衆議院

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第7号 平成14年3月20日(水曜日)

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平成十四年三月二十日(水曜日)
    午後零時三十分開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      熊谷 市雄君    小坂 憲次君
      河野 太郎君    左藤  章君
      佐藤  勉君    新藤 義孝君
      滝   実君    谷  洋一君
      谷本 龍哉君    野中 広務君
      吉川 貴盛君   吉田六左エ門君
      吉野 正芳君    荒井  聰君
      伊藤 忠治君    玄葉光一郎君
      島   聡君    田並 胤明君
      武正 公一君    永田 寿康君
      牧  義夫君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   総務大臣政務官      山内 俊夫君
   政府参考人
   (総務省情報通信政策局長
   )            高原 耕三君
   政府参考人
   (総務省政策統括官)   稲村 公望君
   参考人
   (日本放送協会会長)   海老沢勝二君
   参考人
   (日本放送協会専務理事・
   技師長)         中村  宏君
   参考人
   (日本放送協会専務理事) 板谷 駿一君
   参考人
   (日本放送協会理事)   山村 裕義君
   参考人
   (日本放送協会理事)   笠井 鉄夫君
   参考人
   (日本放送協会理事)   山田 勝美君
   参考人
   (日本放送協会理事)   安岡 裕幸君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     熊谷 市雄君
  滝   実君     吉川 貴盛君
  野中 広務君     小坂 憲次君
  中村 哲治君     永田 寿康君
  松崎 公昭君     牧  義夫君
同日
 辞任         補欠選任
  熊谷 市雄君     大野 松茂君
  小坂 憲次君     野中 広務君
  吉川 貴盛君     滝   実君
  永田 寿康君     中村 哲治君
  牧  義夫君     松崎 公昭君
    ―――――――――――――
三月二十日
 地方自治法等の一部を改正する法律案(第百五十一回国会閣法第六四号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する質疑は、昨十九日終了いたしております。
 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、荒井広幸君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について遺憾なきを期するべきである。
 一 恩給制度については、国民の意識の変化及び社会経済情勢の変化に対応した制度として、公的年金制度との連携をも視野に入れつつ、その役割を果たすべきである。
 二 恩給年額の改定については、恩給受給者の生活実態等について十分な調査研究を行い、その結果に基づく合理的かつ明確な基準により行うよう努めること。
以上であります。
 何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。
平林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
平林委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
平林委員長 次に、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長高原耕三君及び総務省政策統括官稲村公望君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。
    ―――――――――――――
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
片山国務大臣 ただいま議題とされました日本放送協会平成十四年度収支予算、事業計画及び資金計画の提案理由につきまして、御説明申し上げます。
 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。
 まず、収支予算につきまして、その概略を申し上げます。
 一般勘定事業収支につきましては、事業収入は六千六百八十七億円、事業支出は六千六百三億円となっており、事業収支差金八十三億円は、全額を債務償還に使用することとしております。
 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出とも九百七十九億円となっており、放送設備の整備など建設費に七百八十四億円を計上しております。
 次に、事業計画につきましては、公共放送の使命に徹し、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や多様で質の高い番組の放送を行うとともに、新しい放送技術の研究開発等に積極的に取り組むこととしています。
 また、衛星デジタル放送の普及促進や地上デジタル放送の開始に向けた設備の整備を行うなど、新たな時代の放送文化の創造を目指すこととしています。
 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ信頼される公共放送を実現していくこととしています。
 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。
 総務大臣の意見といたしましては、これらの収支予算等につきまして、適当なものと認めた上で、協会は、受信料により維持される法人であることを十分に自覚し、受信料の公平負担を一層徹底し、公共放送としての使命達成に積極的に取り組むとともに、事業運営の適正性、透明性の確保を図ることが必要であり、また、事業計画等の実施に当たり、特に配意すべき事項を付しております。
 具体的には、受信契約締結等の徹底、デジタル放送の普及に向けた取り組み、非常災害時等における緊急報道など取材体制の強化等の六項目であります。
 以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願い申し上げます。
 以上であります。
平林委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長海老沢勝二君。
海老沢参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。
 平成十四年度の事業運営に当たりましては、公共放送の使命に徹し、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や多様で質の高い番組の放送を行うとともに、新しい放送技術の研究開発などに積極的に取り組んでまいります。
 また、衛星デジタル放送の普及促進や地上デジタル放送の開始に向けた設備の整備を行うなど、新たな時代の放送文化の創造を目指してまいります。
 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ信頼される公共放送を実現してまいります。
 主な事業計画について申し上げますと、まず、建設計画におきまして、地上デジタル放送の開始に向けた設備の整備を行うとともに、ハイビジョン放送充実のための設備の整備や放送会館の整備などを実施いたします。
 事業運営計画につきましては、国内放送及び国際放送の充実を図るとともに、緊急報道に備えた取材体制の強化や放送技術などの調査研究を積極的に推進いたします。
 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千六百八十七億四千万円、国内放送費などの支出六千六百三億五千万円を計上しております。事業収支差金八十三億九千万円につきましては、債務償還に使用することとしております。
 また、資本収支につきましては、支出において、建設費など総額九百七十九億八千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額九百七十九億八千万円を計上しております。
 なお、受託業務等勘定におきましては、収入九億三千万円、支出八億一千万円を計上しております。
 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。
 以上、日本放送協会の平成十四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、一層効率的な業務運営を徹底し、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。
 委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
平林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八代英太君。
八代委員 自由民主党の八代英太でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 昨今は、メディアポリティックス時代あるいはワイドショー政治などと言葉が出るように、政治は暮らしのすべてでありますから、政治の問題がテレビで取り上げられるのは、それはそれで構わない、当然といたしましても、非常に行き過ぎた部分があり、人の人権も踏みにじるような過激な報道等々もあるのですが、放送におけるいわば公平そして公正中立、こうしたものがだんだん損なわれていくのではないかという、私はかつて放送を仕事としておった一人として、非常に昨今の報道メディアのあり方というのにはそれなりの批判の思いを持っているのですが、それほどまさにテレビ映像というのは強烈に私たちの脳裏に刻み込まれる。事件あるいは事故、そうしたものが相次いで入ってくる。
 思い返しますと、昨年の九月十一日のあの米国における同時多発テロなどというものは、私たちは生涯脳裏から、あの悲惨な残虐な映像というものは忘れがたい、また消し取ることができない大変強烈な印象、それにおけるテレビの威力というものをまざまざと感じ入ったような次第でございます。
 いろいろ政治的な背景あるいはもろもろの対立の背景はさておいても、あのメディアの生中継における、あの二つのビルに、黒煙に包まれ、炎に包まれ、そこにまた新たな旅客機が突っ込んでくる、それが同時に茶の間に、世界を駆けめぐって伝わってくる、こういうことでございます。NHKもそれは報道しておったわけでありますが、中には、NHKの報道ぶりは余りにも米国寄りであったなどというような、こういう意見もマスコミの中には報じられておったわけであります。
 ああした瞬時に起きるようないろいろなことがこれから私たちの社会の中には包含されている時代を思いますと、ますます報道の責任というものは大変重要だというふうに思うのですが、あの米国の同時多発テロの教訓を海老沢会長はどのように、NHKとして、報道マンとして受けとめたか、まず冒頭、伺っておきたいと思います。
海老沢参考人 今、世の中は、何が起こるかわからないと言われる非常に激動の時代であります。そうした中で九・一一テロ事件が起こったわけであります。私どもも、この事件が本当に世界を変えたと言われるほど、世界の政治、経済、社会に及ぼした影響は大きいと思います。そういう面で、日ごろから、これからグローバル時代、国際化時代になって、我々報道機関はどうあるべきかということは常に我々も考えている次第であります。そういう中での事件でありました。
 私どもは、今、世界の放送機関、四十四カ国、六十二の放送機関と協力協定を結んで、多角的に多面的にいろいろな情報を収集し、そういう中でバランスのとれた報道をしようというのが基本であります。そうした中であの事件が起こって、十数分後にもう生中継で放送したわけでありますけれども、私どもは、やはり、こういう事件の報道というのは国民に及ぼす影響が非常に大きいわけでありますから、そういう面で、多角的、多面的にいろいろな情報を総合しながら編集していくという基本でやってきたつもりでおります。
 そうした中で、あの刺激的な二つのビルの崩壊、これを見て、子供たちにどういう影響を及ぼすのか、またそれがこれからどういうような波紋を呼ぶのか、いろいろな角度から検討いたしまして、その中で、何回も繰り返すことは非常にいろいろな面で影響を及ぼすということで、十分自粛して報道した面もあります。ただ、事実は事実として報道する面と、また、繰り返し報道することによってある一定の印象を与えてしまうというようなおそれも最近出ておりますので、その辺を十分配慮しながら報道したつもりでおります。
 いずれにしても、テレビというものはほかのメディアに比べて影響も多いし、また、生中継、同時放送が放送の使命でありますので、そういうのを十分勘案しながら、いずれにしても慎重に扱うものだろうというふうに思っております。
八代委員 だからといって、萎縮するわけではなくて、やはり素直な気持ちで、この世界、グローバル化された中における、NHKの公共放送としての役割というものは非常に責任が重いという自覚を持ってこれから取り組んでいただきたいという思いで、先ほどまず申し上げたところでございます。
 さて、それにあわせて、いよいよインターネット時代ということになるわけでございますが、インターネットの利用につきまして、この一、二年、いろいろな議論がございました。先ごろ、当面の区切りはつけられたようでございますけれども、昨年の十二月には、放送政策研究会の第一次報告が出されまして、そのガイドラインが確定、公表されたと伺っております。
 議論の経過を簡単に振り返ってみますと、平成十二年の春に、海老沢会長が放送と通信の融合について極めて意欲的な発言を繰り返されたのが一つのきっかけでございました。当時、私は郵政大臣の職にありまして、会長、余り先走って発言されないようになどと、牽制もさせていただいた記憶があるのでございますけれども、しかし、時は刻々と過ぎ行き、そしてまた、そういう背景も醸成されてきているということを考えますと、もう二年前のことが遠い昔のような思いに立つわけであります。そしてその年の五月には、第三者的な立場から検討していただくということが、放送政策研究会という形で発足をいたしました。
 今回の報告では、子会社等の業務範囲とインターネット利用についてに限ったものでありましたが、この第一次報告とこれに基づくガイドラインについて、NHKとしてはどのようにこれを受けとめているのか、伺いたいと思います。
海老沢参考人 こういう技術の進歩が激しい時代でありますし、やはり我々は先見性といいますか、先を見越して、いろいろな機を見ていかなければなりませんので、特にインターネットの急速な普及に対して、このままでは我々、時代に乗りおくれる、世界のそういうIT化に乗りおくれる、そういう危機感から、世界どこでも、だれでもが自由に使えるのがインターネットであります。そういう面で、我々放送事業の方も、こういう新しい伝送路技術というものを活用する、いわゆる放送の補完としてこれを活用していく。そして放送サービスの高度化を図っていく時代だろう、そういう認識で、これまで申し上げてきたところであります。
 そういう中でいろいろな意見が出ました。それに基づいて総務省がインターネット利用のガイドラインをつくりました。私どももインターネットを放送を補完するものとして位置づけて、当面、このガイドラインに沿って業務を展開するということにいたしたわけであります。
 いずれにしても、こういう新しい技術がこれからどんどんまた出てきます。今ブロードバンド時代とも言われている中であります。これからまたいろいろな伝送路がさらに開発されてくるだろうと思います。そういう時代の変化に、我々、公共放送も、視聴者国民の利益になるため、そういう大前提に立って活用させていただきたい、そう思っておるところであります。
八代委員 放送政策研究会は、報告にあった点のほかに、放送法改正も視野に入れて、いろいろ検討していただいたものと承知しておりますが、この後、何か最終報告のようなものを予定しているのかどうか、またお答えいただければと思うのですが。
 さて、放送政策研究会にかわって、次は懇談会についてちょっとお尋ねしたいと思うのです。
 昨年十一月に、ブロードバンド時代における放送の将来像に関する懇談会というのが大臣の懇談会として発足をして、放送政策研究会はすべて、これは学者とか、あるいはまた先生方で構成されていたけれども、こちらの方になりますと、やはり時代に即応するという思いに立って、放送事業者や、あるいは海老沢会長等々も入って、本格的な懇談会が始まったということを伺っております。しかも、総務大臣の懇談会だということでございますので、この懇談会の意味と、その後の議論はどういうようなものをこれで取り上げているのか、まず片山大臣に伺っておきたいと思います。
片山国務大臣 今、八代委員お話しのように、放送政策研究会というのは、これは学者の方や、そういう専門家の方だけの研究会でございまして、これは私のあれじゃなくて局長の諮問機関でございます。そこがこの前ガイドラインというものを、放送と通信との関係といいますか、インターネット利用のようなことについてのガイドラインを出しました。
 それで、一応その報告は報告でいただきまして、今後は、マスメディア集中排除についてのいろいろな御検討を賜ろう、できれば年内にそれについての研究報告をまとめていただけたら、こう思っております。
 一方、今お話しのように、ブロードバンド時代に入ってまいりまして、あるいは放送はデジタル化でございますから、そういう中での放送サービスの将来像、放送に期待される役割という少し大所高所の議論をやっていただこうというので、今度は私の諮問機関である懇談会をつくらせていただきまして、海老沢会長初め、放送業界のトップの方にも入っていただいておりますし、通信業界、メーカー、あるいは視聴者の代表の方、三十一名からの懇談会をやっておりまして、大変活発な議論を展開いたしております。
 懇談会においては、私はなかなか出られないんですけれども、これまで、放送の役割、社会的な意義、視聴者重視の徹底、良質なコンテンツの確保、振興などについて活発な御議論をいただいております。さらに、もう少し広い範囲で御議論賜って、できればその成果をまとめていただければ放送の将来像についてのイメージを形成していく上で大変有益ではないか、こういうふうに私も期待いたしているところであります。
八代委員 そして、いよいよデジタル放送の時代に入っていくわけでございますけれども、アナ・アナ変換とかいろいろ難しい問題があるといたしましても、まさにブロードバンド時代、さぞかしすばらしい映像時代が私たちの暮らしの中に入ってくるだろうと私たちは何となく思うんですけれども、一般の国民は、一体ブロードバンドというのは何じゃいな、あるいはまたデジタルとは何だろうと、本当にわからないまま、そうした言葉だけが先行しているような気がするんですが、今もデジタルデバイドという問題も既にポピュラーになってきましたように、そういう格差というものはこれからますます私たちの中において、デジタル時代を迎えればこそ起きてくるのではないか、ブロードバンドの時代になればなるほど、そうした格差というものは拡大していくのではないかという気がするわけでございます。
 パソコンでもそうでありますが、幾らその機器がすぐれた性能を持っておりましても、使いこなす人が使えなければ、これはもう本当にだめだと思うんですね。ちょうどパソコンがブームになりつつありましたときに、私はいろいろな郵便局にパソコン塾のようなものを開いていただこうということを提唱しまして、これが大変大にぎわいでございました。自来、パソコンというものが、言ってみれば暮らしの中にもだんだん溶け込むようになって、老若男女、私も老に入っておりますが、それでも一字一句をキーボードをたたきながらやる楽しみというようなものも出てまいりました。
 これにもやはり教えてくれる塾のようなもの、あるいはまた何かお助けマンのようなものがなければ、これからデジタル時代を迎える、ブロードバンド時代を迎えると幾ら大合唱しても、なかなか暮らしの中ではついていけないだろう、こんなふうに思うものですから、デジタル放送でも同じことを考えると、やはり、このパソコンの場合はその場所へ行って習えばいいんですけれども、まさか自分のテレビを持って習いに行くというわけにはいきませんから、こういう機会に全国二万四千七百ある郵便局の人たちのエネルギーを使って、お助けマン、つまりデジタルIT出前お助けマンのようなものをやはり育成しながら、家庭の中におけるブロードバンドあるいはデジタルのデバイドというものを解消するためのそういうことを考えていかないと、電器屋さんだけでも対応し切れない。NHKがすべての人たちに対応し切れるわけじゃないので、こういう社会全体のいろいろな資産を使ってやるということも私はこれから非常に重要ではないかと思うんですね。
 折しも郵政公社化というお話が出ておりますけれども、郵便局もこれから本当に新しい時代のありとあらゆる地域の拠点になっていこうという情熱をみんな持っているわけですから、こうした放送のデジタルデバイドを解消するためにも、あるいはまた、そうしたテレビを郵便局の人たちが出張して、おじいちゃん、おばあちゃんに教えてやるような、そういうお助けマン的なこともちょっと大臣、考えた方がいいような気が私はするんですが、私の意見はどんなふうに思いますか。
片山国務大臣 我々もデジタルデバイドの解消というのは大変大きなテーマだと認識しておりまして、IT有識者会議というのを、もう役割を終えましたけれども、私は総務大臣になってからすぐつくらせていただいて、そこでいろいろな御意見を承ったんです。
 御承知のように、一昨年の暮れから去年いっぱいかけまして五百五十万人の研修をやったんですね、IT研修を。これは無料ですからもう大変人気で、全国各地で押すな押すななんですよ。これを一過性にしてはいかぬと思いまして、来年度予算で郵便局や公民館を中心にITの人材サポートセンターを一万カ所以上つくろう、こういうふうに考えておりますし、八代先生郵政大臣のころよく御承知でございますけれども、イントラネットをこの三年ぐらいで希望する市町村には全部やろうと。その中には必ず郵便局を入れる、郵便局をこれから地域ITの拠点にしたいと。
 ちょっと郵便局、証明書の交付を市町村のかわりにやれ、あれもやれこれもやれといって大変だという議論はあるんですが、今の八代委員の構想を大変我々も興味を持って聞かせていただきましたので、今後とも、同じ方向ですから、ぜひ具体化や実現のために努力してまいりたい、その予算がとれておりますので、その予算を上手に使いたい、こういうふうに思っております。
八代委員 期待をしております。
 さて、続いて情報のバリアフリーの問題。NHKも大変熱心に、字幕放送をニュースから取り上げていただきました。たしかこれは一昨年だったでしょうか。自来、聴覚障害の皆さんにとってはニュースというものに対する興味も大変出てまいりました。
 しかし日本語は、英語の二十六文字と違いまして、なかなかリアルタイムで字幕放送というのは難しさがあるんですが、しかし最近はその技術も非常に高度化されたということを伺っております。
 NHKはかなり先行していますが、民放の方はまだまだちょっとおくれをとっておりまして、ここはやはりNHKは胸を張って、さらにこうした聴覚障害者あるいは高齢者における映像を通じてどのようなサービスをするかというのは真剣に取り組んでいただきたいと思うんですが、その辺はどのように会長は考えておられますか、これからの取り組みも含めて伺っておきたいと思います。
海老沢参考人 高齢者社会になってきておりますので、私どもも、人に優しい放送といいますか、字幕放送、解説放送、そういう面に力を入れているところであります。それから、十四年度も対前年に比べて数億の予算を上積みして、できるだけ早く字幕化を完了したいと思っておるところであります。政府の行政指針が十九年度に一〇〇%になっておりますけれども、私どもは、十九年を待たないで十八年度中には一〇〇%達成したいと思っているところであります。
 それと同時に、生放送でも字幕放送をやろうということで、ソルトレークシティーのオリンピックでも字幕放送をやりました。今後とも、ワールドカップサッカーとかいろいろそういう国民の関心の高い生放送、スポーツ放送でも字幕化をさらに推進していきたいと思っております。
八代委員 ぜひニュースだけではなくて、そうしたスポーツにも字幕放送をどんどん取り入れるように心からお願いをし、期待をして、格差のない、そしてまたNHKの放送を通じてみんなが生きとし生けるすばらしい社会をつくるように御努力をいただきたいと思います。
 それでは、左藤議員にバトンタッチをいたします。
平林委員長 次に、左藤章君。
左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。
 きょうは、平成十四年度のNHKの予算について、並びにそれに関連して質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど、大臣から提案理由、並びに、NHKの会長様から補足説明がありました。
 平成十三年度予算と十四年度の比較をしますと、五十七億の増収、そして契約総数も三十七万の増ということになります。そして、要員の効率化を見ますと、平成十一年度から十三年度、十四年度を見ますと、大体百九十人台の要員数を削減している。そして、管理部門も、三十一名から十八名、十六名、二十一名と減らして、非常に経営の御努力をなさっていることは心から敬意を表したいと思います。
 ただ、昨年もちょっとお願いを申し上げましたが、受信料の滞納をしている方が、転宅とか、いろいろなところへ行ってしまって夜もつかまらないという方も多いので、なかなか滞納数が減ってはいませんが、ひとつこれからも努力をしていただいて、やはり我々みんながあまねく負担をするということでよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。
 ちょうど先ほどお話がありましたように、今や、地上デジタルの問題で、俗に言うアナ・アナ変換の問題が出ております。今、NHKでも、いろいろアナ・アナ変換について調査がかなり進捗をしていると聞いておりますけれども、これについてNHKとしてどのような規模の設備投資をして、そしてその具体的な中身はどうなのか。
 また、二〇〇三年度末までに東京、大阪、名古屋、俗に言う東名阪ですけれども、地上デジタル放送を開始をすると聞いておりますが、これについての準備また進捗状態はいかがなものか、お答えをお願い申し上げたいと思います。
海老沢参考人 デジタル放送は、これはもう先生御案内のように、世界の大きな流れ、潮流になっております。こういう新しいデジタル技術を我々も積極的に取り入れて、これを視聴者、国民のために役立ててもらいたいというのが基本的な考え方であります。
 そういう面で、今BSデジタル放送をやり、これを成功させた上で地上デジタル放送を円滑に進めたいというところであります。
 私ども、これまで、この地上デジタル放送を順調に円滑に進めるためにはどうするかということをいろいろ検討しているところでありますけれども、NHKの我々の試算では、地上デジタル放送をやるためには、いわゆる送信設備、私どもが今、アナログ放送で、総合、教育テレビ合わせて送信用の鉄塔が三千五百本全国にあります。これをデジタルにしますと、二千本で済むだろう。その二千本をやるために三千億かかるというふうに見ております。それと、番組を送るためのいわゆる送出設備に、今、五百億円程度を見込んでおります。合わせて三千五百億円でございます。
 これではNHKの財政がなかなか厳しくなりますので、私は、民放連にも呼びかけて、できるだけ送信設備、送出設備というものを共同で建設する、また共同で開発して、お互いにできるだけコストを削減していこうという呼びかけをし、今その話し合いが順調に進んでおります。
 ですから、送出の場合はいろいろ研究開発はこれからでありますけれども、送信の方の設備は大分話し合いが進んできております。私どもは、できるだけこの三千億を二千億程度に圧縮したい、私は圧縮できるだろうと見ております。そうしますと、二千五百億程度でできればというふうに今思っているところであります。
 それと同時に、そういう意味で、今お願いしております十四年度の予算では、百九十三億を地上デジタル放送の設備としてお願いを申し上げているところであります。百九十三億のうち、送出の施設に百五十三億、そして送信の方に四十億ということで予算を組んだわけであります。そして、我々は、十四年度中にそういう施設を建設しておきたい、そういうふうに今思っているところであります。
左藤委員 今、お話を聞きますと、かなりの設備投資、非常にかかるわけであります。アナ・アナ変換になりますと、当然、必要な局数の増加になりますけれども、昨年は対策費が七百二十七億だと言われておりました。しかし、何か、ことしになると、二千億を超える。先ほどNHKさんのお話でもありましたけれども、そういう莫大な金額をかけてどうだろうということがあるわけであります。これについて、総務省はどう思っておられるか。
 また、アナ・アナ変換をしてデジタル化することについて、それだけの巨額を投ずるコストと効果という問題であろうと思いますが、本当にあるんだろうか。また、一般の市民にとってみれば、デジタル化してどういうメリットがあるんだというPRも含めて、不足しているんじゃないかなと思います。総務省の御意見をいただきたいと思います。
佐田副大臣 今のお尋ねは、二つあると思いますけれども、七百二十七億からちょっと費用がふえた、どういうことかということと、もう一点は地上デジタルの必要性についてということ、この二問だと思うのです。
 まず最初のことは、正直申しまして、地上デジタルの場合は、アナログをどかしていくわけですので、非常に込んでいる、例えば、具体的に申し上げますと、九州の一部と、また関東の一部で非常に電波が込んでいるものですから、その辺の計算がちょっと狂ったという部分もあります。
 また、そういう観点から、NHK、民放そして総務省の三者によりまして、地上デジタル放送推進協議会におきまして、日本の複雑な地形に即した形で、例えばセットトップボックスをつけるとか、またはケーブルを引くとか、いろいろなことを工夫しながら、対策を考え、そして経費の圧縮に努めていきたい、かように思っています。
 また、地域における放送推進協議会におきましてもそういうふうな経費を積み上げておりまして、本年の七月の初旬には大体の数字を出していきたい、こういうふうに思っております。
 また、アナ・アナ変換におきましては、電波法の改正におきまして、電波利用料を使うということも念頭に置きましてこれから対処していきたいと思っております。
 二問目の話でありますけれども、地上デジタルをやる必要性があるのかどうかというお話でありますけれども、現在、一億台のテレビがあるわけでありますけれども、先ほどのお話にもありましたように、二〇一一年にはこれは完全にもうデジタルに移行するわけでありますから、その辺の啓蒙活動等もしっかりとやっていきたい。
 また、例えば、基本的には、デジタルにすることによってインタラクティブな通信をこれからは行っていく。放送と通信がある部分では一体になる部分もありまして、例えば自治体からのお知らせのテレビ番組で関心を持った地域の催しを画面上でクリックすると出てくるとか、または、テレビの紀行情報、例えば温泉案内だとか、そういう番組があった場合に、画面上でクリックしますと、例えばインターネットに連動していけばそれに出てくるとか、そういうふうないわゆるインタラクティブな通信も行われる、こういうことであります。
 また、ハイビジョンによる高画質になってくるということも、これは重要なポイントであろうかと思います。
 また、変換することによりまして周波数の有効利用、要するに、アナ・アナ変換することによって周波数があきますから、そういう意味におきましては、周波数がかなりあいてきますから、それに対する利用価値というものは非常にこれからの効果も上げてくるんではないか、かように思っておるわけであります。
 なお、諸外国におきまして、そういうインタラクティブな、これから世界との競争になってくる中におきまして、日本の場合は、二〇〇三年、二〇〇六年……(発言する者あり)失礼、二つありますので。二〇一一年にやりますけれども、そういうことで、各国も全部全力でやっているということであります。
 以上です。
左藤委員 今のお話にもありましたように、アナ・アナ変換の費用についてのしっかりとした検証をしていただいて、余り狂わないように、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それで、実はIT戦略本部でいろいろな議論があります。先ほどありました通信と放送の融合の問題なんですが、デジタル化、IT化の進展に伴っていろいろな融合の問題が進んでまいります。データや音声、映像などのあらゆるコンテンツがインターネット上に提供されるようになりますと、コンテンツをつくる事業者、コンテンツを送る事業者など、水平的な、機能ごとに市場を分化させる、要するにアンバンドル化ですけれども、これが進む見方があります。放送の世界にもアンバンドル化の考え方を持ち込んで、業者ごとの水平分離を促すべきだという考え方が一部に出ているようでございます。これについてNHKさんはどのように思っておられますか、後で聞きたいと思うんですが。
 ちょっと私は、いろいろ問題があると思うんです。果たして、今まではハードとソフトの分離をしておりませんでしたが、今後これが分離されると、本当に自由で一貫した考え方で番組が編成されるんだろうか、また、スピーディーに物事ができるんだろうか。そういういろいろな、放送のあまねく普及について努めておられた方々の立場として、NHKさんからひとつその御見解をお聞きしたいと思います。
