衆議院

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第9号 平成13年11月16日(金曜日)

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平成十三年十一月十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 田並 胤明君 理事 松崎 公昭君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      伊藤信太郎君    河野 太郎君

      左藤  章君    坂井 隆憲君

      新藤 義孝君    滝   実君

      谷  洋一君    野中 広務君

      林  幹雄君    宮路 和明君

     吉田六左エ門君    荒井  聰君

      伊藤 忠治君    大石 尚子君

      大出  彰君    金子善次郎君

      玄葉光一郎君    武正 公一君

      中沢 健次君    中村 哲治君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    春名 直章君

      矢島 恒夫君    重野 安正君

      横光 克彦君    三村 申吾君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      中島 忠能君

   政府参考人

   (人事院事務総局総務局総

   括審議官)        吉藤 正道君

   政府参考人

   (人事院事務総局勤務条件

   局長)          大村 厚至君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  香山 充弘君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長

   )            高原 耕三君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            鍋倉 真一君

   政府参考人

   (総務省郵政企画管理局長

   )            松井  浩君

   政府参考人

   (郵政事業庁長官)    足立盛二郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議

   官)           伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議

   官)           鈴木 直和君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次

   長)           青木  功君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  山本 公一君     林  幹雄君

  伊藤 忠治君     大石 尚子君

同日

 辞任         補欠選任

  林  幹雄君     山本 公一君

  大石 尚子君     伊藤 忠治君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 元日赤救護看護婦に対する慰労給付金増額に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第三二六号)

 同(日野市朗君紹介)(第三二七号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三三九号)

 同(日野市朗君紹介)(第三四〇号)

 同(日野市朗君紹介)(第三五三号)

 同(萩野浩基君紹介)(第三九〇号)

 戦死者の遺族補償に関する請願(土肥隆一君紹介)(第四四四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局総務局総括審議官吉藤正道君、人事院事務総局勤務条件局長大村厚至君、総務省自治財政局長香山充弘君、総務省情報通信政策局長高原耕三君、総務省総合通信基盤局長鍋倉真一君、総務省郵政企画管理局長松井浩君、郵政事業庁長官足立盛二郎君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、厚生労働省大臣官房審議官伍藤忠春君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君及び厚生労働省職業安定局次長青木功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松崎公昭君。

松崎委員 おはようございます。本日は、一般質疑の機会を与えていただきましてありがとうございました。民主党の松崎でございます。

 私は、この場を使わせていただきまして、特に最近の郵政関連の問題、高祖問題あるいはDM事件の問題等、二回にわたりましていろいろお聞きをしてきたわけでありまして、この間に多くの問題が出てまいったと思います。公務員を中心とした政治活動、そして、それを追及していきますと、旧郵政省を中心とした、郵政庁を中心とした巨大な官僚体制を中心といたしまして、また、これは与党の皆さんとがっちり組んで、大きな違反事件も起こしながら、さまざまな問題点が摘出されてきたということであります。その中には、渡し切り費という大変不明朗な問題も出てまいりました。また、組織ぐるみの選挙ということで、さまざまな本質的な問題点がたくさん出てきたわけであります。

 そういう問題から、私たちは、この国のあるべき姿、公務員のあるべき姿、そしてまた、それと政治との絡みというものをもう一度よく反省して、公務員として国民に対する最大のサービスということ、そして、公平中立な立場を保ちながらこの国の国民のために働くんだ、そういうことをもう一度思い起こしていかなければならない、そんなふうに思った次第であります。

 きょうの時間をいただきまして、二回にわたりましての質問で少し残った問題等もございますので、その問題に入らせていただきたいと思っております。

 特に、今回の高祖問題あるいは近畿郵政局を中心としたDMの違反事件、こういうものを見てまいりまして、結果として非常に身内の処分に甘かったんではないか、そういうことをつくづく感じるわけであります。これは人事院との絡みもありますが、任命者自身が自分の裁量で行うというところにかなりの問題点もあった。それから、事の次第の認識の仕方というものも私は非常に甘い処分であったんではないか、そんなふうに思っております。

 まず最初に、DM事件の処分は、現業ということもあり、かなりしっかりとやられたわけでありますが、高祖関連の事件に関しましては、逮捕者が十六人、そして処分者が五十七人、こういう大きな事件の割には大変甘かったというふうに私たちは思っております。特に、逮捕されまして、起訴猶予、訓告を受けた六人の方々、この辺はよく調査されていないようでありますが、雲隠れをしたとかそういう方も含めて、この方々に対する処分というのは非常に甘いんじゃないか、そんなふうに思いますが、長官、いかがでしょうか。

足立政府参考人 警察からの事情聴取を逃れるために雲隠れをした職員がいたといったような報道がなされたことは承知しておりますけれども、事実関係につきましては承知しておりません。

 念のため、逮捕された職員につきまして、警察から事情聴取を受ける前の勤務状況を調査いたしましたところ、一部の職員が逮捕直前、年休等をとっていたという事実はありますけれども、これらはいわゆる年次有給休暇の請求等の手続に従い処理されておりまして、いわゆる無断欠勤といったような行為ではなかったということでございます。

 いずれにいたしましても、いわゆる一般の国民の皆様方から疑惑を持って見られるというようなことは、あってはいけないというふうに考えております。

松崎委員 そこで、現業の場合はなかなか難しいというふうにも聞いておりますが、私、この前取り上げたのは、処分に対してチェックをする機関が同じ国の機関の中に、人事院はありますが、これが意外と力がない、これに問題があるんじゃないかということもお話をいたしました。しかしながら、これはどうも現業の方には人事院の権限が及ばない、この辺、大変わかりづらかったんですね。この辺のことを人事院さんの方、少し説明をしていただきたい、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。

中島政府特別補佐人 今、先生がお話しになりましたように、現業職員については、現行法上、人事院の調査権、懲戒権というのが及ばない仕組みになっておりますので、今回の件については、私たちは所管外だということでございます。

 一般的に申し上げますと、国家公務員法上の調査権というのは、あの条文を子細に読んでいただきますと、よくおわかりいただけると思いますけれども、本人を召喚して質問する権利がない、あるいはまた、本人が勤務している場所に立ち入って調査する権限がないということでございますので、調査権としては不十分なものだということでございます。

 これは、かつての大蔵省等の金融汚職のときにも国会で議論されまして、私たちはその点を国会で何回も御説明申し上げ、また、倫理法ができるときにも、そういう点をよく含んで倫理法をつくっていただけるようにお願いいたしまして、御存じのように、倫理法の現在の体系ができ上がっているわけでございます。

 したがいまして、現在のところ、国家公務員法に基づく調査権というのは不十分なものだという認識を持っております。

松崎委員 確かに法律の上では、しかし、人事院は、国家公務員法の中の八十四条の二項の懲戒権とか十七条の調査権があるんだけれども、不十分で、なかなかこれは発動したこともないということがはっきりしました。

 この辺、どうも私たちには納得のできないことでありまして、現業以外の問題でも私は指摘したわけであります。つまり、西田さんでありますとか、三嶋局長さん、部長さん、このお二人に関しましては今公訴中であります。しかし、これらに関しましても、公務員法の問題を、この懲戒権等を適用すれば、処分がもっと速やかに、そしてかなり厳しくやれるんではないか。

 しかし、それは任命権者の判断することであります。そこを人事院が懲戒権あるいは調査権があってもそれができない、この辺、なぜやらないのか、非常に私たちは疑問に思うわけであります。この辺のことを、やはり倫理法の厳しさをどこかにもう少し生かす、そういう必要がこれからの公務員制度の改革の中であるんではないか、そんなふうに私は思う次第であります。

 少なくとも、この国家公務員の法にのっとって、懲戒、服務に関して、特に服務ですね、今回の高祖事件に関しては、服務規程違反が現場にも、それから幹部にも相当あるわけです。これに関しては、かなり甘い処置であるということを私は認識しております。ですから、ここをこれから、人事院がそういう権限があってもできないということであれば、少なくとも任命権者が、こういう処分あるいは懲戒の場合には、この倫理法にのっとって、倫理法のいいところを使いながら人事院と協議をしたり、そういうことは事前にやった方がいいんじゃないか、私はそう思います。法ではありませんが、実際の現場でそういう活用をしたらどうか、そんなふうに私は思いますが、これは大臣、そして人事院、どうでしょうか。

片山国務大臣 今の国家公務員法の仕組みは、任命権者に懲戒権があるんですね。それで、これは内部規律の保持ですから、一種の特別権力関係で、刑事処分としては司法当局がやるわけです。それで、三嶋さんほかもう一方のことを言われていると思いますが、これは行政処分しないということじゃないんですよ。とりあえず、訴訟が行われますから、そこで訴訟の経緯を見て、判決が確定すれば行政処分を行う、こういうことを考えて国家公務員法上の手続の起訴休職しているわけでございますので、そこのところはひとつそういう御認識を賜りたい、こう思います。

 それから、任命権者なり懲戒権者が行うことについてのチェックが不十分じゃないか、これはいろいろ昔から議論があるんです。そこで、それは人事院がやるのがいいのか、あるいは私どもの方である人事局がやるのがいいのか、また別の機関がいいのか、いろいろな議論がありまして、公務員制度の改革が今大きなテーマになっていますから、私はそういう中で検討されることではなかろうか、こう思っております。

中島政府特別補佐人 私たちは、公務員制度を所管しているという立場から、いろいろな場面で不祥事が起こる、その不祥事についての原因とかあるいは懲戒処分の状況等について今までのデータを持っておりますし、蓄積がございますので、各任命権者の方で、懲戒処分なさるときに、我々の持っているデータをお示しして、お役に立てていただけるように現在努めておるところでございます。

 したがいまして、実際の行政運営上の協力ということで、現在、各省の懲戒権が適正に行使されるように努めている、そういうことでございます。

松崎委員 一連の今回の大きな違反事件あるいはDM事件を通じて感じたわけでありますけれども、先ほど大臣のおっしゃったとおり、これからの国家公務員のいろいろな改正の中でしっかりと考えていただきたい。

 また、人事院の方も、すべて一カ所で厳しくやるということがいいかどうか。先ほど大臣のおっしゃったとおり、各省庁でという、今むしろ分散型になりつつあるようでありますけれども、私は、それだけではだめなんではないか。この前の総務省の評価ですか、今度やります政策評価の問題も、自分たちでやって自分たちで評価しているのでは、やはりだめなんだということと同じように、客観性、公平性、そういった点で、人事院なり客観的なところがそういう処分のこともチェックをする、これが必要ではないかと思いますので、今後、人事院の方もしっかりと全体を見据える、そういうことをお願いしたいと思っております。

 さて、そのほかに今回、まだこの郵政関連で幾つか問題が出たわけでありますが、一つ感じるところは、地方郵政局にもいろいろな問題点があったわけであります。また、監察に関しましても、DM事件で御指摘いたしましたように、非常に私は甘いんではないか。千二百名も全国におりますが、果たしてどこまで機能しているのか、大変疑問に思ったわけであります。この辺、監察制度のあり方あるいは地方郵政局、一部には統廃合という話も出ておりますが、この辺は今後どのような方向に、公社化も含めてやっていかれると思いますが、この辺の御見解を長官、お願いいたします。

足立政府参考人 今回の近畿郵政局管内のDM事件につきまして、四名の職員が逮捕されましたけれども、郵政監察におきまして、その犯罪発覚の端緒をつかんでいなかったということは事実でありますし、その点につきましては真摯に受けとめているところでございます。

 郵政犯罪につきましては、極めて手口が専門的かつ知能的でありますので、部内の業務手続に精通いたしましたこういった郵政監察を活用するということは、今後とも必要であるというふうに考えます。なお、その機能の発揮につきましては、先生御指摘のとおり、もっともっと充実し、能力の向上に努めていかなければならないというふうに考えております。こうしたことも公社へ向けての検討課題であるというふうに考えておるところでございます。

 なお、公社へ向けまして現在の地方郵政局それから監察局といった組織をどのようにしていくのかということでありますが、いわゆる自律的、弾力的な経営を可能とするような公社をつくる、その中で、郵便局におきましては極力創意工夫に満ちた活動ができるようにする、それを支援するための郵政局のあり方はどうすべきかということでありまして、現在、部内におきまして鋭意検討しておるところでございます。

 新聞報道されましたように、段階的にこれを廃止する方針を固めたといったような事実はございません。なお、今後さらに詰めてまいりたいというふうに思っております。

松崎委員 私は、立場的にはどちらかといいますと、民営化を求めるという立場でございますので、公社化の問題で、現在のさまざまな問題点を改善しながら公社化に集約していく、多分そういう方向だと思いますけれども、私は、もう少し、一歩先に行って、その先を考えながら公社化の組織を考えるべきだという立場でございますので、これ以上今の郵政局、監察局のことは申しませんが、どちらにしても、問題点があるということはしっかりと認識をされていかなければならない。

 特に、もう一つ問題点は、特定郵便局長さんですね。私も長いおつき合いをたくさんしていますから、それぞれみんな人格者でいい方かもしれません。しかし、制度とか組織的な、あるいはそういうもともとの問題点がありましたね、借り上げ制度があったり、あるいは任用にも若干問題がある。世襲とは言いませんけれども、かなり任用にも選考という非常にわかりづらいやり方があったり、あるいはまた、この前問題になりました九百億ですか、渡し切りの問題等もありました。

 ですから、こういう特定郵便局長の制度というもの、どうも私は、公社化をしその先がどうなるかわかりませんけれども、とりあえずの公社化も含めて、この特定郵便局長制度は今のままでいいのだろうか。選考の問題、あるいは今言いました幾つかの問題点を抱えております。

 この前の監査でしょうか、大分指摘をされておりましたが、むしろ、簡易局とか普通局へどんどん転換しろというような方針も出ておったようでありますけれども、この辺、特定郵便局長の制度そのものを今後どのように見直すおつもりがあるか、長官、よろしくお願いいたします。

足立政府参考人 特定郵便局につきましては、さまざまな指摘があるということは承知しておるところであります。

 しかしながら、この特定郵便局は、この制度創設以来、経営の責任者として特定郵便局長を配置することにより事業の信頼を確保しつつ、地域に密着して国民生活の利便向上のために貢献ができる。また、そのことが郵政事業の基盤となってきたといったようなことなどを考えますと、さまざまな問題点が指摘されておるわけでありますが、廃止するというよりも、その運用をもっと時代に合わせて透明化する、そういった改善につきましては、積極的に取り組んでいくべきではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、郵政事業は、非常に国民生活に密着して、利便向上のために、今後、公社へ向けて一層頑張っていく必要があるわけでありますので、公社へ向けての検討課題の一つとして取り組んでまいりたいというふうに考えております。

