衆議院

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第6号 平成17年3月2日(水曜日)

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平成十七年三月二日(水曜日)

    午後三時二分開議

 出席委員

   委員長 実川 幸夫君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 野田 聖子君 理事 森山  裕君

   理事 安住  淳君 理事 大出  彰君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      佐田玄一郎君    自見庄三郎君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    西田  猛君

      萩生田光一君    平井 卓也君

      増原 義剛君    松本  純君

      三ッ矢憲生君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    稲見 哲男君

      楠田 大蔵君    小宮山泰子君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      寺田  学君    中村 哲治君

      西村智奈美君    松崎 公昭君

      山花 郁夫君    河合 正智君

      山名 靖英君    塩川 鉄也君

      吉井 英勝君    横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   内閣府副大臣       七条  明君

   総務副大臣        今井  宏君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   総務大臣政務官      松本  純君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           石井 道遠君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  長沢 広明君     山名 靖英君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  山名 靖英君     長沢 広明君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)

 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

 地方分権推進のための地方税財政基盤の確立に関する件


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     ――――◇―――――

実川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長瀧野欣彌君及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、地方交付税の改正案が最後の質疑となりますので、どうか大臣、よろしくお願いをいたします。

 地方財政なんですけれども、今、大体、地方税収というのが三十三兆、そして地財計画が八十三兆、一般歳出が六十七兆、長期債務が二百五兆という状況なんです。よく、国の国債の方は、プライマリーバランスを二〇一〇年までに均衡にするという目標が立っているんですが、地方財政に関しては全く、プライマリーバランスだとか、地方財政をどうやって健全化していくかという話がなかなか出てこないように思われるんです。

 それで、地方交付税法の六条の三の二項というのがありまして、地方税の法定率分、要は国税の一定割合、これが自治体の財源不足の合計額と著しく異なる場合には地方財政制度を変更するようにということが規定をされているわけです。

 ちょっと資料の二枚目をめくっていただければありがたいと思うんですが、今の話でいきますと、平成十七年度、国税五税の定率分が約十一兆九千億円、そして地方自治体に配分する交付税の総額というのが約十六兆八千億円、それに臨時財政対策債約三兆二千億円を足して、引くと、この差額が約八兆一千四百億円。これが、表でいうと、一番上のアと一番下のイと、そして臨時財政対策債の三兆二千億円、一番下にちょっと手書きで書いてありますけれども、ウになります。イからアを引いてウを足すと約八兆一千四百億円ですね。これが地方交付税法六条の三の二項に当たる、著しく乖離しているのではないかというふうに私は思うんです。

 地方財政を預かる財務大臣としましては、この六条の三の二項どおりに抜本的な改革をするべきだと私は思いますけれども、その辺の考えはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今、財務大臣と言われたので、呼ばれているのかなと思って。

 今御指摘のありましたのは、いわゆる地方交付税法の第六条の三の二というところを読まれた、そのとおりなんですが、この中の前提条件というのは、地方の歳入歳出に財源の不足額があり、その額が法定率分の普通交付税のおおむね一割以上になり、その状況が二年連続して継続して、三年以降も継続するであろうと見込まれる、予想されるという場合に、今言われましたように制度の改正もしくは交付税率の変更ということをされているところで、制度の改正につきまして、いかなる内容の改正を行うべきかということに関しましては、従来からいろいろ広い法律改正が行われているんです。

 御記憶のように、平成十六年度、一昨年の地方財政は、地方交付税法第六条の三の二項に従いまして、これに該当するとあの当時判断されたものですから、その規定によりまして、十六年から十八年度までの三年間につきましては、通常収支の財源不足については国と地方が折半するという制度の変更というか考え方のもとに、国庫負担分については、国の負担分につきましては一般会計からの加算によって、地方負担分についても、地方のいわゆる特例地方債、臨財債ですね、特例地方債によって補てんするというのにしたのが一昨年。

 したがいまして、今年、平成十七年度につきましても、今言われましたように、約十一兆二千億の財源不足が生じておりますので、今の法律に該当する状況になっておりますが、平成十八年度までの、いわゆる平成十六年度に決めたルールのちょうど今中間点ということにもなりますので、十六年度に決めたルールにより補てんの措置を講ずることとしておりますので、今年度は制度改正を行っていないということであります。

 今申し上げましたように、これは平成十九年度まで続いていくことになりますので、それ以降にもこのような状況が続くということになるような状況が見込まれた場合においては、当然のこととして、制度の改正もしくは交付税率の変更がその時点で必要となるということになるであろうと思っております。

松野(頼)委員 ただ、このおおむね一割という金額は相当シビアな数字になると思うんですよ。この表で見ていただいても、昨年度が約九兆九千億円、ことしが八兆一千億円ですから、随分改善はしたとはいえ、このおおむね一割という数字とは、私は、まだまだほど遠いのではないかというふうに思うんですね。

 例えば、では、これを平成十九年にこの法の中におさまるような形の数字に持ってくるということは、相当な率の引き上げと、そして歳出のカットと、そしてまた地方交付税の増額と、この今の経済状況の中で果たしてできるのかなというふうに思っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 来年のことを言えば鬼が笑う、さらにそのまた再来年のときにどうなるかという話なんですが、今年度につきましても、正直申し上げて、今までに比べてそこそこの予算が組めた大きな理由は、地方に関しましては、法人税というものが予定より多く入ってきたというのがかなりいろいろな意味で国税にも地方税にもいい影響を及ぼして、結果として予算が組みやすくなったというのは事実だと思うんです。

 今いろいろ言われておりますが、今年度につきましても、少なくとも、地方の法人税というものに関しましては、私は、昨年、今年同様、ある程度、一昨年みたいなきついような状況ではないと思っておりますので、そこらの点につきましては、十分、ある程度状況はよくなってくるであろうと思っておりますのが一点。

 また、今言われましたように、だからといって、おまえ、一割以内におさまるかと言われれば、なかなか難しいということに関しましては、私どもも、今の段階でどっちだと言われれば、なかなか難しいとお答えをせなならぬところだと思っております。

松野(頼)委員 ただ、大臣、ことしが大体、自然増収というのがありまして、一兆数千億ですよ。この一兆数千億をこの中に全くぶち込んでいないわけですよね。どうせ借りるんだからこれをぶち込んだって同じことだからということで、この六条の三の二項に少しでも近づけようという努力が私には見られないんですよ。もしこれに少しでも近づけようということであれば、この一兆数千億をぶち込んで、根本的なシステムを組むべきだと私は思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 大体七・五兆円ぐらいの不足が生じているような状況でもありますので、これは、交付税率の引き上げを求めましても、そう簡単には合意できないのもはっきりしているんだと思います。

 いずれにいたしましても、中期的にバランスをよくさせていくためにはスリム化等々きちんとしたことをやらねばならぬと思っておりますけれども、当該の不足額がある程度見込まれるような段階で、その段階で中期ビジョンに沿って法定率の引き上げ等々をやっていかないかぬことになるんだと私は思っています。

 今年度の分につきましては、今やっていないではないかと言われれば、それは、その分だけ、ことしの分が逆に言えば繰り越すだけのことでありまして、楽になるということでもありますので、この三年以内できちんとするということでもあろうと思いますので、一応、その部分だけは、十七年度の部分において効果が出てくることになるというように、十七年度の段階で使えるようになるということなんだと思っております。

