衆議院

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第11号 平成13年11月22日(木曜日)

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平成十三年十一月二十二日(木曜日)

    午後三時三十分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 田並 胤明君 理事 松崎 公昭君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      伊藤信太郎君    河野 太郎君

      左藤  章君    佐田玄一郎君

      坂井 隆憲君    新藤 義孝君

      滝   実君    谷  洋一君

      野中 広務君    宮路 和明君

      山本 公一君   吉田六左エ門君

      荒井  聰君    伊藤 忠治君

      大出  彰君    金子善次郎君

      玄葉光一郎君    武正 公一君

      中沢 健次君    中村 哲治君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      菅野 哲雄君    重野 安正君

      三村 申吾君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十二日

 辞任         補欠選任

  横光 克彦君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野 哲雄君     横光 克彦君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 元日赤救護看護婦に対する慰労給付金増額に関する請願(志位和夫君紹介)(第四八六号)

 同(不破哲三君紹介)(第四八七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第六四号)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 第百五十一回国会、内閣提出、地方自治法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百五十一回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 地方自治法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

御法川委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長芳山達郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。滝実君。

滝委員 自民党の滝実でございます。質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。心から感謝を申し上げたいと存じます。

 法案の質問に入る前に一つだけ意見を申し上げさせていただきますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 何かと申しますと、昨今、国の予算で、第二次補正予算のうわさが出ているわけでございます。おかげさまで、第一次補正予算に際しては地方の財源措置も万全な措置が講じられたところでございますけれども、聞くところによると、今度の補正予算は国の方は特定財源を財源とするようなうわさも出ているわけでございます。そうしますと、地方の方はそれに見合う特定財源というのは何かというと、考えがつかないものですから、その場合には、やはり地方の負担を伴うような国の予算にありましては、当然のことながら、地方負担は全部起債だということのないように、よろしくお願いを申し上げたいと思うのでございます。

 それから、あわせて、国の方は、国債の発行限度額を三十兆円に抑える、こういうことを強調されているわけでございます。私は、国よりも地方の方がもっと実際の財政運営は厳しい、そういう状況にあると認識いたしておりますので、国が三十兆円の国債限度額を堅持するということであれば、地方はそれに対応した地方債の限度額、そういうものが、恐らく総務省ではいろいろ検討されているんだろうと思いますけれども、早目にお示しをしていただいて、地方の健全化をお図りいただいた方がよろしいんじゃないだろうかなと思いますので、一言だけ意見として申し上げておきます。総務大臣によろしくお願いをいたしたいと思います。

 さて、法案でございますけれども、今回の地方自治法の改正は、この間の、直前までの地方制度調査会でございますけれども、第二十六次の地方制度調査会で特に住民自治という観点から大変議論を長く続けてこられたわけでございますけれども、その答申を踏まえて、今回、画期的な自治法の改正、こういうことになったものと考えております。総務省におかれましては、こういう住民自治というものをまともに取り上げたのは恐らく今回が初めてだろうと思います。前にも少しずつの改正はありましたけれども、本格的に手をつけたのは今回初めてだと思いますので、総務大臣の基本的な考え方をお尋ねしたいと思うのでございます。

 あわせて、今回のこの改正につきましては、全国知事会あるいは市長会その他地方六団体が相当熱望している、これは長らく懸案でございましたので、そういう観点から、地方六団体が熱望されているというふうに私も承知をいたしておるわけでございます。御案内のとおり、地方自治法には、全国的なそういう地方団体については国に意見書を提出することができるという文言があるわけでございますので、そういったこととの兼ね合いもあって、地方六団体がこの改正にはかなり力を入れてこられたというふうに聞いておるわけでございますけれども、この点についても、大臣としてどういうふうな受けとめ方をされているのか、あわせてお伺いをさせていただきたいと存じます。

片山国務大臣 滝委員から冒頭に二次補正のお話がありましたが、これにつきましては、伝えられるように、国の方はNTT株の売却益をこの財源にする、こういうことでございまして、当然、地方に関するものは地方負担が出てくるわけでありますが、これにつきましては、財務大臣と私どもの方で地方の立場を十分配慮しながら協議しよう、こういうことになっておりますので、念のためにまたそのことについて申し上げておきます。

 今回の改正は、第二十六次の地方制度調査会の答申と地方分権推進委員会の意見に基づいてこの一部改正案をつくったわけでありまして、住民自治のさらなる充実を図るために、住民投票、直接請求、住民訴訟、地方議会のあり方等についての所要の制度改正を行おうとするものでございます。

 これからの地方自治については、地方の自立ということを骨太の方針でも言っておりますけれども、できるだけ自分で物を決めて、自分でやっていって、自分で責任をとるという、自己決定、自己責任の原則に基づいていく、そういうことを法制面からフォローするのが今回の改正でございまして、地方六団体は熱望いたしております。昨日も、地方財源の充実強化のための六団体の決起大会があったわけでありますが、私は国会があって出られませんでしたが、六団体の代表の方がお見えになりまして、いろいろな御要望を伺いました。その中の一つに、地方自治法の早急なる成立、こういうことがございましたので、当委員会においても、早急なる御審議の上、早急なる御採決を賜れば大変ありがたい、こういうふうに思っております。

