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第10号 平成14年4月4日(木曜日)

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平成十四年四月四日(木曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      後藤田正純君    左藤  章君
      佐藤  勉君    新藤 義孝君
      滝   実君    谷  洋一君
      谷本 龍哉君    中本 太衛君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   議員           長妻  昭君
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      滝   実君
   国土交通大臣政務官    菅  義偉君
   政府参考人
   (警察庁刑事局捜査第一課
   長)           大山 憲司君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          荒木 慶司君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   政府参考人
   (消防庁次長)      北里 敏明君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局安
   全衛生部長)       播   彰君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月四日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     熊谷 市雄君
  河野 太郎君     後藤田正純君
  新藤 義孝君     小泉 龍司君
  野中 広務君     渡辺 博道君
 吉田六左エ門君     中本 太衛君
  春名 直章君     穀田 恵二君
同日
 辞任         補欠選任
  熊谷 市雄君     大野 松茂君
  小泉 龍司君     新藤 義孝君
  後藤田正純君     河野 太郎君
  中本 太衛君    吉田六左エ門君
  渡辺 博道君     野中 広務君
    ―――――――――――――
四月四日
 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律案(総務委員長提出、参法第一〇号)(予)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
 消防法の一部を改正する法律案(海江田万里君外三名提出、第百五十三回国会衆法第二一号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、消防法の一部を改正する法律案及び第百五十三回国会、海江田万里君外三名提出、消防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局捜査第一課長大山憲司君、総務省自治行政局公務員部長荒木慶司君、消防庁長官石井隆一君、消防庁次長北里敏明君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君及び厚生労働省労働基準局安全衛生部長播彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。
武正委員 おはようございます。民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。
 閣法、そして衆法ということで、消防法改正について質疑をさせていただきます。
 昨年九月一日の新宿歌舞伎町ビル火災からはや七カ月が過ぎました。改めて、犠牲となられた四十四名の方々の御冥福をお祈り申し上げるところでございます。また、原因究明、そして再発防止策を願う御遺族の気持ちにこたえなければならない、これが立法府、行政府の責務であります。
 昨年十一月二十八日、民主党が消防法改正案を出した理由は、既に趣旨説明で述べておりますが、一、命令の義務化、二、消防庁の取り組みの強化、この二点がポイントでございます。
 昨年の火災発生後、東京消防庁が行った緊急査察で、八七・五%の小規模雑居ビルから違反が見つかったことは、日本は法治国家とは言えないという思いを強くいたしました。
 また、閣法では、依然、八条の二の共同防火管理について罰則を設けていないことにより、行政指導条項のままになっていることも指摘をし、以下、質疑を行わせていただきます。
 まず、消防は自治体消防ですよという大臣の御答弁が昨年もございました。ただ、消防庁さんにやりとりしますと、例えば、平成十二年度の違反件数、これは命令の件数は八十四件と把握をされているんですけれども、それでは分母となる違反件数は何件ですかと聞いても、わかりませんと。そういった意味では、消防庁として全国の自治体消防のデータ収集が不十分ではないかと考えるんですが、この点についての御答弁をお願いいたします。
若松副大臣 武正委員の御質問にお答えいたします。
 消防庁といたしましては、消防行政に必要な事項に係る実態を把握し施策に反映するために、毎年度、まず施設の安全対策を目的とした防火対象物実態調査と、あと、いわゆる消防能力を把握するための市町村消防施設整備計画実態調査等、当面必要な統計調査を行っているところであります。
 さらに、社会情勢の変化に対応した消防関係統計の充実を図る必要があると考えておりまして、それは委員の御指摘のとおりでありまして、例えば、小規模雑居ビルの違反が多いという現状にかんがみまして、平成十四年から、防火対象物実態調査に告発の状況に係る調査項目を追加したところでございます。
 なお、今後、統計調査につきましては、平成十五年度にデータオンラインシステム、これを構築することを予定しておりまして、このデータオンラインシステムを活用することによりまして、消防機関の効率的、効果的な統計調査が可能となると考えております。
武正委員 十五年度というお話でしたが、一刻を争うわけでございまして、アメリカを例にとれば、既に、防火協会の基準九〇一を基礎とした災害と民間人の死傷者を報告する分類システムを改正、改正、改定、改定を繰り返しております。火災報告システムというのをきちっと充実させておりまして、連邦の消防局には全米消防データセンターということで、火災データの収集、分析をきちっと行っているということでございまして、これについては、今の十四年度、十五年度というお話でしたが、一刻を争うといったことを指摘させていただきます。
 続きまして、これは消防庁長官さんとそれから警察庁さんにお伺いをしたいんですが、三月七日に独立行政法人で実験をされております、燃焼実験。テレビでも放映をされております。また、警察庁も三月十七日に燃焼実験をしておりますが、それぞれ、その実験の目的、方法、そして結果について触れていただきたいと思います。特に警察におかれましては、火災捜査の目的についても付言をお願いいたします。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘の消防研究所において行いました実験でございますけれども、階段部分において火災が発生した場合の効果的な火災感知や消火の対策を検討することを目的として行ったものでございます。
 この実験の結果、階段火災における熱や煙の発生、拡散、延焼拡大の状況に関するデータが収集できたところでありまして、また、消火設備についても作動データの収集が行われたところでございます。
 現在、消防研究所におきまして四月末を目途に実験データの整理及び分析を行っているところでございまして、消防庁といたしましては、今後、感知器の種類ですとか設置位置など、消防設備の設置基準を検討するに当たりましてこの結果を十分に参考にしてまいりたいと思っております。
大山政府参考人 放火や失火など犯罪の疑いのある火災が発生した場合におきまして、警察といたしましては所要の捜査を行い、出火原因を究明し、出火行為者を特定しその刑事責任を明らかにするとともに、建物管理者等の管理責任を明らかにすることを目的といたしております。
 御指摘のビル火災事件につきましては、現在警視庁において出火原因等を究明するため鋭意捜査中でございます。また、先月には、火災の発生した建物の内部を再現した建物を使いまして、火災の燃焼状況を解明するための燃焼実験を行ったところでございます。
 こうした実験結果あるいは鑑定結果等をもとに、今後出火原因等の究明に努めていくところでございます。
武正委員 過去の例でも、現場に災害研究者たちが入って、やはりその災害現場を見させてくださいと言っても、なかなか警察の捜査等の兼ね合いで難しいといったことが指摘をされております。この当該雑居ビル事件、九月一日でございますが、新宿区役所の建築課の方々が現場に入れたのが十二月ということでございますので、九、十、十一、十二、四カ月目にやっと許されて中に入ることができております。
 今回、昨年末にも通知を出したりして、警察と消防が足並みをそろえて小規模雑居ビルの火災対策に当たろうといったことでの共同での安全点検などもやってきたわけなんですが、私はここでやはり、民主党案で提案をしておりますように、原因究明、再発防止の観点から、自治体からの依頼がなければ消防庁が調査できないという現行法制を、自治体からの依頼がなくても、例えば大規模火災、あるいは今回の小規模のビルであっても死傷者が四十四名、このような大きな被害をもたらしたような事件については、消防庁として独自に調査をするべきではないのかなというふうに考えるんですが、この点、大臣、御所見いかがでしょうか。
片山国務大臣 今、委員の言われるような考え方も確かにあると思いますね。
 ただ、今の消防組織法の考え方が、戦後、あの法律ができたんですが、アメリカの自治体消防をまねていまして、大変自治体の意向を尊重する、国はできるだけ後ろに下がって応援する、こういう仕組みになっておりますから、調査をみずからはできないような、消防機関なり知事の要請に応じて、こうなっておりますけれども、大規模だとか特殊だとかそういうことについては、私は、消防庁みずから調査することもあり得ると思うんですよ。
 ただ、今の消防組織法の建前、関係の消防機関なり地方団体の意見を聞きまして、今後の貴重な検討課題にいたしたい、こういうように思っております。
武正委員 アメリカでは、既に、連邦政府アルコールたばこ銃器局、ATFに火災調査隊が置かれておりまして、ATFは十五人かそれ以上の隊員派遣を二十四時間以内に行う、九七年の出動件数は全米で三十九回、あくまでも地方消防局の支援である、聞き込みは警察と合同で行う、犯罪の起訴が確定すれば、収集された情報及び証拠は地方のATFに渡される、こういった形で、アメリカでも例えばFEMAに連邦消防局が統合されておるような形で、今、日本の消防はアメリカを範にというお話でしたけれども、このような形でアメリカでも工夫をしながら組織の見直しに取り組んでおります。この点についてぜひお取り組みをお願いしたいと思います。
 ただ、ここで、やはり警察と消防との関係で気になるところが、両省庁が交わしております覚書でございます。
 平成十四年三月六日付警察庁と消防庁の覚書では、三(二)、新法三十五条の十の照会は基準を策定し、地方に周知徹底し、警察庁の意見の申し入れには誠実に対応することとしている。また、四(二)では、昭和六十一年覚書が引き続き有効であって、警察官の権限の行使に十分配慮するよう市町村長等を指導することというような項目が入っておるんですけれども、これは航空・鉄道事故調査委員会でもやはり指摘がされております。
