衆議院

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第5号 平成23年5月19日(木曜日)

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平成二十三年五月十九日(木曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 高木美智代君

   理事 岡本 英子君 理事 川村秀三郎君

   理事 城井  崇君 理事 高井 美穂君

   理事 湯原 俊二君 理事 池坊 保子君

      稲富 修二君    小野塚勝俊君

      大山 昌宏君    金子 健一君

      川口  浩君    橘  秀徳君

      橋本 博明君    初鹿 明博君

      松岡 広隆君    山田 良司君

      横粂 勝仁君    吉田 統彦君

      宮本 岳志君    吉泉 秀男君

    …………………………………

   政府参考人

   (内閣官房内閣総務官室内閣総務官)        原  勝則君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳久 治彦君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      渡辺  格君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   参考人

   (独立行政法人放射線医学総合研究所理事長)    米倉 義晴君

   参考人

   (国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)専門職職員)

   (NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン現地事業アドバイザー(無償ボランティア))       千田 悦子君

   参考人

   (日本大学専任講師)   野口 邦和君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金子 穰治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  神山 洋介君     稲富 修二君

  初鹿 明博君     大山 昌宏君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     神山 洋介君

  大山 昌宏君     初鹿 明博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件(東日本大震災による子どもへの影響)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に東日本大震災による子どもへの影響について調査を進めます。

 本日は、参考人として、独立行政法人放射線医学総合研究所理事長米倉義晴さん、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)専門職職員・NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン現地事業アドバイザー(無償ボランティア)千田悦子さん及び日本大学専任講師野口邦和さん、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承ください。

 それでは、まず米倉参考人にお願いいたします。

米倉参考人 放射線医学総合研究所の米倉でございます。

 まず最初に、今回の東日本大震災により被災された多くの方々にお見舞いを申し上げたいと思います。特に、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出により、多くの方々が避難を余儀なくされ、これによって身体的あるいは精神的にさまざまな負担を強いられている現状を考えますと、この状況を早急に解決することが求められているというふうに考えております。

 さて、今回の災害は、二つの大きな特徴がございます。

 第一は、これはもう皆様よく御存じのように、地震、津波に原子力災害という三つの大きな災害が加わった複合災害であります。もう一つは、このうちの原子力災害につきましては、いまだに放射性物質の放出が続いており、今後もかなりの期間にわたって緊急事態への対応が求められている点であります。

 このために、今まで私どもが参考にしてまいりましたマニュアルだけでは対応できず、いわば教科書には書かれていない事態に対して、私たちの英知を結集して、最善の方策を考えていくということが求められているのではないかというふうに考えます。

 私ども放射線医学総合研究所は、我が国の原子力防災体制における第三次被曝医療機関として、震災直後から現地に被曝医療関係の専門家を派遣し、避難所等での住民スクリーニングの実施や、発電所内の作業従事者の被曝等に対応した医療活動を行ってまいりました。この中で、一般の方々への放射線分野に関する情報提供にも力を入れておりまして、三月十四日には、一般の方々からの電話相談を開始し、現在までに七千七百件を超える相談を受けております。その中で、やはり多いのは、子どもたちへの健康影響についての相談であり、地元はもちろんのこと、遠く離れた地域の方々にとっても、極めて高い関心が寄せられているというふうに考えております。

 電話相談を受けました主な内容を拾い上げてみますと、子どもを戸外で遊ばせても大丈夫なのか、雨が降って子どもがぬれてしまったが、大丈夫なのか、水道水から基準以上の放射性物質が出たと報道されたが、知らずに飲ませてしまった、大丈夫かといった非常に素朴な疑問から、子どものぐあいが悪くなって福島県内の病院に連れていったところ、スクリーニングの証明がないと診察できないと言われた、あるいは、県外に避難した方々は、そこの学校で放射能があるから一緒に遊べないと言われたなど、いわれのない被害を受けている子どもさんへの深刻な影響も出てきております。

 これらの状況を考えますと、放射線に対する正しい知識を広めて、子どもの健康を、身体的な面のみならず、精神面においても、しっかりと守るための取り組みが重要であることを強く認識させられている次第であります。

 ちなみに、放医研のホームページへのアクセス数は、震災発生以降これまでの約二カ月間で、従来の放医研のホームページへの年間アクセス件数とほぼ同程度となっており、今後とも、放医研としては、放射線に関する正しい知識の普及に対する努力を進めてまいりたいというふうに考えております。

 ところで、放射線による人体への影響につきましては、国際機関やさまざまな団体から勧告や提言が出されております。これに基づいて各国の規制が行われているわけであります。

 そこで、最初にその仕組みについて、非常に簡単に御説明をさせていただきたいと思います。

 放射線の人体への影響を科学的に評価する国際機関として中心的な役割を担っているのが、原子放射線の影響に関する国連科学委員会、UNSCEAR、ユナイテッド・ネーションズ・サイエンティフィック・コミッティー・オン・ジ・イフェクツ・オブ・アトミック・レディエーション、アンスケアというふうに呼ばれております。この団体であります。これは、一九五五年の国連総会の決議によって設立されて、放射線と放射性物質のレベルについての情報を収集して、それが人と環境に及ぼす影響について科学的な取りまとめを行って、国連総会に報告するという責務を負っております。ここで一つ特筆すべきことは、これは国連の委員会ではありますが、政府機関等とは一線を画した科学者の集まりであり、純粋に科学的な見地からの検討が行われるように配慮した運営が行われているという点であります。

 次に、この国連科学委員会の報告を受けて、放射線防護についてのさまざまな勧告を行っているのが国際放射線防護委員会、ICRPであります。これについては皆様よく御存じだと思います。先ほどの国連科学委員会とは違って、こちらは純粋な民間団体でありまして、現在、英国のチャリティー団体として登録されています。その出発点は、一九二八年に国際放射線医学会に創設された国際エックス線ラジウム防護委員会でありまして、設立の当初は医療放射線の防護を対象としておりましたが、現在では環境までを含む非常に幅広い放射線防護の分野において勧告を出しているところであります。

 このICRPによる放射線防護のためのさまざまな勧告を受けて、国際原子力機関IAEAや世界保健機関WHOなどが連携して具体的な規制につながる基準を作成し、各国の政府はそれぞれの国における規制に取り入れるという枠組みができているわけであります。我が国の放射線にかかわる規制はこのICRP勧告に基づいていますが、二〇〇七年に出されました新しい勧告への対応が現在議論されているということを承知しております。

 さて、ここで、放射線の人体への影響について、これらの国際機関における報告を中心にまとめてみたいと思います。

 その前に、放射線で使われる単位について、よく御存じない方も多いので、簡単に説明をさせていただきます。

 放射線の基本単位は、体に吸収されたエネルギーとしてのグレイという単位があります。ところが、この放射線の種類やエネルギーによって、同じグレイであっても体への影響には違いが出てまいりますので、これを補正したものが、皆さんよく耳にされているシーベルトという単位であります。シーベルトという単位は、そういう意味では、物理的な単位ではありませんで、計算をした、目的は放射線防護のために特別につくられた単位であるということを御承知いただきたいと思います。そして、体の各部位によって、その影響を足し合わせて、これを全身における影響ということで、皆さんよく見ておられる十ミリシーベルトとか二十ミリシーベルトとかいう単位が計算されているわけであります。

 さて、放射線を一度に比較的短時間で浴びますと、受けた放射線の量に応じて、不妊であったり、吐き気とか嘔吐、あるいは血液系の障害、下痢、あるいは皮膚のやけど、ひどくなりますと意識障害といった、いわゆる急性症状が出てまいります。それぞれの症状につきましては、その症状が出る最低限の線量というのがわかっております。これを閾線量というふうに呼んでいるわけです。これらの急性症状は、百ミリシーベルトより低い線量では出ないことが明らかになっています。今回の場合にも、作業者の中で比較的高い線量を受けられた方がおられますが、いずれも急性症状が出るレベルではありませんでした。

 一方、放射線の影響には、放射線を受けてから数年以上の経過を経て出現する病気があります。放射線を受けてから二、三年後以降に白血病が増加することが知られていますし、数年後あたりから甲状腺がんが出てくる、そして十年以上たってその他のがんなどの悪性腫瘍がふえてくるという可能性があることが指摘されています。

 百ミリシーベルト以上の線量では、受けた線量に比例してがんのリスクが高まるということが原爆被爆者の調査で明らかにされているのは御存じのとおりです。ところが、百ミリシーベルトよりも低い線量では、子どもを含む人の集団でがんの発生率が高まるという疫学データは、現在のところ、ないというのが事実であります。

 そこで、放射線による人体への影響が百ミリシーベルト以下では観察されないことから、放射線防護では、一つの基準とした具体的な施策がとられているわけです。

 ここで問題となりますのは、恐らく皆様も一番気になるところだと思いますが、百ミリシーベルト以下では全く健康に影響がないと言い切れるのかという疑問だというふうに思います。この点がどうしてもあいまいなために、国民の皆さんにとって非常に大きな懸念となっているということであります。

 そこで、ICRPの考え方としては、放射線防護という目的のためには、百ミリシーベルト以下の低い線量であっても、線量に比例して影響が出ると考えましょうという防護の施策をとるという方策をとっているわけです。これは直線閾値なしモデル、LNTモデルとよく言われていますが、重要なことは、これは防護のためにつくられたモデルであって、この値を使って計算された値から放射線によるがんの発生率を計算したり将来の危険を予測してはならないということが、ICRPの報告書の中でもあえて記載されているというところであります。

 それでは、問題は、子どもの場合はどうなのかということですけれども、子どもでは、体の多くの部分が発達を続けているという途中でありますので、放射線に対する感受性が高いのではないかという推測は、これはもう以前からありました。現在のところ、子どもは、国際的な機関のコンセンサスとしては、大人の二、三倍の感受性があると考えられていますけれども、これらが見られるのは比較的高い線量であるというのが今までの事実です。放射線の影響が観察されない百ミリシーベルト以下の線量で、これはまだ明らかになっていません。

 ここでもう一つ、子どもの場合に注意が必要なのは、体の部位によってそのリスクが高まる場合があるわけです。その点に非常に大きな注意が必要でありまして、例えば、チェルノブイリの事故では、多くの子どもたちが放射性沃素を含む飲食物を摂取したというふうに考えられていますけれども、このために甲状腺がんの発生率が増加したことが報告されています。このときのデータから、我が国の防災指針では、甲状腺の被曝線量が百ミリシーベルトを超えるおそれのあるときには、安定沃素剤を投与して被曝線量の軽減を図るという方針にしているわけです。

 実際、今回の原子力災害では、避難所等で、千名を超える子どもたちに対して、沃素131の甲状腺への集積量が簡易的に測定されました。これから推定される甲状腺の線量は百ミリシーベルトよりもはるかに低いものでありまして、問題がなかったというふうに報告されています。沃素131の半減期は八日間ですので、現時点では土壌などにはわずかしか残っていないのですけれども、今後もし新たな放出がある場合には、これに対して十分な注意が必要であろうというふうに考えます。

 さて、低い線量の放射線に関する影響でありますが、私たちは、日常生活で、日本におきましては年間に一・五ミリシーベルト程度の放射線を自然界から受けています。世界の平均は二・四ミリシーベルトとなっておりますので、日本の数倍の自然放射線を受けている地域もいろいろなところにございます。これらの地域における健康影響は、現在のところ、観察されていません。

 考えてみますと、ここからは私の私見になりますけれども、地球に生命が誕生して以来、数十億年にわたって、持続的に放射線にさらされている環境の中で、生物がずっと進化を続けてきたわけです。その進化の過程を経てきた我々人類も、ある程度の放射線に対しては、その傷害を修復するメカニズムが備わっているということが明らかになってまいりました。このメカニズムを明らかにすることによって、どれぐらいの線量までなら全く問題がないと言い切れるのかが明らかにされるというふうに私は考えております。

 こういった事実に基づいて、ICRPやIAEAは、緊急事態における対応策をとるための線量の目安を設定しました。それによりますと、緊急時における住民の被曝線量としては、何らかの対処をすることによって二十から百ミリシーベルトを目標とする参考レベルまで下げること、そして、事態が収束してきて住民が居住する場合には、年間に一から二十ミリシーベルトの範囲で参考レベルを設定して、そういったことによって防護策をとって、長期的には年間一ミリシーベルトを目指すことという内容になっております。実際に、チェルノブイリの事故の後も、最終的には一ミリシーベルトを目指す政策がとられました。