滝委員 補正予算に関連いたしましては、総務省も抜かりなく対応されていると思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 次に、今度の法案の中で、市町村合併に関連いたしまして、住民投票の制度を導入する、こういう改正をおやりになっているわけでございます。これも、第二十六次の地方制度調査会で住民投票をめぐって基本的な議論をされてきたわけでございますし、その一つとして、市町村合併の中にこの制度を取り入れたということは承知をさせていただいているわけでございますけれども、長らく議論したことの中で、この住民投票制度は各地方団体とも異口同音に皆関心のある事項でございます。この問題については、市町村合併以外にも手を広げるのかどうか、そういうことがなかなか決着しなかったからこそこれだけに限定されたと思うんでございますけれども、ひとつ副大臣の方から、この辺の経緯というか、考え方をお示しいただきたいと思うんです。

遠藤(和)副大臣 一般的な住民投票の制度化の問題ですけれども、これは、今お話がありました第二十六次の地方制度調査会の答申におきまして、住民投票をする場合に、住民投票の対象とすべき事項をどうするか、選挙で選ばれた長や議会の権限との関係をどうするのか、あるいは投票結果の拘束力のあり方等、種々検討すべき論点があるということで、成案を得るに至らなかった、引き続いて検討するということになっております。

 ただし、一方、市町村合併につきましては、この調査会の答申におきましても、市町村合併はまさに地方公共団体の存立そのものに関する重要な問題である、あるいは市町村合併は地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当である、こういうことになったものでございますから、今回の特例法の改正案の中に入れさせていただいたということでございます。

 一般的な住民投票のあり方については、今後も検討を重ねていきたい、このように考えております。

滝委員 今副大臣がおっしゃった、地方団体の存立そのものにかかわる問題、もう一つは地域に限定された課題、こういうことを基準としてお示しになったわけでございます。私は、やはり、これは各地方団体が独自で住民投票を考える場合の大きな指針だろうと思いますので、その辺のところはぜひもう少し宣伝をしていただいた方がよろしいんじゃないかと思いますので、念のために申し添えさせていただきたいと存じます。

 さて、中身の問題でございますけれども、今回の改正の中で、住民監査請求、それからそれを受けての住民訴訟、これがやはりどうしても主体になるわけでございます。そこで、まず最初に住民監査請求の点について、ちょっとよくわからない点がありますので、行政局長から御説明をいただきたいと思います。

 と申しますのは、今度の監査制度の改正の中で、本格的な監査委員会が差しとめ請求について結論が出るまでの暫定的な執行停止と申しますか、そういうものを今回の改正で入れているわけですね。したがって、その辺のところが今までの経緯からどういうふうに位置づけられるのかを教えてもらいたい。

 というのは、今までも差しとめ請求の監査請求はたくさんございます。そしてまた、それを受けての住民訴訟でも差しとめ請求の住民訴訟がかなりあるわけでございますけれども、この時点で、暫定的な差しとめ措置といいますか停止措置を入れてきた具体的な背景と申しますか、そういうものがどこにあるのかを教えていただきたいと思うのです。

芳山政府参考人 お答えいたします。

 違法な財務会計行為については、事後的な措置としての損害賠償ではなくて、当該行為が執行されないということで、住民監査請求を通じて行政がみずから判断することにより事前に対処することが望まれるわけであります。

 これまでは、違法な財務会計行為を執行しないことを求める住民監査請求であっても、監査委員が一たん当該行為を差しとめたいということで監査を行う必要があると考えても、その権限がありませんでしたので、審査手続中に当該行為が執行される可能性があるわけでございます。そういうことから、今回の改正案においては、審査段階において、監査委員は、一定の要件のもとで、監査手続が終了するまでの間、長等に対し当該行為を停止すべきという旨の暫定的な勧告ができるということにしたわけでございます。

滝委員 私は、住民訴訟制度といいますか、どちらかというと事後的に行われる場合が件数としては多いんだろうと思うのでございますけれども、実効力あるためには、やはり事前の差しとめ請求なり、事前の差しとめ監査請求なりというものがもうちょっとあってもいいなというふうに思っておりますので、今回の改正は、今までちょっと抜けておったところを補完するというか、充実させるという意味では大変大きな意味があるように思います。

 さて、住民訴訟の問題でございます。

 実態を調べてまいりますと、住民訴訟というのは、御案内のとおり、基本的には監査委員に対して住民監査請求をまず出す、そこで会計監査の立場から監査委員が審査をして、やはり本人に責任のあるものは本人の責任を追及する、あるいは地方団体として責任のあるものはそれぞれ地方団体の執行機関として責任を果たす、こういう制度であるわけでございます。それを受けて、監査委員が出した判定について不服の場合には、住民が住民訴訟という格好で起こせるわけですね。

 そのうち、特に今まで問題になっておりますのは四号訴訟というもので、これは地方団体の機関、組織に対しての訴訟じゃございませんで、知事にいたしましても、市町村長にいたしましても、あるいはその他の職員にいたしましても、個人に対する訴訟、こういう組み立て方をいたしておる。そこで、従来から言われておりますのは、いきなり個人が出てくるのはおかしいじゃないかという議論と、いや、個人の方でいいんだという議論が対立した格好で出てきたのが従来の問題だと思います。

