衆議院

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第9号 平成16年3月18日(木曜日)

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平成十六年三月十八日(木曜日)

    午後零時三十一分開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 滝   実君 理事 野田 聖子君

   理事 伊藤 忠治君 理事 松崎 公昭君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      今井  宏君    岩崎 忠夫君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    自見庄三郎君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    西田  猛君

      萩生田光一君    平沢 勝栄君

      松本  純君    三ッ矢憲生君

      山下 貴史君    稲見 哲男君

      大出  彰君    川端 達夫君

      黄川田 徹君    須藤  浩君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      寺田  学君    中村 哲治君

      西村智奈美君    山花 郁夫君

      若泉 征三君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務副大臣        田端 正広君

   総務大臣政務官      平沢 勝栄君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            武智 健二君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   鈴木 康雄君

   参考人

   (日本放送協会会長)   海老沢勝二君

   参考人

   (日本放送協会専務理事・技師長)         吉野 武彦君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 関根 昭義君

   参考人

   (日本放送協会理事)   宮下 宣裕君

   参考人

   (日本放送協会理事)   和崎 信哉君

   参考人

   (日本放送協会理事)   野島 直樹君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中山 壮介君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

三月十八日

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 本日付託となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長武智健二君及び政策統括官鈴木康雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。麻生総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 日本放送協会の平成十六年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入が六千七百八十五億円、事業支出が六千七百十三億円となっており、事業収支差金七十一億円の全額を債務償還に使用することといたしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出がともに九百二十九億円となっております。また、建設費が七百九十八億円となっております。

 次に、事業計画につきましては、一、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や番組のさらなる質の向上に努めるとともに、デジタル放送の普及に取り組み、豊かな放送文化の実現を図る、二、放送を通じて、国際交流と相互理解の促進に貢献するとともに、地域放送の充実や新しい放送技術の研究開発に積極的に取り組む、三、効率的で透明性の高い業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ、信頼される公共放送を実現していくなどといたしております。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 総務大臣の意見につきましては、これらの収支予算等について、受信料の公平負担等の観点から見て将来に向けて改善されるべき点があるものの、おおむね適当なものであると認めるとした上で、協会は、一、地上デジタルテレビジョン放送につきまして、各地域における放送の開始、中継局の開設、国民・視聴者に対する周知広報等に率先して取り組むこと等により、放送のデジタル化を先導すること、二、業務委託及び調達につきまして、競争契約の原則を徹底すること、三、協会の保有する放送番組等について、コンテンツ流通市場の育成の観点から、積極的な利活用を図ること、四、受信契約の締結等について、受信料の公平負担等の観点から、引き続き抜本的に検討すること等の七点について特に配意すべきであるといたしております。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

佐田委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長海老沢勝二君。

海老沢参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十六年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。

 平成十六年度の事業運営に当たりましては、公共放送の使命に徹し、視聴者の要望にこたえ、公正で迅速な報道や番組のさらなる質の向上に努めるとともに、デジタル放送の普及に取り組み、豊かな放送文化を実現してまいります。

 また、放送を通じて、国際交流と相互理解の促進に貢献するとともに、地域放送の充実や新しい放送技術の研究開発に積極的に取り組んでまいります。

 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の公平負担による受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革を一層推進し、効率的で透明性の高い業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ、信頼される公共放送を実現してまいります。

 主な事業計画について申し上げますと、まず、建設計画におきまして、地上デジタルテレビジョン放送やハイビジョン放送のための設備の整備を行うとともに、放送会館の整備などを実施いたします。事業運営計画につきましては、国内放送及び国際放送の充実を図るとともに、緊急報道に備えた取材体制の強化や放送技術などの調査研究を積極的に推進いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千七百八十五億一千万円、国内放送費などの支出六千七百十三億九千万円を計上しております。事業収支差金七十一億一千万円につきましては、債務償還に使用することとしております。また、資本収支につきましては、支出において、建設費など総額九百二十九億一千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額九百二十九億一千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、日本放送協会の平成十六年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、一層効率的な業務運営を徹底し、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。

 委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

佐田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

佐田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。

左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。

 質問をさせていただきたいと思います。

 最近のメディア、特にテレビ局の体質、視聴率至上主義というのがまかり通っている感じがします。行き過ぎた報道、また取材、さらに、記憶に新しいところでは、視聴率を上げるために会社の経費を使って云々という事件などがありました。国民から見れば、何をしているんだろうということに相なるわけであります。

 その中で、放送、報道によって個人やまた団体が名誉、人権、その他を非常に傷つけられるというケースがたびたびあるわけであります。

 電波は、もちろん有限の資源であることは当然であります。放送事業者に対しては放送法により政治的な公平性を図ることが求められているわけでありますが、残念なことに、昨年、我が党の総裁選挙の際、テレビ朝日の「TVタックル」、全く異なる場面を一つの場面に編集し、委員会で北朝鮮の拉致被害者に関する質問をする野党議員に対して、我が党の藤井孝男議員があたかもやじを飛ばしたかのように捏造、映像を編集し、放送したのがありました。直ちに我が党は、BPO、BRCに対して提訴をし、現在審理が行われているところであります。しかし、BRCには放送事業者に対する調査権限がありません。専ら放送事業者の提出する資料によって審理をするほかないわけであります。

 また、昨年執行された衆議院の総選挙投票日直前に、ニュースステーションで、民主党の菅内閣の閣僚名簿と称して、PR番組、三十分ほど放映をされました。我が党は、政治的公平を害する放送であり、しかも選挙の公平性を害されたとして、先ほど申し上げたBRC、BPOに提訴をしたわけであります。BRCは、個人の問題しか取り扱わないということで、団体の報道被害は審理しないということで一蹴されました。

 もともと、我が自由民主党の報道被害、テレビ朝日の椿問題が契機となってBRCが設立されたにもかかわらず、BRCがいつの間にか、団体の問題は審理の対象外にするという内規をつくってしまいました。これは、設立当時の経緯というものを無視したものじゃないか、このように言わざるを得ません。

 放送法は、政治的公平を放送業者に対して義務として負わせているにもかかわらず、所管官庁である総務省は、編集の内容について調査をする権限がないと言い、他方では、報道被害の救済を図るために設立したはずのBRCも、いつの間にか団体の報道被害は取り扱わないという内規を決めています。結局、放送法の定める政治的公平の規定はないに等しい状態であります。

 放送法の規定を実効あらしめる制度について、総務省としてはどのようにお考えになっているか、御質問をさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、滝委員長代理着席〕

武智政府参考人 ただいま、いわゆるBRC、放送と人権等権利に関する委員会の取り扱いについて関連してのお尋ねがございました。

 このBRC、放送と人権等権利に関する委員会は、BPOという組織の中にできているわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、BRCの審理対象となる苦情を申し立てることができる者はその運営規則において定められておりまして、「苦情を申し立てることができる者は、当分の間、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする。」とされているところでございます。

 こう定められた趣旨でございますけれども、これは、人権等の侵害を受けた場合に、裁判を起こす力のないような弱い立場にある人ということで、個人を主体とするというふうに理解をしているわけでございます。このようにされた経緯につきまして、BRCが説明しているところによれば、これはあくまでも原則でありまして、企業や政党、自治体など団体からの苦情を取り扱わないことは原則とはしておりますけれども、裁判を起こす力のないような立場の弱い団体からの苦情までを閉ざしているのではないという説明をなされているところでございます。

 そこで、それについてどうかということでございますけれども、先ほど先生からも御指摘のとおり、BRCが設立された経緯をかんがみますに、このBRCというものは、いわゆる放送番組の編集の自由という観点から放送事業者が自主的に設立をしている団体でございますので、まず、御指摘の点につきましても、BRCないしBPOにおいて十分議論をした上で、その上でまた私どもの方としても検討をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

左藤委員 今お話ありましたように、BRCは個人。しかし、団体、いろいろな団体ありますけれども、それぞれ人格権というのはあるわけでありますから、やはりその辺は考えていただきたいと重ねて私は思います。

 そこで、NHKさんにもちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 BRCは、もちろん独立機関、第三者機関でありますので、口を挟むということは非常に難しいかもしれません。しかし、今お話あったように、NHKさん、また民放さんが一緒になってつくった組織であります。できてもう七年になるわけでありますが、最近のBRCの活動についてどのように思われているのか、お伺いをしたいと思います。

海老沢参考人 お答えいたします。

 BRCができた当時は、今先生御指摘のように、放送による政治的公平さが欠けているんじゃなかろうかとか、あるいは放送によって人権を侵害されたという視聴者の苦情が相次ぎました。そういう中で、我々放送事業者としては、放送による言論、報道の自由を守っていこう、そういう観点から第三者機関、独立した機関をつくって視聴者からの苦情に対応していこう、そういう観点からつくったものであります。

 そういう面で、苦情を審理する委員の先生方は、我々放送事業者以外の方々から人選をして、八人の委員の方々が独立した形で審理をしているものであります。

 この七年の間、二十一件の委員会決定といいますか、勧告と見解という形で決定が出されております。我々放送事業者も、その決定に対しては真摯に受けとめ、放送倫理の確立のために今、努力しているところであります。

 そのほか、十三年度からは、この委員会のあり方として、放送局と苦情申立人との間の仲介、あっせんをしていこう、そういう任務も設けまして、そういう中でこれまで三十一件のあっせん、仲介をして、お互いの話し合いがついているということも聞いております。

 そういう面で、この委員会、いろいろな苦情がありますけれども、これまで着実に審理をし、判断をし、成果を上げつつあるだろうと認識しております。

 放送に関しては、そのほかに放送番組向上協議会というのがありました。それとBROという機構を一本化して、できるだけ機能の強化といいますか、審理の迅速化、充実を図っていこうということで、BPO、いわゆる放送倫理・番組向上機構という形で組織を一本化し、できるだけ視聴者の苦情を迅速に処理していこう、そういう方向で今努力しているわけであります。

 我々放送事業者もそういう苦情が来る前に、我々自身がやはり放送法にのっとって、視聴者の立場に立って公平な報道、そしてまた質の高い番組をつくっていくのが使命でありますので、できるだけ視聴者の苦情が来ないように番組の質の向上を図ってまいりたいと思っております。

左藤委員 電波は国民の財産でありますので、ぜひひとつ政治的にも公平な運営がなされるようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、アーカイブスの件でお伺いをさせていただきたいと思います。

 日曜日の深夜に「NHKアーカイブス」という番組があります。一月に、昭和四十六年の「新日本紀行 浪華芸人横丁」というのを見ていましたら、ちょうど私の地元の風景が出まして、懐かしく思いながら、よくこういう映像を残していただいたなと感心をしたわけであります。

 こういうものがいろいろ放送される、また過去のいろいろな日本の動き、世界の動きというものを多分アーカイブスで残しているんだろうと思います。こういうすばらしい遺産を、公共放送としても、非常に文化的な問題でありますので、これからも残していただきたいと思いますし、そういうものを残す事業、これも、あちこちで見たい、特に、東京の放送センターもありますけれども、大阪にも、BKのところにも番組公開ライブラリーというのがあります。残念なことですが、東京、大阪しか今のところないわけであります。NHKさんがせっかく編集した、残してあるものをどこかで見たいなと思っても、全国でとれないわけですが、これについて計画がありましたらお答えをお願い申し上げたいと思います。

関根参考人 御指摘のNHKアーカイブスにつきましては去年の二月一日から運用を開始していまして、これまで公開ライブラリーというものを結んでいる箇所はNHKの施設で十三カ所あります。

 今の計画としましては、この十六年度から三カ年程度で、本部を除きましてNHKの放送局は五十三ありますけれども、これをすべて高速の光回線等で結んで、そういった公開ライブラリーが利用できるようにしていきたいというふうに考えています。

 計画はそうでありますけれども、できるだけ早くやっていきたいというのが、率直な今のところの考えであります。

左藤委員 そういうものを全国の方々が見られるようになっていただきたい、このように思います。ぜひお願いをしたいと思います。

 それと、今、よく俗に言うブロードバンドの時代ということになります。そういうアーカイブスで集められたものを、全国の人たちが見るだけじゃなくて、インターネットで見ることができないだろうか。もちろんこれは知的財産の問題、相当いろいろな問題があることは承知しておりますけれども、それだけのすばらしいもの、また文化的に非常に価値の高いものを国民が見たりすることができるということはすばらしいことだと思います。

 こういうことに関して、インターネットの利用についてどのようにお考えになっているだろうか、お答えをお願い申し上げたいと思います。

関根参考人 政府に知的財産戦略本部というのがありますけれども、その下にコンテンツ専門調査会というものがあります。これが今週初め、コンテンツ産業、そういったものを国家戦略の柱の一つとしてやっていこうということで、官民挙げてコンテンツ産業を振興させようという提言をまとめています。

 このコンテンツ産業の中でも放送事業というのは中核をなすものでありまして、その中でも、御承知のように、NHKというのは膨大な映像資産を持っています。私どもは、いわゆる卸提供というので、業者に対してはいろいろな映像をお渡しすることはできますけれども、個々に対してはそれは今はやっていません。しかし、ブロードバンド時代ということもありまして、今ブロードバンド事業者が商用化実験というものを始めようという計画があるので、そういったものもにらみながら、いろいろな映像をこれから提供していこうという計画を持っています。

 ともかく、私どもが持っている映像資産を国民、社会に還元する一つの方策としまして、そういったコンテンツの流通をやっていきたいというふうに考えています。

左藤委員 今お答えがありましたように、ぜひ、NHKさんの持っているすばらしいコンテンツ、これをやはり国民に還元していただきたい、このように改めてお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

滝委員長代理 次に、岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本芳郎でございます。昨年十一月に当選いたしました新人議員でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 具体的な点につきまして、数点御質問したいと思います。

