衆議院

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第14号 平成14年4月18日(木曜日)

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平成十四年四月十八日(木曜日)
    午後二時五十五分開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君
   理事 八代 英太君 理事 安住  淳君
   理事 後藤  斎君 理事 桝屋 敬悟君
   理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      左藤  章君    佐藤  勉君
      新藤 義孝君    高木  毅君
      滝   実君    谷  洋一君
      野中 広務君    林 省之介君
      増原 義剛君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      大出  彰君    奥田  建君
      島   聡君    鈴木 康友君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      滝   実君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官
    兼行政改革推進事務局
    長)          西村 正紀君
   政府参考人
   (人事院事務総局人材局長
   )            石橋伊都男君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (総務省自治行政局公務員
   部長)          荒木 慶司君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  河野 太郎君     高木  毅君
  谷本 龍哉君     林 省之介君
 吉田六左エ門君     増原 義剛君
  玄葉光一郎君     奥田  建君
  島   聡君     鈴木 康友君
  田並 胤明君     大出  彰君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     河野 太郎君
  林 省之介君     谷本 龍哉君
  増原 義剛君    吉田六左エ門君
  大出  彰君     田並 胤明君
  奥田  建君     玄葉光一郎君
  鈴木 康友君     島   聡君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官兼行政改革推進事務局長西村正紀君、人事院事務総局人材局長石橋伊都男君、人事院事務総局勤務条件局長大村厚至君、総務省人事・恩給局長久山慎一君及び総務省自治行政局公務員部長荒木慶司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。
安住委員 ちょっと開会がおくれましたけれども、これから始めさせていただきたいと思います。
 きょうは、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案の質疑ということでございますが、理事会でも申し上げましたとおり、一般質疑がなかなかできないということで、一般質疑的な質疑もきょうはいいということを我々としては含んでおりますので、御了解をいただきたいと思います。
 きょうは、中島人事院総裁、それから安倍内閣官房副長官にもおいでをいただきまして、お忙しいところ恐縮でございますが、公務員制度全般についてのあり方についてまずお話を聞かせていただいて、その上で、この法案についても話をしたいと思っております。
 まず、安倍副長官、去年の十二月に公務員制度改革の大綱が出ました。これは、私は後で持論は申し上げますけれども、大体、そもそも今の官僚制度のどこが悪くて、今の官僚制度のどこを直そうということでこういう大綱をつくったのか、御説明をいただきたいと思っております。
安倍内閣官房副長官 公務員制度につきましては、国家公務員制度が制定をされまして以来五十年余も抜本的な改革が行われなかったわけでございますが、今般、この五十数年間の時代の大きな変化の要請にこたえまして、その中での政策の策定や国民のニーズにこたえた行政サービスの提供が効率的に行われるように、そしてまた政策の企画立案機能の強化や、国民から批判のある前例踏襲主義あるいは予算消化主義といったものを改める必要がある、このように考えたわけでございます。
 昨年十二月に決定いたしました公務員制度改革大綱におきまして、現行の人事制度を、能力、業績を反映した人事制度に改めることなどの改革を盛り込んでいるところでございます。この改革によりまして、公務員の意識、行動原理を改革し、コスト意識、サービス意識、今まで公務員の中にはこういう意識が薄いという御批判があったわけでございますが、こうした意識の徹底を図っていきたい、このように考えている次第でございます。
安住委員 これは非常に難しい話であります。なぜかというと、私は、そもそも我が国の高級官僚といいますか、霞が関の役人の皆さんに何を求めるのかということがやはりまずなきゃいかぬと思うのです。これは、モチベーションといいますか、高い志で仕事をしてもらわないといけませんし、そういう観点でいうと今のどこが問題なのかということを聞いているんですよ、今のどこが問題なのか。ですから、役所の書いた答弁でなくて、政治家としてちゃんと話してもらわないと困りますね、これは。いいですか、副長官。
 私が思っているのはこういうことですよ。多分、今の世の中の風潮というのは、政治家も悪ければ役人も悪い、天下りもしてけしからぬ、私利私欲だと。半分当たっているんですけれども、しかし半分乱暴な議論なんですね。
 私は、日本の危機の中の一つ大きな問題は、やはり公務員のレベルの低下というかモラルの低下というのがあると思うのです。しかし、それは果たして個人に起因するものなのか、それともシステムに起因するものなのか、そういうことをよく考えないといけません。きょうは人事院の総裁にもおいでをいただきました。人事院制度というのは本当に今からもう必要なのか必要でないのか、そういうことに立ち至ったときにこういう案が出てきたのかどうかということに関心を持っているわけであります。
 私は、まず自分の意見を最初に申し上げますけれども、やはり高級官僚というのは公平、中立で、ある意味では、我々と違いまして選挙をやりませんから、これは何年もの間、ある意味で恣意的な、政治的なものも、理不尽なことは排除をして、国家のために尽くしてもらわないといけない人たちだと思うのですね。
 こういうモチベーションが今あるのかというと、非常にそれが下がってきたと。それは一体何に起因するのか。そもそも、公務員制度改革の大綱をつくるときにそういう問題意識でこの大綱をつくるように内閣は指示されましたか、されませんでしたか、いかがですか。
安倍内閣官房副長官 ただいま委員が御指摘された点は大変重要なポイントだ、このように思います。
 いわば働く公務員が高い見識を持って、そして意欲を持って仕事に励んでいただく。また、ベスト・アンド・ブライテストを集めるということも重要でございますから、その彼らがそうした高い意欲を持ち続けることが大切なんではないだろうか。つまり、やる気がなくなってしまってはどうしようもないわけでございます。
 しかし、今までの批判があったのは、いわば前例踏襲主義的にこの五十数年間、いろいろな仕組みができ上がって、積み重なってきたわけでございますから、その中で競争の原理を取り入れて、頑張った人には、また意欲を持っている人はそういうプロモーションがある。そしてまた、こういうことをやりたいという意欲を持っている人たちを、やはりその方向性を生かしやすい、そういう仕組みも念頭に置きながら、改革を行ったのではないか、私はこのように思います。
安住委員 いいですか、これは、安倍副長官は有事法制で忙しくてこういうことは余りやっていないかもしれませんから問題意識がないかもしれませんけれども、私は非常に問題意識があります。
 私は、やはり今の世の中は負の連鎖というか、負の循環だと思っているのですよ、負の循環、この官僚を取り巻くものも。縦割りの政策決定しかできない、そして短い役人生活である、そういう中でモチベーションを高くしても、これはなかなかいい仕事のできない環境にある。そういう中で、短い役人生活の中で、いわば天下りというか再就職も考えないといけない。それは人生五十六歳でほうり投げられて、ですから私は同情もするのですよ。事務次官終わった人でも年金二十三万幾らですよ、私が調べたら。
 そういう中で役人に高い仕事をしろといったって、これはなかなか難しいのです。ですから、不祥事もどうしても起こる。天下り先に行きたいと思っている業者にも、業界にも便宜を図ってしまう。そういう中で、悪い循環の中で私は不祥事が起きてきているのではないかと思うのです。
 つまり、そういう中で、では今後どうするのかと。私は、こういうことが続くと役所には多分優秀な人材はもうこれからは集まらないと思いますね、魅力ないですから。給料は安い、仕事はさせられる、短い役人生活の中で将来に対する不安も残る。人事の評価のシステムは年次制度、だれも、一生懸命やったって年次の上を越すことはできない。さらに、省益ばかり考える。予算を分捕ってくれば、減らせばいいのになと思いながらも、分捕ってこなければ昇進できない。これはとても優秀な人間のやっている組織ではないのですよ。だから我が国は、そういう意味では高い志を失ってしまった。我々、それを変えてこなかったというか、気づかなかった、これは私は政治の責任でもあると実は思うのですね。
 では、その中で事業官庁は何をやっているか。業者との癒着ですよ。特に事業官庁はひどいものだ。官製談合なんていうことはもう県の末端までやっている。こういうことを抜本的に解決するときに、さて何が必要かということなんであります。
 そこで、私はこれは人事院の総裁にまず伺います。総裁、今度のこの制度を見ますと、入り口と出口の問題が分かれて書いてあるのですよ。入り口というのは、今までの官僚の採用の仕方、そして出口は天下りを含む役人の皆さんが今後どういうふうにやっていくか、それをだれに持たせるかということが書いてあります。
 その中で、今のこの公務員制度大綱というのは、はっきり申し上げて人事院の権限をかなりそいでいます。むしろ、各省庁別にこれからはやっていこうという趣旨で貫かれています。これに対して人事院は賛成ですか、反対ですか。また同時に、今までの人事院のやり方はやはり間違っていましたか、古い制度だから現代に対応できなかったですか、いかがですか。
中島政府特別補佐人 今度の公務員制度改革大綱の中には、いろいろなことが提言されております。その提言されておることをどう評価するかということなんですが、安倍副長官がお答えになったのも一つの切り口だというふうに思いますが、少し違った切り口で申し上げますと、日本の戦前の官僚制度、戦後の公務員制度というものを歴史的視点からとらえてみますと、やはり戦前戦後共通してそこに持っておる問題点というのがあるだろうというふうに思います。やはり、その問題点をどのように解決していくかということが議論され、その解決策が示されなきゃならないだろうというふうに思います。その上に、なお二十一世紀のこの時点に立ってこれからの公務員制度がいかなる要素を備えていなきゃならないかということを考えてみなければならない。
 そういうことを考えて、その課題というものを整理してみますと、今度の公務員制度改革大綱の中には、その答えが出ているものもございますし、不十分なものもございます。したがいまして、それらを総合的にとらえて、これからの公務員制度の姿というものを描いていかなきゃならないというふうに思います。
 その過程におきましてやはり重要なのは、戦前戦後日本の官僚制度、公務員制度でよく言われる特権性、非民主性というものがございますから、そういうものの是正というものにおいて人事院の果たす役割というのは非常に大きいだろうというふうに思います。そこらの評価を適正にしていただく、その議論というものをこれから高めていただく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
安住委員 実は、この大綱をやるということは、基本的に私は人事院は今の仕事のかなりの部分をもうやらぬでいいと。つまり、これからは、ある意味では賞罰や人事管理の面だけやっていただいて、入り口のところは、今の事前の入省のときの承認制も、それから出口のところもまさに大臣決裁ですから、各役所でやるというふうな方針です。
 これは、私は意見の分かれるところだと思うのです。意見の分かれるところということはどういうことか。これは政府部内で考え方がちょっと違うんじゃないかというふうに私は思うのです。副長官、いかがですか。今の総裁の話の中で言う不十分なところというのは、まさに出口と入り口の話の認識が違うんじゃないかと思うのですよ。
 私は、人事院の言い方にもかなり理屈はあると思うのです。出口のところを官僚に任せちゃって、役所に任せたら、片山総務大臣が幾ら万能な人だといったって、例えば三百人もの退職者を全部チェックできますか、できない。そういうことを多分総裁も言っているんじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
安倍内閣官房副長官 ただいまの御指摘は、いわゆる再就職の際の承認、人事院の承認から今度の改革によってどうなのか、そこに問題点があるんではないかということだと思うわけでございますが、今般の、承認を内閣で行う、内閣というか各大臣が責任を持って行う、それによってまず責任が明確になるということだと思います。
 そのときに、その省の大臣が責任を持ってやるわけでございますから、それでは第三者機関がやらないことによってお手盛りになるのではないかという御批判は当然あるのだろうと思うわけでございますが、そのときに、やはりまずしっかりとした基準というものをつくる、内閣が承認基準を政令で定めまして、承認制度の運用について総合調整を行うということにしております。
 そしてまた、責任を大臣が明確に持つわけなんですが、責任を持つということは、国民にどういうことをやったかということをまず知らしめて、その上で責任を持つということになるわけでございますが、当然、これは詳細に公表するということになっております。
 また、その中で人事院の果たすべき役割なんですが、人事院は、承認基準についての意見の申し出や、承認事務の実施状況についての改善勧告を行うということになっております。
