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第7号 平成17年3月3日(木曜日)

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平成十七年三月三日(木曜日)

    午後五時十一分開議

 出席委員

   委員長 実川 幸夫君

   理事 左藤  章君 理事 野田 聖子君

   理事 森山  裕君 理事 安住  淳君

   理事 大出  彰君 理事 松野 頼久君

   理事 桝屋 敬悟君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      佐田玄一郎君    自見庄三郎君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    西田  猛君

      萩生田光一君    平井 卓也君

      増原 義剛君    松本  純君

      三ッ矢憲生君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    稲見 哲男君

      楠田 大蔵君    小泉 俊明君

      小宮山泰子君    田嶋  要君

      高井 美穂君    寺田  学君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      山花 郁夫君    赤松 正雄君

      河合 正智君    長沢 広明君

      塩川 鉄也君    吉井 英勝君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三日

 辞任         補欠選任

  松崎 公昭君     小泉 俊明君

  河合 正智君     赤松 正雄君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 俊明君     松崎 公昭君

  赤松 正雄君     河合 正智君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)


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     ――――◇―――――

実川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治税務局長板倉敏和君及び国土交通省住宅局長山本繁太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷でございます。

 それでは、きょうは、税源移譲と徴税コスト、この二つの問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 まず、税源移譲についてであります。

 三位一体の改革に関する政府・与党協議会の合意などに基づきまして、平成十八年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現するというふうにされているところでございますが、この税源移譲はおおむね三兆円規模を目指す、また、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施する、あわせて国、地方を通ずる個人所得課税のあり方の見直しを行うこととされているところでございます。

 さて、そういうことであれば、では、このフラット化というのは一〇%というふうに総務大臣の方は考えておられるということも前にお聞きしたことがございますが、このフラット化は一〇%というふうに理解していいかどうか。また、それでおおむねどの程度の税収を見込んでおられるのか、総務大臣にお尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 今、谷先生御指摘のありましたように、一〇%というのは、御存じのように五%、一〇%、一三%と段階が三段階ぐらいに分かれておるのが住民税の実態なんですけれども、それを、当然のこととして一律化、一律に一〇%というと形の上からもきれいになると思っておりますし、五%の方が一三%の方に比べて対象者の数が多いものですから、対象となります数がふえました分だけ一三%が仮に一〇%に減ったといたしましても、絶対数、対象者の数がふえますものですから、私どもとしては、それによって大体、おおむね三兆円ぐらいのものが確保できると思っております。

 それをきちんと、今の段階でこれだということを決めておりません最大の理由は、いわゆる税源移譲というものが一体どれぐらいになるのかようわからぬみたいな話やら何やらがまだ十八年度まで継続している、まだ交渉中、折衝中のものが一部残っておりますので、それがきっちりした段階でということで、取り急ぎ所得譲与税という形にさせていただいておりますけれども、私どもとしては、きちんとした形で一〇%にして、一律にさせていただくことによって約三兆というものを目指しておるというのが考え方であります。

谷委員 総務大臣としては、一〇%、三兆円を目指すという今御説明、考えの披露があったわけでございますが、都道府県と市町村の割合をどうするかという問題はあるにしても、確かに一〇%というのは大変わかりやすい数字でもありますので、ぜひその方向で実現を目指していっていただきたいというふうに思います。

 では、それを前提で物事を考えますと、板倉税務局長にも来ていただいているわけでございますけれども、そうなれば、現在、住民税は五%、一〇%、一三%の三段階であります。そうなると、じゃ、五%の個人住民税を納めている方は増税、逆に、一三%の個人住民税を払っている方は減税になる、単純に考えればそういうふうになるわけでございますが、国税とも絡むんですが、その辺の調整をどういうふうに考えておられるのかということについてお尋ねしたいと思います。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 税源移譲につきましては、個人住民税の税率をフラット化するということと、所得税につきましても、所得再分配機能の適切な発揮という観点から、税率構造等の見直しを行うということを基本として制度設計をするということといたしております。その際、政府税調答申などにおきましても、税源移譲に際しては、個々の納税者に係る税負担の変動にも十分に留意すべきとされているところでございます。

 こうした点を踏まえまして、今後の制度設計に当たりましては、税源移譲に伴い個々の納税者の負担が極力変わらないよう配慮することを基本的な方針としてまいりたいと考えております。

 この方針に沿いまして、御指摘がございました、個人住民税の五%の方がフラット化をいたしまして一〇%になりますと、税額が倍になるではないか、増税になるではないか。確かに、住民税の世界では増税ということになりますが、その分は個人所得税の方からその相当額が減税になるように、そういう制度設計をこれからやっていくということでございます。

 同じように、住民税の一三%のブラケットの適用のある方につきましては、これは一〇%になれば、住民税だけを見ますと減税ということになりますが、そこは所得税の方におきまして適切な負担増を図るというようなことで進めていきたいというふうに考えております。

谷委員 そういうことで、いろいろ課題というのか詰めなければならないこともあるわけでございますが、では、そうした中で、あるべき税制というのを大臣の方にお尋ねしたいわけですが、どういうような個人所得課税といいますか地方税というのか、それを大臣の方は方向性として目指しておられるのかということについてお尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 基本的に、今三位一体にいたしましても、地方団体、いわゆる地方自治体というものが力をつける、自立できるようにさせるというのが本来の目的であって、あとはそのための手段ということになろうと思います。

