衆議院

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第1号 平成18年5月11日(木曜日)

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平成十八年五月十一日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      並木 正芳君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      福井  照君    御法川信英君

      渡部  篤君    岩國 哲人君

      岡本 充功君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    神風 英男君

      仲野 博子君    松木 謙公君

      森本 哲生君    山岡 賢次君

      伊藤  渉君    菅野 哲雄君

      古川 禎久君    森山  裕君

    …………………………………

   公述人

   (精糖工業会会長)    久野 修慈君

   公述人

   (壱岐市農業協同組合代表理事組合長)       吉野 誠治君

   公述人

   (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)     林  良博君

   公述人

   (農業・作家)      山下 惣一君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案について公聴会を行います。

 この際、御出席の公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。公述人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 御意見は、久野公述人、吉野公述人、林公述人、山下公述人の順に、お一人十五分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、公述人は委員に対して質疑を行うことはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず久野公述人にお願いいたします。

久野公述人 ただいま御紹介にあずかりました精糖工業会の久野でございます。

 本日は、こういう機会を得ましたことに対しまして、委員の皆さん方に心から感謝申し上げたいと思います。

 初めに、私の方といたしましては、このたび政府が提出されました法律案については、本当に将来を見越した法律案として、賛成を申し上げたいと思います。

 そこで、私は、賛成に当たりまして、二、三の御意見を申し上げたいと思っております。

 一つは、経緯を申し上げたいと思っておりますが、砂糖業界というのは余り知られていないわけでございまして、我々砂糖業界といたしましては、台湾で砂糖の出発点があったわけであります。それから長い間、日本の甘味資源を提供してきたわけであります。

 しかしながら、その過程におきまして、砂糖業界といたしましては、多くの納税義務を果たしてきたわけであります。現実、国民の皆さん方が、本当に砂糖にこれだけの税金が入っているということは御存じではないわけでありますが、明治三十四年から砂糖消費税が課されまして、戦後におきましては、海外から入ってまいります原料糖に対して大幅な財政関税を賄ってきたわけであります。その金額は、ここの図表に書いてあるとおりでございまして、砂糖というものは今大変安いわけでございますが、それだけの国家的な役割を果たしてきた商品であるということをひとつ御理解願いたいと存じております。

 あわせて、もう一つは、今度の糖調法の改正にもありますように、現在は、沖縄、鹿児島、北海道におきましてサトウキビあるいは砂糖大根の生産をいたしておりますが、約九百億円の助成をこの両方にやっているわけでございます。しかしながら、この九百億円に対して、現在、砂糖の価格の中にその保護財源が入っているわけでございます。現在は大体一キロ三十円でございます。スーパーに行きますと百三十円でありますと、三十円は税金相当分、簡単に言いますと保護財源であります。現実には八〇%を消費者あるいはユーザーが負担し、我々メーカーがそれに対して一生懸命販売努力をしているわけであります。言うなれば、その集めた金が、沖縄、鹿児島、北海道の農産物の生産に対する責任、あるいはそういうものの生産に重要な役割をしているということをまず御理解願いたいと思います。

 二番目には、お砂糖に関しまして、約三百万トンぐらいの消費がございましたが、三十年前と比べますと百万トンぐらい減りまして、現実は二百万トンであるということであります。

 なぜ砂糖が減ったのかということでございますが、これは、砂糖は健康に悪いとかいうこともインプットされまして、全くの誤解の中で砂糖が減ってきたわけではございません。これは、日本の農業政策上、トウモロコシからつくります異性化糖、これが七十万トンから八十万トンございます。これによりまして砂糖の使用量が減ってきたわけであります。もう一つは、加糖調製品というのがございまして、お砂糖と同質でございますが、残念ながら、今の日本の国際環境の中においては、この加糖調製品という砂糖が八三%以下のものについては、砂糖に比べて非常に負担が少ない、調整金が負担されていない。したがいまして、この加糖調製品というのが四十万トン、日本に入ってきているということでございます。

 この四十万トンという加糖調製品、これは本当に経済的にも非常に不平等な制度に基づいて輸入されてきているのでありますけれども、国際的な、WTOとかいろいろな問題がございますと、そこではなかなか交渉でそういう問題を乗り切れないわけであります。この加糖調製品の問題というのは、今後これを放置いたしますと、北海道、沖縄、鹿児島におけるサトウキビの国内生産にも大きな影響を及ぼしてくるわけでありまして、この点についてはひとつ御理解を願いたいと思います。

 もう一つは、御存じのように、お砂糖が世界的に逼迫してまいっております。これは、御存じのように、サトウキビからエタノールをつくるということで、砂糖の国際相場が大変大幅に上がってきております。そういう面からいきますと、我々としては、消費者あるいは国民の皆さん方にいかに安い砂糖を供給するかということができない現状になっているということであります。

 いずれにいたしましても、このエタノールの問題は、サトウキビがエタノールをつくる一番重要な農産物でございます。このことがあらゆる面で影響してまいりますと、農産物に関する構造変化が出てくるのではないかと存じております。

 どうか、委員の皆さん方にも今申し上げた点を御理解願いまして、今度の法律案について、あらゆる問題について、今後とも前向きに対応していただくことをお願い申し上げたいと思います。

 そこで、私の方といたしましては、今まで、四十年以上、糖調法とか糖価安定制度とかありましたが、これについてはあらゆる農業の助成策があったと思います。しかし、私は、この助成策なくして日本の農業は確立できなかったのではないか、したがって、新しい時代の中で競争力をつけていかねばならない、そして、その中において農産物の需給関係がバランスがとれて、公平な仕組みの中で維持しなければならない、こう思っております。

 そういう面で、今度の法律案につきましては、将来を見据えて、あるいは担い手を養成する、あるいは日本の自給率を確保していく、あるいは農家の人たちにつきましても、生産の効率とか競争力の問題についてマーケットを理解していただく、そして全体のバランスがとれて、将来、国際的な市場競争に日本の国内生産のものもすべてが対応できるという面では、この法律改正は私は大賛成であります。そういうことで、この法律案については国民の負担も減るような形を選択されておりますから、これについては私は賛成を申し上げたいと思います。

 そこで、今後どういう問題が、砂糖に関する制度について御理解願いたいかと申しますと、一つは、北海道におけるてん菜糖、これは国際競争力からいきますと二・六倍であります。それから、沖縄、鹿児島のサトウキビについては八・四倍であります。これは、あらゆる手だてをしましても、なかなか競争力はつかないと思います。

 しかし、その中で、競争力がなくても、このサトウキビと砂糖大根の生産をやめるということは絶対やってはならないことだと私は確信をいたしております。北海道におきます砂糖大根につきましても、これは何としても輪作体制、北海道の農業生産の中においては重要なポジションにあるわけでありまして、また北海道の農業経済においては重要な役割を私は果たしていると思いますので、したがいまして、このてん菜の栽培については、あらゆる角度から御理解願いまして、そして、砂糖大根の栽培が今後とも安定的に推進されるように御理解を願いたいと思います。

 また、沖縄、鹿児島は、先ほど申し上げましたように、国際的な砂糖の価格からいきますと八・四倍であります。こんなものは国民の皆さんはなくしてしまえ、こうおっしゃるかもしれません。しかし、離島における鹿児島においては、サトウキビが唯一の生産物であります。また、沖縄においても、すぐれてそれしかないわけであります。これは、どんなに競争力がなくても残さなければならない。

 そして、沖縄と北海道の砂糖の国内生産をすることによって、日本の砂糖、甘味に関する自給率を三五%前後確保していくことは、これからの世界的な砂糖、そういう甘味に関する資源問題から考えて当然強化していくべきだし、また、それをつくっている側の人は、それに対して責任を果たして効率化していくことは当然だと私は思っております。

 どうか皆さん方、甘いものに対する理解が案外ないわけでありますが、中国の方が今とっている砂糖は一年間に九キロであります。日本人は十九キロであります。ヨーロッパ人は四十キロ。そういう状況にありますが、中国人は、コーヒーをこれから飲みますと、どんどん砂糖を使ってきます。そうしますと、砂糖の原料が世界的になくなってくるわけであります。

 かつまた、エタノールという新たな展開で、油にかわる資源、環境資源として使われてくるわけでありますから、砂糖だけではなくて、トウモロコシを含めて非常に重要な問題になってくると思っております。そういう点について、法改正を契機にして、今後とも国民の皆さん方に問題を提起していただいて、真剣に討議していただくことをお願い申し上げたいと思います。

 したがいまして、こういうような制度を維持するという中におきましては、財源の負担をどうしていくかということが重要問題だと思います。

 最初に申し上げましたように、現実段階として、九百億円の財源を、我々砂糖メーカーが八〇%、これを消費者にお願いして、市場原理が厳しい中でその徴収をいたしているわけであります。これは、国民の皆さん方がほとんどわかっていない事実であります。しかし、これを我々は責任を持ってやっていかねばならないし、その責任を履行することによって、企業としての社会的責任を果たし、日本の農業を維持し、そして国の負担を減らしていく、こういうもとになるのではないかと私は思います。

 しかしながら、この財源の負担という仕組みが、今後ともあらゆる面で公平でなければならないというのが私どもの考え方であります。どうか皆さん方におかれましても、委員の皆さんにおかれましても、その辺について、国がどう負担すべきなのか、あるいは我々消費者がどう負担すべきなのか、こういう問題を、今後の法律改正とともに、十分審議されて、全体が納得いくような運営をお願いしたいと思います。

 その面では、加糖調製品という、砂糖が八三%で残りがでん粉とかあんことか、こういうものに対して、なるべく早く均衡がとれるような、国際的な交渉の中においては大変重要問題でありますが、この加糖調製品という四十万トンのものに対して、公平な税制、公平な仕組みの確立を与野党の先生方にお願いしたいと思います。

 そのことがなければ、北海道、沖縄、鹿児島における国内の砂糖生産についても、あるいはその他の農産物についても、いろいろと私は問題が出てくるのではないかと思っております。どうかそういう点を十分御理解願いたいと思っております。

 また、その中で、先ほど私が申し上げましたエタノールの問題でございますが、この問題については先生方も十分熟知されておられると思いますが、ブラジルにおけるエタノールの生産というのは、砂糖の原料として売った方がいいのか、あるいはエタノールとして売った方がいいか、それは生産者があらゆる形から選別いたしまして生産を変えているわけであります。

 現実段階といたしまして、ブラジルにおきますエタノールの生産コストは、油の値段と比較いたしますと、大体三十ドルであります。現実、石油の値段は七十ドルから六十ドルであります。この石油の値段が四十ドル前後に下がってこない限り、エタノールの生産は、トウモロコシを含めて、今後大きな形で展開してくるのではないかと思います。そのことが、世界的な需給の逼迫を来す。

 そういう面では、このエタノール問題は、環境の問題として大変重要でございます。この問題をやはり今後とも十分御審議願いまして、また沖縄、鹿児島においてはサトウキビをつくっているわけでありますから、これを有効な形で付加価値をつける。このためには、政府あるいは皆さん方が、委員の方々が、沖縄、鹿児島においてエタノールをどうやってつくって、環境問題にサトウキビを活用していくのか、そして、沖縄、鹿児島における特殊地域の問題についてどういう形で対応していくか、これを今後とも、この法律改正とともに御審議されることを心からお願い申し上げる次第であります。

 また、砂糖については言われなき中傷がございまして、お砂糖を食べると太る、あるいはお砂糖を食べるから生活習慣病になる、あるいはそういうことが言われております。これは間違いであります。私も何年間もこれをやっておりますが、お砂糖ほど脳にすぐれたカロリーはないわけであります。

 このことは、言うなれば、これからは首から上のカロリーが大変重要であります。砂糖だけは食べてから十分間で脳に行くわけでありますから。お菓子の需要もどんどん減っております。三時のおやつにお菓子を食べる、そのことによってお母さん方と子供たちの対話が出る、そのことによって犯罪がなくなる。やはりお砂糖というものは、脳にいいとともに家庭にすばらしい製品であります。この誤解というものを解いております。

 御存じのように、砂糖については、先ほど申し上げましたように、三百万トンが二百万トンになったわけであります。糖尿病の患者につきましては、現実段階として千六百万人になっているわけであります。どうして砂糖が百万トン減っていて、何で糖尿病と因果関係があるのか、私にとっては理解できないわけでございますから、どうかひとつ、お砂糖をどんどん食べるように、先生方も教育の中でアピールしていただくことをお願いしたいと思います。

 最後に私が申し上げたいことは、私は昔、マルハ大洋漁業という会社におりまして、南氷洋に四回参りました。そして、その中で、北海道においてもそうでございますが、経済専管水域二百海里という問題が出てきたわけであります。

 その中で、日本の漁業はあらゆる外国に移管いたしまして、そこで開発する、そしてそれを日本に持ってくるという形にしたわけであります。現実、二百海里ができまして、日本の漁業は崩壊の状態にあります。これは外国資本にすべてを握られてしまったわけであります。御存じのように、カナダあるいはアラスカ海岸でとれますスケソウダラはすべてアメリカに占有されてしまったわけであります。

 そういう面では、砂糖なり国内生産をやめてしまう、やめるということはどういうことを招くのか。

 それからもう一つは、中国とかインドとか、いろいろな国で食料の生産を移管しておりますが、そのことは、中国に支配権を奪われるということは、日本の食物がなくなってしまう、高いものを買わなきゃいけない。これは、私は、二百海里の経済水域の設定の問題で痛感をしてまいりました。

