衆議院

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第5号 平成19年4月26日(木曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月二十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小宮山洋子君

   理事 後藤田正純君 理事 実川 幸夫君

   理事 谷川 弥一君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 田嶋  要君

   理事 高井 美穂君 理事 西  博義君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      上野賢一郎君    大塚 高司君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    福岡 資麿君

      古川 禎久君    松本 洋平君

      山内 康一君    泉  健太君

      太田 和美君    菊田真紀子君

      郡  和子君    吉田  泉君

      伊藤  渉君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           高市 早苗君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 後藤  博君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西阪  昇君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  津村 啓介君     郡  和子君

  西村智奈美君     泉  健太君

  石井 郁子君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     西村智奈美君

  郡  和子君     吉田  泉君

  塩川 鉄也君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田  泉君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     津村 啓介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件(児童虐待問題)

 児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

小宮山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。

 お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官後藤博さん、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一さん、文部科学省大臣官房審議官西阪昇さん、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中森ふくよさん。

中森委員 おはようございます。自由民主党の中森ふくよでございます。

 二十分のお時間をちょうだいいたしましたので、児童虐待について質問させていただきます。よろしくお願い申し上げます。きょうは副大臣、お忙しいところ申しわけありません。ありがとうございます。

 それでは、すぐ参ります。

 児童虐待防止法は、平成十六年に改定をされまして、既に三年を経過いたしました。その見直しに来ているわけでございます。

 虐待で死亡した子供は、用紙を一枚お配りさせていただきましたけれども、平成十二年から十六年までの約四年間で二百二名。注目しなければならないのは、このうち児童相談所が関与しながら死亡したという例が五十九件、実に三割を占めているということでございます。昨十八年中だけでも五十九名の児童が虐待で命を落としておりまして、これも、比べますと二〇%死亡率が増加しております。

 この死亡事例を見ましても、そもそも、行政機関が児童虐待の発生を認識することができなかった事例が多数含まれているということでございます。早期に児童虐待を把握できる体制が構築できていれば、少なくとも児童が死に至るという最悪の事態を防ぐことができるのではないか。

 山古志村というのがございますけれども、地域に住む住民がその地域で起きていることに特に関心を持って生活しているこのような地域では、いわゆる地域力が高く、防犯活動等についても熱心に行われ、こうした地域では、住民は地域での出来事に敏感であります。児童虐待についても、地域の地域力を高めることにより、児童虐待の早期発見を可能とすることができるのではないかと思うわけでございます。

 今般、この法改正により、児童相談所等に多くの権限を付与し、また児童虐待の防止を推進する、このことは最も大切なことでございます。しかし一方で、児童相談所が現在与えられている権限を十分に使い切れていないのではないか、こう思うわけでございます。

 このことを申し上げますのは、児童相談所の職員が、福祉を担当している女性や心理職も多いため、児童虐待の保護者から、しつけの一環である等、親権を盾に高圧的に迫られますと、十分な調査や対処ができないという一面があるとお聞きしておりますことによります。

 また、行政の側でも、児童虐待防止対策に関する参考資料、ことしの四月に配られましたこの黄色い冊子、議員の皆様もお持ちでいらっしゃると思いますけれども、そこにもこう記述されております。虐待を家庭内の問題であるゆえというふうなとらえ方がされていることと、やはり行政の関与は難しいという事例が多いからとも述べられているわけでございます。

 そこで、お尋ねをいたします。

 親権という問題でございますけれども、親権の喪失制度の運用でございますが、児童虐待防止法の第十五条におきましても、親権の喪失の運用については、適切に運用されなければならないと規定されているわけでございます。しかし、この適切というところが、個人の判断にあるいは担当者の判断によるところも大きいかと思いますので、実質、この十五条の運用実績が非常に少ないと聞いております。なぜこの運用実績が少ないのか、そしてその原因と対策について、まずお伺いをさせていただきたいと存じます。

武見副大臣 御指摘のとおり、運用の実績というのは非常に限られております。

 ただ、その前段階と考えられると思いますけれども、平成十二年の児童虐待防止法の制定以降、積極的な児童虐待に対する介入が進んでおりまして、家庭裁判所の判断による児童福祉施設への強制入所措置の申請が増加をしておりまして、平成十七年度には百七十六件と、法施行前の十一年度の八十八件と比べてももう既に二倍になっております。ただ、その上で、御指摘の親権喪失宣告という点に関しては、これは二件にとどまっているわけでございます。

 このように親権喪失宣告の申し立てが少数にとどまっている背景といたしましては、親権の喪失というのは、第一に、子供にとってみますと、親子の縁を断ち切るということになりますので、心の傷をさらに深めるおそれがあるという点をやはり担当者は非常に危惧するわけであります。それから、二つ目には、親権喪失後の後見人の確保が難しいといったことが理由として挙げられます。後見人になっていただく大半の方々というのはやはり親族の方が多いんですけれども、それでもなかなか後見人の確保が難しい。この二点が、御指摘の親権喪失宣告の運用というものがかなり少数に限定されていることと考えております。

 ただ、今回の改正では、保護者が児童相談所が行う保護者指導に従わないケース、こういった場合には、適切に親権喪失の請求を行うということを明記しております。それから、親権喪失が宣告された場合であって後見人が確保されていない場合には、後見人の選任がなされるまでの間、児童相談所の所長が親権を行うこととされておりまして、そういう点では、今後はより積極的な運用ができる法改正の内容というふうになっております。

中森委員 実は、今、副大臣のお話をいただいたわけでございますけれども、親子の縁という問題でやはりひっかかろうとは思うんですが、子供の生死にかかわる問題でございますので、やはり福祉でとらえる一面と、それから、刑事といいますか、犯罪という形でとらえるかというところで、命に関する部分がかなり出てきているわけでございますので、後はどうにかなる、ただ命が奪われてしまったのではどうにもならないという観点から、ぜひ適切な運用というところの具体的な措置基準というのが必要であると考えているわけでございますけれども、この辺の御見解はいかがでございましょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年、京都府の長岡京市で事件がございましたが、そのときの事例等を見ましても、先ほどおっしゃったような福祉の問題、それから刑事的な感覚の問題、非常にそういった事例でございました。

 本年一月、厚生労働部局長会議を初めさまざまな場におきまして、厚生労働大臣以下、指導なり伝達に努めているわけでありますが、その考え方の根本は、児童虐待への対応においては、保護者との関係にとらわれる余りに、立入調査や一時保護などの措置が手おくれになるような事態が生じないよう、子供の安全確保を最優先にした対応をするようにと繰り返し指示をしてまいったところでございます。

 また、こうした毅然とした対応を図るためには児童虐待対応におけるルールの明確化というものが必要なことから、本年の一月に児童相談所運営指針等の見直しを行いまして、一つは、虐待に関する情報はいかなる形でもたらされるものであってもすべて虐待通告として受理するということ、それから二つとして、迅速かつ的確な対応を図るために安全確認の時間ルールの設定を義務づけ、四十八時間以内とすることが望ましいということも明示する、それから、関係機関相互における情報共有の徹底、こういった措置を講じているところであります。

 引き続き、積極的かつ組織的な対応が行われますように、関係者に対して徹底を図ってまいりたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと関連いたしましてもう一つ質問をさせていただきたいのですが、児童を守るためにこの虐待対策があるわけでございまして、今申し上げた福祉の観点ももちろん重要でございますけれども、虐待を担当する職員に当たっては、保護者に対しては毅然と対応することができる職員の配置ということで考えてみたいと思うのです。

 この点について、毅然と対応できる職員の配慮、そういった配置についてはどのようにお考えでしょうか、御見解をお伺いいたします。

大谷政府参考人 現在、児童相談所におきまして、児童福祉司という専門の職員がこうしたケースに当たっているわけでありますけれども、まず、そうした方々に対し、仕事の仕方については、さっき申しました指針の徹底を図る、あるいは研修を充実してさらにそういった意識なり情報というものを伝える。それから、その数におきましても、今年度、地方財政措置によりまして大幅な増員ということを図りましたけれども、そういう意味で、その質それから量においてそういう対応が図られるように今図っているところでございます。

中森委員 済みません、これは問六でお願いをしようと思っていたんですが、実は、去年の十二月に内閣委員会で、退官警察官を児童相談所の臨時職員として再雇用することについてお尋ねしているんですね。その際、この提案に対して前向きの答弁をいただいた、こう私は考えていたわけでございますけれども、今の質問とちょっと重なるわけでございます。

 厚生労働省としては、この退官警察官の配置という意味も含めて、どのような措置というか、見解をお伺いしたいと思います。対策をお願いいたします。

大谷政府参考人 今、児童福祉司について申し上げましたけれども、この退職警察官の登用等の問題につきまして、現状についてお答え申し上げます。

 これは、昨年の内閣委員会での御提言も踏まえまして、平成十八年度の補正予算におきまして、警察官OBの方々を活用しまして、夜間、休日を問わずいつでも相談に応じられる体制を確保するための二十四時間三百六十五日体制強化事業というものを施行しまして、すべての児童相談所において実施できるよう補助の充実を図ったところでございます。

 現時点において、児童相談所における退職警察官の活用状況について調査いたしましたところ、今の段階では、五つの自治体において、五つの児童相談所におきまして退職警察官を雇用しているという報告を受けております。

 また、厚生労働本省におきましても、本年度より警察庁との間で相互に人事交流をスタートさせたところでありまして、こういった警察と福祉の連携の強化ということが児童虐待対応について有効な体制強化につながると考えておりまして、今後ともそういう取り組みを進めたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 要保護児童対策協議会についてでございますが、厚生労働省では、各自治体に対しまして、この協議会の設置を推進しております。

 多くの市町村では、配付をした紙に書いておきましたけれども、「運営方法がわからない」あるいは「事務局に負担が集中してしまう」などと答えておりまして、そこには、関係者だけでどうやって情報を収集するのか、どうやって監視の目をつくるのかということが現実の問題として横たわっているのではないかと思うわけでございます。

 この要保護児童対策協議会の設置方法等についてどのような指導助言を自治体になさっていらっしゃるか、お伺いをいたします。

大谷政府参考人 厚生労働省では、市町村におきまして地域の関係機関が連携して児童虐待や非行の問題に取り組むために、平成十六年度の児童福祉法の改正によりまして、要保護児童対策地域協議会、いわゆる子どもを守る地域ネットワークというものを法定化して、その設置を進めているところでございます。昨年度の補正予算によります児童虐待等緊急対策によりましてその設置の促進を図っておりまして、先月末の段階で約八五%の市町村で設置されるということになってございます。

 しかしながら、急速に設置が進められる中で、その運営方法等について十分なノウハウがないという自治体も見受けられますことから、現在、先進事例を参考としたマニュアルの作成を進めているところでございまして、これは来月には各自治体に周知できると考えております。

 また、本年度におきましては、この地域協議会の体制強化を図るという観点から、都道府県から地域協議会に児童福祉の専門家を派遣するという事業も行うこととしておるところでございます。

