衆議院

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第3号 平成22年4月8日(木曜日)

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平成二十二年四月八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君

   理事 黒田  雄君 理事 佐藤ゆうこ君

   理事 園田 康博君 理事 菅原 一秀君

   理事 松浪 健太君 理事 高木美智代君

      打越あかし君    大泉ひろこ君

      大山 昌宏君    京野 公子君

      小林 正枝君    斉藤  進君

      玉城デニー君    道休誠一郎君

      畑  浩治君    初鹿 明博君

      室井 秀子君    山崎 摩耶君

      山本 剛正君    柚木 道義君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      小渕 優子君    馳   浩君

      宮本 岳志君    吉泉 秀男君

    …………………………………

   国務大臣         福島みずほ君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   内閣府大臣政務官     泉  健太君

   総務大臣政務官      小川 淳也君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松田 敏明君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           香取 照幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        高原 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           山田  亮君

   衆議院調査局第一特別調査室長           湯澤  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  京野 公子君     和嶋 未希君

  道休誠一郎君     畑  浩治君

  初鹿 明博君     斉藤  進君

  山崎 摩耶君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     初鹿 明博君

  玉城デニー君     山崎 摩耶君

  畑  浩治君     道休誠一郎君

  和嶋 未希君     京野 公子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官松田敏明さん、法務省民事局長原優さん、厚生労働省大臣官房審議官香取照幸さん、厚生労働省大臣官房統計情報部長高原正之さん、厚生労働省医政局長阿曽沼慎司さん及び厚生労働省職業安定局次長山田亮さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒田雄さん。

黒田委員 おはようございます。民主党の黒田雄でございます。

 本委員会では、初めて質問をさせていただきます。また、朝一番、トップバッターということでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 まず、子どもの貧困問題についてお尋ねをしたいと思います。

 先日、福島大臣は、本委員会の所信で、「子ども・若者が心身ともに健康で円滑な社会生活を営むことができる環境をつくるとともに支援を行うことは、我が国の将来に大きくかかわることであり、政府の最重要課題の一つです。」と決意を表明されました。

 また、鳩山総理も、今国会の冒頭、施政方針演説の中、命を守りたい、生まれ来る命、そして、育ち行く命を守りたいと国民に訴えられました。また、平成二十二年度予算が成立いたしましたが、この予算を「いのちを守る予算」と名づけ、新しい日本へ踏み出す第一歩として歩を進めようとしております。

 今、なぜ命を守る政治が必要なのでしょうか。残念ながら、現実の社会の中には、命を脅かされている存在が余りにも多いのではないでしょうか。全国各地で相次いでいる虐待事件は、その悲惨なあらわれではないでしょうか。厳しい経済状況も拍車をかけていると思いますが、特に子どもを取り巻く貧困問題は放置できない深刻な事態となっています。

 厚生労働省は、長妻厚生労働大臣の指示によって、平成二十一年十月、我が国の相対的貧困率を政府として初めて算出、公表いたしました。この調査によりますと、平成十九年の我が国の相対的貧困率は一五・七%で、国民の七人に一人が貧困にあるという結果になっております。また、十七歳以下の子どもの相対的貧困率は一四・二%という結果であります。特に、子どもの貧困について、一人親世帯の相対的貧困率は実に五四・三%に上り、一人親世帯の半数以上が貧困状態に置かれているのが現状であります。

 OECDの調査によりますと、二〇〇〇年代半ばの日本の相対的貧困率は一四・九%で、加盟三十カ国中、メキシコ、トルコ、アメリカに次いで四番目に高い水準になっております。また、日本の子どもの相対的貧困率は一三・七%で、加盟三十カ国中十二番目に高い水準になっています。さらに、日本の一人親世帯の相対的貧困率は五八・七%で、三十カ国中最も高い状況にあります。お手元の資料でお配りをさせていただいている状況でありますけれども、この一人親世帯の貧困状態は、まさに世界一深刻な状況にあると認識しなければならないと思います。

 まず、この事態をどのように受けとめておられるか、お尋ねをいたします。また、このような貧困の問題をさらに深くつかむためにも、徹底した調査を実施し、実態を把握すべきであろうと思います。未来を担う子どもの貧困解消に向けた対策、支援を必要とする子どもや家庭をしっかりと把握する、そういった視点が重要であろうと思いますが、その点についてお伺いをいたします。

福島国務大臣 黒田委員、本当にありがとうございます。

 子どもの貧困の問題については、極めて重要な課題であると認識しています。多方面からの取り組みが必要であると認識しています。

 先般、子ども・若者育成支援本部を総理大臣を本部長にして内閣のもとに設置をいたしました。例えば、そのときに、長妻厚生労働大臣から、人生前半の社会保障に関してきちっとお金をもっと使うように頑張りたいという旨の発言があり、その中でも、とりわけ子どもの貧困の問題は極めて重要です。

 本年一月に決定した子ども・子育てビジョンにおいては、教育の格差や子どもの貧困の問題が懸念されている時代だからこそ、格差や貧困をなくし、その連鎖を防止していくことが私たちに求められていますと明確に宣言し、子ども手当の創設や高校の実質無償化などを盛り込んでおります。

 命を守る予算として本年度成立した予算の中に、生活保護の母子加算の復活や児童扶養手当に関して父子家庭にも支給するなど、予算の面でも大変工夫していると思います。

 先般決定した子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針においても、盛り込むべき施策の例として子どもの貧困対策を取り上げており、今後、関係省庁と調整しながら、黒田委員御指摘の点も含め、取り組むべき施策の具体化の作業を進め、六月上中旬をめどに子ども・若者ビジョンを作成してまいります。

 親の経済力や幼少期の生育環境によって、人生のスタートラインの段階から大きな格差が生じ、世代を超えて格差が固定化することがない社会を着実につくってまいります。

黒田委員 ありがとうございます。

 今、大臣にお答えをいただきましたけれども、世代間の連鎖という話がありました。まさにこの貧困の連鎖、世代間の貧困の継承が大きな問題になっているのではないかと思います。

 生活保護を受けている家庭の世帯主が過去に育った家庭においても保護を受けていたという割合が二五・一%、母子世帯にあっては四〇・六%という貧困の世代間の連鎖の実態を示す調査結果もあります。この調査結果では、最終学歴が世代間の連鎖に深くかかわっていることを明らかにしております。

 家庭の経済状況や親の階層が子どもの将来を決めてしまうというようなことはあってはならない大きな問題であり、特に貧困層の世代間の連鎖はあってはならないことと強く感じております。貧困が原因で教育が受けられないということは、まさに人生のスタートラインでハンディをしょってしまうということであります。また、必要な医療が受けられない、育ち盛りの子どもが最低限の食事すら得られないケース、住宅の問題、親の就労問題、子どもを貧困から救い出す総合的な取り組みが求められていると思います。

 そこで、子どもの貧困解消に向けた具体的、総合的な計画をつくるべきだと思いますが、その点、お答えをいただきたいと思います。

福島国務大臣 黒田委員がおっしゃるとおりです。

 ブレア内閣は、スタートをしたときに、すべての子どもに確かなスタートを、シュアスタートというふうにして、子どもの貧困、つまり人生の始まりの段階でハンディキャップを負うと、それが後半にもとても影響しますし、またそれが連鎖になっていくということで、その意味では、総合的パッケージとして子どもの貧困をどうなくしていくのか、これは、社会保障もそうですし、雇用もそうですし、家族の支援もそうですし、あらゆる総合的な施策が必要だと考えております。

 そのためにも、子ども・子育てビジョンをつくりましたが、子ども・若者ビジョンを作成して、それは二つありまして、すべての子どもを応援するというのももちろん必要、しかし、より困難を抱えた子どもたちの総合支援、その二つをしっかりやっていこうということで、総合的施策としてビジョンを発表いたします。

黒田委員 ありがとうございます。

 これは深刻な、将来に向けた大きな課題であろうと思いますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、負の連鎖としての貧困、また虐待の連鎖など、世代を超えた悪循環を招いていることは深刻に受けとめなければいけません。実際、虐待や貧困家庭の調査結果を見てみますと、その親は中卒や高校中退といった人たちであることが多いと極めて強くあらわれております。また、家庭環境は、まともな教育を受けられるような、子どもにとって落ちついた環境とはとても言えないようなケースが多いようであります。さまざまな問題が浮かび上がってきていると言えます。貧困の世代間の連鎖、再生産に歯どめをかけるためには、就学前の乳幼児期の取り組みが効果的であり、また政府としても投資効率が高い、こんなふうに言われます。

 そこで、現在ある社会的資源を総動員して、育児環境、保育、乳幼児教育、また、親に対する相談体制、家庭訪問などなど、特に乳幼児期の子どもに対する対策、教育の下地づくりが重要なのではないかというふうに思います。その意味で、さまざまな資源の動員で施策の拡充が必要ではないかというふうに思いますけれども、いかがか。お尋ねをいたします。

福島国務大臣 おっしゃるとおりです。

 子どもの貧困問題を解決するには、できるだけ早い段階で、生まれたときから、極端に言えば生まれる前からの支援も必要だと思います。妊婦健診十四回無料化という点も、これは時限つきですが、できればこれはしっかりやって、お金がなくて妊婦健診が受けられないということもなくしたいと思っております。それから、子ども手当に関しても、これはもちろんゼロ歳からなわけで、子どもを応援していくことが必要です。

 今、黒田委員は新たなネットワークづくりというようなこともおっしゃったと思います。地域における多様な担い手の育成としての新しい公共等の機能強化が必要で、例えば、家族や地域の機能を補完する活動の支援、縦割りを排した官民行政と地域のネットワークや、子ども・若者自身のネットワークの強化、開かれた学校や、場合によっては保育所などが必要ではないかというふうに思っており、地域における多様な担い手の育成、新しい公共等の機能強化の取り組みなども、できれば子ども・若者ビジョンに盛り込みたいと思っております。

 今、黒田委員は乳幼児期の支援ということをおっしゃいましたが、地域によって少し区々ですが、保健師さんが家庭を巡回するとか、必要なときにやっているということをやっている自治体もありますし、そういう取り組みも大いに紹介しながらネットワークづくりをやっていきたいと思っています。

 また、実は今、さまざまな保育所、保育園を訪問しているのですが、保育園の中には、その地域のお母さん、お父さん、だれでもいいですよ、開かれた保育園で、例えば、主婦の方で、やはり子どもを連れてきてもいいですよとか、一時預かりをやっていたりするところもありますので、そうすると、悩みを持っていたり、ちょっと子育てに苦しんでいるという人も行ける場合もありますので、そういう地域で開かれたネットワークづくりと訪問体制などを強化していきたいと考えています。

黒田委員 どうもありがとうございました。

 この子どもを取り巻く貧困の問題は、政府を挙げて取り組んでいかなければいけない重い課題だろうと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、児童虐待と社会的養護のあり方についてお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、社会的養護のあり方についてお尋ねをいたします。

 今、社会的な養護を必要としている子どもたちの中には、虐待などによって、発達障害や情緒障害、愛着障害といった、精神面のケアが必要な子どもたちがふえています。最近の児童養護施設等へ措置された多くの子どもたちが、心のうちに問題を抱えて生活をしております。しかし、社会的養護の現場になっている児童養護施設などでは、今はとても対応し切れていないのが現実であります。

 子どもたちに対する養護、そして治療体制がおくれているのではないでしょうか。虐待され、心身に傷害を受けたという意味で、それらの精神的なケアが重要になっています。つまり、児童養護施設や乳児院等の果たすべき役割や機能を見直す必要がある、そんな時期に来ているのではないでしょうか。

 したがいまして、そのような子どもたちに正面から向き合うため、きめ細かな対応がどうしても必要になっているところであろうと思います。単に養育するだけでは、心身に傷を受けた子どもをいやし、治療することはできないのではないでしょうか。小規模グループや家庭的な環境のもとでの養育はもとより、児童指導員や保育士の増員が必要なのではないかというふうに考えるところであります。

 そのような中、厚生労働省は、現在の児童養護施設等の社会的養護体制の全国調査をしていると伺っております。その状況がどのようになっているのか。そして、職員の配置基準、施設や設備基準についても制度の見直しを検討すべきではないかと思います。今、厚生労働省としてそのような検討をされているということでありますけれども、その見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。

 また、小規模グループケア、個別ケア等を一層推進する必要があるというふうに思いますけれども、現状、どのような推移か、お伺いをいたしたいと思います。

山井大臣政務官 黒田委員、御質問ありがとうございます。

 今まで乳児院、児童養護施設等、本当に児童福祉の問題に携わってこられました黒田委員が国会に来られましたことに対して、全国で今社会的養護を必要とする子どもたちが、本当に声なき声として大きな大きな期待を持っておられると思います。

 御質問をいただきました児童養護施設や乳児院等の職員配置基準の見直しについてでありますが、もう委員も御存じかと思いますが、平成十九年の十一月の社会保障審議会の社会的養護専門委員会の報告書において、施設類型のあり方や人員配置基準、措置費の算定基準の見直しが必要、そしてまた、そのための必要な財源の確保や、施設内ケアの現状についての詳細な調査分析が必要と提言をされております。

 これを踏まえて、平成二十年三月、全施設を対象に、施設の概況、入所児童の状況、背景等を把握することを目的とした調査を実施しました。そして、昨年の平成二十一年の一月から三月には、子どもの状態によるケアの内容を定量的に把握するため、いわゆるタイムスタディーを実施して、さらに詳細な分析、集計を行っているところであります。これについてはまだ時間がかかりますが、しかし、この問題は本当に最重要課題でもありますので、五月の末までにまた何らかの新しいデータが出せないかということで、作業を急ぎたいというふうに思っております。

 とにかく、子ども手当の審議の中でも、子ども手当と保育所整備などの現物サービスは車の両輪であるということが言われておりますけれども、私はつくづく思いますのは、現金給付そして現物給付と並んで、社会的養護を必要とする子どもたちにはさらに手厚い支援をする、やはりこの三つをセットでやる必要があると考えております。

 それと、もう一つ、小規模グループケアについてでありますが、これについては、平成二十年度四百四十六カ所、そしてまた、平成二十一年度四百六十三カ所ということとなっております。これについても、予算としては六百四十五カ所分の予算をつけているわけですが、地方負担もありまして、四百六十三カ所しか平成二十一年度ではなっていないところであります。これはさらにふやしていきたいと考えておりますし、子ども・子育てビジョンの中では、平成二十六年度八百カ所、また、地域小規模児童養護施設の拡充は、平成二十六年度には三百カ所を目指して進めてまいりたいと思っております。

黒田委員 ありがとうございました。

 調査をしていただいて、今分析をされているというところでありますが、現場は動いておりまして、そのような子どもたちに今も向き合っている、そのスタッフももうぎりぎりのところまで来ているのが実態でありますので、なるべく早く集計をまとめていただいて、一歩をぜひ踏み出していただきたいというふうに思うところであります。今のままでは子どもたちの将来や生活環境にも大きく影響が及んでしまいますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、先ほど申し上げましたように、各施設で生活をしている子どもたちは何らかの精神的なケアが必要になっている、これが現実であります。各施設に精神科の医師や心理担当専門のスタッフの配置をぜひ厚くすべきではないかというふうに思います。現状の保育士や児童指導員、これらの対応だけではもう限界に来ているというふうに言えます。その意味で、このようなさまざまな障害、特に情緒障害を持つような子どもたちに対しては、情緒障害児短期治療施設など、専門医をメンバーとする専門的な、また医学的な対応が不可欠であるというふうに考えます。

 しかし、この情短施設と言われる施設は全国に三十二施設しかないのが現状であります。全く心理治療機能を持たない都道府県が残されているのが現状であります。私は、一定エリアごとに情緒障害児短期治療施設が整備され、その機能を発揮すべきと思いますけれども、その点について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

山井大臣政務官 黒田委員にお答えを申し上げます。

 私自身、児童福祉施設でボランティアをしておりましたことが政治家になった一つのきっかけでありますので、特に虐待を受けた子どもたちというのは、外から見てわからない、心の中に大きな大きな傷と、人生における人間不信等の大きなハンディキャップを負っておられます。そのような子どもたちをケアしていくためには、今御指摘のように、専門性の高い職員や施設が必要だというふうに思っております。

 現在三十二カ所の情緒障害児短期治療施設を、今回の子ども・子育てビジョンにおいても目標値を四十七カ所と設定し、平成二十六年度までにふやしていきたい。今回の子ども・子育てビジョンの大きな目玉は、今までこういう社会的養護に関する目標値というのが定められたことがなかったわけでありますけれども、それを定めたところが大きな前進だと思っております。

 また、児童養護施設等においては心理療法担当職員の配置の予算措置も進めており、年々ふやしているところであります。先ほど答弁をいたしましたように、平成十九年十一月の社会的養護専門委員会の報告書の趣旨も踏まえまして、今後、必要な財源の確保や施設内ケアの現状についての詳細な調査分析が必要だというふうに考えております。

 今後、子ども手当とともに、社会的養護の支援をどうしていくかというのが重要な課題となってまいりますので、黒田委員の思いを受けとめて、努力をしてまいりたいと思います。

黒田委員 どうもありがとうございました。

 前向きな御答弁をいただいたというふうに思っておりますが、今、現場では、さまざまな精神面、心理面でのさらに充実したケアが望まれております。社会的養護体制のあり方が今大きく曲がり角に来ているんだろうというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そして、その社会的養護下にあった子どもたちがそれらの施設を退所、卒業していく時期が来ます。その児童養護施設や自立支援施設、これらの施設を退所していく子どもたちのその後の進路、その後の人生について、私はしっかり把握すべきじゃないかというふうに思います。先ほどの議論の中でも、さまざまな心理面で揺れ動く子どもたちが成長していって社会に出ていくわけですから、しっかり自立に向けた支援体制というものが必要なのではないかというふうに思っております。その意味で、それらの子どもたちの行く末をしっかり調査、把握すべきではないでしょうか。

 また、退所してからも、社会的養護下にあった子どもたちに対する支援、相談の体制が重要だと思っております。でも、現状は施設を出てから一年限りはその相談に乗ることが許されていますけれども、一年限りでは今の競争社会の中で子どもたちが自立できるはずがない、こんなふうに思っております。そのような意味で、しっかり調査をし、実態を把握していただくこと、また、支援をその後も継続していくことが大切であろうというふうに思います。

 そしてまた、それらの子どもたちの自立に向けて、具体的な対策として児童自立支援ホームの整備拡充に力を入れるという方針も示されております。その自立支援ホームの整備状況についても、加えてお聞かせをいただければというふうに思います。

山井大臣政務官 黒田委員、御質問ありがとうございます。

 まず、自立援助ホームについてでありますが、私もグループホーム、そして自立援助ホーム、児童養護施設、たくさん訪問させていただいたことがあります。自立援助ホームというのは、養護施設を十八歳で出てから非常に重要な役割があると思いますが、まだまだ少ないわけで、平成二十年度が五十四カ所、そして、平成二十一年度は予定も含めて五十九カ所。しかし、子ども・子育てビジョンの中では、これを平成二十六年度におきましては百六十カ所まで大幅にふやしていきたいというふうに思っております。

 私も児童養護施設を訪問して子どもたちとも話をさせてもらいまして、一番心が痛むのは、この子どもたちがどういう人生を歩むことができるだろうか。私も母子寮でボランティアをしておりましたけれども、中卒、高校中退、あるいは高校を卒業してからも、なかなかいい仕事につけない、あるいは仕事についてもすぐにやめざるを得ない、また、その子どもが家庭崩壊になってしまったり、本当にイバラの道の人生をその子どもたちは重い重い荷物をしょって生きているということを痛感しております。

 そういう意味では、その子どもたちがどういう人生を送っているのか、実は私自身も、過去三十年間、本当にそういう実態を知る必要があるということは思い続けてきました。ただ、そう簡単な調査ではありませんが、どういう形で把握することができるかを検討させていただきたいと思いますし、かつ、相談が一年後までしかないということですが、もう少し継続的な支援ができないのかを考えてみたいと思います。

 何よりも、このようなことをある意味で社会全体で応援するのは、社会にとって負担ではなくて、こういう方々が安定した仕事につけて、そして安定した家庭を築くことができる、また、その人が自己実現できるということは、社会にとっても国民全体の幸せに寄与することであるというふうに考えております。

黒田委員 どうもありがとうございました。

 まさに、山井政務官はこういった子どもたちの生活、その現場、実態を一番よくわかっておられると思いますので、政府にあってぜひお力をいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、児童虐待への取り組みについてお尋ねをいたします。

 虐待から子どもの命をどう守るか、そのための児童相談所の機能強化はまだまだ必要であります。平成十九年の児童虐待防止法改正では、児童の安全確認のための立入調査の強化などが図られ、児童相談所の責務も大きくなりました。しかし、年々虐待の相談件数は増加しており、平成二十年度の全国の児童相談所で対応した相談件数は四万二千六百六十二件と、過去最高の状況にあります。

 虐待により幼い命が失われる痛ましい事件が相次いでおり、憂慮すべき状態であります。対策の強化が望まれています。通報を受け、子どもの安全確認に家庭を訪問しても、親の抵抗で子どもに会うこともできず、どう対処すればいいか困ったというようなケースも伺っております。虐待している親は子どもになかなか会わせたがらない、そんな実態もあると思います。

 子どもの安全確認さえ困難なケースも多いような状況であるということでありますので、お伺いをしたいと思いますけれども、子どもの命を守るために、家庭立入調査における法的権限、迅速性、機動性、安全確認などに問題はないのかどうなのか。市町村における子どもを守る地域ネットワークの機能強化を図り、相談、支援を行う児童福祉司等の確保などにより児童相談所の体制強化を図っているところであろうというふうに思いますけれども、その取り組み状況についてどのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

山井大臣政務官 黒田委員にお答えを申し上げます。

 児童虐待防止法の改正により、平成二十年度から臨検、捜索というものが導入をされたわけですけれども、平成二十年度においては全国でたった二件であったということであります。その意味では、今回、さらに児童虐待がふえているということで、児童虐待防止法についても、さらに改正が必要なのではないかという議論があることも私は聞いております。

 また、児童相談所の人員体制に関しましても、私も児童福祉司の知り合いがおりますけれども、現場はもう本当に、パンク状態といいますか、相談件数はふえてくるが人はなかなかふえないということで、非常に苦しんでおられると聞いておりますので、研修を充実して専門性を高めることとともに、これは総務省とも相談して、このような人員をふやすような取り組みが何とかできないものかということは検討してまいりたいと思います。

 また、新たに、一月の江戸川区の事案を受けまして、一度、児童相談所や地域の児童虐待防止のネットワークが把握したケース、地方自治体や児童相談所が把握したケースに関しましては、その子どもの学校での欠席状況、出欠、そういうものを月に一遍程度、定期的に地方自治体や児童相談所に報告して、今回のように、長期欠席して虐待が放置されるということがないようにしてまいりたいと考えております。

黒田委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 余り時間がなくなってまいりました。

 これらの虐待の発生予防、早期発見という観点が重要であろうと思います。

 先日、本委員会でも、池坊委員長を初め多くの委員の皆さんと、熊本の赤ちゃんポストを視察させていただきました。その際も、妊娠段階からの相談支援体制が重要だというような説明を伺ったところであります。私はまさに、妊娠、出産、育児といった早い段階から、母親、家庭に対する相談支援体制が必要だというふうに思っております。

 そこで、お尋ねをいたします。

 発生予防という観点から、妊娠段階での相談支援体制について、どう取り組んでいこうと思っているか。また、虐待の早期発見という観点で、出産、育児、この時期の取り組みについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

山井大臣政務官 黒田委員にお答え申し上げます。

 確かに、早期発見がなければ予防ができません。そのためには保護者の方々の支援が重要であると考えておりまして、医師や助産師等からの専門的なアドバイスを受ける妊婦健診について、必要な回数を十四回程度にふやしておりますことと、妊婦健診を受けられるような公費負担の拡充を行っております。また、妊娠、出産についての医学的な相談や心の悩みに対応する女性健康支援センターの整備、平成二十一年度には三十七カ所整備しております。

 さらに、早期発見のためには、乳児全戸訪問事業の実施ということを平成二十一年四月に法定化をいたしまして、平成二十一年の七月現在では八四・一%の自治体が実施をしておりますし、また、さらに支援の必要な家庭に関しては養育支援訪問事業を継続的に行っておりまして、これは平成二十一年七月時点では五五・四%の自治体で行っております。

 先ほど言いましたような子どもを守る地域ネットワーク、要保護児童対策地域協議会に関しては、全国の市町村の九二・五%で設置をしているところであります。

黒田委員 前向きな御答弁をいただき、ありがとうございました。

 時間でございますので、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、室井秀子さん。

室井委員 おはようございます。民主党の室井秀子でございます。

 福島大臣におかれましては、仕事と子育てを両立され、大臣として、消費者問題、食品安全、少子化対策、男女共同参画、さらには青少年育成、障害者施策、自殺対策など七つ、積極的に取り組まれておりますこと、同じく子育てをしながら国会議員として活動しております私にとりまして、大変誇りに思っております。

 同じく高井政務官も、子育て、議員活動、そして政府の一員として日夜御努力いただいておりますこと、心より敬意を表します。

 本日は、質問の機会をお許しいただき、先輩、同僚の先生方、心より御礼と感謝申し上げます。

 さて、私は、きょうは大臣所信にございました子ども・若者ビジョン、これについて質問をさせていただきたいと思います。

 今般、六月をめどにまとめられます子ども・若者ビジョンの骨子素案を拝見しますと、理念の中に「子ども・若者を大人と共に生きるパートナーとして尊重」とあります。学級崩壊や不登校などの問題が持ち上がると、子どもに権利を主張させ過ぎるのではないかという声も聞かれますが、この「子ども・若者を大人と共に生きるパートナーとして尊重」とは、福島大臣、具体的にどのようなことか、お聞かせ願います。

福島国務大臣 御質問、本当にありがとうございます。

 政権がかわって、ビジョンをつくる骨格や見方、哲学を変えたいという思いがあり、例えば少子化社会対策大綱、上から目線の説教垂れ垂れ少子化対策ではなくて、どうやって子育てを応援するか。今回も、青少年施策大綱でもいいのですが、子ども・若者ビジョンとして、これは日本国憲法、子どもの権利に関する条約にのっとって、子どもを真ん中に置いて、それをどう支援していくかということで考えています。

