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第8号 平成15年5月23日(金曜日)

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平成十五年五月二十三日(金曜日)
    午後零時十分開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 水島 広子君 理事 山口  壯君
   理事 福島  豊君 理事 達増 拓也君
      荒巻 隆三君    小渕 優子君
      岡下 信子君    河野 太郎君
      阪上 善秀君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    小宮山洋子君
      石井 郁子君    保坂 展人君
      山谷えり子君
    …………………………………
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十三日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     荒巻 隆三君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     上川 陽子君
    ―――――――――――――
五月二十三日
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案の廃案に関する請願(北川れん子君紹介)(第二二五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 青少年問題に関する件(児童虐待問題)


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。
 この際、政府から説明を聴取いたします。鴨下厚生労働副大臣。
鴨下副大臣 厚生労働副大臣の鴨下でございます。
 本日は、お手元にあります厚生労働省の説明資料に基づきまして、児童虐待の現状と今後の対応について御説明申し上げます。
 児童虐待の防止等に関する法律は、平成十一年度から本委員会で精力的に御審議をいただきまして、議員立法として制定いただきました。本委員会における児童虐待問題に関する深い御理解と取り組みに改めて感謝を申し上げる次第でございます。
 それでは、第一ページからごらんいただきたいと思います。
 全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法が制定される直前の平成十一年度が一万一千六百三十一件、平成十三年度が二万三千二百七十四件と二年で倍になっております。また、社会的介入が必要な虐待は一年間で三万五千件、そういう推計もございます。
 この相談件数の増加は、一番下の枠の中をごらんいただきたいと思いますが、増加した相談件数五千五百件の約四分の三は、福祉事務所、児童委員等関係機関、近隣知人からのものであるなど、児童虐待の防止等に関する法律の施行以来、本問題に関する関係者の意識の高まりや国民一般の理解の向上が見られることに由来するものでもありますが、いずれにせよ、児童虐待問題は社会全体で早急に取り組むべき課題と認識しております。
 次に、二ページをごらんいただきます。
 児童虐待を防止し、すべての児童の健全な心身の成長、自立を促していくためには、発生予防から早期発見、早期対応、保護、支援、アフターケアに至るまで、切れ目のない総合的な支援が必要であります。
 一番左に「虐待防止・自立」とあり、ここにすべての矢印が向かっておりますが、これは、いかなる段階にあってもその段階で児童への虐待被害を押しとどめ、自立に向け進んでいけるよう、きめ細かな施策を準備しておくことが必要である、こういうような考えに基づいたものであります。
 右の欄にありますように、一たん、虐待に至るおそれがある状態、いわゆる虐待ハイリスクの段階まで至ってしまいますと、保健師が一年継続的に支援しても、リスクが低下した世帯が一割にとどまり、現状維持が七割、虐待に至ってしまったケースも二割というのが大阪児童虐待研究会で行った研究結果になります。この一研究のみをもって断定はできませんが、ハイリスク状態にまで至ってしまうと改善は容易でないということがわかるわけでございます。
 また、虐待は、身体発育や知的発達の阻害、情緒面の問題、さらに世代間連鎖なども引き起こすと言われておりまして、児童の一生涯、さらには世代を超えて大きな影を落とすものであります。
 こうしたことを考えれば、子育て支援策の充実や保健事業の充実などを通して虐待を未然に予防することの重要性は、言ってみれば強調しても強調し過ぎるということはないわけであります。
 虐待が起こっているとすれば、それを早期に発見し、直ちに適切な対応を講ずべきことは当然でありますが、死亡事例の約四〇%はゼロ歳児、うち七〇%強は六カ月未満児という事実からも明らかなように、特に生まれてから間もない時期には、短期間のうちに死亡にまで至ってしまう事例があります。こうした事例を見るにつけても、早期に虐待情報をキャッチし、関係機関につなげる地域に応じた体制の工夫が重要でございます。
 保護、支援については、児童相談所における虐待相談の内訳を見ても在宅での指導が約八割となっており、適切な在宅支援の必要性が見てとれるわけであります。
 また、家庭的な温かい雰囲気のもとでの生活を確保するという観点からすれば、里親制度の活用が望まれるところではありますが、養子縁組を前提とすることを希望とする場合が多く、住宅事情などさまざまな理由から、これまで里親の活用が進んでいない状況にあり、里親委託児童数も、平成九年度から十三年度で二千百五十五人から二千二百十一人と微増にとどまっております。
 一方、施設については、平成十三年度の充足率を見ますと、乳児院では八五%に、児童養護施設では九〇%になっており、言ってみれば余裕のない状態が続いているわけであります。