 今後とも、こういった取り組みを通じて、この地域協議会の機能強化を図ってまいりたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、時間の関係でちょっと飛ばします。

 ゼロ歳児に死亡例が大変多いということは、核家族化の家庭環境も大きな影響があると考えますが、先ほどちょっと触れましたけれども、地域力がしっかりしていれば監視の目も行き届く、情報も来るというふうに考えております。こうした地域力をもっと活用するために、今の要保護児童対策協議会に自治会等、地域で活動する団体等も参加すべきと考えておりますけれども、その点はいかがでございましょうか。

大谷政府参考人 児童虐待の早期発見それから早期対応には、地域住民の協力が不可欠でございます。その積極的な参加が期待されるところでございます。その際、虐待通報の重要性、それから児童虐待防止推進月間の周知など、自治会や商店会、こういった今御指摘のありました地域組織に期待できるところは大きいものというふうに考えます。

 この要保護児童対策地域協議会の構成員でありますが、これは、児童福祉法に規定されている「関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者」ということでありまして、地域の実情に応じて幅広く参加いただくということが可能でありますし、また望ましいというふうに考えておりますので、今御指摘いただきましたような自治会や商店会等の関係者がこの協議会に参加いただくということは、一つの重要な選択肢になり得ると考えております。

 そういったことで、各自治体で工夫をいただいて、最もふさわしい方々に協力賜りたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 それでは、自治体への参加ということが進められるのではないかと期待いたします。

 今配られている法案の中ででも、この新しい法案でも、この対策では法の施行をいっときでも早く進めたいと思うわけでございます。先ほど申しましたように、去年一年間だけでも五十九人の死者がございます。この対策がおくれればおくれるほど児童の死亡する人数がふえるという事態が起きないように、今回の法改正につきましても、一刻も早い法の施行をと思うわけでございます。

 一年が長いのか短いのか、いろいろな方法もあろうかと思いますけれども、この点について、少しでも早くと期待しますけれども、御見解をお伺いいたします。

大谷政府参考人 法律の施行日の中身について直接コメントすることは難しいわけでございますけれども、いわゆる事故防止ということにつきまして、虐待死といった痛ましい事件の発生を防止するために、何よりもこれは早期発見、早期対応が不可欠と認識しておりまして、厚生労働省におきましては、本年一月に児童相談所の運営指針等を改正して、虐待通報後四十八時間以内の直接の目視、目で見るという安全確認の実施、それから市町村が立入調査または一時保護の実施が適当と判断した場合に、その旨を児童相談所長等へ通知するという仕組みの導入、こういったものの措置を講じ徹底を図っているところでございます。

 今回改正されます法律案においてもこの内容が改めて法律に明記されているわけでありますけれども、この法案の施行時期は二十年四月一日とも承知しておりますが、実際には、今申しましたよな措置は改正に先立って実施しておりまして、可能なものからできる限り対策を進め、また、法案に掲げられた新規の施策につきましても、周到に準備を進めたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、これまで子供の生命と親の親権という議論がなされてきておりますけれども、現場においても、生命優先という基準が明確であるならば、遅疑逡巡されることも少なくなると思うわけでございます。どうかこの点において法的にも検討していただけますようにお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、山内康一さん。

山内委員 自民党の山内康一と申します。

 事前に通告していた質問のうち、幾つかもう既にお答えいただいた部分もありますので、順番を大幅に入れかえて質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、児童虐待防止に関するNPOをもっと活用すべきだということは、民主党の田嶋先生からも先日お話がありました。今、日本国内で児童虐待に関係して活動しているそういったNPOの実態について、厚労省の方でどれぐらい把握されているのか、お尋ねいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 児童虐待防止に関し活動を行っているNPO等の民間団体は非常に数が多うございます。その全体は把握できていないわけでありますが、例えば、以下に申し上げるような民間団体が加盟しておられます。一つは、日本子どもの虐待防止ネットワーク、ここでは加盟団体が四十四団体、また、チャイルドライン、ここでは加盟団体が五十九団体、こういうふうに承知しております。

 これまで、児童虐待防止法の制定を初めとしまして、児童虐待防止対策の推進に当たって、こうした民間団体が極めて大きい役割を果たしてきていただいたと認識しております。国としても、こうした民間団体と一体となって児童虐待防止対策に取り組んできたところでございます。

 具体的には、厚生労働省が事務局を務めます児童虐待防止対策協議会、これにも参加していただくとともに、民間団体が中心となって実施しているオレンジリボンキャンペーンというものの後援をするなど、取り組みを進めているところでございます。

山内委員 では、同じ質問を文科省にもお願いいたします。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 私どもの関係では、先ほどもございましたが、チャイルドラインにつきまして関係してございます。チャイルドラインは、先生もう御承知のとおりでございますが、子供の声に耳を傾け、受けとめるという電話相談でございます。平成十年に世田谷で初めて開設をされまして、平成十八年十二月現在でございますが、三十四の都道府県で六十三団体がさまざまな活動をしているというふうに承知をしております。

 このチャイルドラインに対します文部科学省のこれまでの支援関係でございますが、平成十一年度から平成十四年度の間、この立ち上げに際しまして、立ち上げ支援ということで支援を行ったところでございます。また、現在では、チャイルドラインはそれぞれ、NPO法人でございますとかあるいは任意の団体ですとかという形で自主的に御活動されているところでございます。

 文部科学省といたしましては、このような団体がチャイルドライン全国キャンペーンというのを行っていらっしゃいますけれども、それに毎年後援を行っているところでございます。また、その取り組み状況につきまして、文部科学省編集の広報誌、あるいは私どものホームページでその活動の状況を掲載するなどの支援を行っているところでございます。

 また、NPO法人としての活動をされているところがございますけれども、御承知のとおり、認定NPO法人になりましたら税制上の優遇措置がございますので、そのような認定法人の資格取得ということへも私どもとして相談に乗りまして、そのような協力をしているところでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 厚労省も文科省も、NPOと連絡をとりながら支援をしているということはよくわかるんですけれども、実際に現場で活動することをサポートする、助成するということも当然大事だと思うんですが、それと同時に、政策立案のもっと上流の段階からNPOの意見を踏まえていく、あるいはNPOと連携していくということがこれからもっと行われていいのではないかと思います。

 例えば、国際協力、途上国援助の分野に限って言えば、外務省と国際NGOというのは、毎年、年次協議というのをやっておりまして、もう十年以上前からやっているんですけれども、国際協力をやっているNGOと外務省が定期的に公式な、フォーマルな場で対話をし、その成果というのがある程度ODA政策にも反映されているという実情があります。

 もちろん、別に外務省の官僚の方が大変開明的でリベラルだからそうなったということでは決してなくて、途上国援助の世界では、各国の援助機関、各国の政府が途上国をフィールドに援助合戦を繰り広げている中で、やはりNGOと組んだ方がうまくいく、あるいはNGOと組んだ方がより効率的で、そういったNGOとの連携なしにはODAは成り立たない、そういった認識のもとに、外務省とNGOの政策協議というのは非常に進化を遂げてきたわけであります。

 同じようなことがこれから国内のNPOと厚労省なり文科省との間に起こっていく必要があるんじゃないかと思いまして、そういった政策対話、特に上流の部分でのそういう連携というのはどうなっているのか、あるいはどうすべきなのか、御見解をお伺いしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 さっき答弁の中で少し触れたところでもありますけれども、児童虐待防止対策協議会、これは各省の代表者も参加し、またその席にこういったNPOの方々も同席いただいて、年に数回、情報交換なり、それから方針の徹底等の協議をしているところでありますけれども、既に日常の仕事あるいはそういった場でも取り組んでいるわけでありますが、これは非常に重要なことだと考えておりますので、今言ったような進め方についてはさらに促進してまいりたいと考えます。

西阪政府参考人 私どもは、青少年の健全育成という全般的な政策の推進という中で行っているところでございますが、NPO法人と直接に定期的に意見交換する場というのは今のところございませんけれども、青少年の健全育成という観点ではさまざまな民間の団体との協力というのが不可欠でございますので、いろいろな機会をとらえまして、意見交換あるいは情報収集、提供ということをしているところでございます。

 チャイルドラインにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたような形で御支援、協力をしているところでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 また、この児童虐待という問題に関しては、地域社会の理解、協力が欠かせないと思うんですけれども、こういった児童虐待防止に直接かかわっている人たち、例えば民生委員、児童委員あるいは地域のNPOなり、そういった関係者に対する研修とかあるいは情報面のサポート体制というのはどのようになっているのでしょうか。以前に、参考人からも、やはり専門性を高めていくことが非常に重要だという御指摘がございました。そういったサポート体制、研修のあり方、こういったものについて厚労省にお尋ねいたします。

大谷政府参考人 児童相談所の職員を初めとしまして、児童虐待防止に携わる方々について、その増員を図るとともに、その質を高めていくということが大変重要であると認識しております。

 そのため、児童虐待防止のまずは中核となります児童相談所職員につきまして、所長や児童福祉司につきまして任用資格を定めるとともに、子どもの虹情報研修センターを初めとして、関係機関において研修を実施しているところでございます。

 また、児童相談所とともに、児童虐待対応の担い手となります市町村の職員につきましても、同様に子どもの虹情報研修センターにおいて研修を行うとともに、民生委員ほかそういった方々につきましても、各地方自治体や民生委員・児童委員協議会等において研修等が行われているところであります。

 また、国としましては、児童虐待防止対策支援事業におきまして、地方自治体が行った研修を補助対象としておりますが、福祉医療機構では、NPO等民間団体が行う研修についても現在助成を行っているところでございます。

 さらに進めまして、児童虐待の対応の基本となりますマニュアルとして、児童相談所運営指針あるいは子ども虐待対応の手引き等を定めておりまして、本年一月には、昨今の虐待死亡事例の教訓などを踏まえて見直しを行ったところでございます。

 今後とも、児童虐待防止に携わられる方々の質の向上に向けまして、研修の見直しあるいはマニュアルの策定等に努めてまいりたいと考えます。

山内委員 ありがとうございました。

 それから、虐待の被害に遭った子供たちを親から守るために一時保護所というのがあろうかと思いますが、虐待を行った親が子供を取り戻そうとしてそういう一時保護所に押しかけたりといったようなことが恐らく想定されるし、実際に起こっているのではないかと思うんですけれども、そういった一時保護施設を非公開にしてそういう親から子を守っていく、そういった措置というのはとられているのかどうか、あるいはこういったことができているのかということを聞きたいと思います。

 恐らく、ドメスティック・バイオレンス関連のシェルターだと、住所とか連絡先が非公開になっているシェルターというのが非常に多いと思うんですけれども、同じことが児童虐待の被害に遭った子供たちの場合も行われているのかどうかということをお尋ねしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 一時保護所は、虐待を受けた子供や非行少年などを一時的に保護することを目的とした施設でありまして、その性格上、その存在を広く住民に知らしめる、そういったものではないというふうには考えております。

