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第9号 平成14年4月2日(火曜日)

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平成十四年四月二日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      河野 太郎君    左藤  章君
      佐藤  勉君    新藤 義孝君
      滝   実君    谷  洋一君
      谷本 龍哉君    野中 広務君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   議員           長妻  昭君
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府参考人
   (総務省大臣官房総括審議
   官)           板倉 敏和君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (総務省情報通信政策局長
   )            高原 耕三君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            鍋倉 真一君
   政府参考人
   (郵政事業庁長官)    松井  浩君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         中野 秀世君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
三月二十九日
 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
は本委員会に付託された。
三月二十八日
 特定非営利活動の促進のための地方税法の一部を改正する法律案(衆法第六号)の提出者「岡田克也君外九名」は「岡田克也君外八名」に訂正された。
四月一日
 地方議会議員の年金制度改革に関する請願(池田元久君紹介)(第一一九六号)
 同(石毛えい子君紹介)(第一二七五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
 消防法の一部を改正する法律案(海江田万里君外三名提出、第百五十三回国会衆法第二一号)
 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官板倉敏和君、総務省自治行政局長芳山達郎君、総務省自治財政局長林省吾君、総務省情報通信政策局長高原耕三君、総務省総合通信基盤局長鍋倉真一君、郵政事業庁長官松井浩君、消防庁長官石井隆一君、厚生労働省大臣官房総括審議官中野秀世君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、厚生労働省職業能力開発局長酒井英幸君及び国土交通省河川局長竹村公太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田六左エ門君。
吉田(六)委員 皆さん、おはようございます。大臣、おはようございます。
 久しぶりに質問に立たせていただけるものですから、ありがたいなと各位に感謝しながら、郵政三事業のかかわりとそれからデジタル化という、この二つに絞って質問をさせていただきたいと思います。
 私は、二度当選させていただきました。そして、最初に当選させていただいて、国会議員になり、なかなかまだ右も左もよくわからない、その途端に大きな渦に巻き込まれました。いわゆる橋本行革でございます。そして、そこで、郵政三事業、この公社化に向けてという議論をさせていただきました。
 議論をしながら先輩各位からいろいろ教わる、そして教わりながら、またわからないながらも、どの数字が国民にとって大事なんだろう、どうしたことが国家にとって得なんだろう、常にこの一点に絞って、未熟ながらも精いっぱい話を聞いたりさせたりしていただいたことを思い出します。そして、最後には、沖縄の式典に参加をしておられました橋本総理、無理やりその後のレセプションはやめて帰ってきていただき、この決着に向けて決断をいただいたというようなことも今思い出します。たしか十一月の二十一日の夜半のことだったと思います。
 そのときのことについてでありますが、たしか党内での議論、橋本行革の折は民間参入はなしと決めたと思っています。しかし、法文化されるときに民間参入を検討するという形で発表がなされました。どのような経緯でこうなったのかな、いまだに私は疑問であります。もし、そもそも無理なことを書き入れたとしたならば、そうなった経緯が知りたい。だれが検討するという言葉を入れたのか。また、だれにも相談なく法律に潜り込ませたとしたならば、こういうことが今までにも法律ができる経緯であったのだろうかということ。参入を検討するということであって、するしないということではないと私はあの当時から理解していますけれども、この点についてひとつ明快な御答弁をちょうだいしたいと思います。
片山国務大臣 今吉田委員からお話ございましたが、平成八年十一月に内閣総理大臣の直属の機関として行政改革会議というのがつくられたわけでございますが、その行政改革会議の最終報告書の中で、郵政三事業については、さまざまな議論の後、郵便事業への民間企業の参入について、その具体的条件の検討に入る、こういう提言がなされたんですね。
 その提言を受けて、行革基本法、中央省庁等改革基本法に同じ文言がそのまま入ったわけでございまして、私もその当時の状況に必ずしも詳しくありませんけれども、行革会議の提言がそのまま法文の中に入って、閣議決定されて国会に出されて、国会ではそれをお認めになった、こういうことでございます。この条文は、中央省庁等改革基本法第三十三条の第三項、「政府は、郵便事業への民間事業者の参入について、その具体的条件の検討に入るものとする。」こういうことで、文言だけ読むと、民間事業者の参入を当然の前提として、その具体的条件を検討しろ、こういうふうに、素直に読めば読めるわけでありますが、恐らく、入れるについてはいろいろな経緯その他が私はあったと思いますけれども、それは必ずしも十分承知いたしておりません。
 この文言を受けまして、平成十二年の十二月ですから森内閣のときでございますけれども、その行革大綱の中に、公社化とあわせて民間事業者の参入を実現すると、行革大綱にそれが書かれたんですね。
 そこで、公社化は平成十五年中実施でございますので、私どもの方では、役所だけではと思いまして、昨年の八月に郵政事業の公社化に関する研究会という諮問機関をつくりまして、それで民間の有識者の方に御議論いただいて、民間事業者の参入についてどうしようかと。そうしたら、三つ案があると。条件つき全面参入と部分参入と段階参入、こういう御提言をいただいたんですが、その中で、その三つの中では、競争ということを考えると、競争の効果を重視する観点からは、条件つき全面参入の選択肢を採用することが考えられる、こういう答申を公社化研究会からいただいたんです、十二月に。
 それから、総理はかねがね、私はぜひ全面参入を実現してほしい、こういうことのお話がありましたので、私は、ユニバーサルサービスを確保するということは必要ですよと、その上での検討は、公社化研究会の御答申もありますから検討しましょう、こういうことで今具体の法案の検討に入っておりまして、まとまれば国会に出させていただこう、こういうふうに考えております。
吉田(六)委員 ありがとうございました。
 総理が民間全面参入を希望しておられるという御答弁、これはつとにオープンになっておりますものですから。
 ただ、私の個人的な考え、主張としますと、その言葉を聞きますと、少し、今席には差し支えのあるようなことも述べたくなりたい性分でありますけれども、オフィシャルな席でありますのでそのことは控えさせていただきますけれども、最後まで、幅広な、やはり民主主義のルールにのっとった、国民の思いをだれが代弁するのか。そして、山間も僻地も離島も、おかげさまで、野党、与党問わずに議員が輩出させていただいております。そうしたところの皆さんの、今、現状の、間違いなく確かな、信頼の置ける、そして、従事している職員は退職しても生涯、死ぬまで知り得た秘密は守るという、こんなかたくなな中で整えられた、端的に言うと、国民の宝、財産とも言われるべきこのフルネットワーク、ユニバーサルサービス、これだけは私はやはり守られるように、その方向でひとつお考えをいただきたい、このように思います。大臣には、これは要望として申し上げさせていただきます。
 そして、三事業につきましてはこのようなところでおさめさせていただいて、次に、随分と委員長様の御指示のもとでこの平場で議論させていただいたデジタル化にかかわることでありますけれども、いろいろとちまたでこのことを御意見を聴取して歩きますと、やはり議会は定かだったなという思いを強くいたします。
 それは、何を言わんとするかといいますと、いわゆる電波法の一部を改正する法律案に対する附帯決議をつけた、この附帯決議の内容が、本当にこれからデジタル化を進めるに当たって議会は確かな附帯決議をつけておられるんだな、こう思いました。
 その三といたしまして、
  地上放送のデジタル化については、視聴者の立場にも配慮し、柔軟な対応を行うとともに、その必要性について周知・徹底を図ること。
 四 いわゆるアナ・アナ変更に関わる経費については、それを最小限とするよう努めること。
 五 地上放送のデジタル化により地方民間放送事業者の経営への影響が懸念されることにかんがみ、地方における安定的なデジタル放送の実施のため、公的支援の充実等に努めること。
というこの三項でございます。
 過日もこの委員会で、いみじくも質問者の質問の中に、これはテレ朝に限ったわけじゃなくて、ずっと数字が出されたものですから、その中の一つを引用しますと、営業収益二千億、そして経常利益百八十三億。まず、二千億売って一〇%、準じて、各民放すべてが、一千億売っているところは大体百億の利益というような見当なわけです。この膨大な利益を上げているキー局はともかく、地方局は、その内容がこれとはまた手の裏を返すような状態であります。
 こうした中で、まず、前年度予算化した額の倍以上の金額が必要だと言われました。この結果、これらはすべて国民や、あるいは地方局の負担になるわけですが、これらの調査に対して、総務省の調査はずさんだったんじゃないのかというようなことをおっしゃる方もおられますので、この際、ここのところを明確にしていただきたいと思います。
片山国務大臣 恐らく吉田委員言われているのはアナ・アナの問題だと思いますけれども、我々は、七、八百億でアナ・アナ変換をやろう、ローカル局へ援助しよう、キー局そのものは自力でやってもらおう、こういうことでございましたが、調べてみましたら、西日本の電波が、特に九州、瀬戸内海、関東の一部が大変電波が混信をしておりまして、どうも七、八百億じゃとてもできない、二千億ぐらいかかる、こういうことで、調査がずさんだといって、実は机上の調査だったんですね。机の上の想定でございまして、実際やってみると、やはりなかなかそうじゃなかった。
 こういうことですから、今、できるだけ経費を切り詰めるように、ぎりぎりでどのくらいかかるかということをこの夏までに報告をまとめよう。それで、これは国が補助することにしておりますから、電波利用料で。これは、やはりふえても電波利用料でやるように財務省と協議しよう、こういうふうに思っておりますが、とりあえずはできるだけ経費を切り詰めてセーブさせる、こういうことでございます。
 それから、デジタル化の方は一兆以上のお金がかかるんです。民放が五千億、NHKが五千六百億かかるんですね。これをどうするか。大変な議論でございまして、そこで、私どもの方では、法律をつくって税制や金融の優遇措置をすることを考えておりますけれども、それだけで足りるのか、足りないのか。特にローカル局ですね。その辺は、今後、十分検討してまいりたい。こっちの方は二〇一一年までありますから。アナ・アナはこれから四、五年で終えよう、こういうことで、二〇一一年にはアナログをやめてデジタル一本にする、こういう電波法の改正を去年お認めいただきましたので、こういうことでやっていきたい、こういうふうに思っております。
吉田(六)委員 ありがとうございます。
 委員各位は大方このことは御存じなんですけれども、今大臣のオフィシャルな答弁として事情を明確にしていただき、またタイミングもはっきりさせていただいた。このことがオープンになりますと、これにかかわる多くの方々、あるいは関心を持つ国民も安心いただけるもの、そのように思っています。
 いま一度申し上げますけれども、当初、デジタル化に向けて、この附帯決議を読み上げましたとおり、ぜひこのことを徴して、無理なく、丁寧に、そして二〇〇六年に向けて、二〇〇三年に向けて御努力がいただけますように御希望申し上げさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、安住淳君。
安住委員 おはようございます。
 私は、総務委員会できょうは初めて質問をさせていただきますが、大臣、総務委員会では初めてです。三十分しかないので、郵政事業の改革の問題と、きょうは中島人事院総裁においでをいただきましたが、天下りの問題について、時間がありましたら質問をさせていただきたいと思います。
 さて、片山総務大臣、先月の二十九日に大臣は官邸に行かれました。それで、小泉首相と民間参入の条件等について、話し合いをしたのか、総理から何らかの具体的な指示があったのか、わかりません。しかし、その前の日に、実は総理は金澤事務次官も呼んでいるんですね。
 私は、立場は逆じゃないか、最初に大臣呼ばなきゃおかしな話で、その辺がどうもよくわからないので、この二十九日に総理は何をおっしゃったのか、片山大臣に対して。それを、丁寧に、偽りなく、まず報告をいただきたいと思います。
片山国務大臣 先々週、総理の方から、例の郵政関係四法案、出す予定でございますけれども、それについての状況を聞きたいということがありまして、私が話をすることになっておったわけです。ところが、閣議が長くなりまして、国会の関係があって、もうほとんど時間がなくなりましたので、総理、おおよそのことはこうです、詳しくは事務方に説明させますということで、金澤次官以下がその次の日に説明に行ったんです。
 そうしたら、総理の方から、このことについての回答が欲しいという何点かの提示がありまして、それが、先週の木曜日でしょうか、木曜日に返事に金澤次官や、それは事務方に対する総理の注文ですから、答えに行く、できれば大臣も一緒に、こういう話でございましたが、申しわけありませんが、総務委員長さんの招宴がございまして、私はこれはぜひ出させていただこう、こういうことで、総理に事務方だけ説明して、私は次の日に行きますからというので、金曜日に、閣議が終わった後、総理のところに行ったわけです。
 もうそのときは事務方と総理の間で大体話ができていまして、私は万般の話で、特に郵政につきましては、非常に四法案が膨大な量があるので、各省の折衝や法制局審査が手間取っておりますのでおくれます、三月中を目指しましたけれども、三月中に出せませんので、それは御了解くださいと。それはわかりましたと。こういうことで、そこで、民間参入につきましては、なるべく民間事業者を参入できるような条件を考えてほしい、こういうことですから、それについては幅広く関係者の意見を聞いて検討しますと。郵政の関係はそれだけでございます、ほかの話もございましたので。これはもう間違いございません。
安住委員 今の話を聞いて、それが事実であれば、私は、総理というのはわからない人だなと思いますね。政治主導といって、自民党からは批判もあるようですけれども、改革案を出されたんでしょう、総理は。今の話を聞いたら、重要な点は事務方にまず説明して、それから万般にわたって大臣という話で、私は、政治主導と言っている総理が大体政治主導をわかっていないんじゃないかと実は思うのが一点。
 それから、片山総務大臣、民間参入についてはできるだけ条件をつけないでやってほしいという話ですけれども、さて、これは中身です、これから。実はもっと具体的な中身のことを話したんじゃないかというふうに私は思っているんですよ、総理は。
 なぜかというと、これは新聞記事をとりましたけれども、なぜ新聞記事をとったかというと、その次の日の新聞記事は、総理がそれを受けて会見しているんですよ。毎日記者会見しているんですね、総理は。その中で、具体的なことをどうも言っているんですね。総理の言ったことをそのまま言いますと、民間事業者の参入で国民の利便が向上する、だから、それを阻害してはいけないという話をした上で、満遍なく約十万カ所に設置をする郵便ポストの件なんかについては、これは特定の民間会社からしたら高い障壁をつくっていると思われるので、こういうのはよくないのではないかと。
 片山大臣、具体的に総理はこういう話を本当は大臣になさっているんじゃないですか、いかがですか。
片山国務大臣 いや、全くありません。全くありません。総理が言ったのは、民間が入りやすいような条件をできるだけ考えてくれと。ただ、私は、それは事業者は事業者で考えるんだから、だから事業者の言うとおりにもいきませんよと言っているんです。総理に言いましたよ、事業者は事業者の立場で物を言うから、事業者の言うとおりにはなりませんよ、だから幅広く意見を聞きます、そう言いました。
 それから、条件については、大分前に総理には、とにかくユニバーサルサービスの確保ですから、一つは、料金は一緒です、最高限八十円ですと。それから、一通でも引き受けて配ってもらいますと、日本じゅう。それからもう一つは、ポストについては、数はともかくとして、ユニバーサルサービスにふさわしいだけの数を置いてもらいます、こういうことで、ただ、今事務方が検討しているのは、いろいろな基準で、十万ぐらいが一つの案かな、こういうことで検討しているようであります。郵便局が持っているのは十七万であります、ポストは。そこで、これはまだ結論を得ているわけではありませんから、国民にわかりやすいような基準をつくって、どれだけのポストを民間が入ってくる場合にはつくってもらうかは、十分な検討をして、いろいろな人の意見を聞いて決めたい、こういうふうに思っております。
安住委員 聞くところによりますと、片山総務大臣は、昨年の十二月以降、自民党の総務部会には出入り禁止になっているというんですけれども、事実でしょうか。
片山国務大臣 いやいや、そんなことありませんよ。そんなことありません。(安住委員「行ってないんじゃないですか」と呼ぶ)私はいろいろ忙しいものですから副大臣以下にお願いしておりますけれども、出入り禁止じゃありません。自民党は度量の広い党でございますので、そんなことありません。
安住委員 そこで、そうは片山大臣おっしゃっても、明らかにこれは、仲よくやっているというよりは、意見の対立があるなということはだれの目から見てもわかるわけです。
 そこで、十二月の十四日、総理と片山大臣の会談で、今ちょっとお述べになりました合意点について、これは自民党の中では寝耳に水であったという意見がある。特に、この総務委員会の理事をしていらっしゃる荒井さん初め、大変厳しい指弾をしたというふうに私聞いているんですけれども、これは事実ですか。
片山国務大臣 十二月に話したのは、公社化研究会が答申をまとめるについて、総理から、どういうことになっているんだということですから、私は、三つの案を今公社化研究会では民間参入については検討しております、一つは部分参入、一つは段階参入、もう一つは条件つき全面参入です、こういうふうに話しました。そこで、大勢は、いろいろな議論があるけれども、段階参入と条件つき全面参入が強うございますと。総理は、ぜひこの際全面参入をと、これはもちろん総理の御持論ですから。こういう話がありまして、あとは公社化研究会にまとめてもらいますということで、公社化研究会の答申は、三つになったんですね、先ほども言いましたけれども、吉田委員の。その中で、三つの中で競争の効果を考えたら条件つき全面参入が選択肢ではないか、こういう御提案をもらったんです。
 あれは、公社化研究会の答申の状況の説明と、それについての総理の質問に答えることで、その際、条件というのは、我々はとにかく今の郵便局ネットワークと同じような条件でやってもらわなければいけません、ユニバーサルサービスの確保です、ポストを含めて、そういうことを申し上げたわけであります。
安住委員 その中で、片山総務大臣御自身の意見はどちらですか。
片山国務大臣 私は、正直言いまして、総理には、EUが段階的参入を今やっているんですね、段階的参入の方が、入る方も入ってこられる方もベターではないかと私は思っております、こういうふうに申し上げました。
 しかし、総理は、それもどうのというような御意見で、ぜひ全面参入という方で検討してほしい、こういうことを言われました。
安住委員 つまり、総理は全面参入、片山総務大臣は、漸進的というか、EU的に段階的な自由化ということですね。自民党の総務部会の大半は、民間参入も基本的にはだめ、部分参入なんかとんでもない。三つの意見ですね。
 さてそこで、私は総務委員会の筆頭理事をやっていて、これはまた不思議な現象だと思っているんですね。これは、今回の国会では総務省関係の法案がたくさん出ております。しかし、その中で最重要法案は何かといったら、郵政公社化の法案とこの信書便関係法案ですね。ですから、筆頭同士で話をしても、この話はまず前提に来ないといけない。ところが、不思議なことですね、四月ももう一日を過ぎたのに、一向に法案を出してこない。重要法案だといいながら法案を出してこないというのはどういうことかと私は思っているんです。かれこれあと二回日曜日が来たらもうゴールデンウイークですよ。国会延長してまでやるという話なんですか。つまり、重要法案だと言う以上は、これはもう既に出してなきゃいけない。
 私は、このおくれの責任というのは、この法案が出された後十分これは質疑をしますけれども、片山総務大臣、これは国民に向かっても、この法案のおくれは、もう明らかにこれは三人の意見が対立をしているわけですけれども、特に信書便法については、これは私は政治責任を感じてもらわないといけないと思いますけれども、いかがですか。
片山国務大臣 私どもの方も、できるだけ早く国会へ出させていただいて御審議を賜りたい、こう思っておりますけれども、先ほど言いましたように、この法案の基礎になる公社化研究会の答申をいただいたのが十二月のおしまいの年末でございますし、それから、とにかく二百五十ぐらいの法律をいじらないといかぬのですね、重要法案であるだけに物すごく幅が広いんです。それから、関係省庁も相当ありまして、それとの調整もありますし、法制局の審査も大変丁寧にやってもらっておりまして、我々としては、ぜひ三月中と思いましたけれども、四月になりましたが、できるだけ早く出すように頑張らせていただこう、こういうふうに思っております。
安住委員 今のは実は核心に触れた答弁ではございません。つまり、信書便法をまとめるのに手間がかかっているのであって、二百も三百もある法案の精査なんというのは、それは事務的な話。ですから、信書便をしっかり出してもらいたいということです。
 大臣、これは我が党の考え方をちょっと明確に言っておきますが、郵政公社法と信書便法というのは密接不可分です。つまり、新郵政公社は、新しい信書便法が当然かぶってくるわけですよ。そうですね。郵政公社法だけ成立させて現行の信書便というのではないわけですよ。ということであれば、これは明らかに、分離論というのは出ていますけれども、これは私は容認できません。これは一体ですから、一体で国会に出していただくことを強く要望しますが、このことについて御答弁を願います。