 そしてまた、これも大変重要なことでございますが、もしそういう中で違反行為等々があった場合には、これはちゃんとした罰則等の制裁措置の導入を図るということを考えているわけでございます。
安住委員 だから、今までの人事院の役目はもう要らないということですね。私はそう思いますよ。つまり、かなり制限する。それはそれで政府の考え方として、いいでしょう。しかし一方で、これは公平性と情報公開をどう担保していくかということはあるんですよ。
 私は、後からまた申し上げますけれども、しゃくし定規に何でもだめだと言っているわけではないのですよ。天下りの問題とか、そういうことについては後で自分なりの提案をしますけれども、つまり、公平で中立性があるというふうに、人事院は比較的思われてやってきたと思うのですよ。そういう中で、要するに、この制度が抜本的にそこを変えるわけだから、人事院のどこが今まで悪くて、人事院のどこを改善しないといかぬのかというところはやはり明確にした方がいいんだと思いますよ。そこをもう一回ちょっと答弁していただけないですか。
安倍内閣官房副長官 今、委員は、そうであれば人事院は要らなくなるのではないか、そういう御指摘でございましたが、決してそんなことはないわけでございます。
 政府全体としての適切な人事・組織マネジメントを実現するために、内閣と第三者機関である人事院の機能を整理いたしまして、まず、人事管理権者としての各主任大臣等の主体的な責任と権限の明確化を行う、そして内閣の人事行政の企画立案機能、総合調整機能を強化する、そして人事院による職員の利益保護、人事行政の中立性、効率性の確保をするという新たな枠組みを構築することになっております。そして、人事院は引き続き、第三者機関として重要な役割を担うということになっているわけでございまして、そういう考え方でございます。
安住委員 人事院の総裁、今からはそういう人事院でよろしいですか、いかがですか。これは反論があるのだったら、ちゃんと言ってください。
 なぜかというと、どっちがいいとか悪いじゃないんですよ。ただ、新しい制度に変える以上は、役所はそれぞれ採用する人間に対する責任を持ってもらうのは当然だけれども、出口も自分たちで好きにやりますというところは、私はなかなかそうはいかぬだろうなと思うんですよ。信頼されていればいいのですけれども、今、霞が関全体、国民の皆さんから見たときにそうなっていないのです。それは役所によっても違いますよ、しかし関係業界に対してやはり影響力があるのじゃないかとか。私は、出口の問題というのは、本当のところを言うと実は骨の話ではないと思いますよ。しかし、国民の皆さんの感情から見たら、これは骨の部分になってしまっているんですよ。
 ですから、より公平性を担保するのか、それとも本当に役所に任せてしまっていいのか、これについて人事院なりの考え方はありますか、ないですか。いかがですか、総裁。
中島政府特別補佐人 この問題につきましては、今まで予算委員会を初め幾つかの委員会で御答弁申し上げましたが、天下りの審査制度のあり方につきましては、平成十二年十二月に行政改革大綱というものが出まして、問題が浮上したわけでございます。それ以後、平成十三年三月末に大枠、六月末に基本設計、そして十二月末に公務員制度改革大綱というふうに、たびたび案が決定されております。
 そのたびに、ほとんどすべてのジャーナリズムから非常に厳しい批判が寄せられておる、しかもジャーナリズムだけではなくして、評論家とか、あるいはまた大学の教授等からも批判の声が出てきておるということでございます。これだけ一つの施策について継続的に批判が出てくるというのは、やはり、私は今まで経験したことがございません。そういう批判の意見というものをよく踏まえて、私たちが日ごろ考えているところから申し上げますと、問題は三点あるだろうというふうに思います。
 一つは、早期に勧奨退職する責任者、その責任者である大臣が天下りの審査についても最終責任を負うということは、やはり官民癒着という観点から見ると非常に心配な点が残るというのが第一点でございます。
 第二点は、今、安住委員がおっしゃいましたように、省によっては三百人を超える天下りの職員というものを、大臣が責任を持って本当に審査できるのだろうかという点で懸念が残るというのが第二点でございます。
 そして第三点は、これは日本の官僚制度、公務員制度というものを、戦前戦後を通じて議論する人たちがよく言うことですが、各大臣の人事管理権を強くするということよりも、官邸、特に総理大臣の権限というものを強くするというのが必要じゃないか、そのことによって総理の考え方が幹部公務員に浸透する、その必要性というのが今こそあるのじゃないかと言う方が非常に多うございます。
 私は、この三点というものを考えた場合に、今度の、人事院の承認制を大臣承認制に移すということについては賛成できないという立場でございます。
安住委員 これは、政府部内で意見が合わないということのまさに証明ですね。これは結論のある話ではないですから、どっちがいいかという議論はわかりませんけれども、安倍副長官、これからどうなさいますか。
安倍内閣官房副長官 今、人事院総裁の御意見も承ったわけでございますが、また人事院総裁のそうした御指摘も勘案しながら、よりよいものにしていきたい、こういうふうに考えております。
安住委員 大変つまらない答弁だったので、がっかりしますけれども、やはり一番考えないといけないのは、私は、長く公務員をやってもらうのが本当にいいのかというと、必ずしもそうでないのかなとも実は思っているんです。霞が関が市役所みたいになったら、本当にいい仕事ができるのかいなとも思うんですよ、変な話ですけれども。つまり、市役所に怒られますけれども……(発言する者あり)ちょっと野党の皆さん、静かにしてください。任期付職員の話じゃないけれども、やはり短期間の間にいい仕事をしないといけないぐらい、仕事のあれが大きいんですよ。
 だから、そういう点からいうと、私は本音で議論してほしいなと思うんですよ、本音で。つまり五年間なら五年間、六年でもいいけれども、短期間でしっかり国のためにいい仕事ができるような制度。そのかわり、外に行ったらまた活躍できる。つまり役所というものを、就職で一生大丈夫な場所だというふうな考え方でやるのか、そうでないのかということをよく話さないといかぬじゃないですかということなんですよ。
 その中で、では、人事院が本当にいいのか、各役所がやった方がいいのか。今度の法律だって、これで地方公務員、一般職、任期付ができましたけれども、まだ現実には、これを採用するのはなかなか難しいと思いますよ。そんなにすぐ任期付職員を採用できるほど頭が柔軟だったら、日本の地方自治体だってこんなになっていません。ですから、ある意味ではそれは……(発言する者あり)いや、失礼。静かに静かに。
 つまり、これは、私は本音で議論してもらいたいと思っているからあえて言っているのですけれども、本当に霞が関の官僚に何を求めるかということを聞きたいのはそこなんですよ。ただ長くずっとだらだらでいいのか、これは円筒形というんですか、私は、そこがよくわからないから、そこをちゃんと政府部内で統一した話にならないと、こういう大綱というのはどうにも現実性がないのではないかと思うんですけれども、いかがでございますか。
安倍内閣官房副長官 先ほど人事院総裁が内閣自身のリーダーシップについても言及をされましたから、それにも合わせてお答えをさせていただきたいわけでございますが、内閣自身が厳格かつ明確な承認基準を定めて政令という形で国民にも明らかにするとともに、各府省における運用の総合調整を行うということによって、内閣として責任を持って対応するということになっているわけでございます。
 今の答弁とはまた別に、今安住委員が御指摘をされた、我が国の官僚制度の仕組みそのものなわけでございますが、例えばアメリカのように多くのポリティカルアポインティーが入ってくるという形を我が国はとっていないわけでございまして、局長とか事務次官とか、そういうところもすべて役人が上がっていく、そういう仕組みになっているわけでございますから、その仕組みの中で、決してそれほどやる気がなくなるということにはなっていないんではないかと私自身は思います。
 ただ、そういう中で、不断の見直しと改革は行っていかなければいけない。そういう中で、五十数年間改革を行っていなかったわけでございますから、この機をとらえて改革を行っていきたいということでございます。
安住委員 私は一つ提案したいんですけれども、外国の例を今出しましたけれども、例えば出口の問題ですね。
 例えばフランスを見ますと、フランスは、退職した公務員はほとんどの皆さんは年金で食っていけるんですね。なぜかというと、ベースは、ちょっと僕は今資料を持っていないんだけれども、年金額が、働いていた現職世代の大体六五%ぐらいをもらえるそうなんですよ。すると、フランスでは、天下りの必要がないというふうになって、比較的NPOとかボランティア活動をやっている旧公務員というのが結構いるんですよ。
 ですから、私は、考え方というか、具体的な案はわかりません。なぜかというと、ここには答えがないからです。つまり、そうでなければ、天下りを、仮に五十六歳でそれ以上就職してはだめだといったって、そうはいかないですよね、晩婚の人なんてまだ中学生や高校生の子供さんを抱えている方だっているんだから。そういう方が例えば仮に再就職するにしたって、徹底的な情報公開をするしかないんですよ、そうであれば。徹底的な情報公開。そういうことすら今できていないのに、こういう大綱を出しても現実味が本当にあるのかいなと思うんですね。
 ですから、総裁、このことについて人事院は人事院なりの案はないんですか、御自身でも結構ですけれども。やはりこれは、公務員大綱が出ました、それに対して異論があるようですが、もし意見が合わないのであれば、逆に、人事院としては、私が今提案したことに対して何か具体的な案をお持ちですか。お持ちだったらぜひ説明してもらいたいと思うんです。
安倍内閣官房副長官 今の再就職の際の情報公開については、大臣が承認を行うわけなんですが、当然、大臣が責任を持つ、そしてその責任は国民に対して責任を持つわけでございますから、承認した案件については詳細に公表することにいたしております。
中島政府特別補佐人 私たちの考え方は、先ほど答弁申し上げたときに少し触れましたけれども、民間企業への天下り、特殊法人や認可法人等への天下り、この二つの天下りというのが、今、国民が注目しておりますし、批判が集中しておるということでございますので、この天下りというものを一括して審査するシステムが必要じゃないかということでございます。これだけ問題になってくれば、やはり官邸が直接おやりになるというのがいいんじゃないかという御提案を申し上げているわけでございます。
安住委員 中村議員が次の質問ですけれども、民主党としてトータルで一時間やらせていただきますので、ちょっと食うかもしれませんが、その分は本人に了解を得ていますので、引き続きちょっとやらせていただきます。
 私は、やはりもっとクリエーティブな仕事をしてもらいたいと思っています。自分の省益や自分の局の仕事、これは今度は、片山大臣は役所の御出身ですけれども、身をもって体験なさっていらっしゃるとは思いますけれども、やはり今の制度は本当に問題だと私は思いますよ。どんな人間が行ったって、こうしか仕事ができないだろうなというシステムですもの。ですから、中に入って本当に質的に変化をさせる、しかし同時に入り口と出口の問題をしっかりするということでないと、やはり日本はますます地盤沈下すると私は思いますよ。いかがですか。
片山国務大臣 日本の公務員制度は、釈迦に説法でしょうが、メリットシステムで、入るときから成績によって入って、入ってからも業績や成績によって上がっていく。そして、必ずしも終身雇用じゃありませんけれども、基本的には長い勤務ということを想定しているんですね。アメリカを例に出すと、アメリカはスポイルズシステムで、選挙によって皆かわるんですよね、三千人も何千人も。だから、これが効率がいいのかどうか、こういう議論があります。
 ただしかし、今安倍副長官が言ったように、五十何年間大きく変えずに来ているんですね、部分的には変えてきていますけれども。だから、もう一遍この機会に、二十一世紀にも入りましたので、公務員制度を見直していくということは、私は、それはそれで大変意味があると思いますよ。
 それから、今の退職管理ですね。今、人事院が民間や特殊法人等へのあれは審査しておりますけれども、これはどっちもそれぞれ一長一短があるんですよ。だから、運用ですよね。今、安倍副長官が言っているのは、きちっとした基準をつくって、それで任命権者にやってもらって、それを内閣が調整するというんです、チェックする。それでそれぞれの各府省の大臣に責任を持たせた方がいいのか、あるいは第三者機関である人事院が通してやるのがいいのか、これはこれから大いに議論をしていく必要があると私は思っております。
安住委員 どうぞひとつ、国家公務員の採用形態等が変われば当然地方にもいい影響を与えますので。
 やはり前例主義、それからなかなか思い切ったことをやらない。変わらないところが役所のいいところだといえばいいところだと言う人もいますが、しかし、今の時代にとても適合しないんじゃないかと思うこともたくさんありますよね。それが、結局、地方自治体の窓口なんかに反映するんですよ。これはどうやったってそうなるんですよね。だから、それをもっと思い切って改革するときに、政府部内で意見が割れているんじゃもう話になりませんね。
 これはなぜそうなるかといったら、総理自身が本当は全然この問題の意識がないんじゃないですか、関心がないんじゃないかと私は思うんですね。ある意味では、これは安倍副長官、もう帰っていただきますけれども、最後に私は言いますけれども、有事法制をやっているよりは、こういう問題が構造改革ですよ。有事法制は有事法制でまたそういう時期にやればいいんです。私は比較的あなたと考えが近いけれども、しかし、それはそうとして、こういうことをちゃんとやってくださいよ。こういうことをやらずして、何が備えあれば憂いなしですか。何をこんなピンぼけしたことを言っているんだと私は思いますけれども、感想はありますか。
安倍内閣官房副長官 小泉総理もこの公務員制度の問題に極めて重要な関心を払っているからこそ、昨年、答申を受けて、この大改革を行おうという決意をいたしておる次第でございます。
 それと同時に、有事法制も、いつ来るかわからないのが有事でございますから、それに備えておくのは当然我々政治家の責務であろう、このように思うわけでございます。また、安住先生にも御指導をいただきたい、このように思う次第であります。