海老沢参考人 今、ソフト、ハードの分離論が言われておりますけれども、これはいろいろな立場あるいは見方から意見が出ております。今、ちょっと議論が飛躍している場合があるんですけれども、私ども、地上放送、いわゆる基幹放送と申しておりますけれども、これは全国あまねく、先ほどもお話ありましたように、情報の格差なく届けるのが我々の使命であります。そういう面では、我々放送事業者は、番組の制作、それを自分の責任で編集し、それを同時に情報の格差なくすべてに送る、そういう使命があるわけであります。そういう面で、ソフト、ハードの一致が私は原則だろうと見ております。アメリカでもそうでありますし、やはり責任ある対処をするためには、ハード、ソフトを分離してはうまくいかないだろうと思っております。
 ただ、今CS放送はソフト、ハード分離であります。これは有料放送でありまして、私は、どっちかといえば、一部放送、一部流通事業だろう、こう見ております。ですから、今は、ハード、ソフト分離論は、どっちかといえば流通事業者の立場からの発言がそういうことにしているのであって、放送事業者から見れば、そういうハード、ソフト分離は違うんじゃないか、そう思っております。だんだんこれが大分理解されてきていると私は思っております。
 ですから、いずれにしても、情報を的確に責任を持って送るためには、私は、今後とも引き続きハード、ソフト一致でやっていきたいと思っております。
左藤委員 それについて総務大臣、特に地上波の、今お話ありましたハード、ソフトの分離について、いろいろな議論がありますけれども、大臣としての御見解はいかがなものでございますか。
片山国務大臣 IT戦略本部に専門調査会というのをつくりまして、何人かの方が、そういう専門調査ができるようにした結果だという報告があったんですよ。私は、たちどころに反対したんです。
 放送と通信はだんだん近寄ってきますよ、当たり前の話で。中間領域ができる、似てくる。しかし、放送と通信は基本的に違うと言ったんですよ。通信というのは、通信の秘密を守られて、特定の、簡単に言うと一対一ですよ。その一対一が、一対五十になることもあるし、百になることもあるけれども、基本的には一対一ですよね。放送というのは、ある程度中身の制約を受けながら不特定多数に教えるということなんですよ。だからそこは、社会的役割は完全に違う。そこで、通信と放送が似てきたから、通信でやっているハード、ソフトの分離を放送にも持ち込もうという、それはだめだと言っているんですよ。日本の放送は、ハード、ソフト一体でうまくやってきたんですよ。そのために社会的な役割も果たしているので、ここで全部分けてしまう、コンテンツをつくる人、プラットホームをつくる人、ハードの人、施設提供者と、こんなことをやって、うまくいくはずがない。
 ただ、今後、放送の中でハードだけやりたいとか、ソフトだけやりたい、コンテンツだけやりたいとか、プラットホームだけやりますという人があれば、それはそういう人もやれるようにすればいいので、全部それは水平分離だ、こういうことは現実的でないということを言いまして、この間のIT戦略本部でも言いまして、海老沢会長初め民放連の皆さんも新聞協会の皆さんも言われまして、そこの点はIT戦略本部の皆さんや専門調査会の皆さんも相当理解した、こういうふうに思っております。
 基本的には、競争促進なら、ハード、ソフト一体でも競争を促進すればいいので、私はそういうことを申し上げた次第であります。
左藤委員 どうもありがとうございました。
 ハード、ソフトのいろいろな面でみんなが混乱をしていると思いますので、そういう見解でぜひひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 時間がありませんので、アーカイブだけはひとつお願いを申し上げたい。
 我々にとっては、いろいろな古いもの、伝統工芸とか世界遺産というものがどんどん失われつつあります。やはり特に伝統工芸というのはなかなかIT化でできるものでもありません。しっかりデジタルハイビジョンで撮影をしていただいて、アーカイブに保存して、いつでもだれでも見られる、そして伝統文化、伝統工芸というものをしっかりと次世代に送れるように、ひとつこれからもNHKさん含めて御努力をお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、佐藤勉君。
佐藤(勉)委員 左藤、佐藤と続きますが、自由民主党の佐藤でございます。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 最近、マスコミ、特に新聞を読んでおりますと、NHKが巨大化そして肥大化をしているとか、民業を圧迫しているんではないかとかいった記事を目にすることが大変多いわけでありますが、NHKは多くの視聴者の受信料に支えられた公共放送でありまして、民間企業と同じように利益を求めてむやみやたらに事業を拡大するということは本来認められていないということになっております。節度ある事業運営を行うことはNHKの当然の責務と考えております。
 しかしながら、その結果、業務が萎縮して、大きな事件や事故、災害の対応などに欠けることがあってはならないと思うわけであります。さらに、国際化がますます進む時代に、海外への情報発信もこれまで以上に充実させることが必要であると考えるところでありますが、公共放送にふさわしい適切な事業運営が望まれているところでありますし、NHKは、巨大化、肥大化という批判についてどのように考えておられるのか、会長にお伺いをしたいと思います。
海老沢参考人 NHKの巨大化、肥大化という言葉を我々もよく耳にするんですけれども、私はこれは当たらない意見だろうと見ております。といいますのは、NHKの事業計画、予算は、きょうの国会でもおわかりのように、すべて衆参両院で議決されて決まるものであります。決算もそうであります。この十二年間受信料を値上げしないで、事業計画、予算も皆さん方の御審議を得て我々は運営しておるわけであります。我々が営利を目的としてやっているわけではありません。
 そういう面で、予算の中でいろいろ、改革と実行、公開と参加という二つの経綸を掲げて、できるだけ受信料を大事に使っていこう、コストを削減していこうということで毎年百億円以上の節減をし、そして受信料も公平負担ということで、こういう厳しい経済の中でも百億近い増収を図っているところであります。そういう面で、そういう増収分と削減した分を、技術の開発あるいは新しい番組の開発に充てているわけであります。そういう面で、NHKがいたずらに肥大化、巨大化はしてはおりませんし、何か口癖のように何かあるとそういう言い方をされまして、我々も非常に心外だと思っております。
 ただ、我々は受信料でやっている公共放送でありますので、できるだけやはり謙虚に、まじめに、そして質のいい番組を一本でも多くつくるのが我々の使命でありますので、その使命感に燃えて今後ともいい番組をつくっていきたいと思っております。
佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、今会長がおっしゃられましたことを基本に、これからもいろいろな運営をしていただければありがたいと思います。
 先ほども申し上げましたが、受信料を財源とする公共放送であるというのは当たり前の話でありますが、民間企業のように利益を追求するものではないというのも先ほど申し上げました。一方で、NHKの業務に密接する、関連する事業を行う者にはNHKからの出資が認められており、多くの子会社を抱えておるというのも現状だと思います。
 こうした現状を見て、NHKは子会社を通じて事業を拡大し、利益を求め、民業を圧迫しているなどという批判もまた一部ではあるというふうに聞かれるところでありますが、NHKといたしまして、公共放送の子会社の果たすべき役割をどんなふうに考えていらっしゃるのか、まずお伺いをしたいと思います。
海老沢参考人 御承知のように、今、市場経済といいますか、自由な競争時代に入りました。いわゆる規制緩和によって、また技術の進展によって、放送業界も大きな変化の時代を迎えているわけであります。
 そういう中で、十数年前に、NHKも新しく子会社をつくって、それに業務を委託し、NHKの業務の効率化をさらに図っていくべきだろう、それによって受信料の新たな負担をさせないようにという意味合いを含めて、子会社へ対する出資が放送法を改正することで実現したわけであります。そういう面で、私ども、放送法や商法等にのっとって、適切な事業運営をしようというようなところであります。
 この十数年、私ども、NHKエンタープライズを中心に子会社をつくり、やってまいりましたけれども、民間の事業なり民放さんの事業を横取りするとか、あるいは圧迫するということはありません。具体的に、今、民放連にもどういうことがあったのかといっても、具体的なあれはありません。そういう面で、我々は、常に節度を持って、良識を持って事業を運営するという立場でやってきております。
 ただ、時代の変化が急激でありますから、事業を常に我々はそういう変化に応じて見直しながら、いろいろな面で創意工夫しながら、健全な事業運営をさらに心がけなきゃならないだろうと思っております。
佐藤(勉)委員 そこで、今お答えをいただいたわけでありますが、先ほど八代先生の質問にもございましたように、総務省の放送政策研究会というところでも、公共放送、NHKの子会社のあり方について論議、検討が行われたというふうにお伺いをしております。昨年十二月に第一次報告が出され、また、これを受けて総務省から、今月の八日でありますけれども、子会社等の業務範囲に関するガイドラインが示されたと承知しております。NHKにおいて、この報告やガイドラインをどう受けとめ、今後どのように対処をしていくのか、具体的な施策についてお伺いをしたいと思います。
山田参考人 お答えします。
 NHKでは、先ほど会長が申し上げましたように、これまでも節度と良識を持って業務運営を徹底するよう指導監督を行ってきたわけでありますけれども、今回の総務省のガイドライン、それと放送政策研究会の第一次報告の趣旨を踏まえまして、一層適切に対処をしてまいりたいというふうに思っております。
 具体的には、まず、子会社を含めた外部取引全般について、より一層適正性と透明性を高めるということで、放送法に基づく業務委託基準というのをこの四月から改定しまして、業務委託について、業務の専門性、特殊性等からほかに委託先がない場合等やむを得ない場合を除き、競争契約を原則とするという旨を明確にしていくことにしております。
 また、業務運営のあり方につきましては三つの施策を現在検討中でありまして、いずれもことしの七月からこれを実施する方向で具体的な詰めを現在行っております。
 その三つでありますが、その一は、子会社等の指導監督を徹底する観点から、現行の子会社等の運営基準を改定して、これを公表することにしております。それから第二点は、子会社等の事業活動や子会社等の取引に関する外部からの情報、これはほとんどが苦情みたいなものでありますが、こういった外部からの情報を受け付けて、これを審査して、外部委員を含む委員会を設置することにしております。第三点は、連結決算に伴う子会社等の会計検査、これとは別に子会社等の業務運営を監査する業務監査というのを監査法人あるいは弁護士に依頼することにしております。こういう三点をきっちりやっていくことにしております。
 以上であります。
佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、そういう不安があるというのは現実あるわけでありますから、ぜひともNHKの方々には、先ほど会長のお話にございますように、基本に返りまして、間違いないような運営をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、ちょっと観点を変えまして、去年の質問でもさせていただいたんですが、私は、CNNやBBCが世界に配信をしているというのを非常に重く受けとめさせていただいておりまして、日本の放送界のリーダーとして、NHKも、在留邦人向けだけではなくて、世界に向けて英語や現地語ですぐれた番組を発信していくべきだと思っておる一人でございます。世界はともかくといたしましても、私は、アジアぐらいではやったらいかがなものかなというふうな思いを持っておりまして、英語及び現地語で特別編集をして発信できるようなものを考えているのかいないのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
板谷参考人 平成十四年度のNHKの国際放送というのは、先生御指摘のように、日本とかアジアの情報を充実して、それを世界に発信するということを中心に考えております。そして、具体的には、英語放送の拡充を順次やっております。
 平成十四年度については、「ホワッツ・オン・ジャパン」、日本では何が起こったかということですが、四十五分の英語ニュースをやるとか、それから英語文字ニュースを新設するとか、英語番組の放送時間は一日六時間十八分、英語化率は二六・二というところに至るほどだんだん拡大しております。
 ただ、先生、いろいろな言語でアジアに向かってやったらどうか、放送したらどうかということなんですけれども、テレビ国際放送というのは衛星を使っているものですから、特定地域に特定の言語でピンポイントして放送するということはなかなか難しい。日本で衛星放送でローカル放送がなかなか難しいのと同じように、技術的に克服しなければならない問題がいっぱいありまして、当面は、やはりNHKとしては、英語、日本語、これをテレビ国際放送の中軸にしていくというふうに考えております。
 ただ、ラジオ国際放送については、日本語を含む二十二言語、アジアについては十四言語でございまして、一日に六十五時間の放送をしております。ラジオなどでは、そういうアジア地域の言語を使って放送するということが現実に着実にできているということでございます。
佐藤(勉)委員 BBCでやってNHKができないわけないと私は信じておりますので、ぜひとも頑張っていただきたいというお願いをしたいと思います。
 そこで、今お話にございましたように、NHKで制作したニュースや番組を英語あるいは現地語の字幕に変換できる研究開発が行われているというふうに伺っておりますが、その辺のところの話をお聞かせいただければありがたいと思います。
中村参考人 お答えいたします。
 日本語から英語へ自動翻訳をいたしますための基礎技術の研究につきましては、鋭意取り進めをしております。ただ、現時点では、さまざまな分野の話題が含まれております一般のニュース番組につきまして、自動翻訳をいたしますのには、また字幕に変換いたしますのには非常に難しい技術でございますので、課題となっております。この課題解決に向けて、今後とも取り組んでまいりたいというように思っています。
 関連いたします技術といたしまして、日本語原稿を外国語に速やかに翻訳するその助けを行うための翻訳支援システムの開発を行っております。既に、日本語から英語への翻訳支援システムにつきましては国際放送の現場で使用されておりまして、翻訳者が効率的に作業するために活用をいたしております。
 以上でございます。
佐藤(勉)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
平林委員長 次に、新藤義孝君。
新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。
 海老沢会長さん以下NHKの皆さん、御苦労さまでございます。それから、総務省の大臣以下、私、総務省には今回質問いたしませんので、どうぞごゆるりと、結構でございますから。
 まず、今回はこのNHKの予算を審議するということでございます。先ほど、片山大臣の方からも御意見がございました。適当だということでございまして、まさに、受信料収入の伸びが低迷している中で事業支出をふやしながら非常に効率的な経営をしている、こういうことで、私も、これは適当ではないか、このように思う次第でございます。
 ただ、NHKは特殊法人でございまして、昨年の末の特殊法人の整理合理化計画の中でも、NHKを含んで百六十三特殊法人の見直し、私も当時いろいろとやらせていただきましたけれども、そういう中で、NHKについてはほとんどさわらずということになったわけでございます。受信料収入というものが放送法という法律で担保されて、いわば独占的な事業形態ができるわけでございますから、こういう意味において努力をしていただくことは私は評価いたしておりますけれども、しかし、さらに引き続いて、五十年前に日本放送協会ができたときの使命、それから戦後五十年を経て、今いろいろな時代の転換期にあって、特殊法人だとか、いろいろな見直しが入っている中で、これから先のNHKというものはよくよくまた工夫をしていく必要があるのではないかなというように思うのでございます。税の優遇を受けてよかったではなくて、やはり頑張っていただきたいし、しかし、十二年間受信料の値上げをしないということでございますから、これまたかなりの御努力があることも評価しなくてはいけない、このように思うのです。
 ただ、頼りは受信料なのでございますけれども、これは、今後少子高齢化が進んでいく中でやはり厳しいものと思わざるを得ないのではないか、このように思います。そして、受信料収入が伸び悩む中で、NHKがアグレッシブに今度は日本の放送界の先端を行くような仕事をしていくためには、やはり経営の効率化をさらに進めなければいけない。
 そこで、私は提案を兼ねた質問をさせていただきたいと思うのでございますが、今、国においても、五年で世界最先端のIT国家にするんだ、e―Japanということで必死に、全省庁挙げて、政府を挙げて、そして私ども国会でもこれはいろいろと仕事をさせていただいているわけなのでございますが、e―Japanは二面性があると思うのです。一つは、よりよいサービスを、そして便利な社会にするための国民向けのいろいろな情報提供の場をふやしていこう、合理的に処理しましょう、これが一つ。もう一つ忘れてはいけないのは、実はIT化というのは、裏側で事務の効率化とか、いわゆるバックオフィスと言われる企業の運営の効率化を図るためにとてつもなく有効だ。
 ですから、e―Japanは、実は外向けには国民に対するサービスを向上することとあわせて、内側に向けては政府内の合理化を図ろう、こういうことでやっているわけです。そして、今最終的な煮詰めに入っておりますけれども、少なくとも平成十四年度、新年度中に、国が受け付ける申請届け出の五〇%はオンライン化するわけです。そして、再来年、平成十五年度までには九八%の事務をオンラインで処理できるようにしようじゃないか、こういうことで、今国会でこれもまた、今まで余り例がなかったんですけれども、横ぐしの通則法でもってどんどん出していく、こういうことを政府はやっているわけです。
 NHKにおいても重要な、NHKの柱の中でNHKのインターネットの利用というのは出ておりますが、実はその裏側で、NHKという企業、運営体の、コーポレートガバナンスの一環として、私は、NHKのバックオフィスにITをもっと入れたらどうなんだ、またそういう取り組みがあるのかどうなのか、これの状況をお知らせいただければありがたいと思います。
海老沢参考人 今先生から御指摘がありましたように、私どもNHKは受信料で事業運営しているわけであります。この受信料制度にあぐらをかいてしまう、つまり、今の業務をただ漫然とやっていればNHKは信頼を失い、そして受信料収入が滞ってくる、そういう企業であります。そういう面で、私どもは、常に視聴者との信頼関係で成っているんだ、視聴者の信頼をなくせばNHKは受信料は集まらない、そういうシステムになっておるわけであります。
 そういう面で、常に視聴者と真っ正面から向き合って、視聴者本位の番組づくり、企業にしなければならないのは当然であります。そういう面で、マンネリ化しないように、さらに、常に努力をしていくのが我々の使命だろうと思います。そういう中で、ITの技術を生かしたいわゆる管理業務を推進するのは当然であります。
 御案内のように、一九六四年、東京オリンピックが開かれた昭和三十九年から、我々の先輩が、こういう時代を見越してコンピューターの導入を図り、いち早く、経理とかあるいはその関係のコンピューターのシステム化を推進してきております。今も日本では、最先端のそういうシステムを導入して、できるだけ効率的に仕事をするようにしているところでございます。
 いずれにしても、そういうITという新しい技術を今後とも業務の運営管理に生かしていくことは当然であります。それと、そういう中で番組も、これから学校とかいろいろな面にこれを普及させていく、そういう側面的な支援もしなきゃならないだろうとも思っております。
新藤委員 これは、ぜひ御研究いただきたいと思います。本気でやれば、やはりNHKのある年度の柱になるような、そういう仕事になります。これは、コンピューターをどんどん皆さんお使いになっているのは承知の上でございますが、物品調達とか社内の全国に広がるいろいろな連絡をするときに、統一の、要するにネットの中でできるようになる、それから人事管理なんかも全部できるようになるわけで、これは必ず事務費の削減につながりますので、これは御研究いただきながら取り入れていただきたいな、このように思っております。
 また、次の質問をさせていただきます。適当であると評価をするこのNHKの予算の中で、特に配意を求める六項目、これは閣議決定をした総務省の意見でございまして、そこの第一番に挙げられておりますのが、当然のごとく、NHKの運営の柱でございます受信料の問題でございます。それは、受信契約の締結、それから受信料の収納の徹底をせよ、これは皆さんがわかり過ぎるぐらいわかっていることなのでございますが、やはりこれも少し工夫をしてみたらどうか、このように思います。
 平成八年から十二年度までで受信料の、要するに契約世帯はふえているんですよね。契約世帯そのものはふえているのです。ただ、契約率で見ると、残念ながら未契約世帯というのは五年間で八・七%ふえてしまっている。やはりこれは少子高齢化、そして世帯がいろいろふえる、さらには世帯の移動というのがより激しくなっておりますから、これは非常に難しい時代に入っているのは承知の上でございますが、しかし、これはふえてしまっているんです。そして、平成十三年度の見込みにおいても、契約率が八一・八%、衛星の方がもう少し、衛星件数が七六%ですが、しかし、これもよくよく内訳を聞いてみると、二人以上の世帯では九割弱の契約率になっている。しかし、一人世帯の方ですと七〇%弱に落ちてしまう。
 こういうように、今の時代の背景をよくあらわしているなと思うんでございますが、ただ、こういうときに、やはり徴収員さんが、対面徴収ですから、これは会えなければどうにもなりませんという声もよく聞いております。ですから、難しいのは承知なんですけれども、例えばIT利用、それからいろいろと、重点事項においては、契約収納関係については、新しい営業システムの活用による効果的、効率的な業務を推進しよう、こういうふうになっているわけなんですけれども、いわゆるインターネット利用とか、現状どのような工夫をされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
安岡参考人 先生御指摘のとおり、私ども、営業努力を重ねているわけでございますが、その最大の課題は、単身世帯が大変不在がちだということでなかなか面接が難しいというのが大きな課題でございます。それから一方、先ほど来のITの普及によりまして、大変インターネットの利用も増進しているということで、その両者をマッチングさせる施策といたしまして、視聴者の利便の向上を図るという観点で、一つはフリーダイヤルの関係がございます。それからもう一つは、インターネットによりまして視聴者からの届け出をふやせないかということをやっている最中でございます。
 まず、フリーダイヤルにつきましては、元年からスタートを切っていまして、十二年度では二十八万三千件という格好になっています。お尋ねのインターネットの方でございますが、これは実は平成十二年の七月からインターネット営業センターという格好で開設をしておりまして、NHKのホームページにアクセスをすれば、いろいろ契約とか住所変更の届けもできるという格好でやっているところでございます。
 ただ、今の仕組みは、契約関係につきましては本人確認が必要だということで、事後の契約書の送付ということはありますが、今そういうインターネットで届けをしていくということをいろいろ進行しているということでございます。十二年度は一万六千件の届け出という格好に相なっております。
新藤委員 とにかく契約口が三千六百五十万件ですからね。三千六百万件の中での、今、フリーダイヤルで二十八万件、ITで一万六千件だということでございまして、これはもう少し頑張ってもいいんじゃないかなというふうに思います。
 今お答えの中で、やはり今やっているのは、私もNHKのホームページをちょっと見てみたんです。これはよくできていますね。非常にわかりやすく、さすがNHKだなと思いました。ごちゃごちゃ書いてありませんので非常にわかりやすくなっているなと思うんですけれども、結局、これは申し込んでも、では申し込んだ人にもう一回手紙が送られてきて、そして判こを押して届け直す、そこから通常の業務と一緒になっちゃうんですよね。ですから、これはもう少し工夫するべきだと思うんです。
 それから、滞納件数のところも見てみますと、契約拒否者というのは四十二万件でございます。滞納が百七万いますが、転居等による把握不能数が七百二十三万件と圧倒的です。ですから、例えば手続が煩雑だとか、それから、やはり一々訪ねてこられる時間に合わせることはできない、こういう中で契約ができない、こういうことは容易に想像できるんです。
 先ほど私が申しました、来年度で五〇%、そして十五年度中に九八%の処理がオンラインでできますよというのは、これはインターネットの中で完結ができるということなんです、支払いも含めて手続が。だから、国もそういうふうにやろうとしているんですから、これはNHKもぜひここの部分は、要するにインターネットで完結ができるような、それには本人認証が必要ですから、これは国がそういう本人認証の仕組みもつくるわけなんですから、こういうものを活用していただきながら早急にやったらどうかなというふうに思うんです。
 それからもう一つは、やはりITを利用促進させるためのインセンティブが必要だという意味で、これまたホームページで見ますと、受信料の割引制度というんですか、こういうものがございまして、口座振替と前払いを使うと、「なんと年間千八百三十円もお得。」こう書いてあるわけなんですから、やはりこれはIT利用に関するインセンティブというものをあわせて考えたらどうかな、このように思うんでございますが、いかがでございましょうか。
安岡参考人 お答え申し上げます。
 今、営業の課題の中で、支払い方法について、一つは訪問集金という格好をとっていますけれども、もう一方で口座、郵便局とか銀行でお支払いしていただける方、その辺をもっともっとふやしていこうということ、集金活動をより効率的に、あるいは安定化を図るということで、今この口座利用率は、概数ですけれども八二%という格好でかなり高い率になっています。
 問題は、その訪問をやっている方の中から、なかなか不在がちなんで、NHKの方に自動的にアクセスできないかというところが大変大きな課題なのかなということで、インターネットという大変すぐれたメディアをいかにして活用しようかということで今鋭意取り組んでいるところでございます。
 先ほど申し上げた中で、例えば転居の関係、転居の話はこれはもう事実がわかればいいですから、それはそのまま受理されます。契約関係だけが、いわゆる本人確認というか認証の話がありますから、そこをどうクリアするかということで、今電子政府の観点でいろいろやっています。その辺についても、我々、最大限関心を持って、いいスタイルができればそれに乗っかっていこうというふうに思っているところでございます。
 もう一つは、料金に関してなんですが、その辺については、これからの利用の件数とか経費をかけたメリットがどの程度か等々を検討しながら、いろいろ検討を進めていきたいというふうに思っています。
 いずれにしても、そういう多様なメディアを気楽に利用できる制度の促進を大いに図って、営業の業績を上げていきたいというふうに思っております。
新藤委員 前向きのお考えでよろしいと思うんですが、もう来年には国は始めるんですよね。ですからこれは、考えましょうというよりは、すぐにやっていかなくちゃいけないことだと思いますので、これはさらに強力に作業を進めるべきではないかというふうに思います。
 それから、念のため申し添えますけれども、インターネットをIT料金でインセンティブを与えちゃうと、みんなITになっちゃったら、これは受信料は下がってしまうわけですから、やはりここは期間限定とかいろいろ工夫して、とにかくやるときはどんとやる、この勢いを、国とあわせてNHKもおやりいただければいいんじゃないかな、このように思います。
 それから次に、もう一つNHKさんの、国が関連する特殊法人としての大きな使命として、やはり映像関連の資料を整理する、保管をする。これはもうNHKが、世界に名立たるいろいろなフィルム、また映像資料をお持ちなわけでございまして、これを保管し、きちんとしようということで、アーカイブス、これは平成十三年一月に着工して先ごろ上棟したということですね。そして、ことしの九月に建物ができ上がって、来年の二月から始まる、このように聞いております。ありがたいというか、縁がございまして、私どもの地元、埼玉県川口市にでき上がるわけでございまして、この有効活用は大いに地元としても頑張っていきたい。圧力ではございませんから。こんなふうに思っているわけなんでございます。
 そこで、もうこれは運用開始目前なんですから、このNHKアーカイブスの運用開始のスケジュール、二月の日にちも決まっているんじゃないかと思うんですよ。それから、このアーカイブスのコンテンツの社会還元という意味で、どういう配慮をなされているのか。それから、一般の外来者、センターにおいでになられた方に、どんな公開ができるのか。これは地元というよりもそこに行った皆さんが楽しんでもらえればいいわけなんですけれども、私どもも、これはいろいろ地元の市の方でも、映像情報に関連した専門学校、大学を誘致したりとか、それからインターネットのプロバイダー会社を入れたり、デジタルの映像会社をつくったり、いろいろやっています。今後のアーカイブスの活用というのは、ブロードバンド時代で、非常に有効なものになる可能性があります。
 ですので、現時点における、というよりも運用開始直前の最終年次のこのNHKアーカイブスの概要について、御説明をいただきたいと思います。
海老沢参考人 おかげさまで、NHKアーカイブスも、この十七日に上棟式を済ますことができました。来年の二月一日がNHKがテレビ放送を始めて五十周年という日に当たります。そういう面で、来年の二月一日を運用開始というふうに決めております。それに向けていろいろ今作業を進めているところであります。
 御承知のように、今NHKは、全国、地方合わせて百六十五万本の映像を持っております。これは全国でありますので、そのうちのかなりの部分をこのアーカイブスに集約しようと思っております。それと、ニュース項目では三百五十万本ほどありますが、これも今いろいろまだ整理をしております。これをすべてデジタル化しませんと、膨大な量でありますので入り切れないということで、今鋭意、数年前から、デジタルの方に圧縮して、そのための準備を今しているところであります。その作業が非常に時間がかかっているという現実もあります。
 御承知のように、デジタル化しますと、もう半永久に保存できますし、また、IT技術を使って各家庭にもこれが配信できる。そういうことで、すべての映像をデジタル化するように、今作業を進めているところです。
 もう一つは、著作権の問題であります。これは一番の問題であって、著作権をどうクリアするかということで、今これも各関係方面と協議しながら推進をしております。とりあえず来年二月一日にはそのうち二千本を公開できるというふうに見ております。
 二千本、このアーカイブスはできるだけ公開しようということで、いわゆるライブラリーということで、無料で、だれでもが川口のアーカイブスに来てもらえれば見られるというふうに今設備を整えております。これは県の施設とも共用しながらやっていきたいと思っておりますので、それをだんだんふやして三年後には五千本にしたいというふうに、段階的に拡大していきたいと思っております。
新藤委員 時間が参りましたので終わりますけれども、これはNHKならではの、ブロードバンドの時代に、時代を引っ張っていくのはNHKなんだ、これが国の使命なんだ、こういう気持ちで今後また工夫をし、やっていただければいいんではないかなと今後の活動を期待して、質問を終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、伊藤信太郎君。
伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎です。
 二十一世紀に入って、地球の仕組みであるとか国のあり方とか、あるいは社会の構造とか、いろいろなものが変わってきたと思います。その中で、公共放送のあり方というものもやはり変容せざるを得ないんではないかなと私は考えているわけです。
 特に、NHKは、放送法第一章第一条第二号の、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」また、第三号には、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにする」というふうになっているわけですけれども、こういう非常に高度な抽象概念をNHKというのはどのような形で実現しようとしているのか。特に、議論があります不偏不党、真実、客観、こういった概念というもの、またその規定というものは、具体的にNHKが、だれがどのような形で、どのようなシステムによってこれを決定しているのか。また、その後段にあります表現の自由、この表現の自由には、表現者の感性あるいはその価値観の多様性、こういったものも含まれるのか。
