衆議院

メインへスキップ



第20号 平成14年6月4日(火曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月四日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      北村 誠吾君    小西  理君
      後藤田正純君    河野 太郎君
      左藤  章君    佐藤  勉君
      新藤 義孝君    滝   実君
      谷  洋一君    谷本 龍哉君
      野中 広務君    林田  彪君
      松宮  勲君    望月 義夫君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   総務大臣政務官      山内 俊夫君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (総務省郵政企画管理局長
   )            團  宏明君
   政府参考人
   (総務省郵政公社統括官) 野村  卓君
   政府参考人
   (郵政事業庁長官)    松井  浩君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月四日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     林田  彪君
  左藤  章君     北村 誠吾君
  佐藤  勉君     望月 義夫君
  新藤 義孝君     後藤田正純君
  谷本 龍哉君     小西  理君
 吉田六左エ門君     松宮  勲君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     左藤  章君
  小西  理君     谷本 龍哉君
  後藤田正純君     新藤 義孝君
  林田  彪君     大野 松茂君
  松宮  勲君    吉田六左エ門君
  望月 義夫君     佐藤  勉君
    ―――――――――――――
六月四日
 国家公務員の残業改善に関する請願(重野安正君紹介)(第三六七〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 日本郵政公社法案(内閣提出第九二号)
 日本郵政公社法施行法案(内閣提出第九五号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律案(内閣提出第九三号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第九六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、日本郵政公社法案、日本郵政公社法施行法案、民間事業者による信書の送達に関する法律案及び民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として総務省郵政企画管理局長團宏明君、総務省郵政公社統括官野村卓君、郵政事業庁長官松井浩君及び財務省主計局次長杉本和行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉大和君。
稲葉委員 おはようございます。自由民主党の稲葉大和であります。
 いよいよ郵政四法案についてきょうから実質審議に入るわけでありますが、この法案は、小泉内閣にとりましても最重要法案の一つに数えられております。したがって、この法案に関しましては、与野党ともに十分な審議をしていただいて、お互い納得のいくところで結論を求めたい、かようにまず申し上げておきます。
 早速ですが、大臣にお尋ねします。
 郵政事業の公社化につきましては、御承知のように、平成九年の行革会議最終報告を受けて制定されました中央省庁等改革基本法に基づいて法制化されたもの、そう認識しておりますが、この郵政公社への移行は、百三十年にも及ぶ郵政事業にとって歴史的な転換点になります。それは同時に、国民生活に直結する事業の改変を伴うことでありますから、この法案審議は、総理の思い入れもありますが、一番に国民の総意が反映されるよう、決して一部の民間業者の営利に資するようなことの起こらないように、慎重にされなければならないとまず申し上げておきます。
 各方面からさまざまな要請もいただいております。これからの質疑は、あるいは今後の委員の皆様のそれぞれの討論の資料に資したいと思いますし、また、大臣からすれば、あるいは基本的な復習事項であって今さら言うに及ばない、こうおっしゃられるかもしれませんが、スタートラインからきっちりと話を詰めていきたいと思いますので、ぜひ大臣から、今日に至るまでの行政府の流れといいますか、行政改革の、平成八年に始まったと思いますが、そこから順を追って、簡略に今日に至るまでの経緯を御説明いただきたいと思います。
片山国務大臣 今、稲葉大和議員からお話がありましたように、中央省庁改革から事は始まったわけでございまして、中央省庁等改革は、簡素にして効率的かつ透明な政府を実現することを目的として中央省庁の再編等を行う、こういうものでございますが、具体的に議論が始まりましたのは平成八年からでございまして、それが、最終的には平成九年十二月の行政改革会議の最終報告にまとまったわけであります。
 それを踏まえて中央省庁等改革基本法が平成十年六月に制定されておりますが、その中で、まず、郵政省を総務庁、自治省とともに総務省に再編するとともに、総務省に、その外局として、郵政事業の実施に関する機能を担う郵政事業庁を設置し、さらに、郵政事業庁は、平成十五年中に、これは暦年でございますけれども、国営の新たな公社に移行するということ、郵便事業への民間参入について具体的条件の検討に入る、こういうことが規定されたところでございます。
 そこで、平成十二年十二月に今後の行政改革についての大綱がまとまっておりますけれども、その行政改革大綱の中で、郵政事業を公社化するための所要の法案を平成十四年の通常国会に提出するということ、郵便事業への民間参入を郵政公社化に合わせて実現する、こういうことが閣議決定されたところでございます。
 これらを踏まえまして、それじゃどういう案をつくるかということで、昨年八月から総務省の中に郵政事業の公社化に関する研究会を置きまして、これを開催しまして、広く国民の意見を聞きながら論議を進めまして、昨年の十二月に、公社制度と郵便事業への民間参入のあり方についての中間報告、こういう形式をとっておりますけれども、ほぼ最終的な意見の取りまとめが行われたところでございます。
 今国会に提出しました、これから実質御審議をいただきます公社化関係四法案は、この中央省庁等改革基本法の枠組みにのっとり、しかも郵政事業の公社化に関する研究会の中間報告を踏まえて取りまとめたものでございます。
 郵政事業の公社化の意義は、国とは別の法人格を有する公社とすることによって、予算、組織、定員等、国の行政組織であることに起因する制約を外して、独立採算制のもとで自律的かつ弾力的な経営を可能とし、国民利用者の利益の増進を図ることにあると考えております。
 また、郵政事業はこれまで、国民共通のインフラである郵便局ネットワークを通じて、郵便、郵便貯金、簡易生命保険などの国民の生活基礎サービスを全国あまねく公平に提供してきたところであり、こうした国民生活のセーフティーネットとしての機能を公社においても確保、充実していくことが必要と考えております。
 また、郵便事業への民間参入につきましては、研究会の中間報告を踏まえまして、ユニバーサルサービスを確保する一方で、選択機会の拡大など、利用者利便の増大を図る観点から、クリームスキミング、いいとこ取り的な参入を排除するための一定の条件を付した上で、民間事業者の全面的な参入を認める枠組みの法律案としたところでございます。
 なお、今回の公社化関係四法案につきましては、与党審査において、時間がない等々の理由により継続審議とされたまま国会に提出することとなりましたけれども、引き続いて、国会で御審議をいただきながら、与党の方の御理解が得られるように努力してまいりたい、こう考えておりますし、四法案一括での御審議の上、ぜひ成立を期してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
稲葉委員 今までのことから今日に至るまでの経緯につきましてはかいつまんで御説明いただいたわけでありますが、これから申し上げるのは大変初歩的な質問であって、繰り返し繰り返し何遍も問われるところでありますが、まだまだ国民の皆さん方からは、なぜ郵政省が郵政事業庁になったのか、そしてまた、今ある経営状態を変えて公社にする、この変わりぶりというのはどういう相違点があるのか、なぜまたそうしなければならないのか、こういったところについての認識が、私が一番認識不足なのかもしれませんけれども、まだまだ及んでおりませんので、世論の中では、なぜ今この時期にこの四法案を審議するのか、こういった素朴な疑問が発せられております。我々、地元に帰って説明しましても、何かわかったようなわからないような、そんな答えが返ってくるありさまであります。
 まさに大変革をしようとされているわけでありますから、ここのところをきちっと、どのように違ってくるのか、もう一度私にわかりやすく御説明いただきたいんでありますが。
片山国務大臣 今一連の経過のお話をさせていただきましたが、それじゃ、なぜ郵政省を郵政事業庁にするのかと。
 中央省庁改革というのは、行政改革の柱にして、簡素で効率的な行政の仕組みをつくる、こういうことでございます。省庁を大ぐくりにするということ、それによって総合性や包括性を持たせるということを考えたわけでありますし、また、できるだけ行政を政策立案機能と実施機能、現業機能とに分けよう、こういうことでございまして、郵政省に総務庁、自治省が加わった大ぐくりの組織にして、その中で、郵政事業の、現業を行うものはその中から取り出して郵政事業庁という外局にしよう、こうしたことが今日までの中央省庁再編であった、こういうふうに思っております。
 それじゃ、それをなぜ十五年中に郵政公社にするのかということでございますが、これは御承知のように、中央省庁等再編改革の大議論の中で、やはり郵政事業は国営の公社という形にして、自律的かつ弾力的な経営を可能にする、民間に近い形の自由な経営の方式によることが、結果としては国民の利益の増進になる、サービスの向上につながる、こういうことでございます。国営公社で、郵便局の職員の皆さんは国家公務員でございますけれども、経営の実態は役所的でなくて民間的にする、民間のいいところを入れよう、こういう発想でこれがまとまったものと私は理解いたしております。
稲葉委員 確かに総理もおっしゃっておられます。民でできることは民にやらせたらいいじゃないか、こういう御発言をされておられますが、民間でできるものは何があるのか、そして、今こういった国営の公社のほかに、これから先議論されてくることになるでしょうが、郵便事業についての民間参入、民間参入することによってどれだけユーザーたる国民の皆さんに利便性が増してくるのか、増大するのか。こういう点は、言葉では確かに、民間でできるものをもっともっと導入しよう、こういう御発言があり、観念的にはわかるんですけれども、具体的に、じゃこういうものがあるよというのがまだアナウンスされていない部分があります。
 これはこれから審議を進めていく過程の中で明らかにしてくださるものと期待しておりますが、しかし、今まで百三十年続いてきたこの歴史的な分野、これをなぜ改めてここで全面的にしろ部分的にしろ民間に開放するのか、そういうようなところの疑問がまだ解決されておらないような気がいたします。
 さらに御質問申し上げますが、今回の信書便法案、またその整備法におきまして、民間参入に対してどのような基本的な考え方を持ってこの法文がつくられたのか、大変抽象的な質問で申しわけありませんが、大臣の御聡明なところで御教示賜りたい、お願い申し上げます。
片山国務大臣 なぜそれじゃ民間参入させるのか、こういうことでございますが、総理がいつも言っておられますように、基本的には民にできることはできるだけ民に、競争原理を導入しようと。
 独占だと独占としての問題点が出てくる、こういうことでございまして、競争を導入すれば競争が起こるわけでありますから、利用者にとっては多様で安いサービスの提供を受ける機会がふえるということ、また事業者にとっても、競争ですから経営の効率化をもっとやらなけりゃいかぬ、こういうインセンティブが働く、こういうことでございまして、全体としては、国民へのサービスが上がり、経済社会活動が高度化する、こういうことでございます。
 郵便についてもこれは例外でございませんで、世界の各国を見ましても、全面参入というのは少のうございますけれども、部分参入あるいはEUは段階参入、こういうことで民間に門戸を開いておりますので、この際、我が国でも、一定の条件をつけて、特に郵便ではユニバーサルサービスを確保するということが大変重要なところでございますから、全国民があまねく公平に利用できるような条件を満たしていただくならば、いいとこ取りでないならば、郵便局のネットワークと同じようなことでやっていただくのなら、これはぜひ入っていただいて競争していただくことがあるのかな、こういうふうに考えたわけでありますし、また民間の方でも、例えば宅配便等の全国ネットワークを活用して、ユニバーサルサービスがある程度確保できるような環境が整ってきた、こういうこともあります。
 一方、一般信書便以外に我々は特定信書便というのを考えておりますけれども、こういう新しい経済社会情勢の中で、付加価値の高い、したがってたくさんお金を出してもいいよ、しかし大変高度なサービスを提供してくれ、こういう需要も出てきているわけでありますから、こういうところにはもう民間に入ってきていただいて大いにやっていただいたらどうだろうか、こういうのが今度の我々の考え方でございます。
稲葉委員 なかなか具体的な事案が出てこないとわかりにくいんですけれども、今大臣が再三、全国あまねく均一のサービスを、そしてセーフティーネットをしっかりと確立するんだ、また言葉としてよく使われるユニバーサルサービスを確保するんだ、こういうお話をいただきました。
 そこで、改めて佐田副大臣に。
 現在、国みずからが、私も理解が十分でないのに言葉として使うのは不本意なんですけれども、いわゆるユニバーサルサービスを提供している。公社化以降、このユニバーサルサービス、どの学者さんも、ユニバーサルサービスは確立しなきゃならない、確保しなきゃならない、そう言っておられるわけですが、このユニバーサルサービスは公社化後どのように確保されるのか。また、民がやれることを民にやらせよう、いわゆる競争原理を導入して利用者の利便性の向上を図ろう、こういう趣旨のもとに法案がつくられるんだと思いますが、その競争原理が導入される中で、果たしてユニバーサルサービスというのは今までと同じように確保することができるのかどうか、御所見を。
佐田副大臣 先生御指摘のとおりで、ユニバーサルサービスは非常に重要なことでありまして、日本郵政公社をして郵便のユニバーサルサービスを確実に実施していかなくてはいけない、こういうふうに考えております。
 また、日本郵政公社が提供する役務の対象としましても、今までどおりでありますけれども、通常の郵便物であるとか三種、四種の郵便物及び小包、また非常に必需性の高い特殊取扱、公的性格を有する特殊取扱、社会文化に定着した特殊取扱、また万国郵便条約等の国際約束を履行する国際郵便、これは法定で決まっております。
 また、ユニバーサルサービスの提供方法といたしましても、これはもう委員に言うまでもありませんけれども、全国あまねく一通からの引き受け、配達、ポストによる引き受け、その他の随時、簡易かつ秘密保護が確実な引き受け方法の確保であるとか、または全国均一でなるべく安い料金を確保するということで、しっかりとこれは守っていかなくちゃいけない、こういうふうに思っております。
 なお、公社の自律的、弾力的経営が可能となるよう、例えば料金についても、現在の法定ないし省令で定まっているものを認可ないし届け出とする等の措置を講じているものであります。しかしながら、信書便事業者よりも幅広い役務の提供義務があるなどから、ユニバーサルサービスの提供の主体として必要な規律を課しているということでございます。
 いずれにいたしましても、しっかりとこのユニバーサルサービスは守っていかなくちゃいけない、こういうことであります。
稲葉委員 何遍も、どなたからも、そして学者さんからも、ユニバーサルサービスを確保して、そのもとに競争原理を導入する、こういうお話、書物を拝見するわけでありますが、私は、結論から申し上げまして、ユニバーサルサービスを確保することと、それから競争原理を導入して民間に市場を開放するということは、結論的には相入れないものじゃないか、こう思っております。
 これは釈迦に説法かもしれませんが、御承知のように、郵政事業、郵政事業庁、総務省に関係する方であれば既に何遍もごらんになったことと思います。明弘会郵便法第五条違反事件、この事件についての大阪地裁及び最高裁の判決があることは御承知だと思いますが、大臣御承知でしょうか。
片山国務大臣 承知いたしております。
稲葉委員 済みません。
 この判決に書かれている判決文は、有名な信書についての定義に近いものを明らかにした判決であります。私が引用したいのは、その信書の部分じゃなくて、むしろその中身の判決文の中にあります。
 その判決文を少し長いですが引用させていただきます。
 郵便事業は国家の独占たる性質を有する。遠隔の地、交通不便の地、利用者少なき地をも含めて国内全体にわたり、共通の低料金で郵便物の迅速、確実な配達を行い、もって国民全体にあまねく利便を与えることにある。その料金も、これらの諸事情を一括して算出しているものと理解すべきである。私設の事業を認めることとなれば、国家は、費用が多くなり、利益の少ない部分のみを受け持つ結果となり、到底国民があまねくサービスを受ける郵政事業が成り立たなくなるのは明らかである、こう断じております。
 結論的に申すならば、郵便事業は、独占を守らない限りユニバーサルサービスは守れない、このことをこの判決は、既に昭和二十七年、昭和三十三年に明らかにしていることであって、これをもとにして、これは当然、総務省としても御理解あるし、また遵守さるべきことと思いますが、これを超えて、さらに民営化、民間参入ということを図ろうとされていることについて、いかがなものかなと。あえて大臣からの御答弁は求めませんけれども。
 さらに総理は、中央省庁改革基本法の中身にあります、民営化の議論は行わないものとする、この点を削除しようと。ところが、法制局からとめられたのか、法制局の御意見に従ったのか、削除しなくても議論を進めることは可能なんですよ、こういう意見に従って削除という行為まで出ませんでしたが、今我々は郵政公社を打ち立てよう、設立しよう、こういう議論をしている中で、公社にも移行していない、公社として運用もされていない、それにもかかわらず、さらに先の段階の民営化の議論を進めるということは、一般民間の方々であればともかく、総理大臣たる人がこのことを進めようと、私的懇談会までつくって議論をさせようとしているのはちょっといかがなものかな、こう思うわけであります。
 と同時に、それであるならば、我々は……(発言する者あり)静かにしてください。我々はむしろ、民間参入の具体的条件の検討に入るものとする、この条項を、ユニバーサルサービスの確保に支障が生ずるものだから、逆に削除したい、こういうふうな気持ちがあります。
 このことを念頭に置きながら、時間がなくなってきましたのでまとめにさせていただきます。今、行政改革を推進する、そして、マスコミの皆さんの論調にもありますように、規制緩和だ、民営化だ、こういう議論をしていくと進歩的であり、現状を維持しろ、現状が幾ら正しいものであっても、守ろうとする立場の者は守旧派とかあるいは抵抗勢力とか、こういうような言いぶりをされているということは大変不本意であります。もっと法の具体的な中身、内容について検討を加えた上、我々を御批判ください。我々は、確かに抵抗勢力と呼ばれています。呼ばれていることは認めます。(発言する者あり)やじをやめてください。
 それともう一つ、先ほど冒頭にも申し上げましたように、国民の皆さんは何を望んでおられるか。小泉内閣は、この四法案含めまして、四つの法案について最重要課題だ、これを通すために何とか十九日まで、こうおっしゃっておられますが、なかなか時間的な制約もあって、延ばさなきゃならないかなという気持ちはあります。しかし、国民の皆さんが望んでおられるのは、この郵政四法案の成立を図ることではなくて、むしろ先月の月例経済報告で景気が底を打った、そう竹中大臣は言われたけれども、その後直ちに、日本経団連の奥田会長は、そんなことないぞ、こう否定されているわけですよ。
 まだまだ私たちは景気が回復したと思っておりませんし、大変申しわけないですが、小泉内閣で果たして景気回復について一年間どういうことをやってこられたのか、野党的な発言かもしれませんけれども、私はあえてこのことを申し上げたい。そういうことをやらないから内閣の支持率が下がるんですよ。
 ぜひこのことを大臣から、閣僚懇談会というのがどういう性格のものであり、いつ開かれるのかわかりませんけれども、閣僚懇のときにはぜひ大臣から総理に進言していただいて、やってくださいと。そのことを申し上げて、私の質問を結ばせていただきます。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、左藤章君。
左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。
 今、稲葉議員がるる質問させていただきましたけれども、その点でダブる点があるかと思いますけれども、確認の意味で、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 先ほど、平成十年の中央省庁等改革基本法の問題、そして十二年度の行革大綱の問題で、公社化に合わせて民間事業者の参入について具体的に検討に入ろう、こういうことでございますけれども、やはり我々、常識的に考えますと、公社化をして初めてどうなるのか、しっかり検証してから民間参入を入れるというのが常識的な判断じゃないかな、我々はそう思うんですね。
 また、閣議決定、非常に大事なことでありますけれども、十年度はこれは法律なんですね。こっちはれっきとした国会を通った話でありまして、行革の話というのは、閣議決定であります。この辺の、法律の方と閣議決定のどちらを優先するかという疑問もあるわけでありますので、その辺について総務大臣の御見解を賜りたいと思います。
片山国務大臣 今、左藤委員御指摘がありましたが、中央省庁改革基本法は、公社についてはこういうフレームでやりなさい、それから、民間参入については具体的な条件を検討するものとする、こういうことを決めたわけですね。それに基づいて、平成十二年十二月の行政改革大綱で閣議決定として、公社化に合わせて民間参入をやる、こう決めたわけでございまして、法律をどう読むかという議論がありますけれども、民間参入をある程度前提にしたような解釈をされて十二年十二月の閣議決定が私は行われたものだ、こういうふうに考えております。その閣議決定に従って、その後、去年の一月六日から郵政省が総務省になったわけでございますけれども、この公社化に取り組む、民間参入も検討すると。
 しかし役所だけであるということで、先ほども申し上げましたが、公社化研究会をつくりまして、そこで御議論いただきましたら、三つの案があると。条件つき全面参入と段階参入と部分参入と。しかし、三つの案では、条件つき全面参入がいいんではなかろうか、こういう中間報告をいただきましたので、それに基づいて法案化して、この国会で御審議をいただいている。
 閣議決定と法案とどっちが重いか、こういうことでございますけれども、それは、法律は国会の、立法府の承認を得て国民の意思として決まるんですから、法律の方がもちろん私は上だと思いますけれども、法律の具体化として行政府で政府の意思を決めたわけでございますから、そこは一連のものとして御理解いただいたらと考えております。
左藤委員 確かにそのとおりであると思います。しかし、やはり国会が一番、最高機関でありますので、我々の御意見を聞いていただきながらこの法案の審議を進めていただきたい、このように重ねてお願いを申し上げます。
 それと、公社化になりますと、先ほど大臣お話がありましたけれども、民間的な経営感覚でやるんだ、自律的で弾力的な経営が可能となります、こういうことですが、昨年ちょうど十一月に、この委員会でもそうですが、ワンストップサービスというのが通りました。また、地域ではひまわりサービスというのを今やっております。郵便局は地域社会に非常に密着したサービスをしておるんですが、この公社化によってさらに地域社会に充実したサービスを提供する必要があるんじゃないか、また大いに期待をされているんじゃないか、このように私は思います。大臣の御見解はいかがなものでございますか。
片山国務大臣 言われるとおり、今全国二万四千七百あります郵便局のネットワークは、先ほども言いましたが、私は、国民共有の生活インフラ、セーフティーネットだ、こういうふうに考えております。できるだけこれを活用した方がいいと思いますね、百三十一年の歴史があるわけでございまして。
 そこで、昨年の国会で御審議を賜りまして、市町村の証明書の受け付けや交付の仕事を郵便局でもできるようなワンストップサービスの法案を通していただきまして、現在、日本じゅうの市町村でそういう市町村と郵便局との協定の締結をやっていただきますけれども、そういう動きが今広がっております。
 また、法律に基づきませんでも、例えば、いろいろな災害のときの防災協定、廃棄物投棄あるいは道路損傷のそういう情報提供を郵便局の外務職員の方にしてもらうとか、ごみの袋だとかそういうものを郵便局で頒布というんでしょうかね、そういうことをやっていただくとか、子ども一一〇番、子供が不審者なんかについてこられたりした場合に郵便局に駆け込んでもらうというようなことだとか、今いろいろなことを事実地方もやっておりまして、もちろんひまわりサービスもそうでございますけれども、私は、そういう意味では、郵便局はコミュニティーの一つの拠点になっている、安心、安全の拠点になっている、こういうふうに思っております。
 我々は今、市町村合併を全国的に推進しよう、今三千二百十八あります市町村を、できれば三分の一を目標に市町村合併をやろう、こう考えておりますが、そうなりますと住民の方と市町村役場がちょっと距離が遠くなりますので、そのかわりと言ったら言い方がよくないかもしれませんけれども、いよいよ郵便局がコミュニティーのセンターになってもらう、そういうことも考えたらどうだろうか、こう思っておりまして、今委員御指摘のように、そういう意味での郵便局の役割、地域におけるウエートはより高まっていくものと考えております。
左藤委員 今本当にすばらしい答弁を大臣からいただきました。これを聞くと、国家公務員の人たちが非常にサービスをやってくれているわけですね。これは、今みたいなお話を聞くと、この今回の法案ではありませんけれども、もし民間だったらどうなるのかな、そんなもうからないことをだれがやるのかな、ふと、今、大臣の答弁を聞きながら思った次第でございます。
 次に、この公社化についての資本の件、それから三十五条にありますけれども、国庫納付金の件についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 設立当初の資本が大体約一・九兆円と言われておりますけれども、郵政公社は、貯金、保険もあります。これは、民間の金融機関でいいますと、三百五十兆となると非常に、自己資本比率を考えると、私の考え方、いろいろな先生方のお考え方もそうなんですが、二十五から三十兆の資本が要るんじゃないかな、一・九兆じゃ余りにも過少過ぎないか。
 また、他方では国庫納付金云々ということも書いてある。私は、やはりそういう資本の充実をして初めて、それからその状態を見ながら国庫納付金について云々というのが普通じゃないかな、このように思いますので、その辺の御見解と、この国庫納付金について財務大臣といろいろなお話があったのか、また、あったのならその中身をひとつ御説明を賜りたいと思います。
片山国務大臣 今委員御指摘のように、国営公社に移行するときの公社の資本金を幾らと考えるか、これはいろいろな試算が実はあるわけでありますが、学者の方、有識者の方の一応の試算では、約一兆九千億円だろう。こうしますと、今の郵政公社の事業量あるいは郵貯や簡保のスケールからいいますと、過少資本であることはもう間違いないんですよ。ただ、国営公社ですから直ちにその過少資本で問題は起こりませんけれども、これがもし国営でなければ大変な過少資本ですよ。そこで、そういう御指摘をいただきまして、我々は、そういう意味では、経営上の各種のリスクを回避するためにもいわゆる資本金の充実を図っていかなければならない、こういうふうに考えております。
 そこで、公社になる場合に、国でなくて公社になるんだから国庫納付金をひとつ考えてくれというのがこれは基本的に財務省の考え方ですね。税金をまけるんだから、あるいは支払い保証を初めとしていろいろな公的な保護を与えるんだから、国庫納付金を考えてほしい、ほかのこういう似たようなものでも例がある、こういうことでございますけれども、私は、今言いましたように、大変な過少資本であること、経営の状況がもう少しどうなるかわからないということ、民間参入ということも当然考えられますので、そういうことの中でどう考えるかということで、大分財務大臣とも話しまして、とりあえず経営の健全性の確保に支障を及ぼすことがないと認められる範囲内で公社の資産及び債務の状況その他公社の経営の状況を勘案しながら考える。
 それじゃ具体的にどうするか。算定の方式、額、それは今後、そういう経過の中で状況を見て政令で決めていこう、政令で定めるところにより、政令で定める基準で国庫納付ということを考える。ただ、今言いましたように、公社の経営の健全性は損なわない、いろいろな状況を全部カウントして、念頭に入れて、その上でだ、こういうことで財務大臣と私の合意は成立いたしたわけでございまして、具体的なことは今後の議論、こういうことになりますが、公社の立場からいうと、中長期的にはプラスが出るというようなこともありますし、法律に基づいて各種の優遇が与えられているということを踏まえまして、国庫納付金については検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
左藤委員 やはり、金融監督庁に検査をしていただくということもありますし、これは将来どうなるかわかりませんが、先ほど稲葉議員がおっしゃったような、民営化するとかいうことになってきたら大変な大問題で、そんなところへお金を預けたり生命保険に入ったりすることはできないわけでありますから、たとえ国営であっても安心して国民が預けたり入れる、保証金みたいな資本を充実することは非常に大切だと思いますので、先ほどお話ありましたように、まず資本を充実していただいて、それからひとつお願いを申し上げたいと思います。
 それから、この公社化の中で、いろいろなところへ出資ができない公社化ということになっておりますけれども、郵便事業の今後の経営環境でどうなるかわからないと先ほどお話ありました。そうすると、消費者のニーズに対して機動的に、なおかつ効率的に対処するには、ある程度どんな対応でもできるように、例えば出資でもできて何かするということもできるように検討すべき、またその余地を残すべきじゃないか、私はそう思うんですが、統括官の方からひとつ御返答をお願い申し上げたいと思います。
野村政府参考人 お答えいたします。
 公社の出資につきましては、郵政事業の公社化に関する研究会、この中間報告を踏まえまして、郵便事業につきまして、競争に対応しつつユニバーサルサービスの維持を図る、こういったためには、公社に経営の自由度を付与する観点で、必要な範囲に限り民間企業に出資できるようにする、こういった方向で検討、調整を行ってきたところでございますけれども、関係省庁との調整に予想以上に時間がかかりましたこととか、出資が適当な事業の範囲等、公社にふさわしい出資制度とするためのなお検討すべき課題があったことにかんがみまして、残念ながら今回の公社法案には出資の規定を盛り込まないこととしたものでございます。本件につきましては引き続き検討を進めてまいりたい、かように考えているところでございます。
左藤委員 おっしゃったように、ぜひひとつ、いろいろな弾力的運営をさせていただくためにも検討していただかなきゃならない、私はそう思います。
 それで、信書便に関係することを一つ質問させていただきたいと思います。
 実は、先ほど稲葉先生から質問がありまして佐田副大臣が御答弁をなさった三種、四種についての質問をさせていただきたいと思います。
 この制度は、もちろん、御存じのように、情報の入りにくい人とか、過疎地の人とか、障害を持つ人、そして通信教育を受けている人等々、社会福祉や報道の面で大きな役割をしていると思うんですね。一部マスコミに、これが廃止されるんじゃないか、こういう報道がありました。そうすると、あちこち、皆さん方、先生方もそうだと思いますが、障害者団体とかいろいろなところからも含めて、これを残してほしい、こういう話が出ておると思います。もし廃止というのが民間参入のためだったら、これは大問題じゃないかと私は思います。
 改めて、今回の改正でこの制度はどのようにするのか、制度を残すのかどうかを含めて、先ほど佐田副大臣がおっしゃいましたけれども、総務大臣からひとつ御返答を賜りたいと思います。
片山国務大臣 左藤委員御指摘のように、第三種、第四種の郵便物の制度は、学術、文化、教育、あるいは目の不自由な方等の福祉の増進というような重要な役割をしてきたものと我々も認識いたしております。
 公社化後におけるこういう政策的料金減免の扱いについては、本来は公社に判断してもらう、公社の経営判断にゆだねるべきことではないかという意見もありましたけれども、私どもは国営の公社でございますので、その社会的な役割にかんがみ、改正後の郵便法においても公社が提供すべき仕組みだ、こういうことで法定いたしております。
 したがいまして、公社において幅等は御検討いただかなければなりませんけれども、仕組み、制度としては残り、引き続きそういう提供をしてもらうことになると考えております。
左藤委員 本当にありがとうございます。絶対、その三種、四種を残していただきたい、これだけ重ねてお願いを申し上げたいと思います。
 ところで、俗に、先ほどから民間参入云々と言われている中で、利用者のためにどうである、こう言われますけれども、利用者と言っているのは一体何だろう、一般国民なのか、大口利用者なのか、それとも一部の団体なのか、確認のため、ひとつ大臣から御答弁を賜りたいと思います。
片山国務大臣 これは、簡単に言いますと国民ということですね。ただ、今の郵便局の利用は、ユニバーサルサービスという言葉が何度も出ますけれども、特に個人の方、あるいは貯金でいえば、あるいは簡保でいえば小口の方、こういうところがやや念頭にありますけれども、今回、民間に幅広く入ってもらう、特に特定サービス事業というのは付加価値の高いサービスですから、三時間で届けてくれとか、本人に必ず渡してくれとか、貴重なものを送るんだから、そのためには料金を高くする、こういうことでございますから、今、郵便局のサービスの念頭にあったものよりはかなり広がってくる、国民全般になるのではなかろうかと我々は考えております。
左藤委員 今おっしゃったように、国民全体に対するものだということになりますと、民間参入するとユニバーサルサービスがどうなるのだろう、非常に何度も議論になっているところですね。参入業者によってクリームスキミングになるとどうにもならない、我々は非常に心配をしておるわけであります。
 特に都市、私は大阪なんですが、大都市と地方との地域間格差が一層開くんじゃないか、国民、利用者の生活を守るためにはどうしたらいいんだろう、この法案についてその点はどのようになっておるか、佐田副大臣から御返答をお願い申し上げたいと思います。
佐田副大臣 左藤委員の言われるように、これは先ほども御質問ありましたけれども、基本的には利用者の利益を守っていく、こういうことが非常に重要でありまして、料金も、あまねく公平に提供させていただきまして、言いかえるならば、ユニバーサルサービスが確保されている。郵便事業への民間参入に当たっても、このユニバーサルサービスを確保していく、こういうことは最も重要なことだと私は思っております。
 また、郵便事業では、需要、例えば大都市に偏って、東京以外はほとんど赤字であるということ、またポスト投函が不要な大口差し出しの比率が高いなど、クリームスキミングに対して脆弱であるという特性がありまして、そのために、参入事業者に対しましても一定の条件をつけなければこれは平等にならない、こういうことであります。
 そこで、今回の法案では、全面参入が可能な一般信書便事業者に対しましては、クリームスキミングを防止する観点から、全国における引き受けそして配達、または差出箱の、随時、簡易な引き受け方法の確保であるとか、全国均一料金などの義務を課すことによって、平等性というかユニバーサルサービスをしっかりと守っていく、こういうふうな方向でやっております。
左藤委員 今、佐田副大臣から、差出箱、俗に言うポストだと思うんですが、これについてお話がありました。いろいろ、新聞等を見ますと、某民間会社が今度の法案で差出箱の設置の問題で何やかやと言われております。
 ところが、大臣さっきおっしゃったように、宅急便はほぼユニバーサルサービスができている状況じゃないかと言っているんで、ちょっと相矛盾するんじゃないか。要するに、宅急便はよくて、信書と言われるはがき、封書は、ではちょっとおかしい、こういうよく理屈にわからないことをおっしゃっているんですが、そういうことになりますと、民間業者が差出箱を本当にきちっと離島とか僻地と言われるところまで設置していただけるんだろうか、非常にこういう疑問があります。
 今までは十七万七千個あって、ある一定の人口、また距離というのをしておりますけれども、やはり民間参入業者についてもこういう条件が必要じゃないかなと私は思います。私みたいに大阪に住んでいますと、たくさん取扱所があるわけなんですが、田舎に行くとないわけですね。この田舎をしっかり守らないと、同じような民間のサービスを平等に享受できないんじゃないかという不安が非常にあるんです。
 私は、これについてどうしたらいいのか、競争のメリット、都会だけ安くなって田舎は全然安くならないんだというのでは意味がありませんので、このメリットを平等に享受するためにはどうするのか、ひとつ佐田副大臣から御返答を賜りたいと思います。
佐田副大臣 それは確かに、左藤委員が言われるように、やはり偏ったサービスということがないようにしていかなくちゃいけません。
 法案においては、送達する信書の範囲に制限を設けない全面参入を認めるに当たりましては、全国のすべての利用者が民間参入の効果を享受できるような設計、まあ制度設計でありますけれども、行っておりまして、その一環としましても、地方を含め、だれでもいつでも簡易に使えるとともに、信書の秘密が確実に守れるような引き受け方法が提供される、今、ポストの話が出ましたけれども、この辺が非常に重要なことであります。