松野(頼)委員 大臣、今、国が非常に財政赤字、赤字国債を発行して長期債務をふやしていく。私が思いますのは、国債を発行することによって市場から民間の資金を吸い上げてしまうんですよ。ですから、今、大体諸外国では、景気が悪くなって税収が下がってくると減税をするというのが、大臣おわかりのように、世界の経済の流れなんですね。日本はいまだにその逆をやっている。それと同じ、何割かを地方でも同じようにやっているわけです。

 ですから、もう本当に根本的に、補助金、交付金、そして地方交付税を含めた国と地方の資金の流れを抜本的に改革しなければ、国の赤字が、同じだけのある一定の配分が地方についていく。多分、今、三位一体の改革、政府がやっていますけれども、これによって地方のお金がどんどん絞られていきますと、財政破綻をする自治体がこの二、三年のうちに出てくると私は思いますよ。

 ぜひ大臣、そこのところは、しっかりともう一度、根本的、本当の意味で抜本的な改革を早急にこの二、三年で行うということを明言していただきたいと思います。

 きょう金融庁からも来ていただいているので、今、地方銀行が地方債、長期債務をどれだけ買っているかということをちょっと教えていただきたいんですけれども、今年度ベースで結構ですから、何兆円、地方債を地方銀行が買い入れているんでしょうか。

七条副大臣 今の先生へのお答えですけれども、地方債の残高でございますが、平成十七年一月末で七兆四千二百七十九。十二年から十三年、十四年、十五年、十六年度ぐらいは大体七兆五千ぐらいで落ちついてきておりますが、もっとさらに、十年前になりますと、四兆二千億ぐらいから急激にふえてきた。ただし、ここ十二年ぐらいからは大体七兆五千億前後で落ちついているというところでございます。

松野(頼)委員 この資料の三枚目を見てください。

 地銀の中小企業貸し付けの残高を示した表でありますけれども、国のメガバンクが中小企業貸し出しが減っているのと同じように、やはり地銀、第二地銀の中小企業貸し出しというのが下がっているんです。

 といいますのは、多分、僕らが地銀や第二地銀の人の話を聞くと、金融庁がいい銀行とされている銀行というのは、当然地方債も自己資本の中に入りますから、危ない橋を渡って中小企業に二・幾つで貸すよりも、公定歩合で引っ張ってきたお金を、地方債を一・幾つで買っていた方がよほど格付がいいわけですよ。ですから、お金を貸さない銀行、国債や地方債を買ってお金を民間に貸さない銀行の方が、金融庁的に言うと、クラスのいい銀行、程度のいい銀行になっていて、一生懸命地場産業を支えていこうといってお金を貸す銀行ほど格付が悪くなるという現実が実際起こっているんです。

 その辺、御存じでしょうか。

七条副大臣 今先生お話のありました件でございますけれども、地方債のいわゆるリスクウエートも一つの問題だということの御提起だと思うんですけれども、今地域金融機関が地方債を多く保有していることは今申し上げたとおりでありますが、その資産内容、いわゆるポートフォリオをどのように構成するかというのは、金融機関みずからの判断だろうと思います。

 しかしながら、今先生言われるように、中小企業向け貸出残高が非常に減少してきた。その原因というか理由が、いろいろ分析をしてみますと、中小企業の資金需要の低迷や、あるいは過剰債務の解消の努力をしてきた、あるいはそういうような要因も含まれていて、地方債だけのものではないではないかというふうに考えるところもあります。

 もう一つは、これから金融庁としてはどういうことに取り組んでいくかということでございますけれども、これは、リレーションシップバンキングとして地域の中でどこまで根差しているのか、あるいは地域に密着をして相対取引をきちっとうまくやっていけるような地域金融機関になるのかどうか、これも見きわめて、できるだけそういう、先生の努力の中にもあるようなことも目指していかなければいけないと思っております。

松野(頼)委員 それは、ちょっと金融庁、認識が違うと思いますよ。僕らが地元で聞く話ですと、資金需要がないとおっしゃいましたけれども、本当に資金需要があるところには貸してくれないんですよ。

 何が起こっているかといいますと、大体この三月から四月にかけて、ある程度利益が出ていて、そして資金は要らない、別にお金を借りる必要がないという企業のところに行って、一カ月だけ借りてくれ、その金利だけ負担してくださいな、また四月になったら返していいですよと言って中小企業貸し付けの数をふやしているんです。本当に貸してほしいところは相手にしてくれないんですよ。こういう現実をわかっていますか。

七条副大臣 繰り返しになるかもしれませんけれども、先ほども申し上げたリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの中にも今先生が言われたようなことを書いておりますが、各金融機関に対して、企業の将来性あるいは技術力を的確に評価できる人材育成を目的としたいわゆる研修、これははっきり言いまして目きき研修ですね、研修を実施して、地域の金融機関に円滑な資金需要ができていくような努力をしてください、こういうようなことで今やっているところでございます。

松野(頼)委員 これは私の地元で実際に起こった地銀の一つの話ですけれども、その頭取はすごく立派な方で、結局、金融庁から通達が出ておやめになりました。でも、その方は、今、金を貸せば返ってこないで不良債権はふえるんだ、それをわかっているけれども、地場産業を支えないと、うちが支えなきゃどうしようもないじゃないかと言って、そのとおりおやめになりましたよ。

 今は、地方債をいっぱい買って、中小企業には貸さない、国債も買う、それで利ざやを稼いでじっとしている銀行が優良銀行とされているという現実を少し変えていかなければならないと私は思いますよ。これだけ日銀が史上空前の量的緩和をしている、また金融システムを守るためということで公的資金をこれだけメガバンクにつぎ込んだ、最大の目的は、中小企業を守るためというにしきの御旗があったわけじゃないですか。

 これから多分、地銀、第二地銀の統合再編が始まると言われていますけれども、どうかその辺の実情をしっかりととらえた、そういう改革をしていただきたい、このことは強く申し上げておきます。

 そしてもう一つ、地方財政の中で、郵貯、簡保の資金というのがこの地財計画の中に入っています。これが、地方自治体としては今、三位一体の改革、そして不況の中での税収減、そしてこれから来ると言われている、来るかどうかはわかりませんけれども、来ると言われている郵政民営化の財投資金の問題、地方債買い受けの問題等々、非常に地元は不安を覚えているんです。

 そこで、大臣、九月十日の閣議決定の中でも、財務省はしっかりしていますよ、国債の管理政策が大事だからということで、国債の引き受けというのはもう閣議決定の中に入れているんですけれども、地方債の話は一切出てきていない。

 大臣に伺いますけれども、地方債の話を竹中大臣とされましたか。これは、郵政というよりも、地方財政を預かる立場の大臣として伺います。

麻生国務大臣 当然、大きな内容の一つですから話し合っておりますけれども。

 これは基本的には、地方債というものを確保していくのは当然のことなので、確保することになるんですが、平成十七年度の地方債計画を見ましても、公的資金の重点化ということで、約一兆二千億ということで、地方債計画の七・六%としているところだと思っております。今、総額を見ましても、十五兆五千億というのが全体なんですけれども、そのうち郵政公社の資金というのは約一兆二千億、それが七・六%という数字になるんだと思います。