片山国務大臣 我々としては、関係四法案を同時提出いたしたい、こういうふうに思って、今そのために一生懸命の努力をいたしているところであります。
安住委員 いやいや、もうこれは日にちのないことですから、同時に出すということを約束してください。それは約束していただかないとだめですよ。どうぞ。
片山国務大臣 同時に出すように最大限の努力をいたします。
安住委員 与党の筆頭理事を含めて、理事の方々はぜひ、これは出すというふうに約束していただいたというふうに我々はとりますから。つまり、これは重要法案だから私は言っているのです。先行逃げ切りというのは競馬にはあるかもしれませんけれども、そういうことはだめです。信書便法こそがまさに今度の改革の、いわば逆の意味で私は骨になると思います。
 そこで、片山総務大臣、これは私は出していただかないと、野党は議論にはなかなかかめないのですよ。しかし、総理はどうですか。郵政公社の改革というのと、政治的に自分が今、非常に支持率が下がって窮地に追い込まれている、このことをてんびんにかけて、不純な動機とは言わないけれども、このことで突っ張っていくことで内閣の支持率を上げようという、少し政策論から離れた政治的な動きをしているのではないかと私は思うのですけれども、片山総務大臣、いかがお考えですか。
片山国務大臣 いや、そんなことは全くないと私は思います。
安住委員 全くないといいながら、本当は全く思っているわけですね。
 これは与党サイドが、議院内閣制度ですから、しっかりまとめて出してきてくださいよ。つまり、部会の手続がどうのこうのなんということは、それは与党側の問題であって我々には何の関係もないですから。我々としては、問題点をしっかり出した上で、与党サイドが出してくる郵政公社化法と信書便、関連法案、すべてが本当にいいものであるかどうかというのを、今度はじっくり一カ月かけてこの委員会でやるわけですから、大臣、そこでそごがあってはならないはずでしょう、与党の中で。
 しかし、お話を聞いていると、どうも心もとないわけであります。それは明らかに、思っている世界が違うのだと私は思うのですね。それはなぜかといったら、小泉総理が、これは特定の会社のことは私は名前を申し上げませんけれども、やはりそういうことを念頭に言っているのではないかという旨の発言を部会でしている方もおられるやに聞いております。ですからこれは、総理に従うのか、総理が自民党に従うのかというテーマですよ。最後は片山総務大臣はどちらに従いますか。
片山国務大臣 それは総理と党の意見は一致すると思いますので、それは同時に国民の考え方に近いと思いますので、一致したものに従います。
安住委員 これは、とにかく総理に最後は政治責任があるわけですから、これは内閣の責任でぜひ一日も早く法案提出をされるよう、我々としては強く要望いたします。
 ところで、この郵政事業にかかわる、昨年十一月から特定郵便局長の調査をしましたね。いろいろ出てまいりました、三月二十九日付でその調査結果が出てまいりました。十六局七十五件、経費捻出に伴って、非常に不適切で事務処理上の遺漏があったと判明したものがある。しかしこれは、やはり身内の調査だから甘いのじゃないかという指弾を受けております。大臣、いかがですか。
片山国務大臣 これは本省のといいますか、東京の首席監察官室と地方の郵政監察局が一緒になって相当丁寧に調べましたから、今回はそういう批判が出ないようにぜひしてほしい、こういうふうに私は郵政事業庁長官にも強くお願いしましたので、そういうことが一部報道等では言われておりますけれども、私は厳正に行われたものと考えております。
安住委員 そもそも、これからは郵政公社の議論をしていかないといけません。私自身は、郵政公社の設立については前向きです。しかし国民の皆さんに、特定局のあり方というのは、戦前から歴史があるわけですよ、その中でいろいろな不明朗なものがあった。その象徴的なことが多分、渡し切り費という問題だったと思うのですね。渡したまんま、渡し切りですよ。つまり今まで、こういうことが世の中に通用するのかという議論が最初に出たときに起きたわけであります。それに対して、本当に調査をしたらこの程度だった、片山大臣、これはだれも納得しない調査ですよ。
 つまり、今後公社としてしっかりやっていって、国民の皆さんの不信感にこたえるためには、やはり身内に調査させてはだめなんじゃないですか。調査をやり直すぐらいの気持ちがあれば、ああ、なるほど、この特定局を含めてしっかりやっているんだということであれば、公社に移行したって国民の皆さんの信頼を得られると思うのです。郵便事業そのものは確かに不信感はないと私は思いますよ、国民の皆さんには。ただし、それを運営する今までの体制、特にこの特定局の問題というのは、高祖事件以来、政治とのかかわりだって随分言われております。そういう中で身を処するときに、トカゲのしっぽ切りのように、十六件しかありませんでしたという話にはならないのです。
 ちなみに、私がちょっとかかわったことで言うと、土地改良区の不祥事が農林省でありました。その後、一昨年農林省は徹底的な調査をしました。自民党に対する党費の納入等々に対しても、返還をさせております。つまり、あの農林省ですらと言ったら不謹慎な発言になりますが、農林省ですらそれぐらい身を律しているのです。今、そういう時代です。
 特定局にも、ほとんどの人がと言いますが、あえて申し上げますと、自民党の党員になっている方はたくさんいらっしゃいます。そういう背景の中から高祖事件が起きました。私は、郵政公社になったら政治との一線を画してもらわないといけない、それから、身内から特定局長を選ぶ、そういう制度も、国家公務員の身分をそのまま付与するのであるから、やはりわかりやすい体制にしてもらわないといけない。そういうことからいったら、この調査に基づいて再発の防止を図るという、このペーパーだけではとても私は反省しているとは思えませんよ。いかがですか。
片山国務大臣 私は、先ほど言いましたように、監察関係が中央と地方で全力を挙げて調査をした結果で、十六局につきましてはこれは大変厳正な、停職だとか減給だとかの処分もいたしましたので、それは適正にやった、こう私は思っておりますし、渡し切り費は本年度から、この四月から廃止いたしまして、公社化になりましても渡し切りという方式はとりません。
 それから、特推連の会長局というのがよく問題になりますので、特推連の全国組織とブロック組織は新年度からやめることにいたしました。それぞれ末端の特推連は、もちろんこれは業務連絡のためにありますから、これは残ってもらいまして、地方郵政局とタイアップしてやっていただくような、こういう新体制にいたしましたし、公社化についてどういう体制をとるかは、現在、公社化法を含めて検討中でございまして、ぜひ、国民の皆さんから見て納得できるような体制にいたしたい、こういうふうに思っております。
安住委員 ぜひ、やはり目線は、視点は国民の皆さんの視点。私は、特定局長さん初め郵便局員、たくさんまじめな、友人もいます、一生懸命やっている方をよく知っています。だからこそ、渡し切り費等々の不明朗な問題については、やはりしっかりと、やめるからいいじゃないかではないのです。そうじゃなくて、今までやってきたことの反省を踏まえて、特に私が言っているのは、特定の人間じゃなくて構造的に、政治利用したと言ったら語弊があるかもしれないけれども、政治との接点については厳に戒める、そういう姿勢をしっかり持ってもらわないといけないと思っておりますので、ぜひ、その点だけ御留意をいただきたいと思います。この問題は同僚議員がまた後日やると思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、中島人事院総裁、おいでをいただきましてありがとうございました。
 限られた時間でありますが、私は、今回人事院が出した天下り白書を見て、非常にがっかりしました。なぜがっかりしたか。前年に通達みたいなのを出したんでしょう。それで四十件近くに減っているのに、通達が切れた途端に二十九人増。六十九人が、とりあえずこれは高級官僚だけですけれども、天下りがぼんとふえちゃった。これはどう思われますか、総裁、このふえたことについて。私は、モラルの低下じゃないかと思うんです。いかがですか。
中島政府特別補佐人 今、厳しい御指摘がございました。
 どの程度の人数の人間がその組織から退職していくかというのは、もう先生大きな組織で仕事をなさったからよく御存じだと思いますけれども、それぞれの組織の職員構成というものとかなり深くかかわっているというふうに思います。したがいまして一概に批判するわけにいかないわけでございますけれども、こういうふうにふえた原因というのを人事院なりに分析してみますと、一つは、昨年の一月に新省庁体制がスタートするということで、平成十二年いっぱい各省庁はかなり人事の凍結をしておったということが一つ背景にあると思います。
 もう一つは、私たちの方で、一度自然体で審査してみようじゃないかというので、各省庁に対して自粛を特段要請しなかった。この自粛というものの要請というのは、法律上の根拠があるわけでございませんで、事実上の行政指導といいますか事実上の要請ということで行っておったわけでございますけれども、それをやめまして自然体で臨んだときにどういう姿になるだろうかということで、一度出してみて、これをめぐる問題というのをまた議論していただこうじゃないかということでこういう姿になったというふうに御理解いただければというふうに思います。
安住委員 総裁、ちょっと大きい問題なので、私は二点について申し上げます。
 一つは、人事院の存在が問われるような話ですよ。つまり、通達を出して、一時期、一年だけちょっと減ったと。そうしたら大きな省庁になって、いわば在庫一掃なんと言ったらちょっと語弊がありますが、しかし通達がなくなった瞬間にぼんと天下りがまたふえたと。天下りといったって、これは特殊法人や公益法人は含んでいないんですからね。露骨に関係する民間企業に行った高級官僚六十九人という意味ですよ。つまり、これを抑えていかなければいけない時代に、また逆行していることをやっているわけですよ、各省庁。
 これに対して、総裁はもっと強い何かメッセージを発しないとまずいんじゃないですか。これがまず第一点です。どうですか。
中島政府特別補佐人 よく御指摘はわかります。わかりますけれども、ひとつ長いスパンで考えてみた場合に、現在の法律で私たちに与えられている権限、立場というものをそのまま素直にとにかく承認事務に反映させていこうじゃないかということでこういう姿になったわけでございまして、ここから一つ議論がスタートするというふうに我々は実は考えております。
安住委員 そこでもう一つの問題が、まさにそこからの議論ということになるわけです。これは、公務員改革です。これは私は大議論になると思いますが、この年初めに出た内閣府がやっているんだか総理が直属でやっているんだかわかりませんけれども、公務員制度改革で、どうですか、今度は人事院の手を放れるんですね。各省庁の大臣の承認事項になるということになるんですよ、この天下りが。
 これは、制度をいじくるというのは一見いいところもありますが、仮に国交省の例だけ見ますと、国交省で退職して再就職する者というのは三百人を超えているんですよ、毎年。これを一々例えば国土交通大臣がチェックして承認するような制度というのは、逆に言うと、書面を見ないで判を押すことはもう目に見えているんじゃないかと私は思うんですけれども、これは人事院総裁としていかがお考えですか。これは改悪じゃないですか。
中島政府特別補佐人 この改正案が世の中に出ましてから、いろいろな議論が実はございます。御存じだと思いますけれども、ジャーナリストとかあるいはまた評論家とか、大学の先生の中でも非常に厳しい意見を申し述べております。したがいまして、そういう人たちの意見というものをいろいろ私たちの方で分析してみますと、今先生がおっしゃいますように、結局お役人さんのお手盛りの運用になるんじゃないかという批判がございますし、そのことは私たちも、この制度の改革案を作成する過程で指摘してきたところでございます。
 したがいまして、政府としての案がまとまったわけでございますから、国会の場でいろいろな立場から御議論いただければというふうに私は考えております。
安住委員 大臣、今聞いていただいたとおりなんですよ。これは多分、深い問題がもう一つありますよ。確かに、五十六歳で今退職するというのは、そのまま世間にほうり出されたら、私だって再就職先を必死に探しますよ。しかし、知らないところに行ったって相手にされないんだから、自分が行政官庁にいたところでおつき合いしたところで何かをするというふうな構造は、わからぬわけじゃないんです。ですから、公務員制度全体の改革の中で天下りをやはり規制しないとだめなんですよ。
 ところが、どうですか。政治主導にして、今度は承認事項を政治家にするなんといったって、これは改革じゃないですよね。大体、根本にメスを入れないんだから。構造改革やろうなんて小泉さんは格好いいこと言っているけれども、何にもそんなの直っていないですよ。総務大臣、いかがですか。私の考え、正しいと思いませんか。
片山国務大臣 天下り問題だけじゃなくて公務員制度全般について見直そう、こういうことでございまして、今委員が御指摘のことを含めて議論いたしておりますので、最終的にどういうことになるのか。この天下りも、人事管理者というか任命権がある者にやった方がもっと厳しくやるんじゃないかという意見もあるんですね。そのためには基準をしっかりつくって全部公表させて、そのチェックをやって、こういうことでございまして、そこは第三者機関にやった方がいいのか、任命権者がやった方がいいのか、これはいろいろ議論があるところだと私も思いますけれどもね。
 そういうことで一応現在の公務員制度改革大綱をまとめておりますので、その点は、私どもの方じゃなくて行政改革担当大臣の方が中心になって、私どもの方にももちろん連絡その他ありますけれども、そこでまとめておりますので、引き続いてよりいいものにするように私も努力してまいりたいと思います。
安住委員 私は、その行政改革担当大臣が頼りにならないからこうやって片山大臣と議論しているんですよ。さっぱり言ってもだめだから。格好いいことはテレビで言うけれども。
 つまり、大臣、これはもう議論の余地のない話。私も、渡り鳥なんというので三年も四年も前からずっとやっているんですよ。これは、もうみんなわかっていることじゃないですか。何が今議論しているですか。今は行動するときですよ。規制をしないといけないときですよ。公務員制度改革なんて、もう結論出して、法案を今国会へ出さないといけない時期じゃないですか。
 人事院総裁、最後に。人事院の存在問われますからね。もっと言うべきことをしっかり言って、公務員制度、今みたいな大臣の承認になるのが間違いだというのだったら、間違いだとはっきりおっしゃった方が私はいいんじゃないかという意見を申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、伊藤忠治君。
伊藤(忠)委員 私がいただきました時間を、テーマを絞りまして、一つは長期増分費用方式、国会審議の法律改正の経過がございまして、その問題をまず第一点。二点目は、ユニバーサルサービスの問題を第二点。時間が限られておりますので、なるべく焦点を絞りましてお聞きをしたり、私の考え方を述べたいと思います。
 まず、長期増分費用方式はLRIC方式というんですが、これが導入されましたのが二〇〇〇年の通常国会の事業法改正でございます。それまでは、実際費用方式、ヒストリカル方式という接続料のコスト計算が行われていたわけですね。これが長期増分費用方式、一口に言いますと、仮想網を前提にしました費用の実態を反映していない方式に変えるということに、当時の郵政省ですが、法改正を出してきたわけです。随分これは議論になりました。
 そういうことをやりますと、言うならば、安いとこ取りで仮想網を構築する場合に、どれだけの投資をやればいいのか。これはコスト計算のモデルでございますが、ということになりますと、行き着くところ、回収できないような投資は、経営はやりませんから、それを法律でもって規制を加えてやらせるということは、結局、回収できない投資をやらされるのだったら、そのような投資はインセンティブが働きませんから避けようと思うと。
 めぐりめぐって、これは今の基本インフラであるユニバーサルサービスと一体的な関係にありますが、そのような電気通信の骨幹にかかわる基本的インフラが維持できませんから、このネットワークというのはだんだんと疲弊をする。行き着くところ、崩壊を招くというようなことになっていく。だから実際費用方式からLRIC方式に改悪することは反対だということを私たちも当時の国会審議で、これは与野党含めて意見が出ました。冷静に考えると将来はそういう問題を引き起こしますよ、だからこれは導入すべきではないと。
 日本だけが、言うならばヨーロッパも一部ありますが、日米交渉でも大変問題になりまして、がんがんと日本政府に対してUSTRがLRIC方式を導入しなさい、こういうような値幅でもって接続料を下げなさいというふうに迫ってきた本体のアメリカが、御本尊のアメリカですら、一部市内回線は適用していますが、州内の市外回線や州際通信はそういうものを一切適用していないわけですね。にもかかわらず、USTRが日本に対してがんがん日米交渉の場で、言うならば、見ておってこれは押しつけに近い、そういう場面がずっと続いてきた、その過程で起こった法改正でございます。
 もう一度強調いたしますが、交わされた議論の特徴点は、LRIC方式というのは仮想網を前提にした算定方式であって、いかにして料金を値下げするかが目的である。その結果が何をもたらすか、このことを政府は読み取っていない、長期展望のもとに考えていない。これが一点。
 二点目は、コストが回収できないようでは投資のインセンティブは働かない。経営は、投資の回収が可能であり、しかも、これにプラスして適正な利潤が確保できるという前提にあって投資は成立するものであります。
 そういう観点から考えると、全く市場経済や経営の基本を否定するようなLRIC方式を導入するということになれば、国の基本的な通信インフラは、つまるところ維持できなくなる。そういうことを考えてこの法改正をやられるんですか、こういう疑問なり反対の意見がかなり強く出されました。
 しかし、何といっても閣法は強いわけでございまして、多数決でこの改正案が通ったわけですが、審議の過程で、事業者の間にこういう考え方でこの問題の導入を図ろうということが最終場面で行われまして、四年間で二二・五%下げる、この期間内の下げ幅配分は申請するNTTの経営判断による、こういうことを前提にしまして審議に決着をつけまして、最終的に附帯決議が採択されました。附帯決議ではこういう文面がございます。
 「長期増分費用方式の導入に際しては、ユニバーサル・サービスの確保及び東・西NTTの経営・利用者料金に悪影響を及ぼすことがないことに留意し、効率的な投下コストの適正な回収が図られるよう、モデルの選択、適用、実施を慎重に行うこと。」二つ目が、「長期増分費用方式は、諸外国においても一部において導入されているに過ぎない方式であり、この規制方式自体の有効性については、今後十分な検証を行い、必要な見直しを行うこと。」こういう、ある意味では、これまでの附帯決議と比較をいたしますと、非常に具体的で厳しい附帯決議がつけられて、この改正法案は成立したわけでございます。
 この法案の改正が行われるのを待っていたかのように、日米交渉では、二〇〇〇年の沖縄サミット直前、私ははっきり覚えておりますが、七月の二十一日でございます。時の森総理がクリントン大統領と沖縄へもちろんお見えになったんですが、事務方は事前に話がついていたと思いますが、そういうセレモニーを含めまして、結果的にはアメリカペースで押し切られてしまったわけでございます。
 どういう内容で押し切ったかといいますと、これは日本政府がイエス、イエスと終始言っていたのなら大変問題でございますが、いや、そこは難しいだろうというような抵抗も示しながら、結局アメリカペースで決まったのです。つまり、二〇〇〇年末から二年以内に二二・五%引き下げて、さらに、速やかに四一・一%の引き下げを図るという内容でございます。
 こうなりますと、我々が国会でどんなことを審議しても、完全に、日米交渉の結論がそれを踏みにじるというんですか、さらに権限としてはその方が強くなるという認識で日本政府はやりましたので、結局国会審議は吹っ飛んでしまうということになるわけであります。大変これは問題ですね。そんな日米交渉や外国との交渉が一つ一つこれからもやられていったら、日本の国会で我々が審議したって、審議権というのは一体どういう意味を持つんでしょうか。ここがまず一番大きな問題点であります。
 その当のアメリカがどういう状態かといいますと、LRIC方式の導入をめぐりまして、大変もめております。アメリカでは一部しかなかなか導入ができないというのは、これは訴訟が起きていまして、つまり、第一種事業者に相当する通信業者でございますが、その業者が訴訟を起こしております。その言い分というのは、現実のコスト回収を認めないようなLRIC方式は、財産権の保障を規定した米国憲法、通信法の規定に反する、財産権の侵害であるということでこれを提訴しておりまして、二〇〇〇年七月には連邦控訴判決で違法になりました。現在これは最高裁で審理中でございます。
 強く日本に迫ってきたアメリカ自身、足元がそういう状況なんです。したがって、この問題は大変国際的にもまれなケースとしてやられているわけですが、それを日本政府が率先してこういう方式を採用するというところが大変問題だろうと私は考えているわけでございます。
 このことを前提にしまして質問をいたしますが、まず第一点、LRICモデル研究会というのが情報通信審議会の中に置かれておりまして、部会で議論がされておりまして、三月八日に報告が出されました。その報告に基づいて、総務省が情報通信審議会に諮問なさいました。その前提で私は質問をいたします。
 平成十四年度接続料は現行モデルで認可されているわけですが、新モデル、つまり、モデル研究会がモデルの見直しをやりました、さらに接続料の値下げをやるべきだというふうに出した、これを新モデルと呼びますが、新モデルはこれからの扱いであって、新モデルの即時適用は行うのか行わないのか。十四年度は既に現行法でいくことになっておりますので、十五年度以降になると思うのですが、この点についてはどうお考えでしょうか。
佐田副大臣 今いろいろと先生の当時のときのことをお話しいただきました。私も当時のことを振り返って考えておりまして、やはりしっかりとこれからの日本の電気通信につきましても考えていかなくちゃいけない、こういうふうに思っております。
 先生が今、最初の御質問でありますけれども、今度の新モデル、情報通信審議会に三月二十七日に諮問をされたわけでありますけれども、これは要するにモデルの内容、そして接続料の問題、そしてまた適用期限でありますけれども、これも含めて審議をしてまいる所存であります。
 以上です。
伊藤(忠)委員 いずれにしても、十四年はもう決まっていますから、十五年からこの新モデルを適用しないですねということについて、イエスかノーか、お聞かせください。
佐田副大臣 したがって、今私が申し上げましたとおり、審議会によってこれは今議論をしているところであります。
伊藤(忠)委員 二点目、聞きます。