松崎委員 もちろん、今言いましたように、国民へのサービスをしっかりと支えてきた日本の今までの歴史を評価をしないわけではありません。しかし、ここへ来ましてさまざまな問題が出てきた。これは日本全体の中で、行政のあり方、それから国家公務員といいましょうか官僚体制のあり方、そういうものを今すべて見直しをするというところへ来ている。これはもう政治の世界も絡んでいるわけであります。

 特にこの特定郵便局長の問題は、今回指摘いたしましたように、選挙とか政治とか与党体制とか自民党さんとか、そういう政治との絡みの中でこれが機能してきたという側面があるわけですね。国民の側から見たら、長官のおっしゃったようなことでありますが、他の側面からいきますと、自民党の選挙体制を支えた最大の組織であった、そういうことも言えるわけです。その辺もしっかりと国民は見ていますよと。

 ですから、この制度はもうそろそろ考え直さなければならないんではないか、そういうふうに言っているわけであります。今回の、特に官僚を巻き込んでの大きな不正選挙事件も、これを支えたのは半分以上特定郵便局長会であったということは、今まで二回しっかりと私は指摘したところであります。

 さて、そういう状況の中で、今改革の波が大きく、小泉政権ができて、国民の意思のもとに改革をすべしという総理ができた。そこで、この郵政の問題も、特殊法人等と同じように、大きな改革の一つの目玉になって、今大変なあらしの中にいる。大臣もその中に大変な位置を占めて頑張っていらっしゃる、そういうことであります。私は、今のままでいくと、行革なり改革というものがかなり押し戻されていく、そんな危惧をしている一人であります。

 これからちょっと問題にさせていただくのは、いわゆる公社化の研究会と三事業のあり方における懇談会、この二つの問題を少し取り上げてみたいと思っております。

 懇談会も、また研究会も精力的に、今集中的にやられているわけでありますけれども、特に注目をしなければならないのは、第三回目の懇談会で総理がかなり発言されました。前後は余り発言されておりませんね。一回目は、もちろん、基本的な考えを、余り自分は押しつける気はないということで始まったわけですね。しかし、三回目の懇談会ではかなり発言されております。

 これは皆さん御存じだと思いますが、公社化というのは民営化の一里塚である、自分が総理になってから、がらっと変わったんだよ、自分は民営化論者だということをはっきりおっしゃっていますね。それから、国営を前提としてしか公社化を考えてはいかぬというのがおかしいのであって、自由に議論してくれ、ただし、民間でできることは全部民間に参入させてください、そして郵便貯金の監督検査は金融庁に任せろと、一つの方向をはっきり出されています。公社化後も国営でなければいけないという前提は取り払ってほしい、これは総務大臣にもお願いしております、また公社化研究会にも求めるつもりでおりますと。これはオープンに議事録が出ていますから、皆さんがごらんになっていると思います。

 そして、郵政事業庁も考えを変えてもらわなければいけない、これを受けて、総務大臣も発言されていますね。民営化に近い公社化もひとつ念頭に置いてほしいと公社化研究会でも申し上げた、それから、公社化研究会はこの懇談会と対立するものではないので、よい公社をつくって、その後、国民に一番よい形にするということが必要なんだ、こういう発言を大臣も総理大臣もかなり、特に総理大臣は明確に方向性を出しています。この姿勢を、大臣はどのように総理の方向性を研究会に反映されようとしているのかどうか、これをお聞きしたいと思います。大臣、どうぞ。

片山国務大臣 整理をいたしますと、平成十五年中に今の国直轄を国営の公社に移行する、こういうことですね。そのためには、来年の通常国会に法案を出す必要がありますので、年内に制度設計いたしたい、役所だけでやるのにはやはりややいろいろな問題があるかもしれませんので、有識者の方を集めて、研究会をつくってそこで議論していただく、こういうことで公社研究会はスタートしています。

 それから、総理の方の三事業の懇談会は、内閣ができる直前の与党三党の合意で、公社移行後のあり方については民営化問題を含めて具体案を検討する、こういうことでこれもスタートしておりまして、こちらの方は来年の夏ぐらい、六月か七月ごろまでに意見集約をする、こういうことをやっていますね。そこで、公社移行後どうするか、私は、予断を持たずに検討してほしい、国営のままで残すわけでもないし、当然民営化でもないので、とにかく公社としてはどういう公社がいいかということを検討してほしいと。

 私個人の考えを言えば、この公社は、相当自由度を持った、裁量の余地がある民間に近い公社にしてほしい、こういうことは公社研究会で申し上げております。しかし、それ以上は公社化研究会の先生方の御判断だろう、こういうふうに思っております。

 それで、総理は、自分は民営化論者だけれども、押しつけるわけじゃない、どうぞ御自由に、こういうことを、初回は松崎委員御承知のように言われまして、この前、三回目のときは今言われたような趣旨を言われましたので、だから私は、総理の意見を承りましたが、なかなか公社化研究会でいろいろな意見がありますよと、こういうことは申し上げているのです。

 それから、金融庁の検査は、今の権限や性格や体制では無理だ、できないと思う、法的にも難しいと私は思います、金融庁設置法を見れば。だから、それを改めて、あらゆるものの公的な検査をやるような一つの機関をつくるのなら、それは可能でしょう、今のままでは無理ですよということを私は懇談会では申し上げている、総理にも直接申し上げています。

 それから、郵便事業への民間参入は、当然、公社化の一つの課題ですから、これは議論していただいております。総理はぜひ全面参入でやってほしい、こういうことで、これもいろいろな意見がありますよ、必ずしも全面参入、ただ一つじゃありませんよ、しかし、総理の意向は承りましたので調整させてくださいと、こういうことを申し上げている段階でございまして、我々は、予断を持たずにいい公社をつくりたい、公社ができた後どうするかは懇談会の意見集約にまちたい、こういうふうに思っております。

松崎委員 なかなか難しい判断かもしれません。しかし、私の質問は、総理に任命された大臣が、この総理の誕生は、大方の予想を裏切って、いわゆる改革をしようという形で国民の声に押された自民党の党員の方々が選んだ。これは国民の意思なんですね、改革をしてほしい。例えば、この特殊法人もそうなんですね、ですから、まだ支持率も高いのです。

 そういう総理の方針、あそこまではっきり言っているんですね、今までの総理はこんなにはっきり言いませんよね。私は民営化論者で、徹底的にそういう方向へ持っていくんだということを言って、任命した大臣がそれを受けて、大臣そのものが公社化の研究会を招集された。であれば、たしか法律がありますよ、基本法があります、だから、三十三条の六号はいずれ問題になりますよ。しかし、法律ができてから小泉さんが誕生したのだから、確かに、官僚の方とか今までそのラインでやってきた方々から見たら、それは寝耳に水というか、大変な騒ぎになるのはしようがない。しかし、これは国民の意思を受けた総理大臣の方向性というものを出しているわけですから、任命されている大臣は、やはりある程度素直にその方向に持っていくのが、閣内不一致じゃないという方向ではないかと思うんですよね。

 そういう意味で、私は前回にも言ったと思うんです。公社化の研究会がスタートするけれども、その前に、民営化の方向性を持とうとする総理が懇談会をやって、その方向性を一生懸命に出そう、三回目にこんなにはっきり言ったのは、正直言って、懇談会も恐らく総理の思うとおりいっていないということで、激しく言ったのであろうというふうに思いますよ。

 だから、それほどこの問題は大変難しいことはわかりますけれども、そういう方向性を持っている総理の中で、やはり大臣が、公社化研究会に対しても誘導しろとは言いませんよ、誘導しろとは言いませんけれども、そういう意思が残念ながら今回の中間報告にほとんどないじゃないですか、ほとんど総理大臣の意見、全部無視じゃないですか、だから言っているんですよ。

 大臣がその両方にかかわりを持っている。任命された大臣であれば、やはりもう少し総理の意向を踏まえて、しかも、国民の意思だということをバックにしたら、ここでしっかりと、総理の意向をどうやって研究会の方に生かしていくか、そして中間報告に生かしていくか。全然生かされていないということに、私は大変疑問を持っております。

 この辺、民間参入させろと、大臣に対して総理がまた九日にも言ったという報道がありますね。先ほど金融庁の検査、お話がありました。まだそういう体制ではないというお話でありましたが、こういう具体的な指示をオープンに出しているわけですから、ここをしっかりやらなければいけない、そんなふうに思います。

 特に、第三回の同じ懇談会でも、葛西委員、JR東海の社長さん、この方は国鉄改革で大変に力を発揮した、頑張った方でありまして、この方がやはり懸念をしておりますね。公社の法律を国会で審議しているときに、同時に公社では十分でないという議論が並行して進むということでは、国会審議がもたないのではないかと。これは両方に対する皮肉かもしれません。そこで、この懇談会と研究会は、そこの点をうまくクリアして二元連立方程式の接点を求めるような作業をしないと、全体として話が前へ進みにくくなるという点が気になると。私は、この葛西さんの発言が今の現状を最も適切にあらわしているんではないかと思います。

 その二つの会議体が全く違う方向ではいけない。もちろん、こちらは法律が決まって動くんだから、公社化をというのはわかります。しかし、片方で、トップリーダーが民営化を目指して動いている、その意思を一生懸命伝えようとしている、反映してくれと言っているのに、ところが、両方が全然かみ合わないで、きょうですか、研究会と懇談会の意見交換があるそうでありますけれども、その辺、やはりもう一度、大臣のお立場、そして、任命されている総理の意向を受けて、もう少ししっかりと研究会に対しても方向性を示すべきだ、そんなふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

 そして、この中間報告案をつくられましたけれども、これは私は、今言ったように、総理の意向は全然反映していないな、そう思いますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 今回の骨子案は、パブリックコメントにかけるためにあれしたものでございまして、まとまったものじゃなくて、議論の過程を集約したものですね。総理の言われる郵便事業への全面参入も、検査監督のあり方も落としています。落としているというのは、パブリックコメントにかけないということです。それは総理の意向を尊重しているからですよ。

 それから、公社化にするということが今の郵政事業に対してはとりあえずの大きな改革なんですよ、後どうするかの議論はありますけれども。この公社化は、国民の代表である国会の意思で法律に、基本法に決まったことですから、それはしっかりと予断を持たずに私はやらせていただこう。

 それから、松崎委員、わざわざ公社化研究会で相当忙しい有識者なんかをお集めして、郵政事業懇談会も同じですよね、そこで、政府があらかじめ結論を出して、このとおりやれというのは要りませんよ。そこは予断なく、広く意見を聞くということが必要なんですよ、民主主義は。もう方針を決めた、我々はこうだというのなら、研究会や懇談会をつくる必要がない、よりよい案を求めて研究会を今開いていただいたり、懇談会を開いていただいているんですから。だから私は、総理の意向は承りましたと言っているんです。それで、調整しますということは、言葉のとおり、そこの間の調整をするんです。そういうふうにお考えいただきたい。

 総理が言ったら、そのとおりどっといけと、そういうことは民主主義じゃないので、だから、研究会で大いに議論していただいて、懇談会でも議論していただいて、あるべき方向を出していただいて、それをやっていく、これが私の務めだと思っていますから、総理の意向に反対しているわけでも、閣内不一致でも、一つもありませんよ。

松崎委員 ちょっと議論が違うかもしれませんけれども、要するに、民主主義の社会の中で、自民党の総裁を、党員だったかもしれませんけれども広く選ばれて、その公約に民営化を掲げて、その方が総裁になって総理になられた。その方の一つの方向性、私は、今の日本の政治、行政の改革のためには、これは立場が違うかもしれませんけれども、やはり思い切った改革をすべきだという一つの流れがあるというふうな前提で話をしていますから、前提が違うかもしれません。けれども、この辺はもう少しトップリーダーの考え方、そして社会の方向性というもの、意見が違うかもしれませんが、今、行革あるいは特殊法人に関しても、ほとんど小泉改革が進んでいないということが言われておりますから、その辺のことを考えますと、一つの時代をあらわしちゃっておりますねと思いますけれども、小泉さんも独裁者じゃありません、しかし、一つの合理的な、そして我々の国の将来性を考えた上での方向性を出している、私はそう認識しておりますので、やはりそこをひとつしんしゃくしながら、一つの時代を持っていくということも必要であろう、そんなふうに思っています。

 さて、残り時間が少なくなりました。がらっと変わりますが、十一月の六日に安保委員会で我が党の今野東議員が御質問をされました。国際機関におきます派遣職員の問題をぜひこの委員会で取り上げたいと思っております。

 国際機関への派遣というのは、今かなり数はふえてはおりますけれども、この国際化社会の中で日本人が世界に出ていく、まして国際機関に出ていって仕事をする、これはすばらしいことだと思っていますが、なかなかこの辺が、今、システムでいきますと、国際機関の給料と国内の職員としての給料が二重取りというふうに見られるというふうな指摘もございます。かなりその額が高いのじゃないかという懸念があるということを指摘しておりまして、この辺、国際機関への派遣職員の報酬の決め方というのはどんなふうになっているか、人事院にお聞きをいたします。

大村政府参考人 国際機関に国家公務員が派遣される場合の給与でございますが、派遣法及び人事院規則で定められております。

 具体的に申しますと、その支給割合につきましては、俸給等の百分の七十を支給することを原則としております。また、その場合、同じ地域の在外公館等に勤務する外務公務員との比較をいたしまして、外務公務員が支給される在勤基本手当及びその給与の総額と、派遣される職員に支給される派遣先の報酬の額とその派遣給でございますが、七〇%の派遣給を比較しまして、こちらの方が低いときには、外務公務員の給与を上限としまして百分の百まで派遣給を引き上げることができます。

 また一方、日本国内に所在する国際機関、例えば国際連合大学などがございますが、こういうところに在勤する派遣職員につきましては、派遣先で支給される報酬の額が派遣前の給与よりも高い場合には、派遣給をゼロにするということをしております。

