衆議院

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第10号 平成13年11月20日(火曜日)

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平成十三年十一月二十日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 田並 胤明君 理事 松崎 公昭君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      伊藤信太郎君    河野 太郎君

      左藤  章君    佐田玄一郎君

      新藤 義孝君    高木  毅君

      滝   実君    谷  洋一君

      野中 広務君    林 省之介君

      林  幹雄君    宮路 和明君

      山本 公一君   吉田六左エ門君

      伊藤 忠治君    大出  彰君

      金子善次郎君    玄葉光一郎君

      島   聡君    武正 公一君

      中沢 健次君    中村 哲治君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

      三村 申吾君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   総務大臣政務官      山内 俊夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            鍋倉 真一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           加茂川幸夫君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十日

 辞任         補欠選任

  坂井 隆憲君     高木  毅君

  宮路 和明君     林  幹雄君

 吉田六左エ門君     林 省之介君

  荒井  聰君     島   聡君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     坂井 隆憲君

  林 省之介君    吉田六左エ門君

  林  幹雄君     宮路 和明君

  島   聡君     荒井  聰君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案(内閣提出第一五号)(参議院送付)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官村田保史君、総務省総合通信基盤局長鍋倉真一君及び文部科学省大臣官房審議官加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村哲治君。

中村(哲)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 私は、この法律は、民法七百九条の不法行為の要件を明確にするための法律だと考えております。公権力が表現に直接に規制を加えるというのではなく、民事上のルールを定めることにより、私的自治の範囲内でネットの世界の自主規制を誘導しようとするものだと考えます。そういう趣旨のもとで、基本的には賛成の立場で、参議院の審議に引き続きまして質問をさせていただきます。

 この法案では、参議院での大臣の御答弁や副大臣の御答弁にも見られるとおり、他人の権利を侵害する違法情報についてのルールづくりであって、有害情報については対象外だということですが、そのことをまず確認させていただきます。副大臣、いかがでしょうか。

小坂副大臣 中村委員におかれましては、法案の趣旨を基本的に御理解いただきまして、ありがとうございます。

 御指摘のとおり、本法案は有害情報については対象外としております。本法案は、インターネットのウエブページや電子掲示板等で流通する情報によりまして個人の権利の侵害があった場合に、プロバイダー等の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利を定めているものでございます。

中村(哲)委員 その上で、違法情報について、この法案について反対の人たちからは、他人の権利という概念はあいまいであり幅広く解釈されるおそれがあり、違法とは言えない情報に対してまで通信事業者の自主規制によって送信を防止する措置、三条一項、二項がとられるおそれがあるという批判があります。

 これに対しては、本法律における他人、権利、侵害という言葉、用語は、一般司法上の不法行為について定めた民法七百九条の、条文を読みますと、「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」という条文の、他人の権利を侵害するという言葉と同義であるという回答があり得ると思います。つまり、本法律の他人の権利の侵害の法文解釈については、民法七百九条の法文解釈がそのまま当てはまり、従来からの解釈の積み重ねがそのまま適用されるので、反対派がおっしゃっているような幅広く解釈されるおそれはないということがあると思います。この点について確認させていただきます。

 本法律案の他人、権利、侵害は、民法七百九条に規定する他人、権利、侵害と同じものなのかどうか、総務省の見解を伺います。

小坂副大臣 中村委員御指摘のとおりでございまして、民法七百九条に言います他人の権利の侵害と同義であると考えられると思います。

中村(哲)委員 さて、そうだとして、本法律案における他人の権利の侵害として考えられるものとしては、具体的に何があるのでしょうか。恐らく、名誉権、プライバシー、著作権の三つが考えられますが、いかがでしょうか。そのほかには何があるでしょうか。よろしくお願いいたします。

小坂副大臣 委員御指摘のとおりでございますが、本法案において対象とされております権利侵害は民法上の不法行為に該当するものでありまして、したがって、情報の流通によって生じた特定の個人の法益の侵害であれば該当するものであります。

 権利侵害の種類は、特に限定はいたしておりませんが、想定される権利侵害としては、御指摘のような名誉毀損、プライバシー侵害及び著作権侵害などが考えられると思います。

中村(哲)委員 その三つ以外には具体的には、ほかには何があるかということに関してはございませんでしょうか。

小坂副大臣 あとは、商標権とかそういった権利が考えられるかと思います。

中村(哲)委員 さて、この法律案に対しては、発信者、被害者、特定電気通信役務提供者、すなわちプロバイダーの三者によって、それぞれの立場からの受けとめ方があると思います。それぞれの立場から、いろいろな思いでこの法律案については意見があることだと私は認識しています。

 そこで、総務省としては、この法律は最終的には何によって法の目的を担保するとお考えでしょうか。私の理解では、この法律の成立や施行後に、最終的には裁判所が判断すること、つまり、被害を受けた者が裁判所に訴え、三者それぞれが、権利侵害の局面や情報削除の局面など、その時々の局面でどのように判断したのか、その判断が適切であったのかということを裁判所が判断するということで被害者の利益と表現の自由との調整を担保していると考えておりますが、その点についてはいかがでしょうか。

小坂副大臣 最終的にはどうかということであれば、裁判所による判断ということになります。

 ただ、当省といたしましても、プロバイダー等が対応に困ることのないように、法律の解釈指針を示すという方法、あるいは業界団体等が事例の蓄積を行うことやガイドラインを作成することを支援するといったようなことを考えておるわけでありまして、御指摘のように、本法案の個々の条項についての具体的な解釈、適用については、最終的には、訴えを受けた裁判所において発信者の表現の自由と被害者の利益の調整を図りつつ判断が行われ、こうした判例の積み重ねによって解釈の明確化が図られていくものを期待しているところでございます。

中村(哲)委員 小坂副大臣のその答弁を前提として、具体的に事例を設定してこの法律の条文の流れを考えていこうと思います。

 まず、仮に私が、自分に対する差別的な書き込みがあるホームページ、正確にはウエブサイトということになるのでしょうが、そういうホームページがあるということを発見したとします。そこで、まず私ができることがあるとすれば、そのホームページを管理している、法文では特定電気通信役務提供者となっております管理者に削除依頼をすることになると思います。そこで管理者としてはどうしようかと思い、判断が問われることになると思います。管理者としては、勝手に削除すれば書き込みをした発信者の方から、民法七百九条の不法行為責任や、契約関係とかにある場合には民法四百十五条の債務不履行責任を問われる可能性があります。だから、プロバイダーとしては、管理者としては、削除するのにちゅうちょするのではないか。

 そのときに、削除するかどうかの基準になるのが三条の二項だと思います。それはいいですね。それを前提に質問をさせていただきます。

 まず管理者は、三条二項一号の「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」があるかどうかを検討することになると思います。しかし、この条文に基づいて削除した場合には、書き込みを削除された発信者の方から損害賠償請求を受けたときに、相当の理由があったのかどうか、その証明責任を負うのは管理者ですね。それはいかがでしょうか。

小坂副大臣 お説のとおり、三条第二項第一号に規定される要件は、プロバイダー側の立証責任があるというふうに考えられます。

 本法の第三条第二項の各号は、プロバイダー等が特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害についての免責事由を定めるものでありますので、そのようになるということでございます。

中村(哲)委員 それならば、やはり三条二項一号の方では、私の権利が不当に侵害されていると信じたという相当の理由というのを根拠にしては、プロバイダーなどの管理者は削除しづらいだろう。しかし、削除しない場合には被害者、この例では私からですけれども、私の方から民法七百九条に基づく不法行為責任、もしくは何らかの私との契約関係があれば四百十五条に基づく債務不履行責任の損害賠償請求を受ける可能性があります。

 そのときには、管理者の損害賠償責任を検討する上で、プロバイダーの損害賠償責任を検討する上で、三条一項の方の一号や二号の要件が問題となりますが、三条一項の方の一号や二号の要件の証明責任は管理者にあるのでしょうか、それとも被害者である私の方にあるのでしょうか。不法行為責任、債務不履行責任の場合で分けてお答えくださいますようお願い申し上げます。

小坂副大臣 委員の御質問は大変具体的でございまして、大変に、実際起こるであろうことをいろいろ想定されて御質問いただいているわけでございますが、委員のその事例に沿ってお答え申し上げますと、まず、第三条第一号の不法行為責任、不法行為による損害賠償責任が生じる場合でございますが、一般の不法行為の場合と同様にまず被害者側にその立証責任がある、こう考えられるわけでございます。本法案の第三条第一項は、特定電気通信による情報の流通によって権利侵害が生じた場合についてのプロバイダー等の損害賠償責任が生じる場合を明らかにしている規定でございますので、そういうふうになるわけでございます。

 それでは、被害者が債務不履行に基づく損害賠償責任を追及する場合はどうなるのかということでございますが、その場合は、プロバイダー等に対して債務不履行責任を追及する場合であっても、第三条第一項各号の証明責任は権利の侵害を受けたとする側にある、すなわち、今の事例で申し上げますと、私がとおっしゃっている側にあるということになるわけでございます。

 さらに詳しく申し上げますと、権利を侵害する情報の流通についてプロバイダー等が責任を問われる場合に、権利を侵害されたと主張する者とプロバイダー等が契約関係にあるときには、プロバイダー等が契約者たる被害者の権利侵害に配慮しなかったということで、被害者から債務不履行責任を追及されることはあり得るということでございます。一般に、債務不履行責任の場合には過失のないことの立証責任を債務者が負うこととなります。しかし、この場合のような契約の主たる義務とは別の付随的な義務違反を理由とする損害賠償請求の場合には、故意、過失の証明責任は一般の不法行為と同様に権利の侵害を受けたとする者の側にあると解されているところでございます。

中村(哲)委員 続いて質問させていただきます。

 しかし、そのようなときに削除するのかどうかというのを管理者が判断するときに、当該書き込みが被害者である私の権利を侵害しているものなのかどうか、実質的な判断を強いられることになります。判断を迷うことになるだろうと。私の理解では、そのための手続として規定されているのが三条二項二号の照会の規定だと思います。その点についてはいかがでしょうか。

小坂副大臣 本条の、第三条第二項第一号において、ある書き込みについてそれが他人の権利を侵害するものであると通常考えられるようなものであれば、プロバイダー等において直ちに削除等の措置を講じても発信者からの責任を問われることはない旨規定をしているわけでありますが、また、第三条第二項第二号の要件を満たせば、相当の理由を判断せずにプロバイダー等が削除等の措置を講じた場合においても発信者に生じた損害について責任を問われることはない、こう規定しているところでございます。

 したがって、今おっしゃったように、第三条第二項の二号の規定がそれぞれ補完関係にあるということではなくて、各号はそれぞれ独立した免責要件を定めている、このように解していただきたいと思います。

中村(哲)委員 その回答についてはちょっと私も今判断できませんが、具体的にさらに詰めて話をさせていただきたいと思います。

 その照会に対して、条文でありますとおり、当該発信者が当該照会を受けた日から七日間を経過しても当該発信者から当該送信防止措置、この場合では削除になろうかと思いますが、これを講ずることに同意しない旨の申し出がないときには三条二項二号で免責される、また、同意する旨の申し出があるときには司法の一般原則からして私的自治上当然に免責される。

 問題は、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過するまでに当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申し出をした場合です。この場合には、管理者としては当該情報を削除した場合には三条二項二号によっては免責されません。免責されるには、やはり一号に戻ってと私は思っているのですけれども、相当の理由を証明しなくてはならなくなります。だから、同意しない旨の申し出があった場合には、管理者としてはなかなか削除に踏み切れないんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。

 そこで、発信者から削除しない旨の申し出がある場合に、管理者が削除に踏み切れなかった場合には、管理者は逆に私から損害賠償を請求され得るのでしょうか。差別的な書き込みがあるような場合には、私の名誉が侵害されているわけですから、客観的には他人の権利が侵害されていることに当たるでしょう。だから、三条一項の方の一号または二号により故意、少なくとも過失は認められることになると思います。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

小坂副大臣 私の理解が委員が御指摘のものと正しいかどうか、今回の御質問について、ちょっと自信がない部分があるのですが、とりあえず答えさせていただきたいと思います。

 発信者から送信を防止する措置に同意しない旨の、すなわち削除しては嫌だよ、こういうお話があったときにプロバイダー等が情報を削除しなかった場合であっても、その場合には本条の、第三条第一項の各号の要件を満たさない限り、すなわち、一項に掲げてある一、二の、二つの、「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある」という第二号、あるいは当然知っていたという場合、これらの場合でない限り、プロバイダー等が被害者からの責任を問われることはないというふうに解されております。

 また、単に差別的な表現、例えば権利を侵害されたというのが特定の個人の権利の侵害でないような差別的な表現とか、そういうような事例の場合には、他人の権利の侵害があったとはそれだけでは言えないわけでございまして、プロバイダー等が三条第一項により――ちょっと待ってくださいね。

 失礼しました。ちょっと勘違いをしていた部分があると思いますので、補正をさせていただきます。

 了解しないといった経緯で、第三条第一項第二号にいうところの「権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある」とは言えないような場合については、当該情報を削除しなくてもプロバイダーが責任を問われることはない、このように考えられます。

中村(哲)委員 答弁が苦しいと私が感じるのは、削除依頼がプロバイダーに対してあるわけですね。そのときには少なくともプロバイダー、管理者の意識の上には、その違法情報が意識の上に上がるわけですよ。だから、具体的な検討をしないと、この一項の方の要件に当たらないということはなかなか言えないだろうと思うのです。

 だから、私が聞きたいのは、この法律では、プロバイダーなどの管理者が権利侵害を検討される場合にどういう行動指針をとればいいのか、そういう具体的な行動規範を示したものではない、そういうことを確認させていただきたいのですけれども、それでよろしいですね。

小坂副大臣 そのとおりでございます。行動指針を具体的に示したということではないわけです。

中村(哲)委員 確認的になりますけれども、その管理者にとって当該書き込みなどの情報によって他人の権利が侵害されているかどうか判断しづらいとき、それにはどういうふうにすればいいのか。それは、今後のネットの世界での事例の積み重ねや裁判所による解決の事例の積み重ねが必要だということであって、それがゆえに、先ほど御答弁になられた、総務省においてもガイドラインなどを整備していかないといけない、そういうことだと理解しておりますが、それでよろしいですね。

小坂副大臣 そのとおりでございます。

 御指摘のように、実際に、どのような場合に他人の権利が侵害されているというふうにされるのかということにつきまして、必ずしも明確と言えないという場合が出てくることも考えられますので、今おっしゃったような法律の解釈指針を示すとともに、業界団体等が事例の蓄積を行うことやガイドラインを作成することを支援する、先ほど申し上げましたが、そういったことを講じていく、こういうことでございます。

中村(哲)委員 プロバイダー、管理者の判断がその時々に問われるということを確認させていただいた上で、次に、第四条についてお聞きします。

 第四条は、発信者情報について被害者に開示請求権を認めた条文であると認識しております。もしこの条文がなければ、被害者が管理者に発信者情報を求めたとしても、その法的根拠が不確かであり、管理者としてはなかなか応じられない、お客様から文句を言われるかもしれないから応じられない。

 次に、被害者が裁判によって管理者に請求したとしても、それは人格権に基づく妨害排除請求という法律構成をとらなくてはいけない。つまり、物権よりも人格権の方が当然上位にあるので、物権に認められる妨害排除請求権は人格権にも認められるという法律構成をとるしかないのかなということになると思います。

 しかし、それでは裁判所の判断の結果次第ということになり、裁判所の判例による法創造機能といっても、それには限界があるだろう。だから、人格権に基づく妨害排除請求権を明文化するという趣旨でこの第四条の規定がある、そのように考えているのですけれども、いかがでしょうか。

