青少年懇談会の答申の結果について評価をいただきましたけれども、方々でそういう評価を得ております。ですから、今後、これをいかに施策に結びつけていくかということが政府としての大きな課題だというように思いますので、全力を挙げてまいりたいと思っております。
保坂委員 虐待の問題は、母親だけじゃなくて父親の問題も大きいんですね。かなり大きいんです。ですから、男女共同参画社会の担当でいらっしゃいますから、その点も踏まえて、ぜひ御指示をしていただきたいと思います。
 終わります。
青山委員長 次に、水島広子さん。
水島委員 それでは、再び質問をさせていただきます。官房長官、よろしくお願いいたします。
 先ほどに続いてまた質問させていただきますが、青少年の問題というのは、文部科学や厚生労働、法務など各省にまたがる問題でございますし、この報告書においても、各分野にまたがる有機的な連携や協力の必要性が述べられております。どうやってそれを行うのかということをお伺いしたいわけなんです。
 国連子どもの権利委員会から、子供の権利にかかわっているさまざまな政府機構間の調整を全国レベル及び地方レベルのいずれにおいても強化するように勧告するとされまして、二〇〇一年の第二回政府報告では、「中央省庁等改革以後は、内閣府が青少年育成推進会議等を通じて引き続き関係省庁の緊密な連絡を図りつつ総合調整を行っている。」となっているわけでございます。でも、本当に調整が強化されているのでしょうか。
 例えば、この報告書の中にも、父親の育児参加の必要性や一人で食事をとる子供の存在などが述べられているわけですけれども、これらの問題を解決するためには、労働法制を変える必要があるわけでございます。これは、かなり独立性の高い、権限の強い機関でなければ、この調整というのはできないのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。現在の内閣府の力は、そこまで強化されているんでしょうか。
福田国務大臣 先ほども御説明したかもしれませんけれども、この青少年育成施策というのは幅広い省庁にまたがっている、そういうことも課題でございまして、各省庁の分担に応じた事務を着実に実施していくことが重要であると考えております。
 内閣府としては、青少年の健全な育成に関する事項の企画及び立案並びに総合調整等を行う立場でございますので、そういうことから、関係省庁と連携を図りつつ総合的な施策の推進を図ってまいりたい、このように考えております。
水島委員 本当にその総合調整というものを、今言いましたように、労働法制に踏み込んで、子供のためには父親、母親はこういう働き方をした方がいいんだということをぜひ、きちんと子供の立場に立って調整をしていただきたいと思っているわけなんですけれども、それを内閣府でできるのだろうか。私は、むしろ、子供の問題を横断的に扱えるように、例えば子供担当大臣とか子供省というものを独立して設置すべきではないかとも考えているわけですけれども、官房長官はどう思われますでしょうか。
福田国務大臣 今、内閣府で担当しておりますけれども、その報告はもちろん私のところに上がってまいりますし、私からの指示に基づいて、内閣府としていろいろな施策の充実に努めておる、こういうことでございます。
 青少年育成問題は、重要課題であるということはもう何度も申し上げておりますけれども、多くの省庁に関係するという意味から、一つの省の設置などによって対応するというよりも、内閣府が総合調整を行うということで、政府一体となって推進していくことが重要だと思います。あとは内閣の意思であります。
水島委員 政府一体となって頑張っていただきたいんですけれども、ただ、今、官房長官のところにいろいろ情報が上がってくるし、指示をされているということなんですが、官房長官は本当にお忙しい方でございまして、青少年の担当大臣として子供の問題に専念できると本当に思われているでしょうか。
 きょうも、与党の理事さんが本当に誠心誠意努力してくださったにもかかわらず、ここに来ていただく時間が十分にとれなかったため、私は四十五分以降は副大臣に質問をしなければいけないということになっているんですけれども、それで、与党の質問者の方たちは皆さん副大臣にということで、本当にお忙しいと思うんですけれども、そんな状態で、これからもこちらが、委員会で子供の問題を聞くので、官房長官、ぜひ答弁にいらしてくださいとお願いした場合に、いらしていただけるだけのお時間はあるんでしょうか。
福田国務大臣 私としても、責務を果たすために努力をしてまいりたいと思っております。
水島委員 まだ官房長官への質問を少しさせていただきたいんですが、多分、その途中で時間切れになりそうですので、ここでもう一つ確認させていただきたいのです。
 今、官房長官は、十五分で十分十分とおっしゃったわけでございますけれども、副大臣が答弁されることは、官房長官のお考えと完全に一致した御答弁をきょういただけるということで確認させていただいてよろしいでしょうか。
福田国務大臣 そのとおりでございます。
水島委員 それでは、今からまた次の質問に入らせていただきますが、恐らく、途中から答弁者を副大臣にお願いすると思いますけれども、それは官房長官が答弁されたことと同じ重みを持つとして受けとめさせていただきたいと思いますので、どうぞ副大臣、よろしくお願いいたします。
 それで、この懇談会報告書の中では、社会規範の習得のために「自分たちとは異なる価値観への寛容さと多様な価値観をもつ集団が共存する一般社会の規範の習得が必要となってくる。」と指摘をされておりまして、「そのためには、仲間集団を超えたより広い社会への参画を通じて、社会の一員としての意識を形成し、仲間以外の者との付き合い方を学び、試行錯誤をしながら一般社会のルールを身につけていく経験が有効である。」とされております。私も、全く同感でございます。
 でも、大人にこのような姿勢がなければ、子供たちは学べない。大人が全くそのようなことをやっていないのに子供たちが勝手にそれを学んでいくということはあり得ないわけですので、このプロセスを大人がみずから示していく必要があると思いますし、特に、議会というのは民意の調整機関でもあるわけですので、その責任は重大だと思っております。
 私は、かねてから、結婚をしても同姓も別姓もとり得る選択的別姓の推進をしているわけでございますけれども、これはどちらかというと今のような考え方に基づくものでございまして、いろいろなタイプの夫婦がいるわけですから、まさに自分たちとは異なる価値観への寛容さが問われているのではないか、そこで、いろいろなタイプの夫婦が暮らしていく中での一般社会のルールをきちんとつくっていくべきではないかという観点から、ずっと提案をさせていただいているわけでございます。
 これからその議論をさせていただく前提としまして、まさかとは思いますけれども、官房長官は、別姓夫婦は同姓夫婦よりも社会規範意識がないと思っておられるわけではないでしょうねということを、ちょっと確認させていただきます。
福田国務大臣 議員御指摘の部分は、青少年についての一般社会の規範の習得を指摘しているものでございまして、夫婦間の規範との関連は薄いと思われます。
 いずれにせよ、同氏または別氏のいずれかを選択するということと規範意識の高さとは関連性がない、考えにくい、こういうことでございます。
水島委員 ありがとうございます。
 時々、この別姓の話をすると、倫理的に考えろと言われることがありまして、別姓でございます私は、何だか自分が倫理がないんじゃないかと言われているような気がして、非常に傷ついていたわけでございますけれども、官房長官はそう思っていらっしゃらないことがわかりまして、安心をいたしました。
 そうしますと、これは社会規範とは関係ない、どちらも夫婦として尊重されるべきであるということを考えますと、そのようないろいろなタイプの夫婦がいて、制度を変えてほしいという声がかなりあるわけですし、内閣府としても世論調査もされているにもかかわらず、実際に国会では審議もされないし、前向きにこの話が進んでいかないというのはどういうわけなのか、また、政府提出の法案が出てこないというのはどういうわけなのか、これは、子供たちにわかりやすいように説明するにはどうしたらよいでしょうか。
福田国務大臣 選択的夫婦別氏制につきましては、法務省を中心にして、少しでも多くの方の理解を得られるよう、例外的夫婦別氏案を提示するなどの努力を続けてきたところでありますけれども、これまでのところ、一つの立場に意見を集約することは困難でありまして、さきの通常国会では、本制度の導入を内容とする法律案を政府として提出することは見送ったという経緯がございます。
 なお、この問題につきましては、二件の議員提案が継続審査となっておりますほか、別に議員立法に向けた動きもあるものと承知しておりまして、政府としても、その推移について注意深く見守ってまいりたいと思います。
 政府といたしましては、子供たちも含め、選択的夫婦別氏制について、国民各層や関係方面の御理解を得ることができるよう、関係方面での議論が深められることが必要である、こういう認識をしておるところでございます。
水島委員 あと一分ですので、今の点だけもう一問聞かせていただきたいと思うんですが、確かに、おっしゃっておりますように、私も森山眞弓法務大臣に期待をしていた者の一人でございますけれども、現在、法務省は、名古屋刑務所の問題でそれどころではない状態になってしまっておりまして、法務省に今国会はちょっと期待できないなと思っているのです。ですから、むしろ、男女共同参画担当、そして、青少年の担当でもございます官房長官が旗振り役をすべきではないかと思うんですけれども、これを強力に推進していただく御意思はございませんでしょうか。