松崎委員 今、手元にニューヨーク、大体、外交官の年俸、給与を上限にやっていらっしゃるようですね。外交官の方は在勤法で管理されておりますね。

 この一つのニューヨークの例をいいますと、ニューヨークの国連職員として行った場合、マスター取得後十二年程度ということでございまして、大体四十歳ぐらいになるんでしょうか、この方が今、課長補佐クラスでニューヨークの国連職員に行っております。そうしますと、これが年俸で千七百六十八万、ニューヨークの在外公館の同程度の一等書記官九級、四十歳、これと比較しますと、二千三百六十六万ですね。ですから、この在外公館の外交官よりはもちろん低くなっている。しかし、かなりこれは、この前、今野さんが一つの例を示したのは、PKOの自衛官、派遣の自衛官の場合は千九百三十万円だった。ですから、この両方比較をしながらなんですが、やはり一般の国民のレベルから考えますと、大変高いのじゃないか、二重取りしているんじゃないかという印象を持つのですね。

 そこで、今回問題になったわけでありますけれども、しかし、この外交官の給与を見ますと、日本が特別高いというわけじゃないようであります。しかしながら、この辺がどうも国民には納得がしにくい金額ということに対して、どう説明されるのかなと。

 例えば、外務省関係の在勤法は昭和二十七年ですね、派遣法は四十五年だったということで、とりあえず時代にマッチしていないのじゃないか。その当時はまだ固定相場制だったり、給与が低かった、そういうことで、国民から見たときに、どうも今の金額が、海外での比較はそうでもないかもしれませんけれども、日本から見たときに、妥当ではないのじゃないかという意見があるんですが、いかがでしょうか。

大村政府参考人 お答えします。

 今の御指摘、そういう御指摘が時々あるのでございますが、私どもとしましては、国家公務員を海外で勤務させるということでございますから、その地域におきます外交官というのですか、そういう者との比較をやはり基本的にすべきであろうというふうに考えております。

 ただ、先ほど申しましたように、在外公館に勤務する職員の給与というのは最大のリミットということでございまして、それを下回る場合が、国際機関に派遣で行きます職員のほとんどはそういう実情になっておるところでございます。

松崎委員 実態的には日本の給与は今非常に上がっておりますから、なかなか行かない人が多いのだというふうには聞いております。ですから、これは国民感覚と、実際に日本のレベルが上がって、海外へ行ったときに、向こうは向こうで、確かに外交官じゃないという見方はありますけれども、それなりの大変な仕事だということになりますと、これはなかなか難しい判断だなということを感じます。

 さて、その派遣なんですけれども、実際、国連機関、特に国連の事務局を例にとりますと、非常に少ないのですね。分担金は、分担率二〇%、たしかアメリカの次に、二番目に多く出しているんですね。これでいきますと、この分担金の分担率でいきますと、三百三人ぐらいが一番理想的な望ましい職員の数なんだ。ところが、現実は百六人しか入っていない。この辺が国際社会での日本の位置というものを含めて、非常に私は、何でこんなに低いのだろうかな、そんなふうに思っております。

 ましてや、国連のシステムというか、国連全体の機関でいきますと七百四十人、民間が多いのですが、邦人率は二・九%しかない。この辺の状況、なぜこんなに少ないのか、希望者が少ないのか。そして特に、国連事務局の場合、もっとふやす必要があるんじゃないか。充当率が三分の一ですね。これはお金の問題だけじゃないと思うんですけれども、どういう理由でこんなに少ないのか。外務省、お願いいたします。

杉浦副大臣 国連及び関係機関における日本人職員の数が少ないのは御指摘のとおりでございます。

 その理由なんですけれども、今、局長が御説明いたしましたように、国連の給与は外務公務員に比べて相対的に低いということがございます。日本の場合、名目賃金がバブルと同時にずっと上がりまして、国連職員になるためには語学力初め相当の能力が要るわけなんですけれども、国連に勤めるとすると、民間で働いていたときよりもうんと給料が下がるということがございまして、優秀な方々は行きたがらない。

 また雇用慣行、日本の場合は終身雇用が前提なところでございますが、そういう雇用慣行も違う。言葉の問題もあると思います。資格要件も国際機関はうるそうございます。博士課程必要とか修士課程必要とかいろいろございまして、大きな壁になっているということはあると思います。

 我々もいろいろ努力しておりまして、国連からミッションを送ってもらって、国内における求人活動をやってもらうということもしております。新しいところでは、十月二十二日には事務次官懇談会で関係府庁の協力を要請しましたし、二十四日には人事担当課長会議で外務省人事課長から関係府省へ協力を要請いたしましたし、十月下旬には経済四団体や研究機関等に対しまして協力を要請いたしておりますが、現実にまだまだ給料が国連の場合低いものですから、公務員の場合はやはり補てん措置があります、七割限度、場合によっては一〇〇%という補てん措置があるから公務員からの派遣はできるわけですが、民間の場合はなかなか難しいというのが現実でございます。

 私どもとしては、景気が悪くなってきて失業率も高くなっているという客観状況もございますので、国連機関に対しましては、今、日本から優秀な人材を採る、採用するチャンスだよということは機会あるごとにお話しいたしまして、促進を図っておるところでございます。

 今後とも、積極的に取り組んでまいる所存でございます。

松崎委員 時間になりました。

 片方では、国家公務員の派遣に対しては非常に高いんじゃないかという印象がありますから、ぜひこれは仕事の内容をちゃんとPRするとか、やはり補完をしなきゃいかぬと思います。

 また、民間の方の開発というものも頑張っていただきたい。それから、派遣職員は帰国後の処遇という問題もやはり大きな問題になる、そうしないと、なかなか行きづらい。ぜひ御努力をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

御法川委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時三十八分開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山村健君。

山村委員 どうも休憩ということでちょっと気合いもそがれたところはあるのですが、きょうは一般質問ということで、非常に私も張り切って質問させていただこうと思うのです。

 総務省の業務内容といいますか領域が非常に広いので、その中で何を聞いてみようかなというふうにまずテーマを決めさせていただいたのですが、総花的に聞きましても何ら進展がないと思いまして、ITといいますか、放送と通信の融合の問題について、これから先五年、十年、一番大事な基幹産業といいますか、あらゆる面におきまして、構造改革だ等々言われているのですけれども、そのベースにはどうしても私どものこの委員会といいますか、情報通信、それと放送というものはかかわってくると思うのです。

 今後の取り組みといたしまして、まず大臣に、融合化についてのスケジュールといいますか、そこまで具体的なものでなくても結構なんですが、昨年のIT基本法にのっとってどのような形で考えてみえるのか、所信の方をお伺いしたいのですけれども、お願いします。

片山国務大臣 今、山村委員がお話しのように、放送と通信がだんだん融合してまいりました。

 特に、ブロードバンド化や放送のデジタル化が進みますと、さらにこの融合の度合いが増すということでございますが、私どもの方としましては、さきの通常国会で、電気通信役務利用放送法というのを出させていただき成立させていただきました。CSやケーブルテレビについて電気通信事業者回線の利用を可能とするこういう法案を出しましたし、また、通信・放送融合技術の開発の促進に関する法律を成立させていただきまして、通信・放送融合サービス開発のための研究開発に支援しよう、こういうことをやらせていただいてはおりますが、今お話しのように、今後融合はさらに進むと思います。

 そのときに、今はそれぞれ別々の制度でございますけれども、その間の整理をしまして、どういう新しい、適切な制度をつくっていくかということは研究しなければなりませんので、現在、いろいろな研究会をつくりまして、その間の研究をいたしております。いつまでにどうということまでまだ決めておりませんが、できるだけ早急な制度改革のための準備に入りたい、こういうふうに思っております。

山村委員 さきの国会のときにさまざまな法案もつくらせていただいて、それに私どももかかわらせていただいたんですけれども、そのベースにあるのが昨年のIT基本法にあることは紛れもない事実なんです。実は、昨年のIT基本法について思うんですけれども、やはり昨年からことしにかけて、我が国もそうですが、アメリカ、日本、いわゆるITバブルが崩壊してという中での今日の経済状況もあると思うんです。そういう意味合いからも、基本法はできたけれども、今、個別に法案をそれぞれ改正しながら進めていくということなんですが、それだけでいいのかというような疑問がふと頭の中をよぎった次第なんです。

 ただ、この総務委員会、きょう非常に大勢の先生方がお見えなのであれなんですが、非常に専門用語といいますか次から次へと新しい言葉が出てきますので、議論をいたしましても、本当にマウスイヤーだとかいろいろ言われております。そういう中でこれからのキーワードとして思うのは、この国会の議論の場で恐らく初めてなんじゃないかなと思うんですが、ブロードバンドというような言葉の定義づけといいますか、政府の方の考え方を聞かせていただければと思うんです。

小坂副大臣 山村委員の御指摘のように、どうも専門用語ばかりで聞いていらっしゃる一般の皆様にはなかなかわかりにくい議論になってしまうかもしれませんので、この機会に、機会をいただきましたので、このブロードバンドについて私なりに説明をしてみたい、こう思うわけでございます。

 ブロードバンドというのはナローバンドという言葉に対応しておりまして、すなわち、狭い道から広い道に行くというような意味なんですが、ブロードというのは広いという意味でございますので、瞬時に大容量の情報を伝送するような回路、回線あるいはネットワーク、こういったものを称してブロードバンドと言っているようでございます。

 現在、通信回線で一般的に使われております例を言いますと、一般の電話回線を使って普通に今まで通信しておりましたモデムという機械を通しますと、一秒間に五万六千回の信号を送れる、いわゆる五十六キロビットと言っておりました。また、ISDNという回線を使いますと、六十四キロビットというスピードが出せるわけです。

 今ブロードバンドと言われておりますのは、DSLという特殊な方式を採用したり、あるいはケーブルインターネットのように同軸ケーブルを使った回線等を使いますと、もっと早い、一秒間に一メガビット以上の信号を送れる。すなわち、現在よりも数十倍、数百倍、あるいは数万倍のものが技術的にどんどん今送れるようになってきております。

 こういった回線を利用しますと、では、どういう効果があるのかといいますと、e―Japan政策の中でも言っておりますように、電子政府の実現、電子自治体等を実現するためにいろいろな情報を瞬時にやりとりしないといけません。そういったことが可能になってまいりますし、また、遠隔医療のようにレントゲン写真や心電図のようなものを離れた病院間で交換したり、あるいは患者さんが自分で機器ではかって、それが自動的に病院に送信されるようなことも可能になると思います。あるいは、バーチャルユニバーシティー、バーチャル美術館と言われているように、学校に行かなくても授業を受けられる、あるいは美術館に行かなくても立体的な画像が、まさにその色のままに再現されて見ることができるような、あるいは、災害時の関係者の安否を即座に確認できるように安否確認システムとかいろいろなものが考えられております。国の方の施策でも、また一般の民間の事業者によってもいろいろなアプリケーションあるいはソフトウエアが開発をされておりまして、これが利用できるようになってまいります。

 e―Japan戦略におきましては、三千万世帯が高速インターネットに五年以内にアクセスできるようになる、あるいは一千万世帯が超高速、いわゆる三十から百メガビットのスピードの常時接続をした回線に接続ができるように、そうしたインターネットが活用できるような目標を掲げて、今施策を進めているところでございます。

 こういったものを私ども総務省の方では、全国ブロードバンド構想という形で片山総務大臣がこの十月に発表させていただきましたけれども、高速・超高速のインターネット網の全国的な普及を計画し、平成十七年度までにスケジュールを組んでこれを推進するという構想をまとめさせていただいたところでございます。

 このようにして一層ブロードバンドの普及を図って、いろいろな情報が瞬時にやりとりできる、新しいいろいろな政策あるいはソフトが国民の皆さんに御利用いただけるような環境づくりに努力をしてまいりたい。そういう意味で、このブロードバンドという言葉はますます頻繁に使われるようになると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

山村委員 本当に隅々にわたって、具体的な政策も含めて小坂副大臣の方から御説明いただいたんですが、さて、ブロードバンドに行く過程においてなんですが、直近のデータという形で、現在、DSLであるとかCATVインターネット、ISDN等々の従来からのそういう回線の数といいますか、普及度合いというのはわかりますでしょうか。

鍋倉政府参考人 統計のとり方が若干ございますので、日付が異なるので恐縮でございますけれども、平成十三年の十月末現在でDSLにつきましては九十二万二千、それから、ほかのは九月末になってしまいますが、CATVインターネットの加入者数は約百十五万一千、それからFTTH、光ファイバーでございますが、これの加入者が約三千五百、それからISDNの加入者は約一千万でございます。

山村委員 今の数字が、それぞれ多いのか少ないのかということは、基準になるようなベースの数字もないとは思うんですけれども、ただ、非常に私、懸念しておりますのが、これまでの、総務委員会になる前の郵政省の管轄になるわけですが、それぞれがいわゆる放送であり、CATVであり、また通信であり、縦割り行政のまま進んできた。それを、本来ですと、私の個人的な気持ちでいえば、総務省というのもよろしいんですけれども、情報通信省というような形の中で、専門的に横ぐしを通していくような社会基盤を築いていってほしかったなということはあるんですが、一月六日から総務省という形で進んでおりますので、その件は別にいたします。

 これらの数字をベースといたしまして、国民の中に、いわゆるIT革命といいますか、実生活に伴った生活に落とし込んでいくべきだと思うんです。我々に一番身近なところでいいますと、それぞれの地域によっても違うんですが、先ほど聞きました数字の中でCATVインターネット、現実にCATVが、ケーブルテレビが世に出てきたときは、多チャンネルの放送番組が見られるよというようなうたい文句であったと思うんです。それがここ数年の間、一気にまた加入世帯がふえてきたというその原動力に、インターネットもできるよというようなことからふえてきたように思うんですけれども、その辺はいかがですか。

小坂副大臣 おっしゃるとおりでございます。従来、放送の再放送を中心にして、また、ケーブル事業者が独自の番組を制作して流しておりましたが、それだけでは十分な普及が図れませんでしたけれども、インターネットが高速でできるということ、また定額で、常時接続ができるということが大きなメリットになりまして、普及の弾みがついているところでございます。

山村委員 今も、その普及の弾みといいますか、普及度合いの曲線というのはかなり高い率で来ているんでしょうか。

高原政府参考人 平成十二年度末におきます自主放送を行うCATVの加入世帯は一千四十八万世帯ということでございます。前年比一〇・六%の増加ということで、かなりの増加率になっておるところでございます。

