衆議院

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第8号 平成16年11月16日(火曜日)

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平成十六年十一月十六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 実川 幸夫君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 野田 聖子君 理事 森山  裕君

   理事 安住  淳君 理事 大出  彰君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      自見庄三郎君    田中 英夫君

      谷  公一君    谷本 龍哉君

      西田  猛君    萩生田光一君

      平井 卓也君    増原 義剛君

      松本  純君    三ッ矢憲生君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      稲見 哲男君    楠田 大蔵君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      寺田  学君    中村 哲治君

      西村智奈美君    橋本 清仁君

      藤田 幸久君    松崎 公昭君

      山花 郁夫君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   総務大臣政務官      松本  純君

   総務大臣政務官      山本  保君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  清水 英雄君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   広瀬俊一郎君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   本保 芳明君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   高橋 守和君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   斎尾 親徳君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  中村 哲治君     橋本 清仁君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本 清仁君     中村 哲治君

    ―――――――――――――

十一月十二日

 日本郵政公社による証券投資信託の受益証券の募集の取扱い等のための日本郵政公社の業務の特例等に関する法律案(内閣提出第二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政事業に関する件(日本郵政公社平成十五年度財務諸表の承認に関する報告)

 日本郵政公社平成十五年度財務諸表に関する件


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     ――――◇―――――

実川委員長 これより会議を開きます。

 郵政事業に関する件、特に日本郵政公社平成十五年度財務諸表の承認に関する報告について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君、日本郵政公社理事広瀬俊一郎君、理事本保芳明君、理事高橋守和君及び理事斎尾親徳君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣審議官竹内洋君及び総務省郵政行政局長清水英雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森山裕君。

森山(裕)委員 おはようございます。自由民主党の森山裕です。

 本日、郵政公社の平成十五年度財務諸表等の国会報告に関して、本委員会で調査案件として初めて質疑を行うことになるわけでありますが、このようなことになりました経過について少し申し上げてみたいと思います。

 皆さん御承知のとおり、郵政公社法案は、平成十四年の七月の五日、総務委員会で修正議決をされましたが、その前日の七月の四日の委員会で、当時の自民党の川崎理事が、質疑の際、郵政公社の決算が国会に報告された後、委員会としてどのように対応すべきかについて理事会で協議してほしい旨の発言をされ、それを受けて、当時の平林委員長が理事会で協議をしたいという発言をされ、協議が始まりました。

 翌七月の五日の理事会において郵政公社決算の取り扱いについて協議がなされましたが、その時点では結論は出ず、委員会の最後に委員長から、国会に報告されれば当委員会で調査をすることが必要であり、取り扱いについては関係委員会と協議をする旨報告され、同日開催された委員会の最後でその旨の発言が委員長からなされました。

 そして、七月の三十一日の理事会において郵政公社決算の取り扱いについて協議がなされ、九月六日の理事会で結論を出すこととして、委員長、両筆頭で協議することになったようであります。

 ここにおられます安住理事や桝屋理事が当時理事としてこの問題に関係され御努力をされたことが、経過を見るとよくわかるようでございます。

 九月の六日の理事会では、各党で協議をされて一つの取りまとめがなされて、各党が了承をしたということでありますけれども、その主なものは、新たに発足する郵政公社について、より民間企業に近い形で企業会計原則を取り入れていくということであり、つまり決算重視の考えを取り入れていこうということになったようである。それであるならば、民間の株主総会的な役割というものを国会が果たすことが必要ではないかという考え方があり、郵政公社の年次決算については、総務大臣から国会に報告があったならば、総務委員会において、調査案件として、総裁出席のもと委員会を開催して、質疑を行い、委員会決議という形で意見の集約を図りたいという各党の了承があって、きょうからこの議論が始まるということであります。

 私は、公社の年次決算については、国会が民間の株主総会的な役割を果たすために委員会において調査案件として位置づけて質疑を行うものであるということをまず理解しておかなければならないというふうに思いますし、また、委員会決議という形で意見の集約を図るものであるということも理解しておかなければならないというふうに考えております。

 以上のような考え方に基づいて、まず少し質問をさせていただきたいと思います。

 ことしの六月三十日、郵政公社になって初めての決算が公表されました。それによりますと、郵便事業は、二百二十五億円の前年度赤字であったものが、当期利益が二百六十三億円を計上され、郵貯事業も当期利益二兆二千七百五十五億円を計上され、また、簡保の事業の方も四十一億円の内部留保金の積み増しをしておられまして、公社全体としては、簡保の内部留保金は含まずに、当期の利益が二兆三千十八億円。また、自己資本も公社発足時の一兆二千六百六十八億円から四兆六千七十五億円にふえておりますし、また、総資産に占める自己資本の比率も〇・三%から一・一%に上昇しました。

 一期目の決算としては国民の理解を得られるものだというふうに私は思いますし、生田総裁を中心に公社の職員の皆さんが真摯な努力をされましたことに、まず敬意を表したいというふうに思います。

 そこで、まず伺いたいのでありますが、公社を監督する立場にあられる総務大臣として一期目の決算をどう評価しておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 森山先生御存じのように、郵政公社を取り巻いております環境、例えばEメールがふえた、また、いろいろな形で保険に関しての契約が減っている等々の一連の流れの中にあって、公社化されて一年目の決算としては、私としては評価されてしかるべきものだと思っております。

 今御指摘がありました中で、郵便事業については、特に今年度、たしか二十六億円の赤で予算は計上されていたと記憶しますが、結果としては二百六十三億円の黒、今御指摘のあったとおりになっておりますし、昨年に比べましても大幅な、倍ぐらいの結果になっておりますので、その意味では極めて大きな結果を上げておられる、私自身はそう思っております。

 また、内容が、ふえました中でいろいろありますけれども、持ち株、持っております保有株の株価が上がったという点もあります。これは一兆ぐらい上がっていると思いますので、それは少し、いわゆる不労所得ということにもなりましょうから、そこのところがプラスアルファに出た部分等々もあるように思いますけれども、その他の部分の努力も大きかったと思っております。

 中でも、組合との関係やら何やらをきちんとこれまで対応してこられたという点は、余り多くを言われませんけれども、二つの大きな組合、ほかにもいろいろありますが、そういった組合やら何やらの労使関係というものもきちんとしておられたと思っておりますので、私どもとしては評価されるものだと思っております。

 今後、いろいろな意味でさらに多くの問題があろうかと思いますけれども、今抱えております問題というのは、さらにメールがふえてきたり、いろいろな通信手段というものが、郵便、信書から別のものにというものが出てきております内容の中にあって、状況としては決して楽な環境でもありませんし、株がいつも高いという保証もありませんので、そういった意味からいきますと、さらなる努力というものを生田総裁のもとにしていただけるものと期待をいたしております。

森山(裕)委員 大臣、御答弁をいただいてありがとうございました。

 大臣おっしゃいますように、世の中の動きが随分目まぐるしくなっておりますし、そういう中でどう利益を確保していくのかというのは大変難しい問題だなというふうに思います。株価はいつもいい風だけ吹きませんので、緊張をしながら事業というものは続けなきゃいけないものだろうと思いますが、おっしゃいますように、やはり労使の関係というのが大変大事だと思いますし、今、生田総裁を中心にしていい労使の関係がありますことは評価に値するというふうに私も思っております。

 それでは次に、生田総裁にお伺いをしたいと思いますけれども、一期目の決算を最高経営責任者としてどう評価しておられるのかということをまずお聞かせいただきたいと思います。そして、一期目の決算を経て、公社として中期経営目標達成の見通しをどう見ておられるか。

 また、先ほど総務大臣もお触れになりましたけれども、郵便物の数が減っているにもかかわらず郵便事業というものが二百六十三億円の黒字に転じたことをどう見ておられるか。

 郵便事業というのは黒字に転じましたけれども、依然として五千五百億円ぐらいの債務超過があるんですけれども、債務超過を今の中期計画の中で解消する見通しをどう見ておられるか。

 次に、自己資本比率は〇・三%から一・一%に改善をしておりますけれども、依然として過少資本の感がぬぐえないわけでありますけれども、過少資本の解消について今後の見通しをどう見ておられるか。

 この点についてお聞かせをいただきたいと思います。

生田参考人 日本郵政公社の生田でございます。おはようございます。

 今、幾つかの御質問がありましたので、それについてお答えをさせていただきます。

 まず、今期の決算をどう見ているか、それから、中期経営計画の目標は達成できるのかどうかという御質問にお答えいたします。

 今期の決算、今大臣からも御披露いただきましたように、郵便は二十六億の赤の予算であったのが二百六十三億円のプラスになった、それから、郵貯は一・一兆の利益の目標に対して二兆三千億出た、それから、簡保の方は内部留保が三百二十四億減るということになっていたのが逆に四十一億円積み増したということで、数字づらだけ見ていきますと結構いいのかなというふうに思われるかと思いますが、実は私は非常に深刻に受けとめておる、まだまだこれからであるというふうに考えておるということをまず申し上げておきたいと思います。

 それにしましても、初年度、比較的計画値を上回る数字を出し得たというのは、まさに職員一同がサービス業をやっているんだというふうに意識をかなり思い切って変えてくれまして、我々はサービス業、真っ向サービスということで真剣に取り組んでくれた成果であろうと思います。初めは民間的手法ということで非常に戸惑いを感じたと思うのですけれども、よく乗り越えて頑張ってくれたと思います。今お話ありましたように、組合の方も改革ということに対して志をほぼ同じくしてくれていまして、私はパートナーシップ宣言というのをやったんですが、組合もそれをバックアップしてくれている、こういう感じでございます。

 結果はそうやって少しよかったんだけれども、厳しく見ているという要因を申し上げますと、郵便の方はやはり基本的にはITの進化、それから、欧米では独占分野ですから欧米では見られないメール便のところでの競争というふうなものがございまして、売り上げが年々減ってきております。

 したがいまして、この単年度は、最初は思い切ったいろいろな合理化をしましたからそれによる益が出まして黒になりましたけれども、毎年やるわけにはいきませんから、ことしもまた売り上げは減るわけです。多分六百億から七百億ぐらい減ると思います。それをのみ込んでまた黒字にしなきゃならないというふうな大きな問題を抱えておるので、これは四、五年先回りして数千億収入が減るという前提で損益構造を整備するというのが構造改革なので、それへのチャレンジはこれからであるという意味で深刻に受けとめておる。

 それから、郵貯の方は、これも先ほど大臣がちょっと触れていらっしゃいましたが、信託運用益というのが一・二兆あるわけでありまして、これを引きますと一・一兆ということで、ほぼ予算並みということでございまして、その意味ではこれからの問題が大きい。

 保険は、なるほど、内部留保をほんの少々積み増したが、新規契約の伸び悩みということで、マクロとしては大きな問題を抱えておる、こういうふうなことでございます。

 それで、中期経営計画との関連でありますが、来年の十七年度、十八年度でアクションプラン、行動計画の二年目に入ります。今、それの策定の真っ最中でございまして、何とか営業力のパワーアップと生産性の向上というものでさらに改善を求めようというふうな努力の真っ最中でございます。私としましては、中期経営計画の目標としております、郵便では四年間合わせて合計五百億円の利益を出す、郵貯では四年で三・九兆円以上出す、簡保では内部留保の積み増しを三千億以上やるという目標は、よほど大きな与件の変化がない限り達成できるのじゃないか、達成しなきゃいけない、こういうつもりで努力している次第でございます。

 次に、郵便の方が年々売り上げが減っているのにどうやって黒字化になったんだというお話でございます。

 通常郵便物は前年度対比二・三%減少いたしましたので、大変厳しい。これはまことに厳しいんです。特に一種、二種の方ですね、それからメール便。ゆうパックはおかげで大体最後の事業庁の年から比べますと一〇%伸ばしたんですけれども、ほかは大変厳しい、こういうわけでございます。

 それに対しまして、取り組んでまいりましたのは、とにかく営業力のパワーアップということで、品質の向上を図るというふうなことで、翌日配達エリアをふやすとか夜の再配達時間を一時間延長するとかいろいろな施策をいたしまして、品質の改善を図りました。

 それから、事業のあり方、組織、要員配置、そういったものを役所型、管理型から事業型に転換いたしまして営業力をパワーアップするというふうな営業の充実を図るということに加えまして、先行投資的なものも百六十億円やるということでシステム整備を図るというふうな前向きの面。

 それに加えまして、いろいろな生産性向上、ジャパン・ポスト・システムと言っておりますが、トヨタのチームにいろいろ指導を得ました区分、集配等の効率化の運動、それがだんだん深まってまいりました。

 そういったことや、調達のコスト、これは事業庁最終年度、八千三百億円使っていますが、対比二〇%は合理化しようということで、初年度は一三%ぐらい改善しました。初年度の秋まではもう事業庁のときに決まっていましたので効果が出なかったんですが、後半に効果を出すことによって一三%改善いたしました。そういったようなこと。

 さらには、組合との協議を経まして、同意のもとに粛々と進めております要員の調整、二年間で一万七千人やりますが、そういったものの積み重ねによりまして初年度は黒に転じ得た。二年目にもそういったことを積み重ねながら努力をしていきたいと考えております。

 三番目の御質問だったのが、郵便事業の五千五百億円の債務超過は、それじゃ、四年で解消できるのか。これは率直に申しまして無理であります。

 これは、中期経営計画のときは、初年度は赤字、二年目からほんの少々黒字を出し始めて、四年合計で五百億円の利益を出す、こういう中期経営計画になっておりますので、中期経営計画どおりということになりますと、スタートが五千八百億円の債務超過ですから、端数はありますけれども五千三百億円まで縮めればいい、こういうことになっているわけであります。

 私の今の感度ではそれを少し上回りまして、何とか少なくとも五千億は切りたいなという覚悟で全員と努力の真っ最中ということでございますが、アバウトでいえばやはり五千億は残ると思うので、もし民営化ということになるのであれば、これをぜひ、どういう格好で消していただくか、賢明な制度設計をお願いしたいと思います。債務超過でスタートし得る会社というのはあり得ない、これは厳然たる事実であろうと思います。

 それから、過少資本問題、四番目のお問いでございましたが、〇・三%からことし一・一%になりました。だけれども、これには先ほど申しましたような信託運用益も入っていますから、こんな比率でふえていくわけではないわけであります。何が適正資本かというのにはいろいろ御議論があると思います。公社化前には約十兆円じゃないかというのが、新聞を見ますと大体どのエコノミストなんかもおっしゃっていましたが、公社法ではそれを約七兆円と見ているわけですね。

 七兆円へのチャレンジができるのかというふうに問題を置きかえてみますと、今の利益構造からいきますと、郵貯、簡保それぞれ健全に中期目標を達成して、多少上乗せをやったとしましても、これには手が届かないと思います。余りこういう席で数字を申し上げるのがいいのか悪いのか、ちょっと私、全くのど素人でわからないんですけれども、アバウト六兆ぐらいまではいけるかもわかりませんが、足りないと思います。

 それからさらに、さっきも申しました、その中の内訳としては郵便の約五千億の債務超過があるということなので、これをどうして適正な水準に整備していただいてスタートするのか。適正な資本金を持ってスタートする以外、健全な経営というのはやはり難しいと思います。お金のフローだけじゃなくて、バランスシートの方も健全な格好でスタートするということが不可欠の要件であろうと思いますので、何とかいろいろとそこの問題を克服できるような御工夫をいただければありがたいと考えております。

 以上です。

森山(裕)委員 生田総裁、私も、郵政公社の職員の皆さんの意識が本当に変わってきたなというふうに実は思います。地元の事務所におりまして、郵便を配達に来られて一言言葉を添えられることは、切手かはがきかお届けするものはありませんかと一言おっしゃいます。随分、やはりサービス業というものに徹してこられたんだなということを思いますし、やはり人間というのは変わればすばらしく変われるものだなということを実は思います。そのことが数字として出ているんだろうというふうに思います。

 ただ、郵便事業というのは、減収増益というのはそう何期も続く話ではありませんので、いろいろな御努力が必要なんだろうというふうに思いますし、また、郵便事業における債務超過の問題あるいは資本の問題、今から大きな課題があることをぜひ職員の皆さんもしっかりと御認識をいただいて、さらに頑張っていただきたいというふうに思っております。

 次に、会計検査院が十一月の九日の日に検査報告を行ったところでありますけれども、その内容を見てみますと、職員の不正行為の不当金額というのは、前年度からしますと随分減ってはおりますけれども、まだ三億百九十九万円ある、あるいは、債権の管理の問題でもいろいろな問題があるということが指摘をされているところでありますが、そのことについての公社の考え方あるいは今後の改善策について、ちょっと教えていただきたいと思っております。

 続いて、総裁、大変お尋ねしにくいんですけれども、ここはしっかりお尋ねしておかなければいけないんだろうというふうに思いますし、今後の郵政事業と大変関係のある問題だと思いますので、少しお尋ねをさせていただきたいと思います。

 十一月の八日の日に、郵政民営化情報システム検討会議が開かれまして、そのことに関していろいろな報道が実はございました。民営化に伴うコンピューターシステム構築問題について、公社側が、本格的なシステムの構築を後回しにして、二〇〇七年四月からの民営化のスタートというのに間に合わせるために暫定システムの構築を優先するという妥協案を持ち出したという報道もありましたし、また、政府の郵政民営化準備室によると、郵政公社はシステム変更を最小限に抑えた暫定的なものにするとの条件つきで公社化への対応は可能だという見解を明らかにしたという報道があって、翌九日の日に生田総裁がまた、それは重大な事実の誤認があるという抗議をされたという報道があったりいたしました。

 コンピューターシステム構築問題というのは、まさに事業の基本にかかわることだろうというふうに思いますので、そのことについての見解を少しお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 もう一つは、やはり十一月の九日付、竹中郵政民営化担当大臣に対して生田総裁から、「有識者会議における議論に対する意見」というものをお出しになった。また、郵政公社のホームページにも掲載をされているようでありますが、あの内容を読ませていただいていろいろな思いをいたしますけれども、総裁が今の時期にこのような意見をお出しになり、今後も引き続き意見を出していくという表明をされた真意はどこにあるのかをちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

高橋参考人 先生お尋ねの会計検査院の平成十五年度の決算報告の中で、郵便局の職員が業務に従事中、例えば資金等を横領したということで、二十六郵便局において二十三件、三億百九十九万円が指摘をされているところでございます。

 また、こうした不正行為でございますとか事故等で債権額約三百六十二億円、これは平成五年から平成十五年の間でございますが、債権額が三百六十二億円ございますのに対しまして、回収額が約七十五億円ということで、大変低調であるというような点についても記載をされているところでございます。

 こうした債権につきましては、債務者が例えば収監中であるというような場合でございますとか、もしくは会社の倒産により発生したもの等もございまして、なかなか回収が困難なものもございますけれども、現在、マニュアルの整備でございますとか体制の強化ということに努めておるところでございます。

 また、部内者の犯罪等につきましては、発生状況、それから業務面、制度面の問題等を分析いたしまして、類似事態の発生防止、そのための制度、手続の改正でございますとか、部内の防犯意識の向上等に現在鋭意努めているところでございます。

生田参考人 それでは、いただきました二番目と三番目についてお話し申し上げます。

 初めに、システム問題でございますけれども、私は経営者としまして、分社化の話がいよいよ具体化しそうだなと思ったことしの春に、そのタイミングを決める非常に大きな必須要件はシステムだなと考えました。したがいまして、すぐに、公社のシステムを知っているベンダーであるIBM、アクセンチュア、野村総研、NTTデータ等の会社に、非公式に、大体どのぐらい時間がかかるものだろうかということを諮問いたしました。

 回答は、開発要件が確定してから、ということは来年の半ばが一番近いんでしょうけれども、あるいは来年後半かもわからない、それから三年から五年という返事がありまして、一番最短距離の会社でも三年というふうに言われました。

 九月七日の諮問会議で最終的に案を取りまとめる前に、三時間ほど前に、ちょうど午後一時に官邸に来てくれという御要請がありまして、総理と率直にお話し合いをいたしました。

 総理も、別に自分もITの専門家ではないのでということで、何とかうまくいかないだろうかというお話はありましたけれども、最終的には、やはりそれは慎重を期す必要があるだろうというお考えだったんだと思います、それでは今度は、第三者の専門家に公式に見てもらって、その判定に従うことでどうでしょうかという御提案がありまして、私はその場で、大変公正で適切なお考えだと思いますということで、お受けといいますか理解したわけでございます。

 それで、これは私の頭の中では全く政治問題じゃなくて、ちゃんとした経営をやる要件整備の問題というふうに位置づけております。そういった意味で、総理とお話しした後、九月の九日、二日後には渡辺準備室長あてに、とにかくこれは非常に重要なことだから公正かつ透明にやっていただきたいという申し入れをしまして、人選にも厳正を期していただきたいというお話をいたしました。

 その後、オブザーバーで当方も一人出ておりまして、事態は進んできつつあるわけでありますが、委員会の方から、難しいのは何となくわかるんだけれども、それでは七年四月までに整えられるものは何か、それの報告をしてほしいという要請がありまして、十一月の八日の第三回の会合でその説明をしたわけであります。ここまでは整うという話をしたわけであります。

 ただし、その整うものというのは、ほとんど今持っているものをそのまま若干調整して使えるという程度の域を超えないわけでありまして、それでは法令や金融庁の規則などに合わない、クリアできない問題があるかもわからないという点とか、経営のサポート機能が欠けるというふうな点、あるいは新しいビジネスモデル、そういったものが全然入らない、それからリスク遮断というキーワードがあるんだけれども、その面も不十分になるのではないかとか、窓口会社は、これは全く新しい発想でできるものですから、窓口会社としての自前のシステムはこれはとても間に合わないというふうなことで、日本列島にまたがるようなシステムダウンがあってはお客様に、全国の国民に大変御迷惑がかかるというか許されないことだから慎重を期した方がいい、難しいんじゃなかろうかということで、このような不完全、不整備な状態で分社化が妥当かどうか、それこそ委員会でよく検討していただきたいというお話を申し上げたわけであります。

 ところが、その日の午後の準備室の記者に対するブリーフィングで、公社から、暫定システムで分社は可能、いわば考え方を変えたというブリーフィングが行われまして、多分記者の方も不思議に思われたんだと思うのですが、ICレコーダーで声がみんな入っているんですけれども、私も聞いてみましたら、三度ほど記者の方が、本当に変わったのか、本当にできると言ったのかという質問があるんですが、いや、そのとおりです、できると言いましたという応対が行われているのを私知りまして、これは全く事実に反する。

 四月までに間に合うものだけでも出してみてくれと言われるからそれを報告しただけでございましたから、これは非常に透明でもないし公正でもございませんから、その日の夕方、渡辺室長あてに、何でそんなようなことが起こったのか、背景とともに、私どもは今全面協力していますので、データの提供とかすべて全面協力していますので、信頼関係を回復してほしいから、妥当な何らかの御措置をお願いしたいというふうにお願いしたわけであります。

 きょう現在まだ返事をいただいておりませんので、近々催促してみようと思っているんですが、そういうことでございまして、公正、透明を求めるためには、例えば今後は委員会を公開するというのも一手かもわかりませんし、何らかの準備室での信頼回復の御配慮をひとつお願いしたい、かように思っているわけであります。

 そんな記録、本当にきちんとした記録かというような御議論もちょっとあるみたいですけれども、これはICレコーダーでそのままでずばり入っているわけでありますから、それも一人じゃなくて複数の人間がとっておりますので、おっしゃったことは間違いない。

