衆議院

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第3号 平成22年8月18日(水曜日)

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平成二十二年八月十八日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君

   理事 佐藤ゆうこ君 理事 園田 康博君

   理事 菅原 一秀君 理事 松浪 健太君

   理事 高木美智代君

      大泉ひろこ君    大西 健介君

      大山 昌宏君    金森  正君

      京野 公子君    瑞慶覧長敏君

      道休誠一郎君    初鹿 明博君

      室井 秀子君    山崎 摩耶君

      山本 剛正君    柚木 道義君

      あべ 俊子君    小渕 優子君

      馳   浩君    宮本 岳志君

      吉泉 秀男君

    …………………………………

   国務大臣         荒井  聰君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   内閣府大臣政務官     泉  健太君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          齋藤  敦君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  樋口 建史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金子 穰治君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月十八日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     瑞慶覧長敏君

  小林 正枝君     金森  正君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     大西 健介君

  瑞慶覧長敏君     打越あかし君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     小林 正枝君

    ―――――――――――――

八月六日

 一、青少年問題に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件(児童虐待問題)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 皆様、お暑い中、閉会中にもかかわらず、大阪で痛ましい事故があり、児童虐待に対して閉会中審査の申し出がございましたので、政治家として真摯にこの問題に立ち向かいたいとの願いのもとに、本日、委員会を開催することにいたしました。

 この際、荒井国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。荒井国務大臣。

荒井国務大臣 青少年育成を担当いたします内閣府特命担当大臣として、一言ごあいさつを申し上げます。

 子ども・若者が心身ともに健康で、円滑な社会生活を営むことができるよう、環境をつくること、あるいは支援を行うことは、我が国の将来に大きくかかわることであり、政府の最重要課題の一つでございます。

 近年、大人社会の意識や生活様式の変化に伴い、子ども・若者の意識や生活様式もまた大きく変化をしております。

 それらを踏まえて、生活習慣の改善、心のケアの充実に努めるとともに、いじめ、暴力の深刻化や、重大事件の発生に的確に対処し、児童虐待、有害情報のはんらんなど大人に起因する諸問題にも対応するなど、各種施策を強力に推進してまいります。

 特に、七月に策定をいたしました子ども・若者ビジョンに基づき、子どもや若者の視点に立った施策を推進していくとともに、困難を有する子ども・若者への支援を行う地域ネットワークづくりや、若者の不安定雇用、子どもの貧困、子ども・若者の自殺の問題などに取り組んでまいります。

 さらに、同じく七月に策定いたしました児童ポルノ排除総合対策を推進していくとともに、引き続き、青少年のインターネット利用環境の整備にも取り組みます。

 大阪市で発生した児童虐待の事件は、大変痛ましいものであります。こうした事件が再び起きることのないよう、児童虐待防止のためのキャンペーンを実施するなど、国と地方公共団体、さらには地域の力を結集して取り組んでまいります。

 青少年育成を担当する大臣として、関係閣僚とも緊密な連携を図りつつ、青少年一人一人がその可能性を最大限に発揮できるよう、関連施策の総合的な推進に全力を尽くしてまいります。

 池坊委員長を初め、理事、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 荒井大臣、ありがとうございました。

     ――――◇―――――

池坊委員長 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。

 この際、政府から説明を聴取いたします。細川厚生労働副大臣。

細川副大臣 厚生労働副大臣の細川律夫でございます。

 児童虐待問題の御審議をいただくに当たり、一言申し上げさせていただきます。

 大阪市におきまして、このたび、室内に放置された幼い二人が亡くなられましたことは、子どもの福祉を担当する者として、まことに痛恨のきわみでございます。このお二人を初めとして、これまで虐待によりお亡くなりになられた子どもたちの御冥福を心からお祈り申し上げるものでございます。

 大阪市が作成した資料をもとに、大阪市西区において発生いたしました事件の経過について御説明を申し上げます。

 資料一ページをごらんいただきたいと思います。

 概要にありますように、本件は、平成二十二年七月三十日の午前一時過ぎに、大阪市西区のマンションで三歳と二歳の二児の変死体が見つかった事件でございます。

 次に、経過をごらんください。

 この事例は、二人の子どもが変死体で見つかる以前に、同じマンションに居住する匿名の住人から、三回にわたり大阪市中央児童相談所への通告が行われ、家庭訪問を行った事例です。

 経過の最初の三月三十日火曜の午前九時三十分ごろをごらんください。

 このときが一回目の通告になります。資料にあるように、同じマンションの住人により虐待ホットラインへの通報があり、三〇三号室の部屋で、ほとんど毎日のことだが、子どもがすごく泣いている、夜中の二時、三時に、室内と来訪者が通話できるインターホンを使ってママ、ママと長時間叫んでいる、母親は夜中、子どもを置いて働きに行っているのではないかというものでありました。

 この通告に対して、大阪市中央児童相談所は、大阪市西区役所の子育て支援室に問い合わせて居住者を特定しようとしましたが、該当する住所には住民登録がなく、居住者を特定することはできなかったとのことでありました。

 資料二ページをごらんください。

 冒頭の三月三十一日水曜十五時ごろと、次の四月一日木曜十時ごろ、その次の四月二日金曜十八時ごろの三回にわたり、安全確認のため家庭訪問をしたが不在であったとのことでありました。

 同じページの四月五日月曜九時十分をごらんいただきたいと思います。

 このときに、マンションの管理会社へ連絡をとり、当該マンションの二階から三階に赤ちゃんのいる世帯がないかどうかを問い合わせるが、ワンルームマンションなので、基本的にはひとり住まいであり、分譲貸しなので世帯の代表者の名前のみで、世帯構成などは全く把握していないとのことを確認いたしております。

 同じページの四月八日木曜二十時二十分ごろをごらんいただきたいと思います。

 前回と同じ方から虐待ホットラインへの通報があり、相変わらず子どもの泣き声は続いているし、夜中にぎゃあぎゃあという声が聞こえる、大人の声は聞こえないというものでありました。

 同じページの四月九日金曜の十四時十五分ごろをごらんください。

 前日の通告を受けて、安全確認のため家庭訪問をし、マンション入り口のインターホンを鳴らしたが応答はなく、マンション内に入り、玄関ドアのインターホンを鳴らすも応答はなかったようでありました。また、子どもの泣き声も聞こえなかったので、不在連絡票を投入したそうです。

 資料をめくっていただきまして、三ページをお開きください。

 冒頭の五月十八日火曜五時三十分ごろをごらんいただきたいと思います。

 前回と同じ方から虐待ホットラインへ通報があり、一時おさまっていたが、今も三十分ほど泣き声がしている、何と言っているかはわからないというものでありました。

 同日、十五時五十分ごろには、安全確認のため家庭訪問を行い、マンション入り口のインターホンを鳴らすが応答なく、マンション内に入り、玄関ドアのインターホンにも反応はなく、部屋からは子どもの泣き声や物音も一切聞こえず、不在の様子であったので、不在連絡票を再度投函したとのことでありました。

 これ以降の経過は資料にはありませんが、その後、不在連絡票に対する反応もなく、また、通告もなかったため緊急性が高いという判断にはならず、その後のフォローができていなかったとのことであります。

 こうした状況の中で、七月三十日午前一時過ぎに異臭がすると一一〇番通報がなされ、午前二時三十分には警察から大阪市中央児童相談所に、子ども二人が遺体で発見された、これまで貴所での取り扱いはないかとの問い合わせがありました。

 その後、警察の捜査によりますと、逮捕された母親は、六月ごろより子どもたちをマンションに放置していたとのことでありました。

 大阪市としては、大阪市中央児童相談所の虐待ホットラインに三度にわたる通告があったにもかかわらず、もう一歩踏み込んだ対応ができていなかった点を真摯に反省するとともに、児童相談所の対応については、八月三十一日から開催されます大阪市社会福祉審議会のもとに設置された児童虐待事例検証部会で厳しく検証し、そのような事件が二度と起こらないよう、児童虐待に対する対応や体制の再構築を検討すると聞いております。

 また、大阪市の対応については、当面の対応として、考えられることをできることから早急に取り組むこととし、休日や夜間の対応の強化、職員の増員など、今回のようなネグレクトを含めた児童虐待を見逃さないという強い決意で、関係諸機関とも密接な連携を図りながら、子どものセーフティーネットの充実を図るべく最大限の努力を行う覚悟であると聞いております。

 以上、大阪市の事件及び大阪市の対応について御報告を申し上げました。

 引き続き、厚生労働省としての取り組みを御報告いたします。

 資料四ページをお開きいただきたいと思います。

 この資料をごらんいただくとおり、大阪市の事件を受けまして、長妻厚生労働大臣の指示のもと、八月二日に省内において大阪市における虐待事件を受けた対策会議の第一回会議を開催し、児童虐待対応における子どもの安全確認について検討を行いました。

 次の五ページにありますように、第一回の対策会議における検討を踏まえ、都道府県、指定都市、児童相談所設置市に対して、通告がありながら子どもの安全確認措置を講じたにもかかわらず安全確認ができていない事例などについて早急に確認を行うとともに、そのような事例がある児童相談所については、対応方針を早急に見直し、立入調査、出頭要求、臨検、捜索等の一連の流れを念頭に置いた対応を図るなどの措置を要請するために通知を発出いたしております。

 資料を戻っていただいて、四ページをお開きいただきたいと思います。

 資料下段にありますように、八月九日に第二回の対策会議を開き、児童の安全確認の徹底に係る調査等について検討を行いました。

 資料をおめくりいただき、七ページをお開きいただきたいと思います。

 資料をごらんいただきますとおり、第二回の対策会議を踏まえて、八月十日に通知を発出して、子どもの安全確認の実施状況及び安全確認をさまざまな工夫と努力により実施した事例についても、都道府県、指定都市、児童相談所設置市に報告をお願いしたところであります。

 資料にはありませんが、今後、全国の児童相談所における安全確認の実施状況を取りまとめるとともに、安全確認が困難な事例についての取り組みのモデル事例集を作成するとともに、臨検、捜索の許可状を申請する際の裁判所への提出資料のマニュアルを作成するなどして、全国の児童相談所に周知していきたいと考えております。

