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第5号 平成15年5月8日(木曜日)

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平成十五年五月八日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 水島 広子君 理事 山口  壯君
   理事 福島  豊君 理事 達増 拓也君
      小野 晋也君    小渕 優子君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      河野 太郎君    保利 耕輔君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      小宮山洋子君    島   聡君
      肥田美代子君    石井 郁子君
      保坂 展人君    山谷えり子君
    …………………………………
   参考人
   (東京都立大学法学部教授
   )            前田 雅英君
   参考人
   (東京都立大学人文学部助
   教授)          宮台 真司君
   参考人
   (株式会社NTTドコモi
   モードビジネス部企画担当
   部長)          森  健一君
   参考人
   (文化女子大学文学部健康
   心理学科教授)      野口 京子君
   参考人
   (ECPAT/ストップ子
   ども買春の会 共同代表) 宮本 潤子君
   参考人
   (日本弁護士連合会子ども
   の権利委員会委員)    坪井 節子君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     倉田 雅年君
  肥田美代子君     島   聡君
  山元  勉君     小宮山洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  倉田 雅年君     岡下 信子君
  島   聡君     肥田美代子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案(内閣提出第一〇三号)


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、東京都立大学法学部教授前田雅英さん、東京都立大学人文学部助教授宮台真司さん、株式会社NTTドコモiモードビジネス部企画担当部長森健一さん、文化女子大学文学部健康心理学科教授野口京子さん、ECPAT/ストップ子ども買春の会 共同代表宮本潤子さん、日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員坪井節子さん、以上六名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位から、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
 それでは、まず前田参考人にお願いいたします。
前田参考人 御紹介いただきました前田でございます。
 私は、専門が刑事法でして、刑事法学者としてこのような場で発言をさせていただく機会を与えていただきまして、本当に光栄であり、感謝申し上げる次第でございます。
 その立場から、大きく言うと二点ですけれども、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案について意見を申し述べたいと思います。
 一つは、前提でございますけれども、今の青少年の置かれている状況を刑事法学者から見てどうとらえるべきか。非常に危機的な状況にある。犯罪状況も、日本全体の犯罪状況が危機的なわけですけれども、その中でも、少年犯罪の問題、それから少年の規範の喪失の問題、逸脱の問題というのは非常に危機的である。その中で、インターネット異性紹介事業を利用して、長い名前ですのでちょっと省略しますけれども、この法律案をつくることは非常に重要なことであるというふうに考えております。
 お手元にグラフをお配りしてありますように、これはどこにでもあるグラフなわけですが、犯罪率が今、異常な状況にあります、このグラフと、さらにそれに絡んで十代の少女の中絶件数ですね、未成年者の中絶の異常な増加が、ここ五年、進行している。それから、後の方にもグラフがありますけれども、少女の犯罪の増加が著しい。
 それと児童買春それから児童売春みたいなものと直接結びつけるということは短絡に過ぎるわけですけれども、大きな流れとして、非常に厳しい犯罪状況、少年少女を取り巻く犯罪状況の中で、本当に少女を守っていくためにどういう規制をしていくのが合理的かということを、今までよりも一歩踏み込んだ形で考えなければいけない状況に立ち至っているというふうに私などは考えている次第でございます。
 本法は、刑事法学者から見て一番注目すべき点といいますか、特徴といいますか、画期的な点は、一見被害者に見える少女まで罰を加える、これを刑法理論的に説明できるのかという問題がございます。
 今までの議論からしますと、それは処罰までする必要はないという議論に結びつきやすかった面もありますけれども、刑法の理論の動きも変わってきておりますし、それからもう一つ重要なポイントは、先ほど申し上げた状況の変化、そこに、東京都で調べた、高校の女生徒の性体験の率の変化なんかもございますけれども、ここ最近の動きが著しい中で、非常に形式的な、被害者なき犯罪は処罰すべきでないというような議論が意味を持つのかということなんですね。
 大前提として、少女が売春をするということの是非自体にも御議論があると思います。私も学者といっても一定の立場性がございますから、私は、やはり買春というものは悪である、違法であるという立場に立って、それをどう禁圧していくべきか、もちろん、禁圧の仕方によってはマイナスがかえって大きくなるわけですけれども、禁圧することによって少女自身を守っていけるのではないか、また、そういうことを考えるべき時期に来ているのではないかということを申し上げたいと思うのです。
 児童買春の実態、これはもう政府委員の側からるる御説明があったと思うんですけれども、単に買う側の大人のみを処罰すればうまくコントロールできるかというと、つまり少年が守れるかというと、その段階は過ぎている。マスコミの報道の中にも、生活のためにやむにやまれず売春をしている高校生がいるみたいな書き方をしたものがあるんですが、これは、我々専門家から見ますと、非常にお笑いなんですね。生活のための窃盗犯みたいなものの割合の低さとか、それから現実の実態を警察から聞いてみますと、そんな現実とはかけ離れている。
 児童からの搾取というようなことで、条約なんかもできているわけですけれども、世界的なレベルで前提としていた少女の買春のありようと、日本の援助交際といいますか、買春のありようというのは質的に異なる。それに対して、やはり日本の現状に合った法規制というものを考えていかなければいけないというふうに考えております。
 非常に短い時間しかちょうだいしておりませんので、お配りしたレジュメの全部に触れることができなくて申しわけないんですが、二番目の「刑法理論の変化と被害者処罰」というところに移ってまいりたいと思います。
 被害者が処罰されるべきでないとか、現実に被害がないから処罰する必要がないという議論、これは、一九六〇年代、もう今から三、四十年前にはやった議論で、非常に強くその時期から主張されてきた面はあるんですが、徐々に変わってきている。
 そのころの一番強い議論は、薬物、覚せい剤なり大麻なりを自己使用するというのは、被害者がいないんだから処罰しなくていい。アメリカなんかではまさにそういう議論が強かったし、日本でも、学者の中ではかなりの数の人が、自分で自分を傷つけるんだから、覚せい剤を使って何で処罰するんですかという議論をしてきたわけですね。
 しかし、だんだん、それでは余りにも皮相的な説明であって、本人自身を苦しめる、その本人を処罰することによってそういうものを抑止するということが、広い意味で社会全体の利益にもつながる。
 今回のメーンとなる、児童が被害者ではあるわけですけれども、片一方で、売買春を誘引する行為を行う。これはやはり、一面では被害者という面もありますけれども、そういう風潮が広がることによって、一般の少女がそういうものに触れる機会がふえて、そういう環境ができることによって、また、買春以外の強姦とか恐喝その他の犯罪に巻き込まれる可能性もふえている。そういういわば社会法益、我々の業界でいえば社会法益という言い方をするんですが、そういうものを守るために刑罰を使うという考え方が認められるようになってきた。
 非常に自由主義的な意識の強かった六〇年代、七〇年代は、具体的な個人の利益が害されたところだけに刑罰を使うべきだという意識が非常に強かった。しかし、そこまで待って刑罰刑を発動していたのでは、社会をコントロールする手段として余りにも遅いのではないか。一歩手前の危険性、そういうものが発生する危険性の段階で一定の規制をかけるということ、これにも合理性があるという方向に動いてきていると思います。
 最近のDVとかストーカーとか、いろいろな立法がそうなんですが、従来の基準からいくと、非常に問題があると言われてきたものです。それらについて一歩踏み込んで法規制をして、その際には、これによって、乱用されて人権が害されるんじゃないか、いろいろなマイナスがあるんじゃないかというような議論があったわけですけれども、私は、結果的にはそういう問題は起こってはこなかったというふうに評価しているのです。
 ですから、今回のがいいということではないんですが、具体的に、今回の法律を合理的に考える理由というのは、具体的な数字は別途にお示しいただいていると思うのですが、やはり、ここまで問題が生じている児童の危険な状況というのをとめるには、大人の処罰だけではなくて、みずから書き込む女子高校生なんかに関しても一定のサンクションがあるということで規範を示す。刑法理論の中で、処罰することによって国民に規範を定着させていく。専門の言い方ですと、一般的積極予防の理論という言い方をするんですが、そういう考え方、規範を形成していくという考え方も十分成り立ち得る。それを選択するかどうかは、やはり国民であり、国会の場で御判断いただきたい。
 私は、個人の意見としては、そういうことが必要な段階に来ている。ですから、この法案、細かいところをいろいろ、私個人として、学者として、意見がないわけではございませんが、基本的にはこの法案は今非常に時宜を得た必要な法案であるという考えを持っております。
 以上です。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、宮台参考人にお願いいたします。
宮台参考人 おはようございます。宮台真司と申します。この委員会にお呼びいただいたのは二度目でございます。大変光栄に存じております。
 私は、今回の法案につきましては、その立法目的には賛成をいたしております。児童を保護するという立法目的には賛成いたしておりますが、法案の具体的な内容についてはネガティブ、否定的に考えています。
 その理由を幾つか申し述べますが、大きくは三点、一、わかりにくい、二、誤用、乱用の危険がある、三番目、有効性に疑問があるということです。
 まず、わかりにくさですが、出会い系サイトの範囲、出会い系サイト、これはインターネット異性紹介事業者というふうにパラフレーズされていますけれども、これがよくわかりません。いわゆる、メッセージ取り次ぎ型ではなく、単純BBS、ブリティンボードシステム、電子掲示板でも、ユーザーの書き込み次第では出会い系に変貌します。したがって、出会い系になり得ない書き込み可能サイトは論理的に存在し得ないという過剰な包括性が存在しています。
 次に、未成年者を加罰する法理、これは前田参考人もおっしゃっていたことですが、これがわかりにくいのです。保護対象への加罰は法理として矛盾しています。これに加えまして、覚せい剤等の取り締まりとの違いは、事実上、成年の単純売買春、あるいは成人が書き込んでも罰せられないものについて未成年を罰するということの矛盾も指摘しておきたいと思います。
 ちなみに、売買春の是非についての個人的な見解は申しませんが、アメリカの一部の州を除きますと、先進国の多くは単純売買春は合法化し、青少年の性行為も合法化していますが、しかし、国連の子どもの権利委員会は、青少年の売買春はこれを禁止するように勧告をしているわけです。
 その理由は、例えば交渉力が未熟であったり、問題解決能力が未熟であったり、対償が非常に高額であるがゆえの異常行為の反復があり得たりして、いずれにせよ、青少年の健全な試行錯誤に必要な最低限の尊厳を保護するという法理において未成年者の売買春を禁じているわけです。売買春がいけないからではなくて、売買春がいいか悪いかはむしろ成年の良心に任されているのでありますが、にもかかわらず、未成年者についてはこのような一定の保護理由が与えられているというのが国際的な流れであります。
 次に、誤用、乱用の危険について申し上げます。
 まず、いわゆる成り済ましによるでっち上げなどで、個人情報が当局にすべて把握される可能性がございます。成り済ましとは、すなわち、児童を誘引する書き込みを電話番号やメールアドレスとともにアップロードするなどの行為であります。このような単純なでっち上げがありますと、検証令状で過去から未来にわたる位置情報が携帯電話会社から提出される書類を通じて確定される可能性があります。これは、ここにいらっしゃる政治家さんたちにとっては、とりわけ危険なことではないかというふうに私は考えております。
 さらに、個人の攻撃だけではなくて、成り済ましによるでっち上げなどでサイトつぶしが行われる可能性もございます。単なる捜査対象となるだけでもウエブサイトにとっては大きな打撃であります。とりわけ、子供が参加するようなサイトにとっては大打撃。しかも、そのような振る舞いを通じて、特定のサイトの参加者の個人情報が捜査当局に筒抜けになる可能性もございます。
 そして三番目。有効性に疑問がございます。
 かつて、九六年の岐阜県テレクラ条例以降、通称ですが、さまざまな、いわゆる出会い系の前身に当たるような不特定者のメディア、出会いメディアが禁止されてきましたが、その都度メディアが横に移動していくだけでありまして、総体としてのユーザーが減るということは全くなく、むしろずっとふえてまいりました。
 さらに現在では、この出会い系サイト規制法案の成立を見越しまして、いわゆる街頭ナンパ、町で声をかけるという振る舞いの復活、あるいは特にやくざ系の人たちが経営している女子中高生置屋が非常に広がっております。さらに、テレクラ、伝言、ツーショットのようなログの残らない、声を使ったメディアが見直しされ、その種の雑誌で繰り返し特集されているという現状で、ユーザーはもうそこに移りつつあります。
 さらに、簡単に抜け穴もつくれます。例えば、二十七歳!といった暗号化、このびっくりマークはマイナス十歳を意味したりするわけですね。そのようなやり方で簡単に抜け穴をつくれます。このような書き込みは、今回の法案では一切規制することができません。
 さらに、これは後で質問があれば詳しく説明しますが、クローズドなツーショット・チャットシステムというのがございます。これは外からは何を会話しているのか全くわかりませんが、ウエブを使う、例えば児童を見つけようとするユーザーは、もう大半がこちらの方に移行しておりますので、このような法案ができることによって少しも困りません。
 三番目に、このように有効性に疑義があるにもかかわらず、二番目に申し上げたような誤用や乱用の危険の存在する法律が成立すること自体は極めて、つまりコスト、費用対効果という観点から見てアンバランスであり、最小化措置を講じるべし。つまり、目的に対して手段を最小化するべし、あるいは効果に対して手段を最小化するべしという近代法の原則あるいは憲法的な原則に抵触しているというふうに考えることができます。
