衆議院

メインへスキップ



第8号 平成15年3月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年三月十九日(水曜日)
    午後零時四分開議
 出席委員
   委員長 遠藤 武彦君
   理事 佐藤  勉君 理事 林  幹雄君
   理事 八代 英太君 理事 安住  淳君
   理事 武正 公一君 理事 桝屋 敬悟君
   理事 黄川田 徹君
      浅野 勝人君    伊藤信太郎君
      岩永 峯一君    奥山 茂彦君
      上川 陽子君    左藤  章君
      佐田玄一郎君    滝   実君
      谷  洋一君    谷本 龍哉君
      菱田 嘉明君    平林 鴻三君
      福井  照君    宮路 和明君
     吉田六左エ門君    荒井  聰君
      伊藤 忠治君    大出  彰君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      中沢 健次君    松崎 公昭君
      山田 敏雅君    山元  勉君
      西  博義君    山名 靖英君
      山岡 賢次君    春名 直章君
      矢島 恒夫君    重野 安正君
      横光 克彦君    金子善次郎君
      三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        加藤 紀文君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   政府参考人
   (総務省情報通信政策局長
   )            高原 耕三君
   参考人
   (日本放送協会会長)   海老沢勝二君
   参考人
   (日本放送協会専務理事・
   技師長)         吉野 武彦君
   参考人
   (日本放送協会専務理事) 板谷 駿一君
   参考人
   (日本放送協会理事)   山村 裕義君
   参考人
   (日本放送協会理事)   笠井 鉄夫君
   参考人
   (日本放送協会理事)   山田 勝美君
   参考人
   (日本放送協会理事)   安岡 裕幸君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十九日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     福井  照君
  滝   実君     菱田 嘉明君
  野中 広務君     奥山 茂彦君
  久保 哲司君     西  博義君
同日
 辞任         補欠選任
  奥山 茂彦君     野中 広務君
  菱田 嘉明君     滝   実君
  福井  照君     上川 陽子君
  西  博義君     久保 哲司君
    ―――――――――――――
三月十八日
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)
同日
 電磁波から身を守るため予防原則に基づいた対策に関する請願(小沢和秋君紹介)(第八八五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
遠藤委員長 これより会議を開きます。
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長高原耕三君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長円谷智彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。
    ―――――――――――――
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
片山国務大臣 日本放送協会平成十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。
 まず、収支予算について、その概略を御説明申し上げます。
 一般勘定事業収支につきましては、事業収入は六千七百三十八億円、事業支出は六千六百六十億円となっており、事業収支差金七十七億円は、全額を債務償還に使用することとしております。
 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出とも八百六十五億円となっており、放送設備の整備など建設費に七百八十八億円を計上しております。
 次に、事業計画につきましては、公共放送の使命に徹し、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や多様で質の高い番組の放送を行うとともに、放送を通じて国際交流と相互理解の促進に貢献していくこととし、また、地域放送を充実するとともに、デジタル放送の普及促進や新しい放送技術の研究開発等に積極的に取り組むこととしています。
 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ、信頼される公共放送を実現していくこととしています。
 具体的には、三大都市圏での地上デジタルテレビジョン放送の開始、子供向け番組の強化等教育テレビの刷新、夕方時間帯を中心とした地域情報番組の拡充等を計画しております。
 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。
 総務大臣の意見といたしましては、これらの収支予算等につきまして、適当なものと認めた上で、受信料により維持運営される協会は、受信料の公平負担を一層徹底しつつ、公共放送としての使命達成に積極的に取り組むとともに、事業運営の適正性及び透明性を一層確保していくことが必要であり、このため、事業計画等の実施に当たり、特に配意すべき事項を付しております。
 具体的には、我が国のデジタル放送の普及発達に先導的な役割を果たすこと、受信契約の締結等の徹底について検討すること、事業全般にわたる情報公開を一層推進し、協会の経営に対する視聴者の理解を得られるようにすること等の六項目であります。
 以上が、提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
遠藤委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長海老沢勝二君。
海老沢参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。
 平成十五年度の事業運営に当たりましては、公共放送の使命に徹し、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や多様で質の高い番組の放送を行うとともに、放送を通じて国際交流と相互理解の促進に貢献してまいります。
 また、平成十五年十二月から地上デジタルテレビジョン放送を開始するとともに、地域放送の充実や新しい放送技術の研究開発などに積極的に取り組んでまいります。
 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ、信頼される公共放送を実現してまいります。
 主な事業計画について申し上げますと、まず、建設計画におきまして、地上デジタルテレビジョン放送やハイビジョン放送のための設備の整備を行うとともに、放送会館の整備などを実施いたします。
 事業運営計画につきましては、国内放送及び国際放送の充実を図るとともに、緊急報道に備えた取材体制の強化や放送技術などの調査研究を積極的に推進いたします。
 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千七百三十八億円、国内放送費などの支出六千六百六十億四千万円を計上しております。事業収支差金七十七億六千万円につきましては、債務償還に使用することとしております。
 また、資本収支につきましては、支出において、建設費など総額八百六十五億六千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額八百六十五億六千万円を計上しております。
 なお、受託業務等勘定におきましては、収入八億八千万円、支出七億六千万円を計上しております。
 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。
 以上、日本放送協会の平成十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、一層効率的な業務運営を徹底し、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。
 委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出彰君。
大出委員 民主党の大出彰でございます。
 参考人の方々、本日は御苦労さまでございます。
 イラク攻撃を前にいたしまして怒りに打ち震えておりますが、NHK予算も大変重要でございますので、気を取り直して質問させていただきたいと思います。
 まず、受信料についてでございますが、今は契約義務になっておりまして、それを、公平負担のために罰則規定を設けて、支払い義務、すなわち強制化しろという案がございますが、これについて、私は反対でございますが、会長あるいは参考人の方、いかがでしょうか。
海老沢参考人 NHKは放送法に基づいてつくられました特殊法人でございます。私は、このNHKの存在、組織というものは、世界に例のない、最も理想的な、性善説に立った組織だろうというふうに思っております。それは、視聴者国民一人一人が、株式会社でいえば株主でありますし、協同組合でいえば組合員である。そういう面では、NHKは国民の放送局と言ってもいいと思います。
 そういう面で、我々は、常に視聴者国民と緊張感を持ちながら、視聴者国民の声を真摯に受けとめながら番組をつくり放送している。そういう面では、今の受信料制度は強制力はありません。罰則規定はありません。そういう中で、NHKと視聴者との信頼関係で成り立っている、この制度をできるだけ維持したいと私は思っているところであります。
 ただ、最近、不況が続いておりますので、受信料収入が思うに任せないというのも事実であります。そういう面で、視聴者の公平負担という原則を守りながら、我々は今後ともこの制度を維持するように努力してまいりたいと思っております。
大出委員 ちょうど二年前ぐらいに、受信料の質問をしたことがございますが、公正で中立でそしてユニバーサルなサービスを行うために、私たち受信者がむしろ国家や財界からの干渉を受けないようにNHKを育てていかなければいけないんだ、そんな話をしたことがございますが、まさに、そういう意味におきましては、強制化しない方がいいと私も思っておるところでございます。
 次の質問でございますが、ちょっと飛ばしまして先に質問をいたしますが、最近、NHKの視聴率が大変好調であるということで、どうも民放を抜いて二番になったということが言われておりますが、この辺のところ、どのような認識をNHKとしてはお持ちなのかお答えください。
海老沢参考人 先生御案内のように、二十一世紀に入りまして依然としてデフレ傾向、景気がよくない、そういう中で、視聴者国民を元気づけるような、また勇気づけるような質の高い番組を我々はつくる使命があるだろう。そういうことで、この際、日本とは、日本人とは何かということをバックボーンにして、そして、できるだけ視聴者国民が元気が出るような番組をつくってみようということで、今「プロジェクトX」とか「その時歴史が動いた」とか、いろいろなドキュメンタリーもつくっておりますし、また、将来を担う子供たちが健全に育つようないい番組をつくっていこう、そういう姿勢で、今、一本一本制作しながら、質の高い番組に努力しているところでございます。その結果が数字としてあらわれたと思っております。
 我々は、視聴率にとらわれることなく、視聴者国民の生活に役立ち、心を豊かにするような質の高い番組をつくれば必ず国民から支持を得られるだろう、そういう思想でやっております。
大出委員 視聴者の声をよく吸い上げて番組づくりをしているからだとは思っておりますが、実は、こういうことを言いますと、民間放送に手のうちをばらすようなことになるかもしれませんけれども、「プロジェクトX」、なぜNHKの視聴率はTBSを抜いて二番になったのか、その裏に何があったのか、きょうはそのなぞに迫ると冗談めいたことを私は申し上げましたけれども、一九九九年五月十八日にNHKの会長が、視聴者総局を設置する、こう発表なさいましたね、私は、この視聴者総局の設置にあったと見ているんです。特に視聴者コールセンターの役割、視聴者とのインタラクティブな回路を築いたことにあったのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
海老沢参考人 私ども、視聴者本位といいますか、視聴者国民がNHKを支えている、そういう立場でありますので、できるだけ多くの方々から意見を吸い上げる、意見を真摯に聞く、そういう中で、今視聴者が何を要望しているのか、要求しているのか、そういうことを土台にしながら番組をつくっていこう、そういう思想であります。
 そういう面で、視聴者総局をつくりまして、受信料収納の際に、視聴者がNHKに対してどういう要望をしているのか、あるいは、今、電話とか投書とかで年間六百万件を超える要望が寄せられております。そういう中を一つ一つ吸い上げながら番組づくりをする。また、「のど自慢」とか地方派遣の番組を展開しているわけであります。それと同時に、また文化事業だとか厚生事業、いろいろやっておりますけれども、それもやはり、視聴者国民と一緒になって汗をかいて番組をつくろうという、視聴者参加の番組にも力を入れている、そういう考えでやっているわけでございます。
大出委員 次の質問をいたします。
 アナログからデジタル化に伴って多額の経費がかかると思いますけれども、現行受信料で対応するという方針のようですね。そこで、そのことから、二〇〇三年の、今年度の会長の年頭所感にもあらわれていますけれども、営業活動の強化というのをうたっておられます。
 そこで、営業のコストもできるだけ削減しようという方向に動くと思いますけれども、これによっていわゆる地域スタッフ、受託事業者の皆さんの処遇の低下などにつながるのではないかと心配をするわけなんですが、その点はどうでしょうか。
海老沢参考人 今、非常に不況の最中でありますし、失業者も五・五%、そして経済成長も鈍っているという段階、失業者も出る、倒産も起きるという実態でありますので、非常に今、受信料の収納に苦慮していることは事実でございます。
 そういう中で、今、五千人を超える地域スタッフが一軒一軒回って、受信料の意義を話しながら収納しているわけでありますけれども、そういう中で、できるだけ目標を達成しようということで現場には頑張ってもらっております。そういう中で、収入が減ったり、あるいはまた、過酷な仕事に走らないように十分に配慮しながら今業務を展開しているところでございます。
 そういう面で、これからデジタル化で設備投資が大幅にかかりますけれども、これはこれとして、やはり我々は、働く者といいますか、職員や地域スタッフが財産だ、そういう考えで仕事をしておりますので、できるだけ収入減にならないように努力していきたいと思っております。
大出委員 もう時間が来ていますので。
 最初に強制化をしない方がいいという話の質問をしたのは、強制化と営業活動の強化というのは裏腹な関係になっていまして、営業の強化ということで地域スタッフの処遇にしわ寄せをすると結果的には受信料収納が少なくなるという関係になりますので、その点を念頭に置きながら質問したんです。
 そして、十三年度の会計検査院の報告書の中に、NHKの非現用不動産のことが書いてありまして、その適切な売却等について注目するというのが書いてありまして、営業の基本は受信料でございますけれども、非現用不動産の効果的な売却も安定財源の一助にすべきではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
海老沢参考人 平成十三年度末での使っていない土地とか建物、これを売却しますと二百数十億のものになります。これにつきましては、私どもはいろいろ計画を立てながら、一遍にこれを売却するのではなくて計画的に、また必要なものはやはりまだ残さないといけませんから、そういう面で計画的に、総合的に考えながら処分をして設備投資の方へ回していく、そういう考えでやっているわけであります。
 そのためには、できるだけこれは目に見える形で、公開と参加ということを私は言っておりますので、できるだけオープンな形で処分をしていきたいと思っております。
大出委員 私は時計を間違えて見ているようで、まだありましたので質問をいたします。
 ちょっと質問通告をしておりませんけれども、実は、会長の年頭所感の中に、第三十回国際エミー賞授賞式というのに招かれまして、経営者賞というのを受賞なさいましたね。そのときのを読ませていただきました中にこういうのがありました。
 「私が、なぜ、ハイビジョンにこれほど熱心に取り組んでいるのか」という質問が出されました。これに対して、私は、「日本は第二次世界大戦の敗戦を踏まえ、戦後の世界平和のためにどういった貢献ができるかが課題だと思ってきた。」
大変すばらしいことだと思うんですけれども、
 「日本を代表する公共放送であるNHKには、その時代の最高の技術を放送に取り入れ、放送を多様化・高度化し、文明間の対話や相互理解をさらに深めることで、世界平和の構築に役立てる責務がある。こうした観点から、ハイビジョンの普及に努力している」と答え、出席された方々に大いに納得していただきました。
という文章があるのでございます。
 これを読んだときに、頭の中に今イラク攻撃のことがあるものですから、放送人として今の状況をどんなふうに感想をお持ちなのかを、大変答えにくいかと思いますが、お聞きしたいと思います。
海老沢参考人 私ども日本は、第二次世界大戦に敗れたわけであります。そういう中で、日本は、あらゆる国と仲よくする、相互理解を深めてお互いの立場を尊重し合いながら平和国家をつくっていこう、平和な社会をつくっていこうというのが基本だろうと思っております。
 そういう中で、今度のイラクの情勢が非常に今、急変しております。私どもはできるだけ平和裏に解決してもらいたいという希望を持っていたわけでありますけれども、今非常に切迫した状況だというふうに我々は取材の中で把握しているわけであります。
 そういう面で、これからのイラク情勢の報道に当たっても、できるだけ多角的に、いろいろな情報を総合しながら、国民に事実を事実として、また、いろいろな考え方が世界じゅうあるわけでありますから、国論が二つ、三つに分かれるような大問題であります。そういう面で、できるだけ多角的な取材をして、できるだけ事実を詳しく伝え、そして、国民が判断する材料を多く提供していきたいと思っているところであります。
大出委員 時間が参りましたので質問を終わります。ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、松崎公昭君。
松崎委員 民主党の松崎でございます。
 NHKは私も大ファンでありまして、経営の問題とか中身に関しましてはきょうは触れずに、むしろ、今、時代の状況、それを受けての放送の問題を少し質問したいと思っております。
 あすにもイラクの戦争が始まりそうだという、極めて戦後の体制もここから変わるという節目のところに我々は今いるわけでありまして、大変な世界じゅうの緊張の中におります。
 特に、我々日本は北朝鮮を抱えておりますので、その辺は普通のほかの国々よりも、もっとイラクのこの戦争の問題は切実であります。つまり、一部情報によりますと、二十日にテポドンが発射されるんではないかなんといううわさも実際にあるわけですね。
 そこでお聞きするのは、国民にとりまして、こういう場合にどういう情報が確実に伝えられるか、緊急に伝えられるかということは、非常に国民的にも物すごく興味のあることと同時に、みんなが心配することなんですね。
 イラクに関してはもう、きょうの十時から国際放送の幅を広げたということで、通常の形の報道では緊急事態にも対応しているわけですけれども、私は、もう少し踏み込んで、少しあおるわけじゃありませんけれども、北朝鮮の問題があって、もしこれがノドンでありましても飛んできた場合にどういう緊急放送が行われるのかということが非常に国民の関心事。また、大規模テロとか原発でありますとか、それが今のNHKの状態、まあ災害放送は法律で決まっていますけれども、それ以外に緊急事態のときにどんな対応が、あるいは緊急放送のマニュアル、そういったものはできているのかどうかお尋ねいたします。
海老沢参考人 日本は非常に災害の多い国であります。そういう面で、できるだけ国民の生命財産を放送を通じて守っていこうというのが我々の立場であります。
 そういう中で、戦後できました放送法であります。いわゆる国家間の戦争あるいは国家間の紛争というものについての規定は放送法にはございません。ただ、我々はやはり、放送事業者として国民の生命財産を放送を通じて守る使命があるだろうということで、何かあればいつでも放送できる体制を今とっております。
 つまり、ラジオ第二放送を除いて、すべてのラジオ、テレビの波は今二十四時間体制になっております。ですから、緊急事態があればいつでも放送できる。一たんとめたものをさらにまた、火おこしと言うんですけれども、それをしなくても、いつでも放送できる体制をとっております。
 ただ、その第一報、情報をどうとるかというのが問題であります。そういう面で今、それこそ先生のお話にある、北朝鮮のミサイルなりそういうものが発射された場合にどうなんだというその第一報は、残念でありますけれども、我々にはそれを把握する機関といいますか、そういうものは持っておりません。それはやはり、政府なりそういう関係当局からの情報をとってそれを放送する、そういう段階であります。
 そういう面で、そういう事態が起これば、我々に情報が入ればそれは直ちに、まず確認しなきゃいけません、これがデマであったりしたら困りますから。そういう面では確認をとりながら、それが事実としてはっきりわかれば直ちに放送する。今そういう状態にあるということであります。
 御承知のように、私ども、津波とか地震とか大災害の場合は、今全国に四百二十五のロボットカメラを配置して、あるいは中継車なりヘリコプターですぐ対応できますけれども、そういう外国からの侵略的な行為について、どういうふうにそれをキャッチしてどうするかというところまでまだ準備をしていないというのが現状であります。
松崎委員 そういうお答えだろうとは思っておりました。つまりそれは、国の方でそれができていないということなんでしょうけれども、もうノドンにしても数分で着くというようなこと、ですから、これは、安全保障会議でありますとか、国の、内閣の緊急対応との問題、まあ事態法ができておりませんから、これは国会も含めて我々の怠慢なのかもしれませんけれども、もう現実の問題になってきているんですね。今までにないことで、イラクの問題に連動して北朝鮮もあるよと。だから、これはやはり今、まあ事態法ができていなくても、恐らく内閣は何らかの形を考えているんではないかと思うんですね。
 その辺で、本来は安全保障の大臣に聞かなきゃいけないんでしょうけれども、総務大臣、内閣の一人でありますから、今の質問の中で、緊急事態のときの、国がどう把握してそれをどういうふうに公共放送に伝えるか、そのチャンネルなりシステムができていないようですけれども、これで、あすにもあさってにも、テポドン、二十日なんて話がかなり確実性のある情報として来ているものですから、どうなんでしょう、内閣として。
片山国務大臣 テポドンがあしたかあさってかという話は私も承知いたしておりませんが、今委員言われるように、イラク情勢が大変緊迫した情勢になってきまして、きのうも夜、拡大安全保障会議を全閣僚でやりました。
 そこで、本来は、有事立法というものがちゃんとできて、その中に国民保護法制もあって、報道機関の役割も、国との関係でしっかりしておくべきなんですね。しかし、これはちょっとおくれておりますが、恐らく、緊急事態が起これば安全保障会議が作動して、NHKにこういう協力要請する。しかし、今見ていると、一番ニュースが早いのはやはり報道機関ですね、特に国際的な関係は。
 そういう意味で、そこの連携は、私もNHKを担当させていただいておりますから、閣内で、内閣の中ではっきり言おう、こういうふうに思っておりますが、私はこの問題全体の担当ということではございませんけれども、特に情報通信、放送の関係はやはり有事の際にどういう役割を担うか、仮に法律はなくても、それははっきり言い続けておくことが今後必要ではないか、こういうふうに思っております。