 平成五年この方、日本という国は明らかに地域主権の方にハンドルを切って、以来、閣議決定が十年、そして平成十二年度の地方分権一括法というところでその流れは確実だったと思いますが、肝心の、地方が独立していく、自立していくというために必要な財源の保障がなかったというところが、なかなか事が進まなかった大きな理由の一つだったと理解をしております。

 したがって、今回、三位一体の中で税源移譲ということが行われておりますけれども、十八年度まではこの方向で約束どおり補助金を削減し、その分を地域で自由に使える裁量権のふえるであろう税の方に切りかえていくということで、一応十八年度まで、仮にも三兆円の税源移譲というものを一挙にやった例は過去にないので、それなりの大きな決断だったとは思いますけれども、さらに進めていくという意味において、私どもとしては、やはり、地方税と国税の比率が今、五八対四二ぐらいになっておると思いますけれども、これをせめて五対五、簡単に言えば一対一ぐらいにしていきたい、これが一つであります。

 それから、地方税に、国税から切りかえていくときに、いわゆる法人税というもので仮に地方税に振りかえられても、いわゆる法人の多い東京と法人の少ない沖縄とかいうのを例に引きますと、比率が一対六ぐらい違うと思いますけれども、その比率の少ないのでいきますと、やはり消費税が一番偏在が少ないというように思いますので、ぜひともそういった意味では、消費税でいきますと一対一・八ぐらいのところになろうと思いますので、私どもとしてはそういった形での偏在性の少ないものでやりたい。

 そして、私どもとしては、受益者負担とかいろいろな表現はあろうかと思いますけれども、なるべくこういったものはわかりやすいものにしていかねばならぬと思っておりますので、形としてはすっきりしたものにしていかねばならぬということも考えて、税源移譲の形としては基本的には偏在性の少ないもの、そして基本は、地方と国が一対一というのが形として十九年度以降目指していくべきものの内容であって、その手段としては、法定率等々の変更など、いろいろ手段はあろうと思います。

 大きな流れとしては、地域がより自主性を増していくための手段としての税のあり方につきましての考え方は、以上申し上げたようなところが基本だと存じます。

谷委員 ぜひとも大臣に、今後とも引き続き三位一体改革のさらなる前進に向けて頑張っていただきたいというふうに思います。

 徴税コストについてお尋ねしたかったんですが、時間が参りましたので、要望だけにとどめておきます。

 要は、私の問題意識は、地方がこれだけ税源移譲でふえるということになれば、ややもすれば徴税コストについて余り関心が払われなかったということで、現在、決算を見ても、徴税のために地方団体全体で八千三百億も使っている、そして徴税の職員数が八万人だ、こういうことをもっと合理的に、そして、場合によっては、都道府県と市町村の、例えば固定資産税は市町村がかけているわけでございますが、取得税は都道府県だ、こういったあり方も見直すというようなことも今後検討していただければというふうに思います。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 委員の皆さん、大変に御苦労さまでございます。しっかり議論をしたいと思っておりますが、できるだけ簡潔に議論をしたいと思います。大臣もお疲れでございます。

 私は、二点に絞って議論をしたいと思います。

 一点は、今も話が出ておりましたが、地方税収の偏在の問題であります。今回地方税の改正の中で、フラット化はこれから本格的に今年度の税制改正で議論するわけでありますが、暫定的な措置がことし行われているわけであります。その中で、それとは別に、法人事業税の分割基準の見直しが行われるということで、私は、抜本的な改革の前にどうしてもやっておいた方がいいというふうに思っておりまして、そこは一定の評価をしているわけであります。

 先般、この委員会で、今回の分割基準の見直しに係る影響について、各都道府県、調査をしたというお話がありました。大変気になるところでありまして、私は中国五県で選出をされておりまして、中国五県の、今回の、都市部から地方に偏在をなくすということでありますから、結果的に地方がこの分割基準の見直しによって増収になるということだろうと思っておりますが、どの程度改善をされるのか、また増収となる地方の中で特に法人事業税の増加率が高いのはどういう団体なのか、今回の調査の結果をお示しいただいて、改善の状況を御報告いただきたいと思います。

麻生国務大臣 御地元のところが一番気になられるところだと、これは議員皆同じだと存じます。岡山、広島、先生は山口だと思いますが、山口県につきましては、法人事業税の分割基準の見直しによるいわゆる増収分は約十から十五億と思われます。鳥取、島根につきましては、これは五から十ぐらいというのが、全体、今、私ども、四十七都道府県別に申し上げるとそういうところであります。大別的に見ると、稲見さんのところの大阪あたりは減る方、東京はさらに大きく減って、あちらからそちらに来るということになるんだと思いますけれども、東京と大阪以外はいずれも増収、その額の差はございますけれども。

 どこが一番大きくふえるかと言われる御質問でしたが、この点に関しましては、一番ふえますのが多分北海道ということになろうと存じますが、これが八十から九十ぐらいふえると思います。次が沖縄で、三十から四十ぐらいというところ、私どもの調査ではさようなことになっております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 私、山口県でありますが、山口県の財政課と議論しておりまして、今回の改革で、私の試算ですが、二十億ぐらいふえれば何とかとんとんでいくな、こう思っておりました。恐らく地方から上がってくるのは過少報告があるんではないかと思っておりますが、私は、一定の改善がなされているな、こう理解をしている。そんなこともあって、地方から、今回の改革については、改正については一定の評価があるんじゃないか、こう思っております。