 さらに、今私が申し上げたような有効性に対する疑問をもって、この法案をもっと拡張し、拡充し、ありとあらゆるものに網をかけろというふうな議論が出てこないとも限りません。
 例えば、ログの残らないテレクラ、伝言、ツーショットについては、盗聴のような捜査手法を麻薬の取り締まりに関する特例措置と同じように設けてはどうかといった議論が出てこないとも限らず、もちろん、そのようなものが出ても、ユーザーが抜けようと思えば幾らでも抜け穴はあるんですが、いずれにしても、非常に、目的はよいのですけれども、法案の内容には疑問があります。
 ちなみに、私は社会学者で、専攻は数理社会学と社会システム理論でございますけれども、幾つかの研究分野の一つに、青少年の性的なコミュニケーションの問題を研究しているということがありまして、実は、出会い系の前身に当たるテレクラなどにつきましては、テレクラが誕生した一九八五年九月から綿密な調査を重ねてきておりまして、取り締まりがどのような効果を生んできたのかということもつぶさに見てきております。
 以上です。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、森参考人にお願いいたします。
森参考人 おはようございます。NTTドコモiモードビジネス部の森と申します。
 きょうは、青少年の健全な育成に向けたNTTドコモの取り組みにつきまして、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 まず最初に、私どもが提供しておりますiモードのコンテンツと言われるもの、これのカテゴリーについて御説明申し上げます。
 資料の方は二ページになりますけれども、私どもが提供しておりますiモードのコンテンツは、大別すると二種類に分かれます。
 一つは、iモードメニューコンテンツと言われるものです。これは私どものポータルサイトと言われているメニューリストのサイトですけれども、ここにエントリーされているサイト、昨年度末で三千四百六十二サイトございますけれども、このメニューコンテンツのサイトです。
 これらのサイトについては、当社と情報提供者さんの間で情報提供等にかかわる契約を締結しております。また、このコンテンツの内容は、後で述べますけれども、iモードの掲載基準というものがございまして、これに沿った形で打ち合わせを行い、決定させていただいております。
 もう一方のカテゴリーのサイトは、いわゆる一般サイト、勝手サイトとかも言われますけれども、こういうサイトがございます。これは、インターネットの世界ですので、個人、いろいろな団体の方、さまざまな方が御自分で自由におつくりになるサイトということです。ユーザーの方もURLを打ち込めば、もちろん、これはインターネットですから御自由にアクセスできる、そういうコンテンツでございます。
 現在、デジタルストリートさんというところで運営しています「OH!NEW?」というサイトがあるんですけれども、これによりますと、このようなサイトが約六万四千サイトございます。iメニューコンテンツと違いまして、これはドコモ、当社との間との契約関係はございません。コンテンツの内容は、先ほど申し上げましたとおり、情報の提供者さんが自由に掲載することができるという仕組みになっております。
 次は、三ページになりますけれども、iモードのメニューコンテンツ、これについて簡単に御紹介いたします。
 ドコモの携帯電話をお持ちの方はおわかりかもしれませんけれども、iモードのボタンを押していただくと、このようなiメニューリストというのが出てきます。これは、私どもドコモの方で編集をして、お客様に御利用いただけるようにユーザーシーンを考慮して、便利なサービス、楽しいサービスとなるように、このようなリストの画面を提供させていただいております。先ほどのiメニューコンテンツを提供していただく提供者さんはこちらの方にエントリーいただくという形になっております。この中にリンクされているコンテンツには、いわゆる出会い系サイトでありますとかアダルト系でありますとか、こういうサイトはございません。
 ここの仕組みについて、四ページで御説明申し上げます。
 iメニューリストへエントリーしていただく手順なんですけれども、手続は、これはすべてのコンテンツプロバイダーさん、情報提供者さんに均等に機会はございまして、インターネットにて当社で受け付けております。受け付けた以降、企画書に基づいて当社の方と打ち合わせをさせていただいておりまして、メニューリストに掲載する。
 この中で、iモードのメニュー掲載基準、これは、実は、我々のサービス開始当初からこのような掲載基準を持っておりまして、現在ではホームページでも公開されているものなんですけれども、こういったコンテンツ、社会倫理に沿うもので、関係法規に反するものであってはなりませんと。例えば、掲載できないコンテンツを例として、下記に挙げるようなものが例示としてホームページ上にも公開されてございます。
 私どもは、このような掲載基準にのっとった形で、iメニューリストに載っかっていただくコンテンツ提供事業者さんには、内容がこの内容に沿うようにお願いして、打ち合わせをしてやっているところでございます。
 次のページになりますけれども、先ほどのデジタルストリートさんの調べによりますと、一般サイト、先ほど約六万四千と申し上げましたが、デジタルストリートさんのカテゴリーの中の割合でいきますと、一部に出会い系と言われるもの、やはりそういうものが存在しているようです。
 次のページをめくっていただきまして、これはほんのサンプルなんですけれども、一般サイトの一部にこのような出会い系サイトあるいは画像投稿、これは利用者の方が自分で撮った写真をデジタル化してサイトの上に張りつけて、だれでも見られるといった代物でございますけれども、こういったサイトでございますとか薬品の販売等、こういうサイトもありますよということです。現在は、これはiモードの電話に限らず、携帯電話をお使いで、インターネットに接続できる電話からは自由に見られるという形になっております。
 続きまして、我々の方の取り組みについて御説明申し上げます。
 八ページになりますけれども、まず、私ども、従来よりユーザーへの注意喚起といたしまして、例えばインターネット上のトラブル等情報提供を行って、ユーザーの皆様、御利用者の皆様に対して注意喚起を実施してまいりました。これは一例なんですけれども、iモードネットトラブル防止マニュアル、これは、二〇〇一年の十月からこういうものをつくって、ドコモショップ等店頭、お客様の目に触れるところでこういうものを配布して注意喚起を行っているという一例でございます。
 それから九ページ、最後になりますけれども、新聞等で私どもからもアナウンスさせていただいておりますけれども、ことしの夏よりアクセス制限機能の提供ということで、現在、サービス開始に向けて準備を進めている段階です。
 内容としましては、ユーザー、未成年のユーザーの場合はその親権者ということになりますけれども、この希望によって、出会い系サイトが今存在しないiメニューリスト、ここにだけ接続いただけるような、こういう選択の幅をお客様に選んでもらうという機能でございます。先ほど申し上げたとおり、iモードメニューコンテンツは出会い系サイト等は存在しませんので、ここの部分だけにつながるといった選択をお客様の希望によってできるような機能を提供する予定でございます。
 最後になりますけれども、当社といたしましても、昨今、いわゆる出会い系サイトと言われるものが社会的問題化していることについては、やはりモバイルインターネットの健全な普及の妨げになるというおそれがあるかなと思っておりまして、この辺は危惧するところでございます。したがって、健全な通信環境の確保の観点から、可能な範囲で私どもは対策を講じてまいりたいと思っております。
 以上、簡単ですけれども、御説明申し上げました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、野口参考人にお願いいたします。
野口参考人 おはようございます。文化女子大学文学部健康心理学科の野口でございます。
 私は、きょうこういう機会をいただきまして、私の専攻の分野の心理教育的な面からお話しさせていただきたいと思います。
 資料に沿いまして、まず、この法案に私は基本的には賛成しております。
 どちらの立場に立たれる方でも、出会い系サイトを利用した犯罪の防止と子供の健全育成、非行防止という目的には賛成なさると思いますが、このマイナス点に挙げました子供に罰則を与えるということについていかがなものかということと、同時に、規制をかけると、表現の自由と健全な出会いを求めてそういうインターネットあるいは出会い系を、人と交流を求めていく人のそういう機会を奪うことがあるのではないかということが出てくると思います。
 以下、二番、三番に沿いまして、私が規制をかけた方がいいという論点をお話ししたいと思います。
 まず第一に、いろいろな論点がある中でも、特にこの委員会がそうですが、子供を守る、児童を守るという視点がまず優先順位の第一に入ると思います。その児童を守るということは児童をどういう状態に置いていくかというと、健康な状態。その健康という意味も、体だけではなくて心も、それから人間関係の中でもよい状態にいる子供たちをつくりたい、そういう子供たちであってほしい。でありますと、それがこちらの、子供たちに対する健全育成と非行防止に大人がどのぐらい力をかせるかということになると思います。
 私どもの理論からいいますと、行動を変える。つまり、出会い系サイトを利用するとか援助交際とか、そういう行動、一応よくないと言われている行動を本来の児童としてのふさわしい行動に持っていく、行動を変えるということに対して、三番にございますように、いろいろな方法がございます。そうしようと心から思う、願う動機を高める。あるいは、それのための環境を整える。なぜそうしてしまうか、そうせざるを得ないような何か理由があればそれを弱めてあげるとか、事情を説明し、こういうことをすると体はこうなっていくとかいう教示を与えるのもありますし、正しい行動をとっている人を見せるというモデリングもあります。先ほど宮台先生がおっしゃいました試行錯誤という方法もありますが、最後に強制という方法もあります。
 今、心理学の動向といたしましては、いろいろな行動の結果に対して自分で責任を持つ、自発的に自分で変えていく、児童のそういう対応というか態度を図ることが目的になっている。それが今の動向で、被害に遭ってもみんな自分の責任ということになっておりますが、その行動を選ぶための判断とか自分の意思決定をするために正しい情報を与えるというのがやはり大人の役割でありまして、それに対して、それに進めていけるようなソーシャルサポート、サポートを与えるというのが当然、自発的な行動を促すのですが、必要なことになります。
 そうしますと、試行錯誤してひっくり返ってしまったり死んでしまったりしたら何にもならないということで、この問題に関しては、強制ということもある程度必要ではないか。
 これを、一ページの下に図がかいてありますが、行動を変えるために幾ら個人の力だけに頼るといっても、児童の力で、幾ら教育をして、いけないんだと教えても、それだけではやはり、この図にありますように、個人の力が少なければ規制の力を強くする、規制が全然なければ個人の力だけで働く、これはどちらだけでもだめでして、両方の力がちょうどよいバランスでかかわったときにその行動が変わっていく。個人の力と組織、環境からの働きかけということが大事になる。
 そうしますと、今回の問題の規制というのは組織や環境からの働きかけということで、子供の自発的にかかわっていく心を助けようではないかということになります。
 二ページ目に参りますと、もちろん自己責任ではあります、いろいろな問題は自己責任でありますけれども、子供の発達によっては、本能的なものとそれから理性的な部分とあとは規範的な部分、いろいろエネルギーが行ったり来たりいたしますけれども、それがどのように発達しているか、あるいはバランスがどうかということによって、責任能力とその範囲が異なってまいります。
 児童は大人と比べまして、まだ十五、六歳といえば、体は大きくなっておりますけれども、内臓の部分ではまだつくられていく最中でありまして、ですから、たばことかお酒はいけないんだということになるわけです。そういう生理的な部分からもまだ未熟段階にもありますし、ストレスに対する耐性、耐える力というものも弱いわけで、また、善悪の判断とか健康に関する知識がなかったり、自分のそのときの衝動とかを抑える理性的な思考というものに至らないまま、このような援助交際あるいは出会い系サイトでの行動に結びつきますと、これは後で取り返しのつかない、そういうストレス後の症候群が出てくるということになります。
 それで、このようなことを考えまして、今回の規制がどういう役割をするかということで、二ページ目にまた一つ図がございます。
 今回、こういう法案をつくられたときに、いろいろパブリックコメントなども聞きましたし、いろいろな方々のお話を聞いてなされたと思いますが、この図でいいますと真ん中にあります。児童がそういった行動を起こすときにどういう動機づけとか理論づけをしているか。そして、そういう行動を起こすときに、やはり実現させている条件や要素がある。また、それを強化している、つまり報酬とか誘因を与えるものがある。例えば金品、お金をもらうとかそういうことも入るわけで、そういう行動を起こしている要因から出て、では、それをなくせばいいのではないかということで規制が考えられてくるわけですね。
 要因をアセスメントすることによって考えた本案のこういう規制のプログラムを実行するということで、この今出てきた要因が改善されていくという、規制の役割というものは非常に、この図でいうとこういう位置づけをしているので、おわかりいただけるかと思います。
 次の三ページ目に、パブリックコメントで学生の年代のアンケートがちょっと少なかったもので、私も関係の方で調べてみました。
 これはローデータでして、きちっとコントロールも何も置いておりませんが、ごらんいただきますと、十八歳、十九歳、ちょっと前に児童のこういう対象の年齢を過ぎてきたばかりの大学一年生ぐらいのところなんですが、この人たちの数字を見ますと、かなり、斜をかけたところですが、罰則を科すということにも賛成しております。
 これは、最初、ああみんな反対じゃない、これでいいんだなというふうに考えることもできるんですが、実は、また二ページ目に戻りまして、「今後の課題」。この規制を通して行っていく、実施するということになりますと、やはり、子供たちも、外側からの規制によってきっとやらなくなるだろう、それが抑止力になるだろうと考えているという、もう一つ深めて考えますと、やはりそれだけでは危険で、もっと自分で自発的にやめていく力も同時に考えていかなければならない。
 と申しますと、「今後の課題」のところで、この規制プログラムを、通りましてこれが実施された場合には、結果がどうなったか、経過と、それを見て手直しをするところがあるか、あるいはどのような影響が出てきて、ほかの、つまりそれを利用する人のまたマイナス影響もあるかもしれません、結果としてそういう行為が減ったかどうかということをきちっと評価していく必要があるということと、同時に、家庭や学校での教育で健全な児童をつくるための方策もしていく、それが大事なことだと思います。規制というのは当然一部、子供を守るための一部でございますから、同時に、ほかの教育的な配慮も今以上に強くしていく。
 それから、三番目に書いてあります大人の役割の自覚。相手側は大体大人になる、低年化しているといってももう大人でございますので、大人がこれをやめればまずこういうことはなくなるということで、この際、大人も姿勢を正すということ。それから、大人の罰則の方ももう少し強化してもよろしいかと思います。
 それと四番目に、先ほどのアンケートから見ましても、同世代のこういうことをしていない児童、子供たちの意見というものが広がっていけば、そして、これは罰則によっていけないことだということが抑止力になりますと、全体的に数は減っていくだろう、そして、よい方を広げて悪い方を抑えていくということになる、そういう方法も教育分野の方で考えていくことが大切かと思っております。