 昨年一月末の日航機ニアミス事故のときにも、警察が先にボイスレコーダーを押収してしまったといったことで、同事故調査委員会の質疑でも、警察の捜査権、そして事故調査、事故調査の方は犯人捜しというよりもあくまでも原因究明、再発防止だ、ここのすみ分けというものを日本はそろそろきちっとしていくべきではないのかな、警察の方が大変御努力されているのはもう重々承知しておりますが、亡くなられた方、まして遺族の方にとっては、いち早く情報を知りたい、原因を知りたい、そして、二度とこういったことが起きてほしくない、これについての取り組みが必要と考えるんですが、再度、大臣には先ほども御答弁いただいておりますが、いま一度、こういった、アメリカも既にやっておりますよといったことを踏まえての御決意をお願いいたします。
片山国務大臣 警察の関係は、これはいろいろありますので、十分これから検討していきたいと思いますが、今、武正委員言われたアメリカの例、こういうのも参考にしていかなければならないと思います。
 そこで、消防庁の中につくるのか、消防研究所を使うのか、あるいは別にそういう調査機関、審議機関みたいなものをつくってこれを利用するのか、いずれにせよ、十分な検討をし、警察の関係も調整しながら前向きに進めてまいりたいと思っております。
武正委員 新宿雑居ビル事件を検討する座談会等、あるいはいろいろな専門家の方が寄せております「近代消防」の十二月号にも、ある消防経験者の方がこんなことを書いておりまして、それは、そういった火災が起きますと、翌日の新聞には、警察発表と警察からのいろいろな発表が新聞に出る。その消防の経験者の方は、マスコミに申し入れをしたと。消防法ですか、三十一条、消防には火災原因と火災損害調査を行う権限があるんだ。ですから、消防がしっかり有している調査権をもとに調査をした結果を新聞で発表してください、そういった申し入れをしたら、ある新聞が、消防署発表という形で載せてくれたと言っておりまして、消防ができる権限というものがきちっと、まだまだ認識されていないといったこともあろうかと思っておりますので、警察とまた消防、お互い協力しながらも、消防の役割というのはまだまだ、もっともっと重いものがあるので、ぜひお取り組みをお願いしたいと思います。
 さて、新宿区役所によりますと、十二月に警察の方が当該ビル一階のかぎを所有者に返したので、慌てて改善命令を出し、五、六回区役所に来てもらって協議をし、二月四日に、改善については納得をしたというような形でありますが、それを受けて、三月二十二日、使用禁止命令を出すことができたと聞いております。実に、ホテルニュージャパン以来二十年ぶりの使用禁止命令でございまして、これができたのも、安全点検、立入検査を警察、消防で共同でできた、これに新宿区役所も共同でということでございます。
 閣法には、関係省庁との連携という文字もあるんですけれども、国土交通省さん、きょうは政務官にもおいでいただいておりますが、そうはいっても、定期報告は三年に一回の確率が五〇%以下、あるいは小規模雑居ビルではその半分ではないのかとか、あるいは所有者にその定期報告の認識がないとか、こういったことも言われておりますし、この定期報告の実を上げるにはどうしたらいいのかといったことについて、政務官、御答弁をお願いいたします。
菅大臣政務官 まさに委員のおっしゃるとおりであるというふうに思っております。
 我が省としても、今回のこの火災を教訓として国土交通省内に設置をした小規模雑居ビルの建築防火安全対策検討委員会においても、制度の周知の徹底や関係機関との連携など、定期調査報告制度の運用強化、このことが実は指摘をされておりますので、地方公共団体における消防等の関係部局や地域の商店街などと連携した建物所有者への制度の周知の徹底、そして、建築士等の関係団体に相談に応じることのできるような体制の整備、こういうものに努めてまいりたいと思っております。
武正委員 昨年の委員会での議論でも出ておりますのは、やはり、二方向避難、今回、フロアが百平米以下でしたので対象外ということでございました。これは、用途別に二方向避難路が必要なのと除外規定があるのがある、この用途も申請のときと変わってしまう、所有者も変わってしまう、これはもう見直しが必要ではないかといったことも既に指摘されておりますし、また、スプリンクラーなどの設置、あるいは防火対策の根幹に関する事項については新築段階から整備させるよう法改正が必要だ、これは日本防炎協会理事長次郎丸さんが「近代消防」十一月号で述べているところであります。これはやはり、国土交通省さんが建築基準法の見直し、あるいは省令の見直しによって取り組んでいただかないと、消防庁だけでは、あるいは総務省だけでは難しいところが多々あると思うんですが、再度、政務官の御決意をお願いいたします。
菅大臣政務官 ぜひ連携をしてやっていきたいと思います。
武正委員 今度は、政府から行政機関の個人情報保護法が国会に提出されておりますが、これは、特定行政庁に伺ったとき、この法律ができてしまうと、例えば、今回警察からいただいた明星56ビルの見取り図とか、あるいは企業名とか、オーナーとか持ち主とか、その住所とか電話番号とか連絡先とか、そういったものが警察からもらえなくなるのではないかということを危惧する声が上がっておりました。
 これについて、警察庁さんそして総務大臣から、それぞれ御答弁をお願いいたします。
大山政府参考人 警察といたしましては、先ほど申し上げましたように、放火、失火等の犯罪の疑いのある場合には、その刑事責任追及のため、消防を含めました関係機関とも十分連携し、捜査を行っているところであります。今後とも、関係法令に基づきまして、関係機関と緊密な連携あるいは協力を行ってまいる所存でございます。
片山国務大臣 三月の半ばに行政機関個人情報保護法案を国会に出させていただいております。そのうち御審議をいただくことになると思いますけれども。
 この場合、個人情報は保護するんですけれども、行政機関間で、法令に基づく事務の執行で、その必要な限度でしかも十分な理由があれば情報の提供を受けることができることになると思います。
 ただ、今回のこの雑居ビルや何かの場合には、国の機関じゃないのですね、都道府県警察と消防機関の関係ですから。これは、今回の法律ではなくて、地方の、地方団体の条例でどういうふうに扱われるか、こういうことになると思いますので、その辺も関係の地方団体とは連携をとってまいりたい、こういうふうに思っております。
武正委員 やはり法律ができて、そして条例ができる、あるいは条例についてはモデル条例を当然のように御用意されるのが過去の例でございますので、ぜひその点、御留意をお願いしたいと思います。
 というのは、ここで先ほど触れました警察の捜査権といったものとの兼ね合いが出てくるものですから、そうすると、なかなか警察の方からの情報がとりづらくなるのではないかという危惧が出てこようかと思うのですね。その点をよろしくお願いしたいと思います。
 さて、これまで、現行設備点検につきましての有資格者が二十万人いらっしゃる、これに八十万人の消防設備士を加えて、消防設備の点検報告を義務化しているのが現行法制でございますが、閣法では、これをさらに、上の資格を設けようというようなことでございます。
 ただ、これまで、その二十万人の有資格者の講習は日本消防設備安全センターのみで行われております。これは公益法人の枠を外しているのですが、依然この公益法人一つのみ。それは、やはり税金の問題、あるいはさまざまな告示あるいは基準等を含めまして民間が参入しにくいといったことが指摘をされておりますが、このまま、また今回の閣法の改正で今までの消防設備点検者よりもある面上位的な点検者を設ける場合、またこの唯一の公益法人のみで講習、しかも試験というのは講習を終えた後の考査みたいなものですね、そういう形でいってしまうのではないかということが危惧されます。
 民間参入をしやすくするべきと考えますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
若松副大臣 まず、現在の制度でございますが、今委員御指摘の消防設備点検資格者の講習を行う指定講習機関として、先ほど指摘された公益法人のほかにも、現制度では、「講習の事務を適確に実施するための組織体制を有し、責任と権限が明確にされていること。」等の法令で定める要件を満たせば指定される、このように制度がなっておりまして、現在でも民間の参入が可能となっております。
 一方、このような講習につきまして、先月、三月二十九日に閣議決定されました公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画、ここにおきましては、法令の基準に適合する登録機関が講習を実施する方針を示されたということになりまして、現在の指定講習機関につきましても、今後登録講習機関に改めていくというふうに考えております。
 今回のこの法改正案で導入いたします定期点検報告制度の具体的なあり方につきましては、ただいま御紹介いたしました閣議決定の趣旨を踏まえて、今後関係方面と意見調整をしながら検討してまいる所存でございまして、その際には、例えば講習を行う機関について民間参入が可能になるように配慮してまいりたいと考えております。
武正委員 大臣に続けて今の点をお聞きしたいのですが、アメリカでは、損害保険代理店の方がビルのチェックをしているというのを聞くのですね。
 これは、二つの考え方があると思います。もし、そこのビルの契約をその損害保険代理店がとっているとすると、そこで火災がなければ、親会社と、アメリカは非常に独立性の高い損害保険代理店ですので、損害率が低ければ、それに応じて歩合が入ってくるから、一生懸命検査をする。こういう見方と、やはり契約が欲しいからここは目をつぶってくれよと言われて、なあなあになってしまうのかな。この二つの面が考えられるのです。
 でも、やはり損害保険代理業にビルの点検をお願いしていく、あるいはそこの参入を促していく、これも一つの考え方ではないかなと思うのですが、この点について、大臣、先ほどの副大臣の御答弁も含めてお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 アメリカの実態がよくわかりませんが、アメリカというのは保険が進んだ国ですね、いろいろな意味で。
 恐らく、今武正委員言われたことなら、前者だろうと思いますよ、アメリカは。しかし、日本はまだアメリカまでいっていませんね。その辺は、十分今後総体的にいろいろな状況を見ながら検討する必要があると思いますね。
武正委員 私も、損害保険代理業の方、よく知っておりますが、今金融ビッグバンを受けまして非常に淘汰が進んでおります。自分のところでコンピューターを入れて、自分のところで保険の帳票を打ち出したりしておりまして、今、アメリカのそういった保険代理業、アメリカではほとんど弁護士さんやそのぐらいと同じぐらいの資格を有するという大変高い位を持っておるのですが、そちらの方へ向かおうということでございますので、ぜひ、日本損害保険業協会とも御協議の上、そちらの育成も、育成と言ったらあれですけれども、含めてお取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 最後になりますが、共同防火管理体制についてお伺いをいたします。
 明星56ビルは、九九年十月の査察時の八項目の指摘に、消防庁、新宿消防署がやったのですが、共同防火管理についても指摘していないのですね。このことは、昨年当委員会で指摘をいたしました。つまり、消防署も余り、この共同防火管理、八条の二にあるのですが、なかなかこれについても指摘もしていない、こういった実態なんですね。