 そこで、法案では、参入の許可基準の一つとしまして、信書便物の引き受けの方法の要件を定めているところでありまして、信書便差出箱もこの引き受け方法の一つでありますけれども、具体的な設置の基準については、各地域の人口動態等の技術的、専門的な事項を踏まえ定めざるを得ないことから、法律に規定する範囲内で省令委任することとしておるわけでありまして、いわゆる距離であるとか人口であるとかこういうことも踏まえて考えていきたい、かように思っております。
 また、信書便差出箱以外の受け付け方法であっても、秘密を保護するため、適切であり随時かつ簡易に差し出すことを可能とするものであれば認めることとしております。
 いずれにいたしましても、これらの受け付け方法についてはパブリックコメントを通じてこれから考えていくわけでありますけれども、いずれにいたしましても、きちっと秘密を守っていく、こういうことも非常に重要なことだ、かように思っております。
左藤委員 今お話があったように、やはりそういう差出箱をしっかりと設置していただきたい。一部、九万九千という民間に対して案がありますけれども、それも含めてやはり必要じゃないかな、このように思うのです。
 ところが、今お話あったのですが、六月二日の日経新聞によると、郵便ポスト民間も共用という記事が出ております。これはどういうことなのか。私は初めて聞いた話で、どうなるんだろう。この検討に入った、公社が保有する郵便ポスト共用を認める方向で検討に入ったという記事が出ております。これは、事実なんでしょうか、リクエストなんですか。また、事実なら郵便局員が集配したものを仕分けなあかんわけですね、どんなして仕分けしはるんか。また、作業がごちゃごちゃになってかえって混乱しないか。このようないろいろな問題があるわけですね。
 そして、我々も審議をしながら新聞で初めてわかった、こういう状況ですが、こういう記事を見ながらどうなっているんだと私は思いますので、これは大臣からひとつ御見解をいただきたいと思います。
片山国務大臣 六月二日の日経新聞は事実ではありません。我々の方はそういうことを考えていません。
 今お話しのように、ポストの共用や集配業務の委託のような形態での公社の業務委託をやるということは考えておりませんし、公社化研究会も、それは適当でない、こういう報告をいただいておりますので、あれはそういうことではないと思います。
左藤委員 わかりました。
 それと、よく民間参入でもめるのが、ダイレクトメール、これが信書なのかどうかという問題があるわけですね。
 俗に言うクレジットカード、地域振興券とかダイレクトメールというのはグレーゾーンとよく言われています。旧郵政省の「信書のしおり」によると、これは必ず信書に入っているわけなんですが、現実は皆さん御存じのように民間がやっているわけですね。
 やはりこれははっきりしたらどうですか。政省令で云々というより、法律で明記して、民間にもそのかわりそういうことでやってもらう、また公社は公社で頑張ってもらうということにしないと、何かうやむやとして民間会社も困るし、我々も、何か悪いことしているのかなと言いながら民間に頼む人も出てくるだろう、このように思います。
 これは、そういうことで法律にはっきりすべきだと私は思いますけれども、総務大臣の御見解を伺いたいと思います。
片山国務大臣 信書の定義につきましては大変な御意見がありまして、我々もいろいろ検討いたしましたが、これまで確定している判例等に基づき、先ほど稲葉大和議員からもお話がございましたが、ああいう判決に基づきまして、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」こういう規定を設けたところでございます。
 ただ、これだけの規定ではなかなか難しいので、どうするかというので、あとは広く御意見を聞いて、パブリックコメントにもかけて、ガイドラインを作成して信書の範囲を明確にいたしたい、国民が納得できるようなものを出したい、こういうふうに思っております。
 ダイレクトメールといっても、一概に言いますが、定義がないのですね。これも今いろいろなものがあるのです。それからクレジットカードについても、あれを通知文と読むか読まないかでまた扱いが変わってくるのですね。
 こういうことでございますので、ぜひこの点はガイドラインでしっかりとした答えを出させていただければ大変ありがたいと我々は考えております。
左藤委員 そのお答えをいただきながら、やはりもう少し、ある程度法律というものを踏まえてはっきりした方がいいんじゃないかなと私は思います。
 最後に、時間がありませんので、一つお願いを申し上げたいと思います。
 御存じのように、北海道の郵政局というのは七百六十ほど赤字だそうでございます。聞いたところによると、東京の中央郵便局というのは八百億の黒字という。つまり、いかに都会と田舎の経営状態が違うかということであります。ですから、やはりこれは公社が、国が責任を持って国民にユニバーサルサービスをやる。そうしないと、先ほど申し上げましたように、田舎というのはますます、はっきり言って、バスもなくなるわ鉄道もなくなるわ、そういう面で郵便物までそうなってくるとなったら本当に大変なことになってしまうと私は思います。
 そういう面で、民間が参入される方がおられたらありがたいことで、競争していただきたいと思いますが、やはり佐田副大臣おっしゃったように、ユニバーサルサービスをしっかりと確保していただいて、そしてお互いの競争メリットを出していただくようにお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、玄葉光一郎君。
玄葉委員 玄葉光一郎です。私は、民主党の総務部門の責任者でもありますので、冒頭、基本的な私たちの党内の議論あるいは考え方を申し上げたいというふうに思っています。
 私たちの党内も、自民党も恐らくそうであるかもしれませんけれども、さまざまな意見があるのは事実であります。ただ、比較すれば、民営化するべきだという人たちがほかの政党よりは多いだろう、そう思います。一方、それはあってはいけない、そういう意見があるのも事実であります。
 ただ、これから少し申し上げることについては、既に昨年の十一月あるいは十二月ぐらいの時点で党内のコンセンサスとして決めたことであります。端的に、六点だけ申し上げたいというふうに思います。
 昨年の十一月ですからやや抽象的ですけれども、一つは、郵政公社発足時の改革は、郵便業務に関する民間参入については、全面的な民間企業参入を認めるけれども、参入企業に対してはユニバーサルサービスを義務づけるということが一つですね。二つ目は、現行の郵便局ネットワークは原則維持する。三つ目は、郵貯、簡保それぞれ預入限度額あるいは加入限度額がありますけれども、これらについては引き下げる。四つ目は、旧三公社に対する課税を念頭に公社に一定の課税を行う、また民間銀行における預金保険料相当分を国庫納付するということ。そして五点目、特定郵便局制度を改革しなければならない。六つ目は、メルパルクとかメルモンテあるいはファミリー企業の問題、これも改革をしなきゃいけない。
 こういう六点については、いろいろな議論がありましたけれども、昨年の十一月、十二月の時点でもうコンセンサスとしてまとめています。
 その上で、この四法案でありますけれども、この四法案に対する賛否は、今申し上げた点に加えて、これからさまざまな質問が私たちの党内からも出ると思いますけれども、それに対する答弁、そして利用者の立場、ネットワークの維持、そしてマクロの経済、金融、これらを総合的に勘案して判断をしたい、そう考えております。
 以下、質問をさせていただきたいと思っていますが、具体論に入る前に、一つ総論としてお聞きしたいと思っています。
 それは、この法案が本会議で議論されたときに、小泉総理大臣は、本法案により郵便事業へ民間が参入できるようになるということは、私としては、民営化に向けた一里塚であると考えております、こういうふうに答弁をしているわけでありますが、総務大臣も同じ認識だというふうに考えてよろしいですか。
片山国務大臣 冒頭、玄葉委員からいろいろなお話がございました。基本的に我々と考え方が似ている点も多々ございますので、一層の御理解と御協力をよろしくお願いいたしたい、こういうように思っております。
 そこで、今の質問でございますが、当面我々は、この四法案で国民に大変いいものができたなと喜ばれるような公社制度にしたい、今すべてのエネルギーをそっちに注いでおりますけれども、御指摘の小泉総理の発言につきましては、総理は昔から郵政民営化が御持論ですよね。これは一貫されておるので、公社化後についてはという総理としてのお考え、願望を言われたものと私は思います。
 具体的には、公社化後のあり方につきましては、現在、総理直属の懇談会でいろいろ議論して意見を集約している段階ですね。だから、これが恐らく夏ごろかということでございますが、取りまとめが行われる。私は、その後は、国民的議論で、国民の選択にまつべきではないかということを総理にも申し上げ、総理もそうだ、こう言っておられますから、そういうことで進むべきではなかろうか、こういうふうに思っております。
玄葉委員 内閣総理大臣が、この法案の位置づけとして、民営化に向けた一里塚だと、内閣総理大臣が発言をしていて、これは基本的に小泉政権の認識というふうに普通だったら考えるであろうと思いますけれども、そういう認識でよろしいですか。
片山国務大臣 総理は何度も、自分は民営化が持論だ、自分の考えだと。ただ、広く御意見を聞いてどうするかを考えたいということで、総理の郵政三事業を考える懇談会というのをおつくりになって、そこで今けんけんがくがくの議論が行われているわけでありますからね。その際、総理は、冒頭のあいさつで、自分は民営化論者だけれども、どうぞ自由に御議論ください、それで皆さんの意見を集約してください、こういうことを言われておりますので、私は、その総理懇談会の結論によってどういうふうにするか、最終的には、何度も言いますけれども、国民的議論の中で方向を決めていくのが正しいのではなかろうか、こういうふうに考えております。
玄葉委員 これは大事な問題だと思うんです。なぜかというと、結局、この法案が民営化に向けて一里塚として出された法案なのか、そうではないのかで、公社の制度設計のありようもこれは議論が変わってくる可能性がありますね。例えばさっき出資規定の議論なんかもありましたけれども、議論が変わってきますよ。
 だから、いずれにしても、どちらなのか。民営化に向けた一里塚としての法案なのか、いや、そうではないということなのか、イエスかノーかでお答えいただけますか。
片山国務大臣 せんだって、玄葉議員から日本郵政公社法案外三法案に関する質問主意書が出されまして、それについて、内閣として答弁書を出しております。
 「御指摘の平成十四年五月二十一日の衆議院本会議における「私としては、民営化に向けた一里塚であると考えております。」との小泉内閣総理大臣の答弁は、政府として郵政三事業の民営化を決めたということを表明したものではなく、郵政三事業についての政治家としてのかねてからの持論を述べたものである。」こういうふうに閣議として、正式に政府として決めて、答弁させていただいておりますので、ひとつ御理解を賜りたい。
玄葉委員 そうすると、今の質問主意書への答弁という形で読まれた見解が政府の統一見解、こういうふうに考えてよろしいのですか。そして、それは小泉総理も納得の上そのような答弁書を、当然、主意書でありますから、これは閣議決定されるべき、そのような理解でよろしいですか。
片山国務大臣 本日の閣議でこれを正式に決めましたので、これは総理の見解であり、内閣の考えであります。
玄葉委員 本会議で言われたことを撤回して、いわば個人的な考えなんだ、それを本会議で述べた、こういうことですね。私は、言葉として非常に軽いなというふうに言わざるを得ない。ただ、そういう統一見解だということがきょうはっきりしたわけであります。(発言する者あり)後でまた詰めていただければと思います。
 次に、信書便法案について質問をしたいと思います。
 メディアは、この信書便法案について、改革のいわば本丸のような扱いをしているわけでありますけれども、私は、果たしてそうなのかなという感じが率直にしています。
 仮に小泉さんの立場に立ったときに、胸を張るのですけれども、胸を張るような法案なのかという気が私にはしているのですけれども、一つは、まず、法案の目的が一条に書いてあります。法案の目的は、信書、いわば封書とかはがきなどの送達業務について、あまねく公平な提供を確保しながら、もう一つは、利用者の選択機会の拡大を図る、これがいわば法案の眼目、目的だというふうに思います。
 さて、最も話題になった、参入するのではないかと言われたヤマトが参入断念をしましたが、これからまだどうなるかわかりませんけれども、参入断念そのものをどう考えているのかということもありますし、そういう発表を受けて、そもそも、この一条の目的というのは、この法律をつくっても本当に達成できるのか。あまねく公平な提供を確保して、かつ、さっきも若干出ていましたけれども、利用者の選択機会の拡大を図ると。果たしてこの目的は達成できるのか。いかがですか。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
片山国務大臣 我々は、総理のお考えで、民にできることは民にやってもらう、こういうことでございますから、郵便事業への民間参入、これはやってもらう。
 ただ、郵便事業というのは、これは事業の特殊性もありまして、ユニバーサルサービス、あまねく公平な提供ということが一つある。そこで、もしそのユニバーサルサービスの提供を民間参入の事業者の方に義務づけないとしましたら、いいところをとるに決まっていますね、それは企業の論理として。クリームスキミングが起こる。そうなりますと、もうからない、悪いところだけが全部公社になるわけでございまして、それは公社の経営がもちません。そうすると、公社の経営がもたないから、公社も自律的、弾力的な経営ですから、悪いところをやめていく。そういうことになりますと、結果としては、国民が今のサービスよりもっと悪いサービスを受けざるを得なくなる。
 そこで、我々は、全面参入してもらうけれども、ユニバーサルサービスの確保はこれはぜひお願いしたい。そういうことで、この法律の目的にその二点を書いているわけでございまして、そういう体力があって、その辺をお見通しの者が入ってくれることによって、私は、競争が促進して、サービスがよくなって、料金が下がって、あるいは公社の方も、やはり競争ですから、自分の方でもいろいろなことを考えて、体質を強化しなければということで、プラスの効果があるんではなかろうか、こういうふうに考えております。
 今、具体の事業者の名前をお挙げになりましたが、この問題について、私は具体的な事実を確認しておりません。報道しか知りませんので、事情はわかりませんけれども、今後国会の議論でいろいろなことがさらにわかってくる、あるいはこれから、何度も言いますけれども、ガイドラインで信書の範囲を明らかにさせていただいたり、いろいろなユニバーサルサービスの条件も細かく決めさせていただくことによって、よし、それならやってみよう、こういう事業者の方が出てくることを我々は期待しておりますし、特定サービスの方は今何社かそういう具体的な動きがあることを我々は承知いたしておりますが、これは、少なくとも、それについての需要があるとすれば、私は、国民にとっては大変なサービスの向上になる、プラスになるんではなかろうかと考えております。
玄葉委員 民間参入の条件が、いろいろこの法案には規定されているわけであります。ユニバーサルサービスの定義にもいわば関連するような話だろうというふうに思いますけれども、先ほど私が申し上げましたように、うちの党内も、また私自身も、ユニバーサルサービスの確保というのは必要だ、ネットワークの維持は必要だというふうに思っています。思っていますけれども、その民間参入の条件というのは必要最小限のものじゃなきゃいけない、一方でそう思うわけですね。その考え方自体はどうですか。
片山国務大臣 我々も必要最小限度のものでいい、こういうふうに思っておりまして、ポストの数ですね、差出口を幾らにするか、今後いろいろな状況を見ながら検討していかなければなりませんが、少なくとも、今郵便局ネットワークが持っているほどの差出口の必要はないんではなかろうかと考えております。
 例えば、料金の最高限度だとかあるいは配達方法等については、これは全国あまねく一通でも引き受けて配っていただく、そういう体制をとっていただかなければ、こういうふうに考えております。
 具体的な条件は法律のゆえんに基づいて細かく省令で決めさせていただこう、こういうように思っておりますが、決める際にはできるだけ透明度を高くしまして、広く意見を聞いて、国民の皆さんから見て納得できるようなものにしていきたい、こう考えております。
玄葉委員 繰り返しますけれども、私もユニバーサルサービスの確保というのは必要だと思っているんです。ただ、必要最小限のものでなきゃいけないだろうというふうに思っています。この法律を最初に読んで、本当にこれは必要最小限なんだろうか、必要以上の規定というのがあるんじゃないかと正直思いましたね。
 例えば、二十四条にこういう規定がありますね。「総務大臣は、」「許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。」として、二号に、「一般信書便役務を提供するための協定又は契約でないこと。」わかりやすく言えば、例えば、A社とB社が協力してユニバーサルサービスを確保する、これはだめですよということですね。わかりやすく言えばそういうことですね、この二十四条の二項の二号というのはそういうことだと思いますよ。A社とB社が協力して利用者の立場に立ってユニバーサルサービスの確保をきちっとしましょう、これはだめだと。
 これは、なぜだめなんですか。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
片山国務大臣 どういう形態が予想されるかわかりませんが、やはり郵便事業というのは信書ですし、そういう意味では責任が明確でなきゃいかぬ、こういうことでございまして、どういう協定になるのかということも実はありますので、我々も大分、それは大変検討したところなんですよ。公社化研究会の方もそういうことは適当でないという御意見でございましたので、今回はそういう格好にさせていただきましたけれども、これは私個人の意見ですけれども、状況によってそれは検討の余地があると私は思っております。
玄葉委員 私は、これは最初に驚きましたね、一読して。つまり、最初からオミットなんですよね、最初から。今、協定の中身がどういう中身になるかわからないといったら、じゃ、協定の中身を許可制にしたらいいわけですよ、率直に言って。最初からオミットなんだから、A社とB社が協力してユニバーサルサービスの確保をしますと。
 私は、最初にも申し上げましたけれども、ユニバーサルサービスは確保しなきゃいけない、そして、利用者の立場に立たなきゃいけないということですよ。利用者の立場に立ったら、どういう形であれ、基本的にユニバーサルサービスが確保されていればいいんじゃないですか。第一義的にはまずそこから始まらないと、答えを間違えるんじゃないか、そう思うんですね。ですから、必要以上の規定にどうしてもなっちゃっている。
 責任区分という話がありましたけれども、例えば、仮に二社でやったら、仮に二社とも違反したら二社とも処分すればいいわけで、方法は幾らでも私はあり得るんだろうというふうに思っています。私には、二十四条というのは、果たしてどうなのかな、必要以上の規制に見えます。
 今後検討していく、個人的には検討の余地があるということでありますから、これから期待をしたいというふうに思いますし、私はこういう条文を読んじゃうと、いや、本気なのかなと思っちゃうんですよね。総務省は民間参入を目的とする法案を、第一条で目的に書いておきながら、本当に本気で参入させたい気でつくっているのか、そうじゃないのかというのが私はわからなくなっちゃうわけですよ。目的にかかわる話なんです。本気なんですね、させたいんですね。どうなんですか。
片山国務大臣 それは、わざわざ信書便法案という法律を出すということは参入させたいんです。ただ、ユニバーサルサービスは確保しなければならない、そのための、例えばその安全度というか確実度といいますか、そういうことを念頭に置いている、こういうことであります。
玄葉委員 私たちの党内にはこういう議論もあります、あるいは党内だけじゃありませんけれども、これはそもそも論ですけれども、議論の紹介という形で申し上げますけれども、そもそも公社の監督者がいわば総務省ですね。その公社の監督者が民間参入をする許認可を握っている、許認可省庁になっている。俗によく、親子が一緒に審判とプレーヤーをやっている、こういう議論がありますね。そもそも、仮に民間の立場に立てば、確かに嫌は嫌ですわね。
 もしこれが総務省じゃなくて、例えば違う省庁の、あるいは内閣府なんかの委員会に許認可権を持たせるということも考え方としてはあり得たんだろうと思いますけれども、そういう考え方は全くあり得なかったんですか。
片山国務大臣 いや、それは全くないとは言えませんけれども、玄葉委員、日本は法治国家ですから、法律に基づいて我々は行政をやっているんですよ。法律に基づいて、仮に公社を監督するならしますし、民間の事業者の参入についても監督するわけで、むしろ両方がわかる方がバランスがとれるんです、よくわかるから。それで、別々に判断してやるよりは私はずっといいと思うし、それは法律によって行政の仕事をやっているんで、恣意的にやるわけじゃないんですね。
 それから、役所というのは、御承知のように、釈迦に説法ですけれども、機能によってきちっと組織が分かれておりまして、それはそれぞれ、今言いましたように、法律、政令、その他に基づいて行政をやっているわけでありまして、そこが混同するんなら、これはもういろいろなそれについてのチェックの仕方やあるいはいろいろな行政処分だとかそういうことはあるわけであります。
 いろいろな議論はあると思いますけれども、私はその点はぜひ、総務省なり、総務省のつくる法律に基づく行政ですから、そこは信用していただければ大変ありがたいと思っております。
玄葉委員 そのテーマはこれでやめますけれども、民間参入の条件で、先ほどの議論の中で、許可の基準は九条その他にいろいろと規定してありますけれども、具体的な基準というのは、とにかく省令で、ガイドラインでということになっているようであります。
 これは、例えば、先ほど議論が出たような郵便ポストの共有なんという話が新聞に出ましたけれども、これはもう絶対考えていないという答弁があったように思いましたけれども、そのとおりですか。
佐田副大臣 先般出たニュースの話だと思うんですけれども、これにつきましては、先ほどの大臣の答弁もありましたように、これは研究会でも議論されましたけれども、あくまでも別にやらせていただく、こういうことになっております。
玄葉委員 次に、信書の定義ですけれども、確認していきますから、端的に答えていただけますか。
 一つは、一般に民間事業者が、この法案ができて、現在配送しているものまで扱えなくなるんじゃないか、こういう心配をする声、向きがあります。メール便だとか商品券、ギフト券、そういうものがありますけれども、それは現行どおり、従前どおり、こういうことでよろしいですか。
佐田副大臣 信書の定義でありますけれども、委員御指摘のとおりでありまして、先ほども答弁にありましたように、昭和三十三年に最高裁の判例が出ておりまして、それにのっとって今まで判断もしてまいりました。そういうことを考えますと、私は、基本的に変わるということはありませんし、今後ガイドラインでこれも議論をしていきたい、こういうふうに思っております。
玄葉委員 メール便とかギフト券とか商品券、従前どおりだということですが、例えば、クレジットカードとかDM、ダイレクトメールとかはどうですか。
佐田副大臣 ダイレクトメールにつきまして言えば、一般にDMとは、商品、サービスを購入する見込みのある人に直接郵便で届ける広告とされているものであるが、そこに付されている文言や送付される対象の広がり等を含め、多様な形態が想定されるというふうに考えております。
 また、今お話がありましたけれども、クレジットカードについては、発行者から特定の会員に対して意思を表示し、または事実を通知する通信文が記載された信書に該当すると解釈してきておるところでありまして、クレジットカードの支払い手段として利用されているという側面に着目した場合に、記載された文言は通信文とは解せないのではないかということも言われておりまして、これらの事例を含めて、信書の概念への当てはめについては、具体的に整理するために、いろいろと御意見を聞きながらガイドラインを作成していく所存であります。
玄葉委員 何か今の答弁、ちょっとよくわからないんですけれども、そうすると、何となく今のニュアンスだと、クレジットカードでも、あるいは特にDMなんかは、細かい話なんだけれども、例えば同じDMの中でも、これは信書ですよ、これは信書ではありませんよというふうに、DMを幾つかに分けてガイドラインをつくっていく、そういうイメージですか。例えば、あるカード会社が全会員に商品の案内を出した場合あるいは特定の会員に商品の案内を出した場合、これは分けるとか、そういうイメージですか。
佐田副大臣 今委員が言われたように、いろいろな考え方がありますけれども、やはり基本的に、例えば、すべての者に知らしめる、そういうものにつきましては信書ではありませんけれども、特定の事実を特定の方に伝えるというものになれば、信書になってくるわけであります。
玄葉委員 そうすると、ちょっと細かい議論なのでもうやめたいんだけれども、同じDMの中でも分けることをしていくということですか。例えば、DMだって、不特定多数じゃない場合だってあるわけでしょう、特定のメンバーなんかはいいよとか、特定のメンバーだけに出すDMとか。
佐田副大臣 ですから、今ちょっと抽象的な言い方をしましたけれども、DMというものがすべて完全に定義されているわけじゃありませんから、そういう意味におきましては、今、委員の言われたような形になろうかと思います。
玄葉委員 そうすると、DMの中でも分けていく、こういうことですね。
 あと、これは余り議論していると時間がなくなっちゃうんですが、ただ、意見も含めて申し上げるんですけれども、私、この民間参入という議論は、どうも目標みたいなのがはっきりしない、そういうところがあるような気がしているんですよね。だから、何となく国民に十分な理解がされないという側面があるんじゃないか。何かわかりやすい目標みたいなのがないというか。
 例えば民間参入が図られて郵便料金が安くなりますとか、例えばですよ、そういう話なんかがあるととてもわかりやすいんですけれども、法案の目的の利用者の選択機会の拡大というのは、そういう料金の引き下げということも含む概念なんですか。含んでいるんですか、どうなんですか。
片山国務大臣 競争原理を導入する、いい競争をやってもらうということで、料金が安くなるとか今よりサービスがもっと丁寧になるとかということを、我々としては一応期待いたしているわけであります。
玄葉委員 確かに、料金の引き下げは結構大変だと思うんですよ。ただ、ファミリー企業の問題だとか、コスト高の原因はいろいろあるわけですよ、率直に言って。例えば、そういうことを削ることで料金を安くしますと一言仮に言えたら、これは一気に浸透しますね。これは意見も含めて申し上げておきます。
 次に、郵貯、簡保の議論をさせていただきたいと思います。
 公社化法の施行法案には、郵貯の預入限度額、簡保の加入限度額については現在の水準を維持する、こう書いてあるわけであります。そこで、まず総務大臣に確認をしたいというふうに思いますけれども、千四百兆円余りの私たちの国の個人の金融資産の中で、二百四十兆円プラス百十兆円の郵貯・簡保資金、もっと言えば、全体で五百数十兆の公的金融、この規模は果たして、日本全体のことを考えた上で、日本全体の金融も考えた上で適正規模だ、こういうふうに総務大臣はお考えになっておられますか。
片山国務大臣 その適正規模ということの概念があれでございますが、郵貯の立場から言わせていただきますと、御承知のように、平成十二年度、十三年度の定額貯金の集中満期による払い戻しでかなり減ってきましたね。二十兆以上減少してきましたし、また、その減少傾向は続くと我々は思っております。民間の方はふえているんですね。
 それから、簡保につきましても、本年度と来年度で十年満期養老保険が満期になるんですよ。だから、これも私は減少してくると。
 基本的には、金融資産に占めるシェアというのは大体郵貯が二割、それから簡保が一割ぐらいですね。これを適正と見るか適正でないと見るか、こういうことでございますけれども、我々の立場からいうと、全国あまねく公平に、しかも小口、個人を対象に今まで業務をやってきたわけでございますから、我々は今の状況を、今の委員の言葉をかりれば、まあ適正ではないかと考えております。
玄葉委員 適正であると。
 行政が考えるんじゃなくて、国民が考えるんだというやじがあったんですけれども、例えば、では政府は一方ではこう言っているわけですよ。いいですか、これは総務大臣も入っておられる会議だと思いますけれども、平成十三年の六月二十一日と九月二十一日のそれぞれ経済財政諮問会議ですね。それぞれ経済財政諮問会議で、とにかく、私たちの国の金融について、従来の預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇へと金融のあり方を変えるんだ、こういう決意を大方針として出しているわけですね、大方針として。あるいは、これまで我が国の金融は間接金融に大きな比重を置いてきた、しかし、起業、創業を支え、経済のダイナミズムを取り戻すとともに、家計が保有する金融資産の多様化を図るんだ、そして直接金融へシフトしていくんだと。これは政府の大方針でしょう。
 いや、私も、それこそ選挙のことを考えたら、預け入れ限度額とか加入限度額を引き下げろなんて本当は言いたくないんですよ。ただ、全体のマクロの金融とか日本経済を考えたときに、本当にどうなんだろうかと思うわけですよ。一方で、政府は、こうやってリスクマネーをどんどん出せ出せと言う。公的金融が肥大化し過ぎると一方で言っていて、今度総務省は、リスクマネーを出すな、こう言っているのと同じだと思うんですよ。一体政府の方針というのはどっちなんですか、総務大臣も入っていたと思いますけれども。
片山国務大臣 私も、経済財政諮問会議のメンバーでございますけれども、日本の金融市場について、間接金融中心で長い間推移してきていますよね、まだ。アメリカなんかに比べると大変直接金融のウエートが低いんで、これを上げなければならない、これは、私は、総論としては正しい、こういうふうに思っております。
 ただ、リスクマネー云々という議論はありますけれども、もっと直接金融に向かうためには、株式市場そのものがかなり努力してもらわなきゃいかぬと私は思いますよ。信頼性を回復する、国民から魅力ある商品を開発するとか、いろいろな自己努力も必要だと思いますね。トータルなんですね、議論は。
 それで、私が適正だと申し上げたのは、郵貯、簡保の資金のフローですね、流れを見て、私はこれが市場の大きな阻害要因になっているとは思わない、こういう意味でございまして、今もちょっと委員みずから言われましたけれども、行政がいい悪いじゃなくて、やはり国民の方がそういう意味での適正さ、適正規模というものを考えていくんではなかろうか、こういうふうに私は思っているわけでございます。
 今、郵貯、簡保につきましては、御承知のように自主運用でございまして、我々はそういう意味ではできるだけ市場に還流をする、こういうことを考えておりまして、できるだけ今後もそうしたいと思っております。
玄葉委員 さっき銀行自身が努力しなきゃいけないんだ、ほかに要因があるんだと。それは当然銀行自身が努力しなきゃいけないとか、税制だとかね……(片山国務大臣「直接の方」と呼ぶ)直接市場ですね。いわゆる市場整備、環境整備が必要だ、全くそのとおりですよ。
 だけれども、一方で公的金融がこれだけ肥大化している、それは全く理由にならないんだ、これもまたおかしいんですね。まさに大臣おっしゃったとおり、トータルで見なきゃいけない。トータルで見たら、これは全然関係ないとは言えないですよ、率直に言って。そのことはやはり我々、逃げないで向き合わないといけないんじゃないですかということですよね。
 さっき大臣が自主運用だから市場に流すという話がありましたけれども、ちなみに、これは自主運用ですが、郵貯・簡保資金というのは、幸か不幸か、安全な運用をせざるを得ないという、いわば宿命があるんだろうと思うんですよね。安全な運用をしなければならないというふうに言った方がいいんでしょうか、宿命が恐らくあるんだろうというふうに思います。現に、八割が国債を中心に現実に義務づけられているようなものですね。これは、今後、市場に流すというお話がありましたけれども、こういう自主運用の中身の方針は変わるんですか、変わらないんですか。その辺はいかがですか。
 それと、せっかくなんでもう一つ。市場に流す以上は一定のリスクは当然つきまとうわけですけれども、そのときの責任体制というのはどうなっているんですか。
片山国務大臣 今、委員も言われましたけれども、郵貯、簡保のお金は国民の預かり金ですから、だから、それはやはり長期で安定的な運用ということをどうしても考えなければいけません。
 それともう一つは、去年からですからね、去年の四月から資金運用部制度が廃止されて義務預託がやまったんですね。あるいは、財投に対する直接貸付制度がなくなった。そういうことでございまして、経過期間が要るんですよ、あれは七年で預けていますから。だから、これは財務省の方からも頼まれて、七年間の経過措置でなだらかに減らしていくというのと、それからもう一つは、やはりマーケットに大きな影響を与えちゃいけませんから、そこは自主運用のあれをなだらかにしてくれと。
 そういういろいろな要請で、やはり国債のウエートが高いとかあるいは地方債だとか、こういうことになっておりますけれども、今後は次第にその自主性を大きくしていく必要がある、こう思っております。しかし、自主性というのは何でもやっていいかというと、そういうことじゃないんです。私どもの方の審議会にもかけますし、財務省とも相談しますし、ポートフォリオというのをきちっと公表しますし、いろいろなチェックの中でできるだけ自主性を大きくしていく、そういう運用をいたしたい、こう思っております。
 その結果、大きな責任が出たら、それはやはり総務大臣なりなんかの責任を、責任は全くないということは私は言えないと思いますけれども、そこは今言ったようないろいろな段階での手続を経てその合意の中で運用してまいりますから、この責任問題については、総務大臣の責任は私は免れないと思いますけれども、責任のとり方その他については、これは今直ちにどうこうというようなことにはならない、こういうふうに思っております。
玄葉委員 私、その責任体制というのは大事だと思うんですよ。例えば、事実上総務大臣だ、いろいろなチェックをかける、審議会だ。そうすると、責任は分散するんですよ。責任がないところには本当にもうけるという話もないですからね、はっきり言って。これは、最終的には国民負担になる可能性があるわけです。だから、これは責任体制をきちっとしてください。ちなみに、私、どういう体制になっているのかもはっきりわかりません。
 これは、ファンドマネジャーの役割を果たす公務員は、例えばその成績によって人事評価に反映させるとか、そういうことをやるんですか、ちなみに。
片山国務大臣 済みません、玄葉委員、最後のところ、ちょっとよく聞き取れなかったんで、再度御質問いただきたいと思います。
 責任の問題、私は総務大臣の責任は免れないと言いましたが、これは監督責任ですね。実施責任はここでは郵政公社でございますので……(玄葉委員「だれなんですか」と呼ぶ)郵政公社です。それは総裁なり、あるいはその理事会が意思決定機関ですから、理事会のメンバーでございます。ただ、私、総務大臣も責任を免れないと言いましたのは、監督官庁ですから、これはその責任はある。
 責任体制については、これは具体的な仕組みの中で我々としても今後検討していかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
玄葉委員 細かい話なんですけれども、最後のところは、ファンドマネジャー、いわゆる実際に運用する人、これは、ちなみに成績によって人事評価に反映させるみたいなこともやるんですか。これは細かいけれども大事なことだと思うんです。
片山国務大臣 基本的には、まさに今後は給与も任用も成績主義でまいる、これが公社の基本的な考え方です。ただ、非常に極端なことは、公社といっても国営公社で、公務員ですから、極端なことができるかどうかは別にしまして、基本的には今の役所の方式を持ち込まない、こういうことであります。
玄葉委員 話は戻りますけれども、私は、やはり郵貯、簡保の資金、これは、本当に私もつらいんだけれども、やはり引き下げないと、規模を縮小させないといかぬのだと思うんです。それは、二〇〇〇年問題があったから今はがんと減りましたよ。だけれども、今後は一兆円ぐらいのレベルですから、減るといったって。ですから、これは、本当につらいんだけれども、やはりやらないといけないんじゃないですか。やはり、車で幾らアクセルを踏んでも、一種の、トランスミッションが車でいえば壊れているようなところがあるんですよ、余り公的金融が大きいと。これだけが理由だとは言いませんよ。幾ら金融緩和だ、金融緩和だといって、日銀が銀行の国債を買ってマネーを供給しても、車のトランスミッションが壊れているという側面がやはりあるんですよ。だから、このことは考えていってほしいというふうに思います。
 最後に、もう時間があと五分なので、私、民主党の最初の、トップバッターですから、少し頭出しをしますから、端的でいいですから公社化法案の論点について答えていっていただきたいというふうに思うんです。
 一つは、金融庁の検査並びに日銀の考査。日銀の、これは検査というんでしょうか、郵政公社の場合は。考査、検査、これはどうしていくのかということであります。それはどうですか。
片山国務大臣 金融庁の検査につきましては、政府の中で議論をいたしまして、政府全体として、政策金融機関全部に金融庁にリスク検査をやってもらおう、こういうことになりまして、郵貯、簡保につきましても、それじゃ金融庁の検査を入れましょうと。
 ただ、基本的には、例えば郵政公社に絡む問題では、郵貯、簡保なら私が委任するんです。内閣総理大臣に委任して、そこで金融庁がやって、これは委任で、我々もやれるんです。金融庁もやれるんですよ。ただ、我々の方で金融庁にお願いをして金融庁にやってもらって、その結果を我々が受け取っていく、こういうことを考えておるわけであります。
 それから、日銀の方は、現在の国庫預託金口座にかえまして、日銀当座預金口座の利用を考えておりますので、その場合には、契約で日銀の考査を受ける。向こうとしては、口座を開く以上、しっかりした事務処理や機動的な資金繰り等、業務の状況等についてこれは承知していたいと。ほかの特殊法人も似たようなことになっておりますが、この日銀の考査もやっていただく。もちろん、まだ契約はこれからでございますし、公社ができてからの話でございますけれども、そういうふうに今考えております。
玄葉委員 それと、先ほども議論が出ていたんですけれども、出資規定ですね。これは中間報告に盛られていたんですが、なくなりました。これはどうしてですか。