 これを職員の方から見ると、基本的に、先ほど申しましたように、住民訴訟というのは、一遍監査委員の手元でいいか悪いかという白黒の判定をしておる。判定をしているのに、その判定を経ると、今度は訴訟でいきなり、地方団体の執行機関たる監査委員がどこかへ消えてしまって、個人が訴訟の場に引き出される、これはどうもおかしいんじゃないか。

 それから、組織の一員としてあるいは組織として仕事をしている部分がいきなり個人の責任はどうかと追及されるのは、組織として仕事をしている感覚からすると、どうもずれが出てくる、こういうようなことが言われておりまして、これが長年、市町村長さん方から、この制度はやはり日本になじみにくい、こういうふうに言われてきたわけでございます。

 そこで、今回の改正はそこが一番主眼なところだと思うのでございますけれども、その辺のところをどういうふうに把握してどう変えていこうとされているのか、まず、基本的な問題でございますので、総務大臣からお示しをいただきたいと思います。

片山国務大臣 この制度は、戦後、地方自治制度を採用するときにアメリカの強い指導で入った、アメリカでは納税者訴訟というものですね。これは、個人に着目しているんですね。

 地方公共団体の長や職員は、職務として仕事を行うんですよ、個人でやっておるわけじゃないんですね。しかも、今、滝委員が言われましたように、まず監査委員の監査請求が前置なんですよ。これは必ずそこを経なければならない。監査委員の請求が適法だとした場合に、正当だとした場合に、それを不服として訴訟を起こすわけですから、職務として行って、監査委員が監査をして、それは正しいとしたものについて訴訟が起こるわけですね。それを個人に着目して訴訟を起こすというのは、これはなかなか理屈に合わないですね。

 だから、今回の制度は、それは個人じゃなくて、機関としての長、機関の一員としての職員に対する訴訟にしてもらって、これで仮にその機関の長や職員が負けた場合に、負けたら今度は内部で機関が個人に求償する、損害賠償を請求する、こういうことに仕組みを組み立て直したわけでありまして、私は、法理論からいっても考え方からいっても、今回の改正は大変正しいものだ、こういうふうに思っております。

滝委員 考え方は私も同感でございますけれども、ただ一方では、やはりそこのところはぴんとこないという反対論があるんですね。地方団体の利益と、それから違法行為を仮にしたと思って訴えた原告との間では、その職員というのは利益が相反する。したがって、相反する職員をおかしいと言って追及しているのに、今度の改正では地方団体が前面に出てくるのは納得いかない、こういうような反対論であろうかと思うのでございます。

 ところが、今大臣が指摘されましたように、地方団体の長にいたしましても、職員にいたしましても、地方団体の機関、組織の一員としてやっている仕事が何で個人で訴えられるんだという違和感があるんだと思うのです。しかも、法律では違法な行為といって住民訴訟の要件を特定、確定しているというか、限定しているのにかかわらず、実際の訴訟では違法かどうかというのがなかなか一義的に決まらないものですから、どうも政策判断の問題がかなり前面に出てきている。

 こういうような受けとめ方をいたしますと、余計、違法の問題が出てくれば、それは判断するときに、議会も交え組織全体で議論をしながら進めてきたものが違法かどうかというのは、やはり組織としていろいろ判断をむしろ追及すべき話じゃないか、こういうような職員としての言い分、個人としての言い分があるわけでございます。

 そこで、実際に、その辺のところの感じというか状態はどうなっているのか、副大臣の方からお考え、状況をお示しいただきたいと思うのです。

遠藤(和)副大臣 確かに、公金支出の違法性が争われている場合が多いんですけれども、そういう違法性が、手続上の瑕疵というよりも当該支出の公益性、これが結果的に問われることが多い。その公益性とは、議会あるいは多数で決めた、いわゆる政策決定に直接関係するものが多いわけですね。そういたしますと、議会で決定をした、そしてみんなで決めた支出であるにもかかわらず、職員の個人の違法性が問われるということは、大変問題ではなかろうかという問題がございます。

 財務会計行為とその前提となる地方公共団体の政策判断は実際には密接不可分なものが多いわけでございますけれども、こうした問題を区別することなく住民訴訟で問われているという問題があって、これは実際の職務を実行する職員の立場としては違和感を感じる、こういうものがあると思うのでございます。

 したがいまして、今回では、まず機関に対して住民訴訟を起こす、そして機関が個人の違法性に問題がありといった場合には、機関の方が損害賠償を求める、こういうふうな二段構えの方向にした、こういうことでございます。

滝委員 実際の市町村長さんなんかの意見を聞いてみますと、三つぐらいおっしゃるんです。今の違和感の問題ですね、個人が何で訴えられるのかということ。

 それから、これは今までの判決なんかでも、市長個人に対する判決が、例えば三億円とか八億円とか、そういう程度の賠償支払いを判決で出すんですね。そうすると、市長さん方はそういう例をあちこちで、雑誌なんかで読むと、いや大変だ、何かして住民訴訟でもって負けたら三億も八億もなんていったら、一家離散どころか一族郎党全部、閉門蟄居みたいな話ですから、だから、とてもじゃないけれども、これは簡単に仕事ができないという話になってしまう。