福田国務大臣 法務省はほかのことで忙しいという御心配でございますけれども、この問題は、そういうこととは別に、十分に法務省は対応しなければいけない課題であると思っておりますので、今後も、法務省が中心になって、関係方面の理解を得るべく努力をしていくと思っております。
 内閣府も、引き続き、このような内閣府としての努力を続けていくべきものと考えております。
水島委員 議論を続けていきたいということなんですが、国民から見ますと、議論というのは国会で審議されていないと見えないので、まずは、やはり法案を提出して審議を始めるということが非常に重要だと思います。
 そういう意味では、今、法務省がとても法案を取りまとめて提出できる状況にないのであれば、内閣府で何らかのリーダーシップを発揮されてもいいのではないか、その意見を述べさせていただきまして、今うなずいて聞いてくださっておりますので、この思いを受けとめていただいて、では、官房長官はここで、ありがとうございました。
 それでは、残り時間、副大臣に質問をさせていただきます。
 最後に、この別姓の問題について、もう一問だけ質問をさせていただきたいんですけれども、この議論をするときには、よく、子供のことも考えなければいけないということを言われることがあるんですけれども、もしおわかりになるのであれば、これはどういう意味なのかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。
米田副大臣 夫婦別姓の議論で子供のことを……。ちょっと、御質問の趣旨がよくわかりません。
水島委員 これは、子供の立場にもなって考えなければいけないとか、この制度を導入するに当たって、よくそういう論点として子供という論点が出てくるんです。ですから、恐らく、親が別姓になることが子供にどういう影響を与えるかというようなことかなと私は何となく思っているんですけれども、今までこういう議論がよくあちこちでありましたので、副大臣も承知されているのじゃないかと思うのです。全くそういう感覚が理解できないというのでしたら御答弁は結構ですが、おわかりになるのでしたら教えてください。
米田副大臣 この問題に関しては、子供のことを考えることは当然だろうと思います。
 ただ、一部で言われるような、いじめが起きる云々とかいろいろありますが、目下のところ、必ずしもそれが何らかの根拠に基づいて論じられているとは思えないようなこともたくさんあるし、また、真剣に議論を深めなければならないこともあるだろうし、それは千差万別だろうというふうに思っております。
水島委員 時々、親が別姓だと子供がいじめられるんじゃないかとおっしゃる方は、確かに私もお会いしたことがございますし、それは割と極端な方の御意見なんだと思いますけれども、よく言われるのは、親の姓が別々だと子供がかわいそうなんじゃないかということも言われることがあります。
 ただ、本当に、現にいろいろな事情の家族がいる中で、ある家族にかわいそうとかおかしいとか、そういう一方的なレッテルを張ることこそ、慎まなければいけないのではないか、大人の非寛容というものを示しているのではないかと思っております。
 別姓にすると子供がいじめられるから法律を変えるのはよくないなんと言う大人がもしいるとすれば、私は、既に大人としての責任を放棄しているんじゃないかと思いますし、家庭の事情が他者と違うだけでいじめてしまう子供社会を直すために、まずは、自分が断固、法改正に立ち向かって、そのルールの整備をしていこう、そのような規範を示すのが大人の役割なのではないかと思いますけれども、この点については同意していただけますでしょうか。
米田副大臣 いかなる理由があろうとも、子供がいじめられるなんということがあっていいわけはないわけでありまして、夫婦別姓の論議と子供の立場というものは全く別な話である、子供の人権はきちんと確保されなければならない、そう思っております。
水島委員 それでは、今後ぜひ、先ほど官房長官にもお願いさせていただきましたけれども、内閣府としても前向きに、議論ができる体制をつくっていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。
 副大臣にお伺いいたしますけれども、まず、リプロダクティブヘルス・ライツとは何でしょうか。これは、性と生殖に関する健康と権利と訳されると思うんですけれども、これをわかりやすく子供たちに説明する場合には、どういうふうに言ったらいいでしょうか。
米田副大臣 直訳すると、リプロダクティブですから再生産可能なというふうになるんでしょうか、健康と権利。ただ聞いただけではよくわかりにくい部分もあるんですが、御案内かと思いますが、改めて御説明を申し上げますと、このリプロダクティブヘルス・ライツの考え方は、一九九四年にカイロで開催された国際人口・開発会議において提唱された概念であります。今日の女性の重要な人権と認識されているというふうに承知をしております。
 その中心のテーマは、いつ何人子供を産むか産まないかを選ぶ自由、安全で満足のいく性生活、安全な妊娠・出産、子供が健康に生まれ育つことなどが含まれておりますが、これらに関連しまして、思春期や更年期における健康上の問題等、生涯を通じての性と生殖に関する課題が幅広く議論されているわけであります。
 今申し上げたようなテーマ、その言葉どおり素直に受け取るならば、これは至極当たり前の常識的な課題であるし、大変重要な課題であるだろうというふうに考えております。したがいまして、平成十二年に閣議決定されました男女共同参画計画におきましても、女性の生涯を通じた健康を支援するに当たっての重要な基本的な考えであるということで明確に規定されております。
水島委員 ありがとうございます。
 その重要なリプロダクティブヘルス・ライツにつきましては、今回の懇談会報告書の中でも「性に関し適切に行動を選択できる力の習得」としてページが割かれておりまして、性は今の子供たちにとって重要なテーマであると思いますし、私も、十代の人工妊娠中絶が余りにふえているということに本当に心を痛めている一人でございます。
 性教育とリプロダクティブヘルス・ライツの関係についてですけれども、この報告書の中では、「思春期の若者の性に関しては、親やその他の大人はとまどい心配しながらも、とかく目をそらしてしまいがちであり、大人の適切な支援がないままに若者の性に関する多くの問題が生じている。情報メディアの進展で若者が性的情報に直接さらされるようになり、また、身体的な成熟の時期をより早く迎えるようになっている。」と、今日の状況を認めた上で、性の意義と危険性を述べ、さらに、性的な対人関係における主体性の強化、相互の尊重、いたわりの精神や男女平等の意識に根差した行動を選択できる力をはぐくむことの重要性を指摘しておりまして、「若者の性感染症や人工妊娠中絶の増加に対しては、性感染症の予防や治療、避妊などについて正しい知識を教育することが重要である。」などと、性教育の必要性を説いているわけでございます。
 この内容は、副大臣、全くこのとおりということでよろしいでしょうか。
米田副大臣 全く当然のことだと思います。
水島委員 ありがとうございます。
 ここのところ、国会におけるリプロダクティブヘルス・ライツ、特にライツの部分について、私は、何だか、かなり議論が矮小化されているのではないかということを危惧しているわけでございます。どうも、子供を産むか産まないかの権利という議論が中絶問題に特定され過ぎているような、それは意識的にか無意識にかわかりませんけれども、そんなふうに今までの国会における審議を見てきたわけでございますけれども、本来、リプロダクティブライツというのはもっと本質的な権利でございますし、それは先ほど副大臣が、極めて常識的なこととしてお認めになったことであるわけです。
 産むか産まないかを決めるというのは、例えば、今子供を産んだら自分の生活はどうなるかとか、自分が思い描いている人生にとってそれはどういう意味を持つかとか、だれがサポートしてくれるのかとか、このようなことを総合的に考えて、パートナーとも十分に相談をした上で相手との関係を考えるということだと思いますけれども、この姿勢が欠けているから望まない妊娠や中絶が多くなるのではないかと私は思っているわけでございます。
 このように、リプロダクティブライツというのは、何も、中絶をしていいかいけないか、そういう話ではなくて、トータルに考えて、ちゃんと自分の人生の中で性の問題を位置づけていくという権利と思っておりますけれども、例えば二〇〇二年七月二十二日の決算行政監視委員会におきまして、坂東局長が、「リプロダクティブヘルスについては、生涯を通じた女性の健康ということで、大事だという合意はされているんですけれども、ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。」というような答弁をされていたりしておりまして、それ以上には踏み込まないというような姿勢が気になっております。
 先ほど、副大臣もお認めになったように、これは極めて当たり前の、常識的な、また重要な権利であるとするならば、なぜここで、「ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。」と言われて、その後、でも、権利というのはごく当たり前のことですというふうに続けられないんだろうかと、私は、ここの部分が非常に気になっております。