 私たちは、いずれにしても、IT革命だのe―Japan計画なんか年々見直されるわけですが、そういうものを進めていこうとしますと、料金そのものはアメリカよりも大幅に下がっているわけですね、今。日本の料金、高いんじゃないんです。アメリカと比べたらADSLはうんと低いわけです。一般の料金でも低いわけです、そこまで持ってきているわけですから。問題は、これからブロードバンド時代を形成しなきゃいけません。そのためには、核になる第一種事業者の果たす役割は非常に大きいわけです。ブロードバンドの言うならばコスト計算もLRICでやっていくということになったら、投資そのものは、財務状況が悪くなりますから、資金はどこから出るのかということだってあるわけですよ。
 だから、これが全部絡んでおりますから私は申し上げるんですが、そういうことを考えますと、事業者の投資インセンティブを損なうようなLRIC方式は一刻も早く廃止すべきである、少なくとも十五年度以降はこれは廃止すべきであるというふうに私たちは考えているわけです。その考え方に対してどうお考えでしょうか。
佐田副大臣 先生の、いろいろ関連しておるわけでありますけれども、やはり日本の電気通信ということを考えた場合に、NTTの果たす役割というものは非常に大きい、私もそれは思っております。
 と同時に、決算を見ますと、西が千四百億の赤字、そしてまた東の方ではとんとんになっておる。こういうことを考えますと、これからの投資がどうなるのか、これは非常にやはり心配、危惧するところじゃないかと思っております。また、加うるに、やはり技術革新、研究費でありますけれども、これも相当な額でNTTがやられておる、こういうことを考えますと、そういう不安は出てくるわけであります。
 ただ、ブロードバンド関係、NTTの方々が大変御努力賜りまして、全体の投資額というのはちょっと下がっておりまして、次からは四千百億、四千百億で、東が四百億、西が六百億を減らすということになっておりますけれども、いわゆる光のアクセス網につきましては、これからのいろいろなADSLの進展であるとか、今お話がありましたように、投資につきましては、東がアクセス網の光投資につきましては三百四十億、そしてまた西の三百八十五億円ということもあって、大変に頑張っていただいておるわけであります。
 そういうことを考えますと、とにかく、NTTだけではありませんけれども、各電気通信事業者が力を合わせてこれからのブロードバンドの構築のために努力をしていただきたい。そのためには、やはり私は共存共栄ということが非常に重要だと思うんですね。
 それと同時に、今言われたLRIC、果たしてこれが、これからきちっと日本の情報を守るためにやっていけるのかどうか。そういうところをしっかりと検証していかなくちゃいけませんし、要するにLRIC、いわゆる長期増分費用方式が法律化されたときの附帯決議も踏まえまして、今回の情報通信審議会に諮問したわけでありますから、しっかりとその中で、要するに形、存続も含めて議論をしていかなくちゃいけない、こういうふうに思っております。
伊藤(忠)委員 今、附帯決議の内容も踏まえてというふうに副大臣はおっしゃったんですが、もう一度申し上げますけれども、LRIC方式を導入すればこういう結果を招来するというのは、橋本内閣のあの時代からある程度わかったと思うんですね。ですから、日米交渉でも非常に矛盾のあることをやられたんですが、つまり、LRIC方式を導入しますと、ユニバーサルサービスの確保や当該通信事業者の経営や利用者料金に悪影響を及ぼすことがないようにというのは、絶えずその前提条件につきながら、LRIC方式の導入をUSTRとの話でうんと言われたわけですよ。でも、これを前提にしないとなかなか導入しづらい、そういう面があったわけですね。しかし導入はしてきた。
 ところが、導入した結果、懸念していたような、財務は悪化するわ、料金が下がったというのは、当然これは競争をやれば料金は下がるんですから、大いにこれはやっていかなければいかぬわけですが、もう財務状況が悪くなって、経営が、これからもこの方式をずっと導入されていきますとますます、これは計算方式によりますけれども、数百億から場合によっては一千億ぐらい、絶えず言うならば収入に響いてくるということが言われているわけです。ですから、仮想網を前提にしたLRIC方式という方式は、実態を反映していないわけですから、これはおやめになった方がよろしい。
 とりわけ、IP電話がどんどん広がるじゃないですか。これからはIP電話が一般的になると思うんです。IP電話が広がれば、交換機機能というのはなくなるわけです。ルーターでいいわけですね。そうすると、この仮想網そのものの前提だって壊れるし、モデルに何をほうり込むかという問題だって、随分変わってくると思うんです。それを、従来型の固定電話をきちっと規制すれば何か世の中成り立つような、こういう考え方が、事実、もう頭古いですよね。
 これは審議委員の皆さん、随分そういう方が多いわけです、調べますと。八五年でしょう、民営化しましたのは。あの当時からずっと審議委員を続けられている人も見えますね。非常にベテランといいますか大御所といいますか、はっきり言って、そういう方はもう古いんじゃないですか。かわってもらわなきゃいかぬと思うんです。時代が変わっているのに、言うならば箱の中で議論されたって、世の中とか流れの実態を反映してないわけです。そういうものが答申に出てくる。
 これは総務省にしてみれば、何か方針を出す前には必ず審議会に諮って、審議会がどういう考え方かということを踏まえてから方針を決め、法案を、閣法をつくられると思うんですが、そこで審議会の力というのは、これはかなり強く作用するんじゃないでしょうか、僕はそう思えてしようがないんです。
 だから、LRIC方式の検討会の報告を読むと、これぐらい厚いですよ。あんなの僕らもらったって、それこそ技術的に何か計算方式がだあっと出ておって、それでもって料金が結果的にはこれだって出るわけでしょう。あれは料金書いてないわけですよ。何もわからぬ。そういうのを専門的に審議委員の皆さんはやられているわけですよ。
 ところが、お役人の皆さんは二年に一回、三年に一回かわっていくじゃないですか。審議委員の方が力を持つわけですよ。どかっと座って、これは同意人事でペケになったら終わりですけれども、与党さんの方も改革をやらないかぬということで、これから審議委員のあり方を真剣に私はメスを入れてもらえると思っています。審議会そのもののあり方にメスを入れないと、これは仕組みは変わらぬのかな、改革というのはなかなか、そこまで広がってメスを入れなきゃいかぬのかなと私は思っているわけです。
 さて、能書きはそれぐらいにいたしますが、そういう状況の中で、このLRIC方式を、それは副大臣、今やめますなんて言うたら、これは政府の方針を百八十度変えるというような大ごとなんでしょうが、私たちの言っておる実態にそぐわない方式であると。
 これは、附帯決議の趣旨から、あの当時から議論を引きずっているわけですが、ここからしても、これはやはり方式自体そのものも検討しなけりゃいけないし、当然、これを、次の年度というから十五年度、十五年度から適用して走るんだというふうな考え方ではおりませんというか、そういう考え方ではない、硬直した考え方ではないということを、それだけでも答弁いただかないと、これは問題提起をずっとしてきた国会としては立つ瀬がない。どうすりゃいいのかということまでになるわけですから、その点をはっきりしていただきたいと思います。
佐田副大臣 先生が言われたLRIC方式が導入されたときの話も私もよく存じ上げておりますけれども、あくまでもやはり日本の電気通信、先ほどから私が申し上げているとおり、基本は、国民の情報であるとか、そして日本の電気通信を守っていく、こういうことが大事なわけであります。
 あれが決まったときに、先生もよく御存じのとおり、バーミンガム・サミットにおきまして、経営的破壊に陥らない、ユニバーサルサービスが確保できる、こういうことを条件に置いて入ってきたわけでありまして、そしてまた、日本の立場もちょっと違いまして、先生も御存じのとおり、LRICの、要するにモデルですけれども、例えば地中に埋めるとか、電線にはわせるとか、減価償却の問題であるとか、いろいろなことが入っておるわけでありますけれども、あくまでもそれは採算がきちっといくような形で我々も考えていかなくちゃいけない。一番最初に先生が言われたとおりに、そういうふうな形で日本の電気通信がきちっとやっていけるように、それは考えていかなくちゃいけないと思っています。
 したがって、今審議会のお話がありましたけれども、同意人事の話ですから、私は、中には随分バランスのとれて立派な先生方がしっかりと審議していただいていると思っておりますけれども、この中において、これはあくまでも、要するにLRICの問題、そしてまた適用の期限、先ほども申し上げましたけれども、それも含めて、それを適用するかどうかは今審議会で議論をしております。必ずするということではありません。
伊藤(忠)委員 審議会の動きを見ていますと、世の中の動き、余り関係がないんですよ。そういうふうに動くものだから、僕は非常に懸念をしまして、転ばぬ先のつえといいますか、今一生懸命問題提起しているわけです。
 はっきり言って、そうです、もう。長過ぎる。大体、首長でも三期で終わりなんですよ。そういうふうにしようと思っている世の中で、八五年からずっと続いているんですよ。そういう人は力を持ちますよ、何といったって。お役人はもう出世していって、二年か三年刻みでいなくなるんですもの。そしたら、おれが大将だというので、いろいろなことを相談しないと動かないというふうに力を持つんです。私も、これはあちこちで聞きますからね。やはり、それはよくないなと。
 審議会も多過ぎますよね。もう省が審議会に諮問せんだらよろしいんや。なら、仕事つくりませんから、そんな審議会なくなるんですから。実際に、審議会をそんなに置かなきゃいかぬのかどうか。これだって、全体を見ますと、大変これはあるんです。私たちも議運で随分苦労しましたけれども。
 やはりそこもきちっとメスを入れていかなきゃいけませんが、これはおたくの方がどういうふうに考えられるか、これは政府自身の問題でしょうが、私たちは、やはり議会審議をどこかで寸断してしまって全く違ったことをやるような審議会のあり方を、これはやはり問題だと思っておりますから、そのことについても、私は党内でもきちっと物を申し上げて、はっきりやりたいと思っております。
 どうぞひとつ、そういうことで、よろしくお願い申し上げます。実態を踏まえてください。
 これ以上言ったら、こういうことなんですよ。何かNTTの味方しておるように僕は思われますから、発言嫌なんですが、ブロードバンドでいいますと、皆さん実態よく御存じだと思いますよ。実際に市内網を接続させておる業者、少ないわけですよ。固定電話じゃ商売にならぬわけ。ブロードバンドの時代が来るわけ。
 そういうところは指定電気通信設備の業者でありませんから規制はかかりませんが、NTTの言うならばコスト計算、こういうLRIC方式がだんだん厳しく、値が下げられていきますと、そういうところも値を下げないことには商売にならぬわけです。これはわかってもらわなきゃいかぬの。これだけは別に商売ができると思ったら、大間違い。
 結局、接続料金を下げれば、お互いに下げ合い競争が始まるわけです。そうしたら、もうかりませんから、そういうところ、入ってきませんよ、業者は。ということは、結局、設備負担は面倒見られない、投資ができないから。投資のメリットがないから、しませんよ。そうしたら、結局、ネットワークそのものが維持できなくなる。疲弊するわけですね。
 そうしたら、日本全体のブロードバンドだとか、言うならばIT革命というのは結局ネットワークがあっての話ですから、これが結局はマイナスになっていくということを考えるものですから、私は特に強調してこの点を取り上げているわけですが、どうぞひとつ全体のことを考えて、御理解といいますか、対処、善処をいただきたい、こう思っております。
 次の問題に移りますが、外務省、きょうは、副大臣お見えいただきまして、ありがとうございました。
 外務省に対しても、随分当時問題を感じまして、私も、そんな、言うならば対等な交渉にはなっていないじゃないのか。アメリカが日本に対して、貿易摩擦、通商摩擦の一環として、一番これを根っこに挙げられまして、森政権の時代にがんがんやられましたけれども、言っているアメリカ自身が全然なっていないじゃないのか。それを日本に対してがんがん言ってくるというのは何の資格があって言うのかということを、僕は委員会でも大分強調いたしました。
 それで、この話が終わった後で、これはマスコミで公表されたわけでございますが、USTRのこの交渉に当たったある担当者がいわく、実はアメリカもこれという案がなかった。言うたら、LRIC方式そのものはアメリカで今裁判やっていますから、困った。それで、どういうふうにやっていこうかなと思っていたら、日本の政府の方からUSTRに対して、どういうふうにやりましょうか、いい方法があったら教えてくれと言われた。それで、LRIC方式をやるようになったんだということをUSTRの担当官の一人が言っていますよね。
 そういうふうなことで考えますと、これは外務省が責任を持って当たるんですか。それとも、こういう交渉の場というのは、外務省がコーディネートされるんですか。どういう役割になっているんですか。まず、そのことをお聞かせください。
杉浦副大臣 外務省のこの話し合いの場における役割は、わかりやすい表現を使えば、コーディネーターと言っていいと思います。ですから、中身については、今は総務省ですが、中心になって当たるという関係に相なっておると思います。
伊藤(忠)委員 USTRというのは、この問題を担当する、言うならば所管の庁なんですか。所管省なんですか。
杉浦副大臣 規制緩和の問題についての枠組みは、もう先生御案内のとおり、アメリカとの間では、一九九七年から日米規制緩和対話というものを二〇〇一年まで四年間にわたってやる。その後、その対話を発展改組いたしました規制改革及び競争政策イニシアティブというもののもとで、双方の規制改革と競争政策の推進について建設的に対話をしてきたということでございます。そういう枠組みの中でやってまいった。
 そして、昨年六月のキャンプ・デービッドでの日米首脳会談の際に、小泉総理とブッシュ大統領の間で、成長のための日米経済パートナーシップというものが発表されまして、そのフォーラムの一つとして、今までの対話を発展改組した形で、その作業部会の一つとして電気通信分野が設けられたという経過でやっております。外務省は、いわばその窓口になって、今は総務省ですが、共同で対話を行っているということでございます。
伊藤(忠)委員 僕はみんなわかっていますからその経過は言わぬでください、時間がありませんからね。
 そのことだけでも言いますけれども、アメリカとの間に通信関係の規制緩和について相互に交渉されましたでしょう。日本に、言うなら宿題としてもらった項目は何百項目ですよ。アメリカに対して出したのは四、五十項目ですよ。アメリカはLRIC方式について、相互主義じゃないですか、交渉というのは。日本はLRIC方式をこのように導入したのですが、これに対しては、どういうふうにアメリカがこたえたか。LRIC方式が有効手段であることを確認した、それだけしか言っていませんよ。明らかにこれは相互主義になっていないわけです。対等、平等な交渉になっていない。
 言うならば、それ以外にまだ百項目ぐらいある。日本に対しては物すごく細かいことまで言ってきた。ところが、日本政府は、非常にその点紳士なものだから、まあ四、五十項目で、大体みんながわかるようなことを出している。それも、ほとんどアメリカはうんと言っていないのですよ。それが交渉の実態なんです。それをやってきたのは、おたくの経済局長が主にやってきたわけです。おたくの経済局長が主に根回ししてきたわけですよ。それで今日こんな格好になっているわけです。
 だから、副大臣にお願いしたいのは、お役人に任せておいたらだめですよ、これ。わからぬところでがんがんやっていくわけですから、表に出たときにはもう遅いの。
 あと、コーディネーターといいますけれども、コーディネーターもうまくやってくれなきゃ、場所だけつくればいいというものじゃないですよ。場所だけつくるのはだれでもできるわけで、交渉はそれぞれが責任のあるところをやるんですが、アメリカ、USTRは交渉の責任を持っていますか。FCCがなぜ出てこないの。FCCは独立行政機関だから出てこないのですか。それならUSTRは皆わかっていたかといったら、USTRはほとんどわかっていないじゃないですか。わかっていない人間が出てきてやるんですよ。その結果、こういう格好になるわけで、外務省というのは国益を考えて、ここで場所をつくればいいのか悪いのかというのを判断するのが外務省でしょう。ただ場所をつくるだけだったら別に外務省じゃなくたって、だれだってできるじゃないですか。そこを僕らは言っているわけですよ。
 いつも外務省というのはマイナスの役割しか果たしていない。だから積もり積もってこんな格好になるわけですよ。いや、それは副大臣は頑張ってもらっている人ですからあれだと思いますよ、御心労あると思いますけれどもね。はっきり言ってそうですよ。外務省の組織というのは、ちょっと油断したら何やるかわからぬ、僕はそう思っておるの。そういう外務省に歯どめをかけてもらわなきゃ困る、私はこう思います。
 そこで聞きますが、十月までに日米協議をやるということになっています。意見交換と書いてありますが、LRIC問題で意見交換をやると書いてあるわけです。前も、交渉とはなかったので、協議とか意見交換になっていたのです。ところが、日米交渉になっているわけです、実際は。それで、のまされたんだ。今回も十月までにこれをやるとなっておるんですが、LRICを見直してさらにこれを悪くするようなとか、あるいは継続してこのテーマをどのように実施するかということを、よもや交渉の場としてそういう位置づけはないでしょうね。この話はもうこれで終わりということの言うならば意見交換の場にすべきである、そのように理解しておるんですか、どうですか、それは。
杉浦副大臣 この秋予定されております話し合いの場というのは、成長のための日米経済パートナーシップに基づく次官級経済対話、電気通信分野でございます。
 その下の事務レベルの対話も、まだやるかどうかは決まっておりませんが、やることも考えられますし、次官級協議出席者に加えて、議題に応じてその他の政府関係者、民間関係者出席の官民会議もやることになっておりますので、これからその場所の設定については相談してまいるわけでございますが、これは、先生がおっしゃるような、私どもは交渉というふうには思っておりませんで、対話であると。今までお話しになったとおり、今後行われる答申も踏まえた上で、我が国としての政府の方針は総務省を中心にして策定されるわけでありますが、その方針と日本としての主体的取り組みについてアメリカ側に説明をするという場だと思っております。
 もちろん、建設的な意見交換、双方向の対話が行われることも当然のことでございますが、その先立つ審議会の答申を踏まえた上での政府の方針、これは主体的に我が国政府が決めるべきものだ、こう思っておる次第でございます。
伊藤(忠)委員 いずれにしても、ぬかにくぎみたいな答弁をもらってもしようがないのですが、意見交換とは言うんですけれども、交渉ですから、このLRIC方式について新たな展開をやってもらっては困るということですよ。これは日本政府としても、どうしていくかということはこのLRIC方式自体の見直しを含めて今検討中である、だからこれはもう一連の協議等は終わりました、だからそれをこれからの課題としてどう継続するかというような話は困るんで、その点は総務省ときちっと打ち合わせをして、それから外務省は動いてくださいね。勝手に走らぬといてください。その辺をきちっと私は要望したいと思います。どうですか。
杉浦副大臣 おっしゃるとおりでございます。
伊藤(忠)委員 次に移りますけれども、ユニバーサルサービスについて、時間が少しなくなってきたのですが、はしょって申し上げます。
 これは大変問題を含んでいまして、平成十三年の事業法改正で、ユニバーサルサービス、これはファンドをつくってやらないとどうにもならぬ財務状態まで悪化してきたということで、こういう法改正がなされたわけです。
 つまり、法律の中身は、ユニバーサルサービス役務の提供と業者の指定は大臣が行うということで明記をされまして、この基本的な条項というか、枠組みだけをやられまして、法改正になりまして、業務の対象範囲やコストの算定ルールやコストの負担ルール、制度運営問題については省令、規則で具体化する、こういう格好で法改正が何行か出たのです。
 このお国はどういうことを考えられてみえるのかなというので、私は、何をイメージされているんですか、これは新たな制度なんですがというふうに聞きましたら、余りに抽象的だったので私は聞いたわけです。それで、担当者の方が持ってこられた資料を読みましたら、その資料の中身は非常に整理されていまして、三つありました。
 一つは、NTT東西に義務化されているユニバーサルサービスを、体力が弱り、NTTの負担に任せておくとユニバーサルサービスが維持できないと困るんだと。二点目は、他の事業者もNTTのネットに直接、間接を問わず利益を受けているのだから、応分の負担を行うのは当然だと。三つ目は、負担金の徴収や交付金の交付を行うために中立的機関を設置する、これがイメージなんです、こういう考え方で実は改正をしていきたいと思います、具体的な検討はこれから審議会や省内でやっていきます、とりあえず法律はその部分だけ変えさせてくださいという説明だったのです。
 ところが、平成十三年の十二月に情報通信審議会の第二次答申で出された中身を見て、私はびっくりしたのです。その中身というのは全く違うんですね。NTT東西で、採算地域の黒字で不採算地域の赤字を賄うのが一点。それから二点目は、東西も事業収入規模に応じて基金を創出するわけです。拠出しなさいとあるわけです。三つ目が、LRIC方式を採用するんです、その場合も。必要な営業費用まで除外する、こういう答申の中身なんです。
 これはだれが考えても、常識的に考えて、ユニバーサルサービスを義務として課せられている事業者が、財務状況が悪くなって、どうにもやっていけないから政府が助けてやろうというので、他のNCC事業者に対してもこれは応援をしなさいというファンド形成だったのですが、ここに載っておりますのは、東西が不採算地域の赤字を負担させられたらどういうことになるか。競争上、既にそこでさらに不利になります。それで、東西も事業収入規模において基金を拠出するというのがありますが、拠出相当額の赤字が残ることになります。それから、LRIC方式を適用して、営業費は除外するとなっておるわけですが、現実のサービスを維持するために必要な費用が賄えなくなるじゃないですか。だれが考えたってそういうことはわかります。
 こういうことが国際標準として実施されておればまだしもなんですが、調べてみましたら、そうはなっていなくて、グローバルスタンダードでいきますと、アメリカやフランスでは内部補てん制度はとっておりません。当たり前ですよ。内部で補てんをできるんだったら、何もファンドは要らないわけで、内部の補てんで、黒字のところから赤字を埋めたら、黒字は都市部の競争の激しいところで利益を上げている部分を、過疎地やそういうところの不採算地域の赤の出るところに補てんをするんだったら、何のためにあるのか、競争をその都市部でやられてしまうわけで、そんな理屈は成り立たぬ。
 アメリカ、フランスでも内部補てん方式はとっておりません。アメリカはベンチマーク方式というのを採用しておりますが、フランスでは不採算地域の赤字を積み上げて基金を算定しております。いずれにしても、それはLRIC方式じゃなくて、ヒストリカルベースで、実際費用方式で設備コストを算定して、そして、言うならば財務の状況、収支の状況を計算しているわけです。