片山国務大臣 一つは、事務的に各省といろいろ協議しているのに時間がかかりまして、法案を出すまでに間に合わなかったということと、どういうものにどういう形で出資するかを事務的に詰めてから、こういうふうに厳重に考えておりましたのが、これも時間がなかったということでございまして、我々としては、法案の中には入れておりませんけれども、出資をしないという考えでは必ずしもないんです。今後の検討課題としてこの出資問題は検討いたしたい、こう思っております。
玄葉委員 私は、ラ・ポストとかは国営だけれども出資しているというんですけれども、一方、例えばドイツなんかでは、民営化した上でそれぞれの企業の買収とかをしているということです。この問題は難しいんですが、ただ、国営である限りはやはり、他の民間企業の仕事を奪う、あるいはまたファミリー企業の云々という話になっちゃう、あるいは天下りという話にもなっちゃうので、かなり慎重に考えなきゃいけないだろうというふうに私自身は思っています。
 最後に、固定資産税二分の一相当額を市町村に納付金として納めるということに公社はなっているようでありますけれども、これはいわば固定資産税の代替的な性格があるんだろうというふうに私は理解をしていますが、そうなると、国庫納付金というのはどういう性格だというふうに考えたらいいんでしょうか。それによって私は払う額なんかも変わってくるんじゃないか、そう思いますけれども、どうですか。
片山国務大臣 固定資産税につきましては、固定資産の価格の二分の一を算定標準額として納付しようかと。これは、旧三公社が、旧公社が同じ扱いでございましたので、いろいろ検討いたしまして、旧三公社と同じ扱いにしたらどうだろうか、こういうふうに思っております。
 国庫納付金は、特殊法人等で国庫納付金を払っているところもありまして、財務省の方が、払ってほしい、こういう御要請がございまして、我々も検討して、特別の法律に基づいて公的な保護を受けていると。預金保険料がどうだ、支払い保証がどうだということじゃありませんけれども、そういうことでございまして、中長期的に、経営にゆとりができて国庫納付できるような状況なら、そういう意味では、いろいろな公的な保護を受けているわけですから、一定の国庫納付を行うということもあるなと。
 ただ、あくまでも公社の経営の状況を勘案しなければなりませんし、いろいろな状況を全部カウントした上でと、こういう条文にさせていただいて、具体的には政令で定める基準で払おう、こういうことにいたした次第でございます。
玄葉委員 ある程度性格を、思想というのかな、やはり必要だろうと思うんですね。これは保証料なのか、いわば法人税にかわるものなのか。だって、市町村の納付金は、基本的に固定資産税の代替的性格だと、いわゆるそれはもう認識が、コンセンサスが得られていると思うんですけれども、この性格、法人税あるいは保証料、こういうふうに基本的には考えていっていいんですか。
片山国務大臣 恐らく財務省の考えとしては、法人税見合いとか、保証料や、民間の金融機関の預金保険料というのがありますよね、そういうことが念頭にあるのかもしれませんけれども、それに必ずしも直接リンクした議論じゃないんです。先ほど言いましたように、やはり特別の法律でつくられる法人であり、しかも公的な保護を、支払い保証を含めてあるので、そういうことについて、国庫納付してほしい、こういうことでございまして、法人税見合いがどうだとか、預金保険料見合いがどうだとか、支払い保証見合いがどうだ、そういう議論じゃございませんので、トータルとして、我々は、経営にゆとりが出てくるなら国庫納付を検討したい、こういう考えでございまして、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
玄葉委員 もう時間が終わっておりますので終わりますが、ただ、私はやはり、信書便法案が特に改革の本丸のような扱いをされているんですけれども、そういう意味での改革の本丸扱いというのはとても何か違和感があるというか、この四法案は、果たして小泉さんにとって、仮に成立しても胸が張れるような法案なのかというと、やはり甚だ疑問だということだけ最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
平林委員長 次に、伊藤忠治君。
伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。質問をいたします。
 今回のこの郵政事業の問題について、私は、極めて常識論、現場の皆さんの立場に立って、今回の郵政事業の新しい制度設計がどうあるべきかという点を考えまして、そういう視点から質問いたします。
 聞いていまして、何かこの郵政事業の問題になると、与党さんの中でも政治論がかいま見えたり、非常にあるんですね。そうあってはいけないので、実際にサービスを受ける、利用する皆さんが、山村地域でも、何を考えていらっしゃるかという点も含めまして、あるいはまた、これから二十一世紀、さらに高齢化社会がどんどんと進んでいくんだと思うんですが、そういう将来を展望した場合にもどうあるべきかという視点で考えるのは非常に大切だと思います。
 一番初めに同僚議員が申しました小泉さんの一里塚の発言なんですが、その話は私はもう繰り返すのをやめますが、具体的に、常識論に基づけば、まず公社化いたします。公社化した後、民営化の議論を進められるのか、一切否定をされているのか、この点はどうなのかという質問は常識論に基づいて一応聞かせていただいておかないと、その後の議論にも影響いたします。
 もちろん、こういう議論がございます、すぐ民営化の議論を始めるんだ、公社化が終わったらすぐ民営化の議論を始めるんだと。一年かかって準備がございまして、それから、これは大きな組織ですから、この組織の改革をやると、再編成なんですが、これをやると相当時間がかかりますよ。定着するにも相当な時間を要します。私は、経験則で申し上げて失礼なんですが、そう思います。
 だから、まず前段の、公社化した、これでもう民営化は終わり、後は一切やらないということで位置づけられているのか、それともそうでないのかという点はどうなんでしょう、お聞きいたします。
片山国務大臣 中央省庁改革基本法によりますと、とりあえず十五年中には、我々は十五年四月と考えておりますけれども、十五年四月には国営の新たな公社がスムーズに発足できるようにいたしたい、ぜひこの国会で四法案を通していただきたい、こういうふうにお願いしておりますが、公社化移行後についてはどうするか。これについては、先ほど玄葉委員にお答えしましたように、政府として結論を持っているわけじゃないんです。
 そこで、総理直属の郵政三事業に対する懇談会で今議論しているわけでありまして、あれはスタートのとき、御承知のように、民営化問題を含め公社化後のあり方についての結論を出す、こういうことでございまして、夏ごろまでにはそこで意見の集約を図るということで今現在議論をしていただいている。その結論がどう出るかということが一つありますし、それから、その出た結論をどうやって今度は具体化していくか、私はかなり時間がかかると思いますね。
 最終的には、公社化でない、例えば民営化等に進むということなら法律も要るわけであります。そこで、恐らくその総理の懇談会では、時間軸も考えて、公社化後、仮に別に移行するとした場合に、そういうことを含めての御検討があるものだ、私はこう考えておりまして、我々としては、先ほども申し上げましたが、公社化後のあり方については国民的議論の中で最終的には国民が判断することではなかろうか、こう思っておりますが、とりあえずは懇談会がどういう意見集約をするかだ、こういうふうに考えております。
伊藤(忠)委員 そうすると……(発言する者あり)いや、ちょっと待ってください。いずれにしても、この議論というのは、小泉さんと、小泉さんと言うと失礼なんですが、それから片山大臣も入られているわけですが、でも、小泉さんが前に出られていますよね。内閣としては非常にそういう映りがあるじゃないですか。一方、構える方の与党さんの中にもまたそれなりの理屈があるわけでして、だから私たちは、どちらがどうなのかなということを聞いておかないと判断ができないわけですよ。
 ですから、大臣のお話をもう一度繰り返すようですが、六月ごろに懇談会が開かれて、そこで議論をなさって、もうこれでやめという場合もあるし、さらに民営化の議論もやっていくということになるかもわからない、こういうことでよろしゅうございますか。
片山国務大臣 総理の懇談会は、六月になるのか、もうちょっと後になるのか、夏ということで、もう一年前から始まっていますから、去年のかなり早い時期から始まっていますから、相当議論を重ねておりまして、そこで総理の諮問を受けて、公社化後の郵政事業のあり方として結論を出す、意見を集約するということでございまして、それを我々は待っている、こういうことでございます。
伊藤(忠)委員 次に移ります。かけ問答をやっていても、次のテーマがございますので、大臣の言われることはよくわかりました。説明はわかりました。まあ、いいですよ。次に行きます。
 具体的な議論をいたしますが、国営公社というのは、公企体、公企体というのは特殊法人なんですね、公企体の組織なのか、それとも、基本法にございます、これはもちろん公社法にもありますが、新たな公社と銘打たれておりますが、これはどう位置づけられるんですか、その辺をお聞きします。
佐田副大臣 これは、先生、中央省庁等基本法の三十三条一項に基づきまして国営の新たな公社として設立をされておるわけでありまして、前の三公社と比較いたしますと、例えば旧の公社の場合は、予算の国会の議決、事前管理とされていたのに対しまして、郵政公社の場合は、中期目標であるとか目標管理による事後評価、要するにこういうふうな機動的な組織になっております。
 三公社に比較しますと、例えば旧三公社においての収入の大宗を占めておりました運賃、電話料金であるとか、こういうものにつきましても、今度の公社につきましては、届け出であるとかまたは認可というふうな形で非常に弾力的で自律的な経営ができるようにやっていきたい、かように思っております。
 また、非常に重要なことでありますけれども、職員につきましても、非常に国民の日常生活に必要不可欠な生活基礎サービスを提供するという郵便事業の特質にかんがみまして、事業の適正かつ確実な実施を確保するために身分をあえて国家公務員としたところであります。ちょっとここが違うところであります。
伊藤(忠)委員 御答弁で御本人が言われておりますように、その新たな公社というのは、かつて三公社ございまして、御承知のとおり大きな組織でございましたが、これが国営独占から公社化されまして、公企体という特殊法人に移行したわけです。言うならば、そのときの権限、権能の中身と比較をしても今回の新たな公社の方が自由度が高い、こういうことをおっしゃっているわけですね。自由度が明らかに高いんです。
 その高いというのは、いわゆる予算の関係もある、あるいは事業計画を出したら届け出は終わりだとか、自由度は非常に高い。にもかかわらず、社員の身分が公務員だということで、本人はちょっと自嘲ぎみに言われましたけれども、ここのところに縛りがかかっているというこの矛盾した部分ですね。なぜこういう奇妙な制度、私はあえて言いますが、一貫性を言うんだったら、公企体から民営化に移る際の、これは我が国としては例はそれしかないんですが、全額国が株式を所有して、それから株式を公開していくと三分の一は国が持つというこの段階、民営化の過程で、これは特殊会社でございます。特殊法人から特殊会社に移行したわけですね。そのときに初めて与えられたような権限が、今回、自由度として一挙に新たな国営公社でそのことが与えられた、ところが身分は国家公務員だ。このあたりはなぜこうなったんでしょうか、その辺を質問いたします。
佐田副大臣 これは、先生、先ほども申し上げましたように、現場を持っておる省庁でもありましたから、要するに国民に非常に密着しておった組織でもある、そういうことを考えますと、国民の利益を害さないためにも、しっかりとした組織にしていくためにも、これは国家公務員でなくちゃいけない。
 ただ、また、先生、国家公務員ではありますけれども、例えば給与体系であるとか、こういうことにつきましては今までのような形になっていくわけでありますから、決して矛盾が生まれるということはないというふうに判断しております。
伊藤(忠)委員 私は余り詰めて議論をする気はありませんが、例えば特殊法人、公社制度に移行する場合は、職員の賃金なり労働条件というのは高能率、高賃金がうたい文句なんですよ、高能率、高賃金。しっかり働いてほしい、そのかわり、賃金もそれなりに経営者が自由度を、賃金表をもちろん全部変えますが、その中で、忙しいところには能率が高いから賃金も上げましょうというような格好で、職能賃金のような格好になるわけですよね。そのことを否定していないんですよ。賃金というのは、仕事に見合って格付されるのが賃金です。職務なんですよ。だから幾らでもそのようにやっていけばいいわけです。
 ところが、国家公務員という身分がかぶるものですから、そのことにどうしても限度が出てくると私は思うのです。つまり、定数管理は離れますよ、定数管理は離れますけれども、国家公務員が民間の一流企業の賃金よりもたくさんの賃金をもらえるはずないじゃないですか。そんなことはあり得ないわけですよ。私、民間賃金の相場は大体わかっています。三十五歳から四十歳までの、言うならばキャリアの管理者で一千万超えていますからね。それだけの賃金を、では新たな公社の公務員の皆さんに保障できるんですか。
 仕事は変わらないと思いますよ、相当忙しいと思いますからね。特に、キャリアの皆さんというのは管理部門でしょう。徹夜してやる、夜中に帰るのが常識なんですよ。その家庭なんか家庭崩壊だ。でも、実際にそういうふうな厳しい仕事をやっているわけです。そういう皆さんは、大手の民間だったら一千万を超えているわけです。ところが、今の郵政省のエリートの皆さん、お聞きしますけれども、これは係長さんぐらいですか、課長補佐までいきますか、四十歳ぐらいで一千万超えていますか。どうです、それは。だれでもいいですよ。どうぞわかっていたら答えてください。三十五歳から四十歳ですよ。一千万超えていますか。
松井政府参考人 お答えいたします。
 的確なお答えにならないかもしれませんが、郵政事業の職員につきましては、平均年齢で約四十歳強でございます。四十歳までいっておりませんが、年収で六百七十万円。これは、先生御指摘の、本庁もしくは本省で働いている職員も、それから郵便局の職員も全部平均した数字でございまして、この平均値は一般職の国家公務員とほとんど変わるところはございません。それが実情でございます。
伊藤(忠)委員 実態はそうだと思うのです。私、実態を知っていまして、何ぼ一生懸命に、仕事の自由度はふえるんですよ、だから賃金もそういう賃金にならないと働きがいが出ないじゃないですか。ところが、大体六百五十万から、七百万きついですよね。七百万きついですよ。四十歳前後、四十歳超えちゃだめですよ、四十歳までで七百万、とてもきつい。キャリアの皆さんですよ。その人が一千万ぐらいいけるような賃金体系になるんだったら、これは今の経営の自由度とあわせて両立しますよ。そこがリンクしていないんです、どう考えても。
 なぜ公務員に縛ったのかというのが、私はいまだに疑問なんです。常識論で言っていますよ、私は。常識論でいったら筋が通らなければいかぬ。身分保障があるから公務員をとられたのかということになっちゃうわけですが、そのあたりはどうですか。
野村政府参考人 お答えいたします。
 確かに、今度は公社の職員については国家公務員でございます。先ほど佐田副大臣がお話申し上げましたように、仕事の重要性から見て国家公務員になったのではないかと私ども推測しているわけでございます。
 公社の職員、今後制度設計していくわけでございますけれども、例えば、今回予算制度から外れますので、従来ですと給与総額ということで予算で総額が縛られておりましたけれども、今回はそういうものはございません。しかも、私どもとしては成績主義で本人の処遇をしていきたいと考えておりますし、それから、給与を決める、これは団交で決めるわけでございますけれども、考慮要素といたしまして、公社の経営状況、こういったものを考慮要素に入れることになってございますので、経営成績がよい場合にはそれなりの給与ということも可能だというふうに考えているところでございます。
伊藤(忠)委員 一挙にそういう一流民間会社のレベルまではもちろんいきません、それはわかります。しかし、それに近いところ、言うならば三公社の例がございますね。そういう皆さんはもちろん民間になっていますから、それまでいかないにしても、公企体であった当時の水準まではいける、いかなきゃいかぬ、このように公社化後の経営者としてはお考えなんですか。その辺どうです。
野村政府参考人 具体的な給与水準については、まだ公社が発足してどういう経営状況になるかわかりませんので申し上げられませんけれども、公社の制度設計としては、職員のそういった能力、実績、それから公社の成績を反映させるような給与制度、そういったものにしていきたいというふうに考えているところでございます。
伊藤(忠)委員 一方、特殊法人が合理化されますね。民営化される、これこそ一里塚なんですが、独立行政法人化されるじゃないですか。ああいう皆さんがそういう自由度が与えられるとは、私は思っていません。はっきり言って経営主体じゃありませんからね。ところが、やはり公務員でありますから、そのあたりがそんなに差がつくということだったら、なぜ公務員という身分を与えたのか。
 それは、唯一考えられることは、スト権だけなんですよ、結局は。ストライキ打っちゃいかぬわけです。労働三権の一つの争議権が規制されているわけです。だから、団結権、団体交渉権は与えられますね、今回でも。ところが、争議権は与えられません。公社時代もそうです。ところが、特殊会社の民間になれば、労働三権は与えられるわけです。こだわられたのは、その部分が一つ特徴的にはありますね。そのように私は理解いたします。答弁を求めても、すかっとした答えは出ないと思います、まさかそこだと答えるわけにいかぬでしょうからね。私はのみ込んでおきますが、やはりそれも一つの大きな理由なんですよ。
 だから、身分保障といいますけれども、そこまで経営の自由度が広がって、民間参入が来て、かなりこれは経営を、それこそ発想を変えてやっていかなきゃいかぬということになったら、本当に身分保障というのは、後で私申し上げますけれども、これは二十条でもって郵便局の設置義務がありますね、郵便局の設置義務は置かれていますけれども、特定郵便局の数をどれだけ置かなきゃいかぬかというところまで決めてないんですよ。そうすると、やはりこれからの三事業の推移を展望したときに、私は、じわじわとこれは、広がっていくのか狭まっていくのかによって随分議論は分かれますが、そこに影響としては出てくるだろう、このことをとりあえず申し上げておきたいと思います。
 それで、次に移りますが、住民のニーズに郵便事業が、郵便事業というよりも、これは国の基本インフラです、郵便局ですね。郵便局のネットワークが、今何ぼでしたっけ、二万五千、それぐらいありますね。これを大事にしていこうと。僕は賛成なんですよ。それを大事にしていこうと言われるんですが、大事にしていくようなことになっていないじゃないかと私は言いたい。ここが私の言いたいことなんです。
 つまり、末端の郵便局が取り扱うサービスでワンストップサービスがありましたね。これは、今総務省が自治省も包摂していますから、意外と片山大臣がかっと言えば大体広がっていく部分があると思うのですよ。ところが、パスポートサービスはやるべきだ、航空券の取り扱いもやるべきだ、これは民主党の一つの考え方、政策が出ているんです。私は、それを言うの、できないと。それは言ってもできぬ。なぜか。縦割り行政ですもの。これは国土交通省がうんと言わなければできないんです。何ぼやろうと思ったって、総務省管轄の人が言ったって、これはだめだと。
 私は、それぐらい日本の縦割り行政というのはきついと思っています。そこのところは総務大臣の答弁いかんにかかわるわけですよ。この一言は大きいんですが、何が次に言いたいかというたら、スイス郵便みたいにバスを走らせろと私は言いたいんです。十何年間私はこのことを言い続けてきました。
 つまり、どんな農村へ行っても、どんな田んぼのあぜ道、あぜ道じゃないな、農道をずっと走って、郵便バスというよりも公共バスですよ、走っているんです。これは必ず郵袋を載せて、そこの村の人々、高齢者が多いわけですが、そういう皆さんを、定期的に走っていくんです。バスの運行のそういう標識がございまして、手を挙げるわけです。そうすると、その郵便バスがとまるんです。そこに乗るんです。それで次に走っていく。
 なぜこれができぬのか。高齢化社会はどんどん進むじゃないのか。結局、運転できない高齢者が、足がないものですから、人口が、だんだん若者が町へ出ていくと、どうして暮らすんだ。そういうところに、バスとは限りません、ミニバスでもよろしい、バンでも結構なんですが、なぜそういう足が確保できないのか、我が日本は。
 自動車王国である日本がなぜできないのかと言うんですが、郵政省の幹部の皆さんに言いますと、もう先生の言うことはわかったと帰っていくんです。できないということなんですよ。私は、お見えになる幹部の皆さん、見えるたびにそれを言ってきた。十年間言ってきました。ところが、それは歯牙にもかけてもらえない。なぜか。縦割り行政なんです。いや、それはできますと。だから、今の総務省は、国土交通省がかんでいない、運輸省がかんでいないから、なかなかそのことができないわけです。
 だから、本来、この郵便局というのは末端まであります、国民のためのインフラなんです。しかし、これはハードなんですね。ハードというけれども、ソフトがなければハードというのはただのコンピューターの箱と一緒。どんなに立派なコンピューターをつくってもソフトが入らなかったらただの箱なんです。
 そういう状況になっているわけですが、この縦割り行政の弊害をなくすことによっていろいろなサービスが生まれると思うんですが、可能性については、大臣、どうでしょうか。
片山国務大臣 今伊藤委員言われますように、郵便局は本来の郵政三事業以外にいろいろなことを今やっているのですよ。先ほども言いましたが、ワンストップサービスは法令に基づきますけれども、例の防災協定だとかなんというのはかなりやっていますよ。それから、ごみの袋のいろいろなことだとか、いろいろやっておりますが、今、伊藤委員から御指摘があったように、例えばパスポート、それから郵便バス。
 パスポートは、これは外務省なんですけれども、今パスポートというのは大変貴重なあれで、本人確認をしっかりやらないとこれはなかなか困るというのが外務省のお考えでございまして、そこのところでいい方法があれば、将来はいい方向に行く可能性がある、私はこういうふうに思っております。
 それから、郵便バスについては、私は大変いいアイデアだ、こう思っております。今、市町村は過疎バスというのをやっていまして、国土交通省が補助を出しておりますけれども、これもだんだん打ち切られていくんですよ。そうなると、市町村は困りまして、足の確保のために福祉バスというのをやっているんですよ、市町村みずからか第三セクターで。
 そこで、今度は総務省で、自治省と郵政省が一緒になったんですから、そういうことについてどういう問題点があるか、法令上の問題、お金の問題、いろいろあると思いますけれども、問題点を出し合って、研究して、そういうことについてはいい方向に検討していくことは可能だ、私はこう思っております。私は、郵便局にいろいろなことをやらせたらいいと言っている。必要ならコンビニみたいなのとかがないような地域で郵便局がコンビニやってもひとつも構わないではないか、そういうこともひとつ研究したらどうか、こう言っておりますので、方向としては、伊藤委員と大体私も考え方は同じであります。
伊藤(忠)委員 だから、理解をいただいておるようですから、そういうことを例の経済財政諮問会議、あそこでやってもらわなければいかぬわけですよ。それで、今の省庁は大くくりできましたよね。私は、省庁再編のときに特別委員会やっておりましたからよく知っているんですが、あれも、言うならば、お役人の世界の中の縦割りが障害になって、まあ、これでいくかということで結局なったわけで、だから総合的な行政とか、総合的な政策を生かすための総合行政はどうあるべきかということでの切り込んだところまではなかなか行けなかった、完全には。一挙に行けなかったというのなら、第二次再編やってもいいじゃないですか。中央省庁の第二次再編ですよ。これをやって、縦割り行政の弊害をもっと取り除いていく、具体的な例を出せばそういうことなんですよ。
 なぜ私がバスにこだわるかというと、大臣言われましたように、過疎化で皆引き揚げておるでしょう。補助金を県で出しているでしょう。ましてや、町とか村とかいったらとてもじゃない、できない話なんですよ。そうすると、そこがエアポケットになる。ここをやはり国の責任でというんですか、僕はそういう施策の問題だと思いますから言っているんです。コンビニなんかは別に、それは業者が入っていきますからいいんですが。
 だから、そういう基本を守っていくということが、私は本当に地域住民とネットを生かしたサービスとして重要だと思いますから、ぜひともこれはお願い申し上げたいと思います。お役人さんに言っておってもだめですからね、隣を気にしますので。どうぞよろしくお願いしますよ。
 次に移りますが、ユニバーサルサービスの確保の問題なんですね。
 これは法案でも出ています、十九条と二十一条ですか。法案を読むだけでは中身がわかりませんが、民間参入政策のワーキンググループだとか研究会がまとめていますね。この中で言っておることは、私はこのように理解しておるのですが、間違っておれば御指摘ください。
 まず、民間参入については避けて通れない、一点目。二点目が、クリームスキミングを許すとユニバーサルサービスに弊害が起こる。三点目は、ユニバーサルサービス確保を前提に条件つき全分野参入。それを高い付加価値サービスへと段階的に認めていく、こういう見解が出されまして、そのことを要約して法文上明記がされたと理解をしております。それを受けまして、これは本会議で片山大臣が、信書の問題については今後ガイドラインを決めたい、時間をかしてほしい、こういう答弁があったわけです。
 それで、信書便の議論は、ガイドラインで決めたいということになりますが、私は、やはり裁量行政の幅を狭めるというのが非常に大切なことであり、国会審議ではいつもそういう方針に基づいて私たち主張しておりますので、そのことをまずきちっと申し上げておきます。ガイドラインでやるんじゃなくて、もちろん細かいこと全部というわけにいきませんが、やはり最大限これは法文に、法律に明記をするということが大事である、このことを主張いたしますが、まずこの点、大臣どうですか。
佐田副大臣 今回の法案につきましては、信書の定義につきまして、先ほどもお答え申し上げましたけれども、これまでの確定している「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」という規定を設けたところで、これで信書の基本的な概念は明確になったものと思っておりますし、繰り返しになりますけれども、基本的には今までの、要するにこの判例によりまして判断をしてまいりましたから、そういう意味におきましては、基本的なその考え方はそうであって、またガイドラインによってしっかりと議論をしていきたい、こういうふうに思っております。
伊藤(忠)委員 今回のこの法律案には明記できなかった部分に入るわけですね。だから、それは検討して、ガイドラインでもって決めたいというんだったらそのガイドラインで決めるそのものを、その中身を法文化すればいいわけで、別に難しい話じゃないんですよ。だから、私が可能最大限と言ったのはそういうことなんですよ。細かい手続の部分まで言っているわけじゃないんで、それは今回のこの審議でもって、言うならばそれは後刻の時期にその分を法律で明文化するというふうにやっておけばいいわけですよ、別に手続上は幾らでもできますから。
 だから、今、副大臣言われたように、判例とかなんとかいうもの、もうそんなのはわかっています。あれは何ぼ読んだってわかりませんから、抽象的で。だから、定義をはっきりすることと範囲をはっきりすること、このことをこれは明文化された方がいいですよ、誤解が生じませんから。どうですか。
佐田副大臣 先生、確かにそれははっきりするべきだということで、今回もガイドラインを策定していくということでありますので、繰り返しになりますけれども、基本的には、要するに判例に基づいていろいろな判断をしていく、そしてまた、非常にあいまいな、グレーゾーンにつきましては、今後ともこのガイドラインによって判断をしていきたい。
 もちろん、先生、法律で書くということも、またはガイドラインでやっていくということも、これは基本的には同じでありますから、そういうことにつきましてはしっかりと判断していきたい、かように思っています。
伊藤(忠)委員 ガイドラインというのは、いつごろそれをつくられるんですか。
佐田副大臣 時期的には、法律を通させていただければですけれども、その中で施行までにはガイドラインをつくっていきたい、こういうふうに思っております。
伊藤(忠)委員 ガイドラインができるまでこの法案を保留にして、セットにして議論して、それは法文化するようにしたらどうですか。
佐田副大臣 先生、あくまでもこれは、基本的には法律の中において、今も申し上げましたように今までと変わらないような形で、要するに、今までの判断というのは、基本的には前の最高裁の判例によってやっておるわけでありますから、そういう中において、この法案をつくることによって、またその中でグレーゾーンはきちっと施行までに判断していくということでありますから、それによって拘束されるということはない、こういうふうに私は思っております。
伊藤(忠)委員 なるべく御理解しようと思って努力しておるんですけれども、ちょっと今の答弁ではイメージもわかないですよね。それぞれイメージがあるんじゃないでしょうか、違ってはいけないし。これは困りましたな、いや本当。
 では、ガイドラインはどういうふうにつくるか。こういうふうな格好でガイドラインをつくりますということもわかっていないでしょう。全然その中身がわからないんですよね。だから、信書の定義と範囲といいますが、ではどのように定義をするのかといったら、判例のあれだというので、あれだというけれども、あれは非常に抽象的でしょう。それから、範囲があるでしょう。ガイドラインというので、全部これはガイドラインへ持っていくと。ガイドラインをつくる場合には、もちろんこれは法案審議というようなことになかなかなりませんから、これはどうしましょう。
團政府参考人 事務的に検討過程でございますが、定義を置くということの議論がございまして、いろいろ事務的な検討をさせていただきました。特に諸外国などにおきましても、信書というものをどう書いているのかなというふうなこと、それと実態のこともございますけれども、先生がおっしゃいますように、では具体のものは一切名前が出ていないじゃないかということでございますが、諸外国の例なんかによりましても、意思の伝達であるとか文書であるとか、そういう概念で大体入っておりまして、それを超えて具体的に書くというのは非常に法律上、技術的にも難しいということで、信書の要素となる三つのことだけを書かせていただいているというものでございます。
 そういう諸外国の法令から見ても、一定の基準というふうにはなっているのかなと考えますが、先ほど大臣からの答弁もありますように、世の中いろいろな具体的なものがありますので、この決め方としましては、特にこれは疑問であるとかあるいはこれを入れるべきだというふうな意見のある方について意見を伺って、それはあくまで法律に照らして、それに妥当するものかどうかということを検討した上で、そういうグレーゾーンといいますか、個別のものにつきまして明らかにしていきたいという考え方でございまして、一応諸外国並みの定義にはなっているのかなというふうなことを考えている次第でございます。
片山国務大臣 委員、こういうことなんですよ。信書便法に基づいて全面参入すれば全部できるんです、郵便局と。これはもう何でもできるんですね。そこで問題は、そこの問題じゃないんです。今いろいろなことをやっている方がどうなるかということを心配しているんですね、メール便その他。これは変わらないと言っているんですよ、現状は変わらないと。
 こういうことでございますので、際どいのが、グレーゾーンと言われるのがダイレクトメールやクレジットカードなんですけれども、これについてはいろいろな態様のものが出てくるから、解釈もいろいろできるものがこれから出てくるから、それについては、幅広く関係事業者、いろいろな人の意見を聞いて、こういうものだとできるだけ細かく決めるためのガイドラインで、法律で書き切れないんですよ。だから、法律は確定した判決を書いて、これは、信書便事業者になる人は何でもやれるんです、グレーゾーンも全部やれるんですから。
 だから問題は、そうでない、現行のいろいろなことをやっている方が御心配なら、これは今のメール便というのは信書でないものをメール便でお運びになっているんですから、これは現行と拡大するものでも縮小するものでもありません、こういうことを申し上げているんです。
 ただしかし、信書についての定義や、これは書いた方がいいという議論もありましたから、諸外国の例も見まして、みんな日本の今回の定義と同じようなものですよ、それを書かせていただいて、しかし、それでは細かいところがわからないじゃないかという議論があるのなら、ガイドラインではっきりさせましょう、それは関係者や、広くみんなの意見を聞きます、こういうことを申し上げているわけであります。
伊藤(忠)委員 だったら、こうしましょうか。理事会でこの問題を議論いただいて、扱いを含めて決めてください。私はそう思います。
 それぞれの党に、細かく煮詰めていきますと、やはり違いがあるんですね。行政は行政の、これは行政サイドの思いもあります。ですから、意外と、議論してみたら、何だそんなことかということになるかもわからぬし、いや、これは大変だということになるかもわかりませんが、委員長、ひとつ理事会で扱っていただいて、この問題を中身の議論をちょっといただいて、扱いをお決めいただきたいと思います。その方が私は全体議論をやる場合にいいのかな、深まるかなと思いますから、よろしくお願いいたします。
平林委員長 ただいまの伊藤議員の御発言につきましては、別途理事会におきましても御相談をさせていただきます。
 質疑を続けていただくようにお願いいたします。
伊藤(忠)委員 このユニバーサルサービスの論議に関係をいたしましてお伺いいたしますが、電気通信分野のユニバーサルサービスは全然違うんですよね。何が言いたいかといいますと、電気通信分野で、私たち同じこの委員会で議論をやってきましたのは、ユニバーサルサービスは法律で義務づけられているわけです。これは、特別法というのはNTTのことをいうわけですが、あれは特別法でくくられているわけですね。あとは業法でくくられているわけです。業法でもユニバーサルサービスというのは、それほどの義務を負っていないけれども、一般論としてはきちっと明記をされていると私は理解をいたしております。ですから、新規参入事業者だからユニバーサルサービスは関係ないなんて、そんなふうには思えないように業法はたしかなっていると思うんです。倫理規定かどうかわかりませんが、なっていると思うんです。
 それで、いずれにしても、特別法で、言うならばあまねく公平に、そういう規模の事業者に対しては全面的にユニバーサルサービスを維持しなさいという義務が課せられておりまして、市場が全面自由化された結果、法的な義務規定をしょっている企業の財務が悪化したらユニバーサルサービスの維持ができない、悪影響が出てまいります。それが今日の状況ということになって、総務省の方はその影響を除去するために、新規参入業者からユニバーサルサービス基金を積み立てる、そういうシステムをつくりまして、そうして特別法で縛られている事業者に対して拠出をするという方法、システムをとったわけですね。
 しかし、もらうというわけですが、新規参入業者からいただくというわけですが、ところが、そのもらう方の特殊会社も、競争が、利益部分ですね、都市部分では黒字部分ですから、黒字部分から田舎の赤字の部分にみずからも補てんをしてならして、その上で、赤になればユニバーサルファンドで埋めましょう、こういうやり方になって、しかもこれが、接続料金をさらに引き下げて、それを適用した上で算定した結果の赤字か黒字かを判断する、こういう二重縛り、三重縛りのユニバーサルファンドなんですね。これが電気通信事業者のユニバーサルサービスの確保策として制度化されて、今お役人さんがそれを手続をやりまして、近くこれは日の目を見ようということになるらしいんです。
 私は、前の委員会で、国会で申し上げたんですが、それも固まった段階で、政令でやられるということらしいから、国会の審議にかけていただきたいと言いまして、大臣もお約束いただいたという記憶がございますが、一連のこの電気通信事業のユニバーサルサービスの論理からいくと、郵政のユニバーサルサービスの論理をとやかく私は言うつもりはございませんが、明らかに違うんじゃないか。
 同じ省から出ているユニバーサルサービスのやり方が何でこんなに違うのかということについて、これは一貫したものにしていただきたいということを申し上げたいと思いますが、どうですか。
佐田副大臣 先生の、電気通信分野におけるユニバーサルサービス、それでまた今回の郵政関係の方のユニバーサルサービスでありますけれども、これは基本的にやはりちょっと違いますので、御理解いただきたいと思っております。
 また、ユニバーサルサービスでは、今、基金をつくっておると。そして、その中におきまして、はっきり申しましてNTTの方がユニバーサルサービスを義務づけられておるわけでありますから、そこに対してNCCの方から基金の中にお金を拠出していく、その中で赤字になった部分はというふうなことが議論されておるわけでありますけれども、やはり日本の電気通信を考えた場合には、これからも幅広に、いろいろなファンドのあり方も議論をしていかなくちゃいけないなと。これはもういろいろな場で議論をされておることでありますけれども、そういう意味におきましては、引き続き電気通信の方もきちっと皆さん方と議論をしていきたい、かように思っております。
 また、郵便分野にも同様の方式を採用することは一つの考えでもあるわけでありますけれども、先ほども申し上げましたけれども、基本的に電気通信というのは郵便みたいなものと基盤も違いますから、その辺の難しさがあろうかと思います。
 そしてまた、郵便分野におきます採用については、郵政事業の公社化に関する研究会中間報告では、ユニバーサルサービスの基金方式については次のような問題があり、現実には非常に困難であることが考えられるということを基本に言われておるわけでありますけれども、例えば、基金への拠出を求める参入事業者の範囲をどのように設定すべきかですとか、漏れなく対象事業者を把握することが非常に難しいんじゃないか、これも電気通信とちょっと違うところであります。また、原則として引き受けを記録せず正確な取扱通数の把握が困難な信書送達では、各参入事業者の拠出額の正確な算定が難しいということなんでありまして、例えば電気通信なんかの場合は、先生もよく御存じのとおり、各社のトラフィックを調べれば大体のところがわかってくるわけでありますけれども、そういうところで非常に難しい部分もあるということであります。
 なお、諸外国におきましても、実際にユニバーサルサービス基金を運用している国ははっきり言って承知していないということでありまして、このため、今回の法案においては、ユニバーサルサービス基金方式、ファンドの問題ですけれども、ファンドの方は、これはちょっと採用することはできない。したがって、同じようなユニバーサルサービスをやっていくということはちょっと難しいんじゃないかな、かように思っております。