 これは中絶の問題に矮小化された議論に乗るのではなくて、政府として、リプロダクティブライツというのはもっと大きな概念なんだということをきちんと啓発すべき、そういう答弁をされるべきだったのではないでしょうか。
米田副大臣 その坂東局長の答弁の際の細かい状況を今確認する手だてはございませんが、今、水島委員のおっしゃっている基本的な考え方、私も全く同意をしております。
 恐らく、この間、そのライツの部分につきまして、いわゆる中絶、堕胎の自由もあるんだというふうな流れが一部にあるのではないかということを指摘して、もしそういう流れがあるならば極めて警戒すべきである、審議等でそういう御意見も出た時期、段階がさきの国会でもございました。そのことについて、そのライツの部分にいろいろな議論がある、まさに矮小化された部分の議論、かなりそういう議論が存在する時期があったということを念頭に置いての局長の答弁であったのではないかというふうに思います。
水島委員 私も何だかその中絶の議論に乗るようであれなんですけれども、中絶をする権利、堕胎をする権利というようなことが議論になったというふうにおっしゃるわけですけれども、中絶というのは、私は、権利だから喜んで行使するというようなものではなくて、本当に追い詰められた最後の手段なんじゃないかなと、一人の女性として思っております。
 副大臣は男性ですから、当然、中絶された経験はないでしょうけれども、これは体にも非常に傷を残しますし、心にも傷を残す。よく私も、十代の子供たちで、中絶をした子供たちのデータを栃木県がまとめたものを見ましたけれども、そのアンケートの中では、本当に傷ついたので、もっと早く学校で教えておいてほしかった、知識があればこんなことにはならなかった、本当に傷ついたという意見が大半で、中絶をして楽しかったとか、またしたいとか、そういう意見は、私が見たところ、見つけることができませんでした。
 それほど、非常に傷を伴うものであるわけですから、その権利があるかないかということを議論すること自体、私は非常に、意味がないと思いますし、例えばレイプをされて、どうしても育てられない、子供を中絶せざるを得ないとか、本当にいろいろな事情によってせざるを得ない、追い込まれた状況の中で恐らくするんだと思います。そういうことを殊さらにそこだけ取り出してきて、中絶する権利があるかないかというような話をするというのは、このリプロダクティブライツ全体の概念を非常にゆがめることになるのではないかと、これは真剣に心配をしております。
 今の点について、私が話したようなことを米田副大臣も、私、多分変なことを言っていないと思いますけれども、変なことを言っていないと言っていただけますでしょうか。
米田副大臣 いや、変なことをおっしゃっていませんよ。
 要するに、先生は御専門でおられるので、もちろんよく御承知でしょうが、我が国は中絶、堕胎を認めている、その要件は厳しく法によって限定されているわけでありまして、むしろ、この一連の議論の中で、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの、先ほども確認したような基本的な考え方、それは当然であるという、だれしもが基本的にそう思っていると私は思うのです。
 ただ、そこから派生して、まさに今委員が御指摘のような、大変なことだろうと思います。女性にとって、中絶、堕胎というようなことは体を傷つける。そういう極めて重大な課題であるにもかかわらず、それが安易に行われるような方向に行ってはならないという警戒感からのいろいろな議論がこの間存在をしたということを私は申し上げているわけであります。
水島委員 ぜひ、そういう御認識であれば、これは権利がある、ないという議論に陥らないように、中絶をするとこんなに傷つきますよとか、私も、中絶をした友人からしょっちゅう電話がかかってきて、その心を聞いたりとか、そういうことが今までいろいろありましたけれども、そのときには何とも思っていなかった人でも、後でこれは物すごい心の傷になるんだなということを本当に実感しております。
 ですから、権利がある、ないという話にするのではなくて、ぜひ、本当に危険情報を公開していただく。これは何てことないように見えるかもしれないけれども、後でこんなに多くの人が傷ついているんですよ、もう一度思いとどまったらどうですかというような、そういう形での啓発をしていただいた方がよろしいのではないかと思いますし、そうやって、中絶という最後の事態を防ぐための性教育であるとか、あるいは緊急避妊薬であるとか、そういった前段のことをきちんと整えていく必要があると思っております。
 中絶する、しないを本当に権利という観点から考えるのであれば、逆に、本当に、生まれた子供を、では国が、社会が責任を持って、親と関係なく全員育てられるのか、私は多分そこまで話が発展していくと思いますので、その覚悟があるというのならまた話は別かもしれませんけれども、ぜひ、安易に中絶が権利か権利じゃないかという議論にはまっていくのではなくて、本当にこれは当事者を非常に傷つけることであって、何としても避けなければいけない、そういった観点から、当事者をむしろ被害者として位置づけていただくぐらいの感覚で話を進めていただきたいと思っております。
 また、このあたりに関連いたしまして、これは遠山文部科学大臣が、ことし二月二十六日の衆議院文部科学委員会におきまして、「性の自己決定権なんていうのがよくわからないんでございますけれども、」と答弁をされております。文部科学大臣でございます。こんな人が大臣をやっていて大丈夫なんでしょうか。
米田副大臣 文部科学大臣がどういう趣旨で御発言されたか承知しておりません。したがいまして、内閣府としてコメントする立場ではないと思います。
水島委員 これは私、きちんと事前に通告もしておりますので、ぜひそこの議事録をきちんと読んできょう来ていただきたかったなと思いますけれども、特にきょうは官房長官のかわりということでございますので、ちゃんと読んできていただきたかったなと思います。
 それは、性の自己決定権から子供を守れというような、そういう記事に対して、これは非常によくわかる、つまり、子供に性の自己決定権というのを与えるのはむしろ子供がかわいそうだ、そんなような趣旨だったのかなと思います。
 いずれにしても、性の自己決定権なんていうのがよくわからない、これはリプロダクティブライツのことであるわけですけれども、それがわからないと言っている人が、本当に学校の教育の中で性教育なんてちゃんと責任を持ってできるのでしょうか。
 私、先日いろいろ物議を醸し出した冊子の問題なんかを見ておりますと、これは何か、厚生労働省の問題というよりは、本来必要な性教育を現場でできていない文部科学省の問題なんじゃないかなと思ったりもしたんですけれども、今回の報告書の内容でも、かなり教育に踏み込む部分、性教育に踏み込む部分がございますけれども、ちゃんとこの報告書の内容に沿って、大臣を初めとして、文部科学省への指導がちゃんとできますでしょうか。
 今、副大臣は、文部科学省にとやかく言う立場ではない、私は内閣府の人間だというふうにおっしゃったわけですけれども、先ほど官房長官が約束されたように、今回、青少年プランをつくって各省庁ときちんと連携をしてやっていくというふうにおっしゃっているわけですから、文部科学省が何をやってもそれは文部科学省の勝手だという立場はとれないと思いますけれども、改めていかがですか。
米田副大臣 文部科学大臣の思い、御趣旨を今確認するすべがないというふうに申し上げたわけでありまして、ここに、手元にちゃんと議事録もございます。
 要するに、私が申し上げたいのは、まず、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの基本的な考え方、先ほど御答弁申し上げました。水島先生からも御指摘があった。それに政府が異論があるわけではないし、私個人も異論は別にあるわけではない。ごく常識的な、当たり前の、すばらしい理念であるというふうに思っております。
 それから、この文部科学大臣の御答弁を見ますと、最後に、「子供たちにとって大事なのは、人間としての尊厳をしっかり守れるかどうか、そして、みずからの将来にとってマイナスになるような行動をしないようにするかどうか、そういったことをきちんと学校教育においても支え、指導していくということが大事だと思っております。」こういうふうにお答えになっているんですね。ですから、言葉の使い方という問題もあるわけでありまして、御趣旨はきちんと踏まえていらっしゃるというふうに私は思いますよ。
 そこで、内閣府としましても、引き続き、文部科学省を初めとする関係機関との緊密な連携を保って、女性の生涯を通じた健康支援のための総合的な施策を推進していくという考え方に変わりはございません。
水島委員 ありがとうございました。
 きちんと、少なくとも、この懇談会報告書に書かれているこのリプロダクティブヘルス・ライツの考え方、私は大変結構な考え方だと思いますので、ぜひこの姿勢に従って、各省庁、特に文部科学省ときちんと連携をとりながら施策を進めていただくことを改めてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
青山委員長 次に、福島豊さん。
福島委員 両副大臣、大変御苦労さまでございます。特に法務副大臣、お忙しい中お越しをいただきまして、本当にありがとうございます。
 基本的なことを幾つかお尋ねをしたいと思っております。
