衆議院

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第16号 平成13年5月29日(火曜日)

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平成十三年五月二十九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 荒井  聰君 理事 田並 胤明君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      河野 太郎君    左藤  章君

      佐田玄一郎君    坂井 隆憲君

      新藤 義孝君    滝   実君

      谷  洋一君    平井 卓也君

      宮路 和明君    山本 公一君

     吉田六左エ門君    伊藤 忠治君

      生方 幸夫君    大出  彰君

      玄葉光一郎君    武正 公一君

      手塚 仁雄君    中村 哲治君

      松崎 公昭君    松原  仁君

      山井 和則君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      大森  猛君    春名 直章君

      重野 安正君    横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   国務大臣         竹中 平蔵君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            金澤  薫君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠治君     手塚 仁雄君

  山村  健君     生方 幸夫君

  矢島 恒夫君     大森  猛君

同日

 辞任         補欠選任

  生方 幸夫君     山村  健君

  手塚 仁雄君     伊藤 忠治君

  大森  猛君     矢島 恒夫君

    ―――――――――――――

五月二十五日

 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九五号)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気通信事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省総合通信基盤局長金澤薫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田六左エ門君。

吉田(六)委員 おはようございます。

 きょうは私、質問をさせていただく機会を授かりまして、委員長初め各位に心から感謝を申し上げさせていただきます。

 小泉大臣をいただきまして、大変な状況の中、すべての改革ということに命がけで向かわれている様子が気高くさえ見えて、何が何でも支えてこののりは越えなければならぬ。そんな中で、通電のかかわりについても、この思いを大事にしていかなければならぬ。そんな考えから大臣、副大臣に幾つか質問をさせていただきます。

 まず、NTTに強い規制をして弱体化させることでNCCとの競争を促進しようというように総務省の競争政策を私は感じるのですが、ボーダフォンが日本テレコムを傘下におさめるなど、海外の強者が日本に本格参入してきた、こうした状況、従来のようなNTTを弱める競争政策は見直す必要があるのではないかと考えております。

 特に、ボーダフォンのような移動体の外資に売り渡すことは、国民の貴重な電波資源を外国資本のために使わせることになる、このことについても大きく疑問を持っているわけですけれども、この点について大臣からお考えを伺わせていただきたいと思います。

片山国務大臣 済みません、ちょっと閣議が長引き、おくれて参りました。

 今、吉田委員から御質問がありましたが、我々はやはり日本のNTTのような企業に国際競争力を持ってもらいたいと思いますし、それから、よく議論される通信主権という観点もどうしても要ると思います。

 が、同時に、国内的にはやはり適正な競争政策を推進するということはもう一つ必要だろう。また、その競争力をつけるということがいろいろな意味で経営の効率化、経営体質の強化にもつながりますので、その辺の状況を総合的に勘案しながら、NTTに体質強化を図っていただきたいと思いますし、できるだけNTTにも経営の自由化、自由度を持っていただくように、吉田委員の御心配の点を含めて、あるいは両にらみで考えていきたい、こういうふうに思っております。

吉田(六)委員 ありがとうございました。

 改正法案の中の非対称規制、いわゆる支配的事業者規制もNTTを弱めることを目的とするものであってはならないと私は感じます。市場支配力の基準となる市場シェアを省令で定める際に、NTTドコモだけが対象になるような基準であっては断じてならぬと思うのですね。こうしたことを先進国ではよく理解されておりまして、EUでは現在二五%という数字でレベルを決めている、こう言われていますが、これらについてのお考えを伺いたい。

 いま一つ、固定市場においても、マイライン導入を機に市内で競争が本格化する中で、東西だけが強い規制を受けることになっています。

 サービス規約については、東西だけが認可制である、他はそうでない、いわゆる申請をすればよい、こういうことでありますので、とりあえずは総務省では許可処理を、届け出に近いようなスピーディーな処理をしてやらないと、片方はスパイクを履いてレースに臨み、許可制を強いられるNTT東西ははだしかげた履きで走らなきゃならぬ、こういうことになるのではないかと思っております。

 最終的には、将来的に現行法を見直す必要があるのではないかとさえ私は思っているのですが、これらに関しての御意見を伺いたいと思います。

小坂副大臣 吉田委員御指摘のように、移動体分野の支配的事業者を指定する際には、やはり海外の基準とかいろいろなものを指標として考えたいと思っておりまして、今御指摘のように、一位の事業者のみをねらい撃ちするというような考えは毛頭持っておりません。

 EUにおきましては、御指摘のように、支配的事業者の指定基準が市場シェアの二五%を超えるということにされておりますし、また、我が国の携帯電話市場におきまして、電波の有限性から各地域とも三から四の事業者による寡占的な競争が行われているわけですね。そういったものを勘案いたしますと、二五%を超えれば相対的に大きなシェアを有する事業者と考えることができるわけでございます。独禁法の運用指針におきましても、企業結合後の市場シェアが二五%以下となる等の場合においては競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない、このようにも言っております。

 このようなことから考えまして、基本的に私どもが現在めどといたしておりますのは、二五%を超えるということを一つのラインに考えて、これが適当であろう、このように考えております。

 ただし、EUにおいては二五%超の基準を見直すといった動きもあるようでございますので、省令において具体的な基準を定めるわけでございますが、基本的に二五%、こういうことでやっていくわけですが、その制定に当たりましては、国際的な動向や、我が国市場の実態が現状と大きく変わるようなことがあるかどうか、この辺も精査しながら、審議会や関係の皆さんの意見も聞いた上で最終的に決定をしたい、このように考えております。

 それから、御指摘のサービス契約約款についてでございますけれども、東西NTTはボトルネック設備という独占性あるいは非代替性を有する通信設備を設置しているために、これを用いて提供するサービスについても独占性、非代替性が認められることになります。

 特に、契約約款は、通常、事業者がその内容を一方的に設定するという性格を有しているものでございまして、仮に不当な内容の契約約款が定められた場合には、利用者に与える影響の大きさにかんがみまして、利用者利益の保護の観点から、事後的な是正措置では不十分だ、こう考えて、あらかじめ内容の適正さを十分担保しておく必要があると考えて、認可制をとることとしているわけでございます。

 認可に当たりましては、御指摘のような認可のゆえに不利益をこうむることのないように迅速な処理が必要でございますので、それに心がけてまいりたいと思いますし、地域通信市場における競争の進展状況を見きわめた上で、今後検討しろということでございますが、そのように検討を進めてまいる所存でございます。

吉田(六)委員 米国の圧力に負けて、長期増分費用方式、いわゆるLRICを導入したこと、この議論の中には我々も参画したわけでありますが、NTT東西の財務を弱らせてしまった。その影響が地方の通建業界、これらにかかわる仕事をする人たちにも飛び火をして、経営が大変に苦しい企業が多くなった。言いかえれば、日本の産業全体を疲弊させるような状況に向かう施策を改める必要があるのではないか、その後しばらく時間を経て、私は今そんなことを感じています。

 そして、アメリカでは、九六年の通信法に基づいて、強引な新規参入を促進した結果、むちゃな値下げ競争をやって、DSLとか無線のジャンルでありますけれども、六社もみんな必要以上の競争を強いられて、結果として倒産してしまっている。最後にはひとり勝ちで、料金が今上がりつつある。同じ過ちを繰り返さないようにしなければならないのではないかなという所見を持っていますが、これらについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 今御指摘のように、技術革新が進む、あるいは競争環境がかなり厳しくなってくるということで、吉田委員が御指摘のように、東西NTTの財務内容が悪化したり、あるいはそれに絡む地方の通信、建設関連の業界が苦しくなっていることも事実だろう、こういうふうに私は思います。

 そういうことを踏まえて、それぞれの事業者は一層の経営の効率化を進めていただく、こういうことは必要でございますけれども、今お話しのように、やはり国際競争力というものを重視していくということ、ユニバーサルサービスを確保していく、こういう観点は必要であるのではなかろうか、こう私も思っております。

 お話がありましたように、アメリカではDSLを利用したインターネット料金が上がりまして、今や日本の方が安くなっているのですね。だから、そういういろいろな状況の変化も的確に踏まえながら我々は対応していかなければならない、こう思っておりますので、どうかひとつよろしくお願いいたします。

吉田(六)委員 大臣のこのジャンルにかける思いだとか、あるいは大変濃密なこれらに対する知識をお持ちだということには平素から敬意を表しておりますものですから、ぜひ日本の国威と競争力に思いをいたして、御指導いただきますようにお願いを申し上げます。

 最後になりますが、総務省は、法律に根拠を持たない行政指導という形で、NTTに対して、ドコモの持ち株比率の低下とか合理化の促進、ネットワークのオープン化等を内容とする自主的実施計画の策定を促していると聞きます。実質的にNTTに対する規制を強化するということなので、これは問題ではないのかな、こう思います。

 なぜかと申しますと、JRがそうだったがごとく、NTT東西も、自分の持ち株を一生懸命外国でも株主に買ってもらわなければならないわけですね。今のNTTのグループの中の稼ぎ頭に対する持ち株の率を規制して、そして、そことの関係を希薄にするとすれば、株を買うユーザーからすれば、だんだんNTTの株の魅力が減る。一時期は百六十万、あるいはその前は八十万、そして去年は九十五万というような、そのときそのときのNTTの魅力によって、海外ファンドマネジャーはよく見ているわけですね。

 こうしたことからすると、これから完全自由化に向けても、あるいはその前の法律による三三%を持たなければならないという、それに向けて、まだ一二、三%の株を売っていかなければならぬ。こういうときに、でき得る限り、外国との競争力はもちろんですけれども、NTTの株に魅力を持たせる、こんな思いがいたしますが、これらについて一言だけお考えを伺いたいと思います。

小坂副大臣 まず、自主的な実施計画の提出でございますけれども、これはあくまでも電気通信市場における競争促進のための計画の作成、提出を期待するという私どもの考え方をお伝えしたものでございます。五月八日に提出いたしましたが、これは、規制改革推進三カ年計画等において決定された方針に従って意向をお伝えしたということでありまして、あくまでも自主的な実施計画と東西NTTの業務拡大の認可等がリンクするようなことは考えておりません。

 また、ドコモの出資比率の引き下げということでございますけれども、これも、手短に申し上げますと、NTT株の市場価値を高めるように、あくまでもNTTは考えて常に行動するわけでございます。

 ですから、NTTドコモの株式を売却する場合にも、まず市場の動向等、需給のバランスというものを十分見ながら、その時期を考えて売却をすると思いますし、また、売却された利益の使い方も、あくまでも東西NTTの経営改善に使う、そういったような意味で、NTT株の価値を高めるように使われる、このように判断するわけでございまして、計画的にこういうことを行うことによりまして、あくまでも、ドコモの力を弱めるとか、株価を下げて政府持ち株の売却が困難になるとか、こういうことにならないというふうに考えております。

吉田(六)委員 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、平井卓也君。

平井委員 引き続き、時間が限られておりますので、法案にとどまらず、本質的な話をお聞きしたいと思っております。

 まず、耳ざわりのいい言葉で、よく大臣の答弁の中に出てきますユニバーサルサービス、このユニバーサルサービスというのは、あまねく、くまなく、均衡に全国配備するという意味で、弱者等の将来的なデジタルデバイド等を考えると、非常にいいことに聞こえますが、一方で、これが産業の競争力の足かせになることもあるわけです。

 ですから、ユニバーサルサービスというものは、その適用範囲、今後の考え方というものは、ある程度、産業の今後の振興というか技術革新、それと需要があって普及するかどうか、そのようなことも考えながら進めていかなければいけないと思います。

 今、加入電話、公衆電話、そして緊急通報等にユニバーサルサービスというものが、この法案の中でも指摘されておりますが、考えてみると、例えば、携帯電話というものも、今の普及率でどうなるのか、インターネットというのも今の普及率で将来、どう考えていくのか、このユニバーサルサービスというものにどの程度こだわっていくのか、その基本的な考え方をぜひお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 今、平井委員からお話がありましたように、ユニバーサルサービスは、法律上は、七十三条ですか、基礎的電気通信役務、こういう名前で定義いたしております。お話にもありましたが、国民生活に不可欠なサービスであって、だれもが利用可能な料金など適切な条件で、あまねく日本全国において公平かつ安定的な提供の確保が図られるサービス、こういうふうに概念規定いたしておるわけでありますが、それは何だと、こう言われますと、今、総務省令で、これもお話がありましたが、加入電話と公衆電話と緊急通報、こうなっております。

 そこで、基本的にユニバーサルサービスの範囲をどう考えるかということでありますけれども、私は、やはりサービスの普及率や利用状況を勘案し、それから国民の皆さんのニーズ、意向、そういうものを踏まえながら、必要があれば見直すべきだ、こういうふうに思っております。

 今、平井委員からお話がありました携帯電話につきましては、加入電話数からいうと六千七百万ですから、固定電話を超えておりますけれども、携帯電話相互間のトラフィックは全体の約一八%で、やはり加入電話との関係が非常に強いというわけで、そういう関係ではもう一つかな、こう思っております。

 また、インターネットにつきましては、このところ急速に利用が拡大しておりますけれども、世帯普及率は平成十二年で三四%でございますので、これももう少し様子を見る必要があるのではなかろうかと我々は考えておりまして、なお、今後の引き続いての検討課題として対応させていただきたいと思います。

平井委員 私は、あえて誤解を恐れずに言うとするなら、ユニバーサルサービスというものにこだわる余り、産業全体としてのスピード、技術革新のスピードまた普及のスピードというものがおくれる可能性もあると思います。ですから、それはやはり、そこに需要があるかどうか、そのことを十分に見きわめた上で公的援助をしていくというようなことを考えるのであれば、費用便益分析というような面からも十分に検討していただきたいと思います。

 これも私論ではありますが、これからは、日本全国均衡なる発展というのも二十世紀のテーマではありましたが、その不均衡さを健全な特徴ととらえて、産業政策なり地域活性化の法案というものも整備する必要があるのではないか。その辺の考え方を変えていくということも十分にあるのではないか、そういう意味では、このユニバーサルサービスというものも、ある程度今後は限度を考える必要があるのではないかと思っています。

 次に、NTTの業務範囲の緩和についてお尋ねします。

 今般の改正によりまして、東西NTTの業務範囲の緩和が行われることになりましたが、基本的に何のため、だれのための緩和であり、それは消費者の利益にどのように結びつくかということについてお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 今、最初に平井委員が言われましたことは私も全く同感でございます。余り固定的ないろいろな数字にとらわれてユニバーサルサービスをつかまえるのじゃなくて、もっと動態的に、これからの需要やスピードやそういうことを考えてユニバーサルサービスをとらえるべきではないかという観点は私も賛成でございますし、均衡あるということじゃなくて、これからは個性だ、私はナショナルミニマムが確保されたら、金太郎あめのように同じようになるよりも、やはりそれぞれが個性がある、魅力がある、こういう方が正しいんだ、こういうふうに地域の発展も考えておるわけであります。

 そこで、今度、東西NTTの業務範囲の緩和を行いますけれども、これは基本的には利用者と申しますか国民の利益促進のためでございます。そういうことで東西NTTさんには非対称規制というものを導入しますから、市場支配力が強いからあなたの方は少し監視するよ、それ以外の事業者については規制緩和をするよ、こういうことをやらせていただきます。

 同時に、東西NTTの経営の自由化をさらに進めていっていろいろなことができるようにしていきたい、それがある意味では公正な競争の促進だと考えておりますから、そういう措置をとったわけであります。それによって、料金の低廉化なり、消費者のニーズに対応した多様なサービスが進むのではなかろうか、私はこういうことを期待しているわけであります。

平井委員 私は、逓信委員会のころから振り返ってみると、どうしてもDSLの普及がおくれたのは、NTTの問題があったと思います。これは返す返す考えても絶対そうでありますので、業務範囲を緩和するということは当然でありますが、NTTにもやはり本当に市場原理にのっとって努力をしてもらわなければならないと思います。

 そのことについてなんですが、東西NTTに余剰人員がたくさんいるんじゃないか、企業としてちゃんとした合理化に取り組んでいないんじゃないかというような話も聞きますが、そのことに関しまして大臣はどのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 今、平井委員も御指摘のNTTを取り巻く経営環境の現状把握については、NTTの方もしっかりいたしておりまして、NTTとしても、経営合理化は避けて通れない、大変この問題は重要だと考えている、こういうことのようでございまして、その点では我々の方とも認識が一致いたしているわけであります。

 四月十六日に、NTTグループとして三カ年の経営計画でいくんだ、過剰雇用問題に積極的に対応するんだ、こういうことでございますから、私どもの方は大いに期待する、そういうことを申し上げました。具体的には、これは労使にかかわる問題でございますから、我々はどうこうということは言えませんけれども、この重要な問題についてNTTが一層の経営改善努力を行って適切に対応していくことを強く期待いたしております。

平井委員 ぜひNTTの国際競争力を強めていく上でも、合理化という問題、本当の経営の合理化、刷新というものが必要ではないかと思います。

 質問時間も短いようですので、通告はしておりませんが、この法案は当然重要な法案ですけれども、最終的に光ファイバーとかいろいろなものを整備して、では、IT社会で何が始まるかというと、実は、電子政府というものが社会に物すごく大きなインパクトを与えると私はかねがね思っています。ですから、この法律の改正、その先にあるものというのは恐らく、一般国民が、身近に自分の生活の中にはこれでIT社会というものが少しでも進むんだなということを考えたときに、この電子政府をいかに政府が強力に推進するかということにかかってくると思います。そこの中心的な役割を担うのが当然、総務省でありまして、特にブリッジ認証局を担当される、全体のフレームワークを進めていくのは総務省ということになると思います。

 しかしながら、この電子政府というものは、言葉だけがひとり歩きして、一般の国民に、何のためにやっているんだ、これは、行政サービスの効率化、手続の簡素化、そして最終的には行政のスリム化というものも念頭に入れていないと、昔のペーパーレス化と同じようになってしまうと思うわけであります。

 ですから、これは民間の力もかりて進めなきゃいけないことなんですが、ぜひ、電子政府を進めるその御決意、もしくは今後の考え方につきましてありましたら、PRも兼ねて御答弁をいただきたいと思います。

片山国務大臣 今お話がありましたが、私は、まさに電子政府、電子自治体の推進は総務省の最大の使命の一つだろう、こういうふうに思っております。国の行政を扱う総務庁と地方の行財政を扱う自治省が一緒になって、しかも、情報通信全体を扱う郵政省と一緒になったんですから、この電子政府、電子自治体は総務省にとって最も適切な課題だろう、こういうふうに思っております。

 今、御承知のように、ITのe―Japanの戦略なりアクションプランで、二〇〇三年までに一応の電子政府、電子自治体を達成する、当面は、何度も同じことを申し上げておりますが、一万以上ある申請や届け出のインターネット利用によるオンライン化、ワンストップサービスをできる範囲でやる、それから入札や調達の電子化あるいは受け払い、お金をもらったり、そういうことからまずやろう、こういうことでやっておりますし、同時に、行政側から情報の提供も、国民の皆さん、住民の皆さんにやろう、こういうことでございます。

 私は、これはやはり総務省できっちりした計画をつくって、組織的に、系統的に進めてまいりたい、こういうふうに思っておりまして、幾つかの地方団体では先駆的にかなり進んでおりますから、そういうことを踏まえてしっかりやっていこうと思っておりますので、ぜひ先生方の御指導や御支援もいただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。

平井委員 電子政府を本当にスピーディーに実現するためには、その法改正もたくさんあるわけでありまして、その皮切りとして四月一日から施行している電子署名法とか、それによって認証局なんかもできてきまして、世の中大分変わろうとしています。

 あとは、各省庁、先行三府省庁と言われているのが総務省、国土交通省、あとはどこでしたかね、そういう形で進んでいますが、全部の省庁が同じようなスピードで進んでいかないと、これは変なことになってしまいます。

 もう一つ、この電子政府で僕が一番心配しているのは、都道府県まではいいんですけれども、各市町村のレベルは、やりたい人、やりたくない人、何となくついていっている人、全然知らない人、知っている人、物すごく格差があるわけです。それを国が無理やりにやれと押しつけられるものでも今のところないわけで、うまくリーダーシップを発揮するのと、やはり国民に内容とサービスの向上というものを知らせる必要があるのではないかと思います。

