衆議院

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第3号 平成14年11月7日(木曜日)

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平成十四年十一月七日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 遠藤 武彦君
   理事 荒井 広幸君 理事 佐藤  勉君
   理事 林  幹雄君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      浅野 勝人君    伊藤信太郎君
      今村 雅弘君    岩永 峯一君
      上川 陽子君    左藤  章君
      滝   実君    竹下  亘君
      谷  洋一君    谷本 龍哉君
      平林 鴻三君    宮路 和明君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      桑原  豊君    玄葉光一郎君
      島   聡君    武正 公一君
      中村 哲治君    永田 寿康君
      松崎 公昭君    松沢 成文君
      遠藤 和良君    山名 靖英君
      山岡 賢次君    春名 直章君
      矢島 恒夫君    重野 安正君
      横光 克彦君    三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  春田  謙君
   政府参考人
   (内閣法制局第三部長)  梶田信一郎君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (郵政事業庁長官)    松井  浩君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局勤
   労者生活部長)      奥田 久美君
   参考人
   (独立行政法人日本貿易保
   険理事長)        荒井 寿光君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月七日
 辞任         補欠選任
  佐田玄一郎君     今村 雅弘君
  野中 広務君     竹下  亘君
  赤松 広隆君     桑原  豊君
  玄葉光一郎君     永田 寿康君
同日
 辞任         補欠選任
  今村 雅弘君     佐田玄一郎君
  竹下  亘君     野中 広務君
  桑原  豊君     赤松 広隆君
  永田 寿康君     玄葉光一郎君
    ―――――――――――――
十一月六日
 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)
 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――
遠藤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長久山慎一君、郵政事業庁長官松井浩君、人事院事務総局勤務条件局長大村厚至君、内閣官房内閣審議官春田謙君、内閣法制局第三部長梶田信一郎君及び厚生労働省労働基準局勤労者生活部長奥田久美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として独立行政法人日本貿易保険理事長荒井寿光君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。
安住委員 おはようございます。
 きょうのこの法案の審議は、一言で言えば、公務員の皆さんの給料を、こういう大変厳しい御時世なので、減らさないといけないという、特別職と一般職、二つの法案に分けておりますが、これに関連する質疑を私と桑原委員でやらせていただきます。
 デフレが続いて、それを全く解決できない小泉内閣、その被害者は公務員の皆さんにも及んでしまったという言い方もできるわけでありますが、やはり月給取りをやっていた皆さんならわかるかもしれないけれども、それは、給料を減らされたら仕事をやる気になんかなりませんよ、よほどの理由があればそれはそうですけれども。
 そうでなくても公務員の士気が最近低下しているんじゃないかと言われている中で、思い切った削減をすると。削減をするということに関しては、我が党としても、こういう時世ですからそれは理解はしているんです。理解をして、それはやむを得ないところもあるなと思いますが、しかし、私どもは、この引き下げをするならば、下げる対象となる皆さんに対してやはりきちっと納得のいくような説明のプロセスをしっかり経た上で、引き下げたのはもうしようがないけれども、頑張ろうという気持ちに職員の皆さんがならないといけないと思うんですよ。これは一般職ですよ。特別職は責任があるから私はそうとは思わないけれども、しかし、一般の公務員の皆さんにとっては、家族を抱えて本当に大変な思いをしているんです。これはもう民間もそうかもしれません。
 ですから、下げるプロセスの中で、私は残念ながら一言だけ申し上げますと、働いている皆さんとのコミュニケーションというのは果たして今回どうだったんだろうか。やった、努力はしましたとおっしゃるけれども、しかし、そこをちゃんと丁寧にやる手続というのがやはり欠けていたんじゃないかという気持ちが私はあるものだから、この点について一言、これはどちらがいいでしょうか、総務大臣、答弁したいような顔をしていますけれども、人事院総裁に伺って、その後、総務大臣に一言伺います。
中島政府特別補佐人 公務員給与のあり方について、私たちがいつも念頭に置いておるポイントは二つございます。
 一つは、労働基本権が制約されている一般職の公務員にかわって私たちは公務員給与のあり方について勧告するわけでございますので、今おっしゃるように、できるだけ一般職の公務員の方が納得される必要があるだろう。
 したがいまして、調査の方法からあるいはまた調査の対象の選定等につきましても、公務員労働者の話をよく聞かなきゃならないということで、今まで随分聞いております。毎年勧告をしておりますけれども、私たち、勧告に当たりまして、総裁から下は課長に至るまで労働組合の方とよくお会いするわけですけれども、一回勧告するに当たりまして労働組合の方の意見を聞くというのを総計いたしますと、大体百回ぐらいになっているんじゃないかというふうに思います。
 ただ、幾ら会っても、幾ら話をしても納得していただけないことはございます。ただ、納得していただけないにいたしましても、誠心誠意お話しするということを重ねてきております。これからもそういうことは重ねていかなきゃならないというふうに思います。
 もう一つは、私たちの月給というのはやはり国民の税金というものによって賄われておるわけですから、公務員給与のあり方について、国民が納得していただく必要があるということでございます。
 したがいまして、かねがね国会で議論されておりますように、公務員給与のあり方については、できるだけ正確な調査をしなさい、できるだけ精密な調査をしなさいという話がございますし、そういう附帯決議もございます。したがいまして、そういう観点からも、私たちは、中小企業の経営者の話を聞くとか、あるいは国民から直接話を聞くとか、そういうことをいたしまして、国民の声というものも十分反映させる、そして、勧告いたしました給与の内容については国民が納得していただける、そういう手続も踏んでいかなければならないということで、二つのポイントを常に念頭に置きながら作業をしているわけでございます。
片山国務大臣 今、人事院総裁から話がありましたけれども、公務員の給与というのは、労使といいますか、職員団体と我々との話し合いで決まるんじゃなくて、民間の状況を調べて人事院なり人事委員会が勧告して、それを今までは尊重して完全実施する、こういうことで決まってきたわけですね。そこはそれでやむを得ないと思うんだけれども、しかし、中身については、十分な説明をして、関係の方、公務員の皆さんになるほどと納得していただく必要はあると私も思います。
 そこで、今回も、私はちょっとばたばたしまして二回しか組合の代表の皆さんとお会いしませんでしたけれども、人事・恩給局長は九回、それからそれ以下はもっと頻繁にコミュニケーションの確保を図ったということは私も聞いておりまして、今後ともその努力をしてまいりたいと思います。
安住委員 減額調整措置は、公務員給与の民間との乖離で調整していくと。それはそうでしょう。しかし、だからこそ、逆に言うと、これは一言総裁に申し上げますけれども、人事院勧告というものを労使がきちっと遵守していくだけの信頼関係がなければ今の制度というのは成り立たない、特異な制度だと私は思います。ですから、一方だけが話し合いを十分したと言ってもこれはだめなんですよ。そうですね。両方納得をして、理解をしないとだめ。つまり、これはどういうことかというと、やはりその先に、働いてもらって、国民の皆さんのためにいい仕事をしてもらうということがあるから私は申し上げているんですからね。
 詳しい話は桑原委員がこの先しますので、私はちょっと視点を変えたいと思います。
 それは、独立行政法人の問題なんです。つまり、公務員の皆さんは給料を今回下げる。私は、大体普通の国民の皆さんから見たら、人勧でそこまでやって、それで、今もう各地方自治体もそれに倣って、ひどいところといったらあれですけれども、それに輪をかけてもっと下げるという自治体もあるくらいなんです。ところが、独立行政法人というのは、ではどうなのかということで、我が党としてもいろいろ調べておりました。
 そこで、その代表例と言っては恐縮でございますが、経済産業省が所管をする独立行政法人日本貿易保険の荒井理事長にきょうはおいでをいただきまして、大変恐縮でございましたけれども、少しお話を聞かせていただきたいと思います。
 この日本貿易保険の中身についてはあえて申しませんが、一言で言うと、これは職員の、大体百二十人ぐらいいるんですか、理事長、そのうちの大体九十人ぐらいは、三年の任期で経済産業省から出向で行っているという話です。
 そこで、理事長に伺いますが、この独立行政法人は、去年そして今回、給料について、人事院勧告に倣った措置をしておりますか、それとも、それとは全く違う決定をしておりますか、いかがでございますか。
荒井参考人 ただいまの御指摘の点でございますが、私ども、独立行政法人として第一号の形でつくっていただいたわけでございまして、独立行政法人通則法、そこで報酬について決めていただいているわけでございますが、役員の場合と職員の場合で違った規定になっているのは先生御存じのとおりだと思います。
 役員の場合には、国家公務員の給与、民間企業の役員の報酬等、当該独立行政法人の業務の実績を考慮して決めなさいということになっておりますので、昨年度もこれに従いまして、私どもも引き下げをしたわけでございます。それから十四年度、今年度の役員報酬につきましても、今、そういう方向で検討しているところでございます。
 一方、もうちょっとお話しさせていただきますと、職員の報酬につきましては、業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものになるようにしなさいというふうに、これは独立行政法人通則法でございますが、定めていただいておりますので、現在、この定めに従いまして、私どもの独立行政法人としての業務の実績や社会一般の情勢を勘案しながら検討しているということでございます。
安住委員 平たく言いますと、私はきのう、荒井理事長さんのところの方々と話をした。一言で言うと、人勧に従っていないんです。去年も据え置き、ことしも実は据え置く方針なんです。いいですか。公務員の給与は下がるわけでしょう。それで、役員報酬もそれに倣って、理事長がおっしゃるように下がっているんですよ。ところが、一般職は下げておりません。今回も、下げない方向で調整をしていますということだったんです。
 私は、それはそれで一つの考え方だと思うんですよ。独立行政法人で、それは、実のことを言うと、貿易保険は今までは非常に赤字だった、しかし、通産省から離して、そしてこの独法になってから、理事長、私が説明するのが間違っていたら答えてください、去年一年で百八十億近い利益を上げているんですよね。利益を上げているんだから、これは人勧に従う話でないという話なんです。それは、それだけ見たら確かにそうかもしれない。
 しかし、皆さん、ここに行っている職員の、いいですか、九十人近い者は全部通産省の出身だ。言ってみれば、三年たったらまた経済産業省に戻る人間ですね。そうすると、行っている間は人勧に従わないで、給料そのままなんですよ。それで、三年たったら戻ってやると。これは矛盾じゃないですか。
 それで、これはこのままいくとこういうことになるんですよ。二つの問題がある。
 独立行政法人として、ワンウエーチケットで行って、帰ってこないでそこの職員のままだったら、私はそれはいいと思うんですよ。そのかわり、赤字になったら、人勧に関係なく、つぶれるにしても減らすにしても自由にやってくださいと、労使で話をして。ところが、都合のいいところでは公務員の身分で、それで、貿易保険がどうなろうと、三年たったら帰るんだから、それはもう多分七割の職員が行ったり来たりするんでしょう、そうなると、公務員の側でこれを見たら、多分、あそこに出向したやつは随分おいしい思いをしているんじゃないかと思われるんですよ。だから、その矛盾をどうするかという話を今からしたいんです。日本貿易保険そのもののあり方がいいとか悪いという議論じゃないんですよ。
 理事長、ことしはまだ検討していると言いますが、これは人勧に従うんじゃなくて、引き下げない方向で検討しているというふうに私はきのうきちっと説明を受けたんですけれども、間違いないですね。
荒井参考人 あるいは私どもの説明に舌足らずな点があったのかもしれませんが、私ども、先ほど御説明させていただきましたとおり、独立行政法人通則法に、業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものになるようにしなさいということでございますので、今回出た人事院勧告、それから今の先生の御指摘、こういうことも含め、さらにまた、通則法にも業務の実績も勘案しなさいとか、あるいは、今度私ども非公務員型という形にしていただいておりますので、職員の意向もよく聞きなさいということでなっておりますので、職員の意向も聞いていくということもございます。そういうことを、全体、総合的に判断してこれから決めるということでございまして、今までのところ、まだ一定の結論を出したという事実はございません。
安住委員 これは、私は思いますけれども、見ようによってはというよりも、世間がどう見るかというのが大事なんですよ。世間から見たら抜け道だと思ってもしようがないですよ、これは。下手したら、住宅ローンや何かで苦しんでいる経済産業省の職員を、じゃ、そっち側にとりあえず三年間は出してやろうという気にだってなるかもしれないですよ。これをやったら、まじめに出向もしないで働いている公務員の皆さんはどうなんですか。
 ですから、独法といって行くんだったら、戻ってくるなと私は逆に言いたいですよ。それをまた戻ってきて、都合のいいときになると私は通産省の出身ですなんて、やはり矛盾を抱えているということですよ、独法の今のあり方というのは。
 これは私、全部調べようと思ったんですよ。しかし、調べられませんでした。なぜか。情報公開に対して、今までみたいに協力してくれないからです。協力しない、今のままでは。