 これは、昭和四十五、六年のときの改正で、その前には罰則規定があったのですが、それを外したといった改正があったということで、これは元神戸市の葺合消防署長の森本さんが「近代消防」十一月号で指摘しておるのですが、千日デパートビル火災訴訟において、共同防火管理体制をとらなかったことにつき、この最も基本的な法令上の義務を懈怠したがため、大惨事を招いたとされた。つまり、消防法八条の二は行政指導条項であり、全く強制力を持たない。そもそも強固な防火管理を必要とするところにこの共同防火管理というものを設けたのに、この防火管理実施義務違反には、普通の防火管理実施義務違反には罰則があるにもかかわらず、共同防火管理義務違反に罰則がないというのは、およそ法的常識に欠けると言うほかない。明らかに立法ミスである。
 こういった指摘があるのですが、副大臣、これについての御所見をお願いいたします。
若松副大臣 今、第八条の二のお話がございましたが、この小規模雑居ビル、非常にいろいろな権利者が錯綜している状況がありまして、特定の一人にこの防火管理をさせるということは極めて非現実な状況であるというふうに理解しております。
 そこで、今委員が御指摘になったこの消防法の第八条の二でありますが、今御指摘の点も私どもは認識している次第であります。
 そういう状況にありまして、消防審議会、これの答申が実は出ておりまして、特に二点指摘がございます。一点目は、共同防火管理の協議事項におきまして、階段等の共用部分の責任者の明確化、これを図ること。二つ目として、共同防火管理協議会の代表者を所有権を有する等の主要な管理権原者とすること等が提言されておりまして、こういった提言を踏まえまして、今後、省令改正などの必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
武正委員 横浜国立大学の上原名誉教授が、「近代消防」十一月号でこう指摘をしております。「中央官庁はそれぞれ都道府県の担当部署に通知を出し、」中略「お互い何の協調や連携もなくである。中央官庁は一片の通知を出せばそれで済む。 これまでに何度この種の通知が出されたことだろう。この方法で問題が解決した例を聞かない。災害事例に真剣に学び、ふさわしい対応をとるという姿勢が全く見られない。」
 このような厳しい指摘もあるわけでありまして、私も、おくればせながら、昨日現場を見てまいりました。前はなかなか、行っても中には入れませんよというお話もあったんですけれども、ちょっと場所がわからなかったのでうろうろしていたんですね。同じような雑居ビルがたくさんあります。その中にぽつんとありまして、シャッターが閉まっていて、禁止命令の紙がぽんと張ってある。本当にこのまま営業してもおかしくないというたたずまいでありました。ここで四十四名の方が亡くなったなんて到底信じられない。それが今のコマ劇場のそばの明星56ビルの実態なんですね。
 これにつきまして、大臣には先ほど来さまざま御答弁いただいておりますが、再度、警察との協議も含めて、そしてアメリカからの事例も含めて、この明星56ビル、そしてまた国土交通省さんとの協議も含めて、もう三度目の新宿雑居ビルの事件を絶対起こさないぞという御決意を聞いて、終わりにさせていただきたいと思います。
片山国務大臣 四十四名もあの狭いところでたちまちにして亡くなるというのは、大変な惨事ですよ。だから私は、あの事件が起きまして、消防庁だけでは限界があるんですね、消防だけでは。建築基準法なり、あるいは風俗営業等取締法なり、警察や国土交通省、そういうところと十分連携をとる、あるいは厚生労働省と。こういうことを言いまして、この消防法がまとまりましたけれども、今後、ああいう惨事を二度と起こさない決意のもとに十分取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。
武正委員 以上で終わります。
平林委員長 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 私は、衆法と閣法について、それぞれ提出者にお伺いをしたいと思います。
 昨年の九月、我が党の関係者が対策本部を即設置し、本件に関するいろいろな雑居ビルの問題、そしてそれ以降の法案成立ということで、昨年の臨時国会に提出をしたところであります。
 ただ、今回、新たに閣法として今御論議がされているものも含めて、まず冒頭、衆法の提案者であります長妻さんに、なぜ今回、昨年から衆法を提出し、その主目的は何かということを簡潔にお願いしたいと思います。
長妻議員 お答えいたします。
 主目的は、何しろ違反が九割以上小規模雑居ビルに関しては放置されている、こういう無法ぶりを正すというのが主目的でありまして、それはもう現行法でもあるわけで、違反に対しては命令を出す、そういうことになっているはずなんですが、その命令がほとんど出ない。年間たった八十四件しか出ない。三百万件以上の立入検査をしてたった八十四件。では、命令をきちんと出してこういう無法ぶりを是正させるということが主目的でございまして、そのためにその命令に関して義務化をした、違反があった場合命令を出すということを義務づける、これが主要な目的であります。
 もう一点といたしましては、先ほども質疑者から話がありましたけれども、都道府県等の要請がないと、国、消防庁が調査に乗り出せない、こういう主体的な動きができないということで、その条文もあってか、今自治体任せというような状況が調査、データ収集でもありますので、それを是正するというのが主な目的でございます。
後藤(斎)委員 閣法と衆法を比べ合わせますと、今お答えをいただいたように、命令の義務化という点については、閣法のように命令発令の要件の明確化を図れば命令というのはこれからきちっと対応ができるんだ、是正がとれるんだという話もありますが、その点についてはどんな御見解をお持ちでしょうか。
長妻議員 この命令の義務化というのは、今政府案から出ている改正案では、この義務化というのは相変わらず今回も抜けておりまして、命令を出すための要件を明確にすれば命令がきちんと出るんではないか、こういう発想のもと、政府案では要件を明確にしたというようなことでありますけれども、ただ、命令が出ない理由は、要件が不明確だから出ないんではないというふうに考えておりまして、これまで命令がほとんど出ない理由は、一つは、消防署長や消防の幹部の方が関係者をおもんぱかるというような状況が一つあるというふうに考えております。
 もう一点は、命令を出しますと、その命令を聞かない場合は、その後告発等の法的措置が発生しますので、そのためのきちんとした司法にたえる文書をつくる、こういうノウハウが欠けている。
 この二点に命令がこれまで出なかった理由がありますので、ある意味では、命令発動の要件を政府案のように明確化しても相変わらず命令は出ないという状況は同じなわけでありまして、義務化をして、今申し上げたような状況を是正させるということが必要だと思います。
 昨年の当委員会での九月十三日の政府の答弁を見ていましても、田並委員から、歌舞伎町のビル、当該惨事を起こしたビルは二年前に立入検査を東京消防庁がして、六件の違反が二年間ずっと放置をされて、それが今回の大惨事につながった。何で是正しなかったんだということを田並委員が質問されたときに、消防庁の東尾参事官の答弁の中には、「措置命令を直ちに発動するということになりますと、関係者の立場という問題とか、」こういう、ある意味では暴言みたいな話を、関係者の立場をおもんぱかって、ある意味ではこういう大惨事が起こる原因をつくってしまった。これを国会でもはっきり言っているわけでありますので、いずれにしましても、こういうなれ合いを是正するには義務化というのが何としても必要であるというふうに考えております。
後藤(斎)委員 ただ、違反物件、それぞれ命令義務化のようにするということは、逆に言えば、権力の乱用のおそれ、並びにその警察比例の原則に違反するという考え方もあると思います。その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
長妻議員 お答えします。
 確かに、政府から内閣法制局がそういうような指摘をしているということは聞いておりますけれども、それは一概にはそう言えないというふうに考えておりますのは、この命令も、違反があった場合に直ちに、即座に命令を出すわけではありませんで、違反があった場合に、その違反を是正しないと命令を出しますよということを警告するわけであります。今までは、命令なんていうのはほとんど出ないわけで、是正率が非常に低かったわけですけれども、では、是正しないと命令があるんだなということが相手がわかれば、今回の歌舞伎町の関連した事例でも命令が出たやに聞いていますけれども、命令を出すぞと言ったらすぐ是正をされる、こういうような傾向がありますので、別に命令を出すよと言って是正をされれば命令は出ないということが一つ。
 もう一つは、違反の内容によって命令の内容に濃淡をつけていくわけでありまして、重大な違反には厳しい命令、そうでないものはそれに応じた命令を出すということであります。そして命令を出すと即座に罰則ということではありませんで、命令を出して、それでも聞かない場合、その後告発をするということで、警察当局が調査するという段取りも踏んでおります。
 そしてもう一点は、内閣法制局はそういう見解なんですけれども、衆議院の法制局は全く違う見解、真っ向から違う見解を出しておりまして、問題ないという見解。警察比例の原則というのは、今お話にもありましたけれども、自由を制約するのは最小限だ、簡単に言うとそういうようなことであるのでございますけれども、衆議院法制局の見解は、その警察比例の原則、適合性の原則、必要性の原則、比例性の原則、いずれの三つの原則にも、人命ということがかかわっておりますので、今申し上げた、タイムラグをきちんととるとか、内容に濃淡をつけるということをすれば問題がないという見解を出しております。
 いずれにしても、人命を守るということは大変重大な利益でございますので、それに関して命令を義務化するというのは、何としても必要であるというふうに考えております。
後藤(斎)委員 今、衆法について御質疑をしましたが、大臣、今の民主党の案というか、衆法に対する、いろいろな思いが多分あると思います。ただ、私たちは立法府であります。もちろん、閣法というものはたくさん存在しているのも事実でありますが、私は、今までこの委員会、そして他の委員会も含めて、議員立法というもののあり方も含めて、私たちがなぜこの立場に置かれているかということを考えなければいけないと思っています。
 そして、確かに今、閣法と衆法の中で、命令の義務化、そして消防庁長官の調査権の問題について、長妻提案者からも話がありましたけれども、大臣この点、お立場的にはもちろん言わんとしていることはわかりますが、この義務化の問題、消防庁長官の調査権の問題を含めて、どのような評価を衆法になさるのか、まず冒頭、大臣にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 民主党さんの案は閣法よりはある意味では徹底したんだ、こういうふうに評価しておりますが、命令の義務化というのはなかなか難しいんですよね。今委員も言われましたけれども、命令なんというのは、できるだけ権力の乱用にならないように、憶病でなければいかぬというのが戦後の法制の基本なんですね、考え方が。したがって、命令を義務化する場合には、具体的でかつ網羅的でなきゃいかぬ、こういうことなんですね。
 ただ、具体的かつ網羅的となりますと、火災だとかというのは、これはいろいろな起き方がある。多様ですよ、程度もいろいろだし。だから、そこで命令を義務づけるのはいかがかなというのが、法制的な態度としてはそういうことになるんですね。