 また、八月二十六日に開催予定の全国児童相談所長会議においても、子どもの安全確認と安全確保を最優先に取り組むことを徹底してまいりたいと考えております。

 次に、児童虐待に係る現状と対策について御説明させていただきます。

 資料の八ページをごらんください。

 資料のグラフの右端の数字が、先月の二十八日に厚生労働省から公表した平成二十一年度児童相談所における児童虐待相談対応件数の速報値の四万四千二百十件であります。このグラフで明らかなように、児童虐待の統計をとり始めた平成二年度の千百一件から一貫してふえ続けております。

 また、下の表にあるのが、厚生労働省の社会保障審議会に設置された児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会で把握された死亡件数になります。右端にあるのが平成二十年度の虐待による死亡件数で、心中事例を除いて六十四件となっております。

 資料をおめくりいただいて、九ページをお開きいただきたいと思います。

 ここでは児童虐待防止法の制定と改正を柱にした児童虐待防止対策の経緯をまとめたものでございます。

 前のページでごらんいただいたように、児童虐待相談対応件数が一貫して増加する状況の中で、児童虐待問題を社会全体で解決していくために、平成十二年五月に議員立法として児童虐待の防止等に関する法律が制定され、十一月から実施されました。

 その後、平成十六年と平成十九年の二次にわたり、いずれも議員立法により改正がなされております。

 平成十九年の改正においては、子どもの安全確認に万全を期すために、児童相談所等が安全確認のために必要な措置を講ずることを義務づけるとともに、通常の立入調査をかたくなに拒否するような場合には、裁判所の許可状を得て強制的に立ち入りを可能とする臨検、捜索制度が創設されるなど、虐待防止対策が強化をされております。

 最後の十ページをお開きいただきたいと思います。

 前のページで説明いたしましたように、法制度が整備されている一方で、虐待相談対応件数が増加するなどの現状にあり、厚生労働省としては、これまで以上に、一、虐待に至る前の発生の予防、二、早期発見、早期対応、三、子どもの保護、支援、保護者支援などの各段階において必要な対応を行っておりますが、さらに充実したいと考えております。

 この図の右側の具体的な施策をごらんいただきます。

 一、上段の発生予防の取り組みとして、子育て支援事業の普及推進、虐待防止意識の啓発、相談しやすい体制の整備を図っていきます。

 二、中段の早期発見、早期対応の取り組みとして、虐待通告制度の徹底、児童相談所全国共通ダイヤルの周知、児童相談所の体制強化、市町村の体制強化、子どもを守る地域ネットワークによる連携の強化を図っていきます。

 三、下段の子どもの適切な保護、支援、保護者支援の取り組みとして、一時保護所の拡充、混合処遇の改善、社会的養護体制の質、量ともに拡充、親子再統合に向けた保護者への支援を図っていきます。

 これらの施策を通して、児童虐待防止対策の各段階に応じた切れ目のない総合的な支援体制を強化充実していきます。

 以上で、厚生労働省の説明は終わりでございます。

 委員各位におかれましては、引き続き、一層の御理解と御支援をお願いいたします。

 ありがとうございました。

池坊委員長 以上で政府からの説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房政府広報室長齋藤敦さん、警察庁生活安全局長樋口建史さん及び総務省大臣官房審議官平嶋彰英さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博さん。

園田(康)委員 民主党の園田でございます。

 本日は、閉会中ということもあるんですが、先般発生いたしました大阪の西区における、お二人のお子様が大変痛ましい事件に遭われたということをもって、やはりこの委員会といたしましてもしっかりと対応を考えていかなければいけない、そういう委員長の御判断もあり、本日はこのような委員会の運びになった次第でございます。

 荒井大臣を初め内閣府の皆様方、あるいは厚生労働省の皆様方におかれましては、すぐさま対応していただいたことを心からまずもって感謝申し上げる次第でございます。

 また、今般お亡くなりになられましたお二人のお子様のみならず、最近になりましてまだまだふえている児童虐待における犠牲者となられたお子様の皆様方にも、私からも御冥福をお祈り申し上げたいというふうに思っております。

 さて、きょうは、大臣就任ということもあって、大臣就任のごあいさつに基づいての所信の御質疑という形もとりたかったわけでございますが、虐待問題に係る集中審議ということでございますので、それにつきましては今後国会の中でまた改めてお願いを申し上げたいというふうに思っておるところでございます。

 先ほど大臣からもお話がありましたように、今般のこの事件を受けて、やはりしっかりと取り組んでいただく、そういう御決意もあわせてお述べをいただいたところでございますので、改めて、もう一度で大変恐縮でございますけれども、この事件を受けた中で、その事件を目の当たりにされまして、大臣としてのお考え、そしてこの所管をされる大臣としての今後の御決意のほどをまずお聞かせいただければというふうに思います。

荒井国務大臣 閉会中にもかかわりませず、このように委員会を開いていただいて御審議していただくこと、本当にありがたく、私からも、池坊委員長を初め皆様にお礼を申し上げたいと思います。

 若干私ごとになりますけれども、私は母子家庭に育ちました。私の父は三十九歳で、私が小学校六年のときに亡くなりました。父は、幼児教育に情熱をささげていまして、幼稚園ですとか保育所とかをつくって、その教育に専心努力をしておりましたけれども、その父がしょっちゅう言っておりましたことは、人格あるいは人間というのは、幼児の三歳から四歳ぐらいまでに大きな部分が形成されるのだ、したがって、幼児のときに受けるさまざまな体験というものは、想像以上に、大人が考える以上に大きなものだということを常に言っておりました。

 もう五十年以上昔の話ですから、そのころなかなか思い出さなかったんですけれども、今さら、青少年担当の大臣として任命をされたときに、その言葉がふっと浮かんでまいりまして、私の担当というだけではない何かを感じざるを得ない、そんな思いを持っております。

 子どもが安らぐことのできる居場所というのは家庭であります。そのとき家庭で受ける親からの虐待というのは、心の傷になって、その子の一生を左右するというふうにも思われます。恐らく、深い傷を一生背負っていくのだろうなというふうに思います。まして、虐待によって子どもの命が失われる痛ましい事例の発生というのが後を絶たないことは、本当に本当に残念なことであります。私は、日本の社会全体が劣化をしているのではないかというぐらいの悲しい気持ちを持っております。

 子どもを虐待から守るためには、その発生予防及び早期の発見に努めるとともに、地域社会全体で子どもを育てていく、あるいは片親も含めて親を支えていくということがとても大事なんだろうというふうに思います。

 私の場合も、父が亡くなって、母が一人で子ども三人を育てました。ほとんど家庭にいることがありませんでした。そんなときに私たちの面倒を見てくれたのは、隣のお兄さんであり、向かいのおばさんであったというふうに思います。そんな地域全体が子どもたちを支えていく、育てていく、そういう雰囲気が最近少なくなってきたということを非常に残念に思います。

 このような観点から、今年の七月に子ども・若者ビジョンというものを策定いたしまして、児童虐待の発生予防のため、地域における子育ての支援の充実や、あるいは相談、通報などを通じての早期発見と早期対応、あるいは市町村における子どもを守る地域ネットワークの設置促進や機能強化等に取り組んでいくこととしてございます。また、子どもと子育てを応援する社会の実現に向けた一人親家庭への支援にも取り組むこととしてございます。

 さらに、内閣府では、児童虐待防止に関し、幅広い国民の理解と関心を深めるためのキャンペーンとして、毎年十一月に厚生労働省とともに児童虐待防止推進月間を主唱してございます。さらに、同じく十一月に全国青少年健全育成強調月間というものを設定いたしまして、その中でも児童虐待の予防と対応を重点事項としているところでございます。

 私としても、青少年育成を担当する立場から、子ども・若者ビジョンやこの月間等を通じて、関係省庁や地域における取り組みの強化を図って、子どもの最善の利益を尊重する社会の実現に取り組んでいきたいと考えてございます。

園田(康)委員 大臣のその思いというものが私も伝わってきた感じがいたします。どうぞ、この問題、やはり小さなお子様の命がかかっているという大変重要な施策の一つでございます。そういう意味では、内閣府あるいは政府挙げてもお取り組みをぜひお願い申し上げてまいりたいというふうに思っております。

 さて、先ほど、細川副大臣からこの事件についての経緯の御説明をいただいたところでございます。そこの中で、事実確認を二、三、少しさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、この大阪市のこども相談センター、児童相談所でございますが、ここに通報がございましたのは、三月の三十日、それから四月の八日、そして五月の十八日と、三度あったというふうに先ほど御報告がございました。

 それに対して、その通告、通報があって、この児童相談所から職員がマンションに出向いていった回数は五回。三月の三十一日、それから四月の一日、さらに四月の二日、そして四月の九日と五月の十八日。五月の十八日が最後の通報であり、そしてその後の家庭訪問という形になったわけでございます。

 もう御案内ではございますけれども、児童虐待防止法の第八条におきましては、市町村または福祉事務所の長、すなわち児童相談所の所長でありますけれども、通告を受けたときは、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他当該児童の安全確認を行うための必要な措置を講ずる、そういう形の規定になっているわけでございます。

 そして、それを受けての通報があってこの五回の訪問があったというふうに私自身もとらえさせていただいているわけでございますけれども、私がちょっと注目をさせていただいているのは、一度目、すなわち三月の三十日に通報があり、その後三回、翌日から三日間連続でございますけれども、安全確認のために家庭訪問をされていらっしゃる。その後でございますけれども、それでも居住者の特定ができなかった。すなわち、そこにお子さんがいらっしゃるのか、泣き声が聞こえていなかったわけでございますけれども、お子さんがいらっしゃるのか、あるいはそこに住んでいる方がどういう方であるのかということがこの三回の訪問では全くもってわからなかった。

 そこで、この児童相談所の職員の方は、今度は、四月の五日にここのマンションの管理会社に御連絡をされていらっしゃるわけでございます。すなわち、当該マンションのこの三○三号室にそういうお子さんも含めて御家族の方がお住まいであるかどうかというような特定の作業に調査として入ったわけでございますけれども、しかしながら、残念なことに、ここの当該マンションからの返答においても、基本的にはこれはワンルームマンションであって、そしてひとり住まいでありますから、分譲貸しで世帯の代表者の名前のみがわかっているだけで、特定の方、どういう方が住んでいらっしゃるのかまではわからなかったんだという形になってしまったわけでございます。