山村委員 十二年度で一〇%台の伸びということは、ちょうどその時期といいますと、IT革命という言葉が世に出て、どこを向いてもIT、IT、二十一世紀の基幹産業はITというような言葉に代表されていたと思うんですが、それよりも新しい資料というのはないですか、今のところ。ございませんか。

高原政府参考人 これは年度末にまとめておりまして、今のところ、今の数字が一番最新のものでございます。

山村委員 ありがとうございます。

 ということで、いつの間にか、CATVという、多チャンネルであり、その地域の映像といいますか番組が流せるコミュニティーチャンネルでありというような形の放送局が、ITの情報通信の方のインフラという形に置きかえられているように思うんです。

 としますと、その前に、特にNTTさんが力を入れられたISDNというのは、一体どこへ行ってしまったんだということを聞きたいんですが、その辺の政策変換といいますか、それはあくまでもNTTという会社の方針になるんでしょうか。いかがなものでしょうか。

小坂副大臣 委員の御指摘は、技術の進歩とその実際のネットワークというものとの関係になるかと思うのでございますが、日本はデジタル交換機の普及は世界でも最も進んだテンポで参りました。それを利用して、ISDNという、現在の電話回線を使いながら、より高速なインターネットが利用できる、また同時に、音声通話も併用できるという新しい技術をNTTは開発して、これの全国普及を図ったわけでございます。

 しかしながら、後から、いわゆるADSLとかDSLと呼ばれるデジタルの加入者線技術というものが開発されまして、こちらの方がより高速にインターネットが利用できる、こういうふうになってまいりましたら、大分そちらの方の利用勝手がいいということで、そちらを利用する方もふえてまいりました。そういうことで、今、ISDNと、DSLと、それから電話だけを利用される方、そういう方が、同じ電話線をいろいろな形で利用されているわけですね。

 最近の傾向からすれば、ISDNはどうも申込数は若干減りぎみだというふうに聞いております。そして、DSLの方はまた爆発的に伸びているという話もございますので、そういう意味では、両方それぞれの特色がありますので、決してISDNがなくなったわけではございませんけれども、今、利用者の志向は、どちらかというと、より高速な常時接続を好んでいらっしゃるのかな、そういうふうに私どもは見ております。

 これはあくまでもNTTの独自の営業方針、また政策の中で運営されていることでございまして、私どもが総務省としてどちらかへ主導しているということではございません。

山村委員 きょうは三十分という時間ですので、まだまだ聞きたい部分もあるんですけれども、次へ進ませていただきたいと思うんです。

 今までは通信の件について質問させていただいたんですけれども、今度はテレビといいますか放送についてお伺いしたいんです。

 昨年の十二月に鳴り物入りでBSデジタル放送というのが、一千日で一千万件でしたか、そういう目標を掲げてスタートしたんですが、あれからほぼ一年たつんですが、現在のところの普及状況というのはどのぐらいのものなんでしょうか。

高原政府参考人 先生がおっしゃいますように、BSデジタル放送、昨年十二月に放送を開始いたしました。それから約三百日後の十月末現在、二百十四万世帯が視聴いたしておるというふうに考えておるところでございます。

 また、最近、受信機も低廉になりましたし、いろいろな放送事業者等のキャンペーンの効果もございまして、十月以降の受信機の出荷状況は、夏とか春に比べますと三倍の状況でございます。

 こういう状況のもとで、先ほどの一千日一千万世帯というのは関係業界の自主目標でございますが、我々もこの関係業界と一体となってこの普及に取り組んでいるところでございます。

山村委員 最近、BSデジタルの放送がやっとあちこちの一般の雑誌等でも見受けるようになったんですが、決してすべてが全部、番組について、内容についてなんですけれども、肯定的な趣旨の記事でもないように思うんです。かく言う私どもも、では、おまえ、BSデジタル放送を見たのかと言われますと、あえて自分で十万近くのチューナーを購入、買おうという気になっていない、それが現状なんです。といいますのも、結局、ケーブルテレビで三十チャンネルも四十チャンネルも自宅へ帰れば見られる、あれば便利なんだろうけれども、今さらそんなに少額、小さな金額でもないチューナーを買ってでも、もっとも、見る時間もありませんけれども、買う必要もないかなというふうに思ってはいるんです。

 それで、ことしの春ですか、今度は地上波デジタルということで、この場でも議論はさせていただいたんですけれども、次から次へとデジタル、BSデジタルに始まり、地上波デジタル、それで今度は百十度のCSの放送がまた始まるというようなことで、今の景気状況から考えまして、こんな時期にあれもこれも出してきて果たして大丈夫かなという心配があるんですが、その辺はいかがなんでしょうか。

小坂副大臣 委員の御指摘は、私も、若干そういった動きが出てきているなというふうには見ている部分もあるんでございます。しかし、それはどういうことかといいますと、確かに、皆さんがまだ十分にBSデジタル放送の双方向性、高画質というものに対して、または番組内容に対して魅力を感じていらっしゃらない、それはPR不足という部分も相当あると思っております。

 そういう意味で、また同時に、今御指摘のデジタル受信機のアダプターの価格が非常に高いということ、専用受信機もさらに高額であるということも大きく影響していると思いますので、民間放送とメーカーが今、受信機の低廉化、アダプターの低廉化に向けてさらに取り組んでいただくように相互に話し合いを進めていただいておりますし、私どももそういった方向でお願いをしているところでございます。

 それに加えまして、BSデジタル放送の放送局の方が、今後、全国八千カ所において体感キャンペーンを実施する、開局一周年を記念して大型の番組を百本厳選してアピールする、こういったキャンペーンを構えておりますし、BSデジタル放送推進協議会という組織を通じて、なお一層のPRを図る。また、昨日行われました民間放送の五十周年記念大会がございましたが、ここでも、民放連の会長及びNHKの会長が、一千日一千万世帯を何としても実現するためにさらに努力をするという決意を表明されておられます。

 こういうことを見ましても、私どもは、さらに努力をし、受信機の低廉化、番組の内容充実、そして、双方向性、参加性というものをよりPRして皆さんにこの魅力を知っていただいて、BS地上放送への弾みをつけてまいりたい、このように決意を新たにしているところでございます。

山村委員 数々の特徴があるわけなんですけれども、その中で私が一番気になるのが、双方向性という問題なのです。

 BS放送で双方向性ということは、宇宙から電波が流れてくるんですが、見ているユーザーの方、端末からは宇宙の方へ返すということになるわけですか。その辺、いかがですか。

小坂副大臣 おっしゃるとおり、電波は来るんですが、返す方は、実は電話回線を使ってこれを返しているわけでございます。

山村委員 電話回線を使って返すということは私も知っていながらあえて問わせていただいたんですけれども、それを考えた場合、ファイバー・ツー・ザ・ホームといいますか、光ファイバーケーブルを各家庭に引き込んだ方が上りも下りも含めて非常に有効であるのじゃないかなと。ただ、それについては、ラストワンマイルという問題が、今までコストをだれがどれだけ負担するんだというようなことも討議されてきたように思います。

 そういう中で、では、これからどのような形で、テレビといいますか、あらゆるメディアを構成していくのかなと思ったときに、最近、新聞等々で、NHKさんがインターネットの分野に出てきて、放送と通信、それぞれの法律の縛りのある中でそれでいいのかと。NHKに関しては、また別の肥大化という問題等々あるとは思うんですけれども、その辺を考えたときに、具体的に始まってしまったから問題点が、ある意味、こういう総務委員会であり、それぞれの場でも実感として検討されるようになったのかなと思うのです。

 そこで、今現在、各テレビ局、既存の放送局、テレビ、ラジオがどのような形でインターネットを使った配信といいますか、活用法をとっているのかということもお伺いしたいのです。

高原政府参考人 放送局のインターネット利用でございますが、在京キー局五社を見ますと、全社においてホームページ開設及びインターネット利用ということをやっております。この内容でございますけれども、会社概要あるいは財務情報、広報資料の提供、番組表の提供といったようなもの、ニュース、番組ダイジェスト等の提供、あるいは番組審議会の議事録の提供といったようなものを行っているところでございます。

山村委員 その中のいわゆる番組ダイジェストというのは、動画が流れているわけですか。

高原政府参考人 おっしゃるように、動画でございます。

山村委員 インターネットを使って動画の精度といいますか、私もたまには見たことはあるんです。それぞれの局すべてを検査するというような面持ちで見たわけではないんですけれども、この議場の様子も国会のインターネットを通じて配信されているということでもあるんですが、これから我々がまずしていかなければならないのは、冒頭のテーマでもございますけれども、放送と情報通信の融合化。私も、今回の質問に当たっていろいろな文献を読ませていただきましたら、民間の放送局ですと、定款の変更だけで、いわゆる放送事業者がインターネットを通じて通信の事業にも参画をできる。

 ただ、NHKの場合は、法律改正をしないことには通信の分野に進出することもできない。また一方、NTTもしかりでございまして、その辺の課題の検討、いわゆる融合化への検討ということは、今、総務省といいますか、政府として、どのように取り組んでみえるのかということをお聞きしたいのです。

高原政府参考人 先生がおっしゃいますように、NHKの場合は、放送法におきましてその業務が決まっておりまして、インターネット放送を正式の業務として行うという位置づけには、今のところなっておりません。

 また、諸外国におきましても、通信と放送というのはそれぞれ別の規制の体系になっておりまして、全く同じ法体系で融合が成功したという法律はまだございません。いずれにいたしましても、この辺はこれからの検討課題であろうというふうに考えております。

山村委員 日本国内においても放送法があり、情報通信で、それぞれの法律で改正しなければならないということは、今までないものでございますので、非常に多々あるんです。

 それと同時に、一番懸念するのが、インターネットというのはまさに国境がないものでございまして、海外との整合性といいますか、海外とどのように連携していくのかということも、民間の企業ベースじゃなく、政府として、政治としてその辺の法体系というのはどうなっているんでしょうか。

小坂副大臣 御指摘のとおり、通信と放送の法体系という問題については、私どもも研究会で今、研究はいたしておりますが、外国においてもいろいろなパターンがございます。そういう意味で、国際的な整合性という形では出てきておりませんけれども、いずれにしても、インターネットを通じて動画がどんどん入ってくるという状況にはこれからなってくるわけですね。

 国内法制はともかくとして、そういったものを放送ととらえて規制していくのか、あるいは規制をしないで逆にインターネットの枠の中で自由にこれをやらせていくのか、この辺はこれからの一つの大きな課題だと思っているのです。実際に、それによってどういう状況が生じてくるのかということは、まだ十分にわかり切っていない部分もございます。

 その辺で、私ども、より自由なインターネットの世界を描きながらも、その中で、日本の文化あるいは青少年の健全な発育とかいったものに悪影響を及ぼさないようなインターネットの環境づくりのために、十分にこれからもそういったものの進展を見ながら対応してまいりたいと存じます。

山村委員 まだまだ大きな問題として、今回テーマに上げてしまったものですから、踏み込んだところまで議論ができなかったのが残念なんですが、ちょうど時間となりましたので、また、今後とも勉強させていただきまして、いろいろと議論を重ねてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問いたします。

 さて、世界経済は米国テロ事件後、同時不況の様相を色濃くしております。さらに、IT不況等も加わり、米国の景気後退が世界経済、とりわけデフレにあえぐ日本経済へ与える影響は深刻であります。もし我が国がデフレスパイラルに陥ることになれば、世界不況の危機が現実化するのではないでしょうか。我が国はテロ対策以前に、デフレ脱却へ向けて経済を立て直す国際責務を担っていると私は思っております。

 一方、我が国財政の現状を見ますと、景気回復に向けた歳出の増大などの影響で、公債依存度が依然として高く約三四%の水準にあり、国債残高は平成十三年度末で三百八十九兆円に、国及び地方の長期債務残高は同じく約六百六十六兆円にそれぞれ達すると見込まれております。また、地方財政については、平成十三年度末における借入金残高が約百八十八兆円に達する見込みであり、公債費負担比率が一五%の警戒ラインを超す団体が六割以上となるなど、極めて厳しい状況が続いております。

 このような中にあって、地方公共団体の財政面における自己決定権と自己責任をより拡充し、引き続き歳出削減などの行財政改革を積極的に推進することが重要であると私は考えております。そこで、地方財政の構造改革に係る基本的な課題を主体に、幾つかお尋ねしていきたいと思っております。

 まず最初に、地方公共団体の近年の財政事情を見ますと、財政構造の弾力性を示す財政指標がいずれも悪化してきており、硬直化が懸念されますけれども、経常収支比率、公債費負担比率、起債制限比率はそれぞれ過去十年前と比較してどのように変化してきているのでしょうか。また、行政サービスの強化が求められる中で、地方財政健全化の観点から、地方財政計画を立案する上でどのような工夫が図られているのでしょうか。そして、それらを改善すべく、平成十四年度計画の策定に向けてどのように対応しようとなされておるのか。これらをあわせて総務大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。

香山政府参考人 お答え申し上げます。

 指標等がございますので、私の方からお答えさせていただきます。

 経常収支比率について申しますと、十年前は六九・八でございましたけれども、一七・七ポイント上がりまして、八七・五%という状況になっております。それから、公債費負担比率につきましては、十年前に比べまして五・九ポイント上昇いたしまして、現在一七・二%という水準にございます。また、純粋に地方団体が自分の財源で返すべき指標ということになる起債制限比率でございますけれども、これは十年前に比べまして一・一ポイント上昇の一一・〇%というふうに相なっております。

 地方財政計画策定に当たりましては、地方財政の健全化ということが非常に重要なポイントになりますので、行政経費の徹底した節減合理化を図る、これを基本として積算を行ってまいっておるわけであります。十三年度の例で申し上げますと、職員定数の削減なんかを見込んでおりますし、給与関係経費は、そういったことで二年連続で前年度対比マイナスとなっております。その結果、公債費を除きました地方一般歳出も〇・六%の減と、国の一般会計予算の一般歳出よりもより抑制的なものにいたしたところでございます。