 しかしながら、一時保護された子供の保護者に対しまして、ある程度親権に配慮して一時保護の同意を得るということが特にスタート時点では原則でありますから、一時保護先について保護者に明らかにするということにはなっております。

 しかしながら、事例によりまして、例えば保護者に子供の住所を知らせると、子供の引き取りを強行するとかあるいは子供の心身の安全にとって危険な場合もあるというのも事実でありまして、こういった場合には、現状でも、一時保護を行う一時保護所の場所を教えないとか、あるいは児童相談所に付設した一時保護所ではなくて、児童福祉施設等、別の場所で一時保護を行うといった現場の対応が講じられているということも承知しているわけでございます。

 今回改正されます法律におきまして、子供の住所または居所を明らかにしないということができる旨が明確になれば、より子供の心身の安全確保に役に立つというふうに考えるところでございます。

山内委員 そういった形で親に居どころを知らせないという措置がとれるということはわかりましたし、法改正でそういう方向に進んでいるというのは望ましいことだと思うんですが、実際、そういった予算措置とか、具体的に実効性を持たせるための措置というのはお考えなんでしょうか。

大谷政府参考人 今申し上げましたようなケースについては、むしろ制度の問題として、いわば所長の権限であったり、そうした仕事の進め方になりますので、直接大きな予算が発生するというふうには思いませんけれども、事務執行上の必要な処理費用については確保してまいりたいと思います。

山内委員 ありがとうございました。

 あとは、虐待を受ける子供が、必ずしも両親ともに日本人でなかったり、あるいは日本人と海外の方との国際結婚のカップルであったりということで、日本国内にいる外国籍の子供、日系ブラジル人の労働者の方だったり留学生だったり、いろいろなケースが想定されると思うんですけれども、そういった外国籍の子供なり、あるいは国籍は日本であっても、言葉であったり文化的背景が日本のスタンダードな子供と違う、そういった子供が児童虐待の被害に遭うということも実際あるんじゃないかと思いますが、その実態についてと、そういった外国籍の子供たちも今の体制できちんと保護できているのかということをお尋ねしたいと思います。

大谷政府参考人 児童福祉法におきまして、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と第一条二項に規定されております。「児童とは、満十八歳に満たない者」ということで、そういう定義がありますので、日本に居住するすべての児童をこの法律の対象としているところでございます。

 このため、従来から、虐待を受けた外国籍あるいは国籍不明の児童につきましても、児童相談所におきまして相談を受理し、各種の調査、診断を行い、児童福祉施設入所等の措置を講じているという現状でございます。

 外国籍等の子供さんへの対応の件数でありますけれども、そういうことで、具体的に全国のものを把握しているわけではありませんけれども、東京都の場合につきまして申し上げますと、平成十七年度中に外国籍等の子供について二百十三件の虐待相談がありまして、そのうち児童福祉施設に入所した子供が三十六人であったというふうに聞いております。

 私も現場を見てきたことがございますけれども、施設の職員が言葉も踏まえて懸命に対応しているという現状を見ておるところでございます。

山内委員 何でそういう質問をしたかというと、国籍の問題もそうですけれども、やはり文化的な背景が違うと、我が国ではこの程度は児童虐待と言わないというような人もいるかもしれない、あるいは言葉が通じなくてよくわからないけれども、しつけのつもりで殴っちゃったとか、いろいろな文化的な背景の違いによって、起きてくるケースも大分違うんじゃないかと思うんです。

 そういった意味で、異文化適応ができるスタッフとか、そういう体制というのが多少はあってもいいのかなと思うんですけれども、東京都の事例だけで結構なんですけれども、そういう専門性のある方、ある程度言葉がわかるとか、そういう人というのはいるものなんでしょうか。

大谷政府参考人 東京都のケースについて、今ちょっと知る限りの情報で恐縮ですが、小さいお子さんのケースでありますので、言葉の問題といいますよりも、ケアの中身で職員が懸命に対応しているというものも目撃したわけでありますが、一方、必要な場合には通訳等を確保するということもしておりまして、最大限の努力をしているというのが現状でございます。

山内委員 残り時間が大変中途半端なので短く質問したいと思いますが、現行法の問題点について、例えばNPOとか、関係の団体からどのような改正の要望というのが上がってきて、寄せられているのか、厚労省にお伺いしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 児童虐待防止法につきましては、残念ながら、これまでの法改正後も虐待により子供の命が失われるというような事例が相次いでおりまして、こうした虐待死を防ぐための一層の対策の強化が必要と認識しております。

 特に、そういった事例の発生等を踏まえまして、現在、体制の強化を図っているところでありますけれども、一時保護施設入所後の児童の安全を確保するということ、それから親子再統合に向けた支援を強化する、こういった観点から、保護者に対する面会通信制限の強化、あるいは保護者指導の実効性を高めるための見直しが必要であると認識しております。

 児童虐待防止法の見直しに当たりまして、全国児童相談所長会や日本子ども虐待防止学会から、例えば、裁判所の令状によるなど司法機関が関与する仕組みの創設を図り、保護者の強い拒否や抵抗があっても、児童の安全確認の面から確実に立入調査が可能となる手続を制度化することというような御意見、また、司法判断により親権の内容を具体的に制限する柔軟で多様な制度を創設すること、こういった御意見をいただいているところでございます。

山内委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、泉健太さん。

泉委員 民主党の泉健太です。

 きょうのこの青少年問題に関する特別委員会、昨年末より超党派の児童虐待防止に関する勉強会がスタートいたしまして、そして市民団体や研究者あるいは現場の方々、多くの皆様から御意見をいただきながら、そして各省庁ともよくよく現状の御意見をお伺いしながら、超党派で法案をつくり上げて、このたび、この後ですけれども、提案がなされるということまでたどり着くことができました。この審議に至るまでの委員長そしてまた各党派の議員勉強会のメンバーの皆様、またすべての関係者にも心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 ちょうど私の地元、京都の長岡京市で昨年の十月二十二日に虐待死亡事例が起こってしまいました。大変残念なことでありました。その後、我々民主党も昨年の十一月の二十八日から勉強会、作業チームをつくりまして、超党派での法案作成に、我々の党からも意見を反映させてきたところでございます。

 きょうは、そういった形で法案が出てくるわけですけれども、それに伴って幾つか確認をさせていただきたいことがございます。よろしくお願いをいたします。

 まず、早速ですけれども、今回、この法律、児童虐待防止法改正の中でも残念ながら前進できなかった点というものがございまして、その一つが、やはり親権の問題であります。

 これは、三年前の児童虐待防止法の改正のときにも、三年後の見直しに向けてこの親権の見直しを検討していくということを附則で書かせていただいたわけですが、残念ながら、その後三年間目立った動きがなかったということでありまして、今回も附則に前回同様の文言を入れざるを得なかったという現状がございます。

 その意味で、きょうは法務大臣政務官、奥野政務官にもお越しをいただいておりますけれども、実は、この親権のことについて検討を進めていこうとしますと、当然法制審での議論というものが必要になってまいります。その法制審なんですが、もう既に御案内のとおり、これは大臣による諮問というものがなくてはならないという現状でございます。

 政務官にお伺いをしたいんですが、この親権の取り扱いということについて、現在、なぜなかなか進んでいかないのだろうかというふうに我々は疑問を持っているわけですが、その親権の取り扱いについてぜひ法制審の方でお諮りをいただきたいというふうに思うわけですが、いかがお考えでしょうか。

奥野大臣政務官 昨今、児童虐待が大変ふえてきて、その施設もいっぱいになるほどの状態の中で、また一方では、家庭教育が崩壊というような言葉も出てきている中で、皆さん方が児童虐待に真摯に取り組んで立法まで至ったということについては、敬意を表する次第であります。

 そして、三年前ですか、同じような法律、このカテゴリーの児童虐待防止法あるいは児童福祉法の修正が行われて、そのときも附則で同じようなことが御提案されていたというふうに聞いております。そういう意味で、皆さん方の御希望に沿うような形で進めていくというのが、私どもの役所としても必要な、あるいは責務なんだろうな、こう思う次第でもあります。

 ただ、親権の一部・一時停止というようなことは、民法の中にも親権の喪失というところが書かれておりまして、なおかつ、その中に家族法あるいは身分法という表現になりますか、この体系にも大きな影響を及ぼすというふうに考えられるものですから、大変慎重な検討が必要であるということも事実であろうかと思います。

 しかしながら、やはり今度の附則二条ですか、一項に書かれていることから見ますと、やはり個別具体的に親権の一部・一時停止ということを議論していかなくてはいけないんだろうなと思うわけでありますけれども、児童の権利利益を擁護する観点からどのような権限をだれに行使させるべきか、それを、非常に幅広く親権ということでとらえるんじゃなくて、いろいろな個別具体的に議論をしていかなくては答えが出ていかないんだろうと思うんです。

 私は、法務省も真摯に皆さん方ともっと対話をしなさい、こういうふうにさっきも言ってありますから、ただ、いろいろ対話をする中で、すぐに法制審議会だということには相ならないかもしれません。よく中で検討して、法制審議会も巻き込んだ方がいいということになれば巻き込みますけれども、それより前に、一部・一時というのがどの範囲なんだ、どの部分なんだ、あるいはどの時期なんだ、こういう議論は、皆さん方としっかりと対話をしていただく方が先じゃないかな、こう感じておりまして、私どもも精いっぱい努力をしていく所存でありますから、ぜひその姿勢を貫いて、皆さん方との対話をさせていただきたいな、こう思っている次第であります。

泉委員 済みません。きょうは二十分という大変短い時間なものでして、どうか答弁の方もまた簡潔にお願いをいたします。

 その、まさに議論をいただいてということがございましたけれども、どうにか、その議論を法制審の中でしていただく段階に実はもう来ているということを私からは改めてお伝えをしたいと思います。

 この児童虐待防止法、三年前、そしてまた成立のときから超党派で取り組んでおります。各省庁が入って議論しております。その中で、既に法務省の皆さんからもよくよく議論をいただいた上で、我々の中で、今やはりこの親権の取り扱いというものについて、そろそろ法制審で諮るべきだというような、明文化された合意ではないわけですけれども、しかし、超党派では今そこまでの議論になってきております。

 その意味からも、法制審には臨時委員という制度もあるわけですし、その分野の専門家をたくさん集めて、今の法制審のメンバー以外に、また臨時委員の皆さんにしっかりと審議をしていただくということもできるというふうに思います。

 一例を挙げれば、例えばついこの前、法制審で議論されたのが会社法なわけですが、この会社法にしても、実は二〇〇二年に諮問をされて、二〇〇五年に答申が出るまで三年間かかっているんですね。ということは、今回この附則に書かせていただいた、施行後三年以内にこの検討をしようということでいっても、次、またもし改正の時期が来たときには、今から始めてもぎりぎり間に合うかどうかという段階に実はあるんだということをよくよく法務省の方には御認識をいただきたいというふうに思います。