 以上、ありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、宮本参考人にお願いいたします。
宮本参考人 おはようございます。
 本日、法律案の審議に当たり、子供買春、子供ポルノなど子供への性的搾取、虐待の根絶のために働いてきたNGOとして、ここで意見を述べさせていただきますことを感謝申し上げます。
 現在問題となっているいわゆる出会い系サイトにはさまざまなものがありますが、緊急の対処を必要としているのは交際、具体的には性交等の相手探しを目的とするものです。これらのサイトは、携帯電話などから手軽に利用できる反面、犯罪が急増しており、たくさんの子供たちが巻き込まれています。特に事件の多くを占めるのは子供買春です。このような出会い系サイトにかかわる犯罪から子供を保護するために、政府が今国会に法案を提出されたことを評価いたします。その上で、内容につきましては、幾つか大きな問題点があると考えます。
 第一に、出会い系サイトで子供を誘った者を処罰するとしていますが、同時に、勧誘の書き込みをした子供に対しても罰則を科しています。これは、子供買春の被害者に対して懲罰的アプローチをとらないとする国際合意、ストックホルム宣言及び行動計画に反することです。国際ECPATとしても、この子供処罰規定を問題視しておりますし、今後、国連などの場で問題とされる可能性が高いことも申し上げさせていただきます。
 子供処罰の背景には、子供買春事件の九割が子供からの勧誘がきっかけであるという統計がありますが、その認識には重大な誤りがあります。
 サイト利用者の大半は成人男性であり、彼らは子供の書き込みを待っていると言えます。確かに、一たん子供が書き込みをしてしまえば、そこから巻き込まれていってしまう危険性が高くなるかもしれません。しかし、だからといって、子供の書き込みを罰するというのは本末転倒です。子供を罰することによって、相対的に、子供を性的対象とする買春者や虐待者の責任と犯罪性を弱め、正当化の論理を与えてしまうということを認識すべきではないでしょうか。
 昨年十一月に兵庫県で起きた三十五歳中学教師による十二歳の少女の監禁致死事件は、一つの象徴的なケースとなりました。この男は、少女に手錠をかけ、ワゴン車に監禁し、そこから逃げようとして少女は死に至らしめられたわけですが、判決の中で裁判長は、テレクラを利用した少女にも多少の落ち度があったと述べています。九九年、全会一致で成立した児童買春、児童ポルノ等禁止法の趣旨が法執行現場では実体化されていないという現実を示しています。
 同時に、子供に対して、自発的、積極的に売買春に関与しているという印象が日本社会に広まってしまっています。しかしながら、事実はどうでしょうか。冷やかしや暇つぶしで書き込みをした子供が巻き込まれていく場合もあれば、家庭内の性虐待を初めさまざまな虐待、学校での疎外、いじめなどで傷つき、相談相手や優しくしてくれる相手が欲しくて、それを出会い系サイトに求めてしまう子供たちもいます。また、一方的に送られてくる迷惑メールやティーン雑誌に繰り返し登場する記事、広告などで楽しげな印象を持ち、サイトを訪れる場合も多々あるのです。
 テレクラ被害が最初に問題となった当時も、子供の雑誌にテレクラ広告がしばしば載っていたということが指摘されました。子供の性的搾取に直結したマスコミ情報の実態と影響についても、今回改めて考え、対処する必要があるのではないでしょうか。
 責任を問われるべきは、子供ではなく、子供の状況につけ込む者です。その点、法律案では、子供を直接誘う者や出会い系サイト運営者に対する罰則、規制を設けており、一定の評価ができます。
 ただし、そうした出会い系サイト運営者や利用者にサービスを提供し、子供にとっても利用の入り口となっている携帯電話会社、プロバイダー等の事業者にも、悪質なサイトを排除したり子供の利用を防止したりする大きな責任があるはずですが、そうした事業者に対しては、拘束力のない努力義務にとどまっています。通信の秘密がその理由であると説明されていますが、子供の最善の利益から見た場合、考え方の優先順位に問題があると言わざるを得ません。
 サイバー犯罪条約を提示した欧州では、イギリス、フランス、アイルランドなどのISP、インターネットサービスプロバイダー協会が、子供への性的搾取を防止するため、企業の社会的責任として積極的な協力を実践しています。例えばイギリスでは、自主規制と共同規制、コレギュレーションを組み合わせたアプローチを採用し、官庁、法執行機関、ISP、コンピューター製造業者などの官民の関係者が参加するタスクフォースを組織して、法的、非法的両面で取り組みを進めています。
 他方、子供たちに対しても、このままほうっておいていいということでは決してありません。ことし三月に東京で開催された世界初の「モバイルインターネットと子ども」に関する国際ワークショップで日本人高校生が訴えたことは、一日二十から三十件ものスパムメールが入り、ワン切りも多々ある。出会い系とわかるものもあるが、わからないものもある。趣味のサイトと思って話をしていたら、途中から性的な話になっていった。中高生用ファッション雑誌の中に出会い系サイトを勧める文章が載っている。とにかく野放し状態であり、子供は出会い系サイトが自分たちにどう影響を与えているかを教わっていないということでした。
 二〇〇二年度から公立小中高にインターネット接続がなされましたが、ハード面の整備と車の両輪でなければならないインターネットの安全教育、インターネットリテラシーが実施されておらず、学校カリキュラムの中に必須科目として入れる必要があります。
 また、出会い系サイトにまつわる危険やインターネットの安全な利用法を学校や家庭で教えることはもちろん、第三者機関として子供が気軽に利用できる相談窓口やカウンセリングの場を設けることがぜひ必要であり、この点については、予算及び人員措置が確実に担保される義務規定にしていただきたく、お願いいたします。
 九九年に成立いたしました先ほどの児童買春、児童ポルノ等禁止法において防止教育の条項が努力義務のみであり、効果的な執行が行われなかったことが、出会い系サイトにかかわる被害状況をここまで深刻化させた一因でもあると考えます。
 以上の点、また、お手元にございます参考資料の中で述べさせていただいております諸点を含めて、何とぞ十分な審議の上、日本政府が既に批准した子どもの権利条約及び今現在批准に向け準備を進めている選択議定書の目的である子供の最善の利益に立った法律内容としてくださいますようお願い申し上げます。
 最後に、こうした問題を解決していくためには、関係事業者や行政機関のみならず、何よりも親や教育関係者、そしてマスコミ、市民が意識を高め、子供にとって安全なインターネット環境を築いていくべきであると考え、ECPAT/ストップとしても、すべてのセクターと協力しつつ、努力を積み重ねていく所存です。
 以上、陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、坪井参考人にお願いいたします。
坪井参考人 おはようございます。日弁連からきょう出席させていただきました坪井節子と申します。このような機会を与えていただきましたことを、本当にありがたく思っております。
 私自身、この数年間、子供買春の被害対策弁護団の一員として、子供買春の海外あるいは国内での被害者の弁護人として携わってきました経験、あるいは、それをもとにしまして、児童買春、児童ポルノ禁止法、超党派の議員の先生方とともにこの立法過程に参加をしてきた者としまして、昨年暮れ、今回の法案が出るという情報を聞いたときは、本当に衝撃の念を禁じ得ませんでした。
 レジュメの中にも書きましたが、ストックホルム会議、その後のフォローアップ会議、あるいは外務省が開きました国際シンポジウムや横浜の世界会議、そうしたところに、森山眞弓先生、谷垣禎一先生、そうした児童買春禁止法に心血を注がれた先生方がお出になられまして、こうした国際理念に基づいた子供の権利保障、子供の性的搾取が子供の権利侵害であるということ、それをこの日本の国内で貫徹するのだという理念のもとに、初めて日本も国際社会で認められる法律をつくり至った。そうした法案が、三年たって、今見直しの真っ最中にあるこのときに、こうした子供の処罰を求める法律ができてきたということ、一体これは何だったんだろうというふうに今も私は疑問であります。
 これに関しましては、日弁連が既に一月十八日の段階で意見を出しておりますので、詳細は資料におつけしました日弁連検証を見ていただきたいと思いますが、骨子を簡単に申し上げておきます。
 子供の売買春をなくし、そして子供の被害を防止する必要性、そしてその社会意識を醸成する、それが急務であることにはもちろん私どもも大賛成でございます。しかし、本法による規制ということには、非常に重大な問題があると考えざるを得ません。
 まず、処罰の不透明な拡大の懸念ということ、先ほど宮台先生も御指摘になっておられましたけれども、このままでは、構成要件の中で一体どこまで大人たちも子供たちも処罰されるのか、構成要件上、非常に不安を大きくするものであります。
 また、孤立した子供たちがコミュニケーション手段として利用している携帯電話、サイト、そうしたものへのアクセス自体を禁ずるというようなことになっていきますと、子供たちは一体どこへ逃げていくのだろうか。それも宮台先生御指摘のとおり、もっともっとクローズドな場所へ逃げていかざるを得ないのかもしれないという、そうした懸念もございます。
 それから、こうした法規制をする前に、必要なのは、子供たちへの教育、福祉手段あるいは業界の自主規制であります。
 先ほどiモードの自主規制についても御説明がありましたが、さまざまな形で業界がもっと自主規制をしていくこと、あるいは、学校教育の中で、子供たちにインターネットを使うことの危険性などを教育していくということをして、それでもなおだめならということならまだわかります。しかし、児童買春禁止法制定以来、そうしたことは何もなされていないに等しい状況の中で、まず処罰規定を持った規制法が出てくるということ、これは非常におかしい、順序が逆だと思います。
 そして、最大の論点になります、被害者である子供処罰ということの法的矛盾であります。それはもうるる述べられていますので、ここで繰り返しません。しかし、私は弁護士としても申し上げたいのは、少年法に基づく処遇、それが子供の不利益ではないと言わんばかりのこの法案の趣旨説明にございます。
 私どもは、犯罪者となった少年、子供たちの付添人として、家庭裁判所でこの子供たちとともに歩く仕事をしております。もちろんそれは、大人の刑事罰とは違うという形で、子供の教育福祉という視点から、子供たちを何とか立ち直らせたいという働きをしておりますが、しかし、その中では、やはり子供たちは犯罪者として裁かれております。そして、たとえそれが保護観察であれ、あるいは試験観察、少年院送致であれ、少年法のもとで処遇を受けた子供たちは、前歴として、これは一生背負っていかなければなりません。
 被害者である子供たちが犯罪者としてその前歴を背負って一生生きていくようなことをしておきながら、なぜ子供たちに対して不利益がないというふうにおっしゃるのか、私どもは到底理解できません。
 こうした子供たちに対して、福祉的措置、本当の意味でのハード、ソフト面での充実というのはほとんどなされていない。処罰をした後、一体どうするのか。子供たちが今こうしたことに踏み込まざるを得ない、先ほど宮本さんがおっしゃっていましたが、そうした実情を踏まえた子供たちへの福祉的措置、それこそ必要なのに、これも何ら講じられていないという実情の中で処罰が先行するということは、これには私どもは反対せざるを得ないということでございます。
 若干敷衍しておきますが、レジュメに図をつけておきましたので、ごらんいただけますでしょうか。
 この法案の法的な整合性のおかしさということの一つの例なんですが、二つの丸を書いてございます。左側が児童との性交等、それから、右側が児童との対償の供与を伴う交際というふうにしてございます。
 現在の法制度上、処罰をされますのは、この丸が重なる部分、児童買春の部分の大人処罰、それは児童買春禁止法で大人が処罰されます。しかし、左側の部分、児童との性交等につきましては、もちろん児童福祉法の淫行勧誘、あるいは幾つかの県における条例で処罰されるということはあり得るとしましても、基本的に、法律に基づいて、児童との合意に基づく性交をしたというだけで、大人と子供、いずれも不処罰でございます。
 それから、児童との対償の供与を伴う交際、これは、例えば子供がお小遣いをもらって食事をした、あるいはカラオケに一緒に行ったというような場合なんですが、これも大人、子供とも、法律に基づいては不処罰であります。
 しかし、今回は、このいずれの行為に対しても、実行行為については処罰はしないけれども、誘引行為について大人も子供も処罰する、そういう法律になっている。これは私としては、法案の整合性という意味で、立法府の先生方にもう一度考えていただかなければならない重要な点だと思っております。
 それから、今回、犯罪被害を予防するための法律ということになっておりますが、一体、子供たちをどこまで、被害から守るために、どこまで規制すれば犯罪被害を防止できるんでしょうか。例えば、夜道を一人で歩く女の人の被害を防止するためにこの人を拘束するというようなことすら、強姦被害を防ぐためには必要になってくるかもしれない。そういう意味で、被害者をどこまで規制することが犯罪防止につながるんだろうか。犯罪予防というためには、余りにもこの法律の規制範囲が、対象が広過ぎると思います。
 また、懸念しますのは、子供がこうした出会い系サイトの誘引行為の末、自分が買春行為の被害者になった上で、暴行、傷害、強姦等の被害に遭遇した場合、果たして、子供たちはその被害を告知できるのでしょうか。
 自分は誘引行為で処罰されるということが、今回出てくるわけです。自分が出会い系サイトを通じて処罰される対象になった子供が、自分は強姦罪や暴行の被害者であるということを告知することができるのでしょうか。被害者の子供たちの口封じになってしまうという意味でも、大変これは問題だと思っております。
 また、先ほど御指摘もあったとおりですが、犯罪となりますと、そうした犯罪に、供用物件あるいは組成物件に関しては、捜索・差し押さえの対象となっていきます。携帯電話やサイトのさまざまな情報がこうした警察の捜索・差し押さえの対象になっていく。これは大きな意味で通信の秘密あるいは表現の自由の侵害になるということも懸念されております。
 こうした非常に大きな問題を抱えているこの法案を軽々に成立させていただきたくない、もう一度、本当に子供たちを守るための大人の責任はどうあるべきかというところから真剣に考えていただいて、立法府の先生方に、世界に恥ずることのない法律をお考えいただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
青山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島聡さん。
島委員 民主党の島聡でございます。きょうは参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 民主党からは二人、私と水島議員が質問に立ちます。私の方は、いわゆるサイバー社会に関する質問をさせていただきますので、宮台参考人と森参考人にお話を承りたいと思っています。
 いわゆるブラウザーフォンの世界といいますか、それが四千万ユーザーになってきて、これだけユーザーの急増があれば、当然、社会的、公共的インフラとしての意味を持ってくる。そのために、ある意味で法的に規制をする分野も出てくるだろう、その問題については私も賛成でございます。
 ただ、問題は、その法律がどうかということが、これから我が委員会で審議をしていくわけでありますが、サイバー関係の法律というのは、大きく二つ、問題が常にあります。実効性の問題において二つあります。
