衆議院

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第3号 平成16年9月9日(木曜日)

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平成十六年九月九日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 滝   実君 理事 野田 聖子君

   理事 伊藤 忠治君 理事 松崎 公昭君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      今井  宏君    岡本 芳郎君

      奥野 信亮君    加藤 勝信君

      亀井 久興君    自見庄三郎君

      鈴木 淳司君    田中 英夫君

      谷  公一君    萩生田光一君

      松島みどり君    松野 博一君

      松本  純君    三ッ林隆志君

      三ッ矢憲生君    山下 貴史君

      赤松 広隆君    稲見 哲男君

      大出  彰君    黄川田 徹君

      須藤  浩君    田嶋  要君

      高井 美穂君    寺田  学君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      山花 郁夫君    若泉 征三君

      赤松 正雄君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   総務副大臣        田端 正広君

   総務大臣政務官      松本  純君

   会計検査院事務総局第五局長            円谷 智彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (人事院総裁)      佐藤 壮郎君

   政府参考人

   (人事院事務総局総括審議官)           佐久間健一君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          関戸 秀明君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            藤野 達夫君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            山野 岳義君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          須田 和博君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            堀江 正弘君

   参考人

   (日本放送協会会長)   海老沢勝二君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 関根 昭義君

   参考人

   (日本放送協会理事)   宮下 宣裕君

   参考人

   (日本放送協会理事)   和崎 信哉君

   参考人

   (日本放送協会理事)   野島 直樹君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中山 壮介君

   参考人

   (日本放送協会理事)   出田 幸彦君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月九日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     加藤 勝信君

  小西  理君     松野 博一君

  谷本 龍哉君     松島みどり君

  西田  猛君     鈴木 淳司君

  河合 正智君     赤松 正雄君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     奥野 信亮君

  鈴木 淳司君     西田  猛君

  松島みどり君     谷本 龍哉君

  松野 博一君     三ッ林隆志君

  赤松 正雄君     河合 正智君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林隆志君     小西  理君

    ―――――――――――――

八月六日 

 一、行政機構及びその運営に関する件

 二、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件

 三、地方自治及び地方税財政に関する件

 四、情報通信及び電波に関する件

 五、郵政事業に関する件

 六、消防に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件(人事院勧告)

 情報通信及び電波に関する件(NHK不祥事問題等)


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、特に人事院勧告について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房行政改革推進事務局内閣審議官磯部文雄君、人事院総裁佐藤壮郎君、人事院事務総局総括審議官佐久間健一君、事務総局職員福祉局長関戸秀明君、事務総局人材局長藤野達夫君、事務総局給与局長山野岳義君、総務省人事・恩給局長戸谷好秀君及び自治行政局公務員部長須田和博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 去る八月六日の一般職の職員の給与についての報告及び給与の改定に関する勧告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。人事院総裁佐藤壮郎君。

佐藤政府参考人 皆さん、おはようございます。

 人事院勧告及び報告について説明をさせていただきます。

 人事院は、八月六日、国会と内閣に対し、公務員の給与に関する報告及び勧告並びに公務員人事管理についての報告を行いました。

 このたび、その内容について御説明申し上げる機会を与えていただき、厚く御礼申し上げます。以下、その概要を御説明いたします。

 まず、職員の給与に関する報告及び勧告について申し上げます。

 本年の勧告に当たって、民間企業の給与実態を調査したところ、定期昇給の停止、賃金カット等の給与抑制措置が講じられている事業所が昨年より減少しているなど、民間企業における経営環境が改善してきていることがうかがわれました。

 月例給については、官民の給与を正確に調査し、比較した結果、四月時点における官民の給与較差は、三十九円、率で〇・〇一%と、ほぼ均衡していました。したがって、本年は、月例給の改定を行わないことといたしました。

 また、ボーナスの支給月数についても、民間の支給割合とおおむね均衡していたことから、改定を行わないことといたしました。

 これらの結果、昨年まで五年連続の引き下げとなっていた公務員給与の水準が、六年ぶりに維持されることとなりました。

 一方、本年は、地域に勤務する公務員給与の見直しの一環として、寒冷地手当の抜本的な見直しを行うこととしたほか、本年四月に国立大学が法人化され、国立病院・療養所が独立行政法人化されたことに伴う給与法の整備を行うことといたしました。

 続いて、勧告の主な内容について御説明いたします。

 寒冷地手当については、支給地域について、北海道と北海道と同程度の気象条件が認められる本州の一部の地域に限定いたします。支給額については、民間の支給実態に合わせて、約四割引き下げます。支給方法については、これまでの十月末日における一括支給から冬期における月額制に変更します。実施時期については、早期に見直しを実施するため、本年の寒冷地手当の支給から実施します。なお、実施に当たっては、所要の経過措置を講じます。

 国立大学の法人化等に伴い、高等学校、小中学校の教員に適用されていた教育職俸給表(二)、(三)の廃止、東京大学及び京都大学の学長に適用されていた指定職俸給表十二号俸の廃止等を行います。

 また、本年は、地域に勤務する公務員の給与の見直しを含めた給与制度全般の抜本的な見直しについて、具体的な検討項目を提示しました。

 地域の公務員給与については、民間賃金の低い地域における官民の給与較差を考慮して全国共通の俸給表の水準を引き下げ、民間賃金の高い地域に対しては地域手当を新設することを検討します。また、年功的な給与上昇を抑制して、職務、職責をより反映できるように、査定昇給の導入、昇給カーブのフラット化、専門スタッフ職俸給表の新設を検討します。そのほか、本府省の職員の職務の困難性等を考慮した本府省手当の新設、ボーナスにおける成績査定の強化についても検討します。

 これらの検討項目については、今後、各府省、職員団体等の関係者から十分意見を聞きながら、来年の勧告に向けた検討を進めてまいります。

 続きまして、公務員人事管理について御説明いたします。

 公務員制度改革については、内閣官房を中心に検討が進められているところですが、人事院も、これまで、公務員制度改革に当たっての基本的事項やその方向、公務員制度の基本理念等について整理を行い、必要な提言を行ってまいりました。

 現在、法律改正に向けての中心課題は、能力、実績に基づく人事管理を推進すること及び再就職規制の見直しを行うこととされております。

 いずれも公務員制度における重要なテーマであり、国民及び関係者に理解され納得されるものである必要があると考えております。

 公務員人事管理にあっては、基本理念として中立公正性の確保が要請されており、また、労働基本権の制約が維持される限り代償措置の確保を図ることが肝要であります。人事院としては、今後とも、法制化に向けての検討に際しては適宜必要な意見を表明することとし、実効性のある改革が、国民や関係者の理解を得て実現されるよう、必要な協力を行っていきたいと考えております。

 このほか、検討すべき課題として、キャリアシステムの見直しの検討、セクショナリズムの是正、民間人材の採用や民間企業への交流派遣の促進、勤務時間の弾力化、多様化など職業生活と家庭生活の両立支援策の推進、1種採用試験の改革、研修の充実など今日的な課題として対応が必要なものについてもあわせて報告しており、人事院としても取り組みを進めていきたいと考えております。

 以上、本年の報告及び勧告の概要を御説明申し上げました。

 総務委員会の皆様におかれましては、人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、この勧告を速やかに実施していただけるよう衷心よりお願い申し上げる次第でございます。

佐田委員長 以上で人事院からの説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河合正智君。

河合委員 おはようございます。公明党の河合正智でございます。

 ただいまの佐藤人事院総裁の人事院勧告等につきまして、佐藤人事院総裁、麻生総務大臣並びに政府参考人の皆様に御質問させていただきたいと存じます。

 まず最初に、寒冷地手当のことにつきましてお伺いさせていただきます。

 寒冷地手当につきましては、昭和二十四年に議員立法により制定されました。冬場の寒冷による生計費がかさむということに対しまして、定着してきているように思います。本年の勧告でなぜ寒冷地手当を見直したのか、また、どのような観点から見直したのかにつきまして、人事院総裁にお伺いいたします。

佐藤政府参考人 寒冷地手当につきましては、経緯をちょっとさかのぼってみますと、昭和二十四年に議員立法で法律ができたわけでございます。議員立法ということで、したがいまして、支給地の指定等、細目にわたっては総務省の省令で決めているという現状でございます。恐らく、当時非常に国民の生活が経済的に困難であった、言ってみれば、飢え死にするか凍え死にするかというような困難さがあったというふうに思います。したがいまして、その議員立法の趣旨としては、まず公務員が先導して、民間企業にそれに追随してもらいたいというような背景があったのではないかというふうに推測しております。

 実は、経済が落ちつくにつれまして、民間企業の支給実態と、それから公務員の支給実態の格差が顕在化してきたわけでございます。そのため、最近で申し上げますと、昭和六十三年と平成八年に改定をいたしました。しかしながら、先ほど申し上げたような法律制定当時の経緯を引きずっていた、そのことと、それからもう一つは、国家公務員の手当を下げますと、これは当然地方公務員にも波及する、さらには、寒冷地手当というのは一部の地方交付金、補助金等にも影響を与えるということでございまして、地域経済に悪影響を与えるのではないかという配慮もあったかと思います。実際、今回の改定に当たりましても、各県の知事さんとかあるいは自治体の首長さんからいろいろな陳情があった次第でございます。

 そういうこともあって、昭和六十三年と平成八年の改定というのは必ずしも十分なことではなかった。現実に、支給地域の見直しには踏み込んでおりません。したがいまして、今回は、昨年の秋に民間の寒冷地手当の支給実態について詳細な調査をいたしまして、手当についても民間準拠の原則を守るということで、今回の抜本的な見直しというのを勧告させていただいた次第でございます。

河合委員 二十分間の質問で十問通告いたしておりますので、簡潔にお願い申し上げます。

 北海道では八割以上の民間事業所で、また、本州でも一定割合の民間事業所で寒冷地手当を支給しているようでございます。官民較差という観点からの是正ということでございますけれども、この点についてはどのような趣旨で出されているのでしょうか。

 また、次の質問項目もあわせてお伺いをさせていただきますけれども、寒冷による生計費がかさむということにつきましては、これは、かつては石炭、今は灯油等の問題だけではないと思います。といいますのは、北海道を中心にしまして、雪おろしにつきましては大変な労力を要していらっしゃいます。特に、高齢化の急速に進む現代にありましては、この問題は大変な負担になっております。

 このような点につきまして、今回の寒冷地手当の見直しにつきまして配慮されているのかどうか、あわせてお伺いをさせていただきます。

山野政府参考人 寒冷地手当の民間における支給の趣旨でございますけれども、私どもが昨年秋に行った調査によりますと、暖房用の燃料費、防寒用の被服費、除雪費、自動車関係費等の寒冷、積雪に着目して支払われる費用を補てんすることを目的として支給されているというところでございます。

 それから、やはり同じ調査で見てみますと、御指摘のように、多くの企業では、除雪費あるいは防寒用の衣服代、そういった諸経費を考慮して寒冷地手当を支給しているという事業所が非常に多うございます。

 今回の見直しに当たりましては、支給額の決定に当たりましてこうした民間の支給実態に合わせたところでございますので、御指摘の点についても十分考慮しているところでございます。

河合委員 公務員給与を地域の民間給与に合わせるために、民間賃金の低い地域に合うように全国一律俸給表を下げるということでございますけれども、一方では、地域ごとに俸給表をつくるという案も提示されておりました。この点につきまして御説明いただきたいと思います。

佐藤政府参考人 簡潔にお答え申し上げます。

 確かに、地域別、例えばブロック別で給与表を定めるというのも一つの選択肢でございます。ただ、本俸そのものが地域によって異なるとなると、これは職務給原則という問題とバッティングをする。職務給というのは職務の内容と責任の度合いに応じて俸給を払うということでございますので、本俸本体が地域によってばらばらになるということは、その点いかがなものかということがございましたので、もちろん選択肢としてはまだ完全に捨ててはおりませんけれども、一応、全国同一の俸給表ということで提案を申し上げております。

河合委員 次に、査定昇給とする場合には適切な評価ということが前提となります。職員の皆さんの信頼を得た上で、実際に職員の評価に差をつけるような実績評価が可能なのかどうか、これは非常に難しいんじゃないかと言われております。

 職員の間に不安が残らないように、しっかりとしたシステムを構築する必要があると考えます。そのためにどのような手だてをお考えか、お示しいただきたいと存じます。

佐藤政府参考人 今御指摘があったように、公務員の世界に評価というのを持ち込む場合、やはり職員の理解と納得性を得るということがまず一番に大切なことだと思います。

 現に、今行っている勤務評定というのはその点が不十分だったものですから、今、非常に当初の目的と外れた運用になっているということがございまして、今回の評価制度の導入につきましては、ぜひ、職員の徹底した理解と納得性を得るために、職員に意見をよく聞く、あるいは職員団体と協議する、そういう手続をしっかりと踏んでいただきたいというふうに思っております。

河合委員 今回の報告で、人事院は特昇制度の廃止を提言されております。現行の制度におきまして、特昇や昇給期間の短縮といったことにつきましては、どのようなケースに認められておりますでしょうか。

山野政府参考人 特別昇給が行われる場合でございますが、勤務評定の結果、上位の段階に決定され、かつ、職務に関して見られた職員の性格、能力、適性が優秀である場合、あるいは、これらの職員が相当の期間にわたり特に繁忙な業務に精励した場合等公務に対する貢献が顕著であると認められるときに、一号上位に昇給させるわけでございます。

 次に、昇給短縮の件でございますが、初任給決定に当たりましてごく例外的に昇給短縮することはございますけれども、通常、一般行政職につきましては、昇給期間の短縮ということは国家公務員の場合にはございません。

河合委員 地方公務員の場合には採用時に既に一律に昇給短縮をする例がある、かつてありました。現在も行われているかどうか、昇短とか特昇の運用は明確に規定されているのかどうか、お伺いをさせていただきます。

須田政府参考人 地方公務員の給与でございますけれども、これは国家公務員の給与に準じて決定することとされておりますので、御指摘の昇給制度につきましても国に準じた制度とすべきものと考えておりますが、先生御指摘のように、一部の地方公共団体におきまして、国に準じた適正な給与制度としての普通昇給とか特別昇給以外の方法として、一斉に昇給期間を短縮させる一斉昇短とか、あるいは、運用によりましてあるとき全員の昇給期間を短縮する運用昇短といったものが見受けられるところでございまして、こうした点につきましては、私ども、従来からその是正を要請してきているところでございます。

 なお、先ほどお話ございました退職時の特別昇給でございますけれども、これにつきましては、国に準じまして速やかに廃止するよう本年四月に通知したところでございます。

河合委員 もう一つ、いわゆるわたりの問題でございますが、仕事は変わらないのに年功的に昇給させる、いわゆるわたりの実情をどのように把握されておりますか。人事院と総務省からお伺いさせていただきます。

山野政府参考人 先生御指摘のわたりでございますけれども、給与の格、例えば係長とか課長補佐などの職制段階ごとに決められた格付基準に沿わずに、具体的な職務評価もなく年功的に昇格が行われる運用というものを指すというふうに私ども理解しておりますけれども、国家公務員の昇格につきましては、職員がついていた官職の複雑困難及び責任の度合いが高まる場合に、それを十分精査した上で昇格が行われるわけでございます。

 したがいまして、御指摘のようなわたりは行われていないところでございます。

須田政府参考人 地方公務員の場合でございますけれども、ただいま御説明ありましたわたりという位置づけがされるような実態というのは、これまでのヒアリング等からも、ある程度そういう実態があるということを聞いているところでございます。

 また、そのような形でわたりをしますと、ある級別職員の構成比がすごく高くなってしまうとかいうようなことからも、そういうところではわたりのようなことをやっているのではないかという推測もできるわけでございます。

 私どもとしましては、こうしたものを、やはり給与制度を乱すことにもなりますし、給与全体を増嵩させるようなことになりますので、是正していただくよう要請してきているところでございます。

河合委員 日本のバブル崩壊後、民間は大変なリストラでこれをしのいできました。乾いたタオルをなお絞るというような厳しい状況でございますが、そういった中にありまして、やはり公務員給与に対する不信感というのが根強くございます。

 そういう観点からしますと、私は、ただいまの昇短ですとかわたりといった制度は、民間からしますと非常に理解を超えるものではないかと思います。過去の経緯は経緯としまして、むしろ将来的には廃止すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今の御指摘ですけれども、河合さん、たしか松下電器と記憶しますから、民間の会社から来られた方は理解を超えるというより理解できないという表現の方が正しいと思いますが、わたりという言葉を聞いて、何を渡るのかよくわからぬのが普通の方なんじゃないでしょうかね。どこか役所におられて覚えられたか、一斉昇短はまだ理解できるにしても、単語の意味が余り理解できないほどこれは特殊用語なんだと思います。

 こういったようなことを含めまして、基本的には、給与というものはそこに住んでいる住民が納税している分から払っておるわけですから、そこに住んでおられる納税者としての住民の意識が理解できないものとか納得できないものというのは通らぬということになるんだと思っております。

 昔から、この種の話は、組合との間でいろいろこれまでいきさつがあったのはもう御存じのとおりだと思います。私どもとしては、これは基本的には認められる話ではありませんので、各地方自治体に対して、これまでも、そしてこれからも、この種の話は基本的には認められぬのだという点はきちんと言い続けていかねばならぬところだと思っております。

河合委員 大変ありがとうございます。

 一方で、例えば私たちの本日の質問取りもそうでございますけれども、それを受けまして霞が関の役所の方たちは深夜まで激務が続いている、このことについては一般の国民はほとんど知らないと思います。

 そういった中にありまして、いわゆる一人の事務次官をつくるために同期はみんな外に出す。これは日本の国が、明治以降の日本型システムとして、キャッチアップ型の時代にはこれは非常に効果を発揮したと思いますけれども、今の成熟社会、成熟国家になりまして、私はこの公務員制度そのものを考えてみるべきではないかと思います。

 いわゆる、例えばトヨタ方式というのがございますけれども、これは製造工程だけではなくて人事につきましても、人間主義に裏打ちされた人事を行っているところでございます。いわゆる在職期間を長期化して、それまで蓄えてきたノウハウ、知恵をスタッフとして活用できる、こういうことが私は必要なのではないかと思いますけれども、こういった方向を実現していくためにはどのような環境整備が必要とお考えでしょうか。人事院総裁と大臣にお伺いさせていただきます。

佐藤政府参考人 今御指摘のように、いわゆる天下り問題に対する批判にこたえるためにも、職員の在職期間の長期化ということはぜひ必要だと思います。

 いろいろな方策はあろうかと思いますけれども、まずは、一昨年の十二月に閣僚懇談会で各府省に長期化について計画を立てろというような申し合わせがございましたので、各府省がぜひその申し合わせに従って退職慣行の是正に向けた計画的な取り組みを進めていただきたいと思います。

 人事院としましても、ことしの報告の中でスタッフ職の創設ということを提言させていただきましたけれども、ラインを外れた職員たちの経験と能力を生かすために、そのスタッフ職の給与表に移っていただいて、例えば政策立案のための調査研究とかあるいは高度の行政相談とか、人事院の場合ですと公務員研修所の教官とか、そういう役割でぜひ公務に役立てていただきたいというふうに思っております。

麻生国務大臣 河合先生御指摘のとおり、基本的にはヒエラルキーがピラミッド形になっているというところで、御存じのように、五十過ぎたところから大体外していってというのは、これは会社でも似たようなもので、大体子会社に出していったりなんかみんなしているというのとほぼ同じものが、役所でいきますと、それが天下りとかいろいろな表現になってきているんだと存じます。

 今の問題、御指摘のとおりに、天下った先において役人の能力を発揮できる場所もありましょうけれども、そうじゃないところもある。傍ら、役所に残っていたらその能力がもっと生かされておった、ただし、組織がピラミッドであるためにいる場所がないというのであれば、組織的にそれは複線型の組織をつくるということを考えるのは当然であって、その人の給与をどの程度でとめるか。ずっと同じように給与を上げれば給与が上方硬直を来しますので、そういったことのないように配慮をしながら、本人と納得ずくでいろいろ人事としての形を詰めないかぬのだと思います。

 少なくとも在職期間が長引くことによっていろいろなこれまでとは別の問題が発生しますので、それに見合ったような組織づくりは、これは人事院ともども、各府省でもいろいろ考えていかれてしかるべきだと思っております。

河合委員 人は石垣、人は城でございます。公務員制度改革は国家の根幹にかかわる問題でございますので、真剣に私たちも取り組んでまいりたいと存じます。

 大変にありがとうございました。

佐田委員長 次に、岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本でございます。

 本年度の人事院勧告につきまして質問いたします。

 まず、本年度の勧告におきましては、寒冷地手当の大幅な引き下げのほか、新たな公務員人事管理の実現に向けていろいろ踏み込んだ内容となっていることは大変評価しているところでございます。ただ、実現に向けてはいろいろ疑問点もありますので、質問いたしたいと思います。

 まず、寒冷地手当でございますが、寒冷地手当の官民較差というのは何もことし発生したわけではないわけでございます。それがなぜ突然ことしに限ってこういうことをやるのかというのが第一点でございます。

 第二点目に、今回この寒冷地手当を引き下げた結果、月例給の較差がなくなり、月例給改定を行う必要がなくなったという説明もありますが、何か寒冷地を犠牲にしてバランスをとったような感じもするわけでございます。こういった点についてどういうふうに総裁は説明されるのか、お伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 まず最初の御質問でございますけれども、なぜことしになって大幅な寒冷地手当の見直しをしたかということでございます。

 経緯については先ほどお答え申し上げましたけれども、私ども基本的に重要だと思っている考え方は、やはり人事院勧告の根幹というのは官民の給与比較でございまして、俸給本体だけではなくて手当についても官民との比較を正確に行って、その差があれば是正をするということが国民の理解と納得を得るためにも必要ではないかというふうに思っております。したがいまして、ことし、そういう考えのもとに抜本的な見直しの勧告をさせていただいたわけでございます。

 それから二番目でございますけれども、これは端的に言えばたまたまでございまして、俸給の方と寒冷地手当の方を独立して民間の調査を行いました。たまたまその数字が非常に、プラスとマイナス違いますけれども、似た数字であったということでございまして、たとえ俸給本体の方が大きくプラスの改定の必要がある、あるいはマイナスの改定の必要があるという場合であっても、今回の寒冷地手当の見直しというのは、それとは関係なくやはり同じように勧告させていただくことになったというふうに思います。

岡本(芳)委員 次に、国家公務員の寒冷地手当の引き下げによって、地方公務員も寒冷地手当がそれに準じて引き下げられると思うわけでございますが、私が思うに、地方公務員は地元採用の方が多く、もともとそこに住んでいるわけでございますから、寒冷地手当を支給すること自体に何か疑問を感じるわけでございます。そもそも、そういうものは本給に入っているのではないかという気がしているところでございます。

 このことにつきまして、総務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 岡本先生御指摘のとおりなんですが、そもそもこれは、二十四年の議員立法の前に、昭和二十一年、敗戦直後から、石炭手当と昔は言ったんです。石炭手当が石炭・寒冷地手当になり、まきを入れて薪炭手当という言葉になり、そして寒冷地手当と、ずっと時代とともに呼び方は変わっていったんだと思っております。それに合わせて、地方公務員も同じようなところだと思います。

 御存じのように、やはり昔の暖房の設備というものは、正直、今に比べればけた違いに寒いという状況にあったということだと思いますので、同じような職種であれば同じような給与というような基本的な考え方なんだと思いますが、いかにも酷寒の地でというのはこれはいかがなものかということで多分特別な手当がつくようになったというのが歴史的背景だと思っております。したがって、北海道に限らず本州の特に積雪の多い地域において、東北、北陸等々豪雪地域においてはそのような手当をされてきたんだと思います。

 今回、官民較差等々の問題点から、人事院におきましても、従前より寒冷地手当を含めて比較した上で給与水準の均衡を図るということを、これはもう長年の懸案でもあったんですけれども決定されることになりましたので、私ども、地方公務員に対する対応を決めねばならぬ総務省といたしましても、これに準じる形でさせていただきますけれども、もともとあったではないかといえば、もともと確かに条件が悪かったことも確かでもありますので、そういったところを考えて、ほかのところの公務員、同じ地方公務員とはいえ場所によって随分かかる生活コストも違うということから、このような手当がなされておるものだと理解をいたしております。

岡本(芳)委員 また、寒冷地手当の引き下げの実施は今年度からということになっておりますが、このような大幅な引き下げに対し、職員はかなりの影響を受けると思われるわけでございますが、今年度から混乱なく実施できるのかどうか、総務省にお伺いいたしたいと思います。

戸谷政府参考人 お答えします。

 寒冷地手当制度につきましては、先ほどから議論されておりますように、支給地域を大幅に縮小するほか、支給水準も平均で約四割引き下げるなど、抜本的な見直しが勧告されているところでございます。

 一方で、勧告は、この見直しに伴い所要の経過措置を講ずることを求めておりまして、一定期間をかけて段階的に支給額を減じていくことが想定されております。したがいまして、勧告どおり改正することとした場合においても、この経過措置がございますので、混乱なく実施することは可能であるというふうに考えております。

岡本(芳)委員 混乱なきよう、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それから次に、公務員の退職後の再就職についてお伺いいたします。

 公務員の天下りにはいろいろ批判があるのは私もよく知っておりますし、改善しなければならないと思っておるところでございます。特殊法人等で何度も高額な退職金をもらったり、あるいは高い給料をもらったりするのは問題でありまして、是正の必要性を感じております。

 しかし、これも特殊な一部の国家公務員であって、一般的国家公務員の場合はそのような天下りもないわけでございます。そして、退職から六十五歳の年金支給開始までは自分で生活していかなければなりません。しかし、民間で働くためには、やはり五十歳代前半ぐらいでないと採用してもらえないのです。六十過ぎてからでは就職できません。そういったこともあって、単に定年までの在職期間の長期化を図るということを行っても、この問題の解決にはつながらないと思っております。

 このことについて、総務大臣並びに人事院総裁の御意見をぜひお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 いわゆる天下りにつきましては、今国民の批判が非常に強うございまして、今御指摘のあったような事情があるのは大変よくわかるんですが、そういう中で例えば規制を緩めるということは、これは到底許されないことだと思います。

 したがいまして、現状では、在職期間の長期化、それから、定年後、年金受給の開始年齢までは、いわゆる再任用制度を活用していただきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。

 ただ、私ども、実は海外の状況もいろいろ調査しておりますけれども、規制の制度そのものについては、欧米各国、日本と同じような制度を持っております。ただ、聞いてみますと、国民の批判というのは余りないと。なぜかというと、やはり外国では組織で再就職をあっせんするということは全くないわけですね。自分で探す、あるいはヘッドハンティングに応じるという形で再就職をしているということでございます。

 恐らく日本においても、国民の批判の中心というのは、やはり各府省が組織的に再就職をあっせんするという点にあるのではないかと私は思っております。

 したがいまして、現在でも、公正な人材活用システム、これは民間から必要な人材を経団連に登録していただいて、それに合う適切な人材があれば公務の方からそこに再就職してもらうという制度もございますし、それから、自分で五十過ぎて転職を考えるということになった職員に関しましては、情報提供等セミナーも開催しておる次第でございまして、自力で再就職する、あるいは転職するという人につきましては、人事院としてもぜひ後押しをしたい、そういうふうに思っております。