 もちろん、当たり前ですが、子どものわがままし放題を許すとか大人を軽んずるとか、そういう意味では全くありません。子どもは、主体性はもちろん持っているわけですが、大人もそうかもしれませんが、完成途上というかまだ未成熟であることは間違いがなくて、その両方の視点がまさに必要だと思います。

 ただ、子どもや若者を大人が上から目線でけしからぬ、だめだと言うだけではなくて、子ども・若者と大人が尊重し合いながら、社会の重要な構成員としてともに生きるという趣旨をあらわしたものです。

室井委員 大臣に説明していただきまして、私はほっとしている部分もあります。

 私は、パートナーを日本語に置きかえれば、同等ではなく、ともに生きる、つまり、ともに育つこと、それも共育だと考えております。

 私は一つ感銘を受けたものがありまして、作家の山本おさむさんの「どんぐりの家」、御存じでしょうか。

 障害のある子どもを主人公とした作品なのですが、その中で、障害のある子は、小さいとき、ほとんど寝たきりだった。母親は、その子に御飯を食べさせ、おしめを取りかえるのが日課であった。そんな我が子を見ていると、この子はこれで生きていると言えるのだろうかとつい思ってしまう。ところが、ある日、いつものように、寝たきりの我が子のおしめを取りかえようとしたとき、寝たきりのままの我が子の、かすかではあるが、その子ならではの全力を振り絞って、腰を少しでも浮かそうとしている、その努力が母の手に伝わった。その瞬間、この母は、重大なことに気づかされた。この子は、ただ無為に生きているのではない。この子は、自分なりの精いっぱいの努力を、たとえそれがどんなささいと思われる小さなことでも、精いっぱい命を燃やしているのだ。そう感じたとき、その母親は、育てる意味、生きる意味、働く意味をとらえ直したとあります。

 子どもを大人とともに社会を構成するパートナーとして認めることは、ただ単に子どもが権利を主張することでもなく、親が保護するだけでもなく、社会問題化している学級崩壊、いじめ、体罰、児童虐待、少年非行などの課題を解決するために、子どもの立場を考え、彼らの主張にも耳を傾け、大人として親としてどう対処していくかを考えることだと私は思います。このパートナーの意味を国民の皆様に理解していただけるように、大臣、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、青少年の薬物乱用問題に関しましてお伺いいたします。

 青少年育成施策大綱において、青少年や青少年育成関係者に対する薬物乱用の有害性、危険性、乱用防止のための指導方法等についての広報啓発活動の一層の推進を掲げておりましたが、今回の子ども・若者ビジョンの骨子を見ますと後退した感がしますが、福島大臣、御見解をお伺いいたします。

福島国務大臣 薬物問題について質問していただいて、ありがとうございます。

 薬物問題については、従来、第三次薬物乱用防止五カ年戦略に基づく取り組みを推進してきました。青少年による大麻事件等は後を絶たず、大変厳しい状況にあると認識をしています。

 このような認識のもと、三月二十四日に、薬物乱用対策推進会議のもとに、薬物乱用防止戦略加速化ワーキングチームを設置いたしました。青少年に対する未然防止対策、再乱用防止対策などについて重点的に検討を進め、本年六月をめどに、薬物乱用防止戦略加速化プラン、これは仮称ですが、これを策定すべく検討しております。

 薬物問題は、次代を担う子ども・若者の成長にも大きな影響を与えるものであり、本当に体も心もむしばんでしまいます。今回の子ども・若者ビジョンにおいても、ワーキングチームでの議論等を踏まえ、青少年による薬物乱用の根絶に向けた取り組み等をしっかり盛り込んでまいります。

室井委員 私が質問をしようと思っていた数字を大臣がおっしゃいましたので、ちょっとはしょらせていただきます。

 実は、資料を皆さんのところに配付させていただいておりますけれども、資料一、厚生省の未成年者の喫煙実態状況に関する調査研究の結果によりますと、高校生男子、九六年、平成八年には毎日喫煙する者が一八・〇%から、〇八年、平成二十年では四・七%、同じく女子では四・六%から一・七%。中学生でも同じように、未成年者全体で喫煙は減少傾向にあります。

 その一方で、資料二をごらんください。警察庁の資料によりますと、薬物の事犯全体の検挙率は減少傾向にあるものの、特に青少年について、大麻、MDMA等合成麻薬事犯の検挙者の六割を未成年者及び二十歳代の若年層が占めており、将来が懸念される事態となっております。

 そんな中で、ことし、四十五年ぶりに児童生徒の問題行動について指導方針を記した教員用の手引書、生徒指導提要をまとめ、配付するとのことですが、学校教育において、薬物乱用の有害性、危険性、乱用防止のための指導強化が、薬物乱用防止を果たす役割と大きく考えておりますが、先ほどお答えいただきましたので、これははしょらせていただきます。

 次に、禁煙外来のことでお尋ねいたします。

 NPO法人日本禁煙学会の資料によると、禁煙治療、禁煙外来に保険が使える医療機関が日本全国で九千四百十六カ所あります。また、インターネット禁煙マラソン事務局によりますと、全国で、子どもたちへの禁煙支援を受けることのできる病院、つまり児童禁煙外来が七十二病院あります。

 奈良女子大の高橋裕子先生の調査によりますと、未成年は、成人に比べて、喫煙により非常に短期間でニコチン依存症になるんだそうです。

 青少年の喫煙は他の薬物の入り口ともなるので、喫煙防止は薬物乱用防止の役割も果たします。

 私が非常に思いましたのは、青少年で、お父様、お母様がたばこを吸っていらして、そのお子様が喫煙するようになった。しかし、学校にそのことを伝えると、学校から出席停止、いろいろ処分を受ける。しかし、それかといって、このまま放置できない。児童外来に連れていって、そのことが学校にわかったらどうしようかと内々に思っていらっしゃる方も多いと思います。

 厚生労働省が編集した「喫煙と健康」によると、十四歳以下で喫煙を開始した場合、五十から五十九歳までの総死亡率が三・七八倍、がんで死亡する危険度が四・二五倍、虚血性心臓病、つまり心筋梗塞などですけれども、死亡率は非喫煙者の十・三倍になるという調査があります。この意味からも、青少年の喫煙防止が、青少年期の健康保持に役立つばかりでなく、将来の、生活習慣病などの長期にわたる健康問題の予防と早世の防止にもつながります。

 未成年者全体で喫煙は減少したとはいえ、警察庁生活安全局少年課の平成二十一年一月から十二月までの少年非行等の概要によりますと、喫煙での補導人数が三十六万四千九百五十六人と、不良行為少年の補導人員全体が百一万三千八百四十人ですから、約三六%が喫煙で補導されているのが現状です。

 昔は喫煙をやめろという精神論で解決していましたが、今は禁煙外来への受診を学校でも指導すべきではないかと思いますが、高井文部科学大臣政務官、文部科学省のお考えをお聞かせください。

高井大臣政務官 御指摘は大事な点だと思います。

 喫煙などは、割と子どものときはポーズみたいなもので始めたら、それが常習性を伴ってしまって大変な事態に陥り、結果としてそうした病気を引き起こすということをもっときつく教えなくてはならないと私も改めて今お話を聞いて感じている次第であります。

 もちろん、原則吸ってはいけないことですので、吸った人は禁煙外来に行くようにというふうに指導するのもなかなか難しいものであります。やはり個々個別に、教員の方々やまたスクールカウンセラーにいろいろ相談する状況をできるだけつくって、もし万が一そうした場合には、早目にやめられる状況をつくることが大事だから、禁煙外来へ行くようにということも、いろいろと関係の団体と連携をとりながら、必要に応じて受診を促すこともやっていきたいというふうに改めて感じている次第でございます。

 いずれにせよ、喫煙がいかに健康に悪影響を及ぼすか、もっと言えば、先ほど来お話がありました薬物は、悪影響どころか心身を破壊するということでございますので、もっときっちりと個々個別に指導していけるように、私たちとしても努力をしていきたいと思っております。

室井委員 ありがとうございます。

 なかなか、学校で禁煙外来に行きなさいという指導はしにくいかと思いますが、やはり未成年者で、たばこを吸ったからといって刑罰があるわけではありませんので、吸わせた人間と売った人間に罰があるだけですので、そのことを重々学校でも教えてほしいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 実は私の地元で、誇れることではありませんが、兵庫県では中学生グループによる大麻使用事件を受けて、兵庫県警と学校関係者で非行防止研究会をつくり、このほど初会合があり、その中で、川畑徹朗神戸大大学院教授は、小学生の段階から対話能力や問題解決能力を身につけさせ、子どもを励ましつつ、早いうちから自分で判断する経験を積ませることが必要だとし、姫路市内の小学校、中学校で規範意識を向上させるライフスキル教育を四月から始めております。

 資料三をごらんください。

 WHO、世界保健機構が一九九三年に定めたライフスキルの定義では、個人が日常生活の欲求や難しい問題に対して効果的に対処できるように、適応的、前向きに行動するために必要な能力としています。ライフスキル教育は、先進国などで社会問題化している青少年の薬物乱用、飲酒、喫煙、無防備な性行為、学校中退、退学などの危機的状況を未然に防ぐ方法として、発達段階に応じたライフスキルを身につけさせるべきだと世界保健機構がライフスキル教育プログラムを一九九三年に公表、紹介したのが始まりです。

 私は六月に取りまとめられます子ども・若者ビジョンにこのライフスキル教育の推進を盛り込んでいただければいいなと考えますが、福島大臣、大臣のお考えをぜひお聞かせください。

福島国務大臣 ありがとうございます。

 室井委員御指摘のとおり、人々が、日常生活で生ずるさまざまな問題や要求に対して建設的かつ効果的に対処するために必要な能力を身につけることは本当に重要です。

 私たちもこのビジョンをつくるに当たって議論をしているのですが、やはり今の子どもたちが真っ裸のまま社会に出ていくと、例えば、働くときに知っておいた方がいい労働法の知識や、こういう支援策があるよということや、あるいは人間関係を変えていく能力や生きるために必要な知識や能力、やはりそれがとても足りないのではないか。お勉強、お勉強で、がりがり勉強することも大事だけれども、そういう生きていくための技術というものを子どもたちに教えるのが、真っ裸で社会に無防備に出てめちゃくちゃ傷ついてしまうというよりもはるかにいいというふうに思っております。

 先般決定した子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針の骨子案の中でも、盛り込むべき施策の例として、コミュニケーション能力の育成やシチズンシップ教育、片仮名ですが、どう訳したらいいのでしょうか、公民としての教育ですかね。シチズンシップ教育の推進等、ライフスキル教育で身につけるべきとされている事項を取り上げているところです。今後、この骨子案をもとに、関係省庁と調整しながら、室井委員御指摘の点も含め、具体化の作成をしていきたいと思っております。

 エンパワーメントあるいはライフスキル教育で、生きる力や生きる能力や、自分を大事にしてやっていくというそういうスキルを、能力を子どもたちに本当にプレゼントしたいと思っております。

室井委員 前向きな御答弁、本当にありがとうございます。

 学校を出てから急に社会に出ていっても戸惑うことが多いのが現実ですので、学校に行っている間にその技術を身につけてほしいものだと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次の質問に入らせていただきます。

 家族や家族のきずなについてお伺いいたします。

 過日、当委員会で、東京都の児童相談所、熊本市の「こうのとりのゆりかご」、先ほど黒田委員が申しましたように、皆さんの耳には赤ちゃんポストというふうに入っているかと思いますが、そこを視察いたしました。

 その中で、私はショックを受けたことがたくさんありまして、「こうのとりのゆりかご」では、平成十九年五月十日から平成二十一年九月三十日までの約二年五カ月の間に五十一人の子どもが預けられました。預けられた子どもの状況を見ますと、男児二十八人、女児二十三人。内訳は、新生児四十三人、乳幼児六人、幼児二人。預けられた理由です。よく聞いてください。戸籍に入れたくない八件、生活困窮七件、不倫五件、未婚三件、世間体三件、その他四件。

 私は、自分の子どもを「こうのとりのゆりかご」に連れていく人の心を考えたときに、どうしようもなくて連れていったのかなと思っていました。でも、現実は違うものがありました。それも熊本県からではなくて、遠いところから新生児を連れてくるということは、感染症に遭うこともあります、障害がなくても障害を負うこともあるかもしれません。本当に悲しい思いがしました。

 そんな中で一番腹が立ったのは、預けられた理由に、戸籍に入れたくない、世間体があること、この二点でした。

 私が視察しまして感じたことは、これらの事業は最高ではない、ベストではない、最善の策ではありませんが、今考えられる中では、対症療法ではこれしかないんだなと思いました。根底にある家族や家族のきずなの問題を考えていくことがこれから重大ではないかと思いました。

 ただ、いただきました資料の中に、子どもができたことを家族に反対されると思った若いカップルが、「こうのとりのゆりかご」に預けるために来院した際、関係者に相談を行い、家族に出産を打ち明けたところ、家族は孫の誕生を喜んだとありました。この文章を読んだとき、やっと心が温まりました。

 内閣府が平成二十一年六月に実施しました国民生活に関する世論調査では、家庭はどのような意味を持っているかと聞いたところ、「家族の団らんの場」を挙げた者の割合が六四・四%と最も高く、以下、「休息・やすらぎの場」五八・七%、「家族の絆を強める場」五四・七%、「親子が共に成長する場」四〇%などの順になっています。

 しかしながら、ごらんになった方もいらっしゃるかもしれませんが、ことし一月三十一日に放映されたNHKスペシャル「無縁社会 無縁死 三万二千人の衝撃」という番組がありました。全国一千七百八十三のすべての自治体を調査した結果、引き取り手がなく、自治体によって火葬、埋葬された、つまり無縁死した人が二〇〇八年だけで三万二千人に上り、警察でも自治体でも身元がわからなかった身元不明者は一千人になります。

 この一千人は行旅死亡人と呼ばれ、資料四、実は各先生方の議員会館メールボックスに配付されております、この中の一ページです。ごらんになっておわかりのように、推定四十から六十歳ぐらい、全身高度腐敗した女性、身長百五十四センチ、所持品なし、そういうふうにして、こうして官報に書かれているわけです。

 家族や社会とのつながりを失い、孤立して生きる人たち、我が国は無縁社会とも言える状況に突入しているのが現実ですと結んでありました。

 子ども・若者ビジョンの重点課題に、「子ども・若者が生き生きと、幸せに生きていく力を身につけるための取組」「良好な家庭的環境の確保、大人社会の改善」「基本的な生活習慣の形成」「基礎学力の保障」「社会参加・体験活動等の能動的活動を充実」と記されております。この中にあります。

 福島大臣、具体的施策を検討中でしょうか。

福島国務大臣 二つのことをおっしゃったと思います。前半は子どもをめぐる問題と、もう一つは無縁社会の、私もNHKを見ましたけれども、その両方のことだと思います。両方をつないでいるのは、やはり家族を大事に、それをどう支えていけるかということだと思います。

 私も赤ちゃんポスト、「こうのとり」の報告書を読みまして、非常にショックを受けました。それから、随分日本の社会は変わったと思っていたけれども、まだまだ結婚届を出さないで子どもを産むことなどに関しての差別や偏見や、あるいは育てにくいということを改めて実は感じました。民法改正などを実現したいと思うのは、そこです。

 私自身も実は弁護士として、婚約破棄を、直前になってもう中絶ができなくて、妊娠九カ月ぐらいで、子どもを産まなくちゃいけないけれどもどうしたらいいだろうかという相談や、相手が離婚してくれると言って、中絶をしないでいたけれども、やはり離婚できなくなったと言われて、もうどうしていいかわからない、でも、親に相談したら、近所の産婦人科には行かないでくれと言われて、実家には夜しか帰れないとか。

 それは少し前の話、十年ぐらい前の話ですか、まだまだ実はそういう、すべての子どもが祝福される、本当はどんな子どもも生まれて祝福されるべきなんですが、差別や偏見や、もちろん貧困の問題等もあり、反対があり、地域の中で育てることができないということを思っています。そのためには、これだけ少子化の中ですから、すべての子どもが祝福されるような社会をつくりたい。そのためにも、民法改正は実はやりたいんです。

 二つ目は、かつて特別養子縁組制度ができたときに随分議論がありましたが……(室井委員「その辺はちょっと」と呼ぶ)済みません。

 特別養子縁組制度などのPRももっと必要ですし、それから、貧困などのこともさっき黒田委員からもありましたが、すべての子どもを応援できる、貧困の子どもを応援できるような一人親家庭の支援などもしっかりやっていきたいと思っております。

室井委員 私は福島大臣の民法改正の話を聞きたかったわけではありません。このビジョンの中で家族というものをどうとらえるのか、私はそのことの方が聞きたかったのが実際です。しかし、もう時間がありませんけれども、私は家族のきずなをどう教育の中でしていくかを尋ねたかった、これを強調しまして、次の質問に入らせていただきます。

 子ども・若者ビジョンに、若者の就労等支援と記されております。私は、資源のない我が国において人材戦略が必要であり、特にキャリア教育、職業教育の推進が重要だと考えております。

 また、若者が勤めた会社をすぐやめてしまう傾向、よく七五三退社と言われております。中卒で七割、高卒で五割、大卒で三割が三年以内に勤めた会社を退社してしまうのが現状です。

 ことし二月に発表されました総務省の労働力調査(詳細集計)、平成二十一年平均(速報)結果によりますと、失業期間が三カ月以上の完全失業者二百十四万人のうち、一年以上の完全失業者は九十五万人です。その中で、二十五から三十四歳が二十六万人、つまり全体の三割、最も多くなっています。この状況は平成十六年からずっと続いています。このような数字を見ましても、退職後の再就職は大変難しいものがあります。

 私は、これは提案なんですけれども、アメリカのコミュニティーカレッジを念頭に、各省にまたがる職業訓練費や私学助成等を充当するなどを行い、今まで職業や実際生活に必要な能力を育成してきました短期大学、専門学校を、それぞれの特徴を生かして、職業訓練教育を行うセーフティーネット機関として、若者の再チャレンジを応援するための役割を付与することを提案したいと考えますが、高井文部科学大臣政務官、文部科学省のお考えをお聞かせください。

高井大臣政務官 若い人たちが仕事を早期にやめてしまうこととか、今就職も大変厳しい状況でありますので、御指摘のあった、まさに社会的自立や職業的な自立を促す指導というのは本当に必要であると我々も認識しております。

 短期大学は、もともと学位授与機関としてふさわしい質を備えながら、幅広い学習ニーズに対応する教養教育と専門教育を提供するということでできたものでありますが、特に今回から、キャリアガイダンスなども大学とあわせて制度化するということで我々も努力をしているところであります。

 就業力育成に向けた総合的な取り組みという形で、就業力育成五カ年計画というものを実施して取り組みを推進していきたいと思いますし、いろいろ御指摘ありました専門学校等でも、まさに職業に直結する教育を専門学校で行っておりまして、やはり定着率も専修学校や専門学校は高いということもありますので、そうしたことを踏まえながら取り組んでいきたいというふうに思っております。

 ただ、そもそも論として、短期大学と専門学校等の成り立ちも違いますし、ただ、職業教育という点ではいろいろな取り組みをやっていこうと思っておりますが、厚生労働省にある職業訓練機関等も充実を図りながら、また、やはり大人社会がきちんと若い人を温かい目で育てていくという観点も必要かと思いますので、ぜひこれからも御指導いただきたいと思います。

室井委員 政権交代をした今、ぜひ省庁横断的に職業教育を実施していただきたいと思っております。

 文部科学省の答弁を受けて、若者の就労等支援に短期大学、専門学校の積極的な活用を盛り込んでいただきたいと考えますが、福島大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

福島国務大臣 おっしゃるとおり、極めて大事な問題で、子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針でも、キャリア教育・職業教育の体系的な充実にしっかり取り組むことにしております。その中で、おっしゃいました、短期大学や専門学校に果たしていただく役割も大きいと考えております。

 今後、この骨子案をもとに、関係省庁と調整しながら、議員御指摘の点も含め、施策の具体化の作業を進めてまいります。

室井委員 よろしくお願いいたします。

 実は、二〇〇七年、平成十九年の参議院六十周年記念論文入賞者の論文の中に、兵庫県の高校生の「私が夢見るこれからの日本」と題する論文に次のような記述がありました。よく聞いてください。

 「「東大生の三割が就職に不安を感じている」と書いてありました。現在国内で最もレベルが高いといわれている大学の学生でさえそう感じているのです。この記事を見て私はとてもショックを受けました。ただ大学に入るだけではなく、ただ受験するだけでなく、そこに夢や目標がなければ、終わってしまいます。もっと若者たちが、夢や希望を持てる、そういう社会にして欲しいです。」高校生がこういうふうに言っているわけです。そして、これが入賞者の論文です。

 今般取りまとめておられます子ども・若者ビジョンでは、ぜひ子どもたちや若者が夢や希望が持て、幸せを実感できるビジョンにしていただきたいと思いますが、大臣の御決意をお願いいたします。

福島国務大臣 ありがとうございます。

 子どもたちが夢や希望が持てるように、その熱意がこのビジョンの中から子どもたちに直接伝わるようにしたいと思っております。

 御指摘のとおり、子どもたちが夢や希望を持てないのは本当に社会にとっても個人にとってもよくないですから、子ども・若者の個人としての尊厳を重んじ意見を尊重することと、すべての子どもに対するメッセージと、きょう非常に出ました、困難を抱える子どもたちに対しても総合的な支援をして、しっかり応援をしていきたいと思っております。その夢や希望を持てるという熱意をうまく込めてやってまいりたいと思っております。

 ありがとうございます。

室井委員 福島大臣には、未来を担う青少年のために、今後ともぜひ頑張っていただきたいと思います。

 若者に夢と希望が持てる社会をつくることが大人の責任です。決して無縁社会にしてはいけないのです。

 どうもありがとうございました。失礼いたします。

池坊委員長 次に、大山昌宏さん。

大山委員 民主党・無所属クラブの大山昌宏でございます。

 本日は、質問の機会を与えてくださったことに、まず感謝を申し上げます。

 日本は、これまで、失われた二十年と言われる期間を過ごしてまいりました。経済は低迷し、社会は大きな閉塞感にさいなまれてきました。現在の社会の低迷には少子高齢化が大きな影響を与えていることは、一つの事実として間違いないことだと思います。そんな中、資源小国日本においては、常に未来を見据え、将来の日本を担う青少年の健全な育成を図っていくことは、国づくりの必須の課題であるというふうに考えております。

 私自身も、教育者としまして、十年ほど高等学校の方で常勤、非常勤講師として働いてまいりました。また、自分自身も学習塾を経営してまいりまして、小学生から高校生まで、さまざまな年代の子どもたちと接してまいりました。そして、国会議員となった今、よりよい日本を未来の子どもたちに残していきたい、そういった思いできょうは質問をさせていただきたいというふうに思います。

 本日は、福島大臣の所信に関連しまして、大きく二点、一つは、地域における教育、子育て、それから子供会の活動についてということです。そして二つ目は、社団法人青少年育成国民会議について少しお伺いさせていただきたいというふうに思っております。

 四月六日に、子ども・若者ビジョンの作成に向けたパブリックコメントの募集が内閣府で始まりましたが、現在の指針である青少年育成施策大綱を初め、内閣府、文部科学省の施策においては、地域における教育、言いかえれば地域で子どもを育てるということの御意義をどのようにお考えであるか、お聞かせください。

福島国務大臣 大山委員、ありがとうございます。

 子どもを応援するということは、子どものいる家族を応援するということの必要性もあるわけですし、また、その家族が存在する地域で応援する、直接子どもを応援したり家族を応援したりとあると思いますが、地域の中で応援する、地域の中で支える取り組みが極めて大事だというふうに思っております。

 一月に決定した子ども・子育てビジョンにおいても、例えば、商店街の空き店舗や余裕教室の活用、ボランティアの育成等による地域住民の力の活用など、多様な地域のネットワークを活用して、社会全体で子育てを支援することとしております。

 大山委員おっしゃいました子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針の骨子案の中でも、地域における多様な担い手の育成を重点課題としているほか、子ども・若者ビジョンに盛り込むべき施策の例として、子ども・若者を支える活動支援のための仕組みづくりを取り上げております。

 先日、兵庫県川西市に行きまして、子どもオンブズパーソンの取り組みも見学させていただきました。それは一例ですが、やはり地域の中で子どもの相談をどうやってやっていくか。いろいろな取り組みが日本全国でもありますし、総合的にそういうものをしっかり応援していく、地域で支える取り組みを重点的に盛り込んでまいりたいと思っております。

大山委員 ありがとうございます。

 本当に大臣のおっしゃるとおり、子どもというのは、学校とか家庭もありますが、地域全体で育てていくというのが本当に大切なことだというふうに認識しております。

 私自身も、本当に、子どものころ、学校から帰ると夜遅くまで友達と遊んで、暗くなって早く家に帰ってきなさいとか怒られるまで遊んでいたりしました。そしてまた、土曜や日曜になると、子供会を中心とした地域の活動、そういったところで楽しくいろいろなイベント、遠足やらお祭り、そういったものに参加させていただいて、楽しく過ごしたという記憶をしております。

 それはひとえに、やはり安心して安全に遊べる、そういった地域であるということが大前提で、それはやはり、大人たちによって見守られてそういった子どもが安心して遊べるのだ、成長できるのだというふうに思っております。

 今、少し関連でお話しさせていただきましたが、地域で子どもを育てるということに関しまして、積極的に活動している組織の一つに子供会というものがございます。国民の皆さんは子供会の存在を十分に御存じだと思いますし、もう今さら説明する必要がないぐらいのものだと思っております。

 そこで質問させていただきたいのですが、政府の考える子供会というものについて、どういった位置づけをされているのかというのを少しお伺いさせていただきたいと思います。

高井大臣政務官 御存じのとおり、社団法人全国子ども会連合会という会が、それぞれに、地域の子供会の指導者を育成したり、地域の子どもやいろいろな方々と連携しながら安全活動に対する事業を行ったり、いろいろな活動をしている団体でございまして、我々も、年齢が違う子どもたちが、地域と大人の力添えによって主体的、自発的に活動するというのは、すごく大事なことだと思います。