 一つは、ラットイヤーともいうべき技術進歩があって、法律ができたころにはもう次の段階へ進んでいるということが一点。もう一つは、プロバイダー責任法のときにもありましたけれども、グローバルな世界ですから、法律は国内を縛りますが、プロバイダー責任法のときに、例えば外国に、近くの隣国に、韓国ぐらいに置いてあったらどうするんですかという私の質問に対して、それは法律的には関係各国ともこれから協調していくしかありませんということがあって、なかなか実効性がうまくいかないという話になりました。
 宮台参考人にぜひお聞きしたいのは、取り締まりがどのような効果を上げてきたかということをつぶさに見てこられた。私が申し上げた第一点のところであります。一体、今までどのような有効性、つまりこれは、この法律が本当に実効性があるかどうかということも含めての質問でありますが、どのように取り締まりが効果を上げてきたかということに関してお話をいただければと思います。お願いいたします。
宮台参考人 幾つか象徴的な事例があります。
 九六年以降、各自治体にできましたテレクラ規制によって、いわゆる二百メートル規制や五百メートル規制ができて、テレクラの立地が基本的に難しくなりました。そのときから私も主張していましたが、当然のことながら、店舗という形をとらない電話回線上のテレクラ、すなわちダイヤルQ2を使ったツーショットや伝言ダイヤルに大半が移行する、その結果、むしろ問題が大きくなるだろうというふうに申し上げてきました。
 何ゆえならば、特に地方都市に多いのですが、テレクラで出会った男女が、男側の計略によって女性側が暴行されるという事件が、事件になっていないものも含めまして、大変に多くあります。これは現在でも膨大な量があります。
 しかし、この大半はもちろん警察に訴えることができないということもありますので、実は、店舗のテレクラがあったころには、テレクラがブラックリストをつくるという形で少女に告知するという、つまり、フロント側の対処が行われていました。しかし、店舗テレクラが消えたせいで、テレクラのフロントに相当する、要するに事業者が男側のユーザーを把握することができなくなり、その結果、事実上、テレクラのフロントが果たしていたある種の抑止機能あるいはスクリーニングの機能が失われ、問題が拡大したというふうに認識しています。
 問題が見えなくなることですっきりしてしまうというようなメンタリティーは、これは各国、日本に限らずあるわけですが、実際にユーザーの側に需要つまりニーズがあり、供給者がいるならば、それを単に見えなくしてしまってどこかに追いやる場合には、子供の不利益を我々がもともと目にすることができなくなってしまう可能性がありますので、そのことにとりわけ注意をしていただきたいと思っている次第でございます。
島委員 国際的な話を森さんに聞きますが、私もiモードの利用者なんですけれども、先ほど、プロバイダーの関係者に対しても、努力義務規定じゃなくてもう少し強い義務をという話がありました。でも、これは、別の国にサーバーを置いて、ここからやっていく、インターネットですから、つながるということは技術的に可能ですね。
森参考人 今の情報提供者さんのサーバーは、恐らく海外にもあるものと思っておりますけれども、残念ながら、我々の方ですべて把握してはおりませんけれども、今のいろいろインターネットの環境を考えますと、そういうこともあるんだろうなと思っています。技術的にはもちろん可能でございます。
島委員 ということで、同じような問題がこの問題にも発生してくるんだと私は思います。
 本当に時間がないので恐縮でございますが、成り済ましの話をされました。これは具体的にきちんと聞いた方がいいと思うので。
 今の法理では、例えば、これを私がどこかで落とした、あるいはどこかでとられた。そして、ぽんぽんぽんとやって、電話番号でする。そして、その上で名前、島聡といっても何でもいいんですが、そのような形の場合には、今回の法体系では、今、宮台参考人にお聞きしたいんですが、いわゆる個人情報をその後すべて把握される可能性があるという法体系になっている、そういうことでございますか。
宮台参考人 いわゆる出会い系サイトのアクセスの仕方は幾つかあります。いわゆる電話番号をIDがわりに利用するようなところがあります。その場合には、成り済ましは比較的難しいかもしれません。
 しかし、例えばメールアドレスであれば、これは架空メアド、あるいは、もちろん携帯電話の中で、架空ではないんですが、自分で自由自在に臨機応変にメールアドレスを変えることができるような体制になっておりますので、そうした状態で、つまり、アイデンティフィケートが非常に難しい状態で利用するユーザーが大半を占めるような状況では、今おっしゃったような問題、つまり、成り済ましの問題は生じやすくなり、成り済ましかどうかを見きわめるためにも捜査が入るということがあり得るというふうに考えています。
島委員 最後の質問になると思います。森さんに聞きます。
 いわゆる公式サイトですね、iモードさんの。私が聞いた範囲では、公式サイトは三つぐらいのメリットがあって、簡単な操作で素早くアクセスできる。確かにそうです、やってみました。そして、コンテンツ利用料回収代行サービスが受けられる、公式ということですから安心感やブランド力がある、そういう話になります。
 ただ、問題は、これは、先ほどの話でいくと、要するに、三千幾つですから全体の二十分の一ですよね。私、これを知っていてあえて聞いて恐縮ですが、政治家のサイトというのはこの公式サイトに入れませんよね。どうしてそういう基準になっているんですか。
森参考人 どうしてそういう基準になっているかということですね。
 いわゆる思想と言ってもあれですけれども、政治家の皆さんも、それぞれの御意見とかいろいろな思想がございまして、何というんでしょうね、いわゆる思想というかその辺のものについては、公平性を保つというか、その辺の観点から、今回は掲載記事の中にはあえてそういうのは御遠慮いただいているという次第でございます。
島委員 というように難しいんですよ。そうすると、何か政治家の私どものサイトというのは、公式にならないような、何か不思議なサイトだという話になってしまうわけですね。
 もちろん、これは民間企業がやられることですから、それはそれとして一つのお考えだというふうに私は思いますが、その一つの基準をつくっていくときに、公式サイトはいいけれどもほかのサイトは悪だみたいな形になっていきますと、せっかくのインターネットの、これから、モバイルの社会、モバイルインターネットというのは伸びにくくなります。今回の法も同じだと思います。
 だから、当然、この出会い系サイトというのを実効性あるような形できちんと縛れると同時に、簡単に言えば、このモバイルがどんどん発展したのは、実は、女子高生がいろいろな使い方をしたからでしょう。いろいろな使い方をしたんですよ、私たちがだれもわからないような。
 そういう意味でありますから、そのいわゆる発展と、そしてまた、きちんと健全な発展をするために、これからしっかり審議していきます。
 きょうは、参考人の皆さん、ありがとうございました。
青山委員長 水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日は、参考人の皆様、お忙しい中、ありがとうございます。
 私は、子供の観点から質問をさせていただきたいと思いますので、今、島議員が質問をされなかった四名の参考人の皆様に質問をさせていただきたいと思います。十分の持ち時間でできるだけ質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひ御答弁は簡潔にいただけますよう御協力をお願い申し上げます。
 まず、野口参考人にお聞きしたいと思います。
 この出会い系に書き込みを繰り返すというのも、子供の一つの問題行動と私は考えていいと思いますけれども、このように問題行動を繰り返す子供たちと実務レベルで深くかかわられた御経験はございますでしょうか。また、そういう御経験がおありであれば、実際にそういう子供たちがまた健康に育っていくためには、どういうかかわりが有効であったというような御経験がおありでしょうか。
野口参考人 私は、事後のカウンセリングでかかわりましたので、そのときのことからお答えしたいと思います。
 まず、子供たちが言いますには、それほど悪いこととは知らなかった、そういうふうになるとは知らなかったということがございまして、そういうところから、まずは、では、情報として、例えば妊娠をしたということなんですが、それが避妊とか、どういうときに妊娠するという体の知識というものを与えていなかったことによって起こったということで、それはいけないんだとか、情報がわかれば防げることになると思います。
 それは、カウンセリングの途中でかなりの痛みを伴っておりますが、回復します。でも、それを回復する前に、予防の点、防止の点で、こういう規則があるということはやはり抑止力になると思って、この案に賛成しております。
水島委員 申しわけございません。問題行動を知らないでやってしまったというのは、多分一回の問題行動にとどまると思うんですが、問題行動を繰り返す、悪いとわかっていても繰り返す子供たちとかかわられた御経験をお願いいたします。
野口参考人 悪いとわかっていても繰り返す。いろいろな、たばこにおいてもお酒においても、悪いとわかっていても、一度目に悪いということを教えられてその後繰り返すということに、やはり、その子供たちの日常のほかの面での、つまり満足感とか、悪いと思っていてもそれをやってしまうその子供の背後の家庭環境とか、それから友人との中での自分の地位とか、そういうものが影響していると思います。
水島委員 それでは、同じ質問を坪井参考人にさせていただきたいと思います。
 そういうふうに問題行動を繰り返した結果、いろいろなトラブルに巻き込まれてしまう子供たちと恐らくかかわられてこられていると思うんですけれども、そういう子供たちが、いろいろな背景の中でどういう支援を一番必要としていて、どういう支援が実際に効果があったか、その御経験を教えていただければと思います。
坪井参考人 お話しし出したら切りがないほどあります。
 多くの場合、やはり、その生育過程において、極端な形でいくと虐待、あるいは親からの過保護、過干渉、そういった意味での、生育歴における子供が、人間として尊重されてこなかった歴史を抱えてきた子供たちというふうに、一言で言うと申し上げられると思います。
 その子供たちとつき合っていく最大のものは、子供たちが持っている、人間、特に大人に対する絶大なる不信感と言うしかないんですが、そこの不信感を取り除くために、人間、そんなに捨てたものじゃない、君はそんなに自分を卑下することはないのよ、生きていていいんだよという、本当に基本的な信頼感、そこをどうやってその子供とパイプをもう一度持てるか、そこが本当に支援のかぎだというふうに思っております。
水島委員 ありがとうございます。
 私も、かつて精神科医として子供たちにかかわっていた立場として全く同感でございまして、やはり、今の日本には、児童福祉の受け皿、そういう子供に対する受け皿が余りにも不足しているという実感を持っておりまして、恐らく野口参考人も坪井参考人も御同意いただけるのではないかと思っておりますけれども、それでは次の質問に移らせていただきたいんですが、次に、前田参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほど、買う側の罰を強化することで防げる段階を過ぎているというふうに御発言されたと思うんですけれども、本当に買う側の罰がきちんと強化されて、有効である、実効性があるにもかかわらずそれが無効であるというのなら過ぎているというのでいいと思うんですけれども、ちょっと、過ぎているというふうに発言された根拠というか、そのあたりを教えていただければと思います。
前田参考人 私の言葉が足りなくて申しわけなかったんですが、過ぎているというのは、出会い系サイトなんかで起こっている、具体的な数字がいろいろ出てきていると思うんですが、それをきっかけにして、児童買春が行われている数がふえてきて、それを何とかとめなきゃいけない段階で、大人の処罰を行う形でコントロールできるというのを悠長に待っていられないような段階にもう差し迫っているのではないかという意味で過ぎていると申し上げたので、大人の処罰をきちっとやっていくということ自体、否定するつもりは全くございません。
 それをきちっとやっていくことは非常に大事なんですが、それだけにとどまらず、女子高校生たちがiモードを、iモードは特定のあれになってしまいますけれども、携帯で簡単に売買春ができるというような意識が非常に広がってしまっている状況、これを何とか歯どめをかけなきゃいけない段階に来ている。そのための有効な手段として、どれか一つが有効だと申し上げているんじゃないんですが、かなり強制的なものを含めた効果の強いものを打たなければいけない段階に来るだけの数値が挙がってきているということを申し上げたつもりで、説明が足りなくて申しわけございません。
水島委員 そうしますと、確認させていただきますと、やはり、まずは大人を罰するのが正論であって、それがまだ今の日本では十分に行われていないという認識は共有してくださっているということ。そして、それが十分に行われていない中、被害がどんどんふえてきてしまっているので、とにかく何でもいいからできることはやろうというような御発言だったということでよろしいんでしょうか。
前田参考人 基本的に、そのとおりでございます。
 何でもいいからというとちょっとあれなんですが、ただ、被害者の側というか、少女のとらえ方、現場の警察、少年警察の現場なんかを見てみますと、単純な被害者というとらえ方だけでもいかない。少年事件は全部そうなるわけですが、必ず少年は被害者です、非行化をするのは。家庭がうまくいっていないから犯罪を犯す、みんなそうなんです。
 しかし、では、少年には、犯罪として少年院に送ったりとか処罰は一切やめた方がいい、全部カウンセリングだけで済ませればいいという議論が成り立つかということなんですね。そこのところで、一定の罰みたいなものとのバランス、その中でどう動かしていくか、そのバランスの強弱をどうしていくかというのは、やはり私は、現実の日本の状況とか社会のニーズとか国民の意識で決まってくる。
 ちょっと長くなって申しわけありません。
水島委員 そうしますと、これは確かに、今回のこの法案と、例えばストックホルム宣言との整合性ということ、先ほど参考人からも御意見があったわけですけれども、そういう中で、今一つの議論として、子供の買春、子供が被害者として位置づけになっている問題と書き込むという誘引行為とを別のものとして切り分けることで初めて整合性を説明できるんだという立場が政府部内にもあるようでございますし、議員の間でもあるようですけれども、法律の専門家として、買春の誘引行為となるものを買春と切り離して考えるということは、私は法律の専門家ではないんですが、法律家がずらっと並んでいらっしゃるところに行って私がそういうことを話しても恥ずかしくないことなんでしょうか。
前田参考人 これは、切り分けるということは十分論理的に可能であるからそういう御発言があるんだと思います。
 ただ、法律の議論というのは形式的に理念として分けますが、実態としては、やはり少女の書き込み行為というのは、それによって一般の少女たちに危険なものをつくり出すという誘引自体の害悪性みたいなものをとらえることもできますし、ただ、それは裏返してしまえば、自分自身が売春に一歩入っていく側面も持っているわけですね。それをどちらから説明して整合性のあるものにしていくか、今までの条約とのつながりからいって矛盾しないように説明するというための説明は、私は十分成り立っていると思います。
 ですから、法律の議論として荒唐無稽なものでも何でもない、それは立派な議論だと思っております。
水島委員 では、同じ質問を、同じく法律の専門家でいらっしゃる坪井参考人にお伺いしたいんですけれども、切り離すというその考えはどうなんでしょうか。
坪井参考人 それはもちろん、成り立たないという意味で不可能とは申し上げませんけれども、しかし、今回、児童買春禁止法の見直しが行われるときに、その誘引行為だけをどうして切り離して論じるんだろう。まさに立法府としては、その中できちっと児童買春禁止の趣旨を貫くための誘引行為の禁止なのであれば、その法律案と整合性を持った形で、一体の法律として論じるべきだと思っております。