麻生国務大臣 これは岡本さん、物すごく大事なところだと思いますが、国によって事情も違います。アメリカでいえば、前の財務長官ルービンという人は、やめて翌日、たしかメリルリンチの社長だかモルガン・スタンレーの社長になったと記憶します。ほかにもいろいろ、サマーズも似たようなものだったと思います。そういう意味では、大統領制のこともありましょうが、かわりますと職員ごそっと約三千人ぐらい入れかわりますが、その再就職先は、政府に入れないということになれば民間ということになりますので、多くの方が民間もしくは学校、大学に再就職されるということになります。

 私ども、退職した後、年金支給までの間の生活を考えるという立場になりますと、これはいろいろな形で、今言われましたように、早目に退職した方が雇いやすいという方がおられるのはもう事実だと思います。来られた方も、正直申し上げて、若い方がやりやすい、使いやすい、仕事映え上いいということもあります。

 大体、役人なんというのはお金を稼ぐ才能がない人がなっておる職業ですから、そういった人がお金を稼ぐという民間に来られるときに、お金を稼ぐ以外のところに使った方がよほど使い映えがいい。例えば総務関係やら何やら、もう間違いなく民間より法律に詳しい方もいっぱいいらっしゃいます。

 そういった方を有効に使うというのに五十代でというのであれば、多分将来的には、官房がいろいろとかいうことより先に、自分で自分の将来を見て、おれはもうこのままずっと役所にいて、ラインから外れても複線型の方のこっちのスタッフでいた方が自分の将来いいと思うか、おれは出世しそうもないからもっと別の職業を考えようと思うかは、これは個人によって全くばらばらだと思いますし、みんなに言われて議員に出られるという変わった方も世の中にいっぱいいらっしゃいますから、それは実にさまざまな選択があってしかるべきだと思っております。

 その意味では、いろいろな形で天下りの話がよく出ておりますけれども、国家公務員退職後の生活のあり方につきましては、これはかかって個人の選択の幅が広ければ広いほどよろしいんだと私自身は思いますので、何も六十まで待つことなく、五十代でやられるか否かは、自分の将来というのは自分で判断する以外に手がないんだと基本的には思っておるんです。

 そういった意味では、今回のルールというのはいろいろありますので、今、内閣官房を中心に、国家公務員制度のあり方等々いろいろ勉強会がなされているところでもありますので、私ども総務省としては、公務員制度を預かる立場の者といたしましては、せっかく税金を使って長い間育ててきた有能な人たちが、ある程度年になった以降も生きがいを持って、かつ、その能力が生かせる職場を考えるというのは、人物経済上もすごく大事なところだと思っております。

 そういった方たちがより安心して生活できる制度というものを今後とも考えていかないと、これは逆に国家公務員とか地方公務員になろうという意欲を恐ろしく減退させることにもなりかねぬと思います。それもまた人物経済的に見ていかがなものかと思いますので、十分に考えていかねばならぬところだと思っております。

岡本(芳)委員 大変ありがとうございます。

 優秀な人はいいんですけれども、本当に一般的な人はなかなか大変なんです。こういった面もよく検討していただきたいと思うところでございます。

 また、再任用制度もあるわけでございますが、あれも定員の枠内でやられますのでなかなか運用はできないという点もございます。そういった点もあわせてよろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、新たな評価システムでございますが、今回の報告の中で、新しい評価システムを導入すると。これも民間企業がやっているので当然だという感じもあるわけでございますが、民間の場合には業績が売り上げや利益といった形で数字にあらわれやすい。公務の場合はそういったものがない。したがって、どういう指標でもって評価するのか、あるいは現在の勤務評定とどのように違うのか、その点についてお伺いしたいと思います。

佐久間政府参考人 現在検討が進められております公務員制度改革におきましては、能力評価あるいは実績評価の仕組みを整備して、能力、実績に基づく新たな人事管理システムの構築を目指すというふうにされておりまして、人事院といたしましても、実績を踏まえた給与処遇、そういうものの実現が必要であるということで、今回報告をさせていただいた次第でございます。

 公務におきましては、ただいま先生御指摘のとおり、売上高とかあるいは利益といったような、そういう数値で職員の実績を評価するということはなかなか困難だろうというふうに考えておりますけれども、個々の職員には業務が具体的に割り振られております。ですから、その割り振られた業務を明確にしまして、その上で、その達成度、あるいは取り組み状況、そういうものを適切に評価することで実績を把握する、それは私ども可能だろうというふうに考えております。

 また、現行の勤務評定につきましては、評定結果の使用目的が必ずしも明瞭ではない、あるいはその評価基準なども必ずしも十分に整備されていないといったことが指摘されております。また、職員側の理解が必ずしも十分ではなかったというようなこともあって過去には不幸な闘争というようなことも起きたわけです。

 そういう観点からいたしますと、新たに導入する評価制度に当たりましては、これらの勤務評定が抱えている問題点といったものを十分認識しながら、職員側の理解と納得を得るような、そういうような手続も経て、機能するような評価制度をつくっていく、これが重要であろうというふうに考えております。

岡本(芳)委員 時間がないので簡単にいきたいと思いますが、勤務評定制度導入のときには大変な問題になって、自殺者も出たと聞いております。こういったことがないように、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それから最後に、技官の処遇についてお伺いしたいと思います。

 現在、技官と事務官の処遇の格差は相当なものがあります。公務員1種の採用者の率で見ますと、技術系が五五%を占めております。審議官以上の指定職で見ると、技術系は一六%ということで、物すごく差があるわけでございます。また、課長とか室長に昇格する年次も大きな格差があります。

 日本は、科学技術創造立国を目指していることに加えて、最近は、エイズだとかBSEだとか鳥インフルエンザだとか、高度な技術に裏づけられた行政がいろいろ必要となっているところでございます。このような状況から、優秀な人材の確保と職員の勤労意欲を高めるためにも技術系職員の処遇を改善すべきと思いますが、各省では大きな壁があり、ほとんど改善されておりません。したがって、人事院勧告の際に意見を言っていただくなど、各省を指導していただきたいと思うところでございますが、このことについて総裁の御意見をお伺いいたします。

佐藤政府参考人 いわゆる技官、事務官の問題だと思います。

 この問題は、実は戦前からございまして、私も、人事院に来る前は通産技官であったものですから、この問題、非常に興味があって勉強してみたんですが、実は、技官と事務官の間じゃなくて、いろいろなグループの間で昇進に差が出てくるんですね。例えば、キャリア、ノンキャリアはもちろんですけれども、男女の間、あるいは出身校、出身の大学、場合によっては出身の学部にまで、例えば次官を見てみますと明らかに偏りが見られるわけです。

 これは実は、国家公務員法でもあるいは人事院規則でも、法規上の根拠は全くないんですね。すべて各省庁の人事上の運用でなされているわけなんでございます。私、各省の人事担当者が恣意的な人事とか情実的な人事をやっているとは決して思いませんけれども、結果を見ますと、やはり何かバイアスがかかっているんじゃないかという感が非常に強くいたします。したがいまして、人事院の方も、いろいろな機会にこの問題について注意を喚起し、また是正方についてお願いしているんですが、やはり運用上の問題ということがあってなかなか改善につながっていかない。

 私ども、実は、どういう方策がいいか非常に悩んでいるんですけれども、一つは、そういうグループ別のバイアスというのは採用試験のときの試験区分にかかわることが非常に多いわけでございます。したがいまして、今度の報告の中でも提言をさせていただいておりますけれども、やはり試験制度の抜本的な改革、そういう観点から見直しをしたいということが一つ。

 それからもう一つ、今、公務員制度改革の中で導入されようとしている評価制度、これが実効的に動くようになって……

佐田委員長 時間が来ておりますので、簡略にお願いします。

佐藤政府参考人 はい。任用の基準等も透明性が高まれば、やはりこの問題の解決策の一つになるのではないかというふうに思っております。

岡本(芳)委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 終わります。

佐田委員長 次に、稲見哲男君。

稲見委員 おはようございます。

 麻生総務大臣、退職後の生活を考えて私は政治に挑戦したわけではございませんので、一言申し上げておきます。

 時間が限られておりますので、勧告の細かい点は後に回しまして、報告について、まず人事院総裁にお伺いをしたいと思います。

 給与構造の基本的見直しの点全般についてでありますが、この課題は公務員制度改革と大きくかかわるものでありまして、一方、政府の行政改革推進事務局で、現在、能力等級制度、評価制度など、新たな公務員制度について検討中だというふうにお聞きをいたしております。そうしますと、公務員制度改革についての関係者や国民の合意抜きに、またとりわけ、国際労働基準としてILOから何度も勧告をされております労働基本権の付与を先送りして、公務員制度のパーツの一つにすぎない給与構造の見直しだけが先行されて議論されるべきではないというふうに考えております。

 現在の人事院勧告制度を前提にして、人事院の考え方としては理解できるわけでありますけれども、労働基本権のあり方、人事院制度のあり方など、公務員制度の基本的なあり方に及ぶところであり、制度改革の推進とのかかわりでこの基本的な見直しについてどう考えておられるのか、まず総裁にお聞きしたいと思います。

佐藤政府参考人 今御指摘のように、今回の給与構造の見直しに関する提案は、今進行中の公務員制度改革の中で、能力・実績主義の導入と、それに伴う評価主義が確立するという前提で提言をさせていただいております。

 それから、労働基本権の問題につきましては、今いろいろな場で議論がされているということは承知しておりますけれども、今回の報告につきましては、あくまでも現在のような制約があるという前提で報告をさせていただいております。

 当然、労働基本権が回復されれば、人事院の役割のあり方、あるいは人事院勧告の方法などについても変更があると思いますので、その場合につきましては、またその時点でいろいろ検討する必要があるというふうに思っております。

稲見委員 現在の労働基本権が制約をされた中ということでありますが、しかし非常に重要な問題でありますので、これを進めるについて、特に職員団体など関係先との十分な協議ということについてはお願いをしておきたいと思います。

 それから次に、少し各論に入りますが、地域間格差の是正についての問題であります。

 俸給表水準を一律に引き下げる、そこで生じる原資をもって新たな地域手当として再配分する、こういう考え方でございますが、これは、まず第一に、霞が関優遇策そのものではないか。キャリアシステムの見直しなど公務員制度改革の課題に逆行するものと言えるのではないかというふうに思っております。

 しかも、二番目に、俸給表水準を引き下げる根拠として、地域別の官民給与の較差を挙げておられるわけでありますけれども、これらは年々の民間給与の変化に伴って変動するものである。実際、民間賃金の回復で、人事院の報告どおり、較差は小さくなってきております。北海道・東北で、昨年は六・四八%、ことしは四・七七%、そういうふうに変わってきております。これは、景気動向によりましてはこれがさらに縮まるということになりますと、俸給表水準を設定する根拠にならないのではないかという点であります。

 また三番目に、人事院が職務給を公務員給与の原則としている、つまり、地域間で公務サービスに格差はないということからしますと、これについても矛盾を生じるのではないかというふうに思っております。

 公務員給与制度にかかわりまして、基本的な構造に及ぶ問題であり、これも関係団体などとも十分に協議をされまして慎重に検討されるべきであるというふうに考えておりますけれども、この点、総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 最初の、これは霞が関優遇策ではないかということでございますけれども、決してそうではございませんで、現在の俸給の水準というのは全国の平均で設定しておりますので、例えば東京みたいに民間給与の高いところについては、公務員の給与というのはそれに比べて低い。逆に民間の給与が低い地域では、公務員の給与はそれより高いというふうに設定をされているわけでございます。

 したがいまして、今回の私どもの提言では、それをそれぞれの地域で合わせるようにしたらどうかという趣旨でございまして、実際、各省庁からは、優秀な、例えば3種、2種の採用者を地方から引っ張ろうとしても、なかなか霞が関に来てくれないということも聞いておりますので、そのためにも、例えば本府省手当というものを設定するというようなことをいろいろと考えていきたいというふうに思っております。

 それから二番目は、各地域の給与水準、民間の給与水準というのは毎年変動するではないかということでございますけれども、これはそのとおりでございまして、もし変動幅がある一定以上になれば、これは、現在の人事院勧告と同じように、その都度、給与表の改定をまた勧告させていただくということになろうかと思います。

 それから三番目の、職務給とちょっと矛盾するではないかというお話でございますけれども、私どもとしては、職務給というのはあくまでも本俸に対して当てはまる考えであって、手当というのは別途、個人的な、あるいは個別の事情、例えば、どういう地域に勤務しているとか、扶養家族があるとかないとか、そういうことで手当をそれに乗っけているわけでございますので、現在も、俸給を下げるといたしましても、俸給そのものは職務給の考え方でやっていきたいというふうに思っております。

稲見委員 ただ、昨日も質問取りのときに割とフランクにいろいろ議論をしておったんですが、職務給として一本の全国平均の俸給表があった。しかし、これまでの話では、それを例えば五ポイント、全体として下げる。それは、地域の生計費に着目をして、東京二〇%という形でそれを配分していくというふうなことになりますと、結局、今でも四二%ぐらいが調整手当としてはゼロなわけですから、じゃ、退職金の計算のときにどうするんだとか、あるいは、五%落ちたことについて、地方の場合は一方的に下がったままではないかとか、いろいろな問題点というのは現行制度との関連で幾つも出てくるというふうに思うわけです。そういう点では、非常に慎重に議論を煮詰めていただきたいというふうに思っております。

 次に、これは総務大臣にもお聞きをしたいと思います。

 今少し申し上げましたように、地方自治体の給与制度と水準は国に準拠をする、こういうふうになっております。多くの自治体は国の俸給表を適用いたしております。

 そうした中で今の人事院の考えどおりに俸給表水準が引き下げられた場合、国家公務員にあっては、本給のところで引き下げられても、それを総原資として官民較差を図っておりますから、総原資を抑えれば手当の方に回るという形で、先ほどの二〇%の地域給であるとか、こういうものが出てこようかというふうに思います。しかしながら、地方公務員の場合は、必ずしも官民較差の総原資が抑えられていないというふうにお聞きをいたしております。

 私は大阪市の出身で、総原資を抑えておりますが、府県の人事委員会においても総原資を抑えているということにならなければ、この俸給表のところで一律にダウンをしたものはそのまま下がりっ放し、こういうことになってしまうのではないかというふうに思います。

 ことしは人事院による報告という扱いでありますけれども、今後、国における制度化にかかわりまして、地方公務員に大きくかかわる問題でありまして、総務省として今日的にこの地域配分の問題をどのように扱われていくのか、お考えをお聞きいたしたいと思います。

麻生国務大臣 御懸念の点はもっともだと存じます。

 ただ、人事院の勧告で示された案というのは、稲見先生御存じのように、基本的にたたき台として、地方に限らず各府省庁においても、これはいろいろな形で個別にやっていかれる部分というのは今後ふえてくるということなんだとは思っておりますけれども、ほかにも職員団体はいろいろございますので、その点においても検討されていくべきなんだと思います。

 いずれにいたしましても、今回の勧告、報告というものが具体化されれば、これが地方公務員の給与のあり方について大きく影響するであろうということは、稲見先生の御指摘のとおりだと思っております。

 したがって、私どもとしては、学識経験者、労働界また経済界などの方々から研究会を設置するということにして、今回の人事院の報告の内容を検討してやらせていただくのを開始することにしておりますけれども、やはりこれは、だんだん地方自治体においても、例えば大阪府におきましては、既に給与計算、出張旅費等々の計算はすべてアウトソーシングをしておられるということによって、人件費の節約約三十八億なんというのが、この間数字が挙がっておりました。そういった努力をされておられるところ、そのコストが下がった分が給与に充てられるのか手当に充てられるのか、これはいろいろなことが考えられるんだと思います。

 いずれにしても、かつて、大阪周辺、ラスパイレス指数が日本で一番高かったところが、一応この何年間か、御存じのように、各県、各市それぞれ努力をしてこられて、今、ラスパイレス指数は一〇〇・一とか、そういったところまで全国平均でなっております。ということは、一〇〇以下のところがあるということであります。

 そういった意味では、地方自治体も、いわゆる財政事情の中にあって、機械化されたりICT化されたり、いろいろな努力をされておられる結果がそういうことになっているんだと思いますので、それが変な感じの労働強化になるとかいうような形ではなく、スムーズに、いろいろな今の技術の進歩に伴ってバックオフィスの部分を変えていくとか、そういった努力の結果、仕事として従来と同様な効果を上げるような形の努力が各首長さんでされていかねばならぬところだとは思いますけれども、御懸念の点は、これは十分に検討しておかなければならぬ大事なところだと思っております。

稲見委員 私もこれから勉強してまいりますし、ぜひこの点は今後も委員会での議論に参加をしていきたいと思っております。

 あと、総裁、総務大臣、お二人にお聞きをしたいと思います。

 「新たな公務員人事管理の実現に向けて」という報告の項でありますけれども、この問題も労働基本権の付与と密接にかかわる、むしろ表裏一体ではないかというふうに思っております。

 お隣の韓国では、日本の労働運動ほどの時間的、歴史的な経過は長くありませんでしたけれども、今秋にも政府が公務員の労働組合設立及び運営などに関する法律というのを成立させようというふうな事態になっております、御存じかと思いますが。内容をめぐって大きな争点になっておりまして、労働組合側、公務員労働者の側は、労働三権でなくてこれは労働一・五権だというふうなことで、秋にもゼネストを構えるということのようであります。少なくとも、こういう状態になりますと、日本は後塵を拝することになるということだと思っております。

 この点、この新たな公務員人事管理の問題というのは、労働基本権と同時実施という以外ないのではないかというふうに思います。そういう点では、この点は麻生総務大臣にお聞きをしたいと思います。

 それから、この評価制度は昇任、降任等の必要条件でなければならない、このように考えております。

 民間でも、目的の達成度合いを評価し、これを昇給やボーナスに反映させるという形でこの制度があるというふうに報告にも書いてあるわけでありまして、その意味では、評価の基準などが勤務条件であることは明白であるというふうに私は認識をいたしております。そうしますと、評価制度の導入による能力、業績を重視した人事管理制度への改革をし、これを機能させるためには、文字どおり、労使の協議が必要になってくるのではないか。

 これまでの制度の中でこれが機能してこなかったというところでも、先ほどもありましたが、公務員の場合は成果が数字にあらわれにくいという特性や、集団的執務体制の維持が重視される職場風土のもとで管理職の意識や評価のスキルも十分でなかった、勤務評定制度が必ずしも職員に受け入れられず給与への実績反映の手段として機能してこなかった、こういうふうな現制度に対する問題点というのが指摘をされているわけであります。

 そういう意味では、評価制度に係る労使協議制度の確立が不可欠であり、制度設計を含めて十分な労使協議が行われるべきではないか、こういうふうに思っております。

 この後段は、総務大臣と人事院総裁、双方にお聞きをしたいと思います。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

麻生国務大臣 韓国の経緯は少なからず承知をいたしております。一・五等々の御指摘があるところも、かなり激しいことになってきておる状況にあることも知っております。

 いろいろ幅広かったので、時間内にと言われると難しいんですが、国家公務員の世界において、職員の勤務状況というものをきちんと把握していくというか評価するというのは大変大事なところであります。

 採用試験のときの、たまたま二十二、三のころの成績の順番とか、年齢が幾つになったからとか、勤めた時間が何年になったからとかいうような年功管理的な人事管理というものから、能力をどう評価、査定するかが一番難しいところだと思いますが、ある程度の時間を経過いたしますと、その人がスタッフとしての能力があるのか、管理者としての能力があるのか、研究者的能力があるのかというのは、実績というものを見ていただくと大体わかることになります。

 そういった意味から、人事管理というもののあり方を、実績主義とかいろいろな表現があるんだと思いますが、従来の年功序列一本やりのものではない方が人物経済上もよろしいのではないかという御指摘は、これは前からあるところであります。

 ただ、これまでの長い歴史の中で、そういったもので、営業成績と違いますので、どうやってその差を出せるんだと言われると、これはなかなか評価の難しい、分かれるところであるのは、職員をしておられましたのでよく御存じのとおりだと思います。私どもといたしましても、それを考えるからこそ、人事院の、いわゆる中労委初めいろいろな第三者機関においてその協議がなされてきたんだ、その長い間の歴史というものも十分に考慮しながら考えていかねばならぬ問題だと思っております。

佐藤政府参考人 手短にお答えいたします。

 私どもも、今の勤務評定制度の轍を踏まないために、今予定されている能力・実績主義の導入及びそれに伴う評価制度につきましては、やはり徹底した職員の理解と納得性が必要だ、それから労使の協議、話し合いというのも必要だ、これは機会あるごとに口が酸っぱくなるほど言い続けておりまして、ぜひそういう方向でスムーズに導入されることを期待しております。

稲見委員 このことはこれからも議論していきたいと思います。

 さっきの質問が終わったときにはもう一問ぐらいできるかなと思っていたんですが、総務大臣に丁寧に御答弁いただきましたので時間が来たようでございます。一時金の問題について通告をしておりましたが、その点は割愛をさせていただきます。

 終わります。ありがとうございました。

佐藤(勉)委員長代理 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 これまでの委員の皆様方の質疑によって、私の通告したところ、大分重複しておりますけれども、おさらいの形で質問していきたいと思っております。

 まずもって、今回、六年ぶりに公務員の給与が下げどまりしたということであります。これが、民間の景気回復が着実に進んでいる、そしてまた明るい展望が見えておるというのであれば本当にうれしい限りなのでありますけれども、私、東北の出身でありまして、北海道、東北、まだまだ厳しいところが本当にありまして、公務員はいいなというふうな声も、国政報告ではたびたび言われるところであります。

 それで、まず寒冷地手当についてお尋ねいたしたいと思っております。

 歴史的にこの寒冷地手当は、戦後の混乱期、お話しのとおり、北海道等の寒冷地での冬期の生活費の補てん、そういうことのために、昭和二十四年に議員立法でできたものだと思っておりますけれども、その後、何度か改定といいますか改正がされてきたわけであります。

 今年度、五十年ぶりの大改正ということだと思うんですが、地球温暖化ということで暖かくなっているから寒冷費は下がっているというようなことではないでしょうし、そしてまた、去年平成十五年とことし平成十六年度で抜本的に何が変わるかというと、寒冷地手当の関係では、出す出さないの中では何も変わっていないわけですよね。逆に言うと、自民さんからの質問で総裁が答弁されたんですが、何で今になって、今年度になってという、やはり私も疑問があるわけなんです。

 それらも含めて基本的な部分、まずこの大改正の考え方を初めにお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 今回の抜本的見直しについては、支給地から外れた地域の職員というのは最大で十八万円の減になる、それから北海道でも最大十万円以上の減になるということで、職員にとっては非常に厳しい内容になったわけでございます。

 ただ、私どもの考え方といたしましては、先ほどもちょっとお答えしたんですが、やはり人事院勧告制度の根幹というのは、官民の給与、これは本俸も手当も含めてですけれども、正確に官民を比較して、それに合わせる形で公務員の給与水準を決めるということでございまして、これが崩れますと、やはり人事院勧告制度に対する国民の理解というのは得られないということが根底にございまして、この際、そういう気持ちも含めて正確な調査を行いまして、その結果、民間と均衡させるということで抜本的な見直しをさせていただいたということでございます。

黄川田委員 官民の較差是正ということでしょう。突然十六年度になって寒冷地の較差が出たということではないはずなんですよね。

 総務省、三位一体改革ということで、税財源の移譲がしっかりされれば、この人事院勧告は地方自治体にとっても、本当にどういう形の中でやっていくか、自治体からすれば、今度は人事院勧告に準拠してというふうな話になります。そういう形の中で、私から言わせれば、どうも、国家財政あるいは地方財政、大変厳しい環境の中にある、その中で人件費等にもメスを入れなきゃいけない、私は地方の市町村職員をやっておりましたので、例えば、予算編成をすると一般財源が出てこない、どこから出すか、人件費しかないというふうな状況等に、いろいろな絡みがあって出てきたのではないかと思っておりますが、まさかそれを総裁が言うわけにはいかないでしょうから。まあそういうことでしょう。

 私は、岩手の陸前高田市というところです。三陸海岸に近くて、本当は雪も余り降らないんですよ。もちろん寒いですから暖房費はかかりますけれども、東京と比較したら。そうはいっても、これまでもう何十年来の手当である。それで、四・四割ですか、指定地域が解除になる、支給額も半減する。やはり職員からすれば、かつては人事院勧告は楽しみだったわけですよね、差額が幾つ来るかな、十二月ごろにもう給与以上にもらったとか、そういう時代もありましたから。

 そういう中で、一番大事なのは、民間準拠で行われるとしても、やはり職員団体等の声とか、あるいはまた地方議会でさまざま決議も上げておると思うのでありますけれども、職員団体といいますか、そういう方々との話し合いは行われたのでありますか。

    〔佐藤(勉)委員長代理退席、滝委員長代理着席〕

山野政府参考人 寒冷地手当につきましては、昨年の勧告時の報告で見直しを表明したわけでございますが、それ以来、職員団体等と意見交換を重ねておりますし、また民間の調査等を行ったわけでございます。その際、調査票の設計、支給地域や支給額の考え方、経過措置等について、その意見に配慮したところでございます。人事院では、職員団体等の関係者から約六十回の意見聴取、意見交換を行ったところでございます。

 今回の見直しは、職員側にとっては厳しいものになったわけでございますけれども、そういう意見交換等を行いました結果、やむを得ないものとして御理解をいただいているというふうに考えております。

黄川田委員 それから、ちょっと通告していないのでありますけれども、手当に関連してであります。

 私も職員をしていまして、いろいろな手当があるんだなということで、特に特殊勤務手当というもの等がありまして、こういうものこそ時代に、あるいはまた民間との比較とかいろいろなことをやらなきゃいけないと思うんです。どうしてもこれまでは、永田町とか霞が関とか、任命権者と職員との関係ということで、なかなか国民あるいは住民にいろいろなことが明らかにされてこなかった部分の中で、仲間内でのいろいろな議論ということに、仲間内と言ったら変な話ですけれども、そういうものが見えてきたような気がするんですよ。

 国の政策も、総務省自身がやっていますよね。政策評価の時代。そしてまた、いろいろな不祥事等、食糧費の問題あるいはまた報償費の問題。いろいろな問題が出てくる中で、情報が公開される時代だということですよね。そしてまた、政策にはパブリックコメントの時代だということでありますので、本当に有識者からの意見を聞いて人事行政に反映する。さまざまあるんでしょうけれども、国政レベルだとそういうことなんでしょうけれども、もっと汗をかいて働いている人たちの思いの中でのいろいろなことを政策に反映させるのだと思っています。

 手当というのはさまざまありますけれども、既得権というかそういうものになってきまして、廃止というのは難しい。逆に今度、本当に必要な手当があるにもかかわらず、つくっちゃうと既得権になるからということで何かいろいろな不都合が出てくるとか、そういう部分をもっと行政も公務員もしっかり国民、住民にさらけ出してやることが必要だと思っておるんです。