 まず第一点目はデジタル放送でございますが、いよいよ昨年の十二月一日から地上デジタル放送が始まったわけでございます。今の計画によりますと、平成二十三年七月二十四日までにアナログ放送からデジタル放送に全面移行するというふうに聞いておりますが、この地上デジタル放送をより効果的に行うためには、やはり今の東京タワーではなく、もっと大きなテレビタワーが計画されておると聞いております。

 この計画の状況及び現在の進捗状況等について、お伺いしたいと思います。総務副大臣、よろしくお願いします。

    〔滝委員長代理退席、委員長着席〕

田端副大臣 お答えいたします。

 御指摘のように、今の東京タワー、これは三百メートルと言われておりますが、首都圏においてはそれの倍といいますか、六百メートルタワーということで超高層のタワーについての議論が行われているところでございます。

 現在、NHK及び民放キー局五社によって、在京六社新タワー推進プロジェクトというのが昨年十二月十七日に発足しておりまして、今その点について議論されているところと伺っております。

 このプロジェクトにおいて事業者間で話をされていることでございますが、現東京タワーを継続利用するということも含めて、立地条件、あるいは経済的な問題、そういったことも総合的に勘案した上でどうするかということでの新しい構想ということで今検討されていると伺っております。しかし、まだ具体的に、いつ、どこで、どこにということには至っていない、こう伺っております。

 それで、実は私も先般東京タワーに視察に行かせていただきましたが、ちょうど二百六十メートルのところにデジタルテレビのアンテナがあるわけでありますけれども、その地点から見てみますと、確かに近場にたくさんの大きなビルがあるという意味でもっと高いタワーが必要だ、こういう議論は確かに現実の問題だなとは思いました。

 しかし、デジタル化については、中継局をたくさんつくってやっていく、そういうこともいろいろ検討されているようでありまして、経済的な問題、そして立地的な条件、そういうことも今後勘案されながら最終的な事業者間での結論になるんではないか、こう判断しておりますので、総務省としてはその検討を見守っていきたい、こういうふうに考えております。

岡本(芳)委員 これは、でき上がりましたら、新しい日本の名所、あるいは観光的にも相当な効果も発揮すると思われます。ぜひ前向きに検討していただいて、あらゆる面で効果を発揮していただきたいと思うところでございます。

 次に、NHKにお聞きしたいわけでございますが、NHKの事業計画によりますと、障害者、高齢者に向けた放送サービスの充実というのが、これは三つも書かれておるようでございますが、いわゆる字幕放送あるいは手話放送、こういったものを今までどのように充実してきたのか、お伺いいたしたいと思います。

関根参考人 NHKでは、字幕放送につきまして、昭和六十年度から総合テレビを中心にして自主的に行ってきています。ちょうど平成九年度に、当時の郵政省、いわゆる行政の指針というので、例えばニュースとかスポーツ放送、生番組とか、著作権上字幕放送が難しいといったものを除きまして、朝の七時から深夜十二時まで、十七時間ですけれども、ここのすべての時間帯を字幕化するという指針があるんですけれども、この行政の指針に基づいてその達成に今全力を挙げているところであります。

 ただ、私どもの計画としましては、これは平成十九年度までに達成することになっているんですけれども、大体一年前倒しで、平成十八年度ごろには一〇〇%達成できるという見通しがつきましたので、現在力を入れているのは、いわゆるニュースとかスポーツ中継、そういった生放送を字幕化するということであります。

 当面、今年度、十六年度の計画でありますけれども、すべての放送時間に占める割合で、例えば総合テレビですと三六%弱、こういった計画値を持っていまして、これをとにかく少しでも引き上げていこうということを今考えておるところであります。

 それと、なぜ聴覚障害者に字幕放送を基本にしているかといいますと、私ども、以前手話で対処したことがあるんですけれども、番組の端っこに丸ワイプというので、非常にわかりにくいものだというので視聴者から不平が出まして、それから字幕放送中心にやっていくということをしているんです。当然、ニュースにつきましても、今教育テレビで、十六年度の予定でも六つの手話の番組をやっていまして、全く手話をやっていないというわけではありません。

 ともかく、字幕放送を当面重視させる傍らで、手話の放送にも力を入れていくという考えでやるつもりであります。

岡本(芳)委員 耳の不自由な方からいろいろお話を聞きましたら、字幕放送については、普通のテレビでは映らなくて特別なチューナーを持ったテレビでないと映らない、それの生産ももう既にほとんど終わってしまって、これからはつけようと思ってもつかない。さらに、手話放送につきましても、たった一日三十分程度しかないわけでございます。耳の不自由な方がテレビを見ようと思ってもなかなか見られない、これは非常にやはり問題だと思うところでございます。

 先日、耳の日というのがありまして、その記念大会へ出てあいさついたしましたら、大変親切なんですね。ちゃんとあいさつ文を前もって字を映写する、そしてなおかつ手話まで入れて、皆さんによくわかるようにサービスしている。そういった優しさが非常にあふれているという感じの大会であったわけでございます。どうもNHKの今までのやり方、努力はしておるようには見えるわけでございますが、実態的にはかなり厳しいんではないかと思うところでございます。今どうのこうのと言ってもしようがないわけでございますが、今後とも、ぜひ弱者に温かい放送をしていただけるよう要望しておきます。

 次に、日本放送協会、NHKは、放送法によりまして、公共の福祉のため、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、よい放送番組による国内放送を行うということになっておるわけでございます。そして、受信設備を持つ者から受信料を取ることになっております。

 ということは、やはり内容のいい、そしてみんながよく見る、視聴率の高い番組を編成するべきだと思うところでございます。視聴率の低い、だれもが好まないような番組では、料金を取ることもかなり難しいんではないかと思うところでございます。

 ちなみに、日曜日の午前中、よく我々は政治番組を見るわけでございますが、七時三十分からの「報道二〇〇一」ですか、八チャンネル、これの視聴率が六・二%、九時のNHKの「日曜討論」は四・四%、そして十時からの「サンデープロジェクト」は八・一%、このぐらい差があるわけですね。

 昔から、この「日曜討論」、ずっと見ておりますが、十年一昔、一つも内容が変わっていないんではないか。中身の議論は変わるわけでございますが、やり方がほとんど変わっていない。こういったことで、視聴率もなかなか厳しいのではないかというふうに思っております。

 また、ニュース番組を見ましても、民放と相当違うところがあるわけでございます。何が違うか。芸能ニュースが非常に少ないんですね。これはNHKのプライドか何か知りませんが、私はやはりおかしいんではないか。世の中のニュースを見る人は、いろいろなレベルの方がおります。いろいろな種類の方がおります。芸能の好きな方もいっぱいおるわけでございます。世の奥様方、大変芸能ニュースが好きでございます。したがって、民放をどんどん見ます。NHKはほとんど見ません。

 こういったことを踏まえて、やはり何らかの改善をぜひお願いしたいと思うところでございますが、NHKの御意見をお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 お答えいたします。

 今、「日曜討論」、九時から一時間あるいは一時間十五分やっておりますが、その前身は「国会討論会」という形で、戦後、新しい憲法のもとで、ラジオ時代から営々とやってきました。その後、国会閉会中に「国会討論会」というのも題名がおかしいだろうということで、今「日曜討論」という形で、国会中は国会の先生方を中心に、国政の重要な課題、問題について討論を放映しております。

 御承知のように、我々放送事業者は、放送法に基づいて、政治的な公平公正さが求められております。そして、意見が対立したものについては、双方の意見を紹介し、視聴者に判断をゆだねるというのが基本的な編集方針であります。

 そういう中で討論をいたしますと、やはりこの公平さというものをどう見るか、一方的に偏ったものだけの討論でいいのかどうか、いろいろな難しい問題もあります。ですから、これまで「国会討論会」、「日曜討論」もやっておりますけれども、各党の割り振りの問題、また、各党代表による出演も各党にそれぞれお願いする、その辺のいろいろな問題を抱えながらの番組の制作を我々はしているところであります。

 ですから、おもしろく、おかしくすれば、これはどうにでもできるわけで、それが本当に視聴者のためにいいのかどうかは疑問だろうということで、今の政治的な公平さをやはり眼目にしてやっているというのが現状であります。

 それと同時に、やはり時代の変化、そしてまた国民の視聴傾向というものも変わってきております。今先生から視聴率のお話が出ましたけれども、今の視聴率調査が果たして適正なものかどうか、私は疑問に思っております。ですから我々は、あくまでも、視聴率にかかわりなく、伝えるべきものを伝える、視聴者に情報を提供するものはすべきだ、そういう中で放送しているということを御理解願いたいと思っております。

 それから、芸能ニュースの強化でありますが、御承知のように、今価値観も多様化する、またいろいろな面で芸能ニュースが大きく取り上げられる時代になりました。ですから、私どもも、今一般のニュースの中でも、この前、俳優の渡辺謙さんがアカデミー賞の候補に上りました、それについてもいろいろ報道いたしましたし、また森光子さんが「放浪記」の千七百回の公演を務めたというようなこともニュースとして取り上げております。

 ですから、そういうニュース性、社会性のあるものについてはこれまでのように取り上げていくつもりであります。ただ、興味本位に走ったり、あるいはプライバシーを侵すような問題を一々取り上げることはいかがかと思っております。

 いずれにしても、視聴者のそういうニーズにこたえなければ公共放送としても成り立ちませんので、あくまでも我々は国民の信頼の上に成り立っている、そういう視聴者本位の中で適正なニュースを取り上げていきたいと思っております。

 これから、二十四時間ニュースを私どもやりたいとお願いしておりますけれども、そういう新しいニュースチャンネルができれば、当然芸能ニュースの枠を設けるとか、いろいろな形での多様なニュースチャンネルができるだろうと思っております。

岡本(芳)委員 最後の方は大変いい、前向きな答弁ありがとうございました。

 政治番組は公平公正であることは当然でございますが、それとおもしろくないということとは大分違うんじゃないかと思います。そういう点もやはりもう少し考えていただきまして、だれもが楽しく見られるようにしていただきたいということを要望して、終わります。

 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、奥野信亮君。

奥野委員 自由民主党の奥野信亮でございます。

 私は、この間の選挙前まで民間企業で社長として経営していたものですから、NHKさんは公共放送ということで、目的は若干私どもと違ったわけでありますけれども、今度の予算案を大変興味を持ちながら拝見させていただき、少し御質問をさせていただきたいと思っておるわけであります。

 特に、今NHKさんを取り巻く環境というのは、大変コストアップ要因がメジロ押しではないかなと思います。特に技術進歩の著しい通信技術を前提として、デジタル放送等の設備投資のニーズが高い、あるいは視聴者の価値観の多様化、またそれからスピーディーに非常に価値観が変化しますから、そういった意味で制作費の高騰というのもかなりあるんだろうと思います。

 こうした環境で、一方では受信料がなかなか伸びない、サチュレートしているというような状況を考えますと、それが大変な懸念だなということを感じつつ、公共放送という役割を果たしつつも、いつもお客様満足度の向上を期待して事業を営んでいただきたいなと私は常日ごろから思っている次第であります。

 そうした中で、最初に、NHKさんに地域放送の件についてお伺いをしたいと思っております。

 日本は今景気回復に向けて大変明るい兆しが出てきておりますけれども、まだまだこの景気回復は都会だけで、地方の活性化がこれから期待されるところであります。特に、日本の経済力を支えてきたのは地域に多く存在する中小企業の技術力と知恵というふうに私は思っておりまして、地域経済に支えられてこそ日本の経済再生もあり得るだろう、こんな感じを持っている次第であります。先般、小泉総理が広島県の中小企業を御訪問されて元気づけられたというのもこの一環ではないかなと思っております。

 そのために、放送の役割というものは大変大きいだろうと思いますし、各地域それぞれの特性を生かした産業振興の取り組みとか、あるいは地域で頑張る企業の姿を紹介するような地域放送の充実というのは、公共放送の役割として大変大切だな、こう感じる次第であります。

 また、私は、先祖代々奈良県の大和の地で生まれて育ってまいりました。この大和の美しい風景や先人の築き上げました歴史とか文化とか伝統あるいは史跡というものは、いつまでも丁寧に守って、なおかつ子孫に受け継いでいくという必要性があるわけであります。

 先般も平城京遷都千三百年に向けて、二〇一〇年にこれがなるわけでありますけれども、それに向けていろいろな平城京の史跡を復元している活動がございます。この間も、大極殿の立柱式というのをやりました。その前には平城京の朱雀門というものが完成した。奈良県の県民挙げて、多くの国民の皆さん方にも理解をしていただこうということでこういう活動をしているわけでありますけれども、こうした文化や伝統を守り育てるのもNHKさんの地域放送局の役割ではないかな、こんな感じを持っている次第であります。十六年度のNHKさんの事業計画を見ますと、地域から全国への情報発信を積極的に推進するというふうにうたわれております。

 そこで、十六年度、地域放送の充実や地域からの情報発信について、全国向けの発信について、具体的にどのように取り組まれているのかを教えていただければと思っております。

海老沢参考人 私どもNHKは、全国放送と同時にまた地域放送という二本立てで成り立っております。現在、東京を除いて地方局は各県に一局ずつ、北海道は例外として、九州より地域が広いために六局置いてあります。福岡だけが北九州と福岡と二つありますが、あわせて五十三局体制で放送をしております。

 やはり、日本は、昔は三百諸侯と言われたほど、各地方にはそれぞれのすぐれた歴史、文化があります。私どもは、やはり日本のすぐれた伝統文化を守り、その上にまた新しい文化を創造していくというのも放送事業者の大きな役割、使命だろうということで、そういう地方の文化をできるだけ取り上げようということで、いろいろな形で番組をつくっているところであります。

