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第1号 平成15年1月30日(木曜日)

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本国会召集日(平成十五年一月二十日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   会長 中山 太郎君
   幹事 杉浦 正健君 幹事 中川 昭一君
   幹事 西田  司君 幹事 葉梨 信行君
   幹事 保岡 興治君 幹事 大出  彰君
   幹事 仙谷 由人君 幹事 中川 正春君
   幹事 赤松 正雄君
      伊藤 公介君    石川 要三君
      奥野 誠亮君    川崎 二郎君
      倉田 雅年君    近藤 基彦君
      佐藤  勉君    下地 幹郎君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      中曽根康弘君    中山 正暉君
      長勢 甚遠君    額賀福志郎君
      野田 聖子君    野田  毅君
      平井 卓也君    福井  照君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      大畠 章宏君    桑原  豊君
      小林 憲司君    今野  東君
      島   聡君    首藤 信彦君
      末松 義規君    中野 寛成君
      伴野  豊君    古川 元久君
      水島 広子君    太田 昭宏君
      斉藤 鉄夫君    武山百合子君
      藤島 正之君    春名 直章君
      山口 富男君    金子 哲夫君
      土井たか子君    井上 喜一君
平成十五年一月三十日(木曜日)会長の指名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。
 最高法規としての憲法のあり方に関する調査小
 委員
      奥野 誠亮君    近藤 基彦君
      中曽根康弘君    葉梨 信行君
      平井 卓也君    森岡 正宏君
      保岡 興治君    大畠 章宏君
      島   聡君    中野 寛成君
      伴野  豊君    赤松 正雄君
      藤島 正之君    山口 富男君
      北川れん子君    井上 喜一君
 最高法規としての憲法のあり方に関する調査小
 委員長            保岡 興治君
 安全保障及び国際協力等に関する調査小委員
      石川 要三君    近藤 基彦君
      下地 幹郎君    谷本 龍哉君
      中川 昭一君    中山 正暉君
      山口 泰明君    桑原  豊君
      今野  東君    首藤 信彦君
      中野 寛成君    赤松 正雄君
      藤島 正之君    春名 直章君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
 安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長
                中川 昭一君
 基本的人権の保障に関する調査小委員
      倉田 雅年君    谷本 龍哉君
      長勢 甚遠君    野田 聖子君
      野田  毅君    葉梨 信行君
      平林 鴻三君    大出  彰君
      小林 憲司君    今野  東君
      水島 広子君    太田 昭宏君
      武山百合子君    春名 直章君
      北川れん子君    井上 喜一君
 基本的人権の保障に関する調査小委員長
                大出  彰君
 統治機構のあり方に関する調査小委員
      伊藤 公介君    川崎 二郎君
      佐藤  勉君    杉浦 正健君
      谷川 和穗君    額賀福志郎君
      福井  照君    島   聡君
      末松 義規君    中川 正春君
      古川 元久君    斉藤 鉄夫君
      武山百合子君    山口 富男君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
 統治機構のあり方に関する調査小委員長
                杉浦 正健君
平成十五年一月三十日(木曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   会長 中山 太郎君
   幹事 杉浦 正健君 幹事 中川 昭一君
   幹事 葉梨 信行君 幹事 平林 鴻三君
   幹事 保岡 興治君 幹事 大出  彰君
   幹事 仙谷 由人君 幹事 中川 正春君
   幹事 古川 元久君 幹事 赤松 正雄君
      伊藤 公介君    伊藤信太郎君
      岩崎 忠夫君    奥野 誠亮君
      倉田 雅年君    小西  理君
      近藤 基彦君    佐藤  勉君
      下地 幹郎君    谷川 和穗君
      谷本 龍哉君    中曽根康弘君
      中山 正暉君    長勢 甚遠君
      野田 聖子君    野田  毅君
      平井 卓也君    福井  照君
      森岡 正宏君    大畠 章宏君
      桑原  豊君    小林 憲司君
      今野  東君    島   聡君
      首藤 信彦君    末松 義規君
      鈴木 康友君    中野 寛成君
      水島 広子君    太田 昭宏君
      斉藤 鉄夫君    武山百合子君
      春名 直章君    山口 富男君
      金子 哲夫君    北川れん子君
      井上 喜一君
    …………………………………
   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月二十日
 辞任         補欠選任
  土井たか子君     北川れん子君
同月二十一日
 辞任         補欠選任
  西田  司君     平林 鴻三君
同月三十日
 辞任         補欠選任
  額賀福志郎君     小西  理君
  野田 聖子君     伊藤信太郎君
  山口 泰明君     岩崎 忠夫君
  伴野  豊君     鈴木 康友君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     野田 聖子君
  岩崎 忠夫君     山口 泰明君
  小西  理君     額賀福志郎君
  鈴木 康友君     伴野  豊君
同日
 幹事西田司君同月二十一日委員辞任につき、その補欠として平林鴻三君が幹事に当選した。
同日
 幹事中川正春君同日幹事辞任につき、その補欠として古川元久君が幹事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 幹事の辞任及び補欠選任
 小委員会設置に関する件
 小委員会における参考人出頭要求に関する件
 日本国憲法に関する件(現在の国際情勢と国際協力)


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     ――――◇―――――
中山会長 これより会議を開きます。
 本年最初の調査会に当たりまして、この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 本院に憲法調査会が設置され、その活動を開始しましてから四年目を迎えました。
 御承知のとおり、本調査会の調査期間は、議院運営委員会理事会の申し合わせにより、「概ね五年程度を目途とする。」ということにされております。
 これまでの委員各位による真摯な御議論、参考人の御意見などにつきましては、昨年十一月一日に中間報告書を作成し、その集約をいたしたところでございますが、残された期間の中で、より一層議論を深めていく必要があろうと存じております。
 本年も引き続き、憲法は国民のものであるという認識のもとで、人権の尊重、主権在民、再び侵略国家とはならないという三つの原則を堅持しつつ、日本国憲法に関する広範かつ総合的な調査を行ってまいりたいと存じますので、会長代理を初め、幹事、オブザーバーの皆様、そして委員各位の御指導と御協力をいただきますようよろしくお願いを申し上げます。
     ――――◇―――――
中山会長 この際、幹事の辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。
 幹事中川正春君から、幹事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 ただいまの幹事の辞任による欠員のほか、委員の異動に伴いまして、現在幹事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、幹事に
      平林 鴻三君 及び 古川 元久君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
中山会長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。
 最高法規としての憲法のあり方について調査するため小委員十六名からなる最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会
 安全保障及び国際協力等について調査するため小委員十六名からなる安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会
 基本的人権の保障について調査するため小委員十六名からなる基本的人権の保障に関する調査小委員会
及び
 統治機構のあり方について調査するため小委員十六名からなる統治機構のあり方に関する調査小委員会
をそれぞれ設置いたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山会長 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。
 なお、先例により、会長及び会長代理につきましては、小委員会に出席できることといたしたいと存じますので、御了承願います。
 次に、小委員及び小委員長の辞任の許可及び補欠選任につきましては、あらかじめ会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、小委員会におきまして参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
中山会長 次に、日本国憲法に関する件、特に現在の国際情勢と国際協力について調査を進めます。
 本調査会における調査もいよいよ後半へと歩みを進めることになりましたが、本日設置いたしました四小委員会におきましては、憲法の全条章を網羅した専門的かつ効果的な調査を行うこととなります。調査会におきましては、定期的に、この小委員会での議論を踏まえた全体的な討議を行うことにより、調査はより充実することかと存じますが、あわせて国民的に関心の高い時事的な諸問題につきまして、本調査会において憲法的見地から議論することも、また極めて有益であると考えております。
 そこで本日は、幹事会での協議を受けまして、国民が重大な関心を寄せている国際情勢と国際協力について、特にイラク問題、北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題に対する委員各位の御意見に従い、討議に付してまいりたいと思います。
 現在の日本を取り巻く国際情勢は、極めて不透明、不確実な状況にあります。
 特に、イラクをめぐる緊張は、国連監視検証査察委員会による査察の報告を受けまして、近来になく高まっております。そもそも、今回の査察受け入れを要求する国連決議第千四百四十一号は、国連安全保障理事会において全会一致で議決されたものであり、これに対するイラクの協力が不十分であったとの報告は、まことに残念なことであります。九一年の国連安全保障理事会決議に反しましてイラクが大量破壊兵器を開発、保有することは、国際関係に重大な影響をもたらすものであり、許されざることでありますが、まして国際社会にとって不安なことは、その大量破壊兵器がテロリストの手に渡ることであります。経済のグローバル化に合わせるようにテロリストの活動もまたグローバル化しております。
 一昨年九月の米国同時多発テロのような事件は、二度と繰り返させるわけにはまいりませんし、テロ活動は根絶されなければいけないということにつきましては、委員各位も同様の強い思いを抱いておられると存じます。
 一方、北朝鮮における国際情勢も極めて厳しい状況にあります。これまでも北朝鮮が核兵器を開発しているのではないかとの疑惑はありましたが、昨年十月には、米国に対し核兵器の開発を進めていることを認めたとの発表もなされております。
 そういった中、北朝鮮は昨年末、核施設の再稼働等を発表し、監視カメラや封印の撤去、IAEA査察官の国外退去を実施いたしました。IAEAは、これに対し遺憾の意を表し、原状回復、核兵器開発計画の放棄等を求める決議を行ったところであります。それにもかかわらず、北朝鮮は今月六日にNPTからの脱退をも宣言いたしました。昨年の日朝平壌宣言に反して、ミサイル発射実験の凍結を取り消そうとする動きもある中で、これは我が国にとって重大な関心事であります。
 また、不審船による領海侵犯が繰り返されておりましたが、一昨年十二月に海上保安庁が撃沈した不審船は北朝鮮のものであったことが確認されております。さらに、昨年行われました日朝首脳会談においては、事実無根と主張してきた日本人拉致につきまして、その行為を認めたところであり、我が国国民の人権が不当に侵害された事実が明らかになりました。
 また、北朝鮮から中国への脱出者、いわゆる脱北者が日本政府に保護を求める動きが相次いでおります。昨日は、中国吉林省で公安当局に拘束されていたいわゆる日本人妻の方の帰国が実現いたしました。その境遇はさまざまであり、個別の事例ごとの対応が必要かと存じますが、そこには国内の法律問題や中国との外交関係など、多くの思慮すべき要因があります。
 このような国際情勢の中、具体的事例に対峙して我が国の安全保障のあり方及び国際協力のあり方について憲法的見地から委員間の討議を行うことは、本調査会の調査に資するところ大であると感じる次第であります。
 なお、幹事会の協議決定により、この常会よりテーマごとの論点整理メモを作成して、委員の緻密な議論に資することといたしております。
 本日は、イラク問題及び北朝鮮問題に関する資料のほか、本日のテーマに関連があると思慮される主な政府答弁の抜粋並びに憲法、サンフランシスコ講和条約等の関連条約、自衛隊法等の関連法律から成る法規集を事務局をして机上に配付いたさせました。
 サンフランシスコ講和条約第五条(c)項では、「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」とされていますが、これなども、単に歴史的な意味を持つだけでなく、今日的な問題にもつながる条項かと存じます。
 委員各位におかれましては、資料の一つとして御参考にしていただき、活発な御議論に資することができればと存じております。
 本日の議事の進め方でありますが、まず、各会派一名ずつ大会派順に十分以内で発言していただき、その後、まずイラク問題について、次に北朝鮮問題について、それぞれ順序を定めず自由討議を行いたいと存じます。
 それでは、まず、中川昭一君。
中川(昭)委員 自由民主党の中川昭一でございます。
 御指名をいただきましたので、先ほど会長がお述べになりましたことにつきまして発言をさせていただきます。
 日本は、国際社会における民族、宗教、貧困、列強による人為的な国境線画定や経済格差を起因とする地域紛争、テロによる人命、人権の喪失による悲劇に対して、国際社会における真の一員として積極的にかかわり、参加しなければなりません。これまでのように、米国の核の傘のもとで対岸の火事を眺めているわけにはいかなくなっております。
 我が国国内で使われている国際貢献という言葉には、国際紛争が日本の国益とは関係ないところで起こっている、それに日本の善意からサポートするにすぎないというニュアンスがあるように思えます。国際紛争が日本からはるか離れたところで発生しても、それは日本国内で起きた事件と同じものだという国際感覚がありません。国際社会や国際法から日本の主体性を考えることを放棄してきたためであります。
 ここ十数年の国際情勢、特に九・一一米国同時多発テロを契機として、他人事ではない国際貢献、国際連合憲章、日米安全保障条約と日本国憲法との整合性をいよいよ国会の場において明確なものとしていかなければならないときが到来いたしました。
 日本国憲法前文は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」、あるいはまた「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、」「この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」としております。
 国連憲章第五十一条は、個別的または集団的自衛権は固有の権利として規定しております。
 サンフランシスコ平和条約第五条(c)項におきましても、今会長のおっしゃられたとおりでございます。
 日米安全保障条約は、その前文において、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」と規定しております。
 そして憲法第九十八条二項は、我が国が国際法規につきまして、国内法上の遵守義務を負うことを定めております。