 ただ、はっきりしておきたいことは、別に公社として私どもは反対しているんじゃないんです。週刊誌なんかすぐそういうふうに書きたがるんだけれども、システム問題をてこにして民営化に反対しているとか、そういうことでは全くないわけでありまして、経営責任者として七年四月にできるもの、できないもの、これを明示的にきちっと整理して、そして、その整理した上で、それでも分社化をした方がいいというふうな判断ができるのかどうか、これは私は高度の政治判断だと思います。

 そういうきちんとした事実の上での判断をしていただいて、もしそれでもやるとすれば、やはりさっき申し上げたように、幾つかの難点が出てくるわけでありますから、それは、例えば法令をクリアできない点とか、新しいビジネスモデルが全くシステムに乗らないとか、いろいろな問題があります。したがって、そういったものに対して附帯条件としてどういうセーフティーネットを張っていただくのかというふうなところもあわせて御検討して、最終的な御判断をいただく必要があると思っております。

 なお、その準備室の職員のブリーフィングでは、足りないところは全部手でやればできるんで、仕事というのはそういうものだというお話もあるんですけれども、とても現代のシステム産業で、できないからといって手作業でできるというわけにはちょっとまいらないと私は思っておりますので、そういったところのセーフティーネットの張り方といったものも考えていく必要があるんじゃないのかな、かように思う次第であります。

 二番目の御質問の、有識者会議に対する意見を出した真意は何か。真意を端的に、簡単に言えば、民営化をするんであれば、その民営化というものは、日本の全国のお客様、すなわち全国の国民の立場、それから……

実川委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

生田参考人 はい。日本経済の活性化、それから政府、職員等に対していい改革でないといけないと思うのですが、どうも有識者会議の議論というのが本来の五原則及び政府の基本方針からはみ出たような議論になっているんじゃないのかなというふうに思いました。そのとおりいくと、新会社というものが非常に縮小均衡に向かって経営が行き詰まるんじゃないかというふうに思いましたので、原点に戻っていただきたいということをお願いしたわけであります。

森山(裕)委員 御答弁、ありがとうございました。

 いろいろ申し上げたいこともありますが、時間がありませんので、一言だけ申し上げておきます。

 私は、生田総裁のいろいろなところでのお話の中で大変感銘を受けましたのは、御縁があって郵政事業に携わるようになった、今誠心誠意やっているし、自分は郵政事業を非常に愛している、こう言っていただいておりますが、大変大事な視点だというふうに思いますので、どうか郵政事業を愛しておられる気持ちでいろいろなことに対応していただきますようにお願いを申し上げて質問を終わります。

実川委員長 次に、長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 生田総裁、大変な激務が続いていらっしゃると思います。本当にきょうはありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 今回が日本郵政公社の第一期決算、二〇〇四年三月期の決算というのは、生田総裁が進めてこられた経営の効率化が一定の成果を上げてきたということが示された内容であるというふうに思っております。

 ただ、先ほど来指摘をされていますように、自己資本の問題あるいは郵便業務の債務超過といった面にあらわれています財政基盤そのもののややまだ不安定な部分というようなところはこれからの改善が求められる面だというふうに思います。二〇〇七年に予定されています民営化へのスタートに向けまして、収益力の強化あるいはどういう効率化に今後取り組んでいくかということが課題として見えてくるというふうに思っております。

 これまでの特殊法人としての決算から民間企業並みの企業会計原則に基づいた決算、いわば官庁会計から企業会計へ、今までの予算主義から決算主義へ、こういう一つの変化があったわけですけれども、それが会計上にどれだけ成果があらわれたかということが一つの重要な観点になるというふうに思います。

 そこで、まず、公社になってから、総裁のもとでいかなる効率化の取り組みをされたのか、この点を伺いたいと思います。

生田参考人 効率化だけでは業績は改善しないので、その前にまず営業力パワーアップというのが大変重要なことでした。やはり官庁でしたから、進んで物を売るとか、お客様の立場に立って物を考えるとか、それによって品ぞろえするとかいうふうな点がかなり弱い面だったので、そういう営業力のパワーアップをまず大前提として、それにあわせて効率化してきたというふうに御理解いただければありがたいと思います。

 具体的には、例えば調達費の削減というふうなこともやってまいりました。これは、事業庁の最終年度、平成十四年度は八千三百億円ぐらい使っているわけでありますが、それを二年間で対比二〇%は削減しようというふうなことをやりまして、これは実績を上げております。

 また、トヨタからトヨタ生産方式のエキスパートを七人派遣していただきまして、集配区分の無理、むだ、むらを省くという研修を受けて、それは今軌道に乗っております。ことしは全国で前年対比一〇%改善するはずであります。そういった生産性の向上というふうなことに努めてまいりました。

 それから、組織も管理型から事業型に変えてまいりました。

 それから、先ほどお話ししましたように、要員も、組合と十分打ち合わせの上、一万七千人の合理化を進めてきたというふうな、数々の問題を織りまぜながら効率化を図ったということでございます。

長沢委員 そういう取り組みをされていく中で、総裁は、総裁の御自分の感想で結構なんですけれども、公社化したこの一年間で御自分の目で見てどういうところが一番変わったか、特に、公社になって総裁のもとでいろいろな努力をされてきて、こういうところが変わったなというふうに自分でも手ごたえを持っていらっしゃるところ、もしできれば具体的なエピソードも含めて御紹介いただければありがたいと思います。

生田参考人 それでは、余りかたい表現でお答えするよりも、やわらかい表現でわかりやすい話でお話ししたらどうかと思うのですが、みんな商売人になってきたんですね。費用対効果も考えながら、どうやったらお客様に買っていただけるかなというのがごく自然に職員の間で話題になって、いろいろな提案が出てくるようになってきた、これは私が見ていて物すごく変わった点だと思います。

 それから、もう一つ例を申し上げますと、さっき申しましたジャパン・ポスト・システムということで、トヨタの七人の人たちに一年ちょっといろいろ教えてもらいました。

 初めは、これは埼玉の越谷郵便局をモデル局でやったんですけれども、柴沼という局長が初め抵抗しまして、今までやっていたのが何が悪いんだ、今までどおりがいいんだというので、最初の三、四カ月は本当にぎすぎすして進まなかったんですけれども、私から、これはとにかく今後の公社の効率化のいわば社運をかける一つの試みなんだから、指示だ、とにかくやってくれというふうに指示をいたしまして、彼もそれを受けて始めたのが去年の秋ぐらいからだと思うのですが、見る見る効果が上がったんですよ。ことしの三月、二〇%の改善のターゲットに対して二一%上がった。後半は、彼が率先してそれをリードした。

 それで、実は今定年なんですけれども、特別の職員として採用いたしまして、今度は、ジャパン・ポスト・システム、その改革の宣教師、伝道師になってもらいまして、自分は初めそれに抵抗したけれども、今や本当にいいと確信してある程度実績を上げたんで、おまえらもやってごらんよというので、全国行脚しながら指導してくれている。

 こんなような例が出ているということで、先生の御質問に余り直にお答えしていないかもわかりませんが、そんなような雰囲気だということでございます。

長沢委員 本当に総裁にかわられてから、職員の皆様の間からも、雰囲気が明るくなった、そしてまた、新しいアイデアを提案してもそれを受け入れてもらえる、そういう手ごたえ、おおむね歓迎の雰囲気が伝わってまいります。それは、私たち、利用者の立場から見ても非常によく感じるところでございます。

 その一方で、職員の皆さんとちょっとお話をしますと、同僚が退職をしていく、これはある一部の人の個人的な周辺のことかもしれませんが、若い人からやめていかれるとか、自分の周りから職員が退職していったというような話を随分聞きます。

 公社移行前に比べての退職の状況というのをちょっとお聞きしますと、平成十一年度から十四年度までは、大体年間退職者の方は一万人。十四年度が一万二千五百六十八人、十五年度は一万六千八百九十九人と、約四千三百人退職の方が増加をしています。特にこの内訳を見ますと、十四年度の場合は、勧奨退職が七千百二十四人、十五年度については一万二千百七十四人。全体としては退職者の方は四千人ふえている、その中で勧奨退職だけをとりますとプラス五千人ということで、そのほかの定年退職の方は若干減って、自己都合等での退職の方はほとんど数は変わっておりません。そういう状況を見ますと、いわゆる勧奨退職が十五年度で五千人という数字になっております。

 今回の決算を終えて、先ほど一万七千人というお話もありましたけれども、二〇〇七年、これは民営化のためのリストラということであってはならないと私は思いますが、民営化へ向けて適正人員というのを考えていらっしゃるのか、あるいは二〇〇七年の段階での人員の目標みたいなものを設定されていらっしゃるのか。それによっては、二〇〇五年、二〇〇六年とさらに退職の数字というのはある程度出てくるのかということが、職員の方にとっても非常に不安のもとでもありますし、大事なポイントだというふうに思っておりますので、この辺の適正人員を考えていらっしゃるのか、あるいは目標を設定されているのかということについてお答えいただきたいと思います。

生田参考人 とにかく、公社の事業の健全化のために、それを要員の調整によってしのいでいこうという考えはありません。むしろ、今郵便が売り上げが減ってきているのをどうやって上向けるか。これは成長分野でやるよりしようがないんですけれども、小包便とか国際とか。とにかく営業力を目いっぱい伸ばして、成長する内容に置きかえていく、そのために必要なことをやっていく。それは今申した成長分野への積極投資であったり先行投資であったり、それから新規事業の開拓、特に国際をこれからやらなきゃならないと思います。それでそれに必要な人材に対する投資も実は随分やっているわけであります。物すごく、今まで以上に研修をふやしていますし、海外研修に常に二十人ぐらい出すことにいたしましたし、強化しております。

 それからさらに、減すばかりが能じゃなくて、既に一部、商社とか銀行からも人に入ってもらっているんです。近い将来、といっても数カ月のうちに五、六十人また、ITとか経営問題とか運用とか財務とか、そういった専門家を採用しなきゃいけない、こんなこともやっておりますが、その意味では新陳代謝しているわけですね。

 それで、市場に出るとすれば、別に民営化になるからやっているんじゃなくて、健全な公社をつくるためにやっているわけでありますけれども、健全な公社にするためには、そうやっている中で、やはり要員計画というものを数年のスパンで考えて、どのぐらいが適正かというのを見ながら一部ゆうメイトに置きかえるというふうなことでも要員の調整をしてきておる。ただ、その数字が、公社スタート初めの年のフェーズ1では、一万七千人という人数を目標にしてやった。結果はそれをちょっと上回ってきていますけれども。

 今度はフェーズ2、それじゃどうするのか、公社二年目、そういう御質問だろうと思いますが、それはただいま策定中であります。今やっている三事業の将来のあり方というものを今一生懸命、想像も含めながら、描きながら、それに必要な人数はどのぐらいだろうかというふうなことを考えて、現在要員の策定中でありまして、率直に言うと、私の立場で全くそういうことに、数字はノーアイデアかといえば、それはある程度、漠たる数字はもちろん持っているんですけれども、まず組合との話し合い等を尊重しながら、何としても納得ずくで、相互理解のもとに取り進める必要があると思いますので、今後慎重に取り進めていきたい、こう考えております。

長沢委員 民営化の議論にどうしてもかかわるわけですけれども、総裁は、民営化前提ということではなく、公社のあり得べき経営の問題、経営の体質の問題としてそれなりに考えていく、それも組合の皆さんとよく話し合って、その理解のもとで、信頼のもとで進めていかれるというお言葉、大変大事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 民営化の議論の中でも、この五原則の中にやはり雇用配慮原則というのもありますし、そういう意味では、職員の皆様の不安というものをどう払拭していくかということが非常に大事なポイントになっていくというふうに思いますので、その辺の配慮を今後ともよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それでは次に、郵便の事業についてお聞きします。

 総益として見ると、今回、初めてというか、黒字への転換をされました。大変な御努力を総裁されて、皆さん御努力をされて、黒字へ変わった。

 とはいえ、今回黒字になりましたけれども、総裁御自身おっしゃっているように、根本的に黒字体質に体質そのものが転換できたかというと決してそうではない、IT化も進み、競争も激しくなっていくという中で、この一、二年が勝負だというふうに総裁もおっしゃっておりますが、この郵便事業の収益を含めて、今後の具体的な対応、何かアイデアを含めておありになるか、お聞かせいただきたいというふうに思います。

生田参考人 黒字構造への転換というのは大変大きなチャレンジだと思っています。一種、二種のところは、年率三、四%減るという前提を置かざるを得ない。そうすると、毎年売り上げが減る事業ないし企業で健全に成長するところというのは、まず市場ないわけですね。だから、これに何とか歯どめをかける必要がある。それは成長分野でなきゃならない。その成長分野は、実は競争分野であるわけであります。

 それは、大きく、ゆうパック、小包便の分野でありますし、これは五・七%まで落ちちゃっていたわけですから、今かなり競争が激しいメール便の分野であり国際の分野。国際分野はちょっと公社の間でも、多少公社法を変えていただいて、投資等ができる、周辺の事業もできるというふうにしていただかないと、今のところ、頭の中だけで一生懸命国際を伸ばそうと思っているんですが、どうも法的制約で実は何もできないという状況になっておりまして、この二年間、ほうっておくとますます外資が入ってくる、国際急行便のところは二五%ぐらいしかシェアがありませんから、これにどうやって歯どめをかけるかというふうなことを織りまぜまして、とにかく伸びる、成長する事業体に変えていかないと将来はない、それをぜひやろうとまず思っております。

 それに加えまして、効率化でありますが、例えばJPS、集配区分の合理化、先ほど、ことしは前年対比一〇%の生産性向上を図ると申し上げましたけれども、これは来年は二〇%になります。そういったことで、かなり思い切って、新しい手法で集配区分の効率化を図っていく。

 さらに、今、集配局のあり方というのは、四千数百局ありますけれども、かなり細切れになっているんです。これをもう少し集約したら、いわばハブ構想ですね、そういったものをやれば、もっとサービスの内容もよくなるし、費用も安くなるんじゃないかというふうなことを織りまぜまして、生産性の向上を図る。

 それから、最後は、いわゆる費用の圧縮でありまして、購買費をことしは確実に、事業庁最終年度八千三百億に対しまして二〇%以上の合理化を図るつもりでございます。同じ物を買って、値段が下がるわけです。それは公開入札をやっていますから、そういったことで下げていくというふうなことを織りまぜまして、何とか本格的な黒字構造に数年がかりで持っていきたい、かように思っております。

長沢委員 ちょっと関連しますけれども、ローソンとかコンビニエンスストアとの提携というかコラボレーションを一部展開されていらっしゃいますが、こうした取り組みのねらいと成果についてお聞かせいただきたいと思います。

生田参考人 発想の原点は、全部じゃありませんけれども、支社とか主要な郵便局へ行くと、でかいんですよ。物すごく大きい。部屋はたくさんありますし、使っていないスペースがいっぱいあるし、これは、昔はそういう発想でよかったんでしょうけれども、一つのディグニティーを示すことでもあったのかもわからないけれども、この御時世にそれをもっと活用ができないのかなという発想がまずあります。

 例えば、都心あるいは町のど真ん中にあるものは、そんなところで集配区分をしなくたって、もう少し田舎に回せば土地代も安くてスペースもあっていいんじゃないかというようなこともあります。それから、現にあるものも、あいているスペースはだれかに使っていただいた方が、余りがらんとしているよりは見場もいいし、その分我々もスペース貸しの収入はいただけるし、それから地域住民の方々には、便利になったと喜んでいただける。ついでに、お貸しした人のところ、例えばローソンに来たお客様が郵便も利用してくださる、その逆も真なりで、相乗効果も出る。

 こういうふうな発想でやってきておりまして、現在、コンビニでいいますと、ローソンとエーエム・ピーエムにスペースをお貸ししております。それ以外にも、フラワーショップと言っていますけれども、要するに札幌の花屋さんですね。それから、ギャラリーとかコンサートの会場、それから観光物産販売店とか文房具屋さんとか、いろいろな業種に対しまして、十三、四カ所でスペースをお貸ししてお店を開いていただいて、みんなに喜んでいただいています。入った人も喜ぶし、地域の方も喜んでいただく。

 それで、そこに公正を期するために、そういうスペースをお貸しするときには一般公募いたしまして、その中で、余り郵便局の中で居酒屋さんをやられても困りますから、郵便局にふさわしい業種の方で一番条件のいいところに入っていただいているという現状であります。今後も続けたいと思っております。

長沢委員 貯金事業について伺います。

 郵便貯金は二兆円を上回る黒字を計上しておりますが、そのほとんどは、二百二十兆もの豊富な資金量の運用益に占めるところが大きい。これはもう先ほど来総裁もおっしゃっているとおり、こういう運用益によるものにある意味では依存している状態ですと、市場の動向によっては、非常に大きくそれによって左右をされてしまうという危険性もある。

 経営の健全性を確保するという意味では、ほかにどのような営業収益、取扱料あるいは手数料というようなことになるのかもしれませんが、さまざまな対応が必要だというふうに思います。今期の運用状況を踏まえて、今後の取り組みについてお考えを伺いたいと思います。

生田参考人 現在のところは安定、安全ということで、過半といいますかほとんどが国債、財投債、地方債という債券中心になっているのは事実でございます。それだけでは柱が弱いのではないか、それから、郵貯の場合、一部信託運用に回したものが一兆二千億の黒字を出した、これは不安定じゃないか、この御指摘もそのとおりであります。それを、どうやってもう少し柱をふやすのかというのは、確かに今後の課題だと認識しております。

 その一つは、今先生御指摘の投資信託を売るとか、そういう手数料収入、それから、個人の国債もかなり売れるようになってきておりますから、それも一つの柱になると思いますし、今後のいろいろな制度設計の御過程におきまして他の金融商品の取り扱いなども可能になるというようなことがあれば、手数料収入というのが将来的に一つの安定した収入の柱になるとは思います。

 とは思うのですけれども、そこから入る収入というのは非常に少ないんです。今でいえば九百億ぐらいの話でして、今私がずらずらと言いましたものを全部まとめて一生懸命やっても多分二、三千億かなと思うので、例えば郵便局を支える大きな柱になるとかいうふうなことは難しいんじゃないのかなと思っております。

 それよりも、本当に民営化するのであれば、民営化した後のビジネスモデル、今の有識者会議の御発想では、新しいことは一切やらせない、こういうことで議論していらっしゃるようですけれども、そこのところをきちっと、生きた経済、自由濶達にできるようにするんだという基本方針に戻っていただければ、例えば運用の面で、別にやるということを言っているんじゃないんですよ、例えばの話ですけれども、個人へのリテールとかほかの銀行がやっていらっしゃるような業種にも少し回す、国債ばかり、財投債ばかりじゃない、銀行並みのALMが組めるような御工夫をいただければ、そっちの方から、多少のリスクはあっても、より大きな利益が出てくるんじゃないのかな、かように思っておりますが、これは制度設計次第と、次の経営者の経営判断次第だろうと思います。

長沢委員 今のお話にも関連しますし、前の森山委員の御質問にもお答えをされておりますが、自己資本の問題です。

 経営の健全性を確保するには、二〇〇七年度までに自己資本を七兆円確保できればある程度できるというお考えというか、そういう方向で来られておりますけれども、この自己資本七兆円ということについては、先ほども少し答弁の中で触れられておりましたが、どうふやすかということ、またその見通しですね、体力をつけるということについてどういうふうに考えているのか、その辺をちょっとお答えいただきたいと思います。

生田参考人 郵貯の場合に幾らが適正な自己資本かというのは、いろいろな御議論があると思うのですよね。BISの、普通の民間機関並みに四%をとるのか、あるいは三%なのか、さらに国債とか財投債をどう見るのか、いろいろな御議論があると思いますが、それを全部のみ込んで、郵政公社法をおつくりになったときに七兆円という判断をされたんだろうと思うので、これは一つのある程度の妥当性があるメルクマールかなと思いますね。

 ここまでは何とか積ませていただきたいと思っておりますけれども、これは今の郵貯の収益状況からいいますと無理だと思います。やはり一兆内外は手が届かないであろうというふうに思いますので、健全な金融機関としてスタートするとすればどういうふうな工夫ができるのか、その横には郵便の約五千億の、五千億ぐらいまでは減すつもりでおりますけれども、五千億ぐらいの債務超過もありますから、制度設計の上で何かいい知恵を出していただければありがたいな、かように思っております。

長沢委員 今後の、ある意味では制度設計というものが非常にやはり大事になってくるということだというふうに思います。

 若干、最後に、先ほど森山委員も触れられておりましたが、郵政事業の民営化に関連して、ちょっと何点かお伺いしておきたいというふうに思います。

 先ほども話が出ました、八日の情報システム検討会議で、いわゆる郵政公社側の説明とそれから準備室側の説明と食い違ったということでございますね。

 ちょっと確認したいんですが、この八日の日にシステム検討会議に出て、公社の側からシステムについて、準備室側は、暫定的なシステムなら分社化が可能という見解を示したというふうにブリーフをされた、しかし、それは説明した事実と全く違う、逆にこういう問題点があるんだということを指摘したということだったと思うのですが、この八日の段階で、システム検討会議で公社の側からすればこういう問題点があるということを指摘されたのは、これは、出てきて言ってくださいという話があったのか、もともとそうだったのか、なぜこの段階でそういう話をされたのか、これについてちょっと明らかにしていただければと思います。

生田参考人 第二回と思いますけれども、第二回のシステム検討会議で委員の方から、非常に難しい状況は大体わかってきた、すぐには難しいね、だけれども、難しいことを踏まえながらも、二〇〇七年四月までにどれだけ思い切りやればシステムができるのか、どういうものができるのか、四月までに間に合うものを一遍出してみてくださいという御要請を受けて、それで公社に持ち帰ってみんなで知恵を絞って、できるだけアクセルを踏めばどのぐらいかなということを出しまして、こういう点は整備できます、というか、一年半しかないわけですから、それはほとんど今やっているシステムをそのまま使うということですよ、そういうものをお出しして、ただし、これだけでは、分社化ということにするとすれば、A、B、C、D、Eの問題点がありますよ、それをどうお考えになるのか、我々としては、それでは初めにイメージしておられたような的確な分社化はちょっと無理なんじゃないかと思うけれども、それは御検討ください、こういう報告をしているわけですね。それでよろしゅうございますでしょうか。それは全部、ICレコーダーにばっちりレコードが入っておりますので。

長沢委員 ちょっと二つ続けて質問します。

 一つは、今御説明いただいた経緯の問題で、経緯はよくわかりました。こういうことを機に、準備室、政府側と公社の間で相互の信頼感が低下していくというようなことがあるのは、もしそういうことがあるとしたら、それは民営化の議論を進めていく上で大変な障害になるというふうに私は思いますし、信頼回復のための手だてをある意味では考えなきゃいけないというか、恐らく、お互いの信頼を高める上でもうちょっとこういうふうにしてくださいという、先ほどちょっと総裁が触れられていましたが、要請をされているのかどうか、それは具体的にどういうことを要請されているのかということを、もう一度ちょっと整理して伺いたいということが一点です。

 それからもう一点は、先ほど来もありました九日付の竹中大臣あてに提出された意見書、これの中で、いわゆる有識者会議の議論が基本方針に抵触するという言葉が何度も総論部分で出てくるんですけれども、特にどういうところでこの基本方針に抵触しているというふうにとらえられているのか。あえてこの基本方針からはみ出しているということを随分強調されていらっしゃいますけれども、いろいろな中身は出てくるんですが、特に、その基本方針から外れて、ここは公社の方から見てなかなかのみ込めませんよというふうにおっしゃりたいところについて、もしあれば、この二点、お答えいただきたいと思います。