 私の娘も徳島で子供会に入っていて、私自身もこういう活動をしてきたことを今お話を聞きながら懐かしく思い出してまいりましたけれども、やはり鳩山政権が掲げる新しい公共の大事な概念の一つなんだろうと思うんですね。国が何か形を決めてこうしろああしろというよりも、やはり自発的に持ち上がってくる活動をいろいろな形で支援していく。そのために、やはり財政的なことも大変だろうと思いますので、いろいろな寄附税制の形とかも含めて、文部科学省としてももちろんこうした活動の価値をよく理解しておりますので、政府全体と一緒になって、できる限りの支援もしていきたいというふうに考えております。

大山委員 それに関連してですけれども、同じ子どもに関する施策で、放課後子どもプラン、具体的には放課後子ども教室ですね。文科省さんの所管だと思います。それから放課後児童クラブ、これは厚労省さんの所管になると思いますが、そういった放課後子どもプランと子供会というのはどういった形ですみ分けがされているのかという部分について、少しお考えを聞かせていただきたいと思います。

高井大臣政務官 私どもがやっています放課後子ども教室推進支援事業というのが御指摘のとおりございまして、子ども推進事業は市町村を実施主体としておりまして、学校の余裕教室などを活用して、放課後に地域住民の参加によって子どもたちに学習やいろいろな体験交流活動の機会を提供するという事業でございます。十九年度に事業をつくりまして、昨年度においては全国八千七百十九カ所で今実施されているところであります。

 子供会活動はまた、先ほど来お話あったとおり、週末等を中心に学校以外の場所において地域の方と連携しながらやっていくという活動でございまして、実施時間とか活動主体というのが子供会と放課後子ども教室推進事業とはちょっと異なるということであります。

 それに加えて、厚生労働省がやっております児童クラブなどもございますが、私自身の経験から見てもやはり重なる部分も多いと思いますので、今までは縦割りということもありますが、もっとやはり連携して、できるところは一緒になってやっていくということは大事だなというふうに改めて思っているところです。

大山委員 今御答弁にありましたように、少し整理をしないといけないのかな、そういったふうに思う部分もございます。

 子供会の立ち位置は、今御答弁にありましたように、文科省、厚労省の進める放課後子どもプランとは一線を画すものであるかもしれません。しかし、長年にわたって地域に根差して活動されてきた子供会というものは、地域で子どもを育てるということに関して核となる存在である可能性を持っていると思うんですね。それが少し十分に活用されていないのではないかと思われる側面もございます。もちろん、自発的な形で出てきたものでありますので、政府が積極的にという形のものではないかもしれませんが、そういう可能性があるものだというふうに思っております。

 政府としても、ぜひ子供会が地域における子育ての核となる可能性があるものとして把握をしていただき、それに対して何かそういった役割を担えるような施策も考える必要があるのではないかというふうに思います。

 しかし、ちょっと考えてみると、全国にある子供会の現状を考えると、いろいろ活動のレベルに差があると思うんですね。非常に熱心に活動されている子供会もあれば、それほど熱心に活動されていない地域もあると思うんです。そういった質が均質でないものに対して、例えば一律に補助金などの金銭的な支援をするというのはなかなか公平感に欠ける施策となってしまうと思いますので、そういった難しい状況を踏まえて、地域の子どもたちのために長年にわたって活動されている子供会を支えるような何か仕組みが現在あるのか、そして、もしあるのであればどういったものがあるのか、教えていただきたいというふうに思います。

高井大臣政務官 子供会活動、本当にさまざまです。なぜさまざまかといえば、本当に地域に密着しているからこそ、その地域の特性を生かした、お祭り等も本当に地域ごとにさまざまですし、学校そのもの自体、私もいろいろな学校を訪れてみて、最低限のいろいろ基準はありますが、それぞれに本当にさまざまな活動で工夫されてやっておられるというふうに思っています。

 子供会においても、今、団体数が約十一万二千団体もございますし、やはり十一万二千あれば十一万二千それぞれな活動をやっていると思いますし、自発的な活動をまさに支援するというのは、我々が掲げる新しい公共の概念からも、ぜひこれからより一層進めていこうという点は、お気持ちは本当に同じです。

 現在ある、我々がやってきた実際の助成の件数としては、子どもゆめ基金事業というのがございまして、子供会などの民間団体が実施する体験活動などに年間約二千二百件の助成を行ってきたところです。

 実際に、地域の子供会活動においては、平成二十一年度では約五十四件で三千万ちょっとということであったり、さまざまにこうした助成も行っておりますが、改めて補助金的に枠をかけて、こういう形でなければ支援できないというよりも、やはり地域でいろいろお金を集める活動であったり寄附税制であったりということと連携をとりながら、それぞれの自主的な取り組みを生かしながら、私たちもできるところを後押ししていくということで考えているところであります。

大山委員 今、子どもゆめ基金のお話が出ましたけれども、本当に支援が難しいという中、いろいろ工夫されて支援されて……(発言する者あり)そうですね、一律減額という部分はあるかもしれませんが、地域の活動に対してやはり支援していかないといけないと思う部分はあります。ただ、何でも一律にカットすればというふうではなくて、やはり一度立ちどまってしっかり考えていかないといけない部分はあるかと思います。

 その子どもゆめ基金ですけれども、今御指摘ありましたけれども、若干そういった問題があるかもしれませんが、さっきちょっとお話がありましたけれども、割合ですね、応募件数とそれから実際に通っている件数がもしわかれば教えていただきたいと思います。どのぐらいの応募数があって、活用がどのぐらいされているのかというところですね、そういったところも知りたいと思います。お願いします。

高井大臣政務官 子どもゆめ基金の応募件数ですが、二千八百三十三ありまして、採択件数が二千二百十八というのが現在のところでございます。

 子どもゆめ基金事業というのは、基金としては、ためていたお金を国庫に返還しますけれども、事業としては引き続き続けるということで、基金でお金がある上に、今までさらに一般会計から入れていた部分で、それをちゃんと分けまして、プールしていくけれども、きちんとそれは事業として、地域にやっていってもらった方は地域に戻すしという形でいろいろ仕分けをして、事業としては続けていくということで整理をしておりますので、御理解いただければと思います。

大山委員 本当に、件数の割合から見ると、比較的幅広くいろいろな方々に使っていただき、その地域の活動に役立てていただく、そういった基金であるのではないかというふうに数字の上からも今率直に感じられました。

 あと、せっかくこういうものが支援の体制としてあるのに、それが活用されていないというのは少し寂しいかと思うんですけれども、広報、告知に関しては、どういった形、例えばホームページとか、何か通達が行くようになっているとか、そういった部分があれば教えてください。

高井大臣政務官 もちろんホームページも使って広報しておりますし、学校等にもいろいろこうしたパンフレットを配ったり、教育委員会等を通じてこういうのがあるんだよということはできるだけ広めているところであります。

 やはり自発的な活動、もちろん子供会という会がありますが、そのほかにもいろいろな活動を自発的に国に頼らなくてやっているところもありますし、いろいろな形で私たちも広報ももちろんしていきますけれども、今まである取り組みをできるだけ政府として応援していくということの中に、もちろん財政支援もあるかもしれませんが、やはり、実際にやっている方々のできるだけ邪魔をしない形でやっていきたいというのが私たちの考えでございます。

 ぜひ委員も、またこうしたパンフレットもお届けしますので、広めていただければありがたいと思います。

大山委員 せっかくある仕組みをうまく活用していただけないというのも少し寂しいと思いますので、今お話にありましたように、もっと積極的に参加、応募していただけるような体制をとっていただければというふうに思います。

 あと、少し話題がかわりますが、青少年育成施策大綱の中で、NPO等の表記が数多く見られます。NPOというのは比較的新しい言葉で、やはり大綱の中等に盛り込むには見ばえがして、キャッチーな感じがする言葉かもしれません。

 ただ、ずっと長年にわたって地域で子どもを育てるということで活動されてきた子供会、それがもし重要な役割を担っているというのであれば、全国的にも、そして伝統的にも認知度の高い子供会ということですので、そういった子供会というような表記を、ぜひ大綱とかに地域の活動の中の一つの言葉という意味で何か盛り込んでいただけるようなことも考えていただきたいなと思っておりますが、その点に関してはどうお考えでしょうか。

泉大臣政務官 ありがとうございます。

 実は、NPOというのは、我が政権においては、ノンプロフィットオーガニゼーションですから、非営利組織全体を指すと。ですから、いわゆる特定非営利活動法人だけではなくて、まさに子供会も非営利であればNPOの中に入るんだという考え方でおりますので、そういった意味で、学校法人もあるいは社会福祉法人も広い意味ではNPOだというぐらいの認識で、NPOという言葉を使わせていただいているということでございます。

大山委員 ありがとうございます。

 非営利組織ということで一緒だということでありますが、子どもということであれば子育てということで、ぜひそこのあたりを意識していただければなというふうに思いました。

 子供会は、そもそも、地域をよくしようと自然発生的な発意で起こってきたものであるというふうに承知しております。思えば、ボランティアというよりも、地域に住む者としてその地域をよくするために活動するということはごく当然のことでありまして、皆さんもそのように活動されてきたと思いますし、私も含め、地域の人、皆さん今でもそうであると思っています。

 また、ボランティアという言葉が一般的でなかったころから、日本のある意味文化と言っても過言でない存在ではないか。そういったものとして続いてきた子供会を支えてきたのは、地域のボランティアの方たちです。そういった方たちは、純粋に地域をよくしたいという思いで活動されています。

 昨今、私の地元に近いところの愛知県の名古屋市でも、子育て施策がNPO等に外部委託される傾向にあり、行政の外注化が進んでいると思うんですけれども、多くのNPO団体はボランティア精神に基づいて運営されているかと認識しております。先ほども少し述べたんですが、子供会の自発性とは、NPOということと少し趣を異にする部分があるのではないかと少し懸念しております。やはり、NPOというのは運営に関して費用がかかるということもございまして、どうしてもビジネスの部分が出てまいります。お金をもうけるのが目的でないにしても、そういった団体の活動が、伝統的な地域に根差した子供会というような形とバッティングしていく可能性が今後あるんじゃないかなと少し懸念して、そして、逆に子供会が淘汰されてなくなってしまったとか、そういったふうになるのは少し寂しいなというふうに危惧しております。

 そういった点に関しても、やはり形だけの施策ということではなくて、子どもゆめ基金もそうですが、本当に子どものためになる施策というのはどういったものであるのかということについて、少し立ちどまってもう一度検証する必要があるのではないかなと思っております。

 私の育った地域でも、子供会の活動に熱心に取り組まれてきた方がおります。実は、私がこういった形で国政の場へ送らせていただくということをお知りになったときに喜んで飛んできまして、子供会のこういった冊子をくださった方がいるんですね。たくさんあるぞというふうにおっしゃっていただいたんですが、一部だけいただきました。その活動報告がございます。

 その中の一節を少し紹介させていただきたいんですが、この地域に住んで三十八年になり、その間、常に自分の住んでいる地域のことを考えて生活してきたような気がする、ほとんどの方も似たような気持ちであると思うとあります。

 こういった熱い方々の思いで地域の子供会の活動というのは支えられてまいりました。そういった人たちの思いに報いるべく、NPO等ということでしたが、もう少し細かい分類をして子供会というのをアピールしていくような、大綱にと先ほど発言させていただきましたが、何かそういった形で考えていただければなというふうに強く思っております。

 そして、少しお話がかわりますが、子供会以外にも、さまざまな形で地域の活動を支えている人たちがいます。先ほど高井政務官の方からもありましたが、健全な青少年の育成を目的とした青少年育成国民会議という社団法人もその一つでした。しかし、平成二十一年八月三十一日をもって上部組織である青少年育成国民会議が解散してしまったということですが、その経緯について少しお聞かせ願えますでしょうか。

泉大臣政務官 まさに委員御指摘のとおり、青少年育成国民会議が解散をいたしました。

 これは、昭和四十一年に結成大会が開催されて、その後、事務局が常設化をし、四十二年の九月に、公益法人として総理府所管ということで認可をされたわけですけれども、昨今、特に平成十年以降ぐらいから、いろいろ、補助金の見直しですとか事業の見直しがございまして、国からのそういった予算がどんどん削減をされていく方向になりまして、平成二十年度においては、補助金、そして国庫受託事業収入、両方ともがゼロになるという状況になりました。

 そういったことで、これまで割かし継続して受けていた案件も一般競争入札の中で受けられなくなるということで、事業の継続が難しくなって、そういう中で常設事務局を置くのが困難になってきたということで、解散に至ったというようなことでございます。

大山委員 それには実は下部組織がありまして、青少年育成都道府県民会議、それから青少年育成市町村民会議といったものが全国に存在して、地域の子ども育成のために御尽力されているということであります。

 問題は、今まで青少年国民会議の御指導のもと、いろいろアドバイス等をいただきながら活動されていた下部団体が、上部組織が突然なくなった。みんななくなればまだという部分があったと思うんですが、下部組織はまだ活動を一生懸命されているところが非常に多い。そういった中、御指導を受けるところ、アドバイスを聞けるところがなくなったということで、活動に支障が出ているやにお伺いしております。

 例えば、それにかわるものとして、内閣府の共生担当さんが担っていくとか、何かサポートをしてあげるようなことを考えていらっしゃるのか、少しお伺いさせてください。

泉大臣政務官 ちょうど昭和四十年ぐらいにこういった機運が盛り上がって、これは当時、校内暴力ですとか非行というものが随分クローズアップをされて、全国的な機運があったわけですね。しかし、やはり運動というものはそう数十年間同じ熱で続くということはなかなか難しくて、一方で地域に推進の会議体なり運営体ができてきて、委員御指摘いただいた観点も一部ありながら、一方では、全国からの御指導をいただいてやってきたというよりかは、各地域地域に根差してこれまた主体的にやってきた部分というのが相当あります。

 先日も、ある県の県民会議の皆さんとちょっと意見交換をさせていただいたんですが、連絡協議会的なものはやはりあった方がいいなと。しかし、国から一本で指令が出て、それに対して動くということではなくて、それぞれの中で主体的に動いているところもあるので、そういった自主性も尊重しながらやっていただきたいという中で、しかしながら、やはり全国的にいろいろと意見交換をしたり情報伝達をしたりというところは必要かなというふうに思いますので、ぜひ、我々共生社会の側としても、そういったことを支援していくということは取り組みをしていきたいと思っております。

大山委員 ありがとうございます。

 サポートがあるということで、少し安心をさせていただきました。

 若干傍論になるんですが、今回こういった形でいろいろ調べていく中で、文部科学省さんのホームページを拝見させていただきましたが、結構誤字とか情報更新なされていない部分が目についてしまいまして、例えば、子供会の部分だけでも会長は前会長のままですね。これは数カ月とかいう話ではないかと思われます。

 また、誤字で、涵養という漢字を酒養、お酒になっていたりと表記してあるものがありまして、また、日本青年館の部分でも、賜るが腸になって、内臓の方の腸ですね、腸るとか表記してあるものがあります。大量のコンテンツの中の一部かもしれないですけれども、やはり子どもたちをお酒で養っては大変なことになってしまいますし、本当に日本の教育の元締めである文部科学省さんのホームページがこういったことでは少し恥ずかしいと思いますので、そのあたり早急に直していただきたい、これは御要望ということでお願い申し上げます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、吉泉秀男さん。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 早いもので、初登院させていただいてから、もう七カ月たとうとしております。この間、先輩議員たちの大変真摯な討論も含めながら、すばらしい中身、毎日毎日感心をさせられているところでもございます。命を守る、まさに私たち生きていく上で一番尊厳しなければならない、そういう一つの大きな課題。このことに対して、まさにこの委員会においては、それを調査研究しながら、虐待、さらにはこれからの子どもたちのあるべき姿、このことについて、私たち、環境を含めてやっていかなきゃならない課題だ。そういうところに自分自身末席に置かせていただいている、このことに本当に喜びも感じているところでございます。

 福島大臣は所信で、いじめ、暴力の深刻化、児童虐待、有害情報のはんらん、これらに対応するため、各種施策を強力に推進する、こういう決意を述べられました。そして、きょうの質問の中においても、大臣の並々ならぬ決意、このことを随所に伺わせていただいております。

 先週の四月二日には第一回の子ども・若者育成支援推進本部が開かれ、子ども・若者育成推進大綱の作成方針が確認された、こういうふうに承知をしております。まだ骨格の段階でもあるだろうというふうに思っておりますし、具体的な施策が固まっていくのはこれからだ、こう思っております。しかし、今、子ども・若者をめぐる社会情勢が決して良好とは言えない。こういう今日の中において、これから出てくる子ども・若者ビジョン、このことに対して、大臣のカラー、福島カラー、このことを入れて、私たち国民にしっかり示していただきたい、こう思っているところでもございます。

 そういう意味で、大臣のこの考え方、さらには、どういうふうに持とうとしていくのか、大臣としての今の気持ちを率直にお伺いさせていただきたいと存じます。

福島国務大臣 吉泉委員、ありがとうございます。

 私は、子ども自身にももちろん問題があることもあると思いますが、やはり社会の状態、子どもを取り巻く環境が実に厳しい状況だというふうに思っております。

 この子ども・若者ビジョンをつくるに当たって、今までヒアリングもやったり、いろいろな方の意見を聞いてきました。メンバーの中に坪井節子さんという、カリヨンという子どもの家を、NPOで、みんなの寄附だけで賄って頑張っている弁護士さんがいて、児童養護施設を卒業した子どもたちが本当に行き場がなくて、そういう子どもたちのための家をつくっている。本当に一人一人の子どもたちの状況などを聞かせていただいています。

 子どもの貧困の問題も深刻ですし、本当に丸裸で社会に出ざるを得ない子どもたちや、それから高校、大学を卒業しても就職が困難、雇用の状況、虐待の問題、それからニートなどの社会的自立のおくれをどうしていくのか、インターネット上の有害情報のはんらんなど、子どもを取り巻く状況が極めて過酷である、厳しい状況にあると認識をしています。

 ですから、今度の子ども・若者ビジョンの作成に当たっては、もちろんすべての子どもを応援する、だから子ども手当や高校の実質無償化や、いろいろ取り組んでいるわけですが、やはり困難を抱える例えば外国人の子ども、外国人の問題もやっておりますが、日系人の子どもたちの環境もやはり大変なんですね。ですから、困難を抱えるいろいろな子どもたちを応援していくための政治の決意をしっかり示していきたいと思っています。

 五月に、国連の子どもの権利に関する委員会で、日本政府の子どもの状況についての政府の報告書の審査が行われます。ですから、日本国憲法及び子どもの権利に関する条約の理念にのっとって、子ども・若者の個人としての尊厳を重んじ、その意見を十分尊重すること、子ども・若者一人一人の状況に応じた総合的な支援を社会全体で重層的に実施していくこと、新しい公共ということもきょう随分出ておりますが、理念としてしっかりやっていきたいと思っております。

 子どもは本当に未来がある存在で、大人ももちろん大事ですが、子どもたちすべてを応援するための施策を子ども・若者ビジョンにしっかり盛り込んで、状況を変えていきたいと思っております。政治の意思をはっきり示していきたいと考えています。

吉泉委員 子どもは地域の宝、国の宝である、このことを言葉では私たち言います。しかし、今日の状況を見たときに、本当に子どもがすくすくと育てられる、そういう環境にあるのか、こういうふうに問いただしたときに、私たち大人としての多くの責任、そういうものがあるんだろうというふうに思ってもおります。

 私は今、子どもの虐待、このことについて相当心を痛めている一人でもあります。

 先般、池坊委員長の大変な取り計らいの中で、熊本の赤ちゃんポスト、この場所に行って、そして多くのことを学ばせていただきました。子どもを捨てる、このことはまさに子どもへの虐待そのものだ、こう院長が力強く私たちに教えてくださいました。

 少子化傾向がどんどん続く中で、子どもが大切にされなければならない、そういう時代にあるにもかかわらず虐待が起きる。今も、いたいけな乳幼児や児童が捨てられたり虐待を受けている、こういうふうに思うと胸が詰まってまいります。

 そこで、最近の子どもの虐待、なぜこの虐待が年々ふえていくのか。社会的ないろいろな動きもそれはあるだろうというふうにも思っております。しかし、自分のかわいい子ども、そういった状況を含めた虐待というものがなぜ起きていくのか。このことについて、大臣としての所見をお伺いさせていただきたいと存じます。

    〔委員長退席、園田(康)委員長代理着席〕

福島国務大臣 子どもの虐待について質問していただき、ありがとうございます。

 この衆議院の青少年特別委員会は、子どもの虐待に一番早く最も熱心に注目し、子どもの虐待防止法をつくり、改正を含めて頑張ってきたのがここの衆議院の青少年特別委員会ですので、その点も心から敬意を表します。

 私も弁護士として、実は、子どもの虐待の刑事事件を初めいろいろな事件を担当してきました。子どもの虐待をなくしたいと思いながら、むしろふえたり、相談件数や通報がとてもふえていること、実際亡くなっている子どもたちがいることは本当に残念です。

 一番安心できるはずの家庭の中で、とりわけ赤ん坊や小さい子どもが逃げ出せない状況で、一番信頼できるはずの親や家族から虐待を受けているということは、私たち大人がそのことを何としても根絶するための熱意と取り組みとそういう施策が本当に必要だと思っています。

 早期発見も必要ですし、児童相談所における相談機能、体制の整備強化、要保護児童対策地域協議会の設置促進など、全力でやってまいります。

 きょうも出ておりますが、妊婦健診から始まる地域での子育て支援も実は虐待防止に資するところはあると思いますし、保育所や学校を地域に開いていくこと、悩みのある親に対して保育所も含めていろいろ相談をできる、通報した後の大人のネットワーク、子どもがそこから漏れていかないように、地域の中でのネットワークで子どもを救援したり救済したり支援していくことをしっかりやっていきたいと思います。

 そのために、今度、子ども・若者ビジョンにおいてもそのための総合的な施策をしっかり打ち出してまいります。

吉泉委員 まさにこの委員会においては、調査をし研究もしながら、そして実践に移すというすばらしい委員会だろうというふうに私は思っております。自分自身、少し勉強もさせていただきますと、この委員会発議の中で児童虐待防止法が成立をした、さらには、この委員会の中で議論してここまで持ってきたことに対して、本当に敬意も表させていただきたいというふうに思っていますし、自分自身もこの委員会に籍を置かせてもらっていることについても誇りに思うのでございます。

 そうした中において、自分自身、団塊の世代でもございます。そして、最近始めたツイッター、インターネット、こういったところに自分に対しましていろいろな答えが返ってまいります。そうすると、時代が違うなというふうな、そういう思いも自分自身つくづく感じるところでもございます。

 よく、虐待には四つの種類がある、そういうふうに言われております。その中でふえてきているのが親の責任、いわゆる、子どもには必要な世話をしない、こういう一つ一つのところが積み重なって虐待につながっている、こういうふうに今指摘をされているところでもございます。

 私たちの小さなときについては、遊んだらおもちゃを片づけなさい、こうおばあちゃん、おじいちゃん、親から鋭く言われました。そしてまた、朝早く起きて、玄関の靴、そして掃除をしなさい、こういうふうにも言われました。そして、そのことをサボると飯を食わせない、朝飯を食べられなかった。こういう時代の中で自分は育ったのでもございます。そしてそのときに、腹がすいて、サボったことがちょっとまずかったなということで小さいながら反省をする、こういう記憶が今でも残っているのでございます。

 しかし、今、こういう親子の関係、さらには子どもが育つ環境、相当大きく変わったなというふうに思っております。すべてがそろう、そういう状況の中ですくすく育つ、しかし、その中において、親が子どもに物を何か言いつける、さらにはお願いする、こういうふうな部分もやはりあるんだろうというふうに思っています。そして、私たちの年代、こういうふうな状況というものについても、やはり私たちの団塊の中においても、親と子の関係、先ほど質問にもありました親子のきずな、こういうことが大事だ、こういうふうに指摘されてきたところでもございます。

 しかし、私は今、親と子どもの関係、そういうものがどんどんエスカレートしてくると、まさに虐待、こういった部分につながるケースが多くあるのでないか、こういうふうにも思っております。家庭教育、しつけ、こう言葉では言われます。しかし、自分の子どもとどう向き合っていいのかわからない、子どもの育て方がわからない、こういう親が今ふえているのも現実なんだろうというふうに思っております。

 そういう状況の中で、小さな虐待がどんどん大きくなってくる、こういう状況が今社会的な問題として出てきている段階で、文科省として、このような今の親と子の関係、さらには全体的な、虐待が起きてくる社会的な環境、こういった部分をどうとらまえているのかお伺いさせていただきたいと存じます。

    〔園田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

高井大臣政務官 昨今の虐待の数の増加には、本当に私どもも心を痛めているところでございます。

 もしかしたら、吉泉委員と若干認識は違うかもしれません。私はまだ、昭和四十六年生まれで、まさに今子育て真っ最中でございまして、虐待、もしかしたら、昔からいろいろな家庭があり、貧しさゆえにいろいろあったのかもしれません。しかし、昨今の問題は本当に、教育力の低下と言われますけれども、皆様方の世代においても、恐らく、子どもをどう育てるかということは正解は多分ないんだろうと思います。それぞれに愛情を持ち、社会に助けられ、いろいろな人に支えられ助けられ、何とか愛する子を育てよう、いろいろな形の生き方があるだろうと思います。

 私たち世代が子育てに悩んでいるのは本当に事実でございます。助けも必要ですし、今景気状況も悪くなっている中で、どうしても働かなくてはいけない、夫婦で一生懸命お金を稼いで、子どものために頑張らなくてはいけない親も出てきている。そして、その中でいろいろ、私自身もそうですが、悩みながら子育てをしております。

 改めて、あくまでも家庭教育は人生の出発点で、原点であるというのは基本に置きながらも、そうしたことを、親を追い詰めるよりも、社会で子育てをしていこう、助けていこうと。虐待というのは本当に犯罪である、児童の人権をじゅうりんする大変な犯罪であるということをまず国民皆さんに認識を強く持っていただき、万が一そういうおそれがあるというふうに感じた方がいれば、こうした我々どもの方や警察やいろいろなところに早期に連絡をするということも、ぜひ議員からも促していただきたいと思いますし、社会全体で子どもに対して目配りをしてほしいというふうに思います。