松崎委員 前回の事態法はそういう国民の保護の部分が抜けていたので、我々はあのままじゃだめだということだったんですね。だから、そういう意味では、しっかりとしたものを整備して、早く出して、しっかり審議しないといかぬと思います。
 それでは、次は放送と人権の問題なんですけれども、ちょっと古くなりますけれども、平成六年の松本サリンの問題がありました。河野さんが何冊か本を出されていますね。そのとき、やはり、警察の冤罪もひどいけれども、誤報でありますとか、報道が間違っていることによるいわゆる報道被害でした。これで非常に彼は大変な思い、私もあの当時はこの方が犯人ではないかと思うような報道でした。
 これに関して、もちろんこの問題は難しいんです。人権の問題、それから同時に、表現の自由、取材の自由の問題もありますから、これは今継続中の人権擁護法案のメディアと人権侵害の問題でもいろいろ問題になっております。この河野さんの表現じゃありませんけれども、本当に、少し報道がひど過ぎると。やはり視聴率ばかりを追いかけるとある意味じゃこういうふうになるということで、残念ながらこの報道ではNHKも謝っているんですね、河野さんに対して。この辺のことをちょっとお話しいただければ。これはいいですわ、もう時間がないので。
 それよりも、名前を出すということ。これは、欧米ではある程度刑が確定したりしないと出さないそうでありまして、これは私、前から気になっていたんですね。河野さんの場合は、名前は出さないにしても、もう特定できるような形で報道していましたから、出したと同じなんです。報道において、今、被疑者で名前を出されちゃうんですね。最近有名になったロス疑惑の問題があったり、いろいろありますけれども、それからO・J・シンプソンの問題もありましたけれども。こういう相当シビアな問題なんですけれども、名前をどういう形で出しているのか、出さないのか、NHKの基準みたいなのは何かありますか。
板谷参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のように、容疑者や被害者の氏名については実名を原則としております。容疑者や被害者の氏名自身がニュースの要素であり、どこのだれがどのようにというようなことは、事件、事故の事実関係や背景を明らかにするためにやはり必要な要素だと考えております。
 ただ、加害者が少年である場合とか、それから被害者についても、性犯罪事件の被害者だ、そういう場合には、人権、プライバシー尊重の立場から匿名にする方が望ましい、そういうケースもある。ケースごとに判断しているということでございます。
 ただ、欧米各国でも一律に基準があるわけではなく、実名を使うにしても、ミスターというのをつけたり、つけないところもあったり、いろいろな伝え方があると聞いております。
 いずれにせよ、NHKは、基本的人権を尊重して、要するにこれを使命としているわけですから、人権を十分に尊重しながら、正確な報道をするということに努めていきたいというふうに思っております。
松崎委員 そこら辺は、表現の自由、報道の自由とも非常に絡みます。ですから、これから人権擁護法案でも争点になってくると思うのですが、ただ、やはりちょっと過剰な取材でありますとか、それがあり過ぎるなと。NHKよりも民放が多いんでしょうけれども、そこはやはり業界全体でもしっかり考えていただきたいと思います。もっともBROなんかが第三者機関でつくられておりますから、これでもNHKにも訴えというか申し入れが四件ぐらいありますよね。ですから、よほどしっかりしていただきたいな、そう思います。
 もう一つお聞きしたいのは、過剰報道の一つかどうかわかりませんけれども、極めて我々に関係する選挙報道ですね。近々、衆議院選挙がありますが、統一選挙もあちこちであります。出口調査とか、それから、だれが勝つかどうかという予測報道が私は非常に過熱し過ぎているのかなと。もうゲームみたいになっていますよね。これは、へまやると飛ばされたりなんということで、大変なようでありますけれども。
 この出口調査、よくホースレーシングというんだそうですね、競馬中継みたいに。我々のことを競馬の馬みたいに思われているのかもしれませんけれども。私は、選挙報道に関して、出口調査、早く知らせるというだけで、そんなに速報主義の必要性があるのかと。
 実際にアメリカの大統領選挙も、この前のブッシュさんの当選、あれは選挙制度の問題があったんですけれども、やはりメディアの早まった報道という側面もあったそうであります。それから、前回の衆議院選挙では、自民党さんの小杉先生が当確を打たれて、実際は落選された。これは多分、民放だと思いますけれども。
 そういうことで、やはり過剰なんですね。出口調査も結構ですけれども、この辺どうも、ちょっと総務大臣に聞いてみたいんですよ、行き過ぎじゃないのかなと思うんですけれども、予測報道でありますとか選挙報道、どうでしょうか。
片山国務大臣 私は、個人的には、今の日本の選挙に関する予測、いろいろな調査の報道、これはいささかやや過剰じゃないかという気がしているんですね。よその国で、一週間は禁止するとか、告示の前一週間から禁止するとか、告示後は禁止するとか、いろいろなあれがあるようですけれども、やはりいろいろな意味での影響を選挙の結果に与えるんじゃなかろうか、選挙の公正がやはりどうなんだろうかという気はちょっとしております。
 ただ、表現の自由、報道の自由という大原則がありますから、その辺の兼ね合いをどうするのか研究課題だとは思っております。
松崎委員 小泉旋風もある意味ではそういう例の一つ。それから前回の選挙で、うちの方が、民主党が予測以上にとった。これはアナウンス効果があったり、いろいろあると思うんですけれども。だから、どの政党にもプラス、マイナスあるんですけれども、一般的に見てちょっと激し過ぎるんじゃないか。
 最後に、NHKさん、本来の選挙報道、これは私は、放送法の第一条、健全な民主主義の発達ということですから、この辺をひとつしっかりと、政策を対比させるとかそういうことを、しっかり本来の選挙報道のあり方ということを考えてやっていただきたい。これは時間がありませんので要望にとどめておきます。
 ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、武正公一君。
武正委員 民主党の武正公一でございます。
 まず、海老沢会長にお伺いをいたしますが、平成十二年、二〇〇〇年三月十六日の衆議院逓信委員会で、会長はこのような御発言をされております。いわゆるCS百十度の件でございますが、データ通信に関してですが、「このCSの百十度のトラポンを使わせてもらって、そしてきめ細かい地図とか図形も使った情報あるいは番組広報、そういうものを、営利的でなくて公共放送にふさわしいものを少し幅広くやっていったらどうかということは私個人として今考えております。」と。
 これについて、当時、小坂政務次官がこのように答えられています。その一連の流れの中でありますが、「テレビジョン放送の免許を受けた者がデータ放送等の周波数を自由に使える、」中略がありまして、必ずしもやはりこれは消費者の利益につながらないのではないか、また、電波の有効利用という面からも我が国においてはなかなか難しい面があるということで、その場での質疑では小坂政務次官もそれをある面否定をされた。
 つけ加えて、「この点につきましては、希少有限な電波の公平かつ能率的な利用の観点から、現在のようなあらかじめ決められた周波数帯を使用することが適当ではないか、」こういったやりとりがあり、その後、秋に向けてこのCS百十度、トラポンを使ってのデータ通信、NHKとして取り組みたいということについての論争があったわけでございます。
 海老沢会長からも、各新聞で、私は問題提起をしているんですというようなコメントもあったりして、さまざまなやりとりがありましたが、秋には、これについてはあきらめる、撤回というような報道がされたわけでございますが、今現在、このデータ通信への参入あるいはCS百十度等を利用すること、これについて会長はどのようにお考えでございますか。
海老沢参考人 当時、BSデジタル放送、そして百十度にCSも乗り出してくる、そういう時代背景がありました。
 私ども、BSデジタル放送の中でデータ放送が非常にメリットがあるということで今やっておるわけでありますけれども、帯域の幅が非常に狭い、二スロットしかない。これでは、例えば阪神・淡路大震災のときのように、安否情報が非常にたくさん入ってきた場合に処理できない。そういう面で、そういう安否情報なり非常事態にいろいろなデータを送るためには、やはり十なり十数スロットがないと視聴者の要望に十分こたえることができない。そういう面で、CS百十度ならば非常に幅広くいただけるんではなかろうか、それならばCS百十度を我々も借りてやれば視聴者のためになるだろう、そういう発言をしたわけであります。
 その後、NHKの業務範囲といいますか、非常にNHKはそれではやり過ぎではなかろうかというようないろいろな意見が出ました。しかし、そういう中で今、これをなかなか無理だということで私も断念したわけでありますけれども、その後、この二スロットの中で今いろいろ工夫をしながら、技術の開発を進めながら、二スロットの中でもかなりの情報を出すことができるようになりました。しかし、まだそれでは十分ではありません。
 そういう中で、今のこのBSのアナログ放送をいつ打ち切るのかという議論の中で、私ども、二〇〇七年の段階で今の衛星が寿命が切れますが、しかし、その段階でもやはり五百万世帯前後がデジタル化しないで残るだろうと。したがって、さらに、二〇〇七年ごろにまた新しい衛星を使って、二〇一一年の地上デジタル放送が始まる時期まで、そこまで継続していってもらいたいという要望を総務省に出して、その方向で今、最終的な詰めが行われるというふうに聞いております。
 したがって、それが、我々の主張が認められますと、今、BSのアナログのハイビジョンの部分がそのまま残りますので、その部分を使わせてもらえば十分データ放送の役割を果たすことができるだろう、そう思って、そういう要望を今出しているところであります。
 今のところ、CS百十度に我々が参入することは考えておりません。
武正委員 今、総務省に要望を出しているということでございまして、総務大臣には、ここではそれに対してはお答えをお聞きいたしません。ただ、そのCS百十度のときも、NHKがデータ放送、データ通信に参入するについてはやはり法律の改正が必要ではないかという議論もございました。あるいはNHKの肥大化を懸念する声もございました。これはさまざま、NTTからもあったと聞いております。
 こういったことでございまして、NHKの会長として、NHKを経営されるその陣頭指揮に立っておられて、多分、ある面もどかしさも感じるところもあろうかなというふうに思っております。ある面やはり法律での縛り、そしてまた、これは逆に民放からは、NHKは優遇されているんじゃないかと。法律では縛られているというもどかしさも感じながら、民放からは、いや、NHK優遇だよと。そういった中で、会長もこうして年に一度、二度と予算、決算で国会に御登場いただいているんですが、なかなか言いたいことが発言できないというようなもどかしさを実は思っておられるんではないかなというふうに拝察します。
 そういった中で、既に石原大臣や小泉首相からも、NHK独法化、特殊法人改革でどうか、もっと自由にやったらどうかというような発言もありました。まあこれはその後、矛がおさまっております。あるいはまた、経済産業研究所の池田信夫上席研究員からは、NHKのネット放送については規制を全面的に撤廃し、同時に株式会社化を検討すべきだというような、こういった提起もあります。やはりNHKのあり方について、今回、放送政策研究会から最終報告も出ておりますが、まだまだ、もっと大きなくくりで、放送法、電波法も絡めて議論をしていくべきときではないかなというふうに思います。
 そういった中で、実は一九六二年、昭和三十七年十月、郵政大臣から諮問を受けまして、臨放調、臨時放送関係法制調査会、もう今から四十年前でありますが、民放連そしてNHKもそれぞれ要望を出しております。
 民放連からは、NHKと民放二本立てでいくべし、あるいは、NHKは別の法律をつくるべし、編集の自由を確立すべし、免許制度を再検討すべし、いわゆる施設免許から事業免許にすべし、あるいは、放送に関する独立した強力な特別審議会、これが必要だ、そしてまた、NHKの現行の受信契約制の見直しが必要、民放も海外放送を行えるようにしてほしい、こういった要望が出ておりましたが、このとき、NHKさんからはどのような要望、意見を出されたかお話をいただけますでしょうか。
山田参考人 お答え申し上げます。
 NHKは、その翌年、一九六三年十一月、臨時放送関係法制調査会という調査会の意見聴取に対しまして、「日本放送協会の放送法制に関する意見」ということで、放送に関する基本問題、NHKや民放に関する事項など、NHKの放送法制に関する基本的な考え方を陳述しております。
 要約して申し上げますと、その際の意見では、放送行政について次のような意見を述べております。
 放送に関する行政につきましては、法律による行政の原則を確立し、放送行政の基準となる事項はもとより、放送事業者の権利義務に関する事項は、原則として、法律の定めるところによるものとすべきである。次に、放送行政には、特に、長期的見通しに立つ計画性と、政治的、経済的、社会的圧力からの中立性が要求される。さらに、放送行政の管理運営に当たる行政機関としては、放送行政に計画性と中立性を与え、客観的に公正な行政を行わせるため、郵政省の外局として放送委員会を設置するのが妥当であるというふうな意見を、これは、その当時としては、NHKとしてこういう意見だったということであります。
武正委員 放送についてのさまざまな根拠規定などを法定化すべきということや、郵政省の外局としての放送委員会、NHKからもこういうような要望、意見が出されておりました。
 それを受けて答申として出てきたのが四本ほどありましたが、その中で、特に、独立した組織をつくっていこうよというような答申が出てまいりました。これは、番組審議機関やあるいは世論調査機関というのが望ましいというようなことでありまして、またあと、放送行政の公正中立と一貫性を保つため、放送行政に関する委員会を設置し、郵政大臣は放送局免許などの基本的事項について委員会の議決に基づいてのみ権限を行使するという、そういった答申も出ました。
 特にこの放送行政に関する委員会は、いわゆる八条委員会をさらに強力なものにしようと、今のように。委員会が議決をしなければ当時の郵政大臣はそれについて権限を行使できないというような答申が出たわけでございますが、また、三条委員会にしろという一部意見の、少数意見でありましたが、そういった意見もありました。
 私は、先ほどのNHKの会長のデータ通信に関する要望が今総務省に出されていることも含めまして、やはり総務省がこうした、例えばチャンネルプランの法的根拠についての法定化の要望も、実は懇談会から昭和六十二年にも出されております。こうした点はやはり独立性の高い委員会で判断をすべしというふうに考えるのでありますが、この答申、結局、当時は廃案になってしまったんですが、民放連、NHKからの要望、そしてこうした答申、これについて、総務大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。
片山国務大臣 一九六四年に答申が出ているんですね。昭和三十九年ですから、相当な昔といえば昔でございますけれども、そのときに、今武正委員からお話しのように、三条委員会か八条委員会か、八条委員会の方がいいだろうと。三条委員会というのは簡単に言うと行政委員会ですから、八条委員会というのはこれは附属機関ですから、審議会ですからね。八条委員会でいいけれども、八条委員会が言ったらその決めたとおりに郵政大臣はやれ、こういうことなんですね。だからこれも、八条機関としては、なかなかそういうことを義務づけるということは八条機関の性格からいっていかがかな、こういう感じはするんです。
 そこで、現在、電波監理審議会が御承知のようにありますよね。ここで我々がいろいろな電波に関するようなことについては諮問して答申をいただくんですが、答申どおりやっているんですよ、法律は、議決に基づきとかそのとおりやれとは書いてありませんけれどもね。だから、精神は、私はこのときの答申の精神を生かしている、こういうことでございます。
 それから、アメリカにはいろいろな委員会があるとよく言われるんですが、アメリカは大統領制ですからね、大統領に権限が集中し過ぎているんですよ。だから、委員会をいろいろつくって分けるんですよ。日本は、もう何度も同じことを言いますけれども、議院内閣制ですから、総理はやはり、あれは閣議の議長みたいなものですから、簡単に言うと。今はもうちょっと昔よりは力がありますけれどもね。任命権はもちろんある、人事の。
 そういうことでございますが、私は、委員会を日本に相当持ち込むのがいいのかどうかということは、前からこう思っておりまして、しかし、御意見は御意見として、今後とも中長期で検討すべきだ、こう思っております。
 NHKの御要請については今どうするか十分考えておりまして、電波は有限ですから、電波の調査、公表については去年の電波法の改正でお認めいただきました。我々はそれに基づいて、やはり電波の再配分のルールをつくっていこう。これから電波需要はどんどんふえるわけですから、そういうことも考えておりまして、今回も一部電波法の改正を出させていただきましたけれども、より大きい電波法の改正が次の課題だ、こういうふうに思っておりますので、また十分な御議論をさせていただきたい、こう思っております。
武正委員 昨年、FCCからのレポートも出まして、これまでの周波数は希少資源である、政府による配給が必要といった考えから、周波数は使い方によって供給を増加でき、政府は周波数へのアクセスを調整するというように、アメリカあるいはイギリスも今さまざまな改革をしております。日本はもっともっと大胆な改革に取り組むべきでございまして、特に放送の独立性を堅持するためには、私は、一昨年の一月六日ですか、一府十二省庁に統合されたわけですから、より強力な中央省庁になっているゆえに、準立法、準司法的なものは独立した行政委員会にすべしというふうに考え、再度再度このことを申し上げ、私の質問等を終わりにします。
 ありがとうございました。
    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕
林(幹)委員長代理 次に、島聡君。
島委員 民主党の島聡でございます。
 NHKに対して、本年はNHKが我が国のデジタル放送の普及、発達に先導的な役割を果たすことというようなことが総務大臣の答申としてあったようであります。
 私は、きょうの質問は、このデジタル放送の基幹としてハイビジョン放送をNHKが随分やられますが、この高画質のハイビジョン放送というのは、将来的に、e―Japan、ブロードバンドインターネットのストリーミング配信サービスも十分機能する、したがって、NHKの持っているいろいろな映像、そういうものは今後の日本のブロードバンド社会に非常に貢献するはずである、そういう観点から質問をしていきます。
 要するにコンテンツの話なんですね。もちろん、今はNHKの方もインターネットに関してはいろいろな制約があることは知っています。日本はハリウッドのようなところはありませんから、コンテンツをどんどん発信していくためには、いわゆるNHKの持っているいろいろなもの、今までの映像というのは非常に役に立つと思うんです。
 事前に聞いてみましたら、NHKの映像資産というのは百七十三万本あるそうです。つい最近、今年度、NHKアーカイブスというのができました。所蔵数は五十九万本あるそうです。そのうち外部公開、我々が見られるものというのは、五十九万本のうち二千本しかありません。もちろんこれから五千本ぐらいにふやすという話だそうでございますが、この五十九万本あって二千本しか今公開していないというのは、多分、これはいろいろな一般的な原因があるんですけれども、ブロードバンドネットワークで映像が流れるようになったときには三つの要件があると言われます。
 一つは高速ネットワークシステムの確立。これはe―Japan戦略で言うと、二〇〇五年には一千万世帯に超高速インターネット、三千万世帯に高速インターネットですから、もうすぐできるはずなんです。もう一つは著作権の問題です。著作権処理の問題。もう一つは課金システムの問題なんですが、NHKアーカイブスの所蔵が五十九万本のうち二千本というのは恐らく著作権処理の問題だと思うんですが、二千本しかできなかったという理由は一体何ですか。
海老沢参考人 御承知のように、そもそも放送は放送しっ放しだということで、当時は保存という意識がありませんでした。それができましたのは、VTRが普及し、値段が安くなる、そういう中でソフト、番組が再利用の価値がある、それを認めたのが昭和五十七、八年ごろからで、それからNHKは、すべての放送番組素材を保管している。それまでは、VTRが高くて、キネコでやると非常に高いというようなことで、ほとんどの番組が残っていない。そういう歴史上の問題があります。
 そういう中で、映画の場合はすべてオールライツで権利をとりますけれども、放送の場合はオールライツではありません。最初の放送のときに出演料、脚本料を払い、そして再放送の場合に、また再放送分として二割、三割払っていく、そういうシステムが依然として続いております。ですから、これを再放送する場合は改めて著作権者に許可を得なければできない、そういう非常に複雑なシステムになっております。
 二千本のものにつきましては、これは無料で一般に公開するのでひとつよろしくお願いしたいということで、一本一本、関係者にお話をして著作権をいただいている。例えばドキュメンタリーでも、二十年、三十年前に出演された方がその後思想が変わってしまった、そういう方についてもやはり了解をとらなければいけません。そうしますとなかなか手間暇かかるということで、一年に千本ずつふやしていこうということで、とりあえず今二千本やる、そして毎年千本ずつ、それで三年後には五千本にしよう、さらにふやしていこう、そういう作業をしているというのが現状であります。
島委員 総務大臣、e―Japan戦略でブロードバンドを整備しても、そのブロードバンドがあったとしても、走らせる車がないとだめだという話をこの前したんですけれども、同じことなんですよ。今のままだと、きちんと著作権処理をしていかないと同じことが発生するので、これからどのように、総務省はいろいろ実験をしているという話ですが、それは何年までに整備できますか。
加藤副大臣 今の御指摘の著作権処理システムの実証実験でありますが、平成十四年度から三カ年、十六年度までにおきまして、目下の大きな課題となっております権利処理作業の負担を軽減するため、権利者と放送局をネットワークによって接続して、利用の許諾や、また実績の報告を簡便、確実に行えるシステムの実現を目指した実証実験をしているわけでありますが、十六年度には必要な環境整備を完了する予定であります。
島委員 十六年度までにはそのようにきちんとシステムを完備していただきたいと思います。
 次に、課金システムなんですけれども、NHKのホームページを見まして、「受信契約・各種届出受付」というのがありました。それで、「新たに契約」というところを押してみました。住所、氏名を書いて、ずっと見て、このまま完結するのかと思ったら、最後に、「郵送」「ご連絡いただいた内容を記入した契約書と返信用封筒をお送りします。押印の上、ご返送ください。」とあるんです。何をやっているんだろうという感じなわけですね。
 昨年、オンライン三法も国会を通過しました。あれは行政機関等となっていますね。そこまでなっているんなら、今後、電子商取引というものをきちんと推進するためにも、まず新規契約のものにつきましても、NHKの方も、電子商取引推進という意味でも、これはすぐにコンピューターでできるようにしてはどうですか。
安岡参考人 お答え申し上げます。
 今、NHKのインターネット営業センターは、新規の受信契約とか衛星契約の変更、住所変更の届け出をやっているということです。セキュリティーについても、暗号化技術によりましてインターネット上の第三者に情報が解読できないように、そういう対策を打っているところです。
 ただ、先生御指摘のとおり、インターネットを通じた手続の場合に、申し出が間違いがないかどうかということを確認する必要がございまして、そのために、新規契約等につきましては、郵送して押印してやってくださいという格好になっているところです。
 ただ、私どもの方も、この仕組みを行く行くは、利便を増進するために、インターネット上ですべて完結できるようにぜひしたいなというふうに思っておりまして、いろいろやっております電子署名とか電子認証がいよいよ発足もするということで、恐らく、その辺のところが実際に普及するのであれば、あるいはまた予想もされるということで、積極的に検討を加えて利便を増すように考えていきたいというふうに思っているところです。