 さらに、近年は、特段にきめ細かな配慮が必要な虐待を受けた児童の入所の割合がふえておりまして、日本子どもの虐待防止研究会の抽出調査によりますと、東京や大阪など大都市の児童養護施設に何らかの形で虐待された経験のある児童の入所率は五〇%を超えております。
 児童の状態や背景は多様でありまして、在宅支援、施設における支援を問わず、できる限り画一的にならないように、個々の状況に応じて努めてまいりたい、かように考えております。
 次に、三ページをごらんいただきます。
 発生予防に関しましては、これまでにも、親の孤立を防ぐ場の確保として、子育て中の親子の交流の場を提供するつどいの広場や、地域子育て支援センターの拡充、また、母子保健を充実させる取り組みとして、一歳六カ月・三歳児健診の際に心理相談員や保育士を配置するようなことを実施しております。
 さらに、今国会には、自治体に子育てに関する行動計画の策定を義務づけたり、市町村に子育てコーディネートを義務づけるといったことを内容とする次世代育成支援対策推進法案、児童福祉法の改正案を提出させていただいているところであります。
 こうした子育て支援の強化は虐待防止にも資するものとして認識をしております。
 早期発見、早期対応に関する取り組みでは、児童相談所の体制強化として、児童福祉司の地方交付税積算基礎人数を平成十二年度の十六人から平成十五年度には二十三人に増員、また、現場の各機関が利用する対応要領の作成も進んでおり、日本医師会や日本看護協会などにおいて既にマニュアルをつくっていただいているところであります。また、厚生労働省にあっても、児童相談所を対象とした手引や保健師活動マニュアルを作成しております。
 保護、支援、アフターケアに関する取り組みでは、児童が最終的に自立に至るまで継続的な支援を行うことが重要であります。
 児童福祉施設は、戦後の制度創設当初は衣食住を提供することを主目的としておりましたが、現在は、虐待を受けた児童の増加など、施設を取り巻く昨今の環境は大きく変化をしておりまして、そうした状況に対応した施設のあり方が求められております。
 こうした中で、原則六人定員の小規模の児童養護施設の拡充、乳児院や児童養護施設に心理療法担当職員や個別対応職員の配置、また、里親制度の拡充としては、主に虐待を受けた児童を引き受ける専門里親制度の創設、里親に一時、養育から離れ、休息してもらえるレスパイトケア制度などを実施しております。
 また、資質向上や人材確保のため、思春期問題や虐待問題の専門の研修、情報提供を行う子どもの虹情報研修センターを平成十四年度に立ち上げ、研修等を開始しております。
 次に、四ページをごらんいただきます。
 虐待の背景は多岐にわたることから、福祉関係者のみならず、医療、保健、教育、警察など、地域の関係機関や地域住民の幅広い協力体制の構築が不可欠であり、特に住民に最も身近な市町村における虐待防止ネットワークは、予防から自立支援に至るまですべての段階で有効と言われております。
 ネットワークをどのような機関、団体に参加を求め、どのような活動をするかは、地域によりさまざまな取り組みがあってよいわけでありますが、関係行政機関のみならず、場合によってはNPOやボランティア団体などを含めた幅広い参加を、また、単なる情報連絡の場にとどまらず個々のケースの解決につながるような取り組みを期待しているところでございます。
 厚生労働省としても、市町村ネットワークの設置を積極的に働きかけているところでありますが、本年度中には約一千カ所となる見込みでございます。
 次に、五ページをごらんいただきます。
 児童虐待の防止等に関する法律の附則においても、この法律の施行後三年後、すなわち十五年の十一月でありますけれども、それを目途として、必要な措置が講ぜられるものとすると規定されているわけでございます。
 このため、厚生労働省としても、制度全般にわたり解決すべき課題について整理、検討を行うこととし、社会保障審議会児童部会に児童虐待の防止等に関する専門委員会を設置し、現在、検討を行っているところであります。
 発生予防としては、生後間もない時期、例えば生後六カ月未満を中心に母子保健事業を強化し、また、リスク要因を適切にアセスメントする指標の確立や、虐待の予防に関する市町村の役割の強化の必要性などがその中で指摘されているところであります。
 早期発見、早期対応としては、児童相談所全体のあり方の見直しや、市町村のネットワークについて、引き続きその設置を推進してまいります。
 また、家庭裁判所の承認に基づく親の意に反する施設入所措置については、期限つきのものとし、必要に応じ、再審査をするなどの仕組みを検討するといったことが指摘されております。
 保護、支援としては、規模の小さな施設や里親制度や自立援助ホームの充実について検討がなされています。
 在宅支援の強化の視点からは、市町村ネットワークの整備、保護者に対する治療・指導プログラムの充実、それの発展などが指摘されております。
 また、すべての段階で研修などによる関係職員の養成と専門性の確保が必要というようなことも指摘をされております。
 以上、簡単でございますが、児童虐待の現状と今後の対応についての御説明をさせていただきました。
 未来を担う子供たちが心身ともに健康で安心して育っていけるよう体制を整えることは、親のみの責任ではなく、社会全体の責任と考え、今後とも全力で虐待問題に取り組んでいく所存でございます。よろしく御協力をお願いいたします。
    ―――――――――――――
青山委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査のため、来る二十九日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十四分散会


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