 それを地域だけでなくて、今全国発信、いわゆる全国向けに放送する、そしてまたそれは直ちに世界に放送されるわけでありますから、そういう面で今全国発信というものにもかなり時間を割いております。地域だけの放送では、今それぞれ各局、総合テレビは平均三時間ずつ放送しております。ラジオも第一放送、FM放送等で二時間から三時間、時間を割いて放送しております。これからデジタル放送になればますます、データ放送は双方向機能がありますので、いろいろ地域の住民の生活に役立つような情報がいつでも放送できる体制が整うわけであります。

 いずれにしても、地域にはそれぞれの産業、暮らしがありますので、我々は各放送局を中心に全国ネットワークを組んでおりますから、いつでもそれに対応できるわけであります。特に、災害時等についてはそういうネットワークを生かしながら、国民の生命財産を守るということを前提に、いろいろな今施策を強化しているところでございます。

奥野委員 ありがとうございました。

 それでは、その次に、地上デジタル放送について少しお尋ねしたいんですが、先ほどほかの委員も御質問いただきましたけれども、十二月に、関東、近畿、中部の三大広域圏で地上デジタル放送がスタートいたしました。二〇〇六年までには全国で放送開始ということが予定されているわけであります。私も、拝見したところは、この地上放送のデジタル化というのは、大変高画質、高音質のハイビジョンによる放送で、国民の満足感も非常に高いんだろうと思います。

 ただし、経営的に見ますと、これは大変な大きなインパクトがあるんだろう。伺いますと、NHKさんでも四千億円の投資が必要だ、それから民放でも八千億円の投資が必要だ、両方で一兆二千億円の投資が必要になるわけでありますが、これは、公共放送のNHKさんとそれから営利企業を追求する民放とでは、水と油という形になるかもしれませんが、いずれにしても、やはり、低俗番組で視聴率を稼ぐ民放ではありますけれども、理性を兼ね備えて、国民の良識を引き上げるような目的で放送されているNHKさんともう少し協議を重ねて、国の大局的見地から見ても、コストをセーブするということは大事なことであると思うんですが、そこら辺についてはどう考えておられるかをぜひ教えていただきたいと思います。

海老沢参考人 地上デジタル放送につきましては、NHK、民放ともかなりの設備投資を必要といたします。そのために、私、数年前に札幌で開かれました民放連大会に出席し、これからは、いわゆる中継所、鉄塔の共同建設、あるいは送信設備の仕様書の共通化、そういうできるだけ協力できるものはお互いに協力しましょうという呼びかけをいたしました。その後、今、百二十七のテレビ局がありますけれども、各局ごとに、私ども、いろいろな面で協力しながら、中継所の共同建設等を今進めております。そのために、NHKだけで大体一千数百億の節減ができる見通しがつきました。民放さんの方もそれなりの節約ができると私は思っております。

 いずれにしても、膨大な設備投資でありますから、私どもも、平成十三年度から十カ年の計画を立てまして、今、四千億の予算を見込んでおります。そして、これまで三年間で九百億をつぎ込みました。二〇一一年七月二十四日までにこれをなし遂げるわけでありますから、あと三千百億をかけて、全国あまねく見られるように設備を整備したい、そう思っております。

 いずれにいたしましても、技術革新が進んでおりますので、できるだけそういう技術革新の成果を取り入れながら、経費の圧縮にさらに努力していきたいと思っております。

奥野委員 ありがとうございました。

 精いっぱい努力していただきたいと思いますが、最後に、NHKといえば、やはり、選挙報道とか、あるいはいろいろな緊急事態のときに貴重な情報を全国あまねく配信していただいておりまして、国民にとっても大変頼りになる存在で、社会のライフラインとして一つの大きく期待されている情報ソースではないかと思います。

 そうしたときに、今、NHKさんでは、インターネットを使った情報発信にも大変積極的に取り組んでおられるやに伺っておりますけれども、今やインターネットは、ブロードバンドで全国で一千四百万世帯、あるいは、インターネットでも七千万台近くの機械が動いているわけでありまして、多くの国民がその利便性を享受しているところであります。

 こういったことを考えてみた上で、一方で、日本の政治情勢というのを考えてみますと、日本の国民は、政治に関心のある人たちと政治に関心のない人たちにかなり分かれているんじゃないかというような気がしておるわけであります。そうした中で、特に、テレビ、ラジオをごらんになる方は政治にも結構関心がおありになるんですが、インターネットを使う方の中に、あるいはブロードバンドを活用されている人の中には、政治に対して無関心な層が結構あるように私は感じているんです。

 そういう意味で、NHKさんが、例えばですけれども、わかりやすい政治教室みたいなものをインターネットを通じて配信していくというようなことができるならば、国民の政治意識を高めていく上で価値があるかなと私は単純に思っているんですが、こんなことが可能なのか、また、本当に可能であるならばNHKさんとしてはやるつもりがあるか、こんなことを少しお尋ねしたいと思います。

 最初の質問は総務省さんにお答えいただければと思います。

武智政府参考人 NHKのインターネット利用に関してでございますけれども、これにつきましては、これまでもいろいろ議論のあるところであったわけでありますけれども、総務省におきましては、行政法の泰斗でいらっしゃいます塩野宏先生を座長とする放送政策研究会という会合を開催いたしまして、一年以上議論をしていただきました。そして、その報告をもとにいたしまして、さらにパブリックコメントを求めた上で、平成十四年の三月に日本放送協会のインターネット利用に関するガイドラインというものを定め、公表しているところでございます。

 このガイドラインというものは、NHKが放送の補完利用としてインターネット利用のあり方を明らかにするということを目的に定められておるわけでございまして、いわば放送法の解釈指針というものでございます。

 そして、このガイドラインでは、いろいろなことについて定められているわけでございますが、お尋ねの、NHKがインターネットを利用して発信する情報の内容についてでございますけれども、これは番組関連情報ということでありますが、教育、福祉、医療、生活の分野から開始するということになっております。既に二年がたっておりますので、これ以外に特に情報の内容に制限を加えるものではございませんので、NHKにおいて、その番組の全体のニーズなどを考えながら、このガイドラインに沿って行われる限り、特段制度上の問題はないと考えております。

 以上でございます。

関根参考人 今総務省から御説明がありましたように、私どもとしましては、放送を補完する形で、ニュースの提供を平成十二年の十二月から始めています。インターネットでは、災害が起きたときには当然災害に関する情報を流しますし、選挙があったときには選挙に関するさまざまな情報を流しています。

 去年の四月の統一地方選挙では、初めてすべての区市町村の議員選挙といったものの結果についてもインターネットで伝えました。去年十一月の衆議院選挙でも速報を含めた情報を出したのですけれども、これはアクセスが膨大な数字に上りました。いわゆるページビューという単位がありますけれども、一千八百二十五万ページビュー、これは二十四時間で見ますけれども、これだけのアクセスがありました。

 このように、選挙についてインターネットで情報を提供しますと、年代を問わず多くの方々がインターネットにアクセスする、そういった側面からも、やはりインターネットでさまざまな情報を提供するというのは、政治の理解促進といったものにもつながっていくんじゃないかということを考えていまして、私どもとしましては、これからいろいろな形で、災害情報はもちろんのこと、政治に関する情報、そういったものも提供していきたいというふうに考えています。

奥野委員 国民の政治意識をステージアップさせるためにも、また、良識をさらに高めるためにも、NHKさんにはぜひ御協力をお願いしたいし、また、お客様満足度を高めるべく経営をしていただくことをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、萩生田光一君。

萩生田委員 自由民主党の萩生田光一でございます。総務委員会での初めての質問でございまして、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 まず初めに、NHKの平成十六年度の予算について、受信料の公平負担の徹底についてお尋ねをしたいと思います。

 今回の予算につきましては、受信契約の締結等の徹底あるいは未契約世帯の解消等、総務大臣の意見書も踏まえて、前向きな姿勢がうかがえるところでございます。

 最近の資料で申し上げますと、世帯契約総数は約三千五百万世帯、本来契約をしなくてはならない有料契約対象世帯から考えると、契約率は八二%、単身世帯では六〇%と低く、七百八十万世帯以上が未契約で受信をしている計算になります。また、契約者から払ってもらうべき受信料の収納率も、ここ数年九七%台で推移をしてきましたけれども、九六%台へ落ち込み、長期滞納者は百二十万件を超えたと聞きます。長引く不況ももちろん影響しているとは考えられますが、生保等の特別な世帯につきましては免除対象になっているわけですから、生活が苦しくてというのはいささか疑問に感じます。一方で、我が国のモラルの低下はこういったNHKの料金の未払いにも影を落としていると言わざるを得ません。

 いずれにしましても、私は協会の姿勢一つにかかっていると思っておりまして、民間の企業であれば、年間四%の未収金を累積で続けていくという発想があり得ないと思います。ライフサイクルの変化の中で、契約者や受信者に会えない、あるいはオートロックの普及で対面できないなど、都市型事情も東京の代議士として理解をできるところでありますけれども、やはり公平負担の観点から、この徹底に向けては引き続き、いや、デジタル放送に合わせて心機一転、抜本的な対応を計画的に講ずるべきと考えますが、NHKのお考えをお示しください。

海老沢参考人 今先生から御指摘がありましたように、この数年来、受信料の収納が予定よりうまくいっていないという状態が続いております。これはもう御案内のように、デフレ下、そういう中での不況が長引いている、その結果として、失業率がことしの一月現在で五・〇%、人数にして三百二十三万人という数字が発表されております。私ども、泣き言を言っても始まりませんし、ただ、五%といいますと、やはり受信料収入では数十億の差が出てまいります。

 そういう厳しい状況でありますけれども、我々もそういう厳しい状況を深く受けとめて、こういうデジタル放送時代になって改めて、NHKの存在意義あるいはNHKの必要性、そしてやはり公平負担の原則をこのまま続けていく、そういう方針のもとに、もう一度我々は、視聴者に対して、NHKに対する理解促進、あるいは存在感というものを示していく。非常に今厳しい状況に置かれている、そう認識しております。そのために、番組の質の向上あるいは国際貢献、いろいろなことで経営の刷新を今図っているところでございます。

 そういう中で、NHKの業務、これからますます技術革新に伴っていろいろな仕事をしなきゃなりません。そういう中で、我々は、視聴者へのそういう理解促進と同時に、番組の質の向上を図って、NHKというものがこれからも必要であるということをさらにPRしていきたいと思っております。

 と同時に、やはりこれは視聴世帯を一軒一軒地道に回ってお願いするしかありません。そういう面で、今、地域スタッフ、いわゆる集金人の研修あるいは再教育をしながら、そして我々自身も先頭に立って、視聴者の理解をさらに深めるよう努力していきたいと今思っておるところでございます。

萩生田委員 ぜひ前向きな御努力を御期待申し上げたいと思います。

 続きまして、東京圏における新タワーの検討状況、先ほど岡本先生からも御質疑がございましたけれども、私も、地元でございますので、触れさせていただきたいと存じます。

 昨年の十二月から三大広域圏での地上デジタル放送が開始をされたことは多くの皆さんから指摘のとおりでありまして、情報通信二十一世紀ビジョンに基づく、官民一体となって進める、まさに放送革命、国家プロジェクトというふうに認識をしております。

 ちょうど我が家も、選挙が終わった直後でございましたので、この機会にということで、今まで大したぜいたくはしたことがなかったんですけれども、テレビの買いかえを検討いたしまして、デジタル対応のハイビジョン液晶テレビというのを購入いたしました。しかし、実を言いますと、我々多摩地域は、地形的な問題やビル陰の影響で、サテライトアンテナからの再送信されたUHF波を受信している家庭が圧倒的に多くて、既存のアナログ波が本来地上デジタルが使う帯域を既に使ってしまっている関係で、今アナ・アナ変更という作業を国費でまさに行っているわけでございます。すなわち、見たくても地上デジタルが受信できない地域にあるわけでございまして、実は、せっかく買ったテレビの部品も、なくさないようにと言われて、箱に大事にしまっている、こんな状況が続いております。

 海老沢会長、残念なのは、NHKといったら、選挙報道と先ほどありましたけれども、私は大河ドラマだと思うんです。ことしのデジタル元年の大河ドラマは「新選組!」。まさに沖田総司にしても近藤勇にしても、出身地は全部三多摩であります。そして、放送の最後に三多摩のそれぞれの著名な場所をNHKみずからが放送しているじゃないですか。ところが、その三多摩の皆さんはデジタル放送を受信できない、こういう状況にあるわけでございまして、私は、経営戦略上極めて陳腐だというふうにあえて申し上げたいと思います。

 実は、都心では、空域などの問題も含めて、なかなかタワーを建てる場所がないという先ほど副大臣の答弁もございました。私どもの地元では、この問題をいち早く認識して、かつて多摩地区に第二の東京タワー、多摩タワーをつくろうという構想が持ち上がって、しかも専門家や民放の各社が積極的な後押しをして株式会社の設立にまで至って、そして何も人をかき分け手を挙げたわけじゃございませんけれども、地形的に八王子が一番いいと言われたものですから、私ども、八王子の多摩ニュータウン事業区域内の未利用官地を具体的な候補地にまで絞り上げた、そんな経緯がございます。

 しかし、結果として、その後、埼玉の皆さんもお手を挙げたり、あるいは秋葉原がいいとか新宿がいいとか、紆余曲折あって、結果どうなったかといえば、先ほど答弁でもありましたように、東京タワーの二百六十メーター地点に暫定的とも言えるデジタル放送のためのアンテナをつくってこの地上デジタル放送は開始をされたというのが現在の状況でございます。

 大騒ぎの結果、地元のタワーの会社も今休眠状態でございますけれども、ここへ来てNHKと在京民放五社、先ほど副大臣の御答弁にもありましたように、十二月の十七日に新たなプロジェクトを発進させた、こうお伺いしたところでございますけれども、なぜこの時期に新プロジェクトを発足させることになったのか、検討を進める上でどんな要素が大きなポイントになるのか、いつ結論を出すつもりなのか、多摩タワーの可能性も含めて、御答弁をお願いしたいと思います。