 そういうことで、ぜひこれは、総務大臣を中心に、本当に急いで、二〇〇三年から二〇〇二年に前倒しで進めようということも検討されているようですが、スピーディーにやっていただきたいと思います。

 質疑時間が終了いたしましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、生方幸夫君。

生方委員 おはようございます。民主党の生方でございます。きょう、竹中大臣がIT担当ということでお越しいただきまして、まず、竹中大臣の方に質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 私も、竹中さんがお書きになりました本を幾つか読ませていただきました。大変歯切れのいい論議で、日本経済あるいは政府のことをばったばったと切っておられましたので、通信事業分野についても極めてわかりやすい論議をしております。

 竹中さんがこれまでお書きになってきたものを見ますと、日本の通信業界というのは規制でがんじがらめになっている、それが自由な競争を阻害しているのだ、一言で言えばそういう結論だと思うのですけれども、今度の電通法の一部を改正する法律案で、こうした考え方というのですか、これで自由な競争ができるようになるというふうにお考えになっているのかどうか、まず最初にお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 経済学者として活動してくる中で、競争政策の重要性というのは、電気通信事業だけではなく、さまざまな分野で感じてきました。諸外国を見ても、やはり競争政策が大変重要であるという幾つかの例示があると思います。

 ところが、この電気通信、特にIT関連、私は電気通信担当というよりITの観点から見ているわけですけれども、ITの部分というのは非常に特殊な部分で、最先端の幾つかの文献を洗っても、理論的に何が一番いいのかというのはまだ非常に試行錯誤で、各国は模索を続けている状態なのだと思うのですね。今回の改正というのは、その中の一種の試行錯誤の中の重要なステップであるというふうに思います。

 私もIT戦略会議のメンバーを昨年務めさせていただきましたけれども、その中でまずトリガーとしてやるべきことが幾つかあるだろう、一つは紛争処理の委員会を設けるということでありますので、これで一〇〇%になったというふうに私どもはもちろん思わないわけでありますけれども、一つの大きな重要な一歩が踏み出せるのではないかなというふうな期待はあります。

生方委員 昨年末の電気通信審議会の答申では、競争が進まない場合には二年後にNTTも経営のあり方を含めて見直すというような答申がなされていまして、今度の法案にはそのこと自体は盛り込まれておりません。

 私は、NTTとNCCの競争が進まない原因の一つとして、行政のかかわり方がはっきりしないことがあるのじゃないかと。NCCは、いずれNTTは行政の力によって規制されるだろうというふうに考えている。NTTの場合は、どうやろうとしても、これからいずれまた行政の干渉があるだろうから、この辺までにとどめておこうと。両方がすくんでしまって、なかなか競争が進まなくなっているのじゃないか。

 したがって、今度の法案でも、二年後に見直すとか、出資比率の引き下げについて云々とか、それから外資規制について云々、いろいろ小出しに規制が出てくるわけですよね。NTTにとってみると規制が出てくる、片方から見ると規制が緩和される、これをはっきりさせれば、どっちも競争に向けてしっかりしたスタンスをとれると私は思うのですね。これは、渋滞をしているときに、何で渋滞しているのかわからないと、みんないらいらしますけれども、渋滞している原因がわかれば、落ちついて待っていることもできるし、では違う道を通ろうかということもわかるわけで、今のNTTをめぐる行政の対応は、まさに渋滞をさせてしまっていて、その原因をしっかりさせないからいけないのじゃないかと私は思うのですね。

 したがって、NTTさんも、ここまでは確実に規制はしますよ、ただもうその先は自由ですよというのを、きちんと道筋を示すということがこの機会に必要じゃないかと私は思うのです。

 竹中大臣なんかは、NTTは最終的には解体しなければいけないという論を持っているようでございますけれども、本当にそれは解体するのがいいのか、あるいは今の経営形態のままもっと自由度を増すのがいいのかも含めて、NTTのあり方については、もうある程度、これ以上はもうやらぬよというめどをきちんと示す必要があると思うのですけれども、竹中大臣から、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 私は、NTTをどうするかということを直接担当している人間ではありません。私が申し上げられるのはあくまでも競争政策という観点からだけなのでありますけれども、NTTの解体というのは、またいろいろな定義があるかもしれませんが、私は、今まで何回かそれに類した発言をした場合、二通りの意味で言っているのではないかと思います。

 一つは、インターネットの時代というのは、音声情報であれ、映像情報であれ、文字情報であれ、デジタル化してやりとりが行われるのだ、デジタル化してやりとりが行われると、そのデジタル情報をやりとりする場がインターネットなのであるから、今までのように、音声情報だけをやりとりする電話会社、映像情報だけを出すテレビ局、放送局、そういう概念は全く消えてしまう。その意味では、いわゆる電話会社という概念が解体するのだ、テレビ局という概念が解体するのだ、そういうのは学者の一つの議論としては行ってきたというふうに思います。

 もう一つ恐らく議論のディメンションがあるとすれば、それはやはり、非常に大きな組織体でありますから、それ自体が何らかの形で競争しなければいけない。その競争に持っていく姿が、究極的にどういう姿が好ましいのか。繰り返し言いますが、先ほども申し上げましたように、競争政策の、まさに世界の最先端の専門家の間でも、従来、まだ試行錯誤の議論が続いていく中で、しかし、私が議論していた以前の状況では、やはり競争が欠如していることは明らかで、それをどういう形でレイヤー別に考えるのか、別の形で考えるのかはともかくとして、何らかの形でやはり競争を促進するような形に結果的には持っていかざるを得ないのだろう、そういうふうに申し上げたわけです。

 繰り返しますけれども、競争政策についてどういう形が好ましいかという一方での議論がまだ未成熟であるということと、私が特に興味がありますのは、その意味では、どこからトリガーを引くかということではないかと思います。その意味で、一つのトリガーが今回の改正法案の中に織り込まれているというふうに思っています。

生方委員 片山大臣にも。

片山国務大臣 生方委員にもいろいろな見方、お考えがあるのでしょうが、現在の電気通信事業法の改正は、基本的には昨年末の電通審答申を大体そのままに法案化したものなのですね。

 それで、二年間の猶予をやるから、NTTに努力しろ、しなければと、こういうのはありますけれども、私は、二年というのはこだわる必要はないと言ったのですよ。場合によっては前倒しもあるのだと。需要があれば後出しもあるので、だから、そこは全部速やかにしようと。二年後は私が落としたのです。二年後を落として、速やかにという言葉で、今のe―Japanアクションプランの中にも、規制改革三カ年計画の中にも書いておりますから、一部のマスコミも誤って後退だなんと言っておりますけれども、大間違いなのですよ。

 我々は、電通審答申を尊重しながら段階を踏んでしっかりとした競争政策を取り入れていこう、こういうふうに思っておりますから、そこで、せんだっても連休明けに私の方からNTTさんに自主的な開放政策のペーパーを出してほしいと。それは、地域通信網の開放である、もう一つは、ドコモその他に対する出資比率の引き下げである、もう一つは、NTT全体の経営体質の改善だ。こういうことで、そういうペーパーをお渡ししておりますから、もちろん、労使交渉その他の問題もありますから一遍にすぐというわけにはいきませんけれども、ちゃんとした答えを出してくれるものと私は期待いたしておりますし、抜本的な経営形態の見直しといったら、一年何カ月前ですよ、今の仕組みにしたのが。だから、持ち株会社の今のグループでどれだけ努力をやるか、その結果だと私は考えております。

生方委員 私は、規制はやはり緩和するべきだというふうに思っております。今申し上げましたように、NTTさんに自主的に再建政策、再建というのですかね、これからの三年計画を出していただいて、NTTさんも光ファイバー網を開放するとか、いろいろな御努力をしていると思うのですよね。

 ただ、私が今、ここまで努力すればいいのかなというふうに思っていると、そこまで到達するとまた次のゴールを示されるというのでは、レースで四十二キロを走って、ゴールは本当は四十五キロ先になりましたよというのでは、なかなかこれはわからないわけで、ゴールがきちんと決まったならもうここでおしまいだというのがないと、NTTさんも、どこまで努力したってまたこの先規制緩和されるのじゃないかというふうになると、不安で、働いている方もなかなか落ちついて働くことができないと思うのですね。

 その意味で、私は、ある意味で、ここまで来たらもうおしまいですよというものを示さないと、ここまで来て、実際問題としては、それでもまだ競争が十分に達成されていなければ、ある程度のことはもちろんしなければいけないのはわかるのですけれども、やはり大きな会社で皆さん一体になって御努力しているのですから、当面はここまでで終わりだというある程度のめどを示した方が、むしろ競争を促進することにつながるのじゃないかと私は思うのですけれども、いかがでございましょうか。

片山国務大臣 私どもの方から、せんだってNTTに要請しましたのは、基本的には自主的に考えてほしいと、ただ、私の方の注文は先ほど言いました三点ですよ、しかも、その考え方は規制改革三カ年計画やe―Japanアクションプランに書いてありますよ、それをひとつ念頭に入れて自主的につくってほしい、それを見て我々は考えますと。

 生方委員、こういうのは、先ほども竹中大臣が言われましたように、もうこれでおしまいというのはないのですよ。環境が変わる、技術進歩が行われる、国際的ないろいろな問題が出る、私はある意味ではエンドレスだと思うのです。だから、当面は規制改革三カ年計画とアクションプランを見てもらって、それでどこまでNTTさんが努力するかの答えを出してもらいたい、こう考えております。

生方委員 基本的にはそのとおりだと思うのです。ただ、今、私が申し上げましたように、やはり何年間か、ここまでだよというのがないと、私はやる方からしてみると、たまらないなというふうに思います。これはこれ以上あれしてもしようがないのですけれども。

 例えば、ドコモに対する出資比率の引き下げを求めていますね、NTTコムについてもそうですけれども、これも、五〇%以下ならいいのか、五〇%以下を達成したら今度は四〇%にしろというのか、また三〇%にしろというのか、いずれはそういう出資比率さえ、そういうものさえも別に何もなくなってしまうのか。その辺がやはり見えないと、やれといってもやりづらいのだと私は思うのですけれども、この辺はいかがでございましょうか。

片山国務大臣 委員、これはNTTさんのいろいろな事情やお考えも実はあるのですよ。我々の期待とNTTさんのお考えは必ずしも一致しないかもしれませんけれども、ただ、数字はちょっと今申し上げるわけにいきませんが、NTTさんも大変しっかりと受けとめて、真剣に検討して答えを出すと言っておりますから、私はそれを見守りながら調整したいと思っています。今ちょっと数字を申し上げるのは御勘弁願いたい。

生方委員 きのうの夕刊にも六万人のリストラというような数字が出ておりまして、職場が変わらなければいけないというような大変な事態でございますね。したがって、リストラはもちろんある程度しなければいけないのですけれども、縛る部分だけではだめで、では、業務の分野を拡大しようじゃないかということもやはり当然必要なわけです。

 今度、インターネットに対して、東西NTTに対してその業務の認可が出るというような話でございますが、私は、さっき竹中大臣もおっしゃいましたように、通信と放送というのはもうこれからは一体になっていくものであって、東西NTTさんが例えばCATVに進出をしたいといったような場合には、これをやはり許可するべきだというふうに思うのですけれども、この辺についていかがでございましょうか。

片山国務大臣 六万人云々というのは決まった話じゃありませんで、あれは一部のメディアの報道だ、私はこう思っておりますが、かなり思い切ったそういう意味での経営の効率化を考えていることは事実です。特に、アウトソーシングをやって、いろいろな関連会社に分けていこうなんということも含めて御検討だ、こういうふうに思っております。

 放送と通信の融合というのは、もう大勢ですね。そこで、今の放送というもののつかまえ方と通信というもののつかまえ方の整理をもう一遍してみる必要がある。これは、NTTさんもそうですけれども、NHKさんも大きく絡んでいるのですね。そこで、今、研究会をつくったりして検討しております。いずれにせよ、その融合が進むし、融合の成果を国民生活なり国民経済に反映させなければいけませんから、そういう意味での整理をこれからしていこう、私はこういうふうに思っております。

生方委員 竹中大臣にも同じ質問でお答えをいただきたい。

竹中国務大臣 IT革命をいかに日本に定着させていくかという観点から考えていきますと、実は非常に異質のものを幾つか議論しなきゃいけないということに気がつくわけですね。

 一つは、まさにインフラの部分なわけです。このインフラの部分に関しては、多分恐らく圧倒的にいわゆるネットワークの経済性、広い意味での規模の経済性ですけれども、ネットワークの経済性が働く。現実に、NTTの地域サービスというのが、であるからこそ基本的に非常にまだ高いシェアを占め続けているということになっている。これに対してどのような競争政策が有効かということに関して、必ずしも理論的にこれがいいのだというような確立された考え方はないと私は思います。いろいろな試行錯誤を行って、いっそこれを全部公的なインフラにしてしまえというような乱暴な議論が一方であれば、いわゆるエッセンシャルファシリティーの議論等々でこれを徹底的に開放させろという議論もある。これは専門家の間でもかなり議論が分かれているというふうに私は認識しています。

 実は、その上に今度放送の話等々が出てきて、なぜこれが重要になってくるかというと、コンテンツの問題が出てくるわけですね。そうすると、今までの、いわゆるインフラ、ネットワークの経済性があるところの議論と多分全く違う次元のレベルが出てきて、これがまた、具体的にはそこに事業者が存在するものですから、政策論になってくると、疎密非常に大きな差がある議論が行われているのだと私は思います。

 今、片山大臣の方からそれの勉強をしているというお話がありました。私は、やはり今一番重要なのはそれなんだと思います。幾つかのレイヤーに分けた競争政策のあり方、私たちは、その競争政策という観点から、IT戦略本部でゼロベースからこういった勉強をぜひ始めて、それで片山大臣のところの幾つかの成果と今後突合させて、意見を交換していきたいというふうに思っています。

生方委員 NTTのあり方を含めて、これは難しいのですね。ヨーロッパの方では独占は依然として続いているわけで、アメリカは、AT&Tを解体しちゃったおかげで、AT&Tの力は弱まったけれども、ほかのNCCが非常に大きな力を持ったということで、これは一歩一歩進めながらまた考えてというような形にならざるを得ないと思うのですね。

 今度の電通法の改正には、やはり公正な競争が確保されているのかどうかということのチェックをするために、紛争委員会を設けるというのが盛り込まれました。これは、紛争委員会というのを総務省に置く八条委員会にするのがいいのか、あるいはアメリカのFCCのように独立した行政法人の三条委員会にするべきなのかという議論があるわけです。

 竹中大臣は、内閣委員会では、明確にFCCにするべきではないかと。つまり、先進国では政策主体を普通は三つに分けている。一つは業界の育成、これは旧郵政省が担当している。二つ目が競争促進で、これはアメリカにおいてはFCCが担当している。三つ目が価格形成が公正かどうか、これは公取が担当している。これは行政の統合によって、総務省に今、日本の場合はこの三つがすべて統合されてしまっている格好になって、今度の紛争処理委員会も八条委員会であれば、当然総務省の中に取り込まれるということであって、この三つは本当は分立をしてチェック・アンド・バランスを働かせなければいけないというふうに竹中大臣はおっしゃっていて、日本はこの三つが総務省に集中して少し異常な形になっているというふうに内閣委員会で答弁をなさっておるのです。

 私たちも、紛争処理委員会は八条委員会として総務省の中に設けるのではなくて、やはり三条委員会として独立をさせるべきだというふうに考えているのですけれども、竹中大臣、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 内閣委員会で、私は、その三条委員会云々という言葉は特に使っていなかったと思いますけれども、やはり何らかの健全なチェック・アンド・バランスが必要であるという観点からそういう話をしたと思います。

 ただ、これも先ほど申し上げましたように、どういうやり方でチェック・アンド・バランス、健全な独立性を保ちながらチェック・アンド・バランスがいいかという組織論になると、実はそんなにはっきりとした定説なり成功例が世界中でもあるわけではないというふうに思います。私は、紛争処理委員会をつくるというのが一つのチェック・アンド・バランスの重要なスタートだと思います。

 ただし、これを一つの重要なスタートにして、さらに競争政策を、これはエンドレスの競争が今後続いて、やはりエンドレスの議論を我々はしていかなければいけないと思いますので、そのためのゼロベースの議論をIT戦略本部で行っていきたいということを、そのときは申し上げたつもりであります。

 健全なチェック・アンド・バランスという観点からいうならば、IT戦略本部では、その紛争処理の仕組みと並んで、いや、むしろそれ以上に、恐らく公正取引委員会の機能の強化というのがそれと並んで、まさにこれはチェック・アンド・バランスですから、どれか一つを突出して議論しても余り意味がないわけで、それが重要だというふうに私は考えております。

 総理の所信表明演説の中で、今回、公正取引委員会のあり方についての、方向性についての非常に明示的な議論がなされているわけで、それとのバランスをとりながら、繰り返しますが、紛争処理委員会を重要なスタートとして、エンドレスの前向きの議論をしていきたいと思っています。

生方委員 公取の機能を強化するというのはいいのですけれども、公取に電通の専門家がいるのかといったら、もちろん余りたくさんはいないわけで、やはり紛争処理委員会というかFCCのような形で、きちんとした専門家が素早く対処するということが非常に重要だと思うのですね。

 これは、非常に進歩の速い世界でございますから、時間をかけてやっていたのでは、もう規制をしたときには意味がなくなっているというようなこともございますので、私は、やはり育成をするという形の中と、それから、それをチェックするというのが一緒にいるというのは余り適切ではないと思うのですけれども、片山大臣、いかがでございましょうか。

片山国務大臣 当委員会でも何度もお答えしておりますが、アメリカのFCCは合議制の執行機関ですね。そこでどういうことをやっているかというと、企画立案と規制監督と紛争処理までやっているんですよ。

 ただ、日本の場合には、いろいろな議論が行革の過程であったのですが、最終的には、合議制の執行機関では機動性に欠けるし、議院内閣制下における責任のやや不明確さもあるし、やはりこれは大臣といいますか、総務省の中の内局として処理しようということでございます。それはいろいろな考え方がありますが、私は、企画立案と規制監督が一緒になる方が、場合によったらスムーズにいくということもありますので、アメリカもそうですが、合議制です。それから、EUも、欧州委員会がやっているのは基本的なことなので、実態のことは各省庁が、内局と外局と両方ありますけれども、一つの省庁が企画立案と規制監督をやっていますよ。

 そこで、今回、紛争処理だけは処理委員会をつくりまして、八条機関ですけれども、ここでやってもらおう。しかも、ソフトなことを中心にやってもらおう、むしろ、あっせんだとか調停だとかを。そこで、それはほとんど、私としては、総務大臣にいろいろな意見を言ってきたり勧告をするんですけれども、事実上は八条委員会である紛争処理委員会を尊重するということになると思います。だから、形は八条ですけれども、機能としては三条的にそれはいろいろな機能を果たしてもらえればいい、私はこう思います。

 そこで、今、委員が言われることで、問題は公取なんですけれども、公取も、どこに所属するかいろいろな議論があって、総務省の所轄になりました。これは、所轄というのは、総務省の私のもとに属しておりますけれども、完全な独立です。完全な独立機関。これはもう御承知のように、準司法的な機能を中心に行いますから、私は、これで総務省の中におるから職務がちゃんとやれないなんということは一切ない。これは総理の答弁でも、どなたかへの答弁のときにそういうことを言われたと思います。

 ただ、将来とも所轄でどこに置いておくかは、私は大いに今後とも議論していけばいいと思いますし、それから、やはり競争政策では公取のあり方というのが一つの目玉になりますから、これについても大いに議論して、みんなで結論を出していけばいいと考えております。

生方委員 とりあえず八条委員会でスタートして、運用する中で本当に公正な競争が確保できればいいわけで、仮にもしできないというようなことになってくれば、将来的にはもちろん、ここも柔軟にあり方も含めて検討するというお考えだというふうに解釈してよろしいですか。

片山国務大臣 ストレートに、八条でやってみてぐあいが悪かったら三条にと、こうは考えておりませんが、私は、今の紛争処理委員会をこれからスタートしてみて、十分その成果、あり方を見て、なおこれは、今、竹中大臣のお話ではありませんが、すべての制度、仕組みというのはエンドレスに議論していくんですよ。検討していって、よりいいものを求めていくということは当然だ、こういうふうに思っています。