 皆さん方におかれましても、この資源問題、二百海里も同じだと思います、どうかそういう点について、大局的な見地から、今後ともいろいろの面で御議論願って、日本の農産物は金をかけても残すんだ、自給率を確保するんだということで、今後とも政策を推進されることをお願いいたしまして、私の公述人としての話を終了したいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、吉野公述人にお願いいたします。

吉野公述人 おはようございます。

 私は、九州は玄海の島で、人口三万二千人、その中で四千人の組合員を抱えております組合長をしております吉野でございます。

 本日は、私も農業をしておりまして、農家の立場あるいは農業を守る組合長としての立場で意見を述べさせていただきたいというように思っております。

 まず、今回の経営所得安定対策大綱の中の「基本認識」にこのように書いてございます。ちょっと読ませていただきたいと思いますが、「この今回の政策改革は、農業従事者の減少・高齢化、耕作放棄地の増大など我が国農業・農村が危機的状況にある」というように書かれております。

 危機的にまでなっておるのかどうかわかりませんが、それに近い状況にあろうというように思っております。ただ、これは農家が好んでそうなったのではないだろうというように思っております。一生懸命頑張って農業をしておりますが、農業だけで飯が食えない、こういう状況にあり、結果として危機的な状況が生まれておる、このように認識をしております。家業である農業をできたら子供に継がせたい、継いでもらいたい、そういう気持ちで農家はおる。ひがんだとらえ方かもしれませんけれども、全責任が農家にあるというように書いてあるように感じて、少し残念に思っておるところでございます。

 さて、私の意見を少し理解していただくために、私の島の農業形態を若干おつなぎをさせていただきたいというように思っております。

 私のところは、米、畜産を主体にした典型的な土地利用型の農業を展開いたしております。まことに零細規模でありまして、水田が六十アール、畑は三十アール、繁殖牛が六頭程度の規模の農家が多数を占めております。現在、認定農業者が二百二十四名ということで、この認定農業者を中心に園芸、葉たばこ、畜産において担い手農家が育ってきておるということも事実でございます。

 ただ、大半は米、麦、大豆、和牛を複合的に組み合わせた兼業農家でございます。特に、畜産が農畜産物の販売高の六割を占めておりまして、千二百戸の農家が畜産を営んでおります。その数七千頭の繁殖母牛がおりますが、まことに零細でありまして、一頭から四頭飼いの飼育農家が千二百戸のうちの六割、七百七十戸ぐらい占めておりまして、その六割で頭数的には二七%ということで、まことに高齢化、小規模の畜産農家で成り立っておるという現状であります。

 さて、今回の品目横断的経営安定対策でございますが、対象者を全農家から担い手に絞るということが明記をしてございます。壱岐でも、現状、担い手農家は育成をされておりますし、今後もこういうことで育ってくるかもしれませんが、結果としては、多くの兼業農家の切り捨てになるというように認識をしております。地域社会の崩壊にこれがつながってくるんではないかということで、非常に心配をしておるというのが現実でございます。

 北海道を除いて、多くの農村社会は結い社会でございます。助け合いで成り立っておるというように認識をしておりまして、一戸の専業農家、担い手農家だけでは村の形成は成り立っていかないということでありますので、専業農家の周りに兼業農家が取り巻いて、そして村社会を築いていく、今後ともこういう社会が私は望ましいのではないだろうかというように認識をしております。

 今回、担い手農家が四ヘクタールという面積要件が出ておりますけれども、兼業農家の土地を集めないと四ヘクタールの担い手農家は育成できないということになりますと、非常に問題点が出てくるのではなかろうかというように思っております。

 我が長崎県は離島を多く抱えておりまして、その中で壱岐は土地条件は非常に恵まれておるというようには認識をしておりますが、それでも中山間、棚田、まだ未整備地区の水田、畑等もございまして、非常に土地が荒れていっておるというのが現実でございます。農協もできるだけ土地を荒らさないという観点から、担い手農家等に土地のあっせんをしておりますが、条件のいいところは借り手がございますが、条件が悪いところは借り手がないというのが現実の問題でございます。

 そういう中で、農協も、地域の農業を何とかしなければいけないということで、いろいろの取り組みを行っておりますが、二、三紹介をさせていただきたいというように思っております。

 私の農協では、農地保有合理化事業をやっております。それから、農協有のリース牛舎、リースハウス事業をやっております。それから、農協単独で農家に月十五万円の支援をして一年間研修をさせる新規就農支援事業というのを行っております。それから、農作業ヘルパー事業、これは百名ぐらい農家を登録して、担い手農家に労働力の不足したときにあっせんする事業をやっておりまして、これは非常に効果が上がっておるというように思っております。さらに、借り手のない農地をどうするのか、あるいは雇用の創設をどうするのか。壱岐も離島振興法でかなり公共事業がございましたが、かなり減っておりまして、働く場がなくなってきております。その余った労力をどう有効に使うのかというようなことで、二年前に農協の一〇〇%出資で農業生産法人アグリランドいきというのを立ち上げて、農業経営に農協みずからも取り組んでおります。

 これらの事業は、やはり担い手の育成を主体に置いて、先ほど言いました兼業農家もともに成り立っていける地域社会がないかということで現在取り組みをしておるところでございます。

 次に、食料自給率の向上について、一点述べさせていただきたいというように思っております。

 昨年十一月に、長崎県の後援を受けて、JAグループ、NHK、長崎新聞社合同でながさき実りの感謝祭というものを開催いたしました。その中で消費者の方々にアンケート調査をしたわけですが、日本の食料自給率は現在四〇%でありますが、これについてどう思いますかという設問をいたしました。七六%の人が高める必要があるという御回答をいただいております。では、何%ぐらいに高めた方がいいのかという問いには、わからないと答えた人が五五%でした。そして、実際に、数字的には六〇%という答えが一七%で一番多うございました。次に、七〇%、八〇%がそれぞれ一〇%、自給率五〇%と答えた人が六%という結果で、意外と消費者の方は、自給率を高い数字を求めてあるんだなということを認識いたしました。

 私は、一気にはならないと思いますが、今の四〇%を、当面目標として五〇%はやはり確保すべきじゃないだろうかというように思っておりまして、今回の施策は価格補償の恩恵を受けない兼業農家等の経営縮小あるいは離農につながる危険性が非常にあるということで、結果的には、自給率は四〇%を超えるどころか低下する危険性があるんではなかろうかというように認識をいたしております。

 特に今回は、担い手が規模を拡大するとか、あるいは新規に農業をやろうとか、そういう過去に実績を持たない方々の補償がないということでございますので、今後、やはりこれらについて何らかの対策を講じていく必要があるのじゃないだろうかというように思っております。ぜひ自給率が上がるように別途対策を講じていただきたい、このように思っております。

 全国農業会議所が発行しております全国農業新聞というものがございます。去年末だったと思いますが、ここに新聞を持っておりますが、G10の盟友、「スイス農業のいま」ということで、直接所得補償制度の内容が四回にわたって連載をされました。私も非常に興味がありましたので、そのことは記憶にありますが、ちょっと内容を説明させていただきたいというように思っております。

 スイスの直接支払いの歴史は五十年の歴史があるというように書いてありました。これは、面積に応じて支払われる一般型プラス条件不利地域加算プラス環境配慮加算、この三つの要件があるそうで、一例として、標高千五百メーターの山岳で十二頭の乳牛を飼育するクーネン牧場が年間に国から受ける金額が五百三十万円ということを明記してありました。十二頭で五百三十万円、日本ではちょっと考えにくいような直接支払いがされておるということが書いてありました。スイス国内の農家が年間に受けるこの補助が、平均、平地部で三百八十万円、山間部で五百五十万円ということで書いてありました。スイス国民の一人当たり所得の四百十万円から比較して、農業者がいかに国民の同意を得て所得補償を国から受けておるかという事例が出ておりました。私もスイスは山ばかりという印象がありますけれども、この山ばかりのスイスで自給率が五五%になっておるということは、この所得補償制度のたまものかなというように理解をしておるところであります。

 アメリカでもEU諸国でも、農家所得の約五〇%を所得直接補償かあるいは助成金で賄われておるというように聞いておりまして、平成十六年度の米の所得で三万四千六百二十九円と出ております。小麦で一万五千八百二十二円ということになっておりますが、四町歩に米、麦を全部二毛作したときに、所得は二百万円にしかなりません。これでは農家は生活できないわけでありまして、土地利用型の米、麦で生活をするということになれば、少なくとも十町歩の面積は確保せねばいかぬ、こういう実態が出てくるというように認識をしております。

 おいしいお米がお茶わん一杯五十円という米の値段は、私は安いというように思っておりまして、米を初め、麦、大豆の価格は安過ぎるんじゃないかというように認識をしております。農業の持つ多面的機能を評価していただいて、もう少し、農家が安心して、そして農業が続けられる今回の所得安定対策にしていただきたい、こういうことを思っておるところであります。

 それと、集落営農について若干触れさせていただきたいと思います。

 今回は、認定農業者あるいは特定農業団体ということで明記をしてございます。今私のところでも、できるだけこの認定農業者なり特定農業団体でやっていこうということで進めてはおりますが、何せ小さい面積でございますので、認定農業者を集落から外しますと、残った農家だけでは二十町歩の面積の確保は到底難しいという状況でございます。したがいまして、幾つかの集落を合わせて二十町歩に持っていくという方法がございますけれども、余り多くなりますと、やはりまとまりにくくなるということもありますし、あるいはまとめるために認定農業者に貸しておる土地を戻してもらう、要するに貸しはがしという問題が現実に出てくるんじゃないだろうかな、このように考えておりまして、仮にできたとしても、今言いました貸しはがし等の問題が出てきて、非常に難しいなというように思っております。

 したがいまして、私のところは、認定農業者を含めて営農集落、特定農業団体をつくろうということで今進んでおりまして、既に四団体できておりまして、今後二十ぐらい、今年度中につくっていこうかということで進めておるという状況でございます。そういうことを申し上げておきたいというように思っております。

 ただ、先ほど言いますように、新たな面積の増加が認められておりませんので、私のところは、今、麦と大豆が今回の品目に該当すると思いますが、麦で七割、大豆で四割ぐらいしか恩恵を受けないというように推計をしております。したがいまして、今の面積から減りますので自給率は低下する方向に行くんじゃないか、このような心配をしておるというところでございます。

 最後に、食の安全の面で少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 農業の本来的な役割は、安心、安全な農産物の消費者への供給ということにあるというように思っております。国民の食の安心、安全への関心は年々高まっておりまして、私たち農業者もそれにこたえる義務と責任があるというように認識をいたしております。

 五月二十九日から、いよいよポジティブリスト制度がスタートいたします。現在、壱岐においては、米で約六〇%、麦で八割、大豆の七〇%を無人防除ヘリで防除いたしておりますが、これが今後できなくなるだろうというように認識をしております。つい先般の農業新聞でも、ある地域ではことしから無人防除ヘリを中止したということが載っておりましたけれども、せっかく高齢者も含めて防除体系が確立できておりますけれども、これができないというのが現実問題となってきたときには、かなり現場としては問題があるな、そしてコスト増につながる危険性があるというように認識をしております。

 また、BSEの問題に若干触れさせてもらいたいと思いますが、全頭検査について、さきのアンケートでも、八三%の人が継続すべきというように答えてあります。まさかと思っておりました和牛のBSE患畜が、実は、残念ながら私の壱岐で三月の十七日に確認をされました。非常に多くの皆さんに御迷惑をおかけいたしましたけれども、何とか全国の皆さんの支援で乗り切ることができました。

 この中で、多くの消費者あるいはいろいろな皆さん方からこういう意見をお聞かせいただきました。日本の和牛は全頭検査が徹底されているので心配することはないよ、安心して牛肉を食べるから頑張りなさい、こういう多くの激励をいただきました。結果として、過去最高の一頭当たり五十五万という、過去にない価格を記録させていただきました。

 そういうことを踏まえて、BSE全頭検査は国の責任においてどうぞ今後とも継続をしていってほしいし、アメリカに対しても毅然とした態度で輸入交渉に当たってもらいたいということをお願いしておきたいというように思っております。

 壱岐は農業、漁業という島でございますが、そのほかに、実はもう二つほど産業がございます。それは観光産業でございます。約百億ございます。それと、最近しょうちゅうブームで、しょうちゅうが三十億という産業まで発展をしてまいりました。大分県の前の平松知事だったというように認識をしておりますが、山は海の恋人であるという表現をされました。農家が田や畑や山を守ることが海を守ることにつながり、美しい海の幸、山の幸を求めて観光客が壱岐に来ていただいておるんだろうというように思っております。したがいまして、やはり我々は、野山を守り、海を守る義務があるだろうというように認識をしております。そういう意味で、農業を今後とも大切に守っていかなければいけない責任があるだろうというように思っております。

 先ほど言いましたように、壱岐は麦しょうちゅうの発祥の地として認定をいただき、かなり消費が伸びてきております。したがいまして、地産地消という意味で、地元のしょうちゅうメーカーと契約をして、原料大麦を地元で生産しようということで今取り組みをしておりますが、残念ながら、需要量の約一割しかまだ生産ができておりません。これを将来的には一〇〇%地元で生産しようということで今進んでおりますけれども、今回の要件では、新たな面積については品目横断的な恩恵がない、つくっても採算が合わないということになれば、これ以上の拡大はできないということになりますので、何とか、やはり一〇〇%を地元で供給できる施策の拡充なり、あるいはこれにかわる施策をぜひ講じていただきたいなというように思っております。