伊藤(忠)委員 確認いたしますが、そうすると、郵便事業に対するユニバーサルサービスの方針と電気通信事業に対するユニバーサルサービスの方針は違っていいんだ、事業の性格が違うんだからこれは二つあっていいんだ、こういうことでありますか。
佐田副大臣 先生、ユニバーサルサービスのやり方、要するにファンドというふうな仕方は、ユニバーサルサービスでファンドというものを利用してやるのはちょっと難しいんじゃないかということでありますけれども、あくまでも、あまねく利便性を供給していくということにつきましては、要するにユニバーサルサービスの基本的な考え方は同じであります。
伊藤(忠)委員 基本的な考え方は一緒である、あとは方法論が違う、こういう理解でいいんですね。
 ただ、一つだけ納得できない点は、別にこれにひっかけて私言うわけじゃないですよ。とにかく、財務ががたがたになってファンドをいただく方が、そのままもらうわけじゃなくて、都会部分はもうかっているからその黒の部分で赤の部分を埋めて、トータルでどうにもならぬからよこせ、上げましょうということなんですが、それはトータルでやはり厳しいということなんでしょう、問題は。だから、部分を取り上げてそんなふうに切り刻んだような議論をやったら、これはもうどうにもならぬというので、随分とこれは議論も沸騰したわけですよね。
 だから、その点については、やはりこのファンドのあり方、供給の仕方を考慮いただかないと、これは通信事業全体にもかかわる問題でありまして、うまくいかないと思いますよ。その辺はどうですか。
佐田副大臣 先生の言われることもよくわかります。要するに、今の現状を見ますと大変に厳しい。特殊法人としてのNTTも、かなり厳しい状況にあるということは承っております。しかしながら、今NCCの言ういろいろな競争も、これは料金の低廉化等もきちっと進めなくちゃいけない。
 ただ、また反面で、やはり通信主権であるとかそういう考え方もあるということを考えますと、しっかりそういうところも元気に共存共栄をしてもらわなくちゃ困る、こういう部分もありますから、このファンドのあり方、もうすぐこれは答申が出るようでありますけれども、その辺のところもしっかりと平等にやれるように考えていきたい、こういうふうに思っております。
伊藤(忠)委員 最後に、郵政監察局の問題について質問をいたします。
 時間の関係がありますので手短に申し上げますが、これは随分と人数も配置をされていますよね。かなりの人数です。一千百四十九人、いただいています。
 郵政監察は必要なんだ、だからこれだけの人数を、ブロック配置、それから県の中心局配置でやっているんだとおっしゃるんですが、実際は、内部でいろいろな事件が起きまして、そのことで忙しいというのが実態じゃないんですか、これは。省庁別で一番多かったのは郵政事業庁で、全体で二千五百一人国家公務員が懲戒処分の対象になりまして、郵政事業庁で千九百二十三人なんですね。だから、群を抜いているわけです。
 この監察の説明も私いただきましたし、この資料にもありますとおり、これは利用なさる国民の皆さんに安心をしてもらうために、外部からのいろいろな、そういう危険が伴うといかぬから守っているんだ、こういうパンフレットなんですよね。ところが、中で起こっている方が多いんですよ。中の事件が多いんです。中の事件をきちっとチェックするために、千百四十九人ですか。
 しかも、JRは民営化されまして、あれは警察業務に変わりましたからね。今、内部では持っていないです、鉄道警察は。あれはちゃんと県が全部やります、県警。だから、普通の警察権にみんな移ったんです。これは逮捕権だけなくて、あとは全部持っているんですが、郵政監察室というんですか、局というんですか、こんなに要りますかね。これだけ、ひとつ。
野村政府参考人 お答えいたします。
 郵政事業に対する犯罪は一般の犯罪と異なりまして、その捜査に、郵政事業の業務等、手続について専門的知識が必要だろうということで、従来から監察官を置いているところでございますけれども、郵政公社におきましても、郵便、貯金、保険の各業務について専門的知識を有する郵政監察官を置きまして、郵便物の放棄、隠匿とか、保険金や郵便貯金の詐取、そういった郵政事業に対する犯罪の捜査を引き続き行わせたいと考えております。
 なお、先生がおっしゃいました千百何名というのは、現在郵政監察局に勤めている職員でございまして、司法警察職員としての監察官は七百名でございます。ただ、この七百名ないし千百名の者たちは、そういった犯罪捜査以外に業務考査、そういったことも兼ねてやっておりますので、専ら犯罪捜査のためにそういった人数がいるわけではございません。
伊藤(忠)委員 いずれにしても、時間が来ましたので終わります。議論は引き続きやりたいと思います。どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、松沢成文君。
松沢委員 民主党の松沢成文でございます。よろしくお願いいたします。
 これまで民主党の同僚議員から、いわゆる総理の一里塚発言についてさまざま質問がありましたが、聞いていて本当にわかりづらいので、私も再度質問いたします。
 この発言は、郵政事業改革の中で今回の郵政公社というのをどう位置づけるか、そういう意味で大変重要なポイントの発言なんですね。もう一回繰り返しますが、さきの本会議で小泉総理はこう言っているんです。郵政事業の民間参入は民営化への一里塚、本丸への壮大な改革の中でかぎを握る、外堀を埋めたと言っても過言ではない、将来は民営化すべきで、公社化で終わりではない、夏までに取りまとめて検討していきたい、こう言っているんですね。いいことを言いますね、総理も。
 この総理の発言、小泉さん、最近疲れている、疲れているといって評判が悪くなってきていますが、本当に正論を言う方だというふうに私も思っています。ただ、政府や与党の中には、これが正論じゃかなわないといって困っている方がたくさんいると思うので、まずそこからお聞きしたいんです。
 この発言は、簡単に言えば、民営化は、公社化の後民営化していくんだ、これこそ郵政改革だということですね。それとは違って、今回の公社で打ちどめなんだという考え方もあるようなんですが、そこで大臣と副大臣と政務官に、この小泉発言についての見解をまず伺いたい。そのポイントは、これから郵政公社の改革をやってすぐ民営化にしていくんだ、そうなのか、公社化で終わりなのか。これをまずお一人ずつお聞かせいただきたいと思います、政治家としての見解を。
片山国務大臣 既にお答えしましたが、この総理の発言は、政府として郵政三事業の民営化を決めたということを表明したものではなくて、政治家としてかねてからの持論を述べたものであり、日本郵政公社法案等四法案の成立後における、郵政三事業民営化のためのさらなる法整備を決めたということではない、これが政府の正式な、きょう閣議決定いたしました回答でございまして、したがいまして、公社化にしたからこれでおしまいだということもないし、公社化をしたから必ず民営化をやるということでもないんです。だから、そこは今総理の懇談会で公社化後のあり方について議論しておりますから、その意見集約、結論を待って我々としては考えたい。
 何度も同じことを言いますけれども、私は、国民的議論の中で、国民的合意の中で方向づけをすべきだ、こう思っております。
佐田副大臣 今大臣が言われたとおりでありまして、繰り返すのも変でありますけれども、懇談会で公社化後のことを議論されているということでありまして、あくまでも国民の意見を聞きながら議論をしていきたい、こういうふうに思っています。
山内大臣政務官 ただいま大臣、副大臣がお答えしたとおりでございます。
松沢委員 残念ながら、政治家としての見解は、皆さんゼロだということだと思います。
 そこで、ただ、これはこの答弁じゃ困るんですね。といいますのは、将来民営化に向けての公社設計と、公社で打ちどめの公社設計では、おのずとその公社設計の中身が違ってくるんです。したがって、この郵政公社の議論をするに当たって、将来は民営化していく方向なんだ、それとも、将来は民営化せずこの公社のままでいくんだということを、まず政府にその方向性を示していただかない限り、この公社の公社設計の議論ができないのであります。
 ですから、大臣、きょう何か我が党の質問主意書に答弁されているように、郵政外三法案の成立後における、民営化のためのさらなる法整備を決めたという事実はない、こういう書き方なんですが、これじゃ私たちは郵政公社の議論ができません。
 あくまでも民営化に向けた公社なのか。例えばイコールフッティングの問題もあります。将来民営化に向けた公社ならば、例えば金融検査のあり方だって、民間銀行と同じように厳しくやるべきでしょう。あるいは税の負担も含めて、預金保険機構の負担についても民間とかなりイコールフッティングで、将来の民営化の練習をさせるべきであります。あるいは郵便法と信書便法の関係も、将来民営化するのであれば、その民営化の方向で競争できるような内容にすべきであります。将来の民営化というのが、その方向なのか否かによって公社の設計が変わってくるんです。ですから、そこをはっきりしていただかないと、私たちは具体的な公社設計の議論ができないんですね。
 ですから、私はお願いしたいんですが、委員長、まず政府の統一見解、それも具体的に、この公社は、将来民営化に移行するためのステップとしての公社なのか、それとも公社で打ちどめの公社なのか、これを、どちらか方向をしっかり政府の統一見解として示していただかない限り、私たちは公社設計の議論ができない。だから、それを、ぜひとも政府の統一見解を出していただきたいと思うんですが、いかがですか。
平林委員長 松沢君に申し上げますが、ただいま大臣から、質問主意書に対する閣議決定の内容についての回答と申しますか、発言がございましたので、その発言に基づいて、審議は続けていただきたいと思いますが、今のこの質疑は、なお多くの方々から御発言があろうと思います。
 したがいまして、今後の審議の過程におきまして、さらに審議を深めていただくという意味で、この質疑を続けていただきたい、そのように思います。
松沢委員 全然審議が深まらないんです。これまで民主党の三人の委員が同じことを聞いてきて、大臣は同じ答弁を繰り返すだけです。私たちが求めている政府の統一見解というのは、もう何度も言うように、この公社化は将来民営化に向けての公社化なのか、公社で打ちどめの公社化なのか、この二つに一つを政府として方向性を出していただきたい。そうしないと、公社の設計についての議論ができないんです。だから、その統一見解を求めます。
平林委員長 さまざまな御意見がございましょうから、今の段階での総務大臣の答弁、そういうことを一応聞いていただいて、それでほかの党からもさまざまの御質問があろうと思いますから、それを一回りしてから、また新しい御議論があろうかと思います。それまで継続をしていただきたい。(発言する者あり)
 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
平林委員長 速記を起こしてください。
 ただいまの松沢委員の御発言につきましては、理事会で協議をさせていただきますので、どうか質疑をお続けください。
松沢委員 理事会で協議ということなのでお願いしたいと思いますが、政府の代表である総理大臣は、この後すぐ民営化だと言っているわけですね。それで、総務大臣を初めとして、そんなことを決めた、法整備を決めたという事実はないと言っている。これは完全不一致ですよ、閣内不一致ですよ。だから、民営化に行くのか、あるいは公社で打ちどめなのか、これをきちっと内包した政府の統一見解を出していただくように、理事会できちっと議論をしていただきたいと思います。
 では、次に行きます。
 信書便法案について伺いたいんですが、信書便法案の意義、必要性について、法案の最初に書いてございます。ただ、この状況になって、即配便という特別信書便の方では参入してみたいという企業が幾つかあるようですが、特別信書便というのはごく小さい市場で一部のサービスでありますが、全国あまねくサービスをしていただくいわゆる一般信書便については、民間で入るなんというところがないんですね。ヤマト運輸でさえも、とてもこの条件じゃ入れないと言って、撤退宣言というか、参入せずという宣言をしたわけなんですけれども、総務大臣、参入希望者がないその理由は何だとお考えですか。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
片山国務大臣 それは当該民間事業者によく聞いてみなければわかりませんが、そういう意思を確認したわけでも何でもありませんし、私は報道しか知りませんから、それは企業としていろいろな御検討をされた結果の表明だ、こう思っておりますが、これからいろいろなことが明らかになり、決まっていくわけですね。例えば、そういうことの中で、私は、いろいろさらに検討を重ねていただけるのではなかろうか、こういうふうに思っております。
松沢委員 私なりに判断すれば、この法案はやはり規制が多過ぎるんですね、ユニバーサルサービス規制も含めて。逆に言えば、民間が入れないように規制を高くしてある。もう一つは、総務省の裁量権が強過ぎるんです。法律で書く部分よりも、ガイドラインとか政令だとか省令で、行政の、官僚の裁量で決めていきますよという部分ばかりだから、こんな危ない法案で民間参入なんて言えないというのが、私は民間業者の本音ではないかというふうに思います。
 そこで、信書の送達の民間参入については、信書便法という新しい法案をつくるんじゃなくて、今ある郵便法の国営の規定、二条とか五条、これを削除することで十分だ、これを削除していただければ信書便に民間が参入できる、こういう意見も多うございますけれども、これについては大臣はどうお考えですか。
片山国務大臣 今、信書を配達するという郵便事業に民間に入っていただくための法案なんですよ。信書をなくするということは、信書事業そのものをなくするということなんですよ。それはもう全然違った話でございまして、我々は、郵便事業に民間も入りたいという御希望があるならどうぞ入ってくださいと。信書をなくするということは、これは国民の思想や表現の自由にも密接に関係ある信書の秘密にもかかわるようなことについて、だれでもやっていい、こういうことになるわけでございますので、今回の郵政改革とはまた別の話なんですね。これについては、信書の性格上そういうことはできないと我々は思っております。
松沢委員 なぜ信書便法案をつくらざるを得なかったかというのは、やはり総務省としては、郵便事業の国家独占は守りたいわけなんです。しかし、特例として、例外規定として、民間会社でユニバーサルサービスのこれぐらいのことをきちっとやってくれるところは入れてあげましょうよと。ですから、例外規定になっているんですね。
 大臣、信書便、いわゆる郵便の配達の市場というのが日本にはあるんですね。それは今まで国家独占でやってきた。今度民間にも開放してあげましょうと、民間参入を認めるわけですね。そうであれば、公社は郵便法に従って事業をするわけです。民間業者は信書便法に従って事業をするわけですね。これは一つの市場に二つのルールがある。
 それで、片やその監督、許認可権限を持つ実施主体は総務省であります。総務省というのは、郵政公社とある意味で、人事の面でも、あるいはさまざまな事業計画の面でも、つながっているんですね。ですから、一つの土俵でプレーヤーが二人いて、そのプレーヤーはそれぞれ違ったルールで相撲をとれと。それで行司は、一人のプレーヤーのお父さんがやっている。こういういびつな市場なんです。これは、自由主義社会、市場主義社会の市場として、私は全く機能しないいびつな市場だと思いますが、いかがですか。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
片山国務大臣 先ほども言いましたが、信書の事業をだれがどうやってもいいということはできないんですよ。何度も言いますように、これはユニバーサルサービスを確保しながら、個人の通信の秘密を信書でもしっかり守ってやっていくということですから、これは、野放しにしろ、適当なところだけ勝手にやれ、こういうことはできませんので、まず一つ。
 それから、先ほども答弁しましたが、今度の公社というのは総務省と別の法人になるんですよ、国営公社という。それから、その監督は法令に基づいてやるんですよ。法治国家ですから当たり前の話で、法令に基づいてやる。民間の方も、民間の事業者の参入についても、法令に基づいて私どもの方は監督させていただく。法令に基づくんですよ。恣意的なあれじゃありません。しかも、そのやり方は、できるだけ透明で公正なものにしたい、こう言っているわけです。
 人事については、なるほど最初は郵政事業庁の職員が行くかもしれません。後については、それはどう考えるかは、これから十分検討して国民の批判に耐え得るようなものにするわけでございますので、仕組みとしては、役所はそういうことなんですよ。みんな別々でいっぱいつくれというようなことでは、これは行政改革にも反しますし、機能上も大変問題なんですよ。そういう例はいっぱいありますから、ひとつよろしく御理解賜りたい。
松沢委員 それでは、なぜ許認可、監督権限の実施主体は第三者機関じゃだめなんですか。総務省でなければだめなんですか。市場を監督するのであれば、中立的な公正な機関が監督し、許認可権限を与えるのが一番わかりやすいんじゃないですか。いかがでしょうか。
片山国務大臣 だから、それは、何度も言いますけれども、役所というのは法令に基づいた権限を行使するので、恣意的にやるわけじゃないんですよ。それが、大臣がやろうが第三者機関がやろうが、そこのところはそれによって差別があるようでは困るんですよ。ただ、我が国は議院内閣制で、内閣は国会に責任を持っているんですよ。そこで、ちゃんと責任を持つ大臣がこの監督権についても責任を持つという方がずっと正しいので、よくアメリカの例を引きますけれども、アメリカは大統領制なんですよ。だから、第三者の行政委員会みたいなのがいっぱいできるんで、ここのところはぜひ御理解を賜りたい。日本ではだんだん少なくしてきているでしょう。アメリカが来たときにいっぱいつくったんですよ、行政委員会を。
 だから、そこはいろいろな考え方がありますけれども、私は、何度も言いますけれども、法令に基づき、ちゃんとその機能を分けて別法人についてしっかり監督していけば、ここで国会の皆さんに、妙なことがあったらもうこれは大変な御叱責や御批判を受けるんですから、その点について、私は、別にいっぱいそういう機関をつくる必要は必ずしもないと考えております。
松沢委員 水かけ論ですから、ちょっと次に行きます。
 信書の定義についてもさまざま質問がありましたけれども、この郵便法の改正、施行法の方で「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」、こういうふうに書いてありますが、極めて抽象的で、これでは何が信書か何が信書じゃないかの判断は非常に難しいと思います。
 重なりますけれども、まず、なぜ信書の定義が具体的に限定列挙で法案に示されないのか。
 例えば、今郵政省が出している、しおりみたいなのがありますよね。これで、信書であるもの、信書でないものと書いてありますよね。これをきちっと法律に示せば、これは判断は簡単じゃないですか。民間の業者が、もし信書便をやろうかどうしようか、それを判断するときに、どれが信書かわからない状況で、民間の業者が参入しようと考えますか。法律にきちっと限定列挙すべきですよ。なぜそれができないのか、御説明ください。
片山国務大臣 現在は、確立した判例に基づいて解釈をやって、きちっと分けているんですよ。問題ないんですよ、現在。問題ないんですよ。
 ただ、例えばダイレクトメールでもクレジットカードでも、いろいろな態様のものがいろいろ出てくるんで、それについてどう考えるかというのはこれはなかなか難しい問題がありますので、法律は確定した定義を書いて、今までの解釈でやります、拡大も縮小もしません、こう言っているんですよ。ただ、今後のこともあるので、この際、国民にわかりやすくして、わかっていただくためには、ガイドラインをつくって法律施行までに明示した方がいいんではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
 今、それは、我々の解釈としては、これはどうだというのは全部ありますよ。ただ、今までのこの我々の区分けでは完全にできないものが今後いろいろ出てくるんではなかろうか、ダイレクトメールでもいろいろな態様があるようですから。そこのところで、今度こういうことにガイドライン方式というものを採用させていただくことにしたわけであります。
松沢委員 ガイドラインという英語で表現されていますが、日本語に直すと指針ということになるんですよね。この指針というのは法的な拘束力があるんですか、例えば政令や省令みたいな。今のガイドライン、どれが信書かどうかというのを示しただけでは今までのしおりと全く変わらないわけですよ。それで、今までのしおりに書いてあった具体的なものに対して、どれが信書であるか信書でないかという判断が極めてあいまいだから、民間の宅配業者と郵政省の不毛の信書論争というのが起きて、対立を繰り返しているわけでしょう。
 それだから、それの反省があるんだったら、まず法律に書くべきだし、それができないんだったら、ガイドラインにきちっと法的な効力を持たせないと、これからも不毛な信書論争はずっと続きますよ。どうなんでしょうか。
片山国務大臣 ガイドラインというのは、有権解釈を示すということなんです。だから、それは拘束力はありますよ。あるけれども、しかし、もしそれを破ったらどうかというのは、最終的にはそれは司法の判断になるんです、もうそれは釈迦に説法ですけれども。法律に書いた解釈の、有権解釈の指針を出すんですよ、ガイドラインで。そういうふうにぜひ御理解を賜りたいと思います。
松沢委員 では、これまでのしおりを今度新しいガイドラインも準用するんですか。これまでのしおりと同じような内容でつくっていくんですか。それとも、公社になって、さまざまな信書判断をめぐるトラブルがあったんで、抜本的にしおりというかガイドラインは見直して、新しいものをつくるんですか。どちらでしょう。
片山国務大臣 このしおりは、信書のわかりやすい具体例を示しているものでございまして、ガイドラインとは違うんですね。今度は有権解釈を示すということですからね。
 だから、これについても一部にはいろいろな御議論がありますので、今度は広く関係者や国民の御意見を聞いて、パブリックコメントにもかけて、しっかりしたガイドラインという形で示したい、こういうふうに思っております。
松沢委員 有権解釈を示すというような、これは大事なものですね。それならば、やはり国会に示していただかないと。
 有権解釈というのは法的拘束力を持つんですよ。それを、総務省のつくる審議会だか何だか知らないけれども、官僚の恣意的な判断で、どれが信書か、どれが信書じゃないかなんてやられちゃったら、これは民間業者は参入できないですよ、そんなあいまいなことじゃ。
 有権解釈するということは法的拘束力があるんだから、それをきちっと国会に示していただきたいし、その内容がない限り、私たちはこの法案に賛成、反対なんて決められませんよ。一番重要な部分です。いかがでしょうか。
片山国務大臣 何度も申し上げていますけれども、現状は変えないと言っているんですよ、現状は。ただ、今後グレーゾーンに属するものが出てくるおそれもあるから、この際、今までの解釈を含めて見直して、幅広く意見を聞いて、さらに範囲を明示いたしたい、こう言っているわけです。
 だから、わからないと言う方が、今言われているのがおかしいんで、現在の解釈は解釈なりに、それは確定しているわけであります。
松沢委員 そうしたら、このガイドラインを決める審議会というのは大変重要になりますね。これこそ、むしろ第三者機関で中立な形でやっていただかないと、これは郵政公社が有利なように信書判断をしていくのは当たり前じゃないですか。今までの郵政省と民間業者との不毛な対立がそのまま続きますよ、ここでどうにかそれを解決していく方法を見出さないと。そのためにはそれを国会に出してくださいよ。
 どうですか。それは国会できちっと審議するような方向をとれますか。
片山国務大臣 幅広く意見を聞いてと言っているんで、四月までに、施行までにはそれをはっきり示すということですから、国会で議論いただく機会は幾らでもあると思いますよ。
 それから、有権解釈というのは、どこの役所でも、これはいろいろな照会が来たときに行政実例という形で示しているんですよ。それが有権解釈なんですよ。それをわかりやすい一覧表にして、ガイドラインという形で示すというのが我々の考え方であります。
松沢委員 それでは、ちょっと具体的に、私、余りこういう細かいことをやるのは嫌ですから、ちょっと信書論争をしてみたいと思うんです。
 副大臣、クレジットカードはなぜ信書なんでしょうか。地域振興券はなぜ信書なんでしょうか。
佐田副大臣 クレジットカードにつきましては、利用者の氏名、有効期限、取り扱い上の注意事項等の文言が記載されていることから、発行者から特定の会員に対して意思を表示し、または事実を通知する通信文が記載された信書に該当すると解釈しておるところであります。
 しかしながら、クレジットカードの支払い手順として利用されるという側面に着目し、記載された文書は通信文と解せないではないということも指摘があるということを考えますと、今後のガイドラインの中でも議論をしていきたい、こういうふうに思っています。
松沢委員 クレジットカード論争は、ヤマト運輸との間でまだ何か続いているように思いますけれども、これは、クレジットカードの中に磁気テープがあって、そこにはさまざまな個人情報も入っていますね。それも理由の一つに挙げていたと思うんですが、今、磁気情報の中にさまざまな個人情報が入っているというのは、クレジットカード以外にも、例えばCDディスクみたいなものも含めてたくさんあるわけですよ。だから、こういうものは信書じゃないというのは、どこに論理整合性があるのかもわからないですし、また、クレジットカードをヤマトが配達して、それに対して郵政省の方で、これは信書だから配達できないと注意をして、ヤマトがそれを法廷に訴えて、今でもこのけんかは続いているわけですね。やはり、ヤマト運輸に言わせると、これは買い物をするための道具です、何でこれが信書なんですか、こういう考えになっちゃうわけですよ。
 それから、地域振興券についても、これは商品券とどこが違うのか、やはり有価証券じゃないかと。
 確かに、地域振興券の場合は、あて名を書いて届けるというふうになりますね、郵送する場合は。でも、商品券だってあて名を書いて届ける場合があります。商品券はだれが使ってもいいじゃないかという理論も成り立ちますけれども、地域振興券だって、これは限定だけれども、だれが使っても使えるんですね。まあ、区域が限られる場合はあります、川崎市以外だったらだめだというのがありますけれども。
 こうやって、信書の定義というのはさまざま意見が出てくるわけですね。それで、一番難しいのはダイレクトメールなんです。ダイレクトメールは、もう何度も聞いていますが、なぜ信書なんでしょうか。
佐田副大臣 先ほど来から御質問がある話でありますけれども、ダイレクトメールにつきましては、これまで、これは判例の中にあるわけでありますけれども、特定の人に対し意思を表示したり、事実を通知する文書でありまして、信書に該当すると判断してきておるわけであります。
 しかしながら、一般にダイレクトメールというのは、商品、サービスを購入する見込みのある人に直接郵便で届ける広告とされているものでありまして、そこに付されている文言や送付される対象の広がり等を含め、多様な形態を想定されるところでありまして、そこで、ダイレクトメールと称されるものを含め、信書の概念への具体的な当てはめについては、個別具体的にするために、幅広くこれからもまた、先ほどの繰り返しになりますけれども、いろいろな解釈がありますので、これもガイドラインとして議論をしていきたい、こういうふうに思っております。
松沢委員 佐田副大臣の所属する政党自由民主党の総裁である小泉純一郎さんというのは、おもしろいことをする方なんですね。いろいろ実験をしているんです、ダイレクトメールを使って。
 小泉さんが書いた「郵政民営化論」という非常にいい本があるんですが、ぜひとも今度、一度読むといろいろわかると思います、共著ですが。この本のチラシを小泉さんは、当時の郵政省の二百人ぐらいの幹部にヤマト運輸のメール便を使って送り届けた、そのときの大臣が八代大臣でありましたね。それで、最初は本のチラシだったんですね。この本のチラシはオーケーだったという判断であります。
 小泉さんは変人でありますから、今度はこれを、本のチラシでいう郵政省なんかとんでもない、こういう批判めいた私信も裏につけて、もう一回やったわけです。これは違反だと。今、佐田副大臣がおっしゃるように、本のチラシだったらいいんだというんですね。でも、裏に私信が入っていると、これは違反だと。私、この定義はわかるんです。
 ただ、おもしろいのは、では一つの、この最初のチラシ、このチラシがなぜ違反にならないか、要するに信書でないかというと、郵政省がこういう見解を出したんです。本のチラシは書籍である、だから、書籍は信書じゃないから信書にならないというんですね。この論理でいいますと、自動車のチラシは自動車だとなっちゃうんですね。そうでしょう。本のチラシは書籍である、家のチラシは家であるとなっちゃう。マンションのチラシはマンションである、こうなっちゃうわけですよ。
 こうやって、ダイレクトメールの判断なんというのは、それぞれ郵政省の官僚の恣意的な判断で、これはDMです、これは違います、これは信書です、これは違います、全部恣意的な判断でやられていくわけですね。逆に言えば、難しくて統一見解が出せないんです、さまざまなチラシですから。
 ここからが問題なんですが、ダイレクトメールを信書であるかどうかを判断するのは、私は、やはり信書の定義の中で最も重要なのは、通信の秘密を確保すべき文書なのかということと、全国にあまねくサービスをするべき文書なのか。これに当てはまれば、私は信書だと思いますよ。
 ただ、DMの場合は、中身の秘密を守れという人はいませんよ。だって、これは中身を見てもらわなきゃ商売にならないんだから。信書の中身の秘密性というのも、これは極めてあいまいで、だってこれは、町で配ればいいけれども、封筒に入れてポストに入れたら違反になるということですから。それともう一つは、ダイレクトメールは、全国あまねく届けてもらわなきゃいけない品物なんですかということです。
 ですから、私はダイレクトメールはそれに当てはまらないと思っていますから、そういう基準で信書かどうかを決めていかないと、ダイレクトメールについてはすべてを郵政省がチェックしないと、信書であるか信書でないか言えなくなっちゃうんですよ。先ほどのように、本のチラシは書籍であると言いながら、自動車のチラシは自動車だとは言えないでしょう。ですから、ダイレクトメールについては、もうこれは信書でないというふうに扱わない限り、永遠に不毛な信書論争が続くんです。
 副大臣、どうでしょうか。思い切って、ダイレクトメールは信書でない、郵政公社になるんですから、それぐらいの決断をして、きちっとわかりやすい信書の判断をしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
佐田副大臣 先ほど来から申し上げているとおりで、やはり判例に基づいて判断をしていっておるわけでありまして、その中におきましては当然、大臣も御発言がありましたけれども、基本的な判断は今までと変わらない、こういうことであります。(発言する者あり)
松沢委員 今、理事さんの方がやじを飛ばしていましたけれども、信書であるか信書でないかという判断は、要するに、これをやっちゃったらクリームスキミングされて郵政公社の経営が厳しくなる、こういう判断でやっていいんですか。(発言する者あり)そんなことはないです、そんなことはない。
 皆さん、信書であるか信書でないかの判断は、やはり定義に書いてあるように、しっかり通信の秘密が守れて、あまねくサービスをするべきものかどうか、ここの判断でいかないと、私たちは郵政公社を守るために郵政改革をやっているんじゃないですよ。郵政公社の経営でこれをやっちゃったら、ダイレクトメールをとられちゃったら経営ががたがたになっちゃうからダイレクトメールは守るんだとやっちゃったら、これは行政のエゴですよ。
 だから、私は、そこの基準をきっちり設けるべきだと。むしろ、民間でできるもの、信書の秘密をどうしても必要でないもの、全国でサービスをしなくていいものは、これは信書でないという決断をしていかないと、永遠にこの論争は続くんですね。
 そこで、小泉総理は、この前の決算委員会の答弁で、やはりきちっとしたことを言っていますね。「私は、信書の定義にしても、極めて限定的に、民間企業が参入できるような定義を設けます。既に片山大臣に指示しています。必ず民間参入できるような条件を考えます。」総理が立派に言っています。
 さて、大臣、この総理の方向性にどうするんでしょうか。総理は、この前の議論でも言いましたけれども、クレジットカード、地域振興券、ダイレクトメールは信書から外したいんだ、そう言ってさっきの発言になっているんですね。さて、総務大臣、どうしますか。
片山国務大臣 民間が参入するのはできるんです、信書がどうであれ。全部できるんだから、信書であっても、それ以外であっても、場合によっては。その話じゃないので、今の信書の定義をどうかということなんですね。
 だから、これは今、伝統的にかつての郵政省が言ってきたことについてはもう一遍この際見直して、私は、常識的な、国民が納得できることにしたい、こういうふうに思っておりますよ。チラシや何かダイレクトメールのお話がありましたが、特定個人に与えるものは信書ですよ、不特定多数ならと。そこの線引きはなかなか、例えば封筒と中身のあて名がどうだとか、難しいところがあるようですよ。これを国民がわかるような形にするというのが、今回のガイドラインであります。
松沢委員 ダイレクトメールが民間で運べるようになれれば、これはかなり安いコストで運ぶ業者が出てきますね。そうすれば、先生方の後援会報なんかも、今まで、恐らく一万人、二万人に後援会報を送っていたら、何百万とかかるわけですよ。これが半分ぐらいになりますね。そうすれば、鈴木宗男さんや加藤紘一さんの秘書さんのように、無理して公共事業の口ききをやって金を集めなくても、先生方の政治活動も大分楽になってくると思いますよ。民間でできることは民間にやらせる、その基本理念に立って、この信書の定義についてもしっかりと今後決めていっていただきたいというふうに思います。
 さて、もう一点、これも総務省の省令で決めるということになっていますが、ポストを置かなきゃいかぬというのは、法令に書いてあります。しかし、そのポストをどういう基準で置くかというのは、総務省の省令で決めるというふうになっているんですね。私、ふと考えますと、なぜ差出箱、ポスト制度というのをすべての業者に強制しなきゃいけないのか。信書の秘密が守れて、全国あまねく配達できれば、その方法論、手段においては、各業者のそれぞれのノウハウに任せていいという考え方だってできるんじゃないでしょうか。
 さて、なぜポスト制度を強要するんでしょう。それは、前島密さん以来、郵政の歴史があって、その中でポストという制度を使ってやってきた。これはいい部分があったんでしょう、長い歴史の中で。幾らでも説明ができると思います。ただ、なぜすべての民間業者にポストを設置しなければいけないという強制になったのか。そこはどういう答弁でしょうか。
片山国務大臣 ユニバーサルサービス論というのが盛んに今回もやりとりされておりまして、我々も、ユニバーサルサービスは守っていかなければならない、こう考えておりますが、地方を含めて、だれでもいつでも簡易に使える、それと同時に信書の秘密が確実に守られるような、我々は今ポストでやっているわけで、だから別にポストでなくてもいいんですよ、そういう差出口をつくっていただければいい。
 そこで、そのイメージがポストであるというような方があるいは多いかもしれませんけれども、随時かつ簡易に差し出すことを可能にするもの、ただし秘密を保護するため適切なら、それにかわる方法もよろしい、こういうことを言っているわけでありまして、ただ、基準等は事細かになかなか法律では書けませんので、法律に基づく委任省令で書かせていただこうか、こう思っておりまして、これについても関係する皆さんの意見を十分に聞いて基準をつくりたい、こう思っております。
松沢委員 今、民間の宅配便の業者はさまざまな取次店というのをかなりの数持っていますね。ヤマト運輸で三十一万あると言われています。これはポストの十八万よりも多いんですね。じゃ、こういう取次店に簡易ポストのような小さな差出箱も入れて、信書の秘密、投函の秘密が守れるというのであれば、そんなに資本投下は要らないわけですよ。これを全国に今、頑丈ででかいものを、だれにも見られないように投函できるようなところに十万設けろといったら、これは大変ですよね。この簡易ポストのようなものを取次店、いわゆるコンビニや米屋さんとか、こういうところに設ける、こういう差し出し方法でも、これはポストに認めていただけるんですか。
片山国務大臣 状況にもよりますが、秘密の保護ができる、簡易で随時で便利にやるということなら、それは今の我々の考え方は認めようということでございますが、いずれにしても、省令の段階で十分意見を聞いて検討させていただきます。
松沢委員 先ほども質問が出ましたが、これまで郵政事業は、郵便については国家独占でやってきたわけなんです。ですから、税金ではないですが、そういう意味では、公費、公的なお金を使ってさまざまな資本投資もしてユニバーサルサービスをつくってきました。
 それで、今、ポストが十七万あるんですね。立派なポストがあちこちにあります。むしろ、電気通信の分野でNTTが回線利用を民間業者に認めて、これまで国家独占でやってきて、大きな資本を、ネットワークをつくってきましたから、それを民間に認めて、そこから使用料を取るという発想でやったと同じように、ポストについても、例えば、でっかいですから半分に分けていただいて、こちら側は民間で使ってくださいというように、既存のポストを民間にも開放するというのも私は一つのアイデアだと思いますけれども、総務大臣、この方向についてはいかがですか。
片山国務大臣 いや、これは手間が大変ですよね。みんなが一つのポストに入れると、仕分けをしなきゃいけませんし、場合によっては問題が……(松沢委員「半分に分けたら」と呼ぶ)いやいや、そうすると、それは手を入れないといけませんわな、新しい投資が要るんで。アイデアはアイデアとして承っておきます。
松沢委員 時間がないので先に進みますが、ユニバーサルサービス、一般信書便業者は、その事業に入るときには、これは一社ということになっているんですね。独立単体で入る。ただ、ユニバーサルサービスをきちっと維持できるのであれば、民間業者が連携してユニバーサルサービスを実現できるということを証明して、それで参入するということも考えられると思うんですね、要は民間が参入して国民の利便性が上がることですから。もしそういう形を認めていけば、民間業者としても、一社じゃちょっとこのハードルはクリアできないけれども、二社、三社でこのハードルをクリアしようといって、これは民間活力にもつながっていくんですね。この法案にはできないというふうに書いてありますが、将来的にそういうことも考えていいんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
