衆議院

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第2号 平成15年3月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年三月十九日(水曜日)
    午後三時開議
 出席委員
  衆議院
   委員長 瓦   力君
   理事 甘利  明君 理事 伊藤 公介君
   理事 津島 雄二君 理事 牧野 隆守君
   理事 海江田万里君 理事 手塚 仁雄君
   理事 北側 一雄君 理事 東  祥三君
      麻生 太郎君    高村 正彦君
      竹本 直一君    中川 秀直君
      中山 太郎君    蓮実  進君
      林 省之介君    堀内 光雄君
      宮下 創平君    村井  仁君
      山崎  拓君    荒井  聰君
      岡田 克也君    菅  直人君
      野田 佳彦君    羽田  孜君
      冬柴 鐵三君    小沢 一郎君
      志位 和夫君    土井たか子君
      山谷えり子君
  参議院
   委員長 江田 五月君
   理事 河本 英典君 理事 野間  赳君
   理事 北澤 俊美君 理事 木庭健太郎君
      有村 治子君    狩野  安君
      小泉 顕雄君    桜井  新君
      中島 眞人君    舛添 要一君
      松田 岩夫君    輿石  東君
      角田 義一君    直嶋 正行君
      日笠 勝之君    富樫 練三君
      筆坂 秀世君    西岡 武夫君
      渕上 貞雄君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      上野 公成君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   衆議院国家基本政策委員会
   専門員          大西  勉君
   参議院常任委員会専門員  宍戸  洋君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国家の基本政策に関する調査


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     ――――◇―――――
    〔江田五月君会長席に着く〕
会長(江田五月君) ただいまから国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。
 本日、会長を務めます参議院国家基本政策委員長の江田五月です。よろしくお願いいたします。(拍手)
 この際、本合同審査会における発言に関して申し上げます。
 各党首及び内閣総理大臣には、申合せの時間の中で活発な討議が行われるようにするため、御発言はそれぞれ簡潔にされるようお願いいたします。
 それでは、国家の基本政策に関する調査を議題とし、討議を行います。民主党代表菅直人君。
菅直人君 昨日の十時のブッシュ大統領の演説というのは、全国民にとって、あるいは全世界の人にとって、世界が大変大きな曲がり角にあるということを嫌というほど知らしめた演説だったと思います。
 その中でも、ブッシュ大統領が、国連安保理が責任を果たしていないから、それにかわって自分たちが行動するんだという発言がありました。確かに、フセイン政権が大量破壊兵器をまだ隠しているのではないか、私たちもそのことは疑っております。だからこそ、さらなる査察の継続を主張しているわけです。
 しかし、そうした国連の多くの人たちの意見を無視して、あるいは、新たな決議を出しても通りそうにないから、自分たちの言うことが通らないから、それを無視して、それにかわって何カ国かで、単独で行動を起こすというこの発言は、ある意味では国連そのものを否定したとも受けとめられかねない発言である、私はこのように思います。
 新たな国連決議がないままでの武力行使には反対すべきだ、我が党の一貫した姿勢でありますが、なぜここに来て総理は、十分な説明もなく、そのアメリカの姿勢を支持することにされたのか。国民の皆さんにきちっとわかるように、その説明をしていただきたい。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず、国連決議を無視し続けてきたのはイラクなんです。これを忘れてはならない。十二年間以上にわたって何回もの決議を無視し続けてきている。大量破壊兵器を破棄、そのために、即時無条件、無制限に大量破壊兵器、化学兵器、生物兵器を破棄しなさい、廃棄しなさいということを無視し続けてきたのはイラクなんです。これに対して、国際社会は結束して対応しなければならない。このイラクの協力が不十分だったということについては、国際社会は一致結束しているんです。