小坂副大臣 大変詳しく解説をいただきまして、まさにそのとおりでございます。

 これまでに、発信者情報開示について、人格権に基づく請求を認めた裁判例は存在しておりません。また、実定法上の権利がない場合にこうした請求が認められる可能性は乏しい、このように考えられますことから、本法案において発信者情報の開示を求める権利を創設するというふうにしたわけでございます。

中村(哲)委員 具体的な条文の検討に入らせていただきます。

 第四条一項一号の「明らかであるとき。」というのは具体的にはどういう場合でしょうか。小坂副大臣の浅尾慶一郎参議院議員への答弁では、要件への必要性が述べられた上でこのようにおっしゃっております。これは「明白であるという趣旨でありまして、単に権利の侵害の可能性が高いということでは足りない、」とおっしゃっております。

 しかし、これでは、プロバイダーは何をもって明白であるのか判断できないのではないでしょうか。もう一度具体的にお答えください。

小坂副大臣 具体的にというのはなかなか難しいのでございますが、本法案の第四条一項において「当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。」を要件としているものは、通常の訴訟上の証明の場合には、通常人から見て権利侵害があったと確信するに足る程度まで証明することというふうになるわけでございますけれども、本要件の場合にはそれよりもさらに一歩進んで、疑いを差し込む余地のないほどに明らかだということを証明することが求められるということになるわけでございます。

 発信者情報は、プライバシーや表現の自由、場合によっては通信の秘密にもかかわる問題でありまして、安易に開示が行われることのないようにこのような要件が定められることが必要だ、このように考えているところでございます。

中村(哲)委員 管理者の方は、疑いを差し挟むことがないぐらいの明白なことであるというふうに感じたときにこの要件が満たされると判断すればいいということを確認させていただいた上で、次に、二号に入ります。

 二号の「正当な理由があるとき。」とは、浅尾慶一郎参議院議員への答弁では、小坂副大臣は、「具体的にはそれによって損害賠償請求を起こすとか、そういったようなことでございます。」とおっしゃっております。

 しかし、損害賠償請求権の行使のためにということは二号の条文でそのままに書いてありますので、大臣のおっしゃりたいであろうことをちょっと私なりに考えますと、差しとめ請求とか削除の仮処分などのためということも含む、つまり、裁判所を利用するにはその相手方を特定しないといけないから、そういうふうなときにはこの二号を満たすのだ、そういう趣旨だと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

小坂副大臣 本当に中村委員、よく研究をしていただいておりまして、まさにおっしゃるとおりなのでございます。

 具体的に申し上げますと、損害賠償請求のために必要であることのほかには、差しとめ請求、謝罪広告等の名誉回復措置の要求の必要性があることを示すものでございます。

 概括的に申し上げますと、本法案の第四条一項においては、発信者情報開示請求権の要件として、開示の請求をする者に発信者情報の開示を受ける正当な理由があることを要件としたところでございまして、発信者情報はプライバシーや表現の自由、先ほど申し上げたような、そういうふうに厳格にする必要があるということからしたことでございますので、ひとつよろしく御理解のほどをお願いします。

中村(哲)委員 そういう御趣旨ならば、将来的にADR、つまり紛争解決機関ができることを検討されておりますけれども、そういうふうなものができたときに、そういうときに権利救済を求めるときにもこの条文が適用される可能性があると考えてよろしいんですね。

小坂副大臣 時間もないので簡単にお答えしますと、そのとおりでございます。

中村(哲)委員 二項によっては、発信者の同意が得られない場合、開示にはちゅうちょするだろうと思われます。

 四条の四項では、故意または重大な過失がない限り免責されると規定されておりますが、これは何についての故意であったり重大な過失であるのでしょうか。その点についてお聞きいたします。

小坂副大臣 第四条第四項において、プロバイダー等が発信者情報の開示に応じずに、その結果、開示を請求した者に損害が発生したような場合であっても、プロバイダー等に故意または重過失、重大過失がない限り責任を負わないと規定しているのは、プロバイダーが権利侵害が明らかであるとは思わなかった場合については、後日、明らかであるとは思わなかったことが客観的に仕方がないと判断されるような場合は、御指摘のとおりに故意や重過失があるとは認められないと考えられるところでありまして、したがって、プロバイダー等が開示しなかったことについての責任を問われることはないと解されます。

中村(哲)委員 時間が参りましたので、最後に、この法律というのは、インターネット上の表現の自由と個々人の名誉やプライバシーなどの個人の権利との調整ルールを定めた第一歩の法律であると私も認識しております。片山大臣が内藤正光参議院議員の質問に対して「こういう情報の、インターネット上の流通における最初のルール化の法制だと私は思います。それは百点じゃありませんよ。」とおっしゃったのも、そういう趣旨だと考えております。大臣も百点ではないとおっしゃっておりますから、今後も政府としてはインターネット上のルールづくりに引き続き取り組んでいくということを確認させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

片山国務大臣 今、委員と副大臣とのいろいろなやりとりを聞いておりまして、相当詳しく勉強していただいてありがとうございます。

 法案自身が、やはり表現が抽象的にならざるを得ないんです。だから、これでそのままというのはなかなか大変だと思いますね。やはり、いろいろな判例等の積み重ねや、解釈指針をできるだけ役所も示し、あるいはガイドラインも、これは業界団体の皆さんと相談しなきゃなりませんけれども、そういうもので補完していかないと、この法律を読んだだけですっとわかる人というのは、相当頭のいい人、まあ委員なんかそうですけれども、ほとんどいないんじゃなかろうかと私は思います。

 今、委員が言われましたように、基本的なルールの第一歩だと私は思っておりますから、これをスタートにして、できるだけいろいろなものを積み重ねていって、今言われましたように、表現の自由とプライバシーの保護との兼ね合いをしっかり、民法の手当てを含めてこれから対応していく、こういうことにいたしたいと考えております。

中村(哲)委員 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、島聡君。

島委員 民主党の島聡でございます。

 衆議院の綿貫議長の私的諮問機関がいわゆるシャドーキャビネットみたいなものを充実すべきだという提言をされたそうでありますが、民主党にもネクストキャビネットという制度がございまして、そこのIT政策の総括副大臣ということですので、小坂さんとのカウンターパートということでございます。うちはネクストキャビネットと言いますが、シャドーキャビネットというのは、影のように寄り添って、その弱いところをつくというのが仕事だそうでございますので、それをこれからやらせていただきたいと思っています。イギリスでは、今中村さんがやられたような極めて条文審査をする委員会、それから今言ったネクストキャビネットの閣僚同士の議論という二つに分かれています。どちらかというと私は後者の形で今から議論させていただきますので、お願いをします。

 本法案の目的、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任を決めて、その制限及び発信者情報の開示をする法律で、今片山大臣が言われたように、これは第一歩である。私も、サイバー社会という新しい社会にルールをつくっていく、民法七百九条、倫理上のルールを定めることで自主規制をしていく、この法案の趣旨は大まかに言って賛成であるというのは、今、中村議員がおっしゃったとおりであります。ただ、サイバー社会、サイバースペースということを議論するときに一番忘れてはならないのはボーダーレス性なんです。そのボーダーレス性という観点からいくと、この法案はまだまだ極めて不十分であると私は思っています。

 具体的に言います。十一月六日、参議院の総務委員会で、プロバイダーが日本国内に営業所を置いていないということになると本法案の適用はないのではないかというふうに答えています。

 これは、こういうことなんです。例えばですけれども、韓国の国内法を精査していませんが、韓国にプロバイダーがある、置いてあると。韓国国内にしかないというところにホームページ、ウエブがあって、そこに、島聡はけしからぬとか、片山総務大臣の実態とか、そういう権利侵害のあるようなものがあるから、それを明らかに、要するに情報発信元を開示しろ、あるいはそれを削除しろと言ったら、いや、私どものプロバイダーではそういうことが制限されていますのでできませんということがあってできない。そういうように、本法案の適用はできないというふうに考えていいわけですか。

片山国務大臣 それはそのとおりなんですね。大変残念なんですが、国内にプロバイダーの営業所がない場合には、日本の裁判所において本法案の規定に基づいてプロバイダーを訴えることはできないと解釈されていまして、この辺がこれからの課題ですね。国際間といいますか、どこでどうやるかというのはよく考えなけりゃなりませんけれども、何らかの対応が私は将来必要だと思いますね。もう委員の言われるとおりなのです、ボーダーレスなグローバルな時代にこれはまさにどこからでも入ってこられるんですから。

 そういう権利侵害がよそから行われた場合の防衛といいますか対応というのは、これからの大きな課題だと私も思っております。

島委員 私、別のところで、インターネットを公職選挙、選挙に使えるといいという法案を出しています。これにも関係してくるんですよ。つまり、インターネットのホームページを解禁するという話なんです。

 私の政治家のホームページ、自分のホームページはエスエス何とかコムですから、アメリカにプロバイダーが置いてあるんです。確認して、例えばアメリカに置いてあって、アメリカで大統領選挙でこんなことがありました。ゴアのホームページだと思って検索して出したら、何かつくった、ゴアを中傷するホームページがあった。そうですね。もし日本でそれを解禁して、だれかわからないけれども、島聡と検索したら出てきたと。自分のホームページ以外のそういう中傷するホームページがアメリカに置いてあった、プロバイダーだ、情報発信元を教えろ、削除しろと。ところが、いろいろ調べても、それは営業所というのは日本にないというようだったらこれはできない、そういう解釈ですか。

片山国務大臣 これも委員の言われるとおりでございまして、そういうことでございます。

島委員 そうでありますはいいんですが、もうぽんぽんと、今、多分この議員のメンバーも、ああ、そういうことができるのか、危ないなと思ったと思うんですよね。

 それで、そういうとおりの法律が今出ていて、第一歩だからいいということはあるんだけれども、こういうボーダーレス性の、ホームページ上で流せる情報はどこからでも見られるのであるから、被害者の受ける被害、たまたま政治家を例にして出しました、その方が実態としてみんなわかるだろうと思ったんです。ところが、今度は、政治家はともかく、一個人が出されてもこれは同じことですね。

 今、大臣が何とかいろいろ改善をしなくちゃいけないと思っていると言われましたけれども、恐らくこれは国際私法によらなくちゃいけない問題。しかし大臣、あれでしょう。IT政策あるいはサイバー社会のルールづくり、それは総務大臣の所管なんじゃないですか。

片山国務大臣 これは私の所管であるというより内閣全体の、今IT戦略本部というのをつくっていますから、そこで一体として対応する、こういうことだと思います。

 委員が今言われましたように、国際私法の一般原則というのがありまして、これが極めて明確かというと、そうではないところがございまして、だから、国際間、国際的にどうやってみんなで考えていくかと。これは急速に進みますからね、このIT化は。そういうことは、問題意識は私も十分持っておりまして、IT戦略本部等でも議論にはなるんですけれども、しかし、それではすぐ、直ちにどうだということにならないのが大変残念ですけれども、さらに努力してまいります。

島委員 ぜひ努力していただきたいと思います。

 ルール化、今おっしゃったようにあいまいなところもありますから、これは日本がリードしてもいいと思うんですよ。御存じのように、内閣法で、それぞれの所掌事務というのは総理大臣が、どこまでやるかということを、内閣法の定義によると調整するとありますけれども、こういうのはどこか責任を持ってきちんとやらないと、これは外務省だとか、これは何々省だとやっていったら進みません。サイバー社会というのはボーダーレスなんですから、それをどこか責任を持ってやる、そういうことをやらないと日本はおくれますので、これは私もずっと追っていきますから、大臣は国務大臣ですから、発議することができるはずですから、ぜひともやっていただきたいと思います。

 次ですが、今回は特定電気通信の役務ですから、メールは入っていない。メールは入っていないという理由をもう一度教えていただけますか。

片山国務大臣 この法案は、不特定の者によって受信されることを目的とする通信を対象としておりますので、Eメールのように、受信先を特定して行われるものを対象とはしていません。一対一の通信は、特定の者によって受信される電気通信であって、通信内容が通信の秘密によって保護されるものである、こういうことでございまして、それはいろいろな議論があるところですけれども、今の仕分けとしてはそういうことにいたしております。

島委員 大臣、スパムメールというのは御存じだと思いますけれども、あれは一対一じゃないんですよ、実態は。あれは一対多なんですよ。突然たくさん出すんですよ。この法律は基本的に、個人の権利が侵された場合ということを守る法律でしょう。そうですよね。ウエブだったら、受け手側がアクセスしなきゃ大丈夫なんです。見たくなかったらアクセスしなくていいんです。

 皆さんもホームページを持っていらっしゃると思いますが、この政治家のホームページだって、一日何回アクセスされるか。私のホームページでせいぜい七十ぐらいです。結構多い方だと言われている。ところが、スパムメールは一対一じゃないんです。一対ばあんなんです。たくさんなんです。これは、見たくなくても一方的に送りつけられるんです。権利侵害という意味でいけばこれの方が結構大事で、情報発信のその発信先、それを虚偽にするところも結構あるわけです。だったらこれは、実は、メールの方を対象外じゃなくて、メールの方をきちんと考えた方がよかったんじゃないですか。

片山国務大臣 言われることは私もわかるんですが、基本的には一対一の通信が多数集まっているんですね。一対一の通信の集合体だ、こういう認識ですから、本法案の対象にならない、こう考えておりますが、今御指摘のように、迷惑メールというのは皆さんにまさに大変な迷惑をかけているんで、だから迷惑メールなんでしょうけれども、これについては立法措置を考えるべきだという意見がありまして、現在、内閣の方は内閣の方ですが、国会の中にも、有志でいろいろな検討もされているようですから、我々もその動向を見ながらこの迷惑メールへの対応は考えてまいりたい、こういうふうに思っております。

島委員 今、立法の話まで言われましたので、その立法の、私どもも申し上げますけれども、我が党ももう用意しております。用意しておりまして、今パブリックコメントもやっておりますので、またいろいろな議論を進めていきたいと思うんです。

 ただ、法律をつくるときに、やはり、いろいろ難しいことはわかるんですが、その理由がどうも納得できないという理由は、今後気をつけた方がいいと思いますね。一対一だからというんだけれどもこれは現実は一対多で、今おっしゃったように原則は一対一の集合体といっても、現実、御存じだと思いますが、九億五千万通ぐらい一社が一日で扱う、そのうち八億通がいわゆるあて先人不明で返ってくるんですよ。一億五千万ぐらいがせいぜい通用するメール。そのうち本当に一対一のメールはどれぐらいあるかというと、実態は随分違うと思いますよ、通信の秘密があるから、どこまでそれが本当の一対一なのか、スパムメールなのかということは確認できませんけれども。

 ちょっと、いろいろな法律、もう時代がどんどん進んでいますから、議論するときにはその理屈立てでよかったものがまた変わってきつつありますので、そういうことはスピードが必要だということを言っておきたいと思っています。

 それと、大臣、もう一つ。これは、考え方の問題について大臣とお話ししたいし、また小坂副大臣にもお聞きしたいんですが、先ほどから、いわゆる送り手の自由というんですか、送り手の表現の自由とか通信の秘密ということが相当言われています。これは、いわゆる情報の生産者の方の立場です。情報を送る方の立場。情報を受ける方、情報の消費者の立場、それとの整合性というか、その議論というのを政治家同士でやはりしていく必要があると思うんです。もちろん通信の秘密とか表現の自由の確保ということが重要であるというのは必ずまくら言葉につきますが、日本において余り議論されていないのが、情報の受け手の自由といいますか、拒否する自由だと思うんです。