 本来であるならば、私は、この当該の管理会社にまず連絡をして、そしてその代表者の方の会社名、ここでいくならば恐らく風俗店の会社が登録をされていたんだろうというふうに思っているわけでございますが、この会社にすぐさま連絡をして、だれがここの部屋に住んでいるのかどうかというところまで調査を行ってもよかったのではないのかな。通常ですと、そこまでいって、いわば特定の方が住んでいるかどうかということを特定する作業、そういったところを行うものではないのかな。まあ、これはもう結果論でしかないわけでございますけれども、そういうところまでのノウハウというか、確認作業、安全確認というものがひょっとしたら求められていたのではないのかなというふうに思っているところでございます。

 そこで、厚生労働省にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 そういう当該会社への問い合わせを行えば、このマンションの居住者への接触の可能性は高まっていたというふうに私は推察をいたしているわけでございますが、そういう家庭訪問における確認のマニュアルの作成であるとか、あるいは職員の研修の際にそういった事例も踏まえて行うということがあるのかどうかといったこともあわせてちょっとお答えをいただければというふうに思います。

山井大臣政務官 園田委員にお答えを申し上げます。

 まず、今回のこの大阪市の事件に関しましては、本当に何としてもこういうことは再発防止をせねばならないというふうに強く私たちも思っておりますし、先日も平松市長がお見えになりましたが、再発防止のために全力を尽くしたいということを強く語っておられました。

 そして、児童虐待防止法の改正以来二年間で、臨検というものが認められていながらも、たった三件しか臨検が行われていない。そして今回、基本としては、目視、その子どもに会って、そして四十八時間以内が望ましいということで安否確認をすることになっているにもかかわらず、今も紹介がありましたように、四十八時間どころか安否確認が全くできていなかったというようなことでございます。

 ではどうすればいいのかというのが園田委員からの御指摘でありますが、そのことを踏まえまして、厚生労働省としても、八月十日付の通知によって、今回のように虐待の通報があってから安否確認ができていない事例はないのか、あれば一斉に安否確認するようにということと、もう一点、安否確認ができていない事例、今回の管理会社とのコンタクトも含めてなんですが、安否確認が困難であったけれどもさまざまな工夫により安全確認ができた事例というものを今回調査しておりまして、その結果をまとめた上で、九月末ぐらいまでに整理をして、こういう事例であれば安全確認がよりたやすくできる、そしてまた、それを経てもできないのであれば、最終的な臨検ということも含めてとにかく安全確保をしてほしい、そのような通知を出していきたいというふうに考えております。

園田(康)委員 今、山井政務官からもお話がありました、この何度かの法改正により、臨検という形も、安否確認の中、安否確認といいますか救済のためにはそういう形がとられるという法改正がされている。

 しかしながら、私は、どちらかというと、児童相談所の果たす役割、それはすなわち、事件を摘発するわけではなくて、子どもをいかに救うと同時に、親子関係もしっかりと整えていく、整えるという言い方は少し語弊があるかもしれませんけれども、そういう家庭環境をつくっていくということからすると、やはり児童相談所の職員の方がなかなか一歩踏み込めないというのは悩みとしては私もよくわかるところでございます。

 しかしながら、さまざまな注意を払いながら慎重に事を進める中で、できるそういう確認方法というものは、さまざまな形で英知を集め、あるいは知見を集め、そしてそれを少しでも多くの職員の方々に研修を通じて徹底していただけるように、ぜひお願いを申し上げたいというふうに私は思っております。

 それからもう一点、この事件についての確認をさせていただきたいのですが、先ほどお配りをいただきましたこの大阪市の作成資料の三ページ目でございますが、五月の十八日が今回のこの通報の最後になり、また相談所としても、相談センターとしても、安否確認、安全確認のための家庭訪問を行った最後となってしまったわけでございまして、先ほどの報告の中で、これ以降の経過については残念ながらございません、対応がフォローできていなかったということでございます。

 その理由としては、これから大阪市の方でも検証作業がなされていくだろうというふうに思っておるわけでございますが、不在連絡票に対する反応もなく、また、通告もなかったため緊急性が高いという判断に至らずという理由が先ほど述べられたわけでございます。

 不在連絡票に対する反応がなかった、あるいは通告がなかったから緊急性がなかったというふうに判断できるものでは決してないのではないのかな、少しこの部分は甘い判断がなされたのではないかなというふうに今の印象としては私は感じているわけでございます。

 こういったことに対しての、適切かどうかの判断はまたこれからになろうかなというふうに思うわけでございますが、何かそれに対するお考えもあればお聞かせをいただくと同時に、最初にそれについてのコメントをいただいた上で、きょう警察庁の方にも来ていただいているわけでございますが、先ほど私が申し上げた第八条においては、臨検であるとかそういう警察権を投入して家庭の中に入るということの以前にも、各関係の部署の方々からのさまざまな連携をとって安全確認を行う方法というのはあってしかるべきではないのかなというふうに私は思っておるところでございます。

 こういう対応のときに、警察の方に、この場合であったら、例えば朝あるいは深夜、ひょっとしたら緊急性を要する場合の、児童相談所の職員が行けないときに、ではどういう形で警察の方にお願いをするのか。あるいは、警察と一緒に同行して、先ほど不在連絡票をただ単に入れてきた、まあ、ただ単にと言うとちょっと語弊があるかもしれません、入れたと。しかしながら、近隣の住民あるいはほかの手段を通じて、警察の方々のそういう安全確認の方法なども同行していけば何か方法が見つかったのではないかなというふうに思うわけでございます。

 そういった点も、警察庁の方が、もし、こういう場合の同行の要請であるとか、あるいは児童相談所からの要請があった際に、どのような対応が考えられるのか、あわせてお答えをいただければというふうに思います。

山井大臣政務官 園田委員にお答えを申し上げます。

 恐らくさまざまな理由というかがあったんだろうかと思いますが、やはり、先ほども申し上げました、原則として、目視で四十八時間以内に安全確認をするという原則が守られていなかったということは非常に残念に思っております。

 きょうの朝も、足立の児童相談所と葛飾区の児童養護施設に長妻大臣、細川副大臣と私も視察に行ってまいりましたが、その中で、長妻大臣からきょう付で新たに、虐待のおそれのある通報から四十八時間以内の目視での安全確認というものを徹底するようにという通知をきょうじゅうに出すようにという指示が出されましたので、安全確認の徹底をしてまいりたいと思います。

樋口政府参考人 一般的に、若干簡単に申し上げたいと思うんですが、児童相談所等が立ち入りでありますとか保護でありますとかの際に、援助の要請がございますと、現場ですから不測の事態が常にあり得るといったことでございまして、警察官等を同行させまして必要な支援をいたしております。

 また、これはもちろん警察が直接一一〇番通報等で通報を受けるといったことが大いにあり得るわけでございますけれども、それはもちろんのことといたしまして、児童相談所からも被害児童の生命身体に危険が切迫しているといった判断をされて、要請があれば、連携の上で児童を救出、保護するといった活動をしておるところでございまして、やはり警察にとりましては、被害児童の命を救うということが最大の責任であると考えてございます。

 それから、大阪の事案につきましては、五月十八日の通報は三度目であったと承知いたしておりますけれども、この通報内容等から総合的に判断して、この時点で現場がただならぬ状況になっていることが本当に推測できたのかどうかというのは、これは詳しい検証を待ってみませんと判定の難しいところだろうと存じます。

 ただ、警察として、この時点で通報を受け、要請があれば、警察ならではの権限と責任において、安否の確認等のための措置をとることもできたのではないかと考えておるところでございます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、各省といいますか、各関係の機関が連携をとって、先ほど大臣からもお話があったわけでございますが、社会的にみんなで子どもを見守っていく、あるいは発育も含めて成長をはぐくんでいくんだというようなお話をいただいたわけでございます。縦割りというよりは、いろいろな各機関の英知というものが子どもを救うということの中には求められるものではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、今回の事例の中で、マスコミ等の話からも、児童相談所が少しパンクしてきつつあるのではないかというようなお話もいただいているわけでございます。

 先ほど政務官もおっしゃっていただいた、きょう、足立の児童相談所に行かれたということでございますけれども、その際にも恐らく児童相談所の職員の方々からも、児童相談所の体制を、より職員を多くしてほしいというようなお話をいただいてきたというふうに聞き及んでいるところでございますが、体制の強化というものは同時に私も必要だというふうに思っております。

 それからもう一点、これはもう最後の質問にさせていただきます。

 だからといって、とはいえ、今の現状をすぐさま、職員を多くするというようなことが本当にできるのかといったところからすると、大変厳しい状況にも政府全体としては置かれている。

 であるならば、やはり子どものネットワークの、防止システムとして、子どもを守る地域ネットワークというものが今設置をされているわけでございます。これは、市町村に設置をされているわけでございますから、より身近なところで救っていこうという形で行われております。

 設置率は九七・六%にまでなっているわけでございますが、これが本当に機能しているかどうかというところは、私自身も、もう少し見ていかなければいけない。各関係、児童相談所だけではなくて、学校あるいは医療機関そして警察等々も含めて、このネットワークがしっかりと地域で機能を果たしていく、そういう形へ今後持っていっていただきたいというふうに思うのでございますが、厚生労働省の皆さん方、どうでしょうか。

細川副大臣 今、園田委員が御指摘になりましたように、地域でのネットワークが児童虐待を防止するためには極めて重要だというふうに私どもも考えております。

 そこで、今御指摘がありましたように、地域でのネットワーク、これが進んではおりまして、九七%程度までいっております。しかし、ではそのネットワークが現実に充実した活動がされているかということを見ますと、まだまだ不十分な点もあるというふうに考えられておりまして、この点をしっかり充実していかなきゃいかぬというふうに思っております。

 そのためには、連絡調整機関、その機関の職員の専門性などを強く、質を向上させるために、いろいろな工夫をしていかなければならないというふうに考えておりまして、しっかり地域のネットワークを充実させてまいりたいというふうに思っております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 以上、終わります。

池坊委員長 次に、馳浩さん。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 先般、同僚の宮本岳志議員から、大阪の事件について自分も現地に行っていろいろ聞き取り調査などをしてきた、ぜひ、閉会中ではあるが、国会でやはり今後の対応をするためにも閉会中審査をしたいという申し入れをいただきまして、すぐに池坊委員長また園田、菅原両理事に御理解をいただいて、きょうの日を設定していただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 現地の状況などは同僚の宮本委員から後ほど話があると思いますので、私は、安全確認義務、この問題について集中してお伺いしたいと思います。

 平成十九年にこの問題を改正するときに、当時は安全確認については努力義務規定だったんです。なぜ、この部分を義務規定に変えたと思いますか。実はここが一番の今回のポイントにもなるわけですよね。