 今、田植えの真っ最中でございますけれども、麦の穂が風に揺れてなびいておる風景は、何とも言えない、心がいやされる気持ちでございます。そういう意味で、今後ともそれぞれの地域で心豊かに農業が続けられますように、今回の施策がぜひ農家にとって有意義なものになりますようにお願いをいたしまして、私の意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、林公述人にお願いいたします。

林公述人 おはようございます。

 本日、このような委員会におきまして公述させていただく機会をいただきましたことを、稲葉委員長初めとします委員の先生方に心より御礼申し上げます。

 私は、今回問題になっております法律の中で、実は、砂糖につきましては、農林水産省の中に設けられました砂糖及びでん粉に関する検討会の座長をやっておりましたけれども、これは先ほど久野公述人が述べられましたので、私がきょうお話しすることは、むしろそれ以外の、担い手に対する経営安定等について意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、このような法律を御審議いただきますことは大変ありがたいことでございまして、過去三十年で六百万人という人たちが人口非密集地帯、つまり農村でありますけれども、そこから消失してしまったという現実、あるいは、先生方よく御存じのように、耕作放棄地がすごい勢いで増加している、あるいは、地球十周分に当たる四十万キロの農業用水、これは疎水と呼ばれまして、生活用水にもなっておりますけれども、我が国だけで地球十周分の四十万キロを維持してまいりましたが、この保守管理が崩壊寸前までに疲弊している、そういった農村の現実を見ますと、これを活性していただくために大変重要で、かつ緊急を要する案件というふうに考えております。

 ここで御審議されております法律についての私の意見を申し上げますが、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案等は、昨年十月に政府・与党が取りまとめられた新たな経営所得安定対策等大綱に基づくものでありますし、この大綱そのものは、平成十一年に制定された食料・農業・農村基本法、これに基づいて立てられた昨年三月の基本計画、ここには品目横断的経営安定対策というものがございますが、これの延長線上にあるというふうに考えておりますので、きのうきょう考えられた話ではない。ただ、私から見ますと、もう少し速いスピードでやっていただけないものか。この農村の現状を見ますと、いろいろ心配されていることはわかります。私もここできょう申し上げますが、そういった問題はありますが、早く手を打たないとこの現状を一日も早く救うことができないという意味で、ぜひとも早い御審議をお願い申し上げたいと思います。

 まず、この法律は、これまで全農家を対象としてきた、品目ごとの価格に着目して講じてきた対策でありますけれども、これを担い手に対象を絞って経営全体に着目した対策に転換する、これが恐らく一番御審議されている中心的な課題ではないか、こういうふうに転換することによって、残念ながらこれまで減少してきた農業の担い手、これを育成そして確保するということを御審議されているんだというふうに私は理解しております。

 また、ここで、担い手ということにつきましては、既にある程度の安定的な農業経営を達成しておられる農業者だけでなくて、それを目指して努力している農業者、これは後でお話しいたしますが、また先ほど吉野公述人からもお話がありました、集落営農という形できめ細かく配慮していこうということだろうと私は理解していますが、こういう二種類の農業者あるいは農業団体を重点的に支援することによって足腰の強い日本農業を構築しようと御審議されていると理解しております。

 問題は、先ほどからも申し上げていますように、農業者を担い手と非担い手、こういう言い方が正しいかどうかわかりませんが、こういう形に差異化する、区別するということが適当かどうか、その前者を支援することによって本当に足腰の強い農業を構築することができるかということでありますが、私は、結論から先に申し上げますと、現時点でそれ以外の方法は考えられない。

 これをどうやって細かい施策で生かしていかれるかということは今後の問題でありますが、農業に限らず多くの生産活動といいますのは、中核的な生産者とそれを穏やかに取り巻く非中核的な生産者の重層構造によって成り立っているのが普通でございます。それぞれの生産活動を守り、発展させるための新しい技術革新、新しい経営形態、いろいろな新しい動きにつきましては、主として余裕のある中核的な生産者によって開発普及され、それを取り巻く非中核的生産者というのは、多くの場合、その受益者になることが多いということがございます。

 したがって、足腰の強い農業を構築しようとするならば、まず、農業の中核的な推進者である二つの、認定農業者と、それから小さいけれども一緒になって頑張っていこうという集落営農、こういった二種類の担い手を特定して、彼らを重点的に支援することが必要であるというふうに考えております。こうした支援によって生ずる利益といいますか、恩恵は、中核的な生産者だけではなくて、非中核的生産者、ひいては消費者に還元される、国民全体の利益につながるというふうに考えております。

 ただ、これは、後からも申し上げますが、非常に注意深い、きめ細やかな施策が必要とされることであるというふうに思います。特に、この法律案で指定されています、既に効率的で安定的な農業経営を達成している農業者につきましては私は頑張ってもらえるというふうに考えておりますけれども、非常に小規模な農業者が集落営農として法人化される、これがうまくいくかどうかということであります。

 これがもしうまくいけば、もしというか、必ずうまくいくことを願っておりますけれども、これが達成できれば、私は、日本はやはりアメリカ、オーストラリアのような国とは違う、例えば、農村に行って地平線が見える、そしてそこに本当に農家があるかないかわからない程度の農家しかない、こういう農業、農村の景観では日本はないと思うんですね。中核的な農業者というのは既にある程度の力を持ってやっておられると同時に、集落営農の形で営む、そういう人たちがいないと日本の農業の景観というのは達成できないというふうに考えています。景観だけではなくて農業そのものが、日本の場合、地理的な条件からそういうふうな形が歴史的にも達成されてきましたし、今後とも、もちろん変化はありますが、やはり基本はそれになるんじゃないか。

 この人たち両者が、二種類の農業者、農業団体が担い手として確保され、それによってまず農業の担い手確保が達成されると同時に、品目横断的な経営安定対策の支援を受けて生産活動を向上させる。これは、げたを履かせる、あるいは、ならすというふうな表現でわかりやすく呼ばれているものでありますけれども、これができるならば、例えば、特に集落営農組織が中心となって、水路の江ざらいあるいは施設の点検整備など、現在深刻化しているそういう問題、農業用水等の保守管理が可能となるんではないかというふうに考えております。

 特にこの品目横断的経営安定対策は、日本とは生産条件が異なる海外から安い農産物が無秩序に流入する、これは当然のことながら農業の担い手を育成、確保する上で大きな阻害要因になるという認識を持って論議をされているというふうに私は理解しています。そのために、諸外国との生産条件格差を是正する、また、農業者の努力ではいかんともしがたい、例えば天候等の要因、どうしても土地利用型農業というのは自然要因に大きく左右されるところがございますので、そういうことによって生じる収入の変動等、これを緩和するためにいろいろなきめ細やかなことを考えておられるというふうに理解しています。それによって、農業所得依存度が高い担い手が困窮するような事態を招かないよう、これをぜひとも配慮いただきたいというふうに思います。

 こういうふうな施策を今考えておられるということは、私にとりましては非常に歓迎されるべきことであります。スポーツにいたしましても、それから私ども大学でやっております入学試験にいたしましても、公平さが要求される事柄というのはすべて、競争条件を整えることによってのみ公平な競争が担保される、これはもう当然のことであります。WTOなど農業に関する国際会議において、我が国が先頭に立って、真の公平さとは何かを訴えることは極めて重要であります。私の友人でありますレスター・ブラウン氏は、食料自給率の低さから日本が防衛的な意味で、安全保障の意味で食料自給率を高める責任がある、私がもし農林水産大臣だったら、そう国際会議で言うということを彼は言っておられますけれども、これについてはまさにそのとおりだというふうに思います。

 しかしながら、そうはいえ、我が国を取り巻く国際的な環境は、決して直ちに解決できるというような状況にはございませんので、同時に、日本農業の担い手たちが国際的な場である程度の競争を行える条件を整えるために、彼らに適切で効果的な具体的支援をすぐさま行うということは必要でありますし、またそのために、品目横断的経営安定対策が有効な役割を発揮することを心から期待しております。

 先ほどからも繰り返し申し上げていますように、既に安定的な農業経営を達成している農業者だけでなくて、小規模で、しかし一つの集落営農という形でやっていこうという人たち、この人たちをどうやって本当に全国津々浦々まで組織できるのか。

 お聞きしておりますところによりますと、こういったことについて予備的なお話を、農林水産省として各地で展開されているということを聞いています。もう六千回の会議を地方でやっていると。この六千回の説明というのは大変な実績ではありますけれども、それで本当に皆さんがわかったのかどうか、これはやはり検証の要があるというふうに思います。説明したということと理解したということとは違うこともありますので、これがスタートするときには、もっと多くの人たちがこの集落営農のやり方について理解し、それに心から喜んで入ってくれるというような仕組みをぜひとも打ち立てていただきたいというふうに思います。

 そうすることが、これ以上の耕作放棄地が発生することを防止し、またその解消を目指すことになりますし、また、崩壊寸前の農地あるいは農業用水等の保守管理を速やかに健全化することができる、そういうふうに考えておりますので、どうか、慎重な御審議の上、一日も早く法律を成立させていただきたくお願い申し上げるものでございます。

 また、今回の法律に先立って、昨年になりますでしょうか、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律改正が行われ、そこで、従来の農業者だけではなくて、新規参入者を積極的に視野に入れた活動を現在展開されておられるわけですが、私の手元に、ことしの三月十六日、農林水産省の経営局がプレスリリースしたものがございますけれども、幸いなことに、百五十六法人が今参入してきている。このほか、五十の法人が市町村に対して具体的に参入希望を表明している。合わせますと二百を超えるわけですが、やはりこれは、何としても短期間のうちに五百を超える程度までにやっていただきたい。

 五百を超えるというのは非常に重要であります。五百というのは、各都道府県に大体十個あるということで、お祭りなんかも、各都道府県に十個、全国で五百ありますと、結構にぎやかな形になりますので、二百にとどまらず五百程度をぜひとも目指していただきたい。

 ここで見ますと、現在、百五十六の参入法人のうち、建設業が五十七。これは、恐らく新しい参入者は非常に大きなところで農業をじゅうりんするような形で入ってくるんじゃないかと、その参入を危険視されていた方も国民の中には多くおられたといふうに思います。私も危惧していた者の一人でありますけれども。聞きますと、この五十七の建設業は、地域に根差したような建設業で、なおかつ、先ほどからもお話がありますように、なかなか農業だけでは食べていけないというところがありますので、建設業と農業とを兼ねながらやっているというようなところが多い。それから食品会社、これも地域に根差した食品会社ですが、これが四十一、その他五十八ということで、スタートしてまだ一年になりませんが、非常に順調に、特に大きな問題を起こしているところは一件もないということですので、こういうことがもっともっと速やかに全国展開されることを願っております。

 最後に、食料自給率のことについて少し申し上げたいと思いますが、エネルギーベースで四〇%、これを何としても一%でも二%でも着実に上げていく努力をするための細かい施策を今後とも継続して行われるよう、心からお願いを申し上げる次第です。

 それと同時に、エネルギーベースだけではなくて、私は、価格ベースの自給率というのも今ここでもう少し、余りこれまでそれを言うことははばかられるような雰囲気がございましたが、もっと価格ベースの自給率というものに注目してもいいのではないか。

 つまり、農業者が食べられるということは価格が高くなければ食べていけないわけで、幸いなことに、日本の価格ベースの自給率は七〇%ぐらいだと思います。これを八〇%、九〇%になるくらいまで、日本の農産物は安心、安全でとてもおいしいんだということになって、消費者がそれを高くても買うというようなこと。

 つい先日、私は雑談で、コーセーという化粧品会社の会長の小林さんという方とお話ししていたんですが、最近は農業もちょっと化粧品に似てきたところがあって、好ましいと思っていると。化粧品というのは、百円化粧品から一万円化粧品まで百倍の価格差がある。材料的に見ますと、私は科学者ですから言いますけれども、それほど材料は違わないだろう。もちろんいろいろ細かいところは工夫されていると思いますけれども、基本は水とグリセリンであります。それが百円から一万円の差がある。

 では、農業生産物の場合どういうものがあるか。一番高いのは、高級な飲み屋になりますと、一合四千円ぐらいで売っているお酒、それから、一合四百円ぐらいで飲めるもの、十倍ぐらいの価格差をお酒の場合は達成しておりますけれども、お米で十倍とか、ましてや百倍というのはないわけで、しかし、あっても私はおかしくはないと思う。そのくらい各地域の農産物がこれからもっともっとブランド化して、なぜ化粧品は一万円で買うのか。これはやはり信頼だと思うんです。生産者が信頼されたら、消費者は買う。

 ただ、私は、全部こういったらいいと申し上げているわけではなくて、やはり基本はエネルギーベース。基本は安くて優秀な農産品を提供するのが農業者の務めであり、また、それを政策として生かされるのは農林水産省を初めとする省庁であり、そのための法律を立法化されるのは国会でございますが、しかし、それと同時に、質ということに対してこれほど国民が注目した時代はありませんので、そのことも、一%でも二%でも高めるために、先生方の今後ともの御尽力をお願い申し上げて、私の公述を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、山下公述人にお願いいたします。

山下公述人 山下でございます。

 私は、農業の構造改革の方向がこれでいいのかどうかということに疑問を持っている立場から、その一点について意見を申し上げたいと思っています。

 自己紹介しますと、私は、佐賀県の唐津といいまして、一番北の、町の端っこの方で百姓をやっていまして、二番目に意見を言われました吉野さんの壱岐の島とは目と鼻の先でありまして、大地の上から壱岐の島を眺めながら農業をやっています。