生方委員 今度の電通法の改正も含めて、やはり日本をいかに情報社会に移行させていくのかというためにインフラの整備というのが欠かせないということで、私は、法案全体は一歩前進だというふうにもちろん思っているわけでございます。

 竹中大臣にせっかく来ていただいたので、ちょっとお話を伺いたいのですけれども、きのうも私、竹中さんの本を読んでおりまして、これはデジタル革命である、ニーズとウオンツを一致させなきゃいけないのに、日本はまだウオンツをきちんと把握できていないから、きちんとした景気回復ができないんだというようなことに重点が置かれていたと思います。

 私も、一九八〇年代の中ごろから、私はITとは言わずに、デジタル革命とも言わずに、単に情報革命というふうに言っていたんですけれども、日本に情報革命を起こさなければいけないと。

 そのときの根拠は、やはり竹中さんもおっしゃっているように、情報革命というのは産業革命に匹敵するものであって、産業革命というのは蒸気機関を発明して、蒸気機関を発明した大もとは何かというと、生産性を向上させるということになるわけですね。この蒸気機関と分業とが相まって、非常に大量生産、大量消費ができて、それが大量廃棄にもつながっていって、このままではもう工業社会が成り立たないということで、私は、一番大きな原因は、供給が需要を上回ってしまう、だから、供給過多で需要不足が生じてしまう、そこが一番原因で、これは竹中さんがおっしゃっている、まさにウオンツをきちんと把握すれば、ある程度需要が出てくるというのは明らかなんですけれども、私は、とにかくウオンツというのは新商品だったり新規事業分野だったりするわけですけれども、それだけではあり余る供給をカバーすることはできないと思うのですね。

 私が考えるのは、やはり情報社会というのは、竹中さんもおっしゃっているように、流通が非常に大きく変わるということを考えますと、組織でも中間の中抜きというのが行われるわけで、当然、生産部門においても、コンピューター化、ネットワーク化が進むことによって人員の削除が行われていくわけですね。したがって、組織を改革するとか働き方を変えるとかライフスタイルを変えるとか、ウオンツというより、変える、そこにやはり最大の需要が発生するんじゃないか、ウオンツだけでは足りないんじゃないかというふうに、きのうずっと本を読んでおりまして、ここをもう一歩踏み込んでいただくと、より大きな需要が見えるんじゃないか。

 私は、予算委員会なんかでも、ここをやはり政府としてきちんと、都市改革とか、当然、会社に毎日勤めなくてもいいような状態になってくれば、今のままの都市づくりでいいのかどうかというのは大いに疑問になってくるけれども、今のまま、みんな朝、駅に行って会社に行く、会社は東京にあるんだ、本社は東京にあるんだという想定のもとに、いろいろな都市づくりや何か全部行われているわけですけれども、これが、地方でも働けるようになる、しかも、自宅でも働けるようになるというと、ライフスタイルも変わってくるし、ワークスタイルも変わってくる、ここに最大の需要があって、そこに向けてどう変わっていくのかという観点で、政府も政策を組み立てた方がいいというふうに思うのですけれども、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 非常に大きな御指摘をいただいたと思います。

 ウオンツとニーズの議論というのは、経済学者は大変好きなんですけれども、例えば、ウオンツは無限にあるわけですね。私たち、何か例えば食べたい、でも何が食べたいかというのは、よくわからないのです。何かおいしいものが食べたいと。つまり、ウオンツはあるんだけれどもニーズに結びつかないから、グルメ情報誌がそれをつなぐものとして埋める。つまり、情報というのは、そういう意味ではウオンツをニーズに結びつける大変重要な役割を今までも果たしてきたし、それがデジタルな情報のもとでやはり果たせるということになるんだと思います。

 経済財政諮問会議で今議論しているときの一つのキーワードとして、クラウディングインという言葉を使わせていただいています。クラウディングアウトの反対で、何か例えば新しい、情報なら情報の供給、供給がふえることによってそれが新たな需要を引き起こす、まさにこれは、今、先生が言われたのは、そういう観点が必要じゃないかということだと思います。

 その意味では、私たちが今求めているのは、デジタルな技術を自由に安くだれもが駆使することによって新しいライフスタイルをつくる、新しいライフスタイルができるから、そこに新しい需要が出てくる、これは実は構造改革の大変重要な一部をなすものだと思っておりますし、その意味でも、IT革命を競争政策に基づく民間の活力を活用しながらまさに推進していきたいということにつながっていくんだと思います。

生方委員 よく、ゼロベースで見直すという言葉が出てくるんですけれども、これはまさにアメリカ側の、八〇年代の後半にリエンジニアリングというのを行ったとき、あらゆるものをゼロから見直そうじゃないかという中の手法の一つですね。

 私は、リエンジニアリングの運動があったときに、何でリエンジニアリングが起こるのか。もちろん第一義的には、日本との競争にあの当時負けてしまって、何とかしなければいけないと、労働者や個人の力をきちんと引き出さなければいけないということでリエンジニアリングに取り組んだんですけれども、その大もとには、私はやはり、コンピューターネットワークというものを前提とした物づくり、前提とした組織づくり、前提とした企業活動のあり方というのを見直そうというのがアメリカにあったと思うのですね。

 だから、私は、日本の場合はリエンジニアリングをリストラと勘違い、勘違いというか、リストラをやってからリエンジニアリングにいくんですけれども、どうもまだリストラの段階にとどまっていて、ゼロベースから見直すといっても、何をゼロベースから見直すのかがきちんとわかっていないんじゃないかという気がしてならないのですけれども、最後にその点、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 ゼロベースから見直すという場合には、残念ながら、今、委員御指摘のような、そんなに深い意味で使っている場合ではないということが多いんだと思います。

 私が特に強調させていただきたいのは、やはり競争政策を推進するために、さまざまな規制緩和を議論していかなければいけない。総合規制改革会議が立ち上がりましたけれども、実は担当の石原大臣からは、このITの部門というのは総合規制改革会議ではちょっと扱えない問題なので、IT戦略本部で集中的に議論してもらって、それを総合規制改革会議に報告する形をとってほしいというような依頼を受けておりまして、その方向で、まさにIT戦略本部でゼロベースからといいますか全体の、ITに関する競争政策の話を議論していきたいというふうに考えております。

生方委員 またこの問題はいずれゆっくり論議したいと思います。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、松原仁君。

    〔委員長退席、荒井(広)委員長代理着席〕

松原委員 いよいよ二十一世紀を迎えて、新しい情報通信時代が訪れるわけであります。この情報通信時代というのは、人類にとって長い間夢に見てきたような、さまざまな新しいライフスタイルが実現する。今、私たちの日本では大変な不況の波が覆っているわけでありますが、この不景気の波を公共事業やその他のさまざまな施策で乗り越えようという努力も一方でなされておりますが、恐らく、この不景気を乗り越える決定的なものがあるとすれば、それはやはり情報通信の革命によって、今はまだまだ、国民のかなりの部分が使っていても生活の中では、一部ではないですが、広がっておりますが、それがさらにすべての隅々まで行き渡ったときに、恐らくまた景気の回復も起こってくるのではなかろうかというふうにも思っているわけであります。

 そういった意味では、この情報通信革命、情報通信社会というものをきちっと到来させていかなければいけないわけでありますが、そのためには幾つかの乗り越えなければいけない問題がある。つまり、この社会をすばらしいものにするためには、国内におけるさまざまな競争をきちっと行えるような環境をつくらなければいけない。また、ユーザーに対してのサービス、そのサービスの中には値段等も含まれるわけでありますが、ユーザーに対する利益をきちっと確保するような方向性をつくっていかなければいけない。そしてさらには、日本における情報通信社会もしくはその主体者が、国際的な意味において競争力を持たなければいけない、こういう多くのテーマがあると思うわけであります。今回の電気通信事業法の一部を改正するというのは、そういう二十一世紀に向かっての社会づくりの、行政側の基盤整備だろうと思っております。

 そこで、幾つか御質問をしたいわけでありますが、今回、導入しようとしている市場支配的事業者に対する規制により、今お話ししましたように、国際的な規制の動向と調和した競争ルールが確立できるのかということであります。というのは、やはり情報通信というのは従来の、昔と違って、今やまさにグローバルでありますから、グローバルな発想においてそれが是とされなければいけない。国際的な規制の流れや国際的な競争ルールと、今回、我々が目指しているものの整合性というものは極めて重要になってくると思うわけでありますが、これについて御質問いたします。

片山国務大臣 冒頭、委員から言われましたように、やはり我々は本当に望ましいIT社会を構築していく、それから、よくIT革命、IT革命と言われますから、まさに革命でなければいかぬ、そういうふうに思っておりますので、先ほど申し上げましたが、e―Japan戦略をつくり、アクションプランをつくり、来年には中間報告的なものをまとめたい、こういうふうに思っておりますから、そういうことに沿って適切な対応をしてまいりたい、こう思っております。

 今お尋ねの、国際的な規制の動向とどうだ、こういうことでございますけれども、まさに我々は国際的な動向を視野に入れて今回の電気通信事業法を出したわけでありまして、特に、市場支配的事業者による反競争的な行為を効果的に防止、除去する、一方で、それ以外の事業者については規制を大幅に緩和する、これが非対称という、なかなかわかりにくい言葉なんですが、この規制をやる。

 これは、WTO基本電気通信合意というのが平成十年二月に発効しておりますけれども、これに沿ったものでございます。その中でも、主要なサービス提供者による反競争的行為の防止、相互接続に関する要件をぜひ規定しろ、こういうことになっておりますから、それに沿っているということが一つと、欧米諸国においても、今回、我が国が導入するような規制制度の整備をもう既にやっておりますから、その意味では、今回の電気事業法の改正は国際的な動向に沿った競争ルールの確立だ、こういうふうに考えております。

松原委員 そうした中で、今、大臣からお話もありましたが、今回の非対称規制の整備は、五年以内に世界最高水準のインターネット整備をしようという我が国の方針、e―Japan重点計画を達成していく上でどのように具体的に貢献するか、もう一回確認をいたします。

小坂副大臣 これはe―Japan重点計画そのものに記入されているわけでございますけれども、具体的にはこの中で、非対称規制の導入として、市場支配力を有する電気通信事業者の反競争的行為を防止、除去するための規制を導入するとともに、利用者利益を確保しつつ、市場支配力を有さない電気通信事業者に対しては、契約約款、接続協定の認可制等を一定の条件のもとで届け出制に移行するなど大幅な規制緩和を行うと明記しております。

 このように今回の法改正によりまして非対称規制の導入を行うことで、e―Japan重点計画によります、事業者間の公正な競争を通じて、低廉で高速な通信サービスが提供されることを可能とするための制度整備を進めていく、このような目的の達成に大いに貢献するものと考えておるところでございます。

松原委員 そういった意味では大変に前進する内容かなという部分で、評価する部分もあるわけであります。

 そして、今回の非対称規制の整備により、消費者にどのような利益がもたらされるか。これは、消費者がどれだけのメリットを享受できるかということが、やはり一番この社会で重要なポイントだろうと思っております。もちろん、生産者というものも大事でありますが、消費者にとってどのようなメリットがあるか、これをもう一回確認をしたいと思います。

小坂副大臣 消費者にとりましては、より低廉で、より高速で、またより多様なサービスが提供できる、こういうような環境の整備が図られるという意味で、利用者の利益の最大化が図られる、このように考えております。

松原委員 それから、第二種指定電気通信設備の指定というのがありますが、その基準である移動体通信事業者の電気通信設備のシェアについて、総務省令で定める割合はどの程度のものか。諸外国では、アメリカ、ドイツではこういった規制が明確な数字になっているかどうかまだ確認しておりませんが、二五%、五〇%、さまざまな数字があるわけでありますが、その数字はどれぐらいのものが想定されているのか。そして、その根拠として、どのようなものがどういう妥当性をその数字に当てているのか、その辺をちょっと御説明いただきたいと思います。

小坂副大臣 結論から申し上げれば、基本的に二五%という数字を考えております。

 これは、EUにおいて市場支配的事業者の指定の基準が市場シェアの二五%超、こうされていること、またあわせまして、我が国の携帯電話市場におきましては、電波の有限性から、各地域において三から四の事業者が寡占的な競争状態であるという状況からしますと、二五%を超えれば相対的に大きなシェアを有している、このように考えられる、こういう状況にあるということでございます。

 また、独禁法上の運用指針におきましても、企業結合後の市場シェアが二五%以下となるような場合は、競争を実質的に制限することは通常考えられない、こういうふうに規定しておりますから、基本的には二五%を超えるというところに目安を置くのがいいのではないか、このように考えているわけであります。

 しかしながら、御指摘のように、EUにおきまして二五%超の基準を見直すという動きもあるようでございますので、そんなことも考えますと、国際的な動向や我が国市場の実態が現状と大きく変わるようなことがあれば、それもまた勘案しなければならない、このように考えておりまして、審議会や関係者の意見も聞いた上で最終的に決定をする、このように考えております。

松原委員 エリアは、例えばブロック別に東北地方とか関東地方とか、そういうエリアで行政的に考えてパーセンテージを見る、こういうことですか。

小坂副大臣 これは、事業者ごとのサービスエリアというものを一つの単位と考えて、その中でシェアというものを見ていく、このように考えております。

松原委員 サービスエリアという問題があるわけですが、それは固定的にエリアが区切られているわけじゃなくて、時代とともに、新しい町ができるとか、そこを線路が走るとか、道路が走るとかで大分状況が変わってくるわけですよ。そうすると、例えばここだと二七%だけれども、このエリアで見ると二四%です、こういうこともあるわけです。そういう見直しも柔軟に行うというふうなことでよろしいわけですか、エリアに関しては。

小坂副大臣 基本的にはそのように考えております。

 例えば、ケーブルテレビの事業者が電話サービスを始めるというような場合に、その一定の地域をカバーしているのがその事業者のみである、そういった場合には、そのサービスエリアを対象として考えていくわけで、それが町村合併とかいろいろな環境の変化によって延びていく、また、くくりが変化する場合には、それをもう一度見直しながら柔軟に対応していく、このように考えております。

金澤政府参考人 補足説明をさせていただきたいと思います。

 移動体端末設備に係る規制につきまして申し上げますと、これは第二種電気通信設備というふうに言っておりますけれども、各事業者の営業区域といいますかサービスエリアを対象としたものでございます。それから、第一種電気通信事業者につきましては、県単位ということになっております。

松原委員 そういうことで非対称規制ということが整備されていくわけでありますが、冒頭、私、申し上げましたように、国際的な大変な大競争社会に一方で入っているわけでありまして、そういった意味においては、今回の非対称規制の整備というものが大分意味を持つという点においては、そのように私も理解しております。

 ただ反面、国内の競争が促進される部分がある中において国際競争力というものを考えたときに、国際競争力が研究開発等の分野において低下する、可能性としてそれがあるかないか。もちろん、国内競争力が高まることによって、結果として国際競争力が高まるという議論もありますが、やはり大きな地球規模での国際競争力の中ではマイナスかもしれないという議論もあって、この辺についての御認識をちょっとお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 国内競争の促進と国際競争力という観点から考えますと、今回、公正な競争を促進するための法改正を行うこととしているわけでありますけれども、これによりまして、事業者相互が事業活動を盛んに行い、競争が促進される、そして料金の低廉化、サービスの多様化、技術革新が促進される、このように考えているわけであります。

 そういう意味で、国内の競争の促進が国際競争力を強める、こういう関係に出ていく、そういう中で、国内の事業者の国際競争力が一層強まることを期待しているところでございます。

松原委員 IT社会においては、物をつくるときのコストも当然これは消費者が影響を受けるわけでありますが、その製造コストを考えるときに、特許を持っているか持っていないかということがコストを確定する上で大きな影響を持つというふうに言われているわけであります。

 この分野では日本が、先進国というのですか、IT化を先鞭的に進めている国の中でどれぐらいのポジションにあるかというのは、私は十分には理解しておりませんが、特許を獲得したり、またいわゆるグローバルスタンダードというふうな議論があるわけでありますが、世界的な統一基準をとった方がはるかに強いものになっていくわけであります。

 世界的な統一基準、グローバルスタンダードをとるためにそれぞれの企業が企業として努力をしていくのは当然だろうと思いますが、世界的な流れを見ると、それぞれの企業だけではなくて、やはりその企業が存在している国が必死になってグローバルスタンダードを、自分の特許を中心とした一つのコンポーネントというか体系の中で目指していこうというふうに努力をしているわけであります。

 ITU、国際電気通信連合やそういった国際的会合、民間企業はそれに取り組んできたわけでありますが、政府としてもこれに対する取り組みを、私は従来もしてきたとは思いますが、他の諸外国に比べて遜色ないぐらいの取り組みをさらにしていかなければ、結果的に特許を持たない、コストの高い製品を我々日本はつくり、またユーザーはそれを使わざるを得ないことになるのではないかという大変な危機感を私は持っております。

 そういった意味において、これは国と産業の連係プレーというふうに言ってもいいかもしれませんが、この辺に関しての取り組みをぜひ強力にやっていただきたいと思うわけでありますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。

金澤政府参考人 電気通信分野におきましては急速な技術発展が行われておりまして、特に移動通信分野には顕著にあらわれているところでございます。例えば、IMT二〇〇〇につきましては、NTTドコモの考え方を中心にして世界標準を策定するという方向で私どもも努力いたしました。さらに、四Gと申しまして、第四世代の携帯電話につきましても、現在、その技術基準の策定に向けて努力中でございます。

 いずれにいたしましても、国、キャリア、メーカー三位一体となって、日本標準を国際的な標準にすべく努力していきたいというふうに考えております。

    〔荒井(広)委員長代理退席、委員長着席〕

小坂副大臣 今、局長が答弁を申し上げたとおりでございますが、委員御指摘のとおり、これは非常に重要な分野でございますので、私ども、外務省、経済産業省等とも密接な連携をとりながら、ITU等の国際的な会議の、機構の場も通じながら、そのように積極的な支援をしてまいりたいと考えております。

松原委員 そういった意味では、今、副大臣の御答弁で、従来のものも頑張ってきた、こういうふうなお話でありましたが、諸外国に比べて政府の取り組みという部分が、特許を取得しグローバルスタンダードをとるという明確な戦略的な意思のもとで十分になされていたとはなかなか言えないのじゃないかというふうな議論があるわけであります。ここにe―Japan重点計画とかいろいろな計画がありますが、そこにどれぐらい盛られているかというふうな議論を踏まえると、もっともっと、この部分が重要なのだろう、コストにもはね返ってくる、このことはぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 これは私、非常に興味を持っている分野ですので、大臣の御所見もお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 委員と私どもの副大臣や局長のやりとりを聞かせていただいておりまして、私も同じ認識でございますので、今、言いましたように、外務省なり経済産業省とも連携をとりながら、積極的に対応いたします。

松原委員 それにぜひ取り組んでいただき、また、ITU等の国際会合には大挙して、いわゆる民間の企業だけではなくて、今、言ったようなさまざまな立場の、行政も行って後ろ盾、後ろ盾になるというと何かあれですけれども、とにかく負けないで、日本は技術力はあるわけですから、そこで負けなければいけるはずなんですよ。いろいろな議論を聞くと、いい特許の萌芽がありながらうまくとられてしまったとかさまざまな議論があるので、本当にこの部分はよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、電気通信事業紛争処理委員会に関連する御質問をいたしたいと思います。

 今回の改正を受けまして、その実質的な実効性を高める上で、電気通信事業紛争処理委員会というものが設置されるわけであります。総務省の下に委員会を設置することとしており、また、総務大臣が委員を任命することになっていますが、これは許認可部門からの独立性が不十分であり、紛争処理機能の強化が十分に図られないのではないか、こういうふうな議論もあるわけであります。これにつきまして御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 今回の法律の改正で、この紛争処理委員会をつくるというのが一つの目玉でございまして、大変紛争そのものがふえている、高度化している、複雑化している、こういうことで、独立の機関でやっていただくのがどうだろうか、こういうことにいたしたわけであります。