 そういった状況を今、高市大臣にもきょうはお越しいただいて、お聞きいただいたわけですが、法務省は確かに性質上かたい部分もあると思いますが、やはり今、三年前からずっと取り組んできた、そして超党派の合意の上で、またさらに今回も附則で書かれることになったこの親権の一時停止、一部停止ということについては、ぜひ大臣から法務大臣に対して働きかけをしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

高市国務大臣 基本的には、民法を所管する法務省で検討がなされるものと思っておりますが、しかし、日々、虐待で命を落としたり、傷を負ったり、苦しんでいる子供たちがいて、その権利を擁護しなきゃいけない。そのために親権の議論というのが非常に大きなポイントになってくるというのは、これまで超党派の議員の先生方が一生懸命話し合ってこられた論点であると思いますので、一刻も早く検討に入っていただくという意味では、私の方から法務大臣にもお話をさせていただきたいと思っております。

泉委員 大変心強い言葉をありがとうございます。

 先日、大変痛ましい長崎の伊藤一長市長の射殺事件がありましたが、銃器によって命が失われる、これは、過去十年間で二百三十四名の方々の命が落とされているそうです。実は、児童虐待に関して言えば、平均値でいいますと、その三倍の年間六十名程度の子供たちの命が毎年失われている。一週間に一人の子供の命が失われている。それぐらい緊急性の高い問題であるということもぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。ぜひこの親権に係る制度、法制審の方で議論を煮詰めていただきたいと思います。

 もう一つ、次の問題ですが、やはり親指導であります。

 この親指導も、虐待をなぜしてしまったのか、そしてその親がもう一度家族と再統合できるようにということで親指導プログラムの開発研究が進んでいるわけですが、とはいえ、ケース・バイ・ケースということもありまして、この研究の成果を広く運用できる状況にはまだ至っておりません。

 しかし、そういった段階だからこそ、この親指導に対する支援というものをぜひともこれから取り組んでいかなくてはならないというふうに思っておりまして、これは厚生労働省にお伺いをしたいんですが、今、親指導を開発している数々の民間団体、こういったところがあると思うんですが、そういったところに対する支援はどうなっておりますでしょうか。

松野大臣政務官 児童虐待を行った保護者に対する指導につきましては、児童福祉司による指導のほか、児童相談所、保健所、民間団体が実施する専門的プログラム等が多様な形で今実施されているところであります。

 専門的プログラムにつきましては、海外で実施されているプログラムを導入することなどによりまして、グループカウンセリングでありますとかマンツーマンの手法等も取り入れられておりまして、国としても、平成十八年度より家族療法事業として補助を行うことによりまして、その取り組みを支援しているところであります。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、こうした保護者指導といいますのは、各児童相談所ごとに、またそれぞれの地域によって実施されておって、内容もその状況も大きな地域格差があるというふうに認識をしております。

 今回、先生方で御提言をいただいております改正におきまして、保護者指導に係る勧告に従わない場合の措置を明確化していくということもございますので、保護者指導の取り組み強化が重要となってまいります。まずは、現在の取り組み状況につきましてしっかり把握をした上で、保護者指導の標準化を進めて、より有効な専門的なプログラムの開発、普及を進めてまいりたいと考えております。

泉委員 趣旨はよくわかりました。

 ただ一方で、私は思うんですが、こういうものになると、どうしても外国の先進事例があるということで、外国の資料を一生懸命引っ張ってきて、そして何とか日本に応用できないかという考え方がどうも見られるわけです。一方では、日本でも年間三万件を超えるこういった虐待の通報がある、児童相談所だけでもそれだけあるわけです。そうなってくると、実は、そろそろ我々日本そのものが、虐待そして親指導プログラムの開発ということについては世界の先進的な立場に立たなくてはならないのではないのかなというふうに思います。

 逆に、日本の事例を徹底的に研究し、またその事例を活用して、外国の事例がないものであっても日本の中で解決に取り組んでいくべきものというのはたくさんあるのではないのかなというふうに私は思っておりまして、今、家族療法の補助事業ですか、そういったものはあるわけですけれども、厚生労働省にはほかにもいろいろ、研究に対する助成金ですとか、そういったものがあると思います。厚生労働科学研究とか、ああいうものをとにかくいろいろ使っていただいて、特に民間団体が先進的に取り組んでいる、まだ世界では実証されていないような取り組みに対してでも、積極的に支援をしていただきたいということをお願いさせていただきたいというふうに思います。

 そして、この民間団体への支援ということでいいますと、児童相談所がそれぞれ個々の地域にある民間団体と結びついて共同のプログラムをつくっていくということもこれから大変重要になってくると思います。地域の特性も、この児童虐待の問題には多少なりともあると思います。

 そういった意味では、児童相談所が民間団体と協調関係、特別な委託関係、こういったものを含めてどんどんやっていけるようにというふうに思っておりますが、こういったことについて、今、何かしら制限というか、障壁、問題点というのはあるんでしょうか。もしなければ、それこそ積極的に進めていただきたいというふうに思います。

大谷政府参考人 この児童虐待の防止につきましては、国、地方自治体、それから今お話のありました地域それからNPO、あらゆる方々の参画をいただいて進めていくということが大変重要と考えておりまして、特に障壁になるものはないどころか、その連携を進めているところでございます。

泉委員 ぜひともお願いをいたします。

 続いてなんですが、いわゆる児童養護施設の最低基準の件であります。これも要望という形で、済みません、特段通告をさせていただいていないものですからわかる範囲で結構なんですが、子供一人当たりの居室面積が大変小さいということをやはり指摘せざるを得ないと思います。

 それぞれ、政務官あるいは高市大臣も御存じだと思いますけれども、昨今の児童虐待がふえた現状で、児童養護施設、一時保護施設、いろいろなところに子供たちが本当にもうぎゅうぎゅうのような状態になって入っている。そして、一人一人の子供に対するケアが重要なのにもかかわらず、子供たちも、傷ついた子供たちが入ってくるわけですね。傷ついた子供たち同士が狭い部屋の中で何人も共同で生活できるだろうか、これをよくよく考えていただきたい。

 これまでは収容という観点で、それは戦後の復興のころできてきた施設であればそういう経緯があったのかもしれません。しかし、そろそろ、一人一人の子供たちの心のケアということを本当に考えなきゃならない時代になってきているということを考えると、さんざん家庭で傷つけられて、本当に心底傷ついて、入った施設でまたいじめられたり、虐待を受けたり、精神的につらい思いをしたり、プライバシーも何もないというのが今の施設の現状であるということ、また、施設の運営者も一生懸命やっているんですが、現状がこうであるということ。平成十年に、二・四七平方メートルから、たしか三・三平方メートル、畳一畳分ですか、ようやくそこまでいったということですね。

 翻ってみれば、これは厚生労働省にもぜひ検討していただきたいんですが、老人福祉施設の方は十・六五平米ということで、子供の三倍ぐらいの広さがある。確かに、大人です、いろいろ動き回る、家財道具を置く必要性もあるでしょう。あるいは、トイレやいろいろと洗面台も必要かもしれません。

 しかし、そろそろ私たちは、有権者ではないかもしれないけれども、本当に日本の未来を担う子供たちの生活環境を考えてあげるべきではないのかなというふうに思っておりまして、この居室面積はぜひ拡充というか、改正をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 養護施設について、これは、既にかなり時間がたった古い施設もあるというような問題もありますけれども、その運営のあり方についても、今新しく入所されるお子さんの約六割が虐待の経験のある児童、こんな実態も踏まえて、今後のあるべき姿について見直す必要があるというふうに考えておりまして、現在、局内におきましても、社会的養護体制に関する構想検討会というものを設置して議論をしているところでありますが、そういった中で、施設のあり方についても検討し、できるだけ本来の養護のあり方に沿った方向に進めていきたいと考えております。

泉委員 ありがとうございます。

 ぜひ早急な検討をお願いさせていただきたいと思います。

 そして、もう一つ、今、全国に虐待防止対策会議、協議会、これの設置を進めていこうということで、今回の改正の中でもよくその点は話し合われたわけですけれども、一方で、実は昨年十月に虐待死亡事例があった私の地元の長岡京市、きのう虐待防止アドバイザーの辞令交付式というものがございまして、長岡京市でも二度とやはりこういった事件は繰り返さないということで、新しい方が任命をされました。今、民間団体で子育て支援をされている方が、今回、そのNPOの理事長が任命をされたわけですが、一方で、その方ともきのう電話で話をさせていただきました。

 対策協議会、対策会議、こういったものは、実務者会議、ケース会議、それぞれあるわけですが、一番上に立つ会議ですね。どうしてもこういった対策会議、協議会というものは、役職を持った、肩書を持った人たちが集まる会議になってしまいまして、議事録の作成あるいは事前資料の作成、あるいは発言の順番、皆さんがよく経験されているような会議のとおりの、発言もままならないような状況で終わってしまうケースというのは非常に多いわけですね。

 ですから、その意味では、対策会議には残念ながら余り柔軟なものは期待できないというふうに私は思っておりまして、まさにその下にある実務者会議、そしてまた緊急対応のケース会議、この二つが非常に重要であるということを、厚生労働省の方も既に認識を持っていると思いますが、改めてお話をさせていただきたいと思います。

 その意味では、対策会議の設置ということが確かに第一ですが、それに伴って実務者会議とケース会議、その充実こそが大切なんだということをぜひ厚生労働省には全国の自治体に通知をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 この要保護児童対策地域協議会につきまして、代表者会議が重要なことはもちろんでありますけれども、確かにそれをより有効に機能させますためには、その協議の目的や内容に応じて代表者会議、実務者会議、それから個別ケースの検討会議という三層の構造を有効に運営していくことが大事だと考えております。

 まず、その事務局機能を担う調整機関の強化を図ることが重要と考えておりますけれども、それに加えまして、本年一月には要保護児童対策地域協議会設置・運営指針を見直しまして、実務者会議の役割を強化するという観点から、三カ月に一度程度、個別ケースを定期的にチェックする仕組みとする、こういったことを決めたところでありますが、また本年度から、都道府県から地域協議会に児童福祉の専門家を派遣するという事業を行うことによりまして、この地域協議会の調整機関の機能強化を行う、こういったことで、この協議会の活動をより実効性の高いものにしてまいりたいと考えております。

泉委員 少し高井議員の方から質問時間を分けていただきまして、もう少し続けさせていただきたいと思います。

 お互いに同じような質問内容も多かったものですから、お許しをいただきたいと思いますが、もう一つ、最後の質問であります。

 一番最初に親権のお話をさせていただきましたが、実は我々、我が国ももちろん取り組んでいます児童の権利条約、子どもの権利条約がございますけれども、この十九条には、虐待や放任からの保護という規定がございます。