 これについて、私は、昨年の十一月における最後の機会をイラクに与えると。今までたび重なった決議を無視し続けてきたイラクに対して、この決議をいかに実行させるかについて、今、国際社会は真剣に努力を図ってきた。この最後の機会をイラクは軽視し続けてきた。アメリカ初めイギリス等が、軍事的圧力をかける、あるいは、この約束を守らなければ武力行使も辞さないと言うと、小出しに協力してくる。私は、そういう意味において、イラクというのは余りにも国連の決議を無視し続け、国際社会の一致結束した意向というものを甘く見過ぎていたんじゃないかと。今でも、イラクが即時無条件に、全面的に協力すれば、戦争回避できるんです。
 私は、そういう意味において、アメリカ初めイギリス等が、もうこのまま協力しないのならばこれは国連の決議を欺くことだという主張に理解を示し、支持しているんです。あとわずかではありますけれども、イラクがこれに全面的に協力すれば平和的解決は期待できるけれども、その可能性は極めて小さい。戦争か平和かというのは常にイラクの決断にかかってきたのを、イラクはこれを無視し続けてきたということを菅さんはどう考えるのか。
 しかも、私は、きょうはいい機会ですから、国家の基本問題にかかわって、菅さんは先月、仙台市の集会でこのように発言したと書かれている。「米国のイラク問題への対応について、「ブッシュ政権は危険な政権だ。(同時多発テロで)アフガニスタンを攻撃、次はイラク、場合によっては次は北朝鮮だ」と指摘、「ずっと戦争をやっていれば大統領選挙は勝てると。イラクの石油利権を握りたいという思惑も見えている」と語った。」と朝日新聞の記事では報道されている。
 このとおりで本当ですか。菅さんはアメリカを日本の信頼すべき同盟国と思っていないんですか。
菅直人君 きょうはなかなか総理が元気がよろしいようで、私にとっては大変結構なことです。ただ、今聞かれたことはきちんと答えますから、総理も、私が質問したことも答えてください。いいですか。
 私は、今総理が言われたことを、必ずしも最初のことは否定しません。つまり、イラクが十分に協力していないということは、私もそのとおりだと言っているんです。しかし、だからといって、安保理事国が九カ国の賛成もない、決議案を取り下げておいて、そして安保理が責任を果たさないから、それにかわって責任を、みずから勝手にやるんだというその行動、その考え方に対して、それを支持するのはどういう理由なのかと聞いているのを一言も答えていない。全部すりかえている。
 いいですか、その上で申し上げます。私が仙台で発言をした趣旨は、確かに今おっしゃったこととそう変わっておりません。私が申し上げたのは、日米関係というのは大変重要です。日米安保条約によって五十年間、我が国は米国に一番安定的な、一番海外で効果のある基地を提供し続けてきているわけです。その上で、それに対しては、例えば核によるおどしには核抑止という形で日本を共同防衛するという責任をアメリカも負っている。日本は基地提供という責任を負っている。現実に、イラクやアフガンに出ていった船の多くも横須賀を母港とする船じゃないですか。そういう日米関係そのものの存在を否定してもいないし、その信頼関係の重要性を否定してもいません。ただ、クリントン大統領の時代に比べてブッシュ政権というものが、ややもすればクリントンがやったことは全部だめなんだといってそれを変えようとした行動について、やや危険なところがあるのではないかという私の個人的感想を申し上げました。
 そういうことを申し上げたことは事実でありますが、だからといって、日本とアメリカの国と国の関係がどうなってもいいなんということを申し上げているつもりは全くありません。
 逆に、総理に明確に聞きます。もう一度聞きます。
 総理は、国連決議が、国連が自分の思うとおりにならないときには、それは無視して行動するというアメリカの行動に対して、それを賛成されるんですか。それとも、ちょっとやり過ぎじゃないかと思われないんですか。そのことをちゃんと答えてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、はっきり答えておりますよ、アメリカは国連決議を無視していないと。それは法的に、昨年の十一月の一四四一の決議、あるいは一連の六七八、六八七、これによって、アメリカの今回の声明というのは、国連決議を無視していない、国連憲章にも違反していないとはっきり言っています。
菅直人君 川口大臣にお聞きできないのが残念ですが、川口大臣は、答弁の中で一四四一は武力行使の理由にならないということをはっきり述べられています。それから、六七八、六八七というのは、十年、十二年前、つまりはイラクがクウェートに侵入したとき、あるいはその停戦のときの決議であって、一昨年の九月十一日のテロが起きた後の決議ではありません。