水島委員 最後に、宮本参考人にお伺いしたいんですけれども、子供の最善の利益というものを優先させるという考え方、私も全く同じ考えでございます。
 子供の最善の利益を考えます際に、今回の法案では、書き込みをした子供が加罰対象となりまして、どうせ子供なんだから実際の刑罰はないというふうによく言われるんですけれども、結局のところ、一定期間拘束はされますし、それは前歴として一生つきまとうということになるわけで、公務員試験を受けたりするとき、いろいろなときにつきまとっていくことになるのですが、こういうことは子供の最善の利益に反するのではないかと私は思うんですけれども、宮本参考人はいかが考えられますでしょうか。
宮本参考人 議員のおっしゃるとおりだと思っております。
水島委員 ありがとうございました。
 何か慌ただしい十分間で申しわけございませんでしたが、参考人の皆様、本当にありがとうございました。
青山委員長 次に、馳浩さん。
馳委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。
 では、まず森参考人にお伺いいたします。
 携帯電話の販売者であったりあるいはプロバイダーであったり、いわゆる事業者の方々は、こういう出会い系サイトを利用した犯罪とは、私たちは中立的な立場にあり関係なく、全く責任がないというふうな認識は持っておられますか。
森参考人 私どもといたしましては、先ほども説明でちょっと申し上げましたけれども、この出会い系サイト自体が社会的に大きな問題になっているという事実は認識しておりまして、やはり我々の利用者、お客様あってのサービスですから、お客様の利便性をより向上させるという立場から、今回、お客様が出会い系サイトに触れない形でお選びいただけるというような機能を提供させていただいているところです。ですから、お客様の利便性というのが一番大事だと思いますので、その中の一環の取り組みだと思っております。
馳委員 法律の第三条の、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する責務ということを考えれば、いわゆる事業者の方々に一定の責務があるという観点から、今後、ドコモさんもフィルタリングサービスについて積極的に取り組んでいかれると思っておりますし、期待いたします。
 その観点から質問を幾つかさせていただきたいんですが、フィルタリングサービスをする場合には、どのサイトが適正でどれが不適正なのか、その基準づくりは大変難しいと思うんですね。財団法人インターネット協会も、年間五千万円ほどの国の助成を受けて、その基準づくりについて大変苦慮しておられますし、そういう公的支援を受けながら努力もしておられますが、それはドコモさんとしては、まず、何が適正、適正でないかという判断をどのように技術的にしていこうとされるのか。
 また、ドコモさんほどの資本力のある会社であるからこそできることかもしれませんが、そうでない中小のプロバイダーの方々とか、できない事業者もいらっしゃるでしょう。そういう観点について、やはりもうちょっと国として関与すべきではないかという御意見もあったらお願いしたいと思います。
森参考人 ほかの事業者の話は、ちょっと、それぞれ意見がございますので、私どもの取り組みについてまず御説明申し上げますと、我々はiモードのサービス開始当初から、我々の顔として、iメニューリストというものでモバイルインターネットを普及するように、便利なサイトを集めてやってまいりました。
 その中で、今回、出会い系サイトに相当するようなサイトは、我々の掲載基準の中から、メニューリストの中でこれはできませんという形になっておりましたので、今回、事業者側で、ドコモとしてできる範囲で、利用者の利便性向上という立場から、ちょうどこのiメニューリストのところだけをつなげるようにすれば、今回の出会い系等、青少年の健全な育成の妨げになるようなサイトにはつながらないと判断いたしましたので、今回できることからということで、我々の方でフィルタリングというか、iメニューサイトだけつながるようなサービスを提供しようと考えている次第でございます。
馳委員 提案ですが、こういう出会い系とかアダルトサイトにはそもそも接続できないというふうにしておいて、希望者には接続できるようにする、こういうことは技術的に可能なのでしょうか。
森参考人 先ほど、宮台先生のお話にもありましたけれども、要は、何をもって健全でないというか、いわゆる出会い系サイトかと判断するのは、技術的には非常に困難なものだと思っております。
馳委員 大変難しいですよ。私は宮台参考人のお話を伺っていて、成り済ましであるとか、あるいは出会い系サイトを使った犯罪というのは、例えばデート商法なんかもぼちぼち出てきておりますし、なかなか取り締まりが難しいので、なるほど警察庁の方もよく考えたな、いわゆる一定の抑止力を持つ法案として出してきたのかな、こういうふうに私、判断せざるを得ません。
 そういう意味でいえば、宮台参考人も、基本的にはこういう一定の社会的な制約というものが必要であろうと冒頭におっしゃられましたが、では、この法案として、我々も法律上考えると無理からぬ、この程度かなというふうな部分、気持ちを持っておりますが、より効果的な抑止力を持つような対応をするにはどういうふうにしていったらよいのかという御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
宮台参考人 これさえあれば抑止できるということはないと思うんですね。参考人の方々がおっしゃったように、さまざまな、複数の施策の結合が必要だと思います。
 先ほど、島先生の方からお尋ねいただいたときに、テレクラのフロントの件を出しましたが、実際にはなぜフロントが抑止力として働いていたかというと、やはり後ろめたいので強姦されても警察に訴えることができないというケースが非常に大きいからです。したがって、比較的第三者的な、警察ではない、つまり処罰されないテレクラのフロントの方に行くということがありました。
 そのような意味で、例えば、処罰をすれば単に抑止力として働くという部分だけを取り上げて考えることができない。やはり費用対効果なんですね。どういう費用、コストがかかるのかということを考えなければならず、水島先生もおっしゃっていましたけれども、それによって例えば人権を侵害された子供が、つまり犯罪に遭った子供がそれを訴えることができないというような可能性がみじんも存在するのであれば、そのような法律は公正なものではない可能性があります。
 その辺、ほかにもいろいろなコストがあり、そのことはお話をいたしましたが、コストを最小化するための工夫がこの法案に存在するとは、私の考えでは認められないというふうに思います。
馳委員 難しいな。私がそういうことを言っちゃいけませんね。本当に、探そうと思えば抜け道が……。売春が目的ではない子供たちにとって、ちょっとおもしろそうだからやってみようかなという子供たちにとっては一定の抑止力になると思うんですが、確信犯の子供たちにとっては大丈夫かなと。そして、捜査の段階で、いわゆる個人情報が警察の方に恣意的に使われる不安というものは、一抹の不安は私も感じます。
 個人情報保護法案が今衆議院で成立して参議院に回っておりますので、そういった行政機関が得た個人情報の他への転用とかをしてはならないのは、もちろん重々、与野党問わず、議員からの指摘があって、理解されているところではありますが、犯罪捜査に利用する場合にはどうなってしまうのかなという一抹の不安をここでは感じざるを得ません。
 そういう意味で、先ほど宮台参考人も御指摘されましたが、いわゆるこういう出会い系サイト、そして今回の法六条、七条、八条違反に基づいて警察が捜索に入る、情報を得る、こういったものが個人情報として警察側に渡ることの危険性、怖さ、こういったものについての御意見がありましたら、ぜひ聞かせていただきたいのですけれども。
宮台参考人 個人情報が犯罪捜査に利用される場合も、行政機関による個人情報の利用ですね。したがって、行政機関個人情報保護法を拡充してこれが犯罪捜査に使われた場合であっても、盗聴法というか、通信傍受法と同様に、個人情報を使ったということをその情報の当事者に、まさに自己情報閲覧権、制御権の概念の内側でこれを開示していく、情報をお知らせしていくということが必要かと思います。
 しかしながら、現時点では、犯罪捜査に例えば携帯電話の位置情報、これは通話記録に伴う位置情報と、絶えず発信基地と電波をやりとりするときに蓄積されていく位置情報があります。これが犯罪捜査に使われているわけですが、実際には通信傍受法の適用範囲外でありまして、こうした犯罪捜査に使われた非常に重要な個人情報、政治家さんにとっても非常に重要な個人情報だと思いますよ。いつ、どこに、どういうふうにいて、どういうふうに移動したのか、全部わかるわけですからね。そうしたものが利用された後にそれが告知されないという現行法のあり方、あるいは現行法案のあり方には問題があると思います。
馳委員 問題があるという御意見はしっかりと私も受けとめたいと思います。
 それから、森参考人にまたお伺いいたしますが、私、きのう、ちょっと役所の方に提案したんですが、サイトの開設者とそしてプロバイダーというのは、契約するときに利用約款を結ぶわけですよね。そのとき、こうしたらどうかという提案なんです。
 七条の明示伝達義務違反、八条の児童確認義務違反、こういうサイトの開設業者に対しては、もうプロバイダーの方で、明確に違反しているので、判断してすぐ契約切っちゃうよ、こういうのをもうちょっと厳しくやったらいいんじゃないか。事業者の皆さん方のまさしく責務としてやったらよいんじゃないか。もう少しそういう契約を、法に基づいて厳しい契約をとっておいて、そういうことをした場合にはすぐサイトは閉じますよと。
 もちろん、それでも、確信犯のサイト開設者は、名前をかたったり、次から次へと渡りのような形でサイトを開設するのかもしれませんが、これまた一定の抑止力があるのではないか、それも一つの事業者にとっての責務ではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
森参考人 私どもが今迷惑メールの関係とかでいろいろ対策等を講じてまいりました経験から申し上げますと、先ほど議員が御指摘のとおり、最初は善人の顔をして入ってくる、後で内容がどんどん変わってくる。こういったものについてはいかんともしがたいというのが現実の姿でして、一定の抑止力になるかどうかはちょっとわかりませんけれども、やはり効果としては限定的と言わざるを得ないんだろうな、そういうふうに考えております。
馳委員 もう最後にいたしますが、宮台参考人に。
 少女たちのこういう行動に非常にお詳しいと承っておりますが、今回、第六条違反を通じて、児童も犯罪者になるんですね。私は非常に心を痛めておりますが。
 さて、少女たちは、いわゆる少女として、自分の性としての肉体が武器になるんだ、これで金を、おやじをちょろまかしてやろうとか、これは出来心なんでしょうか。それとも、本当に、そうすることがより自分の心の空虚さを満たす一つの役割を果たしているのでしょうか。その少女たちの考え方、どういうふうな思いでアクセスをして、犯罪になり得るような行動をしてしまうのかという行動原理が私はちょっとよくわからないんですよ。
 宮台参考人は、いろいろとフィールドワークも非常に多く、経験がおありだと承っておりますが、警察庁の報告では、九割の、少女の誘引による犯罪が多い、問題が多いということでありました。私は経験もないのでわからないのですが、ちょっとそういう、少女たちが、今回、犯罪者にもなってしまう。そこまで規制されざるを得ないような状況になってしまっている。ところが、少女たちにはそこまで犯罪意識があるのか。規範意識の欠如だけで、私はどうも心理的なものをとらえ切れないんですね。それについてもうちょっと御意見をいただければありがたいと思います。
宮台参考人 出会い系サイトを利用する動機は非常にさまざまありますが、短くするために、こういうことがあるということを申し上げておきたいと思います。
 それは、大人社会のダブルスタンダードということですね。先進各国のほとんどは、単純売買春は合法化されておりますし、日本も、単純売買春については事実上、売春防止法は適用されておりません。風俗産業は、ソープランドも含めまして、最近は、不況もありますので、本番大ブームというふうになっておりまして、事実上、これも規制されておりません。そういうことは、この情報社会、インターネット社会でありますので、年少者、若年者、青少年にも多く伝わっております。
 そういう状況で、例えば麻薬等であれば大人も厳罰に処せられる。そのようなものについて子供も処せられるということであれば、それは抑止力を構成しますが、例えば、酒、たばこは大人はやっていて、しかし子供はだめということになっていますから、実際、もう高校生になれば、酒、たばこはやり放題に近い状況になるわけですよ。もちろん、それで補導されたりもしていますけれども、実際には抑止力を構成していません。そうした、つまり、処罰されるから酒、たばこをやらないのではない。恐らく別の動機でやらない人たちがいっぱいいるんだと思うんですね。
 似たようなことは、例えば児童買春、少女の側から誘引をする買春についても言うことができると思います。かつて、テレクラの黎明期とは違って、不用意に、好奇心からたまたまそれをやってしまったというような少女の数は、全体の中で占める割合が随分少なくなっていて、実際には、ある程度情報が存在する中で、はい、私もこれをやってみようという、はっきり言えば、もう目に見える、可視的な、つまり、どういうものであるかがある程度想像可能なものにみずからをアクセスするというスタイルになっていると思います。
馳委員 そこを突っ込んで聞きたいんです。その動機の部分なんですよね。これは野口参考人にもちょっとお聞きします。少女の精神的な、思いの専門家ですからね。
 その動機が、おもしろく、興味があってやってみようかな、友達もやっているからではなくて、そしてまた、もちろんお金のためでもなくて、いわゆる何か青春期の少女の特有な精神的な構造があるのかもしれませんが、私、動機がよく理解できないんです。
 繰り返しアクセスして、人に会って、自分の体をお金で売りつけるというふうな考え方自体が理解できないんですけれども、なぜそういうことを行ってしまうのかという動機について、もうちょっと、野口参考人なりの御意見をいただきたいと思います。
野口参考人 私の三ページ目のアンケートのところでその理由がいろいろ書いてありますが、その中で、学生たちの話し合いの中でも、反対をした人たちの友達でやっている人がいるというような、それで、どうして行くんだろうかという動機を聞いたことがございます。
 そのときに、最初には、みんながやっているからという、それもございます。そういう軽い気持ちの子供、児童と、それから、先ほどお話にもありました成育歴の面から、どこかの成育過程で、どこか固着していた場所で、親とか異性の親に対する気持ちから出る、あるいは虐待されていた、そういう循環的なものの理由でなるという部分もあります。それからもう一つ、私が興味を持ちましたのは、今の時代の流れに自分も安易に乗ってみるというのもございました。
 これもみんな、先ほどの抑止力ということになるという点では、本当にいけないことだというのがわかれば多分やめていただろうという友人の考え方ですので、今回、いろいろな御意見がありましたけれども、確かに、規制自体が難しいということと技術的にも難しいということのほかに、法律の整合性とかございますけれども、やらない子供よりやっている子供の方が少ないわけで、その中で、またある部分を抑えるという意味になりますので、動機というのも、はっきりこうだというのは、全部の方の意見、みんな別々ございます。
 ですから、難しいところではございますけれども、繰り返すというところで、やはりカウンセリングをして、自分が本当にどうなるかということをやって、納得した場合にやめるので、やはりそういう一つ一つ細かい対応でいくということでいたし方ないことだと思っております。
馳委員 終わります。ありがとうございました。
青山委員長 次に、達増拓也さん。
