衆議院

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第15号 平成16年4月22日(木曜日)

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平成十六年四月二十二日(木曜日)

    午後二時二十分開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 滝   実君 理事 野田 聖子君

   理事 松崎 公昭君 理事 松野 頼久君

   理事 桝屋 敬悟君

      今井  宏君    岩崎 忠夫君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    萩生田光一君

      松本  純君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    山際大志郎君

      山下 貴史君    泉  健太君

      稲見 哲男君    大出  彰君

      川端 達夫君    岸本  健君

      須藤  浩君    田嶋  要君

      高井 美穂君    辻   惠君

      寺田  学君    中村 哲治君

      西村智奈美君    山花 郁夫君

      若井 康彦君    若泉 征三君

      河合 正智君    長沢 広明君

      塩川 鉄也君    吉井 英勝君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務副大臣        山口 俊一君

   総務大臣政務官      小西  理君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           大野 慎一君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  畠中誠二郎君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君



    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  自見庄三郎君     山際大志郎君

  西田  猛君     宮下 一郎君

  稲見 哲男君     辻   惠君

  黄川田 徹君     岸本  健君

  田嶋  要君     泉  健太君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     西田  猛君

  山際大志郎君     自見庄三郎君

  泉  健太君     若井 康彦君

  岸本  健君     黄川田 徹君

  辻   惠君     稲見 哲男君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  若井 康彦君     田嶋  要君



    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇七号)

 市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇八号)

 市町村の合併の特例等に関する法律案(内閣提出第一〇九号)


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案、市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び市町村の合併の特例等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官大野慎一君及び自治行政局長畠中誠二郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲見哲男君。

稲見委員 民主党の稲見哲男です。

 総務大臣に、今さらということかもしれませんが、市町村合併についての基本認識をお聞きしたいというふうに思います。

 私は、二月に議論になった三位一体改革と密接に関連している、こういうふうに思っております。交付税、補助金、臨時財政対策債のカット、税源移譲と相殺しても、三兆五千億円近い財源が地方で減った、こういう事実。地方から財政再建路線に急速に進んでいる中で、行政経費の削減のために市町村合併というのが言われているのではないか。新法の中に幾つかの仕組みが新設をされておりますけれども、現場では、進むも地獄とどまるも地獄、こういう感を呈しております。

 国における強制合併の意図があるのではないかというふうに考えますけれども、自主的な合併を担保しているというふうなことについて、総務大臣の所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 稲見議員の御指摘のところですけれども、基本的には、今回の三位一体の話というのは、よく申し上げますように、質的な話と量的な話と二つあると思っております。

 質的な部分につきましては、国税というものが地方税に曲がりなりにも移り、そして三年後を目指して地方税というものに完全に、いわゆる住民税に移行していくという確実なものにしたというのは大きかったと思っております。そういったものと、傍ら、累積約二百四兆円、地方交付税だけで約五十四兆というものを減らしていかねばならぬという部分と、この二つが一緒に来ておりますので、何となく金目の話にどんと目が行っておるというのは、御指摘のような感じをとられているというのは否めない事実だと思っております。

 ただ、基本的には、中央集権というもので、廃藩置県、明治四年この方やってきたこの国の制度というものを、地域主権、地方分権というものに変えていこうというのが本来の趣旨であります。そういったことをやっていきますと、地方自治体間でいい意味で競争が起きる。例えば企業誘致にしても住民をふやすにしても、少子高齢化に合わせて、住民が、企業が、工場が我が市にというような感じのことになるような、地方が自由にできる、地方が自由裁量でできるという意味で、それを裏づける財源等々を含めて、地方自治体の基礎が強くなるというのが本来の趣旨であります。

 平成十八年度までの三年間に、よく言われます四兆円の補助金、それにかわります財源の移譲ということが基本的な考え方だと思っておりますので、基本的には、初年度、二年度、いろいろでこぼこがあろうかと思いますが、三年間できちんとした形につくり上げたいと思っております。

稲見委員 後段の、自主的な合併というのが担保されているのかということについて回答がなかったんですが、改めて、少し御質問をした上で御回答いただきたいと思います。

 私は、今総務大臣からもありましたように、地方分権推進の担い手たる自治体、これを合併の中でどうつくっていくのかというふうなことが一番重要ではないかと思っております。

 現場での経験を少し御紹介しますと、私は、政令市ですから合併というのは経験はございません。ただ、中心区を中心に人口減による合区というのを八九年に経験いたしました。大阪駅、キタの新地があります北区と淀川に面しました大淀区、これが新しい北区に合区をされた。また、道修町、船場、本社機能の非常に大きい東区と、心斎橋、難波、ミナミの繁華街の南区が合区をして中央区になった。これは恐らく神戸市中央区以来の全国的にもない経験だというふうに思います。

 三年ほどかかりましたけれども、区役所というのは現場で、法令、政省令、事務処理要綱、決まった形での仕事をしているはずなんですが、それぞれの区役所というのは本当に仕事の流れを含めてばらばらだ。それを突き合わせていくということになりますと、極端な話、赤ボールペンを持つのか黒ボールペンを持つのかというところまで声の大きさでどっちかに決めていかなければならない、こういうことでございました。

 また、これは合区ではございませんが、大阪市の市民病院、百五十床から二百五十床の病院五つを統合しまして千床の病院をつくる、こういうこともありました。このときも、やはりお医者さんを中心に病院というのは動いておりますから、京大系、阪大系、大阪市大系、それぞれ病院ごとにカルテの内容も様式も違うというふうなところ、あるいは、看護師さんが帽子をかぶるのかかぶらないのかというようなことまで議論になる。

 まさに組織というのは人ですから、そこで人間関係をつくっていって、仕事をつくっていって、そして庁舎もつくるということは、すべて、そういう合区であるとか病院の統合というようなところでございます。恐らく、中央省庁の場合は、違う部署と違う部署が線引き、枠組みの中で中央省庁の再編というのがあったでしょうから、仕事を一つに合わせていくということはなかったんじゃないかというふうに思っております。

 市町村の合併というのは、恐らく、いろいろな歴史的な違いというものも含めて、仕事の流れ、仕事の内容、そして人間関係、組織、機構をすべて一からつくっていくというふうなことになろうかと思っております。そういう意味では、そこにつぎ込むエネルギーというものは非常に大変なものがあるというふうに、現場から考えますと察することができると思っております。

 しからば、先ほどの話に戻りまして、地方分権の担い手たる自治体ということを中心に考えるのであれば、財政再建を含めて、自主的、自立的な自治体づくりをどうしていくのかというのが目的であって、合併というのはその中の一つの手段、自治体なり住民の選択肢の一つだ、こういうふうに考えられるんじゃないかなというふうに思います。

 福島県の矢祭町や、あるいは北海道のニセコ、そこは小さい自治体ですけれども、役所も変わり、住民も変わり、意識変革の中で、いわゆる自立した自治体としてやっていけるんだという判断をして合併はしないというふうなことをおっしゃっている。そうするならば、そういう施策あるいは職員の意識変革を含めたところにエネルギーを費やすのか、合併というところに費やすのかということの違いになってくるんじゃないかなというふうに思っております。

 そういう意味では、先ほど御回答がなかった点ですが、指針、合併推進審議会、構想の策定、協議会設置の勧告、あるいは報告の徴収、あっせん及び調停、協議の推進に関する勧告、こういう仕組みが今回新法の方で盛り込まれているわけです。今、国と地方の関係は、上下主従の関係から対等平等ということですから、上意下達というふうには言いませんけれども、今申し上げたのは、少なくとも、都道府県を含めて一方通行になっているという意味では、やはり強制合併というふうな趣が強いんじゃないか、こういうふうに思っております。その点、ぜひお聞きをしたいと思います。

 そういう点で、まず自主的な合併というのを担保するという意味で、一つは、総務大臣が策定をされる基本指針でございますけれども、基本指針について、「構想を定めるに当たりよるべき基準」、こういうものが書かれております。

 一昨日も少し議論になりましたけれども、よるべき基準というふうな文言が使われておりますのは、戸籍法や公選法など、法定受託事務に関する処理基準ということに限られていると思います。どういう基準を考えておられるのか。また、自治事務の中でよるべき基準という法律があるのか。それと、一昨日も出ましたが、この基準の中に人口要件を入れるのか、人口要件を入れるのであれば、自主的合併の趣旨に反するんではないかというふうに思いますので、この基本指針についてまずお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 今、稲見委員のおっしゃいました最初のところの部分から言えば、合併はあくまでも目的ではありません。合併は手段であって目的ではないということははっきりいたしておると思っております。

 その上で、合併をするかしないかということに関しましても、これはかかってその市町村の首長さんの判断であり、住民の意思ということもこれまたはっきりいたしております。

 それに当たって、私どもは行政サービスをいろいろ考えますので、そういった意味から、ある程度の規模がないと。例えば五千人ぐらいの町でありますと、一人当たりにかかります行政コストは約百三万円になっております。一万人を超しますと、それが約五十万円、四十七、八万になると思いますので、行政コストが半分。さらに、二万を超しますと三十万台ということになって、四十万前後ぐらいに下がると思いますので、その地域において、それを下回るようにいろいろ行政改革をされる、いろいろなやり方もあろうかと思います。

 そういった意味では、かかって地方の最終判断は住民であり、そこの町議会でありということになろうと思っております。

 今回の指針の中につきましては、私どもは、そういう意味から一万人ということを書かせていただいていきますが、よくこれを法律で書いていないではないか、法律で書けという御意見もありましたが、各町村長会からも、法律に書くのはよろしゅうないと。法律に書くというのは、私ども、法律というのは、書いた人間より、実行するのはその後の人間なものですから、その後の人は書いた紙どおりにやりますので、もう九千九百九十人でもだめみたいな話になるのは非常によろしくないと思っておりますので、おおむね一万人というのを指針として書かせていただこうと思っておりますのはそういう背景であります。

 中には、御存じのように、大阪はちょっと違いますけれども、離島とかそういったところは、合併を本人はしたくてもしてくれる相手がおらぬとか、また、山村の上の方に行くと、とてもじゃないけれどもあれをもらったらたまらぬとか、いろいろな意味で、本人の意思があっても合併をできないところもありましょうし、いろいろな地理的条件とか地域格差は歴然としておると思っております。

 したがいまして、私どもは、人口おおむね一万を目安というような感じにしておりますし、また地理的条件というものも考えてやらないと、画一的になるというのは甚だ危険なことにもなると思っておりますので、そういったことを記述するようにいたしたいと思っておるということを申し述べ、細目は大野の方から答弁させます。

大野政府参考人 自治事務につきましても、必要な基準を定めるということは可能でございます。

 そこで、新しい法案の五十八条になるわけでございますが、基本指針につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、構想対象市町村などの要件を定めてまいりたい、こう思っております。新法の五十八条の第三項に、基本指針を定めたり変更いたします場合にはこれを公表しなければならない、こういう規定がございまして、私どもは、形式的には告示という形で公表をいたしたい、こう思っております。

 そういった形で基準を示すということであれば、自治事務についても基準を定めることは可能である、このようにされているところでございます。

稲見委員 この基本指針なんですけれども、さっき言いました、都道府県を含めての流れ、そこの中で、やはり指針が出発点だと思うんですよね。

 もう一度こだわりますが、やはり自主的合併ということであれば、あえて指針の中で、おおむね一万人という要件は外した方がいいんじゃないか。むしろ、一万人というのを入れれば、結局は町村についてはすべて合併の対象というふうな都道府県の構想をつくっていくという流れになっていき、それは合併協議会の設置の勧告を含めて順番に、そこに強制力を働かせて物事が進んでいくんじゃないかというふうに思っておりますので、そういう意味では、この一万人という基準についてもう一度再考いただければなというふうに思っております。

 それから、自治事務でも必要な基準を定めることができるということでございましたけれども、五つの法律の中に、法定受託事務としてこのよるべき基準というのが使われているというふうに私は考えているんですが、自治事務としてよるべき基準というものを今回の合併特例法以外に使っている法律があれば、その点ちょっと教えていただきたいと思います。

大野政府参考人 まず、基本指針を定めます場合に、都道府県に構想をつくっていただくためのよるべき基準というものが基本指針にうたわれるわけでございます。

 この構想の中で、合併の対象市町村というものを、都道府県がそのときの事情、つまり、今合併を一生懸命やっているものですから、これがある程度現行法でどうなるかというのが見えてくるわけでございますが、その後の構想の対象市町村の多くは、まずは生活圏域を一緒にするような、そういったところを対象にして市町村を想定するということが一点ございます。

 それから、大阪市もそうでございますけれども、政令市になろう、あるいは中核市でありましたり特例市を目指す、こういうふうな考え方で合併をしたいというところもあるわけでございますので、そういったところも構想の対象の市町村になるわけでございますね。

 それから、先ほど大臣が申し上げましたように、現行合併協議が進んでおりますが、そういう中で、場合によれば離脱をされたり、まあ残るところも出てくると思いますけれども、そういったところを、人口一万人というものを一つの目安にして、さまざまな条件はありますが、外洋離島でありますとか、一応現在の合併協議が終わって、例えば五千と四千が一緒になって九千人になってしまった、九千人になったというのは一応合併で終わっているわけですから、それを含めてまた合併構想を描くということは多分なかろうと思いますね。

 そういった諸条件を勘案した形で構想市町村が選ばれるわけでございますが、その場合の目安というものがおおむね一万人だ、そういった意味合いでございます。

 そこで次に、この指針の問題でございますけれども、いろいろな国の法律があるわけでございますけれども、その中で、都道府県が、国が定めます基本指針に基づきまして計画を策定する、こういうふうな法律の規定になっているものがあるわけでございます。例えば、湖沼の水質保全計画をつくるとか、あるいは公害関係の、窒素の削減計画をつくるとか、そういった場合に、国が基本指針を示しまして、これは自治事務でありますけれども、計画策定を都道府県が行う、こういう構造になっている法律は相当数あるわけでございます。

稲見委員 そうしたら、次の項目を質問する中で、自主的合併ということについてまたお聞きをしていきたいと思います。

 次は、市町村の合併推進構想というところでございますが、これも、第一条で自主的合併ということが定められながら、都道府県が合併構想策定を行うというのは矛盾しているのではないかというふうに考えております。

 そうしますと、具体にお聞きをしますが、自治事務として、都道府県が構想を策定しないことができるというふうに考えますけれども、その場合、国はどうされるのかという点。それから、構想は策定をした、しかし、市町村がこの構想と異なる組み合わせによって市町村合併を進める、こういうことがあり得ると思うんですが、それは可能なのかという点。これが構想についてであります。

 それから、合併推進審議会について具体的にお聞きをしますけれども、この合併推進審議会、どのような構成を考えておられるのか。特に、審議会の意見を聞くとされておりますけれども、その場合、何よりも住民なり当該自治体の意思こそが重要である、こういうふうに思っております。住民や当該自治体の意思確認、意見集約の手続が配慮されているのかどうか、その点お聞きをしたいと思います。

 特に、その後の合併協議会設置の勧告のときには、あらかじめ当該構想市町村の意見を聞かなければならないという条文になっております。そういう意味で、その点が、この審議会の中では、そういう当該の市町村なり住民の意見を聞くというところが見受けられませんので、その点の配慮をどうされているのかという点についてお聞きをしたいと思います。

 それから次に、合併協議会設置の勧告、これも自治事務として、行わないことも可能か。都道府県が審議会の意見を聞いても、合併協議会設置の勧告を行わないことは可能か。また、設置の勧告を行わなかった場合、国から何らかの関与があるのか。この点についてお聞きをしたいというふうに思います。

 それから、同じくこの合併協議会の関係ですが、合併協議会の勧告を受けた場合に、その市町村長は議会に付議をしなければならない、こういうふうに今回なっております。これは一昨日もございましたが、いわゆる地方自治法八条の二の都道府県の廃置分合、このことについても、法定受託事務でありながら議会への付議あるいは市町村の対応が義務づけられておらないということですので、自治事務としてありながら市町村への付議というのは極めて強い強制になっているのではないかということについて、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

 それから、協議が調わないときの調停、あっせんですが、この場合、どういうケースが想定をされるのか。役場の位置とか、あるいは議員数とかというようなこともありましょうが、例えば、その中に市町村の組み合わせというのが入っているのかどうか。これは、組み合わせが入っているとしますと、構想の策定に関する市町村合併推進審議会の委員がこのあっせん・調停委員になるということですから、みずからが組み合わせを決めた委員が組み合わせについてあっせん、調停に入るというのは少し矛盾をしているのじゃないか、こういうふうに思いますので、この点、ぜひ大臣ないしは政務官の方からお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 たくさん質問がございましたので、審議会の構成員につきましての答弁の方を私の方からさせていただき、残余の質問を松本政務官の方から答弁させます。

 合併新法の六十条の第三項になりましょうか、「市町村合併推進審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。」というようにいたしております。

 したがいまして、市町村合併の審議会の組織及び構成員につきましては、基本的には都道府県で条例で定めるということにいたしておりますので、その構成員につきましては、基本的には都道府県等々で実情に応じて選択をしていただく、判断をしていただくということになろうと思います。

 具体的には、市町村合併推進審議会の構成員につきましては、通常でしたら、学識経験者とか、町長会とか村長会とかいろいろありますので、そういったところの代表者の方々とか、ほかでしたら商工会、商工会議所の代表とか住民団体の代表などというところが構成員として想定されるところかなと思っております。

 以上です。

松本大臣政務官 稲見委員の御質問にお答えする前に、まことに恐縮でございますが、過日の私の答弁を訂正させていただきたく、お願いを申し上げます。

 一昨日、二十日の当総務委員会で松崎委員から政治資金についての御質問がございましたが、事前通告を受けていなかったため、記憶の範囲で、日本歯科医師連盟からの献金がない旨のお答えをさせていただきました。

 その後、直ちに調査した結果、平成十二年度分の政治資金収支報告書に、日本歯科医師連盟より五十万円の献金があり、適正に処理されていることを確認いたしましたので、御報告をさせていただき、過日の答弁を訂正させていただきたいと存じます。

 それでは、稲見委員からの御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、一つ目でありますが、自主的な市町村合併と第一条で定められていながら都道府県が合併構想策定を行うというのは矛盾しているのではないかという御質問であります。

 もとより都道府県は、市町村を包括する広域的な地方公共団体として、地域全体の発展や住民生活の水準を維持し、確保していくという観点から、自主的な市町村の合併につきましても、地域の事情に応じた適切な役割を担っていく必要があると思います。合併新法におきましても、引き続き、都道府県は自主的な市町村合併の推進に関して必要な措置を行うことが期待をされておるところであります。

 そのため、都道府県が、総務大臣が定める基本指針に基づき構想を策定し、当該構想に基づき、都道府県知事が必要に応じて合併協議会設置の勧告、あっせん等の措置を講じることができる規定の整備を行うことで、自主的な市町村の合併を推進しようとするものであります。

 いずれにいたしましても、最終的に合併をするか否かについては、市町村の自主的な判断によるものであり、政府として強制的に市町村を合併させるという意図は持っていないところでございます。

 次の質問でございますが、自治事務として、都道府県が構想を策定しないことができると考えるが、その場合、国はどうするのかとの質問でございます。

 都道府県が構想を策定する事務は、自治事務でありますが、この構想は総務大臣が定める基本指針に基づき策定するものとするとされているところでございます。仮に都道府県が構想を策定するべきであるのに策定しない場合においても、この事務は自治事務であるため、総務省として構想の策定に関する代執行は行うことができず、強制はできないところでございます。

 総務省としては、構想を策定すべき都道府県に対しては、構想を策定するよう粘り強く求めてまいる所存でございます。

 次に、自治事務であれば、構想の作成を義務づけるべきではないかとの御質問でございます。

 地方分権推進委員会第一次勧告におきまして、自治事務については法律に定めのあるものと法律に定めのないものがあり、法律に定めのある自治事務については、その実施が地方公共団体に義務づけられているものと任意のものがあると整理をされているところでございます。

 すなわち、構想が自治事務であることから、構想の作成を義務づけることができないというものではなく、法律に基づき自治事務の処理を義務づけることは当然可能であるところと考えております。

 次の御質問でございますが、合併協議会設置の勧告を行わないことも可能か、また、設置の勧告を行わなかった場合、国から何らかの関与がされるかという御質問でございます。

 都道府県は、市町村の合併に関する協議を推進することを主な目的として構想を策定するところでございます。また、構想に位置づけられ、いまだ合併協議会を設置していない市町村に対しましては、都道府県知事が合併協議会設置の勧告を行うことができることとされているところでございます。

 総務省としては、都道府県知事が合併協議会設置の勧告を積極的に行うことを期待しているところでありますが、この勧告は自治事務であり、総務省として勧告に対する代執行は行うことができず、強制することはできないところであります。

 次の御質問です。都道府県知事から合併協議会設置の勧告を受けた場合、合併市町村長は議会に付議しなければならなくなる、合併協議会設置勧告を受けたら議会に付議しなければならないというのは強制力が重くなっているのではないか、なぜ議会付議を義務づけているのかとの御質問でございます。

 合併新法におきます合併協議会設置の勧告は、勧告を受けた市町村長が合併協議会の設置協議について議会に付議し、議会が合併協議会設置協議について否決した場合には、住民が六分の一以上の有権者の署名により、または市町村長が住民投票を請求することができることとしているところでございまして、これは、都道府県知事が合併新法に規定する構想に基づき合併協議会設置の勧告を行う場合には、現行の合併特例法第四条の二に規定する住民発議、これは有権者の五十分の一の連署が必要でございますが、これと同等の法的効果を与えることが必要であると考えて設けた制度でございます。

 したがって、合併協議会そのものを設置することを法的に義務づけているものではありませんで、都道府県知事が市町村に対して直接住民投票を行うことを求めるものでもございません。合併そのものの住民投票を行うものではない。こういったことから、市町村合併を強制するものではないという理解をさせていただきたいと思います。