 先般、青少年の育成に関する有識者懇談会の報告書が公表されたわけでございます。私も、全文通読をさせていただきました。大変大切なことが盛り込まれていると思っておりますし、その中に盛り込まれている提案というものを着実に実現していっていただきたい、そのように思っております。
 その実現ということについては、その中でも青少年プランを策定するということがうたわれているわけでございます。これは、政府としても十三年の青少年対策の要綱を取りまとめましたときにも触れられているわけでございますが、本年はいよいよつくらなければならないという年になっているわけでございまして、この青少年プランにどのような内容を盛り込んでいくのか、そしてまた、その策定のスケジュールをどのように考えているのか、この点について御見解をお聞きしたいと思います。
山本政府参考人 内閣府といたしましては、今月の十五日に、今、委員お話ございました懇談会の報告書をいただいております。このいただきました内容も踏まえまして、さらに幅広い検討を行って、ことしの夏ごろまでに青少年プラン、これはまだ名前は仮称でございますけれども、作成をしていきたいというぐあいに考えております。
 この青少年プランの内容でございますけれども、青少年育成の基本理念ですとか、それから中長期ビジョンといったようなものを示すものとしていきたい。
 それから、この懇談会の内容にもいろいろ御指摘いただいております、例えば青少年の社会的自立ですとか、あるいはいろいろな困難を抱えた青少年の支援方策といったような分野横断的な重点課題、それから、乳幼児から青年時までの年齢期ごとの施策の基本的方向、こういったものを盛り込むことを考えております。
 各省広く関係いたしますので、具体的にはこれから関係各省庁とよく相談をしながら、協議しながら内容を詰めていきたい、作成していきたいというぐあいに考えております。
福島委員 数年前に、専修大学の正村先生が「改革とは何か」という本をお出しになられましたが、その中で、今の日本の社会は次世代を再生産するという機能が非常に衰えているんじゃないかという指摘があったかと思います。教育は国家百年の計でございますけれども、健全な、そしてまた力強い次世代を生み出すことができなければその民族は衰えていくだろう、そういう思いがいたします。そういう意味で、この青少年プランにどういうことを盛り込むのかということは、高い立場からしっかりと判断をしていただきたいなと思っております。
 そしてまた、今回質問をさせていただくに当たりまして、青少年白書も拝見させていただきました。ただ、率直に言いまして非常に残念なのは、施策の網羅に終わっているということだろうと思います。いろいろなことはいろいろと書いてあるんですけれども、だからどうなんですか、だからどうなったのかという評価がない。
 政策評価ということがこれからは常に問われなければいけないわけです。あれもやっております、これもやっておりますといいましても、中身をよく尋ねてみると、数カ所でやっている程度で何ら社会的なインパクトのない事業であったりとかということは間々あるわけでございまして、この青少年プランも、単なる施策の網羅ではなくて、だからどうするのか、だからどうなったのかということをどのようにチェックするのかということが問われなければならないのだろうと思います。
 そうした政策評価のプロセスというものを青少年プランの中にどのように組み込むのか、そういうお考えがあるのか、お聞きをいたしたいと思います。
山本政府参考人 今、委員御指摘のように、青少年白書というのを毎年まとめておりますけれども、これは施策の状況というものを取りまとめているという段階でございます。
 昨年の四月から、いわゆる政策評価法というものが施行されまして、それぞれの省庁が所掌しております施策については、それぞれの省庁で政策評価を行っていくということになっておりまして、青少年の施策につきましても、これから各省庁で、そういう観点から法律に基づいた政策評価をやっていくということになるわけでございます。
 私ども内閣府におきましても、今、私どもが所掌しております青年国際交流、こういう事業もやっておりますので、この事業について、現在、そういう政策評価をやっておるところでございます。
 それで、青少年プランをこの夏ごろまでにはつくりたいということを申し上げました。このプランの策定後におきましては、個々の政策についての評価ということにとどまらないで、このプランに沿った施策の推進状況につきまして、総合的な見地から政策評価をしていくということが必要だろうというぐあいに考えておりまして、この青少年プランの中にもそういう政策評価をやっていくという旨を盛り込んでいきたいというぐあいに考えているところでございます。
福島委員 夏までの作業、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、児童虐待の問題について、この問題は、連休が明けますとこの委員会でも本格的に議論しなければならない課題でございますし、私どもも、党においてしっかりと検討を進めていきたいと思っております。ですから、きょうはさわりのようなものでございますが、児童虐待の実態とその予防、そしてまた、その後の保護等も含めまして、どのような対応をしておられるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
岩田政府参考人 児童相談所における相談件数ですけれども、ここ数年、急増いたしておりまして、平成十三年度の相談処理件数は二万三千二百七十四件でございました。平成十四年度については、まだ年度の途中でございますが、十二月までの状況を対前年同期と比べますと、若干減少といいましょうか、頭打ちの兆しが見えてきたかなというふうに思っております。
 その虐待の内容ですけれども、相変わらず身体的虐待が最も多いのですけれども、ネグレクト、育児放棄、この割合がふえてきているのが最近の特徴ではないかというふうに思っております。
 対策ですけれども、防止対策には二つのことに留意しておりまして、一つは、虐待の発生予防から早期発見、早期対応、そして保護、アフターケア、こういった一貫した対策を総合的に講じなければいけないということ。そしてもう一つは、福祉だけでは対応できませんので、医療、保健ですとか教育、警察、司法、こういったところといかに連携して進めていくかということが大事かというふうに思っております。
 虐待防止法施行の前後から今日に至るまで、さまざまな対策の強化をいたしておりますけれども、時間の都合もございますでしょうから、個別に御説明するのはまたの機会でお願いしたいと思います。
福島委員 現在、局長の御指導もいただきながらと思いますが、児童虐待の防止等に関する専門委員会が検討を進めているわけでございます。
 どういう形でこれを取りまとめ、そしてまた、政府としてもどういうアウトプットをするのかということがあるんだろうと思うのです。この委員会としても、児童虐待防止法の見直しをどうするかということは大変大切な課題でございますけれども、一方では、厚生労働省の所管するさまざまな法律をどうしていくのかということもセットで考えなきゃいかぬということだろうと思いますが、この専門委員会における検討も含めて、今後どういう流れを想定しておられるのか、お聞きをいたしたいと思います。
岩田政府参考人 児童虐待防止法に三年後の見直しの規定が附則にございますので、それを一つ念頭に置きまして、厚生労働省では、社会保障審議会児童部会に児童虐待の防止等に関する専門委員会を設置いたしました。昨年の十二月から審議をしていただいております。医療や保健や福祉、法律、そういった広範な分野の専門家にお集まりいただきまして、今、議論を進めていただいております。
 夏には一つの取りまとめをお願いできるのではないかと思っておりますが、そこでは具体的に、今議論になっておりますことを二、三御紹介いたしますと、生後間もない時期、その直後の時期にどういう形で確実に保健サービスと出会うような体制をつくることができるかとか、児童相談所のあり方や市町村の役割、さらには司法の関与のあり方をどう考えるか。そして、虐待を受けた子供の保護、ケアの分野につきましては、里親のあり方や児童養護施設の小規模化の問題、こういったことを通じて、子供の治療と生活の両面をどういうふうに保障する体制をつくっていくか。さらには、市町村のレベルでそれぞれの地域の実情に応じて関係機関に連携を、今ネットワークをつくっていただいておりますが、それをさらに強化するためにはどういう対策が必要か、そういったような議論をしていただいております。
 厚生労働省といたしましては、こういったような議論も踏まえまして、地方自治体や関係機関、関係団体とも連携して、厚生労働省として対応できる問題についてはしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。
福島委員 今の政府参考人の御説明の中にもありましたが、司法がどう関与するのか。
 これは、今参議院に回りましたけれども、私も心神喪失者新法の最初の検討に携わらせていただきましたが、ちょうど、医療、福祉と司法が重なってくるというのでしょうか、連携するという意味においてはかなり類似性のある話だろうなというふうに思っているわけでございます。類似性があるんですけれども、この専門委員会でも司法がどう関与するのか、いろいろと書かれておりますが、なかなか難しいなというのを率直に言って感じます。例えば、施設の入所の措置に対して裁判所がどう関与するのかとか、そしてまた、親権の停止の問題についてどう考えるのかとか、いろいろな観点があるんだろうと思うのです。