島委員 今、日本の電子商取引のBツーBというのが三十八・一兆円あります。BツーC、個人は六千二百二十三億円しかなくて、非常に少ないんです。今後ふえるのは有料デジタルコンテンツ、それが、四百十四億円しか今ありませんが、九千九百四十一億円に五年ぐらいでなると言われています。それから、基本的に時間消費産業、コンサートとか演劇ですよね、そういうものが、またこれが百五十五億円から二千三百三十四億円にふえると言われています。
 だから、NHK、今後いろいろな展開をしていくためにも、きちんと課金システムを完結するようにすることは非常に重要だというふうに思いますし、電子商取引を伸ばすためにも必要だ。個人認証、大丈夫だということでオンライン三法ができたわけですから、ぜひともやっていっていただきたいと思う次第であります。
 それで、どんどんブロードバンド社会が始まります。その中で、今までは、放送法では、協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に受信契約の締結を義務づけています。つまり、テレビを持っている人に受信契約の締結を義務づけているんです。今後、ユビキタスネットワークになったりしてコンピューターでテレビを見ることもできます。もっと言えば、第三世代、第四世代になると携帯電話でテレビを見ることもできます。そうなっていったときに、これは世帯契約をせず、例えば携帯電話だけ持っている人も発生するはずです。携帯電話だけでテレビを見るんです。そういう人たちの受信契約というものは今後どのように考えていくのか、どういうふうに考えているのか、海老沢会長にお尋ねします。
海老沢参考人 今テレビが非常に問題になっているわけでありますけれども、今通信と放送の垣根が低くなり、今先生おっしゃるように、インターネットなりブロードバンドの時代になりました。そして、携帯電話なりいろいろなものでテレビなりラジオが聞ける、見ることができる、そういう時代だと思います。
 ただ、私は、このハイビジョンシステムといいますか、これを中核としたディスプレー、受信機というものは、必ず各家庭では、一台、二台はこれからも家庭の中心になるだろうというふうに思っております。ですから、私どもは今、世帯ごとに受信料をいただいているわけであります。ですから、三台あろうが五台あろうが二台あろうが、一世帯ということで今いただいているわけであります。ですから、携帯を持って見る人もいますけれども、私は、やはり高精細だし高音質でありますし、また、ハイビジョンでありますから、インターネットもそこへ取り込むことができますし、パソコンも取り込むことができますし、いろいろなことができる、中核的なディスプレーだろうと思っております。
 ですから、将来、すべての人たちが携帯電話を持ってもテレビは廃れないだろうという自信を私は持っております。
島委員 テレビは廃れないと。もちろんそれは結構ですが、総務大臣、受信契約料で国民は払っているわけですが、携帯電話とかパソコンとかそういうものでテレビが受信できるようになってくる。捕捉ができるのかどうか、そういうことが問題になりますよね。それは総務大臣としては、同じ質問ですが、今どう考えますか。
片山国務大臣 御承知のように、今は世帯単位の受信契約ですよね。だから、世帯に一台、二台、何台かテレビがあって、携帯は携帯で皆お持ちになっている。役割としては、テレビ利用は補完的ですよね。私は、携帯やデータ通信なんかのパソコンや何かもさらに補完的だ、こう思います。
 島委員言われるように、将来、本当にユビキタス社会になって、もう世帯ごとのテレビがなくなって、みんな携帯か何か、こういう事態が来たら考えなきゃいかぬでしょうね。しかし、すぐは来ませんよ、それは来ない。やはり、それはデジタルテレビになって、いいコンテンツができてくると、家の中にはちゃんと大きい立派なテレビがあって、携帯は携帯で必要なときに見る、こういうことになると思います。
 もし仮に本格的ユビキタス社会になるんなら、その状況を見て、また受信料のあり方については議論する余地が出てくるんではなかろうかと思っております。
島委員 e―Japanを推進する大臣から、そんな時代はそんなに早く来ませんよ、そういう矛盾した答弁があったわけでありますが、私は結構すぐ来ると思いますよ、こういうのは。
 今の私の質問というのは、当然それを総じて、先ほど武正委員も言われましたけれども、放送法、電波法、その他全部絡めてきちんと議論をする時代がもう間もなく来る、国会としてはもう始めなくちゃいけない、そういうことを指摘したわけであります。しっかりやりましょう、これは。
 最後に、私が毎年言っております字幕放送の問題について質問をします。
 字幕放送については推進をしているということは事前にお聞きいたしました。しかし、一つ問題なのは、平成十九年度までに約八割ぐらいだという話なんですが、平成十二年からスタートして三年間で、字幕放送の割合、ある民放ですが、九・九から一七・六、七・七%上昇したにしかすぎません。計画では、平成十二年から十九年、七年間あって、今まで三年間で七・七%しか上昇していないのに、今後の五年間で一気に八四・二%に伸びるとなっています。
 こういうようなのはおかしい、常識的に考えれば無理な見通しだと思うんですが、この予測根拠値、どういうことになっているかだけ最後に聞きます。
加藤副大臣 御指摘のいわゆる拡充計画でありますが、平成十三年の七月に、総務省から放送事業者に対して、字幕放送の普及目標の達成に向けた字幕放送拡充のための計画の作成を要請いたしまして、平成十三年十月に、NHKの一年前倒し実施を含む拡充計画を各放送事業者に提出していただきました。
 この拡充計画値の伸びにつきましては、平成十四年度以降の字幕制作体制の整備、また字幕制作技術の進展による字幕制作時間の短縮、また制作コストの軽減等を見込み、各放送事業者がみずからの判断により達成できるとして定めたものであります。
 十三年度の実績でありますが、NHKが七三・四%、民放キー五局が一六・一%となっております。
島委員 終わります。
林(幹)委員長代理 次に、山田敏雅君。
山田(敏)委員 山田敏雅でございます。よろしくお願いします。
 きょうは、政治家ですから、ちょっと政治的な質問をさせていただきます。
 私は、ヨーロッパのジュネーブで働いておりました。ロンドンでも働いたことがございます。アメリカでもございます。日本のテレビ放送と外国の、まあヨーロッパ、アメリカですね、ちょっとこれは全然違うなというところに最近気がつきました。
 それは政治に関するニュースの扱い方ですね。これはテレビだけではなくて新聞等もそうなんですけれども、二大政党ということもあるんですが、政治的なニュースを報道するときに、イギリスとかヨーロッパでは、一方の政策、例えば与党の政策を出す場合、それと同じぐらいの比重で野党のニュースを流す。
 要するに、民主主義というのは政権が交代して健全になる、こっちが、一方が失敗すれば国民は別の政党を選んで、そして民主主義が健全に育っていく、これがこの考えの根底になると思うんですが、日本の報道を見てみますと、NHKの政治のニュースもそうです。私は過去三年間、五つの議員立法にかかわりました、一生懸命やりました、できました。しかし、一回も報道されたことがない。こういう現実がございます。
 そこで、きのうNHKの方に来ていただきました。イギリスにBBCがございます。私もBBCをよく見ていたんですけれども、あのテレビ放送では、保守党がある問題について、例えばアルゼンチンの問題についてこういうふうなことをやろうというと、労働党の政策を必ず同じように報道する、こういう態度がはっきりしておるわけですね。
 ちょっとお伺いしたいんですが、調べていただいたと思うんですが、BBCのそういうニュースの報道の仕方、その綱領あるいはコードとかそういうのがあると思うんですけれども、ちょっとお答えいただけますか。
海老沢参考人 BBCにはプロデューサー・ガイドラインというのがありますし、アメリカのCBSはニュース・スタンダードという、いわゆる基準といいますか、そういうのを持っております。私どもも放送法に基づいて番組基準というのを設けて、政治報道のあり方、政治番組のあり方、すべてここに網羅してあります。大体私どもと同じ内容のものでございます。つまり、政治的に公平であること、意見の対立したものについては両方を放送して視聴者の判断に任せるとか、そういう文面が書いてあります。
山田(敏)委員 そういうふうにお答えされるだろうと思ったんですけれども、公平に報道している、中立にやっている、こういうコードだと思うんですけれども、実際の運用面で本当に実際どんなことが起こっているのか。
 正確なデータがあるわけじゃないんですけれども、例えばニュースで、今回の予算の報道ですね。これは、政府・与党の予算の政策については報道する。私どもは、民主党は予算の組み替え動議というのを出して、中身は八兆円のこういう政策をやろうというのを出したんですが、これはNHKで報道されなかったんですけれども、これはいかがでしょう。
海老沢参考人 御承知のように、その前に前段として、イギリス、アメリカ、ヨーロッパでは、民主主義という面では一緒でありますけれども、それぞれ政治制度が変わっておりますし、特にアメリカ、イギリスは二大政党であります。日本の場合は、二大政党でなくて、非常に政党が多い状態が今続いております。そういう中で、それぞれの政治文化といいますかがあるので、イギリスが、アメリカがすべていいんだというふうには私は思っておりません。日本独自のやり方があるだろうと思っております。
 そういう中で、今先生御指摘の、政策について放送しなかったという話がありましたけれども、先月から今月にかけての主なニュースだけを調べさせました。そうしましたら、民主党が独自の予算を作成というのは、二月二日の朝六時のニュースで放送しております。それから、民主党が難民支援法案をまとめるというのは、二月二十日の朝の六時半のニュースなどで放送しておりますし、野党が予算案の組み替えを塩川財務大臣に求めたことについても、二月二十五日の夕方の、十八時のニュースでそれぞれ放送しております。
山田(敏)委員 朝の六時の報道で本当に大変な、例を三つ挙げていただきました。
 会長、私が申し上げたのはそういうことじゃないんですよ。報道する、ニュースを伝えるという理念の問題を言っているんですね。どういう思想とどういう理念を持ってやるか、こういうことなんですね。
 ニューヨーク・タイムズでもイギリスのタイムズでも、よく読んでいただいたら、与党の政策を伝えるときは、それに対して必ず野党の意見を述べて、そして出す、これは、報道する、ジャーナリストとしての理念の問題なんです。与党の政策を報道する、これは大事なことだと思いますよ。政府の報道もしなきゃいけない。しかし、その一方で、こういう対立する政策があるということを同じボリュームで出すということは、これは、将来、民主主義が健全に発展していくためにジャーナリストとしての役割はどうあるべきか、こういう理念があるからやっているんですよ。それを聞いているんです。
海老沢参考人 私どもNHKは、先ほども答弁しましたけれども、国民の信頼によって成り立っているわけでありますから、各党の政策なり考え方というのはかなりの時間を割いて私は放送しているつもりでおります。朝から二十四時間放送しているわけでありますが、すべてを網羅することはできません。ですが、ニュース、どうしても国民に知らせるべきものについては私はきちっと放送しているというふうに思っております。
 特に、御承知のように、日本の場合は国会を年五十回、これほど総合テレビで放送しているところはありませんし、あるいは「日曜討論」とかいろいろなところで、各党の主義主張は、討論という形あるいはいろいろな特別番組等でも皆さんの、各党の意見はかなり放送しているつもりでおります。ニュースについても、今七党も八党もあるわけでありますから、二大政党ならば二つで済みますけれども、その中でも、今度のイラク問題についても各党の主張は談話という形で放送しておりますし、大きなニュースにつきましては各党の意見をすべて私は網羅して放送しているつもりでおります。
    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
山田(敏)委員 今、会長御自身が答えられたように、では民主党の政策は、朝六時の放送がありました、朝六時半の放送がありました、夜、この三つありましたと答えたでしょう。これだけしか数えられないということなんですよ。
 私が申し上げたのは、もう一回言いますが、BBCのレギュレーションは同じだということですけれども、その運用の面で、政治のニュースを扱う理念が違うということを言っているんです。もう一回よくBBCのやり方、あるいはアメリカの三大ネットワークもそうですけれども、根本的に違うんですよ。それは、日本の政治を伝えるジャーナリストとしての理念をはっきり持っていないということなんですよ。それを問うているんです。それをもう一回言ってください。
海老沢参考人 私どもは、公共放送として、政治的立場は中立でありますし、政治的問題については公平に扱うということを前提に、これが大変な理念だと思っております。そういう公平に扱うという理念のもとに、各党の主義主張なり考え方をできるだけ基準に沿って放送しているつもりでおります。ですから、理念はBBCともCBSとも変わっていないと思います。
山田(敏)委員 同じ質問で同じ答えをされるので申しわけないんですが、また来年あると思いますのでまたやりますが、もう一回私が今言ったことをよく考えていただいて、それをもう一回来年、どういうふうに変わったか、私もちょっとデータをとってみますので、政策の伝え方、これについてもう一回根本から、何か審議会がありましたら会長みずから、答申するなり、もう一回考え直すということをちょっと言っていただけますか。
海老沢参考人 私どもは、先ほど言いましたように、放送法に基づき、またそれに基づく番組基準に沿ってきちっとやっているということであります。
 BBCのニュース、私どもはアメリカのABCと協力関係があって、朝のBS1でBBCのニュースも扱っております。ですから、そういう中で見ても、私はNHKニュースはきちっとした姿勢でやっているというふうに思っております。
山田(敏)委員 時間が来たので終わりますけれども、とりあえず意見を聞いていただいたというふうに思います。
 ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、中沢健次君。
中沢委員 中沢でございます。
 NHKの予算で質問に立つのは久しぶりであります。寒い北海道と行ったり来たりしてちょっと風邪を引いておりますが、お許しをいただきたいと思います。
 まず、海老沢会長にお尋ねをしたいと思いますが、何といっても年に一回の予算の審議、前回もそうだったと記憶しています。受信料が平成二年からずっと据え置きになっている。そういう中にあって、時代の要請にこたえて、NHKとしての公共性、しかも、その作品について見ますと国民からさまざまな期待がされている。そうすると、私は労働組合の出身ですから、そういう目線でいささか心配することを率直にお尋ねしたいと思うんです。
 NHK本体の職員の体制、ほかの会社と違ってNHKの職員というのは、人と機材の技術をしっかりとつなぐという番組をつくる、こういうある意味でプロ集団だと思いますね。そうすると、一方で予算の枠が、受信料中心ですからどうしても伸びてはいかない、一方では国民からさまざまな要求が出てくる、それを受けていい作品、番組をつくろうとすれば、結果的に職員の数を、優秀なスタッフを自然な形でふやしていくということが普通は当然だと思うんです。ところが、この十年ぐらい、NHKの本体の職員の数は減る一方ですよ。ただ、確かに、子会社と言われている部分でいいますと職員の数は若干ふえているようでありますが。
 私の心配は、本当に国民から期待をされるようなNHKのすばらしい作品をつくる上で、一万二千人程度の全国の職員、そういう技術集団で十分こたえてやっていけるのかいけないのか。会長の悩みなんかあると思います。率直にお聞かせをいただきたいと思います。
海老沢参考人 今、世の中は非常に厳しい時代になっております。そういう中で私どもも、職員の意識を改革し、また組織を抜本的に見直して、聖域なき改革に今取り組んでおります。
 これまでのように、バブル時代のように、人をふやす、あるいはまた受信料の値上げをお願いできるような今状態ではありません。そういう面で、できるだけ受信料の値上げをしないでやっていくためには、やはり内部の改革をしなければどうしてもこれは立ち行かなくなるということであります。そういう面で、私、平成九年から今六年になりますけれども、改革と実行ということで内部の抜本的な見直しをし、そして毎年職員を二、三百人ずつ減らしながら、今、一万二千体制ということでスリムな形にしております。
 ただ、問題は、番組の質の低下を招いては何にもなりません。角を矯めて牛を殺すようなものでございます。そういう面で、放送に直接かかわる部門については、要員は逆に今ふやしているわけであります。そして、間接部門について、これを外部に委託する、関連会社に任せる、そういう面で体制を非常に効率いい事業運営体制にしていっているということであります。
 やはり番組づくりというものは、個性豊かで専門性を持った優秀な人材を育成しなければできません。そういう面で、意識を高めながら質の高い番組をつくる、そのためには人材の育成が最も大事だということでやっておるわけであります。そういう面では人材を大事にしようということを大事にしておりますので、バランスよく対応していきたいと思っておるところであります。
中沢委員 いずれにしても、大変御苦労が多いと思いますけれども、国民の期待というのは、NHKがもっともっとすばらしい番組をつくって提供してほしい、こういう期待が恐らくこれからもっともっと強まると思います。頑張っていただきたいと思います。
 さて、どちらかというと我が党は専門家ぞろいですから、そういう角度でいろいろ質問がありました。私は、どちらかというと、やはりNHKのテレビを見て青春時代を過ごして今日を迎えている、ですから、番組の内容について非常に興味を持っていますから、まあ国民の目線ということになると思うんですが、引き続き会長にお尋ねをします。
 私が逓信委員長をさせていただいた折にたまたま、今、朝のドラマで「まんてん」やっていますね。これは私から見ても、毎日見ていませんけれども、大変すばらしいドラマだと思うんですよ。四年前、私の記憶によると、北海道の沼田町で「すずらん」という、現地ロケもいただいて、そしておよそ六カ月、大変視聴率も高い、当時そういう話を聞いておりました。これが、番組の質もしっかりしていたということと同時に、実は、付加価値として、ロケをしたその沼田という町に対する地域おこしという財産を残しているんですよ。
 私は、やはりこういうことはほかの民放ではなかなかできない話じゃないかなと。さすが世界のNHK。別にお世辞じゃありませんよ。それだけのやはり公共性を持っているNHKとしては、こういう番組の質も大事だ。が、しかし、できれば、番組をつくることによって地域に対する活力を与える、そういう財産を残す、こういう観点は非常に大事だと思いますね。沼田町は依然として、夏はSLの列車が走って、内地の方からも結構お客さん来ていただいて、私のよく知っている町長ですけれども、今でも喜んでいますよ。
 それと同じようなことが、大河ドラマ、今「武蔵」やっていますね。私の聞いた話では、来年は「新選組!」をやると。どういうことになるかはわかりませんが、恐らく函館の土方歳三あたりが後半あたりで出てくるのかな。北海道は今盛んに知事選挙をやっている最中ですけれども、別にそのことに結びつけるわけではありませんが、そうなると、道南の函館を中心にして、確かに観光的にはいろいろな意味で全国的にも脚光を浴びています。来年の「新選組!」、函館の市長とはまだ話していませんが、地元の市長だとか商工会議所、観光協会、あるいはさまざまなそういう関連のところから、恐らく沼田以上のスケールで「新選組!」の現地ロケについての希望が出てくると思います。
 相当先の話でありますから余り明確なお答えがないかもしれませんけれども、御祝儀答弁で結構ですからね。率直に言ってそうだと思いますよ。これ以上言いませんが、ぜひ、来年の「新選組!」、函館でもしっかりと地元の要望を受けて頑張りたい、こういう会長の決意のほどをちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
海老沢参考人 今、大河ドラマなり朝の連続テレビ小説のそういうロケの誘致といいますか、ぜひこういう人物、人材を取り上げてほしい、そしてまた、こういう場所でロケをお願いしたいという要望、いろいろ各地から寄せられております。私ども、できるだけ要望にこたえたいわけでありますけれども、年に一回なり二回の作品でありますし、また作者なり、また現場の担当の方の問題の取り上げ方、いろいろあります。
 そういう中で、私は、できるだけそういうドラマなりによってその地域が活性化する、経済が再生する、あるいはまた、子供たちが、自分のふるさと、生まれたところがどういう土地柄であって、どういう人材が出たのか、要するに歴史の教材として勉強してもらいたい。そういう面でまた文化の振興にも役立つ、そういう、ただドラマというのじゃなくて、そういういろいろな文化的、産業的な側面も取り入れながら番組をつくるように指導をしているわけであります。
 そういう中で、来年は新撰組を取り上げるということで今準備をしております。主に近藤勇を中心に作家は脚本を書いているようでありますけれども、新撰組といえば土方歳三が当然出てきます。そういう面で、地元なり、最期の地であります五稜郭等についても地元からいろいろな要望が来ております。そういう面で、今現場の方も、そういう地元の意向を酌みながら、どういうふうにまとめていくか、前向きに検討しているというふうに聞いております。
中沢委員 それで、これからの話は特に答弁は要らないと思うんですが、今度の予算に関連して、新年度の重点計画で地域を重視する、こういう企画を幾つか出されています。
 北海道は既に、午後三時の時間帯から、現在は大相撲ですから時間がちょっと短縮になっていますけれども、「ほくほくテレビ」というのをやっていまして、これは二百十二の北海道の市町村、順次そこの特産品だとかあるいは観光の案内だとか、つまり視聴者参加型の番組、これは大変すこぶる好評ですね。恐らく、きょういらっしゃる皆さんのそれぞれの地元でも、そういう番組はこれからどんどんつくられてくると思いますよ。これはやはり、日本全体の活力を生むという意味では非常に立派な企画だと私は思います。ぜひひとつ積極的に、また会長以下スタッフの皆さん頑張ってほしいと思うんです。
 さて、時間がありませんから最後、総務大臣。
 地上波デジタル、いよいよ十二月から三大都市圏でスタートをする。昔の話は余り言いませんが、若干計画が少しずれ込んではいる。しかし、およその話でいうと、大体予定どおりアナログからデジタルというふうに放送の世界も変わってくると思うんですよ。
 私は北海道の出身ですから、やはり北海道のことが非常に心配なんです。ほかの皆さんも、地方の場合は同じそういう悩みというか、いろいろなところからの要請があると思うんです。
 釈迦に説法だと思うんですけれども、やはりデジタル放送というのは大変な資本投下、設備投資が必要なわけですね。そうすると、中央のキー局はどうでもいいなんということはもちろん言いません、地方は地方で、そこにやはり依拠して地方なりに頑張っている放送局がたくさんあるんです。そういうところがデジタル化ということでもろに悪い意味で影響を受けて、もともと放送の世界でいうと、正直言って、体力のしっかりしている会社は余りないと思いますね。それに加えて、今度デジタル放送ということになってくるとその種の設備投資も大変負担になる。
 国が直接どういうような援助ができるか、なかなか難しい問題かもしれませんが、ぜひひとつ、これから先相当長期にわたってこういう問題が出てくると思いますので、担当の総務大臣としては、政治家として決意のほどをちょっと聞いておきたいと思います。
片山国務大臣 中沢委員言われるとおりなんですね。デジタル化に移行する、二〇一一年七月末までには地上波テレビも全部デジタル化する、これは電波法の改正で国会でお決めいただいて、我々もぜひそういたしたい、こういうふうに思っておりますが、言われるように相当な設備投資が要るので、体力のないところは大変きついだろうと私も思います。
 そこで、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法、こういう法律があるんですね、もうかなり前にできた法律で。この中で、特に十五年度は拡充しまして、デジタル関係もこれの優遇の対象にする。しかし、これは税制と融資ですね、あるいは利子補給。それじゃそれだけでいけるのかどうか、こういう議論が実は出てきておりまして、そこで、これから推移を見なければなりませんが、ことしの年末から三大都市圏で始まる、二〇〇六年からその他の局で始めてもらう、こういうことでございますから、いろいろな関係のところから要望、要請が来ておりますけれども、それを精査しながら、公的支援として何ができるか、どういうことができるか。