 ここからが多分非常に重要な問題になってまいりますが、実際に緊急事態における問題としては、低線量の放射線によってごくわずかに増加するかもしれない発がんのリスクと、それを防護する方策をとることによって新たに発生するさまざまな影響、これには健康への影響や社会的な影響なども考えられますが、これらを考慮した上で、最適な防護の基準をつくる必要があります。

 ICRPの考え方としては、ALARAというのがあります。アズ・ロー・アズ・リーズナブリー・アチーバブル、すなわち、合理的に達成できる範囲でできるだけ低くしましょうというのが原則であります。

 現在はまだ原子力発電所からの放出が続いており、事態も予断を許さない状況であることを考えますと、必ずしもICRPが言うところの事態の収束後の復興期という範疇ではないかもしれませんが、特に子どもの場合には、今後長い期間にわたって影響が出てくる可能性があることから、できるだけ線量を低く抑えるための工夫は絶対に必要だというふうに考えます。

 それとともに、もう一つ非常に大事なことは、子どもたちを含めて、被災された方々や避難生活を余儀なくされている方々に対する心のケアが最重要課題であると私は考えています。

 チェルノブイリ事故におきましても、先ほどお話をしましたように、子どもたちの甲状腺がんが増加したことが重要な問題として指摘されました。それにも増して重大な健康影響とされたのが精神的な障害でした。これにつきましては、直接放射線の影響はないものということで、国連の科学委員会等では具体的に取り上げられていませんが、かなりの方々が精神的な影響を受けております。放射線を受けたかもしれないことへの不安、自分がどれだけ受けたかもよくわからない、将来にわたる健康への懸念等がこの心の問題をもたらしたものというふうに考えます。

 今回の災害におきましても、早急に住民の方々の受けた放射線量の調査を実施するとともに、心の問題を含めた健康へのきめ細かな対応が求められているというふうに考えます。

 最後になりますが、改めまして、今回の災害でお亡くなりになられた方々、被災された多くの方々に対しましてお悔やみ、お見舞いを申し上げますとともに、放医研としましては、今後とも、国の第三次被曝医療機関として、緊急被曝医療に努力をしてまいりますとともに、放射線の生物や環境への影響という基礎的な研究にも引き続き注力してまいりますことを申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 本日は、このような機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 次に、千田参考人にお願いいたします。

千田参考人 千田悦子と申します。

 私は、京都に生まれました。祖先の知恵に満ちた日本語を母語として生きてこられたことを心から感謝しています。

 息という言葉がありますけれども、息は生きるという言葉の根幹になっていて、そして、話すということは、放つ、物を手放すということにつながります。

 今から皆さんに向かってお話しさせていただくに当たって、東北の被災者の方たちの御冥福、また思いをはせて、ちょっと一度、皆さんに黙祷とともに深呼吸をしていただければと思います。まず、三回深呼吸をお願いします。

 ありがとうございます。

 私は、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所の職員でありますけれども、去年、ちょっと手術をいたしまして病院で入院しておりました。六週間ほど入院して、松葉づえがとれたときにこの被災がありました。

 そして、足が役に立たない私がこの被災地に行ってどういう役に立つかというのを考えたときに、私自身、国連難民高等弁務官事務所で人の命を助けるという仕事をふだんからしていますので、自分が学んだ経験がお役に立てるのではないかと思ってパレスチナ子どものキャンペーンというところに無償ボランティアとして入り、このパレスチナ子どものキャンペーンというNGOは岩手県の大槌という町に入っています。

 なぜ大槌を選んだかといいますと、大槌は地震、津波、そしてさらに、津波に押し寄せられた屋根が燃えて、またガソリンが広がって、火災という三重の被害を受けていて、かつ、原発から約二百三十キロで、四重苦という場所にありまして、また、大槌の場合、最初の一報が津波が三メートルということでしたので、皆さん防災所に集まっていて、役人の方たちがほとんど亡くなってしまい、そのために、ほかのところよりも非常に災害支援の状態がおくれていたという場所でした。

 それで、私たちは、大槌の城山中央公民館、それから金沢という山の奥の部署、それから安渡小学校という三カ所で子どもの支援をしております。特に、そこの子どもたちの社会的、心理的ケアというのが中心なんですけれども、その中でも、三カ所それぞれ、逃げていらっしゃる方たちの人口も違い、また、それぞれの方たちの逃げている避難所の状況も違いますので、子どもたちの状況、また反応の仕方も違います。

 ですけれども、その三カ所を見せていただいた中で、幾つか私が皆さんにシェアさせていただきたいと思います。

 私自身、自分はソーシャルワーカーと公衆衛生の両方を勉強しておりまして、アメリカで虐待児童のソーシャルワーカーとして二年ほど働いておりました。それから、UNHCRで十五年ほど緊急支援をしておりましたので、自分は子どもの専門家ではありませんけれども、その自分が、虐待されたときの子どもたちの状態をかんがみて、どういうふうに見えたかということを述べさせていただきます。

 まず、一番気になったのが、子どもたちが非常に暴力的といいますか、もともと、避難所において、校庭も駐車場にかわり、公民館に至っては、体育館自体も避難所になってしまっているので、子どもたちが自由に遊べる場所というのがかなりございません。かつ、プライバシーがいつも守られていないため、子どもたちが、いつもプライバシーが守られない、また、親と自分たちの時間を過ごせない状態に置かれております。そのため、子どもたちの間で対応するときとかに、どうしても暴力性が出てしまうという傾向が見られます。

 どういう観察があったかということをざっと述べさせていただきますけれども、まず、今言ったように、子どもの言葉それから行動が非常に乱暴になっている。また、非常に肌恋しいといいますか、大人たちに遊んでほしいといって、特に一人一人に対する注意を要求する。肌の触れ合いを求めているということです。あと、やはり本当のことを知りたい、だけれども、大人たちがかなり不安な状態で、聞いていいのかどうかという戸惑いがある。

 それから、PTSDといって、後になってから心理的なトラウマが出てくる症状があるんですけれども、それは大体一カ月後から三カ月後にだんだんあらわれて、六カ月後ぐらいにずっと出てくるというふうに言われていますけれども、そのPTSDが一カ月後ぐらいからそろそろ出てくるんじゃないかというふうに言われておりましたけれども、それぐらいのときから、子どもたちが津波ごっこ、地震ごっこみたいな、実際に再体験をする、そういう遊びが出てきました。

 それから、私たちはボランティアとして子どもたちに最初かかわっていて、四月の終わりから学校が始まりましたので、学校に直接入ったりとかというふうにちょっとかかわり方を変えつつあります。最初は、もう朝から夕方までずっと子どもたちとともに生活をするというような、べったりした遊び方というのをしていたんですけれども、子どもたちは自由に出入りしていいという状態でやっていたんですが、やはり子どもたちは自分たちのいた家の方に本当は行きたい。だけれども、なかなか大人も連れていってくれなくて、やはり本当のものを見たいというのがあって、お散歩に行こうと言って、実際についていくと、自分の家の方に行って、ぽろっと、本当は死体が見たいんだけれどもみたいなことを言ったりとか、やはりアンバランスな、不安定な状態、そういうものが見られました。

 そういう状況の中で、やはり一つ大きな問題は、先ほど言ったように、親と肌を触れ合ってスキンシップを持つようなプライバシーの時間がない。それから、避難所では一応消灯は十時というふうに決まっているんですけれども、例えば三陸の方で漁師さんがたくさんいらっしゃったりとか、あと、夜やることがなくてお酒を飲んで消灯時間後も騒いでいるような大人がいたときがあったんですけれども、それに対して、子どもが翌日になってから、あのおっちゃん、酒を飲んでいてうるさかったみたいなことを言って、大人とけんかになるようなことがあったりとか、実際そういうことがありました。子どもたちは、やはり今の状況をよくわかっていて、一見無邪気に振る舞っているんですけれども、非常に周りの影響を感じながら振る舞っているという状態です。

 そしてまた、実際にそういう大人の、お父さんお母さんが非常に不安定なので、子どもに当たっているという状態も非常に見られます。ちょっと子どもが騒いだのを、お父さん、お母さんが過剰に反応して怒ったりとかする。それが、実際には、子どもの責任でこんなに言わなくてもと思っても、多分お父さんたちの方がはけ口にしていて、実際子どもたちはさっき言ったような非常に荒い行動になっている。でも、子どもたちは本当は優しい心を持っていて、炊き出しとかすると真っ先になって手伝ってくれる、そういう形で発散をしているというような状況が見られます。

 私たちは避難所を中心にしてきたので今言ったような状況なんですけれども、在宅の方ではむしろ分断されている状態が見られまして、子どもたちの中では、なかなか家の外に出られないで、うつうつとして、うつになってしまったりとか、逆に、今まで外に出られなかった方たちが、この災害によって目が覚めて、機能できるようになったというような現象も起きています。

 そういう中で、実際本当のことを知りたいというのが一つの要求であったと思うんですけれども、その本当のことを知りたいという要求の中で、やはり現地のボランティアの方たちの中で、福島の原発のこととか、それから雨に打たれないように、マスクをするように、そういった紙を配ってくださった方たちがいます。

 そういうのを読んで、やはり子どもたちが、みんないろいろなことを言っているけれども、一体何が本当なのか、本当のことを知りたいという要求が非常に強まっているように思われます。

 先ほど米倉先生の方から正しい理解というお話をされたんですけれども、実際、人道支援の人間にとって、正しい理解をしているかしていないかということよりも、実際に人間が生きていくことで、本当に生きていく上で問題があるのかないのかということが一番重要だというふうに考えています。

 私の仕事というのは、いかに一人でも多くの方を助けるかということで、また、国連という職業柄、海外からの情報も非常にたくさん入ります。

 そのとき、まず一番最初に海外の方たちから驚かれたのが、二十ミリシーベルトという非常に高いところで学校に子どもたちを置いているということです。ドイツの原発労働者の一番高い基準以上に高いと言われている福島の二十ミリシーベルトというのを、なぜ日本の人たちは許しているのかというメールを受け取りました。それから、風評被害、風評被害というふうに言っているけれども、実際に、風評ではなくて、福島の食べ物を食べたら危ないではないかというふうにはっきりと、友達からメールが来たりしております。

 私自身、放射能の専門家でも何でもありませんけれども、実際自分が現地に行くに当たって、やはり怖いと思いまして、一応自分なりの勉強をさせていただきました。

 それで、どう考えても、いろいろな資料を自分が勉強する限り、先ほども勉強のことが出ていましたけれども、首相官邸のホームページに四月十五日付でチェルノブイリの被曝との比較という書類も出ているんですけれども、実際に、チェルノブイリ二十周年のときにあったチェルノブイリ・フォーラムで発表された死者約四千人というがんの率というのが非常に低いということで、国際的に問題になりました。そういう低いと言われているその値よりもさらに低い情報を首相官邸のホームページに載せてあります。

 そういう状態で、本当に福島の子どもたちのことを考えてくださっているのか、あるいは日本全体の子どもたちのことを本当に考えてくださっているのかというのが、私にとっては非常に重要な気がかりです。

 実際に、現在のように、メルトダウンが起こっていても二カ月たってからしか発表してもらえない。それから、チェルノブイリの十分の一の放射線が出ていて、それで国際レベル7という値が後で発表になったわけですけれども、その情報も一カ月後、つまり現場の方たちが被災した後にそういう情報が流れているという現在の状態では、国民の皆様はただ混乱するだけで、実際何を信じていいのかわからない。そういうプレッシャー自体、先ほど心理的なケアというお話をされたんですけれども、その心理的なプレッシャーというのが大変大きいかと思います。

 政府の方たちのパニックになるから、そういう言いわけというのがよくあると思うんですけれども、実際に、それは途上国で働いてきた私から見たら、非常に失礼な言い方ですけれども、国民をばかにしていると思います。私たち一〇〇%が、本当に変な言い方ですけれども、江戸時代から識字率がある日本で、国民の皆様は自分の頭で考えて判断する能力があると思います。それで、パニックが起きたとしても、逃げたい方たちが逃げられるという自由の選択の余地がある。まさにそういう正しい情報を流していただくということが私たちは本当に大切だというふうに考えています。

 私たち国連の人間、何が一番問題かというと、判断されないで宙ぶらりんにされていくのが一番いけない、間違ってもいいから緊急の場合は判断するというのを鉄則にしております。その場合、何を基準にしますかといいますと、最悪に備えて、最善になるように行動する。その場合、できるかできないかは後回し、とにかく行動して、できるようにする、そこの人たちを助けると決めたら、まずそこの人たちを助けるためにどうするかを考えるということを鉄則としています。