 とらわれの聴衆という考え方があります。とらわれの聴衆。これは、どういう考え方をされているか、大臣と小坂副大臣、両方とも聞きます。

 とらわれの聴衆というのは、要するに電車の中に、電車の中だと出られないんです、そこから。そうすると、きょうは政治家の話だから政治家の話ばかりしますが、電車の中で急に政治家がわあわあ演説をし出す、聞きたくないんだけれども。これは迷惑なんですよね。でも、ここは電車の中だから出られない。それは、とらわれの聴衆。幾らわあわあ言って自分の意思の自由だと言っても、それは制限してもいいだろうという考え方なんです。

 それと同じことがメール社会、サイバー社会にもあると思いますので、発信者の表現の自由の確保、通信の秘密、そしてまた、とらわれの聴衆という意味でのその情報の消費者、選択する自由についてどうお考えなのか、お聞きします。

小坂副大臣 委員が御指摘の、発信者の自由はいいけれども聞く方もやはり権利があるんだぞ、こういうことでございまして、まずとらわれの聴衆についてどうかというお尋ねでございましたが、委員が御指摘になった事例は、委員が本来おっしゃりたかったことと若干ずれてきたのかもしれません。要するに、電車の中で政治家が発言をする場合は、電車の管理者からそれはやめてくださいと言われればそれでおしまいなんで、むしろ電車の車内放送のような場合ですね。乗っている人が、車内放送でいろいろなことを言われたことを聞きたくない、あるいは音楽を流されて、そんなもの聞きたくないというような場合が特にそれに該当すると思われます。

 そういう場合でございますが、今回のメールの場合は、これは端末の設定によって受信を拒否したり、それからプロバイダーの方で、スパムメールと言われるようなものにつきましても、例えば、今回NTTドコモさんがとりました措置として、大体が、迷惑メールの発信の一つのパターンとして、コンピューターによってアドレス解析をして送りつける、すなわち虚偽の、実際に実存しないアドレスも含めていろいろなものを打っていって、数打ちゃ当たるというもので、当たったものだけを集めてまた打ち直す。こういう方法でありますと、最初にやったときには架空のアドレスが大量に含まれているということで、大量に送られたメールのうちの一定の量に虚偽アドレス、架空アドレスが含まれている場合には、これは迷惑メールと判断をしてしまって、この受信そのものを全部拒否してしまう。だから、発信者が発信できないような措置をコンピューターとしてとってしまう、こういうことをとろうとしているわけで、これがまさに当たるわけですが、こういった措置が講じられることから、いわゆるとらわれの聴衆という概念には当たらない。

 すなわち、逃げることができないというわけではなくて、端末の設定によってはこれを回避することもできますし、また、そもそもが一対一の通信の状況でありまして、放送のような形ではないものですから、同時にマルチキャストで大量に多方向に送っても、それは一対一の通信の集合体というふうに解されますので、受信者が発信者に対して二度目の発信を拒否する措置は講ずることが可能であることから、いわゆるとらわれの聴衆とは考え方は違うのではないかと思っておりますが、迷惑があるということは私も同感でありますので、そういうものについての対策は講ずるような方途を今後とも検討してまいりたいと思います。

島委員 とらわれの聴衆は、今聴衆が政治家だけだったので、政治家の例を出しました。今のことは私も十分理解しておりますが、一対一で拒否できるというのは、こういう例もあるのですよ。

 例えば、メールが来て、勝手に出しました、メール配信停止希望の方は云々と書いてあって、解除の申し込みが書いてある。そして、それをぽんと押しますと、そこに行って、ウイルスがそこに流されるというような、現実的な対応ということもあるのです。とらわれの聴衆の概念と違うというのは、そちらと概念が違うという話だから、この話は、またこれも議論しましょう。私は、それで解釈できると思います。

 なぜかというと、一対一の集合体じゃなくて、どんどんたくさん来るわけでありますし、一対一ではありますけれども出している方は一対多なんだから、そうすれば、電車の中の放送だって、例えば耳栓をすれば大丈夫だという話になっちゃうのですよ。そういうようなことじゃないと思いますので、私は、とらわれの聴衆の概念で立てられると思います。これはまた、法理論ですから、もう少しわかりやすくしながら議論していって、これで法律体系をつくっていくということを申し上げたいと思います。

 参議院の附帯決議のときに、三番目に「今後とも、誰もがインターネットを安心して利用することができるよう、違法な情報等に対する適切な対応策を講じ、」というのがありました。この「等」というものに、私は、できたらこれはきちんと解釈して、「情報等」だからいろいろあると思うから、今小坂副大臣も、メールというのは非常に重要だ、迷惑メールというのは対策が大事だという話をされたのだから、そういう対策をきちんと今後打っていくのだというふうにすべきだと思うのですが、いかがですか。

小坂副大臣 迷惑メールはいろいろなアイデアを出しながらこれを防止する措置を講じるべきだ、こう思っております。

 携帯電話における迷惑メール問題については、本年四月に各事業者に対しまして私ども総務省といたしまして対策の検討を要請し、これを受けて、各事業者においてこれまでに、電話番号によるアドレスを採用していた業者、事業者はこれを英数字の組み合わせによる任意のアドレスに変更するとか、特定のアドレスからの指定受信、指定拒否件数を端末のプログラムを変えて拡大をして、もっとたくさん拒否ができるようにするとか、そういった措置を講じていただきました。

 このようなことによりまして、電話番号をアドレスに使っていた事業者の場合、はっきり言ってドコモですが、ドコモさんの場合には、本年三月末には約四分の一ぐらいの人しか使っておりませんでしたが、この呼びかけによりまして十月末には九割を超えるユーザーの方がアドレス変更をされた、こういうように聞いておりますし、また、このような取り組みによりまして、苦情件数も六月時点で十四万件あったものが十月には六万件と半減しているということで、一定の効果はあったというふうに考えられます。

 しかし、御指摘のように、送り手側もコンピューターによる、先ほど申し上げたようなアドレス検索のプログラム等を使って、さまざまな工夫を凝らして送ってきます。さらに、一回の送信によって多数の受信者にあて、かつ架空のアドレスを大量に含むような迷惑メールが今後とも発生することが予想されますので、先ほどちょっと回答いたしましたような、電気通信事業者が適切な措置を講ずることを可能とするような契約約款の改正について、申請がありましたので、私ども、十一月九日に認可をしたところでございます。

 さらに、今後どんな対策が考えられるかといえば、私は、メールに、頭にヘッダーとして、例えば広告であればPRとかあるいはダイレクトメールであればDMとか、何か符号をつけて発信することを義務づける、そういうようなことをとれば、今度はプログラム上、それを排除するようなプログラムもつくり得るものですから、そんなことも考えられるかな、こういうふうに思っておりますし、諸外国の事例等も研究をしてまいりたい、このように考えております。

島委員 今まさに副大臣がおっしゃったような、迷惑メールの最初に、ヘッダーに名前をつける、そういうのを義務づけるというのを、今、法案化で、私ども、立法を準備しております。そして、それを今、パブリックコメントを求めましたら、我が党のそういう立法に関するパブリックコメントの中では、一週間で三百通来ましたので、本当に多い反応です。国民が、いかに迷惑メールについて関心が高いか、そういうことを感じております。今、義務づけの話もされましたので、私どももそういう立法を準備していることを申し上げておきたいと思います。

 小坂副大臣は、もちろんそういうのを使っていらっしゃると思いますが、いろいろメールアドレスを工夫していらっしゃると思いますが、減りましたか、メールアドレスを変更して。

小坂副大臣 以前は一日に五、六件ありましたけれども、最近では一週間に二件ぐらいになりました。

 ただ、最初、変えて当初は全く来なかったのですね。ところが、一カ月、二カ月ぐらいしましたら、ぽつんと来まして、一度来ましたら、しばらくしてまた来るようになりましたね。ですから、いよいよ察知されてしまったのかなと思って、また変えなければいけないかな、こう思っているところです。

島委員 私も全く同じ経験をしています。最初はなかったのですが、たまたま私のメールアドレスが自分の名前をもじったものだったものですから、多分、英英辞典か人名辞典で、自分の名前の島なんていうのがあると、それで検索して、ソフトで出してやっているのだと思うのですけれども、まるっきりイタチごっこに近いのですね。このイタチごっこに近いのが大変なのは、先ほど申し上げました、九億五千万通出して八億通がそういうような検索のために使われている状況である。そのために設備増強も事業者はしている。さらに、十三万件の苦情が六万件に減った。六万件を苦情処理するコストというのは相当なものだと私は思います。それは、事業主ですし、民間経済ですから、どこにコストが来るかといったら、当然いわゆる料金に上乗せせざるを得ないわけですね、そうしないと企業としては成り立っていきませんから。

 ということは、これは極めて消費者の方からすればコスト高になる原因になっています。そういう意味からも、これは、消費者の方は一般的には一人一人のコスト。今、小坂副大臣が一日に五通だと言われて、一日に五通というと、今はお金を取らないそうですが、前の制度だと大体一日十円ぐらい取られた、そういう薄く広いもの。ところが、大きくなると大変な額になる。

 個々の消費者による訴訟的救済がなじみにくいのでありますから、これは立法措置が絶対必要だと私は思っています。私どももそれを出していきますので、ぜひとも、国会の責務として消費者の立場に立った迷惑メール法案というのを実現していきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

小坂副大臣 迷惑メールが社会問題化していることは同感でございます。それに対して、広告、宣伝メール等の送信自体を法律により規制するということにつきましては、一つの有効な手段だとは思うわけでございますが、一方、受け手によりまして情報の価値というのはその基準が異なるわけでございますので、逆に、広告や宣伝であっても自分の重要な情報源だと思っている方もいらっしゃいます。

 そういうことも考えまして、また、表現の自由、通信の秘密の保護といったものもやはりあわせて考えなきゃいけないと思いますので、そういったことを考えまして、法制化につきましては総合的に検討していく必要がある、このように認識をいたしております。十分に検討をいたしたいと思います。

島委員 時間がほとんどございませんので、最後にサイバーテロについてお聞きします。

 片山総務大臣も、十一月六日の総務委員会では、各省庁と連携をとりながらサイバーテロ対策に万全の措置をとるべきだという話をしておられます。

 具体的な話を聞きます。恐らくサイバー攻撃というのは、貧者の核兵器と言われていますので、次に来る、いわゆるビルに突っ込んだハイジャックテロ、そして生物化学兵器テロ、次はサイバーテロだろうと言われています。問題がありまして、今まで日本のサイバーテロというと、せいぜい大量にアクセスしてそのホームページをストップさせるぐらい、そんないわゆる愉快犯に近いようなものでありました。しかし、本当のサイバーテロというのは、具体的に、例えばあるテロリスト集団がいる、あるいはひょっとしたらその後ろに国家がいる、そして重要インフラというもののところにいく。具体的に言うと、例えば原子力発電所の制御機能を何とかしてしまう、あるいは鉄道を何とかしてしまう、あるいは金融のコンピューターを破壊してしまう、そんなような大きな話であります。

 質問は、きょうは内閣官房に来てもらっていますが、サイバー攻撃が、単なるハッカーの愉快犯的な国内におけるハッカー攻撃なのか、それとも国外からの、テロリスト集団とかあるいはその後ろにひょっとしたら国家がいるかもしれないような攻撃なのか、それによってとるべき体制が全く変わってくると思います。前者なら、いわゆる国内的なハッカーだけだったら、それはある意味で警察庁の対応でいいんでしょう。そうじゃない場合、国外からの対応という場合だったら、これは非常に大きな対応をしなくちゃいけない。

 もちろん内閣法制局が、サイバー攻撃が武力の行使に当たらないと、テロ対策特別措置委員会で私の質問に対してそう答えましたけれども、それに対しても疑義がありますが、初動体制、一番最初に、サイバー攻撃があった場合に、それが一体、非常に単純な愉快犯的なハッカーなのか、その後ろにテロリストあるいは国家がいるような攻撃なのか、ぱっと判断できる体制はどのようにとっていて、どのように判断をする状況になっていますか。

村田政府参考人 お答えいたします。

 政府としましては、重要インフラにおける情報システムにつきまして、それが国内のハッカーによるものなのか、外国のテロリストによるものなのかを問わず、いかなるサイバー攻撃からも防護することが重要と考えておりまして、そのための体制の整備に努めております。

 一般にサイバー攻撃の形態としましては、御案内のとおり、不正アクセスやコンピューターウイルスなどさまざまなものがありますが、そのような攻撃が行われた場合には、それがハッカーによるものなのか、テロリストによるものなのか、これは直ちには明らかになりません。そのため、政府としましては、そうした攻撃がなされた場合には、それがいずれのものによるものであるにせよ、迅速な情報収集、専門家の活用等を通じて、被害の拡大防止、防護の強化等、こうした初動措置を省庁一体となって、また官民連携のもとに行うこととしております。

 また、調査の結果、この攻撃がテロリストによるものである可能性が高まってきた場合には、これは、我が国経済社会システム全体に対する攻撃であるとも考えられるわけであります。そのため、関係省庁、民間重要インフラ等の警戒のさらなる強化を図るとともに、全力を挙げて適切な対応策を講じていく考えであります。

島委員 極めて抽象的でありますし、それから、ハッカーの場合は気をつけなくちゃいけないのは、全部守る、大体それを、危機管理的な発想でそういうことが起きないようにするという発言があるんだけれども、これはほぼ無理ですから。無理ですからというのは、今イタチごっこの話をしましたけれども、必ず何かの手をつくってやってきます。もちろん守ることは重要だけれども、大事なことはその後の被害管理の発想でしょうから、被害管理に対する対応もきちんとしていかないと、サイバーテロ、恐らくまた後手後手に回りますから、それを指摘して、今回の質問を終わります。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 きょうは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案ということで、法律案名は長いのですけれども、要はプロバイダー問題。特にインターネットがここ最近普及しているという中で、平成十年、十一年、十二年と、利用者の数でいきますと倍々ゲームでふえているという状況です。その分、かなり利便性がよくなったという形で、特に情報の流通が、今までと比べるともう加速度的に情報量がふえている。その分、経済、社会、文化等々あらゆる面において、プラスの面もあるんですけれども、逆にインターネット普及でマイナスの面というものもいろいろと見えてきた。そういった中での今回のこの法律案でもあると思うんですけれども、特に、個人の誹謗中傷またはそれを利用した犯罪、そういった部分での今回の法律案の提起だと思うのですね。

 特に、利便性が増す一方で、負の側面、これをどのように考えているかということをまず最初に大臣にお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

片山国務大臣 高木委員御指摘のように、ITと申しますか、インターネットの爆発的な普及と情報通信技術の急速な進歩、これは人類に大変な恩恵を及ぼしている、こういうふうに私は思いまして、これをどうやってうまく取り込んで社会経済活動の活性化に利用するかの各国の勝負だ、そういうふうに思っておりますが、同時に、プラスの反面マイナス、負の部分、影の部分というのがあることも当然でございまして、特に不正アクセスの問題、違法・有害情報の流通の阻止の問題、あるいはいわゆる広いセキュリティーの問題等があるわけであります。

 私どもの方では、不正アクセス禁止法というのを昨年の二月から制定して施行いたしておりますし、本年の二月に総務省の情報セキュリティポリシーというものをつくらせていただいております。さらに、三月に情報通信ネットワーク安全・信頼性基準の策定等の各種の施策を実施しておりますけれども、いずれにせよ、だれもがインターネットを安心して利用することができるような利用環境の整備を今後とも図っていきたい。総務省だけということではありませんけれども、関係の各府省連携をとりながら、IT戦略本部もございますので、そういうところで万般の対応をとってまいりたい、こういうふうに考えております。