 だから、このように具体的に答申が出てきまして、私はびっくりしたんですが、こういうことがやられるわけですね。ちょっと油断しているとこういうことになる。これは行政の裁量規制の最たるものでございます。
 それで、法案審議の際にこのことが感じられましたので、私は、省令、規則ができた段階で国会審議にこれをかけていただきたいと片山総務大臣に申し上げました。片山総務大臣は答弁の中で、それは行政権の範囲ではなかろうか、国会審議権の範囲がそこまで及ぶと、これはいかがなものかという答弁がございました。
 ところがこれは、副大臣御承知のように、議運理事会でも国会改革の一環として取り扱うことを確認いたしまして、政省令、規則も当該の委員会で審議をするということで了解を得ております。このことは全体の与野党含めた了解になっておりまして、だから再度確認したいんですが、法案が一行しか出なくて、具体的なことは、煮詰まってそれが出てきたら政省令、規則で全部やっていくというんだったら、国会の審議権はどうなるのかと。
 この点について、政省令、規則も国会審議で議論をするということについて、私は再度お伺いしますが、やれるように確認をいたしたいと思いますが、どうですか。
佐田副大臣 先生が言われるように、この省令、これは非常に重要でありまして、今言われましたユニバーサルサービス、これは先ほど先生が言われ、繰り返すとまた時間がかかりますから省略させていただきますけれども、この交付金につきましては、要するに、採算地域の黒字と不採算地域の赤字を相殺した上で賄い切れないところを交付金でやるということの省令になっておるわけでありますけれども、これは今この国会の中で御議論いただいておるわけですから、またこれは御議論賜ってもいいのではないかと私は思っています。
 また、先生の言われるとおり、LRICというのは、基本的に、競争する相手がいないから理想的なモデルをつくっていく、そういうふうな形なわけですよね。実際費用というのは、実際賄い切れるかどうかというのがあるわけですから、その辺も加味して議論をしていかなくちゃいけないんじゃないか、こういうふうに思います。
 それと同時に、この省令につきましては、今情報通信審議会に諮問をされておるわけでありますので、その辺も含めてまた御議論を賜りたい、こういうふうに思っています。
伊藤(忠)委員 そうすると、私が質問しましたこの政省令、規則はいいんですな。固まったらここで出してくれますな。審議にかけてくれますね。
片山国務大臣 今副大臣が答えましたように、基本的には、政令は内閣で、省令は省だけで、こういうことですけれども、基本的なことにつながるようなものについては御議論いただくのは当然だ、私はこのように思っておりますから、丸ごと出すかどうかというところはちょっと考えさせていただきますけれども、基本的な点は大いに御議論賜って結構だと思います。
伊藤(忠)委員 それを確認させていただきます。
 いずれにしても、裁量権というのは幅をやはり狭めていくというのが基本なんですよね。だから法案では、それが長くなっても、最大限書けるだけ明文化した方がいいと思うんですよ。ところが、三行ぐらい出てきまして、これはおかしいなと思ったから私もこういう質問をしたんですよね。出てきたのが全然違うと。
 これはどうです。副大臣や大臣は御存じだったんですか、これ。これは事務担がつくって、それでだあっと走ったんじゃないですか。その辺は、わざわざ聞くことありませんが、僕はそうだと思うんですよ。これは恐らく、副大臣や大臣は知らない間にできたんだと思うんです。だれが考えても、これは馬の唇じゃないけれども、かみ合わない。全然おかしいですよ、これは。全然違う。
 だから、その点を認識してください。こんなものは通りませんよ、正直言って、ペテンですな。なぜかといいますと、こういう問題が出てくるわけですよ。つまり、LRIC方式で算定すると、基本料や市内や公衆や離島や緊急通報があるじゃないですか、これがユニバーサルサービスの対象業務なんです。これが大幅な黒字になるんですよ。赤字じゃないんです。黒字やったら、何でファンドが発動されるんですか。ファンド要らぬじゃないですか。大幅な黒字になるようになっておるんです。そんなことをきちっとやはり事務担はやっておるんですな。ということは、大臣に対して事業者はファンド適用の申請しなけりゃいけませんよね。申請しても適用されないわけです、黒字だったら。黒字だったら、申請したって適用されないじゃないですか。
 すなわち、これは空箱なんですよ。空箱をつくって、それで結局、つくったつくったと。それで、そういう一つの中立的な機関をつくるんでしょう。僕はそこまで言いませんよ。中立的な機関ができたらまた天下りが占めたら何にもならぬでしょう。そういうことで格好だけつけて機能しない、まさしくこれは空箱なんですよ。僕はそこまでしか言いませんが、口の悪い人だったらもう一つ言いたいところでしょうけれども、そこまで言いませんが、空箱なんです。機能しないような空箱を承知でつくっておいて、それでつくったつくったと。長い時間かけて審議会で議論をしていて、私どもの仕事ばっかりふやすなよと。仕事を減らすのが言うならば行政改革じゃないかと思うんです。
 まあこれ以上申し上げませんが、いずれにしても、大変そういう問題でございますので、実効性が伴いませんから、国際標準に合った制度にこれは見直すべきであるということを強調させていただきたいと思います。どうでしょうか。
    〔委員長退席、荒井(広)委員長代理着席〕
片山国務大臣 このユニバーサルサービスファンドというのはいろいろな議論がありましたね、去年のあれでも。一種のセーフティーネットなんですよ。競争がどんどん進んでいって、東西のNTTが全部かぶってにっちもさっちもいかぬようになったときに救いましょう、こういうことなので、直ちにこれが機能するということまでは我々も考えてなかったんですけれどもね。
 御指摘の、伊藤委員の言われることももっともなところはたくさんありますので、十分承って今後の検討の対象にいたしたいと思いますし、私も、何でも審議会というのはいかがかなと思っているんですよ。やはり行政側が責任を持ってやるということが必要なので、意見を聞くのはいいですよ。しかし審議会のうのみというのは、そういう傾向がややありますので、行政改革の対象で審議会の数も減らそうということをやってきておりますけれども、そういうことで、そういう点を含めて今後いろいろと、我々も考えていろいろな検討をさせていただきたいと思っております。
伊藤(忠)委員 大臣の今発言なさいました審議会の問題については私も同感でございまして、何でもかんでも審議会を通すという、これはどうしても一つの決まった運びになっておるんですが、しかしそれが必要なんだろうかと。
 お役所の皆さんというのは優秀な皆さんですよね。優秀な皆さんが政策化するために審議会を活用するというのはわからぬことはないんですが、もう細かいことでも全部審議会にほっつける。結局、自己責任回避なんですよ。これは審議会が言ったんだ、審議会が答申したんだからそれに基づいて私はやっているんです、私は、これはこういうお役人の免罪符に使われている部分があるんじゃないのかと。お役人の皆さんも仕事熱心はいいんですが、今言ったようなことを一生懸命に、鉛筆なめなめつくられるというのは、これは行政改革の流れからして明らかに問題がある、こんなふうに考えております。
 最後になりますが、この大きな当面の二つの問題を取り上げましたけれども、これは特定の事業者の代表とかそういう話じゃなくて、ではそれにかわる事業体があればいいんです。その事業者にやってもらえばいいんです。ところがなかなかそうはいかない。
 言うならばNTTが今据わっているわけですが、一日も早くこれを民営化されたらどうですか。でないと規制だ何だというようなことがかかってくるので、まあ大変そのことが、国会を片や見ながら走らなきゃいかぬというのは、いろいろな意味で、私はこれは不便なところもあるし、いろいろな問題があると思うんです。
 そういう意味で、国の立場で今必要なことは、日本のIT革命やe―Japan計画、言われていますけれども、経済財政諮問会議がどこまでそれを考えているのか。正直言って、諮問会議の権限、権能とそれから総務省の言うならば政策方針の考え方と、違った場合にはどちらが優先するのか、優先順位をめぐってもこれは疑問が残るところなんですね。何か経済財政諮問会議というのは民間の方が多いんですが、ベテランの方がお見えなのだったら、これもまた心寒い状況もございますので、そういう意味では、一番現場をしっかり把握されている総務省がそれなりにきちっと誤りのない方針を出されるということがやはり一番大切なんじゃないかなと思っております。
 ブロードバンド時代といいますが、ADSLに何か一喜一憂して、韓国はあれだけふえたから日本もやらないかぬと、そんなもの、いつだってできるわけで、問題はブロードバンドなんです。アメリカはそのことに気がつきました。このままいったらアメリカのブロードバンドはネットが張れないということがわかったから、LRIC問題でもかなり研究機関でも批判が出まして、FCCのパウエル委員長さんも、これはいかぬというので見直したじゃないですか。でなきゃ、アメリカだって、そういう一種事業者の体力が弱ることによってネットワークそのものの言うならば構築に力が入らなくなると、ブロードバンドは形成できません。
 そういうことに着目をしたひとつ勇気ある施策を打ち出していただくように心からお願いを申し上げまして、私の質問、ちょっと早いんですが、終わりたいと思います。
荒井(広)委員長代理 次に、桝屋敬悟君。
桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。
 委員の皆様、お昼前のおなかのすいた時間であります。端的に議論をさせていただきたいと思います。
 この一般質疑、私の方からは、参議院やあるいは衆議院の厚生労働委員会で議論がありました、例の秋田県あるいは山形県で大きな問題になっております救急救命士の処置行為といいますか、この問題について、やはり総務委員会でも確認をしておきたい。一定の厚生労働大臣の御答弁やあるいは総務省のお取り組みの方向は見えておりますけれども、年度も変わりましたことでもありますし、極めて重要な案件であると思いますので、当委員会でも議論をさせていただきたい、このように思っております。
 最初に、救急救命士の処置範囲の問題でありますが、前提として、平成三年から救急救命士ができまして、今日まで、医師の指示のもとに三つの行為、いわゆる除細動やあるいは輸液、さらには気道確保、こうした平成三年以降拡大をされております処置範囲について、問題になっておりますのは心肺の停止患者さんであろうかと思います。全国四百万前後の搬送患者のうち二%前後がそうした心肺停止患者であるというふうに私は理解をしておりますが、そうした八万件を超えるような数だというふうに伺っております。こうした対象者に対して、救急救命士さんの処置といいますか、これがどの程度行われているのか、三つの行為がどの程度行われていて、それがどれぐらい救命効果に影響を与えているのか、この現状について最初にお聞きしたいと思います。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十二年中に救急隊に搬送されました約四百万人のうちで、心肺停止傷病者、今お話がありましたけれども、約八万五千人ほどでございまして、そのうち、医師の指示のもとでの処置の実施件数ですけれども、除細動が四千百三十四件、それから、乳酸リンゲル液を用いました静脈路確保のための輸液が七千五百四十二件、それから、器具を用いた気道確保が二万五千百一件となっております。
 現行制度のもとでも、救急救命士によりまして処置された傷病者と、それから、救命士の資格を有しない一般の救急隊員により処置された傷病者との一カ月後の生存率を比較いたしますと、平成十二年中には、救命士制度が導入されていることによりまして九百八十六人の救命率の向上が図られたことになる、こういうふうに推計しております。
桝屋委員 ありがとうございます。
 今、それぞれ三つの行為について数字を挙げていただきましたけれども、相当の効果があるということで、やはり最初の対応がいかに重要であるか。人命を救助するという観点で極めて大事な仕事を救急救命士の皆さんはされておられるということであります。
 そこで、秋田、山形で問題になっている点でありますが、今の三つの行為に加えて、あるいは、これは現場でいろいろ地元の医師会等とも協議をされたんでしょう、気管内の挿管という処置をしたということで、これが大問題になっているわけであります。
 従来から、消防庁さんにおかれましては、救命効果をさらに高めるために、処置範囲の拡大ということを厚生労働省さんに要請をしておるという状況は聞いているわけでありますが、今回の秋田、山形、こうした大きな問題が発生をしたということ。これを受けて、さらには、これは大臣にぜひお伺いしたいんですが、平成三年以降、約十年たってまいりましたこの救急救命士の制度、私は、やはり一定の成果といいますか、まとめができる段階であろう、新たな段階を迎えているのではないかと。今回の大きな問題を契機に、ぜひとも見直しをするべきではないか、私はこう思っておりますが、今までの経緯も踏まえて、今から大臣としてどういうアクションを厚生労働省におとりになるのか、確認をさせていただきたいと思います。
片山国務大臣 今桝屋委員言われましたように、救急救命士制度も十年を過ぎましたね。私は、大変な成果があった、こういうふうに思っておりますし、秋田、山形の例も出まして、大変な議論になりました。せんだっても、あれは参議院の予算委員会だったと思いますけれども、委員さんから質問がありまして、私は、事は人命に関するので、いろいろな慎重な御議論もあるけれども、ここはひとつ思い切って踏み切っていただくべきではないかと。そのためには救急救命士の研修、教育、それをさらに充実を図るというようなこともありますよ、またいろいろな条件整備もあると思いますけれども、ぜひ、医師の指示なしでの除細動と薬剤投与と気管内挿管、これはぜひお願いいたしたい、こういうことを予算委員会で答弁いたしまして、坂口厚生労働大臣も大変前向きな御答弁をいただきましたので、今後とも、具体的な、今言いましたように、教育内容をどうする、条件整備をどうするというようなことを踏まえて、事務方同士でも十分な相談をしていただいて、私自身もさらにいろいろとお願いしよう、こういうふうに思っております。
    〔荒井(広)委員長代理退席、委員長着席〕
桝屋委員 大臣の御決意を伺わせていただきました。
 今大臣もおっしゃったように、その体制づくりという観点では、既に、メディカルコントロールというようなお話もありましたけれども、体制の整備はもちろん必要でありまして、消防庁においても現在までさまざまな通知を発出しながら対応されているというふうに理解をしております。その辺の最近の動向を消防庁長官からお聞きしたいと思います。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員からお話ございましたように、各地域においてメディカルコントロール体制を構築することが大切でございますので、昨年七月に各都道府県あてに通知をいたしまして、都道府県それから消防機関におきまして、メディカルコントロール体制整備のための実施計画を定めるようにお願いしているところであります。
 また、消防庁としては、現在、救急救命士の病院実習についてのガイドライン、それから、救急活動の事後検証に係るマニュアルをつくっておりまして、できるだけ早期に第一線に配付をしていきたいと思っております。
 今後とも、各地域ごとに消防機関と医療機関との連携を図りながら、今先生おっしゃいましたメディカルコントロール体制早期整備ということで、これは厚生労働省とも協力しながらその促進を図ります。あわせまして、今お話が出ました救命士の処置範囲の拡大の早期実現に努力してまいりたいと思っております。
桝屋委員 私は、今回マスコミが取り上げられました山形、秋田の大きなこの問題、ぜひとも一日も早く結論を出さなきゃいかぬと思っておりますが、そういう意味では、今、通知の御説明もありましたが、医師の迅速な指導助言の体制づくり、さらには事後検証、これは消防による事後検証も当然ですが、医療を巻き込んだ、医療も参画する事後検証というのは極めて私は大事だと思っておりますし、さらには救急救命士の研修、再教育ということは極めて大事だろうと思います。
 ところが、そうした通知を発出してそれぞれ消防本部で取り組みをということなんでありましょうが、私は、実は、きょう審議をするということで、現場の状況を聞いてまいりました。いろいろ救急救命士さんの話を聞きますと、全国で九百消防本部があるんでありましょうか、やはり相当温度差があるということを感じております。
 それは、その温度差の最たる原因はやはり医療との連携ということでございまして、きょうは厚生労働省篠崎局長においでいただいておりますが、私も知らぬ世界ではありませんから、局長に御答弁をいただくまでもなく、厚生労働省としても救急医療体制ということは医療計画の中で極めて重要なポイントとして整理をされ、新しい医療計画の中でお取り組みがされているというふうに思いますし、昨日レクのときにその辺も伺いました。やはり医療の世界には、ここはまだ自分自身でも結論が出ていないんですが、例えば急患が出たときに、お医者さんの立場は、医療の立場は、とにかく連れてこい、病院まで連れてきて、病院に着いてから私たちの専門範囲だよ、守備範囲だよという意識があるのではないか。
 もちろん、皆さんが、厚生労働省が発出をされております医療計画の指導通知の中で、病院前の救護体制、これも大事だということは確かにうたっておりますが、よくよく読んでみると、その病院前の救急体制、これも含めて整備を図るということが望ましい、こう書いてあるわけでありまして、あの望ましいという言葉は、私は今の医療の現状を物語っているのではないかというふうに思うわけであります。
 やはりこれは、総務省あるいは消防庁から幾ら現場に指導いたしましても、受け取る医療側も、この問題について、地域医療の大きなポイントであるということでお考えいただいて、取り組みをしていただかなきゃいかぬ、こう思っておるのであります。まさに連携の話になるわけでありますが、消防庁長官、そうした、特に救急医療に対する医師の指導助言の体制づくり、それから事後検証なり救急救命士の実習、再教育ということで、医療との連携はうまくいっておりますかということについて、あるいは特段の問題があれば、あるいは悩んでおるというような点があれば、この場でぜひ吐露していただきたいな、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
石井政府参考人 ただいま委員からお話がございましたように、救急活動の事後検証あるいは救命士の病院実習といったようなことは、いずれにしましても、医療機関なり医師の確保といいますか、御協力を得ないとなかなかできないわけでありまして、率直に申しまして、地域によってかなり差があることは御指摘のとおりでございます。
 消防庁といたしましては、やはりこれは私ども消防庁自身、それから厚生労働省とも協力しながら、もちろんお願いはするんですけれども、何といっても、各地域で、各都道府県が広域的な観点から調整機能を発揮していただいて、県単位で消防機関と医療機関の協議会をつくっていただく、また、二次医療圏などを基本としまして、それぞれの圏域ごとにメディカルコントロール協議会をつくってもらう、そして消防機関と医療機関との緊密な連携を図ってもらうということで、今一生懸命努力しているところでありまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。
桝屋委員 今長官の方から私はもう少し現場の悩ましいお声を聞かせていただけるかと思いましたが、なかなか長官の立場では言いづらいところもあると思います。私は、現場で話を伺いますと、通知は来ておるけれども、一つ一つどういう状況になっておりますかと確認をいたしますと、やはりそれは、いや実はできていないんですという本当の声もありまして、ここはやはり、先ほど言いましたように、私は両省で、ぜひともことし、今年度お取り組みをお願いしたい点であるというふうに思います。
 そこで、大臣は先ほど、大臣はいつも元気過ぎて、私は心配しているんです。どんどん言っていただくのは結構でありますけれども、大臣が先ほど胸を張って決意を申されたほど事は簡単でないというふうに思っておりまして、参議院の予算委員会の質疑もずっと、つぶさに、詳細に読ませていただくと、なかなか大臣が先ほどおっしゃったように、特に大臣は直ちに指示なしで三つの行為がというような話をされるものですから、きょうは厚生労働省さんにおいでいただいておりますが、これはなかなか簡単な話ではないのではないか、こう思っております。
 年度も明けました。坂口厚生労働大臣の答弁があったということも前提に置いて、これから、ことし、救急救命士の処置範囲の拡大、特に気管内挿管、あるいは、先ほど薬剤投与とか除細動の話が出ましたけれども、そうした問題について両省でどういうふうに検討され、どういうことを検討されて、どれぐらいまでに、大臣は年内にという話をされましたが、大臣のお話じゃなくて、むしろ実務方に私は伺いたいわけであります。消防庁長官と篠崎局長に、今の段階で結構でございます、その辺の御予定をお答えいただきたいと思います。
石井政府参考人 今委員おっしゃいましたように、救命士の処置範囲の拡大と申しましても、大きく言って三つぐらいの分野があるわけです。
 まず、医師の具体的な指示なしでの除細動、電気ショックですね、これにつきましては、アメリカでは一般の市民が四時間半程度の講習を受けますと自動式除細動器を使って除細動をやっていいということに今現になっているわけでありまして、また、飛行機の中では日本でもスチュワーデスさんが電気ショックをやってもいい、こうなっておりますので、これは相当早く実現できるんじゃないかと。今、厚生労働省さんにもお願いしております。
 また、薬剤投与と気管内挿管、これは、いずれも原則はお医者さんの具体的な指示のもとでやるという考え方でおりますが、一方、何とかこれも早期に実現していただきたいと思っておりますが、こちらの方はある程度、今、大体救命士さんは八百三十五時間の講習を受けて試験を受けていらっしゃるんですが、薬剤投与あるいは気管内挿管となりますと、より高度な研修が必要だというようなこともあるかもしれません。そういった点を、少しその充実のあり方をどうするかというような点も実務的に詰めながら、これもしかしそう時間をかけずにできるだけ早く結論を出したい、こんなことで努力してまいりたいと思っております。
篠崎政府参考人 ただいま長官の方から御答弁がありましたので、重複を避けて桝屋先生の御質問に事務方としてお答えをさせていただきます。
 救急救命士の業務の拡大に際しましては、搬送途上にある救急患者の生命を確保する上で大変重要な課題であるというふうに認識をいたしておりますが、また、その一方で、その安全性についても十分配慮する必要があるというふうに考えております。