生田参考人 まず、初めの点にお答えします。

 信頼関係も不可欠だと思います。これはもう竹中大臣とも渡辺さんとも、初めから、一致協力、二人三脚でいろいろ考えていきましょう、公社は全面的に協力しますというお約束をしておりまして、そのとおりやっております。今もそのとおりやっていますし、私は竹中さんや渡辺さんも信用しています。何かそごがあったんだと思うのです。だから、一体どういう背景でそういうことになったのか、どういう措置をとるおつもりなのか、それをお聞かせいただきたいという、電話ですけれども、電話で渡辺さんに申し上げて、その後もばたばたしておりまして、まだお返事を私、直接聞いていませんので、きょうでも帰ったら時間があれば伺ってみたい、こう思っています。信頼は絶対に回復さすべきものだと思っております。

 それから二番目に、有識者会議での議論は、御説明の中で申し上げたんですが、要するに、有識者会議、別にこれは決定権を持っていらっしゃらないんだけれども、だから自由に御議論をされているのはそれは合目的なんですけれども、どうも時々、基本方針とかそれから五原則と抵触するというか、相入れないような御議論が多いという点が一番気になって、そこを常に原点に戻って、何かあればそれは基本方針に合っているのかどうか、五原則に合っているのかどうか、そういうことをよくチェックしてやっていただきたいということ。

 時間がありませんから、二、三言えば、新会社の経営の自由度を拡大するということを基本方針ではうたっているわけですけれども、有識者会議の御議論では、新しいビジネスモデルは原則認めない、常に新会社の、私は仮想的だと思いますが、仮想的な肥大化、民業圧迫、こういうものを防ぐという視点からすべてを御発想になっている。

 それから、方針には、市場を活性化し競争を促進し、ひいては国民、消費者の利便性を増すというふうになっているんですけれども、これも民業圧迫という名前で、実は競争排除。結果としては、既存の業界の利益にだけなってしまって、新しくできた民営会社というものはがんじがらめの規制で、厳しい監督を受け、どうも先細りになってしまうんじゃないのか。

 さらに、基本的に思うのは、同じ有識者の御議論の中では、にもかかわらず、できるだけ早く株を放出して、民有民営を十年待たずに早くやっちゃえとおっしゃっているようなんですけれども、それ以外のいろいろな御議論からいくと、新会社というのは新しいことをほとんど何もできないわけです。費用の方は民間会社と同じように初めから払わされる、そんな会社が成長して発展していくわけがないわけですから、コーポレートバリュー、企業価値というのは、上がるというよりもどちらかといったら悪くなる可能性があるので、幾ら株を放出しようとしても買い手がつかないというようなことすら考えられるんじゃないのかなと思うので、その辺、論理の一貫性といいますか、つじつまの合った御議論をしていただければありがたいな、こういう思いであります。

 新しいことを提案しているのでも何でもない、政府の基本方針と五原則に立ち戻ってよく考えていただきたいということをお願い申し上げているだけであります。

長沢委員 終わります。ありがとうございました。

実川委員長 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 決算を総務大臣から御報告いただき、また補足説明を総裁からいただきました。公社としての初年度の決算でありますけれども、私は、生田総裁の経営御努力は大変なものだというふうにまず評価をいたします。まだまだ足りない部分、やっていただくべきものはありますけれども、かなり大幅に経営を改善されたというふうに評価をさせていただきます。

 私としては、当面の、今焦点となっております民営化については、今国民経済にとってあるいは国民にとってどうなのか、あるいは国民経済的に日本の金融資本が効率的に回っていくかという観点から、今一生懸命勉強をさせていただいておりまして、そういう意味ではかなりニュートラルだ、いい民営化もあれば悪い民営化もあるという観点を持っているということをまず表明させていただきたいと思います。

 その上でこの決算を見せていただいたわけですが、まず私は、簡易保険の分野に、勘定に注目をさせていただきました。

 急な資料で大変申しわけないんですが、お手元に一枚紙をお届けしてあると思います。これは、平成八年から簡保は三利源を公表されております、それから、金融庁は平成十三年、JA共済も平成十三年度から三利源の公表をいたしておりますので、私の方でインターネットで調べたり、あるいは直接、金融庁、農水省に問い合わせまして、表をつくらせていただきました。

 これを見ていきますと、当然ながら、超低金利政策、実質ゼロ金利政策のために利差が大きな額でそれぞれ出ております。そして、簡保のところに出ている予定利率、運用利回りというものも、特に運用利回りは急激に落ちてきております。生保でも、中堅生保がかなり傷んでもう既に破綻を来しております。今の金融状況が続く限り、やはりこれから先も一定期間、相当期間と言いかえていいかもしれません、利差損は相当大幅に出ると思います。

 過去の高い予定利率のものがだんだんアウトしていきますから、予定利率が下がっていることも事実でありますけれども、しかし、それ以上に運用利回りが大変厳しい状況になっているということで、これは、私は、一目見て最初に言えることは、簡保の規模、百二十兆円という規模があるから、あるいは政府保証という安心感があるからもっているのであって、規模が小さくなった場合、あるいはこの金融状況が続く中では、簡保というのは極めてリスクの大きい事業になったというふうに思うわけであります。規模の利益、政府保証でもっているということが言えるのではないかと思います。

 そして、総裁は簡保も激やせしているんだということを言われておりますけれども、その激やせの要因というのを何とお考えになっているか、そして、将来的な見通しをどうお持ちかということを、この数字を見た上で簡単にお話をいただきたいと思います。

生田参考人 先生御指摘のとおり、民間の生保も同じですけれども、簡保も非常に苦しい経営を強いられております。

 まず、利差のところですが、十六年度は一兆八千億という数字を考えております。十五年度は二兆円、少し減ってきております。民間の場合には基礎三利源合わせますと皆黒字になっているんですけれども、我々だけが赤字ということで大変遺憾に思っているんですが、それは利差損のところでありまして、その理由が何かというのは、公社成立時の有価証券の評価がえ、いわば損を補うために利益を先にとるような格好で、アモチ損と呼んでおるようでありますが、七千百億円が計上されたために利差損がこれだけ大きいということになっております。

 三利源合わせましてやはり黒字になるのが、常態といいますか健全体、当然のことだろうと思うのですが、これを回復するのにはまだ数年を要するだろう、こういうふうな感じで、それはそれで深刻に受けとめております。

 それから、政府保証があったから商売できたんじゃないか、百二十兆という規模があったから健全になっているんじゃないかというのは、そういう面をもちろん否定はできないと思いますけれども、私が地方回りしながら肌で感じている感じからいきますと、余りそういうことを、もちろん考えていらっしゃるでしょうけれども、民間の生保とは違って平均で三百万円ぐらいですから、低額の、万一に備えて保険を掛けておこうというのが、それこそ全国にお客様がまたがっているものですから、合わせると大変大きくなっている、こういうことだろうと思います。結果として額が大きいだけに、我々は慎重であるべき。

 これは、平成十五年度は百十八兆まで下がっていますが、公社の最後の十八年度は百十四兆ぐらいになる、平成二十五年には大体九十兆になってくると思います。徐々に下がってくる。だけれども、やはり大きい。

 その間、それを健全にやるために、我々の今推進しておりますコンサルティングセールス、お客様の身になってのファミリーバンクとしての機能をさらに果たしまして契約をいただくというようなことや、きめの細かな資金運用を図る、業務プロセスの見直し、JPS、無理、むら、むだを排するという概念は、今全公社に適用しておりますので、そういったことでの事業費の軽減というようなことで経営の健全化に努力をしていきたい、かように考えております。

 ただいま先生御指摘の非常に難しい状況にあるんだよというのは、十分認識していきたいと思っております。

五十嵐委員 激やせの要因というのをお話しにはなられなかったんですが、どうぞ。

生田参考人 激やせの要因は、市場が保障性の方に軸足が非常に寄ってしまって、一般生保の方はそれで随分稼いでいらっしゃるんだけれども、大ざっぱに言うと、簡保の方は貯蓄型が主流になっているということで、市場性が希薄になってきていたというのが背景だろうと私は思います。

 それゆえに、地方をずうっと回りましても、多くのお客様から、民保とは違うんだから、民保と同じにすることはないんだけれども、多少は保障性のあるものを組み合わせてくれないと我々のニーズは困るんだという大変大きなお声を受けまして、民間は十倍、二十倍型をやるところを、二倍、五倍型という非常に小さな格好でお客様の御要望にささやかにおこたえすることによってしのいできている。

 往年は年間一千億の保険料収入があったんですが、それを中期経営計画では八百億にしようということで、健全なスリム化をねらいました。ところが、公社を上げてみるとそれが七百億になり、さらに六百億半ばぐらいまで来たところで例の二倍型、五倍型を入れさせていただきまして、今、大体六百四十億ぐらいで激やせどまりして横ばいに入っている、こういう状況でございます。

五十嵐委員 激やせしていないんですよね、実のことを言うと。JA共済、それから各民間生保の決算も出そろっておりますけれども、全体の全国のシェアは、JA共済は一三・五%から一三・六%に〇・一ポイント上昇、簡易保険は、簡保は一一・五%で変わらずということで、シェアは全く変わっておりません。激やせという意味でいえば、それは、生命保険全体が第三分野に押されて、いわゆる国民の側の、消費者の側のニーズが変わってきた、掛け捨ての保険の方にむしろ移ってきているということが例えば言えると思うのですね。ですから、総裁が激やせで心配だ心配だと言うけれども、それは生保全体の運命の話だろうと思います。

 それから、逆ざやが生じておる、その大きいのは公社に移ったときの評価損を負っているからだというお話がありましたけれども、逆ざやは各生保ともみんな負っているわけですが、これは一方では、ここまで逆ざやが拡大したのは、見通しが悪いということもあるんでしょうけれども、やはり、簡保が先頭に立って予定利率の引き上げをしてきた、その引き上げ競争につられて民間も予定利率を高目に設定していった、そのために逆ざやが拡大したんだ、こういう分析も一方で専門家の間でなされているようですけれども、つまり、簡易保険の役割というものについて、あるいは民間への影響というものについて、こういうところにもやはり問題点はあるのではないかなと私は思うわけですが、その点の認識はお持ちでしょうか。

生田参考人 民間生保がどういうビヘービアをおとりになったか、経営判断されたかというのは、ちょっとコメントする立場にはないわけでありますけれども、保険料の計算基礎の設定というのは事業経営の根幹にかかわりますので、簡易保険、民間生保ともに、経営陣がおのおの、いろいろな要件を眺めながら独自の判断で決定しているということじゃないかと思います。現在、民間生保が採用している予定利率を見てみましても、大体一%から二%程度というふうなことで、各社の判断で弾力的に設定していらっしゃるのじゃないかと思います。

 また、過去の予定利率の引き上げの経過を見てみましても、必ずしも簡易保険が民間生保に先行していると言い切れない面もあるんじゃないのかなというふうに、過去のレコードを見てみますと、私は感じております。

五十嵐委員 すみ分けしている、小さくて簡易で、そういう分野にすみ分けしているからいいんだと言うけれども、しかし、実際には、そういう民間との競争という面が当然出てくる。なぜ、それでは国で保険事業をやらなければいけないのかという問題、当初は当然そういう大きな意義があったと思うわけですが、今ではその意義は大きく変わってきている。ですから、見直しの議論が特に簡保の分野については起きても当然だろう、ある意味ではそう思うわけであります。

 そして、例えば、あまねく郵便局で取り扱ってもらえるから便利だ、そういう論議があるわけですけれども、実際には、個人の契約というものを見ると、簡保が東京や埼玉では断トツなんですね。個人保険のみの保有契約件数を見ると、東京では、簡保が約六百四十八万件、二位の民間生保が百六十一万件ですから、もうガリバーに近いようなかなり大きなシェアを個人分野では占めています。東京です。そして、埼玉では、簡易保険が三百二十万件で、県民共済が百六十一万件、民間の三番手が九十三万件ですから、ここでも相当大きなシェアを占めている。

 田舎で便利に、田舎でというのは大変失礼な言い方ですが、地方あるいは過疎地域で便利に使っていただいているからいいんだということとは実態が違って、実際には東京で貯蓄がわりに、あるいは首都圏で、人口密集地域で使われているということもある。これはやはり、競争という側面が、民間との競合という側面がかなり出てくるのではないかと思います。

 そこで、そういう議論があって私は当然だと思うのですが、一方で、先ほど、簡保事業に関連して、合理化がかなり生田総裁のもとでなされてきた、それから、公社になるときにもう整理がされたんだというお話が総裁からもありました。私は、総資産を公社になったときのを比べてみますと、八兆円ぐらいたしか縮んでいると思うのですが、そのうち大きなものは株の減価、それから土地の減価だと思うのです。そのうちのかなりの部分が簡保事業にかかわるものではないかなと思うのですが、内訳が示されていないのでわかりません。それはそういう認識でよろしいんでしょうか。

生田参考人 申しわけないのですけれども、今ちょっと手持ちに資料がございませんので、こういうときはどうしたらいいんでしょう。後ほどお届けすることでいいんでしょうか。

実川委員長 では、後ほど五十嵐委員のところへ。

生田参考人 いいですか。では、そうさせてください。

五十嵐委員 資産の査定を行って、公社に会計が移されたわけですけれども、そのときに、全体で八兆円ぐらいデューデリの結果縮んでいます。かなりの部分がその土地と株だということは聞いております。それがどの分野にかかわるものかというのは発表されていないので、後で資料としていただきたいと思うのですが、私は、やはり、かんぽの宿とか、簡保の船だとか、そうした分野の部分が大きいのかなと想像をいたしております。

 ということは、逆に言いますと、今言われている民営化というものは、公社、公団、特殊法人へのむだな資金の流れを入り口で糧道を断つために必要なんだと言うけれども、その公社、公団、簡保でいえば簡保事業ですね、事業団があったわけですけれども、これを整理すれば、実際には糧道を断たなくても直接整理できるじゃないかというのが一つの論点であります。

 したがって、なぜ、直接的にそういうことをおやりになれる状況に今なっているにもかかわらず、その糧道論だけを、入り口論だけを言うのかというそもそもの疑問が私にも生じてきているということをまず指摘させていただきたいと思うのです。

 生田総裁、そういう意味で、公社自体も整理を大分されたと伺っておりますが、いわゆるファミリー企業や関連公益法人、関連の会社、こういったものの整理合理化についてどのような考えをお持ちか、今既にやられた分で十分だと思われているのかどうか、伺いたいと思います。

生田参考人 まず、さっきの資産の面につきましては、後ほど資料を届けさせていただきます。

 それから、二番目に、公社として、余分なものといいますか、整理できるものは整理していくということでやっているんだけれども、例えばファミリー企業とか関連会社をどうしているかという点にお答え申し上げます。

 公社としては、方針としましては、極力、不要不急といいますか、要らないものは整理していくし、不公正なものがもしあるとすれば、それは公正化していく、そういう基本理念で動いております。

 まず、ファミリー企業と言われるものの多くは、公社と取引のある会社だというふうに思いますが、これは一般公開競争入札というのを徹底しておりまして、一億円以上は全部、投資・調達委員会の審議に事前にかけるわけであります。それで、五千万円以上のものは、事後でもいいから、その説明責任を持って、やはりその委員会にかけて承認を得る、こういう手順をとっておりますし、どうしても一般公開競争入札になじまない、どうしても随意契約をしなきゃならないものは、千六百万円以上は全部事前に委員会にかけて審議して承認をとる、一千万円以上のものは事後でもいいから説明責任を委員会に果たす、こういう手順でやっておりまして、これは極めて厳格に行われております。

 ほぼ毎週ぐらい開かれておりまして、ここでふるいにかける。例えば、ファミリー企業があるとしましても、そこに応募してきて、そこで競争要件を満たさなければふるいにかけられる、こういうふうな形になっておりまして、その結果として、何社かのいわゆるそういう企業がみずから整理統合するというふうなことを今現に進行中でやっている、こういうことであります。

 それと関連でありますけれども、関連会社はどうするのか。例えば、かんぽの宿などをイメージしていらっしゃるのかなというふうに思いながら伺ったわけでありますが、これも一軒一軒全部採算性を出しまして、恥ずかしい話ですけれども、ほとんど赤なんですよ。だけれども、それはいつまでもやっていられないので、みんなバーを決めまして、一定限度以上の収益率が悪いものは順次処分していくということで、全部で百カ所ちょっと超えるんですけれども、年間五、六カ所ずつ整理をしていきまして、公社の間に、収支が大体すべて相償うようなレベルまでに改善をしていく、こういう格好でやっております。

 何分、人も絡む問題ですから、一挙に、ある日突如ばっさりというのは、これは私は社会科学的になじまないと思います。だけれども、きちんとタイムテーブルをつけまして、一定の基準を設けて公正に整理をしている過程にあるということを申し上げておきたいと思います。

五十嵐委員 私の方も、職員の皆さんからも、かなり最近は厳格にやられているというのは聞きました。

 ただ、郵便業務で、主に運送の受託が多いようですけれども、三十七会社、法人、簡保で三つ、共通業務で十八もの関連の公益法人そして関連会社、子会社をお持ちです。やはり数はかなりまだ多いと思っていますし、何しろ日本は官製談合の国ですから、適正に受託費を決めているといっても、これは内々に予算はこのぐらいだというようなことが伝わる可能性がないわけではないというふうに思っておりますので、なるべくなら公正な競争をやるべきで、子会社はそれほど必要ないのではないか、そのように思うわけであります。

 いかにこれまでむだが多かったかということは、削減額が逆に大きかったということから言えるのだろうと思います。二〇〇三年度の計画比で八百二十三億円も減になった、前年度比で二千三百九十六億円が節約できたということは、総裁の功績であると同時に、これまでいかにむだが多かったかということの証明でもあると思うのですね。そのこと自体、やはり私は、経営形態論というよりも、もっと事業全体、官業のあり方全体をまず見直す必要があるんだろう、郵政公社はたまたまいい経営者が来たからこうなっているけれども、いまだにこのようなことを続けている省庁、関連の公社、公団、特殊法人がいっぱいあるんだということを申し上げなければならないと思います。

 それから続いて、決算の状況について気づいたことを言わせていただきたいんですが、郵貯、簡保の資金のうち、国債に振り向けられている部分が三九・三%、財政融資資金預託金が三二・七%、七割強が国の財政、財投を引き受けているわけであります。また、地方債が四・八%、そして地方公共団体への貸付金が六・一%あります。一割強、約一一%が地方を支えている、こういうことであるわけであります。

 一方で、支えているという言い方になりますけれども、これが民営化された場合に、先ほど、自由に運営をさせていただきたい、それが民営化の意義だというお話も、同僚議員の質問に対する総裁の答弁の中でありましたけれども、これは国債、地方債の、支えている一方でリスクもあるということです。ここまで財政状況が国、地方とも悪くなると、特に地方債のリスクは大きくなると思うのですが、そうなると、国債のリスクウエートは、バーゼルでゼロになるか、それともリスクをかけろというふうになるかわかりませんけれども、私はやはり市場的にはリスクがあると思うわけであります。そうなると、もし民営化された場合に、こういったものを引き続き引き受けられ続けるかどうかという問題が生じてくると思います。

 国債、現状では、公社としては当然のことだと思うわけでありますけれども、この比重、この将来のリスクについて、総裁はどのようにお考えになられますでしょうか。

生田参考人 公社といいますか郵政事業の金融部門の議論の場合に、出口論と入り口論が混同されるケースが多いと思うのですよね。出口論が過去よくなかったから、したがって入り口を閉めろ、こういう議論が往々にして行われるんですけれども、これを切り離して考えるべきで、私は、入り口の方は、国民の大切な生活インフラですから、これはきちっと維持すべきだという信念を持っています。入ってきたお金は、今度は、過去がよくなかったとすれば、国債、財投等相応分を支えつつも、やはりいいお金として、生きたお金として市場あるいは個人あるいは地方に流していく、そういうふうなことができたときに、日本の経済は活性化するし、経済の持続的発展に資する、まず基本的にそう考えております。

 ただ、それがゆえに、もし今先生が地方債などを買うのを義務として負えということをおっしゃったのならば、先の経営者は私じゃないですから先のことは言えないんですけれども、一経済人として、それはやはり過酷じゃないか、国債も含めて。なぜならば、民営化されれば民間会社ですから、経営者としては経営判断で一番いい資金運用の方法を考えるのは当然であり、逆にそれは義務ですから、その中で、何らかの措置によりまして地方債、国債を強制的に買えと言われれば、それはほかの民間会社に対して大きなハンディになるわけですね。そういう場合は、それに応じての、コインの両面ですから、そういう義務を負うのであれば、税とかその他のところでの対応した措置が必要、こういうふうに思うわけです。

 一番自然な方法として、私は各地で申し上げているのは、やはり国債も、早い話、少なくともリサイクルしていかなきゃいけないでしょう、地方債もリサイクルが必要なんじゃないでしょうか、だからといって、多分新しい経営陣は、明らかに損をすると思ったら、それは買わないと思いますよ、だから、ALMの中に国債なり財投債なり地方債を組み込んでおくのが経営者としてやはり適切だ、安心、安全もあるし、条件も悪くない、一定量組み込もうと思うような、そういうふうに経営者に思わすような国債や財投債や地方債の商品性を整備していただくことが将来は必要なのではないでしょうかと申し上げております。

 実際に買うか買わないかは、新しい経営陣の経営判断だと思います。

五十嵐委員 私は今の総裁の意見に半分うなずきます。それは当然のことなんだろう、経営者としては。百四十兆円もの国債を今、現時点で保有しているわけですから、これが、長期金利が上昇すれば、リスクは膨大なものになるというのは当然でありますから、経営者としては適正なパーセンテージで持たざるを得ない、これは当然のことだろうと思うのですね。

 ですから、本来の改革というのは、おっしゃるとおり、入り口論よりも、根本的な改革というのは、本丸だとおっしゃっているけれども、本丸は、そうじゃなくて、国債の残高を減らすような財政運営をすることであり、むだに特殊法人等に流す必要がないように、特殊法人等の整理をきちんとすること、事業を見直して縮小あるいは廃止をするということが私は大事なんだろうと思う。

 そういう意味では、財投債なんか引き受けちゃいけないし、財投債なんか出しちゃいけないんだ。ちゃんと市場の評価を得て、財投機関債で市場の評価を得て、そして、これは大丈夫と思ったら、その利益に応じて買うということでなければならないんだろうと思います。

 そのことを論じないで、入り口論、出口論、おっしゃるとおりに、ごちゃまぜの論議が行われている。だから、そもそも論に戻ってしまう。私も総裁の準備室への意見書というのを拝見させていただきまして、これは、そもそも論に一たん戻らないと解決しませんよという話なんですね。私は、やはりそこへかかってくるんだろう。

 それから、もう一つ、それと同時に、ただ、そもそも論の一つにサイズの問題というのはやはりあるんですよ。それは、経営者の立場からすると大きいことはいいことですから、経営者としてはそう言わざるを得ないというのはわかるんですが、国の設計として、国民経済全体として考えれば、やはりサイズの問題は出てくる。

 急激にサイズが膨らんできた。この十数年間の間にやはり郵貯、簡保は肥大化してきております。郵政三事業は拡大をしているわけですから、それがどのような国民経済的な影響を与えているのか、このままでいいのかどうかというのは、やはり見直す必要がある。

 それから、先ほども言いましたように、サイズの問題に関連して、よい民営化と悪い民営化、総裁とは使い方が違うかもしれません。官業の方がまだコントロールはできますね、民の独占、寡占というのはコントロールがしにくいですよ。

 そして、特に、今まさに総裁が御指摘をされたように、依然として、現実的な経済の上では、財政、そして地方財政を支える必要があるという公的な要請があるわけです。この二律背反、事業体の運営としては、利益を上げなきゃいけないし、倒産をさせてはいけないし、安全な運営を図らなければいけない、しかし一方では、その公的なもうからない分野への出資あるいは支出を迫られるということがあるわけですから、ここをきちんと整理しなければならない、その指摘がなされているのがこの意見書だと思っています。