 もう時間になってしまったんですけれども、一つだけ言わせていただきたいのは、これから放射線の水が日本の国土からわき出るような状態が本当に起きようとしています。その中で、今、原子力が安全と言っている方たちに、私はぜひ皆さんに大槌に入ってボランティアをしていただきたいですし、自分たちの子どもと家族、それから赤ちゃんを含めて、福島に移住して、福島の方たちと一緒に住んでいただきたいです。それでも安全とおっしゃるなら、本当にそうして、安全ですと改めて言っていただきたいです。

 きょうは、時間が短くなってしまいましたけれども、御清聴ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 次に、野口参考人にお願いいたします。

野口参考人 日本大学の野口です。

 レジュメは用意してありますけれども、その前に。

 日本全体が混乱している。私が経験した、私は研究機関を代表していろいろな活動報告ができるわけでもないし、ボランティア活動をしているわけでもないんですけれども、ただ、全体を見ていて、非常に混乱をしている。原因は情報不足だと思います。

 先週、私の同僚で、私のところに訪ねてきた人がいまして、奥さんと子どもが今沖縄に疎開をしていると言うんです。びっくりでした、東京にいながら、なぜと。最初、三月中は名古屋に疎開したんだそうです。子どもが小学校二年で、当時は一年生、春休みということですけれども、奥さんの実家の名古屋に行った。二週間ほどいて、はたと気づいた、浜岡が近いと思ったんだそうです、ちょっと思うのが遅いと思いましたけれども。その後、沖縄に行ったんだそうです。沖縄には知り合いはだれもいない。そこで、最初二十日間ほどホテル暮らしをして、しかし、お金が相当かかるから、今、家を借りて、沖縄の小学校に子どもを通わせていると言うんですね。いつ東京に戻れますかという話を私のところに持ってきたので、もう最初から行く必要がないんだから、すぐ戻るように言いました。ただ、向こうで学期が始まって、学期の途中でと言うので、そんなことよりも、子どもは相当精神的なストレスを受けているから、これはもうできるだけ早く戻した方がいいですよということを言ったんですけれども、残念ながら、一学期が終わるまでは向こうにいますという返事が後で来ました。

 これは全くの間違いですけれども、東京にいて怖いというイメージを持っている。なぜそういう判断をしたのか。やはり情報が足りない、あるいは正しくない情報がいっぱい流れているということでもあるんだと思うんですね。

 今はインターネット、携帯メールの時代ですから、たくさんの情報が出ています。中には、正しい情報はあるんですけれども、故意に悪い情報を流す人もいるし、あるいは善意でみんなに知らせたくて流している情報が実は間違っていたりすることもあって、むしろそれが多いんだと思うんですけれども、非常に混乱しているなと感じました。

 もう一つ、金沢に行ったときに、水戸に住んでいる人で、だんなさんだけ置いて、奥さんが金沢の実家に戻った、同じです。母親が私のところに相談に来まして、いつ水戸に戻したらいいでしょうか。最初から水戸を離れる必要もなかったし、すぐ戻るように。だんなさんにはペットボトルの水を送っていると言うんですね。奥さんと子どもが金沢、すぐ戻るように言いまして、わかりましたということで、納得して帰っていきました。水戸などは放射線レベルが事故前の二倍くらいのレベルでしかないんです。当初、何十倍か高いときはありましたけれども、全く避難の必要もない。

 それからもう一つ、いわきで、これは福島県の人ですけれども、やはり子どもと奥さんが実家の八王子の方に避難しているんだ、いつ戻したらいいでしょうか。これも、いわきの線量率を聞いたら〇・三とか〇・四マイクロシーベルト毎時だというので、たとえ一マイクロを超えていようが全く避難の必要がないということで、すぐ戻るように言いまして、本人たちは戻っています。

 この三つの例、ほかにもいっぱいあるんですけれども、やはり情報が不足している。そして、正しい情報がとにかく極端に不足している。その結果として、しかし、情報はいろいろ出ているんですね。ですから、正しくない情報を受け取って、かなり深刻に、過大に対応しているんだと思います。やはり情報がないから、どうしても家族を守るために過大に対応する。そうしがちになるのは当然のことで、そこはやはり、政府の方でしっかりと情報を丁寧に出して説明をするということが非常に必要だということを強調したいと思います。

 それで、福島の問題に戻りますけれども、私は事故以来、福島、二本松、本宮、大玉、郡山などを訪れまして、現地の状況を視察してきました。

 郡山などでは、段ボールで仕切って、それぞれの家族がまだ住んでいる。一週間、二週間じゃなくて、もう二カ月たとうとしていて、既に二カ月を超えましたけれども、そういう状況がいまだにある。たくさんの家族がそういう状況だと思うんですけれども、それを視察しました。

 それから、学校の教育の関係者、先生方とも懇談をいたしました。安達地方の二本松、本宮、大玉村では、校庭とか園庭の表層土壌の剥離の話が出ていまして、意見を求められました。剥離するのはいいけれども、郡山のように、外に出して、持っていこうと思った先から苦情が出て、結局、校庭に積み上げているというような状態、やはりそれは避けなければいけない、どうしたらいいんでしょうかという相談を受けまして、報告書も提出をいたしました。

 言うまでもなく、実はもう新学期が始まっています。これは私は確認しておりません。県の教育委員会は、現在の状況が安全な状況であるか否か、一切語らないまま新学期が始まったということを現地の教員の方が言っていました。そういう中で、保護者は非常に不安に思っているというわけです。先生方も大きな不安を感じて、保護者、生徒に対応しているという状況です。

 保護者、生徒、教員ともに不安を感じたまま新学期に突入したために、ある県立高校のPTA総会で、四月の末ですけれども、放射線とどう向き合うかというタイトルの講演を頼まれて、私は一時ためらいました。放射線とどう向き合うか、つまり、もうその場にとどまって生活をしなければいけない、そういう中で、では、どうつき合っていったらいいんだというかなり深刻なタイトルで、少しためらいましたけれども、行ってきました。現地にとどまって不安な生活を強いられている。見えない放射能、放射線、そういう恐怖と向き合わざるを得ない保護者、生徒、教員がいるんだ。ですから、そういう人たちの安全を確保し、安全だけじゃだめなんですね。やはり安心を与えないといけない。そういう政府の施策が必要だというふうに思います。

 とりわけ、現地で混乱と困惑を生み出しているものは何かといいますと、実は、四月十九日付の文科省の発表した「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」、これであります。児童生徒等の受ける線量上限値、年間二十ミリシーベルト、それを逆算しまして、一時間当たり三・八マイクロシーベルトという空間線量率を算出しまして、この値を超える学校の校庭における屋外活動を制限するというふうにしたわけです。

 この暫定的考え方についてですけれども、夏季休業終了までの、おおむね八月下旬までの期間を対象とした暫定的なものであるにもかかわらず、年間二十ミリシーベルト、こういう数字の表現の仕方などから、これはどうも来年の三月まで、一年間の政府の施策として誤解されている面があります。これはしっかり説明しないといけないと思うんですね。

 それともう一つ、年間二十ミリシーベルトの被曝を政府が容認したんだ、自分たちはどうも見捨てられたようだ、そういう考えを持っている住民の人にもいっぱい会いました。ですから、しっかり文科省の出している文書を読めば、決してそのようには書いていないわけですけれども、しかし、そのように思い込んでいる人がたくさんいるということもわかりました。

 ですから、こうした誤解も、やはり政府が丁寧に説明をしていれば起きなかったと思うんです。一片の文書を出して、後は地元の方でやってくださいみたいな形では、やはり問題が問題だけに、放射能とか放射線について、残念ながら、小、中、高、大学と、教育はほとんど行われておりませんので、そういう点でもやはり丁寧な説明をしなければいけなかった。住民の理解を得る努力をもっともっとすべきであるというふうに思います。

 それと、現地で混乱と困惑を生み出しているのは、暫定的考え方についての誤解だけではなくて、そもそも暫定的考え方についての内容そのものが問題ではないかというふうに私自身は思います。

 児童生徒等の受ける線量上限値、年間二十ミリシーベルト、そこから、一日のうちの十六時間を屋内にいて空間線量率の六〇%の値だ、それから屋外では三・八マイクロシーベルトだということで、一時間当たり三・八マイクロ。ですから、そういう値を超えなければ、年間で二十ミリシーベルトを超えることはないというふうに言っているわけですけれども、計算上確かにそのようにはなる。

 しかし、問題はこの二十ミリシーベルトの根拠なんだと思うんですよね。この根拠について、暫定的考え方についてというのは国際放射線防護委員会の刊行物百九というのを引用しておりまして、事故収束後の基準である一から二十ミリシーベルト・パー・年を適用する地域の存在を認めており、ことしの三月二十一日に同じ国際放射線防護委員会が、改めて、今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、一から二十ミリシーベルト・パー・年の範囲で考えることも可能という声明を発表したことを挙げています。

 では、なぜ、一から二十ミリシーベルト・パー・年のうちの最大値である二十ミリシーベルトという値を政府は採用したのかということになると、依然としてその根拠は示されていないというふうに思います。福島県民にも説明もされていない。私は、現地で混乱と困惑を生み出している原因の一つはこれではないかというふうに思います。

 私自身は現在五十九歳、残りの人生は恐らく二十年くらいだと思っておりますけれども、しかし、例えば十歳の子どもであれば、残りの人生は恐らく七十年以上あるということになります。そうすると、残りの人生が長ければ長いほど、その間での発がんの影響の問題、これは大きいものがあって、決して大人と同じようには扱ってはいけないと思います。また、成長期にある子どもというのは放射線感受性が大人よりも高い、これも疑いようがない。そうであるならば、子どもの被曝線量を可能な限り低くするという努力をすることが政府に求められるはずであるし、根拠不明なまま、二十ミリシーベルト毎年というのを適用するのは慎まなければいけないのではないかと思います。

 事故に伴う被曝、では、幾つが妥当ですかという質問をいつも受けるんですが、私に言わせれば、妥当な線量なんてありません。事故による被曝ですから、やはり受け入れがたいです。しかし、そういう中で生活をしなきゃいけないというところで、我慢的に何か決める、これは政府のあり方として当然だと思うんです。ですから、子どもに適用するときには、より慎重な施策というのが求められると思います。そういう慎重な施策を現在受けとめられていないですね。ですから、暫定的考え方については現地で信頼されていない。残念ながら、信頼されておりません。混乱と困惑を生み出している原因でしかない。

 二本松市の健康演説会で、県のアドバイザーを務める国立大学の医学部の教授が来て、この問題は大いに現地では関心になっていますので、いろいろと質問が出て、最後はこのように言ったそうです、国の施策に従うことは国民の義務であると。義務かもしれませんけれども、そういう発言をする前に、やはり懸念を表明した市民に対して丁寧に説明する、アドバイザーなんですからね。そういう点で、まだまだ説明不足ではないのかなというふうに思います。

 私は、五月三日に、初めて二本松市長、本宮市長、大玉村村長にお会いし、校庭の線量低減化について相談を受けました。私自身、基本的には、全体が汚染している中で校庭だけをやってどうなるかという思いがあるんです、これははっきり言いまして。しかし、校庭だけは何とかしたいという現地の住民の気持ちもよくわかるんですね。ですから、こういう場合には、私がどうというよりも現地の住民の要望が重要ですから、では、低くするためにどうしたらいいかということで一、二、三と。

 一番目が、事故直後に大気中に漏出した放射性セシウム、沃素、これは土壌表面に付着しているだけなんですね、現在は。表面部分だけです。

 それから、福島原発の漏れている箇所はふさがれてはいないです。しかし、現在はほとんど出ていない。出ているにしても、当初に比べればもう何万分の一以下と非常に少ないというわけです。

 四月初めまでに土壌の放射能濃度の最大の寄与割合を占めていた放射性沃素ですけれども、五月の初めには寄与割合が全体の放射能の中で五%に減っています。六月初めには〇・三から〇・四%にまで減る。七月の初めには〇・〇二%まで減っていくというわけです。

 それから四つ目は、放射性沃素の消滅後、放射性セシウムだけになるんですね、陸上は、これ以上の放射性物質が出なければということが前提ですけれども。そうすると、これ以上は、沃素がなくなっちゃいましたので、空間線量率はほっておいても下がらないという事態であります。

 そういう中で、空間線量率を現在よりも低減する確実な方法というのは、汚染している表層土壌をはがすことだというふうに思います。はがす工事は生徒のいない休日になされなければいけないと思います。