 今問題になっているのは、そういうテロ組織に大量破壊兵器を譲るのではないか、アルカイーダに譲るのではないかという議論がある中で、その二つの決議は余りにも時期的にもずれているので、それで新たな決議があることが望ましい、これは総理自身が言ったことじゃないですか。総理自身が新たな決議があることが望ましいと言ったんじゃないですか。
 いいですか。国連憲章七章の中では、一般的に言えば、国連からの要請があって、こたえて行動するんですよ。今回、アメリカは、国連からの要請があって、こたえて行動しようとしているんですか。総理、どうですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、確かに新しい決議があった方が望ましいと言いましたよ。しかし、法的根拠を問われたから、一四四一、六七八、六八七、一連の決議で、アメリカの武力行使、これに対して法的根拠はあると、その理解を示し、支持を声明しているわけです。
 この問題に対して、確かにこの見解に違うと述べている国もあるのは承知しております。私は、やはり九月十一日のニューヨークでのテロ攻撃、あの事件以来、世界は、戦争に対する観念についても、あるいはテロ行為についても、さらに大量破壊兵器についても、観念は変わってきたと思います。
 その間の世界の情勢の変化を見きわめなきゃいけないと思っておりますし、過去の決議を無視し続けたことに対するイラクの姿勢を問わなきゃならない。過去は過去と言っているけれども、長くたてば過去の決議はどうでもいいということは違うんじゃないですか。私は、むしろ一連の決議を、武力の圧力をかけないと協力してこなかったイラクにこそ問題があると。
 この点について、私は、安全保障を考える面においても、今後大量破壊兵器の脅威という面を考える上においても、あるいは日米同盟の重要性を考える上においても、大変重い、大きな問題だと思っております。(発言する者あり)
菅直人君 与党席がちょっとうるさ過ぎますよ。甘利さん、我々はイラクの肩を持ったことなんかないんですからね。そういうやじはやめなさい。
 いいですか、総理。先ほど総理自身認められました。国によっては、今回の行動が国連憲章に違反するのではないかと言っている国もあると。国どころじゃありません。アナン事務総長は、今回のアメリカの行動は正当性が問われる、正当性に疑問があるということを明確に言っているんです。事務総長がですよ。
 そういった意味で、何度も言いますけれども、私たちが問題にしているのは、イラクが大量破壊兵器をもっと早く廃絶しておけばよかったのは当然です。そのことを我々は否定しているんじゃない。しかし、さらなる査察の継続によってそのことが平和的にやり得る可能性がまだ残されている今日の段階で、それを一方的に放棄して、つまりは国連が送った査察団を、ある意味ではもう危ないから帰りなさいと言って追い返させて、そして米国が軍事行動に踏み切るというこの決定が、国連の考え方としておかしいのではないかということを言っているんです。
 そこでもう一点、余り時間がありませんので、若干関連することを言っておきます。
 総理、日朝平壌宣言に対して、官房長官が、これの廃棄ということもあり得るということを、示唆を予算委員会等でされております。ということは、九月のピョンヤンにおける日朝首脳会談というのは、みずから失敗であったということを官房長官が認めたことになると思いますが、総理も同じ見解ですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) そんなことは言っていないと思いますよ。私は、日朝平壌宣言、これは政治文書として大変重い文書だと思っております。この日朝平壌宣言は有効であります。なおかつ、日本は北朝鮮との国交正常化交渉に向けてこれを誠実に実行に移す、こういうことによって初めて日朝国交の正常化はなされるんだということについて、北朝鮮側もこの日朝平壌宣言は成果だと認めている。
 こういう意味において、今後とも、この日朝平壌宣言が実施に移されるよう努力を続けていかなきゃならない、また北朝鮮側にも誠実にこの平壌宣言を守ってもらえるように働きかけていくことが重要であると私は思っております。
菅直人君 官房長官が言っていることを総理が知らなかったというのは私には驚きですけれども、きのうの予算委員会、きょうの記者会見で官房長官は、日朝平壌宣言の破棄の可能性について、北朝鮮の対応が日本の安全保障に直接脅威を与えるようなものであれば、宣言の維持はいけないのではないかと述べ、破棄もやむを得ないとの認識を示した、こういうふうになっているんです。