 文部科学省としても、もちろん、この間児童虐待防止法ができまして、厚労省や内閣府や警察とも連携をしながらいろいろな取り組みをしておりますが、家庭教育に悩む人に対する情報提供や相談対応、そうしたことはもちろんでございますが、そうしたことに応じてきてくれる方はまだいいので、応じてくれない方々にどう手を差し伸べていくかということも、積極的な取り組みの中で、家庭訪問をしたり企業を訪ねたり、いろいろな取り組みをしているところであります。

 また、家庭教育手帳等の情報提供も充実をさせていきたいと思いますし、これからも、悩みを抱える親御さんたち、それから子ども自身も、小学生、中学生、高校生からの直接の声を聞くことも、いろいろ努力をしながら、最大限、地域社会で連携をして、子ども一人一人、どのような状況に生まれようとも同じような、基本的な人権をきちんと守られる、安心、安全な生活が送れるということを保障していくべく努力したいと思っています。

吉泉委員 本当に、きずな、親子のきずな、地域のきずな、このきずなが今の社会的いろいろな面の状況の中で少し薄れてくる、自分自身もそのことについてすごく心配もしているところでもございます。

 そういう面の中で、やはり、さっき話していましたとおり、子ども、このことについてはまさに国全体でそれを支えていく、そういった部分というものがもっともっと強力に政策も含めて進めていかなきゃならない、こういうふうにも思っております。

 赤ちゃんポストの検証報告を読ませていただきました。その中で、十五歳未満の子どもたちからの相談もふえている、このことの指摘も検証報告の中で出されております。義務教育課程の小学校、中学校の子どもが何かの原因で妊娠、出産、こういう状況に追い込まれる。これは、単に子どもだけでなく、私たち大人が真剣に考えていかなきゃならない、こういう一つの課題だというふうに思っております。

 性教育、この言葉というものについて、自分自身も含めて少し抵抗がございます。親と子向き合って、性に対する会話、これはなかなか自分自身もできない一人でもございます。そういう面からいった場合に、私は、この性教育、学校現場での努力は大変なされている、そういうふうには思うわけでございますけれども、これを命の教育、こういうふうな形で呼んでいった場合にやはり違ってくるのでないか、こういうふうに思います。

 なぜ命が大事なのか、そして命という、そういう一つ一つ、その言葉だけでなく、はぐくんでいく心。中途半端な性という部分ではなくて、やはり、私たちのこの命、この部分の大事さ、人間の尊厳、そういうふうにいった場合に、こういう視点の中で小さいときから教えていく。さらには、親と子がふろに入った中でも、いろいろな中で、そこが性に対する、逃げないでしゃべっていかれる、会話が進む、こういう部分が出てくる。そういう部分も自分自身反省もしながらも、こういう言葉、こういった性というものから命というふうに変えていく教育、こういう部分が私は必要だ、こういうふうにも思っております。

 そうした面で、文科省が、性感染症予防の観点から性教育、このことを非常に強めてきて、そして成果が上がっている。このことについても事実であるわけですし、自分自身は今、大変大きく評価をしているところでございます。しかし、もう一歩、先ほどお話ししましたように、命を大切にする、こういう視点からの性教育、このことに対して、文科省の考え方をお伺いさせていただきます。

高井大臣政務官 大事な御指摘だと思います。

 性に関する指導、大変難しいところはあります。今この情報過多の中で、ともすれば子どもの方が間違った性の情報を先に得てしまっていて、教えるに当たり、すべて、そうしたごっちゃまぜの情報といろいろ子どもたちが混乱してしまうところもあるかもしれませんし、児童生徒が性に対して正しく理解し、適切に行動をとれるようにするためには、やはり学校だけでなく、本当に、おっしゃった家庭、お父様、お母様から、また兄弟から、いろいろな丁寧な形での児童の発達段階に応じた必要な情報を提供していく、指導していく、相談に乗っていくということがまず何よりも大事だと思っています。

 もちろん、性感染症とかの問題は本当に命にかかわることでありますし、女性も男性も、子どもであっても、自分の体を大切に扱い身を守るということ、まさに生きる力のそれは原点だと私は思っておりまして、性というのは、自分の体を守ることは相手の体も守ることなんだ、そういうことも含めて、やはり丁寧に教えていきたいと考えております。

 何よりも、やはり先生のそういう理解、現場の子どもたちに丁寧に命の教育を教えるためには、先生の質の充実、やはり人と人とですから、家庭の親と子どもの関係、先生と子どもの関係、そうしたことを、命に対する、温かいとか、しっかりした理解と尊厳を持ったいい教師を育てるということも、文科省として次のステップとして、今、教員の免許、充実の話もカリキュラムの話もセットでやっているところではありますが、御指摘も踏まえて、やはり、教えたときにわからなくても、ああ、あのときこうだったんだというふうな気づきが得られるような教育を充実していきたいと思っています。

 ありがとうございます。

吉泉委員 本当に、私たち、生まれてから他界するまで、人それぞれの人生、さまざまそれは違うんだろうというふうに思っています。しかし、精いっぱい悔いのない人生を送りたい、これはだれもが思うというふうに思っております。しかし、その時期の中で、いじめ、さらには虐待に遭う、こういうふうな状況になったときに、その人の人生が大きく変わってくる、こういう部分もあるわけでございます。そんな面では、やはり、社会的にそこをどう補っていくのか、こういった部分について大変重要だというふうに思っております。

 そして、今、統計的な数字を見ますと、特に一番キーポイントを握っております児童福祉司、相談件数はどんどんふえてくる、そして職員はなかなか配置ができない、こういう状況。さらには、虐待に関する相談というものは普通の相談よりも何十倍も時間がかかって苦労する、こういうことも明らかになっております。

 そういう状況の中で、私は、今の児童福祉司の増員も含めながらの自治体における一つのとらえ方、そういった部分も含めて、厚労省として、児童福祉司の増員等を含めた一つの対応策、このことについてどう今考えて取り組みをなされているのか、お伺いさせていただきます。

山井大臣政務官 吉泉委員にお答えを申し上げます。

 確かに、児童虐待の防止のためには、質の高い、専門性を有した児童福祉司の数を抜本的に増員していくことが必要だという御指摘は、まさに私たちも認識は共有をいたしております。

 子どもの保護者等からの専門的な相談対応や指導を行う職員としては、現在二百一カ所の児童相談所に配置されておりますが、平成十七年の児童福祉法の改正により、人口おおむね十万人から十三万人に一人という基準からふやしまして、人口おおむね五万人から八万人に一人というふうに基準は強化されたところであります。

 しかし、国や地方の財政状況が厳しい中、地方交付税措置の充実等を行いその数をふやして、平成十二年には一千三百十三人だったのが、平成二十一年、昨年の四月には二千四百二十八人に、一・八倍にふやしたところですが、それでもまだまだ追いついていない。標準団体、人口百七十万人当たりの児童福祉司数も、平成十九年には二十八人から平成二十一年には三十人にふやしておりますけれども、今後とも、さらにふえるように取り組んでまいりたいと思います。

吉泉委員 時間がなくなってまいりました。

 今答弁がありましたように、もっともっと私たちはこの点については強化をしていかなきゃならない、そういうふうにも思っております。

 児童虐待対策が本格稼働し始めたのは、日本において一九九〇年に入ってからでございます。決して、この対策、施策、歴史的には長いと言えない、こういうふうに思います。しかし、本委員会での法案、設置を含めながらこの間の動きを見た場合、児童虐待を含めた関連法案、さらには事業、そういったものの進展というのは非常に目覚ましいものがあるんだろう、こういうふうにも私は思っております。

 福島大臣を初め副大臣、そしてそれぞれ関係する皆さんの大きな活躍、そして私たち委員会も、それぞれ、地域の現状、さらには多くの課題、それをつぶさに点検をし、調査をし、研究をして、委員長を中心としながら頑張る、そういった部分も、自分の気持ちも込めまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 馳浩さん。

馳委員 自由民主党の馳浩です。よろしくお願いいたします。

 まず、「こうのとりのゆりかご」について質問をしたいと思います。

 まず、この施設の法的位置づけはどうなっているでしょうか。児童福祉法上、刑法上、適法でしょうか、違法でしょうか。

香取政府参考人 御答弁いたします。

 熊本市の慈恵病院に設置されました「こうのとりのゆりかご」でございますけれども、お子様を病院に置くという行為については、これは一応、遺棄に当たると考えておりますが、施設自体につきましては、病院内に設置されていること、それから、置かれた子どもさんにつきましては、生命身体の危険が生じないような措置が講じられているということから、私どもとしては、設置そのものが直ちに児童福祉法に違反するものではないというふうに考えております。

馳委員 現地視察でも、熊本県、熊本市当局の説明では、命を救えるのであれば直ちに違法ではないという政府の見解と受けとめておられました。

 違法ではないというだけであって、適法であると真っ正面から位置づけることはできないということなんですね。したがって、法的な位置づけが必要だと私は思いますが、大臣、そう思いませんか。

福島国務大臣 確かにこれは違法ではないわけで、私も、この「こうのとり」の報告書を読んで思ったんですが、本当に皆さんが人道的な観点から始められて、ただ、やはり、本当はこういうものはなくなった方がいい、そういうものがない社会をつくりたいと思って、本当に人道的な観点から努力をしていらっしゃるのだというふうに思っています。

 ですから、政府の見解は違法ではないということなんですが、適法か違法、私も、これはもちろん違法ではないと思います。でも、本当は、こういう「こうのとりのゆりかご」がなくなる社会を政治としてはつくっていかなければならないというふうに思っております。

馳委員 大臣今おっしゃっていただいたんですが、政府として、「こうのとりのゆりかご」は歓迎すべきではない施設と考えているのか、それとも必要不可欠な施設と考えているのか、あるいはやむを得ない施設として、黙認をし、設置者に感謝をしているのか、どうお考えですか。

福島国務大臣 そうですね、二と三の間ぐらいでしょうかね。

 私は、これを読みまして本当に、やっていらっしゃる方たちの人道的な思いとその努力、それからその後のフォローも含めて、頑張っていらっしゃるというふうに思っています。ただ、こういう状況は子どもにとってもいいわけではないわけで、それがなくなるために政治は努力をすべきだというふうに思っています。

 ただ、私自身は、やむを得ないということに近いのですが、子どもがよく新聞の記事などでも、生まれたばかりの赤ん坊が捨てられているとか、むしろ、亡くなっているという新聞記事に非常に心を痛めて、生きていて、だれかのもとに引き取ることができれば、その赤ん坊は本当に大事な命を全うすることができるわけで、とにかく赤ん坊の命を救いたいというのも私自身は非常にあります。ですから、やむを得ないというよりも、今の日本の現状では必要とされているものでしょうが、本当だったら、それはなくなるようにと思います。

 日本の社会で生まれてきた子どもが、その命をきっちり生かして生きるような社会を全力でつくっていきたいと思います。

馳委員 現実を見ると、「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもを、地元自治体もできる限りのその子どもの育ちの支援をしている現状があるので、何か対応できないか、ここが、私たちが視察をしてきたときにいただいたお言葉だったんですね。

 では、厚生労働省の香取さんに聞こうかな。

 「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもを、法的にどのような立場の子どもとして位置づけていますか。

香取政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には、お子様は親御さんがそこに置いていかれたということになりますので、冒頭申し上げましたように、親御さんが子どもを置いていく行為は基本的には遺棄に当たりますので、ぎりぎりどうかと言われれば、虐待の一形態のネグレクトに当たる可能性が高いと考えております。

 一応、お子様については、遺棄されたお子さんということでお引き取りをして、基本的には、そういう意味でいいますと、親御さんがいらっしゃらない、あるいは不明の子ということになりますので、通常は、社会的養護の範疇の中で国としてきちんと面倒を見る。ですから、通常は、一定期間あった後は、県において乳児院なり、しかるべき施設に措置をしてお預かりするということになります。

馳委員 やむを得ず、そういうふうな法的な位置づけをして対応をしていただいているわけですよね。

 そこで、児童虐待防止法におけるネグレクトの一類型と判断することが必要ではないかな、そして児童福祉法上、緊急避難・一時保護施設という位置づけをこの「こうのとりのゆりかご」に与えることが妥当ではないかなというふうに私は現場を視察して思いました。

 それで、ちょっと法律をひっくり返してみたんですね。私、今から読みたいと思います。

 まず、児童虐待防止法第二条、ここにネグレクトの規定がありますから読みます。「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」。ここで育児放棄というふうな読み方をし、私は余り遺棄という言葉がなじまないかなと思うんですよ。なじまないかなというのは、まさしく匿名性だからなんですね。ここなんですよ。

 そこで、私は第三条のところを引っ張ってきたらいいのかなと思っているんです。第三条を読みますね。「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。」。実は、児童虐待防止法をつくるとき、第二条と第三条では、これは相反する考え方なんですよ。当たり前ですよね。第二条、児童虐待の定義では、保護者はこういうことをしてはいけませんよと言っておきながら、第三条で、何人もと。

 つまり、社会どこにいても子どもは、だれであっても子どもを虐待してはならないよという文言をあえて入れたわけですよ。まさしく児童の権利利益の擁護という観点に照らせば、社会全体、虐待というのはいけませんよという規定はやはり必要だよなということでここに入れたんです。したがって、この赤ちゃんポストが匿名性も許されているということを考えると、何人も規定を引用することによって対応できるのではないかな。

 そこで、児童福祉法の第十一条と第十二条を私はもう一度読んでみました。第十二条第三項、「児童相談所は、必要に応じ、巡回して、前項に規定する業務を行うことができる。」。ここには、「(前条第一項第二号ホに掲げる業務を除く。)」とあって、そのホの業務というのは、「児童の一時保護を行うこと。」なんですね。これはできない。

 でも、ここは、私が先ほど申し上げたように、緊急避難・一時保護施設という位置づけをした方がいいのではないかな。したがって、この一時保護の上に緊急避難ということを書くとすれば、第十二条の四、ここを読みますと、児童の一時保護施設とあって、「児童相談所には、必要に応じ、児童を一時保護する施設を設けなければならない。」。この一時保護施設の緊急避難場所という位置づけを持ってくることによって、何とか、こういった「こうのとりのゆりかご」の法的な位置づけをする。

 何で私がここにこだわるか、大臣、わかりますか、法的な位置づけが必要だというのは。

 先ほど香取さんもおっしゃったように、ここに預けられた子どもはその後どうなるかというと、親が当然判明しない場合があるわけですよ、匿名性を認められていますから。そうすると、施設に預けられたら措置されますから、国が二分の一、自治体が二分の一、お金を使うことになっていますよね。この措置費というのは、結構、自治体にとっては負担が大きいはずなんですよ、ふえていますからね、今。

 それを考えると、できる限り法的な根拠を用い、国としての関与を強めた方がよいのではないか。熊本県の方も、熊本市の方も、あるいは医療法人慈恵病院さん、理事長さんも、中途半端なままにしておくことは子どもにとってよくないのではないのか、加えて、やはり負担が大きいので、これは対応できないものだろうか、こういう悩みをおっしゃっておられました。だから、法的な位置づけ、根拠を設けるべきであり、やはりこれに取り組むべきではないのかなと私は思ったんですよ。

 これは、まず香取さんにお伺いをした後、大臣に、私が今申し上げてきたことについての見解をお伺いしたいと思います。

香取政府参考人 お答え申し上げます。

 「こうのとりのゆりかご」に関しましては、私どもも内部で大分議論いたしまして、なかなか議論が難しいなと思っているわけでございますが、今先生お話ありましたように、匿名で預けることができるというところをどのように考えるかということになろうかと思います。

 これは熊本県の方の報告書の中でも出てくるんですが、匿名で預けることができるということは、預ける側にしてみますと、自分がそういう行為をしたことを人に知られることがないということで、もしかしたら、そのまま行けば虐待に行ったようなケースをそこで救うことができるという面があるわけですが、他方で、いわば子どもにとってみると、出自のわからない形でだれかに預けられるということに結果的にはなるわけで、そういう、何といいますか、いい面もありますが、メリットのない面もあるということがございます。

 一時保護施設は、今先生が条文をお読みになっていただいたように、行政の側で、虐待その他、問題があった子どもを保護して入れる、行政の方でそういう判断をして引き取るという形になるものですので、今のような形で、匿名のままで預けることができて、いわば受け身で行政側が引き取るものを一時保護施設、緊急保護施設というふうに位置づけてしまうと、預け入れを助長する危険があるという議論が一方でありますので、今のままの議論で一時保護施設にしてしまうというのはなかなか難しいのではないかと考えております。

 もう一つは、今回のケースでいえば病院でお預かりをするわけですが、私どもとしては、先ほどから先生もおっしゃったように、そういうことがないようにする努力をするということを前提として、現実にそういうふうにお預かりした子どもについては、できるだけ速やかにきちんとした措置をして、保護をして、お預かりをするという取り扱いを基本的には県の方とも相談してやっております。

 なお、費用負担に関しましては、一時保護で預かった場合でも、措置で入れた場合でも、国二分の一、自治体二分の一という費用負担は同じ形になってございます。

福島国務大臣 今、香取さんの説明を聞きながら、それは非常に納得できるところなんですが、多分、馳委員の御質問は、冒頭から、これはどういうふうな立場で見ているか、だから、この「こうのとり」を法的にどう位置づけるか、それと子どもの将来ということがやはりリンクしているんじゃないか。

 今の話ですと、費用は二分の一、二分の一で変わらないけれども、どうかということでいいますと、今後の課題ですが、確かに、今、厚生労働省から説明がされたとおり、緊急避難的に一時保護が必要だと思って引き受けた場合と、親が匿名で預ける場合と、それはちょっとは違うだろう。多分、厚労省がそこで踏み出さない大きな理由は、やはりそういうのを助長したくないという思いがあるのだと思います。

 ただ、「こうのとり」の果たしている役割は、とにかく今現在であることと、それはやはり、物すごくふえることがいいとは全く思わないが、必要とされるからやむを得なく存在しているということは事実なので、それについての法的位置づけや支援については、子ども担当大臣としてしっかり考えていきたいと考えています。

馳委員 香取さんの説明は本当にわかりやすく、そのとおりだと私も思いますし、同時に、政治家という立場で大臣がおっしゃったことも、私は全くそのとおりだなと思いました。助長してはならない、けれども現実としてある、ではどうしようか。費用負担は、今のところ、ちゃんと、国、県、二分の一ずつ出しているからいいじゃないかでは済まないところがやはりあるよなと。

 そこで、私は、池坊委員長に提案をしたいと思います。

 「こうのとりのゆりかご」を国会としても見て見ぬふりをしてはならないと考えます。そこで、青少年特別委員会の理事会において、法的位置づけや制度上の支援、予算措置も含めて、バックアップをするための協議をするプロジェクトチームを組んでいただきたいと思います。

 この青少年特別委員会においては、児童虐待防止法を議員立法として成立させ、二回にわたって改正をし、国家として、適切に対応してまいりました。その伝統を引き継いで、池坊委員長の指導力を発揮されるよう求めるものであります。

 池坊委員長の見解を求めます。

池坊委員長 馳浩さんの今の御提案は、大変大切な問題をはらんでいると思います。委員長としては、しっかりと受けとめ、理事会で真摯に検討したいと思います。

馳委員 ちなみに、「こうのとりのゆりかご」に預けられた乳幼児の親権問題はどのように整理されているでしょうか。匿名性を担保している以上は、出自の確定と、それに伴う戸籍の書きぶり、そして親権の適切な代理行使は重要な問題だと思います。現状をまずお伝えいただきたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 「こうのとりのゆりかご」に預けられたお子様のように、出生届の届け出義務者が不明である場合には、そのような子を発見した旨の届け出が市町村長に対してされます。したがいまして、市町村長におきまして、その子に氏名をつけまして、それから本籍を定めて、発見された場所等を調書に記載し、その調書の記載に基づきまして戸籍が記載される、こういうふうになっております。

 このようなお子様につきましては、養子縁組がされたり、あるいは未成年後見人が選任されることがございます。養子縁組がされますと、養父母が親権者となります。未成年後見人が選任された場合には、未成年後見人は親権者と同一の権利義務を有する、こういう整理になっております。

馳委員 法務省、原さんにもう一回聞きます。

 未成年後見人には個人しかなれないんですか、法人はなれないんですか。

原政府参考人 お答えいたします。

 現行民法におきましては、未成年後見の場合には身上監護が主な任務ということになっておりますので、法人は後見人にはなれないという現状でございます。

馳委員 ここは私は問題ありと思っています。

 個人がなる、これは司法関係者がなるのかな、あるいは、充て職で首長がなるということはまずはないですよね。そうすると、法人という言い方は、例えば児童相談所なり児童養護施設の所長なり、やはり子どもの監護また養育に責任を持つ方が、私は充て職という言い方は余り使いたくないんだけれども、法人という形で、責任を持った施設の代表者がなるということで、法人として未成年後見人になるという道が開かれてもいいんじゃないかなと思うんです。こういう議論は今までもあったはずだと思うんですが、現行どの程度まで議論が進んでいますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたように、現行制度のもとでは法人が未成年後見人になれないわけですが、この未成年後見人の引き受け手がなかなか確保できないという問題もございますので、法人による未成年後見を認めるべきではないかという御意見がございます。この点につきましては、未成年後見制度の趣旨や未成年後見人の確保の実情等を踏まえまして、法制審議会において検討が行われるものと承知しております。

馳委員 検討はいつから行われるのですか。いつまでに結論を出すのですか。

原政府参考人 児童虐待の防止等の関連で、親権制度の見直しの議論が今法制審議会で始まっております。親権制度の見直しにつきましては、改正法の附則の規定によりまして、三年以内に必要な見直しをするということになっておりますので、来年の三月までには、必要な調査審議を法制審議会でしていただいて、その中でこの問題についても方向性を出していきたい、こういうふうに考えております。

馳委員 大臣、今お聞きいただいたとおりなんですよ。平成二十年に改正案が施行されて、三年以内に見直し、そこに親権のあり方、そして未成年後見人の、今は個人しかできないけれども、法人も未成年後見人という役割を与えられていいんじゃないか、ここまで議論が進んできているんですね。したがって、今後一年間、法制審議会の議論にもなり、最終的には法務大臣なのか、当然、厚生労働大臣や福島さんにも、やはり検討の一員として議論がされると思います。

 未成年後見人は法人も対象としないといけないのではないか、こういう議論についてどうお考えですか。

福島国務大臣 法制審議会で今議論中ですし、親権の制限については、以前から馳委員もこの点については非常に熱心に、この問題についても協議をしたり発言をされていることは承知しているとおりです。

 私は、親の親権については、ここまで児童虐待が進んでいる中では親権も万全ではなくて、何らかの制限、今よりも制限をしてもいいと実は個人的には思っております。

 ただ、未成年後見の点が法人も可能かどうかについては、例えば法人にどういうものがふさわしいか、あるいは、個人ですと個人で判断、未成年後見できるわけですが、法人ですと、その意思決定をどうして、子どもの利益を最善にするときにその法人がベストを尽くせるのか、例えばそこの中での議論が適切に行われるのか、またそういう問題もありますので、子どもの利益を最善に保障するという観点から、法人も後見人になれるかどうかについては、私自身もまた研究しますし、法制審議会の議論を見守りたいと思っております。

馳委員 おっしゃるとおりだと思います。

 また、いわゆるその子どもが置かれている、後見人を必要とするような環境にもよると私は思いますし、今現在は個人だけですが、法人としてそれが未成年後見人としての役割を果たせるのかどうかという現状も踏まえて、法制審議会での議論を深めていただきたいと期待を申し上げたいと思います。

 さて、次に、また大変難しい質問を大臣にいたします。

 「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもが成長したときに、どのように自分の出自を理解させるかは大問題です。大臣の見解を伺います。

福島国務大臣 それは、子ども子どもに応じてやはり丁寧に、あなたは、本当にこの社会の中で喜んで迎え入れられて、幸せになる権利があるのだということをしっかり伝えることが大事だというふうに思っております。

 おっしゃるとおり、その出自に関して、私はどこから来て、パパはだれでママはだれなのかというのを子どもが知りたいと思う気持ちはよくわかります。御存じのとおり、世界の中では法制は実にさまざまです。スウェーデンの親子に関する法律では、人工授精などを受けた場合に父親を知る権利を子どもに保障している。ちょっとスウェーデンはほかの法制とは随分違うというふうに思っております。アメリカは、御存じ、人工授精については親との関係を切断して検索ができないようにしているのと、アメリカとスウェーデンは対極にあると思います。

 ただ、私は、いろいろな、映画にもなっておりますが、子どもが、自分はどこから来て、自分は何者で、父親や母親を知りたいと思う気持ちは、人間として実は根源的にあるんじゃないかというふうにも思っております。でも、大事なことは、いろいろな子どもがいますから、その子どもにとって、あなたが幸せになる権利があって、みんながあなたの幸せを願っているということをきちっと伝える中で、どういう形で預けられたのか、父親、母親を明らかにすることも、その父親、母親と相談の上、丁寧になされるべきだと思っております。

馳委員 次に、「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもには、子ども手当は出せますか。

香取政府参考人 お答え申し上げます。

 現行子ども手当、四月一日から施行しております子ども手当法では、子ども手当は、子どもを監護しておられる親御さんあるいは監護者に出る、お支払いをするという構成になってございますので、今問題になっておりますように、「こうのとりのゆりかご」に預けられたお子さんは、親が不詳、いらっしゃらない、現実に子どもを監護している監護者がいない形になりますので、子ども手当の支給すべき対象者がいないということになりますので、子ども手当は支給されないことになります。

 これは国会等でも議論になりまして、そういった方々に対しては、別途、安心こども基金から、お預かりしている施設に対して一定の、子ども手当に相当する措置を講じるということで考えてございます。(福島国務大臣「委員長、ちょっと一つだけ修正させてください」と呼ぶ)

池坊委員長 福島国務大臣。

福島国務大臣 済みません。

 スウェーデンは、親子に関する法律ではなくて、スウェーデンの人工授精に関する法律です。訂正いたします。

馳委員 厚生労働委員会の議論を私は聞いていたんですけれども、どうなんでしょう、未成年後見人とか親権代理者等が明確である場合には、素直に出した方がいいんじゃないですか。だめですかね。香取さんにもう一回聞きたいと思います。