 十四年度の地方財政計画、先般来大臣からもお答え申し上げておりますとおり、国の予算編成方針が明らかでないので、現在確たることは申し上げられませんけれども、地方負担を伴うような国の施策の見直しを図りますと同時に、地方の経費につきましても、定員の計画的削減あるいは全般的な歳出の見直しを図る、それから、特に地方単独事業については一〇%程度の抑制を図る、そのようなことで計画規模の抑制に努めまして、一方で交付税はきちんと確保するわけでありますけれども、そういう手法によりまして、地方財政の健全化に向けて歩を進めてまいりたいと考えているところでございます。

片山国務大臣 今、自治財政局長が答えましたように、地方財政も近年、相当硬直化が進んでいますね。今挙げられた数字が全部上がっているというのは全くそういうことでございまして、そういう意味では弾力性を取り返すということが私も必要だと思いますので、いろいろな歳出を見直して、やはり切り詰めるべきものは切り詰める、見直すべきものは抑えていく、こういうことが必要だと思います。しかし同時に、地方団体はどうしても住民のために、地域のためにやらなきゃいかぬ仕事もありますから、おのずからそこには限度があると私は思いますので、その接点を見ながら来年度の地方財政計画は組み立てていきたい、こういうふうに思っております。

黄川田委員 局長から具体的な数字をいただきまして実態はよくわかったのでありますけれども、地方財政はこの七、八年、財源不足で大変厳しいものがあります。また、過去に発行した地方債の元利償還金、これが増嵩しまして、来年度もまた財源不足が深刻であります。大臣からは意気込みを伺いましたけれども、この地方財政計画、ぜひともきっちりとしたものを組み立てていただきたいと思います。

 それでは、骨太方針では、国の財政健全化の取り組みと歩調を合わせまして、地方財政の健全化の取り組みを進める方針を明らかにしております。単に国の財政支出を抑制する観点から地方に負担を転嫁するのではなくて、国と地方双方の財政収支の改善につながる見直しが必要であります。

 昔炭鉱で栄えた福岡県の赤池町は、全国唯一の財政再建団体に陥っておりましたけれども、十年がかりの自治体や住民の再建努力が実り、予定より二年早く、年内に脱却のめどが立ったと聞いております。住民も町の危機を共有しまして、再建の過程で自治が芽生えたとも言われております。再建は、官と民がその役割分担を見直しながら地域づくりのうねりを広げた結果であると思っております。

 これは一例にすぎませんが、今日、全国でどこでも油断をすれば赤字自治体になるという状況、これは続いていると思います。そこで、政府は各地方公共団体の財政の健全化をどのようにして図るつもりなのか、また、財政再建団体にならないような取り組み策、住民との協力等も含めてどう対処する所存か、副大臣にお尋ねいたします。

遠藤(和)副大臣 地方財政の健全化というのは大変重要な課題でございまして、まずそのためには、入り、収入を健全にふやしていって、歳出を減らしていく努力をしていかなければいけない、これは当然のことでございます。

 そのために、やはり政府としては、国全体の構造改革を進めまして経済の活性化を図っていくということが重要でありますし、それがまた地方の経済の振興にもなる、このように考えております。そして、地方税と地方の一般財源の収入増を図っていくということが基本的な考え方、また、その一方、出を減らすという意味では、国、地方を通じて行政改革をいたしまして、財政の簡素だとか効率化を図って収支のギャップを縮小していく努力をしていかなければいけない、このように思っております。

 それから、個々の自治体の財政の健全化ですけれども、ただいまも赤池町の例がございましたけれども、赤池町がこの十年間大変な御努力を払って財政再建団体から脱皮するということは、本当にその努力に敬意を表したいと思います。例えば、住民の皆さんも協力していただきまして町おこしのイベントを手づくりで住民の皆さんに行っていただいた、あるいは図書館の本を住民の皆さんが寄贈されて充実されたとか、役場の職員の皆さんもみずから例えば道路の補修工事等をされたとか、要するに、住民の皆さんも役場の職員も一体になって、本当に懸命な努力をして財政の健全化に努めてこられたということでございまして、私も大変敬意を表したいと思っています。

 このように、個々の地方公共団体におきましては、いろいろな工夫、独自の工夫というものがある、また自主的、主体的に取り組んでいく、そして行政全般にわたって効率化を図っていくということが大事でございまして、そのためにも、行政の財政状況を公表して住民の皆さんによく理解をしてもらうことが一番大事だと思います。そして、住民とともにみずからの手で町づくりを行っていく、こういう努力もぜひお願いをしたい。また、国といたしましても、前段申し上げましたように、最大の努力をさせていただく、こういうことで頑張っていきたいと思っております。

黄川田委員 副大臣からお話しされたとおり、地方分権の時代、特に情報公開、そしてまた説明責任、さらには政策評価とどんどん変わっておりますので、その必要性、取り組みは大事だと思っております。しかしながら、どうもこの財政再建への特効薬というものがなかなかないようであります。行財政改革を計画どおり着実に実行することが第一なのでありますけれども、実はこれが難しいというのが実態だということもあるようであります。

 次に、地方債に関係してお伺いいたしたいと思います。

 従来、地方債については、公的資金を中心としたいわゆる護送船団方式により資金を確保してきたと認識しております。本年四月より新しい財政投融資制度がスタートいたしまして、これにより郵便貯金や年金積立金の義務預託が廃止されまして、財投機関の施策に必要な資金を市場を通じて調達する仕組みに変わりました。

 この例外として、地方公共団体については、郵貯資金と簡保積立金が直接貸し付ける仕組みが残ったわけでありますけれども、今後の大きな方向性として、地方においても自己責任が一層求められるとともに、地方債の格付も求められることになると思います。しかしながら、地方公共団体の人口規模はさまざまでありまして、小さい市町村においても学校施設や廃棄物処理施設の建設のように、義務的に実施しなければならない事業がありまして、長期で安定した公的資金を確保することもこれまた大変なことであります。

 そこで、今後、財投改革や地方分権が進む中で、町村レベルの小さな自治体がこのような公共施設の建設などを行う場合において、公的資金を確保する必要があるわけでありますが、小規模町村が民間資金を拡大していく際には、地方債の共同発行等の工夫をする必要があるのではないかと私は思っております。将来的な話でありますけれども、総務省の見解をお尋ねいたしたいと思います。

香山政府参考人 御指摘のとおり、小さな町村等にありましては、市場において資金を調達するのに限界がございますし、一方で、住民に不可欠な施設というものは計画的に進める必要がありますから、そのような意味で、一定の公的資金を確保していくということは今後とも必要であろうと思っております。

 現在、私どもの地方債計画のレベルで申しますと、六割ほど公的資金で確保するという形をとっておりますが、一方で、今後、金融環境等が変化していくことも予想されますから、地方団体は地方団体として、民間資金の調達が可能になるようないろいろな手だてを講じていく必要があろうと思っております。

 地方債の市場における人気を高めるためには、基本的には、発行規模を大きくする必要があるとか証券発行にする必要があるとか、いろいろな売り物がありますが、そういう流れの中で、今御指摘がありました共同発行というのも極めて重要な方法でございまして、私ども、その方式の整備などにつきまして、今後とも積極的に検討してまいりたいと考えておるところでございます。

黄川田委員 次に、重複するところもありますけれども、特定郵便局の渡し切り費の問題に移りたいと思います。

 先般、片山大臣は、全国に約一万八千九百カ所設置されている特定郵便局の局長に支給される渡し切り費制度の廃止を、二〇〇三年の予定から一年早めて、二〇〇二年度予算から新しい方式に改めると表明されております。もともと、二〇〇三年の郵政公社化あるいは民営化の際、あわせてこの制度を廃止し、郵政事業の透明性を高めたかったようでありますが、元高祖議員の選挙違反事件や去る十三日の予算委員会で我が党の達増議員が指摘した東北郵政局の不正使用問題等を考えると、当然の措置であると思います。

 東北郵政局の不正利用による上納、裏金づくりに関してはここでは問いませんけれども、郵政の監察制度については本質的な疑問が残るところであります。組織的な選挙違反にかかわるたび重なる不祥事で、郵政の監察機能に対する国民の信頼は完全に失われております。現在の監察制度は、郵政事業庁の中の各地域に郵政局と並列に監察局が置かれておりますけれども、これでは仲間意識が先行し、独自の強い意見が言えるわけがないのではないでしょうか。

 そこで、米国のSEC、証券取引委員会や、FCC、連邦通信委員会並みの強力な独立した権限を持つ、郵政事業全般にわたる新しい監視機関を設置しないことには、このような根深い問題には対処し切れないのではないかと私は思っております。郵政民営化等の問題に先んじて検討されるべき課題であると私は考えますが、いかがでしょうか。また、渡し切り費が再度別な形にすりかえられないよう、来年度予算措置においてどのような形に改正されるのか、あわせてお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 渡し切り費のお話がございましたが、これは、黄川田委員言われましたように、本当は公社のときに、公社になるものですから、渡し切り費を見直して、場合によったら廃止しよう、こう思っておりましたけれども、いろいろ問題があるやの報道もありますので、来年度から渡し切り費というやり方はやめさせていただこう、こういうふうに思っております。

 そこで、今の、郵政監察が機能しているのか、こういうお話でございますけれども、私は機能していると思います。ただ、服務規律的な面での監察はほとんどやっていなかったと思うんですね、業務監察で。だから、今回はやはり、内部のチェック機能強化のためには監察局に頑張ってもらうということが必要なんで、どういうようにしたらいいか、今、公社化とあわせていろいろ検討している段階であります。今の地方ごとにあるものをそのまま残すのか、どういうふうにやるのか、十分検討いたしたい、こう考えております。

 当面の、東北郵政局の渡し切り費につきましては、本省の、郵政事業庁の中にある首席監察官室と東北郵政監察局で合同のチームをつくりまして、そこで中を詳細に調べてもらおう、こういうふうに思っております。

 それから、いずれ公社にした段階では、独立採算は独立採算なんですが、企業会計原則になるものですから、内部監査だけではなくて、外部監査という意味で、外部監査人による監査ということも考えておりまして、今後とも、国民の信頼を損なわないような監察の仕組みを検討いたしたい、こう思っております。

黄川田委員 渡し切り費の予算措置はどんな形になるのかという部分、質問いたします。

片山国務大臣 それで、渡し切り費は会計法にも根拠がありますし、予決令にも根拠があって、私はあれは一つのやり方だと思うんですよ、少人数の官署における簡便な会計処理としては。ただ、そういう制度はやっている人がちゃんとやるという前提ですから、ああいうのはちゃんとやらない人がおると困るんですね。

 だから、今回は思い切ってそれを見直しまして、それにかわるどういう方法があるのか、特定局は少人数官署ですから、透明度を増して、しかし余り複雑でなくて簡易にやれるような方法を今検討してもらっておりまして、これは関係のところとも相談をしなきゃなりませんので、例えば財務省だとか、そういうところを含めて相談をして、来年度までにはもっと透明度の高い、しかし余り複雑でない、そういうしっかりした会計処理の方法を考えたいと思っております。

黄川田委員 監察、監査制度については、私は大臣とちょっと認識が違いまして、地方にあっても、監査委員という制度はあるんですけれども、先ほどお話がありましたとおり、外部監査制度とか取り入れましてどんどん進んでおりますので、やはり監査、監察は第三者機関にしっかりとやってもらう工夫も必要だと思っております。

 それから、特定局長の自由裁量で使えることがこの渡し切り費の不正の温床となると思っております。原則ゼロベースにして必要な額を予算措置するような形に変えなければ、不正を断ち切ることはなかなかできないような気がしております。名ばかりの廃止とならないように経費の透明性を高めていただきたいと思います。

 次に、最近私の地元でも大きな問題になっております介護保険料についてであります。

 御案内のとおり、昨年十月から徴収が開始された介護保険料は、一年間半額に抑えられておりましたが、この十月から本来の全額徴収になりました。最近、厚生労働省の十月一日現在の調査結果によりますと、低所得の六十五歳以上の介護保険料を独自に減免している市町村が全国で三百十市町村に上り、半年前と比較して倍増したことが明らかになりました。従来、厚生労働省は、全額免除や一律減免、一般会計からの財政補てんの三点を避けるよう指導しておりますけれども、この指導原則を守らない百二十二市町村のうち、重複もありますが、全額減免が八十四市町村、一律減免が二十三市町村、そして一般会計補てんが七十四市町村にも及んでおります。

 そこで、地方財政が厳しい昨今、特に高齢者が多い中山間地の市町村は今後財政負担が増加するのではないかと想定されますが、厚生労働省はこの問題にどのように対処していく所存か、まず伺います。

 そしてまた、今後、低所得者に対し、保険料収入から賄い切れず、地方交付税も含めた一般会計から補てんする市町村が増加していくことが予想されます。そこで、今の保険方式を維持していくために、将来保険料のみでどこまで賄い切れると考えておるのか、さらに、税方式を導入するなどして、制度改正を行うことに対してどう考えるか、あわせてお伺いいたしたいと思います。

伍藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、高齢者の多い地域での保険料減免が財政を圧迫するのではないかというお尋ねでございますが、まず最初に、介護保険制度におきましては、地方の高齢者の多い地域、多い町村におきましては、保険料あるいは公費の配分において一定の調整が行われるような仕組みになっておりますから、高齢者が多いということだけで、それがそのまま即財政にはね返るというような仕組みにはなっていないということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、さらに、減免をすることが財政を逼迫させるのではないか、こういうことでございまして、私どもも全く御質問の趣旨と同じような立場で、全額の減免はしないといったようなことを中心にいたしまして三つの原則を立てて市町村にお願いをしてまいったところでございます。御指摘のように、現在三百十の市町村で減免が行われておりますが、私どものこのお願いがだんだん浸透してきたのかと思いますが、この半年間、減免制度を取り入れた市町村の中では八五%の市町村が私どもの趣旨をお酌み取りいただいた形での減免制度の実施ということになっておりますので、今後、こういったことをさらに徹底してお願いしていくということをやっていきたいと思っております。

 それから、二点目のお尋ねでございますが、税方式に切りかえたらどうかというようなお尋ねだと思いますが、現在の仕組みにおきましても、既に御承知のとおり、財源の半分は税金で賄う、公費で賄う、残りの半分を保険料という形になっておりまして、事実上、税と保険料で折半して制度を支えていくという仕組みになっておるわけでございます。これを、保険料を全部税に切りかえるということについては、制度導入時にいろいろ議論をされたわけでございますが、今後、介護のニーズあるいはこれに伴う費用の負担というのはどんどんふえていくということが想定されますので、こういったことについて費用負担をお願いしていく上では、使途が明確といいますか、給付と負担の関係が明確な保険料というものをある程度組み入れて制度を運営していくことが適当ではないかというふうに私ども考えておりますし、そういった立場で今後も制度を運営していきたいと思っております。