 私は、将来は、テレビのデジタル化は電子政府、電子自治体にも大変有用ではないか、こういう考えもありますから、そういうことで、そこでドッキングできるのならば、ジョイントできるのならば何らかの公的支援の説明づけが可能になり得るかどうか、そういうことを含めて、十分関係者の方々の御意見を聞きながら検討してまいりたいと思っております。
中沢委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 日本でテレビ放送が始まって、ことしで五十年を迎えるということであります。私も、この世に生をうけまして、間もなく五十年になります。振り返ってみますと、私たちの世代は、テレビを通じて日本あるいは世界を知り、そしてテレビの発展とともに知見を広め、そして人生を歩んできた、そう言っても過言ではないと思っております。
 そこで、放送文化あるいはテレビ文化のますますの健全な発展を念願する立場から、これから幾つか質問していきたいと思っております。
 まずもって、昨日、ブッシュ大統領は、ついにイラクに四十八時間の最後通告を行ったところであります。まさに歴史的転換点でありまして、ますます報道の重要性が高まってきておると思います。
 そしてまた、国内では、去る三月十一日、日経平均株価は、終わり値で二十年ぶりに七千九百円を割り込みました。景気の回復が一向に望めない中で、イラク情勢の緊迫化や、それから消費者の心理が冷え込む、そういうわけで、デフレ経済が本当に深刻化しているところであります。そしてまた、これまで一流と言われた企業でさえも淘汰される、そういうふうな時代でありまして、国民の意識もどんどん変わってきている、価値観の多様化が進んでいる、そう思っております。
 そこで、今、我々国政に携わる者でありますけれども、一番心がけなければならない一つには、やはり若い人たちが、どうせ努力したって報われないといった自暴自棄に陥ることのないように、将来に向けた明るい希望が持てるような仕組みをつくり、そして実行していくことだと思っております。これは同じように、公共放送であるNHKにも言えるのではないかと思っております。
 そこで、最初に、放送メディアのあり方について、二点お尋ねいたしたいと思っております。
 まず、若い人たちには将来の夢を、そしてまたお年寄りには生きる希望と喜びを与えてくれる、そういう放送を期待するのでありますけれども、海老沢会長の御見解はいかがでしょうか。
海老沢参考人 おかげさまでテレビ放送五十周年ということで、私ども、この五十年間の歴史を振り返りながら、そういう中でテレビの功罪も云々されております、そういう中で、五十年という節目に当たって、これから放送が視聴者国民にどのような役割を果たすことができるのか、もう一度考え直してみようということで、いろいろ今、勉強もさせていただいているわけであります。
 そういう中で、こういうデフレ不況の中、また国際情勢も非常に厳しい中で、すばらしい日本が落ち込んではいけませんので、できるだけ視聴者国民を元気づけるような、勇気づけるような番組をつくっていこうというのが基本的な姿勢でございます。
 それと同時に、今先生御指摘がありましたように、未来を担う子供たちがやはり健全に育たなければなりません。そういう面で、私ども、子供向けの番組も、教育テレビが中心になりますけれども、総合テレビでも、家族、一家が見ても恥ずかしくないような、見ても同じ話題として取り上げられるような質の高いものを出していこうということで番組をつくっているわけであります。
 特に、この問題につきましては、今「NHKスペシャル」で、二月から「こども・輝けいのち」ということで、子供たちが一生懸命、けなげに生きている姿をドキュメンタリーで放送したり、あるいは、子供向けの「ひょっこりひょうたん島」が昔非常に評判がよかったものをもう一度つくり直すとか、いろいろな工夫をしながら、子供たちが楽しめるような、また夢を持つような番組を一本でも多くつくろう、そういう姿勢で今取り組んでいるところであります。
 特に、少子化時代でありますし、また高齢者もどんどんふえております。そういう中で、高齢者向けの番組、今テレビは高齢者にとってはなくてはならない生活の中心になっております。そういう面で、お年寄りも楽しめるような番組をつくっている。特に「百歳バンザイ!」とか、あるいは「にんげんドキュメント」とか、年をとっても元気な方を紹介して、高齢者がその人たちを見習って、もっと元気が出るようになるというような番組もつくっているところであります。
黄川田委員 会長さんからいろいろお話がありましたけれども、NHKの解説ですか、「あすを読む」ですか、あるいはまた「NHK特集」、さらには「クローズアップ現代」などで、やはりこの社会の閉塞感といいますかが蔓延しておりますので、そういう厳しい経済状況の中にあっても頑張っている人たちがたくさんいるんだというような形の社会の側面をぜひとも取り上げていただきたいと思っております。
 そこで、次に、過去の経済成長の波に乗りまして、テレビは日本のメディアの主役になったわけであります。そしてまた、今テレビは各家庭の茶の間のみならず子供部屋まで入り込みまして、メディアの中心的な役割を果たしておるわけであります。しかしながら、物質万能の時代から知性の時代へと国民の価値観が変わっておりまして、そして、テレビがこの主役の座をいつまで保ち続けられるか、これは大きな問題になると思います。
 具体的には、ADSLや光ファイバーの普及が急速に進みまして、本格的なブロードバンドの時代を迎えたと思っております。そこで、パソコンのディスプレー上で動画像あるいはまた放送コンテンツを見ることができるようになりまして、テレビはインターネットにのみ込まれるのではないか、そういうお話をされる方もおられます。
 そこで、ブロードバンド化はますます進んでいくと思いますけれども、テレビ放送の役割、メディアの中で今後どのような位置を占めていくと思われるか、会長の御見解をいただきたいと思います。
海老沢参考人 私、去年の夏にアメリカのシリコンバレーあるいはハリウッド等を視察してまいりました。その中で、今、光ファイバーを中心としたブロードバンド時代にアメリカはなったわけでありますけれども、ITバブルがはじけて、ブロードバンドもわずか二・七%しか使っていない、九七・三%があいてしまっている、そのために不況に陥ったというようなことでございました。つまり、高速道路ができても走らせる自動車がない、そういう状態が今アメリカは続いております。
 そういう中で、日本も今、e―Japan構想で光ファイバー網の建設を急いでいるわけでありますけれども、いずれにしても、ブロードバンドネットワーク時代であります。そういう面ではやはり、あくまでそれは道具であって、問題は番組、ソフト、コンテンツというふうに言っておりますけれども、つまり、視聴者国民がそれを見て役に立つ、また、それを見て心が豊かになるようないいものでなければ視聴者は見てくれません。
 そういう面で、私どもは、どういう時代になろうが、どういう技術が発達しようが、問題はそれの内容、番組の質の問題だというふうに認識しております。いつの時代でも、質のいいものを一本でも多くつくって視聴者に提供する、そうすることによって放送は永遠に続いていくだろうというふうに我々は思っているところであります。
 いずれにしても、携帯電話なりパソコンなり、いろいろなツール、機械が出てきますけれども、それはあくまでも道具であって、問題は内容であります。その内容をつくるのは我々放送局の一番の役割でありますから、そういう面で、今後とも、人材を育成しながら質のいい番組をつくることを第一に考えていきたいと思っております。
黄川田委員 会長がお話しのとおり、私もコンテンツが大事だと思っております。テレビであろうがあるいはインターネットであろうが、よいコンテンツ、それの競争の時代だと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは次に、地域放送の重要性について、二点お伺いいたしたいと思います。
 私の地元、岩手県でありますけれども、三陸海岸沿岸は、昭和三十五年でありますけれども、かつてチリ地震津波に襲われました。そして、大きな被害を出したところであります。
 NHKは災害時の指定公共機関でありますので、災害報道に力を入れておること、私もNHKの放送センターに昨年お邪魔しまして見てきたわけでありますけれども、大きな災害が発生しますと、すぐに東京のスタジオ発の全国放送に切りかわるわけなのであります。確かに、大きな災害ほど被害が大きく、広域化するのでありますので、東京がキーステーションにならざるを得ない、これはよくわかります。しかしながら、地域に住む者にとってといいますか被災者にとっては、今自分の置かれているところがどういう状況かということが一番の関心事だ、そう思っております。
 そこで最初に、地方分権改革が叫ばれておりまして、国と地方のあり方、これの役割分担等々いろいろ議論されておるところなのでありますけれども、NHKにおいても、全国放送と地方放送のあり方についてどのように区分して、さらに充実をどのように図っておるのか、お伺いいたしたいと思います。
海老沢参考人 私は、全国放送と地域放送は車の両輪だというふうに言っております。片っ方でも欠けてはいけませんし、全国放送と地域放送のバランスをとりながら今事業を推進しているわけであります。
 特に、東京は全国の一割、一〇%であります。九割は地方であります。私どもは今、地方に五十三の放送局を設置させていただいているわけであります。そういう面で、それぞれの地方にはそれぞれの歴史、すぐれた文化がありますし、そしてまた、新しい、経済、観光、いろいろな面でそれぞれ独自の活動をしておるわけであります。そしてやはり、地方のそういう文化なり経済活動なり、生活ぶりを全国に発信する。また、それは世界に流れるわけであります。それとやはり、全国的な視点でのニュースなりあるいは番組も必要であります。その辺のバランスをとりながらやっていきたい。
 特に、これから地上デジタル放送時代になります。デジタル放送になりますれば、ますますチャンネルもいろいろな使い方が、マルチチャンネルというようなことで使うことができますし、データ放送も、いろいろな面できめ細かい地方の情報を発信することができます。
 そういう面で、私は、この数年来、地域放送の一層の充実強化を図っているところであります。それによってバランスをとりながら日本全体の文化水準の向上を図っていきたい、そういう思想で番組編成しているところでございます。
黄川田委員 関連して、地域放送についてお尋ねいたしたいと思います。
 地域の災害予防の観点からであります。津波情報等を地方放送局から今まで以上にきめ細かく発信できるような仕組み、そういうものを図るべきじゃないかと私は思っておりますが、いかがでしょうか。
 そしてまた、地上放送がデジタル化された際には、災害情報であるとか、あるいはまた被災者の安否情報はどのように向上されるのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
板谷参考人 お答えいたします。
 大きな地震とか津波なんかが起こった場合に、東京からまず緊急報道を始めるのは、先生もおっしゃっていたように、広範に及ぶだろうということと、もう一つは、何といっても東京に人が多くて二十四時間体制でできる、東京は最適であるということがありますが、御指摘のように、最初の立ち上がりの後は、地域からやはりきめ細かな情報を流していくことが非常に大事だと思います。電気、ガスとか水道とか学校の情報とか、そういう細かい情報を的確に流していくのがやはり必要である、そのために柔軟な編成もやっていく必要があるというふうに考えております。
 それから、地上デジタルが始まりますと、データ放送で、地域に密着したいろいろなそういう災害の情報も含めて、最新情報をきめ細かく出していくというふうなことも可能になってくると思います。
 それから、安否情報については、今NHKに電話を受け付けている視聴者コールセンターというのがありますが、そこが一般の人から得た安否情報を電話で受け付けて、それをコンピューターに入力して、教育テレビとFM、それからBSデジタルのデータ放送、インターネット、携帯電話なんかで安否情報が送られるような仕組みが既にできているんです。ただ、地上デジタルについても、そういう時代になっていったときに、さらに内容を充実させていくにはどうしたらいいかというふうなことを今後検討していきたいというふうに思っております。
黄川田委員 災害の対応に強いNHKにぜひともなっていただきたいと思います。
 それから次に、先ほど来議論されているところでありますが、私からも、地上放送のデジタル化について、二点お尋ねいたしたいと思います。
 ことしの十二月から、東京、名古屋あるいは阪神地区で、地上放送のデジタル化がスタートされるわけであります。しかしながら、この地上デジタル放送開始を間近に控えておりますけれども、国は国民に向けて事前のPRが十分であるかと問えば、どうも私はまだまだ足りないんではないかと思っております。
 最近、都心の量販店をのぞいてみますと、家電のセールスマンの方は、我々のところには何の情報も来ていない。受信機も、いつごろ、幾らぐらいのものが届くのかわからない。お客さんからいろいろ聞かれるが、今のテレビを単に売ればよいとも限らず、販売現場は困っているのが実態だなどなどの苦情が少なくないわけであります。
 そこで、細かい国の放送政策は別の機会に議論するといたしまして、NHKに質問する前に、国の政策と国民の認識との間にまだまだ大きなギャップがあるのではないかと思いまして、総務省はデジタル化について広く国民にどのように周知させておるのかお尋ねいたしたいと思います。
高原政府参考人 今先生お尋ねのデジタル対応の受信機でございますが、ことしの秋ごろに出回るんじゃないかといったような予測がされております。そういうことも含めまして、総務大臣の懇談会におきまして、放送事業者、メーカーあるいは自治体、今の量販店等、広範な関係者が取り組む周知・広報アクションプランというのを先般、策定いたしたところでございます。
 この中において、例えば、放送事業者は視聴者向けお知らせ番組等において周知を行う。あるいは、受信機メーカー、販売店においては、店頭や体感フェアといった場において効果的なPR活動を行うとともに、アナログ受信機購入者に対しては受信機へのシールの貼付等を行うといったようなことを決めております。こういうことを通じまして、関係者は各種の周知を繰り返して、国民の幅広い理解を得ていきたいというふうに考えております。
 それで、十四年度の補正で、総務省といたしましても、新聞広告あるいは電車とかバスなんかの広告、あるいはJRの駅前の大型街頭モニターに地上デジタルのPRをするとか、いろいろなことを今やっておる最中でございます。
 いずれにしましても、今のアクションプランをさらに強力に推進してまいりたいというふうに考えております。
黄川田委員 お話ありましたけれども、地上デジタルでありますけれども、これはまだまだ家庭の話題にはなっていないような気がするわけであります。量販店でさえ、販売サイドの問題ではなく、これは送信サイドの問題ではないかととらえている方もおるわけでありまして、もう少し国民の目線でもって、国としても放送政策をしっかりやっていただきたいと思っております。
 それでもって、デジタル化の進展によりまして、放送と通信の融合がますます進んでいくと思われるわけであります。そこで、パソコンの画面上で放送コンテンツを見ることができるようになる一方で、テレビの方も、新型の受像機やあるいはまた情報端末などの画面上でも多様な情報が得られるということになると思います。例えば、今見ているスポーツ選手のプロフィールなどの文字データをデータ放送を通じて入手できたり、あるいはまた、画面を見ながらオンディマンドで商品を注文したりすることができる、それが可能になると言われております。
 そこで、このようにコンテンツを受けることができる受信機はどこまで進化していくのか、大変興味深いわけでありますけれども、その開発状況、できればその販売価格、どんな形で推移していくのか、見通しなどをNHKにお尋ねいたしたいと思います。
吉野参考人 お答えいたします。
 御承知のように、BSデジタル放送それから地上デジタル放送、これは高画質のハイビジョンと、それから、便利なデータ放送による双方向サービスが特徴でございます。それに加えまして、地上デジタル放送用の受信機にはインターネットに接続できるような端子もつきまして、テレビのリモコンを使ってインターネットに接続されるような、そういった受信機も発売されるんではないかというふうに考えています。
 それから、次世代の高機能サービスとして期待されているサービスに、サーバー型放送というのがございます。これは、受信機の中にあります大容量のホームサーバーを使いまして、自分の見たいシーンだけをハイライト的に見るとか、あるいは、最新のニュースを蓄積しておいていつでも見れるとか、そういったことが可能になるというふうに思っています。
 NHKでは、こうしたサーバー型放送のサービスの実現に向けて、今研究所の方でいろいろな技術を開発しているところです。こういったサーバー型放送を導入するためには、一方では著作権なんかの課題も解決していく必要があるかなというふうに思っています。
 これに加えまして、将来的にはブロードバンドにもつながるような、そういった受信機も可能になりまして、いわば放送からブロードバンドへ、ブロードバンドから放送へというふうにシームレスでつながって、家庭の中の大画面のハイビジョンがいわば情報のゲートウエーになる、そんなふうな世界を予想しております。
 それから、受信機の値段でございますけれども、今の、先に始まっておりますBSデジタル放送の受信機がかなり下がってきております。ことしの十二月から地上デジタル放送が始まりますと、BS・地上一体型の受信機が発売されるというふうに思いますので、普及とともにさらに値下がりを期待しているところであります。
 以上です。
黄川田委員 それでは次に、番組についてちょっとお尋ねいたしたいと思います。
 先ほど言ったとおり、今年はテレビ放送実施五十周年の節目に当たりますが、国民によい放送番組を提供することは大きな役割であると思っております。しかしながら、民放においては、広告収入を主たる財源としておりますので、なかなか視聴率を確保できないような番組は放送されないというようなところもあります。しかしながら、民間放送においても、営利の追求のみならず、よい番組の放送をするということは大事なことだと思っております。
 また一方、NHKでは、これまで制作してきた良質のコンテンツを保管し、そしてまた、一般の人たちがそれを見て楽しむことのできるアーカイブスを、先月ですか、川口に完成したところであります。NHKに対しては、今後も質の高い番組の制作を期待するところ大でありますけれども、総務省の方でも、放送政策研究会でそのための検討をさまざま行っていると聞いております。
 そこで、良質で公共性の高いテレビ番組ですが、これを制作するためにNHKはどのような検討体制を設けて、常々それが現場でどのように改善されているかお伺いいたします。
板谷参考人 私どもは、やはりいい番組をつくる上で一番大事なことは、人材を育成してすぐれた番組をつくれるようにしていく、このことが最大のポイントだと思っております。
 ですから、放送現場におきましては、例えば、入ったばかりの新人、新入社員には、ちゃんと人材育成のトレーナーとかリーダーがきちんと面倒を見る、マンツーマンできちんとオン・ザ・ジョブのトレーニングをするというふうなことを重視してやっておりますし、それから研修においても、特に最初の三年間、鉄は熱いうちに打てと申しますが、この三年間の間にきちんと放送人としての基礎とか基礎的な能力というものを身につけるということを最も大事にして、人材育成を大事にしてやっております。
 それから、そのほか、私どもには中央、地方の番組審議委員会というのがございますし、視聴者会議というのがあります。そういうところでいろいろな御意見を寄せられるので、そういうものも尊重しながら番組に生かしていく、編成にも生かしていくというふうなことをやっております。
 それから、局内に考査部門を置き、NHKが放送する番組を見て、番組のよかった点、それから、これはもうちょっとこうした方がいいんじゃないかというふうな問題点も指摘して、それを現場に迅速におろして、それを参考にしながら現場も番組をつくっていく、そういうふうな仕組みも持っております。
黄川田委員 持ち時間が残り五分でありますので、残り二点、まとめてお尋ねいたしたいと思います。
 まず、経理の関係であります。NHKは多くの子会社あるいはまた関連会社を抱えておりますけれども、この子会社とNHK本体との連結決算及び子会社の予算管理、これはどのような会計基準のもとになされておるのかお尋ねいたします。そしてまた、外部の監査法人による会計監査の実施状況、これはどうなっているでしょうか。これが第一点であります。
 もう一つは、デジタルデバイドの関係、情報格差の関係なんでありますけれども、情報弱者、障害者やお年寄りに向けた放送について、これを機能面でどのように向上を図り、あるいはまた内容面でどのような充実が図られているのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
笠井参考人 お答え申し上げます。
 まず、一点目の御指摘についてお答え申し上げます。
 NHKでは、子会社等の適切な運用を図るため、放送政策研究会の第一次報告や、それを受けた総務省の、子会社等の業務範囲等に関するガイドラインを踏まえまして、子会社等の指導監督の基準でございます関連団体運営基準、これを全面的に改正いたしまして、平成十四年七月より運用しているところでございます。
 新しい関連団体運営基準では、子会社等の業務範囲を明確にするとともに、節度のある事業運営を図るための遵守事項を定めております。また、重要な子会社等の事業に関しまして、NHKに対する事前協議それから事前説明の必要な事項、こういったものを拡充いたしまして、これらを通じまして、子会社等の業務運営に関するより適切な指導監督に努めているところでございます。
 なお、子会社等の効率的な体制整備を図るために、平成十一年度から子会社等の整理統合を進めております。平成十四年度は六社の整理統合を終えまして、平成十五年二月現在、子会社等の数は、関連公益法人を含めまして三十九というふうに減少しております。
 それから、子会社等との連結決算につきましても、財務状況の透明性を高めよう、それから視聴者に対する説明責任を果たすために、これは民間企業と同様の会計基準にのっとりまして、自主的に平成十一年度決算から、試行でございますけれども行っております。十二年度からは、連結決算の状況をインターネットで公表もしているところでございます。
 連結決算の本格導入につきましては、当初の予定を一年前倒しいたしまして、十四年度決算からすべての子会社、関連会社、これは三十社でございますが、これを対象に実施しまして、あわせて、連結決算についての外部監査法人による会計監査、これも実施する予定でございます。
 なお、子会社等に対する外部監査法人による会計監査につきましては、既に商法の規定に基づき、二社実施しております。それから、公益法人の指導監督基準に基づきまして、公益法人七団体、これはすべて実施しているということでございます。
板谷参考人 御指摘のように、やはりパソコンや携帯を使いこなすのはお年寄りや体の不自由な人には難しいというのは確かなので、テレビに関しては、デジタル化しても、ユーザーフレンドリーというんですか、人に優しいということを基本に考えていく必要があると思っています。
 私どもの放送技術研究所では、こういう人に優しいというのか使い勝手のいい、いろいろな研究を進めておりまして、例えば、口で注文すれば、ちゃんとテレビが答えてくれる、スポーツ番組を見たいということだったら、何を見たいんですかとか、そういうことまで研究しております。それから、話速変換機といって、スピードを少し緩めて放送してお年寄りが聞きやすくする仕組みとか、そういうものも既に開発されて、ラジオでは市販されております。
 いずれにせよ、デジタル時代になっても、テレビは、使いやすい、人に優しいということを中心に考えていく必要があると思っております。
黄川田委員 時間でありますので終わります。
遠藤委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
 東京、大阪、名古屋の三大都市圏で、ことし十二月から地上波デジタル放送が開始されます。しかし、アナ・アナ変換が大きくおくれて、費用も増大するなど、率直に言って、計画は総崩れという状態であります。このまま突っ走っていいのかどうかが非常に今鋭く問われております。今度のNHK予算にも八十三億円の建設費などが計上されておりますので、その地上波デジタル問題について、主に会長にお伺いしたいと思います。