高木(陽)委員 今、マイナスの部分を述べていただきましたけれども、その上で、この対策というのが本当に非常に重要だということで、特に今回の法律が、その面に関してしっかりと対応していこう、そういう考えの中で出されていると思います。

 ただ、違法な情報の流通に関して考えますと、インターネットに限らずさまざまなメディア、メディアはたくさんございますけれども、あると思うのですね。今回は特にウエブページ、電子掲示板等々、特定電気通信というふうに限って法的な処置をしようという考えなんですけれども、その理由をまずお聞かせ願いたいと思います。

小坂副大臣 委員御指摘のように、今回特定電気通信と限ったのはなぜか。最近は本当にいろいろなメディアで個人の権利侵害が広がっているように感ずるわけでありますが、今回、特定電気通信と絞りましたのは、第二条第一号にありますように「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」といいますと、放送もこれに入ってしまうわけです。したがって、その一号で放送を除いているわけでございますが、それ以外のものをいうわけでございます。

 それはなぜかというと、近時、特定電気通信と言われるインターネットのホームページあるいは掲示板といったようなものによって、個人の権利侵害が行われるケースが次第に増加してきているということですね。それは、すなわち、直ちにコピーして再送信することができる、そういうところが特徴でありまして、瞬時に被害が拡大する、また、大量の人に瞬時に閲覧をされてしまうということによる被害の拡大のスピードが他のメディアに比較して格段に大きいということで、その問題が非常に顕在化してきたということで、今回それに絞りまして設定をさせていただいた、言ってみれば第一歩を踏み出させていただいた、こういうことでございます。

高木(陽)委員 今、副大臣の方から第一歩というような御発言がございましたけれども、ここ数年、ネット上のいろいろな問題、誹謗中傷、特に掲示板等々でもあると思うんです。こういった裁判に発展するケースというのが、これは先日新聞に掲載されておりましたけれども、ここ二カ月間でもう三件の司法判断があった。そういった形の中で、プロバイダー等の方は、板挟みになっていろいろと悩んでいる部分もあるかなと。

 これは、先ほどの質問の中にもありました表現の自由と通信の秘密、この板挟みの中でプロバイダー等も苦慮している中で、今回のこの法律案を策定するに当たって、そういう関係者の意見、特に法律の直接対象となっているプロバイダー等、そういった人たちの意見等々はどのように反映されているか、これをちょっとお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 この点につきましては、昨年五月から開催されておりますインターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会という研究会を総務省の中でやっておりまして、座長に中央大学の堀部教授にお願いをいたしておりますが、ここで、プロバイダー、法律学者、それから消費者団体等に御参加、御議論をいただいたところでございまして、これらの関係者の御意見を集約した結果、今回報告書が取りまとめられ、提言をもとに検討してこの法案の策定に当たった、こういう段階を踏んでおります。

 その後も、昨年の十二月二十日から本年の一月まで意見募集を行ったんですが、この中でも、プロバイダーの団体、法律学者、著作権団体等から御意見を寄せていただいておりまして、それを参考にもさせていただきました。

 さらには、それではまだ足りないのではないかと思いまして、私自身も勉強会を主宰いたしまして、省内で、プロバイダー及びプロバイダーの団体、消費者団体、弁護士、法律学者の皆さんと意見交換をさせていただいて、さらに調整を図り、私としても、もう少し、削除の時間的な問題とかいろいろ検討すべき点はまだあると思ったんですが、しかし、現時点で早急に対策を講じていくことが必要だという判断から本案にまとめさせていただきまして、まさに第一歩として提示をさせていただいたところでございます。

高木(陽)委員 また、インターネットの情報量、これは膨大な量になると一番最初に申し上げました。この中で、自分個人のホームページの方は余り、先ほど島委員の方は一日数十件、多い方だと。そう思います。自分の方も、多いときは大分多いんですけれども、少ないときは全くない。ただ、党のホームページ等々で意見がメールで来る数なんかすごく多いわけですね。

 そういったものを、当事者ですから見る、また読む、これは当然なんですけれども、プロバイダー等が、これは規模にもよるんでしょうけれども、膨大な量を情報発信、また仲介している、そういう状況の中にあって、インターネットを流通するすべての情報を網羅的にチェックすることは一般的には困難ですね。それを、監視義務を負うことはできないと思うんですけれども、そこら辺のところはどうなんでしょうか。

鍋倉政府参考人 先生御指摘のとおり、プロバイダー等には違法情報が流通していないか監視するという義務はないと考えております。この法律案でも明文でそれを明らかにしておりまして、具体的には、三条第一項第二号でございますけれども、プロバイダーが責任を負い得る場合の要件として情報の流通を知っていた場合というふうに規定をしているのはそういう意味合いでございます。

 なお、国際的に見ましても、例えばEU指令では、プロバイダーに対して一般的な監視義務を義務づけてはならないというような規定を置いているところでございます。

高木(陽)委員 その上で、プロバイダー等が負う責任、今までの裁判例として、他人の名誉毀損になる情報を放置したことについてのプロバイダー等の不法行為責任を問う、そういう事案が二つあったというふうに聞いておりますけれども、そのどちらの判決も、一定の場合にはプロバイダー等に責任を生じることがあるとして、プロバイダー等に不法行為責任が生じる場合について判断をしている。

 ただ、その具体的な基準というのは必ずしも一致していないように思います。これも先ほど申し上げましたけれども、普通、本来当事者間で争う、名誉毀損された、いろいろな誹謗中傷を受けたと。ただ、裁判においては、情報発信者だけではなくて、情報発信者がだれかわからないわけですから、プロバイダーがネット運営者、発信仲介者として当事者になってしまう。こういう問題が今回の法律案においてはやはりクローズアップされたと思うんです。

 このプロバイダー等の損害賠償責任の制限を規定していますけれども、逆に、その責任の制限の要件に合致しない場合について、プロバイダー等はすべて責任を負うことを規定したものではないと考えてよいのでしょうか。

鍋倉政府参考人 御指摘のとおり、この法律案での責任の制限の要件に合致しない場合には、プロバイダーが他人の権利を侵害する情報の流通に関する責任を負い得ることとなりますけれども、すべての場合に責任を負うということにはなるものではございません。すなわち、この法律案の責任の制限に関する規定は、プロバイダーが民法上の責任を負わない場合について規定したものでありまして、それに該当するときは責任を負わないことを規定しているというものでございます。

 他方、これらの規定に該当しないときには、損害の発生と情報の流通の因果関係があるか等、他の要件をチェックして、民事法の一般則、例えば不法行為責任を定めた民法七百九条に従って責任の有無が判断されるということになると考えております。

高木(陽)委員 インターネットというのは、これは国内の問題だけではないですね。国際的に情報のやりとりが行われる。先ほども質問の中にございました、国を越えた場合どのようになっていくのか。それは、今回の法律は第一歩だと思うんですけれども、ただ、プロバイダー等の責任のルール、この整備というのは、できる限り国際的な調和のとれたもの、そういう国際的な標準的なものというか、日本だけが突出していたり、日本だけがかなりおくれていたり、こうであってはならないなと思うんですね。

 この法律案で、プロバイダー等の損害賠償責任の制限の規定、これについては国際的に見てどのような状況なのか、お伺いしたいと思います。

山内大臣政務官 委員御指摘のところでございますが、確かに、インターネットというものはボーダーレスのところでございますから、日本だけが突出して厳しくしたりとかいうわけにはいきません。当然調和をとらなければいけないということでございまして、本法案の特定電気通信役務提供者の責任の制限に関する規定については、諸外国の規定等も参考にしつつ立案したものでありまして、諸外国の制度と十分に整合性のあるものとなっていると考えております。すなわち、プロバイダー等の責任の制限については、もう既にアメリカ、ドイツ、EU指令において類似の規定が整備されているところでありまして、いずれも、本法律案と同様にプロバイダー等が責任を負わない場合についての規定をしたところであります。

 なお、現在、EU指令に基づいては、フランス、イギリス、スペイン、フィンランド、デンマーク、スウェーデンの各国においても新規立法が進められていると聞いております。

高木(陽)委員 次に、損害賠償を請求するには発信者を特定しなければいけない。先ほどこれも申し上げました、発信者がわからないから仲介者であるプロバイダー等がいろいろと板挟みになって困っているというのがあるんです。発信者を特定して訴訟を提起する必要があるんですけれども、今回の発信者情報の開示請求権の創設、これによって被害を受けた者が救済を受けられるようになると思うわけですけれども、その発信者情報開示について何点か御質問したいと思うんです。

 まず、被害者が実際に発信者情報の開示の請求をプロバイダー等に対して行う場合のやり方ですね。これは具体的に法律案では書かれていないんですけれども、やはりネット社会ですから、ネットを通じてこれは可能なのかどうか、ここを確認したいんです。

鍋倉政府参考人 発信者情報の開示につきまして、本法律案は請求の要件等について規定したものでございまして、具体的な手続等は規定をしておりません。

 この請求権の行使の方法につきましては、他の請求権の行使と同様に、民法の一般原則に従って、意思表示の要件を満たすように行われる必要があるというふうに考えます。しかし、その方法には特別な制約はないわけですので、電子メールなどを使って行うことも可能であるというふうに考えております。

高木(陽)委員 可能だということです。

 発信者情報の開示は、被害を受けた者にとっては非常に意味があるものなんですけれども、逆に、誤って過度に、いわゆる行き過ぎて開示が進むことになると、今度は発信者側の方が被害を受けるというか、取り返しのつかないことになりかねないと思うのですね。特に、プロバイダー等に困難な判断を強いることになる。プロバイダー等に不利益になるとともに、誤った判断がなされて、発信者が被害を受ける可能性が高くなるんじゃないかなというふうに考えるんです。

 そこで、発信者情報の開示の請求権を設けるに当たって、逆に発信者側の権利が害されることがないよう、発信者側の権利の保護にも十分配慮しているかどうか、ここら辺のところをまたお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 御指摘のように、誤って発信者の情報が開示されてしまうと、これは取り返しのつかないことになるわけでございますので、その開示に当たっては慎重に判断をしていただかなければいけない。一方で、ちゅうちょしていることによってそれがおくれると、今度は何か賠償責任でも負わされるんじゃないかなと思って、慌てて開示してしまう、こういうことになっても困るものですから、この開示を請求できる要件というものを非常に厳しくいたしておりまして、権利侵害が明白であること、あるいは開示を請求するべき正当な理由があること、この二点を定めておるところでございます。

 また同時に、要件を満たすかどうか、その微妙なケースにおいても、特定電気役務提供者が誤って開示することのないように、故意または重大な過失がない限り、開示をしないことによって生じた損害について賠償責任を負わないというふうにこちらの方も担保をしたところでございます。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

高木(陽)委員 これは被害を受ける側、いわゆる情報がプロバイダー等を経由して名誉毀損になっただとか、そういうような形で被害者の側と、また発信者側、ここのバランスの問題というのは本当に微妙なところだと思うのですね。

 これも何度も先ほどからの質問で出ていました。これは、この法律案が完璧であるかどうかというのはやってみないとわからない部分もあるんですけれども、逆に、初めての経験なわけですね、こういうインターネット社会の中で。そういう部分では、まずこの法律案、この法律を施行する中で、また一つ一つ現実対応を本当にしっかりやっていかないと、ここら辺のところで行き過ぎがあったり、表現の自由と通信の秘密、ここら辺のところが本当にアンバランスにならないように、ここはしっかりとやっていただきたいな、このようにも思います。

 今回のこの法律案の対象、特定電気通信ということで、不特定の者により受信されることを目的とするとされている。先ほども出ましたメール、特に携帯のメールの問題ですね。これはもう一度ここで確認します。アドレスをランダムに指定することにより多数の者にあてて送信されるものも含めて、いわゆる迷惑メールは対象とならないということでいいわけですね。

小坂副大臣 おっしゃるように、幅広く送るということになりますと、これは放送と同じようなものじゃないか、性格的に見るとそういうふうに見えるわけでございますが、しかし、詳細に見てみますと、それはやはり一対一の通信の集合体である、こう解されます。

 そういった迷惑メールを規制しないでいいとは思っておらないわけでありますが、今回の法律では、この迷惑メールは対象にいたしておりません。これは、あくまでも基本的には一対一の通信が集まったものと解してこの法案には含めておりませんが、今後検討すべき課題、このように思っているところでございます。

高木(陽)委員 インターネットの普及に伴うマイナスの側面、この対策は非常に重要で、今回が第一歩と。

 ただ、今副大臣からもお話がありました迷惑メールの問題、これはかなり大変な問題で、野党の民主党の方でもいろいろと論議が進められているというふうにも聞いておりますし、実は与党の方でも、情報通信プロジェクト、ここで、しっかりとこの問題をとらえて立法化していくべきではないだろうか、こういう論議もなされているわけであります。ただ、本当に難しいなというふうにも実感しているわけですね。そう簡単にはいかない問題。これについて効果的な対策等々、総務省として今後これをどうしていく、法案化していくかどうかも含めて、どう考えているか、ここをお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 それでは果たして法制化をどう考えているかということでございますが、今、委員から御指摘がありましたように、与党の中において法制化が検討されていることも私どもは了解をいたしておりますし、また、先ほど野党の方からも御指摘がございました。そういう中で、委員から、検討はしてきているんだけれども、どうなんだ、総務省としてどうなのか、こういうことでございますので、それにつきましては、当委員会また与党の皆さんの検討の経緯等を踏まえまして、総務省としても、当委員会における御指示等を仰ぎながら、この点については今後前向きに少し検討をしてまいりたい、このように考えるところでございます。

高木(陽)委員 迷惑メールの問題等々、これも含めて、被害を受けて、被害というか実害の部分、なかなか難しいのですけれども、かなり数としては多いわけですね。それが命にかかわるとかそういう問題まではいかないのですけれども、確かにそういう多くの人たちが幅広く不快感を持つ、そういった問題についてはやはりしっかりと対応していかなければいけないと思いますので、ここら辺のところは、野党の方もそういうふうにお考えの部分もありますし、与党もしっかりとそこをやりながら、また総務省としてもしっかりとやっていただきたい、これを要望しておきます。

 あと、これは通告にもないのですけれども、今、先ほどから出てきた通信と放送の問題、これはさまざまなところで、一般質問でも質問させていただきましたし、今回の法律案にもよるのですけれども、結局、そこの立て分けがはっきりしてこない。また、逆に、ボーダーレスになっているからこそ法律もきちっと確定できない。ここはだめですよ、ここはいいですよというのができない。

 そんな中で、さまざまな法律をこれからもいろいろと手がけていかなきゃいけないし、逆に既存の法律も変えていかなきゃいけないと思うのですけれども、この通信と放送の融合について、大臣でも副大臣でもどちらでも結構ですが、今後どのような方向性に持っていくべきか、お伺いしたいと思います。

小坂副大臣 高木委員からもたびたび、通信・放送融合について法制はどうするんだと御質問もいただいております。私どもも真剣に今考えておりまして、現実が大分進行してまいりまして、最近では、コンピューターで画像も送れますが、音声部分だけの放送に該当するような内容のものを視聴していらっしゃる方、大変多くなってまいりました。

 最近のコンピューターのオペレーションシステムによりますと、リストが全部提示されまして、そして外国の放送局、インターネット放送ですが、それを含めて局名がずらっと並んでいる。中には、外国において一般に放送されているのと同等の内容をネット上でまた送信している、そういう送信者も見受けられるようになってまいりまして、そのリストをクリックするだけで受信できるということで、言ってみれば特定の、通信、一対一の関係といっても、内容的にも放送に非常に近くなってきた。