 どこまで保険料で負担が可能かということにつきましては、これは社会保障費全体の負担でありますとか税を含めた国民負担全体の中で考える必要がございますから、今の二千九百円の水準がどこまで引き上げられるのが可能かということについては一概にはお答えできませんが、さまざまな効率化の施策を講じながら制度の運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

黄川田委員 改めて、我が党は、基礎的年金、高齢者医療、そして介護に関しては消費税ですべて賄うという政策を提言しておりますことをここでお話しさせていただきたいと思っております。

 残り時間が少なくなりましたので、通告、あと二点ありますけれども、文部科学省の方は、また来週質疑の時間があるようですので、そちらに回したいと思います。

 最後の質問は、電気通信分野の話題であります。

 ADSLの実現に際しまして、NTT東西は当初消極的でありましたけれども、ベンチャー企業が政府や旧郵政省の後押しによりサービスを開始すると、一変しまして積極的に市場に介入をし、後発にもかかわらず数カ月で過半数のシェアを獲得いたしました。ADSL市場は、昨年末に開始されてから、約一年後の本年十月末で約九十万回線を超えております。また、e―Japan基本計画では、二〇〇五年までにADSL及びCATVインターネットで三千万世帯の加入を目標にしており、これから爆発的に成長する市場であることは疑問の余地はありません。

 NTT東西は、マイライン市場においても、市内電話では九月末までに登録したユーザーの七〇%以上のシェアを獲得しておりまして、巨大な支配力を有しております。今回、マイラインプラスの申込者に対してフレッツADSLの名称で料金を一〇%割り引くセット割引は、マイライン市場における市場支配力をADSL市場に持ち込むものであります。すなわち、成熟期の電話市場での支配力をもって、今後成長する市場の支配を意図するものでありまして、公正競争上看過できない行為であると私は思っております。

 消費者から見れば、どのようなサービスが提供されようが、価格が安くなることは歓迎すべきであるとの意見もありますけれども、それによりNTTの支配力が高まることは結果的に消費者に影響を与えることになるのではないでしょうか。アメリカでDSLベンチャーが経営破綻した後にADSLの料金が上がったこと、そしてまた、日本でもADSLベンチャーが強引にサービスを開始するまではNTTがインターネットの低価格化、高速化に消極的であったことからも、市場が独占状態になった場合、消費者へマイナスの影響を与えることは明白であります。

 そこで、総務省は事前規制から事後規制への転換を唱道しており、今回のケースは総務省が事後規制というスキームによりまして競争促進を図れるかどうかの礎になると私は思っております。これは禁止されていることでありますが、単にNTTの電話とADSLとの内部相互補助の有無といった視点のみではなくて、長期的に競争や市場を育成していくという観点から、適正に裁定できるのかどうか、小坂副大臣の見解を求めたいと思います。

小坂副大臣 委員御指摘のように、電気通信市場におきます利用者の利便の促進と公平な、公正な競争促進ということは、私ども常に心がけているところでございまして、十分に注視をしなければならないことだと認識をいたしております。

 この中におきまして、今までも私どもは、接続ルールの導入、それから料金の届け出制への移行など、さまざまな環境整備を図ってまいりました。特に、料金についての事前届け出制でございますけれども、事業者が競争の進展状況や高度化、多様化する利用者ニーズに機動的に対応できるように届け出制というものを導入したわけでございます。しかし、届け出料金が他の事業者との間に不当な競争を引き起こして利用者の利便を阻害するという結果になるようなことを避けるために、事後的に料金変更命令を課すことによって、料金の適正さを確保するようにしているところでございます。

 この点におきまして、もう既に、過去に料金変更命令を出した事例もございました。例えば第一種通信事業者によります第二種通信事業者向けの電話料金が、大口一般利用者向けの料金よりも割引率が少ないという、逆ざやになっているようなものがございましたときに、平成十二年九月のときでございましたけれども、意見申し出がありまして、これに対し変更命令を同じ十二年の十二月に出したような事例もあるところでございます。

 このように、今回の御指摘のマイラインの登録とADSL料金のセット割引につきましては、十一月の五日にイー・アクセス社ほか四社から事業法に基づく意見申し出がございました。現在、御指摘がありましたような独占的分野からの競争分野への内部相互補助、これが行われているかどうか、またもう一点は、競争事業者を排除または弱体化させるために適正なコストを著しく下回るような料金設定をしていないかどうか、こういった点について、市場の健全な発展や公正な競争を阻害するものでないかについて、関係者のヒアリングをする等、必要な調査を行っているところでございます。

 私どもの基本的な姿勢といたしましては、こういった相互補助とか内部補助、あるいはコストを下回る料金設定等、従来同様、公正、適正な設定が行われているかどうか、これは事前、事後にかかわらず同じ基準でしっかり判断をしてまいりたい、このように思っているところでございまして、御指摘のような点も踏まえながら、なお一層、公平、公正な市場環境の整備に努めてまいりたいと存じます。

黄川田委員 時間でありますので、終わります。ありがとうございました。

渡海委員長代理 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章です。きょうは、NTTのリストラ問題について伺っていきたいと思います。

 総務大臣の見解をお聞きする前に、労働法制上のことについて、厚生労働省にまず確認をしておきたいと思います。

 マスコミでは、NTTのこのリストラについて、転籍というふうに報道しております。NTT労組合理化案承認、十一万人が転籍だとかいう表現とか、転籍十一万人と賃下げ承認等々、マスコミではこのNTTリストラについて転籍というふうに報道しておりますが、一般論として、転籍というものはどういうものか、まず御説明をいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 今、転籍というものはどういうものであるかという御質問がございましたが、一般に転籍とは、労働者が在籍していた企業との間の雇用関係を終了させ、新たに別な企業との間に雇用関係を生ぜしめるもの、そういうふうに理解をしております。

春名委員 今の、私もそのとおりだと思いまして、「労働法」という、労働法制の大家の菅野さんがお書きになった本の中でも、今おっしゃったように出てまいります。「「転籍」とは、労働者が自己の雇用先の企業から他の企業へ籍を移して当該他企業の業務に従事することをいう。」「転籍は、現に存在する甲企業との労働契約関係を終了させて新たに乙企業との間に労働契約関係を成立させる人事異動である。」今、御説明いただいたとおりであろうと思います。

 それでは、転籍について、労働協約や就業規則上にその定義や規定がある場合は、これは当然守られなければならないということだと思うんですが、これも一般論なんですが、引き続きお答えください。

鈴木政府参考人 労働協約、就業規則、そういったものについて、労働条件の問題についていろいろ規定がある場合には、それを守るということが基本であると考えております。

春名委員 そこで、今回のNTTのアウトソーシングなんですが、大臣もよく御存じのとおりなんですけれども、企画とか戦略とかサービス開発とかいうのは本体に残して、そして、注文受付とか設備オペレーションとかSOHO販売、それから既存の子会社の故障、修理等々は、すべて地域単位のアウトソーシング会社に切り出していくというんですか、アウトソーシングするということになって、それに伴って労働者が転籍をしていくということになるわけであります。

 ですから、今のお話のとおりの転籍そのものであって、それについて労働協約がある場合は当然守らなければならないというのは、これも理の当然なんですが、改めて確認しておきたいと思います。

 大臣、いきますか。

片山国務大臣 労働法規の関係は、私の方じゃなくて、厚生労働省か何かに聞いていただけばいいんですが、今回のNTT東西は、私もその決算の状況を聞いてびっくりしたんですけれども、相当に悪くなっていますね。これは、世界的にというか、我が国の中でも競争が大変激化しているというんでしょうか、料金の引き下げ競争になっていますし、マイラインなんというのは大変便利になりましたけれども、あれは、きょうの新聞にもありましたように、勝者なしですよ、NTT東西のシェアが確かに高いけれども。だから、そういうことのあれで、こういうことをNTTがお考えになったんだろうと思います。

 労働協約は向こうに聞いてください。

鈴木政府参考人 先ほどと同じ答えで恐縮ですが、一般論として言えば、労働協約、就業規則等でそういった労働条件についての規定がある場合に、それを守るということは基本であるというふうに考えております。

春名委員 大臣、私NTTの組合と会社が結んだ協約をちょっとここに持ってきているんですが、確かにあるんですよ、転籍についての。ですから、今回の転籍についても労働協約が守られなければならないというのは、これは当然のことだと私は思うのです。

 大臣、これは労働法制上の基本問題というか、それはだれでも答えられることですので、大臣、そういうことでいいでしょうか。

片山国務大臣 それは、労使がそれで合意しているものが労働協約ですから、これは守られるべきことが前提だと思います。

春名委員 それで、今回の場合は、転籍だということで、守られるべきものだということで、今、当然の答弁をいただいたと思うのです。

 最近、この転籍を本人同意なしで済ませることができるという産業界が待ち望んだ法律が制定されました。会社分割に伴う労働契約承継法という法律でございます。この法律は、アウトソーシングなどをするときに、この法律に従って計画を提出すれば、そのアウトソーシングする業務に携わっている労働者の同意なしに転籍を可能とするという法律だと私は理解しておりますが、これでよろしいでしょうか。

鈴木政府参考人 会社分割に当たっての労働契約の承継の問題というふうに理解しておりますが、会社分割に当たって労働契約の承継の問題が生じる場合、新たに分割される会社でその業務を主として行っている者、その人については新たに分割される事業に労働契約が承継されるというような法律の規定になっております。

春名委員 つまり、新たにアウトソーシングする業務に転籍を可能にする法律だということが、今御答弁でありました。

 だから、考えてみたら、さっき私、この表で言ったんですけれども、外注化するじゃないですか。そしてそこに労働者を転籍するじゃないですか。そうすると、NTTのためのような法律がこれなんですよ、今回の事態のようなやり方について。会社分割に伴う労働契約承継法。ところが、NTTはこの法律を利用されていないわけなんです。

 そこで、これも一般論で、原則論をお聞きしたいと思うのですが、この法律に基づいて労働者を転籍させるときに、労働条件はどういう扱いになるのか。そのまま引き継ぐということを、先ほどもそのニュアンスのことを言われましたが、改めてこの点を確認しておきたいと思います。

鈴木政府参考人 労働契約が、そういった方についてはそのまま承継されるということでございます。

春名委員 お話があったとおり、労働条件、労働契約をそのまま引き継いでいく、そういう法律であります。

 つまり、この法律を使うと労働条件を切り下げることができないんですね。できないんですよ。だから、アウトソーシングをするための法律があるにもかかわらず、NTTはこれをあえて利用しない。それは一体なぜか。今回のNTTのアウトソーシングというのは、アウトソーシングすること自身、それ自身が目的じゃなくて、労働条件を切り下げるということが目的だからです。そこが問題なんです。

 確かに、今回のアウトソーシングは、行くとすれば賃金三〇%カットですよね。大変なことであります。労働契約承継法を使えば、三〇%カットなんという法律違反はできない。だから、そんなやり方をやめて、あえてこれを適用せず、アウトソーシングすると見せかけながら、それを目的にするんじゃなくて、賃金を引き下げていく。こういうやり方をとっているということが問題なんです。今、これが大問題になっているんですね。

 総務大臣、ちょっとこの点でお聞きしたいと思うんですね。このような労働条件の切り下げを、当たり前の質問なんですが、労働者みずからが喜んでといいますか、迎える、そういう気にはならないと僕は思うんですけれども、この点、どう考えられますか。

片山国務大臣 NTT東西も生き残らなきゃいけませんよね、この激烈な企業間競争の中で。私は、いろいろなお考えがあってやったと思いますが、基本的には勤務条件は労使が協議をして決めるものですよ。だから、あなたが言うような考えが労働組合側にあれば、それは大いに使用者側と議論して、そこで合意できる道を探っていけばいいと私は思います。

春名委員 生き残るためなら何をやってもいい、脱法してもいいというふうにはならないんですね。生き残ることは大事でしょう。しかし、だからといって脱法的な行為をすることは許されないわけです。そのことをはっきりしておかぬとだめだと思うんですね。法の番人として、政府が責任を持ってこの点は明確にしておいてほしいと思うんです。

 それで、労使の同意という話が今出されました。私、この間、いろいろなところのNTTの労働者の人にお会いしてきたんですよ、これが出されてから。この計画で大変心配が広がっているんです、もうそれは大臣もお耳に入っているかと思うんですけれども。例えば、五十歳になったらその瞬間に、五十一歳から賃金が三割カットされていくという仕組みになるわけでしょう。五十歳といったら、一番大事な、一家の大黒柱の年代ですよね。

 例えば、この人は愛媛の人ですけれども、こう言っていますね。私の家族は五人です。長男は高校三年、長女は高校一年、次女は中学一年です。次女には夢があり、それを実現するために、大学へ行くとなると、あと十年間子供の教育に二千万、三千万のお金がかかります。その上、月四万の住宅ローンの返済もあります。先日生命保険を解約し、貯金をすべてつぎ込んでボーナス払いの住宅ローンを返済したので、貯金ゼロ。この状態で二割から三割の賃金カットになると……怒りでいっぱいです。こういう、心配です、不安です、将来への不安です。そういう声が、この計画が出されて具体化されていく中で、もうずっと広がってきているというのが今の姿なんですね。

 そこで、大臣が今おっしゃった、労使の間で同意をされて進めているからということでありました。私、この点も、お話を聞いてもらいたいと思いますし、労働法制上どういう見解かも聞きたいんです。

 同意と言うからには、やはり対等、平等に、自由な選択の意思に基づいて同意をされていく、そういう環境の中でやられていくというのは当然だと思うんですが、これは、例えばということなんですが、転籍しないと仕事がなくなる、つまり、転籍しなかった労働者を隔離の部屋に入れてしまうとか、こういうことが問題になりましたけれども、そして仕事を奪ってしまう。あるいは、転籍しないと配転をして、事実上仕事をなくす。例えば、転籍しなかった人を次々と配転をして、東京に勤務していた人を北海道とか、大阪に勤めていた人を沖縄とか、こうして、転籍しなかった人が事実上、そんなことはのめないから、退職に追い込まれてしまうというような事態、こういう場合は到底同意とは言えないんじゃないかと私は思うんですね。