安住委員 私は御指導はしませんけれども、政治的にはこの委員会だって大変ですよ、郵政事業法案を抱えていまして。有事法制の方が政府が大事だと言っているんですから、総務大臣、どんどんあっちへ出ていただきまして、我々の方よりもあっちの方が大事でしょうから、どうぞ、それだったらそれでやってくださいよ。そのかわり、その責任は、私は、委員会は持ちませんから、そのことだけ申し上げますから、どうぞ、御退室いただいて結構でございます。
 それで、片山総務大臣に、この一般職の任期付採用についてですが、まず、五年という根拠、もちろんそれは霞が関もそうだからということなんですが、しかし、やはり五年という根拠をちゃんと示すのと同時に、ここで言う高度で専門的なというところは、市民の皆さん、町民の皆さん、地方に住んでいる方がよくわかるような形にしてもらわないと、市長さんなんか対応に苦しむから、そこはわかりやすくちょっと説明してもらえませんか。
片山国務大臣 今回、地方団体の一般職に任期付を入れますのは、一つは国がやっていて、国が七十六名の任期付採用が行われているんですね。それを見ますと、公認会計士の方が十四人、弁護士の方が十四人、それから民間企業、それから研究者みたいな方。それで割に効果が上がっているではないかということが一つと、地方もやってくれという要望が出てきまして、地方もやりたい、こういうことでございますので、それではこの際やろうかと。
 それで、何で五年かというと、二年や三年じゃ短過ぎるんですよ。十年じゃ長過ぎるんです。そこで、五年ぐらいでないと成果が上がらないではないかと。それから、任期付ですから来てもらって帰るということを想定しています。そういう意味で五年を一つのあれに考えたわけで、ただ、五年ですけれども、安住委員、五年が済んだらもう一遍採用すればもう五年いくんですよ。そういう制度ですからね。
 それで、今、地方がどういう人を求めているんだというと、希望を調べてみますと、ITですよ、ITの専門家。それから、いろいろなイベントを今地方団体やっていますから、イベントのプランナーみたいな人。それからやはり弁護士さんや公認会計士さんなんですよ。だから、こういう需要は私はそれなりにあるんではないかと思っております。
安住委員 何の根拠もないということはよくわかりましたが、まあ、それはいいでしょう。だから問題は、一回入ったらもう安心だという、安心に構えられるのがだめなんですよ、やはり。信賞必罰、そういうことをちゃんとやってもらわないと、この制度は逆にいったら生きないんですよ。私はそう思いますから、それは最後、同僚議員に譲ります。
 最後に、これは郵政のことですけれども、信書便法と郵政公社化の法案、これは大臣、二十六日には閣議決定をしてちゃんと出すということですね。それは、ちゃんとそれを出さなかったら政治的に責任とってもらいますよ。いかがですか。
片山国務大臣 与党の中の手続がありますが、私は二十六日が、連休前ですからね、二十六日に全法案を出したい、こう思っております。
安住委員 出さなかったら政治的責任はありますからね。それは政治的に責任とっていただきますよ。いかがですか。
片山国務大臣 私の仕事はこの四法案をまとめて出すということだ、こう思っております。ただ法制局の審査がかなり手間取ってはおりますが、全力を挙げます。
安住委員 法制局が手間取っているんじゃなくて自民党が手間取っているんだと私は思っているんだけれども、まあいいでしょう。もし出なければ、我々としても言うべきことは言わせていただきます。
 それでは、同僚議員にかわります。どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。安住議員の質問に引き続きまして、公務員制度について議論をさせていただこうと思います。
 片山大臣、今安住さんが、公務員が一生ここでやるのがいいのかどうか、そういうことも考えていかないといけないんじゃないかと。そういった意味で、公務員の働き方について、やはり政治家は方針を示していかないといけないと思っております。
 大臣と過去、いわゆる官僚と言われる人たちの超過勤務の問題について二回議論をさせていただきました。昨年の十一月八日の質疑、そしてことしの三月五日の質疑でございます。特に去年の十一月八日の質疑におきましては、平成十一年度の育児休業取得者数のうち女性が占めている割合が九九・六%であった、男性がなぜとらないのか、やはりその理由についても調べないといけないですねというような議論をさせていただいたと思っております。その中で、超過勤務の問題がやはりあるのではないか、実態調査をしないといけないんじゃないか、そういうことも議論させていただきました。うんうんとうなずいていただいております、これは確認ですので。
 そして、私は思うんですが、この実態調査、やっていかないといけないですよね。そのためにも、私これを聞いてびっくりしたんですけれども、タイムカードが今公務員は使われていない。やはり国家公務員の皆さんは、職場へ出てこられたらきちんとタイムカードを押す。それで、退省の時間もタイムカードを押す。そして、その結果をもとに実態調査をしていく。こういうことが必要だと私は考えますけれども、総務大臣、いかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 国家公務員の勤務時間の管理については、それぞれ各府省が責任を持って行うという仕組みになっております。それから、超過勤務というのは超過勤務命令を出して初めて行われるもので、タイムレコーダーは出入りだけは機械的にわかりますけれども、ただ、それによって勤務時間管理がすべてコントロールできるかというと、そうじゃないですね。超過勤務命令を受けなくても残っている方もおりますしね、仕事をしているかどうかわかりませんけれども。まあ、仕事をしている人が多いんでしょうけれども。
 だからその辺、必ずしもなじむかどうかの検討を各府省で責任を持ってやってもらうというのが我々の立場でございます。
中村(哲)委員 民間では、タイムレコーダーを使うことは当たり前です。何で公務員はできないんですか。前近代的な議論じゃないんでしょうか。人事院総裁、その点についてどのように人事院はお考えでしょうか。
中島政府特別補佐人 タイムレコーダーの導入の話でございますけれども、仮にそれを導入した場合には、在庁時間というのは把握できると思いますね。何時に入って何時にとにかく役所を出たかと。
 ただ、在庁時間数というのは把握できても、その時間の間どういうふうなことをして過ごしておったかというところがしっかり把握できない。その把握できないことに関連して、今総務大臣が、それぞれの任命権者がそれぞれの職務上の指揮監督権者をしてその部下の勤務状況について把握させる必要があるというふうにおっしゃったんじゃないかと思います。
 したがいまして、タイムレコーダーを導入することが超過勤務問題を解決する一つの非常に有力な手段であるというふうには、やはりなかなか申し上げられないんじゃないかというふうに思います。
中村(哲)委員 私は、タイムカードを導入することによって問題が解決するというふうなことを言っているわけじゃないんです。たまたま大臣がおっしゃったとおりだと思うんですね。それを導入したからといってその間どういうふうな仕事をしているのかはわからない、タイムカードではわからない、それは私も重々承知しております。しかし、今の状況であれば、何時に入って何時に出ていったかということもわからない。だから、その中でどういうふうな仕事をしているのかもよくわからない。
 タイムカードを導入することによって、まず何時に入って何時に出るかということはわかるようになります。そしてその中で、ああこいつ、いてる時間が長いな、それなら実態はどうなっているんだろう、チェックしないといけないな、何でおまえこんなに長い間省庁にいるんだ、残業命令は出ているのか、そういうことも含めて、任命権者の責任においてより勤務実態を調査していくこともできるし、把握することもできる。
 そういういわゆるチェックの前提として、手段としてタイムカードを導入した方がいいんじゃないかということを提案させていただいているわけでございますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
若松副大臣 今、中村委員からタイムカードの効用ということの御指摘でありますが、私も議員になる前は公認会計士をやっておりまして、企業を見ますと、やはりタイムカードを使っているところ、使っていないところ、いろいろあります。安住委員がいらっしゃればお聞きしたいんですけれども、恐らくNHKはタイムカードを使っていないんじゃないでしょうか。あと、例えば政治家の事務所とか。
 主にタイムカードが使われるというのは、どちらかというと生産のラインが決まっていて、それにある意味で人が定量・安定的に配置できる、そういったときに効果的でありまして、現実には、超過勤務などの場合は申請書を出してそれを上司がチェックする、こういうのが大体一般的な手続なわけですね。
 それで、今、御存じのように各省庁もフレックスタイムをやっておりまして、いわゆる時間を大体三段階に分けて出社している。それを当然その課なりの長がしっかり見ているわけなんですね。ですから、特にこういう霞が関の極めて、いわゆるホワイトカラーというか知的な職務におきましては、かつ国会の対応等も考えますと、かなり時間の勤務体制が変わるわけなんですね。そういうことを考えると、私は、タイムカードというのは、かえってそれで公務員のある意味で自由な仕事のやり方というのを縛ってしまうんではないか、そのように認識しております。
中村(哲)委員 民間ではタイムカードは使われていない、マスコミでは使われていないのじゃないかというふうなことを、今、安住議員の方にも目を向けて、声を向けて話されておりましたが、確かに民間もやっていないところはあります。銀行の友人とかに聞いても、なかなかタイムカードを押せないよね、何でかといったら、残業代きちんと払ってもらえないからね、そういうふうな議論ですね。
 労働基準法というのは何のためにあるのかということだと思うんですね。労働基準法は労働時間というもので決めているわけですね。今の若松副大臣の答弁だったら、ホワイトカラーは労働時間にとらわれずに働いた方がいいというふうにもとれるわけですよ。フレックスタイムをするのは、それはいいんですよ。フレックスタイムをするときに、タイムカードがあった方がきちんと労働時間を把握できるじゃないですか。労働基準法は要らないんですか。それは、公務員は労働基準法の適用外でしょう。しかし、労働基準法の趣旨をきちんと反映して国家公務員法というのはできているんでしょう。そんな無責任な答弁ではだめですよ。ホワイトカラーは仕事を時間でやるんじゃない、本当にそれでいいんですか。
若松副大臣 御存じのように、国家公務員はこの労働基準法の適用外で、地方公務員は適用となっております。
 私の申し上げた趣旨は、かつ、委員の問題意識にも立ち返りますと、いわゆる超過勤務、これをまず減らすという委員の問題意識も恐らくあるんではないかと思っております。では、それぞれの公務員がいい仕事をしようとする場合、それは自主的に残る方もいるでしょうし、いわゆる上司から命令されて残る方もいらっしゃるでしょう。これは千差万別なんですね。そういったことを今議論しているわけであります。
 そこで、では、タイムカードを導入することの意義ということでありますが、これは先ほど大臣からも、また中島人事院総裁からもお話があったとおりでありまして、私は、客観的に、やはりこのタイムカードを導入することの大きな意義というのは見出しがたい。それは、別に無責任に言っているわけではありませんで、私なりの今までの経験なり、現状を見ての判断というふうに考えております。
中村(哲)委員 私も、質問取りにいらっしゃる官僚の方たちとお話しさせていただきます。きのうの方たちは比較的早く帰っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいました。私も、いつも申しますけれども、先週家族と一緒に何回夕食をおとりになりましたかということは常に聞かせていただいております。
 これは、十一月八日の片山大臣との議論の中で、この国というものが父親の役割、古い意味での父性の復権という意味じゃなくて、やはり現代家庭においても父親の役割というものがいろいろな問題、いろいろな局面において大切になってきている中で、官僚の諸君にもきちんと家庭の味わいと申しますか、そういう家庭生活をきちんと送らせてやるということがこれは政治家の役割だから考えているわけでございます。
 タイムカードを導入するのは余り意味のないことだというふうな趣旨の副大臣の御答弁でした。だから、その合理的な理由を私は教えていただきたいわけですよ。入庁の時間、退庁の時間、そういうことがわかって初めて実態というものは把握できるんじゃないでしょうか。実態調査というものをきちんとしていくつもりならば、その大前提として、勤務時間の把握というのが私は必要だと思います。片山大臣、いかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 若松副大臣はタイムレコーダーの効用というのをすべて否定したわけではないんですよ。ただ、公務員に入れても物すごい効用があるかどうかについてはやや疑問だ、こういうことなんですね。
 というのは、今フレックスタイムというのがはやってきていますね。それから、特に国家公務員の場合には、かなり夜仕事をしますね、国会や予算の関係があるものですから。そうなると、朝はどうしても遅くなるんですよ。今、中村委員が言われるように、家庭内の団らんだとか、晩飯をみんな一緒に食べるとか、朝飯もそろって食べるとか、そういうことからいうと、夜遅くまでやったら朝遅くなりますよ。だから、それを一律に、何時登庁、何時退庁ということではなかなか律せられないし、それから超過勤務命令がなくてもいろいろな都合で残っている人もかなりおるわけです。いろいろなことがありますので、私は、それぞれの人事管理権者がしっかりとした勤務時間の管理をやればいいと。
 そこで、自分のところはタイムレコーダーをぜひやりたい、そういうところがあったら、各府省の中の人事管理権者の判断で導入されることはいささかも、それはそれで結構ではないか、こういうふうに私は思っておりますので、それぞれの任命権者なり人事管理権者が勤務時間管理に責任を持つ、こういうことでございます。
中村(哲)委員 大臣、それは現場に責任を転嫁していると僕は思うんですよ。政治家が責任を持って方針を決めなければ、こういう問題は進まないんですよ。大臣、この間、十一月の質疑、三月の質疑をさせていただいていて、なかなか難しいですねという答弁ばかりじゃないですか。やはり政治家がリーダーシップをとって、官僚の働き方、公務員の働き方についてきちんと決めていく、環境を整えていくということが大事なんじゃないですか。人事管理権者というふうに任すのもいいんですけれども、それは私は政治家としてはあるべき姿ではないと思います。