香取政府参考人 現行法制の考え方を前提に申し上げますと、当該お子さんの生計を維持していて、監護をしているということがありますので、実際にそういう形で監護をしている、あるいはきちんとお子さんの生計を見ておられるということが要件ということになりますので、例えば、法定代理人が財産管理についての一定の権限を持っているという構成をとったとしても、現実に監護しているという構成がとれないとすると、なかなかお支払いすることはできないと思います。

 考え方を全く変えて、子どもがもらうという構成をして、子どもの財産管理を例えばどなたかが立ててという構成をとると可能ですが、その場合ですと、これは一般的に、ゼロ歳の子どもから含めて財産というか手当の管理をどうするかというちょっと別の問題が発生しますので、お子さんに出すという構成が、恐らく日本以外どこの国もそうですが、なかなか難しくて、親御さんに出しているという構成をとっているとすると、法定代理人だということでお支払いをするという構成をとるのはちょっと難しいのではないかと思っております。

馳委員 何か余り難しく考えない方がいいんじゃないかなと私は思うんですよ。

 先ほどから申し上げてきた親権の中には、身上監護権と財産管理権がある。その財産管理権を、「こうのとりのゆりかご」という施設に預けられた子ども、その財産管理権を持っている人、そして当然、監護している人、代理、代行している人が素直に受け取るようにしておけばいいだけなんじゃないですか。そういう法的整理をすれば素直に出せると私は思うんですが、そうはならないんですかね、香取さん。

香取政府参考人 そこはやはり、例えば親権の制度を見直して、一定の、親権に相当するような義務と責任を持つ、そういう資格とか持たれる方を用意して、その方が現実に監護と生計維持をしているという構成をとるような形をつくって、いわば、まさに親御さんのかわりの義務と権限を持っている方を立てるという構成までとって、実際にその方がやっているというところまでいくと、今でも親御さん以外でも、おじいちゃん、おばあちゃんでも面倒を見ておられれば出すという構成がありますので、そういった前提条件が整備されればそういう議論はあり得ると思いますが、今の法制を前提だと、やはりちょっと厳しいのではないかと思います。

馳委員 今、あなた、親権について義務と責任とおっしゃったんですね。親権には責任という概念がありましたか。権利と義務の関係じゃなかったでしたか。弁護士さん、ちょっと。

福島国務大臣 親権は、権利と義務です。ただ、義務の中にも責任が入っているというふうにも思いますが、権利と義務ですね。

馳委員 では、香取さん、もう一度お願いします。

香取政府参考人 申しわけありません。ちょっと言い間違えまして、権利と義務でございます。

馳委員 あえて言葉じりをとらえて言うんじゃないんですが、僕は、親権を考えるときに、義務と責任という考え方も概念として必要なのではないかなと。言わんとするところは、親としての責任を果たしていないのであるならば、その事実を家庭裁判所において審理、審判をし、親権を段階的に制限していくという考え方なんですよね。

 こういう考え方を法的にとっている海外の実例がもしありましたら、民事局。

原政府参考人 お答えいたします。

 委員が今お話しの件は、親責任というお話だと思います。

 私どもが承知している範囲内では、イギリスでは、一九八九年の児童法におきまして、親責任という概念を規定しております。これはどういうふうに規定されているかといいますと、親が子及びその財産との関係で法に基づいて持つすべての権利、義務、責任及び権限を意味する、こういうことが規定されております。

馳委員 では、原さんにもう一回聞こうかな。

 我が国の法制度の中で親責任という概念を持っている法律というのはありますか。

原政府参考人 私どもが所管しております民法におきましては、先ほどお話が出ていましたように、権利と義務という表現が使われております。ただ、親権には義務的な側面があるということと、親権行使には児童の権利利益と整合的でなきゃいかぬ、こういう観点から、平成十九年の児童虐待防止法の改正におきまして、「児童の親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するものであ」る、こういう「責任」という言葉が初めて使われたものであります。

 そういう意味で、親権には義務のほかに責任の側面もあるということが我が国の法制においても確認されていると考えております。

馳委員 この平成十九年の法改正のときに、我が国の法制度上初めて、親としての責任が一義的にあるということがうたわれたんですよ。なぜだと思いますか、大臣。

福島国務大臣 子どもにとって、第一義的にその養育の責任を負っているのが親だからだと思いますし、権利と義務という中に、私、個人的には義務の中に責任も入っているだろうというふうに思っていたわけですが、第一義的責任を持つというふうにすれば、やはり子どもにとって第一義的責任を持つのは親であって、その自覚を持つべきだし、そういう支援もしなければならないという意味で、よりはっきりしたのだと思います。

 責任を果たしてほしい、責任が果たせなかったらどうするかという問題が次に出てくるわけで、児童虐待防止法が、責任を持つべき親が虐待をするというところを重く見ているのだと思います。

馳委員 では、この平成十九年の法改正のときに担当していた高井政務官に伺いたいと思います。

 なぜ親としての責任を第一義的に親が有すると書き込んだんですか。

高井大臣政務官 福島大臣がお答えなされたとおり、第一義的に親に責任がある。それが今までの法制度の中でなかったということで、あえてここをきちんと明確にしようということで、立法者の意思としてお書きになられたものではないかと思います。

馳委員 お書きになられたんじゃなくて、あなたも参加をして一緒に書いたんですから。

 ここは、大臣、私たちもそうなんですよ。児童虐待防止法なんという法律、つくりたくなかったですよ、児童福祉法のこんな横出しの法律なんて。でも、二〇〇〇年に、当時、チャイルドライン支援議員連盟の皆さんがばたばたとおつくりになった。積み残しがあったので二〇〇四年に改正をし、またさらに積み残しがあったので平成十九年に改正をし、こういうふうに来て、また今回、親権の問題がまだ積み残しがありますし、社会養護の体制もまだ十分ではありませんねということで、池坊委員長もこの間携わってこられたので、「こうのとりのゆりかご」等の諸問題について整理しましょうよ、こういうふうな流れになってきているんですね。

 したがって、先ほど原さんからおっしゃっていただいたイギリスの親責任の問題、多分ドイツにもこういった法体系があったと思います。当時、私たちも勉強させていただきました。権利と義務の関係は重要だと思います。

 同時に、一義的に親としての責任を果たしていない、では、だれがそれを判断するのか。それは、恐らく児童相談所の方々とか、あるいは、司法に持ち込まれた場合には家裁の審判にゆだねられることになろうと私は思いますよ。

 したがって、親としての責任を果たしているかどうかということについて、今後、法的に議論の一つの一里塚としていかなければいけないんじゃないかな、そういうふうに思っているということをまず申し上げたいと思いますし、先ほど委員長が、この青少年問題特別委員会の理事会で、今回の「こうのとりのゆりかご」ばかりではなく、万般にわたって意見を積み重ねて、法改正も視野にしていただけるというふうにおっしゃっていただいたので、親責任のあり方についても私は期待したいと思いますし、その責任を果たしていない以上、段階的に親権も制限されていくというようなことはやむを得ないと私は思います。

 次に、「こうのとりのゆりかご」について最後の質問にしますが、ここに預けられた子どもが十八歳を過ぎたら、どうやって自立させますか。それこそ、この責任は社会全体にあるものと考えます。いかがでしょうか。

福島国務大臣 それはおっしゃるとおりです。児童養護施設を卒業した後、大学に行く子どももいらっしゃいますが、その数は、御存じのとおり、まだまだとても少ないです。ですから、この社会の中で、親がいればいいんだけれども、そうでない、真っ裸で社会に出なくちゃいけない子どもたちが多いことも理解しておりまして、この「こうのとり」の、巣立っていく子どもたち、それから、児童養護施設やそういうところで社会に出る子どもたちへの支援を強化しなければならないと思っていますし、その立場で頑張ってまいります。

馳委員 これは、「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもばかりではなく、児童養護施設に在籍する子どもすべての問題であります。

 これは質問通告してあったと思いますが、地方自治体ごとに、こういった児童養護施設を十八歳で出なければならない子どもたちについて、具体的にいろいろな支援メニューが取りそろえられているはずなんですね。もしそのメニューがありましたら、実例等もお知らせいただきたいと思います。

香取政府参考人 養護施設から十八歳で出ていかれるお子様たちにつきましては、まず、国の制度としては、進学に際しまして、大学等進学支度費ということで、約七万七千円の加算をいたしております。国として、就学支援の加算、それから支度金というのを出しておりますけれども、それ以外に、国のそういった基準に加えまして、各自治体でそういった加算でありますとか、あるいは、外へ出て御自分でアパート等を借りる場合の敷金、礼金の支援でありますとか、そういったものをしていらっしゃいます。

 今ちょっと言いかけましたが、国の支度金が七万七千円なんですが、例えば、神奈川県ですとこれに二万八千円の加算をする。あるいは、福岡市ですと四万五千円の加算をする。あるいは、神奈川県は同様に、家賃補助ということで、敷金、礼金の支援ということで十二万円程度の資金を出すというような形で、それぞれ国の施策に上乗せをしたさまざまな手当てをしてくださっております。

馳委員 これは、本人の立場になってみましょうよ。十八歳になったら、残念ながら、法的に外にほうり出されてしまうわけですよ。

 では、泉さんに聞こうかな。あなたが十八歳になったら家を追い出されて、何もなく、自立するとしたら、何があればいいなと思いますか。

泉大臣政務官 それは、やはり最初は衣食住を整えなければいけませんので、住む場所、そして着るもの、食べるものという意味での最低限の生活費。その後に、職を見つけなければいけないなというふうに思いますので、仕事先。また、その仕事先を見つけるに当たってのいろいろな準備も必要だというふうに思いますので、そういったものからまず必要になるのかなというふうに思います。

馳委員 やはりそうですよね。仕事ということを考えたら、資格。資格の第一歩は運転免許かな。あるいは、専門的な職業につくのであるならば、理容、美容、調理人、あるいは介護等、そういった資格を取れるような専門学校あるいは大学等への進学もしたいところですよね。しかし、どの程度の財産を持っているのかということを考えれば、先ほどおっしゃったような七万円とか、あるいは十万円とか二十万円で済む話じゃないというのは、これはだれが考えてもわかりますよね。したがって、十八歳を過ぎて社会にほうり出される前段階というのは必要ではないのかなというのが私の指摘なんですよ。

 香取さん、あなたが、もし、十八歳を過ぎて、高校を卒業してほうり出されたらと思いながら、ちょっともう一度、こういう支援がさらに必要だと思いますと答弁してくださいよ。

香取政府参考人 なかなか立場上答弁しにくいのでありますが。

 先生御案内のように、自立支援ホームというのがございまして、十八歳で卒業した後のお子さんたちの自立の支援をしている施設がございます。私も幾つか回ってお話を聞いたんですが、私ども、先ほど申し上げたように七万七千、あるいは親御さんがいらっしゃらないと二十万円近いお金を出しているんですが、実は、金銭的な支援のほかに、アパートを借りる、あるいは、就職するときにやはり身元保証をしてくれということを結構言われて、残念ながら、そこはきちんとした制度上の手当て、先ほど来未成年後見の話もございましたが、実は余り手当てがされていなくて、現実には、養護施設の施設長さんですとか、そういう方が個人で保証して子どもを出していく、あるいは自立支援ホームの方がそういった形で保証するという形になっております。

 それについては、私ども、何か事故があったときの損害保険のようなものに入っていただいて、それに助成をするということをとっておりますが、実際は、今の日本の社会ですと、今、アパートを借りるにも身元保証人が要りますので、実は一つはそういうことがもうちょっと本当は必要なのではないかというふうに思っております。

馳委員 そうなんですよ。私、実はここに結びつけたかったんですよ、さっきの未成年後見人制度の話も。

 個人には、今香取さんがおっしゃったようなことは物すごく負担がかかるわけですよ。そうした場合に、法人として責任を持ちますよというふうな、まさしく未成年後見人制度でありますから、これは、十八歳で出た後、十九、二十、まあ二年間のことかもしれませんが、この二年間というのは自立に向けての助走期間として極めて重要な期間だと私は思うんですね。私は、そのことを実は指摘したかったんですよ。

 大臣、そのことの関係でありますか。

福島国務大臣 今ので、馳委員がなぜ法人を未成年後見と言って、今、十八から二十までの身元保証人を法人でやったらどうかということを御提案なさったかがわかりました。

 私は、ドメスティック・バイオレンスに取り組んできて、とりわけ、参議院ではDV防止法をつくり、衆議院では児童虐待をやり、当時、そういう関係があったわけですが、女性に関しては、各都道府県に配偶者暴力相談支援センターをつくり、また、極めて財政難の折、厳しいけれどもNPOも結構できて、シェルターができたりしているわけです。

 ふっと思うと、子どもはやはりどうしてもとても弱い。それで、例えば高校ぐらいで親に虐待を受ける、性暴力を受ける、逃げたいと思って、そういう子どもたちが行く場がない。子どもは経済力がないので、子どものためのシェルターとか子どもの家というのはないんですね。ですから、これはちょっと壮大な、大きな、将来的な話ですが、子どものためのシェルターや子どもの家というのはやはり必要だと思っています。

 カリヨンというNPOの家を紹介いたしましたが、そういうものがもっとふえ、そこは全く援助は受けていないんですが、そういうものを援助できる仕組みができればと思います。

馳委員 私が言おうと思っていたことをビンゴでおっしゃったので。

 実は、たまたまきのう、高齢者虐待防止法の見直し勉強会をして、埼玉県の行田市の福祉課の皆さん方に来ていただいて勉強していたんです。全国で唯一、埼玉県の行田市は、高齢者虐待、児童虐待、障害者虐待の条例を平成十七年におつくりになって、その支援体制をつくっているんです。DVも含めれば、まさしく家族に対する支援。私たちも、児童虐待防止といいながら、要は、虐待しているのは親であり、保護者であり、家族の問題として総合的に取り組んできているんですよ。

 そう考えると、埼玉県行田市の条例として一括して取り組んでいるという問題は、よく考えれば、全部これを担当しているのは、幾ら私たち国会で法律をつくっても、市町村の現場なんですよ。ところが、市町村の現場で、司法関係者、医療関係者、福祉関係者、教育関係者、みんな同じような人にばらばらに各個別事業に基づいて予算が割り振られて、仕事が割り振られて、仕事が与えられる方は、児童虐待もやらなきゃいけない、DVでお母さんの審判で行かなきゃいけない、障害者の対応も、障害者はより専門性が必要なので、都道府県が一義的にはやはりそれは責任が多いんですが、でも、現場は、走っていくのは市町村の職員ですよ。

 こうなったときに、今大臣がおっしゃった子どもの家、女性の家というよりも、そういったシェルター的な、家族として支援できるような場所というのは今後必要になってくるんですね。

 ちなみに、ある意味でいえば、我が国の地域の実情を考えると、そういう役割は公民館とか、もっと昔々でいえばお寺さんとかお宮さんとか、そういうところが果たしてきていますよね。私は、ここはなかなか難しい議論をしているつもりなんですけれども、やはり受け皿も、その法的根拠も、我々国会において考えていかなければいけないんじゃないのかなと思っているんです。

 だから、法務省の原民事局長もいろいろな事案を分析しておられる立場にありますが、私は、まさしく児童虐待というのは、事案を分析した上で、調査だけではだめで、分析した上で、全体としてどう取り組んでいくかという姿勢が必要だと思うんですよ。改めて大臣の見解を求めたいと思います。

福島国務大臣 おっしゃるとおりです。虐待の問題も子どもの人権問題も、親支援だったり家族支援でないとやはりこれはできないというふうに思っています。それも、地域で応援する必要がある。

 それで、今、実は、子ども・若者ビジョンをつくる過程の中でいろいろなところに出かけているんですが、だんだん議論が収束してきて、どうやってつくるかというと、子どもオンブズパーソンのところでもそうですし、カリヨンの取り組みもそうなんですが、子どもを真ん中に置いて、例えば弁護士、保健師、ソーシャルワーカー、学校の先生、場合によっては警察、いろいろな大人が周りでチームを組んでその子どもがおっこちないように助ける、その家族を支援していく。そのとき、一人だけが背負うのではなくて、やはり専門家チームがいることがいいと。

 兵庫県川西市は、オンブズパーソンが教育関係と心理学と弁護士だったんですね。やはり専門家が、専門というか、それぞれスキルのある人が取り囲むことが大事で、そういうのが地域でやれたらいいというふうにも思っています。そのための仕組みづくりをどうしたらいいかを、今、子ども・若者ビジョンを書き込むに当たって考えている途中です。

 でも、馳委員がおっしゃったように、虐待があって、では分離すればいいとか、処罰すればいいという話ではなくて、虐待に行きそうなところや、ついうっかりとか、あるいは明らかに問題を抱えているところを、オンブズパーソンなんかもそうですが、関係をつくり直すことが早期に専門家の力もかりながらやれるかということを、やはり仕組みづくり、しかも実質的な仕組みづくりを、新しい公共という概念とも一緒にやっていきたいと思っています。

馳委員 私も、まだ埼玉県行田市を見習いながら、早く障害者虐待防止法もつくりながら、最終的にはDVも含めて包括的に対応していくべきであり、これを支えることこそ新しい公共の姿であろうかなというふうに思います。

 済みません、最後、残り、放課後児童クラブの話をして終わりますが、これは結論から最初に言います。私は、学童保育推進基本法のようなものが必要だと強く強く昔から思っているんですよ。

 大臣、どう思いますか。

福島国務大臣 法的必要性も含めて、しっかり検討してまいります。

 私も、娘を学童クラブに入れるために引っ越しました。小一の壁、小三の壁という言葉もあります。保育園は皆さんよくわかるのですが、子どもが小学校に入って、学童クラブというのは今まで議論がまだ少なかったと思います。御存じ、学童クラブで働く人たち、女性も多いですし、非常勤で給料が安かったり、いろいろな点で、ガイドラインもなかったり、極めて不十分です。

 すぐ法律ができるかどうかはわかりませんが、学童クラブは保育所と同じぐらい重要政策として子ども担当大臣としてやっていきたいと思っていますし、予算の獲得も今回四十億プラスをしました。今後は、ガイドラインをつくったり、法律も視野に入れて頑張ってやっていきたいと思います。

馳委員 余り勢い余って、一応政権は足並みをそろえておいた方がいいと思いますが。

 これは、児童福祉法において、一九九七年でしたか、放課後児童クラブという位置づけがなされて、それまでは単なるエンゼルプランといった形で支援してきたんですが、それでは済まないよねという社会状況が起きてきたわけですよ。

 基本的な数字をお伺いしますが、全国に今、学童保育、放課後児童クラブ、何カ所ありますか。プラス、高井さん、文科省が所管する放課後子ども教室、何カ所ありますか。まず、香取さんの方からお伺いします。

香取政府参考人 お答え申し上げます。

 放課後児童クラブ、二十一年五月現在で、全国で一万八千四百七十九カ所ということになってございます。

高井大臣政務官 平成二十一年度、昨年度において、全国八千七百十九カ所でございます。

馳委員 単純に足し算をして二万七千カ所ですね。二万七千カ所もありますよね。

 では、何人の子どもがそこに在籍しておりますでしょうか。まず、香取さんから。

香取政府参考人 今在籍しているお子様の数は約八十万人でございます。

高井大臣政務官 済みません、ちょっと今、箇所数だけしかなくて、数がちょっと出ませんので、調べられれば報告をいたします。

馳委員 数はどう考えてもたくさんいるということを私は言いたかったんですよ。たくさんいるんです。

 そして、文科省の事業であったとしても厚労省の事業であったとしても、放課後の児童の居場所は、教育ですか、福祉ですかという線引きはなかなかしづらいんですよ。だから、法的根拠を持った上で、そろそろ社会全体で子どもたちの放課後の居場所、そして教育であろうと保育であろうと、いや、単なる居場所にいて友達と一緒に騒いでいたっていいんですよ、安全であれば。

 では、聞きますよ。放課後児童クラブの事故は、厚生労働省、過去五年間どういう推移であったか、そしてどういう分析をしているか、ちょっと報告してください。

香取政府参考人 放課後児童クラブの事故ですが、私どもの方で全国的な統計というのはとれていないんですが、国民生活センターの方で調査をしていただいた数字がございまして、直近三年で申し上げますと、平成十八年が九千八百五十七、十九年が一万二千八百三十二、二十年が一万一千三十四となってございまして、そのうち、複数回答ございますが、先ほどの一番直近の数字でいいますと、全体の半数は、クラブの中で遊んでいて転んでけがをしたとか、子ども同士ぶつかってけがをしたとか、そういうけが、事故のものがほとんどでございます。

馳委員 それはやはり子どもの居場所ですから、安全確保について、制度としてある以上は、国が把握をし、もちろん把握するための実態調査、そして市町村、都道府県から国に報告が上がり、それを分析し、そうならないように対応していく、それが一番大事なんじゃないですか。

 だから、法的根拠を持たせた上で、もちろん、指導員の給与の問題とか施設の安全性もあります。また、障害児を受け入れているところもあれば、障害児はだめよと敬遠しているところもあります。つまり、全部現場に、そしてほとんど民間にお任せのような現実があるから、ここはそろそろ法的根拠を持った方がいいんじゃないんですかということを私は主張しているんです。

 一九九七年の児童福祉法の改正で放課後児童クラブと位置づけられただけで、飛躍的に厚生労働省は予算づけも、また指導の方も、丁寧にやっていただけました。それによって、本当にそれによって、自治体関係者の意識も格段に改善されたんですよ。放課後児童クラブ、学童保育、そんなの家で面倒見ればいいじゃないか、そんなことを言う自治体の首長さんとかいっぱいいたんですよ。今、ほとんどそういうことはなくなりましたよね。

 だから、私は野党だからという意味じゃないんですけれども、絶対にこの学童保育を法的根拠を持った上で推進していく政府としての姿勢が必要だなと思っていて、ずっと申し上げてきましたが、最後に大臣の見解をお伺いして終わります。

福島国務大臣 学童クラブ、放課後児童クラブについて質問していただいて、非常に感謝しています。これは、子ども・子育てビジョンでも、三十万人ふやすということを掲げております。

 私も全国の学童クラブを見ますと、親が自然発生的に一生懸命つくって、民営化してアパートに入れているとか、ですから、今まで本当に、なかなか、行政の支援もとても足りなかった部門です。

 香取さんから言っていただきましたが、消費者庁担当なんですが、先月、三月に国民生活センターが学童クラブについての調査報告書を出しました。そこにもやはり事故や保険がどの程度適用されているかなどがあります。

 おっしゃるとおり、これから保育所も応援しなくちゃいけないけれども、学童クラブ、放課後クラブをしっかり子育て支援の中に位置づけてやっていきたいというふうに思っておりますし、子ども・子育てビジョンでも、その位置づけをちゃんとやっております。今回も予算を大分ふやしました。

 今後、おっしゃるとおり、どう位置づけるかという法的なことも、皆さんと相談しながら、視野に入れて、しっかり検討していきたいと思います。

馳委員 遅いな。検討はもっともっと早くにやっておくべきだったと思いますが……(福島国務大臣「それは自民党政権のときに。これからちゃんと、すぐやります」と呼ぶ)それは言いっこなしだから。

 なぜかというと、関係省庁がお互いにやはり知恵を出し合うのも必要だし、同時に、関係省庁の議論も参考にしながら議員立法でやるというのも一つの、スタート地点はえいやっとやることも必要なんですよ。

 委員長、私が先ほど言ったように、児童虐待防止法の改正もそうですが、学童保育基本法というのを衆議院の青少年問題特別委員会で超党派でつくるというのも一つのテーマだと私は思いますので、この検討も理事会にお願いをして、私の質問を終わります。

 以上です。

池坊委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十七分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日は、大臣所信に対する質問といたしまして、青少年を取り巻く問題のうち、幾つか質問させていただきたいと思います。

 先日の福島内閣特命大臣の所信では、子ども・若者ビジョンの作成に取り組んでいくとともに、ニート、ひきこもり、困難を有する若者の支援を行うためのネットワークづくりを推進していく、また、現在特に問題となっている若者の不安定雇用について取り組んでいくということを述べられました。

 まず初めに、平成二十一年七月一日に成立し、七月八日に公布され、本年四月一日から施行されました子ども・若者育成支援推進法について、大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 この法律、子ども・若者育成支援施策の総合的な推進、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を支援するための地域ネットワークづくりの推進を図ることとしており、例えば、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、小中高等学校は文部科学省、しかし、障害を有する子どもや若者への対策は厚生労働省など、省庁縦割り、省内でもさらに縦割りとなっている子ども・若者育成支援において、非常に重要なことであると認識しております。

 去る四月二日、内閣府、厚生労働省、文部科学省などの関係大臣の合同の協議に基づき、「子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針について」という骨格が発表されました。この骨格をもとにいたしまして、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取り組みのための具体的なビジョンが、これから取り組まれて、六月を目途に中身の議論が行われると聞いております。

 資源の少ない我が国、世界に類を見ない超少子高齢化を迎えた我が国にとって、子どもは国の国力でもあります。しかし、子どもたちの健全な育成や教育といった子どもにかけるお金は、我が国では、現在、OECD諸国でも最低水準にございます。

 さらに、先ほど申し上げた省庁縦割りの中で抜け落ちていく部分も多く、文部科学省、厚生労働省、経済産業省など関係省庁と連携し、内閣府が主導して取り組んでいただきたい課題であると認識しておりますが、担当大臣としての御決意をお伺いしたいというふうに思います。

福島国務大臣 あべ俊子委員は、私が言いたいことを言っていただきました。本当にありがとうございます。

 おっしゃるとおり、縦割りの中で、各省庁の中でも縦割りで、子ども・若者に関しては、その縦割りを排して、きちっと拠点をつくっていくことが必要だと思います。

 子ども・若者育成支援推進法に基づいて、ニート、ひきこもりなどさまざまな困難を有する子ども・若者に対して、教育、福祉、保健等の関係機関が連携して、それぞれの専門性を生かした支援が可能になるように、子ども・若者支援地域協議会の設置を地方公共団体に働きかけてまいります。