 先ほど、拡大の検討項目、スケジュールのことでお問い合わせがございましたので、若干具体的になりますが、お話をさせていただきますと、まずは、医療機関そして消防機関などの関係機関の間でのメディカルコントロール体制の確立、これが非常に大事でございまして、そういう問題を検討していただこう、それから、病院における実習体制の整備を含めまして、養成施設の教育機関、教育内容、あるいは卒後における研修内容についての見直しの問題も検討していただこう、それから適切かつ安全に業務を実施するためのマニュアルの作成等についても議論をしていただきたい。それから、救急救命士の行った行為に対する事後検証体制の整備、これも非常に大事なことでございまして、今後、救急救命士さんの質の向上の上では非常に重要なことでございますので、その事後検証体制の整備など、これらの問題につきまして専門的、技術的な検討が必要であるというふうに考えております。
 できるだけ早期に関係者による検討の場を、もちろん消防庁とも御協議申し上げた上で、なるべく早急に設けたいというふうに考えております。
 先ほど坂口大臣の方からのお話がございましたが、大臣は遅くとも十四年中にはという御答弁をされておりますが、できるだけ早い時期に、これは遅くともでございますから、もっとできるだけ早い時期にその作業を進め、結論を得たいというふうに思っております。
 それからまた、具体的な薬の投与の問題がございましたので、このことについても若干敷衍をさせていただきますと、私どもの基本的な考えなんでございますが、医療職種としての救急救命士の業務につきましては、基本的には医師の指示のもとに行われるべきものであるというふうに考えております。
 器具を用いた気道の確保あるいは静脈路の確保のための輸液につきましては、現時点では特に危険性の高い行為として医師の具体的指示を必要としているということでございます。
 また、電気的除細動器につきましては、これは先ほど先生も御指摘のありました平成十二年五月の検討会の報告書にもございますが、医療機器、その機器そのものが非常に進歩しておりますので、メディカルコントロール体制の整備等あるいは事後検証等が確実に行われることを前提といたしまして、医師の包括的な指示で救急救命士の方が使用できるようにすべきだということにつきましては、ほぼ合意形成がなされておるというふうに認識をいたしておりますので、この点についても早急に結論が得られるようにしたいと考えております。
 いずれにいたしましても、心肺機能停止状態という患者さんに対することでございます。心臓がとまっておりますし呼吸もしていないという状態、生と死の境にあるような大変重症な患者の救命措置でございますので、気道の確保、静脈路の確保、そして電気的除細動でございますが、一つ一つでやるということではなくて、それらを的確かつ総合的に、そしてきちんとした順序で行うというようなことでございますので、相当の医学的知識そして技術を要するものであるというふうに考えております。
 繰り返しになりますが、消防庁ともよく協議をした上でなるべく早急に結論を出すように、事務方として努力をしたいと考えております。
桝屋委員 ありがとうございます。
 大臣、今の答弁がまさに答弁でありまして、決して見やすくないという今答弁をされたんではないかと。さまざまな隘路がある。私は、今、局長の答弁を聞いておりまして、これは一つ一つの処置行為を判断するということもあるんでしょうし、総合的にというような説明もありました。なかなか困難な問題が横たわっているように、きょうは時間がありませんから一つ一つの議論はいたしませんが、ぜひ検討に着手をしていただきたいことをお願いしておきたいと思います。
 先ほど安住委員からいつ法案が出てくるのか、こういう催促の御指摘がありましたが、この問題も、せめてこの国会が終わるときにはきちっと両省で検討会が立ち上がって、検討項目も明確になっておる、しかも検討されるスタッフもそろっている、こういう状況はぜひともおつくりをいただきたい、そうしないと年内ということにはならないだろう、こう思っております。お願いをしておきたいと思います。
 そこで、今の局長の御答弁を聞いても感じるんですが、やはり検討するに当たっては二つの段階があるのかなと思っております。一つは、今の、現行の制度の中で、医師の指示という体制の中でどこまでできるのかということ。それからもう一点は、大臣は先ほどざくっとおっしゃいましたけれども、指示なしでという、ここも確かに検討しなければならない。
 ただ、私も現場で救急救命士さんから話を伺いましたけれども、気管内挿管については、私は自信がない、相当やらなければ、トレーニングを積まなければ、私はできないと思います、こういう率直な声も聞きましたし、現場で実際に今からやるとして、どういう研修ができるのかと。研修する、そのトレーニングを積む機会というのは今の業務の中でなかなか得がたいのではないか、こんな話もありまして、この気管内挿管については、医師の指示ということもさることながら、その体制づくりについては、相当これはやるべきことがたくさんあるだろうというふうに思っているわけであります。
 こうしたように整理をして、協議を開始して、協議を進めていただきたいと思うわけでありますが、その中で、先ほど篠崎局長からあったように、除細動等については云々という話、これはそんなに、今までの検討経過から見てもそれほど遠くはない話なんだろう、こう思っておりますから、ともかく、先ほどの局長の答弁じゃありませんが、全体として整理できなければ前へ進みませんよ、合意が調わなければ一歩も動けませんということでは、これまた悩ましいわけでありまして、現場の現状からすると、できることは少しでも早くスタートしていただきたい、このように思っているわけであります。
 そこで、それをぜひお願いをすると同時に、篠崎局長にはもう一点。
 坂口大臣は、予算委員会でしたか、答弁を聞いておりますと、薬剤投与については相当慎重な、大臣がドクターなものですから慎重にならざるを得ないというふうに私も感じているわけであります。ただ、いろいろな薬剤、特に救急救命の場は劇薬を使うということもあるんでありましょうが、問題になっておりますのは、現場ではエピネフリン等の強心剤とか、そうしたものに限っての議論でありますから、それほど大きい話ではないわけでありまして、できることからやるという方向で御検討いただきたい、実施をしていただきたいと思っておりますが、この点については篠崎局長の御答弁を求めたいと思います。
篠崎政府参考人 今先生が御指摘のありました、例えばエピネフリン等の薬物につきましては、劇薬指定をされているものでございまして、特に搬送途上で使う薬物にはそういうものが多いわけでございます。
 そういうことでもございますので、投与量あるいは投与経路を決定するなど、これも先ほど申し上げましたように相当高度な知識が要る、それからその時々の適時適切な判断が要るということでございますので、御指摘の点も含めまして、今後設置される関係者の検討の場において一つ一つ検討をしていただきたいと思っております。
桝屋委員 現場で聞いた話と若干雰囲気が違うような気もしますが。慎重な局長の姿勢も理解はできるのでありますが、ぜひ薬剤投与、大臣のあの御答弁では相当難しいような気がしましたので、全部薬剤まぜこぜではなくて、今のような特定の薬剤について、現場の状況もよくお聞きして検討を進めていただきたいというふうに思います。
 いずれにしても、篠崎局長にとっては、この救急救命士というのは特別の思いがあるだろうというふうに思っております。局長在任期間中に、何としても新しい体制を、第二期の救急救命士の流れを御検討いただきたいというふうに思います。
 最後にもう一点だけ、せっかく篠崎局長、厚生労働委員会でやればいいお話でありますが、このテーマについては医師法でありましたり医療行為という問題になるのでありますが、例の養護学校等における医療的ケアの問題もありますねということを、ひとり言を私ここで申し上げて議事録にとどめておきたいと思っております。何かお話がありましたら最後に伺いたいと思いますが。
篠崎政府参考人 この問題につきましても、今鋭意検討が進んでおるわけでございますが、平成十年度から文部科学省において実践研究をやっていただいております。
 私どもも、その線に沿って都道府県に対して支援の要請などを行っておりますが、こうした調査研究の成果も踏まえながら、看護師と教員との効果的な連携のあり方等について、引き続き文部省と協力し検討させていただきたいと考えております。
桝屋委員 これで終わりますが、大臣、現場へ行きますと、例えば消防本部ごとに随分温度差があります、救急救命士の活動は。
 私がたまたま見ましたのは、今心肺停止患者については携帯で画像を送り、それぞれ指示をいただいてやっているわけでありますが、その受け取る相手側が、例えば国立の救急救命センターあたりがあって物すごく体制が整っている、常時専門のドクターもいらっしゃるというところがあったり、あるいは、輪番制でやっておりまして、救急の専門でない小児科の先生が向こうにいる、ぎいぎいその先生の指導を聞くまでもないというような話があったり、悩ましい話があります。
 この問題は、両省の協議と同時に、救急体制、やはり消防庁として整えていかなければならない課題があるということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
平林委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十三分開議
平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 まず最初に、市町村合併の現状と課題についてお伺いいたしたいと思います。まず、市町村合併の進捗、進展状況等の現状認識を伺いまして、引き続き、平成十七年度で終わる合併特例法以降の地方制度のあり方について考えてみたいと思っております。
 最近の危機的な日本経済の悪化、特に地方経済の惨状は、産業の空洞化現象の影響などもありまして、本当に目を覆うものがあります。今年度末で約百九十四兆円にも達する見込みの地方債残高や、あるいはまた過疎化、少子高齢化による地域社会の衰退を背景に、特例法の適用期間内に合併にこぎつけようという動きが急速に広がりつつあります。また、住民意識の変化と多様化を踏まえまして、より効率的な広域行政への取り組みが求められている反面、多くの町村は、介護保険あるいはまた消防事務、さらには一般廃棄物の処理など、広域連合や一部事務組合で行財政の効率化を図っておりまして、政府主導の合併に反対する声もこれまた依然としてあります。
 また一方、昨年十二月末までの合併動向を総務省は去る一月二十五日にまとめておりますけれども、それによりますと、具体的な計画を練る法定協議会が三十四で百十七市町村、任意の協議会が六十で二百七十一市町村、研究会などが三百四十六で一千六百三十八市町村でありまして、研究会の位置づけあるいはまたとらえ方にもよりますけれども、多目に見ると検討組織の設置数は四百四十で、二千二十六の市町村が参加していることになります。さらに、昨年九月末から三カ月間で三百六十九の市町村が新たに検討を始めておりまして、合併の機運は徐々に高まっている、こういう状況であります。
 そこで、総務省に伺いますけれども、これから三年を切った特例法の期限の平成十七年三月末までに、どの程度の市町村が合併に至ると想定しておるのでしょうか。そしてまた、同年三月末時点でどのような状態をこの特例法の対象とみなすのでしょうか。また、去る二月二十一日の市町村合併支援本部の第四回会議では、どのような方向づけがなされたのでしょうか。あわせて三点、お尋ねいたしたいと思います。
芳山政府参考人 市町村合併の進捗状況についてのお尋ねでございますけれども、ただいま御指摘がありましたように、現在、合併協議会ないしは研究会を設置して、真剣に、かつ具体的に検討を行っている市町村数は二千二十六市町村、全国の市町村の六割を超えております。また一方、都道府県知事が合併重点支援地域として指定をしております数でございますけれども、四月一日現在、三十五府県、九十八地域、四百三十四市町村が指定をされております。
 また、法定の合併協議会の設置状況でございますけれども、ただいま御指摘がありましたように、昨年末、十三年十二月末現在では三十四地域、百十七市町村でございましたけれども、ただいまの、十四年四月一日現在では倍増しておりまして、六十五地域、二百五十市町村が法定協議会を設置してございます。今回、地方自治法の一部改正がございまして、住民発議制度の充実も図られておりますので、この法定協議会の設置数も今後増加が予想されております。
 したがいまして、十二年十二月の行政改革大綱に基づく、自治体数、千を目標とするという与党の方針を踏まえまして、合併特例法の期限であります十七年三月までに十分に成果が上がるように、我々も引き続き全力を挙げて努力してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
 また、二点目の合併特例法の期限の関係でございますけれども、法律の附則の第二条に規定しておりますが、「十七年三月三十一日限り、その効力を失う。ただし、同日までに行われた市町村の合併については、同日後もなおその効力を有する。」という規定がございます。そういうことから、時限法であります合併特例法の対象となるためには、十七年三月末までに合併をしておることが必要であるというぐあいに認識をしてございます。
 三点目の、二月二十一日の第四回の支援本部の決定の内容でございますけれども、主に四点ございます。一つは、各省庁の連携した支援プランでございますけれども、引き続き拡充を図るように検討を行う。特に市町村合併の広報啓発については、十四年度においても引き続き、三回目でございますが、全国においてリレーシンポジウムを開催していこう。そして、十四年六月を市町村合併広報の強化月間としまして、各種政府広報等、啓発活動に集中的に取り組もう。四点目は、合併重点支援地域の指定を一層拡充することの要請を含めた新たな指針を都道府県に通知をしたい、これは通知しておりますけれども。二月二十一日の決定内容はそういうことでございます。
 以上でございます。
黄川田委員 一般的に、合併協議会が設置されまして、そして合併が実現するまでに約二年ぐらいかかると言われております。そうしますと、この特例法の期限切れまでに合併するには、ことし一年がこれからの市町村のあり方を決める重要な年だと思います。そこで、自治体へのさまざまな情報等を的確に提供されるよう、よろしくお願いいたします。
 さて、三年後の合併状況が興味深いわけでありますけれども、その後の青写真をどう描いたらよいのでしょうか、ここが問題となると思います。国の形が行革等でどう変わり、そしてまた税財源の移譲を伴う実質的な地方分権がどの程度進んでいるか、難しい問題であると思います。
 市町村合併の結果いかんにもよりますけれども、地方自治の本旨に立ち返れば、国、都道府県、そして市町村の三層構造の中、私はこの中層の県レベルの行政機構のあり方論議が次に来る重要な課題だと思っております。例えば、私の地元の岩手、そして隣の青森、秋田の北東北三県は、廃棄物の処理など既に広域行政化に取り組んでおるところであります。
 経済財政諮問会議では、昨年六月、人口数千の団体と数十万の団体が同じように行政サービスを担う仕組みを見直して、団体規模に応じて仕事や仕組みをさらに検討するとしております。また、地方分権推進委員会では、一昨年十一月に、市町村合併が飛躍的に進展することになれば、広域的自治体としての現在の都道府県のあり方の見直しも視野に入れまして、地方自治そのものの仕組みについて中長期的に本格的な検討課題として取り上げていく必要がある、このようにしております。さらに同委員会の最終報告でも、市町村合併の帰趨を見きわめながら、道州制であるとか連邦制など、都道府県と市町村の二層の現行制度を改める観点から、さまざまな提言の当否について検討を深めるとしておるところであります。
 そこで、さきの新たに発足した昨年十一月の第二十七次地方制度調査会の折、小泉総理は、現在の三層構造のあり方について問題提起をしております。片山大臣はこの将来構想についてどのように描いておられるのか、改めてお尋ねいたしたいと思います。
片山国務大臣 黄川田委員のお話のように、今は国、都道府県、市町村の三層構造でございますけれども、これがどう変わってくるか。国は、これは一つの国ですから、それから今一番下の市町村の再編を合併を中心にやろう、こういうふうに考えておりまして、市町村の再編が仮にうまく進むとすれば、中間的な団体であります都道府県を、都道府県制度をどう変えていくかが大きな議論になると思いますので、地方制度調査会等で並行してもう議論を始めてもらったらどうだろうか、そういうふうに考えております。
 第二十七次の地方制度調査会の発足のとき、総理から、社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革について、地方自治の一層の推進を図る観点から調査審議をお願いいたしたい、この諮問をしてもらったわけでありますけれども、その際の念頭には、やはり都道府県制度についてもそろそろ議論を始めるべきではないかという考え方があるわけでありまして、ぜひ地方制度調査会ではそういう議論の展開をお願いいたしたいと思っております。
 また、総務省の中に研究会をつくっておりまして、これは恐らく局長レベルの研究会だと思いますけれども、そこでもう都道府県制度について議論してもらっているんです。
 都道府県制度の将来像については、道州制だとか連邦制だとか、あるいは府県合併だとか、いろいろな議論が過去にもありましたし現在もあるわけでありまして、そういうことで国民的な議論を展開してもらうということは必要じゃなかろうか、私はこう思っております。
 今の地方自治法だと、府県については何にも書いてないんですよね。例えば府県合併だとか府県連合については何にもないんです。だから、新しい法律が要るんですね、いずれにせよ府県制度を考える際には。そういうことを含めて、法制的な対応を含めて、これから我々も大いに議論をしていきたい、こういうふうに思っている次第であります。
黄川田委員 それから大臣に確認でありますけれども、この特例法の期限の延長というものはないということで理解してよろしいのでしょうか。
片山国務大臣 世の中締め切りがあるから頑張るので、締め切りがエンドレスということになると、まあゆっくりでいいや、こういうことになりますので、特例法の延長は考えておりません。
黄川田委員 現時点においては考えていないということで理解したいと思います。
 それでは次に、情報通信分野における公正な競争環境の育成についてお尋ねいたしたいと思います。
 機会あるごとに情報通信分野の公正な競争環境の育成に関する問題を提起してまいりましたけれども、今回は、地域通信市場において、どのようにしたら固定電話の料金政策に真の競争環境が導入できるかということを考えてみたいと思っております。
 我が国においても、マイラインの導入によりまして通話料については競争が進展しまして、料金水準も低廉化し、国際的にも遜色のない水準になっております。しかしながら、基本料については、住宅用の一級局で千四百五十円、二級局で千六百円、三級局で一千七百五十円と変わらず、通話料に比較し割高感が否めないと思っております。この原因が何かと考えますと、基本料についてはNTT東西が独占的にサービスを提供している、こういうことと言わざるを得ないと思っております。
 そこで、電話の料金政策について三点質問したいと思います。
 まず、NTT東西との接続について伺いたいと思います。
 長距離事業者等は、自己のサービスを利用者に提供するためにはNTT東西の設備を使用する必要があります。そのための使用料、接続料を長距離事業者等はNTT東西に支払っております。このようにNTT東西の設備が他の事業者にとって不可欠性であることから、既存の事業者、NTT東西のネットワークの非効率性を取り除くため、現在、長期増分費用方式という方式により接続料を算定しているところと伺っております。
 また、総務省は去る三月二十七日、情報通信審議会に、新電電各社がNTT東西の市内通信網を利用する際に支払う接続料について料金算定方法を見直すよう諮問しておるところでもあります。
 そこで、午前の質疑にもありましたけれども、私は一回生でありますので、改めて、この長期増分方式とは概略どのような計算方式なのか。そしてまた、最近の新聞報道によりますと、総務省は最大で二割弱の引き下げを試算しているようでありますけれども、この接続料の引き下げは、通信インフラの根幹をなしまして、公正な競争市場を育成する上で最重要課題でありまして、過去の日米交渉の経緯もありますけれども、この迅速な対応が望まれると思いますけれども、大臣の基本的な考えはいかがでしょうか。
鍋倉政府参考人 長期増分費用方式というのはどういう方式かというお尋ねでございますが、現在利用可能な最も低廉で最も効率的な設備と技術の利用を前提として新たにネットワークを構築するとした場合のコスト算定を行う方式でございます。
 これは、今先生御指摘のありましたように、ボトルネックということでございますので、地域通信ネットワークの提供においてその地域通信ネットワークを持っている事業者が非効率な投資を行う可能性がございますので、そういった非効率性を排除して競争価格の水準を示すものとして、経済理論上そのように解されているものでございます。
 ちなみに、我が国では、長期増分費用方式を導入するために、既に事業法の改正を十二年に行っているところでございます。
 それからもう一つ、今後の日米交渉等についてのお尋ねがございましたけれども、先生御指摘のとおり、この長期増分費用方式のモデルにつきましては、三月八日に研究会の報告書が出ました。これはコストを算定するモデルの見直しを行ったものでございますが、では、これをもとに実際に接続料等の料金をどうするか、あるいはその適用時期をどうするか、あるいはそもそもこの見直しのモデルが適当かどうか等々につきましては、三月二十七日に情報通信審議会に対して諮問をしたところでございまして、私どもの希望としましては、七月ごろに御答申がいただければと思っております。
 これをもとにアメリカ政府とは意見交換ということでございますけれども、これは本年十月までに行うということにされておりまして、現段階では、いつから行うということは確定しておりません。
 以上でございます。
黄川田委員 新聞報道によりますと、接続料引き下げの一部は、次に議論したいと思っております基本料に上乗せする案もあると耳にしております。これは慎重に検討を要することだと思いますので、情報通信審議会においては適切な判断が行われることを望むわけであります。
 それでは次に、基本料について伺いたいと思います。
 これについては、情報通信審議会によるIT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方についての第二次答申の中で、競争政策の一つとして挙げられている公衆網再販が大きく期待されるところであります。これにより他の事業者が基本料のサービスを利用者に提供することが可能になれば、基本料の設定にも競争原理が作用しまして、他事業者による柔軟な料金設定が可能となりまして、また、請求書が一本化され、利用者の利便性の向上が図られるわけであります。
 そこで、質問でありますけれども、多様化する利用者のニーズに柔軟に対応しまして、利便性を高め、結果として基本料の低廉化を促進すべく、通信事業者が料金設定の自由度を向上できる競争環境を整えられるよう、この公衆網再販の導入を早急に検討すべきであると考えますが、これについての総務省の見解はいかがでしょうか。
鍋倉政府参考人 公衆網の再販につきましては、今先生御指摘のとおり、基本料の低廉化につながるものでございまして、そういった意味で地域通信分野における競争をさらに促進するための一つの方法であろうというふうに私ども思っております。