 ちょうど今田植えの時期で、棚田が八割なものですから、ため池の水を落としまして、ずっと四十ヘクタールぐらいやっていくんですけれども、あしたぐらいまで田植えがかかります。うちは水のかかりのいいところに田んぼがあるものですから四日と五日で終わったんですが、川に軽トラックを落としている人がいまして、それを揚げる手伝いをしていたらぎっくり腰を起こしまして、まだ引きずって姿勢が悪いのでお許し願いたいと思います。

 私の方は、今回の品目横断的経営安定対策は関係ありません、今のところ。今のところ関係ないというのは、将来これが米に入ってくるということになると、これはもう、それこそてんやわんやの大騒ぎになると思うんですが、関係がないのは、麦も大豆もつくっている人がいないからです。ほとんど知りません。こういう法律ができていることすら知らない実態であります。農協も動かないので、どうしているんだろうと思って農協の営農企画担当に事情を聞きましたらば、こういう形になっているんです。

 私たちの農業は、ことしの四月に県北の四つの農協が合併しまして、正組合員が七千二百、農業の取扱高が二百七十五億で、これは県下で一番多いんだそうです。そのほかに、農協が取り扱わないもので葉たばこが百五十名で約二十億、それから直売所が十六ありまして、これもそれくらい。それから、生協と取引している人もいるし、商系の畜産もありますから、かなり農業の盛んなところだと言われているんです。

 その実態、その構造はどういうことになっているかといいますと、田んぼが四千ヘクタールで、畑、果樹園で二千五百ですから、これを七千二百で単純に割りますと、一戸平均田んぼが五反五畝、畑が三反五畝、九反であります。そういうのをそういう人たちが支えているわけなんですね。だから、本当にみんなが担い手という感じでありまして、この農業を例えば半分の三千五百の組合員で支えられるかというと、支えられません。まして三割の担い手でこれをやれるかというと、全然やれないわけですね。では、四ヘクタール以上の耕作をしている人が何人いるかと農協に聞きましたら、五、六人いるみたいだと。面積の大きさには、ほとんどだれも興味も関心もないというところで農業をやっているわけです。そういう立場から申し上げます。

 つまり、今度の品目横断的経営安定対策をてこにして、農業構造、特に都府県の稲作の生産構造を変えていこうとされているわけですけれども、その農業の構造改革のゴールはどこだということですね。

 これは、いただいた資料の「法案の概要と論点」というものの二百三十七ページから始まっている項目で、農業構造改革の加速化、急いでやらなきゃならぬということが書いてあるわけですね。大事なところですから、私、読ませてもらいますけれども、二百三十八ページにこういうふうに書いてあります。

 「「構造調整」とは、生産性の低い分野から、生産性の高い分野に資源(資金、労働力等)を移転させることを意味する。これを、農業分野に当てはめれれば、兼業農家・副業的農家の農地等を、日本農業を担うべき農業者・農外からの参入企業に移転し、後者を農業労働力の雇用の受け皿とするというビジョンが描かれることとなると考えられる。」

 これが今から進めていこうという農業のゴール、到達点なわけですけれども、果たしてこれでいいのか。日本の風土あるいは地形、コミュニティー、すべてから判断して、この方向でいいんだろうか、これ以外に方向はないんだろうかということを考えるわけです。私は、この方向ではだめだと思っています。この農政担当者もそれを感じているわけで、こういうふうに書いてあるわけですね。「「農業の構造改革」がなぜ必要なのか、十分な議論が求められるところである。」もっともっと議論してくれと言っているわけです。これでいいとは書いていないわけですね。

 今回の品目横断的経営対策の法目的の規定はどうなっているかというと、こういうふうに書いてあるんです。「農業構造を構成する個々の担い手に着目し、その農業経営の安定を図ることとしているものであり、必ずしも農業構造全体のあり方について言及したものではないと考えられる。」と書いてあります。かなり腰が引けているといいますか、何か、うまくいかなかった場合の逃げを打っているんじゃないかと私は思うんですけれども、かなり自信がないんですよね。

 私は、自分の認識としてですけれども、日本農業と普通いいますけれども、日本農業という実態はない、どこのことを日本農業というんですかといつも言うんです。だから全国に、日本の農業というのはさまざまありますけれども、それが数字として、トータルとして積み上がってきたものを日本農業と称しているわけであって、そこを論じるから実態と合わなくなっていくんじゃないかというふうに私は思っております。

 それから二つ目に、村の中で暮らしている者たちを普通百姓と言います。御存じのように、日本では百姓という言葉は差別用語ではありませんけれども、それに類する言葉だとして使ってはいけないことになっていますが、村の中では皆さん百姓と言っていまして、私もそう思っています。結局、これを専業農家である、兼業農家であるとか、最近は担い手とかというのは、これは行政がつけた背番号であって、村の人たちとは関係ないことなんですよね。だから、村の中で、村の人同士が区別をするとか、差別をするとかというようなことはほとんど不可能に近いというふうに私は考えています。

 それから農業の形態が北と南では非常に違う。つまり、一言で言えば、北の方では何をつくっても一年に一作しかとれないんです。だから面積を大きくしてどかっとやるしかない。そういう農業しかできないんですね。南の方はそうじゃないんです。

 私は、北海道から視察の人が来ると、必ず長崎県の島原の、畳を積み重ねたような畑でジャガイモをつくっているところがありますけれども、そこを見に行くように勧めます。長崎県の島原半島では一枚の畑で三回ジャガイモをつくるんです。南串山という非常に農業の盛んなところがあるんですけれども、今、雲仙市になったと思います。南串山に講演に行きまして若い連中と話していたら、一反歩の畑では面積が広過ぎるというんですね。三畝がちょうどいいと。三畝というのは三アールです。九十坪です。その理由は何かといいますと、それくらい狭いと石垣に当たった太陽の熱で地温が高まってジャガイモが早くできる、だから三回とれるんだと。これくらい違うわけなんです。どうも、何か、農林省の農業の考え方は北方型の考え方で、南の方のことを考えていないんじゃないかというふうに思っているわけですね。

 ばらまきがだめだとよく言われるんですが、なぜばらまきがだめなのか、私はよくわからないんです。所得の分配という意味では、ばらまきが一番いいんじゃないでしょうか。私はそういうふうに思っています。

 だから、私、農林省を好意的に考えてずっと見ていたんですけれども、一九九九年の、平成十一年の食料・農業・農村基本法は、農業は食料だけを生産しているわけじゃありませんよといって、農業の多面的機能というのを前面に出しました。そして、中山間地の直接支払いが始まりました。今回は担い手、直接支払いしなきゃつぶれますからこれはせざるを得ぬわけですけれども、今回の品目横断的で担い手の直接支払いをする、次の五年後の見直しには今度は環境支払いをやるというふうにしていけば、ばらまきじゃないふりをしながら結局ばらまくということを考えているんじゃないかと思っていました。

 ばらまきでは現状が変わらないと言うけれども、変わらないのは変わらなくていいから変わらないんですよ。どうにもやっていけなくなると変わります。だから、今農林省が言っていることは、昭和一けたの人たちがリタイアしたら次にやる人がいなくなる、そのための準備をしておくと言うけれども、まだいるわけですからね。それをやるということは、まだ生きている人の葬式を出すようなもので、そんなこと、村の中でできるわけがないわけです。

 というふうなことで、大きくなることが競争力が強くなることなのか、考えなきゃいかぬと思う。農業の場合は、小さなところで合理性を求めますと大きな不合理が出てくるというのはたくさんあるんですよ。だから、その一つ、典型的な例が畜産だと思うんです。

 昔、田んぼのあぜ草や稲わらを食わせている二頭、三頭の畜産、これを零細と言うんですが、なぜこれを零細と言うんでしょうか。小さいからあぜ草でやっていけるわけですよ。それを集めますと、今度はせっかくの堆肥の材料が産業廃棄物になるわけですよ。金をかけて処理しなきゃいけなくなる。毎年牛の飼料だけでも千二百万トンもアメリカから輸入して、廃棄物処理法ができましたけれども、それが結局日本の環境に放出されるわけですから、これが二百年も三百年も続くんでしょうか。ほかに方向はないのかということです。

 これは河野武平さんという人が書いた「野菜が糖尿病をひきおこす!?」という本なんですけれども、人工透析を受けている患者の全国マップをつくると、施設園芸地帯と畜産地帯に人工透析を受けている患者が非常に多いということ、これは恐らく硝酸態窒素、地下水汚染が原因じゃないかと言っているんですよ。こういうことが広がっていくばかりなわけですよね。だから、ぜひ、もう時間がありませんので言いませんけれども、この方向だけしかないのかということをもう少し議論していただきたいということをお願いしてやめます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島夕雁君。

飯島委員 自由民主党の飯島夕雁でございます。

 本日は、質問の時間を与えていただき、ありがとうございます。また、公述人の皆様からは丁寧な御説明を大変ありがとうございました。

 早速ですが、さきに久野様からお話がありましたように、私の地元北海道では、てん菜の生産が大変盛んでございます。その中で、砂糖の価格決定の過程を初めて学んだときに、国内産糖の企業が最低生産者価格以上で原料作物を買い入れた場合には、これに交付される交付金というのは、輸入糖からの調整金と国からの交付金により、国内産糖及び原料作物について助成されているという非常に複雑なシステムを学ぶことになりました。これは正直なかなか複雑な制度で、今回改めてわかりやすく御説明いただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 てん菜の粗収益のうちの約五割は助成によるものである、サトウキビはさらに八割というふうに伺っております。原料価格については砂糖の販売価格を上回る水準で、こうした中、国内産糖の原料コスト、製造コストの一層の低減が必要であり、とりわけ供給コストの約六割を占めると言われる原料コストの低減ということが重要な課題と認識をしております。

 こういったことを踏まえまして、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど国内産のてん菜やサトウキビは絶対守るべきであると力強いお言葉をいただきました久野様に、この機会にいろいろお尋ねさせていただきたいと思うのです。

 まず、私どもの地元では、今後の輸入状況によっては、国内産糖交付金のうちの調整金の方が減額してしまって、生産者への打撃が出てしまうのではないかと心配する声が大変上がっております。砂糖制度を維持することの妥当性についてはどのように考えておられますでしょうか。

 また、法改正により市場原理などが導入される見込みですけれども、国内産糖助成財源というのは基本的に輸入糖調整金であるということについては変わりがないわけなので、そういった中で、加糖調製品の輸入増加は砂糖制度をいろいろな形で阻害していると思いますが、これについてはどうでしょうか。改めて御説明をいただきたいと思います。

久野公述人 お答えいたします。

 北海道におけるてん菜糖につきましては、北海道経済におきまして重要な位置づけにあります。これをやめることは、北海道経済に大変な打撃を与えるとともに、北海道の農産物全体のバランスが崩れるわけであります。

 私はメーカーの社長でありまして、本当は砂糖を自由化すべきだという立場に立たねばならないわけであります。しかし、公平な考え方から申し上げますと、やはり日本の農業を維持していかなきゃいけない、そのためには、その効率化を図り、その中でこの全体のバランスをとっていくべきである、こう考えております。

 現実段階として、この交付金に基づいて、北海道のビート大根というのは助成を受け市場に出ているわけであります。しかし、この輸入糖がどんどん減ってきているわけであります。基本的に言いますと、現在、輸入糖というのが百三十万トンぐらいであります。百三十万トンの輸入糖に調整金が課せられ、そしてそれが全体に助成になっているわけであります。国の負担は一〇%ぐらいであります。

 そこで、やはり北海道におけるてん菜については、あらゆる品種改良をし、農家の人も一生懸命努力してここまで育成してきたわけでありますから、これを今後とも維持していくことが私は重要だと思っております。

 また、その中で、国際的に砂糖の原料価格が大幅に上がってまいります。これは避けられないと思います。もっと上がってまいりますと、ビート大根、先ほど申し上げましたが、二・六倍ぐらい高いということでございますが、これが一・五倍ぐらいになるわけであります。そういう面で、全体の国際的な砂糖価格の上昇の中においては、この北海道のてん菜を生産しながら、そしてその中で価格をなるべく、そういう努力をしていただいて効率化して、国民の皆さんに提供していくということが一番大事なことだと私は思っているということでございます。

 そういう面で、我々メーカー側としては、こんな例はないのであります。砂糖業界が、我々メーカーが市場に対してその保護財源を集めているのは砂糖以外にないわけであります。国民の皆さんはそれを理解していないわけであります。そういう面では、我々が果たしている役割というものが日本の農業を守り自給率につながっている、それだけの販売努力をしているということでございます。その中で、北海道のてん菜についても、品種改良とかあらゆる面で努力をされております。

 そういうことを御理解願うとともに、それともう一つは、果たしてこの八〇%という、我々がメーカー側として消費者に負担をお願いしている問題について、公平な透明性を持った仕組みにしていかねば、国民の皆さん、消費者の皆さんが御理解できないんじゃないか。

 あわせて、この加糖調製品、ソルビトール調製品とか、言うなればソルビトールが一七%で砂糖が八三%とか、こういうことでございますね。これについては、砂糖と同じ種類でございます。ですから、今、この加糖調製品というのが日本に四十万トン入ってくる。これが六十万トンになれば国内産糖に影響するわけですから、加糖調製品についても、北海道の農業経済を維持していくという立場に立てば、何らかの公平な仕組みを国として勇気を持って対処してもらわねばならないときが来たんじゃないか。

 今、加糖調製品というのは日本に四十万トン入ってきております。これが入ってこないと仮定しますと、年間で約百二十億ぐらいの調整金が輸入糖からふえるわけであります。その分が北海道の経済に行くわけですから、大きい問題だと思っております。

 どうかその辺についての価格構成を御理解願いまして、ぜひとも、砂糖大根については一生懸命努力しておりますから、これについては今後の国際的な市場、砂糖の市場を含めまして、御理解を願えればありがたいと思っております。