 そしてまた、放送法第二章第七条では、NHKは、「公共の福祉のために、」中略いたしますが、「豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行い」となっておりますが、この公共の福祉というのは、NHKにおいてはどのようにとらえているのか。また、この豊かとかよいとかいうことは、だれがどのような形で定義しているのか。
 以上申し上げたようなことを、NHKの中においては、どのような方法、システム、手続、過程によって行っているのか、これについて会長からお伺いしたいと思います。
海老沢参考人 御案内のように、NHKは放送を開始して七十七年の歴史を持っております。我々は、公共放送として、国民にひとしく、全国あまねく同時に情報を伝える、それも、不偏不党であり、何人にも干渉されないで、NHKの自主的な判断、いわゆる言論、表現の自由といいますか、それをきちっと守りながらやっていくのが我々の業務だろうと思っています。
 そういう中で、今御指摘がありましたように、豊か、あるいはよい番組というのは何かという、非常にこれはまた抽象的で難しい概念でありますけれども、いずれにしても、我々は、国民の生活に役立ち、そして心が豊かになるようないい番組をつくっていくということであります。それは何を基準とするかというと、長年の間の日本国民の英知といいますか、その辺を十分考えながら、いい番組をつくるということでやっているわけであります。
 ニュースの取材でも、一方に偏らないように、記者が書いたものは必ずデスクが目を通す、そしてオンエアをする場合もまた、編集者がそれを見て、それをデスクが見るという、二段、三段のチェック機能を経ながら、できるだけ公平で客観性を持ったものにしようという、そういう努力を重ねております。
 どれが公平か真実かが非常に難しいわけでありまして、できるだけ公平そして真実を追求するという、そういうひたむきな一つ一つの積み重ねが大事だろうと思っておりますし、そういう努力を今も重ねているところであります。
 いずれにしても、世の中矛盾だらけといいますけれども、それぞれの時代の価値観もありますし、今、価値観が多様な時代と言われています。そういう中でも普遍的なものといいますか、やはり我々は、こういう不況の時代は、国民を勇気づけ、元気づけるような番組をつくらなきゃならぬだろうし、また日本は、地震、津波、台風とかいろいろな自然災害が多いわけですから、そういう面で、放送の特性であります緊急報道、災害報道についていち早く的確に情報を流して、防災に役立つ、被害を少なくする、そういう使命もありますし、また国会においても、今、年に五十回前後、国会を生中継させていただいております。これも、民主主義の健全な発展に資する、そういう意味合いで、国民の代表である国会の審議の模様をできるだけ多くの国民に同時に伝える、そういう役割も果たしているわけであります。
 いずれにしても、我々は、先ほど申しましたように、国民の信頼なくして成り立たない公共放送でありますから、そういう面で、できるだけ国民のコンセンサス、合意を得ながら仕事を進めていきたいと思っております。
伊藤(信)委員 NHKがいろいろな努力をされていることはわかったんですけれども、私が思いますには、世の中にいろいろな物理的な現象がある。それをどう認識するかということ自体に常に主観性というものが内在している。そしてまた、世の中のあまねくいろいろな現象のどこをとらえるか、その議題設定機能がマスコミにはあると言われておりますけれども、それには当然価値基準というものが大きく影響を与える。また、すべての空間や時間をとらえるわけにいかないわけですから、部分的にとらえた空間とか時間を編集者の何らかの思想性によって編集して、限られた放送時間の中で情報表現をしていくというわけですから、どのようなシステムをとっても、この放送法でうたっているような真の客観性というものを実現するのは難しいのではないかなというふうに私は思うわけですね。
 その中で、公共放送で、客観性といいますか、バランスのとれた放送あるいは編成なり報道をするために、例えばNHK職員の教育であるとか、番組の編成権のあり方であるとか、あるいはNHK全体のあり方に対する経営委員会の発言権やあるいは人選のあり方、その点について、具体的にどのような工夫をなさっているか、お伺いしたいと思います。
海老沢参考人 私どもの番組編成につきましては、中央放送番組審議会、各地域ごとに八つの地方放送番組審議会、それに国際放送のための国際放送番組審議会、三つの審議会で毎月一度、一回ですか、会議を開いてもらって、NHKの番組の意見を承っておりますし、また、視聴者会議ということで全国各放送局ごとに年に三回ずつ、意見を聞く会、あるいは各種団体の意見を聞く会とか、そういう国民を代表する方々のいろいろな意見も聞きながら、番組を編成し、制作しているというのがまず第一であります。
 それと同時に、年間六百万件の電話なり投書が参ります。常に我々は視聴者の意見に謙虚に耳を傾けようということで、そういう視聴者のいろいろな意見も参考にしながら、ニュースの編集あるいは番組の制作をしているわけであります。
 それと同時に、また我々、放送倫理といいますか、テレビの及ぼす影響が大きいわけでありますから、そういう面で、視聴者の人権、プライバシー、いろいろな問題があります、そういうものを含めて、放送倫理をきちっと確立していこうということで、部内にもそういう放送倫理委員会などをつくりながら、また、年に数回ずつ、研修所で自社番組も対象にして一般職員の研修も行っております。
 いずれにしても、ひとりよがりの独善にならないように、人間、どうしてもやはり主観的なのが人間のなせるわざでありますけれども、できるだけ主観にとらわれず、客観性を持つように努力するという、そういう努力が大事だろうということで、今研修にも力を入れているところでございます。
伊藤(信)委員 御努力をなされていることに対して、深く敬意を表したいと思います。
 しかしながら、私の質問の本質的な部分、つまり、例えば、民主主義というものが国を治めるすぐれた体制であるということ自体が一つの私は党派性だというふうにもとられると思うのですね。ですから、この放送法の三号と二号というもの自体が既に、少なくとも哲学的な意味では、私は、矛盾しているんじゃないかなと思うのですけれども、これは質問通告をしておりませんが、総務大臣にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 一条の二号、三号でございますか。(伊藤(信)委員「そうでございます」と呼ぶ)済みません、一条の二号は、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」三号、放送にかかわる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するもの、ちょっと、矛盾しているとは私は思えませんですがね、二号、三号。
伊藤(信)委員 というのは、会長に対する質問で申し上げたように、もし表現の自由ということをまずうたうなら、この表現の自由には、既に、感性であるとか価値観の自由も含まれていると思うわけです。
 それで、私たちは、戦後の日本社会に育っておりますから、民主主義というものが絶対的な価値であって、あるいは健全なという言葉が示すものが同じ意味領域であるというような、私に言わせれば大いなる幻想を持っているのではないかなと思いますけれども、長い人間の歴史観においては、必ずしもそれが絶対的真理とは言えない面もあるわけですね。
 そういうことも含めて、不偏不党というなら、これは表現の自由を認めるということは不偏不党では既にない。そしてまた、三号にうたっております公共の福祉であるとかあるいは健全な民主主義に資することが放送だというのなら、二号の後半の部分とそれは抵触するのではないかというふうに私は思うわけでございます。
片山国務大臣 なるほど、表現の自由は感性や価値観に基づくとかあると思いますけれども、しかし、それはやはり感性や価値観に基づいても、できるだけ不偏不党であるとか、真実に近づくという努力が要ると思うのですね。多様ないろいろな価値観があっていいんですよ。多様な感性があっていいんだけれども、その中で、できるだけ不偏不党だとか、ここで言いますような「真実及び自律を保障する」、こういうことに近づく努力の上での表現の自由じゃないでしょうか。何を言ってもいい、何を思ったら言ってもいい、自分の価値観はこうだからこれを押し通すということじゃなくて、抑制された感性なり、中庸をとった価値観、感性によって、多様な表現の自由をやるということじゃないでしょうか。そう理解しないと、委員の言われるように言うと、これは自己破産しますよ、この条項、そういうように思います。
伊藤(信)委員 これは少し哲学論争になって、委員会では結論が出ないので、私としては思索的な矛盾があるというふうに考えますが、次の質問に移りたいと思います。
 NHKは今、放送と通信の融合ということを言われておりますけれども、このことに関する技術的研究というのはどのように行っているでしょうか。
中村参考人 お答えいたします。
 私どもNHKの放送技術研究所におきましては、これまでにも、インターネットや携帯電話の通信インフラを使いまして放送サービスを補完いたしますことで、視聴者の方々にデジタル放送をさらに便利に利用いただく技術研究を進めてまいっております。
 例えば、放送中の番組に関連したホームページをすぐに見ることができる技術を開発いたしまして、昨年実施されましたインターネット博覧会、インパクと言っておりますけれども、ここでサービス実験を行いました。
 また、このほか、外出先から携帯電話を使いまして、家庭内のホームサーバーを制御したり、番組予約をするなどのシステムも開発を進めております。
 また、これからのブロードバンド時代に対応できますように、高速ネットワークを利用しまして、大容量のハイビジョン信号を伝送する場合の技術的な可能性についても研究を行っております。昨年十一月に、岡山―東京間の超高速ネットワークを使いまして、IP、インターネットプロトコルによります伝送、これによりまして、放送コンテンツの配信についても検証を行いました。
 大容量、高速化、それから高機能化ということで、これから放送も発展してまいりますけれども、これと通信のネットワークを有機的に連動いたしまして、見たい番組を、また欲しい情報を、時間や場所によらずシームレスに提供されますサービスの実現を目指しまして、今後も研究開発を進めてまいりたいと思っております。
伊藤(信)委員 いろいろな技術の研究をなさっているということですけれども、その中で、技研が進めておりますPRS、つまりプログラム・リクエスト・サービスであるとか、あるいはこれは通信の方からのあれですが、SSM、つまりソース・スペシフィック・マルチキャストによる通信アーキテクチャー、あるいはブロードバンド無線LAN等の技術の実現可能性というものをそれぞれどのように判断なさっているか、お伺いしたいと思います。
中村参考人 お答えいたします。
 現在の放送は、電波を利用しました一方向のサービスというものが主なものでございますが、プログラム・リクエスト・サービス、先ほど先生がお話ししましたPRSでございますけれども、これは、通信ネットワークの双方向性を利用いたしまして、もう一度番組を視聴したいという要望の方個別に、それに対しておこたえするということを目的とする新しいサービスでございます。それで、私どものNHKの研究所は、先日、新しい放送技術研究所をつくりました。その落成披露の式典のときにも、このPRSにつきまして、基礎的な技術検討の状況を展示させていただきました。
 また、ブロードバンド無線LANとか先ほどお話しのSSMは、無線で高速ネットを実現いたします有効な技術でございますので、どこにいても双方向の高速通信ができるという点で、PRS、先ほど言いましたプログラム・リクエスト・サービスというものができる映像伝送の手段ということで、有望かと思っております。
 このようなPRSを実現いたしますには、高速の蓄積装置、サーバーとか、ネットワーク伝送技術、それから低廉な家庭用の端末の開発と、解決すべき課題がまだたくさんありますので、これらにつきましても研究を進めてまいりたいと思います。また、番組にかかわりますさまざまな権利処理についても適正に行うことが必要かと思っております。
 いずれにいたしましても、電波によります放送は、屋内、屋外、移動体でも受信が可能でございますので、非常災害にも非常に強いという特徴を持っております。このほかに、電波のことを基本といたしまして、SSMとか通信アーキテクチャーを活用しまして、これらの放送が充実できる、それがお届けできるというような多様なサービスの実現に向けても可能性を追求してまいりたいと考えております。
伊藤(信)委員 時間が来ましたので、最後の質問をしたいと思います。
 地上波デジタル化には膨大な費用がかかると言われていますが、このことが近い将来のNHK受信料増額に結びつく危険性があるかどうか。もしそうだとすれば、そのことが視聴者といいますか、国民の理解を得られるかどうかについて、NHKがどう考えているかお伺いしたいと思います。
平林委員長 簡潔にお願いします。
海老沢参考人 この地上デジタル放送をするための設備投資、先ほどNHKだけで三千五百億かかると申しました。それを民放との共同建設等によって二千五百億程度、一千億程度削減するようにこれから努力していきたいと思っています。
 今のところ、私ども、いわゆる財政安定のための繰越金五百五十九億ほどをプールしてあります。ことし、十四年度は、そのうち百十億ほど取り崩す予定でありますけれども、この五百五十九億を活用しながら、そしてまた、経費の節減を図りながら、できるだけ受信料を値上げしないで賄っていきたいというふうに、今心を新たにしているところでございます。
 いずれにしても、このような御時世で、経済不況の中で、当分の間受信料を値上げすることは不可能でありますし、また、我々もそういうことを求めるべきではないと思っておりますので、できるだけ経費の節減を図り、また、受信料の公平負担をお願いしながら、歯を食いしばって、値上げしないで努力していきたいと思っております。
伊藤(信)委員 一言では答えづらい、多岐にわたっての複雑な質問に対してお答えいただきまして、ありがとうございました。
 これで私の質問を終わります。
平林委員長 次に、田並胤明君。
田並委員 田並でございます。大変御苦労さまでございます。
 それでは、幾つかの点について、時間が二十分という制約がありますので、ポイントで質問させてもらいます。
 NHKの経営状況と調達取引のあり方について、この二点をまず質問させてもらいます。
 NHKの受信料は、以前はオリンピックがある年ごとに、四年ごとに改定をされる、いわゆる引き上げをされる、こういう状況が続いておりましたが、平成二年から十年間にわたってNHKの受信料が引き上がらない、これは非常に結構なことでございますが、当然、その陰で、職員組合でも大変な御協力をしたんでしょう、一万二千人体制をつくったり、あるいはいろいろな意味での経営の効率化、あるいは子会社等つくってそこに業務委託をする、いろいろな努力の積み重ねでこういう結果が出たと思うんです。
 しかし、今もちょっと質問ありましたように、受信料を据え置くだけでなくて、さらに国民負担を軽減するという方向でも一層努力をしてみたらどうだろうか、こういう観点から質問をさせてもらいます。
 一つは、外部資金について、本年度の予算を見ますと、長期借入金として六十八億九千万円はありますけれども、放送債券が、平成十一年度、十二年度、十三年度と百億円の放送債券を発行しておりますが、平成十四年度はそれをゼロにしております。大変結構なことなんですね。しかも、発行ゼロにするだけじゃなくて、百二十億円の返済をされております。債券はなるべく早く償還をしよう、長期借入金も早く返還をしよう、こういう努力のあらわれで、これも高く評価をしたいと思うんです。
 そこで、この改善された努力を評価いたしますけれども、その主な理由、これだけの努力をされてこれだけのものを返せた、ということは、何か新しいことをやめたとか、あるいはどの部分を効率的に運営をすることによってこういうものが出てきたのか、これが一つお聞きをしたいところであります。
 それと、もう一つは、御案内のとおり、今、日本経済はデフレ傾向です。消費者物価を見ますと、総務省の発表でも、二〇〇〇年で〇・七%の下落、そして、二〇〇一年で〇・八%の下落、卸売物価も同じような下落が続いております。
 東京都区部の平成十四年一月の消費者物価指数というのは、前年同月に比べて一・七%の下落をしております。二十九カ月連続の消費者物価の値下げである、このように言われているわけです。特に、本年度、平成十四年度も、一・〇%ぐらいの物価下落、消費者物価の下落があるんではないか、このように想定をされておりますから、そういう意味では、NHKの経費にそれなりの影響というのが出てくるんじゃないだろうか、プラス要因として、このように思うんです。
 しかも、本年の四月一日から、東京電力が平均で七・〇二%の電力料金の引き下げをする。家庭用が五・三七%、業務、産業用が八・六%の引き下げだ。これは、二〇〇〇年十月にも五%を超える電力料金の引き下げを東電はされているわけですね。
 そういう意味では、かなりの影響がNHKの経営にも出てくるんではないだろうか、このように思うんですが、その辺について、経営の効率化という観点から、この経営状況に与える影響等について、わかる範囲で結構です、教えていただきたいと思います。
笠井参考人 お答えいたします。
 まず、放送債券の発行についてでございますが、御指摘のように、放送債券の発行につきましては、建設費の財源といたしまして、平成十一年度六十億円、十二年度百億円、それから十三年度百億円を発行してきております。
 一方、今後ふえていくことが想定されます地上デジタルへの設備投資の財源といたしまして、これまでの経営努力の成果である財政安定のための繰越金五百五十九億円を取り崩すということにしてございます。十四年度は、このうち百十億円を充てることにより、放送債券を発行しないということにしたものでございます。
 これによりまして、外部資金の増加、いわゆる負債を抑制いたしまして安定的な財政運営に努めるということと、デジタル時代における放送サービスの充実を図っていくということにしております。
 外部資金は、建設費と出資の財源といたしまして減価償却資金などの自己資金で不足する部分、これに充てておりまして、放送債券は、放送法第四十二条四項に基づきまして、毎年度の未償還額の十分の一ずつを償還原資として積み立てております。また、長期借入金は、借入金の翌年度から十分の一ずつ返還をしております。
 計画的に発行、借り入れ、それから返還、償還を行っているということで、これは財政の規律をしっかり守るということに基づくものでございます。
 なお、十四年度の放送債券償還金百二十億円でございますが、平成二年度それから四年度、それぞれ六十億円を発行したものでございます。満期償還ということでございます。
 それから、十四年度の予算編成におきまして、最近の消費者物価の下落、特に先生御指摘のありました、電力料金の引き下げ、それから通信料金の引き下げでございますが、これの影響を織り込んだ予算編成をしております。例えば、電気料金の引き下げでは約二億円の節減、それから電話料では約三億円の節減を予算では見込んでおります。
 それから、十四年度の予算編成では、このような物価下落の影響による経費節減というものを当然盛り込みながらすべての業務を見直しておりまして、これらの十四年度の節減額というのは百七億円程度見込んでおります、こういうことでございます。
海老沢参考人 もう一つの質問であります受信料の値下げをしてはどうかという先生の御意見でございますが、御案内のように、私ども、できれば値下げするのが一番いいんでしょうけれども、一つは、地上デジタル放送をこれから展開するためにも、設備投資が年々これからふえてくることになります。そういう地上デジタル放送への設備投資をやっていかなきゃならぬという、一つ大きな課題があります。
 それと、今、もう一つは、スポーツの放送権料は、これは年々高くなってきております。五年前の平成九年では百三十七億の放送権料を払っておりましたけれども、十四年度は、二百十数億になります、二百十二億ぐらいになりますかに値上げするというような状態。それから、出演者の出演料とかあるいは著作権料というのは安くはなりませんので、だんだん高くなる傾向があるということ。それから、こういう東海地震に対する対応とか、いわゆる災害対応のための緊急報道、設備をさらに強化せにゃならないというふうなことから申しまして、値下げするほどの財源的な余裕はないということがございます。その辺で、我々は、今の受信料をできるだけ据え置きながら、効率のよい仕事をしながら、番組の質の向上を図っていきたいと思います。
 ただ、値下げすることによって番組の質の低下をさせては視聴者に対して何のための値下げなのかということになりますし、そういう面では、今の受信料を維持しながら質のいい番組を一本でも多くつくるというのが我々の当面の使命だろう、そう思っております。
田並委員 私が言ったのは、別にすぐ受信料の引き下げをしろというんじゃなくて、今会長言われたように、これからの、特にスポーツ番組の放送権料だとか非常に高くなっていますし、しかも、これからNHKが豊かで非常によい放送を出していただくためには相当の放送研究も必要だろうと思うんです。ただ、最低でも、こういう時代ですから、受信料の引き上げなんということは考えないでほしいということをまず申し上げたかったということが一つ。
 それと、もう一つは、今までは何カ年か計画というので経営計画みたいなのを見ていたような気がするんです、私は。例えば五年計画とか、その収支状況がどうなっていく、NHKではこういう努力をしていく、そういう収支計画でしょうかね、こういうものが出ておったような気がするんですが、これは最近ないんですかね、中期の経営計画的なものは。
海老沢参考人 私ども、三カ年の計画を立てております。私は会長就任以来、今、二期目、五年になりますけれども、私は任期中は値上げをしないと。そういう中で、年間百億以上の経費の節減、そして百億以上の受信料の増収を図って質のいい番組をつくるという、それが基本的な計画として出してあります。
田並委員 いずれにしても、総務大臣の意見の中にも、より一層効率的な運営に努めること、これがありますので、ぜひそのことをきちっと肝に銘じて頑張っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次に、調達取引、要するに、NHKが物を買うとかあるいは物をつくるとか、いろいろな契約の関係についてお伺いをしたいと思うんです。
 放送政策研究会、これは総務省にあります、局長が私的な諮問機関でつくったんでしょうか、これの第一次報告ということで、平成十三年十二月二十一日の日にこれが取りまとめられております。その中で、子会社等のあり方について、業務委託と調達取引という二つに分けて提言がされております。この中の、この調達取引についてお伺いをしたいと思うんです。これは総務省の方とNHKに聞きます。
 まず、総務省の方にお聞きをしたいのは、この子会社等のあり方について、業務委託と調達取引について特別に提言がされておりますが、何か問題があったのでこういう提言をされたのかどうかということが一つですね。
 それと、もう一つは、NHKの調達手続について、資料を見ますと、平成十二年度のNHKの契約の内訳が、総額二千百億円という契約のうち、競争契約が四百三十二億円、競争契約ですね。割合にすると、二〇・六五%。随契が千六百六十八億円、七九・四五%、約八割ですね。ですから、競争契約が約二割、随意契約が八割、こういうふうになっております。
 放送政策研究会第一次報告では、調達取引について競争契約原則を運用面で徹底する、こういう提言がされておりますが、NHKのこのような調達手続の現状について、総務省としてはどうお考えなのか。特に、この調達取引の随契と競争の割合を何か考えられて提起をされたのかどうか、これも含めて御答弁いただきたいと思います。
高原政府参考人 まず第一点目の、何か問題があったのかというお尋ねでございます。
 これは、NHKの取引は、放送という業務の性格もございまして、総取引額に占める随意契約額の比率が高いが、子会社等との取引の適正性及び透明性が十分確保されているかどうか明確でないという指摘がございました。そういう指摘があったということでございます。
 それから、二点目でございます。
 NHKの契約のうち、今先生御指摘のように、随意契約の比率が高いのは、番組品質の水準維持のためには一定以上の高い能力を有する者に発注せざるを得ないという特殊な事情があるものというふうに認識をいたしております。
 しかし一方、NHKは受信料を主たる財源とする公共放送事業体でございますから、受信料を使用する調達取引の適正性や透明性が確保されることも必要でございます。総務省といたしましては、随意契約は、業務の専門性、特殊性等から他に委託先がない場合等、やむを得ない場合に限定するといったようなことなど、可能な限り競争契約の拡大が図られることを期待いたしておるということでございます。
田並委員 局長にもう一回お伺いしたいんですが、別に、どうしてもそこでなければ、専門的な知識だとかあるいは専門的なものをつくるのに、ここでなければどうにもならないんだという場合は、これはしようがないと思うんですよ。しかし、今言われたように、NHKの子会社等の取引にかかわる適正性及び透明性が十分に確保されているかどうか明確でない、こういう指摘があったので、「業務運営の適正性及び透明性の確保」ということで提言をしたというお話でございました。そうすると、指摘をされたということになると、何かあったということにとらえられるんですよ、何かがあったから指摘されたんだと。
 そうすると、先ほど言ったように、八対二という割合が総務省のこの提言の中身からして妥当なのかどうか。NHKにはこうしてほしいという、これは総務省といえども指示はできませんから、こうしてほしい、こういう願望はあるのかどうかということを先ほど聞いたんですが、いかがですか。
高原政府参考人 先ほど申し上げましたように、具体的な割合の数値を今我々として申し上げるほどの中身を詰めたものではございませんが、いずれにいたしましても、NHKの番組の制作の割合とか、そういう全体の業務の中でおのずと妥当な水準が決まってくるものであろうかというふうに考えておる次第でございます。
田並委員 それで、情報通信政策局長、もう一つあるんですよ。
 というのは、同じ報告で、調達取引等が適正に行われているかどうか、「一定規模以上の取引についてはその評価を取りまとめて、毎年、公表する。」このように提言されているんです。
 もちろん、平成十三年にこれが提言としてまとめられたものですから十三年分はこれから出るんでしょうけれども、当然十四年度分についても公表を期待していいのかどうか、この点を一つ聞かせてください。
高原政府参考人 先生おっしゃいますように、総務省といたしましては、NHKの準備が整い次第、早期に実現を図っていただきたいというふうに考えておりまして、少なくとも平成十四年度分からは、この報告書にございますように自己評価及び公表を行っていただけるものというふうに期待をいたしておる次第でございます。
田並委員 NHKにお伺いしたいんですが、NHKの方も大変努力はされておると思うんですが、一般的に見て、競争契約と随意契約が、八対二というのはいかがなものか。一層の努力をされる必要があるんではないだろうか。それがまた一つの経営の効率化に結びつくような気もするんです。その辺はどうでしょうか。
笠井参考人 お答えを申し上げます。
 調達に当たりましては、公正な取引を旨といたしまして円滑な事業活動に資するとともに、経済性と効率的な調達に努めることを基本といたしまして、契約は競争によることを原則として行っております。
 例えば、建物の新築工事など、これは一般競争契約、それからコンピューターなどの調達につきましては、国際調達を実施しているところでございます。御承知のように、放送に係る調達物件といいますのは、ハードとソフトの両方が大変複雑に組み合わさった特殊な物件が多うございます。これは放送事業の使命達成のためには、高度の専門性や最先端の技術、そういったものが必要でございます。こういったものはどうしても、市場も狭く特殊な物件ということで随意契約にならざるを得ない場合も多くございます。その場合も、契約に当たっては、公正な、透明性の高い経済性を持った調達に努めているところでございます。
 先生御指摘のありましたNHKの十二年度における調達取引につきまして、先ほども申し上げました番組制作などの高度な専門性を必要とする調達物件を除きますと、競争契約の比率は四三・六%というふうになります。
 現在NHKでは、外部の有識者の参加をいただきまして調達制度研究会というものを設置しております。その中で、競争契約手法の開発、それから導入といったことの検討を進めているところでございます。今後とも、公正な調達、適正かつ透明性の高い調達に向けまして努力をしてまいる所存でございます。
 それから、放送政策研究会の第一次報告の第二章では、NHKにおいて子会社等との調達取引及び子会社への業務委託が適正に行われているかどうか、一定規模以上の取引についてはその評価を取りまとめて毎年公表するという提言をいただいておりますが、NHKでは現在、契約における透明性の確保と情報公開に関しまして、調達業務の最重要課題というふうに認識をして取り組んでいるところでございます。報告書の提言の趣旨を踏まえまして、公表内容及び公表の方法などにつきまして、積極的に検討を進めているところでございます。
 なお、建設工事の調達に当たりましては、公正で透明性のある契約を一層推進しようということで、外部有識者、専門家で構成する入札契約委員会を設置しております。五千万円を超える契約につきまして委員会での審議をいただきまして、契約の結果等を公に閲覧できるようにしているところでございます。
田並委員 終わります。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、伊藤忠治君。
伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。
 地上放送のデジタル化に絞りまして質問をいたします。
 デジタル放送なんですが、いろいろお聞きをいたしまして、つまるところ、これは二十一世紀に向けた国家的な一大プロジェクトだと私は理解をいたします。つまり、具体的に申し上げれば、二〇〇三年末までに東名阪エリア、二〇〇六年までに地方局エリアに、これで全体に行くわけですが、アナ・アナ変換をやらなければいけませんし、二〇一一年でもってデジタル放送に完全に切りかえるというのがこれまで検討されてきているスケジュールになっております。対象は、各家庭にテレビ受像機は約二台強ございまして、総数一億台を超えます。
 何が言いたいかといいますと、地上放送のデジタル化に伴うアナログ周波数の変更対策が当面必要になるわけですが、先ごろ三者の推進協議会なり関係者の会議でもって決められましたことは、計画とそれに要する経費がございますが、大幅な見直しが行われているわけでございます。つまり、アナ・アナ変換の対象世帯が二百四十六万世帯から四百三十六万世帯に見直しがなされました。これに対するアナ・アナ変換対策経費が七百二十七億円から二千億円強になる、こういう膨大な経費がかかるわけであります。
 このことを考えますと、アナログ周波数の変更対策と一口に片づけますが、実態は大変な作業だし、大変なお金がかかる、このように私は理解をいたします。
 そこで、具体的に質問をいたしますが、想定される、考えられる作業として、現在のテレビのチャンネルを変更するわけですからリセットをやらなければいけません、これが一つ。二つ目は、UHF用のアンテナの取りかえが要ります。これは全家庭ではありませんが、そういうケースが出てまいります。取りかえなり調整が要ります。三つ目には、セットトップボックス、アダプターのことなんですが、これの取りつけがございます。
 一家二台のテレビがあるとしまして、約一千万台のテレビのチャンネルをかえなければならないわけです、それをかえないとデジタル化には対応できないわけですから。その作業を具体的にどのようにやられるのか。もう時間がないんです。二〇〇三年末までにはそれを完了しないと、二〇一一年までには全国一斉にぽんと切りかえて、それまではアナ・アナ変換をやるわ、サイマル放送をやって、移行過程を踏みながら一一年には完全にこれを実施するわけですから、時間がもうないわけです。
 ですから、そういうことを考えますと、これは大変な規模で作業を進めなきゃなりませんが、そのことを一つお知らせいただきたい。
 もう一つは、セットトップボックスを配布する、取りつけの場合のことも検討しておかなければならないと思うんです。そういう御家庭はどういうケースをお考えなのか、このことについて、かなり技術的になりますから担当の局長さんからまず聞かせていただきたい、こう思います。お見えですか。どうぞ。
高原政府参考人 先生お尋ねの、まず、アナログ周波数変更対策の具体的な内容でございます。
 アナログ周波数変更対策というのは二つに分かれまして、まず、送信対策というものがございまして、送信機の方の設置、あるいは送信用アンテナの改修、それから、大きく分けて二つ目に、今先生おっしゃいましたように、受信側の対策というのがございます。受信側の対策で、今もお話に出てまいりましたように、テレビ受信機のチャンネル設定の変更作業、これをチャンネルプリセットと申しておりますが、そういうもの、あるいは受信アンテナの取りかえ工事というのもございます。それから、今、新しく選択肢の一つとして検討いたしておりますのが、セットトップボックスというものも、その効果のある地域では導入してはどうかということで、選択肢の一つとして検討いたしておるわけでございます。
 それで、具体的な実施の作業といいますか、それをどのようなイメージかといったようなお尋ねかと思いますが、具体的には、これは昨年六月に電波法を改正していただきまして、そこで指定周波数変更対策機関というものにその業務を行わせるということになりました。昨年八月に、この機関として社団法人電波産業会を指定したところでございます。この電波産業会が、具体的に、いろいろ要員を調達したりそういうことで、全国的に作業を行ってまいる、屋上対策とかそういうことも含めて、今の作業も含めて行ってまいるということでございます。