 六つ目は、はがした表層土壌は他の場所に移動して処分するということは難しい。他の場所も実は汚染しているから、そこに少し持っていったくらいでという気持ちは私自身にはあるんです、研究者としては。それで果たして深刻な事態が起こるのかという思いはあるけれども、しかし周辺住民の思いもわかる。そんな、自分たちは要らないからここに持ってこられても困る、これも当然の思いだと思います。ですから、学校の中で出てきたものは学校の中で処分するということで、例えば校庭の隅に穴を掘る、そこに埋める、そして穴を掘ったときに出てくるきれいな土壌を百センチかぶせれば、これはその埋めたところの地上一メートルの線量率は百分の一以下の線量率に減るはずです。

 ですから、そういうことを提案して、現在、二本松、本宮、大玉村とそういうことをやりつつあります。やった結果として、三分の一以下、五分の一以下に線量率は減っています。丁寧にやると十分の一以下までいくということもわかっていて、それは国も福島大学の附属の中学校、幼稚園で試験的にやっていますので、よく御存じのことだと思いますけれども、表面に付着しているんですから表面を取り払うことが最も確実で、線量を低減できる方法であるんだと思います。

 暫定的考え方についてというのは夏休み終了までのおおむね八月下旬までの暫定的な措置なんだと言っているわけですけれども、そうであるならば、現在もなお、三・八マイクロシーベルト毎時以下であっても屋外活動を控えて、ほとんどの学校が屋外活動をしていないんですよ。三・八マイクロを超えている学校は極めて少ないにもかかわらず、屋外活動をやっている学校はこれもまた極めて少ないです。ほとんどみんな体育館で授業をやっている。そういう状況なんですね。

 ですから、自由に校庭で遊ばせたいという気持ちを先生方は持っているわけですから、そのあたりは、そういった気持ちを酌んで、政府は九月以降の新たな施策をこの際早急に提示すべきではないかというふうに思います。

 二本松市では、校庭の表層土壌をはがすことにとどまることなく、市民の放射線被曝による健康を守るために、市民の健康調査、ホール・ボディー・カウンターによる検査を独自に行う。これに私は驚いて、私自身はそれは必要ないというふうに市長に言うつもりですけれども、やはりそこまで追い詰められているんですね、自治体の長さんは。ですから、そういった状況をよく酌み取って、安全だけじゃなくて、安心も与えて住民の信頼をかち取る、そういう施策が今必要ではないかというふうに思います。

 以上です。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣総務官室内閣総務官原勝則さん、文部科学省大臣官房審議官徳久治彦さん、文部科学省科学技術・学術政策局次長渡辺格さん、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子さん及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより参考人及び政府参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田統彦さん。

吉田(統)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの吉田統彦でございます。

 貴重なお時間ですので、早速質問に移りたいと思います。

 欧州放射線リスク委員会、ECRRというものがありまして、この科学委員長のクリス・バスビー氏は、国際原子力機関、IAEAや日本の各省庁のウエブサイトのデータを駆使しまして、トンデル法という方法とECRR独自の方法で発がんにかかわるデータを計算されまして、その中で、例えば、百キロ圏内三百三十万人の住民のうち、今後十年間で十万人以上、五十年間で二十万人以上、百キロから二百キロ圏内では、七百八十万人の住民のうち、十年間で約十二万人、そして五十年間で約二十二万人に福島原発からの放射線による影響でがんが発症するとしています。

 これは、おのおのの地域で今後五十年間で約三千人程度とする国際放射線防護委員会、先ほどから出てきておりますICRPのモデルよりはるかに高い数字です。こういうさまざまなデータが出て、国民はかなり疑心暗鬼になっています。

 また、先ほど少しお話がありましたが、チェルノブイリの件です。

 チェルノブイリのときも、実は、当初の予定よりかなり多くの小児に対して甲状腺がんが発生しています。しかも、この甲状腺がんは、私、医療人から見ると異常な甲状腺がんでありまして、乳頭がんが多かったと思うんですが、乳頭がんは本来、転移は余りしないんです。そして、予後がいいんですね。しかしながら、このとき私が調べたデータによりますと、かなりの確率で肺転移を伴う異常なタイプの甲状腺乳頭がんが出ております。これは予想をかなり上回った数字だったと私が調べたデータでも出ております。

 こういうさまざまな予測、そして予想外のチェルノブイリのときのようなデータ、こういうものを含めて、今回、超長期にわたる異常な低線量被曝を国民は経験するわけです。これに対して、放射線医学総合研究所、以下、放医研と呼ばせていただきますが、放医研の見解、そして知見はいかがでしょうか。簡潔にお願いいたします。

米倉参考人 今お尋ねの件につきまして、簡単にお話をしたいと思います。

 まず、ECRRが出しました線量の報告がございますが、これは私も昨夜、論文を確認いたしましたけれども、ここにおけるがんの発生率は、非常に過大に評価されているというふうに考えます。彼らは、セシウムの濃度に基づいて発がん率を算定するという新しいパラメーターを用いておりまして、ICRPの考え方とは違います。

 現在の段階で、チェルノブイリの経験も踏まえまして、こういったことは福島では考えにくい、考えられないだろうというふうに思います。しかしながら、国民の皆様、特に現地の方々へのフォローアップを考えますと、長期的な観察は必ず必要であるということで、まず、それぞれの方々がどれぐらいの線量を受けたのかを確認して、そして、長期にわたる観察体制をつくることは必須であるというふうに考えます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 そういうことであれば、ぜひしっかりしたフォローをしなきゃいけないんですが、今後五十年のデータというと、まさに、子どもたちに関する重要な知見ということなんです。

 今もお話に出ましたが、子どもたちの被曝線量の把握をしていくということは極めて大事になっていきます。先ほどもお話に出ましたが、全員にホール・ボディー・カウンターを施行していくわけには絶対にいかないんです、いろいろな意味で。そういう中で、例えばガラスバッジ、線量バッジによる外部被曝の把握、そして、例えば尿なんかを使うと、ある程度内部被曝の把握なんかもできるはずです。こういうものは有効であると思います。ぜひ御考慮いただきたいということ。

 そして、二十ミリシーベルトという数字に関しては百家争鳴です。私も、先ほどお話に出ましたように、こういう数字が大事じゃないと思うんです。そもそも被曝なんというのは低ければ低いほどいいわけであって、こういう数字を云々するよりも、子どもが可能な限り被曝を防いでいく方法を我々は考えていかなきゃいけない。

 それにはいろいろなアイデアがあると思います。例えば、ガンマ線を測定するベラルーシ製の時計、PM一二〇八Mなんというものもございますね。こういうものを全員に持たせればそれはいいんでしょうし、ガラスバッジ、線量バッジを持たせるのか。そして、衣類なんかを定期的にシンチレーションして、しっかり線量を把握していくのか、それとも、現在のように、モニタリングと行動様式に基づいた線量予測しかしないのか、そういうことに関して御意見を開陳いただければと思います。

米倉参考人 ただいま申しましたように、住民の受けた線量がどれぐらいかということを過去にさかのぼってまず評価をするということが第一点であります。今後につきましては、そのモデルを使いながら実測をしていくということが非常に重要です。

 そして、学校の子どもたちについては、恐らくかなり似通ったパターンをしているということから、代表的なだれかに少なくとも線量計を持っていただいて、それをフォローアップするということでかなりの部分ができると思います。

 ただ、その中で、残念なことに、外部の線量計では外部被曝しかはかれませんので、内部被曝があるかないかについては、何らかの形でサンプリングをして調べる。そのときに、ホール・ボディー・カウンターで計測することは非常な手間がかかります。そういう意味で、尿を使って尿中のセシウムをはかるというのは、スクリーニングとしては非常にいいものだというふうに思っています。

 それから、いかに線量を下げるかということは、まず、どこに高線量があるのかを、例えば学校の中で調べてみるということをどこかの学校でやれば、それに従って、多分、同じようなところに集まっているだろう。例えば、汚泥が集まるようなところは非常に高い線量が考えられます。こういうものをみんなで調べて、そして、その情報を共有することによって、それをどうして取り除くのか、そういうことにつながればというふうに考えます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、内部被曝に関しては、チェルノブイリに関しては、ミルクを経由してかなり体内に被曝したということが最終的に甲状腺がんの原因になったというエビデンスがかなりございますので、しっかりした御提言を今後もいただきたいと思います。

 そして、次の質問は、子どもだけでなく、大人、そして東電で働いている作業員に関してぜひ御提言したいことでございます。それに関して御意見をいただきたいと思います。

 DLS、ダイナミック・ライト・スキャッタリングという機械があります。これは、NASAとNIH、ナショナル・インスティテューツ・オブ・ヘルスで開発された機械で、無侵襲で目の水晶体の異常を把握することができるんです。これは、現在はNASAで宇宙飛行士の放射線に対する影響というものに関して使われています。

 これは、今回利用するに当たって非常にいいものだと思います。なぜならば、今実際、線量計とかいうもので把握しています。あと、リンパ球なんかも採血してチェックしているんですが、リンパ球が減少することは恐らくないでしょうし、線量計の場合はつけ忘れることもあります。そして、外部から何らかの遮へいをした場合、例えば防護服なんかを着た場合、非常に線量計のデータの信憑性が下がることは御存じのとおりです。

 しかしながら、目というのは、大体だれも防護していません。特に作業員なんかは必ず、子どもも、物を見ていますから、そういう中で、目の影響を見るということは、放射線を浴びると白内障になりますね。白内障というのは、現在の医学では確かに治ってしまうので、それに対しては、もし疾患になってしまった場合は手術によって治療すればいいわけですが、今回、このDLSというもので無侵襲で目の状況をはかることによって、全身への影響の一つの目安になるんです。特に、目の白内障というのは確定的影響で出るものでございますので、ほかの確率的影響、白血病を代表とする悪性腫瘍、そして甲状腺がん、そして、確定的影響だと不妊、そういうものに対する目安としてこのDLSというものを導入することは非常に有意義ではないかと思うんです。

 特に、現在、アメリカのNIHのうち、NEI、ナショナル・アイ・インスティテュートというのがあります。そのディレクターのポール・シービングが、私、少しお話しさせていただいたら、日本、外国の話ですが、予算をすぐ組んでくれると。ぜひ日本の国民、そして原発で勇気を持って闘っている作業員のために導入してほしいと申し出てくださっています。

 これに関して、ぜひ放医研でも鋭意お取り組みをいただきたいんですが、御意見をいただきたいと思います。

米倉参考人 DLSというのは、非常に新しい手法だというふうに私は考えております。NIHとNASAが共同開発したということで、これから、実際にどのような使い方がされるかといういろいろな応用の分野で広がっていくんだと思います。

 その基本的な原理を考えますと、水晶体の中におけるたんぱくの変化を見ていくということで、非常に早い段階で白内障を予測できるようなマーカーになるということで、これは多分、診断の意味でも、あるいは予防の意味でも、非常に重要だと思います。

 問題は、これが、いわゆる被曝を受けた方の線量計の目安に使えるかどうかということで、これについては、ぜひ我々も協力させていただいて、実際にはかった線量とこの値とがどのような関係にあるのかを調べる、そういうことは積極的に進めたいというふうに考えます。

吉田(統)委員 今のを少し補足させて。

 アルファクリスタリンの量とかは定量できるんですね。これは本当に無侵襲ですし、特に、もう既にNASAがかなりのデータを持っていますので、それと比較する上でも非常に有意義だと思います。しかも無侵襲ですし、機械としては確立されていますので、状況によっては本当にまだまだその改良の余地はあるのかもしれませんが、放射線による特有のタイプの白内障まで鋭敏にわかる可能性もございますので、ぜひそれは今後ともしっかり御考慮いただければと思います。

 では、次の質問に参ります。

 子どもだけではなく、大人もそうなんですけれども、急性大量被曝に対する治療ではなくて、繰り返しになりますが、今回の超長期の低線量被曝のフォローということで、今後どのような医療機関がその経過観察、疫学調査、治療を行うのか、これは極めて重要なことだと思います。

 福島がやはり一番高線量でございますので、福島県と福島県立医大がやるのか、それとも本日参考人として来てくださっている放医研がやられるのか、それともこの二つがタッグを組んで、手に手をとり合ってやるのか、しかし、そういう場合はどちらが主導権を握っていくのか、その場合、国家、政府というのはどのようにかかわり合っていくべきなのか。

 また、二〇一一年四月一日現在、放医研のスタッフを調べさせていただきましたが、定年制、任期制を合わせて四百七十八人ですね。医師二十一人、技師三十人、看護師四十七人、研究職百九十三人、ほかに非常勤三百十六人のスタッフがいると思いますが、これで対応し切れるのかどうか。