 以上でございます。

飯島委員 ありがとうございます。

 私自身も、北海道農業のバランスを欠いてはならないというふうに思います。

 また、輸入品百三十万トンという膨大な数字、そしてまたメーカーが負担して販売努力をしてくださっているという砂糖ならではの特性について、やはり認識しながらやっていかなければならないなということを感じております。

 今のお答えと重複して大変恐縮なんですけれども、やはりこれからの日本農業においては、食の安全、安心を重視した生産を目指すということが、日本産ならではの農産品として輸入品との差別化を図ることができるのではないかというふうに私自身は考えるのです。

 砂糖は、現在、供給過剰という状況でございまして、その背景には、さきにお話しくださいましたように、加糖調製品の問題、それから加糖あんに代表されるような海外からの加糖製品の影響が大変大きい。また、これら輸入品は原産国表示の義務もありませんので、そういった意味で、安心、安全の観点からは疑問が残るのではないかというふうに考えております。

 日本人の食の安全の視点、またさらには日本農業を守る、北海道農業を守る、北海道農業だけ言ってはいけないですね、日本の農業を守るという視点で考えたときに、本当にこれから今後さまざまな政策を講じる必要があると思いまして、その中で、今、久野様からもお話をいただいたんですが、より具体的にはどうしたらよいとお考えでしょうか。

久野公述人 残念ながら、この砂糖というのが無視されているわけですね。やはりもっと甘味に関する理解を国民の皆さん方にしていただかなきゃいけないと思っております。

 最近では、先ほど申し上げましたように、砂糖を食べると太るよとか、砂糖は生活習慣病だ、こういうことでございます。これならば、明治三十四年から砂糖についてはこれだけの消費税がかかってきたわけですから、これは国家的に決して認めちゃいけないことだと思います。これは、体に害があるものを国が税金をたくさん取ってやっていたということは、私は理解に苦しむわけであります。国際的にも、WHOでも、砂糖は安全だということは明確になっております。

 そして、砂糖は甘味だけじゃないんです。砂糖というのは自然の防腐剤なんですね、はっきり申しまして。お菓子とかあるいは漬物に使っておりますのは、砂糖を入れることによって、カステラ内、お菓子の中に水が発生しますと、砂糖がそれを包んじゃうんですね。そのことによって、三週間なり自然にもつわけであります。砂糖はすごい防腐剤なんです。甘味だけじゃないんです。先ほど化粧品の話が出ましたが、お砂糖はとにかく大変な保湿性を持っているわけであります。そのことによって腐敗を防止しているわけであります。

 私は、横浜の市長さんにも前に申し上げましたが、横浜市民というのは三百五十万人おります。しかし、日本の政府の防災対策の中には、砂糖を防災対策として使えというものはないわけであります。私どもの工場は横浜にあります。二千トンありますと、この横浜市民が、砂糖をかじりながら二週間、地震あるいは防災の中でやっていけるということであります。

 しかし、真夏に地震が起こりますと、実際問題として、今、冷凍、冷蔵の時代ですから、日本の冷蔵庫が全部とまっちゃいます。東京から横浜に約四百五十万トンの穀物が冷凍化されているわけです。この大都市に地震が来たら、そのときに何を食べたらいいかということになれば、砂糖以外にないんですね。登山等で遭難に遭ったときも砂糖を食べております。また、砂糖ほど安全な品物はないわけであります。最近、お菓子の需要もどんどん減ってきまして、私は全国和菓子振興会の会長をやっておりまして、何とか皆さん方に、日本の伝統的な、心のふるさとである和菓子を食べていただきたいということをアピールしているわけであります。

 そういうことを理解していただく国民的な土壌あるいは政治的な土壌の中で、やはり、この甘味資源を競争力がなくても競争力をつけながら守っていくことが、北海道経済なり、あるいは沖縄、鹿児島の特殊地域におけるサトウキビというのが、そこで、沖縄、鹿児島の離島の人も安心して、それが採算がとれなくても一生懸命努力しながら、それは担い手が少なくなっていることは事実であります。そういう点に、具体的な政策をやっていくことが重要だと私は思います。

 私も何回も聞きました。もう沖縄、鹿児島でサトウキビはつくるべきじゃない。それでは、実際問題として、離島で何かつくる農産物があるのか、沖縄でつくる農産物があるかということになれば、ないわけでありまして、ただ、それについては、ある程度の経済性を、マインドを、つくっている人にもやはりきちんと調製しながら、その中で公平なバランスのとれた仕組みをつくっていかねばならない。

 私の方は、三分の二は外国から砂糖の原料を輸入し、三分の一を国産糖で賄っている。そして、その財源をなるべく透明で公平にしていくことが、この甘味資源を日本で守るもとになると思います。

 私は、甘いものがなければ、脳が動かないわけですから、本当に日本は滅びてしまうんじゃないか、こう思っております。

 どうかよろしくお願いします。

飯島委員 ありがとうございます。

 以前、私は病院勤務もしておったんですが、こんなに大きなリンゲル液を点滴で体に入れるよりも、口からおまんじゅうを一個食べた方がどれほど価値があるかということを現場の中で見てまいりました。そういう意味でも、やはり砂糖というものの重要性ということは十分に理解しております。これをさらに広げていく努力が必要なんだと思います。

 また、お話にありましたように、競争力をつけていくということが一つのキーワードになるかと思うのですが、ここで、ちょっと幾つか地元の取り組みについて御相談させていただきたいと思います。

 諸外国との生産条件格差を是正するための対策とかてん菜の過去実績についての話になるわけなんですけれども、地元のてん菜農家においては、現在、産糖量の取引に移行しておりまして、糖分の高いてん菜の生産を行うということで、生産者の方が取り組んでおられます。過去実績の算定に当たっては、産糖量を基本とした算定を行うべきという考え方もあるのですが、それについてはいかがでしょうか。

久野公述人 お答えしたいと思います。

 これは、糖度のいいものをつくるように、てん菜についてもサトウキビについても求められ、いいものをつくってきているわけであります。てん菜も非常に質がよくなっている。糖度がよければ、それだけ製品としてもいいものが出てくるということでございます。この辺については、北海道におけるビート農家につきましても最大限の努力をしてきているんじゃないか。

 したがって、今後は、やはり糖度をもっともっと上げていただく。しかし、これは天候によって糖度が低かったりいろいろするわけであります。かつまた、その中で、北海道のてん菜については、いろいろと気象条件がありますから、増産するときと減産するときがあるわけであります。私は、そういう面では、北海道の経済全体、今中心になっているのはこのてん菜糖だと思います。したがって、増産になったら、それをやはり国で備蓄していくような政策を展開していくべきだ、こう思っております。もちろん、備蓄コストがかかることは事実でありますが、それぐらいはやはり国の方で助成していただいて、やはり北海道全体の農業経済があるいは北海道全体の経済が円滑に動くようにすべきだ、そういうことでございます。

 ですから、糖度がどんどんそういう点で上がってくる。ただ、てん菜糖についても、相当程度工場を合理化してまいっております。あるいは、そういう面で工場を集約化している、あるいは今そういう途中にあります。最大限努力しております。

 その中で、農家との連動があれば、もっといい品物ができて、現実は、もう本当にサトウキビの原料と変わらないようなてん菜の砂糖が出てきているわけですから、これは喜ばしいことだ、こう思っているということであります。これは自信を持ってやってもらわねばならないことだと思います。

 よろしくお願いしたいと思います。

飯島委員 どうもありがとうございます。

 私の事務所では、おいでくださったお客様に、できるだけ地元のブランドを知ってもらいたいということで、地元の特産品をお出しするようにしております。例えば、コーヒーをお出しした場合には、スティックシュガーは、北海道のてん菜、ビートのスティックシュガーを使っているんです。

 久野様のお立場で、改めてお尋ねしたいんですが、今うちの事務所で使っているのは、日本甜菜製糖株式会社とか、あと日本ビート糖業協会のものなんですけれども、ただ、少し残念だなと思うのは、パッケージデザインにポケットシュガーというふうに書いてあるだけのものがとても多いんです。北海道産ビート糖と書いてくれていると非常にわかりやすいんですけれども、一見すると普通のポケットシュガーで、その地域のものである、あるいは国産品であるということがわからない状況のものが多くて、そういった部分で残念だなということを少し感じております。

 それで、砂糖の必要性、砂糖の普及、国産品がこれだけ努力して、先ほどお話しいただきましたように、努力していいものができ上がってきているということをこれからさらに広めていくためには、国内産のものであるということ、あるいはどこどこ産のものであるということ、ビートであるあるいはサトウキビである、そういった表示がきちんとされて、消費者の方にわかりやすい形で消費してもらうことが、また何がしかの効果を生み出すのではないかと思うのですが、その辺についての取り組みはいかがでしょうか。

久野公述人 今先生のお話は、生活者の立場に立たれて、かつまた、北海道のそういう品目について、そういうようなビート砂糖とは何だろう、大体ビート、てん菜糖とは何だろう。それは大多数の国民の皆さんが知らないと思います。したがって、それは、北海道でつくられるてん菜糖について、やはりそういうような商品の紹介なりをもっと徹底的にやらなきゃいけないときが来たと思います。

 そして、残念なことには、御存じのように、先生方もそうでしょうが、三グラムの砂糖なんですね、あれは。昔は六グラムなり八グラムありました。小さくなっちゃっているんですね。砂糖は害があるからと。とんでもない話だと思います。これはもう全く害がないわけで、本当は、三十グラムや二十グラムぐらいのシュガーをつくりまして、それをコーヒー一杯に入れていくということでなければならない、そう思っております。

 ですから、やはりてん菜糖についても全く国民の理解がない、消費者の理解がない。だから、先生の事務所にあるものについても、てん菜糖という、てん菜はこういう形でできるんだともっとブランドを提供しなきゃいけないと思います。

 きょうは、砂糖の宣伝の本を置いてありますが、私は、幼稚園から全体に対して、絵本で、お砂糖というのはこういうものなんですよ、そして、どういう形でつくっているのか、国際的にどうなのかということをアピールしてきたわけでありますが、そうすると、子供たち、お母さんが初めてそれを理解するということであります。

 今どきは、料理教室に行きますと、料理の先生が、お砂糖は害があるから使わないでおきなさいというのが教科書になっているんですね。これは全く間違いなんですね。そういう点から是正していかないと、お砂糖というこれだけいいものが無視されちゃう。

 ですから、例えば、ノンシュガーというのがあります。これは無糖だ。私どもは、本当は、この無糖だとかノンシュガーは、砂糖に対する侮辱だと思っております。とんでもない話だ。ノンシュガーが正しいのか。ノンというのは、本当は砂糖に対する名誉毀損だと思っております。本当はそういうことをやめさせなきゃいけないと思います、正直言いまして。そこまでいって、てん菜というのが理解できるんじゃないか、こう思っておりますから、よろしくお願いしたいと思います。

飯島委員 やはり、てん菜というものが本当に知られていないと思います。もちろん、私自身も、恥ずかしい話ですが、こういう機会を得るまではてん菜という葉っぱをさわることすらないまま大きくなってしまいました、そして砂糖が最初から白いものだと思っておりました。こういったことについて、やはり教育普及、いろいろな、農水の分野だけでなく文部科学の分野も含めて広く啓蒙していかなければいけないと思います。

 終了時間が来てしまいましたという紙が来たので、いろいろ質問したかったんですが、これで終わりにしたいと思います。久野様初め公述人の皆様からは本当に貴重な御意見をいただきましたことを改めて感謝しまして、質問を終わりとしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

稲葉委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 きょうは、公述人のお四方、それぞれ遠くからも来ていただきまして、大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 それで、早速お聞きしたいと思いますが、吉野公述人にお聞きしたいと思っております。

 実は、先ほどお話を聞きながら、本当に大変御苦労なさっていることはよく理解させていただきました。その中で、今回の担い手法案で、いわゆる壱岐の農業者の、これは面積かもしれませんが、麦の四割、大豆の七割、これしかいわゆる今回の直接支払いの恩恵を受けないんだと。

 確かに、今度の担い手法案については、農水省が初めて品目横断的な直接支払いをするということでみんなが期待しておったと思うんですが、実際に、麦で四割、大豆で七割以外の人は何ももらえないということになってしまうわけで、そうなると、残りの麦の六割の人、大豆の三割の人はつくらなくなってしまうんじゃないか。例えば、壱岐のしょうちゅうの原料、これの一割は何とか自前で、壱岐の麦でやっているけれども、九割つくりたいと思ってもできない。過去三年間の実績によって支払うと言っていますから、新しくやる人もいなくなる。そうすると非常に困りませんか。

 あるいはもう一つ。麦の四割、大豆の七割は確かに品目横断的な直接支払いはもらえるんですが、私、きのう農水省に確認しましたら、もらえる金額も、麦をつくった分だけ、大豆をつくった分だけ。しかもその金額は、従来の大豆単品あるいは麦単品に対してのいわゆる品目に対する補償というか助成金がありますが、その金額を上回るものじゃないというふうに確認しておりますが、そうなると、いわゆる今度の担い手法案で、実際に農家は大変困ったことになりませんでしょうか。

 その辺の、実態としての、現場としての吉野公述人の御意見をお伺いできればと思います。

吉野公述人 先ほど、私の言い方が悪かったかもしれませんが、麦で七割、大豆で四割と言ったと記憶しておりますが、今先生は逆に言われましたけれども、まず、そこを一点確認しておきたいと思っております。