 そこで質問なんですが、特殊勤務手当とかそういうもののいろいろな見直しなんかはどうなっているんでしょうか。

山野政府参考人 御指摘のように、特殊勤務手当につきましては、近年、職場によっては職場環境が急速に急激に変わっているところがございます。例えば、今まで手作業でやっていたものが機械化されるとか、あるいは新しく危険な職場ができた等ございますので、私どもでは、一昨年来、特殊勤務の手当につきましては見直しを行っておりまして、これにつきましては引き続き見直しを行っていきたいというふうに考えております。

黄川田委員 いずれ、職員団体等々、もっと胸を開いて、そしていろいろな議論をしていただいて、それが国民の目線にしっかりとさらされるような、そういう仕組みづくりをお願いいたしたいと思っております。

 それでは、時間ももうあと半分でありますので、人事院で報告されております給与構造の基本的見直しについてでありますけれども、この考え方、そして検討スケジュールについて、ちょっと具体的にお尋ねいたしたいと思います。

佐藤政府参考人 給与構造の基本的見直しについては、大きく言って三点、目標といいますか目的がございまして、一つは、職務、職責を重視して、実績を的確に反映する給与制度への転換でございます。そのために、年功的な給与上昇を招いているとの批判のある俸給表構造、それから年次重視の昇格運用、特別昇給、勤勉手当の持ち回り運用の見直し、これが第一点でございます。

 それから、在職期間の長期化に向けての環境整備として、複線型人事管理を進めるための専門スタッフ職俸給表の新設、これが二番目でございます。

 それから次に、適正な給与の地域間配分の実現のため、地域における民間賃金を反映するよう俸給表水準の見直しと地域手当の新設でございます。

 これから、私どもとしては、関係省庁、それから職員団体等といろいろ協議を重ねながら、一年後に勧告をしたいと思っておりますけれども、これはあくまでも私どもの希望でございまして、特にこの三番目の俸給表の水準を下げるということについては、これはいろいろ紆余曲折があろうかと思います。これにつきましては、職員団体との協議の場も設ける予定でございますし、また、下げる場合の基準となる地域の選定等につきましてもこれからいろいろ協議をしなきゃいけないというふうに思っております。

黄川田委員 特に俸給表の引き下げについては職員団体とのしっかりとした話し合いもお願いいたしますし、モラルが低下しないようによろしくお願いいたしたいと思っております。

 見直しの中で、次に、ボーナスへの実績反映やあるいはまた査定昇給の導入について、ちょっとお尋ねいたしたいと思っております。

 すなわち、民間企業の成果主義賃金に倣いまして、ボーナスや昇給に差をつけていくとのことでありますけれども、具体的には、これはどういうことを考えておるのか、人事院の方針をお尋ねいたしたいと思います。

山野政府参考人 まず、勤勉手当でございますけれども、これまで以上に実績に応じた手当支給額となりますよう、成績率あるいはその分布のあり方につきまして基準をきちんと定めようということでございます。

 それからまた、昇給につきましてですが、現行の普通昇給が自動昇給化しているという批判がございます。また、持ち回り的と言われております特別昇給、この二つを廃止いたしまして、実績評価の結果に基づいて毎年の昇給額を決定いたします査定昇給制度を導入したいと考えております。

 あわせて、勤務実績が的確に反映し得るよう、昇給幅を今までよりもきめ細かく設定することや、昇給考課を一定期間に限定することなどにつきまして、今後、各府省や職員団体等の関係者とも十分に意見を交換しながら検討を進めていきたいと考えているところでございます。

黄川田委員 関連して、民間企業においても、成果主義を導入する際には組合と徹底的な話し合いを行っておるというのが現実だと思っております。そしてまた、公務員においても、そういう査定昇給などを導入するのであれば、導入に先立ち、職員団体との十分な協議、これが必要不可欠であると思っております。

 ところで、このような成果主義や査定に基づく給与を導入するのであれば、そのような見直しには公正あるいは透明性、あるいはまた納得性のある評価、これが前提となると思っております。

 そこで質問でありますけれども、現在、公務員制度改革の中で検討されている評価は、この査定昇給やボーナス査定に用いられることになるのか、行革の副大臣にお尋ねいたしたいと思います。

佐藤(剛)副大臣 お答えさせていただきます。

 現在検討いたしております能力評価についての御指摘でございますが、まず、能力評価と実績評価、このように二分されるんだろうと思います。そして、評価結果の給与への反映については、先ほど来総裁初め人事院の方から答弁がございましたが、給与構造改革、見直しの一環として進められているということだと思います。

 そして、評価結果によって直ちに給与が決まってしまうというような制度とするということは適当ではなくて、特別昇給とかあるいはボーナスの決定に当たってのあくまで総合的な判断の際の重要なエレメントといいますか、判断材料としてこの評価結果を活用するということが適当である、かように考えているわけでございます。

黄川田委員 あわせて、では、評価については実績評価のほかに能力評価も検討されているということでありますけれども、これらは昇進などに用いられるのでありますか。

佐藤(剛)副大臣 今の能力評価が昇進に反映されるかということでございますが、答弁としてはイエスでございます。

 能力評価の評価結果というのは、主としまして、昇任を含む、課長から審議官になる、あるいはほかのところに移るといったときの任用に反映されるものであります。

 先ほど答弁しましたが、ボーナス等の給与、処遇に反映されることは否定しませんが、直接的には想定していないわけでございます。

黄川田委員 評価制度が給与や昇進などに使われる、そういうのであれば、評価制度は職員団体としっかり協議し、職員側の納得を十分に得る必要があると思っております。この給与や昇進などに用いられる評価制度はしっかりとした勤務条件に該当すると私は思うのでありますけれども、勤務条件に該当いたしますか、評価制度は。

磯部政府参考人 先ほど副大臣から御答弁いたしましたとおり、現在、この評価制度について鋭意検討を進めておるところでございまして、全般的な観点から十分今後検討していきたいというふうに考えております。

黄川田委員 副大臣の答弁を求めておるんです。管理運営事項的な面がもちろんあるわけでありますけれども、それをもってして勤務条件たる側面を否定することはできないと思っておるんです。再度副大臣の答弁を求めまして、質問を終わります。

佐藤(剛)副大臣 現在、この能力評価の問題につきまして、これをどのような形で持っていくかということは、これまでの政策の形成力とか、組織管理力がどうであるとか、そういう職員の能力の観点から、課長なら課長になっている、審議官なら審議官になっている、それがどのような勤務の状況をしていた、これが勤務のところでございますが、評価結果でありますが、職員が現についている官職におきます働きぶりを評価することに加えまして、将来移っていく、あるいは他の官職についていく、そして職員がどのような働きをしそうか、こういう判断を行うに当たって活用し得るものであります。

 ですから、任用にかかわる任命権者の総合的な判断の際の重要なる判断材料としまして活用するということを考えているわけでございまして、これにつきましては、先ほど黄川田先生おっしゃられましたように、多方面にわたりましていろいろ意見を聞くようにという御指摘は、十分理解の上、進めていくわけでございます。

黄川田委員 時間でありますので、終わります。

滝委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、人事院報告で検討課題としております地域間格差の問題について質問をいたします。

 適正な給与の地域間配分を実現する、この地域間格差のことですが、なぜ国家公務員に地域間格差を設けるのか、その理由をお聞きしたいと思います。

佐藤政府参考人 従来は、国家公務員の給与というのは、全国で民間と比較する。それで、例えば地域別にどういう差を設けるかというのは、内部配分の問題というふうに私どもやってきたわけでございます。

 しかしながら、昨今、公務員の給与に対して国民の批判に非常に厳しいものがございまして、特に、私ども、地方でしばしば有識者との懇談会を開いたり、それから地域の中小企業の経営者の方たち等の意見聴取をいろいろ行っておりますけれども、やはり、それぞれの地域で、民間の給与に比べて公務員の給与は非常に高過ぎるんではないかという批判がしばしばございました。

 憲法十五条を持ち出すまでもございませんけれども、やはり国民というのは、公務員の最終的な使用者であり、また、税金を払っているという意味では株主でもあるわけでございますので、そういう国民の皆様の御意見というのは決して無視できないということで、今回、なるべく各地域の民間の給与の実情に合わせて公務員の給与も設定したいということで勧告を申し上げた次第でございます。

塩川委員 国家公務員の組織は、日本では最大の組織、当然のことながら、人事異動を含めて全国展開を行っているわけですね。その場合は、民間に準拠してということ、全国一本からブロック別なりにというお話でしょうけれども、しかし、比較をするんであれば、全国展開の企業との比較が必要だろうと思うんですよ。

 そういう意味で、全国展開の企業で地域間格差を設けている企業というのは多いんでしょうか。

山野政府参考人 人事院が実施いたしました平成十五年の職種別民間給与実態調査によりますと、転居を伴う異動がある事業所のうち、勤務地によって支給額が異なる給与種目があるとした企業は全体で七三・六%でございまして、七割以上の企業が何らかの形で勤務地による給与格差を設けているところでございます。

塩川委員 基本給をブロック別で変えているような企業というのはあるんですか。

山野政府参考人 正確な数字はちょっと手元にございませんが、基本給で地域格差を設けている企業は極めて少のうございます。基本給は一緒だけれども都市手当等の手当で差をつけているという企業が大半でございます。

塩川委員 昨年まとめられております地域に勤務する公務員の給与に関する研究会基本報告がありますね。これを拝見していましても、全国展開を行っている企業で見ると、地域に着目して基本給を異にしている企業は少ないとありますが、これは事実ですね。

山野政府参考人 おっしゃられるように、基本給を変えている企業は、数字を申し上げますと三・四%でございますので、極めて少ないということでございます。

塩川委員 民間準拠と言いながら、全国展開企業ではほとんど実績がないというのが実態だと思います。

 加えて、地域・勤務地手当を支給している企業で、千人以上の大きな企業ですよね、そういうところでは実際どのくらい支給をしているものなのか、平均支給額は幾らなのか、ちょっと数字がわかれば教えてほしいんですが。

山野政府参考人 規模別の勤務地・地域手当でございますが、先ほど申し上げましたように、基本給については差を設けていない企業が大半でございます。ですが、七割以上の企業で地域手当のような地域による給与格差を設けているわけでございます。

 規模で申し上げますと、私どもの調査区分でいきますと、五百人以上で、異なる給与種目を設けている企業は七九・七%でございます。それから、五百人未満では七〇・三%でございます。全体といたしますと、先ほど申し上げた七三・六%になるというところでございます。

塩川委員 それは部分的には当然あるでしょう、地域に応じたものを出すということはね。ただ、それが支給額としてどのくらいなんですか。私が承知しているのは、千人以上の企業でいうと、平均支給額は一万四千四百三十八円ということだと思うんですね。要するに、極めて小さいんですよ、全国展開を行っているような企業で。

 そういう意味でも、この研究会報告でも、同一企業内での給与の格差は必ずしも大きくないと言っているわけですよね。そういう点でも、全国展開の企業に準拠して考えた場合に国家公務員で地域間格差を拡大するようなことがどれだけ道理があるのかと私は率直に思うわけです。

 さらに、今回の人事院報告では、「地域格差の調整方法としては、地域別に俸給表を設けることなども考えられ、併せてこれらの調整方法についても検討する。」、先ほど総裁も選択肢の一つとしているとおっしゃられました。しかしながら、昨年の研究会報告では、地域別俸給表は、三つの理由から「公務の実情にはそぐわない」と言っています。

 一つが、組織としての一体性が保てない、二つが、人材確保面でも支障が生じる、三つ目が、地域別俸給表は、「労働市場がその地域において閉じている場合に成立するものであり、全国異動を含め広範な転勤がおしなべて頻繁に行われている公務の実情にはそぐわない」、私は、道理のある理由だと思うんです。

 それをいわば否定するような形で、地域別の俸給表を設けることも選択肢の一つだとしたのはなぜなんですか。この理由を否定する根拠は何ですか。

佐藤政府参考人 例えば、ブロック別の俸給表の場合は、今おっしゃったとおりの理由で、私ども、第一候補としてとらなかったわけでございます。ただ、確かに、国家公務員というのは非常に大きな全国組織でございますけれども、やはり民間の会社と違って、官民比較をする場合には、いわゆる地場産業を含めた地域の比較的小さい会社を含めて民間と比較をしているわけでございます。

 したがいまして、大規模な全国展開している民間企業がこうだからといって、それに準じた形で公務員の給与を決めるというのは、これはやはり国民の皆様方の御理解というのは必ずしも得られないんではないかというふうに私ども思っております。

塩川委員 そのことはこの後でまたお聞きしようと思っております。要は、人事院の今回の報告で、ブロック別の給与表を設けることも選択肢の一つだと言っているのは、去年の研究会報告の指摘を否定するものなんじゃないか、それはなぜなのかというその理由なんです。

    〔滝委員長代理退席、委員長着席〕

山野政府参考人 報告で述べておりますように、今回、私どもでは、地域別給与問題につきまして一つのたたき台を示したわけでございます。

 それで、御指摘のように、ブロック別俸給表につきましては、私どもの研究会等では、いろいろ問題があるという指摘はございましたけれども、今回の報告で示している私どもの案は一つのたたき台でございますので、それ一つに限定するというのもたたき台としてはやはりふさわしくないんではないか、いろいろ問題はあるにせよ、これまでブロック別俸給表というのが議論に上ったわけでございますので、再度選択肢の一つとして幅広く、この二つの案に限りませんで、もっとほかにいい案があればそれも含めて今後検討していこうという意味で例示的に示したというところでございます。

塩川委員 私は、だから、この研究会報告で、ブロック別俸給表は余りそぐわない、実情にそぐわないと言っている三つの理由は非常に妥当なものだと思うんですよ。それを否定する根拠は何なんですかということを聞いているんですよ。

山野政府参考人 否定したわけではございませんで、私どもでは、今回の報告で示している地域格差の是正の問題が今の段階でベストだと考えております。今御指摘のようなブロック別俸給表には問題点はあるという認識は変わりません。しかし、今後議論していただく中で、現にブロック別俸給表はどうですかと御意見をおっしゃる方もおられるわけですから、そういう意味で、一つの案の例示として出したということでございます。

塩川委員 本来、そぐわないという研究会報告を踏まえての検討がこういう形では、まるでそれを否定するかのような形で盛り込まれたところに、やはり道理のない圧力に屈するようなことがあるんじゃないか。私、そういう点でも人事院の主体性が問われる問題だ、このことは指摘をしておきたいと思います。

 その上で、民間で都市部と地方の格差が生まれている、その理由は何なのかということをお聞きしたいんですが、先ほど総裁は、地方には中小企業が多いからだ、ということは都市部の方に大企業が多いからだ、それが民間において地域間格差が生まれている理由だというふうにお考えだということなんですね。

山野政府参考人 なぜ民間賃金に地域間格差が生ずるかという問題でございますが、これは極めて大きな難しい問題であろうかと思います。

 民間企業の地域格差といいますのは、やはりそれぞれの地域によりまして、産業構造とか、あるいはそこに立地いたしております企業の規模、毎年々の業績あるいは労働者の需給状況がそれぞれ恐らく異なっておりますので、その結果、そういったさまざまな要因によって地域間格差が生じておるものと考えられます。

塩川委員 いろいろな理由があるというのは当たり前の話なんですけれども、先ほども紹介した去年の研究会報告では、「東京、大阪等の民間賃金の高い地域に本店を置いて全国展開を行っている民間企業の支店の給与と、地元企業の給与との間に相当な「民民」格差があると考えられる。」と言っていますよね。

 そういう点でも、やはり全国展開の企業と地方の企業の差が地域間格差にあらわれているんじゃないか、先ほど総裁がおっしゃられた点がまさに都市と地方の格差を生んでいる理由じゃないか、大企業と中小企業の格差が都市と地方の格差にあらわれているということなんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 確かにそういう点は否定できないと思います。私どもも決してそれを否定するつもりはございませんけれども、先ほど局長が答弁いたしましたように、やはりいろいろな要因が地域間の格差を生んでいるということはございます。そういうことで、私どもも、地域の広さというのをどういうふうにとるかというのをかなり工夫したつもりでございます。したがいまして、なるべく、企業の規模なり、それから地域の特性というのが直接反映されないように、ブロックという比較的広い地域を根拠としてとっているわけでございます。

 それから、その報告の中の例でお示ししたように、東北、北海道という二つを一緒にして、東北・北海道ブロックというふうにして、なるべく地域特有の性格なり特徴なりというのが直接には反映されないような工夫はしたつもりでございます。

塩川委員 大企業と中小企業の間に賃金の格差が大きいというのは厳然としてあるわけで、人事院が勧告を行っていくベースにする職種別の民間給与の実態調査で、地域別、企業規模別調査事業所数を見ても、五百人で区切って、多いところと少ないところで出していますが、五百人以上の事業所の割合というのは、北海道・東北が四六・五%、それに対して東京都は五六・九%ですから、そういう偏差というのは、当然のことながら、賃金の格差、地域間格差という形であらわれてくると思うんですね。

 私、そういう点でも、民間準拠、民間準拠と言いながら、その理屈というのが大企業と中小企業の格差を前提とするという形で、それを国家公務員にも当てはめるようなことでは、これは実態に合わないんじゃないかなと率直に思います。

 私、そういう意味でも、中小企業が本当に前向きに前進できるように、そんな中で、中小企業の従業員、労働者の賃金も上がっていくような方向で国としての施策が行われるべきで、今、大企業の優越的地位の乱用の問題、これを正すという立場で独禁法もあるわけですし、独禁法を迅速に適用する上で、下請代金法という形の、個別法を切り出してわざわざつくっているということを見ても、大企業と中小企業の格差を是正するというところにこそ大きな方向があるわけで、実情を追認するという形で、大企業と中小企業の格差が地域間格差にあらわれている、それだから国家公務員もそれに合わせるんだというのでは、理屈に合わないんじゃないかなと率直に思います。この点、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 確かに傾聴すべき御意見だと思います。私ども、実はその点について突っ込んだ検討はそれほどしておりませんので、今後一年検討期間がございますので、その点を含めて、関係者と相談しながら鋭意検討してまいりたいと思います。

塩川委員 あわせて、総賃金が同じということを前提に考えれば、地方が下がるということは都市部が上がるということになるわけで、そうなると、今でさえ地方が大変なときに、地方に落ちるお金が都市部に移る、東京に移るということでは、これはやはり地域経済を考えても、改めて深刻な状況を加速させるんじゃないかな、そういう地域経済、地方経済という側面から見ても、これは重大な問題をはらんでいると率直に思います。

 この人事院勧告の波及効果というのはどういうものなのか。賃金に影響も与えるでしょう、補助金にも影響を与えるだろう。その波及効果がどれだけあるのか、それは人事院としてはどのように把握をされておられますか。

佐藤政府参考人 おっしゃるとおり、地域経済への影響というのは、これは当然あると思います。給与が減ることによって、やはり消費に回るお金が少なくなるということもございますし、また一方で、もしこれが地方公務員まで波及すれば、逆に地方自治体の財政の改善にもなるということにもなるわけで、実は、そういうことも予想はできるんですけれども、人事院として、詳しくそういう分析はしておりません。したがいまして、ちょっとお答えはできかねる状況でございます。

塩川委員 給与勧告の影響がどれだけの人に及ぶのかという数字ぐらいは以前出したことがあると思うんですが、その点、いかがでしょうか。

山野政府参考人 給与勧告の影響がどの程度及ぶかということでございますが、公務組織、国家公務員、地方公務員、準じて定められる者を含めまして約三百八十万人、特殊法人等いろいろございまして、全体を合わせますと、恩給受給者等も含めますと、七百三十万人程度でございます。

塩川委員 七百三十万人というと大変大きな影響が出るわけですし、補助金の算定の基準に人事院勧告を使っているというところも、厚生労働省なんかも含めてかなりあるわけですね。その波及効果たるや、大変大きいと見なければなりません。

 私は、地域間格差ということがもし導入されるようなことになれば、地方への公的支出が大きく引き下げられることになりかねませんし、地方公務員の給与にも当然影響しますし、官民で賃金引き下げの競争にもなりかねない、こういうことを大変懸念するものであります。

 そういう意味でも、この地域間格差の先取りとも言えるのが今回の寒冷地手当の見直しであるわけで、我々としては、積雪の八十センチの根拠も納得がいかないものですし、ことしから実施などはとんでもないと率直に思う。

 この点は引き続き議論するとして、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

佐田委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 人事院勧告の件につきましては論点が大体絞られておりまして、どうしても重複することがあろうかと思いますが、確認するということで御理解いただきたいと思います。

 公務員給与をめぐって、ここ数年、非常に厳しい情勢が続いていたわけでございますが、今回の人事院勧告は、月例給、一時金ともに水準改定なしという結果となりました。六年連続しての年収マイナスはストップされたわけでございます。これから賃金改定を行う民間企業への影響を考えると、昨年まで続いた年収マイナス勧告に歯どめがかかったことは非常に大きい意味があると思っております。

 そこで、大臣にお尋ねいたしたいと思うのですが、政府として、今回の勧告の受けとめ方について、まずお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 今、横光先生御指摘のとおり、地方はともかくとして、大都市中心に景気が少し底を打ったということは、いろいろな経済関係の指標の上からも明らかだと存じます。したがって、今回、六年ぶり、過去五年間でトータルで約八%ぐらいのマイナスだったと記憶しておりますので、そういった意味では、六年ぶりに給与というものが前年並みに水準が維持された背景と言われるのは、今御指摘のあったとおりだと思いますので、景気状況を反映しているということも言えると思います。

 ただ、今話題になっております寒冷地手当等々、一部の地域におきましては、寒冷地手当が減る分だけきついことになってまいりますので、そういったところにおきましては引き下げられるという実態もあるということでもありますので、そういった意味では、私どもとしてはこの点は十分に配慮しておかなければいかぬところだと思っております。

横光委員 今、景気のお話が出ましたが、今回、特に一時金が据え置かれたことなどについては、まさに民間の動向や、あるいは景気回復との政府の認識を考えれば、私はちょっと不満が残ると言わざるを得ないのです。

 また、今お話がございました、今回の勧告の大きな焦点となったものの一つが寒冷地手当ですね。先ほどからずっと質問が続いております。

 この制度そのものは残ることになった、また所要の経過措置も講ずることになった。とはいえ、今の大臣のお話のように、支給地域、支給額ともに今度厳しい結果となっておりますね。積雪地域でありながら対象から外れ、どちらかというと北海道中心という方向に今流れようとしております。

 気温及び積雪量についてどのような基準で見直しをされたのか、御説明をいただきたいと思います。

山野政府参考人 寒冷地手当の支給地域の基準でございますが、北海道と同程度の気象状況が認められる市町村に限って支給地域として指定したわけでございますが、その具体的な条件といたしましては、北海道の市町村の気象状況を参考にして、平均気温が零度以下で、かつ最深積雪が十五センチ以上の市町村、それからまた、本州では、北海道に比べまして気温は高いけれども積雪が非常に多いという地域がございますので、その点を考慮いたしまして、北海道全域の平均最深積雪に相当いたします八十センチ以上の市町村、この二つの条件で指定したところでございます。

横光委員 例えば富山なんというのは、それは物すごい積雪、量はすごいですね、そういったところはどうなったんですか。

山野政府参考人 私どもでは、全国を一キロメッシュに区切りまして、そこの気象データ、三十年の平均の気象データを使いました。それで、それぞれの市町村の市役所あるいは役場の所在地の気象条件が、先ほど申し上げました条件に該当するかどうかをチェックしたわけでございます。

 それで、富山県の場合でございますけれども、富山市の場合ですと、その条件に当てはまらないわけでございますので、指定からは外れたというところでございます。

横光委員 なくなったところの経過措置、所要の経過措置を講ずるとなっておりますが、これは大体目安として何年間ぐらいを想定されておるのか、中身はどのようなことをお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

山野政府参考人 経過措置でございますが、今回は、支給地域の廃止とか、平均約四割の支給額の引き下げを内容とするものでございます。例えば十八万円支給されていた地域がゼロというところもございますので、経過措置を設けたわけでございます。

 経過措置でございますが、引き続き支給地域に指定された、ただ金額が下がった、この地域につきましては、支給額を一年目から逓減いたしまして、最長五年の経過期間を設けました。

 それからまた、現行の支給地域から外れる地域、ゼロになる地域につきましては、三年目から逓減することにいたしまして、最長六年の経過期間を設けたところでございます。

横光委員 いずれにいたしましても、これは寒冷積雪地において困難を強いられている実態もあるわけでございますので、そういった地元の声も十分配慮して私はお考えいただきたいと思うのです。

 次に、能力本位の任用の推進、あるいは実績を踏まえた給与の処遇等の見直しが打ち出されております。

 しかし、実績、能力、成果、これを重視するシステムを導入するということは、これは先ほど総裁も、国民あるいは何よりも職員の納得する公平公正で透明な制度でなければならないということをお答えになりました。当然のことだと思っております。

 しかし、公務の場合は、民間と異なって成果というものが数字にあらわれにくいですね。営利を目的としない公務員の働きぶりを民間のサラリーマン並みに評価しにくい部分があるわけでございます。

 また、どう評価すべきか、一概に言えない場合も多い。例えばこういった例なんですが、事故や違反自体の防止に努力している、一生懸命頑張っている警察官、一方、ネズミ取りに力を注いで検挙率が非常に高い警察官、どちらが高く評価されるのですか、端的な例ですが。答えが非常に難しいと思うのです。

 こういうふうに、評価することが難しいのです。同じ公務員でも、場、場によって違う。やる仕事によって違う。どちらも私は評価されることだと思うのです。でも、これを評価基準で当てはめていかなきゃならないわけですね。非常にこの制度は難しい。

 そこで大事になってくるのがこの評価基準なわけですね。この評価基準の客観性、そしてまた透明性、評価自体の信頼性、こういったものが重要になってくるわけでございます。

 公務員という仕事の特性を十分に踏まえた上で、各省庁と働く職員の双方が納得できる公正な評価方法を構築しなきゃならないことは当然ですが、公務員が仕事に意欲を持てて、国民に理解される制度にしていくためにも、今後、職員団体との論議を深めて、合意を得る道を探るべきだと考えておりますが、そのことも含めて、新たな評価システムについてどのように検討していくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 確かに御指摘のとおり、公務員の場合はもう成果だけに着目して評価すると、これはとんでもないことになろうかと思います。したがいまして、私どもとしては、ぜひ、仕事に対する取り組みの姿勢とか努力のプロセスとか、そういうことにも着目して評価基準を設ける、それからもう一つは、評価の結果を単に給料とかボーナスに反映させるだけではなくて、それを個々人の研修なりなんなり、個々人の能力を高めるための資料にもぜひ使っていきたい、そういうふうに考えております。

 それから、職員の納得するということは、これはもう先ほども申し上げましたように何よりも大事なことでございまして、そのためには、労使交渉といいますか、労使の協議以外にも、やはり試行期間というのを十分にとって、修正すべき点があれば修正しつつ、何年か後にちゃんとした制度をつくる、そういう姿勢が非常に必要ではないかというふうに思います。その点につきましても、私ども、機会あるごとに関係方面に言い続けておりますので、ぜひそういう新しい制度が定着してもらうことを願っております。