 それとも、放医研の理事長として、政府に対して、もともと福島県立医大だって各医局の医師が潤沢な大学病院ではないんです。ですので、放医研そして県立医大としては、予算、人員配置、そういった環境整備に関して、政府に関してどのような御意見というか力添えをしてほしいのか、ぜひ意見を御開陳ください。お願いします。

米倉参考人 難しい御質問をいただきました。

 まず、住民の健康調査に関しましては、これは早急に取り組まなければいけない、しかも長期にわたって観察が必要であると考えています。ただ、そのときには、必ず地元の自治体が中心となっていろいろな作業を行う必要がありますし、県との協力なしでは不可能であります。

 そういうことで、現在、福島県立医大を中心として、私ども放医研それから他の大学も含めて、新しい枠組みをつくろうということで話が進められているようですので、そこに対して私どもとしては全面的な支援をしながら、長期のフォローアップ体制を支援していきたいというふうに考えています。

 先ほどお話がありました、では、放医研のスタッフがどのようにかかわれるのか。実を申しますと、今回の緊急被曝のような事態というのは余り想定されていない。そのために、私どもとしても、ごく限られた人数しかその専門を持っていなくて、ただ、私どもは病院を持っていて、そこでがん治療を行っているということがございますので、ここを全面的にストップして、ちょうど停電もありましたので、そのスタッフたちを使いました。

 しかしながら、そういったことだけですべてが賄えるわけではありません。今後は、日本の全体の中で、それに対してどのような取り組みをするのかということを考えてネットワークを再構築するということが求められると思います。

 特に、今回現地で起こったことは、初期医療の崩壊であります。これによって、本来初期医療がやらなければいけないいろいろなことが、二次被曝医療機関である福島県立医大に非常に大きな負担がかかって、結果として、二次被曝医療機関である福島県立医大でやるべきことが放医研まで来る、そういうことが起こってしまいましたので、先ほど、最初にお話をしましたような複合的な災害に対しても想定した上でのネットワークをきちっと構築するということが求められると思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 先ほど理事長がおっしゃったように、放射線対策三次医療機関として誇りを持ってしっかりやっていただくことは大事だと思いますし、国民は実はそこまで悠長に待っていないと思います。ネットワークづくり、経過フォロー、もう直ちにやらなきゃいけないと思います。はっきり言って、さっきのDLSに関しても、今やっていった方がいいんです。特に作業員、高線量の被曝を受けそうな子どもたちに対しては、現時点、たった今すぐにでも僕はやるべきだと思います。ぜひそういうおつもりで、放医研としても、三次医療機関としていろいろお力添えもいただきたいと思います。

 次に、被災地の子どもの心のケアに関しての質問に移りたいと思います。

 今回の東日本大震災のような激甚災害では、PTSD、うつ、うつ状態、不安障害の発症が増加することはよく知られております。また、統合失調症の悪化や発症の契機になることもよくわかっております。

 こういう子どもの心のケアは、本当に長期、多分、疾患の中で一番最後に残るのは心の病気だと私は思っています。そういうフォローの方向性を考えることは重要ですが、例えば被災地のみでも、メルボルンやバーミンガムでもう既に非常に効果があることがわかっています、精神疾患に対する早期介入というものです。子どもの精神疾患の発症や増悪を減らす努力をしていくこと、検討することに十分値すると思うんですが、いかがでしょうか。

 また、例えば、手始めに学校で質問紙を配ってスクリーニングをして、何らかの兆候が見られる子どもに対しては、保健師、スクールカウンセラー、精神科医が分担して戸別訪問して、しっかりフォローするなどということを具体的に検討すべきだと私は思っています。

 また、発達障害の子どもを、こういう状況で私は非常に心配しております。特に過敏性が非常に強いですので、過敏性の問題は重要で、大人にとっても有用だと思うんですが、被災地でテントや間仕切りをしっかりして、そういった過敏性にも配慮していくこと、大分ふえてはいるんですが、今後もしっかり政府としてやっていくことが大事だと思います。

 そして、つけ加えますが、被災地は大都会ではありませんので、親が子どもの症状を隠ぺいしてしまうなんということもありますので、政府としてしっかりした配慮を相当しなければいけないと思いますが、これに関して御意見、お返事をいただきたいと思います。

徳久政府参考人 それでは、学校関係の施策につきまして答弁させていただきます。

 まず、被災地の学校におきましては、スクールカウンセラーなどを活用いたしまして、被災した児童生徒に対しまして、今御指摘のありました質問紙による調査、スクリーニングや学校活動における観察、または保護者や教員との話し合いなどを通じて、子どもの状態を把握して、特に心のケアが必要な児童生徒等の早期発見に努めるとともに、必要に応じて医療機関とか精神科医につないでいくことが重要であると考えていまして、この旨につきましては、文部科学省が平成二十二年の七月に、「子どもの心のケアのために」という学校教職員用のパンフレットをつくっておりますが、そこにおいても明示をしているところでございます。

 また、文科省では、御案内のように、スクールカウンセラーの派遣事業をやっていますが、その事業実施に当たりましても今委員御指摘のありました点は大事であると考えておりまして、文部科学省といたしましても、適切に医療機関や精神科医と連携を図るように、周知を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 時間がないので、次の質問に移らせていただきます。参考人にぜひ御意見をいただきたいんです。

 私の地元は愛知県なんですが、二百人を超える児童生徒さん、皆さん、愛知県に避難してきています。

 昔、呉秀三という方が一九一八年、「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」の中で述べた、我が国十何万人の精神病者はこの病を受けたるの不幸のほかにこの国に生まれたるの不幸を重ぬるものと言うべしという言葉は非常に有名です。これはどういう意味かといいますと、日本という国は差別という概念が他国より根強いという本質をついた非常に含蓄のある言葉です。

 特に、被災地、福島から他の地域へ疎開という形で避難した子どもたちに対してメンタルヘルスのケアは非常に重要だと思います。それに関してどういった対応をすべきとお考えか、こういう子どもたちが差別を受ける可能性について何か対策をお考えなのかどうか、ぜひ千田参考人にも御意見をちょうだいしたいと思います。

千田参考人 ありがとうございます。

 先ほど肝心なことを一つ言い忘れたんですけれども、私が子どものケアに関して一つサジェスチョンさせていただくとすれば、現在のこの非常に大変な被災の状態で、子どもたちが普通の同じスピードで学ぶというのは非常に難しいのではないかというふうに考えています。それで、一年ぐらいおくれてもいいので、学校は四月の終わりから始まっているんですけれども、被災された方たちは、ゆとりのある、少しその子たちに合ったスピードで授業を進めていくという一つの方法があるかと思います。特にPTSDに関しては、初期の対応というのが非常に大切です。

 なので、その差別のことも非常に重要だと思うんですけれども、初期の段階で介入するために、やはりできる限り早い時点で、お母様方とか親御さんに対しても、広く子どもに対しての対応というのをお伝えする、周りの方たちに対しての教育をするということが大切かと思います。

 差別の行動に関して言うと、一番問題なのは、やはり被曝とかの正しい理解がされていなくて、子どもに対して周りの方たちが反応してしまうということがあると思います。

吉田(統)委員 もう時間が来ましたので、最後の質問、ちょっと簡単にお話しします。

 今回の被災地域、そもそも医療過疎地域を大量に含んでいるわけです。特に、震災後の離職も非常に顕著です。こういったところで、そもそも精神科医の約一割しかいない児童精神科医の不足に関してどのように対処するのか。そして今、極めて外部の大きな医局、旧帝国大学、そういうところから人が大分出ています。厚生労働省の心のケアチームも出ていますが、これは六月までという枠組みと聞いております。

 そういう外部からの援助に関して、例えば補助金とかの援助をしていくおつもりがあるのかどうか、そして、根本的にやはり、医療現場を見てみると、精神保健福祉士ないしは精神科医が約五万人に一人ぐらいは要るんじゃないかと私は考えておりますが、人員の確保は可能かどうか、そういった対応を最後に簡潔にお願いいたします。

高木委員長 木倉障害保健福祉部長、簡潔にお願いいたします。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生御指摘のように、心のケアチームの巡回の形から、今後は地元の医療機関を支援していく、あるいは面的な地域の保健活動をもう一度きちんと展開できるようなことを支援していくということが非常に大事だろうというふうに思っております。

 このために、今のこのケアチームをまだ引き続き派遣していく必要があると思っておりますけれども、別途、医療機関に対してどのようなマンパワーの応援が必要か、それから地域保健活動を展開していく上でどのようなマンパワーが必要かということ。私どもも、現地に私どもの職員を派遣しましてきちんと御意見を伺わせていただいております。これに対します活動に対する予算的な面、これまでの医療の再生のための基金等もございますが、これらも活用しながら、さらに必要な手だてを加えていきたいというふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございました。

高木委員長 以上で吉田さんの質疑は終了いたしました。

 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。きょうは、三人の参考人の方には大変有意義なお話を伺い、心から感謝いたします。

 昨日も文部科学委員会で四人の参考人のお話を伺い、伺えば伺うほど、何か頭の中で整理ができないというのが私の率直な気持ちです。

 つまり、明確な放射線とがんとの因果関係というのはまだ示されていない、これがある意味では初めて。初めてだから、科学的には因果関係はないかもしれない、でも、あるかもしれない、だから調査が必要なんだよというのが今の段階ではないのかと思います。

 昨日お呼びした長崎大学の先生は、チェルノブイリにおいては、二十四万人の百ミリシーベルトを被曝した人たちに人体に影響がないとおっしゃいました。

 原子力基本法では、あれは確か一ミリシーベルトではなかったかと思います。先ほど米倉先生は、一・五であって平均は二・四ミリシーベルト、アメリカはそれよりも低く設定しているのではないかと私は思うのです。

 政府関係者は、基本的には、余り人体に影響がないから安心しなさいというような発信が多い一方で、先ほど野口参考人がおっしゃったように、説明ができていないからみんな混乱するんじゃないか。計画的避難というのは、やはり人体に影響があるから計画的避難というのをしているわけですね。だけれども、もし年間二十ミリシーベルトまで人体に影響がないならば、計画的避難というのは現状においても必要であるというふうにお考えでしょうか。あるいは、これからもしかしたら万が一大きな事故が起こるかもしれないから避難をするということなのでしょうか。

 持ち時間が少ないので、ちょっと簡潔に米倉参考人と野口参考人に伺いたいと思います。

米倉参考人 最初に少し誤解があったようなので、御説明させていただきます。

 私が一・五ミリシーベルトと言ったのは自然界から受ける放射線の量でありまして、これが世界平均では二・四ミリシーベルトという値になっています。

 さて、問題は、そういう非常にわずかな放射線を受けたときにどういう影響があるか。確かにがんの発生率が高まるかもしれない、そういうデータがございます。この発生率というのは、百ミリシーベルトで死亡率にして〇・五%程度という量でございます。十ミリシーベルトで〇・〇五%という量がふえるかもしれないということに基づいて放射線防護の体系がつくられていて、実際のところはわからないというのが事実でありまして、たかだかこの程度の量である。

 そういうことを踏まえた上で、では、どういう政策をとるのかというのは、先ほどお話をしましたように、できるだけ合理的に達成できる範囲で、できるだけ少なくする、それによって将来起こるかもしれない健康影響を避けようというのが基本的な考えだと思います。そのときにどういう施策をとるかは、これはもう政府あるいは行政の考え方であると思います。

池坊委員 私が質問申し上げましたのは、今の段階において、この現状の段階において、計画的避難は必要であるというふうにお考えですかということに対して、ちょっと一言だけお答えください。

米倉参考人 計画的避難というのをあえてあそこでやらなければいけないのかという御質問というふうに理解してよろしいかと思います。

 正直なことを言いますと、これはもう少しきめ細かにやってもいいのではないか。そして、二十ミリシーベルトというのが果たして妥当かというところに多分なってくるかと思うんですけれども、いろいろな状況を考えると、例えば高齢の人に対してはそんな必要はないのではないかという意見が出てくると思います。ここをどこまで国民の自由裁量に任せるのか、ここからは絶対だめである、そういう方策もあるかと思いますけれども、これは非常に私自身の個人的な意見です。

池坊委員 野口参考人、お願いいたします。

野口参考人 長崎大学の先生が百ミリ以下では発がんについての証拠がないと、これは何度もあちこちで言われているようですけれども、それはそうなんだと思います。証拠がないと言われればそうかもしれません。それでは、がんにならないという証拠があるのかと問えば、多分それも答えられないんだと思うんですね。