 これに対して、実は、内閣府、おいででありますけれども、私、返事を出さないのかと聞きましたら、これは意見として承っておくだけだ、これはあくまでも有識者の御意見に対する公社としての御意見なので、準備室としてあるいは政府側として答える性質のものではない、そういうお返事をいただいているわけです。

 私は、そうではなくて、これはそもそも論へやはり戻る必要がある、思考停止して、それこそ、先の詳細設計、詳細設計と走っていったら、もとがわからなくなってしまう、そして経営者の経営裁量権に属するものまで縛ってしまうという御指摘だと思うのです。そこになってしまうのは理の当然でありますから、そもそもの国の設計、そもそも民営化というのは何なのかというところに、いい民営化は何なのかというところに戻っていかなきゃいけないんだという御指摘だと思うのですから、答える義務があると私は思います、政府側にも。

 その点、現時点で、この後、午後にでもお答えを求めに、催促したいと総裁はおっしゃっているんですが、政府としてはどういうふうにお考えになるか、内閣府の方から伺いたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 十一月九日付の、総裁の書簡という形で、竹中大臣に出された書簡でございますけれども、その中では、新会社の経営の自由度の拡大のあり方につきまして、それと対となるイコールフッティングのあり方、それから民有民営のあり方、そういうものにつきまして有識者のこれまでの議論を踏まえた御指摘をいただいたわけであります。

 有識者会議というのは、あくまでこれは竹中大臣に対する助言機関でありまして、そこで何らかの決定を行うというものではございませんで、制度設計、それから法案作成というのは、郵政公社を初め関係者と十分に調整しながら進めていくということでございます。

 生田総裁が御指摘の、基本方針や五原則をしっかり踏まえた検討を進めていくことが重要だというふうに書簡の方で書かれておりますけれども、それは全く同じ考えでございまして、そういったものも踏まえて、今後とも公社とも密に相談しながらこの制度設計をやっていきたいというふうに考えております。

五十嵐委員 何かよくわからないんですね。その細かい制度設計を公社とも相談しながらこれからやっていくんだからいいではないか、特にここで答える必要がないというふうに聞こえましたけれども、そうではなくて、今私が言ったことを聞いておられないんだと思います。

 そもそも、設計そのものに触れるような論議になっていますよと、形態論が先行しているからそういうふうに詳細設計、詳細設計になっていっているのであって、一たん、問題が起きたときは、もとへ戻して考える必要があるのに、思考を停止しちゃっているんですね。思考を停止してしまって、もう七年度の民営化、そして十年後の民有民営化ありきだということが先に来ているものですから、そういう論議に、細かい詳細設計へと入っていっているんであって、その民営化という言葉自体も私はどうもあいまいに使われているんだろうと思います。

 民営化じゃないんですね。政府が株を持ち続けているということは民営化じゃない、ただ株式会社化するというだけです。民営化というのであれば、それこそ、総裁がおっしゃるように、自由に経営させなきゃおかしいわけです。だと思います、私は。だから、これは半分民営化であって民営化じゃない。ただ民営化という名前を、小泉さん、自分の手柄で欲しいから、民営化だ、民営化だと言っているだけであって、民営化じゃないんじゃないですか、これは。

 だから、そこに矛盾が起きてくる。民有民営化、民営化という言葉の使い分けも起きていますけれども、民営化という意味がそもそも違っているからそういうそごが起きてくる。どの部分は税金を使ってでも守っていかなきゃいけない分野なのか、どの部分は民間に全くゆだねてしまっていいのかという議論がある。

 それから、国民にとっての視点が、私は双方に欠けていると思うのですね。先ほどリテールという話がありましたけれども、地域の金融機関として親しまれているとか信頼性があるんだということをおっしゃっているけれども、今の郵貯というのは、地方でお金をかき集めて、中央へみんな持ってきて、中央政府の都合で突っ込んでいるということですから、地方にお返ししていないんですよ。地方で集めたお金を地方にお返しをして、地域の活性化に使うという観点が全くない。これは私は、地域の金融機関と言うにはおこがましい、こう思うのですね。

 ただし、これを本当にやっていくためには、先ほど言ったように、サイズの問題が私は出てくると思う。官業が、官業出身の民業がでもいいです。官業出身の民業が本来の民業をみんななぎ倒してしまったら何にもならないわけですよ。零細な地域金融機関、信組、信金をなぎ倒すというようなことがあってはならない。

 しかし、一方では、地域で集めたお金を、その地域の金融機関として生き返るならば、もし分割してそこで使えるならば、それはそれで意義がある。そういう設計をするならわかる。ただ、見せかけの分割をして、実際には一体的に運営していって、そして、それは民営化なんだ、自由にやっていただくんだといっても、実際には自由ではないという大きな矛盾が出てくる。民業論の観点からも、それからリスク管理あるいは金融の効率化、資本の効率化という意味からも、大きな矛盾があちこちに出てきてしまうんだろうと思います。

 私の指摘で間違っているでしょうか。総裁の感想を伺いたいと思います。

生田参考人 立場上、私、政策立案者じゃございませんので、余りストレートにお答えするのはいかがか、控えさせていただきたいと思いますけれども、おっしゃっていることで、そうだなと思う点はたくさんあったと思います。

 一つ、これは先生の御質問に対する直接の答えじゃないんですが、サイズ、別に我々はサイズを求めていないんですよ。サイズは、だんだん減ってくる、健全なスリム化に持っていこうということで考えておりまして、平成二十五年には、先ほども申しましたように、簡保でいえば多分八十兆か九十兆になるでしょうし、郵貯の方も百五十兆ぐらいになるだろうと思うのです。

 なぜかというと、それは自然に還流するんですね。確かに、今物すごくでかいんですけれども、それは、例えば一九九〇年のときの郵貯、簡保と、最盛期の二、三年前を比較しますと、倍ぐらいになっているんですよね。だから、単に、たったの十一、二年の間に、金融システム不安があった、生命保険会社もいろいろと問題があった、安全だからこっちに持っていこうというので、二倍になっているんですね。

 だけれども、いろいろ改革も進んできて、金融システムに今不安を持っている人はほとんどいないと思いますね。生保もしっかりしてきた。自然にお金は還流していっているわけで、平成二十五年、今後の十年ぐらいの間に二百三、四十兆まで戻るだろう、もうその現象はどんどん起こっていますから、そうなっていくだろうと思います。決して、公社が肥大化しようなんて思っておりませんので、そこはちょっと御認識を改めていただいたらどうか。

 やはり、内容は、収益性をどうよくするかということと新分野だと思います。有識者会議なんかでも、今ある経済単位を常に一〇〇と考えて、公社が出てきたら片方がへっこんで、民業が減ってと。私は、それは基本的に間違っていると思うのですよ。やはり改革によって生きたお金にして、その一〇〇を一二〇、一五〇、できたら二〇〇にしようというのが私は改革だろうと思うのです、経済単位を。

 だけれども、常にゼロサムゲームで、今やっている商売を一〇〇として、だれかが出てきたらだれかがへっこむから、民業圧迫だからやめた方がいいという非常に狭い議論になってしまっているので、そうじゃなくて、出口のところをきちっと考えていただいて、日本国の成長分野に資するような格好でそれが使われていく、生きたお金としていく、それで、日本国の経済を一〇〇じゃなくて一二〇、一五〇にしていく、新分野を開いていく、そういうふうなゼロサムゲームから早く脱して、日本の成長を求める、それが構造改革だろうと思いますし、日本国の持続的経済成長につながる考え方じゃないかと思っております。

五十嵐委員 今のに私は異論があります。半分当たっているんですが。

 要するに、意見書でも暗黙の政府保証を否定されていますけれども、私はあると思うのです。それは、国民の側がそう思っているからです。現実に、国民感情としても、やはり政府の事業であるということに対する安心感、それから、大きいものはつぶれないであろうという安心感というのは当然あると思います。ですから、思っているように、そんなに急激な規模の縮小というのは起きないだろうというふうにまず私は思っています。

 それから、起きたとしても、今、サイズとして、簡保で八十兆から九十兆、郵貯で百五十兆とおっしゃられましたけれども、これでも非常に大きな規模だということですよ。こんなお金を運用できる会社が、能力が、民間の会社でもどこにあるんだということなんです。それは非常に大きなリスクであるということを認識されなきゃいけないし、こんなマーケットがあるのかということです。

 これを運用するんだったら、多分運用し切るにはデリバティブを使わなきゃいけないと思いますが、これはばくちですから、日本人が一番不得手な分野ですから、大穴をあける可能性もあると思うのですね。現実に、百五十兆や八十兆や九十兆もすごいサイズなんだということをどう考えるのか。竹中さんはわかっているはずなんですが、わざとそこはもう言わないで済ましているように思われます。

 このサイズの問題というのを総裁は楽観的に見られているけれども、私は、そうではない、マーケットはそんなにありはしないんじゃないか、将来的につくればいいと言うけれども、そんなに生まれやしないんじゃないのという話があると思うのですよ。その点について、一点、確かめたいと思います。

生田参考人 縮小に向かうのは、ほぼ確実に向かうと思います。それは僕は、お互いにゲスワークですから、どっちが正しいとは決められませんけれども、公社の中のシミュレーション、非常にまじめにやっていますけれども、縮小に向かうことは事実だと思います。

 だけれども、やはりそれはでかいじゃないか、もうおっしゃるとおりだと思う。私、数字を見て、いつも恐怖感を感じています。それをどう安全に、市場でもつような格好で運用をしていくかというのは、新しい経営陣が抱える極めて大きな課題だ、リスクを伴っている、それはもう全く同じ認識をしております。

 その額と、これは言わずもがなかもわかりませんが、国ないし地方が必要とする資金が、プライマリーバランスが回復するとしても、二〇一三年とか何か言われていますけれども、一定のお金は要るわけでしょうから、強制されるものではないけれども、その辺の国債管理政策あるいは地方の自治体の財政管理政策との連動で、百何十兆が突如市場で暴れるなんということは絶対起こらないような状況で、何らかの方策があるんじゃないか、知恵が絞られるんじゃないかと期待しております。

五十嵐委員 もう一つ、やはり官業を引きずりながらの民業にならざるを得ない、半官半民にならざるを得ない部分がありますねということを先ほどから申し上げております。そこが問題なんだろうと思います。

 おっしゃるとおり、民間の企業の側の恐怖心だけでそちらの側に立っておれたちにもうけさせろという意味で民間が言っているとしたら、それは考え違いだと私は思いますけれども、官業を引きずりながら民業、民営化だという名目のもとに何でもやれるということになれば、先ほど言った暗黙の政府保証なり明示の政府保証なりがくっついてきちゃうじゃないですか、好むと好まざるとにかかわらず。ですから、そこは非常に大きな問題ですね。

 そこの整理がどうも、今ファイアウオールだとかなんとか言っていますけれども、勘定を別にするけれども一体運営だというんだったら、私はファイアウオールにならないと思いますし、私はやはり、半官半民、官業を引きずった民業にならざるを得ない、その部分が非常に重要な問題なのにきちんとそこの論議がされない。そこから先の論議だけを、細かい部分だけしているというのが問題で、これはなぜかというと、小泉総理の趣味の分野になっちゃっていて、その趣味をどうしても生かさなきゃいかぬ、こういうことになっているからこういうおかしなことが起きているんではないかな、こういうふうに思うわけですね。

 本来的に国民の側を向いて、国の根本である国家財政がこんなに借金依存であるということはどうなのか、あるいは、むだな組織がまだまだ残っていることをどう整理するのかというところに手をつけないで、その入り口論だけ言っているところに問題があると思いますが、最後に麻生さんに、きょうの議論をお聞きになって、まだ私の議論も大変不十分で申しわけないんですけれども、私の指摘に対してどうお考えになるかを伺って、終わりたいと思います。

麻生国務大臣 質問予告をいただいていなかったので、いきなり振られて、聞いていてどうか、しかも、私の話は不十分であるという前提で答えろと言われると、それは不十分に答えても文句はないという前提で話をしていただかぬと、理事の方に後で変なことを言われたらかなわぬから、あらかじめお断りをしておきたいと思います。

 この民営化論という話に関しては、株式会社論ではないかという表現は、極めて適切かなという感じが率直なところですよ。いずれにしても、この話に当たっては、新しくでき上がった会社というものが少なくとも今の内容よりよくなるという話にならないと、何のためにしたか意味がないということになりかねない。これは、この問題を担当した、政調会長のときからずっと同じことしか多分言っていないと思うのですが、それが一番肝心なところで、それは一社であろうと四社であろうと三社であろうと、それは一つ一つ皆同じことでありまして、一つが悪くなったら、その分は税金で埋めるなんというのでは、今より話が悪くなるではないかということで、ちょっと認められぬでしょう。

 行政のサービスとして、これもきちんとしたことを考えないと、今よりサービスが落ちるというのでは、これまた、行政サービスを受けている側としては、これは不満が出るのは当然であって、宮城県の山奥とか筑豊の辺では割を食うという話、多分これは出るんだと思うのですね。

 そういった意味では、そこらのところは、きちんとしたものができるというためには、それなりのサービスを維持するには、ある程度の利益をどこかから出しておかないと、そっちの赤の部分は埋められないということになりかねませんので、そこらのところの経営形態をいかにするかというところは最も肝心なところで、これは五原則として一応うたわれておりますけれども、先ほどの総裁のお話のように、その五原則が何となく忘れられているかのごとき話が最近出回るのはいかがなものかという御意見に関しては、私も同じような感じを受けております。

五十嵐委員 終わりますけれども、たとえ税金を新たに投入しなきゃならないとしても、国の仕事としてやらなきゃいけないところはやるべきで、その後の仕切りをきちんとやるべき、税金を新たに投入することになるから悪くなったということではないということを申し上げて、終わります。

実川委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

実川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 第一期日本郵政公社決算について質疑をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 まず、生田総裁にお尋ねをしたいと思います。

 決算につきまして、午前中もるる質疑があったわけでございますけれども、若干重複することがあるかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。

 決算を拝見させていただきますと、郵便、貯金、保険、それぞれに、スタートの一期目としては大変出足は好調と言うと言葉が適切かどうかわかりませんけれども、手がたいなという印象を持っております。その点、総裁には敬意を表したいと思います。特に、郵便などについては予想以上の黒字であったということ、また、貯金についても同様かなという感じなんです。

 まだ一期目ということで、中期経営計画あるいは中期経営目標ということでいいますと四年あるわけですけれども、郵便、貯金、保険、それぞれについて、午前中も、そんなに楽観的ではないようなお話だったんですけれども、改めて見通しについてお伺いしたいと思います。

生田参考人 数字づらだけ見ていただきますと、中期経営計画では、郵便がマイナス二十六億のところを二百六十三億、曲がりなりにも黒を出させていただいた。それから郵貯の方は利益が一兆一千三百五十五億の計画だったんですが、それが二兆二千七百五十五億だった。それから簡保の方は、内部留保を三百二十四億取り崩しせざるを得ないという計画だったんですが、逆に四十一億積み増したということで、いいように見えるんですけれども、決して楽観をいたしておりません。

 というよりも、内容を見れば見るほど、今後が大変だというふうに深刻に受けとめているということを申し上げておきたいと思います。

 それにしましても、そこだけを比較すれば、計画よりよくなったことは事実でございまして、私は、職員が、公社化ということで、民間的経営手法、随分戸惑ったとは思いますけれども、よく趣旨を理解してくれまして、サービス業にあるんだというその現実をきちんと認識して、サービス業の視点からすべてに取り組んだ、このままでは事業が成り立たないということをよく理解しながら、真っ向サービス、生産性の向上ということをやったたまものであろう、こういうふうに考えております。

 三事業について簡単に触れてまいりますと、郵便は今申しましたように二百六十三億の黒字ですけれども、ことしはそれじゃもっと出て、再来年ももっと出てということじゃございませんで、売り上げそのものは、Eメールとの競争というか、別に競争はしていないんですが、Eメールの発展によりまして信書が減るという現象で、これは先進国共通の現象ですけれども、大体四%内外、毎年伸び率が減るというのは各国同じでありまして、我が国も同じ。ことしもまた六百億から七百億ぐらい減るだろうと思いますので、それをのみ込んでいかなきゃならない。この現象は少なくともここ数年続くはずでありますから、私としては、五年ぐらい先回りして、数千億、収入が減るという前提に立って、それでも利益を出せる内容に改革していくということに現在取り組み中でありまして、それが成ったときに初めて構造改革ができるというふうに認識しております。

 その間、営業力の強化、サービスメニューの多様化、商品の品質の改善、それから集配区分等に関します生産性向上運動、購買費の削減、適正要員への、組合と十分話し合いの上での引き締まった格好への調整というふうなことを織り込みながら努力していく、こういうことでございます。今期は、十六年度は、何とか二百億ぐらいやはり黒を出したいということで奮戦中というところがあります。

 郵貯は、二兆二千七百五十五億と大変大きくなったのでございますが、このうちの一兆二千億は信託運用益でありまして、これは株価が上がったから出てきたので、それを除きますと、予算、計画の数字とそんなに違わないわけでございまして、この運用益というのは株価次第でまた下がる可能性があるわけでありますから、そういった意味では楽観を許さず。対預貯金利益率というのを見ますと、〇・四九%しかなくて、例えば三井住友でいいますと一・九%ぐらいあるので、国債、財投債主体に持っているからやむを得ないといえばやむを得ないんですが、こういう利益率では決して健全とは言えないので、それをどう改善していくかというのが将来の大きな課題というふうに考えております。

 簡保も、新契約が随分激減してきたんですが、やっと今水平レベルに入っております。ここで一番問題なのは、三利源、基礎利源ですね。ここが、利差、利率の差のところの益が二兆円も赤になりまして大変な赤字になるわけなので、あと、死差、費差をもってしても約四千五百億の赤字ということで、この基礎のところが赤字というのが大変民間とは違った難しい点でございまして、これの改善にはまだ五、六年かかると思うのでありますが、逓減はしていくというふうに見ております。

 その間、サービスの質の改善、営業力のアップ、それからJPS、これは郵便だけの話じゃなくて、郵貯、簡保にも取り入れております。そういったことでの生産性向上というふうなことによりまして、公社を挙げて健全な公社化への努力をする。

 それで、アクションプラン、今度はフェーズ2になります、平成十七年、十八年。それもやり遂げて、何とか中期経営計画を全うしていきたいというふうに考えております。中期経営計画は、十八年度で郵便が累計五百億円の積み増し、郵貯が三兆九千億以上を積む、簡保が三千億以上の内部留保を積み増しする、こういうのが中期経営計画になっておりますが、これをすべてクリアしていきたい、かように考えている次第であります。

山花委員 今、JPSの話なども伺いました。午前中の質疑でも、埼玉の越谷の郵便局のことが話題になっておりました。私も、行って見させていただいてまいりました。最初は、トヨタ方式というんですか、トヨタという物をつくるところの話ですから、それを郵便局でどの程度汎用性があるのかなと思っていたんですけれども、行って見てみますと、時間の管理の仕方で、こっちでこうやって人数を差配すれば、この分三十分浮くんだとか、そういうのがボードに出ていたりとか、あるいは本当にもう物流の倉庫、物を置くところにもテープが張ってあって、要するに今まで見直すべきところは見直して、そしてまた二階の方ではスペースができたなんという話も伺ってまいりまして、大変御努力をされているなという印象を持っております。

 また、日本郵政公社になったときにも、それこそ総裁のお言葉ですけれども、従来は、郵便局については利用者と言っていたと承知をいたしておりますけれども、総裁はお客様というようなことを言われるのを見ていて、公社ということになってこういう形になってきたのかというような思いをした記憶がございます。

 ところで、今、貯保のことなんですけれども、この決算などを拝見させていただきますと、資金量は、貯金、保険それぞれ六兆円程度前年比減っているということであります。将来的な資金量について、減らないんじゃないかという議論もありますけれども、公社側からは、数年後には二百四十兆程度になるんじゃないかとか、あるいは将来的には百五十兆程度になるんじゃないかとか、そんなような話もあるんですけれども、この辺の資金量の将来的な見通しについて、どう考えておられるのでしょうか。また、将来的にそうやって縮減していくということであれば、当然利ざやも減ってくるでしょうから、そこのところは経営的にちょっと懸念があるんですけれども、いかがお考えなのかということも含めて、御答弁いただければと思います。

生田参考人 中期経営計画におきましては、公社第一期が終了する十八年度末で、郵貯の方が二百八兆円になる、それから簡保の方が百十四兆円になるということを計画しております。減っていく流れに従って、平成十五年度も六兆ずつ減ってきている、こういうのが現状であります。

 ちょっと振り返ってみますと、非常に大きな金額に今なっている、三百五十兆ぐらい両方合わせてあるわけですから。ところが、一九九〇年ごろに視点を移してみると、ということはバブルのまだ生きている元気なころですね。合わせてみると、大体、大ざっぱに言いますと、この資金量は半分だったんですね。ところが、九一年にバブルが崩壊してから、どっとお金が郵貯、簡保に流れてきて、約十一、二年のうちに倍近くなったというのが歴史であります。

 なぜか。いろいろな理由があると思いますけれども、やはり一番大きな客観的な理由というのは、金融システムに不安があった、銀行の再編その他が多く行われた、それから生保の各社も大変御苦労をされて今の格好が出てきているというようなことで、その間の預金者あるいは利用者から見れば、セーフティーネット的な形になって膨らんだのかな、それが一番大きな理由かなと思います。

 その裏返しとして、今、金融システムが確立されて、生保も安定経営に入られた現在、今お客様はずっと資金を民間に返していらっしゃるプロセスになりまして、その流れから見ますと、過去の経験則も入れましてシミュレートしますと、平成十九年以後もこういう傾向は続きます。もちろん、郵貯や簡保のビジネスモデルがどうなるのかというふうなことや、全般的な金融情勢というものにも左右されるわけでありますが、私どものシミュレーションでは、結構当たるんですけれども、十年後、すなわち平成二十五年度には、郵貯の残高は百五十兆前後になるであろう、簡保の残高は八十から九十兆になるだろうという数字を私どもは持っております。これは全然政策的に、何か恣意的につくった数字じゃなくて、一番妥当と思われるデータで客観的にやっているわけであります。

 ところで、今度は経営との問題なんですが、必ずしもサイズが大きいからよく利益が出て、小さかったら悪いということではないわけでありまして、もしそういう論理が正しいとすれば、郵貯のところでも、我々の対預金利益率は〇・四九%であるのに対して三井住友は一・九%、こういう数字があるわけですから。そういうわけじゃないので、減ることにそんなに心配することはないし、残った額そのものも大きな額であることは間違いありません。

 したがって、単純に資金収支、運用収入引く支払い利子というのが、絶対額が、それは全体がへっこむんですから減るでしょうけれども、ALMをどういうふうに運用するかというのを適切にやれば、そしてこれは、もし民営化するとすれば、民営化後のビジネスモデルの開放がどれだけ行われるのかということに大きくかかわってくるわけでありますが、それ次第によりましては、健全な利益率を維持あるいは発展さすことも大変可能性の高いことであろう、こう思います。

 加えまして、国債の販売を今させていただいておりますが、今度、御承認いただけると期待しているんですけれども、投資信託の販売もやることになれば、それはプラスでありますし、その他法律の改正によりまして、他の業者の金融商品等を扱わせていただく、すなわちフィービジネスを拡大させていただければ、健全な経営はやっていける可能性は多分にある、加えて生産性向上をやるということで、次を担う経営者の方たちの知恵次第では大いに発展もあり得る、期待し得るというふうに思う次第でございます。