 いずれにしても、資金調達能力が低い、簡単に言えば財政指数の低いところのいわゆる団体、自治体において、義務教育とかその他廃棄物処理とかいろいろな施設など、住民生活に不可欠な部分というのはどうしてもありますので、そういった整備などを円滑に進めることができないということになりますと非常に大きな問題でもありますので、長期かつ低利というような前提で安定した資金を提供するというもので、政府資金というようなものと公営企業金融公庫というようなもののいわゆる公的資金の所要額というのはきちんと確保せないかぬというのは当然なんだと思います。それが一点です。

 もう一点は、今、郵便貯金の話が出ましたけれども、これは今約三百五十兆と言われますが、だんだん減っていって二百兆ぐらいになるであろう、今、流れから見たらそういう流れになると言われているんですが、それの流れの中で、一体どれだけ自分で資金需要を開拓できるかという話は、これは全然別の話ですよ、もう商売をやっていればおわかりのことなんだと思いますので。これは全然、すぐ民間に行くような話をしている学者上がりの人はいっぱい世の中にいらっしゃいますけれども、よくわかっておらぬ。

 こういったものは基本的に、商売というものをやればどういうことになるかといえば、資金需要というものは今、年間、全企業で二十五兆六千億ぐらい毎年返済の方が多いんですよ。たしか日銀の過去六年間の平均で二十五兆六千億だったと思いましたけれども、多いんですよ。そこに預貯金が約二十兆前後入ってくる。四十兆ちょいのものがどんどん入ってくるわけですから、そういったものを足して、何らかで消化していかない限り、これはデフレ圧力ということになりますので、そこらの部分をどうやっていくかというのを考えないと、いわゆるこの種の話はただ数字合わせでいくわけにいきません。これはおっしゃるとおりに、別に買わなくてもいいのよ、国債を買わなくてもいいのよということになるんですが、ではそういう資金需要を自分で開拓できるかというと、それはなかなか別の話でして、かつ、貸した以上は金利をつけて取り返さないかぬわけですから。

 その部分のことまで考えますと、なかなかこれは簡単にはいきませんので、そういったところは、確実なところでいえば、地方債に回ったり国債に回ったりする部分というのは当分の間は見込まれるのではないか、基本的にはそう思っております。

松野(頼)委員 ですから、国債の方は閣議決定に入っていますけれども、では、地方債等の地方分に関しては今後どうなるんでしょうか。

麻生国務大臣 地方債につきましては、地方もいろいろ内容のいいものも悪いものもありますけれども、今、私どもとしては、各市によってそんなに極端に金利の差がついて、何々市は〇・幾つでこっちは二・幾つなんということは起きない、現実問題としては、そこそこのところで、皆一様のところへおさまっておると思います。

 今後とも、こういったものにつきましては、私ども、極端な格付の差がつく、そういったような話にならないようにやっていくと同時に、こういった優良な資金というものについては、私どもとしては、地方団体を立ち行かせるような手段というものをいろいろ考えていかねばならぬものだと思っております。

松野(頼)委員 そうすると、引き続き引き受けるということですか。

麻生国務大臣 基本的にはそういうことです。

松野(頼)委員 民営化の話はまたしますけれども、だったら、民営化する必要はないんじゃないでしょうか。感想を。

麻生国務大臣 どういう意図でそういう質問をされておるのかというのを想像できないわけではありませんので、うかつには答えられぬところなんですが、考え方はいろいろあると思います。

松野(頼)委員 続きまして、資料の最後のページを見てください。

 これが、昨年行われました、千六百六十一億円、公立保育園の運営費を税源移譲したということですけれども、それを追跡した調査の結果であります。本来であれば、私は、この千六百六十一億が保育関係に使われたのかどうかというふうにその資金の追跡をするべきだと思うんですけれども、その資料はあるんでしょうか。

麻生国務大臣 これは基本的には、所轄官庁は主に厚生省ということになるんだと思いますが、いずれにいたしましても、今の段階できちんとした調査が出たわけではありませんので、実態を調査していく必要があると思っております。

松野(頼)委員 ぜひその調査を約束してください。

 それと、厚生労働省の方に伺いますけれども、このデータを見られて、例えば、今までの公立保育園から、千六百六十一億円が地方に、自治体に税源移譲された場合、平成十五年度は八・三%、十六年度は九・一%、十七年度は一三・二%、年を追うごとにどんどん保育料が値上げをされているんです。それで、その結果、公立保育園を民営化したという数字が、十五年には二・一%、十六年には四・六%、十七年には五・二%。

 たしか、税源移譲をしても、多分、保育のレベルは変わらない、そしてその行政サービスは変わらないということだったと私は思いますけれども、保育行政を預かる厚生労働省としては、この数字はいかがでしょうか。

藤井大臣政務官 今先生がお示しいただきました資料は私どもが昨年の九月に調査したものでございまして、これをもって、一般財源化の方向が見えた、そこまで言うつもりはございませんが、この調査結果は今先生の御指摘されたような内容というものを示唆していると思っております。

 ただ、この調査結果と一般財源化との因果関係というもの、これを一概に評価することは必ずしも簡単ではないと思っております。

 といいますのは、例えば、保育料の引き上げなどで見ますと、地方自治体によりましては、今まで独自に保険料の軽減措置を持っておられた。それを地方財源の状況から縮小されているケースなども報告を我々は受けております。また、この運営予算の減少というものに伴ったものと思いますけれども、民間の保育所と比べて今までどちらかというと高コスト構造にあった、こういう指摘が強かった公立保育所の運営が効率的になったという指摘も受けておるわけでございまして、私どもとしては、いずれにしましても、この先、質を担保した保育というものをお願いしたいと考えているわけでございます。

 厚生労働省は、今後とも、適切な保育の実施が行われるように、市町村に対しまして必要な財源措置をお願いしたいと考えております。

松野(頼)委員 ただ、実際に利用者への値上げというのは行われているわけですから、住民の負担というものは上がっているわけですよ。当初のこの税源移譲のそもそもの話では、保育のレベルは変わらない、今回義務教育の国庫負担金が四千二百五十億円税源移譲されますけれども、これも全国知事会の話ですと教育のレベルは変わらないということだったんですが、どうかそこのところを、税源移譲がされたから税源移譲された分の行政サービスが下がったということのないように、そのことをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、補助金を廃止して税源移譲するということで地方の自由度を高める、政府はこれをずっと言ってきたわけですが、この問題について見ていきたいと思います。

 いざ税源移譲の段階になったら、ちょっとその額は多過ぎる、八割程度でとか、あるいは実は必要額の全額はこの程度だと値切ってくる、こういう作業が所管官庁でやられています。

 普通は、補助金を削減ということは一〇〇%税源移譲と行くはずなんですね。ところが、税源移譲一〇〇%になっているわけではないという問題がある上に、実は、税源移譲したということになりますと、つまり、補助金をなくしたということは、国の関与をなくすから自由度が高まるという議論でしょう。ところが実際は、二〇〇五年度の税源移譲の額一兆一千百六十億円、対象の国庫補助負担金の目の数で見れば三十六、このうち廃止される補助金は目の数として十五なんですね。税源移譲対象補助金の半分以上が引き続き補助金として残るということになっています。

 税源移譲は、補助金を廃止するから税源移譲するということが最初の説明だったと思うんですが、実際には廃止されていないというのが実態ではありませんか。

麻生国務大臣 御指摘のところ、八割と言われたのは、多分、三兆に対して約二兆四千億、だから八割という数字のことを言っておられるのかと存じますが。

 もともとスリム化の二〇〇三のところから、これはもう先生よく御存じのとおりに、少なくとも、今まで一〇〇を切ったものは少しはスリム化してくださいよと。例えば今、保育園が出ていましたけれども、保育園の事務経費などというものは少しは努力してください、構成人員も少し若返りを図ってくださいとか、いろいろな形でスリム化をお願いするというのは、前々から基本方針二〇〇三でも決めていたところでもあります。