 それから、もう一点ですが、個人住民税の非課税限度額が段階的に廃止される、こういうことであります。非課税限度額制度がなくなるということは、逆に言うと、とりわけ六十五歳以上の方々については増税になる方があるわけでありまして、国民に広く、なぜ改革が必要であったのかということは十分説明をし、理解を得ながら進めなきゃならぬ、こう思っているわけであります。

 これは自治税務局長に伺いたいと思うんですが、今回の六十五歳以上の非課税限度額が廃止された理由といいますか、ぜひここでわかりやすく、時間もありませんから、端的に御説明をいただきたいと思っておりまして、国民の皆さんにぜひ理解をいただきたい、こう思っている次第であります。

板倉政府参考人 端的にとおっしゃいましたけれども、できるだけ簡単に答弁します。

 この非課税制度は、実は終戦後間もない昭和二十六年度に設けられたものでございまして、肉体的ないし社会的にも一般の人々に比べて不利な立場にあるということで、所得稼得能力とか担税力が乏しいというようなことで、六十五歳以上の方についてはこういう特例が設けられたところでございます。

 しかしながら、その後、国民皆年金制度が確立したとか、高齢者を支える社会保障制度が充実をしてきたというようないろいろな事情がございまして、創設当時と比べますと大きく変わってきているんではないかという認識がまずございます。

 また、最近の高齢者は、制度創設時に比べましても、平均寿命が大幅に延びました。健康状況もよくなったと思われます。経済的にも豊かになったと言われているところでございます。こういうことを受けまして、政府税調答申におきましては、年齢だけを理由に高齢者を優遇するような制度というのは見直すべきであるというふうに指摘をされたところでございます。

 今回の改正は、高齢者を不利に扱うというものではございませんで、高齢者を現役の世代の、六十五歳になっておられない方と税制上同じように扱うというようなものでございます。この改正によりまして確かに税負担はふえますけれども、できるだけ平たんになるようにということで、平成十八年度から三年間で段階的に廃止をするということにさせていただいたところでございます。よろしくお願いします。

桝屋委員 国税の方が既に制度が変わっていたということもありますし、必要な改革であったと思いますが、しかしやはり、市町村民税非課税という言葉がイコール各市町村の低所得者対策として、その対象として使われる言葉でありますので、もとより国保や介護保険にも影響を与えるということでありますから、十分関係省庁間でよく連携をして、十分な対応をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、安住淳君。

安住委員 通告になかったんですが、板倉税務局長、今ちょっと気になる発言をしたので。

 六十五歳以上も現役と同じようにみなすと。これは課税のときだけ同じようにみなして、そのほかは、雇用関係とかは六十五歳以上はもう全く厳しいんだから、そこだけ、非課税措置を廃止するのに六十五歳以上の方を同じように扱う旨の発言というのは、私はこの課税をするとき、ちょっと適切でないと思うんですね。

 大臣、ちょっと、今聞いていて気になりませんでしたですか、恐縮ですけれども。

麻生国務大臣 私もことしから六十五になりますので、今の話が気にならなかったと言えばうそでしょうけれども、ただ、自分を見て、そこそこ元気にしていますし、いろいろ、昔と違って平均寿命も大幅に伸びて、六十五歳以上の方で要介護者というのは二千四百八十万人のうちで一三%しかいらっしゃらぬという実態を見ますときに、ある程度いろいろな方々に広く薄く負担を分かち合っていただくというお願いをしなきゃいかぬことになりつつあるのかなという感じがしております。

安住委員 それでは、具体的に質疑を進めたいと思いますけれども、ちょっと冒頭、恐縮ですけれども、定率減税の話に進む前に一問だけ。

 大臣、放送事業者のマスメディア集中排除原則の違反に対して警告を出したという話を先ほどちょっと新聞を見たし、きのうブリーフィングもいただきましたけれども、ちょっと一問だけ確認しますが、これは警告をしたわけですね。電波法七十六条に基づく行政処分もあり得る旨ということは、悪質なのは、あえて名前を出しますけれども、東海テレビや鹿児島テレビですね。これは、もう一回同じことをやったら、要するに電波をとめるということも考えるということですか。いかがでございますか。

麻生国務大臣 御指摘がありましたように、マスメディア集中排除原則等々に基づいて、過日、新聞に出ましたとおり、違反している新聞社、放送会社、かなりな数に上っておりましたので、私の方から、昨日、そのほかにも社団法人日本民間放送連盟及び社団法人日本新聞協会等々に対して、原則の遵守と周知徹底を図るように要請をしております。

 その上で、今の七十六条の話が出ましたけれども、基本的に、本当にとめるのかということでしょうけれども、これは「その免許を取り消すことができる。」と七十六条の二に書いてありますので、いわゆる違反した、途端にあしたから放送停止というわけではないということだと思いますが、できることは確かです。その点は、悪質だった場合は当然のことだと思います。

安住委員 やはりこの集中排除は、長年にわたって悪質な事例もあるということでやってきたわけですから、強い態度で臨む会社もあっていいというふうに私は思いますので、再発の防止のために万全を尽くしていただきたいと思います。