 まず、テレビの買いかえのサイクルについてですが、地上波デジタルの開始からアナログ放送停止まで七年半の期間しかございません。テレビの買いかえサイクルが今大体何年になっているか、これをまずお答えください。
    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕
海老沢参考人 業界の調査によりますと、八年から十年という数字が出ております。
春名委員 最近の内閣府の調査をずっと時系列に見ますと、消費動向調査ですが、カラーテレビで、平均使用年数、八年、九年というよりも、九年から十年というような数字が大体並んでおります。
 二〇一一年にアナログ波を停止いたしますと、視聴者の自然な買いかえでは追いつかない事態が予想されます。事実上、強制的な買いかえを押しつけざるを得ないという事態になると考えますが、会長はこれでいいとお考えなのかどうか、そのあたりをお聞かせください。
海老沢参考人 地上デジタル放送の全国的な普及につきましては、国会で、二〇一一年の七月二十四日まででアナログ放送を打ち切る、その後はすべてデジタルでありますということは、法律として公布されたわけであります。そういう面で、私ども法律を守る立場からすれば、この法律ができた以上、二〇一一年七月二十四日までにアナログ放送からデジタル放送に切りかえるよう努力する使命を持っているだろうと思っております。
 そういう中で、本当にこれはできるのかできないのかということになるんですけれども、それに私はとにかく努力したいと思っているところであります。
春名委員 国会で決めたことは事実であります。ただ、私たちは、それは無理があるということで反対したんですけれども。
 その前提になるアナ・アナ変換の費用や計画、それは総務省、NHKも、民放と加わって、その予測も立ててやってこられたわけですので、国会で決めたことですから私たちはどうもわかりませんということだけでは大変困るわけなんですね。会長は常々、国民と視聴者の立場に立ち切るということをモットーにされて言っていらっしゃるわけですので、そういう角度からこの問題を今真摯に、ともに検討することが必要だと思うんですね。
 それで、二番目の角度でお聞きしたいんですけれども、BSデジタルとの関係なんです。
 二〇〇〇年末に始まったBSデジタル放送の普及について、海老沢会長は、一千日で一千万世帯普及するという目標を掲げられてまいりました。現在、世帯数とテレビ、チューナーの普及数はどうなっていますでしょうか。
海老沢参考人 私どもがBSデジタル放送を始めたときに、NHK単独でBS放送を始めたわけでありますけれども、もう既に千五百万世帯に普及しておりました。そういう中で、NHK、民放合わせて七社体制になりますか、アナログでいきますと八社体制でやれば、一千日一千万世帯まで行くだろうという予測を私は立てました。それに向けて普及促進を今図っているわけでありますが、残念ながら、これが今、CAテレビを含めて三百八十三万世帯というような数字にとどまっております。我々としても非常に残念に思っているわけであります。
 その理由としては、いろいろ分析できますけれども、受像機が、ディスプレーが、あるいはチューナーが私が予想したより安くならなかったという点、チューナーは特に、五、六年前から、二万円程度にしないとこれはなかなか普及が難しいということでメーカーにも要望してきたところでありますが、売り出し価格が十万円という値段では、とてもこれは普及するわけにはいきませんし、今大分、四万円台まで下がったというふうに聞いておりますけれども、やはり値段が高ければ売れない。我々はまた、放送事業者として、BSデジタル放送を見るようないいソフトを提供しなければなりません。
 そういう面で、ソフトとハードが車の両輪として一致しませんと普及しない。お互いに責任をなすり合ってはいけませんので、今後とも、メーカーと我々と話し合いながら、できるだけ受像機を安くし、我々もいい番組をつくっていく、そういう中で普及を図っていきたいと思っております。
春名委員 目標の一千日一千万世帯という点で見ますと、今お話が出ましたように、大体八百日ちょっと経過して、三百八十三万世帯に残念ながらとどまっている。テレビとチューナーの台数はお話しになりませんでしたが、事前に聞きましたら、チューナー含めて二百一万台ということになっている。その理由は後で議論します。
 もう一つ会長にお聞きしたいんですが、BSアナログ放送の停止の年限について、民放は、現行のBS衛星の寿命が来る二〇〇七年と言っておられたと思うんですが、NHKは二〇一一年を要望されていらっしゃいます。それはどういう理由で、逆に言えば、なぜ二〇〇七年までに終了するとできないのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
海老沢参考人 千五百万世帯、それが今千六百万世帯を超えたと思います。今の速度でいきますと、二〇〇七年で千七百万にふえてくると思います。そうしますと、我々の専門分野で検討した結果、五百万世帯前後が転換できないだろう。我々は、やはり視聴者保護の立場からこれを考えなくてはならぬだろうということで、二〇〇七年では無理だ。そのために、二〇〇七年でBSの衛星の寿命が切れますので、引き続いて新しい衛星を打ち上げて、それで補完してもらいたい。そして、地上デジタル放送が始まる二〇一一年でBSも終わって、地上とBSが一体となって二〇一一年から再スタートを切る。それが非常にスムーズなやり方だろうということでお願いしておるところでございます。
春名委員 今お話しいただいたように、二〇〇七年に停波しますと五百万世帯ぐらいが残ってしまうんじゃないかということを想定されておられるわけですね。今BSデジタルの普及は、お話が出たとおり、全く目標に追いついていません。大きなおくれになっています。そして会長自身がそのことをよく御存じで、だから、BSの寿命が来る二〇〇七年までにはアナログの廃止といっても、それは普及の状況からいって無理だ、二〇一一年までということだと思うんです。
 ところで、このBSデジタルの放送は、開始当初から、衛星ですので、BSアナログエリアの一〇〇%をカバーしているものです。そして、BSアナログの受信世帯は千六百万世帯で、地上テレビの放送視聴世帯の約三分の一にすぎません。それにもかかわらず、これほどおくれて、BSアナログ停止まで十年七カ月は必要だ、一一年まで延ばしてほしいということを主張されているのであります。
 一方、地上波デジタルの方はどうでしょうか。停止までわずか七年半しかありません。BSに比べて世帯数は三倍です。しかも、BSのように一挙にすべてのアナログエリアをカバーすることはできません。徐々にやっていかなければなりません。しかもアナ・アナ変換が大きくおくれています。三年近くおくれています。どう考えても二〇一一年までに円滑に移行するということは可能とは思えません。
 率直に、会長自身が今の事態を、円滑な移行ができるのかどうか、どういう御認識をされているのかお聞かせいただきたいと思います。
海老沢参考人 私ども、日本の最先端技術を持っておりますいわゆる電子産業のメーカー、このメーカーに対して、設備投資をふやして大量生産すれば当然値段は安くなるわけでありますから、できるだけ大量生産をしてできるだけ安くしてもらいたいと。問題はやはり値段が高い。手ごろな値段ならば私は不可能でなくて可能だろうと見ております。
 そういう面で、これは私が幾ら力んでもどうしようもないといえばそれまででありますが、メーカーに対して、設備投資をしてできるだけ安く市場に出荷してもらいたい。それによって普及を図る。それと同時に、我々も、デジタル放送のいい点、すぐれた点をPRし、理解を得て、今、私どもNHK、民放、総務省あるいはメーカー、技術事業者、一体となってBSデジタル放送の普及を図っているわけでありますから、そういう面で、私は、このやり方をきちっと推進していけば可能だろうというふうに思っております。
春名委員 興味深い調査がありまして、民放の経営研究会というところのある研究者が、カラーテレビの普及のことを調査したんですね。そうしますと、当時カラーテレビは、現在の価格に直して約五十万円した。それぐらいの値段をしていたけれども、半数以上の世帯に一挙に普及したという数字があるんですね。値段が高いからBSデジタルが普及されていないということだけでははかれない問題があるんですね。
 今、BSデジタル、八百三十日で二百一万台ですので、テレビだけでいいますと百二十二万台しか普及していないわけで、この計算でいきますと、十年かかって五百万台なんですね。一方、地上アナログ放送のテレビは約一億台あるわけですね。今、深刻な事態なんですね。
 こういう状況の中で、二〇一一年までに打ち切るということを、これは国会の責任としてですけれども、最後だけは決めて、アナログ波は打ち切るということだけはがんとされているようですが、そんなことを今言っているような場合じゃないという事態だと私は認識するんですね。
 会長にお話を聞きたいと思うんですけれども、BSデジタルの普及は地上波デジタル放送の立ち上げに不可欠のものなんだというふうにおっしゃってきたわけですね。そのBSがこういう状態になっている。したがって、総務省にはまた後の機会にお話はしますけれども、きょうはNHK予算ですから、会長に改めて私はお聞きしたいと思うんです。
 これまでの経過を見ますと、買いかえサイクルを無視した今の計画では円滑な移行はできないのではないか。私は、今、放送事業者の視聴者国民への説明責任が大変厳しく問われていると思います。NHKが、デジタル放送の宣伝に偏ることなく多角的な観点から報道していただいて、国民視聴者の利益に沿う、真に円滑な移行計画への国民的な合意を形成するために真剣な努力を尽くしていただきたいと思います。場合によっては、二〇一一年打ち切りをやめていただきたいという進言すらしていただきたいと思っております。
 そういう点を改めて会長にお聞きしておきたいと思うんですが、いかがでしょう。
海老沢参考人 私は、放送は技術を活用した文化だというふうに常々言っております。我々は、その時代の最先端の技術を取り入れて、その技術を利用、活用して文化を築いてきた歴史を持っているわけであります。
 私は、デジタルというのはやはり世界の大きな流れでありますし、これは今世界的な競争の時代になっているわけであります。そういう面で、我々が外国におくれをとることなく、デジタルのすぐれた面、メリットというものを国民にできるだけわかりやすく説明して、理解を得ながら普及をさせていくのが我々の社会的使命だろう、そういう信念のもとにデジタル放送の普及をしているわけであります。
 デジタル放送、私は、やはり日本にとっても、経済の再生にもつながりますし、経済の発展にもつながるものでありますし、また、日本の文化を世界に発信するにも、ハイビジョンを中心としたデジタル放送というものがその中核をなすものだろうというふうに思っているわけであります。そのために、今、ハイビジョンを中心とした日本のデジタル放送の番組なりあるいは機材というものが世界的に高く評価されているわけであります。そういう高く評価されたものを我々は自信を持って国民に説明し、また世界に向けても説明しているわけであります。
 ですから、今普及がおくれていることは事実でありますけれども、そういう厳しい経済情勢の中で我々はそれを克服しなきゃならないという使命があるんだと思います。ですから私は、この方針を貫いて頑張っていきたいと思っております。
    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
春名委員 時間が来ましたので終わりますが、デジタルそのものの前進を否定しているわけじゃないんですね。つまり、円滑な移行、国民視聴者の立場、この点に立ち切っていただきたいということなんですね。そうすると、二〇一一年までにおしりを切るというので本当にいいのかどうかが今問われているんだということをきょうは問題提起しているわけなんです。そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。
遠藤委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 私どもは、提出されておりますNHK予算の承認につきましては、承認することに賛成です。しかし、もろ手を挙げて賛成だというわけにもいかない部分がございます。そこで、限られた時間ですが、その問題点をただしていきたいと思っております。
 最初にまず、昨年十二月十二日の当委員会で、NHK決算の審議のときですけれども、取り上げた問題を、きょうは別の角度から質問したいと思っております。受信料の集金業務にかかわる問題であります。
 そのときに、NHKにとりましてはまさに受信料というのがその経営の根幹である、それを集金する労働者の問題というので取り上げたわけですけれども、先日、受信料の集金業務に従事している人たちの労働組合である全日本放送受信料労働組合、全受労と略称言っておりますが、この予算審議に当たって訴えられた文書が恐らく各総務委員のところに回っているんじゃないかと思うんです。それぞれ見ていらっしゃると思います。
 その中にこう書かれているんですね。四千名以上の労働者の雇用を隠して、本来なら事業主の義務として全額を支払わなければならない労災保険料の負担を逃れる脱法行為を犯しながら、時に、労災保険で治療すべき集金労働者の仕事上の災害を財政が厳しい地方自治体の国民健康保険で治療させる違法行為を犯すこともありますという文章がその中にあるんです。
 そこでお尋ねしたいんですが、NHKは、集金業務の労働者の業務上における災害、これを国民健康保険で治療するというふうな指導をしているんでしょうか。
安岡参考人 お答えを申し上げます。
 NHKと地域スタッフとの関係につきましては、雇用の契約ではないということでございまして、業務委託契約に基づく委託、受託の関係だということでございます。したがいまして、雇用契約とは基本的に性格を異にするということでございまして、雇用労働者に適用されます労災保険は適用されないということでございます。
 しかしながら、NHKは、地域スタッフを確保する、そしてまた、安心して業務に従事いただけますように独自の給付制度を整備いたしておりまして、業務上で事故に遭ったときにつきましても、休業の補償だとか医療費等、ほぼ労災保険の水準に準じた給付を行っているところでございます。
矢島委員 安岡さんとはこの問題で十二月に随分やって、雇用契約の問題というのはもう大体お互いに出し合ったんですよ。ですから、きょう聞いているのは別の角度で、つまり、今聞いたのは、もちろん労災は関係ないというお答えなんですが、ここに書いてあるように国民健康保険で治療させる、そういう部分についてお尋ねしたんですよ。実際にそんなことがあるんですか、ないんですか。
安岡参考人 お答えを申し上げます。
 健康保険の関係については、先ほど言った建前の話になりますが、私どもの方も、それにかわる給付といたしまして、いわゆる医療の見舞金ということで措置をいたしているということでございます。
矢島委員 なかなか答えにくそうですので、私、こういうことがあるという事実だけをお知らせして、ひとつお考えをお聞きしたい。
 ここに、大阪北区の山本スミ子さんという集金業務に従事している労働者の方のこんなケースがあります。
 この方は、一九九九年五月十五日、平成十一年の五月十五日、十二時半ごろ、業務中、ビルの出入り口のドアを押して外に出ようとしたところ、戻ってきたドアの取っ手に右肩と上腕部分の二カ所を打ち、右腕全体と指先のしびれなど、感覚がなくなり診療を受けることになり、そのことを営業センターに届け出て、営業センター副部長に相談したところ、国民健康保険で受診するようにと言われた。この方は、それ以後六カ月間、国保で診療を受けていました。そして、十二月に入って、さらに一カ月の休業及び外来加療と診断されたわけです。そうしましたら、今度は、あなたはもう解雇する、このように言われたんです。納得できないので全受労の組合に相談を持ちかけた、こういういきさつなんです。
 いきさつはともかくも、いきさつは安岡さんはわからなくてもいいんです。つまり、こういうことがあったということ、こんな事例が出てくるということは、ほかにも隠れた事例があるんではないか、あっても不思議ではないな、こんなふうに思うんです。つまり、そういうようにやる指導をしているのか、これが最初の質問なんです。
 そして、実は、お答えいただいていると思うんですが、労災保険料をNHKが払って、これらを労災対象とするべきだというのが私の意見ですが、これについては多分なかなか一致しないと思いますが、お答えいただきたいと思います。
安岡参考人 ただいまの大阪の事案についてはつまびらかに承知しておりませんが、いわゆる国民健康保険でスタッフの方が治療を受けた場合に、本人負担が三割ということになっているようでございますけれども、そのときの医療費の一部を医療見舞金という格好でNHKが給付をしているということでございます。
矢島委員 大体、労災で診療中に解雇などという事態もこれは重大な問題だし、それから、この方は職場に復帰したんです。そうしたら、軽労働部門に移りました。その間、給料も大幅に減少したんです。これも、労災というものとの関係からいえば重大問題だと私は思うんです。時間がありませんから、次の問題に行きます。
 昨年十二月の当委員会で、私は、受信料の集金労働者の雇用関係で質問したんですが、きょうはそういう問題じゃなくて、不当労働行為という点でお尋ねします。
 平成四年十月二十日の東京都地方労働委員会の命令書の主文、六項目あるわけですが、その中の四のところにこういう命令書の中の文章があるわけです。「協会は、本命令書受領の日から一週間以内に、下記内容を五十五センチメートル×八十センチメートル(新聞紙二頁大)の白紙に明瞭に墨書して、被申立人協会放送センターの正面玄関前の見やすい場所に十日間掲示しなければならない。」こういう命令が出ているわけです。
 それで、下記、つまり、白い大きな紙に書くべき内容がずっとあるんですが、それは例えば、処遇改善を実施しなかったこと、奨励金を支払わなかったこと、それから委託契約の解約を行ったこと、いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました、今後このような行為を繰り返さないよう留意します、放送協会の会長名でこういう張り紙をするということになっておりますが、不当労働行為であったということについては、これはお認めになりますか。
安岡参考人 平成四年の東京都労働委員会から出された命令については、東京都労働委員会としては、三件ある中で二件につきまして不当労働行為に当たるということになったわけです。
 NHKといたしましては、この都労委の命令については、業績不振の地域スタッフの解約を組合への介入と認定している点等、事実誤認による判断の誤りがあるんじゃないか、こう考えまして、平成八年六月に、東京地裁に取り消し訴訟を提起したということです。その後、和解になったということで、NHKとしては、あくまでも不当労働行為ではない、こういう考えでございます。
矢島委員 どうも安岡さんの大変な考え方ですね。和解していますよと。もしこの問題を出したらもっと聞きたいと私は思うんですが、時間が何しろないんですよ。和解の中で五千万円払っていますよね。どこで決めて、どうやって、どこの予算から出しているか、そういうことも聞きたかったんですよ。どこで協議したんだ、この問題はと。ただし、そんなことをやっていたら、もうあと三分きりありませんから、そういう問題もきちんとしなければ、何しろ東京地方裁判所に提訴したんだということだけで、なるほどこの問題はNHKに道理があるなというようなことにはならないということ。
 それから、これも前回私、出しまして、山形における山形放送局の事件であります。仙台高裁でこれも判決が出ております。その判決の中にはきちんとこんな文章で、「実質上使用者の地位にあるNHKがその組合結成を阻止しようとし、また結成された組合の組合員に対し脱退を強要説得する行為が、組合に対する支配介入として不当労働行為を構成することはいうまでもなく、」というような判決文もあります。
 つまり、私が言いたいのは、こういう不当労働行為が、それぞれ都労委やあるいは仙台高裁で確定しているということから見て、もう時間がありませんから、会長に最後のことで決意をお聞きしたいんですが、二つの点でいきます。
 一つは、こういう労使関係について、これまで経営委員会とかそういうところで議題になったり研究したりしたことがございますかということです。あるかないかで結構です。
 それからもう一つは、今までずっと安岡理事とのやりとりをお聞きして、全受労が労働組合としての認定、これはもう既に明確だろうと思うんです。そうであれば、集金労働者への労働契約であるということも明らかじゃないのか。だから、会長、労災保険も雇用保険も適用する対象じゃないのか。事業主として早急に対応方向を検討してもらいたいというのが私の最後の質問の中身なんですが、いかがお考えでしょうか。
海老沢参考人 全受労の問題について経営委員会で、私の知る限りでは、議論になったことはありません。
 御承知のように、NHKの受信料収納業務の、いわゆる地域スタッフと言っておりますけれども、今五千数百人おりまして、全受労は百六十七人の組合員というふうに聞いております。大多数の方が今のNHKのやり方を納得していただいて、やっているわけであります。そういう面で、私どもは、今やっているこのやり方を継続していきたいと思っております。
矢島委員 組合の大小で差別しないようにということだけ申し上げて、時間になりましたので終わります。
遠藤委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後二時四十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十七分開議
遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 きょうは、大臣初め、そしてまた海老沢会長、NHKの参考人の皆様、御苦労さまでございます。
 今党首討論があったわけでございますが、私も見ておりました。非常に熱い討論だったと思います。イラクの大量破壊兵器の査察、まだまだ継続する必要性、可能性があったにもかかわらず、アメリカを中心として攻撃を決断した。そのことに対して日本政府も支持をした。私たちの国は戦争放棄という憲法を持っている国でございますので、ああいった武力攻撃を支持するという日本政府の方針はなかなか国民からは理解を得られないのではないか。そういった党首討論を聞いておりまして、そんなふうに感じた次第でございます。
 それはともかくとして、質問させていただきます。
 NHKの事業収入、これは実にその九六%が受信料収入なわけですね。まさに受信料に支えられている公共放送であるわけでございます。そのNHKにとりまして、良質の放送を提供し続けることができるかどうかということは、まさに受信料収入を確保し続けていけることができるかどうかにかかっていると私は思うんですね。つまり、NHKの放送内容と受信料というのは表裏一体のものである、このように私は考えておるわけでございます。
 ところで、受信料収入の伸びでございますが、平成十五年度予算を見ますと、増収額は四十一億円。これは、前年度の七十二億円に比べると相当圧縮された金額となっております。非常に厳しい状況と言ってもいいんじゃないかと思うんです。このように収入の伸びが過度に落ち込むようなことが続きますと、受信料制度の存続、もっと言えば、公共放送の存続意義そのものが問われることにつながるおそれがあるのではないかという気が私はするわけでございます。
 経営側としては、そういったおそれあるいは危機感、こういったものをどのようにお感じになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
海老沢参考人 今先生から御指摘がありましたように、十五年度の受信料の伸びは対前年比〇・六%、四十一億という数字を私ども今度の予算で提出したわけであります。
 御承知のように、今この不況下で失業率も五・五%と、三百万人を超える方が失業している。そういう中で、今失業中なのでちょっと払えないから待ってほしいという、いわゆる未納、滞納がふえてきております。この失業率、一%ふえますと受信料収入に四十万世帯が影響を及ぼしてくるという数字がこれまで出ております。そういう面でこの二、三年来伸びが鈍ってきている。そういう中で私どもは、今、非常に危機感を持って、全力を挙げて、公平負担の原則のもとにお願いをしているわけであります。
 そういう面で、高い目標を掲げてもなかなか今の経済不況では無理だということで、〇・六%、四十一億というふうにしたわけであります。できれば、努力をして、この四十一億を七十ないし八十億にもしたいという気持ちで十五年度やっていきたいと思っております。