 今からこの国会で独法のあり方を議論します。そこで、総裁、ちょっと簡潔にお答え願いますが、こういうふうに、世間から見たときに、事実上の公務員がどこかに出向に行ったときに、そこに合わせて給料をもらうことによって結局人勧から離れていく、しかし、現実にはこの人たちは公務員だということを考えると、これは何かのルールが必要だと私は思うんです、何かのルールが。それはやはり人勧から逸脱しないということだと思うんですけれども、これは、人事院としては、今の制度を見直すというふうな提言をするお気持ちはないですか、いかがですか。
遠藤委員長 中島人事院総裁、簡明に。
中島政府特別補佐人 一般職の公務員と独立行政法人の職員と、適用される労働関係が少し異なりますので、人事院勧告と全く同じというわけにはいかないでしょう。少々の差があるというのは、適用される労働法制からいいまして、これはやむを得ないと思います。
 ただ、今先生が御指摘されますように、頻繁な人事交流があるということになりますと、給与調整というのも難しくなってくるでしょうし、独立行政法人がこれからも非常にふえてくるということでございますので、そういうところの職員が一般職の公務員と違った給与水準のものを受けるということが広く行われるようになりますと、一般職の公務員の給与のあり方にも影響してまいりますので、その点はやはり広い裁量権を与えられておるということは、反面、高い自律性というものも要求されているという認識をお持ちいただく必要があるんじゃないかというふうに思います。
安住委員 百八十億ももうけるんだったら、民間がやればいいんですよ。そんなことまで後生大事に国が持って、それで独法にして、職員をこうやって移して天下り先を確保するようなやり方はよくないの、やはり。
 大臣、あなたは小泉内閣の有力なメンバーだと私は聞いているんですけれども、こういうことを放置して何が構造改革ですか。そう思いませんか、大臣。いかがですか。
片山国務大臣 今、安住委員のお話を聞きまして、やはり独法はこれからふえていくわけですね、この国会でも四十六法案を御審議いただくことにしておりますが。そうなりますと、公務員型の場合、なるほど、行ったり来たりして、行っている間は給与が高くて、帰ってきたらまた下がってと、こういうことはやはりバランス上いかがかなという感じがしますから、いずれにせよ、その出向する公務員の給与については、ルールか基準か、何かそういうものの必要性はあるかもしれませんね。ひとつ閣内でそういう議論を少し起こしてみます。
安住委員 私は総務大臣を信頼していますから、必ずやってください。総理は多分全く関心がないわけですね、こんな小さなことはいいじゃないかと。小さいことからやらなかったら改革はできないの。あの人によく言っておいてください。今国会はなかなか直接話す機会はありませんから、ぜひお伝えを願いたいと思います。
 それでは、荒井理事長は結構でございます。ありがとうございました。ぜひ給料は公務員並みにするように、よく話し合ってください。
 ところで、もう一言だけ人事院総裁に言って、次に分権に移りますけれども、公務員の国家公務員試験があった。今回二・五倍採った。しかし、採用を見ると、結局二十五校、去年と大して変わらないんですよ、東大を中心に。何のために二・五倍も一次試験の採用者をふやしたの、総裁。
 ふやしたけれども、一次試験は受かったけれども、結局、地方の大学の出身の人たちは国家公務員にもなれず、就職先を探して右往左往している。しかし、実際採用している官庁を見ると、何か四つか五つの大学でほとんど七割も占めちゃっている。何のための改革ですか、これは。ちゃんと見直さなかったら、有為な人材は地方にたくさんいるんですよ。しかし、学歴偏重の相も変わらない採用の仕方をやっているのは、実は霞が関そのものじゃないかという話になりますよ。いかがですか。次は四倍もふやしたって、一次試験に受かった者を四倍もふやしたって、これは自動車免許じゃないんですよ、総務大臣。そうでしょう。その人たちから見たらどうなんだという話ですけれども、このことについてだけちょっとコメントをください。
中島政府特別補佐人 二・五倍にいたしました。いたしました結果、今、先生が指摘されますように、合格者を出した大学数というのは十七校ふえた、四十一から五十八校にふえた。ところが、内定をもらった受験者がおる大学は二十五校で、昨年と同じだということでございます。全然内定者が出ない大学が十六校から三十三校にふえたということでございます。
 したがいまして、多様な人材を広く全国から採用していくんだという目的は達成されていないということにならざるを得ないというふうに思います。したがいまして、この結果というものを私たちは重く受けとめて、来年に臨みたいというふうに考えています。
片山国務大臣 これは委員、両方の考え方があるんですよ。私も県で、地方に在職した場合に、いろいろな考え方がありまして、一次内定をふやしたこともあるんです、幅広く採るという意味で。私は、地方大学なんかもっと採ったらいいと思うんです。私立も、今、特定の私立だけですよね、正直言いまして。もっと広げたらいいと思うんですね。
 そのためには、やはり二・五倍というのも一つの考え方だなと思いますけれども、もう少しやってみて、試行錯誤して、どっちがいいかみんなで議論すべきではなかろうかと。ただ、今、公務員制度改革本部等でいろいろ議論しているのは、もうちょっと選択の余地を広げたらどうか、二・五倍より四倍ですか、そういう議論もあることは聞いておりますが、私はもう少し、トライ・アンド・エラーじゃないんだけれども、やってみて、みんなで何がいいかなと選択した方がいいのではなかろうか、こういうふうに思っております。
安住委員 委員長、ちょっと私は桑原委員の時間を食いますけれども、一時間で党としてやります。
 大臣、私もそこでやめようと思ったんですけれども、今の話を聞いてちょっとやめられなくなったので一言だけ言うと、では総務省は、大臣、地方大学の学生をいっぱい採ったかというと、採っていないですよ。あなた、口で言ったってだめなんだって。行動しなさいって。だから、採るべきだって。あなたが採れと言えば、今回だって総務省は地方の大学からいっぱい採れたじゃない。何が地方分権とか地方を大事にする役所ですか。東大ばかり採っているんじゃないですか。どうなんですか、あなた、反省しているんですか。
片山国務大臣 私は、かねがね、幅広くいろいろな優秀な人材を採ってほしい、それから女性の採用をふやせ、こう言っていますが、細かい採用を一々私まで相談に来ないんですよ。後で大体こうしましたからということで御報告を受けるので、見ましたら、私はもう少し女性を採った方がいいんじゃないかと思うし、大学ももう少し幅広く採った方がいいんじゃないかと思っておりますので、来年度以降の採用については委員の御意向も体してやりたいと。ただ、東大は六割におさめていますから。全体の六割、東大は六割にしております。
安住委員 来年の採用まで大臣をやっていればそういう話にもなるかもしれませんが、ぜひそういう話にしてください。
 ところで、地方分権の問題で、大臣、随分財務省と激しくやり合ったと聞きますが、しかし、結果を見ると、大変失礼な言い方だけれども、今や総務省というのは地方自治体を守るんじゃなくて財務省のしもべ、くびき、子分、何かそういう話になるんじゃないですか、これは。
 義務教育費五千億円、結局、今のままで終わるんだったら、きのう土屋知事は何か官邸に行ったようですけれども、これは確かに自治体の言うことは全くそのとおりで、ただ単に国の財政再建のしりぬぐいを地方はさせられたという話ですけれども、小泉内閣というのはやはりそういう内閣で、そこの総務大臣は片山さんだということになっていますから、片山さんも結局は財務省の片棒を担いでいるんですか。いかがですか。
片山国務大臣 いや、それはもう全く事実と違うんです。この五千億の話は、来年度の概算要求に絡んで、文部省の方の義務教育の国庫負担金というのは御承知のように今三兆五百億あるんですよね、それについて少し見直したらどうかという指摘を経済財政諮問会議でしましたら、文部科学省の方が、それじゃ五千億、義務教育の国庫負担を削りましょうと。ただ、その五千億は義務教育の先生方の共済組合の長期の負担金と退職手当です、こう言うから、それはだめだというのが我々の考え方なんです。
 そういうことを地方分権改革推進会議で議論しておりましたので、そこのところはわかってくれ、こう言ったら、地方分権改革推進会議も、将来は一般財源化だけれども、とりあえずは文部省の考え方をベースにしたらどうか、こうおっしゃるものだから、私は経済財政諮問会議で、地方分権改革推進会議の議長の西室さんや議長代理の水口さんに大分厳しくそれは指摘したんですよ。その際、財務大臣が、それを擁護でもないんだけれどもやや同調するようなことを言われるから、それは全くだめだ、この五千億は、これは単なる負担転嫁、つけ回しになる、絶対認められない、こういうことを厳しく言いまして、それが一部報道されているわけであります。
 私は、国庫補助負担金を整理縮小して、税源移譲をしていく、地方交付税を見直していく、三位一体の改革をやるということを主張して、それが今の政府の方針になっているんですよ。地方分権改革推進会議、骨太方針の中にもそれが書かれているわけですね。その突破口が国庫補助負担金の見直しなんですから、それをあいまいなことじゃだめだということを分権改革会議に言っているので、財務省は基本的には税源移譲を国の財政が極めて厳しいから勘弁してくれという立場ですから、そこのところは我々と違うんですけれども、私は、本当に地方の自立性を高めるためには税源移譲というのをやらにゃいかぬと。そのためには、国庫補助負担金を見直す、整理縮小する、地方交付税も場合によっては見直すと。
 財政力のあるところは税でやれるような仕組みにせにゃいかぬのですよ。財政力のないところは交付税でやるんですよ。今、東京都以外で全都道府県が交付団体であり、全国の三千二百幾らの市町村のうちの百弱が不交付団体であるようなのは、仕事に合った税源を与えられていないからですよ。だから、六、四を五、五にしろと私は言っているんです。
 そのために五兆五千億の税源移譲を主張しておるわけでありまして、それは、財務省がどう言おうが何会議がどう言おうが、私は断固として主張してまいります。
安住委員 それは、総務大臣の言うことはもっともなんだけれども、小泉内閣ではあなたの意見は反映されていないような気がするんですよ。だからこうなるんでしょう。だって、それは総務大臣、十一人中五人の委員が抗議をするといいますか、多分、事実上この答申は受け入れられないということで反対しているわけですよ。それは全く、私なんかが見ても、これはもう地方のしわ寄せ以外の何物でもないですよ。しかし、とりあえず一里塚だからやらせてくれと。
 ということは、つまり、将来に向かって地方分権をどういうふうに具体的にするかという話をするのではなくて、来年の財政再建のところで、取れるものから要するに取っていこう、再建するものからやっていこう、そういう話で、では義務教育費五千億という話になったとしか考えられないんですよ。考えられないの。
 総理はそれに対していい案だ、一里塚だ、いこうじゃないかというだけの話だから、そうしたら、あなたは閣議なりでちゃんと言わなければいかぬのじゃないですか、地方自治体を大体どうするつもりなんだと。ちゃんと総理の話を聞いて、自分と考えが合わなくて、今言ったことと違うことを考えているんだったら、やめればいいんですよ、もう長くやったんだから。それぐらいの覚悟でやらなかったら、あなた、今から地方自治体に対して、町村合併しろだ、議員の数は減らせ、合併しなかったらあめとむちだとさんざん総務省は言っておいて、いざこういう話になったら地方自治体のことを守らないというんだったら、だれが言うことを聞きますか。どうですか、大臣。
片山国務大臣 いや、委員、必ずしもそういう認識は正しくないと思いますよ。
 というのは、分権改革推進会議が今そういうことで報告を出しただけなんですよ。政府の方針じゃないんです、今の案は。そこで、私は、この間の経済財政諮問会議では、内閣で責任を持って改革案をつくりましょう、内閣府と総務省と財務省で案をつくろう、こういうことにして、それじゃそれで行こう、こういうことになっております。
 それから、小泉総理は、私がかなり分権改革会議や財務大臣とやり合ったときに、後のまとめで、三位一体の改革を進める方向でやってほしい、地方の自立性を強化する方向で考えてくれ、こういうことを総理から言ってもらいました。それは全く我々と同じ考え方ですから。これからなんですよ。今の案は、文部科学省が五千億の案を出して、五千億だけではないですよ、ほかにもいっぱいあるんですよ、ただ、この五千億が今象徴的に取り上げられているんです。
 それから、分権改革会議は権限移譲や事務配分ではかなりいい答申を出しております。問題は、国庫補助金のところがちょっとあいまいで突っ込み不足で、税源移譲を言っているんだけれども、もっとはっきり言え、こういうのを私は注文をつけているので、これからなんですよ。
 それで、とりあえず来年度の予算編成で補助金の整理合理化の道筋をつけて、まず緒につけた後、本格的な案は来年の夏ぐらいまでにつくる、こういうことでございますので、今後とも大いに地方の意向を受けて頑張ってまいりたいと思います。
安住委員 私も、中央集権を終わらせるといいますか、まず最終的な終着駅はどこかということをちゃんとターゲットを示してこういう話はやってもらいたいんですよ。そうでないと、やはり金の話は、そうでなくたってもう赤字団体に転落するかどうかぎりぎりのところでそれぞれの県は生きているんですから、これを持ってこられて、結局、これだって交付税で対応して何かしないといけないんでしょう。
 つまり、つじつま合わせではなくて、またつまみ食いをやってもだめ、やはりまずターゲットを決める。大体こういうことこそまさに総務省がやるべき話であって、そんな、学者の皆さんや経済界の皆さんも立派だけれども、そういう人間に丸投げするようなやり方は私はどうかなと思っているんですよ。小泉さん、政府の責任でやればいいんですよ、これは一番大事な話なんですから。総務省が責任を持って案を出すことの方が大事だと思いますよ。何とか会議なんかに頼らず、私はきちっとやってもらいたいということを要望して、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
遠藤委員長 配分時間を御配慮の上、次に、桑原豊君。
桑原委員 短時間で盛りだくさんの質問になろうかと思いますので、ぜひ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
 まず、安住委員からもお話がございましたけれども、今回の公務員給与の引き下げというのは極めて遺憾だ。公務員の生活が大変厳しい、そういうことで、民間が大変な厳しさの中でそれに準拠しなきゃいかぬということですから、それは結果としてはやむを得ないというふうには考えるわけですけれども、ただ、不況であるとかデフレであるとかということの大きな責任はやはり政府の政策にあるわけです。そういう意味では、使用者側としての政府は一般の公務員に対してちゃんとそのことを責任を持って説明をして、これは、下げる前にやはり一言申しわけないという言葉があってしかるべきではないかというふうに思うんですが、大臣、どうですか。
片山国務大臣 どういう勧告が出るかは私も承知していなかったものですから、勧告が八月八日ですか、出た後、組合の代表の方にお会いして、今の民間の状況はこういうことでこういう勧告が出たので、これについては皆さんの意向も体しながら政府の中でしっかり検討します、こういうことを申し上げまして、それからもう一回会わせていただいていろいろと意見交換いたしました。九月の終わりに完全実施、人勧尊重、こういうことを決めたわけでございまして、我々としてはその間、先ほども言いましたが、人事局長が九回ぐらい組合の方とお会いしていろいろ話し合いをしておりますし、我々としては組合の方々の御納得をいただくような十分な説明をした、こう思っております。