 そういったところから考えますと、ぜひ奥野政務官にも聞いていただきたいわけですが、現在の民法には懲戒権というものがございます。八百二十二条、懲戒権というものがございまして、そろそろ我々、我が国も、確かにこの懲戒権というものは歴史的な背景もありますけれども、こういった子どもの権利条約、虐待、放任からの保護ということにもあわせて、そろそろ子どもの利益に反するというか、暴力によらずに教育をされる権利を有するというドイツの民法なんかもございます。そういった点から、やはりこの懲戒権というものの見直しというものも私は考えていっていいのではないのかなというふうに思いますが、政務官、お答えいただける範囲で御認識をいただけたら幸いです。

奥野大臣政務官 法務政務官であっても、民法は詳しく知りませんから。ただ、懲戒権というか、いずれにしましても、今、親と子供の交わりというのか、あるいは親が子に尊敬される親になる、そういうようなことから考えていくと、家庭教育というものも崩壊しているんだろうなと、さっきも私ちょっと触れたんですが、そういう意味合いからいうと、これは全く私の個人的な感覚ですけれども、民法というものも逐次改正をしていますけれども、やはり時代に追いついていないというところもありますから、皆さん方と司法の番人である法務省とよく相談していただいて、そして皆さん方が納得いただけるような答えを引き出す、あるいは納得させるような意見を述べる、そういう対話が必要じゃないかと思います。

 ですから、懲戒権そのものについて私は余り詳しく知りませんけれども、もしそういうことが本当に必要だということならば、ぜひ対話をしていただきたいな、こういうお願いであります。

泉委員 どうもありがとうございました。

小宮山委員長 次に、高井美穂さん。

 泉さんと調整をした時間の範囲でお願いします。

高井委員 はい、承知しました。

 民主党の高井美穂です。

 泉議員と中身をいろいろと分担しまして、引き続き同じような視点から質問をさせていただきたいというふうに思っています。重複するところはすべて割愛させていただきますので、少し順番を入れかえて、先に泉議員からもありました養護施設について、児童の保護の施設について厚生労働省の方にまずは伺いたいというふうに思っています。

 一時保護所というのが、児童の保護施設、たくさんございますけれども、その中でもとりわけ私は一時保護所がいっぱいであること、一時保護所の環境が子供たちにとって十分な環境ではないんではないかということを少し懸念をしているところであります。

 もう改めて言うまでもなく、児童を保護する施設としては、一時保護所、それから乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童自立生活援助事業などをする施設、それから情緒障害児短期治療施設、母子生活支援施設、婦人保護施設などさまざまな施設があると思います。その中で、とりわけ一番最初に挙げた一時保護所というところは、各施設へ子供を引き渡すまで一時的に保護するという施設だというふうに思っております。

 虐待を受けた子供も一時保護所に一たん保護されるわけですし、例えば非行で補導を受けた子供も一たん一時保護所に引き受けて入ることもございます。そういう意味では、被虐待児であるのといじめの加害者側である児童とが一緒になって一時的に生活する施設でもあり、また、その年代構成も、小さいお子さんから割と大きなお子さんまで、一時的な施設ということで、皆さんそこへ一たん入るということになっておると思います。

 その一時保護所という施設、この間、私も新宿の方の一時保護所に視察に参りましたけれども、やはり、大変子供たちも多く、結構壁なんかも傷んでいたり、一時的に保護された子供、大変ストレスがたまっている子供たちなんかは、とりわけ物を壊したり、やはりストレス発散の場として物に当たるということもあるというふうなお話も拝聴しまして、劣悪な環境とまでは申しませんが、子供たちにとってまだ十分な環境ではないということを大変感じました。

 そういう中で、今、都市部では、一時保護所も満杯といいますか、入る予定の子供たち以上に数が、どうしても引き受けなくてはいけないケースがふえてきて、いっぱいの状態であって、かつ、そこから次の施設に移動するまでというのも、次の施設がいっぱいであれば、次の処遇が決まるまでまたもうしばらくそこにいなくてはならないというふうに、予定する以上に、思ったより長期的にそこの一時保護所にいなくてはならない子供が出ているというお話もありました。

 そういう点からも、虐待を受けた児童なんかでも、虐待を受けて一番傷ついているときにまず行く居場所が一時保護所というふうになるわけですから、そこでは極めて細やかなケアなり、精神的なケアも含めて肉体的なケアも必要な場と思っています。

 それに引きかえ、その場所がやはり十分ではないのではないかということがございますので、ぜひここら辺、充実に向けて御尽力をいただきたいと思いますけれども、現状認識も含めて、これからの方針等もお伺いさせてください。

大谷政府参考人 一時保護所についてのお尋ねでありますが、実は、恐らく同じ一時保護所を私も見ておるんだろうと思います。その施設の中で職員が懸命に処遇しているというものも見ましたけれども、確かに、特に都市部でそういった対象のお子さんがふえるということで、そのスペース等についても苦慮しているという実態もあるということも、おっしゃるとおりだと思います。

 特に、全国で全部が満杯というわけではありませんけれども、都市部で虐待が急増している、そういった地域において施設の不足があるということで、これは昨年の補正でも、一時保護施設についての施設整備やあるいはその辺のいろいろな設備についての予算もとり、それから今現在、各都道府県に対して、その一時保護のいわば充足が十分でないところに対して計画をお願いして、十分にその一時保護施設が確保されないということのないように各県にお話をしているところでありますけれども、いずれにせよ、大事な視点でありますので、私どもも努力してまいりたいと思います。

高井委員 もう一点、厚生労働省に伺いたいと思います。

 本委員会でこの後提出を予定されております児童虐待防止法の改正案の中で、このたび中身が大変大きく変わった点、立入調査の件について、大きく変わったという報道もありましたし、予定されている案文を拝見いたしますとそのようになっております。そして、その中で、虐待のおそれがある場合、都道府県知事が親子に出頭を要求して、児童相談所が裁判所の令状を得て、児童の安全の確認のために居住地に立ち入ることができるという仕組みになります。

 つまり、大きなポイントとしては、ここに司法を関与させて、裁判所の令状をきちんともらってから立ち入るということになり、これが、立法者の意思として、あくまでも、警察がまず立ち入るということを前提にするのではなくて、福祉的手法で、児童相談所がまず子供の安全確認をするということを主眼に置きながら、万が一入れないときには警察に立ち入りを手伝ってもらうという趣旨でこのような仕組みになったというふうに考えておりますが、こういう点から、警察の力が家庭に簡単に踏み込むことができるようになるのではないかという懸念が前々の段階からすごく出されておりましたけれども、そういう仕組みがないようにということでこのような形にいたしました。

 改めて、警察権力の発動が、職権を発動する仕組みが濫用されるものではないというふうに私は考えておりますけれども、厚生労働省として今後、対応をいかに考えておられるか、御答弁をお願いします。

大谷政府参考人 今回の改正案におきましては、新たに、裁判所の許可状を得た上で強制的に立ち入りが可能な制度が導入をされますけれども、これはあくまでも例外的な措置として、従来の制度では対応困難なケースに限って実施するということが想定されているものと認識しております。

 強制的な立ち入りに至るまでには、保護者への出頭要求を行い、当該保護者が出頭を拒否すること、それから、その上で立入調査を実施し、保護者が立入調査を拒否すること、加えて、保護者への再出頭要求を行い、保護者がこの再出頭要求をも拒否すること、こうした過程を経た上で裁判所が強制的に立ち入ることについて許可状を交付する、こういった手順が想定されているというふうに承知しております。

 加えて、実際に強制的に住居に立ち入る場合でありますが、必要に応じて警察の援助を得た上で、あくまでも児童福祉に従事する職員が住居に立ち入り、調査を行うというふうにされておると承知しております。

 このため、新たに設けられます強制的な立ち入り制度につきまして御懸念いただきましたが、濫用されるとか、あるいは警察が前面に立って、中心となって実施される、こういった事態にはならないというふうに私どもは考えております。

高井委員 今御答弁いただいたとおり、大変厳しい要件を経て初めて警察に力をかりて子供の安全を確認するということですから、単に不登校であるから、姿が見えないからちょっと調べに押し込むなんということはあり得ないと思いますので、こういうふうなことを懸念している団体の方がおいでですから、その意味で改めて確認をさせていただいたわけでございます。

 私も、改めて、児童の安全確認というか、安全を確保するということは何よりも大事だと思っております。しかしながら、やはり安全を確保したその後のこと、結局、そのとき児童の安全を確保できた、ああよかったねというので終わりじゃないですので、その後、子供をいかに自立させていい環境を与えられるか、また、一たん引き離した親子を、親にどう立ち直ってもらうか、どういうふうにまた子供のきちんとした養育環境を整えられるか、そこに次は踏み込む段階だと私は考えております。

 そういう点からも、今回の改正は、容易に踏み込むのではなくて、まず安全確保をするということをきちんとできるスキームができて、その次の段階できちんと児童のために環境を整える。今、泉議員からもお話ありましたけれども、子どもの権利条約の趣旨にのっとって、子供に対してでき得る限りのいい環境を提供するということにぜひ踏み込んでいかなくてはならないというふうに思っております。

 そして、その点からも、前回の改正の中の附則の中には、これは三年前に改正された附則の中に、附則「検討」第二条に「児童虐待の防止等に関する制度に関しては、この法律の施行後三年以内に、」それが今回であるわけでございますけれども、「児童の住所又は居所における児童の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策、親権の喪失等の制度のあり方その他必要な事項について、この法律による改正後の児童虐待の防止等に関する法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。」と、前回の改正でもこうなっておりまして、この前段の部分の安全確保の実効的な部分、これは今回の改正で大いに進みました。

 問題は後段の部分であります。先ほど泉議員が法務政務官にも高市大臣にもお願いをしておられましたけれども、私も全く同じ意識で、この点が今回全く進まないという結果になりました。

 それで、予定されている法案の中に、少しこの点についてもまた、附則第二条の方にも、より踏み込んで、これからまた親権に係る制度の見直しについて検討を行い、必要な措置を講ずるものとすると、同じような文面が盛り込まれる予定となっていると聞いておりますけれども、その点はさっき高市大臣も答弁ございましたので、ぜひ法制審の方で、大変難しい問題だからこそ専門家チームに検討していただいて、よく練り上げて、それを参考に、立法者の意思として次はどう向かうかということを立ち上げて向かっていきたいと思いますので、ぜひ御尽力をいただきたいと思いますが、こちらは法務省の方から一言御答弁お願いできますでしょうか。

後藤政府参考人 親権の一部・一時停止の制度についての検討でございますけれども、先ほど大臣政務官から御答弁申し上げたとおりでございます。

 検討に当たりましては、個別具体的に、児童の権利利益を擁護する観点から、だれにどのような権利を行使させるべきか、その行使に対応して、親権者による親権の行使をどのような方法で制限することとするか等を議論すべきと考えております。これらを踏まえて、また附則の趣旨も踏まえまして、親権に係る制度のあり方について検討してまいりたいと考えております。