 私は、一つ提案をいたしておきます。もし私が総理の立場であれば、第一に、まずはこのイラクの問題についても、こういうぎりぎりの段階になるまでに、先週、私たちを、野党党首を呼ばれましたけれども、そのときには、その時点になってみなければ何も答えられないと言って、一切答えなかった。
 そうではなくて、適宜きちんと国会の中で、こういう考え方なんです、ああいう考え方なんですと。何も六七八や六八七のことは急にきょう決まったんじゃない、半年前から出ているんです。何一つ説明しないで、最後の最後になって、今ごろになって、事実上、アメリカ大統領が物事を決定した後、単なる追従のための理屈でしか説明しないというのは、国民に対する説明不足だ。私であるならば、あらかじめ国会をみずから開いてもらって、国民の前で説明すべきだった、こう思います。
 また、日朝問題についても、日米韓の間で共通の提案をきちんとしたらどうか、そのことを予算委員会でも申し上げておりますが、総理はすべて丸投げあるいは投げやり、何一つみずから国民に対して説得しようとしていない。ブレア首相やシラク・フランス大統領が、立場は違っても、明確に国民に対してメッセージを送ろうとしているのに比べると余りにも情けないと思いますが、総理みずからどう反省されますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、その時々、説明しております。その説明に対して意見が違う、見解が違うと、説明になっていない、アメリカの主張を理解し支持すると、アメリカ追随。勝手に決めつけるのは、それは菅さんの言い方で、野党の勝手ですけれども、日本としては、日本の国家利益を考えて、その時々の国際情勢をにらみながら日本の立場を表明する。ある時点で言うべきこと、言わない方がいいこと、それを判断しながら説明するのは、日本国の総理大臣として当然じゃないですか。
 私は、いつも詳しく説明しております。きょうも党首討論ではっきりと日本の立場を説明しております。また、時期が来れば、国会でもいつでも説明します。皆さんと意見が違うから説明しない、していないと言うのは、これは余りにも勝手過ぎるんじゃないでしょうか。
菅直人君 いいですか。これは国民の皆さんが一番よくおわかりだと思うんです。
 きのう、つまりブッシュ大統領の最後通告があった後に、一時から衆議院の本会議をやっているときにインタビューを受けて、そのときに初めてアメリカを支持すると言って、それ以前に支持するという言葉がもしあったとしたら、いつ言ったんですか。少なくとも、私が先週の党首会談のときに聞いたじゃないですか。新たな国連決議がないままの攻撃がある場合に賛成しますかと言ったら、その時点にならないとわかりませんと言ったじゃないですか。何も答えていない。
 つまり、そういう無責任な態度を後になって変えておいて、前から言っていたようなことを言うのは、国民を欺くことですから、そのことだけを指摘して、私の質問を終わります。
会長(江田五月君) よろしいですね。答弁、よろしいですね。
 以上で菅直人君の発言は終了いたしました。
 次に、日本共産党幹部会委員長志位和夫君。
志位和夫君 イラク問題について、日本共産党の基本的立場を明らかにするとともに、首相の基本的姿勢を伺います。
 昨日、ブッシュ大統領は、イラクへの最後通告を行い、明日早朝にも攻撃の危険が切迫してきております。しかし、なぜ戦争なのか。私は、ブッシュ大統領の昨日の演説では、この戦争を正当化する理由を世界に向かって何一つ示せなかったと思います。そして、首相はすぐにこれに支持表明を与えましたが、なぜ支持なのか。この国民を納得させる理由も、私は首相は何一つ示していないと思います。
 私は、こうした状況自体が、この戦争がいかに道理なく、そしていかに無法であるかということをみずから示すものだと思います。私たちは、この戦争について、国際の法と正義に照らして、次の三つの点で絶対に許してはならない戦争であると考えます。
 第一に、この戦争は、国連の査察による平和解決が本格的な軌道に乗りつつあるところを力ずくで断ち切ろうとするものであります。この査察による到達点は、どのようなものか。
 国連の査察団の最新の報告、三月七日のブリクス委員長の報告では、ミサイルの廃棄など実質的な進展が見られること、イラクの協力姿勢に十分とは言えないものの積極性、自発的な変化があり、これは歓迎されるべきであることを述べて、武装解除のための未解決な問題点を二十九項目にわたって具体的に明らかにした。この二十九項目を解決すれば、この問題、平和的に解決できるんですよと言って、数カ月の査察延長を求めたわけです。