 御承知のように、これは議員立法です。私どもも、警察や厚生労働省や児童相談所の職員、民生委員さん、児童委員さん、皆さんからお話をお伺いする中で、これはやはり努力義務規定ではなくて義務規定にしなければいけないなという最終判断をしたんですよ。これはなぜだと思いますか。虐待問題でいつも一緒にやってまいりました山井さんかあるいは泉さん、なぜだと思いますか。お答えください。

山井大臣政務官 馳委員にお答え申し上げます。

 まさにこの児童虐待防止法は、池坊委員長や馳委員初めとして多くの超党派の議員のおかげで成立し、そしてさまざまな改善、修正というものが今日まで行われてまいりました。

 その中で、私も前回の修正のとき民主党のメンバーの一人でありましたけれども、一番大きな論点の一つがどこまで臨検というものができるかということで、これは一番賛否両論あった部分でありますが、ここに関しましては、やはり子どもの安全確認ということが最優先であるということで義務規定になったというふうに承知しております。

馳委員 いきなり臨検という以前に、実は、立入調査をすることが困難な事案が極めて多いという報告が厚労省や警察からあったんですよ。

 おい、ちょっと待てよと。立入調査が困難な事例というのはどういう事例なんだろうかというと、物音がしたりとか、親が子どもをたたいたり子どもが泣き叫ぶ声とかが近隣にわっと響き渡る事例は、立入調査困難な事例ではないんです。なぜかというと、現行法でも、立入調査をしようとして調査を拒否した場合に、立入調査拒否罪というのがありましたから、それで警察も入ることができました。

 そういう問題ではなくて、まさしく今回の事件のように、全く音さたなし、いわゆるネグレクトであったり置き去り事案、つまり育児放棄、こういう事案が極めて多い。

 ここからどうやって子どもを救い出すか。なかなか現行法では強制的に立ち入ることができないので、山井さんがおっしゃったように、最終的にはやはりこれは、臨検というものをできるだけ福祉の部局で行えるようにしましょうね、こういうふうになっていったという経緯があったんですよ。

 荒井大臣もぜひ、やはりこういった社会的な情勢というものを御理解いただきたいと思うんですね。

 そこで、今回は、児童相談所の運営指針、厚生労働省が示したマニュアルでは、四十八時間以内に目視で安全を確認するという三点セットがあるんですね。四十八時間以内、目視、そして安全確認をする、これがなされていなかったということが細川副大臣の報告でも明らかでありました。

 これは本来ならば、安全確認は義務規定になっているんですよ。本来ならば、しなければいけない、現場の運用の段階でしなければいけない問題ですが、残念ながらしなかった。しなくても、その児童相談所の所長ないしは職員に対して、特別、厚生労働省やあるいはだれかからとがめられるものでもないんですよ。そういう法体系になっているんです。やはりここの意識の問題でもあると思うんですね。

 ちなみに、全国の市町村等で、実際、この厚生労働省の児童相談所運営指針、マニュアルどおりに、四十八時間、目視で安全確認を行っていないところはどの程度あるんでしょうか、ちょっと数字的にお答えいただきたいと思います。

山井大臣政務官 馳委員にお答えを申し上げます。

 先ほどおっしゃいました、目視、四十八時間以内が望ましい、安全確認というのが三点セットでありまして、この大阪市の事例も、そこがなぜ実行できなかったのか、そのことが再発防止ということを考える上で一番重要であると考えております。

 そこで、八月二日付で通知を出しまして、安全確認ができていない事例や、当初安全確認ができていたが後に子どもの姿が確認できなくなってしまった事例がないか、あるならば、それを至急安全確認するようにと。また、先ほど園田議員にも申し上げましたように、安全確認が困難であったがさまざまな工夫により安全確認ができた事例というものを今調査しているところでございます。

 そして、四十八時間以内にどれぐらい行われたかということに関しては、現在把握はしておりません。

馳委員 山井さん、ありがとうございます。

 要は、四十八時間、目視での確認、これをまず徹底するところから私は始まると思いますので、さらに対応を進めてください。

 次に、四十八時間以内、目視による安全確認ができなかった場合、その後、このマニュアルにおいてはどのようにすべきというふうに指導しているんでしょうか。

山井大臣政務官 このマニュアルの中では、引き続き安全確認に努めていく、そしてまた、警察や市町村とのネットワークなどもとりながら引き続き注視していくということになっております。

馳委員 ということは、今回の大阪の事案では、大阪市の方も児童相談所の方もその対応をとっていなかった、とることができなかった、いずれの表現もできますが、とっていなかったというふうに判断してよいですか。

山井大臣政務官 馳委員にお答え申し上げます。

 まさにそこが私たちにとっても最大の問題点であり、疑問点でありまして、そのことについては今大阪市が検証をしているところでありますが、余り予断を持って言うわけにはいきませんが、やはりそこが、四十八時間のみならず、数カ月たっても安全確認が結果のところできていなかったということが最大の問題点だと思っております。

馳委員 安全確認の義務実施において、警察との連携は不可欠だと思うんですよ。先ほどの警察の答弁を聞いても、なるほどなと思いました。

 そこで、四十八時間以内で目視による安全確認ができなかった場合は、警察等への支援要請を義務化すべきということを提案したいと思います。

 まずは厚労省のマニュアルにおいて明記すべきと思いますが、まさしく連携の重要性を山井さんも今おっしゃいました。ぜひ義務化してほしいんですね。いかがですか。

山井大臣政務官 馳委員にお答え申し上げます。

 安全確認が簡単でない場合には、マニュアルに従って、立入調査、そして出頭要求、再出頭要求、臨検、捜索という流れになっておりますが、警察等への支援要請というものに関しましては、子どもを守る地域ネットワークも活用しつつ安全確認を行うということや、立入調査等の強制的な手続が活用できるということを児童相談所運営指針や子ども虐待対応の手引きにおいて示しております。

 以上です。

馳委員 そこなんですよ、示しているんですよ。ところが、現場では十分にそれが機能していなかった、機能していない現状なんですね。

 これははっきりとマニュアルに書いて、四十八時間以内に確認できなかったら警察の支援要請をしましょうよ、こういうふうにした方がいいんじゃないですか。

 警察も、先ほどの口ぶりだったらば、むしろ、支援要請してください、救いたいんです、一一〇番であればすぐに行きますよ、こういうふうな対応だったので、私はそこら辺を意識を持っていただきたいと思い、次の質問をいたします。

 児童虐待の通告を受けただけでは、児童虐待のおそれがあると法的にも、現場の運用においてもなされていないと思いますが、いかがですか。

山井大臣政務官 馳委員にお答えを申し上げます。

 住民による虐待の通告は、児童虐待を受けたと思われる児童ということになっておりますが、結局、家庭訪問等の結果などから、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときということになれば、これに関してはさらなる強い指導なりが行われることになるわけでありまして、ですから、虐待のおそれがあると行われることがすべてではありませんが、そのように該当すると判断され得る場合もあるというふうに考えております。

馳委員 ちょっと苦しい答弁で、場合もあるということで、要は、法律を読めば、実際には通告だけでは虐待のおそれがあるとは判断できないんですよ。ここがやはり職員の方々にとっても戸惑うところでもあるんですね。

 そこで、四十八時間以内に安全確認が目視でできなかった場合は児童虐待のおそれがあると判断すべきであって、その上で立入調査も可能だ、こういうふうに、つまり、立入調査を可能にするハードルを低くすべきではないでしょうか。いかがですか。

山井大臣政務官 馳委員にお答えを申し上げます。

 私たちも、子どもの安全確認が最優先ですから、安全確認ができない場合には立入調査、それが無理な場合には臨検ということを速やかにやっていくべきだというふうに考えておりますし、そのために今回どのような手続を簡素化すればいいか、またいろいろな事例集を発表していきたいというふうに思っております。

 立入調査等が適切に実施されるよう、子ども虐待対応の手引きに明記し、全国の児童相談所に示しているところでありまして、これからも徹底してまいりたいと思います。

馳委員 これはやはり手続の問題なんですね。

 あなたは今簡素化するとおっしゃいましたが、まさしく、我々、議員立法で、法律を結構こねくり回したり、こうした方がいい、ああした方がいいといろいろな御意見をいただきながら条文を考えたりしますけれども、ところが、その立法者の意思が現場で、運用で厳格に適用されないとこういうことになっちゃうんです。本当に我々も立法者として恥ずかしい思いをしながら、ではどうしたらいいかなというふうに考えているんです。

 だから、要件のハードルを低くしていくような、現場が使い勝手のよいような法律に改正をしていく不断の努力が必要なんじゃないのかなということをあなたに申し上げているんですね。

 そこで、次の問題に移りますが、今回の大阪市西区の事件は、児童虐待防止法第四条五項の「児童がその心身に著しく重大な被害を受けた事例」に当たり、国、自治体双方により、重大事件の分析、検証というのはなされるんでしょうか。いかがですか。

山井大臣政務官 大阪市において、八月三十一日に大阪市社会福祉審議会児童福祉専門分科会児童虐待事例検証部会が開催されると聞いておりますし、厚生労働省におきましても、社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会で検証することになっております。

 それと、先ほど馳委員がおっしゃった、前回の改正で、まさに臨検まで入れてハードルを低くしたつもりだったんですね、これは議員の気持ちとしては。ところが、振り返ってみたら、過去二年間で臨検までいったのが三件だと。

 ですから、私は、今回の大阪市の事例で一番考えるべきは、法律に問題というか、法律がやはりハードルが高過ぎたのか、それとも運用が不十分なのかというどちらかなんですが、まずはやはり運用に問題があったんではないかということで、今事例を調査しております。それは九月末までに報告をさせていただきますので、それを踏まえて、また超党派の先生方の中でもやはりこれは運用だけでは限界があるんじゃないかという議論が出てくるならば、また超党派で御議論がなされるかもしれないというふうに思っております。

馳委員 今の答弁は大変前向きないい答弁だったと私は評価したいと思いますし、池坊委員長、現状も、親権の一部・一時制限の問題とか、あるいは虐待を受けた子どもに対する社会的養護の問題とかで議論をし、委員会としてもドイツの赤ちゃんポスト視察に行かれるそうですね。また、改正の準備、勉強会も開かれております。