 他方、現在の内閣法制局による政府見解は、我が国がこのような集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどまるものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないというものであります。
 それでは、政府見解に言う必要最小限の範囲とはいかなるものであるのか。必要最小限ではなくとも集団的自衛権を行使することはできないのではないか。ここに論理のすりかえがあるのではないか。その区別の基準は論理的か、あるいは国民を説得するものであったのか。私たちは、必要最小限の範囲の流動性をも勘案しつつ、明確な答えを見出さなければなりません。
 平成二年八月のクウェート侵攻により人質となった多数の在留邦人の救出について、当時の政府はなすすべもなく、同年十一月に現地入りをし、七十四名の人質救出を実現したのは、中曽根康弘元総理を初めとする自由民主党イラク派遣団であったことは、既に多くの人々にとって残念ながら忘れ去られております。
 国会においてPKO協力法が成立したのは湾岸戦争終結の一年四カ月後の平成四年六月であり、我が国は増税までして総額百三十億ドルの財政支援を行いながら、国際社会からは何らの評価も受けることがありませんでした。戦後、ペルシャ湾に派遣された海上自衛隊掃海部隊の奮闘に対しまして、国際社会からの高い評価とは裏腹に、国内では正当な評価がなされなかったことは、戦後の我が国の体質と言って割り切れるものではありません。
 湾岸戦争後は、PKO法、極東有事、すなわち周辺事態に対しては周辺事態安全確保法、九・一一同時多発テロの発生を受けての対テロ、アフガン戦争に対してはテロ特措法と、事が起きるたびに対応への限定的対症療法、つまり兵力の逐次投入で後手後手の立法を重ねているのが、残念ながら我が国の現状であります。しかも、テロ特措法は時限立法であり、本年十一月二日の期限が来ればなくなる法律であります。
 イラク問題は、周辺事態確保法やテロ特措法で対処できる問題ではありません。我が国は、新法の制定によりこの問題に対処しようとするのでありましょうか。
 これは、法的な問題のみならず、我が国の外交戦略の基本問題であります。兵力の逐次投入の立法ではなく、現行自衛隊法第八章「雑則」に運動競技会への協力とともに規定されているPKO活動につきましては、自衛隊法を改正し、自衛隊に期待されている国際的諸任務について、第三条「自衛隊の任務」に明確な規定を設けるべきであります。
 国連は、既にポスト・フセイン、戦後処理の検討に着手しつつあります。第一次大戦時、イギリス、フランス、ロシアによるサイクス・ピコ協定を発端として人為的に国境線が画定された中東地域の将来に対して、我が国の外交戦略を明確に世界に対して示すべきときが来ております。
 北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権を侵害する北朝鮮の国家犯罪であり、我が国国民の人権をじゅうりんするこれ以上重大な人権侵害はありません。拉致問題につきましては、帰国された五人の方々及びその家族、北朝鮮が一方的に死亡と発表した八人の方々のほかに、百人を超えるとも言われております突然の行方不明者が存在しており、北朝鮮に対し、全員の帰国、原状回復と、はかり知れぬ失われたものに対する対価を求めていかなければなりません。
 さらに、万景峰92号等の入港による数々の不法行為や国内での北朝鮮によるさまざまな不法行為に、厳然として対処していかなければなりません。しかし、現状では、現行法体系は全く不備であります。
 また、北朝鮮が現在保有するミサイルは我が国全土を射程内としておりますけれども、我が国にはこれを迎撃する装備はありません。国民の権利は御丁寧にいろいろ列記されておりますけれども、国民の生命、身体、財産を本質的に守るすべを我が国は持っていないということであります。軍隊は持てない、戦力は持てない、海外での武力行使はできない、専守防衛、集団的自衛権は行使できないといった憲法と安全保障の考え方では、真の国民及び日本の安全は確保できないのであります。
 拉致事件を、捏造されたもの、でっち上げと長年にわたって主張してきた一部野党議員の責任をここに明確にしておく必要があると思います。彼らは、戦前、戦争への道を支持した議員を批判する資格はありません。さらに、五人を送還すべきという一部国会議員の意見は、国民の意思、人権への国家権力の悪用、乱用であります。
 北朝鮮による一方的なNPT脱退宣言は、世界を震撼させるものでありました。我が国は、拉致問題を最終的に解決せず、北朝鮮の核開発とミサイルの脅威にさらされたまま国交正常化や経済協力を行うことは、絶対にやるべきではありません。
 終わりに、今こそ憲法と安全保障の関係を見直し、戦力なき軍隊、軍隊と呼べない軍隊という自衛隊の位置づけを見直し、憲法を改正し、自衛隊法を改正すべきときであります。国連の平和維持活動等との関連からも、集団的自衛権の行使をめぐる政府見解は直ちに改めるべきものであります。
 そもそも、外からの侵害に対して国民一人一人の人権、生命を守るということは、我が国の主権を確立することであります。もはや、安易な言葉だけの護憲とか、憲法第九条をPRすれば平和でいられる、悪いのは日本だ、憲法改正は危険で軍国主義になるといった考えこそが危険なのであります。
 公共広告機構のテレビCMに「ニッポン人には、日本が足りない。」あるいは「日本人よ胸を張りなさい」という本もあります。いずれも外国人の言葉であります。最低限かつ最も大事な国民の生命、自由といった権利を保障し、真の安全保障の確立なくしては、国際社会への真の貢献はありません。
 以上です。
中山会長 次に、島聡君。
島委員 民主党の島聡でございます。
 本日は、イラク問題、北朝鮮問題、国際情勢と国際協力につきまして、民主党の安全保障政策というのが九九年にまとまっておりまして、その憲法問題に関するところを御紹介しながら発言をさせていただきたいと思っています。
 湾岸戦争から十二年たっています。当時と現在の大きな違いというのが、アメリカがイラクに対し予防的な先制攻撃というのをとる、そういうことを言っていることであります。昨年九月の米国の国家安全保障戦略では、テロに打ちかつためには、国際社会の支援をかち得る努力を続けるけれども、必要であれば先制攻撃による自衛権行使の単独行動をためらわないとしています。
 この自衛権という考え方が先制攻撃というものに本当に一致するのか、これは非常に大きな議論になると思います。
 国連憲章のもとでは、武力行使や武力による威嚇というのは全面的に禁止されています。例外が二つ。一つは自衛権の行使であり、もう一つは国連による集団安全保障上の強制措置であります。
 自衛権の概念というのも、これは極めてさまざまに解釈されていましたが、厳しく制約されていると私は思っています。武力攻撃が発生した場合のみ自衛権の行使が認められ、武力行使のおそれだけでは先制的攻撃の自由は認められない、こういうのが今までの国連の慣行であるというふうに私自身は思っています。
 アメリカは今、国際社会と協調しまして、問題の平和的解決に向け、ともかくあらゆる外交努力を払うべきでありますし、引き続きイラクに対して厳格な査察を継続する、そしてまた、イラクへ武力行使をする場合でも、国際社会への脅威となる具体的な根拠、それをきちんと示すとともに、新たな国連安保理決議の採択を求めるべきであると思っています。
 日本の個別的自衛権というのは、皆さん、もう言うまでもありませんが、急迫不正の侵害があること、排除するためにほかの適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、先制攻撃は認められない、これが政府見解であります。
 とするならば、今回のアメリカ、もちろんアメリカのイラク攻撃は議会決議で大統領に授権されておりますし、米国憲法上、手続的には全く問題はございません。しかし、このいわゆる予防的な先制攻撃というのが、果たして今後、国際社会においてどういうような影響を与えていくのか。国連決議がない状況で武力行使に踏み切ったときには国連憲章違反の疑いがあるのではないか、そういうことすら私は思う次第であります。
 アメリカはイラクを武力攻撃するには十分に慎重に、そして国連の決議が必要であるというのが思いでありますが、日本がきちんとアメリカに言うためには、日本自身が毅然としてテロと対決していくという態度を示さなくてはいけません。
 民主党の安全保障政策、ともすればよく民主党は安全保障政策がばらばらであると言われる方が多いので改めて申し上げますが、民主党の安全保障政策はこう書いてあります。
 国連安全保障理事会の決議に基づく武力行使を伴う多国籍軍については、憲法前文の国際協調主義を強調する立場、憲法九条に規定する国権の発動に当たらないとする考え方に基づき、積極的に参加すべきとの意見がある。しかし、多国籍軍はその指揮権は各国が持つことが通常であり、参加するか否かの選択が各国にゆだねられている状況において多国籍軍への参加を日本が決定することを考えると、国権の発動に当たらないとは言えない。このため民主党は、正式の安保理決議に基づく多国籍軍が現実に果たしている役割については一定の評価をしています。しかし、日本が多国籍軍に参加し武力行使を行うことについては憲法九条が許容していない、そう考えております。
 したがって、現在のインド洋で続ける協力とか国際治安活動に対する後方支援、国連PKOに対する協力、これは拡大も含めてですが、それは積極的にすべきでありますが、武力行使を行うことについては憲法九条が許容していない、そのように考えております。
 北朝鮮の問題について申し上げます。
 今、中川議員からもありましたが、NPTからの最終的な脱退や、兵器、プルトニウム抽出につながる再処理施設を再稼働させることなんかをにおわせております。特に、北朝鮮の核、ミサイル脅威は、日本の安全保障に対する直接の脅威であるということを忘れてはならないと私どもも思っています。
 先ほど、憲法九条の問題について中川議員からございましたが、私どもは、憲法九条の解釈に関しましては、国会、学界における論争においてさまざまな考え方が示されましたが、外国からの違法な侵害を受けた場合の個別的自衛権の行使まで放棄したものではない、それは当然であると思っております。したがいまして、ミサイルの発射におきまして、座して死を待つべきではない、そしてまた、いつをミサイルの発射と見るか、注入したときかどうか、そういうことに関しましては、末松議員が予算委員会でただしているところでございます。
 最後に、集団的自衛権について申し上げます。
 インド洋に給油のために補給艦を派遣するということを日本は決めて、現在も施行しております。これは、あくまで武力の行使ではないということでございます。後方支援であるということでございますが、政府は、憲法九条が認める自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限の範囲にとどまるものであり、集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるものであり、憲法上許されないとの立場に立っています。
 私どもは、集団的自衛権に関しまして、憲法解釈の変更により安易に行うべきではないと考えております。つまり、もし集団的自衛権というものをきちんとするならば、ここできちんと議論をして、憲法解釈をして、きちんと解釈を変更すべきである、そういうのが私どもの立場であります。
 今、今回のイラク、北朝鮮の問題等について、例えば、最初に申し上げた先制攻撃ということについて日本はどう考えているかということに関しましては、小泉首相は昨年十一月の党首討論で、先制攻撃がなされていない段階では判断は差し控えたいと述べられました。
 安全保障の議論というのは、常に仮定、ネバー・セイ・ネバー、いろいろなそういう状況のもとの議論であります。そしてそれが、このような、いわゆる仮定だからやらないというようなことをしているのが、もしも憲法の議論があるということで問題になるならば、これはこの憲法調査会において、イラク情勢に関しても、そしてまた今の集団的自衛権に関しても、きちんと議論をして、憲法調査会で整理をして、国会で議論が封殺されることがないようにすべきだと考えております。
 今回は党の方針に沿っての発言でございますので、以上、私どもの安全保障基本政策ということに関しまして、それを基盤にお話を申し上げました。民主党は、九九年にこの安全保障基本政策を党としてきちんと正式に決定いたしております。したがいまして、民主党が、よく言われるように、安全保障政策に一致していないということは全くの誤解でありまして、このような安全保障基本政策に基づいて今後もきちんとした対応をしていくということを最後に申し上げたいと思います。
 以上です。
中山会長 赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 私は、きょうのテーマでありますもののうち、イラクをめぐる問題について主にお話をさせていただきます。
 まず冒頭、エピソード的に一つのお話をさせていただきます。といいますのは、昨日、公明党は、駐日イギリス大使のゴマソールさんを招きまして、イラク問題をめぐるイギリスの対応についてお話を聞くとともに、私たちと意見交換をいたしました。
 イギリスは、御承知のように、ブッシュ政権を強く支持する姿勢を示しております。国連の新たな決議が成立することが望ましいとしながらも、もしそれが不可能なら、各国は自分の責任で後は対処するしかない、急いで軍事行動に臨むということはないけれども、しかしまた、余り時間は残されていない、こんなふうなお話を述べられました。
 これに対しまして、私を含めた公明党からの発言は、アメリカの最も親密な同盟国であるイギリスがもっと適切な助言をするべきであって、日本から見るとアメリカのよき同調者としての態度のみで終わっているようにしか見えない、軍事的攻撃を断念させるような態度強化を望むという意見が相次ぎました。
 これに対しましてゴマソール大使は、軍事力をも辞さずとの強硬姿勢があってこそ、そういう姿勢があってこそ相手の邪悪な意思をくじくことができるんだという姿勢を強調されたわけであります。ただ、余りに執拗な軍事行動批判の発言が公明党の側から出ましたので、いささか辟易した態度をとられ、公明党の態度は一体どうなんだと逆に問い返されたわけであります。
 それに対しまして私は、軍事行動も辞さずとする強い態度こそ相手の軟化を生み出すとの教訓というのは、あの九月十一日以降、日本も持つに至ったし、北朝鮮あるいはイラクに対しても同じことが言えるという点は認識をしている、したがって、イギリスの対応と基本は変わらないと述べました。ただ、イギリスに望みたいのは、フランスほどとまではいかないまでも、もうちょっとアメリカへの歯どめ役に徹してもらいたい、そういう思いがあるんだということを述べました。
 イギリス大使はかなり不満の御様子で、招きながらこちらとしても言いたいことを言ってしまったなという後味の悪いものがあって、反省をした次第でございます。
 こうした発言の背景には、アフガンへの軍事攻撃において、アメリカと全く軌を一にしたイギリスのいわゆる集団的自衛権の行使に強い違和感を持ったことが挙げられます。今の日本の憲法では到底なし得ないことをよくやるなという思いが私には強く残っているからであります。
 公明党は、領土、領海、領空の領域保全に日本はその自衛力を行使すべきであって、他国の領域、海外での武力行使はできないという憲法解釈に立ちますし、これを今後も変えるべきではないとの立場に立っております。
 ところで、日本自身に対する攻撃への防衛のための法としてのいわゆる自衛隊法の整備に加え、この数年、いわゆる周辺事態への対応としての周辺事態安全確保法や、それに関連した船舶検査法、さらには国際攻撃などに対応するための措置としての対テロ特別措置法等、順次整備をされてきました。
 これは、湾岸戦争後の十年というものが、いわゆる、よく日本の経済という部分に関して言われます失われた十年という言い方を適用させるというか、それに関連して申し上げますと、私は、逆にこの過去十年というのが、日本の安全保障という観点からすれば、むしろ失われなかった十年、精いっぱいの十年であったというふうに、PKO法に始まる今日までの一連の安全保障上の措置はなされてきた、そういうとらえ方をいたします。
 ただ、その上で、法整備の観点からすれば、今この国会でも引き続き論議の対象になります有事法制、これを早急に整備する必要がありますし、もう一つ欠けているものがあると考えています。
 それは、国際の平和及び安全に対する脅威、つまり、大量破壊兵器など国際安全保障上の事態への対応、言いかえれば、国際社会の枠組みを壊す行為に制裁を加えようとする多国籍軍への協力をどうするかといった問題がもう一つ大きく残された課題であります。
 これにつきましては、昨年の十二月十八日に、明石康さんを座長とする国際平和協力懇談会が報告書を出されました。その中での指摘、提言が極めて注目をされます。
 これは、国連決議に基づき派遣される多国間の平和活動、いわゆる多国籍軍への我が国の協力、例えば医療とか通信とか運輸などの後方支援について、一般的な法整備の検討を開始すべきだという提案であります。この報告書は、国際平和協力の理念と枠組みや現状等の課題について、今の憲法の中でなされねばならないことを網羅的に示した画期的なものと高く評価できますし、政治が、立法府がどうこれを具現化するかがこれから問われてくると思います。
 その中で、「憲法の前文を流れる積極的な平和主義や国際主義を思い起こす必要があると同時に、国際平和に寄与しようとする国民の願望が、ともすると抽象的・観念的なものになりがちであったことを踏まえ、それを現実のものとする意欲を新たにし、工夫をこらすために、国民的な議論を展開すべきであろう。」こういうふうに述べていますけれども、私たちは全くこれに同感をいたします。
 この報告書に提起されましたもう一つの大事な点としては、現行PKO法をめぐる課題を踏まえた上で、より柔軟な国際平和協力の実施に向けて早急に法整備を行うべきだ、そういう意味合いのもとに、八つの提言がなされております。