達増委員 きのう、私の地元の中学生が修学旅行で国会見学に来ていまして、私が紹介したので、最初、迎えて、あいさつなどをしていたんですね。それで、きのうからちょうど、いわゆる出会い系サイト規制法の審議が始まったので、青少年特別委員会というのがあって、きょうからそういう議論を始めているんだよとその中学生たちに言ったら、ある女子中学生が、その話し合いには中高校生も参加しているんですかと聞いてきて、非常に新鮮な質問で、目からうろこが落ちるような思いがしました。
 きょうは、つまりきのうで言えばあしたには参考人質疑というのがあって、ちゃんと、中学生、高校生のいろいろな現場とか実態とか、そういうのをわかった人たちに来ていただいて議論をするんだよと言ったんですけれども、でもその中に中高校生は入っていないんですねと言って、すごくがっかりしていたんですね。
 代表なくして課税なしという民主主義の有名な言葉がありますけれども、代表なくして加罰なしということも言えるんじゃないかなということをふっと思いました。つまり、中高校生は立法する責任能力はないから、結局、今ここに中高校生がいないんですけれども、そういう中高校生に自分のセクシュアリティーをきちんと管理する自己責任というのを、加罰対象にまでしてそういう責任を求めるというのは、何か立法の仕方として矛盾しているのかなということを今感じております。
 そこで、「可罰的違法性論の研究」という著書もある前田参考人に伺います。
 可罰的じゃない違法性、つまり、今回のこの法案でいけば六条の二号と三号ですね。性交等の相手方となるように誘引する場合、異性交際の相手方となるよう誘引する場合、これは対償を受けることを示してですけれども、そうしたことについては違法ではある、しかし、児童みずからが誘引する場合には、これは加罰の対象にはしない、そういったやり方でも、法規範として成り立つのではないか。また、特に法律というのは言語による社会統制だというような、ある法学者の言葉を大学一年生のときに習った記憶があるんですけれども、法律で違法だとなることで、かなりの程度抑止効果というのはあるんじゃないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。
前田参考人 おっしゃるとおりだと思います。
 法律で違法だと定めることによる抑止、それからそれを越えて、いろいろなサンクションのつけ方が法律の世界でもあるわけですけれども、刑罰の重さもいろいろあり得るわけですが、だから、売春も、違法であるけれども、単純売春は処罰はしない。ただ、それぞれ、どういうサンクションをつけて禁止して、規範を定着させていくかというのは、やはり一般論としては成り立たないわけで、今の状況の中で、どの程度のサンクションまでやる、それで、薬みたいなものですから、薬というのは必ずマイナスの側面といいますか、毒の面を持つわけです。毒でもあえて強い薬を使わなきゃいけないかどうかという御判断をここでしていただくということだと思うんですね。
 私の個人的な判断としては、やはりこれだけ出会い系サイトで問題が起こってきて、何より問題なのは、悪いことだという意識がなくて、そして、お金になるから、みんながやっているからやるというのがどんどん広がっていくことをとめなくていいかどうか、今のような状況をどう評価するかということにかかわっていると思います。
 それに対して、もちろん、一人一人説得して、それから、一人一人の家庭の問題をほぐしていって、みずから自発的にやめる、売春なんかはしないような子供をつくり上げていく、これはいろいろな側面から一番大事だと思いますが、それだけで、今何の手も打たなくて、出会い系サイトをこのまま野放しにしていいのか、また、単に違法だと宣言するだけでいいのかというと、政策的な判断として、私は、やはりこの程度の、罰金にとどまるわけですけれども、宣言をするという意義は非常に有効ではないかと考えます。
 ですから、違法性を宣言するだけよりは、罰金刑までつけた方が政策判断として合理的なのではないかと個人的に考えると申し上げたわけです。
達増委員 同じ質問を野口参考人にも伺いたいと思います。
 特に、心理学の専門家でもあるということで、これは、少女、論理的には少年の場合もあり得ると思いますけれども、そういう誘引をする少女の心理を考えた場合に、法律が禁止していないからやってもいいんだ、みんながやっているからやってもいいんだというようなことで踏み切る場合に、罰則はなくても、違法化されることによって一歩踏み込まずに済むということが、これは統計的に数字で示すのは難しいんですが、かなりそういうことがあって、また、特に教育あるいは保護といった観点とのバランスからしても、そういう、違法ではあるけれども罰しないというやり方があり得るのではないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょう。
野口参考人 最初に申し上げましたように、やはり規制をするというだけではだめで、もちろん、その背後での教育というものも非常に重要視されるということを申し上げましたけれども、いけないことだということを知らなかったという人に最初に知らせるということは、まず、子供の年代ですとかなり効果があると思います。
 というのは、同じような年代の人が、知らないであの人たちやっているよという人たちには罰則があった方がいいねという言葉からも、それが大人の考えよりも、同世代の人たちがそう思っているということと、あと、それだけではなくて、やはり自発的にやらないようにするという土壌を育てていくということで、もしかしたら、規制よりも、もっとその前に出てくる教育の部分というものが大事だと思います。
 そういう面で、私の「今後の課題」というところに置きました。一体、このぐらいの罰則が重いか軽いか、お金の面の罰則がつくということが評価の中であらわれてくるんだったら、これはやってみて効果があったと。やはり、今まで罰則というものがなかったにもかかわらず、今回これをやるということで、もし抑止力が出たということになれば、これは一つの効果として評価されることになると思います。
 ですから、この二つ、両方同じような重みでもって、罰則の効果と、それから同時に、教育を行う。その教育は、自分から自発的にやめるということの、学校と家庭での情報を知らせるということ、それにかかっているのではないかと思います。
達増委員 これは、同じ問題を坪井参考人にも伺いたいと思います。
 違法であるということで、加罰しなくても非常に効果があるのではないかという考え方について、どのように思われるか。
坪井参考人 私は、十分効果があるというふうに思っています。そして、子供たちを軽視してほしくない。子供たちは、それが自分にとって危険な行為であって不利益であるということをきちっと知った場合に、それでもなおかつ自分たちを傷つけるかというふうに考えていただきたいのです。
 これは、法律をもってしなくても、本当に学校現場でその危険性をきちっと告知していくことによって、大方の子供たちはそういうことができなくなる。そして、これを繰り返す子供たちというのは、処罰があってもやります。ですから、それはもう、処罰をもって規制できない問題性を深く持った子供たちというのが今本当は問題になるのでありまして、大方の子供たちは、禁止されているという、そういう意識が醸成されることによって、十分に自分たちの行動を抑制できるというふうに思っております。
達増委員 これは、同じ質問を宮本参考人にも伺いたいと思います。
 特に、加罰ですね、罰則というもの、罰則がなければだめということはないのではないか。罰則がなくても、きちんと、こういうことをやってはいけないということがはっきりすれば、非常に効果があるのではないかという考えについてはいかがでしょう。
宮本参考人 先ほどの陳述の中で申し上げさせていただきましたとおり、子供たち自身も、自分たちがどう使うのか、何がおかしい、どういう影響があるのかということを知らされていないということを、はっきり子供たち自身が私たちに伝えてくれています。ですから、子供たちにきちんと自分を守るための正確な情報を与えたときには、子供たちはほとんど判断するというふうに思います。そして、禁止事項というのは既に、補導対象になりますので。
 そこで、一つ、例えばとてもいい資料で、「警察時報」の二〇〇二年十二月のものに、台東少年センターの心理の主査の方が書いておられます。
 こうした繰り返し繰り返しやるような子供たちに関して言うと、本当にその子供たちを目の前にしたときには、「自ら進んで売春をしていた少女を前にすると、被害者という言葉が色あせる感じを受けてしまう。しかし、彼女らはやはり買春行為をした大人の被害者なのだ。どんなにあっけらかんと気軽そうにみえても、心の奥には自分は汚れてしまったという感情がある。今現在はそう認識していなくても、時間の経過とともに自分のしたことの重大さに気付き、愕然とする日がやってくる。性非行に走る少女たちの特徴は、セルフイメージの悪さだ。これは自己評価が低いということ、つまり、自分のことを、「駄目な人間、馬鹿」と評価しているということだ。売春行為をしたことで、ますますセルフイメージが悪くなり、自尊感情を持てずにときには捨て鉢な気持ちになっていく。強姦や輪姦の被害経験がある場合はなおさらである。」
 つまり、繰り返しする子供たちに関しては、こういうものが背景にあるわけなんですよね。
 ですから、その子供たちには特別の手当てが必要ですし、今、多くのそのほかの子供たちに関して言えば、きちんとした正確な情報とそして禁止ですよと、子供たちに何が悪いかということはきちんと教えるべきだと思います。それは私たちの責任です。その部分をやることによって、子供たちは判断するというふうに思っております。
達増委員 次は、宮台参考人に質問をします。
 今の問題については、宮台参考人は、レジュメの中ではっきり、「保護対象への加罰は法理として矛盾。」ということで、非常に明確だと思います。
 ただ、政府は、そこで、この法律の法益は社会法益なんだという言い方をするわけであります。一般の少女に危険なものが広がっていくのをとめるために、誘引を行う者については、これは児童であっても罰するんだという論法を使うんですけれども、女性のセクシュアリティーというものが物すごいパワーを持っているということは、これは古来、人類がずっと直面してきた課題だと思うんですね。商業的価値というものが非常に高く、それが搾取につながることが問題になっているし、その商業的価値に気づいた少女が、みずから経済的なものを獲得しに行くというようなことが社会問題になったりもしている。
 これはもう、古今東西、いろいろな例を引きますと、そういう女性のセクシュアリティーというものが、傾国傾城という言葉にあるように、殷王朝滅亡のきっかけになったあの妲己の、そういう神話的イメージもありますけれども、もう国を滅ぼすくらいのパワーを秘めているということで、それで、古来、そういう女性のセクシュアリティーというものは文化的、宗教的な恐れの対象になったり、また、制度的に非常にいろいろな工夫で封じ込められてきたところがあると思うんですね。家庭の中で封じ込められてきたり、しつけの中で、あるいは近代教育の中で封じ込められてきた。
 今、そういった制度がきかなくなり、文化、宗教というものもきかなくなり、そして行き着いた果てが、そういう物すごいパワーを秘めている、まだ児童、中高校生ぐらいの段階でそういうパワーを持ってしまっている人たち自身にその責任、きちんと管理しろよという責任を求めて、うまく管理しなかったら罰するぞというやり方を法律で定めるのは、ある種世も末、人類文明の行き着く果ての世も末状態だというふうに思うのです。
 したがって、そういった観点からも社会システム論的にも、そういう社会法益を守るその責任を、いまだ十八歳未満にしてそういうパワーを秘めてしまっている人たち一人一人に求めるのはいかがなものかと思うんですが、いかがでしょうか。
宮台参考人 社会的法益と個人的法益とどちらを保護法益として重要視するべきなのかということについては、社会政策論の中でも、あるいは公共政策論の中でも、学説の変遷があります。わかりやすく言えば、何が道徳的によい秩序か、例えば何がよき家族か、何がよき恋人関係かというようなことについての合意が存在するそのような社会では、社会的法益としてよき秩序を守るというようなことに合意を調達しやすく、したがって、それが通りがよかったんですね。したがって、そういう観点から売春を防止する、禁止する法律を持っている国も、あるいはわいせつを禁止する国も、かつては今よりもたくさんありました。
 しかし、今は、何がよき性的な秩序であるのか、何が例えば劣情を催すものであるのかについては、それは個人の良心に任されるべきであって、むしろその点については、人権の侵害がなき限り、あるいは人権の両立可能性の侵害がなき限り、立ち入らないというのが近代社会の流れというふうに申し上げることができます。その観点からいえば、例えば万引きなら万引きが犯罪である理由を、おまえが万引きするとほかのやつも影響を受けて犯罪を犯してしまうからなんというのは、万引き処罰の理由にならない、笑い話にしかすぎないというふうに私は思います。
 それと、もう一つ非常に重要なことは、何人かの参考人の方がおっしゃっていたことなんですけれども、例えば自己決定と申しましても、自己決定の前提になるのは情報です。できるだけ完全情報に近い方が不利益をこうむらないわけです。
 その意味では、例えば、一九六〇年代にオランダが行ったタイムスパンの長い研究があります。それは、麻薬がある程度広がった段階での話ですけれども、麻薬はいけないと教えたグループ、いけない理由を説明したグループ、麻薬の是非を議論させたグループに分けると、麻薬はいけないというふうに禁止命令を出したグループが、その後の経年調査で、最も麻薬に手を染める割合が高いという結果が出ています。逆に言うと、子供たち同士で議論をさせたグループが最も麻薬に手を染める割合が低かった。
 これはパラメーター、外生変数がありまして、麻薬がある程度広がった段階で自分がそれをやるかやらないかということが現実的な問題になった段階で意味を持つ議論でありますが、売買春、援助交際等につきましても似たような状況にあると思います。
 個人的な経験からいうと、援助交際をする中高生の多くは、援助交際の危険を知りません。例えば、よくあるのが、地方なんかですと、男と待ち合わせて、車で移動すると、男の仲間が別の車で、ワゴン車等でついてきて、人里離れたところで輪姦するというようなことが今でも頻繁にありますね。必ずしも事件化はされていません。同じような形で、ワゴン車等に乗ったら、それに別の男たちが乗っていて、監禁されてレイプされるというような事件もあるわけです。その他さまざまな、現実にこういうこともある、ああいうこともあるという事例を彼女たちはほとんど情報として知りません。
 そういう危険にもかかわらず、つまり、あり得る確率論的な、簡単に言えばコストにもかかわらず、それをやる価値があるかどうかという判断を、つまりコスト計算をした形跡がありません。そのようなコスト計算をさせることは、抑止という観点からむしろ非常に重要でありまして、そのようなコスト計算をさせるためにも、禁止されているからだめなんだよという議論はむしろマイナスに働く可能性があると思います。
達増委員 最後に、森参考人にも伺います。
 法律でどこまで業者に何をしろというのかはっきりしないような法律をつくっておきながら、どこまでやるんだと業者に聞くのは、本当にこれは立法者として無責任なんじゃないかと思っているんですが、法律がない段階でこの夏からのサイト規制のようなことをされる。そういう決定に至るモラルチェックの体制というんでしょうか、無限の可能性を持つと同時に、やはり非常な危険性も持つそういう携帯電話、モバイルというサービスを提供するに当たって、その社会的な影響とか危険性とかをチェックして今回のような意思決定に至る、どういう社内的な組織というか仕組みでやっていらっしゃるのかを伺いたいと思います。
森参考人 私ども、新しいサービスを導入するときには、しかるべき意思決定機関というのがございます。これは、社長以下幹部の皆さんそろった場で意思決定をしていくというプロセスになってございます。