 今回の安全確認義務の問題も含めて、私は、池坊委員長のもとで改正に向けて不断の努力をするということを求めたいと思っておりますが、委員長、いかがですか。

池坊委員長 馳委員の御意見をしっかりと受けとめ、理事会で検討していきたいと思っております。

馳委員 そこで、重大な事案については分析、検証する、これも平成十九年の改正で盛り込んだ点なんですよ。そして、この分析や検証を通じて厚生労働省のマニュアルが遵守されていないということが判明をしたときに、どのようなペナルティーを含めた対応を児童相談所に対してするのか、これは一つの厚生労働省の指導力の問題になると私は思うんですね。

 そこで、地方分権の問題と絡むので私はちょっと言いづらいんですよ、正直。ただ、伝家の宝刀として、厳重注意あるいは改善勧告、命令まで出せるかどうかなというのは私もつらいところですよ、これは正直言って。

 ただ、改善勧告、せめてこのぐらいは出すことができる仕組みにしておかないと、幾ら法律、厚生労働省による児童相談所の運営指針、マニュアルを示しても、まさしく地方主権といいながら、地方自治体がなすべきことを行っていなかった場合が明確になった場合に、やはりそれは指導することが必要なんじゃないんですかね。

 これはどうでしょうか。まあ、国家戦略担当というふうな観点からいけば大臣の答弁として伺いたいと思いますが、荒井さん、いかがですか。

荒井国務大臣 地方分権は大きな流れでもありますけれども、今、馳議員のおっしゃった件は、そのはざまをついていると私は思います。

 十分に議論をしていく必要があると思いますけれども、ただいま馳議員の指摘されたことは大変ポイントをついている重要な点で、法改正の、これは議員立法ですからずっと議員立法でいかれるのが筋なのかもしれませんけれども、内閣府としても、その改正の要があれば、側面援助、支援をしていきたいというふうに考えてございます。

馳委員 これはちょっと横道にそれるかもしれませんが、地教行法の改正のときも、文部科学省は、明確に違法な場合と児童の生命にかかわる場合には改善勧告とかを出せるんですよ。

 そう考えると、厚生労働省としても、児童相談所がかかわった事案で、マニュアルも守らない、法の運用も不備があったという場合には、これはある程度厚生労働省として指導することができる、児童の生命を守るためにも。ここは何も地方主権、地方分権の考え方とは私は反しないと思うんですね。そのことを踏まえて荒井大臣には検討をお願いしたいと私は思います。

 さて、次に行きますが、児童虐待の事例において、児童相談所等の公的関与があったにもかかわらず児童を死亡させた事例はどのくらいの割合となっているでしょうか。

 さらに、これらすべての事例を、この際、政府は徹底的に分析、検証して、児童相談所等が抱える問題点をつまびらかにして、今後の対策に生かしていくべきではないでしょうか。いかがですか。

山井大臣政務官 馳委員にお答え申し上げます。

 社会保障審議会の専門委員会の第六次の報告によれば、平成二十年度における心中以外の死亡事例は、児童虐待による死亡は六十四例でありまして、そのうち、児童相談所が関与していながら死亡に至ったケースが七例で一〇・九%、児童相談所はかかわっていなかったけれども、保健所とかさまざまな公的機関、関係機関が虐待やその疑いを認識していた事例は六例の九・四%というふうになっております。

 このようなことに関しましては、御指摘の児童相談所等の公的機関の関与した事例も含めた死亡事例に関する検証が行われ、その中でさまざまな提言をいただいておりますので、この提言内容を地方公共団体とともに共有して徹底してまいりたいというふうに考えております。

馳委員 これはやはり悲しいことですよね。ある程度、通報、通告等もあって、児相が関与、あるいは学校にしても、保育所、幼稚園等、病院等にしても、きっかけをつかんでいたにもかかわらず、別に見逃していたわけじゃないですよ、にもかかわらず、介入が十分ではない間に死亡させてしまったということの反省を踏まえながら、反省というよりも、まさしくどうしてそうなったのかという事例の分析、検証をしながら先に進んで、一人でもこういった児童虐待による子どもの死亡事例を出さないという決意を私は強く持つべきだと思います。

 最後に、ちょっと時間の問題もありますので、質問を二つ続けていたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 まず、今回の大阪市西区の事件で、産経新聞の八月六日の報道によりますと、安全確認義務の履行のために市消防局の救助隊を利用する方向という記事がありました。これは事実でしょうか。また、どうして消防局なのでしょうか。消防局には強制的に立ち入りをする権限があるのでしょうか。救助隊は、異常を感じてすぐ突入する権限が、こういう福祉の事案の場合に与えられているんでしょうか。どうして警察ではないのでしょうか。ここの問題を私はお伺いしたいと思います。

 まあ、大阪の平松市長と、大阪府警を管轄する大阪府の知事の関係が悪いからこういうこともあるのかなという、うがった見方も私はしてしまう。つまり、市長としてすぐ対応しやすいところにやらせようという考えでもあるんじゃないのかな、でも、消防局にそんな権限があるのかな、そんなノウハウを持っているのかな、ここは素直に警察にお願いした方がいいんじゃないのかなというのが私の意見。

 もう一つ。今回の事件の犯人の母親は、マンションを賃貸で借りていました。過去には、マンションの管理人の協力を取りつけて、部屋のかぎをあけてもらって、住居に侵入して安全確認や立入調査を実施しております。

 なぜ今回、そのような管理人と連携しての対応が行われなかったのでしょうか。こういうケースは今後もあると思います。したがって、厚生労働省のマニュアルにおいても、こういう賃貸のマンション、アパート等での事案に対応するマニュアルも準備した方がよいんじゃないんでしょうか。

 この二つの問題についてお伺いして、私の質問を終わります。

山井大臣政務官 馳委員にお答え申し上げます。

 最初の消防局の件は、大阪市に確認をいたしました。それによりますと、今回の事件については、市民から三回通報があった際にすぐ職員が駆けつけられなかった点が指摘されまして、消防局は深夜、早朝の職員配置も整っており、現場に近く、機敏な対応が可能なことから、今回協力を求めたということであります。

 しかし、大阪市としても、従来から立入調査などに際して警察の同行等の援助要請を行っているが、今まで以上に大阪府警と緊密な連携をとっていきたいというふうに言っておられました。

 また、二点目のマンションの管理人の協力でありますが、なぜ今回、そこまでやって、泣いている赤ちゃんと面会、安全確認できなかったかというのは、本当に幾ら悔やんでも悔やみ切れないわけなんですけれども、まさにそのことも含めて今、安全確認のさまざまないい事例を全国から集めておりますので、そのことを含めてマニュアルやさまざまな形で児童相談所に対して情報提供をしていって、徹底を図ってまいりたいと思います。

馳委員 けさの毎日新聞の社会面に大きく取り上げられましたね。こんなことをさせない町にするためにということで、大阪の不動産業者がみずからポスターをつくって、うちの賃貸マンションでは絶対こういうことはさせないという防止ポスター八千枚を張りまくって、二十四時間、携帯で、連絡先を自分のところに、自分の事務所にしたんですよ。

 こう考えると、国土交通省などを通じて賃貸マンション業者の皆さんにも、こういった啓発、これは管理責任の問題にもなりますから、協力を求めるという全庁的な取り組みをやっていただいた方がいいんじゃないんですかね。

 私は、このことも荒井大臣に要請というかお願い申し上げ、民間の方でここまでやっている方がいらっしゃるわけですね、ぜひ取り組みを強化していただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 実に痛ましい、そしてまたやるせない事件が起きました。三歳、二歳のお子さんの心中を思うと、もういたたまれない思いでいっぱいでございます。

 しかし、こうしたことを二度と起こさない、その決意できょうは閉会中審査が行われたわけでございます。

 私は、先ほど来、園田先生そしてまた馳先生のお二方の質疑を伺いながら、恐らく主要なところはこのお二方がお聞きになるだろうなという、そんな思いできょうは臨ませていただきました。わずか二十分でございますので、簡潔に質問をさせていただきたいと思っております。

 ただ、先ほど来伺っておりまして、やはりこの児童虐待の問題、ただ単に厚生労働省だけではなく、それに関連する警察庁、そしてまた総務省、また文科省等々の多様なネットワークが必要であるということは周知のとおりでございます。

 そこで、荒井大臣に私はきょうこれをお願いしたいと思いますが、児童虐待につきましては政府を挙げて取り組むべきではないかと思います。

 例えば少子化社会対策会議、この会長は内閣総理大臣です。また、子ども・若者育成支援推進本部、本部長は総理大臣です。省庁縦割りではなくて、総理のもとに、こうした会議のもとに専門部会などを設置しながら、省庁横断の、厚生労働省をこういうふうにして支える、またパンク寸前の児童相談所をこのようにみんなで支えていこうではないか、こうした専門部会などを設置し、対応を協議すべきであると考えております。

 また、あわせまして、従来の子ども・子育て応援プランでは、その中に、児童虐待死ゼロという、撲滅の明快なメッセージを入れておりました。それでも今こうしてなかなか進まないわけでございますけれども、やはり政府の方向性といたしまして、児童虐待死の撲滅を目指す、これをまさに政治の強いリーダーシップで掲げていただきまして、総理みずからこれに取り組む、こういう姿勢をお示しいただくことは、子育て支援に苦しむ方たちの究極のセーフティーネットにもなりますし、そうした点を踏まえて、国を挙げて取り組むべきであるということを大臣に申し上げさせていただきたいと思います。

 お考えはいかがでしょうか。

荒井国務大臣 今高木議員からお話しのとおりでございますね。私も今話を聞いていて、本当にこの児童虐待というのは痛ましい、悲しい事案だなという思いを強くしております。

 そういうこともあって、この七月には総理大臣を本部長とする子ども・若者育成支援推進本部というのをつくりましたし、また内閣府としては、十一月に全国少年健全育成強化月間というのを、これは毎年やっているものですけれども、その中でも、ことしは特に児童虐待の予防と対応というものを重点項目として強化月間にしたいというふうに思ってございます。

 この事案あるいは虐待の話というのはいろいろな関係がありますね。格差の話あるいは所得の低廉さとか、そういうものも根底にあるでしょうし、あるいは、若いお母さんが子育てのノウハウを、昔ならば、おじいちゃん、おばあさん、まあおばあさんですか、おばあさんから教わっていたのが、そういう機会がなくなってしまったとか、あるいは、地域全体で支え合っているという仕組みが非常に希薄になってきてしまったとか、そういう社会全体の大きな変質というようなものも根底にあるのではないのかなという、そんな気持ちがしました。