 いずれにしろ、相当、十分な実施体制の確保ということが必要になってまいりますので、今鋭意その作業にかかっておる最中でございます。
伊藤(忠)委員 のんびりした回答なんですね。一千万世帯対象ですよ。今言ったように、三つのケースが出てくるわけですね。一年半しか残っていないわけですよ。そこでできなければこの計画は大幅にずれるわけですね。そのことを申し上げておきますよ。だから、委託する事業者というかそういう協会ができたというんですが、そこには具体的にどういう作業の準備が指示されておるのかということがなければこれは進みませんよ。私はそう思います。
 次に移りますけれども、各家庭に入り込んで作業するわけです。マンションもあれば留守宅もあります。共働きだったらいませんよ、昼は。夜行くんですか。プライバシーの問題で、恐らくこれは断られると思いますよ。さまざまな苦情が出ると思うんですね。そういう苦情に対して、言うならばどのように処理をするのかということだって考えておかなきゃいかぬじゃないですか。簡単には進みませんよ、簡単には。机上のプランではいかないわけですから。実態は非常に複雑なんですよ。特に都市部は集合住宅が多いでしょう。マンションなんかは簡単にいきませんよ、これは。私たちもそういう苦労を、この問題ではなくてほかの問題で聞いていますけれども、大変なことなんです。だから、問題は、進めます、進んでいくであろうなんということを十回聞いても、本当に進むのかな、計画どおりいくわけない、私はそういう気持ちが非常に強いわけです。
 そこで、それじゃ総務省の、これは副大臣さんにお伺いいたしますけれども、どういう体制でやるんですか。相当な数を動員しなきゃいかぬですよ。恐らく電器屋さんだと思うんです。郵便局の人を引っ張ってくるわけにいかぬでしょう。電器屋さんなんです。電器屋さんとかそういう皆さんを大量に動員してだあっとやるわけですよ。それができなかったら、こんなもの全然できません。はい、私はそう思っています。
 そのことについて、決意じゃないんです、今の実態がこうなんで、どのように見通しは持つかなということをひとつお答えいただきたいと思います。
佐田副大臣 先生の御心配はもっともなことだと私も思いますけれども、先ほど局長の方からもありましたように、具体的に何をやっていくかという話になりますと、送信対策の方では、送信機の設置であるとか送信用のアンテナを改修するとか、また、受信側は、もう言うまでもなく、要するにチャンネルをそれにセットするとかアンテナの取りつけ工事ということでありますから、いずれにいたしましても、指定されました社団法人の電波産業会、これを中心にいろいろな苦情を承りながら全力でやっていくと同時に、先ほども申し上げましたように、NHK、民放とまた総務省一緒になりまして、地上デジタル放送推進協議会、こういうところと協力して、満足のいかない答弁かもしれませんけれども、全力でとにかくやっていきたい。先生、全力でやっていきますから、よろしくお願いします。
伊藤(忠)委員 言葉はそういうことなんでしょうけれども、これは説明を受けても、実際、そういくのかなという気になかなかなれないですよね。例えば、これは山間僻地が非常に多いわけですよ、アナ・アナ変換の切りかえのケースというのは。そういうところは電器屋さんを探すの大変ですよね。アンテナを取りかえるんだったら、一軒、一軒屋根に上がらなければいかぬですよ、屋根に上らなければいかぬわけ。これは大変なことですよ。机上のプランは立てられますが、実際、実行で一つ一つつぶしていこうと思うと、なかなか計画どおりには進まないな、私はそういうふうに思います。だから、無理やりでもやるんだ、そう思ったってできない場合がありますから、計画は計画、実態はそういうふうにならざるを得ないのかな、このようにひとつ私は理解をいたします。
 次に進めます。
 それで、問題は、経費の問題に、設備投資に関連するわけですが、地上放送のデジタル化には大変な設備投資が必要なんですね。これも聞いてみて私はびっくりいたします。
 NHKに例をとれば、これは財政安定のための積立金という表現で、間違っておるかもわかりませんが、そういうことですね、積立金を運用するわけです。それを取り崩して使っていかないことには出どころがないわけですよね。
 そういうふうにやっていって、NHKとしては地上放送のデジタル化のトータルの設備投資額はどれぐらい見込んでみえるのか、民放はどれぐらいかかるのかということを、NHKさんに聞いたら失礼だと思うんですが、その辺ももしおわかりだったらトータルでどれぐらい要るのかということをまず聞かせていただきたいと思います。
佐田副大臣 デジタル放送設備に関する投資額は、民間全体で約五千六百億円、民放テレビ局で平均一局当たりが大体四十五億円ぐらいになろうかと思います。NHKでは約五千億。合計しますと、一兆六百億を見込んでいるところでありますけれども、その負担が民放各社の大きな経営課題となることは十分に認識しておるところであります。その辺につきましては、総務省としましても、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法、平成十一年にこれは可決させていただいておりますけれども、こういう法律を利用しまして、税制、金融面からこれを援護していきたい、また、放送事業者においても、NHKを含めた放送設備の共同建設などいろいろ工夫をしまして、その経費ができるだけ圧縮できるようにやっていきたい、こういうふうに思っております。
伊藤(忠)委員 もう大変な金額ですよね。それこそ膨大な金額になります。
 問題なのは、アナ・アナ変換に二千億強のお金がかかるんですね。さらに加えて今のお話、そういう経費が重なっていくわけです。国の立場で、アナ・アナ変換に対する二千億を超える経費は、これはとりあえず国が全額負担をするということは、大体そうなっているわけですね。問題なのは、放送事業者が一兆六百億円かかるんですが、これは国は援助するということを今考えていなくて、それは事業者それぞれの資金繰りの援助はするけれども、自前でやっていきなさいということなんです。そういう結果、計画が大幅にずれるということになれば、やむを得ないのか、それとも、これは国家事業でありますから、計画を完遂するために国は相当分の国費を、言うならば負担してでもやっていこうとお考えなのか、この点、どうですか。
片山国務大臣 アナ・アナ対策は、やはり、机の上でいろいろ想定したんですね。調査をしてみると、特に西日本なんですよ。九州、瀬戸内海、私も瀬戸内海で責任を感じているんですけれども、海と山がまじっているところは大変混信状況なんですね。それが関東もそうなんです。そういうことがかなり詳細にわかってきまして、これは全体を見直さなきゃいかぬというので、ことしの夏までに詳細に調査をして、ここはアナ・アナでいくか、あるいは、今言いましたように、新しくセットトップボックス方式をどれだけ導入するかということを含めて、今、いろいろ経費等も見積もり直しをやっております。二千億かかるのか、もう少し少な目に切り詰められるのか、これはできるだけ切り詰めたい、こう思います。
 そして、一応我々は、七、八百億は、これは三カ年計画で、三カ年ないしは五カ年でその予算を確保する、こういう話を財政当局としておりましたけれども、全体が変わりますので、もう一遍話をしなきゃいけません。しかし、これは電波利用料ですから、電波利用料という特定財源を使わせてもらう、こういう話になっておりますので、いろいろな工夫をして、できるだけそれはやっていきたい、こういうふうに思っております。
 それから、デジタル化の方は、これは原則としては事業者にやってもらう、こういうことですけれども、特に財政基盤の弱い局については、今言いましたように、債務保証だとか税制だとか金融でできるだけ優遇していく。それでも恐らく大変だというところが出てくると思いますので、その具体的な負担の調整については、なお相談は私ども十分させていただきたい、こういうふうに思っておりますが、そのために国費をどっと入れるということは、今のところは考えておりません。
伊藤(忠)委員 国費は、おっしゃったように切り詰めてやっていくということになれば、その分は計画はどうしてもずれていきますよね。僕は、そうならざるを得ないと、実態を思っております。
 もう一点質問をいたします。ケーブルテレビの場合です。
 これは、ある県は、県下全世帯数の八〇%を超えています、一番進んでいる県なんですが。ほとんどの家庭がケーブルテレビなんです。そういうところには、もちろん集合住宅も都会にはあるわけですが、そういうところでデジタル化をやるというと、いわゆるデジタル化計画の、例えばアナ・アナ変換だとか、そういうフォローする経費の範囲にこれは入っているんですか。これはどうなんでしょうか。
高原政府参考人 アナ・アナ変換の対象地域については、今先生おっしゃいましたように、国費の対象に入っております。
 それから、一般的に申し上げまして、デジタル化といいますか、二〇一一年までに全体、サイマル放送を終了してデジタル化をやるわけですが、その際には、個別の受信者あるいは共同受信施設の受信者を問わず、自分の自己負担でデジタルテレビを買いかえていただくということになっておりますので、そういう一般的なデジタル化に際しては、共同受信施設も特例ではございません。
 ただ、先生御心配のように、共同受信施設はいろいろなケースがございますから、今、昨年から共同受信施設の実態を把握いたしておりまして、この世帯数あるいは改修方法等に関する調査を実施しているところでございます。この結果を踏まえまして、先ほどの一般家庭の公平さの原則と比較しながら、これから判断してまいりたいというふうに考えております。
伊藤(忠)委員 なぜ私が問題にしたかといいますと、地域でケーブルテレビに入っていますよね、地域ぐるみで。ほとんどそうなんですよ、地方の方は。そうすると、自分のところはケーブルテレビに入っているから、ああ、これは丸ごとやってくれるんだという理解が意外と、そういうふうに早のみ込みするじゃないですか。ところが、そうじゃなくて、言うならばアダプターをつけなきゃいかぬわけですね。放送事業者がデジタル設備をつくっても、各家庭にはそういうセットトップボックスをつけないと放送が行きませんよね。そうすると、それは個人が負担をするか、リースでもって月々加入料でやっていくのかということにならざるを得ないのかなと私は思っているんですが、それはこれから検討いただくといたします。答えは要りません、時間がありませんので。そういうひとつ検討をつぶさにいただきたいと思います。
 最後に申し上げますが、いずれにしても、これはデジタル放送になっても、受信者の立場は、全然画像は変わらぬわけです。ハイビジョンにしないと画質は変わらぬわけですよ。これはそのとおりだと思います。
 アメリカとかそれからヨーロッパのテレビと日本のテレビを比較いたしますと、日本の画像はすばらしいですよね。それから、チャンネルをぽっぽっと切りかえたときに、瞬時に日本のテレビは変わるじゃないですか。ところが、アメリカのテレビでもヨーロッパでもそうですが、押してからしばらくしてからがしゃんと変わるわけですな。
 だから、そういう点からいうと、余り不自由はないわけですよ。後ろ向きのような感想を言うようですが、余り不自由を感じていないんです。にもかかわらず、こんな大がかりなプロジェクトをやられるというと、そこに何のメリットがあるかな。結局、アダプターを買わないと、デジタル用のテレビを五倍も値段を高いものを出して買わなきゃいかぬということになっていくわけです。
 だから、やはりそこで、視聴者の立場からするならば、違いを明らかにするということは、コンテンツに尽きるんじゃないかと思うのです。なるほどと、デジタル放送になった、番組もこのように変わったということが明らかに受け取れないと、やはり視聴者はデジタルテレビを買おうということにはいかぬじゃないですか。私はそのような、極端な言い方をするようですが、そういう気持ちがいたします。
 ですから、そこが一番大切なんですと。ハードの面はこのように進めたにしても、ソフトがそれを上回るような格好でやられていかないと、民放のBSデジタルじゃないですけれども、何だ、全然変わっていないじゃないかというようじゃ、視聴者はこれはいまいちなんでございまして、その点をしっかり受けとめていただきたいな、こう思います。
 御感想がございましたら答弁いただいてもいいのですが。時間が参りましたけれども、どうぞ。
海老沢参考人 やはり放送というのはハード、ソフトが車の両輪として転がらなければなりません。そういう面で、私ども放送事業者の方は、やはりいい内容の、質の高いものを出さなければ、当然視聴者は見てくれません。
 ですから、デジタルハイビジョンのよさというもの、メリットというものをやはりもう少し詳しく説明する。今、BSで大分キャンペーンをして、BSの普及を図っておりますけれども、そういうBSデジタルハイビジョンのよさがわかってもらえれば、地上波の方も順次進むだろうというように私は見ております。
 いずれにしても、コンテンツ、番組の内容が大事だということはもう言うまでもありません。そういう面で、やはりデジタルのメリットというものを、番組の内容の面で我々は証明しなきゃならぬだろう、そう思っております。
伊藤(忠)委員 終わります。
平林委員長 次に、松沢成文君。
松沢委員 民主党の松沢成文と申します。
 まず、私は、テレビ、ラジオの英語放送の必要性について、NHKの見解を伺いたいというふうに思います。
 世の中は国際化の時代でありまして、多くの人が海外に出ていく。海外旅行もありますし、留学もあります。また、日本にさまざま仕事を求めて外国から人々が入ってくる、こういう国際化の時代であります。その中で、私もそうですけれども、もうちょっと英語を勉強しておけばよかったかなと思うようなことを感じる機会がある方がほとんどだと思うのですね。
 なぜ、世の中、世界じゅうを見て、英語がこうやって支配力を強めたか。これは、歴史からひもとくと、さまざま、パクス・ブリタニカの時代、イギリスが世界じゅうに植民地をつくって、その植民地に英語を広めていった。それから、アメリカ、パクス・アメリカーナの時代、今もそうですけれども、アメリカのリーディングカントリーとしての影響力が英語力の強さにつながっているということだと思うのですね。
 もう一つ、それに加えて、高度情報化社会。つまり、インターネット。インターネットを通じて世界じゅうの人々と瞬時にリアルタイムで情報交換ができる、こういう時代でもあるわけですが、そのインターネットの情報量の八割が英語だと言われていまして、この英語ができるか否かによって、インターネットで一次情報をとるということに関しては、やはり英語力というのは大変重要なわけなんですね。
 ただ、そういう状況にもかかわらず、我々日本の国、日本人の英語力というのは、これは大変心もとないところがあるわけなんです。
 例えば、一つの指標で、よく言われるのがTOEFLとかTOEICといいます海外に留学するときの試験ですね。これは国際共通試験ですけれども、世界じゅうのノンイングリッシュ・スピーキングの人が受けているわけです。これはアジアの中でもいつも、日本か北朝鮮か、この辺がびり争いをしているのですね。これは、日本は受ける人が多いからこういう点数になるかというのは、これは理由じゃありませんで、韓国の方がもっと受ける人が多いんです。でも、日本よりは平均点は高いんですね。こういうことで、日本人はだれもが中学、高校で六年間英語を勉強するにもかかわらず、ほとんど英語でのコミュニケーションがとれないというのが実情なんです。
 なぜこうなっちゃうのか。さまざまな理由があると思いますが、一つは、島国でありますから、外の人との交流がなかなかないから、日本の中では日本語さえしゃべれれば全部事足りちゃう、こういう状況と、もう一つは、日本の経済がある意味で大国で大きいですから、英語の本が入ってくれば、売れる本だったら翻訳本が出ちゃいます。あるいは、映画が入ってくれば、それを吹きかえによって日本語にして放送に乗せるわけですね。こうやって英語を使わなくてもいい環境が整っちゃっているからみんな英語がうまくならない、こういうことだと思うんです。
 そこで、きょうは公共放送としてのNHKに提案があるんですけれども、NHKでは国際放送といって海外に住む日本人を対象にラジオ・ジャパンとかあるいはワールドTVとかワード・プレミアムですか、こういうラジオやテレビの衛星を使った放送を行っているんですが、日本にいる皆さん、というのは日本人プラス日本に来ている外国人も含めて、英語放送というのをつくったらどうかと思うんですね。
 これまで、音声多重放送で、例えば映画やニュースは音声切りかえをすれば英語で聞けるというのもありましたけれども、私は、ここまでデジタル化が進んで多チャンネル化が可能になったのであれば、日本のニュースや日本の番組をできる限り英語で放送していく。そういう番組があることによって、英語に触れる機会がふえますよね。その都度切りかえをするんじゃなくて、多チャンネルになるんですから、英語放送というのをつくる。
 それも、例えばCNNを聞きたきゃ聞けばいいじゃないかという議論になっちゃうんですが、あれは世界じゅうの情報、アメリカの情報の英語が聞けるだけなんですね。むしろ、日本で起こっている今のニュースあるいは日本の放送を英語で聞けることによって、聞く日本人もすごくそれが入りやすいし、あるいは外国人も番組を見ると同時に日本の理解が進むわけなんですね。
 そういう意味で、私は一日じゅう英語を流す日本の英語放送が必要だと思います。それは公共放送であるNHKしかできないと思いますし、また、デジタル時代の多チャンネル化においてはそれが可能だと思うんですけれども、NHKとしてはいかがお考えでしょうか。
海老沢参考人 英語専門のテレビ局をつくったらどうかという意見、私ども、日本に在住する外交官等からそういう意見も寄せられております。
 ラジオの方は民間でやっているようでありますけれども、テレビについてはなかなか難しいということでNHKがやったらどうかという御意見だと思います。私ども、まあ皆さんが認めてくれればやってもいいだけの力を持っていると思いますが、これをやるとまた巨大化、肥大化という批判が一方では出てくる、またその財源はどうするか、いろいろな面があると思います。ですから、まあ意見として承り、今後一つの検討課題にさせてもらいたいと思っています。
松沢委員 私は、これは非常に教育的効果、文化的効果が高い施策だと思っていまして、むしろこういうことをやるのがNHKの評価につながって、肥大化という批判は受けないというふうに思うんですが、ぜひとも今後の検討課題にしていただきたいというふうに思います。
 次にお聞きしたいのは、大きなスポーツイベントの放送権料あるいは放映権料についてであります。
 先ほどの田並先生の質問でも、NHKの受信料は四年に一回上がる、それは膨大なオリンピック等の放送権料が一つの原因じゃないかというような御指摘もございました。
 ことしはスポーツイヤーでありました。二月にはソルトレーク・オリンピック、また三月にはその後パラリンピックも行われました。私も深夜まで、モーグルの里谷多英選手とかあるいはスケートの清水選手、リアルタイムでその活躍を見たいと思って、目をこすりながら頑張った一人であります。また、五月、六月にはアジアで初めての日韓共同のサッカーワールドカップが開催をされるということなんですね。
 ただ、恐らくNHKも含めて、こうしたビッグイベントの放送権を獲得するためのお金というのは、大変大きな悩みの種だというふうに思うんですけれども、まず、ソルトレーク・オリンピックと日韓サッカーワールドカップの放送権料はどれくらいなのか、そこからお聞きしたいと思います。
海老沢参考人 ソルトレークシティー・オリンピックの放送権料は、三千七百万ドルと記憶しております。(松沢委員「三千七百万ドル」と呼ぶ)三千七百万ドルです。ドル建てでやっております。次の二年後のアテネのいわゆる夏のオリンピックは一億五千五百万ドル、その次の二〇〇八年の北京のオリンピックは一億八千万ドルということで、年々放送の権料は上がってきています。
 それから、ワールドカップサッカーについては、これはFIFAとの契約で当分公表しないということになっておりますが、御承知のように、最初私どもの方に、ISLという中間業者の要望は六十四試合すべてで二百五十億円ですね、日本円で、言ってまいりました。その後、いろいろ交渉して、向こうの要望どおりには我々はとても無理だということで、私どもはNHKと民間放送がオリンピックと同じようにジャパン・プール、ジャパン・コンソーシアムと今言っておりますけれども、共同で交渉に当たろうということでやってまいりました。
 そういう中で、御承知のように、CS放送のスカイパーフェクト・コミュニケーションズが六十四試合を契約してしまいました。我々六十四試合すべてをやったらとてもこれは採算に、採算といったらおかしいですけれども、高過ぎるということで、私どもジャパン・コンソーシアムは四十試合で契約いたしました。それで、四十試合のうちNHKが六〇%、民間放送が四〇%、したがって、私どもは二十四試合を総合テレビとハイビジョンで放送する、そういう段取りであります。いずれにしても、相当高い値段であります。
 四年前のフランスのワールドカップサッカーは、これはNHK単独であります。これはわずか五億、日本円で五億五千万円でございました。
松沢委員 今、海老沢会長お話がありましたそのジャパン・コンソーシアムというのは、これはNHKと民放で共同で、連合軍というか、連帯を組んで放映権の交渉をし、獲得するという組織ですけれども、これはオリンピックについて言うと、ロサンゼルス・オリンピックあたりからジャパン・プールというのをつくって、こういうやり方に変わっているわけですね。
 各放送局単独で交渉するよりもこの方が有利である、効果的であるということなんですけれども、先ほど、今回のワールドカップについても、値段の方もありましたけれども、大変、ジャパン・コンソーシアムで六十億円、四十試合かかっているわけですね。この共同を組んでジャパン・プールとかジャパン・コンソーシアムでやることで、これは何か効果が出ているんですか。単独でやるよりもこれだけ放映権料が安く、また有利に獲得できている、こういうことになっているんでしょうか。
海老沢参考人 御承知のように、ロサンゼルスの前のモスクワ・オリンピックのときは、それまではNHKが単独でやれていましたけれども、モスクワ大会から民放さんもオリンピックに参入するということで大競争時代になりました。そのときに、やはり高い値段で民放のある一社がこれを落札したということがあります。
 その反省に立って、ロサンゼルス・オリンピックでは一緒にやった方が安い値段で抑えられる。要するに、競争になれば、これはウナギ登りに上っていくのは当然であります。それはアメリカの三大ネットが、NBC、CBS、ABCがいつも競争して、この前のシドニー・オリンピックは日本の四、五倍といいますか、七億ドル以上の、正確に申しますと、七億一千五百万ドルという、我々からすれば予想もできないような値段で落札しているということで、競争になれば当然そうなってくると思います。
松沢委員 二〇〇二年のワールドカップで、先ほど会長もおっしゃっていましたけれども、スカイパーフェクTVという、これは商業放送です、有料テレビですけれども、ここが百二十億でジャパン・コンソーシアムよりも先にワールドカップのすべての試合の放映権を獲得したんです。それにおくれてどうにかジャパン・コンソーシアムも四十試合を六十億で買ったということなんですが、スカイパーフェクTVのような商業放送がどんどんその資金力にも任せてこういう大きなスポーツイベントの放送を独占してしまう可能性も指摘されているんですけれども、そのあたりはNHKとしてはいかがお考えでしょうか。
海老沢参考人 御承知のように、このようにいわゆる商業放送といいますか、有料放送、ペイテレビ、特にイギリスのBスカイBが始まってから、非常にスポーツ放送権料が一挙に高くなったという歴史的背景があります。それは、やはり、おもしろいスポーツ、視聴率が高い、とれるスポーツは、金を出しても商売になるということで、我々、基幹放送といいますか、公共放送なりCMを財源とする従来の放送ではとても太刀打ちできない。そういう面で、イギリス、その後ヨーロッパ各国にそれが広まってまいりました。そういうことで、いわゆる衛星を通した有料テレビが独占的に今サッカーとかラグビーとかそういものをやっているということであります。
 そういう中で、イギリス等では、やはり、それでは一般の方々が世界的なイベント、オリンピックとかワールドカップサッカーとかそういうものが見られない、一部の金持ちしか見られないということで、イギリスでは主な十のスポーツをいわゆる無料放送でも見られるように法律で決めました。そのように、ヨーロッパではイギリスを初めほかの国でもそういう動きがありますし、オーストラリアでもそういうことが決まったと聞いております。
 そういうことでありますから、これからどのように展開するかわかりませんが、いずれにしても、このままでいけばだんだんスポーツ放送権料は、一部の人しか見られない、金持ちしか見られないというような状態になりかねないことは、世界の流れであります。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
松沢委員 海老沢会長、俗に言うユニバーサルアクセス権というのは非常に大切だというお立場だと思うんですが、公共性のある重要なイベントに人々がアクセスする権利といいますか、本当に簡単に言えば、視聴者の見る権利、これが有料放送がどんどんのしてくることによって失われてしまうんじゃないかという危険もあるわけであります。
 そこで、総務省、副大臣にお伺いをしたいんですが、今海老沢会長もおっしゃいましたように、イギリスあるいはオーストラリアなんかでは、ユニバーサルアクセス権を確立するための法整備ができているんですね。例えばイギリスでは、一九九六年に、オリンピックやサッカーなどの国民的スポーツイベント、大イベントは、特別指定行事として有料放送の独占が禁止されております。日本はこうした規制はないんです。したがって、今後、今回のワールドカップの放映権でも、スカパーがもう先にジャパン・コンソーシアムよりも放映権をとってしまったという事態もあるわけで、私は、しっかりとユニバーサルアクセス権を認めるための法整備が必要だと思うんですけれども、総務省はいかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 今のお話のように、イギリスではそういう法制がありますね、ほかのところもあるようでありますけれども。我が国においては、今そういうふうな状況は実は起こっていないんです。先ほど松沢議員が言われたスカイパーフェクTV、六十四試合というのは、これはCSですよね。CS放送ですから、独占は。だから、そういう状況は起こっておりませんが、もしそういうことが起こるようなら、それはやはり考えなきゃいかぬと思いますよ。
 それから、これだけどんどんつり上げるというのもいかがかな、こう思いますね。これはやはり国際的にも良識というのがなきゃおかしいと私は思うんです、それは本日の必ずしも議題じゃありませんけれども。もしそういう状況が起これば、我々としては検討いたします。
松沢委員 終わります。
稲葉委員長代理 次に、島聡君。
島委員 民主党の島聡でございます。ネクストキャビネットでIT政策を担当しておりますので、佐田さんにも後で聞きたいと思っていますから、よろしくお願いします。
 今、e―Japan戦略とか放送と通信の融合とか、たびたびまくら言葉で皆さん使われる。佐田さん、二〇〇五年でしょうかね、五年以内と言うんだから。三千万世帯が高速インターネットアクセス網を持つ、一千万世帯が超高速インターネットアクセス網を持つ。高速と超高速、どう違うか。高速の方、三千万世帯の方は、音楽データがやりとりできる。そして、超高速インターネットというのは、これは「プロジェクトX」のビデオだけれども、こういう画像データがやりとりできるようになる。今、ISDNだと一時間ビデオをダウンロードしようと思うと三時間かかるけれども、八秒ぐらいでできるようになる、そういう理解で、佐田さん、いいですね。
佐田副大臣 e―Japanの方で、基本的に二〇〇五年までに努力というか、その方向性として、今言われたように、三千万世帯については高速、一千万世帯には超高速ということでありますから、基本的には、私の理解の中では、要するに、例えばADSLであるとか、これは高速であります。超高速というふうな形になってくれば、これは光ファイバーを引いていく、そういうふうな認識でございます。
島委員 今の認識でいいんです。
 それで、このところ、いわゆるNHKのインターネット利用。先ほど、ある自民党の議員が、NHKのホームページはよくできているとおっしゃいましたけれども、私はそう思っていません。グローバルで比較して、BBCのホームページを見ますと、相当おくれています。例えば、BBCなんというのは、英国政府関係者が言っているんです、世界のどこからもアクセスのできるネットというものを英国が持って、英国から情報発信することは国益にかなうものである。私は、そういう認識を持っています。
 今回のガイドラインを見ますと、何かえらくせこいです。何か予算は十億円。海老沢会長にお聞きしますけれども、十億円ですと、私が好きな「プロジェクトX」なんというのは、著作権法等の処理なんか、なかなかお金がかかって難しい。それから、分野が医療と福祉と教育と生活に限られている、この四分野に限られているという話ですが、そういう理解でよろしいんですか、海老沢会長。
海老沢参考人 私どものインターネット、ホームページも含めて、あるいはこれからガイドラインに沿って行いますいわゆる放送の補完的なインターネット利用、これを合わせまして、今十六億の予算を組みました。今問題になっているガイドラインの部分は補完利用分、これはいわゆる六億ということであります。
 今のそういうインターネット、まだ、いわゆる本格的な大容量のブロードバンドになればまた別に考えなきゃいかぬでしょうけれども、今は、今ある携帯とかパソコンに流すいわゆるナローバンドと言うとあれですけれども、若干ブロードバンド化した点もありますけれども、その部分ではまずまずの情報は送れるだろう。ただ、今おっしゃるような「プロジェクトX」とか、そういう映像を鮮明な画像で見るためには、それは無理だと思います。
 ですから、我々は、そういう時代の変化、また視聴者のニーズにどうこたえるか、これからの課題だろう、こう思っております。
島委員 先ほど申し上げましたように、何か極めて変なんですよ。医療と福祉と教育と生活。今おっしゃったように、ブロードバンド、二〇〇五年ですから、あと三年先でしょう。物すごい高速道路をぱあっと通すんですよ、ブロードバンドは。そこで走っている車を見たら、医療、救急車、福祉、介護の車、教育と生活、学校の先生と市役所の運転している車だけ。ファミリーカーもスポーツカーも走らせないというのが今のガイドライン。何でこんなガイドラインをつくってしまったのか、そういう思いがしています。
 総務大臣、ここは立法府ですから、法律に基づいて議論したいので、ちょっと後ろの方、六法全書をお渡しください、放送法。私と同じ郵政六法だったら千七百六十四ページ、先ほどばたついておられたので、親切に申し上げます。そこに、放送法七条というのがあります。七条と九条というところ、私と同じページだったら千七百六十四ページです。ありましたか。
 今回のガイドラインは、九条二項の「前項の業務に附帯する業務を行うこと。」という附帯業務で入っているのです。先ほど申し上げましたように、私はこれはちょっとおかしいと思っておりまして、七条をごらんください。七条の「協会は、」とあって、真ん中、三行目ぐらいに、「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、」とあります。
 「プロジェクトX」なら「プロジェクトX」の番組をビデオ・オン・ディマンドで私が受信する。これは、受信の進歩発達に必要な業務、そういうふうに解釈すればいろいろなことができて、BBCにも負けないようなことができるというふうに思うのですが、官僚はどんなふうに解釈しているか知りませんが、大臣、どう解釈しますか。
片山国務大臣 まあ、七条は目的規定ですからね。九条がその目的の具体的な業務を指定しているんですよ。
 問題は、委員言われるように、番組の二次利用は制限がないんですよ。番組関連情報だけが、今委員が言われるように、教育、福祉、医療、生活なんですよ。二次利用は制限ありませんから。まあそれは大変なコンテンツをお持ちだし、いいのがたくさんありますから、大いに利用すればいいという理屈は一方であるのだけれども、民放連だとか新聞協会だとかこういうところがまたやかましいのですよ、いろいろと。受信料でやっているじゃないか、公共放送じゃないかと。だから、この辺の接点をどういうふうにとるか。我々は、この七条の目的は十分わかっていますよ。いいコンテンツはいっぱいあるのだから、これは国民の資産ですよ。これを有効に利用するのは当たり前の話なんだけれども、しかしそこはやはりセットが要るんですね。ひとつ御理解を賜りますように。
島委員 明快に政治家らしい御発言をいただきまして。ただ、それを超えてやらないといけないと思うんですよ、大臣。
 これもBBCを見ていましたら、BBCで新しくなった、そういうネット担当の重役というのは三十歳代だそうですよ。今おっしゃった、民業圧迫というものなんでしょう。だけれども、我々がすぐれたコンテンツを提供すれば、英国のネット加入者がふえる、市場が広がるのは民間企業にとってもよいことだと。何か五年以内に世界最先端のIT先進国家、ワールド・エコノミック・フォーラムというのがありまして、そこで見ると日本のIT度は二十一位。ソルトレークシティー・オリンピックでは銀メダルが一個、銅メダルが一個。二十一位から一位になるのは大変ですよ、これは。
 そういうことを考えたら、資産が、コンテンツが随分あるという話だったら、それはぜひとももっとやっていただきたいというふうに思うわけです、もっと大胆に。これは国益の観点でぜひ御判断いただきたい、そう私は思っております。