 今後このようなものをどうするのか、ましてやそれが外国から送信されるようなものをどうしていくか、大変に問題は深くなってきておりまして、この点について、私どもも早期に法制化を図ることができるかどうか、幅広く知見を求めて、また外国の事例等を見ながら、検討をいたしております。

 ただ、今のところ、外国においてこれらを規制するような形の法制というのはないわけでございまして、規制する方向がよいのか、放送というものの考え方を拡大するのがいいのか、いろいろな対策があると思いますが、その点について、また委員の御意見も含めて、当委員会での御議論も踏まえながら、慎重に検討を重ねてまいりたいと存じます。

高木(陽)委員 小坂副大臣、いつも前向きな御答弁、それは何とかしなきゃいけないという問題意識もすごく高い。ただ、自分自身も思っているのは、余りにもスピードが速くて、当初は何年後かにできればいいだろうなという思いが、今、副大臣がお話しになったように、もう現実はどんどん進行していて、本当にその垣根がなくなってしまった、果たしてどちらの法律に当てはめればいいのか、こういった問題。これが、今後、ただ単に発信者側だけがどちらの法律の枠内、こういう問題ではなくて、今回のこの法案と同じように、被害が出てくる、そのときにどちらの法律に基づいてどれだけそのブレーキがかけられるかですとか、そういった問題が出てくると思うんですね。

 ですから、今回は、この第一歩のプロバイダー等に対する損害賠償の問題または情報開示の問題でしたけれども、今後、さらにもう少しトータルな部分での法制化を含めてしっかりと検討をしていただきたい、これを要望いたしまして、答えは結構ですので、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。通告に従い、順次質問していきたいと思います。

 まず、米国のIT産業不況の影響を直接こうむるなど、我が国の情報通信に係る産業は大打撃を受け、大幅な生産削減や人員削減を強いられております。今回の不況は、従来の在庫調整による受給バランスが回復すればもとに戻る循環型のものではなくて、海外に生産拠点を移すことによる製造業の空洞化現象による構造的なものでありまして、完全にもとの生産レベルに戻らないのではないかと危惧する識者も多いわけであります。

 このようなときこそ、政府は公正な競争原理を一層強化し、今取り組んでいるIT改革等による新規需要の開拓で、この構造不況を早く回復させる責務があると思います。しかしながら、その実行手段であるe―Japan戦略の重点政策分野は進行が遅く、早期達成が期待されますけれども、大きな不安を感じざるを得ません。

 昨年十一月、本会議にIT基本法が上程された折、私は、世界各国がインターネットを初めとするIT戦略を進める中で、我が国が大きく立ちおくれている現状をどう改革していくのかの具体策が明らかにされていないなど、危機意識が不足していることを指摘いたしました。したがって、今回のIT不況は、単に経済環境の悪化だけから来ているものではなくて、政府の基本政策がこのIT不況を底支えし切れていない、こういう点にも大きな課題があると思っております。

 また一方、今まで快走してきた携帯電話も飽和感が強まるなど、通信産業は転機を迎え成長神話は崩れつつある中、巨大な市場支配力とブランド力を持つNTTのなりふり構わぬ安値攻勢や、ドコモの海外投資の失敗等、NTTの経営戦略は最近、国民から疑問視されているのではないでしょうか。また、宮内さんが会長を務められる政府の総合規制改革会議は、十二月上旬にまとめられるようでありますけれども、その意見書の原案ではNTT持ち株会社は廃止の方針と聞きます。まさに今こそ、IT改革など政府の情報通信政策の真価が問われるときであります。

 このような基本認識を踏まえ、本法案の質疑の前に、競争政策の促進に係る基本的な課題を幾つかお尋ねいたしていきたいと思います。

 電気通信事業法の改正の際には、規制緩和と公正な競争促進の観点から、幾つか質問させていただきました。公正な競争を促進する事業環境が整わない場合、政府はNTTの完全資本分離やNTT持ち株会社の出資比率引き下げの検討を早急に行うべきであることを私は指摘いたしました。

 その後、総務省は五月に、NTTに対し自主的実施計画の作成を要請し、地域通信網開放の徹底、ドコモ、NTTコムへの出資比率引き下げ、NTT東西の経営合理化等を盛り込むよう求めました。また、公正取引委員会とともに九月に電気通信分野における競争の促進に関する指針案を提示するほか、NTTグループのみならず、NHKについても放送政策研究会においてネット配信のあり方等を検討中であるなど、積極的に取り組んでおると私は思っております。

 最近、片山大臣は、NTTに提出を求めている通信市場の競争促進に向けた自主的な実施計画に関しまして、NTTドコモ現六四・〇六%、NTTコム現一〇〇%への出資比率の引き下げを求めておりまして、過半数以下を示唆しているのではないかと思っております。

 そこで、質問でありますけれども、今申し上げたNTTの自主的実施計画がやっと公表されましたが、子会社への出資比率引き下げの水準や時期等が不明確でありまして、今後、NTTをどう指導していくのでしょうか。

 また、あわせて、電気通信事業者区分の見直しなど、さらなる競争促進政策について、情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会ですか、これによって、どのような方向づけをしようとしているのでしょうか。あわせてお伺いいたしたいと思います。

小坂副大臣 まず最初の、NTTの自主的実施計画につきましてでございますが、この自主的な実施計画を十月二十五日にNTTは公表いたしました。それを受けまして、私ども総務省は、電気通信市場の公正な競争を促進する観点から、翌日にNTTに対しまして、同計画の着実かつ速やかな実施を要請いたしました。

 持ち株会社のNTTコミュニケーションズ及びNTTドコモに対する出資比率や役員兼任の問題につきまして、NTTは、グループ各社の業務運営上の自主性を最大限尊重することを基本として、NTTグループをめぐる市場環境等が激変する中で、株主利益の最大化の観点から事業運営上の必要性や株式市況の動向等を勘案しつつ、速やかに結論を得るよう引き続き検討するといたしております。総務省といたしましては、この検討結果を報告するよう要請するとともに、計画全体の進捗状況についても、実施後一年をめどに報告するよう求めているところでございます。

 いずれにいたしましても、本計画が着実かつ速やかに実施され、所期の目的が達成されることになるよう、今後とも注視してまいりたいと思っております。

黄川田委員 NTTの自主的経営計画では……(小坂副大臣「失礼しました」と呼ぶ)後段の問いにまだ答えていませんね。では、お願いいたします。

小坂副大臣 失礼しました。二問あわせていただいております。

 情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会において、今後の、一種、二種を含めてどのような検討がされているかということでございますが、本年の八月から、情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境の在り方に関する研究会という研究会を開催いたしておりまして、この議論を踏まえまして、十月二十四日に主論点、主要な論点を公表したところでございます。

 この中には、第一点といたしまして、ネットワーク保有事業者がコンテンツ事業に進出する等の、いわゆる垂直統合型のビジネスモデルに対応した競争環境整備のあり方について、また、第二点目として、ネットワークあるいはプラットホーム、アプリケーション等、各事業分野における水平的な競争環境の整備のあり方について、さらには、一種、二種の事業区分も含めた電気通信事業における競争の枠組みのあり方ついて、このような三点について、研究会において、幅広い観点から今後の電気通信制度のあり方についての議論をいただいているところでございます。

 研究会においては、この公表した主要論点を踏まえてさらに議論を深めていくことになっておりまして、年内を一つの目途にいたしまして、中間報告として一定の方向性を取りまとめていただくように考えております。

黄川田委員 前段のNTTに関しましては、収益基盤が揺らぐといいますか、業績悪化という形の中で競争促進策を受け入れなかったという面があると思いますけれども、いずれ、結論の先送りをしないように、よろしく御指導をお願いいたしたいと思います。

 次に、電波監理政策についてお尋ねいたしたいと思います。

 現在、電波資源は、携帯電話の急速な普及に代表されるようなIT革命の進展に伴いまして、大変深刻な混雑状況になっている。そして、これは電波が余っていた時代のぜいたくな割り当ての結果、その多くがそのまま残っているのが原因であります。また、従来の電波政策は、土地利用に例えて言えば、しっかりとした土地開発計画がない状態で、駅周辺に工場、商店、住宅などが虫食い状態で開発されているのによく似ているなどと、先般の電波法改正の際に私は述べさせていただきました。

 また一方、総務省は、電波の利用状況を公開し、需要の多い通信事業者から要望があれば、再配分する考えを表明しておられます。無線アクセスなどに代表されるような電波を利用した新しいサービスの実現が、このIT不況の克服に寄与するとも考えられるところであります。そのため、電波資源が有効に活用されることを切望するものでありますけれども、ドッグイヤーと言われるIT革命の時代に迅速に対応するためには、電波資源のより一層の効率的な利用を図る政策が求められております。

 そこで、このような問題認識を基本的にどのように考えておられるでしょうか。また、来年の通常国会に電波法改正を提出すると耳にしておりますけれども、その骨子はどのようなものでしょうか。これまた、あわせてお伺いいたします。

小坂副大臣 御指摘のように、電波事情は大変逼迫をいたしておりまして、周波数の再配分等が必要だ、委員も御指摘のこういう問題意識は、私も共有しているところでございます。

 この逼迫状態を、一体どのような状況になっているのか、まず調査をしなきゃいけないわけでございまして、再配分の前提として、電波がむだなく効率的に使用されているかどうか、この利用状況調査をしたいと思っております。その利用状況調査をした後、それを国民の皆さんに公表して、国民の皆さんの理解と協力を得ながら、さらなる再配分の方式を検討していくことが必要、このように考えております。そのために本年九月から学識経験者から成る調査研究会を開催いたしまして、電波の利用状況の調査、公表の具体化について検討を進めております。

 この調査会において検討いたしまして、虚偽報告、報告書を定めても虚偽の報告をされてしまっては実態がわかりませんので、虚偽報告等に対する罰則の導入等を含む報告書の骨子案を先日、取りまとめたところでありまして、現在、パブリックコメントにかけております。

 今後、この調査研究会におきましては、パブリックコメント等を踏まえた上で、本年末までに結論を取りまとめる予定でございます。それによりましては、ただいま御指摘がありましたが、来年、通常国会という御指摘でありますが、時期はまだ確定はいたしておりませんが、この検討結果を踏まえまして、電波法の改正を含めた制度整備を図っていきたい、このように考えております。

 いずれにいたしましても、今後、無線アクセス等の新たな電波利用サービスが拡大することが予想されますので、これに的確に対応できる体制をとってまいりたいと考えております。

黄川田委員 お話をいただきましたけれども、国や地方公共団体の防災用無線など、割り当て周波数帯には見直しができるものがあるのではないかということを、ここでちょっと指摘しておきたいと思います。

 次に、電柱等の規制緩和についてお尋ねいたしたいと思います。

 我が国の電気通信分野において、ラストワンマイルにおけるNTTの独占状態が続いているのが実態であります。高度情報通信ネットワーク社会の実現のためには、この分野における競争促進をすることにより、国民にとって安価で使いやすいネットワークインフラの早急な構築を促進していくことが必要であります。

 したがって、この分野へのNCC、新規参入事業者の参入を促進しまして、電気通信サービス競争を活性化させるためには、NCCが電柱や管路を円滑に利用できる環境にすること、すなわち、線路敷設の円滑化が必要不可欠であると思います。

 そのため、電気通信事業法の改正、電柱、管路等の使用に関するガイドラインの策定等、順次さまざまな対策が講じられてきたと思っております。しかしながら、現状は、今年から電柱の開放は義務づけられましたけれども、具体的な敷設条件が厳し過ぎるとNCC側からの批判が多かったように思われます。最近、電柱に架する電線同士の距離間隔を今まで原則三十センチ以上としてきた、いわゆる三十センチルールの参入障壁を緩和する予定と聞いております。

 そこで、質問でありますけれども、この緩和策がNCCによる線路敷設を一層促進すると思いますけれども、この規制緩和によって、線路敷設にどのような効果が具体的に期待できるでしょうか。この点について、総務省の見解を求めます。

鍋倉政府参考人 先生御指摘のいわゆる三十センチルールでございますけれども、これは有線電気通信設備令第九条におきまして、そもそも三十センチあけるというその目的でございますけれども、工事や保守を行うときの作業性を確保するという点、それからもう一つは、架空電線同士の接触等による損傷を予防する、そういう観点から、離隔距離として三十センチを規定しているものでございます。

 ただ、現行制度上、新規事業者がこの間隔三十センチ以下で通信ケーブルを設置するには、先に添架している他の通信事業者の承諾を得ることが必要であるということでございますので、これが公正な競争を阻害するおそれがあったということでございます。

 このため、年内施行を目標としまして、今、この設備令の改正を考えておりまして、既存設備に損傷を与えないなど、客観的要件を満たせば添架を可能とするように改正をする予定でございます。現在、改正案についてはパブリックコメントを求めているところでございます。

 この改正が実現しますと、電力会社やNTT地域会社が保有します電柱に、新規参入事業者が通信ケーブルを添架しやすくなりますので、御指摘のとおり、アクセス系ネットワークにおける競争促進が図られるものというふうに期待をしているところでございます。

黄川田委員 ぜひとも新規事業を促すような積極的な対応を要望しておきたいと思います。

 それでは話題を変えまして、NHKの事業経営についてお尋ねいたしたいと思います。

 最近の新聞報道によりますと、NHKは、関連子会社を通じて手がけていた中国で経営しておりますホテル事業から撤退するとのことであります。国民からの受信料で成り立っている公共放送のNHKが、放送業務と直接関係がないホテル事業を海外で行っていることは、私にとっては驚きであります。

 NHKエンタープライズ21など、子会社、関連会社九社が三一%、約二億一千六百万円も民間会社九社とともに出資しております。NHKのような巨大な放送事業者が、本来の目的以外の分野で事業を行うことは、特殊法人として業務が肥大化し、余りよくない方向に向かっているのではないかと私は思っております。

 総務省によりますと、一九九〇年、北京でアジア・オリンピックが開催された際、放送機材のレンタル会社設立の折、中国側から抱き合わせ投資として、ホテル投資を強要されたとのことでありますけれども、これは間々よくある話でありまして、安易に受け入れたNHKの経営の甘さのあらわれでもあるのではないでしょうか。

 先般、独立行政法人等の情報公開法の質疑に際しまして、特殊法人としてNHKが公開義務から除外されているが、NHKも公開の対象に加えるべきであると、私は主張いたしました。また、会計検査院も毎年、検査を行っておりますけれども、表面上は特段問題がなかったとのことであります。かつ、総務省によりますと、放送法上、子会社の出資はNHK本体のものではなく、NHK予算の国会承認は必要ないが、NHKの節度ある子会社運営に任されているとのことであります。しかしながら、NHKの経営層の自覚、あるいは総務省の指導に甘さがあるのではないかと私は思っております。

 一方、最近、行革推進事務局は、NHKと子会社間の不透明な随意契約や民業圧迫の懸念があるインターネット配信など新規事業を問題視しているとも耳にしております。

 そこで、以上の観点を踏まえまして、公共放送の大役を担うNHKが、このような問題を抱えていることに対しまして、放送法の趣旨にかんがみ、総務大臣の見解をお伺いいたします。

片山国務大臣 今、黄川田委員御指摘の件は、平成二年の北京アジア大会の際に、日中の合弁事業の日本側の共同事業体として、NHKの子会社と百貨店、電機メーカー等がつくりました、日中メディア交流センターのことであると承知いたしております。