山花委員 ありがとうございます。

 ただいまの議論がこれから先の見通しということなんですけれども、時間の一部分を切り取って議論をされることがありますので、その点について伺いたいと思います。

 これはことしの七月十六日の有識者会議の中で、委員の方二名より、平成十五年度、昨年の公社決算に基づく試算によると、隠れた国民負担は一兆一千億程度あるいは一兆二千億程度になるのではないか、こんなような発言があったわけであります。

 隠れた国民負担、余りいい響きの言葉ではありませんが、こういう指摘があって、十六年の決算ですから、またしばらくすると、ことしの決算を見てこういう議論をされる方もいるのかな、こんな気がするんですけれども、この隠れた国民負担ということについて、公社としてはどのような御認識をお持ちでしょうか。

生田参考人 隠れた国民負担という表現をしていらっしゃる定義は何かというのを見てまいりますと、どうやら、公社が法人税、事業税等を免ぜられているということと預金保険機構の費用、こういったものを対象におっしゃっていると私は理解しております。

 そういう前提で私が申し上げたいのは、この表現というものは大変不適切というか間違った表現ではないか、平たい言葉で言うと、私としては嫌いな表現であります。

 常に物は両面で見るべきでありまして、私は、それを諮問会議でもコインの両面という表現をとらせていただいたんですが、コインの一面において、なるほど税及び一部費用の免除はしていただいているんだけれども、コインのもう片側においては、ユニバーサルサービスを提供申し上げて費用は自己負担するということに加えて、大変大きなのは、ビジネスモデルに対する厳しい規制であります。ほとんど手も足も出ないようなビジネスモデルに対する規制がある。そのコインの両面で一定のバランスがとれているというふうに私は考えております。

 したがいまして、ビジネスモデルは今のまま手を縛っておいて、それからユニバーサルサービス費用も自己負担よと言っておいて、片面のお金の、お支払いする分だけイコールフッティングにせよというのは、これはアンフェアな考え方でありまして、やるのであれば、コインの両面とも民間と同じようにしたときに初めてコインの両面のイコールフッティングが成り立つ。それを一挙にやるのがいいかどうか、これは別問題ですよ。物の考え方としてはそういうことになると私は思っております。

 加えまして、公社の場合はなぜ免じていただいているか。今言ったユニバーサルサービス費用とビジネスモデルに対する規制に加えまして、自己資本を自分で積めという約束事に公社法上なっているわけであります。公社法上、一応我々の適正な資本金は約七兆円というふうに組まれているわけでありますが、その持参金は公社化のときに持たせていただいていないわけで、一兆三千億だけいただいた、残りはそういう税や費用を免ずるから行った先で自分で積み立てなさい、こういうことで、今、自分で利益を出して積まさせていただいている真っ最中でありまして、それをやっとことしも三兆円前後積ませていただいた。

 積んだ瞬間に、それは国民の見えない負担と言われるのはまことに不適切な表現であろうと思うわけでありまして、私は、それは、最初にいただかなかった自己資本を自分で積んできて、しかもそれを公社のバランスシートにきちんと資産として計上しているわけでありますから、国民によく見える、国民の貴重な財産というふうに表現を改めていただいた方がいいんじゃないかな、こう思うわけであります。

 早い話が、職員が一生懸命努力して、利益が大きくなればなるほど税金はふえますね。そうすると、今、見えない負担とおっしゃっている方の論理に従えば、利益が大きく出れば出るほど、また国民の負担がふえた、こういう表現になるわけなので、お聞きになっている方たちも、何かおかしいんじゃないかなと多分思ってくださるんじゃないかと思います。

 加えて、一言言いましたら、それができるのも七兆円まででありまして、七兆円まで来ると、あとは利益の五〇%を国庫納付することにしております。これは、一般の事業会社が約四〇%税金として払うのよりも一〇%割高なわけでありまして、その意味では、むしろハンディキャップを負いながら国庫に納める義務を負っているわけでございますから、できることならば、この見えない国民負担というのは、いかにも補助金か何かもらっているような誤った印象を全国の皆様にお与えするんじゃないかと思うので、今後、できるだけないことを願っている次第でございます。

山花委員 お気持ちは非常によくわかる御議論なんです。ただ、言葉から受け取る印象のせいなのか、あるいはちょっとこの辺はよくわかりませんけれども、隠れた国民負担という言葉を使っている人は、少なくとも、救いようがあるのは、税金を投入していないね、税金を使っていないねということはわかった上でこういう言い方をされているのかなと。

 一般の方というか一般の有権者の方は、少しその辺はわかっていらっしゃらない方が多いような気がいたしまして、先日も地元で、普通の仕事あるいは自営業の方とお話をする機会があったんですけれども、郵便関係はだって税金使っているでしょうという言い方をされるものですから、いや、使っていませんよ、本当かねと随分しつこく聞かれましたけれども、そういう認識がある方が結構多いのかなと思います。

 ただその点は、やはり従来、国税を使って何かを維持してきたということではありませんし、公共サービスを行うに当たって、公租公課の面で多少のメリットがあったにしても、ユニバーサルサービスを維持するということが義務づけられているわけでありますから、それは現在の形態で見合っている、そういうことなのではないかと思います。

 ところで、せっかく決算の審議でありますので、今、有識者懇談会でも議論になっているようであります三種、四種の郵便物のことについてお尋ねをしたいと思います。

 この三種、四種の郵便物については、今、有識者懇でも、そのあり方についてどうしましょうかということが議論になっているようであります。私は、この三種、四種の郵便物、現在の形で、未来永劫全くいじくるなと言うつもりはございませんし、物によっては時代の変化に伴って形を変えるということはあり得るのかもしれませんけれども、現在、これについては、恐らく三種、四種で黒字になることはあり得ない性質のものではないかと思っております。

 この十六年で、どの程度の収支になっていますでしょうか。数字のことです。

本保参考人 お答え申し上げます。

 十五年度の決算のベースで申し上げますと、第三種では二百十六億円の損失でございます。また、第四種では三十億円の損失になっておりまして、これを封書などの第一種郵便、はがきなどの第二種郵便の黒字でカバーをしている、こういう状況でございます。

 先ほどもお話にございました、ユニバーサルサービスの義務でございますとかそれからビジネスモデルの制約、こういうものとあわせて、総務大臣のお言葉をおかりしますと見える公社負担になっている、こういうふうに思っておりますので、ぜひコインの両側で御議論をいただければと思います。

山花委員 三種で二百十六億、四種で三十億の赤字というお話です。特に、盲人用のものですと、これは無料ですね。

本保参考人 先生の御指摘のとおり、盲人用は無料になっております。

山花委員 つまり、これで黒字が出るはずがないわけでありまして、これらは非常に公共性の高いサービスということで、ユニバの一内容なのではないかと思っておりますけれども、ここのところ、ちょっと気になる議論がされております。

 この有識者懇なんかでも、提供義務を課す公共性の高いサービスの範囲をどうするかという中で、例えば、基本は自由にして経営の判断にゆだねるべきというような議論があるようですけれども、仮に民間の会社だということになったときに、まあ額も全体からするとそんなに巨額とまでは言い得ないのかもしれませんけれども、本当にこうした制度ができてきた背景には、そうした、生活とか、非常に社会的に弱い立場にある人のニーズに根差した制度ではないかと思うのです。

 生田総裁に伺いたいと思いますけれども、経営者として、民間の会社になったときに、こんなようなことが続けられるとお考えでしょうか。

生田参考人 経営者にもいろいろおりますので、どの経営者かということになるので、経営者ならこう判断するというのは、実際上、申し上げにくいわけでありますけれども、会社を経営する場合に、いわゆるステークホルダーというのが最近よく言われていますね。その中には、資本の、株主ですね、それからお客様というのもあるんですよ。お客様は全国の利用者と考えていただいてもいい。それから地域社会への貢献というのもあるし、従業員というのもある。それから取引先というのもあるんですね。

 だから、単に、経営者だからといって、資本の論理で、極めて生産性高く利潤だけを求めるというのは、これは良質の経営者じゃないわけで、今申し上げた五つ、六つのステークホルダーというものに対して適正かつ応分の配慮を加えるのが当然なんで、その範囲の中において、ユニバーサルサービスを維持するプロセスにおいて、そういう三種、四種の、あるいは点字の郵便物を無料で差し上げるのを、ステークホルダーを尊重するという意味において、無料にするのは当然と判断するかどうか、これは人によってくると思うのです。その可能性もあることはあると思うけれども、絶対的では決してないと思います。

 もう少し言わせていただくとすると、やはり経営者は、例えば資本の論理と、そういった社会的公正とのどこに基準を置くのかというのは迷うものなんですよ。

 だから、竹中大臣等に申し上げているのは、例えば郵便局の設置基準なんというのも、新しい会社が自分で判断して決めなさいなんということじゃなくて、公的に、第三者的にきちっと郵便局設置基準というのを設けて、実際にユニバーサルサービス機能の維持が担保されるような基準を客観的に示してあげなさい、それを新会社に任せちゃったら、ひたすら経営者は悩むだけで、ぐずぐずとそれが崩れていく可能性がありますということを申し上げております。

 この三種、四種につきましても、それと同じことが多分言えると思います。できることであれば、公的な何らかの指針が示される、それに、もしどうしてもコストが高くてやむを得ない場合は、そのコストをどうするかということも含めまして一つの指針を示された方が、欠落がなくてよいのではないかと私は考えます。

山花委員 大変良識的な経営者の御答弁かな、そういうふうに伺いましたが、ただ三十億とか二百十六億は決して小さな数字ではありませんで、最近プロ野球の球団の買収が話題になっていますけれども、これを買えるぐらいの、それも二つ、三つ買えるぐらいの額でありますから、これを維持しようというか、この体制でやろうとすると、経営上相当圧迫する要素にはなることは間違いないのではないかと思います。

 だから、最終的には、隠れた国民負担どころか、維持できないけれどもしなきゃいけないということになると、税金の投入とかそういった形にもなる可能性があるのかなというふうにこの議論は拝見をさせていただいております。

 ところで、先ほども、午前中の議論でも、ちゃんとその方針どおりやってほしいという総裁のお話がありましたこの郵政民営化の基本方針、これには、郵便についてはユニバーサルサービスということははっきりと書いてあるわけですね、引き続き郵便のユニバーサルサービスの提供義務を課すと。ただ、郵便についてはもともと万国郵便条約上のものですので、ある意味当たり前といえば当たり前の話ではないかと思いますけれども、一方、基本方針で郵便貯金会社、郵便保険会社、こちらについては、ユニバーサルサービスについての記述はございません。

 金融サービスについても、これももう既になされた議論かもしれませんけれども、地方に行くと、私の連れ合いは鳥取が田舎なものですから、大変人口の少ない県でございまして、市内といっても本当に中心部に行けばそれは金融機関そこそこございますけれども、妻の実家の近くというのはタクシーにでも乗っていかないと信用金庫までたどり着かないようなところであります。私ごとで恐縮ですが、義理の父母も今は車を運転できますからいいですけれども、将来年をとったときに、それこそ年金とか受け取るときにどうするのかなというような、どうするのかなというのは、つまり、近くの郵便局へとりに行ければ全然それは問題ないんですけれども、そういう心配があるわけでして、特にやはり地方の方のそういう心配というのは今の民営化の議論の中であるんだと思うのですよ。

 私自身は、金融についてもユニバーサルサービスは提供すべきではないかと考えている者の一人なんですけれども、この点について生田総裁そして麻生大臣それぞれに、金融のユニバーサルサービスについての必要性、その御認識をお伺いしたいと思います。

 まず生田総裁、お願いいたします。

生田参考人 今御指摘の点が、私は経済財政諮問会議に三回呼ばれまして参考意見を言わされたんですが、大変大きな争点でございました。

 議員の中には、もうこれだけ時代が発達しているんだから要らないじゃないか、ナローバンクでもいいじゃないかというふうな御議論がかなり強かったわけでありますが、私は、金融に関してもユニバーサルサービス機能はやはり必要であるということを三回とも強くお話し申し上げまして、大体それを認めていただく線で取りまとまっているというふうに私は理解いたします。

 私も、頭で考えただけじゃだめだと思ったので、日本国じゅう、十三の支社があるんですが、その管内を大体三回りぐらいいたしまして、行く先々で、場所を変えて、地域住民の方と話し合うというふうなことをやってきたわけでありますが、その経験を通じまして、やはり民間の銀行、生保を使っていらっしゃるのと違うんですよ。非常に少額です。どっちも三百万ぐらいで、片方は本当に家の金庫がわりであり、片方は万一のときの備えの保険ということで、本当に自分の生活インフラとして利用していらっしゃる。

 店の数がどのぐらいあるかというと、郵貯でいうと、金融機関を一〇〇とした場合の郵便局は、これは一年ぐらい古い資料でありますが、七四・三%ですが、保険に至っては八六・九%が簡保といいますか、郵便局であるということがありますので、やはり田舎に住んでいらっしゃる方ほど、アクセスをするのに郵便局が一番手軽であるというふうに思われます。

 議員の中には、欧米はそんなことほとんどないじゃないかという御議論があるんですけれども、欧米はもともとないからないわけで、日本はもうこの長い、百年になろうという歴史でつくっちゃったわけで、そのベースで生活が成り立っていますから、それは参考にならないんじゃないかということを申し上げましたし、例えば、携帯電話を使ったら何でもできるとか、自分で車を飛ばして三、四十分走ればどこか行くだろうとか、コンビニ使えばという御議論もいっぱいありましたけれども、それはそれでできる人とできない人があるので、私も携帯じゃほとんど何もできませんし、本当の田舎にはコンビニもないし、やはり私はユニバーサルサービス機能の維持は必要だろうと思います。

 それで、取りまとまっているのは、政府の基本方針の中で郵便のユニバーサルサービス機能はきちんと維持するということになっておりまして、そこで生まれてくる郵便局に郵貯、簡保はアクセスができるようにしておく。そこで業務をやる。早い話が、郵便局では三事業やるということが割合大まかに書かれているんですね。

 それで、その当時の話し合いでは、それを具体的に、本当に金融の部分もそこで必ずやるように、経営者判断でこの郵便局ではやるけれどもあっちではやらないなんとなると、虫食いになると全部だめになりますから、三事業とも本当にやるように、きちんとするのはどうするのかという質問に対しまして、それは制度設計でやるというお話だったと私は理解しておりますので、今の有識者会議等での議論を経て、結局はそういう方向に行くんだろうと期待しております。

 ただ、きょう現在の議論は、ちょっと逆に経営者に任せたらどうかなんという御議論も出ているようですけれども、これも意見書を出しているとおり、もともとの基本方針、流れに戻るんであろうというふうに期待しているところであります。

麻生国務大臣 今の考え方は、基本的に生田総裁とほぼ同じところなんですが、今ユニバーサルサービスを確保するというのは、いわゆる郵政民営化の基本方針、この間出された方針の中においては、基本的には郵貯、簡保につきましては義務づけはされていない、明文化されていないというのが基本方針になっております。

 傍ら、今御指摘がありましたように、いわゆる郵便局の設置、通常二万七千とかよく言われる数字ですが、あのうちで過疎地と言われるところ、基本的には採算が合わないであろうと言われているところというのは、四千七百八十局とよく言われる数字なんです。それで、集配やっておりますのだけでいけば、五千もあれば、集配だけやろうと思えば、超合理化すればそれだけでできます。約二万が余るという形になる、極端な表現をすれば。それで果たしていいのかというところが最大の問題なんだと思うのです。

 集配だけを合理化すれば、今言われたように、経営者のあれで合理化、合理化だけでいけば、それでいって人数はもっと減らせますということになりますが、今言われましたように、少子高齢化が進む、過疎化が進むという大前提、かつ町村合併が、今二千六百台まで下がってきておりますから、それからいきますと、過疎地における行政のところもかなりな勢いで、行政サービスという点からいきますと、これは郵便局が代替をやるという必要が迫られるということに結果としてなろうと思います。

 そのときに、今言われたように、いわゆる恩給とか年金の振り込み等々がどのような形で受給者側にとって行い得るかといいますと、これはさらに高齢化が進んできますと、車の運転に限らず、その他いろいろ出てくると思いますが、そういったときにおいて行政サービスは落とさないという五原則を掲げますと、それに見合うような方法をとっていただくということになりますと、これは郵貯、簡保のいわゆる窓口業務と言われるもの、いわゆる金融、いわゆるおろしたりする、そういった部分のところのサービスは、これは行政サービスとしては最も基本中の基本ということになろうと思います。その点も勘案すると、それをある程度維持する何らかの形をつくっておかないと、生田総裁みたいな人が次の経営者になるという保証は全くありませんから、そういった意味ではとぼけたのも出てくる可能性がありますので、そのときにはどうするかというのは、これは山花先生、真剣な大問題ですよ、ここのところは。

 だから、そういった意味では、東京の都会にいらっしゃる方とそうじゃない方と、私ら田舎にいる方から見ると、これはかなり実感として大変だろうなという感じはするんです。事実、新聞なんかでも、新聞の配達は郵便配達に頼っているというところは結構多いところでして、長野県あたりでも二千世帯ぐらいは郵便配達でいわゆる新聞の配達をやっているという実態がありますので、全国でいうと結構な数になると思います。

 そういう意味では、これをやる必要は、私はすごく大事なところだと思うのです。ただ、義務づけるということになりますと、途端にコストが上がるわけだ、当たり前の話ですが。その上がった分はだれが払うかという話になる。三種郵便の話についても四種についても同じことだと思いますが、義務づけられると、そのコストアップした分をだれが払うんだといういわゆるコストの論理というのが、これは政府の支出ですが、だれが払うんですかという話は、今までは一体でやっていましたから、そこそこ融通し合ったり、いろいろしてきたんですが、それが分社化した上でやると、窓口ネットワーク会社が郵便会社から一体幾らの委託料をもらえるのかによって、うちはやらない、やめたということもいろいろ考えられますので、そこらのところはきちんとよくよく詰めた上で枠組みをつくり上げないと、将来に禍根を残すことになりかねぬ。私としては、そんな感じがいたしております。

山花委員 私は東京に住んでおりますけれども、鳥取でも少し時間を過ごすことがございますので、あちらの方の実感というのも少々はわかっているつもりです。

 ところで、今麻生大臣からも、次の経営者が生田さんのような立派な方がなるとは限らないのでというようなお話だったように聞こえましたけれども、まさにその点が気がかりなところでして、民有民営の議論の中で、この有識者の意見ですと、もともと基本方針では大体三分の一ぐらいは国で保有しようという話だったんですけれども、ゼロ%ぐらいがいいんじゃないか、いや、ゼロが最低条件だというような議論も出ている。つまり、国は全くもう持たないんだというような話になっているわけでありまして、本当にそこまでいってしまうと、私は、ユニバーサルサービスというのは、ちょっとこれはなかなかしんどいのではないのかな、そんな気がいたしております。

 ただ、その議論を多分大臣にしても、いや、違う大臣に聞いてくれという話になるのかと思いますけれども、今総務大臣おっしゃったように、町村合併のところは非常に大事な話だと思うのです。というのは、現在の郵政公社でも、郵便局の設置基準というのは一市町村に対して一局。多分一局以上のところの方が多いんだと思いますけれども、恐らく合理化の中でむしろそれがミニマムの要請だという話に勢いなりがちだと思うのですよ。

 そうなっていったときに、ただ、今までは、例えばAという町とAという村があって、お互い一局ずつあって、それがユニバの最低条件だったというのが、これは分権の議論をさんざんさせていただいておりますけれども、細かな部分については多少意見の違いはございますが、その辺は留保をさせていただいて、ある程度のスケールを持った自治体が権限と財源を持つと非常に効果的に自治が進むよね、こんな議論をしているわけでありまして、そのことと、つまりユニバのときの郵便局の設置基準というのが、これは、ある程度スケールができてしまうことによって、むしろこっちの局は必ずしも最低の設置義務を課されるものではなくなってしまうという現象も起きてくるわけでありますから。

 別に法案の取りまとめの後押しをするつもりは全くございませんが、議論の際にはその点もしっかりと御認識をして、国民の利益に反するようなものにならないようにしていただきたい。それは、政府の閣僚の一員でございますので、ぜひその点はそうしていただきたいと思います。一応御答弁をお願いできますでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、今郵政担当大臣をしているわけではありませんから、そこのところは、私の立場として今申し上げた趣旨で申し上げますけれども、最終決定は郵政担当大臣という点もぜひお忘れなく。

山花委員 それはわかった上で、一閣僚として、閣議決定をするときには関係大臣なんですから、その点はよく御認識をしておいていただきたい。あなたに言われるまでもないと言われそうですけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 ところで、これは総裁にお伺いしたいんですけれども、午前中でも少しお話があったように存じますが、今御紹介したほんの幾つかの例にすぎないんですけれども、そのほかのところでも、ちょっと当初の基本方針からすると、おやっと思うような議論が、私が見てもされているような気がいたします。

 これだけ後ろ手に縛り、足も縛り、何かジャングルの中に出ていけというような話であれば、いや、国営に戻せ、国営に戻してこういう形態にしろという議論の方がむしろなじむのではないかというものもあるような感じを受けているんですけれども、総裁としては、基本方針を受けてのはずのこの有識者会議に対して、どのような印象あるいはお受けとめをされているのかということ。

 あと、特にちょっと通告はそこまで細かくしていなかったんですけれども、監視組織の話。

 監視組織、もともとは、経済の実態が今のままというわけにはならないでしょうから、少し三年ぐらい期間を見てそのあり方を検討しようじゃないかという趣旨で、たしか総裁なんかがむしろ積極的に御発言されていたはずのものなんですけれども、何か最近の議論を見ていますと、全然違う議論になっているように見えてならないんですが、そのことも含めて、総裁の今の感想なり御意見なりをいただきたいと思います。

生田参考人 私が意見書を出した内容は、何か新しい提案をするとか、付加的に何かをお願いしているということじゃなくて、一貫しているキーワードは、基本原則、五原則に戻ってほしい、それと同時に、経済財政諮問会議での議論の結果及びその精神、それを取りまとめた政府の基本方針に立ち戻ってほしい、その土俵の上でぜひ御検討いただきたいと。つぶさに拝見してみると、随分その辺が、土俵を割られていることが多いんじゃないでしょうかというのが大勢、観察であります。

 例えば、時間が限られているでしょうから簡単に言いますと、新会社の経営の自由度を拡大するというのが基本方針にうたわれておりますし、市場を活性化し、競争を促進し、ひいては国民、消費者の利便性を増すというようなことも基本方針にうたわれております。

 民営化ですから、いわゆる民間会社のいいところを生かすような仕組みにしていこうというのが民営化の本旨でありましょうから、それから見ますと、やたらと規制がたくさん出てくるわけでありまして、率直に言いますと、あれを読んでいますと、多分、公社経営よりもっと難しくなるんじゃないのか。もっとがんじがらめで、規制規制、あっちこっちのところに、監督官庁だけじゃなくて横の監視委員会の承認もとらないかぬし、多分、今の公社経営より不自由になると私は思います。

 ということは、今、市場経済で、規制撤廃の世の中ですから、そんなときに古い官僚的な発想でそんなものをつくってしまったら、競争力をなくして事業は衰退に向かわざるを得ない。そのときに、例えば雇用重視の原則とか、リソーシズ、すなわち郵便局を活用する原則とか、国民の利便性を維持増進する原則とかとどうつじつまを合わすんですか。そこに対する経済効果まできちんとシミュレートして、それに対する対策もつけて提案していただかないと案にならないんじゃないでしょうかということを申し上げているわけであります。