 それから、デフレが続いておることにつきましては、政府の責任じゃないかというあれもあるんですが、これは今、世界同時不況、同時デフレですね。いろいろなことがありますけれども、一つは、やはり景気がこういう状況だから需要がなかなか出てこない。それから、供給の方では、開発途上国等の安い輸入品が増大したり、ちょうどITの大きな技術革新の途中ですから、そういう意味では供給面でのいろいろな構造的な問題もある。それから、金融システムが御承知のようにこういうことでございまして、金融仲介機能が弱っている。
 そういう複合的な要因でデフレが続いているので、このデフレを食いとめるために十月末に御承知のように総合的なデフレ対応の対策を決めましたので、これを着実に実施することによってデフレをとめ、あるいは不良債権の処理を加速して、同時に問題が起こればセーフティーネットを整備していく、こういうことを決めたわけでございまして、今後とも政府は全力を挙げてデフレ不況には取り組んでまいりたい、こう思いますが、公務員給与の方はこういう仕組みでございますので、その仕組みの中でこういうことになったわけであります。
桑原委員 言いわけと釈明、責任転嫁、そういう感じがして、まあ勧告は、人事院は機械的にある意味ではやって、それを受けて実行するのは政府なんですから、私は、やはりその責任というのを深く自覚していただきたいと思いますし、ぜひ、これからこんなことのないように万般やっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 さて、本題の中身でありますけれども、この改正によって施行日を十二月一日というふうに想定しながら、四月にさかのぼって減額する、この金額は一人ずつ計算をして、すべて、その全額を十二月の期末手当から減額する、こういうことでございますけれども、私は、この措置というのは、いわゆる最高裁の判例、判決などに原則化されている不利益不遡及、これに抵触をするんではないかと思いますが、大臣、どうですか。
    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕
片山国務大臣 これは、人事院勧告の中身でこういう措置をやってほしい、こういうことでございますが、御承知のように年間給与で民間準拠なんですね、年間給与で。したがいまして、既に払ったものを取り上げるということじゃなくて、これから払うものについて減額調整をする、年間給与として合わせる、こういうことでございまして、これは私は、不利益不遡及の原則にも当てはまらないし、法律上は十分説明はできることだ、こういうふうに思っておりますし、内閣法制局も同じような見解だと聞いております。
桑原委員 やり方は、改正後の手当から調整するということですけれども、現実に調整をする額というのは、先ほども言いましたように、一人ずつ計算をして、四月にさかのぼった額と全く同じものを引き去るということなんですね。これは一つ確認しておきたいと思います。
片山国務大臣 そのとおりでございまして、今度の新しい給与表といいますか、今回の給与改定によって額が減る四月から十一月のものについては、十二月の期末手当で調整する、こういうことで、今言いましたように、年間の給与で民間と合わせる、こういうことでございますから、これから払うものについてそれを減額することは、不利益不遡及の原則には当てはまらない、こう考えております。
桑原委員 私は、全くそのやり方というのは、年間の給与だというそのバランスの考え方とはまた別に、既に支給されたいわゆる賃金債権を侵害するということになるわけですから、実質的には遡及適用と同じ効果を持ってくる。民間バランスの問題というのはまた別なんです。
 やはり、不遡及というものを、させないというような形式を取り繕うために原理原則をねじ曲げているんではないか、こういうふうに思うんですけれども、どうですか。
片山国務大臣 いや、私はそうは思いませんね。
 それは、四月から十一月を、払ったものを返せというんじゃないんですよ。しかし、四月から十一月の、新しい給与表でいくとそれは本来減額されなきゃいかぬものについて年間給与で調整しますから、これから払うものについて差っ引くということが、さかのぼって不利益を与えるということじゃない。
 払ったものを返せというのは、これは議論がありますよ、払ったものはそのとおりなんですから。しかし、年間給与の調整でこれから払うものについて調整します、これは十分私は法律的にも成り立ち得る議論だと思いますし、この点については、今言いましたように、人事院もそういうことができるという勧告を出される、内閣法制局も法律上はそういう解釈だ、こう言われるわけですから、私どもの方はそうだ、こういうふうに思っております。
桑原委員 払ったものを返せというふうに言っていることは間違いないんです。そして、その返せというやり方を、これから先の調整でそれをやるというだけの話であって、払ったものを返せと言っているわけですよ、現実は。そういう意味で、私は、大変不利益不遡及の考え方に抵触し、もとるものではないかということを改めて申し上げておきたいと思うんです。
 そこで、こういう問題が生じるのは、いわゆる公務員賃金決定の制度のあり方からやはりこういう問題が出てきているわけですね。このことについて少しお伺いをしたいと思うんです。
 民間の場合ですと、御存じのように、交渉が妥結をして労働規約が改定をされれば、その段階から上げる、下げるという話になるわけですから、こんな問題は全く起きないわけですね。しかし、公務員の場合にはそうじゃなくて、八カ月とか一年後に民間に準拠して賃金が調査をされて決定をされますから、結局、下げるということになればこういう話になってくるわけです。やはり制度の問題であるということを、後でこれはまた議論いたしますけれども、一つ前提にして考えなければならないと思うんです。
 そこで、私は、こういう制度の中であっても、例えば同じような立場にある国営企業の場合、これも今回、大変厳しいということで、全体的には一・九%のマイナスの裁定が出たわけですね、十月の末に。しかし、国営企業のこの裁定の実施については、さかのぼってそれを返せという話ではなしに、要するに、労使が話し合いをして、そしてこれからどういうやり方をするか協議をする、そういうやり方で、今後の問題として労使が話し合いをして協議をすると。そして、月例給の給与額も変えないということで話し合いが行われているというふうに私は聞いておるわけです。
 考えようによっては、こういうやり方だってできたわけですよ。選択の余地があったわけです。なぜこういうやり方をしなかったのか。こういうやり方をすれば、労使の話し合いをしてやるということですから、労の側も納得をしますし、そしてまた不遡及の問題もこんな形では私は出てこなかったというふうに思うんですよ。
 その点、こういう選択の余地がなかったのか、まず人事院総裁の方にお聞きしたいと思います。
中島政府特別補佐人 現業職員がどういうふうに交渉してどういう結論になるかということは承知しておりませんが、私たちといたしましては、毎年四月現在の官民の月例給与額を比較する、そしてその差を勧告する、またボーナスについては過去一年のボーナスを比較して月数を合わせるということをやっております。そして、ことしの場合にはどちらもマイナスになったということでございます。
 そのマイナスの調整の方法をどうするかということについては、先ほど総務大臣がお答えになったと同じ考え方でおります。
桑原委員 その話の仕方では、賃金を下げるに当たっても、労というものの存在が全然頭の中にないじゃないですか。これは、こういうふうにやれるんだから、我々が勝手にやれるんだ、そういうことを言ったにすぎないじゃないですか。私は、非常に問題があるというふうに指摘せざるを得ません。
 それでは、次にお聞きしますが、月例給と一時金の官民比較方式は違うわけですね。今回の措置は、月例給の官民比較で減額される部分を期末手当という一時金で調整をする、こういうやり方をとったわけですね。やはり、比較方式が違うものをそういう形でやれないと私は思うんです。このやり方というのはルール違反ではないかというふうに思います。
 また、現に、この一時金の比較は、年間の民間の臨時給と比較をして月数を出してくるわけですね。結果として、今回十二月のボーナスからそういう形で減額をいたしますと、一時金の結果は民間との関係では四・六五となっているわけですけれども、結局、その減額調整をした結果は一人当たり〇・三カ月程度民間より低くなってしまう。結局、一時金の比較方式というのが、そういう意味ではちゃんと守られていない、そういう結果になるわけですけれども、この点についてはどう説明されるんですか。これは総務省と人事院、どちらからもお答えいただきたいと思います。
中島政府特別補佐人 月例給与については先ほど申し上げたとおりでございます。
 調整をボーナスから、期末手当から行うということについて若干疑義をお持ちのようでございますけれども、年間の支給月数を四・六五にするという月数を合わせた、その合わせた後で減額調整をするということでございますので、ボーナスの支給月数についてバランスが崩れているということはないというふうに認識しております。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 月例給と特別給に関しまして人事院が行っております民間給与の調査方法でございますが、それぞれ官民給与比較の基礎資料を得る上で、人事院が最も適当であるというふうに考えたものであると認識しております。
 今回の給与改定でございますが、月例給と特別給につきまして、それぞれ民間調査を踏まえまして改定を行った上で、法律を遡及適用することなく官民の年間給与を均衡させる観点から、十二月期の期末手当の額を調整することとしているものでございまして、このことは月例給と特別給の調査方法の違いを何ら否定するものではないというふうに理解しているところでございます。
桑原委員 四・六五に決めた後で、そこから調整するんだから問題はないと。私は、これは詭弁じゃないかと思います。そんなふうにこれからされるとしたら大きな問題だと思いますよ。どうしてそういう理屈になるんですか。決めたんだから後で調整してもいいんだ、そういう理屈になるんですか。それはちょっと納得できませんね。もう一回。
中島政府特別補佐人 四・六五月にするということは、今回の勧告ではっきりしているわけでございます。
 したがいまして、減額調整するときにどういう減額調整の仕方をするかというのは、いろいろ手法があるだろうと思います。私たちは、期末手当の性格とかあるいは事務処理手続というものを考えると、期末手当から減額調整するのが一番いいということでございますので、四・六五月というものが崩れておるということはないというふうに認識しております。
    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
桑原委員 減額調整の仕方も、やはり私は、ちゃんと比較方式にのっとったルールを踏まえてやらなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。
 そういう意味でも、いろいろなやり方、方法があるわけです。それを労使が協議をして決めていくくらいの、信頼関係というか、そういうものがなかったら、私は、労使関係の安定などというのはとても実現できないと思いますし、とりわけ、労使一体になって日本の行政を進めていかなきゃいかぬわけですから、そういう意味では、ある意味では民間以上に呼吸を合わせていかなきゃならぬところが多いと思うんですよ。特にこの厳しい時代です。私は、そういったことについて労側の意見を聞き、知恵を出してもらっていろいろ議論をしていく、そういうものを、これは大臣の方にもお願いしておきたいと思うんですけれども、ぜひつくっていただきたいということを申し上げたいと思います。
 それと、もう一つぜひ確認をしておきたいのは、公務員の賃金決定は、単に公務員にとどまらず、公務員に倣っていろいろなことを決めている、そういう民間の企業がたくさんあるわけです。私は、全部合わせれば本当に数千万に及ぶような大きな影響を持った決定だというふうに思うんですね。
 そういう意味では、今回のこのような調整のあり方を含めて、異例のやり方だと私は思うので、これは結果的に、公務員の賃金決定の制度というものから敷衍して出てきた問題だ、そういうふうに言わざるを得ないわけで、これは公務員特有のあり方なんだということをぜひ確認していただきたいと思うんです。民間がこんなことに倣ったり、あるいはこの問題以外の、例えば年金の物価スライドなんかの問題にまで波及したり、そんなことがあっては絶対にいかぬわけで、そこら辺は、大臣、そういったことはこの特有の問題なんだというふうにぜひ確認していただきたいと思います。
片山国務大臣 先ほどから、例の国営企業職員といいますか現業職員の話が出ましたが、現業職員は、委員御承知のように団体交渉権があるんですよ。普通の公務員は団結権しかないものですから、そこのところは恐らく仲裁裁定で差があったんではなかろうかと基本的には私は思います。しかし、団体交渉権がないからといって、職員団体と我々の方がコミュニケーションをなおざりにしていいということじゃありません。やはりお互い十分な意見交換をし、できるだけわかってもらう努力は今後ともしていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
 それから、何度も申し上げますが、公務員の給与決定方式は、労働基本権制約の代償措置で、中立な第三者機関の人事院なり人事委員会がそれぞれ勧告をして、それを法律なり、地方の場合は条例で議会のあれを得て決めていく、こういうことでございますから、民間の賃金決定、給与決定方式とは完全に違うわけですね。公務員の雇い主は国民なんですから、簡単に言いますと。そこが民間企業とは違いますので、これはこれで公務員特有のものだ、私も委員と同じ認識を持っております。
桑原委員 それでは、そういうことで、特有の問題だということを確認していただいたと思います。
 それで、私は、右肩上がりで多少なりともベースアップがあるときは、たとえ一年おくれようとも上がったんだ、そういうことでこの制度の一つの存在意義というのはあると思うんですけれども、今のような厳しい不況、デフレ、そういう状況が続いていったときに、今回のような事態がこれから先あり得ないとは言えないわけですね。
 そういうふうに考えていきますと、私は、もうこの制度の限界に来ているんではないか、こういうふうに見ておるんですよ。賃金決定制度のあり方、これは大いに考え直さなきゃいかぬ時期に来ているんではないか。特に、やはり一番問題にしたいのは、この決定過程に、それは百回もいろいろな話をしたとはいえ、お互いに気持ちで話し合っているだけなんです。制度として、労が一定の関与をするというような仕組みは何にもないわけです。話し合いは嫌だと言ったら、それで話し合いできないんです。そんな話し合いなんです。
 そういう仕組みの中で、特に今回は下げるという話の中で、労働側は、ある意味では従来以上にいろいろな交渉をしたかった、いろいろな話が聞きたかった、いろいろな言い分が言いたかったわけですけれども、残念ながら、そういったことを言うチャンスも少なかったし、そしてほとんどが決まってしまった後で、もう動かしがたい段階で話し合いをするというようなケースが多かったわけです。
 そういう意味では、私は、この労使の関係、労働側がちゃんと賃金決定に関与できる、そういう仕組みをぜひこの機会に見直してつくっていただきたい、これはもう単刀直入に大臣にお伺いしたいと思うのですけれども、どうでしょう。