 これを解決していくのは、まさしく、先生おっしゃるように、縦割りではなくて横割りの大きな仕組みというか、そういうものが必要なんだと。そういうことを担うのが内閣府、私のところでございますので、そんな方向でこれから励んでいきたい、努力していきたいと思ってございます。

高木(美)委員 御決意はよくわかりました。

 したがいまして、具体的に厚労省と警察庁をどのようにつないでいくのか、またどう知恵を出し合っていくのか、具体的な会議を立ち上げていただきたいと思います。これらの会議のもとの専門部会、もしくはまた違う名称で構わないと思いますが、何かしらの検討をぜひ加えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、先ほど来ございましたが、私も大阪の府議会議員、また市議会議員、うちの党の議員からさまざま要望を受けました。また、こちらからも伺いました。

 一つは、五回も現場の部屋を訪問しながらなぜ調査できなかったのか、当然、マンションの管理人、オーナー等の協力が得られる手だてはなかったのか、さまざまな点があります。こうした点につきまして、何点か順次伺ってまいりたいと思います。

 まず、警察との連携の問題でございます。今申し上げました点につきまして、警察庁のお考えを伺いたいと思います。

樋口政府参考人 大阪の今回の事案に関しましては、通報の回数でありますとか通報内容等から総合的に判断して、現場の緊迫性が本当に推測できたのかどうか、先ほども申し上げましたけれども、なかなか詳しい検証がなければ難しいところだろうと存じます。

 ただ、警察といたしましては、要請があれば、警察としての権限、警察官職務執行法内の権限に基づいて警察ならではの措置をとり、安否の確認等をするということもあり得たのではないかと考えておるところでございます。

高木(美)委員 先ほど馳委員から、四十八時間、目視できない場合は、これはまさに虐待が行われている、命に及ぶととらえて対応すべきではないか、警察に応援を要請すべきではないかという話もありました。私も、これは必要な点であると思います。

 ただ、一方で、今、新聞報道の解説では、臨検、捜索につきまして、二年間で四万四千件の通報があった、きょうはその資料を用意させていただきましたので順次ごらんいただきたいと思いますが、その通報に対して臨検が行われたのは三件のみである、今回の事例を踏まえて、状況がつかめないという場合には臨検を活用するよう早急に徹底すべき、こうした意見が強くあります。また、あわせて、手続の煩雑さを現場の実態に即して簡素化すべきだ、こういう意見があります。私は果たしてそうなのだろうかという疑問を持ちます。

 このことにつきまして、厚労省の見解を簡潔にお願いしたいと思います。

細川副大臣 今、委員御指摘の臨検、捜索の制度につきましては、十九年の児童虐待防止法の改正、これは議員の皆様方の議論によって議員立法で改正されたところでありますけれども、この臨検、捜索につきましては、いろいろな要件があって、しかも裁判所の許可状をもらって行う、こういうことになっております。

 その要件が定められておりますのはなぜかというと、御承知のように、憲法三十五条という規定がありまして、住居の不可侵ということもありまして、あくまでもこれは例外的な規定なんだ、こういう立法の趣旨でもございます。そういう立法の趣旨をかんがみて、この臨検、捜索ということも行わなければならないというふうに私ども考えております。

 ただしかし、その一方、子どもの安全確認が実現できないような場合には、この新しい制度を利用いたしまして、しっかりと子どもの保護を実現するというふうに努めていかなければいけないと思っております。

高木(美)委員 この資料をごらんいただきますとおわかりのとおり、委員各位にもごらんいただきたいと思いますが、通報があります、また知事の出頭要求、警察の援助があり、立入調査、再出頭要求、そしてその後に、あくまでも保護者の執拗な反対、また扉の施錠等によって立入調査を行わなければならない場合、こういう形で、平成十九年の改正におきまして、臨検というものがここで設けられたわけでございます。

 このときに、実は我が党の中でもう一つの議論がありました。これをこのまま入れてしまうと、むしろ、警察に対しての協力体制、これが弱くなってしまうのではないかという懸念です。ここにありますとおり、立入調査、最初の警察の援助、そして最後の臨検があればこれで十分できるという話になり、むしろ、現場でやらない理由をつくってしまうことが生まれてしまうのではないか、こういう懸念でございます。むしろ、現場で運用できるのではないかという考え方もありました。

 現実、児相の援助要請によりまして警察官が同行した件数を伺いました。厚労省の調査では、平成十九年、三百四十二件、翌年、二百五十五件に減っております。また、警察庁の調査によりましても、平成十九年、二百八十九件、二十年、二百二十八件、若干減り、そして二十一年では百四十九件と激減しております。

 明らかにこれは警察との連携が弱まっているのではないか、私はこのような懸念を抱かざるを得ません。むしろ現場の連携を推進すべきであって、それに対して、この臨検という制度をつくったために、ここで、現場の強い協力関係を進めなければいけないところが、その推進が弱まってしまったのではないかと懸念をしております。

 一方で、警察と児相、また児童福祉部局との人事交流もずっと行われてまいりました。しかし、まだこれも二十四道府県でございます。

 「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」という社保審児童部会専門委員会の第六次報告が出ておりますが、死亡事例の検証を実施したのは四分の一の事例であります。この検証がなされた実施主体は、児相であり、市町村が中心です。警察はほとんどそこに参加をしていないという現実があります。

 私は、こうした現場の連携をやはり進めるべきであり、むしろ警察のスキルを活用しまして、連携と援助を進めるべきと考えております。厚生労働省、また警察庁の見解を伺います。

山井大臣政務官 高木委員にお答えを申し上げます。

 安全確認ができなかった場合や安全確認を行う過程における警察への援助要請との連携については、児童相談所運営指針や子ども虐待対応の手引きにおいて示しております。

 やはり、今回の事例においても、警察との連携を含め、まだまだ課題が現場では多いというふうに考えておりますので、さらに連携が強化できるように取り組んでまいりたいと思います。

樋口政府参考人 御指摘のように、特に児童相談所との協力連携が大変重要であると考えておるところでございます。警察といたしましても、児童相談所から要請があればいろいろな段階で必要な援助を行う、これはもう当然のことでございます。

 加えまして、特に、命を救うといったことが警察にとりましても最も重要な責任であると考えてございますので、事態が緊迫しているような場合においてその状況判断が的確に間違いなく行われるように、ここのところが最大のポイントだと存じますけれども、日ごろから現場レベルでの児童相談所との協力連携をさらに深めていく必要があると考えてございます。

 そういった観点からいたしますと、個別事案の検証作業に対しましても、警察として参加させていただくことが望ましいと考えておるところでございます。

高木(美)委員 ただいま、検証事案につきましても警察も参加してというお話もありました。こうした点を踏まえて、やはり同じことを二度と繰り返さない、そのための検証を強力に進めていただきたいと思います。

 もう一点は、この資料にありますとおり、家庭訪問しても会えない等の場合、知事の出頭要求というのをかけることもできるとしております。この出頭要求につきましては、児童虐待防止法の第八条の二第二項に、「当該児童の保護者の出頭を求めようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該保護者に対し、出頭を求める理由となった事実の内容、出頭を求める日時及び場所、同伴すべき児童の氏名その他必要な事項を記載した書面により告知しなければならない。」とあります。

 このような内容ですが、今回の事例につきましては、住所と理由しかわからない、こういう状況でございます。それでも実施することが可能なのかどうか。また、今後、こうした「厚生労働省令で定めるところにより、」と出ておりますが、これをもっと使い勝手をよくするために、この省令の改正をすべきではないかと考えております。見解を伺いたいと思います。

山井大臣政務官 高木委員にお答えを申し上げます。

 今回の事例は本当に不明な点が非常に多かったわけですが、保護者や児童の特定や、児童虐待が行われているおそれがあると認められることは必要でありますが、住民登録のないような事例において、保護者と接触できないような事例も例外的にはあることから、あらゆるケースにおいて氏名の判明がないと実施できないものではないというふうに私たちは考えております。

高木(美)委員 その内容につきましては、恐らく省令で、これだけきっちりと書かれていますので、ある程度の、省令をこのように改正するとか、またそこで弾力的な運用のために大臣から通達を出すとか、さまざまなことが必要かと思いますが、その点は具体的になされるのでしょうか。

山井大臣政務官 今まさに、安全確認のために何がハードルであるのか、また、それをどのようにクリアしていっているのかという現場の事例を集めて、九月末までに整理しようというふうに考えております。

 子どもの命を守るための児童虐待防止法というのが、私も提出者の一人でありましたけれども、なぜかなかなか現場ではうまくワークしていないという、本当に涙が出るような現状があるわけでありまして、高木委員の御趣旨を踏まえて、やはり出頭要求というものが、速やかに、スピーディーに、的確にできるように、改善を考えてまいりたいと思います。

高木(美)委員 続きまして、母親の育児への相談体制の充実につきまして、最後の質問になるかと思います。

 やはり、虐待が起こる温床といたしまして、さまざまなケースがありますが、今回も、周りに育児の相談をできる人がいなかったという供述があります。ただ、今回は殺人容疑まで進んでいるケースでもございますが、これまでのケースの検証でも、地域社会との接触について、ほとんどない、乏しいという方が七割近く、そしてまた、子育て支援事業の利用もなしといった方が六割を超えている。いわば育児不安、孤立から発しているわけですが、この相談体制の充実が急務であると思っております。どうしても福祉の支援に近づかない、自分はだめな母親だと言われたくない、こういうお母様たちにどのように支援の手を差し伸べていくかということが急務であると思っております。

 我が党も家庭訪問つきの相談支援事業をずっと主張してまいりまして、平成十九年から、生後四カ月までの全戸訪問事業、こんにちは赤ちゃん事業、また、育児支援家庭訪問事業の実施を進めているところでございます。

 しかし、平成二十一年度までの全国市町村の実施率はまだ八四・一%にしかなっておりません。一〇〇%実施されるように、未実施の市町村にてこ入れをすべきだと考えますが、厚生労働省の見解を伺います。

山井大臣政務官 高木委員にお答えを申し上げます。

 先ほど馳委員にも答弁させていただきましたが、児童相談所や公的機関が余り関与をしていなくてお亡くなりになられる虐待死というのがふえておりまして、その意味では、公明党、そして高木委員が今までリーダーシップをとっておられます、この乳児家庭全戸訪問事業、こんにちは赤ちゃん事業というのは非常に重要であると思っております。まだ約一六%の市町村が未実施でありますので、ぜひともてこ入れをして、一〇〇%を目指すように心がけていきたいと思います。