 例えば、そのうちの一つの大事な提言としては、「国際平和協力業務において、国際基準を踏まえ、「警護任務」及び「任務遂行を実力をもって妨げる試みに対する武器使用(いわゆるBタイプ)」を可能とする。」こういう提言があります。この提言に対しては、過去の政府の答弁、事務局が用意してくださったこの資料によりますと、このBタイプの武器使用について、衆議院テロ対策特別委員会における内閣法制局長官の答弁を見ますと、「任務遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用でありますが、それを我が国自衛官に認めることは、憲法九条との関係で問題があるという考え方でございます。」こういうふうな答弁があるわけでありますけれども、こういった問題を具体的にどう乗り越えていくのかということが差し当たって私たちが直面しているテーマではないか、そんなふうに考えております。
 とりあえず、以上をもって御報告にかえさせていただきます。
中山会長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 現在の国際情勢と国際協力についてお話ししたいと思います。
 国民の生命と財産、自由、人権、文化を守り、国民生活を発展させることは、国家の最大の義務と責任であると思います。国民生活を根底から覆す非常事態に当たっては、政府は、すべてに優先して国民の生命、財産等を守らなければなりません。武力攻撃であろうがテロであろうが自然災害であろうが、その鉄則は貫徹されなければなりません。
 本来、この最重要事項については憲法に規定がなければなりませんが、残念ながら、現憲法にはそれがありません。私たち自由党は、現憲法を補うために安全保障に関する基本法を制定すべきであると考え、さきの通常国会に提出しました。
 この日本の安全保障はこれまで政府の憲法解釈によってなし崩し的に、恣意的に行われてきましたが、安全保障の原則とそれに基づく自衛隊の行動原則を確立し、内外にはっきりと示すべきであります。その土台の上に、国際協力に際して、また武力攻撃などの非常事態において、国家が国民の生命と財産などをどのような手段、方法で守っていくのかを定める必要があると思います。基本法を制定することにより、これまであいまいにしてきた憲法解釈を確定し、国がどうやって国民の平和と安全を守るかについて、基本方針を明示するべきであると考えます。
 自由党は、我が国の安全保障は次の三原則に基づいて行うべきであると考えております。
 まず第一は、我が国は、日本国憲法の理念に基づき、我が国が武力による急迫不正の侵害を受けた場合に限り、国民の生命及び財産を守るため武力による阻止または反撃を行うものとし、それ以外の場合には、個別的であれ集団的であれ、自衛権の名のもとに武力による威嚇または武力の行使は一切行わない。
 第二に、日米安全保障体制は、我が国及びアジア太平洋地域の平和と安定のかなめとして引き続き堅持し、その信頼性をさらに高める。そのために我が国は日米安全保障条約の諸規定を誠実に履行するとともに、防衛力を効率的に整備する。
 第三に、我が国は、日本国憲法及び国際連合憲章に規定される国際協調主義の理念に基づき、国際連合の総会または安全保障理事会において国際連合平和活動に関する決議が行われた場合には、これを尊重し、当該活動に積極的に参加する。
 この三原則に基づき、現在の国際情勢と国際協力について、イラク問題、北朝鮮問題について、自由党の見解を申し上げます。
 ただいまの原則で明確にしておりますが、国際社会の平和はあくまで国連の枠組みの中で保たれるべきであり、問題が解決されるべきであります。
 まず、イラク問題についてであります。
 一月二十七日に国連によるイラク査察団の中間報告が行われましたが、イラク問題は、イラクは国連決議を守り誠実に国連の査察を受け入れるべきであり、国連は引き続き査察を続け、大量破壊兵器開発に関する事実の検証に努めるべきであります。米英両国などが国連決議一四四一の違反を理由にイラクを攻撃する可能性が指摘されておりますが、一四四一はあくまでも査察受け入れ要求決議であり、武力行使を容認するものではありません。イラクに対する攻撃を行うようなことがあっても、我が国はこれに参加すべきではありません。我が国政府はこの点について考え方を明確に示しておりません。
 一昨年のアメリカに対する同時多発テロ事件の際に、米国が自衛権を行使してアフガニスタンを攻撃しましたが、我が国は法律を制定して自衛隊による後方支援を行いました。直接の武力攻撃であれ後方支援であれ、軍隊を派遣するのは戦闘行動への参加であり、集団的自衛権の行使であります。派遣するのであれば、政府は、集団的自衛権の行使は憲法上許されると堂々と憲法解釈を変えた上で派遣すべきであります。我が国のこの行動は自由党の言う原則からは認めるわけにはいきません。同様に、国連の武力行使容認決議がない限り、イラクに対する武力攻撃には、たとえ後方支援であっても協力すべきではありません。
 中東和平への道はなお遠しであります。エネルギーの多くを中東の原油に頼るなど、中東の平和は我が国自身の安全の問題でもあります。我が国は中東諸国とは経済的にも友好関係にあり、中東和平の実現に向け、積極的に努力していく必要があると考えます。
 次に、北朝鮮問題について申し上げます。
 本年一月十日、北朝鮮はNPTから脱退することを表明いたしました。これは国際社会のルールに反する身勝手な行動であり、到底容認することはできません。北朝鮮が脅かしによって事態が好転すると考えているとすれば、それは誤りであります。孤立化の道を歩むことは事態をさらに悪化させ、問題の平和的解決が一層遠のくばかりであることを、北朝鮮政府は強く自覚すべきであります。
 我が国としては、北朝鮮に対してNPT脱退宣言の撤回を直ちに要請するとともに、国際社会の総意として、NPT脱退宣言撤回と核開発計画の放棄、核査察の即時再開を求める国連決議を採択するよう、国連に対して求めるべきであると考えます。北朝鮮問題についても、イラクの問題と同様に、国連のイニシアチブのもとに平和的な解決が図られるべきであります。
 小泉総理は、昨年九月に平壌を訪問し、日朝平壌宣言を取り交わしました。その内容を見ますと、まず初めに、過去の植民地支配の反省とおわび、日本からの経済協力に触れ、拉致問題にも工作船問題にも具体的には触れず、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題をあいまいにし、しかも「日朝が不正常な関係にある中で生じた」と、あたかも国交がないのが原因であるかのごとき内容となっており、極めて遺憾な内容であると言わざるを得ません。
 この平壌宣言で「関連するすべての国際的合意を遵守することを確認」としていながら、北朝鮮がNPT脱退を表明したのは明確な宣言違反であり、政府は、北朝鮮に対して強く抗議すべきであります。朝鮮半島は、かつて北朝鮮がNPT脱退表明を行った一九九三年当時と同様に、極めて危険な状態に入ったと判断すべきであります。政府は、安全保障面を含め、あらゆる事態に備えて万全の態勢を整備すべきであります。
 自由党はこの見地から、この国会に安全保障基本法案並びに非常事態対処基本法案を改めて提出し、成立を期す方針であることを申し上げまして、私の意見表明といたします。
中山会長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
 最初に、四つの小委員会の設置について一言発言をさせていただきます。
 憲法の運用実態の調査というテーマについては、私は以前から、広範かつ総合的な調査を行う憲法調査会としての調査の主要な内容であると主張してきたものであります。ところが、提案されている小委員会の内容や手法は、それにふさわしいものとなっているとは言えません。
 運用実態を調査するためには、例えば基本的人権では教育権、労働基本権、男女平等など、一つ一つについて多面的、多角的に掘り下げる調査がどうしても必要です。ところが、幹事会での提案では、きょうは教育、次回は労働などについて学者の意見を聞き質疑するというものになっています。学者の意見だけではなく、もちろんそれも大事ですが、行政の実態、法律、現場の実態等々、多角的に調査しなければ、掘り下げた調査にはなりません。結局、残る二年間という調査期間の中で、全条文を調査したという実績をつくるものと思わざるを得ません。
 今回、新たに最高法規小委員会を設置しますが、憲法の最高法規性、明治憲法の制定経緯の検討がなぜ必要なのか疑問であります。月一回の総会での自由討論も、今述べた掘り下げた調査の上に立って討論するというものにならなければ、実りあるものにはなりません。これらはすべて最終報告書づくりが先にありきで、それに向けて調査日程を合わせたものと言わざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。
 さて、イラク問題と憲法について触れたいと思います。
 一月二十七日の国連査察団の国際原子力機関と国連監視検証委員会の査察結果報告は、大量破壊兵器保有の決定的な証拠は得られていないこと、同時に、イラクが査察に完全に協力していないということも指摘をしています。
 エルバラダイ事務局長は、IAEAですが、我々の仕事は着実に進展しており、査察は継続されるべきだ、適切な検証方法がとられ、イラクが自発的な協力を継続することで、今後数カ月以内にイラクに核兵器開発が存在しないという信用に足る確証を提供できるはずだ、その数カ月は戦争を避けるための価値ある投資となるだろう、こう述べています。ブリクス委員長、UNMOVICですが、ブリクス委員長は、イラクが査察のプロセスについて予想以上にUNMOVICに協力してきたと述べると同時に、実質的な協力が十分でないこと、幾つかの問題点があると指摘し、査察の有効性を強調し、それを継続する方針を示しております。また、アナン事務総長は、国際社会が一致結束して査察を進めることによって平和解決ができると述べています。査察団とイラク政府との間でも、共同声明で、今後の査察の段取りが合意をされています。
 したがって、今何よりも重要なことは、査察を必要で十分な時間をとって継続し、それを強化し、国連の枠組みの中でこの問題を平和的に解決するために、引き続き国際社会が努力を図ることであります。当然、イラクは国連憲章の平和解決の方向に沿って努力すべきであり、具体的には、国連の査察に対して無条件に協力を義務づけた決議一四四一を厳格に遵守することが必要だと考えます。
 アメリカが国連憲章の原則を乱暴に掘り崩し、国連を無視した一方的な武力行使計画を進めていることは、極めて重大であります。
 二十八日の一般教書演説の中でブッシュ大統領は、イラクが大量破壊兵器を廃棄しないなら、友好国を率いて武装解除すると述べました。パウエル国務長官も、査察報告を受け、二十七日、イラクは大量破壊兵器を保有し隠しているとして、もし国際社会が国連を通じ武力を行使しようとしなければ、アメリカは主権国家として、同じ考えを持つ国と武力行使の決断を下す権利があると態度表明しています。
 国連が査察によって大量破壊兵器の存在の有無を検証する努力を行っている最中に、一方的、独断的に大量破壊兵器を保有していると決めつけて、国連を無視した一方的な軍事力行使を公言するこのアメリカの態度は、国際社会が取り組んでいる査察による解決への努力を妨害するものになり、国連憲章、国連決議を無視するものとして許されないと考えます。
 こうしたアメリカの態度に対し、ドイツ、フランス、中国、ロシアなどから批判が広がって、中東諸国からもイラク攻撃反対の声が上がっております。アメリカの国内でも、おひざ元のワシントンで二十万人の集会が開かれ、民主党議員百二十二人が、査察の継続を求める手紙をブッシュ大統領に送っています。各地で大規模な集会が開催され、イラク攻撃反対は今や世界の大勢になっていると言っても過言ではないと思います。
 国連憲章は、平和解決が国際紛争解決の基本であることを明記しています。武力行使が可能な場合も、経済制裁を含めたあらゆる非軍事の措置をとる、それでも不十分と認め、かつ安全保障理事会の決定があって初めて許されるということ、四十二条、また、自国が攻撃されたときの自衛反撃で安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、五十一条に限っていることは御承知のとおりです。
 つまり、武力行使は極めて限定的、例外的であって、紛争は平和的解決を尽くすことが大原則であります。これが国際社会の到達点です。今、世界で起こっているイラク攻撃ノーの世論と運動はこの国連憲章の精神に合致したものでありましょうし、この線での努力こそ、今決定的に重要だと考えます。
 そのとき、日本政府はどうでしょう。小泉首相の答弁は、イラクが査察に応じ国連決議を守ることが肝心、国際社会と協力して臨むと、いわば様子見の発言しかしていないというふうに思えます。イラクに国連決議を守らせることは当たり前のことで、問題は、この局面の中で、アメリカも国連憲章を守れ、国連を無視した一方的な武力行使はするなとはっきり言明することではないでしょうか。
 それどころか、政府は、昨年十二月十六日、集団的自衛権の行使につながるとの懸念から派遣を見送ってきたイージス艦を派遣いたしました。エジプト・カイロ大学のアジア研究センター所長モハマド・セリム教授は、私どもの特派員のインタビューに答え、日本政府のイージス艦派遣には非常に失望した、日本は紛争解決でいかなる軍事的役割をも担うべきではなく、中立の立場で問題の平和的解決を目指すべきだったのに、アラブ世界で築いてきた友好なイメージをみずから破壊しているようなものと述べています。
 日本国憲法九条は、国際紛争の解決の手段として、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は永久にこれを放棄するとして、陸海空その他の戦力はこれを保持しないこと、交戦権はこれを認めないと、徹底した平和解決、平和主義の立場に立っています。イージス艦を含むすべての自衛隊を即時撤退させること、アメリカの無法に従うのではなくて、平和解決へ、国連憲章を守れとの立場で力を尽くすべきではないでしょうか。それが憲法九条の要請するところだと思います。憲法調査会は、このような現実に起こっている政府の憲法違反の実態そのものを深く調査すべきだということを申し上げておきたいと思います。
 次に、北朝鮮の核問題についてです。
 何よりも重要なことは、この点でも憲法九条に沿って平和的解決に全力を尽くすことだと考えます。
 NPTの脱退は許されることではありません。何よりも、北朝鮮の態度は、国際的な核問題の取り決めをすべて遵守するとした日朝平壌宣言に違反するものであります。日本政府は、みずから当事者として、北朝鮮に宣言を遵守させる責務があると考えます。NPTは、核兵器の全面廃絶の立場から見れば、特定の国の核兵器独占を認めるものであって、この条約そのものは問題があると考えていますが、一たん加盟していた国がそれを脱退することは、核兵器を持たないという立場を放棄し、新たに核を持つことを宣言するに等しいものであって、断じて許されるものではありません。
 一月七日、日米韓三国局長級協議後に発表された共同声明では、三国代表は北朝鮮に対して核兵器開発の廃棄を求めた、三国は問題の平和的かつ外交的解決を追求する意図を改めて表明したと明記しております。
 この問題のあくまでの話し合いによる解決を目指すということが確認をされておりまして、その努力を尽くすことが非常に大事だと考えます。それが唯一の被爆国としての日本の重要な責務だということを申し上げまして、私の発言とさせていただきます。
中山会長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 憲法から見た今日の国際情勢について意見を述べたいと思います。
 最初に、イラク問題について申し上げたいと思います。
 今、我が国がとるべき態度は、米国が主張する武力による問題解決には反対し、日本国憲法の精神に沿って国際社会に働きかけることであります。既に米国による軍事攻撃を想定して、その場合、我が国は米国の行動を支持すべきであるとする発言が一部に行われていることは極めて問題だと言えます。
 そもそも憲法は、前文において、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とし、我が国のみならず、全世界の人々が平和のうちに生存する権利を持っていることを確認しています。さらに、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と決意しています。
 この憲法の前文は極めて重要です。今日のイラク問題を考えるときにも、日本政府がこの憲法のうたう理念に沿って行動しているかといえば、残念ながらそうではありません。
 最近、特に国連中心主義ということが言われております。確かにこれは重要であります。しかし、国連といえども、私たちと切り離されたところに存在するものではありません。国連は加盟国によって構成されているのであり、したがって、国連がどのような行動をとるのかは、結局のところ、加盟国の態度によって決定されることになります。
 日本にとってもこの点は極めて重要です。すなわち、国連中心主義に名をかりて、国連任せになるようなことがあってはなりません。さきに引用しましたように、国家の名誉にかけて、全力を挙げて崇高な理想と目的を達成するという憲法前文に示された決意をどのように実行し、そして平和的な国際社会をつくり上げるのか、まさにそのための主体的な努力を尽くすことが重要であります。国連中心主義といえども、このような憲法の理念や決意としっかり結びついたものでなければならないことは当然のことであります。
 この点に関しては、現状では日本政府が最大限の努力を行っているとは言いがたく、これは憲法上からいっても極めて問題であります。一たび軍事攻撃が開始されれば、多くのとうとい命が、しかも無辜の市民の命が奪われることは明らかであります。例えば、さきの湾岸戦争においても、米軍が使用した劣化ウラン弾による被害は今なお深刻な状況を市民に与え続けております。また、今続いておりますアフガニスタンへの軍事攻撃によっても地上で何が起きているかを直視すべきであります。