 それでは定率減税の話に入りますが、先ほどちょっと、私、六十五歳以上の方のことを少し触れましたけれども、順序立ててもう一回最初から話をしますと、私たちが言っているのは、十一年のときを振り返ると、小渕総理は条件つきでこの減税をやったわけですよ。つまり、この減税を廃止するに当たっては、景気回復と、そして所得税を含む抜本的な税の見直しだ。

 きのう五十嵐委員が総理に聞いたときも、明確な答えがなかったのです。景気についてはあると思います。景気は、十七年の総務省の税収見込みを見ても、かなり法人事業税等は地方でも上がるような傾向があるということですから、そこは意見があるから、それに対してとやかく言いません。見解の違いがあると思います。ただし、所得税を含めた税制の抜本的な見直しをやらないままにこの縮減に入るというのは、少しやはり、私たちから見れば、これは公約違反ではないかというふうに思うのですが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 公約違反かと言われると、いわゆる定率減税というものを導入いたしました平成十一年だったかな、あのときの状況に比べて、やはりかなり状況としては、今踊り場、竹中の表現をかりれば踊り場、随分長い踊り場のような気もしますが、踊り場という状況が三期続いているのだとは思いますが、背景は少なくとも、アメリカ等々、十一年のときに比べて、かなり状況は、あのときほど在庫がふえていない、アメリカ等の外国の景気が悪くない、いろいろな意味で変わっております。

 所得税の方で言わせていただければ、抜本的な見直しというのはやはり基本的には必要なのだと思っておりますけれども、今の状況で、基本的に税制改正を、やはり平成十八年度の税制改正というところで多分やっていかなければいかぬところではないのでしょうかね。僕は何となくそんな感じがするのですけれども。

安住委員 要するに、抜本改正をやらないままにこの縮減に入るという話なのですよ。なぜ私、こういうことを言っているかというと、やはり去年あたりから、財務省も政府も与党も、私から見ると、これはもう非常に本末転倒だというのは、年金財源の充実みたいなことを急に持ってきたでしょう。そのために財源がなくて、要するに定率減税の縮減がそこに当てはまると。言ってみれば、全く最初の恒久化とは違う関数を出してきたというところに、まずやはり縮減ありきだったのではないかというふうに思わざるを得ないのですよ、大臣。十八年から抜本改革、フラット化の話、さっき局長もなさっていたけれども、そんな中でこれをやるということはいかがなのですかということなのです、大臣。

麻生国務大臣 いろいろ御意見のあるところなんだと思いますけれども、やはり年金の制度というのは、安住先生、ある程度、制度としては持続できるような形にせないかぬというのが、やはりしょっていかなければいかぬ大きな荷物でして、これはだれが総理大臣にかわろうとも、この制度をゼロから、御破算を願いまして新しいものというのはなかなかできないというところが、やはり非常に大きな問題。傍ら、どんどん迫ってきているというところもありますので、今言われたように、ある程度の負担をお願いするということになってきているのだと思っておりますけれども、何となく、すべてそっちにいってしまっているということにとられかねぬような表現というのが財務省からあったというような感じにとっておられるのだと思います。

 確かに表現は、あのころ、えらく年金が出てきたものですから、何となくそんな感じにとられるような、この種の表現の稚拙なところは最近、財務省には目立っていて、七・八兆円の話もふざけていましたけれども、こういった話はこのところは、敵失とは言わぬけれども、何となくちょっと配慮が少し欠けておるかなという感じがします。問題は税の基本的な話ですから、何となく年金だけと思われるような言い方は余り適切ではない、私もそう思います。

安住委員 いやいや、だから十一年のときには年金の話は全くないのだから、まるでパッチワークをするようにくっつけていくというやり方で負担を強いるのは、フェアでないよと言っているのですよ。

 それと、あるべき税制のあり方を議論せずに、言ってみれば、縮減分が、後で言いますけれども、何兆円かの穴埋めができて、足りなくなっている年金財源にちょうど充てるにはいい、年金と言えば国民は理解してくれるだろうと。まさに稚拙なんですよ。財務省の言っていることは安易なんですよ。全くそのとおりだと思うんですね。しかし、それでもやるというんですから我々としては強く反対します。

 ちょっと当時のことを振り返ってみたいと思うんですね。私は、当時こう思ったんですよ。相当な経済危機でした、大臣。通貨危機があって、消費税を五%に上げて、それでたしか四兆円の特別減税をした。そのときは、お先真っ暗といいますか、そういう状況の中で、経済対策で打つ手なしという中で恒久減税化を盛り込んだ対策を立てた。私はいいことはあったと思うんですよ。何がいいかというと、これは、大臣も企業経営なさっておられるわけですけれども、大臣、日本の法人税は非常に当時、世界的に言ったらもう非常識なほど高かったわけですよね、企業経営を圧迫するぐらいに。法人税率の引き下げは大体三四から三〇になったんでしょう。それから所得税は五〇から三七。まあ住民税に関しては一五から一三だから、さほどだとは思いませんけれども。