 私も、今回の法案、分厚い冊子をいただいて、何遍読み返しても頭が悪いせいかよく理解ができなくておるわけですが、今のやり方では、麦、大豆については、これ以上の面積はふえない、したがって生産量はふえないというように今のところ私は理解をしております。

 といいますのは、今の面積を超えて新たにふえた分については対象外ということでございますので、ふやしたくても、生産費を下回る生産ではつくる人はおらないということはもう目に見えておるだろうというように思っております。したがいまして、その辺を何とかしていただきたいし、それができないならばこれにかわる何かの施策で救っていただきたい、このように現場としては考えております。

 当初申しますように、今しょうちゅうの原料、一割しか生産をしておりませんが、農協としても、今つくっておる生産者の皆さんもふやしていこう、しょうちゅうメーカーもぜひ地元の麦をふやしてくださいということで一生懸命やっておりますが、今回の法案ではこれ以上ふやせるのかなということで、先ほど言いますように、七割、四割と言いましたのは、担い手農家なり集落営農に加盟できる面積がそれだけしかないということでございます。そのほかの三割なり六割については、もうばらばら、個人でしかつくれない、それは恩恵にあずからないわけですから、それは当然もうつくらなくなるだろうということを数字的にお話をしたところでございます。

山田委員 林公述人にお聞きしたいんですが、林公述人の陳述書を読まさせていただきましたが、今回の法案の中央公聴会の公述人としては、政府提案の三法案と我々民主党提案の一法案があるわけですが、政府法案についていろいろ述べておりますが、民主党提案の法律について一切触れておりません。これは何も意図的なものはなかったかと思いますが、これはなぜなのか。ひとつ参考までにお聞きできればと思っております。

 もう一つ、先ほどの林公述人のお話を聞いておりますと、中核農家、担い手農家、これをやっていくことで非常にいい法案だ、それはわかるんですが、それを取り巻くいわゆる小さな農家、それはすべて集落営農で救われるんだ、そのような言われ方に聞こえたんですが、では、救われない集落営農、それは実際にこれから生産にどう携わっていくのか。

 先ほどの吉野さんの御答弁を聞きながら、かつ問題なのは、先ほど吉野さんのお話の中にあったんですが、仮に、四ヘクタール、これは中核農家を集約できたとしても、四ヘクタールで麦と大豆をつくったとしても二百万の所得しかない。例えば、ヨーロッパ。四十ヘクタールから六十ヘクタール集約できていますが、これでも平均して約五〇%の直接支払い、所得補償がなければ農業をやっていけない。そうなると、今度の政府の担い手法案、これで本当に十分日本農業は立ち直れるのか。

 そしてもう一つ、山下さんの先ほどの話にありましたように、実際山下さんの所属している農協においては、集落営農の集の字もない、何の話もない、だれも関心を持っていない。そんな中で、今度の担い手法案は本当にいい法案と思われるのかどうか、そこをお聞かせいただきたい。

 お願いします。

林公述人 まず、一番最初の御質問は、民主党から出されております、私の手元にもございますけれども、この法案について全く触れなかったというのはなぜなのかという御質問だと思いますが、この法案の中の基本的なところで私と同じ考えのところが多いんですが、例えば、食料自給率の目標を十年後に五〇%、将来においては六〇%、本当にこうあってもらいたいという願望は私は持っていますが、実際に、今日本の状況を考えた場合、これが一つの法律としてなじむのかどうか、それだけの論議が今なされているのかどうか。

 これまで、私は法律については余り明るくないんですが、少なくとも、戦後だけを見ましても、農業に関するいろいろな法律がございました。そのときそのときで一生懸命お考えになられて立法化されたものだというふうに理解しているんですが、現在の農業を見ている限り、必ずしもうまくいかなかった。

 それは、これまでの法律のつくり方が悪かったということよりも、想像した以上のことがやはり起こるということで、今政府・与党が出されておりますこの法律についても、一〇〇%うまくいくということはあり得ないというふうに私は考えています。先ほどから、私以外の公述人もいろいろな危惧を出されていますとおり、いろいろなことが心配されます。

 しかし、まず一つは、お答えしなければいけないのは、なぜ民主党から出された法律については何も触れなかったのかといいますのは、いろいろな点で共感し得るところはありますが、これまでの論議、平成十七年度の基本法から始まった流れの中で、これはやはり唐突過ぎるということで、私としては、いい悪いをここで判断するというようなレベルにないということで、反対も賛成も、意見も申し上げられなかったということであります。

 もう一つは、それでは、ほかの政府・与党が出された法律が一〇〇%うまくいくと思っているのかどうかということについていえば、そういうことを願っておりますし、現時点で、これが法律として出されるのには最善のものだ、これ以外に何か考えられるんだったらぜひお聞きしたいところだと思うんですが、これ以外考えられないという意味において、一〇〇%うまくいくということはあり得ないかもしれませんが、しかし、その都度その都度きめ細やかな対策をとっていただきたいということを先ほど私は公述の中で申し上げましたけれども、考えられるのは、例えば、集落営農が必ずしもうまく機能しないかもしれないという心配もいただいているところでありますので、今相当努力されているということはお聞きしていますが、その危惧は今でも持っているということです。

 ただ、中核的な農業者以外すべて、農業者というのはどういう人を農業者というのかということでいえば、例えばアメリカは、長らく、あれだけの地平線のかなたまで農業をする人が農業者だと思われていた節がありますけれども、しかし、そういう時代であっても、農業者と言われている人の半分はいわゆるホビー農業をやっている。年収でいいますと百万円ですね。大体一万ドルですから百万円、今でいうと百二十万円ぐらいでしょうか。百二十万円以下の年収のホビー農家が、やはり農業者と言われる中で半分いたわけです。

 農業は三つぐらいの構造でいくんだろうと私は思うんです。一つは、現在の土地の利用の仕方を考えますと、もう既に認定農業者のような形で動いている方と、それから、何人かが一緒になって集落営農をやるような、この二つを担い手とし、なおかつ、それ以外の人は農業をしないのかといえば、私はやり得ると思う。これから団塊の世代が地方に帰ることをいろいろ期待されていますけれども、もっともっといろいろな施策でそういう人たちを呼び戻し、そして、生きがいとして農業をやる人たちをふやす、そういうお手伝いをもっと政府としてやっていただきたいと思うんですけれども、日本国として。

 そういう中で、それを農業者と言うのか言わないのかという意味においては、私は、ここで論じている農業者の中には入らないだろう、しかし、そういう方が農業をぜひともやっていただきたい、農業というのは物を育てる産業でありますけれども、物を育てる喜びを持つ人がたくさん国民の中にいてもらいたいというふうには思っています。

 以上でお答えになりましたでしょうか。

山田委員 では、一つだけ言っておきますが、私どもの法律は法律になじむのかという話ですが、これは基本法で、しかもかなり具体的に書いております。しかも、麦については、私ども、法案の説明、この国会で三十時間近く今論議して、きょうも、自民党さんからも、いろいろな方々から私どもの法案についての質問がございます。これは、かなりの間論議してまいりました。基本法ですから、法律になじまないとか、あるいは論議していないとか、そういうことはございません。それは結構です。

 もう一度、吉野公述人にお聞きしたいと思うんです。今申し上げましたように、四町歩、あるいは知事の特例で二・六町歩、それだけの面積を有している人が今回直接支払いの恩恵を受けることになるわけですが、あるいは、それだけだと本当に一握りになってしまうんじゃないのか。

 例えば、所得の特例措置があります。吉野組合長も御存じだと思いますが、例えば、壱岐市で六百万と認定農家の目標所得金額を決めたとして、その半分までは特例ができるようになっていますが、そうなりますと、例えば、畜産とかその他も含めて年間三百万あるいは三百五十万か、壱岐においても各市町村でそれぞれ金額が違ってくると思うんです。そういった特例措置で救われる農家、そこは、麦、大豆、そういったものに対してもいわゆる恩恵を受けられるわけですが、今度の担い手法案で、それ以外については受けられないことになります。

 そうしますと、今現に始まろうとしているわけで、どうしたらいいか。例えば、特例措置の緩和とか、殊に離島においては非常に厳しい状況になりますので、吉野公述人として、各農協の組合員を預かる立場で、こうしたらいいんじゃないか、ここまでしてもらえば、今度の担い手法案でも、いわゆる兼業農家も含めてかなり救われていくんじゃないか、もっと麦も大豆もつくっていけるようになるんじゃないか、そういう考えがあったらお聞かせ願えればと思うんです。

吉野公述人 この法案をもとに長崎県知事の特認でいろいろできるようになっておりまして、具体的には、うちの場合は、認定農業者が三百五十万円という線が出ておるようでございます。したがいまして、その半分、百七十五万円の所得があれば救われるということになっておりますので、今つくっておる農家、特にうちの場合は、麦、大豆について救えるように何とかしていきたいというように思っております。

 したがいまして、努力、工夫では、今の作付面積は全部この品目横断的な恩典にあずかるだろうと思っておりますが、問題は、今の自給率四〇を四五なり五〇に上げるとするならば、今の面積をふやしていかなければいかぬということになると思っています。そうすると、そのふやした分に果たして恩典があるのか。今の法案では恩典がないということですから、それではうちとしても困る。

 先ほど言いましたように、麦をどんどん今後ふやしていきたい、大豆についてもふやしていきたいという中で、それについても、この法案でできないならば、別な何らかの方策で救えるようにしていただきたいというのが私のお願いでございます。

山田委員 全くそのとおりだと私も思いますが、その中で、今度の政府の担い手法案では、私どもが非常に心配しているのは、これは兼業農家も含めて、農業の切り捨てにつながって、自給率の達成はおろか、まさにどんどん生産意欲もなくなり、農業が衰退していく道をここでもって開いていくんじゃないか、そういう心配から私ども対案を、私ども民主党の法案を出させていただいたわけです。

 山下公述人にお聞きしたいと思うんですが、先ほどからお話を聞いていて、何か非常に目を洗うような、少し前々から先生のいろいろな考え方はお聞きしておったものの、今回、何よりも私が非常に感心というか感動を受けたというのか、農業はすべてが担い手である、そしてその中で、今回の担い手法案は全く関係ないんだ、民主党の法案も含めてというくだりでした。

 まさにそんな中で、山下公述人にお聞きしたいんですが、このままでいくと、高齢化も進み、かつ、農業者に若手が来ませんし、農業は衰退していく一方、いわゆるお百姓さんはどんどんいなくなっていく一方、自給率はFTA、EPAによって下がっていく一方という中でしか考えられないと思うんですが、山下さん御自身は、どういう形で今の日本の農業をやっていったらお百姓さんは本当に助かっていくと思われるのか、ひとつお話しいただければと思います。

山下公述人 私は、この十五年ぐらいで世界の四十カ国ぐらいの農業、農村を見て歩きまして、言えることは、数を減らして面積をふやしたぐらいではコスト競争には勝てないということです。労賃でも勝てません。北海道はちょっと事情が違うんですが、唯一我々が残れる道は、結局、生産地のすぐそばにたくさんの消費者がいるという世界で特殊な例でありまして、生産者と消費者が混住混在しているということです。

 これは農林業センサスで見るとよくわかるんですが、恐らく今、各自治体で農家世帯が一割を超しているところはないと思うんですね。ということは、一戸の農家の周りに九戸の消費者がいるということですから、この強みを生かす。そこでとれたものをそこで食べる。つまり、地産地消をベースにして、環境なり、食の安全、安心なり、例えば子供の生きる力なんかを育てていくという方向でしか残れないと私は思っています。それなら残れると思っています。それで、各自治体がそれをこれから始めると思うんです。

 これは、愛媛県の今治市の食と農のまちづくり条例の案ですけれども、それをつくる理由をこう書いています。地域資源の活用と市民の健康を守る地産地消、安全、環境保全を基本とした食と農のまちづくり及びそのための食育の実践を強力に推し進めていくことを目標としてこれを定める。

 これが、国が進める構造改革に反対することになるのかどうかと考えられたら困るんですよね。私は、必要なのは、それぞれの地域の地べたの自給率を使って、各市町村の自給率を高めていくということをベースにして、大きな農家を育ててもいいけれども、全体が生きていける地域社会をつくっていくというのが、日本の、都府県の、北海道はまた別ですけれども、農業のこれからの姿じゃないかと思っております。

山田委員 ありがとうございました。

 私の持ち時間がなくなりましたので、質問を終わらせていただきます。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 本日は、四人の公述人の皆さんにそれぞれお話をいただいて、大変勉強になりました。それぞれお一人お一人に御質問を申し上げたいと思います。

 初めに、お砂糖のことについて久野公述人からお話がございました。先ほど、神奈川県の例として、砂糖は優秀な備蓄品である、こういうお話。確かに、砂糖は腐らないという意味でも、それは備蓄の意味も大変あるんだろうなと新しい目を開かされたんですが。

 それはそれとして、国家的見地から一定の備蓄をする、これは必ずしも災害という側面だけではなくて、ほかの面、米等との見合いもあって、一般的な面もあると思うんですが、そういうことの考え方、それから、今の実情等についてもあわせてお尋ねを申し上げたいと思います。

久野公述人 現状では、沖縄、鹿児島におきましては、台風が大変襲来しておりますから、大体十六万トン前後つくっておりまして、今二十万トンぐらいつくろうという考え方がありますが、やはりどんなに努力してまいりましても、十六万トンから十七万トンだと思います。それをふやしていくということになりますと、エタノールの関係で、やはり沖縄、鹿児島は一番いい立地にあると思います。それは、日本のエネルギー政策あるいは環境政策として取り組んでもらわねばならない問題だと思います。