片山国務大臣 今までの人事院勧告はほとんど上がりっ放しですよね。したがって、上がったときも完全実施しましたが、こういう状況で下がったときもやはり民間準拠、官民均衡ですから、上がるときだけいいところをとって、下がるときは一切知らないよというのじゃ、これは国民の納得をなかなか得られませんので、今の制度では上がったり下がったりというのはやむを得ない、こういう御理解を賜りたいと思います。
 そこで、今の人事院制度、人事委員会制度とは別の給与決定の仕組みを考えたらどうか、これは公務員をどう考えるかという大議論になるんですよね。公務員は全体の奉仕者で、御承知のように、公務の公共性、身分の特殊性ということから、本当は労働基本権を全部与えなきゃいかぬものを普通の公務員は団結権だけにしているんですね。団体交渉権も争議権も認めていない。こういうことなんで、団体交渉権を認める、争議権を認めるということになると、公務員の法的性格をどうするのか、こういう大議論でございまして、これは最終的には国民の御納得がなきゃいかぬし、国会でもそれでいいということにならなきゃいけませんので、これは大変大きな議論で、昔からずっとやっている議論ですよね。
 私は、今の公務員あるいは公務のいろいろな性格を考えれば、現在の労働基本権は制約する、しかしそのかわりきちっとした代償措置をとる、こういう仕組みがベターではないかと考えております。
桑原委員 私は、大臣の言葉の語感からいろいろ感じるのは、制約はされているけれども、やはり労使の話し合い、そういうものを何とかきちっとしていかなきゃいかぬのじゃないか、そんなものは感じるわけですけれども、そういう意味で、特に賃金決定、労働条件の決定、ここに労がやはりきちっと関与するという仕組みをぜひこの機会に前向きに検討していただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、本来なら、もうこの話は私も若いときから何十年間、公務員の労働基本権の問題についてはやっているんですが、むしろ現実はだんだんおかしくなってきているんですよ、昔よりは。
 そういう意味で、特に私は、今回出された行革推進事務局の新たな人事制度の考え方について、討論のたたき台になっている、今度の公務員制度改革の中で公務員の人事制度をどう位置づけていくかというたたき台を見せていただいたんですけれども、むしろ逆行しているというふうに言わざるを得ないような中身になっておると思うのです。
 使用者側としての内閣と各省庁の当事者能力が著しく強化をされている。例えば、昇格や能力評価の基準などの決定は内閣がやる。そして、各大臣を人事管理権者ということで明確に位置づけをして、職員の昇格や能力評価などを実行する者にしている。そして一方、人事院は、代償措置である人事院の機能は、給与勧告や給与水準の決定や人事行政の事後チェック、そういうことなどに、ある意味では従来より狭められて、限定されてきているんですよね。
 そして、一番問題なのは、肝心の一般公務員の労働基本権は制約をされた今までのままなんですよ。使用者側の力はさらに大きくなる、人事院は後退する、労働側の制約はそのままだということになったら、これはどうなるんですか。私は、今まで指摘されてきた問題点がさらに拡大をするだけだ、労使関係の不平等あるいは不合理がさらに広がるだけだ、まさに歴史の歯車を逆回転させるような話がたたき台として出ているんじゃないかというふうに思うんですよ。
 ある新聞なんかも、これはキャリアと政党の一部の人たちだけで決めた話だ、今までいろいろ議論をされてきた公務員の労使関係について、ちゃんとした公正なことをやろう、そういうものが全く見えないというふうに、社説にまで書いてありました。私は、まさにこのたたき台をたたき直す必要があるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、これは本当は大臣にも聞きたいところですが、まず行革推進会議の方で意見を言ってください。
遠藤委員長 簡明に。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の末に閣議決定をされました公務員制度改革大綱におきまして、公務の安定的、継続的な運営の確保の観点あるいは国民生活に与える影響の観点、こういったものを総合的に勘案して、公務員の労働基本権の制約につきましては、今後ともこれにかわる相応の措置を確保しながら、現行の制約を維持するということとさせていただいたところでございます。
 御指摘の、「新たな人事制度の設計の考え方について」でございますが、これは、労働基本権制約のもとにおきまして人事制度の具体的な仕組みを考えるために、職員団体、関係省庁等と広く議論を行うためのまさにたたき台ということで提示させていただいたものでございます。
 この中で、公務員の労働基本権制約についての代償機能、これにつきましては今後とも確保するということとしておりまして、まさに議論のためのたたき台でございますので、検討に当たりまして職員団体、関係省庁と幅広く意見交換を続けていく所存でございます。
桑原委員 時間が参りましたので終わりますが、大臣、どうでしょう、このたたき台について、一言何かあったら言ってください。
片山国務大臣 たたき台ですから、たたかれやすい方がいいでしょう。十分たたき台として検討します。
桑原委員 どうもありがとうございました。
遠藤委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 まず、給与法改正の質疑の前に、公務員制度改革に関連して幾つか質問していきたいと思っております。
 私は、去る九月六日の閉会中審査におきまして、公務員の採用試験における内々定の問題について質問いたしました。先ほどの安住委員からもお話がありましたけれども、今年度実施された1種試験の実施結果に関連しまして伺いたいと思います。
 今年度は、多様な人材を確保するとして、昨年度に比べ合格者数を拡大して実施いたしましたけれども、最終的に内定者を出した大学は二十五校で昨年度と同数、上位五校の顔ぶれが変わらないのに対しまして、合格しても内定につながらなかった大学が十六校から三十三校に逆にふえたとのことであります。これは、安住委員もお話ししましたとおり、合格者をふやしてもすそ野の拡大にはつながっていないということであります。そして、その背景には、合格前に採用者を決定してしまう内々定の慣行によりまして、結局、従来の有力校が有利になってしまうという結果だと思うわけであります。
 そこで、こういった点につきまして、人事院は地方の大学の関係者などから意見を聞いている、こう聞いておりますけれども、合格者の四倍化の問題やあるいはまた内々定の問題について、地方大学関係者などからどういうふうな意見が出されているのか、人事院の把握している範囲で結構でありますので、その内容をお示しいただきたいと思っております。
 それから、内閣官房の行政改革推進事務局は、これらの点に関する地方大学関係者などの意見につきましてどのような認識を持っているか、これまた簡潔にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
中島政府特別補佐人 一つは内々定の問題でございますけれども、これにつきましては、地方大学の関係者のみならず、中央に勤務しておられる大学関係者も、その過程が不明瞭だ、公正性に欠けるという指摘をしておられます。そういう外部の指摘をまつまでもなく、私は、公の機関が行う試験についてそういう指摘があるならば、これはもう関係者の意見をまつまでもなく、ぜひとも直さなきゃならない指摘だというふうに受けとめております。
 もう一つは、四倍の話もなさいましたけれども、四倍の前に、現在の二・五倍についてどういう結果が出ているかということを先ほど安住議員にも御説明申し上げましたけれども、安住議員に御説明申し上げた以外に、ことしは行政、法律、経済の分野でおおむね七百人の合格者を出しました。そのうち二百九十人が採用される予定でございます。四百十人が採用されないということでございます。
 それで、四百十人が採用されないんですけれども、そのうち百二十人の方が地方公共団体に就職するとか、あるいはまた国会職員になるとか、特殊法人の職員になるとかいうことで、何とか就職先を探したようでございます。残る二百九十人ばかりは、現在就職浪人をしておる、あるいはまた大学に留年するとか大学院に進むというようなことを考えておるようでございます。したがいまして、現在の二・五倍でも非常に問題が多いというふうに認識せざるを得ないと思います。
 この問題をどのように解決していくかということがこれからの問題でございますが、先ほど総務大臣がおっしゃいましたように、総務省は来年は地方大学の出身者を大いに採用していただけるということでございますので、そういう御努力を期待したいというふうに思います。
 したがいまして、関係省庁がそういうような動きをされるということで、私たちは期待いたしますけれども、それならばもう一度二・五倍を続けてみようかなという感じがいたしますけれども、四倍というようなことを考えるような状況でないということを申し上げておきたいと思います。
春田政府参考人 お答えいたします。
 私ども内閣官房の行政改革推進事務局でございますが、地方大学の関係者が最終合格者を四倍にするということにつきましての不安を持っておられる、あるいは現在の内々定の仕組みというのが不透明である、こういった指摘については、いろいろと御指摘があるということを承知しております。
 私どもも、この問題を考えていくに当たりましては関係者の声をやはり十分お聞きする必要があるだろうということで、ことしの十月に、全国、ブロックごとに職員を派遣いたしまして、ことしのいわゆる採用試験におきまして合格者を出した地方大学の九割近く、二十二大学のいわゆる就職の担当部局の部課長さん、あるいは就職担当の教授の方にお集まりをいただきまして、相当時間をとっていただきまして、私どもが公務員制度改革で取り組もうとしている、内容的に複雑多様化する行政課題に対応して広く多様な人材ソースから公務部門に有為の人材を誘致していきたいということで、その趣旨を御説明し、また関係者の疑問とか意見ということを十分伺ってきたところでございます。
 その結果でございますけれども、確かに、四倍になることの不安であるとか、あるいは内々定のプロセスについてはいろいろな御指摘があったり、あるいは首都圏大学と情報の格差があるというような声もございました。その一方で、現在進められている採用試験制度の改革、この内容を正確に理解していただいている関係者も決して多くない状況でございまして、私どもが説明を申し上げ、質疑も十分に行った上ででございますけれども、やはりこういう改革については期待を表明する声が多かったというところでございます。
 それから、最終合格者、四倍までということについては、やはり今まで以上に学生にチャンスが広がる、特に人物評価を重視した採用面接というものが実施されるということの中で、チャンスが広がるということで賛意を示す大学がほとんどだったということでございます。
 ただ、日程の問題等については非常に不満が強くございました。こういう問題については、日程の早期化、短縮化というようなことは共通でございましたので、私ども、できるだけこういう意見も受けとめなきゃいかぬと思っております。
 そういうことで、こういう声もお聞きしながら進めていかなきゃならないと思っておりますが、特に地方の関係者からは、私どもともよく、情報提供とか、そういうものが欲しいということで、ある程度自由にそれぞれ大学の方が情報に接せられるような連絡会を設けるというようなことを考えてございます。
 それから、ことしの試験のことで先ほどちょっとお話がありましたが、私ども内閣で各省の採用担当等にもいろいろとアンケートをかけましたところでは、やはり今回、最終合格者が二・五倍というようなことで、その手前の一次合格者、私ども、内々定ということで大体採用者の四・五倍程度の方と面接をしたわけでございますが、多様な人材確保につながったというような意見もいただいておるところでございます。
黄川田委員 ただいま、それぞれお話を伺いましたけれども、基本的な部分で人事院、そして内閣官房の認識の違いがあると私は耳にしております。そこで、今後、合格者を採用予定者の何倍にするとか、あるいは内々定を廃止して採用面接の透明化を図るなど、こういうことを検討する上で、やはり大学の関係者、受験者からの声が最も大事だと思っております。
 そこで、内閣官房からはいろいろ細かく説明していただきましたけれども、改めて整理して、追って文書で手元にいただきたいと思います。それぞれ人事院、内閣官房にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
中島政府特別補佐人 どの大学のだれから話を聞いた、どういう意見であったということを、整理してお出ししたいと思います。
春田政府参考人 私どもも、それぞれどういう方からお話を伺ったかということを、少し詳細なもので御報告申し上げたいと思います。
黄川田委員 それでは次に、公務員の人事管理の政治からの中立という問題について質問していきたいと思います。
 一般に、政治の側から公務員の人事に圧力をかけたり、採用するよう働きかけるということが実態としてあっただろうし、またその可能性は常に否定できないわけであります。ところが、今回の公務員制度改革においては、採用試験制度の企画立案を人事院から内閣に移すことを検討中とのことであります。この点について、私は非常に危険であると思っておるわけであります。
 そこで、採用試験を初め政治の介入を許すべきではない分野については、やはり、中立機関、独立機関である人事院が企画し、運営する必要があると思っておりますけれども、人事院総裁の見解を求めておきたいと思います。
中島政府特別補佐人 これにつきましては非常に深い議論がございまして、現在なぜ採用試験の企画立案権が人事院にあるかということなんです。
 現在の国家公務員が生まれたときに、どうしてそういうふうになったかということなんですが、やはり戦前の公務員の性格にも関係いたしますけれども、公務員が政治的に中立でなかった。特定の政党と結びついて、その政党が政権にある間には非常にいいポストを占める、ところが政権がかわると全部入れかわるというようなこともございましたし、政党の力がなくなった場合には、今度は公務員は軍部と手を結ぶ、また財界と手を結ぶというようなことが行われて、公務員が政治的中立性を失って、日本の国政を運営するに当たって、若干といいますか、大いにまずい事象が生じたという経験がございます。そういう経験を踏まえまして、戦後、公務員というのは憲法上全体の奉仕者だ、政治的に中立でなければならないというふうに位置づけられたわけでございます。
 この政治的に中立でなければならないという位置づけ、それに基づきまして、現在、公務員の採用に当たりまして、あるいはまた研修に当たりまして、それは政治勢力から中立の人事院に担当させるということが現在の制度でございます。この制度を変えなければならない理由が一体どこにあるんだろうかということをやはり考えてみる必要があるだろうというふうに思います。現在までの公務員制度の運用の過程において、また現在の姿において、そういう理由を見つけ出すのは難しいんじゃないかというふうに思います。
 ただ、私は、翻って考えてみますに、公務員の採用試験というものについて内閣が一切発言してはいけないということではないだろうというふうに思います。かつて、1種の採用職員というのが非常に多いので天下り職員が多くなるというので、1種の職員の採用を五年間かけて三割減らしたとか、あるいはまた先ほど総務大臣から御答弁がございましたように、やはり東大生の占める割合が多くなり過ぎると日本の学歴社会というものを是正することができないというような趣旨から、東大卒業生を一定割合以下に抑えるとか、そういうことが、内閣の方からお話がございまして実現されております。