 そこで、我々は、命令の発動要件を明確化すれば、これはかなり義務化と同じになるんじゃなかろうかと。今度は発動要件を明確に書いていますから、やらなかったら、やらない人を非難できますよね。だから、今よりはかなり進む。こういうことでございまして、内閣法制局と衆議院法制局のお話が出ましたけれども、我々が一貫して戦後の法制でとっているのは、できるだけ権力の乱用にならないように、行政の恣意的な判断で権力行使をしないように、こういうことでございますから、今回はこういうことをやらせていただきましたけれども、もし、具体的、網羅的に発動要件が書ける、命令をやる要件が書けるのなら、それは、義務づけるということは当然あり得る、こういうふうに私は思っております。
 それから、調査の方は、先ほど答弁をいたしましたけれども、基本的には自治体消防、こういうことでございまして、まず自治体を中心、表に出して、国は後から、こういうことでございますから、求めに応じて、できないときは出ていく、こっちからしゃしゃり出ない、こういうのがこの消防組織法の精神なんですね。ただ、これも場合によりますよ、場合による。そこで、今後、状況を見ながら私は検討することはあり得る、大規模でかつ特殊なものについては、全部地方に任せてもできないようなものについては消防庁がやっても一つもそこは構わないのではなかろうかと考えておりますので、いずれも検討課題にさせていただきたいと思います。
後藤(斎)委員 今大臣がお答えいただきましたように、閣法の中では、措置命令の発動の明確化の措置をこれから行っていくことになっています。ただ、先ほど武正議員からも指摘をしましたように、実際、命令発動というのは大変少ない、本当にネグリジブルであるというのも現実だと思っています。今回の法律改正によって消防機関がそれにどうこたえていくか、現場がどうこたえていくかだということに尽きていくのではないかなと私は思っています。
 今回の法律改正を踏まえまして、消防機関にどのような措置を講じてその実効性を上げていくのか、御答弁をお願いします。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま片山大臣からも御答弁ございましたように、措置命令の発動要件の明確化を図ることによりまして、今委員も懸念されていますような消防法違反に対する是正措置なり命令が速やかにできるような仕組みが整備されると思っております。
 もっと具体的に申し上げますと、措置命令の発動に当たっての現場の判断が迅速でかつ的確に行うことができるように、防火対象物に重大な違反がございました場合は、まず履行期限を付して警告を発する、それから当該履行期限内に違反是正がなされないときは速やかに措置命令を発するといったようなことなどを、地方団体に対して、これは消防庁でマニュアルをつくりまして、これを全国の消防本部に配付する、そして周知徹底して万全を期して対処していきたいと考えております。
後藤(斎)委員 また、今回の法改正の中では、権限が大きく増大します。それも、現場職員の権限が増大いたします。立ち入り時間の制限も原則廃止で、二十四時間フルに対応することになりますし、また、今まで措置命令を行える主体というのは消防長または消防署長だったものが、一般の現場の消防職員にも拡大をされます。このようなとき、私は、まだ今の自治体消防の中では、今回の法律改正、ややもすれば権限の乱用という一方のものにぶち当たるのではないかなという懸念を有しております。
 何を言いたいかといえば、要するに、現場職員が今回の法律改正の趣旨を十二分に理解し、そして権力の乱用にならない範囲の中できちっと法目的を達成していくということに尽きていくと思います。要すれば、現場職員の資質向上ということを、これから実際の法律が施行される間に対応していく必要があると思いますが、その点につきまして、総務省の御見解をお伺いしたいと思います。
滝大臣政務官 今委員から御指摘のとおり、やはり具体的な処理の仕方、あるいはそれに伴うところの、権限の乱用にならない、そういうような二点の問題があろうかと思います。
 ただいま消防庁長官からは、マニュアル化をするんだということでございますから、立入検査あるいは違反処理のマニュアル、そういうようなことを通じてきちんとするということは、これは大きな今回の事故にかんがみての対処だと思いますけれども、御指摘のように、やはりそれだけではいきませんで、消防職員を通じて、これまでも予防消防という観点から、消防大学校においてそういう課程を、コースも設けておりましたのですけれども、今度の、これによって権限の拡大する分、事務処理が増幅する分、これについて改めてそういうような研修、あるいは消防大学校における予防消防課程における充実というような観点からの取り組みが必要だろうというふうに思っております。
後藤(斎)委員 そして、昨年九月の雑居ビル、これは雑居ビルという定義が正しいかどうかは別としても、まだ抜本的に幾つか、複数、それも大きくなればなるほど、防火管理者がもちろんふえるということになります。法律自体ではありませんが、法律を踏まえた省令の中で、共同防火管理体制ということについての基準がございます。ただ、昨年九月の新宿雑居ビルの問題もそうですが、それが基本的にきちっと対応がなされていないというところに問題があるというふうに考える方がたくさんいらっしゃいます。
 その雑居ビル等々の共同防火体制の権原の問題について、これから総務省としては、その現場も含めた実効性を高めていくことが大変必要になってくると思いますが、その点につきましての総務省の御見解をお伺いしたいと思います。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 雑居ビルの共同防火管理の問題、今委員おっしゃったとおりでございまして、私どもの消防審議会の答申におきましても、共同防火管理の協議事項において、階段等の共用部分の責任者の明確化を図る、あるいは共同防火管理協議会の代表者を所有権を有するような主要な管理権原者としなさいといったような提言をいただいているところでありまして、これにつきましては、今後、省令改正で必要な措置を講じたいと考えております。
 また、今回の法改正で導入を予定しております防火対象物の定期点検報告制度でございますが、これの点検済み表示ですとか、あるいは認定済みの表示制度につきましては、雑居ビルに入っていらっしゃる個々の管理権原者のすべての部分が当該表示の基準に適合していなければこうした防火対象物の認定済みの表示等を付すことができないというふうに、これは法文上、明確に規定をした案に今しております。こういうふうにすることによりまして、防火管理について個々の管理権原者がやはりお互いに協力してしっかり取り組まなきゃいかぬな、こういうインセンティブ効果も高まると考えておりまして、委員が今御指摘になりましたような共同防火管理体制の充実になるんじゃないかと考えておる次第でございます。
後藤(斎)委員 先ほど、閣法、衆法の中で、焼け落ちたというか、火災が起きて、終わった後の調査権の問題について御議論がありました。そして、まだ記憶に新しい延岡の工場の問題も、私は調査権ということだけではなく、予防消防ももちろんですが、実際火災が起きているときの防災体制、これも、今もちろん自治体消防というのが原則なんですが、形として、フレームとして、市町村の枠を超え、県の枠を超え、そういうものもきちっと事前に準備をしていくことが私はこれから必要になってくると思っています。
 その点につきまして、大臣、延岡の工場の問題も含めて、簡潔に御見解をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 後藤委員言われるように、自治体消防というのは、市町村消防ですからやはりいろいろな意味で限界があるんで、広域応援ということが大変重要だ、こういうふうに思っております。県内については協定を結んでやってもらう、県域を越えるものについては緊急消防援助隊というのを組織していまして、これが全国で千七百八十六あるんだそうです。これが常時応援に駆けつける、こういう体制にしております。
 そういう体制の強化等、いろいろな訓練をやるというようなことを含めまして、あるいは、必要なら助成をする、いろいろな施設の。こういうことで、今後ともそういうお互いが助け合うという体制を強化してまいりたいと思っております。
後藤(斎)委員 一方で、昨年の十二月、行革大綱という中で、公務員制度の見直しが今議論されております。我が国は、ILO八十七号条約は、既に昭和四十年に同条約を批准しております。その中で、消防署の職員についての団結権はまだ未批准国であります。ILO八十七号条約、消防職員が団結権を持っているかどうかというのは、いろいろな統計のとり方があってわかりませんが、ただ一つ言えることは、いわゆる先進国と言われている国で消防職員が団結権を持たない国は日本が例外だというふうに言われております。
 そして、そのいろいろな議論を踏まえて、平成七年五月に自治大臣と自治労委員長が合意をして、消防職員委員会制度というものをその団結権にかわるものとして対応したということになっていますが、このときの経緯が、いろいろな方にお聞きをすると、それぞれの思いがあって、ちょっとわかりません。この場できちっとお教えいただきたいんですが、その平成七年の消防職員委員会の設置を決定したとき、当時は総務大臣はありませんで、自治大臣、そして自治労委員長、このそれぞれのお名前と合意内容について簡潔にお答えを願います。
荒木政府参考人 お答えいたします。
 消防職員の団結権問題につきましては、平成七年五月二十六日に自治大臣と自治労委員長がその解決策について合意をいたしたところでありますが、当時の自治大臣は野中大臣、自治労委員長は後藤委員長でございます。
 合意の内容としましては、各消防本部に消防職員の意思疎通を図るための新たな組織として消防職員委員会を設けることとし、消防組織法の改正を行うこと、地方公務員法の改正は行わないこと、自治大臣と自治労委員長は、従来と同様に、消防職員の勤務条件などについて定期的に話し合いを行うこととすることなどについて合意をしたところでございます。
後藤(斎)委員 その後、平成七年十月二十日の臨時国会中の本会議によって、今御説明いただいた消防組織法の改正が行われました。その先立っての地方行政委員会の中の議事録を昨日拝見させていただきました。当時も平林委員長が地行委の委員長だったというのを確認させていただいたんですが、中を読ませていただくと、今お答えになっていただいたようなことが、ちょっと議論の中で違っているのかなというふうな思いがします。
 と申しますのは、当時自治省は消防職員委員会の導入に反対をして非常に消極的だったものが、今お話しいただいた五月二十六日のトップ会談で導入が決まったということだったと思うんですが、当時、消防職員の団結権の問題に対する自治省のスタンスというのはどんなものだったんでしょうか。
荒木政府参考人 消防職員の団結権問題につきましては、大変長い経緯を有しているものでございますが、国内におきましては、昭和四十八年の第三次公務員制度審議会答申に基づきまして、主として公務員問題連絡会議において関係者から意見聴取を続け、平成二年度からはこの問題に密接な関連を有する自治省と自治労との間での協議を開始し、平成六年度からは消防庁も加わりまして協議を重ねてきたところでございます。
 この間、この問題の検討に当たりましては、ILOの状況や職員の勤務条件等の改善への職員の参加という要請を念頭に置きながら、同時に、円滑な消防任務の確保、全国の消防組織、活動への影響などを踏まえて検討が進められてきたところでございます。このような長い年月にわたる論議を経た上で、平成七年五月に先ほど申し上げた合意に至ったわけでございます。