高井委員 最後に一点だけ。

 私は、児童をやはり健全に育成するための社会的資源といいますか、社会的なリソース、今、日本にはまだ少な過ぎるんじゃないかというふうに感じております。あの少年法改正のときも質問に立たせていただきましたけれども、やはり現実的に社会が大きく変わって、家庭の、地域の環境が変わって、ある意味では崩壊のような状態が進む中で、子供自身の社会の中での受け皿をふやさないと、やはり子供自身が追い詰められてしまうのではないか。

 子供というのは、親を選べない、地域を選べない、住む場所を選べない、そういう中で、ある一定の制約のもとで過ごさざるを得ないのが子供ですから、だからこそ、親がというか、大人が保護しなければいけないというのが権利条約の趣旨でもあると思いますので、被虐待児童がその立ち直りの機会がなかなか得られないとか、虐待ならずともいじめを受けたり、さまざまな社会的な貧困の環境の中で育っている子供が、いわゆる再チャレンジの機会をきちんと持てるようにしていかなくてはいけないというふうに思っています。

 そうしないと、不幸の連鎖から抜け出せずに、ずっとやはり苦しい思いをする中で一生を過ごしてしまう子供が多くなるというのは大変不幸なことでございますので、その点ぜひ充実を図っていただきたい。我々政治家としても、それは、今回法律改正にかかわった人全員の意思でございますので、ぜひ皆さんにも御理解いただきたいと思っています。

 附則の中にそういう点も強く盛り込ませていただいたので、ぜひここでちょっと紹介をさせていただいて、最後に締めたいと思いますけれども、「政府は、児童虐待を受けた児童の社会的養護に関し、里親及び児童養護施設等の量的拡充に係る方策、児童養護施設等における虐待の防止を含む児童養護施設等の運営の質的向上に係る方策、児童養護施設等に入所した児童に対する教育及び自立の支援の更なる充実に係る方策その他必要な事項について速やかに検討を行い、」それに基づいて必要な措置をするということを、まさに、最後にこういう意思として盛り込ませていただいておる法案がこの後かかると思います。ぜひともこの点御理解をいただいて、国会挙げて、省を挙げても御支援を賜りたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、伊藤渉さん。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 今、最後に高井委員がおっしゃっていただいた社会的養護体制の確立、この後提出をされる法改正の附則にも書かれておりますけれども、私も、ここまでの青少年特の委員会での質問の中でも、再三この養護体制の確立については御質問させていただきました。私の方からも、繰り返しになりますが、この点について一層の御努力いただきますことを、まずお願いいたします。

 私の方からは、この後提出される児童虐待の法律の改正、この論点に従って何点か確認をさせていただきます。

 昨年、先ほど質問されておられました泉委員のお地元でもございます京都府の長岡京市で、児童虐待により子供の命が失われるという痛ましい事件が発生をいたしました。三年前に改正をしたこの児童虐待防止法、これを受けてもなおこうした事件が発生してしまった。まずこの点について、国の取り組みとして何が足りなかったと認識をされているか、厚生労働省に見解をお伺いいたします。

大谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 児童虐待防止法につきましては、平成十六年の法改正後、施行三年目を迎えておりますけれども、残念ながら、御指摘のように、法改正後も虐待により子供の命が失われる事例が相次いで発生しており、こうした虐待死を防ぐため、一層の対策の強化が必要と認識しております。

 特に、今御指摘いただきました京都府の長岡京市の事件などのように、虐待に関する情報が児童相談所などに伝えられていたにもかかわらず、適切な対応が図られなかった事例が見られるということは極めて残念なことでありまして、早期発見それから早期対応を徹底していくということが重要と考えております。

 この早期発見、早期対応の観点から見ますと、一つは、虐待通告があった場合に、児童相談所や市町村が迅速かつ確実に安全確認などの措置を講じること、それから次に、こうした虐待対応を行う児童相談所や要保護児童対策地域協議会、いわゆる子どもを守る地域ネットワークでありますが、こういったものを初めとする市町村の体制の整備を図っていくということが大変重要な課題であると認識しております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今のお話の中にも出てきました、例えば児童相談所ですけれども、職員の方々は大変に厳しい環境の中で一生懸命働かれていると私は認識をしております。実際に東京都の足立区の児童相談所を視察させていただいたときも、そのように感じました。一方で、いかんせん人数が少しやはり足りないのかなという印象を持ったのも事実でございます。

 限られた予算の中で人員を確保していくことは非常に困難を伴うことであるとも承知をしております。また、行政改革の観点からも、流れとしては逆行をする事柄にもなると思います。ただ、こうした児童福祉をつかさどる厚生労働省としては、あるべき姿、これをきちっと描いておくことは非常に重要であると私は考えております。

 そこで、児童相談所のあるべき体制について、現状と比較して、できるだけわかりやすく、我々が今後イメージしやすいように答弁をお願いいたします。

大谷政府参考人 児童虐待対応に当たりましては、平成十六年の改正の際に、従来の児童相談所のみで対応する仕組みを改めまして、市町村それから児童相談所、この二層構造で対応するというふうにしたところでございます。まずは、それぞれの地域の実情に応じて、市町村単位で要保護児童対策地域協議会が設置され、一般的な相談を行う体制や関係機関の連携体制が整えられている、こういうことが重要と考えております。

 その上で、子供の安全確保のとりでであります児童相談所につきましては、一つとして、安全確認のための担保措置とも言えます立入調査や一時保護、施設入所措置など、児童相談所にのみその実施が認められました措置が迅速かつ確実に実施されるよう、児童福祉司などのスタッフや一時保護所などの体制の確保を図ること、それから二つとしまして、親子再統合に向けた保護者指導や虐待を受けた子供に対するケアを実施する体制の確保を図るということが必要と考えております。

 なお、こうした問題認識に基づきまして、非常に財政、行政、厳しい中ではありましたけれども、一つ、児童相談所につきましては、児童相談所の中で中核的役割を果たします児童福祉司につきまして、これは平成十九年度の地方財政措置において、標準人口百七十万人当たり三名といった、これまでにはなかった大幅な増員を図りました。また、一時保護所につきましては、平成十八年度の補正予算におきまして、一時保護された子供の安全体制の強化を図るための警備設備の整備や間取りの改善などの環境改善を実施する、また、定員超過の状態にある一時保護施設を有する自治体につきましては、本年六月までに緊急整備計画の策定を求める、こういったことを行っているところであります。

伊藤(渉)委員 今、最後に局長答弁いただきましたように、今後、十九年度予算また十八年度の補正では、これは超党派の議員でこういった予算を確保するように全力を挙げさせていただいたわけでございますが、今後とも、その応援はぜひともさせていただきたい、そのように思っております。

 さて、今回の法改正の議論の中で、子供の安全確認の実効性をどう向上させるのかが大きなポイントの一つとなりました。まずは、通告を受けた場合の安全確認を努力規定から義務規定に格上げすることを考えております。一方で、運営指針の改定で、既に、通告を受けてから原則四十八時間以内に安全確認をする旨を規定されているわけでございますが、まず、このとおり運用が可能な体制が現在整っていると認識してもいいかどうか、これは厚生労働省に答弁をお願いいたします。

大谷政府参考人 京都府の長岡京市の事件を初め、近年の虐待死亡事例を見ますと、虐待通告を受けた後の迅速かつ確実な安全確認、それから速やかな一時保護の実施などが重要というふうに認識しております。

 このため、本年一月には、児童相談所の運営指針等の見直しを行いまして、一つ、虐待に関する情報はいかなる形でもたらされたものであってもすべて虐待通告として受理すること、二つ目として、迅速かつ的確な対応を図るため、安全確認の時間ルールの設定を義務づけ、四十八時間以内とすることが望ましいという旨を明示したものであります。それから、三つ目として、関係機関相互における情報共有の徹底、こういった措置を講じました。

 また、児童福祉司の配置の充実ということでは、先ほど申しましたとおり、人口規模当たりの大幅な児童福祉司の増員ということを図ったところであります。

 また、今般、児童相談所が行う安全確認措置の時間ルールの設定状況について、急ぎ調査を行ったところでありますけれども、本年四月一日現在で、約九割の自治体で四十八時間以内に安全確認を行うルールを導入しておりましたほか、他の自治体につきましても、少なくとも今年度中にいわゆる時間ルールを導入するということを確認しております。

 今後、現場において、文字どおり早期発見、早期対応が図られ、虐待により子供が命を落とすといったことがないように、安全確認などの徹底を図ってまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 さらに、今回の法改正では、先ほど高井委員からも触れていただきましたけれども、今までの安全確認の手続に加えて、さらに、保護者等に対して再度出頭要求をかけてもそれに従わない場合に限り、裁判所の許可状を得て強制的に安全確認のため住居に立ち入ることができるスキーム、これを法定しようと考えております。

 まず、こうした手段でなければ児童の安全が確認できず、危険な状態になりかねない事例、いわゆる立法事実について御教示をいただきたいと思います。また、そうした事例がこれまでに何件程度あったのかも、あわせて御答弁ください。

大谷政府参考人 現行制度におきましては、安全確認等が必要な場合には、都道府県知事が必要なときは警察の援助を受けて立入調査を実施することとなっておりますが、昨年実施した調査によりますと、平成十七年度中に実施した立入調査二百七件のうち、保護者の拒否、抵抗により立入調査を執行できなかった事例が八件あったところでございます。

 これらの八件の事例でありますが、いずれも、繰り返しの訪問等を行うことで、最終的には何らかの形で安全確認が行われておりますが、その安全確認を行うまでの間に児童相談所等が膨大な労力を費やしているのが実情であります。現場からは、保護者の強い拒否や抵抗があっても、児童の安全確認の面から、確実に立入調査が可能な制度とするよう要望を受けているところでございます。

 また、こうした事例のほかに、立入調査を執行できた事例ではありますけれども、現行制度では、声をかけても応答がないということから、親類がチェーンを切断して解錠して、その児童の安全を確認したというようなケースもあったところでありまして、このように、対応に限界があると思われる事例も報告されているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私の認識でいきますと、つまり、今までのスキームでも、例えば、いかにも、その家の中で、扉は閉まっているけれども子供の悲鳴が聞こえるだとか、危ない場合、これは警職法を使って強制的に入ることはできたんだろうと思います。しかし、今おっしゃっていただいたように、全く応答がない、見る限り普通の家だ、しかしその中で虐待がされている疑いがある、しかし入る手段がない、時間がかかる。今までの事例では、結果的に子供の安全を確認できたけれども、仮に、時間がかかっている間に子供の命が奪われてしまいかねないというリスクがあったというふうに私は認識をしております。

 つまり、わかりやすい言い方で言うと、いわゆるネグレクトのようなケース、こういったケースに主に効果を発揮するスキームであると私は理解しておりますが、厚生労働省の見解をお願いします。

大谷政府参考人 今お話しのありましたとおり、現行制度でも、現に保護者による児童への加害行為がまさに行われようとしており、当該児童の生命身体に危害が切迫している場合等、警察官職務執行法の対象となるようなケースにつきましては、状況に応じて強制的に解錠するといった実力行使も可能と解されております。