 したがいまして、やはり、中立性といいますか中立公正性に係る分野というのは人事院の方にお任せいただく、それ以外の分野について内閣の方でいろいろ発言なさるというのが一番実情に合った方法じゃないかというふうに考えております。
黄川田委員 人事院の権限を縮小しまして、そして公務員の採用から研修、また再就職、いわゆる天下りのルールに至るまで、各省庁任せで人事院の関与を廃止するということであれば、到底本来の構造改革という時代の流れに沿ったものではないと私は思っております。人事院の役割の再構築をよろしくお願いいたしたいと思っております。
 それでは次に、今日の公務員制度の大きな課題として、早期退職慣行の是正という問題があります。幹部公務員が五十歳代前半で退職するという慣行があるために天下りが減らないわけでありますし、再就職あっせんということが、役所に自分の人生をゆだねるわけであります。つまり、役所のために働くという気持ちを極端に強め、それがセクショナリズムにつながるわけだし、年次中心の人事がなくならないのも早期退職慣行と密接に関係していると思っております。
 そこで、私は、この早期退職慣行については早急に是正する必要があると考えております。去る七月には小泉総理から早期退職慣行の是正について指示が出されまして、政府は幹部公務員の勧奨退職年齢を引き上げるための計画を作成するなど、検討を開始したということであります。
 そこで、その取り組み状況はどのようになっているのか、大臣にお伺いいたします。そしてまた、この問題を解決するためには、人件費をふやさないように枠をはめながら、いわゆる分掌職を活用していくなどの取り組みが必要であると思いますので、これらの点も含めて、今後の見通しを総務大臣にお伺いいたしたいと思います。
片山国務大臣 今、黄川田委員が言われましたように、総理から早期退職慣行の是正をという指示がありまして、現在、各省庁で早期退職年齢を三歳ぐらい引き上げようということでいろいろな計画をつくってもらっておりまして、私どもの方と内閣官房で各省庁の人事当局から、ヒアリングというんでしょうか、それを行って、いろいろこちらの方の考え方、注文も各省庁に伝えましたりということで今やっております。大体、各省庁違うんですね、少し。早いところは五十ぐらいからもう勧奨退職をやらせるところもありますし、五十三、四歳のところもありますし、いずれにせよ、全体を三歳ぐらい引き上げよう、こういうことをやっております。
 そうなりますと、昇進がおくれるとかいろいろな問題、ポストの問題とかがあります。そこで、今、黄川田委員言われるような、スタッフ職というんでしょうか、分掌職、そういうものを活用したらどうかと。私もそう思うんですよね。今は単線型の人事ですから、複線型にする。ゼネラル職で上がっていく者があってもいいし、スタッフ職で大変専門的に公務に取り組むということがあってもいいし、そういうことも今回の勧奨退職年齢引き上げにあわせて検討すべき問題ではなかろうか、こういうふうに思っておりますが、いずれにせよ、全体としては今言いましたように延ばしていく、こういうことで今政府全体で取り組んでおります。
黄川田委員 小泉内閣は、計画を立てるのは素早いんですが、なかなか実行しないという内閣でありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、ここで本題の給与法に戻りたいと思います。
 本年八月に出された人事院勧告は、昭和二十三年に人事院勧告制度が始まって以来初めて俸給の引き下げを行うなど、国家公務員にとっては大変厳しい内容となっております。そしてまた、地方公務員にあっても、先般すべての人事委員会における勧告が出そろったようでありますけれども、国家公務員と同様、ほとんどが給与の引き下げを求めるものでありまして、非常に厳しい勧告内容となっております。
 今回審議を行っている一般職の給与法改正案は、この人事院勧告を完全実施する内容となっております。国家公務員の給与につきましては、国家公務員法に情勢適応の原則が定められておりまして、従来から民間準拠により決定していること、そしてまた現下の厳しい民間の経済情勢等にかんがみますと、やむを得ないものではないかと私は思っております。
 そこで、まず、この給与法案の内容の質問に入る前に、本年の人事院勧告を受けてから、政府として、人事院勧告どおりに給与改定を行うことを決定し、今回給与法改正案を提出するに至った経緯、経過につきまして、改めて総務大臣にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 言われるように、大変厳しい人事院勧告が出たわけでございますが、八月八日にそれを受け取りまして、同じ日に給与関係閣僚会議を開きまして、取り扱いについての意見交換、議論を始めまして、九月二十七日の第二回目の給与関係閣僚会議においていろいろな事務的な検討を含めまして検討した結果のもと、やはり人事院勧告尊重、完全実施がいいのではなかろうかと、万般の検討の上での結論を出したわけでございます。
 したがいまして、それに基づいて給与法をつくって、現在御審議をお願いしている、こういうことでございますが、いろいろな議論は確かにありますけれども、やはり人事院勧告を尊重するというのが政府のずっと基本的な姿勢でございますので、今回もそういう考え方をとったと御理解を賜りたいと思います。
黄川田委員 それでは、具体に入りたいと思います。
 平成十五年度から、ボーナスにおける勤務成績の反映強化のため、期末手当と勤勉手当の支給割合を変更することとしておりますけれども、現行の勤勉手当の仕組みを変えない限り、余り意味がないのではないかと思うところもあります。
 すなわち、勤勉手当というのであれば本来勤勉な職員だけに支給すべきでありますけれども、実際には、勤勉手当の支給の基準はあるとは思うんですが、どうもあるのかないのか、ほとんどすべての職員に一律に支給されているように思います。もしそうであるならば、期末手当と勤勉手当を分けておく必要もないと考えますが、現行の勤勉手当における成績がどのように反映されているのか、そういう状況を含め、人事院の見解を求めておきたいと思います。
大村政府参考人 勤勉手当につきましては、民間におけるボーナスの成績査定分に合わせて設定しているものでございます。これは一律に支給される期末手当と異なりまして、本人の勤務成績に応じて支給すべき性格の手当でございます。
 先生御指摘のように、各府省における勤勉手当の支給の運用につきましては、従来から一律的な支給になっているという御指摘もございました。したがいまして、制度を所管している人事院といたしまして、ぜひともその制度の趣旨に従った運用をなされるよう努力してきたところでございます。
 平成十三年の運用状況を見ますと、約二割の職員が優秀または特に優秀というような成績率の適用を受けている状況でございます。したがいまして、現在ではほとんどすべての職員に一律に支給されているということではございませんが、ただ、こういう一層の成績主義の推進という面からは、さらにその差をきちっと成績を評価してやっていく必要がございます。
 したがいまして、来年度から勤勉手当につきまして支給割合の増加も図ったわけでございますので、その中でよりめり張りのある運用の推進を図るために指針をさらに出すということで、今後とも、勤勉手当におきましてその職員の勤務成績が的確に反映されるように努力していきたいというふうに考えております。
黄川田委員 処分を受けた者は多分マイナス査定といいますか、それから、職責に応じて加算されるという制度だと思いますけれども、勤務成績といいますか、これはなかなかよく見えないところがありますので、今後いろいろな具体案を提示しながら、十二分にその成績がしっかりと確立されるようによろしくお願いいたしたいと思います。
 では次に、人事院は、地域における公務員給与のあり方について、俸給制度や諸手当の抜本的な見直しを行うことなどを表明しておりまして、私も、去る九月六日の総務委員会の場で、具体的な検討内容や今後のスケジュール等を伺ったところであります。
 私は、この問題は地方に勤務する国家公務員に限らず、その何倍もの職員がおります地方公務員にも影響する重要な話であると考えております。そこで、人事院では、その後、まだ二カ月しかたっておりませんが、研究会を立ち上げて検討を開始したやに聞いておりますので、現時点におきます検討状況及び今後のスケジュール等について、改めてまたお聞きしたいと思います。
大村政府参考人 研究会につきましては、学識経験者や報道関係者の合計十名の委員で構成するということを行っております。それからもう一つ、研究会の運営につきましては、ぜひとも委員主導で進められるように、委員から推薦された研究者を主体に事務局を構成することとしているところでございます。
 研究会の実施状況でございますが、第一回の研究会を九月三十日に開催、それから第二回目は今月の五日に開催しております。現在までのところ、事務局からの現行制度や実態の説明が中心でございますが、今後、来月にかけて集中的に民間企業や各府省からのヒアリングを実施する予定でございます。その後、論点整理等を経まして、来年春ごろを目途に当面の結論をいただけるよう検討をお願いしているところでございます。
黄川田委員 検討によりまして、ぜひともいい案が出ますことを期待したいと思います。
 それでは、時間が時間でありますので、最後であります。最近新聞で大きく報道されました、郵便貯金の課税逃れについて触れたいと思います。
 報道によりますと、全国に二十八カ所ある郵政事業庁の貯金事務センターのうち、昨年十五センターが国税庁の税務調査を受け、二〇〇〇年に払い戻した郵便貯金の利子約三十五億円にかかる所得税の源泉徴収漏れを指摘されたとのことであります。
 そこで、依然として絶えないこういうふうな問題でありますけれども、この根本原因はどこにあるのか、そしてまた国税当局から指摘されている不正の内容は主にどのようなものであるのか。そして、再発防止のための対策、特に郵便局の法令遵守の徹底につきまして、来年四月からは公社化であります、それを間近に控えての関係でありますので、どのように取り組んでいくのか、郵政事業庁長官の答弁を求めておきたいと思います。
松井政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘の新聞記事は、十一月一日の読売新聞に大きく出たことについての御指摘かと思います。事実関係について申し上げたいと思います。
 国税当局によりますこの調査と申しますのは、従来から定期的に貯金事務センターに対して調査がされております。この七月に国税当局からお話があったものとして私どもも承知していることについて申し上げますが、事例として申しますと、非課税貯金、六十五歳以上の老人の方だとかいろいろな障害をお持ちの方だとか、そういう方々の非課税貯金、限度額としては三百五十万円というのがあるわけでございますが、これにつきましては、いろいろ要件が決まっております。
 これについて、預金者の住所や氏名、例えば住所の枝番等が違っていてもやはり問題だということになるんですが、そういうものだとか、それから住所を移転された場合に届けが提出されていないという問題だとか、あるいは預金者がお亡くなりになっておりましても、家族の方が代理で来られまして郵便局の窓口で払い戻しされるというときに、後日、税務調査で、その預金者は実際にはもう亡くなっておられる、そういう場合は非課税の扱いという要件に該当しないことになります。それから、預金額の合計が三百五十万円を超えておりましても、預金者の側の思い違いもありますし、いろいろなケースがあるんですが、限度額を超えている場合、これも該当しないということがございます。
 こういったものが約二千七百件御指摘いただきました。出入りの多い通常貯金を除きますと、郵便貯金の払い戻し件数は六千万件あったわけでございますけれども、この中で二千七百件につきましてそういう御指摘がございました。ただ、国税当局のお話では、私も後日確認いたしましたが、異例の申し入れをした、そういう認識はないというふうに聞いております。
 その結果、平成十三年度におきまして、私ども源泉徴収義務者として税額は四兆一千億円納めておりますが、こういう徴収漏れとして、追加として四億六千万円を納付したわけでございます。
 要件に該当しないという御指摘がありました二千七百件の中で数件につきましては、一部の郵便局におきまして、非課税限度額を超えていながら、またそれの認識がありながら、全額を非課税にしてほしいというお客様の方からの依頼があって、これに対して全額非課税扱いとして払い戻しをした、そういう処理をしたというふうな不適正な取り扱いがありまして、これにつきましては重加算税が郵政事業庁に課せられております。これは、税法に基づいてでありますけれども、二百五十万円課せられております。
 いずれにしろ、こういった数件があったわけでございます。まことに遺憾でございまして、事実関係が明らかになり次第関係した職員に対しまして厳重に処分するなど、厳正に対処しております。
 従来から、先生御指摘のように、非課税貯金の取り扱いについての本人確認の徹底あるいは限度額管理につきまして、厳格にしなければなりませんし、そのように努めてきているところでございますが、今回のことも機会に、こうした事例が再発しないように、これからは、本人確認講習会あるいはコンプライアンス管理者研修、こういった施策を通じまして、郵便局に対しまして一層の法令遵守の徹底を図ってまいりたいと考えております。
 今後、公社化を控えまして、国民の方々の郵便貯金事業への信頼が一層厳しく求められるものと考えておりますし、信頼回復に向けて格段の努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
黄川田委員 質疑時間がなくなってしまいました。大臣から所感を伺おうと思いましたけれども、いずれ来春は郵政公社を設立いたします。ですから、職員の意識改革、ぜひとも確立していただきますことを指摘しまして、終わります。ありがとうございます。
遠藤委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。持ち時間の関係から、直接すぐに質問に入っていきたいと思います。
 提出されておりますこの給与法、人事院が創設されて以来初めて月例給引き下げ、これまでも公務員給与については年間給与として四年連続マイナスであった上に加えてこういうことが法案として提出されておるわけです。金額でマイナス十五万円、率でいきますとマイナス二・三%、大変な引き下げになるものであります。
 その影響というのは、七百五十万の公務員労働者だけじゃなくて、その家族もいますし、あるいはそれに関連する方々、あるいは年金、こういうものにも連動するという事態を考えますと、今日の日本経済に対する影響、国民生活に対する影響、これも非常に大きなものがあると考えるわけです。
 そこで大臣、こういう今日の日本の経済の中にあって、公務員給与の引き下げという事態を受けて、やはり何かお考えがあろうかと思うんです。消費不況と言われている今日の状況の中で、どういうお考えを持っていらっしゃるか、まず最初にお聞きしたいと思います。
片山国務大臣 何度も当委員会でもお答えさせていただいておりますように、公務員の給与の決定方式というのは委員御承知のとおりでございまして、それに基づくこういう決定をさせていただかざるを得なくなったことは、勧告自身が本俸の引き下げというある意味では初めてのような勧告でございましたので、我々としても、公務員の皆さんには大変厳しいあれだな、こう思っておりますけれども、そういうことで決めさせていただいたわけでございます。
 一方、デフレだとか、あるいは金融不安までではございませんが、金融システムの信用を上げるということにつきましては、これは先ほども申し上げましたが、万般の対策をとっていく、こういうことを内閣でも決めておりまして、これを着実に今回実行してまいりたい。そっちの方はそっちの方でやっていく、公務員給与の方はこういうことで決めさせていただきたい、こう思っております。