 憲法第九条によって、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争の解決の手段としては永久にこれを放棄した我が国が国際紛争においてとるべき道は、戦争回避のために最大限の努力をすることであり、万が一、米国による軍事攻撃が行われる事態に至ったときには、速やかに軍事攻撃を中止させるために、その先頭に立つことであります。これこそが、憲法の理念を実現する道であります。
 さて、イラク問題や朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の問題、いずれも大量破壊兵器にかかわる問題で指摘をされております。特に核兵器開発問題が主要な問題になっておりますので、次に、この点について触れてみたいと思います。
 私たち社民党の態度は、たとえいかなる理由であれ、そしていかなる国であれ、核兵器を開発し保有することは絶対に認めないということであります。私たちは、世界のすべての核兵器を速やかに廃絶すべきであると主張しております。
 核兵器が非人道的な大量殺りく兵器であることは、五十七年前の広島、長崎の悲惨な体験が証明しています。世界で最初の核戦争の体験を持つ我が国は、その意味で大きな役割を果たさなければなりません。したがって、北朝鮮がNPT体制からの離脱を表明したことは、それが核兵器開発、保有へと発展する危険な行為であり、これを許さないために、国際社会と協力して、平和的手段によって解決するために全力を挙げて取り組むべきであります。
 我が党は既に、朝鮮半島を含む北東アジア非核地帯構想を発表していますが、その実現こそが今日の問題を解決するための大きな役割を果たすことになると考え、そのため、全力で取り組む決意であります。
 北朝鮮は、平壌宣言にもうたわれた、すべての国際合意を遵守し、核兵器開発につながるこのような行為は直ちに中止すべきであることを改めて強く申したいと思います。
 さて、昨年、安倍内閣官房副長官や福田内閣官房長官などの憲法と核兵器保有についての発言が相次ぎました。その趣旨は、自衛のための必要最小限を超えない範囲にとどまる限り核兵器保有は憲法九条第二項に違反しないという、全く許されざる発言であります。
 被爆国である我が国は、憲法九条を持ち出すまでもなく、核兵器が非人道兵器であり、憲法違反であるとするのは当然のことであります。核兵器の非人道性は、一九九六年の国際司法裁判所の勧告的意見でも示されており、我が国憲法で保有できないことは当然であります。核兵器に対して不使用と廃絶という明確な態度を持たない限り、我が国が核兵器廃絶のための真の役割を果たすことは到底できません。
 今問題になっている核兵器の不拡散に関する条約、NPT体制は、五カ国のみ核保有、核兵器保有を認めるなど、幾つかの問題を持っています。二〇〇〇年四月のNPT再検討会議では、保有核兵器の完全廃棄を達成するという核保有国による明確な約束を含む最終文書が全会一致で採択されましたが、残念ながら、世界はその方向に向かって進んでいません。被爆国日本政府の果たすべき役割が厳しく問われていると言えます。
 NPT条約では、アメリカなど五カ国の核保有を認めていますが、残念ながら、このほかにも、イスラエル、インド、パキスタンが新たな核保有国となっており、この三カ国はNPTへの加盟を拒否しています。
 特にここで指摘しておかなければならないことは、インド、パキスタンの核兵器保有です。我が国は、一九九八年に両国が行った核実験に対して、核兵器保有を許さないとする立場から経済制裁を行ってきましたが、ところが、一昨年、米国によるアフガニスタンへの軍事行動を支援する形で両国への経済制裁を解除してしまいました。事実上、我が国も両国の核保有を容認することになったわけです。
 しかも、我が国政府が昨年国連総会に提出した核兵器廃絶決議でも、二〇〇〇年の再検討会議で採択された、完全廃棄を達成する明確な約束を実行させるという重要な課題について、明確な姿勢を示しておりません。
 世界の最大の核兵器保有国はアメリカです。アメリカ政府は、一九九六年九月の国連総会で採択された決定的な、画期的な包括的核実験禁止条約、CTBTをいまだなお批准しておりません。それどころか、核爆発実験の再開をも示唆し、懸念が広がっております。また、CTBTでは禁止されていないとして、未臨界実験を繰り返しています。
 しかも、アメリカは、さきに述べました我が国政府の国連決議に対しても、一昨年、昨年と反対をしました。しかし、こうしたアメリカの核政策に対して日本政府は全く批判できず、対米追随の核政策となっています。いかなる理由であれ、どの国であれ、すべての核兵器保有が違法であるという立場に立って、アメリカの核政策に対しても厳しい姿勢を示すことが今極めて重要であります。
 世界最初の被爆体験を持つ日本が、こうしたあいまいな核政策であってはなりません。身をもって核兵器の非人道性を体験した我が国こそが、核兵器廃絶、禁止に向けてのイニシアチブを発揮すべきであります。そのためにも、非人道兵器である核兵器が憲法に違反していることを改めて再確認し、非核三原則を法制化することによって、憲法の平和主義の理念をより明確にすべきであることを申し上げて、私の意見とします。
中山会長 次に、井上喜一君。
    〔会長退席、仙谷会長代理着席〕
井上(喜)委員 保守新党の井上喜一でございます。
 最近の国際情勢あるいは国際協力との関連において、日本国憲法のどういうところが問題なのかというようなことについて、意見を述べてみたいと思います。
 中東のイラクの問題でありますとか、あるいは北朝鮮の問題が現実の問題として要請されてまいりまして、今さらながら、我が国の憲法制定当時の状況と今日の状況、この彼我の差というのは非常に大きいということを痛感するものでございます。
 私は、憲法制定当時、あるいは憲法そのものに、当時の占領軍の占領政策が色濃く反映した部分がありますけれども、憲法九条あるいは前文なんかはその典型的なものだというふうに考えます。当時、我が国は戦争に負けまして、これからどう復興していくかというようなことが中心でありまして、国際関係とは余り直接に関与をしない状況におったわけでございます。
 また、占領軍といたしましても、我が国を徹底的に非武装化していく、軍備をなくしていく、こういうことを考えておりましたので、ある意味では、日本の国の状況それから占領軍の考え方が一致をしたといいますか、相矛盾することなしに日本国憲法がつくられた、こんなふうに私は理解するわけであります。
 今日、日本の国も当時とは随分変わりまして、経済的にも非常に大きな国になってまいりましたし、またそれなりに国際社会に対して責任を持つようにもなってきておりますし、また一定の役割を果たすことを要請されてきている、こういう状況だと思います。
 そういったことで、我が国も、国際的な平和と安全の維持でありますとか、あるいは自由貿易体制の維持など、これは日本の国益を守るためにも必要になってきている、こういう状況だと思います。
 イラクの問題、中東紛争の問題を考えますときには、エネルギーの安定供給の確保というのが、我が国の経済活動あるいは国民生活の上で死活的に重要になっているわけでありまして、こういうようなことを十分念頭に置いてこれらの問題に対処していかないといけない、こんなふうに思います。
 さらに、北朝鮮の核開発の再稼働宣言でありますとか、あるいはミサイルの発射実験、これは我が国に対する直接の脅威、これを現実のものにしているわけでありまして、これに対処していくことは当然のことだと思います。
 また、テロ活動が世界的に拡大をしておりまして、テロ、ゲリラが世界の平和と安全に対する一大脅威になっているということ、これまた周知のことでありまして、そういった撲滅のための国際協力が求められるに至っておりますし、我が国としては、最大限そういったことに協力をしていかないといけないと思います。
 これは、憲法調査会でありますので、制度的に国内の憲法あるいはその他の法体制をいかに整備していくかということが今日の議論だと私は思うのでありますけれども、状況の変化に対応いたしまして、憲法九条の解釈というのも微妙に違ってきたと私は思うのであります。
 日本政府の基本の考え方は、自衛権と集団的自衛権は本来の権利としてある、固有の権利としてあるんだけれども、集団的自衛権の行使については憲法九条で禁じられている、こういう解釈をしているのでありまして、その集団的自衛権の行使であるかないか、これを判断する基準として、武力の行使の一体化ということを言うわけであります。他国の軍と武力行使を一体化して行う、それが判断の基準で、集団的自衛権の行使になるのかならないのか、こういうことを言ってきたと思うのであります。
 どうもこの解釈も、近代兵器が飛躍的に発展してまいりますと、なかなか明快に説明できる区分でなくなってきていると思うんですね。一体になっているのかなっていないのか、どういう状況をもってそういうことを判断するのかということが非常に難しいということで、こういうことを言うこと自身が非現実的になってきている、こんなふうに思うのであります。
 私は、そういう意味で、日本国憲法の解釈、集団的自衛権についての解釈あるいは武力の一体化の解釈、これについてもう少しやはり詰めていく必要がある、解釈の変更を含めてこれはきちっと詰めていく必要がある、こんなふうに考えております。
 九条の問題というのは、まさに日本の国の存立にかかわる基本の問題でありますので、今日の状況をよく考えた上で柔軟に対応できるように、かつまた一つの原則というようなものも必要でありますので、そういう原則もしっかりと規定をしていく、そういうようなことが必要だ、私はこんなふうに思います。
 どうも、九条をそのままにしておいて解釈を自由に変えていくというのもいかがかと思うのでありまして、解釈を変えるならば、これがもう限界だというような解釈の変更をすべきでありますし、その解釈でどうも現実に対応できないというような場合は、九条の見直しそのものをしていかないといけない、こんなふうに考えております。
 いずれにしましても、法律を墨守して日本の安全がないがしろにされることのないようにするということであります。憲法も現行法でありますから、死文の憲法になるというのはやはり一番の問題でありますので、生きた憲法として現実の諸問題に対応できるような憲法の見直しをしていく、あるいは憲法解釈をしていくということが必要である、こういうことを申し上げまして、陳述を終わります。
    〔仙谷会長代理退席、会長着席〕
中山会長 これにて各会派一名ずつの発言は終了いたしました。
    ―――――――――――――
中山会長 次に、委員各位からの発言に入ります。
 御発言を希望される方は、お手元にあるプレートをこのようにお立てください。御発言が終わりましたら戻していただくようお願いいたします。
 議事整理のため、御発言は、会長の指名に基づいて、自席から着席のまま、所属会派と氏名を述べられてからお願いをいたします。
 なお、本日は、討議をより一層充実したものにするために、一回の発言は五分以内とし、公正を保ちつつも、委員相互のやりとりが成り立つよう運営いたしたいと存じております。
 発言時間の経過についてのお知らせでありますが、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。
 それでは、イラク問題、北朝鮮問題がございますが、まず、イラク問題について御発言を願います。
葉梨委員 自由民主党の葉梨信行でございます。
 イラク問題についてということでございますが、私はもうちょっと総括的な御質問から始めたいと思っておりましたので、お許しをいただきたいと思います。
 中川委員からの御発言、冒頭に、国際貢献ということをよく使われるが、国際紛争が日本の国益には関係のないところで起こっている、我々は善意からサポートするにすぎないという指摘がございました。我々は日本だけで日本の平和、安全が確保されるなんということに戦争直後とらわれておりましたけれども、現在はそういう状況にないという適切な御指摘であったと思いますし、そういうことをベースにして各党の皆様と議論を展開してみたいと思います。そのことは、今、井上保守新党委員から、憲法制定時と現在の状況は違うという御指摘に通ずるものがあると思うのでございます。
 私、各党の皆様に御質問したいと思いますが、日本の平和がどういうことでこの五十数年、六十年近く守られてきたか。もちろん、憲法にうたいます日本の平和主義が、世界各国から認められ、評価されてきたということはございますけれども、例えば朝鮮事変のときに、実は国連軍と韓国軍が、南進してきました北朝鮮軍に対しまして大変な犠牲を払いながら抵抗いたしまして、実は、釜山で食いとめて反撃に入ったということで、我が国に上陸し、戦火が及ぶことを防いでくれたという事実を、私は忘れることはできないのでございます。
 それはまさに、それらアメリカを中心とする国連軍、韓国軍の皆様の血をもってあがなわれた日本の平和ではなかったかと思うのでありますけれども、その点につきまして、各党の皆様、特に共産党、社会民主党の皆さんはどうお考えになるか。
 そしてまた、六十年近くにわたる平和は、私は、日米安保条約というものがあってこそ日本に侵略をしようとすることがなくて済んだのである。しかし、九八年でございますか、テポドンを北朝鮮は発射いたしまして、我が国の本土の上を飛び越えて着弾したということもございました。そういう危険なこともございましたが、もう六十年近く本当に平和で安全な生活を過ごすことができたのは、私は日米安保条約があったからこそだと思います。
 それは、北朝鮮自身が、百基とか二百基とか言われるミサイル発射台を持っている、あるいは、中華人民共和国が多数の核発射台を持っていて、それはどこの国に向けられているかわからないけれども、我が国もその対象の一つに現になっているということを踏まえて、どうお考えになるか伺いたいのでございます。
 共産党の春名議員から、多角的な、掘り下げた調査をという御指摘は、私も同感でございますが、イラクに関して申しますと、もし事実がわかればということをおっしゃっておりました。来月五日とか、アメリカのブッシュ大統領がきのう教書の中で、アメリカとして調査したイラクのそういう危険な生物兵器、化学兵器あるいはその他についての事実を発表するという指摘がございましたが、もしそれが事実ということがわかった場合に、共産党としてどう判断されるか、伺いたいと思います。
 また社会民主党、これは、今まで申し上げましたことは、金子議員が、前文理念を大事にし、各国の公正と信義に信頼するということを強調されましたが、我々も同感でございますけれども、世界各国、百三十国が憲法に平和主義をうたっておりまして、しかも、国際紛争は第二次世界大戦終了後数年、本当にごくわずかな数年後から世界各地で起こっているわけでございます。それらについて、一体、憲法の前文の理念を掲げるだけで日本国民の平和、安全、国土の保全、独立を確保できたんだろうか、そのことについてお話を伺いたいと思います。
 また、拉致事件については、金子議員からお触れになりませんでした。そのことについて、ひとつ御説明いただきたいと思います。
中山会長 ただいまの葉梨君の御発言に関するもので、日本共産党の春名君、社民党の金子君、御意見ございましたら御発言をお願いいたします。
春名委員 最初の質問の、日本の平和が五十数年間どういう形で守られてきたかについてですが、これは、憲法九条と前文に基づく平和主義が大きな貢献をしてきていることはもう間違いないと思います。今まで、戦後、軍隊が外に出ていって人を殺すということは一度もやりませんでした。その徹底した平和主義の努力、そしてそれを支える国民の努力が大きな力を発揮してきたというのが、偽らざる実際の姿ではないかと私は考えております。
 そして、安保条約と憲法との関係でいいますと、これは大きく矛盾しているものです。今、朝鮮戦争の話なんかもされましたけれども、逆に、例えば六〇年代のベトナム戦争のときには、日本の米軍の基地がどれだけの規模で使われて、どういう役割を果たしたか、そういうこともよく考えなければならないんじゃないでしょうか。そういう問題が今想起されていると思います。
 それから、イラクの問題について質問がありましたので申し上げたいと思いますが、私は、二月五日にどういうものが出てくるかわかりませんが、イラクの証拠というものについて、もし持っているのであれば早くそれを出して、本当にそれがどうなのかということを議論すればいいのに、そういうことをやらない。それで、戦争を準備するために、戦争を前提にして今対応しようとしている姿が非常にありありに出ているというのが、非常に危険を感じているわけです。
 そして、当然、先ほど私が言ったように、国連決議がなければだめだというのは国連憲章の精神だと思いますし、それは当然のことです。前提の問題として、そういう方向に行く前に、今大事なことは、私が発言したように、平和的解決の道が開かれているわけですので、その努力をどれだけ尽くすのかということが、今この時期、一番大事なことではないかなと私は思っています。
 そのことを申し上げておきたいと思います。
金子(哲)委員 何か、多岐にわたる質問が出ておりますので、すべてを答えているかどうかわかりませんけれども、戦後の日本の平和の問題について、私は、やはり平和憲法があったからだというふうに考えております。何よりも戦前の時代と比較して一番大きなことは、日本の国民が戦争によってだれ一人犠牲にならなかったこの事実というものは、やはり私は、日本の憲法が平和主義をうたっていることが一番大きな柱になっているというふうに考えております。
 日米安保条約の問題を出されておりますけれども、仮に、その中にあって、戦争という事態が起きたときのことを我々は想起しなければならないわけでありまして、戦争の事態をつくらないということが憲法の理念でありますから、そのことに最大限の努力をしてきたし、またその理念を生かしてきたということが日本の戦後の平和を守った最大のことだというふうに私どもは考えております。
 もちろん、憲法にうたわれている、前文にうたっている平和主義の理念というものが、世界の人、すべての地域に広がっているということでもないと思います。しかし、国連の中にあっても、戦争というものをどうやって回避するかということは、基本的な理念としてあるように私は思います。その点では、日本国憲法がうたっている平和主義というものが、これからの世界の中にあって指し示している方向性というものを先駆的にうたっているわけであって、そのことが否定されるものでも何でもないというふうに私は考えております。