 なお、その他の御質問につきましては、大野総括より答弁をさせます。

大野政府参考人 地方公共団体が都道府県が定めます構想の組み合わせと違った形で合併を進めることも、これはもとより可能でございます。それを制約するものではないわけでございますが、せっかく構想をつくられる、あるいはつくられたわけでございますので、組み合わせが変わる、あるいは変わった方がいい、こういうふうに自治体がお考えになるのであれば、よくよく都道府県と市町村が御相談いただきまして、構想の組み合わせそのものを修正されるのが適当ではないか、このように思っております。

 そこで、協議が調わない、こういった問題が出た場合のあっせん、調停、これは合併調整委員が行うわけでございますけれども、合併調整委員につきましては市町村の合併推進審議会から任命するというふうに考えておりますゆえんは、まずは、構想を策定するときに市町村合併推進審議会にかけるわけでございますので、合併の事情をこの審議会の委員が十分承知をしているということでありますので、そういう方を合併調整委員に任命した上であっせん、調停をしていただいた方が有効に機能するのではないか、こういった考え方でございます。

 そこで、合併調整委員があっせん、調停する対象として組み合わせまで入るのかどうか、こういうお尋ねがございました。

 新法には、六十三条にありますように、難航する課題として、合併市町村の名前をどうするかとか、あるいは本庁事務所の所在地をどうするか、こういったことがあるものですから、これを明記させていただいておりますけれども、いろいろほかにもあり得るわけでございまして、合併の期日でありますとか、あるいは合併の方式でございますね、新設合併であるとか編入合併であるとか、こういったことなども想定をされるわけでございまして、こういったことは当然あっせん、調停の対象になるわけでございます。

 組み合わせにつきましては、そもそも、あっせん、調停というのは、六十三条を読んでいただくとよくおわかりだと思いますけれども、あらかじめ構想の中で組み合わせがあるわけでございまして、この組み合わせに基づいて合併協議会ができているわけですね。そこで問題になったことをあくまでも申請によって、申請がなければあっせん、調停しないわけです。申請主義でございますね。そうしますと、組み合わせがあって、それで法定協議会ができているわけですから、そこから組み合わせの別なパターンについて申請をするということは、それはあり得ないというふうに思います。

 そういった意味では、組み合わせそのものがおかしいから協議会から申請されるという事態はまずないものというふうに考えております。

稲見委員 付議にかかわっては、私は住民投票のことなんて聞いてないんですよ。法定受託事務でも付議されてないのに、自治事務でなぜ付議というふうなところの強制力を働かすのかというところに限って聞いているんです。

 こちらの質問を再度読み上げられて答えるということですごく時間をとっておりますので、その辺はちょっと問題じゃないかと思います。

 それから、もう一つは、先ほど政治資金についての訂正発言がありました。

 訂正発言をするのであれば、まず一番最初に委員長に発言を求めて、きょうの委員会の冒頭で訂正をするのが当たり前じゃないかというふうに思います。質問の中でたまたま自分が立ったから訂正をする、議事録についても私の質問なり答弁の中で扱われるというのは、そういうものかというふうに思いますので、おっしゃった意味は、訂正ですし、こちらも非常に重大な問題だと思いますので、議事録の扱いとしては、委員長なり理事会の方で少し取り扱いを変えていただきたい。こういう質疑の中で訂正の議事録扱いをしてもらいたくないというふうに思います。

 ちょっと時間がそういうことで過ぎてしまいましたので、少し細かい点については後の皆さんの、特に合併特例区であるとか自治区であるとか、その点、たくさん質問したいことがあったんですが、それは少し飛ばします。

 その上で、合併特例区協議会と地域自治区、ここで一つだけ御質問をしますが、ここの協議会の委員について、特例区協議会は、住所を有する、被選挙権を有する者、こういうふうになっております。それから、地域協議会においては、区域内に住所を有する者ということで、いずれにしても被選挙権があるか住民票があるかということで、住所を有する者になっております。

 その場合、これまで行政にいろいろ協力して町づくりをやってまいりました、例えば商店主、あるいは料理飲食業などの同業組合、あるいは三師会と言われる医師会や歯科医師会、薬剤師会、商工会、各種団体、そういうものの長でそこに住所を持っておられない方というのはたくさんおられるわけです。そういう場合、これは合併特例区協議会あるいは地域協議会の構成員になることができないのか。こういうふうなことについて、少しそれは実情と違っているんではないかということ。

 それから、一昨日もありましたが、そういう場合、NPOの人たち、一生懸命頑張っている人たちを対象にするのかどうか。それに、地域に定着をした在日外国人の方。これは、住所を有する者あるいは被選挙権を有する者というふうにしますと、全くそういう地域社会から排除されてしまうということについてどうお考えなのか。その点をお聞きしたいと思います。

大野政府参考人 ただいまのお尋ねの中で、まず、合併特例区の協議会の方について先に申し上げますと、この合併特例区の協議会は、合併特例区の予算につきます同意権があるということでございますね。そうしたことから、この協議会の構成員の資格でございますが、当然住所を有するということは要件になるわけでございますが、さらに被選挙権を必要としているということでございます。したがいまして、外国人を選任することは、合併特例区協議会についてはできないということでございます。

 それから次に、地域協議会でございます。地域協議会は、構成員の資格としては、法律上は単に「地域自治区の区域内に住所を有する者」としか書いてございません。これは、地域自治区というものがどういうものかといいますと、その区域に関するさまざまなことを住民と行政が協働でやるとか、そういったことになっておりますので、住所を有しておりさえすればそこは構わないということでございますので、今御指摘の外国人が排除されるということはないわけでございます。

 それから、商店会長であったとしましても、住所を有しておれば当然いいわけですね。ですから、地域自治区について言うならば、地域協議会の構成員の方は住所を有しておればいいということですから、ほかの要件は一切ありません。商店主であっても、それはその住民であれば一向に構わないわけでございますし、歯科医師会とかそういったいろいろな会長さんであっても、住所を有していなければこれはだめだということでございます。(稲見委員「市外に住んでいたらだめですか」と呼ぶ)

 だめですね。それは、法律上そういうふうに書かせていただいたゆえんは、今言いましたように、地域に関することをいろいろやっていただくということでございますので、そういう趣旨でございます。

稲見委員 時間が来ましたので、終わりますが、ただ、自主的合併というところがやはり一番大事なところですので、この新法はどうしてもいろいろな仕組みが、強制力が働くような気がしてなりません。その辺を、後ほどの議論もありましょうけれども、総務大臣としてもぜひ御認識をいただきたいと思います。

 それから、地域の協議会、私は、住所を有していなくても、いろいろ行政に対して協力をし、いろいろ町づくりなんかで実際にやっておられるわけですよ。それを、市外居住者だという形だけで切ってしまうというのはどうか、実情に合わないんじゃないかと思います。

 終わります。

佐田委員長 短目にお願いします。時間が来ておりますので。

大野政府参考人 今の私の答弁で少し誤解を招きましたので。

 法人に関しましては、その主たる事務所が区域内にあれば、それは法人の代表者の方も構成員になれるということでございます。

佐田委員長 次に、須藤浩君。

須藤委員 本日は、麻生大臣とは二回目になろうかと思いますけれども、まず、私は、時間が四十分ということで、二点ほどお伺いをしたいと思います。少し観念的なことになろうかと思いますけれども、ぜひ大臣とディスカッションする中から問題点をいろいろ指摘させていただきたい、このように思います。

 まず最初に、地方分権についてですが、これは相当これまでに議論を重ねられています。しかし、私自身は、地方分権の具体的なイメージといいますか、最終的に到達する地方主権の姿というものがどうしても答弁の中からはまだ見えてこないわけです。

 地方分権ということは、言葉が示すとおりに、分権ですから、いわゆる権限、まあ財源も加わるんですが、権限を移していく過程を表現しているわけですね。そうしますと、今質問にも出ましたように、分権は、あくまでもそれは手段であって目的ではないということであれば、その先にある目的が具体的にどういうものなのかということに関して、なかなかはっきりとした姿が見えてこないわけです。

 そこで、これまで地方制度調査会やさまざまな審議会や委員会等で議論をされてきているんですが、麻生大臣は、到達点、目的となる地方主権あるいは地方の姿、自治体の姿というものをどのように描いていらっしゃるのか、まずお聞きをしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、須藤先生、いろいろなことが考えられると思っているんですが、基本的には、明治四年に廃藩置県をやってこの方これだけ大きな改革をやったのは、平成十二年、地方分権一括法。あの法案をつくったときだって、それは大騒ぎして、こんなことができるのかという話がほとんどの御意見だったと思いますが、結果的にその法律をつくった。それに基づいて、明らかに今までとは違う方向に踏み出したことは非常にはっきりしておると思っております。

 まず、流れとしては、江戸二百七十年間続いたものをいきなり廃藩置県といったときも、多分、先はどんな国家になるか、世の中になるかというのが見えた人はほとんどいなかったと思いますが、今回は逆に、集めてこういうのにつくるんだというんじゃなくて、そちらにお渡しして、考えてくださいという話ですから、基本的にはその地域によってかなりいろいろ差が出てくるのは、これは当然と思います。

 基本として、やはりある程度のことは自分で、地域の権限として、主権として、地域主権、地方分権より地域主権という言葉の方が正しいんだと思っているんですが、そういった意味で、地域が主権を持って、自分で自由に決められる、その結果が悪かったら、それはその地域が割を食うんであって、国家が責任を負うところじゃありません、そういう人を選んだあなたが悪いということになろうかと思います。

 そういったことになりますと、地域主権という方向に流れが出てくると、その地方の人が抱えているイメージと他の人とが一緒という保証はありませんから、それは、そこで選挙で選ばれる首長さんの責任は極めて大きい、従来とは随分違ったものになってくる。逆に言えば、市長、市議会の責任は大きいということになろうと思います。

 しかし、自由があっても持つものがなかったら話になりませんから、しかるべき財源というものは与えてもらわぬとどうにもならぬということになるんだと思うんです。したがいまして、その点に関しましては、今、四対六とか七対三とか三割自治とか、いろいろな表現がありますが、基本的には、地方の財政、国の財政の比率は、五対五とか一対一とかいろいろな表現がありますが、それくらいの地方財源というのを持つ、そのかわり対応は自己責任でやる。財源は保障される、その結果、地方が自分たちの地域に合った政治を、自分たちの地域に合った制度を自分たちの代表でつくるというのが基本的なところだと思っております。

 基本としてイメージを描けといえば、そういうことになろうと思いますが、私は、それを進めていっても、地域によって、地理的条件によって差がある程度出てくるというのは避けて通れぬと思っております。離島とか山村とかいうところと過密地とはもう全然条件が違いますので、そういったところで、行政ごとにある程度落差が出ることは避けて通れないところだと思います。

 その部分につきましては交付税等々である程度調整する必要はあると思っておりますので、そういった機能は今後とも必要と思いますし、それの財源も必要と思いますけれども、基本としては、今申し上げたように、地方の自由度がふえる、そしてそれを保障する財源ができる、そしてその地域住民によって選ばれる町づくりというのが基本になろうかと思っております。

須藤委員 地方分権の議論の最終的な到達点は、今大臣が言われたようなところになるんだと思うんですけれども、今大臣が言われた姿というか形というのは、あくまでも機能といいますか、そういったことに触れられていると思うんです。例えば、大臣がお住まいになっている地元ですか、そういったところをまず想定されるのか、あるいは北海道みたいなところを想定されるのか、もう少し具体的な町の形みたいな、イメージみたいなものを考えられているのであれば、述べていただければと思います。

麻生国務大臣 これは、須藤先生、行政体の規模にもよろうと思いますが、私の住んでおります町は約八万弱でありまして、かつてもっとあったのが急激に人口の減った地域、三割ぐらい減りましたでしょうか、昭和三十五、六年から激減しましたので。そういった意味では、他の地域の参考になるような地域ではなくて、一時期猛烈に疲弊したというところを、いろいろな形でやっと人口をふやして、高齢化率が高かった町に国立大学を呼び、鉄道を、気動車を電気にかえ、何となくいろいろな形で町のイメージを変えつつあるところ、まだその過程のような町ですので、私のところは、地方の中核都市かもしれませんけれども、とてもそういった参考になる町ではありません。

 私は、どういった町がいいかというと、規模によってみんないろいろイメージが違いますので、政令都市というところでいきますれば、千葉も政令都市になっておりますが、私のところも政令都市は北九州市と福岡市と、一県で二つ政令都市がありますのは、今の現状では神奈川県と福岡県だけだと思います。同じ政令都市でも全く性格の違う都市で、片っ方は二次産業のみ、片っ方は二次産業はないというような極端な形になっておりますので、同じ政令都市でも全然イメージが違います。先生のところの千葉と四街道とか、そういったようなものと多分全然違うと思っておりますので、私のところのは参考にはならぬとは思います。

 いずれにいたしましても、政令都市に多くの方々がなりたがられた。北九州市の場合は八幡、若松、戸畑、小倉、門司という、昭和三十年代最大の合併をやったところで、昭和の大合併の最たるものだと思いますが、そういったことで百万都市になったところですけれども、基本的には工場が主のところなんです。

 そういったところですから、イメージとしては、何となく煙がぼうぼう上がっていたような、昭和三十年代は、八幡製鉄発祥の地ですから、コークスと鉄、重工業地帯というか、とにかくそういったイメージだったのが、隣の博多に行ったら、煙突から煙が出ているところはふろ屋以外ありませんでした。工場はありませんでしたから、あそこは。そういった意味では全く違う政令都市が二つでき上がったのが、私がちょうど学校を出た、日本に帰ってきたぐらいのときだったので非常に印象的だったんです。

 そういう意味で、これはどういうのをイメージしているかと言われると、私の場合は特にその二つが強烈な印象でありますので、アイデアとして思い描いている町があるかと聞かれれば、私はその極端な二つしか、それができ上がる過程も、先生ぐらいの年齢はとっくに過ぎていましたので、そういった時代としては結構、絵になるようなというのを持ち合わせているかといえば、その両方はちょっと違いますね。

 ただ、きれいさだけからいったら、それは博多の方がはるかにきれいな町になったことは確かです。もうこれは合併して物すごくきれいな町になって、とにかく学生がやたらふえてきてということになりました。学生というのは貯金するという才能というか機能がないので、入ってきたものはそのまま全く出ていっちゃいますので、町は金がじゃんじゃん落ちておるわけです。物すごく町はにぎやかになりました。

 傍ら、同じ人口が住んでいても、工場に勤める勤労者ですから、こっちはもう町には金は落ちぬ。ネクタイして歩いているとみんな人が見るから、私も顔が売れたのかと思ったら、ネクタイしている人がほかにいないから人が見るだけのことだったというのを気がつくのにやはりしばらくかかりました。

 そういったぐらい極端に違うところですから、これがアイデアかと言われれば、本当に先生、それは御自分でこういう町にしようと思われない限りできない、私は基本的にはそう思っていますが、そう思ってもやれない理由が金と規制のおかげだというんだったら、それは外す、取っ払うというところが基本なんだと思っております。

須藤委員 いみじくも今の大臣答弁の中で、結局、日本の地方分権、最終的には地方主権の姿というものがなかなか描き切れていないということじゃないかと私は思うんですね。

 日本は、高度経済成長で、日本全国至るところ、金太郎あめのように同じような国づくりをしてきてしまいましたよね。例えばコンビニなんかも、本当に田舎の地方の方に行ったときに、そこに行ったらコンビニがあってほっとしたみたいな、そんな感じを持つ人がたくさんいると思うんですよ。果たしてこれでいいのかというふうに私は思うんですね。

 私自身の見方をすれば、その地域に行かなければ、そこでつくっているものは食べられないとか、そこの風景は見られないとか、そういういわゆる個性というものを追求できる、あるいはつくることのできる地域あるいは自治体が必要で、そういう多様性のある集合体として日本が存立するということをイメージとして実は描いているわけです。

 では、地方自治体がそういう町づくりをできるかといったら、なかなかできない。少なくとも、法制度上、これまで三割自治と言われるような状況に置かれていた。しかも、今日の財政難ということも含めて、どちらかというと財政効率的な意味の市町村合併が進められている。そして今は、いわゆる税財源も十分であるとは言えない。しかも、地元に企業を誘致しようといっても、大きな日本の産業構造の中で地方が疲弊をしてしまっている。これだけ諸条件が厳しい中で、地方のすばらしい絵を描けといっても、非常に難しいと私は思うんですね。

 ただ、これだけ厳しい条件の中でも、背水の陣をしいて、自分たちの町はいいぞ、どうぞ来てくださいと自信を持って町づくりをしている地域もあります。

 地方分権がそういうような自立した町をつくる、地方をつくるための手続、方法であるとしたら、なぜ今回、税財源の移管、たまたま首相が一兆円だというような数字をぽんと挙げたから、そのつじつま合わせのような形での交付税化をしようなんという荒っぽい作業をするのか。本来であれば、そういう方向性に向かってもっともっとじっくりと煮詰めて、そして、一つずつといいますか、もう少し理想像に近いような形で税財源を移転すべきじゃないかと私は思うわけです。

 しかも、権限についても、多少は上下の関係から横の関係になっていますけれども、実態上はまだまだ国があり、県があり、市町村がありと。行政上は上下関係が厳しく問われるといいますか、実態はそうなっている。目的とするところまで到達するにはこれはえらい騒ぎだなと私は思うんです。

 税財源の移転ということに関しても、大臣が就任されたときはもう決まっていたからできないといえばそれまでですけれども、本当にそういう地方分権、地方主権が、日本の国の形といいますか、二十一世紀の日本の国のあり方というものの中で一番重要ではないかと私は今考えているんです。それを実現しようと思ったら、少なくとも、思いつきと言ったら失礼かもしれませんけれども、こんな乱暴な市町村合併を含めたやり方というのは少し待った方がいいんじゃないかというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今の御意見の中で、須藤先生、一兆円の話が出ておりましたが、これは基本的には、今回、平成十八年度までの間に四兆円の補助金の削減、それに見合う税財源の移譲というところでありまして、初年度一兆円ということが出たものですから、そういう数字合わせになった感は否めないところだと思っておりますが、では逆に、あれが出なかったら三年後四兆円できたかと言われると、それはなかなか、二年先の話だから取り急ぎは何もせぬでとずっと流れる可能性もあるわけで、やはりそれなりの意義はあったんだと思っております。

 ただ、基本的には、税源が移譲される部分と補助金が切られた部分との差が大きかったということは、いろいろな面で御指摘のあるところ。特に自主財源の少ないというか、交付税比率の高いところほど痛みが多かったという点は各地でいろいろ言われているところだと思って、私もそれは十分理解しておりますが、これを仮に一挙に進めるということにしていった場合に、今急激にやるのはという御意見は私も決して反対するわけではありません。地域によって、これまた一挙に進めた方がいいと言われてくる首長さんもいらっしゃれば、もうちょっと時間をかけろという首長さんもいらっしゃいますので、これはいろいろなんです。

 ただ、何となく、補助金を削減しないと税源を渡さないという形より、税源を先に渡してくれたらそれに見合って補助金を切りますと。優先順位のつけ方を、先に三兆円ください、それに合わせて補助金を切ります、補助金を切り損なったら返しますというのは、全く逆の言い方をしているだけですけれども、行き着くところは同じです。そういった考え方を含めまして、私どもとしては、この考え方ができるできないの問題もありましょうが、基本的には、地方がある程度自主財源というものを持たない限り、今言われたように、なかなかそれがやりにくいというのは、仕事をするにしても会社を始めるにしても何にしても、先立つものが要ることは確かです。

 そういった意味では、その与えられた財源をいかにうまく使うかというのは確かにその町の首長さんであり、会社でいえば経営者の才能によるところが大きいとは思いますけれども、基本としては、全く無手勝流でやれるわけではありませんので、自由裁量権を持った上で、ある程度それを裏づける財源も要るという上での町づくり。しかし、同じ条件がそろっていても、それを自分でイメージできる、想像できる、イメージしてもそれを実行できるということはまた別な話ですから、そういった意味では各地でいろいろ能力によって差が出ることも確かだとは思いますが、基本として、今言われたように、財源の話と権限の話、この二つは避けて通れぬところだと思っております。

須藤委員 地方分権を、権限と税財源を移転するということで、手続あるいは優先順位、こういったものに余り陥ってしまいますと、その中でしか物事を考えられなくなってしまうんじゃないかという危惧を私は持っています。

 もう少し包括的に地方に、わかりやすく言えば直間比率も全部含めて、それから国税と地方税のそういう区分けもしっかりして、一対一なら一対一ということでぼんと移したとします。とりあえず税源といったものを移したとする。ただ、果たしてそれだけで地方が自分たちの思うような町づくりができるかというと、まだまだ私はこれは難しいと思います。

 というのは、日本の首都である東京が非常に肥大化というか極大化して、世界の中の大都市間競争というにはそれなりに意味があるんでしょうけれども、同じような構図で、県の中心となる市にやはり集まっている。同じ構造ですよね。産業もそういったところに集まってしまって、人口は地方から都市へ集中している。やはりこういった構造を積極的に変えていかない限り、多少の税財源移管だけではできないと私は思うんです。

 今回の地方分権論をさまざま聞いていても、どうも、総合的に産業の配置であるとか日本の構造をそこまで変えるとかという意味での仕組みといいますか、そういったことが前面に出てきていないように思うんですね。それは、縦割り行政のいわゆる弊害と言われるのかどうかわかりませんけれども、やはりトップである総理大臣が、あるいは所管である総務大臣が、そういった観点からこの市町村の合併ないし分権というものをとらえて施策を遂行すべきであると私は思うんですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今言われたところで、先ほどの質問の中にも出ていましたけれども、昔は、よく言われますように、千葉に銀座があったかどうか知りませんけれども、新潟に行っても銀座、福岡に行っても銀座、福井に行っても銀座と、どこへ行ってもみんな銀座をくっつけるわけですよ。なぜか。東京のまねをしたいんですよ。私は基本的にそうだったと思っております。東京みたいになりたいというのがほとんどの方の夢だからああいうような名前がついたんだ、私はそう思っております。