高木(美)委員 あと一分ございます。

 最後に、児相の共通番号は十けたでございます。覚えにくいというお声が圧倒的に多くございます。一一〇番もしくはシャープ八〇〇〇番のように覚えやすい番号にすべきだと考えます。大阪からも強いその要請がございました。細川副大臣の見解を伺います。

細川副大臣 確かに、けた数が多いということでなかなか覚えにくいというところはありますけれども、しかし、これを三けたの数にするにはなかなかコストもかかるということで、今の共通番号の〇五七〇、こうすればコストがかからないというようなことでこの共通番号にしているということです。

 それで、これはまだ始めてから時間は余りたっていないんですけれども、利用の件数がふえておりまして、半年くらいで四千五百幾らも利用されているということで、こういう番号を国民の皆さんに周知徹底させていただければ、多少番号は長いですけれども、国民の皆さんにもわかっていただけるのではないか、利用していただけるというふうに考えております。

高木(美)委員 やはり、子育てに困るお母様たちが、今回のような事件を起こしたお母様たちが、その番号にかければいいんだなと。確かにコストは今十億ぐらいというふうにおっしゃる方もいらっしゃいますが、まさに、これはお金で人の命が何とかなるのであれば、厚生労働省、いろいろさまざま予算が苦しいところはもう十分承知でございますが、後押しもさせていただきますので、ぜひ頑張っていただきたいことを最後に申し上げさせていただきます。

 また、通告させていただきながら質問できなかった各省庁の皆様、大変恐縮でございます。ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 大阪市西区で発生した幼児虐待事件は、全国に大変大きな衝撃を与えております。私も、八月の七日に事件があったマンションに伺いまして、献花をさせていただくとともに、八月の十日に開催をされました、この問題での大阪市議会文教経済委員会の協議会質疑を傍聴させていただきました。また、児童福祉司など関係者からも現状をお聞きする調査を行ってまいりました。

 私は、まず冒頭、今回の事件の犠牲となられた桜子ちゃん、楓ちゃんを初め、すべての犠牲となった子どもたちの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 このような事件は決してあってはならない、二度と繰り返されてはならない、これはもう事件のたびに言われながら、今日、依然として後を絶ちません。児童虐待防止法ができて十年、この間二度の改正が行われたにもかかわらず、今回もまたとうとい幼い命が奪われる結果となりました。

 先ほど来の質疑も聞いておりまして、荒井大臣のこの問題に対する並々ならぬ御決意も聞かせていただきました。時間がありませんので一言だけまず確認させていただきたいんですが、このようなことはあってはならない、そして、重く受けとめて、深刻に受けとめている、これはよろしいかと思うんですが、いかがですか。

荒井国務大臣 そのとおりです。こんな悲しいこと、こんな寂しいこと、これは私はないと思います。日本の社会全体が、どこか、ある大事なものを失いつつあるのではないか。そこをしっかりとてこ入れするのが政治の、政府の役割だというふうに思います。

宮本委員 今回の事件では、住民からの通告を受けて、大阪市こども相談センターが五回訪問はしたものの、結局会えずに、目視による安全確認がなされていない。そのことから、一部に、解錠、扉をつぶしてでも入るという強制措置、臨検、捜索をなぜしなかったのかとか、臨検、捜索の要件を緩和すべきだ、そういう議論も出始めております。

 しかし、私は現場を調査してみて、これは少し違うというふうに思ったんですね。大体、今回の事例では、住民登録さえされていないわけですし、だれが住んでいるのかということも特定できない状況でありました。

 これは基本的なことだけを確認しておきたいんですが、相手も特定できない、そして、出頭要求も再出頭要求もまだなされていない段階で、いきなり臨検、捜索、これは制度上もとてもやりようがないと思うんですが、間違いないですね。

山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。

 御指摘のように、まずは立入調査や出頭要求、再出頭要求を実施し、いずれも拒否された場合には臨検、捜索を行うことができるということが明記されておりますので、その手順、そのプロセスが必要でございます。

宮本委員 私が話を伺った関係者や専門家は、口をそろえて、今回の事件は臨検、捜索の問題ではない、立入調査の問題だ、こうおっしゃっておりました。通告を受けてすぐに立入調査がなされていれば子どもたちの命は守られたのではないか、これがそういう方々の御指摘であります。

 読売の昨日付で、関西学院大学の才村純教授は、「通告を受けて訪問しているが、子供の安全を確認するための張り込みや近所への聞き込みが不十分だった。」こう指摘するとともに、「近隣住民やマンションの管理会社に説明し、もっと協力を求めるべきだった。その法的根拠もある。」こう述べておられます。

 そういう意味では、なすべきことがなされていなかったのではないか、こういう思いはもうだれもが否定できないと思うんですが、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 今回の事件におきましては、やはり立入調査や出頭要求をまずすべきであったというふうに考えております。

 ただ、ここは本当にさまざまな議論があると思います。まさに、私も最初は一足飛びにこれは臨検の問題かなと思ったんですが、いろいろ聞いてみると、そのプロセスが全然なされていなくて、近所のヒアリングもされていない。ここで一足飛びに臨検には当然行くわけにはいきませんよねという気がするんですが、ただ、本当に今後の再発防止のために重要なのは、何か事件が起こるたびに、法律はちゃんとあったんだけれども運用ができていなかったという議論を毎年毎年続けて、子どもが犠牲になっているような気がして、私は本当にいたたまれない気持ちなんです。

 ですから、もちろん、今回プロセスのことを、事例を集めて、きっちり厚生労働省としてもやろうとしておりますが、同時に、これはさまざまな議論があると思いますので、必要であればまた超党派で、先ほど馳委員から提案もありましたが、法律は一〇〇%これで完璧なのかという議論もまた出てくるかもしれないというふうに思っております。

宮本委員 ある専門家なんですけれども、かつては相当ぎりぎりまで工夫して立入調査で問題を解決してきた。二〇〇七年の法改正で、家庭裁判所の許可をもって臨検、捜索できるという新しい枠組みができて、逆に今誤解が生じているんじゃないか。つまり、強制介入は専ら臨検、捜索でやるんだと。だから、今回の事例のように、とても家裁の許可をとれないというものは強制的な介入はできないんだということで、かえって、かつてならばもっとぎりぎりまで追及していた、立入調査をやらないという誤解が生じているのではないか、こういう御指摘もあったわけですが、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 委員にお答え申し上げます。

 まさに同様の危機感、心配も私たちは持っておりまして、ですからこそ、今さまざまな安全確認の事例を全国的に調査しておりまして、二十六日にも全国の児童相談所の所長さんに集まっていただこうと思っておりますので、そこで意見交換と、そしてこのような、四十八時間以内、安全確認を目視するということの徹底を改めて図りたいと思っております。

宮本委員 なすべきことがなされていない、その現状、これは何も児童相談所にその責任のすべてがあるわけではありません。

 昨日の才村さんの読売新聞の記事でも、日本の児相は一人当たりの問題を抱えている数が多過ぎる、長時間の張り込みや頻繁な訪問をしたくても、とてもそこまで手が回らない。体制の不備ということが触れられておりますね。

 それで、私どもは、繰り返しこの委員会でも体制の不備を指摘して、児童福祉司の増員ということも申し上げてまいりました。四月八日の当委員会での私の質問に対して、山井政務官は、社会保障審議会の社会的養護専門委員会の報告書に基づいて、施設のあり方、人員配置基準、措置費の算定基準などの見直しをすべく、社会的養護専門委員会で議論中だ、来年の通常国会に法案を提出したいと答弁をいたしました。検討の状況はどうなっておりますか。

山井大臣政務官 宮本委員にお答え申し上げます。

 まだそのことについては検討中でございますが、きょうも足立の相談所でそのお声はお聞きしてまいりまして、一人の相談員の方が約百人のケースを担当している。やはり理想は二、三十人。ですから、四倍ぐらいの職員がいないと、丁寧で責任を持てる対応というのはなかなかしづらいというお話もお聞きしましたので、これは地方交付税の措置の充実等の問題にも関係しますが、厚生労働省としても努力をしてまいりたいと思います。

宮本委員 本当に、そういうことを言っている間にも子どもの命が奪われているわけですから、この問題だけでも直ちに切り離して結論を出して、児童福祉司を抜本的に増員すべきだと思います。

 先ほど紹介した才村教授は、児童虐待で一人前の担当者になるには十年かかると言われている、実際には二、三年でころころかわるという実態があって、経験の蓄積もノウハウの継承も難しいという指摘もされております。

 そういう点では、ただ人数をふやす、人員の増員というだけでなくて、専門性をしっかり確保していく、やはりそういう専門的なマンパワーを養成していくということも求めておきたいと思います。これはもう答弁は結構です。

 私は、きょうの質問の準備のために、改めてこの馳先生の「ねじれ国会方程式」という本を読ませていただきました。この本は、前回、二〇〇七年改正の意義や経緯についてまとめられております。

 ここで馳さんは、警察を突入させればいいじゃないかと最初考えたが、これは私も実はそちらに傾いたことを反省しているんだということで、最初、警察が何でもかんでも突入するというふうに考えたのは間違いだったというふうにおっしゃっておりまして、さまざまな議論がこのとき交わされたことがよくわかります。

 ここで、実は、要保護児童対策地域協議会、先ほどから議論になっている地域のネットワークですね、これが議論に書かれております。重要性についても触れられております。厚労省の説明によればとして、数年内にほぼ一〇〇%の市町村や広域行政単位で設立できる、この地域協議会ができる、こうなっておりまして、どれぐらいに今なっているかというと、先ほど御紹介があったように九八%既にでき上がっている、ほぼ一〇〇%だというふうに聞きました。残っているところもそれなりの事情があるところが多いということのようです。

 ただ、これがどういう運用になっているかということが問題だと思うんですよ。昨年七月に発表された子ども虐待による死亡事例等を検証した社会保障審議会児童部会の専門委員会の報告、いわゆる第五次報告を読みますと、この要保護児童対策地域協議会において、児童相談所と市町村の役割分担が明確になっていないものがある、福祉、保健、医療、教育機関、警察等との連携をさらに進めるべき、さらには、担当者や単独の機関内で抱え込むことのないような要保護児童対策地域協議会の体制の整備を行うべき、こういう指摘が一年前にされているわけですね。