 しかし、ここで一つの考え方が私はあるんですよ。つまり、本来、直接税に非常に頼って高い税率のものを下げて世界標準にしたというふうに考えれば、やはり私は恒久化だと思うんですよ。違いますか。そういう考え方があっていいんじゃないですか。むしろその方が世界の常識だと私は思うんですよ。それを、少し景気がよくなって年金が苦しくなったから、そこをまた引き上げてもとに戻すという議論は、私はおかしいと思うんですけれども、いかがですか。

麻生国務大臣 この国は社会主義制度として最も成功した国として見習いたいと金正日が言ったそうですけれども、私どもから見ていても、先進国の中で最も税率等々はかなり激しいものになっていた。例えば相続税九五%とか、そういう時代がありましたから。それが、何となく、そういうものじゃなくなってきつつある。その流れの中に、今御指摘のあった、法人税にしても何にしても自由主義諸国の先進国並みになった。まだいろいろ、相続税等々問題のあるところはいっぱいありますけれども、そういったところを含めまして、今言われたような流れになってきていることはもう間違いない。

 あの当時、やる気のある人たち、金を稼げる能力のある人たちを大いにやろうという気にさせたのは、あの平成十一年に多くの企業の経営者やら何やらをその気にさせた効果は物すごく大きかった。私も、友人らの話を聞いて、本当にこうなるのかと何回も念を押されましたから、やはりそんなにさせるものなんだな、あのときは確かにそう思ったことも事実です。

 だけれども、今言われましたように、最高税率の引き下げやら何やらは、いろいろあったんだと思いますけれども、今、私どもとして、いろいろな意味で、税のその種の話をやると、金持ち優遇じゃないかとか、いろいろごんごん言われているのが長くなっていたものですから、何となく、もう一つやり切らなかったところもあったんだというのが一つ、これまでの話ですよ、最高税率を引き下げるまでの話。

 ところが、今回の御指摘の点については、やはり、あの平成十一年度に導入するときから、確かに、抜本改正というのとは別にして、定率減税の話だけでいけば、これをいつもとに戻すかは問題だなと、当時、宮澤大蔵大臣、小渕の間で結構何回も言われた話だったんですが、今回まあ半分だけという形でさせていただいておりますけれども、その他の所得税の抜本改正等々は、基本的にはやはり見直さないかぬものだと思っております。

 そのタイミングが違うではないかと言われれば、それはごもっとも、その点は認めないかぬところでしょうね。

安住委員 いや、だから、ごもっともだったら定率減税の縮減をしなきゃいいんですよ。

 私は、これは常識的に、大臣は経済をわかっていらっしゃるであろうから言っているんだけれども、そこまで直接税が高いわけで、私たちの党はそれで消費税を含めた引き上げも言っているわけだから。つまり、財政再建を考えたときに、単に減税をすればいいなんという無責任な態度を我が党はとっているわけではないんです。だから、財政再建も非常に重要、しかし、そういう中で、経済の活力をそぐような、例えば法人税の引き上げとか、そういうことにはくみしないという考え方を基本的に我々は持っているということなんですよ。

 そういう立場に立った場合、例えば、今回の所得税のことも、やはりフラット化をちゃんとやるとか何かのことがないのに、ただ、多分、話がちょっと散漫になって悪いけれども、所得税分の減収二・五兆でしょう、住民税が〇・八兆、大体その減収を補いたいと。二分の一、二分の一で、もう再来年度にはこの上がりを上げて、まあ年金か何か知らないですけれども、それはもう足りないところにぶち込みたいと。

 しかし、これはもう抜本改革の名に全く値しないですよ。これは将来に対してあるべき税制なんて全く考えていないですよ。その場しのぎのことをただ単にやっているだけじゃないですか。大臣、自分でそう思いませんか。だらしのない政府じゃないですか。大臣、いかがですか。(発言する者あり)

麻生国務大臣 いや、それはまことに、そうだなんて言っていただいても、ついつい調子こいて、そうだなんて言うとえらいことになりますが。

 今おっしゃっておられるところは、基本的には私も同じようなことを考えないわけではありませんよ、それは正直なところ。抜本的な見直しは、これは平成十八年度必要になると、去年の十月でしたか、何とかで、これは必要になるということをあのときも認めているぐらいですから。ただ、今言われたように、形としては余り格好いいきちんとしたものじゃないことは確かですよ。だから、そういったあれで、こっちも認めないかぬところなんだとは思いますけれども、いわゆる形として今回はそこまで行き切らなかった。正直なところですな。

安住委員 正直なだけ了とします。素直に謝られたので。

 しかし、私はこう思うんですよ。つまり、これは我々国会議員としても大きな仕事ですよ、税制をどうするかは。特に、地方税の問題というのは、高齢化して過疎化をして、取れるところはどこかというのが非常に難しくなってきて、また、先ほどの話じゃないけれども、東京と過疎地では随分差が出てくる。こういう中にあって、しかし、やはり税の公平性を保つために、例えばフラット化なんていうのはなるほど説得力のある話で、そういうことは時間をかけてしっかりやらないといけないんですよ。

 私どもは何でこの間、先週から大暴れしたかというと、十八年度のこの話を、一般の税制改正と、潜り込ませると言ったら失礼ですが、さらっとこの予算と一緒になって通しちゃおうという考えがまた姑息だと言ったんですよ、大臣。大臣だってそう思っているわけでしょう。しかし、与党だから知らぬ顔してしらっと採決しようと思ったんでしょう、大臣。違いますか。