 この専門委員会に裁判所からもオブザーバーで判事の方が参加していただいておりますけれども、一方で法務省として、全体としてどういうふうに対応していくのか。児童虐待という大変膨大な、二万を超える事例があるわけでございまして、死亡者もたくさん出ているということでございますから、司法がどう関与するのか。裁判所の話ですよという説明もあるんですけれども、そうではなくて、裁判所がどうかかわるべきかということも含めて、司法のあり方を検討するのはやはり法務省なのかなというふうに私は思うわけでございまして、きょう、お忙しい中お越しいただきました副大臣にお考えをお聞きしたいと思います。
増田副大臣 お答えを申し上げてまいります。
 非常に難しいという御発言がございましたが、そういう点を踏まえながら、実はこれから、今真剣な取り組みをしております。
 そこで、次世代を担う児童を虐待から保護し、その健全な育成を図ることは、今日、国家全体として真剣に取り組むべき重要な課題である、まずこの認識に立っております。そして、親子関係等の家族制度や家事審判制度、これを所管しております法務省としても、児童を虐待から保護するという観点から、これらの制度をどのように活用することができるかを検討すべきは当然であるともちろん認識いたしております。
 そこで、法務省としましては、児童の保護及び福祉を第一義的に所管する厚生労働省と密接に連携しながら、必要な施策の実現に向けてできる限りの協力、貢献をしてまいりたい、これが基本の考えであります。そして、本年がたしか三年目になるかと認識しているんですが、そういうことで取り組んでまいりたい、このように考えております。
福島委員 ぜひ、しっかりとお願いいたします。
 副大臣、お忙しければ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
 三つ子の魂百までもという言葉がございます。これは、なかなかにそうなんだろうと。水島先生は御専門ですから、そういうことはお詳しいのかなと思うんですけれども。
 一昨年でしたか、「育児室からの亡霊」という、これはアメリカの方が書かれた本でございますが、日本でも翻訳されまして、要するに、三つ子の魂百までもという話に近いわけでございます。青少年期にいろいろな問題行動を起こすことがある。それも、突然そういうことになるのではなくて、育児室といいますか、本当に幼児期までさかのぼることができるのではないか、そういうさまざまな事例を集めているわけでございます。
 そういう観点からいくと、青少年白書でさまざまな青少年の問題行動、犯罪等々が語られておりますけれども、それはどこまでさかのぼって考えるのかという視点も大切ではないか。
 私もこの四年半ほど子育てをしておりますので、しみじみといろいろなことを実感しながらおるわけでございますが、その中で感じましたことは、今の孤立化といいますか、小規模になった家族の中で、母親と子供だけ向かい合っていると、うちもそうなんですけれども、やはりいろいろなフラストレーションがある。特に、私の子供は障害がありますから、それが一層加速されているところがありまして、途中から障害児の保育ということでお世話いただいて、この二年半ほどですか、親ですから観察すると言ったらいかぬのですけれども、一方では観察をしている。そうすると、大変大きく変わることがあるなというふうなことは実感しています。
 今の子育てを、例えば三つ子の魂百までもというのであれば、三つ子までのときにどれだけ人間として成長していくための土台をしっかりつくるのかということが大事なんだろう。小規模な家族の中で、出会うのは母親と子供二人だけとかという環境というのは、やはり私はどこかよくないんだろうなという気がするんですね。
 例えば、公園デビューとかいろいろとありますけれども、公園デビューもスムーズにできるようなお母さんだったらいいんですけれども、人によって性格がありますから、なかなかそういうこともできないということもあるんでしょうね。
 ですから、私が最近思うのは、個別の子育てというのは確かにあるんだけれども、集団での保育というのは、単に仕事をして保育に欠けるから必要だということではなくて、やはり、もっと小さいときから集団の中で人と触れ合うとか他者と触れ合うということそのものが大切なんじゃないか、その子供が変わっていく契機になるんじゃないか、そんなことを実感しております。例えば、引きこもりの問題なんかでも、ずっともとをたどればそのあたりにあるかもしらぬと思うのです。
 ですから、保育サービスというのは、保育に欠ける子に対してのサービスということだけではなくて、もう少し普遍的なサービスとして活用することも考えた方がいいんじゃないか。それは、親が病気だとかということだけに限らずに、出会いの場として活用した方がいいんじゃないかというような思いがあります。以前、局長にはそういうことを申し上げたことがありますけれども。
 幼稚園と保育園の連携というようなことも最近言われておりますし、そういう中で、保育サービスのあり方そのものもどういうふうにするのか、今見直しを、この間、検討会がスタートしたところでしょうか。財源のあり方とかも含めて、これから二十一世紀の社会の中における保育サービスというのは一体どういう役割を担うのか、そういう視点から考えてもいいんじゃないかと思いますが、お考えをお聞きできればと思います。
岩田政府参考人 委員御指摘のとおり、かつては、多人数の兄弟の中で育ちましたし、また、隣近所にも同年齢、異年齢の子供がたくさんいて、その中で育ったということがあると思いますが、今日では、子供の数が減っておりますので、家族や地域の子育て力というのが低下してきたと言わざるを得ないというふうに思います。そういう中で、同年齢や異年齢の子供が集団で育つということは、人間関係の形成、子供の健全育成にとって大変大事なことではないかということについては、全く同感をいたしております。
 保育所は、本来といいましょうか、保育所のこれまでの主たる任務というのは、親が仕事をしている、その他の事情から、みずから家庭で子供を育てられない、そういう家庭にかわって保育を提供する場ということでやってまいりまして、その役割は今後とも重要であると思いますけれども、あわせて、最近強調しておりますのは、専業主婦家庭も含めてですが、その地域のすべての子育て家庭に対する支援をする、そういった支援の中核的な施設の一つとして力を発揮すべきではないかというふうに考えております。
 具体的に、既に取り組んでおりますのは、一時保育ということで、毎日ではありませんけれども、例えば、一週間に一回程度来ていただいて集団保育をする。これは、保育に欠けないお子さんもお預かりするということをいたしております。
 また、保育所に、地域子育て支援センターの整備、併設ということも進めておりますけれども、そこでは、例えばお母さんたちが子供さんを連れてきて子育てサークル活動をする、そのことを保育所が支援、援助するといったようなことも取り組んでいるわけでございます。
 また、さらに、今国会に児童福祉法の改正案を提出させていただいておりますが、その中で、地域における子育て支援事業を初めて法定化するということをいたしております。そして、保育所や幼稚園やNPOやさまざまなグループが、集団保育というような場の提供も含めて、子育て支援を質量とも充実していっていただきたいというふうに考えているところでございます。
福島委員 いろいろと取り組みを進めていただいておりますことは評価をしたいと思いますし、これからも、もっと使いやすくしていただきたい。特に、児童虐待等にかかわる話になりますと、母子関係が煮詰まらないように、どこかにやはり抜け道があった方がいいんだろうというふうに私は思っておりまして、そういう意味では、使いやすさというのが大事ではないか。
 時間も限られておりますので若干はしょらせていただきまして、次は、食育についてお聞きをしたいと思います。
 根岸宏邦先生、これは大阪の先生ですけれども、おととし、「子どもの食事」という本を、これもちょっとPRしたいと思っておるわけでございますが、大変大切なことを書かれております。
 子供の食生活というのは、やはり大きく変化してきたと思います。食生活が変化してきたということは、いろいろな意味合いがあると思います。例えば、一つは家族のつながりが薄れたということもあると思いますし、そしてまた、医学的に言えば、食生活の変化によって将来の成人病の予備軍が大分ふえたのではないかというようなこともあると思いますし、そしてまた、場合によっては、例えばキレやすさにつながっているという話もあるわけでございます。こういった点についてどういう認識をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
岩田政府参考人 子供の食生活につきましては、発育、発展の大変重要な時期でありながら、現状を見ますと、例えば、学校に行く前の子供も含めてですが、朝食を食べていないという子供さんがふえているとか、成人病の予備軍とおっしゃいましたけれども、小児期における肥満の増加が見られるなど、栄養摂取の隔たりとか食生活、食習慣の乱れなどが深刻になっているというふうに思っております。
 あわせて、思春期のやせ症などに見られますように、食の問題というのが心の健康の問題と関連をしているといったような問題もございまして、子供の食を取り巻く状況というのは大変深刻になってきているというふうに考えております。