片山国務大臣 今回、この法案でそういう方式はだめだとしましたのは、やはり責任が大変不分明になるんではなかろうかと。それから、連携というのがどういう形でいけるんだろうかという心証が我々としてはなかなか得られなかったんです。ただ、本当にきちっとユニバーサルサービスが守れて、責任が明らかで、連携ももうそれはしっかりしたものになるということならば、それは私は将来検討の対象にはなると考えております。
松沢委員 もう一つは、公社と民間業者の連携です。公社もさまざま経営がきつくなると思います。その中で民間業者と組んでユニバーサルサービスを実現できれば、国民的には損はないわけですね。これも法律には、読んでみたんですけれども、書いてありませんが、将来的には公社と民間業者の連携というのも考えられるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
佐田副大臣 その御意見もあろうかと思いますけれども、これは、信書便の事業者の方々には委託の法律はありますけれども、公社の方が受託ができるというふうな法文はございませんので、今のところはそれはできない、こういうふうになっております。
松沢委員 最後にしますけれども、法案の中に一般信書便業者による業務委託というのが、何条でしたか、あります。
 この業務委託については、例えば、今、公社も、ステーション・ツー・ステーションは日逓みたいな民間企業にやってもらっているんですね。それで、今度、一般信書便業者にも当然、公社がそうやっているわけですから、やはり競争条件を一緒にしなきゃいけません。民間業者にそういう業務委託ができるようにすべきだというふうに思うんですが、一般信書便業者については、それが総務大臣の許可をとらなきゃならないということになっている。
 それで、もう一つ、公社の方は、今度、郵便物運送委託法というのが施行法の中で改正になりまして、郵便物の運送等を他に委託することが経済的であり、かつ、郵便物の運送等に関する業務に支障がないと認めるときという条件があったんですが、これが削除されているんですよ。
 要するに、公社は条件なしでどんどん業務委託を認めましょう、それに対して、一般の信書便業者に対しては総務大臣に許可をとりなさいと、そのときに条件がついているんですね。これじゃ、まるで民間いじめですよね。全く、条件まで公社を楽にして、民間を総務大臣の許可制にしている。一事が万事こうだから、民間からしてみると、こんな法案じゃとても競争できないということになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
佐田副大臣 今のお話ですけれども、民間事業者の業務委託について、秘密の保護その他の信書便事業としての適格性を担保するために、今おっしゃられましたように、当該委託を必要とする特別な事情があること、または受託者が当該業務を行うに適している者であるということの二つの規定を設けさせていただいているということであります。
 ただ、一方では、現行の郵便物運送委託法では、委託することが経済的であること等抽象的な基準を規定することにとどまっていたが、公社としては、適切な業務委託とするため、ほかの特殊法人法制の例にならって、総務大臣の認可を受けて定める具体的な基準に従ってしなければならないということで、その辺もしっかりと、決して不平等にならないようにしておりますので、御理解いただきたいと思います。
松沢委員 以上で質問を終わります。これからも問題がたくさんありますので随時議論をさせていただきたいので、よろしくお願いします。
平林委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。遠藤和良君。
遠藤(和)委員 明治五年、一八七二年ですけれども、我が国では北海道の一部を除きまして、官営の郵便事業が全国展開されました。今から百三十年前でございます。明治政府は誕生したばかりで、財政力も豊かではない。そういうときに、わずか明治五年という大変早い段階で全国に郵便事業が展開されたということは、まさに驚異的な歴史ではないのかなと私は思います。その出発に当たりまして、短期間のうちに全国展開できたのは、地域の素封家の皆さんが家屋敷を提供し、官営の郵便事業に協力をしていただいた、こうした歴史があったからできたものだと思いまして、先輩の皆さんに心から感謝をするものでございます。
 この今回の法律案は、私は、そういう意味では、百三十年ぶりの大改正の法案である、このように位置づけたいと思います。国と別のいわゆる国営の郵政公社をつくる、経営主体をそのように改めるということですね。それからさらに、国家独占でございました信書の取り扱いについて、これは条件つきですけれども民間の業者にも参入を全面的に認める、こういうふうな大改革法案だと私は思っているわけでございますが、今審議の始まりましたこの四法案、私は共通する理念があると思います。これは日本国民に対してどのようなサービスを提供するのか、こういった意味から、四法案共通する理念があると思いますが、そうした理念につきまして大臣はどのように理解していらっしゃるのか、まず最初にそこからお聞きしていきたいと思います。
片山国務大臣 今遠藤委員からお話がありましたように、我が国の郵便局ネットワークは百三十一年の歴史を持つ、ある意味では国民の生活インフラとも言ってもいいものだ、こういうふうに思いますが、時代が大きく変わってきておりますので、いつまでも国が直接やるのではなくて、国と別の法人格を持つ公社にして、そこで自由に、法律は自律的かつ弾力的にと書いておりますが、できるだけ民間に近い形で自由にやっていただく、それによっていいサービスを効率よく提供していただく、こういうことでございます。
 同時に、信書便法の方は、百三十一年ぶりに国家独占を排して、民間にも参入の道を開いて競争していただいて、いい競争をしていただく、こういうことでございまして、共通する理念は、国民の皆様にユニバーサルサービスという基礎はしっかりと確保しながら、より質のいい、安いサービスを提供するということにそのポイントがある、こういうふうに考えております。
遠藤(和)委員 この大法案、私は、法案を作成する作業も大変なものだったと理解をするわけでございますが、この法案に対して総理から、これは一里塚である、あるいは外堀である、こういうふうな発言があったわけですけれども、私はちょっとその発言は、法案を一生懸命つくって百三十年ぶりに大改革をして、国民の皆さんにそのサービスを競争して提供しようという崇高な理念のもとにつくったものが、単なる一里塚である、このように位置づけられますと、つくった人たちの心証に対して本当に傷つけるのではないか、こういうことを恐れるわけでございますけれども、この総理の発言に対して総務大臣はどのような印象を持っておりますか。
片山国務大臣 総理は、かねがね郵政改革には大変な御熱意を持っておりますし、郵政を民営化するということが持論でございますので、公社化をまずやって、できれば民営化、こういう御意見の日ごろのお考えを国会では言われたと思いますが、公社化というのは、そこで終わりでも途中でもないのですね。これから公社化をした後、大いに議論して、総理の御意見もありますし、国民の皆さんの御意見も体して方向づけをしていく、こういうことではなかろうかと思います。そういう意味では、できるだけいい公社、国民の皆さんから見て本当に変わったな、よくなったなというふうな公社を目指すべきでございまして、そういうためには、先ほども言いましたが、できるだけ民間的な、民間の経営的な仕組みを導入していく。前の公社は、結構あれは自由といってもかなり手と足が縛られておりましたけれども、今度は余り縛らなくて、事後チェックであったり、料金その他も自由に公社で決めてもらう、こういうことにいたしているわけでありまして、給与や任用についてもぜひそういうことで、大変経営の効率が上がるように、いい経営ができるようなことにしていくべきだと考えております。
遠藤(和)委員 総務大臣の認識は、私は一里塚とは考えていないと。これは、公社をつくることを目的にした法律であり、あるいは民間の全面参入を目的とした法律であって、そこでつくったものを国民の皆さんに御評価をいただく、その上で議論があって、これじゃだめだ、やはり公社の方がいいという議論になれば、そのときに議論が始まる、こういうふうな話ではないのかと思いますが、つくる前から、これに対して、これは一里塚と言うのは、審議をする意味もなくなっちゃうわけですね。これはやはり、きちっと公社として大きく育てて、この公社の経営というもの、公社のサービスというものを国民にどのように評価をしていただくか、こういうことが大事だと思いますけれども、いかがでしょう。
片山国務大臣 まず、今この四法案を国会に提出させていただいて御審議をお願いしておりますのも、今遠藤委員言いましたように、とにかく国会で皆さんで、先生方で決めていただいた中央省庁改革の一環として郵政公社にする、こういうことでございますから、これをしっかりした公社につくるということに我々は全力を挙げていきたい、こういうふうに考えております。
遠藤(和)委員 今、冒頭、片山大臣から、この法案、いわゆる郵政公社化法案、それから信書便法案ともに、これは国民のための法案である、国民の皆さんのための改革である、こういう位置づけがあったのですけれども、具体的に公社化研究会の皆さんが中間報告をまとめて、その後パブリックコメントをかけていますね。実際にどういう声がパブリックコメントとして寄せられていたのか、具体的にお示し願いたいと思います。
野村政府参考人 郵政事業の公社化に関する研究会では、広く国民の皆さんからの声を聞くために、親会でのヒアリングとか地方での公聴会、それ以外に、先生今お話しのようなパブリックコメントを募集しておりまして、全国から千五百二十四件の意見をいただいたところでございます。
 公社の制度のあり方につきましては、一つは、三事業一体で全国あまねく公平なサービスの提供を継続すべき、これが三百四十九件ございます。
 二つ目といたしまして、郵便局は国民共有の生活インフラ、セーフティーネットであり、地域の拠点として地域社会に欠かせない存在である、これが二百八十件でございます。
 郵便貯金の預入限度額は現行どおりとすべきというのが二百十五件です。
 地域社会の発展及び住民利便の向上のため、郵便局及び郵便局ネットワークを強化、有効活用すべきというのが二百九件でございます。
 それから、国、地方公共団体と連携したワンストップ行政サービスの推進に期待するというのは二百九件でございます。
 また、郵便事業の民間参入に関しましては、ユニバーサルサービスを堅持すべきというのが五百二十九件ございました。
 二番目といたしまして、部分参入または段階的参入等慎重な対応を望むというのが二百十五件でございます。
 三番目といたしまして、信書の秘密の保護についての措置を検討すべきというのが二百十三件。
 こういったところが主な意見でございました。
遠藤(和)委員 公社化研究会は、二つのプロジェクトチームをつくりました。一つは公社化の議論、それからもう一つは民間参入のあり方、これでそれぞれ結論を出しているわけですけれども、それぞれ、大体どういうふうな結論であったのか、それは国民の声をきちっとまとめて表現をしたものになっていたのかどうか、これを聞きたいと思います。
野村政府参考人 中間報告は、研究会とか先ほど言ったパブリックコメント、公聴会の意見を踏まえまして、一つは、国民共有の生活インフラ、セーフティーネットとしての郵政事業、郵便局が果たしてきた意義、機能を公社化後も確保し、郵便局ネットワークの有効活用を推進すること。二つ目といたしまして、民間企業的経営手法を導入し、経営の効率化やサービスの改善を図ること。三番目といたしまして、郵便事業への民間参入については、現在のユニバーサルサービスの確保を前提とした上で、競争導入による国民利用者の利益の増進を図ること。こういったことを基本的な考え方として、次のように取りまとめられたところでございます。
 まず、公社の制度設計のあり方につきましては、公社に対する国の関与は、これは法律で定められておりますけれども、事前管理から事後評価への移行を基本といたしまして、中期経営目標、中期経営計画を総務大臣が認可する。その後、業績評価を総務大臣が行う。二つ目といたしまして、公社の会計は企業会計原則に基づくものといたしまして、事業部門ごとの財務状況についても明らかにするというのが二つ目でございます。三番目といたしまして、能力、実績重視の任用、登用制度とか給与制度、こういったものを確立すること。四番目といたしまして、業務範囲は現在の郵政事業を一体として行うこと。五番目といたしまして、商品、サービスの提供条件のうち、基本的なものは法令で定めますけれども、その他のものについては総務大臣の認可を受けて公社が定める、こういったところでございます。
 それから、郵便事業への民間参入につきましては、ユニバーサルサービスの確保を可能としながら競争の効果を発揮される現実の政策となり得る選択肢といたしまして、一つは条件つき全分野への参入、二つ目としまして部分的自由化、三番目といたしまして段階的自由化、この三つが考えられる。このうち、競争の効果を重視する観点からは、当初から全分野への参入を可能とする条件つき全分野への参入の選択肢を採用することが考えられるということとされたところでございます。
遠藤(和)委員 民間参入のあり方で、部分的参入、それから段階的参入、それから条件つきですけれども全面的な参入、この三つのシナリオがあったけれども、条件つき全面的参入を認めたというのは、私は、大変大きな理念的な意味があったと思うんですね。
 というのは、部分的参入とか段階的参入というのは国家の独占を残しているわけですけれども、この条件つき全面参入、これは国家の独占を排除する、こういう意味では全く違った分類になるのではないか、よくぞここまで決断をしたな、こういうふうな印象があるんですけれども。私は、これで独占はないと、要するに、条件さえクリアできれば、国家独占のところも民間が自由に参入できるんだ、このように、この三つのあり方について私なりに理解をするんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。
團政府参考人 お答えいたします。
 遠藤委員のおっしゃるとおりでございまして、世界的には、アメリカやヨーロッパなど、部分的な参入ということで、ということは、すなわち、事業体に独占分野を残しているというものでございますが、今回の信書便法案は、すべての信書の業務ができるという制度をつくっておりますので、参入になれば独占分野はなくなるという制度でございます。
遠藤(和)委員 それから、研究会は公聴会を中央あるいは地方でやっていますけれども、こうした公聴会で各界各層の皆さんの意見を聞いていると思いますね。
 私も大変印象深い公聴会に出席をした思い出がありますけれども、それは、郵貯、簡保に資金が集まり過ぎるから限度額を引き下げろという銀行とかあるいは保険会社の皆さんの強い意見の後、出席された消費者代表の御婦人が話をされました。
 それは、限度額が問題ではないんだ、国民の、自分の選択の問題ですと。私は、信頼ができるから郵便局に預けたり、簡保に預けるので、それを限度額でもって制限をして締め出すというのはおかしいんじゃないか、こういうふうな話がありました。資金が集まるか集まらないかというのは、国民がどうして自分の資金を運用しようかということを考えるときに受け皿になるものがあれば、そこに集まるわけですね。そういうことを言っているわけであって、それを、限度額を決めることによって排除しようということになると、排除された資金は行き場がなくなっちゃう。銀行には行かなくて、銀行の金庫に行っちゃうんじゃないか、そういうふうな議論もされておりましたことを大変印象深く思っているんですけれども。
 この、いわゆる公聴会の意見というものも、今回の法案の中にきちっと反映されているんでしょうか。
野村政府参考人 中央の公聴会以外に地方での公聴会も実施しておりまして、そういった公聴会でいただいた主な意見といたしましては、先ほどとちょっと重複するわけでございますけれども、三事業を一体的に提供し、生活インフラ、セーフティーネットとしての郵便局の利便性を維持してほしい、ワンストップ行政サービスやひまわりサービスの提供等を通じて引き続き郵便局ネットワークの有効活用を図るべきだという意見とか、公社化による一層のサービスの向上に期待する、採算性重視によるサービス低下や郵便局の廃止を懸念するというような意見が公社化についてあったところでございます。
 また、民間参入関係につきましては、ユニバーサルサービスを確保する仕組みが必要だとか、信書の秘密を保護し、安全確実な配達を確保してほしい、そんな意見があったところでございまして、公社化研究会の中間報告には、理念等のところにこういった意見が反映されているところでございます。
遠藤(和)委員 国庫納付金のことについてちょっと具体的に聞きたいと思いますけれども、公社になって国庫納付金の規定があります。したがって、国庫納付金を納めることになるんですけれども、そのめどをどう考えているのか。
 私は、スタートしたばかりの公社は非常に資本過少ですね、とても払える状態ではないと思うんですけれども、払うときにどういう基準で決めるのかという問題があります。それは、例えば法人税あるいは預金保険機構の保険料見合いのものになるのかどうか。いわゆる収益性、あるいはその保証をした、国家保証をしているから、そういうふうなものに見合いをして算定することになるのかどうか。それは財務省と総務省が議論をして決めるのか、その辺、具体的な算出基準のようなものは決めているんですか。
野村政府参考人 国庫納付金につきましては、今回、法律の中に根拠規定を置いたところでございますけれども、この趣旨といたしましては、公社は法律により直接設立される法人であるということとか、中長期的に利益が生ずることが想定される、そのほか、いろいろな公的保護がある、こういったことを総合的に勘案いたしまして、法律の中に、公社の経営の健全性確保に支障を及ぼすおそれがないと認められる範囲で政令で定める基準により計算した額を国庫納付するということでございまして、今後、具体的に政令を定めていくわけでございますけれども、そのときの考慮要素といたしましては、公社の損益状況、資産及び負債の状況等、総合的に勘案して決めていくことになると考えているところでございます。
遠藤(和)委員 大臣、具体的に、払える状態というのは、やはりそのときになってみないとわからないと思うんですね。今から、いつまでということは言えないと思いますけれども、少なくとも公社の経営が健全になる、そして十分な資本の蓄積もできた、こういうときでなければ、法律はあるけれども法律のとおりにはできませんと、こういうことをきちっと今の委員会の審議の中ではっきりした方がいいんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
片山国務大臣 まさに法律の中にも、経営の状況を考えるとか、いろいろなことのあれをつけていますね、留意事項。それが、今遠藤委員が言われたように、経営が安定して過少資本を解消して健全な経営の見通しがついてからと我々は考えておりまして、そういうことは私も財務大臣にははっきり言っております。
 ただ、それがいつなのかというのは、これから中期経営計画、中期経営目標をつくっていくわけでありますから、少なくとも最初の中期経営計画が終わるまではそういう状況にならない、私はこういうふうに考えております。
遠藤(和)委員 スタートする公社の、いわゆる民間で言われているBIS規制による自己資本比率、こうした指標で見るとどうなるのかということですけれども、BIS規制の言っている自己資本比率の計算式は、リスクアセットに対する自己資本の額ですから、これが八%以上という話になれば、公社が扱っている商品は、大体運用が国債とか安全な、リスクの少ないものをやっていますから、大変リスクが少ないですから、分母が小さくなって、恐らくこのままの計算ですれば八%を超えるんじゃないかと思うのです。
 ただ、一方、いわゆる総貯金高に対する資本の割合というものを見ると、都市銀行なんかは大体十二年度で六・四%、地方銀行は六・一%もあるんだけれども、郵貯は二百五十兆円の総貯金高に対して資本は二・三兆円ですから、一%を切りますね。
 そうすると、こういう指標で見ると、都市銀行や地方銀行に比べても格段に自己資本が少ない、こういうことが言えるんじゃないかと思います。自己資本が少ないから、国庫納付金が払えるような状況になるのは十年も二十年も先じゃないのかなという印象もあるのですけれども、いかがでしょうか。
山内大臣政務官 遠藤委員はつい最近まで私の上司でもありまして、大変緊張しながら答えをさせていただきます。
 先ほど、経営の健全化について、民間の金融機関に用いられる自己資本比率はどうなのかとか、今おっしゃっておりました資本増強に努めなければならないじゃないかという御質問をいただいておりますけれども、例えば、BIS規制に関しましては、自己資本比率というのは、保有資産にそれぞれのリスクウエートを乗じることによって求められるリスクアセットに対しまして、具体的に自己資本相当額がどのくらいあるか計算する比率でありまして、主に信用リスクとの関連で見た自己資本の評価が目的として認識されておるところでございます。
 郵便貯金は、そういった制度上、こうした信用リスクの大きい貸し出しは行いません。したがって、資金は国債などを中心に運用してまいりますので、リスクアセットをベースにするBIS基準に照らし合わせて自己資本の水準を見ることは適当ではないのかなという感じはいたします。
 そして、公社の資本増強に努めなければならないという問題につきましては、郵政公社の設立当初における資本の額については、現時点において確たることは申し上げられませんけれども、郵政事業の公社化に関する研究会、これは平成十三年十二月の中間報告にございますが、平成十二年度決算計数等をもとにした試算では郵政公社の資本金は約一兆九千億とされており、過少資本ではないかとの指摘を有識者の方から受けております。したがって、郵政公社は、独立採算制のもと健全な経営を確保していくために、金利上昇に伴う保有債券の価格変動リスク等の経営上の各種リスクに対応できるよう、資本の充実を図っていくことは必要であると考えております。
遠藤(和)委員 それから、経営の見通しなんですけれども、公社がスタートして、三事業別に見通しをつくりまして事業計画をつくりますよね。その見通しについて、黒字基調になるのかどうか。特に、郵便事業については最初から赤字になるんじゃないかという心配もある。この辺については、スタートした段階で見通しは明るい、こういうことは、今確たる見通しを持っているんですか。ちょっと三事業別に説明してください。
團政府参考人 お答えいたします。
 三事業の経営見通しでございます。これは、継続して事業が行われますので、公社になる前からの経営努力が必要ということで、いろいろな努力をしてまいっております。
 まず郵便事業でございますが、これは、平成十年度から三年度赤字が続いておりまして、十二年度の決算でも単年度百億の赤字でございますが、累積の積立金が千二百二十六億ということでございました。そこで、十三年度におきましては、補正後で二百四十六億円の赤字という予算でございましたが、相当な経費節減等の努力を行っておりまして、これよりかなり大幅に好転するものというふうに見ております。さらに、十四年度におきましては十億円の黒字で予算を立てておりまして、三年にわたります赤字基調からの脱却というのがこの時点ではできるのではないかというふうに考えております。
 しかし、これに加えまして、さらに競争も始まってまいりますので、公社スタート以降のまた経営努力も一層必要になってくるということでございますが、ともかく赤字から脱却したスタートができるのではないかという見通しでございます。
 郵便貯金事業でございますが、これも集中満期という時期がございましたので、赤字の時期が十二年度まで続いたわけでございますが、十三年度以降は黒字が見込まれております。十四年度におきましても、予算上一兆二千億を超える黒字を予定しておりますし、十五年度以降につきましても、金利の水準等が現行の水準で推移すれば、趨勢として支払い利子が減少していくということでございますので、十四年度並みの黒字を出すことができるんじゃないかなというふうに考えておるところでございます。
 それにつきましても、貯金事業につきましても、資産負債管理、ALMの管理というふうなこと、あと経営の効率化が一層必要だというふうに考えております。委員の御指摘のとおり、資本金が少ないということにつきましては、こういう原資をもちまして増強に充てていきたいというふうに考えているものでございます。
 簡易生命保険事業、簡保につきましては、低金利が長期化しておりますので、逆ざやという状況が続いております。さらに、今の経済状況もございまして、保有契約の減少というふうな厳しい経営状況が続いておりますけれども、市場金利の逆ざやの分につきましては、追加責任準備金というものを積み立てておりまして、この準備によりまして、平成十四年度の損益におきましても千六百八億円の剰余金を見込んでいるということで、健全な経営が運営できているというふうに考えております。
 十五年度以降でございますけれども、これにつきましては、一つの要素としましては、指定単の含み損の償却というふうなことによりまして内部留保の減少ということも予想されておりますけれども、こういう要素も織り込みながら、適切なリスク管理を行うことによりまして内部留保を充実していきたいというふうなことでございます。
 三事業とも厳しい状況ではございますけれども、それなりの目途をつけて公社がスタートできるんじゃないかというふうに考えております。
遠藤(和)委員 先ほど、公社化研究会の中間報告を法案に表現をしたという話をされておりましたけれども、一つだけ中間報告の報告を法案にしていないところがあります。それは、公社が子会社等に出資ができるという条項ですけれども、これを法律に盛られておりません。私は、これは時間がなかったとかおっしゃっていましたけれども、やはりきちっと出資できるようにして、経営の自由化、自由度というものをつくってあげた方がいいんではないかと思うんですね。例えば、一体的な事業運営が必要な場合は出資ができるとか、そういうふうにした方がコストダウンにもなりますよね。
 そうした意味で、これは出資をできるということを早く法律でつくる、その法律を用意される、こういうふうなことを考えてほしいと思いますが、いかがでしょう。
山内大臣政務官 先生から、なぜ法案に明記されなかったのかという御指摘もいただいております。
 公社の出資につきましては、郵政事業の公社化に関する研究会の中間報告を踏まえまして、競争に対応しつつユニバーサルサービスの維持を図る、そういった意味から、公社に経営の自由度を付与するという観点から、必要な範囲に限り民間企業に出資できることとするよう検討、調整を行ってまいりました。
 ただし、今も御指摘が一部あったんですが、法案全体としての関係省庁との調整に大変予想以上に時間を要しまして、まずそれがうまくいかなかったというのが、時間が足らなかったということがまず一つ。
 そして二つ目には、出資が適当な事業の範囲等、公社にふさわしい出資制度とするために、なお検討をじっくりしていかなきゃいけない、またそういった課題もあったというように聞いておりまして、今回、公社化法案に出資規定を盛り込まないということにしたものであります。
 ただし、本件については引き続き検討を進めてまいりたいと思っておりますので、どうかよろしく御理解のほどお願いします。
遠藤(和)委員 それから、公社になった後、今の郵政事業庁が、要するに、いわゆる郵政ファミリーだとか下請企業だとかから調達するコストが余りにも高過ぎる、もっと低く、効率のよい調達ができるようにしろということは何か言われているわけですけれども、そういうものを大改革する考え方はあるのかどうか。
 それから、例えば、一般競争入札を原則とするとおっしゃっているんですけれども、金額ベースでいうと、やはり一般競争入札は半分くらいですよね。あとは随契になっています。これをやはり一般競争入札をどんどんふやして調達コストを下げていくということをしていかないと、これは公社の経営にも響くのではないか、こう思いますが、どうでしょう。
松井政府参考人 お答え申し上げます。
 郵政事業庁における物品や役務の調達契約についてのお尋ねでございますが、御案内かと思いますが、郵政事業庁における物品等の調達契約は、政府調達に関する協定、条約ですが、これとか、それから会計法等の法令によりまして、原則として競争入札により行っているわけでございます。いわゆるファミリー企業等が何を指すのかということがちょっとございますが、特定の企業を優遇することによってその調達コストが高くなるということはないと考えておりますし、また、あってはならないというふうに考えております。
 それから、新たな公社における調達契約に関する制度的な枠組みでございますが、今公社の位置づけを踏まえて検討しているところでございますが、いずれにしましても、その透明性それから公平性を保つ観点が大事でございまして、物品等の調達に当たりましては公社化後も原則として競争入札によることを考えております。
遠藤(和)委員 特殊な機材が多いからなかなか全部を一般競争入札にするのは難しい、あるいは一遍入った機材の保守点検とかそういうものは随意契約にならざるを得ないという理由はわかるんだけれども、やはり総額、金額の半分が随契であるというのはちょっと改革の余地があるんじゃないかと私は思いますから、ぜひそういう方向で努力してもらいたいと思います。
 それから、別の話ですが、第三種、第四種郵便、いわゆる政策料金減免制度ですけれども、私はこれはある意味でユニバーサルサービスの一環ではないのかなと思っているんですね。ユニバーサルサービスをする、だから盲人の手紙は無料にする、そしてそういう方々に対して配慮する、そういうことをユニバーサル事業者はプライドとしてやっていくんだ、それを私は本当なら信書便で全国で展開する、一般信書便事業者にもこの三種郵便、四種郵便を同じように義務づけるべきだ、イコールフッティングということからいえば、というふうに思いますけれども、それはなかなか大変だということになったんでしょう。
 私は、なぜ義務づけなかったのかという理由を聞きたいとともに、この日本郵政公社が今後も三種、四種をきちっとみずからの事業としてユニバーサルサービスを行う、日本郵政公社、唯一の公社ですけれども、やっていくという意味で、法律の中にこの存続を明文化すべきだ、このように思いますが、いかがでしょう。
團政府参考人 第三種、第四種郵便物の取り扱いについての御質問でございます。
 第三種、第四種郵便物、これにつきましては、政策料金の減免制度ということで、現在の郵便法で郵政事業庁が実施しているものでございまして、社会、文化の発展、学術、教育の普及、目の不自由な方の福祉の増進などに重要な役割を果たしてきているというふうに考えております。今回、法案をつくるに当たりましても非常に多くの要望が寄せられたところでございます。
 そこで、公社化に関する研究会の中間報告でもこの問題は取り上げられておりますが、この中間報告では、競争状況になれば郵政公社の経営判断にゆだねられるべきだという御提言もございましたけれども、この制度的な意味それから影響というものを考えた場合に、やはり制度としては残すべきではないかというふうなことで、新しい改正後の郵便法におきましてもこの第三種、第四種の制度は残すということにいたしまして、郵政公社には引き続きこの制度を実施していただくということにいたした次第でございます。
 もちろん、料金等の決め方につきましては、これは公社が決めまして、国の認可に係るというふうなことにいたしましたが、制度としては継続してやっていただくということにいたしました。
 他方、御指摘の新規に参入する民間事業者におきまして同様なサービスの提供もするべきではないかという御意見でございます。
 これにつきましては、いろいろ検討の結果でございますけれども、確かに他の公益事業におきまして身体障害者の方などに料金減免をされているような例がございます。例えば、NTTにおきましては視覚障害者等について番号案内料を免除するとか、あるいは鉄道、航空におきましても障害者の方に料金を割引するとか、NHKにおかれましても放送受信料についてそういう制度がございますが、いずれもこういうものは法律によって実施しているものではなくて、各事業体におきましてみずからの公共的役割ということを意識してこういう制度を実施されているということでございます。
 したがいまして、今度新規に参入される信書便事業におきましても、郵便の伝統でもございますこういうふうな政策的な料金の体系というものを期待いたしたいというふうに考えてはおりますが、法律の義務づけまでは少し過剰ではないかということで差し控えているという状況でございます。
遠藤(和)委員 郵貯、簡保の自主運用について聞きたいんです。
 いわゆる財投改革がありまして、郵貯、簡保は自主運用になっているんですけれども、これは建前なので、実際は財投債の引き受けを今やっています。これは経過措置期間があって、平成十九年まで引き受ける、こういうことになっているんですね。これは財務省からお願いしますということで来たんだろうと思うんですけれども、この経過措置が終了した後は、平成二十年度以降になりますか、財投債の引き受けをしないわけですから全額市中で発行する、これは完全自主運用になるわけですね。そうすると、財投との関係は一切切れるわけですね。
 そういうことをわかっていながら、総理は、郵貯、簡保を民営化しないと財投改革、特殊法人改革につながらないとおっしゃっているんですけれども、これは論理的じゃないんですね。今も、ほうっておいても財投との関係は、郵貯、簡保、ないんですよ。ないものを、民営化しないと財投改革ができない、特殊法人改革ができないと言うのはちょっとこれは論理的じゃないんですけれども、どういうふうに理解しますか。
片山国務大臣 制度としては、まさに遠藤委員が言われるとおりでございまして、昨年の四月からは義務預託も廃止になりましたし、あるいは直接に財投資金が特殊法人に流れ込む道も断ったわけでございまして、そういう意味では制度は変わっているんですが、ただ、七年間は経過措置ということで、既往の貸付分についての継続をやることと、それから一遍に変えないでほしいというようなマーケットに対する要請がありまして、だから、そこでなだらかに移行していく、こういうことにいたしていること等はあることは事実でございます。
 いずれにしても、今後は、先ほども答弁いたしましたけれども、自主的に運用していく。自主的といっても、いろいろな審議会の御議論をいただいたり、相談すべきところには相談したり、資金運用計画をつくったり、そういう中で自主運用の幅を広げていきたい、こういうふうに思っておりますから、特殊法人にストレートに金が行くことはなくなりますけれども、マーケットで、例えば財投機関債を買うとか財投債を引き受けるとか、こういうことはあり得ると思いますので、財投機関といいますか、特殊法人の方もそういう意味では自立していただかないと、こういうことになろうかと思います。
遠藤(和)委員 ですから、財投改革、特殊法人改革をするために、財投債引き受けの経過期間を短縮するというのならわかるんですよ。短縮するというのはわかるんですが、公社の経営形態を変えないと財投改革とか特殊法人改革にならないという論理は飛躍していると思うんですね。そこのところを聞いているんですが、どうですか。
片山国務大臣 完全に縁が切れればそういうことが言えると思いますけれども、制度としては、何度も同じことを言いますけれども、資金運用部経由で金が回っていったり、簡保の金が直接特殊法人に行ったりするようなことは切れたわけでありますから、そこのところは、もう少し運用が、時間を経ていけばかなりはっきりしてくる、こういうふうに思っておりまして、来年も、七年の経過分については、これは約束ですから続けなければなりませんけれども、特殊法人のいろいろな改革は少なくとも進んでいくように、我々の資金運用についても今後とも考えてまいりたい、こう思っております。
遠藤(和)委員 それから、財投改革の趣旨を考えると、財投債により資金調達をするのではなくて、財投機関が財投機関債を発行して自己責任で資金調達をする、これが本来の姿ですよね。そうなっていなくて逆転していますね、今。これをきちっとやる方が先なんですね、財投改革は。私そう思うんですけれども。
 これは直接総務大臣の所管事項じゃないかもしれませんけれども、経済財政諮問会議のメンバーでもいらっしゃいますから、こうした財投改革の趣旨をきちんと実行していく。したがって、財投機関債の資金調達を多くしていくように政府全体で取り組んでいく、こういうことをしないと、これは特殊法人改革にもなりませんよ、財投改革にもなりませんよ。これに対する御意見、どうですか。
片山国務大臣 その点は遠藤委員の言われるとおりでございまして、昨年度は、財投機関債は一兆一千億、財投債が四十三兆九千億ですから。本年度が、財投機関債が二兆七千億、財投債が三十四兆四千億ですか。
 そういう意味で、本当は財投機関債の方が多くならなきゃいかぬのですね。自己発行することによって信用力が審査されて自力もつきますし、淘汰も行われるんですよ。ただ、これも一遍にということじゃなかなかということで今こういう形になっているのではなかろうか、こう思っておりますが、今後とも財投機関債をふやして財投債を減らしていく、これが本来の財政投融資改革の本旨だ、こういうふうに私は思っております。
遠藤(和)委員 これは、財投改革ぜひやってほしいですよ。それを何も公社の経営形態とくっつけないでほしい、こう思います。
 それから、公社化以後の、公社の資金運用のポートフォリオですけれども、これは基本的に今の郵政事業庁がやっているポートフォリオが継承される。これは基本的には総裁だとか理事会が経営方針を決める話ですけれども、こういうふうな考え方でしょうか。
佐田副大臣 それは、先生言われるように、郵貯、簡保の資金の運用につきましては、公社法に基づきまして、公社総裁が事業経営の一環として責任を持って行っていくということでありまして、具体的には、中期計画、四年間でありますけれども、一項目として、資金の運用計画を公社が作成し、総務大臣が認可をするということでありまして、年度経営計画は、公社が作成をいたしまして総務大臣に提出する。また、後の運用実績は、業績評価の一環といたしまして総務大臣が評価をしていくというふうな枠組みで、公社が資金運用していくということであります。
 また、公社化以降の資金運用のポートフォリオにつきましては、これは、郵貯・簡保事業の簡易で確実な貯蓄手段及び簡易に利用できる生命保険を提供するという事業の性格であるとか、または郵貯・簡保資金、それぞれの負債特性であるとか、事業の運営の健全化の確保を目的とした確実で有利な運用、そういうようないろいろな観点を勘案いたしまして検討が行われると思っております。
 以上です。
遠藤(和)委員 郵便貯金の預け入れ限度額の話ですけれども、先ほど公聴会の議論を若干、私思い出すまま言ったんですけれども、これを一千万円ということに維持されたわけですね。それとともに、今度は地方公共団体等も、公共法人に対して今まで青天井だったんですけれども、これを一千万にしましたね。これをあわせてやったんですけれども、これはどういう趣旨でやったのかということです。
團政府参考人 お答えいたします。