 不要不急と言われるところは少し削減をしていただく、スリム化していただくということはやはりある程度していただきませんと、全体にならない。ただ、全体として、きちんとした譲れないもの、必要なものに関しましてはほぼ全額ということだと私どもは理解をいたしております。

吉井委員 スリム化しろといって圧力をかけたら、これは自由度を増す話と全然違ってくるんですね。

 財務省資料を見ていましても、税源移譲額一兆一千百六十億円の積み上げの基礎となった補助金名が挙げられております。それを見ると三十六ですが、その中には暫定的に補助金カットがあった義務教育費国庫負担金もありますから、それを除いて目の数で見れば三十五なんですね。そのうち廃止されて目がなくなるのは十五の補助金です。半分以上は存続するんですね。

 大臣は、昨年四月に経済財政諮問会議に提案されたものの中で、国庫補助負担金の改革の目標として、地方の自由度の大幅な拡大を目指し、税源移譲に結びつく改革を中心に推進するということを挙げていたわけですよ。ところが実際は、補助金は切るんだけれども、切った分が一〇〇%税源移譲されるわけではなしに、廃止するとともに補助金がなくなっているのかと思ったら、半分ぐらいは残る。つまり、国の関与が続いていく。そして、スリム化しろという話ですね。

 一体これで地方の自由度が拡大することになっているとお考えなのかどうか、伺います。

麻生国務大臣 今言われましたように、例えば義務教育費等々は、教育に係ります教職員の給与の半分がそのまま移転するだけですから、全然ふえないではないかという点等々、挙げれば例が出てくるんだと思います。

 例えば、独居老人対策として生活支援ハウス運営補助金というのが、吉井先生はよくお詳しいところだと思いますが、利用定員についておおむね十人としつつ二十人を限度とする、調理室を設置しなければならないなどなど、国から示された補助基準というものを満たさなければならないということで決められております。しかし、この補助金が一般財源化されたということによりまして、国の補助基準というものに縛られることがなくなりましたので、地方の判断によって、地域の現状に合わせて、独居老人対策というのは結構できるようになった。私どもの筑豊なんかでもよく見られた例ですけれども。

 そういった意味からいきますと、いろいろな意味で、現実問題としては自由度が増して、首長さんはその範囲内で随分できるようになったという意見は聞かされておりますので、全部が全部うまくいったとも申し上げませんけれども、全部が全部全く自由度が一つもふえていないではないかというようなことではないのではないかと思っております。

吉井委員 補助金をカットすれば、それに見合う税源移譲があって当たり前です。実際には税源移譲はきっちり行われていないし、それから、補助金を切るということは、少なくとも目はなくなるはずなんです。しかし、目は半分残っているんですから、国の関与は続いているんです。昨日やりましたように、交付税の方は税源保障機能の縮小ということで縮小へ行くわけですから、これでは地方の自由度が高まるということにはならない。

 私は、この点では、こういう三位一体の改革というものはやめるべきだということを申し上げまして、時間が来たという札が来ましたので、質問を終わります。

実川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。

左藤委員 私は、自由民主党及び公明党を代表して、地方交付税法等の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。

 この法案は、地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等にかんがみ、平成十七年度分の地方交付税について総額を確保することなどの特例を設けることとしております。また、地方交付税の単位費用を改正するとともに、あわせて、税源移譲等に伴う増収分を基準財政収入額に一〇〇%算入し、さらに義務教育費国庫負担金の暫定的な減額に伴い税源移譲予定特例交付金を増額すること等を内容としております。

 特に、このうち、三位一体改革を着実に推進するためには、国と地方の信頼関係が必要であることを踏まえ、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税等の一般財源総額を確保したことは、適切かつ妥当なものであると考えております。

 また、地方財政計画の計画と決算の乖離を是正するとともに、税源移譲等に伴い、各地方公共団体間で財政力格差が拡大しないように、確実に調整するなどの措置を講じたことは評価するものであります。

 政府においては、今後とも三位一体改革を着実に進め、地方税財源を充実確保することを強く要請いたします。

 以上のような理由により、賛成の意を表するものであります。

 つきましては、地方公共団体は新年度が始まる前に一日も早くこの法律案の成立を要望しておりますことを申し添えて、地方交付税法案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)

実川委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました政府提出、地方交付税法等の一部改正案について、反対の立場より討論を行います。

 冒頭、政府の三位一体の改革とは地方財政の財源の削減がメーンでありますので、あえて私たちは、三位一体の改革との言葉を使わず、地方自立の改革という言葉を使わせていただきます。

 反対の第一の理由は、地方交付税制度の抜本的な改革のおくれであります。

 その内容に入る前に、冒頭、地方交付税法等改正案の審議をめぐる委員会の混乱について一言申し上げます。

 二月二十四日の総務委員会では、法案の趣旨説明のみが議題とされていたにもかかわらず、与党は、当日唐突に趣旨説明後の質疑を強行いたしました。与党の横暴とも言える行動、そしてそれを黙認した実川委員長は、地方自治を所管する総務委員会の委員または委員長としての認識を欠くことを指摘させていただきます。猛省を促すものであります。

 そもそも、我々が委員会での審議時間を大幅に要求したのは、交付税制度の抜本改革が急務であるという危機感があったからであります。国税から地方税への税源移譲が視野に入ってきた今、早急に、透明、簡素かつ地方の自立努力を促し、適切な財政調整機能を持つ交付税制度を実現しなくてはなりません。

 それにもかかわらず、地方交付税制度の抜本改革は一向に進展を見せず、地方交付税法等の改正案の中にもその方向性は見出せません。交付税制度の抜本改革に背を向ける政府には、地方分権を任せることはできません。

 第二の理由は、地方交付税法等改正案が政府の地方自立改革を前提としていることであります。

 昨年、政府が示した政府・与党の合意は、改革の全体像と呼ぶのには余りにもお粗末な内容でありました。四兆円の補助金改革、三兆円の税源移譲の目標値を達成できなかったばかりか、補助金改革案は骨抜き、もしくは地方の裁量につながらない項目の羅列と交付金化による中央省庁の権限温存に終わりました。

 この地方分権の欠陥商品と言わざるを得ない地方自立改革の中で、とりわけ議論となったのは、義務教育費国庫負担金でありました。中央省庁、族議員の抵抗により、その扱いについては結論を出し切れず、結局中教審へ丸投げされました。その間に、地方交付税法等改正案で措置される税源移譲予定交付金によって暫定的に交付されようとしています。文科省が必死になって国庫負担金堅持に動くことが容易に予想され、それでは地方が先の見通しを立てることはかないません。

 政府内で繰り広げられている義務教育費国庫負担金の扱いをめぐる争いは、地方分権の理念が忘れ去られた地方自立改革の象徴的な存在とも言えるものであります。小泉総理の地方自立改革は、補助金改革、税源移譲、交付税改革、すべての面で地方分権の理念が忘れ去られ、地方分権が矮小化されているものであります。

 このように、地方自立改革は言語道断、地方自立改革と密接に関連する地方交付税法等の一部改正案に対しても断固反対であるということを申し上げ、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)