 おまけに、一〇〇%にするためには、その会社をできるだけ早く、十年も待たずに株を開放して売っていくということを言っているわけですから、そんな会社は多分私は売れないと思いますよ、コーポレートバリューはふえないんですから、むしろ悪くなるでしょうから。だから、そういう論理の一貫性のあるプランニングをぜひひとつお願いしたい、こういうふうに考えている次第であります。

 その中で、特に先生の御指摘になった監視組織の点で申し上げますと、二〇〇七年度にスタートして十年後に民有民営化で独立させていくという案に対して、やはり政府としてきちんとした方針をお示しになるのは私はいいことだと思うので、それはそれで書き込んでいただくのは大変結構なんだけれども、ただ、十年たつと世の中変わりますねということを申し上げたいわけです。

 十年前に十幾つあった都市銀行が三つか四つになるとだれが想像したか。信託銀行しかり、証券しかり、いろいろな産業みんなそうでしょう。だから、今から十年先を確定的にしてしまうのは、私は、やはり現代から見るとちょっと不都合かと思います。

 世界の流れは今、エコノミー・オブ・サイズで大きくなると同時に、エコノミー・オブ・スコープといって、いろいろな業種を取り込んで一つのコングリマットはできるんですね、オランダのINGとか、それからシティグループとか。金融、銀行、信託、証券、保険、生保、事業会社、それが連携しながら一つの経済体をなして世界で勢力を持つ、こういう時代へ入っているわけなので、ひょっとするとやはり手直しが要るかもわからない。

 したがって、そういう世界、日本の社会科学的な進化、進歩というものを見ながら三年置きにレビューして、基本的に何か訂正を加える、修正を加えるべきことがあればそれを加えるというふうな監視委員会をつくっていただいたらどうでしょうかということで、そういう趣旨が政府の基本方針にもうたわれて、そういうものができることになったんだけれども、それが今、有識者会議では、そっちではなくて、ひたすら公社の中を見て、受託、委託の関係の料金を調べるとか、ビジネスモデルは全部チェックして、新しいものはやらせないで、何か新しい案が出てきたらチェックして承認するとか、全部内政監視に変わっちゃったので、ちょっと視点が変わった。せっかく仏様をつくっていただいたつもりが、ちょっと魂の方がどうなったのかなという感じがしております。

 繰り返して言いますが、新しいことを提案申し上げているんじゃなくて、もとのレールに戻ってもう一遍考えていただく。株を売るところまで全部関連するわけですから、本当に売れるような状態になるのかどうか、そういうところまでも含めて御検討いただきたいということを申し上げているわけであります。

山花委員 時間が参りましたので終わりにいたしますけれども、システムの点についても質問をさせていただこうと思ったんですが、午前中の議論でも出ておりました。

 やはりシステムの問題は非常に重要だと思うのですよ。総裁を目の前にして大変申し上げにくいことですけれども、たかだかと言っては申しわけないけれども、郵政公社になったときですら多少のトラブルがあったわけで、今度は、何だかよくわからない、四社に分けるんだか何だかということで、これをやるには相当な話だと思うので、この点については、それをてこに反対しようとするつもりでやっているんじゃないんだとおっしゃっていましたけれども、やはり経営の責任者として言うべきときはちゃんと、まあおっしゃっているんでしょうけれども、毅然としたことを言っていただきたいということだけ申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。

 麻生太郎大臣に国会で質問ができるということを大変光栄に存じます。この決算の問題に入る前に、政治家としての麻生先生に二つほど質問をさせていただきたいと思います。

 麻生大臣の選挙区で香田証生さんという方が、イラクで残念ながら命を落とされたわけですけれども、御家族のところに弔問に行かれたかどうかわかりませんけれども、大変残念な結果になったわけでございます。

 私どもも、いろいろな意味でこの人質解放に努力をしてきたつもりでございます。それで、前、本会議でも質問させていただいたんですが、私は、これは自衛隊の撤退問題とは別に、人命支援と援助ということが重要だったろうと思うのですけれども、政府の対応の印象で、いわゆるテロに屈しないということと香田さんの生命を守るということが、何か二者択一的な印象を受けて仕方がないんです。

 ですから、テロに屈しないということと香田さんを救うということ、これの両立のための最大限の努力というものが必要ではなかったかという印象を持っておるわけですけれども、選挙区の大変貴重な人材を落とされたということも含めて、大臣の方から率直な所感をお伺いできれば幸いです。よろしくお願いします。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

麻生国務大臣 郵政公社の決算とは関係ない話がここで議論をされる前提というのは、今、理事の方一人もいらっしゃいませんけれども、御了解を得ているという上で答弁をさせていただきます。確認しますけれども、よろしゅうございますね。(藤田(幸)委員「はい」と呼ぶ)

 香田証生の自宅に行ったか。伺いました。本人を知っておるか。本人の身内を知っておりますけれども。本人の一族、あの辺はみんな香田という名字なんですけれども、みんなとは言いませんけれども、香田というのは四つか五つあの辺はあると思いますが、知っておりますので、伺ったことは事実です。

 大変お気の毒だったと思いますし、両親としては、たしか兄貴がもう一人いると思いますけれども、非常に残念なことになっておると思って、お悔やみを申し上げる次第です。

 今の、イラクに屈しない話とやり方はどうあったかというのは、所管外の話に対して口を挟めというような話は、この種の委員会というような議事録の残るところではいたしかねるというのが率直なところであります。自分の個人的見解を述べても、ここでは大臣として呼ばれていると思いますので、所管外のことなのでお答えいたしかねます。

藤田(幸)委員 もう一つ、所管とは直接関係ないかもしれませんが、関連づけて質問したいんです。

 おじいさんに当たる吉田総理に関して、最近出た本で、これは小倉和夫さんという前のフランス大使が書かれた本で、「吉田茂の自問 敗戦、そして報告書「日本外交の過誤」」、お読みになったんだろうと思うのですけれども。

 要するに、吉田総理が総理の現職であられたときに、政府の人間に検証させたんですね。つまり、軍部だけではなくて、日本の政策としての間違いがあったんではないか、例えば、国際連盟を脱退したとか、軍縮会議を脱退したとか、南方進出をしたとか。これは、現職の大臣が当時のいわば政府の関係者に数年後に検証させた、これは大変意味があるんだろうと思っているんです。

 例えば麻生総理大臣が実現した際に、今の国際情勢の中で起こっております、単独行動主義とか、アメリカと国連との政策対立とか、あるいはイラクの特別措置法の非戦闘地域とか、こういった問題について、私は、麻生総理大臣として検証されると非常に意味があるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 仮定の問題につきましてはお答えいたしかねるというのが一番簡単な答弁で、はっきりしているんですけれども、今の話は松井の話ですか。読まれたんでしょう。(藤田(幸)委員「はい」と呼ぶ)読まれたら、それは担当したのは松井という課長になっていますか。吉田茂が命令した名前が松井という課長になっているでしょうか。(藤田(幸)委員「はい」と呼ぶ)なっていますね。フランス語しかできない松井さんが何で英語の担当になったんだとまずきっと疑問に思われたと思うのですが、当時、立場上その松井というのが受けた、私の記憶でも昭和二十四年だったと思いますね、それは。

 その反省は、たしか私の記憶では、日露戦争が終わって、当時、あのナポレオンすら勝てなかった帝政ロシアに勝った、今からちょうど九十九年前の話です。そのときの戦勝国だった日本は、勝ったがゆえに反省なく、二百三高地の攻撃方法はいかがなものだったか等々の反省なく、作戦を分析してみればいかがなものだったかという方も皆偉くなられた結果、どのようなことになったかといえば、あのような形になったのではないのか。それが一番最初の原点だった、そういう記憶に基づいて松井という人に命令をした、私の記憶ではそうです。

 したがいまして、今のような形で、勝ったからどうとか、負けたからどうとかいう話ではなくて、基本として、常に政策が決められて、その決められた結果に基づいて、どのような形でそれを評価するかというのは、今私どもの役所でも政策評価というのをいろいろな形でしておりますけれども、政治決定に対しての評価というものを役人にさせたのはいかがなものかと思わないわけではありませんけれども、当時、昭和二十四、五年のことだったと思いますので、第二次吉田内閣が始まった直後だったと記憶しますが、そういった形で、評価をいろいろな形でするという努力は常に行われてしかるべきものだと思っております。

藤田(幸)委員 ありがとうございました。大変いい答弁をいただいたと思っております。

 例えば、この郵政民営化という問題ですけれども、けさからいろいろ議論が出ておりまして、有識者会議というものがある。それから、いろいろな会議に竹中大臣がかかわっておられる。それから、総務大臣がいらっしゃる。それからもう一つ、公社の総裁、総裁の英語の肩書を見ましたら、プレジデント、CEOというから、最高経営責任者というふうになっておられる。

 そうすると、その三つの関係、それから、こういう政策決定がされて、行政が絡んで、そして今民間会社ができようとしている、その決定のプロセス自身を、今大臣がおっしゃいましたように、後々役人の方が評価をされるかは別にして、今回のこの内容というのは、後々、麻生総理になったときかどうかわかりませんけれども、非常に検証する価値があるんではないかと思います。

 済みません、この部分は質問通告しておりませんけれども、大臣、所感で結構ですけれども、この郵政民営化の現在の流れ自身を後で総合的に検証する非常にいい題材だし、必要ではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 政治も経営も基本的には結果責任だと思っておりますので、動機が幾らよくても結果がだめならだめです。動機が少々不純でも結果がよければそれでよしと思わないかぬところだ、私は、政治というものはそういうものだと思っております。

 そういう意味では、この郵政公社というものが仮に民営化なり、先ほどの五十嵐さんの言葉をかりれば株式会社化ということになろうかと思いますが、その結果、仮にいい結果が出たにしても、公社のままでそれはできなかったかというような疑問は常に持ってしかるべきだと思います。先ほどの総裁の答弁にもありましたように、三年なり五年たったときにレビューしたときに、もっといい方法がというのが、その時代にまた別の考え方が出てくるのであれば、それはそれなりにその場で検証してしかるべきだと思われますし、公社が株式会社化された結果、その結果がいい、悪い、両方検証されてしかるべきだと思いますので、三年に一遍のレビュー等々の努力、評価というものはされてしかるべきだと思います。

 これが特にいい題材と思うわけではありませんけれども、一つのアイデアとしては、きちんとして評価されてしかるべきものだと思います。

藤田(幸)委員 ありがとうございます。

 今御答弁をいただきましたので、質問通告をしておりました、中身は変えません、順番を若干変えてお聞きしたいと思いますが、大臣と総裁と両方でございます。

 それは、先ほどちょっと申しましたが、有識者会議、それから経済財政諮問会議、民営化準備室、すべて管轄は竹中大臣であります。それで、けさからもいろいろ問題になっておりますけれども、そういった会議で議論された内容、それについての報告は、大臣及び総裁にどういう形で報告をされているのか。そして、それぞれの報告に対して異論や疑問があった場合に、逆にどうやって大臣の意見を竹中大臣にお伝えになっているのか、まず麻生大臣からお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本方針ができるまでの間とその後、もしくは準備室ができるまでの、後と前とでは少し違うと思いますが、準備室ができるまでの間は、よくこの種の話がありましたし、特に最初のうち、基本方針ができるまでのところは、極めて煩雑に両方であっておりました。内閣の改造が終わりました後、郵政担当大臣は竹中大臣になっておられますので、それ以後は竹中大臣が主に、有識者会議それから準備室等々はいずれも竹中大臣の所管で、私どもの所管ではございませんので、その意味に関しましては、かつてほど煩雑に報告を受けることはありません。

 ただ、経済財政諮問会議において、これは確実に上がってまいりますので、その場において財政諮問会議の議員として、基本方針以後、ちょこちょこ出てくる話に関しましては、いろいろやらせていただきましたし、あの中で、特に出ていなかったところで私の方から申し上げましたのは、労働組合との話は、有識者会議の方々、学者、役人というのは労働組合等の経験のほとんどない方でありますので、そういった点の配慮は全くされていないのはいかがなものかという点は、きちんと反映されたと思っております。

 いろいろな意味で、先ほど申し上げましたように、結果責任を問われるのはあなたじゃありません、あなたはそのころいないわけですから。しかし、そのとき社長をやらされている人が、その枠の中でやらされるという人の立場をよく考えてもらわないと、これは民営化された結果、前より悪くなった、責任はその社長だけにおっかぶせられるというのであれば、それは制度設計した方が間違いだということも考えられますので、そういったことのないように、基本的には、新会社というものは、事業として、いわゆる経営として成り立つようにしてもらうというのが一番肝心で、そこにユニバーサルサービス等々の義務がくっつきますので、それを賄えるだけの余力がなければ、こっちで先ほどの二百十六億等々御質問があっておりましたように、三種郵便だけで二百十六億から赤が出るわけですから、その分を補えるだけの利益を出す部分がなければ、そこも枠をはめてこっちのサービスだけやれと言われても、それはとても成り立つ話ではありません。

 そういったところを考えて、この基本方針の枠組みというものに関しましては、きちんとしてもらわねば、これは財政諮問会議でこの種の話が出るたびほとんど毎回申し上げていると思っておりますので、ほかの議員の方々も、その点に関しましては、きちんと経営として成り立つ、かつ行政サービス等々は落とさないの五原則に基づいて成り立つという点が一番肝心なところだ、これは毎回申し上げているところであります。

藤田(幸)委員 懇切な説明をありがとうございます。

 同じ質問でございますが、生田総裁に関しては、竹中大臣がかかわっておられますいろいろな会議等々については、準備室ができる前、後も含めまして、どういう報告がなされているか。それに対して総裁の方から意見書を出されたりとか声明を出されたりしておるようですけれども。

 ということは、直接何か会って総裁の方からこれは違うというような話をする機会がないのかどうか、どういう方法をとっておられるのかについて、総裁から御答弁いただきたいと思います。

生田参考人 まず、経済財政諮問会議でございますけれども、これは、郵政問題を本格討議されるとき、三回私も招集を受けまして、参考人ということで参加させていただいたわけでありますが、その際は、冒頭、一定の時間を下さいまして、公社としてどう考えているかというお話をさせていただいて、それを中心に後の議論が進むというような形でありまして、非常に緊密な話し合いをさせていただいたと理解しております。ただし、三回ですから、それ以外の問題については、終わったらすぐにきちんとした議事録といいますか内容を受ける、こういうことであります。

 それから、いよいよ閣議で基本方針が決まった後は、民営化準備室ができました。これに関しましては、竹中大臣から直接私の方に、もうこうなった以上は、公社と民営化準備室も二人三脚で一緒に協力してやっていかなきゃならないので、全面協力をお願いしますというお話がありまして、私も、もちろんそうだと思いましたから、全面協力を約しまして、あらゆる可能なデータ、その他スタッフの提供も含めまして、全面協力をして今日に至っております。

 それから、システムの検討委員会と有識者会議、この二つにはオブザーバーとして人を出してくださいということで、その人には発言は認めるけれども意見は聞くにとどめる、オブザーバーですから当然ですけれども、そういう格好でうちの山下専務が出席させてもらっておりまして、一応意見は言っておりますけれども、聞いていただいているかどうかは別問題ということでございまして、ただし、何が議論されているかは、正確に出席している山下専務から報告を受けている、こういうのが実情であります。

 そのうち、例えば有識者会議の問題あるいは情報システムの問題なんかで、オブザーバーですから何を言っても余り聞いてもらえない、ましてや、システムのところについては全く事実無根の記者会見が行われたというふうなことが起こった。そういったときには、オブザーバーを通じて物を言うというのでは間に合いませんから、私自身が直接意見を申し上げる、あるいは訂正をお願いするというふうなことで、有識者会議の問題につきましては、十二ページの提案書といいますか意見書を差し上げたというところであります。

 これについては、特に返事はいただいていませんけれども、返事をいただく筋のものでもないと思っております。有識者会議そのものが、これはあくまでも意見を言うだけであって、制度の決定権はお持ちでないと理解していますので、竹中大臣として、あちこちから意見を聞いておくということのプロセスとして処理されているのかなというふうに思います。

 システム検討の問題の間違った記者会見が行われたものは、これはちょっと看過できない。公社として方針を変えたという全く事実無根のことをおっしゃったわけですから、これはどういう背景でそういうことになっちゃったのか、信頼を回復するためにどういう御措置をおとりになるのかというのは、これはお返事をいただこうと思っておりまして、今のところ御返事をいただいていないので、きょう、あすじゅうにでも一度また渡辺さんにお電話をしてみようかなというふうに考えております。

 今後とも、折に触れ、これは重要と思う点がありましたら、今やっていますようにきちんと書面でお願いすることも考えますし、場合によったら、手っ取り早く竹中大臣ないしは渡辺室長にお電話して、両方の間にそごが出ないように、少なくともこっちの考え方を聞いておいていただくような努力を重ねていきたいと思っております。

 いずれにしましても、私ども、別に何もどれもこれも反対しているわけじゃなくて、どうせ民営化するのであればよい民営化にしたい、こういう思いからやっているわけでありまして、すべてのことが公正かつ透明にとり行われる、本当にいい格好で整々と事が発展するといいますか、制度設計がなされていくことを期待して、それに必要な措置はすべてとっていく、こういう考えでおります。

藤田(幸)委員 冒頭で申し上げませんでしたが、民間の会社から大役を担って大活躍をされておられます生田総裁に敬意を表しながら、きょう、いろいろ質問させていただきたいと思っております。

 今、私は大臣と総裁からお話を伺いまして、大臣もとにかく五つの原則が重要だとたびたびおっしゃっている。ところが、生田総裁から、この十二ページの意見書ですか、十一月九日、これを見ていますと、要するに、有識者会議の内容は五つの原則を逸脱しているのではないかということがポイントなんですね。それで幾つか指摘をされておられるわけですけれども、そうしますと、大臣の方も、せっかく民営化するので、やはり国民経済的な立場からいい会社をつくってほしい、そのためには五つの原則、基本原則を重視してとたびたびおっしゃっている。

 ところが、この有識者会議の方は、まさにここまで総裁が書いたくらいに、五つの基本原則をむしろ離れたような内容の議論が進んでいる。私は、これはやはり、一つは、内容的に五つの基本原則に戻させるような、大臣と総裁の間のより緊密な連携がやはり必要だろうということと、それから、実際にその五つの原則にのっとっていい株式会社ができるように詰めていく際には、もう少し工夫が必要なのかなという気がするんです。

 例えば、この意見書の中を見ますと、官と民の差を強調することになっていないかとか、あるいは、結局、市場の活性化を阻害し、国民、消費者へのサービスをよりよくするという民営化の本来の目的が達成できなくなるのではないかというような心配も書かれております。それから、先ほど来出ておりますけれども、余りに監視が強過ぎて、手足が縛られて、郵便事業を無用に劣化させるのではないかというような指摘もございます。

 となってきますと、もう少し直接的にこういった実際に経営をされておられる総裁の現場での立場なり考え方なり経験が反映されるようなシステムが必要ではないかという気がいたしますけれども、その点について、総裁、どうお考えでしょうか。

生田参考人 お考えの御趣旨には全く同感なんですが、それを、今行政的に進めていらっしゃる方式、やり方としてどうするのかというのは、ちょっと私を超えた問題で、まさに担当大臣にお考えいただくことだと思うので、私から申し上げるのはいかがと思うのであります。

 いずれにしましても、竹中大臣とシステム関係でお電話したときの感じでは、私は、竹中大臣は十分御認識になっているんじゃないかなという感じでおります。いろいろな、私の意見も大臣から見れば一つの意見でしょうし、それから有識者会議から出ている意見も一つの意見でしょうし、諮問会議を常に取り仕切られた竹中大臣としての御責任と御認識がもちろんあるでしょうし、政府の基本方針のまさに提案者でいらっしゃるので、そういうことは十分踏まえた上で、いろいろな意見が出尽くしたといいますか出そろったところで、全部織り込みながら、きちんとした適正な、五原則を生かし基本方針にのっとった具体的な法制化の案が示されてくるのであろう、このように期待しています。もしそれが違うようであれば、また御意見を申し上げたい、こう思います。

藤田(幸)委員 その関連で、ちょっと違った角度から御質問したいと思います。

 生田総裁は、経済同友会の副代表幹事時代に政策提言をまとめられて、当時は郵貯、簡保の廃止を含めた政策提言を行っておられる。その中では、例えば郵便事業については、高コスト構造と効率性の低さを是正し、高質のサービスによる利便性の向上を図るため民営化すべきであるというふうな提言をされておられる。それからもう一つ、やはり公社方式はできるだけ短期間、最長でも二年間程度で終了させ民営に移行すべきであると考えるというふうに、数年前のこれは二つの違ったレポートですけれども、提言をされておられる。

 ここで言っていらっしゃる内容は、割と今の有識者会議等で出てきている部分と似ているんです、ある意味では。それから、最近、これは十月の経済同友会、今、北城さんの郵政改革に関する考え方も、かなりダブっているところもあるんです、このスピードの問題を含めて。

 私は、これを別に取り上げて、考えをなぜ変えたんだという詰問をするというよりも、多分、同友会におられたときにはそういう一般的な考え方を持っておられたけれども、実際に社長になってみると、そしていろいろな政治的、行政的制約の中で、いい民営化を進めるためにはこういったことが必要だろうということで今進めていらっしゃるのではないかなというふうに好意的にとっておるわけです。

 まず一たん、今私が申し上げた、つまり、同友会時代にはそういうふうにおっしゃっておられて、今は社長になって立場を変えて考え方も変えられた。恐らく、今実際経営をされて、今主張されておられることが当然のことながら正しいと思っていらっしゃると思うのですが、その変わったいきさつと、現場での責任者として、やはりこれが必要なんだということについて、少し説明をしていただければ幸いです。

生田参考人 数年前、私、経済同友会の経済政策委員長をやっておりまして、二十一世紀の日本国はどうあるべきかという二十一世紀に向けての、たしかマスタープランというものをまとめたんです。ちょっと題名を間違えたかもわからないけれども、たしかマスタープランだったと思います。

 これは、経済同友会の中の政策委員会というのは、本当に全般を取り仕切る委員会でして、その委員長をやっておりまして、大きな、基本的な現状及び二十一世紀初頭にかけての経済予測とか、どういうふうな経済政策であるべきかとかいうふうな大まかなことは私どものこの委員会が書くんですけれども、各専門分野にはそれぞれ委員会がありまして、例えば憲法問題調査委員会というのもありますし、IT委員会というのもあるし、金融委員会とか財政委員会とか、そういった横並びの中に郵政改革委員会というのがありまして、そういう特殊分野については、各特殊分野の委員会の中の意見をまとめてもらって、委員長が紙を出してくるんです。それで、その特殊部門については、それのいわば集約をやるんですよね、政策委員長というのは。

 その意味において、私は、責任逃れとか言いわけをするとか、そんな振る舞いをする気はみじんもないんですけれども、形を言うとそういうことになりまして、実は、憲法問題も含めて、書いてあること全部、委員長の意見というよりも各組織の意見が出てきているわけです。

 そういった意味で、大変恥ずかしいことを言えば、その当時は、私は、郵政改革委員会から出てきた意見というものをばあっと集めていくときに、まあそんなものかなということで、余り深い委員長としての考え方でそれに加筆修正するというようなことはないままにまとまってきて、それで委員会の名前で出ているということは紛れもない事実であります。

 ただ、そういう過程で出てきているもので、そのときに言った、例えば憲法改正に関する問題で、おまえ、そのときの考えが変わったのかと言われても、そのとき憲法調査委員会が何を書いてきたかなというのを今思い起こさなきゃならないというふうな形で、組織の取りまとめというのは出てくるものだということを、まず御理解いただきたいと思います。