 また、家族そろって食事をする、そういう機会も減っているということですとか、親の世代、特に若い三十代、そして二十代の親の世代が多いようですけれども、食事づくりについての必要な知識とか調理の技術も十分持っていないというふうに回答している、そういう親もふえてきているというようなことでございます。
 そういうことで、社会環境、家族機能の変化、そういった中で、子供の食を取り巻く環境というのは、ある意味では非常に危機的になってきているというふうに感じております。
福島委員 食というのは家庭の中のものなので、どう公が介入するのかというのはなかなか難しいことなんですけれども、介入できるチャンスがあるとすれば、例えば、保育園もそうですけれども、保育園でも最近は園児と一緒に調理をして食べるというようなことをやっているところもあるみたいですね。そしてまた、もっと長い時間がかかるのは、学校での給食の問題だと思うのです。
 いろいろなことが言われておりますけれども、小学校、中学校を通じての食育というのは大変大切な課題で、ある意味で、人間が生きていくことの根本は何を食べていくかということにもあるわけでございますので、文部科学省としても今までいろいろな取り組みをしていただいておりますけれども、簡単に御説明いただきたいと思います。
田中政府参考人 食育についてのお尋ねでございますけれども、文部科学省といたしましても、現在の子供たちの食生活において、朝御飯を食べてこない、あるいは、子供だけで食事をとっている、さらには、好きなものだけを食べて、偏った栄養摂取等の問題が生じておるところでございまして、児童生徒一人一人が正しい食事のとり方あるいは望ましい食生活、食習慣を身につけ、食事を通じてみずからの健康管理ができるようにするために、食に関する指導を一層充実していくことが必要だと考えておるところでございます。
 このために、各学校におきましては、関連教科あるいは特別活動を通じまして、特に学校給食を生きた教材として活用することによりまして、食に関する指導を推進しているところでございます。
 文部科学省といたしましても、学校栄養職員に対する研修あるいは食に関するシンポジウム等の開催等に加えまして、昨年からは、小学校の高学年及び中学生を対象といたしました食生活の学習教材をつくりまして、また、教師用の参考資料をつくりまして配付しておるところでございますし、さらに、平成十五年度には、小学校低学年の食生活の学習教材を作成、配付したいと考えておるところでございます。
 また、学校における指導だけでなく、家庭や地域との連携も必要であると考えておりまして、PTAの方々の協力も仰ぎながら、親子料理教室、あるいは食生活と健康、栄養についての講習会の開催等を通じまして保護者に働きかけを行うよう指導いたしておるところでございまして、今後とも、食に関する指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
福島委員 親も巻き込んで、保護者の方も巻き込んで、つくるところから含めて食育をしっかりと進めていただきたいと思います。
 本当に時間が、あと一問ぐらいしかできませんか。
 次に、文部科学省の方にお尋ねをしたいわけでございますが、今、特別支援教育ということでいろいろと取り組みをしていただいておりますけれども、マイルドディスアビリティーズ、六%、ADHDとかLDとかがおるということになっているわけでございます。それの対策ということでいろいろと取り組みを進めていただいております。
 きょうお聞きしたいのは、それぞれ、例えば小学校なら小学校、中学校なら中学校で分かれた対応ということではなくて、恐らく、そういった方は就労のところまで、自立というところまで一貫してきちっとつなげていかなきゃいけないんだろうと思うんですね。そういう一貫した対応というものをどうこれからつくっていくのか、この点についてお聞きしたいと思います。
矢野政府参考人 LD、ADHDの児童生徒に対する教育的対応というのは、私ども、大変重要な課題であるというふうに認識しておりまして、このため、文部科学省といたしましては、平成十三年の十月に設置いたしました特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議で検討を行いまして、ことしの三月末に最終報告を取りまとめたところでございます。
 その最終報告では、LD、ADHD等の子供の一人一人の教育的ニーズに対応して、適切な教育的支援を教育、福祉、医療、労働等の関係機関の連携のもとに、学校卒業後まで一貫して計画的に進めていくことの重要性が指摘されているわけでございまして、これはまさに、先ほどの先生の指摘と軌を一にするものでございます。
 また、このために必要な学校あるいは地域における総合的な支援のための体制整備の重要性があわせて提言されているところでございまして、文部科学省といたしましては、こうした提言を受けまして、平成十五年度予算におきまして、ADHDを含めた総合的な教育的支援体制の整備を図るための事業を新たに盛り込みまして、この中で、都道府県において教育、福祉、医療等の部局間の連携を推進する協議会を設置すること、あるいは、小中学校に関係機関との連携のためのコーディネーターを置くことなどを進めることといたしているところでございます。
 文部科学省といたしましては、これらの指摘を通じまして、厚生労働省とも連携をしながら、今後とも、LD、ADHD等の子供に対する支援の充実を一層図ってまいりたいと考えているところでございます。
福島委員 もう時間がなくなりましたので、質問をはしょらせていただきますが、今の質問は、今、フリーターも非常にふえている、そしてまた就労そのものが安定していない、ある面においてはこういったことも関係しているんじゃないかという思いがあるんですね。ですから、どういうふうにある意味でハンディキャップというものをカバーしてあげて、安定した就労につくことができるのか、単に学校だけ終えればいいという問題ではない、そういう観点から取り組んでいただきたいという思いで申し上げた次第でございます。
 質問を省略しました。御答弁を用意していただきましたこと、おわび申し上げまして、おしまいにします。ありがとうございました。
青山委員長 次に、馳浩さん。
馳委員 私は、きょうは、リプロダクティブライツについても質問しようと思っていたんですが、先ほどの水島委員と米田副大臣のやりとりを拝聴しておりまして、ほぼ言い尽くされたのかなと思っております。また、厚生労働省として国民に理解していただこうとするリプロダクティブライツということと、文部科学省として、子供たち、いわゆる未成年、青少年への教育における対応の仕方というものには一定の配慮があってしかるべきである、こういったところに集約されると思います。
 先ほど、坂東局長は、いわゆる御自身のリプロダクティブライツについての見解のところで、答弁をしようかなと手を挙げておられましたので、水島さんが先ほど指名されませんでしたので、私の方から、坂東さん、いわゆるリプロダクティブライツの見解についての御答弁で、先ほど何か言いたそうだったので、どうぞしゃべってください。
坂東政府参考人 ありがとうございます。
 あのときは、七月の私の答弁についての御質問だったので、言葉足らずだったなということも含めて、答弁する機会を与えていただきたいと思って手を挙げてしまいました。
 そのときに、水島委員からの御質問にありましたように、リプロダクティブヘルス・ライツという言葉が、恐らく九四年のカイロ会議以来使われてきている言葉ですが、片仮名の言葉、そしてまた、それを翻訳した、性の自己決定権という言葉で使われておりますけれども、その具体的な中身が、まさしく先ほど御指摘いただきましたように、性的な対人関係における主体性を強化するとか、あるいは異性の性的な心理や生理について正しい知識を得られるようにし、いたわりの精神、男女平等の意識に根差した行動を選択できる力をはぐくむとか、特に、みずからまたは相手の望まない性行為を確実に防いでいけるようにすべきであるといったようなことを、もう少しかみ砕いて表現をする、そして、そういう考え方をもっと皆さんに理解していただかなければならないなということを申し述べたいなと思ったところです。
 どうもありがとうございます。
馳委員 まさしく、やはりリプロダクティブライツと言われる、特に産む、産まないの権利のところで、これは青少年に対して教育の現場で指導される場合には、当然、我が国には母体保護法というものがあるわけでありますから、中絶に関しては非常に限定的に取り扱われているのであって、こういったものを、権利があるかないかという論争に持ち込んでいくのではなくて、やはり十分な配慮を持った教育の仕方を、これはまさしく文部科学省も、教員の研修に当たって御配慮をいただきたい、この点は私も主張しておきたいと思います。
 きょうは、各自治体で制定されております男女共同参画社会に関する条例、この問題点について幾つか質問をさせていただきます。
 まず御質問させていただきたいのは、言葉の整理であります。日常用語で使われる男らしさ、女らしさ、生物学的に男女の性別をあらわすセックス、それから社会的、文化的に形成された性別、性差をあらわすジェンダー、これはどういう関係にあるのか、言葉の整理をしていただきたいと思います。