 また、昭和三十九年に新幹線ができましたときの新幹線の駅の外壁を見ていただくと、東京駅も大阪駅も京都駅もみんな同じです。みんな同じだから、どこどこで壊れたら別のところから持ってきて、ぱちゃっとはめたらそのままはめられるようにする方が効率がいい。安い、軽い、早い、これは当時の絶対の正義です。

 しかし、今になってくると、それは特徴がないといって、木造建築をそのまま残せとか、東京駅のれんがは効率が悪くてもそのまま残せとかいう御意見は、明らかに今までなかった時代としての大きな変化なんだと思います。それに合わせて、やはり地方でも、従来と同じような、どこどこと一緒じゃなくて、おれのところにはおれの特徴のある町をという意見が間違いなくふえてきた。

 千葉都民とか埼玉都民とか、いろいろな表現が今ありますし、この間も奈良府民と言われましたかね、委員会でそう言われたことがありますが、大阪とくっついているからそう言っておられるんだと思いますけれども、そういった新住民と旧来からおられる旧住民との間の融和がなかなか図れぬ。しかも、新住民の人口比の方が六割を超えた。そうすると、旧住民は傍らに追いやられるというような状況の中でどうするんだというような話は、ほかのところ、そういった大都市を近くに持っておられる県でないと理解ができないところなんだと思います。

 そういった地域に合わせて、やはりそれぞれ、その地域をおれたちはどうするということを政府に聞かれても、または総務省に聞かれても、これは地域の住民の選択の話なんだと思います。

 そういった意味では、やはり首長さんなり市議会議員の方々は、そこのところをよほどよく考えて住民としてのコンセンサス、コミュニティーとしてのコンセンサスというものをつくり上げる努力をされないと、千葉市に合併するか否かというのは投票だけで安易に決めて大丈夫かとか、どこどこと合併するのもとか、私どものところにその種の話は毎日いっぱい参りますので、そういった話はそれぞれ皆地域であって、十二対十二でちょうど二つに割れて、どうすればいいと、そんなことおれに聞いたって知るかと言いたくなるような話を含めて、いっぱいあります。

 しかし、最終的にいつも申し上げるんですけれども、それは総務大臣の仕事じゃないでしょう、住んでいるのはおれじゃないので、あなたが住んでいるんだから、あなたの子供なり、あなたの孫なりなんなり考えられて、決めるのはおたくなんじゃないんですかと言うんですけれども、まあそうなんだけれども、わらをもつかむ気持ちで、ちょっとアイデアだけかせとかいうような話でお見えになる方も、おとといいらっしゃいました。

 私ども、正直申し上げて、須藤さん、本当に、やりやすくするというところまでが私らの役目でありまして、そのやりやすくなった結果どうするか。やれないから、やれるようにやりやすくしろというお話には私どもは積極的にこたえようと思っておりますが、どうやればいい町になるかというのは、私たちがいい町と思っても、それはその方にとってはとんでもない町であるかもしれません。コンビニなんか絶対認めないというフランスの町みたいにしろ、しかし、コンビニが一つもないから、田舎と思われるから、せめてコンビニを出せ。これは全く同じ町で言われた話なんで、私ども、正直、すぐ近くでこれだけ意見が違うのは、同じぐらいの年齢なのにと思ったことが昔ありました。

 そういった意味では、須藤さん、これは本当にその地域でみんなで真剣に、改めて、何となく住んでいた町だけれども、生まれ育ったところだから何となくだけれども、よく考えて、おれの町はこんなところがほかの町よりはいい、おれがここにずっと住んでいる理由はこれなんだというような話を、一回まじめに、家族で、コミュニティーで、学校で、いろいろなところでやってみた結果つくり上げられていくものなんじゃないのかなという感じが、私の、この役所に来て半年少々になりますけれども、その間、随分いろいろな方々からお話を聞かせていただいている中で感じ取っているところでありまして、最終的にはそこに住んでいる住民が決める、これしかほかに言いようがないのかなと思っております。

須藤委員 今お聞きしまして、まあそうだろうなという感じもしているんですけれども、そうしますと、国といいますか、総務省でやることは、やはり地域が自分たちで物事が決められる、自立できる、自治ができる、そういった環境をいかにつくっていくかということが仕事ですよね。どういうものをつくるかというのは自分たちで考える、これは当たり前だと思います。

 その環境をよくつくっていくという立場を考えますと、今回の三法案、特に、県に対する、どちらかというと市町村合併の推進の後押しをさせるような機能といいますか、位置づけですよね。条文上はそうなっているような気もしますし、実態もそうなっている。というのは、既に、各都道府県でそのための準備を、予算を持ったり、そういう準備をしていますから、従来型の、いわゆる上級官庁が下級官庁に、はい、やれというような流れというのも当然出てくる。そうすると、今大臣が言われたような十分な環境をしっかりとつくっていくというところと、趣旨が外れるというよりも、やり方がちょっと違うんじゃないかなという部分も私は感じております。

 これは結構重要なところで、子供が大人になっていく途中で、親がちょうどいいところまで引っ張ってあげるのはいいんだけれども、強制的にやれば、自分から伸びようとする力は当然なくなってくるわけで、その辺のあんばいといいますか配慮というものが、今の合併論にかかわる法制度整備に関しては、私はちょっと強硬かなというふうに感じます。

 それに関してはまた同僚議員がいろいろな角度から質問をするでしょうから、おいておきまして、地方の市町村合併に関して今大臣が言われました。

 実は、ちょっと事務的なことになりますけれども、私の住んでいる四街道市というところは、人口が八万四千人ほど。昔は二万人ぐらいだったんですね。昭和四十五年ぐらいから、住宅、宅造がどんどん進んで、今日になりました。ですから、新住民と言われる方がたくさん入ってきて、それによってコミュニティーが形成をされて、今日に至っています。そして、市町村の合併という大きな問題が降りかかってきて、今、合併するかしないかという、そこまで来ています。

 先般、市議会議員選挙がありまして、定数二十四名のところ、十二対十二ということになりました。さらに、賛成、反対の両方の得票数の差が千三百三票。ですから、完全に市を二分する形で、意見が真っ二つに割れているんです。

 それで、三月議会を開催しましたら、十二対十二ですから、どちらも議長をやりたくない。議長を出せば一減りますから、合併の議会の議決をされてアウトだということで、議長を出さなかった、出せなかったんですね。そうしましたら、三月議会が流会になりました。何も決めていないんです。市長の方で、今さまざまな、専決であるとか、基本的な予算を組んで執行しているわけです。

 実は、五月十六日に住民投票があります。それに向かって、双方もう大変な騒ぎで、町を二分して今やっています。住民投票、これは法的なものではありませんが、その後に六月議会で賛成か反対の議決をしなきゃならない。しかし、恐らく六月議会は、下手をするとまた流会なんということになるかもしれないですね。これはわかりません。

 そうすると、これは、市長は合併賛成派なんですけれども、どうするのか。今の市町村の合併の流れといいますか、法律で定めた範囲内では、千葉市が議会の議決をした場合、四街道市は市長が合併しますよという協定を結ぶのか、そして、それが県に上がって、国に来て、大臣のところに来て、そうしますよという判こを押すのか。この辺は、事務的なことですけれども、どうなるんでしょうか。

大野政府参考人 今のお尋ねで、基本的な流れを再度、御存じだと思いますけれども、申し上げますと、総務大臣の方に合併の協議が来ることになるわけでございますが、当然のことながら団体意思というものが確定していなきゃならないということになりますので、千葉市議会もそうですし、四街道市議会も、それぞれ議決をしていただくということが当然必要になるわけでございますね。

 今お話しのように、十二対十二で議長の選出もできない、こういうふうなことになっているということでございますけれども、いずれにいたしましても、何らかの形で、原則的には議会の議決を経た上で申請をしていただくということは当然のことだということでございます。

須藤委員 当然というのは、手続として団体意思が議決をされなければ、逆に言うと、それは無効といいますか、受け付けられないというふうに解釈してよろしいんでしょうか。

大野政府参考人 そのとおりでございます。

須藤委員 これは、今回の市町村合併の一つのケーススタディーであると私は思っているんですが、このように、今回の市町村合併の進め方といいますか、持つエネルギーの大きさというのははかり知れないものがあって、今回合併するにしてもしないにしても、何十年、下手するとコミュニティーの分断が生じかねないと私は見ているんです。

 つまり、先ほどから私が、ちょっと乱暴じゃないかとか、そういうふうに具体的なケースを当てはめていくと困っているところもたくさんあるというのは、こういったことも指しておるわけですけれども、地域をつくるということは、ただ単に、行政効率であるとか財政効率であるとか、あるいは空間をどうくっつけたり離したりするかということだけではなくて、私は、もっともっと本質的な部分で大切なことがあるんじゃないか。

 それは何かといいますと、やはりそこに住んでいる人が住んでいる地域をどうするかという、簡単に言えば、ふるさとを愛するというか、地域を愛するという言葉で語られると思うんですけれども、この部分が非常に大事で、ややもすると、行政のいわゆる機能を求めるためには、だれが市長をやってもいい、首長をやってもいい、どこが行政の中心になってもいいというような考え方に陥ってしまうと、本当にその地域をつくっていくのは、ではだれなんだという話になると思うんです。この欠如が今の日本社会全体を覆っているから、日本の国是みたいなものが定まらないというふうに私は思うんですね。

 ですから、その意味では、地域づくりは国づくりだ、もうここ二十年ぐらい私は言ってきたんですけれども、肝心かなめのこの部分が、欠落とは言いませんけれども、かなり意識が薄くなっていると私は思う。今回の市町村合併に関しても、この部分をもっともっと私は強調されるべきだというふうに思っています。

 それで、実は、過半数という話になりますと、特に法的な拘束力はありませんが、住民投票で一票でも多くをとった方が勝ちだなんという話になりかねないんですね。

 実は、きのうかおとといの新聞で、地元の市長が、過半数、反対派がいたら、いわゆる合併の協議といいますか、書類は提出しないという話が新聞に載ったんですね。それまでは賛成派の人たちは、何が何でも、一票でも賛成が上回れば、それはもう合併していいんだというような話が高らかにうたわれていた。

 この妥当性ですよね、合併する、しないの妥当性。今申し上げたように、地域はだれがつくるんだという主体性を持てば、合併するということは、どちらかというと、私は、そういう考え方から少しずれているんじゃないか。合併しないということは、合併賛成、反対じゃなくて、自分たちの地域は自分たちでつくっていくんだという主体性のあらわれなんですね。

 それが、賛成に対すれば反対という話であるだけであって、基本的には、自治は自分たちでやっていく。だから、交付税等が足らなくて町づくりができないのなら、自分たちの住民税をもっと上げても、自分たちの町は自分たちでつくろうじゃないかという声も盛んに出ているわけです。これは日本全国、どちらかが圧倒的な多数で票が出るといいますか、住民投票で決められればそれはそれなりの意味があるんでしょうけれども。

 私は、合併する、しない、自立でやっていくんだ、反対をするんだという部分のところは、過半数であればいいんですが、賛成する側、合併するんだという方にとってみれば、やはり五割ということはおかしいなと。妥当性としては、六割、七割ぐらい、合併してもいいよと言う人がいれば、それは時代の流れであり、恐らく地域住民も納得してくるんじゃないか。五割を超えたぐらいで、では合併してしまおう、これはコミュニティーが相当がたがたくるんじゃないかと思いますけれども、大臣の所感はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 国鉄に福岡駅というのはないのは御存じかと思います。博多駅というんです。明治の時代に、福岡市にするか博多市にするかは、えらいもめました。選挙になったんです。結果的に、一票差で福岡市になった。しかし、国鉄駅は福岡駅はだめ、博多駅にする。当時の政治的妥協の産物であります。したがって、福岡市という駅はありません。政令都市で、その市の名前の駅がないんですから、福岡には。今日まで皆、おもしろおかしく、それはそれなりに楽しんで、福岡駅なんというのを言うと、ああ、こいつは田舎者だなと思ってばかにして、みんなおなかの中で笑っているのは、今、博多区というのはあるんですけれども、福岡市民の結構プライドでもあるんです。

 基本的にはやはり、須藤先生、今の話も深刻に考えていけば、突き詰めていけば、それこそ住民の意思で最終的に決めなきゃいかぬということで、多分そこに答えは落ちつくんです。その意思をどうやってあらわすのかといったら、もう投票という以外にほかにどうやってやるんだということになると、五十一対四十九で決まりということに、行き着くところはそこになるんです。

 少なくとも六割、七割というんであれば、今回は合併を延ばして、さらにもう一回やるということにならぬと、私の感じですけれども、多分、おたく暫定予算組んでいるでしょう。三月に議会が開かれなかったら、暫定予算です。六月に開かれなかったらまた暫定予算。それで町長さんが、多分、専決やったんだろうな。町長経験者がそこにいるけれども、それしかこれは手がないですものね。それで、終わってから、事後承認ですか、多分、そういう手口でやるんだろうけれども。

 これは住民としては、抱えた仕事の予定が全部とめられちゃうから、大変ですよ。そういった意味じゃ、もうどっちでもいいから早うせいという話になる可能性というのは高い。否決になるにしろ、どっちになるにしろ、そこらのところも、十二対十二で、外から見ていれば、一つの今回の合併の例として、おもしろいといえばおもしろいけれども、そこに住んで、四月からすぐに仕事が来る予定のところは全部とまっているはずですから、それは結構深刻なことになりますよ。

 そういう意味では住民のことを考えているとはとても思えぬけれども、そこらのところをどう妥協するか、折り合いをつけるかというところなんであって、大臣としては、それは合併ですよとか、合併じゃありませんよと言えるような立場には全くありませんので、ちょっと私に質問されても答えようがないというところだと存じます。

須藤委員 その意味では、大臣の答えが実質的にどうなるか、有効に活用できるかどうかは別として、今回感じているのは、合併特例債がその引き金になっているということは間違いないということですね。期限内にそれをもらうために何が何でも合併してしまおうと、非常に大きなひずみが生まれるというふうに私は思います。これは機会がありましたら、また別の角度から質問したいと思うんです。

 実はあと一点だけ、地域自治区の問題についてなんですが、従来の地方制度調査会の経緯、どういうふうに決めてきたかということを見ますと、今回出されている法案は、長の決め方であり、協議会の委員の決め方であり、私は、これは当初の趣旨といいますか、考え方からかなりずれているんじゃないかなという気がしてなりません。

 これは本来、自治というものですから、下から上がってくるものに対する環境整備であるはずのものが……

佐田委員長 須藤浩君、持ち時間が来ておりますので、短目にお願いします。

須藤委員 いつの間にか上からの指名であり、そして、協議会のところまで委員を首長が選任するという。これなんか、最初の考え方から骨抜きになっているなという気がしてなりませんけれども、よくよく地方制度調査会の経緯、決められた中身、そういったものと今回出されている法案を照らし合わせてみると、私は、余りにも問題を大きく含み過ぎている、その意味ではこの部分は少し考えるべきではないかというふうに思いますが、一点だけお願いします。

佐田委員長 短目にお願いします。

麻生国務大臣 基本的には、短く答えると、第二十七次地方制度調査会の答申の内容を制度化したものでありますとしか答えようがないんです。

 基本的には、こういったようなものを置いておきませんと、大きくなりましたので、コミュニティーセンターを壊すとか、つくるとか、どうかするという話は、その地域の話は全然聞こえてこなくなりかねないというところを考えて、こういったものをつくらざるを得なくなったと思っております。プラスの面からいえば、そういった地域住民の声が吸い上げやすいようにつくってあるというぐあいに御理解をいただければと存じます。

須藤委員 終わります。

佐田委員長 質疑者に申し上げます。持ち時間をしっかり守っていただきたいと思います。かなり時間が経過しておりますので、よろしくお願いいたします。

 次に、高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂です。どうぞよろしくお願いします。

 本日は、民主党ばかりで、しかも副大臣もお見えになられないのでお疲れかとは思いますけれども、ぜひともよろしくお願いをいたします。

 私たち民主党は、一年生でチームを組んで、今、二十一世紀における地方自治はどうあるべきかという問題に取り組んでおりまして、その一環として道州制の方を検討しているところであります。コスト削減とか合理化とか効率化という観点からの分権ではなくて、画一的な中央集権ではもはやこの国は成長していかない、国が地方を管理する体制をやめて、自立した地域の連合体による主体的で多様な、まさに自治の確立こそ今後の発展に必要との認識に立って私たちが今取り組んでいるところです。

 つまり、繁栄できる単位を道州、つまり道州という州ごとに競い合う形で外からの富を呼び込む、成長のエンジンが地域にあるという観点から道州制の導入を考えていて、地方分権という言葉をやめて、地域主権という言葉をできるだけ使おう、先ほど大臣も御答弁の中にそのようなお言葉がございましたけれども、そういう認識で私たちも取り組んでいるところです。

 そこで、まずお聞きしたいのは、大臣として、道州制というものについて、必要性やイメージ等、どのように考えておいでになられるか、教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは今、既に道というものは北海道にあって、昔は、御存じかと思いますが、函館県とか札幌県とか、県があったんです、あそこには。それをまとめて一つ道ということにしてから、もうかれこれ九十年ぐらいたつんだと思います。そういった意味では、北海道として、いわゆる県というものを越えた形で既にでき上がっている例がありますので、そこでどのような形にやってみるかというところは、第二十八次地方制度調査会において精力的に議論が進められているところです。

 ただ、県を越えて合併するという話は、高井先生、簡単に言われるけれども、四国四つまとめてできますかといったときに、例えば東北、ここにいらっしゃるけれども、南部と津軽じゃ人種が違うみたいに、私らが聞いたら両方とも意味がよくわからないという点においては同じなんです。御本人同士は、あれは津軽の者だろうとか南部の者とか、もうむちゃくちゃなことをやって楽しんでおられますけれども、私らの方にしてみれば、どこが違いがあるんだかさっぱりわからぬのですけれども、同じ青森県の中でも八戸と津軽では、八戸が南部、青森は津軽ということで、これまた全然違っておられる話をよく聞きます。

 そういった、先ほどの自主的な地方自治の文化の話と道州制というのは似て非なるところもありますので、これはよほどうまく議論をされないといけないものだ、私どももそう思っております。

 やはり、江戸二百七十年間続いたこの制度というのは、結構話としてはよくでき上がったというか、根づいているものです。九州というのは、筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後、薩摩、大隅、日向、それで九州なんですけれども、そのうち、筑豊はいわゆる筑前と筑後と豊前と三つ一緒になっているんですが、言葉がまたなかなか違うところがあって、まとまらぬ。ところが、佐賀も長崎も肥前だったものですから、今、県が違っていても、ここは実にすんなりいくというのが地域におります実態です。

 こういったものも重々考えておかぬと、歴史や文化というものを無視して、単なる機能的、効率的だけで合併というのは、同じ会社の中に事業部制をやってみたりカンパニー制でやってみたりして、法律も変わったりして、いろいろ努力をされているところなので、いろいろな意味で、この第二十八次地方制度調査会の中でいろいろ議論をしていただければと思って議論をお願いしているというのがただいまの現状です。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

高井委員 今回の法案にも、県を越えた、県同士の合併の話も出ておりますけれども、私どもが検討しているのは、合併という概念ではなくて、道州という単位にして、それで繁栄をする。つまり、四国というところで独立してやっていけると私はある意味で考えていまして、独立した単位ごとに競い合ってやっていくというイメージで私たちは検討しているんです。

 四国は今、GDPでいうとフィンランドと同じだけの経済規模だということを聞いておりまして、そういう点では、一国がそういうふうに成り立って経済を立てておりますので、独立しても可能性としてはやっていけるんじゃないか。御承知かもしれませんが、水、山、川の最高の自然はありますし、農産物も豊かですし、潜在力は大いに四国というところはあるというふうに考えておりまして、今後、もっともっといろいろ議論を深めていきたいなというふうに思っています。

 そういう中で、つまり、国と道州でも何でもいいんですが、国、都道府県、市町村という、今後の仕事というか事務なり、役割分担をどういうふうにイメージしておられるのか。中央政府が担うべき役割、それから、それをどういうふうに絞り込んでいくか、私どもも検討しておりますけれども、大臣の中でお考えがありましたら、教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 細目は大野の方から答弁させますけれども、やはり、今の道になりますと、基本的にはかなり大きいイメージになるんだと思うんですね、道というイメージで。御存じのように、人口割で簡単に割ってみますと、例えば、北海道の武部先生のところの選挙区は端から端まで六百三十キロ、東京から神戸まで六百三十キロですから、それが一つの選挙区ですよ。人口割で割ったらそういうことになるというのは、学者が選挙区を決めると一方的になるという最たる例の一つかと思って、あれができたときに、これは住民にしてみれば多分、見たこともないものという、およそ親近感を持たない選挙区だな、僕はそう思ったんです。

 そういった意味では、今言われましたように、市町村というのは、何となく親近感を一番持つ首長さんというのは、村長さんというのがやはり一番近いイメージ。何となく、市長になるとちょっと冷たい、距離がずっと離れますでしょう。イメージがあるんだと思うんですね。そういった意味では、町長さんというと、何となく一番やぼったいというか、近い。普通、数が一番多いんですよ。

 だから、私の場合も町長が一番仲のいいところなので、いつもその人たちとしゃべるんです。市長は少なくて、うちは村がないものですから、四市十六町なんですけれども、何となく十六町の方が、人口はそっちの方が少ないんですけれども、それでもそっちの方と話がぱっといくというのは、やはり何となく近しいんだと思うんですね。

 そういった意味では、こういった小さなところというのは、とても身近に感じられる町長さんをというのが物すごく大事なところだと思います。大きくやると効率的になることは間違いないでしょう。しかし、効率的になるからといって、それは住民にとってみて、行政相談をいろいろやるにしても何にしても、何となく、自分たちが選んだのは知事であって、県会議員でもなければ町長でも町会議員でもないということになると、かなり距離が出てくることになるという点も実際運営するときには考えておかないかぬところなので、効率だけでやるのは考えておかないかぬところなんじゃないかなという感じがいたします。