麻生国務大臣 この種の地方税の改正というのは、毎回そうですけれども、何となく、ほかの税法と一緒に期日を合わせていただくというのがこれまでの慣例ということになっていましたので、今回もおっしゃるとおり、十八年の六月の話とはいえ、ぜひ一緒にそろえていただいて、まあある程度周知、告知の時間もかかりますのでということで、ひとつお認めをいただきたいというお願いであります。

安住委員 こうやって委員会をやっているんですから、それはまあそれでしようがないなと私は思っているんですよ。

 だけれども、つまり、先ほどちょっと私、役所には確認をしたんですけれども、局長、個人住民税の所得割で十七年度は七・六兆ぐらいなんでしょう、大体。大体そんなものなんですよ。そうなの、大臣。七・六から七・七ぐらいなんですよ。いいですか。私は、そのうちの個人住民税分がウエートが高いか低いかとなると、これはやはり今の減税分では〇・八なんでしょう。わかりますか、〇・八兆。七・六のうちの〇・八だから、やはりこれは相当ウエートの高いものだと思わざるを得ないんですよ。ただ単に上げてという話にはならないと思うから、いい機会だから、抜本的な改正を何らかの形でした方がいいと言っているんですよ。それがやれるのは、だって政治の力ですもの。それをやらないから私は批判をしているということなんですよ、大臣。

 いろいろ言いたいことはありますけれども、夜も更けてきましたからこの辺で質問をやめますけれども、大臣、税のことは、庶民に負担を強いる話だから、やはりもっと謙虚に、政府は時間をとってお願いをしないといけませんよ。

 単なる普通の税制改正と同じようにしらっと潜り込ますなんということは、私は来年からぜひやめていただきたいのと、政府も、我々もそうですけれども、ここはやはり税制の抜本改正にそろそろ手をつけないといけない時期なのでそのことを、税源移譲も、ちょうどいい時期に重なっているわけですから、ぜひ役所の中でも頑張ってやっていただきたいということだけ申し上げて、十分も残して質問をやめます。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きのうに引き続いて、二日連チャンでございますけれども、質疑に立たせていただきます。

 今、るる大臣の答弁を聞いていました。やはり、大臣は、去年の十二月の二日の経済財政諮問会議の中で、今回の定率減税に反対されているんですよね。ですから、多分気持ちが同じ同士で議論をするというのはなかなかこれはつらいものだなというふうに思うんですけれども、ただ、今回これをこういう形で踏み切られましたので、それもいたし方ないことだというふうに思います。

 今、安住議員が指摘をしていました。私も何回か、大臣とこの地方税の関係で、固定資産税だったり法定外目的税だったり、税のことで随分議論をさせていただいています。

 私は、やはり、特に税を取るというときには、国民にきちっと説明をして、そしてもっと神聖な立場で取るべきだというのが基本的な考え方なんです。ですから、今まで随分、税の話をさせていただくときも、やはりそういう思いを持ってずっと話をしてきているんですけれども、特にこの定率減税は余りにもひどい。

 今お配りした資料を見てください。この一番最初の閣議決定にしても、所得税の抜本的な改正とセットでこれをやる、これも随分議論はしていましたからもう深くやりませんけれども、こういう話。

 そして、平成十一年にこの税を導入するときはもっとひどい。当時は、鮮明に覚えていますけれども、橋本総理が参議院選挙の最中に恒久減税から恒久的減税に言い直したといって大騒ぎになった。それで、参議院選挙で大敗されて辞任をされ、やはり小渕総理が恒久減税から恒久的減税という形で導入をされているわけです。

 これは、広辞苑で調べてみました。恒久的という言葉は広辞苑に載っていないんですよ、恒久という言葉しか載っていない。その上に、恒久を調べると、未来永劫、永久。それに的をくっつけて、何とかごまかして入れちゃったというのがこの税の生い立ちなんです。ですから、やはり課税の世界でこういうことをしちゃいけないと私は思いますよ。

 それで、今回の定率減税の縮減でありますが、ちょうどこれは平成十一年の二月二十三日に、参議院の予算委員会で、宮澤大蔵大臣、当時の課税の担当者です、この方がこういうふうに言っているんです。日本経済の順調な経済成長は二%ぐらいだ、だからこの二%ぐらいになったらば日本の経済が順調に成長している、これはそれまでのつなぎの税金だということをちゃんと予算委員会の中で示しているんですよ。ですから、連続二%ぐらいになったらば、この所得税の抜本的な改革をしなければいけませんねということを片山前総務大臣に答弁しているんです。

 どうでしょうか、大臣。今二%ありますか、GDP比、名目成長率。

麻生国務大臣 宮澤大蔵大臣のときだったと思いますけれども、その後、今の竹中の仕事を私がしていた時代が、四年ぐらい前だったと思いますが、そのときにもほぼ同時に、日本で、当時、やたらみんな実質でしゃべるものですから、実質なんというのはだれもわかっている者はおらぬ、小泉さんなんか意味もわかっておらぬでしょうが、だから名目で言え、名目でといって、もうちょっと品のいい言い方をしてくださいとえらくたしなめられた記憶があるんです。