 これは、委員も言われましたけれども、中国では放送事業単独への外資導入を禁止しておりますので、ホテル事業とあわせて行うのが通例化しているというんですね。そういうことがありましたので、ホテル事業とあわせてやる、もともとは放送関連事業をやる会社なんですけれども、ホテル事業もあわせてやった、こういうことでございますが、今般、中国側の番組制作ノウハウが大分育ってきましたので、合弁解消に踏み切った、解散は明日の株主総会で決定する、こういうふうに我々は聞いております。

 また、NHKの情報公開につきましてもお話がありましたが、NHKは政府の諸活動としての放送を行うために設立された法人ではありませんので、独立行政法人だとか一部の特殊法人等の情報公開をやるようにしております今回の独立行政法人等情報公開法案、当委員会で御審議いただきまして今参議院に送っておりますけれども、その対象にはしておりませんけれども、同じ仕組みで自主的に情報公開をするというNHK側のお話でございまして、それはちゃんとやってほしい、こういうふうに我々は言っているわけであります。

 それから、行革の事務局は、八月十日にいろいろ検討過程の発表がありまして、その中で、民間と競合する新たな業務の拡大を抑制する仕組みを検討したらどうかとか、子会社等との随意契約はほかに委託先がない場合に限ってくれとか、こういう注文を出しておりますが、これはこれでNHK側も十分承知いたしております。

 いずれにせよ、NHKは公共放送ですね、受信料を財源とする特殊法人、公共放送でございますから、その子会社がどうあるのか、その業務範囲がどうあるのか、あるいはインターネット活用について、放送と通信の融合という話もありますけれども、これもどうあるのか、そういうことについては早急に検討することが必要だと考えております。

 今、総務省の中に研究会をつくっておりまして、研究会が中間的な意見を取りまとめましたので、今パブリックコメントにかけております。その結果を踏まえまして、年内には一定の考え方の整理を図って、場合によったら発表いたしたい、こういうふうに考えております。

 御指摘の点は念頭に置きながら、検討してまいります。

黄川田委員 NHKには、子会社とかあるいは関連会社を通じた業務の拡大ではなくて、本業に邁進していただきたい、こう要望しておきたいと思います。

 それでは次に、将来のIT産業の底辺を厚くする上で重要な学校教育の情報化問題に移っていきたいと思います。

 御案内のとおり、IT戦略本部は、e―Japan重点計画の柱の一つに学校教育の情報化を掲げ、二〇〇一年度までに全公立学校をインターネット接続、すべての公立学校教員がPC操作に習熟、一千人のIT関連特別非常勤講師の任用の三項目を挙げておられます。

 また一方、文部科学省は九月に、学校教育における情報教育の実態等に関する調査結果、三月末調査で、公立学校、計三万八千九百九十五校でありますけれども、これを公表いたしました。それによりますと、インターネット接続状況は、小中高全体を平均して八一・一%接続されているのに対し、コンピューターで指導できる教員の割合は四〇・九%と低く、特に、実際にインターネットを利用して授業を行った経験のある教員は二二・七%と、ほぼ半分にとどまっております。

 そこで、質問でありますけれども、今年度は学校教育での情報化目標の達成が不可能な状況でありまして、五年で世界に冠たるIT国家をつくり上げる目標が、最初から何かつまずいたようになるのではないでしょうか。この原因はどこにあり、また、どのように改善を図るつもりか、文部科学省の見解をお伺いいたしたいと思います。

加茂川政府参考人 学校教育の情報化についてのお尋ねでございます。

 e―Japan重点計画におきましては、お話にもございましたように、二〇〇一年度中に全教員がコンピューターを操作でき、その半数はコンピューターを用いて子供たちを指導できるようにすることといたしておるところでございます。

 これを受けまして国としましては、都道府県レベルのリーダーを養成することを目的といたしまして研修を実施しておりますし、都道府県、学校、各段階ごとにも教員研修を体系的に実施しておるところでございます。

 この結果、平成十二年度、すなわち、平成十三年三月末現在でございますが、コンピューターを操作できる教員の割合が七九・七%、また、コンピューターを使って指導できる教員の割合が四〇・九%になってございます。この数字は、前年度、十一年度と比較しますと、私どもは順調に伸びてきているのではないかと考えておるところでございます。国、都道府県等を通じまして計画的に研修事業等を進めているところでございまして、平成十三年度末、来年三月までの目標はほぼ達成できる見込みにあるものと考えておる次第でございます。

 さらに、e―Japan二〇〇二プログラムにおきましては、学校教育におけるITの活用を一層推進するため、教員のIT指導力の一層の向上を図ることとされておるところでございます。

 これを受けまして、来年度、平成十四年度以降でございますが、新たな目標といたしまして、平成十七年度を目標に、おおむねすべての公立学校教員がコンピューターを活用して指導することができるようにすることを目指しまして、国、都道府県、各学校における研修におきまして、コンピューターの操作技能の習得というレベルから一段進めまして、各教科でのコンピューターやインターネットを活用した授業実践を重点化することにいたしておるところでございます。

 今後とも、関係する研修事業を通じまして、教員の指導力、資質の向上を図ってまいりたいと思います。

黄川田委員 パソコンなんかは特別教室にありまして、普通教室とかへの導入、あるいは校内LANでありますか、そういうものの整備も大事だと思いますので、特段の取り組みをお願いいたしたいと思っております。

 最後に、本題のいわゆるプロバイダー法に移りたいと思います。時間がなくなってまいりましたので、一点だけ、お聞きいたします。

 本法案の意義と申しますか、本法案は迷惑メールなどは対象外で、狭い範囲に限定し過ぎているように思います。以前、電気通信役務利用放送法の質疑の際に、通信と放送の融合分野で技術進歩に法体系の整備が追いついていけないことを指摘いたしました。今回も、近い将来、本法案の周辺で、さまざまなコンテンツの充実等とともに、対象領域を広げる必要に迫られると想定されるわけでありますが、いかがでしょうか。

 あわせて、インターネット等の高度情報通信ネットワークにおける違法な情報の流通に対応するため、総務省としてどのような形で取り組んでいこうとしておるのか、伺いたいと思います。

小坂副大臣 まず、委員の、第一点の点につきまして、この法案は、私どもとしては第一歩を踏み出したものだと思っております。

 そういう中で、迷惑メールのような別の形態で個人の権利侵害が起こっていると言われるようなものにつきまして、今後どのように対応するかにつきましては、当委員会における議論、あるいはまた、私どもも諸外国の事例等も研究いたしまして、同法案の修正という形をとるか、どのような形をとるかは全くわかりませんが、いずれにしろ、こういった違法な情報の流通に対処していかなければならない、このように考えているところでございまして、委員会での御指導をお願いいたしたいと思っております。

 また、今後、インターネット等の高度情報通信ネットワークにおける違法な情報の流通に対応するために総務省としてどうするかという点でございますが、放送法、電気通信事業法あるいは今回の法案等、いろいろな法律の枠ではとらえ切れない進歩というものは、前回、委員からも御指摘がありましたように、事実の方がどんどん先行していくという情報通信の分野でございますので、諸外国の事例等をさらに注視しながら、委員会におけるいろいろな御指摘等も踏まえて、新たなインターネット等のネットワーク上の情報流通に適切に対応できるような法制度の研究を進めてまいりたい。

 総括して言えば、ドッグイヤーとも言われる、あるいはそれ以上のスピードで進むと言われる情報通信につきましては、予見を持たずに、常に事実を注視しながら適切な対応を図ることが必要だ、そのような心構えで私ども、対応してまいりたい、このように考えております。

黄川田委員 いずれ、この法案の施行によりまして、プロバイダーが過度の負担とならないように、特段の配慮をお願いいたしまして、私の質問を終わります。

御法川委員長 次に、矢島恒夫君。

矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。

 私、インターネット上での名誉毀損だとか著作権問題あるいはプライバシー侵害、こういう違法な情報から国民の権利をいかに守るか、その一方で、一人一人の市民が情報の発信者になり得る、こういうインターネットの大きな特性を生かして自由な言論をいかに保障するか、こういうことがIT社会、ネットワーク社会の最重要課題の一つであると思うのです。ネットのルール化は、何よりもこういう観点から検討する必要があると思います。

 今回の法案の内容の一つは、違法な情報の取り扱いをめぐってプロバイダーの免責事項をルール化するものですが、プライバシーの侵害や著作権の侵害がインターネット上で起こった場合には、後の損害賠償によって回復できないような重大な問題を生じさせることになるわけです。

 ところで、現在、プロバイダーは、違法情報に対して事後的に何らかの措置を講じることができる立場にある。違法情報だと指摘された情報を削除するかどうかについて、表現の自由との関係で、そのルール化と対応にこれまでも取り組んでまいりました。

 そこでお尋ねしたいのは、今回プロバイダーの免責事項を規定することは、こうした今までのプロバイダー自身の対応というものを弱めるものであってはならないと思うのです。今回のルール化がプロバイダーの免責を定めることによって、違法情報から国民の権利侵害を防止するのにどのように役立つことが期待されるのか、その点についてお答えいただきたい。

鍋倉政府参考人 先生の御指摘のとおり、これまでもプロバイダー等の団体では、ガイドラインや契約約款モデル条項などを作成しまして、違法情報に対して自主的な取り組みをしておりますし、一定程度の効果を上げてきたというふうに私どもも思っております。

 ただ、これらには一定の限界がございまして、プロバイダー等は、権利を侵害された者との間では契約関係がない場合が多いわけでございますので、これらの者との権利関係を約款で規律することはできないということ、それからまた、約款に基づく自主的な措置であるということから、すべてのプロバイダーがモデル約款等に則した措置をとっているというものでもない、そういった限界がございます。

 そこで、この法案を整備することによりまして、プロバイダー等の責任が明確化をされますので、他人の権利を侵害する情報に対するプロバイダー等による自主的な取り組みが行いやすくなるというふうに私どもは考えております。ですから、そのため、プロバイダー等による迅速かつ適切な対応が期待できるのではないかというふうに考えております。

矢島委員 この法案の第三条の二項によりますと、プロバイダーは、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由を示して侵害情報の送信を防止する措置を求められた、そういうときには、クレームがついた情報の発信者にその情報の送信防止措置をとるかどうかを照会する、そして、七日間待っても発信者から反論がない場合にはその情報を削除しても賠償の責めを負わない、こうなっているわけですが、諸外国にこのような規定があるのかどうか、わかりましたら、お答えください。

鍋倉政府参考人 こういった照会手続の立法例としましては、著作権分野に限ったものでございますけれども、類似の手続としまして、アメリカのデジタルミレニアム著作権法がございます。

 ただ、この法律では、著作権者から一定の要件を満たす通知があった場合には、直ちにその通知に係る情報の削除等をしても、発信者への連絡等の手続を踏めば、プロバイダー等は当該情報を削除した等についての責任を問われないというふうにされております。

矢島委員 今、アメリカの例として、DMCAですか、著作権法、こういう手続の問題があるということですが、日本の場合には、著作権の分野に限らずに、分野横断的にいわゆる広い免責規定になっていると思うのです。分野横断的な規定となっているのは、どういうところに違いがあるのか、その辺についてお答えください。

鍋倉政府参考人 私ども、この手続を定めますときに、やはりアメリカのデジタルミレニアム著作権法の手続も参考として検討いたしました。

 先生御指摘のとおり、これは分野横断的になっていないわけでございまして、著作権分野に限っているわけでございます。一方、調べてみますと、アメリカの手続というのは、被害者、いわゆる著作権者からの通知の要件に陳述書を求めております。虚偽の陳述書は法廷侮辱罪となるというのがアメリカのルールでございますので、通知の乱用というのに対して制度的な担保があるということでございますので、我が国では同じように規定するわけにはいかないということで、そういったことを考慮しまして、今回の手続を定めたものでございます。

矢島委員 今回の立法の趣旨というのは、免責規定をルール化することによって、プロバイダーの違法情報に対する責任ある自主的な取り組みをさらに推進していく、ネット上での違法情報から国民の権利を守る仕組みを整備していくということにあると思うのです。

 日弁連の「サービス・プロバイダの法的責任における判決執行等の問題に関する意見」、ことしの四月二十日に出しておりますけれども、その中で、サービスプロバイダーに対する免責の範囲及び方法は、被害者、権利者の法益を過度に制限することがあってはならないとしています。この角度から、サービスプロバイダーの免責の範囲や方法というのは、点検を受けながら見直すべきは見直すということが必要だと思います。

 このことについては、もう既に前の委員が質問し、答弁を得ていますので、もう一つの問題は、発信者情報の開示の仕組みをつくることがこの法律の中身となっているわけですが、発信者情報というのは、通信の秘密を構成するものですから、その扱いは極めて慎重を要すると思うわけです。

 調査室がつくった資料には、テレコムサービス協会のホームページからとったインターネットにおける苦情集というのが載っておりました。そこには、信用毀損の例として、フォーラム内に登録した発言により信用の低下を余儀なくされたとして、宗教団体から当該発言の削除とか、あるいは関係者の氏名、住所、電話番号、この開示を求める申し入れがあった、このプロバイダーは、通信の秘密の保持、プライバシー保護の観点から開示できないとしたと思います。

 大臣に最後にお聞きしたいのは、安易な発信者情報の開示というのは、通信の秘密との関係で厳密に運用をされなければならないと思うわけです。大臣のお考えをお聞かせいただきたい。

片山国務大臣 この件は、矢島委員が言われるとおりでございまして、私も、開示に当たっては慎重な対応、慎重な判断が必要だ、こういうふうに考えます。

 したがいまして、この法案では、発信者情報の開示を請求できる要件を厳格に規定することといたしておりますし、また、要件を満たすかどうか微妙なケースにおいてプロバイダーが誤って開示してしまうことのないよう、故意または重要な過失がない限り、開示しないことによる損害については賠償責任を負わない、こういうことにいたしているわけであります。法案の仕組みはそうなっておりますし、運用に当たりましても、規定の趣旨が十分理解され、適切な運用が図られるように努力してまいりたいと考えております。

矢島委員 この法律は、やはり、プロバイダーの免責についてルール化するものでありますけれども、それは、プロバイダーの保護が目的ではなくて、インターネット上の違法情報から国民の権利侵害というものを守っていく、インターネットを健全に発達させるためのルールづくりの一環だと思います。

 先ほど来、こうしたルールは第一歩だ、これからいろいろと考えながら改正したり、あるいは内容を充実させていくんだという御答弁もありました。今回の法案というのはそうした努力の一つとして出てきたものですから、この観点から、今回のこのルールもその運用だとかあるいはルール自体も常に点検して、改善していくことにぜひ努力していただきたいということを申し上げたいと思います。

 次に、NTTの問題について、残りの時間でお聞きしたいと思います。

 去る十六日の総務委員会で、春名議員がこの問題を取り上げました。そのときの総務大臣の答弁の中で、今回のNTT東西は、私もその決算の状況を聞いてびっくりしたんですけれども、相当悪くなっていますね、これは、世界的にというか、我が国の中でも競争が激化しているというんでしょうか、料金の引き下げ競争になっていますし、こういう答弁がありました。

 そこで、実は東西NTTの赤字、つまり、状況が非常に悪くなっているという問題でお聞きしたいのです。NTTはことしの春、今回の計画、いわゆるリストラ計画の出発点になった新三カ年計画を出しましたが、その中で、東西地域会社は事業者間接続料金やユーザー料金の大幅値下げで厳しい財務状況にあります、こういう表現になっております。つまり、マイラインなどのユーザー料金だけじゃなくて、もう一つ、この事業者間接続料金の大幅引き下げというのが理由に挙がっているわけです。