 それから、もっとひどいところになると、市長さんが亡くなって奥さんが訴訟を引き継ぐということになると、これまた何が何かわからない。要するに相続人ということで奥さんが訴訟の被告になってやるなんてことは、もうとてもじゃないが耐えられない。そのときは、個人に対する訴訟ですからもう組織のバックはありませんからね。そうすると、これは何のために仕事をしているんだ、こういうようなこともあるというふうに私どもは聞いているわけでございます。

 こういった点からすると、それがいいかどうかということとは別に、何となく常識に合わないなという感じがするんです。政務官も、これは国の、国民訴訟が仮に導入されれば政務官だっていずれそういう目に遭うんですけれども、そういう立場でちょっとその辺の感じを聞かせていただきたいんです。

山名大臣政務官 滝委員御指摘のように、過去、数億円単位の賠償を命ずる判決も存在をいたしておりまして、長個人として莫大な負担になるわけであります。違法な支出と判断された以上、現行制度上はその責任を果たさざるを得ないわけでありますが、同じ政治家という立場で考えても、政策審議を経て判断された事項、そういう内容、あるいは議会の議決を経た、こういう観点から考えても、やはり、個人的に巨額の賠償責任を問われるということにつきましては、政治家の一人として、割り切れない、こういう思いを持っております。

 また、先ほどお話がありましたように、長、首長さん御本人が亡くなられた、それを今度は奥様初め家族がその訴訟を引き継ぐ、こういう事態も現実に存在しておるわけでありまして、本人が亡くなられた場合は、相続を放棄しない限り遺族の方が訴訟を継続せざるを得ない、こういうわけであります。

 住民訴訟の対象となる債務につきましては、いわば相続の対象から外せばいいじゃないか、こういう意見もあるわけでありますが、株主代表訴訟の債務あるいは他の民事上の債務が相続されている、こういった問題との整合性、あるいは相手方、例えば民間業者等が被告となる住民訴訟の場合もあるわけでありまして、そういった整合性を考えれば、そういった御意見もあるわけでありますけれども、極めて困難な問題が存在をする、こういうふうに認識をしております。

 いずれにいたしましても、奥様初め家族にそういった負担がかけられるということについては非常に酷な面があるわけでありまして、今回の法改正によりまして、地方公共団体の機関が住民訴訟の被告となるということになりますれば、こういった問題点はほぼ解決をするんではないか、こういうふうに考えるところでございます。

滝委員 私は、賠償額が大きいからどうかとか家族に負担がかかるからどうかというのは、それが基本的な問題とは思いませんけれども、一つは、違法かどうかという争いというのはやはり政策判断に係る部分が多い。そういう場合には、個人じゃなくて、やはりそれは一つの組織、機関の中で訴訟も受けて立つという今回の改正というのは、一つの方法だろう、それなりに筋が通っているんじゃないだろうかな、私はこういうふうに思っている一人でございます。

 それから、二番目の問題として、今回の改正に対する反対論として、これは二段構えになっているんですよね。第一回目の住民訴訟で、個人が、違法行為があった、賠償責任を負うべきだという判決をした場合に、それを今度、そうすると個人は判決に基づいて賠償額を支払わにゃいかぬ。支払わないときにどうするかというと、個人が判決に応じない場合には、今度は監査委員が住民にかわって本人からお金を払えという訴訟を起こさにゃいかぬということになっているわけですね。二段構えの訴訟制度を今度組み込んでいるわけでございますけれども、その際に、第二段目の訴訟で監査委員が個人に金を払えという訴えを起こさなかったときに何にも担保するものがないじゃないか、だからこの制度はいけないんだ、今回の改正法はそこに大きな問題あり、こういうふうに指摘をされているんでございます。

 私はそんなことはないだろうと思っているんでございますけれども、山名政務官、どうでしょうか。

山名大臣政務官 滝委員がおっしゃるように、そんなことはないんです。

 第一段目の住民訴訟におきまして執行機関の長たる者が敗訴をした、その後六十日以内に長個人から賠償金等が支払われない場合には、代表監査委員は訴えを提起しなければならないということをこの法律上明文化したわけでございます。また、第二段目の訴訟は、住民訴訟に引き続いて行われる関係から、住民あるいは議会等の監視下に置かれるということにもなるわけでございます。

 したがいまして、代表監査委員が第二段目の訴訟を提起しないということは通常想定できないわけでありまして、万が一、代表監査委員が訴えを提起しなかったら、これはもう法律上の義務違反でありますから、そういった意味では、民事、刑事上の法的責任を負うこととなるわけでありまして、こういったことを考えても、代表監査委員が二段目の訴訟を提起しない、こういうことは考えられない、あり得ない、こういうふうに考えるところでございます。