 つまり、非常に低い十ミリとか、やはりそういうあたりはわからないんですね。人間については人体実験ができませんから、残念ながら、不幸にして原爆被爆者とか事故で大量に被曝した人とかそういうデータしかないものですから、かなり高いところの線量になってしまうんですね。

 ですから、そういう低いところをどう考えるかという話ですから、放射線防護学では、やはり低いところも低いなりの確率でがんになるかもしれない、そのように考えて対処することが将来において過大という判断が出てくるかもしれないけれども、現状においてはわからないわけですから、過大と言われようが、やはりそういう対応をすることが正しいんだ、そういうことで防護体系は成り立っておりますので、その点は御理解いただきたい。

 ですから、百ミリシーベルトであれば証拠がないと言われちゃうともう要らないんですよね、実際。

池坊委員 私がお願いいたしておりますのは、計画的避難に関して、今の状況でいいと思うか思わないか、それは必要ないんじゃないか、過敏過ぎるのではないかということだけ、一言ちょっとお答えいただきたいと思います。(野口参考人「はい、わかりました」と呼ぶ)

高木委員長 野口さん、委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。

野口参考人 計画的避難区域、これは必要だったと思います。

 二十ミリでよかったかどうかという判断はあるんだと思いますが、やはりあのままあそこにとどまれば、かなりの被曝をする人たちが出るという判断のもとでそういう対策をとったわけですから、必要であると。

 二十ミリについては、私自身は、それはその時々の政府が判断することで、例えば私のような者が幾つにしろとか、そういうものではないように思います。全体状況を見て検討されて、発すべきものだと思います。

池坊委員 ありがとうございました。

 先ほど米倉参考人がおっしゃいましたように、私は、年齢によっても異なるんだと思います。八十歳の方あるいは私ぐらいの人間は、多少の放射性物質や放射線を受けましても余り関係ない、だけれども、小さな子どもたちはやはり先が長いのですから影響を受けるのではないか。そういう意味では、私はもっときめ細やかな避難に対する対応が必要なのではないかというふうには思っております。

 ちょっと心のケアについて千田参考人に伺いたいと思います。

 千田参考人は、国連難民高等弁務官としてソマリアなどの子どもたちの救済にも当たられました。先ほど、津波ごっこ、それから地震ごっこをする、これは、私、チャイルドラインというのに関係しておりまして、その関係者からも聞いたんですね。

 子どもたちが津波ごっこをすると、親たちは、そんな恐ろしいことだめなのよと言ってそれを封じる。でも、子どもたちは、もしかしたら、そうすることによって自分のストレス、PTSDにならないためにそういう方法があるいは必要なのではないかなと私は思ったりするんですけれども、子どもたちの状況を見て、その辺のことに対してはどのようにお考えですか。

千田参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、子どもたちが感情を消化する方法というのは、味わい尽くすということがあります。現在、いろいろな心理療法とかもされていますけれども、トラウマにならない一番の方法というのは、その感情を得たときに、悲しかったら悲しみ尽くす、痛かったら痛いというのをとことん感じ尽くす。一たん感じ尽くすと、それが解消されるというふうに言われています。

 なので、おっしゃるとおり、池田小とかでも、殺人ごっこがはやったという話があるんですけれども、その体験を自分で体験して、再体験して消化することによって、後のPTSDの予防になるというふうに考えられます。

池坊委員 よく、泣きたいときには泣いたらいいんだよと子どもに言う。それから、関西に起こりました大震災のときにも、頑張りましょうねと言うと、もう言ってほしくない、私は十二分に頑張っているんだから、そんな言葉は聞きたくない。確かに当事者だと、頑張りましょうなんて言われたくない、もうこれ以上言われたくないんだという気持ちは、私もよくわかるような気がいたします。

 先ほどおっしゃった、子どもたちが同じスピードで学業についていくことが必ずしも必要ではないと私は思うんですね。そうするとすごい無理がある。もう文部科学省が帰っちゃったので言えないんですが、あした委員会があるから申しますけれども、今、学業が遅くなる遅くなると、子どもたちは心に受けた痛手とともに、そうした学業がおろそかになっちゃうんじゃないかということにおいて非常な焦りをまた感じているのではないかと思うんですね。でも、公立においては落第ということ、それから、留年というのは病気以外は余り認めてはおりませんので、これも一つの問題ではないかと思いますけれども、現場に行って、親との接触、スキンシップもできていない。今、ではどういう解決法があるとお思いでしょうか。

 例えば、ソマリアなんかに行けば、本当に悲惨な子どもたち、その救済に当たっていらしたわけでしょう。でも、そこの子どもたちはまた別の意味で希望があったのではないか、別の希望を持っていたのか。今、被災地にいる子どもたちの現状を見たときに、世界のいろいろな子どもたちを見ながら、率直にどういう解決策があるのか、どういう手だてをしたらいいのかとお考えですか。

千田参考人 ありがとうございます。

 先ほどもお伝えしましたように、やはり途上国などで働いていますと、時間に対する管理が弱いということが挙げられると思います。

 実際、心理的な、今までの自分の体験からいいまして、初期の時間に早い段階で介入して、子どもたちにゆとりを与えることが、その後、十何年にわたってのPTSDを防ぎ、結果としてはその子たちの時間をずっと助けることになるというふうに私は考えます。

 なので、日本が今、非常に管理が行き届いているからこそ物がうまく進んでいく面はあるんですけれども、今回に関しては、前代未聞の災害ということで、その災害に遭われた子どもたちに関しては多目といいますか、きっちり一年間で終わらなくてもその子のペース、あるいは、特にPTSDが出た子どもたちに関しては大きな措置をとるというようなことを文科省として考えていただければと思います。

池坊委員 私もそういうような方向に持っていけたらいいなというふうに考えています。

 今、心のケアとか、スクールカウンセラー、臨床心理士そして加配というのはきめ細やかにやるようにというふうにいたしておりますけれども、やはり一人一人の子どもたちと向き合っていく、その子の持っている状況というのはみんな違うと思いますから、必ずしも学業だけにとらわれるのではなくて、細やかな配慮をして対応していけたらというふうに思います。

 米倉参考人に伺いたいんですけれども、今、校庭の、二十ミリを基準にして算定して、一時間三・八マイクロシーベルトというのがある意味ではひとり歩きしているわけですね。

 政府は、それは大丈夫だと言う。文部科学省も発表したわけです。でも、保護者にしてみれば、三・八マイクロシーベルトの中で遊ばせるのは、二でも怖いのよ、遊ばせたくないのよという気持ちだと思います。

 そういうことはすべてポリシーとバランスの感覚なんだとおっしゃった方があるんですね。つまり、だめだだめだと思うストレスの方が、ちょっとぐらい浴びるよりは、浴びても、そういうのがない方がいい。だから、そういうバランスなんだとおっしゃった方もいらっしゃいますが、米倉参考人はこの三・八をどうお考えですか。

米倉参考人 三・八マイクロシーベルト・パー・アワー、一時間当たり三・八マイクロシーベルトというのが一つの基準というふうにされたのは、事実であります。この値そのものが何から計算されたかというと、先ほど言われましたように、年間二十ミリシーベルトというところから出ているのも事実であります。

 ただ、問題は、そういう基準をどこに置くかというのは私が言うことではないんですけれども、どこかに基準を置かなければいけない。そのときの基準の置き方というのは、その人が、この子どもたちが受ける障害のリスクと、それから今度はその子どもたちを学校に行かせないということによるリスクを両方考えて行う必要があるというのが一点。

 それからもう一点は、子どもたちはその大部分を自分たちの親と一緒に今過ごしている。では、その環境と学校の環境が大きく違うのかというと、実際には余り変わらないところでやっている。そうすると、校庭の問題だけでは済まなくて、やはり、子どもたちがどの地域にいてもいいのか、ここからは危険なのかということを示す基準を出さないと、校庭だけの問題で済むのではないというふうに私は考えています。

 これは、非常に難しい問題だと思います。

池坊委員 私も、東京都の夢の島公園というのがありまして、そこで小学校一年生、三年生、五年生、六年生、中学、高校もいるんですけれども、福島から避難して、転校してきた子どもたちと会いました。その子たちもけなげに勉強しているんです。

 確かに、放射線のそういうことからは安全であるわけだけれども、また別の意味で子どもたちが本当にさまざまな問題も抱えながら頑張っているというのがとてもいじらしかったなと思いますので、これは、大人たちがもっと懸命になって力を注がなければいけない問題だと思います。

 千田参考人は、今の三・八、どうお考えですか。

千田参考人 やはり、先ほど申し上げましたように、ドイツの原子力発電所で働く方の最高基準よりも高いというレベルのところで行われるというのは非常に問題があるというふうに考えます。

池坊委員 今私たちがすべきことはわからないということが本当のところなんじゃないかと思います。だって、こういう事件が、チェルノブイリがあり、そしてフランスでもございましたけれども、先ほども申し上げたように、因果関係がわかっていないんだ。科学的な根拠がない。だけれども、ないからといって、全然存在しないわけではないというのが本当だと思うんですね。

 私たちは今、ある意味では次の世代に対しての出発点、重要な何か出発点に立っている。そういう意味で、みんなが謙虚であり、そして偏見にとらわれず、自分の知見のみにこだわるのではなくて、もっと柔軟な態勢で、個々に日々変わってきていると思います。それに対して、政府も、また国民も対応していかなければいけないのではないかと私は今考えております。

 特に政府は、例えば文部科学省だったら、三・八と言っちゃったからこれにというんじゃなくて、これはあくまでも暫定的であって、変えるということは決して恥ずかしいことでない。私は、政府もそうなんだと思います。計画的避難地域を、本当にここにいたい高齢者はいてもいいとか、いろいろな柔軟に考える必要があるし、それをまた理解する、そういうことをしっかりと説明、野口参考人、説明不足だとおっしゃいましたでしょう、説明不足であり、たくさんの情報が流れているから私たちは混乱していくのです。

 これは危ないと思う、これは大丈夫だというようなことを政府が示す必要もあるし、丁寧に説明する責任があるし、それを受けとめて国民も冷静に判断しなければならないときに今は直面しているのではないかという思いを私はしております。

 お三方の参考人の御意見をしっかりと受けとめながら、これからも政策に反映してまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

高木委員長 池坊さんの質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志さん。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、有益で大変貴重な御意見をお聞かせいただいた三人の参考人の皆さんに、私からもお礼を申し上げます。

 四月の十九日に政府と文科省が「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」というものを発表いたしました。

 ここでは、国際放射線防護委員会、ICRPが示す危機収束時の一般公衆の参考レベル、一年間に一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトという基準を採用した上で、その最高値である年間二十ミリシーベルトを校庭の利用判断の暫定的な目安にした、このことが大きな議論を呼んでまいりました。

 なぜ子どもたちに大人も含めた一般公衆の参考レベルの最大値を適用するのかといった疑問が噴出し、去る五月十二日には、日本医師会も、「この一〜二十ミリシーベルトを最大値の二十ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべき」だと指摘をしております。

 先ほど池坊先生の方から、三・八マイクロシーベルト毎時についての御見解の質問がありましたけれども、私はまず、そもそも年間二十ミリシーベルトと最大値をとったことに関するそれぞれの参考人の御見解、これは千田さんも含めてお三方、どう思われるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

米倉参考人 先ほど私の方で説明をしましたように、緊急時には二十から百ミリシーベルトというレンジが与えられていて、そしてそれが定常的に落ちついたときには一から二十。これは何を意味しているかというと、今回のように事態が刻々と変わっていくときには、当然その値はどんどん変わっていっていいものだと思います。

 そういう意味では、私としては、二十ミリシーベルトというのは苦肉の策でとられた値であろうというふうに推測しておりました。当然、それに対して、今後速やかに一ミリシーベルトに持っていくという努力が必要なんだろうということです。

千田参考人 今回、この被災において、子どもたちは一生分以上の学びというか、本当にすごい、物すごい体験をされたと思います。

 その子どもたちにこのレベルの災害の値を持ってきたというのは、さらに被災を深めることになって、実際、先ほど申し上げましたように、ドイツの原子力発電所で働いている方たちの、これは計算したら大体五倍から六倍ぐらいになるんですけれども、この値を日本がとるということに関して、私も全く理解がいきません。

野口参考人 先ほども言ったことですけれども、子どもというのは、非常に放射線感受性が高く、しかも残りの人生が非常に長いわけです。そういう点でいえば、決して大人と同じように扱って線量上限値を決めてはいけないというふうに思っています。