 ただ、みんな、よく外国帰りの方は、例えばサクラメントというのが、これはカリフォルニア州の州都ですけれども、サクラメントじゃなくてサンフランシスコやロサンゼルスが州都と思っていらっしゃる方が多いんですが、サクラメントが州都なんです。しかし、行ったことがあるかといえば、ほとんどの人がそこに行ったことはないというのが実態で、それでも別にうまくいっているのは、郡とか町とかいうのがえらくうまく作動しているからというように私は思います。

 そういった意味では、この道州制をお考えになるときには、実にいろいろな要素で、効率だけでやるのは甚だ危険なことになりはせぬかなというのが、正直な私の思っております実感であります。

高井委員 町の方が身近に感じられるというお話もわかるんですけれども、多分に麻生大臣のキャラクターによるところが、おつき合いする中で多いんだろうというふうに思います。市長であっても、御本人が身近な方は多分お近いんだろうし、私なんかはそういう印象を持っているんですね。

 実は、お聞きしたかったのは、地方自治に対する国の関与をこれから縮小していこうというふうにお考えであるのかどうか。国の役割を、地方に向けて本当に仕事をちゃんと渡していこうとお考えであるのかということをお聞きしたかったんです。

麻生国務大臣 基本的には減らす方向、その分だけ独立する、親離れとか子離れとか、いろいろな表現はあるでしょうけれども、そういったのが基本だと思います。

 細目は大野の方から答弁させますけれども、基本的には、独立するというのはそういった形で、それは、突き放すとかそういうんじゃなくて、国の関与がなくても自由に独立できるような形の財務内容とか、そういった規制とかいうようなものにしていくのが流れだと理解をいたしております。

大野政府参考人 今大臣がお答え申し上げたようなことでございますけれども、一つの考え方の目安として、前回の二十七次の地方制度調査会、この答申の中でも補完性の原理という表現が使ってございますけれども、市町村、仮に基礎自治体というふうに言いますと、できるだけ身近なところでいろいろなサービスが提供できるようにしようということで、まず基礎自治体というものを役割分担として重視をする。そこで、この基礎自治体でできないものについて、広域自治体、仮にこれを都道府県とする、あるいは道州というふうに言うかもしれませんが、そういう広域自治体でやる。さらに、そこでもできないもののみを国がやっていく。こういうふうな考え方があります。

 そうなりますと、おのずと国の仕事というのは、つまり、国としての存立にかかわるような、外交とか防衛とか、あるいは通貨の問題とか、そういったものにだんだん限られていくのではないか。そういった考え方を持ちながら、これから地方制度の議論をしていただきたいということで、調査会にもお願いをしているわけでございます。

高井委員 私の方も、ある意味その考え方には賛同しまして、もし道州ができるのであれば、国と道州というのが、どちらが上という形ではなくて、別々の機能を果たすものとして存立していけばいいなというふうに考えております。

 次に合併の話に移りたいんですけれども、先ほど大臣も、町村の方が身近だといみじくもおっしゃいましたけれども、そうであるならば、そもそも、では何のために合併を推進するのか。合理化のためであるのか。今回の合併三法は合併を進めるための法案だというふうに認識しておりますけれども、その点、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今回の合併の本来の目的というものは、基本的に、地方自治体というものが自立できるというところが本来の目的であります。

 ではなぜ自立するかというと、自立した方が、その自治体における自由裁量権の裁量幅がふえるということになるから。では、自由裁量権の幅ができると何がいいかというと、それは住民自治ができるということを意味しますので、それを援助するためにつくられたいろいろな制度で、今回の法律、地方自治の三位一体等々、いずれもその話であります。三位一体でいけば、少なくとも、国税でありました税金を地方税に移譲させたというところは、明らかに従来にはなかった大きな変更だと思っております。

 そういった意味では、町のままで、物すごくスリム化して、今でも三割自治じゃない、おれのところはおれのところで実はという企業がおありになって、町と合併するのを拒否しておられる地方も、実は全国には幾つもあります。そういったところは、総じて皆、町長さんの意識もそういう意識がおありな上に、かつ、それを補えるだけの、財政の面におきましても、またいろいろな面におきまして有利な、地理的条件も確かに有利ですけれども、そういったところもあることも確かです。

 私どもは、申し上げましたように、独立ができるということは、高井先生の言葉をかりれば地域主権ということにより近づいていくために、地方が独立しやすいようにするための手段としての三位一体もしくは今回の合併促進ということだと御理解いただければと存じます。

高井委員 二十七次の地制調の答申の中では、さっき大臣がおっしゃったように、基礎自治体は自立性の高い主体になることが必要であって、これにふさわしい十分な権限と財政基盤を有するものとする必要があるというふうに述べられていますけれども、もうちょっと具体的に言うと、これはどういうことなんでしょうか。

麻生国務大臣 ちょっと取り違えているかもしれませんけれども。

 住民に一番身近ないわゆる総合的な自治主体、行政主体として、やはりこれまで以上にその行政主体が、何となく三割自治とか二割自治とか言われるようなことではなくて、きちんとした十分な権限と財源というのが一つのキーワードだと思っております。

 もう一つは、御存じのように、行政手続オンライン化法という法律が昨年の二月に通っておりますので、地方の自治体におきましても、書類に関するものがすべてオンラインで接続できるということになりますので、県とか国から来る書類というものは、基本的にはオンラインで、コンピューターでITを使って流れてくるということになります。

 そういったものに対応できるだけの人材もしくは設備に対応することはできますかと言われると、小さなところではなかなかできないところもいっぱいありますので、そういった意味では、身近な事務といったようなものを処理できる基礎的な体力というか、基礎自治体というところにおける行政体で行政処理ができるということを構築する必要があるんだと思っております。

 ここのところは物すごく大きなことでして、給与計算から何から、少なくともこのオンラインである程度タイプができ上がると、それに合わせればしゃんと出てくる形になりますので、人がかなり削減できることははっきりしていますし、その分だけ人件費は浮かせることもできるでしょう。その人を別の、フロントオフィスに回せる、前の部分で住民の行政サービスに回せるところもあろうと思いますので、そういった意味では、地方分権とか地域主権というのを推進していく上で、この種の話というのはすごく大事なところだと思っております。

 やはり財政基盤の強化というのは非常に不可欠なものだと思っておりますので、私どもとしては、市町村合併というのはそういう一つの手段として、引き続き継続をしていきたいと思っております。

高井委員 さっき大臣がおっしゃったようなことが、合併ができれば実現するだろうという思いで、多分、合併を進められているんだろうと思うんですが、実は、きょうの朝日新聞にも載っておりましたけれども、「合併新市 苦い現実」というタイトルで載っていました。

 合併によっていろいろなサービスが身近になったり、よくなるだろうという思いで合併したのに、少し紹介させていただきますと、例えば茨城の潮来市というのは、財政難が続いて、水道料金をとうとう値上げすることになってしまった。当初は上げないと言っていたのが値上げすることになってしまった。香川県の東かがわ市というところは、最初、特例債で必要なものを再開発していこうというふうな計画があったにもかかわらず、財政難の現状が見えてきてやめることになった。最後に、岐阜の山県市というところでは、つまり、小規模で合併した市町村が、そこの役場の職員がいなくなり、商店街にも人がいなくなり、身近に接することができるどころか、やはり過疎化が進んで、どんどんどんどん町が寂れてしまった。

 こういうふうな現実を訴えられている市町村が、現実的に今あるというふうに思います。そういう点に関しては、どのようにお考えになられていますでしょうか。

麻生国務大臣 三千もございますので、いろいろな例はあろうかと思いますが、それでは、今の例がありましたところは合併しなかったらどうなっていたかといえば、もっとひどいことになっていたかもしれぬということにもなりますので、これは高井先生、立場上、個別の例でこれはこうと、具体的な現場を知らないでわかったようなことを言う立場にはありませんけれども、少なくとも、したからという場合としなかったからというのと、両方の例を言わぬとなかなか難しいところだと思います。

 合併したからすべてよくなるというわけでもありませんし、合併しないということを決めて大いに頑張って、財政難をこらえるために徹底してスリム化しましたというようなところ、収入役を一人減らしたとかなんとか、いろいろな例はもう数え切れなくありますけれども、そういったようなことをした結果、いわゆる職員の意識も変わったとか、そういったことからもろもろ複合的に生み出されるものの結果だと思いますので、この例だけ引いてどうかと言われても、なかなか答える立場にないと思っております。

高井委員 私も、確かに、この例がすべてだ、合併は全部失敗したというふうに認識しているわけではもちろんないんです。ただ、こういうふうな自治体の悲鳴が現実的にあるよということを承知していただきたいと思うのと、やはり自治体の中に、一生懸命、今、全国の市町村会でもそうですが、いろいろな働きかけが、悲鳴が上がっているというふうに思っています。

 恐らく大臣も御認識であろうと思いますけれども、もはや国に頼っている時代じゃなくて、自立しようと思っている自治体の長ほど懸命に努力しているわけであって、それに関して、私ども政治家の立場でも、省の側でも、十分に声にこたえられていないんじゃないかという思いがあるんであります。そうした中で、合併をとても急速に進め過ぎている矛盾がいろいろなところの問題点に出てきているんじゃないか。そういう声を拾い上げながらぜひ合併を進めていただきたいなと思うんです。

 総務省として、基礎自治体の位置づけを、人口要件で基本的には区分しようと考えておられるのか。私の意見としては、人口要件、人口規模にかかわらず、いろいろな要件を加味して基礎自治体として位置づけてほしいというふうに思っているんですけれども。

麻生国務大臣 基本的に、人口が約五千人以下の町におきます一住民にかかります行政経費というのは、全国で見ますと、約百三万五千円ということになります。人口が五千人から一万人ぐらいの間になりますと、六十二万九千円に行政経費が下がります。そして、一万人を超しますと四十三万八千円ということに、人口がふえるに従いまして一人頭にかかります行政経費が下がる、数が多くなれば、同じ人数でそれができますのでそういうことになる。

 お断りしておきますが、これは平均です。平均で、地域によって違いますので、若泉先生みたいに優秀な町長のいるところはがたっともっと安かったりします。これは人によって全然、経営者の能力によって違いますので一概には言えないんですが、今申し上げたのは、グラフとして出せるところなんです。

 そういった意味では、ある程度市町村の規模が一定なものを有しておいた方が行政経費が下がるという面は否めない事実ですので、基礎自治体として、一応の目安として一万人ということを、これを法律で書くというお話でしたから、法律はやめた方がいいと。法律というのは縛りがきつ過ぎるし、法律ですと、今度はつくった本人より後で勝手にその一万人という数字だけがひとり歩きし始めるので、先ほど大野の方からも答弁申し上げましたように、二町合併して、片っ方は四千、片っ方は五千、合併したら九千だった、だから一万人以下なんか絶対認めないとか、あとさらに千合併しないと認めないみたいな話になるのはいかがなものかということで、私どもの方の指針として、一万人を目安という言葉を使わせていただこうと思っております。

 ただ、島とか山村の中で、なかなかそういった結婚の相手、合併の相手がいないところというのも出てまいりますので、そういったところも考慮していかないといかぬところだと思います。それは別の意味で、地理的条件というものを十分に考えてやっていかねばならぬものだと思っております。

高井委員 お話からも、やはり合理化とか財政的な観点からの合併というのがとても大きな要因を占めているというのは思うんですけれども、やはり本当に、大臣がおっしゃったように、人口規模だけにこだわらず、町村会が提案されているような例えば市町村連合とかも考えて、合併がまずは強制的にならないように、一万人以下の小規模の町村を人口規模で決して切り捨てることがないようにお願いしたいというふうに思っています。

 先ほど稲見議員からの質問にもございましたけれども、都道府県の知事が合併協議会設置に対するあっせんや調停ができるということが今回の法案に入っていますが、これもぜひとも強制しないようにお願いしたいというふうに思っています。一万以下の自治体の解消のあっせんを知事や都道府県の首長がなさることになっては、やはりとても強制的になってしまうと思いますので、ぜひとも御配慮をいただきたいなというふうに考えておりますが、その点、確認だけよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 基本的におっしゃるとおりなんであって、これは強制力を持っているわけでもありません。代執行ができるわけでもありませんので、あくまでも、基本的に自主的にやっていただく。

 ただ、住民はみんな賛成していても、あの町長とだけは一緒になりたくない、私のところのある長の話ですけれども、あいつがやめたら、来年の五月、選挙であいつが負けたらおれたち合併してもいいとか、わざわざ大臣室まで来て言う話かと言いたくなるような話をまじめにする長もあります。だれかが口をきいてもらわぬとどうにもならぬ、代議士で何とかしてくれって、担当大臣がいるのにできるわけがない、だから知事に頼めという話をしたんですけれども、だれかが口をきいてもらわぬとなかなかできないというところが幾つも現場でありましたものですから、そういった話が今できておりますが、強制的にするつもりは全くございません。

高井委員 麻生大臣のお話は大変おもしろくて、引きずられてしまいそうなんですが、話に取り込まれてしまいそうという意味なんですけれどもね。変な意味ではございませんので。

 財政の問題からいうと、すごく大事な問題である議員年金と議員の在任特例についての御質問に移りたいと思います。

 在任特例ができたのは、私がお聞きしているところでは、合併後もとの小規模自治体の声を議会に反映できなくなると困るという観点から在任特例を設けたというふうにお聞きをしているんですが、この趣旨で正しいんでしょうか。

麻生国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりです。おもしろくもどうもない答えで済みませんでした。

高井委員 ありがとうございました。

 ということは、今回の法案に合併特例区、地域自治区というのも上がっていますけれども、地域自治区、合併特例区、両方ともやはりこれから小規模市町村の声を反映していくためにできたというふうに考えております。その整合性というか、二重の意味で、こっちもでき、こっちもできというふうに、財政的な観点からすれば非常にむだなんじゃないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、協議会等々の方には私どもは無給を考えておりますので、財政的にというようなことにはならないと思っております。

 地域を代表するということで、小さなところがたくさん集まった方がわかりやすいと思いますが、二市八町なんというところで合併いたしますと、町会議員、市会議員だけで百八十何人になります。それが、法律でいきますと、人口で約二十何万ですから三十何人の市議会議員の数になりますので、簡単なことを言えば、五分の一か六分の一になるという話です。多分、ある町はゼロということになる可能性が非常に高いというのがありますが、そういうところの代表者としてはとてもじゃないということで、少なくとも、地域自治区等々、地域自治会等々では議会においての発言権を有しているわけではありませんので、やはり議員として自分たちの地域の話をということで、ある程度期間を延ばしてくれと。

 一番大きな例は、北九州市が五市合併したときに、たしか政令都市が二年間延ばしたのが昭和三十八年から四十年にかけてだったと記憶しますけれども、そこはそこそこうまくおさまったところだったとは思います。

 これは高井先生、本当に難しい話でして、話が飛ぶようで恐縮ですが、ここは戸畑、若松、八幡、門司、小倉という五つの名前を残してそのまま区の名前にしたわけです。今回も、それがいい、それがなくなるのはよろしくないという御意見に基づいて区を残すようにしたんです。北九州市、私は今選挙区じゃないんですが、昔の例でいきますと、ここは小倉と言えば通じるものですから、どこからですかと言ったら、北九州市からですと言う者は職員以外いません。みんな八幡で通じますから。戸畑で通じますから。どこからですか、戸畑ですと。だから、北九州市という名前は全くネーミングの失敗だと思いますけれども、区の名前としてはそっちが残っちゃったという形になったんです。

 私は、それがありますものですから、今回もきちんと名前を残した方がよろしいというのは、私も気持ちはわかりますし、旧住民の方々にしてみれば特にそうだという感じが残りますので、これはそんな簡単になくなるものだとは思いませんけれども、名前が残らないから合併に反対という方も随分いらっしゃるということでしたものですから、こういった形にさせていただいておるという経緯で、いわゆるこういったものをソフトランディングしていくようなことが主たる目的というように御理解いただければと存じます。

高井委員 名前を残すという点で特例区を設けるという趣旨もよくわかるんですけれども、協議会のメンバーには、報酬を払わないことができるという規定で、基本的には払うような形になっておりますよね。今の御答弁だと大体のところは払わないんじゃないかというような雰囲気だったんですが、私は、決してそうではなくて、恐らくほとんどのところは払うようになるんだろうというふうに考えています。

 また、その件とは別に、では在任特例というのはなぜ必要なのかというのが、どうしても私には腑に落ちないのであります。実際のところ、在任特例というか、議員がずっと続くのはおかしいということで、これも東かがわ市でしたか、去年の十一月に、住民投票があって、議会を解散して再選挙ということになった例もあります。そのほか、私も少し在任特例について調べてみますと、幾つかの自治体というか住民の側から反対の声が出ている。この点についてどのように認識しておられますでしょうか。

大野政府参考人 在任特例は、先ほど大臣が申し上げたように、それぞれの市町村の合併した後の旧の市町村の声が反映されなくなるのではないかというふうなことで、むしろ住民の方から、しばらくの間自分のところから選出される議員を置いてほしい、こういうことから、いわば合併の阻害要因あるいは合併の障害になる要因を除こう、こういうために考えられた制度であるわけです。

 それによって在任特例が使われたとしても、合併しないよりは、いずれ議員の数は減るわけですから、それの方がいいじゃないか、こういう考え方もあって、障害除去の方策という位置づけであるわけですが、やはり最近の情勢は、住民の方々が大変に行政に対する厳しい目を持っておられるというふうになってきまして、当初そういった目的でつくられた制度についても、本当に必要なんだろうか、こういうお考えでさまざまな動きが出ているということも事実であります。

 したがいまして、それこそまさに住民の判断になるわけでありますので、私どもとすれば、合併協議の中で、住民の意向を十分踏まえていただきまして、情報も公開していただいて、決めていくべきものであるというふうに今考えているわけです。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

高井委員 今、住民の方から残してほしいという声が出たというふうに冒頭おっしゃいましたけれども、その割には、在任特例は要らないんじゃないかという声の方が住民の側からも多く上がっているような気がいたしまして、むしろ、合併の障害になる要件を除こうというお答えは総務省としてのお答えで、住民の側から上がってきた話ではないというふうに私は思っています。

 議員の在任特例に関しては一応趣旨はわかりました。そうしたら、議員年金の特例に関してはどのような趣旨で残されるんでしょうか。

大野政府参考人 議員年金の特例も同じような趣旨で、障害除去対策ということで設けたものでございます。

高井委員 財政的に合理化しよう、合併を促そうという話と同様に、むだな部分もふえてくる、非常に矛盾したことがいっぱいあるなとこの法案を見ながら感じています。合併特例債に関してはまたほかの議員に譲りたいというふうに思うんですが、片や合理化し、片や借金がふえるという不思議なことが双方で起こっていて、その矛盾というのは後々大きく禍根を残すんじゃないかなというふうに思っています。

 特に、議員年金の特例に関しては、今、国会の側でも国会議員の議員年金すらおかしいじゃないかという声が上がっている中で、さらに特例を設けるというのは本当に私はおかしいんじゃないかなと。おかしいというか調査が始まっている、自民党の方でもそうだというふうにお聞きしているんですけれども、まさに今、国民の年金の保険料を上げて給付を下げるという法案が審議されていて、積立金のむだ遣いのことも今国会で審議されている中で、この議員年金の特例をすっとこの部分だけ通すというのは、とても非常識なように住民から見て見えるのではないか、これこそ税金のむだ遣いではないかと住民の方から言われるんじゃないかというふうに私は懸念があるんですが、いかがでしょうか。

大野政府参考人 繰り返しになるわけですが、合併をいたします場合に、新設合併でありますれば、そこの市町村の議員の方はすべて首が切られるということになりますね。それから、編入合併であっても、編入される市町村の議員さんは首が切られる、こういうことになるわけでありますね。そこで、それが理由になりまして合併が進まない、こういう例が大変多いわけであります。

 そういうことから、何らかの手当てをしなければ進まないので、先ほど申し上げたような議員年金の特例もできたわけでございまして、合併が進むことによって広い意味での合理化というものが進むということを考えた上でできた便法であると私どもは考えているわけであります。

高井委員 議員年金が欲しいから合併に反対するというのはとても意識が低いのではないかなというふうに思うんですが、そんな議員さんばかりではないと私は信じて、もっと本当に一生懸命地方で頑張っている議員さんもおられるはずですので、いっそのことこれは特例を排除してはというふうに私は考えておりますので、また御考慮いただきたいというふうに思います。

 そろそろ時間が来ましたので、最後になりますけれども、先ごろ市町村サミットというのが行われて、「改革自治体からの世直し提言」というのが採択されたというふうに聞いています。恐らく大臣もお目通しでないかというふうに思うんですが、これは百三十三の市町村の連名で出されて、地方がまさに先々自立していこうというための本当に前向きな提案であって、中身は私たち民主党が目指すところと重なる部分も大変多うございます。地方交付税のあり方の問題点に対する認識とかも、大変私も共鳴するところが多いんです。

 短く申し上げると、例えば地方交付税の改革について、財政調整機能部分を……

佐田委員長 質疑者に申し上げます。

 持ち時間が来ておりますので、短目にお願いします。

高井委員 はい。国税五税分として固定するとか、財政保障機能部分をある程度緊急対策的なゆとりは残しつつ中長期にわたって減らしていく、今年度のような裁量なき見せかけの税源移譲となるよりは、目的の縛りはあるが具体的なお金の使い方は縛らないという形で税源移譲すべきであり、暫定的な措置として、財源移譲特区による目的交付金方式を導入して、目的は縛るが使い方は縛らないという部分をつくるというふうな提言がありますが、特にこの目的交付金に関しては、さきの総選挙で民主党が提唱した一括交付金と同じような趣旨であって、私たちもこの実現を願っているものであります。

 もし大臣の所感がございましたら、最後にお願いします。

佐田委員長 短目にお願いします。

麻生国務大臣 これを短目に答弁するのはかなり難しいんですが、基本的には、交付税の法定税率を高めるとか、総額の将来予測を立てやすくするというのが例のサミットの提言の主眼とするならば、いいことだと思っております、方向としては。