矢島委員 今のお答えに関連して、去る五日の日に閣議に提出された経済財政白書というのがありますが、民需が弱く、アメリカ経済が停滞すれば景気回復が腰折れする可能性も否定できない、こういう文章もその中にありますし、それからまた、活性化するための課題というところでは、デフレが進行中であり、キャピタルロスは千百五十八兆円、個人消費の水準を引き下げた結果、住宅建設も慎重化させた、こういうような文言が書かれております。
 こういう状態の中で、今度の法案によりますと総額六千九百三十億円の削減、地方経済にも大きな影響、一層消費を冷え込ませるのではないかという懸念が広がっております。やはり国民の将来不安をなくす、このことが政治の果たすべき役割だろうと思いますが、今、国民負担というのが、いろいろな面で、例えば医療費の問題、社会保障の問題、あるいは増税の問題などなどを押しつけてきている。これじゃ消費の拡大は期待できない、今やるべきことは国民の懐を暖めることじゃないかと私は思うんですが、大臣、日本経済の立て直しとして、今やるべきことはどんなことだとお考えですか。
片山国務大臣 委員の言われましたところと認識を共有しておりますのは、とにかく国民の将来不安を解消する、現下の雇用不安その他も解消していく、こういうことが必要だと思いますね。
 そのために、御承知のように、十月三十日でございますか、総合的なデフレ対策、あるいは不良債権処理加速の方策とそれに伴うセーフティーネットの整備を内閣としても決めさせていただいたわけでございまして、先ほども言いましたが、これを着実に実行していくことによって経済の立て直しを図る、こういうふうに思っておりますが、それと同時に、経済再生のためには、新しい産業を起こしていく、新しい雇用を創出していくという努力も必要でございまして、そういうことのための内閣としての対応も一応あの中に決めさせていただいたわけでございまして、ぜひこれはこれでやってまいりたい、こういうふうに考えております。
矢島委員 この問題については、さらに深く論議していかなきゃならない問題でもありますし、時間がありましたら、後ほどまたお聞きしたいと思います。
 早速ですが、不利益不遡及の問題をまず取り上げていきたいと思います。
 この問題は、九月六日の日の委員会でも、それからきょうの委員会でも、それぞれ同僚委員から質問があり、総裁も答弁ありました。どうも私、納得いかないんですよ、今までの答弁をよくお聞きしながら、議事録も読み返してみながら。きょうは、本当のところ、本音が聞きたいな、こういうことで不利益不遡及の問題をお尋ねするわけです。
 そこで、まず最初に、事務的なことですが、恐らく、この法案、できるだけ早く成立させて、十二月一日には施行できるようにしたいと政府は考えていると思うんですが、そうだと思いますが、この施行日が後ろにずれたらどういう影響が起こるのかということ。
 それから、大臣には、四月から既に支給済みである月額払いの給与、これは私、仮払いじゃないと思うんですね、確かに。年間調整といって、仮払いでもない月例給与がなぜ調整の対象になるのか、それがよくわからないんです。その根拠は何か、お答えいただきたいと思います。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 十二月期の期末手当の基準日でございます十二月一日に法律が施行されないというふうな場合におきましては、十二月期の期末手当は現行の給与法の規定に基づいて支給されるということになりますので、俸給引き下げに伴う調整措置が行われないということになるわけでございます。この場合、今年度につきましては官民の年間給与の均衡が図られないということになりまして、国家公務員法に定める情勢適応の原則に照らしまして問題があるものというふうに考えております。
片山国務大臣 既に何度もお答えしておりますけれども、人事院勧告の考え方は、年間給与について官民の均衡を図る、こういうことでございますので、十二月の期末手当で年間給与の均衡としての減額調整をすることは、直ちに遡及適用の問題じゃないと思うんですね。毎月の給料を対象にしているわけじゃないんですね、年間をトータルして、その給与が民間とバランスをとれ、こういうのが人事院勧告でございますから、政府もそれを是として、そういうことを政府の意思として決めたわけでございます。
矢島委員 年間給与として均衡させるといいますか官民の均衡を保つ、このことは確かにそのとおりの答弁を前、大臣、やっていらっしゃるんです。私、これを聞いて、先ほども私がこれからお尋ねしようとすることと類似した質問がございましたので、同じ答弁になるのかなと思いますが、人事院総裁にお聞きしたいんです。
 今までずっと答弁にあるように、人事院勧告では十二月一時金で年間調整しようとなっているわけです。しかし、月例給と一時金とを合わせたものが年間支給額。
 ところで、月例給与の方は、これは四月一日時点、官民賃金水準、これをラスパイレス方式によって実施している。一時金の場合は、これは時期としても、前年の五月からその年の四月まで、これを一つの期間として、そして民間の一時金支給額を平均所定内賃金で割って月数を出して、月数同士で官民の比較をする、こうなっているんですね。
 そうすると、比較方式も違う、それから時期も異なる、これを一緒にして均衡させる、こういうやり方が成り立つのかどうか、これまでこうした事例はあるのかどうか、この辺について総裁、お答えいただきたい。
中島政府特別補佐人 お尋ねのような方式で全国一律に調整したという前例はございません。個別にはそういうことがあるという話は聞いておりますけれども、全国一律といいますか、全職員一律にそういう調整をしたことはないというふうに記憶いたしております。
 結局、先生が仮に減額調整をするのは反対だという立場だったら、幾ら説明してもやはり頭に入っていただけないんですよね、本当に。僕ら今まで随分説明したけれども、反対の方は幾ら言ってもやはり納得していただけない。何とかかんとか言って疑問を呈されるということなんです。
 そこで、減額調整するのが国民の意見にかなっているというふうな立場に立ちますと、どういう方法で減額調整するのが公務員に一番いいかという選択の問題になるということで、私たちは今回御提案申し上げているような考え方をとったわけでございます。
矢島委員 何とかかんとか言いながら、そのことを納得させようとしても、納得しないのが反対の方だ、こういうことだそうですが。
 それならば、総裁、これまで人事院は、月例給が官民均衡するので、一時金も結果的に均衡して、そして年間トータルでも均衡するようになるんだ、こういう説明をされてきたわけですよ。それが、今度は月例給のカット分を十二月の一時金でマイナス調整する、こういうわけですよね。これまでの主張と今やろうとしていることは矛盾するんじゃないですか。こういうやり方は、月例給与、一時金のそれぞれについて官民均衡が図られることになる、つまり年間トータルで官民均衡をとるようにするんだ、こういうことに変わるわけですか、今後は。
中島政府特別補佐人 先ほども御説明申し上げましたけれども、本年に限って申し上げますと、月例給与というのは四月現在で比較してマイナス二・〇三%、ボーナスについては〇・〇五月マイナスして四・六五月だということで、平成十四年度は制度としてはそういうような均衡が図られておる、その上で、先ほど申し上げましたような減額調整の方法をとったということでございますので、制度としては均衡がとれておるというふうに御理解いただきたいと思います。
 なかなか御理解いただけないような顔をしておられますけれども、基本は、やはりどこかで、どういう方法で減額調整するのがいいのかという視点に立ってお考えいただきたいというふうに思います。
矢島委員 これまでの官民均衡のあり方というのと、今この段階でやろうとしている年間トータルで均衡を図るということとは、根本的に中身が違うだろうと私は思うんですよ。その点をまた後で機会がありましたら聞くとして、指摘しておきたいと思います。
 そこで、四月にさかのぼる、いわゆる遡及するということは、私たちは不利益不遡及の原則に反する、何回もこれは答弁と行ったり来たりで、ほかの委員もやっていることですけれども。そこで、四月へ遡及するのではなくて、調整という名前が使われた。そういう言葉が使われている。だけれども、実質、遡及そのものだ、本質そのものは隠し切れるものじゃないと私は思うんですよ。
 そこで、大臣、また同じ答弁になるかもしれませんが、私は脱法行為だと思うんです、このやり方は。それは、調整だという言葉を使っても、遡及という言葉を使わなくても、やはりこれは不利益不遡及の原則に反するものだと私は思うんです。政府みずからが脱法行為はやるべきでない、こう考えているんですよ。それについて、大臣。
片山国務大臣 政府は、人事院勧告を尊重して完全実施なんですよ。人事院勧告がこういう減額調整をやりなさいと。人事院ともあろうものが脱法行為を政府や国会に勧告するはずはありませんから、それは十分内閣法制局とも調整の上、人事院もしっかりした理論的な根拠を持ってそういう勧告をされたのに違いない、私はこう思っておりまして、政府はそれを素直に受けとめてそのとおり完全実施しよう、こういうことでございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
矢島委員 何回もお聞きしています。人事院にすべての責任を転嫁するんじゃなくて、よくそれを受けて検討したという言葉が入っておりました。しかし、私は、この経過を見ますと、どうも小泉内閣の経済財政政策といいますか、これと無関係じゃないという気がするんです。
 実は、この勧告が出される前にたくさんの閣僚が発言しているんですね、公務員給与の問題で。五月二十六日には竹中大臣が発言しております。聖域なくコストを削減する意味で給与も例外ではない、こう言っておりますし、小泉首相も、閣内で国家公務員の給与削減論が出ていることについて記者団に問われましたら、これからあらゆる歳出を見直す、検討していく一つの課題だと思う、こう述べております。以下、坂口大臣も含めていろいろな大臣が発言しているんですけれども、竹中大臣のもう一つの発言を見ますと、税の負担を見直すに当たって納得できる政府のスリム化が必要だ、だから公務員給与の削減問題は避けて通れない、こういう発言も五月段階にございます。
 ところで、六月三日の日に、財政制度審議会が基本的考え方というのを出しております。その中にこういう文言があるわけですよね。公務員給与の引き下げを含む総人件費の抑制、これを求める、こういうのがあるんです。
 そこで、お聞きしたいのは、大臣、この総人件費の抑制というのは政府の方針となっているのかどうか。それから、そのことが、いわゆる基本的考え方が人事院勧告に反映したという関係にあるのかどうか、その辺について御答弁願いたい。
片山国務大臣 総人件費の抑制につきましては、財政制度審議会は財務大臣の諮問機関でございますけれども、経済財政諮問会議やあるいは骨太方針の中にも、やはりこういう財政事情の中で、民間も大変厳しいリストラを行っている中で、総人件費の抑制をしていこう、こういうことはほぼ政府の方針と言ってもいいと思いますが、それと給与の決定方式は全く別でございまして、給与は、諮問会議でも閣内でも、労働基本権制約の代償措置で人事院があり、人事院勧告があるので、これは人事院勧告を尊重しての完全実施だ。
 そこで、それじゃ、総人件費の抑制はどうやるんだ。結局は定数管理なんですよ。そこで、御承知のように、今国家公務員は、昨年の中央省庁再編以降、十年で二五%の定数削減をやろう、その中には独立行政法人への移行も含みます。そういうことでございまして、それは厳重にやっていこうということでございます。もう一つは、国、地方を通じて民間委託、アウトソーシングできるものはアウトソーシングしていこう、こういうことが総人件費抑制の中の主な内容でございまして、今回の人事院勧告と政府の考え方あるいは財政制度審議会の答申等とは全く関係ありません。
    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕
矢島委員 私、先ほど申し上げましたように、この人事院勧告を前にして、いろいろな閣僚の方々が公務員給与について発言している。まだ人事院は、四月一日を基準にしながら民間給与との関係、これを作業している最中だったと思うんです。そういうさなかに、人事院勧告に向けての注文やあるいは方向づけ、こういう発言が相次ぐということは、総裁は絶対そんなことはないと言うだろうと思いますが、普通、外から見ますと、どうも人事院勧告に対して予断を与えるような弊害があるだろう、こんなことを言って、どんどん発言が下げろ、下げろという大合唱になるということは。つまりそういう弊害があると私は思うんですが、大臣、どのように認識されていますか。
片山国務大臣 人事院は、内閣から独立した中立公正な第三者機関でございまして、政府のことに影響されるようじゃ困りますね。中立公正な第三者機関と言えない。しかし、政府の意向ということも、それは念頭に置いてもらう必要がありますけれども、今の人事院勧告はそういうことでなされるわけじゃないんですね。四月時点の給与あるいはボーナス等をしっかりと調べて、詳細に調べた結果に基づいての民間準拠の勧告をされるわけでございまして、私は、政府の中の閣僚等がいろいろな発言をしたことによって、この調査結果が影響され、勧告が影響されたとは全く考えておりません。
矢島委員 厳しい財政状況である、だから、どんどん改革を進める必要がある、財政改革が必要だ、私もそう思います。そのとおりだと思います。
 しかし、財政改革を言うのならば、どこを削減していくかというところで、私たち、削減してむだや浪費をなくしていこうという点については一致すると思うんですが、それじゃ、どこにむだがあり、どこを削っていくべきか、ここで見解の相違があらわれてきているんですね。私たちは、大型公共事業、まだまだメスを入れる必要がある、来年度予算では一〇%削減と言ったけれども、実際には三%ぐらいだ、三%というのは、今デフレで物価が下がっているから、事業総数にしてみたら少しも削減されていない、そういうような事態もあるし、だからそういうところにきちんとメスを入れるとか、軍事費も聖域なき削減の切り込みをする必要があるだろう、こう思います。
 そして、こういうことを言いながら、一方では、社会保障分野で三兆円を超えるような負担増がある。あるいは、恐らく政府税調もそういう方向で検討しておりますように、国民と中小企業への増税計画、外形標準課税その他、専ら国民に痛みを押しつけている。この公務員給与の削減、これもそうだと思うんですよ。やることが逆さまだ、私はこのことを指摘しておきたいと思います。質問の時間がどんどん短くなっておりますので、私の意見だというふうにお聞きいただければいいかと思います。
 そこで、実は人事院に聞きたいんですが、勧告の根拠となっている民間の実態調査について聞きたいんです。
 ことしの調査では、層化を大くくりにした、それから抽出率を同じにした、ここに大きな変化があるんだと。この層化を大くくりにしたというのは、これまでの調査対象になっていた大企業が外れていく、その結果、中小企業の事業所の比率が増加することになると私は思うんですが、規模五百人未満の企業の比率、前年度と比べてどういう結果になっているか、教えていただきたい。
大村政府参考人 規模五百人未満の事業所の調査の割合が一一・六%ふえております。
矢島委員 事業所の比率で一一・六%中小企業がふえている。かなりな数になっていると思います。
 お配りした資料の中に、その部分は、下の(二)の表で事業所数一一・六%というのが出ている。これは人事院の方からいただいた資料です。