 それから、拉致問題についての指摘がありました。
 何をお答えすれば一番いいのかという疑問がありますけれども、私どもは、拉致の事件については、既に党としても、その事実が明らかになった時点で、これは犯罪行為であって、さらに、真相の究明をやるべきだということは申し上げております。また、私どもは朝鮮労働党に対しても、その点については直接書簡をもって、その問題の真相、今不十分だということを申し上げております。その点については我々も同様な意見でありますし、人権が守られるべきという意見については同じような考えであるということを申し上げておきたいと思います。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 この場ではイラクという話でございましたけれども、イラクだけではなく北朝鮮も含め、あるいはテロも含め、日本に対する脅威に対して日本国憲法がどのように対応できるのか、現在の状況にどのように日本国憲法が即応しているのかという点を中心に、幾つか述べさせていただきたいと思います。
 憲法を読めばわかるように、それが成立した状況というのを考えれば当然のことでありますが、そこで述べられている趣旨というものは、日本が国際の平和を乱さないということを重要な視点として掲げているわけであります。
 それは、第二次世界大戦、太平洋戦争の惨禍を生み出したという点において、その反省から出てきている憲法でありますから当然のことでありますが、現在の状況のように、特に冷戦後、世界において国際社会が非常に不安定化している、そういうような状況において、一体どのように日本が国際の平和を構築していくのか、あるいは国際の平和を維持していくのかということにポジティブに対応するという形では、憲法の条文というものは明確にはこたえていない。もちろん、そこには前文に込められた高い精神性というものがあるわけですが、しかし、具体的には、では日本は世界の平和のために何をするのかということは規定されていないわけであります。
 このことが、PKOの問題だけではなくODAのような海外援助に関しても、あるいは世界各国がやっているようなさまざまな世界の貧困や環境の問題に対する人的な派遣という点に関しても、十分に対応していない一つの背景ではないかな、そういうふうに考えております。
 二つ目の視点は、日本は憲法九条においてその軍事的な活動というものが否定されているわけですが、一方、日本には膨大な基地があって、たくさんの人がいて、そこから毎日のように航空機が完全装備で戦場へ向かっているような状況もかつてあったし、また、これからもあるかもしれないということであります。
 そういうような状況というものは、現在、ドイツなんかにおいても、一方ではドイツはイラク問題に関しては参戦しないと言いながら、現実にはそこの基地からアメリカ軍が爆弾を抱えて行くではないかという批判がドイツ国内で起こっていると言われておりますが、同じように日本も、基地がここにある以上、それは日本の軍隊が別に攻撃していかなくても、そこにある外国軍が戦闘機を送り出せば、それは自動的に参戦に加担すると見られてもしようがないわけでありまして、現実に中東社会において、反日感情、日本に対する嫌悪感が非常に強まっているというのがその現実を示しているものだと思います。
 それからまた、このことは同時に、そうした日本と非常に離れた国からも攻撃される可能性がある、あるいは、そういう現状を見て日本に対してテロ攻撃をしてくることがあるということでありまして、この点に関してもどのように対応すべきかということをこれから考えていかないとというのが第三点であります。
 すなわち、日本国憲法というのは、日本が他国に、特に近隣諸国に惨禍をもたらしたという反省から出てきているわけでありまして、日本国が外国によって占領されたり攻撃されたりしているという事態を想定しているわけではありません。ですから、そう考えますと、今の有事法制の問題もありますけれども、一体、そういう攻撃された状況、それは近隣諸国にしろテロにしろ、そういう状況に関して国民がどのように行動すべきなのか、あるいは国民をどのように保護すべきかということが非常に十分に対応されているとは考えられないところがあります。
 私はNGOとして活動してきたわけですが、例えば戦場や紛争地に行けば真っ先に直面するのは、外出禁止、そしてチェックポイントというものがあるわけです。それはもう、戦争というものは、戦争だけではなく紛争というものは、ちょっと起こっただけで、たちまち家の外にも出られない、買い物にも行けないという、基本的な人権すら制限が真っ先に加わってしまうんですが、こういう状況にどのように対応するかということが日本国憲法の中には明記されていないというものであります。
 しかし、現実のようにテロ攻撃が行われる、あるいは近隣諸国からの脅威というものが高まる状況において、この面に関しても、日本には基本的な対応を定めた基本法というものがやはり必要となるのではないかな、そういうふうに考えております。
 最後に、こうした問題に関してもやはり精神が重要だということであります。例えば難民が押し寄せてくるとすると、すぐ対応できないとか、追い返せとか、そういう問題がありますが、現実に紛争地ではどうしているか。それは、何十万という人たちを多くの市民がホームステイさせているわけです。それはやはりその紛争地の知恵でもありますけれども、やはりこういう状況において日本はどのように、近隣諸国での惨禍、あるいは日本が関係するさまざまな問題に関して助け合うのか、この精神性もまた憲法の中には十分に盛り込まれていないのではないか、そういうふうに私は考えております。
 そういうことをもって、これから、現在のイラクあるいは北朝鮮における脅威を奇貨としまして、もう日本においてもどのように対応すべきかを真剣に考えるべき時期に来ているんだ、そういうふうに考えております。
 以上です。
赤松(正)委員 先ほど葉梨委員が各党の意見をと言われましたので、簡単に触れさせていただくと同時に、葉梨委員の質問に対する社共両党のお二人の答えにいささか疑念を感じますので、ちょっと追加で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、日本国憲法とそれから日米安保条約、この二つの問題について葉梨委員が言われました。私は、両方が同時に相補い合って役割を果たした、この二つの存在は矛盾するものではない、憲法の役割も大きなものがあったし、同時に日米安保条約の存在も大きかった、こんなふうに思います。
 そこで、先ほどの委員の御質問に対するお二方の答えの中で私が思いますのは、お二人とも憲法の前文におけるところの平和主義の理念ということをおっしゃったんですが、私は、両党についてぜひともここでお考えを聞かせていただきたいと思うのは、PKO法に対する両党の態度であります。
 約十年前に、イラクのクウェート侵略に端を発して、この問題をどうとらえていくかということで、私たち、私はその当時議席を持っておりませんでしたけれども、大変な大議論になって、当時、まだPKOに本格的な参画をしていなかった日本が、やはりPKOに参加することということが大事だという観点から、まさに憲法の前文の平和主義の姿勢で、PKOに参画するということを決めた。ただ、その決めた流れの中で、やはり従来的な憲法の九条の制約というものを十分意識しながら、いろいろな角度で手だてを講じた、そんなふうに思います。
 約十年たって、私の記憶では社共両党は激しくPKO法に反対をされたというふうに記憶をいたしておりますけれども、今もなおPKOに対しては反対なのかどうか、あるいは何らかの手だてを講じてやればいいと思っておられるのか、今のPKO法が問題ありと思っておられるのか、その辺をはっきりさせてほしい。当時大反対をされたメディアも今ではPKOの価値を認めているわけですけれども、そういった点について、過去と今とにどう決着をつけておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
 先ほど私が引用いたしました国際平和協力懇談会、明石康さんが座長でありますが、その中にも、国際平和協力法の今後を考える上で、要するに法律上の諸問題はいろいろある、一言で言えば、国際平和協力の現場というのは、当初の国際平和協力法が想定したよりも広範な協力を必要としている。つまり、事態は大きくどんどん変わっているんだ。そういう流れの中で、いろいろ知恵をひねって対応していかなくちゃいけない。それが私は憲法の前文が求めている平和主義に大きくかかわってくると思うんです。
 その辺のところについて、何だか紋切り型に憲法の前文の平和主義云々と言われるだけで、PKOに反対という態度を示されて、今なおそれを引きずっておられるんだったら、いささかおかしいのではないか、そんなふうに思うんですけれども、お答えを願いたいと思います。
中山会長 それでは、ただいまの赤松委員の御発言中のPKO法案等に対する態度に関しまして、日本共産党、社会民主党の両党からそれぞれ御発言を願いたいと思います。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 まず、その質問に入る前に、今のイラク問題をめぐる局面なんですけれども、国際連合ができて大分長い時間がたつわけですが、国際連合が目指しているいろいろな紛争問題の平和的解決は一体何なのかということが、国連憲章に立ち戻りまして国際政治の舞台で大問題になっているのが今の局面だと私は思うんです。
 そういう意味では、アメリカがやろうとしている一方的な攻撃の問題ということに対して、世界各国が国連憲章からいってもおかしいんじゃないかということを言っているのは当然でして、そういう目でこの問題を深く見ていくことが大事だというふうに思います。
 それから、赤松委員から出された問題ですが、まず一問目の憲法と安保条約の問題なんですけれども、これは全く矛盾した存在です。といいますのも、この安保条約の存在によって外国軍の基地があり、そのことによってもたらされる諸矛盾というのはもういろいろな形で明らかになっていると思うんですね。これはほんの一例なんですけれども、憲法九条が求めている日本のあるべき姿からいったら、これは矛盾した存在として見ないことには問題の解決にならないというふうに思います。
 それから、PKOの問題なんですが、私はこれは二つの面から見る必要があると思っております。
 一つは、国連が行おうとしているPKO自体に、私ども、これが国連憲章に反するという態度をとったことはありません。問題は、国連がそれぞれの時期にやろうとしている中身が、一体、国連憲章が定める方向に沿っているものなのか、あるいはそこで起こっている事態に沿っているものなのか。そういうことを一つ一つ吟味しながら判断していくという立場をとっているということ。
 それから、日本で、私ども反対いたしましたPKO法なんですけれども、PKOというのはどうしても軍事的な側面を含みますから、そこに参加するという面が出てくる場合には、これは憲法上許されないという点での反対でしたので、PKOについては、そういう両面からごらんいただければというふうに思います。
 以上です。
中山会長 今の御発言について、今度は社会民主党の金子委員から御発言ください。
金子(哲)委員 社民党の金子ですけれども、日米安保の問題については、やはり日本が憲法で非武装をうたっている限り、速やかに解消すべきだ、私はこのように考えています。
 これまでの歴史の中にあっても、日本の米軍基地が果たしてきた役割を考えれば、ベトナム戦争への出撃もそうでありますけれども、まさに他国における紛争の解決の手段として日本の米軍が使用されたという歴史的な事実も明らかでありますから、その点を申し上げておきたいと思います。
 PKOについてでありますけれども、私はPKO活動そのもの等は否定をしているわけではありません。ただ、PKO法において反対をしたのは、自衛隊が海外に出ることに対して私どもは反対をしたわけであります。しかも、その後の状況を見てみましても、PKO活動にかかわる自衛隊の武器使用が現実的な問題として、武器使用の範囲が拡大している現実を見ても、私ども、やはり自衛隊が参加をすることによる紛争への巻き込まれる危険性というものを言っているわけであります。
 私どもは、日本国憲法がある限り、前文のみならずその九条も含めて、PKO活動に協力するとすれば、非武装の範囲で活動できることに限定をされるべきであって、しかも、新たな国際協力のための、PKO活動を援助するための非武装の、自衛隊と別の組織をつくってPKO活動をやるということを提案しているわけでありまして、PKO活動そのものを否定しているわけではなく、今の自衛隊によるPKO活動について、自衛隊の海外派兵につながるPKO活動について反対をしているということでありますから、その点については今も変わっておりません。
中山会長 今の両党の御発言について、赤松委員、御意見があったらお述べください。意見はありませんか。
 葉梨君。
葉梨委員 PKO活動についての赤松委員の御発言は、私は大変評価したいと思っております。PKO活動を、もう少しきちっとした、自由度をとって国際協力ができるようにしたい、明石さんの御提言などを十分参考にすべしという御説は、私も同感でございます。
 それから、共産党の山口委員に質問申し上げますが、理念がどうかということではなくて、イラクが持っているであろうと言われる生物化学兵器が現に存在するという証拠が出たときに、しかしそれでも制裁をアメリカが先頭に立ってしてはいけないとおっしゃるのか。そのときには、まあやむを得ないというお考えなのか。そのことを伺いたいと思います。
 それから、金子委員に対しましては、憲法と安保について否定的なお話がございました。これはまた後で議論をすべきことと思いますが、ベトナム戦争につきましては、終わりましてから、アメリカの要人、あれはどなたでございましたか、アメリカも、いわゆる後進国が独立するためのいろいろな運動をしてきて、それをアメリカが武力で抑えたということは、アメリカの失敗、政策判断の誤りであったという反省の言葉が聞かれたはずでございます。アメリカ政府がそれを認めたかどうか、アメリカの大変政治的に有力な立場の識者がそういう反省をしていらっしゃるということを私は聞いた覚えがございます。私はそのように認識しております。
 そこで、山口委員に、その事実があったときにどう判断していったらいいかというお考えを伺いたいと思います。
山口(富)委員 最初の質問は春名議員が答えたことなんですけれども、私の方に葉梨委員の方から質問がありましたのでお答えしますが、それはやはり国連が判断することだと思います。事実としてそういう大量破壊兵器の保持が現実に認定されるということになった場合は、国連の一連の検証委員会の報告にも盛られ、それが安全保障理事会で議論されることですから、そこでの判断がやはり尊重されるべきだ。
 私は、その時点で、ではアメリカの軍事攻撃を認められるのかという点でいえば、やむを得ないという立場には立ちません。やはり、これは国際世界の今の到達からいけば、十分に認定されたら、認定されたということは、それはどこにどれだけあるかというのはわかるわけですから、それをどうやってなくしていくのかという次の手をみんなで考えればいいことであって、その事実という問題は、そのことを踏まえて、当然、国際社会がきちんと判断していくだろうというふうに考えております。
仙谷委員 今のに関連して。
 むしろ、葉梨先生あるいは与党の方々で、現在、アメリカのブッシュが声高に叫んでいる先制攻撃あるいはフセイン政権打倒、こういう目標を掲げたアメリカの、あるいは米英の軍事行動というものが、国際法上どんな根拠で許されるのか。そのことを私もずっと考えてまいりましたけれども、単独行動にせよ、あるいは米英の共同行動にせよ、ある一国の、主権国家の政権を倒す、そのために軍事行動をとるというふうなことが、国連憲章以下、第二次世界大戦を経た現代における国際法上、合理化できる根拠があるとは私には思えないんですね。
 つまり、先ほどの問題にもございましたけれども、生物化学兵器や大量破壊兵器が存在するという証拠が出てきた、そういう事態もあると思いますけれども、その認定権はあくまでも国際連合あるいはIAEAというところになければならない。つまり、アメリカがその認定権者だったり判断権者であるということには、現在の国際法秩序はなっていないのではないかと私は考えております。
 その点をいかように解釈を、国際法をどう認識されて現在のイラク問題に日本の政治レベルの判断として臨まれようとしているのか、そのことをお答えになっていただきたいと思います。
 私どもは、というよりも私自身は、もし国連の判断主体のもとに従来国際法のレベルでイラクが約束してきた義務を果たしていないとすれば、それは国連という枠組みの中での武力行動を含む強制的な行動があってもしかるべき、日本は応分の協力をすべき、こういう結論を持っておりますけれども、しかし、それはあくまでも国連が主体となってやるべきことであるという原則だけは外せない、こう考えております。
島委員 今、仙谷委員が言われたことで、もし、できれば、中川委員が先ほどいろいろな話をされたのでお答えいただきたいんですが、先制攻撃の問題について、一体、与党はどうお考えかということなんですね。
 国連憲章の五十一条では、自衛権の行使は国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合に限定をしています。政治論から考えても、例えば、今回アメリカが、こういうようなことを安易に一般化を認めますと、例えばインド、パキスタンなど緊張関係にある諸国に対して先制攻撃の口実を与えることがある。それから、それはすべて、現在ある国連による紛争処理という国際秩序の崩壊につながりかねない。そういう構想がきちんとあった上でやればいいんだけれども、もっと言えば、米国だけ先制攻撃の権利を認めるというと、いわゆる法の支配の概念、それが一体どこまで、空洞化するんじゃないかというふうに私は思っている次第であります。
 まだ、総理は仮定の問題には答えられないというような議論をされています。ただ、駐米大使は何か、米国が武力行使に踏み切った場合は支持表明をすべきだという発言もされておるようであります。中川さんとはおつき合いが長いので、政治家がきちんと発言すべきだといつも言われる方ですから、ぜひともそういう話をお聞きしたいなというふうに思う次第であります。