 また、協議会の設置、運営に当たっての助言や先進事例等に関する情報提供、支援に携わる人材の育成などを積極的に行ってまいります。

 同法に基づき、六月をめどに、あべ委員おっしゃっていただいた子ども・若者ビジョンを作成し、ニート、ひきこもりに対する支援を盛り込んでいきます。

あべ委員 さらに、省庁の縦割りの中で問題となっておりまして、保育関係団体が反対をしております幼保一元化、一体化でございますが、先が見えなくて、大変現場が混乱をしております。大臣、このことに関しては、どうお考えでしょうか。

福島国務大臣 そのことにつきましては、現在、新システム検討会議で、今、ヒアリングを含めて、精力的に議論をやっております。六月ごろに意見をまとめたいというふうに考えております。

 幼保一体化、幼稚園のいいところ、保育園のいいところ、あるいはその地域の資源を最大限に生かしていくことが必要ですが、幼稚園、保育園でやっている皆さんたちの現場が、非常に不信感を持ったり混乱をしたり、あるいは意気が下がってしまうというようなことが絶対に起きないように、子どもの支援と、それから待機児童解消、子どものために何がいいかという視点から、そこの中で、十分議論を行い、考え方をまとめていきたいと考えています。

あべ委員 その幼保一体化もしくは一元化という考え方は、ある意味、いわゆる全保育園化するという考え方なのか、それとも、大臣が非常に懸念されていた省庁の縦割りをなくした形で、財源も含め一元化をしていくことなのか、大臣の今の段階のお考えをお聞かせください。

福島国務大臣 今まさに、その検討をしている最中で、ヒアリングをやっている最中ですので、今ここで私がどういうイメージでというのを言うのは、ちょっと不適切だと思います。

 ただ、私は、せっかくですし、政権もかわったので、縦割りで、幼稚園は幼稚園、保育園は保育園、御存じ、放課後学童クラブにしても認定こども園にしても、二つ出さなくちゃいけない、本当に勝手が悪い、ある地域は幼稚園が余っている、ある地域は保育園が余っている、ある地域はどうだというその中で、もったいないと言うと言葉はおかしいですが、子どものために教育も保育も両方必要ですし、そういうことを力を合わせてやっていけたらと思っております。

 ただ、これは、今まで連綿と続いてきた二つの、厚生労働省と文科省とあるわけですから、私は、それは、つながりを持って子どものために議論することが必要だと思いますが、私が一番心を砕きたいと思っているのは、現場の混乱や、働いている人が意気消沈するというか非常に不安に思うというようなことが絶対に起きないように心を砕いてまいります。

あべ委員 ありがとうございます。

 では、現在行われている認定こども園、これを拡大していき、省庁の二つに分かれている部分は温存ということの理解でよろしいのでしょうか。

福島国務大臣 そこまでは、認定こども園の拡充だけにとどめるのかどうかについては、まだ結論を出しておりません。

 ただ、御存じ、認定こども園は、それぞれでいろいろな性格がありまして、私自身も認定こども園に行きましたけれども、残念ながら、数が少なくて、どうしてもそれが広がっていかない。

 その大きな理由は、ヒアリングも行いましたが、入り口が二つで中が一つ、でも書類を二重に出さなくちゃいけない、両方の省庁に書類を出さなくちゃいけなくて、手間暇が二倍になって実はとても大変だという声も聞いております。

 ですから、私は、それは、広がっていかないのであれば残念ですので、認定こども園の単なる拡充という観点ではなく、もう少し、縦割りを排した形で進めていきたいと思っております。

あべ委員 例えば、保育園の保育士さんの八割ぐらいが幼稚園教諭の資格を持っている、幼稚園教諭の八割の方が保育士資格を持っている。

 資格の一元化、さらには財源の一元化ということも、大臣の中ではお考えなのでしょうか。

泉大臣政務官 ありがとうございます。

 今、作業グループの主査をさせていただいておりますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 委員御指摘の、財源ですとか資格の共有化が今後どこまでできるのかというところを今まさに議論している最中でありまして、確かに、すべてを機械的には、机上では一緒にできても、先ほど大臣からお話があったように、現場の対応というものもありますので、子どもたちの育ちの環境にできる限り影響のない形で実際に行えるようなことを今模索しているという段階であります。

あべ委員 本当に、働くお母さん方にとって、子どもたちがどういう状態で保育をしてもらえるか、また幼児教育をしてもらえるかは非常に大きな点なので、子ども中心に、ぜひともこれからも御検討いただきたいというふうに思うわけでございます。

 次に、いわゆる若者の就業問題について質問をさせていただきたいと思います。

 大臣が所信表明の中で、若者のいわゆる不安定雇用の問題について取り組んでいくというふうにおっしゃっておりました。このことは本当に今大きな問題ですので大臣にぜひ質問したいと思いましたら、担当の内閣府の方が飛んでいらっしゃいまして、これは大臣の管轄ではないから違う方にお答えをさせていただきたいというふうに言っていましたが、やはりこれは、大臣が所信表明で言われたので、私は、しっかり大臣にお答えいただくのが一番いいのではないかと思っているところでございます。

 去る四月一日、全国の企業や官庁で入社式や入省式が行われ、厳しい就職状況を乗り越えた若者たちが社会人の仲間入りをしました。新社会人は約七十六万人と推定されています。

 しかし、厚生労働省などの調査では、特に大学生の就職内定率は八割と過去最低でございまして、一九九〇年代後半のいわゆる就職氷河期よりも非常に厳しい値となっていることが新聞でも大きく報道されています。一方、高校卒業者も、就職内定率が八一・一%と氷河期並みの厳しさでございまして、就職先が決まらないまま四月を迎えた学生もたくさんいました。

 大臣、このことについて、本当にお心を痛めていらっしゃると思いますが、お考えをお聞かせください。

福島国務大臣 あべ委員おっしゃったとおり、就職内定率が八〇%ということで、依然として厳しい状況です。新聞の投書にも、新卒という立場を維持したいために留年をするとか、なかなか決まらない、まだ就職先が決まらないという投書も見たりして、人生のスタート時点で本当に苦しんでいる若者の姿には心を痛めますし、何とかしなくちゃと本当に思っております。

 一つは、平成二十一年度第二次補正予算や平成二十二年度予算に新卒者対策を盛り込んで、重点的に取り組んでいます。

 学校や企業を訪問して新卒者の就職を支援する高卒・大卒就職ジョブサポーターのハローワークへの倍増配置により、支援を強化しています。また、新卒者を体験雇用する事業主を支援する、新卒者体験雇用事業を創設しています。また、新卒者向けの職業訓練コースを新たに設置し、一定の要件に該当する方には、生活費十万円を支給しています。

 また、新卒者以外の若年者の就業支援として、ハローワークにおいて、一人一人の課題に応じたきめ細かな職業相談、職業紹介による支援を実施し、また、フリーターの人が安定した職につくことができるよう、トライアル雇用を通じた正規雇用化を推進しております。

 また、派遣法の改正や、将来的には、有期契約をどうしていくのか、パートの人たちの労働条件の向上など、労働法制をきちっとしていくこともやるべきことだと思っております。

 将来ある若者がきちっと就職できるよう、全力で支援してまいります。

あべ委員 本当に、大臣がおっしゃるとおり、さまざまな対策が立てられている中、四月一日、希望にあふれた多くの方々がいわゆる入社式、入庁式に行った一方、就職が決まっていない方々もハローワークに同じ朝に通っていたということがあります。

 特に、この日に入社式を迎えることができずに若者向けのハローワークに行った女子学生の様子も報道されていたところでございますが、ハローワークはスタートラインに立つことを目指す若者たちで既に込み合っている状態でございまして、予約がとれたのは十日後だったと言っています。その女子学生は、自分以外にも就職できない人がいるんだということで、十日間待つことに関して、ほっとした一方、できることならきょうから働きたかったという思いと、両方持っているわけでございます。

 このハローワークの支援、さまざま今やっている中でございますが、特に、今、日本社会の中が、新卒、正社員というラインが引かれてしまうと、そこを外れてしまった子たちは、どうしても、その時代に卒業してしまったがゆえに、将来ずっとそのツケを支払わなければいけない。

 やはり、このことに関しても、もっと総合的なフォローが必要だというふうに思っておりますが、単発の政策でない形でこの子たちを中長期的にどうフォローしていくか、大臣、このあたりのお考えも聞かせてください。

福島国務大臣 あべ委員おっしゃるとおりで、今、新卒者の方がとりわけ苦労しているわけですが、これは、三十代前半から後半にかけて、いわゆるロストジェネレーションと呼ばれた世代でも起きたことです。その後のフォローが十分でなければ、今、三十代に入って、後半になっても、いわゆる条件のいい労働になかなかつけなくて苦労しているその世代の人たちが私の周りにもたくさんいます。

 ですから、そういうロストジェネレーションの世代をどうするかということと、新卒の人たちを、ずっと非正規雇用になる、あるいはなかなか就職が決まらない状況に置かないようにすることが今まさに求められていると思います。

 そのためにも、私自身も、いろいろな職務に関して、自殺対策担当としてもお世話になっているわけですが、ハローワークやあるいはそこの労働局などに対する非常な人員と機能の強化が急務だと考えております。

あべ委員 そういう中で、いわゆる派遣法に関しても、今、改正案の部分が出てくるところでございますが、本当に正規雇用と非正規雇用の問題だけなんだろうかということも、派遣が本当にいけなかった仕組みなのかということも疑問視されております。

 どういう働き方を選んでいくかということは、本人たちの選択とさらには社会環境と両方ある中でありますが、今、本当に不況で大手企業が採用を減らしていく中、学生は、安定した就職先を求めて、大手志向を強めております。特に、リーマン・ショックの後に相次いで行われた、厚生労働省の派遣村で年越しをされた派遣切りの方々、新卒の内定取り消し、多くのマスコミ報道を受けまして、若者の就職先選びの基準は、例年以上に安全、安定というところに殺到しています。

 学生の大手志向、安定志向が強まる中で、就職志望企業ランキングの上位に並ぶ有名企業には多くの学生が殺到しておりまして、資生堂などは百人の募集に数千人の応募があったと聞いています。しかしながら、逆に、中小企業では、採用する意欲があっても人手不足に悩んでいる会社も少なくありません。実際、従業員千人以上の大企業の求人倍率は〇・五五と厳しい状況にありますが、千人未満の求人倍率は三・三六に上がっている状態であります。また、農業、介護、人材不足の分野は多数ございます。

 景気悪化、処遇の悪さからくる明らかな求人と学生のミスマッチであるというふうに考えますが、ニーズがある分野があるにもかかわらず就職できない学生がいるというミスマッチ、これに対しては、具体的にどういうふうに取り組むおつもりでいらっしゃいましょうか。

福島国務大臣 おっしゃるとおり、介護労働者の人たちなども、労働条件が悪くて若い人がやめていくという状況は、もう広く知れ渡っているところです。ですから、介護労働者の労働条件を上げるための予算を今年度の予算で取り組みました。

 あべ委員は看護師さんの出身ですが、例えば、資格を持っていらっしゃるけれども、やめてしまうあるいは働いていないという人たち、お医者さん、看護師さん、介護士さん、保育士さん、いろいろな方たちがたくさんいらっしゃるわけですが、もったいない。せっかく資格を取って、もったいないわけで、労働条件をよくしていく、あるいは働き続けられる条件を確保できるようにやっていきたいと思っております。

 例えば、昨年末に企業内保育所の税金の控除などについても新たな制度を打ち出しましたけれども、そういうことも含めて、多くの人が働き続けられるようにと思っています。

 今あべ委員がおっしゃった、大企業に集中し、中小企業は実績があったりいい仕事をしているのに求人率がという問題に関して言えば、中小企業庁とも連携をしながら中小企業を応援していく、あるいは、そこでの労働条件、公契約条例をつくった千葉県野田市などもありますが、労働条件をよくしていくことと同時に、中小企業を応援する中で、いろいろな人がさまざまな企業に就職できるようにやっていきたいと思いますし、雇用の面については、子ども・若者ビジョンにしっかり盛り込みたいと考えています。

あべ委員 実は、きょう、自民党の部会の勉強会の一つに出ましたのが、特に、若い方々の、非正規雇用の低所得の男性が結婚ができなくて困っている、ところが、若い女性はいわゆる専業主婦志向が強い、ただ、受け入れる男性が、専業主婦を抱えるほどの収入がある方が限られてしまっていると。

 もっと結婚していただかなければ少子高齢化は解消できませんから、ともに働いていくということを考えたときに、研究者の方がおっしゃったのは、やはり、女性がもっと働くために百三十万と百三万の壁の部分をどう考えるのかということをもっと明確に出していかなければ、本当に収入の少ない若者が結婚をしないまま終わってしまうということの提案がされたわけでございますが、そのあたり、大臣、どうお考えでしょうか。

福島国務大臣 ありがとうございます。

 少子高齢化、あるいはなかなか子どもを産むことに夢を持てる社会でない大きな理由は、あべ委員おっしゃるとおり、雇用の問題、収入の問題、環境の問題、これは本当に大きいと思います。

 逆に言えば、雇用をこれだけ壊してきて、若者の二人に一人が非正規雇用で、結婚して子どもを産まなくちゃいけないというわけではありませんが、結婚したいということもできない社会になっていることは、これは本当に大問題だと思います。

 私もあべ委員も女性ですが、やはり女性の活用に失敗している社会ではないか、もっと、女性も男性も働き続け、望めば子どもを生み育てられる社会につくり変えたいというふうに思っています。

 そのためには、女性が働き続けたり収入を得ることのふたになっている部分というのが、その百三十万円などの壁になっている部分もあると私は思っています。それはまた、税調やいろいろな場面で、女性も男性も応援していくというときに、きちっと議論すべきだと思っております。

あべ委員 特に、若者の非正規雇用という働き方がいわゆる主婦層のパートの働き方と代替になっている、そういう中で、特に日本の主婦は非常に質が高いといったときに、やはり、若者を非正規雇用とするよりはパートの主婦ということで考えたときに給与が横並びになってしまう、百三万と百三十万のその壁の部分が逆に若者の非正規雇用に余波として来るんだということは、今回その中で言及されたところでございます。

 若者の就労問題に関して連動させていただきますが、今、普天間問題、福島大臣も大変御苦労されているんだと思います。

 そういう中で、普天間の基地の従業員が、今、年間五百から八百いる中でございまして、私は、この普天間の移設問題に関しては、やはり就労問題と大きく関連するんだと思いますが、大臣、そのあたりはどうお考えでしょうか。

福島国務大臣 基地労働者の労働条件や雇用の問題は確かにあると思っております。

あべ委員 労働条件だけではなくて、雇用の創出、さらには全体の、若者にも影響する就労問題に非常に大きく連動するんだと思うんですが、県外移設を社民党党首として主張されている大臣は、ここのいわゆる就労問題に関してもしっかりとお考えの上反対しているんだと私は思っておりますが、いかがでしょうか。

福島国務大臣 雇用の問題は本当に重要です。

 大田県政、吉元副知事のときに、例えば、基地がどう移転したら、その跡地をどうつくって、どう雇用をつくるかとか、宜野湾市におきましても、宜野湾市で普天間基地がなくなれば、逆に、市のど真ん中にある基地がなくなって、むしろ、交通の便も市の開発もよくなって、基地の跡地を有効活用することによって大変雇用が伸びるという試算もあります。

 沖縄県民の多くが国外、県外ということを望んでいるわけで、その中で、もちろん、さまざまな今までの、例えば普天間基地がなくなった後のプランなども私も拝見させていただいたり勉強させていただいておりますが、それは、また違う形で雇用をしっかりつくっていくことが大変必要だと思っております。

あべ委員 やはり県外に移すべきであるというふうにずっと社民党の党首として先生はお考えだと思いますが、もし移設ができなかったとき、内閣の一員の大臣として、そこの部分の矛盾、大変おつらい部分だと思いますが、どう整理されるんでしょうか。

福島国務大臣 政治は、あらゆる可能性に挑戦する技術であり、情熱だと思っています。この内閣のもとで実現をするべく、頑張ってまいります。

あべ委員 頑張るのは大変よくわかりました。思いが、そのオレンジのスーツからも出てまいりました。

 頑張ってもできなかったときに、社民党の党首としての福島先生のお考え方と内閣の一員の福島大臣としての矛盾点をどう整理されるんでしょうかというふうに私は質問をしたわけでございます。よろしくお願いいたします。

福島国務大臣 政治は、どうなったときにどうなるかというものではなくて、自分たちの信念や約束したことに向けて全力を挙げることこそ政治だと思っております。

あべ委員 全力を挙げた結果、自分の中に矛盾が出てくるということに関して、やはり大臣、しっかりと御自分のお覚悟も決めていかないと、本当に大臣として、内閣の一員として考えていることなのか、さらには、社民党の党首としてどう考えるかということの自己矛盾に関しては、多分これから御自分が全力で取り組んでいかなければならない部分だと思います。

 いわゆる普天間の基地問題に関して、国外、県外、雇用問題までしっかりと考えてくださっている福島大臣であれば、全力を尽くして、どちらの方向に行くかわかりませんが、ぜひ頑張っていただけたらというふうに思っているところでございます。

 また、普天間の基地のあたりには小学校がございます。大臣は多分視察をされてわかっているんだと思いますが、私は、移設が何年かかるかわからない中で、この小学生たちのことも大臣は心配をしていらっしゃるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

福島国務大臣 普天間基地が世界一危険な基地と言われ、沖縄国際大学にヘリが激突をした直後にも行きましたけれども、こういう基地を放置してきたことの政治の責任はやはり大きいというふうに思っております。

あべ委員 本当に、子どもたちの安全ということが大切だと思っております。

 最後の質問になりますが、ニート、ひきこもり対策に関して大臣にお伺いいたします。

 これまで、いわゆるニートと呼ばれる若者無業者の定義は、非労働力人口のうち、年齢十五から三十四歳、通学、家事もしていない者とされていましたが、今回施行されました子ども・若者育成支援推進法におきまして、これが三十九歳に上方修正され、枠組みが広げられました。

 実は、私も前職は教員でございましたが、教え子のお父様がひきこもりでありまして、どういう世代でひきこもりになるかということは全くわからない状態で、本当に大変な思いをしていらっしゃる方々もたくさんいる。

 また、ニートの推移を見ますと、平成十四年以降、ほぼ横ばいの状態にございまして、現在約六十四万人、ひきこもりが原因とされる方は三十万人程度と言われるわけでございますが、この十年近く、全く改善の動きは見られていません。

 さらに、ニートと同じ定義で、三十五歳から四十九歳の中年層の無業者数を見ますと、平成十四年に四十四万人だったのが、平成二十一年には五十七万人まで増加していまして、ニートの高齢化が懸念されているところでございます。

 そうした中におきまして、新規学卒者の就職状況が非常に厳しい中で、就職氷河期と言われる時代に正社員になれなかった者がニートやひきこもりになっていく可能性が高いと考えられますが、就職氷河期に就職できなかった若者が現在どのような状況になっているか、その把握はされていますでしょうか。大臣、お答えください。

福島国務大臣 あべ委員がおっしゃったとおり、ニート、ひきこもりの問題が大きな問題で、しかも、おっしゃったとおり、そのまま年を重ねていっているということも問題だというふうに思います。

 だからこそ、内閣府としては、子ども・若者育成支援推進法に基づいて、子ども・若者支援地域協議会の設置を地方公共団体に働きかけ、その地域のネットワークの中でそういう若者を精いっぱい支援していきたいと考えております。

あべ委員 この三十五歳から四十九歳の中年層の無業者が増加することは、年金や社会保障などの、将来、生活保護の予備軍となることも十分考えられるわけでございまして、この年齢層の対策が特に重要だと思っております。

 特に、生まれる時代を選ぶことができない団塊ジュニアの世代を中心とした方たち、本当にこれからの対応、救済が必要だというふうに思いますので、ぜひとも、今回の就職ができなかった子たちに対してもこれから先のフォローをしていただけたらと思いますが、やはり継続性ということが私は大切だと思っております。

 大臣、このことに関して、いま一度、新しく出てしまう新就職氷河期という子たちのフォロー、さらには、団塊ジュニアの、非常に世代の古くなってしまった三十五歳から四十九歳の無業者に対してフォローを続けることに関して、御決意を述べていただけたらと思います。

福島国務大臣 政治の結果あるいは不況などのためになかなか職が見つからなかった、これはまさに政治の責任だと思っております。だからこそ、政治の力を渾身に込めて、労働法制をきちっとしていくことと、そういう若者の支援を精いっぱいやってまいります。

あべ委員 ありがとうございます。

 残り時間がほぼ五分ぐらいになりましたので、本当に済みません、最後の質問になりますが、児童虐待に関してでございます。

 児童虐待、馳委員も一生懸命やっていますが、ここの部分に関しては、特に児童虐待は家庭環境が大きいと言われておりまして、私自身が大学で学んでいましたときに、とにかく、親が、自分が児童虐待をされて育つと、子どもを育てるときに、それが子どもに対する対応の仕方だというふうに思い込み、また、さらには、親を介護する時期になるといわゆる老人虐待になってしまう、この悪循環をどう断ち切るかということが大切なのだ、本人は虐待しているつもりが全くないんだと私は大学のときに教わったわけでございます。

 そうした中におきまして、特に児童虐待をしている親には、子どもというのは、子どもを抱き締めてあげるんだ、さらには、褒めてあげるときにはこうしてあげるんだということをゼロから教えないといけないということも実は教わったわけでございます。

 このことに対して、やはり、家族で子育てをしていく中にありまして、その家族の子育てをしっかりと地域でも支えていかなければいけない。この児童虐待の中で、児童虐待をしている方々の半分以上の方々は近所づき合いがないというデータも出ております。そうした中におきまして、地域ネットワーク、このことをさらに発展させていくことが重要だと思いますが、大臣、このことに関してぜひ御決意を述べていただけたらと思います。

福島国務大臣 それはもうおっしゃるとおりで、地域から孤立をしている、あるいは非常にストレスを強く持っている、あるいは虐待する母親が場合によっては夫からDVを受けていたりするような状況がある、だれにも相談ができない、家族の中だけで非常にストレスや不満が高まって子どもの虐待になっている、それをとめる人がそこの場には登場しないということなど、子どもと親の関係だけではなく、親自身の抱えている問題などがあると思います。

 そのためにも、そこまで深刻にならない段階で、もっと相談ができる、あるいは支援ができる、ほかの子を見て、ああ、うちの子も大丈夫だと思えるような状況などをつくっていく必要があって、今あべ委員が最後におっしゃった地域での支援とネットワークは、本当に必要だと思います。保育所や学校が、開かれたもので、週に一回でも子どもを預けたり相談に行けたら、変わった局面もあるかもしれません。

 その意味で、今度の子ども・若者ビジョンの中でも、地域のネットワークの強化、どこを開いていくか、どこを拠点にするかというところでも、まだ議論の途中なんですが、きちっと盛り込んで、虐待を減らすために家族を応援したいと思います。

あべ委員 虐待されている子どもたちは、自分が虐待されているということがわかりません。そういう家庭環境でずっと育っているわけであります。

 私の選挙区の岡山県の美作市にも、親がほぼアル中で、給食費を払っていない方がいらっしゃいます。こういう給食費を払っていないということを子どもは承知しておりまして、給食の時間になるとクラスから消えて、食べないということをしております。実は、さまざまな行事があるときにも本人が出てこない、うちに迎えに行けば、酔っぱらった親が出てきて、うちの子だからほっておけと言われ、多分おふろにほぼ入らず、においもしている状態であります。

 御近所の方が、絶対あれは虐待されている、特に暴力を受けているわけではないにしても、ネグレクトという形で育児放棄をされてしまっている、そのことを周りの者がみんな知っているけれども通報ができない、通報すれば家庭に対する変な介入になるのではないかと思い込んでしまっているという、そこの部分の偏見をぜひ払拭していかなければいけない。

 やはり、日本のいわゆる国力となる子どもたちは国全体で守っていくということも、家庭で育てるということのほかにも、同時に必要であると私は思っておりますので、大臣、そこのところはしっかりとお願いしたいと思います。

 時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日、総務省そしてまた文科省、厚労省から各政務官にお越しいただいております。私は、児童虐待につきまして質問をさせていただきます。

 児童虐待が後を絶ちません。一月には江戸川区で小学校一年生の男児の死亡事件、また二月には奈良県で五歳の男児の死亡事件と、続いております。また、三月には江戸川から検証の報告書が出ました。

 こうした虐待の実態が明らかになるにつれ、なぜもっと対応できなかったのか、手を差し伸べることができなかったのか、まさに、救えるべき命を落としてしまうという、大変悔しい思いに私も駆られます。

 福島大臣は、この江戸川からの報告書をお読みになられたのでしょうか。また、前後して、こうした事例をどのように受けとめ、具体的にどのように行動されているのか。児童虐待を担当される大臣としての所見を伺いたいと思います。

福島国務大臣 済みません。江戸川区のケースは、いろいろ話は聞いておりますが、報告書本体は、申しわけないですが、まだ読んでおりません。

 ただ、児童虐待が極めて重大な問題であるということは認識しておりまして、とりわけ江戸川区の場合は、歯医者さんが児童虐待があるんじゃないかと気づき、児童相談所、学校もそのことを知りながら、休んでいてもついついフォローしなかったという点で、大人の間におけるネットワークが、そこの点検が十分であったらという面があれば、もう少し違う形の展開がとれたのではないかというふうに思っております。

 子ども・子育てビジョンにおいても、児童虐待の防止に取り組むとしておりますが、今度の子ども・若者育成支援推進法に基づく大綱として作成する子ども・若者ビジョンにおいても、児童虐待防止対策については、積極的に検討し、盛り込もうとしている状況です。

高木(美)委員 私は、この児童虐待の問題について、与党、野党関係なく、むしろ超党派で、子どもの命をどう救うかということで取り組ませていただきたいと思っております。

 やはり、大臣は担当でいらっしゃいますから。しかも、報告書、そんなに長いものではありません。氏名を入れても十一ページという内容です。これは事務方もしっかりと支えていただかなければいけませんが、政治主導ということでございますので、大臣、お忙しいとは思いますけれども、また、先ほども普天間等のお話もございましたが、命にかかわる話、しかも、新政権になって、この児童虐待に対する抜本的な方向性はまだ示されていないと私は思っております。そういう中で、二例も続いたという、これを大臣が本当に重く受けとめていただいて、先頭に立って取り組んでいただかなければいけないのではないか。