 そこで、私、対象人員比率がどうなっているかを計算してみたんです。それが(一)の方の表であります。ことしと去年とを比較いたしますと、規模五百人未満の企業、対象人員が一五・二%ふえている。つまり中小企業に大きなウエートがかかってきた。だから、実際問題として、この二・〇三%という数値が、総裁は大くくりの問題やあるいは抽出率の問題を出しながら、より正確といいますかより厳密に、さらにはより詳しくといいますか、こういうような形で出てきたんだ、こう答弁されております。
 そこで、答弁はよろしいんですが、これだけお聞きしたいんです。お配りした資料の(三)の表です。層化抽出方法の変更でこの四十年間でどういうふうに数字が変わってきたかというので、一九六〇年のときからそれぞれ、飛び飛びですけれども、調査した事業所の規模、層化数、職種、調査事業所、それから以下母集団、ここまで表にしてみたわけです。
 その結果、見ておわかりいただけるように、層化数については年々ふえてきたんですね。最初の一九六〇年から比べたらずっとふえてきて、昨年千四十五。ところが、今度これががたっと減って昔の状況に戻ってきた、七百四十二。それから、調査実人員、これも二十七万、四十五万、ずっとふえてきまして、一時は六十万人台になり、昨年も四十四万人。これからまた減ったんですね、三十九万人に。これを母集団に計算してみますと、これまた二百五十一万人。
 こういうように、この表でもおわかりいただけるように、中小企業に対する割合というのがよりウエートを占めるようになった。層化数でいえば三割減ですね。大くくり方式となったことやあるいは抽出方法の変更、こういうところで中小企業が多くなっている。調査実人員も一割以上の減になっていますね。母集団への割り戻しも三割減。これを、より精細に調べたんだ、そのやり方としてこの方式を今年度はとったんだと。より実態に適したというような言葉も使っていました。どうも私は、こんなに一挙に変化を行ったこの調査というものが、果たしてより詳細に調べた、そのためにこうしたのかどうか、意図的なものを非常に感じるわけですよ。いかがでしょうか。
    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
大村政府参考人 民調の見直しを本年したわけでございますが、その見直しを行った理由というのは、従来、民調の場合、調査効率を重視していた、つまり一カ所に行きましてたくさんの調査人員をとれるということをある程度目的としていたものでございますので、これをきちっと全体がよく反映されるようにやるというのが今回の目的でございます。
 まず、層の話でございますが、層のところにつきましては、従来、子細に見てみますと、特定の産業に特化したもの、対象事業所が少ないもの、それから最近の社会経済情勢の変化で安定した給与水準を把握することができないというところが生じてきたために、層の構成については、企業規模別、本支店別を中心に産業別を考慮しながら大くくり化して整理した結果、全国で昨年の千四十五層から本年七百四十二層になったものでございまして、より安定的な結果が得られる効果を持つものと理解しております。
 それから、調査人員でございますが、先ほど申しましたように、調査効率を重視していた関係で大企業に若干偏っていた部分がございますので、これも企業規模、それから産業に隔たりがないように同じ割合で調査対象従業員が抽出されるようにした結果、本年は従来以上に多くの中小規模の事業所が調査対象になった。その結果としまして、調査実人員は減少しております。
遠藤委員長 もう時間ですから、簡便にやってください。
大村政府参考人 こういうような調査をやったわけでございますが、民調というのは、大規模な調査で一般的に行われています層化多段抽出法に基づいて調査事業所を抽出しまして、集計に当たりましては抽出率の逆数を乗じて母集団に復元するということをしておりますので、復元後の給与水準に特段の影響を与えるものではないというふうに考えております。
矢島委員 時間になりましたので終わりますが、いわゆる調査の方法を変えたということが継続性の問題、つまり前年度の比較、今までの長い間の比較、そういうものを断絶するわけなので、今後ともその点についてもより慎重に研究してもらいたい、このことだけ申し上げまして、終わります。
遠藤委員長 次に、重野安正君。
重野委員 社会民主党を代表しまして、議題となっております一般職の給与に関する法律の一部改正案について、人事院勧告制度及び現行公務員制度問題を中心に幾つか質問をいたします。
 まず、法案の内容に入る前に人事院に聞いておきたいんですが、国家公務員法二十八条に定める情勢適応の原則において、百分の五以上増減する必要が生じたときは勧告をしなければならない、こういうふうになっておりますが、ここで言う上下五%の絶対的かつ合理的根拠は一体何なのか。これについてまず人事院の見解を聞いておきたい。
中島政府特別補佐人 二十三年にその条文が入ったわけでございますけれども、その当時の年間の物価上昇率というのが大体七〇%から六〇%ぐらいでございます。したがいまして、月に直すと五%、おおむねそういうことになるわけですけれども、それがもとになっているということではございません。その当時のことについて少し知識がありそうな人に何人か聞いてみましたら、その条文を入れるときに、公務員には労働三権というものを制約するんだから、せめて五%を超えるとやはり勧告を義務づけておかなければならないんじゃないかというような話をなさった方がおるようでございます。そういうような話がどれほどの力になったかはわかりませんけれども、そういう話があったということぐらいで、それ以外にその五%というものに関する話もございませんし、またそういう記述もございません。
 ただ、昭和二十七年ぐらいから物価上昇率が大体年五、六%になったということでございますので、まあ五%という数字はいいところをとにかく早く規定したものだなということを、後から気がついた人がおるんじゃないかというふうに思います。
重野委員 ただいまの総裁の答弁を聞く限りでは、これが絶対的、合理的根拠だというものではないのではないかな、こういう感じを持ちました。
 しかし、いずれにいたしましても、この規定にとらわれることなく、人事院はこれまでわずかであってもプラス勧告を行ってきたという歴史がございます。これは、労働基本権が保障されていないという現状における公務員労働者に対し、代償機能を人事院みずから積極的に果たそうとした努力の結果として私は受けとめたい。それだけに、今回マイナス二・〇三%の勧告を余儀なくされたということは人事院にとっても遺憾なことである、このように考えているのではないか、この間の歴史を翻ってみるときに。そういう受けとめを私はするわけですが、そこについて人事院総裁どのようにお考えですか。見解を聞かせてください。
中島政府特別補佐人 それぞれの公務員の方は、やはり今までの人事院勧告といいますか、今までの給与の変動というものを念頭に置きながら将来の生活設計をお立てになっておったというふうに思います。したがいまして、長い間、給与勧告で給与がアップしてきたということが念頭にあるだろうと思います。そういう中におけるこのところの減額勧告でございますので、その責任者としていい気持ちがするはずがない、これは非常に残念だと私は思います。
 ただ、先ほど御答弁申し上げましたように、公務員の給与というのは、公務員の皆さん方のとにかく生活に関係がある、公務員の皆さん方に納得していただくということも非常に重要でございますけれども、他方、一般の国民というものがどのようにお受け取りになるか、どのように納得していただくかということも考えなければなりませんので、私たちはその二つの要素というものを常に考えながら勧告作業に臨んでおるということでございます。
 お尋ねにつきましては、やはり私たちも、こういうマイナス勧告が続くということについては遺憾なことだ、残念なことだというふうに考えています。
重野委員 今の総裁の話を聞きながら、今回の勧告の内容そして今日に至る経過を見るときに、先ほど桑原委員も指摘をしておりましたが、そうであるならば、この勧告の影響を受ける公務員を代表する団体とそういう意味での本音の意見交換をして、そしてその団体の理解をいただく、そういう努力をしたプロセスというものが今日ここに出されてしかるべきではないか、このように思うんですね、言葉面だけではなしに。そういうことが、マイナス勧告という今日的状況の中で、必ずこの国の公務員労働者そして政府との関係、人事院との関係にとって極めて積極的な意味でのいい結果を出す、私はそう思っているんですね。そこら辺の考えというものがこの結論を出すに至る過程の中でなかったのかという点について改めて聞いておきたい。
中島政府特別補佐人 ことしの勧告が、本俸にマイナス勧告だということは初めてでございました。そして、結局、プラスのときには四月にさかのぼって差額支給する、マイナスになったときには、もう既にもらったものは知らないよ、おれはポケットに入れたままだということでは、やはり国民が納得してくれないだろう、という感情があるだろう、そういう感情をどのように制度の上で反映させていくかということを私たちは考えざるを得なかった。
 そのときに、いわゆる減額調整の話になるわけでございますけれども、減額調整について、労働団体の方は結局は賛成なさらなかった。したがって、ことしの労使間の話し合いというのは、例年ほどスムーズではなかったというふうに私は感じております。それは本音は賛成だったかもわかりませんよ、わかりませんけれども、しかし、そういうことは私たちには受け取れなかった。そこで、先ほど申し上げましたように、少し労使交渉というのが違ったような形になったんじゃないかというふうに思います。
重野委員 それでは、違った視点から質問してまいりますが、最初に申し上げたように、国会にも勧告尊重義務があることは十分踏まえた上でお聞きしたいと思うんです。
 改正案の特徴は、一つは、官民給与の逆較差二・〇三%の解消、二つ目が、四月からの年間給与について官民均衡を図るため、十二月期の期末手当で調整措置を実施する、こういう勧告内容をそのまま法案化した、こういうふうに理解をしています。
 そこで、まず第一に、勧告に対し給与関係閣僚会議がいかなる議論をしたのか、二つ目に、この具体的な立法作業に当たって、内閣法制局はいかなる理由をもって勧告の妥当性を判断したのか、総務大臣と法制局長官の見解をお聞かせください。
片山国務大臣 八月八日に人事院勧告を受け取りまして、先ほども御答弁申し上げましたが、第一回の給与関係閣僚会議をやり、九月二十七日に第二回目をやって、そこで人事院勧告尊重、完全実施を決めたわけでございます。
 その間、今のような二・〇三%の引き下げ、しかも初めての本俸カットですから、これは大変公務員の皆さんにも関係あることだ、こういう認識は各関係閣僚皆持ったと思いますけれども、そういう中で、民間のいろいろな状況を考える、あるいはそういうことと公務員が軌を一にしなければならない、やはり民間準拠というのは守らなければならない、それから人事院勧告が、長い歴史の中で、このところずっと尊重、完全実施でございますので、そういうことは守っていかなければならない。景気へのいろいろな影響だとか、そういうことの議論もありましたが、最終的には、人事院勧告をそのまま受け入れる、こういう方針にいたしたわけであります。
梶田政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の給与法の改正案は、ただいま御指摘ございましたように、人事院勧告を受けまして、本年四月からの官民の年間給与の均衡を図るという観点から、この法律の施行日以降の俸給月額を引き下げる、それからまた本年十二月の期末手当による調整措置を講ずること、こういったことを主な内容としておるものでございます。
 国家公務員の給与改定につきましては、人事院勧告を受けまして四月に遡及して改定するという方式が定着してきており、このことによりまして、四月からの年間給与におきまして官民の均衡が図られてきておるというふうに承知しております。
 そこで、本年の給与改定におきましては俸給の引き下げが必要になるとされたところでございますけれども、今回の給与法の改正案におきましては、既に適法に支給された給与をさかのぼって不利益に変更する措置は行わないという考え方のもとで、この法律の施行日以降の将来の給与である俸給月額を引き下げるとともに、本年十二月期の期末手当による調整を行うことによりまして、従来どおり四月からの官民の年間給与の均衡を図ることとしているものでございまして、その内容につきましては合理性があるものというふうに考えておる次第でございます。
重野委員 先ほど来同趣旨の答弁をずっと聞いてきたわけでありますが、どうしても看過し得ない問題が残るんですね。
 まず、調整措置の問題でありますが、調整手当や超過勤務手当まで、過去の支給分を職員一人一人計算をし調整措置を行うわけですね。これは、先ほど来累々同じ質問がありましたけれども、不利益不遡及原則、このものを否定するということではないのかと言わざるを得ないんですね。
 不利益不遡及原則の否定と我々から指摘されるその問題について、関係閣僚会議あるいは法制局においては全く問題なしとしたのか。くどいようですが、改めてその点を聞いておきたい。
片山国務大臣 確かに余り今まで例がなかった措置を行うことについての議論はありましたが、しかし、人事院勧告でそういうことをはっきりと勧告されているわけでありますから、政府としては、それを受け入れてそのとおりにしようと。年間を通じての官民較差をなくする、民間準拠ということについてはだれも異論がないわけでありまして、やり方については人事院が、改定後支給される期末手当で調整しろ、こういうことでございますので、それはそれで受け入れよう、こういうことになったわけであります。
梶田政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の十二月期の期末手当による調整措置でございますが、これは法の施行日以降の将来の給与である期末手当の額を調整するものでございまして、改正後の給与法を遡及適用いたしまして、既に適法に支給された給与をさかのぼって不利益に変更するものではございません。したがいまして、法律の遡及適用に伴う問題はないというふうに考えております。
重野委員 この不利益不遡及問題は、どうしても議論がかみ合わない、平行線をたどっているわけです。
 そこで、問題はそれだけではない。官民の給与比較は、四月時点での月例給は月例給、一時金は一時金と、それぞれ区分比較されているはずであります。年間給与とはそうした比較の結果にすぎないわけで、事は年俸制をとるプロ野球選手なんかとはわけが違うんですね。この条件あるいは制度をゆるがせにしたら、勧告制度はもちろん、それに基づく給与法の改正も妥当性を欠くことになるのではないか、このように私は指摘をしたいのでありますが、総務大臣、いかがでしょうか。
片山国務大臣 既にこの点については人事院総裁から答弁いたしておりますが、月例給と特別給に分けて調査する、これは民間の状況を正確に知る意味でそういう方法をとられているわけですね。
 したがって、それについては、給与改定の勧告では、月例給はこうだ、特別給はこうだ、こういうことで改定を行った上で、法律を遡及適用するのではなくて、官民の年間給与を均衡させるという観点から、減額調整は十二月期の期末手当の額でやります、こういうことを決めたわけでございまして、このことは、調査法が違うんだからおかしいじゃないかということにはならないんではないかと私は考えております。
重野委員 なかなか大臣の答弁は納得できないですね。
 もう一度聞きますけれども、三月期の期末手当及び期末特別手当から〇・三カ月分を十二月に繰り上げ支給、それは一体なぜか。くどいようですが、結局、月例給分を調整、つまり実質遡及適用したかったんではないんですか、このように私は結論づけるんですが、大臣並びに人事院総裁、見解を聞かせてください。