横光委員 まだ評価の中身が決まらないうちにこれに連動する給与の仕組みが変えられるというのもおかしな話だと思うわけですが、今お話しのように、修正しつつ、非常に慎重に対応するというようなお考えに受け取ることができました。こういった制度を導入して、逆に職場が風通しが悪くなったり、暗くなったり、もっと言えば険悪な状況になってしまえば、これは一番損をするのは国民、利用者ですから、そのあたりをどうか慎重に、これからいろいろな関係者と論議を進めて、深めていただきたいと思っております。

 次にお尋ねしますが、留学制度の件なんです。

 一九九七年度から五年間、二〇〇二年あたりまで、国費で海外留学した若手キャリア官僚四百五十二人。このうち、留学が終わった直後の二〇〇三年十月までに退職した官僚が四十七人に上っております。約一割ですね、一割の方が海外留学した後おやめになっている。海外留学というのは、これは人材育成策でございますし、少なからず業務に関連するものでございますので、早期に退職した場合に費用の返還を求めることは、これは全く問題がないかといえば、これは問題もあるわけですね。

 しかし、民間の動向あるいは国民感情を考慮すると、税金で留学して、はい、さようならでは、これは国民としてはなかなか納得いかないであろうし、せっかくの高い金を出して留学させて勉強して帰ってきて頑張っていただきたいという制度なわけですので、一割の方が制度を利用してやめていくということでは、やはり何らかの見直しが必要になってくるんじゃないかという気がいたしております。

 海外留学の費用の返還の必要な範囲を決めるとか、あるいは返還が義務づけられる期間などについて、具体的にどこまで規定していくのかについて早急に詰めていくべきだと考えておりますが、御見解をお聞かせください。

佐藤政府参考人 確かに御指摘のとおり、貴重な税金を使って留学して、すぐやめてしまうというのは、私ども、これは大変問題があるというふうに思っております。

 そこで、何らかの措置が必要ということなんでございますけれども、現在はすぐには退職しないという念書を書かせているわけでございますけれども、必ずしも有効ではないというふうに思っておりますので、今御指摘のあったように、例えば費用を返還させるということも一つの方法であろうかと思います。

 ただ、法制的にこれは問題があるというようなことも聞いておりますので、いろいろな観点から鋭意検討してみたいというふうに思っております。

横光委員 それは難しい問題もあるでしょうけれども、国民感情からするとなかなか納得いかないし、これは単に費用とか税金とかいう問題だけではない、人材の損失なんですよ。大変な人材の育成をしていながら、優秀な人が抜けていくということは人材の損失にもつながるわけで、魅力ある公務職場を構築するなど、人材流出の防止のためにも、私は両方から考えていく問題であろうと思っております。

 次に、公務員制度改革大綱で打ち出されておりました各大臣による天下りの承認です。これが、今回の勧告では内閣によるものとされております。確かに、おかしな天下りを認めれば首相の責任が問われることになるんですが、各省庁が認めたものを内閣がそのまま承認するだけでは、これは今までと何ら変わることがないし、かえってチェックが甘くなるんじゃないかという気さえするわけです。

 本来、中立公平な第三者機関での管理、チェックとすべきであり、内閣が仮に判断する場合でも、きちんと判断できる組織を内閣に置くような工夫が必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか、行革。

磯部政府参考人 現在検討しております内閣承認制におきましては、すべての職員につきまして、国の機関等と密接な関係にある営利企業への再就職について原則として禁止しまして、内閣が承認した場合でなければ再就職を認めないということを考えております。

 この際、再就職の承認基準につきましては、再就職を認めないこととする類型をできる限り法律で規定することとしておりまして、内閣官房におきましては、職員が関与していた契約とか行政処分などが再就職を認めないこととする類型に該当しないかといった点を中心にチェックを行った上で、内閣が責任を持って承認の判断を行うことになると考えております。

 具体的な手続等につきましては今後さらに詰める必要があると考えておりますが、内閣承認制とする趣旨にかんがみまして、御懸念のように、現在よりチェックが甘くなるといったことがない仕組みとするとともに、その仕組みに対応した事務処理体制を構築していきたいというふうに考えております。

横光委員 これまた国民の批判が非常に強い問題でもありますので、今のような仕組みをしっかりと実施できるような形を、やはり国民が理解できるような形をつくっていただきたいと思います。

 公務員制度改革関連法案については、この秋の臨時国会で法案の提出が取りざたされております。能力等級制度とか天下りのまやかし改革で事態を収束させようというような声も聞こえておりますが、政府と労組の政労協議が始まりましたね。ここで協議を進めていく中で、ILO勧告を踏まえた労働基本権の確立の問題、そしてまた、今出ました天下り問題、さらには特権的なキャリア制度、また政官業の癒着構造の打破、こういった国民の求めにこたえた改革を図るべきであると考えております。政労協議を無視した一方的な法案提出はあってはならないと考えております。

 現在の協議の状況及び法案の検討状況をできましたら明らかにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

磯部政府参考人 まず検討状況でございますが、公務員制度改革につきましては今法制化作業を進めておりまして、その一環といたしまして、関係機関との調整を進めていくために、事務局で作成いたしました「国家公務員制度改革関連法案の骨子」等を各府省、また職員団体にも示しまして、調整作業を進めております。

 特に、職員団体との話し合いにつきましては、御指摘のとおり、本年五月に関係大臣と連合代表との政労協議を開始しまして、これを受けた形で、関係行政機関と連合の局長級との実務者協議といったものも行っておりますし、その他課長クラスでも、さまざまなレベルで職員団体と協議をしているところでございます。

 引き続き、こうした関係者と幅広い意見交換を行いまして具体化作業を進めていきたいと考えております。

横光委員 よろしくお願いします。終わります。

佐田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

佐田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 情報通信及び電波に関する件、特にNHK不祥事問題等について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長岡田薫君及び総務省情報通信政策局長堀江正弘君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長円谷智彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま参考人として、日本放送協会会長海老沢勝二君、日本放送協会専務理事関根昭義君、理事宮下宣裕君、理事和崎信哉君、理事野島直樹君、理事中山壮介君及び理事出田幸彦君、以上の方々に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

佐田委員長 この際、日本放送協会会長海老沢勝二君から発言を求められておりますので、これを許します。日本放送協会会長海老沢勝二君。

海老沢参考人 NHK会長の海老沢でございます。

 NHKを代表いたしまして、まず、今回の不祥事で公共放送に対する視聴者・国民の皆様の信頼を損ない、当委員会の各委員の先生方にも多大な御心配、御迷惑をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。まことに申しわけございませんでした。

 私どもは、今回の事態を極めて強く重く受けとめ、一体どこに問題があったのか、再発防止のために何をなすべきか、この一カ月余りにわたりまして調査を行い、おととい七日にその報告書を取りまとめました。

 私は、平成九年に会長に就任して以来、改革と実行、公開と参加、それに向上と貢献の三つの経営理念を掲げ、これまでの業務の進め方を抜本的に見直す、いわゆる聖域なき業務改革を訴え、職員の先頭に立って改革を進めてまいったところでございます。大部分の職員がともに改革に取り組んでいる中で、一部とはいえ、不正を行った職員がいたことはまことに残念でございます。今回、執行部全員の責任を明確にすることとし、十二人の役員全員に減給処分を科しました。襟を正して、一から出直す覚悟でございます。

 今回の不祥事の事実関係を調べていく中で、改善すべき点が明らかになってまいりました。

 まず、経理処理の仕組みを、放送という業務の性格を踏まえてより適正なものに改善し、責任体制を強化してまいります。経理の審査や監査の仕組みも、番組制作の内容にさらに踏み込んだものに改めていきます。

 そして、何よりも大事なのは、高い倫理意識と緊張感にあふれる組織を再構築することだと思っております。私を初め、役員、職員一丸となりまして、意識改革と法令遵守の活動を進めてまいります。

 おととい七日、私を長とするコンプライアンス(法令遵守)推進委員会を設置いたしました。この推進委員会で、まず、NHK倫理・行動憲章や行動指針を今月中までにつくり、これを誠実に守ることを、年に一度、すべての役員と職員に誓約、署名を求めます。

 また、このような不祥事の再発を防ぐために、職員からの通報や相談の窓口を、職場の内部に加え、外部の法律事務所にも設けます。

 さらに、NHKでは、経理の適正化を進めるため業務の総点検を行っておりますが、改善すべき点は速やかに改善してまいります。適正化施策を策定するに当たりましては、公平性を確保するため、外部の弁護士や公認会計士の方々でつくる委員会の助言等をいただいてまいります。

 NHKが公共放送として今後とも正確で迅速なニュース、心を豊かにするようなよい番組を放送していくためには、視聴者・国民の皆様からの信頼と御支持がぜひ必要だと思っております。

 今回、多くの視聴者の皆様から厳しい御意見、御指摘をいただきました。私どもは、これを謙虚に反省し、信頼を回復するため、私を初めNHKすべての役職員が心を引き締め、たゆみない努力を積み重ねていく所存でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

佐田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。滝実君。

滝委員 自由民主党の滝実でございます。

 今回のこのNHKの問題につきまして発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 質問に先立ちまして、一言だけ申し上げておきたいと思うのでございますけれども、九月七日のこの調査報告書、十年前にさかのぼって資料を一つ一つ点検された、その御苦労には敬意を表したいと存じます。そしてまた、海老沢会長以下役職員の皆さん方が必死の思いで真相究明と今後の対策に当たってこられたこの一月間の御苦労に、心から敬意を表したいと存ずるわけでございますけれども、一言だけつけ加えさせていただきますと、実は、経営委員会の姿がどうも見えにくい、そういうような思いがいたします。会長以下、大変御苦労をされている割には、最高意思決定機関であるところの経営委員会の姿が余り前面に出てこない、こういうことでございます。

 本来であれば、経営委員会の代表の方もお呼びするのが筋でございますけれども、御答弁を求める時間的な余裕がございませんので、こういうようなNHK挙げて重大な問題に取り組んでいる問題につきましては、もう少し経営委員会が前面にも出ていただいた方がよろしいんじゃないだろうかな、こういう希望だけを申し上げて、質問に入りたいと存じます。

 今回のこの九月七日の報告書で、大変よくわかる点とわからない点が実はございます。時間の制約もございますので、わからない点の例示を挙げて申し上げたいと思うんです。

 まず、人事面の問題でございます。

 第一点は、芸能番組の担当の磯野チーフプロデューサーの事件については、ちまたでうわさされているところによりますと、当時の、今から三、四年前の上司が、この本人に直接会って、本人がそういう不正なことをやっているということを認めたというようなことが言われているわけでございますけれども、この調査報告書ではそういったことが出てきておりません。報告書の十一ページを、あるいは十ページにさかのぼって穴のあくほど見たのでございますけれども、そういうくだりが実はないのでございます。

 それで、ない理由、そういうようなところがむしろ知りたいわけでございますけれども、その辺のところは、どういうような仕方をして本人あるいは当時の上司と言われる人たちに確かめて、そういうようなうわさが出てこないのか。その辺のところをまず第一点お聞きしたい。

 それから、もう一点、人事に関連いたしまして、ソウルの支局長事件の問題でございます。

 ソウルの支局長は、今から七年前ですか、一たん配置転換をされているわけでございますけれども、その後しばらくたってから、ことしになってからでございますか、ソウルの支局長がそのままもとの支局長に復帰をしている。その辺のところが、本筋と違うのかもしれませんけれども、どうもこの報告書では、なぜそういうようなことになっているかということのコメントがないのでございます。

 以上、まず人事の取り扱いに関することについて二点ほど、ごく簡単に、ポイントだけをおっしゃっていただきたいと存じます。

関根参考人 お答えします。

 まず第一点でありますけれども、不正な支払いをしていました元職員の後任のチーフプロデューサーは、業務実態が把握できない支払いがあると当時の芸能番組部長らに報告しています。これは平成十三年の十二月ごろであります。

 当時この報告を受けた業務実態を把握できない放送作家というのは二人でありまして、こういった問題を担当している庶務担当のチーフプロデューサーというのがいるんですけれども、このうちの一人に直接会って具体的にどのような仕事をしていたのか確かめています。これに対して、この人物は、元職員に頼まれて実際に業務に携わっていたという話をしています。また、この元職員も、二人にはいずれも具体的な業務を依頼し、さまざまな調査とかアイデアを提供してもらったという話をしています。

 当時の芸能番組部長らは、二人の放送作家への支払いがなくなりまして番組の赤字が解消したことにより、すべての問題が解決したというふうに思い込みまして、これ以上の調査は行いませんでした。NHKの内部調査では、この芸能番組部長らが意図的に隠ぺいを行っていたということは確認できませんでしたけれども、調査をこれ以上進めなかったという重大な職務上の怠慢があったというのは紛れもない事実であります。

 もう一点のソウルの支局長に関してでありますけれども、NHKの中でも韓国とか朝鮮半島の専門家というのはそういません。この職員は、そういう中で、ハングルに精通していまして、韓国内に豊富な人脈を持っていまして、情報源も多くあります。朝鮮半島が大きく動き出そうとしているときこそ再びこの職員を派遣する必要があると判断したことが第一点であります。

 二点目は、この支局内のずさんな経理処理というものを深く反省しまして、その後、適正な経理処理につきまして、個別の指導を受けたり、研修を受けています。経理上の処理とか税務上の処理、そういったものにある程度精通したと判断したことなどによって派遣したということであります。

 しかし、こうした人事は到底国民の皆さんに受け入れてもらえるものではないと考えまして、深く反省しているところであります。そして、おととい、責任審査委員会といったものを開きまして、本人を停職六カ月の懲戒処分にするとともに、きょう九日付で放送総局に配置転換をしたということであります。

 以上であります。

滝委員 今、特にソウルの支局の問題につきまして、この報告書であらわれていないお話も伺いました。

 とにかく本人の能力に着目して人事を配置する、それはもう大変大切なことではございますけれども、そういう意味では、今回、あるいは人事当局の判断が結果的には正しかったのかな、今回停職処分六カ月ということは、それなりのけじめとして正しかったのかなという感じはいたしますけれども、何となく納得のできないような経過をたどっているんではなかろうかなという感じはぬぐい切れないと存じます。

 次に、予算執行について、一つ二つ例を挙げて申し上げたいと思うんです。

 この芸能番組のチーフプロデューサー、自分の知人である会社に相当多額の文芸委嘱料を上乗せで払っている。一つの番組で、紅白歌合戦の場合では何と百二十万円、その他の番組でも三十万から百万までの間を一つの番組で上乗せをしている。そういうようなことが、私ども庶民の立場に立ってみると何となく理解できないんですね。

 この世界は、いわば原価を積み上げることが難しい世界でございますから、ある程度の、そういう世界かなとは思うのでございますけれども、百万、五十万という金額を上乗せして何となく通ってしまう、だからこそいろいろなチェック体制をつくったんだろうと思うのでございますけれども、その辺のところの感覚というものが全く理解できないのでございます。恐らくそれを今回改正しようというんだろうと思うのでございますけれども、長年のそういう問題について、私どもがこの調査報告書を見てもなかなか理解できない面がございます。

 それから、例えばソウルの支局の事件でも、当時は、今御説明ございましたように、それほど重大視していないんですね。取材費であれば、ユーザーである会社に水増し請求させてもそれほどのおとがめはないということで従来来たことは事実なんです。それは海老沢会長が就任以前の話でございますから全然今とは違うんだろうと思うのでございますけれども、どうも、取材は別である、あるいは機密に関する経費は別である、こういうようなことがこの予算執行の取り扱い上堂々とまかり通ってきたようにも見えるわけでございます。

 何はともあれ、それよりもまず問題になるのは、実はこの事件の、芸能事件の発端になりましたのが、個々の番組について予算の割り当てをしながら、予算をオーバーした事業が展開されてきた、番組編成が展開されてきたという事実が今回明らかになったわけでございます。

 そういう意味では、予算というもののきちんとした統制が尊重されていない、それから、つかみの世界、何となく原価がつかみにくい世界ではありますけれども、一つ一つの番組のおおよその事業費がどのぐらいかかるかということが、お互いに認識なしに番組の制作が行われてきたんじゃないだろうかな、こういうところに問題もあるように思いますので、その点につきまして、ひとつ担当理事さんから御説明をいただきたいと思います。

出田参考人 お答えいたします。

 NHKでは、番組の編成に当たりまして、それぞれの制作現場から必ず予算書をつけた提案というものを募っております。その上で、番組単価委員会というのがございまして、これは放送総局長が座長でございますが、そういう場で、それぞれの番組予算が適当かどうか、適正かどうかということを査定しております。今回問題になりました文芸委嘱料につきましても、そこで審議をいたしております。

 私、考えますに、問題は、むしろその予算の執行がきちんと行われているかどうかということだろうと思っております。

 今回のように、元職員は、チーフプロデューサーという職権をいわば乱用した、悪用したということで、不正な支払いを繰り返しておりました。したがいまして、今後につきましては、こういった放送料のような重要な支払いにつきまして、最終的な決定を上司であります部長が行うというように改めたいと思っておりますし、そういったことで責任体制あるいはチェック体制を強化してまいりたいというふうに思っております。

滝委員 海老沢会長が御就任になりました、平成九年でございますから今から七年前に、NHKを揺さぶった大きな事件がございましたね。各支局における不正経理事件というものが大きな話題を呼んだ。その後を受けて海老沢会長がNHKの三つの改革を進めてこられた、それは私どもも評価をさせていただくわけでございます。

 そして、今回のこの一連の事件にかんがみて、早速、この文芸委嘱料の関係の専門部会をつくるとか、あるいは単価の見直しの問題でありますとか、最終的には法令遵守の組織をつくるとか、そういうような一連の組織改革をこれから実行に移そう、こういうことでございますけれども、私は、単なる手続の問題ではなしに、やはり基本的な問題を少しあわせてお考えいただいた方がいいんではなかろうかなという感じがいたすわけでございます。

 今から四十年も五十年も前から、実はNHKは通称何と言われたかというと、NHKじゃなくてケチケチケーと言われたわけでございます。そして、日本放送協会じゃなくて日本薄謝協会。こういう本当につめに火をともすような精神をNHKの事業展開の基本原則とされてきたことを思い出すわけでございます。

 そういうようなことを受けて、七年前から、海老沢会長は、もう一遍NHKの原点に戻って改革を進めるんだという意気込みで来られたと思うのでございますし、今回も、あえて一から出直す、こういう決意表明をされているわけでございまして、そのための手続面での改定、改正を意欲的に取り組もう、こういうことでございますけれども、やはり特にこの番組制作というのは、ある意味では、先ほど申しましたように、つかみ金の世界、五十万円で済むなら五十万円で済むし、百万円かけたら百万円で済む、そういう世界が展開をされるわけでございます。

 したがって、国民の前に、いい番組、NHKとして放送文化に貢献できるような番組ということを掲げますと、どちらかというと、経費は多少かかってもいい番組をつくるんだという意欲が先行するんじゃないだろうかなということを恐れるわけでございまして、そこのところは、会長はもとよりそういうことを前提にした改革を進めてこられたと思うのでございますけれども、こういった問題についての、改めて会長の御見解を承りたいと思うのでございます。

海老沢参考人 今先生から指摘を受けましたように、私ども、国民の受信料という公金を扱っているわけでありますから、そういう面での公金意識を全職員に徹底することも言うまでもありません。そうした中で、それぞれの職員が個性を持ち、また専門性を持って、質のいい番組をつくるのが我々の使命であります。そういう面で、この公金をどう使うか、これはやはり我々の倫理観といいますか、高い志がなければいけないことは当然であります。

 その意味で、私が七年前会長になって以来、新しい時代へ向けて、我々は、これまでの親方日の丸的な、あるいは甘えやおごり的な感覚で仕事をすれば、必ずこれは行き詰まってしまう。もう一度我々は、視聴者・国民にどういう奉仕ができるのか、サービスできるのかをきちっと踏まえながら、一本一本丁寧に番組をつくっていこうという運動をしてまいったわけであります。

 そういう中で、今回、一部とはいえ、このような不祥事を起こしたこと、私も十分目が届かなかった点、また十分指導監督できなかった点、今深く反省をしているところであります。

 いずれにしても、視聴者・国民の信頼なくしてNHKは成り立ちません。そういう意味で、私は、先ほど申し上げましたように、一から出直す、原点に返って、視聴者・国民に質のいい番組を一本でも多く我々が提供し、この信頼回復に努めていかなきゃならない、今深く反省をしているところであります。

 そういう上に立って、これからさらに研修なりいろいろな改革を進めながら、国民の負託にこたえていきたいと思っているところでございます。

滝委員 NHKは公共放送でございますから、民放に負けるなという意気込みでそれぞれの職員が専門性を発揮してこられたということはそれなりの意味があるだろうと思うのでございますけれども、その余り、この予算執行においてもルーズなことになりがち、いい番組をつくりたいというものが先行するようでは、やはりぐあいが悪いんじゃなろうかなということをまず申し上げておきたいと思います。

 それからもう一つ、取材につきまして、取材をするについては、もう番組編成だって取材が要るわけでございますけれども、そういった面については何よりも優先させる。そして、報道番組を持っているわけでございますから、報道番組のための機密にわたる取材も必要でございます。しかし、それが、機密にわたる取材のためには経費も惜しまないということであっては、やはり私はどこかで公共放送としての一線を画する必要があるんだろうと思うわけでございまして、以後、そういうようなことも配慮して改革に取り組まれんことを希望申し上げまして、質問を終わります。

佐田委員長 次に、長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 海老沢会長を初め参考人の皆様、大変御苦労さまでございます。私も、短い時間でございますので、NHKの不祥事問題に絞って質問をさせていただきます。

 今回、幾つもの不祥事が発覚したことで、いわゆる公共放送としてのNHKに対する視聴者の信頼、これを大きく損なう結果になったということは否めないというふうに思います。受信料収入によって成り立つ公共放送が、その受信料の使い道、経理などで横領まがいの不祥事が起きていたということがあれば、それは受信料を納める視聴者の側から見れば、あえて厳しく言えば、視聴者との契約違反、背任とも言える重大な問題であると指摘せざるを得ないと思います。この信頼を回復する道のりは相当厳しいものになるというふうに思います。

 また、その一方で、視聴率競争に左右される必要のない公共放送として、国民に対して果たすべき役割の重要性、特に視聴者から期待されるもの、これはもうかわるものはないというふうに思います。報道番組や教養番組、そういう良質な番組をつくるためには、必要な予算と必要な時間をかけて良質な番組を提供する、放送サービスを提供する、そういう使命と努力をしっかり果たしてもらいたい、そう期待する視聴者も少なくないと考えております。

 とはいえ、今回の不祥事発覚が視聴者に与えたショックは非常に大きいと思いますので、まず視聴者からの反応について伺いたいと思いますが、NHKに寄せられた苦情や抗議の件数、特にその中でも代表的な声をかいつまんで御報告いただければと思います。

和崎参考人 お答え申し上げます。

 今回の不祥事に関連しまして、七月二十日から九月八日までの間に視聴者・国民の皆様から寄せられた意見、その総数は六千五百十二件でございます。そのうち、東京で受け付けたものが五千四百八十四件、地方の放送局で受け付けたものが千二十八件でございます。

 東京分で内容を見てみますと、御意見を寄せられた方は、性別では男性の方が圧倒的に多かったということと、年齢的には五十代、六十代の方が中心であったというのが現状でございます。

 それから、意見の内容でございますが、おおむね六つの項目に分類できるかなと思っております。一点目は、受信料の支払い拒否という強い意見でございます。二点目は、処分が甘いなど、処分のあり方に対する御意見をいただいております。三点目は、検証、謝罪番組の要求というような御意見もいただいております。それから四点目は、NHKトータルとしての不信感という御意見も寄せられております。それから五点目として、調査、再発防止の徹底をしてほしいという御意見でございます。そして六点目として、NHKに対する激励の御意見もいただいた。大体この六つに分類できるかなと思っております。

長沢委員 非常に大きな反響が来ているということは、反面、やはり視聴者の方からも、期待も大きい、そして、それに対する、今後この信頼を回復する道のりをNHKとしても一生懸命歩んでもらいたい、こういうことだというふうに思います。

 まず、具体的に「BSジュニアのど自慢」を初めとした番組の制作費の不正問題についてちょっと伺いたいと思いますが、この元チーフプロデューサーがイベント会社の社長に対して不正にお金を支払って、その一部をキックバックさせて着服していた、こういう事件でございます。

 NHKの出された調査結果によりますと、このチーフプロデューサーが不正に支払った金額は四千八百八十八万六千六百円というふうにされておりますが、果たして、被害金額といいますか、この金額がこれですべてと言えるのかどうか。また、一部報道では、総計では一億円にも上る、このようにも言われておりますし、調査の結果どうだったのか。調査の経過と今後の見通しについて伺いたいと思います。

出田参考人 お答え申し上げます。

 今回の調査で、元職員からイベント企画会社の社長へ不正な支払いが行われましたけれども、その金額につきましては、報告書でお示ししたとおりでございます。それがすべてだというふうに考えてございます。

 ただ、元職員に関係いたしますそのほかの支払い、これにつきましても、不正があったかどうか、私ども調査を進めております。ただ、NHKの任意の調査、これには限界がございますので、現在のところ、すべてはっきりはしておりません。したがいまして、この元職員の支出状況につきましては警視庁に詳しく説明をしております。さらに関係資料も提出をいたしまして、捜査を依頼しているところであります。

 現段階では、警視庁のそういう捜査の妨げになるおそれもありますので、現時点で具体的な内容あるいは金額について明らかにすることはできませんけれども、今後捜査が進みますと、被害がさらにふえる可能性もあるというふうに考えております。

長沢委員 捜査が進むと被害金額がふえるという可能性もあると。

 調査報告書の中を見ましても、五人の放送作家に対して支払っているが、そのうち一人はしっかりと台本も書いている。仕事をしている人、そして、今回不正に支払ったとはっきりわかる相手。そして、仕事していない、したという証拠が残っていない、どう調べてもわからない、だけれども本人はちゃんと仕事をしたというふうに言われているということで、支払われた文芸委嘱料が適切だったのかどうか、ややグレーな部分の人が若干残っている、その辺が調査ができないというようなことが調査報告の中にも出ておりまして、これは非常に調査がなかなか難しいところにあるのかなというふうに思います。

 ただし、この四千八百八十八万円としても、それはやはり大変に大きい金額である。この元チーフプロデューサーの問題一つとっても、いわゆる不祥事の根っことなるような問題が幾つか浮上するというふうに言っていいと思います。

 まず指摘できるのは、やはり経理処理のずさんさということでございます。

 本来、この支払いを請求するのは、担当のデスクが請求をして、コンピューター上でその請求の書類を起票する、そしてそれをその上司であるチーフプロデューサーが決裁するという構造になっている。ところが、この担当のデスクが出張等でその支払い請求が起こせない場合は、上司、決裁者であるチーフプロデューサーの方が代理でそれを請求できるという手法があった、こういうふうに調査報告の中にも出てきています。これを使ったのではないかということなんです。