 そこで、どういうものをつくるか、いろいろな議論がございましたけれども、やはり総務省の中につくると。ルールをつくること、ルールを運用すること、それに基づく紛争を処理することが、その三つのコミュニケーションができるだけいい方が私はスムーズにいくんではなかろうかと。

 仕事の方は委員会と総務省の関係のところと一体でやるけれども、その構成や進め方は独立の方がいいというので、私が任命しますが、この委員さんは五名だと思いますけれども、両院の国会の承認人事で、権威ある中立的な人になってもらう。

 また、今のところ直属の事務局をつくりたい、こう思っておりまして、それにもしかるべき適材適所を充てて、仕事の方は独立してやってもらう。ただ、お互いの連携、コミュニケーションは十分やっていく、こういうふうに考えております。

松原委員 先ほど竹中大臣の話があったように、これをつくること自体が大きな意味があるんだということですから、それは評価するわけでありますが、それが本当にきちっと機能するかどうかというのはまた見ながら、よりいいものをつくるためには、とりあえずはこれでスタートしますが、考えていかなきゃいけない部分があるのかなということだけはきちっと銘記しておきたいと思います。

 続いて、委員の構成及び選任の基準については、まさに今の質問とも絡んで極めて重要なんでありますが、どのように考えているかということであります。

 学者などのいわば指定席を内規で定めるなど、従来のものをいろいろと見ていると、そういう議論もあるわけでして、そういった意味で、恣意的に偏った編成にしてしまうのではないかというおそれがありますが、これについての御所見を副大臣にお伺いいたします。

小坂副大臣 委員は、電気通信事業に関してすぐれた識見を有する方の中から選ぶということでございます。

 ただいま大臣が答弁申し上げたとおり、国会の承認人事でもございますし、また、委員が御指摘になりましたように、特定の分野に偏って選任するようなことがあってはならない、このように考えておりますので、そのような指定席を設けるようなことは全く考えておりません。

松原委員 次に、委員会の事務局の規模が、この規模で十分な調査ができるのかということであります。

 また、先ほどの生方さんの質問のどこかにもありましたが、大変にIT社会というのはドッグイヤーといいますか日進月歩でございますので、そういった意味では、紛争が出されて二年調停に時間がかかりましたとか、こういうふうなことでは、終わったときにはすべてもうそのステージを越えてしまっている、こういうことでありまして、期間の問題もあるわけであります。

 ですから、この部分で、もちろん、そういう話になれば、なるべく早くと、こういうふうな話をなさるのかもしれませんが、これで十分な調査ができるのかということと同時に、迅速な処理というものが、イメージとしてどれぐらいのイメージでできるのかということ。また、この委員会にいろいろと来た内容で取り上げなかったものについて、きちっとした答弁というんですか、回答をするのか、こういったことも含めて、副大臣に御所見をお伺いいたします。

小坂副大臣 この体制でございますけれども、五名の委員のほかに十名程度の仮称特別委員というようなものを置いて補強してまいりたい。

 また、事務局も設置をするわけでございまして、そういった意味で、十分な体制をもって臨んでいきたいと思います。

 また、処理について、従来、郵政省という枠組みの中でやってまいりましたところでは、一から二カ月ぐらいかかっておりました。しかし、先ほど大臣が答弁申し上げたように、ドッグイヤーと言われる今日、時間をかけておりますと、非常に問題になりますので、一、二カ月よりより迅速に常に心がけてまいりたい、こういうふうに時間的なめどを考えておるところでございます。

松原委員 公取委は、規則制定権や立入検査、反競争的行為の停止命令等ができるのに比べ、電気通信事業紛争処理委員会の権限は少ないようですが、今のに関連しますが、十分な役割を果たせるのかということでございます。

 同時に、今、副大臣、少し御答弁にあったわけでありますが、迅速な処理をするのはもちろんでありますが、その間の、本当はさまざまな、もう先にやり得だったというふうな部分に関しての実は議論もあるのも事実でありますが、どちらにしても、公取委に比べて権限が少ない中で十分な役割を果たせるのかにつきまして御所見をお伺いいたします。副大臣。

小坂副大臣 公正取引委員会につきましては、独占禁止法に基づく競争制限的行為を事後的に排除、是正する役割を担っているところでございまして、そういった意味から、御指摘のとおり、立入検査や停止命令等があるわけでございます。

 しかし、紛争処理委員会というのは、電気通信事業者間の接続等に係る紛争についてのあっせんや仲裁を行うということでございまして、紛争処理の役割を担っているのでございます。あっせんとか仲裁というのは行政処分ではございませんので、これを行うための強制的な調査権限は有しておりません。

 しかしながら、当事者からの意見や報告の聴取を行うなど、紛争処理に必要な調査ができるように規定をされておりますので、これによりまして十分に機能を果たすことができると考えております。

 また、事業者間紛争に係る総務大臣からの諮問事項についても、委員会は総務大臣に調査を要請することなどによって十分な機能を発揮することができるわけであります。総務大臣は、行政処分というような形の中でより強力な権限を有しておりますので、その連携によってこの機能は十分に果たされる、このように考えております。

松原委員 時間が参りましたので終わりますが、もっと細かい多くの問題点が実はあるわけであります。きょうも、あとユニバーサルサービスの問題その他さまざま聞こうと思っておりましたが、この問題は後の同僚議員がまた質問すると思います。

 以上で終わります。

御法川委員長 次に、中村哲治君。

中村(哲)委員 おはようございます。

 政府に対する質問の前に、一言委員長に対して申しておきたいことがあります。

 与党側の席を見てください。(発言する者あり)さっきはもっといなかったという声が同僚議員から聞こえておりますが、定足数というのは何のために設けてあるのか。与党側の席だけ見ると、定足数は足りていません。私は、地元の戦没者の追悼式に出るために、委員会を休んだり本会議を休んで地元に帰っている人もいると聞く。そのような国会のあり方でいいのか。国会議員というのは全国民を代表する存在であるというのは憲法にも書かれている。

 こういう状態に対して、委員長はどのようにお思いになりますか。

御法川委員長 非常に遺憾でございます。

 今、事務局を通じて出席方の要請を進めております。(発言する者あり)

 中村君。

中村(哲)委員 今、不規則発言で、そんなこと言うなと与党の側の委員さん、おっしゃいましたけれども、それは本当に本心でしょうか。

 委員長は遺憾だとおっしゃいました。遺憾だというのは余り国民がふだん聞く言葉じゃありませんので、ちょっとわかりやすい言葉で言っていただけませんでしょうか。

御法川委員長 総務委員会のメンバーでございますから、どういうお仕事があるかはわかりませんけれども、出席するのは当然でございますので、ぜひ総務委員としての役割を果たしてもらいたいという意味で申したところでございます。(発言する者あり)いや、数はいっています。

 中村君。

中村(哲)委員 確かに、抜けざるを得ない用事とかも出てくると思います。だけれども、物事には程度というものがあって、だからこそ、定足数が設けられているというふうに私は思っていますから、一人一人のことをやっていきましょう。もちろん、みずからの自戒も込めて、ともに取り組んでいきたいということを申させていただきます。

 さて、政府の方に質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、ユニバーサルサービス基金についてお尋ねいたします。

 まず、小坂副大臣の方にお聞きいたします。ユニバーサルサービス、法文では基礎的電気通信役務と定められておりますが、このユニバーサルサービスの対象となるサービスは何でしょうか。

小坂副大臣 ユニバーサルサービスにつきましては、法律の七十二条の五に定めておりますが、基礎的電気通信役務ということで、法文上は、国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき電気通信役務、このように規定しているわけでございます。

 このユニバーサルサービスの具体的な範囲については総務省令で定めることとしておるわけでございますが、加入電話サービス、それから公衆電話サービス及び緊急通報サービス、この三つを規定することを予定しております。

中村(哲)委員 逆に考えると、ISDNやADSL、そういったインターネットというものは入らないと明言されていると理解してよろしいんでしょうか。

小坂副大臣 今御指摘のADSLあるいはインターネット等のサービスは、まだその世帯普及率等からかんがみてこのユニバーサルサービスという中に規定するには至っていない、このように考えております。したがって、今おっしゃるとおり規定しないということでございますが、今後、いわゆるドッグイヤーと言われるようなこの市場の変化に対応して、常にユニバーサルサービスにつきましても検討を重ねていくことは継続してまいる所存でございます。

中村(哲)委員 検討していくというところが、総務省の中だけでやっていることに問題があると思うんですよ。これは省令だということが私は非常に問題だと思います。

 先ほど条文をお読みになりました。国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき役務とおっしゃいましたが、この範囲を決めるのは、やはり国会でなくちゃいけないんじゃないでしょうか。私はこれを法律事項とすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小坂副大臣 今、申し上げましたように、このユニバーサルサービスというものをどの範囲にするかということは、なぜ法律上規定しないかといえば、また繰り返しになるわけでございますが、今日の変化の激しいサービスの中で、サービスの普及率、利用状況等を勘案して、国民利用者のニーズを踏まえつつ、それを見直していくということが必要でございます。その意味で、法律事項とすることによりまして、逆にユニバーサルサービスの範囲というものが時代におくれてしまう、あるいは手おくれになるということも考えられないではないわけでございまして、十分に機能する枠組みの中で適時適切に見直しを行っていくことの方がむしろ国民利用者の皆さんの利益に資する、このように考えて、法律事項にはいたしておらないところでございます。

中村(哲)委員 小坂副大臣の答弁を今、お聞きしますと、法律事項だったら迅速に変えることができない、省令だったら変えることができる、そういうふうなお考えだと思います。

 では、適宜変えていくというのはどれぐらいのタームで考えておられるのか、どのぐらいの期間で変えることを考えているから法律事項ではいけないのか、そういう具体的なイメージがもしあるんだったら、それをお答えください。

小坂副大臣 決して法律事項にしてはならないというふうには考えておりませんが、むしろ、省令で制定をする方が国民ニーズに適合するだろうと考えているという考え方を申し上げたわけでございます。この検討に当たりましては、審議会に諮問をするとか、あるいはその諮問に基づく答申に対してパブリックコメントを広く求めて国民利用者の皆さんの意見を十分に反映させるとか、こういったことをしながらやっていくわけでございます。

 期間的なものについては、普及の度合いが、どのくらいのものが普及するかというのはなかなか算定しがたいですね。

 例えば、携帯電話も当初は十年以上かかるだろうと思っておった普及が急速に進んだとか、インターネットもまだまだ普及は伸びないだろうと言われていたものが急速に進展するとか、今も御指摘にありましたDSLのサービスも当初予定していたよりも急速な進展をしております。こういった状況をつぶさに見ながら判断をしていく方がよろしかろう、このように考えているところでございます。

中村(哲)委員 逆に言えば、つぶさに見ていきながら法律事項にして、そういう状況が今、国で起こっているんだよと、そういう問題提起を内閣の方からしていって国会で議論をしていくというのが、このユニバーサルサービスの性質からしてあるべき姿なんじゃないかと私は思います。

 そもそもユニバーサルサービスとは何なのか、なぜこういうふうな基金が必要になってきたのか、そういうふうに議論を進めたいと思います。

 小坂副大臣、今なぜユニバーサルサービス基金が必要になったんでしょうか。

小坂副大臣 委員も多分お使いになると思うんですが、よくデジタルデバイドと言われるように、電気通信、情報通信、いわゆるITと呼ばれるこの分野の急速な進展によりまして、利用できる層と利用できない層、それが、地理的な条件や年代あるいは国別、国の施策等によっての格差、こういうものが生じる。これは避けなければならないことでございますね。だれでもがあまねく利用できるような、便利なものであればみんなが公平に利用できるような環境をつくっていかなければなりません。

 そういう中で、一方では競争を促進し、そしてその競争の中で市場の原理に基づいてそれぞれの事業者が事業を営んでいく、こういう環境を整備していくわけでありますが、それによりますと、営業的に有利な部分には多くの事業者が参入するが、営業的に採算性のとりにくい分野にはなかなか事業者が参入しないということが考えられるわけでございます。

 地域的な分野で例を申し上げるならば、都市部においては、多くの事業者がそこに参入をし幅広いサービス、多様なサービスが提供されるけれども、地方においてはなかなか採算性がとれないので、どの事業者も都市部を優先して地方の整備に手を抜くというようなことがもしあったとするならば、それは公平な環境の整備にならない、こういうことになりますので、特定の事業者を定めて、その事業者がこのユニバーサルサービスを提供する義務を負って、そして、そういった地域においても必ずユニバーサルサービスと規定されるサービスについては提供をしていく、このように努めなければならないというふうに、私ども政府は考えているわけでございます。

 その点から、事業者が実際にそれらの地域で提供するコストが、提供による収入よりも上回ってしまう場合、この損失をだれかが補てんしてやらなければ、その事業者は競争に不利益をこうむることになります。そういった意味で、それらの地域についても、同じような電気通信事業者の共通のファンドによって、不利益をこうむる、まあ言ってみれば、収入を上回る赤字部分、その一部をこのユニバーサルサービスファンドというようなもので埋め合わせをしていく。このことによって、全国あまねくユニバーサルサービスが提供できる環境を整備していくことに心がけることがやはりどうしても必要だと考えて、このような議論がスタートしたというように理解をいたしております。

中村(哲)委員 今の小坂副大臣の御答弁をお聞きしまして、デジタルデバイドの解消のために、将来、ユニバーサルサービスを広げていくという前提のもとでお話しされています。そうじゃないのですか。

小坂副大臣 一面にはそうかもしれませんけれども、デジタルデバイドを起こさないということを基本に考えて、このサービスというもの、事業者のあり方というものを考えていく、そういう考え方を申し上げたつもりでございます。

金澤政府参考人 事実関係でございますので、若干の補足をさせていただきたいというふうに思います。

 現時点におきましてユニバーサルサービスの創設について検討することとなりましたのは、現在は、あまねく電話につきましては、東西NTTが提供することがその責務とされております。しかしながら、いわゆる内部相互補助、つまり、都市部における利益で過疎地における損失を埋める、そういう内部相互補助が競争の進展によって成り立ちにくくなるという状況を踏まえまして、ユニバーサルサービス、つまり、あまねく電話を中心とした、現在、日常生活に必要不可欠な役務を提供するための費用を、NTTの地域電気通信網に接続する電気通信事業者、これは電気通信事業者として受益するわけでございますので、この電気通信事業者にその費用を負担させることにより、ユニバーサルサービスを維持しようというものでございます。

中村(哲)委員 私は、副大臣の答弁と局長の答弁と、微妙にずれていると思います。このユニバーサルサービスの範囲が、今おっしゃった三つの、加入電話と公衆電話と緊急電話の範囲で考えるユニバーサルサービスなのか、それとも、時代の進展に伴ってインターネットまで含めて考えるのか、そこで大きく違ってくるのじゃないですか。

金澤政府参考人 現時点における法律改正の考え方は先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、当然、ユニバーサルサービスも、技術環境の変化、技術の発展動向、競争状況、それからいろいろなサービスの普及状況、そういうものを勘案しながら、適時適切に見直していくべきものでございます。

中村(哲)委員 今ある電話というメタルの回線と、インターネットで必要とされるようなIPの接続網というのは、別のルートであることが普通は考えられるわけです。そのような中にあって、一緒くたに議論していくと、議論が混線してしまう。質的に違うものをユニバーサルサービスに含めていくということは、法律事項でやっていかないといけない、大きな変革を伴うのだから、省令でやるべきではないと私は改めて思いますが、その点について、いかがでしょうか。

金澤政府参考人 インターネットと申しますのは、いわゆるインターネットプロトコルということでございまして、通信を行う上でのプロトコルでございます。

 それでは、具体的にはどういうふうなルートを通って行っていくかということでございますけれども、加入者は、当然、インターネットを行う場合にも、現在のメタリック回線を使ってやるということでございますが、途中は、交換機ではなくてルーターその他の設備を経由して行うということでございまして、地域電気通信網のメタリック回線を利用して行っていくという部分については、ある意味で重複している部分もあるということでございます。

小坂副大臣 局長答弁と私のは同じラインであると思っております。局長は、現在の状況の中で、NTTが地域加入者網の独占状態にある中で今日の経過があったという御説明を申し上げ、私は、特定の事業者を例にとったという形でなくて、委員の御質問にできるだけ普遍的な意味で答えようと思って申し上げてきた、概念的な説明を申し上げたところでございます。

 今後どういうふうになっていくかということでありますが、例えば、今の緊急サービスにしても、普通の音声のサービスにしても、IP電話であろうと、あるいは現在の交換機利用の電話であろうと、それが的確に提供できるということであれば、これはユニバーサルサービスを提供できることになるわけでございます。また、特定の地域において、ケーブル事業者が寡占的に地域網を張りめぐらせて、そこにおいて電話サービスを提供するということであれば、これもユニバーサルサービスを担っていることになるわけでございまして、こういった状況を全体的に総合して御説明を申し上げたつもりでございます。

中村(哲)委員 小坂副大臣の整理には納得します。だから、そのような違いがあるということを、答弁性質上違いがあるということを私も申したかったわけです。

 局長のなさった答弁を前提とすると、次に生じてくる疑問が、九九年の再編のときには内部相互補助でできると考えられたものが、なぜ、それではできなくなったから基金なんだ、そういう疑問が今度出てくるわけですよ。これについてはどう評価をしていますか。

金澤政府参考人 今回の一連の法律改正事項は、いわば公正な競争の促進という視点から、さまざまな施策を法律改正事項として挙げたということでございます。

 そういうことで、持ち株会社及び東西NTT、NTTコミュニケーションズという四分割いたしました平成十一年の組織変更と申しますか、その時点におきまして、当然、NTT東西に対して責務を課したわけでございますが、この法律改正に伴いまして、さまざまな状況の変化が発生してくるだろうということを念頭に置いているものでございます。

 ユニバーサルサービスコストをどのように算定していくかということでございますが、特定の役務を提供するためのコストと、その役務によって得られる収入というものを比較いたしまして、赤字であればこれを補てんしていくということでございまして、そういう状況を見ながら、ユニバーサルサービスファンドを設立していきたいというふうに考えている次第でございます。

中村(哲)委員 時間もなくなってきましたから次に入りますけれども、だったら、基金を算定する基準とか規模とかはどういうふうに考えておられるのでしょうか。

小坂副大臣 ユニバーサル基金の負担金の算定方法でございますけれども、先ほど一部申し上げましたが、ユニバーサルサービスの提供により生ずる収益の額を上回る費用がかかると思われる場合には、上回ると見込まれる額の費用の一部、これは実際の額ではなくて長期増分費用に基づく形で算定をしたものをベースにした費用なのでございますが、その費用に指定法人の事務経費等を加算して、各事業者ごとの負担額は、この総額を各事業者の売上高等に比例して配分をする。全体の事業者の総売り上げの中でシェアを出して、そのシェアに基づいて案分する、このような方式が考えられるわけでありまして、負担金の算定方法については、そのような形で配分することを考えております。

 しかしながら、規模が非常に小さな事業者に対しても同じ割合で負担金を課すということになりますと、過重な負担になることも考えられますので、負担金を適用する規模を一定のレベルというもので切っていく必要があるだろう、いわゆる足切りのようなものを考えて、それ以上の事業収入のある事業者を対象にこの負担金を分割していこう、このような考え方で臨んでいく予定でございます。

 また、事業の規模や収益の額に対する負担金の額の割合は、現在では長期増分費用の算定がまだできないわけでございますので、今後そのような状況を十分見ながら算定の方式を詰めてまいりたい、このように考えております。

中村(哲)委員 今の答弁は非常にわかりにくいです。理解できません。

 長期増分費用方式というのは、もともと公平な競争のために設けられるものでしょう。このユニバーサルサービスというのは、競争とはもう一つ対立概念、トレードオフの関係にある公益性を確保するためのものでしょう。何でそういうふうになるのか、私には全然わからない。

金澤政府参考人 原価を算定するための算定方式として長期増分費用方式という考え方を用いるわけでございますけれども、これは、負担金を負担いたしますのは、NTTの地域電気通信網と接続する電気通信事業者ということになっております。その電気通信事業者が負担する負担金の額を積算するときに、例えばNTTの経営が非常に非効率であったというために、そのことによって多額の負担金を負担する必要が生じてくるというふうな場合もございます。