 今回の件につきましても、これはお客様へのサービスですから、利用者の利便性向上ということで、今現在社会問題化している状況につきまして、やはり親御さん等からの声というのも聞こえてまいりましたので、そこを踏まえての意思決定だというふうになっております。
達増委員 では、時間ですので終わります。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 こんにちは。日本共産党の石井郁子でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、それぞれ専門の立場からの意見陳述をいただきまして、本当にありがとうございます。
 きのう、当委員会で、出会い系サイト規制法と略して言わせていただきますけれども、審議入りもいたしました。幾つか問題点も出てきておりますので、それも踏まえて私は少し質問させていただきます。
 まず、いわゆるメル友と言われる友達のインターネットを通してのつき合い、そのことについてちょっと伺いたいと思うのですけれども、これは野口参考人、宮本、坪井両参考人にお聞きしたいと思います。
 メル友が大事な友達になっている子供たちが少なくないと言われています。ところが、きのうの質疑の中では、政府側からは、健全なメル友は規制しないけれども、異性交際を求めるメル友づくりは不健全だという答弁があったわけですね。私は、これを聞いて、異性交際を求めたら不健全などというのは、ちょっと、もう時代が逆に戻ったんじゃないかということがありまして、本当にここをもっと確かめることが必要になるわけですけれども、しかし、こういう感覚というのがこの規制法のもとにあるとしたら、大変大きな問題をはらんでいるというふうにも思いました。
 そこで、私は、今、若い世代のことを余りよく知らないこともありますから、インターネットを通じたいわゆる友達づくりというのがどんな実態にあって、この問題をどう考えたらいいのかということについて、少しお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
野口参考人 いわゆる携帯で、つまり、最初は顔を知らない者同士の交際に入るという場合は、多分その子供たちはフェース・ツー・フェースの交流というのがかなり欠けている場合が多いかと思います。
 今、私たちの学生とのディスカッションとかゼミでは、そういう顔が見えるうちの交際なく、急に出会い系サイトとかそういうインターネットの中で知っている気持ちになってしまうという交流の仕方をいいものだろうかというのを学生の中でも話し合っておりまして、そういう事件に結びつくというのも、知ったつもりですぐ直接的な行為に行くというのは、やはり、もしこれが実際の人物の、現実に顔を合わせた交際であれば起こらないことかもしれないというのが出ておりまして、確かに、人間関係がなかなか、今までのように穏やかなものがなくなってきているということからも一つ、そういうメル友に先に走るということが出てくると思います。
 異性交際を求めるというのは、これはとてもいいことでありますし、むしろ、ちゃんとフェース・ツー・フェースもできて、そういうものでも趣味の仲間とか、もっとそれ以外に広めるという意味では、これもよい使い方の一つではないかとは思っております。
宮本参考人 子供たちに聞きますと、今、携帯でのやりとりが本当にコミュニケーションを密にして、逆に言えば、朝から晩までといいますか、夜遅くまで親の関与なしにコミュニケーションができてしまう。これはもう欠かせないもののようですね。先ほど申し上げた国際ワークショップにおいても、これがもしなくなったらどうなるだろうというふうな言葉も高校生たちから出ておりました。
 この法律でただ規制しようとする、つまり、子供たちを守ろうとするのは、かなり限られたもの、この法律でできるのはそういうところだろうと思っております。もし、買春またポルノなどに関する性的な搾取全体を見ようとするときには、先ほど申し上げましたとおり、九九年に成立いたしました買春・ポルノ等禁止法、あの法律において、たとえ限定された出会い系でなくとも、ほかのさまざまな形のホームページがございますね。たとえどこであっても、子供を性的対象として搾取、虐待しようとする誘引に関しては禁止するという形で、ダブルで押していかなければならない、つまり決めていかなければならないのではないかなというふうに思っております。
坪井参考人 私も、高校生の人たちから話を聞いているというレベルでしかお答えできないんですが、どうして大人たちが、自分たちがいつもみんな不健全なサイトの使い方をしていると思っているんだろうか、自分たちはそうじゃないんだ、本当に趣味の仲間を募ったり、一緒に映画に行く仲間を募ったり、そうした形の仲間づくり、今なかなかフェース・ツー・フェースではできないものをインターネットを通じてやっている、そして、健全な使い方をしている人たちの方が多いのにということを盛んに言っていました。
 実際に、自分の子供も含めて、そうしたところをわかっている子供たちについては、危険もちゃんと承知しながら、自分の身を守りながら上手に友達づくりをしているなというふうに思っております。それが現状です。
石井(郁)委員 どうもありがとうございます。
 私も、子供たちに、何が危険なことで、何が本当に自分の身を傷つけることになるのかとか、そういう点での情報、教育、これをもっともっと徹底することが先ではないかというふうに考えておりまして、そのときに、これが健全、これが不健全という分け方は、法律をつくるときに安易に使ってはいけないなというふうにも考えておりまして、今お聞きして大分整理ができました。
 同じような点、同じというと失礼ですけれども、児童買春のことが今問題になっておりますので、その買春の問題で次にお聞きしたいわけですけれども、これも宮本参考人と坪井参考人に伺いたいと思います。
 児童買春禁止法では、買春の問題で言えば子供は被害者だ、被害者として保護されるという立場だと思いますけれども、今回の新法では処罰の対象になってしまうという問題だと思うんですね。その理由として出されているのが、一つ、これはアンケートの結果で、きのうも言われたんですけれども、書き込みをするのは子供の方が多い、だから、子供の方にその誘引行為が多いので、やはりそれを罰しなければいけないということが性の商品化などの抑止力になるのではないかということが言われました。
 これは、きょうは宮本参考人の資料にも出されているんですが、しかし、これは事件になったものについての分析だ、本当に圧倒的にそうなのかどうかというのはもっと検証が要るという話だったんですが、ちょっとこの問題で、要するに、確かにみずから書き込みする子供たちもあると思います。その問題と性の商品化という風潮、これをどうやって食いとめていくかという問題をどう考えたらいいのかということについてお聞かせいただければと思います。
宮本参考人 資料の中にも申し上げさせていただきましたけれども、繰り返し繰り返し書き込むということは、それは子供たちの被害状況がそれだけ深刻化してしまっている段階というふうに私たちは見るべきだと思います。ですから、その前に虐待が繰り返されている、その前に子供たちの権利が侵害されていることが既に多々起きてしまっている。そういう状況の子供たちにはどういう手当てをするのかということで、先ほど坪井さんもおっしゃっていましたけれども、きちんとしたケア、手当てというものが特別に必要だと思います。
 それと同時に、出会い系にしろ何にしろ、子供たちの多くは非常に健全な形で使っているし、多くはそういう中に属しているわけですね。その子供たちに対して、あたかも子供を性的搾取、性的対象として使っても構わないとする風潮、それ自体を変えていかなければならないと思います。
 そして、実は、九九年の買春・ポルノ禁止法において初めて買春者が処罰されました。それ以前はなかったのです。ですから、日本の社会、日本の土壌というものは買春者に非常に甘い、そういう土壌であるということをまず認識して、それを土台にして、特に子供に関して絶対的に被害者を出さない、子供から出さないという視点でこの商業的性的搾取を根絶していくような、そういう視点に立った方策を考えていかなければならないのではないかと思います。
坪井参考人 私は、大変情けないというふうに思っています。子供が幾ら書き込んでも、大人が買わなければもう子供は売りません。なぜ大人たちが、先ほど女性のセクシュアリティーという話が出ましたけれども、子供たちのセクシュアリティーに惑わされ、それを買って、そして大人たちは、それに惑わされる自分たちの責任を棚上げして子供を処罰しようとするのか。本当に大人たちが情けないとしか言いようがありません。ですから、まず、子供が幾ら書き込もうが、大人が買わなければいいんです。だから、そこのところをきちっとしていただくというのがまず第一。
 そして、この長い長い売春の歴史の中で、ずっと売春者が悪い、売春者が加害者だという意識で来ていました。それを根底から変えない限り子供買春がなくならないということで、ようやく子供が被害者だという認識ができたばかりです。そうしなければ性の商品化はなくならないというこの意識、それをまた逆戻りさせるような今回の法律というのは根底から考えていただきたい、そういうふうに思います。
石井(郁)委員 それでは、出会い系サイトの事業者の側の問題でちょっと伺いたいと思います。
 今のお話のように、やはり現状で買春目的の書き込みが放置されているということがあるわけでしょう。それから、児童買春禁止法の趣旨を踏まえるのならば、本当はそういうサイト事業者、運営者自身が書き込みを防止するような責任や義務を果たすべきだということが先にあるべきだと思うんですが、そういう点では、業界の自主規制というのはできないものなのかどうか。それからまた、現状でどういう有効な手だてが考えられるのか。この面で、少し森参考人に伺いたいと思います。
森参考人 私ども自体が出会い系サイトの事業者ではございませんので、そこは誤解のないようにしていただきたいと思うんですけれども、自主的な規制ということで、我々の方は、今回のフィルタリングといいますか、iメニューリストだけを見られるというサービスをやっております。ほかの携帯電話事業者の方も同様のサービスをやっているということで、それぞれの会社で同じような形で、自主規制という形で取り組んでいるものだというふうに思っております。
石井(郁)委員 性の商品化の問題で、もう一点、宮台参考人に伺っておきたいと思います。
 先ほどの意見陳述の中で、規制によって別の手段が選ばれるだけで終わる可能性があるということで、この間の経過が言われまして、また新しい事態も進んでいるんだというお話が少しございましたので、もう少し詳しくお伺いできればというふうに思いますし、この有効性という問題ですね。それから、性の商品化というのは、実はこの間の日本の社会の中でどんな実態で進んで、またそれはどこに一番の問題があるのかということで、言えば大変それは長くなるとは思いますが、少し簡潔にお示しいただければと思います。
宮台参考人 性の商品化それ自体の是非は、これ自体が非常に論争的です。二つ、ポイントがあります。
 それは、性的サービスに対償が提示されることと人格の理解とが混同される。すなわち、性的サービスは商品化されても構わないが、人格の商品化はよくないという立場が例えばあり得ますね。そういう観点から一つ問題が提示できます。あともう一つは、性別非対称性というふうに一般には申しますけれども、なぜ女性の性的サービスばかりが商品化されるのか。単にそこに性的サービスに対する対償の提示だけがあるのだとしても、そうした性別非対称性が、女性という存在に対する、ある意味で比喩的に言いますが、全般的に暴力的な社会イメージを構成してしまう可能性があるということを危惧する、そういう立場もあります。
 こうした問題は非常にセンシティブ、難しい問題ですから、市民同士議論をし合い、何がよき人間の振る舞いであり得るのかということについて、簡単に言うと、少しずつ合意を形成していかなければいけないわけですね。なかなかそういう状態に入ることができず、学校の先生がだめと言っているとか、法律がだめと言っているということで、いわば思考停止になってしまっている状況があります。これは、先進国の中でも、日本が最も著しい思考停止状況に陥っているように私は推測をしております。
 したがって、有効性の問題は、先ほどから繰り返し、私あるいはいろいろな方が申し上げているとおり、確信犯は必ず抜け穴を見つけることができます。何ゆえならば、それだけ社会が複雑だからですね。
 ここに挙げたクローズドなツーショット・チャットというのを少し説明しておきますと、これは、二人だけがコンピューター上で、あるいはパソコン上、携帯電話上でチャットができるようなシステムですから、ほかの人が内容をのぞくことはできません。したがって、そこで交わされた交渉事は、ちょうど電話の会話とよく似ていて、当事者だけが知り得るものとなっておりますので、例えばそうしたクローズドなツーショット・チャットを利用して相手を探そうという子供や大人たちが確実にふえ、ネット社会ですから、その情報が一瞬において共有されるだろうと思います。ネットの中でさえも、簡単に抜け穴は見つかります。
 それよりも、こうした規制が出てくると、私のレジュメにも書いてありますように、いろいろな雑誌が、これをくぐり抜けるためのいろいろな提案をしています。やはり直接に声をかける、直接の声かけがいいのだとか、あるいは三行広告やインターネットの掲示板での広告を通じていわゆる女子中高生を置いているホテトル、違法なホテトルですが、そうしたものを利用するのがいいのだとか、あるいは数少なくなったテレクラを見直そうではないかといったようなことが書かれているわけで、これは予想どおりではありますね。
 むしろ、規制法が規制法案という形で話題になりますと、そういう抜け穴についてのコミュニケーションが異常なほど活性化いたしまして、そういう雑誌を読む人たちも全体として延べ数が非常にふえますね。そのことを危惧した方がよろしいかというふうに思われます。
石井(郁)委員 ありがとうございました。
 もう一点の問題なんですけれども、この法案では「インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護」するということで、性犯罪のみならず、あらゆる犯罪を防止の対象としているという面がございます。
 それで、これは法律の専門家である前田参考人、坪井参考人に伺いたいのでございますが、児童と性交とかお金と交際という買春以外の勧誘行為も規制対象になっていますが、こういう買春の書き込みはともかく、インターネットの利用に起因する犯罪ということでいえばどういうようなケースが想定されるんでしょうか。何かお考えがございましたら伺いたいと思います。
前田参考人 要するに、インターネットのサイトを利用することによって巻き込まれる犯罪から児童を守っていく、そのために誘引を禁じていくという仕組みになっているわけです。ですから、女子高校生なんかがどんどんサイトに入り込んできて、特に、確信犯的な人よりもむしろ知らないで入り込んでくるのをどう防ぐかというかなり重要な面があるんだと思うのです。ですから、それに巻き込まれて、サイトの絡みで恐喝に遭ったりとか、強姦に遭ったりとか、脅迫に遭ったりとか、この前提として、サイトを利用したことによって知り合った人間が、特に児童がひどい目に遭ったということがやはり立法事実としてあったんだと思うんですね。
 ですから、この法律によって間接的にそういうものが減ることを目指していますが、直接的にこの法律によってネット上の恐喝ないし強姦とかを禁圧するということではないわけです。
坪井参考人 私が理解しておりましたのは、児童買春というような、二人きりの場所になったり、あるいは複数対一になったときに起きる暴行、傷害、恐喝、強姦、そうしたものを意味しているのだろうと推察はしておりました。
 ですから、先ほどもちょっと申し上げたように、そういうことを防止するとしたら、これも子供たちから言われたんですが、では、殺人事件や恐喝事件は、出会い系サイトを利用するときに、例えば一件だ五件だと言っているときに、路上で起きている恐喝事件、殺人事件の数と比した場合に、そっちの方がずっと多いんじゃないの、出会い系サイトでどうしてそんなにたくさんの犯罪を防止しようとするの、犯罪はもっとほかのところで起きているよと言われて、そうしたことはちゃんと統計をとっていないなと私も思った次第です。