 春名委員に、野党同士で恐縮ですが、お尋ねしたいことが一点あります。
 先ほど、戦後の平和は平和憲法があったから守られたという話がありました。私、その論理構成が実はよくわからない。もちろん憲法には政治的なメッセージというのがあります。日本は平和というのを希求する、これは非常に大きな意義を果たしたと私は思っております。だけれども、現実の政治の上において、平和憲法があったからいわゆる平和が守られたという論理は、私の中には腹に落ちない点があります。
 非常に具体的な質問で、ちょっと北朝鮮に入って恐縮でありますが、例えば北朝鮮がミサイルを、テポドンを発射する。平和憲法があっても飛んできたわけです、上の方に。そういうようなことについてはどういうふうに自分の中で整理されておられるのか、それは一度ぜひお聞きしたいと思いますので、お願いいたします。
中山会長 春名君、どうぞ。今の島委員の春名さんに対する質問に対してお答えを願いたいと思います。
 それでは、中川委員、どうぞ。
中川(昭)委員 今の島さんの御質問に対して、まず、実際に武力行使が起きる、結果としては武力行使ですけれども、その前の段階が今非常に重要だという共通認識の中でこういう議論があるんだろうと思いますが、そのときには、やはり、いろいろな状況というか、体系が幾つかに分かれて区別をしなければいけないんだろうと思います。
 一つは、個別的自衛権、集団的自衛権あるいは国連といったみんなが参加しているところでのルールという問題。それから、先制攻撃をやる、この場合、北朝鮮を念頭に置いているという議論でよろしいんですか、あるいはイラクの問題ですか。
 イラクの問題に関しては、去年の一月にアメリカが三つの国に対して名指しで非難をしたわけでありますけれども、それもアメリカの事情が原点にあることは当然だろうと思います。その場合にもアメリカは、湾岸のときでもそうでありましたし、特にベトナム戦争以降、アメリカというのは、やはり単独で力でねじ伏せるということはしないんだ。唯一最大の民主主義に基づく超パワー国家であるということはもう自他ともに認めておりますけれども、何らかの手続、何らかの手続の第一歩は、やはり去年の一月でしたか、ブッシュのあの発言から始まっていて、その中で相手がどういう反応をしていくのか。他方、アメリカの発言が国連なり同盟国に対して、どういうふうな反応あるいはまた協力が出てくるのかということでございますから、先制攻撃、いきなりどんと、アメリカにしろやらないわけであります。
 他方、テロあるいはテロに関係をしているところというのは、まさに、いついつから、こういう状況になったらやるぞなんということはやらないわけでありますから、そこにおのずから現在における紛争の一つのルールの混乱といいましょうか、相手はテロ集団であり、アメリカに言わせればテロ国家であり、そして我が方は少なくとも国際ルール、国際的な同盟関係を前提にした民主主義国家であるという差が歴然としておる。その差を一緒くたにして、ただ攻めていくのはけしからぬという論理だけで片づけることは、余りにも単純過ぎる議論であろうというふうに思います。
 そういう中で、日本としてはどういう対応をとっていくのか。日本が、イギリスやオーストラリアと同じように、同盟国家として比較的アメリカの対応に対して協力的であることは私も認めているわけでございますけれども、なぜ協力的なのかということをもう少し政府としても国民に説明する必要があると思います。
 いずれにしても、アメリカはある日突然奇襲攻撃をやるということはないわけでありますし、当然、日本が何らかの行動を起こすときには、少なくとも、現在においては現行の憲法あるいは国際関係あるいは日米安保等々、それから例の周辺事態法とかそういうもの、そして、それでは不十分な場合にはどういう対応をしていったらいいのかという一つ一つの積み重ねが日本には求められるわけでありますし、また、アメリカもアメリカなりにそういう手続を去年以来一つ一つとっていったわけでありまして、それですべての紛争が一定のルールで悲しいことに始まり、そしてまた決着が出るということで、世界がそういうルールでもってきちっとなっているかどうかということの疑問が今回の問題の一つの混乱の要因になっているというふうに私は認識をしております。
春名委員 先日、九月から十月にかけて中国、韓国などへ憲法調査会の海外視察で私参加させていただいたときに、中国の張さんという法制工作委員会副主任がお話をされたことが印象に残っています。日本はこの平和憲法を持っている力で戦後の繁栄をつくってきた、そのことを非常に尊敬して見ている、こういう御発言をされていました。私は、そういう見方をしていただいていることを本当にうれしく思いましたし、日本国民として非常に誇りに感じました。
 憲法九条それから前文は、単に理念ではなくて、私は平和を守る力になってきたと思います。それは、何よりも軍事大国という道に進まない歯どめになった、そういう力になっている。一%枠というのもありましたが、今はもう突破されて、また広がっていますけれども、そういう力を経済や平和の方向に役立てていくということにもなっていったと思います。
 それから、九条があり、そしてそれに基づく国民の平和を求める運動があったので、海外派兵の問題でも、今は突破されてきているという面がありますけれども、海外に出ていくということはしない、そして海外で人を殺すということにも参加をしない、そういう明確な現実があるわけでして、そのことが日本の平和をつくっていく大きな礎になってきたと思いますし、これを全面的に実施をし、さらに平和解決の方向へ平和外交の努力を貫けば、一層揺るぎない平和の礎になっていくだろうというのを私たちは確信を持っております。それが私の答えです。
大出委員 民主党の大出彰でございます。
 このイラクの問題でございますが、攻撃をする理由がないのではないかなと実は考えておりまして、それはいろいろな情報が多分伝わっていないせいもあるんだろうと思いますが、この種の問題というのはいつもマスコミで知るということになるわけですが、一番初めから疑問に思うのは、なぜ国連決議一四四一が出るのかというのがまずわからないんですね。
 クウェートを侵攻したときには侵略行為があったから国連決議が出たということはわかるんですが、今回に至ってはどうも侵略行為というのはないわけですね。いろいろな理由がついていて、前回、十年前の査察違反の理由をつけながら言ってきているんですが、いろいろな準備はアメリカはしているけれども、一番欠けているのは、その理由について準備が何もなされていないということなんですね。
 一応、非常に心配をしているので、国連決議一四四一以外の決議が出る理由はないのではないかと思うものですから、発言なんです。
 ベトナム戦争時代にアメリカの司法長官をやっていたラムゼー・クラークさんという方が、今度の問題に関して二〇〇二年九月二十日に国連安保理に公開書簡を実は出しておりまして、その方の書いていることの方が、私が考えながら物を言うよりも実はわかりやすいんですね。
 多くの国民の皆さんが、イラクというのはそんなに脅威なんだろうかというのがまず一つ疑問でありましょうし、また、何でイラクをアメリカとイギリスは一生懸命攻撃しようとしているのか、こう考えるわけですね。その辺について、先ほど申し上げたラムゼー・クラークさんは、国連安保理への公開書簡の中で次のようなことを書いているんですね。
 「イラクは戦争を正当化する脅威だというブッシュ大統領の主張はまやかしである。イラクの軍事力の八〇%が九一年に破壊されたことは国防総省が明らかにしている。大量破壊兵器を作るための材料・設備も、国連の八年以上にわたる査察で九〇%が破壊された。イラクは、一九九〇年には、近隣諸国に比べて強大だった。今では、弱い国である。イラクで生まれる赤ん坊の四人に一人が、体重二キロに満たず、短命で、病弱で、正常に発育できないことは目に見えている。一九八九年には、二キロ以下で生まれてくる新生児といえば、二十人に一人もいなかった。かりにイラクが平和の脅威になるとしても、それは遠い将来の、他のどんな国や集団に比べても僅かな可能性でしかないので、それに対して暴力的な攻撃を加えることは正当化できない。イラクを攻撃すれば、アメリカとそれを支援した国への報復が、これからの時代には、はるかに多く起ることだろう。」このように言っているんですね。
 そして、いろいろあるわけですが、「アメリカは、核兵器とその拡散を統制する条約を拒絶し、生物兵器協定の施行を可能にする議定書に反対票を投じ、地雷禁止条約を拒否し、国際刑事裁判所の創設を阻止するべく力を尽くし、開設されてからはその骨抜きを図り、国際労働機関(ILO)の子どもに関する協定の成立を阻み、子どもに戦争を行わせることを禁止するのにも反対する。アメリカは、戦争を抑えたり制限する努力、環境を守る努力、貧困を減らし健康を守る努力に、ほとんどすべて反対した。」このように言っているわけです。
 時間ですので、結論だけ申し上げますが、「国連と米国は、戦争ではなく、平和を追求しなければならない。イラクに対する攻撃は、世界を、数十年におよぶ暴力の蔓延へと運命づけるパンドラの箱を開けることになるだろう。平和は可能であるばかりではない。科学技術によって、この惑星と自分自身を破壊する人類の能力がいかに高められたかを考えれば、平和は不可欠なのである。 もしジョージ・ブッシュが、国連の承認があろうとなかろうと、イラクを攻撃することが許されるなら、彼は、社会の敵第一号となるだろう。そして、国連そのものも、無益というよりなお悪い。戦争の終結を目的として創設された機関でありながら、戦争の共犯者となるだろう。全世界の民衆は、そのとき、戦争という災厄に終止符を打ちたいと望むなら、国連に代わる何らかの方法によって、新規まき直しを図らなければならない。 いまは、国連にとって決定的な瞬間である。国連は、強固に、独立して、憲章と国際法とこの機関の存在理由に対して忠実でいられるだろうか、それとも、我々を無法の世界に引きずり込む大国の強制に従い、文明の発祥地に対する戦争を容認することになるのだろうか? そんな事態が起こらないようにしていただきたい。 敬具 ラムゼー・クラーク」、こういうことでございます。
 私も本当のところはこういうことではないかと思っておるので、お話をいたしました。
 以上です。
今野委員 私もイラク攻撃に対しては、我々が持っている憲法上、どのように解釈をしても、たとえ後方支援であっても無理なのではないかと思います。何より、湾岸周辺の親米政権も、支持しているのはイスラエルだけでありますし、国際的な合意形成は難航をしております。
 こうした状況の中で、イラク側が国連の査察に対してすべてをさらけ出すという覚悟が足りないのではないかという実態はあると思いますが、仮に大量破壊兵器があったとしても、それがどういう形で、どれぐらい、どこに残っているのかを、我が国も細かい情報に至るまで知っておく必要があって、我が国が抱えている問題としては、イラク攻撃に対してどのように加担するかということではなく、そういう情報を知り得るのかどうか、そういう能力を持っているのかどうかということの方がむしろ問題なのではないかと思います。
 仮に何らかの兵器があったとしても、それが戦争をしかけるに値する禁じられた能力の保有を意味しているのかどうかということになると、これは厳しく精査しなければなりません。先ほど葉梨さんがおっしゃいましたように、何かそういった大量破壊兵器があった場合攻撃するのかしないのかという議論がありましたけれども、逆に、たとえその兵器があったとしても、化学兵器一瓶でも攻撃をするのかどうかということも冷静に考えなければいけないのではないかと思います。
 我が国が直面している問題は、情報を集められないということ、むしろそのことなのではないかと思っております。
北川委員 社会民主党・市民連合の北川れん子と申します。
 私は、二〇〇一年の十月、ちょうどアフガニスタン空爆が始まった折にパキスタンを訪れ、そして十一月、アメリカのバークレーを訪れた経験があります。
 そのときに、日本国憲法の英文の文書、これを携えて行ったわけですけれども、そこで出会ったパキスタンの普通の人々に、日本にはこういう憲法があるんです、私たちはこの理念と精神に沿って政治活動を行い、そして市民も生きていく、そういう社会をともに世界が歩めるようにしていきたいというお話をすると、パキスタンで言われたことは、では、なぜ日本はアメリカと一緒になってアフガニスタンを空爆するんだということを鋭く指摘されました。
 そして、後方支援という名の攻撃ということは、他国の方々、そして特に、空爆を受けている当事国のアフガニスタンには入れなかったのですが、その周辺諸国においても、空爆の危険性ということにさらされる可能性が高い方々においては、後方支援も軍事行動であるというふうに見られるのは当たり前だという経験をいたしました。
 そして、私は、きょうどなたかおっしゃっておりましたけれども、護憲、護憲と口で言って立ちどまっていては、積極的な平和主義を目指そうという国民が減っていくというのも、昨今の状況の中から推察するにつけ、やはり良心的軍事拒否国家としての着実な歩みをしようということをさらに今こそ訴えなければいけないという気がしております。
 我が党、社民党の阿部知子議員と山内惠子議員が、昨年の十二月十六日から十二月二十二日までイラクを訪問してまいりました。そこでは、イラク日本大使館やイラク国民会議、また保健大臣とかとお会いしたりしてきたわけですけれども、その中で、国連核査察広報官植木氏、この方はちょうどよいことに日本人でいらっしゃったということで、日本語の会話がスムーズにいったということもあるんですけれども、その方に、今の核の査察の問題をどのように受けとめていらっしゃるかというお話などをしてきた経験があります。
 その中で、彼は、イラク国民、イラク国家全体が核の査察についてはできるだけ協力的にしているということを証言されています。そして、これだけやっていて、出てきた結果、今結果の問題が問われているんです。それで、中川委員、済みません、今お席を立たれたので、私は中川委員にちょっと御質問を投げかけたくて今申し上げたので、申しわけないんですけれども。
 今回の査察は国籍を超えて全員が国連職員で構成されており、できるだけ多くの国から理解をしてもらえるものとして発表、結果は明るみに出していくというふうにも言われたらしいんですけれども、最後に彼自身も、政治的判断がどうなるかというような、そういう言葉も漏らされたということであります。
 そして、イラクの中においては、経済制裁、十二年に及ぶ被害がどのように子供たちを苦しめているか、また湾岸戦争の折の劣化ウラン弾の使用におけるこの昨今の被害の状況が如実に、五年、十年と核の被害というのが顕著になってくるということで、そういう報告などもありました。国民の栄養摂取量が半分ぐらいしかとれないような状況での石油との交換の食糧輸入しかできないという状況がどれだけ子供たちを苦しめているかということが、改めて私たちも目にしたわけです。
 そこで、先ほど中川委員がいろいろ言われた中に、なぜアメリカに協力的なのかというのを国民に説明するべきではないかという御発言があったと思うんですが、中川委員はなぜアメリカに協力的な日本であり続けることが必要なのかというふうに、どうして思っていらっしゃるのかという点と、もう一つは、アメリカが先制攻撃をすることはないと思うとおっしゃったと思うんですけれども、なぜそういう確信を持たれているのか、この二点についてお答えいただければ幸いです。
中川(昭)委員 今の北川委員の御質問にお答えしますが、イラクに関してアメリカは、まず、さっきも言ったように、アメリカだって去年の一月、ブッシュの国会演説で、不法国家、ならず者国家、三つのうちの一つにはイラクを挙げました。それから段階を追って、イラクの査察でありますとか、あるいは国連の手続でありますとか、去年の八月あたりはいつやるかという強硬派、ラムズフェルドとかチェイニーとかいう人たちの意見ががあっと出てきて、かなり攻撃のテンションが高まった時期もあったんですけれども、ここに来て、パウエルあるいはコンドリーサ・ライスといった人たちの意見がどうもアメリカ国内の政権の中での多数説というか、ブッシュがとっておる考え方だと思います。
 きのうの一般教書演説の中での、分析は今後少し時間がかかるのかもしれませんけれども、そういう意味で、何も気に食わないからドンパチやるんだという、ほかのどこかの独裁国家とアメリカは違うわけであります。国連との関係も無視していない。それから、イギリス、オーストラリア、場合によっては日本といった国を、同盟としてついてこいではなくて、そことよく話し合いをする、それからNATOともよく話し合いをする、それから湾岸の国々ともよく話し合いをするという、そこがまさに同盟関係だと思うんですね。何も日本は一緒に戦闘機と航空母艦を持っていくわけがない、できないわけですから、その中で同盟関係としてどういうことができるのかと。
 では、なぜそういうことに、問題になっていくのかというのは、先ほど私がいみじくも申し上げましたとおり、イラクは関係ない、もう日本からとんでもなく向こうに離れた中東の国々であるから日本は関係ないということで、果たして世界秩序というか安定した世界の発展にとって重大な影響を及ぼすであろうこのイラク問題に日本が全く関係なくていいのかという側面が、私がさっき申し上げたかったところの一つであります。アメリカとの関係ももちろん配慮しなければいけませんし、アメリカ自体は手続を踏んでおると私は思っております。そういう中での、他人事の、善意の国際協力という時代はもう終わったということであります。
 ちなみに、あなたはパキスタンとかイラクとか、いろいろな国に行って、アメリカまで行かれていろいろ御意見を聞いてきた、私たちの考えと一緒だということでありますけれども、アメリカを除く幾つかの国は、民主主義国家ではありません。政権の判断がある意味ではすべてであります。もちろん、その政権は自分の国の利害に合うような行動をするわけでありますから、それが一概にだめだということは言うつもりはありませんけれども、このパキスタンなりイラクなり、いろいろな国々の行動が決して、パキスタンとは言いませんけれども、パキスタンと、あのアフガン戦争のときのあの勢力を支援したということもパキスタンの事実としてあるわけでありますから、御自分が聞かれてきたことイコールすべて民主主義的な国家における国家の最高判断だというふうに御判断をされるのは、私は短絡的だと思います。