 すなわち、本来請求する人間、担当デスクの請求書を、決裁者であるチーフプロデューサーがコンピューター上でその書類を引き出して、そしてそこで、請求者である担当デスクの名前を使ってチーフプロデューサーが請求をする。ということは、すなわち、請求者とそれを決裁する人間とが全く同一人格になるという、これは、普通考えれば、チェックシステムが全く働かないという中身になっているわけで、システムのいわば欠陥だと思いますが、これがこの不祥事が発覚するまで長年続いていたということ自体、やはり大きな問題だと指摘せざるを得ないというふうに思います。

 また、こうした抜け穴を利用して、そこからキックバックをさせて着服していた。いわば受信料という公金、これを不正に得たわけですが、この公金に対する意識、自覚の欠如というのがここにはっきりうかがわれるわけで、これはこの事件をやった元チーフプロデューサーだけの問題ではなく、このチーフプロデューサーの不正をその後任の人が調べた、赤字がずっとこの番組は続いていた。赤字ということは、当初計上された番組制作のための予算、その予算をずっと上回る支出をその番組はずっと続けていたので、それに対して、なぜ赤字が出るのかと。

 これは、海老沢会長のリーダーシップのもとで、経営をしっかり効率化しよう、こういう呼びかけがあって、そういう調査をその後任の人がした。そうしたら、その赤字の部分を調べていく中で、どうも不正な支出があるかもしれないということが指摘があった。この指摘がありながらこの事件を放置してしまった当時の上司についても、この受信料に対する、公金に対する意識というものがやはり欠けていたのではないかというふうに言わざるを得ないわけです。

 この管理監督責任者である上長が、赤字経理を背景にする調査に対する責任も果たさなかった。それも、元チーフプロデューサーの、別の、借金の問題に対応しただけでよしとしてしまったという、この辺の管理責任。これについて、NHKさんからもこれをきちっと処分をしているわけですけれども、こうした自覚、意識の問題が不祥事の温床になっていたというふうに言わざるを得ないのではないかと思いますし、こういうところについては、しっかり今後、自覚、公金意識、そういうものを促す。

 そして、もう一度、本当にまじめに働いている職員の方もたくさんいらっしゃると思いますし、すべての職員がこういう不正をしているということはあり得ないわけで、そういう意味ではごく一部の不心得者ということになるかもしれませんが、それでも、ごく一部でもその不祥事の温床というものがその中にあったとすれば、その自覚はやはり促していく努力を今後続けていただきたいということを、これは要望にさせていただきたいというふうに思います。

 関連しまして、この「BSのど自慢」ほか八十八件、四千八百万円の不正の事件以外にも幾つもの不祥事が浮き彫りになっているわけですけれども、私の方から一つお聞きしたいのは、九月二日の定例記者会見におきまして、海老沢会長から新たな別の不祥事四件が公表をされました。

 これはみずから海老沢会長の方から公表されたというものでありますけれども、平成九年の十一月に処分をされた、取引銀行に対して払い出し用の認証を不正に使用するなど約百万円の公金着服。平成十二年十一月に処分された、取引銀行の通帳を改ざんするなどして合計三百万円の公金着服。平成十三年四月に処分された、集金した受信料の一部、およそ二百万円の着服。平成十三年十二月に処分された、出向先の会社の経費三百七十万円余りを私的に流用という事件。

 この四件を会長の方からは記者会見で発表されたわけなんですが、この会見の席でなぜ公表されたのか、逆に言うとその前になぜ公表されなかったのか、この理由について伺いたいと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 今回の不祥事を踏まえまして、私ども、懲戒事案の公表の考え方を変えました。

 今まで、情報公開で公開請求がありますと、一定の基準に従いまして公開してきましたが、私どもの方から報道機関などを通じてそれらの事案を発表するということはしませんでした。ただ、この不祥事を踏まえまして、考え方を変えて、改めまして、これからは、情報公開で求められる公開基準に従いまして、そういう事案につきましては私どもの方から報道機関などを通じて国民の皆さんに公表する、発表するというふうに方針を変えました。

 その方針に基づいて、九月二日の会長会見で過去の事案について会長が発表した、こういう次第でございます。

長沢委員 当時は、この会長の会見を伺いますと、やはり、これまで公開基準に照らしてみずから進んで開示するものではなかったけれども、今後は進んでしっかり開示をしていきたい、こういう決意が述べられておりまして、本当にそれは正しいというふうに思っております。

 この四件の不祥事の中で、私はちょっと個人的に、この公表の仕方なんですけれども、この四件、例えば、平成十三年四月に処分をされました、集金した受信料の一部およそ二百万円を着服、このことだけでございまして、本当にこのような不祥事を二度と起こさないためには徹底した情報公開が必要であるというふうに思っております。

 例えば、集金した受信料の問題、これは非常に大きな問題でございますし、この問題についても、情報の公開の仕方としては、例えば所属の部署はどこだったのか、そして、どういうことがきっかけにしてこれが発見できたのか、こういうようなことについても一緒に公開することで、逆に情報公開の意味というか、それが私は高まっていくというふうに思いますので、この四件の概要につきまして、事実経過についてさらなる説明を求めたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

宮下参考人 お答えいたします。

 九月二日に会長が四件発表したわけですが、これはいずれも過去の事案でございまして、それぞれ懲戒免職になっておりまして、ある種、社会的制裁を受けているということがございまして、過去事案につきましては、特に個人のプライバシーの保護など勘案いたしまして、一定の制約のもとで公表するということにしております。

 お尋ねの受信料の件は、それにつきましてもそういう基準で発表したわけでございますが、職員が集金した受信料をあたかも集金できなかったように報告して着服したという事案でございまして、これは内部調査によって明らかになりました。全額弁済させた上で懲戒免職にしております。

 所属部署につきましては、先ほど申し上げましたように過去事案でありまして、本人のプライバシー等特定できる手がかりとなりますので、公表は差し控えたいというふうに思っております。

長沢委員 今の受信料のいわゆる着服の二百万円の事件についてだけ、あたかも集金したかのように報告をしてそれを着服した、内部調査によってわかったと。こういう情報はきちっと公表することが非常に大事だというふうに思っています。

 例えば、この事案が起きた。二百万円の着服といいますが、二百万円を一遍に着服するという、これは大変なことだろうなというふうに思っていまして、例えば、いつからいつまでかけてこの着服が起きていたかとか、あるいは、明らかになった、発見できた経緯、今内部調査によってわかったというふうに報告がございました。こういうことをきちっと示すことが、逆に言えば、自浄作用を示すことにもなると私は思いますし、再発防止を進めるという面にも非常に意味があるというふうに思います。

 例えば、集金業務で今も日々汗をかいて苦労されている方がいらっしゃるわけで、そのまじめに頑張っている職員の皆様がきちんと説明をし、また釈明をしていくということができる上でも、こういう情報はきちんと公開していくことが今後も大事であるということを、あえてさらに言わせていただいておきたいというふうに思います。

 時間が足りなくなってまいりましたが、最後に、一つは、監督官庁としての総務省の対応についても少し伺っておきたいと思います。

 NHKを監督、監督というか所管の省庁の立場の総務省として、再発防止に向けた今後の取り組みをどう考えているのかということが一点。

 そしてもう一点は、先ほど滝委員の方からもお話がありました、私も同感でございます、経営委員会の取り組みにつきまして、やや経営委員会の姿が見えにくい。経営委員会の取り組みについて、総務省として、これは指導するあるいは助言するということは非常に関係からいって難しいというふうには思うんですけれども、その辺について指導あるいは助言するというようなことは考えていらっしゃるのかどうか。その辺を伺いたいというふうに思います。

田端副大臣 御指摘のように、今回の一連の不祥事については、まことに遺憾なことだ、そういう認識でございます。

 それで、今いろいろ御議論がありましたが、一昨日NHKの方でまとめられたこの報告書、それにおいて、点検活動をこれからもさらに実施していくということ。それから、この日にコンプライアンス推進委員会というものが設置されまして、会長が中心になって、さらに点検活動、不正防止、適正化に一層邁進していくということを決意されていますので、それについては見守ってまいりたいというふうに考えております。

 総務省としましては、NHKの社会的な責任の重さ、これについては深く認識しているところでありまして、そういった意味でも、国民・視聴者の皆さんの信頼回復に全力を挙げていただくように考えているところでありまして、再発防止についても、その実施状況等を含めて随時報告を求めていきたいというふうに考えております。特に、御指摘のように、受信料をいただいている公共放送ですから、それだけに、この再発防止等、積極的に取り組んでもらうように見守っていきたいと考えているところでございます。

 また、経営委員会の問題につきましては、今回、七月から三回、この経営委員会を開催されているようでありまして、そして調査、点検、再発防止等に精力的に取り組んでおられるというふうに思うわけでございますが、そういう指示をなされていることについて、私たちとしてはこの経営委員会の自主的な取り組みというものを注目していきたい、こういうふうに思っております。八月二十五日の臨時の経営委員会を開催するなど、熱心な対応をされているものと理解しておりまして、これらの改善に向けた取り組みが成果が上がるよう、注意深く当面は見守っていく決意でおります。

 そういうことで、私たちも、今回の事件がより国民の皆さんの信頼回復につながるよう、監督官庁としても注視してまいりたい、こう思っております。

長沢委員 やはりこれはもうNHKのみずからの努力というものが、自浄作用の発揮というものが一番問われるようになっていくと思いますし、その意味でも、NHKの存立、運営の基盤でもありますいわゆる受信料、その公金に対する意識の改革、これを不断の努力として続けていっていただきたいと思います。また、より一層の情報公開に努めていただきたいと思います。また、より良質な番組づくりに努力をするというNHKの根本的な使命、これをさらに果たしていくよう努力していただくことを強く求めまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、伊藤忠治君。

伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。

 NHKの海老沢会長を初め参考人の皆さん、御出席をいただきましてありがとうございます。お聞きをしまして、私は四十分間質問させていただきますが、少しでも全容解明ができますように、簡潔な答弁と問題点をひとつ明らかにしていただきますようにお願いをいたします。

 幾つか不正疑惑問題が出たわけでございますが、これは他のマスコミが、新聞から始まりまして雑誌に至るまで、随分早い段階から集中的に報道されておりました。私たちはそれを耳にもしましたし、読んでもまいりましたが、正式にNHKの全容解明の中身が正式決定の形で出されましたのは、九月七日の協会としての、つまり経営委員会を経た上で出されたことなんですね。

 その間、説明を私たちも受けておりましたが、中身については、精査をしていきますと、ところどころ、やはり判断に迷うというか、事実関係について一体これはどうなのかなと不明に感じる部分もございますので、そのあたりからちょっとお聞きをしたいと思っております。

 まず、磯野元チーフプロデューサーというんですか、これは番組制作費の不正支出、言うならば詐欺事件なんですが、質問いたします。

 この元チーフプロデューサーは、十五本の番組を担当していたんですが、イベント企画会社の社長に計四千八百八十八万六千六百円を不正に支払いまして、その中から九百三十七万円を自分の懐にキックバックさせた、こういう理解でよろしゅうございますか。イエスかノーかでお願いします。

出田参考人 お答えします。

 調査報告書にも書いてございますけれども、キックバックの額につきましては、私ども、いろいろな形で調査をいたしました。そこに書きました、口座に振り込まれた数字でございます。それ以前に現金による手渡しもあったのではないかというふうに考えておりまして、キックバックの額としてはもう少し多くなるのではないかというふうに考えてございます。

伊藤(忠)委員 記録に残りますから、もうそういうことで私は次に質問いたしませんが、それ以前は、つまり発覚した以前は本人に対する手渡しと見られまして、総額としては未確定だと。しかも、手渡した分は相当な金額になるのかならないのか、この点についてはどうですか。

出田参考人 お答えします。

 手渡した金額につきまして、私たちの任意の調査でははっきりしておりません。これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、現在、警視庁に捜査をお願いしてございますので、その中で明らかになっていくことを期待しております。

伊藤(忠)委員 つまり、協会みずからの手で実態把握というか捜査はできないので、それは告訴という方法で訴えまして、司直の手に今ゆだねているからそちらにお任せします、こういう理解でいいんですね。

出田参考人 私どもの調査では限界があるということも事実でございまして、そういう意味では、先ほど申し上げましたとおり、捜査にお願いをしているところでございます。

伊藤(忠)委員 次、質問いたしますが、BSジュニア番組にかかわる放送作家を五人契約しているんですが、実際はこれ、あの番組程度という言い方は、私が言っているわけじゃありませんが、プロに言わせると、あの程度の番組だったら五人は要らないので、三人で十分やっていけた、こういう意見もございます。五人と契約されたんですが、その元チーフプロデューサーから支払われたイベント企画会社社長は、全く作家としての業務実績はないんですね。あとの、四人ございますが、そのうちの二人は、報告書にあるように、一応の実績らしいものはあったけれども、残る二人は全く実績がない、その疑いが濃いということになっているわけですね。

 この実態把握と、しかも、損害賠償ですよね、実際やっていないのにお金をもらっているわけですからね。それの損害賠償というのは、当然その契約をしたイベント会社の社長以外の放送作家にも出てくると思うんですが、この点はどうお考えなんですか。

佐田委員長 挙手をお願いします。

 出田日本放送協会理事。

出田参考人 損害賠償につきましては、今回の金額以外にも不正がありましたら、これにつきましても同様に、警視庁の捜査を見きわめながら、全額の返済を求めていきたいというふうに考えてございます。

伊藤(忠)委員 元チーフプロデューサーの立場は、つまり契約することの権限、それから請求をすることの権限ですか、しかも支払いに対して確定をするというんですか、支払い確定までもみんな自分が握っているわけですよね、経理処理です。そういう立場にある人だったら何でもできますよね。こういう職場の、言うならば作業運営のシステム、これに私は問題があるのではないのかな、こう思っているわけです。

 ちょっとお聞きください。次、続けますが、つまり、番組ごとに予算が決まるじゃないですか。これは今も御答弁ございましたように、上の方で決まるわけだ、局長さん含めて決めるわけでしょう。すると、一本一本の番組に対して予算が決まりますよね。すると、執行に際しても、私が常識的に考えますところ、それぞれの分野のチーフというんですか、責任者が集まりまして、企画委員会などで協議をしまして、この番組は予算がこのようについた、具体的にはどのように作業を進めていくかという細部の計画は、そこで実施計画も決まっていくと思うんですが、そういうことと、この元チーフプロデューサーが何もかも自分でやるということの関連というか、なぜできたのかというのが不思議でしようがないんですが、その点については手短にひとつ、どこに問題点があったのかということをお答えいただきたいと思います。

出田参考人 私どもも、本来チェック機能を果たすべきチーフプロデューサーが不正を働いたということは大変残念でありますし、大変深刻に受けとめております。

 今回のケースは、そういう意味では、請求を代理でできるようなシステムがあって、それを悪用したということで、我々としてはそのシステムをこの際すべて廃止したいというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 普通、聞いていますと、そういう答弁でなるほどなというふうに思いがちなんですが、具体的に聞きますが、それでは、「BSジュニアのど自慢」ですか、この予算とそれから決算の関係を見ましても、こういう疑問がわいてまいります。

 どういうことが言いたいかというと、つまり、「BSジュニアのど自慢」は平成十一年度四月から実施されておりまして、取り組まれておりまして、平成十五年三月までやられているわけですね。予算も四回組まれています。四年度にわたって予算を組まれているわけです。一本当たりの予算の単価が一千万です。これは、三十二本この番組というのは組まれているわけですね。だから、これが平成十一年、十二年、十三年というふうに十五年まで続くわけですが、例えばそのうちの十一年度を例にとりますと、この文芸委嘱料というのは予算額では五十万なんですよ。決算額では九十八万六千七百六十円なんですよ。オーバーしている赤字が四十八万六千七百六十円なんですね。明らかにこれは赤なんです。

 その次に、その他の制作経費というのは随分多くて、全体の番組予算は、それぞれみんな項目を見ましても、非常にこの経費が多いんです。これは、予算額が五百七十万に対して赤字が二百五十七万三千円まで膨らんでいるわけですね。全く予算額と決算額は大きく開いていまして、これはフィットしていないわけです。それなら、次の年度を見てこれが縮まったかといいますと、全然それは縮まっていません。つまり、赤字が十二年度でも百五十二万七千円出ています。

 ということで、つまり、予算と決算は、これは単年度でやったとしましょうか。そうしたら、運営してみて、これはやはり予算額と決算が開き過ぎているな、それだったらどのようにこれはフィットさせるような運営をするのか、番組編成の過程でやっていくのかという努力が当然幹部の連中で出なきゃおかしいわけですよ。それは下の方の関係では出ませんから、企画会議以上の皆さんの協議の中で当然そういうものがチェックされていって、トータルの予算というものがやはり生きていくと私は思うんです。

 これは創作活動中心のNHKであれ、生産活動をやっている一般の企業であれ一緒だと思いますよ、私は。もっと厳しく言えば、月次決算でやるじゃないですか、民間は。一月一月やっていくところだってあるわけですよ。何をやるかというと、予算と決算の乖離をどのように縮めていくかという努力をやっているわけですね。

 ところが、一年度がこれだけ開いておって、二年度も同じように開いているというのでは、今言われたような、言うならば何でもできるポストを握っている人が、言っちゃ悪いけれども横着ができるじゃないですか。そこのところをきちっとチェックをして締めていくというのは、言うなら番組編成トータルの皆さん方、理事さんの役割じゃないですか。私はそのように思えてしようがないんですが、その点はどうですか。

出田参考人 お答えいたします。

 一本ごとの番組の予算管理、この責任は担当のチーフプロデューサーでございます。

 番組制作に当たりまして、与えられた予算の範囲の中で番組の制作に努めるということは当然でございます。ただ、御指摘の「BSジュニアのど自慢」など、当初、赤が続いていたということは事実でございます。

 これにつきましては、当時の現場では、番組がスタートいたしましてしばらくは、いろいろなリサーチ業務がどうしても必要だということですとか、あるいは開発経費が必要だということで、やや赤字になるのはやむを得ないなという認識でございました。

 ただ、当時の上司、部長は、こういった個別の番組が赤字になっている場合につきましては、こういう赤字をどうしたら解消できるのかということにつきまして、担当のチーフプロデューサーに指示を出しております。ただ、問題は、そこに不正が行われていたということになかなか思いが至りませんで、結果的に不正経理を発見できなかったというのが実態でございます。

伊藤(忠)委員 どうもぴんとこないんですがね。

 その元チーフプロデューサーは、そういうことも知っていて、皆さんおっしゃるように、理事さんの立場からしても、これはやはり是正していかなきゃいかぬなというふうに、特にBSジュニアでは予算と決算の乖離が多かった、こういう指摘ですけれども、「青春のポップス」を見てもそうじゃないですか。十年度から十三年度の資料を私はいただいていますが、みんなこれは赤字で、乖離が多過ぎますよ。十年度の「青春のポップス」、十年度やってみて、それで、ああこういう予算執行だった、不自然だな、では赤字を減らすために十一年度はもっとそこのところを組み直そうかというような努力がありませんよ、これは。だあっと赤字が出ています。

 しかも、もう一点問題なのは、その他の制作経費という項目が、つまり、出演料だとか文芸委嘱料だとか美術費というのは、これは多いことも多いですが、文芸委嘱料なんてそう多くないんですよ。その他の制作経費という項目ががばっと多いわけですよ。これは一体何なんですかということです。

 だから、その他の制作経費の中身というのはもっと細分化できるでしょう。私が言いたいのは何かといいますと、例えば、水増し請求をして、おつき合いのいろいろなことに要ったから、支出を自分が判こを押してやって処分を食らったという例もあるじゃないですか。ソウルの話は後で伺いますけれども、どちらかというと、あれもその疑惑の話なんでしょう。

 だから、この、その他の制作経費の予算全体に占める金額が非常に多いものですから、この中身は何ですかということをきちっとしておかないと、私はこう思うんです。それは、言うに言えない、いろいろなスタッフだとか渉外費が要ると思いますよ。要ってもいいんです、それは。それはちゃんと領収書をもらえばいいんですよ、そうしたら、どういう性質のもので支出したのかということが証明できますから。

 そのことを言っているんじゃないんです。こういうことをやっちゃいかぬとかやっていいということを言っているんじゃなくて、つまり、領収書をきちっともらいなさいと。領収書なしに、これが要った、あれが要ったというので支出したら必ず事件になるというのは、これはどの組織でも間々あるわけです。間々あるというか結構あるわけですよ。そこのところをきちっと押さえれば、要ることは要るんですから、いいものをつくろうと思ったら、それなりのものが要るじゃないですか。そのことを否定しているんじゃないんですよ。

 だから、そういう経理というか管理体制をきちっとしておかないと、これはこれからだって出ますよという気がするものですから、例を出して私は言うんですが、まず予算と決算の乖離をなくすこと、この点についての努力というのは現実にやられたんでしょうか、そこのところでございます。

出田参考人 お答えいたします。

 まず、先生、先ほど御指摘いただきましたその他の制作経費でございますが、大変比率が高くなっております。

 これは、実は、上の出演料ですとかあるいは美術費以外のものでございまして、実態的には、番組の編集料とか、あるいは効果音をつけるときの効果の支払いですとか、出張する場合の旅費ですとか自動車料、あるいは資料を買うためのあれです。さらに、一番大きいのは、技術関係と申しまして、いろいろな機材ですとか技術関係のエンジニアを雇う場合のお金も全部ここに入ってございまして、そういう意味では比率が高くなっております。

 それから、予算と決算の乖離でございますけれども、確かに、この「青春のポップス」あるいは先ほどの「BSジュニアのど自慢」につきまして、スタート当初、かなり予算と決算が乖離しているというのは事実でございます。

 先ほどお答えいたしましたとおり、私どもとしては、当初、番組のスタート当初ということで理解をしておりましたけれども、その都度、決算を見ながら、次の予算を組むときに、修正するところはないかという指示を出しておりましたけれども、結果としてなかなかそこが縮まらなかったというのが実態でございます。

伊藤(忠)委員 結局、その体質なんですよ。上が気づいて言っても、下にそれがなかなか届かないということなんですよ。こういうことは一般の経営じゃ、絶対一般の組織というか会社なんかじゃ通りませんよ、そうでしょう。後で会計監査のことを聞きますけれどもね。

 だから、理事さんがそのように思われて下に言われたら、下がぴしっとそれに従ってやらなきゃいかぬじゃないですか。毎年同じように赤字が出ているんですもの。しかもそれは、その他の制作経費ですか、この部分が非常に多いんですよ。

 今、あなた、おっしゃいましたよね、技術費だとかいろいろなことがあると。要るんだったら、そういうのを皆チェックすればわかるでしょうが。要るんだったら、要るんですもの、それなら、予算もそのように組んではどうですか。そうでしょう。

 そこが問題なんですよ。そういうふうに、言うならば、番組編成だけに限りませんが、いろいろなものについても、そのように予算執行なり組織運営の管理監督を徹底していかなかったら、必ず今のようになりますよ。私は、そう思います。

 その辺を気づいておりますので、今回、それも含めて是正をしたいという決意を会長は述べられましたけれども、本当にこれはやってもらわぬと、よくこういうふうにこられたな、これからどのように変えるんだ、きちっとそれを変えていこうと思ったら、相当職員の皆さんは窮屈な部分も出てくるんじゃないですか。私は、実は簡単に変わるかなという感じがしておるんですが、この点が問題点のように思います。

 二点目は、時間がございませんが、ソウル支局長問題なんです。

 これは同僚議員からも出ておりましたけれども、当時は、私的な流用はなかったということで厳重注意処分で終わっているわけですね。ところが、一カ月六十万から二百十万で、積算すると四千三百九十九万七千百二十円、金額としては随分多いですよね。本人は着服していないけれども、そういうおつき合いが必要だったというんですが、ちょっと、どう考えても、このおつき合いは広がり過ぎだったと私は思いますよ。ところが、それは上司の部長さんあたりが、厳重注意処分で、言うならばそういう懲罰の委員会にもかけずに内々に済ませて、厳重注意で終わっているわけですね。

 本人は、松山にずっと行かれまして、協会本部に戻られまして、平成十六年、現在、ソウル支局長にまた就任されているわけです。昇格して就任されているわけです。ぐるっと回って、またソウルの支局長さんに戻られたわけです。

 そうしたら、今回どかんと処分が出まして、その処分がかなり厳しい処分でしょう。停職六カ月ですか、九日付で出たんです。これは七年ぶりに出たんです。同一事件なんですよね。事件というか同一問題に対する処分が七年ぶりにどかんと出たわけです、停職六カ月。

 本人にしてみれば、どういう気がしたでしょうかね。忘れておったころに出てきた、これはショックだったと思うんですよ。一事不再議というのは国会でも法案の審議でございますけれども、一回厳重処分を食らっているものが七年ぶりにまた重い処分を食らうというのはあり得るんですかね。

 そういうことをやりますと、職員の皆さんはどう思いますか。今はこれで済んでいるけれども、いつ処分をもらうかわからぬ、非常に不安に思うんじゃないでしょうか。これじゃいかぬわけで、本人はそれはわかっているのやというたって、本人はなかなかノーと言えませんでしょうけれども、ちょっと、どう考えたって、これは処分のやり方というか人事の政策として私はおかしいと思うんです。

 ところが、協会側にしてみればそれなりの言い分がまたおありかわかりませんが、もし言い分がありましたら聞かせてください。恐らく、これはびっくりしたと思いますよ。どうですか。

宮下参考人 先生お話しのように、この不祥事が発覚した平成九年の当時は、責任審査の上申がなかったんですね。現場で責任審査を経ずに厳重注意、訓告に当たるんですが、やったということなんですが、今回、この事件が報道などもされまして、改めてもう一度調査をし直しました。それで、新しい事実はなかったんですが、その事実を、要するに我々としては責任者に付すべきだというふうに判断いたしまして、責任審査を初めて今回行ったわけです。その結果、厳重な処分をした、こういうことでございます。

伊藤(忠)委員 厳正処分をした、その事件はそれ以上のものは出なかった、ところが七年たった今日、非常に世間が騒がしくなった、これは大変だというので本人には停職六カ月の処分を改めて出した、こういうことなんですね。それは反論は結構です。結局そういうことなんですよ。体裁を考えてやったということですよ。

 たまりませんわな、本人は。本人はたまらぬと思いますよ。当時は厳重注意で終わっていたんですもの。上司がやって終わりだった。今度は、協会全体でそういう審議にかけられて、偉い様に、あんた、停職六カ月と。七年前の話を今回改めて出されたといったら、それは言い分、残りますよね、本人は。やはりそういうことも考えてやられるべきじゃないですか。絶対私はおかしいと思います。非常にこれは不自然だと思いますので、そのことだけ申し上げます。

 次に、内部監査、会計検査院のことについて質問いたしますが、どうも内部監査は、時間がないので自分で言っちゃいますが、お聞きするところ、この宮尾さんの今の停職六カ月の話です、この事件に対しては監査には入られていないですものね。監査に入られていないと私は聞いていますが、その辺どうですか。