 そこで一遍仕切りまして、あとは私の本音でいきますけれども、今言ったように、おととしの八月末に総理からどうしても受けろというお話でお受けするまで、正直言って、郵政問題、そんなに関心を持っていませんでした。だから、そんなに深い知識があるとか哲学とか、何か方針を自分で考えたということはありません。

 それで、いよいよ入ることになってから七カ月の余裕があったわけなんで、その間に事業庁に日参いたしまして、本当に日参でした。かけ持ちでしたけれども、商船三井の会長と。それで、勉強させてもらうと同時に、自分で地方回りする、職員と一杯飲んで話してみる、組合とも話すというようなことで、自分の考え方を形成していくわけですけれども、そこで得た自分の考え方というのは全然変わっておりません。入る前も、入ってからも、今も変わっておりません。

 民間にいたときと違って、何となくぼやっと外から見て違ったのは、どこが変わったかということをあえて申し上げると、二つあると思います。

 一つは、経済人として、東京に住んで東京に通っている、社会が見えている、日本国が見えているつもりでも、実は円のうちの二百七十度ぐらいしか見えていなかったというのに気がつきました。入る前から、入った今もやっていますが、地方回りして、ぐるぐる回って地方の方と話し合うと、こういう生活があるんだ、地域社会でこういう生活インフラが必要なんだ。地域の方たちの御意見を直に聞くわけですから、北は北海道から沖縄まで。これはやはり大きく視界に入れて考えないと過つというふうに深く今思っております。視界が九十度加わったつもりでおります。

 それからもう一つは、外にいるときは評論でいいんですよ。評論というのは、時々、世の中を動かすために過激なことを言ってみるのも、これも一つの真っ当な手法だと思います。だけれども、私は今は経営責任を負っておりますから、評論家では絶対にあり得ないわけです。結果責任が自分がとり得る、とれる、少なくともとる責任を持って決めているという覚悟で、すべてのものを判断し、リードしていく。いいかげんな、可能性があるからやってみようとか、失敗してもいいからやってみようというようなことは一切許されず、計算し得るリスクの幅の中でベストを求める。ただし、計算はできるだけ大きい計算をする。

 こういう格好で、評論ではなくて実務者としての責任ある物の見方をしていかなきゃならない、こう考えているという点が、かつてと違う点ではないかというふうに思っております。

藤田(幸)委員 経緯が大変よくわかりました。ありがとうございました。

 同友会も外の評論家のような存在かもしれませんが、それはさておきまして、大臣と総裁に違った角度からお聞きしたいと思います。

 私は、今、公社が置かれている存在、実は総裁の肩書はCEO、つまり最高経営責任者というふうになっているんですが、先ほど来、いわゆる有識者会議があって、それから総務大臣がいらっしゃって、それで生田総裁の公社がある実態は、実際にはCEOというよりもCOOではないかなという気がするんです。つまり、最高経営責任者というよりも最高執行責任者といいますか、本当の意味での結果責任がとれる権限というか体制にまだないんだろうと思うのですね。それが一つ。

 それからもう一つは、この意見書にも書いてございましたと思いますけれども、いわゆるいろいろなステークホルダーズに気配り、目配りをしながら経営をしなければいけない。それで、会社が劣化してはいけないし、本当の民営化をしなければいけない、国民経済それから経済活性化に役立たなければいけないということがあるわけですが、結局、何か仮想のステークホルダーズといいますか、つまり、この郵政公社というのは、普通の民間経営会社であれば、従業員から始まって、仕入れ業者、従業員、それから最近は地域に広がって、企業城下町からさらに広がって、もう少し大きなマーケット、それから環境。いろいろな、民間の経営責任者であれば、ステークホルダーズというのは、普通、そういう利害関係者といいますか、企業を取り巻く利害関係者というのが普通のステークホルダーズのコンセプトだろうと思います。

 私も不勉強ですが、日本郵政公社を見ておりますと、それ以外のステークホルダーズに対しても責任を負えというふうに言われて、しかも、実際にはCOOである総裁がCEOであるかのように責任をとれというふうに言われているような気がしまして、それが、きょう議論になっておりますところの、溝といいますか、カバーできていないグレーゾーンといいますか、あるいは、いろいろな意味での負担が、麻生大臣と生田総裁、あるいは、当然のことながら、この公社で働く郵便局の職員の方、家族の方、そういった方々に対しても、影が当たっているんではないかという気が非常にしてならないんです。

 したがって、そのいわゆる普通の企業でないステークホルダーズを押しつけられているということと、実際には、CEOではなくてCOOではないかという印象を持っておりますが、その点について、生田総裁のコメントというか、お答えをいただき、それを何か変える方法がないかということについて、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

生田参考人 大変難しい御質問になってきたので的確にお答えできるかどうかあれなんですが、いわゆる民間の株式会社におけるCEOとは明らかに違うと思います、これは官ですから。それはいい悪いの問題じゃなくて、公社としてはやむを得ない。官としてのモディファイされた、修正されたCEOであろうと思っております。単なるCOOではないと思っております。民であれば、株主総会、取締役会、それが決めた枠内、そして定款で許されている範囲で、合法的に、社会的規範に反しない限りCEOは何でもできるという意味では、いろいろな規制がありますし、監督官庁の監督も受けるわけですから、CEOにも限度があるのはやむを得ない事実であろうと思います。

 では、ステークホルダーというものを余り認識しないでどうやってやっていくのかという点を指摘されたんだろうと思うわけでありますが、私は、そういう監督官庁、それから公社法その他関連法規という枠組みがありますけれども、その枠組みの中では、限られた分野においては、やはりいろいろな経営計画その他の立案ができ、決算という格好で責任が出てくるわけでありますから、CEO的役割は果たし得ているし、果たさないといけないと思っております。

 その場合のステークホルダーがないじゃないかと思われると、そうではないわけで、なるほど株式会社じゃないですから株という格好ではありませんけれども、結局一兆三千億、今回自分で積んだのではありますが、四兆を超える自己資本というものはやはり株主資本と考えるべきで、それはタックスペイヤー、税金を払っていらっしゃる方たちが株主であると私は位置づけ、その代表として政府がいらっしゃる、それを株主と考えようということを去年の四月に職員に呼びかけております。そういった意味では、株主はいるという認識でおります。

 客は客で、これは全国のお客様、すなわち国民の皆様方だと思っております。それから、取引先は、これはもう普通の民間会社と同じようにあります。それから、地域社会への貢献という意味では、これは民間会社でもステークホルダーとして重要なファクターなんですが、それこそユニバーサルサービスを通じまして、日本国じゅうの地域社会に貢献する努力をさせていただいているわけであります。普通の民間会社が持つ職員は無論職員で、二つの組合を中心に、職員とは、何とか満足度を高めるような努力をさせている。

 そんなことを言っても、株主総会がないとおっしゃるかもわかりませんが、私は、この席、まさにこの席が株主総会だと思っております。これは、タックスペイヤーである国民を代表する先生方に囲まれて決算の内容にお答えしているわけですから、これが民間の株式会社における株主総会だと認知しております。

 それでは、ガバナンスがきいているか。ガバナンスがきいているかというのはいろいろな切り口があるんですけれども、唯一、一点に絞ってそれを答えるとすれば、CEOが不適任の場合にだれかが首が切れるかどうかがガバナンスがきいているかどうかの決め手なんですね。通常、それは株主総会が過半数で決めるんだけれども、それがないじゃないか。これは、普通の会社以上にガバナンスがあるんですよ。後ろに座っていらっしゃる麻生大臣が、おまえ、首と言われたら、その場で首になるわけですから、これほどきついガバナンスがきいている組織はない、このように認識いたしておりまして、もちろん、普通の民間の会社とは違った形で、官庁型に修正された一定の付加的な制約を受けた枠内ではありますけれども、私は、民間の株式会社と同じような責任を感じながら経営していくことが重要であろう、こう思っております。

麻生国務大臣 藤田先生、基本的には、明治四年、前島密逓信卿でスタートしたこの組織をさわる、しかもその対象は二万四千七百の支店、従業員、パートを含めて約三十九万、それだけの大組織を、いわゆる変えるという話は、それは簡単な話じゃありませんよ。

 そういった意味では、本来は、郵便、貯金、保険というような、このユニバーサルなサービスというものを、少なくとも法律上からいけば政府が提供するというのが目的の組織ですから、この郵便局というものは。それをできるだけその枠の中で自律的にやればもっとうまくいくんじゃないかというので公社ということになって、それが経営しようとしているのが今やられている制度なので、公社というのは多分そういう制度になっているんだと思うのですが、それを民営化することによって、さらに経営が自由化することによって、よりよいサービスができるのではないか。例えば、安くなるかもしれぬとか、もっとサービスがよくなるかもしらぬということを考えて、民営化、株式会社化とか、いろいろな表現があるんでしょうけれども、そういった形で今進んでいる、ちょうどその経過の途上にあるんだと思うのですね。

 そういった意味では、公社のままでもよろしいのではないかと、これは先ほどの例で申し上げましたように、いろいろ反省点として、民営化された後、株式会社化された後出てくる一つの案なのかもしれませんけれども、少なくとも、今私どもは、この形でやってみた方が、五原則に基づいてよりよいサービスができるような形の組織、枠組みというのをつくり上げねばならぬということで今努力している経過の途上にあるというように御理解いただくのが一番いいのではないか、私自身はそう思っております。

藤田(幸)委員 したがって、そういう経過の中であるがゆえに、先ほど来聞いております、いろいろな有識者会議等々で出てくる中身と、それから今の、変形的なCEOであり、それから国会が株主総会のような役割を得て、それで麻生大臣のもとで責任を担っておられる総裁、社長ですね。その中で、それだけ大きな事業を過渡的に、今プロセスで進行しているわけですけれども、そうすると、その中身をいい形で、いい民営化をするためには、一番経営をされておられる方の経験、つまり、同友会にいらっしゃったときには、いわば評論家的に外部からで済んだけれども、実際に日参して七カ月勉強されて中身を熟知してみると、こういうやり方だと。そうすると、そういうやり方を支援する仕組みが、今大臣自身は、経済諮問会議以外のときには、あるいは有識者会議が出た後は直接担当ではないという。そうすると、先ほど来の、けさからのお話を見てみましても、やはりそれでは、五原則から離れたような議論がどんどん出てきてしまって、そちらが既成事実化して進んでしまうというような実態が、かなり私ははっきりしていると思っておりますので、それをもう少し実態的に内容面で変えていく仕組みが必要ではないか。

 そうしますと、この委員会が株主総会だけれども、首にする権限が、我々にないけれども大臣にあるということは、やはり大臣の方で、単に郵政民営化というのは竹中大臣の所管だという紋切り調で答えずに、もう少し工夫が必要ではないかということが、今のお二人の議論からの、答弁からのエッセンスではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 藤田先生、これは法案ですから、でき上がりますときには。そうすると、あなたもそのときに、立つか座るか、投票するか、それは法案が出されたところでもう一回ここで議論になるという点も忘れないでいただかなきゃいかぬので、政府が決めて、はい、それまでよということはない種類の話だから、理解を得るためにどうするかという汗をかいていただかぬといかぬのであって、一部の方だけでこそこそとやられて、はい、これが答えというわけにはいきません。

 それが私どもの申し上げているところでありまして、いろいろな方の意見を聞いていただかないと、これは、御党の中にもいろいろ御意見があるでしょうし、自民党の中にもありますでしょうし、世間もいろいろあるわけですから、そういった意味で理解を得る努力をしていただかなきゃいかぬというところだと思います。いろいろな意味で、私どもの意見が今あったところで、法案に出るときにまた別のが出てきたら意味がありませんので、法案が出されるときが一番の問題だし、またその法案の審議の内容、審議の経過等々がきちんとした枠組みをつくっていく上で一番大事なところだ、私はそう思っております。

藤田(幸)委員 同じ質問、実際に総裁の立場からですと、今のような、つまり意見書を出したりとかいう形以外に、実際に意見を反映させる方法、あるいはこういうふうにもう少し反映をさせたいという考えがおありでしたらば、言っていただきたいと思います。

生田参考人 政府の側で有識者会議に意見も言わせながら、私どもはボランティアですけれども、自分でも意見を出し、またいろいろな先生方も意見をおっしゃっていると思います。そういうものを集約されつつ、政府として、いつか私は存じませんが、また諮問会議に移っていくんじゃないかなと思っているのでありますが、そういったプロセスを見ながら、言うべきことがあるとすれば、今言うべきことは一応私は申し述べたつもりでおります、申し述べるべきことがあるとすれば、僣越を省みず、適切なタイミングにきちんと対外的に申し上げていきたい、こう思っております。

 それから、特に有識者会議の今後の推移について、私どもが意見があれば、引き続き書面で意見を出しながら、それをホームページで開示していくということは、もう準備室の方にも、これは決して対決するとかけんかするとかそんな意味じゃなくて、我々の意見をきちんと表明し、それを社会的にも知っていただくという意味において、開示していきますよということで、それはもうぜひやってくださいと、こういう非常に納得ずくの和やかな感じで、ただし建設的に、きちんと意見を申し述べていきたい、こう思っております。

藤田(幸)委員 例えば財政問題で、郵便に存在するという約五千五百億円の債務超過、こういう具体的な問題に関しても、最近、政府・与党の方で、郵政民営化会社に国債一兆円を投入する方策を検討というようなことも報道されておりますけれども、この中身について、あるいはほかに債務超過対策をお考えなのか、この点について総務大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 たびたび申し上げますように、新聞は努めて読まないようにしていますので、この話を御質問いただいて、初めてその文を読ませていただきました。

 政府・与党は二〇〇七年四月に発足予定の郵政民営化会社に国費一兆円を投入する案の検討に入った、日本経済新聞の文だけは読ませていただきましたが、この種のような検討に入ったというのは、私は全く関知しておりませんし、私の知らないところでこれが進むはずがありませんので、このような事実はないと思っておりますので、今申し上げたとおりなんです。

 現在の勘定を四社に分けて分社化を図る観点からいきますと、これは四社に勘定区分を分離するんだと思うのですね、当たり前の話だと思うのですが、今一つではないから。そうすると、四機能別に勘定を全部分けるわけでしょう。その上で、その一兆円という話、ではどういうものにやるのか。私は、ちょっと、正直、何を基準にどうやるんですか、従業員の数別ですか、何別にやられようとしているんですかが、この新聞記事からではさっぱり理解ができませんので、少なくとも私の承知している範囲では全くこの種の話はございません。

藤田(幸)委員 では、どういう債務超過対策が必要とお考えでしょうか。

 まず、大臣。

麻生国務大臣 これは基本的には、基本方針の中にもその種の話が、一応積み上げていくというお話になっておりますので、先ほどの話は国鉄の長期債務処理のときの話で、平成十年度から十四年度において、郵便貯金特別会計の方から毎年約二千億ずつで、掛ける五ですから約一兆円繰り入れたという実績は確かにあるのは御存じのとおりですけれども、私どもとして、今穴埋めの方式として、少なくとも利益というものが出てくるわけで、その利益の中できちんと対応していくということになるのが基本だとは思っております。

 利益が二兆とか四兆とか出てくることになりますので、その間、三年なり四年なりの間でそこのところをきっちり埋めていくとかいうような形になる。それは四社に分けるときにやることになるという感じでやる以外にほかにないんじゃないかなとは思っております。

藤田(幸)委員 では、総裁。

生田参考人 決して総務大臣と意見が違うわけじゃございませんけれども、公社まとめて、どこまで自己資本を積んでいけるかとなりますと、公社法で七兆円までは自分で積みなさい、その間税金はおまけするから、こういう仕組みで来ておりますが、多分六兆円内外ぐらいのところまでしか積み立てられないだろうと思います。そうすると、公社全体としても過少資本という問題が起こります。

 その中の内訳で、郵便だけを見ると五千八百億の債務超過でスタートしまして、公社は四年でそれを五千三百億まで改善しなさい、すなわち五百億は利益で補いなさい、こういう中期経営計画をいただいているわけなんですが、これは政府で承認された内容ですね。

 それに対して、私どもは何とか黒字の幅を少しずつでも広げて、五千億内外までは縮めていこうとしておりますが、それを全部埋めるのは、五千億を全部埋めるなんというのはとてもできない相談であります。したがいまして、公社全体としての過少資本をどうするのか。

 それから、その中でも、内訳として、郵便の債務超過をどうするのか。債務超過で会社がスタートできるはずがありませんから、やはり応分の資本金は必ず必要ですから、それをどうするのかというのは大変大きな課題でございまして、実は当事者としてそれに対して回答を持つというのは、ちょっとそういうことはできない。そういう能力がないわけでございまして、最終年度にたまるであろう自己資本、例えば六兆内外で適当に四つに割れと言われるとみんなが過少資本ということになるわけなので、それでいいのかどうか。

 制度設計の中で、何とか健全な民営化をして、将来株を売って民有民営にしようというのであれば、それを本当にそうするんだというのであれば、スタートのときのバランスシート、ストックの方は健全にスタートさすということがお国にとっても必要なことじゃないかと思いますので、制度設計の過程でよく考えていただきたいなと。

 その関連で、この一兆円の新聞記事を読みまして、政府方針がこう決まったという記事を見ますと、大体非常に怒り狂う記事が多いんですけれども、これだけは非常に喜んで拝見したわけでありますけれども、今総務大臣のお話を承るとそんなことは聞いていないということなので、実現できればいいなと。

 この記事が出たときに、実は、私は職員連中に、何だ国鉄に一兆円貸していたのなら、貸していたものは返していただくのが当然じゃないかと言ったら、ちょっと筋が違うかもわからないから、そんな下品なことは言っちゃいけないと言われたので、そういうことを申し上げる気はないわけでありますけれども、できればそういうことも含めまして御措置をいただければありがたいなと思っております。

藤田(幸)委員 時間が参りましたので、一言ずつ、大臣と総裁から、結果責任を十分果たせるという自信、見通しについてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 システムを含めて、かかってでき上がる枠組みが、どのような形ででき上がり、かつそれを審議いただくことになりますので、その御審議をいただく内容で、藤田先生の御意見で、悪い方に修正されたらかないませんから、常に、必ずこれがよくなる方向に、これはよっぽどみんなで詰めたところででき上がらないと、これだけ大きなものをやるんですから、ちょっと、数名かの思いつきでできるような話とは全く思いませんので、私どもは、議会においていろいろ御審議をされた結果、最上のものが出てくるようにしなければならぬと思っております。

生田参考人 何に対する結果責任か、ちょっと正確に私は理解できなかったんですが、全般に関して言いましたら、私は、日本国の生産性を高め、国際競争力も高めていくというマクロの立場からいくと、あらゆるものが改革の対象になるだろう、そう思っております。

 私が今お預かりしている公社について考えれば、公社で持たせていただいている経営資源というものが必ずしも最適な格好では配置されていないわけでありまして、それを、意識の改革、それから官庁文化からの脱却という意味での文化の改革も経まして、持っている公社の経営資源をできるだけ最適に再配分することによりまして、一番生産性高く、結果もいい内容にしていこうと思っております。しかも、職員に喜んでもらえるような、職員の士気が鼓舞されるような格好でできればいいな、そのことについて最善の努力を尽くしていきたい。自分自身としては結果責任を負うつもりである。それは、結果が悪いかどうかは客観的に評価していただく以外ないわけで、自分ではできないわけでありますけれども、いかなる御批判を受けてもいいというつもりで最善を尽くしていきたい、こう思っております。

藤田(幸)委員 ありがとうございました。

実川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 郵政公社決算審議に当たりまして、最初に、生田総裁、サービス残業問題についてお聞きしたいと思っております。

 昨年の四月に郵政公社がスタートをして、その際、衆参の総務委員会で生田総裁への質疑も行われました。その際に、参議院の総務委員会で、近畿支社のサービス残業問題が取り上げられまして、これは郵政局時代のことではあるけれども、この近畿支社のサービス残業問題を教訓として、労基法など法規を確実に守るということは今のところ全員に徹底しつつあるところだと生田総裁御自身が答弁をされておられます。

 そこで、サービス残業に関する労働基準監督署からの行政指導状況について、お尋ねします。スタートしました平成十五年度と十六年度、今年度の是正勧告と、指導を受けた局所の数について、数だけで結構ですから御紹介ください。

広瀬参考人 お答えを申し上げます。

 職員が時間外勤務を行いました場合に超過勤務手当を支給することは当然のことでございまして、いわゆる不払い残業はあってはならないものと考えております。

 しかし、遺憾ながら、時間外勤務に関しまして労働基準監督署から是正勧告を受けました局所は、平成十五年度で十局所、平成十六年度十月までで七局所ございます。いずれも、時間外労働について割り増し賃金を支払っていない旨の是正勧告を受けております。

 これら是正勧告につきましては、実態調査を行いました上で、時間外労働に対する割り増し賃金を支給しております。

 以上でございます。

塩川委員 指導の件数が落ちていましたけれども、昨年度は四回、ことしが五回ということで、是正勧告を見ましても、昨年度で十カ所、ことしは十月末で既に七カ所なんですよ。つまり、年度ベースでいえば昨年度を上回るような規模で是正勧告を受けているわけで、根絶にはとても至らない、相変わらず重大な事態なんです。

 生田総裁にお伺いしますが、何でなくならないんでしょうか。

生田参考人 今、事実関係は広瀬がお話ししたとおりなんですけれども、私も公社に入りまして、こういう格好の残業があるというのを知って、これは普通、ちゃんとした民間はあり得ないんですよね。非常に驚きました。それは、経営者として、あり得べきことではないと思うので、絶対にやめるべしというおふれを、公社スタートと余りおくれずに、一、二カ月後ぐらいに出したんですよ。

 ところが、国会でもそういう御質問があったし、私のところに手紙が来て、そういうことがまだあるというふうなこともあったので、これは昨年十一月七日に一斉点検をやったんです。とにかく全部正直に報告せよ、出してみろと。その結果、やはりかなりあることが発見されたんですよ、あちこちに。それで、これを最後に、全部本当にやめるんだよということで、九月、十月、二カ月にわたりまして全職場をチェックして、そこから出てきた隠れ残業部分は全部表に出しまして、ことしの一月十八日付でそれは全部支払いをした。

 今度こそ本当に全廃、もしやっていたらその管理者の責任が問われますよということで今運営しておりまして、きょう現在一つもないかというと、私、全部今見ていませんから、ひょっとしたら一カ所ぐらいあったら、それは恥をかきますけれども、私どもの認識では、もうなくなっていると思っております。また折に触れまして調べます。

塩川委員 ことしの一月に是正されたというお話ですが、今年度に入ってからの是正勧告が七件なんですけれども、この点は御承知ですか。その点は御存じなかったんですか。

生田参考人 事前に見ていたんですけれども、うっかりしていました。

 いずれにしても、これは経営の恥だと思っています。したがって、何回も、かなり根気が要ると思いますけれども、根絶させていきたいと思っております。

塩川委員 私は、ことしの二月の総務委員会でも、JPS方式の越谷郵便局のサービス残業問題について取り上げまして、その際にも、越谷郵便局の全逓の越谷地方支部のアンケートに基づきまして、これは一月のアンケートでしたけれども、ここにも、サービス労働がないという方が十名に対して、あったという人が六十二名だ、こういう現状ですよということを紹介したんです。加えて、今度、郵政公社労働組合に変わってからも七月にアンケートが行われていまして、このアンケートでも、やはりサービス労働について、ないという答えも三十人ありましたけれども、あるという答えも五十二名なんです。

 そういう点では、現場は依然としてこういうサービス労働、サービス残業が行われているんだということが、現場の労働者の声として挙げられているわけなんですよね。

 そういう点でも、この委員会の後でも、この組合のアンケートを総裁に差し上げますので、ぜひ越谷郵便局も含めて抜本的な打開策をとるべきだ、タイムカードをつけるだとか、ふさわしい対策をきちっと行うべきだ、そう思いますが、その点、お答えいただけますでしょうか。