 そこで、長期増分費用方式というのを導入したときに、旧郵政省からいろいろな資料を私、要求して出していただきました。NCCの売り上げに占める接続料金の支払いの割合、そういうようなものだとか、あるいはNTT長距離部門、現在コミュニケーションズになっておりますが、日本テレコムなどの長距離系NCCの売上高と支払った接続料金の額、売り上げに占めるその割合、こういうものを資料としていただきました。

 そこで、長期増分費用方式を導入して、これがどうなったかという点を明らかにするために、NTTコミュニケーションズと長距離系NCC、移動体通信あるいはケーブルテレビ、地域系のNCC、それぞれの接続料金の額とそれから売り上げに占める割合、これを総務省、示していただきたいと思うのです。

鍋倉政府参考人 十二年度の数字で申し上げますけれども、長距離事業者三社の、これは支払う額でございますけれども、三千五百四十八億円、それから、ちょっと先生、お尋ねがございませんでしたが、携帯電話会社がございますので、これは四グループで八百三十六億円、それから地域系の事業者、これは二社が三百五十三億円でございます。

 それで、収入に対しての占める割合でございますけれども、十二年度では、長距離事業者が三〇・二%、それから携帯電話事業者が一・六%、地域系事業者が四六・六%でございます。

 前年度との比較でございますけれども、これは接続の形態が変化していますので、単純に比較ということは必ずしも正確ではないのかもしれませんが、一応申し上げますと、その前年度で長距離事業者が三五・五%、携帯電話事業者が二・八%、地域系の事業者が五〇・九%ということで、いずれも前年度よりも割合は少なくなっております。

矢島委員 いずれも前年度よりも低くなっているというのは、この長期増分費用方式を導入したことによって、NTTに支払うべき費用が減少しているということです。

 そこで、私、昨年の四月二十日に電気通信事業法の改正案が逓信委員会に出されたときに、この問題で質問いたしました。当時の八代郵政大臣だったと思いますが、私の質問に答えて、郵政省としては、NCCが電気通信事業者としての社会的責務を認識していただいて、通信料金の引き下げや新サービスの提供によって、事業者間の接続料金の引き下げのメリットを結果として国民利用者に還元することを私どもは期待しておりまして、また、そのように促してまいりたいものだ、このように答弁されました。

 そこで、NTTが十月二十五日に発表しました「当面の経営課題に対するNTTの取り組み」、先ほどもちょっとこの問題が出ましたけれども、総務省が要請したいわゆる自主計画、これによりますと、二〇〇〇年度においてNTTが実施した値下げはユーザー料金、それから事業者間接続料金合わせて二千九百億円、こう出ております。事業者間接続料金はNTTコムを含めて千九百億円、こういうふうに書いてあります。マイラインなどのユーザー料金の二倍近くを、NTT東西は事業者間の接続料金の値下げというものをやったわけです。この千九百億円のうちの七百億円がNTTコムの値下げ分です。

 NTTコムとしては、結局、この接続料金の値下げによって何もしないで七百億円の利益を上げたと。問題は、そのNTTコムが何をしたかということなんです。先ほどの大臣答弁でも、国民利用者に還元するということを促してまいりたいというのが郵政省の立場だったわけです。

 ところが、NTTコムはヴェリオというアメリカのデータ通信会社に投資した。ヴェリオの買収には約五十五億ドル、日本円にして約六千億円かかった、現金で買い取ったと。それに伴う増資をNTTは二〇〇〇年の九月二十九日に行いました。約三千二百億円を調達しました。差額は内部留保だとかあるいは利益から補てんされたと。

 きょうの日経新聞を見ますと、このヴェリオの投資の失敗というのは五千億円に上るという記事が載っておりました。つまり、ヴェリオへの投資あるいは損失の穴埋め、こういうものに、いわゆる接続料金を引き下げたことによって生じたところの不労利益といいますか、七百億円がつぎ込まれている。つまり、国民の利益に還元されていない。この問題についてどのようにお考えか、お答えいただきたい。

小坂副大臣 基本的には、企業はその株主に対して、また利用者に対して利益を還元するということが必要だというふうに思っておりますが、当NTTコムは、今御指摘のように、平成十二年九月に、情報通信のグローバル化に対応いたしまして、国際競争力の向上を図るべく米国のヴェリオ社を買収した、こういう事実があるということでございます。

 また、最近の海外市場におけるIT不況の影響によりまして、ヴェリオ社の出資に対する評価の見直しについて種々報道されておりまして、今御指摘のように、日経等でも報道されておるところは承知いたしております。しかし、その具体的な処理については現在検討中と聞いておりまして、その詳細については承知をいたしておらないところでございます。

 いずれにいたしましても、本件は、民間企業の経営の判断の問題というのが根底にございます。また、そういうことに関しての具体的なコメントはこの場では差し控えてまいりたいと思いますが、今後とも健全な財務状況が維持されて、安定的なサービスが確保されるということについて、私どもは大変に関心を持っておりますので、そのようになることを期待したい、このように考えております。

矢島委員 海外投資の失敗、経営判断の間違い、こういう失敗の穴埋めというものにNTTコムの売り上げだとか、つまり、国民の通話料と接続料金の引き下げ分、こういうものが充てられていくということは、まさにこの大臣答弁やあるいはその間の電気通信審議会の答申、こういうものを読んでいましても間違いである、やはりサービスに、国民利用者に還元するということが本筋でなければならない。

 ですから、私は、規制緩和をずっとやって民間の経営を自由にやっていく、こういうのに任せますと、国民のサービスが必ず向上する向上すると、料金値下げの競争が起こって料金は下がりますよとか、いいところだけはずっといろいろ規制緩和の中で出てくるのですが、必ずしも国民サービスが向上するわけでないということを示している一つの事例だと思うのです。

 アメリカでも一部しか導入していない長期増分費用方式を導入してNTTコムやNTTドコモを応援した、その結果がこういう事態になっているわけです。そして一方、東西NTTの状況はといえば、先ほど申し上げましたように、接続料金引き下げで千九百億円の売り上げを失った、こういうことになるわけです。ユーザー料金の二倍の収益減ということになるわけです。

 大臣は、NTT東西が今大変な状況にありますということを十六日におっしゃられました。その大変な状況をつくった主要な原因の一つに、この接続料金問題があるということはお認めになりますか。

片山国務大臣 接続料の引き下げというのは世界的な傾向ですね。いろいろな意味での、ITを進める上での基本的な要件の一つでございまして、できるだけ努力してもらうということは必要なことだ、私はこう思っておりますが、これはちょっと競争になりますね。競争になりますと、やはり無理をしてもというところがややあるので、そういう意味では、経営の体質に影響を与えたということは認めざるを得ないのかなと思っております。

矢島委員 確かに、東西会社の値下げの三分の二は、この接続料金の値下げというのは客観的な事実だと思うのです。マイライン以上に経営を直撃している。問題は、この政策上の失敗あるいは経営陣の見通しの甘さ、そういう状況の中にあるのに、これを労働者を犠牲にして解決しようというやり方、ここに問題があるのだと。

 十六日の総務委員会で春名議員の質問に答えて、我々が経営の効率化を求めるというのは当然なんですよ、だから、よいものを安く、NTTにそういうサービスを提供してもらうというのは当たり前のことですと大臣は答弁されました。

 我々も、経営の効率化一般を否定するわけではありません。それがNTTの場合、ユニバーサルサービスなどの公共性を切り捨てるとか、地域サービスの切り捨てとか、あるいは労働者へのしわ寄せだとか、こういうことにならないようにすることがNTTの社会的な責務だと私は考えるわけです。

 大臣はNTTの経営の効率化を求めていることをお認めになりましたが、問題は、総務省がどのような経営の効率化を求めているのかという問題です。

 二〇〇〇年、昨年の十二月二十一日の電気通信審議会の答申は、特別に「NTTの在り方」という項目を立てています。「東・西NTTの在り方」という項の最初に「高コスト構造の解消」というのを指摘しています。

 中身は、東西NTTは、中高年が高い比重を占める社員構成、NTTグループ内他社・他事業者に比べて低い一人当たりの売上高等の問題が存在しており、高コスト構造解消のための改革が急務である、こう書いてある。その中には丁寧にも、「東・西NTTの年齢別従業員数」という図表が一緒に掲示されています。そして、事業者間接続料金の引き下げなど市場環境の変化を指摘した後で、「従って、東・西NTTが新たな経営環境を踏まえた中期経営改善施策の改訂に早急に取り組むことが期待される。」こうしているわけです。

 そして、わざわざこの答申を参考として添付した自主計画の作成というのを、五月に総務省の総合通信基盤局長名でNTTに要請した。その中で、中高年が高い比重を占める社員構成を何とかしなさい、余剰人員を何とかしなさい、つまり、中高年をアウトソーシングしなさい、こういうふうに総務省はNTTに求めたと思うのですが、間違いありませんか。

片山国務大臣 審議会の答申は審議会の答申で、それを参考として添付したことはあると思いますけれども、我々、基本的には、やはり効率的な経営が国民に対する大きな利益になるわけですから、いいサービスを安い料金で提供してもらう、これを求めているわけであります。

 審議会はいろいろなことを言ったのでしょう。それは、言うのは審議会の独自の判断だと私は思いますけれども、労働条件について我々がくちばしを入れようと思っているわけではありません。トータルとしての経営の効率化でございまして、それは、生産性の問題、いろいろなことがあると私は思いますね、そういうことを求めたわけでございますので、そこのところは直に労働条件や給与と、あるいは今の中高年云々と結びつけて考えているわけではございませんので、念のため申し添えます。

矢島委員 局長名で出されたそのNTTに対する要請は、一般的な経営の効率化ではなくて、中高年をアウトソーシングしなさいという方向の要請になっているのですよ。ですから、そういうことを総務省はNTTに要請している、それによって出てきたのがいわゆるNTTのリストラ計画だ、こう言えるわけです。

 昨年の十二月二十一日の答申は、これまで日本のいわゆる電気通信事業の中核を支えてきたところの中高年齢の労働者のねらい打ち、これを事実上要請した。NTTは、一般的な合理化ではなくて、五十一歳以上の労働者の賃金カット、これを脱法的に行おうという、この答申にこたえたわけです。この脱法的なアウトソーシングのやり方というのはNTTが考えたものですけれども、中高年をターゲットにしたアウトソーシングという設計図は、この要請文の中で総務省がかいたわけです。

 これは春名議員が、みちのく銀裁判の判決、これを引きまして批判しました。労働条件の不利益変更というルール破りだけじゃない、年齢による差別という憲法、労働基準法の根本にもかかわる問題を含んでいるという点を指摘したわけです。

 総務省とNTTによるこの大リストラ計画は到底認められないということを主張しまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

御法川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 インターネット等の普及は、行政や企業の情報公開、あるいはまた国民の知る権利の拡大、こういったプラスの面をもたらした反面、違法な情報がインターネット上にはんらんして社会問題にもなってきているような現状でもございます。

 そういった中、インターネット上の名誉毀損などの人権侵害に対して適切な救済手段が必要であるわけでございます。ですから、明らかな人権侵害を含む情報の発信者に関する情報を被害者が知ることができる、そういった法的な制度の必要性、これは我々はもう十分に必要性があるということは理解しているわけでございます。

 しかし、この法案には、その運用をもし誤るようなことがあれば、重大な新たな人権侵害を招きかねない問題点が存在していることも指摘せざるを得ないわけでございます。これは、各議員がほぼ集中的にこの点を心配されているわけでございます。

 この法案四条、権利侵害情報について、被害者がプロバイダーに発信者の氏名等の開示を求められるとしているわけでございますが、その要件、人権侵害が明らかであるということ、そしてまた正当な理由があるということ、明確に定められているわけでございますが、しかし、発信者側の意見を聞く手続以外には判断基準は何ら定められていないんですね。各プロバイダーの自主的な判断にゆだねられているわけでございます。

 そこで、重複することがありますが、確認するという意味でもう一度お聞きいたします。権利侵害が明らかであるか否か、あるいは開示を受けるべき正当な理由があるかないか、こういったことはプロバイダーが判断しなければならないんですね。

鍋倉政府参考人 両方とも、裁判上でも、それから裁判外でも請求が可能でございますので、裁判外では一義的にはプロバイダーが行うということでございます。

横光委員 裁判に行く前の、第一義的にはプロバイダーが判断するということでございます。しかし、こうなりますと、私は、これはかなりプロバイダーの事業者の方々には過重な負担が生じてしまうことになったなという気がするわけです。プロバイダーの中には、本当に大手のプロバイダーもあれば、大手はそういった判断をするノウハウというものがあるでしょう、しかし、極めて小さなプロバイダーもある。いろいろなプロバイダーがある中で、一律にこういった判断をせざるを得ないということになってしまう。

 プロバイダーというのは、事業を開始するとき、サービスを開始するときに、まさかこんなことの責任まで負わされるとは恐らく思っていなかったと思うんですね。これはある意味では、インターネットの問題と違って、いわゆる法的な課題になってくるわけですね。プロバイダーの方たちは、法的な専門家ではないわけです。

 そういったプロバイダーが、このような情報開示あるいは削除といった法的要件について適切な判断ができると思っておられるんでしょうか。

鍋倉政府参考人 確かに先生がおっしゃるとおり、プロバイダーが請求の要件を満たしているかどうか判断をする場合に、その要件を満たすかどうか判断が難しい場合というのはあろうかと思います。発信者情報は誤って開示されると取り返しがつかないということも御指摘のとおりでございますので、その開示に当たっては、慎重に判断が行われる必要があるということでございます。

 ということで、この法案では、要件を満たすかどうか微妙なケースにおきましては、プロバイダーが誤って開示してしまうことのないように、故意または重大な過失がない限り、開示しないことによって生じた損害について賠償責任を負わないというふうにしているところでございます。

 私ども、こういった法案の実施に当たりましては、規定の趣旨が十分理解されるように適切な運用をしてまいりたいというふうに思っております。

横光委員 ごらんになったと思いますが、きょうの毎日新聞、この法案のことがこんなにでかく載っている。書かれていることは、私が今心配している点ですね。いわゆる判断が業者任せになっていることに対する心配、そしてまた、安易な削除が横行するんではなかろうか、正当な批判かあるいは正当でないか、いわゆる中傷かという、この判断が非常に難しい、こういった中でプロバイダーの責任というのは非常に過重であるというような内容でございます。本当に通信の秘密と表現の自由というのは私は紙一重だと思いますし、そこを判断しなきゃいけない、まさに板挟み状態だと思うんですね。

 この中に書かれております大手プロバイダーのある法務担当者は「面倒な訴訟に巻き込まれたくないプロパイダーにすれば削除する方向に走りやすくなるだろう」、これは専門家ですよ。専門家が、この法案ができたらこうなるだろうという予測をしております。これは削除する方向、削除のときですね。

 そしてまた、先ほど言いました発信者情報の開示、これも誤ったことをやればということは当然問題ですが、誤っていなくても恣意的に運用するということだってあり得るんですね、わからない場合は。恣意的に、そういった裁判とかを避ける意味で。

 いろいろな市民活動によって、政治家や企業、団体に対する批判活動が確かに行われていますよ。批判している人は、その原因、理由があるから批判する。批判される人は、そういったことはあり得ないと言う。そこで、結局、正当か正当でないかということでいくわけですが、ここで恣意的に情報開示が行われることがあったら、これは人権侵害とされて、発信者が特定されて、損害賠償請求、そういった形になる可能性が非常に強いということもあり得るわけでございます。

 ですから、政治家や大企業からの情報開示、発信者の開示の請求に対して安易に応ずるような運用がなされれば、市民のインターネット上でのいわゆる自由な情報の発信が萎縮される可能性がある、そういった発信が妨げられる危険性があると思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