 江戸川区を呼んだりとかさまざまな対応を、やはり現場から声を聞かなければ、また、それがもしできないのであれば、こうした報告書を通して、その中から、現場がどのような痛恨な思いでいるのか、また、これから、そこにどのような課題が残っているのか、この対処に頑張っていただかなければいけないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

福島国務大臣 報告書も早速読みますし、できればヒアリングも行って、しっかり児童虐待について、これは衆議院で主につくられた議員立法ですが、社民党の中でも、児童虐待防止法の作成のときには関与しておりますし、改正にも関与しておりますので、新しい政権の中でも、今、現に法務省の法制審議会で親権の制限など議論があることは承知しておりますが、何ができるか、厚生労働省、他の省庁とともに、連携して一歩進めたいと考えています。

高木(美)委員 私は、大臣にきょう申し上げたいのは、児童虐待死の撲滅、これをぜひ政府の最重要課題としてしっかりと位置づけをして、大臣がそれに向けて先頭に立って頑張る、このような方向性を明確に示していただきたい。

 やはり、これを国民の皆様にメッセージとして伝えていくことが、これはそのまま現場の取り組みを強化することになりますし、また、さまざま現場で、児相、子ども家庭支援センターもそうですが、もうバーンアウト寸前で、乳児院、児童養護施設もそうです、もうバーンアウト寸前の中で頑張っていらっしゃる、その方たちに対してどれほど激励になるかと思いますが、最重要課題として位置づけるというこの考えについて、大臣、いかがでしょうか。

福島国務大臣 児童虐待を最重要課題の一つとして位置づけて、頑張っていきたいと思っております。

 児童相談所や子どもにかかわる職員の皆さんたち、おっしゃるとおり、バーンアウト寸前で、児童相談所もどこも、東京都なども含めてもう満杯状態で、費用の面も、人員の面も、施設の面も、もっともっと改善しなければならないというふうに思っております。

高木(美)委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 なぜそのように申し上げるかといいますと、先ほど来、きょうも朝から、ほかの特別委員会は余りやっていない中で、この委員会だけは熱心に質疑応答をされております。この児童虐待という中に今の社会のまさに影が投影をされている、そこから子どもたちを守れるかどうかという一番ぎりぎりのところ、そこに政治の光をどのように当てていくかということが、子どもの命を救うことにもなり、また、ひいては今の社会の課題を解決することになる、そのように私も認識しますし、恐らく、今まで質問に立たれた議員、また、きょうも朝からずっと質疑をお聞きいただいた議員も、同じ気持ちでいらっしゃるのではないかと思います。どうか、その思いをしっかりと受けていただきまして、大臣の明快なリーダーシップをお願いするものでございます。

 続きまして、児童虐待の中で、私は、この新政権、新しい公共のあり方というものを位置づけてはどうかと考えております。

 先ほどもお話がございましたが、民生委員、また児童委員、保健師の活用や、地域での市民参加のあり方について、児童虐待の電話相談等を行っているNPO法人とか、また、その当事者の民生委員、児童委員、保健師など、幅広い方たちに参加をしていただいて、今現場でどのような課題があるのか、そうしたことについて検討の場を設けてはいかがかと思っております。

 今、既に着手もされているようでございますので、厚生労働の山井政務官にお伺いいたします。

山井大臣政務官 高木委員にお答え申し上げます。

 御指摘のように、児童虐待については、社会全体の大きな問題であり、今までの公的機関だけではなく、NPOなど、子どもに関係するさまざまな機関が連携しなければならないと思っております。

 そこで、子どもを守る地域ネットワーク、いわゆる要保護児童対策地域協議会の設置を進めておりまして、全市町村の九二・五%、その市町村のネットワークのうち、民生児童委員協議会が九一・九%、社会福祉協議会が五四・五%、医師会が六二・四%、NPO団体が一〇・九%と、それぞれ民間団体等にも積極的に御参加をいただいております。

 今後とも、こうしたネットワーク等を活用しながら、NPOの皆さん方のお声を聞きながら、しっかり連携して虐待防止対策に取り組んでまいりたいと思います。

高木(美)委員 検討の場を設けてはいかがかと思いますが、政務官、どのようにお考えになりますでしょうか。

山井大臣政務官 新しい公共ということを、鳩山政権の一つの大きな目玉でもございますので、こういうNPO法人の方々の声とかもぜひ聞いていきたいと思っております。

高木(美)委員 これは、政務官中心の検討会でも勉強会でも構いませんし、また、それを福島大臣がなさるということであれば、それでも私はすばらしいと思うのです。

 いずれにしても、今、何が課題なのか。当然、この児童虐待、先ほど来お話ありましたように、市民参加をどのようにしていくか。あと、もう一つは、やはり専門家の目から、どのように一つ一つの事例をチェックし、分析をし、危険信号を受けとめていくか。今、その二つが大きな課題ではないかと私は認識をしております。

 その認識も、もう少し伺わせていただきたいと思っているのです。

 そうした点は現場の方たちはもう既に十分御認識で、もっとこうしてほしい、こうであれば解決できる、こうしたスキルをお持ちであるかと思います。その方たちにお集まりいただくなりして検討の場をつくっていただき、その中から、新しい公共、その中に当然、結論を盛り込んでいくというような考え方をとっていただければと、児童虐待の分野におきましても、この新しい公共という考え方を活用すべきではないかと思います。政務官並びに福島大臣の御見解を伺いたいと思います。

山井大臣政務官 このような児童虐待にかかわらず、やはり、現場で一番機敏に、そしてきめ細かく相談に乗っておられるNPOというのも私も存じ上げておりますので、そういうところも含めてお声を聞いていきたいというふうに思っております。

福島国務大臣 家庭の養育力の低下や、地域社会における人と人とのつながりが切れてしまっている、希薄化が児童虐待とつながっていますので、おっしゃるとおり、新しい公共、そして当事者の皆さんが問題点を一番知っているというのは、それは、ほかのテーマに関係なくそれがあると思います。

 ですから、今までも、児童相談所やいろいろなところに見学に行きましたけれども、改めて、児童虐待を最重要課題の一つとして取り組むという中で、新しい公共、そして当事者の皆さんたちと十分議論しながら、これはまた「新しい公共」円卓会議の議論もありますので、厚生労働省と連携をしながら、しっかり取り組んで、方針を出してまいります。

高木(美)委員 最重要課題とおっしゃりながら、恐らくその取り組みは、お声を聞きますというお話でございます。やはり、何かの形で明快にまとめていただいて、それをはっきりと示していただくということも私は必要なのではないかなというふうに思います。余りここで申し上げても時間がなくなりますので、重ねて検討をお願いしたいと思います。

 私は、きょうは、江戸川の虐待死の事例を踏まえまして少し質問をさせていただきたいのです。

 まず、文科省の高井政務官、そしてまた厚労省の山井政務官、恐らくこの検証報告書をごらんになっていると思いますが、これをどうお読みになられて、また各省としてどのようにお取り組みになられたのか、その上で、それぞれの政務官御自身が現在の児童虐待防止のための課題はどこにあるとお考えなのか、答弁を求めます。

高井大臣政務官 この江戸川区の虐待事件の報告書、私も丁寧に読ませていただきました。痛恨のきわみであるということが本当に文面から感じられるように、もうこのような事件を二度と起こさないようにしなければならないという強い気持ちと悔恨の気持ちも、その文書から読み取れました。それ以降も、この間ニュースにも虐待の死亡例も出ておりますし、裁判等も今行われていて、日々、虐待の事例が本当にひどいということが皆さんの目にも明らかになってきていると思います。

 一義的には、もちろん、その犯罪を犯した、児童の人権をじゅうりんした保護者の責任ではありますが、やはり、関係各者がなぜ防げなかったかという、犯人捜しの部分ではなくて、検証という形で、御指摘あったとおり、きっちりやっていかなくてはならないと思っています。

 その中にも、児童相談所と学校との間の連携がちょっと甘かったのではないかということが書かれておりますが、それを踏まえて、先般、山井政務官とともに、児童虐待防止のための連携強化に関する検討会議というのをいたしまして、学校と児童相談所の間の情報共有の仕組みについて検討を行って、三月二十四日に周知をいたしました。

 児童虐待の早期発見、または定期的に報告をするなど、要保護児童として認定されていて進行管理台帳に載っている子どもの情報をきちんと児童相談所と連絡をとり合いましょうと、例えば学校の出席日数であったり状況等を連絡し合おうということを確認し合って、それを再度周知しているところであります。

 先ほど来御指摘あった会議の件ですけれども、実は、子どもを見守り育てるネットワーク推進会議ということで、文部科学省が事務局をやっておりますが、こうした会議を設けました。児童虐待はもちろんですが、いじめとか、あらゆる子どもを取り巻く問題、それについて対応していこうと。

 これは、内閣府、警察庁、法務省、文科省、厚労省、それから、各中学校長会であったり教育研究の関連団体、社団法人のチャイルドラインであったり臨床心理士会、スクールカウンセリング推進協議会、それから、NPOも含め、フリースクール全国ネットワークやインターネット協会など、いろいろな団体が連携をして、この件もまさにこの会議でもしっかり取り組んでいきますので、政府として取り組んでいくという強い姿勢でこうした会議も設けておりますので、ぜひ御理解をいただければと思います。

山井大臣政務官 高木委員にお答え申し上げます。

 今回の江戸川の本当に痛ましいこの事例そして報告から、私たちは反省をいたしまして、今、文部科学政務官からもお話がありましたが、今回の最大の教訓は、児童相談所や市区町村に虐待の登録というか、その信号が来ていたにもかかわらず、その後、お子さんが学校で、きょうきのう欠席をされていて、親子関係も非常にうまくいっていなかったにもかかわらず、その情報が行っていなかったことであります。

 今後は、そのような、児相や市区町村が虐待が疑われるケースということで把握しているケースに関しては、おおむね一カ月に一回、出欠状況を、児相や市区町村の方に保育園、幼稚園、小学校等から報告をして、欠席の日数、その欠席の理由、また、その欠席の理由等が保護者から連絡があったか、そういうことを連絡しながら、漏れのないようにしていきたいと思っております。

 また、高木委員から、根本的な問題は何かということですが、私は、二点あると思います。

 一点目は、やはり児童福祉司、この現場の人手が非常に不足をしているということ、その悲鳴を私も聞かされておりますし、もう一つ重要なのは、残念ながら、そのような被害に遭われたお子さんをその後ケアしていく、児童養護施設や里親さんであるとか、そういう社会的養護のマンパワー、専門性、そのバックアップ、アフターケアというんですか、そういう体制がまだまだ脆弱であるというふうに思っております。

 子ども手当、保育園整備とあわせて、三つ目のやはり大きな柱として、社会的養護、虐待防止に取り組まねばならないと思っております。

高木(美)委員 私は東京が地元でございますので、江戸川の虐待事例、新聞報道で御承知の委員の方もいらっしゃるかと思いますので、少しお話をさせていただきたいのです。

 この報告書、江戸川区、また江戸川区教育委員会が三月にまとめました。岡本海渡さんという小学校一年生の男の子です。死亡事件検証報告、「児童虐待死ゼロをめざして」というサブタイトルになっております。

 ここでは、昨年の九月四日、児童が歯医者さんを受診しまして、そこで歯科医があざに気づくわけです。ここは本当に大きなメッセージで、まず、太ももにあざがあったと。太ももにあざがつくというのは、専門家の話では、けり上げるとか、正座をして上から強い圧力をかけるとか、そういう場合でなければ太ももにあざがつくということはなかなかないと。また、顔などにも複数のあざがあって、そのために、歯科医が子どもに聞くわけです。そうすると、お父さんが殴る、お母さんはそれに対して何も言わない、そういうことを、ここで既にこの児童は、最後のSOSのつもりで発信をするわけです。

 十日後、歯科医が子ども家庭支援センターに通報します。市区町村に通報するという義務がありますので通報するわけですが、そのときにこの子ども家庭支援センターがどうしたかというと、小学校の校長に連絡をします。その児童の、ちょうどそのときは登校していて、その状況を担任が確認して、外傷はないという確認をした。しかし、このときに既にセンターはハイリスク家庭という家庭状況を認識しなければいけなかったというのも、この報告書に出てまいります。

 そして、翌日、児童欠席。自転車でけがという連絡が家庭から来ます。そこで、翌日、担任が家庭訪問をします。その様子に異変を感じて、学校に戻って学校長に報告し、状況を把握するために、今度は、校長、副校長、担任が再度家庭訪問をします。そこで父親が暴力を認めるわけです。二度と殴りません、男の約束だという発言があり、そこで、翌日、この状況を学校はセンターに報告をする。また、センターは児相に文書で情報提供をした。

 その後、最終的に、長期欠席等々さまざま続くわけですけれども、一月二十四日にお子さんが亡くなる。こういう状況でございました。

 途中、連絡がとれなくなるとか、そういうことも何度かあったわけですけれども、ここで本来踏み込んで確認ができるはずであったのが、やはり、学校がずっと責任を持ってやっていた、また、センターも、熱心な学校だ、本当に熱心な先生たちだという認識でここまで来てしまったということから、ここで問題点、課題ということで、何度も甘さということが出てくるのです。

 例えば、子ども家庭支援センターは、リスクの適切な把握と初期対応について受けとめの甘さがあったと、「本人が虐待について訴えていること、母親が虐待を黙認していることから、ハイリスク家庭と認識すべきであった。」と。状況把握の甘さ。また、学校も、同じく状況把握の甘さ、担任に任せてしまったと。また、情報提供の不足等々、甘いという言葉が十カ所近くずっと続くわけです。

 こうした点を含めて、最終的に、「対応策」として、学校は、「「子どもの命は自分が守るんだ」という使命感をもち、子どもや保護者の理解を深める」、また、「校内体制の再構築」「多くの目で子どもを見るためのネットワークを深める」ということが書かれております。

 そして、最後に、「再発防止に向けて」というところで、「本事件の検証において、事実経過をたどればたどるほど、命を救えなかった「子ども家庭支援センター」と「学校」の対応に、深い悔恨の念が湧きあがってくる。 子ども家庭支援センターは、歯科医からの通報を受け、学校に安否確認や事実確認を依頼しているが、区における専門機関としての役割を発揮せず、結果として、学校任せの対応になってしまったこと、及びセンターを中心に学校、民生・児童委員などとの具体的連携体制を構築し、ケースマネジメントをしていくことができなかった。」さまざままだ続くわけですが、「痛切な反省に立ち、今後の再発防止に向け」ということで何点か挙げていらっしゃいます。

 こうしたことを踏まえて、今後、私が思いますことは、一つは、こういう発信される情報の意味が読み取れるという、この専門家が大事であると思っております。危険な状態にある、こうしたシグナルが続いたときに、それをしっかりと受けとめることができる、危ないと直感することができる、そういう専門家。もちろん、研修等によって養成することはできるかとは思いますけれども、ただ、どうしてもそこには限界というものがあります。

 例えば、学校の先生が行く。行けば、学校の先生ですから、親御さんたちがどういう思いで迎えるかというと、先生が来る、やはりそこで何となく、気持ちを打ち明けようというよりも、先生方の説得しようという、どうしても教師の目線というのはそういう目線も強いものがありますので、本来であれば、打ち明けて、その悩みを吸い取ってもらわなければいけないわけですが、それが、この場合はできなかったということがあります。

 そこで、提案でございますが、今、スクールソーシャルワーカー、この配置について、私どもも提案をさせていただき、今、多く配置を開始されているとも聞いております。このスクールソーシャルワーカーの配置状況等につきまして、高井政務官にお伺いをいたします。

高井大臣政務官 スクールソーシャルワーカーの活用事業について、社会福祉士の専門的な知識や技術を用いて、社会福祉の関係機関と連携を深めながら家庭へ働きかけるという大事な役割を担ってくださっていまして、適切に、まさに御指摘あったとおり、いろいろな相談を受ける、また、広く子どもに関するいろいろな対応ができる人として、これからもっともっと充実させていかなくてはならないと私どもも思っているところです。

 現在、平成二十一年度においては、全国で五百七十三人が学校、教育委員会等に配置されているのが現状でございますが、本当に、もっと充実させていかなければならないというのは、私も同じ気持ちでおります。

高木(美)委員 今後の拡充の目標ですが、また、必要な財源措置をどのようにされるのか、恐縮ですが、重ねて高井政務官にお伺いいたします。

高井大臣政務官 先般通りました二十二年度予算におきまして、学校・家庭・地域連携協力推進事業という中で、スクールソーシャルワーカーの活用事業として、地方自治体が主体的に地域の事情に応じて配置することができるように、必要な経費を計上しているところであります。

 これは、三分の一補助ではありますが、一億三千万で補助しているところでありまして、これからも、連携したりしながら強化体制を図ってまいりたいと思います。

 申しわけございません、間違えました、数字を。千五十六人の人数を予定しておりまして、百三十億でございます。失礼しました。

高木(美)委員 そうですね。補助金といいますか、学校・家庭・地域連携協力推進事業費補助金ということで、その内数としてスクールソーシャルワーカーということですね。これは、三分の一の国の負担で、残り三分の二は自治体ということになりますと、その前のモデル事業のときはもっと多い人数の方がスクールソーシャルワーカーとして働いていらしたわけですが、これが三分の一になって、今五百七十三人、来年度の予算で千五十六人という状況でございます。

 今、文科省で、教育についての一括交付金みたいなこともいろいろ検討されているとも伺っておりますけれども、ここがもう少し、費用負担のところまで、教育という分野でどこまでできるか。当然、義務教育費の国庫負担割合というのもありますので、ハードルは高いかと思いますが、ただ、やはり、こういう専門家がいることによって守られる命があるという、ここのところをどう切り分けていくかというところを私はもう少し検討する余地をお持ちいただければと思っております。重ねて、今後、取り組みをお願いしたいと思います。

 また、このスクールソーシャルワーカーの県の分布を私はいただきました。きょうは、済みません、これは資料で出しておりませんが、まだまだ県によっても取り組みがさまざまで、これは二十一年度です、東京都のような場合は六十六人、しかし、山口県、新潟市、また福島県では二名というところもございます。

 それぞれ、都道府県に置く、そしてさらに市に置く等々、取り組みは違うかと思いますけれども、こうした余りにばらつきがある内容につきまして、私はもう一歩、今後、専門的なスクールソーシャルワーカーの配置の推進、具体的にお取り組みをお願いできればと思っております。手法につきましてはさまざまあろうかと思いますので、きょうこの場では申し上げませんが、重ねてのお取り組みをお願い申し上げます。

 次に、児童福祉司、先ほど来多くございました。きょう資料も用意させていただきましたが、この児童福祉司また児童心理司、これが児童相談所に配置をされております。その中でも、今、児相における児童虐待相談対応件数、平成十一年のスタートしたときから比べまして約三・七倍増加しております。それに比べて児童福祉司の数は約二・〇倍の増加というのが具体的な数字でございます。これは、平成二十年で終わっている四万二千六百六十四名という数字でございますので、恐らく、平成二十一年になりますと、もう少しふえているのではないかなということを感じます。

 これだけの伸び率に対応しまして、さらに児童福祉司の配置が求められるわけです。今、配置の現状、そしてまた配置基準につきましても、たしか五年前に、おおむね十万人から十三万人に対して一人、それを、五万人から八万人に一人というように改正がされました。しかし、データで見ましても、平成十七年のときから、またさらにぐんと約一万人ふえている。こういう現状を考えますと、この配置基準につきましても、さらに検討を進めるべきではないかと思います。

 特に、昨今、児相、被虐待児等を含めまして、親子分離ということをずっと進めてまいりましたけれども、どちらかというと家庭的環境で育てるとか家庭的な養護を進める、こういう考え方に立ちますと、では、この児童をだれが見守っていくのかということを考えると、当然、児童福祉司の果たす役割はさらに広がっていると思わざるを得ません。

 そしてまた、先ほど、不登校児、長期欠席の児童について報告を求めるということになっておりますが、その膨大なデータを恐らく今度は児相で処理しなければいけない。そこに例えばハイリスク家庭が潜り込んでいるとか、そこのところをだれがどのようにするかということを考えますと、当然、この児童福祉司の配置につきましても、もう少しふやしていきませんと成り立たないのではないかと思っております。

 この再検討につきまして、厚生労働の山井政務官に答弁を求めます。

山井大臣政務官 高木委員にお答えを申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、今回の江戸川区の事例をもとに、教育現場と児相や市区町村の連携の情報交換を密にすることにしましたが、密にすればするほど、それに対して対応する人手が必要になるということでありまして、今のままの人員で本当にここはやっていけるのかどうか、ただでさえ非常に人手が足らなくて困っているのが現状であります。

 そういう意味では、もちろん、今御指摘いただきましたように、人口おおむね五万人から八万人に一人という基準の強化を図ったところでありますが、これも自治体間の格差が非常に多いわけでありますし、その意味では、さらにこれから、専門性を高める研究と同時に、やはりこの体制の整備、人員をふやしていくということに取り組む必要があるというふうに考えております。

 また、平成二十一年では、児童福祉司は二千四百二十八人となりまして、平成十一年四月の千二百三十人に比べて約二倍、そして、児童心理司については、平成二十一年の四月では千六十五人、平成十一年の五月の八百十六人からは一・三倍となっておりますが、虐待の数がとにかくふえておりますので、これでは追いついていかないと思いますので、とにかくふやす必要があるというふうに考えております。

高木(美)委員 そこで、きょうはお忙しいところ申しわけありません、総務省の小川政務官にもお越しいただきました。

 地方交付税の積算根拠を見直しまして、都道府県、政令市、児童相談所設置市に対して必要な財政措置を講ずるべきと考えます。政務官の答弁を求めます。

小川大臣政務官 大変痛ましい事件に対する委員の御心痛、また、それに基づく御質問に深く敬意を表したいと思います。

 交付税の算定でございますが、人口百七十万人の標準的な都道府県で児童福祉司がどれくらい必要かという観点から積算をいたしておりまして、これが、少しさかのぼりますと、平成十八年には二十五名で積算をいたしておりました。これを、十九年に二十八名、二十年に二十九名、二十一年に三十名という形で、大変限られた財源ではございますが、鋭意拡充を図ってきたところでございます。

 現在のこの三十名というのは、今の配置基準の実態とほぼ見合った状況でございまして、これで必ずしも十分ということではないかと思いますが、引き続き努力をいたしたいと思います。

高木(美)委員 ここはぜひ大臣に頑張っていただきまして、総務省と連携の上で、必要な財政措置、やはり人数をふやして命が守られるのであれば、私は、そこは政策判断で、まさに政治主導で進めていただきたいところでございます。ぜひとも今後の取り組みを、また小川政務官にも、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 また、市区町村、児相におきまして、児童福祉司に対する社会福祉士の割合というのもあります。この割合がどのようになっているのか、また、社会福祉士の方たちの拡充をどう考えていくのか、答弁を求めます。

 要するに、児童福祉司といいますのは、もう皆様も既に御承知の内容でございますけれども、さまざまな方がこの児童福祉司の資格を取ることができます。例えば、大学で心理学、教育学もしくは社会学等を修めた者で、社会福祉施設等において一年以上子ども等の福祉に関する相談、援助等の業務に従事したもの。例えば、私は社会学出身ですので、一年間従事すればこれを取ることができる。しかし、では私が児童虐待の相談に乗れるかというと、大変心もとないものがございます。研修を受ける等々、もちろんそれもあるのでしょうが。

 ということから考えますと、そのほかの、この社会福祉士、まさにそうした専門的な免許を持つ人、専門性の高い方に、私は、この児童福祉司の中でやはり高いウエートを持って活躍をしていただきたいと思っております。お考えを伺います。

山井大臣政務官 今、児童相談所の児童福祉司に関しましては、二千三百四十七名の方が厚生労働省に対して任用区分について報告がありまして、そのうち社会福祉士は三百八十一人、一六・二%であります。そして、市区町村の担当職員に関しては、二十一年四月一日現在、六千八百四十二人のうち二百七十一名、四・〇%が社会福祉士であります。

 しかし、高木委員の話を聞けば聞くほど、やはり児童福祉司が虐待を防ぐための命綱であるということをますます痛感しているところでありまして、研修等による専門性の向上とともに、さまざまな、詳しい方と経験が少ない方がおられますので、専門性を高めるとともに、やはり質の高い児童福祉司の方をふやしていかねばならないと考えております。

高木(美)委員 実は、自治体はこうした児童福祉司等の専門職をなかなか採りたがらない、採用したがらないという現状があります。それは、一たん採れば、その方が、例えば児童相談所に三年間とか五年間とか固定化されてしまう、なかなかそのかわるポストが見つからないという理由のようですが、今、高齢者虐待、障害者虐待、またこの児童虐待も含めまして、権利擁護のこともそのようにありますし、またさらには、先ほど申し上げたような多くの児童に関するポストもあるかと思っております。

 こういう現状に対して、ぜひとも、厚生労働省山井政務官に働きかけていただきまして、頑張っていただきたいと思っておりますが、具体的にどのように働きかけていただけますでしょうか。

山井大臣政務官 虐待を防ぐための児童福祉司には非常に高い専門性が求められるところでありまして、厚生労働省としては、全国厚生労働関係部局長会議において、児童福祉司の積極的な増員配置と、児童福祉司には、高い社会福祉援助技術を持った人材の確保や、現任職員に対する研修の実施等を通じた専門性の確保等の向上に努めることなどを各自治体に、直近でありますと平成二十二年一月十四日、十五日の関係部局長会議でも強く要請してきたところでありますし、これからも強く要請をし続けたいと思っております。

高木(美)委員 だんだん時間が迫ってまいりました。それでは、福島大臣に最後にお伺いしたいのですが、子ども・若者ビジョンの中で、子ども・若者の健康と安心の確保、児童虐待から少し話は離れますが、その中に、学校における相談体制の充実という項目がございます。

 私たちは熊本の「こうのとりのゆりかご」で視察をいたしまして、判明した三十七件のうち、実は自宅での出産というのは十四件ありました。三十七件のうち十四件です。二七・四%。