 同時にまた、我々も視聴者から信頼されることが大事なので、そのためには、今御指摘ありましたように、質のいい、よい番組をつくらなきゃ意味がありませんので、そういう受信料収入の努力と同時に、いい番組を一本でも多くつくって視聴者のニーズにこたえたい、そういう気持ちでいるわけであります。
 いずれにしても、今、非常に危機感を持って、受信料の制度を維持するためにはやはりもっと頑張らにゃならぬだろうというふうに、決意を新たにしているところでございます。
横光委員 今お話しのように、よい番組をつくるためには受信料収入をふやさなきゃいけない。その収入をふやすための方策として、きょう、先ほどもお話ございましたが、やはりいろいろな方策があると思うんです、その収入をふやすことだけを考えるとですね。今言われました受信料収入をふやすということ、これが第一、いわゆる受信料契約によってですね。それからまた、受信料を値上げするということも収入をふやすための一つの方策でございます。あるいは、受信料を義務化するということも、これまた一つの方策でございます。
 しかし、公共放送を公共放送たらしめていくためには、最初言いました受信料収入、これをふやすことに全力で取り組むことがやはり第一だと私は思うわけでございます。先ほどからお話ございますように、こういった経済状況でございますので、受信料を下げてくれという声はありますが、こういったデフレの状況の中で受信料を上げるということは不可能でございましょうし、また義務化ということになりますと、そもそもこの制度そのものが崩れ去ってしまうわけでございます。
 NHKというのは、公平負担の原則のもとに、視聴者がみんなで支える放送、そして、どこからも何からも圧力を受けることなく自由かつ自律で番組を維持していく、これがNHKに課せられている使命の一つだと思うわけでございます。さきの特殊法人改革の際もNHKだけは特殊法人のまま残ることになったわけで、そういった意味からしても、この今の制度を守ること、さらにもっと言えば、この制度を守ることは責務である、このように協会には求められていると思うわけでございます。
 そういった中で、では、どのように収入をふやしていかれるのか、いかれようと努力をされておるのか、そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思うんですが。
海老沢参考人 一つは、衛星放送の普及でございます。
 御案内のように、今、衛星放送の方も、BSデジタルハイビジョン放送ということで、民放各社とともに普及運動をしておるわけでありますけれども、このBSの伸びも余り思わしくない。しかし、やはりBSはBSならではの役割があります。
 そういう中で、ことしは、巨人軍にいました松井選手がニューヨーク・ヤンキースに移籍した。今、松井選手の動向、やり過ぎではないかというぐらいやっておるわけでありますけれども、そういう松井選手なりイチロー選手がやはりアメリカの大きな舞台の中で日本選手として活躍する、そういう日本選手の活躍について、視聴者、ファンからは非常に大きな期待を今寄せられております。そういう面で、松井選手とイチロー選手を軸に、できるだけ日本の選手の活躍している場面をBSなりハイビジョンで放送しようということで、前年度より、かなり試合数を、放送日数をふやして、普及に努めていきたいと思っております。
 また、地上波が我々の生命でありますから、そういう面では、地上波は今ほとんど全家庭に行き渡っておりますので、公平負担ということで、地味ではありますけれども、やはり、できるだけ一軒一軒回って、NHKの存在、受信料制度というものを理解してもらう。そして、苦しい生計の中ではありましょうけれども、そういう御理解を得ながらふやしていく、そういう地味な努力がまた一層求められているだろう、そう思っております。
    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕
横光委員 今お話がございました。確かにそうでしょう。BSが現在一千百万、あるいは地上波は三千七百万の契約と聞いておりますが、まだまだ三分の一でございますので、余地はあるし、ここに、さらにBSの普及に努力していただかなければならないことでございます。
 そのためには、やはりBSの内容の充実ですよね。やはりNHKのBSはさすがに違う、こういった印象をお客さんにいかに与えていくか。そのことが、今言われました、一軒一軒訪ねていく現場の皆さん方の力になるわけですね。いわゆる委託集金人、そしてまた、その人たちをサポートする、戦略を立てていくブレーンである営業職員、こういった人たちは、それぞれパートパートで別々じゃないと思うんですね。番組の内容がそのまま現場の人たちには全く営業成績でつながっていくわけで、そういったことをつなげていくことによってまた番組の内容のプラスになっていく、非常に連係効果があるということだと思うんです。そういった意味では、営業セクションを中心とした努力というのは、これはまた第一だと思うわけでございます。
 それと、私ちょっと一つ申し上げたいのは、公共放送あるいは受信料制度というものが、集金の仕方によって、口座振替とかになって、かなりお客さんの中で認識が薄くなっているんじゃないかという気がしないでもないんですね。ですから、露骨でなく、嫌らしくなく、わかりやすく、スポット等でもっともっとPRしてもいいんではないかという気が私はしております。
 放送局の人が、いわゆる放送に出ている人がお願いをするということも一つの手法ではないか。つまり、実際の放送中に、逆に映像をうまく利用して、アナウンサー等が、ニュースとかいう番組以外のざっくばらんな番組はNHKにもあるわけでございますので、そういった中で、親しまれているアナウンサーが何げなく番組の中で、こういった放送ができますのも皆様方の受信料のおかげでございますぐらいのことも言って、あっ、あの人が言っているのかというような形で自然とそういった意識がしみ込んでいく、そういったこともあり得ると思うんですね。駄じゃれでございますが、まさにアナウンス効果抜群じゃないかという気がいたしております。
 このように、もっともっとNHK自体も、番組を利用して、NHKというのはこういった受信料制度で成り立っているんです、皆さんのおかげですというようなことを言っても、ちょっとはやっていると思いますが、私は、少ないんじゃないか、もっともっとやってもいいんじゃないかという気がいたしております。
 また、直近の収入増、これだけではなく、長期的な視点に立っての収納アップの取り組み、これもまた力を入れていただかなければならないと思うんです。
 その一つとして、例えば子供対策、まあ対策と言っては大げさですが、子供さんたちが、NHKと民放とどう違うのか、コマーシャルのあるなしぐらいの認識しかないんですね。やはり子供たちのころから、NHKというのはそういう形なんだ、公共放送なんだ、受信料で成り立っているんだ、そういったことを子供のころから自然と溶け込ませていけば、大人になっていきなり受信料を要求されても、自然と不払いとか拒否とかいうことがなくなるんじゃないかという気がするわけですね。
 今、教育テレビにも非常にNHKは力を入れていると聞いております。ただ、ちょっと話がそれますが、「中学生日記」という番組がございますね。これは一九七二年にスタートしているので約三十一年間やっているんですが、この番組が、今まで総合放送、いわゆる一チャンネルで放送されていたんですが、放送時間帯がどんどんどんどん変えられて、とうとう今度、四月からは三チャンネル、教育番組になるというふうに聞いております。ちょっと寂しい気がするんです。
 なぜ寂しい気がするかといいますと、個人的に、私、あの「中学生日記」の最初の先生を一年間やっているんです。NHK名古屋に一年間通いました。「中学生日記」がスタートしたときの最初の先生を一年間私がやった。まさに名古屋放送の、NHK名古屋の誇りなんですね。それが、一チャンネルでずっと放送されていたのが今度三チャンネルになるというのは、いろいろな理由があるんでしょうが、事情があるんでしょうが、ちょっと寂しいなという気がいたしております。
 それはともかくとして、子供のころから、NHKの意義、そしてまた民放との違い、あるいはNHKのあり方、成り立ち、こういったものを自然とやはりいろいろな形で心の中にしみ込ませていくということも必要であろうと思いますし、そういったこともこれから考えていただければと思っております。ちょっと何か御意見がございましたら。
    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
海老沢参考人 今先生御指摘のように、私ども、子供から高齢者までということで、すべての国民を対象にする。そういう中で、未来を担う子供たちに対するメッセージといいますか、そういう面で、朝の時間帯では「おかあさんといっしょ」とか、あるいはアニメとか人形劇とか、また学校放送等、あるいは語学番組とか、いろいろやっておりますけれども、やはりその時代に合ったものを出さないと子供さんは見てくれない。そういう面で、視聴者の要望なり意見を聞きながら、さらに内容の充実を図って、すべての人たちに楽しんでいただけるようなおもしろい番組をつくっていきたいと思っております。
横光委員 終わります。
遠藤委員長 次に、重野安正君。
重野委員 それでは、数点お伺いいたします。
 まず、NHKの役割についてお伺いいたしたいと思うんですが、事業運営計画において地域放送の充実強化をうたっております。私もそういう方針には賛同するわけでありますが、そのためには地域からの情報発信ということが非常に大事ではないか。
 一つの例を挙げさせていただきたいんですが、例えばサッカー、私の県にことし一部リーグに上がりましたトリニータというチームがあるんです。このチームは、県民がそれぞれお金を出して、大分ですから大企業もそう数多くありませんから、それこそ県民が手づくりのサッカーチームというふうなイメージでやりまして、そういう我が郷土のトリニータというサッカーチームが試合をすると、それがNHKの大分放送局の電波に乗って県民にその活躍が知らされる、そういうふうな役割というのも我が大分放送局の中にはあるのではないかと思うんです。
 そういう目的意識を持って地域スポーツ文化の向上に貢献をするという役割を果たすべきだ、このように思うんですが、そういう立場に立って放送の時間をつくり出していく、こういうふうなことをすることが求められていると私は思うんですが、まずその点について会長に。
    〔委員長退席、安住委員長代理着席〕
海老沢参考人 私ども、地域放送に対する充実強化ということをこの数年来一般の方々に説明してきております。そういう中で今、去年ワールドカップサッカーをやり、そして日本もサッカーファンが非常にふえてきている中、特に九州では大分にも新しいスタジアムができて非常に関心を呼んでいるということを十分承知しております。
 Jリーグは、私ども、去年の数字でいいますと八十七試合を放送しております。そのうち、地方だけのいわゆる各県単位の放送は去年は三十試合やりました。ことしは、さらにこれを、地方発をふやしていきたいと思っております。
 ことしの予定は、前期が、この二十一日、あさってから八月の二日まで、これを第一ステージと言っておりますが、第一ステージの方は、大分スタジアムでは今のところ七試合を放送する予定にしております。その七試合のうち四試合を全国放送、大分だけの県内向け、ローカル向けは三試合、今七試合を予定しております。第二ステージは、八月の十六日から十一月二十九日までが第二ステージでありますが、それにつきましては、第一ステージの結果を見て、大分が頑張っているようならばふやすだろうし、ちょっと低迷しているようならば若干減らすかもわかりませんが。
 いずれにしても、七試合という数字を挙げてありますし、これはもう各県からそういう要望が来ておりますので、その辺のバランスをとりながらやっていきたいと思っております。
重野委員 そういう方向で今後ともひとつ努力をしていただきたい。我々も、大いに強くなるように応援していきたいと思います。
 次に、視点を変えまして、二〇〇三年末から、関東、近畿、中京の三大広域圏、デジタル放送への完全移行、こういう方向が決まっておるわけです。ただ、そういう国の政策が果たして国民各界各層に浸透しているかという点なんですね。我々は常に大臣とこういうふうなやりとりをして国の方向というのは聞いていますからわかりますが、しかし、国民一般大衆から見るとその辺はまだ浸透していない、私はこのように思うんです。
 それで、なぜ三大広域圏なのかというところから出発をするわけです。
 私は、テレビを見る時間の長いのは、やはり高齢者が長いと思うんです。高齢者の割合は地方に多いわけで、そういうふうに考えていくと、三大都市圏からスタートするということが果たして現実のニーズにマッチした方策かどうか、そういう点も一考すべきではないかというふうに思うんです。
 そういう、テレビに期待している高齢者が多く住む地方が納得する説明というのは今非常に重要だというふうに私は思うんですが、その点について、これは総務大臣、お答えください。
片山国務大臣 地上波のデジタル放送は、御承知のように、三大都市圏でことしの十二月から始めて、それから三年おくれで二〇〇六年からその他の地方局で始めてもらう、こういうことですが、何で三大都市圏だといいますと、やはり視聴者が多いところからやる方が普及が早いんですね。それからまた、結局デジタル受信機というものを安くせないけませんから、視聴者が多い方がいいのではなかろうか。さらに言えば、体力のある局からやってもらう。そういうことで、関係の皆さんと話し合いまして、それじゃ三大都市圏でと、協議会をつくっていますから、こういうことでございまして、地方の方は、それでは二〇〇六年ぐらいからやりましょうと。
 今、重野委員言われましたように、テレビを見る時間というのは大体三時間台なんですね。三時間台で、多いのは、やはり地方が多いんです、平均二十分ぐらい。大都市の方が二十分ぐらい少ないのです。それは、今、重野委員言われたように、高齢者の方が地方に多いから高齢者の方がよく見ていただいている、こういうことだろうと思いますけれども、三大都市圏から始めるというのは、当事者の相談の結果だ、こういうふうに考えていただきたい、こう思います。
 できるだけ早く始めて、都市でも大都市でもデジタルのメリットを享受してもらうようにしたい、こう思っておりますし、地方の方はアナ・アナもせないかぬところがかなりあるものですから、そういうことも関係があると思います。
重野委員 今の大臣の説明も、それなりに一つの理屈はあると思うんですね。
 さきの国会で、郵政公社化法の審議の中で、お互いに確認したのは、広くあまねくという言葉が再三にわたって使われました。放送も、これはまさしくユニバーサルサービスでありまして、そういう意味では共通したものがあるというふうに思います。つまり、NHKのユニバーサルサービスをどう確保していくか、そういう視点だろう、このことも非常に重要な課題というふうに思います。
 私は、ユニバーサルサービスを使命とするNHKのデジタル放送について、結果的に地域的時間差が生ずるんですね、今言うように、大都市圏が先にスタートして、そして広がっていくわけですから。この時間差をどう埋めるかというのが非常に重要な意味を持つ。
 そのときに、当初から言われておりますように、二〇〇三年から二〇一一年という幅があるんですが、この幅がどう縮まるかということに結果的になるんですね。そのことを私は強く要望というか指摘しているわけですけれども、その点について、やはりNHK、なるほどNHK、そういうふうな評価をあまねく国民から受けるためには、私は、この幅を縮めるという、国とNHKがどう工夫して縮めていくかということが求められていると思うんですが、この点については、大臣とそれから会長、それぞれお答えください。
片山国務大臣 NHKの大きな役割の一つが、やはりこういうデジタル放送なんかのときは先導的役割を果たしてもらって、国民の皆さんによくわかってもらい、また、ほかの民間放送事業者のモデルというか、そういうことで先頭に立っていただく、こういうことでございますから、三大都市圏は年末から始めますけれども、できるだけ御努力をいただいて早目早目にやっていただくことが適当だろう、こういうふうに思っておりますが、NHKはNHKのいろいろな御事情もおありでしょうから、そういうことの中で最善の努力を図っていただく。
 NHKが全国あまねく見えるということがユニバーサルサービスですね。民放ももちろんそうですけれどもね。そういう意味では、NHKの皆さんの御努力に大変期待いたしております。
海老沢参考人 先生の御指摘のように、私ども公共放送としては、全国あまねく普及させるというのが大きな目標であります。今言われているデジタルデバイド、情報に格差をなくすようにしよう、情報格差をできるだけなくす、縮めていこうというのも我々の大きな使命だろうと思います。
 そういう面で、先生御指摘のように、二〇一一年七月二十四日という枠がありますけれども、それではアクション無理じゃないか、もっと先に延ばすべきじゃないかという意見もありますし、逆に、もっとこれを縮めて、いわゆる情報に格差がないようにするのも我々の仕事ではなかろうかと私は思っております。
 これまで、ラジオもテレビも、全国に普及するにはそれぞれ三十年の歳月を要してきました。一遍にはなかなかできない。そういう面で、段階的にやり、それぞれ三十年もかかってきた長い歴史があります。そういう中で、今十年足らずでアナログからデジタルにすべて変えるという、本当にこれは一大国家事業といいますか、国家的な事業として取り組まない限りは一遍にいかないのは、もう言うまでもありません。そういう面で、私ども、新しい技術を開発しながら、それを活用しながら、できるだけ早く普及させていきたいというのが我々の仕事だろうと思っております。
 その一つとして、光ファイバーも今どんどん敷かれておりますけれども、そういう中で、光波長多重という、放送と通信がそれぞれ別個に情報を送れる新しい技術が今開発されております。こういう新しい技術を使えば、山間地なり、あるいはビル陰で見えにくい難視の都市部もカバーできるのではなかろうか。その辺を、放送事業者、通信事業者あるいは自治体がこれをどういうふうに活用していくか、今その辺の議論もしていかなければならない時期だろう、そう思っております。
    〔安住委員長代理退席、委員長着席〕
重野委員 そこで、今、大臣、会長、それぞれお答えになりましたけれども、今三大都市圏は明らかになっておりますが、問題は、その後どういうスケジュールで全国をフォローしていくのかという点を、もう少し私はわかりやすく説明していただきたい。これは大臣の方に。
 それから、いわゆるデジタル化に伴って、これを一つの商売の好機ととらえる流れもあるんですね。問題は、地方は非常に高齢化が進んで、お年寄りのひとり暮らしというふうな、そういう世帯も大変多いのであります。そういうところに行って、例えばアダプターの押し売りとかあるいは訪問販売みたいな、そういうふうなことが起こらぬとも限らないですよ、このような時代ですから。こういうことによってお年寄りが大変な被害をこうむるというふうなことをやはり予防していかなきゃならぬ。そういうことも念頭に置いた対策、これも私は非常に大事なことではないかというふうに思うんですが、この点について、大臣、答弁ください。
片山国務大臣 まだアナ・アナ対策が進行中でございまして、ある年限までアナ・アナ対策と並行して進めますので、二〇〇六年から始めるローカル局の方の細かいスケジュールはつくっておりませんが、いずれにせよ、早い時期に、全国地上デジタル放送推進協議会、こうありますから、本年の夏ぐらいまでには全体のきちっとしたスケジュールは要るんじゃなかろうか。
 ローカル局の親局は二〇〇六年ぐらいから一斉に始めてもらえればと、こう思っておりますが、御承知のように、中継局がありますから、これについてはなおおくれていく、こういうことでございますが、ぜひ夏ごろまでの全体のスケジュールをつくることまでお時間をいただきたい、こういうふうに思います。
 それから、今言いましたように、アダプターというかチューナーというのか、そういうものが何か、アナログ受信機をお持ちの場合にそういうことになる可能性も実はあるものですから、この辺の周知をやらないといかぬのですよね。
 きょうも先生方何人も言われましたけれども、まずNHK初め放送事業者の人にやってもらうんですけれども、メーカーさんも量販店も卸売も小売も、とにかく二〇一一年からはもうアナログは使えませんよ、デジタル受信機ですよ、買いかえは平均八年ですから、合わせて上手に買ってください、こういうことのPRもしていかなきゃいけませんし、あるいは、それは私は、自治体やその他も全面的に、国はもちろんやりますけれども、協力すべきではなかろうか、こう思っております。
 性能をよくして値段を下げることですね、デジタル受信機の普及は。そのためには、総合的な周知徹底のアクションプランを、これはみんなで集まってつくろうじゃないか、今そういう機運になっておりますから、ぜひ大々的にやってまいりたいと思いますし、幸い、十四年度の補正予算で公費がとれましたので、これから最も有効な方法を考えながら使ってまいりたい、いいお知恵がありましたらぜひ御指導賜りたい、こういうふうに思っております。
重野委員 以上で終わります。
遠藤委員長 次に、伊藤信太郎君。
伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎です。
 きょうは、NHKのコンテンツクリエーション及びコンテンツの調達、このことに関する考え方を伺いたいと思います。
 コンテンツといってもいろいろな種類がありますけれども、きょうは、特にドラマコンテンツについてお伺いしたいと思うんです。
 ドラマというと、劇場でいうと映画ということになるわけですけれども、NHKは、平成十五年には年間八百八十本の映画を放送する予定だということです。それからまた、予算では、平成十五年度は約三十五億円を映画の放送権料として予算としているわけです。これだけの本数をNHKとか民放でどんどん放送しますと、いずれ良質の映画というのはなくなっていくわけですね。
 それから同時に、今、デジタル時代になりまして、いわゆる旧来の映画というメディアと、テレビ番組ということと、DVDとかビデオとかいう形のパッケージメディアと、それからインターネットのコンテンツという、その垣根というのはどんどんなくなってきているわけですね。
 一方、NHKの従来のドラマの制作費ということで見てみますと、今放送している「武蔵」というのは四十五分で三千五百四十四万円かけている。これを二時間に直すと九千四百五十万円ですね。それから、朝やっておりますテレビ小説「まんてん」、これは十五分で三百五十四万円かけておりますから、これを二時間に直すと二千八百三十二万になるわけですね。
 一方、映画は、いろいろ小さなものから大きなものまでありますが、最低一億円から、大きいもので二百億円ぐらいかけています。そして、今の映画の制作資金というのは、三分の一以下のところが劇場収入、三分の一より大きいところがテレビ・セール、それから残りの三分の一がいわゆるパッケージメディアということで入っている。それで、現在はインターネットによるビジネスモデルというのがだんだん現実化していく。こういう状況にあるわけです。
 ですから、今映画をつくるということは、とりもなおさず、テレビ番組をつくることでもあるし、パッケージやインターネットのコンテンツをつくるということでもあるわけですね。
 これは経済的な側面ですけれども、技術的な側面でも、NHKが心血を注いでつくったハイビジョン、このハイビジョンの技術が映画制作に使われて、二十四Pという形で、映画の撮影から、編集から、今度は映画界のデジタル配信というものも行われてきているわけです。
 こう考えてみますと、映画ということとテレビということとインターネットということの、業態というか、コンテンツクリエーション及びその調達というのは一体化しつつあるんですね。
 このことを歴史的に見ますと、例えば、フランスの例で恐縮ですけれども、フランスではCNCという、サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・シネマトグラフィー、国立映画センターというのが一九四六年にできるんですけれども、当初は劇場収入のあるパーセンテージをこの運営に充てていたわけですね。ところが、一九八四年にカナル・プリュスという局ができますと、このカナル・プリュスの年間売り上げの二〇%を映画制作に共同出資するか、あるいは放送権料の先買いという形で提供するということが法律的に義務づけられるわけです。現在は、CNCは約二十億フランの予算を持っておりますけれども、そのうち半分以上がテレビ・セールのところからの、今五%に下がっていますけれども、五%が二十億フランの半分を賄っているということであります。