 何でもかんでも、世の中名目で動いているわけですから、名目でしない話はだめですよといって、実質の方が高いものですから何となくそっちの方を言うんですけれども、実際は名目でいえばマイナスだったんだ。それだから、プラスになるのは、名目でいうためには二%必要なんですよということを申し上げたんです。

 今、実質経済成長率で二・一%、平成十六年度。だけれども、名目でいった場合は〇・八ぐらいしかないと思うんですね。そういった意味では、今言われましたように、ことしは昨年よりは高いと思います、私どもの感じでは。高いと思いますが、それで二%いくかと言われると、私は、ことし、実質じゃなくて名目で二%いけばそれは大したものだなと思いますけれども、まだその実感がないのが正直なところです。

 かつ、この二%が、ある程度国民に自信を、経営者に自信を、消費者に自信を持たせるためには、数年ある程度いって初めてという感じであのときも話をしたんだと思いますけれども、今もその感じは変わっておりません。現実はどうかといったら、まだそこまではいってない、私自身はそう実感しております。

松野(頼)委員 今ここに内閣府が出したそのGDPの実質がありますけれども、全然いっていないんです。一・四、一・四、二〇〇三年、二〇〇四年。名目でいったって〇・六、一・二で、その後の二〇〇四年の四―六なんかはもうマイナス〇・六ですよ。七―九も〇・二。

 ですから、決めたときの話で、とてもこの税を今動かす時期ではないんです。大臣も、経済財政諮問会議で、今がタイミングではないだろうというふうに発言をされているとおりに、全く今動かすタイミングじゃないんですよ。

 ですから、なぜもっと、この税を縮減するときに、地方税を所管する大臣として、経済財政諮問会議ではなくて閣議の中で反対をされなかったのか、その辺を聞かせてください。

麻生国務大臣 いろいろ、正直言って、閣議というような場じゃなくて、経済を担当いたします財務大臣、官房長官、また竹中大臣等々と四、五人での意見交換というのは何回かあったのですが、その中で、景気の判断をしないで税を先に決めるなどというのは優先順位のつけ方がまず違っているんじゃないのか、景気判断はどうなっているというのを経済財政担当大臣が言いもしない先から税の方が先にというような話はどう考えてもおかしい、多分それが最初の口火だったと思いますけれども、以後、何回かあったと記憶いたします。結果として、それで半分になったと自分自身はそう思っているんですけれども。

 その当時は、とにかくもとへ戻せ戻せの一本やりだったのが、結果的には十八年度三カ月だけで取り急ぎというような形で、大分当時意見が分かれて、少なくともことしになって秋ぐらいになったら、その段階でもうちょっと平成十七年度の景気というのはもっとしっかりしたものになるということが確信を持てた段階で話に乗ってもいいけれどもという話をして、結果的には今申し上げたような形で、十八年の一―三月という形で、半分になり、半分になりというような形になっていったというのが経緯です。

 これは結構意見がいろいろ分かれたところではあったんですが、何となくそこらのところで、聞こえよく言えばお互いに折り合ったというところなんでしょうけれども、結果としては、今はそこらのところで妥協したというのが正直な実感ではあります。

 ただ、幸いにして、きのうのグリーンスパンの話やら何やら聞かれたとおりなので、そういった意味では少し、アメリカやら何やらも思っていたほどひどくないかなという感じがしますので、名目の部分はそこそこいきはせぬかなという、期待半分、ちょっと不安半分なところではありますけれども、今はそういったところが率直な実感です。

松野(頼)委員 ちなみに、大臣、もう一つこういうことをおっしゃっているんです。「もう一点は、このルール、定率減税の決め方の機動性がない決め方を変えない限りは、このルールはずっといくわけだから。」と。まずいぞというようなニュアンスのことを言っているんですね。

 その中で、大臣が言っていることを大臣に聞くのも変な話なんですけれども、実際に、では、例えば二年目を実行するかしないかというのは、一体どのぐらいの経済の目安で決めるんですか。

麻生国務大臣 なかなか松野先生、難しいところですよ。去年とほぼ同じような経緯をたどるんだとは思いますけれども。いろいろ話し合いをして、そのときに景気が、きのうのFRBの議長が言うように、本当にあのものになっていれば、当然日本の景気はかなりいいものになるであろうと予想できますので、少しは雰囲気としては変わるかなとは思っておりますけれども、それが今程度のものでしたら、ちょっと正直、これで十八年しょっぱなやって後大丈夫かという話は多分もう一回そこで出ることになると思いますので、かかって、やはりそのときの景気判断が非常に大きな要素を占めるということになると存じます。

松野(頼)委員 先ほども申しましたけれども、この定率減税を決めたときに、当時の宮澤大蔵大臣が、次にこの税をもしもとに戻したり、抜本改革をするときには、大体GDP二%ぐらいの成長が少し続いてからじゃなきゃいけないなというふうにおっしゃっているわけです。ただ、全く今その状況にないにもかかわらず、定率減税の縮減というのを実現しているわけですね。

 また、経済の状況を見て、平成十八年度、まず一年分だけ決めました、二年分、次年度に関しては、そのときの景気判断によって決めますということを言っているんですけれども、全くそこの数値だとかルールというのが見えてこないわけですよ。これぐらいまで回復したらとか、一年度やってこれぐらいしか落ち込まなかったらとかいう、数値である程度示しておくべきじゃないんですか。