 この協議の経過におきまして、自治労側から、消防職員の団結権を付与するとともに、その経過措置として、消防職員により構成される職員委員会を設置する提案がなされたところでございます。これにつきましては、この自治労の提案では団結権の付与が前提ということでございましたので、それゆえに自治省としては反対したということでございますが、その後、協議を重ねて、先ほど申し上げたような合意に至ったということでございます。
後藤(斎)委員 私がなぜこの問題をお伺いしているかというと、この件について冒頭お話をしましたように、今公務員制度全体の議論がなされております。そして、先進国であるはずの我が国だけが、ILO八十七号条約の批准を、消防の職員に団結権の付与をしていない。先ほどの平成七年五月二十六日の合意の中で、当時の自治大臣が、将来において関係者で、労働基本権の制約に関する問題、議論するものまでも否定するものではないということで、いろいろな意味で将来の展望を述べられているという話も聞いています。
 大臣、最後に、確かに、消防職員委員会というものが導入され、ある程度の成果を得ているという評価はわかりますが、公務員法、公務員制度全体の議論も含めて、我が国の消防職員の団結権という問題を検討していくべきだというふうに私自身考えておりますが、その点についての大臣の御見解を最後にお伺い申し上げます。
片山国務大臣 今、公務員部長から御答弁申し上げましたように、この消防職員の団結権問題、もう長い問題ですよね。いやいや、本当に。いろいろな議論を今までも経てきたことは事実なんです。そこで両方知恵を出し合ったのが、今の消防職員の委員会制度なんですね。
 国によって事情が違うんですよ。委員御承知のように、消防団というような義勇消防、ボランティア消防は世界のどこの国にもありませんよ。日本の場合には、この義勇消防と常備消防が一体でやっているんですね。そういうこともありますし、もともと警察と一緒だったものですから、消防というのは。そういういろいろな観点がありますので、団結権について、これを認める方向というのはなかなか私は難しいと思いますが、議論は私は大いに今後ともやっていくべきだと思っております。
後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございます。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 通告に従い、順次質問いたしますけれども、まず、この法改正の質疑の前に、最近多発しております山火事と、消防団等の活動についてお尋ねいたしたいと思います。
 御案内のとおり、ことしは暖冬で春の訪れが早く、地表が極端に乾燥していること、あるいはまた登山等のシーズンが一足早く幕をあけたこともありまして、この二月、三月に、奈良県あるいは長野県など全国各地で大規模な山火事が発生しております。私の地元でも、大規模には至りませんけれども、小規模な山林火災は例年になく多いわけであります。
 消防庁によりますと、焼損面積が十ヘクタール以上またはヘリコプターで空中消火を行った林野火災の発生状況は、ことしの二月、三月は六十一件で、昨年の三十件の二倍を超える異常事態であります。
 昨年九月の閉会中審査の折に、私は、市町村に設置されております自主防災組織の地域に密着した活動と、消防団の地域に果たす消防防災活動の役割の重要性を指摘しておりました。
 そこで、以上の実態を踏まえまして、我が国の貴重な森林資源を守る、そういう上で、まず最近の林野火災の特徴はどのようなものであるか、そしてまた、地域の消防団が林野火災に関し消防防災上大きな役割を果たしておると思っておりますけれども、消防庁の見解はいかがでしょうか。
 加えて、大規模災害時のヘリコプターの消防防災機能は大きなものがありますけれども、パイロットの確保、あるいはまた機材の維持管理に多大な費用を要す、こういうこともありまして、平成十三年四月一日現在、消防機関保有が二十七機、道県保有が四十一機配備されておりまして、未配備県域は三県となっておるところであります。そこで、このヘリコプターの広域連携が必要となると思われますけれども、現在どのように図られておるのでしょうか、御質問いたします。
石井政府参考人 お答えいたします。
 まず、第一点目の、最近の林野火災の特徴はどうかという点でございますけれども、平成十三年度で約三千件ほどの林野火災が発生したわけですけれども、主な出火原因といたしましては、たき火が七百七十五件で全体の四分の一、たばこが四百七十二件で一五、六%程度、それから火入れが三百六十六件で一二%程度となっておりまして、ここ数年、傾向としてはほぼ同じようなことでございます。
 御指摘のとおり、最近も大変林野火災が多発しておりますので、先般、地方団体に対しても林野火災予防の徹底等について通知を出しておりますけれども、あわせまして、林野庁など関係機関とも協力しまして研究会を設けて、この林野火災を何とかもっと減らすための対策を検討するというふうにいたしております。
 それから、二点目の、地域の消防団の役割ですけれども、お話に出ましたように、消防団は地域における消防防災の中核ということでありますし、多数の動員が可能だ、また、現場の状況や地形に大変精通されていらっしゃるということで、大変すぐれた対応力を持っていらっしゃいます。例えば、平成十年度でいいますと、延べ十三万四千ぐらいの消防団員が動員されていますし、その前の年の九年ですと、延べ二十五万三千人の消防団員の動員がなされております。今後とも、消防団の皆さんの役割に期待していきたいと思っております。
 それから、第三点目のヘリコプターの問題ですけれども、ヘリコプターは、御承知のように、定期点検なんかのために年に二、三カ月は運航不能になるといったようなこともあるものですから、東京や大阪のように複数のヘリコプターがあるような場合は余り問題ないのですけれども、一機しかないような県でありますと、例えば北海道ですとか東北あたりでありますと、隣接県の保有するヘリコプターによる代替の運用をするための協定を結んで、広域的に運用をしております。
 また、お話に出ましたように、運航経費がかなりかかります。機種によりますけれども、年間二億数千万程度はかかるということであります。そこで、例えば大阪なんかですと、大阪市と大阪府、府内の各市がそれぞれ割合を決めて分担し合うとか、あるいは最近では、例えばヘリコプターの部品を各都道府県で共同で保有して、できるだけ経費を削減しようといったような研究もしているところであります。
 私どもとしても、交付税の基準財政需要額に運航経費を参入したりしておりますけれども、今後とも、このヘリコプターも大切な、防災のときに大変有用な機能を果たしていただきますので、経費の面も含めましてできるだけ効率的になるように、広域的な観点からうまく使われますように、地方団体と相談しながら、消防庁としても取り組んでいきたいと思っております。
黄川田委員 お話しのとおり、ヘリコプターは定期点検に一定期間かかるわけであります。そして、県にあっては例えば警察ヘリとの役割分担とか、いずれ、離陸できなかったとか活用できなかったということのないように、広域連携は大切だと思いますので、その適切な運用をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、本題の消防法改正の質疑に入りたいと思います。
 消防審議会の答申では、この火災が大惨事となった主な要因は防火管理違反等の消防法令等違反にあると指摘しております。しかしながら、このビルにおける消防法令違反については、既に、東京消防庁によって平成十一年十月一日に実施した立入検査に際し、防火管理者が選任されていない等の多数の点が指摘されておりました。これらについて適切な是正措置が講じられていれば、このような大惨事を招くことはなかったのではないかというふうなことも言えると思います。
 今回の歌舞伎町の火災原因はまだ特定されておりません。前回の質疑で私は、火炎の伝播が極めて速いこと、天井部が異常な高温にさらされていたこと、そしてまたエレベーターホールのガスメーター周りの不自然さ等を指摘いたしました。また一方、去る三月十七日に警視庁は警察学校跡地ビルで燃焼実験を行いましたけれども、その際のテレビ放映の映像で、燃焼速度が極めて速かったことをテレビで報道しております。
 そこで、消防庁は、発生から半年以上も経過する現在、この火災発生の原因は何であると考えておるんでしょうか。そしてまた、発生原因が特定されていない段階で、十分な再発防止のための措置が盛り込まれた法改正を行うことができるのか、さらに、原因が判明し、新たな事実が明らかになったら再度法改正をするのか、法改正の基本的な姿勢が不明確だと感じるところもありますので、この点について総務大臣の見解をお尋ねいたしたいと思います。
片山国務大臣 新宿の九月の雑居ビルの火災につきましては放火説もありますね。ただ、現在、東京消防庁等が調査中でございまして、原因がはっきりいたしておりませんけれども、今、黄川田委員が言われましたように、消防審議会の答申をいただきましたので、事件が起こってからもう八カ月たっているんですよ、だから、とりあえず審議会の意見を入れて、答申を入れて今回の法令改正をしようと。
 以降、新たな事実等が明らかになりましたら、また所要の対応をいたしたい、こういうふうに今考えております。
黄川田委員 それでは次に、消防機関の人員不足についてお尋ねいたしたいと思います。
 日ごろ、火災現場あるいは災害現場での消防機関の活動を目にしますと、本当に住民の一人としても消防機関には信頼をしておるところであります。しかしながら、火災を未然に防止するというようなこの予防業務は、複雑な法令等も相まって、なかなか我々の目には見えないところもあるわけであります。
 私の地元では、消防本部に勤務している消防職員の数は、地域によって濃淡はありますけれども、消防力の基準の約六五%程度の充足状況と聞いております。また、消防庁では、現在の経済雇用状況にかんがみ、雇用対策として都道府県や市町村に対し、消防防災支援要員を雇用し、小規模雑居ビルなどの防火対象物の調査、指導事業を実施することにより地域の防災、安全の向上を図るよう働きかけておるところでありますけれども、逆にこのことは、まさに消防機関の慢性的な人員不足の証左でありまして、このために立入検査の要員や防火対象物の違反是正指導を担当する要員が不足して、思うような検査、指導ができないことから今回の結果を招いた、こういう考え方もあるわけであります。そうであるならば、まず、消防機関の体制の充実強化を期することこそが重要ではないかと考えるわけであります。
 そこで、地方財政の苦しい状況の中で、常備消防職員の人員増加も難しく、そしてまた少子高齢化で消防団員数も減少傾向にある中で、どのように消防職員、消防団員を含めた総合的な体制強化を図るべきであると考えておられるか、消防庁の見解をお伺いいたしたいと思います。
滝大臣政務官 現在、常備消防の消防職員は約十五万人、消防団員が九十五万、こういうふうに言われているわけでございます。今御指摘のとおり、少ない、制約された人数の中でどれだけ力を発揮するかということではありますけれども、ことしも、平成十四年度の予算の中において、地財計画として約一千名の増員をお願いをし、それが織り込まれている、こういうことでございまして、年々この増強はしていただいているわけでございます。