石井(郁)委員 時間が参りました。きょうはどうもありがとうございました。
青山委員長 次に、保坂展人さん。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 宮台さんにお聞きしたいんですけれども、幾つかの法律で、今回は十八歳未満の子供の誘引行為は加罰対象になりますけれども、例えば性交同意年齢は十三歳、あるいは、女の子が婚姻できる年齢は十六歳。例えば、出会い系サイトでちゃんと結婚しましょうと言って見事に結婚した場合というのは祝福されて、そういうケースがあるのかどうかわかりませんけれども、実際に私の周りにも、十七歳などで結婚して子供をもうけて今四十歳近くという人は何人もおりますけれども、そのあたりの混乱といいますか、幾つも価値観の軸が複雑に、かつ、わかりにくく混在するという状況になると思いますが、いかがでしょうか。
宮台参考人 性交合意年齢、そして刑事責任年齢、少年男子・女子、そして結婚可能年齢、そして選挙をする有権者であり得る年齢、酒、たばこのいい年齢、ばらばらですよね。このようなばらばらさは、多かれ少なかれ多くの国にありますが、日本はとりわけばらばらで、これを統合するという動きがわずかに存在しますけれども、諸外国に比べるとやはり非常に弱いというふうに感じます。世界的な流れでいうと、大体十八歳に一つ大きな線を引くという線と、あともう一つ、性に関しては大体十四、十五、十六のどこかに線を引く、十八歳よりも前の段階で線を引くということが大体一般的な流れになっていると考えられます。
 このようなばらつきが抱える問題は、例えばこういうことです。大学の新入生は十八歳、十九歳の人が多いですよね。しかし、新歓コンパで酒を飲まない、いや、おれは二十になっていないから酒は飲めませんと言う人は見たことがないし、聞いたこともない。たばこについても同様ですね。そのような問題が生じるわけです。
 これは、もちろん脱法行為を行う人間がいけないじゃないかというふうな議論もあるのですが、どこかに非常に明確な線を設けておいて、ここから先、例えば大学に入るのも十八だし、選挙できるのも十八だし、酒、たばこも十八だし、売買春にかかわっていいのも十八だしというふうになっていれば、ある種の、シンボリックなというふうに言うんですけれども、わかりやすい、象徴的な効果がもっと期待できるというふうに思います。
保坂(展)委員 森さんにお聞きします。
 先ほどの説明では、改善策として、ドコモの方の公式サイトと一般の部分を分けるということで、どうも政治家のサイトも一般の中に入り込む、こういうことになりそうだということなんですけれども、そうしたら、もっと絞り込んで、明らかにこれはまずいというものにおいて狭く絞ることが可能ではないのかという点と、もう一つは、その前提として、ドコモ自体、iモードで営業収益を相当上げてこられたと思うんですけれども、これは公式と一般、それぞれどのぐらい上がっているかとか、もし何かそういう数字などもあったら教えてほしい。
 そしてまた、今回かかる規制が、例えば、一般的にかなり広まった場合における営業への影響とかというのはありますか。その二点。
森参考人 まず最初の、絞り込みをやったらいいんじゃないかという御質問なんですけれども、やはり一遍こういうサイトの絞り込みをやったとしても、最初は善人の顔をして入ってきて、後で仮面をはがすというか、仮面がはがれるといったケースが非常にあると思っておりまして、実態的には静的に絞り込みをするということは難しいのかなと思っております。
 それと、公式と一般の収益の話なんですけれども、収益はちょっと把握しておりませんが、アクセスの数でいきますと大体半々ぐらい、一般サイトの方がアクセスの数が若干多いかなという形でございます。
 それから、私ども、別に、政治家の皆様のサイトが悪だと思っているわけじゃございませんで、基本的に、誤解のないように申し上げますと、一般サイトイコール悪だという考え方は全くございません。ただ、事実関係として、一般サイトの中には危険なサイトもありますよということを認識しておりまして、この辺は誤解のないように、我々のフィルタリング機能を提供する前に当たって、お客様にはきちんと説明させていただきたいと考えております。
保坂(展)委員 きょうはプロバイダーの方とか来ていらっしゃらないので、もう一回森さんに聞きますけれども、この法律がもし成立をしてサイバーパトロール等が行われた場合に、どういう捜査が行われて、事業者はどういう協力を要請されるというイメージを持っていらっしゃいますか。
森参考人 具体的なイメージはちょっとまだ持ち合わせていないんですけれども、事業者の希望を言わせていただければ、やはり過度な規制というか、過度な制約にならない範囲での運用が望まれると思っております。
保坂(展)委員 宮台さんにもう一度お聞きします。
 先ほど、定義のところで、インターネット異性紹介事業というのが非常に不明確である、単純BBSなども含まれてくる。それ以外にも、ツーショットのチャット型であるとかあるいはメールマガジン、メーリングリストというものも、ひょっとしたら、メールマガジンの中にいろいろ個人紹介コーナー等があれば、そこはまた対象になって、そこにメールアドレスなどがついていればということも考えられますよね。
 そうすると、中高生がおしゃべり感覚で参加するようなメールのやりとり自体、その中に誘引行為があるかどうかということがとことん追われていく可能性はないでしょうか。
宮台参考人 結論から言えば、ございますね。単純BBSも一般のメーリングリストもすべて、誘引的な書き込みがなされる可能性があれば、当然ながらサイバーパトロールの対象たり得ます。
 そこに、先ほど申し上げたような、例えば何らかのかたり、成り済ましのようなものがあった場合には、捜査対象として、そうしたメーリングリストや単純BBSが対象になることもあり得るかというふうに存じております。
保坂(展)委員 坪井参考人に伺いたいんですが、私は以前、「セブンティーン」という十代の女の子しか読んでいない雑誌のライターを十年ほどやっていましたので、いろいろ思い出していたんですが、街頭補導なんかの取材をしたこともあります。警察に協力をしていただいて、新宿二十四時間とか、そういうことをやったことがあります。
 考えてみると、メールでやるわけですよね、出会い系で知り合った人、あるいは出会い系以外の、今のお話もあるように、さまざまな形でのメールでのいわゆるやりとりの会話。そのものは電話の履歴の中にあるわけですよね。
 そうすると、例えば新宿出会い系一斉捜索というものが行われて、例えば、十八歳以下らしき、主に女の子が、ちょっとかばんの中見せてごらん、そのときに、たばこ入っているじゃないか、これはちょっと君だめだよという補導は行われるわけですけれども、では、電話の履歴をちょっと見せてごらんということで、それらしき言葉や、あるいは相手から、じゃ何時にどこでとか、きのうはどうだったみたいなことがあると、ちょっと来いというようなことにならないのかなと思いますが、実態を知っていらっしゃる立場でどうでしょう。
坪井参考人 現在、児童買春で逮捕される男性がどういう経路で逮捕されているか。発覚するのは、子供たちが持っているメールの履歴、あるいは手帳に書いてある住所とか、そうしたもので発覚しているというのが現状ですよね。そうでない限りわからないです、買春は。
 ですから、おっしゃっていらっしゃるように、そうした意味で、先ほど、捜査の過程で犯罪となれば子供たちはそれを押収されていく、今はまだ任意提出、拒むことができるけれども、そうではない、おまえは誘引行為をやったんだというようなことで犯罪捜査の対象となると、もっと強制的にそれが没収されていくだろう。
 ですから、その履歴をすべて見られてしまうということが、先ほど申し上げたように、捜査の中で権限乱用ということで起きるのではないかということを申し上げたところです。
保坂(展)委員 通信の秘密というのは、その人が何を考えているのか、何を思ったのか、どんな感性を持っているのか、またどんな嗜好を持っているのかということも含めて十分尊重されなければならないし、これは十代であっても当然だということだと思います。けれども、出会い系における売買春、これがこんなに盛んになっているということで今回の法律の提案になっていると思います。
 宮本さんに伺いたいんですけれども、政府の方は、これはストックホルム宣言の問題、私も、外務省にきのう来てもらって、矛盾をしているんじゃないかという指摘をしましたけれども、とにかく罰があるよということをしっかり置いておくことによって、子供たちに周知させて、一応これはまずいのかなといってその領域から撤退させるんだ、こういう効果を持つんだというふうに言っているんですが、その点についてどんなお考えか、お願いします。
宮本参考人 先ほども申し上げましたとおり、罰をつけることによって逆に、子供たちが被害者であるにもかかわらず、この問題を訴えられなくなるというふうに思います。この事柄は禁止されていることだよということだけで、教育的には十分であるというふうに思います。
 あとは、それを具体的に、そして学校のレベル、これは子供たちだけではなくて、実は、保護者や学校、その周りにいる大人たちの無知とそれから関与のなさ、買春者や子供を利用しようとする側の人たちは関与していますが、そうじゃない立場の大人たちの関与のなさが問題だと思っておりますので、罰によってではなくて、今、業者の方も頑張ってくださっておりますので、この業者、行政、そして法執行機関、NGO、それから子供の周りにいる親、学校、そうしたものがとにかくこの問題についてきちんと話し合って、何ができるか。通信の自由も含めて、私たちも通信の自由は重要だと思っています。ただ、子供の人権、体や心がこれだけ侵害されているときに、まずそこから何ができるかを考える、その体制が必要なのではないかというふうに思っております。
保坂(展)委員 それでは、もう一度宮台さんに伺います。
 先ほどのように、私は、今回の法律成立後は、サイバーパトロール、掲示板などでそういった表記があった場合にチェックをして、警告をかけて、場合によったら取り締まりに当たるということが大体の手法なのかなと思っていましたけれども、実際には、街頭などで、子供が持っている携帯電話などのメールの履歴が引き金になるということも現実に起こっているというお話もありました。
 今の社会全体の風潮の中から、やはり公益のためには、ある種個人のそういった会話のたぐい、メールなど、時として、特に子供であれば見られても仕方がないのではないかという議論も一方には出てきているかと思います。私はそうは思いませんけれども。
 今回の法律の中で、実際には子供たちが持っている電話を全部見るなんてことは不可能ですから、一罰百戒的に、どこかでシンボリックにそういう取り締まりが行われることによって子供全体に周知させるということを捜査当局も考えるとは思います。しかし、そういう行為が、人間の内心の領域に踏み込んでくる、憲法との絡みでも大きな問題を生むんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
宮台参考人 人権は一般に公共の福祉という制約事由によって一定の制約を受けるというふうにどこの近代憲法にも書いてありますので、公共の福祉が何であるのかという議論が一般には必要で、そこでは、先ほど達増さんからの質問にもございましたけれども、個人的法益と社会的法益の両立可能性の問題について、あるいはどちらを充実するべきなのかという議論について、抽象的な話ではございますけれども、やはり議論を積み重ねていく必要があると思います。
 さらに、それとは別に、日本はとりわけ、例えばプライバシーの権利と名誉を毀損されない権利が、近代裁判、日本の裁判の歴史においても混同されてきています。三島由紀夫の有名な「宴のあと」裁判というのがありますが、これは、事実上プライバシーの侵害が名誉の毀損という概念の内側で争われているということもあります。
 プライバシーの権利とは、簡単に言えば自己情報制御権、コントロール権だというのが近代憲法学の最先端の発想であります。それは、簡単に言えば、名誉を毀損されるかされないかに関係なく、自分がどういう人間であるのかということを人に示す、その示し方を自分で制御できるということなんですね。したがって、面目を失うか失わないかに関係なく、自分の知られたくない情報を伏せることが認められるというのがプライバシーの権利の基本であります。
 しかし、もしプライバシーが制約されるような何らかの法律がある場合には、やはりその理由が説明されなければならないし、もし犯罪捜査で個人情報が利用されたりするということがあるならば、しかるべき理由が事後的にでも開示されて、納得がいくような形で処理されなければ、社会の中の、例えば日本社会におけるプライバシー権という考え方はどんどん希薄なものとなり、それがひいては非常に大きな社会的な利益の損失に結びついていく可能性があり得ると思います。
保坂(展)委員 今と同じテーマを前田参考人にお聞きしたいんですが、これだけの状態になってきたということで、加罰対象にするのもやむを得ないということでしたけれども、捜査の仕方、そこにおける、例えば通信の秘密などとの兼ね合い、捜査の厳格化、手続の厳格化というような面については、どういうふうにお考えでしょうか。
前田参考人 先ほどと関連して申し上げておきますと、今度の規制する対象は、やはり個人個人の通話みたいなものは恐らく入らない、条文上の文言から言いまして。公の場に明示しなければ、公衆の目に触れる形でなければならないので、その意味で一つ限定が加わっているということを申し上げておきたいと思うのです。
 あともう一つは、おっしゃるとおり、通信の秘密の問題とそれから児童の権利保護の問題が、ある意味ではこの問題は、児童の処罰が表に出ていますが、一番本質的な対立はそこだと私は思っているんですね。
 片一方では、児童の人権という側では、やはりなるべく厳しい規制をして通信の秘密は少し退いてほしいという要請と、片一方では、やはり児童の人権という名のもとに通信の自由とかプライバシーが侵されようとしている。そのせめぎ合いの中で、その中間のところで、間をとって、周知徹底してやるやり方として、それから規範をつくっていくやり方として、一歩踏み込んで違法だというだけではなくて刑罰を使うというやり方で、間をとったみたいな構造が本当は私はあるんだと思うんですね。
 その中で、確かにプライバシーの権利は非常に大事ですし、近代の社会を支える上で、それをないがしろにすれば、やはり国の存立基盤が崩れる。片一方で、今、次代を背負う青少年が健全に生きていく力をつけていかなきゃいけない。そのバランスをどうとっていくかということなんです。
 通信傍受とかいろいろな局面が出てくるんですが、国会ではかなり慎重な縛りをかけてつくっておりますし、今度のものでも、具体的に、先ほど宮台参考人も御指摘ありましたけれども、後からやはり情報をどう使ったかということの説明責任みたいなものはきちっと要求されてくると思いますので、御懸念があって、こういう場でそういう御指摘をいただくことは非常に大事だし、それを踏まえて運用してもらわなきゃ困るわけです。
 ただ、こういうものをつくったから、ざっとバケツの底が抜けるような形でプライバシーの権利が抜け落ちてくるというようなことは私は心配していなくて、むしろ、当面はやや対症療法で場当たりだというふうに見えるかもしれませんが、今の、出会い系サイトを放置すればほかに逃げる、そのとおりなんですが、では、ほかに逃がさないで、今のままどんどん出会い系サイトで売買春がふえていくことをそのまま許していっていいのかということを私は申し上げたいんですね。
 以上です。
保坂(展)委員 大変勉強になりました。ありがとうございました。
 終わります。
青山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十七分散会


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