 そういう点で、大人を含めた公衆の参考レベルの最大のところを持ってきて一緒に扱う、これは私自身は非常に疑問に思っておりますし、子どもについてはもっと低くしなければいけないというふうに思います。

宮本委員 実は私、文部科学委員会でも、これは野口先生の御本を引用させていただいて、ICRPが定める線量限度遵守の原則というものについて触れさせていただきました。つまり、二十ミリシーベルト・パー・年、これは線量限度に当たるわけですけれども、これは、ここまで被曝してもよいという値ではなく、これ以上は絶対に被曝してはならないという上限値である、もともと許容線量という言葉を使った時代もあったが、ここまで被曝してもよいというような誤解をなくすために線量限度という言葉を使うことにしたのだと、これは野口先生の本から学んだことですから、もうこの場では野口先生にはお伺いをいたしません。

 米倉参考人、これは間違いないですね。

米倉参考人 間違いないかと言われますと、実は間違っております。

 線量限度というのは、法律上で決める、これ以上は絶対にだめだという線量でありまして、これは職業人等の被曝管理のときに用いられております。

 緊急時に関しまして、ICRPは線量参考値という言葉を使っています。この参考値というのは、そこから上が危険で、そこから下が安全だという閾値ではないということをしかも述べておりまして、一つの目安として使うということになっております。

 そういう意味では、ちょっと申しわけございませんけれども、正しいかと言われますと、最近の新しい勧告ではそこが変わっていると思います。

宮本委員 ちょっと戸惑いましたが、文科委員会では、原子力安全委員会の久住安全委員がそのとおりでございますと言下に肯定をされましたので、原子力安全委員会はそのように扱っていると私は理解をしております。

 それで、文科省の言う年間二十ミリシーベルト、毎時三・八マイクロシーベルトという基準は、専ら空間線量、つまり外部被曝の影響しか考慮されておりません。本来ならば、外部被曝と内部被曝の両方の影響を勘案しなければならない。これは、放射線医学総合研究所が「放射線被ばくに関する基礎知識 第六報」という形で東京都民の被曝線量を仮計算したものを見ても、相当丁寧に内部被曝の影響をきちっと計算して足し合わせてあるわけですね。

 しかし、今回、文科省は、子どもたちへの内部被曝の影響はせいぜい二、三%しか影響しない、こう言って完全に無視をしております。このことに関して、原子力安全委員会には放射線医学総合研究所が行った試算が示されたと聞いております。

 米倉参考人、これを無視してよいとする根拠は何ですか。

米倉参考人 私どもが出しましたデータは、こういう仮定に基づいたときにはこういう線量になりますよという計算を出させていただきました。それのみであります。最終的な決定は原子力安全委員会がしている、文部科学省がしているという状況でありまして、私どもが出したデータは、あくまで、こういう線量のもとでこういう仮定で出したときにはこういう内部被曝の線量になりますよということをお話ししております。

 ただ、内部被曝がどの程度あるかというのは、皆さん非常に御懸念のあるところなんだと思います。今回の試算では、土壌からの舞い上がり、これから吸入するものを中心にしております。そして、問題となるのは、恐らく食物が入ってくる部分、ここの部分が非常に大きな関与をするというのがチェルノブイリ事故のときの一つの教訓ではないかと思います。これに関しましては、現在いろいろな食品に関する規制がかけられているというもとでの考え方からいいますと、余り大きくないというふうに考えています。

宮本委員 五月十二日の原子力安全委員会の場でも、放医研の試算について一定の理解を示しつつも、ダストの影響は無視できない、そこはきちんとフォローが必要だという意見が出されたと聞いております。

 また、昨日、文部科学委員会の参考人質問で話を伺った伊達市長は、一つは、小学校、中学校については三・八マイクロシーベルトを上回ったところの表土を除去するということをやっているのだが、幼稚園、保育所については、幼児はそれこそ土の上に寝転んだり口に入れたりということがあるので、これは土壌の放射線量にかかわらず、すべての幼稚園、保育所の表土を除去することにした、こういう判断を示しておられました。

 これは野口参考人にお伺いするんですけれども、内部被曝の影響ですけれども、今の放射線医学研究所の見解も踏まえて、私はやはり影響を無視できないと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

野口参考人 食べ物で暫定規制値を設けて規制をしている、ですから外部被曝より超えるはずはないと私も思いまして、暫定規制値で全身で年間五ミリ、そこのところで規制値をつくっているものですから、二十ミリシーベルトという年間の中で、最大でも五ミリしかいかない。しかし、ゼロではないわけですから、少なくとも、私は、学校などについて適用するのであれば、その部分を引いた上で当然計算されて求められるべきであるというふうに思います。

宮本委員 原子力安全委員会の議論でも、決定される以前ですけれども、そして、後には個人的見解ということになってしまいましたが、ある原子力安全委員は、内部被曝の影響を考えれば半分ぐらいが妥当だろうという見解もお示しになった。

 私はやはり、線量限度というものは、超えてはならない、こういう値であり、しかも、ドイツなどに比べたらそれは非常識だというきょうの参考人の御発言もあるようなことからすれば、やはり、二十ミリという年間の値にとったということは非常に不安の原因になったというふうに思うんですね。

 だから、今、この基準が守られていないんですよ。先ほど野口参考人も少し口にされましたけれども、私、文科委員会でも明らかにいたしました。実は、現状で、毎時三・八マイクロシーベルトを上回っている学校というのは既に中学校一校になっております。今、継続的に空間線量を測定している学校が五十六校あるんですけれども、実は、その一校以外の、つまりもう既に下回っているところ、五十五校全部、これはここに資料がありますけれども、普通に屋外活動している学校は皆無、ゼロであります。

 ですから、現場では残念ながらこれは信用されていない。そして、なかなか、そういっても親御さんの理解が得られるような話になっていない、こういう声もございました。

 野口参考人は、この間、何度も現地を訪れて実際に校庭の放射線量の測定などもしてこられました。現場へ行って、この点についてどういう実感をお持ちなのか、野口先生からお答えいただけますか。

野口参考人 とにかく、文科省は校庭について五カ所で測定をしているようでありますけれども、五カ所ではなくて本当に何十カ所と、一校のグラウンドだけで、そこを歩きまして、大分、線量率、二倍三倍変わってきますので、そういう点で、一つの値で代表させるというところにやや問題があると思いました。

 それから、現場ではやはり、三・八マイクロシーベルト毎時、信用されておりません。できるだけ低くしたい、思いは同じなんですよ、保護者も先生方も。

 ですから、私は先ほど、安全だけでなくて安心も与えないといけない、これは行政の施策だと思いますので、そういう点で、安心というところで、やはりちょっと抜かりがあったように思っております。

宮本委員 おっしゃるとおりでありまして、こういうものは本当に、親であれば、自分の子どもの健康ということについてはだれもが過敏なぐらいに気にするというのは、当たり前のことだと思うんですね。

 それで、昨日、文部科学委員会の参考人質疑で、静岡がんセンター総長の山口建参考人は、内部被曝に関し、沃素131が体内で濃縮することを指摘いたしまして、沃素はかなり減衰していると思われるものの、福島市の放射線量が余り変わっていないこととあわせ調査の必要性があるというふうにおっしゃっておりました。

 それから、米倉参考人は、百ミリ以下のところでは疫学上のデータがないというふうにおっしゃいました。そのとおりだと思うんですけれども、だからこそ、データがないからこそ、今、福島で起こっているこの事態に際して、本当に子どもたち一人一人の健康調査をしっかりとやって、そして長期にわたってしっかりフォローしていくということが必要だと思うんですね。

 この点についての米倉参考人の御見解をお聞かせいただけますか。

米倉参考人 最初のところで私もお話ししましたように、こういった子どもたちの長期間の調査、これは絶対に必要であるというふうに考えています。

 そのときに、基本的には県を中心とした枠組みで動かすとしても、日本全国がそれを支えるシステムが必要になります。原爆被爆者がおられたころとは違って、現在、日本じゅうどこにでも動く時代になっていますので、ぜひ、こういう方々のデータが、日本のどこの病院に行って、どこで診断を受けてもそれが見られるような仕組み、こういう仕組みを新しくつくることによって、私たちは多分、医療システムを全く大きくつくりかえるということも可能だと思いますし、それによって、実は、きょうは全くお話をしませんでしたけれども、医療で受ける被曝というのがございます。こういったものも含めて、私たちが評価をしていくということをきちっとやるべきだというふうに私は考えています。

宮本委員 絶対に必要だというお話であります。

 これは、きょうは文部科学省に来ていただいております。子どもたちの沃素の蓄積も考慮した計画的な健康調査をできるだけ早く行うべきだというふうに私ども思っておるわけでありますけれども、文部科学省の御見解、政府内での検討の状況、御答弁いただきたいと思います。

渡辺政府参考人 地域住民の方々が受けた放射線量の実態の把握やその適切なフォローアップというのは重要であるというふうに私どもは考えているところでございます。

 先生御指摘の内部被曝について、特に注意を要する小児の甲状腺被曝に関しては、これまで、ゼロ歳から十五歳までの千八十人について、三月下旬に測定を行ってございます。その場合は、スクリーニングレベル、毎時〇・二マイクロシーベルトを超えた者はいなかったということでございます。

 現在でございますが、政府原子力災害対策本部におきまして、放射線量の推定や将来の健康管理等について検討が行われているところであります。福島県や関係市町村の御意見を踏まえつつ、調査が行われることになるものと認識しておるところでございます。

 文部科学省としても、先ほど申しましたように、子どもの健康調査は重要と認識しておりますので、今後とも、放射線医学総合研究所あるいは大学などの能力を生かしながら、協力してまいりたいと思っております。

宮本委員 やはり、一刻も早く子どもたちにとって安心、安全な状況をつくり出すということが非常に大事だと思っておりまして、その点では、現地ではグラウンドの、校庭の表土を取るという作業が始まっておりますし、野口参考人から御紹介があったように、文部科学省も、福島大学の附属幼稚園と中学校で表土を取ったり、また上下を入れかえるということによる放射線量の低下という実証実験もやって、これには効果があるということも明らかになってきております。

 ただ、私も現場でお伺いをして、これは、校庭によっては、その学校、学校において、そう一律でないという話もお伺いをいたしましたし、それから、郡山では、全部この表土をはいだはいいんですけれども、やわらかい表面の土をはぎますと、下はざらざらの土になっておりまして、このままでは子どもを表に出すわけにはいかない、放射線は下がったけれども、上にまたやわらかい表土を入れなければ危ないというような話もお伺いいたしました。

 現場でそういう相談にも乗ってこられた野口参考人に、そういった学校ごとのさまざまな対応、柔軟な対応、それから、こういうことが大事じゃなかろうかとお気づきになっている点をひとつお話しいただきたいと思っております。

野口参考人 安達地方と呼ばれる二本松、本宮、大玉、これは、二本松は一・九マイクロシーベルト毎時を超えたところははがすんだ、大玉村はもう全部の学校についてやるんだと、まちまちです。ですから、そのあたりの判断は、私などが言うことではなくて、それはやはり、そこで慎重に検討されて決定されればいいことであるというふうに思っております。

 それと、一つ感じたことは、どの会場でもこういう質問がありました。今、長ズボン、長靴で、そしてマスクをして、帽子をかぶって登校しています、これから暑い夏を迎えるのに、いつまで私たちはこういう格好をして生徒に登校させなければいけないのかという質問がありまして、私は、その対応は三月であれば間違っていなかったけれども、現段階では、放射性物質が空気中を漂っている状況ではありませんので、もう半ズボン、半そで、帽子も要らないしマスクも要らない、ただし、風が強いときについては、やはり子どもについては吸入摂取の問題があるので、そういう場合にはマスクが必要でしょう、教室の窓を閉めっ放しで今学んでいるんですけれども、それも暑ければどうぞあけてくださいと。

 空気はもう漂っていないので、三月の対策と今の対策は変えなきゃいけない、アドバイザーがいるにもかかわらず、そういう説明がきちっとされていないということで、少し驚きました。

宮本委員 ありがとうございました。

 やはり科学的で正直な政策ということが、こういう原子力災害に当たって非常に大事だと私どもは思うんですね。二十ミリシーベルト、三・八マイクロシーベルトの問題でも、私、文部科学大臣に率直に申し上げたんですけれども、僕が現場で聞いて一番ショックだったのは、現場の市町村は国が決めたことだからといって一生懸命説明してきた、理解してくれというふうに言ってきた。ところが、その国の中で、内閣官房参与が涙を流して、これは危ないんだと記者会見された日には、もう何の説明の立場もなくなったと。