 ただ、全体として、今仰せのとおり、それにいたしましても、消防職員、そして消防団員が一体となった活動ということも重要でございますので、平成十二年の消防力の基準改定におきましては、都市部におきましても常備消防と消防団が一体として活動できるように、こういうようなことを強調いたしておりまして、あの阪神大震災のときも、神戸の一部の地域におきましては消防団に機動力がなかったというようなことも反省の上に立って、とにかく連係プレーですね、ポンプ車の連係プレーも必要でございますし、常備消防と消防団の連係プレーも必要だ、こういうようなことでの合理化を図っているさなかでございます。
黄川田委員 時代に合った消防力の強化は大変必要でありますので、特段の配慮をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それから、消防機関における法の執行体制整備について質問通告しておりましたけれども、消防職員の法執行に関する資質の向上に関しては、消防学校等で教育するということでありますが、それぞれ消防署、個々の現場での資質の向上も大事だと思うわけなんでありますけれども、この点の法執行に係る対応策についてお尋ねしたいと思います。
北里政府参考人 お答えいたします。
 今回の立入検査の権限強化に際しまして、職員の資質向上は非常に重要であるということで、先ほど滝政務官からお答えいたしましたように、小規模雑居ビルにおきます立入検査の優先順位の考え方とか検査項目のポイント、防火対象物の関係者への指導要領等を盛り込みました立入検査のマニュアル、あるいは、使用停止命令等の命令発動要件の具体的な事例とか告発のための要領等を盛り込みました違反処理マニュアルというものをつくって配付したいと考えているわけでございます。消防大学校等におきます講義にあわせまして、全国で消防職員に対しましてこのマニュアルを活用した研修等を行ってまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
黄川田委員 いずれ、現場が十分に動けるような仕組みをつくっていただきたいと思います。
 それでは次に、防火対象物の防火対策促進について伺いたいと思います。
 防火管理の徹底として定期点検報告制度を導入するなど、防火対象物の所有者や管理者に対して新たな防火管理義務を課すものでありますけれども、現在の経済状況下におきまして、消防用設備の維持管理や防火管理業務の実施に多大な経済的負担も必要とする場合においては、その実施になかなか取りかかれず、やむを得ず違反状態を放置している例もあると耳にしております。
 そこで、防火対象物の防火安全性を確保するために、また一層の防火対策を図ろうとするときに、例えば長期あるいは低利の融資など、管理権原者の経済的負担の軽減と防火対策の促進のための誘導施策の展開がこの法律の強化と相まって必要と考えるわけでありますけれども、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
北里政府参考人 お答えをいたします。
 ビルの所有者など管理権原者が消防法令を遵守するために負うこととなります経済的負担の軽減策というのは、違反是正の徹底あるいは防火管理の徹底等を図る観点から非常に有効であると思っております。
 事業者が多額の費用を要します消防用の設備等の設置をするに当たりましては、現在でも、中小企業が事業拡大等のために行います設備投資に貸し付けられます中小企業金融公庫の中小企業事業展開支援特別貸付、あるいは生活衛生関係の営業者が行います設備投資に対しまして貸し付けられます国民生活金融公庫の生活衛生貸付等の活用が可能でございまして、今回の改正によりまして、いろいろ点検等を契機として管理権原者がさらに設備の設置等を行います場合には、これらの措置によりまして長期、低利の融資が受けられるというふうに考えております。
黄川田委員 では、最後の質問であります。
 火災事故が発生しますと、消防法のみでなく、例えば高圧ガス取締法あるいは労働安全衛生法など、多くの規制法令が対象になりまして、かつ、大規模災害の都度、関連取り締まり法規が強化される方向で改正されるわけであります。しかしながら、規制緩和の時代の流れに反しないよう、別の対応をしている分野もあります。例えば高圧ガス取締法は、優良事業者は自主点検の範囲を拡大し、一斉点検の周期を延ばすなど、インセンティブを活用しながら法令遵守を促し、規制の一律強化によってみだりに負担の増加にならないようにしているところであります。
 そこで、私は、社会秩序も変わりつつある昨今、一律に規制や法令遵守を強化するだけではなく、ビル管理者などが法令を遵守するようになるようなインセンティブを付与して、自主的な法令遵守を促す、そういう方策が検討されるべきと考えておりますが、この点について、消防庁の見解はいかがでしょうか。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 委員おっしゃいましたように、確かに、規制を強化するばかりでなくて、やはりインセンティブ付与ということも大事だと思っておりまして、今、御審議をお願いしております法案でも、今回、防火対象物の定期点検制度というのを設けることにしておりますが、三年間消防法令の違反がないといったような優良な防火対象物につきましては、向こう三年間、定期点検報告義務を免除するという認定を消防機関が行うというふうにしております。
 また、点検の結果基準適合が確認されたものにつきましては点検済み表示、それから定期点検報告義務を三年間免除する認定を受けたものは認定表示を付するというふうにしておりまして、これはそのビルを利用される一般の方も目にされるわけですので、こういった措置はビル管理者にとって法令を遵守するインセンティブになるのではないかというふうに考えている次第でございます。
黄川田委員 大臣のお話のとおり、消防事務は市町村の固有の事務でありますけれども、今回の改正案については、その実効性の確保といいますか、それが一番大事だと思っておりますので、それを十分認識されまして、消防機関に対する指導の強化や消防職員の充足あるいはまた質の向上に十分な方途を見出すよう要望いたしまして、質問を終わります。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 私、最近の、科学技術がいろいろと発達してきている、発展してきているということやあるいは社会の複雑化というような状況の中で、火災も、新しい形の火災といいますか、そういう状況が少々起こっているわけですが、国民の生命や財産を守る、火災原因というものもやはり徹底的に科学的な解明が必要だし、その解明の上に立って対策が立てられていくということが求められていると思うわけです。そういう立場から、あの昨年の九月一日の歌舞伎町雑居ビルの火災、その原因の徹底究明というものがなされなければならないし、それなしに形だけ対策をとったとしても、国民は安心することができないわけです。
 そこで、東京消防庁は十月の二十六日までに、火元は三階エレベーターホールに天井からつり下げられていたマージャンゲーム店の発泡スチロール製看板だ、こういうように火元を限定したと聞いておりますけれども、先ほど、消防研究所で再現実験が行われており、その状況というものの説明が長官からありましたが、階段付近の熱や煙の拡散の状況を調べたとか、あるいは感知器の設置の問題等の言及もございました。また、警視庁の再現実験も行われておるということですが、まだ、出火原因というものはこれから究明するんだ、こういう答弁でございました。
 そこで、まず消防研究所でやっている方の再現実験の中身なんですが、先ほどの説明で一応熱や煙の拡散その他をやったというわけですが、発泡スチロールについて、例えば発火点だとかあるいはどれだけ炎上するか、あるいは煙の量だとか拡散など、そういうものの再現実験というのは行われているのかどうか、その点だけお答えいただきたい。
北里政府参考人 お答えいたします。
 消防研究所での火災実験、この二月から三月にかけて行いました。階段部分で火災が発生した場合の効果的な火災感知あるいは消火の対策等を検討するために行ったわけでございますが、現実に階段で、新宿火災で起こったような、ごみを燃やしてみたりあるいは木材を燃やしてみたりガソリンを燃やしたり、さまざまな実験を行っております。
矢島委員 やはり私、そういう実験、科学的な根拠をもとに、今後の対策をきちんと立ててもらいたいということ、それからともかくも原因の徹底究明ですね、これをひとつぜひ早めてもらいたいという気持ちがありますので、そのことを申し上げておきたいと思います。
 そして次の質問へ入りますが、この新宿歌舞伎町の雑居ビルの火災で四十四名の方が亡くなられました。この死亡原因について、一酸化炭素中毒が多いという報道もございますが、それぞれの死亡原因についてどのように把握しているか、お答えいただきたいと思います。
北里政府参考人 昨年九月の新宿区のビル火災で発生いたしました四十四人の死者の死因でございますが、先生がおっしゃいますように、一酸化炭素中毒によるものが多いのではないかというふうに言われておるんでございますが、現在、東京消防庁等関係当局で火災の原因も含めまして調査中であるということで、死亡原因そのものについてまだ確定していないということでございます。
矢島委員 結局、火災の原因もこれから、死亡原因もこれから、こういう状況だということです。
 そこで、先ほども私、言いましたように、いろいろ科学技術の発展と社会の複雑化の中で新たな形の火災というものが発生している中で、国民の不安というのも非常に広がっているわけであります。そういう点から、火災原因について徹底的に科学的な解明をするということ、その上に立った万全の対策が必要だと思うんです。
 そこで、先ほども同僚議員から同じような質問がありました。つまり、原因の徹底究明が進んでいきますと、いろいろな対応ということで対策が出され、それが今法改正として提案されておるわけです。そこで、大臣が先ほどその旨の答弁をなされているわけですが、私もお聞きしたいのは、総務大臣として、政府を代表して消防行政における国民の要望にこたえる責任があるということから、今回の法改正で決して一件落着だということではないんだということを国民に説明する義務があると思うんで、ひとつそのことについてお答えいただきたい。
片山国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、今回の法改正は、現状において我々が知り得たことと消防審議会の答申に基づくものでございまして、今後新たな、いろいろなことがわかれば、それについての対応は十分させていただこうと思っております。
矢島委員 私、昨年のあの九月十三日の集中審議の中で、査察そのものがなかなかしにくいという点、権限がやはり与えられていない、弱い部分が多い、ですから、例えば査察の前にその査察しようとする店へ通知しても強制することができない、いろいろな問題がある、そこで、この火災の教訓に立って、もっともっと消防職員への権限というものを拡大する必要があるんじゃないかという点で質問したわけです。
 先ほどもありましたけれども、例えば違反に対する厳正な対処。消防法では、指導に従わない所有者に対し建物の使用を禁止できる、こう規定しているけれども、なかなかそういうぐあいにいかない。民事で訴えられてしまう、そういう答弁など、あるいはまたそういう記事などがその後いろいろと載っていたわけです。そこで、私、現行の消防法では限界がある、消防法の改正ということ、その強化が必要だということを、その質問の中で申し上げたわけです。
 そこで、今回の改正案、現行法とどういうふうなところが違って、どう強化されたか、その点だけを教えていただきたい。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の消防法改正におきます権限強化の点ですけれども、避難経路となります廊下あるいは階段に放置された物件の除去ですとか、あるいは火災予防上危険な火気使用設備、器具の使用禁止等の一定の命令については、従来は消防長あるいは消防署長だけでしたが、今回は消防吏員もそういう命令が出せることにした。