 まず、郵便貯金の預入限度額の件でございますが、これは、簡易で確実な国民大衆の貯蓄手段という制度の本旨に沿って設けられておりまして、もう十年以上続いておりますけれども、一千万円の限度額ということになっております。
 その限度額の設定に当たりましては、老後の生活など、いろいろな貯蓄ニーズを抱えた世帯が目標とする貯蓄額というものを参考にしまして、一千万円の限度額ということで継続しているものでございますし、この状況につきましては大きな変化はないということもございまして、今回、引き続き一千万円を維持するというふうなことにしているわけでございます。
 なお、地方公共団体等の公共法人等につきましては、現在、預入限度額が適用されていないということで、言ってみれば青天井ということでございます。これは、本来、個人とは目的が違うということと、それから、そうはいいましても、余り多くの預入を期待していたわけではなかったわけでございますが、現在、ペイオフが実施されるというふうな時代になりましたので、本来の郵便貯金が小口個人を主たる対象とする貯蓄手段であるということを明確にするというふうなことをさらに徹底するために、今回、原則として、公共法人等につきましても一千万円の限度額を設けることにしたというものでございます。
 ただし、民間金融機関がないという市町村もございます。そういう市町村におきましては、日々の資金繰りのための貯蓄手段も必要だということでございますので、特例措置としまして、民間金融機関が全くないという市町村、非常に数は少のうございますが、それにつきましてはこの限度額の適用外というふうにいたしております。
遠藤(和)委員 時間がだんだん過ぎてきて、あとは少し駆け足でやります。
 先天性疾患の子供さんが簡易保険に加入できない、こういうふうなことに今なっているわけですけれども、厚生労働省の方では、今医療がすごく進歩しておりまして、そうした先天疾患の子供さんも回復はする、こういうふうなお話もあるわけですね。したがって、判断基準を再検討して、簡易保険に加入ができるような仕組みをつくってあげるべきではないのか、このように考えますが、厚生労働省とよく検討してくれませんか。
山内大臣政務官 簡易保険については、民間の生命保険と同様、加入者の相互扶助によりリスクに備える制度でございまして、その安定的な運営と加入者間の公平を確保するという観点から、一定の健康状態にある方を加入対象といたしております。
 御指摘の先天性疾患についても、罹患の有無だけではなくて、具体的な健康状態を告知により確認させていただいております。その結果、一定の健康状態にないときはお断りをしておるところでございます。
 先天性疾患の中には、適切な治療の継続によりまして、治癒したり、症状の発現をかなり抑えられるということがあることも事実でございます。ただし、罹患している方に生命保険という相互扶助システムに入っていただくためには、その方の生存率が罹患していない多くの方々と統計的に同程度のものと判断してよいかどうか等の検討が必要であろうかと思っております。
 このため、現在、厚生労働省の協力を得まして、専門家からの情報収集等を行いまして、簡易保険としての対応を検討いたしております。また、お断りした後の経過によっては加入していただける場合もあることから、郵便局からの適切なフォローアップのあり方も検討するということにいたしております。
遠藤(和)委員 信書便法案について若干の質問をしますけれども、一民間事業者が参入を断念したということについて、官房長官が、民間が参入できなければこの法律は意味がない、民間が参入できるような工夫をしなければと述べたらしいんですけれども、この法案はその一社のための法案じゃないですよね。この一社の御都合、御機嫌をとって修正するというなら、本末転倒だと私は思うんですね。やはり、国家が独占してきた信書の取り扱いに対して、きちんとした条件をクリアした人にこのユニバーサルサービスをしていただきます、それは国民の皆さんのための利便にも通ずる話です、こういう崇高な理念のもとにつくり上げた法案じゃないかと私は思うんですけれども、この官房長官の御発言に対して、総務大臣はどう思っていますか。
片山国務大臣 官房長官の発言のすべてを知っているわけではございませんが、今、遠藤委員が言われましたように、我々は、先ほども言いましたように、国民のためのサービス向上を目指して、競争原理を導入するために民間参入の道を開く、こういうことでございますので、特定の社を念頭に参入を考えているわけではございませんし、ユニバーサルサービスの確保というものはまた別の意味でしっかり考えているわけでございまして、いずれにせよ、これで、例えば参入の条件が具体的に省令等で明らかになること等もございますので、真剣に関係の民間の事業者の方も御検討いただいて、場合によっては参入を決意していただけるのではなかろうかと。
 特定サービスの方がわかりやすいものですから、もう既に何社かがそういう動きがあるようでございますけれども、民間参入の方はすべての参入の条件が明らかになったわけでもございませんので、もう少し検討の時間が要るのかな、こういうふうに私は考えております。
遠藤(和)委員 その事業者の発言は、郵便法第五条に定められた信書の国家独占を廃止せよという主張のように聞いているんですけれども、この第五条に適用除外規定を設けて、全面的に民間事業者に参入ができる機会をつくったというのが今度の信書便法案ですよね。その法案を理解しないで五条を廃止しろというのは、要するに信書そのものをこの日本の国からはなくしてしまえ、こういう議論になっちゃったと思うんですね。やはり、信書というのは個人の秘密をきちっと扱う大切な仕事だと思うんです。私は、ちょっとこの御主張というのは理解ができないんですけれども、どのように考えますか。
佐田副大臣 先生のおっしゃるとおりでありまして、先ほど来からも答弁をさせていただきましたけれども、法案は、一定の適格性を有する事業者についてはすべての信書の取り扱いを認めるものでありまして、信書送達の国家独占を廃止することとしているものでありまして、郵便法の第五条に残っていることをもって国家独占が残っているという指摘があるというのはどうかと私も思っております。
 また、そもそも信書送達の事業は、先生も今御指摘がありましたように、国民の思想、表現の自由にも密接にかかわりを有する重要な事業でありまして、一定の規律のもとに営業されるべきものであります。そのため、信書便法においては、信書の秘密の確保、クリームスキミングの防止という観点から、一定の適格性を要件として参入を認めることとしておりまして、許可を受けた事業者が信書を送達する場合についても、郵便法の第五条の適用除外としているものであります。
 したがって、郵便法第五条は、信書便法と相まって一定の適格性を有する者に対して参入を許可することを法的に表現した、こういうことであります。
 なお、参入する事業者に対する規律は必要最小限としているところでありまして、さまざまな事業者が参入し、競争の効果が発揮されることによって利用者の利便の向上が図られる、こういうふうに期待をしておるわけであります。
 以上です。
遠藤(和)委員 最後に、せっかくこの信書便法をつくったのにかかわらず、そこに参入しないで、信書とは何ぞやという、また不毛の論争が始まるのを、大変私は危惧するんですね。国家独占の信書の取り扱いにきちっとしたルールをつくって、表玄関をあけたのにもかかわらず、表玄関から入ってこないで勝手口から今までどおり入ってきて、信書とは何ぞやという議論を続けていく、そうするとまた、地域振興券は信書ですから民間事業者は取り扱えません、こういう議論になるわけですね。
 そうすると、小泉さんというのは大議論をして大騒動をしたけれども、結果は何ちゃ変わっていないじゃないか、こういう話になるわけですね。もしだれも信書便事業者になる人がいなかったらですよ。
 私は、それは、せっかく法律をつくったのに何ら変わらなくて、また不毛の哲学論争なんでしょうか、信書論争が行われていくというのは、大変不幸なことだと思うんですね。
 したがいまして、この信書便法案、この法案を正確に、この審議を通して民間の皆さんにも理解していただく、決してそんなに高いハードルでもないし、本当にその志のある人はどんどんと国家独占の分野のこの信書取り扱いに全面的に参入できるんだということを啓蒙する意味でも、この委員会の審議を徹底してされることを希望しまして、質問を終わります。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 これまでの質疑で重複するところもありますけれども、基本的な考え方あるいは枠組み、そして体制などを改めて問うことになりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 まずもって、国民生活に密接に関係いたします郵政三事業の改革を目指す重要四法案でありますけれども、これは迷走台風の観を呈しまして、それでもやっと審議の俎上に上ってまいりました。国民不在の、政府・与党内の複雑な政治力学の余波をこうむりまして、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資する、本来の国民の目線に立った改革理念は消えつつあるのではないでしょうか。この重要法案も、もはやはっきりとした論点の、台風でいえば目のない、勢力の衰えた熱帯低気圧の感じを受けるのであります。
 それはなぜでしょうか。今回のこの郵政公社法に限らず、有事法制や個人情報保護法案などにも見られますように、最近の小泉内閣の政治姿勢の軸足のぶれ、これが目立つからであります。例えば、御案内のとおり、昨年秋のいわゆるテロ対策特別措置法の審議の際にも、憲法第九条の集団的自衛権に関する従来の内閣の統一見解を無視しまして、武力行使をしない、後方支援と称し、危険を冒しまして自衛隊を派遣しておるのであります。
 さて、行政改革会議の最終報告を踏まえまして、中央省庁等改革基本法でありますけれども、これが平成十年六月に制定されました。私は二年前に国会議員となりましたので、過去の経緯に少しく不案内のところがあるのでありますけれども、同法では、郵政事業について総務省に、事業の企画立案及び管理を行う部門を内部部局として、そしてまた外局として事業の実施事務を所掌する郵政事業庁を設置し、さらに郵政事業庁は平成十五年中に国営の新たな公社に移行することとされたところであります。
 また一方、この基本法の第三十三条第一項六号にて「民営化等の見直しは行わない」と規定しているにもかかわらず、小泉首相は、去る五月二十一日の本会議で、これはあくまでも公社化までのことを規定したものであり、民営化問題を含め、公社化後のあり方を検討することは問題ないと答弁しております。
 そこで、最初にこの基本法第三十三条の基本的解釈をはっきりさせたいと思いますので、まずこの小泉総理の答弁に関しまして、片山大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
片山国務大臣 これは本会議で小泉総理が答えたとおりでございまして、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を書いているので、それも一つ裏返せば、それによって民営化の措置は講じないものとする、そういうことを確認的に書いたものでございまして、公社化した後について、一切それ以外は禁ずる、こういう趣旨ではない。これは、私も内閣法制局と直接話をしまして、法律の解釈としてはそういうことだ、こういうことになっておりますので、御理解を賜りたいと思います。
黄川田委員 大臣から答弁いただきましたけれども、この三十三条一項の各号でありますけれども、これは、国営の新たな公社を設立するために必要な措置についての方針でありますけれども、必ずしも時間的に、公社設立時までの事項に限定されたものではなくて、設立後の公社のあり方に関する事項も含んでいると解釈するのが自然ではないか、こう思っておりまして、この六号はまさに郵政公社は民営化しない旨を規定していると私は考えるわけであります。
 また、あえて言えば、六号の「民営化等の見直し」は、公社化後のあり方についての見直しという意味に読みつつ、そして同号は、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講じる際の方針の一つであると解釈することもできると思っております。つまり、同号は、公社設立の際に各号に掲げる措置を講ずることによりまして、公社の経営を民間企業に近いものとし、その後さらに民営化等の見直しをすることを想定しないような確固とした公社を設立するという方針を示したものであると解釈もできると思っておるわけであります。
 そこで、以上の二通りのいずれかに解釈するのが自然であると考えるのでありますけれども、内閣法制局長官の見解を求めていきたいと思います。
 そしてまた、もう一つなんですけれども、三十三条一項にて、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講じるとして、民営化概念がないにもかかわらずなぜ六号を置いたのか。この一項の中で、この六号が非常に据わりが悪いわけでありまして、この据わりの悪い六号をわざわざ置いたのは、公社化後の世界を描いたと解釈するのがこれまた自然ではないかというふうな考え方もありますけれども、これも含めてお尋ねいたしたいと思います。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 まず、この中央省庁等改革基本法の第三十三条第一項を見てみますと、「政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」というまず柱書きがありまして、そこから一、二、三、四、五といろいろ各号書いてありまして、そこで、第六号に「前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。」ということとともに、第十七条でも、「郵政事業の実施に関する機能を担う外局として置かれる郵政事業庁は、」中略しまして、「第三十三条第一項に規定する国営の新たな公社に移行すること。」というようなことが述べられているわけであります。
 そして、ここの三十三条一項六号でございますけれども、これは先ほど条文を読ませていただきましたけれども、この第一項で、「政府は、次に掲げる方針に従い、」と、まず方針を言っているわけであります。その方針に従って「総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」
 まさに、次に掲げる方針に従って必要な措置を講ずるというふうになっているわけでありまして、これは、郵政三事業において国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しを行う旨を定めているものでございまして、公社化以後のことまでも規定したものではないというふうに解されるわけであります。
 それから、なぜ、先ほど読みましたところに第六号を設け、さらに国営というような条文にしているかということでございますけれども、ここの次に掲げる方針に従っていろいろな措置を講ずるわけでありますけれども、それが改めて国営の新たな公社となるということを確認的に、先ほど総務大臣からも御答弁がありましたけれども、これは、国営のというのをまた改めてはっきりとさせたということであろうかと私は感じております。
 以上でございます。
黄川田委員 普通の国民の一人として、この法律というものがなかなかわかりにくいといいますか、この部分については私は私なりに、事業庁を公社化するんだ、民営化ではないというふうな形で読んでおるわけなんであります。
 そしてまた、一九九九年の三月十二日の参議院の交通・情報通信委員会におきまして、鹿熊議員の質問に対し野田郵政大臣は、この基本法においては、「民営化等の見直しは行わない」と明記されていますから、必ず将来的に見直しは行われないと理解していると答弁しております。私も同じ考え方であります。
 そこで、この答弁を踏まえまして、総務省を所掌します片山大臣の見解を改めて求めておきたいと思います。
片山国務大臣 野田当時の郵政大臣がどういうお答えがあったかということでございますが、野田そのときの大臣は、政治家としてそういう見通しをお述べになった、こういうふうに思っておりまして、法律上のことに言及されたのではない、こう私は理解しております。
黄川田委員 大臣は政治家でありますか、それとも事務方の長でありますか。
片山国務大臣 大臣というのは難しいんですね。政治家であり役人なんですよ、これ。そういうふうにひとつ御理解を賜りたいと思います。
黄川田委員 そしてまた、この重要法案の審議の前提といたしまして、まさに軸足のぶれない一貫性のある方針を貫くためには、このように解釈が大きく分かれる第三十三条一項六号をそのままにして議論を進めるのは不自然でありまして、この際、総理に強く進言し、この六号を削除すべきではないかという考え方もあるわけでありますけれども、これについての見解も求めておきたいと思います。
片山国務大臣 私は、総理からこの点についていろいろお話があったときに、これは確認的な規定だから、総説的な意味を持つものでないんだから、これはあっても公社化のあり方を検討する際の支障にならないと私は考えております、こういうことを申し上げ、内閣法制局とも、今長官の答弁ありましたけれども、お話を伺って、これはこのままにいたしたわけであります。
黄川田委員 それでは次に、だれのための公社化なのかであります。
 今回の郵政三事業の改革の原点はどこにあるのでしょうか。国が独占している郵政事業に競争原理を導入し、国民へのサービスの向上と料金の低廉化を図ることではなかったのでしょうか。一体だれのための公社化であるのか。最近、透明性の高い、公平な民間参入のルールづくりから、既存の宅配事業者や公社の業務範囲などへ議論のポイントがずれてきておるのではないかと思っております。
 そこで、この原点に立ち返って、国民生活から見た今回の郵政三事業の公社化の目的とその意義はどこにあるのか、これまた改めて片山大臣にお伺いいたします。
片山国務大臣 何度も御答弁させていただいておりますが、今回の郵政改革は中央省庁改革の一環でございまして、そういう意味では、一つは、国が直接やっておった郵政事業を、郵政事業庁を経て国営の公社にすることによって民間的な経営をやってもらう、効率的で質の高いサービスが提供できるように公社の経営ということで、自律的、弾力的な経営を可能にするということが一つですね。
 それからもう一つは、今まで独占の郵便事業に民間参入の道を開くことによって、ただしユニバーサルサービスは確保した上で競争原理を導入して、また効率的で質の高いサービスを国民へ提供する。
 基本的には、私は、中央省庁改革という大きな行政改革の一環として、こういう方向といいますか措置がとられたものだと考えております。
黄川田委員 ところで、今回の法案の提出をめぐりまして、政府・与党内の確執が報道をにぎわせておるわけであります。
 党内議論を超越した首相の決断は、我が党も以前から主張しておる政治主導にも通じるところもありますが、しかしながら、一夜にして官房長官が連立与党の幹部に今回限りのこととして謝罪するなどの迷走ぶりを国民世論がどう見ているのか、そしてまた、政府・与党はどこまで自覚しているのでしょうか。
 そこで、以上の観点に関し、片山大臣の御認識を伺いますとともに、郵政事業のあり方を考える懇談会、これは年明け後一度も実質審議がなされておらないと思っておるわけなんでありますが、たびたび片山大臣は、六月あるいは夏までにこの懇談会でも十二分に議論されていろいろな答えが出てくるはずだという話でありますけれども、私は、ここも迷走ぎみと考えております。
 大臣は、閣僚メンバーとしてこの事態をどのように調整あるいは指導されてきたのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
片山国務大臣 今回、私どもの方も少しばたばたしまして、法案の準備が、大変ボリュームが大きいものですから手間取りまして、与党、特に自民党の関係の部会等で十分な御審議をいただく時間がとれなかったというようなこともありまして、国会に出すことは了承しよう、内容については引き続き審議だ、こういう異例の形をとっていただいたわけでありまして、国会審議と並行して御議論を賜るものだ、こういうふうに思いますが、いずれにせよ、御理解を得て、国会での審議とあわせて四法案の一括成立をぜひお願いしてまいりたい、こういうふうに思っております。
 それから、総理の郵政三事業に関する懇談会は、大体民間の有識者の方が中心でございますけれども、政府からは総理と官房長官と私がメンバーになっておりまして、なるほど、ことしになりましてから、国会が始まってから大変皆さんお忙しいもので、なかなか私ども三人が入る全体会議は行っておりませんけれども、閣僚メンバーを除く有識者の方の会は月に一、二回でかなりやっておりまして、せんだっても行われていろいろ御議論を賜っていると聞いておりますから、いずれ、恐らく七月になるのか八月になるのか、私も詳しく承知いたしてはおりませんけれども、スタートが去年の夏ですから、だから約一年後に、夏ごろにということで今御検討を賜っている、こういうふうに思っております。
黄川田委員 それでは次に、信書の定義や範囲は後日じっくり議論させていただくといたしまして、最近、ダイレクトメールなど信書の範囲等をめぐり、民間宅配事業者の事業参入ですか、これをめぐりまして議論が交わされております。しかしながら、首相や総務大臣は、民間参入条件を明示することを避けまして、信書便法案を成立させた後で指針で、ガイドラインで信書の範囲などを示すとしております。
 私は、これは順序が全く逆ではないかと思っております。最近の他の法案にも見られるわけでありますけれども、難しい問題を法案に規定することを避けまして、そして政省令で後で示すとして、準備不足を棚に上げまして、そして逃げるといいますか避けるという事例が間々見られるわけであります。
 そこで、このような政治手法、やり方は、行政の裁量が増大するばかりで、官僚政治でありまして、国民や民間事業者を、そしてまた我々立法府も軽視するやり方であると私は思っておりますけれども、片山大臣のこの点に関する見解を求めておきたいと思います。
片山国務大臣 この点も、何度も恐縮ですが答弁させていただいておりますけれども、信書の範囲を変えるということじゃないんですね。今度信書の定義を書きましたのは、信書について今まで定義がないものですから、この際法律上明らかにしておこう。全部が書ければ書くということもあるんですけれども、なかなか全部は法律ではカバーできないものですから、今までに確立した判例の表現をそのまま信書の定義に使わせていただいて、残りについては、これは今まではしおりか何か知りませんけれども、今度は正式なガイドラインとして示そう、こういうことにいたしたわけでありまして、民間事業者の方が参入する上に信書の定義は何の関係もないんです、参入すれば全部できるんですから。信書については全部できるんです。
 問題は、そうじゃなくて、ほかのことの議論なんです、信書は。だから、それについてはこの際はっきりしよう。我々は、現状の扱いについて、信書でないということでメール便等が行われたものについてはこれを直ちに変えるようなことは考えておりません。それはもう現状どおりなんです。ただ、それをはっきりしておこう。それからかなりグレーゾーンの、なかなかどちらか判断しにくいものもこれからふえてくると思いますので、その点この際明らかにしておこう、こういう考え方でございますので、従来からいうと、私はこれは前進だ、今までは定義も何にもなかったんですから。ガイドラインもなかったんですから。そういうふうに考えておりますし、ガイドラインをつくるにつきましては、関係の事業者の方や広く国民から意見を十分聞いて、何度も申し上げますけれども、国民の皆さんから見て納得できるような、こういうことにいたしたいと思っております。
黄川田委員 一昨日の日経新聞によりますと、政府は、郵政事業への民間参入に関しまして、公社の郵便ネットワークを民間に開放し、公社が保有する郵便ポスト等の共用を認める方向で検討に入ったと、かなり詳細に報道しておりました。そうしたら、昨日の定例記者会見でありますか、総務省の金澤事務次官でありますけれども、一部報道があるけれども、今国会に提出している郵政関連法案ではそういうことを想定していないし、法改正の必要も考えていないと全面否定していました。先ほどの質疑の中でも全面否定ということでありまして、本当によくわからないところがあるわけであります。
 いずれ、書いておりましたポストを共用した場合、郵便局で郵便物を公社向けとあるいはまた民間向けと仕分けするなど、もしそうすることになれば幾つかの難しい問題が生じると思っております。いずれ中山間地などでのサービスの維持が難しくならないかなど、整理すべき課題は多いわけでありますので、政省令事項ということではなく、できるだけ、できるものは基本的なことは法案にきっちりと明示していただきたいと思っておるわけであります。
 それでは次に、公社と民間とのイコールフッティングの基本条件について考えてみたいと思います。
 公社が郵便貯金、簡易生命保険等、現在の郵政事業庁の業務をそのまま引き継ぐ以上、民間とのイコールフッティング、これが確保されなきゃならないと思っております。この点に関しまして、イコールフッティングの基本条件として、主として国庫納付と納税について基本的な考え方を伺っていきたいと思っております。
 まず、国庫納付についてでありますけれども、そのあり方については、民間とのイコールフッティングを確保することが必要と考えますが、本法案ではその点が明確にされておりません。単に、公社の経営にのみ配慮して、公社の経営の健全性の確保に支障を及ぼすおそれがないと認められる範囲内で政令で定める基準により計算した額を国に納付すると規定されているにすぎず、経営の健全性の意味、尺度は不明確であります。
 何度も聞かれておりますが、私からも、そこで一体、この場合の経営の健全性、これは具体的に何を意味するのでしょうか。そしてまた、政令で定める算定基準において民間とのイコールフッティングは確保されることになるのか、あわせて総務省にお尋ねいたしたいと思います。
佐田副大臣 先ほどからもいろいろ議論になっておりますけれども、ユニバーサルサービスという重要な事項があるわけでありまして、郵政公社の現状でありますけれども、独立採算制のもとに公共的なサービスを不採算地域も含めて全国あまねく公平に提供することを使命としておりまして、国庫納付についても、郵政公社の経営状況等を考慮せずに納付させることになれば、ひいては財政状況の悪化を招き、その使命の遂行に支障を来すという事態が生ずるおそれもあるわけであります。
 そこで、経営の健全性の確保に支障を及ぼすおそれがないと認められる範囲内で国庫納付をするという旨を定めたものでありまして、あくまでもこれは、そういう状況下の中でも経営に支障がないようなことを経営の健全性、こういうふうに判断をしておるところであります。
 また、イコールフッティングの話でありますけれども、国庫納付の具体的な内容を政令で定めるに当たっては、郵便貯金や簡易生命保険等に対して国の支払い保証を付されることも勘案されるものと考えられますけれども、民間とのイコールフッティングの問題につきましては、郵政公社がまた民間とは別に不採算地域における郵便局の設置を義務づけられている。または、先ほども議論ありましたけれども、郵便貯金や簡易生命保険に限度額も設けられておる。または、商品、サービスや運用対象が限定されている。こういうふうに縛られている部分もありまして、こういうことを総合して論じていかなくてはいけないのではないか、こういうふうに思っております。
黄川田委員 政令で定める算定基準において納付ということになるんでしょうけれども、公社化に当たってきっちりとした経営展望があれば、もう少し具体的にお話ができるのではないかと思っておるわけであります。
 腹づもりでよいのでありますけれども、国庫納付について、どのような場合にあるいはいつから納付できるかというようなことは明示はできないのでしょうか。
野村政府参考人 お答えします。
 国庫納付、法律の三十五条に載ってございますように、健全経営に支障のない範囲内で一定の基準に基づいてやるということでございまして、具体的な勘案事項として、損益状況とか資産、負債の状況、その他の状況を判断してやるということでございますので、そういった状況を総合的に判断しなきゃならないので、もう少し時間がかかるものと考えておるところでございます。
黄川田委員 それでは次に、公社の租税負担についてお尋ねいたしたいと思います。
 公社が現在と同じく法人税等の支払いを免除されていることについて、民間からは、隠れた補助金ではないかと指摘されるところもあります。また、固定資産税についても、市町村納付金として実質その二分の一とされておりまして、民間と比べて大変有利になっており、これまた民間企業とのイコールフッティングの観点からバランスを欠くと言われるところもあります。大臣は、本会議の答弁で、基礎年金の拠出金の国庫負担分を郵便局が肩がわりすることを挙げられましたけれども、どちらかというと、私からすればこれは当たり前な話でありまして、これだけでイコールフッティングが確保されているとは思えないわけであります。
 そこで、民間とのイコールフッティングの観点から、公社の租税負担、これについて大臣の基本的な考え方を求めておきたいと思います。
片山国務大臣 この公社は国営の公社でございまして、職員の方は国家公務員で、仕事もかなり公共性が高いんですね。ユニバーサルサービスというのはまさにそうでして、それから、現に市町村の仕事も請け負っていく、ワンストップサービス等をやっていく、こういうこともありますし、また、いろいろなコミュニティーのセンター的な役割も担っている。
 そういうことからいうと、税金を払わないというのは、特殊法人でもございますし、私はこれは、今までの例から見てもそうさせていただかなきゃいかぬと思うわけでありますが、同時に経営的なことをやっているので、民間とのイコールフッティングという議論はございますけれども、それは今の基礎年金の国庫拠出分を全部持っていることだけじゃございませんで、例えば今も副大臣が言いましたが、本来不採算で、民間なら置かないようなところにも郵便局を置くということもありますし、あるいは、預け入れや保険の場合の加入限度額を設定するとか、運用対象も限定するとか、かなりそういう意味では窮屈な、民間にはない制約が課されておりまして、私はトータルで見ると、イコールフッティングではなかろうか。
 ただ、そういうことの中で、かつての三公社が、固定資産税については、これは市町村の財源ですし、二分の一納付金という形で払った。こういうこともありますので、それでは、その二分の一を納付金という形で払うかな、こういうことでございまして、ぜひその点は御理解賜りたいと思います。
黄川田委員 市町村への固定資産税、そして、かつての三公社を勘案しながらということで、二分の一ということで、ちょっと私は経緯がわからないものですから、公社時代になぜ二分の一というふうな形になったのか。そしてまた、二分の一であれば、全国の市町村に総額、国の保有する郵便局の固定資産税ということでしょうから、どのぐらい納めなきゃいけないのか。何百億とか何千億とかという数字でありますでしょうから、事務方の方から答弁いただきます。
野村政府参考人 お答えします。
 年金費用の国庫負担分を、普通の民間企業ですと三分の一が国庫負担している。その部分について、国営事業については事業そのものが負担している。旧三公社も同様に負担しているということでございますけれども、負担の理由として言われていますのは、一つは、郵政事業が国の経営する独占事業であること。それから、郵政事業特別会計において、自収自弁と物の本には書いてございますけれども、独立採算でやっている事業であること。それから、事業収入は公共料金として一定の規制を受ける。こういった観点から、そういった共済年金の国庫負担分を郵政事業が負担しているというのが現状でございます。
 それが今回、公社化に当たりまして、それと同様の形でなぜやるかということでございますけれども、これについても、造幣とか印刷、これも独立行政法人化されるんですけれども、これらについても同様な措置でございますが、一つは、国の政策の実施の機能を担う法人で、公的負担について特別の取り扱いを受けている。それから、独立採算制の事業で運営している。こういったことから、従来同様、三分の一は国庫負担の部分についても各事業で負担するということでございます。
 それで、具体的な額でございますけれども、二分の一納付で、そういった市町村納付金としては百八十億円ぐらい予定しておりますので、百八十億円ぐらいの固定資産税が減免になっているというふうに考えているところでございます。
黄川田委員 全国で市町村に入る固定資産税は、二万五千弱の郵便局があるんですが、全部が全部固定資産税を払うわけじゃないでしょうし、個人のを借りているわけでありますから、国が持っている資産で、全国で市町村に固定資産税を納める全体額で百八十億ということでありますか。
野村政府参考人 おっしゃるように、特定局のように借り入れ庁舎は実際の税金を払っておりますので、私ども事業庁が直接持っている資産の中で、郵便局とかそういった事業用資産について、固定資産税のかわりに市町村納付金を払う。その市町村納付金の額が百八十億円ということでございます。
黄川田委員 それでは次に、自己改革によります競争力の強化であります。
 公社化の目的は、予算や定員等の国の行政機関であることに起因いたします制約を外し、そしてまた、独立採算制のもと、自律的かつ弾力的に経営することによりまして、経営の効率化やサービスの改善によりまして、国民、利用者の利益の増進を図ることにあるものと考えるわけであります。
 また一方、職員の身分については、身分保障のある国家公務員としております。これは、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第八号の規定を受けたものでありますけれども、職員が身分保障のある国家公務員であるとの制約のもとでは、果たして公社化の目的に沿った企業的経営をどこまで行うことができるのか、懸念されるところもないわけではないのであります。
 そこで、この点について大臣の基本認識を求めておきたいと思います。
片山国務大臣 今回の国営公社で職員の皆さんは国家公務員、こういたしましたが、できるだけこれも弾力的な運用、効率的な運用をすべきではなかろうか。配置だとかあるいは人件費使用も、能力主義、実績主義でやる、あるいは競争原理の働くような任用や配置を行っていく、こういうことを考えておりまして、郵政公社に移行していくわけでありますが、この郵政公社のトップの方にもそういうことを伝えさせていただこう、こういうふうに思っております。
 職員が国家公務員であることが民間的な企業的な経営をする上にマイナスになる、そういう見方もあろうかと思いますけれども、できるだけそういう意味での制約は制度的にも外していきたい、こういうふうに思っております。例えば労働基本権は、これは争議権以外は認める、今までと同じ、こういうことでございまして、そういう意味では、労使の協調もまたお願いしていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
黄川田委員 それでは次に、公社の出資については、昨年末に発表されました総務大臣の研究会の中間報告でも、競争に対応しつつユニバーサルサービスの維持が図られるよう経営の自由度を付与する観点から、必要な範囲に限り民間企業への出資ができることとされており、私も、公社の経営合理化を進める観点から、限定された周辺事業への出資は必要ではないかと思っております。
 出資が認められれば、公社は民間企業への業務委託を一層進め、あるいはまた、一部組織を子会社として切り離して、本体のスリム化によりますコスト削減を進めることが可能となるのではないかと思っております。そしてまた、そうした合理化を進めることによって、職員の意識も、親方日の丸的なものから、民間との競争に勝たなければならないような意識に変わるのではないでしょうか。ただし、この公社が出資によってその業務範囲を拡大し、既存の民間企業の経営を圧迫することがあっては、これまたならず、公社がその経営合理化を進めるために必要な最小限の出資でなければならないという見方もあります。
 そこで、公社化と同時に、民間参入の予定されている郵便事業の周辺業務等、限定された周辺事業への出資を公社に認めて、アウトソーシングなど民間企業並みの厳しい経営感覚を磨く、そういう必要があると考えるわけでありますけれども、たびたび質問になっておりますけれども、改めて大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
佐田副大臣 先ほど来も、ちょっとこれはありましたけれども、公社の出資につきましては、今御指摘ありましたように、郵政事業の公社化に関する研究会の中間報告を踏まえまして、競争に対応しつつユニバーサルサービスの維持を図るために、公社に経営の自由度を付与する観点から、必要な範囲に限り民間企業に出資できることとするように検討、調整を行ってきたところであります。
 物理的に、法案全体といたしまして、関係省庁等との調整に予想以上に時間を要したということもありまして、また、出資が適当な事業の範囲等、公社にふさわしい出資制度とするためになお検討すべき課題がありまして、今回、公社法案に出資規定を盛り込まないというふうにしたことでありますけれども、本件につきましては引き続き検討を進めてまいりたい、かように考えております。
 なお、従来から効率化、合理化を進めてきているところでありますが、公社化後は郵便事業への民間参入等による競争にも対応するために、効率化、合理化に一層努力をする必要があるものと確信をしております。
黄川田委員 最近の新聞報道によりますと、総務省は、郵便貯金と簡易保険は別といたしまして、郵便事業のみはそれにかかわる業務の委託先となる民間企業に限って出資ができるように改める方針、こういう方針を決めたとしております。今回の法案には、出資については、時間がなかった、間に合わなかったということであって、しかしながら、これはきっちりと引き続き検討しておるんだということであるようであります。
 そこで、本体の方はまだ通っておりませんけれども、これは通れば早速提案ということになるかと思うわけなんでありますけれども、いつごろ、あるいはどのような手続で出資について改正しようとしておるのか、検討が決まり次第ということなのか、その点、具体的に、もしお話しできれば伺いたいと思います。
野村政府参考人 公社の出資条項の関係でございますけれども、現在検討中でございまして、公社法が通った後になろうかと思いますけれども、まとまり次第また御相談させていただきたいと考えておるところでございます。
黄川田委員 それでは最後に、ユニバーサルサービスの基本問題についてお尋ねいたしたいと思います。
 現在、手紙、はがきの全国均一料金、そしてまた、ポスト投函制を基本とした郵便物の送達のサービスがユニバーサルサービスとして全国あまねく公平に提供されておるところであります。このような郵便サービスの継続的提供が国民に保障されていることが、通信分野におけるセーフティーネットとして高い公共性と安心感を提供する制度になっておるわけであります。
 しかしながら、最近、麻生政調会長は民間参入に関し発言をしております。すなわち、参入した企業が都市部で郵便料金を下げて利益を上げながら、採算の合わない地方では郵政公社に配達を委託することが可能であり、郵政公社が赤字に陥るおそれがあると表明しております。