 したがいまして、経営の非効率性というものを完全に排除し得る長期増分費用方式という方式によって行うことが、費用負担者との関係において適正であるというふうに考えているということでございます。

中村(哲)委員 だから、そこに恣意的な、政策的な判断が入ると言っているんですよ。全部省令じゃないですか。総務省がそういうふうに考えると、そういうふうになるようになっているんじゃないでしょうか。そんな法律のつくり方でいいのかということを聞いているんですよ。

 非効率的な経営をしているという判断は、だれが判断するんですか。総務省令で決まるということは、総務省が判断するんじゃないですか。そんなことで本当に公正な競争とか通信市場ができると思っているのですか。

片山国務大臣 いろいろやりとりを聞かせていただきました。

 今の我が国の制度は、委員御承知のように三権分立ですよね。我が国会は立法機関、我々は行政機関で、立法では法律をつくっていただいて、その中の実際の施行は行政がやる。その接点が、法律の下の政令や省令ですよね。

 それで、大きなユニバーサルサービスの定義は法律で決めていただきました。その具体の施行は、我々は省令でやらせていただこうと。ここは見解が、そうしますけれども、ただ、総務委員会で十分国会の意向は聞かせていただいて、また我々のやることに御批判もいただいて、その上で省令を決めてまいりたいと思いますので、その辺は役所だけで独走するとか勝手に決めるとかということは一切考えておりませんので、その点は御安心賜りたいと思います。

中村(哲)委員 時間が来たので、もう本当にやめなくてはいけないのですけれども。

 だからこそ、ユニバーサルサービスの範囲というのは、そこまでは法律事項にしておかないといけないのではないかということも言っているわけですよ。それを、時代の変化が早いからそれはできないとか、そういう答弁、私は、きょうの御答弁の総合的な組み立てというのは論理破綻していると思うのですよね、うまくつじつまを合わされていますけれども。

 だから、その点に関して、正直に最後に答えていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

小坂副大臣 私どもも、決して何かごまかそうとしているわけでもなく、何でもないのでございまして、今、局長が、NTTがもし非効率な運営をしているような場合に、そのコストを、接続している事業者に押しつけられるのでは困るので、こういった長期増分費用方式を使うのですと申し上げたところ、中村委員は、そういった非効率な運営を許している、あるいはそれを判断するのが総務省だからおかしいんだ、こういうお話ですが、それは判断できないのですね。

 要するに、非効率かどうかということを排除するために、それを私どもが判断することを排除するために、現状において一番効率的なモデルでそれを組み立てたらどのくらいの費用がかかるかということを算定して、それをベースにして、NTTのコストを横に置いておいて、そうではなくて、理想的なモデルをベースにして算定したコストを、接続している事業者の方々に負担をしていただく、こういう形をつくって、より公正な基盤をつくるというのがこの考え方でございます。

 それから、今、委員が御指摘になりました、省令か法律事項かというのは、まさに今、大臣が申し上げたように、この分野におきまして公正な運営を私どもは心がけておりますし、その点においては、議院内閣制において皆さんに御理解をいただかなければ、これはどうにも議論がおさまらないところではございますが、このような変化の激しい分野においては、国民の利便というものを一番に考えて、そして、法律の改正というのは時々の事情によっていろいろ変わります。例えば院の構成とか、いろいろなものが関係してまいります。

 しかしながら、省令であれば、国民にパブリックコメントを求めて公平な判断をいただいた上で、省令改正も迅速にできるわけでございます。こういった観点でこれは省令事項にさせていただきたいという私どもの考え方を明確に申し上げ、透明性も確保しているつもりでございますので、その点、何とぞ御理解をいただいて、今日のところはおおさめをいただきたい、このように思うところでございます。

中村(哲)委員 おさめられないですが、質問を終わらせていただきます。

御法川委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 きょうの電気通信事業法の改正案に対する質疑でございますが、日本の経済におきまして、これから、バブル崩壊後ずっと低迷する経済を打開するためにも、また新たな発展をさせるためにも、IT革命というものが重要である。これはもう昨年来ずっと言われ続けたことで、IT基本法も昨年できましたし、また政府部内でも、IT戦略会議からIT戦略本部という形で展開をしているところでもあると思います。

 そういった中で、政府のe―Japan戦略において、我が国が五年以内に世界最先端のIT国家になることを目標としている。この目標を実現するためには、ITにかかわるさまざまな分野で特に徹底的な規制緩和を行う、撤廃を行う、さらにベンチャービジネスの市場参入を促していく、そしてIT市場全体の活性化をさせるということが、このITのe―Japan戦略にとっては重要な問題であると私も認識しております。

 そのような中で、特にITの基盤を促す通信・放送のインフラの整備、これがやはり一番重要だということで、今回の電気通信事業法の改正というものが位置づけられていると思うのですが、特に競争政策を促すためには、アメリカや韓国等でも既に行われておりますけれども、規制を取り払う中で自由競争を促していく、そこでさらに発展をさせていくというところが重要であるな、そう考えております。

 その上で、今回の改正案がそれを促すものである、そういうふうに位置づけられておりますけれども、ただ若干、さまざまな意見が交錯する中で、まず第一段階からさらに第二、第三段階という、二の矢、三の矢を打っていかなければいけない状況であるかな、そういうような気もしております。

 そういう部分で、まず最初の質問でございますけれども、今回の改正案におきまして、第一条、目的のところがこのように変わっております。「その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保する」、公正な競争、これをつけ加えたわけですね。公正な競争を確保する、これはまことに重要なことなのでありますけれども、具体的にはどのような項目が公正競争を担保しているか、このことをまず最初にお伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 今、委員言われましたように、第一条に、公正な競争の促進、こう書いてあります。

 これは、一つは、非対称規制というのをこの法案で導入させていただく。市場支配的な力がある事業者には反競争的な行為を監視してこれを防止、除去する、これが一つですね。それからもう一つ、それ以外の事業者、力の弱い事業者については徹底した規制緩和をやる。力の強い者は少し力をセーブしてもらう、力の弱い者はもっと自由にやってもらう、ここで一つの競争を促進してまいりたい。

 それから、従来の加入者系の固定通信分野における接続ルールに加えて、これから、増大しております移動通信分野における接続ルールを整備していく。また、先ほども言いましたが、例えばいろいろな、光ファイバー網はもとよりでございますけれども、電柱だとか管渠だとか管路、そういうものも改良していく。

 また、電気通信事業者間の接続等に係る紛争の処理を図るために、許認可部門とは切り離した電気通信事業紛争処理委員会をつくって、ここで適切な処理をやっていく。こういうことによって、全体としては公正な競争を担保してまいりたい。そうすれば、多様なサービスあるいは料金の低廉化その他いろいろな効果が国民経済や国民生活に出るのではなかろうかと我々は考えたわけであります。

 言われましたように、一の矢と言えば一の矢ですね。私は、その一番大きいNTTグループさんにさらなる競争促進、開放のための措置を要請しておりますから、これが出てまいったときにどういう対応をするかということがその次の二の矢ということにあるいはなるのかもしれない、こういうふうに理解しております。

高木(陽)委員 今、大臣の方から、具体的な公正競争を担保する項目という形でお話をいただきましたけれども、最後に大臣がおっしゃられたその二の矢という部分、これがまさにこれから重要になってくるなと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 その上で、現在、電力会社や鉄道などが保有する光ファイバー網、これはもう既に全国レベルで張りめぐらされている。これを有効に活用することができれば、利用者の方はこんな便利なことはない、こういうことでございます。

 そこで、卸電気通信役務制度のことでちょっとお伺いをしたいのですが、今回改正案で新たに加えられたこの制度、これは総務省の今回の法改正の概要で書かれておりますけれども、自治体、公益事業者等の光ファイバー網の有効活用及び電気通信事業者のネットワーク構築の柔軟性の向上を図るため、事業者間の個別契約による柔軟な卸電気通信役務の提供を可能にする制度で、卸契約は届け出とする、このように説明されております。

 しかしながら、この改正案、卸電気通信役務を提供するのは、第一種の通信事業者としての免許が必要である。従来から行われている公益事業者の光ファイバーのIRUベースによる賃貸が非規制であったことから比べれば、逆に規制を強化したのじゃないか、こういうような指摘もあります。

 今ある光ファイバー網というものを本当に活用すれば、e―Japan重点計画による五年後を待たずに実現できる可能性もあるわけですから、そういうことから考えますと、本制度の新設がどのように競争を促しているのか、こういうことをお伺いしたいと思います。

金澤政府参考人 現行法のもとで第一種電気通信事業者が他の電気通信事業者にいわゆる事業者向けの電気通信役務を提供する場合でございますけれども、これは、提供相手は第二種電気通信事業者に限定されているということでございます。しかも、約款外役務ということで、認可を要するということとなっております。

 今回の卸電気通信役務に関する制度におきましては、これまでと同様に、先生御指摘のように第一種電気通信事業者としての許可は必要ではございますけれども、提供相手は一種、二種を問わないという規制緩和をいたしました。また、約款外役務としての認可にかえまして、届け出のみで提供できるということとされております。この制度によりまして、大規模な規制緩和措置がなされることとなりますので、事業者のネットワーク構築の柔軟性の向上が図られるというふうに考えている次第でございます。

 先ほど先生からも御指摘がございましたように、現在、第一種電気通信事業者の許可をとることなく自治体や公益事業者が、第一種電気通信事業者にいわゆる永久的使用権といいますか、IRUという形態でその保有する光ファイバーの芯線貸しを行っているということでございますけれども、この点につきましては、今回の法改正に関係なく従来どおり維持されるというふうに考えております。

高木(陽)委員 続きまして、改正案の附則第六条のことをちょっとお伺いしたいと思います。

 第六条には、「政府は、この法律による改正後の規定の実施状況、インターネットその他の高度情報通信ネットワークに係る技術及びその利用の動向その他内外の社会経済情勢の変化等を勘案し、並びに国際的な電気通信事業の円滑な遂行及び我が国の電気通信技術の国際競争力の向上に配意し、通信と放送に係る事業の区分を含む電気通信に係る制度の在り方について総合的に検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。」まさに先ほどから申し上げている二の矢の部分がこの附則のところで担保されているのかなと思うのです。

 そこで、これから、今回の改正案で完璧だとは私も思いませんし、大臣、副大臣及び担当者の方々もそうは思っていないと思うのです。その上で、このようにさらに必要な措置を講ずるのは当然なんですが、e―Japan重点計画では、公正な競争を促進するための施策によっても十分な競争の進展が見られない場合には、通信主権の確保や国際競争の動向も視野に入れ、速やかに電気通信に係る制度、NTTのあり方等の抜本的な見直しを行う、また規制改革の推進三カ年計画でも同様の趣旨で、NTTグループの経営形態を抜本的に見直すことが明記されている。

 先ほどから、野党の方々の質問でもこのNTT問題に触れられていたようでございますけれども、NTT問題だけではなくて、競争促進の状況をチェックしていく、そのチェックに基づいて、それがちゃんとした公正な競争になっていなければさらに手を打たなければいけないのですけれども、こういったものの具体的なスケジュールというか、どのようにしていくのかということについてお考えをお聞かせ願いたいと思います。

片山国務大臣 今言われましたように、二の矢というものをどう考えるかということでございますが、連休明けの五月八日に総務省の方からNTTに正式に文書で、NTTグループの経営の改善と公正競争を図る観点からNTTが自主的につくる実施計画を出してほしい、こういうことを求めましたので、経営については労使交渉になる事項もかなり入っておりますから恐らく少し時間がかかると思いますけれども、NTTから計画を出していただいて、その計画に基づいて公正な競争の確保と経営改善をさらに進めていただこう、こういうふうに思っております。

 そこで、計画をどう出していただくかということ、その計画の実行をどうやっていただくかということ、これを我々は注視してまいりますけれども、それが公正な競争の確保の進展にとって必ずしも我々が考えておる点とは違う、こういうことになりましたら、今高木委員お話しのように、規制改革の三カ年計画やe―Japanアクションプランに書きましたように、速やかに電気通信に係る制度、NTTのあり方等の抜本的な見直しを行う、こういう考え方でございます。ただ、法律は、これはいろいろな議論がございましていろいろな要素を入れましたので、ちょっと複雑でわかりにくくなっておりますけれども、基本的な考え方はそういうことでございます。

 しかも、その場合に、電通審の答申では二年という期限でございましたが、私は、二年は速やかにの方がいいのではないかと。競争政策促進の観点からはできるだけ前倒しをしていただくこともあるし、事情があれば必ずしも二年にこだわらないでもう少し時間をかけることもあり得るのではなかろうか、こういたした次第でございます。

高木(陽)委員 前倒しもあるし、また後回しというのですか、そういう可能性もあるというお話ですけれども、まさに今、このIT関連分野におきましてはドッグイヤーというふうに言われておりますので、そういう部分では本当に従来の考え方を一新して、早急にというか速やかに、とにかく一番大切なことはそれを使っている利用者、国民の側の立場だと思うんです。一千万人、そして四千万人という形の人たちがインターネットを自由に使えるようになる。そのためには、一番問題となるのは通信料金が安いかどうかということで、高ければ幾ら通じていても使わないということになりますので、そこら辺の問題意識を私も、そして公明党の方も持ちながらずっと論議を進めてまいりました。

 その上で、次の質問はちょっと幅を広げまして、通信の問題でずっと今質問をしていたんですけれども、やはりこれからの時代というのは通信と放送が融合されるであろう、まさにもう融合し始めているという状況の中にあって、規制改革の推進三カ年計画においても、NTT、またNHKのあり方も含めた通信と放送の融合への的確な対応を進めるべきとしておりますが、そういった中で、メディア別に分かれた諸制度、法律がみんな違うわけですね。そうなりますと、融合してきますと、そこら辺のところで、では、その部分はどっちの法律でやるんだとか、こういった問題が出てくるのは明らかであると思うんです。

 そういった中で、今回の改正案をベースとしながらも、今後、通信・放送の融合について具体的にどのように考えているか、お伺いしたいと思います。

小坂副大臣 御指摘の通信・放送融合と言われる分野には、端末の融合とか伝送路の融合、あるいはサービスの融合といろいろありますけれども、端末の融合については現在法規制というのは特にございませんので、アイデア次第でいろいろな商品を出していただける、こう思うわけです。

 しかしながら、一番問題なのは、光ファイバーや通信衛星等の電気通信回線が広帯域化をしておりまして、これを放送の方でも利用したいという要請がある。こういうことから、伝送路の融合に対応するために、やはり喫緊の課題として法改正が必要であろう、このように認識いたしておりまして、その意味で、電気通信事業者の広帯域回線を通信とともにCS放送やケーブルテレビジョン等に柔軟に利用できるようにするために、電気通信サービスを利用した放送を可能とする電気通信役務利用放送法案というものを今国会に提出いたしました。委員の御協力を得て早期成立を図ってまいりたい、こういうことでございます。

 また、他の分野につきましても、通信・放送の融合の進展状況等を十分に見まして、この制度のあり方について適宜適切に対応してまいりたい、このように考えております。

高木(陽)委員 具体的に、今国会でも、そういうCATV等を使った放送・通信の融合の部分、これに対する法律案が提出されておるというふうに今副大臣の方からお話がございました。

 まさにそうやって一つ一つ対応していかなければいけないんですが、近い将来は、やはり放送と通信を融合した形の総合的な法律という形にしていかないと適応し切れないのではないかなという問題意識がございまして、これは今すぐということではないんですが、検討のほどをよろしくお願いしたい、このように申し上げておきます。

 その上で、今は放送と通信という大きな分野でございましたが、今度は、通信事業者の間では区分として第一種、第二種、こういうのがございます。IT革命が進んでいろいろな通信手段という形が普及してまいりますと、この第一種、第二種という区分のあり方も今後見直していかなければいけないのではないか。それについてどのように検討されているか、お伺いしたいと思います。

小坂副大臣 この第一種、第二種の区分のあり方につきましては、欧米とはまた違う区分のあり方であるとか、経済界からも見直すべきだという御要望をいただいているとか、規制改革推進三カ年計画においてもあるいは本法案の附則においても明らかにされておるわけであります。

 この点につきまして、現在は、電気通信の基本的なインフラである電気通信回線設備を設置しサービスの提供を行う、このインフラを提供している第一種電気通信事業者、そして、他の電気通信事業者からサービス提供を受けて、いわゆるユーザーとしてそれを自由に利用してサービス展開を行う第二種電気通信事業者、こういう区分を行っておりまして、この区分は簡素でわかりやすいという利点を持っているわけであります。

 しかし、今後の技術動向や競争の進展あるいは通信と放送の融合、こういった環境の変化を十分に見据えて、電気通信制度全体の中で総合的に判断をし、検討してまいりたい、このように考えております。

高木(陽)委員 続きまして、独禁法との関係ということでちょっと質問させていただきたいのです。

 まず、マーケットが十分に競争的環境になっているのであれば、事業者の監視というのは独占禁止法に基づいて、そこにゆだねていくというのが普通だと思うんです。今回の改正案において、支配的事業者による不当な差別的取り扱い禁止などの禁止事項が盛り込まれております。これは、公正競争を担保するためという大義名分もあると思うんですが、独禁法でも禁じているわけですね。そうなってきますと、事業者の側から見ると、独禁法でも規制され、しかも電気通信事業法でも規制され、何か二重に規制をされているんじゃないか、こういうふうに考えがちですけれども、いずれも総務省の所管であるわけですね、公正取引委員会も。

 そうなってきますと、独禁法と電気通信事業法の二重に規制するという意味、または法律の役割分担、これはどのように考えているか、お聞かせ願いたいと思います。

金澤政府参考人 今回の電気通信事業法等の一部を改正する法律におきましては、市場支配的事業者がその電気通信業務について、特定の事業者を不当に優先的または不利に取り扱うということを禁止行為類型として挙げております。他方、独占禁止法では、不公正な取引方法の一つとして不当な差別的取り扱いというものを禁止しているところでございます。

 このたび、電気通信分野の特殊性、それから同分野が独占から競争への過渡的な状況にあること、つまり地域電気通信設備はほとんど九九%、東西NTTの所有に帰するものという状況を踏まえまして、電気通信市場の競争を積極的に創出していくため、競争の一般的ルールでございます独占禁止法に加えまして、電気通信事業法におきましても、市場支配的事業者を特定した上で、個々具体的な禁止されるべき行為類型を明確化し、それに該当すれば競争を阻害する要因がなくとも速やかにその是正措置を発動できる措置を講ずることにより、迅速な紛争解決に資することといたしたところでございます。

 こういうふうな制度改正の基本的な考え方につきましては、私ども、公正取引委員会との間でさまざまな話し合いを行いまして、今申し上げましたような一定の整理を行ったということでございます。

 ただ、先生も御指摘なさいましたように、電気通信事業法と独占禁止法の適用関係をめぐりまして事業者に無用の混乱や負担を生じさせないよう、電気通信分野における電気通信事業法及び独占禁止法の適用関係を明確化するための共同ガイドラインの策定を含めまして、電気通信分野における反競争的行為を漏れなく防止するために必要な連携を行える仕組みにつきまして、今後、公正取引委員会と私どもと十分な調整を進めてまいりたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 続いて、電波の問題でちょっとお伺いしたいんですが、今回、電気通信事業法ですけれども、電気通信制度を話し始めますと、どうしても電波の問題は触れざるを得ない問題なんだろうなと。特に、先ほどから申し上げているe―Japan重点計画、さらには規制改革三カ年計画等々でも、周波数の管理、割り当てについてもこれが透明かつ公正ということで述べられておりますけれども、しかもモバイルインターネットがもう爆発的に普及しておりますので、そうなりますと、電波監理という観点からもこのIT問題というものをとらえられていく。

 この問題について、例えば電波オークションのあり方、これはヨーロッパでも行われていて、まだまだ日本では導入というところまではいっていないんですけれども、今後、透明かつ公正で効率的な電波監理ということを考えていく上で電波オークション制度も含めてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

片山国務大臣 今、委員御指摘のように、周波数割り当て、これは電波利用の大変重要な課題だ、こういうふうに認識しております。電波は、いわば国民共通といいますか共用の資産ではなかろうか、こう思っております。