和崎参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、NHKも在京民放五社も、これまで継続して新タワーの必要性というものを検討してまいりました。とりわけ昨年の十二月に地上デジタル放送をスタートさせてから、デジタル放送の電波をより広範囲に行き渡らせたい、それからもう一つは、これからのサービスでございますが、いわゆる携帯向けサービス等を考えますと、できるだけ高いタワーから電波を出すことが非常に有効だ、しかも安定的に届けることができるというようなことを在京六社の中で話し合ってまいりました。

 そういう意味で、先生も御指摘のように、六百メーター級のタワーということの有効性というものを今再認識したところでございます。そういう意味で、昨年の十二月から在京六社の間で新タワー推進プロジェクトを発足させ、今検討に入っているというのが現状でございます。

 そんな中で、新タワー、今御指摘のどういう基準かということにつきましては、まずカバーエリアがどのぐらいになるのかというまさに技術的な検証が一点、それから環境への影響というものはどうか、それからあるいは航空管制面での立地条件というのはどうなのか、それから経済性、そうした多角的な視点で今検討に入っているというぐあいに聞いております。

 そんな中で、今プロジェクトの方には複数の提案が寄せられているというぐあいに聞いておりますが、これから一年ぐらいをめどに一つの方向性を出したいと聞いておりますので、その検討結果を踏まえて、放送事業者としては、ぜひいいカバーエリアができるタワーを実現できればと思っているところでございます。

萩生田委員 標高を考えますと、都心で六百メーターのタワーを建てなくても、多摩地域であれば、三百メーター、四百メーターで六百メーターがカバーできるじゃないかというのがこの多摩タワーの一番最初の発端でございまして、こんな点も含めて、ぜひ可能性を早い時期に模索していただきたい、こんな要望をしておきたいと思います。

 続きまして、デジタル放送の特徴というのは、画像の鮮明さですとか、あるいはきめ細かいエリア情報や、あるいは、スタジオと視聴者をつなぐ双方向性、移動体通信への機動性、こういったものが指摘をされているところでございます。

 実は、昭和五十八年当時、郵政省が、地域の情報化、活性化を目途に鳴り物入りで始まったのがテレトピア構想でありました。その主役が実はケーブルテレビでございまして、ケーブルテレビの特徴は、画像がきれいで、同軸ケーブルで、双方向性があって、きめ細かい地域情報が発信できて、難視聴対策にも効果的、どこかで聞いたようなこんなフレーズなんですね。

 それで、どうなったかといいますと、このテレトピア構想の指定を受けるべく、それぞれの自治体が血眼になって第三セクターの会社をつくり、ケーブルテレビ会社の設立がなされた、こういう経緯がございました。政府系の金融機関からの無利子貸し付けや財政投融資が受けられる、あるいは税制上の優遇措置が受けられるということで、自治体が経営するか、あるいは三セクで行うというのが主流でございました。結果、どうなったかといいますと、設備投資がかなりかかりますので、どこのケーブルテレビ会社も赤字経営で大変苦しんだ、そんな時代がございました。

 平成七年に、インターネットの普及によって追い風が吹きまして、結果、本来のケーブルテレビ事業じゃないインターネット事業で単年度の黒字に転換した会社が幾つも出てまいりましたけれども、もともとの累積赤字は消えずに、その第三セクターの出資者である自治体が債務保証をしたり、あるいは増資をしたり、あるいは番組制作という形で、新たな財政的な支援をしているのが実態だというふうに思います。

 今回のデジタル放送化を踏まえて、各社は単独では再送信のための設備投資にとても耐えられないというような原因もあって、大手資本によるケーブル会社の系列化が進んで、今日では、JCOMですとかあるいはJCN、KCANといった大きな会社が全国で誕生することになりました。結果、親会社との出資率で大きく変化が生じて、第三セクターの各自治体は、債務保証だけを押しつけられ、発言権は大きく後退をして、不採算である番組制作を打ち切られ、あるいは、設立当初の地域のコミュニティーチャンネルとしての機能が果たせなくなってきている、こういう問題が発生しております。

 そこで、今回、地上デジタルが普及をすれば、中途半端なインフラ整備の進むケーブルネットワークはある意味では使い道がなくなってしまい、自治体は、未回収の出捐金と債務だけが残ることにもなりかねません。

 デジタル放送の普及に合わせて、総務省は、全国に設立されたケーブルテレビ局あるいはケーブルそのもののインフラをどのように位置づけし、今後活用していくお考えなのか、お示しいただきたいと思います。

田端副大臣 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、ケーブルテレビの事業者間のネットワーク化あるいはヘッドエンド共用化ということで連携が進んでいることは事実だと思います。しかし、ケーブルテレビによってデジタルテレビの再送信の実現がより期待される、こういうことでもあろうと思います。

 昨年十二月の地上デジタル放送開始時において、当初の目標であった二百万世帯というものを大幅に上回って、ケーブルテレビ事業者間の連携によりまして、現在、七百万世帯が視聴可能である、こういうことにもなっているわけであります。

 先生おっしゃるように、ケーブルテレビが地域のメディアとして今まで大きな役割を果たしてきた、また、それがこれからも必要だ、今後も地域情報の基盤としてケーブルテレビというものは重要な役割を果たしていくべきだということについては、全くそのとおりだと我々も考えているところでございます。

 デジタル化に対応するためにケーブルテレビの事業者間の連携が進む状況にあったとしても、ケーブルテレビには、地域に密着したメディアとしてより一層役割を十分に今後も果たしていただきたい、引き続きそう期待しているところでございます。

萩生田委員 時間が参りましたので終わりますが、国の政策を信じてそれぞれ設立をされた地域のケーブルテレビ局があるわけですから、これから目指す情報化社会に向けて、このツールをどうやって活用していくか。冒頭申し上げたNHKの料金徴収については、もう既に連携をとっているところもございます。あるいは、きょうは触れませんでしたけれども、難視聴対策につきましては、今協同組合でやっておりますけれども、これはケーブルテレビに振りかえをした方が非常に効果的だということももう立証されているわけですから、使い道をぜひ検討しながら活用いただくようにお願いして、質問を終わりたいと思います。

佐田委員長 次に、山下貴史君。

山下委員 自民党の山下貴史でございます。

 私も、当委員会で初質問でございまして、私からは、NHKの会長さん初め担当の方に、何点かこの機会に御質問させていただきたいと思います。

 冒頭、デジタルテレビジョン放送に関してでございまして、これはもう先ほど来、同僚委員から御質問がされております。一部重複する面もあろうかと思いますが、お許しをいただいて、その質問をさせていただこうと思うのであります。

 いただいた事業計画、詳細に読ませていただきました。その事業計画の冒頭で、「放送の世界では、地上デジタルテレビジョン放送が始まり、本格的なデジタル放送時代を迎えた。」こんなふうに述べられておって、その上で、計画概説の中の一番最初の項目に、「地上デジタルテレビジョン放送の視聴可能地域やサービスの拡大に向けた設備の整備を行う。」こうしっかり明記をされておられます。

 そして、参考にいただいた、いわゆるNHKビジョン、「平成十六〜十八年度 NHKビジョン」、少し分厚い方の資料の中も読ませていただいたわけでありますが、その中で、平成十八年までに全国で地上デジタルテレビ放送を開始し、その後順次、放送エリアを拡大し、平成二十三年七月までにデジタル放送に全面移行するという国の方針に沿って、NHKは、地上テレビ放送をデジタル化するため、ここが大事なポイントでありますが、テレビ塔や中継局を合わせ、およそ二千三百の送信設備で全国をカバーする計画を持って、その費用におよそ二千億円を見込む、こういうことが書かれてございました。

 私の問題意識は、私の出身地は、本当に、人口で申し上げますと二千百人ぐらいの極めて小さな山間僻地でございまして、こうした地域に住んでおる者からすると、本当にこの年限までにきちんと全国津々浦々までデジタル放送の波をかぶせていただけるようにやっていただけるのかどうか、大変心配をいたしている面があります。先ほど、都心でもそういう問題があるという話を伺いましたが、私どもの田舎は、投資効率からすると、本当にきちんと年限内にデジタル放送のすばらしい恩恵に浴せる地域になれるのかどうか、心配いたしております。

 これはNHKさんだけの問題ではないかもしれませんが、NHKは、先ほど申し上げたビジョンの中で、デジタルデバイドの解消、それへの貢献、それから情報バリアフリーへの取り組みを進める、こういうことが強調されております。

 全国津々浦々までデジタル放送の波を広げるための努力について、NHKの明確な決意のほどをまずお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 お答えいたします。

 私ども公共放送として、地上デジタル放送の整備については、先導的役割を果たしていこうということで、いろいろな面で協力といいますか、先頭に立って今業務を遂行しております。

 そういう中で、去年の十二月一日から東名阪で放送を始めました。今、三つの都市圏、千二百万世帯が見られる状態になっております。それをさらに年々拡大していきたい。

 それは、アナ・アナ変換といいますか、アナログの周波数変更対策が非常に難しいという状況の中でスタートしたわけでありますが、おかげさまで、今、アナ・アナ変換も順調に進んでいるというふうに聞いております。ですから、このアナ・アナ変換を四百二十六万世帯がやるわけでありますから、このアナ・アナ変換が順調に進めば、私は、国会で議決された二〇一一年七月二十四日までにデジタル放送が見られるようになるだろうというふうに見ております。

 ですから、今、アナ・アナ変換の方が順調に進んでおりますので、あとは、我々放送事業者が中継所の施設、あるいはメーカーが年産一千万台ほどの出荷数を出していけば、予定どおり進むだろうと見ております。

 いずれにしても、我々放送事業者とメーカーとがうまく車の両輪としてかみ合っていけばという前提でありますが、今のところ、私は、順調に進んでいると見ております。

 そういう中で、日本は、山あり谷あり、いわゆる難視聴の地域が非常に多いことは先生御指摘のとおりであります。そのために設備費がかかる、時間がかかるという、世界でも例のないほど電波事情が複雑なところであります。そういう面で、地上の鉄塔だけで本当に間に合うかどうか。

 そのために、光ファイバーのいわゆる光波長多重方式という新しい方式等を導入しながら、放送事業者、自治体、あるいは通信事業者が一緒になって共同で運営するとか、いろいろな方法を考えれば全部カバーできるだろう。

 それまでにまだ時間がありますので、これからいろいろそういったことを考えながら、デジタルデバイド、いわゆる情報格差がないようにさらに努力を重ねていきたいと思っております。

山下委員 ありがとうございました。

 政府全体で取り組むべき課題だろうというふうに思いますが、ぜひ、NHKさんも積極的に今の問題に力を注いで頑張っていただきたいと思います。

 次に、国際放送についてちょっとお伺いしたいと思うわけであります。

 事業計画の中で、これまたこういうフレーズがございます。「放送を通じて、国際交流と相互理解の促進に貢献する」、その旨が述べられておりまして、本当に意欲的な表現になっているな、こう思うわけであります。

 やはり私も、日本の政治経済や文化、これが世界によりよく理解され、知ってもらうには、テレビ等を通じて、いかに日本から海外へ発信力を高めていくかということが大事な課題だろう、こう思うわけであります。

 かつて、私も海外に住んだことがございますが、その当時、今もそう事情は変わっていないと思いますが、日本発のニュースというか、そういうものが極めて少なかった。ヨーロッパだったわけですが、日本の顔がヨーロッパの人に直接見えるような場面が極めて少なかったなというのを鮮明に覚えているところでございまして、やはり海外に向けた発信力強化、大事な課題だと思っております。ですから、NHKも、当然、国際放送の充実に力を注いでいらっしゃると思うわけであります。

 実際のところ、今、衛星放送等を通じて行われている海外放送、どの程度の人にこれは見られているのか、その現状についてちょっと教えていただいた上で、今後、それを恐らく充実する方向でいらっしゃると思いますが、その具体的な方策についても、何かございましたら御説明いただきたいと思うんです。

 それから、あわせてもう一つ。これまた詳細に事業計画を読んでおりましたら、「補完放送等」という項目の中で、海外の放送事業者等へのNHKの番組の提供についても触れられておりました。これを進めるという趣旨のことが書いてあったわけであります。

 確かに、衛星放送を見ておりますと、我々は、アメリカのABC、BBCやあるいはまたフランスのアンテンドゥー、韓国のKBSといったニュースをしょっちゅう見られるわけであります。あれは、NHKが事業者として海外のそういう放送社のニュース等の番組を何らかの形で入手して我々に流している。

 同じように、NHKが作成をされたニュース等の番組を、そういう海外の放送事業者に、これは売り込みということになるのか、提供ということになるのか、ちょっとよくわかりませんが、そして、彼らのテレビを通じて日本発のニュースが浸透していくような努力も大事かな、そのことが書かれていることだろうと思うわけであります。

 こうしたことについての今後の展望といいましょうか、方向性についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

海老沢参考人 先生御案内のように、今、テレビは国境を越える時代になりました。いつ、どこで、何が起こっても、瞬時にして世界にニュースが流れる時代になっております。

 そういう中で、私どもも、日本の理解を深めるために、また日本の旅行者が今年間千六百万ほど出ているわけでありますから、そういう人たちにも、いつでも日本のニュース、現状がわかるようにということで、御承知のように、今、三つの衛星を借りて全世界に発信しております。

 これは、NHKのいわゆるテレビ国際放送であります。これは、現在、三つの衛星で百八十カ国をカバーし、今、在留邦人八十七万おりますけれども、その方々の九九%をカバーできるというところまでカバー率が高まりました。そして、今、日本語と英語と両方でやっておりますが、英語化率は四五%に達してきております。

 これは、Cバンドという電波を出しておりますものですから、三メートル前後の大きなアンテナでないと見られないということであります。その三メートル前後のアンテナとチューナーを持てば、どこでもこれが映る状態であります。それを視聴可能世帯と言っておりますけれども、七千二百万世帯がアンテナをNHKが見える方向へ向ければ映るということになっております。