 そこで、この発言、よいところをとっていく、よいとこ取りのクリームスキミングでありまして、あってはならないことであると私は思っておりますけれども、総務省は、このようなケースは可能性があると思っておるのか、そしてまた、そのような場合、どのような状況が想定されるのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
團政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、郵便事業につきましては非常にクリームスキミングが起きやすい事業だというふうに考えております。すなわち、利用構造から見ましても、東名阪で出される郵便が収入で六八%というものでございます。非常に、都市部におきましては効率的な事業ができるということでございます。
 そこで、参入された場合の料金につきまして諸外国の例を見てみますと、やはり都市部で下がって地方で上がる、あるいは小口で上がって大口で下がるという例もあったようでございます。
 そこで、今度の参入の制度につきましては、基本的な郵便のサービスの基本につきましては全国均一料金ということを義務づけておりますので、その料金の中で全国の格差が起こることはないものというふうに考えております。
 また、今の地方の部数が少ないところは非効率でございますので、地方の部分だけ郵政公社に委託して配達させるというようなことになりますと、これはまた非常にバランスがとれませんので、郵政公社がそういう部分のみを請け負うという制度は、この制度には入れておりません。
 したがいまして、一般事業者が、部分的な業務委託が民間同士であるのは構わないわけでございますが、みずから全国のサービスを行っていただくというのを基本にしてございます。
 したがいまして、要は、今回の信書便法によりまして、クリームスキミングを許さない事業計画を前提にしておりますので、この法律を守る限り、ベーシックなサービスは全国で均一料金で行われる。これが守られませんと、これはまた参入の条件から違ってまいりますので、これは改善命令とか、ひいていえば許可の取り消しとかいうことにもつながっていく問題でございますが、そういうことにならないように、参入条件に従った公正な競争を行っていただくということを期待しているものでございます。
黄川田委員 そしてまた、郵便サービスは、単に集配サービスを提供するだけではなく、離島あるいは山間部を含めて、全国あまねく約二万四千七百局の郵便局ネットワークを基盤といたしまして、郵便貯金、簡易生命保険等を扱う傍ら、政府機関の事務窓口、ひまわりサービス等、地域に密着した身近な公共機関として国民の利便向上に貢献しておるところであります。
 しかしながら、この郵便事業は、その特性といたしまして、電子政府やあるいはまたEコマースなど、技術革新の厳しい電気通信分野と違いまして、大きな成長が見込めない成熟産業でありまして、むしろ、ネット化の影響をこうむり、需要が減少する可能性があるわけであります。
 そこで、国民生活の利便性を維持しつつ、貴重な全国ネットワークを活用し、そしてまた民業圧迫にならない範囲で、郵便局サービスのさらなる多機能化を図るべきであると考えておりますけれども、この点について総務省の見解を求めておきたいと思います。
山内大臣政務官 全国二万四千七百局の郵便局ネットワークは、これは本当に地域社会に密着した国民共有の生活インフラでございます。
 地域住民ニーズにこたえまして、住民票の写しの交付等のワンストップサービス、こういったものも行っておりますし、また、地域貢献施策などでネットワークを利用した施策の推進は今からどんどん図っていかなきゃいけない、このように考えております。
 ですから、公社化後におきましても、地域住民の利便性の向上を図る観点から、引き続き郵便局の一層の多機能化が期待されると考えておりますし、とりわけ、公的機関としての地方公共団体との連携を向上させて、公的なサービスの充実を進めていくということを確認いたしております。
黄川田委員 郵便局でありますけれども、国の機関の中で最も国民に身近なものだと思っております。そしてまた地方自治体、これはまた住民の福祉の向上に努める本当に最前線の機関であります。これらが連携するようにということで、郵政官署法案ですか、昨年通していただきましたし、その後いろいろな意味で郵便局との契約等も進んでおるようであります。
 そこで、今、市町村の広域連携あるいは合併ということで、合併に取り残されたところはその町村の権限を取り上げて県にやってもらおうかなというふうな感じを、地方制度調査会でも議論しようかなとかという話があるみたいでありますけれども、ここに至って、市町村あるいは郵便局、郵便局を残すのであれば、単に町村だけの話じゃなくて、もっと総合的にいろいろな組み合わせとか、その辺もまないたに上げていただくような方向性が私は必要であると思っておりますが、通告しておりませんが、大臣、何か所見があれば、最後の質問でありますので、よろしくお願いします。
片山国務大臣 我々は、平成十七年三月末までの合併特例法の期限までにできるだけ市町村合併を進めたい、こういうことで今やっておりますが、自主的な合併でございまして、どうしても自分のところは合併の合意ができない、こういうところも出てくると思いますし、いろいろな地形その他の条件でなかなかまた合併が困難だというところも出てくると思います。
 そうなると、かなり市町村がふぞろいになるということも想定されますので、そういう場合の今の市町村制度はどうか、こういう議論は少し地方制度調査会でもお願いしたらどうか、こう考えておりますけれども、まだ具体的にそういう議論をやっていただいたとは聞いておりませんので、これはもう少し合併の状況を見ながらの話でございまして、今大きな団体から小さなところまで画一ですから、画一で必ずしもいいのかどうか、今、多様な時代ですから多様な市町村制度もあるのかな、場合によってはこういうことでの検討をお願いするかというようなことも、内々私どもの役所の中で検討いたしている、こういう段階でございます。
黄川田委員 きょうは郵政四法案の入り口でありまして、出口までにはしばらくかかると思いますので、個別の部分はまたの機会があると思いますので、以上で終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 いよいよこの公社法の審議に入っていくわけですが、今回、日本郵政公社法提出の出発点ということを、前の委員もいろいろお話がありましたが、九七年の行政改革会議の最終報告、「郵政三事業一体として新たな公社とし、法律により、直接設立する。」というところにあるんだろうと思います。そして、これが中央省庁等改革基本法の先ほど来出ている第三十三条というものとなっていった。その結果、今回、この日本郵政公社法案なるものが提出されている、こういう経過だと思います。
 そこで、私、今最初に聞きたいのは、なぜ国営の公社を設立することになったのかという問題であります。
 当初、行政改革会議は、中間報告の中で、簡保については民営化、郵貯については民営化の準備をする、こういうことになっておったわけです。それが一転して、民営化ではなく国営となった。もちろん、いろいろな人たちの働きかけがあったということもいろいろ報道されておりますけれども、何よりも私は、当時の社会的な状況、経済的な状況、とりわけ北海道拓殖銀行だとか山一証券などが次々と破綻するという状況の中で、国営の郵貯あるいは郵政事業、こういうものの存続を求めている圧倒的な国民世論というものがそこには存在したと思うんです。
 総務大臣、当然こうした経過は御存じだと思いますが、この行革会議の方針が、簡保、郵貯の民営化から郵政三事業一体の国営ということに転換したことの理由について、大臣はどのように認識しておられるか、お伺いしたい。
片山国務大臣 矢島委員も言われましたように、行革会議の議論としては、平成九年ですけれども、九月には中間報告で、言われたように、簡易保険事業は民営化、郵便貯金事業については早期に民営化するための条件整備、こうなりました。最終報告は十二月三日ですけれども、三カ月後には、民営化等の見直しは行わない、国営の公社にする、三事業一体だ、こういう新しい、独立採算制でいろいろな仕組みを入れる、こういうことに決まったわけでございます。これは行革会議での中間報告というのはたたき台ですから、それを出していろいろな議論を仰ぐということが一つありましたのと、恐らく、当時の与党ですね、いわゆる自社さと言われておりましたが、そこでも相当な議論があったように聞いておりますし、その結果が与党の合意としては最終報告のようなことにまとまった。その間、今委員が言われたような経済社会情勢、いろいろなことが背景にはもちろんあった、私はそういうふうに理解いたしております。
矢島委員 総務省の発行している「郵便貯金二〇〇一」というディスクロージャー誌があります。毎年出しておりますが、これは郵便貯金のものです。これを見ますと、国民の貯蓄の目的というのがありまして、その統計を見ますと、第一位は病気や不時の災害への備え、六七・五%、老後の生活資金、これが五五・九%、子供の教育資金、三二・二%。つまり、国民のとらの子の資金の安全な預け先、この一つとして、国営の郵便貯金の存続を国民が願った結果であるということが言えると思うわけです。これは、別の見方をすれば、日本の社会保障の貧困さというのをあらわしている、病気や老後の備えに対する国民の自助努力の反映だと思うんです。
 この点については今も変わらないと思いますが、九七年当時、国民は、この金融不安の中で、郵貯の郵政事業国営の存続を望んだ。そして、先ほど大臣も答弁がありましたように、行革会議の最終報告に反映していった。
 この中央省庁等改革基本法の第三十三条一項の六号、先ほど来黄川田委員の方からも出されておりましたけれども、この「民営化等の見直しは行わないものとする」という条項でありますが、この条項について、小泉首相はたびたび、これは本会議での答弁だったと思いますが、公社化までのことを規定したものであります、したがって、民営化問題を含め、公社化後のあり方を検討すること自体は、法制局にも確認しておりますが、法律上何ら問題はありません、こう答えています。
 そこで、先ほど黄川田委員も質問しまして、それに法制局長官、答弁なされました。そのこと自身を繰り返して私お聞きするわけじゃないのです。つまり、この郵政公社の制度をつくるに当たっては後々民営化を必要としない制度設計を行う、これが三十三条第一項第六号の基本的な趣旨だと私は思うのですが、津野長官、これに対して、何か違っていれば理由を言っていただきたい。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 先ほどお答えしたことにほとんど尽きておるわけでございますので、このことを聞かないとおっしゃられましたけれども、趣旨といたしましては、まさに、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項は、これは、「政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」と規定しておりまして、同項第六号におきまして、「前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。」と規定しておりますけれども、これは、郵政三事業について国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しを行わないということを定めているものでございまして、公社化以後のことまでも規定したものではないというふうに考えているわけでございます。
矢島委員 そこでお尋ねしたいのは、小泉首相は、本会議質問の答弁で、今回、参入法案あるいは公社化法案によりまして、将来、郵政三事業の民営化、さらには財政投融資制度、特殊法人という公的部門の抜本的な改革につなげていきたいと思っておりまして、と答弁されています。
 そこで、これはこの答弁を考えますと、結局、今回出されているこの公社化法案それから参入法案ともに、民営化につなげていきたい、こういう答弁なんですね。すると、民営化につながる公社というわけですが、そこで、私、午前中に松沢委員の方からもいろいろこの問題で出されておりましたけれども、つなげるための公社法だとなると、郵政公社の設計の中身という、そもそものそこが違ってくるわけですよ。この法案によって後々民営化につなげていきたい、こういうわけですから。
 ということは、基本法の三十三条一項第六号、これに違反しているんじゃないかと私は思いますけれども、そもそもの出発点でありますけれども、大臣の見解をお聞きしたい。
片山国務大臣 何度も申し上げましたけれども、この公社化法案はつなぐ法案じゃないのです。
 御承知のように、中央省庁の改革基本法案の中で、郵政事業庁から郵政公社に移す上のフレームを基本法の中で全部書いているのですよね、措置の内容として。それらの、以上の措置により民営化等の見直しはしないものとする、こういうことなんですね。だから、民営化はあの時点ではしないということを前提にフレームをつくっているんですからね。我々はそのフレームに従って、また、何度も言いますけれども、公社化研究会の中間報告に基づいてやっているわけですからね。つなぐあれではありません。ありませんが、できるだけ民間に近くという発想で我々はやっていますから、中身は。だから、極めて今までの公社と違って、手も足も縛るようなことはしない、できるだけ自由にやらせる、民間的な感覚で。ここはその内容になっている、こういうふうに理解しております。
矢島委員 私も本会議での質問でこの問題を取り上げ、総理の一里塚発言というものがあったわけですけれども、その一里塚発言の中で、実は私の質問とのかかわり合いで言うと、今までこの一里塚発言ということとのかかわり合いで総務大臣もお答えしていただいていたわけですが、こういう答弁なんですね。つまり、私がお聞きしたのは、いわゆる信書便法、これも一里塚だ、こういう答弁なんです。つまり、郵政公社法、これが民営化の一里塚だという発言はありました。もう一つあるんですね、一里塚発言が。それは、今回の郵便事業へ民間が参入するという法案、つまり信書便法です。私としては郵政民営化への一里塚であると考えております、これが首相の答弁です。
 そこで、もう一度確認するために大臣にお尋ねするわけですが、今回のこの信書便法、これは郵政民営化の一里塚と考えておられるかどうか。公社法については先ほど来御答弁いただいたので、このことも確認しておきたい。
片山国務大臣 信書便法案は、これも何度もお答え申し上げておりますが、今独占の郵便事業に全面的な民間参入の道を開く、ただしユニバーサルサービスは確保してもらう、そういう条件の上での参入を図るということでございまして、これをもって直ちに民営化とイコールだ、こういうことではないと理解しております。
矢島委員 そこで、もっと私この問題で、先ほど政府の統一見解というんですか、何か、質問主意書に対する閣議決定をされた文書の、民主党からのお話がありました。
 いずれにしても、私、納得いかないんですよ。ただし、総理がいないことにはこの納得、どうも自分で納得するわけにいかないんで。ぜひこの部分については、極端に言えば、うまく総務大臣は弁が立つんでごまかされる可能性が強いんですが、大臣と首相との間に物すごく違いがあるんですよ、ここに。ただ、これを違わないような形でずっと何となくくるめるけれども、これは総理大臣が来ればここでいろいろと論議できる問題だと思うんです。
 そこで、委員長、やはりこれは小泉総理大臣に来てもらわないことには話が進まないんですよ。質問することもできないような状況なんですよ。ぜひひとつその辺を考えてもらわないと、これ以上ちょっと私、質問を続けられないんですが。
平林委員長 矢島委員のただいまの御発言につきましては、既に理事会でも御要望がございまして、現在理事会で協議することにいたしておりますので、その点を御承知の上で、どうか質問を続けてくださいますようにお願いをいたします。
矢島委員 ぜひ期限を切って、ここで。ちょっと理事にひとつ相談してみてくれませんか。これは、いつやるかといったって、六月十九日でしょう、終わりは。すぐそこにもう会期末、迫っているんですよ。
平林委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
平林委員長 それでは、速記を起こしてください。
 矢島君。
矢島委員 という方向で、至急に総理の出席を確定していただきたいと思います。
 質問を続けます。
 そこで、別の、総理にかかわるところは抜きにしまして、後で総理が出席したらそこでやらせていただきますが。
 一里塚発言の根本を考えてみますと、やはり総理の哲学と言っていいかどうか、民間にできることは民間でというところから出発しているんです。本会議の答弁でも、民間にできることは民間にということに対して皆が賛成するのに、なぜ郵政事業に民間を参入させないのか不思議に思っておりましたと。そして、そのときに宅配便事業者の例を持ち出しておられるんですね。宅配事業でできたものが郵便でなぜできないのか、こういう言い方なんですよ。私は、どうも総理の常識を疑うんです。郵政大臣経験者としての発言とは思えない。そこで、これらの問題は総理がいないことにはどうやっても仕方がありませんから。
 そもそもこの郵便事業というのを考えてみますと、近代郵便制度というのは、いわゆる民間事業者が個々ばらばらに事業をやっていたんですね。それでは全体的な効率が悪いというので国家独占事業として始まったのがそもそもの郵便事業ですよ、近代的な。そして、郵便事業というのは、宅配便などの事業と比べて容易にいいとこ取り、もうかる部分だけへの参入ができるという特性があるんですね。宅配事業と郵便事業では、ネットワークの特性が違うわけです。
 そこで、大臣にお聞きしたいんですが、民間がもうけ本位でやったんでは郵便事業は成り立たない、これが郵便事業の基本的な特質だと私、思うんですけれども、大臣、このことについてどのようなお考えをお持ちですか。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
片山国務大臣 今お話しのように、郵便事業はクリームスキミングがやりやすいというか、そういうことに弱い体質がありますね。したがって、そこのところを考えなければなりませんので、民間の方に入っていただいて競争するのは大いに結構なんですけれども、ただ、最低の条件は、やはりしっかりしたユニバーサルサービスという点は、これはナショナルスタンダードとして守ってもらわにゃいかぬというのが我々の考えでございまして、そういうことでこの法案を組み立てております。
矢島委員 総務省にちょっとお聞きしたいんですが、郵政事業の公社化に関する研究会でも、こうした郵便事業の特性について、電気通信事業やあるいは民間宅配事業と比べて、先ほど大臣が言われたようにクリームスキミングに対して弱い、脆弱である、こう指摘されていると思うんですけれども、なぜそうなのか、このクリームスキミングに対して脆弱なのか、その辺についてお答えいただきたい。
團政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の中間報告、ここにございますけれども、ここにおきまして郵便事業の特性というものが報告されております。
 それによりますと、郵便事業は通信手段である信書の送達を基本とする全国ネットワークであるが、同じく通信手段を提供する電気通信事業や貨物の運送手段を提供する宅配便等の民間運送事業者と比較すると、次のようにクリームスキミングについて脆弱である特性が見られるというふうなことで、脆弱性を指摘しております。
 その一は、まず郵便につきましては、電気通信のように特殊、大規模な設備を要しない労働集約産業であるというふうなことで、大規模な投資をすることなく、参入しようとする事業者が容易にサービスを開始することができるということを言っております。
 また、二つ目としましては、差し出しの際に事前の契約とか費用負担が不要である、そのために事業者の乗りかえというのも容易であるというふうなことを言っておりまして、利用者はいつでも最も安い事業者の選択が可能であるというふうなことであります。特に、個人はともかく大口利用の場合には、全国サービスは必ずしも強みではないというふうなこと、さらに、電気通信のような技術革新が見込めない成熟産業であって、需要が減少する可能性があるというふうなことを言っております。
 以上が電気通信との比較でございますが、もう一方、宅配便やメール便等の民間運送事業者との比較ということを言っておりますが、この場合に、郵便は、ポスト投函制という無審査の簡便な引き受けシステムを採用しているというふうなことでございまして、法人、個人の別なく全国均一の料金によってサービスを行っている、このために、民間運送事業者に対して料金設定上の対抗措置を講ずる上で一定の制約がある。
 こういうふうなことによりまして、コスト構造が異なる地域、利用者間の内部補助によって公平なサービスを行っているという構造でありますから、収益性の高い部分が民間に移行した場合には、ユニバーサルサービスを担う公社の財政に影響を与え、その維持が困難になるのではないかという懸念がある、こういうふうな指摘をしてございます。
矢島委員 今、局長からるる述べられましたとおりだと思います。当然のことながら、こうしたクリームスキミングというところ、つまりいいとこ取りというものが認められれば、郵政事業への打撃は避けられないと私は思うんです。こうしたクリームスキミングに対して郵便事業がさらされちゃった、こういう場合にどういう影響があると考えられるか。これも多分、中間報告の中にある程度書いてあるんじゃないかと思うんですが、その点がありましたら、ぜひお答えいただきたいと思います。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
團政府参考人 お答えいたします。
 この中間報告によりまして、仮に無条件に全面自由化を行った場合ということの懸念のことを述べたくだりがございます。
 無条件に全面自由化を行うと、実際に参入事業者による提供の対象とされることが見込まれる大口利用者や都市部の利用者のみが競争の便益を享受することになると考えられる。他方、セーフティーネットとしての公社の継続性に破壊的な影響を与え、結果として参入の対象とされないと見込まれる個人、小口利用者や地方の利用者に負担のしわ寄せが及ぶことも予想される。
 具体的には、郵便局の廃止とか、土日の窓口取り扱いの停止とか、政策的料金減免の廃止、料金別後納の郵便物の料金の低下の一方で切手を張った郵便物の料金の上昇、利用の少ないポストの廃止等が想定されるというようなことを言っております。そこで、かかる弊害を回避する参入の制度が必要だということを後に述べているわけでございます。
矢島委員 今、幾つか、大変な事態になるなということで私はお聞きしたんですが、もちろん、無条件な全面参入の場合にはという条件がありますけれども、いずれにしろ、大変な打撃を、破壊的な影響を受ける。
 郵便事業の収入というものを考えてみますと、東京、近畿、東海で全体の収入の約半分以上を占めています。もしこのクリームスキミングを認めた場合には、中間報告が言うように、郵便局の廃止だとか土曜の窓口の取り扱いの停止、今局長が述べられたようないろいろな問題、こういうものが起きてくると私も思うんです。
 小泉首相の、民間にできることは民間にという中身は、大口利用者と民間事業者は利益を上げるが、小口利用者やら国民や地方に痛み、不利益というのがかぶさってくる、これが真実じゃないかと思うんです。
 そこでお尋ねしますけれども、今回の信書便法は、この全面参入に条件をつけたものになっていると思うんです。郵政公社化の研究会は、幾つかの選択肢、三つだったと思いますけれども、そのうちの条件つき全分野への参入とか、それから部分的自由化とか段階的自由化とか、この三つの選択肢を検討してきたと思うんです。この中で一番ユニバーサルサービスを危機に陥れかねない民間参入方法であるこの条件つき全分野への参入というのを選んだのはなぜなんですか。
團政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、この研究会の報告書でございます。その報告書におきましては三つの選択肢を提示しておりまして、そのうちの条件つき全分野への参入を最も適当な案というふうなことで提言されているわけでございます。すなわち、選択肢の一が条件つき全分野への参入、その二が部分的自由化、その三が段階的自由化というところでございます。
 結論的に申しますと、この条件つきの条件といいますものは、クリームスキミングを避ける。これは、この条件をきっちり確定するということが前提でございますが、それを行いますと、利用者にとって多様で低廉なサービスの提供を受ける機会の拡大を図るということができる。つまり、部分的参入等でございますと、クリームスキミングで、あまねく広く便益を受けられない。この全分野への参入を条件つき全国サービスで行いますと全国において競争が起こってくる、しかも、そのことによってサービスの向上が見込まれるというものを選んで条件つき全分野への参入を進めているということでございまして、私どもはこの報告書に従った法案を作成したというものでございます。
矢島委員 そこで、その条件を見て、一般信書便事業者への参入の唯一の候補者と言われていたヤマト運輸が参入を断念した。いろいろヤマトの社長も言っておりますが、均一サービスは過疎地の負担が重く、高収益は見込めない、このためヤマトは全国全面参入を断念、これは五月八日に記者会見で言っています。あるいは、ヤマトや日本通運、佐川急便などが信書便法に基づく全面参入を検討してきたのも、信書便事業の免許業者にならないと、今扱っているDMなどのいわゆるグレーゾーン、灰色分野のサービスまで禁じられかねないと懸念したからだ、五月十六日朝日新聞。
 つまり、民間は、最初から、ユニバーサルサービスというよりも、いわゆる全国サービスをやるという気などなかった。中間報告も指摘したように、大口の場合には全国サービスは必ずしも強みではない、こう先ほど局長も答弁されたわけですけれども、最初から、いいとこ取りができないような参入、もうからないような参入には興味がない、こういうわけですよ。だから、いろいろな効用を言われた条件つき全分野への参入、この方式では民間は入ってこないという結果になったんです。
 ところが、小泉首相はあくまでも、持論の郵政民営化の一里塚として郵政事業への民間参入を求めている。枠組みは全分野参入であり、民間参入させるためには、民間がもうけられる、いいとこ取りができる参入、こういうことができるところまで結局参入条件をどんどん切り下げていく、それ以外にないのか、こういう懸念があるんですが、大臣、そんなことはないんですか。
片山国務大臣 これも先ほど答弁しましたが、特定の業者の参入は我々は念頭にないわけでありますから、やはり大きな目的のために、競争原理の導入という、こういうために民間事業者の参入の道を開いたわけでありまして、ユニバーサルサービスの条件につきましては余り過大なものにするな、必要最小限度にしようという意見もありますが、何が合理的な必要最小限度か、それを検討して、いずれにせよ、今法律には三つの要件を書いておりますけれども、その具体化から図ってまいりたい、予断を持たずにやってまいりたい、こう思っております。
矢島委員 私は、民間が郵便事業に入っておられない、こういう法案ならそもそもつくる必要がないと思うんですが。
 実質的な参入が可能となるような条件を定めるならば、大口利用者と宅配業者の利益と引きかえに個人利用者や国民に不利益を与える、痛みを与える、こういうのがどうも信書便法なんだと言わざるを得ないんです。
 そこで、このことが典型的にあらわれた、この委員会でも今まで再三話題になりました第三種、第四種郵便の問題に移っていきたいと思います。
 条件つき全分野への参入、これの公社への影響、それからいいとこ取り問題、いろいろと出てまいりました。公社へのいろいろな影響があるという事態は、その参入の状況、条件つき全分野参入、こういう中であるということもわかりました。
 そこで、条件つき全分野への参入というのは、各郵便サービスについて従来以上にコストベースで料金を設定する必要が大きくなることから、郵便事業内の内部相互補助によって提供されているいわゆる政策的な料金減免、この維持が非常に困難になるということが研究会の中間報告の中にもあるわけですね。
 つまり、政策的料金の減免ということ、いわゆる第三種、第四種郵便物、これが日本の文化の発展だとかあるいは福祉の増進だとかあるいは障害者に対する権利の保障だとか、いろいろな点で非常に貢献してきた、このことは事実でありますし、今もそういう状況にあろうかと思うんです。そういう状況にあるこの二つの分野について、つまり第三種、第四種の分野について維持することが非常に困難になることが見込まれるという、中間報告に書かれている状況があるわけです。
 そこでお尋ねしたいのは、部分的自由化とかあるいは段階的自由化、これについて、第三種、第四種郵便への影響、こういうものをどういうふうに記述していますか、中間報告では。
團政府参考人 お答えいたします。
 同じく中間報告のところでございますが、条件つき全分野への参入の場合の公社への影響等につきましては、今委員御指摘のとおり、三種、四種の維持が困難になるようなことも見込まれるというふうなことを書いております。中間報告としては条件つき全分野への参入の選択肢を一としていますので、そのほかのタイプの場合の影響については書かれておりません。
 部分的な参入、これは、一つの線を切りますと影響額の上限が明確になってまいりますので、ちょっとこの場合と状況が違うということで書かれなかったものではないかというふうに考えております。
矢島委員 そこでお尋ねしますが、信書便法の条件つき全分野への参入、これは、三つの選択肢のうちで最も政策的料金にしわ寄せがいく選択肢である。つまり、部分的自由化だとかあるいは段階的自由化の場合にはとりわけこれを記述する必要がない。ところが、全分野参入だとやはり第三種、第四種郵便物への影響が非常に大きい、こう書かれているわけです。
 そこで、こういう選択をするに当たっては、つまり条件つき全分野への参入ということを選択するに当たって、当然、この第三種、第四種郵便を利用している人たちあるいは団体、いろいろな意見を聴取すべきだと私は思うんです。とりわけ点字郵便物を含め、第三種、第四種郵便が重要な情報保障手段になっている障害者団体の方々の意見など、総務省はお聞きになりましたか、こういう状況について。
團政府参考人 お答えいたします。
 この信書便法案をつくるに当たりましていろいろな検討をやってまいりましたが、この間、いろいろな文書とかあるいは団体からの直接のお話ということで、三種、四種の郵便の制度を維持していただきたいという強い要望がございました。この点につきましては、正直言いまして、思った以上の御意見だったと思いまして、したがいまして、制度も極力引き継ぐような制度にしているわけでございます。
矢島委員 私が言いたいのは、こういうことをする前に聞くべきだったというんですよ。これが出ちゃって、第三種、第四種についてはこういう重大な問題が起こるし、料金についても今の水準を維持できるかどうかということは、これは新しい公社の問題ですが、わからないという事態になる前に、こういう考え方を出す前に、出たために、今局長答弁されたように、いろいろな方々からいろいろな御意見が今寄せられているというのだろうと思うんです。
 そこで、公社の対応法というのは、経営の自由度を増すことだ、こう言われていますし、そう書かれております。今回の郵便法の改正で、郵便分野での経営の自由度を増す改正として、まず一つは、料金決定の弾力化というのがある。あるいはサービスの多様化というのが書かれております。あるいは料金収受方法の多様化。
 そこで、日本郵政公社施行法による郵便法の改正で、郵便法の第二十六条第三項であるところの第四種郵便の方ですね、これで第一項の第二号、盲人用点字郵便物、それから第三号は盲人用録音物等に掲げられている「無料とする。」という、この条項を削除した、その理由は何なんですか。
團政府参考人 お答えいたします。
 この第三種郵便物、第四種郵便物に対する非常な要望、強い要望ということもございまして、制度を延ばさせていただいたということでございます。
 これは、これまでの郵便事業の蓄積もありますので、経営努力によってこの制度が維持できるというふうには考えてございますが、具体的な料金のあり方、減免、低減ないし免除というふうなことにつきましては、これはさすがに法律ではなくて日本郵政公社におきまして決めていただくということを想定して、この条文からは削除しているというものでございます。
 これまでの扱いも含めまして、公社におきまして減免の程度、やり方につきましては検討していただきたいというふうに考えておるものでございます。
矢島委員 局長、私がお聞きしたのは、「無料とする。」という条項がありましたよね、盲人の点字物だとか録音、これがなくなっちゃったのは何か、今度のは。つまり料金の策定やそのほかは公社に任せるんだという形にしたんだというのはわかりました。しかし、第四種郵便物の無料の条項はなくなっちゃった、これはなぜなんだろう、こういうわけです。
團政府参考人 お答えいたします。
 減免の免に当たるものというふうに考えておりますが、法律によりまして無料にするということを公社に義務づけるというのはちょっと無理があるのではないかと。仮に無料にすることも考えられますが、そのことは公社において検討していただくというふうな面で削除しているわけでございます。
矢島委員 私から見れば、明らかに後退している。ここにも福祉とかあるいは身体障害者の権利の保障とか、そういう観点が欠如している、こう言わざるを得ないんです。つまり、あとは公社に任せるよ、減になるか免になるかは公社が決めることというわけですけれども、明らかに後退しているということだけは事実だと私は思います。
 そこで、中間報告へまた戻りますけれども、この中間報告を見ますと、「従来実施されてきた政策的料金減免は、国民に対して基礎的通信手段を提供することにより公共の福祉の向上に寄与するとの郵便事業の目的から高い意義が認められてきたものである。」ここまでは確かにきちんと書いてあるんです。「しかし、」というところがあるんです。「公社による自律的・弾力的な経営を認め、その経営に対する国の関与を緩和するとの趣旨にかんがみると、公社化後における政策的料金減免の扱いは基本的には公社の経営判断に委ねられるべき事項であると考えられる。」こういうのが書いてある。公社による自律的、弾力的な経営が、結局のところ、公共の福祉の向上あるいは身障者の当然の権利の保障、こういうものの上に置かれちゃう。つまり、弾力的な、自律的な経営というのが、郵便事業の目的であった福祉の向上とかそういうものよりも優先するという考え方であると断ぜざるを得ません。
 そこで、私は、日本郵政公社法案が、第一条、日本郵政公社の目的、ここに公共の福祉の向上がないということ、そして、総合的かつ効率的運営が目的化している、つまり、目的が、福祉の向上などということがなくなっちゃっている、これはどうしてなんだということを実は本会議で指摘したわけであります。その象徴的な部分が、この盲人用点字郵便物やあるいは盲人用の録音物等を無料としてきた郵便法の第二十六条の第三項が削除されたことだ、こう言わざるを得ないんですよ。
 大臣、ひとつどうですか、この郵便法の第二十六条の第三項の削除、これは取り消して、きちんと入れる、こういうことをお考えになりませんか。決意を伺いたい。
片山国務大臣 今回の公社で、自律的、弾力的な、民間的な経営をやってもらおう、こういうことですから、本当はこの政策料金問題も全部任せるということがあったんです。しかし、今までの実績で大変多くの方に感謝してもらっているということもありますし、国会でいろいろ御議論の中でそういう強い御示唆も受けましたので、これはわざわざ法定化したんですよ、自律的、弾力的に反することを法律で書いて法定化しよう、こういうことをしたんですから、その中身まで全部一律に国が強制するというのは、これは昔と同じになっちゃう。だから、これは公社で、思い切って減にするか免にするか、どうするか、経営状況を見ながら考えていただこう、こういうことにいたしたわけでありますから。精神は、矢島委員初め皆さんが言われることを体して法定化したんですよ。これにも大変議論があったんですよ、任せると言いながら何でこれだけこんなことを書くんだと。それをそうしたという我々の努力も、ぜひこれは御理解賜りたいと思います。
矢島委員 そんなに威張る問題でもないんですよ、これは。当然なんですよ。ですから、まだこのこと、私これから論議をさらに重ねたいと思いますが、時間がなくなってまいりました。
 盲人の問題で一つだけ確かめたいのは、これは総務省の方でですが、万国郵便条約というのがありますね。この郵便条約の第七条に、「郵便料金の免除」という項目がありますね。万国郵便条約、日本は批准していると思うんですけれども、外務省に聞かなきゃわからないかもしれませんが、総務省でもわかる範囲でお願いしたいんですが。点字郵便物というのがあるんですね、第七条に。そこに、「点字郵便物については、航空増料金を除くほか、郵便料金を免除する。」という項目があるんですが、これとのかかわり合いでやはりきちんと条文に置けるんじゃないかなと私は思うんですが、総務省、何か見解がありましたら。
團政府参考人 お答えいたします。
 確かにUPUの条約を批准しておりまして、これは日本の国も守っていくということになります。
 これまでとの違いは、これまでは、条約を国が締結し、国みずからその業務を行う、国の業務は法律で書いてあるということになりますので、自動的に法律に、そういうUPU条約を受けたものを直接書いていたというふうな構造があったというふうに理解しております。今度の場合は、そういう条約は守りますけれども、実際の業務を公社が行うということで国から主体が離れますので法的な表現としては明記していないということになりますけれども、条約の精神というものは国営の公社としては守っていくことになりますので、その二つの、国から離れた主体になるということと、条約を守っていく、その間に現実のことが行われていくんじゃないかというふうに考えております。
矢島委員 なかなか局長の答弁も難しいところで、まあ、国営の公社というのと、それから国の、今までのようないわゆる郵政事業庁がやってきたこととの違いというものもわからなくはないんですが、ぜひそういう面も考慮に入れながら対処してもらいたいと思うんです。
 そこで、私のところに一つのメールが届いたんです。小平市の梅田さんという方なんです。この方は、私は点字図書館に勤めておりますということで書き出しておりまして、その中に、盲人用郵便物には点字郵便物と、それに準ずる法令で定める施設が発受する録音物とがあります、公共図書館などの障害者サービス部門でも、この盲人用録音物等発受施設指定を受けているところがたくさんあります、全国には障害者用冊子小包郵便を使っているところもあります、そして、盲人用録音物等発受施設指定制度の継続をぜひともお願いしたい、でなければ、公共図書館を運営する自治体財政にも影響を及ぼし、障害者の公共図書館を利用する権利を制限してしまうことになります、また、障害者用冊子小包郵便というのはやはり今回の割引制度廃止の対象になっているのでしょうか、教えてくださいとあるので、ひとつ教えてください。