 そして、そのための作業計画はどうなっているかというと、十七日の夜、安保理に提起されて、提出されているところなんですよ。すなわち、査察の到達点というのは、それが本格的軌道に乗りつつあるところなんです。それを継続強化すれば、平和解決への道は大きく開かれている。だから、この平和解決の道を、国際社会の圧倒的多数の国々が支持しているわけですね。これを今、平和解決の道を中断し、戦争に切りかえなければならない理由が一体どこにあるのか。そんな理由はどこにもない、私はそう言わなければなりません。
 私たちの意見をまず言いますが、第二に、この戦争は、国連安保理の支持がなく、国連憲章と国際法の根拠も持たない、無法な先制攻撃の戦争だということです。
 ブッシュ大統領と小泉首相は、戦争の根拠として幾つかの国連安保理決議を持ち出し、今も言われましたけれども、その中には、イラク戦争を根拠づける決議は一つもありません。
 大体、これまでの安保理決議では戦争の根拠にならないからこそ、米英はあれほど執拗に新決議案を求めた。しかし、その新決議案は孤立し、失敗に終わったわけです。そのこと自体が、この戦争が法的根拠を持たないことの証明ですよ。
 しかも、ブッシュ大統領は、この戦争の目的が、大量破壊兵器の廃棄などではなく、イラクの現政権を転覆するためのものだ、米国言いなりの政権を押しつけるためのものだと公然と宣言しているわけでありまして、これは国連憲章が厳しく禁止している内政干渉そのものです。
 そして第三に、この戦争がもたらす罪なき人々の犠牲ははかり知れません。
 国連機関の内部文書では、五十万人の死傷者、三百万人の難民が生まれ、子供と、妊娠中ないしは授乳中の女性の被害は五百二十万人。全世界で何千万人という人たちが平和の声を上げている根本には、この理不尽さへの強い怒り、憤りがあります。何千何万という罪なき人々を殺しておきながら自由ということを叫ぶことほど、私は偽善はないと思います。私たちは、一かけらの道理もない戦争計画の中止を求めます。
 首相には一点だけ質問いたします。
 首相が昨日の会見で、米国の戦争を支持する理由として、ただ一点だけ理由をお述べになった。次の言葉でした。フセイン政権に武装解除の意思がないことが断定された以上、米国の武力行使を支持する。断定されたと言われました。
 そこで私は聞きますが、フセイン政権に武装解除の意思がないと一体だれが断定したんでしょうか。国連安保理事会は断定していません。国連査察団も断定していません。一体だれが断定したのか、端的にお答えください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、国際社会がこの点については一致結束して、イラクが大量破壊兵器、これを十分協力しているとは認めておりません。これは、既に一四四一の決議において国際社会が断定していると言っても過言ではないんです。無条件受け入れ、最後の機会を与えると言って、その機会を果たしていないということについては、国際社会は結束して一致しているんです。
 昨日のブッシュ大統領の演説の中で、国連安保理決議六七八、六八七によってイラクの武装解除を要求してきた。最後の機会を与える一四四一、これは昨年の十一月八日であります、全会一致で採択され査察が行われたが、イラクは協力しなかった、これについても国際社会は一致しているんです。そして、現在においても、イラクが国連決議を遵守していると言える者はだれもいないんですよ。
 私は、そういう面から、今回のアメリカの主張に対して、武力行使しない限りはイラクが大量破壊兵器を廃棄しないであろうという状況。そして、今までさまざまな圧力をかけて、平和的解決を求めて努力してきたぎりぎりの効果も、結局、イラクのサダム・フセインが協力の意思がない限り、どんなに延ばしてもこれは無理なんですよ。
 そういうことから、私は、今までの国連の一連の決議、そして、大量破壊兵器は危険である、なおかつ、この大量破壊兵器が危険な人物に渡ったら、世界の国民が大変大きな危険に直面する、なおかつ、日米同盟の重要性を考えながら、私は、アメリカの主張を支持し……
会長(江田五月君) 小泉総理、発言は簡潔にしてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) アメリカの決断を支持していると発言したわけであります。
会長(江田五月君) 発言は簡潔にしてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これからも、日本としては、日米同盟と国際協調の重要性をわきまえて行動していきたい、これははっきりしております。
志位和夫君 私は、フセイン政権に武装解除の意思がないとだれが断定したのかと聞いたのに対して、あなたはお答えにならなかった、答えられなかった。国際社会と言いましたけれども、国際社会はそんな断定していないですよ。それが、あの新決議案が通らなかったじゃないですか。断定しようとしたのが新決議案ですよ。それが通らなかったということは、国際社会はそんな断定していない。断定しているのはアメリカだけです。アメリカにただ従っているだけです。