 以上です。
中山会長 まだまだ発言希望もおありと存じますけれども、イラク問題につきましては、今プレートを立てておられる方々に限らせていただきたい。後は、北朝鮮問題がございますので、また御発言はその機会にしていただきたいと思います。
杉浦委員 民主党の島委員にお尋ねしたいと思いますが、冒頭、島委員が民主党を代表して、民主党の安保政策に基づくイラク問題への対応についての御表明があったわけですが、その後の何人かの民主党の委員の方の御発言を聞いておりますと、民主党の中の議論が一本にまとまっていないのではないかという印象を受けますので、端的にお伺いします。
 先制攻撃との関係で、国連の新たな決議が必要だという御表明があったわけですが、仮定の問題だと思って逃げられたらしようがないんですけれども、仮に湾岸のときのような決議が国連の安保理でなされたと、私は、アメリカはそういう方向で努力すると思うんですが、決議がなされた場合、日本として、国連加盟国ですし、協力、どの範囲でというか検討しなきゃいかぬと思うんですが、民主党としてはどういう協力が可能であり、すべきだというお考えなのか、お伺いしたいと思います。
島委員 民主党全体を統括して政策の技術的な、具体的な判断をできる立場にありませんので、それは御容赦いただきたいと思います。
 今おっしゃったイラクの問題で、我が党は、今のところまず、きちんとした決議がされた場合には、私どもは、武力の行使をされない、日本が多国籍軍に参加して武力行使を行うことについては憲法九条は許容していない、そのように考えておりますので、武力行使でない範囲であるならば、それは参加すべきというふうな判断をする方向性であるんじゃないかと思います。それが安全保障基本政策の今の考え方であります。ただ、私が政策責任者じゃございませんので。それは申し上げておきたいと思います。
 それから、今、民主党委員、そんなに発言したかなと思って聞いておりました。先制攻撃に関しまして、国際法上、どういうようなきちんとした位置づけがされているのか、それがあいまいであるから、我が党としては、きちんとしたいわゆる安全保障理事会の決議があればきちんとその中で整理されるわけですから、そのときに判断するという意味では一致していると私は判断しております。
 以上です。
末松委員 私の方では、今の御質問とはちょっと違うんですけれども、今、イラク攻撃の関係で各党の御意見を聞いていますと、国連決議がなされた場合には、各党さんの方で、それに対して一応日本として協力をしようというところが多いんだろう。その場合でも、今島さんが言われたように、武力行使に賛成するとか、ないし武力行使と一体化した形で日本がやるということは憲法上許されていないということで、これも各党の御意見は一致しているんだと思います。
 問題は、国連決議がない場合にどうするか。それでも、自民党さんの御意見を聞いていると、そこはアメリカとの配慮の関係もあってやってもいいのじゃないかなというふうに私、聞こえますけれども、その場合でも、武力行使を行うということはないということだろうと思います。
 私が今、憲法的にちょっと提起したい問題は、九条の方で、国際紛争を解決する手段として、戦争及び武力による威嚇及び武力の行使は、永久にこれを放棄するということで禁止をしているわけですけれども、国際紛争という場合に、例えばテロから日本が攻撃を受けた場合、こういうテロに対して、では武力を行使しちゃいけないのか、こういったことについては、必ずしも明らかになっていない問題ではないかということだろうと思います。
 ですから、これについて、例えば具体的にもうちょっと言えば、アメリカで起こった九月十一日のあの事件が日本で起こったらどうなるんだろうということなんですね。オサマ・ビンラーディンのあの一派がこの日本で攻撃をした、そうした場合に、日本として、ではアメリカと同じようにアフガンまで行って我々は攻撃することはできない。ならば、何か国連に訴えていろいろとやるんでしょうけれども、その場合であっても、アフガンあるいはテロ組織に対して日本が武力行使はできないという形が、多分今の憲法ではそういう解釈になるんでしょうが、そういうことについて一つやはり憲法的に論議をしておかなきゃいけないんじゃないかという点。
 もう一つは、先ほど首藤議員からも御指摘があったかと思いますが、やはり日本が、北朝鮮のように今緊迫した状況になっていますが、ミサイル等を撃ち込まれるような危険性が高い、本当にそういうふうな厳しい状況になったときに、自衛権の中でどういったことが必要なのかというところは、本当に国の存立の大きな問題ですし、ミサイル等が本当に飛んできたら、核兵器等余りにも第一撃が、被害が大き過ぎるので、そういった意味で、日本のリーダーシップが吹っ飛ぶ場合もありますから、そこの点についても、憲法上かなりの論議をしていく必要があるということも指摘させていただいて、終わります。
中山会長 まだまだイラク関係の御発言の御希望もあるようでございますが、これにて一応イラク問題についての自由討議を終了しまして、後は、北朝鮮問題について御意見のある方はお述べをいただきたいと思います。
伊藤(公)委員 イラクの問題でいろいろ皆さんの御議論が今あったし、提案といいますか問題点も指摘されたようですけれども、私は、北朝鮮の問題については、日本はもっと、より具体的に、深刻に考えなければならない問題だと思います。
 我が国の憲法と自衛権、そして、今いろいろ議論がありました先制攻撃、こういうことについてちょっと私の意見を述べたいと思いますが、一昨年の九月十一日のニューヨーク・テロ事件の日、ちょうどその時刻、私はシカゴに滞在していました。そして、二日後のニューヨークに入ったわけですけれども、日本はテロ事件と報道していたようですけれども、アメリカは、確実にこれは新しい戦争と新聞もテレビも報じました。私は、世界の平和、秩序というものは新しい脅威というものがあるということを実感として感じたものであります。
 そういう中で、非常に異常な国家であり、今、数々の拉致問題が国際的な問題になっている北朝鮮という国を我々は隣にしているわけでありますけれども、今のいわゆる一般国際法上では、自衛権といえば、当然、他国の違法性あるいは急迫した侵害に対して自分の国の権利あるいは公益を守るんだということで、国家の基本的な権利だ、こうされているわけであります。また、我が国の憲政史上でもいろいろここは議論になったところでありまして、自衛権の発動要件としては、日本の政府は、三つの要件を国会答弁でもこれまでしてきたところであります。
 しかし、問題は、あの湾岸戦争のときもそうでしたけれども、こういうテロ事件を含めて、これからの国際紛争は、瞬時にしてその国家が危機にさらされるという状況にあると思います。
 それは、今日の情報化の時代でありますから、一つは、これは最近の、たしか予算委員会ですか、国会でもちょっと議論になったところを私もテレビで聞いておりましたけれども、一体どういう時点で日本は自衛権を発動できるのか。
 これは当然、武力攻撃が発生をした場合にのみ発動できる、こう言ってきたわけでありますけれども、例えば、相手の国が、東京をまさに火の海にするんだ、こういう発言を繰り返して、これはつい最近の国会のやりとりにあったようでありますが、相手国が給油をする、液体だとか固体だとかいう議論もあったようですけれども、そういう状況になったときに、日本は座して死を待つというわけにはいかないというこれまでのやりとりもあったように伺いました。
 我々は、そのときにどういう情報を得て、そして、日本のこの国の平和と安全を守っていくかということをきちっと整理しておかなければいけない。そして、整理だけではなくて、それにきちっと対応できるのかということを国民の皆さんにもきちっとメッセージを送らなければ、送ることができなければ、我々はこの国の平和と安全に対して責任を持たされている議員としてそのことを放棄していることになると私は思うわけであります。
 いろいろ申し上げている時間はもうありませんけれども、今、日本のいわゆる相手国のミサイルに対して、これを迎撃できるというのは、完全に日本の国全土をカバーすることはできないということも伺っているわけであります。あるいは、ことしの二月ですか、情報収集の衛星を打ち上げるという準備が進んでいるようでありますが、それも、確かにそのことが成功するかどうかわからない。そのときに我々は、緊急の、相手国がそういう事態になったときに、一体その情報をどこで得るのか、そして、それに対して日本はどういう指示をするのか、決断をするのかというようなことを明確にしておかなければならない時期にあるのではないかというふうに私は認識をいたしております。
 まだもう一点ありますが、とりあえず、時間のようですから、発言を終わらせていただきます。
金子(哲)委員 赤松委員にぜひお伺いをしたいんです。
 私、核問題についてお話をさせていただいたんですけれども、今、北朝鮮の核開発をめぐる疑惑の問題について世界の世論がこれを阻止すべく力を入れているわけですけれども、そもそも核兵器に対する認識という問題について私はぜひお伺いをしたいんです。
 先ほど紹介しましたように、我が国においても自衛のための最小限度のものであれば核兵器の保有も憲法上可能である、ただ非核三原則を持っているから保有ができないという論理の方もいらっしゃるわけでありますけれども、そういう論理が成り立つとすると、核兵器の保有は自衛のためだったら許されるという論理が成っていくと思うんですね。
 だけれども、ここで先ほど中川委員から、例えば民主主義国家ではないというような話も出てまいりますけれども、例えば先ほど出てまいりましたパキスタン、パキスタンも一九九八年に核実験を行って、この衆議院憲法調査会資料第十二号の九ページをごらんいただければわかりますけれども、NPTにも加盟をしていない、核兵器の保有も行っている、こういうことが一方では事実上容認されるような事態が起こっているわけですね。
 その点について、やはり核兵器そのものに対する非人道的大量破壊兵器という位置づけがあるならば、すべての核保有に対して廃絶をする、禁止をしていくという明確なメッセージというものがない限り、私はやはり日本政府としての働きかけというのは極めて弱いと思うんですけれども、その点について、例えばインド、パキスタンの核保有、イスラエルもこの資料では核保有ということ、しかもNPTには加盟をしていない、CTBTも未批准国である、こういうような状況が事実上許されているような国際秩序に対してはどのような見解をお持ちなのか、ぜひお伺いしたいと思います。
赤松(正)委員 お答えいたします。
 核兵器の保有ということに関して、公明党は、非核三原則というものについて、単に自国に対するいわば戒めというか、持たず、つくらずという角度ではなくて、さらに他に対する働きかけすらしていくべきである、つまり、持たせず、つくらせず、持ち込ませず、こういったふうなことを党の政策の中にうたっておりまして、核兵器廃絶に対する強い意思というものを表明いたしております。
中川(昭)委員 私の冒頭の発言の中で、北朝鮮問題につきましては、国連に加盟している国であるわけでありますけれども、日本にとっての核の問題、それから拉致の問題、大きく分けて、あと工作船とかいろいろありますけれども、核の問題というのは、無法国家であろうがならず者国家であろうが、一応国家としての、ほかの国と同様のレベルの中でのちょっと異常な行動だろうと思います。
 他方、拉致の問題に関しましては、これは完全に日本の領海そして国内を含めてじゅうりんをしている、もう無法の限りを尽くしているということで、核の問題というのは国家が第一に立つべき問題でありますけれども、この拉致の問題というのは、全部が全部北朝鮮に拉致された、あるいは殺されたということは断定はいたしませんけれども、とにかく、普通の人間が、海岸縁だけではなくて、普通に都会においても歩いていた人が突然いなくなってしまうというこの異常事態に対してどういうふうに対応していったらいいのかということを、水際の問題あるいはまたお金の輸送の問題、物の輸送の問題、あるいは白昼堂々日本人が北朝鮮政府の指令によって組織的に拉致をされていくという問題、これにきちっと対応していかない限り、幾ら平和だ平和だといっても、個人の皆さん方にとっての不安が、特にここ数カ月、マスコミあるいはまた五人がお帰りになったこと、八人が亡くなられたこと、そして関係者が次々と出てくるということでありますから、私は、次元が若干違うのかもしれませんけれども、くくりとしてはやはり国の主権の問題であり、ひいては、先ほど強調させていただいたつもりでありますが、日本国民一人一人の最低限にして最大重要な人権問題になってくるわけであります。
 そこで、金子さんと春名さんにお伺いをしたいわけであります。
 過去のことはもう先ほど十分申し上げましたから言いませんけれども、きょうの御発言の中で、イラクの問題あるいは憲法の問題、それから北朝鮮の核の問題については随分御丁寧に発言をされましたけれども、この拉致の問題についてはほとんどコメントがなかった。改めて御意見をお伺いしたいと思います。
春名委員 一つはまず、拉致の疑惑が拉致の犯罪になったということが九月の十七日に明らかになって、そのとき既に明らかにしていますが、これは国家犯罪であって絶対に許されることではない、そして、補償の問題、全面的な事実を究明する問題等々、これから交渉ルートを開く努力を通じて、交渉の中で一つ一つそれらを解決するということが必要だというのが私たちのはっきりした立場です。そのことはもう既に何回も公式に明らかにしているので、きょうは改めて言ってはいませんけれども、そういう点が一つです。
 二つ目は、この拉致の疑惑の問題、拉致の今犯罪の問題について、一九八八年の三月に、参議院の予算委員会で私たちも詳細に調査をした上で質問もいたしまして、その後も何度もこの問題を国会でも取り上げて、最初に、八八年の三月ですけれども、当時の梶山国家公安委員長が北朝鮮のやった疑いが濃いということも答弁をされています。それは我が党の橋本敦参議院議員が当時、質問したことについてであります。このように、繰り返しこのことを問題提起もしてきました。そして、統一的な体制でこの問題に当たるべきだという政府への提案もしてまいりました。
 そして、九九年の一月と十一月の衆議院本会議では、交渉のルートを開くことを通じて、そのこと抜きに、それがないために疑惑が疑惑のままで棚上げにさせられるということになるので、ルートをきちっと開いて、そういう努力を尽くして解決のために当たるべきであるということを二回の衆議院の本会議でも問題提起をし、そういう努力を尽くしてきました。それが二番目です。
 最後に、私の意見を言いますけれども、今、五人の方をどうするかとか、さまざまな問題がありますが、私たちは、そういう政府の具体的な対応の問題に一つ一つコメントをして、一つ一つこうすべきだ、これは間違っているなどと言うことを自制するという立場に立っています。それは、私たち自身が交渉の当事者ではありませんし、不正確な情報で、それに基づいてさまざまなことをやりますと、交渉自身に障害を持ち込むことになりますので、そういう立場はとらない。
 しかし、やはり敵対から友好の関係に前進をするということ、そういう立場で臨む、包括的に議論をする、そして、相手が無法と言われる国であるからこそ、こちらは無法じゃなくて理性と道理に立って臨む、そういう態度をとってこの問題に当たっていくということが大事だということを言っておきたいと思います。
金子(哲)委員 拉致問題の基本的な認識については、先ほども申し上げましたように、国家的な犯罪という認識を私ども持っておりますし、そして人道上からも許される問題じゃありませんから、速やかにこの問題が解決されるべきだと。そしてまた、我々も十分に真相が明らかになっているというふうには考えておりませんから、この拉致問題の真相を解明すべきだというふうに考えております。
 その点については、先ほども申し上げましたように、指摘をされている我が党と朝鮮労働党との関係の中においても、昨年書簡を送り、それに明確な回答がない限りは、朝鮮労働党との関係も凍結するということを党としても決定いたしております。
 さらに、我が党のこの問題に対する取り組みのことがいろいろな場所で指摘をされているわけでありますけれども、御承知のように、確かに私どもと朝鮮労働党との関係があったことは事実でありまして、そのとおりであります。しかし、九〇年代の日朝間の交渉なり党間の交流というのは、我が党が単独で交流を行ったというよりも、むしろ、九〇年代に入りましては、自民党を含め、場合によれば全党の国会議員の代表団等々含めて訪朝し、そして交渉をしてきた経過があると思うんです。
 その中にあっては、残念ながら、当時、北朝鮮側が拉致問題として認めないということで、行方不明者という問題で解決を図るという方向も模索されたのは事実でありますし、これは我が党のみがそういう態度をとったわけではなくて、すべての党の代表、参加をした訪朝団においてもそのことが取り組まれていた事実だけは申し上げておきたいと思います。
 今後の問題でありますけれども、私は、やはり平壌宣言に基づいて、両国が日朝国交正常化の話し合いの中においてできるだけ早くこの問題を解決していくということが極めて重要だというふうに考えております。いずれにしても、平壌宣言というものが結ばれたわけでありますから、それに基づいて、やはり話し合いなり日朝間の交渉を行っていくという原則を立てながら取り組むべきだというふうに考えております。
中川(昭)委員 春名さんは、正式に当時の国家公安委員長が一部拉致である疑いが非常に強いという答弁をされたのは参議院の共産党の橋本敦議員だと。これはもうそのとおりだと思います。ただ、そのときにそのスタッフとして活躍されていた兵本さんという方が、その後共産党との間に何があったのかわかりませんが、とにかく今現実においては、この拉致問題に、我々の議員の立場の活動ではありますけれども、非常に貴重な情報をやっていただいておる。
 そもそもは反対をした、拉致問題を取り上げた一番手は共産党だというその面だけを見れば否定はいたしませんけれども、一九五九年以降、帰還運動に関して九万四千人、その中には千八百人の日本人妻も含めて、向こうに、地上の楽園に送り込んだ、その主導的役割をしたのは日本共産党であるということも事実だということを言っておかなければなりません。