 もし転籍しなかった労働者がこのような扱いを受けた場合には、この転籍は到底同意などと呼ばれる代物ではなかったというふうに言わざるを得ないと思うんです。これも労働上の基本的な認識の問題ですが、こういうことをもしちらつかせて転籍を迫れば、これは同意とは言えず、ある意味、脅迫ということにもなりかねないので、こんな事態、これは私が想定している事態なわけですが、こういうことは許されないと思うのですね、同意と言う以上。その点をきちっと明確にしておいてほしいんです。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木政府参考人 転籍に当たりましては、判例では、労働者の承諾が必要というような考え方が示されております。個別具体的な問題にはこの場でお答えすべきではないと思いますが、いずれにしても、承諾というものが本人の意思によって選択されるということは必要であると思っております。

春名委員 承諾が必要というのは当然だろうと思います。

 昨年の二月の二十一日に、神奈川の労働基準局が、社員の意思に反して出向先の子会社に執拗に三回、四回と転籍を迫って、これはNKKの例ですが、私はNKKのままで定年を迎えたいので転籍したくないということを言って頑張られたある労働者がいらっしゃる、そのことに対して、繰り返し転籍するように勧めたことを、これは行き過ぎである、違法であるという指導を、昨年二月の二十一日に神奈川の労基局が出しています。勧奨に許容される限度を超えるということを言っている。これは、私は非常に大事な指摘だというふうに思いました。

 ところで、NTTの場合、総務大臣、承諾ということ、納得に基づく承諾が一番大事だということで、この点、今確認したんですけれども、例えば、本体にそのまま残って仕事をしたいという人がいるじゃないですか。そうしたら、そのまま残ろうと思ったら、外注化されているので、そのまま同じ仕事をしようと思ってもできないという制度設計になっちゃったんですね。それはわかるでしょう。それから、そのまま本体に残っちゃったら広域配転になっちゃうんですね、物すごい。それも、もう御存じのとおり、大変なところへ飛ばされていくということを条件にさせられる。五十歳以上といえば、やはり家族を持って一生懸命頑張っている世代ですからね。そういうことになる。

 それから、では、もう同じ仕事をしたいというふうに選択したら、大臣、これは外注会社に行くことになりますので、賃金三割カットをのむということが事実上条件になる。どっちに行っても地獄みたいな話なんで、こういうときに、同意をとりましたというふうに言っても、これは本当に対等な関係で同意をしたというふうに言えるのかという問題が、今大変大きな問題になっているんだと思うんですよ。

 総務大臣もそういうお話は耳に挟んでいらっしゃると思うし、本当に対等な関係で同意をする、自由な選択ができるということを考えると、これで本当にいいのかということ、見識ある御見解を聞いておきたいと思うんです。

片山国務大臣 今あなたが言われることには余り見識がないんですけれども、それはないんだけれども、個別具体の、どういう態様、事情かというのは、聞いてみないとわからないと思いますよ。しかし、承諾が必要だということは、これはしっかりしておりますから、本人がどういう対応をするかですよね、会社側からどう言われるかということはありますけれども。

 春名委員、相当想像をたくましくされていろいろなケースをお考えになって、あなたの言われていることはわかるけれども、しかし、基本的には、何度も言いますけれども、労と使が十分話し合って結論を出すことだと私は思っておりますし、NTTがそんな無理なことばかり言っているんではないと私は思います。

春名委員 それでは、大臣、見識を示していただいたんですが、ついでにもう一つ見識を示しておいていただきたいんです。

 先ほど言ったような選択を、率直に言ってやらなければいけないという状態に置かれているわけですね。もうこれは事実の問題です。ですから、それが労働者にとって、括弧つきでいいですけれども、脅迫というようなとらえられ方がされるような事実上の同意というような、そんなやり方は、私は、先ほどの説明にあったとおり、慎まなければならないと思うんですね。これはもう共通認識だと思うんですよ。事情がどうなっているかは聞いてみないとわからないともおっしゃいましたので、そういう良識を発揮して、そんなことはないでしょうかというあたりは、指導されている、所管されている大臣としてよくお聞きになって、適切な指導をしていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

片山国務大臣 余り私の方が、それは関係官庁というか監督官庁であることは事実ですけれども、個別にあなたの方の承諾はどうですかなんということは、なかなかそれは、NTTさんの方の判断でやっていただくべきことだと思いますし、承諾というのは本人の自由な意思で対応することなんですよ。だから、私はその点だけは言っておきますけれども、そのことでNTTに注文を出すとか指導するとかということにはなかなかなりませんので、御理解を賜りたい。

春名委員 今言ったことが大事なんですね。本人の自由な選択の意思が尊重されるような環境が大事だということが問題だと思うんですね。その点はぜひ頼むよということを言っていただくということを言われたので、良識を発揮していただいたと私は思っております。その点、ぜひ大臣、よろしく。

 それで、これは本当に大きな問題になっています。実態は、先ほど私が申し上げたように、労働条件の不利益の変更に今はなっているわけなんですね。労働条件の不利益変更は、最近の最高裁の判決でも非常に厳しく、一方的にやるということは断罪されています。

 みちのく銀行裁判というのがございます。昨年の九月七日にこの裁判の判決が出ています。これは、厚生労働省に確認したいのですけれども、五十五歳になった際に賃金水準を五十四歳当時の四〇%から五〇%程度に引き下げるという労働条件の一方的切り下げを違法として断罪した、大変有名な最高裁の判決でございます。そこで私が注目したのは二点ありまして、一点は、その切り下げを多数が所属されていらっしゃる労働組合が合意しているにもかかわらず、それからもう一つは、そうした高齢者の賃下げが会社経営上の合理性は一定あると認めていたにもかかわらず、しかし、そうであっても、そのような労働条件の一方的切り下げは許されないのだというのがこの最高裁判決の中身だと私は認識しております。厚生労働省に、念のために確認をしておきます。

鈴木政府参考人 今御指摘のみちのく銀行事件の判決でございますが、これは、御指摘のように、新たな就業規則の作成または変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないとしておりますが、一方で、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則、そういったものの性質から、当該規則条項が合理的なものである限り、その個別の労働者において、これに同意しないことを理由として適用を拒むことは許されないというふうにも言っております。

 その場合の合理性なんですが、その合理性の有無については何点か言っておりまして、主要な点だけ申し上げますと、就業規則の変更によって労働者がこうむる不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容、程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代替措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、そのほかにもありますが、そういったこと等を総合的に考慮して判断すべきものというふうに判決では言っております。

春名委員 いろいろ枝葉をつけていただいたのですが、私がこの判決の中で特徴だというのを二点言っているわけなんです。それは判決文にもありますのでもう読み上げませんけれども、今度の四割、五割の賃金カットというのは多数の方が入っておられる労働組合も合意をしていた、それと同時に、経営上、一定合理的な理由もある、だけれども、それでも一方的な労働条件を不利益にしていくというやり方はやってはならないんだという中身をこれは出しているものなんですね。そのことは慎重に言わなかったのかどうかわかりませんけれども、そういう性格の中身のものでもあるということははっきりしていると思います。

 それで、これをしなければ会社が倒産するなどという場合以外には、大幅な賃金カットなどの労働条件の一方的な不利益変更は許されないというのが労働上のルールになっているということです。そこが大事なところだと私は思います。

 塩川財務大臣は大変おもしろいことを言われる方で、十一月の十三日に衆議院の予算委員会で、今回のNTTのリストラについてこう言っておられます。NTTがああした大量の十万人リストラをやりましたのでびっくりしました、そして聞いてみますと、結局のところはリストラじゃない、要するに賃金の変更をしたいために人を動かす、こういうことをやっていますのでねと発言されているんですね。現職の大臣がこういう脱法的なことを人ごとのように言うことはどうかと思いますが、しかし、言い得て妙の発言だと私は思いましたね。

 つまり、こういう最高裁判例がある、正面から賃下げを、三割カットしたらこの最高裁判決を正面からじゅうりんすることになってしまう、だからそこで人を動かす方にした。世の中ではこういうのを脱法というふうに言うんだと私は思うんですね。賃金を下げるという一方的労働条件の切り下げを最高裁の判例にひっかからないようにするために人を動かす、つまり、一たん退職し再雇用する、こういうやり方をとられてやっていく。私は、本当にこんなことでいいのかと思うわけなんです。

 大臣の答弁は何となく予想できるんですが、労使が合意しているからという言われ方をされるのかと思いますけれども、ただ、私が今言ったように、最高裁の判決というのはそういう到達点なんですね。これはもう共通認識だと思うんですよ。

 それで、電気通信という公共性を持っているこの会社、政府が株の四六%を握っている最大株主であるこのNTT、一民間企業と違うんですね。一民間企業ではないこの企業が、こういう事実上のというか、脱法的な行為をされていくというのは、社会的影響は大きいと思うんですよ。こういう認識を持って総務大臣は事に当たる、これを見過ごすことはできないという断固とした立場に立っていただきたい、私はこう思っております。大臣の御見解をお聞きします。

片山国務大臣 委員は、脱法、脱法と言われますけれども、それはちょっと言い過ぎじゃないかと私は思いますよ。

 何度同じことを言っても、委員の方も御想定になっているようでございますけれども、労働条件の問題は基本的には労使自決なんですね。これは古今東西を通じる大原則です。だから、私は、何度も言いますように、使用者側と労働者側と、たとえ電気通信事業であっても十分話し合って折り合いがつく、妥結ができる合意に達してもらいたい、こう思っておるわけであります。

春名委員 基本的には労使の問題だということをおっしゃったのですが、それはその限りで事実の問題なんですが、ただ、さっき私が言ったように、一民間企業と違うんだというのは、特別の総務省の責任、重みがあると私は思っていまして、もう時間もありませんので最後の質問になると思うんですけれども、率直に言って、総務省自身がこのリストラ計画はNTTに提案をして実行させてきたという側面があると思うんですよ。

 二〇〇〇年の十二月二十一日の電気通信審議会の答申は、特別に「NTTの在り方」という項目を立てています。この「NTTの在り方」というところで何を言っているかというと、その中で「東・西NTTの在り方」という項を起こしまして、その一番最初が「高コスト構造の解消」、東西NTTは、中高年が高い比重を占めている社員構成、NTTグループ内他社、他事業者に比べて低い一人当たりの売上高等のような問題が存在していて、高コスト構造解消のための改革が急務であると。そして、丁寧に「東・西NTTの年齢別従業員数」なる図表まで掲載をしております。そして、事業者間の接続料金の引き下げなどの市場環境の変化を指摘した後に、したがって、東西NTTが新たな経営環境を踏まえた中期経営改善施策改訂に早急に取り組むことが期待されるというふうにしております。

 そして、わざわざ、その答申を参考として添付をした自主計画の作成をこの五月にNTTに要請しているわけですね。そして出てきたのが、十月二十五日のNTTの自主的な計画というものであります。この自主的な計画の中に、「NTTグループの構造改革の推進」という項目がございまして、十万人程度をアウトソーシング会社へ移行すること、五十一歳以上の移行社員は、NTTを退職し、一五%から三〇%減の賃金水準でアウトソーシング会社で再雇用する仕組みを導入すると明記をしております。つまり、答申、そして総務省のその要請に対する、ある意味では満額回答が今の事態ということなんですね、これは。事の経過から見ればはっきりするわけなんです。これは一民間企業で労使の問題というふうに片づけられない問題なんです。

 そして、十月の二十六日、NTTが出してきた次の日に、「「構造改革措置」については、」「経営の効率化・合理化という所期の目的が真に達成されることとなるように努められたい。」というふうに留意すべき事項を示してNTTを督促しておられます、皆さんは。そして、進捗状況を実施後一年をめどに報告までしなさい、ここまで言っています。

 一民間企業の話じゃないんですよ。あなた方がこういう、私に言わせたら脱法的なやり方を、そしてこういう十万人のリストラというようなやり方をやっているわけなんですね。

御法川委員長 春名君、時間になりましたから、早く結論を出してください。

春名委員 その点を自覚しないと私はいかぬと思うんですよ。だから、一労使の関係じゃない。その点、もう一回御答弁いただきたいと思います。

片山国務大臣 我々が経営の効率化を求めるというのは当然ですよ。

 今、日本じゅうが、公も私もみんな経営の効率化をやっているんですよ。だから、よいものを安く、NTTにそういうサービスを提供してもらうというのは当たり前のことで、ただ、我々が労働条件に介入しようとか口を出すなんて全く考えておりませんので、誤解のないようによろしくお願いします。

春名委員 だからといって脱法的な行為はできないということは明確にしておきたいと思います。

御法川委員長 いやいや、許可しておりません。発言を許可しておりません。時間でありますから。

春名委員 以上で質問を終わりたいと思います。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党を代表しまして、自治体における雇用問題を中心にして、厚生労働省及び総務大臣に質問をいたします。

 五・三%、かつてない高い失業率に対して、雇用対策と銘打った補正予算が承認をされたわけであります。種々雇用対策は述べられておりますけれども、何といっても中心は三千五百億円の緊急地域雇用創出特別交付金にあると考えます。

 そこで、まずお伺いいたしますが、この交付金は、地方財政法に規定をする国庫負担金、支出金、補助金、交付金のうち、どれに該当するんでしょうか。交付金と名づけられておりますが、奨励補助金にすぎないのではないかという私の思いもありますが、厚生労働省の見解をお伺いいたします。

青木政府参考人 この交付金でございますが、地方財政法上は補助金に該当すると理解しております。

重野委員 補助金ですね。

 そこで、補助金適正化法との関係についてお伺いいたします。聞きますと、都道府県における基金の造成及び雇用創出効果の高い事業の二点をもって補助金適正化法の適用対象としたというふうに承知をしているんですが、一体この補助金、これが、適正化法で縛るだけの法律上の実質的効果は何か。さしたる実質的効果があるとは思えないんですが、厚生労働省はどのようにお考えか、お伺いいたします。

青木政府参考人 緊急地域雇用創出特別交付金は、都道府県への交付額を財源に都道府県が基金を造成し、地方公共団体が緊急かつ臨時的な雇用を創出する事業を実施するものでございます。これは先生の御承知のとおりであります。