 また、今お話に出ましたけれども、立入検査の時間制限を見直した。それから、使用禁止命令の要件を明確化して、まあこれは権限強化というよりは権限を出しやすくするということだと思いますけれども、させていただいて、効果としては、なかなか命令が出せなかったところを、今回はそれを出しやすくする。また、措置命令を発した場合の公示の義務づけなども行いまして、これは一般の方もそういうものを目にすることになりますから、そういう効果によって違反是正を従来以上に徹底するということを考えている次第であります。
矢島委員 強化の問題では、私、衆法として出されている法案、これはすぐれていると思います。ただ、時間の関係で詳しく御説明を受けることができませんけれども。
 私、この法案が出たときに現場の人たちにいろいろ聞いてみました。そうしたら、いろいろとそれなりに変化、改正はしているわけですが、例えば第四条関係でいえば、資料の提出命令を、消防長または消防署長とあるけれども、これは消防職員にも権利を拡大したらどうかとか、第八条関係でいえば、関係者が消防長または消防署長に防火管理者の選任届け出をしないとかあるいは消防計画を提出しない場合に防火管理不適合対象物として表示、公表するというようなことだとか、あるいは特定対象物への立入検査を消防職員に年に一回行わせるよう法律改正するとか、いろいろ現場の意見は出ております。もちろん、それらの意見についてどういうように取り扱うかについては、今後いろいろ原因が究明されたりあるいはまた死亡原因等もはっきりする中で、もう一度考える必要のある部分もあろうかと思います。
 そこで、私、時間の関係もありますので、ことしの三月九日、読売新聞に出ていたんですが、「大惨事の教訓 ビル防火強化へ法改正案 対策の実上げる工夫を」という見出しの記事が載っておりました。それによりますと、対策の実効性を上げる課題として、真っ先に消防職員の増員というのを挙げているんですね。そこの記事を読みますと、何よりも立入検査を行う調査要員が足りない、検査対象となる建物が三百六十万棟で、調査要員は一万人程度で、消防庁が示す目安の七割、その結果、立入検査実施率は三一%へ低下している、検査や指導が追いつかない状況だ、こんなことが指摘されております。
 ぜひ、国民の財産等を火災から守るという、また守ってほしいという国民の願いや声、そのためには消防職員を増強してもらいたいという要求も広いわけですけれども、この点についてのお考えをお聞きしたい。
石井政府参考人 委員、いろいろ消防の現場の声も聞いていらっしゃるんだと思いますが、私どもの認識としますと、今回の改正に当たりまして、まさに第一線で苦労されています消防機関からいろいろお話を聞きました。出てきた要望はほとんど対応できているんじゃないかというつもりでおります。
 それから、今おっしゃいました、それにつけても消防職員の増員が大切じゃないかということはごもっともでございまして、私どもは、ここのところ大変財政状況も厳しいわけですけれども、平成三年当時、消防職員は十三万五千人ほどだったんですけれども、平成十三年には十五万四千人ぐらいになっておりまして、この十年間で約一万九千人近くふやしてきている。率にしますと一三・九%ですので、大変な厳しい財政難のことを考えますと、私どもも精いっぱい努力しているというのを御理解いただければと思っております。
 特に今回、十四年度の地方財政計画におきましても、雑居ビルへの立入検査体制の強化をしたいということで、予防要員一千七十七人を含めまして千九十八人の増員を措置しております。私どもも懸命に努力しておりますので、御理解をいただきたいと思っております。
矢島委員 消防職員の増員という問題と、もう一つ、労働条件、待遇の問題についてお聞きしたいんですが、消防職員が人手不足、こういう中で市民のために満足な火災予防活動もできないというのではやはり困るわけですし、同時に、そのことが消防職員自身の労働条件というのを非常に過酷なものにしているという実態であります。
 これは、千葉県習志野市の消防本部の消防職員四十二名の方が六月の市議会に、人事、待遇、施設の改善を求める請願書を提出しました。請願された消防職員の方々は、消防隊員は全国どこでも劣悪な条件下で過酷な労働が強いられている、消防法に沿った市街地の防災チェックも行われていない状況だというような訴えをしているわけです。例えば、その中には、消防職員の机がないんだ、事務所は狭くて息が詰まりそうだ、仮眠室はベッドの置く場所も困るほど狭い、それから夜騒音がすごくて仮眠に支障を来すとか、休暇もとれない、これは新婚旅行の休暇もとれないんだという訴えが入っております。
 これらの原因に、市当局は、消防力整備基準だと二百七十五人、習志野では必要なわけですが、今現在百九十八名しかいないわけで、消防職員の不足というのがある、こういうことを言っていらっしゃる。やはり、国民の生命財産を守るという意味から、全国の消防職員の人事、待遇、施設の改善、これが求められていると思うんです。
 こういうのを調査したり何かするというようなことをやったことはあるんですか。
石井政府参考人 今委員がお尋ねのような、個別の団体につきまして、消防職員の方がどんな御不満を持っていらっしゃるかといったようなところの調査はいたしておりません。
 ただ、今お話に出ました習志野市、私ども聞いている範囲では、さっきもちょっと話題に出ましたが、消防職員委員会制度なんかも、平成十二年度の場合は不開催だったとかいろいろなことがあったようですけれども、十三年度には三十四件の意見がこの消防職員委員会でも審議されまして、それでその要望が実施されたものがそのうち十一件あるとか、大分いろいろ理解が深まってきているんじゃないか。
 私どもとしても、今後とも、消防は第一線の職員の皆さんの士気がやはり大事でありますので、その辺は、よく職員の気持ちも消防長なりしかるべき人が酌んで、円満にやっていただくことが望ましいと思っておりますので、そのように対処していきたいと思っております。
矢島委員 時間が来ますので、最後に大臣にお聞きしたいんですが、今、先ほども出ましたが、林野火災、全国で山火事が相次いでおります。この実態を重視した消防庁も都道府県に対して通知を出したということを、先ほど長官が答弁の中で言われました。平成十三年版の消防白書の百四十六ページを見ますと、林野火災の増加の背景に、過疎化の進行と消防職員不足などが指摘されております。また、消防業務の中で、これもこの委員会で話題になりましたが、救命救急活動への国民の要望も高まっている。
 やはり、科学技術が発展する、それから、高齢化社会が進行する、こういう社会も時代も新しい局面を迎えている中で、国民の生命や財産を守る、その要望にこたえる、このためにも、私、消防職員をふやすことが不可欠だと思うんです。
 そこで、大臣にお聞きしたいのは、今ずっと、長官といろいろ話を進めてきたわけですけれども、消防職員の増員の問題、それからとりわけ待遇改善、人事とかあるいは施設だとかその他、こういうものについてぜひ検討していただきたいと思うんですけれども、その辺についての大臣の見解をお尋ねいたします。
片山国務大臣 地方財政計画上は、もう全体が減員なんですね。ただ、今回は、消防は千百人ふやしました。ほとんど予防です。警察もふやしました。そういうふうに、めり張りをつけた定員配置をやっていこう、こういうふうに思っております。
矢島委員 終わります。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 社会民主党・市民連合を代表しまして、質問をいたします。
 まず、質問の第一は、消防の機動性、能力向上の問題であります。
 消防防災施設等整備費補助金の問題でありますが、この補助金算定の基準額と実勢価格を比較してみますと、これは私の出身県の調査でありますが、消防ポンプ車で基準額二百六十九万円に対しまして実勢価格四百八十四万円、高規格救急車では二千六百五十一万円に対し三千六百六十五万円、随分この乖離があるわけであります。したがって、市町村の負担はかなり重い状況にある。この乖離を埋めるために、補助基準額を引き上げる、そういう考えはないかどうかが一つであります。
 それから、高規格救急車の問題でありますが、九一年の救急救命士制度の発足に伴い、高規格救急車もこの補助対象となりました。二〇〇一年四月現在、全国で二千七百四十二台が導入されておりますが、そのうち、整備費補助金によって措置された台数が千五百八十五台、こういうふうに聞いております。高規格救急車も含め、補助対象分については起債と交付税措置がなされていることは承知しておりますが、更新については補助制度がないというふうに聞いています。
 制度発足以来十一年以上が過ぎまして、更新時期を迎えているものもかなりあるはずでありまして、この際、更新についても補助対象に加えて、同時にこの補助基準額の引き上げをすることが必要ではないか、このように考えますが、この点についての見解をお伺いいたします。
若松副大臣 重野委員の御質問にお答えいたします。
 ただいま、いわゆる補助基準額と実勢価格の乖離についての見直しのお尋ねでございますが、まず、消防ポンプ自動車等の消防施設設備に係る補助基準額につきましては、標準的な装備や規格を前提に実勢価格等を考慮して決定しておりまして、実は約数百項目の項目がございまして、これを適時見直しているところであります。かつ、いわゆる特殊な要因、例えば市町村が必要に応じて特殊な装備を消防ポンプ自動車に施す、こういった特殊な要因を除いても、これはどう考えても恒常的に補助基準額が実勢価格と乖離している、このような場合には随時補助基準額の見直しを行っているところであります。
 平成十四年度予算におきましては、飲料水兼用型耐震性貯水槽の補助基準額について約五七%引き上げたところでありまして、また、消防ポンプ自動車の補助基準額につきましては、平成九年度には約一四%、平成十二年度には約六%引き上げたところであります。
 今後とも、必要に応じて、この補助基準額が実勢価格に見合ったものとなるように改善を図ってまいりたいと思っております。
 特に高規格救急自動車につきましては、事務方の方から報告させます。
石井政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいま委員の御質問の中で、ポンプ自動車は補助対象になっているけれどもホースはなっていないというようなお話があったかと思うんですけれども、ホース単独ではもちろん補助対象にはしておりませんが、通常、ポンプ自動車を更新するときには当然ホースも一緒にしますので、そのときに補助対象にいたしているところでございます。
重野委員 いずれにいたしましても、施設能力を高めていくという点においては、すぐれた装備をしていかなきゃならぬという自治体の強い要望があります。したがって、その乖離を埋めるように今後とも努力をしていただきたいと思います。
 次に、救急救命士の処置範囲問題でありますが、先般も秋田市の消防における心肺停止患者に対する気管内挿管問題がマスコミで取り上げられ、また本委員会においても、さきの委員会での質問の中でもこの問題が取り上げられました。
 重複いたしますけれども、心肺停止等の患者を搬送するに当たって、現在の法律では気管内挿管は否定されているわけであります。しかし、患者を助けたいという現場の強い使命感から気管内挿管等を行うということを全く、全面的に否定していいものかどうなのかというところは、私は大いに議論のあるところだろうと思うんです。