 しかしながら、食事を与えないなど、保護者としての監護が著しく怠った状態でありますネグレクト、これが行われているような場合であって、児童を直接黙視、目で確認できないようなケースでは、現に児童の生命身体に危害が切迫しているといった状況自体、把握できず、先ほど申しました警察官職務執行法に基づく強制的な立ち入りが困難な場合も想定されているところであります。

 このため、御指摘のように、新たな立入調査の制度が設けられました場合には、こうしたいわゆるネグレクト事例についても強制的な立入調査を実施し、安全確認等が可能になるということに考えておりまして、現在、委員がおっしゃったお見込みのとおりと考えます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今回の法改正の議論は、いわば子供の命を守る、この一点で、各党がその差異を超えて法改正の議論を重ねてきたと私は認識をしております。

 少し角度を変えて、一点、確認をします。

 今回のスキームができることによって、例えば、冒頭にお話をした京都府長岡京市のような事件、これが防がれる、こう考えたいところ、また、世間一般の方は、新たな仕組みができるとこういうのも防がれるという印象をお持ちだと思うわけですが、少し事情が異なると私は認識をしておく必要があると考えております。すなわち、昨年の事件は、あくまで現行法の枠内で十分対応できたにもかかわらず、その執行、運用に不備があった。例えば、児相と市町村の連携などですね。

 そこで、もう一度、厚生労働省にお伺いをします。

 今回の法改正による新たなスキームと昨年の長岡京市の事件の発生の防止とは、実は直接的には関係があるわけではないと私は認識をしておりますけれども、厚生労働省の見解をお願いします。

大谷政府参考人 京都府長岡京市のケースにおきましては、今お話しにありましたとおり、児童相談所が虐待を疑わせる情報を把握していながら、速やかな安全確認を実施しなかったことが課題とされたところであります。

 これに対しまして、今回検討されておられます新たな立入調査は、児童相談所等が安全確認を実施しようと試みているにもかかわらず、保護者の強い拒否、抵抗を受けて、その実施が困難となっているケースを想定したものと承知しておりますので、今委員のおっしゃったとおり、この長岡京市の事件とは直接関係があるわけじゃないと認識しております。

伊藤(渉)委員 その上で、今回のスキームを設けることで、さらに、今までの手法では防ぎ切れなかったハイリスクな虐待の状態、例えばネグレクトのようなケースを防止できると考えます。もちろん、これは大切なことだと思います。

 ただ、あえてこのことを今質問で確認させていただいたのは、今回の法改正によって、非常にマイナスな見方ですが、例えば、児相は裁判所に許可状を請求しているのですが、まだ許可状が出ないんです、一方で、裁判所は、虐待の疑いがあると認定するに足る資料が整わないんです、こういった状態になりまして、むしろ安全確認が遅くなってしまう、こういうことがあってはならないと考えています。

 ですから、こうした状態を避けるために、あくまでも、現行のスキームの十分な運用をした上での最終手段として新たなスキームを設けようとしているということを認識しておいていただきたかったから、あえてこの質問をいたしました。

 最後の質問をさせていただきます。

 今回の改正で創設を考えている司法の関与する立入調査の制度化によって、かえって手続に時間を要し、安全確認がおくれることにはならないのか、またそうならないために今後どのような取り組みをしていこうとお考えか、厚生労働省の答弁を求めます。

大谷政府参考人 今回の改正案では、現行の立入調査制度において強制的な解錠、かぎをあけることですが、認められていないために、一部の事例ではありますが、安全確認が困難なケースが存在するということを踏まえて、新たに司法の関与による立入調査が制度化されるものと考えております。

 したがいまして、今回の改正法の施行後も、従来、現行制度のもとで警察と連携しながら安全確認を実施してまいりました大多数のケースについては、引き続き、現行の立入調査の段階で安全確認を行うべきものと考えておりまして、今回の改正案によって創設される解錠を伴う立入調査は、あくまで例外的な措置として立入調査を実施し、かつ、重ねての出頭要求にも応じないような、従来の制度では対応困難なケースに限って実施することを想定しているというふうに考えております。

 この児童虐待対応に当たりましては、何よりも迅速に児童の安全確認を行うことが重要と認識しておりまして、この改正法が成立しました場合には、こうした取り扱いが現場に徹底されますよう、関係省庁と連携しながら、立入調査の実施に関するマニュアルの作成等、準備を進めてまいりたいと考えます。

伊藤(渉)委員 明快な答弁、ありがとうございます。

 世の中のゆがみ、これが子供たちにしわ寄せをして、いじめ、虐待、そうした事件により子供たちのとうとい命が奪われることのない世の中になることを心より祈念し、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、塩川鉄也さん。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 今回、法改正が行われることになりますと、司法の関与による子供の安全確保や安全確認がなされるようになります。特にネグレクトなど、今まで手を差し伸べることができなかった子供や家庭への対応も可能となるということであります。

 児童虐待への早期対応や早期発見が進むことで、市町村また児童相談所は児童虐待の通告や事例を今まで以上に抱えることになる、これ自身は望ましいことであります。また、子ども・子育て応援プランにおいてはすべての市町村に要保護児童対策地域協議会の設置との目標も掲げられているわけで、一層児童相談所、とりわけ児童福祉司の役割が重要になると思っております。

 そうなりますと、現状、人口五万から八万に一人の児童福祉司の配置になっておりますけれども、現状も届いていないところは当然あるわけですが、さらにこの役割が求められるときにこういったテンポでいいのかというのもありますし、法改正も踏まえたこの児童福祉司の拡充に当たっての対応策についての厚生労働省のお考え、対策をお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 児童相談所におきまして家庭への立入調査や子供の安全確保などの児童虐待対応の中核となります児童福祉司につきましては、平成十八年度は二千百四十七名、児童虐待防止法が制定されました平成十二年度に比べまして一・六倍の増員となるなど、各自治体とも、定数管理の厳しい中、児童福祉司の配置の充実を進めていただいているところであります。こうした体制の従来のスピードに比して、児童虐待相談件数、対応件数が伸びておりまして、こういった現状を踏まえれば、人的体制の強化はさらに重要な課題と認識しております。

 このため、児童福祉司につきましては、平成十九年度の地方財政措置におきまして、標準人口百七十万人当たり三名の増員といった、これまでにない大幅な増員を図ることとしたところでございます。

 さらに、今後の児童福祉司の配置のあり方につきましては、今回の地方財政措置の見直しに伴う配置の状況、また今回の法改正に伴う業務の状況、もう一方の児童虐待対応の担い手であります市町村の体制整備の状況、こういったものも総合的に勘案しつつ、今後の検討を行ってまいりたいと考えます。

塩川委員 ぜひ積極的な対応をお願いしたいと思っています。

 あわせて、児童相談所全体の専門職の確保、体制の強化ということも求められていると思います。児童相談所における職員構成、これは児童相談所の運営指針の中でも明示をされているものですけれども、児童心理司や精神科医、小児科医、あるいは保健師などの専門職の配置も急務であります。こうした専門職の配置をどのように促進していくのか、これについての方向性について示していただきたいのと、あわせて、児童福祉司の配置基準のようなものについてもきちっと設けることも必要なんじゃないのか。こういうことについてぜひお伺いしたいと思っております。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 児童心理司等いわゆる専門職員のことでありますけれども、これは、子供に対する診断面接あるいは心理検査などの心理診断業務のほか、虐待を行った親への親指導など、児童相談所が子供への適切な援助方針を決定するに当たりまして極めて重要な職員というふうに認識しております。

 こうした中で、児童心理司について申し上げますと、着実に増員が図られておりまして、平成十八年度においては九百四十一人、児童虐待防止法制定前の八百十六人と比べますと一・二倍ということになっております。

 なお、児童福祉司と同様に配置基準を設けるべきか、こういったことでありますけれども、現状を見ますと、地域によりまして、児童福祉司が行う家庭訪問への同行を行っているようなケースがある、障害者の相談所や知的障害者更生相談所と兼任で行っている、いろいろな事例があるというふうに聞いております。こういった地域の状況によって多様な実態があることから、先ほど申しましたように、一方で児童福祉司についてその増員に今全力投球しているということもありまして、直ちに配置基準を設定するといったところまでは難しいかと思いますけれども、必要な増員等、対応に努めていきたいと考えております。

塩川委員 児童福祉司が二千数百、児童心理司が九百四十一名、大体二対一ぐらいの割合で、全体としてはふえているということですけれども、都道府県別で見ると減っているところもあるというのも現状であります。個々の事情は当然あるんでしょうけれども、そういう意味でも、何らかの基準を定めて大いに促進をするということをあわせてぜひ促すということが求められていると思っております。

 次に、市町村の体制の問題ですけれども、二〇〇四年の児童虐待防止法の改正によって、市町村も児童虐待の通告から家族再統合まで支援することになりました。また、今回の改正案におきましては、市町村に対しても、通告から四十八時間以内に子供の安全確認をすることが義務づけられております。

 そこで、要保護児童対策地域協議会について、市レベルでの設置率は高いですけれども、町村になると半数近くが未設置ということも聞いております。厚生労働省が行ったアンケートによれば、窓口業務の困難な点として、専門性のある人材の確保、職員の確保、業務多忙で体制づくりにおくれなどの声が上がっております。

 三月の当委員会での参考人質疑、その際に沼津の担当者の方のお話がございました。市町村に児童虐待の対応に専任で当たれる職員の配置を、その職員へのマニュアルと研修をという点での対応の訴えがございました。

 厚生労働省に伺いますが、市町村に対しこういった面でのどのような支援を行っていくのか、その点について、この間行っている内容についてお示しいただけますか。

大谷政府参考人 児童虐待の対応件数が増加します中で、児童虐待への対応につきましては、平成十六年の児童虐待防止法等の改正によりまして、市町村も虐待通告の通告先となり、市町村それから児童相談所が二層構造で対応するとされたところでございます。市町村に設置される要保護児童対策地域協議会を含め、市町村の体制強化にこれまで取り組んでいるところでございます。

 具体的な中身といたしましては、一つ目として、前年度の補正予算におきまして、児童虐待等緊急対策の一環としまして、地域協議会を前倒し設置した場合に設備費を補助するということ、二つ目として、本年度の予算から、都道府県より地域協議会に児童福祉の専門家を派遣する事業を実施するということ、また三つ目としまして、本年度の地方財政措置におきまして、地域協議会の機能強化など児童虐待対策の充実を含めまして少子化対策分を大幅に増額しておりまして、平成十八年度全国ベースで申しますと、約三百三十億円の財政措置が約七百億円にも拡充、これはいわゆる全体の費用でありますが、そういった拡充を図ったところでございます。こういったことで、市町村の体制強化についてもさらに取り組んでまいりたいと考えます。

塩川委員 なかなか、予算措置を丸めてというので、どこがふえているのかよくわからないというのが実態でもありますし、特に、要保護児童対策地域協議会におきましてもそれぞれの立場の関係部署が集まって協議をするわけですが、市町村がそういう意味でもかなめとなる。そういう際に、やはり事務局的な人材がきちっといるかどうかというのは大変重要になってくるわけです。