実川委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、地方交付税法等の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。

 反対の理由の第一は、地方財政が毎年巨額の財源不足を生じる事態にありながら、抜本改革を放棄し、依然として、国の責任放棄と言われる折半方式を継続していることであります。二〇〇五年度の財源不足は七兆五千百二十九億円と見込まれ、法定額の六三%に当たるという巨額なものであります。

 本来ならば、地方交付税法第六条の三の第二項の規定によって、九六年度から財源不足額の全額を補てんする抜本改革が求められています。ところが、政府は、抜本改革を回避して、折半方式をもって法第六条の三第二項の制度改正と強弁し、続けているのであります。しかし、法第六条の三第二項は、国が責任を持って地方の必要な財源を確保する旨の規定であり、財源不足の半分を負担するだけでは、到底国がその責任を果たしたと言えるものではありません。

 第二は、赤字地方債の増発をも地方団体に強要するものだからであります。二〇〇五年度も、三兆二千二百三十一億円の赤字地方債の増発が予定されています。この赤字地方債による補てんは、それぞれの地方団体が自前で借金をして調達する方法だから、法第六条の三第二項の国の責務が果たされたことにはならないとの理由から、採用できないとされていたものであります。

 ところが、政府は、元利償還の全額を交付税に算入するという条件をつけるだけで、強引に制度改正に該当すると強弁しているのであります。しかし、元利償還の全額を交付税に算入するということは、地方の共有財源である交付税をその償還に充てるということを言っているだけで、国の責務が果たされていないことには変わりはありません。加えて、赤字地方債は、地方財政法で原則禁止されているものであります。そうしたもので財源不足を補てんするやり方は、二重の脱法的手法であり、容認できません。

 第三は、国の歳出削減を優先する三位一体の改革の関連法案だからであります。二〇〇五年度の三位一体の改革は、交付税はほぼ前年同額に据え置かれた形をとっているものの、国庫補助負担金の削減額一兆七千六百八十一億円に対して、税源移譲額は一兆一千百六十億円、七割と、昨年に続いて、地方の自由度の拡大よりも国の歳出削減に重点が置かれたものになっています。

 数合わせのために、税源移譲とは関係のないスリム化、補助負担金を温存する手段とも言える交付金化を改革の額に含めるなど、改革の理念のかけらもないことを申し上げ、討論を終わります。

実川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、地方交付税法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 反対の理由の第一は、肝心かなめの税源移譲については二年間で三兆円を目標としながら、二〇〇四年度実施分の〇・六兆円が含まれた実質一・八兆円の税源移譲しかない、水増しのまま生活保護や義務教育費、施設整備費などは先送りされ、国民健康保険に対する新たな都道府県負担の創設など、地方が望んでもいない新たな負担も押しつけられた三位一体の改革を前提としていることです。

 反対の理由の第二は、大きな争点となった地方交付税等一般財源の総額の確保について、入り口ベースでは財務省の顔を立て、出口ベースでは総務省のメンツを立てながら、実質は、交付税と臨時財政対策債が合計二・八兆円削減された二〇〇四年度の水準にとどまっており、地方の財政危機の状況の深刻さは改善されていないことであります。

 反対の理由の第三は、後年度地方交付税で措置すると言われていた臨時財政対策債の元利償還分について、改めて臨時財政対策債の発行で対応するなど、タコの足食い状態が蔓延し、常態化していることです。

 反対の理由の第四は、地方六団体が、地方交付税を政府の政策誘導の手段として用いることは、今後順次縮小すること、あわせて、新たにこうした制度を設けたり拡大したりしないこととしている中、交付税の単位費用算定について、二〇〇四年度のアウトソーシングによる効率化の反映に続いて、二〇〇五年度は経営努力が報われる算定が行われることです。

 最後に、地方分権推進委員会最終報告では、「税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠の手段」とされております。住民と接する機会が多い地方に行政の裁量権を持たせ、地域の実情に合う公共サービスが提供できるような制度に変えることが三位一体の改革の本来の趣旨であるはずです。

 地方側の求める税源移譲を何としても実現するため、政府と地方の協議機関を設置し、禍根の残らない議論が行われることを求め、討論を終わります。(拍手)

実川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより採決に入ります。

 地方交付税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

実川委員長 次に、地方自治及び地方税財政に関する件について調査を進めます。

 この際、森山裕君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による地方分権推進のための地方税財政基盤の確立に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。森山裕君。

森山(裕)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    地方分権推進のための地方税財政基盤の確立に関する件(案)

  真の地方分権時代にふさわしい地方税財政基盤を確立するため、政府は次の諸点について措置すべきである。

 一 国庫補助負担金改革、国から地方への税源移譲、地方交付税の見直しに係る真の改革を確実に実現し、地方分権の一層の推進を図るとともに、地方公共団体の歳入・歳出両面における自由度を高め、権限と責任を大幅に拡充するため、具体的な方針を早急に策定すること。

   また、その策定に当たっては、地方の参画の機会を拡充し、保障するとともに、今後の改革の推進に当たっては、地方の総意を真摯に踏まえ、地域の実情を十分反映したものとするよう、最大限の配慮を払うこと。

 二 平成十七年度末において二百五兆円に上ると見込まれる巨額の借入金が地方公共団体の財政運営を圧迫し、諸施策の実施を制約しかねない状況にかんがみ、地方財政の一般財源を充実強化し、地方財政の健全化を進めるとともに、累積する臨時財政対策債の元利償還については、将来において地方公共団体の財政運営に支障が生じることのないよう万全の財源措置を講ずること。

 三 地方交付税については、地方公共団体の自主的・自立的な行財政運営に充てられる固有の財源であることにかんがみ、財源調整や財源保障の機能を適切に果たすことができるよう、地方税等と併せ地方公共団体の安定的な財政運営に必要な所要額の確保を図ること。

   また、財源の中長期的な安定確保を図る見地から抜本的な方策を講ずること。

 四 義務教育費等の負担のあり方等、国庫補助負担金の廃止・縮減は、今後の地方分権推進のための改革を左右する重要な課題であることから、その検討に当たっては、単なる地方への負担転嫁とならないよう、地方公共団体の意見を十分踏まえつつ、地方の自主性の拡大につながるものとなるよう積極的に取り組むとともに、その内容、規模等を考慮して、必要な一般財源の確保を図ること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

実川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり地方分権推進のための地方税財政基盤の確立に関する件を本委員会の決議とするに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

実川委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

実川委員長 次に、内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。麻生総務大臣。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明を申し上げます。

 現下の経済財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、定率減税の縮減、所得譲与税の増額、法人事業税の分割基準の見直しなどを行う必要があります。

 次に、この法律案の要旨について御説明申し上げます。

 その一は、住民税の改正であります。個人住民税において平成十一年度分から実施しております定率減税を、現行の二分の一に縮減することといたしております。この改正は、平成十八年度分の個人住民税から適用することといたしております。

 その二は、所得譲与税の改正であります。税源移譲につきましては、平成十八年度税制改正において、所得税から個人住民税への抜本的な税源移譲を実施することとしており、平成十七年度におきましては、所得譲与税により税源移譲を行います。平成十七年度の所得譲与税は、国庫補助負担金の改革内容を踏まえ、一兆千百五十九億円を都道府県及び市町村に譲与することといたしております。

 その三は、事業税の改正であります。法人事業税の分割基準につきまして、各都道府県内における法人の事業の規模等をより的確に反映させる観点から、見直しを行うことといたしております。