 確かに、気管内挿管、強心剤等の薬剤投与、心臓に対する電気ショック等は、これはもう紛れもなく医療行為であることは間違いないわけでありますが、かといって、みすみす搬送患者を見殺しにすることも救急救命の目的に反することになるわけで、救急救命士の処置範囲について、訓練内容を高度化する等々の努力をし、拡大することを通して、早急に検討されてしかるべきではないかというふうに思いますが、この問題に対する今後の具体的検討スケジュール、あるいは結論をどこら辺に出そうと考えておられるか、その点についてお伺いいたします。
石井政府参考人 救急救命士の処置範囲の拡大でございますけれども、委員御指摘のとおり、今、国民の皆様の関心も大変高いわけでございます。私どもとしては、救急救命士の処置範囲の拡大、大きく三つございますが、医師の具体的な指示なしでの除細動、電気ショック、原則として医師の具体的な指示のもとでということですけれども一定の薬剤投与、それから気管内挿管、こういうものをぜひ早期に実現できないかと考えておりまして、現在、厚生労働省さんといろいろと相談しております。できれば、近く厚生労働省さんと私どもとで共同の検討会を発足させまして、できるだけ早く前向きの結論を出したいものだと思っている次第であります。
重野委員 そういう方向でひとつよろしくお願いいたします。
 次に、地域の自主防災問題についてでありますが、自主防災組織は昨年四月現在、全市区町村において十万五百四あると承知をしています。家庭の主婦中心の組織が全国で一万四千八百十二団体、約二百三十四万人が参加している。また、これ以外に、少年少女によるものが六千百八団体、四十八万人となっているようであります。
 ところが、こうした自主防災組織に対し、これまでは財団法人日本防火協会から助成金が交付されていたのでありますが、一昨年度からこれが廃止されまして、各県ともに大変苦慮しているというのを承知しています。
 全国の火災の八割以上は家庭火災である実態からすれば、こういう組織の育成強化というものは非常に大事ではないか、そういう観点から、国がこの種の団体に対し助成をするという点が求められていると思うんですが、これについてはいかがお考えでしょうか。
平林委員長 重野君、厚生省の答弁が必要でしょうか、気管内挿管につきまして。
重野委員 そうですね。やってください。
篠崎政府参考人 先ほどの長官の御答弁に、厚生労働省としてちょっと補足をさせていただきます。
 搬送途上の救急患者の生命を確保するということは大変重要なことであるというふうに認識をいたしております。また一方で、その安全性についても十分配慮をしなければいけないのではないか、このように思っておるわけでございまして、先ほど長官から御答弁ございましたように、私どもと共同で専門的、技術的検討の場をなるべく早く設けたいと思っておりますし、坂口厚生労働大臣からもお答えを申し上げましたが、遅くとも年内には結論を出したいというふうに考えております。また、早く結論が出るものにつきましては、順次適切に対応を図っていきたいと考えております。
北里政府参考人 お答えいたします。
 自主防災組織の育成強化は非常に重要であるというふうに認識をしておりまして、従来から自主防災組織の活動に対する経費につきましては、交付税措置を講じる、あるいはコミュニティーレベルで使用されます防災資機材等を整備します市町村に対しましてはその経費の一部を補助するなど、その活動の助成に努めてきておるところでございます。
 ただ、この自主防災組織の運営経費ということにつきましては、みずからの地域はみずからが守る、こういう観点から、各地方自治体がそれぞれの御判断で自主的に行っていただく、こういうものであろうと思っております。その意味で、これまでも、普通交付税の基準財政需要額に算定するというやり方をとる以外につきましては、国からの補助金の交付というのは行ってきておらないところでございます。
 防火協会で、従来、自主防災組織に対して運営経費の助成をしておられるということは承知しておりますが、これは、それぞれの団体として独自の御判断でされてきたものだろう。その意味で、私ども、国からの補助金交付ということについてはこれまでもしてきておらないということについて、御理解を賜りたいと思います。
重野委員 関連をして、今指摘した問題というのは、消防団のあり方についても言えることではないかと思うんです。
 今、消防団員は、九十四万四千百三十四人に減りました。平成十三年度から見ますと四万七千四百三十二名の減、こういうふうになっています。平均年齢も三十六・九歳、平成十三年に比べて一・五歳上昇、こういうふうになっているわけであります。加えて、サラリーマン団員がふえまして、全体の六八・二%というふうになっている。こういうふうに、状況というのは決していい方向には進んでいない。加えて、事業所等への気兼ねなどによって、サラリーマンがこの種の活動になかなか参加しづらい、こういう状況もあるわけです。
 したがって、そういう実態を踏まえて、消防団員となっている社員等を雇用している事業所の理解というものをどう得ていくかということも非常に重要になってまいります。そこについての何らかの措置を講ずることを検討してもいいのではないかと思うんですが、その点についての答弁をお願いいたします。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員から御指摘ございましたように、消防団員の中でサラリーマンの方が大変ふえているわけでございます。そこで、消防庁としましては、消防団の活動が円滑に行われますように、消防団員が雇用されている事業所の理解を何とか得たいということで努力をしておりまして、それぞれの消防機関、地方団体から各事業所に対して、出動時における職務の免除でございますとか、それから、仕事のほかにボランティアで防災活動にせっかく携わってくださっているわけでありますので、会社等における昇進等の面でもできるだけ公平な扱いにしていただくようにお願いをしているところであります。
 また、今年度から、消防団について特に理解があり、協力していただいている事業所について、新たに表彰制度を設けるというふうなことも考えております。
 それからまた、今の事業所の問題も含めまして、今後の消防団が、おっしゃるように団員が減っているという問題もありますので、もっと活性化しますように総合的な検討を行おうということで、昨年来、検討会を設けて勉強しております。しっかり取り組んでまいりたいと思います。
重野委員 最後に、消防庁の消防職員の現場活動に係るストレス対策研究会中間報告、こういうのがありますが、それによりますと、職員のケア体制について、精神医学または臨床心理学からの専門的配慮、そうした精神医学等の診療を受けられる体制整備が必要、このように指摘をしています。
 そこで、まず厚生労働省に聞きますが、労働安全衛生法上、こうしたストレスや心的外傷に対し、事業者は、安全衛生の観点から必要な対策、つまりケア対策を講ずる義務があるというふうに考えますが、この点について厚生労働省の見解をお伺いします。
 また、これに含まれるとすれば、消防庁は、衛生管理に関する規程の案を示すなど、衛生管理体制の整備を図っていると消防白書では言っておりますが、今後、この中間報告でも示したケア体制、診療体制についてどのように整備するのか、お聞かせください。
播政府参考人 お答え申し上げます。
 労働安全衛生法上、消防職員の方々につきましては、ごく一部の規定、例えば監督官の司法警察権限の規定などを除きまして、安衛法の規定の適用がございます。先生の御指摘のような事業主の責務の規定も適用がございます。
 以上でございます。
石井政府参考人 今、委員御指摘がございました消防職員の現場活動におけるストレス関係の問題ですけれども、昨年の十二月から、精神医学ですとか心理学分野の専門家の参加も得まして、この研究会を設けた次第であります。この研究会で十五の大都市の消防本部にアンケート調査を実施いたしまして、ストレスに関する意見、それからその対策等、どんなことをやっているかといった状況把握を行っておりますが、どの消防本部も、やはりストレス対策が必要だという回答でありますし、また一方で、その対策、いろいろ知恵を絞っているんですけれども、どうやったらいいかというのはやはりまだまだ知見が少ない、情報も不足しているという問題が今回の中間報告で浮き彫りにされたところでございます。
 今年度は、こうした実情がよくわかりましたので、消防庁としてさらに調査研究を重ねた上で、それには当然各方面の学識経験者の方々の御意見を十分お聞きしたいと思いますが、各消防本部がとるべきストレス対策をまとめまして、これを各消防本部の方に周知徹底して、何とか消防職員の心の健康を確保していくということに取り組んでまいりたいと思っております。
重野委員 現場では本当に命がけで頑張っておられる消防職員です。最大限の配慮をしていただいて、本当に国民の生命財産を守る、そういう前線の苦労にこたえていただきたい、そのことを要望しまして、終わります。
平林委員長 ただいま議題となっております両案中、内閣提出、消防法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、消防法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、荒井広幸君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。後藤斎君。
後藤(斎)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    消防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、防火安全対策の徹底のため、次の事項について所要の措置を講ずるべきである。
 一 防火対象物の避難経路における多量の物件の存置、消防用設備等の設置維持に関する重大な違反等があって、消防法第五条等の要件を満たす場合において、警告を発した後、履行期限内に違反是正がなされないときは、速やかに措置命令を発動すべき旨を地方公共団体に対してマニュアル、通知等で周知すること。
 二 違反是正等の予防事務を担当する職員の対応能力を強化するため研修制度を充実する等、職員の資質向上に努めること。
 三 雑居ビルその他管理権原が分かれている防火対象物の増加に鑑み、消防機関は、これらの防火対象物全体の自主的な防火管理体制が充実されるよう指導に努めるものとし、このための組織や体制の整備を徹底すること。
 四 多数の死者が発生するなど社会的影響が極めて大きい火災、燃焼の性状が特殊である火災であって、通常の火災原因調査ではその原因究明が困難と考えられるものが発生した場合等には、消防法第三十五条の三の二による消防庁長官の火災原因調査を速やかに求めるべきことについて地方公共団体に対し周知すること。
 五 今後、地方公共団体から求めがないときであっても、消防庁長官が大規模火災等の原因調査を実施できるよう制度や体制の整備に努めること。
以上であります。
 何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。
平林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、その御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
平林委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
平林委員長 次回は、来る九日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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