 それから、もう一つは、同じ衛星に、NHKワールド・プレミアム、それはNHKのいわゆる大河ドラマなり朝のドラマなりニュースなり、いろいろなものをまぜ合わせたもの、これを有料で出しております。これはなぜそうなるかといいますと、今、CAテレビの時代、各国も衛星時代であります。そのために、やはり有料でないと受け付けてくれないということで、世界の百三十七の事業者、九十二カ国で、今、千四百三十一万世帯が見られる状態になっております。

 そして、当然、私どもが今契約している世界で千八百五十のホテル、四十四万五千室で見ることができるようになっております。ですから、これを今どんどんふやしておりますが、主な世界のホテルではNHKのワールド・プレミアムが見られる状態になってきているということでございます。そういう面で、これもさらに拡充をしたいと思っておるところでございます。

 そのほかに、これはテレビ・ジャパンという形で、今ニューヨークとロンドンで放送しておりますが、これは有料でやっております。NHKといわゆる日本の商社、航空会社、いろいろなところが株を持ち合ってやっている株式会社制度のものであります。これは今、アメリカでは五万世帯を超えております。そして、ヨーロッパでは一万世帯を超えた状態になってきております。

 そういう中で、先ほど先生から指摘がありました、日本のニュースをもっと外国に発信したらどうかという御指摘であります。

 今、私どもは、BS1で、世界の主な国の主な放送局の主なニュース、二十一の放送局から、これを原語でとって、そのまま朝の四時台から九時台にかけて放送しておるわけであります。これは、世界に例のないやり方でございます。これが、非常に世界各国で評価されているニュースチャンネルであります。

 そういう中で、私どもも、こういう国際化の中でNHKのいろいろなニュースを、今、四十七の国・地域、七十三の放送機関と協力協定、交換覚書、あるいは契約して、ニュースの交換がいつでもできるようになっております。そのために、そういうところにいろいろなニュースの素材を提供する、またはニュース番組を提供するという形でさらにそれを強化しようと思っているところであります。

 いずれにしても、こういう国際化の時代でありますから、我々の役割、使命はさらに重くなっておりますし、影響も大きいわけであります。そういう面で、さらに国際化にできるだけ対応していきたいと思っております。

山下委員 時間が参りましたので、ちょっと要望だけ申し上げて終わりたいと思いますが、冒頭、左藤委員からも御質問がありました、NHKが持っている映像資産、膨大なものがあって、質、量とも日本一だと私も思うわけであります。

 昨年埼玉の川口にNHKアーカイブスができて、そこを通じてもっともっと、持っている映像資産というかコンテンツというか、それを一般開放してはどうかという声、私も時々聞くところであります。IT化がどんどん進む中で、ぜひNHKの持っているこうした充実したコンテンツを広く提供する取り組みをしていただきたいと思います。インターネットを通じてパソコン上で随時過去のNHKニュース等が見られるような体制づくり、そういうシステムにまでぜひいくように強く御要望しておきたいと思います。

 そんなことで、時間がちょっと足りなくて残念でございますけれども、いずれにいたしましても、今度承認される収支予算、事業計画等に基づいて、私はNHKのファンでございまして、十六年度、広く視聴者から理解され、そして支持される、そういう公共放送の事業主体として責任と役割を万全に果たしていただきますように期待を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤(勉)委員長代理 次に、田中英夫君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英夫でございます。

 私も四問ほどお尋ねをしたいと思っております。できるだけ短く質問させていただきますので、また簡潔にお願いをできたらありがたいと思います。

 まず最初に、改めて公共放送としてのNHKの決意のようなものをお聞かせいただきたいのでありますが、今年の一月にできましたNHKのビジョンの中でも、NHKは、日本の放送文化の質を高め、放送サービスを高度なものにするために、公共放送に求められている先導的な役割を引き続き積極的に果たす、こういうふうにおっしゃっておるわけであります。

 もとより受信料が収入であり、その中で常々経営革新に努めておられるというふうに思うわけでありますし、当然、民放の経営よりももっと努力しているという自負も持っておられるというふうに思うわけでありますけれども、放送文化をよりよいものにして国民生活を豊かにしていく責務という点につきまして、NHKとしての決意をお伺いしたい、このように思います。

海老沢参考人 お答えいたします。

 私どもNHKといたしましては、視聴者の信頼なくしてNHKは成り立たない、いわゆる視聴者本位の機関ということで、そのためにはやはり番組の質の向上を図ることが大事だろうと思っております。そういう面で、今、質の向上を図るためには、やはり番組をつくる、またニュースを取材し放送する職員の質の向上を図らねばならぬだろうと思っています。いわゆる職員の育成が最も大事だと私は思っております。

 ですから、常に我々は、放送倫理をきちっと踏まえながら、視聴者が今何を求めているのか、どういうことを我々は視聴者にサービスすればいいのか、そういう中で、世界はどういうような今状況にあるのか、そういう時代の認識をきちっと踏まえながら、時代に合った質のいい番組を一本でも多くつくるというのが我々の変わらざる使命だろうと思っております。

 そして、今、こういうデジタル技術あるいはインターネットの普及によって、放送と通信の垣根が低くなる、いわゆる放送と通信の融合の時代になりました。そういう中で、情報がはんらんする情報過剰時代の中で、やはり頼りになるニュースは何か、質のいい番組は何かということを我々は常に考えていなければならない時代だろうと思っております。

 そういう面で、先生御指摘のように、番組の質の向上を図り、一本でも多く国民生活に役立ち心を豊かにするような番組をつくっていきたい、そう決意を新たにしているところでございます。

田中(英)委員 ありがとうございます。常に経営革新を続けながら、放送文化を高めていく御努力をぜひお願いしたいと思います。

 次に、二元体制ということについて少しお聞きしたいと思います。

 先ほどから出ておりますように、本格的なデジタル化、こういうことでありまして、NHKとしても、デジタル技術を活用した放送と通信の連携による新しいサービスの可能性についてこれから追求していく、こういうことになっていますが、一方、民放の一部では、民間の事業者を圧迫してNHKの肥大化をもたらすというような、国の放送の二元体制を崩すものだという反発の声があるというふうに聞いておるわけであります。

 そこで、この二元体制とはどういうものであって、その意義とは何かというNHKの見解をお聞きしたいと思うのであります。

 また、あわせまして、NHKとして公共放送が果たしてきた独自の役割というものが当然あり、今後もその役割が期待されておると思いますが、そういう意味において、この二元体制の一翼を担っておるというNHKの役割についてもあわせてお聞かせをいただきたい、このように思います。

松本大臣政務官 田中委員にお答えをいたします。

 我が国の放送は、御案内のとおり、非営利の特殊法人であるNHKと、広告料等を主な財源とする営利企業等の民放とが併存する二元体制のもとで行われてきているところでありますが、この二元体制は、NHKと民放との切磋琢磨を通じて、放送における表現の多様性及び多元性の確保、放送の全国津々浦々への普及、放送番組の質の確保及び向上、採算性には乏しいが公共の福祉のために求められる分野に関する放送番組の確保などを図っていくものでございます。

 我が国の放送は、この二元体制のもとで着実に進展をしてきたところでございますが、一方、外国の事例を見てみましても、民放のみでスタートしたアメリカではその後PBSが設立され、またイギリスにはBBCが存在するように、民放と公共放送の二元体制の意義は広く認められているところでございます。同様に、我が国におけるNHKと民放の二元体制についても、有効に機能していると総務省では認識をしているところでございます。

海老沢参考人 昭和二十五年に放送法が成立して以来、私どもNHKと民放との二元体制、いわゆる競争的共存体制を続けてきております。

 私どもは、今政務官からもお話がありましたように、全国あまねく、情報に格差なく電波が行き渡るようにする、いわゆる情報の格差をなくするという大きな使命もあります。

 それと同時に、放送は技術を活用した文化だと私は言っております。それは、常に放送というのは、その時代の最も新しい技術を導入しながら、その新しい技術を活用して番組をつくってくるという、技術とともに歩んできた歴史であります。

 そういう面で、激しい国際競争の中での技術開発競争、それに負けないような体制、そのために、NHKは技術研究所、世界に冠たる技術を持っておりますし、そういう放送技術の進展に役立たせること。

 それから、御案内のように、戦後民主主義の世の中になって、この二元体制のもとで日本の民主主義の健全な発達に資するということが書かれてあります。そのために、私ども、国政の問題について、いわゆる国会中継というものを年に五十回以上放送させていただき、国民の民主主義への関心を高めるということをずっとやってきております。そういう使命があります。

 それと同時に、先ほども答弁しましたが、日本には、全国各地にいろいろなすぐれた伝統文化があります。古典芸能を含めて、そういうものを守り、また継承していく、そのための放送の役割はいつの時代でも変わらないだろう、こう思っているところであります。

 それと同時に、日本は世界で最も災害の多い国であります。地震、津波、台風にいつでも対応できるようなそういう施設の整備、また、我々の職員の訓練、それに対する十分な対応ということも求められています。

 それと同時に、また、教育関係の放送、教育テレビは今NHKしかありません。そういう面で、教育、教養関係の番組の強化という民間放送にはなじめないものも我々は使命を負っているわけでありますし、先ほど言いました国際放送もしかりだと思います。

 いずれにしても、こういう競争的共存の中で、お互いに切磋琢磨しながら番組の質の向上を図っていくべきだろうと思っております。

田中(英)委員 今、NHKの役割、それぞれの分野にわたってお答えをいただきました。競争的な共存体制というお話もございました。しっかりと役割を果たしていただきたいと私も思っております。

 次に、そうした国民に必要な情報をきっちり伝えるという使命ということから、イラクで活動する自衛隊の取材をめぐってのことについてお聞きしたいと思います。

 日本新聞協会と日本民間放送連盟が、防衛庁と取材についての基本原則を申し合わせたというふうに聞いております。取材の自由を最大限尊重する、一方では、やはり現地の自衛隊部隊の円滑な任務、そして安全に支障を与えないように留意する、こういうことであります。

 NHKとしては、そうした取り決めの中で、どのように独自に取材を進めながら国民に知らしめるべき事実を正確に伝えていこうとしているか、このあたりについてお聞かせいただきたいと思います。

関根参考人 御承知のように、イラクのバグダッドのホテルでは、外国の民間人をねらったテロと見られる大きな爆発事故がありまして、多くの死傷者が出るという事件がありました。ちょうど、私どものNHKの取材班も、このホテルから近いところで寝泊まりしながら取材を続けているんですけれども、こういう極めて危険な状況の中で、今私どもは、イラクの取材に際しまして、このバグダッドのホテル、そして自衛隊が復興支援活動を続けていますサマワ、それとクウェートに取材拠点を置きまして、独自の取材を続けています。

 確かに、こういった危険な地帯でありますから、取材に当たる職員の安全管理、これはもちろんのこと、復興支援活動を続けている自衛隊員の活動にも当然配慮しながら、我々は取材をやらなければいけないというふうに感じています。かなり制約された中での取材が続くとは思いますけれども、できるだけ、NHKでしか出せないような独自の情報、そういったものを出していきたいということを考えています。

 それと、私どもとしましては、現地の情報ということ以外に、つい最近、外国のメディアと一緒になりまして、イラクでの世論調査というのをやりました。フセイン政権が倒れてイラクの人たちは一体今何を考えているのか、日本の支援活動等についてどういった考え方を持っているのか、こういったこともイラクの実情を知らせる上での独自の情報ではないかというふうに考えています。

 ともかく、何度も言いますけれども非常に危険な地帯ですので、職員の安全管理、こういったことに最大の留意を払いながら、これからもいろいろな情報を国民の皆さんに届けていきたいというふうに考えています。

田中(英)委員 世界の平和にかかわる課題でありますので、全体像がやはり我々にとっても見えるような、そんな調査も含めて、また正確な報道をいただけるようにひとつ御努力をお願いしたい、このように思います。

 最後に、先ほども出ていましたが、三多摩から出られた新撰組の面々だそうでありますけれども、いよいよ京都の場面が放送されるということで、放送も佳境に入ってくる、こういうことであります。「新選組!」、こういう番組でありますが、評判はどんなものかなというふうに思っておりますのと同時に、私といたしましては、ぜひこれがまた京都の観光ということに結びついたらということで、地元でもいろいろなそうした動きがあり、イベントなども企画されておるわけでありますけれども、今後、この番組終了の後も、こうした新撰組を初めとした幕末の京都にまつわる企画などを放送してほしいなと。

 例えば、京都放送局では、前に京都の中で「上がる下がる」というような番組があったのでありますけれども、そんな意味では、ぶらり幕末めぐりというような形で、街角を歩くとか、それによって時々フラッシュを入れてみるとか、そういうことが可能ではないかなと思っております。

 半ば要望としながら、ちょっとお伺いをしたいと思います。

関根参考人 これまでにも申し上げてきていますけれども、大河ドラマとか朝の連続テレビ小説、そういったものが地域の活性化、地域の掘り起こしにつながっていけば、私どもとしても放送のしがいがあるというものであります。

 今回のこの「新選組!」につきましては、私もついせんだって京都にお邪魔しましたけれども、大変な観光客で、土日は道路が大変混雑しているという話も伺いました。恐らく、これから京都が舞台になりますので、また多くの観光客が訪れるんじゃないかと思いますけれども、来年はまた別の大河ドラマで「義経」、京都も当然舞台になってくる番組であります。

 こういったものを繰り返しながら、できるだけ地域の活性化につなげていきたいというふうに考えています。よろしくお願いいたします。

田中(英)委員 ありがとうございました。

佐藤(勉)委員長代理 次に、三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 きょうは、十六年度のNHK予算の審議ということで、NHKの皆さんも大変御苦労さまでございます。