 こういういろいろな世界の趨勢とか歴史的状況を見ると、やはりこれからNHKが良質のコンテンツというものを特にドラマ部門でつくるためには、純粋に番組ドラマとしてだけではなくて、映画コンテンツということも入れて考えていく必要があるのではないかなと思います。
 日本にはまだCNCのような組織はありませんけれども、仮にそのようなコンテンツクリエーションのコンソーシアムあるいは機構ができた場合に、その中においてNHKの予算を放送権料の先買いあるいは共同出資者として出すということは考えられるのかどうか、その辺のNHKのスタンスをお伺いしたいと思います。
板谷参考人 先生の御指摘ではありますが、まず、私どもNHKとしては、受信料を使わせていただいて、とにかく一本でもいい番組をテレビで流す、これがまず基本的に一つあると思います。
 それから、先生が今御指摘のように、ハイビジョンで映画がつくられる、それからテレビもハイビジョン、インターネットでもブロードバンドになればやがてハイビジョン、そういうふうにソフトがいろいろな形で使われる時代というのを我々も念頭に入れながら物を考えていかなければならない、次第にそういうふうな状況にはなっているというふうに思います。
 それからもう一つは、そういうお金を放送局なりテレビ局がプールして、例えば国立映像センターみたいなところで映画をつくっていくというようなことについても、将来的にはそういうことはあるかもしれませんが、今私どもとしては、受信料をそういう映画に投じていいんだろうかどうか。やはり映画というのは何といってもお金がかかるところがございますので、率直に言ってテレビと比べてまだコストがかさみます。
 ですから、そういう受信料を映画に投じるということで視聴者の皆様の御理解を得られるかどうか、そういうこともやはり慎重に考えながら検討していくべきことかなというふうに思っております。
伊藤(信)委員 次に、NHKの経営形態についてお伺いしたいと思います。
 このようにインターネットがいろいろな形で国民の大多数に利用されている状況、また放送と通信の融合がある。そのことから、NHKが当初つくられた状況とは、いろいろな意味で政治経済あるいは技術状況が変わっていると思うんですけれども、そういった場合に、経営のあるいは運営の自由度とか、今後の発展性あるいは効率性、国際性、そしてまたNHKが抱えております責務である日本の公共放送としての使命、そういったものをバランスを持って考えた場合、今の特殊法人という形のままでいいのか。それとも、独立行政法人という考え方もあるのか。あるいは、一歩進んで民営化ということも一つの視野に入っているのか。
 重要な問題ですので、この件について総務大臣とNHKの両方から御意見をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 今は、NHKは放送法に基づく受信料を主たる財源とする特殊法人ですね。民営化というと、民間放送事業者を一つふやすだけになるんですね。今は、公共放送であるNHKと民放連中心の民間放送事業者が切磋琢磨、二通りじゃありませんが、二元体制ですね。だから、それをやると公共放送をなくしていいのかという議論になる。そこが一つあります。
 それから、独立行政法人というのは、ある意味では役所のダミーなんですよ。だから、極めて公的な色彩が強いのと、主務大臣の監督が隅々まで及ぶんですよ。今NHKは、国会の予算、決算の承認だけですよね。独立行政法人になったらずっと大変ですよ。それから、評価委員会ができまして、ここが三年か四年ごとに評価をして、場合によっては、役員をやめろとか仕事をやめろとか、そういうことをやるので、それもやはり、公共性といいますか、広い公共性、そういうものを考えるとどうだろうかと。それで、やはり特殊法人だなということになりまして、いつだったですか、閣議決定、平成十三年十二月十九日の特殊法人等整理合理化計画では、NHKの組織形態については現行どおりいこう、こういうふうになりましたので、私も、それでよかったな、こう思います。
 通信と放送の融合ということが言われますが、似てきますよ、どんどん似てきますけれども、基本的には違うんですよ。放送は不特定多数ですよね。しかも、極めて公共的な役割を担わなきゃいかぬ。通信は、多数になるけれども、特定多数ですよ。基本的には特定少数なんだから、これが通信の秘密だとか別のあれが加わるんです。
 だから、似てはくるけれども、そこは違うので、やはり法制や根拠も違った方がいいと私は思いますし、似てくる部分ではお互いが便益を共有し合うような仕組みをつくればいい、こう思っておりまして、通信と放送が一緒になってきたんだから、ハード、ソフトも別にしたらどうかなんという、通信と同じような議論が放送にありましたけれども、私は、それはだめだ、こういうことを一貫して申し上げた次第であります。
海老沢参考人 NHKのあり方については、これまでいろいろな議論がなされたと思います。そういう中で、結論的には、特殊法人、今の昭和二十五年にできました法制に基づくNHKという組織が、私は、まだまだ存在理由が、意義があるだろうと思っております。それよりは、また我々は、こういうすぐれた組織をどれだけ維持し、発展させるか、そちらに今力を注いでいるところでございます。
 私は、今のままの組織でやっていくべきだろう、そう思っております。
伊藤(信)委員 時間が過ぎたので、短くだけお聞きします。
 そうなってくると、NHKは当分の間特殊法人ということになると思います。そうすると、NHKが持っている膨大な量のコンテンツを国民が自由に利用する、またNHKが持っているいろいろな施設あるいは制作能力というものをもう少し自由度をもって使用する、しかも、そのことが民放やプロダクションの民業を圧迫しないということになると、デジタルアーカイブの管理とか、インターネットで流す場合の著作権処理であるとか、あるいは課金システムの開発というものをNHKが本体でやるのはなかなか難しいと思うんですね。かつ、民業を圧迫しないで民間の持っているものも使うとなると、やはりNHKと民間が共同で何かそういう処理をするコンソーシアムをつくるということが必要じゃないかと私は思いますが、その件についてのNHKのお考えをお伺いしたいと思います。
海老沢参考人 私どもが今保存している映像資産、これは非常に文化度の高い資産だろうと思っております。これを後世に残すためにどうするか。それをいろいろな面で再利用する、活用するというのも大きな使命だと思います。
 その使い方については、ブロードバンドのネットワークをさらに構築し、そしてまた著作権の処理をどうするか、その辺の大きな課題をクリアしながら、全体像がはっきりした中で、また運営をどうするか、またどういうふうな利用の仕方があるか、それをさらに検討していきたいと思っています。
伊藤(信)委員 質問を終わります。
遠藤委員長 次に、上川陽子さん。
上川委員 自由民主党の上川陽子でございます。
 きょうは、海老沢会長に質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 現在、日本国内には一億二千万台というテレビの受像機があるということでございますが、テレビ放送の開始から五十年、国民一人に一台ということでのテレビ時代を迎えているわけでございます。
 私は今五十歳でございまして、まさに放送とともに生まれたということでございますけれども、小さなころには、「ひょっこりひょうたん島」とか「月光仮面」とか「赤胴鈴之助」とか、家にテレビのない、近所の家に、テレビのあるお宅に行って見させていただいた、こんな記憶もございまして、そのころと比べますと大変隔世の感がある、こんなふうに思っております。
 さて、提出されております平成十五年度の予算ということでございまして、これまでの五十年を振り返りながら、これからのテレビのあり方を考える節目の予算ということでございまして、大変大切な予算ではないか、こんなふうに思っております。
 ことし二月三日、ホームページを開かせていただきましたら、会長のトップの方針としまして、テレビは時代の一歩先を歩くという宿命を持っている、テレビの可能性を追求しながら、人類共通の課題を考える番組をつくっていきたいと、大変大きな抱負を述べられておりました。
 メディアは、立法、司法、行政に続く第四の権力、こう言われているわけでございますが、特に、この発達著しいテレビの放送ということでございますと、社会や世論の方向をよい方向にも悪い方向にも導く大きな力を持っているということでございますので、その意味で、放送事業者の立場で大変高い倫理観また将来を見通す先見性というものを要求されている、こんなふうにも思っております。
 そこで、時間の限りがございますが、今、日本の社会が抱えている二つの課題につきまして、NHKさんとしてどのような考え方で番組を編成し、また社会をリードしようとお考えでいらっしゃるのか、お考えをお聞かせいただきたい、こんなふうに思います。
 まず第一点は、男女共同参画社会の実現ということでございます。
 今、朝のテレビ番組、「まんてん」という番組がございますが、主人公である女性、満天は、宇宙飛行士ということで、今大変訓練をしているところでございます。宇宙から気象予報をしようということで、大変大きな夢を持っているわけでありますが、だんなさんの方は宇宙飛行士の試験に失敗をなさいまして、今子育てに奮闘ということで、ともに共通の夢を追いかけている、こういう姿を描いているわけでございます。
 こうした番組を通じて、NHKさんとしては、女性の生き方あるいは働き方、子育てのあり方あるいは家族観、こういうものについてどのようなメッセージを国民にお伝えしよう、こんなふうにお考えなのか、ぜひお聞かせいただきたいし、また同時に、男女共同参画社会の将来像という形で、放送事業者としてどういう姿を描かれていらっしゃるのかということを、まずお伺いしたいと思います。
 時間が短いので、ちょっと関連して。
 翻って、NHKさんの職場の実態ということで、男女共同参画の実態を見てみますと、職員の皆さん一万二千人ということでございますが、女性は千二百八名ということでございまして、ちょうど一割ということでございます。また、管理職について見ますと、全体の三千七百六十人に対しまして女性は百二名ということでございまして、二・七%、低い水準ではないかな、こんなふうに思います。
 男女雇用機会均等法が施行されまして十七年という年月がたっているということでございますので、どうも公共放送としては、事業体としても余り誇れる数字ではないな、こんなふうにも思うところでございます。こういったことも踏まえまして、女性職員の能力の向上あるいは人材開発その他の面でどのような御努力をしようとしていらっしゃるのか。
 二点お願いを申し上げます。
    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕
海老沢参考人 私ども、男女共同参画社会を目指そうというようなことで、いろいろな取り組みをしております。
 今先生から朝の連続テレビ小説「まんてん」のお話がありました。御承知のように、朝の連続小説は、女性一代記といいますか、日本の女性が苦難にめげず、一歩一歩、自分の志を持って、そして夢を持って、人生を切り開いていくといいますか成長していく、そういうドラマが非常に多いわけであります。
 それは今、こういう高齢化、少子化時代の中で、女性の社会進出が非常に進んできております。そういう中で、いろいろな障害を乗り越えながらたくましく社会へ進出していく、そういうものを見せることによって、男女共同参画社会といいますか、それを円滑に、着実に進めていこう、そういうメッセージも込めて放送しているわけであります。
 特に、男女の性別といいますか、そういう区別なく、高い志と意欲とそして能力があれば、だれでもが男性と対等に、それ以上に社会で働くことができる、そういう社会がこれからの時代だろう、そういう意識のもとに番組をつくっているわけであります。
 そういう中で、NHKの女性の職員が非常に少ないという御指摘が今ありましたけれども、御承知のように、最近はふえてきまして、ちょうど今一割まで達しました。
 といいますのは、私どもの業務の内容が、非常に専門性が必要とされるところ、それから技術部門とか、あるいは地域スタッフといいますか、我々は営業と言っていますが、いわゆる受信料の収納業務とか、非常に多岐にわたっております。そういう中で、女性の働く場が非常に少なかったといいますか、やればできるわけでありますけれども、最近は、そういう反省も込めて、去年の場合は女性の割合が二六、七%までふえてまいりました。当分の間は、一つの目標として、採用者の中で女性を二〇%という目標を掲げましたけれども、今それを突破して、二六、七%に来たということであります。私どもは、優秀な能力ある女性ならばさらにもっとふやしていきたいと思っております。
 そういう面で、今、世界の放送局でも女性の働く場が非常にふえてきておりますし、そういう中で、私どもも、現場の状態も十分把握しながら、能力ある者をどんどん採用していく、能力中心でやっていく、そういう姿勢で今取り組んでおります。
上川委員 ぜひ、数値目標なども立てていただきながら、積極的に女性が頑張れる社会、職場ということで、会長のリーダーシップを御期待したいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 次の点なんですけれども、教育基本法の見直しということでの関連についてお尋ねをいたします。
 現在、国会では、幼児教育から高等教育、生涯教育ということで、そのあり方が見直されているわけでございまして、例えば小学校教育につきましては、ゆとりの教育あるいは体験学習というようなことについても議論が進んでいるわけでございますが、そうした中で、これからの日本人はどうあるべきか、アイデンティティーを問うということをたびたび議論しているわけでございます。
 私は、司馬遼太郎さんが大好きなんですけれども、これまでNHKさんでは、司馬遼太郎さんの作品ということでたくさんの番組をつくられて放送されておりまして、私も見させていただいております。数年後には、司馬さんの代表作であります「坂の上の雲」、これを映像化するというような計画だということを承っているわけでございます。
 実は、司馬さん御自身は、この作品、誤解を招くようなことになりかねないということもありまして、映像化についてはかたくなに拒んできた、こういういきさつもあるようにお伺いしているわけでございますが、そうした中で映像化をするということでございまして、NHKの取り組みとしては、どのようなねらいから、また、どのような日本人像を意図しながらこの作品に取り組まれようとしているのか。その思い、また抱負ということにつきまして、よろしくお願い申し上げます。
    〔佐藤(勉)委員長代理退席、委員長着席〕
海老沢参考人 司馬遼太郎先生の「坂の上の雲」、これは非常に関心が持たれている作品でございます。私どもも、我々の先輩が、司馬さんが産経新聞に連載された当時から、司馬さんに、ぜひ大河ドラマで放送したいという申し入れをし、その後も何回も先生にお会いして許可を得ようとしましたけれども、司馬先生は、これは今の日本の映像技術では自分の目指す作品はできない、そういう面でこれは映像化させないんだということで、私どもも、ほかのテレビ会社も、映画会社も、どこも許可されなかったという長い歴史があります。
 そういう中で、私ども、この数年来、「街道をゆく」とか「空海の風景」とか、そういう司馬さんが思いを込めた、つまり司馬さんの基本的考えは、今話しましたように、日本とは、日本人とは何か、もう一度こういう時代に日本人をひとつ考えてみよう、そういう精神がバックボーンにあるわけであります。そういう面で、そういういろいろな作品を、我々は、ドラマだけでなくて、ドキュメンタリー風のタッチにしながら、ドラマとドキュメンタリーを組み合わせながら、新しい映像手法を使って作品をつくってまいりました。そういう手法が、著作権の権利を引き継いだ御夫人の福田みどりさん初め関係者から、ここまで来ればひとつNHKに任せてみようということで、許可がおりたということであります。
 そういう面で、私どもも、非常に責任が重いといいますか、司馬さんの歴史観、思いというものをどういうふうに映像で表現するか、今プロジェクトチームをつくっていろいろ議論し、そしてきちっとした台本、シナリオを書き上げてから撮影しようということで、あの小説にありますように、余談ながら、余談であるがという、司馬さんの思い、歴史観、日本人論というものをどういうふうに表現するか、その辺を今勉強して、できるだけ世界に誇れる作品に仕立て上げようと思っているところであります。
 そういう面で、今ロケ地だとかいろいろなところ、勉強しておりますけれども、そういう脚本ができてからきちっと検証し、司馬さんが心配したような、日本海海戦とか二〇三高地の攻防とかという、いわゆる戦争場面にとらわれるのではなくて、近代国家をつくった日本人のすばらしさ、精神像というものをどう描くか、その辺を今いろいろ勉強しているところであります。
上川委員 二十一世紀、私たち日本人ということでございまして、国のあり方とか基本的な生き方ということについて基本から問い直すという、大変大きな時代の節目にあるということでございます。今、会長から、大変真摯な姿勢で取り組まれるということでございますので、ぜひ頑張っていただきたいと思うし、期待しておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 質問を終わります。
遠藤委員長 次に、左藤章君。
左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。
 きょうは、地上デジタルの放送の件でいろいろ質問がありましたけれども、私もちょっとそれに関連をしまして質問させていただきたいと思います。
 十二月に東名阪でいよいよ放送されますけれども、まず試験放送というのがあると私は思うんですね。この試験放送が、どのような範囲で、どのような形でされるのか。それと、本放送が東名阪で十二月から始まるんですが、いきなり、例えば私は大阪なんで申しわけないんですけれども、全部のエリアが、関西全部が一挙にデジタルが入るのか、この辺のことも踏まえて、また、東京も関八州一緒に入るのかということもありますので、その辺の状況はいかがなものか、教えていただきたいと思います。
吉野参考人 お答えいたします。
 ことしの十二月の放送開始に向けて、まず、この夏ごろに東京と大阪で、送信機とかアンテナがきちっとできているかどうか、それをテストするために、本放送の出力を想定して電波発射を予定しています。これは、まだ東京、大阪ではアナ変作業が終わっておりませんので、今のアナログの放送をとめて夜間に数時間行うという作業になります。
 それから、十二月から始まります本放送につきましては、これもアナログ周波数の対策がまだ完了しておりませんので、送信電波を絞って、今のアナログ波に混信が起きないような、そういう状態で始めます。そして、アナログの周波数変更対策の進捗状況に合わせて徐々に出力を上げていく、そういうふうになります。
 それから、この夏に行う技術確認のためと、それからその以後、試験電波の発射ということが受信機調整のために考えられます。これにつきましては、設備整備の状況等を見て具体的な計画を立てていく、そういうふうに考えております。
左藤委員 三年前にBSのデジタル放送が開始されたときに、千日一千万世帯という目標を掲げましたけれども、なかなかうまいこといっていないという話も聞きます。しかし、十二月には地上デジタル放送が開始をされるわけですね。新たにBSまたは地上デジタル放送対応の受信機が開発されるとも聞いております。これも踏まえて、これからのデジタル受信機の普及の見通しはいかがにNHKの方はお考えになっているか、教えていただきたいと思います。
山田参考人 お答えします。
 千日一千万世帯という目標につきましては、景気の後退あるいは受信機がいまだに高いというようなこともありまして、目標達成というのは、千日一千万というのはちょっと困難だと思うんですけれども、二年余りで三百八十四万世帯に普及した。これをBSアナログ放送の初期の段階の普及ペースと比べますと、比較的健闘している数字ではないかというふうに思っています。
 それで、先生が指摘されました、ことしの暮れには地上デジタル放送というのが始まるわけで、これに備えて、ことしの秋ごろには、BS、CS、地上デジタル共用の受信機が発売されるというふうに聞いております。BS、CSに加えて地上波もデジタルで見られるということで、相乗効果が働きましてデジタル受信機の普及にも弾みがつくんじゃないかというふうに期待をしております。
左藤委員 実は、我々はe―Japan計画というのをやっておりまして、政府のe―Japan重点計画二〇〇二に盛り込まれておりますが、デジタル放送は、ブロードバンドと組み合わせることによって放送と通信を融合させた利便性の高いサービスだ、こう言われているわけです。例えば、それを使って行政サービスの申請とか届け出ができる、こういうことも考えられるわけですね。
 ところで、三月七日発表の、総務省の地上デジタル放送を活用した地域情報提供に関する研究会の報告書をちょっと私見ました。地方自治体はこれをどう考えているのかというアンケートなんですけれども、やはり、この評価というのは、観光とかいろいろ、交通情報、イベントとか、公共の施設関連、公共サービスの提供を、IT活用だけじゃなくて、地上デジタル放送の活用の意向が非常に高く書かれているわけですね。
 こういうことも考えますと、地上デジタル放送が開始されることを契機に、これからの受信機、今、パソコンを使ってインターネットをやると結構やりにくいというか、年がいった人は非常にしたくないということになりますけれども、テレビの受信機を利用することによって、家庭における総合情報端末としての機能を持つべきだ、また活用できるんじゃないか、私はこのように思うわけです。
 これについて、NHKのお考え、また総務省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
山田参考人 NHKとしても、地上デジタル放送の受信機は、将来、すべての家庭、すべての国民に普及していくであろう中核的情報端末ということで、単なる放送受信機の枠を超えた、社会のゲートウエーといいますか、IT国家のゲートウエーにテレビがなるように、その役割を担っていこうというふうなことで技術開発を進めております。
 そのためには、デジタル放送受信機にもさまざまな機能が求められるわけでありまして、特にブロードバンドとも接続できる機能を活用して、パソコンのキーボードというふうな難しい扱いじゃなくて、テレビのチャンネルからインターネットの世界にも入っていけるようなゲートウエーとしての機能を持とう。
 この点に関して、キーになる機能としては、CAS機能、要するに、メッセージ機能をちゃんと持った受像機をつくって、これが各家庭で、例えば電子自治体ともリンクし、いろいろな双方向の機能を持ったことができるように、このCAS機能をテレビが持つか持たないかというのが非常に大きな分け目になるというふうに思います。
 CAS機能を持たない放送というのは、将来的には、やはり通信の方に押されまして、放送事業者がソフト制作だけをやるような、矮小化されるようなおそれもありますので、このCAS機能、メッセージ機能を持った放送の受像機を、メーカーとも、NHKも民放も協力して開発していかなくてはならないのではないかというふうに思っております。
高原政府参考人 今先生おっしゃいましたように、テレビはIT社会のゲートウエーということになります。自治体も、この地上デジタルに対する期待も非常に高いものがございます。
 そういうものを網羅いたしまして、近々、この地上デジタルの推進のための大規模なオール・ジャパンの団体を設立しようという動きもございます。相当の自治体あるいはメーカー、幅広い経済団体等を網羅して、この推進に当たって環境整備に努めたいというふうに考えております。
左藤委員 ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、谷本龍哉君。
谷本委員 自由民主党の谷本龍哉でございます。
 本日は、地上波放送デジタル化についてのみ質問をさせていただきたいと思います。片山総務大臣、またかと思っているかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
 先日の予算委員会の分科会でも、三十分質問をさせていただいてとても時間が足りなかったんですが、そのときに、高原局長の方から詳細な答えをいただきました。その直前か直後、同僚の議員が高原局長に、デジタル化は大丈夫ですか、谷本さんは心配していましたよという話をしたところ、高原局長の方が、谷本さんは心配性だからというふうに言われていたと伺ったんですけれども、別に怒っていないですから大丈夫ですよ。