 今、教育の二次利用、つまり、いろいろな取材したものがあったらどれだけ自由にやってもいい、そういう話だと思いますが、十億円の根拠を聞きたいと思っています。
 BBCは、今度本格的な教育サイトを立ち上げるそうでありますが、向こう五年間で一億六千万ポンド、三百億円を投資します。年間五十億円ぐらい。私は、NHKの教育放送というのもすごく気に入っているのです。先ほど英語の話をされましたけれども、私は、中国語とハングル語の講座をテレビで見ていまして、いろいろ工夫されていて、浅川さんとか阿部さんとかいう女性が出てきて、なかなか楽しいのです。そういうように工夫されていていいと思うのですけれども、それがビデオ・オン・ディマンドだとかそういうのだと物すごくいいと思いますし、BBCは今申し上げたように五年間で一億六千万ポンド、三百億円ぐらいを投資する、教育一つに限って。
 日本が十億円という枠をつくった理由は何ですか。
片山国務大臣 この十億円という規模についてもいろいろな御意見があると思うのですが、民間の団体からは、余り高いのはだめよ、十億でも相当高額だ、こう言われておるのですよ。そういう意味では、反対意見がかなり強い。
 そこで、我々としては、とりあえずBSデータ放送の番組制作費が約十億円だ、こういうことを知りまして、それを一つ念頭に置いて、年額十億円を上限と。それは合理性があるかといえば、あるようでないのです、こういうものは。丸い数字なんですよ。ただ、当面はこれでまあまあということになっていますから、我々はこれでいかせていただこうと。御理解賜りたいと思います。
島委員 本当に見事な政治家らしい御発言で、片山大臣との議論はいつも楽しみにしております。
 先ほどだれかおっしゃっていました。私が、大臣のときに何か牽制したみたいな話をしておられましたけれども、まあいかがなものかと私は思って聞いておりましたけれども。まあ議事録に残ったから、これが果たして、何年か先に、国益で考えた場合に、BBCというものは物すごく発展している、日本がどうだったかという判断のときの政治家として判断を問われることになると思いますから、私は、十億円というのは、今おっしゃったように、政治判断なら、根拠がなくても、これは強化していくべきだと思っています。そういうことを申し上げます。
 次に、同じようにインターネットの話でありますが、今回の事業計画でも、要するに災害関係は強化するという話になっていると思います。阪神・淡路大震災からもう七年もたちました。阪神・淡路大震災のときに、インターネットというのは、情報を得るために非常に役に立ったという話がありました。
 ただ、問題があったのです。そのときインターネットで流れた情報というのは、ある意味でスクリーニングされていませんから、例えば何月何日にもう一回地震が起きるとか、あそこで大変な暴行事件が起きているとか、そういううわさもたくさんあって、かえって不安を助長したというのがありました。
 その後、七年たって、ますますよくなった。あのときは、テレビ、ラジオがだめで、インターネットだったのですが、今はもうこういう時代です。iモード等で皆さん情報をとる時代になってきました。今回のガイドラインでも、そういう地震があったときには、携帯端末で全部情報がとれるようになっているのかどうかです。特に、私の地元でも、東海大地震の警戒地域が西にずれました。震度六弱の警戒域になったりしております。この前、NTTドコモ東海だったか、基地局を見に行きました。震度七でも耐えられるそうです。
 そういう意味では、それできちんとやれば、いざというときに危機管理ができますが、そういう放送は、今回はできるのか。あるいはどのようにお考えなのか。海老沢会長。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
海老沢参考人 私どもは、やはり国民の生命財産を放送によって守っていこうという大きな使命を持っております。
 ですから、平成七年の阪神・淡路大震災、これはテレビ、ラジオ、携帯電話が非常に役立っておるわけです。インターネットも当然役立つでしょうけれども、やはり一番に役立つものは、携帯電話だろうと思います。
 それと同時に、これから携帯端末に情報がどんどん入ってきますから、私どもは、そういう災害緊急報道に対応するために、どのようなツール、いわゆる携帯電話であろうが何であろうが、あらゆるツールに情報を入れなければ末端まで情報が行き届かないというわけですから、そういう面で、どの端末にもNHKの災害報道が伝わる、そういうふうに今体制をますます強化していきたいと思っております。これまでのいろいろな災害でも、本当に携帯端末が役立つというふうに聞いておりますし、我々の使命だろうと思っております。
片山国務大臣 今の海老沢会長の答弁でもう尽きているのですが、今回のガイドラインの適用からは、災害、危機管理情報は外しておりますから、これはもうやってもらおう、携帯端末もどうぞ、こういうことでございますので。
島委員 テレビ字幕の普及について、お尋ねしたいと思います。
 私どもが、民主党がインターネットで政策の募集をしたことがあります。そこで、深田麗美さんという一人の女子大生が政策の提言をされました。耳の御不自由な方であります。耳の御不自由な方、つまり、要するに、字幕放送を普及できるように、もっと字幕放送を広げてほしいという御提言でありました。
 その方は、耳が御不自由でありましたが、頑張って普通の学校に入りまして、同志社大学に入られた方です。非常に頑張っておられる人です。来られましたので、私が、学校は大変だったですかというふうにお聞きしました。そうしたら、学校の授業は教科書があるから何とかなるとおっしゃいました。何が一番つらかったですか、字幕もいろいろされる、例えばニュースはされる。でも、学校に行って、例えばドラマとかそういう話を友達がしている、そのときに話の中に入っていけない、それが一番つらかったとおっしゃっていました。
 その後、だんだん推移して、ドラマがあったそうです。私は見ていないのですが、松嶋菜々子さんという人が主演の「やまとなでしこ」という番組があったそうですけれども、そういう番組で字幕がついた。そのときに家族みんなで笑うことができた。ドラマにも字幕がついた、こんなに一緒に笑えることがすばらしいことかと思ったということで提案されまして、私どもも字幕普及のための法案を出しました。
 なぜ出したのか。アメリカの三大ネットワークは全体の放送で字幕放送が九〇%、イギリスは五〇%であります。もちろん、アメリカは電子通信法でそのような規定があります。日本でも九七年に放送法が改正されて、努力義務規定があって、そして今の、それこそガイドラインがあってなされている。二〇〇七年ですから十年、ちょうど折り返し点なんです。
 それで、私どもが事前に承ったところによりますと、全体の放送時間数では、NHKが一九・八%、民放に至っては、一番高いところでテレビ東京の三・八、低いところは朝日放送二・四%。あと五年、半分たっているんです。字幕付与可能な放送時間に占める字幕放送の割合でも、NHKが六七・六、民放八・六という状況であります。五年間でたったこれだけ。あと五年しか残っていない。
 まず、NHKは、字幕放送について、今、予算はどれぐらいで、今後どういうふうにするおつもりなのか。あと五年なんです。片山総務大臣はどのようにされるおつもりなのか、それをお尋ねしたいと思います。
板谷参考人 字幕放送については、鋭意今進めているところでございますが、NHKの字幕放送は、行政の指針では平成十九年度までに、午前七時から深夜零時までの時間帯、これを字幕が可能な分はすべて字幕にするというのを一年前倒しして、十八年には実現するということでやっております。
 平成十三年度の字幕化率も七一・三、それから七七・三というふうになっておりますが、着実にふえております。どんどんこれからも着実にふえていく努力をするつもりでおります。
片山国務大臣 この字幕放送がなかなか進まないですね。言われるとおりなんですよ。
 十九年度までに字幕付与可能なすべての放送番組を字幕にする、こういうことで、私は去年の七月ごろにこう聞きまして、大分私も、怒ったわけじゃないですけれども、これは話が違うのではないかと。そこで、十九年度までの計画を出せと通知を出したのです、全部に、特に民放に。秋に計画が出てきました。あとは計画の進行管理をやって、十九年度に当初の約束になるようにぜひ頑張るように、特に民放に。今言われるとおりなんですよ、NHKが六七・六で、民放が八・六ですからね。いろいろ言い分は皆さんありますよ、大変だということは。ただしかし、そういうことで、一応公に明らかにしたわけですからできるだけの努力を、私が一〇〇%と言うだけの今権限がありませんけれども、計画どおりやっていただくように、特に民放を中心に督促をしてまいります。
島委員 私ども、そういう議員立法を提出しております。計画を出して、かつ勧告ができるようにしていますから。
 ちなみに、耳の不自由な方は全国で三十七万人、お年寄り、これからいわゆるそれが必要だろうと思うのは六百万人おられます。議員立法がいいとよくおっしゃる総務大臣でございますので、ぜひとも与党の皆さんも一緒になって審議していただいて、それが実現できるように、バリアフリーな社会が実現できるようにお願い申し上げます。
 終わります。
平林委員長 次に、武正公一君。
武正委員 民主党・無所属クラブの武正公一でございます。
 きょうは、電波について、海老沢会長の御所見をさまざまお伺いをさせていただきたいと思っております。
 先ほど、同僚委員から、アナ・アナ変換に伴いまして、当初七百億強が二千億ぐらいになるだろうというようなお話のやりとりがございました。その財源はと言われれば、これは昨年の電波法改正で、御案内のように、電波利用料からというような形になっているわけであります。そうすると、では、七百億が二千億になれば、今後、この電波利用料をもっともっとふやさなければならないのかなといったことも議論として出てくるのかなというふうに考えるところでございます。
 電波についてなんですけれども、「IT革命を実現させる電波政策に関する提言」ということで、通信と放送の研究会が提言書を昨年一月三十一日にまとめております。
 その中で、電波とはということで、電波は自由財である、電波資源の実質価格はゼロで、電波を無料で利用すること、これまでは何ら差し支えなかったというような形で、ただ、それが今激変しつつある。これがアナ・アナ変換の理由となっているわけなんですが、簡単にこれをわかりやすく、電波の今の状況をこの中ではこう書いてあります。
 「電波資源全体をかりに関東地方の土地スペースにたとえれば、利用に便利な都市部・平野部はすでに割当が終わっており、山岳・峡谷部でも悪条件を克服しながら利用が拡大中である。しかしながら、東京都区内や山手線の内側に当たる部分でも低利用の区画、つまり空き地や、古い平屋建がまばらに散在する区画がまだ残っているという状態である。」あるいはまた、「現状のように、一方において電波資源の非効率な利用を放置したまま、他方において高度利用技術の開発のみに依存することは、国民全体にとって有利な方策ではない。」このような形で提言をしております。これがこの通常国会で、今回、電波法の改正で電波の利用状況、やっとこれから精査ができるようになるというような形で法案の準備もされているわけでありますが、同研究会もそのことは提言として述べているわけでございます。
 そこで、まず海老沢会長に、平成十四年度予算で、NHKさんはこの六千億を超える予算、支出の中で、どの項目でこの電波利用料を幾らお支払いになられる御予定なのか、御説明をお願いいたします。
海老沢参考人 十四年度予算では二億円を計上しております。予算書の中では、国内放送費における放送施設の運用維持経費という中にこの電波利用料が含まれております。
武正委員 六千億のうち二億円ですから、〇・〇三%ということでございます。
 この日本の電波利用料、平成十四年度は五百四億円、これは収入の方ですね。そしてまた、歳出の方、歳出で昨年来、アナ・アナ変換を歳出から充てていくわけでありますが、歳出の方が五百二十六億円、これが平成十四年度でございます。
 平成十四年度の電波利用料収入五百四億円の中で、このNHKさんが二億弱、民放さんがやはり二億弱ということで、合計四億円ぐらい。これは、平成十二年度でかんがみますと、平成十二年度の電波利用料の四百億円の約一%が放送局さんの負担分というような形になるわけなのですね。これについて後でまたお話をさせていただきますが。
 引き続きまして、電波は国民共有の財産というふうに言われております。先ほど、関東地方でなかなか電波の利用状況、関東地方の土地利用でとらえると、まだまだもっと利用ができるのではないか、特に都心部というような形でのとらえ方がございましたが、国民共有の財産というこの電波資源。ある電波帯では、それこそ公的な機関がそのある電波帯の四割を占めるということで、公的な機関は電波利用料を払っていないといったこともありまして、電波は国民共有の財産というようなことで、これをもっともっと活用すべきということが言われているわけでございますが、海老沢会長は、電波は国民共有の財産という考えについていかが御所見をお持ちでしょうか。
海老沢参考人 御案内のように、電波は国民の共有財産だということはもう当然であろうと思います。この国民共有財産をどのように国民のために有効に使うかということだろうと思っております。私ども公共放送NHKもあるいは広告放送を主な財源とする民間放送も、同じ電波といいますか、これを免許という形で我々は扱っているわけであります。そういう面で、国民共有財産でありますから、当然、NHKも民放も、ともに公共性を重んじなければならない企業体だろうと思っております。
 そういう面で、私どもは、国民共有財産の電波というものを、視聴者国民のためにできるだけいい番組を出すことによって貢献したい、そう思っております。
武正委員 先ほど、平成十二年、電波利用料収入四百億円のうち、放送局さんがお支払いの分が約、民放二億円、NHKさん二億円、ですから一%というお話を申し上げました。電波利用料の八割は携帯電話の電波利用料から賄われております。一台当たり五百四十円。ですから、平成十四年度の電波利用料収入予算は平成十三年度に比べて約五十億円ぐらいアップをしている。それは、携帯電話の利用台数が一千万台、毎年今ふえているから、掛ける五百四十円イコール五十億円というような形で、年々電波利用料収入はふえております。
 電波利用料収入に対して、放送局の、割合でいきますと一%、八〇%は携帯電話の利用者、国民が納めている。これはやはりいかがなものかなというふうに私は思うのですが、この電波利用料収入に対して放送局の支出の割合が少ないことについての御所見をお伺いします。
海老沢参考人 御案内のように、携帯電話がどんどん普及すれば無線局がふえるわけでありますから、そういう面で上がってくるだろうと思いますが、私ども、電波法という法律に基づいて、一局当たり今二万三千八百円ということでお払いしておるわけであります。ですから、法律で定めたことを忠実に守っているということであります。
 安いか高いかは、これは私は論評いたしません。
武正委員 NHKさんが約一万六千、そして民放さんが八千というような形でそういった基地局があるわけでございますが、今、安いか高いかは話さないというかお答えにはならないというお話でございます。私は割合のことをお聞きしたわけでございまして。
 放送法にうたう放送の独立性ということを考えると、適正な電波利用料を払うということが放送の独立性から考えてふさわしいのではないかなというふうに私は思うのですが、放送の独立性と電波利用料との関係ではどのような御所見をお持ちでしょうか。
海老沢参考人 ですから、電波使用料といいますか利用料というのがどういういきさつでなったかということにまず問題が出てくると思います。これはもう、総務省、当時郵政省がこれから電波行政を進めるための方策として特別財源としてつくったわけでありまして、我々は、その法律に基づいて支払っているというだけであります。
 ですから、この電波利用料がいいのかどうかは、なかなか、私が今ここで明快な答弁をすることは、頭の中で整理されておりません。
武正委員 なかなか議論が、ちょっとかみ合わなくなってきたのですけれども、電波資源の有効活用方策に関する懇談会というところの報告の中には、電波のオークション制についての記述がございます。「放送へのオークションの導入の是非」ということでございまして、特にNHKさんについて、「NHKは法により放送事業を行うことを目的として設立された法人であり、目的達成のためには周波数の割当てがあることが前提。」あるいはまた「NHKの法定業務は電波を用いることとされており、周波数の割当てが必要。」という意見がある一方、「NHKは電波利用料を他の免許人と同じように納めているのだから、オークションの対象ともなり得るという言い方もある。」あるいは「周波数の割当てがなくても、有線等の手段により、NHKが法定業務を行うことは可能」、あるいはまた「AM、FM、地上波テレビ、衛星放送等、必ずしもすべてのサービスを行う必要はない。」というような、さまざまな意見がございます。
 この電波の入札制ということ、今の電波利用料ということで、国民が、携帯電話の利用者、約八割が負担をしているわけなのですけれども、電波利用料というような形で諸外国もやっているのですが、最近では欧米各国で電波の入札制といったものに取り組んでおります。この電波の入札制について、これも会長として御所見をお伺いしたいと思います。
海老沢参考人 イギリス、ドイツ、フランス等、これまで周波数といいますか、電波のオークションをやったところ、聞いております。欧米の通信事業者が数億のお金で落札した。それによって経営が非常に苦しくなって、競争力が失われたということも我々聞いております。
 ですから、それぞれの電波行政、いわゆる周波数の割り当てなり電波の利用というものはその国固有のものでありますから、それぞれの国の政策によって決められるものだろうと思っております。ですから、日本に当てはめて、これが、オークションがいいのかどうかは、また日本は日本としてそういう産業面あるいは電波の有効活用という面から総合的に考えるものだろうと私は思っております。
武正委員 お答えいただきましてありがとうございます。
 私が電波の入札制にこだわるのは、先ほど触れたような、国民共有の財産であるということでの、もっともっと活用をしていくべきではないかといった意見に立っているからでございます。ただ、例えばフランスでは、放送事業者に対してオークションとはまた別途の形で、それを公共放送というような形での対応もしておりますし、イギリスでもそのような対応をしているということでございますので、放送と、また通信ということで、すべてがすべてオークションに立てといったことを言っているのではございませんので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
 なぜ電波の入札制かということですけれども、これも先ほどの通信と放送研究会の中で、大阪学院大学の鬼木さんという方でしょうか、述べているのですけれども、「たとえば海難事故の場合、海水に触れると電源が入って自動的に海面に浮かび、位置情報を発信する「海難・漂流時用パーソナル・ブイ」があれば、救助に役立つはずである。この種の警報装置は、ストーカー行為を被害女性が警察に通報したり、いじめにあった生徒が先生に知らせたり、あるいはお年寄りの介護・医療など福祉目的にと、さまざまな利用方法がある。」ただ、そのためには、電波が利用できるかどうか、容易にわかる制度になっていないと、有能なメーカー、とりわけ中小、ベンチャー型企業が開発、ビジネスに乗り出しにくいというようなことが言われているわけなのですね。
 まず、電波を、だれがどのように使用しているかというのを明らかにする、これが第一歩ということで、今回法律も出てまいりました。
 その次に、先ほど触れましたように、関東地方での電波の利用状況、家に例えれば、まだまだ利用されていないところ、これをやはり利用できるようにしていくというのが次の段階ということで、そこからまた新たなビジネスが生まれてくるんだといったことだと思います。
 ただ、こういったことをやっていくためには、私は、やはり電波監理審議会のありようというのも問題かなというふうに思っております。これは昨年電波法の改正で指摘をいたしましたが、戦後、昭和二十七年から平成十二年まででありますが、異議申し立ての処理件数が二十五回、勧告を行ったのが二回ということで、公平、公正、中立な立場で電波監理審議会があるということでいうと、いささか問題ありというふうに私は考えております。
 総務大臣、今まだお帰りではないんですけれども、総務大臣には、だからこそ国家行政組織法第三条の組織にすべき、あるいはまた電監審、通信と放送の融合もありますので、電気通信審議会との融合というようなこと、あるいは、これは民主党がかねてより日本版FCCといったことも主張しているのは、そういったところでございます。
 NHKさんにおかれましても、私はやはりNHKさんが、先ほど同僚委員がガイドラインについてお話ありました。私はまた、新聞協会や民放連さんの危惧するところもわかるわけなんです。ですから、それは何かといえば、やはり公平、公正、中立な立場で電波行政を運営していただく、そういった第三者機関がきちっとあれば、NHKさんも正々堂々と経営をしていく、そういった時代になっていくのではないかな。監督官庁にある面遠慮することなく、NHKが自主的な、きちっと経営をしていくためにも、私は第三者機関のそういった公平性が必要ではないかなと思っております。
 さて、最後になりますけれども、会長には、先ほど同僚委員からアーカイブスについてのお話がございました。私も昨年、横浜の放送センターの方に行きまして、これまでのコンテンツをDVD化したり、そしてまたギガネットですか、高速通信といった形で、それを瞬時に日本国内に送っているというような話も伺っておりまして、これは、今度川口でつくりますアーカイブス、これに対する期待が非常に大きいわけでありますが、国内のさまざまな機関との連携ということも、私は大変大事かなと思っております。
 川口アーカイブスの今の進捗状況とともに、先ほど触れた横浜のセンターなど含めて、そうしたネットワーク、これについても御答弁をいただければと思います。
海老沢参考人 私どもの文化遺産といいますか映像の文化的な遺産というのは、国民に開放するといいますか社会還元するつもりで、今いろいろ諸施策を展開しているわけであります。
 今お話ありました横浜での放送番組センターによる公開ライブラリー、これにも三千本ほど提供いたしております。それから民放各社にも、U局を中心に、これまでも二万本程度、我々は提供しております。これは番組放送センターを通じての事業でありますし、それから海外には、数万本をODAの無償で提供する。
 今度は、川口のアーカイブスでは、とりあえず二千本を公開ライブラリーとして、無料でこれを見てもらうというふうにしておりますし、いろいろ著作権なりあるいは手数料等もかかるわけでありますから、その面で、これからどういうふうにそれを効果的に公開していくかというのは、いろいろ今検討しているところであります。
 いずれにしても、受信料で我々がつくった番組であります。しかし、それにはいろいろな方の協力もいただいております。いわゆる著作権もありますし、またドキュメンタリーを放送する場合にも、いろいろな方の出演協力をお願いしているわけですから、その人たちの了解も得ながら、できるだけ多くのソフトを今後とも提供してまいりたい、そう思っております。
武正委員 平成十二年度NHK予算審議では附帯決議がつけられておりまして、「アナログ周波数変更に伴う経費等については、それを最小限にするよう努めるとともに、公的支援の在り方を含め検討すること。」ということがつけられております。
 先ほど来、私が電波利用料収入について触れておりますのは、これからアナ・アナ変換で七百億が二千億になったときに、電波利用料の増額ということも出てこようかと思っております。そのときに、放送と通信ということで、また放送の独立性といったことから、割合としての適正ということを申し述べたのであって、そのときにはやはり、電波の入札制ということをある面大きくとらえていく時期にもう来ているのではないかなといったことを最後に申し述べまして、私の質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、永田寿康君。
永田委員 お疲れさまでございます。長い審議の時間で、片山総務大臣も大変、質問できるチャンスが回ってきたということで心待ちにしておったのですが、先ほど我が党の理事から説明を受けておりますので、これから二十分間は、私の質問時間は大臣には質問いたしませんので、どうぞ御自由になさっていただきたいと思います。
 さて、海老沢会長と理事の方々もたくさんいらっしゃっているので、ぜひ、先ほど来質問でたくさん話題に上っております地上波デジタル放送、これの開始時期についていろいろな話がなされておりますので、ぜひ明確にお答えをいただきたいと思います。何しろNHKというのは特殊法人で、しかも報道と言論の自由が建前になっておりますから、私ども国会議員あるいは行政府、総務省といえども、なかなか内部の情報にタッチするということは難しい組織になっています。
 そんな中で、大変気になるうわさが流れておるのを海老沢会長も御存じだと思います。すなわち、地上波デジタル放送、この開始時期が二〇〇三年というのが二〇〇五年にずらされなければならないというようなことをNHKの中で議論をし、そしてことしの一月の理事会で、NHKの意思として一つの確認をしたというようなうわさが流れておるのですが、この事実関係、海老沢会長、いかがでしょうか。
海老沢参考人 今、インターネットでそういう怪情報が流れたというのは耳にしております。
永田委員 うわさの存在自体はお認めになったようですが、理事会でそのようなお話がなされたという事実はあるのでしょうか。
海老沢参考人 理事会でそういう、二〇〇五年に延期すると決めた事実は全くありません。
永田委員 これまたうわさの話で大変恐縮なんですけれども、時にはこういうこともあるということで御容赦いただきたいですね。
 二〇〇五年に延期をしたという、理事会の決定でしたということを、その内容をインターネット上で発言をした人に対して、これは事実と異なるという理由で、NHKがその本人に対して訂正と謝罪を、NHKとしてそういう要請をしたというようなうわさが流れています。
 これは、NHKというのは言うまでもなく、報道と言論の自由という憲法の重大な規定を体現する、非常に崇高な理念を体現する組織でありますから、こうした私的な発言に対して圧力をかけるようなことがあるとすれば、これは決して小さい問題じゃないと私は思っています。
 訂正と謝罪を求めたという、このような話は事実あるのでしょうか。
海老沢参考人 インターネットに流れて、それがいろいろなところに出回っているということであります。その方は元NHKの職員というふうに私聞いておりますし、また社会的に地位もあるということで、そういう方がインターネットといえども流すということはいかがなものかということで、うちの担当役員の方から内容証明、弁護士をつけて抗議をいたしました。
永田委員 お認めいただいて、大変誠実なことだと思います。
 「地上波デジタルの断末魔」というインターネット上のメーリングリストでの発言らしいですね。「NHKは、先週の理事会で地上波デジタル放送の二〇〇三年放送開始を二〇〇五年に延期しました。」こう断定口調で書かれたメーリングリスト。これ、全くプライベートな発言だというふうに思いますが、これに対して、平成十四年二月、経済産業省官房長林殿に対して、日本放送協会理事山田勝美氏から、NHKの文書として内容証明郵便が送られています。内容は、かいつまんでお話をしますと、
 貴省が主務省である独立行政法人「経済産業研究所」の上席研究員池田信夫氏が、弊協会の
NHKですね、NHKの
 重要な事業にかかわることで、自ら加入するインターネット上のメーリングリストにおいて、事実ではないメッセージを流布されました。これに対し、誠に遺憾ながら弊協会として、池田氏に対し別紙のとおり謝罪と訂正を求めたことをご通知申し上げます。
これは、官房長あてに、経済産業省の職員池田氏に対して謝罪と訂正を求めたということをこれまた官房長にお話をする、こういう手紙ですね。
 それで、「訂正と謝罪の要請」というこの別紙の文書は、こうなっています。
  貴殿が、一月三十一日、メーリングリスト“digitalcore”上に掲載した「地上波デジタルの断末魔」と題するメッセージの中に、事実と全く異なる記述がありました。
それで、中を省略しまして、
  協会が「理事会で地上波デジタル放送の開始を二〇〇五年に延期」したという事実はありません。
  協会は地上波デジタル放送の開始延期をいかなる形でもいかなる程度でも総務省に根回しした事実はありません。
  貴殿が、権威ある経済産業研究所に所属していることを明示した上で、事実と全く異なるメッセージを発信していることは誠に遺憾です。
  そこで、貴殿に対し、(1)「協会が地上波デジタル放送の開始を二〇〇五年に延期した」と述べた根拠となる具体的な事実を示すこと。(2)もし(1)について明確な回答を示せない場合には、貴殿は社会に対して自らの発言を訂正するとともに、協会に対して謝罪することを求めます。
  上記各点について、一週間以内に貴殿が誠意ある回答をされるよう要請します。
  なお、貴殿の回答が協会として満足のいかない内容である場合、法的措置を検討することも付言しておきます。
日本放送協会、上記代理人弁護士蒲野、齋藤両名の名前が入っています。
 これは事実ですね。
山田参考人 お答え申し上げます。
 先ほどから先生が読み上げられていることについては事実であります。
 何でNHKとしてこういうことをやったかと申し上げますと、経済産業省という国の機関、その研究所の上級研究者が、インターネットの中で会員を募って、百四、五十人ですか、そこの場で、事実無根、本当に悪意に基づいた、中傷に近い、怪文書に近いような内容のものをインターネットのそういうサイトで流していいものかと。やはり、インターネットは何でも自由と言われていますけれども、事実と全然違った、でたらめな内容のことがそういうところに流れていいものかどうかということがありまして、これは断固その本人に対して謝罪を求めると。それとともに、その上級官庁の経済産業省の官房長に対して、こういう事実があるんだけれどもという文書を送ったのは事実であります。
永田委員 時間が短いので、事実かと聞かれたら、事実かそうでないかということだけお答えいただきたいと思います。
 ただ、今、理由の中でお話が幾つかありましたので、ちょっとおもしろいなと思います。
 僕は、この文書を見ましたけれども、経済産業省が、あるいは経済産業研究所が職務としてこの上級職員に、研究員に発言をさせたんだとは、私はそうはとても思えない。これは個人的な、私的な、プライベートな会話ですよ。
 それは、私は、どこへ行ったって、初めての人に話をしたり、あるいは会ったりしたとき、メールを出すときに、身分を明らかにすることはあります。そこで話したことは、別に政治家、国会議員永田寿康として話をするのではなくて、プライベートな話をすることも多々あるわけです。
 ですから、身分を明かしたからといって、それは別にその職務としてやったというふうに私は考えないし、また、そのような立場の発言について、これ、NHKが職務として、受信料収入で給料をもらっている役員たちがその職務として訂正と謝罪を求めるというのは、極めて重大な言論に対する圧力であるというふうに私は考えます。
 大体、これは本当に理事会でそのような話をされていないというならば、議事録を提出していただきたいんですけれども。ないということを証明しなければなりませんよね。これは法的措置をとるというふうに最後に書いてありますから、法的措置をとる場合には、そのような話がなされていないということを明確に証拠としてお示しする必要があります。当然その準備はなされていると思いますが、理事会の議事録の提出をお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
海老沢参考人 理事会でそういう話し合ったことはありませんので、提出いたします。おたくへ提出すればいいですか。
永田委員 総務委員会の私あてに提出をください。
 それから、これ、一週間以内に返事をしなければ法的措置も検討すると書いてあったんですが、返事はあったんでしょうか。
山田参考人 返事はございません。
永田委員 法的措置はとられるんですか。
山田参考人 検討をしております。
 それと、ちょっとつけ加えさせてほしいんですが、その研究所の上級研究員は、絶えずインターネットの中でもその研究所の名前を頭に振って、上級研究員ということでありますし、この経済産業省研究所には二十億円を超える税金も供与されている団体でありますので、全く私的な立場で彼がそういう怪情報を発信しているということはできないというふうに思います。
永田委員 しかし、通常、常識的に考えて、役人が、まあ役人あるいはみなし公務員かもしれません、こうした方が、自分の職務として自分の発言をするときに、私的な、プライベートなメーリングリストを使ってインターネットで発信するというのは、普通考えられないですよね。これはやはり私的な会話というふうに見るべきだし、また、メーリングリストといえどもこれは通信ですから、つまり手紙を出すのと同じです。ですから、その内容についてNHKがチェックをして、どこから入手したのか知りませんが、チェックをして言論を封殺するかのように圧力をかけるというのは、全くもって甚だしい権力の乱用と言うべきだというふうに思います。
 また――まだ話は終わってないんです。また、なぜこれを官房長に、経済産業省の官房長にも送付しなければならないのか。これ、全く不思議な話ですよ。個人的な話ですよ。これをどういうふうに話をしたのかということを一々官房長に告げ口をし、そして訂正と謝罪も求めたという話を官房長にするということですけれども。
 同じ構図を考えると、これ、日掛け金融とか町金の人が取り立てをするときと同じですよね。お金を貸すときは貸してくれるんですよ。だけれども、取り立てのときにお金を返してくれない。よし、じゃ、おまえの職場に殴り込んでいって上司のいる前で金返せと言ってやるぞというのと非常によく似た構図なんですよ。