 また、政府は、一方的に男らしさ、女らしさを否定するものではないと答弁されておりますが、厳密な線引きができないまでも、ある程度の類別、つまりは、男女共同参画社会を実現していく上で、明らかにふさわしくないもの、その逆に全く問題がないもの、時と場合によってはふさわしくない、ケース・バイ・ケースのもの、このくらいの類別といったものは具体的事例を通じて明らかにしておいてもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、日常的に使われる男らしさ、女らしさとは別に、生物学的に男女の性別をあらわすセックス、あるいは社会文化的に形成された性別を表現するジェンダーという言葉がございますが、男らしさ、女らしさというのは、社会や状況、社会的な環境によって大変多様な意味を持っておりまして、いわゆる生物学的な性差、セックスにかかわらず、多くの男性も女性も、男らしさ、女らしさと言われる特性をともに備えている。
 例えば、優しさとか思いやりとかというのは女らしさのイメージで使われることが多いんですが、馳先生はとても優しい男性だと思いますし、同じように、例えば決断力がある、責任感があるという言葉は、比較的これは男らしい特性だというふうに言われがちですけれども、これはもう本当に、男性、女性を問わず、社会的に責任のある仕事をしていく人たちは皆そういった決断力、責任感を求められているわけで、男らしさ、女らしさということについて線引きをするというのは非常に難しいのではないかなというふうに思っております。
 いろいろ学者の方たちの御意見ですと、それはやはりセックスによって、生まれつきの生物学的な差によって少し傾向は違う。しかし、それが、育てられる環境とか周りの影響によってさらにその傾向が拡大するというふうなことが言われております。
 いずれにしましても、それが、例えば優しさのもとはセックスなのかジェンダーなのかと言われても、両方が影響しています。それぞれの特性によって、両方が影響しているんですけれども、その度合いが大きいものと小さいものがあって、そこをぴったしと線で示すということは非常に難しいのではないかなと思います。
 そこで、どういうふうに我々、国として対処していくかというお尋ねだろうと思いますけれども、男らしさ、女らしさにつきまして、私は女らしい女性が好きだとか、男らしい男性が好きだとか、自分はもっと女らしくなりたいとか、男らしくするように努めようとか、あるいは子供を女らしく、男らしく育てたいというようなことは、もう個人の好み、美意識、哲学等に属する部分でございますので、それは国あるいは行政が関与すべきではないと思います。
 しかし、男らしさ、女らしさが、男はこうあるべきだ、あるいは女はこういうふうに振る舞うものだというふうに決めつけを生んで、それによって個人の能力、個性、多様性の発揮に支障を生じたり、あるいはまた差別的な取り扱い、人権の侵害を生じたりすれば、それは、男女共同参画社会の形成に支障を生じるということで強く規制していかなければならないと思います。
 ということで、この問題で地方自治体の男女共同参画行政がいろいろな議論にさらされているということは、国としてもいささか残念に思っております。もっと行政としてやらなければならないことがたくさんあるんだ、この差別的な取り扱いの是正といった実質的な男女共同参画社会の推進をすることを希望しております。
馳委員 そこで、そうはいうものの、各自治体の条例に基づいて、いろいろな苦情などが出ております、問題等も出ておりまして、具体的にちょっと聞いてみたいと思います。
 埼玉県、公立の男子高校五校、女子高校十一校ありますが、これを共学化するよう埼玉県の苦情処理委員が県教委に勧告しています。この勧告内容自体を政府はどう判断されますか、お聞きしたいと思います。
 私の個人的な意見ですが、男女共同参画社会が目指すものは、一人一人が自分らしい個性を発揮できる社会の確立であり、その自分らしさを追求して活動していく上でジェンダーが障害になるとき、このようなジェンダー慣行を否定していこうとする社会だと思います。
 であるならば、青少年が高校を選択するに当たり、男子校、女子校、または共学を選ぶかは、まさにその青少年の自分らしさ、個性の追求の一環としての選択であり、ジェンダーが障害になってはいない事例だと思います。したがって、この勧告は行き過ぎたジェンダー否定と私は考えますが、政府としてはどうお考えですか。
 また、これは埼玉県の問題ではありますが、文部科学省にお伺いいたします。
 文部科学省の施策としては、全国にある公立の男子校三十四校、公立の女子校百十四校に対して、ジェンダーの視点から共学に変えるような指導等の関与は一切行わないということでよろしいのか。さらに、国立において、筑波大学附属駒場高校が男子校、お茶の水女子大学附属高校が女子校ですが、国立の中高で男女別学校について、ジェンダーの視点から考えて共学化すべきと考えているのか、教えてください。
坂東政府参考人 埼玉県の苦情処理について今御指摘のような御意見が出されておりますことは承知しておりますが、埼玉県において、苦情処理委員会の方でそういった意見を出され、また、県の責任において対処を決められたというふうに理解しております。
矢野政府参考人 先ほど御指摘がございました勧告につきましては、埼玉県男女共同参画苦情処理委員による、共学化を進める立場からの一つの見解であるというふうに認識をいたしておりますが、文部科学省といたしましては、男女の共学、別学につきましては、地域の実情や学校の特色に応じて設置者が適切に判断すべきものというふうに考えております。
 また、一般的に、公立学校の共学化についてでございますが、我が省といたしましては、教育上、男女の共学は尊重されるべきものというふうに考えております。しかし、そのことは男女の別学を一律に否定するものではなくて、先ほど申し上げましたように、男女の共学、別学については、地域の実情や学校の特色に応じて設置者が適切に判断すべきものでございます。したがいまして、文部科学省といたしましては、公立学校の共学化について指導等を行うことは考えておりません。
遠藤政府参考人 国立大学の附属学校についてのお尋ねがございましたので、お答えさせていただきます。
 附属学校は、現在、二百五十九校ございまして、その中で男子または女子のみの学校は、高等学校では、先ほど御指摘ありましたように、お茶の水女子大附属高校、筑波大学附属駒場高校の二校、中学校では筑波大学附属駒場中学校一校の三校、こうなっております。
 附属学校につきましては、大学・学部に附属をしておりまして、大学・学部の教育研究に協力している、こういう性格を持っておりまして、どのような生徒を受け入れるかということなどにつきましては、まず大学側において検討、決定されるべきものと考えておりまして、我が省といたしましてはその判断を尊重してまいりたい、こう考えております。
馳委員 埼玉県の事例でもわかりますように、この条例を通じて苦情処理の名のもとに各自治体の勧告や指導、助言が行われるわけです。愛媛県では、ミスコンテストにおける県の関与を中止するよう助言が行われています。このような勧告、指導、助言が各自治体で行われ、しかも、その内容がばらばらであった場合、政府はこれを放置するのかどうか。少なくとも、条例の運用が男女共同参画社会基本法や男女雇用機会均等法等に反して違法であれば是正していかなければならないはずです。これは、行き過ぎたジェンダー否定の場合も同様なはずです。
 また、具体的な苦情処理に当たり、自治体から政府にどう処理したらよいのかの相談がある場合も十分想定されます。そうであるならば、男女共同参画社会基本法等の判断基準が抽象的ですから、これを補完する意味で自治体の苦情処理が適法、適正かを判断する際のガイドラインみたいなものが不可欠だと思いますが、いかがでしょうか。
米田副大臣 男女共同参画社会形成のための施策は極めて広範囲にわたっているわけであります。したがいまして、施策についての苦情や意見を幅広く吸い上げ、必要に応じて施策の改善をも行う、地域の実情に合わせながらではありますが、そういう枠組みをきちんとつくる必要があるだろうというふうに考えております。
 地方公共団体におかれましても、取り組みの推進が図られているわけでありますが、現状では、こういう仕組みが講じられたばかりであるということが一つ、それからまた、取り上げられた事例の集積もいまだ十分とはいえない、そういう状況にあるのではなかろうかと思います。
 そこで、内閣府といたしましては、平成十五年度におきまして、一つは、苦情処理担当者向けに、何が施策についての苦情に該当するのかという事例や苦情解決に当たっての視点、方法論などを内容とする苦情処理ガイドブックを作成し、それを周知すること。それから、第二点といたしましては、関係施策の苦情の処理につきまして、指導的立場にある者を対象とした研修を実施するなど、地域において施策についての苦情処理が円滑に行われるよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。
馳委員 日本一国といえども、北海道から沖縄まで地域性がありまして、各都道府県、市町村、こういう男女共同参画社会づくりのための条例を制定しようとすれば、その議会における論争もあるでしょうから、なかなか統一したものはつくれないとは思うのですが、余りにも行き過ぎたジェンダー論争を否定したり、逆に助長したりするようなことがないような対応というのは、政府でもガイドラインをつくって折に触れて対応し、その実例が積み重なって一つの良識として定着していけばよいのかな、こういうふうに思いますので、副大臣のリーダーシップを期待申し上げます。
 最後になりますが、男女共同参画社会基本法第二条にも定められている積極的改善措置、いわゆるポジティブアクションについて質問いたします。