 だけれども、非現実的なところもまたこれには出てくるところでして、交付税の財源保障機能廃止ということを望んでいる市町村長さんというのを私は聞いたことがないので、私どもとしては、短期的に廃止して一括交付金化するという案よりは、私どもから見ますと、地方の権限と責任を大幅に拡大するという観点からですと、これは財源移譲の方がより重要だと思っております。

高井委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

佐田委員長 次に、寺田学君。

寺田委員 民主党の寺田学と申します。

 私は、麻生大臣の話に引き込まれないように気をつけて頑張りたいと思います。

 地方自治の質問をするわけですけれども、それ以前に、国の財政というものは本当に非常事態であるなということは、これから生きていく年代として、ひしひしと感じている部分があります。そういうことを含めますと、本当に地方も甘えていられないな、厳しい現実であるということは、幾ら野党といえどもしっかり認識して、地方分権、地方自治に関して質問させていただきたいと思っております。

 合併は手段であってと先ほどからおっしゃられている、本当にそのとおりだと思います。合併は最大の行政改革、行政コストカットの最大のチャンスというかポテンシャルであるということも、ある種わかり得るなというところではあります。その行政改革のチャンスというかポテンシャルをいかに生かすかという部分は、本当にその首長の判断というか裁量にかかっているんではないかなと自分自身思っております。

 そういう意味も含めまして、昨日、以前知事をやられていた三重県の北川さんのお話を聞く機会がありまして、北川さんも、今はもう地方行政というものは管理ということではなくて経営である、アドミニストレーションではなくてマネジメントだということをおっしゃられていたことも、本当に的を射ているなと思っております。

 電波法のときに、麻生大臣の方から、君は経営というものをやったことがないであろうからという前書きをいただきまして、私も会社時代、事業投資先のマネジメントぐらいはしていたんですけれども、まだまだ経営は足りない。

 麻生大臣の前歴を見てみますと、本当にすばらしい御経歴でありまして、私の生まれる前から経営をやられていたということは、本当に時代と経験の豊富さを感じさせていただいております。そういう麻生大臣の経営感覚と、そして地方運営というものは経営というような視点を持たなきゃいけないということをもってお伺いしたいんです。

 昔から、いじめっ子はいじめられっ子の立場になってみろということを言われているとおり、相手側の立場になるというのは非常に大事ではないかなと思っています。

 もしもの世界で結構なんですけれども、麻生大臣が五万人以下ぐらいの自治体の長で、そして、国の流れとして合併が騒がれているという段階において、周辺町村との息の合い方というのはそれぞれであると思うんですけれども、合併するに際しての基準選び、何をもって合併するかしないかを考えるか。本当にそれは経営感覚だと思うんですよね。麻生大臣も、以前経営されていたときには、MアンドAなりスクラップ・アンド・ビルドなりをされていると思うので、その経営感覚を生かしてどのような基準を持たれているかということをお伺いしたいと思います。

 私としては、少ない経験ではありますが、マーケットニーズ、住民がどういうような行政ニーズを持っているかという部分、そして収益予想、自治で言い直すと、幾らぐらいのお金が来るんだろうかなとか、幾らぐらい使うんだろうかなという収益的なもの、そして合併しないとしたらどうなるんだろうというシミュレーション、そういうものをもって、合併するかしないかを首長は判断するんではないかなと思います。

 麻生大臣の御見解のほどをお願いします。

麻生国務大臣 役人では思いつかない質問だなと思って感心して今聞いていたんですが、親の受け売りというふうでもないから、大したものだと思って感心して聞いていたんです。

 今の話でいきますと、五万人ぐらいの町で合併しないでやろうと思ったら、よほど行政をスリム化するということを考えていかないと、行政サービスを期待する住民の要望にこたえられないということになるんだと思うんですね。したがって、やはり行政の長としては、いかにして行政サービスを維持するかというところが、これは首長として考えなければいかぬ一番だと思います。

 ただ、経営はあくまでも収益の集中、これに決まっていますので、収益を上げるというのが最大ですが、行政となると、これは最大公約数ということになりますので、能力のない人は排除するというわけにいきませんところが行政が経営と大分違うところなんです。

 そういった意味では、行政のサービスをいかに維持するかというのを優先順位の一番に置いて、では、そのためにどうするということになったときに、いわゆる町の役場の内容がむだなところでいえば、これは組合との話し合いもつけなきゃいけませんでしょうし、いろいろな形で行政をスリム化して、これしか収入がない、地方交付税もこれしか来ない、入りはこれしかないという前提で、出を制する以外に手がありませんから、基本的にそれをやって、それで現実問題としてできないということになれば、その現実を見せて、うちはこれしかほかに方法がありません、町会議員、今四十人いますけれども三人でやろうとか、そういったような極端な話を持ち出して、御年配の方々にもちょっと引いてもらって、有能ないわゆるソフト屋さんで町のソフト、行政を全部つくり直してということをやって、それで採算が合うか、入りと出がチャラになるかというところが寺田さん最大の関心事、多分そこから入るんだと思います、自分としては。

 ただ、それができるかねと言われると、私の見た感じで、組合対策また議員対策を考えて、それが市議会で通るかと言われると、なかなか難しいと思いますね。そうすると、ある程度の規模というものを考えた方がということになりますと、近くの、周りのところと語らって、そこらの人を説得してある程度の規模にして、その痛みを少し和らげる方をやった方がいいかな。

 細目詰めたことはありませんけれども、おまえが合併される首長の立場に立って考えろと言われたら、多分そういう優先順位で考えるんじゃないかと存じます。

寺田委員 民間におられたといえども大臣までされると、市議会議員との交渉とかそういう政治的な発想が第一になってしまうのかなと非常に残念に思います。現実論として、そういうような障害というか乗り越えなきゃいけない壁は往々にしてある。

 今回の法案を見てみると、今までは経済的な部分、本当に財政的な部分で合併しましょうよという話だったものを、ある種住民やら議員のメンタルな部分に訴えかけるようなやり方、それのよしあしはまず別としても、そういうような法案になった。恐らく今回、今までの合併の法案を施行してみて、うまくいかない部分はそこだなということで補てんされたのかなという部分はあります。

 先ほど最後に自分が質問の中で聞いたんですけれども、収益性、もちろん、自治体というものは利益を追求するものではないので、いかにもうけるかという発想ではなくて、マネジメントという面では民間企業と一緒だと思うんですね、その求める目的というものは違えども。いかにマネジメントするかという点においては、収益性、要は、いかに入ってきて、いかに使うかということは気になさるというお答えをいただいたと思っています。一番最初に言われたとおり、住民のニーズをいかにして何とかという部分も気にされていた。

 合併するかしないかを考える上で、しないとしたらどうなるだろうということはお考えになるでしょうか。確認の意味を込めてお答え願います。

麻生国務大臣 合併しなかった場合にどうなるかというのは、一番最初に多分考えると思います。現状のままでいこうとした場合にできるかということは、これは必ずその立場に立ったら考えると存じます。

寺田委員 今お答えをいただいたとおり、要は、合併しなかったらどうなるか、そしてこれからの財政的なものはどうなっていくんだろう、そして住民ニーズ、もちろん、今地方分権が進んで国からのいろいろな仕事を自主自立という名のもとで地方がやっていくということがある以上、住民ニーズにどうこたえていくかというこの三点だと本当に思うんですよね。

 そういうような前提を考えてみますと、この合併問題と三位一体の問題というのは本当に切っても切れないような関係なのではないか。今、国の財政というものと地方の財政というものがある種リンクしていて、国がもうこれ以上耐えられません、地方をおんぶにだっこすることはできませんので減らしていきますというのが地方交付税だったと思いますし、そういう部分があると思うんです。

 地方の合併の問題と三位一体というものの関連性はあるかないかという部分について、お答え願います。

麻生国務大臣 三位一体は、基本的には、それこそ補助金の削減、交付税の削減、税源移譲というのを三つ一緒にやるという話で、これは地方の話でいけば質の話だと思います。片や、交付税の話やら何やらは、これは量の話になりますので、両方とも、地方の自治体の強化という意味においては同じなんですけれども、質の話と量の話が一緒になっているところが話をこんがらがらせていると思っております。

 ただ、基本的には、いろいろ地方に税源を移譲していくという形で、いわゆる国税から地方税にという形で、曲がりなりにもこの何十年間かの間、初めて地方税の方に直接来るということ、交渉を開始したときはこれはなかなか難しいだろうなと思っておりましたところが、少なくとも来た。その分に関しましては、私は大きな進歩だったと思います。

 問題はやはり、言われましたように、例えば公立保育園の補助金というものをカット、その分だけ地方税として来た。補助金で縛られてくるのか、自分で自由に使える金が来るのかで全く違います。同じ入ってきたのでも全然意味が違うと思いますが、その入ってきた金をどう使っているかということに関しましては、私どもの得ている範囲では、随分、経営感覚のあるなしで違っておりまして、さっさと自分の持っていた公立保育園を公設民営として民間にどんどん渡して、その金を全部自分で使えるようにした町長さんもいらっしゃれば、抱えたまま、従来と同じようにそれを公立保育園に割り振られた方もいらっしゃる。それは、実にさまざまなんです。

 そういった意味では、私は、経営感覚というのでいけば、北川の話、北川は今早稲田の先生をやっているのかな。早稲田も立派なもんやな。ちょっと褒め過ぎか。北川正恭さんの話で言われるとおり、アドミニストレーションからマネジメントへというのであれば、その分は明らかにマネジメントの要素がこれから出てくることは確かだと思います。

 私どもとしては、その面も考えないかぬとは思いますけれども、これは効率だけを追い過ぎると非常にぎすぎすしたものになりますので、ここらのところのさじかげんが首長さんの最も難しいところなんだと思います。

 政治の難しさは、効率だけでいけばいけるところが、効率でなかなかいけず、先ほど言われましたけれども、これは民主主義であります以上、やはり住民代表の議員を無視はできぬという点も考えてやらないかぬところが難しいところだと存じます。

寺田委員 幅広いお話をいただいて本当に感銘を受けておりますが、三位一体の話、質と量の話はこんがらがっているけれども、結局のところ、地方の運営ということに関しては非常に密接であるというお話をいただいたのではないかなと思います。

 そういうことであれば、三位一体改革と市町村合併の問題、ある種関連性があって、そして一つ、今、三位一体の改革においては三年間。これから三年間で四兆円減らしますよ、そして税源移譲もします、そして交付税改革もします、それで残り三年間。そして、今回法案が出て、これは五年間なんですけれども、二年間のタイムラグがあると思うんですよね。

 先ほどの最初の質問に戻りますけれども、もし首長であるならば、これからの収益予想、どれぐらいのものになるんだろうということを把握した上で、そして合併するかしないかを考えるということでは、この二年間のタイムラグ、未知数なところがあるわけですよね。一つの区切り、四兆円の区切り、残り三年間の区切りが終わった後に、いきなり減らされるかもしれないという恐怖感を持って見てしまうと、それは正しい判断ができない。この二年間のタイムラグは本当に大きいと思うんですよね。

 そういう部分というのは、地方が合併することに際して非常に大きな支障を来すと思うんですけれども、いかがお思いでしょうか。

麻生国務大臣 基本的に、合併というのは、いわゆる基礎自治体を強化するというために行う手段であるのに対して、三位一体の方は、先ほど申し上げたように、国税が税源移譲される等々の財政面の話における地方分権という話ですから、これはそれぞれの目的に応じてやるのであって、タイムラグが起きるというのはある程度避けて通れぬところだと思っております。

 それぞれの目的に応じて進めていかないかぬところだと思っているんですけれども、基本的にやはり地方分権を進めていく上で、基礎自治体のいわゆる行財政基盤というものを強くするというのは不可欠な話なのであって、私どもは、市町村合併というものを推進していくということはそれに資することなんだと思っております。

 合併は、確かに市町村合併ということをやりますと基礎自治体というものを強化することに資するということになるんですが、一方、地方分権という話からいくと、その話は、財政面の強化ができないと地方分権にならないんですよ、やはり独立できないから。

 だから、やはりそれぞれ似ているところはありますけれども、基本的には、目的が少し違うところがあります、強化するための手段ということですから。そういった意味では、地方というものを強化するというのが本来の目的でありまして、そのために、合併した方がより強化できる、かつ、三位一体によって財源が入ってくることによって、さらにそこができてくるということになります。

 両方とも、強化という大目的からいけば、地域主権という目的からいえば同じ方向なんだと思いますけれども、それぞれは少しずつ違っておりますので、タイムラグがある程度出てくるということであろうと思っております。

寺田委員 タイムラグが出ることは仕方がないという御説明をいただいたんですけれども、そのタイムラグがあることによって自治体が合併するかしないかの判断に支障を来すのではないかという質問には余り明確に答えられていないのではないかなと思います。

 本当に、財政面、最初に御答弁されたとおり、幾ら入るかということがわかれば、自分の自治体だけで何とかコストカットできよう、いや、もっともっと切り詰められる、交付税はもっと下がっていくんだというような予想、ちゃんとした五年間の予想ができているんであれば、これぐらい減るのであれば隣ともっとくっついて、冒頭申し上げましたけれども、財政カットをするというか、行財政改革の最大のポテンシャルを持ってそれで財政カットに走っていかなければいけないねという判断の二手に分かれると思うんですよ。

 その点において、結局、私はその三年間の見通しすらまだ交付税に関しては全く立っていないんじゃないかなと思いつつ、そしてなおさらのこと、ブラックホールのような二年間があることは、市町村の方も合併するかしないか判断のしようがないと思うんですよ。

 最初の質問に戻りますけれども、住民ニーズを把握することが必要だ、これから地方自治体を強化しなければいけない。強化する必要性は何かというと、国がおんぶにだっこできませんと。そして今地方分権が進んで、国からいろいろなメニューがおりてくる、おりてくるという言い方は正しいかどうかわかりませんけれども、移譲される。では、移譲されるメニューというのは何なんだろうというのは、自治体は当然のこと考えると思うんですよね。例えばの話、教育においてこの分野をやらされる、やってもいいと移譲される、そういうような発想になったときに、では、自分たちの自治体ではできませんね、他と協力しましょうという発想になると思うんです。

 しかし、それが、具体的に何が移譲されるかどうかもはっきりしていない。もしはっきりしているのであれば、今お答えいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今の御指摘の中で、先がよく見えてこぬというところは、いわゆる不安になるところ。ファンじゃありませんよ、不安になるところね。そういった意味で、何となく、これは先行き大丈夫かなという気持ちになるのは、これはある程度わかるところでもあります。

 そういった意味では、今回、二〇〇四年の骨太と言われるものを政府として出されると思いますが、それまでに私どもとしてはきちんとした対応ができるように答えを出したい、それまでに目安がつくような形にいたしたいと思っております、総務省として。したがって、それを見て、ああ、これぐらいになるんだなという。

 私どもにしてみれば、一昨年、交付税はこれくらい減るんですよというような話を一回したんだ。ところが、昨年はわあわあ出てきて、それを何となくいろいろカバーしたので、あのときに、来年はいろいろやられるなと思ったいわゆる経営感覚のあるところは、最初から構えていたものですから、今回は余り大騒ぎにならなかったんですが、余りその種の感覚がなかったところは、ある日突然に弾が飛んできたみたいな形になられたということが今回の十二月の話だったと思いますので、今回はそういったことがないように、きちんと対応していかないかぬと思っております。

 その中の例で、例えば先ほど須藤先生にお答えを申し上げましたときのように、今何となく、税源移譲という話といわゆる補助金の削減という話が、いろいろわあわあ、この差の話が大きくなっておりますが、基本としては、先に税源移譲三兆円、それに合わせて補助金の削減をします。補助金の削減があって税源移譲はやりません、最初に税源移譲。したがって、それに合わせて補助金を削減します。もし補助金を削減し切れなかったら、その分返済します。偏在性のあります税金というのはいろいろありますので、それを使って返済しますというようなことも考えられないわけではないのであって、これは今から財務省やらいろいろ話をせないかぬところかとは思いますけれども、地方自治体というものが不安にならないように、ことしの六月の骨太方針ぐらいのところまでに目安といったようなものを出したいと思っております。

寺田委員 六月までにめどを出すということでした。先行き不安になっている気持ちもわかるということでした。

 最初の部分に戻るんですけれども、本当に麻生大臣が首長であったらどうするんですか、何を考えますかと言ったらば、財政的な部分を考えるよと。住民のニーズというか、これからやる仕事も考えるよと言っていますけれども、現段階では何一つ先行きが見えていない、不安になられる気持ちもわかるという言葉が如実にあらわしているとおり、自治体の方としては、これから何が起きるんだ、どれぐらい減らされるんだと全くわからない状態で、やれ合併せよと迫られている。

 今までの法律であれば、目の前にあめ玉を下げられてぱくっと食いついちゃうところもあれば、いやいや、本当に合併しなければと思っているところもある。本当に、何を基準にして、どのような将来があるから合併するべきかということが全く見えていない状態なんじゃないか。

 だから、総務省としても、本当に合併を推進するのであれば、このような将来になるとこちらとしては想定して政治判断をするので、その上で合併するかしないか自主的に決めてくださいという段階に入るべきだと思うんですよね。

 民間企業であれば、マーケットリスクやら何やらというものはいろいろな指標を見て判断できるとは思うんですけれども、事政治のことに関してみれば、ある種一部の人間の政治判断、一つの政治判断によって大きく方向性が変わる、そういう政治リスクを抱えているので、何とも自治体の方としても判断できないと思うんです。そういう部分は、今、六月までということで、かなり明確なものを出されるんだと期待しておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 加えて、見通しの件で一つお話しさせていただきたいんですけれども、今回、新法の中では合併特例債はなかったんですけれども、それまでは合併特例債という一つの、私にとってはあめだと思うんですが、あめがあった。そこに交付税の補てん措置というものが施されているんですけれども、本当にそれはちゃんと補てんされるのか、約束がちゃんと守られるのかということが本当に非常に不安でなりません。

 昨年の六月の財政制度審議会の中で、地方に税源を移譲する際に国と地方の債務残高を調整するみたいなことを言っている。そういうような理由にかこつけて、今まで交付税措置というものがあったにもかかわらず、いや、それはちょっと政策変換ですということでなくしちゃう。本当にその特例債の交付税措置というものは守られるのかということを、確認の意味を込めてお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 合併特例債を含めまして、地方債というものの元利償還というところなんだと思いますが、元利償還等の経費につきましては、これは、毎年地方財政計画というのが出ますので、この地方財政計画の策定を通じていわゆる歳出というものが決まりまして、地方交付税等必要な地方財源、役所用語でいえばこういうこと、これが一番正確な言葉なんですが、地方交付税等必要な地方財源というものは確保いたします。これは必ず、確保せぬとどうにもなりませんので、今御心配の点に関しましては確保するというように、民間用語で言えば確保されますということです。

寺田委員 続いて、小規模自治体のことについてお伺いしたいと思っているんですけれども、では、その小規模自治体というのは何なんだと原点に返って思うところがあるんですよね。西尾私案の方では一万人以下みたいな言葉を言われていますし、与党の中ではやはりまだ一万人以下という言葉が出ている。

 果たして、人口というもので、一万人以下ということで小規模自治体と定めるのか、それとも、本質的に能力的な問題で、これからの地方分権に耐えられないというような部分をもって小規模自治体と言うか。言葉は変わるんでしょうけれども、そのようにとらえるのか。小規模自治体の定義ということをお話しいただければと思います。

麻生国務大臣 一概にこれが定義ということが決められているわけではありませんが、基本的には人口一万人を目安とするということは、第二十七次地方制度調査会の答申を踏まえて、一応今考えているところなんです。多分僕は、一万人以下の町とか村というのは出ると思うんですね。

 そういったところは、だれにも合併されないとか、合併してくれる対象のない離島とか山村とかいうところを含めまして、いろいろな都合で、されないというところはかなり出てくるであろうと思っております。

 したがいまして、これは合併をしたにしても、市町村は地理的条件や人口によってかなり格差がつくということは避けて通れぬところだと思いますので、ある程度行政サービスを維持していく上には、地方交付税というものは今後とも必要なバッファーとして、調整として残しておかねばならぬ大事なところなんだと思っております。

 そういった意味で、今、一万人未満ということを言いましたけれども、合併が困難な市町村というところだったらば、これは法令上義務づけられております行政事務だけをやって、それ以外の事務処理というようなものは、その属しておる都道府県なんかにある程度義務づけしちゃうというようなことも考えられる。うちでやるのはこれだ、もうほかのことはできません、だからあとの公共工事やら道路やら市町村道は県でやってくださいというような形で、そういったものを引き続き検討する必要があるということがこの答申の中に書かれておりますので、こういったことも引き続き検討していく必要があるであろうと思っております。

 簡単に言えば、小さなところでできない、したくてもだれもできないというところであれば、そういったところが現実に多分出てきますから、そういったところに関してはどうするんだと言われれば、入るはこれしか入ってこないから出はこんなに言われてもできません、私ども合併したくてもできないんだから、だれもしてくれないんだから、その分は都道府県がかわってやるというようなことも考えろということがこの答申の中に書かれておりますので、そういったところも含めて検討していかねばならぬと思っております。

寺田委員 西尾私案の中の事務配分特例制度みたいなことをお話しされたのかなと思うんです、答申の中にも書かれていると思うんですけれども。

 先ほどの、本当にまた最初の質問に戻るんですけれども、合併しなかったらどうなるんだというシミュレーションは真っ先にすると思うんですよね。自分が自治体の長であったら、合併しなかった、どうなるんだろうと。そして、交付税というのはどんどん下がっていく、けれどもまあ何とかなるでしょうというお気楽な方もいないことはないと私も思うので、そういう部分で、ではこのまま合併しなかったらどうされるんだろうという発想は、多分その首長さんも思いつくと思うんですよね。