滝委員 日本は法治国家として徹底しているわけですから、判決があって、そして地方団体の機関たる監査委員に法律上訴えを提起しろ、こういうような条文があれば、それに従うというふうに私は信じているんでございますけれども、そこのところが問題だという指摘もあります。私は、今の山名政務官のおっしゃるとおりだというふうに思いますので、そこら辺の疑問は解消できるんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。

 それから、今回の改正に反対する三番目の問題として、例えば今までの制度でございますと、談合をやった建設業者があったとしますと、本来もっと安くできたのに、談合の結果高くなったから、その分、高くなった分だけは地方団体に損害を与えたといって、職員といわば共謀したというか、そういう場合もあるんだろうと思うんですけれども、共謀した第三者たる業者をこの住民訴訟に巻き込むことができた。ところが今回は、今度の改正では、そういう第三者、違法行為をあえてした、職員の相手方たる第三者をこの訴訟に引っ張り込むことができなくなったというような批判があるわけでございますけれども、私、今度の改正条文を見るとそんなことはないと思うのですけれども、その辺のところを、これは行政局長から少しわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

 余り説明をわかりやすくやって長くならないように、よろしくお願いをいたします。

芳山政府参考人 お答えします。

 いわゆる現行の四号訴訟でございますけれども、談合行為の存在の有無について、住民監査請求を経てなお住民と地方公共団体の判断にそごがあるというようなことで、住民が直接企業を訴えることができるわけでございますが、今回の改正は、こうした場合には、業者に対して損害賠償請求をするよう求める訴訟を住民が地方公共団体の機関に対して提起することとなります。しかしながら、第三者である業者に対しても訴訟告知を行うこととしておりまして、住民訴訟における判決の効力が業者に及ぶということになりますから、業者として訴訟参加をします。そういうことで、談合行為の有無に関する実態解明は十分可能と考えております。

 また、新たな訴訟構成においては、執行機関が被告となります。そこで、地方公共団体の説明責任が果たされる、強化をされる。機関が敗訴をした場合は、一定期間内に企業に対して賠償請求が行われる、その責任は追及されるわけです。そして、当該事案のみならず、発注者としての入札事務全般にわたって、再発防止に対する対策を地方団体が講じるということが期待されると思います。

滝委員 私は、反対の理由というか、この改正について疑問を投げかけている三つの意見についてそれぞれお答えをいただいたわけでございます。

 私は、それぞれそのとおりだろうかと思うのでございますけれども、要するに、この問題は、先ほど一番最初に総務大臣がおっしゃったように、戦後、アメリカにおいて地方団体で普通行われている住民訴訟、納税者訴訟というものを導入したわけでございますけれども、どうも、その後、聞いてみますと、本家のアメリカでも、日本のようなこういう住民訴訟のパターンというのは比較的少ない、ほとんど行われていない。ですから、市町村長や何かが個人でいろいろ賠償金を払う、何千万、何億という判決が出ているのを見て、アメリカの方ではむしろ不思議がっているような、そういう地域が圧倒的に多い。アメリカですから、いろいろありますから、物すごくいろいろなパターンがありますから一概に言えませんけれども、どうも、アメリカが持ち込んできた、日本の実際の運用形態というのは大分違っているんじゃないだろうかなと。

 私ども、聞くところによると、特にアメリカでは、こういう制度は事前の差しとめ請求というのにむしろ重点が置かれておって、後の、事後的なこういうものはほとんど例がない、こういうようなことだろうと承知をいたしておるわけでございます。

 この辺のところについて、行政局長からでも最後に御答弁いただいて私の質問を終わりたいと思いますので、簡単にその辺のところの事情を説明してもらいたいと思います。

芳山政府参考人 我が国の住民訴訟制度は、先ほどお話がありましたように、米国の納税者訴訟を参考に、二十三年の自治法改正で導入されました。

 御指摘の米国の状況ですが、我が国の文献等によりますと、最近の納税者訴訟においては、違法行為の事前差しとめを求める訴訟が一般的であるということで、長や職員個人に賠償を求める訴訟は余り利用されておらないというぐあいに聞いています。

 違いとしてどうして起こるのかというと、定かではありませんけれども、両国の法体系の違いないしは訴訟手続の違い等が背景にあるのではないかというぐあいに考えております。

 以上です。

滝委員 ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。

御法川委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 継続審議となっておりました地方自治法の改正案、ようやく実質的な審議に入りました。会期の方もだんだんと後ろの方が見えてまいりましたので、速やかな審議、充実した審議をやってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 今回の改正案、この法律案は、幅広い改正ということで、例えば、直接請求の要件緩和、また議会制度の充実、また今、滝委員の方からもお話がございました住民監査請求制度及び住民訴訟制度の充実、そのほか、中核市の指定要件の緩和、合併協議会の設置に係る直接請求制度の拡充及び住民投票制度、本当に幅広い改正案ですけれども、やはり一つの法律、それなりの理念があると思うのですけれども、今回の法改正全体に通じる目的について、まず大臣の方からお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 今回の法改正は、先ほども言いましたように、第二十六次地方制度調査会の答申や地方分権推進委員会の意見にのっとったものでございますが、基本的な理念は、結局、住民自治の拡充なんですね。