 実際には、兼任の方ですとか行政職の方とか、そういう方ということで、なかなか全体の状況が見えない、専門的な状況についてよくわからないということもあるわけで、協議会の事務局にやはり福祉職などの専門職の人材の配置というのが必要なんじゃないか、そういうことを促せるような国としての取り組みというのが求められているのではないか、その点についてはいかがでしょうか。

大谷政府参考人 市町村の児童家庭相談の体制の現状でありますが、平成十八年度におきまして、約六千人の児童家庭相談に従事する者が配置されているということでありまして、そのうち、児童福祉司と同様の資格を有する方、これが一一・四%、これは前年に比べて約三割の増加となるなど、体制の充実が着実に図られてきていることが見てとれるところであります。

 中でも、今御指摘ありました市町村における児童虐待の中核となります地域協議会について、参加する関係機関のうちから事務局的な役割を果たす調整機関を指定するということが児童福祉法に規定されております。その充実が課題となっております。

 こうしたことから、今年度におきましては、都道府県から地域協議会に対しまして、児童相談所のOBなど児童福祉の専門家を派遣するという事業を実施する、こういうことを始めます。また、さっき申しましたような地方財政措置の大幅な増額、こういったことによりまして、地域協議会の調整機関、これが事務局として一層の強化を図っていただきたいというふうに考えております。

塩川委員 なお一層の対応を求めるものであります。

 それで次に、今改正案の内容にもかかわることで、超党派による児童虐待防止法改正案におきまして、都道府県知事による出頭命令を二度拒否し、児童虐待が行われているおそれがある場合、児童福祉司らが家庭裁判所などの令状を持って住居に入ることができるようになる。子供の安全確保を第一にした対応ということが行われることにつながるわけですけれども、改正案には、そういう場合の資料につきまして、児童虐待が行われている疑いがあると認められる資料、臨検させようとする住所または居所に当該児童が現在すると認められる資料並びに当該児童の保護者が立ち入りまたは調査を拒み、妨げ、または忌避したこと及び出頭の求めに応じなかったことを証する資料、こういった資料の提出というのが明示をされております。

 厚生労働省に伺いますが、児童相談所など現場の方からは、どういうような証拠資料が求められるのかという声がありまして、子供の安全確保を第一にという立場から、児童相談所はどのような資料の提出ができるのか。その点について、事務方なりに整理している内容について、ありましたら示していただけますか。

大谷政府参考人 今回の改正によりまして、強制的な立入調査が制度化されました場合に、裁判所の許可状を得るために、児童虐待が行われている疑いがあると認められる資料等を提出するということが必要になります。

 現段階におきまして想定されております内容を申し上げますと、現場の児童相談所の意見を今伺っているところでありますけれども、提出可能な資料といたしましては、児童相談所における記録、保育所の供述、近隣住民からの聞き取り情報、過去の訪問記録、立入調査の状況報告書、こういったものが現在の候補として想定されているところであります。

 いずれにせよ、今後、関係省庁とも相談しながら、この立入調査の実施に関するマニュアルの策定を行っていくということを考えておりますが、その際に具体的内容についてはさらに明確化してまいりたいと考えております。

塩川委員 法務省に伺います。

 どのようなレベルの証拠を要求するかという問題で、先ほども紹介しました三月の参考人質疑の際にも、弁護士の方からこの問題についてのお話がございました。その際も、刑事事件の有罪判決に要求されるハイレベルのものではなくて、伝聞証拠、例えば児童福祉司が近隣住民の供述、説明を聞き取った記録なども許容されるのではというお話もありましたけれども、この点についてはそういう考え方でいいのか。その点について確認をさせていただけますか。

菊池政府参考人 今御審議いただいている法律案の中にある許可状の要件があるかどうかにつきましては、それぞれの事件を担当する裁判官が具体的な事情に応じて御判断になることでございますが、一般論として申し上げますと、許可状の要件があるかどうかは、提出されたすべての資料を総合して裁判所の方で御判断になることだろうと思いますけれども、今、委員御指摘の伝聞に基づく資料であっても、そのことだけの理由で資料から排除されるということはないだろうというふうに考えられているところでございます。

塩川委員 現場の方の参考人質疑の意見でも、近隣住民の証言を証拠とするために、裁判所に提出するので署名捺印が必要です、こんなふうに言われると、協力を求めるのが難しくなるんじゃないのかという話もありました。ですから、署名捺印がないものは資料として認めないとか、そういうものは排除されているということではないということだと思いますけれども、その点、確認させてください。

菊池政府参考人 今御指摘の署名押印がない、いわゆる匿名の情報を記載した資料ということにつきましても、先ほど申し上げました伝聞に基づく資料と同様に、そのことだけの理由で資料から排斥されるというものではないというふうに考えているところでございます。

塩川委員 最後に、大臣にお伺いいたします。

 児童虐待防止法の附則の施行後三年以内の見直し規定には、親権について触れられておりますけれども、今回の改正においても結論が出ずに、法制審での議論も踏まえて、これがどうなるのかというのは、先ほどの政務官の話を聞いているとなかなかよく見通しが立ちませんけれども、今後検討していくことになっております。

 児童虐待事例にかかわる報道を見ると、しつけのつもりだったという声が今でも大変多いわけですから、やはりしつけの名によるこういう虐待を見逃さない、こういうことが求められているわけで、その点についての大臣のお考えをお聞かせください。

高市国務大臣 まず、子供の教育は、第一義的に親、保護者の責任であると思います。ですから、基本的な生活習慣を身につけさせる、そしてまた自立心を養うために親が子供を教育する、しつけをする、これはむしろ義務であると思います。

 一方で、そういった教育、しつけというのは、温かい愛情のもとで行われる、健全な環境のもとで行われる、これが非常に必要なことでございますので、児童虐待防止法に虐待とは何ぞやということで定義づけられておりますような行為、つまり行き過ぎですね、しつけの名をかりた行き過ぎをさらに超えた虐待という行為は、許されるべきではないと考えております。

塩川委員 親権については、一部停止や一時停止などの議論が焦点になっていますけれども、やはり親権条項にあります懲戒権の削除ということが、しつけの名による虐待を防ぐことにつながると我々は考えておりますが、大臣、ぜひ、政治家としてのお考えではいかがでしょうか。

高市国務大臣 民法は法務省の所管でございますけれども、民法には懲戒権というものが定められております。これは、子供の非行を防止したり、また矯正をするというようなことで親に与えられた、そのために必要な措置をとるということで親に与えられた権利でございます。

 ただ、民法は、そこで保障されているすべての権利の濫用を禁じておりますので、ここは、懲戒権そのものをなくしてしまうとか制限するという御議論かとは思うんですけれども、私は、既に民法に保障されたすべての権利にはその濫用を禁止する条文が含まれている、これによって対応されるべきなのではないかと考えます。

塩川委員 先ほど泉委員からも紹介のあったドイツの民法などのように、懲戒権の規定をなくす、子供が暴力によらないで保護されるということが盛り込まれているということもうたわれておりますので、ぜひそういう方向での対応が求められているということを申し上げて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

小宮山委員長 次に、児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間で御協議をいただき、意見の一致を見ましたので、お手元に配付いたしました起草案を委員長から提案したいと存じます。

 本起草案の趣旨及びその内容につきまして、委員長から説明いたします。

 児童虐待防止法は、児童虐待問題が深刻化する状況を背景として、平成十二年に本委員会提出法律案として可決、成立し、また、平成十六年に児童虐待の防止等に関する施策を強化するため、改正されました。

 同法律の改正後、国民の理解や関係者の意識が向上し、児童虐待が表にあらわれるようになり、数多くの関係者の努力によって対応が行われてきました。

 しかし、子供のとうとい命が奪われる児童虐待事件は減少するには至っていません。児童虐待問題へのさらなる取り組みが喫緊の課題となっています。

 また、同法附則に、施行後三年以内に、児童の住所等における児童の安全の確認または安全の確保を実効的に行うための方策、親権の喪失等の制度のあり方等について、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすると規定されています。

 そこで、前回の改正法の見直し規定を踏まえ、児童虐待の防止等に関する施策のさらなる強化のため、児童の安全確認等のための立入調査等の強化、保護者に対する施設入所等の措置のとられた児童との面会または通信等の制限の強化、児童虐待を行った保護者が指導に従わない場合の措置を明確にするための規定の整備等を行う本案を起草いたしました。

 次に、本起草案の主な内容につきまして説明いたします。

 第一に、この法律の目的として、児童の権利利益の擁護に資することを明記するものとすること。

 第二に、児童相談所等は、虐待通告を受けたときは、速やかに安全確認のための措置を講ずるものとすること。

 第三に、都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、児童相談所の職員等に必要な調査または質問をさせることができるものとすること。

 第四に、都道府県知事が立入調査を実施し、かつ、重ねての出頭要求を行っても保護者がこれに応じない場合に、児童虐待が行われている疑いがあるときは、裁判官があらかじめ発する許可状により、児童相談所の職員等に児童の住所等を臨検させ、または児童を捜索できるものとすること。

 第五に、虐待を受けた児童の一時保護または保護者の同意による施設入所措置の場合にも、児童相談所長等は、保護者について児童との面会または通信を制限することができるものとすること。

 第六に、裁判所の承認による施設入所措置を行った場合、面会または通信の全部が制限されているときは、都道府県知事は、保護者に対し、児童へのつきまといまたはその住居等の付近での徘回を禁止することを命ずることができることとし、この命令違反につき、罰則を設けるものとすること。

 第七に、児童虐待を行った保護者が都道府県知事の指導勧告に従わなかった場合には、都道府県知事が一時保護、施設入所措置その他の必要な措置を講ずるものとすること。

 第八に、都道府県知事は、施設入所等の措置を解除しようとする際には、保護者に対する指導の効果等を勘案するものとすること。

 第九に、正当な理由なく立入調査を拒否した者に対する罰金の額を引き上げるものとすること。

 第十に、この法律は、平成二十年四月一日から施行するものとすること。

 第十一に、政府は、この法律の施行後三年以内に、児童虐待の防止等を図り、児童の権利利益を擁護する観点から親権に係る制度の見直しについて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとし、また、児童虐待を受けた児童の社会的養護に関し、里親及び児童養護施設等の量的拡充に係る方策、児童養護施設等における虐待の防止を含む児童養護施設等の運営の質的向上に係る方策、児童養護施設等に入所した児童に対する教育及び自立の支援のさらなる充実に係る方策その他必要な事項について速やかに検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 以上が、本起草案の提案の趣旨及び主な内容です。

    ―――――――――――――

 児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小宮山委員長 お諮りいたします。

 児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、配付の起草案を委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決することに賛成の皆さんの起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小宮山委員長 起立総員。そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これで散会いたします。

    午前十一時七分散会


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