野島参考人 お答えいたします。

 宮尾がソウル支局長に在任しました平成五年七月から九年六月までの間に、確かに監査は行っておりません。それで、その前後……(伊藤(忠)委員「もう結構です。それでいいです」と呼ぶ)はい。

伊藤(忠)委員 当時はやはり話題になったわけでしょう、協会内でも。どうもそうらしいなというので、ソウルではこういうことがあるぞというので、それはかなり広がったと思いますよ。だから処分を出したわけですから。そういうところに対して監査に入らないで、どこを回っていたんですか。監査というのはルーチンでやっているというのはよくわかります、私も。監査は監査、それから運営は運営と別々になるからこういうことになるので、それだったら業務監査でも入れればいいじゃないですか。本来、業務監査が入りますよ、組織というのは。その辺は全然やられていないというのはわかりました。

 それからあとは、海外総支局が全世界に三十五局あると聞いておりますが、こういう監査は六年に一回しかやられていないと聞いています。それは、人がいないと言われればそれまでですよね。六年に一回ですよ。実際に放送番組というのは、大阪も放送局ができていろいろやっているじゃないですか。番組というのは絶えず皆、下の方にこれはおろしていますからね。そういうところで番組を結構やるんですよね。六年に一回です、監査は。

 また、監査というのは、国税の監査じゃありませんからね。皆さんも御承知のように、税務署の監査というのは、これは民間の企業にとってはもう生き死にがかかっているわけですよ。泊まり込んで監査に来ますよ。ところが、この監査は違うわけだ。ルーチン監査で、それでだあっとスケジュールを組まれておって、行ったらちょちょっとやって帰ってくるわけ、正直言って。ただそんな監査ですよ。そういう監査でいいのか。これは会長さんにもお願いなんですが、監査のやり方もやはり、業務監査、会計監査、どういう方法をとるのか別にしまして、どうせやられるんだったらそこまでやられた方が本当は私はベターかな、こんな気がいたします。

 次に、会計検査院にお聞きいたしますが、これは、放送法の四十一条に基づいて会計検査院がかかわっているわけですが、NHKに対して、平成十年あたりからずっとこういう一連の事件が出たわけですが、それを意識して監査、検査院の検査はやられましたか。

円谷会計検査院当局者 お答えいたします。

 今、先生がおっしゃいましたように、会計検査院は、放送法の四十一条の規定によりまして、NHKを必要的検査対象ということで毎年検査をいたしております。さまざまな観点から、合規性、正確性、経済性、効率性、有効性を検査いたしておりまして、一昨年は、NHKの用地の問題につきまして検査報告に掲記をいたしたわけでございますけれども、ただ、今回問題になっております一連の事案、特に放送番組制作費等につきましては、費用対効果あるいは個々の経費が適切かどうかといった観点からの検査というのは非常に難しい、非常に特殊な分野でございまして、これまで検査をして指摘をしたというケースはございません。

 けれども、今回の一連の事案につきましては、個々に検査をいたしまして、不正行為に当たると判断した場合には、NHKから報告を徴しまして適正に対処いたしたいと考えております。

 また、今おっしゃいましたように、十年からこういった問題が続いてまいりましたので、大変難しい分野ではございますけれども、鋭意創意工夫をいたしまして、こういった放送番組制作等につきましても検査に努力を傾けていきたい、このように考えております。

伊藤(忠)委員 このように理解をさせていただいていいですか。検査院もルーチンを組んでやっているわけですが、放送協会にも毎年入られているわけですね。その場合に、帳簿だけ突合してもだめですわな。こういう問題は出ないじゃないですか。大体、数字でひっかかるような会計処理なんてだれもやりませんからね、まずやっていませんから、それを何ぼ見ても、これは発見はできないわけです。やはり聞き取りを当然やられるでしょうし、業務監査風なこともやられて、ちょっとこれはおかしいんじゃないのというふうな検査を検査院はやられているんですか。その辺はどうなんですか。

円谷会計検査院当局者 検査に参りますと、書面検査だけではなく、実地検査にも行きますし、また現場にも参ります。放送協会本部だけではなく、年間、拠点局は全部行っておりますし、地方局も約二割ほど検査に行っておりまして、実際、その現場まで行って確認をしたりということもしておりますので、決して書面だけで終わらせるということはございません。

伊藤(忠)委員 何も協会にかかわらず、検査院としては、ぜひともひとつ突っ込んでいって、どういう実態なのかということを明らかにしていただきたいと私は思っています。ひとつ、そういう姿勢でもって取り組んでいただきたい、このことを強く希望いたしたいと思います。

 最後に、協会全体の監督として事に当たってこられました海老沢会長さんにお考えを伺いたいと思っております。

 やはりNHKというのは我が国を代表する公共放送でございまして、今も、一連の不祥事件に対して、受信料を払っている国民の皆さんから、心配事や、何しているんだとか、いろいろな声が届いたということを聞かせていただきました。随分、NHKに対する、いわゆるファン、好きだというファンですよ、不安じゃなくてファン、結構多いと思うんですよ。いいものをつくってくれ、そういうやはり応援する人たちは多いじゃないですか。やはりそういう視聴者の皆さんに、一連の今回の不祥事というのは、大きなダメージというか、非常に信頼感を失った、そういう出来事じゃないのか、私はこのことが非常に残念でならぬわけであります。私自身もファンの一人ですが、そのように思います。

 NHKといったら、やはり、予算は六千七百億、これは民放と比較しますと、民放の大きいところの倍はありますよね。それから職員が一万二千人。しかも公共放送として放送法三十二条で位置づけられているわけですよ。だから受信料をみんな払っているわけですが。

 そういう大きなマスコミということになれば、これは誤解なく聞いてほしいんですが、マスコミは権力だとよく言うじゃないですか。すると、無意識のうちに、やはり知的集団ですから、そういう気持ちに、錯覚する場合だってなきにしもあらずだと思うんです。

 予算というのは、会長がいつも予算審議の際に物すごく強調されますよね、受信料を上げなくて済むようにと。保留金という格好で次年度繰り越しができるようにということなんですが、今の番組なんかをずっと精査していったら、次の年度には予算ももう一遍洗い直していただくというような、そういう必要性があるのじゃないのかと私は思ってもみたりしているわけですが、いずれにしても、この幹部職員の皆さんの公金あるいは職務に対する責任の重さというのは、より以上、これからも加わっていくと思います。

 信なくば立たずという有名なあれですが、これは中国のことわざから始まっているんですが、組織は大きいだけではまたこれは大変なんで、世の中もそうですが、お互いに信頼し合えるということが基本にあって組織も成り立つし、社会も成り立つわけです。お金や経済だけでは世の中成り立たぬわけで、やはり信なくば立たずというのは、そこが私はポイントだと思っております。パワーを引き出すのもこれはやはり信頼関係、組織運営の中でやる気を出すのも私はそういうことだろうと思っております。

 監督責任の立場で非常に悩みもいろいろな御苦労も多いと思うんですが、今日、海老沢会長としてどのようにお考えなのか、もうこういう不祥事件は二度と出さない、こういうことでお考えいただいて、これからの決意表明をいただきたい、こう思っております。

海老沢参考人 ただいま先生からの御指摘、いろいろな御忠告、私も深く重く受けとめております。

 今、信なくば立たずというお話がありましたけれども、我々、受信料に支えられている私どもとしましては、視聴者・国民の信頼なくして成り立ちません。そういう面で、受信料の使い方、公金支出というものを我々自身がきちっと踏まえてやらなければこれからのNHKは成り立たない、そういうことを常に我々は頭のてっぺんに置いて仕事を進めていかなきゃならないと、今、改めて反省をしているところでございます。

 また、私ども、今、こういう市場経済の中で、国際的な激しい競争時代を迎えております。そういう中で、日本の情報を海外へ発信し、また、視聴者には質のいい、心を豊かにするような番組を一本でも多く出していかなければなりません。ですから、こういう事件を起こしたことを深く反省するとともに、また、こういう事件が起こったわけでありますから、これを改善し、また一から出直す思いで改革を進めながら、信頼の回復にさらにさらに努力を重ねていきたいと、今、改めて痛感している次第であります。

 私も七年間会長を務めさせていただき、職員と一緒に汗を流しているわけでありますけれども、さらに視聴者の信頼にこたえるためには、我々役職員一同が一丸となって、そして、こういう事件によって現場の士気が低下し、また、番組の質の低下をもたらしては何にもなりませんので、やはり視聴者・国民の信頼にこたえるためには、職員の士気を高めながら、そしてまた、一本でも多くいい番組をつくっていくようさらに努力を重ねて、視聴者の皆さんに改めておわび申し上げるとともに、また、今後、これを機会に一から出直す思いで頑張っていきたいと思いますので、よろしく御指導願いたいと思います。

伊藤(忠)委員 協会を所管されます総務大臣に、この問題に対してどうお考えなのか、一言見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 国民からの受信料というものに基づいて日本放送協会というのは成り立っておりますので、広告をもらってやっておるというのと少しわけが違うという気持ちは、多分、伊藤先生以外、多くの方がお持ちのことだと存じます。

 これまで、今言われましたように、放送料をここまで上げずに頑張ってこれた。いろいろな意味で、その内容等々と比較して、費用対効果の話等々、私ども、予算委員会の中でいろいろ予算を審議する中で、その内容についても伊藤先生いろいろ関心を持ってやっておられたことだと存じますが、まことに、こういったような形で、何となく公金横領に近いようなイメージという形になりますので、イメージを損なったという点につきましては大変遺憾ということははっきりいたしておるところであります。

 したがいまして、今回、いろいろ対策という案が出されておりますので、これをきちんと精査して、その上で、今後ともこういった不祥事、もしくは、いろいろたくさんおりますから、それはいろいろ不届きなのも出てくることも十分あり得るとは思いますけれども、そういうときには早期に発見して対応するというシステム、制度というのがきちんとでき上がるというところをつくっておくというのが大事なところだと思いますので、今後とも関心を持って対応してまいりたいと存じます。

伊藤(忠)委員 終わります。

佐田委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 本日のこの審議は、NHKの不祥事問題等という形で情報通信及び電波に関する件という形で開かれております。NHKの問題に入る前に、一点、総務省にお尋ねをしたい問題がございます。

 さきの通常国会当委員会で、山形テレビについての質疑等を行いました。当時は、あの問題について、中間的な報告である、こういうふうに伺っていたところでございますが、何か国会が閉じた途端に、注意なのか処分なのかよくわかりませんが、そういったことがやられたように聞いているんですけれども、あれだけこの委員会で議論になった課題でございますので、それについてどういう形で総務省としては決着をつけたという認識なのかということについて、簡単に御報告いただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 六月三日の本委員会におきまして、ただいまおっしゃいましたように、山花先生も含めましていろいろな質疑が行われました。その際にもいろいろとやりとりはございましたが、不明な点がまだ数多くございまして、総務省としてはまだ事実関係の全体像が把握できておりませんでした。そこで、これらの不明点を質問事項として整理いたしまして山形テレビに提示し、回答を求めておった段階でございます。

 その後、六月十六日に山形テレビから回答が提出されまして、総務省としては、本件事案について、放送番組の編集上求められる注意義務を怠った重大な過失があるというぐあいに認められるとの判断から、六月二十二日に山形テレビに対して厳重注意という形での指導を行ったものでございます。

山花委員 ということで、当時、総務省として、山形テレビの対応について問題があるのかないのか、どういう認識なのか、こちらとしても不明なところがあったんですけれども、一応、問題があったという認識で対処をされたということであると思います。

 ただ、同日、返す刀でテレビ朝日も何か注意されたやに聞いておりますが、その点についてちょっと申し上げたいことも多々あるんですけれども、それはまた別の機会に議論ができればと思います。

 ところで、NHK、日本放送協会の方々、きょうは参考人としてお越しいただいております。

 これだけいろいろ問題が発覚をしてきた第一報というのは、週刊文春の記事ではなかったかと思います。その点については先ほど来いろいろ議論が行われておりますし、また情報の公開に今後も努めていきたいというような御答弁もございました。その情報の公開ということで関係するのかどうかということなんですけれども、最近若干気になった雑誌の記事というのがございまして、NHKの情報公開コーナーというところに監視カメラがついているのではないかというような週刊誌の記事がございます。

 これは、情報公開担当者とカウンターを挟んで面談している際に、その正面の方にカメラがあるという指摘なんですけれども、まず、こういうカメラがそもそも設置されているという、具体的に申し上げますと九月十九日発売のサンデー毎日でそういう報道があるんですけれども、カメラの評価云々という話は別といたしまして、そういったカメラが設置をされているということ自体について、事実関係はそのとおりなんでしょうか。

和崎参考人 お答え申し上げます。

 放送センターにあるこのカメラは、いわゆる人の出入りの多い、視聴者ふれあいコーナーと我々呼んでいますが、そこに防犯上の目的で設置したものでございます。そして、これを設置いたしましたのは、この情報公開の仕組みが平成十三年からスタートしたわけですが、実は平成三年、既に、ふれあいコーナーをつくったときに、まさに防犯上の理由でここに設置したものでございます。

 そういう意味で、このカメラは防犯カメラの目的でございますので、常時録画をしているというようなことはございません。そういう意味で、何か問題が起こったとき、あるいはトラブルが起こったときに初めて非常で収録する、こういう仕組みになってございます。

山花委員 従来から設置をされていたというお話ですけれども、この記事でも指摘がありますけれども、こういったふれあいコーナーというような非常にのどかな名前のついた場所ですので、例えば、協会に対していろいろな意見を本当にざっくばらんに言えるような場所であってほしいと思うんですが、そういう場所にカメラがついていると、何か撮られている、常時録画しているものではないという御答弁でしたけれども、撮られている側は、撮られているというかカメラが向いている人間はそれはわからないわけですから、そういうところに設置をしているということは余り好ましくないのではないか、このように思います。

 また、そんなに前から、そういったことで何か事が起きたときに困るというようなお話ですけれども、事前には通告をいたしておりませんけれども、何かかつてそこでトラブルがあったりとか、そういった事実があったから、平成三年でしたか、そのときから設置をしているんでしょうか。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

和崎参考人 お答えいたします。

 基本的には、防犯カメラという性格でございますので、さまざまなお客様がおいでになる中で、中には乱暴を働かれてほかのお客様に迷惑をかけられる方等々ございますので、そういうときのための防犯カメラということでございます。ただ、御指摘のように、これは平成三年から既につけていたんですが、今回、先生の御指摘のように威圧感を与えるのではないかという御指摘もありましたので、今回は、情報公開受付の場所をこの防犯カメラから外れる位置へ移すということを実行しております。

 以上です。

山花委員 いやちょっと、聞いたことと違うんですけれども。かつてそこで何かトラブルがあったということなんでしょうか。乱暴を働くような方もいらっしゃった、だからつけたということ、要するに設置をしたという。何事ももしなかった、ないにもかかわらず設置するということだと威圧感を与えるので、それは外した方がいいですよと申し上げることができるのかな。ただ、かつて何かあったのでという話であれば、限定的に、例えば常時録画してないんだという今お話がありましたからそういうこともあるのかなと思うわけであって、そこの事実関係についてはどうだったんでしょうか。

和崎参考人 これまでも人の出入りの多い入り口である、あるいは玄関口あるいはふれあいコーナー等のところには、例えば酔っぱらいのような方が来られて暴れられたというようなことはございます。ただ、そういう意味で、何かがあったからつけたというよりも、入り口等いわゆる一般的な防犯の意味でこれはつけたものでございます。

山花委員 ただ、カメラは、それをつけることが本当に防犯になるのかどうかというのは若干疑問があるんですけれども、この点、また機会があれば少し事実関係について教えていただきたいと思います。

 ところで、本日私が取り上げたいテーマの主題の方に入ってまいりたいと思います。これは、九月九日号の週刊新潮で報じられている中身でございます、「プロジェクトX」展に関する話です。

 先ほど来いろいろ質疑が行われておりまして、日本放送協会というのは受信料で運営されているという話はもう先ほど来出ておりますけれども、私も、公共放送としての位置づけとして大変重要な役割は担われているということは認識をいたしております。

 例えば先日、日曜日に大きな地震があった折にも、直ちに、あれは大河ドラマの放映中でしたでしょうか、画面が小さくなってすぐに津波情報というのが出たりとか、これは民放で力を入れてやった番組をそういうふうにしてしまうというのはなかなか難しいことではないかと思いますし、浅間山が噴火したときにも、民間の報道番組がヘリを飛ばしていますという状況のときにも、NHKのニュースは、もう八時二分現在の噴火の模様なんというのを放映していたりとか、ああいうのを見ると、まあ有効に受信料が使われているなと思うんですけれども、そういうことはぜひ頑張っていただきたいと思いますが、一方、疑義を生じさせるようなことがあってはいけないのではないかという観点。

 そして、「プロジェクトX」という番組自体も、私も大変すばらしい番組だと思います。先日も放映されていたものは、たしか日産と合併する前のプリンスという会社の技術者たちの物語だったと思いますが、ああいった、物をつくったりとかそういった技術を取り上げるという意味ではすばらしいですし、それを民間の民放がスポンサーを募ってやろうとしたときに、やっぱりライバル会社がスポンサーだったりするとちょっとどうだろうかという話になってしまうケースも出てくるのではないかと思いますので、ああいった番組をNHKでやられるということも意義があると思います。

 ただ、今回報じられている「プロジェクトX」展、これは七月二十五日から八月二十五日まで、「プロジェクトX21」特別展ということで、東京ドーム・プリズムホールで行われたものであります。これは、報道がもしそのとおりであるとすると、今後これは現場にとっても余りいい影響を及ぼさないのではないかという懸念を持っております。

 と申しますのも、例えば、非常にいい技術を持った企業があって、会社があって、ぜひそういうのを後の時代に残したいということで、番組をつくろうということで、お願いします、協力をしてくださいと言ったところ、その企業の側が、いや、もしかして後で三千万円要求されるかもしれないからと思って、勘弁してくださいなんということになると、これは現場にとっても余りいい影響が出ませんので、こういった報道がある以上は、この点についてしっかりこの機会に御説明をいただきたい、こういった観点から質問をさせていただきたいと思います。

 ところで、この「プロジェクトX」特別展なんですけれども、主催者が、特別展「プロジェクトX21」実行委員会となっておりまして、その実行委員会を構成しているものは、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社、社団法人発明協会、東京商工会議所となっております。

 この「プロジェクトX」展についてですが、この週刊誌の報道ですと、間に入った代理店がNHKの関連会社だという書き方ですが、どうもNHKプロモーションが間に入っていると聞いております。このNHKプロモーションというのはどういう団体なのでしょうか。そしてまた、NHKとはどういう関係の団体かということについて、まずお答えいただきたいと思います。

野島参考人 お答え申し上げます。

 株式会社NHKプロモーションは、NHKの子会社でございます。NHK並びにNHKの関連団体が九〇%近くを出資している子会社でございまして、NHKを補完、支援して、NHKの放送番組に関連した催し物を実施する、あるいは企画をする、さらに自治体などの委託による各種の催し物の企画、実施などを行っているというものでございます。

山花委員 このNHKプロモーション、平成十五年度の営業概要によりますと、NHKとの取引額でいいますと、五億七千五百万円の収入があって、NHKに対する支払いは一千四百万円ということですので、株式会社としては、NHKはいいお客さんという立場になるんでしょうか。当然、子会社ですのでいろいろ持ち合いの関係はあるんでしょうけれども、NHKとの関係でいうと、収支については五億六千万円ぐらいの黒字という会社であります。

 ところで、今御説明いただいたように、催し物など、こういったことをやる会社であるということですけれども、今回のこの「プロジェクトX」の特別展、これをそもそも企画したのは、これはNHKプロモーションなんでしょうか、どこなんでしょうか。また、今指摘をさせていただきましたけれども、複数の、実行委員会の形をとっておりますけれども、こういった形で設立した理由とか経緯について御説明いただきたいと思います。

関根参考人 御質問の企画でありますけれども、NHK本体が企画しました。

 といいますのも、これまで私どものところに外部の幾つかの機関から、より多くの人に物づくりに対する関心を高めるようなイベントをぜひ検討してほしいという要望があったために、今回こういった企画をやろうということを思いついたというのがきっかけであります。今回のこの「プロジェクトX」展につきましても、日本社会に勇気と活力をもたらすとか、あと、日本人が持つ挑戦への勇気、そういったものを理念としながら、教育的、文化的な側面を持ったイベントに仕立てたつもりであります。

 それと、実行委員会の方式をとった理由でありますけれども、これは、それぞれの機関とか団体が連携を図りながらこのイベントを成功させようということで、先ほどおっしゃいました五つの団体、機関が中心となって組織したということであります。

山花委員 今少し驚いたんですけれども、NHK本体が企画をされたということなんですが、これは、実行委員会は、繰り返しになりますけれども、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社、社団法人発明協会、東京商工会議所。社団法人発明協会は、社団法人ですから営利を目的としてはいけませんし、東京商工会議所も社団法人のはずであります。NHKも当然営利を目的としてはいけません。NHKプロモと読売新聞社は、これは株式会社ということですので営利を目的とする会社なわけですけれども。

 ということは、主催者の中には営利を目的とする会社が入っていて、つまり、主催者は、営利を本来的な目的とする企業が入っている、全くそういうことがあり得ないとは言いませんけれども、そういう実行委員会を立ち上げるに当たって、本体が今回の展覧会を企画したということは、後でまたその点については指摘をしてまいりたいと思いますけれども、ちょっと疑義がある話ではないかと思います。

 ところで、先に進みますが、この特別展の中で、主催者とは別に、特別協賛として十社、協賛企業が九社、特別協力というのが二社ありますけれども、この特別協賛とか協賛とか特別協力というのは、これはどういう違いなんでしょうか。

関根参考人 まず初めに、誤解のないようにお願いしたいんですけれども、今回のイベントでありますけれども、もともと営利を目的に企画したというものではないんです。後で御説明する機会があるかもしれませんけれども、そこは誤解のないようにお願いします。

 お尋ねの特別協賛とか協賛、特別協力ということでありますけれども、今回の場合で申し上げますと、お願いするに当たりまして、協賛金の扱いというのは、私どもNHK本体というのはお金を取り扱うことはできませんので、NHKのプロモーションがその協賛金の取り扱いを担当しています。

 そして、特別協賛というのは、これは幾つかのコーナーをつくったんですけれども、最初が「プロジェクトX」という番組で取り上げましたプロジェクトの実物を展示するコーナーと、あとその企業が未来に向けてどういったプロジェクトを今やっているんだと、二つのコーナーがあるんですけれども、特別協賛はその二つのコーナーに展示してもらいました。それと、協賛の方でありますけれども、これは未来に向けたコーナー、そこだけに出展していただいたということであります。つまり、二つのコーナーに出すところと一つのコーナーだけに出すところで特別協賛と協賛を分けたということであります。

 それと、ついでに申し上げますが、協力というのは、これは会場費とか輸送費、これに関して特別に御配慮いただいた企業について特別協力という形で呼ばせていただいております。

山花委員 この特別協賛とか協賛、つまり、第一ゾーン、第二ゾーンとありまして、両方出すか片方出すか、平たく言えばそういう話なんだと思うんですけれども、こういうところに、結果的に特別協賛が十社、協賛が九社ということになっているんですけれども、そもそもということでいうと、どういう企業にお声かけをしたのか、そしてまた、特別協賛をお願いしますという形で、最初から対象を絞って、おたくは特別協賛でお願いしますとか、あるいはおたくは協賛でお願いしますとか、そういう形で協力の要請をしたのかどうか、この点はいかがなんでしょう。

関根参考人 ちょっと、ごめんなさい、一点訂正させていただきます。協賛企業というのは、番組で取り上げた実物を展示するコーナーであります。失礼しました。

 今回の展示会に当たりまして、これは物づくりをやっている企業を中心にお願いしまして、私どもとしては、合わせて四十一の企業と機関、そういったものに参加を呼びかけました。このうち、実際に協賛をしていただいたところというのは十九の企業であります。

 したがいまして、別に、番組で取り上げたからぜひ協賛をお願いしたいとか、そういったことはお願いしてありません。ともかく、このイベントの企画の趣旨、あとその性格について賛同と理解を得た企業だけに参加をいただいたということであります。

山花委員 今、番組で取り上げたからぜひということで言ったんじゃないというお話ですけれども、これは番組で取り上げたところ以外にもお声かけをしたということですか。番組で取り上げたところに声をかけたんではないんですか。

関根参考人 これは番組で取り上げた企業が対象でありました。

山花委員 いや、どういうふうに言われるかわかりませんけれども、多分、受けた側からすれば、番組で取り上げてもらったからぜひということで来たんだろうなという受けとめになるんではないかと思います。

 ところで、この一部報道によりますと、特別協賛金は三千万円であるというふうに言われております。協賛金はその十分の一という書かれ方をしていますが、実際には数百万から一千万ぐらい出した会社もあったようですが。ただ、一般的に、こういう展覧会等に対する協賛の額としては少し高過ぎるのではないかという指摘もあります。

 まず、二点あります。だから、一点は協賛金の額、報道されているのは全く事実無根の話なのか、大筋そういうとおりなのかということが一点。もう一点、その協賛、特に特別協賛金の、随分多額に募ったようでございますが、その算出の根拠、あるいはその使途はいかがでしょうか。

関根参考人 これは、あらかじめ、特別協賛をお願いするとか協賛で結構ですとか、そういった区分けはいたしませんでした。あくまでも、趣旨に賛同していただけるんでしたら、それは企業側の自分の判断でお願いいたしますという形でお願いしたということでありまして、別に、こちらからあらかじめ、ああやってくれ、こうやってくれという希望は申し上げていません。

山花委員 済みません、金額についての話はどうだったんでしょうか。三千万という形で報道されていますけれども、本当なのかどうか。あるいは、信頼関係があるからと記者に答えているようですけれども、そのままその額だとは言えないにしても、おおむねこの記事のような話なのか、まるで違うのかということもあると思いますので、そこはどうでしょうか。

関根参考人 別に、私としましては、金額を隠すとかそういうあれはありませんので、申し上げます。

 これは、消費税込みで、上限は三千百五十万であります。下限はその十分の一の三百十五万ということであります。

山花委員 というと、協賛金の方はどういう形なんでしょうか。特別協賛ではなくて、協賛の方です。

関根参考人 特別協賛はすべて上限というものではありませんけれども、協賛の方は大体下限の方の企業が中心であります。

山花委員 下限、済みません、特別協賛という企業が上限が三千万円であると。特別協賛ではなくて協賛した、九社ありますよね、こちらはどうなんですか。

関根参考人 いや、特別協賛が上限の方でありまして、協賛は下限の方ということであります。

山花委員 その間の幅でということなんでしょうけれども、この算出の根拠はどういうことだったんでしょうか。三千万というのは多額のような気がするんですけれども、何でそういう額の協力を求めるという、何にもなくて、ただ、いやそれは、何かやろうとするんですから、多くもらえればもらえた方がいいんでしょうけれども、何で上限三千万という、そういうことが算出されたんでしょう。