生田参考人 隠れ残業はとにかく全廃していこうと思っておりますから、後ほどいただきまして、よく対策を検討したいと思います。

塩川委員 JPSにつきましても、効率が上がったといいましても、昨年の十月、十一月の残業、三六協定をさらに上回るような労働時間にせざるを得なかったという点では、逆に、そういったサービス残業で効率が上がったんじゃないかと思えるような、そういうことでは本来の趣旨に反するものでもありますし、こういうことをきっぱりとなくすという点での取り組みをお願いしたいと思っております。

 続けて、第三種、第四種郵便物の問題についてお聞きいたします。

 生田総裁が、郵政民営化問題の集中審議を行った八月二日の経済財政諮問会議の場で、第三種、第四種郵便について、「郵便分野において、一種、二種以外の分野については、民間並みのデ・レギュレーションが行われてもいい気がしている。」と、三種、四種については規制緩和を考えてもらってもいいんじゃないか、そういう趣旨のお話だと思うのです。

 私、コスト論だけで考えていいのかなと思うわけですね。情報バリアフリーを支えている面もありますし、地域の文化ですとか、あるいは集会、結社の自由のように、全国的な会員が少ないような団体であっても、それを維持するようなネットワークづくりという点で三種、四種郵便物の持つ意味は大変大きいと思っております。

 この間、生田総裁御自身が全国を回られて、地方でもいろいろな声を聞いてこられている、このように伺いました。そういう中で、この三種、四種郵便物の果たしている社会的な役割について、生田総裁御自身はどのような声を聞いておられるのか、率直な御意見をお伺いしたいと思っています。

生田参考人 その前に、先生の質問に、ちょっと離れて悪いんだけれども、越谷のJPSの問題、あそこで働いている方たちの中のごく一部に、多少先生がおっしゃったような御意見に近い人がいることは事実なんですけれども、マクロで見ますと、非常に生き生きと、みんな意気に燃えて改革に取り組んでくれまして、多分この三月で二一%の改善をしていましたから、今はもう二五%ぐらいになっていると思います。大変みんなが評価し、現実に効果を上げて、それが今全国に広がっているということをちょっと付加的に報告させていただきたいと思います。

 それから、三種、四種のことですが、私が諮問会議で申し上げたのは、だからやめたいと言っているんじゃなくて、ユニバーサルサービスとして、そういったようなこともコインの両面としてやっているんですよというふうな関連で多分お話ししたんじゃないかと思います。

 私自身は、三種、四種の郵便物というのは、社会文化の発展や学術、教育なんかの普及、それから福祉の増進、こういった意味で、どちらかといいますと、余りお金が潤沢でない分野あるいは欠けている分野に対して大変大きな貢献をして、社会的意義があると思っております。

 郵便法上、公社が提供すべきサービス、こうなっているわけでございまして、公社としては、当然これはきちっと維持していくべきだと思っておりますし、特に点字の郵便物につきましては、目の不自由な方の通信手段として不可欠なものだろう、重要な役割であるというふうに認識しております。

塩川委員 障害者団体の方からも要望書をいただきまして、それなども拝見しますと、自主財源の乏しい障害者団体などの社会啓発活動や会員相互のコミュニケーション及び各種情報の伝達、入手手段として極めて重要な役割であり、これが存続がなされないということは、団体の存続自体が危機に瀕する、また、障害者政策におけるバリアフリー施策の流れにも逆行し、障害者基本法が定める障害者の自立と社会参加を阻害する新たな情報バリアにもなりかねないというお話、もっともだと思っております。

 そういう点でも、多くの団体の皆さんが郵政事業の組織形態のあり方を超えて、三種、四種については維持存続してほしいという声を上げておられるわけですね。そういう意味でも、私は、こういった事業を行うということが企業の、企業といいますか公社も含めて、その社会的な責任として大変重要な値打ちを発揮するものだと思っております。そういう意味でも、この制度を維持発展させることが現在の公社にとってもその存在意義や値打ちを高めることになるんじゃないか。

 その点で率直に生田総裁のお気持ちもお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

生田参考人 御趣旨としておっしゃるとおりだと思いますね。

 だから、公社である間、もちろん大変重要な社会的役割としてその使命を果たしてまいりますし、それが引き続き可能となるようなきちっとした制度設計ができることを期待しております。

塩川委員 続けて、同じ八月二日の経済財政諮問会議の中で、ユニバーサルサービスをめぐって生田総裁も発言をされておられます。

 その言葉を少し拾いますと、

 私も経営者の一人として単純に考えれば、事業を任されるとすれば、一〇〇%自由がよい。

 もし、郵貯・簡保に対して単なる努力目標ということで置かれた場合に、経営者の立場としては、それに気を遣いつつも、最終的には、資本の論理の使命感と誘惑には勝てないと思う。その結果として、郵貯・簡保を中心に郵便ネットワークの一部にほころびが出れば、結果としてネットはぼろぼろになってしまうだろうし、そうした努力目標と、実際の必要性という板挟みの中に新しい経営者を置くのは、非常に過酷だ。

  その実証例はドイツである。三万あった郵便局が一万二千までになって国民的に非難されたので、法律で歯止めをかけた。さらに一旦離してしまったポストバンクをまた子会社にし、郵便局を使用させた例があり、これは生かしていただきたい。

このように述べておられます。

 しかしながら、この間の有識者会議での議論を見ますと、どうもそういう生かされない方向での、ドイツでの失敗の轍を踏むような方向に進んでいるんじゃないか、このように私は思うのですが、生田総裁はどのようにお考えでしょうか。

生田参考人 たしか今先生がお読みになったのは、二回目の諮問会議に出たときに私が言ったことではないかと思うのですが、そのときの議論は、郵便だけがユニバーサルサービスで、金融については不要という議論であったので、そうではないということを申し上げて、金融部門についてもユニバーサルサービスの機能を維持するようなきちんとした義務づけをすべきである。それがよしんば、もし仮に法的に難しいというのであれば、法に準ずるような格好でやはり義務づけをしないといけない。

 もしそれを、今有識者会議の一部の方なんでしょうけれども、議論しているように経営者判断に任す、郵貯会社あるいは簡保会社の経営に任すということになれば、努力目標としておいても、やはりいろいろなステークホルダーの利益を考えるといっても、最後の決め手のところは資本の論理になるでしょうから、利益の三割四割を投じて、それを犠牲にユニバーサルサービスを維持するなんという発想にはなり得ないと思うので、そういう悩みといいますか板挟み的な苦悩を経営者に与えるんじゃなくて、法的に郵便局設置基準を設けて、そこでは三事業はそういう業務を提供するということを明確にすべきであるということを申し述べたわけであります。

 なぜそういうことを言うのかというのは、私自身が経営者ですから、大体経営者のビヘービアといいますか、どういう判断をするかというのは想像がつくから、ぜひそういう制度設計をお願いします、これは、諮問会議で大方の先生の、一部の先生なんかに要らないという御意見があったことは記憶していますけれども、大方の先生の、委員の御賛同を得て、その精神は基本方針に入っていると私は思います。

 ただ、そこが明確に三事業とも、金融も郵便局でやると書いていないところで、一見しますとしり抜けになっているんですね。そのしり抜けをどうするのかという私の質問に対して当時の返事は、それは細かいことだから制度設計でバックアップする、制度設計で穴埋めをするんだというふうに私は理解していたわけなんですが、そのようにもおっしゃっていたわけなんですが、どうもその制度設計する有識者会議でしり抜けのままいく可能性を見たものですから、原点に戻ってほしいという意見、要望書を今出して結果を期待しているところであります。

塩川委員 ドイツの実例で、ドイツ・ポストとドイツ・ポストバンクが切り離された。これ自身は制度設計上やはりまずかった、そのようにお考えですか。

生田参考人 ドイッチェ・ポストの場合の貯金部門というのは小さいんですよね。我が方の貯金部門というのは巨大なんですよ。だから、もろに比較して向こうの経験が、ドイッチェ・ポストバンクに限っていえば、必ずしも参考にはならないと思います。

 だけれども、その小さい貯金ですらやはり入れておいた方がよかったんだという反省をしたということは、多分、そこから得られる教訓というものは、巨大であればもっと離したらえらいことになるぞということを意味しているんじゃないかと私は思います。なかんずく、無集配特定郵便局の場合に、かかっている費用の七〇%は実は金融部門が持っている。六〇%が郵貯、一〇%が簡保、それで三〇%が郵便、こういうパターンになっておりますから、金融部門が抜けると郵便局ネットワークの維持は難しくなると思います。

 ただし、私は発想としては、費用の負担がそういう関係になるから金融もユニバーサルサービスを維持せよと言っているのでは全くないんです。やはり地方の住民の方たちの生活インフラとして必要である、少額のお金の金庫がわり、あるいは万一に備えてのせめて二、三百万の保険を掛けておこうという保険、そういう意味の金融絡みの生活インフラとしてユニバーサルサービスが金融部門にも必要である、だからユニバーサルサービス機能は維持すべきであるということを申し上げているので、その結果として、それが郵便局を維持することにも通じて役立つというふうに、私は、頭の中の優先順位はそういう順序で物を考えております。

塩川委員 例えば、金融のユニバーサルサービスを外すということが結果として郵便局網がぼろぼろになってしまうんじゃないか、こういうことだと思うのですが、総裁自身もそのようにお考えですか。

生田参考人 算術をやると、結果としてそうなると思いますけれども、さっき申し上げましたように、だからユニバーサルサービス機能を維持せよと私は思っていないわけで、金融のユニバーサルサービス機能の維持が絶対に必要である、それは日本国を改革していく場合に、地方改革をしていく場合にやはり必要であるということでまず考えておりまして、その結果、それが郵便局ネットワークの維持に大きく資する。

 同じことじゃないかとおっしゃるかもわからないけれども、やはり物の考え方というのは重要だと私は思っております。

塩川委員 今、郵便局しかない市町村というのが、去年の初めぐらいは十一だったのが、ことしの七月ぐらいですか、十七にふえているんですよね。地方における民間金融機関がどんどん撤退をしていく、過去五年間をさかのぼっても、郵便局はほぼ店舗数は維持しているけれども、特に農協の店舗が減っていますから、そういう意味では民間金融機関では一五ポイントもこの間で下がっているというのを見ましても、地方における金融のユニバーサルサービスの維持というのは大変大きな意味を持つと私自身思っております。

 しかしながら、実際の議論というのは必ずしもそうはなっていないわけで、有識者会議に対して意見書を総裁として出されましたけれども、そういう中でも、民業圧迫という名のもとにおける、実は競争排除、既存の業界利益の擁護になっていないのかという指摘もありましたし、金融業務については、制度的締めつけにより結果として半ば強制的に大幅なスリム化、ナローバンク化に導くという議論の流れになっている、先行き行き詰まることがほぼ確実な民営化だという指摘もありまして、私自身は、こういう民営化の議論そのものが、既存の業界、今の金融業界の要求に根差すものだと思っていますし、それにゆだねるということでは国民サービスそのものもずたずたになると率直に思います。その点での感想を一言お聞きしまして、私の質問を終わります。

生田参考人 今先生が読んでいただいたところに私の考えも集約されておりまして、私は有識者会議での御議論がそのまま制度に結びつくとは全然思っておりませんけれども、万が一、仮に結びついたとしたら、明らかに郵便局ネットワークの維持は大変難しいということになりますし、ひいては雇用の問題にも大変大きな影響を与えてくるということになりますから、郵便局対策及び雇用対策についてどういう対策を考えているのかというのが、その有識者の方たちの御意見と一緒に、パッケージでお出しいただかないと、一つの政策論議としては難しいんじゃないかなと思います。

 結果として、事業そのものが限りなき縮小均衡で劣化していくということになれば、事業の維持そのものが大変難しい事態があり得るわけでありますし、ましてや、同じ有識者の方たちがおっしゃっているような、できるだけ早く株を売っちゃって、一〇〇%民有民営にしろといったって、株をお買いになる方を見つけるのは非常に難しいんじゃないのか、コーポレートバリューは下がってしまうんじゃないか、かように危惧するわけであります。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

実川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 生田総裁にお尋ねをいたします。

 郵政公社、総裁を先頭にして、中期経営計画、四年の目標を掲げてスタートいたしました。そして、今回一年間の決算が出たわけでございますが、この実績を見ますと、郵便、貯金、簡保、三事業とも好転している結果になっております。とりわけ、郵便において、十四年度の赤字から何と黒字に転換しておる。黒字になったとしても、先ほどからお話ございますように、減収増益である。つまり、収入は減っているにもかかわらず黒字に転換した。結局のところ、職員の犠牲やあるいはしわ寄せもあったと思うのですね。

 そういった意味で、総裁以下職員一丸となった相当の効率化に向けての努力がうかがえるわけでございますが、この一期目の決算を振り返って、総裁としてどのように評価されておられますか。端的にお答えいただきたいと思います。

生田参考人 数字的には一定の成果を、職員の努力によりまして上げ得たかなと思っておりますが、内容的にはおのおの厳しいということを繰り返し申し述べております。

 郵便は、マイナス二十六億の計画のところ、二百六十三億の黒字を出した。郵貯は、一兆一千億程度の利益の目標のところ、二兆二千七百五十五億出した。簡保は、三百二十四億の内部留保減を予想したところ、四十一億積めたということで、数字的にはまずまずなんですが、郵便も、考えられ得るあらゆる手段をとりあえずとったところで水面に鼻先を出しましたが、ことしも売り上げが減りますので、本格的な黒字構造への転換はこれから入るところである。それから、郵貯も、二兆三千億のうちの一兆二千億は信託資金の運用益ですから、これは株価が下がればまた下がりますので不安定なものであり、簡保も、基礎三利源は合計赤字という深刻な状態になるということで、総じまして、健全化はこれから取り組むべき課題であると認識しております。

 もちろん効率化もやったわけでありますが、それよりも、皆がやってくれたことは、サービス業を我々はやっているんだということで、真っ向サービスということに集約されますけれども、すべてお客様の視点に立って、お客様の論理でサービスもするし、商品メニューも考えるし、商品の質も高めるというふうな努力をしてくれた。それで、営業拡大に最善の努力を尽くしたということがまず前提にありまして、それに加えて、購買費、できれば前年対比二〇%カット、実際上一三%になりましたが、購買費の合理化とかJPSに代表されます生産性向上というふうなことを織りまぜまして、達成が可能になったと考えております。しかし、すべてはこれからであって、スタート台についたところだというふうに考えております。

横光委員 すべてはこれから、スタート台に立ったところだというお話でございます。

 現在二年目に入っているわけでございますが、しかし、政府の方は郵政民営化基本方針を閣議決定して民営化の方向へ動き出しております。基本方針では、窓口会社も含めて郵便、貯金、簡保、四つに、ばらばらに分割する方向が出されておりますが、果たしてこのことによって今の二万四千六百の窓口ネットワークが本当にうまくいくのか非常に心配しておるわけでございますが、仮にこの基本方針の方向で民営化され、四事業が分けられたときに、公社のトップとして、さらに各事業がこれまで以上によくなるとお思いなのか、厳しい状況が生まれるとお思いなのか。つまり、長い間築いてきた国民の財産ともいうべきネットワークが果たして維持できるのかどうか、この点について総裁のお考えをお聞かせください。

生田参考人 実は、諮問会議の御結論と政府の民営化の基本方針、ここまではいい民営化になる骨組みはあると思います。家で例えますと、上棟式、棟上げ式をする、柱を立てたところまでは私はいい民営化になる基盤は十分あると思っております。問題は、内装、外装、それから庭のつくり方で家ができるわけですけれども、そこを間違えると悪い家になってしまう。今、その瀬戸際に立っていると思います。

 それで、その内装、外装、庭づくりの議論が、例えば一つの場としては有識者会議で行われている。ここで行われている中にも、いい意見もいっぱいあるんでしょうけれども、そこで出されている基本原則、五原則を忘れたり、あるいは基本方針を忘れたような議論でもし内装、外装が行われたら、非常に郵便局ネットワークの維持も難しくなりますし、雇用の維持も難しくなるでしょうし、事業そのものも縮小に向かう可能性があるというふうに思っております。ただ、悪い意見だけじゃないから、いい意見を拾い上げて、いい内装、外装、庭づくり、これからつくるわけですから、それさえしっかりつくっていただけましたら、いい民営化に結びつくだろうと思います。

 御質問の郵便局ネットワークにつきまして一言だけ言いますと、二万四千七百がそのまま現状を維持するのは、私は必ずしもいいことではないと思っております。やはり時代は進化しています。町も変わってきているし、都市も変わってきているし、地方も変わってきている。そういった地方や都市も含めての社会的な構造変化、進化に合わせてのある程度の調整は当然必要だろうと思いますが、その中できちんとした郵便局設置基準というものが示されて、そこをベースに郵便のユニバーサルサービスが維持される、そこで三事業が提供されるということになれば、いい民営化という方向に持っていくことも十分可能ではないかと考えております。

横光委員 これまでは三事業一体の運営で何とか相乗作用でコストを落とし、そして黒字という結果を出しているんであり、これが崩れると、やはり手数料収入だけで各事業が維持できるのかどうか非常に疑問だと思うのですね。

 基本方針では、ユニバーサルサービスについて、郵便事業だけ維持するとされておりますが、これは窓口会社は窓口の配置については努力義務規定になっている。となりますと、採算が合わない郵便局は廃止することも理由があれば可能となる。つまり、そこからネットワークが崩れる、それによってサービスが低下する、ユニバーサルサービスに影響する、こういった形になるのではないかと非常に心配をいたしておるわけでございます。

 ちょっと違う点でお聞きしたいんですが、ことしは台風あるいは水害、そしてまた地震と、日本列島じゅうがこのことによって大変な被害が発生しておるわけでございますが、そういった中、新潟県中越地震における被災地向け宅配便サービス、これでは、災害時における郵便システム、この強さが改めて私は見直されたと思っておるんですよ。

 ヤマト運輸や佐川急便あるいは日本通運の民間大手は、被災地の現状を考えると配達の責任を全うできない、あるいは、荷物が滞り現場が混乱する可能性がある、避難先がつかめていないなどと、こういった理由で宅配便引き受けの停止を打ち出しております。一方、日本郵政公社は、被災地向けの引き受けを続けて、そして避難所への配達を可能な限り実施した。

 かつて、北海道奥尻島の青苗郵便局、ここで一九九三年発生した例の北海道南西沖地震、このときには局舎が全壊してしまった、しかも職員が一人亡くなってしまった。そういった大混乱の中でも、このようなときこそ郵便局として地域のためにと、約一カ月間、非番あるいは休日を返上して頑張ったと聞いております。阪神・淡路大震災のときもそうです。民間各社が取り扱いの停止を打ち出す中で、小包の取り扱いを継続しております。

 なぜこういうことができたのか、その背景には何があるのか。つまり、地域と密着した郵便局網、そして地域に密着したサービス、そして、だれがどこに避難しているかをほぼ把握している情報収集力、さらには公務員としての献身性、これらがあったからこそ私は可能だったと思っているんです。

 さらに、救援用郵便物やあるいは被災者への郵便物は無料ですね。これは、公社の料金免除処分に国からの補てんはありません。つまり、公共性ということで、持ち出して自助努力でこういったサービスを行っている。

 これが完全民営化となって、果たしてこういうことができるかどうか非常に疑問になってくるわけでございます。被災地で被災者のために頑張っているのは、とりわけ被災直後、自治体職員であり学校の先生であり、そして警察であり自衛隊であり消防であり、そして郵便局員なんです。地域のことがわかっているからこそ地域の役に立つことができる、私はそう思っているんですね。

 ですから、配達に責任が持てないという民間業者でユニバーサルサービスの維持ができるのかどうか非常に疑問でございますし、公共性より採算性を重視し、そして公務員としての気概とかあるいは地域での密着性をなくすような民営化で非常時の郵便サービスの維持が可能なのかどうか、総裁のお考えをお聞きしたいと思います。

生田参考人 まさに制度設計そのものにかかわることなんで、どうも私のキャパを超えてしまっていると思うので、それにお答えする立場にはまずない、率直に言ってないと思います。

 今回の問題に関しましては、直ちに対策本部をつくりまして、指令系統を一本に絞りまして、現地の救済に努力いたしました。職員の家も十数軒倒れておりますし、さらに二十軒ぐらいかな、半壊しているというようなことで、職員自体にかなり大きな被害が出ているんですが、幸い生命にかかわる被害はありませんでした。それにもかかわらず、やはり長年培ってきている職員の使命感だと思います。大変な力が出まして、他の社のエリアからも、もちろん秩序を持って整々と組んでいくんですけれども、たくさん応援部隊が出まして、他の業者の方はみんな郵便物をとめられたんですけれども、私どもは小包便の配達を、それもほぼもう翌日配達でやったんですね、維持したということで、身内を褒めてはいけないんですが、頑張ってくれた職員に非常に感謝しているところであります。

 こういったことをやはり維持するということは、こういう危難のときのお国の役目だと思うので、そういうことを織り込んだ制度設計というものを考えていただけることを期待したいと思います。

横光委員 終わります。

     ――――◇―――――

実川委員長 この際、森山裕君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による日本郵政公社平成十五年度財務諸表に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。森山裕君。

森山(裕)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨の御説明を申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    日本郵政公社平成十五年度財務諸表に関する件(案)

 一、日本郵政公社は、郵便・郵便貯金・簡易生命保険の現状におけるサービスの維持に努め、第一期中期経営目標の達成に向け、以下の点に留意しつつ、引き続き、中期経営計画の着実な推進を図り、郵政事業に対する国民の信頼に応えること。

  ア、郵便業務については、平成十五年度決算において黒字転換を果たしたが、郵便物数が減少する環境下でも健全な経営が確保できるよう、引き続き経営体質の強化を図ること。

  イ、郵便貯金業務については、地域に信頼される金融窓口として効率的な経営を目指し、自己資本の充実に努めること。

  ウ、簡易生命保険業務については、収益性の向上に努めること。

  エ、国民利用者の立場に立って、よりよいサービスを提供するため、経営の効率化とサービス改善に向けて、一層の経営努力を行うこと。

  オ、郵政事業が国民生活に不可欠な基礎的サービスを提供していることを踏まえ、国民の一層の信頼が得られるよう、コンプライアンスの確保の徹底を図ること。

  カ、国際的に進むIT革命や物流革命の進展状況を注視し、国際的に展開される郵政事業に的確に対応するため、引き続き郵政事業の進化に努めること。

  キ、公社経営については、職員の声を出来るだけ経営に反映させて、労使の信頼関係を確立させるように努力すること。

  ク、災害時における非常取り扱いをはじめとした郵政事業の公共的性格を有するサービスの提供については、今後ともその確保に努め、国民の一層の信頼に応えること。

 二、政府は、郵政事業の自律的かつ弾力的な経営を可能とし、もって国民利用者の利益の増進を図るという公社化の意義を徹底するよう努めること。

 三、政府は、郵便局がよりよいサービスを国民に継続して提供できるよう、第一期中期経営目標の達成状況及び中期経営計画の推進状況並びに公社の業務の継続性にかんがみ、普通郵便局、特定郵便局等を通じた郵便・郵便貯金・簡易生命保険からなる現在提供されている郵政事業のサービスを引き続き維持し、その責務を確保すること。

 右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

実川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり日本郵政公社平成十五年度財務諸表に関する件を本委員会の決議とするに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 ただいまの決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

実川委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日木曜日午後一時十分理事会、午後一時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十分散会


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