團政府参考人 御指摘の小包郵便物に係る政策料金というものでございますが、これは現在の制度としましては、心身障害者用冊子小包郵便物、盲人用点字小包郵便物それから聴覚障害者用小包郵便物、この三つを総務省令で実施しているというものでございます。これは基本の小包の料金自体が省令ということになっておりますので、割引も省令という形で表現されているというものでございます。仮に小包郵便物が法律の料金であれば、法律事項ではなかったかというふうに思います。そういう法形式のレベルの違いということで、現在そうなっております。
 したがいまして、これを受けて公社発足後はどうなるかということでございますが、これも、先ほどの三種、四種郵便物と同様に、公社におきまして、このような制度をどう引き継ぐかということをこれまでの制度を参考に検討されるものというふうに考えております。
矢島委員 時間になりました。
 結局、無料条項が削除されたり、第三種、第四種郵便料金については公社が第一種料金より低い範囲で決められる、こういうことになったと。無料条項以外は、これまでも第三種、第四種郵便料金は第一種料金より低いものでなければならないということであり、一見しますと法文上はそう大差がないように見られるんですが、しかし、その大前提が違っていると。民間参入である、中間報告で、まさしく政策的減免料金に一番犠牲が行くのが今回の条件つき全分野への参入、こう私指摘してきたわけですけれども、まさにそういう方向へ行っているということ。
 条件つき全分野参入というのは、制度の設計どおりの民間が参入をしてきたならば、そのしわ寄せが行くのは政策的減免料金、制度設計を超えていいとこ取りを認める参入に踏み込んでしまうと、それこそ政策的減免料金の値上げも含めて、この郵便制度というものの崩壊につながりかねない、私、この危惧を申し上げて、きょうの質問は終わりたいと思います。
平林委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 ちょうど五年前、行政改革会議の中間報告で、この郵政三事業民営化という文言が明記されたんですね。しかし、その後、いわゆる政治の力といいますか、国民の声をバックに、現在のこの郵政公社という方向に大きくかじを切ったわけですね。そのときの、なぜそういうことができたかという最大の原因は、やはり何といっても国民の声だったんです、当時。いわゆる国鉄の分割・民営化のときのような声が国民から上がらなかった。あのとき各地で公聴会をやりましたよ。そのときに、やはり多くの各地の参加者の声は、郵便三事業は国営でやってほしい、郵便局をなくさないでほしいという声が非常に多かったんですね。そういった声があったわけでございますが、その後、こうして五年後、いよいよこの郵政公社という法案が提出されて、審議されているわけでございます。
 この間、郵政三事業の民営化に対する国民のアンケートを聞きますと、かなり民営化の声も五年前に比べたら上がっているんですよね。これは一つは、やはり民営化論者であります小泉さんが突如として総理になったという、そして、構造改革の一端として郵政は民営化すべしという主張を強く訴えていったのが国民の間にかなりしみ込んでしまって、民営化に賛同するという状況になったのが一つ。
 しかし、私は、もう一つこういうことがあるんではなかろうか。つまり、これまで郵政省、郵政事業庁、総務省は、地域の住民に信頼される、親しまれる、愛される、そういった郵便局づくりに邁進するんだとずうっと言ってきましたよ。そして、それが何よりも大事だということは、総務省が一番ようわかっている。そういうことを言ってきながら、現実の、全国の各地域の職場の状況は果たしてどうかということを私はもう一度、この郵政公社の法案を審議するときに、スタートするのを機として考える必要があるんではなかろうか。
 というのは、私もいろいろな地域の声を聞いてみたんですね。そうしますと、やはり、五年前に比べたらかなり配達員の異動も大きくなった、以前はこんなに激しくなかったという声もあるんです。いわゆる人事交流ですね。これは職場の活性化という意味ではもちろん必要でございます。しかし、あくまでも、この人事交流というのは数合わせの人事交流であってはならないと思うんです。当然のごとく、適材適所の人事交流でなければならない。しかし、現実には、地域によっては、かなり激しい人事交流のために、なかなか地域住民と密着する機会が薄れてしまっているという声があるんですが、そのことに関しましてはどのような認識をお持ちでしょうか。
松井政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、地域に密着して、地域に信頼される郵便局づくりを目指していることは先生御指摘のとおりでございます。その中で、局務運営につきまして、特に人事交流につきまして御指摘いただいたところでございます。
 ただ、人事交流につきましては、私どもの考え方は、職員に複数の職場を経験してもらうことによりまして、職員の能力開発あるいは職場の活性化を図っていきたい、こういった観点から取り組んでまいりました。
 しかしながら、先生御指摘ございましたが、一部に、局情とかあるいは本人の適性にかかわらず画一的な取り組みが散見された面もございます。そこで、労働組合ともよく話しまして、本来の趣旨を踏まえた適材適所の人事に配意するように今取り組んでいるところでございます。
 それから、特に郵便の外務作業につきましては、郵便事業の新生ビジョン等の中でも、外務職員が地域に精通する通区率の維持ということが非常に大事でございますので、これがまた郵便局にとっても大きな財産になりますので、こういうことが損なわれないような配慮をしていく必要があるというふうに強調しているところでございます。
横光委員 そういう方針でやられておるという認識でございますが、今言われたように、それぞれの地域によっては、せっかく住民と意思の疎通ができ上がったときに、またほかのところに行かざるを得ない、また新しい人が来て、独居老人の人はそういう若い人を、あんた、だれかいというぐらい、信用するのに時間がかかる、そういった問題も起きているわけですね。
 そして、現実に外務職員は、これは全国的な平均はわかりませんが、ある地域で聞きますと、やはり一日百キロぐらいバイクで走る、そして一日五百平均の配達をするというような状況でもあるわけです。ですから、時間的に、以前やっておりましたいわゆるふれあい郵便、声かけ運動、いろいろな形で地域住民との密着が強かったのがだんだん薄れつつある、そういった時間がなかなか持てないんだという声も上がっておるんですね。
 事業庁の方針では、外務職員の総合担務、この場合は、午前中に郵便を配達して、午後、貯金や保険の勧誘や営業や契約、こういったことをやるという方針のようですが、実際はなかなか、今言ったような距離数、配達数からすると、午前中ではなかなか業務は終わらない、どうしても二時、三時になる。そうすると、残った一、二時間で今度は貯金や保険の仕事をする、これも十分にできない。結局夜までやる、極端な場合は休みでもそうした営業活動をするという声もあるんですね。
 これはほんの一部の地域かもしれません。しかし、これは非常に、これまでの密着した、信頼される、愛される郵便局づくりのためには欠かせない問題だと私は思うんですね。ここが薄れてくると、要するに、民営化の声が今少しずつ強くなっている中で、さらに国民の郵便局離れというものが起きかねない。そこで私は申し上げているわけでございます。こういったことが内部から崩れてしまいますと、結局は現場の声というものが上に上がらないというような気がしてならないわけです。
 私、代表質問のときに、中国の「山の郵便配達」という映画を紹介して、総理にその見解を聞いたのですが、なぜあのような例を出したか。つまり、時代が変わってもあるいは場所が変わっても、最後は人が人に渡すんですね。そこなんです。ですから、心のこもった配達をするのか心のこもらぬ配達をするのか、これはこれから大きな差になってくるんですよ、郵政そしてまた郵便事業において。ですから私は、ああいった問題を提起して、この郵政公社を機に、さらに現場の職員との意思疎通というものをもう一度検証し直す必要があるのではないかということを訴えているわけです。
 とりわけ労使問題は、労と使がお互いの立場を尊重し合って協調し合わない限り、今、この大きな民営化の波に太刀打ちできないという気がするわけです。この公社がスタートすることを機に、いま一度、労使協議制度のあり方等、みんなで話し合う、そういった場をつくって、お互いの力を出し合うということを考えてみてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
松井政府参考人 お答え申し上げます。
 最初に、総合担務について触れていただきましたので、それについてちょっと申し上げたいと思います。
 一人の外務職員が、郵便だけでなくて、貯金も保険も、三つの事業の業務を同じ地域で取り扱えれば、お客様からの要請に迅速に対応させていただける、こういうメリットがあるという考え方で実施してきております。
 これは、一つのシステムとしてそのように考えたわけでございますが、変わり目になりますと、一人一人の職員のあれからしますと、お客様との触れ合いがかえって難しくなるところもあろうかと思います。いずれにしましても、実際の郵便局の職場の現場での年齢構成だとかあるいは地域の実情、こういうものとの間で、かえってお客様サービス上好ましくない事例もございます。御指摘のとおりだと思います。
 そこで、よく労働組合とも意思疎通しまして、この二月からちょっと変えましたのは、現場のお客様に一番近い立場にあります郵便局長に、当該局での総合担務の実施の是非とか、あるいはその場合の方法について判断をゆだねるということで、画一的に、お仕着せ的ではなくて、現場に判断をゆだねるというふうなシステムをとっております。
 いずれにしましても、地域の実情を踏まえた適切な実施というのが第一義だと思いますし、今後、新たな公社に向かいまして、よく労働組合と意思疎通できるような体制はしていきたいと思っております。
横光委員 今おっしゃったように、確かに、総合担務、利用者の利便性にもプラス、あるいは職員にもプラスの面があるわけですが、それがうまく機能すれば非常にいい制度ではあるのですが、これがなかなか時間的に厳しい地域も出てきているということを考えると、度が過ぎれば、せっかくいい機能がうまく発揮されないために、先ほど言ったような、結局住民の郵便局離れということが起きかねませんので、今私は問題提起したわけです。ありがとうございました。
 それでは、郵政三事業、郵便局というのは、国民にとっては必要不可欠な生活インフラであるということは、これはもう認識が一致するところでございます。また、行政を含めて各種のサービスのアクセスポイントである、さらに、これから少子高齢化社会の中では、本当に安心される、あるいは安全である、そういった良質な公共サービスを提供する地域コミュニティーとして、厳然と今存在しているわけですね。そういった意味から、たとえ郵政公社になったとしても、現状の郵便局の配置数、これは維持することは変わらないということでよろしいでしょうか。
山内大臣政務官 お答えさせていただきます。
 先生おっしゃったとおり、郵便局は、これはもう国民生活に必要不可欠な郵便、為替貯金及び簡易保険のサービスを全国あまねく公平に提供するという観点から、山間地であろうと僻地であろうと、離島なども含めた全国津々浦々に今二万四千七百余設置いたしております。平成十三年度末現在で三千二百二十三の市町村すべてに配置されているところでございます。
 このような郵便局ネットワークは、百三十年余の歴史を持って、国民共有の資産でもありまして、生活のインフラであることから、地域から、その存続への期待が大変大きいものと我々も認識をいたしております。
 他方、公社におきましては、この三事業ともに競争が激化することが予想されておりまして、独立採算制のもとで、経営上の難しさはありますけれども、効率化また合理化の経営努力を行いまして、現在の水準を何とか、郵便局ネットワークを維持していくということに期待をいたしております。
横光委員 先ほど言いましたように、高齢化社会、あるいはこれから市町村合併とかいう大きなうねりがあるだけに、郵便局の役割はこれまで以上に大きくなる。ですから、こういった大きな転換期であるとはいえ、大事に続けて維持していただきたいということを要望したいと思います。
 それでは、先ほどから大きな議論の的になっておりますいわゆる小泉総理の本会議での発言、この法案は民営化に向けた一里塚であるという発言に対して問いただしがございました。
 大臣は、先ほどから、これは政府の方針ではない、一政治家の発言であるという答弁を繰り返されております。これは閣議決定された答弁なんですね。――ということは、基本法の第三十三条第一項六号、これは削除されておりませんし、存続いたしております。つまり、民営化等の見直しは行わないものということになっております。であるにもかかわらず、総理がこのような発言をする、一政治家としての発言であるということでしたが、その総理が、懇談会に公社化後の経営形態のあり方を検討しろと指示を出したという報道がある。これは幾ら何でも、閣議決定されたことと違うことを総理がやろうとしているわけですから、明らかに違法じゃないですか、総務大臣、どうぞ。違法じゃないですか、そういったことを指示するということは。
片山国務大臣 一政治家じゃないですよね、総理大臣である一有力政治家でございますので一政治家じゃないと思いますが。総理は、そういう意味では、民営化が持論でございますし、民営化を望んでおられるということは我々もよく承知いたしております。ただしかし、政府の意思として民営化をどうするなんて、まだ何にも議論しておりませんし、そこで、そういう議論のたたき台を出す総理の懇談会を総理はつくられて、一年ぐらいかけて意見を集約してくれ、こういう段階なんですね。
 だから、今、まず公社にして、公社になったらどうだということはまだ決まっていない。これはきょうも閣議決定いたしましたので、そのことを申し上げましたが、そういうふうに御理解いただきたいと思います。総理も、自分は民営化論者だけれども、自由に総理懇で論議をして、意見を集約して結論を出してほしい、こういうことですから。
 だから、その総理懇で今議論をしている最中のいろいろな選択肢として、例えば、民営化したらどういうことになるのか、民営化するとすればどういう形態があるのか、こういうことをお話しになったのではないかと思いますが、先ほど言いましたように、今有識者だけの議論をやっておりますから、閣僚メンバーは入っておりませんので。
横光委員 総理、一政治家の発言ということですが、一政治家じゃないんですね。総理の立場になると、発言には物すごい重みが伴うわけですよ。我々が言う発言と全然違うんです、天と地ほど。それを軽々しく、軽々しくというより、何度も何度も叫び続けるわけでしょう。そのことによって、先ほど言いましたように、国民は、そうだそうだという意識にだんだん流れていってしまう、そこのところを心配している。閣議、政府が決めたことと違うことを総理大臣が、言うのは自由ですよ、しかし、先ほど言いましたように、総理の諮問機関にそういった指示を与えるということは、これは違法じゃないかと言っておるんですね。
 一政治家で言うんならいいと言っているんです。でも、それによって指図して、公社化後の経営形態のあり方をちょっと、民営化の方向で検討してくださいと指示を出すこと自体は、もう実におかしい。私は、ここまで見解が違う以上、やはり総理大臣にここに出席してもらって、政府の見解と同じであるということを、認識を示してもらわない限り、この法案は本当に大きな問題につながりかねないという気がいたしておりますが、委員長、どうですか。理事、お願いします。
平林委員長 横光君の御発言でございますが、最前からその問題につきまして理事会で協議することといたしておりますので、御了承の上で御質問を願いたいと存じます。
横光委員 お願いしますよ、それは本当に今おかしな形になっておるので。
 次に、今大臣は、仮に民営化になった場合どうするかというような論議をその懇談会はしているんだ、するんだとかいうような発言もございましたが、例えば、この問題はやはり国民もしっかり認識してもらわなきゃなりません、民営化ということになればこの郵便事業はどうなるのかということをちょっとお聞きしたいと思うんです。
 実は、私のある地域の局では、現実にもう宅配の場合、民間事業者から委託を受けておるというんですね、委託を。これは、とりわけそれが年末年始、お盆の繁忙期、大変忙しいときは物すごく多いらしいんですよ。要するに、下請ですよ。郵便局が民間の下請をやっておるんです、現実に。つまり、中央で預かったものを地方ではなかなか配達しても収益が上がらないので、郵便局にお願いする。現実に起きておるんですよ。しかも、そういった宅配便のあれにはバーコードが二枚ついておるんです。受けるときの一つ、それから郵便局にお願いするときの、バーコードが二つついている小包が多いんですよ。御存じですか。そういう時代になっている。
 その中で、今度この郵便事業を例えば民営化、仮にそういったことになった場合、さらに郵便ではもうからないわけですから、民間事業者がそういったことをやるとは到底思えない、こういったことをまず認識してもらわなきゃいけない。
 そして、一番大事なことは、先ほどから言われておりますユニバーサルサービスですね。現在の郵便事業はどうして成り立っておるんですか。いわゆる全国一律料金、それを維持するために、結局、大都市、大口利用者、こういう人たちの収益で不採算部門の過疎地域の赤字を補っているわけでしょう。これはそのとおりですか、現在の郵便事業のあり方、経営は。もう聞かぬでもいいですね。そのとおりですね。
 ということは、もしそういった形で成り立っている郵便事業が民営化されたらどうなるか、これはもう一目瞭然じゃないですか。これは当然、都市部では競争が激しくなる、あるいは料金がその点で下がるというメリットはあるかもしれない。しかし一方、先ほど言ったような不採算地域では結局サービスの低下ということになって、全国一律料金の維持は難しくなる、こういうことは、当然そのように想像できますね。つまり、営利至上主義の民間事業者にとって、不採算地域の郵便サービスというのは、結局は切り捨てになってしまうのは当然なんです。
 ですから、ユニバーサルサービスというものは、あなた方でスタートするときのこの公社の大前提であるなら、そのユニバーサルサービスを大前提とした全国ネットワークというのはどこで守れるか、やはり国営でしか守れないということになると思うんですが、今私が述べたようなことはそのとおりだという言葉だけでもいいんですが、どうぞお答えください。
團政府参考人 委員の、郵便事業の関係で二つのことがあると思います。一つは事業体として国営、公営ないし民営という問題と、それから独占、非独占、まあ独占、競争といいますか、その二つの軸があるのではないかというふうに考えます。
 そこで、世界の趨勢ということを見た場合に、郵便の事業につきましては、アメリカがUSPSという国家機関で行っているというふうなこと等ありますように、国家機関ないし特殊会社、公法人というものが大半でございまして、ドイツ・ポストあたりが特殊会社となっておりますが、これも国が六〇%以上株式を持っておりまして、やはり、純粋に民間の事業者が郵便事業をユニバーサルで行っている事例はないものというふうに考えております。
 それから、競争ということについて言いますと、そういう、一方がユニバーサルサービスを行う公法人ないし特殊会社、国家機関でありながら部分的な参入で競争をやっていく、それからイギリスあたりでは全面的な競争をやっていくという、二つのユニバーサルサービスを担う事業体の問題と今の独占、競争の問題、こういうものが動きつつあるという状況だと思っております。
横光委員 とにかく、ユニバーサルサービスというのが大前提となると、今のような郵便事業のあり方というものはなかなか民営化では成り立たないということを私は申し上げたかった。
 そしてもう一つは、いわゆる社会的な福祉支援サービスですよ。これを民間事業者はもう最初から、そういう福祉は別だ、郵便事業でそういうことをやる必要はないんだ、むしろこれはそういうことをやるから行政の肥大化につながっているんだと、はっきり民間事業者は福祉支援なんか郵便配達とは関係ないんだということを言っているぐらいなんですね。
 ところが、この郵便事業を百三十年間培ってきた中で、社会福祉支援サービスというのは物すごく大きなものがあるわけでしょう、今。そういったものが、片一方は完全に福祉なんかやる必要ないと明言するほどのことを言っていて、それが民営化になったら、当然その福祉の部分は切り捨てられるわけですよ。
 高齢化が進んだ過疎地域では、郵便局がそのネットワークを生かして地域の高齢者の社会福祉に非常に貢献してきたわけです。また、高齢者向け在宅福祉サービスを支援するひまわりサービス、私はちょっと先ほどひまわりサービスのあり方が弱くなっているんじゃないかという苦言を申しましたが、それでもひまわりサービスは非常に喜ばれている。こういったものが民営化されたら結局もう廃れていく、切り捨てられていく、そういうことになろうかと思いますが、そのことについてのお考えはいかがですか。そういうことになりかねませんね。うなずきがないですね。当然そうなるんです。
 それから、もう一つお聞きしたい。これは効率性の向上でございます。
 これは、民営化すれば効率性がよくなる、よくなると言う。確かに民営化による効率性の向上を挙げておりますが、この効率とは一体何に対する効率性だと思っておられますか、事業庁としては。効率性、民営化すれば効率性がよくなる、何に対する効率がよくなるんですか。
松井政府参考人 的確なお答えになるかどうかわかりませんが、御指名いただきましたので。
 効率性ですから、かなり広い意味での生産性、あるいは一人当たりの生産性だとか、いろいろな考え方があると思いますが、そういう意味で能率が上がることだというふうにまずは考えさせていただくことだと思います。
横光委員 余りよくわからなかったんですが。
 この言っている民営化による効率性というのは、企業論理を前提にした営利至上主義の効率性じゃないですか。その効率性しか考えていないんだ。いわゆるユニバーサルサービスの提供という公益企業、公益事業とは、基本的になじまないということなんですよ。本来の効率性というなら、国民の利便性、これをさらに高めるための効率性こそ追求されなきゃならないんでしょう。それが皆さん方のお考えだと思うんですよ。そういったことから、収益のみのための効率性の追求というものは社会弱者の切り捨てにつながりかねないということを、私はまた強く申し上げたいわけでございます。
 こういうふうに、民営化されたらどうなるかということを事例を挙げました。さらに今海外の例もちょっと述べられましたが、海外ではもう民営化した国がありますよね。例えばスウェーデンやニュージーランド、こういった民営化した後の国の事業体のサービスがどうなっているかということも、私はここでやはりしっかりと参考にすべきだという気がするんです。こんないい先例はないだろうという気もするんです。ですから、本当に民営化して果たしてうまくすべてが成功しているかどうか、どんな弊害が起きているかということは重々御存じのはずだと思いますし、そういったことをしっかりと参考にしてこの問題に対応していただきたい、私はこのように思います。
 それでは、この郵政公社の法案について質問に入りたいと思うんですが、公社化の目的、「国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資する」、こういった目的が書かれております。先ほど福祉の切り捨てにもなるんじゃないかということを言いましたが、この法律には、目的規定の中に公共の福祉の増進という一文はありません。しかし、郵便法や郵貯法、簡保法の中では、それぞれの事業の目的としてしっかりと公共の福祉の増進が明記されておりますね。これはもう重複するから書かなかったのであろう、言わずもがなのことであろうということで私は認識いたしておりますが、公社でも当然のこととして公共の福祉の増進ということで理解してよろしいでしょうか。目的の一つに。
野村政府参考人 先生おっしゃるように、公社法の目的規定の中には、直接公共の福祉の向上というのは入ってございません。ただ、ここに書いてございますように、国営の公社として、信書及び小包の送達云々ということで、具体的業務は、後ろの方で、郵便法の云々ということで、郵便法の業務をやること自体がこの公社の目的と。その郵便法の方で、郵便業務をあまねく公平にやることによって公共の福祉を増進するというのを書いてございますので、そちらの方で公共の福祉というのを書いてございますので、あえて公社法の方にはそれは規定しないということでございます。
横光委員 はい、よくわかりました。
 この公社の経営は独立採算制ということでございます。ということは、赤字になれば、当然のごとく、最終的には国民の負担につながる懸念があるわけですね。そういった意味で、国民の負担を軽減するために、この独立採算制の実効性を担保する措置が必要であろう、このように思いますが、この実効性を担保する措置をどのように講じるおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
山内大臣政務官 先ほどお答えになりました公社化の目的というものに照らし合わせまして、自律的、弾力的な経営を可能にしていく、弾力性を持たせていくということ、それから独立採算制ということの基本的な考え方ですが、これはもう端的に言いますと、郵政事業の経営に伴う収入をもってその経費を賄っていくということが独立採算制の基本的な考え方になろうかと思うんですが。
横光委員 例えば、独立採算制、ここで利益を上げた場合、この利益はどうされることになっておるんですか。
野村政府参考人 お答えいたします。
 法律の三十六条に「利益及び損失の処理」という規定がございまして、公社は、毎事業年度、損益計算において利益が生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残りの額を積立金として整理しなきゃならないということで、積立金として整理する形になってございます。
横光委員 つまり、内部留保をするということですね。しかし、内部留保をした、プールした金はいずれどうするかということなんです。御案内のように、先ほどからお話が出ていますように、今回の郵政公社は過少資本なわけです。非常に自己資本比率が低い。〇・四%。例えば、この状態で民間企業であれば、これはもう即刻破綻の金融機関という烙印を押されかねないわけですよ。ですから、いわゆる国民の負担を最小限、全然負担をさせないという意味から、大事なことは、この資本の増強ということにつながると思うんですね。資本の増強につながるということが国民の負担を避けるということにつながる。資本の増強策としてどのようなことをお考えなのか、お聞かせください。
野村政府参考人 先生御案内のように、資本として、今の想定では公社発足時一・九兆円ということでございますが、非常に過少資本ということでございますので、私どもとしては、事業の健全経営を図ることによりまして、先ほど申し上げました三十六条の積立金をふやしていく、そういった形で資本の増強を図っていくということでございます。
横光委員 先ほど言われた積立金、いわゆる内部留保金、これは先ほどから言われている国庫納付ということが義務づけられておるわけですが、これはむしろ国庫に納付する以前に、まず過少資本対策に投じなきゃいけない。国民の安全のためにも必要であるという気がいたしておるんです。
 そしてまた、例えば、旧国鉄債務処理のための、ことしで一兆円になるんですかね、一兆円出しているわけです。この回収策は何か検討されているんですか、それとも出しっ放しなんですか、この問題は。一兆円ですよ。
團政府参考人 御指摘の一兆円の問題、二千億ずつ五年間ということで、ことしで終了でございます。この問題とこの資本不足の話ということもあわせて議論したところでございますけれども、あの法律によりますと、十四年度におきまして、これは郵便貯金の積立金から出したものでございますけれども、どうしても郵貯の状況がまずいということであれば検討するということでございました。現状、十三年度から郵貯も黒字になっておりまして、当分の間、少なくとも資本不足という面はございますけれども、単年度におきまして健全経営が見込めるということでございますのでそのままにしているというふうなことでございます。委員おっしゃいますように、まず、資本金が不足しておりますので、当分の間、郵貯は黒字が見込まれますけれども、あくまで資本の増強に努めていくということを着実にこの数年はやってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
横光委員 私が言いたかったのは、結局、郵政三事業は税金を納めないという批判があります。しかし、国鉄の債務処理、これは本来なら国民の税金で補わなきゃいけないものですね。それを郵貯の方から一兆円も肩がわり、税金の肩がわりをしているということでしょう。つまり、税金を納めていないという批判は当たらないというようなことをもっともっとしっかりと広報で国民に知らしめていくということも大事ではないかということでございます。
 次に、信書便法案についてちょっとお尋ねをいたします。
 この法律案のねらい、これは、特に全国サービスを行う一般信書便事業への民間参入にあると考えられるわけでございます。そして、この目的が、許可制度を実施して利用者の選択の機会の拡大を図る、これが一つ、そして公共の福祉の増進に資する、この二つが目的に書かれております。
 ところが、先ほどからお話ございますように、この法律が成立したとして、全国サービスへの民間参入というものは今のところどういうような状況なんですか、予測としてでも結構でございますので。
團政府参考人 一般信書便事業というもののことと思いますが、この制度をつくるに当たりましては、パブリックコメントを求めたり事業者へのヒアリング等いろいろなことをやりまして、この制度がいいということで中間報告をいただき、それを法制化しております。これに基づきまして法律をつくったわけでございますが、これは条件つきの参入にしておりますので、全国サービスを行わなくちゃいけないということで、かなりの投資額もかかりますし、事業のリスクも恐らく計算されているだろうと思います。
 そういうこともあろうと思いますが、現在のところ明確に参入するというような表明がされた会社はありませんけれども、途中の議論の過程でも、いろいろな意見はありますけれども、参入の可能性はあるというようなことで制度をつくったわけでございまして、引き続きまた、全国的な配達能力のある事業者におかれましては検討されているものというふうに考えております。
横光委員 今の御答弁でおわかりのように、この法律が成立したとしても、民間の参入はほとんど現在のところ期待できない状況だということでございます。であるならば、この法律が、先ほど私が申しました目的、利用者の選択の機会の拡大を図るとありますが、民間参入者がほとんど期待できないということは、民間が参入しなければ利用者の選択の機会の拡大を図ることができると言えるんですか。
團政府参考人 ちょっとつづめて話しましたので誤解があるかもしれませんけれども、二つの、一般信書便事業と特定信書便事業がございます。特定信書便事業の方は既に新聞等で出ておりまして、参入の意向を示されております。一般信書便事業につきましては、これはいろいろ検討中だろうというふうに考えておりまして、必ずしも参入がないというふうなものとは考えておりません。なお民間において検討中であるというふうに認識しております。
横光委員 私は、今のところ、これはいわゆる絵にかいたもちである、しかも、目的ができても参入しなければ、その目的は何ら、利用者の選択の機会の拡大を図ることはできないということを申し上げたいと思います。これは、今、全国参入しない場合です。しなかった場合、こういう利用の拡大なんて考えられない。
 いま一つ、もし将来、民間事業者が参入した場合、いわゆる営利を目的としている信書便事業者が福祉に貢献することは、先ほど私が申し上げましたように、考えられない。まずやる気がないと言っておるんですから考えられない。つまり、公共の福祉の増進に資するといういま一つの目的、この目的も全然達成されないということになりませんか。
 つまり、公社が民間事業者との競争にさらされて、そして公社の経営が悪化した場合、郵便料金の値上げ、あるいは公社が担う、先ほどから言われております第三種郵便物、第四種郵便物の縮小や廃止、さらには不採算地域の郵便局の統廃合、さらには地域住民へ貢献しているひまわりサービス等の縮小や廃止といった、いわゆる公共の福祉の増進どころか、参入すれば公共の福祉の後退を招くということにもなりませんか。つまり、この法案には私は二つの矛盾があると今感じているんですが、いかがですか。
團政府参考人 二点目の、参入した場合、公共の福祉に資するかどうかということについてのお話でございます。
 この場合の福祉というのは二つあろうかと思いますが、まず、郵便の事業におきまして、これは電気通信なんかでもそうでございますけれども、新規参入をすることがありました場合には、必ず、先に存在している事業者よりいいサービスを、例えば電気通信でもそうでございましたけれども、長距離料金、安い料金でないと入れないということでありますから、参入するということになりますと、これは一般に、これまでのサービスよりいいサービスというのが入ってくるのではないか、そういう、郵便の分野におけるよりよい、あるいは安いサービスということが直接的な公共の福祉になるというふうなことを念頭に置いて表現しているものでございます。
 その副作用として、先生の御指摘のある三種郵便の問題とかひまわりサービスの問題というのは次のまた問題としてあろうかと思いますが、信書便自体についていいますと、信書便におけるよりよいサービスの実現ということが図られるということは期待できるものというふうに考えているわけでございます。
横光委員 なかなか説得力が弱いですな。私は、やはり、これは参入しなければいま一つの利用者の選択の機会の拡大を図ることはできない、参入すれば目的である福祉のむしろ後退につながる、そんな気がする法案であるということを強く感じている。
 次に、これまた先ほど激しい論議になりましたが、信書の定義ですね。郵政省は、ダイレクトメールは信書に該当する、こういうふうにずっと位置づけてまいりました。総務省も同じですか。
團政府参考人 その点の郵便法は変わっておりませんので、考え方は現在のところ変わっていないということでございます。
 なお、新しい法律につきましては、ガイドラインでまた明確にしていこうという考え方でございます。
横光委員 変わっていないということですね。
 そして、五条に、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」という定義規定が表現されておりますが、これは非常に抽象的ですよね。そこで先ほどから信書の具体例は郵便法でしっかりと規定すべきではないか、限定列挙すべきではないかという声があるわけでございます。
 今ガイドラインでいろいろと具体例は示すということですが、ガイドラインというのは法的に拘束力あるいは法的根拠があるんですか。
團政府参考人 これは、法律の有権解釈というものは、担当の省庁がやるわけでございます。これは一般に公示するかしないかといろいろなやり方がございますけれども、そういうものとして、もちろん法律で解釈できる範囲内でございますけれども、そういう意味で法的な意味はあるというふうに考えております。ただし、最終的な争いというものは司法の場で決着がつくということになりますけれども、そういう有権解釈としての意味があるというふうに考えております。
横光委員 私は、ガイドラインという非常に不安定な状況になると、法的拘束力があるというお話ですが、結局、最後は裁判ということになるわけでしょう。ですから、そういった不安定な状況のガイドラインより、ちゃんと限定列挙して明記すべきであるということの方がずっと正しい主張だと思うわけでございます。
 ちなみに、先ほど、クレジットカードやダイレクトメール、これはこれまで郵政省は信書であるということだったんですが、引き続き信書に該当するということになった場合、これはある意味では公社が大きなシェアを占めるわけですね。ダイレクトメールは信書ではないということになれば、これはまた安い料金で民間に流れてしまって、大都市特化する、そしてまた結果的には公社は大変打撃を受ける。それをガイドラインで決める、審議会で決める。そのときに、先ほど、審議会でダイレクトメールを信書とするというようなことにガイドラインで決めれば、これは公社を守るという大前提でやるというのはおかしいじゃないかという意見があった。
 しかし、私は逆なんです。むしろ公社を守るために私はガイドラインでもダイレクトメールは信書であるとはっきりとすべきである。これは公社を守るんじゃない。国民の利便性、ユニバーサルサービスという観点から国民を守るんであって、公社を守るんではないわけです。ですから、そういったことで私は意見が真っ向対立するわけですが、その点はいかがお考えですか。
團政府参考人 信書の定義の問題、これは信書の範囲だと考えてもいいかと思うんですが、実は、中間報告で、公社化の問題のときに、郵便の参入をどうするかということで議論されましたけれども、条件つき全面参入ということになりましたので、信書の定義とか範囲とかいうことについては余り議論されませんでした。
 といいますのは、今は官の独占で、郵便法五条で官以外はできないということになります。ところが、全分野で民間が参入できるということになりましたから、どこまで参入できるかということを参入事業者については検討する必要がないということでありますから、部分参入であれば、例えばヨーロッパでありますように、三百五十グラムまで入れるとか、ダイレクトメールだったら五十通までだったらいいとか、そういうことを議論したと思いますけれども、全分野入れるので、参入事業者が全分野参入できるということで、議論が余りされませんでした。
 したがいまして、この問題といいますのは、民間が参入できるかどうかということではなくて、信書の定義から排除といいますか、別のものとして、信書じゃないものとして扱う。したがって、通信の秘密とかそういう規律の問題とは切り離したところで扱うかどうかという問題だろうと思いまして、これは参入の問題ということとはちょっと、本当は違うと思います。
 しかしながら、法律の解釈というものは明確なことが必要でございます。先生おっしゃるとおり、できればやはり法律できれいに書くのがいいと思いまして、いろいろな検討をしてまいりましたけれども、諸外国におきましてもやはりどうもこの程度の定義しかできていないということで、こういうやや抽象的な定義にしてございますけれども、これでも一歩明確化に進んでいるというふうに思いまして、あとはガイドラインでやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
横光委員 今、参入の問題ではないとおっしゃいましたが、とんでもないと思うのですよ。この信書の定義こそが参入するかしないかの分岐点なんですから。これからガイドラインでどうこれが書かれるかというのが非常に大きな、また新たな論議の的になろうかと思います。
 終わります。
平林委員長 次回は、来る六日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.