中島政府特別補佐人 十二月の期末手当から調整したいためにそうしたんじゃないかというお話でございますけれども、そんな悪い人間じゃございません。
 期末手当というものにつきまして、三月期で今まで支給しておりましたけれども、三月期といいますか、年間三回ボーナスを支給している民間企業というのがもう非常に少ない、ほとんど年間二回になっておるという調査結果がございました。それに従いまして、三月期を廃止して六月と十二月に配分するわけでございますけれども、そのときに、民間で六月で支給しているボーナスと十二月で支給しているボーナスの比率というものを勘案してといいますか、それに従いまして公務員の方の割合を分けますと、十二月に〇・三月、そして六月に〇・二月という配分になる、そういう結果でございます。
片山国務大臣 人事院総裁が答弁されましたけれども、我々は人事院の勧告を是としてそれを受け入れたわけでございまして、根拠は総裁と同じであります。
重野委員 くどいようになりますけれども、十二月の期末手当で調整することの可否と深くかかわっているんですよ。月例給は月例給、一時金は一時金、区分比較された逆官民較差分をまとめてなぜ十二月期の期末手当で調整、つまり実質遡及できるんですかということです。仮に、百歩譲って実質遡及するにしても、両者は区分して調整するのが筋ではないか、このように思うんですね。
 これでは、労働基本権を保障していないことに伴う代償機能からしても、ルールの一方的変更ではないかと指摘せざるを得ない。労働基本権が保障されていない公務員労働者にとっては、これはやはりおよそ認めがたいルール変更と言わなければなりませんね。労働協約締結権が認められ、労使双方で話し合って決めたならいざ知らず、そうした保障措置もないまま従来のルールを変更することは許されることではない、このように思うんですが、総務大臣、いかがですか。
片山国務大臣 何度も申し上げておりますが、年間給与で官民のバランスをとる、年間給与でですよ。十一月までは既に支給済みということになる、それでは、十二月以降で年間給与のバランスをとるとすればどの方法が最もいいかということの上で、人事院は期末手当で減額調整するという判断をとられたと思いまして、私もそれが適当ではないかと考えておりますが、今回の勧告をもって、現在の公務員の労働基本権制約あるいはそれに伴う代償措置について、それ自身が否定されたと私は考える必要はないんではなかろうかと。
 要は、今の人事院制度を信用するか信用しないかという議論でございまして、今の人事院は中立公正な第三者機関として労使の中に立って機能しておるわけでありまして、総裁がるる答弁しておりますように、そういう中で今回は大変苦渋の勧告をされた、こういうふうに私は考えております。
重野委員 私がこのことをくどくくどく言うのは、この問題が他に与える影響が非常に大きいと心配するからくどく質問しておるんですね。公務員労働者の問題については今そういうふうな状況にありますが、今後、民間労働者の賃金はどうなるのかという点に私は思いをいたすんです。四月に労使交渉によって決めた賃金が、企業の業績が悪化した、いろいろな外的条件によって四月にさかのぼって月例給や一時金をカットする、そんなことだって許されることにもなりかねない。これは余計な心配でしょうか。しかも、その際、公務員でも行われたと経営者に利用される場合だって十分考えられるんですね。
 厚生労働省に聞きますが、この改正案が民間の賃金カットの口実とならないと言明できますかどうか。お願いします。
奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員お話しになりましたように、民間企業の賃金決定は、四月の月例賃金を定めるために、その前の年から準備をし、二月、三月にかけての交渉で決定をされていく、こういったルールのもとでされているわけでございます。その際、賃金決定が行われた場合におきましても、その後の企業の状況に応じましては、再度賃金交渉が行われて、賃金決定についてのあり方をもう一度議論するといったことも現実に行われているわけでございます。
 今回のこの人事院勧告の決定が民間の賃金決定のあり方にどのような影響を及ぼすかということにつきまして、これを判断しろということは、私ども、なかなか困難だというふうに考えているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、民間企業におきます賃金決定は労使交渉のもとで両者が納得のいく形で決定をされているということで、こういった原則のもとでの賃金決定のあり方を私どもとしては見守ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
重野委員 これは、この国の今後の経済動向、景気にも非常に大きな影響を結果として及ぼすことになる。したがって、やはり今私が懸念しているような動きを起こさせてはならぬというふうに思うんですね。ですから、そういう視点で、民間労働者の賃金の決定制度にこのことが悪用されるようなことがあってはならぬ。
 そういう点について、総務大臣、さらには厚生労働省、もう一度聞かせてください。
片山国務大臣 今厚生労働省から説明がありましたように、民間は労使の交渉で決まるんです。公務員はそういう権限が与えられておりませんから、何度も言いますけれども、代償機関として人事院勧告があり、人事委員会勧告があるわけでございまして、それは決定の仕組みが違うわけですからね。しかし、全く影響がないか、それはわかりませんけれども、基本的にはあるべきでない、こういうふうに考えております。
奥田政府参考人 この問題につきましては、先ほどもお答えを申し上げましたけれども、民間の労使におきまして、今後におきましても賢明な判断がされていくというふうに考えているわけでございます。
重野委員 非常に大事な点でありますので、私もしっかり踏まえていかなければならぬと思います。
 そこで、もう時間もありませんが、国家公務員法二十八条と現実の人事院勧告の関連について聞きますが、法制上、プラスマイナス五%を超えていなければ勧告する義務はないことになるわけです。人事院の創設の意義あるいは勧告の歴史、そして何よりも、労働基本権否定の代償機関としての本源的な性格、そうした関係を考えれば、これまで人事院は、先ほど来総裁が申しているように、勧告に努力してきたことは間違いない事実であると私も認識いたします。しかし、そうした努力が人事院の性格に由来するものであればあるほど、マイナス勧告となるような事態はおよそ想定外の出来事ではなかったのか、こういうふうに私は思うんです。
 いずれにしても、そうした人事院の本源的な性格なるがゆえに、今回のような調整措置と称されるものが苦肉の策として生まれざるを得なかった。率直に言って、今回の勧告とはそうした性格のものだと私は考える。その原因を探ってみれば、つまるところ、労働基本権の否定に立つ現行公務員制度の必然的な結果と言って間違いない。そういうふうな状況を見るにつけ、こういう公務員制度を長年放置してきた行政府の政策、もっと言えば、この間の政治が生み出した産物そのものだというふうに断ぜざるを得ない。これを解決するには、労働基本権を回復する以外、労使双方が納得する結論を出す方法はないのではないかというふうに思うんですが、最後に、総務大臣、この点についての見解をお聞きしたい。
片山国務大臣 国家公務員法では五%を超えないと義務がないわけですが、今までも人事院は、上げるときは五%以下でもかなり勧告してきていますね。ですから、今回、下げるときだけ、五%未満だ、これは目をつぶろう、これはなかなか国民の納得は得られないと私は思いますので、人事院の態度はそれでよかったのではないか、こう思います。
 それから、労働基本権を公務員に与えるか与えないか。これは大議論でございまして、公務の公共性や身分の特殊性からいいますと、私は、今のように、団結権は認める、団体交渉もできるけれども協約の締結権は認めない、争議権は認めない、そのかわりに、生存権を保障するために人事院制度をつくって、そこが勧告したら、それを政府も国会も完全に尊重する、こういうことは大変一つの知恵ではなかろうか、こう思っております。世界の国を見ましても、公務員に全部労働基本権を与えている国はない、私はこう思っております。
重野委員 いずれにいたしましても、このことが来年の春闘にどういうふうな影響をもたらしてくるのか、そしてそのことがこの国の消費マインドにどういう影響を及ぼしてくるのか。私は本当に、沈む一方のこの国をどう浮上させるかというその視点からも、この問題というのは非常に重要である、そういう認識を共有していただければありがたい、このように思っています。
 以上で終わります。
遠藤委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 この際、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、後藤斎君外一名から、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。後藤斎君。
    ―――――――――――――
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 ただいま議題となりました修正案につきまして、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
 平成十四年十二月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置は、不利益不遡及の原則に反し、既発生の労働債権を過去にさかのぼって実質的に不利益に変更しようとするものであります。このような措置が国会で認められれば、公務員労働者にとどまらず、民間労働者へ影響が及ぶことは必至であり、このままでは到底認められるものではございません。また、不利益遡及に当たる措置は、人事院勧告制度のもとでのルール変更に相当するものであり、職員が全く関与できないもとで一方的に法定化されることについては疑念を抱かざるを得ません。
 他方、官民均衡を図り年間給与について何らかの調整措置を講ずるとの立場から、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合は、新たに職員の意見を踏まえた年間給与減額調整措置を設けるとともに、政府案の年間給与減額調整措置については、これを削除することが必要であると考え、本修正案を提出することといたしました。
 次に、修正案の内容の概要を御説明申し上げます。
 本修正案では、政府は、平成十五年三月三十一日までに、平成十四年度分として支給する給与の額と同年度の分として支払われる民間における賃金の額との権衡を図るため必要な措置を職員の意見を聞いた上で講ずるものとするとともに、平成十四年十二月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置に係る規定を削除し、平成十四年度三月期及び十二月期に係る改正規定を改めることとしております。
 以上が、ここに修正案を提出する理由及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜るようお願い申し上げます。
遠藤委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。春名直章君。
春名委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の国家公務員一般職の給与法改正案に反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、今回の法案が深刻な不況に追い打ちをかけ、デフレ克服に水を差し、日本経済に大きなマイナスをもたらすからであります。
 今回の大幅賃下げは、七百五十万人の労働者に直接影響を与えるだけでなく、年金給付減や民間労働者の賃下げにもつながるもので、まさに賃下げの悪循環を招くことになります。GDPを〇・一から〇・二%押し下げるとの試算もあるように、本法案の強行は、社会保障改悪や増税、そして不良債権処理の名による中小企業つぶしと並び、個人消費を押し下げ、日本経済に取り返しのつかない否定的影響を与えることは火を見るより明らかであります。断じて容認できません。
 第二は、十二月の期末手当から四月以降の支給済み給与を調整と称して差し引くことが不利益不遡及の原則に触れる脱法行為であるからであります。
 この問題は、法律論としても重大であるばかりでなく、人事院制度の根幹にかかわる原理原則が問われる問題でもあります。このような脱法行為を労働者との話し合いもせずに強行することになれば、争議権、労働協約締結権を剥奪されている国家公務員労働者の労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度をみずから否定するものと言わざるを得ません。断じて認めることはできません。
 なお、特別職の給与は一般職に比べて高額の水準にあり、一般職の給与法とは同列に論じられないことは明らかです。よって、法案には賛成するものですが、不利益不遡及の原則を逸脱する部分は同意できないということを改めて明確にしておきたいと思います。
 民主党、社民党提出の修正案は、不利益不遡及の原則に立って、実質的な四月遡及を削除し、労働者との話し合いを義務づけるものであり、当然賛成できるものであります。このことを申し上げまして、討論を終わります。
遠藤委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 これより採決に入ります。
 初めに、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、後藤斎君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、後藤斎君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 この際、ただいま議決いたしました一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、林幹雄君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。林幹雄君。
林(幹)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 今回の月例給与のマイナスが公務員の士気に与える影響、民間賃金・経済に与える影響等を重く受けとめ、政府は一刻も早くデフレ克服のための総合施策を実施すること。
 二 今回の減額調整措置は、公務員給与の改定時期が民間と乖離している人事院勧告制度特有のあり方に起因していることに、政府は十分留意すること。
 三 政府及び人事院は、年間における官民給与を均衡させる方法等を決定するに当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。
 四 政府は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、公務員制度改革に当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。
以上であります。
 何とぞ御賛同のほどお願い申し上げます。
遠藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
遠藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十分散会


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