 国として自主性を担保する、市町村合併は自主性ですということをやっていく。そういう方針でいくんでしょうけれども、自主性であるがゆえ、現状というものを余り見ずにどんどんそのまま孤立していく。もちろん、先ほどおっしゃられた離島だとかという特別例を除いて、合併できる範囲にある、合併ということの余地は残されているにもかかわらず、いや、わしは一人でやっていくんだということで一人で残っていく、そういうものは恐らく御認識どおり出ると思うんですよね。

 それで、端的にお伺いしたいんですけれども、そういうところというのは、このまま国の財政が厳しくて交付税もどんどん減らされる方向にある、そして地方分権でいろいろな仕事を自分たちでやらなきゃいけない状態になると、一万人以下か何万人以下という、人口では割れないと思うんですけれども、そういうような単独村というものはやっていけるとお思いになるのか、それとも、ちょっと厳しいんじゃないかとお思いになるのか、どちらでしょう。

麻生国務大臣 厳しいと思います。

寺田委員 厳しいという御判断で、そのとおりですよね。

 では、厳しいとして、そういうふうに残っていく自治体に対して、どのように国は関与していくのかということだと思います。

 そのままほったらかしにする、それとも、いやいや、先ほどのように特例制度のようなものをつくる、それとも、町村会が言っているとおり、市町村連合というものをつくる。そういう判断をするのか、そこがはっきりしない限り、なおさらのこと、市町村合併をするかどうかを判断しにくいと思うんです。

 そこら辺のお考えをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 交付税を合併のためのむちみたいな感じで使うことはありません。基本的にそう思っております。

 ただ、今申し上げましたように、そういうことになって、離島とかそういう話じゃなくて、合併できるのにしないということになって、だんだん交付税というのは基本的には絶対量が今減る方向にありますので、そういった中にあってできないとなれば、そのところは自分で、行政の面でいけばスリム化する、そして単独事業を減らす、そういったようなことをしていって、歳出を減らすということによって帳じりを合わせるということになろうと思います、基本的には。

 ただ、それでも合わないでどうしてもということになったときに、ほかの町と、隣の町と比べて何でうちはこんなにおかしいんだ、道路やら何やらというような苦情が多分住民から出ることになる。その段階で選挙になってみたりリコールになってみたり、いろいろなことが、それこそ地方自治として起きてくる可能性があるとは思います。

 ただ、それでも、いやいやおれの町の名前が変わるよりはよっぽどこっちがいいという方が住民にいらっしゃるんなら、それはまたそれの選択だろうと思いますので、一概に、これが答えというものは存在しないと思います。

寺田委員 本当に、小規模自治体をどうするかということは、私は、合併を論議する中で一番の大きな論点ではないか、というか整理しなきゃいけないことではないかなと思うんです。

 これからの財政見通しはどうなるか、そして、住民ニーズというか、地方が担うべき仕事は何なのか、そして、何もしないのであればどうなっちゃうのかという部分を総合的に判断して、よし合併しよう、いやいや単独村でいけるんだということだと思うんです。

 そこら辺の仕組みというもの、先ほどは事務的な特例制度の話に触れられましたけれども、そういうものはいつ結論を出されるのか。もちろん、審議中だ、検討中だということなのかもしれませんが、そういうことがはっきり出ない限り、この五年間、新しい法律の中でも合併するかしないか迷っちゃうよというところがふえると思うんですよ。

 もし本当に総務省として合併を進めたいのであれば、合併しなければこういうような制度であなたたちの部分、別に制裁とは思いませんけれども、事務配分というものをある程度県に移譲してもらいますよという指針を示すことが、一番の合併の自主性を高める方法だと思うんですよ。

 そのような結論というのは、いつごろ出るんでしょうか。

麻生国務大臣 それこそその問題は、今、二十八次地方制度調査会にお願いをしている議論の一つなんですが、これは二年ぐらいかかる話です。二年刻みですから。そういった意味では、その間いろいろ、確かにおっしゃるように、今からおれの町はどうなるかという話はあるんでしょう。

 ただ、地方交付税の話、幾ら来るかというのは、これは今回に限ったことではないんであって、毎年、地方税収入が幾ら上がるかというのはわかりませんから、それが上がった段階で逆算して答えが出てきますので、その意味では、年末にならぬと答えは出せないというのが毎年であって、毎年、そんな安定したものではないんです。

 ただ、流れとしては、少しずつ少しずつ交付税というのは、この数年間で見ましても、今年度に限らずこれまでも毎年一兆ずつ減ってきたという形になっております。

 したがいまして、今言うように、ある程度そういった、減らされるという前提に立って自分の町の中期計画を立てないかぬということなんだと思いますので、首長さんの立場に立っていれば、昨年よりこれだけ減るという前提をある程度立てて考えていかないかぬ。

 そのためには、単独事業は減らすとか、これまでやっていた行政事務は今以上にふやさないとか、いろんな形でできるでしょうし、また、再生債を使って、コンピューターを、旧式のものを新しいものにかえて、人件費をある程度抑えるとか、いろいろな手口を考えるのは、これは地方における首長さんの才覚、才能、経営感覚にかかっているんだと思います。

 あくまでも、小さな市町村というのをどうするかというのは、特徴ある形で生き残りたいというところは、私はいろいろ町を見ていてもある気がいたしますので、それはいかに地方をうまく演出するか。

 この間、総務省やら何やら、いろいろ地方でやっておりますものを、全国五十幾つの新聞社が全社集まってやったふるさと大会というのでも、全く知らないようなところからすごいものが出てきた。

 やはり、そういったようなものをやって、それによって金を取り、客を集めてやっておられるところ、鹿嶋市がいきなり鹿島アントラーズというサッカーのチームを持って、突如として、やたらめたらどでかいサッカー場をつくって、気でも違ったかと思いましたけれども、正直言って、最初に持ってこられたときには、何年前でしたでしょうか、J1ができるときに正気ですかと言ったんですけれども、実はあれでも足らないぐらい大きなものになった。間違いなく鹿嶋はあれで当たった。鹿島アントラーズのときの市長さんが最初にお見えになったときには正直驚きましたけれども、少なくともあそこは、臨時電車が毎土曜に出るぐらいの騒ぎにまでつくりあげたというのは、やっぱりサッカーを使って町づくりをやった一つの例だと思います。

 私は、いろいろな意味で、小さなところが生き残りをかけてやっておられるアイデアを大事に育ててやるという後押しをすることが大事なんであって、あめばかり、むちばかりという、片方だけじゃいかぬというのは確かだと思います。

 しかし、一番大事なのは、その町の首長さんの感覚、センス、北川先生の言葉をかりればマネジメントということになりましょうか、そういったことになるんだと存じます。

寺田委員 ごめんなさい、いろいろおもしろいお話を聞かせていただいて、自分の当初の質問がわからなくなってしまったんですけれども。

 とにかく、事務配分特例制度というものの結論、いわゆる小規模自治体をどうするのかということは、いつ結論が出るんですか。

麻生国務大臣 これは後の話で、きっと一番最初に言ったことを忘れておるわけですが、ちゃんとそれは一番最初にお答えしたのです。

 二十八次地方制度調査会が終わりますのは、去年二十七次が終わって、ことしから始まっておりますので、あれは毎回二年ということになっておりますので、二年以内ということになると存じます。

寺田委員 二十八次の部分で結論が出るということで考えてもよろしいですね。そういうふうにお話をいただいたと思います。

 そういうことで、ある種、合併というものを進めていくと思うんですけれども、いろいろな皆さんの考えはあると思うんですが、小規模自治体をどうするか。

 単独でやっていくのは本当に厳しいという判断であれば、ある種強制的にやるのも一つの案でしょうし、それに賛同しているというわけではなくて、今おっしゃられた事務の特例制度を設けるなり。それとも、要は、財源というものをもっともっと、高負担でありますけれども、確保して、小規模の自治体もカバーしますよという判断をする。これは、まさしく政治判断に近いと思うんですよ。特例制度も一つの考えとは思うんですけれども、そういうような結論を早く出していただきたいと思います。

 最後に、一問だけなんですけれども、今回の三法の中で、先ほど高井議員も聞かれていましたけれども、合併しなければ十二年間務めたことになって本当は年金をもらえたんだけれどもという人のために、務めたとみなすみたいな特例があると思うんですよ。先ほど御答弁された中で、いや、障害を除去するためですとおっしゃられましたけれども、じゃ、その障害というのは何なんでしょうか。具体的にお答えいただければと思います。

大野政府参考人 今お尋ねのお話は、通常、合併がなければ、三期を迎えた議員の方は、当然、三、四、十二年、十二年間在職する。そうなりますと、議員共済年金の受給資格を満たすということになるわけでございますね。

 ところが、任期中に合併がありますと、当然のことながら資格を満たさずに議員を退職しなければならない、こういうふうになるわけですが、それがために、自分の任期中の合併は嫌だ、そういうことをおっしゃる議員の方も現実にいらっしゃるわけですね。

 そういうことがありましたために、それで合併が進まないということでは困るので、いわば受給資格の特例措置を設けて合併の障害を除去しよう、こういう趣旨でございます。

寺田委員 私がきついことを言うと家庭環境上余りよくないと思うんですけれども、そういうような状況があるんだなということをひしひしと、身にはしみていませんが感じるところであります。

 先ほど、最初に言ったとおり、財政的な部分はどうなるのか、そして地方分権が進んで地方はどういうことを担っていくのか、そして合併しなければどうなるのか、この三点というものを早目に明確にお示しいただいて、合併というものの自主性というものを高めていただければと思います。

 以上です。

佐田委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 先日の本会議ではありがとうございました。しかし、本会議の質問に対して十分に答弁をいただけなかったというふうに感じておりますので、そのあたりを中心に質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、基本的なところからなんですけれども、合併を推進する目的について伺いたいというふうに考えています。

 これは、小泉マニフェストの中でも掲げられていることでありまして、いわば政府の重要政策であるというふうに受けとめています。そうであるならば、合併を何のために進めるのか、そういったことについて私は本会議でお尋ねをしたんですけれども、きちんとした、聞き手にとって納得のできる、わかりやすい答弁をいただけるものだというふうに思っておったんですけれども、答弁は以下のようでございまして、読み上げさせていただきます。

  第二十七次地方制度調査会の答申では、地方分権の推進の観点から、市町村の規模、能力の充実を図ることが必要であり、合併新法で都道府県が策定する市町村合併の推進に関する構想の対象となる小規模な市町村として、人口おおむね一万未満を目安とし、その際地理的条件等も考慮すべきこととされております。

  この答申を踏まえて、今後とも、自主的な市町村の合併を推進してまいります。

ということでございました。

 何のための合併なのか、今まで何度も何度も恐らく質問があったと思いますし、そのたびに麻生大臣も答えられてはいるんだと思うんですけれども、いま一つ私たちの気持ちの中には入ってくるものがないんですね。

 恐らく財政的な事柄と地方分権の推進の点からというようなお答えをされるんだと思いますけれども、いま一度お伺いをしたいと思うんです。何のための合併でしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、新潟は何割か知りませんけれども、三割自治という言葉があります。収入が三割ということだと思いますが、そういう状態にありますので、残りの分をいろいろな形で、国からの補助に頼る、交付税に頼る、補助金に頼る、その他いろいろありますけれども、そういったものに頼るという形で、基本的には自立という気持ちがなくなる。

 今までは中央集権という大きな流れ、明治四年以来の流れがありますので、それはそれでよかったんだと思います。事実、成功して、これだけ豊かになったんですから。間違いなく、官僚主導、業界協調型で戦後これだけ経済的に反映したことも確かですから、私はそれはそれなりに当たった制度だったと思います。

 ところが、ほとんどのところに物が行き渡り、公民館もそこそこ皆でき、いろいろな形で一わたりしてみたときに、改めて、もう一回、その地域にはその地域の特色ある発展、いわゆる特色ある地方というものがあってもいいのではないか。金太郎あめという言葉がさっき出ていましたが、金太郎あめみたいにみんなミニ東京を目指す必要はないのではないか、新潟は新潟の文化があって当たり前じゃないかという話が出てきて、これは当然のこと。

 しかし、それをやるに当たりましては、新潟というところが独立できるようなものにするためには、財政基盤がきちんとしていないと、やっぱり一家を構えても収入がきちんとしていないと家庭はなかなか難しいというのと同じように、財政基盤をきちんとするというのが大きな理由の一つです。

 同時に、新潟市のように、北陸で最初に近々政令都市になろうかというような大きところと違って、小さな市町村も世の中にはいっぱい存在します。そういったところにおきましては、財政基盤というものは新潟市に比べてさらに弱い。そういうところは、行政サービスというものを最低限維持するというのに当たっては、それだけの、行政サービスを維持できるだけの人材はいますか、財政基盤はありますか、これからは全部書類で来ませんよ、オンラインで来るんですよ、そのオンラインにこたえられて、オンラインできちんと対応できる人材は育っていますかと言われれば、私の選挙区内にある町でできていないところ、幾つもあります。

 そういったところを含めて考えますと、基本的には、きちんと行政サービスができるようにするためには、ある程度の規模を持っておかないと行政サービスはなかなか難しい。

 加えて、人口が少ないところでは、先ほど申し上げましたように、五千人以下では約百三万円かかることになります。五千から一万でも約五十万。そういった形で、ある程度の人口規模というものを持っていないと、一人頭にかかります行政経費が高い、しかも三倍ぐらい高い、三十万ぐらいになりますから。そういった意味からいきますと、これはある程度きちんとしておいていただかないといかぬのではないか。

 したがって、今回のいろいろな意味での目的は、行政サービスというものを考えた場合に、やはり基本的には、そこに住んでいる地方の人の自由、その自由度を上げるためのいわゆる財政というものの基盤の確立、そしていろいろ規制がかかっておりますものは少なくともその規制の緩和、そういったものが結果としてその地域住民を幸せにする、順番からいくとそういうことになろうかと思いますが、本来の目的は、地方の活性化、地域主権、そういったようなものを確立していくという目的であって、そのための手段の一つと思います。

西村(智)委員 長い答弁をありがとうございました。

 伺っておりまして、私の耳にはこう聞こえてまいります。結局、お金がなくなったから、済みませんけれども、今までどおり、国は地方の面倒を見ることができなくなりました、ですので、申しわけないけれども、合併をして、それなりのスケールメリットを図っていただいて、行政サービスの維持を図ってくださいというふうに私の耳には聞こえるんですね。

 ですけれども、その最初の部分がなかなか聞かれない。もう今までとは違うんです、お金がなくなったのでこれまでどおりとは違うんです、これまでの国のやり方は、ある意味では、自治の本旨、これを育成することとは少し違って面倒を見てきたんですけれども、もうこれからはだめですよというようなところがなかなか聞こえないものですから、たびたびこうやって質問させていただいているということでございます。

 ちょっと時間がございませんので、済みません、先に進ませていただきたいと思います。

 合併関連法案の方に今度は移らせていただきますけれども、基本指針の策定につきまして、総務大臣が法律の中に書くよりは指針として書いたほうがよろしいのではないか、こういう御判断でつくられるというふうに承知をしておりますけれども、一昨日の委員会の中での質疑で、平成十七年度早々に策定をしたいというような御答弁だったかというふうに思います。そして、どのようにお答えをいただいているかと申しますと、合併の状況をよく見きわめないと、その内容というのはどのようであるか言えない、基本指針の中身についてですね。

 私も本会議の中で質問をさせていただきましたけれども、では、一体何を見きわめるのか、基本指針の策定までに何を見きわめて、そしてどういった内容のものを策定しようとお考えになっているのか、その点について伺いたいと思います。

麻生国務大臣 第一問のお答えも、素直に受け取られるか、ひねて受け取られるかで考え方が全然、反応が違うのと同じように、今回の話も、素直にとられるか、ひねてとられるかで全然違います。素直に聞いていただくと、何回も質問されずに済むんだと存じます。平成十七年の三月までの市町村合併の進捗状況を踏まえということを答えておりますので、第二十七次地方制度調査会の答申を踏まえてそれを申し上げておるところなんです。

 一万人未満の話が出ましたけれども、一万人未満というのを法律で書けというお話ではなくて、こういった形で一つの目安の方が望ましいというのは、これは町村会長等々からの意見を踏まえた上で、法律には書かずにこういった形にしたという経緯がありますので、いろいろ関係しておられる市町村長さん方の御意見をある程度伺ってみないと、これはなかなか答えが出せないところなのです。

 離島に限らず、できないという山の中もあろうかと思います。山の中だからおれのところは逆に独立するんだというところもありますし、県を越えて、長野県が嫌だからといって岐阜県に合併したところもあるわけですから。

 そういった意味で、いろいろな形で地理的条件等々は考慮すべきものだと思っておりますので、基本指針につきましては地方の事情を踏まえたものにしなければということを申し上げております。

西村(智)委員 最近の合併推進のための国の姿勢を見ておりますと、とにかくやはり合併は進めたい、何が何でも進めたいということで、合併の推進のための現行法を延長したり、あるいは合併新法の制定をしたりというふうに映るんですけれども、私が考えておりますのは、この基本指針というものは、結局合併が進まなかったときに、より厳しいものになるのではないか、あるいは合併の進捗状況によってその中身が、あるいは、一回策定をされた先で見直しをされるようなことが出てくるのかどうかという疑問なんです。

 とにかく、この一連の流れを見ておりますと、本当に次から次へと指針やら、そして、今回の新法の中ではあっせんやらというようなことがございますから、その基本指針の策定について、その見直し、中身、そういったものについてもう一度お答えをいただきたいと思っております。

大野政府参考人 この新法でございますけれども、新法の施行は、現行の合併特例法が十七年の三月末で失効する、今、経過措置についてはお願いいたしておりますけれども、そういうことでありますので、十七年の四月一日から施行するということで新法を出させていただいているわけでございます。当然、基本指針はその新法に基づく指針でありますので、それ以降に総務大臣が策定をしてこれを都道府県にお示しするということになるわけでございますね。そこで、都道府県は構想というものをお考えになるということになるわけです。

 今、いろいろなところでこの合併協議が進んでおりますので、先ほど大臣も申し上げましたけれども、この合併協議がどのような結果になるか、例えば、合併協議会があるものがすべて合併に至るのか、現実に離脱したり協議会が解散をするというふうなことになっている場合もあるわけでございますが、いずれにしても、その推移は十七年の三月末には一応わかる。

 なぜかといいますと、現行特例法、経過措置をつくったとしましても、それまでの間にそれぞれの市町村の議決をしていただきまして申請までいきませんと、現行合併特例法のいろいろな特例規定が使えませんものですから、それで、あと一年足らずの間にその帰趨がわかります。

 そこで、その結果を踏まえませんと、先ほど大臣の方からお話しいたしましたように、なぜ合併しないで残ったのか、これもわからないわけですね。ですから、合併しなかったにはしなかった事情があるわけですから、そういったことも勘案して、今度、都道府県には構想をつくっていただかなければならないということになるんだろうと思いますね。

 それから、もう一つ大事なことは、合併協議が順調に進みまして、都道府県の中でほとんど合併が終わってしまった、こうなった場合には、新しく合併構想なるものを都道府県がつくる必要はないわけでございますので、そういったことも含めまして基本指針の中で考えていかなければならないということであります。

 したがって、もうしばらくその基本指針についての具体的な検討は先になるということでございます。

西村(智)委員 合併の進捗状況を見きわめてその基本指針の中身を決めるんだというようなことで御答弁をいただいたというふうに思っています。

 合併特例債についても本会議の中で質問をいたしましたけれども、これについては答弁をいただけませんでした。仮にという条件を置いてもよろしいので、合併特例債の発行額が幾らになるのか、その総額の見通しをいただきたいというふうにお伺いをしたんですけれども、平成十一年度からこれまでに約九百十億円という御答弁をいただいただけだったんですね。これでは済まないと思っています。それでは済まないというのは、本会議の答弁では済まないというのと、これまでの九百十億円ではとても済まないだろうと。

 ある知事は、合併特例債の総額が何十兆円になるのかわからないというふうにおっしゃっておりましたけれども、非常に大事な数字であるというふうに思っております。しかし、法律のこの審議の前に改めてその数字の見通しが示されることはありませんでした。極めて審議の前提になるものだというふうに思っておりますけれども、明確にお答えをいただきたいと思っております。

 政府が言うところの千自治体くらいまで合併が進んだとき、あるいは現時点で法定協が存在しているところがすべてゴールインをしたとき、そして千七百程度ということが見込まれているそうでございますけれども、いずれの条件でも結構でございますが、合併特例債、総額で幾らになると見通していますか。

麻生国務大臣 合併が幾ら、どれだけ進むかというのがわからぬうちに合併特例債の額が逆算できるはずはありませんから、まず基本的に、正確に言うのは無理です。これはまず頭に入れておいていただかぬと。今ありますものが全部できる可能性はほぼありませんから、いろいろごちゃごちゃして分かれるところもいっぱい出ると思います。

 そういった意味では、全部が全部できる前提ですべてというのはちょっといかがなものかと思いますが、大まかにいって、時間的に言えば今から約十年間ぐらいになりますので、その額からいくと、七、八兆円ぐらいになりはせぬかなと思っております。

西村(智)委員 七、八兆円。現時点での見通しということで初めて数字を出していただいたと思っています。

 この合併特例債は、後年度にも非常に大きな影響を及ぼすものになるだろうと私は考えております。七、八兆円ということになりますと、単純に計算をして、国の措置分が五兆円程度ということになりますでしょうか。地方の措置分、負担分が残りの部分ということでございますので、今後必要に応じて、合併特例債など合併にかかる費用がどのくらいかということを適時国会にお示しいただきたいというふうに考えております。その点についてはいかがでしょうか。

大野政府参考人 大臣が申し上げましたように、どういう数の市町村が合併をするかというのが不確定でありますので、そういった試算をお出しすることはできないわけでございます。

 ただ、合併をしまして、市町村建設計画にある事業につきまして合併特例債というものを認めるわけでございますので、これまでは、先ほどお話あったことでございますし、そういった許可額ベースのもの、これは当然お出しをすることができます。