 その他、非課税等特別措置の整理合理化等を行うとともに、国有提供施設等所在市町村助成交付金等について所要の改正を実施することといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

実川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

実川委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長瀧野欣彌君、自治税務局長板倉敏和君、財務省大臣官房総括審議官石井道遠君及び大臣官房審議官加藤治彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより質疑に入ります。

 内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。総理、よくおいでいただきました。ありがとうございます。

 昨日の衆議院予算委員会の私の質問に対する、時間制限がもうぎりぎり迫った中での総理の答弁の中で、民主党は郵政公社化法案に反対しておいて今度は残せと言うのかという趣旨の答弁をされました。民主党は、実は、この公社法案の際に、二〇〇二年だったと思いますが、これは政府原案に賛成、そして与党修正案に反対という議決態度をとっております。

 テレビが入っている中で、反論の余地がほとんどない中で間違ったことを言われて公党を非難するというのは、私は許されるべきではないと思いますが、私は、総理に、公式にこの場で訂正をし、党に対して謝罪をしていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 何か両方で、賛成反対がごっちゃになったもので、私も、間違ったことがあったら訂正します。

 私が昨日郵政公社法案に民主党は反対したと申し上げたのは、民主党が参議院において、修正後の郵政公社法案に反対したことについて言及したものなんです。衆議院においては、原案に賛成して自民党の修正案に反対していたということなものですから、何か反対と賛成、両方あったものですから、正確に言えば、五十嵐さんの言われるとおり、賛成したところもあったんだなと思って、訂正いたします。

五十嵐委員 修正部分に反対したんですから修正したものが来たらそこに反対するのは当たり前なので、混同したというのはおかしい。

 それから、私どもは、正確に申し上げますと、公社がいい、本来の改革だと言っているわけではないし、しかし、一歩前進だということを認めて、いわば条件つきで賛成したということで、正確にはそういうことでございますので、御認識を新たにしていただいて、間違ったら素直に謝っていただきたいな、私はそう思うわけでございます。

 それから、きのうのことなのでちょっと申しわけないんですけれども、ちょうどお二人、総理と総務大臣、並んでいらっしゃいますから。

 総務大臣は、郵政民営化というのは手段の一つだということを明確に述べられました。手段の一つだ、手段だということは、手段はいろいろある。いろいろというのは総理のお得意でありますけれども、目的であるというのであればそれは一つになるかもしれませんが、手段であればいろいろなんですよ。ですから、そのことを比較検討する必要がある。

 私は、何も公社が今のままでずっといいと言っているわけではない、公社も改革が必要だと思いますが、改革の仕方もいろいろあるでしょうと。民主党もかつていろいろ提案してきたことがあるんです。私がその張本人でありますけれども、例えば政府系金融機関を、商工中金など中小企業に貸す能力があるところを改組して、そこを中心に例えば民営化して、郵政のお金を流すというようなことで、中小企業金融に役立てたらどうかとか、いろいろな提案をしたことがあります。そのほかのこともあると思うんですよ、例えば国際物流も国策会社を僕はつくることだってあり得ると思うんです。ロケットの会社を国策でつくったっていいと思います。いろいろな考え方があると思うんですね。ロケットというのは別に郵政改革とは関係ありませんが、国策会社だから悪いということもないという意味です。

 つまり、いろいろな考え方が、それこそ総理お得意のいろいろあっていいはずなのであって、なぜ、株式会社化だけが唯一でなければならぬと言い張るのか。

 そして、時間ぎりぎりに私のことを時代おくれだと言われたけれども、この考え方は第二臨調のときから、昭和五十四年、五十五年のときから実は民営化論というのがあったわけです。私もそのときの論議に新聞記者として参加をしておりました。いろいろな考え方があるはずでありまして、そういう意味で、私は、むしろ総理よりも総務大臣がおっしゃる方が正しいなと。

 正しいことをおっしゃる総務大臣が所管大臣ですから、総務省設置法によれば、この郵政公社改革、郵政公社に関する事業あるいは企画というものも、総務大臣が所管大臣なんです。竹中さんは、法令上の根拠がない特命大臣なんですね。

 ですから、きちんと所管大臣を加えて議論する、政府としての態度を決めるというのが正しい態度だと思います。そして、それを審議する場は、あくまでも、法に従えばこの総務委員会だというふうに思うんです。総理においでいただいたから、特に申し上げたいと思うんですが、今、私が申し上げた、総務大臣を、共管でもいいですけれども、所管大臣に加え、そして総務委員会でこの問題を審議するということについて、総理の所感を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 郵政民営化は経済活性化のための一つの手段です。それは否定しません。大きな手段です。だから必要だと私は言っているんです。別に郵政民営化が目的じゃない。いかに経済を活性化させるかということで、欠かせない一つの手段であると思います。民営化できるものは民営化していこう、民間にできることは民間に任せようということだったら、大方の人は賛成だと思います。ならば、できるじゃないかということでございます。

 その郵政民営化についてもいろいろ議論があることは承知しております。そういう中で、今、政府案、与党と協議しながら決定する準備を進めております。法案が提出された際にどの委員会で審議するかというのは、国会が決めなきゃならないことでありますので、国会に任せたいと思っております。

五十嵐委員 恐縮ですけれども、所管大臣についてのことはどうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 所管大臣、当然、麻生大臣とも協議して進めておりますし、郵政民営化担当大臣の竹中大臣とも協議していきますし、各方面からの意見を聞いて判断しなきゃならない問題だと思っております。

五十嵐委員 所管大臣、麻生さんとも協議をしてという言い方でちょっと微妙だったんですが、私は、所管大臣は総務大臣だというふうに存じますし、それから、目的化しているというふうに思われているからそのような手段か目的かという議論が巻き起こっているということをきちんと御認識いただきたい。それから、民のことは民でというけれども、民でできない部分があるから、ですから今公社の形をとっているという部分があるということも御認識をいただきたいと思いますが、このことはまた別途やらせていただきますから、ここで詰めるということはとりあえずしないでおきたいと思います。別途やらせていただきたいと思います。

 さて、地方税法の本題に入らせていただきますけれども、今回の地方税法改正案の中心部分は、定率減税の半減、個人住民税分の措置と住民税のフラット化であります。

 この定率減税は小渕内閣で恒久的減税として導入されたものでありますけれども、そのときの議論の過程からして、これを廃止するときの条件は二つあるというふうに思われます。一つは景気の回復であります。これについても議論があるところでありますけれども、もう一つは、これは所得税の抜本的見直しをするまでの間の暫定的なイレギュラーな措置としての減税方式だったわけであります。

 この所得税の抜本的見直しというものをやらずして、条件を満たすことなく、半減とはいえ廃止に踏み出すということは、これは約束違反ではないでしょうか。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 税制改正をどうすべきかというのは、そのときの経済状況、景気状況、いろいろな判断が必要かと思いますが、私は、常に、税制の改正についてはそのときの判断を政府はしなきゃなりませんし、今回、その必要性があるからしたわけでありまして、これが法律に違反するとは思っておりません。あるいは、過去の法律に違反するのではないかというふうには思っておりません。

五十嵐委員 いや、法律に違反するとは一言も言っていないわけですよ。約束で、所得税の抜本的な見直しをするということになっているはずなのであります。これをやらないと、実はいろいろな弊害が起きて、現に起ころうとしているんです。