 これは厚労省に聞きますけれども、そういう指摘があって、既に問題点がわかっていながら、この間、どのような改善措置を講じてまいりましたか。

山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。

 そのような指摘がございましたので、まさにそれが実際機能するように、そして、先ほどお話がありましたように、任意設置の虐待防止ネットワークを含めると九七・六%、約九八%で、まだ二%が未設置でありますので、そこの設置に向けても取り組んでいるところです。

宮本委員 つまり、これは縦割り行政の弊害と言われるものでありまして、市町村でも今そういう議論がやられていますよ。しかし、これは市町村に向かって連携を強めようと幾ら号令をかけても、率直に言って、現場からは、そう言っている大もとの中央省庁こそ一番の縦割りではないか、こういう声を確かに聞くんですよ。そういう点では、何よりも政府が率先して、二度と虐待で命を落とす子どもを生まないというかたい決意のもとに、全省庁一致して、縦割りを排した取り組みが求められていると思うんですね。

 その点では、私は、荒井大臣の役割というのは大きい。これは内閣府においてこの問題でのそういうリーダーシップを大臣に求めたいのですが、御答弁をお願いしたいと思います。

荒井国務大臣 そういう観点から、内閣府がこの問題について所掌しております。

 特に、この七月に策定をいたしました子ども・若者ビジョン、これは、内閣府が初めて各省庁縦割りのものに横ぐしを当てて、しかもその中の大きなものが、子ども虐待でありますとか、あるいは子どもの健全な育成について視点を当てた計画書になっております。

 これは、恐らく、今政権になって初めてしっかりと形をつくることができたということだろうと思っております。この部分は、私、行政としてもかなり未分化、あるいは余り進化していない分野なのかなというふうに今聞いておりました。

 現政権になってから自殺の問題を非常に深く取り上げましたけれども、自殺についてのしっかりとした統計書というのがありませんでした。どういう原因で自殺に結びついているのかということですね。

 そこで、私の方から、政府が持っている、内閣府が持っている経済研究所に、自殺のしっかりとした調査ができるような部局を置きたいというふうに思っているんですけれども、同じように、児童虐待についても科学的な研究というのがしっかり行われているのかどうか、原因も含めて、そういうものについて内閣府としてもしっかりとした調査研究体制というのを整備する必要があるのではないかと、今さまざまなお話を聞いていて、そんな思いをいたしました。

宮本委員 先ほど公明党の委員からもありましたけれども、子ども・若者というくくりだけでなくて、やはり児童虐待そのものに機敏に対応する、リーダーシップある取り組みをお願いしたいと思います。

 時間がないので終わりますけれども、この問題はこれで到底終わるわけにはいかないと思います。大阪市における検証委員会での議論の進捗状況も踏まえて、大阪市の担当部局をお招きするなり、また現地調査に行くなり、引き続きこの議論を進めていく必要があると思いますが、委員長に理事会での御協議をお願いいたします。

池坊委員長 しっかりと、委員の御意見、大切なことだと思います。私も現場視察を望んでおりますので、委員の方々の御協力もいただいて行いたいと思います。

宮本委員 終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 次に、吉泉秀男さん。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 きょう最後の質問でございます。

 今回の事件、まさに、女性一人で子どもを育てている、こういう女性の方にとって、母親にとって、ショックというふうな言葉で言いあらわせない、大変大きな、痛ましい事故である、こういうふうに認識をしております。

 自分自身、大阪の児童相談所の職員は福祉職として採用されて、他の自治体より職員も多く、そしてまた虐待に対する取り組みもすぐれている、こういう認識をしていましたので、自分にとっても、また関係者も含めて、このように起きた事件、大変な驚きであったというふうに思っております。

 これまで各委員の方から質問もありました。今回の事件は、エアポケットで、児童虐待防止法では想定できない事態であり、制度的欠陥、人員配置不足など、いろいろな課題が複合して起きたのではないか、私はこういうふうに思っております。もちろん、通告内容の吟味が不十分だった、さらには警察との連絡協議が行われなかった、こういうふうな問題点、きょうも多く出されたわけでございますけれども、その問題がないというふうには言えないと思っております。

 この間の虐待における、零歳児を含めて小さな命が奪われている、このところが年々ふえてきている、こういったところに対して、私どもはまずどういうふうに認識をすればいいのか。

 今、大臣の方からは、子育ての問題等々を含めて、社会の変質、こういう一つの言葉で出されたわけでもございます。しかし、今二十四時間眠れない、眠らない町がふえてきています。そしてまた、女性が夜、仕事をしていかなきゃならない、こういう状況にもなってきているわけでございます。

 そういう中において、きょう資料にも出されました、相談件数が物すごくふえてきている。こういう事態についてどういう認識、さらにはどういう分析をしながらこれから進めようというふうな考え方に立っているのか、まず冒頭お伺いをさせていただきたい、こういうふうに思います。

荒井国務大臣 吉泉委員にお答えをいたします。

 日本の国の伝統というのは、万葉集の山上憶良の歌ではありませんけれども、子どもは宝だというのが私は日本の社会の伝統的な価値観であり、あるいは地域観だと思うんですね。子どもは家庭のものでもあるんですけれども、同時に、地域が大事に育てていく、そういうものをあわせ持っていたというふうに思います。

 ところが、今のような事例を見ますと、本当に悲しい事例であって、日本の社会が抱えていたそういう価値観みたいなものが失われてきたのではないかという意味で、私、日本社会の変質という言葉を使ったわけでありまして、これをどういうふうに解決していくのかということは、いろいろな知恵がこれから必要だと思うんですけれども、その中の一つ、もちろん制度的にはいろいろ政府は努力をいたしました。

 この七月に総理大臣をヘッドとする審議会の形をしたものもつくったわけでございますけれども、それ以外に、失われていく地域のネットワークなりあるいはきずなというものを深めていくために、鳩山前総理が提唱いたしました新しい公共という概念がございます。これは、純粋な官ではないけれども、パブリックな性格を持ったそういうネットワークなりあるいはNGOを社会のきずなの中の一環として活用していくという考え方でございます。私は、こういう考え方をもう少し根づかせていくということによって、地域全体あるいは社会の中の本当に大切なものは何なのかということを議論できるような、そういうものができ上がっていくのではないか。

 内閣府は、そういうものを推し進めながら、社会で今ぎすぎすしている、この児童虐待もそうですし、あるいは自殺もそうですし、そういうものにぜひ対応していきたいという考え方を持ってございます。

吉泉委員 今、離別で母子世帯というものが死別よりも大変多くなっている。こういう状況の中で、年収二百万以下、そういう中においては、いつ一人の母親が、今の大阪の事件と照らし合わせていった場合に、すごく寒々な思いなんかもする女性も多いんだろう、こういうふうに思っております。そして、児童虐待だけでなく、お年寄りの百歳以上、この部分についても今大きな問題になってきています。

 そういう中において、きょう資料の中にありました、いわゆるこんにちは赤ちゃん事業、乳児家庭全戸訪問事業、こういうことに取り組もう、今そういう状況になってきているわけでございますけれども、ただ単に、簡単な訪問事業にはならないんだろうというふうに私は思っています。

 今も、この事件でありましたように、住所登録もしていない、いろいろなところの中でエアポケットに置かれている、そういうところで事件が起きている。夫婦一緒になって子どもを育てている、こういったところについてはなかなかこういった事件というものが起きるというようなことはないわけで、あるかもわかりませんけれども、ほとんど少ないだろうというふうに思っています。だとするならば、この訪問事業、どういうふうな形でしながら、私方の、いわゆる委員会の方に資料として、結果として出されるのか。

 そして、八月の児童相談所の方に出したこの調査依頼、これも九月というふうな形でまとまるというふうなことで今答弁がなされたわけでございますけれども、このところについて、今の訪問事業の関係なども含めて実態というものを出していく、このことについてどのように進めていこうとしているのかお聞かせ願いたいというふうに思います。

山井大臣政務官 吉泉委員にお答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、母子家庭のお母さんで就労経験も少ない方々が孤立をしておられる、そして、今回の痛ましい事件もそういう背景の中で起こったのではないかと思っております。

 そういう中で、母子自立支援員や母子家庭等就業・自立支援センターにおいて母子家庭の相談に乗るとともに、こんにちは赤ちゃん事業などにおいても、そういう孤立しかねないお母さんの支援にも取り組んでまいりたいと思いますし、そのような状況については把握をさせていただいて、また報告をさせていただきたいと思います。

吉泉委員 今の百歳以上の推移の調べなんかを見ましても、医療の段階では、これまでの考え方、単なる調査、そういったことではなかなか解明できない、こういう状況が今あるんだというふうに思っています。

 だとするならば、訪問事業の中についても、二十四時間、こういう中において、必ず直接会ってどうなのかということをやる場合は、全国でやるのは本当に大変な作業になるんだろう、私はこういうふうに思います。ですから、国の方として、ただこういうことをやりなさいとか、一つのいわゆるマニュアルでというふうな部分よりは、やはりこのところについての調査、このことについてはしっかりやってほしいなというふうに思っております。

 そして、今回の事件のように、自分の子どもを死亡に至らしめた、この母親が責められる、このことは、私は当然その部分もあるというふうに思っています。しかし、そこまで追い詰められた母親の一つの気持ち、そのこともまた私たちは考えていかなきゃならない、こういう部分もあるというふうに思っています。

 そういう意味の中では、私たちの今の環境という面からいけば、まだまだ公的な施設の段階、子ども一時預かり、そういう機関が、場所がやはり少ない、そしてまた、そういう母親に対して、その辺に対する指導、そういった部分もなかなか行き届かない、こういう状況もあるのでないか、こういうふうに私自身思っております。

 今、馳委員がおっしゃいました、やはり地域全体で子どもを育てていくやり方、方法、そのことについては、もっともっとキャンペーンも含めてしっかりした施策が今求められているんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

 そんな面で、時間が来ておりますので、この点については要望だけさせていただきまして、しっかり自分たちも頑張らせていただきたいというふうに思っておりますし、今回の委員会だけでなくて、これからもどんどん進んでいくというふうなことで、論議を積み重ねていくということをお互いに確認をしながら、自分の質問を終わらせていただきたい、こういうふうに思います。

 ありがとうございました。

池坊委員長 本日の質疑はこれにて終了いたしますが、今後とも、現場視察等を積極的に行っていきたいと思っておりますので、委員の皆様方のお力添えをいただきたいと思います。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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