 一つは、地方議会の活性化と住民参加の積極的な拡大でございまして、それが今の住民投票制度や住民訴訟制度ということになっていると私は思いますし、さらに、二十一世紀の地方自治を担う市町村の規模、能力強化のための市町村合併の促進もその中の視野に入れておる、こういうことが基本的な理念ではなかろうかと私は思っております。

高木(陽)委員 そういった考え方の中で、個別の問題についてこれから質問させていただきます。

 まず、住民監査請求及び住民訴訟制度の問題でございますけれども、今、大臣の方からお話がありました、今回の改正は住民自治の充実を図る、そういう観点から、今回、監査請求制度や住民訴訟制度に関する事項も含まれていると思います。

 言うまでもなく、地方分権時代においては、地方自治体、地域住民の意向をしっかりと反映させていく、そして、その反映させた主体的な政策が展開されるということがやはり重要だと思うのです。その上で、先ほどの質疑の中にもありました、みずからの責任でという言い方がございましたけれども、そういうみずからを厳しく律していく、これまで以上に求められていると思うのです。

 そんな中での今回の監査請求、住民訴訟制度、そういう役割をとられていると思うのですけれども、今回、この改正について、住民の請求に基づいて、議会の同意を得て任命された独立の執行機関である監査委員が違法または不当な財務会計行為があるかどうかを審査できる制度、これは今までもそうであったのですけれども、住民訴訟の前段階に当たると思うのですが、今回のこの制度の改正内容及びその趣旨をもう少し具体的にお伺いしたいと思います。

遠藤(和)副大臣 住民監査請求制度について、まず、行為の停止を求める監査請求の実効性を担保しなければなりません。その審査の段階におきましても、監査結果が確定するまでの間に監査委員が当該行為の停止を勧告することができるという権限を付与した、こういうことでございます。

 これによりまして、地方公共団体に対して回復困難な損害を生じさせる財務会計行為については、損害賠償等の事後的な措置ではなくて、これまで以上に行政みずからの判断によりまして事前に対処することができる、こういうふうになるものと期待をしておる次第でございます。

高木(陽)委員 住民監査請求制度というのは、地方公共団体の違法行為の是正には不可欠、今回の改正でさらにその充実を図っていただきたいのです。

 次に、公共団体の違法な財務会計行為についての司法による是正手段でもある住民訴訟手続、先ほどもこれについて多々御質問がございました。今回の改正で、従来、その長や職員個人が被告になっていたいわゆる四号訴訟、これは一たん地方公共団体の執行機関が被告になるという、このように変更することで、先ほど滝委員の御質問では、三点ほど、いろいろと異論があるというような形で質問がありました。

 この違法な財務会計行為を抑止する効果が今まであったんだ、個人でやった方が。今回、改正によってそれがマイナス部分に働くというような指摘もあったんですけれども、私自身も、そこまではいかないんじゃないかなと思うんです。

 ただ、この長や職員の実体責任に変更がないということが大切なことで、先ほど指摘しました抑止する効果が減ずる、マイナスになるということはないと思うんですけれども、この点について、改めて総務省の御見解をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 先ほど滝委員と副大臣とのやりとりもございましたが、基本的には、訴える住民の実体的な権利は全く損なっておりませんし、それから、訴えられる職員あるいは長の実体責任にも何らの変更はない、こういうことでございまして、私は、抑止効果をよく説明すればおわかりいただける、抑止効果にいささかの減少もない、こういうふうに思っております。

高木(陽)委員 今、大臣の方からも、抑止効果の減ずることはない、こういうお話がございました。やはり大切なことは、その法をしっかりと運用していくことだと思うんですね。法改正になる前からいろいろな疑問点、これは法改正ですから当然あると思うんですけれども、やはりそこのところを明確にしながら、その上で改正後もしっかり運用していけるような形をとっていただきたい、このようにも思います。

 続きまして、直接請求の要件緩和、この問題についてちょっとお伺いしたいと思います。

 自治体の場合には、自己責任、自己決定の拡充に伴って、選挙で選ばれる長または議会の役割は逆にこれまで以上に大きくなってくると思うんです。このような中で、代表民主制を補完する制度である直接請求制度の充実を図っていく、これも住民自治の充実を図るという観点では極めて重要だと思います。

 そこでまず、直接請求の要件緩和を行うその趣旨、今回の改正を行う趣旨及びその理由についてお伺いしたいと思います。

山名大臣政務官 直接請求の持つ趣旨については、高木委員の仰せのとおりでございます。

 地方公共団体の議会の解散及びいわゆるリコール、長の解職の直接請求につきましては、現行、三分の一以上の選挙権を有する方の署名が必要となっているわけでございますが、実際、人口が多い地方自治体におきましては、この三分の一以上の署名を集めることがまことに至難のわざでございまして、そういう意味では、非常に要件が厳し過ぎるんではないか、こういう御指摘も従来からあったところでございます。