 まず、配偶者特別控除がなくなるということが二〇〇五年からきいてまいりますし、老年者控除の加算部分が縮減される、なくなるというようなこともあって、地方税の部分では、とにかく課税最低限が下がるということ、要するに、今まで税金を取られなかった人たちから取られる人たちが出てくる。その上にこの定率減税の半減というものが加わりますと、そしてフラット化が加わりますと、一気にその部分が大幅な税金の増税になってくるわけです。

 それから、中堅所得層、特に、年収五百万、六百万台の人たちも二二%という大幅な増税率になってまいります。子育て世代や働き盛り世代に大変きつい増税になってくるわけで、私どもは、こういうことをやる場合には、それだったら、憲法に認める最低限の生活というのを保障するためにどうするか、今までの考え方を変えて、基礎控除というものを引き上げるなり、基礎控除の見直しをするなり、そういう抜本的な考え方の変更を検討しなければならない、精査しなければいけない、こう思っているわけです。

 それをなしに、やるという約束だったのをやらないで、一方的に単純な増税だけを押しつけるというのは、これは約束違反ではないか、こういう話であります。国民生活にも重大な影響があります。ですから、そういう意味で、総理に、約束違反はまずいんじゃないですかということを申し上げているんです。いかがでしょう。

麻生国務大臣 最初に、まず配偶者特別控除、いわゆる例の上乗せ部分の話なんだと思いますが、それと老年者の控除の話を二つ、途中からされました。

 これは、社会構造というものがこれだけ高齢化してきて、いろいろな意味で、高齢者の持っておりますいろいろなもの、時代が変わってきていますので、広く公平に負担を分かち合うという観点から、ここのところは見直しを行おうということなんだと思います。

 また、定率減税の話が出ましたけれども、御記憶のことだと思いますが、あれはたしか平成十一年だったと思うんですが、五十嵐先生、あのときの小渕内閣のときの景気状況と今の景気状況とを比べてみて、これは、明らかに法人税収の伸び、またその他いろいろな意味での設備投資、機械受注等々の伸びは著しく変わってきております。あの当時、景気に最大限の配慮をしろというのを前提にたしか導入ということが決まったと記憶していますが、当時と比べてかなり変わってきたので、いろいろな意味で税収のバランスを図らねばならぬということで、少なくともとりあえず半分だけということでさせていただいたということなんだと思っております。

 また、今、基礎控除の引き上げという話がありましたけれども、基礎控除の引き上げというのをやろうとすると、これはすべての納税者に及ぶということになりますので、これは当然のこととして、いきなり多額の減収になる。

 それから、個人住民税の方の話も出ていましたけれども、個人住民税というのは、御存じのように、その地域に住んでいる、一種の年会費というか会費みたいな部分がありますので、その地域の住民等々のことを考えましたときに、これはかなり慎重な検討がなされないと、うかつにはということだと思います。

 いわゆる政府税調の答申にも、個々の納税者に係る税負担の変動にも十分に留意してということで、低所得者層については答申が出ておりますので、具体的な点についてはもっと慎重にやらないかぬところだと思っております。

五十嵐委員 ですから、論理的な場所なんですから、ここは、論理で。要するに、減税を決めたときに、こういう減税方式はイレギュラーだ、我々は実は、賛成しがたい、こう言っていたわけですよ。やるなら、もっとちゃんとした減税をしなさいと。今でも、この定率減税は時期が来たらやめるべきだと我々も思っていますよ。だから、それを反対しているわけでもない。

 それから、控除を見直すことも別に反対しているわけじゃない。控除の見直し、我々も配偶者特別控除を廃止しろと言ってきたんです。控除から手当に変えなさいと言っているんですから。

 そうじゃなくて、それをやるんだったら全体の見直し。基礎控除が難しいのはみんなわかっていますよ。だけれども、それはやはり見直すべきものなんでしょう。どういう税体系が全体としていいのかというのを、所得税の体系を、二元的所得税論だとか、あるいは世帯単位にとらえるか個人単位にとらえるかとか、総合所得かどうかとか、いろいろな観点があって、それらを精査した上で、所得税体系を全部見直した上でやりましょうね、恒久的なものを本当にやりましょうねという話になっているはずなんです。

 それをやらないでいきなり、金が足りないから三位一体で、我々は地方分権改革、自立改革と言っていますけれども、地方にとられちゃうから、その前に大急ぎで増税で、財源をとられる分を確保していきましょうという発想なんですか。

 とにかく、これはそのときの総理が決断をして、恒久的減税としてやられたんですから、約束違反かどうかということをきちんと認識される必要があるということ、もう一回、総理から答弁を聞きたいということと、それから、今言ったように、見直しを抜本的にやらないと、いろいろなことが起きますよということなので、三位一体との関係は一体あるのかどうか、この二点をお尋ねしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 約束違反ではないかということでありますが、これは、当時、小渕総理大臣自身がこう言っているんですね。平成十年の八月十七日の衆議院の予算委員会において、「一年限りでなく期限を定めないで制度改正を行い、その後特に法律改正を行わない限り継続していくという趣旨で恒久的な減税と表現したもの」であると答弁しており、未来永劫に改正しないという趣旨で恒久的減税という言葉が使われたものではないと理解しているということでありますので、現在の状況を考えまして、五十嵐議員言われたように、民主党が、所得税の改正の必要性、基礎控除を含めた議論を展開しているのも私は承知しております。また、所得税のみならず消費税も引き上げるべきだという議論も承知しております。

 抜本的税制改正というのは、所得税自身の税制改正、あるいは消費税に対する税制改正、資産課税に対する税制改正と、総合的に見るのもこれは抜本的税制改正であり、個別に見るのも抜本的税制改正と、人によっては言うでしょう。

 そういう点において、現下の状況において、私は、財政状況や景気状況を見きわめて、今回の定率減税を全部廃止するのではなく、二分の一に限った。あとどうするかというのは、ことしの暮れの状況を見ながら判断するというのは、私は決して約束違反だとは思っておりません。

五十嵐委員 いや、所得税の見直しというのが、その審議の過程の中では実は条件になっていたんです。ですから、それは全体に広げられるのは間違いだと思います。

 それからもう一つは、それだったら、消費税のアップをなぜ凍結したまま、その部分を見直さないのかというふうに私は思います。今は急激に景気が回復しているんだというふうに竹中さんはおっしゃっているわけですよ。それだったら自然増収もかなり期待できるはずでありますから、何も慌てて、抜本的な見直しをしないまま一部の層だけねらい撃ちにしたこういう増税をする必要はないはずであります。

 むしろ、税収不足対策というのであれば、やくざや泥棒まで取れる消費税というのを、薄く広く負担していただいた方が、そういう論議をきちんとして、そういう凍結論を解除して議論をした方がむしろいいんじゃないですか。私が総理の間は消費税は一切手をつけないんだというようなことではなくて、まだ任期はかなり残っているわけですから、それは議論をして、場合によっては、議論の結果、上げてもいいというんだったらお上げになったらいいんじゃないかなと思う。

 なぜこの時期に、一方で、景気がかなりよくなっていますよと言いながら、回復してきたんですと言いながら、大慌てに約束を破ってまで所得税、個人住民税に手をつけなければならないのかということをお聞きしているわけであります。

 消費税については、これだけはどうして聖域なんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、消費税について、消費税の重要性はよく認識しているつもりであります。消費税の導入、三%の導入時におきましても、この議論については終始参加しておりましたし、三%から五%に引き上げるときも、この問題については重大な関心を持って取り組んでまいりました。