関根参考人 私どもがこういったイベントをやるときには、予算書というのを大体先につくります。そういったところで、大体の参加企業の見通しとしまして、そうたくさんの企業にお願いできないだろうというので、社会的な感覚としては三千万というのは多いのかもしれませんけれども、そういった上限の価額を設定したということであります。

山花委員 ただ、実際、入場者は、報道によりますと大体十万人ぐらいを数えたということですので、この手の展覧会にしては随分お客さんが来たものではないかと思います。十万人といっても、みんなお金を払っているわけじゃないでしょうから、これは有料入場者数とか入場者数とか、今回のイベント、収支は、先ほど、営利を目的としたんじゃない、後で説明したいというお話でしたけれども、その辺のことも含めて、収支はどうなったんでしょうか。

関根参考人 先ほどちょっと触れましたけれども、今回のイベントというのは、ともかく物づくりに対する関心を持ってもらおう、とりわけ次の世代を担う小学生とか中学生、そういった人たちにぜひ見てほしいというので、小中学生の入場料というのは無料にいたしました。

 そういうことで、協賛金については、先ほども申し上げましたように、各企業の理解と賛同を得た上で拠出していただきまして、これによりまして入場料金をトータルとして安くすることができたということのほかに、協賛金はイベントの制作費とか運営費といったものに充てまして、内容を充実することができたんじゃないかというふうに考えております。

山花委員 収支は結局どうなったんですか。黒だったんですか、赤だったんですか。

関根参考人 収支については、今最終的な精算をやっているので出てきていませんけれども、私が伺っている限りでは、収支は大体とんとんなのかなという見通しを現場では持っているようであります。

山花委員 少しそれが信じられないんですけれども、協賛金、例えば特別協賛が十社あって、協賛金も、先ほど下限だというお話をされていましたけれども、実は当方でも、この企業、答えてくださらなかったところもございますけれども、ところによっては非常にノーガードでお答えいただいたところもございまして、恐らく、十億まではいかないですけれども、協賛金で数億集まっているはずであります。しかし、数億、この一カ月間で使い切りますかね。

 そして有料入場者数、今よくわからないお答えでしたけれども、期間中の入場者数が十万人いたということで、半分お金を払っていたとしたって、一般が千三百円、高大生が千円、小中生無料ということですので、それなりの収入が、まず一つ、収支がどうなっているか、まだわからないということですが、そんなにお金が出るって、どこに出るんですか。申しわけないけれども、東京ドームだって、賃料をまけてあげていますよね、これは特別協力ということで。ヤマト運輸だって、搬出、搬入はお金はまけているはずですよ。こんなにかからないはずですよ。

関根参考人 先ほど申し上げましたように、今とにかく最終的な精算をやっていますけれども、会場の設営費とか、あとは、今回は各ブースの説明員というのは主催者側で持っていますから、これが結構な要員が必要でありまして、とにかく、企業ごとに、余り企業の宣伝色を出したくないという配慮もありまして、そういったところにかなりのお金をかけたということであります。

山花委員 収支については、今わからないのであればそのうちお出しいただけるものと信じておりますが、今回のこの展覧会について、私は非常に問題があったのではないかと思われる部分があります。

 といいますのも、協賛金を企業から集めたりとか、あるいは企画に参加を呼びかけたりするときに、NHKプロモーションの人だけではなくて、日本放送協会の立場の方も一緒に回られたようでありますし、週刊誌の記事には出ていませんけれども、こちらの方で、どこということはちょっと相手方の関係がありますので指摘はいたしませんけれども、間違いなく行かれているようですね。これはどういう立場で行かれたんでしょうか。

関根参考人 先ほどもちょっと触れましたけれども、NHK本体の役割というのは今回のイベントの趣旨を説明するということでありまして、大体同行しているプロモーションの職員が協賛金についてお願いするという、いわば役割分担的なものをしました。

山花委員 プロモーションの人が単独で行かれたところもあったようですけれども、NHKの事業部の方が、事業部長さんが同席していたりとか、そういうケースもありますね。また、御本人を前にしてあれですけれども、関根さん御自身も回られていますよね。いかがですか。

関根参考人 事業局の職員と、私自身も幾つか知っている企業には顔を出しました。

山花委員 つまりそういう、私は別に展覧会をやっちゃいけないと言うつもりもありませんし、展覧会自体は、行った人は非常にすばらしいものだったと言っています。

 ただ、今まで質疑の中でやってきたことからもわかっていただきたいんですけれども、どういうおつもりでやられたかは別として、実態としては番組で取り上げた企業のところに協賛をお願いし、そしてそこについても、世間相場からいうと大体数百万ぐらいだそうですし、一千万を超える協賛金を出すというのは余りないそうです。

 世間相場からいうと高い額を協賛としてお願いし、そういう席に、特に専務理事の方が、その説明の仕方が、それは役割分担が違ったといっても、専務理事の方だとか事業部長の方だとかNHK本体の方がやはりいたら、それこそ形を変えた広告料じゃないかというふうな疑念を、つまりは、実際は、もしここで、収支の話はちょっとまだわからないにしても、収益が上がったようなケースですと、NHKがもうけないにしても、NHKプロモーションと恐らく読売新聞、個別のほかの企業を挙げても失礼かもしれませんけれども、何せ実行委員会の中で会社形式でやっている、会社で、社団法人でなくて特殊法人でなくてというところはそこしかないわけですから、そこに恐らく行くだろうと。

 そうすると、結局は世間から、そういうふうな形で、形を変えた広告料を請求しに行っているんじゃないかというような指摘を受けるような、そういったケースに当たってしまうのではないか。少なくとも、放送法九条等でNHKの本来的な業務というのはこれこれこういうことですよということになっているわけで、NHK本体が営利を目的としたことをやったんじゃなくても、それをサポートするようなことをやってしまったのではないか、こういう疑念が指摘をされてもこれはしようがないことではないかと思います。

 今回のこのようなことについて、専務理事もこうやって回られているぐらいですから、会長はこの点について、今回の問題についてどの程度認識をされていたんでしょうか。いかがでしょうか。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

海老沢参考人 「プロジェクトX」は、私が、これから日本が二十一世紀を迎えてもっと元気が出るような、そしてまた青少年が科学技術の振興に興味を持つような、そういうものをひとつつくってみようじゃないかという提案をし、出てきたのが「プロジェクトX」であります。それで、今回もこういう、放送だけじゃなくて、放送に関連したイベントを通じて、物づくりの大切さ、科学技術の振興というものにできるだけ若い人たちに関心を持ってもらう、また実物を見てもらう、そういうことで、私もこれに賛成といいますか了承して、このような展覧会を開いたわけであります。

 私も開会式等に行き、またいろいろなところで関係の方にお会いしましたけれども、ほとんど、すべて、私が会った方では、これは非常にいい企画であり非常にすばらしいものだったと。それから、アンケート調査を見ましても、九五%の方々が満足しているというふうに答えております。

 ただ、その協賛金の集め方が非常に強引であったのか、あるいは法律に逸脱したのかというような御指摘がありましたけれども、私どもは、あくまでも強制でなくて、こういう展覧会の意味合いというものを申し上げてお願いしたということで、私の耳元にはそういう不平とか不満とかいうようなことは一言も聞いておりません。

 そういう面で、今、収支決算の方は、これから実行委員会の方に諮って、了承されて発表ということになると思いますが、いずれにしても、こういう文化事業あるいは福祉事業というようなものは、私どもは、収支ゼロといいますか、要するに、もうけ主義でやるわけでなくて、できるだけ業務の範囲の中で展開しているわけであります。

 それから、読売新聞が共催に加わったのは、これは名義貸しということで、赤字になっても黒字になっても金の面には一切タッチしないという立場での参加であります。それは発明協会あるいは東京会議所も同じでありますが、そういう面で、実行委員会制度をつくりながら、お互いに意見を出し合いながら、企画を出し合いながら成功させようという意味での実行委員会であったということであります。

 いずれにしても、誤解を与えるようなことがないように、これからも注意しながら慎重に進めたいと思っております。

山花委員 終わりますけれども、私は別に「プロジェクトX」展がひどい展覧会だったと言っているのではなくて、あれはすばらしいものだったというふうに聞いておりますので、そこは申し上げておきたいと思いますし、また、ただ、お金を集めるときにNHK本体の方と一緒に行かれるようなことは、これは問題ですよということは申し上げて、終わりたいと思います。

佐田委員長 次に、中村哲治君。

中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 中村さん、私たちがNHKに聞きに行っても、NHKの広報は、八月、受信料が幾ら減ったのか、クレームについて今まで何件あったのか教えてくれないんですよ。そのように、各マスコミの記者の方が私のところに来てお話しになりました。

 私に与えられた時間は四十分ですので、一々データを聞いている暇もありませんから、昨日、そのデータについてお尋ねをいたしました。そうすると、NHKはきちんとけさまでに出してきているんですよ。そして、八月の受信料の変化というのは例年とほぼ変わりがない。この不祥事が起きているからといって、特別ことしだけ、八月大幅に減っているというわけではないんですよ。こんなデータがなぜ広報からほかのマスコミの人に流れないのか、非常に私は不思議に思っております。

 それからクレームの件数、先ほど長沢委員の御答弁にもありましたように、すべてで六千五百十二件、ここの私がもらっているペーパーでは六千二百九十五件、総数というふうになっておりますけれども、こういうデータも、私たちに渡すのであれば、広報できちんと私は示すべきだと思います。

 NHKは開かれて情報公開をしていく、このようにきょうも理事、経営陣はおっしゃっていますけれども、言っていることとやっていることが違うじゃないですか。

 また、報告書があります。平成十六年九月七日、おととい、日本放送協会が出された報告書、「「芸能番組制作費不正支出問題」等に関する調査と適正化の取り組みについて」、この報告書の二十八ページに、今後の懲戒処分についての公表の基準について書かれております。

 読ませていただきますと、「今後、責任審査によって懲戒処分を行った場合は、NHKの「日本放送協会報」に、原則としてすべて掲載します。この協会報を視聴者・国民のみなさまが閲覧できるよう、新たに全国の放送局・支局・営業センターに備え置くことにします。」

 私、これを聞いたとき、何で放送センターや営業所まで足を運べと言っているんだと。国民の皆さんや視聴者の皆さんが知りたいのであれば、足を運べと言っているんじゃないですか。なぜ、ウエブのページやホームページ、インターネットに載せないんですか。

 こうも書かれています。「この「情報公開」に加えて、より透明性を高めるために、今後は、起訴猶予以上の刑事事件に関する懲戒処分と、刑事事件以外の事柄でも懲戒免職処分としたものについて、原則として視聴者・国民のみなさまに発表することとします。」こうしているんです。

 だけれども、この基準だったら、今回の磯野事件も含まれないんですよ、事前の方ですけれども。懲戒免職になる以前の厳重注意のときでは含まれないんです。また、ソウル支局長の事件、今回停職六カ月になりましたけれども、停職六カ月でも、これは懲戒免職となっていないから公開されないんですよ。何で公開しているのか、この報告書にも載っているのか。それは、週刊新潮が報じたからじゃないですか。この基準、新たな基準でも公開にならないんです。

 そして、こうもあります。「こうした考えから、平成九年以降の責任審査処分のうち、金品の不正取得によって免職処分し、すでに開示対象になっている次の四件も九月二日に記者発表しました。」そういうふうに書いているんです。しかし、その内容と見れば、先ほど長沢委員から御指摘がありましたように、事案は詳しく書かれていないんです。これでどうやって判断しようというんですか。

 だから私は、昨日、資料請求で、この事案についてきちんと報告してくれ、文書でくれ、そうして渡されたペーパーがこれですけれども、ここの二十八ページに書かれているのと全く一緒の文章が書かれています。である調がですます調になっているだけですよ。事案もあわせて公開しないと意味ないじゃないですか。

 それで、この全部の四事案、これはすべて本来刑事事件にすべきことですよ。全部、着服とか私的流用とかそういったものに対して、プライバシーがあるからと言って、先ほど理事の答弁では、所属の場所も公表しない、名前も公表しない、細かい内容も公表しないと言っているんです。だから、私、内部情報を聞かせていただくことがありますけれども、こんな金額では済んでいないと言っているんですよ。

 先ほどからNHKは、自分たちは調査できないから司直にゆだねるんだと言っているんです。だったら、この四案件も司直にゆだねるべきじゃないですか。何で告訴状を出さないんですか。

 告訴状を出さない理由、答えてください。

宮下参考人 その四件につきましては、先日、九月二日に会長が発表いたしましたのは、先ほど申し上げましたように、これからは、一定の基準のもとに、請求されなくても協会の方から発表するという方針にいたしましたので発表したものですが、いずれも、金額についての調査は責任審査委員会の調査で確定しておりまして、しかも、その処分につきましても懲戒処分になっておりまして、そういうことがはっきりいたしておりますものですから、それから、全部弁済されております。それで告訴はいたしませんでした。

中村(哲)委員 なぜ告訴をしていないのかという理由を聞いているんです。

宮下参考人 その不正に扱われた金額が確定して、その全額を本人が協会に払い戻して、かつ懲戒処分にいたしましたので、告訴はいたしませんでした。

中村(哲)委員 横領や背任、詐欺について、お金を返したら違法性がなくなる、そういう認識だということなんですよ、今の答弁というのは。そんなことは許されないんです。

 あなたたちは会計検査院法で報告義務があります。二十七条には、会計に関係のある犯罪が発覚したとき、会計検査院に報告しないといけないと書いているじゃないですか。だけれども、自分たちは、お金を返してもらったら、これは犯罪に当たらないから報告しなくてもいいんだ、そういうふうに思っているんでしょう。その隠ぺい体質、内部者を守ろうとする意識が問題だと言っているんです。これが、今の経営陣と私たち国民・視聴者がずれているその一部分なんです。だから結局、この抜本改革と言われている案でも、今見た限りでもそれだけずれがあるんです。そのことをまず指摘させていただきたいと思います。

 時間がありませんので、具体的な事件の中身に入っていこうと思います。まず、磯野チーフプロデューサーの巨額詐欺事件でございます。

 台本に名前が載っていなかった人たち、B、C、Dの名前と、その支払われていた金額、それについてお答えください。

出田参考人 私どもが調査した内容につきましては、報告書に書いてあるとおりでございます。関係者の主張がさまざまにございまして、必ずしも、不正があったかどうかということにつきましてはっきりしていない部分がございます。

 したがいまして、先ほども申し上げましたとおり、NHKの調査そのものに、任意の調査に限界がございますので、この部分につきましても警視庁に詳しく説明をいたしまして、関係資料を提出しているところでございます。

 そういう意味では、今回のこの時点では金額を明らかにすることができませんので、差し控えさせていただきたいと思います。

中村(哲)委員 国会に来て何を説明するんですか。報告書を出して、もうそれで終わりでいいじゃないですか。

 例えば、Cの業務内容、ここで書かれていることは、元職員の言い分とCの言い分が書かれているだけです。皆さんがどのように判断したのかということはきちんと書かれていません。それは何でか。今までの経営のあり方が、事後にチェックするような仕組みを設けていなかったんです。

 それは、皆さんが、報告書十五ページのところで、「番組の制作形態が多様化するのに伴い、情報収集やアイデアの提供、出演交渉など多種多様な業務までを文芸委嘱料の対象としてきました。」そして、「放送現場の担当者以外には、放送作家の業務実態を把握しにくく、実際の業務に見合った支払い額なのかどうか、確認が難しい構造になっていました。」放置していたんですよ。これは、だから私は経営責任が問われるような問題だと思います。だから、Cの業務実態についても確認できない、Dにおいても確認できないということなんです。

 司直に全部任せるとおっしゃいました。それでは、NHKとして出している告訴状、これは受理されているんですか。警察、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 お尋ねの件は、七月二十三日に告訴の相談を受けている件であろうかと思います。

 現在、告訴人側から所要の疎明資料の提出を受けるなどして、事実関係の確認を行っております。そういう意味で、現時点で正式には受理していないと承知しております。

中村(哲)委員 つまり警察は、告訴の相談は受けているけれども、告訴状の受理はしていないと言っているんですよ。

 なぜ、受理できるようなところまでやらないんですか。そして、まだ受理されていないんだったら、積極的に自分たちで事案の解明をするべきじゃないですか。そこの問題点、告訴に係る問題点、どのようにお考えでしょうか。

関根参考人 私どもが内部調査している内容につきましては、現在、警視庁の担当者と連絡をとり合いながら捜査に全面的に協力しているということであります。

中村(哲)委員 その捜査に協力をしているということですけれども、それならば、当然、イベント会社社長にとどまらず、名前のないA、B、C、Dに関しても捜査資料等を提供しているということですね。間違いないですね。

関根参考人 もちろんそうであります。

 それで、具体的に私どもの報告書に記述しなかったというのは、例えば、金の性格がはっきりしないとか、果たして、イベント企画会社の社長に元職員が渡しているように、両方ともその事実関係を認めているというような内容ではありません。いろいろな調査をしたつもりでありますけれども、任意調査には限界があって、真相のところまでたどり着けないというのが現状であります。

 したがいまして、そういったことも含めて、警察にさまざまなデータも含めて提供しているということです。

中村(哲)委員 聞かれたことに端的に答えてください、時間が短いんですから。

 私がお伺いしているのは、元職員やイベント会社社長の件だけでなく、A、B、C、Dそれぞれの件についても捜査資料をきちんと警察に提出しているんですねと言っているんですよ。

関根参考人 御指摘のとおりであります。

中村(哲)委員 その件に関しては、また後で事実確認がされることだと思います。

 それでは次に、この件に関する処分についてお伺いします。

 磯野チーフプロデューサーは海老沢会長と同じ茨城県出身である、また、コネ採用の温床と言われていた長期臨時採用である、そういったことが報道されております。だから磯野に対し手心が加えられたというのではないとは思いますけれども、天海当時芸能番組部長の処分である停職六カ月、この理由は何なんでしょうか。なぜ停職六カ月なんでしょうか。

宮下参考人 お答えいたします。

 NHK職員は、職員就業規則により、重要事項についてその都度上司に報告することが義務づけられております。また、部局長は、部下に懲戒に当たるような行為があったと判断した場合には、職員就業規則に従って、速やかにその真相を調査し、懲戒について会長に上申するよう定められております。

 こうした規定に基づいて、芸能番組部長は、不正に気づけば、部局長である、その上司である番組制作局長に報告し、番組制作局長は会長に上申しなければいけなかったんですが、それをしませんでした。

 それで、芸能番組部長は十分な調査をしなかったということが一点と、その調査をしなかったために、不正が行われているということに気づかなかったと本人は述べております。ただ、この行為は、不正を知りながら隠ぺいしたものではないんですが、職務上の怠慢によって重大な不祥事を見過ごしたもので、それを理由に停職六カ月という処分にいたしました。

海老沢参考人 ただいま先生から、磯野君が茨城県であり、私も茨城県だから、会長が何か情実的な人事をしたんじゃないかというような報道がされたことについて触れられましたけれども、私は昭和五十四年当時は福岡の報道課長をしておりまして、この磯野何がしとは一面識もありませんでした。

 それで、今回も、この事件が発覚し、初めて磯野という名前を聞いたわけですし、磯野何がしの顔も見たこともありません。一面識もないということを申し上げておきたいと思います。

 そのほか、いろいろ週刊誌等で、NHKにいる茨城県人は、何か海老沢とつながりがあってそういう情実人事を受けているというようなことが書いてありますが、これは全くそういうことはありませんし、我々は実力主義あるいは適材適所で人事をやっております。誤解のないように申し上げておきます。

中村(哲)委員 私は、聞かれていないことに別に答えてもらわなくても結構です。

 事実だけ申し上げておきますと、この事件が三年前知られた平成十三年は、会長の任期中でございます。

 それで質問なんですが、それであれば、一定の基準があったと。つまりこういうことだと思います。部下の詐欺や業務上横領などの可能性がある行為について上司が知った場合には、それをきちんと上に届けるというそういった基準があったということですね。私は、これがなかったというのであれば、経営責任を大きく問われても仕方ないというふうに思っていたわけです。しかし、今のおっしゃることは、あったということであれば、その責任は非常に重いんです。天海当時部長の責任は重い。

 故意過失というのがありますけれども、重過失というのもあります。ほとんどこれは重過失に近いケースですよね。それで何で六カ月なのか。これは私たち理解ができません。本当はこの件に関しても私は経営責任が問われると思います。何で六カ月なのか。ほとんど磯野とやっていたことは変わらないじゃないかと。磯野の個人的な行為です。確かに個人的な行為です。でも、有権者、視聴者にとっては、一番問題があるのは、三年間ほっていた天海部長の行為じゃないですか。それにもかかわらず、ほぼ重過失のような行為に対して懲戒免職もせず、六カ月たったら帰ってくる。そんなことで本当にいいんでしょうか。恐らく、多くの視聴者はそのように思っていらっしゃると思います。

 そこで、もうどうせ聞いても同じような答弁が返ってくるでしょうから、時間もないですし、次の質問に行きます。

 そもそも、NHKが芸能番組を続けていく理由というのはどこにあるんでしょうか。恐らく、歴史的にはテレビの普及という目的があった。かたいニュース番組だけじゃ困るだろうから、紅白もする、そして芸能番組もさせていただく。そして、多くの皆さんの、ああテレビ買いたいな、NHK見たいな、そういった思いで番組が始まったんだと思います、歴史的には。

 しかし、その歴史的使命も終わったんじゃないでしょうか。CSで多チャンネル化が進んでいます。放送と通信の融合、これは海老沢会長の持論でもあると思いますけれども、放送と通信の融合は進んでいる。そうなったときに、オンデマンドで、自分の見たい番組をテレビだけじゃなくインターネットでも見られるようになる。去年の紅白の結論も、最後に一番視聴率がとれるだろうといってSMAPを持ってきたんだと思います。そうして白組の圧勝で終わってしまう。私、こんな紅白を見たのは初めてですよ。

 もはやNHKが芸能番組を放送する意味はないのではないか、私はこういう意見が出てくると思うんですが、いかがでしょうか。

出田参考人 お答えいたします。

 私どもの日本放送協会国内放送基準というのがございますけれども、この中に、「すぐれた芸能を取り上げ、情操を豊かにするようにつとめる。」あるいは「古典芸能の保存と各種の芸能の育成に役立つようにつとめる。」あるいは「家庭を明るくし、生活内容を豊かにするような健全な娯楽を提供する。」こういう、NHKが芸能番組を放送する必要性というものを定めております。

 それで、私考えますに、NHKというのは、日本人にとって欠くべからざる文化を守り育てるというのが使命だというふうに思っております。具体的に、童謡ですとか、あるいは民謡、唱歌、こういったものを日本人として後世に伝えていくということも一つの文化でございますし、また、演歌も、最近では民放では余り取り上げることのないジャンルとなっておりますけれども、これも日本人にとっては忘れられない存在だというふうに思っております。

 そういう意味では、視聴者の皆様からNHKの芸能番組に寄せる期待というものは大きいですし、公共放送としても欠かすことのできないというふうに思っております。

中村(哲)委員 いや、それだったらわかるんです。つまり、童謡、民謡、唱歌、演歌に限って番組をつくればいいんですよ。日本の文化を守るんでしょう。私もそれは反対しませんよ。そしてこれが、必ずしも商業ベースに乗らない、だから、CSで聞こうと思っても、また、レンタルビデオ屋さんでDVDを借りてきて音楽を聞こう、そういうことにならないですから、こういった音楽に限ってやるというんだったらわかります。だけれども、その理由、ほかの音楽の理由を言っていないじゃないですか。

 だから、そういうことで、ちょっともう考えを変える時期に入っているんですよ。時代の変化とともに好みが多様化していますから、多種多様なチャンネルを選ぶ、それを前提にして番組を編成していく、基準もそれに合わせて変えていく、それが必要なんです。

 次の質問に参ります。

 磯野チーフプロデューサーのNHKに与えている損害、それはいつどのような形で請求されていくんでしょうか。報告の十三ページにはこのような形で書いてあります。

 しかし、今までのお話、C、Dに対しても幾ら請求するかわからない。これは民事訴訟をしないといけないわけですから、C、Dに払ったお金は全部磯野が会社に与えた損害だとまずNHKが主張しなければ、民事訴訟で、処分権主義ですからのってくることはないんですよね、裁判の俎上に。だから、どういう形で請求していくのか、最終的には裁判していくのか、そこが重要なんです。

 報道にもありますように、元職員は、不動産会社が言うには、八千万程度の家に住んでいると言われています。高級外車を乗り継いでいるとも言われています。そんなことを、のうのうと大きな家に住むのを残しておいていいのかどうか、有権者、視聴者の皆さんはそのように感じていると思います。

 それについて、元職員にどのような形で請求をしていくつもりなのか。十三ページに書かれている以上のことがあればお答えください。

出田参考人 元職員とイベント企画会社の社長、双方とも弁済の意思は明らかにしております。NHKといたしましても、全額の返済を双方に求めていきたいと思っております。

 ただ、返済を求める時期についてでございますが、今後の捜査の状況を見きわめながら具体的な対応を検討していきたいというふうに思っております。

中村(哲)委員 少なくとも、時効が成立するようなところまで先延ばしするようなことがないようにしてください。少なくとも、時効の中断をするような法的処置はとっていただきたいと思います。

 それでは次に、ソウル支局長の問題に移りたいと思います。

 皆さんのお話では、結局、経理処理が不適切だったということで当時厳重注意したというふうなお話でした。しかし、普通に考えたら、明らかになっているだけでも二十九カ月分で四千三百九十九万円余り、そして、全体では四十八カ月に及ぶわけですよね。これは何ぼあるかわからない。そういった額になっています。これが、全部取材に使いましたと聞いて納得する視聴者の方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。

 そして皆さんは、このようなことを私が聞けば、取材源の秘匿だということを理由にされます。しかし、取材源の秘匿というのは、外部に対してそのようにおっしゃるなら構いません。しかし、内部監査のところでは情報は共有できるんです。それをやっていなかったということは、当時のこの厳重注意をした報道局長もぐるだったんじゃないか、共犯なんじゃないか、そのように思われても仕方ないわけです。

 なぜこの件が取材だったと言い切れるのか、その理由についてお答えください。

関根参考人 今回の再調査でも、私どもは調査チームをつくりまして調査をやりました。

 その調査のねらいというんですか、目的というのは、まず、支局経費の私的な運用がないのかどうか、そこを中心に調べました。本人に話を聞くことはもちろんのこと、当時支局におった人間、それと、この支局長がよく出入りしていたと言われる飲食店の店員等、そういったところから今回もいろいろな形で話を聞きましたけれども、少なくとも私どもの調査の結果としては、そういった私的な流用、もちろんソウル支局の銀行口座、本人の口座も調べました。そういったところからは私的に使っているという確認はとれませんでした。

 したがいまして、そういった金というのは、本人の供述とか周りからの話、そういったものも含めて、業務とか、あとは支局の運営費、そういったものに使っているという判断をしたということであります。