 ところで、先ほど来お話が出ておりますように、我が国のテレビ放送も、二〇一一年の七月にアナログ放送からデジタル放送に全面移行されるということになっているわけでございますが、そうした中で、NHKとしても四千億円に上る巨額の投資をされようとしておるわけでございます。受信料の値上げがなかなかままならない中で、大変な経営努力をされて収支の均衡を図られているということだと思います。ここ十数年来、収支均衡されているということで、経営努力に対しまして敬意を表する次第でございます。

 さて、本年一月に公表されましたNHKビジョン、これを拝見いたしました。今後、いろいろな新しい取り組みをされようとしているようでございますが、私自身は、このビジョンの中で一つの大きな目玉ではないかというふうに思っております二十四時間ニュースチャンネルについて、幾つかお尋ねをしたいと思います。

 現在、世界では、最も早く放送を開始しましたアメリカのCNNを初め、日本を除きまして、十五の国と地域で六十にも及ぶ二十四時間ニュースチャンネルがあるというふうに伺っておるわけでございます。アジアでも、最近とみに有名になっておりますカタールのアルジャジーラでございますとか、近隣で申しましても、中国、韓国あるいは台湾などでも放送されておるというふうに伺っておるところでございます。

 国際化が進展する中、また生活の多様化が進む中で、テレビに視聴者が最も期待するのは正確で信頼できるニュースであろうかというふうに思うわけでございます。今回NHKが衛星放送で二十四時間ニュースを検討するというのも、そうした考えに基づくものだというふうに理解しておるわけでございますが、ここで改めまして、この時点で二十四時間ニュースを導入しようというNHKのねらいについてお伺いしたいと思います。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

海老沢参考人 お答えいたします。

 私ども、この二十四時間ニュースをBSで実施できればということで今提案をしておるところであります。これはもう先生御案内のように、今、国際化がこれほど進み、国境を越える時代になって、いつどこで何が起こってもこれにこたえることができるようなチャンネルがやはり必要だろうと。今御指摘のように、アメリカのCNNから始まって、今、世界で十五の国・地域、二十四の放送局が二十四時間ニュース放送を世界に向けてやっております。

 そういう中で、我々も国際放送をいろいろやっておりますけれども、それでは日本国内にも十分に行き渡らないということで、今、BS1、BS2、それからデジタルという三つの波を持っております。BSデジタル放送は、日本はいわゆる山あり谷ありで電波が全世帯に行き渡らないということで、今、BS2を使って難視解消をしております。

 BS1の方は、今、総合情報波として、世界のニュース、日本のニュースを中心に、それにスポーツを加えている。第二の方は、総合テレビと教育テレビをミックスして、それを六割。六〇%、総合と教育テレビを衛星第二でやっております。四割を、世界のオペラ座とかクラシック音楽だとか、あるいは日本の古典芸能とか、そういう文化性の高い、芸術性豊かなものを中心に今放送しております。そして、デジタルの方は、御承知のように、ハイビジョンを中心に総合波で総合的な編成をしております。

 そういう中で、この第一と第二をうまくかみ合わせる、編成することによって、BS1をニュースチャンネルに特化したい。つまり、新しいチャンネルを我々は要求しているのではなくて、今のBS1、BS2、あるいは、今普及が進んでおりますデジタルの三つの波の中でうまく編成をして、そういう知恵を出していこうという提案であります。

 ですから、よく民放の一部から民業圧迫だという声がありますが、民放さんの場合は、今、民放四社、新聞社それからBBC、CNN、合わせて十チャンネルがCSで有料で放送しておりますが、CSとBSとでまた違いますし、我々は今のBSの中でやっていくということでありますから、民業圧迫とかあるいはNHKの肥大化等には当たらないと私は確信を持って表明しているわけであります。

 そういう中で、これをやることによって、いつでも対応できる、そしてそれがまた、国際放送にもそのまま流したり、また、国際放送はそれにプラス安否情報とかあるいは危険情報とかいろいろな情報も流しますので、そういう面で、業務面においても効率的な運営ができるだろうということで提案しているわけであります。

三ッ矢委員 ありがとうございます。

 これからますます国際的な情報収集また情報発信ということが重要になってくると思いますし、ねらいとしては的確であると私は考えるわけでございますが、実際これを実施するということになりますと、設備あるいは要員などさまざまな準備が必要だと思います。どの程度検討が進んでいるのか。

 それから、先ほど会長がお答えになりましたように、BS1をこのチャンネルに使うというお話でございますが、BS2あるいはBSハイビジョン、こちらの方のチャンネルをどのような内容にしていくのか。ニュースチャンネルとの関係で、ほかのチャンネルをどうされようとしているのか。

 さらに、もう一つお伺いいたしますと、放送普及基本計画、これとの関係でいろいろ難しい問題もあるんだと思います。その点につきましても、現時点でわかっている範囲で結構でございますが、お答えをいただければというふうに思います。

海老沢参考人 私ども、このBS1で総務省の当局の方からオーケーが出れば、できるだけ早くということで、今、内々でのシミュレーション、準備は進めております。いつでも対応できるようにしておきたいと思っております。ただ、設備をかなりかえなければならない部分があるものですから、ことしの十月でも来年の四月でも、いつでも対応できるようには今しているところでございます。

 それと同時に、BS2あるいはBSデジタルにつきましては、今の、そういう芸術性の高いもの、あるいは映画とかをやっていますから、できるだけそれを減らさないようにどう編成するか。映画をできるだけデジタルに持ってこれたらいいのかどうか。あるいは、今、この四月からまたシーズンに入りますが、日本のプロ野球あるいはアメリカのMLB、大リーグの放送をかなりやっておりますので、これをどういうふうにすみ分けをしていくか、これも大きな課題であります。そういう面で、土日は、当面は、大リーグなりプロ野球は第一の方でも若干やらなければならないのか、いろいろ今そういうシミュレーションをしているところであります。

 できるだけ視聴者が見やすいような、また質の向上を図るような、そういう編成を今考えているところでございます。

三ッ矢委員 解決しなければならないいろいろな課題も多々あろうかと思いますけれども、特に、視聴者でございます国民の意向といいますか、その辺を十分勘案していただいて、うまく調整を進めていっていただければというふうに思っております。

 それから、先ほど会長から既にちょっとお答えをちょうだいしたのですが、民放連が、この二月でございますか、平成十六年から十八年度のNHKビジョンに対する見解という文書を出しておられます。

 その中で、既に言及がございましたが、民放側として、既に民間によるニュース専門チャンネルが事業を開始し、新しいビジネスとして成長を遂げようとしている、そういう中で、NHKが巨額な受信料収入をもとに同じようなサービスを始めれば、競争条件の圧倒的な違いによって健全な発展が阻害されるのではないか、視聴者が望むから二十四時間ニュースチャンネルを行うという論理は、NHKの肥大化をもたらすのみであって、民放事業者としては容認できないというようなことを申しておるわけでございますが、改めまして会長の御見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

海老沢参考人 民放連の見解につきましては、私も書類で読ませていただきました。記者会見でもお話をしたわけでありますけれども、我々は、民業を圧迫する気はありませんし、今の予算の中でやるわけであります。

 要するに、このチャンネルを設けるために、新しく国民に、視聴者に負担をかける、いわゆる受信料を値上げしてやるとか、あるいはチャンネルをもう一本とるとかではなくて、今の枠組みの中でやっていくということでありますので、民業圧迫にはならないと私は思っております。

 同時にまた、民放さんも今、決算なんかを見ますと、かなりの高収益を上げていると聞いておりまして、民放が経営が悪いということは聞いたことがありません。お互いに競争しながら、切磋琢磨しながら、番組の質の向上をさらに図っていくべきだろうと思っております。

三ッ矢委員 私自身は、民間放送には民間放送のよさがあり、NHKにはNHKのよさがある、こういうふうに思っておりまして、それぞれのよさを生かすことが日本の放送界の健全な発展につながるのではないかというふうに思っておるところでございます。

 最後に、先ほど同僚議員からも同様の質問がございましたが、国際的な情報発信の件について、一つだけお伺いしたいと思います。

 NHKは、NHKワールドなどを通じましてニュースや番組を世界じゅうに発信しておられるわけでございますが、いろいろな面でグローバル化が進展する中で、日本のことを海外の人にもっと理解してもらうためにも、さらに内容を充実させていくべきであるというふうに思っておるわけでございます。

 NHKも、イギリスのBBCでございますとかあるいはアメリカのABC等と提携をされておるというようなことも伺っております。これら外国の放送局との連携も活用しながら、一層、情報発信の強化に努めていただきたいと思うわけでございますけれども、この点で、二十四時間ニュース、このチャンネルをどう活用されていこうとしているのか、お考えをお聞かせいただければというふうに思います。

海老沢参考人 今度のイラク戦争の状況を見てもわかりますように、非常に情報が一方的に流れる、あるいは情報操作をしているのではなかろうかとか、いろいろな意見が戦争報道になると出てきます。私どもも、そういういろいろな経験を踏まえて、戦争報道というのは非常に難しい点があります。それは、身の危険があるわけであります。ですから、取材の自由と危険の問題をどういうふうにうまくバランスをとるかということにかかっていると思います。

 そういう中で、私どもは、そういう危険な中でできるだけ事実を伝えていこう、しかしながら実は難しい。そのために、今、世界の多くの放送局から、我々はニュースの素材を受ける、またニュースを取り寄せて、供給をやっております。あるいは、いわゆる湾岸地方の衛星会社から映像を買う、そういうことで、できるだけ多極的な報道を目指しております。ですから、アメリカあるいはイラクだけでなくて、周辺の国々あるいはヨーロッパ、フランス、ドイツ、ロシアがどういう態度なのか、そういう面でその国のニュースを取り入れる。

 今、ニュースがいろいろな面で交換される時代、またそれをうまく編集していく時代、そういう国際化の時代でありますので、我々もそういう国際的な視点に立って、我々の日本のニュースもどんどん海外に発信していく、そして我々も海外のニュースをできるだけ多く取り寄せて、それをわかりやすく視聴者に伝えていく、それによって全体像が浮かび上がる、そういう方針で今やっておるわけであります。

 そういう面で、こういう複雑な国際情勢の中では、なおさらテレビの影響が大きいわけでありますから、我々も心して、できるだけ客観報道に徹するように、さらに努力していきたいと思っております。

三ッ矢委員 ただ単に二十四時間ニュースを、言葉は適切でないかもしれませんが、だらだらと流すということじゃなくて、ぜひ、我が国の政治、経済あるいは文化、特に観光の面で、海外からの観光客も倍増しようというような計画もあるわけでございますので、やはり映像を見て、行ってみたいなとか見てみたいなというふうに思うわけでございますから、情報発信機能もあわせて強化していただくようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

左藤委員長代理 次に、谷公一君。

谷委員 兵庫五区の谷でございます。

 自民党も八番目になりました。大分いろいろな意見が出ているんですが、先ほどの三ッ矢委員のビジョンの問題で、二十四時間テレビに絞った質問でございましたが、私は、ビジョンの中で、別のことについて御質問をしたいと思います。

 ビジョンのパンフレットを見ますと、「デジタル技術によって大きく進化するテレビを活用し、公共放送の役割をさらに広げ、新たな放送文化を築きます。」と、大変意欲的といいますか、積極的といいますか、挑戦的といいますか、官から民へということがよく言われますが、民以上に大変積極的ではないかというふうに思います。

 そういう中で、放送が通信と連携する新しいサービスの実用化ということをこのビジョンの中に挙げているわけでございます。

 先ほども話が出ましたが、日本民間放送連盟、私の方にも、会館の方にも参りましたが、そちらの方は大分強い反発といいますか、そういう取り組みについて、いかがなものかと。「放送のデジタル化により、通信分野のインフラと組み合わせ、さまざまなサービス提供が行えることは確かであるが、NHKが放送という本来業務を外れてサービス拡大に走ることには問題がある。」という、民間ベースといいますか、民放連の見解でございます。また、こうも言っています。「NHKビジョンで示された放送・インターネット融合サービスは、明らかに放送の枠を超えたものであり、視聴者の要望に応じるという名目で、業務範囲をなし崩し的に拡大することがあってはならない。」そういうコメントでございます。

 先ほどの二十四時間テレビも相当、きついといいますか、民放連としての反論は出ていましたが、それ以上にこちらの放送・インターネット融合サービスについての抵抗は、私が文書なりお話を聞く限り、強いように思えました。

 そういう放送の枠を超えているという批判について、一体どういうふうにNHKは考えているのかということについて、まずお尋ねしたいと思います。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

海老沢参考人 放送法にありますように、NHKは、いわゆる全世帯といいますか、日本国民が、すべての世帯がNHKの、株式会社に例えれば株主だろう、それでこの国会の場がその株主総会だろうというふうに私は日ごろ申しております。

 それは、我々の受信料は、一般のいわゆる税金でなくて、法律で求められた、受信設備を持った世帯からひとしく、各世帯から一台ずつといいますか、何台持っても一台という格好で受信料をいただく。つまり、政治的に中立で公正であるべきだという主張から、そういう世界に冠たる受信料制度があるだろうと思っております。

 NHKの場合は、先生御承知のように、罰則規定がありません。税金のように強制力がありません。ひたすら私どもが視聴者の理解を得ながら、視聴者の信頼を得ながら、受信料の収納に当たっている。そして、受信料を払わなくても罰則規定がない。そういう非常に性善説に立った受信料制度だろう。世界にこういう例はありません。イギリスのBBCも公共放送と言っておりますけれども、これは強制力がありますし、受信料を払わなければ罰金を取られる、罰金を払わなければ収監される。どっちかといえば国営に近いと私は見ております。