 そこで、第二十六次地方制度調査会におきましても、この解散、解職の直接請求につきましては、必要署名数に係る要件を人口規模等を勘案して緩和すべきである、そういう答申がなされたところでございまして、こういった事情を勘案いたしまして、現在三分の一とされているこの要件を、有権者数四十万、人口にしておよそ五十万規模になるかと思いますが、その四十万を超える場合につきまして六分の一に緩和をしよう、そして、この制度のより実効的な運営を確保いたしまして、地方自治の一層の充実を図ろう、これが趣旨と理由でございます。

高木(陽)委員 続きまして、条例の制定、改廃の直接請求の際に、請求代表者に議会の審議において意見を述べる機会を保障する趣旨、これについてお伺いしたいと思います。

山名大臣政務官 これにつきましては、当然、請求代表者が議会でみずからその趣旨あるいはその直接請求の内容を説明する機会をお与えする、制度的に保障する、こういうことでございまして、そういう意味では、議会の活性化にもつながりますし、審議の充実にもつながる、そしてまた、この制度そのものの信頼性、こういったものにもつながる、こういうふうに思っております。

 従来から、請求を受けた首長さんが条例案を議会に付議する場合、みずからの意見をつけるということもされておりますので、そういった意味での均衡を図るという意味もございます。

 本改正によりまして、条例の制定、改廃に係る議会審議のより一層の活性化が図られ、まさに住民自治の充実に寄与する、こういうふうに考えているところでございます。

高木(陽)委員 先ほど申し上げましたけれども、この直接請求というのは大切な問題だと思うんですけれども、ただ、もう一点確認したいのは、やはり代表民主制という、まずは議会があるという前提であるというところをしっかりと認識しながらやらなければ、何のための議員なんだ、何のための議会なんだということにもなりますので、ここら辺のところもまたしっかりと運用段階でやっていただきたいなと思います。

 続きまして、中核市の問題、これも要件緩和ということで御質問したいと思います。

 今回の改正において中核市にかかわる制度改正が含まれ、中核市制度というのは平成六年、地方自治法改正により創設された。現在、対象となる三十四団体のうち二十八団体が既に中核市に移行して、平成十四年四月一日から倉敷と奈良が加わって三十団体になる。また、さらに船橋等々もそれを目指して準備をしておるというふうに聞いておりますけれども、こういう中核市によって権限移譲がなされてくるわけですね。規模や能力が比較的大きな都市の事務権限の強化、それによってより住民の近くで、住民のニーズに即した行政を可能にすることができる。地方分権においては、これは本当に大切な中核市であるというふうには認識しているんです。

 その上で、今回、要件緩和されることによって、その対象となる団体は地方自治法の早期成立を強く要望しているというふうに聞いております。今回の中核市問題についての要件緩和の趣旨、目的等々をお伺いしたいなと思います。

遠藤(和)副大臣 昨日も中核市の市長さんと懇談をさせていただいたんですけれども、今、日本全国三千二百二十四市町村あるんですけれども、その中にありまして、中核市がまさにその中核としての誇りと活力に満ちて、いろいろな事業をやっているということを頼もしく思ったわけでございます。

 今、中核市となるべき要件といたしましては二つありまして、一つは人口が三十万以上であるということと、もう一つは面積が百平方キロメートル以上あるという二つの要件があるんですけれども、この法案におきまして、人口五十万以上の市につきましては面積要件を撤廃する、こういうふうな改正法案を出しているところでございます。

 これによりまして、千葉県の船橋市、神奈川県の相模原市、それから大阪府の東大阪市が該当するわけですけれども、この中で、船橋と相模原からは、私の方にも直接お越しになられまして強く要請があり、早くこの改正法案を成立させてほしいというふうな御希望がありまして、すぐにでも中核市として誕生したい、このような希望が寄せられているところでございます。

高木(陽)委員 続きまして、議会制度。

 先ほど、代表民主制、議会というのは根幹であると。地方分権が進みまして、いよいよ地方の権限がふえてくる。そうなったときに、この議会、重要な役割を果たすわけでございますけれども、その上で、議員派遣制度の法制化、さらに点字投票制度の導入、こういったことを今回また導入されるということで、これについてどのようなねらいでやっておられるのかということをお伺いしたいと思います。

芳山政府参考人 地方議会がその本来の機能を発揮するために、種々充実を図っていかなければならないというぐあいに思います。

 第二十六次地方制度調査会の答申の中で、議会の調査機能や議員研修の充実を図ることの重要性が指摘をされております。これを踏まえまして、議会が、議案の審査や地方公共団体の事務に関する調査等のために議員を派遣することができる旨を地方自治法上明確にする、国会法と同じように明確にするとともに、その手続を会議規則で定めることとしたものでございます。

 また、視覚障害者である議員の活動のより一層の充実を図る観点から、地方議会における選挙について、点字投票制度を導入することとした次第であります。

高木(陽)委員 今回の改正で、化製場等に関する法律、クリーニング業法、河川法及び湖沼水質保全特別措置法の四本の改正が含まれております。条例や規則等への委任のあり方、こういった観点があると思うんですけれども、この改正に至った経緯、またはその目的をお伺いしたいと思います。