 現在のところ、どの額まで発行したかということにつきましては、御質問にもございましたように、適時適切な折に御報告を申し上げたいと思います。

西村(智)委員 それで、この合併特例債ですけれども、やはり後年度どういうふうに、私たちの子供の代ですとか孫の代ですとかに影響が及んでくるのか、それは考えれば想像にかたくない部分がございます。

 何でも、平成十六年度末、予算ベースですけれども、国と地方合わせての長期債務残高が七百十九兆円という非常に天文学的な数字だそうでございますけれども、これは対GDP比にいたしますと一四三・六%、これはちょうど十年前と比べますと倍になっているという現実がございます。

 合併特例債、本当に後年度の負担になるということを考えると、できるだけ私はこれは抑制的にすべきだというふうに考えておりますけれども、この見通し額を国の方でどのように受けとめていらっしゃるのか、それを聞かせてください。

大野政府参考人 大ざっぱな見通し額は先ほど大臣がお答えをしたようなことでございますけれども、現行の合併特例債というのは、先ほど申し上げましたように、合併をいたします場合に、協議の中で、これからの、合併後の市町村の一体化を図るため、あるいは均衡ある発展を図るためにさまざまな事業をやるわけですから、それに必要な財源措置をするということで特例法で書いてあるわけでございますので、私どもとすれば、そういう意味を持ったものだというふうに考えております。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

西村(智)委員 七兆円、八兆円という額についてどう評価しているのかということについてお伺いをしたかったんですけれども、いかがですか。短くお答えいただけますか。

大野政府参考人 大変大きな額だと思いますけれども、合併がそこまで進むようになってきたのかなという思いもいたします。

西村(智)委員 次に移ります。

 地域自治区と合併特例区、もうきょうまでに随分と議論がありましたけれども、私も勉強してまいりまして、すればするほどわからなく、こんがらがってくるというのが率直な感想でございます。やはり、役所の机の上で考えるとこういうふうになるのかなと改めて思わせていただいたんですけれども。

 この地域自治区のもとになっているのは、恐らく第二十七次地方制度調査会の報告であろうというふうに考えています。地制調のその報告の中でも、この地域自治区などの考え方は、自治体の関係者からは割と評価がよかったものだというふうに記憶をしております。

 しかし、こうやって法案になってまいりますと、先日からも議論がありました、地域自治区などに対する中途半端とも言える設定の仕方から、本当にこれが地域の自立性や独立性を高めるものにつながっていくのか、そういう疑問が生じている。やはり地域自治区の設定の仕方について制約だらけのものになっておりますので、本当にこれが地域の責任を増し、また自主性を増すものになっているのかという点は、私も懸念をしているところでございます。

 地域の実態はそれぞれでございまして、こちらの机の上の方で把握できるものではございませんから、こういった地域自治区や合併特例区などについては、いわば地域の自主的な選択の幅を大きくした方がいいんではないかという考えであります。それによって、地域の責任も恐らく増してくるんだろうということで伺いたいと思うんですけれども、まず、大変細かい話になりますが、合併特例区の期限、期間がこれは五年以内というふうになっております。この理由について伺いたい。

 一昨日の委員会の質疑の中で、この合併特例区は、いわば合併への入り口であると山口副大臣はお答えをくださいました。いわば、そういうふうに合併のインセンティブを高めるものであるというふうに考えたときに、この五年という年数は、私は短いのではないかというふうに考えているんです。どうでしょうか。

大野政府参考人 これもいろいろ地域の実情によって見方も変わってくるのではないかという感じもいたしますけれども、新しい合併特例法、新法でございますけれども、この期間が五年というふうなことにいたしておりますので、そのことを勘案して、一体性を図るための合併でありますので、余り長いこと法人格を持った特例区が存在するのはいかがかということで、五年以内でそれぞれの合併協議の中で決めていただくというふうにいたしたわけでございます。

西村(智)委員 新法が五年なので合併特例区の期限も五年以内という、大変にわかりやす過ぎる御答弁でございました。

 続いて伺います。合併特例区における協議会の構成員の任期、これが二年以内となっておりました。これはどうなんでしょうか。

 先ほど、法律は五年ですので特例区の期限も五年だとおっしゃった。いわば、そこで整合性というものに配慮したと思うんですね。であるとすると、この二年という数字は何と整合性をとったんですか。議会の任期は四年です。あるいは地域協議会の構成員の任期はこれもまた四年です。こうなった理由について聞かせてください。

大野政府参考人 この五年以内でありますとか二年以内でありますとかいうのは、いずれもアッパーでありまして、協議会の構成員につきましても、二年以内で、規約で定めるということでありますので、一年ということもあり得るわけでございます。

 要するに、特例区の協議会のメンバーの方々、さまざまな権限を行使できる、そういう具体的な権能を持った形で地域の問題について御意見をおっしゃるというふうなこともありますので、余り長期間にわたって同じ方が構成員であるのはいかがなものかということから、合併特例区そのものが五年以内、こうなっていますので、その半分くらいをもって二年以内の中、こういうことでございます。

西村(智)委員 半分くらいということで二年になった、非常に安易な数字のはめ込み方かなというふうに思うんですね。

 続いて、地域自治区の事務所長、これは事務吏員というふうになっておりますけれども、これについての理由を伺いたいと思っています。

 合併関係市町村の区域における地域自治区、こちらの方は特別職を置けるというふうになっておりますけれども、地域自治区の事務所長もいわば特別職とできるような書き方はできなかったんでしょうか。こうなった理由について聞かせてください。

大野政府参考人 地域自治区でございますけれども、市町村の区域の中で、区域を分けてつくるわけでございます。市町村長の権限に属する事務を処理する、あるいは住民の意見を反映させながらそうした市町村長の行う事務を処理する、こういうことが地域自治区であります。

 その事務処理をするための人をどうするかということでありますけれども、実際には、この地域自治区の事務所というのは、例えば、今で考えますと支所とか出張所があるわけでございますが、そういった支所とか出張所を使って事務所機能を果たしていただくというふうになることが想定されますので、市町村長の指揮監督を受けてやるという意味では、特別職の長ではなくて市町村の職員でいいのではないか、このように考えたわけでございます。

西村(智)委員 やはり、合併後の市町村ですとか、あるいは大臣が先ほどおっしゃったようなこれからの地方分権、地方自治の姿というものを考えますと、マネジメントが必要だ。マネジメントが必要だというときには、それはやはり首長のリーダーシップと、そして、その首長のリーダーシップのもと緊張感を持ってきちんと動く組織というものが必ず必要になってくるんだろうというふうに考えています。

 その組織の緊張感をつくるという点からも、この地域自治区の事務所長は特別職にした方がよろしいんではないか、そういうふうにできるとすべきではないかというふうに考えます。果たして、事務吏員でこれからの地方自治に、地域主権たるものを目指す自治体に対応できる機動力のある組織に本当になるんでしょうか。

大野政府参考人 あえて申し上げますと、この地域自治区の構成要素は、地域協議会とそれから事務所、こういうふうに二つあるわけですけれども、私どもが考えている地域自治区の活動の意味合いは、行政を、単にその地域のことをやるという意味ではなくて、地域協議会の方々がむしろ中心になって、その地域にかかわる問題を自分たちでどうしたらいいかということを考えてもらう場にしたいというのがこの地域自治区でありまして、いわば、この事務所長さんというのは、協議会の庶務担当といいますか、一方で支所、出張所の仕事をやりながら、協議会の庶務も担当する、そういういわば窓口的な機能でありまして、主役はあくまで協議会の構成員なんですね。

 ですから、構成員の方々が、自分たちの地域にかかわる一部の、例えばリサイクルをどうするかとか、何でもかんでも行政に頼るんではなくて、自分たちも参加しながらやっていく、その仕組みを地域自治区といっているわけでありまして、主役はむしろ協議会のメンバーであるということでありますので、まあ事務所長さん程度でよろしいんではないかと思います。

西村(智)委員 事務職員程度でよろしいんではないかと。

 続いて、地域自治区の法人格がないことについてお伺いをしたいと思います。

 合併特例区の方は法人格を有するということになっておりますけれども、これは恐らく、合併特例区に法人格を与えることによるメリットというのがあるんだと思うんですね。先ほどのお話でいえば、名称と機能と、自立性や独立性が高まるというようなことで合併特例区の方には法人格が付与されるというようなことになったんだというふうに思いますけれども、地域自治区の方には付与されることになっていないということでございます。

 私が今までこの合併特例区それから地域自治区に関して一連の質問をしてきた基本的な考え方と申しますのは、やはり、それぞれの地域の実情があるのである、いわゆる住民自治、団体自治、きちんと進んでいるところもあり、また、そうではないところももしかしたらあるかもしれない、そういういわばごちゃまぜになっている状況の中で、一律、この法律によって、合併特例区はこうです、地域自治区はこうですというような決め方をするのは、いかにも画一的に進めることになるんではないかという考えなんですね。

 ですから、こういったさまざまな、今私が申し上げたような合併特例区の期間が五年以内になっている点についても自由にできないかとか、あるいは協議会構成員の任期が二年以内になっている点についてもどうかというようなことについても、地域の選択に任せるべきではないのかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。

大野政府参考人 全くそのとおりでございまして、地域自治区については、今回法律でいろいろなことを決めますけれども、関係の団体の方からも、できるだけ条例でいろいろなことを決めるようにすべきだ、こういう御指摘もございまして、そういうふうになっています。本当に一定のことしか法律には書いてない。

 ですから、地域自治区を、例えばネイバーフッドガバメントというとか、コミュニティー何とかと呼ぶとか、それはもう全く自由自在でありまして、そんなことを法律で決めているわけでも何でもないわけであります。

 しかも、一応市町村の区域の中全域に地域自治区をつくるという想定はいたしておりますけれども、そういう意味では、今御指摘のように、熟度の高いところから地域自治区をつくっていくということも、これは市町村がお考えになればそういうことも結構でございますというふうなこともあるわけでございまして、かなり自由にしております。

 ただ、合併の際に、これはあくまでも選択肢でありまして、例えば、合併特例区をつくる必要もないわけです。ただ、つくりたいというところがあるわけで、こういう法律案の中に用意はいたしましたけれども、つくるかつくらないかも全くその合併協議の中でお決めいただけばいいですし、それから、合併特例区ではなくて地域自治区というものを合併時に特例で使うというオプションも結構でございましょう。それから、それもやめて、合併してから地域自治区というものにすることもいいわけですし、それから、例えば地域審議会をつくりたいというのもいいわけでして、オプションはたくさんある、それをどのように選ぶか、それ自体まさに合併の協議の中でお決めいただければいい、こういうところまではかなり考えさせていただいたつもりでおります。

西村(智)委員 先ほど御答弁の中に出てきました地域審議会、これは、先行しているところではもうスタートを切っているところがかなりあると思うんです。そういった、先に地域審議会で走っているところが出ているというところに、この地域自治区と合併特例区なる新しい枠、制度ができたということは、これはどうなんでしょうか。

 合併を推進するという点から果たして有益なのかどうか。これはタイミングもよかったのかどうかという問題にもなると思うんですけれども、この法律の中で、そういった合併特例区や地域自治区をこういう形で、まあどれでもいいんです、地域審議会も含めて、というふうに出してきたことが合併に実際に与える影響をどんなふうに考えていらっしゃいますか。

大野政府参考人 今の御指摘の、地域自治区の合併時の特例でありますとか、あるいは合併特例区制度というものも新法で決めて、規定しておりますけれども、これは現行特例法の中で、またそういうことでさかのぼって、今合併協議をやっているところも合併特例区をつくることができるようにしようという改正案も入っているわけでございます。

 これはいずれも、合併協議をしていますけれども、それでは、例えば新法になれば合併特例区ができるから、それまで待とう、こういうようなことになっても困りますので、今合併をしている場合であっても、法律が通れば合併特例区というものを今からつくることもできるというふうにしているわけでございまして、地域審議会だけでは不十分だという声もありましたので、そういうふうな規定を入れて、いろいろな選択肢ができるようにいたしました。

 これはむしろ、合併の阻害要因にはならないというふうに思います。

西村(智)委員 阻害要因にはならないというふうに私も期待をしたいと思いますけれども、ぜひとも地方にわかりやすい合併の道筋を示していただきたいと思っています。

 いろいろな自治体の方のお話を聞きますけれども、やはり一番質問が多いのはここなんですね。地域自治区と合併特例区、ここのところの姿がはっきりと見えるということが合併推進ということにつながっていくというふうに思いますので、今申し上げたようなそれぞれの地域によってばらつきのある状況、またこれは大臣の指針の中でもきちんと確認をしていただきたいと思いますけれども、一律人口一万人未満で合併をするというような方向にはしない、小規模の自治体で頑張るというところはそのまま残していただく、そして、加えて交付税の将来像もきちんと示していただく。

 こうしないと、とにかく自治体は、本当に合併をすべきかすべきでないか、どの道をたどっていって合併するのがうちの地域にはよいのかという選択になりませんので、そのあたりはぜひとも、国の立場ではなく地域の立場に立って、地方自治体の立場に立ってこれからの合併を推進していっていただきたいと思っております。これは要望いたします。もし何かありましたらいただいて、終わりたいと思います。

佐藤(勉)委員長代理 次に、若泉征三君。

若泉委員 やぼったい町長、優秀な町長ということで、下げたり上げたり、総務大臣にされました、私、民主党・無所属クラブの若泉でございますが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 同僚の議員が、もう何人も同じような質問をいろいろとされておりますので、私も重複する面もあるかもしれませんが、皆様お疲れだと思いますが、一緒に勉強していきたい、こういうように思っております。よろしくお願いしたいと思います。

 まず第一に、大野総括審議官の方にお聞きしたいと思います。先ほども大臣が何回もおっしゃっております、地方制度調査会の答申によってこういうことになったと。私も実は、新聞でいつも見ますと、この総務委員会に提案される前に、地方制度調査会でこのような答申がなされた、それをもとに、どういった法案が出てくるのかなというようなことを、私どもはいつもそれに気を使いながらこういう場に出させていただいているわけでありますが、果たして第二十七次地方制度調査会の答申を踏まえて法案化が進められた。地方制度調査会委員はどのような人が任命され、その人選方法についてお尋ねしたい。

 第二十七地方制度調査会には、私どもの松崎先輩も委員になっていらっしゃいます、ことしはおかわりになりましたが、民主党からも出ております。学識経験者十八名、国会議員六名、地方六団体六名、そして臨時委員三名、そのような内容になっておりますが、ちょっとその人選方法とか、そういうことについてお尋ねしたいと思います。

大野政府参考人 地方制度調査会につきましては設置法がございまして、昭和二十七年の八月十八日に、法律で地方制度調査会というものが動き出したわけでございますけれども、基本的には、委員なり臨時委員につきましては条文がありまして、六条でございますが、「委員は、国会議員、地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長及びその他の職員並びに地方制度に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」こういうふうになっております。

 学識経験者につきましては内閣総理大臣が適切な方にお願いをするというふうにいたしているわけでございますし、国会議員につきましては国会の方でお決めをいただいておるということでございます。それから、地方公共団体の議会の議員につきましては、いわゆる議長会三団体の長の方にお願いをいたしております。それから長につきましては、原則的には首長会の会長さんですが、知事会のみはそうではないというふうなことでございます。

若泉委員 この場合、地方公共団体の実情を十分に把握された上で御審議されているかどうか、その辺、いかがですか。

大野政府参考人 具体的に、その地方制度調査会の審議の仕方でございますけれども、学識経験者の方を中心にいたしまして専門小委員会というものをつくります。ある程度議論をいたしまして、もちろん時に応じて自治体の方からのヒアリングなどもいたしますけれども。おおよその案をつくりまして、今度は総会にかけるということでございますので、そこでは国会議員の方あるいは地方六団体の会長さん方が皆さん入りまして、またさらに意見をおっしゃる、こういう組み立てでございます。

 私どもとすれば、自治体の方々の現場の意見を十分踏まえながら議論をさせていただいているというふうに思っております。

若泉委員 この地方制度調査会の答申というのは、恐らく非常に影響があると思うんです。私どもも、これを信頼していつも見ているわけでございます。

 実は私、経験しておりますと、以前に、審議会制度というのが各市町村に置かれたんです。そうしまして、例えばその市の、また市町村の総合計画をこの一年以内にまとめろ、例えば五カ年計画をまとめなさい、こういう指示を得た。どこから指示を得たかといいますと、当時は自治省でございました。そうしまして、県から、さらに自治省からの指示だということで、一年以内にこの総合計画が出されなかった場合には、提案されなかった場合には、あなたのところの交付税が削られます、補助金も削られます、というようなことはおどかしだと思いますが、現実にはなかったわけでございます。

 なぜかと申しますと、私は、その一年以内につくれといいますのを二年半かけてやりました。各地域の住民の、小学校単位の地域の住民の意見を聞いてその総合計画を立案していきました。二年半かけたわけでございますから、五年後の計画じゃなくて、約十年後の計画を私どもはその自治省の指示に従ってやったわけであります。

 そこで考えられますことは、今いろいろと吟味されて、それぞれの地方の実情というのはよく踏まえた上で審議されているということでございますが、いろいろと私は今までの審議会制度というのを見ておりますと、もともとそういう役所でつくられたものが、審議委員の前に提案されまして、約一時間で会議が終わる。ほとんど、皆さん、御質問ございますか、いや、それでいいですよ、いいですよ、結構です、いいですねということで一時間で終わる。それが審議会。この地方制度調査会ではないと思いますが、私どもの先輩の議員も入っていますからそういうことないと思いますが、地方のそういう総合計画の審議会ではほとんどそういう状態だったんです。

 それで、私が提案を申し上げたいと思いますのは、現役または生え抜きの助役さん、副市長さんとか、または総務部長さん、いわゆる地方自治体のプロフェッショナルな方を人選されたらどうか、ここに、人選される場合には職員もということが含まれておりますが。この内容を見ますと、自治体の長はいますけれども職員は含まれておりません。

 肩書とかそういうものが優先するんじゃなくて、実際の中身がやはり優先されるものだ、私はそのように信じておりますので、できればやはりプロフェッショナルな人選をやる、そういうことを今後していただきたいと思いますが、どのようにお考えでございましょうか。

大野政府参考人 今の二十八次でございますけれども、学識経験者という観点から選んだ方の中で、ある県の前副知事という方も入ったりもいたしておりますが、今の御指摘の趣旨は、今後の人選の中で十分考えてまいりたいと思います。

麻生国務大臣 若泉さん、全く私もそう思いますけれども、ただ、そういう職員を、毎回毎回あの審議会に出てくるだけの時間を割けるほどその助役は暇かというと、これは優秀な助役こそ町長が絶対出さないんですよ。これは難しいんです。暇な人というのは余りよくわかっていなかったりしますので、これまた難しいんです、そのバランスが。

 これはもう本当に、だれだれを出してくださいと、総務省は知っているから言うんですけれども、それはもう町長が、ちょっと待って、あれを出されたらうちは困るとか、これの折り合いをつけるところがいつも難しい。

 近郊だけになると、今度は逆に、そんな大都市の近郊の町の助役だけじゃつまらぬ、田舎の方を出せと必ず言われるわけです。田舎の方は、今度は、そんな急に言われても出ていけるかとか、実にこれはバランスが難しい。これは正直、意図的じゃなくて、これを選択するときにはかなり総務省としてはいろいろ考えているのですが、実行に移すときにはなかなか難しいというのが実態という点も、ちょっとあわせて認識をしておいていただければ助かります。私らとしては、本当に優秀な方はぜひちょうだいをしたい、かしていただきたいと存じます。

若泉委員 お言葉を返すようでございますが、もし私が町長なり市長でありましたら、この制度調査会が一年に二、三回だったら、出るように命じます。

 大臣と審議官の方のお考えが少し違ったように思いますが、そうですね、自治体が、上の長がしっかりしていない場合にはこれはやむを得ない場合もありますが、いつもおっしゃる言葉でございます、できる限りそうしていただきたい。

 次に質問させていただきますが、これは大臣にお聞きしたいと思います。

 いわゆる三位一体改革について、私も党を代表しまして先般本会議で反対をいたしましたが、御存じのように、この三位一体改革というのは、いろいろとお考えになって提案されたものと思いますが、一歩前進して、三歩も四歩も後退している、そのようなことが言えると思います。

 それは、私自身が各市町村に連絡して聞きますと、やはり交付税の削減とか補助金の削減とかそういったものと、そして、所得税の税源移譲なんというのはこんなことはなかったんだと。おっしゃるとおりです。移譲されたけれども、実際、やっていけないという悲鳴を上げている方がたくさんいらっしゃる。

 この実態を見ますと、地方分権というのは、私は、百カ所ぐらい講演して歩きまして、よく言ったことがあるのですが、貧しいという字は貝が分かれると書くんですね。貝が分かれますと、これは貧しいんです。やはり権限と財源が一緒になってこうなって、そして地方分権ができるんですが、今、このような状態だったら、これは地方貧権というのです。でありますので、そういう意味では、私はこれは財源が伴わないのを地方貧権じゃないか、このようなことを言いました。

 そしてまた、市町村が合併することがメリットかデメリットかというようなことがよく議論されております。

 そういう中におきまして、やはり国の借金を処理するんですから、そのまま私はおっしゃっていいと思うんですよ。実際、借金が八百兆円近くあるのですから。その借金を処理する借金総清算合併だということを言っているわけであります。

 それで、いわゆる国の借金を処理するということで、この前、提言書提出市町村長、百三十三の市町村長が第二回の市町村サミットをやりました。そのときの内容が非常に厳しく、そして、せつなく、切実に訴えているものを簡単に読ませていただきますが、大臣はもうよく御存じのことだと思います。