 そういう中で、国民の信頼を得て、今八二%の世帯から受信料をいただいている私どもの方が、私は民間放送だろうと。今の民間放送は商業放送と普通は言われていますが、日本の場合は、日本民間放送連盟というのができたものですから民間放送と言っていますけれども、普通はNHKが民間放送で、今の民間放送は商業放送だと言った方が私はわかりやすいだろうと思っております。それは、そういう受信料制度という、世界に例のない組織だろうと私は思っておるわけであります。

 そういう面で、お互い、NHKは受信料を主体としたもの、民放はCMを主な収入源としてやっているわけでありますから、私どもは、より多く視聴者に責任を持っているということであります。そういう面で、できるだけ我々は視聴者のニーズ、要望にこたえて仕事をしなければ、NHKは成り立たないわけであります。信頼されないわけであります。

 今、二十四時間放送についても、なぜNHKはやらないのかという声が私は大きいだろうと思っております。そういう面で、放送普及基本計画というものがあって今できませんが、できれば視聴者のニーズにこたえてこれを変えてもらいたい、そして、視聴者のニーズにこたえて二十四時間放送をしたいということを我々は主張しているところであります。

谷委員 NHKが視聴者のニーズにこたえて質の高い評価といいますか支持のもとに事業を展開しているということは、私は何も疑うものではないんですが、ただ、どうも、今会長は民間と言いましたが、民放業者にしてみれば、やはり官的な、官と民という意味で官というふうにとらえがちで、それが大変大きな力、強い力で新たな通信の方にまで行くということに、大変懸念といいますか、いわば弱い立場で懸念されているのかなという思いもしているわけです。

 もう少し突っ込んでお尋ねしたいんですが、放送・インターネット融合サービスで新たに経費を負担するということもどうもビジョンで見られるように思います。つまり、受信料とは別に、新たにそういうサービスを使う人からお金をいただく、そして財源とするということですが、その辺はこれから検討していくということにはなろうかと思いますけれども、方向性といいますか、そのことについてお尋ねしたいと思います。

海老沢参考人 今の技術の進歩が著しい、つまり、アナログからデジタルへ大転換をしておりますし、また、コンピューターの方もインターネットが世界的に普及する、つまり、技術革新によって非常に大きな変化が今起こっているわけであります。そういう面で、通信と放送の境目がなくなる、融合するときに、放送と通信がいろいろな面で連携を深める、そういう時代になって、我々が予想しなかったような時代に今なってきているわけですね。

 そういう世界的な変革の時代に、ただ我々が何もしないでいいのかとなれば、私は、これはそうはいかないだろう。やはり、そういう時代の変化に適切に対応し、また新しい技術を積極的に取り入れなければ、我々は公共放送としてそれこそ世間から批判されるのは当然であります。

 そういう面で、我々は技術を開発し、そういう中で、今、世界の競争時代に日本が負けていいのかどうか、我々はもっと世界に日本の技術をさらに発信していくべきであろう。そのためのハイビジョンが今世界的に評価されて、日本がその最先端を行っているわけでありますね。そういう新しい技術をどんどん取り入れる。

 そのために、今のNHKの受信料制度でやっていけるのかどうか。また、新しいそういうサービスをするために、今の受信料制度の中でやるべきなのか、また別の料金を取ってもいいのか。それは、これからひとつこの国会の場なりいろいろな場で議論をお願いしたいと思っているところであります。

 それと同時に、民放とNHKの関係について先ほど質問がありましたけれども、NHKの放送業界におけるシェアというものは年々減ってきております。平成五、六年時代はNHKは全放送業界の中のシェアは二〇%ありましたけれども、今一七%まで低下している。それは、民放さんもどんどん大きくなる、そして、その中にBS、CS放送が出てくる、CATVが出てくるという中で、そういう面でNHKが巨大化、肥大化するということにはなっていないわけで、その辺もひとつ御理解願いたいと一言つけ加えておきたいと思います。

谷委員 放送と通信のあれは、会長が言われるように、確かに我々が予想していなかったというか、予想以上に融合化というのは進んでいて、物を考えるときに大変難しくなってきているということかと思います。

 ちょっと別の質問でございますが、同じくビジョンの中に教育テレビのことが少し触れられていますので、少し御質問をさせていただきたいと思います。

 政府の方は、教育のIT化ということで、十七年度までに全国の公立小中高校で高速インターネットとの接続を可能にし、授業への利用を進める、こういういわばハードといいますか、そういう整備を積極的に進めているわけですが、さて、NHK教育テレビの学校教育に対する取り組みといいますか、それを、そういうハードの整備を踏まえてどういうふうに具体的に進めようとしているのか。

 その辺が、私の勉強不足もあるかと思うのですけれども、もう一つよく見えない。前からもちろん学校教育の場でいろいろ活用しているということは承知はしておりますが、そういう周りの変化に合わせてどういうふうに展開しようとしているのかということについてお尋ねしたいと思います。

関根参考人 今御指摘ありましたように、教育現場のIT化というのは一段と進むということが予想されます。そういう中で、私どものNHKとしましては、放送と通信の連携というのですか、放送と通信が連携する教育番組の高度な利用方法といったものを開発いたしまして、教育サービスのさらなる充実を図っていけないかということを今考えています。

 その一つとしまして、NHKの学校放送番組のホームページ、これを充実させた上で、インターネットを活用するサービス、そういったものに取り組んでいるところであります。現在、この教育番組のホームページというのは三十六ありまして、学校放送オンラインとして活用できるようになっています。

 また、さらに、学校放送番組の高度化としまして、放送とインターネット、これを連携させまして、NHKデジタル教材、こういった活用方法を開発しまして、平成十三年度からNHKデジタル教材といったものを提供いたしております。

 NHKデジタル教材というものは、カリキュラムに沿った形で制作した放送番組と、番組に関連する動画映像、さらに、学習の理解を進める、深めていきますホームページ、この情報を組み合わせた形で使うものでありまして、子供たちはインターネットで自由に学習できるという仕組みになっています。

 これまで、小学校の高学年の総合学習用、そういったところをにらんだ教材など合わせて三十八の番組をつくっていまして、こうしたデジタル教材というのは、子供たちの学習意欲を引き出すというだけでなくて、学習の理解促進につながるというので、教育現場では大変な好評を得ているということであります。

 教育現場のIT化、こういったものの進捗状況をにらみながら、私どもとしましては、こういった教材のさらなる充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

谷委員 さらなる教育テレビの学校教育での活用をお願いしたいと思います。

 最後に要望でございますが、来年の一月十七日に阪神・淡路大震災からちょうど十年になります。十年の日に神戸放送局を建てるということで、私も震災を身をもって体験した一人の者として大変うれしく思っております。復興のシンボルとして、全国のモデルとなるような、災害対応のモデル放送局といいますか危機管理のモデル放送局として、立派に神戸放送局がそれこそフェニックスのように今後とも活躍されんことを願いまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

佐藤(勉)委員長代理 次に、長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 田端副大臣、海老沢会長、大変御苦労さまでございます。私が最後になりますが、きょうは、ラジオ放送、そしてデジタル化、さらに放送資産の活用という観点で幾つか質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 デジタル放送時代が本格化して、とかくテレビに目を奪われがちなんですけれども、NHKの放送の分野ではラジオの放送も一つの大変重要な分野でございます。

 NHKの事業計画を見ましても、ラジオでは、第一放送、第二放送、FM放送、そしてデジタル音声放送、このようにラジオの取り組みをされているというふうに理解しておりますが、テレビが直接映像でダイレクトな情報が入ってくるという特徴を持っているのに対して、ラジオの場合は耳から情報が入るということで、教育に関係される方なんかは特に、もっと子供にラジオを聞いてほしい、耳から入る、耳を通して伝えられる世界は情緒や情感をはぐくむ、また想像力をはぐくんでいく、ラジオにもっと力を入れてほしいという声も聞くことがございます。

 また、ラジオの持つ特徴としては、いつでもどんなところでも簡単に情報をキャッチすることができるという大変優位性がございまして、あらゆるライフステージに対応ができる。職場でも、あるいは車の中で、あるいは屋外で、あるいは病気で寝ているときもその病床の耳元で、ラジオに触れることができます。

 こういうラジオの重要性をNHKさんでも認識されているとは思いますが、具体的に、今の番組づくりの中でこういうラジオの持つ特徴を生かす工夫をどのようにしておられるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

海老沢参考人 ラジオは放送の基本だろうと私は思っております。

 ラジオ放送も、おかげさまで来年の三月でNHK第一放送が始まって八十周年を迎えることができました。そういう面で、ラジオの歴史は非常に古いわけでありまして、我々もラジオ時代にNHKに入ったわけでありますが、このラジオの役割、使命は今もって変わっていないと私は思っております。

 特に、今、我々は、ラジオ第一放送は、いつでもどこでも安心ラジオということで、二十四時間、絶え間なく、間断なく放送をしております。災害が多い日本でありますから、そういう災害が起こり、また大事件が起こればいつでもそれに対応できるように、九六%を今、生放送化しております。そういう面で、このラジオ第一放送というのはやはりいろいろな面で国民生活に密着していると私は確信しております。

 そういう中で、深夜帯も、ラジオ深夜便ということで、夜眠れないという方もかなり多くて、今、ラジオ深夜便も平均して二百万人の方が聴取しているというふうに聞いております。そういう面で、そういう方を励まし、また勇気づけるのがやはりラジオだろうと私は思っております。

 それから、第二放送の方は、もう御承知のように、スタートから学校放送、いわゆる教育チャンネル的な役割を務めてまいりました。そういう中で、今、語学講座なりあるいは学校放送なり、そういう教育、教養関係を中心に放送しております。

 FM放送は、これも二十四時間放送で、いつでも災害等に対応できるようにしております。そういう面で、FMは音質がいいために総合音楽波と位置づけております。クラシック音楽を中心にやっておりますし、また、地方の地域放送もこのFM放送の中で、今、三時間前後、局によってはFMで地域向けの情報も流しておる。

 そういうことで、この三つの波を有効に活用しているところでありますし、我々は、そういう中で内容の充実を図っていくことを今心がけております。

長沢委員 ラジオの最大の特徴は、その携帯性と機動性、そして速報性ということになると思います。今、二十四時間、しかも第一放送は九六%生放送ということで、大変大事なことだと思います。

 平成七年の一月十七日に起きました阪神・淡路大震災をきっかけに、特に災害時におけるラジオの重要性というのは改めて認識をされております。

 その後、NHKと、特に首都圏の民放六社で共同で制作、またこれにライフライン五社も参加して、「ラジオ災害情報交差点」という番組をつくられているというふうに聞いております。これは、災害時にラジオをつけると、チャンネルを選ばなくても同様に必要な情報が得られるという取り組みでございまして、これは非常に、緊急性を優先させた一つの訓練という意味もあり、また電波の公共性というのを生かした取り組みということでも注目に値するというふうに思っております。

 このNHKと民放ラジオ局による災害関連の共同制作番組について、その内容とともに、これまでの成果について御報告をいただきたいと思います。

関根参考人 今先生御指摘されましたように、私どもは、あの阪神・淡路大震災を教訓としまして、平成七年の七月でありますけれども、NHKと民放ラジオ局が中心になりまして、今御紹介がありましたラジオ・ライフラインネットワークといったものをつくりました。ここには当然、電気、ガス、水道、電話、そういったライフライン各社も参加しまして、毎年、阪神・淡路大震災がありました一月十七日と防災の日の九月一日、年二回、いわゆるキャンペーン番組をやっているところであります。

 このキャンペーン番組の内容でありますけれども、やはり災害というのはいつやってくるかわからないわけですから、万々が一災害があったときにまず何をすべきなのか、そういったことをきちんと伝えていくということと同時に、いわゆる防災一口メモといった簡潔でわかりやすい防災に対する備え、そういったものをできるだけ細かく伝えているということであります。

 こういったNHKと民放のラジオ局によるネットワークでありますけれども、これは、首都圏だけではなくて、現在では名古屋と近畿圏でもつくっていまして、いずれも、一月十七日と九月一日のところを中心にしまして、さまざまなキャンペーン番組を繰り広げているということであります。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

長沢委員 この番組に参加しているある民放は、毎月一日を防災の日と定めて、防災番組の放送の頻度をふやしているということで、防災意識を高めるという意識を民放が非常に持って取り組んでおります。また、災害時にラジオは非常に大事だという価値を再認識してもらうという意味で、自治体の防災訓練やイベントにラジオの民放局が参加をして、無料でラジオを修理したり電池を交換したりするということをされているところもあります。

 非常に大事な取り組みだと思いますが、むしろ、防災意識を高めるという意味で、こういうような事業というのは公共放送であるNHKが積極的にやるべき仕事であるというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

関根参考人 よく言われていますように、災害は形を変えていつでもやってくるというふうに言われています。先ほどもちょっと触れましたけれども、何もない日常生活の中でいかに万々が一に備えていくのかということが必要なんじゃないかと思います。

 我々も、そういった立場に立ってさまざまな防災キャンペーンをやっているんですけれども、電池交換ということは私どもやっていませんけれども、とにかく、国民のそういった意識を高めることにふだんから細心の注意を払っているということでありまして、先ほど申し上げました安心ラジオ、ラジオ第一放送を中心にしまして、そういったさまざまな防災に関する意識を高める番組を出しているということであります。

長沢委員 電池交換にこだわらないで、いわゆる意識を高めるための事業というものをNHKは積極的に公共の場でしていく必要があるというふうに思っております。

 また、ある別の民放は、地下鉄の中でもラジオを聞きたいというキャンペーンをしている局もありまして、首都圏でも、東京都営の地下鉄は、大分前からホームや車内でもラジオを聞けるようになっておりますが、営団地下鉄も含めて地下道ではまだラジオが聞けないというところが多くなっております。

 携帯電話がとれるようになっているところもふえているんですが、いざというときには携帯電話はなかなか使えなくなる状況というのもあります。地下鉄あるいはこれに連動する地下道などでは、外部との情報が遮断されてしまうということもあり得るわけですので、安全防災上の観点から、ラジオが地下道で受信できるようにということに取り組んでいく必要があると思います。防災上の観点からの総務省のお考えをお伺いしたいと思います。