芳山政府参考人 お答えします。

 地方公共団体が、住民に義務を課し、また権利を制限する場合には、地方自治法十四条に基づいて、原則として条例で定めなければならないということになっております。

 昨年、十二年八月の地方分権推進委員会の意見の中で、国の法令の中で権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方団体に委任している場合、法律の中で規則に委任するというような規定も見られるところでございます。

 そういうことから、この意見を踏まえて、今回、所要の検討を行った結果、御指摘のありました法律について、地方公共団体の規則ではなくて、条例に委任することを規定として書くということで、一括して改正を行うことで御提案させていただいております。

高木(陽)委員 続きまして、市町村合併特例法の改正についてお伺いしたいと思います。市町村合併は従来から大臣も主張されておりまして、昨年十二月に閣議決定した行革大綱、また、与党において、市町村合併後の自治体数を千を目標にすると。

 これは公明党の方でも、党大会を開いて政策決定をいたしまして、党としても、今三千二百二十三ある市町村を千程度にすべきだ、こういうふうに主張しているわけでございますけれども、今回この改正において、市町村合併について、住民投票を導入した理由についてお聞かせ願いたいと思います。

片山国務大臣 平成七年の改正で、住民発議制度というのを導入いたしまして、合併協議会を住民の発議によってつくることができる、こういう仕組みをつくりましたけれども、なかなか、関係の議会がノーと言って否決してしまうんですね、合併協議会設置の議案を、住民発議の議案を否決してしまう。こういう例が多々見受けられますので、この住民発議を貫徹するためには、さらに住民投票で合併協議会を置くか置かないかを決めたらどうだろうか、こういう発想に立ったわけであります。これもいろいろな議論がありますけれども、ここまでは、住民投票を導入することが差し支えないんではなかろうか、こういう判断を我々はいたしたわけであります。

高木(陽)委員 今、合併協議会の設置について、住民投票の導入ということを言われまして、この合併協議会の設置に関して議会と住民の意思が乖離した場合、これは住民の意思を議会の意思に優先させる、こういう考え方があると思うんですが、合併協議会の設置ではなく、合併そのものについて住民投票制度を導入するべきだ、こういう意見もあると思うんです。この点について、総務省の方に。

片山国務大臣 例の二十六次の地方制度調査会の答申の中にも、今、高木委員が言われたような合併そのものを住民投票制度にかけたらと、こういう御提言もあったわけでありますけれども、そこまでやりますと、間接民主主義、議会制民主主義を今の地方自治制度もとっておりますから、議会の意思を完全に否定するというようなことまでいくのはいかがかなと。これは市町会、町村会やそういうところの関係団体の御意見も聞きまして、合併協議会の設置ぐらいはと、こういうことになったわけでございまして、この点はいろいろな、両方の意見があると思いますね。

高木(陽)委員 今、大臣の方から両方の意見があるというふうなお話がございました。まさにそのとおりだと思うんですね。

 ただ、やはり議会制民主主義というこの形を大切に育てていかなければいけないし、先ほどから何度も出ていました代表民主制という形を、これこそ活性化させていくことが本当に住民自治、地方自治を生かしていく点かなというふうに私も考えております。

 その上で、今回の法改正で合併が進めばいいわけですけれども、また進んでもらわなければ困るんです。時間も大分なくなってきましたので、今回の改正でどれぐらい市町村合併が進むと考えられるか、これを最後にお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 今の合併の特例法の期限が平成十七年の三月までですから、あと余り時間がございませんので、大きなうねり、流れ、雰囲気が私は出てこなければならない、こう思っておりますけれども、現在、合併協議会や複数の市町村で研究会を設置して合併を具体的に検討している市町村は千六百五十七市町村でございまして、五割をもう超えているわけです。ただ、これが合併につながるかどうかは、これからのやり方、これからが勝負だ、こう思っておりまして、これで住民発議制度が、住民投票制度が拡充されるわけでありますから、私はかなりの促進剤になるんではなかろうか、こう思っております。

 それでは、どれだけどうか、こういうお尋ねをいただきましても、どのくらいと、こういうお答えがなかなかしづろうございますけれども、雰囲気的には、この自治法の改正を我々は大きなよりどころにいたしたい、こう思っておりまして、そういう意味での効果は大変大きいものと考えております。

高木(陽)委員 数的にはなかなか言えないと思いますが、ここら辺のところは、どんと千にしたい、そういう思いをしっかりと持っていただいた上で、まさに地方分権がこれからさらに重要になってくる、また推し進めなければいけない、その上で、その受け皿である地方公共団体が財政力を含めたしっかりした体力を持っていかなければいけない、その上での合併論議になると思うんです。

 今後、少子高齢化、またはさまざまな、環境問題だとか情報化が、スピードが増してくる。こういう中で、本当に住民と密着している地方公共団体が、住民のニーズ、市民のニーズというものをしっかりと受けとめてやっていくことが重要である。その上での今回の、合併を進めていく地方自治法の改正でもあると思うんです。

 そういった意味では、法を改正して、法をつくって、大切なのは魂を入れることでございますから、やはり総務省を挙げて、また私たち国会の方も議会として、地方分権、そしてその受け皿づくりというものに対して力を入れていく、そういうふうに思いまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十八分散会




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