小坂副大臣 委員は特に、プロバイダーの権利もそうだけれども、発信者の権利をしっかりと保護することも、やはり同時に達成されなければならないという御指摘でございますが、それはそのとおりでございまして、そのバランスをとっていくことが肝要と思っております。

 しかし同時に、インターネットにおける情報発信のスピード、拡散する量的な問題がやはり社会的な問題にも発展しておりますので、今法案におきましては、発信者情報を開示する場合、それからしない場合について、いずれも恣意的な運用にならないように配慮したつもりでございます。

 すなわち、役務提供者は、本法案に規定する要件に合致しないにもかかわらず、発信者情報を開示した場合には、当然、発信者から、この発信者に対する責任を問われることになります。

 また一方、特定電気通信役務提供者は、発信者情報を開示しないことについて、悪意または重大な過失がある場合でなければ、開示を請求する者から責任を問われないことと規定をいたしまして、これによりまして両者のバランスをとるような形で、また同時に、自由な情報の発信に影響を及ぼすことのないように配慮したつもりでございます。

横光委員 いやいや、今の説明はよくわかるんですが、では、当事者にとってその判断というのが非常に難しいだろうということを私は言っておるんです。

 これは参議院でも審議されましたし、附帯決議もされております。そこでは「発信者の表現の自由の確保並びに通信の秘密の保護に万全を期すこと。」ということ、これは我々も今回、附帯決議を要求しておりますが、「万全を期す」と。今の、発信者の表現の自由、通信の秘密の保護に万全を期すこと、これは附帯決議ですから、政府がこれに向かって実施すべき努力目標だと思いますが、実施すべき問題だと思いますが、「万全を期す」ということを書かれておるんですが、今のような形で万全を期すことができると思っているんでしょうか。

小坂副大臣 参議院におきます附帯決議につきましては、総務省として、この御意思を体して十分に配慮していかなければならないと思っているところでございますが、総務省といたしましては、インターネット上の違法な情報の流通に関しまして、過度に情報が削除されたり、あるいは誤って発信者情報が開示されることがないように、この法律の施行に当たりまして解釈指針を示すということをまず第一に考えております。

 また同時に、本法案の趣旨等につきまして関係者への周知等を十分に行っていくことが必要だと考えておりますので、あらゆる業界団体の会合とか、あるいは会報とか、そういうものにお願いをいたしまして、この趣旨を徹底するように図ってまいりたいと思います。

 また同時に、業界団体等に事例の蓄積を行っていただく、そのことによりまして法律の内容を具体化したガイドラインを作成する、このことにつき、私どもも支援をしてまいりたいと思っております。

 このように可能なことを次々とやらせていただくことによって、万全を期すという方策にしたいと思っております。

横光委員 解釈指針をつくる、あるいは関係者に周知徹底させる、これはもちろん、絶対やっていただかなければならないわけでございます。先ほども同僚議員が提議されておりましたが、慎重な判断を担保する、あるいは各プロバイダーの判断を客観的に行っていくためには、私は、やはり第三者から成る専門的な諮問機関を法定することが必要なんではないか、でなければ、余りにも負担が重過ぎるんではないかという気がいたしますが、その点についてはいかがでしょうか。

鍋倉政府参考人 先生御指摘の点につきまして、私どもも、旧郵政省の時代でございますけれども、昨年十二月にまとめました報告書で、研究会で、インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会というのがございまして、ここで昨年の十二月に報告書をまとめました。その中では、プロバイダー等にかわって発信者情報の開示に関する訴訟等を行うため、専門的な知識を有する第三者機関を設置することも一つの案ではないかということが提示をされております。

 ただ、その後、この研究会の結論といいますか報告をもとに検討いたしたんでございますけれども、政府部内及び関係者を交えての検討の中で、第三者機関について、法定をした場合に、実体法上、手続法上の位置づけがなかなか困難だという問題点が指摘をされまして、現段階では採用することが困難であるというふうに判断したものでございます。

横光委員 そこのところに設置するのが難しいのであれば、今、副大臣が言われたように、ガイドライン等で、民間がつくるところでの支援をするというお話がちょっとございましたが、いわゆるプロバイダーの皆さん方が、幾つかの会社が共同で専門家等を含めて情報開示の審査をする場を設けて、自分たちで判断できかねる症例については、そこで開示の許諾を判断するように相談できるような場がなければ、私は、誤った運用あるいは恣意的な運用、過度な削除、こういったことにつながりかねないという気がするんですね。

 ですから、これは、法が成立しても施行まで半年あるんですから、今、副大臣が言われていましたように、そういったところでは支援するという意向もございましたし、各プロバイダーがつくるところを法務省が指導して、もし自分たちで判断できないときはそこで判断を仰ぐという場を設けていただきたいという気がするんです。そういうことに対して総務省もバックアップしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

小坂副大臣 委員が御指摘の趣旨はよくわかります。ただいま局長が答弁を申し上げたのは、今回の法律にそのような第三者機関の設置を盛り込むということは見送ったわけでございますが、今御指摘のように、業界が任意にそういった窓口をつくる、そして、発信者情報開示に関して、特定電気通信役務提供者が開示の是非を判断するときに、補佐するとか相談できるような何らかの窓口は必要であると考えております。

 今後、総務省といたしましても、窓口設置について、関係団体とも連絡をとりながら対処してまいりたい、そういう方向で、御希望であれば支援をしていきたい、このように考えております。

横光委員 プロバイダーの方たちは、この法案が成立したとき、先ほど新聞情報にございましたように、非常にそのことを心配されている。そして、そういった不安を少しでも払拭する意味でも、今のような窓口あるいは相談する会をつくっていけば、随分私は判断がやりやすくなるだろうなという気がいたしておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、省令で定めることになっております発信者情報、唯一これは省令で定める分野ですね、今回のこの法案の中で。この発信者情報というのは、具体的にどのようなものを想定しているのか、お聞かせいただけますか。

鍋倉政府参考人 第四条第一項で、開示請求の対象となる発信者情報につきましては、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。」というふうに規定をされております。具体的に、私どもが今考えておりますのは、氏名、住所のほかに、電子メールアドレスですとか、あるいはIPアドレスが規定されることになるのかなというふうに考えております。

 ただ、この総務省令を定めるに当たりましては、パブリックコメントに付しまして、広く意見を聞くということもやってまいりたいというふうに思っております。

横光委員 このこと、訴訟の問題あるいはプライバシーの問題、兼ね合いがありますので、そこのところも、やはりいろいろな方たちの意見をパブリックコメントの中で聞いて、つくり上げていただきたいと思います。

 それでは、ちょっと別な問題、アメリカであのような同時多発テロが発生して、それに対して米軍が空爆等をずっと行っているわけでございますが、そのことによって、新たな報復テロの可能性が出てきているわけですね。アメリカのFBI等も、従来から、今回の軍事行動等に伴い報復テロが行われる可能性があると警告しております。また、私たちの国も、自衛隊の派遣等で、その危険性はある意味では非常に高まったという見方もできるわけでございます。

 報復テロの方法として、自爆テロや生物兵器を利用したテロと並んで、インターネット等のネットワークを利用して政府や企業のシステムに侵入して、データの改ざんや破壊等を行い、国家やあるいは重要な社会インフラを機能不全に陥れる、そういったサイバーテロが行われるのではないかという指摘がされているわけでございます。

 政府も昨年十二月にサイバーテロ対策に係る特別行動計画を策定いたしておりますが、あれから状況が大変化いたしました。今回の事件によって、サイバーテロ発生の危険性が、従来に比べたら非常に高まっているわけでございますので、私は、万全の対策をやはり講じる必要があるであろうと。

 今回の事件以降、新たな対策を講じられたのか、また、講じられていなければ、これからどのような対策を検討しておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

村田政府参考人 このたびの事件を受けまして、私ども政府におきまして、サイバーテロの問題を、NBC、核・生物・化学剤を用いたテロと同様に、危険性、可能性のあるものとしてとらえて対策を進めてまいりました。関係の省庁との会合を含め、問題点を明らかにし、また、今後に必要な予算的な措置についても検討し、このたびの補正予算におきまして、緊急テロ対策の枠、それから電子政府の実現の枠、合わせて約五十億円を措置していただいたところであります。

 また、今後いろいろな状況を見ながら、サイバーテロの防止、それから情報セキュリティー全般の確保に向けて努力を払ってまいりたいと考えております。

横光委員 サイバーテロ対策として五十億円の予算要求をしているということですか。

村田政府参考人 先ほど申しましたのは、十三年度補正予算におきまして、そのような額の措置がなされたということでございます。

 また、来年度、十四年度の予算につきまして、情報セキュリティー、つまり、サイバーテロ対策を含めた情報セキュリティー対策として、概算約二百八十億円を要求していくということでございます。

横光委員 このサイバーテロというのは本当にわからぬわけで、どういった形で来るか想像がつかない。かといって、あり得ないことではない。それに対する防御体制はやはり必要である。アメリカの場合は、その十倍ぐらいの形、あるいは民間を含めると物すごい金をつぎ込んでこの防御対策をやっているのですが、やはりテロを未然に防ぐための一番の問題は、専門的な技術者の数が、圧倒的に日本の場合は少ないと言われているのですね。そしてまた、レベルもまだまだ低いと言われている。

 このあたりがサイバーテロを防御できる唯一の手段であると私は思いますし、このあたりのことを考えますと、今回の事件が起きたわけですから、やはり相当な概算要求、一応締め切られているわけでございますが、状況を見て、さらなる要求を、予算の大幅な上積みをしてこの対策をすべきだという気が私はいたしております。また、予備費等の柔軟な予算執行も行うべきだと考えておりますが、大臣、いかがですか。

片山国務大臣 今、内閣府の方からお話がありましたが、この問題の重要性はみんな認識しているところでございまして、IT戦略本部の中にセキュリティー対策会議というのがありまして、今内閣府の方でやっておりますが、我々もその中に加わっております。

 私どもの方では今までもいろいろなことをやってまいりましたが、特に今回のテロ以降、十月九日に主要な電気通信事業者に対して、サイバーテロ対策を含めた電気通信施設の安全性、信頼性の再点検と強化をぜひお願いいたしたい、これをやりましたし、十三年度補正で、今も内閣府の方からお話がありましたが、サイバーテロ防止のための高機能ネットワークセキュリティーシステムの整備、今、委員が言われたように、やはり技術水準、技術の問題があるのですね、そういうことの整備をやろうという補正予算を獲得いたしました。また、御承知のように、インターネットの相互接続点をIXというのですが、これを余りまとめているとぐあいが悪いので分散配置すべきではなかろうかと、アメリカの例もありますから。今、日本はほとんど大手町か何かの辺に集まっておりますけれども、こういうことの促進も十四年度、ぜひ予算を要求してやっていこう、こういうことを考えておりまして、今後とも関係の省庁と連携をとりまして、万全の対応をとるように努力いたします。

横光委員 先ほど言いましたように、これは万全な体制をとっても、それでも防御できないという部分もありますが、でも、まずとることが私は必要だと思っております。いろいろな関係省庁とともにお願いをしたいと思います。

 では、もう一問、質問させていただきます。

 携帯やインターネットのホームページにおいて交際の場を提供する、いわゆる出会い系サイトが今非常に急増している。しかも、これが大変なトラブル、事件となって頻発しているわけですね。

 警察庁の調べでは、出会い系サイトに関連した犯罪の検挙数は、ことしの上半期だけで昨年一年間の検挙数の三倍にもなっているということでございます。しかも、非常に若年層がこの犯罪の温床になっている可能性が高いわけですね、若年層がインターネット、ホームページをむやみに使うわけですから。

 そういった意味で、今回の法律案では、明らかに売春等の刑法上違法な出会い系サイトについてもプロバイダー等は削除できないのですね。

鍋倉政府参考人 本法案におきましては、特定の個人の権利を侵害する情報ということで、民事上の不法行為に当たる情報が本法案の対象でございますので、刑事上違法な情報につきましては、一般には特定個人の権利を侵害する情報ではございませんので、本法案の対象ではございません、ということでございます。

横光委員 というような説明でございます。

 ということは、このことに対して、この法案は何ら効果を示すことはできないということだと思うのですが、では、それでいいのか。情報通信を担当している総務省としては、それでいいのかと。

 警察庁は、ネット上の違法・有害情報から青少年を守る方策を検討する研究会を発足させて、出会い系サイトの実態調査を始めております。総務省としても、こういった有害な出会い系サイトに対して、何らかの対応を行っていく必要があると思うのですが、いかがですか。

鍋倉政府参考人 御指摘のとおり、出会い系サイトについて、特に青少年等にとって有害な場合があるということは私どもも認識をいたしております。

 従来から総務省としても、例えばプロバイダーによる違法・有害情報に関する自主規制ガイドラインの策定、周知の支援ですとか、有害情報のフィルタリング技術の研究開発あるいは電気通信サービスを利用する際の注意点をまとめたパンフレットの配布ですとか、そういったいろいろな取り組みをやってきております。

 今後とも、この問題、通信の秘密や表現の自由とも関連する問題でございますので、そこにも配慮しながら、いろいろな対策を講じてまいりたいというふうに思っております。

横光委員 いろいろ努力されている、電気通信サービスを安心、便利に使うためにこういったものを配布しているというお話もございました。しかし、これには出会い系サイトのことは触れられていないんですね。やはりここまでこういった問題が浮上した以上、これを新たにつけ加えると大変な経費がかかるでしょうけれども、いわゆるホームページは簡単に改定できるわけですから、こういったものをホームページでも見られるわけですから、ここに新たに出会い系サイトの利用について、利用上の注意点とかいうものをやはり載せていくべきではないか。

 これはいろいろな関係省庁のお力、協力が必要だと思うんですが、教育上でも必要だと思う。教育の分野でも、出会い系サイトの利用についてある程度指導していかなきゃならない。警察も必要、そして、何よりも情報通信担当である総務省がやはり努力していかなければならない、そういったことでございます。これだけ大きな社会問題になって、これからますます悪用される可能性がありますので、十分注意するようにホームページでつけ加えるというようなことはやっていただきたい。

 警察庁や文部科学省と連携して、先ほど言いましたように、情報通信担当は一番中心は総務省でございますので、この出会い系サイトに対する対策につきまして、最後に大臣から御意見をお聞かせください。

片山国務大臣 この問題は、頭が痛い問題ですね。出会い系サイトに関する情報すべてが違法、有害かというと、それはなかなか難しいんですね。そこで、憲法を含めたいろいろな法律上の問題がありますので、委員の言われることを念頭に置きながら、警察庁や文部科学省と十分連携をして、どういう対応ができるか研究してまいりたいと思います。

横光委員 終わります。どうもありがとうございました。

御法川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、渡海紀三朗君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。松崎公昭君。

松崎委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。

 一 特定電気通信役務提供者による情報の削除や発信者情報の開示が濫用されることのないよう配慮し、発信者の表現の自由の確保及び通信の秘密の保護に万全を期すこと。

 二 インターネット上の違法な情報の流通を原因とする名誉毀損等の権利の侵害が増大している現状にかんがみ、特定電気通信役務提供者が違法な情報の削除や発信者情報の開示を迅速かつ適切に行えるよう、運用の在り方等について検討すること。

 三 インターネット上における違法な情報等の流通の増大にかんがみ、今後とも、本法の実施状況や技術の進展状況等を踏まえ、国民がインターネット等を安心して利用することができるよう、必要な環境整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。(拍手)

御法川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。

片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

御法川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

御法川委員長 次回は、来る二十二日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十五分散会




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