 一体、NHKはいつからこんなにモラルが下がっちゃったんですか。教えてください。
海老沢参考人 我々はプライドを持って仕事をしております。
 要するに、個人で流したと言いながらも、やはり元我々の同僚であります。それがどうしてそういうでたらめなことを言うのか、私は非常に理解に苦しむ。そういうことで抗議をしたわけであります。
永田委員 この問題、基本的には、僕は、理事会でちゃんとお話があった。その結果、それを今度はなかったことにしたんだけれども、議事録からも削除もしたんだけれども、それが漏れて、お話がされちゃった。まあ真実だったから、図星に当たったから痛かったんだなと。これは、過剰反応の原因はそういうふうに推察をするのが合理的ではないのかなという印象があるということを、ここで一つ述べておきたいと思います。
 さらに、さっき山田理事から、悪意を持って、誹謗中傷のような言論をされておるというお話でしたが、僕は、普通の一般人が、はっきり言って、地上波のデジタル化に対して悪意を持つということが、それは、ちょっと疑問符をつけて、これは本当に必要な政策なのというようなことはあったにしても、悪意を持つということはないんじゃないのかなというふうに思うんですよ。
 じゃ、どういうような悪意を感じたのかというと、やはり、これは経済産業省と総務省のバトルというか、つまり通信と放送のバトルですね。このまま放置をしておくと、通信の、インターネットとかどんどん大きくなっていっちゃって、そっちで立派なコンテンツがブロードバンドでばんばん流れるようになっちゃって、放送なんて要らなくなっちゃう。今ここでやらなければどうにもならないんだ、そのような意識が裏にあって、これはひとつ代理戦争でもやろうか、そういうような印象が私はあるんですが、どのような悪意をお感じになったのか、教えていただきたいと思います。
山田参考人 先生、先ほどその方のことをいわゆる一般人と言われたけれども、その人は、ほかの場所でも、それこそNHK、総務省が、事実であればびっくりするような発言をしております。それが事実であれば甘んじて受けますけれども、事実でないことを経産省の上級研究員がいろいろな、インターネットだけじゃなくてほかのところにもそれに似たようなことを言っているということでありまして、これは、インターネットの言論の自由、そういうのは僕らも十分わきまえているつもりでありますけれども、これだけは許せないという気持ちでいろいろな行動を起こしたわけであります。
永田委員 インターネットをお調べになれば、ネット上で皆さんが許せないというような発言は幾らでもあると思うので、ぜひ、それについてもお調べになった方がよろしいんじゃないかなというふうに思っております。
 さて、もう時間があと二分しかないので、一つお話をしておきますが、子会社の経営、大変問題があります。
 子会社を使って本体の業務をスリム化して、そして経営を効率化するのは、確かに国会の議論にありました。
 しかし、調べてみると、子会社の役員八割方、NHKの関係者じゃないですか。NHKのOBあるいはNHKの現職の職員まで入っている。事実上、経営を支配している環境にあるわけですよ。こんなところで経営を行っても、とてもとても、NHK本体と一体であるというふうにみなさざるを得ないわけですから、経営の効率化なんて期待できないと思いますけれども、どうしてこういうことになっちゃっているんですか。
 要するに、経営権の八割を握っているということは、事実上、支配しているのと同じです。そんなところで、子会社に利益をつけかえる。要するに、受信料収入から契約をしているわけですから、そこで子会社に利益をつけかえ、天下りの職員の給料を養っている、こういうようなことを指摘されておるわけですけれども、国会の意思として子会社を使っているんだと言いますが、役員の八割をNHK関係者が占めるということは、国会の意思であったとはとても私は思えません。
 なぜ、このような脱法行為が行われているのか。こういう子会社を利用して肥大化しておるということを指摘されておるわけですが、なぜこのような悪用をしておるのか、教えてください。
海老沢参考人 私どもは、この会社については、株式会社でありますから、当然、商法に基づいて適切な手続をしてつくった会社であります。ですから、子会社でありますから、当然、NHKの関係者が多いのは社会の常識だと思いますよ。
永田委員 これでもう質疑時間が終わったので最後にしますが、先日、民主党の総務部会で、海老沢会長に私、同じ質問をしました。そうしたら、適切な商行為を子会社が行っていると考えるというふうにおっしゃいました。
 しかし、子会社とはいえ取引相手ですよ。取引相手が必要以上の利益を得て、そこで職員の給料を賄っているという指摘に対して、会長がどうして適切な商行為であると弁護する必要があるのか。取引相手が必要以上にもうけているという指摘に対して、適切な商行為であるとNHK側が弁護する理由は全くないわけですよ。おまけに……
平林委員長 永田君に申し上げます。質疑時間が終了しておりますので、簡潔に終わってください。
永田委員 わかりました。
 というわけで、子会社の経営について、今、さらに、この間NHKの職員の方が御説明にいらしたときにも、外部監査を入れているという話がありました。
 外部監査をするというのは、それは監査法人が満足をすることであって、あるいは、NHKが適切な商行為であると認めることはNHKが満足することであって、僕らにはそんなことは関係ないんです。興味があるのは、国民が満足するかどうか、国民が満足する経営をNHKと子会社が行っているかどうか。それをチェックしなければならないのであって、それをチェックするのは、国民の代表、利益を代表する、意見を代表する国会議員であると私は強く確信をしております。
 ですから、監査法人を入れたからといって、それは経営が効率的にいっているという理由ではありません。単なる言いわけです。
平林委員長 永田君、質問時間が終了しております。質問を終わらせてください。
永田委員 ですから、そのような言いわけを私たちは許しませんので、ぜひ今後の経営の効率化を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。がらっと雰囲気を変えまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。
 まず、通信と放送の融合問題から、若干私自身の整理も含めてちょっと御質問をさせていただきたいと思います。
 そもそも放送というのは、放送法の第二条にありますように、公衆によって直接受信される無線通信の送信、こういうふうに定義づけがされております。すなわち、放送というのは、不特定多数の大衆を対象にいたしまして、電波によって直接一般家庭等に送られる電気通信の一形態、こういうことであるようです。すなわち、放送は一対n、大多数を対象にしたマスメディア、それに対して、通信は一対一、特定の相手を対象にしたいわばパーソナリティーなメディア、こういうふうにまず整理ができるのではないかと思っております。
 ところが、最近、その立て分けがだんだん変化をしてまいりまして、特に放送のデジタル化と通信のブロードバンド化によりまして、放送・通信の世界は、従来の枠組みでは割り切れない、とらえ切れない、こういう状況になっていると思っております。
 例えば、WOWOWの場合あるいはスカパーなどの有料放送というのは、有料契約を結んでいる特定の世帯のテレビにしか放送されない。すなわち、放送であるけれども、一対nではなくて一対一になっておるわけであります。今後登場するであろうハードディスク向けの蓄積型放送サービス、こういったものも、視聴者からのリクエストに応じて、オンディマンド、音声や画像の提供でコンテンツを配信する。これもまた一対一という形になるわけであります。
 このように、放送技術の進展、デジタル化によりまして、公衆を対象にした一方向の放送から、限定性を有する放送へ向かおう、このようにしていると認識をしております。
 一方、通信の世界も、ブロードバンド化によりましてライブ中継ができたり、IPマルチキャストといいますか、こういった、受信者の制約なく、テレビ放送と変わらない規模で動画サービスを提供できる。すなわち、本来の一対一から一対nに近づいている。双方がそういう形でお互いの、垣根を乗り越えるという表現がいいかどうかわかりませんけれども、インターネット放送と言われる言葉もあるように、近づいてきておるわけです。
 そこで、このように放送と通信の融合、こういう時代の変化を今後どのようにとらえてNHKとして対応をされようとしているのか、まず海老沢会長にお伺いをしたいと思います。
海老沢参考人 今先生が御指摘なさったように、放送と通信の垣根が今だんだん低くなってきております。これは、デジタル技術、インターネットの普及に伴ってきたわけであります。
 私は、放送と通信は、やはりそれぞれの特性といいますか、メディアもそうですけれども、新聞もラジオもテレビもインターネットも、そしていろいろな通信も、それぞれのやはり歴史的背景、また特性があって発展してきたものだと思います。
 そういう面で、技術の開発によって、融合するといいますか垣根が低くなってくる、そういう時代になってきた。ですから、融合しても、それぞれの特性があるわけであって、私は、それぞれのメディアがやはりそれぞれの特性を生かしながら、融合した分といいますか、補完し合うものは補完し合いながらすみ分けをして、さらに発展していくだろうと思っております。ですから、一つのメディアがほかをすべてのみ込んでしまうというのではなくて、やはりそれぞれの特性をさらに伸ばしながら、すみ分けしながら共存していくだろう、そういうふうに感じております。
 今後、ブロードバンドで、IDSLとかファイバー・ツー・ザ・ホームとかいろいろ出てきます。光ファイバーなんかもその一つです。そういう中で、私が最近聞いているところでは、一本の光ファイバーに複数の、二つの色の光を多重させるといいますか、その技術を使って、異なった波長の光を多重することによって、放送と通信を別々の光で送ることによって、放送・通信が両方流れていく。そうしますと、放送の方も、そういう光ファイバーを使っての、ハイビジョンなら百チャンネル以上のチャンネルができる、また、通信は双方向の通信が自由にできる、そういう時代がもう目の前に来ているのではなかろうか。そういう時代を視野に入れながら、また、いろいろな面で新しいことを考えていかなきゃならぬだろう。
 ですから、やはり技術の進歩は非常に速いものですから、そういう面で、今のブロードバンド時代における放送のあり方をいろいろ我々は勉強しておりますけれども、さらに次の世代も考えなきゃならぬだろう、そう思っております。
山名委員 NHKの立場としてはそういうことで、お互いの領域を守りながら共生をしたい、より発展をしたい、こういうことだと思いますが、二〇〇一年三月に発表された「IT時代のNHKビジョン」というのがございまして、その中に、これからのNHKのあり方として、放送のデジタル化、あるいは地上デジタル放送、それから放送を補完する手段としてのインターネットの活用、こういったことが将来ビジョンとして掲げられておりまして、そういう方向に今向かっているわけであります。
 ところが、一方で、こういう新しいメディア領域への進出に対しては、御承知のように、これは業務範囲の拡大ではないか、NHKの肥大化ではないか、こういう民業圧迫という観点からの声も、批判も、反発も出ている、これは認識されているとおりでございます。
 ところで、NHKの場合は、放送法によっていわゆる業務範囲が限定、規定をされておりまして、新しい業務を行う場合は放送法を改正しなければならないわけであります。このネット通信というのは本来の業務範囲を超えたものじゃないか、放送には当たらないんじゃないか、こういう批判が一方であるところでありまして、これについては、さきのガイドライン等にもありますけれども、総務省としてどのような見解に立たれているのか、総務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 もう既に御答弁申し上げましたが、NHKの良質のコンテンツをインターネットを利用して情報提供することは社会的に大変意味があることだ、こういうふうに我々は考えています。
 ただ、いろいろな御意見がございますので、当面、本来事業である放送の補完、いわゆる附帯業務として位置づけて、民間との調和ある事業展開にも配慮しつつやっていただく。そのために、ガイドラインというものをつくりまして一定のルールを整理いたしたわけでございまして、あとは状況の推移を見ながら我々も新しい展開は考えてまいりたい、こういうふうに思っておりますし、ガイドラインもこれは不変のものじゃありませんで、今後とも必要に応じて見直していきたい、こう思っております。
山名委員 そこで、NHKの存在というのを改めて考えてみますと、先ほども出ましたように、まさに今話題の特殊法人の一つでもございますし、何よりも、全国放送を行う唯一の放送事業体であります。そして、広くあまねく放送することが義務づけられている、これは民放と大きく違うわけであります。
 そして、NHKは、民放が原則として県域を基本単位としておりまして地域放送事業体であるのに対しまして、先ほど申しましたように、全国を一つの事業体としてカバーするのがNHK、こういうことでございます。要するに、民放は、それぞれのキー局から、全国各県域のいわゆる○○テレビ系列、こういったものを設けて、そこで受けながら各ローカル局とのネットワークで結んで放映している。そういう意味で、全国放送であるけれども、流れがNHKとはいささか違うわけです。
 とともに、NHKの場合は、国民から受信料を徴収いたしまして、それを財源としている公共放送である、こういうNHKの特徴もございます。そういう公共的な意味合いを踏まえて、いわゆる放送法によって、営利を目的とする業務は禁止されているし、広告放送も禁止をされている。
 一方、民放には、マスメディア集中排除原則、こういうものがございまして、一事業者の独占的な支配とならないような規制、地上波でいえば、二局以上を所有、運営してはならないとか、いろいろと、いわゆるマスメディア集中排除原則というのをつくっておるようでありまして、NHKはその排除原則から対象外になっている、こういうことであります。
 私は、今後、共生社会じゃないですけれども、民放とNHKのいわばお互いの共生の中で、民放に対する排除原則、こういったものを取り去る方向で検討してはいかがなものか、こういうふうに考えておりますが、総務大臣の御見解はいかがでしょうか。
片山国務大臣 この集中排除原則につきましても、いろいろな意見があるんですね。そこで、これを大幅に直すべきではないかという意見も確かにありまして、今度の、例の放送政策研究会でこれを少し議論していただこうか、こういうふうに考えておりまして、その検討の結果を待って我々としては対応いたしたい、こういうふうに思っております。
山名委員 次に、NHKのインターネット利用につきまして、種々論議があったところでございますが、今後、NHKの特殊性といいますか公共性にかんがみまして、インターネット活用についても特別な役割というものがNHKには与えられているのではないか、こういうふうに思っております。特に教育番組とインターネットを組み合わせた、いわゆる小中学校の教室向けの新しい教育番組といいますか、そういうサービス実験を今NHKとしてはやっている、こういうふうに聞いております。
 これから学校では、まさにテレビとビデオ、そしてパソコン、こういう幅広い情報提供といいますか教育機会がふえるわけでありまして、そういう意味では、教育現場も大いに期待をしていると認識しているところであります。特に、この四月から、新学習指導要領によりまして、総合的な学習の時間、こういったものが始まるわけでありますけれども、今後、NHKとして、どのように教育番組とインターネットの活用を考えているのか。
 あわせて、教育番組というのは、民放と比べれば抜群にNHKの占めるシェアも広いし、内容も充実しているし、まさに国民的な大きな期待を背負っていると私は思っております。それに加えて、今度のガイドラインにもありますけれども、やはりNHKの持つ新たなコンテンツを含めまして、いわゆる介護や医療、そういう福祉分野とともに、公共放送としての役割をインターネットという世界でも十分果たせるような、こういう取り組みが今後とも必要になってくると思いますので、教育番組の取り組みとともに、この辺の御見解、取り組みの決意についてお伺いしたいと思います。
板谷参考人 先生おっしゃるように、学校放送番組の教育効果を上げるためにインターネットを有効に使いたいなと思っております。放送番組で見るだけじゃなくて、インターネットでいつでも子供たちが見られる。それからさらに、動画の、二分ぐらいのいろいろなセグメントをつくってあって、子供たちがもうちょっと勉強したいなというときにそのセグメントを見る、そして学習効果が上がるとか、そういう形で有効にインターネットを使いたいなと。
 それから、福祉番組も同様でございます。「きらっといきる」という番組がありますが、介護の仕方とか手話の話とか、そういうものをインターネットで紹介したりしながら、御指摘のように、公共放送としての使命を果たしていきたいというふうに思っております。
山名委員 もう時間がありませんので、最後に若干要望だけして終わります。
 NHKが保有する、まさに良質な番組のストックがあると思います。NHKアーカイブス、先ほど出ましたけれども、そういったものを含めて、そういうストックに対して、これからブロードバンドなどで広く公開をする、どんどん提供していただく、こういうことをぜひお願いをしたいと思います。やはりこの業界といいますか、民放や通信、このそれぞれの事業体との競合の部分もあると思いますが、要はそれはその業界の中の論理でありまして、やはり国民視聴者、こういう立場に立って、NHKの立場としても視聴者の立場に立っての取り組みをこれからもぜひお願いをしたいし、とりわけ青少年育成のためにNHKの果たす役割は今後とも大きいと思いますので、一層の御奮闘を心からお願いを申し上げまして、また要望いたしまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 どうも皆様御苦労さまでございます。公明党の遠藤です。
 NHKの情報公開のあり方につきまして、最初に質問をさせていただきたいと思います。
 NHKは特殊法人です。しかし、特殊法人等情報公開法の対象外にされたわけでございます。これは何でそうなったのか。私、何回か答弁したことがあるんですけれども、改めて確認をさせていただきます。
若松副大臣 NHKの役割は、放送法においてでありますが、一般放送事業者の放送と同様に、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」これは当然といたしまして、特にNHKの放送につきましては、受信者からの契約による受信料の収入により維持することとされておりまして、さらに、政府の諸活動としての放送を行わせるために設立された法人ではない、このような形で理解されておりますので、NHKは、より行政の一部である独立行政法人等情報公開法の対象にはしない、このようにいたしたところでございます。
 ただし、受信者に対する説明責任は当然要請されるところとなっておりますので、特殊法人情報公開検討委員会の意見もいただいて、NHK独自の情報公開の仕組みが整備され、昨年七月から運用が開始されたところであります。
 今後とも、総務省といたしましては、この仕組みが的確に運用されて、視聴者の要望にこたえるべく、NHKの視聴者に対する説明責任がしっかり全うされることを期待している次第でございます。
遠藤(和)委員 つまり、NHKは行政機関じゃなくて言論報道機関である、したがって国の法律の対象にはしないけれども、NHKの財政そのものが国民の皆さんの受信料によってそれは賄われているんだから、財政の支出等について国民の皆さんに対する重い説明責任がある、したがって、みずから判断をして、国の法律に準じてと申しますか、国の法律以上に丁寧に説明を、情報公開していくべきだ、こういうふうな考え方だと思います。
 そこで、NHKに聞きたいんですが、具体的にみずからの意思としてどういうふうに情報公開し、具体的にどんな情報公開の件数が上がりましたでしょうか。それについて御報告ください。
山田参考人 先生御指摘のような経過をたどって、結局、情報公開制度としては日本のマスコミ界のトップを切って、NHKが去年の七月、これまでの情報提供の仕組みに加えて、自主的に、視聴者一人一人の求めに応じてNHKが保有している文書を開示していく仕組みをスタートさせました。NHKの放送の視聴者であれば、受信料を払っても払っていなくても、視聴者であればどなたでも開示を求めることができることになっています。
 この仕組みの基本的な部分は国の制度とほぼ同様なものになっておりますけれども、NHKが報道機関であるということから、幾つかの特色があります。
 まず、放送番組の編集の自由を確保ということで、放送番組や放送関係の文書を開示の求めの対象外としております。対象外としたものについても、可能な範囲で関係する情報を提供していくということにしております。
 次に、NHKの部分開示、不開示の判断に対しましては再検討の求めができるということになっておりまして、再検討の求めが出された場合には、第三者機関のNHK情報公開審議委員会というのを設置しておりまして、この委員会の意見を求める仕組みになっております。委員会は、すぐれた識見を有し、公正な判断ができる外部の有識者の方で構成されておりまして、客観的、中立的な立場からNHKに対して意見を述べる。NHKは、その意見を尊重して再検討の求めに対する最終判断を行うという仕組みになっております。
 それで、スタートから今月の十五日までに、本部、全国の放送局において、直接来局されたのも含めて、来局と郵送を合わせて四十八人の視聴者から八十一件の情報公開の求めがありました。このうち、窓口対応によって情報提供で対応したものが三十二件、残り二十五人の視聴者の方から四十九件の情報開示の求めというのが出されて、これを受け付けました。これまでのところ、制度の趣旨にのっとって適切な運営が行われているというふうに考えております。
 以上でございます。
遠藤(和)委員 地上波のデジタル放送について聞きたいんですけれども、この大前提のアナ・アナ変換の対象世帯が、見込みからかなり違ってふえた、こういうふうな事態が起こりまして、これは時間的に、当初の計画がそのとおりできるのかなという懸念が大変広がっているわけですけれども、二〇〇三年に三大広域圏、二〇一一年に日本全国でやる、そしてアナログ放送は完全にしない、こういうふうな当初の方針をそのまま実行するためには、やはりNHKがその先頭を切るぐらいの迫力でこの推進を図っていかなければなかなか難しいのではないかと私は思います。
 したがいまして、例えば民放と一緒に共同で中継アンテナをつくっていくとか、いろいろな、放送業界全体を巻き込んでデジタル化を推進していくという情熱、そういうものがなければ、なかなか当初のスケジュールで目的を完遂するのは難しい状況になっているんじゃないかと観測をするわけですが、その辺の腹構えについてお聞きしたいと思います。
海老沢参考人 先ほどから御指摘がありますように、アナログ周波数の変更対策に今手間取っております。
 今、総務省、民放、NHKの三者による全国デジタル放送普及促進の協議会が一体となって最終的な詰めをしております。六月の末に、どれだけの影響があるのか、またどれだけの金がかかるのかということを算出する、積算する予定になっております。そして、七月の初めにはきちっとした形で公表できるだろうというふうに今作業を急いでいるところであります。
 私どもは、そのきちっとした積算、数字というものを見た上で最終的には決めなきゃならぬと思いますけれども、今のところ、この三者の間では二〇〇三年の末から放送を始めるということで、その方針をまだ変えていないということであります。
 いずれにしても、このアナ・アナ変換の作業がおくれることは事実でありますので、我々は、やはり二〇〇三年中を目指して、そういう結果が出次第、総力を挙げて、まなじりを決してやっていかなければ大変だ、そういう認識を持っております。
遠藤(和)委員 それから、NHKのインターネット利用のガイドラインについてちょっと確認をしたいのです。
 そもそもガイドラインをつくるということ自体が言論報道機関に対する行政の介入につながりかねない、そういう意見もあったやに伺っています。あるいは、ブロードバンド時代を考えると、そういうことは基本的に自由にすべきであって、一々ガイドラインをつくってやるというのはいかがなものか、もっと民放もNHKも大きな気持ちで、国民全体の利便に供するようにこうしたことは考えるべきではないのか、こういうふうな考え方もあると思いますけれども、この今のガイドラインについて、NHKの皆さんはどういうふうに受けとめているのですか。
山田参考人 このガイドラインの策定に際しまして、総務省がパブリックコメントを行ったわけですけれども、その中で、言論報道への行政の不当介入を懸念する意見も一部寄せられましたけれども、これに対して総務省は、ガイドラインはあくまでも条文の解釈指針であり、新たな規制を設けるものではなく、かつ提供する情報の内容そのものに関する規制でもないというふうに答えております。
 NHKとしては、現状の通信環境のもとでは、当面、放送の補完としてインターネットを活用していくということにしておりまして、このガイドラインに沿って工夫を重ねることで、当面は国民視聴者の要望にこたえていけるんじゃないかというふうに考えております。
 ただし、インターネットの分野はブロードバンド化の進展など変化が激しいということで、将来を見通してあらかじめその対応を決めておくということは非常に難しいわけでありまして、総務省の実施した意見募集を拝見しても、この分野についてNHKに対する期待が極めて大きいということを痛感しましたので、総務省のガイドラインを尊重しながら、今後の技術動向なども踏まえて、必要に応じて適宜見直しをしていったらどうかなというふうに考えております。
遠藤(和)委員 それから、これからデジタル化が進んで、衛星放送もだんだんふえると多チャンネルの時代になるわけですけれども、放送局がいっぱいできても、何を放送したらいいのかというコンテンツの問題が最大の問題だと思います。
 そうすると、NHKが持っているコンテンツをデジタル化いたしまして、これを民放も自由に活用ができる、コンテンツバンクと言ったらいいんでしょうか、そうしたものをつくり出さないと、日本は、多チャンネル化したけれども、どこの放送を見ても外国のテレビばかりやっている、こういうふうになるとまさに情けない状態でございまして、NHKの持っているコンテンツのデジタル化そして著作権の処理、そして、今後契約する場合は、二次使用とか三次使用を前提にした契約の仕方等も考えて、NHKがつくったコンテンツが放送界全体の共有財産として活用できる仕組みをつくっていかないといけない、このような認識を持っておりますが、そうした準備はしているのでしょうか。
平林委員長 板谷専務理事、簡潔に答弁してください。
板谷参考人 民放には相当いろいろな形で提供しています。素材であったり、番組であったりして、あとは百十度のCSなんかができたときも、CSの方にも番組を提供するということを考えております。
 ただ、やはり権料の問題がありまして、著作権料をクリアしなければ、相当NHKも負担しなくちゃならないので、有償ということを原則にしながら協力していきたいというふうに思っております。
遠藤(和)委員 では、最後に一つだけ。
 NHKが創設した日本賞というものがあります。これは、一九六五年に国際的な教育番組の国際コンクールをつくって、世界じゅうからすぐれた教育番組を日本へ紹介して、それに日本賞を差し上げたと。私も昨年の授賞式に出席をさせていただいたのですけれども、こうした教育番組のソフトを、やはり世界じゅうでNHKが中心になって流通させていく。世界の番組を日本でも放映するし、日本の番組も世界に交流を進めていく、こういうものは大変大事だと思うのですね。ライブラリーをつくったり、あるいは日本の中でも、NHKだけじゃなくて、いろいろな媒体でそうしたものが活用できるようにこうしたものを積極的に進めてもらいたいと思いますが、その御決意を聞きまして、最後の質問にさせていただきます。
海老沢参考人 日本賞は、NHKが呼びかけて創設したものでございまして、今、国際的な教育番組コンクールとしては最も世界から注目されているものであります。そういうことで、私ども、できるだけ世界の多くの方々に見てもらいたいということで、今世界の十四カ国にそういう日本賞のライブラリーということで、十四カ国にライブラリーをつくってそこにすべての番組を提供しております。ですから、各国の教育関係者、学校関係の方はそれを見ていろいろ勉強してもらっているというのが実態でございます。
 今後とも、私ども、毎年これを続けて、いろいろな面で教育番組の各国の提携といいますか、いろいろな共同制作なりあるいは交流を深めながら、世界的に子供たちに役立つようないい番組をつくるようにさらに努力していきたいと思っております。
遠藤(和)委員 終わります。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。これまでの質疑で重複するところもあると思いますけれども、改めてお尋ねいたしますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 さて、放送業界は、まさに大きな変革期を迎えていると思っております。東経百十度のCS放送もこの三月一日に始まったばかりでありますけれども、デジタル化、多チャンネル化、そして放送・通信業界の競争の激化という大きな変化の真っただ中であります。まさにブロードバンド・インターネットなどIT技術の急速な進展によるいわゆる放送と通信の融合が進展する中、これまでの情報通信分野の基本制度を見直すべきではないかという議論も起きております。
 それゆえ、国民から受信料をいただき、公共放送の大役を担うNHKには、この変革期に大きな責務があると考えております。というのも、多チャンネル、そして放送と通信の融合の時代には、この基本政策を誤ると、国民に送り届ける情報でありますけれども、これが安かろうあるいは悪かろうというふうな形になるおそれがあるからであります。それだけに、私は、この公共放送が国民の求める質の高いニュースや番組を積極的に送り届けることにおきまして、NHKこそ主導的役割を果たすべきものだと思っております。
 不易流行という言葉があります。御案内のとおり、俳人の松尾芭蕉が、奥の細道の旅の体験を通じて深めた考え方であります。新しさを求めて絶えず変化する流行性にこそ永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根源において一つであるという意味であります。
 変革期の放送業界にあって、NHKは新たな公共放送へと自己革新する、これが求められております。しかしながら、この不易流行の考えに倣えば、NHKには、経営改革や技術開発などの自己革新とともに、国民生活を豊かにし民主主義の発展に寄与するという公共放送の変わらない役割も、また肝に銘じてほしいと思っております。
 公共放送NHKへの期待をまず表明した上で、さらなる自己革新を求めるという観点から、やや注文もありますけれども、質問を行いたいと思います。
 まずもって、海外取材体制の強化と緊急報道の充実についてお尋ねいたしたいと思います。
 昨年の夏、当委員会の米国情報通信等の視察の際に、ちょうど八月二十九日、ニューヨークのNHKアメリカ総局を訪問いたしました。私たちがいつも茶の間で見る米国についてのニュースが、意外と小規模な施設で効率よく放映されているということを実感したわけであります。驚いたわけであります。窓の外にそびえ立つ二本の世界貿易センタービル、本当に仰ぎ見ましたけれども、その直後の九月十一日、あのような無残な姿に変わり果てようとは、本当に言葉にあらわしようがない衝撃と憤りを覚えたわけであります。
 さて、このようなテロの惨劇を見るにつけ、来年度の事業計画において、海外取材体制を強化し、緊急報道を充実させること、これは喫緊の課題であると思っております。そこで、国際化が進む中、NHKはどのような業務分野でどのような協力関係を海外で締結していく考えか。そしてまた、みずからの取材体制の充実も含めお伺いしたいと思います。
海老沢参考人 今、世界の情勢は非常に複雑化といいますか、変化に富んでいるわけであります。そういう面で、いつ、何が、どこで起こるかわからないような、非常に緊迫した場面も時々拝見するわけであります。
 地球がだんだん狭くなり、また、二十一世紀は文明間の対話と共存ということが言われております。そういう面で、我々放送の果たす役割も大きいわけでありますから、日本一国だけでなくて世界のあらゆる国から情報を入手し、それを的確に、日本だけでなくて世界にも、我々は公平に発信していく使命があるだろうと思っております。そういう面で、九・一一事件以来、改めて海外の取材体制の強化、あるいは海外の各放送機関との提携を進めていかなければならないということを痛感いたしました。
 私ども、今、世界の三十の都市に支局を置いております。六十数名の体制でやっておるわけでありますけれども、そのほかに、世界の主な都市、今二十二の都市にストリンガーといいますか情報提供者、これには簡易のビデオテープ、ビデオカメラなども一緒に配付して、何かあったら第一報を送ってほしい、そういうストリンガーを置いております。それと同時に、アメリカのABCあるいはイギリスのBBC、CNN等とも、番組の、ニュースの買い入れ、交換あるいは協力協定を結んで、いろいろな面での協力関係を今築いております。
 そういう面で、どこで何が起こっても一応ニュースが入るような体制ができておりますけれども、さらに今問題は、いわゆるシルクロードの地域、アフガニスタンから中近東にかけての地域の取材強化を図っているところであります。そういう面で、私どももこれまでも、中近東あるいは中央アジア、この辺が非常に空白状態にありましたものですから、そういう面にも取材班を送って、いろいろな面でコンタクトをとってきましたために、この前のカブールでの取材も順調に進んだという経験を持っております。