 ただ、公衆網再販の実現のためには、NTT東西とそれから競争事業者の双方が必要な投資を行う必要がございます。そのために、まず、具体的な競争事業者のニーズをもとにしまして、NTTとの契約関係、あるいは事業者間の業務処理手順、あるいはシステムの開発、それに要する金額、それからその分担のルールといったような前提条件を明確にする必要がございます。
 そういうことで、総務省におきまして、昨年十二月に、NTT東西、それから競争事業者、学識経験者から構成されます協議会を設けまして、今私が申しましたような前提条件について検討を行っているところでございます。
黄川田委員 料金政策上重要な話だと思いますので、しっかりと検討していただきたいと思います。
 それではここで、固定電話について議論してまいりましたけれども、近年は、携帯電話の加入、普及も目覚ましく、御案内のとおり、平成十四年二月末現在で、電気通信事業者協会によりますと、インターネット接続型が五千三十三万台、携帯電話全体で六千八百万台にも達しております。そしてまた総務省によりますと、平成十三年四月に携帯電話の加入者数が固定電話のそれを既に上回っております。そこで、固定電話と携帯電話の通信料金に関連してお尋ねいたしたいと思います。
 携帯電話の普及は、すなわち固定電話から携帯電話に電話をかけるケースもふえてくることを意味します。特に、携帯電話を持たない高齢者などにとっては、身内などに電話するときには、やはり固定電話で携帯電話に連絡することも多いわけであります。
 また、固定電話から携帯電話への通話料金が高く設定されていると聞いております。さらに、老人ホームや入院先の病院では、高齢者が公衆電話で身内の携帯電話へ通話する機会も多く、そのときの通話料金は特に高く設定されていると聞いております。
 公衆電話でございますが、これはピーク時には全国で九十三万台ありましたけれども、逐次減少傾向にあるとはいえ、今でも七十万台余りあると思います。そこで、このようなデジタルデバイドの現状に対して、総務省はどのように認識しましてその改善策を考えているのか、お尋ねいたしたいと思います。
鍋倉政府参考人 固定発携帯着の料金が携帯発固定着の料金よりも高いという点でございますが、この点につきましては、昨年の二月に総務省が、当時既に固定発携帯着の料金是正に取り組んでおりましたNTTドコモグループ、この各社を除きまして、携帯電話事業者に対しまして、今後料金改定を行う際に、固定発携帯着の料金と携帯発固定着の料金との格差の縮小あるいは解消に努めるようにということで行政指導を行ったところでございます。
 この行政指導を受けまして、各携帯事業者におきましては、本年三月に、固定発携帯着の料金を三分百二十円に引き下げたところでございます。また同時に、公衆電話発携帯着の料金につきましても、三分百八十円に引き下げたところでございます。
 公衆電話の減少の問題でございますが、公衆電話事業の収支が非常に悪化をしておりまして、改善の必要性を実は会計検査院から指摘をされているところでございます。ということで、NTT東西におきましては、最低限の通信手段を確保する観点から設置される公衆電話と近接して設置されているような公衆電話等、要するに都会の駅などに複数並んでいるような公衆電話というふうにお考えいただいてよろしいわけですけれども、そういった公衆電話等については一定の削減を行ってきております。
 ただ、今先生御指摘がありましたような、利用頻度にかかわらず、社会生活上の安全ですとかあるいは戸外における最低限の通信手段を確保する観点から設置される公衆電話、これにつきましては、昨年の法改正によりまして、他事業者も応分の負担を行ういわゆるユニバーサル基金を導入いたしたところでございます。
黄川田委員 今後とも、料金の低廉化、そしてまた技術の進歩、その成果が国民全体に享受できるように、さらに適切な料金政策を展開されますようよろしくお願いいたしたいと思います。
 それから、時間も残り少なくなってまいりましたので、最後に、地方行政改革と新たな行政課題についてお伺いいたしたいと思います。
 国の行政については、行政改革を進める上で、昭和五十六年の第二次臨調、いわゆる土光臨調以来、この二十数年間、昭和六十二年の国鉄民営化などさまざまな改革がなされてきたと思っております。特に、今、深刻な経済状況において民間で辛酸をなめるような合理化が進められていることを考えますと、行政改革は今日の最重要テーマであると思っております。
 地方分権の推進が実行の段階を迎えた今日、地方公共団体は、厳しい財政状況を認識の上、みずからの責任においてさらなる改革を進め、地方自治の新時代にふさわしい体質の強化を図りまして、住民ニーズの高度化、多様化等に適切に対処をしていく必要があります。
 そこで、地方公共団体においては、事務事業の見直し、組織機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合などの行財政運営全般にわたる改革を積極的に推進するとともに、新たな視点に立ったさらなる改革を進めるために、PFIや政策評価などの新しい行政手法を活用した行政改革を進めるべきであると感じております。このPFIについては普及促進のため税制上の優遇策を拡充する方向とも聞いておりますので、現在のPFIの地方自治体の活用事例はどうでしょうか。そしてまた、実施上の問題点、またその解決策について、総務省からお伺いいたしたいと思います。
板倉政府参考人 PFIの関連でお答え申し上げます。
 PFIの推進は、民間事業者の新たな事業機会の創出を通じまして、経済の活性化のみならず、先生御指摘のとおり、地方公共団体の行財政運営の改革にも寄与するものと認識をいたしております。
 総務省といたしましては、地方公共団体に対しまして、平成十三年の四月でございますが、事務次官通知等におきまして、PFI事業の積極的な活用を促すとともに、地方公共団体がPFI事業により公共施設等の整備を行う場合に生ずる財政負担につきましては、基本的に直接整備する場合と同等の措置を講じているところでございます。
 地方公共団体のPFIの実施状況でございますが、平成十四年三月三十一日現在、四十八事業について実施方針が策定、公表されておりまして、既に供用を開始したものが三事例でございます。具体的には、教育・文化施設ですとか廃棄物処理施設、複合公共施設、駐車場、港湾施設など、さまざまな種類の公共施設の整備がPFIで行われているのが実態でございます。
 PFIの実施上の課題でございますが、まず、バリュー・フォー・マネーといいますか、その評価ですとか、リスクの明確化、定量化など、従来の事業手法に比べ新たな検討要素が多いということが第一です。また、いわゆる欧米流の契約手続が複雑で、なれる上で時間がかかるということもございます。さらに、国の制度や補助の仕組みがPFIという新しい手法にマッチをしない面があったということもございます。
 これらの課題に対しましては、総務省におきまして、窓口を設けて直接地方公共団体からの相談に応じますとともに、財団法人地域総合整備公団と連携をしましたPFI研修会の実施ですとか、PFIアドバイザーの派遣等を実施しております。さらに、本年度におきましては、同財団と協力をしまして、PFI事業に関心のある地方公共団体間の意見交換及び情報共有の場といたしまして、自治体PFI推進センターを、仮称でありますが、立ち上げることといたしております。
 また、国の制度や補助の仕組みにつきましては、さきに行われましたPFI法の改正により行政財産の貸し付けが認められるようになったことや、関係各省庁によります改善に向けた取り組みが進むなど、進展が見られるところでございます。今後とも、関係省庁と連携をとりながら、PFI事業の推進に努めてまいりたいと考えております。
黄川田委員 いろいろお話がありましたけれども、このPFIについては、事業の透明性の確保であるとか、あるいはまた責任分担の明確化等を前提にしまして、さらにその指導に着実に取り組んでいただきたいと思います。
 それでは、最後の最後であります。地域課題になりますけれども、質問いたします。
 地方では、国の出先機関の統廃合計画がメジロ押しであります。先ほどお話しいたしましたように、行政改革は時代の流れであります。また一方、地方から見ると生活の利便性が損なわれ、大きな痛みを強いられるところもあります。
 私の地元でも、公立高校、高専、大学、あるいは地方法務局出先の登記所、あるいはまた職業訓練機関の出先機関などの統合化が検討されております。また、地方では、鉄道輸送の地方路線の廃止、それにかわる代替バス路線も十分ではなく、都市のように交通網が整備されていないところもあります。昨今の雇用情勢の悪化を反映しまして、私の地元の岩手職業能力開発促進センター、いわゆるポリテクセンター岩手には職業訓練希望者が殺到しているにもかかわらず、国、雇用・能力開発機構は釜石支所を花巻センターに統合しようとしております。国が発行する卒業証書を取得した中高齢者はハローワークで評価が高いのが実態であります。
 そこで、厚生労働省に伺います。
 平成七年、特殊法人の整理合理化についての閣議決定の結果を踏まえて、同機構も釜石を含め全国でたしか六カ所ですか、整理統合の方向と聞いておりますけれども、こういう時期は柔軟に対処しまして、雇用環境が改善されるまで統合計画を見送るであるとか、あるいはまた地域のニーズに合わせて逆に拡充を図るなど、そういう考えがあってもいいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
平林委員長 答弁を簡潔に願います。
酒井政府参考人 先生御指摘のように、六センターを十四年度まで廃止をさせていただくということを閣議決定を踏まえまして決めさせていただき、地元と相談をいたしまして、まず分所化し、さらに個別に地元地方自治体とも相談しまして十四年度末に廃止ということで進めておるところでございますが、特殊法人につきましてはその後も改革が求められておりまして、昨年末にはより大きな改革が閣議決定されておりまして、ポリテクセンターにつきましてもさらに重点化、効率化をすべしということを言われて取り組んでおるところでございますので、分所、廃止の取り扱いを延期するということは困難なことではございます。
 しかしながら、雇用情勢が厳しいことは先生おっしゃるとおりでございますので、こういう公共の施設でやるタイプ以外に、委託訓練をもっと多用するとかといったような対応をさせていただいておるところでございます。
 分所機能というものをこのポリテクセンターに関して廃止した後につきましては、地域に開かれた能力開発を行う場ということで、地元の自治体あるいは民間教育訓練機関に活用していただくといった形で地域の能力開発に対応していくように努めたいというふうに考えているところでございます。
黄川田委員 県及び市町村とも連携をとっておられるようでありますけれども、地元への十分な説明責任を引き続き果たされますことを求めまして、終わります。
平林委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章です。
 NTTが進めております十一万人のリストラ問題について、きょうは人権を守るという角度から質問をさせていただきます。
 厚生労働省にまずお聞きをしたいと思います。
 ILOの百十一号条約、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、これは広範な差別を禁止する、そういう条約で、一般性を持った国際人権条約と言われている根本的な条約の一つだと思います。百十一号条約は年齢による差別についての明示はございませんが、それを補う形でILOの百六十二号勧告というのが出されておりまして、高齢労働者に関する勧告、一九八〇年にこれが採択をされております。この百六十二号勧告が採択された理由は、百十一号条約に掲げられている差別待遇の理由の中に年齢を含んでいないけれども、差別待遇の理由を追加することが可能であることについて規定していることを想起して、この勧告を採択している、前文でこう述べております。
 さて、この条約と勧告についてILOでの日本政府の賛否、それから勧告の中の2の五、差別を禁じる事項の中身について、簡潔に御説明願います。
中野政府参考人 お答え申し上げます。
 ILOの第百十一号条約は、いわゆる雇用及び職業についての差別待遇に関する条約でございまして、ILO総会における本条約の採択に当たりましては、その内容、趣旨につきまして大筋で賛同できるものであることから、我が国政府は賛成しております。
 また、百六十二号勧告につきましては、高齢労働者に関する勧告でございますが、ILO勧告は加盟国が自国の状況に適した方法で採用できる指針という性格を持つものであることを踏まえまして、本勧告のILO総会での採択におきまして、日本政府は賛成しております。
 また、百六十二号勧告の2の五におきましては、高齢労働者は、年齢を理由とする差別待遇を受けることなく、他の労働者との機会及び待遇の均等を享受すべきであると規定されております。
春名委員 勧告は何が差別であるのかというガイドラインを明示しておりまして、今箇条書き的に読まれなかったので、後でまた言っていただければいいんですが、この条約も賛成、そしてこの勧告も賛成なんですね。勧告の方は法的拘束力はもちろんないわけですが、加盟国に差別待遇防止措置をそれぞれ求める、こういう性格のものだと思います。
 以上を確認した上で、NTTが進めている今のリストラについて、この国際水準の角度からお聞きをしていきたいと思います。
 五十歳という年齢を境に全員が退職の対象になる、賃金三割カットで子会社への再雇用に応じなければならない。一方、この退職には応じられない、そのままNTTに残って働きたい、こう労働者が思った場合でも、同じ仕事はそこにない、そして異職種の全国配転を覚悟しなければならない。いずれの選択にしても大変過酷な選択が用意をされた、こういう構造改革の仕組みになっております。
 問題は、これを五十歳という年齢を境に実施することについてです。私は、この仕組み自身がILO条約、勧告の趣旨そのものに反する、年齢による差別待遇そのものだと考えますけれども、政府はどういう御見解でしょうか。
鈴木政府参考人 御指摘の問題についてですが、企業におきましては、労働者を雇用している以上、その雇用の安定に最大限努力する、これは極めて重要なことと考えておりますが、企業の存続のためにやむを得ず転籍等が行われることもあり得るものと考えております。
 ILO百六十二号勧告の趣旨から見てどうかというお尋ねですが、この趣旨については、先ほどもお話がありましたように、高齢労働者が年齢により差別待遇を受けることのないようにする、そういう趣旨を示したものでありますが、この雇用保障の項では、雇用の終了に関する国内法令や国内慣行に従うことを条件とするということも記されております。したがいまして、いずれにしても、本件のような転籍等の問題につきましては、国内の法令あるいは裁判例、そういったものの考え方を十分踏まえまして、労使間で十分話し合って対応していくべきものと考えております。
春名委員 国内の慣行に従うと言われるんだが、そんな慣行は今までなかったんですよ、このNTTがやるまでは。五十歳という年齢で一律全員を退職させるなんという仕組みは、今度初めて出たんですよ。だから、そんな仕組みを、この勧告や条約を賛成し、条約は批准はしていないですよ、しかし、その批准のために努力をするという立場にある、そういう日本の政府がこういう仕組みを、あえて逆流するような仕組みを今導入することについて、本当にこのままでいいのかという問題提起をしているんです。
 もう一度どうぞ。
鈴木政府参考人 今申し上げましたように、国内のいろいろな法令あるいは裁判例、そういったものがありますので、そういった考え方をもとに、労使間で十分話し合って解決していくべき、そういうことが今までもなされてきましたし、これからもそうあるべきだと考えております。
春名委員 それは違いまして、裁判例等で話し合って労使で決めたらいいというんじゃなくて、その決めた中身が条約、勧告に沿って本当にいいのかどうかを今問うているわけなんですね。労使間の話し合いは関係ないんです、人権を守るというのはそんな問題じゃないですから。
 それで、今お話が出たけれども、年齢により差別してはならないというのがこの趣旨なわけです。総務大臣、いかがですか、これ。こういう二つの、私に言わせたら不毛な選択と言わせていただきたいんですが、選択を迫るような仕組みを一律五十歳という年齢でもって導入をして、労働条件の不利益を強制する仕組みを入れる、こんな仕組み、本当にいいのでしょうか。私、ここが非常に疑問でありまして、総務大臣、どうお感じになりますか。
片山国務大臣 それはまあ、NTTも生き残らなきゃいけませんよね。厳しい経済状況、しかも競争が激しくなる中で、いろいろ考えに考えての改革案を出して、労使で十分話し合って、今委員が言われるようなことは全部、話し合いの、考えの中には入って結論を出したんだと私は思いますよ。
 だから、そういう点は基本的には労使の自決、話し合いということでございますし、労働関係の今の条約、勧告についてはそれぞれ担当の方に聞いていただかなければいけませんし、アウトソーシングするんだから、その仕事がなくなるというのはしようがないといえばしようがないですね、それは労使が合意したんですから。委員の言われることは、気持ちはわかりますけれども、しかし、私は、やむを得ないあれではないかと考えております。
春名委員 すぐ労使の問題だからと言ってそこに持っていかれるんだが、だから私は、きょうは人権という世界基準の問題で議論をしているわけです。人権を守る、それから、みずから賛成をした条約、勧告を守る、人権侵害を許さないというのは当然政府としての断固とした姿勢だと私は考えますが、総務大臣、この点、一般論で結構ですが、それはいいですね。
片山国務大臣 まあ、人権は人権なんでしょうけれども、やはり企業の存続というのがまずなきゃ、企業がおかしくなったらみんな失業するんですから。だから、その兼ね合いですよ、すべて。
春名委員 日経新聞の三月三十日付、NTT最終赤字一兆円である、特損二兆円超すという記事を私も見ております。中身は、何のことはありませんね。第一は、ドコモの海外出資先四社に対する評価損、総額で一兆円前後。NTTコム、海外出資先のベリオの評価損が五千億円。西日本、東日本の今やられている、人権侵害を伴っていると言わざるを得ないこのリストラの退職金積み増しなどの費用が五千五百億円。この三つで二兆円を超えているんですよ。
 企業も生き残らなければならないと言うけれども、労働者のこういう不利益なことを与えられる責任は労働者にはありませんので、そこのところはよく見ておいてください。
 それで、厚生労働省にお聞きしますけれども、先ほどお話が出なかったんだが、勧告の2の五、どういうことが差別、やってはいけないのか、箇条書きで結構ですから、箇条的に言っていただきたいと思います。
中野政府参考人 百六十二号勧告のうちの2の五についてでございますが、2の五におきましては、「高齢労働者は、年齢を理由とする差別待遇を受けることなく、特に次の事項に関し、他の労働者との機会及び待遇の均等を享受すべきである。」ということで、(a)から(g)まで七項目につきまして記されております。
 具体的に述べますと、まず(a)項では職業指導及び職業紹介の業務を利用する機会、(b)としまして、各自の技能、経験及び資格を考慮した上で、次の事項に対する機会ということで、自己の選択による雇用、職業訓練の便宜等について記されております。(c)といたしまして雇用保障、(d)といたしまして同一価値の労働に対する報酬、(e)といたしまして社会保障措置及び福祉給付、(f)といたしまして労働条件、(g)といたしまして住居、社会的サービス及び保健機関を利用する機会となっております。
春名委員 今お読みいただいたその項目の中でも、例えば(d)、同一価値の労働に対する報酬、年齢によってこの報酬に差別をつけてはならない。それから(f)、労働条件、労働条件も、年齢によっていわれない差別をしてはならない。はっきりしているんですよ、これ。
 皆さんは、もし人権侵害でないと総務大臣などがそうお考えになるのであれば、なぜ五十歳という年齢でこういう差異をつけてしまうのか、今度は私に納得できるように説明をする義務があります。厚生労働省でも総務大臣でも結構ですが、例えばこの(d)、同一価値の労働に対する報酬、それから(f)の労働条件、こういう二つのガイドラインを明示されている項目から見ても、NTTが今やろうとしている、やられているやり方は抵触するおそれがあると私は思いますが、いかがですか。
鈴木政府参考人 勧告の2の五の(d)等のお話でございますが、ここでは賃金の問題がございます。それから、その後に労働条件の問題がございますが、ただ、この問題につきましては、NTT労使間で協議がなされた上で、例えば転籍先の会社での賃金等の問題も含めて、労働者の同意が得られた場合に転籍が実施されるというふうに聞いております。
春名委員 先ほどから同じことを答弁されているので困っちゃうわけですけれども、労使が合意をしたということがにしきの御旗にされているんですけれども、そのことは自明の前提で私は議論をしておりまして、労使といっても、大きな労働組合は合意しているかもしれませんが、そうでない組合もありますので、そこも理解していただいた上で、そのことは前提にしつつ、しかし、そうであっても、こういう人権の侵害という問題、年齢による差別を許さないという今日のグローバルスタンダードという問題、そういう角度から考えたときに、果たして見過ごしていいのかということを、きょうはそういう角度から問題提起をしているわけであります。
 労働条件、そして同一労働、その価値に対する報酬、これは差別をつけてはいけないというのが、示されている国際的な基準であり、日本政府が守るべき基準でしょう。その角度から見て、本当に、労使で決めたことだったらいいやというように見過ごしてしまうというのが政府の姿勢なんでしょうか。
鈴木政府参考人 今の御指摘の問題でございますが、これは、いずれにしても転属先の会社での賃金、労働条件の問題でありまして、先ほど申し上げましたように、労使間で協議の上、その点を踏まえて同意がなされているというふうに考えております。
春名委員 もし労使でそういう合意をしたかというのを繰り返し言うのであれば、それはそれでいいですが、今転籍のお話をされているので言いますけれども、転籍というのは本人の同意がしっかりあって初めて成り立つものであって、その同意についてこのような二つの選択肢しか用意をしていないという仕組みが差別そのものじゃないかということを言っているわけです。
 一方の仕組みは、転籍をして三割賃金カット、もう一方の仕組みは、全国配転、異職種の配転。五十歳というのは、高校生や大学生の子供さんがおって、PTAの役員をして、地域の中で大変な仕事をして、さあ、これから最後の十年、定年まで頑張ろうという年代のときに全国異職種配転をやる、それをのめ、それがだめなら三割賃金カットでいけ、こんな仕組みを導入していいのかということが問題であるし、それを唯々諾々と、労働者がみんな、わかりましたと言ってのむはずがないでしょう。
 私はもう一つ違った角度からお聞きしたいんですが、私、総務大臣にこれは聞いておきたいと思うんですけれども、五十歳以上にもとの仕事を保障するという道をもしつくっておれば、例えば四十九歳以下の労働者と同様に在籍出向といいますか、そういう道をもしつくっていれば、自由な選択ということが言えるかもしれませんね。人権侵害に当たらないというふうに言おうと思えば言えるかもしれませんね。しかし、そういう道は残していないわけですね、総務大臣。全国異職種配転、あるいは三割賃金カットという道しか残さないわけですね。在籍出向を認めないわけですね。四十九歳以下の労働者はそれはある。しかし、五十歳になった途端にその道を閉ざす。これはどう考えても、いわれのない年齢による差別としか言いようがないと私は思うんですよ。この点、どうでしょうか。