 そこで、今お尋ねのように、オークション方式の導入については、かねてから大変議論のあるところでございますが、例のe―Japanアクションプランでは、二〇〇五年度までに結論を得ると。その場合には、よその国での実施状況を踏まえて、今お話しのように公平性、透明性、迅速性、効率性、そういうことのすべてを含んだ検討の結果で結論を得よう、こうなっております。

 どうも外国の例を見ますと、オークションをやると落札価格が大変高くなって、それが結局、利用者のサービス料金へ転嫁されるような例もありますし、あるいは高い落札をしたために事業者の経営状況が大変悪くなってやめてしまうというような例もないわけではありませんので、そういうことも十分調査しながら、導入の是非について慎重な検討が必要であると考えております。

 いずれにせよ、国民すべての資産とすれば、その有効な利用ということは必要なことだ、こういうふうに私も考えております。

高木(陽)委員 時間も大分迫ってまいりましたけれども、NTT法の改正に関することもちょっとお伺いしたいと思うのです。

 NTT東西会社が運営する地域のIPネットワークは、現在四十七の都道府県に分割されているため、例えば、関西のユーザーが東京のインターネットサービス、プロバイダーにアクセスしようとするとき、高い長距離電話料金がかかる。また、高速のIPネットワークの恩恵も受けることができない状況にある。これはNTT法で東西会社の県間通信を禁じていることが原因だと思うのですが、まさにこういう規制がインターネットの発展を妨げている、こういうふうな指摘もございました。

 また、今回の改正によって、総務大臣の認可を得ればNTTの東日本や西日本はこれまで禁じられていた県間通信を行うことができる。ただ、ここでちょっと問題なのは、その条件がございます。例えば「公正な競争の確保に支障を及ぼすおそれがない」。これはまさに大切なことなんですけれども、行政判断があるわけですね。総務大臣が認可、別に大臣を疑っているわけではないのですけれども、そういった部分で、今まで、行政判断というのはどうしてもあいまいなんじゃないか、こういう指摘がされております。

 そういった中で、やはり公正な競争というのは透明性でもあり、そういうことを念頭に置いた上で、特に、ラストワンマイルの設備を持つNTT東西会社が全国レベルでのインターネット事業に乗り出すことは独占による弊害を生むわけですね。これはこれでまたいろいろと独禁法の問題として指摘はされておりますので、NTT法による規制、もう一つはこれもまた独禁法の規制、ここの関係ということをどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

片山国務大臣 東西のNTTの業務範囲は限定いたしておりますが、この法律で、その保有する設備、技術、職員を活用して新たな電気通信事業を営むこと、例えばインターネット関連の新たな業務を行うことも可能にいたしたわけであります。その場合には、地域電気通信業務の円滑な遂行ということが一つの基準、それからもう一つは、電気通信事業の公正な競争の確保に支障を及ぼすおそれがない、この二点が具体的な認可の基準になると思いますけれども、これだけではわかりにくいといえばわかりにくいわけですから、何らかのさらなるガイドラインを作成することによって、事業者の方にもなるほどわかるな、国民の皆さんもそうか、こういうことにぜひいたしたい、こう私は考えております。

 そこで、独禁法といいますか、公正取引委員会との関係ですが、あれは公正取引、独占禁止の一般的なルールを決めたわけでありまして、こういう電気通信のような特別の分野につきましては、それにさらに上乗せ、横出しというのか、よくわかりませんけれども、その分野特有の規制があってもいいと私は思います。ただ、委員が言われるように、それが二重の規制にならないようにそこの整理はしっかりする必要がある、こういうふうに考えておりまして、公取も、独立しておりますけれども私の所轄に属しておりますので、その辺のコミュニケーションだけは十分してまいりたいと思っております。

高木(陽)委員 時間が参りましたけれども、最後に一言申し上げたいのは、まさに今回の電気通信事業法、最初に申し上げましたように、IT革命を推し進めるための基盤整備、これを推し進めるためのものであると認識しておりますけれども、インフラが整備されても、やはり大切なことは利用者の側の感覚。利用者の素朴な感覚は、とにかく通信料金がまだまだ高い。

 私ども公明党の方も、一昨年に署名運動を行いまして、全国で一千二百五十万人の通信料金を下げてくれという署名が集まりました。その結果、それぞれの事業者の方も競争の中で料金値下げを順次行っておられますけれども、利用者の側から見るとまだまだ高い、または海外と比較した場合に高い。

 本当にIT革命を進めるための一番の問題は、そこの利用者の料金の問題が避けて通れない問題である。そのための公正な競争促進、そして規制を緩和及び撤廃していく、この流れをさらに推し進めていただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。重複する質問があるかもしれませんが、改めてお尋ねいたしますので、よろしくお願いいたします。

 御案内のとおり、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、IT基本法が一月六日に施行され、政府は一月に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、IT戦略本部を設置し、五年以内に世界最先端のIT国家の形成を目指し、e―Japan戦略を策定するとともに、三月には、それを具体化すべく、e―Japan重点計画が定められたところであります。

 一方、小泉総理は、さきの所信表明演説にて、世界最先端のIT国家を実現するという野心的目標を設定し、その実現を確かなものとするため、e―Japan重点計画を着実に実行するとともに、中間目標としてIT二〇〇二プログラムを作成したいと表明しております。

 そこで、電気通信事業法の改正並びにNTT法の改正に際し、一日目は、巨大なNTTグループによる強力な通信市場支配の弊害、その結果いかに自由な競争が阻害されているかを主体に議論を進めていきたいと思っております。

 御承知のとおり、技術力の高い我が国は、著名なIMD、スイス経営開発国際研究所によりますと、世界の競争力の比較において、わずか五年前に世界第四位であったものがその後急落し、昨年十七位、ことしは二十六位にまで下がると予測されております。また、総務省の資料等によりますと、昨年末のアジアではインターネット利用者は最大であるものの、その先を示すブロードバンド、高速大容量普及率は韓国の三八・一%を筆頭に香港、台湾、シンガポールに次いで、五位の三・四%にすぎないのであります。我が国がIT戦略面で世界の先進国やアジア主要国から、このように大きなおくれをとっている現在、これから五年でどこまで追いつけるか強い疑問を抱いております。

 どこに基本的問題点があり、どうキャッチアップすべきかなど、これから質疑を深めたいと思いますけれども、その前に、総理が所信で新たに中間目標の設定を表明したのは、政府は、五年以内の目標達成に自信が持てなくなってきているのではないか。また、中間目標は概略どのようなもので、かつ、どこに力点を置こうとしているのか。総務大臣にまたまた改めてお尋ねいたします。

片山国務大臣 小泉総理は、所信の中で、e―Japanアクションプランを着実に実行していくとともに、中間目標であるe―Japan二〇〇二プログラムをつくる、こういうことを言われました。

 このe―Japan重点計画は、御承知のように、二〇〇五年までに日本を世界で最先端のIT国家にする、こういうことでございますが、やはり中間目標を示した方がそれぞれの関係のところに励みが出て目標がはっきりするのではなかろうかということでこういう言葉を入れられたわけでありまして、これは、自信がないのじゃない、自信があるからプログラムをつくるのです。

 特に、世間では、インターネットがおくれている、おくれていると言われているのですけれども、これは去年なんかは相当伸びてきまして、先ほども言いましたが、三四%を超えるような普及率になってきましたし、モバイルは世界で一番なんです。携帯電話は、何度も言いますけれども、六千七百万台ですよ。それから、情報家電も進んでいますし、テレビも日本が一番進んでいるんですよ。これもこれからデジタル化を思い切ってやるわけですからね。

 そういうことで、我々は自信を持って二〇〇二プログラムをつくって、さらに今のIT化を促進していく、こういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。

黄川田委員 技術力も資金力もあった日本がIT革命でなぜおくれをとったのか。関係者が国内の主導権争いに終始してきたからではないですか。失敗の原因はしっかりと分析されるべきものだと思っております。

 さて、電気通信審議会は、昨年七月、IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策のあり方について、旧郵政大臣から諮問されております。それによりますと、地域通信市場におけるNTT東西会社の事実上の独占状態は依然として解消されておらず、地域通信市場の競争が十分に進展しているとは言いがたい状況にある。また、インターネットや携帯電話の爆発的普及に見られるような市場構造の急激な変化など、予測をはるかに上回るテンポと規模で進行する環境の変化に対し、現行の競争に関する枠組みが、必ずしも十分に対応していない状況が生じつつあるとしております。

 また、同審議会は、昨年十二月、同様な競争政策のあり方について、「IT時代の競争促進プログラム」として、第一次答申がなされております。それによりますと、インターネットに代表されるスピード経営の時代にあって、新しい競争制度の導入後、二年を経過してもなお十分な競争の進展が見られず、所期の目的が達成されない場合は、公正かつ有効な競争状態を実現するため、NTTグループの経営形態について、完全資本分離を含め、現在の持ち株会社形態の抜本的な見直しを実施することが必要であるとしております。

 しかしながら、今回の改正案では、核心部分の経営形態の見直しやNTTドコモに対するNTTの出資比率制限などが、残念ながらすっぽり抜け落ちております。これは組織防衛を図ったNTTが自民党の郵政族を動かした結果であると、広く報道されております。時代錯誤も甚だしいと私は思うのであります。

 これらの認識のもと、依然としてガリバー型NTTグループが通信情報市場を支配し、反競争的な行為を行い、ベンチャー企業の健全な発展を阻害している実態にかんがみ、聖域なき構造改革を断行するとしている小泉内閣は、このNTT完全資本分離や出資比率問題にどう対処される所存でありましょうか。すぐさまこの問題の検討に着手すべきではないのでしょうか。

 先ほどおられました竹中経済財政担当大臣も、IT関連分野でも原点に立ち返って、ゼロベースで構造改革に対応したいと表明していること、及び経済財政諮問会議の経済財政運営の基本方針案における情報技術分野の重点化を図る表明などを踏まえ、総務大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

片山国務大臣 まず、IT新戦略本部の方ですが、これはアクションプランをつくっておりますから、先ほども言いましたが、二〇〇二プログラムをいずれにせよつくるわけですから、その中で、アクションプランを踏まえて、その実行を見て、どういうふうに中身を変えるかという議論は確かにありますね。その際、竹中大臣はゼロベースと。ゼロベースの意味が私もよくわかりませんが、そこでいろいろな議論をする、見直すべきものは見直す、結構でございます。我々も大いにそこで議論をいたしたい、こういうふうに思っております。

 ところで、経済財政諮問会議は、これは御承知のように六月中に骨太の来年度予算の考え方をまとめる、こういうことでございまして、まだ何にも固まっておりませんし、ITを中心に議論をしたことも実はございません。今まで大きいものでは、社会保障と公共事業と国と地方の関係をやったわけですけれども、これは今後の課題でございまして、私は、ITだけをとらえてどうこうということにはなかなかならないのではなかろうかと。ITの投資をもっと活発にしよう、公共事業の中にもITをふやそう、これは私がいつも経済財政諮問会議で主張しておりますから、そういうことがむしろ取り入れられることになるのではなかろうか、こう思っております。

 そこで、NTTについていろいろお話がありましたが、NTTは今の仕組みになってから一年数カ月でございまして、やはり今の経営形態でどれだけの実績を上げるかということを見なければいけません。そこで、NTTさんに連休明けに、自主的な計画をつくって開放政策、競争政策をもっと進めてほしい、ここでも申し上げましたが、地域通信網の開放だとか、ドコモ等に対する出資比率の引き下げだとか、経営の効率化だとか、私どもの方からこういう注文を出しましたので、現在その答えを一生懸命考えていただいていると思います。

 いずれにせよ、まとまればそのNTTさんの計画の公表がある、策定すれば公表がある、こういうことでございますが、その計画を実行されるかどうか、我々は注目していく。実行が十分でない、十分な効果が上がらない、そういうことになりましたら、我々としてもNTTのあり方を抜本的に見直す、こういう考えでございます。

黄川田委員 国際競争力確保の名をかりた保護主義が競争政策をもみくちゃにしたとも言われております。私は、NTTグループのみの総合力を強化するよりも、他企業の参入や競争を促し、全体のパイを大きくすることが国際競争力の向上につながるのではないかと指摘しておきたいと思います。

 次に、NTT完全分離に関し、NTTグループ各社から、NTTは数々の先進的な研究開発を推進するとともに、その成果を広く普及させ、日本の産業競争力の向上に貢献してきており、今後も今までどおりのグループ運営のもとでの一元的な研究開発体制でないと、国際競争力を維持できないと主張しているところであります。

 また一方、新規参入事業者、NCCからは、現在の重厚壮大な研究開発体制のままでは、ますます加速するIT分野の研究開発のスピードに追いついていけないとの意見もあります。

 国内の民間大手企業の研究開発体制は、トヨタ自動車、日立製作所等、基礎研究的な研究所は独立した株式会社組織で、開発型の研究所はグループに属する企業または事業部に所属させて、効率化向上と競争力を強化しているケースが多いわけであります。

 一方、米国のATT改革において、ベル研究所はノーベル賞級の多くの著名な研究者が散逸してしまったと言われますが、反面、ベル研から出た研究者たちが米国のベンチャー企業の発展に貢献してきたとも言われております。私は、総合的に考えると後者の見解に理解を深めているのであります。

 このように考えると、現在NTT持ち株会社に属している研究開発組織は、NTT完全分割後でも独立した株式会社として、十分機能していくと私は確信するわけであります。むしろその方が、競争意識も高まり、より効率化が図られると思いますが、総務省の御見解はいかがでしょうか。

小坂副大臣 委員が御指摘になられましたNTT持ち株会社の研究開発でございますが、現在、東西NTT、NTTコム等のNTTグループによりまして資金提供を受けまして、応用研究のみならず、長期的視野に立った純粋基礎研究も含まれておるわけでございます。

 我が国全体の情報通信技術の発展に重要な役割を果たしてまいりましたこの組織でございますが、NTT持ち株会社の研究組織を、それではNTT完全分割後に独立した株式会社としたらどうだ、今、米国の例を引かれまして、ATTのことをおっしゃいました。

 確かに、一九九六年、ベル研究所が通信機器製造部門とともにAT&Tの方から分離をされまして、ルーセント・テクノロジーとして独立をしたわけですね。そして、優秀な研究者がそちらに参りましてやってきたわけでございますが、このことによりまして効率化等のメリットが発揮された、こういう指摘もありますが、一方では、長期的視野に立った基礎研究への投資が困難になってきたというデメリットも指摘されているというふうに私どもは聞いております。

 したがいまして、NTTの研究開発のあり方につきましては、単にNTTの研究開発の効率化という視点だけではなくて、我が国全体の基礎研究力の維持といった観点も踏まえて検討していく必要がある、このように考えております。

 委員の御指摘も勘案しながら、今後そういった観点で検討を進めてまいりたい、このように考えております。

黄川田委員 時間も残り少なくなってまいりましたので、次に、完全資本分離を想定して、NTTの経営問題を考えてみたいと思います。

 御承知のとおり、昨年三月、固定電話と移動電話の加入者数が逆転し、ISDNを除いた加入電話がここ三、四年減少傾向に転じたことや、事業者間接続料金の低廉化並びにダイヤル通話料金の激しい値下げ競争により、東西NTT、特に西日本NTTの経営が悪化しているところであります。

 四月に発表されたNTTグループ三カ年経営計画では、競争促進の道筋が描き切れてなく、東西NTTの経営合理化策に関しても明確な立て直し案が示されておりません。一応グループ各社へ人員再配置を行うなどして、東西NTTの経営合理化を図るとしておりますが、東西合計で十一万二千人にも及ぶ人員を、具体的にどう削減するのか、いろいろ報道されているものの、抜本的な打開策はまだ示されていないのが現状であります。

 合理化の必要性に迫られた民間企業の多くは、退職加算金などによる早期退職奨励制度を設け、血の出るようなリストラを既に実行しているわけであります。

 これらを踏まえ、減少傾向にある固定電話等による将来の確実な収入に見合った、大幅な人員削減等の経費削減の合理化を行い、東西会社は縮小均衡を図るべきであります。安易にグループ他社への転籍を考えるだけではなく、民間企業並みの大胆なリストラ策を講じるべきであります。NTTの合理化問題は、生ぬるい思い上がった殿様商売であると、国民から厳しく見詰められていることを、NTTの経営者の皆様、そしてまた労働組合の幹部の方々は強く認識すべきであります。

 そこで、このことについて、総務省はどう認識しているのでしょうか。また、株主としてどう指導しておられるのか、総務大臣の御見解を伺います。

片山国務大臣 この前、宮津社長ほかが来られまして、いろいろ話をしましたが、言われているように、西は余りよろしくありませんね。東だって必ずしもいいわけではない。いいのはドコモなんですよ。ドコモのひとり勝ちと言ったらいけませんが、ドコモがいいですね。それから、コミュニケーションズもいいと私は思います。

 そこで、全体として、過剰雇用問題を中心にどういうふうな経営改善をやるかというのはNTTにとって大きな課題でございまして、みずからNTTグループ三カ年経営計画というのをこの前つくりましたね。私どもの方が要請したのは、もちろん経営改善、経営合理化もありますけれども、競争政策、開放政策の方でございまして、必ずしも一致はしませんけれども、経営の効率化というところでは一致するのではなかろうか、こう思っております。

 そこで、今いろいろなことをお考えのようでありまして、先ほども言いましたが、アウトソーシングを中心に過剰な人員を移していく、こういうことをお考えのようですが、具体的な数字は我々は承っておりません、これは労使交渉事項ですから。恐らく関係の労働組合と話をされて詰めていかれるんだ、こう思います。

 今、黄川田委員が言われましたように、殿様商売だと私は思っておりませんけれども、そういう人がおるんでしょうかね。やはり国民の目から見てもなるほどと納得のいくような経営体質にする、スリムな経営体制にするということが必要でございますから、我々もそういうことを強く期待し、我々の方に相談があれば、その相談に応じてしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに考えております。

黄川田委員 お話しのとおり、雇用の重要性をNTTは強調されるわけでありますけれども、単なる人員のつけかえだけで解決しようとしているところに問題があると私は思っております。NTT東西の外注が進んでも、人件費が委託費に切りかわるだけで、効率化につながるかどうか疑問な点もございます。もっと利用者の方に目を向けて、経営のかじ取りをしていただきたいと思っております。

 次に、我が国のIT革命を阻害している、NTT独占による反競争環境が継続されている事例を挙げてみたいと思います。

 一昨年、中小企業基本法が制定され、これまでの中小企業を指導する考え方から、自立、活性化を支援する方針に改めるとともに、我が国企業の九七%を占める中小企業を育成する数々の支援策が講じられております。しかしながら、新しい市場や技術を開拓するために積極的にリスクをとるプレーヤーが必要不可欠であるにもかかわらず、今回の事業法改正には、ベンチャー系通信事業者の育成を支援する視点が欠けているように思われてなりません。

 ブロードバンドなサービスを提供している、有力なベンチャー企業の試算によります、日米間のことし三月二十一日の通信事業者の株価時価総額比較において、新規参入通信事業者の時価総額の割合は、日本はKDDI、日本テレコム等五社でわずか八%にすぎないのに対し、米国はクエスト、ワールドコム等主要五十数社で五三%も占められております。

 このように、株価で見る限り、日本ではNTTグループが九二%と圧倒的に通信市場を支配しているのに対し、米国では多くのベンチャー企業が通信市場に参入し、競争することにより市場を活性化しております。かつ、ATT分割後も雇用が増加しているのであります。

 中小企業基本法制定の精神はお題目にすぎないのでしょうか。このような状況を踏まえ、通信事業系ベンチャー企業の育成、支援を基本的にどう考えておられるのか、総務省にお伺いいたします。

小坂副大臣 委員御指摘のように、米国において経済発展の牽引車としての役割を果たしたベンチャーと言われる企業の育成というものは、我が国においても大変重要な課題でございます。

 情報通信ベンチャー企業は、特にスタートダッシュ時における資金不足、経営ノウハウを持つ人材の不足等が指摘をされておりまして、また開業から開業後の成長、発展に際してのハードルにも人材不足等がなっている、こういう状況でございますので、総務省といたしましては、資金、人材、技術の三つの側面から支援をいたしたい、このように考えております。