 そもそも国会の議論というものが政治家同士の議論でしていかないといけないということもあって、質問取りそれ自体の意味というものもまた考えていかないとという時代に入ってきていると思います。
 そして、きのうも私、公務員の人から匿名のメールをいただきました。二十三時、一部の人の終電に及ぶことも多いです。下っ端も含めてほとんどの関係職員が残されているわけです。それでいて質問が入らないことも多い。しかし残業代はわずかな割合でしか出ません。これは労働基準法違反ではないでしょうか。職員の家庭と健康を破壊する実に非人間的な仕打ちであると感じています。職員の疲労、光熱費やタクシー代も考えたら国費の膨大なむだになっているでしょう。何とかならないものでしょうか。こういう意見、入っているんですよ。こういうふうなことに関して、政治家が責任を持っていくかどうか。
 先ほど安住さんが申しましたけれども、優秀な人間がこの世界にやってくるのかどうか、公務員の世界を選ぶのかどうか、そういうふうな局面に入ってきているわけですよ。危機感を持って政治家が決定するかどうか、それが問われている時代ですよ。大臣、政治的な決断をお願いいたします。
片山国務大臣 私が申し上げたのは、個々の職員の勤務時間管理は、例えば課長さんが責任を持つとか局長さんがちゃんと見るとかということを申し上げたんで、国家公務員の、中央官庁の役所の人にできるだけ超過勤務をさせないようにするというのは、ある意味ではこれは政治家の仕事なんですよ。だから、閣議でも超過勤務はできるだけしないようにしようと何度も申し合わせをしているんですが、現実はなかなかそうはいかないですね、国会開会中の質問取りその他あるいは予算の折衝や法制局の審査や。
 だから、そこはある程度、決まった仕事ではありませんから、頭脳労働で非定型的な仕事ですから、しようがないのかな、こういうふうに私は思っておりますが、できるだけ超過勤務は少なくしようという努力は政府としてもしておりますし、我々もそういうことを地方団体にもお願いしておりますから、ぜひそこは御理解を賜りたいと思います。
中村(哲)委員 閣僚懇でぜひタイムカードのことも提案してください。それで皆さんが難しいですねということになったらまた考えたらいいですけれども、そのときには合理的な理由というものをやはり考えないといけないと思うんですよ、タイムカード導入を拒むのであれば。
 質問取りも、これを官僚の皆さんがやるということに関しては、私は考えてもいいと思いますよ。これは政府の方針で変えられるでしょう。政務官の皆さんがやってもいいじゃないですか。質問取りなしで議論するというのも一つのあり方だと思いますよ。それから、国会の審議全体のあり方、また委員会での理事会のあり方にもかかわってくるでしょうけれども、あらかじめもうちょっとゆとりを持って審議の日程を組んでいく。例えばイギリスなんかはそのようにやっているわけですよね。そういうことも含めて考えていった方がいいんじゃないか。
 日本が日本という国として、いろいろ昔からの文化、そういうのも踏まえた日本に合った制度をやはり考えていくべきじゃないかと私は思いますけれども、大臣、閣僚懇におきましてタイムカードの話をするかどうか、そのことも含めてもう一度決意をお聞かせください。
片山国務大臣 国会の委員会や本会議の持ち方、あるいは質問の通告のあり方、これについては、大いに国会の中で各党各会派で御議論いただいて、いい方向を出していただければ大変結構だと思っております。タイムレコーダーの導入だけじゃなくて、勤務時間管理、超過勤務、そのありようについては、しかるべきときに閣僚懇で話題にいたします。
中村(哲)委員 もう時間がないので、法案の審査もちょっとやらなくてはいけないので、議論をさせていただきます。
 私の地元の天理市で、試験採用のときに市長がみずから成績を改ざんしたというようなことで、有罪判決も出ている。うなずいておられる政務官もいらっしゃいます。
 こういうふうなことで、採用そのもの、地方自治体による採用というものに、やはり公正性とか中立性、そういうものを確保していくような手段が大切だと思うんですね。特に、任期付採用の場合は選考採用です。先ほど大臣がおっしゃったようなメリットシステムにおいては、基本的には競争試験で採用していくということですよね。しかし、この選考採用ということになると、ある意味それと相当するような中立性とか公正性とかが採用過程においては確保されないといけないと思っております。
 特に、今回の法案で一番問題があるなと思うのが、人事委員会がないような地方自治体の場合であるときに、首長が採用すると言ったらもう採用されてしまう、第三者のチェックが及ばないというところにあると思います。
 私は、公平委員会を強化するとか人事委員会のない地方自治体はこの制度を除外する、そういうふうなことがあってもいいんじゃないかなと思います。何か第三者のチェックが及ぶような制度にしていくためにも、このようなことを検討する必要があるかと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
若松副大臣 今、公平委員会のあり方についてのお尋ねと思います。
 先ほどの人事委員会の設置というのは、大体、都道府県、指定都市、こういった大きい自治体になされておりまして、それ以外の自治体で、いわゆる市町村で公平委員会を設置しているというのが全国で千二百八十八、こういう状況でありますが、この公平委員会という機能は、どちらかというと、人事のいわゆる事後的なチェックというか救済機関、こういった機能を今役割として有しているわけでありまして、今、この公平委員会が採用についてのいわゆるチェックをする、そのような機能は実は与えられていないわけでありますね。
 いずれにいたしましても、公平委員会のあり方につきましては、平成十一年四月の地方公務員制度調査研究会報告におきまして、公平委員会の所掌事務の範囲の拡大、この検討について報告されているところでありまして、今後検討が必要な課題である、そのように認識しております。
 一方、この法律案でありますが、地方分権が進む中で、各地方公共団体が、高度化、専門化するそれぞれの行政ニーズに応じて外部の専門的な人材を有効に活用できるようにするためのものでありまして、人事委員会がないことのみをもって一定規模以下の地方公共団体を対象から排除することは適当ではなく、原案となったということも御理解いただきたいと思っております。
中村(哲)委員 私、だから副大臣の答弁は嫌なんですね。もうちょっと自分の言葉でしゃべってくださいよ。片山大臣はいつも書類を見ないでお話しされますよね。だから、そこが全然違うわけですよ。
 もう時間が参りましたからこれで終わりますけれども、もうちょっと誠実な議論をしていただくようお願い申し上げまして、たくさん質問は積み残しましたが、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 本題に入る前に、私、一回生でありますので、これまでの経緯、不案内なところがありますので、まず、これまでの国が取り組んできた官民交流などについて、改めてお聞きしていきたいと思います。
 昨今の行政の複雑・高度化に的確に対応しまして、人事管理の閉鎖性を是正するなどして国民に対して良質な行政サービスを提供していくためには、有為な人材を公務に確保していく、これが必要でありまして、その一環として、この官民の人的交流を積極的に推進することが重要である、そう考えております。
 また一方で、この平成十一年三月の公務員制度調査会の答申におきましては、「行政部外から高い専門性を有する人材を導入するための任期付任用の活用等を含めた中途採用の拡大、広い視野を持った人材育成等のための官民交流の推進」が指摘されているところであります。
 最近、官民の人事交流法や任期付職員法の制定など、官民の人的交流を推進するための枠組みがいろいろ整備されております、私が国会に来る前でありますけれども。これらの制度は、いずれも人事院の意見の申し出を受けて制度化されたものと理解しております。
 そこで、まず最初に、官民の人的交流の意義について、その基本的な認識及び官民交流の実態とその評価について、総裁にお尋ねいたしたいと思います。
中島政府特別補佐人 国会の御審議を煩わせまして、官民人事交流法、任期付職員の採用法という二つの法律を成立させていただきました。この法案の審議の過程でもいろいろ御議論ございまして、御指摘ございました。
 このねらいとするところは、官民人事交流法は、やはり民間の手法、効率性とかあるいは弾力性とか機動性、そういう手法というものを学ぼうじゃないか、そしてまた民間の人たちが持っておる価値観というものを官の方も取り入れて、その価値観で物を判断していくように公務員もしようじゃないかということがあったというふうに思います。
 そして、任期付職員任用法の方は、時代の変化に伴いましていろいろ高度な、複雑な行政課題に対応しなきゃならない、その対応するに必要な職員というのが公務の組織の中で得られないというときには、民間の人たちでそういう能力、才能を持っておる人たちを取り入れていこうということで、任期付職員任用法というものを提案し、成立させていただきました。
 これらの法律に基づきまして、現在どのようになっておるかといいますと、任期付職員の任用法で採用された職員が、弁護士とか公認会計士とか大学教授とかITの専門家など、七十六人が現在採用されております。それから、官民人事交流法に基づいて現在公務の世界で働いておるいわゆる交流採用の職員が四十五名、そして、公務員が民間企業に派遣されまして民間企業で働いている人たちが現在十名おるということでございます。
 制度が始まったばかりでございますので、これから、そういう制度の意義というものを関係省庁、関係公務員の方によく理解していただきまして、さらにこの拡充というものに努めていかなきゃならない、そして、公務員の世界が民間的な手法、民間的な価値観というものに基づいて仕事をしていくように努めたいというふうに思います。
黄川田委員 始まったばかりで、その評価というものはこれからだということでありますけれども、いずれ、高い評価ができるように、人事院からも的確な意見を出していただきたいと思っております。
 そしてまた、今般の公務員制度改革においては、官民の人的交流を積極的に推進するために、官民人事交流法について、民間企業の従業員としての地位の併有、身分の併有を可能とする方向での制度改正を行うこと、さらには、人事院の事前承認、協議手続等を見直すことなどが検討されていると聞いております。
 私も、官民の人事交流を一層推進していく、この必要性は十二分に理解しておるつもりでありますけれども、また一方、これらの問題については、現行制度において、なぜ身分併有が禁止されているのか、そして、なぜ人事院による事前手続が定められているのか、こういう仕組みが設けられた趣旨を踏まえて対応する必要があると思っております。
 そこで、これらの疑問も踏まえまして、官民人事交流法及び任期付職員法における衆参関連委員会の附帯決議にもあるように、公務の公正性の確保の観点などに十分留意する必要があると思っておりますけれども、今回の公務員制度改革大綱の策定に当たりまして、このような点についてどのような検討が行われたのでしょうか、内閣官房の見解を求めておきたいと思います。
西村政府参考人 お答えいたします。
 昨年の十二月に政府で決定いたしました公務員制度改革大綱におきましては、官民の人事交流を積極的に推進するために、過度に厳格な官民区分という考え方での諸規制とか制約というものを見直しまして、民間企業の従業員としての地位の併有、身分の併有を可能とする方向での制度改正、それから人事院の事前承認、協議手続等の見直しを行うということを決めたところでございます。
 もちろん、大綱の策定に当たりましては、現行制度の制定の経緯、それから公務の公正性の確保の観点も留意をして検討を行いまして、これらの改革の基本的な方針も決定しております。
 すなわち、民間企業からの不当な影響力の行使の制限をするという措置、また、あらかじめ明確な基準を設定するということ、あるいは情実採用の排除等の観点から人事院が適切に関与を行うということなど、公務の公正性を確保するための措置もあわせて講じることを大綱で決めております。
 これを具体的な制度としていくに当たりましては、国会の附帯決議の趣旨等を踏まえて、公正な公務の運営に疑念を招くことがないように十分留意をしてまいりたいと考えております。
黄川田委員 お話のあったように、公務の公正性を確保していくこと、これが重要な課題でありまして、附帯決議にあることをしっかりと受けとめておいていただきたいと思っておりますし、そしてまた、今後の公務員制度改革の具体化に当たりましては、人事院の意見も尊重しまして慎重に検討していただきたいと思っております。
 それでは、本題の地方公務員の任期付採用の質疑に入っていきたいと思っております。
 厳しい経済情勢の中で、我が国の行政においては、財政赤字を初めとして困難な課題が山積しております。これは地方行政においてもこの状況は全く同じでありまして、特に、地方分権が一層進められる昨今でありますので、効果的で効率的な行政運営に向けた構造改革は避けて通れないものであります。こうした中にあって、住民の求めるオープンで質の高い行政の実現に向けて政策の企画立案能力、これを向上させるべく、地方公共団体の職員についても、内部の人材のみならず、民間企業などの外部の有能な人材を積極的に確保していく、これまた大事なことであります。
 実は私の地元の県庁でも、一例として、任期付採用ではありませんけれども、先般のペイオフ対策上、公金管理のため、損保会社から財務管理の専門家を中途採用しておるところでもあります。
 従来の公務員制度は、地方も国と同様、新規学卒者等を内部で育成しまして、その人的資源や能力の範囲内で対応する傾向が強く、官民の人的交流には余り積極的ではなかったという実態があると思っております。しかしながら、地方公共団体にあっても、もっと官民の人事交流が促進される、それが必要とされる時代になっております。
 そこで、総務大臣にお尋ねいたしたいと思います。
 まず、国家公務員においては、研究職については平成九年に、それ以外の一般職全体については平成十二年に任期付採用制度が導入されておりますけれども、地方公務員については、平成十二年に研究職を対象とした任期付採用制度が設けられたのみであります。