 だから、私、申し上げたんだけれども、本当に仕切り直さなきゃならない、ボタンをかけ違っている、いろいろ議論はあるけれども、結局、今だれも信用しないという状況になっている。そういう点では、私は、やはりもっと早く科学的な情報をつぶさに公開すべきだったし、そして、改めて本当に内外の科学的知見を集めてしっかり信頼される対策を講じるべきであるし、そのためには、間違った場合には勇気を持って引き返す、そういう勇気も必要だということを申し上げたところであります。

 本日参考人からお伺いしたそういう貴重な御意見もしっかり踏まえて、今後ともそういう方向で頑張りたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

高木委員長 宮本さんの質疑は終了いたしました。

 次に、吉泉秀男さん。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 先生方の方から、大変御多忙の中、私たちのために御意見さらには御指導をいただく、本当に心から敬意を表させていただきたいと存じます。

 大震災が発生してからもう二カ月経過をしました。自分自身も東北出身でございますので、ほとんど被災地を回らせていただいたところでございます。

 きょうについては青少年でございますから、大変ショックでございます。お父さん、お母さん、そして保護者の方々が、今回の震災で他界をしてしまう。子どもたちが一人だけ。これを今日まで、どのぐらいの児童数がいるのか、一生懸命調べさせていただきました。そうしたところ、岩手県で五十七名、宮城県で六十七名、福島県で十八名、合計で百四十二名です。この子どもたちがこれからどう学びながら、どう暮らし、そしてこの子どもたちの未来をどういうふうに保障していくのか。政治的にも大変大きな課題だろうというふうにも思っております。

 それぞれ今、被災地の中で、避難場所で一緒に生活をしたり、いろいろな環境があるというふうに思っておりますけれども、先般、文部科学省は、岩手県のそれぞれの教育委員会なり知事の要望も受けながら、この子どもたちに対して、全寮制の小中一貫校を建設するという構想を明らかにしたわけでございます。そして、この構想をめぐって、それぞれ意見が出されております。

 そのことについて、まず千田参考人から、この構想、さらには、これだけの子どもたち、ひとりぼっちになった子どもたちに対して、どういうふうに対応していくのがいいのか、考え方、このことをまずお伺いいたします。

千田参考人 この孤児の問題、本当に大変なことだと思うんですけれども、孤児でいらしても、私たちのアメリカにいたときの虐待児童の子どもたちを保護する場合の原則としては、できる限り親族を捜してその方たちにケアしていただくということがありまして、やはり全寮制というのは、私の個人的な意見としては非常に問題があると思います。

 というのは、できる限りおじい様、おばあ様とか、あるいはいとこ、それから親戚という方たちがケアしていく場合に、一カ所に集められたりとか、そういうケアの仕方というのは非常に難しいというふうに考えられます。やはり、そういう御家族に対して極力支援をして、そして、なるべく御自分の家庭に近い環境の中で子どもたちが教育を受けていくということを保障するということは私は非常に重要と考えます。

 特に、今回のように、被災だけでも大変な状況で、かつまた全寮制という、余計に家族から切り離されたような環境の中で一貫して育てられるということは、子どもたちにとってさらなる心理的な負担になるというふうに考えられます。

吉泉委員 米倉先生の方で、三月十四日から、それぞれ電話相談なり、相当件数が多くなっているという報告があったわけですけれども、今のこれらの子どもたち、さらにはおじいちゃん、おばあちゃんなり、さらには親戚等々の方から、今の震災でひとりぼっちになった子どもたちに対する相談なり、そういうものはありませんか。

米倉参考人 私どもが受け付けているのは、実は放射線による人体への影響に対する相談窓口でありまして、震災一般の窓口ではありませんので、あえてそういうことに関する質問というのは特に来ていないというふうに考えます。

吉泉委員 ありがとうございました。

 やはり私自身も、こういう小中一緒に全寮制でこの子どもたちを対応するということについては問題がある、そういうふうに思います。しかし、だれが面倒を見ながらやっていくのか。確かに身内であれば一番いいわけですけれども、それもかなわない、こういう状況もあるというふうにも思っております。

 そして、千田先生の方からお話がありましたように、また米倉先生の方からもありましたように、やはり子どもたちが少し暴力的な行動を起こすという状況の中では、それぞれ心のケア等を含めて必要なんだろうというふうに思っておりますけれども、その面、これから私どもしっかり対応していかなきゃならないというふうに思っておりますけれども、ただ、大人の段階についてもこういう状況があるんですね。

 というのは、福島県のナンバーの車に対していたずらをする、来るなと。さらにはホテル、旅館、ここのところについても、一生懸命一時避難を受けているわけですけれども、福島の人方を受け入れているのか、受け入れているとすればキャンセルするとか、風呂には一緒に入れないとか、そういう状況が、いわゆる風評被害ということで片づけることはできない、そういうふうに私ども思っているわけですけれども、子どもだけでなくて、全体的に、日本全体が変な方向に行っている、やはりこれは大きな課題、問題でもあるというふうに思っております。

 その中で、米倉先生の方にお聞きをしたいわけでございますけれども、正しい情報、そういう情報がないから混乱する、さらにはそれぞれ変な方向に行くんだというふうなお話もあったわけでございます。しかし、自分自身思うんですけれども、それぞれ第一人者である科学者の人たちが、さらには、放射線の汚染に対する考え方、第一人者でありながら、それぞれ違う、見解が違う。この見解の差というものはどこから来るのかというふうに自分自身率直に思います。

 また、野口先生の方は、暫定の基準から、やはりきちっとした基準を出さなきゃならない、こういう言い方で、私方に指導、さらには意見を言っているわけでございますけれども、この点について、第一人者である先生方から、米倉先生、野口先生の方から、こういうふうな基準を決定したことに対して何で意見が分かれてくる、その分かれてくることがどこから来るのか、まずそのことについての考え方をお聞きしたい。

米倉参考人 お答えします。

 科学者というのは、ある科学的なエビデンスに基づいて、我々はいろいろなことを判断するというトレーニングを受けているわけであります。しかしながら、生命現象、これは非常に多様性に富んでいるために、ある人とある人の間で大きな差が存在するということがあります。そのために、先ほど来話が出ています、放射線のごくわずかな影響に対しては個人差がかなりあるということがはっきりしてきました。そういったことを踏まえて、放射線防護の体系上はかなり安全側にシフトしたような体系がつくられていて、それは、国際的には、先ほどもお話をしましたいろいろな仕組みの中で認知されている状況にあります。

 我が国においては、そういう放射線に関するいろいろな研究者が一堂に会する学会等がございますけれども、その中で、その意見を取りまとめるという作業がともすれば行われていないのかなということをちょっと懸念する点はありますが、ただ、これは、規制に関しましては、基本的には、政府の中にある、少なくとも各省庁の話と、それから原子力安全委員会が出している指針、ここの間できちっとしたものを取りまとめているということがございますので、やはり、我々国民としてはそれに従って動くんだということしかないんだと思います。

野口参考人 一つは、非常に低いところの放射線に対する発がんのデータなどがないものですから、そこをどう考えるかというところで、それぞれ違いが出てくるのかなと思います。

 それと、こういう政府の対応みたいなことになってくると、必ずしも科学の問題ではなくて、政治の問題、行政上の問題が入ってきますので、これはこれとしてやはり考え方に相違が出てくる。むしろ、そのあたりが、後ろの方の点での考え方の違いがそれぞれ大きく出て、ですから、私は、先ほども言いましたように、例えば二十ミリシーベルト毎年なんて、事故による被曝であれば、私自身は受け入れがたい。では十ミリならいいのかと聞かれれば、それも受け入れがたい、私自身は事故による被曝なんというのはそもそも全体としては受け入れがたいという考え方でおりますので。

 しかし、私は、行政はわかるんです、行政はやはり対応しなきゃいけない、そのときに何か決めなきゃいけない、これもよくわかる話ですので、そこでのいろいろな考え方の違いの結果として見解に相違が出てくるのかなと。難しい問題だとは思っております。

吉泉委員 ありがとうございました。

 しかし、今御指導いただきましたように、それぞれ科学者、またはそれぞれの専門性を追求している先生方、それぞれ見解がまた違う、そのことについては事実だと。しかし、私ども、政治的な部分のところから言わせれば、国民の命を守っていく、このことがまず第一義的な責務でもございます。

 その中で、まだ収束していない東電の第一原発、これがどういうふうにこれから進んでいくのかわからない。そしてまた、海の汚染なり、さらにはまた、水蒸気の方もまだ出している、そういう状況もございます。これはやはり国際的にも非常に関心が高い。

 そしてまた、私ども、全体的に、今お話がありましたように、それぞればらばらだというふうになるんですけれども、初めての、これからあってはならないというふうに思うんですけれども、こういう事態に二カ月なっているわけですから、それぞれ、科学者さらには第一人者の人たちが、自主的にも集まりながらも一定の見解を出すような、そういう努力はしてほしいなというふうには思うわけでございます。

 この辺、それぞれ集まって、つまり、それを集約する、そういった点については米倉先生あたりの方向にお願いしたいなというような気持ちもあるんですけれども、その辺は無理なものでしょうか。その辺、お願いします。

米倉参考人 お答えします。

 まず、実は、この参考人に呼ばれた私と野口さんとは、多分立場がかなり違うんですが、しかしながら、生物学的なバックグラウンドは非常に一致しているなということをきょう感じました。ほとんど同じバックグラウンドに入っています。だから、後は政策的にどうするかということを決めるんだと思います。

 ただ、今言われたように、科学者がみんなで集まってそういうものを議論する場をつくる、これは非常に大事なことでして、現在、日本学術会議の中にそういう分科会が存在いたします。これは震災の後、緊急に立てられたものですので、ここが中心になってそういった取りまとめをやっていくんだというふうに私は今理解しております。

吉泉委員 私たち、大変、そういう科学者、博士の方に、ぜひ今回の事故において御指導いただきたい、さらには頑張ってほしい。そういう点で、参与を科学者の中から、教授の中から入れて、そして御指導いただく。さらには、それぞれ見解を求めるという状況になったわけでございますけれども、残念ながら、一カ月足らずで退くという状況になってしまって、大変ショックな状況だと思っています。

 このことに対して、政府の対応の問題について、それぞれ状況的に聞いているわけでございますけれども、新たに質問させていただきます。

 とどめることができなかったのかどうかということについて、まずお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

原政府参考人 議員の御指摘は、小佐古参与の内閣官房参与の辞任の件であろうかと思いますが、小佐古氏に政府として慰留を行ったのかというお尋ねでございます。

 小佐古氏からの申し出を受けまして、総理秘書官室におきまして、菅総理との面会の日程調整を始めつつあったときに、小佐古氏から辞表の提出がございまして、小佐古氏の辞意の意思はかたく、慰留するような状況にはないと総理は判断されて、申し出のあったとおり辞表を受理されたものと承知をしております。

吉泉委員 それでは、改めてもう一度お伺いします。

 小佐古教授の立場の人たちを参与の方に新たに入れるという考え方はないでしょうか。

原政府参考人 小佐古氏は、内閣官房参与といいまして、総理に対して専門の立場からいろいろな御助言なり情報提供をいただくという国家公務員の非常勤の一般職という方でございまして、総理におかれましては、そのときそのときの課題に応じまして、必要に応じてそういった人材の方々に委嘱をしてお願いをするということでございますから、今後もそうした状況になれば、また対応されるのではないかと考えております。

吉泉委員 今、それぞれ、米倉先生の方からもお聞きしたわけでございますけれども、一度政府の方として方針を出しますと、例えば今の校庭の問題なんかも含めて、それを下回るというところについては非常に安心をするというふうな、そんな状況の中で、モニタリングなんかも、後、やめてしまうわけですよね。これも恐ろしいというふうに私は思うんですよ。

 今、それぞれ、科学者等、教授が集まる、ディスカッションする、そういう場所はある。しかし、それを集約し、そして、そこまでは難しいんだろうというふうに思うんですけれども、あってはならない事故でございますから、これをどう切り抜けていくのか、こういうところの中で、それぞれ、科学者も私どもも一致しながらやっていかなきゃならない。

 そのときに、この二カ月間見た場合に、やはり情報不足だとか、間違った情報だ、いろいろな形で言われているわけでございますけれども、そのところについて、きちっと一枚岩になって、今回の震災を乗り越えて、復興をかち取っていくということを自分自身は願うわけですし、努力もさせていただきたい、こう思っております。

 きょうについては、大変お忙しい中、私方のために御指導いただいた、このことに敬意を表しながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 以上で参考人及び政府参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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