武智政府参考人 ただいま御指摘のとおり、一部の地下鉄や高速道路のトンネルにおいて、ラジオ放送の聴取が可能な環境が整備されているという状況でございます。

 ラジオ放送は、安全防災上の観点からも国民聴取者の情報入手の有力な手段になり得るものと認識はするものでありますが、現状では、施設管理者であります鉄道事業者や道路管理者等の取り組みに期待をしているということでございます。

 そういうことで、これまでの経緯を推察いたしますと、地下構内の情報伝達の手段といたしましては、例えば、施設管理者が非常放送設備や非常時に緊急警報や避難誘導を行う体制をみずから整備していたり、また、地下のテナントなどには、地上からの配線によりテレビ放送が受信される環境が整備されているようなことがある。これこれなどが要因となりまして、移動中の個別受信に適したラジオ放送ということにつきましてはニーズが顕在化してこなかった、また大きくなってこなかったとも考えられるところでございます。

 総務省といたしましては、今後、ラジオ放送に求められる具体的なニーズの高まりなどを見きわめつつ、また、放送事業者とも連携を図り、技術的、制度的な観点を含めて検討すべき課題と承知しているところでございます。

長沢委員 アーカイブスの問題に移りたいというふうに思います。

 昨年二月に埼玉県の川口市にNHKアーカイブスの拠点が建設をされまして、大変に大きな反響を呼んでおります。また、地元でも期待が高まっているところであります。NHKが一九五三年に放送を開始して以来、その映像の一こま一こまというのは歴史の記録であり、国民にとってもかけがえのない文化的な財産であると言えます。

 伺ったところによりますと、地方放送局の分も含めて、番組が四十六万八千本、ニュースは二百六十八万四千項目に上る、いわゆる放送コンテンツが保有されている。これはまさに国民的な資産であります。ところが、いわゆる番組公開ライブラリーで見たり聞いたりできる番組というのは、このうちテレビで三千二百六十四本、ラジオで百九十二本と、全体の保有資産の中のほんのわずかしか見たり聞いたりできないという状態になっております。

 NHKアーカイブスの役割と機能について、NHKは、「伝える・活かす・公開する」という三つのキーワードで、コンセプトにして取り組んでいるというふうに伺っておりますが、どのようにしてこの貴重な映像資産を次世代に伝えようとしているのか、どう生かそうとしているか、そして、どのように公開して社会に還元しようとしているか、そのイメージとプロセスについてお伺いしたいと思います。

関根参考人 今御指摘ありましたように、川口のNHKアーカイブスは去年二月一日に運用開始がありまして、これまで一年間で大体十三万人近い入場者がありました。先ほど申し上げましたように、この川口アーカイブスを含めまして、全国では、公開ライブラリーとしまして十三カ所で見ることができます。

 そういったことで、まず、公開については、現在このライブラリーで見られるものは先ほどお話がありましたようにまだ三千四百本余りでありますけれども、できるだけ早く五千本に近づけたい。これはテレビ番組でありまして、ラジオについては五百本ほど、できるだけ早い時点でこの数に引き上げたいというふうに考えています。

 ただ、やはり、このライブラリーで見られる番組の数をふやしていくためには権利処理という問題もあります。それと、中には、昔のフィルムが傷んでいまして、それを再生しなければいけないということも必要であります。そういったもろもろの最新のデジタル技術を使いながら今復刻を急いでいるところでありますけれども、数が簡単にはそろわないという理由は、そういった事情、背景があるということもぜひ御理解いただきたいというふうに思っています。

 それと、社会的または国民に対する還元につきましては、先ほど申し上げましたように、コンテンツ産業の振興、コンテンツの流通ということを念頭に置きまして、これまでCATV、CS事業者、BS事業者、さらにはブロードバンド事業者、私どものコンテンツの提供を受けたいということを申しておりますので、そういったところにもコンテンツを提供いたしまして、国民・視聴者の方々がNHKのどういったコンテンツに関心があるのか、そういったものも探っていきたいというふうに考えております。

長沢委員 今お話がありましたとおり、この川口市のNHKアーカイブスは大変な好評で、去年の二月に公開をされて以来、もともとは一年間に十万人という入場者の目標でしたが、わずか八カ月で十万人を突破しまして、ことしの二月、ちょうど一年たった段階で十三万人を超えるという大変な反響を呼んでいるわけです。

 大変お年を召した方が昔の番組を見たくて寄るとかいう形で、非常に高く評価されているわけですけれども、今お話がありましたとおり、大変たくさんの量があるこの映像資産の中で公開されているのはほんのわずか、今三千本、それを五千本を目標にというふうにおっしゃっていましたが、もともと持っているものは、けたは全く違うわけですね。

 恐らく、最初に映像を撮る段階でのいわゆる契約の問題、最初の公開とそれからその後再放送一回とかいう形の契約、またその際の著作権の存在、番組に登場する人物の肖像権の問題、そういう許諾をとれたものからしか公開ができないというようなことになって、そういうことが非常に大きな障害になっているというふうに思います。

 今回のNHKの十六年度予算案に対する総務大臣の意見の中にも、「協会の保有する放送番組等については、受信料を負担する国民・視聴者にとっての貴重な資産であることにかんがみ、コンテンツ流通市場の育成の観点から、積極的な利活用を図ること。」というふうに、総務省の方からもこのコンテンツの積極的な利活用を促されております。

 その意味で、これはNHKだけではなく民放も含めての問題になりますけれども、映像資産の活用は重要だと考えますが、今後総務省としてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 ただいま先生御指摘のとおり、NHKあるいは民放のものにかかわらず、放送番組は極めて貴重な映像資産であると認識いたしておりまして、御指摘がありましたように、知的財産推進計画でうたっております知的財産の創造あるいは保護、活用を放送番組に即して言えば、番組の制作、流通、保存といったさまざまな面で多様に活用していくということが大事だと考えております。

 また、先ほど専務理事からもお話がございましたように、ブロードバンドネットワークが整備されておりまして、そういったところを通じての番組の活用もまた重要だと考えております。

 こうした観点から、総務省におきましては、さまざまな局面での放送の活用を促進するために、平成十四年度から三カ年計画で、NHKを初めとする放送事業者、あるいは著作権等の権利者団体、あるいは電気通信事業者等の参加を得まして、コンテンツに係る著作権等の権利処理の円滑化と、あとはコンテンツの安全、確実かつ多様な流通技術の確立に向けた実証実験を行っているところでございます。

 今後も、こうした施策を着実に推進することによりまして、映像資産の有効活用を推進してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

長沢委員 ぜひ積極的に後押しをしていただきたいというふうに思います。

 地上デジタル放送についてお伺いします。

 デジタル放送、従来のチャンネルをデジタル用に確保するためのアナ・アナ変換と呼ばれる電波帯の移動事業も積極的に行われております。当初の予定よりもかなり速いスピードで進んでいるというふうに思っておりますが、平成十八年末には全国の主要な都市で視聴が可能になると伺っております。

 今後、地上デジタル放送の普及に向けてどのように取り組んでいかれる方針か、目標などありましたら、あわせてお聞かせいただきたいと思います。

田端副大臣 お答えいたします。

 昨年の十二月から始まりました地上デジタル放送でございますが、今、三大広域圏でスタートしておりますが、この三大都市圏以外にこれから随時広がっていくことと思います。大ざっぱに言って、私は、二〇一一年完全移行を目指して、ことしはアテネ・オリンピックがございますし、二〇〇六年、サッカーワールドカップが行われますが、このときには一千万世帯、そして二〇〇八年、北京のオリンピックのときには二千四百万世帯、そして二〇一一年、最終目標のころには四千八百万世帯、こういう大きな目標になろうかと思います。

 今御指摘のありましたように、こういう目標に向かって着実にしていくためには幾つかの課題があると思いますが、その一つが、今御指摘のありましたアナログの周波数の変更対策の問題であります。これは随時着実に今進めているところでございます。そしてもう一つは、国民の皆さんに対する周知徹底といいますか、そういったPRの問題だろうと思います。それからもう一つは、まだデジタルテレビは高い、こういうイメージがありますから、ここをどういうふうに実質的に安くしていっていただけるか、こういうことかと思います。

 周波数の問題は、これは随時集中的に今やっておりまして、当初思っていたよりも三年ぐらい早く、二〇〇七年ごろには完了するということで、今着実に、三年程度前倒ししてやっていくという見通しがついています。

 それから、国民への周知徹底でございますが、これはいろいろなところで今やっていただいております。例えば、きょうちょっと見本をお持ちしましたが、総務省でもこういうチラシをつくったり、これは経済産業省の外郭ですが、つくったり、いろいろな形で今やっていただいておりますし、例えば電車の中づり広告とか、あるいは雑誌の広告とか、そういったところでもいろいろキャンペーンを張っていただいておりますので、これは随時国民の皆さんに知られていくことになると思います。

 さらに、問題は、受信機の値段の低廉化の問題でございますけれども、これは一番国民にとって敏感なところだと思います。例えば、今、ざっと大ざっぱに言って、一インチ二万円ぐらいだと。だから、三十インチぐらいの大きい画面になりますと、六十万とか六十何万とかということになるんだと思いますが、そういった意味で、一インチ一万円ぐらいまでに、今のアナログのテレビ受信機のそういうところに値段がもっと早く落ち着いてくれれば、この普及ということももっと進んでいくんではないかな、こう思います。

 いずれにしても、総務省としては、通信事業者及び関係の皆さんと呼吸を合わせながら、こういった普及促進に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。

長沢委員 時間がなくなってきましたので、少し質問をはしょって聞きます。

 地上デジタル放送が広い範囲に一定の出力において発信をされる、例えば携帯電話などでも受信ができるようになっていく、そういうふうにしていくためには、例えば関東地域におきましては、六百メートル級の電波塔、デジタルタワーが必要になるというふうに伺っております。

 ちまたでは幾つか候補地が挙がっていまして、いろいろ手を挙げているところもたくさんあるというふうに伺っておりますが、特に首都圏においては、この六百メートル級のタワーを建設できる場所というのは大変限られているというふうに思いますし、いろいろNHKそして民放の間でも検討されているというふうに思います。

 その検討状況と、タワーを建設する候補地として条件というものがあれば、お聞かせいただきたいというふうに思います。

吉野参考人 地上デジタル放送の特徴の一つに、ビルの反射とか山の反射によるゴーストという現象を非常に受けなくて、きれいに受けるということと、それから、携帯型の受信機でも鮮明に受信できるという特徴があります。

 東京から今出しております電波は、まだ関東地区のアナログ周波数変更が終わっておりませんので、かなりパワーを絞った形で出しております。来年の末ぐらいになりますと、このアナログ周波数変更が終わりますので、そういたしますと、東京タワーからの電波のサービスエリアというのは約千四百万世帯、関東の大部分をカバーすることができます。

 一方、もう一つの特徴であります携帯受信にサービスしようといたしますと、やはり六百メートルのタワーからサービスした方がビル陰の影響を受けないとか、そういう数々の特徴があります。

 それでは、どこにどういう規模で建てたら、どのくらい受信状況が改善されるのか、あるいは、それにかかる費用はどのくらいになるのか。この費用というのは、例えば東京タワーにかわる高いタワーを建てる費用と、あるいは中継所をどのくらい減らせるのか、そういった総合的な費用が一体どちらが安いのか高いのか、そういうことについて慎重に今検討しているところです。

 それから、場所によっては、周辺の受信者の受信機に新しいタワーを建てたことによる影響が出てきたり、あるいは航空管制に影響が出たりということもあります。そういったところも具体的な提案に基づきまして検討して、選定の作業を進めていきたいと思います。もちろん、選定の結果によっては、東京タワーを継続的に使うということもあわせて検討をしていきたいというふうに思います。

長沢委員 当面は今の東京タワーで対応するということで、それは対応できるということですけれども、いずれ限界がやってきたときに肝心の場所がないということにならないように、万全の準備をする必要があるというふうに思います。

 先ほど、航空管制に影響という問題も条件の一つ、こういうふうにありましたが、私の地元埼玉県も実は手を挙げておりまして、さいたま市を中心にデジタルタワーの誘致を、特に埼玉県の場合は航空管制に影響が少ない、非常に条件に適した地域でございます。埼玉県、さいたま市、そして県内の財界を中心にこのタワーの誘致に極めて積極的でありまして、最近は、県知事そしてさいたま市長の呼びかけで、個人や法人、さまざまな行政機関に呼びかけて、さいたまタワー実現大連合を設立しよう、こういう大変な勢いでおりまして、政令指定都市のさいたま市議会では、新都心タワー誘致促進議員連盟をつくって頑張ろうということで、準備万端、お迎えできるという体制になっております。

 関東のほぼ中心に位置するさいたま新都心地区は非常に利便性がありまして、もう一生懸命、お迎えできますよという形でおりますので、ぜひ検討方お願いしたいというふうに思っておりますが、県民の関心が非常に高くなっておるものですから、さいたま市が積極的にこうやって考えているということについて、お考えをお聞かせいただければと思います。

海老沢参考人 六百メートル級といいますと、これまで世界にはありません。六百メートルというのは世界一のタワーということになります。そういう面で、この六百メートルのタワーは展望が非常にいいということで、観光客の誘致に非常に役立つこと。また、我々は、六百メートルあれば経済性からいって非常に利用しやすいとなると、それに乗りたい、そういうことも考えられます。

 いずれにしても、どこが一番立地条件がいいのか、経済性がいいのか、その辺はこれから、NHKだけで決められる問題じゃありませんし、いろいろな関係方面と協議しながら慎重に対応していきたいと思っております。

 埼玉県が熱心であることは、こちらとして承知しております。

長沢委員 終わります。

佐田委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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