 こうした中にあって、このたび、地方公共団体の研究職以外の一般職全体を対象とした法案を提出するに至ったわけでありますけれども、その経緯と趣旨について、そしてまた、国家公務員の一般職の任期付採用制度よりちょっと制度化がおくれておりますけれども、このおくれた経緯も含めて、お尋ねいたしたいと思います。
片山国務大臣 地方行政もだんだん複雑化、高度化、専門化してまいりまして、やはり専門的な知識、経験、能力が必要になってきた。こういう背景の中で、平成十二年の秋に、国家公務員の研究職を除く一般職全部のこういう任期付採用の制度ができましたので、地方団体もそれがどういう状況かと注目しておりましたところ、先ほどお話がありましたように、七十六名の任期付採用の実態が出てきた、こういうこともありますし、地方団体も、ぜひこういう制度をつくってほしい、こういうことを地方六団体を中心に要望がございましたので、それじゃ、研究職もやっているし、研究職以外の一般職もそれに踏み切ろうか、こういうことでございます。
 それは選考か試験採用かというのはあるんですけれども、この任期付は来ていただくんですね、それぞれの専門的な知識や能力や経験があるからぜひ来ていただきたい、こういう方でございますので、基本的には選考で来ていただく、こういうことでございます。
 先ほども言いましたが、どういう要望が多いかといいましたら、ITの専門家、イベントのプランナー等のそういう経験のある人、それからやはり訴訟関係のいろいろな仕事、ということは法律の専門家、弁護士さん、こういうことになるのでしょうか、あるいは会計の関係でいえば公認会計士さん、こういう方の需要があると私は聞いております。
黄川田委員 大臣から答弁されましたけれども、私、いつも言うのですけれども、地方自治法で制度化されている自治体でありますが、三百五十万にもなんなんとする横浜市であるとか、二百人にも満たない村もあると聞いております。でありますので、国と同じぐらいの自治体もあれば、本当に集落一つが村というようなところもありまして、欲するところ、必要とするところはさまざまだと思うのですね。ですから、こういう法案は、そういういろいろなニーズに対応する形で生かされればと思っているわけなんであります。
 そこで、どういうものに活用されるかということで、弁護士さんとか公認会計士さん、あるいはまた、時代の要請に応じたIT関連というような形で、どちらかというと、大都市あるいは都道府県ということから始まるんではないかと思っておりますけれども。定員数の枠内で、専門性が高いとはいえ、自分たちの職場に外部から任用されることへの不安感といいますか、任期付採用に対して、地方公務員の意識は、国家公務員に比べて、なかなか高くはないと思っております。そこで、外部から任用されるということへの自分たちの職場の不安感であるとか、あるいは職場の士気の低下、こういうことが懸念されるところもあると思いますけれども、その対応策について総務省にお尋ねいたしたいと思います。
若松副大臣 今の委員の御懸念でありますが、確かに、地方公務員の皆さん、一生懸命働いていらっしゃるわけですが、今、これだけ時代の変化が激しい、かつ、それに必要な人材がなかなか内部から出ないということで、任期付採用をどんどん採用してきた場合には、当然、やはりバランスの問題から、既存の地方公務員の皆さんはいろいろと複雑な思いに駆られると思います。
 そういうことを配慮しながらこの任期付採用の募集というものをしっかりしなければいけないと考えておりまして、この法律の適用に当たっては、各地方公共団体がこの法の趣旨をしっかりと踏まえていただいて、職場の士気の低下を招かないようにしっかりやっていただく。その適切な対処をこちらは期待しているところでありまして、やはりバランス、既存の地方公務員に対する刺激と、時代に応じた高度な専門的な知識を有する人との調和、それが大事ではないかと考えております。
黄川田委員 そしてまた、法案の第六条では、任命権者は、採用の趣旨に反しない限り、その任期付職員を、任期中他の職に任用できるということにしております。その場合、人事委員会の承認を得なければならないとしておりますけれども、この人事委員会について、先ほどちょっと答弁があったみたいでありますけれども、この人事委員会の設置要件と設置状況、これはどうなっておるんでしょうか。そしてまた、人事委員会が設置されていない場合は、これはどのように対処するのでしょうか。あわせてお尋ねいたしたいと思います。
荒木政府参考人 人事委員会の設置状況等についてお答えを申し上げます。
 まず、制度的な面につきまして御説明申し上げますと、地方公務員法の規定によりますと、都道府県及び指定都市につきましては、人事委員会が必置でございます。また、人口十五万人以上の市及び特別区につきましては、人事委員会か公平委員会かいずれかを選択して置く。また、人口十五万人未満の市、町、村につきましては公平委員会を、いずれも条例で置くというようになっております。平成十二年四月一日現在で見ますと、当然でございますが、都道府県と政令指定市には置かれております。また、特別区と和歌山市、熊本市に人事委員会が設置されているところでございます。
 次に、法案の第六条の規定によります他の職への任用につきましては、人事委員会を置いていない地方団体におきましては任命権者の判断で行うこととなるわけでありますが、その判断に当たりましては、採用時に占めていた特定の業務と同一の業務を行うことをその職務の主たる内容とする他の職に任用する場合、こういったような法の要件が決められておりますので、これを踏まえて、任命権者において適切に対処することが必要であると考えております。
 この点につきましては、今後、法の施行に当たりまして、各地方団体によく周知もしまして、地方団体において適切に対応が図られるようにしてまいりたいと考えております。
黄川田委員 先ほど副大臣から、公平委員会のあり方といいますか、ちょっと検討しなきゃいけないところもあるんじゃないのか、その仕事の中身も変えていく必要があるんじゃないのかと。あるいはまた、現実に、職員の人事に関して、申し出があったところについて裁定したりするというところなんでしょうけれども、実際の活動といいますか、その実態も、余り忙しくないのではないかという部分とか、ちょっと感じられるところもありまして、まあ、そういう争議がなければ忙しくないということで、それでいいんでありましょうけれども、これに関して、公平委員会がその部分を対応するというような考え方はないわけでありますか。任命権者が決めるということで、その判断するということになる、今お話しされましたけれども。
荒木政府参考人 公平委員会が、人事委員会が行います承認等の事務を行うようにすべきではないかということでございますが、これにつきましては、現在の地方公務員法におきましてやはり所掌が異なっておりまして、人事委員会につきましては、採用等につきましても所掌することになっておりますが、公平委員会は、事後的に、職員の勤務条件に係る措置の要求でありますとか不服申し立て等、いわゆる司法的な、裁定的な事務を行うことになっております。
 この点につきましては、今回の法では、あくまでも現行制度の中での対応ということで、人事委員会が置かれている団体につきましては、承認等について国の場合の人事院と同じような仕組みにしてございますが、公平委員会しかない団体につきましては、任命権者において厳格に、公正に採用等の事務を行っていただくということで対処していただくように考えております。
黄川田委員 制度上、公平委員会の役割というのが、裁定が主ということでありますし、そのとおりなんでしょうし、今回の期限つき任用に関しても、大都市、都道府県からという形で動き始めると思いますけれども。地方分権が一層進んでくる中で、地方にあってもいろいろな人材を活用したいという場面が出てくると思いますので、将来的に公平委員会のあり方もいろいろと議論していただきたいと思っております。この辺は要望でありますので。
 それでは、残り時間が少なくなってきましたので、今回の法案と国家公務員の任期付職員法の相違点が、もしあれば、主にどこにあるのかお伺いいたしたいと思います。そしてまた、国の場合は一昨年十一月に施行されておりまして、人数何人ということはお答えいただきましたけれども、実施して主に何か問題点があるか、その問題点があったらこそ、それを改善してこの法案に改善策を反映させて今回提出したとか、そういうことがあれば、あわせてお尋ねいたしたいと思うんですが。
荒木政府参考人 今回の法案と国の制度との相違点でございますが、まず、本法案では、国の制度と異なりまして、地方公務員の任期付職員の採用の基本的な枠組みを定めるものでございまして、各地方公共団体は、条例で定めるところによりまして、任期付職員の採用を行うということになるものでございます。したがいまして、法は根拠を与えるということで、各地方団体は、それぞれ自主的判断で条例を制定して、任期付職員の採用を行うということになるものでございます。
 そのほか、相違点としましては、法で定める要件に準ずる場合の要件を条例にゆだねている点、あるいは、採用等を行う場合に、ただいま申し上げましたように、人事委員会を置かない地方公共団体におきましては承認の手続等がないという点、また、給与につきましては条例で定めるということにしている点などが主な相違点かと思います。
 次に、国におきましては、平成十四年四月一日現在、十四府省で七十六名の方が任期付職員として採用されているところでございますが、まだ法施行後一年余りという段階でございますので、今後の推移を見守る必要があろうかと考えております。いずれにしましても、各府省においてこの法律が一層活用されるように要請が行われているところというふうに承っております。
 いずれにしましても、今回のこの法律を制定いたしますと、各地方公共団体におきましても、国と同様に、専門化、高度化する行政ニーズに対応するために外部の優秀な人材を有効に活用できることになるものでございますので、私どもとしては、この法律の一日も早い成立をと考えているところでございます。
黄川田委員 この法律が実際に運用されるためにも、外部の有能な人材が安心して働ける職場をつくらなきゃいけないということで、その能力や期待されている業務内容にふさわしい処遇を行う必要があるということであります。
 そこで、その高い専門性を有する任期付職員の給与体系をどのようにまず定めるのでしょうか。そしてまた、法案の第三条第二項に基づいて、高度とまではいかないが一定の専門的な知識経験を有する者を採用する場合には、その任期付職員の給与体系はどうなるんでしょうか。それぞれお尋ねいたしたいと思います。
荒木政府参考人 法案第三条第一項に基づいて採用されます任期付職員、いわゆる特定任期付職員の給与につきましては、各地方公共団体の条例で定めるところにより支給されるものでございますが、高度の専門的な知識経験等を活用して遂行することになる業務にふさわしい給与を確保することが必要でありますことから、国の制度に準じまして、特別の給料表を設定して、適切に格付を行うことが適当である、このように考えております。
 また、法案の第三条第二項に基づいて採用されます任期付職員の給与につきましては、各地方公共団体が現行の給与条例で定めております給料表を適用した上で、経験年数等を適切に反映させるなど、弾力的に決定していただくことが適当であろうと考えております。
黄川田委員 それでは、最後の質問であります。
 地方分権が進む、あるいは市町村合併が進んでいくということの中にあって、この法案による制度が地方公共団体に活用されまして、その結果、部内の組織に対しどのような効果が期待されるのか、大臣の期待されるところをお伺いいたしたいと思います。
片山国務大臣 この任期付の主たるねらいは、先ほど言いましたが、地方行政の専門化、高度化、複雑化に対応する有為なる人材、能力ある人に入ってもらいたい、こういうわけで、来たらもう即、戦力になりますよね、そのまま。ITでも訴訟関係でも会計の方でも即、戦力になる。
 それとやはり、民間から来られる方が大部分でしょうから、そういう意味では、民間的な処理の仕方、発想、考え方を、地方団体の職員に影響を与える、感化する。こういう意味で、職場全体の活性化、地方団体全体の物事の処理の活性化につながっていくのではなかろうか、私はこういうふうに考えて、ぜひそういうふうになってもらいたいと期待いたしております。
黄川田委員 いつも時間を超過しておりますので、きょうは二、三分早目に終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章です。
 これまで、首長や自治体が、民間の知恵や力をかりる、民間活力導入ということで、第三セクターをつくったり開発仕事を推進してきたという経験がありますが、それが失敗して、自治体財政を破局に導く重大な要因の一つになってきたことは周知のことです。
 例えば、青森県の大鰐町では、スキー場を経営する町の第三セクターがバブル期にリゾート開発に失敗して巨額の負債を抱え込む、一昨年の末で負債額は六十二億円、一般会計五十三億円の一・二倍、財政再建団体の予備軍になる、こういう状況まで生まれています。
 そこで、今回の任期付職員法案ですが、同様に、外部の知恵、民間の人材を自治体内に任用して事業を推進するという性格のものだろうと思いますが、率直にお聞きしますが、こういう今までの苦い教訓、今までの二の舞、一層開発の推進や財政破綻などを引き起こす流れを促進することになるんじゃないかという危惧を持っております。この点はどうお考えでしょうか。
若松副大臣 今、委員は恐らくミクロ的な観点からの指摘をされたと思うんですが、御存じのように、日本の経済が非常に困難になっているのは、いわゆる日本の終身雇用という雇用体系のもとから、どちらかというとゼネラリストが多くなってきたと。ところが、時代は非常に変化が激しく、かつ専門的なニーズが高まってきた、それに対応できないというところでの日本の構造改革が求められている、これは実は公務員の世界でも同じでありまして、こういった観点から、この任期付職員、このような制度というのは、やはり即戦力という観点から、私は時代のニーズではないかと思っております。
 そういう意味で、この法律が成立することによりまして、この任期付職員の活用ということで、これからのさまざまな住民の高度なニーズに対応できる、行政能力の強化につながるのではないかと私は期待しておりまして、ぜひとも、この外部の人材の活用は地方公共団体にとって大変有益なものと考えております。
春名委員 外部の人材の活用が有意義かどうかは別にして、その使い方を間違えますと大変なことになるので、そういう角度から議論をしているわけなんです。