 「今回のような三位一体の改革は、」いいことが書いてあります、「霧に包まれた森を歩くようなもの」と。何かいい感じでございますけれども、その意味は「先の見通しが全くつかめない状況に市町村を追い込んでいる。また、このままの「国の財政再建」的な改革が進むと、地方の自立どころか破綻する自治体が続出することが目に見えている。市町村は、自らの行政改革を行わないと言っているのではない。」これはいいことだと思います。非常に自立心があります。「市町村が計画的に行財政改革を行うことのできる長期的な地方財政の方向性を、将来的な地方配分額の明示を含め行うべきである。」その中に、財政調整機能部分とか、財源保障機能部分とか、地域総合整備事業債、こういったものを改革してほしい。これを切実に訴えております。

 この訴えに対しまして、細かくいいますと長くなりますので、大体このような考えでいる、また、この三位一体改革で苦しんではいるけれども、総務大臣に私は期待しておりますので、いずれ将来は明るい三位一体改革になるんだ、そのようなお考えはあるかどうか、お聞きしたいと思います。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 今、市町村サミットのお話が出ておりましたが、この様子はそんな全部に詳しいわけではありませんけれども、ちらっと一読した程度なんですが、これは幾つか分かれているのです。地方交付税の法定率分を高めろ。地方財源を確保して、特例措置分をなくして、そして、いわゆる法定率分に限定する方向で改革せよ。

 なかなかいいせりふなんですが、改革して、その総額について将来予測が立てやすくなるようになるはずだからという話は、ここを主眼としておられるというのならこれは極めて評価が高い提言だと、私自身はそう思っております。

 しかし、その後に、地方交付税の中の財源保障機能を廃止せよということがその次に書いてあるのですが、この話をしてのまれる市町村長というのは私は正直どなたも存じ上げません。必ずこれだけは確保してくれというお話こそあれ、これを廃止しろという方はありませんので、私は、それをちらっと見て読み間違いかもしれませんけれども、これはちょっと賛同を得られぬのじゃないかなと思いました。

 いずれにいたしましても、これは大前提として、国と地方の役割分担の話の再構築というところと、地方自治というものと、国の関与というものを縮小する、そういったことが書いてあったところで、私はこれは、まさに中長期の改革としてはおおむね当たっておると思っております。

 基本的には、よく申し上げますように、財源の部分で、先ほどの貝が分かれる話じゃありませんけれども、私も、権限と財源というものは、分けると、それこそ田んぼを分けるからたわけ者という話と同じような話ですから、似たような表現だと思って、漁村でもあるんだなと思って話を聞いていたんですが、今のお話でいくと、地方の財源と国の財源がよく七対三というのが、まあ五対五とか、そういったような形になっていくところまでいかないといけないんだと思うのです。

 今、三位一体の中で、やはり問題になっているのは、先ほどの須藤先生、それからあちらにもお答えしましたけれども、やはり今回の中で、税源移譲の分と、いわゆる補助金の話の部分とでいきますと、補助金のカットの割に税源移譲が少なかったというところが大きなことになっておるんだと思うのですね。

 そういった意味では、先ほどお答えも申し上げましたように、逆に、税源移譲を、三兆なら三兆、先にきちんとして、そのかわりそれに合わせて補助金をカットします、もし補助金カットをし切らなかったら、その分はお返ししますという提案が仮に出た場合に、地方としてその意味がわかる町長さんという方もいらっしゃると思いますので、それがわかれば、私は、おお、それならということになり得ると思うんです。やることは同じです。三年以内で四兆円の補助金のカットですから。かつ、地方もそれなりにスリム化してくださいよという話ですけれども。何となく、スリム化だけ先にさせて税源移譲の方は全然やる気がないんじゃないかというようなイメージに今の段階でなっておるところこそが問題だと思います。

 それを解消するためには、今申し上げたように、税源移譲が先、そして補助金カットはそれに合わせてきちんとやりますというようなことが仮に、大騒ぎになるでしょうけれども、これができれば、一つの流れとして、先もある程度見えることにもなります。そういった形をやりますと、バラ色とまでは言いませんけれども、一応目安が立つので、うそじゃないんだなということになり得るのではないか、これができるとは申し上げているわけじゃないので、おまえはどう考えておるのかと言われれば、そういったことを考えております。

若泉委員 私がこの前ここでも質問いたしましたように、地方消費税にして、そしてある程度事務的なものは固定資産税と住民税を上げる、そして、あとそれに不足するものは調整金として交付金はどうだろう、こんなことを提案しましたら、大臣は、そういう考えもいいねとおっしゃってくれました。いいお答えだったんです。きょうのお考えはまたちょっと違うわけですが。

 今、一番三位一体改革で困りますのは、私も十六年間、いつも予算査定いたしておりますとどういうことがあったかといいますと、基準財政需要額が少ないからもうちょっと多くしなさい、金をもっと起債して借りなさい、お金をたくさん借りなさい、これじゃ公債費率は、一五%までにいけば注意だから、まだ大丈夫だよ、あなたのところは。そういうような形で、いわゆる財政力指数やらそういうもののいろいろな指導を受けながら、もっとお金を使え使えということになって、それの地財計画を立てたそのときの形が、結果的にはちょうど、どこの市町村もそうだと思いますが、今、この平成十六年度ぐらいがピークになりまして、いわゆる分岐点みたいになっていたと思うんです。

 そこへもってきて、ばしゃっと赤字補てん債が切られた、そして交付税は切られる、補助金は切られる。だから、そういうものが大きなしわ寄せになって、どうやって組んでいいかわからないという実態は、私はその実情は自分がやっておりましたからよくわかります。その辺の無理があるということだと思うんですね。このことについては、時間がありませんのでやめておきますけれども。

 この前私が申し上げました、地方消費税とか、そういう形で財源をどこに求めているか、税源の移譲をどうするかというようなことに対しまして、総務大臣ははっきり、そういうようなことも考えてもいいというような言い方でおっしゃいましたので、思い切ってやはり消費税を地方税にするというようなことでやっていただくと、これが最も大臣と私は気持ちが一緒になるんじゃないかということで期待しております。

麻生国務大臣 消費税という話は、これは、先進国を見ますとヨーロッパは軒並み二けたというところになっておりますし、また、消費税というものはもっと上げろという方も御党の偉い方でもいらっしゃいますし、それを福祉目的税に使えという方もいらっしゃるし、実にいろいろ御意見が分かれるところです。

 また、自由民主党の政調会長をしているときに調査したときでも、いわゆる年金等々のものに使うのが前提であれば一〇%、一五%やむなしという御意見は私どものアンケート調査で六〇%を超えておりますから、そういった意味では、今の御意見は決して間違っているわけではないと思っておりますが、ただ、今の段階で消費税を上げる上げないという話になりますと、いつ上がるかわからぬみたいな話で、先の話はできませんので。

 その意味では、所得税を住民税にというのが一番わかりやすいところかなと思っております。住民税ですと今、五%、一〇%、一三%というのになりますので、一律一〇%になりますと約三兆円になります。そういたしますと、その分が地方税ということになりますと、それは明らかに所得税が、払う方は両方とも今までと同じで、受け取る配分の仕方が変わってくるということになろうかと思いますので、基本的な偏在性の少ないものでいくならばそれが一番今の現状としては、大きなものの基幹税を移すならそれが一番現実的かなと思っております。

若泉委員 まだほかに質問がたくさんありますので、これはこの辺でおきます。

 今回、先ほど質問の中で、特例債についてどれくらい将来かかるかということに対して七兆円か八兆円くらい、これは仮定だけれどもかかると。よくお答えになったと思います。実際、これはわからない。実際はもっとかかると思います。

 例えば、私が福井市と鯖江市との二市三町村の合併の様子を見ましたら、五百三十億円かかっています。これはだめになりました。だめになったことは後ほど申しますが。それから、南条町、今庄町、ここを見ても、これは一万二千人ぐらいの人口ですけれども、六十億。ここが偉いなと思いますのは、八十八億まで認められておるけれども、自分のところの裏負担が払えないから六十億でとめておくんだ、こんなことをちゃんとやっています。これは私はいいと思います。それから、あわら市は、芦原と金津がこの前市になって、合併しましたが、六十五億。こんなことを考えますと、福井県だけでも一兆円になる。そうしますと、四十七都道府県ですから相当な金額が出てくるな、そのような気がいたします。

 しかしながら、七兆円か八兆円という数字をお出しになりましたが、これはとにかく、後ほど申しますが、これだけのいろいろな特例債がかかって、いわゆる膨大なお金を使うことによって、国もまた借金ができる、そして地元の市町村も借金ができる。やれ、やれとおだてるんじゃなくて、いや、自分たちの将来、地域づくりをちゃんとできるような形にやはりやるべきだという自覚を持たせる意味では、こういう一つの数字を出されたことはいいと私は思うんですね。

 そこで、私が申し上げたいと思いますのは、これは大野審議官にお聞きしたいと思います。合併の特例等に関する法律案でございますが、私は、先ほどの質問とは違いまして、特例区が一定の期間、五年以下で設置できるということに関しましては、それはよかろう。結局、続いていきませんから、そこで一応期限があるわけでございますから、この期限があるということに関してはそれでいいんじゃないかと私なりに感じております。しかし、この中で、きのう、中村委員が大臣と一緒に、にこにこ笑いながらいろいろな議論をよく長くされておりましたが、地域自治区ということですね。この地域自治区はよろしくないと思います。

 では、なぜよろしくないかということを私なりの経験から申し上げます。

 その地域自治区というものが、いわゆる、例えば市町村長がその区長を選任するとか住所の表示に地域自治区の名称を冠する、このあたりはいいと思うんです。もともと地方制度調査会で答申が出たときには、名前を消したくない、昔からの文化、歴史の名前を消したくないから、名前を残したいというだけが最初の地方制度調査会の答申であった、このように思うんです。

 ところが、ここに、いわゆる市町村長がなぜ選任しなきゃいかぬの、いわゆる互選でいいんじゃないかとか、そういうことが言えると思うんです。なぜかといいますと、私、一つの例を挙げます。

 私が町長をやっておりますときに、今立の長ですが、一町三村を合併いたしました。昭和三十一年でございます。そのときに、粟田部というのがあります。これは継体天皇ゆかりの地、男大迹皇子のいたところで粟田部というんですが、こんな宣伝はしなくていいんですが、粟田部というところがある。この粟田部地区の協議会は二十六区の千三十戸あるんですよ。ところが、条件として、必ずこの粟田部という名前を残してほしい、この自治区を認めてほしいということになったんですね。それで、二十六区にはそれぞれ町から補助金が来ました。区長さんもいます。ところが、この二十六区の協議会が、我々が何かを言うと、協議会の会長、協議会の意向がなかったらこれは言うことを聞きません。そしてもう一つ、中村委員が言っておりましたが、これはジンクスでありますが、選挙が、例えば町会議員はここの推薦がなかったら町会議員にはなれないというような感じになったんですよ。これは事実なんです。この問題は、二十六区がみんなそれぞれ自分たちの集落を守りたいということで、また町内を守りたいということで、みんな解散したいんだけれども、そのときの条件からなかなか解散ができない。これが、今言う地域自治区と余り変わらない。

 ということで、私は、当初地方制度調査会が答申をされましたように、昔からの文化、歴史、そういったものを守るために名称を残す、このことは私はいいことだと思いますが、区長まで市町村の長が選任するとか、またこれが長く、特例区は五年で終わりですが、十年も二十年も続いて、後で孤立した一つの地域自治区になった場合には大変なことになるということで、私は実例を挙げましてちょっと申し上げておきたいと思いますが、その点についてどのように審議官は感じられますか。

大野政府参考人 今先生の御質問の中で、本来的な地域自治区というのは自治法の改正でお願いしておりますので、市町村の中で一定の区域を限りながらつくっていく。これは基本的には住民自治を強化するということのための仕掛けであるということでございます。

 合併特例区というのは、おっしゃるとおり、合併をした場合の、いわばソフトランディング的に五年以内の中で法人格を持ってもいいということなんですね。そうなりますと、一定の仕事をするということになるものですから、やはり区長さんということで特別職の方を設けた方がいいのではないかということですね。

 一方、合併をする場合に、殊さら法人格を持った合併特例区までは要らないけれども、もう少しの間一体的にやっていきたいというので、地域自治区の特例を使う。これは法人格はありません。ただ、特別職の区長さんを置くことはできますよということだけなんです。それも格別上限の期間は決めておりませんけれども、合併協議の中で一定の期間設置をするというふうになっておりますので、やはりこれは、合併したということからいいますと、余り長い期間そういう区長さんを置いてやるのがいいのかどうかという判断にいずれはなろうかと思います。

若泉委員 今審議官がお答えになりましたが、私がさっき言いましたのは、本当に重大なことになります。私は自分で経験しております。議員さんを出すのにも、そこの協議会の推薦がなかったら議員は出せないとか、そしてまた、その自治区が、行政から物を言いますと、我々の協議会の返事がなければ、審議をして決定されなきゃだめだとか、そういうような意見がよく出まして、なかなか難しい、孤立した一つの自治区になりますので、その辺は今お答えにならなくても結構ですが、これは十分にお気をつけください。私は、これは議事録に残っていますから、あのときに大野審議官は大丈夫ですと言われたというようなことになると大変な責任問題になりますから、申し上げておきますけれども。

 次に、質問がまだありますので申し上げますが、これからの合併について、合併後の地域づくりというのが一番大事だと思うんですよ。合併後の地域づくりというのを考えて合併している人はいない、これが一つの大きな問題になっているわけであります。

 実は、つい最近の合併が失敗した例を挙げておきます。これは総務省の皆さんもちょっと役に立つと思います。

 私どもの福井県の福井市と鯖江市が合併がだめになりまして、今月の二十九日から市長のリコール運動の署名運動にまで発展しております。こういう非常にまずい結果になっています。

 これはなぜ失敗したかといいますと、鯖江の市長が三七%の結果を市民の理解を得ないで、六三%の意向を無視して私物化して、議会で強行に可決させた。このことと、それから、一番よくないのは、これは大事なことです、専門部会から小委員会、法定合併協議会、各議会、市民へは一番最後に説明した。これは逆なんですね。市民から小委員会または法定協議会へ行って、そして議会という順番が、市民が一番後回しにされて説明された。

 もう一つは、先ほどから、延命行為の目的で在任特例をほとんどが望んだこと。これが失敗の原因だ。なぜかといったら、市会議員が百名になるんです。それは住民の反対です。住民が、百人も要らないんじゃないか、大変な金がかかるんじゃないかと。

 そしてもう一つは、広域圏構想であります。今まで広域行政、広域圏があったものは、数百億というお金がつぎ込まれたんです。これがみんなばらばらになってしまうと、また私たちはお金を負担してこれを同じ電算化したり、文書関係は電算化システムになっています、そういったものがだめになるんじゃないかという声。または、一部事務組合、こういうのがばらばらになってしまう、こういったことでの住民の反対。そして、新市建設計画については合併後に先送りする、新しい都市の計画は合併後にやる、こういったことが一番の問題になって、今回住民投票は二回やりましたが、また、住民の署名運動をやりまして、有権者数五万一千のところで二万六千近く集まったんです。そこで、市長は記者会見して、もうできませんと言ったんですね。そこで、今リコールが、二十九日から署名運動される。

 私は恥をさらしたくはありませんが、こういう例が日本じゅうで起きてくる。でありますので、こういったことで一番大事なことは、私は何を申し上げるかといいますと、これはお答えいただかなくても結構でございますが、やはり市民から。これは、総務省で指導していただきたいと思います。

 今回の法案の中には、総務大臣の指導とか、または都道府県の指導というものが入っておりますから、よく指導していただきまして、市民から運動が始まる、議論が始まる、そして、当たり前のことなんですが、法定協議会、そして議会へと。この順序が間違っているのがあちこちで見られております、私も見ておりますけれども、ぜひこれは注意していただきたい。

 あともう五分しかありませんので、最後に大臣に二つほどお聞きしたいと思います。

 市町村合併の推進の目的の一つに、行政の効率化ということが言われております。その中で、国に大きな財源が必要になって、地方自治体を膨大な事業に走らせまして借金が増額していく。そういう中におきまして、私は、法定協議会の設置とあわせて、行政合理化推進委員会というものを市町村に指導してつくるべきじゃないか、このように考えています。

 なぜかと申しますと、例えば、今回私どもの福井県で一番最初に市になったあわら市は非常に賢明だったと私は思うんです。どういうことかと申しますと、金津と芦原が合併しまして新庁舎という話が出たけれども、我々が大きな負担になるから新庁舎は慎重にやろうということでありまして、まさに庁舎は古い既存の庁舎を、金津の庁舎を本庁舎にして、芦原の庁舎は今までどおり事務的に使おうと。新庁舎をつくらないために住民の負担がなくなった。私は大したものだと思うんですね。

 例えば、こういうことを考えますと、道路の規模を四メーターしかないから六メーター欲しい、そうしますと、これはお答えいただかなくて結構ですが、国土交通省は、いや、十二メーター道路じゃないとだめだ、二メーターの歩道が必要だ、前も申し上げましたように。田舎の方では、歩道は、人が歩くよりは最近犬が歩いているんです。

 本当にそのような状態で、必要ない歩道まで、全国的に、画一的にそういった規格を立てているということは余りよくない。これは大きな地元の負担にもなり、国の負担にもなる。こういったものも行政合理化推進委員会で、県を通じて国へ要望ができる、このような一つの要望できるようなシステムをとったらどうか。

 例えば連絡車でも、全部軽自動車にしているところもあります。または、各省庁の補助金を合わせて複合施設をつくっていく、このような考え方もしています。これをやはり行政合理化推進委員会というような形の中で、いわゆる法定協議会とあわせてそういうものを議論して、これはよくないんじゃないか、これはこうした方がいいんじゃないか、これは県を通じて国へ、我々の規格に、我々のニーズにこたえてもらうように申請したらどうか、そのようなことを申請できるようなことはできないか。行政合理化推進委員会をいわゆる法定協議会にあわせて設置できるかどうか、このようなことをぜひともひとつお願いしたいということと、最後でございますが、あと二分しかありませんので、時間がたつとまたやじられますから早くやります。

 現在進められております市町村合併の組み合わせは、自主的な合併を前提としたために、広域行政、広域圏に基づき発展してきました経済圏やいわゆる生活圏がばらばらに分散しまして、本来あるべき姿ではない、そういった実情が全国的に、もともとの広域行政、広域圏がばらばらになっている。そういう中で、今回、都道府県合併の自主的な手続等の整備の提案をされております。

 私は、先ほども同じような質問がありましたが、今後の道州制の区域についても、国が理想とする組み合わせや区域を示すべきである。それが、今、市町村合併をしながら、我々、将来、道州制になるとこの地域に行くのかな、どの町に入るのか、どの人たちと私たちは経済圏や生活圏というのは一緒になるのかなというようなことを頭の中に入れながら、今後の市町村合併は動いていくと思うんですよ。

 私は、そういったものは当然国が想定されて提案されるべきじゃないか、このように思っておりますので、最後にいたしまして、大臣の御答弁をお聞きしたい、このように思っております。よろしくお願いします。

麻生国務大臣 一党からの質問だけでちょうど三十分間時間が延長になったというのは珍しい例だと思いつつ、ちょうど三十分で終わるところも、なかなか、最後に締める方が若泉さんだと大したものだなと思いながら、答えさせていただきますけれども、今の御提案は正しいと思います。

 基本的には、行財政の効率化を図るというのは、これは合併して行財政の効率化を図らなかったら話になりませんから、間違いなくそういったようなことは、簡素合理化とか公共施設等々の効率的な配分とか配置等々を含めまして、こういったようなことは、事務事業の見直しを含めて、いろいろあります。

 今、話として、庁舎は新しく建てずにというお話がありました。

 これは、綿貫先生のところですから、砺波は富山県でも同じように、あれは八町村合併したと思いますが、庁舎を建てるのを拒否、要らない、それだったら、あそことあそこつなぐところの道路にだけ金が要る、それ以外は要らないと言い切って、議会はここ、何とかはここといってきちんと分けて、考えてみれば十二、三分でつながるようなところでもありますから、それはやれぬことはないんだと思います。私は、そういったことは町村がきちんと見識なりそういったものがあればできると思いますので、今言われたのは基本的に正しいと思っております。

 それから、都道府県のあり方の見直しというのは、先ほどどなたかの御質問にもお答えいたしましたけれども、これは、明治四年この方、九十何県あったものを四十七都道府県までにした経緯これあり、奈良県なんというところも、かつては大阪からまた分かれて奈良になったり、堺県も、一回大阪だったのが分かれて堺県、堺県がまた戻ったり、いろいろしているんです。

 国のあり方としては、この県というのは、私どもえらく親しんで、長いものですから、何となくそういうものだといってここまで来たんですが、これだけいろいろ出てきますと、県境のところなんというものは、下関なんというのは北九州の方へほとんど顔が向いておりますので、この際、中国の武漢市みたいに、関門合併して一つの市にしたらとか、極端なことを言えば海を渡ってというような話も地元の人はするぐらい、いろいろこの数年の間に意識はかなり変わっておると思っております。

 したがいまして、これは、二十八次の地方制度調査会の中で、いろいろこの件を含めまして議論をお願いしているところであります。それこそ、先ほど言われましたように、住民からの発議が大事と言われたのと同じように、県民からそういった声が上がってくるのを受けてどうするかということを考えるというのは、いろいろなところで案が出て、例が出てきて、一番最初にそれに火をつけたのは、多分、長野県から分かれて岐阜県にというあの話がスタートしてから、一斉にあちらこちらからこの種の声を、県を越えて合併すると言われて、片方は二市、片方は三市で合併するものですから、どうされるんですかと聞いたら、何をですか、いや、どっちの県に属されるんですかと言ったら、いい条件を出した県の方に入りたいというようなことを市長が言うというようなことというのは、なかなか私はおもしろい話だなと思って正直聞いておりますけれども。

 いずれも、両方の県議会の了解が要りますので、なかなかそう簡単にいく話ではありませんけれども、都道府県を含めて再構築、再編成というのは、これは国の形に直接関係する話でもあろうと思いますので、今の話は大変大事な御指摘だと存じます。

若泉委員 ありがとうございます。

佐田委員長 次回は、来る二十七日火曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三十五分散会


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