片山国務大臣 委員が私に言うよりNTTに、春名委員の御存じの労働組合もあるんでしょうから、大いにNTTの中で議論していただきたいと思いますね。それから、法律に触れる、触れないというようなことになれば、これは司法の世界の話になります。NTTが必死の頑張りで生き残りのためにいろいろな案を出して労働組合の同意も得てやっている、それはそれでやむを得ない、私はこう思っております。
春名委員 生き残りのためなら人権侵害してもいいとはならないと思いますので、きょう私は議論をしているわけであります。
 それで、一点、私、聞いておきたいと思いますが、今度は厚生労働省にお聞きしておきますね。憲法十四条には、法のもとの平等という大変大事な基本的人権の骨格になる条文があります。そして、労働基準法の三条では、労働条件についての均等待遇、信条や社会的身分を理由とする差別を禁止しております。この趣旨は、合理的な理由がなければ年齢などによっても差別してはならないという趣旨だと私は理解しております。相違ありませんか。
鈴木政府参考人 労働条件の差別、これは一般的に、法令によって決められているものはあってはならないものでございます。ただ、具体的な問題、例えば年齢等による問題については、具体的にどういった場合にどういった問題が生じるか、そういう観点から、いろいろな判例等もありますので、そういった点を踏まえて考えていくべきものと考えております。
春名委員 私は、労働基準法の一般的な解釈を聞いておるわけでありまして、これは信条や社会的身分を理由とする差別は禁止をする、年齢というのは入っておりませんけれども、しかし、その趣旨は、合理的な理由がなければ年齢なども含めたそういう労働条件の差別はしないと。
 そして、アメリカでは、そういう年齢による差別をしないという条文とか法律とかができて、それが世界の流れになっているというのが今日の到達点じゃないですか。そのことはもう確認をするまでもないと思っていたんですが、その点、国内の法令から見ても、国際的な基準、そして条約、勧告、そういう中身から見ても、大変疑義のある仕組みを導入しておると私は言わざるを得ないわけなんですね。
 先ほど大臣は、春名さん、NTTに行って話してくれと言われておるので、私は、八つの支店に行きまして直接話しております、そんなことをやるべきじゃないと。人権侵害になりますよということも直接話しております。したがって、私は、大臣の方にボールを投げたいと思うんですが、この仕組みを会社全体でつくってやっているわけですから、国会でもこういう、人権侵害じゃないかという問題が議論されましたということも伝えていただいて、自分の目で、こういう仕組みがいいのかどうか、人権侵害じゃないのかどうか、五十歳によるいわれのない差別になるんじゃないか、こういう問題を、労働者からもお話を聞く、会社側からももちろんお話を聞く、そういう真摯な姿勢を私は見せていただきたい。この点、いかがでしょうか。
片山国務大臣 私がどういう根拠と権限でそういうことをNTTに言うかということにもなりますし、国会で春名委員のような御議論があったということは何かの機会にお伝えいたします。
春名委員 しっかり伝えていただくということ、何かの機会ではなくて。だって、一月の三十一日にそういう選択を迫って、五月の一日に子会社ができて、もう本当にみんな労働者は、今回の対象は五万五千人ですよね、来年も同じことが全部五十歳になったらやられるんですよ。五十歳という年齢になったがゆえに、そういう不毛の選択が迫られる仕組みなんですよ、これは。これを、もういいじゃないかということにならないでしょう。
 幾つかの基準をお示ししました。そのことを腹に落としていただいて、本当にこの問題について真摯な対応をしていただきたいと思いますし、私自身もその問題はきちっとこれからもただしていくということを申し上げておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 春名委員の残りの時間、幾つか質問させていただきます。私の方からは、午前中にも質問がありましたが、三月二十九日に総務省が発表いたしました渡し切り費に関する調査結果について、お尋ねしたいと思います。
 そこでまず最初に、私、この問題、何回かこの委員会で取り上げてまいりました。一貫して、この中身が問題があるという立場から追及してまいりました。とりわけ、昨年の十月三十日の当委員会で、十月二十四日付の読売新聞の報道に関連して、東北郵政局管内の一九九九年度、平成十一年度の渡し切り費の調査を要求したわけであります。
 午前中の同僚議員の質問に対して大臣は、首席監察官あるいは東北郵政監察などにより、つまり中央、地方監察によって厳正、適正な調査が行われた、こう答弁されました。私の要求した、この十月三十日の委員会で指摘した問題についても、監察が入って調査が行われたんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
松井政府参考人 お答え申し上げます。
 十月二十四日付の読売新聞の記事に関連して十月三十日に矢島先生から御質問がございました。全体的な調査を監察組織を使ってやるというふうに大臣から御答弁しているところでございますけれども、今回の監察の、首席監察官がもちろん総責任者であるわけでございますが、その調査につきましては、証拠書類の残っていなかった平成十一年度以前を調査対象とすることはできませんで、証拠書類の残っております十二年度のもの、それから十三年度の上半期を対象として監察の調査が行われております。
矢島委員 時間が物すごく少ないので、監察が入ったか入らないかをお聞きしたんですが、その理由として証拠書類の問題を長官が今言われたわけです。その結果、十二年度と十三年度の上半期だけが行われたんだ、そういう答弁だろうと思うんです。
 そこで、私がお聞きしたいのは、結局、東北のこの問題については監察は入らなかった。当時は足立長官ですけれども、大臣の御指示もございますので、現在、首席監察官のもとで特別にこれを調査するということを決めて進めているという答弁なんですよ。これと、どうしてこうなっちゃったかというのは、その証拠があるかないかだけの違いなんですか。お願いします。
松井政府参考人 ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、十二年度と十三年度の上半期を対象として監察が調査をしまして、その過程の中では、十一年度以前に新聞記事にあるような行為があったと疑われるような事実は見出せなかったということでございます。監察の調査としてはそういうことでございます。
矢島委員 この平成十一年度の問題について、私、お聞きいたしましたら、いろいろな調査の内容の中で、二〇%という上納の問題が新聞にも出ていたわけですけれども、これは、要するに事業庁から東北郵政局へ、指示があったかどうかということを関係者から話を聞けと、こういうやり方の調査なんですね、監察入りませんから。そして、その話の結果、指示があったという人と覚えていないという人がいた、こういう返事が東北郵政局からあったということをお聞きしました。いずれにしましても、調査していないということなんですよ。やったことはこういうことですよ。
 十三年の十月下旬、本庁より東北郵政局に対し、事実関係を調査するよう指示した。私には監察が入ってやるんだという答弁をしておきながら、証拠書類がないからだめなんだ、できませんで、結局、身内の東北郵政局、とりわけ、関西郵政局の問題がありましたが、この特推連や全特というのは全く一体なんですよ。一体の中で、同じ一体の郵政局に調査をするように指示して、聞き取り調査をしたというんでしょう。これでは本当に何のために調査をしたのかと言いたいですよ。
 それで、同じく十三年の十一月下旬、特推連の会長に対して当時の状況を聞いたと。それが、先ほど私が一部言いましたけれども、二〇%の上納金の問題であります。これは、覚えているのもいれば覚えていないのもいる、やったかもしれないしやらなかったかもしれない、こんな調査なんですよ。そして同じく、東北郵政局において、東北特定郵便局長会、いわゆる全特の東北版、これの前事務局長に対していろいろ聞いたと。
 結局、それらの結果、特に問題はなかったと。これだけのことでなぜ問題がなかったと決められるのか、私は全然納得できません。
 きょうは時間がありませんから、もっと細かいこともお聞きしたいのですが、別の機会にまた細かく大臣にもお聞きすることになると思いますので、よろしくお願いします。
平林委員長 松井長官、簡潔に願います。
松井政府参考人 公的な組織である特推連に関する上納というのはございません。それから、公費をもって上納という認識の者はだれもいません。これだけは申し上げておきたいと思います。
矢島委員 終わります。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 社民党・市民連合の重野安正です。
 私は、きょうは土地開発公社問題に絞って質問をしたいと思います。
 言うまでもなく公社は、まず土地の保有総額で、土地造成、先行取得合わせて九六年、九七年度が、また保有面積では九七年、九八年度がそれぞれピークとなっています。こういう状況を生んだ根本的原因が、土地開発公社が政府の不況対策としての経済対策に動員をされた。したがって、そういう点については総務省も当然自覚しているというふうに思うわけであります。
 そこで、まず問題を自治体の公共用地先行取得全体に広げて考えてみるとき、経済対策の一環として、九五年度から今年度まで公共用地先行取得債等について交付税の基準財政需要額に算入し、さらに二〇〇〇年度及び二〇〇一年度には金利について特別交付税で一部措置している。まず、その趣旨及び目的は何なのか、伺いたいと思います。
 また、基準財政需要額と基準財政収入額において、普遍的なものでない、つまり特別な財政需要を考慮して配分されるのが特別交付税であることを考えるとき、公共用地先行取得事業債の金利を特別交付税の対象とすることは問題ではないのか、このように思うんですが、まず、その点について伺いたいと思います。
板倉政府参考人 まず私の方から、公共用地先行取得等事業債につきまして、平成七年度から普通交付税措置を実施しております、また平成十三年度から特別交付税措置を実施しているその目的、趣旨は何かということについての御質問にお答えしたいと思います。
 平成七年度からの普通交付税措置につきましては、平成六年二月八日、経済対策閣僚会議におきまして、総合経済対策が取りまとめられました。土地の有効活用を促進し、本格的な景気回復と安定した持続的成長経路への移行を確保することとされたところであり、地方公共団体等における用地の先行取得の積極的促進を図ることとされたところでございます。この公共用地の先行取得の促進措置の一環といたしまして、基幹的な公共施設用地の先行取得を促進するため、公共用地先行取得等事業債の利子の一定割合について普通交付税措置を講じることとしたところでございます。
 平成十三年度からの特別交付税措置につきましては、平成十二年七月二十八日、土地開発公社経営健全化対策(自治事務次官通知)に基づきまして、設立地方公共団体が策定した経営健全化計画に従って、土地開発公社の保有する土地を再取得する場合に、公共用地先行取得等事業債の利子の一部を特別交付税により措置することとされているところでございます。この特別交付税措置は、公社の抜本的な経営健全化を促すという目的で実施をされたものと認識をしております。
林政府参考人 御質問のうちの特別交付税による措置といたしましたことにつきまして、お答えをさせていただきます。
 公共用地の先行取得につきましては、地方団体における社会資本整備を円滑に進める観点から所要の財政措置を講じているところでございます。御指摘をいただきました特別交付税による利子を対象とした措置につきましては、土地開発公社の経営健全化を図るために、設立団体におきまして経営健全化計画を策定し、計画的に土地開発公社の経営健全化に取り組もうとする団体が出ております。これらの団体におきましては、その推進を支援する上から、特別交付税による支援措置を講ずることとしているところでございます。
 この土地開発公社の経営健全化は、地方団体にとりまして早急な対応を要する重要な課題となっております。そのために要する経費につきましては、特定の団体における特別の財政需要でございますので、現在、特別交付税の算定の対象といたしているところでありまして、特別交付税の趣旨に即したものと考えているところでございます。
重野委員 それでは聞きますが、今指摘をしました交付税の基準財政需要額への算入額が、調べてみますと、土地開発公社も含め、トータル四百二十六億円と聞いておりますが、まずその点を確認したいと思います。
 それほどこの交付税で誘導する一方、土地開発公社について、二〇〇〇年度の二団体も含め二〇〇一年度から七十三団体について、土地開発公社の借入金の簿価と標準財政規模との割合を基準とする経営健全化計画の策定を条件に特別交付税で利子軽減を図るというのは、政策的に矛盾しているように聞こえるわけでありますが、この点について大臣の見解をお聞かせください。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
林政府参考人 御質問のうち、普通交付税の基準財政需要額への算入額につきましてお答えをさせていただきます。
 御指摘いただきましたとおり、平成六年度から行っておりますが、平成六年度から平成十一年度の許可債についての算入、また平成十二年度許可債についての算入額、算入率は違いますが、合わせますと、累積算入額は四百二十六億円程度と見込まれております。
片山国務大臣 バブルがはじけまして、ちょうど平成六年といったら細川内閣でございますけれども、景気対策をやろう、そういう経済対策の一環で、公共用地を先行取得して、公共事業を大いにやって、それで景気に刺激を与えよう、こういうことをやりまして、そのためには公共用地先行取得債の利子の一部を普通交付税で見ようと。これは景気対策ですね。景気対策で公共事業を促進しよう、そのためには公共事業に関する土地を先行取得しよう、こういうことをやったんですね。
 今度、特交で見ようというのは、この公社がいろいろな土地を抱えて、土地開発公社自身がおかしくなっているんです、経営が。土地開発公社がひっくり返りますと、これは地方団体の分身ですから、ダミーみたいなものですから、もうもろに地方団体の財政に影響する。そこで、この土地開発公社の経営健全化を図るために、とにかく今度は地方団体が土地を買い上げる、再取得する、その場合の利子について特別交付税で見てやろうと。これは、当初の普通交付税のときにはわかりませんから、健全化計画を出させて、それを承認して、承認した場合にそれを特交で利子の一部を見てやろう、こういうことですから、これは公社の経営健全化ですね。
 だから、視点が違う、時期が違う。だから私は、それぞれ財政的に応援するという点では一緒ですけれども、時期が違いますし目的が違いますから、それはそれで御了解いただけるものだ、こういうふうに考えております。
重野委員 そこで、まずこの経営健全化計画について聞きますが、対象となる土地開発公社について、一つは、設立団体の債務保証、損失補償にかかわる土地の借入金の簿価が標準財政規模の五〇%以上、二つ目に、保有期間が五年以上となっている債務保証等対象土地の簿価が同じく標準財政規模の二〇%以上、このようにされておりますが、この五〇%、二〇%という根拠は一体何なのかということが第一点。また、この基準に該当する団体名、二つの条件にかかわる保有土地についての金額について、説明できればお聞かせいただきたい。
板倉政府参考人 まず、土地開発公社経営健全化対策の対象団体の要件についてでございます。
 各団体の平成十一年度末におきます標準財政規模に占める債務保証等対象土地の簿価総額及び五年以上保有する債務保証等対象土地の簿価総額の割合を調査いたしまして、その平均値を算出いたしました。この平均値を基準といたしまして、原則といたしまして、その二倍以上の割合となる土地開発公社の設立出資団体については、その土地開発公社の経営の健全化が必要であると考えまして、その数値を全国平均まで低下させることなどを経営健全化対策の目標として設定をいたしました。
 平成十一年度末におきます調査の結果の平均値はそれぞれ約二五%と約一〇%でございましたので、経営健全化の対象団体となる要件の数値といたしましては、それぞれその倍をいたしました五〇%と二〇%というふうにいたした次第でございます。
 次に、該当する団体とこの二つの要件にかかわる保有土地についての金額いかんということでございます。
 経営健全化対策の対象団体は、平成十一年度末におきます、先ほどの標準財政規模に占める債務保証等対象土地の割合、または標準財政規模に占める五年以上保有する債務保証等対象土地の割合が一定の数値以上であることを要件としたわけでございますが、健全化計画を策定するかどうかにつきましては、それぞれの団体の任意といたしておるところでございます。
 総務省といたしましても、対象となる団体について詳細に把握をしているわけではございませんが、全体で約二百弱の団体数になるのではないか、また平成十一年度末における保有土地の総額は約二兆三千億円程度ではないか、こういうふうに考えております。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
重野委員 いずれにしても、今論議されておる事項の出発点は政府の経済対策にあるわけですが、条件となる数値基準、これを私は高過ぎるという認識を持つわけであります。
 健全化目標で見ますと、まず、一の基準でいきますと、簿価総額を二五%以下とすることになっているわけでありますが、目標どおり引き下げても、債務保証、損失補償が起債と同種のものであることを考えれば、例えば、総務省が問題とする公債費負担比率二〇%という数字が出てくるわけでありますが、それと比べても依然として高い、こういうふうに思うのですね。それで当該自治体財政の硬直性の緩和とはならないのではないか。このことは二つ目の基準でも同じことが言えるわけです。
 そこで、こうした健全化措置が二〇〇五年度までに確実に達成されるのかという点が一つ、明確な見通しを持っておられるのか、その点について伺います。
板倉政府参考人 この経営健全化対策の要件は、特に経営状況の悪い、そういう団体を対象としたわけでございます。
 先ほど申しました二百弱のうち、全国で七十三団体が経営健全化計画を策定いたしまして、大部分の設立団体が、平成十三年度を初年度といたしまして、健全化対策の最終年度でございます平成十七年度までの五年間を計画期間として、取り組みを現在進めているところでございます。総務省といたしましても、その円滑な実施が図られますように、今後とも、設立団体への地方財政措置等を通じまして、土地開発公社の経営健全化に努めてまいりたいと考えております。
 この計画の着実な実施によりまして、保有土地の処分は進展をするというふうに考えておりますが、今後の推移を慎重に見守ってまいりたいと考えております。
重野委員 見通しの問題については後ほどちょっと質問いたしますが、この健全化対策では、設立出資団体の責任において健全化が図られるべきである、こういう立場ですね。
 しかし、そう言いながらも、今の説明にあるように七十三の団体がありますが、七十三団体のうち、およそ六五%が大都市圏に集中しておりますね。そうした自治体に、特別交付税とはいえ、自治体共通の財源を注入することが、最近総務省が強調しております自治体の自律と自立に反するのではないか、これでは金融機関の不良債権処理に対する公的資金注入と全く同じ構造ではないか、こういうふうに思うのですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
林政府参考人 地方交付税が地方団体の共通、共同の財源の性格を有するという点につきましては、御指摘のとおりでございます。
 特別交付税の算定対象といたしております財政需要につきましては、個別に見ますと、都市地域に多いものもあれば地方に多いものもありますが、いずれにいたしましても、地方団体に存在いたします財政需要のうち、例えば突発的であるとかあるいは地域的であるとかといいますように、普通交付税による画一的な算定になじまないものにつきまして、特別交付税により財政措置を講ずることといたしているものでございます。
 御指摘の土地開発公社の経営健全化計画を策定している団体は七十三団体あるわけでございますが、確かに都市地域の団体が多いのは事実でございますけれども、必ずしも大都市圏の団体に限られているわけではございませんで、北海道から九州まで、該当団体が存在している状況にございます。
 なお、それらに対します支援としては、土地開発公社の地方団体による健全化を支援してまいりたい、こういう趣旨で行っているものでございますので、御理解をいただきたいと思います。
重野委員 先ほど、健全化計画達成に対する明確な見通しを聞きました。必ずしも私は確実性のある答弁とは理解をいたしません。
 健全化対策でも達成数値を弾力化しているのではないか。こうした二段構えの達成数値を掲げるのであれば、最初から低い数値目標に一本化して、要件も広くとらえて、多くの団体を対象とする方が、それこそ、逆に交付税の理にかなうのじゃないか、そういうふうに思うのですが、それについてはいかがお考えでしょう。
板倉政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、この健全化対策を策定する要件がございます。これは、全国平均値よりも二倍、それよりも悪いという団体を対象にしたものでございます。
 したがいまして、御指摘のとおり、達成の目標が二段構えになっているんではないか、こういうことでございますが、この平均値を基準といたしまして、原則として、その二倍以上の割合となる土地開発公社の設立出資団体につきまして、健全化対策の対象とした上で、その数値を全国平均まで下げるということを健全化対策の第一弾の目標として設定をいたしておるわけでございます。
 しかしながら、先ほどの数値が二倍を大きく超えているというような団体もございますので、その場合には、全国平均値まで一挙に下げるという健全化の目標を達成することが極めて困難であるというふうに見られるわけでございまして、最低限達成すべき目標というのを二次的に設定をさせていただいたということでございます。
重野委員 時間がありませんので先に進みます。
 今度は大臣に聞きますけれども、ちょっと内容を転じまして、土地開発公社の性格について聞きたいのですが、土地開発公社とその設立団体である自治体とはどのような関係にあるとお考えでしょうか、大臣の見解をお聞かせください。
片山国務大臣 この土地開発公社制度というのは、当時の自治省と建設省が一緒になって、昭和四十七年に公有地拡大法というのをつくりまして、あのころは土地神話ですから、絶対土地は下がらない、だから早目に地方団体が土地を持って、将来の公共用地を持っておくことが大変効率的な公共事業の推進になる、こういう考え方なんですね。そこで、法律をつくって、地方団体の分身である、全額地方団体出資で、簡単に言いますと特別の手続による地方の特殊法人ですね、それをつくらせたんです。
 したがいまして、この性格は、先ほども申し上げましたが、地方団体とは別人格ですけれども、いわば分身でございまして、土地の先行取得のためのダミーだ、こういうふうに考えていただけばいいと思うのですね。