 東京新聞の去年の十一月二十四日付によりますと、第三セクターの四百六十三社が債務超過と、惨たんたる状況を伝えています。この中で、旧自治省自身が第三セクター運営の指針を出さねばならない、こういう事態になりました。
 よく調べてみると、重大な要因は、首長が、外部や民間のものも導入する、そういう手法を取り入れながら、銀行、コンサルタント会社、ゼネコンなどと組んで、本来の自治体の仕事から率直に言って外れて開発事業を推進したという点は否めないと思うんですね。自治体に営利団体の手法を持ち込んでいく。
 もう一回同じことを聞きますが、今回の法案はこうした悲惨な事態を加速するものにはならないとはっきり言えるかどうか、その根拠がどこにあるか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
荒木政府参考人 ただいま若松副大臣からも御答弁申し上げましたように、今回のこの法案では、地方公共団体におきましても、国におけると同様に、部内で直ちに確保できない人材を公務部外から登用いたしまして、その専門的能力等を即戦力として、その団体の行政運営に活用しようというものでございます。
 任期付職員の活用は、こうした行政の円滑な運営に資するために行われるものでございまして、当然その中では、コストの意識や柔軟な発想力を持って、官にはない民間の知恵でありますとか専門的な知識、そういったものを官の世界に導入しようというものでございますので、私どもは、こういった制度によりまして、むしろコスト意識等について職員も大いに啓発されて、自治体の経営につきまして効率的な、能率的なものが行われるようになるように期待をしているところでございます。
 したがいまして、今委員からいろいろ御懸念の点が御指摘ございましたが、私どもとしましては、この制度を適切に運用することによりますと、むしろ逆の、財政的にもいい結果につながることが期待できるのではないか、このように思っているところでございます。
春名委員 その専門能力の使い方が問題だと言っているわけなんです。
 といいますのは、既に前例がありまして、一九八七年に例のリゾート法ができまして、総合保養地域整備法ができて、各自治体が競って次々と大規模リゾート基地構想を打ち出して推進しましたよね、御存じのとおり。シーガイアを見るまでもなく、大破綻を招いて、今日の財政破綻に大きな影響を与えたわけです。
 ここに、八七年の法が制定されて一年後に出された論文があります。八八年八月一日付の日経地域情報、第二ラウンドを迎えたリゾート開発という論文があるんですが、これを読んでみますと、何て書いてあるかというと、国際級の大規模リゾート基地をつくるには、従来型の観光地づくりとは異なる新しい発想が欠かせない、各都道府県では民間の新鮮なアイデアを生かそうと、構想づくりに外部の専門家を活用するケースが目立つというふうに分析をしまして、四十七都道府県のうち、外部コンサルタントの知恵をかりてリゾート構想を作成したのは全体の三分の二に当たる三十二府県であるというふうに報じておるわけです。
 要するに、短期集中でこういう開発の事業を推進したそのかなめというのは、まさに外部の専門的な能力を生かす、この論文によりますと、三菱総研や日本交通公社などが請け負って構想をつくった例が数が多いというふうに載っておりますけれども、こういう苦い教訓があるわけですね。自治体の財政にとっては大変な事態をもたらしたわけです。
 したがって、そうはならないということの根拠を明確にしないと私はまずいと思うんですね。同じ轍を繰り返す危険性があるんじゃないか。先ほどから全く答弁がすれ違っているので、大臣はこの点ではどう思われますか。
片山国務大臣 バブルのときは、あのころは何でもやれという攻めの時代でしたよね。今はその反省から、そうではなくて、むしろ攻めより守りというのか、しっかり改革をやってむだをなくそう、こういう時代に私は変わってきたと思います。
 いずれにせよ、その外部の人を登用して働かせるのは首長なんですよ。首長の責任なんですよ、だれを採ってどう働かせるか。その首長がどうやったかは、次の選挙で住民が審判を下すんですよ。私はそれで十分だ、こういうふうに思っております。
春名委員 その首長の権限といいますか、裁量が随分広がってきているというのが今の特徴でして、昨年の臨時国会でも議論になりました住民訴訟法では、長個人は問われない、こういう仕組みになりましたし、今度の場合は、後で議論しますけれども、人事委員会がないところはノーチェックという事態があるわけですね。
 こういう危険性がある中で、私は、任用には慎重にも慎重、本当に慎重さの上にも慎重さが要ると思うんですね。ある意味、国家公務員以上に厳しくやらないといけないと私は思うんです。任用に当たってのチェックは一体どうするんでしょうか。
荒木政府参考人 地方公務員の任期付職員の採用に当たりましては、まず人事委員会が設置されておる団体につきましては国におけると同様、人事院の承認に係らしめるということになりますが、恐らく委員の御懸念は、人事委員会がない団体の方にあるかと思います。
 この人事委員会がない団体につきましては、承認の手続というものはないわけでございますが、これにつきましては、任命権者におきまして、国におきましても人事院の規則二三―〇というものがございますが、その第二条で、任期付職員の採用の公正の確保に関する規定がございます。これは、任命権者が遵守すべきことを決めてあるわけでございますが、地方の任期付職員の採用も国に準じた要件で採用されるものでございますので、当然、この第二条の規定、考え方は、すべての地方団体に適用されるということでございます。
 任命権者におきましては、すべての首長さん、この条例に基づいて採用する知事なり市町村長の方は、この選考される者について、従事させようとする業務に必要とされる専門的な知識、またはそのすぐれた識見の有無、これにつきまして、その者、採用しようとする方の資格でありますとか経歴、実務の経験、こういった面につきましては客観的なデータをもとに経歴の評定等を行っていただく、行うことが必要であると。
 このような客観的な方法をもって人事を行うということで、しかも、この制度制定に当たりましては、先ほども申し上げましたとおり、条例を設ける必要が各団体ございます。
 当然、地方議会でこういった条例を制定する際には、どのような場合に行うのか、条例を制定する以上はその必要性があるということで、恐らく首長が提案をすることになると思いますが、そういった地方議会の場での議論。さらには、近年の情報公開ということで、住民への情報の提供というものが当然各団体において行われることになると思いますが、私どもも、そういった住民への情報の提供、公開等につきましては、この法の施行に当たりまして各地方団体にも適切に助言をしてまいりたい、このように考えております。
 このような対応によって、各団体においては適切な採用をしていただけるものと考えております。
春名委員 るる言われるんですけれども、短くしてくださいね、時間がないんですから。
 国家公務員の任期付職員の採用については、人事院の承認が必要です。一昨年の十一月十六日、内閣委員会で、先ほどお出になっていた中島総裁などが出てきてどういうチェックをするかということを明言しております。
 第一、従事させようとする業務というものに専門的な知識が必要であるかどうか、採用しようとしている人間がそれにふさわしいかどうか、これが第一。第二、その任期が担当する業務から見て期間が妥当なものかどうか、これが第二。第三、情実採用とか特定の団体とか特定の力というものが作用して、採用というものが公正に行われないようなことがあってはならないので、そういう面もチェックする、こういうふうに言っています。
 公務の公平性それから中立性、これを確保するためには地方公務員の場合も最低限こうしたチェックが私は必要だと思いますが、これはどうするんですか。
荒木政府参考人 ただいま委員から御指摘ありました三つの項目にわたるチェックにつきましては、私どもとしましては、地方公共団体におきましても当然これはそれに倣って行うべきものであると考えておりまして、人事委員会が置かれる団体におきましては、その承認に当たりまして、そういった観点からの厳正なチェックを行うということにいたしたいと考えております。
 また、人事委員会を置かない地方公共団体につきましては、採用に関する事務を所掌する機関がないわけでございますので、公平委員会しかありませんので承認ということはできないわけでございますが、これらの団体におきましても、制度の趣旨に合った適正な運用が図られますように、任命権者は、客観的な判定方法によりまして厳正に検証すべき事項、こういったものを具体的に決めまして、それに基づくチェックを行いまして、公正に採用が行われるように私どもとしましては地方公共団体に助言してまいりたいと考えております。
春名委員 何の保証もないんですね。
 三千以上の自治体は人事委員会がないわけですよ。圧倒的にないんです。三つのチェックをする、できればそういうふうにしてもらいたいというだけの話。チェックする機関がないんですよ。国家公務員がやったから地方公務員もやったらいいという、そんな単純な話にはならないです、これは。
 もうちょっと詳しく聞きます。
 国家公務員の場合は、人事院規則二三―〇第二条、性別その他選考される者の属性を基準とすることなく、及び情実人事を求める圧力または働きかけその他の不当な影響を受けることなく、選考される者について従事させようとする業務に必要とされる専門的な知識またはすぐれた識見の有無をその者の資格、経歴、実務の経験等に基づいて経歴評定その他客観的な判定方法により公正に検証しなければならない、人事院規則で明確にこれを定める。そして、それを保障するために、採用予定官職、業務、氏名、高度の専門的な知識経験、またはすぐれた識見の内容、任用予定期間、その期間に限って従事させる必要性、こういうものを明記した承認申請書を人事院の事務総長に提出させることになっています。ここまで決めているわけです。
 地方公務員の場合はどうするんですか。
荒木政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、国の制度におきましては、一定の書類等を人事院事務総長に提出するということになっておるわけでございますが、人事委員会を置きます地方公共団体におきましては、国におきます制度に準じまして、国と同様の一定の書類を、ただいまお話ございましたような、能力と資格あるいは経歴、実務経験、こういった点を客観的に評価できるそういった書類を提出していただくようにする取り扱いにしてまいりたいと考えております。
 また、繰り返しになりますが、人事委員会を置かない地方公共団体につきましても、この任期付職員の制度につきましては、やはりニーズもございますし、必要性もあるということで導入をするわけでございますが、人事を所管する第三者機関がないわけでございますので、それだけに、首長におかれては、先ほども申し上げましたような人事院規則の二三―〇の規定の趣旨等を踏まえまして、適切に、それぞれ責任を持って厳正、公正にやっていただきますように、私どもとしましては、できるだけ具体的に、ある意味では事細かに国の扱いの事例等もお示ししながら、それと、担保といいますか、それにつきましては、地方議会のチェックもございますし、先ほど申しておりますように、住民への情報公開という点の住民の監視というものもございますので、まさに地方自治でございますから、そういった地域においてこの制度の運用について全体で適切に行われるようにしていただくように、まずは任命権者である首長さんに適切に対応していただくように助言をしてまいりたいと考えております。
春名委員 さっきから同じことばかり言って、公正に、適切に、責任を持って。結局、首長が裁量を持ってやるんですよ。三千の自治体はそういう仕組みになっているんですよ。
 もう一回聞きますよ。国家公務員の場合は、人事院規則二三―〇第二条の二項で、公正を確保するため特に必要があると認めるときは、行政運営に関しすぐれた識見を有する者の意見を聞いて、採用するかどうかを決めるという仕組みがあるんですよ。これは、地方公務員の場合はどうするんですか。
 それから、出身企業に対する行政権限の行使にかかわるセクションには例えば配属しない、官民癒着を防止する上では絶対必要ですね。どう担保するんですか、こういうのは。具体的に言ってください。
荒木政府参考人 地方公共団体が、採用に当たりまして、人事院規則二三―〇の第二条第二項にございます「行政運営に関し優れた識見を有する者の意見を聴く」といった手続を地方団体にも導入するかという点でございますが、私どもとしましては、地方公共団体におきましても、これは、人事委員会の置かれている団体、置かれていない団体問わず、この法の趣旨に基づく、これに準じた仕組みを設けていただくようにしてまいりたいと考えております。そのように助言してまいりたいと考えております。
春名委員 後半。
 出身企業に対する行政権限の行使にかかわるセクションには配属しない、官民癒着を防止する上で絶対必要ですが、これはどういうふうに担保するんですか。
荒木政府参考人 一般職の地方公務員として採用される職員でございますので、当然、地方公務員法の服務の関係の規定等も適用がございます。あらゆる面で地方公務員としての規制を受けるわけでございますので、そういった行政マンとしての守るべきものは当然出てくるわけでございますが、それと、採用に当たりましても、先ほど来申しておりますように、国に準じまして、必要な、そういった問題が起こらないような手続をそれぞれの団体において、これは運用上でそれぞれの団体において決めていくことになると思いますが、それにつきまして、各団体が適切なルールをつくって、それに基づいて採用が行われるように、具体的な面につきまして助言をしてまいりたいと考えております。
春名委員 いや、助言するのはいいんですけれども、法律の枠組みを導入するのはあなた方ですから、どうするのかと聞いているんです。
 官民のこういう癒着を防ぐためには、少なくとも、こういう行政権限の行使にかかわるようなセクションには配属しない、当然のことでしょう、そんなもの。しかし、それは、指導します、言っていきます、そういう程度の話でしょう。
 全然私は納得できないし、先ほど、地方公務員法の縛りを受けるなんて当たり前のことでして、これは定数内で入るんですから。地方公務員法の縛りを受けるなんというのは当たり前のことなんで、そんなものは理由にならないんです。
 それで、私は、本当に、国家公務員が導入したから同じように導入したらいいという感覚なのかもしれませんけれども、ノーズロと言ったら失礼な言い方ですけれども、それほど地方はチェックがないんですよ、現実。そして、前段に私が言ったように、外部の人をそういう形で首長の裁量で導入することを通じて、苦い教訓を生み出しているわけです。だから、チェックする機関が国家公務員以上にきちっとやらないとだめだということを私は言っているわけです。全然納得できる答弁が出てこない。