 いずれにしても、世界のどこからニュースが入ってきても、体制ができるように、そういうことでさらに強化していきたいと思っております。
黄川田委員 国際化の中で、私たちの生活は世界の動きから切り離して考えることはできないと思っております。そこで、世界の出来事を正確に、また迅速に視聴者国民に届けられるように、世界各国の放送機関との連携を引き続きお願いしたいと思っております。そしてまた、我が国の実情も十二分に世界に伝えていただきたいと思っております。
 次に、さまざまこれまで議論されておりますけれども、地上波デジタル放送のトラブル解決策についてお尋ねいたしたいと思っております。
 BSデジタル放送は、一昨年十二月、千日で一千万台普及するとの予測のもとでスタートいたしましたけれども、現在約二百四十万台と二分の一強の普及にとどまっております。一方、地上デジタル放送については、これまで、総務省、NHK、そして民放の三者が共同して検討を重ねてこられましたけれども、いよいよ来年二〇〇三年から、東京、名古屋、大阪の三大都市圏で開始される予定となっております。
 先日の一般質疑の際、私は開始スケジュールを懸念し質問いたしましたが、総務省は、まだ解決すべき問題が多いが、スケジュールどおり間に合う、そういう答弁でありました。しかしながら、三月十七日の新聞報道によりますと、総務省は、周波数変更の対象世帯数が予想より多く、三大都市圏の一部地域で開始がおくれるとの見通しを明らかにいたしました。
 そこで、この放送開始のスケジュールの本音は一体全体どうなっておるのでしょうか。そしてまた、国の財政事情が厳しい折、いわゆるアナ・アナ変換等で事業費が計画よりふえた分は、放送事業者側でも応分の負担をすべきではないかと思いますが、総務大臣の見解はいかがでしょうか。あわせて、地上デジタル放送の開始に向けたNHKの準備状況、これまで答弁されておりますけれども、なお具体的にどのような進展状況か、お伺いいたします。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
片山国務大臣 アナ・アナ変換問題につきましてのお尋ねでございます。
 もう何度もお答えしておりますように、当初我々が考えていましたよりは電波状況が、幾つかの地域で大変混信、複雑でございまして、そのために、現在再調査、詳細調査を行っている段階でございます。
 ただ、行っておりますけれども、二〇〇三年から三大都市圏で開始をする、二〇〇六年からその他の地域で開始をするということをおくらせるつもりは全くありません。ただ、やり方を、例えば開始時にエリアや周波数の出し方等に混信の生じない工夫を加えるといったようなことを現在検討いたしておりまして、そういう変更はいたしますけれども、開始時期をおくらせるとかスケジュールを変える、こういうことは現在考えておりませんで、NHKや民放連とも、その実現に向けて現在いろいろ具体的な検討をしております。中央でもやっておりますけれども、三十二のブロックに、地域に分けまして、そこで現場でもやっているのです。そういうことで着実な具体化の検討を進めてまいりたい、こう思っております。
 それで、経費はどうなるのか、一部報道では相当ふえるという報道がありますけれども、まだきっちり詰めた数字は出ておりませんので、七月ごろまでには経費を詰めたい、こういうように考えております。今、経費の、国が持つ分、事業者に持ってもらう分等については一応のルールをつくっておりますから、それを変更するつもりは特に今のところはございませんが、できるだけ経費は切り詰めたい。ふえるという報道でございますけれども、できるだけこれは切り詰めたい、こういうふうに考えております。そこで、国の出し分がふえるとすれば、電波利用料等についてどう考えるかと。電波利用料で出すということに電波法の改正をいたしたわけでありますから、その辺も含めて今後検討いたしたい、こういうふうに思っております。
中村参考人 お答えいたします。
 地上デジタル放送の開始に向けまして、NHKは、平成十四年度の予算につきましては、送信設備と送出設備の整備に必要な経費百九十三億を計上しております。そのうち、送信の設備の経費が四十億円、送出設備の経費が百五十三億円でございます。
 送信設備につきましては、東京は、在京民放五社と共同で東京タワーの地上デジタル放送用アンテナの製作及び工事を開始しております。名古屋につきましては、瀬戸市幡中の地域に民放五社とタワーを共同建設するということといたしまして、具体的な設計に着手しております。大阪は、既存のアナログ放送用の鉄塔とか局舎が使用可能でございますので、デジタル放送用設備を併設するという準備を進めております。
 また、東京、大阪、名古屋の送出設備につきましては、設備の設計につきまして今鋭意取り進めているという段階でございます。
黄川田委員 基本的にこの対策費の財源は電波利用料でありますけれども、この事業費は、先ほどからお話があるとおり、当初見込みの三倍に達するということになっております。
 そこで、二〇〇三年にスタートするということでございますけれども、それでは改めて、二〇〇六年の全国展開、この計画に変更はないか、お伺いいたします。
片山国務大臣 開始するんですよ。完了するのは二〇一一年ですよ。開始を三大都市圏で始めてもらう、二〇〇六年からその他の地域でも始めてもらう、完了は二〇一一年、こういうことでございます。
 経費が二千億というのが伝えられております。どこかが書いたものですから。それは、二千億ということではないかもしれませんよ。私は、もっと切り詰めてほしい、こういうことを言っておりますから、いろいろな、セットトップボックス方式を導入するなり、経費は縮減する、こういう方向で今検討しております。
黄川田委員 それでは次に、経営改革と合理化問題についてお尋ねいたしたいと思います。
 昨今の厳しい経済状況下でありまして、民間企業は、強い決意のもとに構造改革を行うなど、経営効率の改善に向けた不断の改革を進めております。
 そこで、公共放送のNHKにおいても、視聴者の一層の理解と協力が得られるよう、経営全般にわたる抜本的な見直しに取り組み、業務運営の効率化に努めるべきであると思っておりますけれども、ここ数年どのような改革を行ってきたか、またその概要と削減効果はどうか、あわせてお尋ねいたします。
海老沢参考人 私、平成九年に会長に就任して以来、改革と実行、公開と参加という二つの経営理念を掲げて、まず自己改革、構造改革を進めようということでやってまいりました。
 一つは、経費の節減であります。コストの削減ということで、毎年百億以上の削減策を行って、この十四年度の予算では百七億の削減を見込んでおります。そうしますと、平成九年から十四年で今のところ七百億以上の削減になる予定、経費の節減をすることになります。順調に経費節減の方は予定を上回るペースで進んでおります。
 それと同時に、昭和五十四年に一万六千九百人いた職員を、現在は一万二千数百人、一万二千ちょっとに十四年度末にはなります。毎年百九十人ないし二百人の削減をしてまいっております。ただ、余りにこれを削減するとこれからの番組制作に支障を来すおそれがありますので、この人員の削減については、これからもう一度検討するつもりでおりますが、いずれにしても、今一万二千人体制に到達したということでございます。
 そういうことで、着々と効果が上がってきております。
 ただ、そういう中で、やはり我々は、技術の新しい開発をしなきゃなりませんし、また番組についても質の高いものをつくっていかなきゃなりません。そういう面で、今、職員の育成といいますか、やはり我々の仕事は専門性が豊かで個性を持った人材を育成しなければいいものはできませんので、人材の育成に力を注いでいるところでございます。
黄川田委員 それから、受信料についてお聞きしたいと思います。
 先ほど田並委員からもお話がありましたけれども、物価が下落している、下落する中で受信料の据え置きは実質値上げではないかと。それから公共料金も、電力あるいはまた通信業界の値下げとかいろいろ動きがある。こういう中で、改めて受信料の値下げについて、その見解をお聞きいたしたいと思います。
海老沢参考人 私ども、こういうデフレの中で消費者物価が減ってきている、そういう事実は十分認識しておりますが、番組制作を中心とする放送事業というのは、普通の消費者物価と違って、いろいろな面で違った要素があります。
 その一つは、先ほども御答弁申し上げましたように、オリンピックなりワールドカップサッカーなり、あるいはアメリカの大リーグなりゴルフなり、いろいろなメジャーなスポーツの放送権料が世界的に高騰しており、それが日本にも影響して、毎年これが上がってきているという状態。それから、番組出演者の出演料なり、あるいは著作権も、下がる方向ではありませんし、上がる方向でございます。それと同時に、これからBSデジタル放送に続いて地上デジタル化しなきゃなりません。それへの設備投資が、これから、先ほど申し上げましたように、二千五百億から三千億、三千五百億というような設備投資をしなきゃなりませんので、そういう面での設備投資に金がかかる。
 そういう面で、私は、今値下げすることは得策でないだろう、それよりは、この料金を据え置きながら、もっと質のいい番組をつくると同時に将来の設備投資への対応を考えねばならないだろう、そういうふうに今思っておるところであります。
黄川田委員 新たな財政需要に対応していかなきゃならないということでありますけれども、国、そして地方とも厳しい経済状況でありますので、これを敏感に受けとめて、そしてまた国民に理解されるような取り組みをお願いいたしたいと思っております。
 それから、大手民間企業の三分の一は、この春闘の要求段階でベアを要求しない方針を既に決めております。連結ベースで一兆円強の利益を上げている世界のトヨタでさえ、ことしはベアを断念しております。また、定昇制度自体の見直しを検討し、実質賃下げを断行している企業も多く、年功給型から実績給型へと大きく転換しつつあります。
 一方、このNHKの平成十四年度収支予算書によりますと、事業支出のうち給与は平成十三年度と同様に定昇及びベアを見込み、ほぼ同額を計上しております。
 そこで、職員の平均年齢、モデル賃金による年収はどの程度であるのか、また職員の給与水準は何を基準に定めているのか。あわせて、会長以下理事、理事待遇の方々は何名で、それらの方々を統合した一人当たりの平均年収はどの程度であるか、お尋ねいたしたいと思います。
山村参考人 職員の平均年齢は四十・四歳であります。NHKの大卒のモデル年収は、三十歳で五百九十九万円、三十五歳で七百四十二万円で、これは同業他社である在京民放などと比較すると、それぞれおよそ二割程度低い水準になっております。
 職員の給与につきましては、当然のことではありますが、NHKの財政状況、社会状況などを慎重に見きわめた上で決定しておりますが、その際、採用など人材確保面で競合する同業他社の給与水準なども総合的に勘案しながら、予算内で適切な水準を維持していくように配慮しています。職員につきましては、公共放送の使命を達成していくという責任と能力が求められておりまして、その分野にわたってすぐれた人材の確保が必要で、一定の給与水準の確保が必要であると考えております。
 それから、会長以下役員及び理事待遇まで含めた人数は二十三人でございまして、この平均年収は二千四百四十四万円であります。
 以上でございます。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
黄川田委員 NHKは、安定収入と特殊法人の特権に支えられてきた、あるいはまた経営の根幹にかかわる情報は今なお余り公開されていないというふうな声もあります。受信料で成り立つNHKにはより一層の経営の効率化、説明責任を求めておきたいと思っております。
 残り時間が少なくなってまいりましたので、次に、放送政策研究会の第一次報告への対応についてお尋ねいたしたいと思います。
 我が国のインターネット利用人口は今や五千万人を超えようとしており、放送と並ぶ有力な情報伝達手段となっております。そして、インターネットで映像や音楽を楽しむことができるなど、放送とインターネットの垣根は次第に低くなっております。
 こうした中で、昨年十二月に公表されました放送政策研究会第一次報告では、NHKのインターネット利用は「一般論としては社会的に有用」としており、これに基づいて、総務省によりNHKのインターネット利用に関するガイドラインが作成されたと聞いております。しかし、それによりますと、放送番組の二次利用についてはネット事業を認める一方で、ネット情報の提供期間は番組終了後一週間程度に、予算は年額十億円程度を上限にしているなど、極めてあいまいな規定であると思っております。私は、基本理念に欠けるとの思いがあります。
 そこで、総務省は、この第一次報告等を踏まえ、NHKが本来事業である放送と新しいメディアであるインターネットにどのような基本方針で取り組むべきであるとしているのか、お聞きいたしたいと思います。大臣からお聞きいたしたいと思います。
片山国務大臣 今、放送政策研究会第一次報告を踏まえての話がございましたが、NHKのインターネット利用につきましてはガイドラインをつくらせていただきました。これはもう既に何度も答弁させていただいておりまして、一定の考え方、ルールを整理したものでございまして、これでNHKさんに当面はやっていただきたい。
 これにつきましてはいろいろな意見がありまして、その意見を集約して、我々としてはこれがベターであろう、こう決めたものでございまして、これを今後ともずっと不変のものとするわけではない。常時見直していく、また状況に応じて弾力的な対応はもちろん加えていく、こういう考え方でございまして、一応の仕切り、ルールとしてこういうガイドラインを示させていただいたわけであります。
黄川田委員 また、この第一次報告にて、NHKの子会社等のあり方に関して、経営の透明性を確保すべく、子会社等との連結決算を平成十四年度への前倒しも含めて導入することを求めておりますけれども、今回の平成十四年度事業計画ではどのように対処するおつもりでしょうか。そしてまた、連結決算にあわせて、外部監査法人による会計監査の導入も求められておりますけれども、これについてはどう対処するか、どういう方針か、あわせてお聞きしたいと思っております。
山田参考人 お答え申し上げます。
 NHKでは、子会社に対しましてこれまでも、何回も申し上げましたように、節度ある業務運営というのをやってまいりましたけれども、今回の総務省のガイドラインや放送政策研究会の第一次報告の趣旨を踏まえまして一層適切に対処していきたい。
 具体的には、まず、子会社等を含めた外部取引全般についてより一層適正性と透明性を高めるために、放送法に基づく業務委託基準をこの四月から改定します。この中で、業務委託につきましては、業務の専門性、特殊性等からほかに委託先がない場合等やむを得ない場合を除いて競争契約を原則とする旨を明確にしてまいります。
 そして、子会社等の業務運営のあり方に関しましては三つの施策を現在検討中で、いずれもことしの七月から実施を想定しております。
 その一は、子会社等の指導監督を徹底する観点から、現行の子会社等の運営基準を改定し、これを公表いたします。第二、子会社等の事業活動や子会社等との取引に関する外部からの情報、これは苦情も含めてですが、これを受け付け、審査し、外部委員を含む委員会を設置する。連結決算に伴う子会社等の会計検査とは別に、子会社等の業務運営を監査する業務監査を監査法人や弁護士に依頼する。この三つの点を実施することにしております。
 以上です。
黄川田委員 大臣、そしてNHKからさまざまなお話をいただきましたけれども、この研究会の報告はインターネット利用と子会社との問題に限定しておりまして、これまでの既成事実の追認というふうな形になっていると思っております。改めて、公共放送の将来像を見据えた本格的な検討の必要を指摘しておきたいと思っております。
 残りわずかでありますので、通告しておりましたが、最後、要望をさせていただきたいと思います。
 NHKは、大阪放送会館や放送技術研究所といった大規模な会館の建てかえが終了しまして、今後は、各地域の放送会館の建てかえが順次年間二件から三件ですか、こういう割合で進められるようであります。この放送会館は地方文化の中核をなす存在でもありまして、会館周辺の公共施設の存在を十分吟味するなど、地域の特性を慎重に考慮しまして、今あるからただ建てかえるというふうなことじゃなくて、そういう画一的な発想を排しまして、さらには公共工事の見直しが叫ばれる昨今でもありますので、より適正な建設計画を立案していただくことを望みまして、時間でありますので終わります。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 NHKからいただいた「平成十四年度 収支予算と事業計画(要約)」、ここに「予算のポイント」というので五つ挙げられています。その中の一つが、地上デジタル放送開始に向けた設備やその他の整備を進めていくというものであります。
 きょうのこの委員会、たくさんの同僚委員から地上波のデジタル化の問題が取り上げられてまいりました。私もこの地上放送のデジタル化の問題でお尋ねしたいわけですが、なるべく重複することを避けて、違った視点からただしていきたいと思います。
 何といいましても、地上放送のデジタル化というのは、国民の生活に非常にかかわり合いを持つ大事業であります。ですから、国民の合意なくして成功することはあり得ないと私は思うわけです。この点で、現状はどうかという点からまず見てみたいと思うんです。
 そもそも私ども、昨年のアナ・アナ変換そのほか、電波法の問題の中で取り上げてまいりましたが、二〇一一年にはアナログ放送が打ち切られる、このことを含めて、デジタル化の計画そのものが国民にきちんと知らされていないということを痛感するわけなんです。これが現状だと私思うんですけれども、最初NHKに聞きますけれども、この問題で、このデジタル化のスケジュールについて国民がどれだけ知っているか、世論調査か何かやったことはございますか。
山田参考人 NHKが正式に世論調査書で世論調査をしたということはございませんけれども、例えばNHKの受信技術というポジションがありまして、地上デジタル放送へどういうことを期待しているかというようなこととか、多彩な番組が楽しめるというのが四五・六%で、ゴーストのないきれいな映像が見られるとか、自動車等移動中でも安定した映像が見られるとか、こういうのを見ますと、それなりに浸透はしているけれどもまだ全然十分ではないな、これから国民の理解を得ながら着実に推進していかなくちゃいけないなというふうに思っております。
矢島委員 世論調査の中身については、スケジュールについてお聞きしたのですが、そういうことは特にやられていないようであります。
 そこで、海老沢会長にお尋ねするわけですが、どうでしょう、どれくらいの国民がこういう形で二〇一一年になったら打ち切られるんだよということを知っているだろうか。その辺、どんなふうにお考えでしょうか。
海老沢参考人 地上デジタル放送につきましては、もう数年前から、この場でもいろいろな質疑応答がありました。私どもも、BSデジタル放送を始めるときに、これをまずスタートさせ、その後、地上デジタルの方に行きたいということをいろいろな場で申し上げてまいりました。
 私も去年二回ほど番組に出まして、地上デジタル放送のメリット、国民に対するサービスはこういうふうなものがあるんだというようなことを述べてきております。いろいろな新聞インタビューなり雑誌インタビュー、記者会見で言っておるんですけれども、なかなかこれがまだ浸透しないという実感を持っております。しかし、何%というとなかなか難しいわけでございますけれども、いずれにしても、今そういう情報を徹底するというのは非常に大変な取り組みが必要だということは申すまでもないと思います。
 いわゆる多メディア多チャンネルになり、情報が非常に個別化してしまう。逆面では、いわゆる多メディア多チャンネルは情報過剰であると同時にまた情報過少ではないかということも言われるのはその辺だと思います。
 いずれにしても、この地上デジタル放送をやるためには、やはり国民の理解とコンセンサスを得なければできない大変な国家的な事業だと私は認識しております。そういう面で、今後とも総務省、民放、私ども、あるいはメーカー、流通業も含めて、まずBSデジタル放送のよさをわかってもらう。その上でまた、地上デジタルをやればさらにいろいろなプラスがあります、そういうことをさらにPRしていかなければならぬだろうということを痛感しております。
矢島委員 なかなか浸透しないという部分については、確かにこんな世論調査結果も最近発表されました。
 ビデオリサーチ社が行った世論調査であります。それによりますと、二〇〇三年、三都市で始まるということを知っている人の割合が一八・一%です。それから、二〇〇六年には全国的に地上放送デジタル化が行われるということを知っている人は一四・〇%です。さらに、二〇一一年、アナログ放送が終了する予定ということを知っている人は一一・三%。この世論調査の結果を見ますと、おおよそ十人に一人しか、二〇一一年になったらアナログ放送が終わっちゃうんだぞということを知らないという現状だ、こういうのが今の状況だと思います。
 そこで、私、国民が計画を知らないまま、この地上放送のデジタル化がどんどん進められていっているということに対して非常に危惧を持つわけなんです。この計画をきちんと国民に伝えることが求められることは言うまでもありません。
 ところで、NHKにお聞きしたいのは、今毎日のようにこのBSデジタルの宣伝がなされております。宣伝ですから、BSデジタルのメリットを中心に国民に伝えているわけです。しかし、その一方、放送事業者として、この放送のデジタル化を取り上げる場合には、宣伝とは別に、問題を多角的に掘り下げる必要があるんじゃないか。つまり、デメリットも含めてこの計画を国民に明らかにすることが放送事業者には求められる、こういうふうに思うわけです。
 そこで、NHKは、こうした分野では、NHKスペシャルあるいはクローズアップ現代、こういうすぐれた番組の実績を持っておりますけれども、デジタル放送の宣伝ではなくて、問題を多角的に明らかにするこれらの番組の中で地上放送のデジタル化という問題を取り上げたことがあるかどうか、また今後取り上げる計画があるかどうか、その辺についてお答えいただきたい。
海老沢参考人 私どもは、去年の放送記念日の後、三月二十二日にNHKスペシャル「テレビはどう変わるのか IT革命とデジタル放送の未来」というふうなところでこれを取り上げたことがあります。そのほか、「NHK予算とビジョン」という番組を去年四月の一日にやりましたけれども、その中でも、私の方からいろいろな点を申し上げたところであります。
 いずれにしても、これから具体化すれば、さらにいろいろな面で、地上デジタル放送はなぜやるのか、なぜ必要なのか、そういう面での番組をつくるのは当然だろうと思っております。ですから、これからまたアナ・アナ変換のきちっとした数字が出てきた段階、あるいはまた工事が始まる段階、いろいろな段階を踏みながら、国民視聴者の皆さんに説明してまいりたいと思っております。
矢島委員 国民にいろいろと知らせるという重要なことなんですが、ただ、取り上げ方の問題として、いわゆるメリットをずっと宣伝するだけではなくて、こういう問題もあるんだぞと。例えば、二〇一一年になるとアナログ放送は見られなくなりますよ、テレビを買いかえるかチューナーをつける必要がありますよというようなことも含めて、やはりやっておく必要があるのではないか、このことが求められていると私は思うのです。
 総務省は、地上放送のデジタル化周知徹底という意味で、リーフや新聞広告、ポスターなどを作成しております。やはりそれらのパンフやリーフを見ますと、デジタルだといいことがいっぱいだというキャッチフレーズで、メリットの羅列という宣伝が非常に多いわけです。
 私は、ここに一つだけ、「もうすぐ全ての放送がデジタル化されます。」という総務省のリーフを持ってきておりますが、これもやはりいい面がずらっと書いてあるわけですね。
 そういう意味からすれば、私たちは、もちろんデジタル放送のメリットを否定するわけではありません。また、地上波デジタルというものに対して反対しているわけでもありません。しかし、問題は、国民不在でこれがいったら大変だという感じなんです。
 つまり、先ほども出ましたけれども、今現在BSデジタルの普及というのは本当に問題があるのですね。つまり、メリットという点ではほとんど地上波デジタルと変わらないのですよ。だから、メリットという点については同じ地上波デジタルがなぜ順調に進んでいないのか。先ほど、千日で千台というのが出てきましたけれども、こういう状況の中で、やはりこのおくれは、つまりBSデジタルのおくれは何なんだろうか、あるいは地上波デジタル化への影響というものが何なんだろうか、こういうのを真剣に分析する必要があると思うのですよ、現在。
 そこで、NHKの放送文化研究所の鈴木祐司さんとおっしゃるのですか、民放労連の学習会へ出られて講演されているのですね。その中で、日本のデジタル化は早急にトータルデザインの見直しが必要であるということで、最後の一軒までひとしく情報を行き渡らせるにはどうするべきか、皆が納得するアナログ停波はどうしたらよいのか、これを踏まえトータルデザインを再考すべきであるという講演を行っているわけです。
 そこで、デジタル放送の国民への周知徹底といった場合には、放送事業者は、総務省のようにどんどんいいところ、いいところを宣伝するんだというのとは違って、国策だからといって追随するのではなくて、ひとつ放送法が規定するように、公平に、事実を曲げずに、多角的に情報提供をするべきだと思うのですけれども、会長、これに対する見解をお聞かせいただきたい。
海老沢参考人 我々は国民に、情報に格差なく公平に放送するのが務めであります。ですから、我々は、いたずらに希望的なことばかりじゃなくて、やはり国民にとって必要な情報は、辛口であってもそれは伝えなきゃならぬのは当然であろうかと思います。そういう面で、我々は我々の自主的判断で、いろいろそういうPR活動、普及活動に努めなきゃならぬということは当然だろうと思います。
矢島委員 時間がありませんので、最後に大臣にお聞きしたいと思います。
 先ほど来、アナ・アナ変換の大幅な見込み違い、これは去年のうちに私お聞きしておりますが、当初のスケジュールから約一年おくれが既に出ているんですね。それから、二〇一一年アナログ放送の停止、このスケジュールについても非常に問題があるということを、私は去年の電波法の審議のときに、二〇一一年にアナログ放送をやめちゃう、初めにまず二〇一一年ありきということから二〇〇三年や二〇〇六年が出てきたんじゃないかと。
 今現在の状況からいえば、先ほど大臣は、いや、絶対変更ないと決意を言われた、先ほど副大臣も決意表明はされた、しかし、どうもその決意表明だけで、なるほど、では大丈夫だなという気になれないのは、やはり今国民も、周知徹底していないし、合意も得られていない。それから実際にアナ・アナ変換にしてもおくれてきている、スケジュール全体が問題がある、こういう指摘も現にあるわけですね。
 例えば、これは自民党の議員ですからあれですが、同じ電波法を審議したときの議員です。このときに賛成したわけです。しかし、その不明を恥じるというので、これは中央公論の四月号に出ています。「地上波デジタル計画は凍結せよ」という表題なんです。後ずっとその問題点を書いて、「下手をすれば第二の住専になってしまう。」とまで書いているんですね。
 つまり、こういう状況の中で、私は、根本的に、二〇一一年ありきというのではなくて、現在の事態をきちんと分析した上でスケジュールを見直すべきだと。私はそのときも言ったんですが、二〇一一年というのが最初からありきじゃなくて、やはりどれだけの電波でカバーすることができるようになったか、どれだけデジタルテレビが普及したか、国民的な合意はどれだけいった、これを基準にして、いつデジタル放送に切りかえる、あるいはアナログ放送を打ち切る、こうすべきだということを主張してまいりました。この辺について、大臣のお考えをお聞きしたい。
片山国務大臣 去年の審議の際にも矢島委員からそういう御指摘はいただいておりますが、去年電波法を通しまして、我々は、大体十年でやろう、そういうことで、三大都市圏から始めていただいて二〇〇三年、六年にその他の都市圏、こういうことでございまして、アナ・アナが何カ年計画でやるものが少しスタートがおくれましたけれども、おくれを取り返すようにエリアややり方について少し見直していこう、こういうふうに考えておりまして、締め切りがないとなかなかこういうものははかどらないんですよ……(発言する者あり)いやいや、我が国の国民性からいきまして。
 それから、テレビの買いかえは、御承知のように大体七年から八年ですから、買いかえのサイクルが。そういうことの中で、デジタルテレビも相当安くなってまいります、まだちょっと高いですけれどもね。
 そういういろいろなことを考えて、こういうことで御討議をいただいて法律も通していただきましたので、ただ、去年はまだ法律が通っておりませんから大々的なPRはしておりませんけれども、ぜひ十四年度からもう少し国民の皆さんに、いいところだけじゃありませんで、買いかえが必要ですよというようなことを含めてPRをさらにやらせていただきたい、NHKさんや民放さんとも御一緒に、そう考えておりますので、もう少し温かく見守っていただきますようによろしくお願いいたします。
矢島委員 時間になりましたのでやめますが、またの機会にやっていきたいと思います。
平林委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。昨年に続いて字幕放送の推進についてお聞きをしたいと思います。
 総務省は、九七年に、二〇〇七年までに字幕付与可能番組に一〇〇%字幕を付与することを目標に、ガイドライン、指針ですね、これを示してこられました。まず、NHKの番組への二〇〇〇年度の字幕付与率、これがどうなっているか、それから、二〇〇七年までのこのガイドラインの目標ですが、二〇〇七年までに一〇〇%付与する計画がどうなっているか、この二点、お尋ねいたします。
板谷参考人 お答えいたします。
 NHKの字幕付与率、これは行政の指針にかかわる字幕付与率は、平成十四年度末には七七・三の計画値になっております。ちなみに平成十三年度は七一・三の計画値でした。そして、平成十八年には、行政の指針にかかわる総合テレビの字幕率は一〇〇%になる、一年前倒しになると思っております。
春名委員 前倒しをして一〇〇%やるということでありまして、その点でいいますと、NHKの努力は大変すばらしいと思うんですね。敬意を表したいと思っております。
 さて、問題は民放であります。民放の字幕付与率、そして二〇〇七年の達成見通し、これがどうなっているのか、お答えください。
稲村政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年十月に、NHKと民放キー五局から、字幕放送の普及目標の達成に向けた字幕拡充のための計画を提出させていただきました。その中で、民放キー五局の二〇〇七年までの字幕拡充計画の目標値は、日本テレビ放送網が八四・二%、東京放送で八五・三%、フジテレビジョンで八八・三%、全国朝日放送で九〇%、テレビ東京で八〇・四%の数字をいただいております。
春名委員 字幕付与可能番組比で、現在わずか八・六%なんですね。そして、全番組比でいうとわずか三・三%、現状が。そして、二〇〇七年の最終目標でいっても八割台、一番多いところのテレビ朝日が九〇%だということなわけですね。おくれは歴然です。これではガイドラインが絵にかいたもちになります。どうしてこのような計画になっているのか、これをどうされるつもりなのか、総務大臣、これはいかがお考えですか。
稲村政府参考人 実は、平成十二年の数字等を見ますと、非常に低く見えるということは事実でございます。
 それで、二〇〇七年の目標値が八〇%ないし九〇%にとどまっているということでございますが、これは大変な努力をした上でのことでございまして、数字を各社それぞれ誠実に出したものと理解しています。字幕制作には多くの費用がかかることは事実でございますが、また、時間がかかったり、放送直前に字幕を入れなくちゃいけないために時間が確保できない等の理由もございます。
 総務省としましては、そういったことで字幕拡充計画の進行管理を十分強力に行うことによりまして、字幕放送の普及目標の達成に向けて努力していきたいと考えております。
 また、効率的な字幕制作の方策を含めまして、いろいろな事項につきまして、昨年九月から次世代の字幕研究会ということで開催しておりまして、現在関係者と議論を重ねているところでございます。総務省といたしましては、この結論が来月中には出ることにお願いをしてございますので、その結果を踏まえまして、これからの字幕行政を一層推進してまいりたいと考えております。
春名委員 いや、私は、NHKは前倒しして一〇〇%やるという意気込みで、目標も明確にしてやられているわけですよね。しかし、皆さんが掲げられた二〇〇七年度までの、皆さん自身が掲げられた目標が二〇〇七年でしょう。それを、計画を出させたところ、八割、一番高いところが九割しかいかないという数字をごらんになって、やむを得ないかなというふうにおっしゃること自身がおかしいんじゃないかと私は思うんですね。
 それで、先ほどの、お話が出ましたけれども、直前に番組がいろいろ来るから技術的に難しいとはおっしゃるんだろうけれども、しかし、それはNHKでも同じであって、やはりそういう技術は持っているわけですし、そういう技術は開拓されてきているわけですから、一〇〇%実現するという角度から問題を考えていかないと、これはいつまでもずるずる後ろに行くということになるんじゃないでしょうか。
 この点では総務大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
片山国務大臣 二〇〇七年度までに一〇〇%、そこまで私は求めなくてもいいと思うんですよ、八割でも九割でもやってくれたらいいんです。それが、大変今進行率低いですよね。だから、去年、計画を出してくれと出させたんですよ。だから、その計画どおりやるように強く指導してまいりますよ。