 今回の措置は、とにかく土地開発公社をつくったものが面倒を見ればいいんですよ、本体が、地方団体が。ところが、ほっておきますと本体すら危なくなるような、極めて状況の悪い土地開発公社だけ持ちこたえさせようということなんですよ。基本的には、景気がよくなって財政がよくなれば、工業地もありますけれども、公共用地が多いですから、地方団体に引き取ってもらえばいいんですね。基本的には、土地の値段が上がって土地の価値が出れば一番いいんですけれども、今のような状況ですから、ほっておくと、土地開発公社が倒れると、本体の地方団体にまで影響がありますから、とにかく健全化計画をつくって持ちこたえさせようということなんです。
 ただ、それでも、この基準でいきますと、二百以上の団体が二兆三千億の土地を持っているんですよ。そのうち、健全化計画つくったのは七十三で、一兆二千億なんですよ。まだ半分の土地は残っているんです、この条件に該当するものが。だから、事態をよくするんじゃなくて、悪くしないような精いっぱいの措置なんですよ。
 そこで、せめて利子の一部を特別交付税で見てやろう、こういうことでございまして、ぜひそこのところは御理解賜りたい、こういうふうに思います。
重野委員 自治体の分身である、そういう答弁であります。
 そこで、土地開発公社の借入金は、地方自治法二百十四条に定める設立自治体の債務負担行為の議決なくしては生まれない、そういうふうに押さえていきますと、結局、土地開発公社の債務も、これは国、地方の債務残高にカウントされるべきではないか、このように思うんですが、これについてはどういうふうに考えていますか。
林政府参考人 土地開発公社は地方団体とは独立した法人ではございますが、公社が民間金融機関から借り入れを行います場合には、地方団体が債務保証するのが通例でございます。そのような場合、地方団体におきましては、当該地方団体の予算に債務負担行為として計上することになっておりまして、議会の議決を経て実施されているものでございますので、設立団体の債務として明示するようお願いをいたしているところであります。
 総務省におきましても、このような各地方団体の財政状況を把握するに当たりましては、地方債の現在高のみならず、債務保証または損失補償を行ったこと等による地方団体の債務につきましても報告を求めているところでございまして、土地開発公社に係る保証債務を含めまして、将来、地方団体において支出が予定される金額については、これを把握し、全国的な概況を公表いたしているところでございます。
 さらに、このような保証債務の状況を含めまして、地方団体の資産と負債の状況を全般的にとらえることができるよう、バランスシートの作成手法もお示しをいたしているところでございまして、このバランスシートの活用等によりまして、各団体の財政状況が総合的にわかりやすく公表され、住民の理解と協力のもとで財政運営が図られるよう、各地方団体に対して助言をさせていただいているところでございます。
重野委員 なかなかその答弁、理解できないんです。二〇〇〇年の七月、「地方財政」という雑誌に、当時の自治省の方が債務負担行為について書かれておりますが、同時に、同じ年の四月二十一日付の建設省、自治省の共同通知でもそのことが明確に書かれているわけですね。
 私は、やはり突き詰めれば、間違いなく設立自治体の債務であるということを否定することはできないと思うんですね。国民に対する説明責任ということが今非常に問われておりますが、私は、地方財政全体の債務残高にカウントすべきである、このように思います。そのことを明確にしないから、この土地開発公社の借金は自治体の隠れ借金などというふうな批判を受けるわけですね。
 そういう観点からも、今私が問いました内容について、また同時に、もう一つは、今後市町村合併が進んでまいります。今回のこの健全化計画が、合併によって標準財政規模が拡大をすると、今の方式では要件を満たさなくなる場合が出てきますね。その場合にどうするのか、そういう点も含めて答弁願います。
平林委員長 簡潔に答弁してください。
板倉政府参考人 市町村合併により新たに誕生する地方公共団体の標準財政規模が拡大をしまして、結果として健全化団体指定の要件を満たさなくなった場合にはどうなるかということでございます。
 健全化団体の指定を継続すべきか否かにつきましては、その時点でよく検討しなければならないというふうに思っております。
片山国務大臣 今の隠れ借金というのは、国でいえば特殊法人ですよ。特殊法人の累積債務を、今、国の債務の中にはカウントしていませんね。そういうことで同じ扱いにしておりますが、例えば、バランスシートを今地方団体につくってもらっておりまして、そういう中には入れてくれと言っているんです。
 それから、私は、地方財政白書なんかで土地開発公社のことについて言及することはいいことだ、こう思っておりますので、今委員の言われたことは、検討いたします。
重野委員 終わります。
平林委員長 次に、三村申吾君。
三村委員 先日、南極から、委員長の御地元である鳥取県に匹敵します、大きさ三千二百キロ平米、厚さ二百メートルのラーセンBという巨大な棚氷が流れ出したという記事を読みました。地球の温暖化がその一つの要因かと言われております。
 私は、青森の太平洋側が地元なんですが、ここ数年、特にこの冬においては、がちがちの寒気を伴う北西風の日が少なくて、実は北西風だとなぎになりまして冬場の海仕事が大変いいんですが、ただただ潮が渦巻いて海がうねる、異常な状況が続いたと聞いております。
 ひたひたと温暖化とそれに伴う気象の異常が迫っているのではないかと、ことしの早い桜を見ながら危惧いたしております。心から、大きな干ばつや大冷害、そして大水害のないことを願う次第でございます。
 さて、水害という言葉を申し上げた次第でございますが、そもそも日本は、世界有数のと申しましょうか、最大の水害国でございます。資料Aの方、答弁側にお渡ししてございますが、ごらんいただければありがたいんですが、日本だけが格段に飛び出た水害の状況にある。また、資料Bを見ていただければ、アメリカとの比較でございますが、二倍から七十倍の水害の状況である。
 確かに、日本の地形、気象の特性としては、河川勾配が急である、あるいは集中豪雨が多発する、また、国土の一〇%である沖積平野に人口の五〇%と資産の七五%が存するという社会条件もあるとしても、余りの水害大国ぶりに、この国の治山治水はどうなっているのか、理解と予算が足りな過ぎるのではないかという思いに、一町長経験者としてはとらわれるのでございます。
 そこで、本日は、河口の町で津波、高潮、洪水地帯を守備してきた首長経験者としての思いとあわせまして、水害防止の両輪である水防活動と治水事業について質問させていただきます。
 まずは、水防団の状況でございます。
 この方々の献身的な御尽力によって、何ほどか地域社会が救われたか知れません。ただ、実際的にはほとんどが、消防団員がこれを兼ねている現状であると思われます。私のところでもそうでございます。ところが、両団は総務省と国土交通省と所管が違うということで、火と水の間柄ではあるわけでございますが、実際には補完し合っていると伺いましたので、実体でありますところの消防団を念頭に総務省に伺います。
 水防、消防の最前線を担う団員の老齢化や人員確保困難がある中において、後継者対策はどうなっておりますか。また、対策の一つとして、団員への公務災害補償、退職者報償等、年々改善されていることは存じ上げておりますが、今後も適宜見直し、処遇の向上に努めていただきたいのですが、どうお考えでございましょうか。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員がおっしゃいました消防団でございますけれども、水防の問題も含めまして、地域におきます消防防災の中核として幅広く重要な役割を果たしていただいているわけでありますが、一方で、今お話に出ましたように、社会経済情勢の変化もございまして、団員数の減少ですとかあるいは中高年齢化、それから団員の方の、サラリーマンの方がふえてくるといったような変化がございます。
 そこで、後継者確保対策ですけれども、私どもとしては、消防団員の処遇改善のために、平成十四年度で申しますと、報酬あるいは出動手当等につきましての地方交付税の算入額の引き上げでございますとか、あるいは退職されましたときの報償金の基準額の改善、それから自家用車が防災活動等に関連して損害を受けた場合、見舞金支給制度、これは議員提案でやっていただいたわけですが、こういうようなこともやっております。
 それから、狭い意味の消防防災に限らず、平常時に、例えば、ひとり暮らしのお年寄りの家庭を訪問して声をかけていただいたりとか、いろいろな地域の活力を生み出すためのイベント的なものに協力される、あるいは福祉面で協力される、いろいろな消防団活動をやっておられますので、本年度から、こういう優良な消防団について新しい表彰制度をつくりますとかいったようなことをやっております。
 また、消防団員で苦労されている方に少しでも張り合いを持ってもらうために、例えば消防設備士試験ですとか危険物の取り扱い試験の一部科目の免除をするといったようなこともやっているわけでございます。
 いずれにいたしましても、消防団は地域の防災力のかなめ的な役割を常備消防と協力しながらやっていただいているわけでありまして、今後とも十分配慮をしてまいりたいと思っております。
三村委員 ぜひともの配慮をお願いしたいわけでございます。
 さて、私どもの地域、女性消防団というものがございまして、この日曜日に新しいポンプ車が入ったものですから一緒に写真をとってきたんですが、後方支援活動を非常によくやってくれます。全国的にはこれはどういう状況であるか、あるいは、女性消防団員による啓発活動の効果というものが非常にあるものですから、今後ともこの方々を強化していくべきと考えますが、総務省のお考え、簡潔にお願いいたします。
石井政府参考人 女性消防団でございますけれども、全国的には、さっき申しましたように消防団員数が減りぎみな中で、女性消防団員につきまして言いますと、平成三年には全国で二千五百人程度だったわけですけれども、十年後の昨年の四月一日現在ですと一万七百七十六人ということで、この十年を見ましても大変増加しております。
 今お話にも出ましたが、実態を調べてみますと、女性消防団員の方は、防火指導ですとかひとり暮らしの御老人のおたくに声をかけたり、あるいは一般市民向けに応急手当ての普及、指導をやったり、イベントとか広報誌の編さんなんかの広報活動で大変活躍されたりというようなことでございます。
 今後、高齢化社会ということもございまして、いよいよ女性消防団員の果たす役割が重要になってくると思っておりますので、消防庁といたしましては、女性が消防団に加入しやすいような環境整備、一例を挙げますと、例えば、消防団の拠点施設に更衣室とかシャワー室を兼ね備えた設備を設けるように補助対象にするとか親しみやすい制服を採用する、あるいは女性を起用した消防団のPR活動をやるとかといったようなことを工夫しておりまして、今後ともしっかり取り組んでいきたいと思っております。
三村委員 その方向でよろしくお願いしたいと思います。
 続いて、国土交通省に伺います。
 これは二〇〇一年版の河川事業概要でございますが、四十二ページにITという項目がございます。自分が町長でありました時代にこういうITによる情報化というものがありましたならば、奥入瀬川の土手で、私ども奥入瀬川が流れているんですが、川の水がふえてきた、どうなるんだろうとただぼうっと見ているよりも、もっと早い段階でリアルタイムで的確に対策をとることができたと。むしろどんどん進めるべき公共事業と考えますが、進展状況はいかがでございましょうか。
竹村政府参考人 委員御質問の情報、ITは大変重要なことでございまして、特に温暖化等により、気象の変動幅が大変大きくなり、凶暴化してきてございます。私どもハードな河川事業をやっておりますが、思わぬ、予想を超えた大きな災害が現実に起こっております。そのとき、人々が自分の命を救うのは情報でございます。私どもの持っている、河川管理者が持っている情報を国民が共有すべくITでさまざまな取り組みをしてございます。
 具体的に申しますと、光ファイバーの敷設、インターネットでの情報提供、携帯電話での情報提供、特にこの携帯電話の情報提供は非常に好評でございまして、去年の台風十五号では最大十三万五千のアクセスが、瞬間でございますけれどもありました。
 また、去年、NHKとタイアップしまして、私どもの、国土交通省の監視カメラをNHKにそのまま提供いたしまして、NHKが中継をしたということがございます。このように、現在、各地方整備局においてNHKと協定を現在結んで進めておりまして、私ども、私どもの持っている情報をそのままダイレクトに国民に共有していただくよう努力している最中でございます。
三村委員 今後とも御努力をよろしくお願いする次第でございます。
 さて、私は、このところ河川とか海の本をよく読んでいるんですが、近日、上林さんという方の「日本の川を甦らせた技師デ・レイケ」とか、関さんという方の「大地の川 甦れ、日本のふるさとの川」という本を読ませていただきました。どちらも河川局のエンジニアでございますが、非常にいい哲学を持った方を出しているということに喜びを覚えるわけでございます。
 これらの本や資料の中で、私は、治水事業の展開にとって流域や水系という概念が非常に重要と気がついた次第でございます。日本の治山治水事業は、元来は自然と適正共存し、環境保全や水循環を大切にしてきたものの、戦後の成長のために河川を痛めつけた、そしてまた、川上、川中、川下の連携というものが途切れてしまったと知るに至りました。
 今その反省に立ち、多自然あるいは近自然工法による川づくりが求められているわけでございますが、水害を大きく減じるためには、流域、水系単位の河川整備の問い直しが重要であると思っております。そこで、合併問題との複合した視点が今こそ必要になると考えておるのでございます。
 実は、偶然か必然か、私の地元である高瀬川水系というところと奥入瀬川水系の二つ、それぞれが合併に向けての取り組みが進んでおります。水文化と申しましょうか、水系に沿ってのふだんのやりとりがあるわけでございますから、その合併がそういう機運で盛り上がることは必然と思うんです。奥入瀬の方では任意の勉強体制の状況ですが、高瀬川水系の方では、実質上の流域にすっぽりとはまっている四つの町が公式の協議会を立ち上げる状況でございます。
 治水事業は、上流、中流、下流が密接な連携において計画的に一気に仕上げてこそ防災効果が著しく上がるわけですし、また、自然との共生的治水事業は、上、中、下流の合意によってこそ、地域づくり、地域おこしに最大寄与するものがございます。
 私は、去る十一月二十九日の当委員会で、道のネットワークについて質問させていただきましたが、短期、集中、重点的という答弁をいただいたわけでございます。そこで、流域あるいは水系単位における合併に対して、共同することで大いに治水効果や環境保全効果が上がり、将来的に合併自治体の健全経営に大きく寄与する治水事業計画の提案を市町村が提案してきた場合においては、集中、重点的に支援すべきと考えますが、国土交通省、総務省、それぞれの御見解を承りたく存じます。
竹村政府参考人 委員御指摘のように、私どもの治水は流域単位で見るということは大変重要でございます。
 それぞれの河川の治水の歴史を見ますと、上下流の対立、左右岸の対立、つまり上流があふれていると下流が助かる、また上流が堤防ができますと下流に負荷をかける、もちろん左右岸も同じような状況でございます。一つの河川事業をやるにしろ、その市町村会がございますと、大変難しい調整をしながら河川管理者は事業を実施しているのが現状でございます。
 この流域が一たび洪水になれば、市町村会構わず水害は襲ってくるわけでございますので、私ども、この流域の方々が運命共同体として、一体となって安全な地域にすることが重要だと思っておりまして、もしそのような流域が、皆様が一体となってやるということを進めていただければ、私ども、各地方自治体の意見を伺いながら、効率的、効果的な治水事業について集中的、重点的に支援していきたいと考えてございます。
片山国務大臣 三村委員が言われるように、町というのは大体川べりですよ、河口だとか水の便がいいところで。そういう意味で、河川の流域だとか水系に沿ってという一つの地域づくりというのがありますね。
 だから、今、委員のところでそういう合併の動きがあったらぜひ推進していただきたいと思いますし、そういったところは、今河川局長が言いましたけれども、治水事業計画を合併支援プランの中に入れて、国土交通省と一緒になって我々も応援していきたい、こういうふうに思っておりますので、国土交通省河川局とよく相談します。
三村委員 大変ありがたい答弁をいただいて、逆に言えば非常にうれしく思っております。
 合併は、本当に一つのチャンスでございます。意欲のある自治体それぞれが自分たちで発想し自助努力しよう、そういうところを助けてくださるという言葉に対しまして、元町長でございますが、我々旧自治体関係者も連携プランをきちんと出していくようにと思っております。
 時間が来ましたので、水循環についての質問を予定しておりましたが、本日はこれにて終了させていただきます。大変ありがとうございました。
     ――――◇―――――
平林委員長 次に、内閣提出、消防法の一部を改正する法律案及び第百五十三回国会、海江田万里君外三名提出、消防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。
    ―――――――――――――
 消防法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
片山国務大臣 ただいま議題となりました消防法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。
 この法律案は、平成十三年九月に発生しました新宿区歌舞伎町ビル火災等を踏まえ、違反是正の徹底を図るため、消防機関による立入検査及び措置命令に係る規定の整備を図るとともに、防火管理の徹底を図るため、防火対象物の定期点検報告制度を設けるほか、避難上必要な施設等の管理の義務づけ、罰則の引き上げ等の改正を行うものであります。
 以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。
 次に、この法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。
 第一に、違反是正の徹底を図るため、消防機関による立入検査の時間制限の廃止、措置命令等の発動要件の明確化、措置命令を発した場合の公示の義務づけ等立入検査及び措置命令に係る規定の整備を図ることとしております。
 第二に、防火管理の徹底を図るため、資格者による防火管理業務等に関する定期点検報告制度を設けるとともに、法令を遵守している防火対象物について定期点検報告義務免除の認定を行うこと等としております。
 第三に、避難・安全基準の強化を図るため、廊下、階段等の避難上必要な施設等の管理を義務づけることとしております。
 そのほか、罰則の引き上げ、消防用機械器具等の検定を行う指定検定機関の公益法人要件の撤廃を行うこと等としております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
平林委員長 次に、長妻昭君。
    ―――――――――――――
 消防法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
長妻議員 ただいま議題となりました消防法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案理由とその要旨について説明いたします。
 昨年九月一日、新宿区歌舞伎町明星ビルにおいて、四十四人の犠牲者を数える大惨事が発生いたしました。東京消防庁は当該ビルに過去三回立入検査を実施し、違反に対して改善指導をしていますが、改善はほとんどなされませんでした。
 当該ビルの直近の立入検査は平成十一年十月に実施され、八件の違反が確認されました。しかし、指導しても二件しか改善されず、六件の違反は約二年間放置され、今回の大惨事につながったわけです。
 本来は、消防法に基づく措置命令を発し、改善を迫るべき案件にもかかわらずそれが発せられなかった。特定の関係者の立場をおもんぱかったことによって、結果的に大惨事が発生し、四十四人の方が犠牲になったとするならば、東京消防庁の責任は大であります。
 歌舞伎町の大惨事を受けて全国で実施した小規模雑居ビル一斉立入検査の結果を見ると、対象物件八千四百七件のうち、実に九一・九%の物件が違反と認定されています。このような無法ぶりが放置されている例は寡聞にして知りません。一方で、消防法に基づく改善命令は、平成十二年には全国でたった八十四件。罰則がかけられたケースに至っては、日本全国で過去二十年間でわずか十三件というありさまです。
 法令違反を確認しながらも、ほとんど命令が出されていないというのが実情であり、雑居ビル関連の消防法違反の放置は目に余る状況にあります。命令を出すか出さないかの判断を行政裁量にゆだねていることの問題点が、ここに浮き彫りになっているのです。
 また、現在の消防法では、火災事故の原因究明について、都道府県知事等からの求めがあった場合に限り国が調査することができるものとされており、国が主体的に火災原因の究明に当たることはありませんでした。このことは、火災事故に対する国の責任感を著しく損ない、さきに申し上げた法令違反放置の蔓延化等の状況を生み出すことにつながったものと考えられます。
 本法案は、かかる実情をかんがみ、歌舞伎町雑居ビル火災のような痛ましい悲劇を二度と繰り返すことのないよう、提出するものであります。
 以下、本法律案の内容の概要につきまして御説明申し上げます。
 第一に、消防長または消防署長は、火災の予防上必要があると認める場合等において、現在、措置命令を発することが可能とされておりますが、これについて命令することを義務づけるものとしております。
 第二に、消防長または消防署長は、防火管理者が定められていないと認める場合において、現在、防火管理者を定めることを命じることが可能とされておりますが、これについて命令することを義務づけるものとしております。また、防火管理業務が法令に従って行われていないと認める場合において、措置命令を発することが可能とされておりますが、これについても命令することを義務づけるものとしております。
 第三に、消防長または消防署長は、消防用設備等が設備技術基準に従って設置、維持されていないと認める場合において、現在、措置命令を発することが可能とされておりますが、これについて命令することを義務づけるものとしております。
 第四に、火災原因の調査について、現在、都道府県知事等の求めがある場合に限って消防庁長官が調査できるとしているものを、消防庁長官が特に必要があると認めた場合は、主体的に調査に乗り出すことができるものとしております。
 以上が、この法律案の提案理由とその要旨であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
平林委員長 これにて両案についての趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十九分散会


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