 具体的に申し上げますと、テレコム・ベンチャー投資事業組合による資金的な支援を行う。また、DSL事業やベンチャー企業の事業立ち上げの経費に対する助成を行うという形で、DSLの補助金の実績といたしましても、十七億六千万、四十二件ほどの実績があるわけでございます。ストックオプション制度の特例を設けまして、一般の商法の規定に、新事業法認定企業の場合には発行済み株式の三三%という特例を設けてこれを支援する等も行っております。また、ベンチャー企業の行う先進的な情報通信技術の研究開発の支援、これも先進技術型研究開発助成金制度、こういう形で設けております。

 このような支援策を通じまして、今後も、情報通信ベンチャー企業に対するさらなる支援の充実に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

黄川田委員 時間ですので、終わりに、NTT独占の弊害の事例をもう一つだけ紹介したいと思います。

 NTTは、ISDN等自社開発技術へこだわり過ぎるがゆえ、誤った技術選択をしてきたのではないでしょうか。かつ、それを旧郵政省は正しく指導できず黙認してきたのではないでしょうか。確かに武蔵野通研の技術力の高さは世界最高レベルにあります。しかしながら、NTTは競争相手であるDSL、デジタル加入者線事業者への設備開放を拒否するとか、反DSLキャンペーンによるイメージ操作を行うなど、競争相手の新規参入を阻止してきたのは、既に広く知られている事柄であります。

 旧式のネットワークで、爆発的に拡大しているデータトラフィックを処理しているため、非効率でコストの高いネットワークになっているのが、我が国の現状であり、IT後進国になってしまったのも、ガリバーNTTによる技術選択の誤りと旧郵政省の行政力不足も大きな原因の一つではないかと思っているわけでありますけれども、総務省の見解はいかがでしょうか。

小坂副大臣 委員御指摘の見解につきましては、若干総務省の見解は異なっておるわけでございます。

 DSLの導入等につきましては、お隣の韓国がいつも引き合いに出されます。韓国におきましては、各家庭に四芯の、二芯ペアのものが二本配芯をされているんです。そして、電話で二芯を使っておりまして、残りの二芯があいているわけです。ですので、DSLを導入する際に、そこを使いまして一気に普及の促進が図られました。

 日本の場合には、電話線というのは二本だけでございますので、そこを音声通話で使っておりまして、そこにさらにISDNが導入をされてまいりました。そんなことから、DSLの導入に際して、技術的に検証を行うために若干の時間を要したということはございます。

 しかしながら、その後、DSLモデムの売り切り制度の導入をし、またMDF接続及びラインシェアリングという技術を可能とするような省令の改正等も行ってまいりまして、本年四月現在ではDSLの普及状況は約十一万二千件ということで、確かに数としてはまだまだ十分ではございませんが、昨年十月末から比べますと三十五倍に急増する等、急激に追い上げております。いわゆるコンテンツ面等も考えれば、このIT分野におけるおくれというのは必ずしも他国と比較して致命的なものではないと思っておりますし、IT、e―Japan戦略会議で御決定をいただきました重点施策等を導入いたしまして、今後五年間に世界最先端のレベルになれる、こういうことも考えますと、必ずしも御指摘のとおりではないと思っております。

 今後とも、さらに努力することによりまして、委員のおっしゃっている趣旨に従って私どもも努力を重ねてまいりたいと存じます。

黄川田委員 NTTはISDNから一気に光ファイバーに行く方針だったところへ、DSLがその間を埋める手段としてNCCから急に登場し、NTTはその対応に混乱してブレーキをかけてきたのではないかと私は思っております。

 時間でありますので、これで終わります。

御法川委員長 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章です。

 ユニバーサルサービスの問題に絞って質問したいと思います。

 先ほどの議論もありましたけれども、省令事項の中で、加入電話、公衆電話、緊急通報をユニバーサルサービスの範囲と位置づける、こういう答弁がありました。改めてお聞きしますが、三つの分野になぜ限定するのか。少し狭いんじゃないかというように私は改めて思っていますが、その点についてお答えいただきたいと思います。

金澤政府参考人 ユニバーサルサービスでございますけれども、法文上「国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき」電気通信役務というふうに規定しておりまして、具体的には、総務省令において、先ほど御指摘がございましたように、加入電話、公衆電話、緊急通報等を予定しているところでございます。

 それから、加入電話、公衆電話及び緊急通報をユニバーサルサービスとしている理由でございますけれども、先ほどの、国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国において提供すべきもの、それが現状においてはこの三つという理解でございます。

春名委員 質問は、狭いんじゃないかという質問なんです。

 アメリカは、公衆電話網への音声級アクセス、一定時間の市内通話、学校、図書館、ルーラル医療機関への高度サービスの提供、低所得者向けサービス、これがユニバーサルサービスの範囲です。EU新指令では、固定公衆電話網への接続、音声電話サービスへのアクセス、無料緊急サービスの提供を含む公衆電話サービス、障害者などの特別措置、これがユニバーサルサービスの範囲です。イギリスは、音声電話、公衆電話サービスへの無料アクセス、低所得者向け発信禁止サービス。フランスは、通話伝送サービス、公共用地に設置された公衆電話の全国的な提供、無料の緊急通話の伝送、低所得者及びハンディキャップを持つ人々への特別措置。イタリアでは、基本電話サービス、公衆電話サービス、緊急通報サービスへの無料アクセス、障害者などのための特別措置。こういうふうになっているわけです。

 これらの国々では、番号案内は当然のことですが、低所得者の方々や障害者向けサービスがユニバーサルサービスの範囲なんだということをはっきりと特徴づけております。そして今、御存じのとおり、インターネットもユニバーサルサービスの範囲に取り込もうということが議論をされ、アメリカでは一部それが導入されている。

 こうした国々と比べますと、いかにも日本のユニバーサルサービスの範囲は狭いように感じるのです。低所得者、障害者向けサービスやインターネットなどをユニバーサルサービスとして位置づけて発展させるということこそ必要ではないでしょうか。大臣、いかがですか。

片山国務大臣 いろいろな議論があって、今回はユニバーサルサービスの範囲を今御指摘のような三種類に限りました。

 これは、基金をつくりまして、NCCさんということもないけれども、そういうところから金を集めるわけですね。だから、その辺との兼ね合いもありまして、しかも、日本はこれからスタートするわけですから、私は、かなり普及して、みんながまあそうだなと、成熟した評価のものから入るのはやむを得ないのかな、こう思います。

 ただ、今、よその国で低所得者や障害者の皆さんへの対応のそういうサービスがあるというのをお聞きしましたけれども、ユニバーサルサービスそのものと所得格差だとか障害の程度というのはつながるのかなという感じは、私は個人的にいたしておりますが、御指摘は御指摘として承っておきます。

春名委員 これからいろいろ検討されるということなわけです。ただ、あなた方がこの間言ってきた、私が読んだ限りでは、ユニバーサルサービスについて三回ほど文書を出しているのですね。その文書を見ますと、例えば三年前、九八年六月にマルチメディア時代に向けた料金・サービス政策に関する研究会で「ユニバーサルサービスの新たな確保の在り方について」というのが出ていますね。三年前のその研究会報告では、「福祉サービスの料金の減免措置等については、国全体の社会福祉政策などの在り方の中で検討されるべきものであり、ユニバーサルサービスに含めるかどうかは、多面的検討が必要。」であるというふうに述べているのです。同時に、その研究会報告の中では、学校や医療機関などの公共的機関への高度サービスの提供はユニバーサルサービスに含めるべきとの考え方があるということもはっきり述べているわけなんです。つまり、皆さん方は、もう既にかなり前からこういう問題について検討を加えてきたということに一応なっているわけなんですね。

 そして、出てきた今度の法案とその省令が、しかし三つに限るというふうにあえてなっているものですから、どうしてこういうふうに切ってしまうのか。どういう検討をされてこの考え方があるのか。公共機関にまず導入するというふうな問題を、思い切ってやればいいと思うのですよ、なぜそこで線を引いてしまったのかがわからないわけです。

金澤政府参考人 先ほどの大臣の御答弁にもありましたように、今回ユニバーサルサービスに必要なコストを負担するのはだれかということでございますが、それはNTT回線と接続することにより受益する電気通信事業者、これが負担するということでございます。したがいまして、ユニバーサルサービスとして何を想定するかということについては、負担者である電気通信事業者の考え方も当然念頭に置きつつ判断する必要がございます。

 さまざまな方々の意見を調整しながら、今回の法律案をつくったということでございます。

春名委員 今言われたけれども、負担者の意見を聞いて、お金がかかるからこの三つに限定しましょう、早い話がそういう話なんですよ。

 研究会の報告の中ではこういう議論をされてきた。そして、ユニバーサルサービスというのは国民にとって不可欠のサービスなんだという位置づけで、そういうものをこれからきちっと発展させていくという考え方でしょう。ところが、今回の省令の中では三つに限るという理由は、負担する電気通信事業者が大変だからここで切っておこう、こういう考え方で進めているということの発想が、私はちょっと違うのじゃないかという気がしてならないのですよ。

 だって、マルチメディア時代のユニバーサルサービス・料金に関する研究会の一回目の報告、九六年五月、このときにはこういうふうに言っていますよ。

  マルチメディアが普及した社会においては、情報を持つ者と持たざる者との間に生ずる格差は、単に情報の格差にとどまらず、教育、医療、雇用機会など様々な社会的不均衡を招くおそれがある。高度な電気通信サービスは、地域的、身体的に条件が不利な人々に様々な可能性を提供するという意味で、むしろ中山間地域の居住者や障害者にニーズが高い。

  この観点から、高度な電気通信サービスは国民生活に不可欠なサービスとして、ユニバーサルサービスとして位置づけ、社会的不均衡を回避すべきである。

非常に重要な提言をされているわけなんですね。

 私は、なるほどなと思って読んだわけです。これは、郵政省の電気通信局の報告書ですからね。こういう問題提起をして、社会的不均衡を正していくという認識でやっているのに、事業者の負担が大変だからそれを陰に置いておこうかということでは、国民は納得できないのじゃないですか。私は十分納得できないですがね。

金澤政府参考人 先ほど少し申さなかったことがあるわけでございますけれども、結局、電気通信役務として現在東西NTTに責務を課せられているもの、それはあまねく電話ということでございます。基本的にはそれを維持していこうという考え方のもとに、今回の制度を設けたということでございます。

 それで、先生が御指摘のような、デジタルデバイド的なものも含めた総合的な施策の展開ということについては、諸外国においては確かに御指摘のような点もございますけれども、私どもとしては、そういう施策を展開するための経費をどのような形で負担していくのがいいのかという視点もございますために、今回のような措置としたことでございます。

春名委員 要するに、今までやっていることを、今度のファンドをつくって何とか維持できればまあいいかなと。だから、僕は見たときに、インターネットをこれからユニバーサルサービスに組み入れていくなんというのははなから考えられないような答弁なので、そういう認識でやられますとちょっと心配ですね。

 そもそも、決め方自身が世界から見て狭い。それから、皆さんが言っていた提案や検討の中身からいっても、今回非常に狭い。私はそのことを非常に危惧しておりますし、今局長は言われたけれども、これは今ある制度を、ユニバーサルサービスを維持する制度をつくったのだというのだけれども、この制度で果たして維持できるのかという心配すら出てきます。次に、その点を伺っておきたいと思います。

 基礎的電気通信役務、ユニバーサルサービスを担う適格電気通信事業者は、現時点でどこを想定しているか。とりあえずNTT東西かと思いますが、そのことでよろしいでしょうか。

小坂副大臣 適格電気通信事業者としては、基礎的な電気通信役務を提供する第一種通信事業者であって、これは七十二条の八に書いてあるわけですね。ですから、余りこれを全部読み上げるのもあれかと思いますが、委員がもし御存じであれば、読み上げないで先へ、時間を節約したいと思いますが……(春名委員「読まないでください」と呼ぶ)はい、わかりました。

 ということでありまして、現状においてどこが可能かといえば、東西NTTである。委員の御指摘のとおりでございます。

春名委員 先ほど中村委員の質問の中でも出ましたが、このコストですね。これは長期増分費用方式を導入するということをおっしゃっていたわけですが、それを議論する前に教えてほしいのですけれども、現在、このユニバーサルサービスの加入電話、公衆電話、緊急通報、それぞれの収益と費用がどうなっていて、どの程度の徴収がこの負担金として必要で、どの程度の交付金がこれから必要になるのか。概略でも結構ですけれども、試算があれば教えてください。

金澤政府参考人 ユニバーサルサービスコストは、長期増分費用方式を用いて算定するというふうに考えておりまして、会計上、つまりヒストリカルコストの営業費用とは当然異なるものであるということでございます。したがいまして、御説明としては、現在集計が行われている範囲内で、会計上の数値をベースに御説明申し上げたいというふうに思います。

 平成十一年度音声伝送役務損益明細表というのがございますけれども、これによりますと、東西NTTの加入電話及びISDNの基本料及び市内通信の営業収益でございますけれども、NTT東日本が約八千八百三十三億円、NTT西日本が約八千七百億円ということでございます。それから、加入電話及びISDNの基本料及び市内通信の営業費用の方でございますけれども、NTT東日本が約九千十八億円、NTT西日本が約九千二百億円というふうになっております。ただし、この中には、ユニバーサルサービスに該当しないISDNの収支分が含まれておりますけれども、これは分計されていないために、明確にここで申し上げることができないということでございます。

 次に、東西NTTの公衆電話及びデジタル公衆電話の営業収益でございますけれども、NTT東日本は約百九十億円、NTT西日本は約百八十七億円ということでございます。それから、公衆電話及びデジタル公衆電話の営業費用は、NTT東日本が約三百六十六億円、それからNTT西日本が約三百七十二億円というふうになっておりますけれども、この中には、ユニバーサルサービスとされます、最低限の通信手段を確保する観点から設置される公衆電話サービス以外の収支分、つまり、駅等に多数の公衆電話がございますけれども、そういうものの収支分が含まれておりますので、ユニバーサルサービスのみの数値ではないということでございます。

 それから、緊急通報の営業収益及び営業費用につきましては、音声伝送役務損益明細表上、区分されていないということでございまして、現在数値を把握しておりません。

 なお、長期増分費用方式の算定につきましては、例えば端末回線部分について、現実の地中化状況がモデルに反映されていないというふうなこともございまして制度の適用除外となっておりますために、これをきちっと一から積算し直さなければいけないというふうな問題がございます。それから、ユニバーサルサービスの提供に要する費用の算定のためには、離島通信とか緊急通報についてどの程度の費用がかかるのか、これは今数値として把握されておりませんので、正確なモデルをつくって算定する必要がございます。

 現在、総務省において長期増分費用モデル研究会というものを開催いたしまして、モデルの見直しを実施しているところでございまして、長期増分費用に基づく原価というものにつきましては、現時点ではまだ算定されていないということでございます。

春名委員 今、数字は教えていただきましたが、算定方法を長期増分費用方式にするということなんですが、要するにこれは、設備にかかった費用を基礎にするのじゃなくて、そのときそのときの最新の機材というのですか、それを最も効率的にネットワークに使った場合にそのコストが幾らになるのかということを机の上で計算して出す、そういう方式ですね。つまり、そういう意味では架空の費用算定方法といいますか、最も効率的で全部そぎ落としたものというふうに言えるのかと思うのですが、当然のことながら、こういうものを導入しますと、実際のコストよりかなり安くなってしまうだろうと思います。

 そういう意味でいいますと、私は非常に素朴な質問なんですが、実際に基礎的電気通信役務を提供して、コストが一定かかった。実際かかったが、赤字になっても、この方式を導入することによって、必要な補てんが行われないということに当然ならざるを得ないのじゃないでしょうか。この点はいかがでしょうか。

金澤政府参考人 この法案におきましては、ユニバーサルサービスを維持するために適格電気通信事業者に対して交付する交付金の額でございますけれども、当該サービスの提供に要する費用の額が当該サービスの提供により生ずる収益の額を上回ると見込まれる場合につきまして、上回ると見込まれる額の費用の一部を負担するという形になっております。

 費用の一部というふうに規定している理由でございますが、それは、会計費用をそのまま用いるのではなくて、能率的な経営のもとにおける適正な原価の算定方法により算定するというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、原価の積算方法をヒストリカルコストで算定いたしますと、能率的な経営のもとにおける適正な原価という形とずれてまいりますために、このような方式を用いているということでございます。

春名委員 要するに、費用の一部を負担する、それが長期増分費用方式で、そういう形でやるのだということだと思うのですね。

 そうしますと、私が非常に危惧しますのは、今まではNTTが内部で調整してということだったわけですけれども、こういうものを導入する。しかし、その費用のコストの算定の仕方は、実際にかかった分よりもかなり少ないという事態になって一部の補てんしかされない。一体本当にユニバーサルサービスがこれから拡充するんだろうかという素朴な質問、疑問が起こります。だから、あえて三つに限定をして、今までできていることに絞っているというふうにしかなかなか思えないですね。

 負担をするNCCの側は、もし金を出せというんだったら口も出させてもらう、経営をもっと効率化せい、合理化せい、こういう話を当然言ってくるでしょう。もちろん効率化ということは必要だと思うんです。しかし、そのことによって、国民生活に不可欠であるユニバーサルサービスが後退しかねないような制度設計になっているなというのを私は非常に感ぜざるを得ないわけですね、今の話を聞いてみても。

 そこで、大きな圧力といいますか、かかってくるのは、NTTに対する、特に東西会社に対する一層の合理化、効率化が厳しく要請されるということになるだろうと思います。問題は、今までの例を見れば、これが住民サービスの低下と労働者の犠牲によって大体進んできたというところを私は問題にしているわけです。必要な効率化は必要ですけれども、今のこの二点にしわ寄せがいっているということをどうしても考えざるを得ない。

 ここで、時間が余りないので、片山総務大臣に基本的認識を聞いておきたいと思うんですが、必要な合理化は当然やるべきでしょう、効率化も必要でしょうが、しかし、それは住民サービスの低下に結びつけてはならない、住民サービスの低下に直結させるということはだめだ、こういう立場ではありますよね。

片山国務大臣 なかなか難しいところですね。

 基本的には委員と私はそう認識が違わないと思いますけれども、言われるように、福祉だとか、福祉というのか、低所得者や障害者の方に対するものは、こちらの方の負担じゃなくて、別途の負担というのがあるのかどうかですよね。そのためには、今の三つのサービス以外のサービスを拡大するときに、インターネットでも携帯電話でもいいですよ、そのサービスがユニバーサルサービスだということについての国民のコンセンサスが要りますね。熟してこなきゃいかぬ。

 そのときに、その経費はどっちが持つか。事業者に全部かぶせるのか、そうじゃなく、福祉的な要素があるのなら、別のことで検討していくのか、そういうことが課題になると私は思いますけれども、とにかく、これから始めるんだからいろいろな議論があると思いますよ。しかし、この法律を通していただいて、始めるということで、トライ・アンド・エラーみたいなところが出てくるに違いないと私は思うけれども、始めさせていただくということで御理解賜りたいと思います。

春名委員 ちょっと質問の趣旨を取り違えられているので、もう一回聞いておきます。

 NTTは、長期増分費用方式で今の仕組みを導入すると、あれは担っているわけでしょう、ユニバーサルサービスを担っている会社、そこに対して当然効率化せいという圧力がもっと強まりますね。そうなったときに、今までの歴史から見ると、それが住民サービスの低下だとか労働者に対する犠牲の転嫁だとかでかなり抜けてきているという傾向があるんです、これははっきり言って。

 ですから、もう一回聞いておきますが、必要な効率化は必要だけれども、住民サービスの低下に結びつくようなことはできるだけ避けるべきだし、やってはならないという点は認識は一致していますねと聞いているんです。

片山国務大臣 いや、それは冒頭に申し上げましたよ、春名委員とその辺の認識は違わないけれどもと。ただ、NTTの経営については、これは見直して、効率的経営にしていただかなきゃいけません。それはもう大前提です。

春名委員 その見直しの中身が住民サービスの低下に直結しているので、それできょう言っているんです。

 例えば、私、この間、高知に戻ったときにNTT職員からお話を伺ってきたんですが、民営化前の八四年には、高知県で二十二カ所の営業窓口があったんです、東西長いから。順次削減されて、九九年の四月時点で九カ所、九九年十一月末で四つを廃止して、残り五つ。そのうち四つが昨年二月末で廃止。残ったとりでは、高知市だけ残っていまして、八十万県民のうち三十万が住む都市ですので、ここだけはなくならないだろうと思っていたら、昨年十月、ついにこの高知市の窓口も廃止、県内にただ一つの営業窓口がなくなってしまいました。こんな事態が平然と起こっているわけなんです。