 その意味では、性行為がそのまま命の問題にかかわるんだ、自分の体をもっと大切にする、またそのための知識、そのような自宅での出産がどれほど自分にとって命の危機に及ぶようなことなのかというような本来教えるべき知識、先ほど性教育という話もありましたが、そういう次元ではなくて、自分の体に対する知識でございます。それがそのままリスクを取り除くことになるのではないかと思っております。そうしたこともこの相談体制の充実の中に盛り込んでいただきたいと思います。

 私は、実は若い方たちの健康教育ということに当選以来ずっと静かに取り組んでおりまして、学校で相談するというのは、恐らく、友人関係のことであるとか、御自分の不登校、そしてまたひきこもり等々、そうしたことは学校で相談できると思いますが、こうした課題については恐らく電話相談が一番有効であるというのが、どの専門家の方に伺ってもその結論でございます。

 この「こうのとりのゆりかご」では、二十四時間、電話相談を行っておりました。電話相談を受けることによって、しかもそれは、いわゆる看護師さんとかという方たちではなく、婦長さんみずから、看護師長さんみずからが行っている二十四時間体制。

 こういう相談体制の充実をどのように考えていくのか。私は、国として、委託して二十四時間体制で実施をしていただくということも踏み出していただいていいのではないかと思います。ほかに二十四時間実施しているところはほとんどないと言ってもいいと思います。大臣の見解を求めます。

福島国務大臣 おっしゃるとおり、私もその「こうのとり」の報告書を見て、自宅で子どもを産んだり、強姦によって妊娠したり、必要な知識が本当に得られていなくて、しかも助けをなかなか求められない状況に、取り組む必要があることを非常に思いました。

 子ども・若者が、自分の体のことをよく知って、健やかに成長、発達していくことは大変必要です。発達段階に応じた教育も必要ですし、今まで出ましたスクールソーシャルワーカーも、スクールカウンセラーもさることながら、ソーシャルワーク的な機能をもっと重要視すべきだということも、子ども・若者ビジョンをつくる過程の中で議論をしております。

 それから、相談体制、とりわけ二十四時間なんですが、これは二十四時間になるかどうかわかりませんが、もう一つ、子ども・若者ビジョンで議論しているのと同時に、第三次男女共同参画基本計画の中で、女性に対する性暴力や暴力などに対する相談窓口や相談体制の充実、とりわけ、女の人の生まれてから死ぬまでの健康についての一つのケアが必要だということを痛感しておりまして、子ども・若者ビジョンと男女共同参画基本計画にしっかり盛り込んでいきたいと思っております。

高木(美)委員 今最後に大臣がおっしゃった女性のトータルのサポート、まさに私は、それを健康パスポートということで提案をさせていただいております。自分の体に対する知識を含めて、またそのためのサポートをどのように周りでできるシステムが整っているのか、その情報発信も含めて進めていきたいと思います。

 最後に、先ほど来、子どもの貧困、また若者の雇用の問題がありました。

 私は、これは、一番最後、突き詰めるものは景気対策だと思っております。それをやはりきちっと底上げをしながら両面でやりませんと、今景気対策がないという、ここに帰結をするのではないかと思っております。ぜひとも、その点も含めて、抜本的な解決のためにも、ぜひこれは政治の責任として取り組ませていただきたいし、また、ぜひ取り組んでいただきたいことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池坊委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 まず冒頭、池坊委員長に一言申し上げたい。

 私の反対を押し切って私の質問時間を五分間短くしたことは、断じて納得をしておりません。冒頭、抗議の意思をはっきり申し上げて、質問に入りたいと思います。

 私も、この間の委員会視察に参加をいたしまして、改めて、日本の子どもたちと子育てをめぐる現状の深刻さ、立ちおくれを実感いたしました。

 本来子どもにとって一番安全であり安心できる場所でなければならない家庭で起こる虐待、その背景には、貧困あるいは格差社会など、親も含む社会のありよう全体、これに大きな困難とゆがみがあると痛感をいたしました。

 児童虐待防止法のもとでさまざまな対策が進められてきたわけですが、日本社会のありようという、その大もとの問題にメスが入らなければ、問題の根本的解決はないと思います。

 そこで、まず、現政権のこの問題に取り組む姿勢について大臣に問いたいんです。

 ことし一月二十九日に閣議決定された子ども・子育てビジョンでは、社会全体で子育てを支えることを掲げ、一人一人の子どもが幸せに生きる権利、育つ権利、学ぶ権利を大切にすると述べられております。これは、ただ単なる少子化対策として子どもを生み育てる責任の多くを親の扶養義務や家庭の自己責任に求めてきた今までの対策から、大きく一歩踏み出すものだというふうに思います。

 社会全体で子どもと子育てを支える、これが現政権の基本姿勢だと認識をしておりますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

池坊委員長 答弁者を指名いたします前に、宮本岳志さんからの今の御発言でございますが、質疑時間を決定いたしますのは、委員長の強権ではございません。理事会で決議したということをしっかりとここで、誤解ないように、委員の皆様方にも申し上げておきたいと思います。

 それでは、福島国務大臣。

福島国務大臣 おっしゃるとおりです。

 子ども・子育てビジョンに関して、単に子どもが、私たちの将来の、例えば年金やいろいろな制度を負担してくれるからとか、少子高齢化が問題だからということだけではなく、もっともっと重要なことは、子どもは、その存在そのものが大事であって、本当に未来の存在であって、大事な存在であって、存在そのものを応援することが必要だというのが、おっしゃるとおり、子ども・子育てビジョンの骨格です。

 だからこそ、チルドレンファースト、子どもを真ん中に置いて、子どもが主人公で、子どもの権利に関する条約を踏まえて、子どもを、子育てを応援していこう、そういう考えで子ども・子育てビジョンをつくりました。ですから、もちろんこれは、単なる少子化対策だけではないわけです。

 子育ては、基本的には親が第一義的に責任を負うとしても、当たり前ですが、個人に過重な負担がかかったり、親だけで子どもを育てられるわけではもちろんありません。ですから、社会全体で子育てを支えて、個人の希望が実現できることを目指して、子どもを大切にする社会をつくるという観点からこのビジョンをつくりました。ですから、少子化対策から子ども・子育て支援へと視点を移し、当事者の目線で、子育てを社会全体で応援すると考えています。

 子ども・子育て支援を進めるに当たって、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、子ども・若者育成支援とも関係があるという認識を持っておりまして、そのさまざまな施策ともあわせて解決していきたいというように思っております。社会的な支援をしっかりやりながら、子育ての応援をしていきたいと思っております。

宮本委員 私は、冒頭、私が納得していないということを申し上げたわけでありまして、そのことに抗議の意を表明したまでであります。

 さて、そういう、社会で支えるということが求められているわけですけれども、現状は、まだまだ、子どもと子育てはその親の自己責任にのみ押しつけられて、思いがけない妊娠や望まれずに産み落とされた子どもが無残にもその命まで奪われるという、悲しい事件が後を絶ちません。

 先日視察してきた熊本県の「こうのとりのゆりかご」、いわゆる赤ちゃんポストというものは、そういう現状に対する一つの鋭い問題提起だというふうに思います。

 「「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの」という昨年十一月二十六日に熊本県が発表した報告書では、「ゆりかご事例から見えるのは、社会のありようの一面であり、現代社会の子育てにおいて個人や個々の家庭だけでは背負いきれないものが形として噴出している状況」だ、こう述べて、先ほど私が申し上げた問題意識と重なる認識を示しております。

 その上で、この報告書では、匿名で相談でき、一時的に母子を匿名のまま緊急保護し、短期の入所も可能な設備を備えた施設が全国に整備され、そこを中心にネットワークが形成されることが必要だと指摘をしております。現場で日夜悪戦苦闘してこられた方々の実感に立った、非常に大事な指摘だと思うんですね。

 そこで、厚生労働省に聞くんですけれども、国や自治体の責任で、妊娠、出産、子育てに悩んだり困難にぶつかったときに、いつでもだれでも、その場で専門的できめ細かい相談に乗ってもらえ、必要な支援を受けられる、そういう場やネットワークの形成、こういう取り組みの現状はどのようになっておるでしょうか。

山井大臣政務官 宮本委員にお答え申し上げます。

 まず、厚生労働省としては、各都道府県等とともに、出産や子育てに悩んでいる方が相談しやすい環境整備のため、児童相談所全国共通ダイヤル、〇五七〇―〇六四―〇〇〇の実施を平成二十一年十月からいたしております。

 また、妊娠、出産についての医学的な相談や心の悩みに対応する女性健康支援センターの整備、これは、平成二十一年度におきまして三十七カ所、都道府県、指定市、中核市に整備をしております。

 また、生後四カ月の子どもがいる家庭に保健師や子育て経験者が訪問し、子育ての不安や悩みの解消を図るとともに必要な支援を行う乳児家庭全戸訪問事業、こんにちは赤ちゃん事業は、平成二十一年度、実施率が八四%であります。

 また、市区町村においては、一般的に、助産師、保健師が妊産婦、新生児等の家庭を訪問しての相談や保健指導、また、市町村保健センター等における妊娠、出産、子育てに関する相談や保健事業などを行っております。

宮本委員 熊本の「こうのとりのゆりかご」の視察で、祖父母が赤ちゃんを預けに来た例で、後で理由を尋ねたら、娘の戸籍を汚したくなかったと語ったという、本当にやりきれない話もお伺いをいたしました。

 思いがけない妊娠ということになれば、まだまだ、妊娠、出産の段階から周囲に反対されたり白眼視されるということも多いと思うんですね。そうなれば母親は、子育ての最初から家族の中や地域で孤立しやすい状況に置かれます。そうした孤立が、子育ての不安や焦燥感を高めて、虐待のリスクを高めるという指摘もございます。

 この問題は、熊本県のこの報告書も指摘しているとおり、日本社会のありようと深くかかわる問題であり、現代社会の子育てにおいて、もはや個人や個々の家庭だけでは背負い切れないものが厳然と存在していることは何人たりとも否定できない、そういう状況だと思っています。

 さて、そういう前提を置いた上で、次に、児童虐待防止対策についてお伺いしたいと思うんです。

 児童虐待防止法が施行されて十年、家庭内の問題だとかしつけなどということを口実にして子どもを虐待することは絶対に許されてはならない、こういう考え方がやっと浸透してまいりました。

 しかし、先日も、東京江戸川区で、本人からの申告や歯科医師からの通告があったにもかかわらず、子ども家庭支援センターも学校も状況認識が甘かったことが一つの理由になって、ついに命を落とすという悲しい事件が発生をいたしました。

 また、同居している男性による暴力で二歳の男の子が亡くなった大阪門真市の事件、あるいは、子どもをごみ箱に長時間閉じ込めて窒息死させたという事件、本当に胸の痛む事件が後を絶たないわけであります。

 まず、これは大臣の認識をお伺いするんですが、政府として、この現状をどのように見ておられますか。

福島国務大臣 おっしゃるとおり、児童虐待については、児童虐待防止法ができた以降、むしろ通報件数もウナギ登りにふえておりまして、また報道でも、子どもが命を失ってしまうという事件が相次いで、これは本当に喫緊のとても重要な課題だというふうに思っています。

 このためには、やはり、ネットワーク力や対応が弱いということは、政治としてはっきり自覚すべきだと思います。これはもちろん、児童相談所が満杯状態だったり、家庭支援センターが、職員がとても忙しいとか件数を抱えているとか、なかなか親の親権に対抗できないとか、学校が家になかなか踏み込めないとか、さまざまな問題があるわけですが。

 私は、一点、DVや児童虐待の認識についての研修やソーシャルワーカーの力が必要だと思います。

 DVをする男性も、女性もいるかもしれませんが、あるいは児童虐待をしがちな親も、もう二度としないと言ったり、いや、しつけをしているんだとか、悪いことはしていない、殴ってなんかいないと必ず言うんですね。にもかかわらず、問題が続くというか、しつけや、いや、ちょっと手を出しただけだと言われていることが重いということを、そういう発言を聞いたら逆に危ないんだということを認識してやっていくだけの専門家集団のフォローアップが必要だと考えています。

宮本委員 そういう状況のもとで、やはり体制が全然足りない。先ほどもそういう議論がございましたね。

 いただいた資料によると、児童虐待防止法が施行された十年前、一九九九年度の相談件数は一万一千六百三十一件、十年後には、二〇〇八年度で四万二千六百六十四件と三・七倍にふえたということですけれども、先ほども指摘があったように、児童福祉司の方は、二〇〇九年四月一日の時点で二千四百二十八人と、正確に言えば、十年前の二倍にも達していないわけです。一人の児童福祉司が受け持つ虐待に関する件数は、平均で年間百件を超えるという事例も珍しくありません。

 そもそも、この配置基準というのは児童福祉法施行令で定められておりますけれども、これは、もちろん子どもの数や交通事情を考慮するということはついているんですが、あくまで人口当たりの人数で定められているわけです。おおむね五万人から八万人までというふうになっております。そして、先ほど総務省の答弁もありましたけれども、地方交付税の算定による基準の方も、百七十万人当たり三十人、これも、割ってみたら、六万人弱ということになりますよね。

 それで、私は、実は国立国会図書館で欧米各国の事例を調べていただいたんですね、欧米各国でどうなっているか。

 ここにイギリスの例を持ってまいりましたけれども、イギリスでは、自治体の児童サービス部には国家資格を持つソーシャルワーカーが配置をされております。配置人数は各自治体が決定するんですけれども、一人当たりの平均的な担当件数というものは、児童虐待チームでは十件から十五件、家族委託チームでは十五件から二十件である、これが国会図書館の御説明でありました。児童福祉司の行う業務は極めて専門的でありまして、十五件とか二十件というふうにしておるのは、なぜかといえば、専門実務を行うことが可能である範囲にすることを原則にしていると。これがイギリスの制度のようです。

 日本でも、もちろん専門的な仕事でありますし、ですから、私は、いつまでも人口基準のみでこの配置を決めるんじゃなくて、やはり一人当たりの相談件数、受け持ち件数を基準として明確に示す、抜本的な増員を図るべきだというふうに思うんですけれども、福島大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

福島国務大臣 児童福祉司さんがもっとふえて子どもたちをしっかり見るようになれば、随分これも変わっていくと思います。

 青少年育成や少子化対策を担当する大臣として、児童福祉司の人員の確保や質の向上など、児童相談所自体の体制を充実させる方向で検討が進められるよう、やっていきたいと思います。

宮本委員 二〇〇五年二月に、厚生労働省は、今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会、こういうものを設置いたしまして、二〇〇六年の四月に報告書が出されております。

 それで、この報告書の「児童相談所の必要な職員体制の確保」という部分、児童福祉司の第一項ですね。ここでは、今後、国は配置基準についてどういう要素を基準として示すべきだと書かれてあるか、厚生労働省政務官からお答えいただけますか。

山井大臣政務官 児童福祉司の配置基準のところでよろしいですか。

 そこに関しましては、御質問の児童福祉司の配置基準については、児童福祉法施行令第二条において、保護を要する児童の数、交通事情等を考慮し、人口おおむね五万人から八万人までを標準として定めると規定されております。(宮本委員「それはもう終わったんです」と呼ぶ)いや、ですから、確認をしたんです。

宮本委員 それは、既に先ほども私申し上げました。

 ですから、厚生労働省が置いた、この研究会報告では、基準についてどのように示すべきだと述べられておりますかと聞いたんです。

山井大臣政務官 御質問の点については、「今後、各都道府県は、政令改正も踏まえ、また相談内容なども加味しながら、より一層、児童福祉司の配置を充実させることが望まれる。 その際、相談件数や児童福祉司の担当事例件数、児童数など、人口以外の要素を基本とした標準について、国で示すべきである。」とまとめております。

宮本委員 先ほど私が指摘したとおり、担当事例件数、児童数など、人口以外の要素を基本とした標準について国で示すべきだ、こういう指摘もされているわけですね。

 これは、やはり本気でやらないと、幾ら、社会全体で子育てを支えるとか、一人一人の子どもが幸せに生きる権利、育つ権利、学ぶ権利を大切にすると子ども・子育てビジョンに書き込んでも、それは担保されないということになりますから、ぜひしっかりとこの見直しは進めていただきたいというふうに思います。

 児童養護施設は、子どもの最後のセーフティーネットとして極めて重要であります。

 二〇〇七年の十一月二十二日に出された社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の報告書、「社会的養護体制の充実を図るための方策について」では、明確に、子どもにとって必要なケアの質を確保するための人員配置基準の引き上げや措置費の算定基準の見直し等を含めたケアの改善に向けた方策を検討することを求めております。

 そして、先日、本委員会で視察に伺った熊本の慈愛園乳児ホームの施設長も、これは委員長の視察報告にもあるように、乳幼児一人に対する看護師、保育士等の人員配置基準を一人に引き上げること、また、一時保護に係る委託費の単価の引き上げなどに関する要望が出されました。

 既にこの点についての検討に入っておられると聞いておるんですけれども、一体いつまでに結論を出して、この基準を見直すのか、お答えいただけますか。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘のように、平成十九年十一月の社会保障審議会の社会的養護専門委員会の報告書において、子どもの状態や年齢に応じた適切なケアの実施のための施設類型のあり方や、人員配置基準、措置費の算定基準の見直しが必要、そのための必要な財源の確保や施設内のケアの現状についての詳細な調査、分析が必要と提言されました。

 それを受けて、平成二十年三月に、全施設を対象に、施設の概況、入所児童の状態、背景等を把握することを目的とした調査を実施し、そして昨年の平成二十一年一月から三月に、子どもの状態によるケアの内容を定量的に把握するため、いわゆるタイムスタディーを実施してきたところであります。

 また、現在、その詳細な分析、集計を行っているところでありまして、その結果等を踏まえ、社会的養護専門委員会で具体的に議論していただく予定になっております。

 ついては、新たな次世代育成支援のための包括的・一元化システムについては、平成二十三年通常国会、来年の通常国会に法案を提出し、必要な準備を行い、先ほど申し上げましたように、子ども手当、そして保育所や学童クラブの整備、さらにこの社会的養護というものを三つの柱として新しいシステムの構築を図りたいと考えておりますので、社会的養護にかかわります施設機能の見直しについても、この新システム構築の全体的なスケジュールの中を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

宮本委員 本委員会でも、児童養護施設の施設最低基準、これは見直しを繰り返し求めてまいりました。最低基準ができてもう既に六十年ということでありますから、やっと検討に入ったことは評価しつつも、やはり本当に急いでいただかないと、遅きに失した感は否めないと思います。

 児童養護施設関係者らが求めているように、子どもの心のケアを充実させるなど個別の支援が可能となるような職員配置、個室の設置など、子どもの発達を保障する生活環境の確保、施設に入所している子どもたちの立場に立った見直しを進めていただきたいと思います。

 最後のテーマなんですが、政府が今国会に提出しているいわゆる地域主権法案にかかわって、児童自立支援施設の職員資格の制限緩和ということについて伺いたいと思います。

 まず、確認をしたいんですけれども、児童自立支援施設、この施設はどのような目的を持った施設なのか、入所してくるのはどのような子どもたちなのか、厚労省、お答えいただけますか。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 児童自立支援施設とは、不良行為をなし、またはなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、または保護者のもとから通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設であります。

 以上です。

宮本委員 自立支援という名称がつきますので、障害者の施設だと思っている人もおるようでありますけれども、この施設が児童自立支援施設と名前が変わったのは一九九八年の四月からでありまして、それ以前は教護院と呼ばれていた施設であります。

 ここには、非行を行った児童が都道府県知事の判断で入所しているだけでなく、少年法に基づく家庭裁判所の保護処分決定に従って入所措置がとられる場合があるなど、その性質上、管理的な性質が高い施設でありますし、児童の処遇の難しさから、児童の権利擁護の観点も含めて高い専門性が必要となる施設だとされております。

 それだけに、児童自立支援施設で子どもたちと日々向き合っている職員の資格は児童福祉法施行令三十六条に定められておりまして、第五項は、児童自立支援専門員及び児童生活支援員は、当該都道府県の職員をこれに充てるとしております。

 ところが、政府は、昨年十二月の地方分権改革推進計画で、この施行令三十六条五項は廃止すると決定をいたしました。一体、この理由は、なぜですか。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 今回の見直しは、地域主権改革の実現に向け、法制的な観点から地方自治体の自主性を強化し、地方自治体がみずからの責任において行政を展開できる仕組みを構築するという地方分権改革推進委員会の第三次勧告の趣旨を最大限尊重したものであり、一律に児童自立支援施設の運営の民間委託を禁止していたものを改め、地方自治体がみずからの責任において民間委託を選択することも可能としたものであります。

 宮本委員御指摘の点は、私も非常に重要な論点だと当然思っております。ですから、このことによって、当然、ケアの質といいますか、そういうことが下がることがあっては決してならないというふうに思っております。

宮本委員 それは、当然のことなんですよね。ケアの質が下がることはあってはならないというのはもちろんなんですけれども。

 今お話があったように、全国知事会からも、実はこの規制緩和を求める意見が出されてまいりました。その中身は、この三十六条五項があると児童自立支援施設の外部委託が不可能なために、それで、効率的な行政運営が可能となるよう職員の身分規定を廃止すべきという要求があったというんですね。つまり、コストの削減をしたいというのが知事会の要求だと思います。

 しかし、この児童自立支援施設の民営化問題をめぐっては、二〇〇五年七月に厚労省自身が設置をして、二〇〇六年二月に報告書を取りまとめた児童自立支援施設のあり方に関する研究会というものがやられておりまして、ここで議論をされてきた経緯がございます。

 まず、冒頭、これは厚労省に確認いたしますけれども、児童自立支援施設のあり方に関する研究会の報告、ここに持ってきましたけれども、この報告については、厚労省は尊重いたしますね。

山井大臣政務官 当然、尊重いたします。

宮本委員 尊重するということであります。

 この報告書では、さまざまな角度からの検討がやられております。そして、この中では、児童自立支援施設が、極めて公共性の高い施設であり、子どもに対する適切な対応を図っていくためには、施設運営の安全性、安定性、継続性に加えて、職員の専門性の確保が不可欠だと強調した上で、施設の民営化を検討の視野に入れる場合には、少年非行対策へのスタンス、公としての責任、対応、民営化する場合の施設機能の維持強化などの検討が必要であり、特に、財政的基盤のあり方、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援・連携システム、とりわけ、運営に支障が生じた場合の設置者としての責任を持った回復サポート体制などの諸課題を満たすことができるかどうかについて検証が不可欠だ、こう述べているわけですね。

 では、この研究会報告書に基づいて、今述べたようなことをきちっと検討、検証いたしましたか。

山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。

 規制緩和や民間委託によってケアの質が落ちてはならない、これは当然のことであります。現在の鳩山政権においては、地域主権ということを進めてまいりますが、これは当然の前提だというふうに思っております。

 ですから、今回の民営化におきましても、民間委託が可能になっても、処遇にかかわる高い専門性が損なわれることはあってはならないということを考えておりますし、そうするための方策として、先ほど御指摘いただいた児童自立支援施設のあり方に関する研究会の報告書も尊重をしてまいりたいと思っております。

 また、児童自立支援施設の民間委託を地方自治体が検討する場合には、研究会の報告書で指摘されているように、今、宮本委員がおっしゃいましたように、財政基盤のあり方、人的配置、公的支援・連携システムなどの諸課題を満たすことができるかどうかについて検討をいただくことが必要だというふうに考えております。

 厚生労働省としても、地方自治体の自主性を尊重しつつ、引き続き、児童自立支援施設における支援の質の確保について、有識者や関係者の御意見も伺いながら、検討し、地方自治体に助言してまいりたいと思います。

 改めて申し上げますが、今回のことによってケアの質がアップすることはあっても低下することがあってはならないと考えております。

宮本委員 民間委託をするときに検討することはもちろんでありますけれども、十二月のこの閣議決定をするに当たって、きちっと、民営化を視野に入れる場合にも検証が不可欠だと指摘された中身を、国は、厚労省は検証いたしましたかと聞いたんです。

山井大臣政務官 繰り返しになりますが、これに関しましては、自治体が民間委託をする際に、この報告書の趣旨を尊重して、財政基盤のあり方、人的配置、公的支援・連携システムなどの諸課題を満たすことができる、そのことを検討する。逆に言えば、満たすことができないのであれば、それは民間委託にふさわしくないということになると考えております。

宮本委員 この検証、検討というのは全くされていないんですよね。やっておられないですよ。

 私、ここに全国児童自立支援施設協議会が長妻厚労大臣あてに出した意見書というものを持ってまいりました。

 昨年の二月に、この協議会の役員会に厚労省の担当官が出席し、この問題についての検討会を設置する旨の説明があった、にもかかわらず、こうした検討や検証を一切捨象して、公設民営化への道を開く第三次勧告、そしてこの計画が出されてきたんだ、これは遺憾であり、とても容認できるものではないと、はっきり述べておられるんですね。

 ですから、大臣も閣議決定に参加されたと思うんですけれども、これは本当に、現場の人の意見に照らしても、おかしいんじゃないですか。大臣、そう思われませんか。

福島国務大臣 宮本委員おっしゃるとおり、民営化という中での問題点の指摘や懸念は理解できるところです。

 今、山井政務官が申し上げたとおり、民営化が可能となっても、質が落ちたり、ケアが必要な入所や処遇困難なケースを取り扱うことがあるわけですから、それに対する専門性の確保や質の確保がない限り民営化はできないということを、青少年育成担当大臣として、地方における取り組みを注視し、監視してまいります。

宮本委員 研究会報告書の結論は、以上を踏まえ、児童自立支援施設は、子どもの健全な発達、成長のための最善の利益の確保を目指し、取り組むべき課題について取り組めと、こう言っているわけですよね。

 だから、知事会が言うように、いかにコストを削減するかという視点からではだめであって、子どもの最善の利益をちゃんとしっかり追求せよというのが研究会の報告書ですから、やはりその立場でしっかり見ていく必要があると思います。

 私は、この協議会の方々にも委員会に参考人として御参加いただいて、ぜひとも御意見も伺ってみたいと思っております。

 以上で、時間が参りましたので、私の質問を終わります。

池坊委員長 本日の質疑はこれにて終了いたします。

    ―――――――――――――

池坊委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十七分散会


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