 人事委員会を持っているところはいいのか、そう単純にいきませんよ。人事委員会を持っているところで、常勤になっている人は、何自治体ありますか。常勤者がいるのは何自治体ですか。今、六十幾つあると思いますけれども。
荒木政府参考人 人事委員会のうち、常勤の委員が置かれております団体でございますが、平成十三年四月一日現在で、七団体と承知をしております。
春名委員 いいですか。単独設置が六十一、組合設置が一で、六十二の人事委員会の中で、常勤として仕事をしているところがある団体は七団体しかないわけです。県のレベルでも、常勤者がいないところが圧倒的に多いわけです。しかも、いずれも、全部一人だけです。少なくとも、人事院は、総裁を初めたくさんの常勤がいて専門職員でチェックする、こういう仕組みになっています。余りにも貧弱です。
 しかも、事務局はあるけれども、他の部局との人事交流もあって、独立性が保てるかどうかすら疑問です。大体、事務局に座る職員の任命、これはだれがやるんですか。任期付職員を選任する同じ首長がやるんでしょう。どうしてこれで三つのきちっとしたチェックができるんでしょうか。私は全然納得できない。国家公務員が導入したから地方公務員も導入したらいい、そんな単純な話にはならないです。
 なぜ、こういうところをきちっとするということを法律として一緒に出さないのか。なぜ、こんなノーズロな方針を出すのか。もう一回説明してください、ちゃんと。
片山国務大臣 委員は、やるなということですね、何でもやるなと。我々は、市町村の能力を上げるために、強く大きく元気よくするために合併を言っているんです。合併も反対だと、地方団体はこんなことちゃんとやれないと。やらせてみにゃだめですよ。
 それから、当面、任期付の職員の採用は、大きいところからやるんですよ。大きいところは、それは人事委員会がちゃんとあるんだから。小さいところは、住民の監視が行き届いている、議会で条例をつくるんですよ、首長が任命したら首長はその適否を次の選挙で問われるんです、住民に。
 そういうチェック機能があるので、しかも、地方団体がやりたいと言うのを、全部やるなと、もっと大局的な観点に立ってお考え賜らにゃ困ると思います。
春名委員 全く、話をすりかえて、本当に信じられませんけれどもね、私は。
 チェックをする機関を同時になぜつくらないのですかと、こんないいかげんなチェックの仕方でいいのかという問題提起をしているときに、何でも反対と、そんな誤ったことは言わないでください。訂正してください、本当に。訂正してくださいよ、さっきの。
 この法案は、「地方自治・新時代の地方公務員制度 地方公務員制度改革の方向」、平成十一年四月二十七日、地方公務員制度調査研究会報告、この報告を具体化したものです。
 その中身には、人事委員会、公平委員会制度という項目もあって、地方分権の進展に伴って地方公共団体の行政の自主性が拡大し、多様化し、複雑化していく中で、公務員の任用形態の多様化、能力、実績の重視など地方公務員制度や人事管理などの新たなあり方に対応して、人事委員会などが中立公正な専門的人事行政機関としての機能をより一層的確に果たしていくことが求められている、その制度上の機能の充実、効果的な体制整備、専門的にすぐれた人材の育成確保が不可欠である。いいですか。任期付の問題もここで提案されているんです。それが、今度法案で提案されているわけです。
 しかし同時に、この報告の中では、人事委員会の機能をちゃんと強化する、自主性が高まっていくだけにこのチェック機能が重視されなきゃいけないと、同じように報告で出ている。
 ところが、いいとこ取りというのですか、この部分だけ導入して、公平委員会、全く権限がない、人事委員会、六十二しかない、そこでできるだけやってもらいましょう、あとは首長にお任せしましょう、こういう話じゃないですか。なぜ、では、こういう制度を導入するのであれば、一緒にチェックする機関も強化するという中身を一緒に出さないんですか。そこが私は疑問です。
片山国務大臣 何でも反対と私申し上げていませんよ。市町村合併には反対、任期付も反対、少し欠点があれば全体の制度のよさを見誤るおそれがあるのではなかろうかということを言っているので、何でも反対じゃありませんよ。時々は賛成していただいておりますので、大変ありがたい、私はこう思っております。
 それから、もっと地方自治や首長や地方団体を信用せないけませんよ。我々はその上に立っていろいろな仕組みを考えているのですよ。
 それから、今の、人事委員会、公平委員会のあり方については、我々もこれは研究していきます。いろいろなことをこれから検討しよう、こう思っておりますので、いいとこ取り、いいじゃないですか、いいところからやるのは。ぜひ、そういうふうに御理解を賜りたい。
春名委員 では、いつまでに、この報告書に載せられている人事委員会の強化、公平委員会の強化、いつまでに具体的にされるんですか。
片山国務大臣 それはまた、いつまでにということはいきません、これから検討するのですから。できるだけ早くであります。
春名委員 ですから、いいとこ取りだと私は言っているんですよ。
 それで、専門家の能力、民間の人の能力をかりるということを一般に私は反対しているつもりはありませんよ。先ほどの議論をよく聞いていただいたら、そんな結論に絶対なりませんからね。
 しかし、今回こういうふうな導入をすると、首長の裁量で三千以上の自治体は、はっきり言いまして、もう全くノーチェックで採用する、制限も別にないんですよ。法文上は一般職全部ですからね。これは、一応制限はいろいろ出てくるでしょうけれども。
 そういうものを導入するということになったときに、一緒にチェックするということを同じように考えなければだめでしょう。そういうことはなしに、とにかくこちらだけ先にやるというやり方をしているということが、余りにも、それこそ時代錯誤だというふうに私は思っております。
 そのことをはっきり申し上げまして、欠陥があるということを指摘して、質問を終わりたいと思います。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 質問も最後になりまして、多分幾つか内容が重複する部分もあると思うのですが、ひとつ誠実に答弁していただきたいことを最初にお願いしておきたいと思います。
 まず、国に準じて自治体でも任期付採用制度が導入されようとしているわけでありますが、これによって自治体にどのような効果が生じると思われているのか。本案の評価と将来展望について、まずお聞かせいただきたいと思います。
若松副大臣 委員の御質問にお答えいたします。
 先ほど、中村委員からちょっと嫌われてしまいましたが、官僚の皆さんが徹夜をしてつくった大変ベストアンサーをもとに答えさせていただきたいと思います。
 本法案でございますが、公務部内では得られにくい専門的な知識経験またはすぐれた識見を有する外部の人材等を、任期を限って採用できるものとしたものでございます。
 専門的な知識経験等を有する任期付職員の活用により、各地方公共団体は、高度化、複雑化、専門化する行政課題への対応がより可能となるとともに、組織全体としても、コスト意識、サービス意識の向上によってより効率的で住民ニーズに根差した行政運営を進めることができるものと期待しております。
 このために、地方行財政を取り巻く環境の変化、地方分権の進展等に的確に対応するために、各地方公共団体において本法案によります制度が積極的に活用されることを強く期待しているところでございます。
重野委員 まずその点を押さえた上で、次に、二〇〇〇年七月から自治体における任期付制度として先行実施されています任期付研究員制度の適用状況、これを調べてみました。二〇〇一年十二月現在、招聘研究員型四名、若手研究員型九名。極めて少ない人数にとどまっていると承知いたしております。
 また、自治体に先駆けて先行実施されています国の一般職の任期付採用の適用状況は、先ほど大臣も申しておりましたけれども、二〇〇二年四月現在、全体で七十六名、こういうことになっています。
 そこで、お聞きしますが、このような適用状況のもとで、なぜ現時点で自治体の任期付採用制度の創設が必要なのか、その積極的な根拠は那辺にあるのか。この点についてお聞かせください。
荒木政府参考人 お答えいたします。
 地方分権の進展などに伴いまして行政の高度化、専門化が進む中で、公務部内では得られにくい外部の専門的な人材等を一定期間活用する必要性が高まってきております。
 昨年秋行いました地方公共団体に対するアンケート調査では、都道府県と指定都市では、ほとんどの団体が任期付職員採用制度の導入が必要としておりまして、具体的には、例えば電子自治体の推進関連、あるいは法制執務、公営企業関係等の分野での活用を想定するなど、任期付採用制度へのニーズが高まっているところでございます。
 このため、地方公共団体の自主的判断によりまして任期付職員採用ができますように、国の制度に準じまして、法的な枠組みを整備するためにこの法案をまとめたところでございます、お願いしているところでございます。
重野委員 次に、自治体行政において、部内の人材活用では賄うことが困難な専門性や専門的対応が求められている、こういうふうに言われるわけでありますが、現行任用制度、例えば特別職非常勤職員制度というのがありますが、その制度ではなぜ不適当なのか。一般職任期付採用でなければならない積極的必要性について、客観的かつ具体的に説明をしていただきたいと思います。
荒木政府参考人 特定の学識、経験に基づいて採用されます顧問、参与、嘱託員などの特別職非常勤職員につきましては、一般職とは異なりまして、守秘義務、職務専念義務、兼業禁止等の服務の規定を初め地方公務員法の規定が適用されないものでありまして、一般の職員と一体となって業務に従事することは予定されていないものと言えるかと思います。
 本法の制定によりまして、特定の専門性や識見を有する公務部外の人材を一般職の任期付職員に採用できることとなりまして、各地方公共団体におきましては、その知識経験を生かしながら、職員と一体となって政策の立案等にも継続的、主体的に取り組んでいただくことができるようになるものと考えております。
重野委員 国が必要とする専門性と自治体のそれとでは、当然異なる部分があると思います。したがって、自治体においては、その独自性、主体性に基づいて、詳細な採用条件の検討がなされなければならないと思います。同時に、業務の特定化は、公正性、中立性と表裏一体の関係にありますことから、要件の明確化と、それから限定化が当然図られる必要があるわけです。
 この点に関して、国の場合は、採用の公正性、中立性を確保する観点から、人事院規則や人事院事務総長通知によって、例えば、倒産法制の見直しに関して弁護士を従事させる場合、あるいは金融機関に対する特別の検査業務に公認会計士を従事させる場合、内閣審議官として国全体の政策課題の企画立案に従事する場合、原子力に関する専門技術者を保安検査に従事させる場合などなど、そういうふうな限定がなされております。
 ところが、自治体の採用条件を見ますと、条例にゆだねられていることから、議会、住民監視が可能であるという点、その点は、柔軟な採用決定ができる仕組みとなっている。しかし、その反面、制度創設の趣旨に反する採用要件の拡大の危険性も多分に内包されていると言わなければならない。
 そこで、自治体の場合、採用に関して、具体的にどのような場合を想定しているのか。また、採用要件について、自治体の自主性、独立性に配慮しつつも、国の要件を参考として、自治体においても適用要件を明確化、限定化する、そういう必要があるのではないかと思うんですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
荒木政府参考人 地方公共団体におきます採用に関して、具体的にどのような場合を想定しているかという点でございますが、高度の専門的な知識経験を有する者を活用する場合といたしましては、例えば、公立病院など公営企業の財務状況の分析、健全化への対応等のため、企業会計に精通した公認会計士の方を採用する場合、訴訟施策や政策法務の充実のために弁護士の方を採用する場合などが考えられるところであります。
 次に、すぐれた識見を有する者を活用する場合といたしましては、例えば、民間企業の役員の方などを長期総合計画の立案等のために採用する場合などが考えられるかと思います。
 また、専門的な知識経験を有する者を活用する場合としましては、例えば、国際会議などの開催準備のために、民間の大規模イベントの運営等に習熟した方を採用する場合、電子自治体を推進するために、システムエンジニアなどの情報技術の専門家を採用する場合などが考えられるところでございます。
 また、本法案の第三条で規定をいたしております任期付採用することができる要件につきましては、行政の高度化、多様化等に対応して、公務の能率的運営を確保する観点から、専門的な知識経験等を必要とする業務について、期間を限定して職員を採用する蓋然性が高い場合を類型化しておりまして、各地方公共団体における多様な行政ニーズに対応し得るものになっていると考えております。
 同時に、この第三条の規定では、任命権者は、任期を付して専門的な知識経験等を有する人材の活用が必要な業務が存在し、かつ、採用しようとする者が当該業務にふさわしい専門的な知識経験等を有する場合に限り、採用できるものとされておるところでございます。
 このような本法案の内容にかんがみますれば、法律上の要件について、これをさらに各自治体で限定するような仕組みについては導入する必要はないものと考えているところでございます。
重野委員 次に、人事行政において、政治的影響力を排除し、中立公正な人事行政を確保するということは、これは公務員制度の大原則であろうと思うわけです。この点、人事院規則では、任期付採用制度について、「情実人事を求める圧力又は働きかけその他の不当な影響を受けることなく、」と明確に想定しております。
 そこで聞きますが、任期付採用はあくまでも任用の特例である以上、自治体において制度化するに当たっては、その必要性、具体性を明確化するとともに、先ほど指摘をしました人事行政の大原則を確保する立場から、自治体においても、最低限、制度的、実態的な措置が図られるべきではないか、このように思うのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
荒木政府参考人 本法案による任期付採用につきましては、法律上の要件に該当する場合に限って行うことができるものでありますが、この制度を地方公共団体において導入する場合には、さらに条例の制定が必要でございますので、各地方議会において、導入の必要性や採用の方針などについて十分な議論が行われるものと考えております。