 推して知るべしなんですが、非常に住民サービスに対して不便を感じているという声が殺到しているでしょう。一一六に全部集中して、そこがかからないという話にもなっているし、そういう事態をどういうふうにリアルに認識されておられますか。もっと具体的な話でお聞きします。どうですか。

小坂副大臣 確かに委員の御指摘のように、国営の事業として推進しているときには国民の皆さんの要望にできる限りこたえる体制でどんどん拡充できたわけでございますが、今の時代なかなかそういうわけにはまいりません。民間でできることは民間活力を引き出すという形の中で、国民の合意を得て進めていかなきゃいけない。

 そういう点で、合理化をしつつも、できる限り国民のサービス切り捨てにならない方法をとられるということで、例えば一〇四の案内のようなサービスについては、今まで各県にあったけれども、実際にかける方にはどこで応答しても変わりないだろうということで、コールセンターを集中して合理化を図る、そういう努力も企業としてなさっているわけです。

 そういう中で、福祉の部分につきましては、今大臣が答弁申し上げたように、国としてどういう立場でやっていくかということもあわせて考えていかなきゃいけない。また、ユニバーサルサービス、今回の電気通信事業法の中で規定する分野としては、やはり民間の事業者がこれを担うという観点のもとで、法律で規定しているユニバーサルサービスというのはどの範囲かということを、省令で、このような枠組みでいこう、こういうことを今決めているわけでございまして、これはここで固定したわけではございませんので、委員御指摘のように、今後、インターネットや何かもユニバーサルサービスにすべきだ、こういうことになりました場合に、その費用、それからその効果、またその必要性といったものを勘案して、これは事業者の負担だけではできない、もしそんなようなことになって、ただし、やはりどうしてもユニバーサルサービスとしてやるべきだ、こういうことであれば、またこの基金に加えて新たな方法が必要かどうかも踏まえて、そういうことも幅広く検討するという可能性はまだ残っているわけでございますので、今するということではございませんけれども、そういったものも将来はいろいろ考えながら対応していく、このような柔軟性が政治の世界には必要だろう、こう私は考えております。

春名委員 時間が参りましたので、後にまた議論は譲りたいと思いますが、民間であるからサービスが後退してもやむなしということでは、くみできないわけです。つまり、NTT法には、あまねくちゃんとサービスを提供する、NTTには特にそういう義務が課せられているわけです。そして、ユニバーサルサービスを三つの分野で担うということを今回明確にされているわけです。窓口の廃止というのと、その周辺のいろいろな住民の、故障だとか移設だとか、加入電話、固定電話をしっかり支えていくということに対する、それが今崩れつつあるということは、無関係ではありませんからね。そういう点で、今質問しているわけです。

 時間が参りましたので、また次にしたいと思います。終わります。

御法川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 今回の電気通信事業法の一部を改正する法律案、この附則の第六条に、「国際的な電気通信事業の円滑な遂行及び我が国の電気通信技術の国際競争力の向上に配意し、」等々の文言が明記されているわけでございます。これは、昨年の電通審の答申と比べますと、いわゆる国際競争力という分野に非常にウエートを置いているという印象を強く持っているわけでございますが、このことは、もちろん私も理解はいたしております。

 その必要性を訴えているということは、裏を返せば、いわゆる通信分野においては国際的におくれをとってきた、あるいは技術力、資金力、これが十分で高い日本であったにもかかわらず、これまでIT革命に有効な対策を打ってこられなかったということを証明しているようなものだと思うんです。今回のNTT改革の際にも、やはり関係者が国内の主導権争いに終始するというような印象を与えるのではなくて、旧郵政省、現総務省とNTTとの建設的な議論を深めなければならない重要な今回の改革案だと私は思うのですね。

 言われておりますように、この情報通信分野の技術革新は本当に目覚ましいものがあるわけで、本当にドッグイヤーそのものでございます。日を追うごとに変化していると言っても過言ではない、そういった産業分野であるだけに、もちろん公正な競争、競争を促進していくということは必要だと思いますよ。これも不可欠だと思います。しかし、一方では、この附則に書かれておりますように、グローバルの時代、国際競争に置いていかれていいのかという非常に大きな、重要な課題も同時にあるわけですね。

 この二つを両立させる。国内での公正な競争、あるいは海外、国際的な競争、この二つを両立させるということは、確かに矛盾している部分も出てくる。あるいは、確かに難しい、困難な課題ではあります。とは言いながら、電気通信産業の活性化、あるいは情報通信のさらなる発展のことを考えますと、この両方がやはり必要なんです。そこのためにも、私は建設的な議論をしっかり深めてほしいということをお願いしたいと思うわけでございます。

 今回の改正案で、一方の問題でございます公正な競争、漠然とし過ぎているのですが、公正な競争の状態とは一体どういうことを具体的には言うのか。ちょっと御説明いただけますか。

    〔委員長退席、荒井(広)委員長代理着席〕

小坂副大臣 電気通信事業における公正な競争という状態はどういう状態か、こういうことでございます。

 電気通信事業というのはそもそも非常に公共性の強いものでございますね。ですから、この事業において不当な競争が行われるということですと、これはだめなわけでございまして、それを排除するために、公正妥当な競争ルールの整備をすることがまず第一でございます。その競争ルールにのっとりまして、事業者がそれぞれ創意工夫を凝らして、世界に負けない電気通信サービスというものを心がけながら、事業活動を盛んに行って競争していくこと、競争状態をつくっていくこと、これが公正な競争という状況であろうと考えております。

 今般の改正におきまして、公正な競争の実現のために行っている趣旨もあるわけでありますが、今委員の御質問は状況だけということでございますので、とりあえず状況だけ御説明したところでとめておきたいと思います。

横光委員 今月の一日から、いわゆる優先接続制度、マイラインの制度が始まったのですが、この制度の導入に合わせて、多くの通信事業者が市内通信サービスに参入してきたわけですね。市内通信は自由化されたにもかかわらず、いわゆる地域通信というのは長い間競争がなかなか進まない一つの課題であったわけですが、ここでマイラインという制度が導入された。

 途中経過、今のところ、東西NTTの市内通信市場におけるシェアが七〇%台だという報道がございます。これまで一〇〇%近い、九〇%超のシェアを持っていたわけですから、そういった意味から、七〇%に下がったということは、私はかなり大幅な下がりではないかと。これがいわゆる公正な競争の始まりになっている、このように総務省も認識しているのでしょうか。

小坂副大臣 そのとおりでございます。

横光委員 今は市内通信だったのですが、今度は移動通信、この分野もいわゆる非対称規制の対象としております。これは恐らくNTTドコモ等が規制の対象になると思うのですが、地域固定分野では確かにNTTが完全に先行していた。ある意味では、もうハンディがあったわけですね。しかし、この移動通信分野においてはスタートからほとんど一緒ではないか、他の移動通信事業者もこの分野では同じ環境、状態からスタートしたのではないかという気が私はしているわけです。

 そういった中で、NTTドコモが高いシェアを占めているということは、インターネットに接続できる、いわゆるiモード等をいち早く取り入れた結果であり、これはある意味では企業のアイデアと営業努力の成果であろうと思うわけです。そういった状況であるにもかかわらず、今回の改正では、非対称規制として移動通信分野を対象としている。この理由はどこにあるのか。御説明いただきたいと思います。

小坂副大臣 固定電話の場合には、加入者線というのがボトルネックになってきて、そこの力をもってすれば支配的な力を及ぼし得るということになるわけです。

 しかしながら、移動体の場合にどうかといいますと、移動体は無線を使っておりますので、周波数がだれにでもどんどん割り当てることができればいいのでございますが、やはり利用できる周波数は有限でございますので、電波の有限性から、各地域において三社ないしは四社の事業者が寡占的な状況に今もう既になっております。

 そういう状況から、一社当たりで二五%という一つのシェアを基準にいたしまして、このシェアを超えますと、支配的事業者たり得る、こういう状況になってくると考えておりまして、そういう意味で、移動体分野におきましても、支配的な事業者による不正競争を防止するために非対称規制を導入することとしたわけでございます。

横光委員 その説明はわからないでもないのですが、私は、アイデアとか技術とか営業とか、いろいろな努力によってこういったシェアを占めることに、何でそういった規制をする必要があるのかなという気がしないでもないわけでございます。

 この非対称規制の導入については、先ほどほかの委員からもちょっと質問がございましたが、公正取引委員会では、このことに対して非常に検討が必要ということを言っておるのですね。今までの独禁法で十分ではないか、さらに独占禁止法の規制に加えてかかる新たな規制を設けることの必要性等については十分な検討が必要としている公正取引委員会の見解があります。

 ここは、同じ総務省の中と外の形でやるわけですから、この役割分担をしっかりしないと本当に二重規制にもなりかねない。この調整というものをしっかりしておられるのか、でき上がっているのか、いま一度説明をいただきたいと思います。

小坂副大臣 このたび、電気通信分野の特殊性や、この分野が独占から競争への過渡的な状況にあることを踏まえまして、電気通信分野の競争市場をより積極的に創出してまいりますために、競争の一般的ルールであります独占禁止法に加えまして、電気通信事業法において、市場支配的事業者を特定した上で、個々具体的な禁止されるべき行為類型を明確化しまして、それに該当すれば速やかにその是正措置を発動できる措置を講ずることによりまして、迅速な紛争解決、紛争処理を行おうとしたわけでございます。

 こうした制度の改正の基本的な考え方につきましては、今御指摘の、公正取引委員会との間でも一定の整理を行っておるところでございまして、事業法と独禁法の適用関係をめぐりまして事業者に無用の混乱や、どっちに行ったらいいのだろうとか負担を生じさせないように、電気通信分野における電気通信事業法及び独占禁止法の適用関係を明確にするための公正取引委員会と共同のガイドラインの策定を含めまして、電気通信分野における反競争的な行為を漏れなく防止するために必要な連携を行える仕組みについて、今後さらに検討を進めてまいりたいと存じます。

横光委員 公正取引委員会というのは、御案内のように三条機関でございます。独立の機能を持っている機関でございます。同じ総務省の中ですので、外局ではありますが、しっかりと調整して、混乱が起きないような体制を築き上げていただきたいと思います。

 私も、ちょっとユニバーサルサービスのことについてお聞きしたいのですが、今度のユニバーサルサービス提供コストの算定方式として、長期増分費用方式を採用するという御説明が先ほどからございました。

 この接続料の算定のときに長期増分費用方式を導入するという昨年八月の国会のときに私は実は質問したことがあるのですが、アメリカでは、連邦高等裁判所ではこの長期増分費用方式に対して、地域通信会社が実際のコストを回収できないという理由からして違法であるとの判決を下したわけですね。そのことについて見解をただしたのですが、今おられます、当時は平林郵政大臣でございましたが、そのときには、直ちに我が国の法律制度に影響はないが、十分注視する必要があるという旨の答弁がございました。その方式を今回ユニバーサルサービスの提供コストの算定方式として導入する。

 この当時の米国の高裁での違法判決の後の状況、その後どういう状況をたどっているか、ちょっと説明をいただきたいのです。上告したのか。

金澤政府参考人 事実関係でございますので、お答えさせていただきたいと思います。

 昨年七月に米国の連邦高裁から出されました判決は、ユニバーサルサービスのコスト算定に係る話ではなくて、事業者間でネットワークの使用料として支払われます接続料のコスト算定に係る話だということでございます。

 それから、判決の具体的な内容でございますけれども、FCCが規則で規定いたしました仮想的なモデルに基づく長期増分費用方式という接続料の算定方式が、米国通信法の接続料金算定原則を定めた二百五十二条という条文がございますが、それに適合しないというふうにされたものでございまして、長期増分費用方式というコスト算定方式自体が問題になったものではないということでございます。

 また、FCCは、判決を不服として昨年十月に連邦最高裁に対しまして上訴いたしておりまして、現在、連邦最高裁において審理中でございまして、先ほどお尋ねがございましたけれども、違法性についてはまだ確定していない状況というふうに承知しております。

 それから、我が国でユニバーサルサービスコストを算定する上で、経営体の非効率性を排除し得ると言われている長期増分費用方式を用いることを予定いたしておりますのは、ユニバーサルサービス制度が新たにコスト負担を他事業者に求める制度だということから、正確性を期する意味でむしろ望ましいというふうに判断しているところでございます。

横光委員 要するに、連邦最高裁に控訴しておるということですね。係争中であるからまだ違法性は確定していないというお話ですね。

 しかし、高裁では一度そういった違法判決が出てしまった非常に問題のある方式でございます。これを今回算定方式として導入することはどういうことなのか。あるいは、先ほどこれも同じ意見が出ました、いわゆるユニバーサルサービスのコストの算定というのは公益性につながるわけですね。ところが、この長期増分費用方式というのは本来そういったものじゃなくて、接続料の算定とか、競争の分野で使われる方式である。これを一緒くたにしてこういった分野で導入していいものかどうかという気がいたしておるのですが、いかがでしょうか。

金澤政府参考人 現在、EU諸国や米国においてユニバーサルサービスのコスト算定が行われておりますけれども、原則として、このような国においては長期増分費用方式というコスト算定方式を用いて行っております。これは、その費用負担をだれに求めていくのかというところからこのような形になっているものというふうに想定しているところでございます。

    〔荒井(広)委員長代理退席、委員長着席〕

横光委員 先ほどとこれまたちょっと質問がダブりますが、NTTが経営の合理化に今取り組んでいる、大変な企業努力をしているわけですね。この結果、その計画の一環として、先ほどお話が出ましたが、人員のリストラや再配置だけでなく地方の営業窓口等に非常に影響を与えている。これは、地域住民の生活に支障が生じているだけでなくて、もっと言えば、地方の経済あるいは雇用、そういった情勢にも悪影響を及ぼしかねないわけですね。そしてこれは、先ほど高知の説明がございましたが、私の地元もそうですし、恐らく全国的な形で進むでありましょう。

 いわゆる健全な合理化、そのために過当競争に巻き込まれ、過当競争の結果、国民に利便を与えなければならないところが国民に不便を与えるというような状況が今起きつつあるわけですね。これは、ファンドの問題とは別に、やはりユニバーサルサービスの一環だと思うのです。

 ですから、これからだというお話が先ほどございましたが、やはり国民にあまねく通信サービスの恩恵を与えるという国の施策がある以上、こういった不便が生じ始めているということはしっかり考えなければいけない。単に事業者だけの問題でなく、これはやはり国の施策の一環だと思うわけですから、先ほど副大臣、国営ならばできるかもしれないがという答弁がありましたが、国営と同じ思いでこういった生活者の、ユニバーサルサービス的な意味合いからして、しっかりこれから対応していっていただきたいなという思いがいたしております。

 次に、これもちょっとお願いでございますが、今度、紛争処理機関が設置される、電気通信事業紛争処理委員会。これも非常にわかりにくいのは、総務省の中に置かれ、委員は総務大臣が任命されるということでございます。各事業者の信頼を得るためにも、こういった委員会というのはどうしても必要でしょう。しかし、同じ省内で振興と規制を両方やらなければならない、同じ役所が、同じ人間がやるかもしれない、そういったことでは非常に透明性が確保されにくいわけですね。ですから、先ほど意見がございましたように、この組織の構成や運営についてももっともっと議論を深めていただきたい。そして、もっと透明性をはっきりとするためには、いずれは分離することも課題として論議していただきたいということをお願いいたしておきたいと思います。

 これはちょっと法案と違うのですが、いわゆるITの普及というものは、次世代の経済の牽引車という大変大きなプラスがある反面、将来においても予想できない情報公害あるいは社会的混乱を引き起こすおそれがあるわけですね。情報公開じゃないんですよ、情報公害。情報公害や社会的混乱を引き起こす可能性がある。市民社会や環境に及ぼす影響がだんだん大きくなってくる、となりますと、その対策とかルールについてまた真剣に考えなければいけないと思うんですね。

 例えば、ペースメーカーを埋め込んでいる人たちにとっては、携帯電話が発する電磁波はある意味では凶器でございます。また、インターネットの有害情報には、年齢を問わず二十四時間アクセス可能になっている。さらに、個人情報の保護やネット取引におけるトラブルや不正行為も急増しておる。いわゆる技術革新が進めば進むほど、それと比例するように負の部分も大きくなってくるんですね。ですから、実効性ある社会的な規制あるいは管理をしっかりと整備すべきときに来ているのではないかという気がするわけでございます。

 自動車や原子力のように、短期的には経済の危機を救うという大変大きなプラスがあった。とともに、長期的には、自動車や原子力が今与えているのは、マイナスの面では社会の安定や地球環境を脅かす、そういった影の部分もやはり出てきているわけですね。ITも当然、そういった問題は存在するわけです。そして、その失敗が起きた場合は、これを修復するまでには膨大な社会的なコストがかかる。こういうことを考えますと、やはり負の側面をしっかりと管理しながら、いい面をさらに伸ばす、実効性ある社会的な規制と管理を整備すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 まさにIT社会の負の部分、やみの部分というのでしょうか、そういうところの対策をしっかりしなければならないと思います。

 不正アクセス防止法というのを既につくっておりますが、これをまた見直すとともに、今回個人情報保護法、基本法的なものが出ておりますので、これに関連して、特に電気通信分野における個人情報保護の新しい法制だとかあるいはプロバイダーの責任を問う、そういう意味でのルール化をした法案等について当省でも大分検討しました。国会がこういう会期になってまいりましたので、この国会ではなかなか出しにくいかもしれませんけれども、引き続いて我々としては検討して、場合によれば国会に出させていただきたいと考えております。

横光委員 これはもうある意味では追いかけっこみたいな問題ですので、早急に対応、対策だけはとれるようにしていただきたいと思っております。

 これも先ほどほかの委員から出ました、ボーダフォンというイギリスの会社の件でございます。この会社は、新興の携帯電話で進境著しいわけですね。この会社が日本テレコムを買収した、四六%の株式を保有した、そのかかった総額が十一兆円だと言われております。物すごい資金調達力。

 ところが、私たちの国の、e―Japan戦略もそうですが、光ファイバーを全国に引こう、こういった計画のときにかかる費用が約十兆円だと言われております。しかし、過疎地域とかを含めると、事業者ではできない、政府もできない、ではこの先はどうするかという課題にもぶつかっている。

 そういったことを考えると、一私企業がなぜそんな資金調達力があるのか。このバックには銀行がついているわけですね。情報通信分野もこういった時代になってきたわけです。片一方で、日本では国を挙げてやろうとしているぐらいの規模を、一私企業が一つの企業を買収するというような力を持っている。

 ウィンブルドン現象という言葉を最近よく聞くと思うのですが、イギリスのウィンブルドンのテニスコートは、一年に一回最善の努力をしてすばらしい設備を準備する。ところが、ウィンブルドンテニスは、実際ベストエイトに行けるのは、イギリス人なんか一人もいないのですね。昔はおったようですが、今は一人もいない。ほとんど諸外国の人たちがウィンブルドンのテニスコートを使う。

 こういうふうに情報通信の分野でも、準備はするのだがその恩恵をこうむるのは諸外国であるというような状況がウィンブルドン現象だというのですが、このボーダフォンの例をとっても、これは笑い事ではなく、本当に日本の市場が外資によって占有されかねない。これは大げさですが、そういったことだってあり得る。そういったときに、国際競争の中では、蓄積された技術力、NTTの開発力、こういったものの必要性がこれから大事になってくるのではなかろうかと私は思っております。

 先ほど竹中大臣が、大臣になる前あるいは大臣になってからも、やはりNTTの完全分割を主張しているようですが、この問題につきまして、簡単で結構でございますので、最後に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 何度も繰り返しましたが、現在の経営形態になってまだ期間もわずかでございますし、NTT自身も一生懸命努力しよう、こういうことでございますので、我々は、今後のNTTの対応の動向をしっかり見詰めて、その上で考えていきたいと思います。

横光委員 終わります。

御法川委員長 次回は、来る三十一日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会




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