 そういうやり方はもう撤回すべきだということをはっきり申し上げて、質問といたします。
会長(江田五月君) 以上で志位和夫君の発言は終了いたしました。
 次に、自由党党首小沢一郎君。
小沢一郎君 民主党の菅代表の御配慮で、ふだんよりも少し時間を与えていただきました。ありがとうございました。
 皆さんと重複することになると思いますけれども、イラクのことにつきまして総理に御質問をさせていただきたいと思います。
 先週、総理から、イラクの問題について意見を聞きたいということで、官邸に呼ばれました。同じようなことが昨年の九月にですか、日朝会談のときにも呼ばれまして、私はそのときもこう申し上げたんですが、いろいろ野党の意見を聞くのも結構だけれども、野党の意見を聞く前に、まず、政権を担っている内閣総理大臣、政府としてのしっかりした見解、対処方針を持つことが大事だと思うと。
 北朝鮮は、私は前から言っているんですが、核兵器を持っているし、一生懸命、さらに核開発を進めておると思う。この問題も日本にとって大変な脅威であり問題だ。それからまた拉致問題、これはもう、人道上の問題は別として、日本の国の国家主権を北朝鮮政府が侵している、侵害している、まさに北朝鮮による国家テロである。こういった問題について、総理はどういう考え方で、どういう方針で会談に臨もうとしているのか、そのことが私はお聞きしたいし、日本国にとって、国民にとって大事なことだというお話を申し上げたわけであります。総理からは、話し合いが大事だということ以外にお答えはありませんでした。
 帰ってこられてから、また来いということでございましたので、参りました。それで、私は同じことを、首脳会談でどういう議論になったんだ、核の問題は、拉致、すなわち日本の主権の侵害というこの問題についてはどういう議論をしたんだというお話を、質問をいたしましたけれども、やはりお答えはありませんでした。
 先ほど菅さんとの話の中で、共同宣言、非常に大事な、これからも重要なものだというお話がありましたけれども、この平壌宣言なるものが、もはや北朝鮮の政府の手によって、まさに泥足で踏みにじられて、そしてもう紙くずとしても痕跡をとどめないぐらいに全く無視され、意味のないものに今やなっておるのではないかと思うんです。
 私はそういう経緯を踏まえまして、今回は、このイラクの問題、これまた日本にとって大事な大きな問題ですから、まず、前もって私どもの考えとそれから総理に対する二、三の質問を文書にして、これにぜひお答えいただきたいと。わかったという御返事でしたので、私もまた官邸へ参りました。
 そこで私、第一の質問は、先ほど来議論にもありますけれども、アメリカ、米英ですか、がイラクを攻撃する、武力によって、軍事力によって。これについて支持するに当たって、新たに、あるいは明らかな武力行使容認、軍事力行使容認の国連決議が必要と考えますか、あるいは必要でない、あった方が望ましいけれどもということは別といたしまして、なくてもいいとお考えになるのか、どちらでしょうかという質問が項目の第一でありました。
 総理と多少の、行ったり来たりのやりとりはありましたけれども、総理の結論は、今は何とも言えない、とにかくその場の状況で、その場の雰囲気で決めるというお話がありました。
 私は、日本国の総理大臣からそういう言葉が発せられたことは大変驚きでした。温泉旅行にでも行くとか一杯飲むとかいうことであるならば、それはその場の雰囲気で行っても行かなくてもいいんですけれども、事柄は戦争に加担するかどうかという、日本にとっても大事な、本当に、将来にも影響を及ぼす問題をそのような考え方で、私はとても、日本の政治というものに大変心配をいたしましたし、また、それ以上話をしてもしようがないと思いましたので、制限時間の前に席を立って帰ってきましたけれども。
 そのときと、それからきのう、おとといあたりからですか、総理が、決議がなくてもアメリカの行動を支持するという話を、きのうは正式になさったようですが、されました。我々が、木曜日ですか、呼ばれたときには、その場になってみないとわからぬ、その場の状況、雰囲気だというお話でしたが、月曜日になって総理の言葉に、総理への質問ですから総理の言葉に準拠して質問する以外にありませんが、あの先週と今週、週明けてどのような状況、どのような雰囲気の変化があったんでしょうか。御質問いたします。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 先日の小沢党首と私との会談で、私の会談の様子について、日ごろは大局を見られる小沢さんだと思っていましたが、何か私の状況とか雰囲気をとられた発言をされて、雰囲気とは情けないというような報道をされました。私は、やはり大局を見ていただきたいと思いますね、言葉じりをとらえるのじゃなくて。