 そういう面で、この十六万トンは沖縄、鹿児島においては非常に重要な農産物である。そして、それは競争力はなかなか持ち得ないけれども、そういうものを我々が評価しながら、社会的責任を果たしているということだと思います。

 北海道におけるてん菜糖につきましては、この数年間、天候とかいろいろとございまして、大変な増産になりました。したがいまして、増産いたしますと、それだけ調整金を集めなきゃいけないわけでございます。しかし、残念ながら、加糖調製品、こういう砂糖のまがいものみたいなのが四十万トン入ってきておりますし、そういう中で、輸入の原料が減ってきているわけでありますから、減ってくれば、そちらが増産になっても交付金が出てこないわけであります。

 それが今一つの問題になっておりまして、これは、北海道における自然条件からいきますと、やはり何としても、生産できる自然条件の中では増産になるわけであります。それを捨てていいということにはならないと私は思っております。ただ、それかといって、その分について交付金があるかどうかということになりますと、輸入糖が減っているわけですから、財源がないわけであります。今、その接点にあるわけでございます。

 そういう面で、この砂糖大根というものが北海道の農業経済、重要な位置づけにある、あるいは、砂糖の全体の、甘味資源に関する世界的な需給が大幅に変化しているわけであります。ヨーロッパにおきましても、六百万トンのてん菜糖、ビート糖をつくらないということでございますし、また、エネルギーとしてそちらに転化していくわけですから、砂糖の原料はどんどんなくなっていくわけであります。

 そういう面では、甘味資源に関する自給率を確保していく、あるいは安定供給していく面においては、一定の限度で備蓄する政策は今こそ考えるべきときに来ているんじゃないか、私はこう思っておるということでございます。

 以上でございます。

西委員 続いて、久野公述人にもう一度お願いしたいんですが、今回の法改正は、いわば競争原理を導入するという側面もあると思います。そういう法改正が成りました後に、国内産の糖、これの生産の効率性、当然また努力していただく必要があると思うんですが、それから、それに対して、砂糖の内外の価格差等がどうなっていくんだろうかということについて、御所見をお願いしたいと思います。

久野公述人 沖縄、鹿児島については、これは特別地域だと私は思っておりまして、例えばサトウキビの、沖縄、鹿児島に対する離島対策とかインフラを考えますと、今、八・四倍ぐらい原料で国際的な内外価格差があるわけですが、それを含めますと、毎年のインフラを含めますと、膨大な価格になっちゃいまして、本質的に競争力がなくなってしまうわけであります。しかし、インフラをやめていいかということにはならないと思います。

 やはりそういう点で、継続的にやってきたインフラの中で、最大限の内外価格差を是正するように沖縄、鹿児島の方々も努力してきておりますし、また、今度の制度によって、そういう点に関する理解がつくる側にも相当進んできたと思っております。

 今までは助成金におんぶしている、だっこしている段階から、やはりそういう市場の流れを理解する状況に、この法改正の中でも、沖縄、鹿児島における砂糖を生産している農家の人あるいは扱っている人たちがそういう点のマインドを高めてきているという点では、この法律は私は賛成だと思います。

 また、北海道についても同じだと思います。当然、てん菜は北海道においては大変収益性の高い農産物になってきているわけであります。なぜかと申しますと、それだけの経営努力をしてきているわけであります。

 そして、そういう中で、今度の法律によって一層、砂糖大根をつくっている人たちが正常な生産状態はどうなのかと。今までは、実際問題として六万八千ヘクタールですか、そこで、面積でやっていたわけでありますが、今後は、やはり全体の需給を考えながら、そして、内外価格差を縮める努力をてん菜をつくる方々もやってきているんじゃないか。

 現実に、てん菜糖についても、原料で売るものと製品として売るものがあります。製品として売るものはどうしてもマーケットに出ますので、流通の段階で厳しい市場原理に遭うわけであります。そういう点では、北海道の農業団体の方々もそういう面を農家の人にインプットして、何としてもそういうような市場原理を理解してもらって対応しているのが、今、現実だと思います。

 ただ、そういう中で、本当に北海道のてん菜農家の人が十分新たな生産をやっていけるかどうか、これはそれぞれの認識とバランスと全体の環境ではないか、私はこう思っているということでございます。

西委員 大変ありがとうございました。

 続きまして、吉野公述人に質問をさせていただきます。

 壱岐における農業の実情を具体的にお話いただいて、私も中山間地にずっと住んでおりましたので、いろいろな難しい、小規模の農家が多い、また、離農される方もいらっしゃる、後継者がいなくなってくる、同じ状況を目の当たりにしているわけです。

 私は、今の一つの特徴は、少子化で後継者が限定、一人いるか、二人もいればいいんですが、この人にと。一方では、子供は、やはりいろいろな夢を持って都会へ出ていったり、いろいろな仕事にあこがれたりという現実がございます。兼業農家のことが心配という、まさしくそのとおりなんですが、兼業といえども、結局は家、つまり、土地とそれから仕事というのがセットにならない限りはそこで兼業というのは成り立たないという今不幸な状態、これをだれがやるか、一人っ子の子供がやるしかない、こういう厳しい職業選択も一方では迫られている、そこが非常に後継者が育ちにくい条件になっているんだというふうに思います。

 それを解消するために、集落営農の団体を結成するために随分御努力されて、二十団体を目指すというお話がございました。私は、そういう意味では、一人一人のおうちがどういう状態になろうとも集落として農業を維持していけるという、そのあり方というのはやはり現実はこれしかないのかな、そういう気がしております。そのことについて、組合長さんのお考えをお聞きしたいというふうに思っております。方向性についてお願いをしたいと思います。

吉野公述人 農業後継者の予備軍はいるというように思っています。高齢ではありますが、農家の人は割と元気ですので、七十、八十になってもまだ農業を結構やっております。その農業予備軍がおりますが、リタイアしたときにその予備軍が今後農業をやるかというと、ちょっと疑問視をしております。

 ですから、少なくとも、今の、麦、大豆をつくっても米をつくっても何とか生産費を賄う所得格差になるよということじゃないと、予備軍が今後兼業農家になっていくことはないだろうという意味で、そういう意味でも今回の品目横断的なものについてもう少し再考願いたいという話をしたわけでございます。

 それから、うちはやはり土地利用型の農業でございますので、今までも集落営農、もちろん担い手をつくっていくということが一つの前提で、先ほど言いましたように、農協独自で新規就農支援事業、月十五万円助成をして新たな担い手を育成しておるわけですが、もちろんそういう方を核にその周りに十軒、二十軒の兼業農家がいる、そういう村社会をつくっていかねばいかぬだろうということで努力をしております。

 そういう意味では、既存の機械利用組合とかいろいろなそういう協同の組織体がございますので、それをもう少し発展させて営農団体にしていこうということで進めておりまして、既に三、四できておりまして、二十ぐらいまでは可能じゃないかなということを思っております。ただ、これでも全体の約半分ぐらいしか救えませんので、半分以下について今後どうするのかというのは、今後非常に時間と労力が要るのかなというように思っております。

 最後に言いますと、やはり昔ながらの農業を今後とも継続していける、豊かな農業をつくりたいなというのが私の組合長としての責任だろうというように思っております。

西委員 次に、林公述人にお願いを申し上げます。

 先ほどの話にほぼ近いのですが、先ほどのお話の中で、中核的な農業者、これがあくまでも核になるであろう、この人たちが経営的な側面を存分に取り入れて、その地域地域で新たな農業の花を咲かせる、その周りに集落営農を中心とした皆さんが取り巻いて、地域地域における例えばブランドとか地産地消とかいろいろな戦略的な形でもって農業を支えていく、その合間と言ったらおかしいですけれども、小規模な皆さんも引き続きまた活躍をしていただける、簡単に構図的に言えばそういう構図の農業というものを将来構想として描いていらっしゃるというふうにお見かけしたんですが、そのことについての御見解といいますか、もうちょっと詳しくお願いをしたいと思います。

林公述人 私、先ほど申し上げましたのは全体としてのモデルでありますけれども、先生も御存じのように、日本は地域によって随分違います。見渡す限りの地平線まで見えるところというのはそう多くはないんですが、しかし、かなり広大な水田地帯もあれば、中山間地のようなところもございます。ですから、今回もお考えになっておられるというふうに聞いていますのは、条件によって集落営農にしても必ずしも一つではない、中山間地なんかもっと少ない面積でやっていけるようにする、これはやはり当然のことだと思うんですね。その地域、その地域に合ったような形というのをある程度柔軟にやっていただかないと、これは成功しないというふうに思っています。

 ただ、全体のイメージでいいますと、先ほど先生もおっしゃいましたように、大きく言って三つの構造、担い手と非担い手という意味では二つの構造ですけれども、その担い手の中に二種類の担い手が存在する。そうでないと日本の農業の特殊性が生かせないという意味では、担い手の中に二つの担い手があり、また、そうでない、農業をある意味では喜びとして農業活動に、農業といいますか、生き物を育てる、そういう活動に参加される方たちもいて、これは生産という意味で国は支援はしませんけれども、その人たちが、地域の景観であるとか、それから、地域を守るために必要ないろいろな活動に参加されることがありますので、別の形でのそういう方たちに対する御支援はぜひともやっていただきたいというふうに思います。

 今は、この法律としては、日本の農業をどうやって今置かれているような状況から脱却させて、一〇〇%国際競争に打ちかつ農業というのはできませんが、しかし前よりも前向きな方向である程度いくというところが、先ほどから申し上げていますように、現実的な案としてはこの法律以外ないのではないか。

 ここは、競争原理の導入というふうに先生もお考えになっておられますけれども、この競争原理というのは悪い面といい面がございまして、やはりこれまでの中で、どう考えても公平でないのは、本来国の支援を受けるべきでない人までも受けている、ばらまきというのはそういうことなんですね。ばらまきの中にそういう人がいなかったかという検証をしてみれば、いますよ。

 だから、本当に適切な人にはきちんといくというのが本当の公平さというものであって、その公平さというのは、しかしこれだけの多くの方々を相手に実際に一つの法律あるいは一つの施策でやっていかれるというのは大変なことなんですが、そこには、従来にも増して多様なそして柔軟な施策を展開していかれることを期待したいというふうに思います。

西委員 今おっしゃられたように、私も今モデルを提示しましたけれども、それは、全国各地それぞれ特徴がありますし、地形も全く違いますので、そこは当然柔軟な形できめ細かな対策を考えていかなければだめだというふうなことを考えているところでございます。

 さて、先ほどの話に戻りますが、後継者の問題です。

 現実の問題として、先ほどかなり努力されている、また、いらっしゃるとおっしゃる地域もあるんですが、なかなか一様にそういうわけにはまいりません。私どもの住んでおった集落でも、子供が出ていって、おじいちゃんが亡くなれば、お父さんが亡くなれば、もう後、後継者はいないというところを、一軒一軒数えても相当数ございます。そういう意味で、新規の就農ということが大きな課題になってくるかと思います。農水省もかなりいろいろな努力をされておりますが、まだ十分それに成功しているとはいえないというふうに私は理解をしておりますが、この点について、先生の方で御意見ございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。

林公述人 今回の法律も含めて、何としても担い手、先ほども私申し上げましたように、過去三十年で六百万人の人々が消えたいわゆる農村地帯にどうやって人を戻すのか、また、その中で農業に何らかの形で従事する方たちをどうやってふやすことができるのか、それを考え、実現していくことが今一番大切なことだと思います。

 その一つの方法として、これは生産活動ではありますけれども、ほかの生産活動と、やはり工業的な生産活動と違うんだ。工業的な生産活動は、同じ物づくりですけれども、その物は、メークする、メーキングの生産であります。だけれども、農業の生産というのはグローイングの生産ですから、これは物すごく喜びを伴う生産活動であるべきだし、そうなっていないのは、これでは食っていけないという厳しい現実があるからそうなんですけれども、しかし、本来的にいえば生産活動の中で非常に高いレベルの生産活動ではないかというふうに思っていますので、これは今まで普通、工業労働者であれば若いときからというふうなことをやはりどうしても考えますけれども、特に農村地帯の悪いところでもあるんですが、やはり男中心社会であって、女性が中心になったところは非常に元気であるんですけれども、そうなかなかならせない、お年寄りで男の組合長さんが頑張っておられるところを私も何カ所か知っていますけれども、もっと大胆に若い人あるいは女性に任せるとか、そういったこれまでにないような展開を、この農業分野でみずからが、農業者がやられることを国として御支援いただくのは必要なのではないか。

 つまり、従来の考えをかなり変える政策をとっていくということだろうというふうに思いますが、それは従来とは違うという点において危険性も伴います。もし何か問題が起きたときは直ちに戻ってやり直す、そういう率直さというのも持ち合わせる柔軟さが必要ではないかというふうに考えております。

西委員 かなり大胆な方法をとらないと、なかなか農業者の継続は難しいであろうというお話であったと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 四人の公述人の方々から意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。それぞれの方々に私の意見を申し述べながら質問していきたいというふうに思っております。

 まず、久野公述人にお伺いいたしますけれども、先ほど、二百海里以降の水産業の今日的な実態を踏まえて、そして競争力を持たないてん菜や甘蔗糖への保護政策は絶対必要なんだという強い御主張をなされたというふうに思ってお聞きいたしました。