 私は心配性じゃないんですよね。単に、電波法改正に賛成した者の立場として、これはやり遂げる責任がある、そのためには、調べれば調べるほど新しい問題がたくさん出てくる、これをやはり的確に迅速に解決してもらわないと失敗するんじゃないか、そういう思いから、こういうふうに機会を得ては質問をさせてもらっています。
 海外の状況を見ても、先行して行ったイギリス、アメリカはどうもうまくいっていない。困難な状況がたくさん出てきている。さらに、国民の認知度も日本においては非常に低い。アナ・アナ変換の問題もある。さらに、最近では、デジタルリパッキング、サイマルをやめてアナログを停波したときに、ばらばらの場所にあるデジタル波をまたもう一度そろえ直さないといけない。これはアナ・アナ変換と同じ作業が必要なんです。でも、この費用も多分まだ検討された様子はありません。こういう新しい問題がたくさん出てきています。これはデジ・デジ変換というらしいんですけれども。
 こういうふうに、やり方を間違えると失敗するんじゃないか。買いかえが進まずに、そして一〇〇%世帯をカバーできずに、サイマル放送が延々と続いて放送局の負担もふえる。こうならないために、一つ一つ細かく、その都度その都度質問をさせていただきたい、そういうふうに思います。
 その中で、そのデジタル化の先導役と位置づけられておりますNHKの海老沢会長、簡単で構いませんので、今のデジタル化の進捗状況についてどのようにお考えか、感想を聞かせていただきたいと思います。
海老沢参考人 地上波もBSもそうでありますけれども、アナログからデジタルに転換する、これは非常に世界的な大きな流れの中に我々はおるわけであります。そういう面で、このデジタル化というものは、国を挙げて、やはり国家の事業として推進しなきゃならない最大の課題だろうと思っております。そういう面で、私どもも、全力を挙げて、全局を挙げてこれに今取り組んでいるところでございます。
 今、非常に厳しい経済情勢の中でありますけれども、それを一つ一つ克服して、着実に進めていきたいと思っております。
谷本委員 わかりました。
 では次に、片山大臣にお伺いしたいと思います。
 近々、平成十五年度春をめどと聞いていますが、地上デジタルテレビ放送実施推進会議なるものが設立されるといううわさを聞いております。非常に大きな会議で、デジタル化に関連する業界すべてをほとんど網羅したようなものだというふうなうわさを聞いておりますが、実際こういう話があるのか、もしあるとすれば、それはどういうものなのか、お伺いしたいと思います。
片山国務大臣 この話は、私の諮問機関でございますブロードバンド時代における放送の将来像に関する懇談会において話が出まして、そこは一応アクションプランをつくったんですよ。しかし、それだけで、今谷本委員言われるように、いろいろな問題点もある。それでは、それほど周知徹底が末端まで進んでいるか。役所に聞くと、五割ぐらい知っていますよ、ことしの年末から始まるということを知っている、二〇一一年には全部終わるということを知っていると、始めと終わりだけ知っているような話なんです。それはそれで結構なんですが、私は、もっともっと詳しく国民の皆さんにわかってもらわにゃいかぬと思うんですね。
 そういう懇談会の議論もありましたので、現在、放送事業者の方、メーカー、家電販売店、地方公共団体、マスコミ、各種経済団体等、幅広い分野の方々に参加してもらったオール・ジャパンの組織をぜひつくりたい、こういうふうに思っております。
 谷本委員、専門的な立場でいろいろ御指導いただいてありがたいんですが、そう簡単ではない。しかし、国策として、電波法の改正で打ち上げて、しかも海老沢会長初め民放連の氏家会長も不退転でやると、こういうことですから、これはぜひ成功させないといかぬ。そのためには、今のオール・ジャパンの組織で、そこを推進母体にして幅広い活動をやっていこう、こう考えておりますので、またひとつ、よろしく御指導のほどをお願いいたします。
谷本委員 オール・ジャパンで本当に熱心に取り組んでいただければ一番ありがたいと思います。ただ、逆に、みんなでやるかわりに、みんなで失敗すれば怖くないのようなそういう組織にはならないように、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。
 時間がないので、次に行きます。
 アナ・アナ変換についてですが、先月、二月に、五地区約七千世帯ほどアナ・アナ変換を行う予定だったと思うんですが、結果として何世帯やれたのか、その実績を報告していただきたいと思います。
吉田大臣政務官 今の御質問に御報告申し上げます。
 昨年八月以降、送信側の対策を進めてきたところでありますけれども、現在、二百十四局中百七十四局、約八一%交付決定をさせていただいております。
 そして、受信対策につきましては、二月中に対策に着手しました八地域のうち五地域、三月中に対策に着手しました十六地域のうち八地域について、既に受信対策を完了しているところであります。なお、これまでに対策を完了した世帯数は約九千七百世帯。いずれにしても、予定の期間中に完了すべく順調に推移しているところであります。
 今後とも予定どおりに進めるべく、精いっぱいの努力をしていきたい。
 以上であります。
谷本委員 最後に一問だけです。
 そのアナ・アナ変換の中で、青梅の地区で予想外の、鉄塔の反射による混信が出たと伺っております。これは、テレビ東京四十六チャンネルと千葉テレビの四十六チャンネルの混信問題なんですが、これは三十六チャンネルを補間波として対策をしたということですが、このような同じような問題が絶対ほかでは起こらないのかという質問を予算委員会の分科会でもさせていただきました。絶対ないという答えでしたが、専門家にいろいろ話を聞くと、恐らく出てくるだろうという話の方が多いんです。
 いま一度これを確認したいのと、この三十六チャンネル、実は近くに、大船のNHK三十六チャンネル、前橋のTBS三十六チャンネルがございます。逆に今度は、こちらとの混信が起こらないのか。この辺、しっかり調査していただけているのか、お答えをお願いします。
加藤副大臣 御指摘の青梅沢井局の件でありますが、これは特別な事例ということで、複数の原因が結合した特異な例だと考えておりますし、今の三十六チャンネルは、現在、前橋や大船と混信はしておりません。そして、ほかの地域に関してましても、事前の検討の中でよく精査しておりますので、こういった事例は余りない、問題はないと考えております。
谷本委員 以上で終わります。
遠藤委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 まず最初に、片山大臣にちょっとお聞きしたいと思うんですが、イラク情勢が大変緊迫してきておりまして、明日、どういった行動にアメリカが出るのか、大変危惧されるところでございます。
 昨日、安全保障会議が開催されたようですが、特に、それぞれ、内閣一丸となっていろいろな対応をしようということらしいんですが、総務省として、特に放送関係、邦人の情報提供、あるいはサイバーテロ、それから施設の安全のための、何が起こるかわかりませんので、そういったきちんとした手はやはり打つ必要があるんじゃないか、こう考えておりますが、その辺のお考え方について、ちょっとお聞きしたいと思います。
片山国務大臣 今、山名委員御指摘のように、昨日の夜八時前から安全保障会議、全閣僚出席で行われました。そこで、私どもの方としましては、既に昨日、NHKに対しまして、短波放送による周辺地域向けの情報提供の拡充を要請いたしました。NHKは、日本時間の本日十時から二十四時間放送に拡充し、在外邦人に対します安全情報等の提供を始めております。
 それから二つ目は、本日、主要な通信事業者や放送事業者に対しまして、今お話しのサイバーテロ対策を含めた施設の保安確保措置の徹底を要請させていただきました。
 また、国際電気通信事業者に対しましては、イラク及びその周辺諸国との間の国際電気通信回線の確保の要請等を行ったところでございまして、今後とも、状況の推移を見ながら、関係機関とも十分な連携をとり、安全確保に万全を期してまいりたい、こう考えております。
山名委員 わかりました。
 それでは、本題に入りたいと思いますが、まず総務省にお聞きしたいと思います。
 二〇一一年にアナログ放送が停波しまして、地上波デジタル放送しか見られなくなる、こういうことでありますが、国民にとってはなかなかわかりづらい。要するに、その必要性に迫られてから仕方なくテレビを買いかえる、こういう状況に追い込まれる。こういうことは、やはり国民の側から見て余り得策ではないんじゃないかと思っております。
 少なくとも、地上波デジタル放送はこんなにすごいんだ、ぜひ見たい、やはりこういう要求というものが、要望というものがどんどん膨れ上がってくる、こういった状況を今からつくり出していかなければいけない。そういう意味では、いかに周知徹底を図るか、そして地上波デジタルというのはメリットがどこにあるのか、こういうことを含めて、しっかりとした周知徹底、広報を図るべきだ、こういうふうに考えております。
 総務省のホームページを見ますと、確かに、八項目ぐらいのメリットが書かれておりまして、高画質、高音質等々、あるいは地域情報が手に入るとか、双方向で、いろいろな、ゲーム等含めてやれるとか、買い物ができるとか、いろいろ書いてありますが、ああいう程度では十分国民はわからない。
 こういう観点から、今後しっかりとした取り組みをしていただきたい。その方向性をまずお聞きしたい、このように思います。
 とともに、身近に手軽にデジタル放送を見ることができる周辺機器の整備、このためにやはり大事なことは、価格とそれから操作、この問題だと思うんですね。
 価格については、BSデジタルチューナーでいえば、最初十万円台、今は大分安くなって数万円。しかしながら、数万円になったとしても、まだBSデジタルの普及は進んでいないわけであります。地上波デジタル放送が開始となっても、受信機が高ければこれは当然進まないわけでありまして、どうしても必要になってくる二〇一一年のぎりぎり、停波の時点で値段が下がるのを待って庶民は手を出す、当然こういうことになるわけですね。
 地上波デジタル受信機というのは、BS、CSそれから地上、この三つのデジタル放送が見られる、高価な、そういう機能を持った受信機しか出ない、こういうふうに聞いておるんですが、これでは、高価のままではとても手が出せない、こういう状況が続くだろうと思っております。
 とともに、操作性の問題については、今でも家庭にはビデオを含めていろいろなリモコンがあるわけですね。私もそうですが、クーラーのリモコンを入れればもう数台のリモコンで、どこをどう押していいかわからない、まさにリモコンだらけの家庭になっておりまして、特に高齢者や障害者の方、こういう人が扱えない状況も当然あります。
 したがって、だれでもが手が届くそういう受信機の開発、並びにそういう操作性、簡単な操作によって見られるもの、これをしっかりとメーカー側に対しても周知徹底し、指導し、協力を願う、こういったことも当然必要ではないか、こう思いますが、まず総務省のお考えを聞きたいと思います。
高原政府参考人 最初の、国民への周知の点でございます。先生おっしゃいますように、我々も、地上デジタルのメリットということでいろいろPRに努めておりますが、必ずしも十分ではないと考えております。
 先ほどから御答弁申し上げておりますように、大臣の懇談会におきまして、デジタルの周知、広報を強化するためのアクションプランを策定いたしまして、量販店あるいは小売店、メーカー、自治体、いろいろなところにお願いをいたしまして、当然政府もやっておりますが、いろいろなイベント、キャンペーンあるいはデモンストレーションといったようなものを開催して、このメリットを体験していただけるように、あるいはいろいろ周知徹底をできるような施策をやっておるところでございます。
 さらには、今大臣からも答弁ございましたように、地上デジタルテレビの放送実験推進会議というオール・ジャパンの組織をつくりまして、関係者全員で共同キャンペーンを張って、具体的に国民の方々にこのメリットをきっちり周知できるように努めてまいりたいというふうに考えております。
 それから二点目の、要するに機器の問題でございます。
 特に機器の問題に関しましては、地上デジタルテレビの放送局の免許方針というのを昨年九月に制定して、放送局の方に示しておりますが、この中では、障害者あるいは高齢者に配慮した放送番組を多くつくってくださいということを定めております。
 また、これを受けまして、機器の機能といたしましては、社団法人電波産業会におきまして十四年一月に策定した受信機の規格がございます。ここで、先ほど先生おっしゃいましたように、リモコンに字幕のキーをつけるとか、あるいは、字幕とか文字サービスを受信できるような受信機にするといったようなことを決定いたしております。
 さらに、価格の点も、先ほど大臣の、行動計画で、メーカー等は低廉な受信機の供給に努めるということを約束しているところでございます。
山名委員 海老沢会長に最後にお聞きしたいと思いますが、NHKとしてのメディア戦略、やはり、国民が本当にいいなというためにも、特にいわゆるデータ放送といいますか、こういったものの有効性をしっかりと訴える必要があるんじゃないか。そういう意味では、NHKのこれからのメディア戦略というのは極めて大事になってくる。
 そういう意味から、ぜひともこの際、NHKさんの考えるデータ放送の中身について何点かお聞かせいただきたいと思います。
海老沢参考人 やはり、デジタル放送といいますか、衛星、地上波のデジタル化をできるだけ早く完了させたい。そういう中で、データ放送なりあるいは移動体向けの放送をさらに充実させていく。
 特にデータ放送につきましては、地上デジタルの最も大きなメリットでありますし、そういう面ではいろいろな活用の仕方があります。そういう面で、帯域の幅をもっと広くして、きめ細かい情報を提供できるようなことも我々は考えております。
 その後は、サーバー放送とか、いろいろな新しい技術を活用した通信・放送の垣根が低くなるわけでありますから、そういう面で、テレビの方にインターネットなりパソコン等も利用できるような、そういう時代になりますので、そういう面での研究開発もさらに進めて、視聴者国民が、今先生おっしゃるように、だれでもが簡単な操作で安く利用できるような、そういう方面にさらに力を入れていきたいと思っております。
山名委員 終わります。ありがとうございました。
遠藤委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 保守新党の金子善次郎でございます。
 ラストバッターでございますが、よろしくお願い申し上げます。
 最初に、質問というよりは要望のたぐいのことでございます。
 実は、平成十三年の日本人の海外旅行者というのは千六百二十二万人。しかし、我が国を訪れる外国人は、その四分の一の四百七十七万人。これは世界的に見まして、ブラジルの次の三十五位、G7では最下位、アジアでも九位、韓国よりも少ない。こういうような数しか観光客が日本に来ていないというような状況でございます。
 そうした中で、保守新党でございますけれども、昨年十二月、観光立国推進宣言というものをいたしまして、推進本部も設置したところでございます。
 観光とは、この意味するところでございますが、中国の易経にある、国の光を観るという言葉に由来するというふうに聞いております。この国際観光というものは、人と人との交流、あるいは外国の方々に日本の本当の素顔と申しますか、日本人も見てもらうというような機会を提供するということになるわけでございますけれども、いろいろな意味で、広い意味での人と人との交流の促進を図るということは、日本の安全保障というようなものにも長い目で見れば貢献していく、そういうものだというふうに思います。
 NHKさんにおかれましても、いろいろないい番組を海外で放送されているというふうに聞いているところでございますけれども、観光の推進ということは、経済のいわゆる景気の回復、あるいは雇用の創出ということでも大きな効果があるんではないかというようなことも考えられるわけであります。
 そうした中で、ぜひとも日本各地の特色、いい点というものを海外の方にPRをしていただきたい、このように思うわけでございますが、要望でございますけれども、お答えをいただければと思います。
海老沢参考人 我が日本は、長い歴史と文化を持っておりますし、また、美しい自然に恵まれております。そういうことを私ども、番組につくり、そして今世界にも配信しているわけであります。
 日本に外国からのお客が非常に今少ないというお話、我々も統計を見てびっくりするほど少ないわけであります。そういう面で、やはり、日本のよさ、そしてまた、安心して、安全な日本であるということをどれだけ外国の人たちにわかってもらえるか。その辺、我々も、いろいろなラジオ、短波放送、あるいは三つの衛星を使って、今百八十カ国以上に国際放送を持っておりますが、そういう面で、さらに日本の文化なり自然なり、そういうものを紹介していきたいと思っております。
 御承知のように、国宝の番組とかいろいろなものをつくり、これも世界に配信しておりますので、そういう面で、今先生おっしゃるように、さらにそういういい番組の強化を図って、海外にまた出していきたいと思っております。
金子(善)委員 ありがとうございました。
 次にでございますが、本日の質疑の中でも出ておりましたが、いわゆるNHKアーカイブス、先般、我が党で海部最高顧問あるいは二階幹事長とともに視察をさせていただきまして、大変お世話になりました。埼玉県におきましても、これから大変画期的な一つの施設ができたなというような印象を受けてまいりました。
 これは、埼玉県が推進しております映像関連産業都市、いわゆる川口市にオープンされたわけでございますが、地域に開かれたNHKの施設として、今後どのような地域、埼玉県という地域あるいは首都圏ということを考えてもよろしいかと思いますが、そうした地域への貢献という意味でどういうような効果があるのか、その辺について御質問したいと思います。
海老沢参考人 私ども、経営の理念の一つとして、公開と参加ということを掲げております。
 そういう中で、川口市につくりましたNHKアーカイブス、これは、埼玉県もその隣にアーカイブスをつくっております。そういう面で、今二千本の映像を無料で公開しておりますけれども、これも埼玉県と共同で運用しております。お互いにこれを活用し合おうということで、相互乗り入れといいますか、そういうことをやっておりますし、また一角に早稲田大学の芸能学校もできます。そういう学生たちにも利用してもらう、あるいはまた、私どものそういう専門家が学校へ行って講義するとか、あるいはいろいろな面での人的な交流も図っていくとか、いろいろなことを今考えているところであります。
金子(善)委員 本年は、NHKがテレビ放送を開始して五十年、あるいは地上波デジタルテレビ放送が始まるというようなことで、大変画期的な年になるというふうに承知をいたしているところであります。
 この節目の年と申しますか、あるいは二十一世紀を展望いたしまして、大変価値観が多様化している現代社会におきまして、民主主義の前提とも言える報道の自由、あるいは健全な社会の発展に寄与するというNHKの社会的使命と申しますか、そういう中で、この二十一世紀の公共放送NHKとしての基本的な役割と申しますか、最後になりますけれども、会長の決意のほどをお聞きして質問を終わりたいと思います。
海老沢参考人 今、こういう不況の中、そしてまたイラクの情勢の急変という中で、公共放送NHKといたしましては、できるだけそういう世の中の動きを正確に、的確に、そして早く事実を知らせるというのが大きな役目だろうと思っております。
 それと同時に、民主主義の健全な発展に資するということもありますので、国会の審議等も、中継等あるいはいろいろな番組等で紹介をしていくということは当然でありますけれども、そのほか、日本の、先ほどおっしゃられました、観光、文化の面についても国際的な貢献も果たしていかなきゃならぬだろう、こう思っております。
 いずれにしても、我々は、高い倫理観を持って、そして情報に格差がないように、いろいろな面で技術の開発を進めながらこのデジタル化を推進していきたいと、今決意を新たにしているところでございます。
金子(善)委員 ありがとうございました。以上で終わります。
遠藤委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。
 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
遠藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、佐藤勉君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守新党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。安住淳君。
安住委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)
  政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。
 一 放送が社会に及ぼす影響の重大性を深く認識し、放送の不偏不党と表現の自由をより一層確保するとともに、視聴者の意向に十分留意しつつ、公正な報道と青少年の健全育成に配慮した豊かな情操を養う放送番組等の提供に努めること。
 二 協会は、放送法の趣旨に照らし、インターネットによる情報提供については、放送の補完利用として適正な運営を図るとともに、子会社等の業務範囲の在り方等については、業務の適正性、透明性を図り、その実効性の確保に努めること。
 三 協会は、視聴者の十分な理解を得るため、業務運営の効率化及び事業全般にわたる情報公開を一層徹底すること。また、協会の経営基盤が受信料であることにかんがみ、受信料の公平負担の観点から、未契約世帯等の解消に取り組み、衛星契約を含む受信契約の確実な締結と受信料の収納を一層徹底すること。
 四 地上放送のデジタル化については、視聴者に対しなお一層の周知・徹底を図るほか、デジタル化の円滑な導入に向けた各種施策を着実に推進すること。特に、アナログ周波数の変更対策については、対策方法を十分検討するとともに、視聴者の理解と協力の下に実施すること。
 五 視聴覚障害者や高齢者に対する情報提供の重要性にかんがみ、字幕放送、解説放送等の更なる拡充と番組内容の充実を図ること。
 六 協会は、災害時等の緊急報道体制の強化を図り、国民生活に不可欠な情報の迅速な提供に努めること。また、地域放送については、地域の要望等を踏まえ、放送番組の充実・強化を図ること。
 七 協会は、国際放送について、我が国の実情を的確に海外に伝えるとともに、海外在留日本人をはじめとする視聴者の期待にこたえるため、番組内容の充実に努めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
遠藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
遠藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、片山総務大臣及び日本放送協会海老沢勝二会長から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。
片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。(拍手)
遠藤委員長 日本放送協会海老沢勝二会長。
海老沢参考人 日本放送協会平成十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。
 本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいろいろいただきました御意見並びに総務大臣の意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。
 また、ただいまの附帯決議につきましては、協会運営の根幹をなすものでございますので、これを踏まえて、執行に万全を期したいと考えている次第でございます。
 まことにありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
遠藤委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
遠藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 情報通信及び電波に関する件調査のため、来る二十五日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る二十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.