 私は、そのとき、確かにどういう言葉を使ったかはっきり覚えていませんが、今、国連安保理で各国が議論している最中だ、状況も刻々変わってくるかもしれないと。そのときにおきましては、安保理非常任理事国の中間派と言われるチリとかメキシコ大統領が、何とか安保理の理事会を結束させるべく懸命の努力をしていた最中であります。何とか妥協案が見つからないものか、アメリカとフランスがともに合意できるような案ができないか、そういう懸命の、ぎりぎりの折衝をしている最中でした。
 そういうことから、私は、できれば新たな決議があった方が望ましい、しかし、今アメリカは武力行使をすると言っていない。その時点で、武力行使したらどうなるか、どうかという仮定の質問に対して、あの時点において私が支持する支持しないという発言をするよりは、そのときの状況を見ながら、各国の発言、そういうものを見ながら判断していいのではないか。
 これについて、そんなの意見じゃないとか答えになっていないと言うのは勝手ですけれども、それも政府としてのはっきりとした立場だと私は思っております、どのような状況になるかというのは刻一刻変わってきたんですから。
 そういう中にあって、今回、昨日アメリカ・ブッシュ大統領は、四十八時間の猶予を与えて、フセイン初めその息子たちが国外退去しなければ、武力行使、決断するというような発言をされました。いよいよ、もう大詰めに来たな、この期に及んで、私は、支持する支持しない、いざ武力行使したときに考えるというよりは、あの時点でほぼイラクが全面協力する可能性は極めて少なくなった、武力行使の可能性は極めて高くなったという私の判断から、あの時点で、ブッシュ発言、イラクが今後国外退去を拒否した場合には、アメリカを初めイギリスが武力行使をするというのがほぼ確実になってきた状況で、日本政府としては、私としては、あのブッシュ大統領の発言を理解し支持するということを決断したわけであります。
 これは、はっきりした答えじゃありませんか。今までの状況で、あの小沢さんと話していた段階におきましては、まだ譲歩案が、中間派がともに共同案を出して、アメリカ、フランスも歩み寄る可能性がゼロとは言えなかったんです。そういう点については、私は、あの時点で武力行使を前提に支持か不支持かというはっきりした答弁をするよりは、その時点ではっきりさせるというお答えの方が私は適切であったと今でも思っております。
小沢一郎君 大局的な見地に立って政治の判断をしなきゃならないというのは、もうそのとおりでして、私もいつもそういう心がけでいるつもりであります。
 あのときの議論を蒸し返してもしようがないんですが、総理とのやりとりは、その場になって、その場の雰囲気で判断する、それが方針だ、こういうお話でしたから、それは方針とは言わない。その場の状況を判断するには、判断する原則とか価値判断の基準、ルールというものを持っていなきゃいけないんだ。その点について、常に、先ほど申しました日朝の問題についても、そのことをきちっと持っていた上で、その状況において判断するということが、私は、最高権力者として、指導者として、総理大臣として必要な心がけ、資質ではないか、そのように思うわけであります。今の総理の御発言は、先ほど来繰り返されましたけれども、アメリカがもう攻撃の決断をしたということが、総理が支持するということになった最大の要因であると思います。
 私は、日米同盟を本当にもっともっと進めようという積極論者なんですよ。ただ、同盟というのは、本当に対等の国と国との協力、信頼関係なんですよ。一方が一方に従属するという関係では、もう同盟ではないんです。
 ですから、本当にアメリカがやるんだ、だから、同盟国としてはいろいろ議論したけれども、日本も一緒にやるんだというのなら、それも一つの選択ですよ。ところが、一方において、武力行使しないんだから関係ありません……
会長(江田五月君) 小沢党首、申合せの時間です。
小沢一郎君 こういうごまかしはいけない、私は、こういう言葉のごまかしによって本当に国を危うくする、歴史をひもとくまでもないことだと思います。
 そのことを申し上げて、終わります。
会長(江田五月君) 以上で小沢一郎君の発言は終了いたしました。
 次に、社会民主党党首土井たか子さん。
土井たか子君 引き続きまして、イラク問題をお尋ねしたいと思うんです。