 ただ、それぞれ、皆さんのお話では大変な手間と時間とお金がかかるようですから、経営をやっていますから、だから何でもほかのものを犠牲にしてもということはない。なかなかそれぞれの会社、つらいところはあると思います。そういう意味では、NHKさん、大変えらいですよ、いや本当に。さすが公共放送です。それは本当ですよ。だから、そういう意味でNHKさんを見習えと言って、私は、ほかの民放五社に強く申し上げます。
春名委員 今お二人からやはり予算の問題とかあるということが出たので、この点についてきょうはきちっと議論しておきたいと思うんです。
 総務省の資料によりますと、NHKの二〇〇〇年度の字幕予算は七億四千万円、これは決算で七億四千万円ですね。二〇〇一年で八億二千万、二〇〇二年で十億七千万。そして、二〇〇〇年度の字幕付与番組比、その付与率ですけれども、これはNHK総合だけで六七・七%。恐らく二〇〇二年度では七七%ぐらいになることに、先ほども出ましたけれども八割近くになる。これ以外に教育でも二割近くの付与率を行っているわけですよね。
 そういう意味では、かなり苦労して努力されている、大臣おっしゃるとおりだと思うんです。私が言いたいのは、年七億円から十億円という予算で、大きく付与率を伸ばして、高い水準でまた伸ばすということをやられているというこの事実であります。
 ところで、総務省にお聞きしておきますが、日本テレビの二〇〇〇年度あるいは二〇〇一年度の売上高と経常利益、これはどれぐらいありますか。
高原政府参考人 日本テレビ放送網株式会社の二〇〇〇年度の売上高は約三千百三十六億円で、経常利益は六百四十億円と承知をいたしております。
 また、二〇〇一年度の最終決算の見通しは、同社によりますと、売上高で約三千七十五億円、経常利益は五百四十億円というふうに承知をいたしております。
春名委員 大変な経常利益ですよね、超優良企業という言葉も出ましたが。二〇〇〇年度、ほかを調べてみますと、フジテレビは売り上げ三千三百九十六億円で経常利益五百二十九億円。TBSが二千七百二十八億円で三百一億円。テレビ朝日が二千七十四億円で百八十二億円。
 この上に、民放全体に国からの字幕放送付与のために制作費助成が、ことしでいえば五億円、来年度は六億円、これが支出をされるということになっているわけですね。日本テレビでいいますと、NHKの字幕予算の約九十倍の経常利益を上げて、その上国からも助成を受けている。にもかかわらず、放送時間はNHKのわずか十分の一程度にすぎないということになっているわけです。民放の怠慢としか私は言いようがないというふうに言わざるを得ないわけです。
 そして、先ほどお話が出たけれども、ようやく出してきた計画、二〇〇七年度までの計画では、最終目標であるにもかかわらず、八割台あるいは一番高いところが九〇%。全番組比では二割台から三割なんですよ、たったの。
 ですから、これはどう考えても問題ですよ。だから、民放だからそんなに強くいけないんだという話ではなくて、本当にそういう助成もしながらやっているわけであって、断固として、こういう超優良企業なわけですから、きちっとした予算も出して、情報アクセス権を保障する、そういう権利として、そういう立場に立たせないとずるずる行くんじゃないか、そういう問題ではないでしょうか。大臣、どうでしょう。
稲村政府参考人 総務省といたしましては、字幕拡充計画の進行管理等を十分に行いまして、去年の七月から大臣の強力な御指示でやっているわけで、これを引き続き重ねまして、字幕放送の普及目標の達成に向けて努力していきたいと考えております。
春名委員 全然答えになっておりません。
 昨年十二月、全日本聾唖連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会主催で、聴覚障害者の放送バリアフリーを考えるシンポジウムが開催されております。その中で提案された放送バリアフリー法案というのは、端的に言えば、総務省がおっしゃっているガイドラインの内容を法制化するというものです。二〇〇七年以降は字幕一〇〇%を義務化しよう、つまり、それまでに一〇〇%達成しよう、そういう法案を提案されております。
 私は、これは総務省自身が提案すべきような性格のものですよ。そういうものじゃないでしょうか。このシンポジウムには、平林委員長もメッセージを寄せられていますし、衆参の多くの総務委員もメッセージを寄せておられますし、今お答えになっている稲村政策統括官もごあいさつをされておられる。
 このような民放の姿勢をそのままにすれば、総務省のガイドラインも絵にかいたもちになります。ぜひ、総務省として、今こそ義務化する、二〇〇七年に向けてしっかりやる。先ほど、デジタルは二〇一一年、しりを切らぬとだめだと言っているじゃないですか。二〇〇七年にきちっとしりを切って、そしてそこに向けてどういう努力をするか、どういう技術的開発をするか、予算をどうつけていくか、そういう手だてをとらないとだめなときに来ているんじゃないかということを言いたいわけです。大臣、いかがですか。
片山国務大臣 民放も、いいときも悪いときもありますし、アナ・アナ対策にもお金が要りますし、デジタル化にも要りますし、だからまあ全部字幕というわけにはなかなかいかぬでしょうけれども、しかし、ちゃんとした一応の目標を立てて計画を去年はつくってもらったんですから。私が一番きついんですよ、この問題では、いや本当に、役所の中で。
 だから、ぜひ大きな前進をするように民放連に強く要請いたします。
春名委員 強い要請をしていただくのは結構なんですが、私の提案もぜひ聞いていただきたいと思っております。
 それで、一点ちょっと聞いておきますが、次世代の字幕研究会、今つくっていらっしゃいますよね。そこで、二十一世紀の字幕、技術的問題も含めてどう推進するか、それを議論されていることは大いに結構なんですが、議事録を私、全部読んだんですよ、ホームページで。そうしますと、ここの次世代字幕研究会の構成員の中に障害者団体が入っていないんですよ。これは私は驚きました。ほとんど制作者側の、テレビ放映側の方々が圧倒的に多数で、障害者団体、受け手の側の運動団体、難聴の方々とか全然入っていないんですよ。
 これは、少なくとも入れていただいて、そしてそういう意見もよく聞きながら推進をしていくということが必要ではないかと思います。この点はぜひ一言お答えいただきたい。
稲村政府参考人 御指摘のとおり、委員の方々には入っておりませんが、会合を重ねる中でそうした団体の方々から丁寧に御意見を拝聴する、こういうことにいたしております。そういう会合も持ったところでございます。
春名委員 最後に、海老沢会長に一点だけお願いして終わりたいと思います。
 NHKは、生番組の字幕放送のパイオニアとして頑張ってこられて、ソルトレークの経験もあります。聴覚障害者の意見も集約していただいて、ぜひ、ことしの最大のイベントの一つである日韓ワールドカップの字幕化に向けて挑戦していただきたいということは強く要請をしておきたいと思いますが、最後にお答えいただいて、終わりたいと思います。
海老沢参考人 私もワールドカップサッカーを字幕化しようということで、今現場に指示しております。ただ、サッカーの場合は、御承知のように非常に展開が速くて、どういうことができるのか、今勉強させております。できるだけやる方向で今検討させております。
春名委員 以上で終わります。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 もう質問も、いよいよあと私と横光議員の二人となりました。
 それで、質問が幾つか重複する部分があると思うのです。それはお許しをいただきたいと思います。
 私の選挙区は典型的な過疎地域でありまして、非常に高齢化率の高い地域であります。そういう地域で生活をするという一人の人間として、素朴な質問を幾つかしたいと思うのですが、アナ・アナ変換問題に限って質問をいたします。
 まず第一に、テレビは今一家に二台強という時代でありますが、実は、このアナ・アナ変換に関連をして、セットトップボックスの配布の問題ですね。これは、そういう一家に二台強という時代の中で、持っているすべてに行き渡るような、そういう配布になるのか、あるいは、もう二台目については、これは有料ですというふうな形になるのか、その点をまず第一にお伺いいたします。
高原政府参考人 先生お尋ねのセットトップボックスの配布の基準といいますか考え方でございますが、結論から申し上げまして、今検討中でございます。
 セットトップボックスを導入する地域は、アナログを停波しましてデジタルに即変えるという地域でございますので、できるだけ負担がかからないようにということでございますが、経費総額、あるいは先生今おっしゃいました、各世帯がどのくらいテレビを保有しているのかといったようなことも総合的に勘案して、これから決定してまいりたいという段階でございます。
重野委員 そういうことでありますれば、この点についても十分配慮していただきたいと思います。
 それは、家庭だけではなしに、事業所あり、それから学校がある。そういう職場あるいは学校等について、この問題にどういうふうに対応していくのか、一般の家庭と同じようなレベルで検討するのか、その点をお伺いします。
高原政府参考人 学校あるいは生活の拠点としての機能を果たしている職住一体型の事業所というものは、家庭と同じように、基本的には配布対象としたいというふうに考えておるところでございます。
 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、全体の経費総額等々の関係もございますので、きっちり今ここで結論を出すわけにはいきませんが、そういう方向で考えておるということでございます。
重野委員 答弁は前向きに受けとめたというふうに私も理解いたしますので、そういう方向でひとつ検討のほどよろしくお願いをいたします。
 三点目は、昨年の法案審議の際に、この変換費用、およそ七百億円。ところが、その後いろいろな角度から調査されまして、二千億円程度というふうに聞いているのでありますが、こうなってくると、これまでのこの委員会における法案審議というのは一体何だったのかな、こういうふうな疑問を持たざるを得ないわけであります。
 聞くところによりますと、この七月初旬までにNHK、民放、総務省の三者による検討体制で結論を出すというふうに聞いておりますが、この検討は、この二千億円という、七百億円が二千億円、約三倍弱というふうに膨らんだ、それを圧縮する方向に結論が出るのか。いや、全く現段階においては見当がつかない、五里霧中であるというふうな状況にあるのか、お聞かせください。
高原政府参考人 昨年、詳細に電波状況等を調査しましたところ、先生おっしゃいましたように、中間段階の数字として、二千億円を超える可能性があるという数値が出ました。これを、先ほどから申し上げておりますように、セットトップボックス方式等を選択手法の一つとして加えることによってできるだけ圧縮をしてまいりたいということで、圧縮の方向で今検討を進めておるということでございます。
重野委員 圧縮の方向で鋭意検討が進んでおるという答弁でありますので、そういう方向をぜひお願いをしたいと思います。
 次に、四点目でありますが、経済財政の中期展望では、二〇〇四年度以降、名目二・五%以上の成長が見込まれると言われています。このような成長が持続すれば、当然、コストダウンもかなりのものが見込まれるのではないか。そうしたコストダウンによってデジタル対応受信機の価格も下がってくる、そういうふうな見当がつくわけでありますが、そういう見当づけでいいのかどうか。そういうことが期待できるのかどうか。
 しかも、そうした価格は、例えば生活実態を見ますと、現在でも三万円台の特例年金受給者が現におられるわけでございますが、そういう層、そういう収入のレベルの人々にとって、果たして買いかえ可能な価格になるんだろうか、こういうふうな思いがあるのですが、その点はどういうふうに見当づけられておるのか、お聞かせください。
高原政府参考人 社団法人電子情報技術産業協会の需要予測におきまして、二〇一〇年には、デジタルテレビ受信機の出荷台数が累計で六千万台を超えるであろう、そして、年間の出荷台数も、現在のアナログテレビ受信機の年間出荷台数と同じ一千万台程度となるというふうに推測をしておるところでございます。
 類似の例でございますが、BSデジタルの受信機は、二〇〇〇年の十二月の放送開始時には三十五万円前後でございましたが、一年経過して百万台程度普及した現在では、二十万円程度まで下がっております。
 こういうようなことから類推いたしますと、アナログ放送が停波する二〇一一年には、デジタルテレビの価格は相当下がりまして、アナログテレビ受信機と同程度の、だれもが購入しやすい安価な水準となっているというふうに考えているところでございます。
重野委員 今の答弁では、そのときに大体現状のテレビと同等レベルの値段になるだろうという見通しであります。
 問題は、今私が指摘をしました、年金で生活をする、その糧の年金の額が、現実に、今私が指摘しましたように、三万円というふうな方々も相当おられるわけですね。僕らの目線、一般の元気な健常者、あるいはごくごく当たり前のサラリーマンの目線で見れば、今局長が言ったような言い方というのはすんなり入ると思うのですね。しかし、そういう弱い部分、こういう部分から見れば、それでもまだ高い、高ねの花だという部分があるということを私はしっかり踏まえておかなければならないのではないかと思うのですが、その点についてはどうですか。
高原政府参考人 先生おっしゃいますように、福祉的な面からいろいろ、福祉機器という面から、今、厚生省等が福祉機器の普及制度みたいなものを制度として持っておりますし、そういうところともこれから相談をしながら検討してまいりたいと思います。いずれにしろ、今のアナログテレビでも大体、サイズとか機能のかなり小さいもので一万円ぐらいからございますので、そういうことも含めまして、これから検討してまいりたいと思います。
重野委員 その点についても、ひとつそういう方向で努力をしていただきたいと思います。
 次に、五つ目は、ローカル放送局が、このデジタル化の利点とされる多チャンネルの方向に対応できるのかどうなのかという点の疑問であります。
 また、NHKにとっては、全国放送でありますから、多大な費用負担となることが見込まれる。大体どれくらい想定しているのかという点が一つですね。それで、これが、この受信料値上げで賄うというようなことはないと私は考えておりますが、その点についてはいかがでしょうか。
 また、こうした費用負担が多大なものとなると、都道府県単位の民間放送許可制度の見直しというところまで行き着きかねないのではないかという素朴な疑問を持ちます。そして、その先には放送業界の再編による広域独占化、こういうふうなものが生じてくるんではないかというふうに思うんですが、その点。
 二つの点についてお答えください。
高原政府参考人 デジタル化投資の第一点目の点でございます。
 デジタル放送設備に係る投資額は、民放全体で約五千六百億円、民放テレビ局平均で一社当たり約四十五億円ということになっております。先生おっしゃいますように、これらの負担が特に経営規模の小さな局には大きな経営課題となっているというふうなことは十分認識をいたしております。
 このため、総務省といたしましても、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法といったようなもので税制、金融上の支援措置を設けて、各社の負担を軽減するといったようなことに努めておるところでございます。
 また、放送番組につきましても、ローカル局がその番組の制作といったような面が心配であろうといったような面もあろうかと思いますが、このデジタル番組の放送に向けて、ローカル局においても、キー局からの番組供給あるいは系列局間での番組の共同制作といったようなことに加えまして、もともとの独自番組の充実を図る等、多彩なデジタル放送番組の提供に努めていただけるものだというふうに考えております。
 それから、二点目の、県域放送を原則としている民放テレビはどうなるのかといったような御指摘でございます。
 この民放テレビ放送につきましても、放送普及基本計画におきまして、地域の自然的、経済的、あるいは社会的、文化的な諸事情を勘案しまして、その住民が同一の放送番組を視聴することが相当とされる地域として、県域を中心とする放送対象地域が定められております。
 先生おっしゃいますように、今後の地上放送のデジタル化の推進に当たりましては、経営面から、このような放送普及基本計画の見直しが必要という御指摘もあろうかというふうに承知はいたしておりますが、いずれにいたしましても、その放送が地域社会において現在果たしている役割なども十分に踏まえて、総合的にこの辺を検討していく必要があろうというふうに考えておるところでございます。
海老沢参考人 この地上デジタル放送の設備投資が非常にかかる。そのために受信料の値上げにつながるのではないかという御指摘でありますが、私ども、今のところこの設備投資に三千五百億ほど見込んでおりますけれども、これをできるだけ圧縮する、一千億削減して二千五百億を今目指そうとして、民放各社ともいろいろ協議をしているところであります。そういう中で、できるだけ我々自前でひとつやっていきたい、受信料を値上げしないで頑張っていきたい、そういう方向で、今、これから具体的な年次計画をつくらなきゃならぬだろう、こう思っております。
 いずれにしても、こういう御時世でありますので、視聴者にまた受信料の値上げということは、とてもこれはできるようなことではありませんので、できるだけ経費を節減しながら、また、受信料の公平負担をお願いしながら、我々の予算の中で処理していきたいと思っております。
重野委員 では、最後になりますけれども、要望しておきます。
 アナ・アナ変換が、電波監理行政とそれから放送業界の論理のみが先行して、肝心な受信者の利益との間に格差が生じないように、受信者、とりわけローカルな地域の受信者利益を重視していただく、そういう基本的な姿勢の中で今後検討していただくことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 NHKの来年度の予算案、これは、十二年間も受信料据え置きの中、黒字予算を編成されている、大変な御努力をされているということで、評価をしたいと思います。また、受信料の増収計画、これも、現在の経済状況を踏まえて、現場の認識をしっかりした上で圧縮をしている。このことも評価に値すると私は考えております。
 さて、NHKの経営は、御案内のように受信料によって成り立っているわけですが、もう一度ここで受信料の重みというものを認識する必要があるんではないか、私はそういう気がしておるんです。
 八〇%の視聴者が受信料を払ってくれている。三千五百万件。そのうちまた一千万件の衛星まで契約をしてくれているわけですね。しかも罰則規定なんかないわけですね。BBCのように罰則規定も何もない。にもかかわらずこれだけの視聴者が受信料を払っている。これは世界の公共放送の関係者からも不思議がられると同時に、大変称賛の的にもなっておるんですね。国際的にもこれだけの放送体制を残しているのは私はもうNHKしかないんではなかろうかと思うんですが、八割以上の方からお金をいただいて、しかも基本的にはどこからも干渉されることなく、しかもNHK職員の提案に基づいた番組がつくられている。
 こういうふうに受信料制度が守られているのはなぜか。やはり一言で言えばNHKの放送内容が視聴者の期待にこたえているからだ、この一言だと思うんですね。払いたくない人だっている。あるいはいろいろ不平や不満もある。しかし、こんな番組つくってくれるじゃないか。あるいは、緊急のときには、災害のときには、こういった情報を与えてくれるじゃないか。いろいろな幅広い形で視聴者のニーズにこたえているから、私はこの制度が成り立っているんだと思う。この受信料の重みというものを、私は、またもう一度考えていかなきゃならない。しかも、これからIT化、デジタル化、多チャンネル化の時代がやってくる。NHKの役割、ニーズというのはますます大きくなると思うんです。
 しかし、逆に、それだけに、この視聴者の人たちの見る目というものも厳しくなってくる可能性もある。ですから、この今築いている期待をいかに継続して、さらに信頼を確固たるものにしていくかということが大変な課題であるということは申すまでもございません。
 そこで、そういった期待がある一方で、先ほどからお話ございますように、NHKの肥大化ということも、これまた一部では批判の的になっているわけですね。先ほど会長がお話しされました人に優しい放送、そうしたことを目指して取り組んでいくんだと。これは公共放送だからこそ率先して取り組まねばならないことであり、私はこういった分野ではその肥大化の批判というのは当たらないと思うんですね。インターネットによる配信サービス、あるいは関連会社の増大、こういった問題以外では、こういった公共放送の役割でございますので、それに率先して取り組むことには、これは肥大化の批判は当たらない、私はこのように考えておりますが、そういった声も現実にあるわけです。肥大化、肥大化といって、あらゆる分野で大きくなっているという印象を与えますが、事この職員の数という点からいえば、逆に、肥大化どころか逆の方向に進んでいるわけですね。
 確かに、受信料の重みという観点から効率化の努力、これは必要でございますし、とりわけ公共放送でございますから、ほかの企業よりも、より一層厳しいスタンスで取り組んでいかなければならない。そして、現実に取り組んでこられた。業務改革の着実な遂行に努力してこられた。そして、今回の予算案には、一万二千七十七人という職員体制になったわけですね。一万二千人体制になった。
 一昨年の十二年度の参議院の交通・情報通信委員会の中で、会長は業務のスリム化についてこうお答えになられているんですね。「NHK、今一万二千数百人という体制で仕事をしているわけであります。」「ただ、私は、あと一、二年で、余りにも減らすと仕事に差し支えがありますので、そういう面で一万二千人体制の中でいろんな工夫をしていかなきゃならぬだろうと思っております。」
 ちょうどこのお答えになってから一、二年が現在でございますが、そのお話のように、ちょうど一万二千人体制になったわけですね。このときの趣旨を言えば、これから二十一世紀、NHKとしては、業務はこれからこういうサービスをやっていくんだ、そのためには職員はこの一万二千人体制で当面はやるんだ、いろいろ減らすことによって業務に差し支えがあってはならぬ、全体の枠はこれだけの人数で、やりくりして工夫をしていく、そして最大の効果をお客さんに番組というサービスで還元していくんだ、私はこういうお考えだと思うわけでございますが、会長、いかがでしょうか。
海老沢参考人 今御指摘のように、公共放送の使命は年々高まってきていると思っております。
 私は、常日ごろ、放送というものは、その時代の最新の技術を積極的に取り入れて、この新しい技術を活用した文化であるというふうに言っております。
 そういう中で、放送技術の方も、NHKが今世界の最先端の研究開発を進めております。その象徴がデジタルハイビジョンでございます。そういう面で、この日本の放送の世界的な位置づけというものは、私は最高水準を行っているものだろうと自負しているところであります。
 そういう中で、これからますます、こういう多メディア、多チャンネル、新しい技術の開発が進む中で、それに見合うだけの、視聴者、国民が関心を持つ、生活に役立つ、そして心豊かになるようないい番組をつくっていかなきゃならないまた新しい時期だろう、こう思っております。そういう面で、いろいろ効率的な運用、業務改革を進めてまいりました。
 そういう中で、今職員も一万二千人体制になりました。これ以上人を減らすと、本当にいい番組ができるのか、視聴者、国民の期待に沿えるような質の高い番組を維持できるかどうか、これもまた再検討していかなきゃならない課題だろうと思っています。
 それを私は二、三年前から、一万二千人体制の中で、これからもいろいろな創意工夫を凝らしながら、質のいい番組をどのようにつくっていくか、その辺のことをさらに勉強していこうというのが今現在の心境であります。
 そういうことで、やはり我々は視聴者のニーズにこたえるような質の高い番組をつくることが仕事でありますから、そういう面で人材の育成が最も重要だということはたびたび言っているところであります。
 そういう面で、今先生御指摘のように、いずれにしても、ソフトの供給といいますか、質のいい番組をつくらなければ、デジタル時代になろうが何時代になろうが、視聴者にとっては何も役に立たないわけでありますから、そういう面で、技術の開発と相まってソフトの新しい開発も進めていく、そのための一万二千人体制をこれからも維持しながら、いい仕事をしていきたい、そう思っております。
横光委員 これからNHKの業務、この予算案にもいろいろ取り組む課題が書かれていますが、大変大きくなると思うんですね。業務量はますますふえていくと思うんですね、現在より。
 そういった中で、地方局の役割、これはどのようにお考えか、ちょっと。これからの地方局の、これも大きくなると思うんですよ。
海老沢参考人 地上デジタル放送が普及し、これが定着すれば、ますます私は地方放送局の役割は高まっていくというふうに見ております。
 やはり地上デジタル放送の一つの大きなメリットは、地方でもデータ放送ができる、また、きめ細かい情報を的確に放送できる、そしてまた移動体なり携帯電話にも地方から発信できる、そういうメリットがあります。そういう面で、私は、地上デジタル放送時代にはますます地方局の役割を重視しなきゃならないだろうと思っております。
横光委員 業務量はこれから大きくなる。地方の役割も大きくなる。いわゆる地上波デジタルの時代が来れば、多チャンネルの時代になる。そうすると、大量のソフトが必要になる。たくさんの番組をつくらなければならない。しかも、良質の番組をつくっていかなければならない。
 地方局を例にとれば、私は大分県ですが、大分向けの時間帯が今よりも何倍も、大分放送局から流すことが技術的に可能になるわけですね。となりますと、今の大分放送局の要員だけで果たして賄うことができるのか。今でも大変なのに、これから、デジタル化だ、やれ多チャンネルだということで、もっとたくさんのサービスをと言われても、対応が厳しくなる可能性がある。対応が厳しくなると、番組の質の低下ということにつながる危険性もあるわけですね。こういった地方局の、これから大きな課題だと思っております。
 次に、NHK本体と関連団体との関係ですが、現在、総制作のうちに、関連団体、つまり外部に委託しているのは何割ぐらいなんでしょうか。
板谷参考人 お答えいたします。
 今、手元に正確なデータは持っておりません。大体、目の子で言うと、また間違うといけませんので、後から調べますので、済みません。
海老沢参考人 地上波、いわゆる総合テレビと教育テレビで大体二〇%であります。再放送は含んでいませんが、二〇%。衛星放送の方は、七〇%前後だろうと記憶しております。
横光委員 もちろん本体だけでは制作には限度があるわけですから、外部に委託する、これは必要かと思いますが、これも度が過ぎると、先ほど質問がございましたように、NHKの肥大化ということにもつながりかねない。これが一つですね。
 私は、もう一つは、本体の制作のパワー、これをもっと上げる必要があると思うんです。
 本体の制作のパワーをしぼませてしまうと、おのずと外部の委託の比率を高めなければならないわけでございます。本体で番組をつくることがあって、初めて、外部に委託して、そういった買ってくる番組を、これがNHKのチャンネルで放送するに値するものかどうかということを検証することができる。逆に、番組をつくらないNHKの職員では、外部でつくった作品がいいのか悪いのか判断できなくなる。いわゆるNHKの空洞化ということにもつながりかねない。こうなると、NHKの存在意義そのものが問われかねないわけですが、これは極論ですよ。今言ったのは極論ですが、そういった方向に近づいてはいけないという認識を持っていただきたいということでございます。
 放送局ですから、ソフトをどこまで提供するかという原点、これに立ち返らなきゃならない。この思いをいつも持ち続けながら、本体で制作をして、しかも検証できる目を、検証していくことが非常に重要である。もう時間がございませんので、答弁はいただきませんが、そういった思いを述べさせていただきます。
 また、NHKの本体の職員の数を今のまま守るのかという問題も、これも非常に、先ほどからのソフトとハードの水平分離、ここにもかかわってくると思うんですよ。いわゆるNHK本体がソフト制作集団という形を小さくしてしまえば、単なるテレビの通信社になってしまうわけですね。いろいろなところで番組制作を頼み、そしてよいソフトだけ買い付けて、NHKというチャンネル、ブランドだけつけて、はい、出しますよというのであれば、それこそ水平分離へとつながる危険性もあるわけでございまして、この点はいかがお考えでしょうか。
海老沢参考人 私ども、関連会社を通じて外部のプロダクションに委託をしておりますけれども、これは、あくまでも我々が品質管理をして、いわゆる丸投げではなくて、品質管理をして、最後まで責任を持ってやるという執務をとっております。そういう面で、番組の質の低下を招かないように努力しているところであります。
 いずれにしても、関連会社とNHKとの役割というのはきちっとしながら、いい仕事をしていきたいと思っております。
平林委員長 横光君、時間です。
横光委員 ありがとうございました。
 公共放送であるNHKの放送制作体制、これからこれをどう守っていくのかというのは非常に重要な課題だと思います。預かっている受信料で、できるだけの、可能な限り自前でつくるという制作能力をきちっと確保した上で、まさに放送法にのっとった公共放送としての道を歩み続けていただきたい、このように思うわけでございます。
 先ほどから受信料の重みと申しましたが、受信料の重みはとりもなおさず番組の重みでございます。番組は人がつくっているんだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
平林委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。
 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、荒井広幸君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。荒井広幸君。
荒井(広)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)
  政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。
 一 放送が社会に及ぼす影響の重大性を深く認識し、放送の不偏不党と表現の自由をより一層確保するとともに、視聴者の意向に十分留意しつつ、公正な報道と青少年の健全育成に配慮した豊かな情操を養う放送番組等の提供に努めること。
 二 協会は、放送法の趣旨に照らし、インターネットによる情報提供については、放送の補完利用として適正な運営を図るとともに、子会社等の業務範囲の在り方等については、業務の適正性、透明性を図り、その実効性の確保に努めること。
 三 協会は、視聴者の十分な理解を得るため、業務運営の効率化及び事業全般にわたる情報公開を一層徹底すること。また、協会の経営基盤が受信料であることにかんがみ、受信料の公平負担の観点から、未契約世帯等の解消に取り組み、衛星契約を含む受信契約の確実な締結と受信料の収納を一層徹底すること。
 四 地上放送のデジタル化については、視聴者に対しなお一層の周知・徹底を図るほか、デジタル化の円滑な導入に向けた各種施策を着実に推進すること。特に、アナログ周波数の変更対策については、対策方法を十分検討した上で正確な経費算出を行うとともに、視聴者の理解と協力の下に実施すること。
 五 視聴覚障害者や高齢者に対する情報提供の重要性にかんがみ、字幕放送、解説放送等の更なる拡充と番組内容の充実を図ること。
 六 協会は、災害時等の緊急報道体制の強化を図り、国民生活に不可欠な情報の迅速な提供に努めること。また、地域放送については、地域の要望等を踏まえ、放送番組の充実・強化を図ること。
 七 協会は、国際放送について、我が国の実情を的確に海外に伝えるとともに、海外在留日本人をはじめとする視聴者の期待にこたえるため、番組内容の充実に努めること。
以上であります。
 何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
平林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、片山総務大臣及び日本放送協会会長海老沢勝二君から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
平林委員長 日本放送協会会長海老沢勝二君。
海老沢参考人 日本放送協会平成十四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。
 本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいろいろいただきました御意見並びに総務大臣の意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。
 また、ただいまの附帯決議につきましては、協会運営の根幹をなすものでございますので、これを体しまして、執行に万全を期したいと考えている次第でございます。
 まことにありがとうございました。
    ―――――――――――――
平林委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
平林委員長 次回は、来る二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十六分散会


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