 それから、金子さんにつきましても、九〇年代に入ってからはと、今北朝鮮がいいと思っている党は、共産党も社民党さんも含めて、ないんだろうと思います。
 さてそこで、では、現に今も行われている不法行為、万景峰92の問題あるいは外国人登録法違反の問題等々含めたいろいろな人権侵害、国権の侵害、あるいは過去に行われたものについてもやるべきことはたくさんあると思いますけれども、これらを、正常な法治国家、人権を守る国家として必要であるというものについては法改正をするということに対しては共産党や社民党も賛成されますか。
金子(哲)委員 今の中川委員のその最後のところは法改正の問題の提起だと思いますけれども、それはやはり出る法を見なきゃ、今賛成するか反対するかと言われても表明することはできません。
 さらに、今例えばそういう不法行為があると指摘された点が、今の国内法においてもそれを阻止することはできないかという問題がまずあると思うんですよ。現行法において十分にそれが実行可能なことがあるのではないか。例えば拉致問題だって、拉致の問題はそもそも一般の国民であっても、そういうことが日本国の国内にあっても、犯罪行為として厳しく指摘される行為であって、それはもう今の刑法上からも許されることでないわけです。私どもは、少なくとも今の国内法においてもそういうことが可能なことは十分にある、それをまず検証することが重要だというふうに考えております。
 中身について一つ一つを、まだ今中川委員から指摘されておりませんから、それについて答えておりませんけれども、私どもは今の時点では少なくとも、党ですべて今見解をまとめているわけではありませんけれども、むしろ不法行為と指摘するということは、日本の国内法に照らして不法だから不法行為ということになっているというふうに私は思いますから、そういうことは日本の今のある国内法に基づいて適切に処理するということがまず第一だというふうに思います。
中川(昭)委員 もうやめますけれども、今の法体系では十分ではないというのが大前提でありますが、仮に金子さんが今言われるように、今の法体系でもできるものがあるだろう、それは確かにもちろん法体系の中でもあるものはあると思いますよ。でも、過去においてそれを一番否定してきたのは金子さんの政党だったということも言っておかなければならない、そもそも拉致は存在しなかったんだということを言い続けてきたんですから。運用面においてその法律を適用する以前に、あなた方は反対をしてこられたんだ。
中山会長 それでは、前から発言の意思を表明しておられますので、古川委員。
古川委員 会長、ありがとうございます。
 民主党の古川元久でございます。私は、ちょっと北朝鮮の話について一言申し述べたいと思います。
 実は、私は先週末、スイスのダボスで開かれました世界経済フォーラムに参加をしてまいりまして、ちょっとびっくりしたことがあります。と申しますのは、日本にいますと、先ほど来から議論になっておりますイラク問題と北朝鮮問題というのは、まさに二つが両並びでいろいろ話題になっているわけなんですけれども、この世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議では、議論の焦点はイラク問題に集中しておりまして、北朝鮮の問題はほとんど触れられていないというのが現状であります。
 これは、場所がヨーロッパで、ヨーロッパの人が中心であるということはあるかもしれませんけれども、北朝鮮の問題というものの、イラク問題というものの事の本質のところから考えてみますと、国際社会でやはりイラク問題と同じレベルで北朝鮮の問題というのも本来扱われなければいけないんじゃないか。とりわけ我が国にとっては、北朝鮮問題というのは国家の安全保障という観点からも大変に重大な問題でありますので、これはやはり国際社会においてもそれだけの関心が持たれるように日本としても努力をしていかなければいけないんじゃないか、そういう感を強くいたしました。
 先ほど来から議論が出ておりました拉致問題でありますけれども、これなどは憲法が保障している基本的人権を重大に侵害する行為、こういうことが国家的犯罪として行われていたということであります。これは単に日本と北朝鮮との関係のみならず、こうした人類普遍の原理として認められています基本的人権がこのような形で侵害されたということは、やはり国際社会全体が北朝鮮に対して取り組んでいかなきゃいけない問題であって、そういうことを日本はもう少しやはり国際社会に対して訴えかけていくということも、非常に大事なんじゃないかなというふうに感じております。
 憲法でもうたっている国際協調というのは、単に世界がこういう方向に動くからというので日本もそれに協調していくというだけでなくて、日本が主体的に国際的な協調の枠組みをつくっていく、そういう主体的な行動というものも今の憲法では求められていると思いますし、やはりこれから日本は国際協調というものをもっと日本が主体的になって、日本の国民の基本的人権あるいは日本の国益という観点から、国際協調の枠組みをもっともっと自分でつくっていくということを努力していかなければいけないんじゃないか。
 この北朝鮮の問題などは、やはり先ほど申し上げましたように、ヨーロッパなどになりますと、どうしてもまだ遠い国の話ということで認識も小さいようであります。ですから、ぜひこれは、北朝鮮の問題は単にアジア地域の問題というだけでなくて、やはり世界全体に対する脅威というとらえ方をして、拉致問題も含めてでありますけれども、日本が積極的に世界の中で協調して北朝鮮の問題に対して取り組んでいく、そういう体制をつくっていくように主体的に行動していくということが私は今の憲法の中でも求められていることではないか、そういうふうに感じました。
 ぜひそのことを私はここで一言申し述べたいと思います。
桑原委員 私は、北朝鮮が、中国やロシアとさまざまな伝統的な外交関係を活発に利用しながらいろいろやっている、韓国との間でもいろいろ交渉をやっている、そしてそういった延長線上で我が国と平壌宣言を結んだ。これは中身的に見ますと、核開発も含めて、拉致問題も含めて、明示的な表現がある、なしという問題はありますけれども、北朝鮮が、問題とされていることを乗り越えて、何とか国交正常化の交渉をやろう、こういうことですから、非常にいい方向に行っているなと思っておったんですが、一方では、いわゆる核開発を続けている、あるいはNPTを脱退する、こういうような宣言をするなど、およそ国際的には大変問題の多い、非常識な、そういう挙動、行動に出たんですね。
 一体、平壌宣言とのこの矛盾はどういうことなのか、なぜこんなに落差のある行動をとるのか、こういうことを突き詰めて考えていきますと、やはり非常に国家体制としても危機的な状況にある。ある意味では、そういう状況の中でアメリカを除く周辺国とはそれなりの関係をつくって自分たちの体制の維持を保障させてきたけれども、問題は、やはりアメリカが現在の北朝鮮の体制をどう保障してくれるかどうか、そこが最大の根本的な問題点なんだろう、彼らが一番気にしているところなんだろうというふうに思うんですね。そこを、ではどうしてアメリカをそういう方向に引き出すかということで、大変問題がある、そういう瀬戸際的なやり方でアメリカをまた引き出そうとしてきたんではないか、こういうふうに思うんですね。
 そういう意味で、私は、アメリカが北朝鮮の体制を侵さないという保障をしていくかどうかという、そこが一つのやはりポイントだろうというふうに思うので、それをどう実現していくか。いや、核開発の放棄が先だ、後だ、そういう議論ではなかなかこれが先に進まないわけでございます。できれば日本も、平壌宣言の中でもあるいはその後の記者会見でも触れられていますように、いわゆる北東アジアの平和を、北朝鮮を国際社会に引き入れていくために、アメリカも含めた関連の六カ国がちゃんと協議の場を持ってこれを保障していく、こういうようなことが非常に重要だということを日本としてちゃんと言っているわけですから、それを具体的にどう実現していくか、これはやはり言い出した日本がしっかりと責任を持ってやっていく必要があるんではないか。
 そこからやはり迂回してやっていかないと、平壌宣言の具体的な、それを守らせていくということに結びついていかない。これを守れ守れという話だけでは、これはとてもそこへ行き着かない。そういう国際的な協力関係を日本としてどうつくっていくのか、この点にやはり日本外交の、平和外交の積極的な力を注いでいくことが今必要になっているんではないか、こういうふうに意見として思います。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。先ほど中川委員が指摘されたことと、また桑原委員から出された問題に触れまして、発言したいと思うんです。
 中川委員の方から冒頭、八八年の橋本さんの質問について、大きな意味があったという話がありました。それに続いて兵本氏という名前が出たんですけれども、はっきり申し上げまして、この方は、恥ずかしい話なんですけれども、公安調査庁という、私どもをひどい扱いするところですが、そこへの就職あっせんをやっていたということが問題になりまして、私どもとは関係がなくなったという方です。
 それからもう一つ、五〇年代末からの帰国事業の問題なんですが、あれは、自民党や社会党も含めまして超党派の運動としてやり、五九年には閣議了解にもなって、運動として日本としては取り組んだものなんですね。その結果、その帰国された方々があの国でひどい目に遭ったというのはその後はっきりわかったわけですけれども、その責任はやはり北朝鮮の政権に本来あるべきもので、そこのところはきちんと見なきゃいけないというふうに思います。
 それから、桑原委員が御指摘になったことなんですが、私は、今度の北朝鮮をめぐる問題というのは、やはり一つはこの北東アジアの平和と安定にかかわる問題として、日本は当事国の一つですけれども、そういう視野で取り組む必要があると。政府自身もその方向は出しておりますが、具体的に言えば、中国、ロシアそれから北朝鮮、韓国、日本、アメリカ、こういうところでも大いに議論をし合いながら、この問題、北東アジアの平和と安定にかかわるという位置づけで取り組んでいくことが大事であるというのが一点です。
 それから二つ目に、交渉ルートが開かれたわけですけれども、この中では、拉致問題、過去の日本の植民地支配にかかわる問題それから核兵器の問題、この一連の問題を、平壌宣言が一つの到達を築いているわけですから、その問題としては堂々と日本は外交交渉に当たっていくということが必要だと思います。
 そして最後に、もう一つは、やはり国際政治の課題として、大変な無謀をやってきた国ですから、この国を国際社会に戻らせるというのはなかなか大変なこれからの事業だと思うんですね。それをやっていく上でも、日本としての、国際的に道理のある、大義のある、そういう立場をきちんと示しながら対応していくということがかぎになるんじゃないか。そのことを申し上げて、意見の表明といたします。
中川(昭)委員 橋本議員と当時の兵本秘書さんとのやりとりは、けばけばしい赤旗の号外で十分承知をしております。それについては、どうだこうだと言うことは、この場でやっても赤旗の宣伝になるだけですから言いません。
 それから、平壌宣言を我々も尊重しております。平壌宣言に基づいて、今の状況はどういうことかというと、十月末のクアラルンプール会合で、物別れにはなりましたけれども、日本側から百五十項目にわたる詳細な要求が出て、一つでも二つでもいいから回答しろということに対して、向こうから全くの回答がないというのが現在の状況です。
 だから、今、山口さんがおっしゃったように、こちらが幾らルールに基づいてやっても、向こうはそんなことはもう踏みにじるのは朝飯前だという国家だという認識で日朝関係というものを考えることも必要だろうと思います。
島委員 極めて活発な議論が展開されてすばらしいと思うんですが、憲法調査会でございますので、私の方からは二点申し上げます。
 北朝鮮問題につきましては、個別的自衛権を行使できる要件をきちんとここで議論すべきだと思います。ミサイルの発射がなされた場合に反撃ができないとした場合に、これはいいとなっていますが、要するに、政府中枢が第一撃によって破壊されれば、判断をすべき政府が存在しなくなります。こういうときに、一体、本当に急迫不正の侵害、いつなのかということをきちっと整理する必要があると思います。
 それから一般的に、今はサイバー攻撃、一番最初にコンピューターを麻痺させることであります。これはテロ特措法のときも私は聞いたんですが、一体いつ侵入と見るのかというときもはっきりしていません。これをきちんと議論する必要があると思います。
 それから、実は赤松委員に時間があれば聞きたかったんですが、PKOの国際標準に合わせるという問題、これは武器をどうするかということがあります。武器使用基準は、憲法九条一項は武力の行使を禁ずるが、国連文書にある、任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用、Bタイプの武器使用というのは、内閣法制局は、憲法の禁ずる武力の行使に該当することも多いとしています。要するに、PKOの参加五原則のうち、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られることというのは、私も少し議論する必要があると思います。
 そういう議論をこの憲法調査会でぜひともやっていただきたいと思いますし、きょうは委員長の差配で非常に活発な議論が、私もずっと憲法調査会をやっておりますが、ここまで最後まで楽しかった、楽しいというのは失礼ですが、すばらしい議論ができたことは委員長のすばらしい差配だと思いますので、今後もよろしくお願いします。
葉梨委員 自民党の葉梨です。
 北川委員にちょっとお聞きしたいと思うんですが、先ほどの御発言の中で、国家というものは軍事力を持ってはいけない、軍事力の存在を否定する御発言があったと思いますが、それでよろしゅうございますか。
北川委員 私は、良心的軍事拒否国家を目指すという意味においては、国家として武力は縮小していくという立場をとっております。
 それと、先ほど中川委員の発言においてなんですけれども、私自身が先ほどちょっと説明が足りなかったのだと思うんですが、パキスタンでは、普通の人々に聞いた場合に、日本は憲法に沿った精神で立ち向かうべきではないかと言われました。パキスタンの国家のありようがどうかという問題について言及したわけではなかったので、その点は御理解をいただきたいというふうに思っております。
中山会長 葉梨委員、何かそれに反論がおありのようですが。
葉梨委員 北川先生にもう一度お伺いしますが、社会民主党は、長く北朝鮮と友好国家、友好国として、党と党の交流をしておられましたね。今の北朝鮮は、強大な軍事力、兵器、人員ともに我が国に比ぶべくもないものを持っておりますが、それについては、北朝鮮に軍事力の縮小を求めたことがありますか。
北川委員 私どもは、二〇〇一年五月二日に、「二十一世紀の平和構想」というものも出しております。その中に、北朝鮮に対してもそういう方向で取り組んでいこうということは提案しておりますし、北朝鮮の軍事力に比べて我が日本の軍事力はどうあるのかというのは、世界第二位と言われている日本の軍事力でありますので、この後、この時間の中では短いので、北朝鮮にもまさにまさるような軍事力を持っているというふうに、自分たちの国のことを客観的に見るべきではないかというふうに思いますが。
中山会長 これは会長として申し上げますけれども、北川委員、日本が世界第二位の軍事国家であるということは、ここでは、私は会長として認めるわけにはいかないように思います。
 議事整理上、もう一度もし御発言があれば、どうぞ遠慮なしに御発言ください。
金子(哲)委員 もう時間がないようですので、今、会長が北川委員の発言についてそういう指摘をされたことについては、これはまた検証しなければいけないと思いますので、その検証をすればいいと思いますけれども、中川委員から先ほど拉致問題に対して、最後に社民党の対応について発言がありましたので、その点についてだけ申し上げておきたいと思います。
 党が公式に、拉致問題はないということを公式見解で出したことはありませんので、その点については明確に申し上げておきたいと思います。そして、先ほども申し上げましたように、不十分であったかもわからないけれども、九〇年代の中において、党としての取り組みをしてきたということは事実でありますから、その点についてだけ、それについてはまたいろいろ御意見がおありでしょうけれども、中川委員から指摘をされただけで終わりというのは私どもとしても納得できませんので、その点についてだけ申し上げておきたいと思います。
葉梨委員 それでは、もう一つ申し上げておきますが、我が国は、憲法上、自衛のための軍事力を持つことは否定されていない。認めている。その中で、国の独立と平和、国民の身体、生命、財産を保護するために軍事力を保持しているわけで、私が伺いましたのは、軍事力を国家が持つことは認めないとおっしゃるその御発言をもう少し確かめたかったわけでございます。
 もう一度申し上げますと、今、社会民主党は自衛隊を認めるのか認めないのか、そこをはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
金子(哲)委員 今、直接かかわりのない御質問ですので、答えるべくもないと思いますけれども、申し上げておきたいと思います。自衛隊について、私どもの今の方針は、縮小、改組すべきだという方針を持っております。以上です。
中山会長 それでは、きょうは、大変委員の方々、活発な御意見をちょうだいいたしまして、まことに調査会も成果が上がったように思います。
 予定の時間も参りましたので、本日の自由討議はこれをもって終わらせていただきたいと思います。
 次回は、公報をもってお知らせいたすこととし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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