 我が国のポジティブアクション規定は、いわゆる男女、特に女性に対する機会の平等を単純に保障しようとする形式的平等観を超えて、機会の平等が実際には保障されていない現状をかんがみて、機会の平等を実質的に担保しようとする意味での条件の平等を保障したのか、さらには結果の平等まで保障したのか、ここの違いを知りたいと思いますので、教えてください。
坂東政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、男女共同参画社会基本法におきまして、さまざまな分野において活動する機会の男女間の格差が大変大きい場合、それを改善するために必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、活動に参画する機会を積極的に提供するポジティブアクション、積極的改善措置を講ずることは国の責務とされております。
 今、その積極的改善措置は、条件の整備なのか、結果の平等なのかという御質問がございましたけれども、これはあくまで実質的な機会の平等が保障されるように環境を整備していく、条件を整えていくということであって、結果の平等を強制するものではございません。
馳委員 そうであるならば、結果の平等から出てくる割り当て制、例えば、選挙の候補者について一定割合を女性にすべきだと法令で義務づけるようなことはしないという意味だと思うのです。
 しかし、限界事例が問題となります。
 例えば、政党が自主的に割り当て制をとるのは私的自治の問題ですから全く問題ありませんが、政党が割り当て制をとるなら、公的助成金を出したりして公的優遇措置をとることは法的に許されるのか否か、これが一つ。
 さらに、現実の政府の方針として、国の審議会委員への女性の参画を二〇〇五年末までに三〇%にするという目標設定がありますが、これら数値目標を設定し各種の促進策を講ずる、いわゆるゴール・アンド・タイムテーブル方式は、結果の平等を志向しており、法的に許されるのか否か。割り当て制同様に、能力主義の否定や逆差別の問題とも考えられるが、いかがでしょうか。
 そして、政府のポジティブアクションの今後の方向性をお聞かせいただきたいと思います。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 積極的改善措置として、国は、今は、審議会の女性委員の登用について、二〇〇五年までに三〇%という目標を掲げて努力はしておりますが、そのために人材の情報を提供するとか、それぞれの担当省庁で適当な方を見つけていただく努力をしていただくということを期待しておりまして、結果の平等のために強制をするといったようなことはしておりません。
 また、現に、もう既に三〇%をはるかに上回っておられるような委員会もあれば、まだそのレベルに達しておられないところもあるということで、その条件の整備といいますか、そういった目標を掲げて努力をしていただくということで、クオータ、強制的な割り当てとは違うのではないかなというふうに考えております。
 それからまた、例えば、国立大学協会が二〇一〇年までに二〇%女性にというふうな目標を掲げて努力をしておられる。その努力は、例えば、各大学で女性の割合は何%になっているというふうな調査をなさって、それを公表なさるといったようなことをしておられることが、その積極的改善措置の取り組みというふうに思っております。
 海外の例を見ましても、例えば、公務員に積極的改善措置をするという法律をつくっている国でも、研修の機会を女性に特に与えるように配慮をするとか、いろいろな形で取り組んでおります。
 そしてまた、政党につきましても、基本的にはそれぞれの政党で自主的に目標を定めて取り組んでいただくというのが本筋ではないかと思っております。
 四月八日、男女共同参画会議の意見で女性のチャレンジ支援策について取りまとめておりますが、これも二〇二〇年までに三〇%になることを期待すると。各分野でその目標に取り組んでいただくということを考えております。
 それとあわせて、今、馳委員から御指摘いただきましたように、積極的改善措置というのはどういうことをやるんだ、どういう概念なのか、結果の平等を目指すということになると逆差別ではないか、いろいろな御疑問をお持ちの方もいらっしゃいますので、ポジティブアクション研究会といったような、専門家の方たちに集まっていただいて、きっちりと理論的に、どこまでポジティブアクションとして行うことが法的に問題がないのかということを平成十五年度、十六年度にかけて検討するというふうに考えております。
馳委員 最後になりますが、今行われております統一地方選挙においても、市町村長への立候補者、過去最高の女性の立候補者だそうであります。広島県などでは、町長選でお母さんと娘が争っていたりというふうなこともありました。
 女性が社会的な立場で、しかるべき公的立場において活躍できる場をより広げていこう、と同時に、家庭のこと等もあるでしょうから、できるだけそれを支えてあげられる社会にするのがこの男女共同参画社会基本法の目指すべきところであろうと思いますので、くれぐれも行き過ぎのないように、また配慮を十分できるような、そういう体制をとっていっていただきたいと申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
     ――――◇―――――
青山委員長 次に、内閣提出、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。谷垣国家公安委員会委員長。
    ―――――――――――――
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
谷垣国務大臣 ただいま議題となりましたインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 この法律案は、最近におけるインターネット異性紹介事業の利用に起因する犯罪による児童の被害の実情にかんがみ、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を禁止するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための措置を定めること等をその内容としております。
 以下、各項目ごとにその概要を御説明いたします。
 第一は、インターネット異性紹介事業の定義についてであります。
 インターネット異性紹介事業とは、異性交際希望者の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールそのほかの電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいうこととするものであります。
 第二は、インターネット異性紹介事業者等の責務についてであります。
 これは、インターネット異性紹介事業者及びその行うインターネット異性紹介事業に必要な役務を提供する事業者、保護者並びに国及び地方公共団体は、それぞれの立場で、児童の健全な育成に配慮し、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するよう努めなければならないこととするものであります。
 第三は、児童に係る誘引の規制についてであります。
 これは、何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、児童を性交等の相手方となるように誘引し、または対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引する行為等をしてはならないこととするものであります。
 第四は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止についてであります。
 その一は、児童がインターネット異性紹介事業を利用することを防止するため、インターネット異性紹介事業者は、利用者に対して児童がインターネット異性紹介事業を利用してはならない旨を伝達するとともに、利用者が児童でないことを確認しなければならないこととするほか、これらに違反していると認められるときは、都道府県公安委員会は、当該インターネット異性紹介事業者に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしております。
 その二は、インターネット異性紹介事業者は、その行う事業を利用して行われる児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するための措置を講ずるよう努めなければならないこととするものであります。
 その他所要の規定を設けることとしております。
 なお、この法律の施行日は、公布の日から起算して三月を経過した日とし、インターネット異性紹介事業者が、利用者が児童でないことを確認するための措置等に関する規定にあっては、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願いいたします。(拍手)
青山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
青山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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