 厚生労働省といたしましては、厳しい雇用失業情勢を踏まえ、地方公共団体に雇用創出効果が高い事業を的確に企画、実施していただくため、失業者の雇い入れ割合等について一定割合以上とすること、事業計画とその実績を国に提出し、さらに公表することなどの要件を設けることといたしております。本交付金は、地方公共団体が創意工夫に基づいてさまざまな事業を企画、実施するものでございますが、事業実施の適正を確保するために補助金適正化法の対象とするものでございます。

重野委員 この緊急地域雇用創出特別交付金について厚生労働省が出しております資料を見ますと、奨励事業を幾つか提示しております。これはどういう性格のものなのかということが一つです、その例示をしているということですね。

 それから、補正予算による説明では、各地域の実情に応じて地方公共団体の創意工夫に基づきというふうに書いておられます。この金を雇用創出のためにどのように使うかは全く自治体の自由というふうに私は受けとめますが、それについての確認をしたいと思いますが、いかがでしょう。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急地域雇用創出特別交付金による事業につきましては、先生ただいまお述べになりましたように、地域の実情に合って地域のためになり、かつそこに新しい職場がつくられるということを前提にしております。

 そこで、今まで事業実施の例もございますし、この事業の検討段階で整理をいたしましたとおり、教育、文化であるとか環境問題であるとか、あるいは治安、防災、福祉、保育といった部分について、いわば推奨事例としてお示しはしておりますが、実際の事業実施は自治体の創意工夫にお願いをすることにいたしております。

重野委員 この例示が自治体を縛るものではない、あくまでも例示であって、その自治体が創意工夫を凝らして雇用を創出するためにいろいろな事業をやるということについて、それを縛るものではないというふうに理解していいですね。

青木政府参考人 そのとおりでございます。

重野委員 ところで、この交付金に基づく雇用創出事業は地方分権一括法に基づく自治事務と考えますが、これについてまず確認をしたい。

 それからまた、事業の実施に当たる都道府県の主務課はどこになるんでしょうか。私の県に例えれば雇用能力開発課などという課がございますけれども、そういうところになるのかなというふうな想像をいたしますが、そこら辺についてお聞かせください。

青木政府参考人 ただいまのお話のように、この事務の性格は自治事務というふうに理解をいたしております。

 また、具体的に都道府県のどういったセクションで仕事をしていただいておるかということでございますが、これは自治体のどのセクションでやっていただいてもいいのですが、現実問題といたしましては、各都道府県庁にございます労働主管部局に御担当いただいているところでございます。

重野委員 都道府県における雇用対策の重要性というのは、今日の状況に限らず、非常にふえていくだろうということは十分想定できたことであります。にもかかわらず、職業安定事務について中央の直接執行事務というふうについ最近変更したんですね、それは当時の労働省の、国の方針でそういうふうにしたわけでありますが。そうした経緯があるにもかかわらず、今回、こうした事務を都道府県の自治事務として、それを行うのはそれぞれ県にある課というふうに今答弁をされたんですが、これはちょっと私に言わせれば御都合主義もいいところだなと。こうした事務を都道府県にお願いするのであれば、お願いという言葉が適切かどうかわかりませんが、せめて法定受託事務に変えたらどうか、このように私は思うんですが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 雇用対策における都道府県と国との事務分担と申しますか、そういったことにかかわるお尋ねというふうに理解をいたしておりますが、地方分権推進計画、これが取りまとめられる際に、公共職業安定所が行う事務とそれからそれ以外の事務に分けまして、公共職業安定所の指揮監督に関してはそれまで都道府県に置かれておりました地方事務官が担当する部分は国の直轄事務とする、しかし、それ以外に、例えば中小企業の雇用管理改善計画、あるいはUターンのための企業、生活情報の提供、あるいは企業誘致、創業支援に伴う雇用創出、こういった仕事は都道府県において実施していただくことが適当ということで、事務分担が現在のようになったというふうに承知しております。

重野委員 それでは、視点を変えて違った内容について質問いたしますが、二〇〇〇年度の緊急地域雇用特別交付金の場合には、一部求人倍率によって補正をしながらも人口と求職者数で配分した、これが二〇〇〇年度の交付金の交付の仕方ですね。今回はかなり複雑になりまして、各県の労働力人口、求職者数、非第三次産業従事者割合、完全失業率、かなり配分基準を変えておられる。配分基準変更の積極的根拠は何なんだろう、これが一つ。

 また、こうした配分基準では、例えば沖縄の場合を例にとりますと、二〇〇〇年度における配分額は約二十六億円でした。今回交付金総額が約一・七五倍になっておりますから、配分額も同率でふえるのかなというふうに我々は素人考えで思うのでありますが、どうもそうはならない。前回の場合、配分額の最大県と最小県、最も多く配分を受けた県と最も少ない県が大体二十対一ですね。今回、この配分割合は縮小するのか拡大するのか。また、失業率の高い東北、近畿、私が住んでおります九州、こういうところは大体どの程度の位置を占めるんだろう、このように思うんですが、具体的説明をお願いいたします。

青木政府参考人 交付金の各自治体への配分の問題でございます。

 先生お述べになりましたように、現行の交付金は、労働力人口それから求職者数、これをウエートといたしまして各自治体にお願いをいたしました。それぞれの比率というのは、その結果でございます。

 そこで、今度の交付金につきましては、その二つの指標に加えまして、非第三次産業従業者割合及び完全失業率の指標を加える方向で現在検討をいたしております。この非第三次産業従業者割合と申しますと、産業の高度化が進んでいない、製造業とかそういったもののウエートがかなり高いところというのは、これから構造改革の中で失業者の方々が出てくる心配がある部分がございます。それから、現実の完全失業率につきましては、これは昨年の国勢調査で、実は通常はとることができません各都道府県別の失業率を私ども入手いたしておりました。こういったことで、構造改革が進んでいない地域や失業者の割合が高い地域の実情をできるだけ反映させた形で配分をいたしたいということで考えておるところでございます。

重野委員 後段の部分の答弁が抜けていますが。

青木政府参考人 したがいまして、ただいま、きょう午前中に補正予算の決定をいただきましたので、今申した方向で具体的な作業を詰めて御相談をしてまいりたいと思いますが、この最大、最小がどうなるかということにつきましては、結果の数字でありますけれども、こういったことを加味すると少し縮小してくるのではなかろうか。人口が少ないとか、あるいはその反映で求職者が少なかったということだけで反映されたところに、実はそこが非常に失業率が高いとか産業の高度化が進んでいないということになりますと、それは今度プラスのウエートになりますので、そういった意味では格差は少し縮小するのではないかというふうに考えております。いずれにしても、それは結果のことでございます。

重野委員 一番最後に聞きました、東北、近畿、九州、こういうところは失業率が高い、このように認識していますが、今言うように、この制度をやった場合に、そういう部分はその実勢が反映されたものになるというふうに理解していいんですか。

青木政府参考人 ただいま申し上げた意味では、現在行われている交付金よりもよりきめ細かな実態を反映したものになるというふうに考えております。

重野委員 二〇〇〇年度の緊急地域雇用特別交付金、これは二千億円でした。雇用創出効果は三十万人とされていました。この事業は今年度をもって終わるわけでありますが、この事業の実際の事業総額はいかほどになったのか、また、二年間の新規雇用者数は実数で約二十一万五千人、今年度見込み数は九万人、こういうふうに聞いておりますが、それは間違いないんでしょうか。確認をしたいと思います。

青木政府参考人 交付金の事業総額でございますけれども、トータル二千億円でございまして、平成十二年度末までには約千三百四十億円の事業費が執行をいただきまして、これは、先生御案内のように、約二十二万人の雇用就業機会が創出されておりますが、さらに、今年度末までこれを一生懸命実施いたしておりますので、三十万人程度の雇用を創出するという目標は達成できるのではないかと思っております。

重野委員 国が二千億円、そうすると、私が聞いた実際の事業総額、それもやはり二千億円ということなんでしょうか。

青木政府参考人 この事業そのものは、先生御案内のように、いわゆる十分の十、全額国から交付をするという形になっておりまして、こういった事業をきっかけに、各都道府県においてさらにそれを広げるような、あるいはレベルを上げるような活動をされておるかどうか、そういったことについては私ども承知をしておりません。

重野委員 できたら、国が政策を打ち出すと、そのことが、地方自治体も国の政策にさらに肉づけをして自治体なりの新たな政策というものを提起していくというふうなことがあると思うんですね。その辺について、実態は一体どういうふうになっているのかということは、私は一度きちっと調査する必要があるのではないかと。お願いしておきます。

 次に、雇用はそういうふうな形でほぼ当初の目的を達成したということになっています。ただ、この政策は雇用期間六カ月、今回の場合は更新が一度あるんですが、期間更新はなしとなっていることから、雇用対策として、果たして文字どおりその数字がその後継続していっているとはならぬわけですね。したがって、そういうのが間違いなくそのとおりに新たな雇用を生んで定着したというのであれば、今日のような状態は惹起されるはずがないんですね。問題は、契約期間終了後、どれだけ常雇用されたか、そこが結論になるわけですね。

 そういう点をどういうふうに把握されておるのか。この基金事業により事業所に採用された者、定着している者、それが一体どれだけおるのか、それは調査されておるんでしょうか。調査しておるのであれば、その数字を教えていただきたいと思います。

青木政府参考人 交付金事業に雇用された方々のその後の状況でございますけれども、これをスタートいたしました、それで今年度で終了する現行の事業でございますけれども、昨年、サンプル的なアンケート調査ではございますが、調査をいたしましたところ、本事業の六カ月間の期間が終了した後、同じところにさらに続けてお仕事をされている方、約四割強の方が続けてお仕事をされているという結果になりました。また、継続している方々のうち八人に一人は、いわゆる本採用となってお仕事をされておるという結果になっております。

重野委員 その政策を打ったことによって、今説明されたように、新たに職につく人がいるということだけは間違いないようです。しかし、我々が期待をしたボリュームの点において、決してそんなに生易しいものではないということをこの数字は示していると思うんですね。私がいろいろな報告書等々を見ておりましても、今の説明のようであります。

 そこで、今回の緊急地域雇用特別交付金では雇用創出効果五十万人、こういうふうに見込んでおりますが、その根拠、一体どういうものを積み上げればこの五十万という数字が出てくるのか、これを示していただきたい。

青木政府参考人 平成十二年度末までの事業実績について先ほど御報告申し上げましたが、千三百四十億円の事業費で約二十二万人の方の雇用就業機会が創出された、これは各都道府県から御報告をいただいたものを積算したものでございます。

 今回の事業は、現行事業の反省にかんがみ、先生お触れになりましたように、雇用期間の更新の問題とか、できるだけ次につながるような仕事にしてほしいとか、いろいろお願いしてございますが、それだけでかなり改善がなされると思うわけでありますが、現行のものと同じ基準でもって計算をさせていただいても五十万人になるということでございます。

重野委員 予算額三千五百億円、そのうち、事業費に占める人件費割合八〇%以上、失業者の雇い入れ割合七五%以上、こういうふうになっておりますが、単純にこの二千八百億円をそういうレベルで割り返していった場合、五十万人強という雇用創出効果が確実なものというふうに断定することはできないんじゃないか。今後の推移を見守りながら、また違う機会に聞きたいと思います。

 そこで、一九九九年度からの雇用交付金事業、そして今回の雇用創出事業は、実質三カ月ダブりますね。そのダブりの期間を入れても六年となるわけです。一方、失業率の改善はなかなか見込めない。今後、さらに悪化するのではないかというふうに見る人の方が多いようですが、二〇〇五年度以降も、結局、同種の雇用創出事業をしなければならないのではないか、こういうふうに私は想像するのであります。厚生労働省は、新しい事業が始まってまた三年ずってその先をということについては答えにくいかもしれませんが、しかし、そこまでの見通しはやはり持っておかなきゃならぬと思うんですが、そこについてはどのように受けとめておられますか。

青木政府参考人 本日成立をいたしました補正予算を含めまして、今回、雇用対策としては相当額の予算をお認めいただいたわけでありまして、私ども、政府の総合雇用対策を平成十六年度末までの構造改革期間ということで一生懸命まず仕事をやらせていただきまして、少しでも雇用情勢の改善に努力をしてまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、この間、集中的に諸事業を、この事業を含みます総合雇用対策を展開するということでございますので、三年後にどうなるかということよりも、今与えられた任務を一生懸命やってまいりたいというふうに考えております。

重野委員 それでは次に、内容を変えまして、総務大臣にお伺いいたします。

 補正予算に伴う交付税法改正の審議で片山大臣は、来年度、自治体の単独事業についておおむね一割削減、このように答えられました。この意味は、国の予算における公共事業一割削減と同一基調に立つものと私は受けとめましたが、大臣の見解をお聞かせください。

片山国務大臣 確かに、国の方が公共事業一割カットということですから、それと歩を一にして、こういうところもありますが、実は、重野委員御承知のように、決算との乖離がかなりあるんですよ、単独事業は。三兆から四兆ぐらいありまして、このところ規模是正をやっていますから、実態は、私は、一割カットしてもなかなかそこまでやってもらえるかどうかの期待が、難しいと。むしろ、やれやれと言わないとなかなかやってくれないようなあれでございますが、規模是正、決算との乖離を埋めるという点と、やはり全体で抑制基調の国と歩調を合わせる、こういう意味で、一割カットという線で今検討いたしております。

重野委員 今、大臣もいみじくも触れられましたけれども、本当に物すごい乖離があります。もう消化できないんでしょうね。そのことは、いわゆる自治体財政が非常に窮乏化が進んでおるということを私は示していると思うのです。

 したがって、単独事業よりも補助事業にシフトする、これもやむを得ないことであります。しかし、地域の社会経済振興にとって単独事業の果たす役割というのは非常に大きいわけですね。したがって、そういう重要性というものを踏まえた上で、来年度地方財政計画の策定に当たって、このことをひとつ十分しんしゃくした地方財政計画をつくってもらう、このことをお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 言われるとおりで、必要なものは積極的に認めていく、こういうことで、地方財政計画なり、あるいは地方単独事業の性格づけをはっきりさせていきたいと思っております。言われるようなことを念頭に入れてやってまいります。

重野委員 以上、お願いいたしまして、私の質問を終わります。

御法川委員長 次回は、来る二十日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十三分散会




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