中村(哲)委員 皆さんがそのようにおっしゃったからといって、視聴者の皆さんがそのように納得するかどうかとは別問題なんです。報道だったら経費になって芸能だったら横領か、そういうふうに私は印象を受けますよ。額が大きいじゃないですか。その額すべて取材だって言い切れるんですか。岡山支局の問題であったら、九十万円の着服で懲戒免職です。九十万円程度も横領していなかったというような確証がなぜあるんですか。そこに答えていただかないと私たちは納得できないんです。

 次に移ります。

 今回、処分が、先ほど伊藤委員の指摘にもありましたように、今回何も状況が変わっていないにもかかわらず、週刊新潮の指摘があって初めてこれが表になって、また朝日新聞の記事が表になって、責任審査委員会にかけられて処分が変わる、こんなことになっているんです。伊藤委員はおっしゃいませんでしたけれども、これはまさに経営の問題です。経営方針の姿勢の問題です。こんなころころころころやり方を変える、そしてこのような形でしか対応ができない、私は、経営者の責任、大きく問われるべきだと思っております。

 そのことについて後で申し上げますけれども、それと関連して、なぜ今回、それならばその額を返還するということを求めていかないんでしょうか。宇宙新時代プロジェクトの空出張の問題、これは取材費の経費ですけれども、全額を戻させております。同じように取材の経費であるのならば、そして不正な支出であるのならば、ソウル支局長の場合でも全額を払い戻しさせるべきなんじゃないですか。これはダブルスタンダードになっているじゃないですか。理由をお答えください。

関根参考人 まず、ソウル支局長の場合でありますけれども、これは、本人は、以前ソウル支局長をやっているときは一般職でありました。一般職でありまして、支局長という重職にあったわけですからそういった責任がないということは言いませんけれども、空出張をやっていた職員というのは、これはいずれも管理職であります。そういった意味での責任の重さということも一つの判断の材料になったということであります。

 以上です。

中村(哲)委員 そんなことは視聴者の理解を得られるとは思いません。

 何でソウル支局長が管理職じゃないのか、そんなこと視聴者にわからないじゃないですか。金額が大きいからでしょう。本音のところはそうなんでしょう。そんな二重基準を設けちゃだめですよ。

 ソウル支局長は自分の判断でお金を使えたんでしょう。宇宙新時代プロジェクトのチーフプロデューサーが自分で決めてお金を使えたのと一緒じゃないですか。実質的には変わらないのに、形式的に、ソウル支局長は管理職じゃなかったから、一般職だったから、そんなことはNHKの内部にしか通用しませんよ。そんな答弁ばかりしていると、この委員会の意味自体なくなるんですよ。

 宇宙新時代プロジェクト、これは何ですか。ソウル支局長の問題と同じ問題があります。なぜ経費だと認められたのか。こんなこと説明つかないじゃないですか。このことも同じようなどうせ答弁をされるんでしょう。もう答弁結構です。

 岡山支局では九十万円の不正請求で懲戒免職ですよ。今回、問題が明らかになって、処分が出勤停止七日になりましたけれども、その前は厳重注意じゃないですか。何でこんなに岡山支局の場合と比べて軽いんですか。それについてお答えください。

宮下参考人 あの岡山の事案につきましては、この九十万円というお金が業務に使ったものかどうかということについて本人から十分な納得いく説明がありませんでした。宇宙プロの方は、先ほど専務理事の方から説明いたしましたが、経費に使ったということについては確認ができました。

 ただ、宇宙プロは、先ほど言いましたように管理職でもありましたし、ともあれ、空出張という行為は理由のいかんにかかわらず就業規則違反でありますので、出勤停止七日という処分をいたしました。

中村(哲)委員 私は、そんな答弁では皆さんは納得できないと思いますよ。

 もう時間も短くなりましたから、次に行きます。

 謝罪番組はつくるんですか。放送時間はどれぐらいだとお考えなんでしょうか。他局は、不祥事のときにしっかりと謝罪番組をつくられております。しっかりと取材もされております。自分自身で自分たちのうみを出し切る、その取材もされております。

 しかし、私、NHKの記者さんとお話ししたときに、何で中村さん、この件についてそんな詳しいんですかと言われるんですよ。経営陣は、自分たちは危機感を持ってやっておられるのかもしれませんが、社全体にそのことを伝える努力をされていないんじゃないですか。

 まずお伺いします。謝罪番組、おつくりになられるんでしょうか。

海老沢参考人 あさって十一日の土曜日の午後二時から一時間、二部にわたって、まず私が謝罪をし、そして、この前記者会見で発表しました調査報告書を詳しく説明いたします。その後、当総務委員会の審議の模様を四十分ほど、今収録しておりますので、それを入れながら特別番組を組むつもりでおります。

 その後、全容が、今警視庁に告訴状を出しておりますので、そういう捜査の段階が進み、また裁判等の問題がありますけれども、それぞれの今またいろいろな総点検をやっておりますし、また、法令遵守推進委員会等でも今総点検をさらに続けながら、逐次改善するべきは改善しながら再生を図っていくつもりでおりますので、また次の段階で御報告申し上げたいと思っております。

中村(哲)委員 もう時間も迫ってまいりましたので、聞き漏らした質問を一問聞きます。

 懲戒処分というのはどういう処分なんでしょうか。後の人事に関係してくるんでしょうか。私には、めっと言われるだけにすぎないと感じているんですが、いかがでしょうか。

宮下参考人 今、懲戒処分ということですか。厳重注意ですか。(中村(哲)委員「ああ、厳重注意です、済みません」と呼ぶ)

 厳重注意というのは、就業規則にのっとった訓告に当たりまして、いわゆる懲戒処分ではありません。

 ただ、もちろん、その厳重注意、訓告を受けたということについては、人事上いろいろな判断には影響があるということでございます。

中村(哲)委員 いやあ、厳重注意は懲戒処分ではないということだったんですね。私、懲戒処分と思っていましたからちょっと言い間違いもしましたが、そういうことだったんですね。もう一事が万事こういう感じですよね。

 海老沢会長、私は、経営責任をとるというのは二つの方法しかないと思っているんです。皆さんともお話をし、特に内部者の皆さんや労働組合の皆さんともお話しさせていただきました。一番大事なのは、視聴者に対して理解してもらうことだ。視聴者に対して理解してもらうまず一つの方法としてあるのは、会長以下経営陣がおやめになって、形の見える形であらわすべきだ。もう一つの方法は、見える形で徹底的にうみを出し切って新しい形をつくることだ。その二つの方法しかありません。

 しかし私は、残念ながら、きょうの四十分の質疑をさせていただきながら、皆さんが本気でうみを出し切って、NHKだからこそつくれる番組、それを安心して見ていただけるようなそういう会社につくっていこう、そんな努力が私は不十分だと感じました。

 私の父は海老沢会長と同じ昭和九年生まれです。理学博士ですけれども、もう引退して年金生活をしております。会長におかれましても、最後の会社人生、厳しい御判断をしながら自分の歩む道を決めていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 NHKが発表されましたこの調査報告の内容について質問いたします。

 最初に、海老沢会長にお尋ねいたします。

 冒頭の発言の中で、海老沢会長が、今回の事件にかかわって、一体どこに問題があったのか、これから何をなすべきか明確にしていきたいとおっしゃられました。私、ここの中には、いわばこういう事件の解決の前提となる大事なことが欠けているんじゃないか。つまり、肝心な、事実そのものを明らかにする、この点が欠けているんじゃないか、このように感じましたが、今、さまざまな疑問や疑惑の指摘なども行われています。こういうことにきちんとこたえて、事実を明らかにする、その会長としての決意をまずお聞きしたいと思います。

海老沢参考人 私どもは、やはり視聴者・国民の信頼を得なければ成り立ちませんので、なぜこういう事件が起きたのか、その事実関係をきちっと精査をして報告する使命があるだろうと思います。そういう形で今、一カ月にわたって内部での総点検をしております。

 さらに、それと同時に、まだまだ解明されない部分がありますので、今警察にも、NHKにとっては本当に残念でありますけれども、初めて個人の問題について刑事事件として警視庁に捜査をお願いしたわけであります。そういう中で、真相の徹底的な究明、そして、今わかった段階での改善策をとっているわけであります。

 それと同時に、先ほど申し上げましたように、法令遵守推進委員会を設けて再生を図っていこう、すべての分野においていわゆる聖域なき業務改革をしながら、一本でも多く、視聴者のニーズにこたえられるような、国民生活に役立つ、そして質の高いいい番組をつくって、視聴者の信頼をかち取っていこう、そういう決意で取り組んでいるわけであります。

塩川委員 事実をきちんと調べて報告をする。私はぜひ――当然承知をされている事実についてお聞きしたいと思っているわけです。

 「BSジュニアのど自慢」の件ですけれども、放送作家の名目で、支払いがどうだったかという件ですが、磯野元チーフプロデューサー、元職員がイベント企画会社社長に放送料を支払った件ですけれども、これについては、この報告の中にも、上司から、リサーチ業務なら放送料ではなくて役務費として支払うべきで、適正な経理処理をするようにと、つまり、本来、役務費で支払うべきリサーチ業務を放送料で払っていたのは不適正な経理処理だったということだと思うんですが、その点確認したいんですが、いかがでしょうか。

出田参考人 そのとおりでございます。

塩川委員 そうしますと、Cという放送作家の業務がリサーチ業務だった、本来、役務費で行うべき支払いが放送料、文芸委嘱料で行われていたという、不適切な経理処理だったということになると思います。このC氏への支払いは不適切な経理処理だったという認識をNHKはお持ちだと思いますが、いかがでしょうか。

出田参考人 調査報告に書いてある範囲でしか我々も判明しておりませんけれども、今先生がおっしゃったように、不適切な処理があったかもしれないというふうにも考えております。

塩川委員 それはおかしいんじゃないですか。リサーチ業務は本来、役務費で払うべきで、放送料で払うのはおかしいんだ、そういうふうに指導したんでしょう、三年前に。であれば、この問題について、C氏への対応についても、リサーチ業務だったわけですよ。ですから、放送料で払っていたのは不適切な経理処理だということになりますよね。いかがですか。

出田参考人 本来、リサーチ業務等は、御承知のとおり、役務費で払うべきだということを指導してまいりました。ただ、実態的に文芸委嘱料で払うケースが幾つか当時からありまして、このケースもそういう中で支払われていたんだろうというふうに考えております。

 今回のこの不祥事をきっかけに、ここをもっと明確にきちっと区分けをして、役務費として払うということをさらに徹底していきたいというふうに考えております。

塩川委員 いや、ですから、おかしいですよ。

 だって、リサーチ業務は放送料で払うのは不適切な経理処理だったと認めましたよね。このC氏に対する支払いは、リサーチ業務なのに放送料だったわけですから、不適切な経理処理ということになりますよね。その点、もう一回。

出田参考人 我々も調査を進めておりますけれども、詳細の事実関係がはっきりしておりませんので、そういう意味では、我々としては今申し上げた限りのことの範囲でしか申し上げられません。

塩川委員 だって、リサーチ業務だって当事者二人とも言っているわけなんでしょう。こんなことは納得できないですよ、どう考えたって。

 私が言いたいのは、今の問題、私、納得していないですけれども、この不適切だった支払いについて、やはりきちっと明らかにするということは当然必要だと思うんですね、このCという人物に対して不適切な支払いだったと。その総額を明らかにする必要があると思うんですけれども、いかがですか。

出田参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりまして恐縮ですが、今回の関係者にいろいろヒアリング、事情聴取をしておりますけれども、さまざまな主張がございまして、そういう意味では、現段階では、はっきりとこういうことですというふうに申し上げられません。

 そういう意味で、先ほどから御説明いたしておりますとおり、捜査の行方を見守りたいというふうに考えております。

塩川委員 書いてあることさえ説明できないで、どうして事実関係を報告できるんですか。

 では、Dという放送作家について聞きます。

 ここでも「ジュニアのど自慢」の仕事もしていないんですよ。その上に、本来、役務費で払うべきリサーチ業務について、放送料で支払っているんですよ。二重の意味で不適切な経理処理だったんじゃないですか。いかがですか。

出田参考人 繰り返しで申しわけありませんが、我々といたしましては、この件が不正かどうかということにつきまして、まだ解明できておりません。そういう意味では、御理解いただきたいと思います。

塩川委員 こんなNHK内部の不適切な経理処理の問題についても明らかにできない、刑事の捜査にかかわる話じゃないですよ。NHK内部の経理処理の話でしょう。それについても何で明らかにできないんですか。疑惑隠しと言われてもしようがないんじゃないですか。会長、どうですか。

出田参考人 今見れば、経理処理の仕方としては、御指摘のように、本来は役務費として支払うべきでありまして、そういう意味では不適切だというふうに考えるところでございます。

 ただ、この件が、元イベント企画会社の社長のように、そういった、いわば不正なことが行われているかどうかということにつきましては、我々は解明はまだできておりません。

塩川委員 その不正の話を聞いているんじゃないんですよ。NHK内部の経理処理の話を聞いているんですよ。

 今は、いや、放送料で払うのはまずかった、役務費で考えるべきだったというんですけれども、三年前に言っているじゃないですか。三年前に、放送料で払うのはまずいから、役務費で払うようにしなさいと指導したんでしょう。三年前から不適切な経理処理ということを認めていたんじゃないですか。

 海老沢会長にお聞きします。

 こういったNHK内部の経理処理の問題についても、事実関係さえ現場が説明できない、担当者が説明できない、これで、NHKが襟を正していきますと国民は見ると思うんですか。会長として、どう考えますか。

海老沢参考人 私ども、今あらゆる角度から調査を進めておりますし、不適切な点があれば、それをすぐ直ちに改善していく、そういう方向で今やっております。今、その手続なり役務費の問題等につきましても、おかしなものは正していく、そういう姿勢でやっておりますし、また、その辺が十分徹底していない点につきましては、私の方からも、きちんともう一度、事実関係を明快に説明できるようなことをしていきたいと思っています。

塩川委員 会長として、では、この不適切な経理処理ということは、認めるんですか、認めないんですか。役務費で払うべきものを放送料で払っていた、三年前にそういう指摘をしていたのに、CとDという放送作家がこういう事実関係があるのを。不適切な経理処理だったと私は思いますが、会長、それについてはどうですか。

海老沢参考人 いずれにしても、不適正なものについては、改めるのは当然であります。

 現在、私も、その役務費と文芸委嘱料の問題、その辺のかかわり方については十分把握しておりませんが、いずれにしても、当時からそういう役務費として処理すべきだということが指示してあれば、全くそれは、経理の処理のおかしさといいますか、不十分だったという指摘については、そのとおりだろうと思います。

塩川委員 内部の経理処理の問題についてさえきちっと担当の方で説明できないとなると、私は、三年前の調査そのものが疑わしくなるということなんですよ。三年前のときに、現場でこういった庶務担当チーフプロデューサー柳氏が、リサーチ業務なら放送料ではなく役務費として支払うべきで、適正な経理処理をするように、不適正な経理処理だったから是正しなさいというふうに言っているわけですよ。それは本当だったのかなと疑わしくなってくるわけです。

 その上でお聞きしたいんですが、事実関係でここに書いていないことがあるわけですけれども、事実関係について、いろいろな疑問が出ている、指摘があるのについて答えていない部分があるんですが、その一つに、週刊文春の九月九日号で、二〇〇二年春に柳氏がウォール・コーポレーション社長と会ったと報じていますが、これは事実でしょうか。

出田参考人 平成の十四年の一月に、会社の社長、ウォール・コーポレーションの社長とお会いしております。

塩川委員 二〇〇二年春に会ったというのは事実ではないということですか。一月に会ったということですか。春ですか。

出田参考人 私どもの調査では、平成十四年の一月というふうに聞いております。

塩川委員 この柳氏がウォール・コーポレーション社長と〇二年春に会っていたと報じたことについて、NHKは柳氏にこの事実関係の確認を、この報道がされた後、行いましたか。

出田参考人 私ども、今回の不祥事が発覚して以来、関係者にそれぞれ事情聴取をしておりまして、今御指摘の当時の上司につきましても、事実関係を確認しております。

塩川委員 そうすると、柳氏は二〇〇二年春にはウォール・コーポレーション社長とは会っていないと述べているんですか。

出田参考人 御指摘の部分が定かではありませんが、私どもが、ウォール・コーポレーションの社長とその柳が会ったのが、平成十四年の一月というふうに認識しております。

塩川委員 その春に会ったかどうかということは、確認はされていないんですか。

出田参考人 それについては聞いておりません。

塩川委員 いや、これは疑問に答える上では確認すべきことだと思いますけれどもね。何で確認しないんですか。

 要するに、春にここで報道されているようなことが行われたとしたら、その二〇〇二年の一月の段階では、適切でない経理処理はあったけれども不正が潜んでいるとは思わなかった、不正を知りながら隠ぺいしようとしたものではないんだと言っているんですけれども、春の段階でもし会って、あそこに報道されているようなことが事実であれば、知っていたということになりますよ。隠ぺいしていたということになるんじゃないですか。なぜそういう大事なことを確認していないんですか。

出田参考人 私どもの調査では、先ほどから申し上げましたとおり、平成十四年の一月にこういう形でお互いが会って、いろいろ話をしたというところで調査をしております。

塩川委員 では、今後、この春に、二〇〇二年の春に会っていたかどうかということを柳氏に確認をし、国会に報告するつもりがありますか。

出田参考人 私どもは、調査は引き続き継続をしておりますので、先生御指摘の部分も含めて、調査をまたしたいというふうに考えております。

塩川委員 きちんと国会に報告してもらえますか。

出田参考人 委員会の方でそういうお話がございましたら、我々の方も誠意を持って対応したいというふうに思っております。

塩川委員 この件について、理事会での対応をお願いしたいと思いますが。

佐田委員長 その件につきましては、理事間におきまして、機会を持てるかどうかの基本的なところから話をさせていただきたいと思っております。

塩川委員 要するに、その一番核心になることについて、内部の人に対して確認もしていないんですよ。

 海老沢会長にお聞きしたいんですが、これで説明責任を果たしていると言えるのか。事実関係を明らかにして報告をするという決意が示されていると思われるのか。この間の雪印や三菱自動車の問題を挙げるまでもなく、隠ぺいというのは社会的な事件で、その組織の存立にかかわるような大問題ですよ。報道機関としての存立にもかかわる大問題だ。

 そういう意味でも、会長にお尋ねしますが、NHK職員の不祥事の事件がNHKの不祥事隠ぺい事件になるんじゃないのか、こういう問題についてきちんと国会に明らかにする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

海老沢参考人 私ども、公共放送NHKは、受信料で成り立っているわけでありますから、当然、視聴者・国民、もちろん国会等に説明責任はあります。そういう面で、隠ぺい体質、そういう疑いを持たれることは、最も我々が反省しなければならない点であろうと思っております。そういう意味で、できるだけその事実の解明といいますか、事実関係を調査し、きちっと報告するのが我々の使命だと思っております。

 そういう面で、不十分な点につきましてはさらに調査を進めて、別な形で、いろいろな形でまた説明していきたいと思っております。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。

佐田委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 お尋ねをいたします。

 今、会長のお言葉にございましたように、申すまでもなくNHKの経営はほぼ受信料、視聴者が負担する受信料から成り立っているわけでございます。この受信料には支払いの義務があります。義務ではありますが、罰則規定があるわけではありません。罰則規定がないにもかかわらず、八〇%を超える高い契約率があります。これは一体なぜでしょうか。これは、私は、NHKに対する信頼、そして期待からこれだけ高い契約率につながっていると思うわけでございます。

 先週のビデオリサーチのベストテンの中に、何と七本のNHKの番組が入っておるんですね、ニュースを中心に。そしてまた、立て続けに日本を襲っております台風あるいは地震、こういった情報提供も、やはり民放に比べたら断トツにNHKは充実している。国民の多くはNHKを信頼して、期待しておるんですよ。だから、カラーの月額千三百九十五円の受信料を払ってくれているんですよ。その信頼が、今回の不祥事で今大きく崩れ去ろうとしている。

 私は、今回相次いで発覚した不祥事を見ると、先ほどから各委員の質問、指摘にもございますように、どうしても経営の対応が甘いと言わざるを得ないと思うんです。

 不祥事そのものは、本来あってはなりませんよ。しかし、これはNHKに限らずどのような組織でも避けられない面もあると思うんです。しかし、問題なのは、こういった不祥事が発覚した後の対応や処理の仕方だと私は思うんですね。なぜ、そのときそのときに監督責任委員会を開いて問題を処理し、そして、情報を公開してこなかったのか。つまり、事を大きくすまいと丸くおさめることによって、逆に事を大きくしてしまった事例だ、そういうふうに思うんですね。そういった意味から、今回の不祥事の根底にはどうしても、今質問がございましたように、隠ぺい体質と言われても仕方のない部分があると思います。

 会長に重ねてお尋ねいたしますが、結果的にはそういった体質があったということを認識されておられますでしょうか。

海老沢参考人 私は、この七年間、当委員会を初めいろいろな場で、これからの新しい時代を迎えてNHKは視聴者・国民の信頼と期待にこたえなきゃならない……(横光委員「認識があるかどうかだけでいいです」と呼ぶ)でありますけれども、そういう面で、できるだけ説明責任を果たし、いろいろな情報を公開していく。そのために、改革と実行、公開と参加という経営理念を掲げてやってきているわけであります。

 そういう面で、隠ぺい体質にならないように努力したわけでありますが、今回、このような不祥事を起こして、改めておわびするわけでありますけれども、我々は、今後とも、そういう隠ぺい体質と言われないように、できるだけ公開をし、そして、いろいろな視聴者の参加をいただきながら、国民とともに歩むNHKにしていきたい。

 我々多くの職員は、本当に日夜、オリンピック放送でも、今回の台風でも、集中豪雨でも、いろいろな面で汗を流しながら働いているわけであります。そういう面で、今後とも国民の信頼と期待にこたえていきたいと私は思っております。

横光委員 今の御答弁は、隠ぺいにならないように努力しなきゃならないということだと思いますが、私がお聞きしたのは、隠ぺい体質がこういった事件の起因にあるかどうかということをお聞きしたんですが、会長としては、一万二千弱の職員のトップである立場から、到底隠ぺいがあったということはお答えすることはできないと思います。

 しかし、今までの事例を見ますと、芸能番組のCPあるいはソウル支局長の件も、三年後、五年後、今回明るみになったわけですね、新たにまた追加処分になったわけですね。こういったことを考えてみますと、やはり、国民の多くが、受信料を払っている視聴者の多くが、今回の事件の起因に隠ぺい的な体質があるというふうに思っている。このことだけは認識していただきたいと思うんですね。でなければ、言われました再発防止策、そしてまた、きょうも冒頭言われました、視聴者・国民の皆様方の信頼回復に全力を挙げることを改めて約束いたします、こういった言葉が、そういった認識さえなければ、私は、絵そらごと、空念仏にしか聞こえないと思うんです。

 ですから、隠ぺい体質があったということは口が裂けても言えないかと思いますが、心の中ではやはりそういったことを認識した上でないと、新たなNHKのいわば再生に向けて取り組むことはできないということを、まず冒頭申し上げておきます。

 ソウル支局長の人事についてなんですが、なぜ過去に問題のあった人物をよりによって再びソウル支局長に任命、起用したか、どうしても私はこの理由がわからなかったんですね。そして、先ほど、冒頭、質問がございましたよ。答弁もございましたよ。ハングルに精通していた、あるいは人脈の広さがあった等々いろいろな理由で起用したと。要するに、一言で言えば、非常に有能であったということですね。

 しかし、NHKはそんなに人材不足ですか。ハングルに精通している人はいっぱいおるでしょう。朝鮮半島に精通している人はいっぱいおるでしょう。それなのに、何年か前にいわゆる不正を行った人がなぜ行かなきゃならないのか、この人事がどうしてもわからない。

 それで、反省しているというお話もございましたが、もし有能であるから起用したということになれば、大変なことですよ。いいですか。有能だから起用したということになれば、不正よりも有能の方が優先するということになるんですよ。

 もう一度お聞きします。どうですか。

関根参考人 NHKにはいろいろな人材がいますけれども、やはり韓国とか朝鮮半島に通じている者というのはそんなにいないんです、これは正直なところ。だれでもまた務まるというものでもありませんし。

 それと、やはり人間ですから過ちを犯すこともあるかもしれません。七年かけて、いろいろな反省をしながら、経理処理も学んだ、税務の処理も学んだ、もうそろそろどうかなというので出したこと自体がやはり間違いだったというので、深く反省しているということであります。

横光委員 私が申し上げたいのは、このような人事が平気で行われるということになれば、職員の士気に影響すると思うんですね。そして、倫理観を高めなければならないといいながら、逆に倫理観が低下するんじゃないかという思いがあったもので、とにかくこういったことは、これから慎重な人事を行っていただきたいということを申し上げておきます。

 先ほど、芸能番組はNHKはもう扱う必要はないんじゃないかという意見もありましたが、私は、説明を聞いておりまして、確かに芸能は文化でございます。説明の方が納得いきました。

 といいますのも、私は一時期芸能の世界に身を置いておりましたから、この芸能番組のCPの不正事件を見たときに、いわゆるさもありなんという思いをしたわけです。というのは、そういう世界におったものですから、ある程度、そういった業界の仕組み、慣習というのを私は大分知っているわけですね。確かに、支払いとか、あるいは仕事の決まる、決まらないというのは、どうしてもまだまだどんぶり勘定的な部分が残っておるんですよ。これは、実力よりも人間関係とかあるいはプロダクションの大小とか力とか、こういうものがどうしてもまだまだ大きく影響する。そうなりますと、どうしてもそこには金というものが動くんですね。

 ですけれども、民放と違って受信料で成り立っているNHKにおいては、絶対にこのどんぶり勘定があってはならない。絶対にあってはならないことなんですよ。ですから、一番不正の温床、あるいはこういったことが起きやすいのは、私は、芸能番組、それからいわゆる支局長、こういった部分が非常に起きやすい部分、てきめんに二つとも出ていますよね。こういったところというのは気をつけなきゃいけない。受信料で成り立っているだけに、NHKのどんぶり勘定、しゃくし定規にはいかないかもしれませんが、極力しゃくし定規に近づけるのがNHKの使命だと思っております。

 もう時間がございません。

 会長は、三期目、七年の長期政権にいるんですが、私は、この長期政権というものに対して、もちろん、その経営手腕が認められてのことだと思うんですが、長期政権の弊害も言われている。

 しかし、長期政権であるからこそ、今のこの組織の風通しをよくするチャンスだと私は思うんですね。今回のことは本当に厳しい事態、NHKにとって私はピンチだと思います。ピンチだと思いますが、そのピンチをチャンスにするときだと私は思っております。

 どうか、NHKの予算、受信料が六千五百億、こういう総枠に意識を働かせるのではなく、千三百九十五円、一人一人が払っている千三百九十五円というところに意識を持っていって事に当たっていただきたいということでございます。

 本当にすべてのうみを出し切って、これまで視聴者から寄せられていた信頼を本気になって取り戻すチャンスだと受けとめていただきたい。一度地に落ちた信頼を取り返すのは至難のわざだと思いますが、本当に果てしなく遠い道のりになろうかと思いますが、どうか会長以下職員一丸となってこの難局を乗り切っていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

佐田委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十一分散会


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