 その後の話を聞いていると、私は、何としても第一次産業、水産業が衰退していった経過を見たときに、林業もそうなんですが、第一次産業というものは、そもそも私は市場競争になじまないんじゃないのか、そして久野公述人もそのことを私は強調なさっていたというふうにとらえたんですが、砂糖の今日的な状況を通じて、第一次産業全体、水産業や林業というものをどのようにとらえているのか。私は、基本的には水産業や林業に対しても産業保護政策というのは絶対必要なんだという立場をとっているわけですけれども、久野公述人のお考えをお聞きしたいと思います。

久野公述人 私は、昔、マルハ大洋漁業というところにおりまして、南氷洋に四回行きました。あるいはベーリング海にも十二回行きました。その中で、日ソ漁業交渉とかいろいろ参加してまいりまして、イシコフ漁業大臣、カーメンツェフ漁業大臣、あらゆる問題で闘ってきたわけであります。それは何のためかと申しますと、北海道におる漁民の人たちの生活をいかに維持していくかという概念であったわけであります。

 もう一つは、日本がたんぱく源がございませんから、何としても水産によってたんぱく源を確保して日本の皆さん方に供給しなきゃいけない、その努力の立場にあったわけであります。

 ところが、突然二百海里の問題が出まして、それをほとんど国民の皆さんが理解されていない。日本の資本漁業としては、我々資本漁業、マルハ大洋漁業とか日本水産は、国の助成というのは一つも受けていなかったわけであります。資本漁業がその責任においてたんぱく源を確保するために、海外、あるいはモーリタニアとか、あらゆる国で開発、そこに冷蔵庫をつくるなり船を持っていったわけであります。あるいは、一番最初申し上げましたように、アメリカ、アラスカの海岸では百四十万トンのスケソウダラをとっていたわけであります。それがどんどんどんどん、言うなれば、アメリカのフラッグの船でなければならない、アメリカに工場をつくらなきゃいけない、そういうことで、全部の原料を握られてきたわけであります。ここは私は重要だと思っているんです。

 したがいまして、今、この市場競争というのは、当然国際的にすべてのものが受けているわけでありますが、中国とかあるいは東南アジアで食料を生産しているのは、結果的にそのこと、我々食品メーカー側も、そういうところで食品を生産して、安かろうということで、向こうからつくったものを日本に持ってきているわけでありますが、向こう側に支配権が握られるときが必ず来ると思います。その面で、市場原理にそぐわなくても、やはり日本の一定の自給率の確保は私は絶対必要だという理念に立っているということであります。それがなくて何もなかったら、相手方になめられちゃって高いものを買わされるということであります。

 それは、国民の皆さん方の理解で、これは思想信条の問題じゃないと思います。国民的な立場に立ってそういう問題を論議して、突破していかなければいけない重要課題だと、私はたまたまそういうことで捕鯨船に乗って向こうに行きまして痛感し、そして二百海里という、二百海里というのはだれも理解してもらえないんですが、そのことによって第一次産業である水産業は崩壊をしてきたわけであります。

 ですから、やはり、日本における第一次産業である農業なり林業なり、すべてのそういうものについては、一定の枠組みにおける明確な透明性を持った助成を行いながら、そして、そういう中でマインドを高めて、漁業に携わっている人たちにもそれだけの経済的な事情を理解していただいて、効率化を上げていく法律といいますか、そういうような政策をこれは国民的レベルでやるべきだというのが私の意見だということを御理解願えればありがたいと思います。

菅野委員 ありがとうございました。

 もう本当に、日本の地域社会を守っていくというか、農村集落、漁村集落を国家的に確立していくというのは、多くの国民的理解を得ていかなければならないこれからの大きな課題かなというふうに私はとらえているところでございます。これからも御支援のほどをお願い申し上げたいと思います。

 吉野公述人にお伺いしたいと思うんですが、長崎県の壱岐市において、農業協同組合長として、担い手と、あるいは地域は、担い手農家と兼業農家が、あるいは農家以外の人たちが混在している地域の中において、その地域をどう発展させていくのかというのが今日的な大きな課題であって、品目横断的経営所得安定対策が出た中において、先ほどもおっしゃっておられましたけれども、認定農業者を中心とした集落営農二十ヘクタールはちょっと難しいから、担い手を中心とした、認定農業者も含めた特定営農団体というものをふやしていこうという努力をこれからもしていかなければならないし、四団体から二十団体へと考えているとおっしゃっておられました。

 ただ、それでもなおかつ半分だという、先ほど申されておりましたけれども、この四団体から二十団体に行くにしても、大きな苦労を伴っているというふうに私は思っていますし、これから残された五割を特定営農団体にしていかなければ品目横断の恩恵を受けないという状況を加味したときに、これからも努力していかなきゃならない大きな課題だと私も思っているんです。

 実は、まだ戦後六十年しか経過していない中で、農業者の土地への執着というのが物すごく大きなものがあるというふうに思うんですね。これがもうちょっと時間経過がなっていればそうでもないと思うんですが、そういう中におけるこれからの取り組むべき方向性における考え方、苦労話とかありましたら、お話をお聞かせ願いたいというふうに思うんですが。

吉野公述人 農地の流動化については、農協だけじゃなくて、農業委員会等が主体的に今までやってきておりましたが、やはり今先生がおっしゃるように、土地に対する執着心がございます。したがいまして、農業委員会等がやってもなかなか流動化が進まなかったということで、五年になりますか、では、農協みずから農地保有合理化事業をやって、農地の荒れておるのを守りながら流動化できないかということで、実際やりました。そうしますと、やはり、農協と農家組合員の信頼関係の上で、農協に対しては結構土地を提供する方がふえてきました。したがいまして、それを今、中核農家等にあっせんをしながら、規模を拡大したい農家にはお世話をしてあげておるということでございます。

 ただ、条件の悪いところは借り手がございませんので、これをどうするかということで、先ほど言いましたように、二年前、では農協みずからその土地を有効に活用しようじゃないか、それが荒廃地の減少にもつながるし、雇用の創設の場になるということで、二年前に農業生産法人を立ち上げて、今、大体二十ヘクタールぐらいの土地を借りましていろいろ経営をしておりますし、今後もそういう形で進めていけたらいいな、そして、それを参考にしながら、もう一つ、それで雇用が、多いときはパートで大体百名ぐらい雇っておりますけれども、雇われるよりも自分で農業した方がいいなという農家が出てくることを実は期待しておるわけです。

 そういう農家を今後つくりながら、実際自分で農業をやっていく、そういう人たちを中心に、今ないところにもそういう生産集団をつくっていきたいな、こういうことで進めておるということでございます。

菅野委員 先ほどからも議論になっているんですが、平場農業と中山間地域農業、あるいは条件がいろいろな、長崎の壱岐というのはある意味では平場農業というふうなとらえ方を私はしているんですが、そういう地域と中山間地域との取り組みの仕方というのが全く違ってくるなというふうに私は考えているんです。

 そういう意味で、林公述人にお聞きしたいんですが、先ほども西委員の質疑の中でも議論されておりましたけれども、中核的農家を中心に、それを穏やかに取り巻く非中核的生産者の重層構造によって営まれる社会というのは、これは私は平場農業だというふうに思うんですね。それで、中山間地域における実態はというと、どうしたって四ヘクタールというのはなくて、農地集約もできないという状況をどう考えていったらいいのかというのが大きな課題だと私はとらえているんですが、品目横断的経営所得安定対策のほかに中山間地域を対象とした新たな政策というのを打ち出すべきだと私は思っているんですけれども、その考え方について御見解をお聞きしたいと思います。

林公述人 今先生がおっしゃったことに私は全く同感です。中山間地域で直接支払いをやられたこと、これはもう既に高く評価されていますし、今回の法律も、日本全体の農業に少しでも足腰を強くするために貢献するだろうということを確信してやまないんですが、ではこれで終わりなのかといえば、そうではなくて、やはり中山間地域は、中核的になるような方たちがなかなかいない、そういう地形のところが随分たくさんありますので、そういうところでどのようにしてやっていくのかということについては、また新たなことが望まれるのではないかなというふうに思います。

 具体的には、いろいろ考えられるわけですけれども、これは一つの例で申しますと、私たちが今までやってきた中で、例えば集落営農を私が大変注目している一つの理由は、例えば教育はどこでされるかというと、教育は、学校であり、家庭であるんですけれども、もう一つは地域というものがございます。その地域が崩壊しているから、今、日本がいろいろな面でおかしくなっているというところがありますけれども、集落営農的なものが行われる基盤が整いますと、その地域のいろいろな活動をする何か核になってくれるのではないか。そういうことでまた日本がもう一度健全さを取り戻す、そういう仕組みに対して、農業が中心になりながら、農業ゆえのそういう支援の仕方というのも含めてあり得るんじゃないかというふうに考えておりますので、どうか先生方でそういうことは御検討いただくと大変ありがたく思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

菅野委員 中山間地域に対しての直接支払い、あるいは林業に対しての直接支払いが行われているわけですけれども、この果たしている役割というのは、私は非常に大きいものがあるというふうに思っているんです。ただし、今回の品目横断的経営所得安定対策の中身を見たときに、これでは全部、農業分野はどうなっていくんだろうという危機感があってこれまで議論してきたところでありますけれども、これからも、私どももしっかりとした政策を提起していきたいというふうに思っております。

 最後に山下公述人にお聞きしたいと思います。

 佐賀県の唐津市の実態から、唐津市は農業の盛んな地域だというふうな表現をされながら、地域の実態を報告、公述いただきました。私も、宮城県の気仙沼なんですが、中山間地域で、本当に平場農業のない地域で、それでも農林水産業の盛んな地域というふうに私どもは思っているわけです。

 それで、先ほど、ゴールはどこなんだろうかということで、三十万から四十万の農家に日本農業全体を集約していこうという一つの目標が設定されていることに対して、物すごい、私は怒りともとれる発言だとお聞きしたんですけれども、集落を大切にと考えたならばこんな政策は無謀だというふうに私は主張してきたんですけれども、山下公述人の考え方をお聞きしておきたいと思います。

山下公述人 私の意見のときも申しましたけれども、やはり農業というのは地形によって規定されるわけですよね。だから、そこに合った農業をやっていくしかないわけでありまして、唐津の実態からいうと、担い手に政策を集中するという政策は全く合わない。だから、それに取り組めないんですよね、取り組まないんじゃなくて取り組めないんだから、そのことについて、構造改革に熱心でないとか、抵抗勢力であるとかというレッテルを張って、ほかの補助事業でいじめないでほしいというふうに私はお願いしたいわけです。

 もう一つ、これは中山間地であってもそうですけれども、今度の直接支払いでは、土地を担い手あるいは認定農業者に預ける人に対する手当てが全く考えられていないわけですよね。基盤整備の償還金というのがみんなありまして、私もあるんですが、うちの近所のもう八十近いばあちゃんが一人で年金で払っているんです、三十万。それが大変なんですよね。本人は基盤整備はしないと言うのに、役員が押しかけていって、これは残したら基盤整備ができないからと言って、無理にやらせているわけですよ。だから、長期にわたって担い手に土地を預ける人の償還金は減免してやるぐらいの措置をお願いしたいと私は思っています。

 だから、この十数年間、現場の動きはほとんど現場がリードしてきた。例えば地産直売所にしても、有機農業にしても、アイガモ農法にしても、消費者との連携にしても、全部これは現場の動きですよ。農政が動かしたのは何もない。みんな知恵を出して頑張りますので、現場を応援するという姿勢をもっと出してほしいと私は思っています。

菅野委員 品目横断的経営所得安定対策と同時に、法案にはなっていないんですけれども、農地・水・環境保全向上対策というのが並行して出されているんですね。それで、同じように平成十九年度から、十八年度はモデル事業をやって十九年度から具体的に施策として展開していくという流れになっているんですけれども、山下公述人にお聞きしたいんですけれども、この政策に対する評価というか考え方について、最後にお聞きしておきたいというふうに思っています。

山下公述人 直接支払いと関係のない私たちとしては、それに期待するしかないわけですけれども、車の両輪と言いながらそっちが今のところまだ非常に弱いわけですよね。だから、この次かなというふうに思っています。

 村の人間としてぶっちゃけたことを言いますと、生産は中核担い手に集めろ、しかし、土手の草刈りとか田んぼの溝さらいはみんなでやりましょうという非常に虫のいい話でありまして、そんなことが成り立つのだろうかと私は危惧しています。ただ、自分の田んぼに水を引くから溝さらいに全部出るわけでありまして、だから、なるべく多くの人が農業にかかわってそこに住むということが一番大事なことであって、これを壊していくような政策ではまずいんじゃないか。非常に申しわけない言い方をするけれども、集落営農だって、何で今さら日本で人民公社をやるんだという声ももちろんあるわけです。

 北陸でやっているのは、機械の共同利用とか、農民の共生の知恵で始まっているんですけれども、今度は担い手にするために、規約をつくるのは当然ですけれども、専任者を置かなきゃいかぬとか、その所得を補償しなきゃいかぬとか、将来は法人化しなきゃいかぬという枠がはまっているわけですよね。だから、経理の一元化なんということを言われると、これはまさに人民公社なので、本当にうまくいくのかなというふうに、私はやらない側の人間としては感じています。

菅野委員 基本は、本当に私は、農業集落を後世に、二百年、三百年という先ほどの話だったんですが、二百年、三百年はまだ短スパンだというふうに思うんですね。日本の国がずっと後世に伝えていくというのは、一千年、二千年、中国四千年の歴史と言われていますけれども、それくらいの歴史を刻むためには、農村、漁村、山村集落をどう維持発展させていくのかというのが基本であるべきだというふうな私は主張をしておりますけれども、皆さん方の意見を参考にお聞きいたしまして、これからもしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、公述人の皆様に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 これにて公聴会は散会いたします。

    午後零時二分散会


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