 今回私は、私の任期中、まあ長くても来年九月までですが、その間に消費税を引き上げる環境にないと見通しているからこそ、私の在任中は消費税を引き上げないと言っているわけであります。それは、別に引き上げろと言う人に対して批判しているわけじゃありませんよ。

 私は、たびたび選挙の最中にも、消費税を引き上げないというのは無責任だと批判されました。しかし、私の役割は、行財政改革を徹底させることにある。どちらかといえば、国民は、歳出削減賛成だと言いながら、いざ自分のところにかかわってくる歳出削減は反対でしょう。もちろん、増税も反対です。突き詰めて言えば、歳出削減も反対、増税も反対、そういう中で今の財政状況をどう見るかということで、この国債の増発をし続けてきたわけですね。

 考えてみれば、国債の増発も、後の世代、子や孫の世代の増税と似ております。現在の人が負担をしない、負担が軽いということでここまで国債の増発が膨らんできたわけでありますが、そういうことから考えますと、今後、歳出削減を徹底してやったとしても、今のいろいろな財政需要、国民の要望にこたえる財政状況になるかというと、なかなか疑問に思っているのは、私も感じております。だからこそ、消費税の議論は妨げないと言っているんです。しかしながら、私の任期のあと一年ちょっとの間に消費税を上げる環境にないと政治家として見通しているからこそ、私の任期中は消費税を引き上げないけれども、議論は大いに結構です。

 また、所得税の問題につきましても、消費税を導入したときに、当時の物品税を廃止して、そして消費税を導入しました。このときも大きな批判を浴びたから、今度は、五%に上げるときには、所得税を減税して、しかも減税を先行して、後々消費税を増税したけれども、大きな批判を浴びました。

 今回の消費税の引き上げ論者につきましては、社会保障の財源とかさまざまな財政状況を見ると消費税の引き上げは避けられないという議論が行われていることを私は十分承知していながら、この議論は妨げないけれども、私の任期中は引き上げる必要はないと言っているわけでありまして、決して議論を防止しているのではありません。今後大いに議論はしていただきたい。その際には、当然長い期間を必要とするでしょうし、各党が胸襟を開いて、大いにこの消費税を含めた所得税等について議論はしていただきたいと歓迎しております。

五十嵐委員 幾つかおかしい点があると思うんですね。まず、将来不安が国民の間を覆っている、このことを直さない限り、景気の回復はない。それは、一つには老後の不安でありますから、社会保障、特に年金の安心を与えることが大事だ。年金の将来安定や安心感が得られるためだったら、国民は、消費税を引き上げることについては、これは賛成するという統計上の、世論調査で数字が出ております。ですから、そのことを環境がないというのは、大衆増税になるという意味かなと憶測をいたしますけれども、それとはまた別だと思います。

 それからまた、同時に、大衆増税ということだったら、同じことなんですよ。社会保険料の負担を続けざまに、国民年金も厚生年金の保険料も介護保険料もみんな上げて、そしてここで所得税の増税ですよ。これをやるというなら、同じことじゃないですか。要するに、消費税は目立つから、目立つところはやめて、目立たないところで上げてしまおうというこそくな考えではないかなというふうに私は思うわけであります。

 時間が来ましたのでこの辺にしておきますけれども、私は、総理の考え方はかなりいびつだなと言わざるを得ません。また別の機会に議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。

実川委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 GDPの約六割は家計消費ですが、家計の可処分所得を奪ってしまうことになると、消費不況を拡大するということになっていきます。景気にも税収にもマイナスになることは明白です。

 今回の高齢者の個人住民税非課税措置の廃止で、六十五歳以上の高齢者の中で約百万人が非課税から課税対象になります。しかも、それに連動して、国保や介護保険、地方自治体のシルバーパスから医療費助成に至るまで、全部負担増につながってきます。ですから、非課税から課税世帯になることで、地方のサービスも含めて考えると、これは高齢者の世帯の構成とか年齢とか所得とかいろいろ違いはありますが、例えば基礎年金ぐらいの所得の高齢者夫婦で見れば、三倍に負担が重くなるという例もありますし、また、単身高齢者で四倍に負担がふえるという例もあります。ですから、今回の問題は高齢者から悲鳴が上がっております。

 そこで、高齢者、所得の低い方たちにとってこうして雪だるま式の負担増も出てくるということについては、総理は思っておられるかどうかを総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 定率減税が高齢者に対して負担増になるという御質問ですか。(吉井委員「住民税非課税措置廃止でね」と呼ぶ)この定率減税と住民税について、別に一体ではありませんが、税というのは、だれでも負担しなきゃならない問題なんです。共産党が常々主張されているように、消費税、これは国民全体が負担するから反対だという主張はよく聞いております。

 そういうことを考えますと、税というのは、どういう税をやっても、負担になるということは避けられない。国民の負担なくしてあらゆる福祉政策というものは遂行できない、だれかに負担をお願いしなきゃならないということでありますので、負担になるということの議論については、私は否定しません。しかし、予算等、支出の方も考えないと、これは、だれも負担しないで政策が実行されるというのは、どこの国でもあり得ないんですから、そういう点をよく考えて私は判断すべき問題ではないかなと思っております。

吉井委員 定率減税廃止による負担増ももちろんあります。同時に、高齢者の住民税の非課税措置を廃止した場合に、それだけにとどまらないで、高齢者、特に所得の低い方たちの中には、雪だるま式に、国保も介護保険もそうですし、さらに地方自治体、いろいろなことをやっていますね、取り組み、シルバーパスの問題にしろ、そういったことにあわせて雪だるま式に負担がふえてくるということは総理もお考えでしょうということを聞いているんです。

麻生国務大臣 基本的には、国民健康保険料と今言われましたけれども、負担額にある程度の影響が出てくるということは、もう間違いありません。

 雪だるま式と言われると、何かえらい騒ぎで、そういう形容詞にちょっとひっかかるんですけれども、雪だるまと言われるほどむちゃくちゃな感じはしませんけれども。

吉井委員 総務大臣は国保にかかわりがあるから国保が気になったんでしょうけれども、そうじゃなくて、高齢者の非課税措置、これを廃止して、そうすると課税世帯になりますね。だから、税額がふえるという分はもちろんあるんですが、その負担だけじゃなしに、国保も介護保険も、さらに地方がシルバーパスその他負担がふえてきますから、雪だるま式に負担がふえてくるでしょう、それは総理もお考えでしょうというのが一つなんです。

 その一つと、時間が迫ってまいりましたから、もう一つあわせて。では、その措置に対して、高齢者の非課税措置廃止による低所得者の負担がふえて暮らしが困ることにならないように、国がきちんと責任を果たす必要があると思うんですが、その場合、何か総理として対策をお考えなのか、この二点を総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 それぞれの負担がかかる部分にどのような配慮をなすべきかというのは、当然国だけでなく市町村等考えていかなきゃならない問題だと思っております。

吉井委員 時間が参りましたので。要するに、負担増が雪だるま式にふえるんです。考えていかなきゃならぬというお言葉ですが、これは本当に、そこを考えたならば、とりわけ住民税の非課税措置の廃止などで負担を重くするようなことはやめるべきだ、このことを申し上げまして、質問を終わります。

実川委員長 次回は、明三日木曜日午後四時二十分理事会、午後四時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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