 総務省といたしましても、先ほど来再三申し上げておりますように、法の施行に当たりましては、各地方公共団体に対して制度の趣旨、内容についてよく周知を図りますとともに、各地方公共団体において適切に条例化がなされ、また運用が行われますよう、必要な助言等に努めてまいりたいと考えております。
重野委員 今の答弁を踏まえまして、本案の趣旨、制度が通知あるいは助言によって十分自治体に周知徹底されるように、強く要望しておきたいと思います。
 次に、近代公務員制度の原則に基づいて、国においては第三者機関、つまり人事院が置かれているわけであります。
 問題は、人事院と自治体の人事委員会では、人事行政における企画立案機能が異なっている、こういう現実があります。つまり、人事院は、法律の委任に基づいて人事院規則等の制定権を持っております。第三者機関として強い権限が保障されている。したがって、相当高度の中立性あるいは公平性の確保が図られているのも、まさにこれに由来している。ところが、人事委員会について言えば、人事院に比べて権限は著しく限定されております。
 この両者の権限上の相違を認識して、自治体における任期付採用制度の中立性、公正性を確保するためには、少なくとも人事院の権限、企画立案にかかわる規定を自治体においても制度化するか、あるいは実態的に対応できるようにすべきではないかと思います。現在の自治体における人事委員会の設置状況は、先ほども議論がありましたけれども、さらに地公法第七条の設置基準とその実態との乖離についてどのように認識しておられるのか、見解をお聞かせください。
荒木政府参考人 人事委員会についてのお尋ねにお答えをいたします。
 本法案におきましては、人事委員会は、任命権者が採用を行うに当たって承認をすることとしているところでございます。
 次に、人事委員会の企画立案機能でございますが、地方公務員法第八条第四項の規定によりまして、人事委員会は、法律または条例に基づき権限を有する事項について人事委員会規則を制定することができることとされているところでございます。
 また、人事委員会のあり方につきましては、平成十一年四月の地方公務員制度調査研究会報告におきまして、人事委員会等の機能の充実等が報告されているところでありまして、今後、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、検討が必要なものと認識しているところでございます。
 また、次に、人事委員会の設置状況でございますが、平成十二年四月一日現在におきましては、必置とされている都道府県、政令指定市のほか、特別区並びに和歌山市、熊本市に設置されているところでございます。
 地方公務員法第七条では、人口十五万以上の市及び特別区については、人事委員会か公平委員会のいずれかを、これは選択によりまして置くということになっております。これらの団体のうち置いている団体が少ないわけでございますが、これらの団体におきましては、行政運営の民主化及び能率化という側面と、人事委員会の設置に伴います負担の増加や行政機構の複雑化といった側面を比較勘案いたしました結果、現在のような状況になっているものと考えております。
重野委員 今の後段の部分については、私は問題を感じますし、今後のいろいろな角度からの検討課題になるだろうというふうに思います。
 次に、人事委員会に関する幾つかの指摘を私はしたわけでありますが、人事委員会が存在していない自治体の数は大変多いわけであります。したがいまして、そういう自治体においては、なおさら制度的あるいは実態的対応が求められるわけであります。
 指摘するまでもなく、都道府県、政令指定都市を初め、人事委員会が設置されているのは、今の話にありましたように非常に少ないわけでありまして、それ以外の自治体においては公平委員会が設置されていますが、それとて町村に至っては委託や共同設置にとどまっているという状況にある。しかも、公平委員会は制度上採用事務は付与されていないという現状を直視するならば、採用等についての権限を当然付与すべきではないか、このように思うんですが、そうした考えはお持ちにならないんでしょうか。
荒木政府参考人 公平委員会につきましては、地方公務員法第八条第二項の規定によりまして、勤務条件等に関する措置要求に関する事務及び不利益処分の不服申し立てに関する事務などを行うこととされておりまして、従来から採用等に関する事務は所掌をしていないところでございます。
 公平委員会のあり方につきましては、平成十一年四月の地方公務員制度調査研究会報告におきまして、公平委員会の所掌事務の範囲の拡大の検討について報告がなされているところであり、今後、これにつきましても検討が必要なものと考えております。
重野委員 本案が施行されることになりますと、中立公正な採用の必要性はますます重要な課題となると考えますが、まずその点についての認識をお聞かせください。
 また、人事委員会未設置の自治体について、採用方法を公募による選考とするような、そういうことも必要ではないか、このように思うんですが、以上二点の見解をお聞かせください。
荒木政府参考人 任期付職員の採用につきましても、職員の任用は能力の実証に基づいて行うという地方公務員法第十五条の成績主義の原則は当然適用されるものでありまして、各地方公共団体の任命権者は、選考される人の資格、実務経験、実績等客観的な経歴評定を通じて公正に採用を行わなければならないことは当然のことでございます。
 また、選考採用を行う場合、公募の方法により候補者を集めることも可能でありまして、特に、本法による任期付採用を行うに当たりまして、必要とする専門的な知識経験等を有する人材が広く存在し得る場合には、公募による方法は十分考えられてよいものと考えております。
 なお、これらのことは、人事委員会を設置する地方公共団体であるか、設置していない団体であるかを問わず、変わるものではございません。
重野委員 任期付雇用となる者の給与についてでありますが、地公法二十四条三項の給与の根本基準に基づく国公準拠を前提といたしますと、国の任期付職員に適用されている特別の俸給表は、係長クラスから本省課長クラスの職務関連手当を含めた水準を参考として設計されていると聞いております。また、極めて高度な専門性を有する者を採用する場合には、指定職俸給表十二号俸に当たる最高額まで適用できるとされている。
 そこで聞きますが、このような特別の俸給表の水準及びそれを適用することによる他の職員への影響を考慮いたしますと、単純に国公準拠は問題があるのではないか。給与、勤務条件、水準、運用については、対象となる職種と職務の専門性等に相応する処遇確保、同時に、他の職員への影響に配慮した制度の創設を図るべきではないか。これが第一の質問。
 次に、地方公務員の任期付研究員法の審議の際、当時の自治省は、特に顕著な業績の評価は大変難しい問題であり、部内、場合によっては部外の専門家を交えた評価機関を設置するなどの工夫が必要、このように答弁しています。本案に定める任期付採用についてもこれは当然当てはまることであり、適切な給与制度の運用を図るためには支給基準を明確にする必要があるのではないかと思うのですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
荒木政府参考人 任期付職員の給与につきましては条例で定めるものでございますが、特定任期付職員につきましては、その知識経験の水準や業務の重要性等にふさわしい給与を確保する必要があることから、国の制度と同様、特別の給料表など特別の給与体系を設けることが適当であります。その他の勤務条件につきましては、任期付職員が他の一般職の職員と同様に業務に従事するものであることから、特例を設けていないところでございます。
 職員の士気への影響でございますが、本法によります任期付採用の制度は、新規学卒者等の採用と部内育成を中心とした任期の定めのない採用を基本とする公務員制度の特例をなす制度でありまして、行政の専門化、高度化等に対応するため、高度の専門的な知識経験等を有することが客観的に明らかな方を、しかも任期を限って採用するものでございますので、職員の士気の低下をもたらすおそれはさほどないものと考えております。むしろ、外部のすぐれた人材が公務の中に、組織の中に入ることによりまして、職員に対しましてよい刺激をもたらすことが期待できるのではないかと考えているところでございます。
 また、特定任期付職員業績手当の支給の認定に当たりましては、任期付研究員業績手当の場合と同様、専門家を交えた評価機関を設置するなどによりまして、公正かつ適切な業績の評価の確保が図られるよう地方団体に助言をしてまいる考えでございます。
重野委員 最後に、本案の性格を踏まえまして、今後の自治体行政のあり方について一言注意を喚起しておきたいと思います。
 本案は、部内の人材活用では補うことが困難な、高度な知識経験を有する者を期限を切って採用するものでありますが、今後の自治体行政にとって、専門的知識を有する者を外部に求めることは、あくまで一時的あるいは過渡的なものだと考えるわけであります。重要なことは、行政内部にそうした職員を養成していくことが重要であります。それが地方分権の内実を豊富なものとするものであると思いますし、同時に、こうした外部からの人材活用が、公務員制度の原則を逸脱し、間違っても恣意的な運用がなされないよう、総務省においても対処されることが求められていると思います。
 最後に、大臣のこの問題に対する所見を伺い、質問を終わります。
片山国務大臣 今、重野委員御注意のような点も私はあると思いますけれども、この制度をうまく活用すれば、即戦力で有能な人が得られまして、しかもほかの職員にも大変いい刺激になる。これは、あくまでも通常の方じゃないんですね、例外的な措置で。だから任期付なんですよ、五カ年という。だから、ぜひうまく地方団体に活用してもらいたい、こう思っております。
 私どもの総務省に、月尾先生という東大教授に、ITの専門家ですけれども、入っていただきまして、任期付じゃありませんよ、普通の採用ですけれども、総務審議官を今やってもらっているんですが、省内に大変いい刺激を与えておりますし、地方団体からも引っ張りだこであります。私は、こういうのが一つのモデルかな、こう思っておりますので、今後とも、この法律の趣旨を損なわないように、いい結果が出るように、しっかり努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
重野委員 以上で終わります。
平林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。矢島恒夫君。
矢島委員 私は、日本共産党を代表して、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案に対する反対の討論を行います。
 反対する第一の理由は、この制度導入が現行の地方公務員制度の中に混乱を持ち込み、地方公務の継続性、安定性の確保を難しくするからであります。
 本法案では、研究員に続いて一般職の中にも任期付職員の採用制度を広げ、その対象を、高度の専門的な知識または識見を有する者や、専門的な知識経験を有する者で、公務の能率的運営を確保するために必要であるときなどと規定し、条文では具体的限定を示さず、広く解釈できる内容のものとしております。このように一般行政職のあらゆる分野で任期付職員の採用を可能とすることは、住民福祉の向上、全体の奉仕者としての職務を担う地方公務員の制度に悪影響を与えるとともに、住民本位の地方自治のあり方にも悪影響をもたらしかねません。
 反対する第二の理由は、この制度導入による不透明で恣意的な選考採用方式は、現行の地方公務員法第十五条に規定されている能力の実証に基づく成績主義の原則とは異なり、政治的採用が持ち込まれるなど、官民癒着を生むおそれが指摘されているからであります。
 反対する第三の理由は、任期付職員の採用が広がれば、自治体リストラが進む中で、地方公務分野における不安定雇用を広げ、地方公務サービスの低下をもたらす可能性があるからであります。特に、国家公務員の任期付採用には人事院のチェック機能が設けられていますが、地方公務員には人事委員会が存在しない自治体が多く、チェック機能が国に比べて極めて弱いという問題点を指摘しなければなりません。
 最後に、自治体職員が全体の奉仕者としての使命を果たすためには労働基本権の回復は避けられないこと、それが実現しない段階では、人事委員会、公平委員会の機能の抜本的な充実強化が必要であることを指摘して、私の討論を終わります。
平林委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより採決に入ります。
 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、川崎二郎君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。川崎二郎君。
川崎委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び地方公共団体は、本法律の施行に当たり、次の事項について配意すべきである。
 一 地方公共団体が、任期を定めて職員を採用する場合、真に専門的な知識経験又は優れた識見を有する者を採用することとし、性別その他選考される者の属性を基準とすることなく、及び情実人事を求める圧力又は働きかけその他の不当な影響を受けることのないよう留意すること。
 二 任期付職員制度が、地方公共団体の人事行政における政治的影響、公民癒着等の疑惑や批判を受けることがないよう、その適正な運用を図るとともに、人事委員会・公平委員会の機能の充実に努めること。
以上であります。
 何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。
平林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
平林委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
平林委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
平林委員長 次回は、来る二十三日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十九分散会


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