 ブリクス委員長率いる査察団が、査察による解決をあきらめてはいない、継続を望んでいる以上、これを最大限に尊重しなければならないのが国連の立場であり、安保理の立場だと思うんです。これは、査察が無意味であるかどうか、継続することが必要かどうか、アメリカが決める問題じゃないんでしょう。少なくとも、査察委員会、査察団が、具体的にこれに対して報告をしているわけですよ。査察はさらに必要であるという報告が出ております。十七日には、安保理で十二項目の作業計画が提案されております。いずれもブリクス委員長提案であり、報告でございますが、総理は、この報告と提案を無視されるんでしょうか、この提案と報告を信用されているんでしょうか。いかがでございますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、過去何年にもわたって議論されてきたことであります。それが、査察に全面協力すれば直ちに武装解除できたんですよ。そこをしないところが問題だ。一致できなかった。
 このまま、十二年間以上にわたって、ずるずるずるずるイラクは国連の決議を軽視、無視し続けてきた。武力的圧力をかけると、協力を小出しにしてきた。これを放置しておくと、またイラクの欺瞞を認めることになる。あるいは、国際社会の結束した対応に対してイラクは誤った見方をして、依然として、時間がたてば国連決議を無視してもいいという、そういう誤った判断を与えるんじゃないか。その限度が来ている、時間が来ている、私はそういう判断に今立っております。だからこそ、昨日のブッシュ演説を支持し、これからも日米同盟と国際協調、この両立を図るように努力しているのが日本の立場だとはっきり日本は言っています。
 この五十年以上にわたって、戦後、日本の平和と繁栄を築いてきた基礎は、日米同盟と国際協調なんです。これを今後とも追求していくのが日本政府の方針である。この方針を堅持していきたいと思います。
土井たか子君 そんなことを聞いておりませんよ。総理にそういうことを、私、お尋ねもしていないことをいろいろとおっしゃるだけ、時間が私にとってはむだであります。まことにこれは遺憾だと思いますよ。
 それで、さっきの話は、これも異論がありますが、先に行きます。
 安保理での決議なしの攻撃は国連憲章に違反する、これはアナン国連事務総長が言われているわけで、事務総長というのは言うまでもなく国連のまとめ役、そして総括する存在、国連の顔ですよ。戦争は常に大きな災いと悲劇をもたらす、安保理の支援なしに武力行使が行われれば正当性に疑問が出てくる、国連憲章に合致しない。安保理の承認のないような攻撃は国際法への侮辱であって、国連憲章に合致しない、はっきり言われているんですが、こういう意見に対して反対なんですか、総理は。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、もう一段の決議があった方が望ましいということは私も思っています。しかし、これができない以上、今までの一連の決議、もちろん一四四一を含みます過去一連の決議、これにおいても私は妥当性があると。だから支持しているんです。
 アナン事務総長の、国連が一致してもう一段の決議が、これはあった方が望ましいというのは、私は、これは同じように望ましいと日本政府も言っています。しかし、できなかった、国連が、安保理がまとまらなかった、そういうことに対してイラクがどういう態度に出るのか、これはやはり我々国際社会の一員として真剣に考えなければならない。
 今の時点において一致できない限りは、イラクに対して大量破壊兵器を廃棄させよう、そして今後世界がこの脅威に対応していこうという決断をされた米国の方針を支持するのが、私は日本にとっても正しい選択であったと思っております。
会長(江田五月君) 土井党首、一言。
土井たか子君 何をおっしゃっているのかよくわかりませんな。何をおっしゃっているのかわからぬけれども、国連中心主義というのが少なくとも今まで日本の外交の基軸の一つだったんですが、どうも最近、総理の姿勢並びにおっしゃることを聞いておりますと、国連に対しての軽視が目立つ。恐らく国連中心主義というのを放棄されたんじゃなかろうかと思うんです。
 アメリカの軍事行動を支持することは、日本にとっては憲法の基本理念を踏みにじるということになるわけですが、首相はこの行為を国民の皆さんにどう説明されるのか。少なくとも自主的な外交はない、丸投げという言葉があるけれども……
会長(江田五月君) 土井党首、簡潔にお願いします。
土井たか子君 アメリカからの丸請け外交だと言うしかないと思うんですが、このことをはっきり申し上げて、時間が五分しかないですから、終わります。
会長(江田五月君) 以上で土井たか子さんの発言は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
 次回は、参議院、衆議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十分散会


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