麻生国務大臣 気づいておられるでしょうけれども、これは総務省管轄の話じゃなくて、経済財政とか財務大臣の話が主たる話なんで、景気判断は私の担当するところではないと百も二百も知った上で、生半可な経済の話をするのも僣越だとは思いますけれども、やはり宮澤先生の言われた二%というのは基準としてはいいところだろうな、数字を入れろというのであったら、やはり名目成長率二%というのは一つのいい数字だな、目安かなというのは、私も感じとしては率直にそう思います。

 ただ、正直、今はなかなかえらく複雑なものになってきておりますので、昔みたいにGDP以外の、数字に出てこない景気がよかったり、なかなか見えないアンダーグラウンドのものがよかったりいろいろしますので、わからないところではありますけれども、二%、宮澤先生が導入するときに言われた数値は、一つの目安としてはいいのではないか、私も正直そう思います。

松野(頼)委員 国税と地方税を切り離すこともできるわけですから、国税は定率減税を縮減しても地方税はやらないよということは、実際はできるかどうかわかりませんけれども、理論的にはできるわけですよ。ですから、私が見て大臣は本当によくおわかりだと思いますし、本当に心から思うのは、大臣はそう何もいい子にならずに、大臣の思いで思いっ切り税制を動かしてもらった方が非常にいい結果が出ると思いますよ。

 ですから、そのことはしっかり指摘をさせていただいて、私たちは今回の定率減税の縮減には本当に反対です。ここでもし景気の腰を折ってしまったらば、橋本内閣のときの二の舞になってしまう。あのときは社会保障を含めて九兆円の増税をしたけれども、実際に景気の腰を折って税収は下がっているという、こんなばかなことをしているわけですよ。ですから、今回そのような二の舞にならないように、どうかそのことはしっかりと監視をして、そして二年目を実行するときには本当に、これはまずいぞとなったらちゃんと抵抗していただきたい、ぜひそのことをお願いする次第でございます。

 そしてもう一つ、ちょっと資料の二ページ、三ページを見てください。

 今回の税制改正の中で、先ほども話が出ました老人所得課税、これは百万人が対象で、約百七十億の増税が行われるわけですよ。二、三と見てください。これは会計検査院が指摘をした額なので、この話には直接関係ないように見えるんですけれども、二ページ目は、あの甘い会計検査院が、各省庁の予算についてこれはまずいんじゃないですかといって指摘をしている金額、毎年これだけあるんですよ。

 それで、資料の三を見てください。これは直接関係ないかもしれませんけれども、一つのシンボルとして、エネルギー特会には三千六百四十五億の余剰金があり、そして電源開発特会には千七百三十五億の余剰金があるんです。そして、もっと大きく見ると、その下の表を見ていただければありがたいんですけれども、これは財務省がつくった資料です。この歳入、歳出というところを見てください。歳出の下の不用額、一般会計で一兆以上あるんです。特会では十一兆の不用額がある。これははっきり数字に出ているんです。

 これだけの金額の、本予算、特会の予算の中で不用だと言われている金額がある。その一方で、百万人を対象にして六十五歳の非課税措置の縮減を行う、そのためにたかだか百七十億の増税をするという。これは関係ない話かもしれませんけれども、アンバランスだと思いませんか、大臣。これは、六十五歳以上の方の特にべらぼうにお金を持っている人の話じゃないんです。政治は弱い人のためにあると私は思いますよ。

 そういう中で、これだけ不用額だの余剰金を残しておきながら、この方々に課税をするというのは、今からでも遅くはありません、これは政府だとか与党だとか野党だとかいう話ではなくて、国民の代表者として、我々、議会に送られているこの議会の責任として、この老人所得課税の縮減は今からでも法案からどうかできれば削除してもらいたい。このことをお願いいたしますけれども、感想はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 初めて見た資料なので、ちょっとにわかによく歳出のところとあれのところが、とにかく十一兆余っておるという数字になっているんだと思います。ちょっとこれは初めて見た資料なので、この数字だけ見たところで、随分差額がでかいな、歳出歳入のところの差がちょっと違い過ぎているなという感じが率直なところであります。

 次に、今の年金の、六十五歳以上の非課税措置の話ですけれども、松野先生、これは吉田内閣だったから、昭和二十六年だったと思うんですね。第三次ぐらいのところだと思うんですが、この制度が設けられた当時というのは、まだもちろんいわゆる国民の皆年金制度なんというものはでき上がっておりませんし、社会保障の制度なんというのも全然充実していない。戦争に負けてたかだか五、六年というところでもありましたので、かなりすさんでいた時代でもあったんですが、そういった時代に、男で平均寿命が五十九ぐらいだった、六十に行っていなかったと思うんですが、女性が六十に行ったぐらいだったと思うんです。

 そういう時代だったのに比べて、今は、御存じのようにごそっと平均寿命というのは、女性の場合、八十四、五までになっておるわけですかね。そういった形になってきていますし、男子も七十七、八ぐらいまでになってきているんだと思います。行政も変わったし、いわゆる六十五歳以上の方の人口比というのも、あのころは五%あるかないか、今はもう二千四百八十万、一九%ぐらいのところまで行っているんだと思いますので、そういった人口構成やら何やら。

 また、特に、先ほど安住先生の御質問にも答えましたけれども、二千四百八十万と言われる高齢者の中で、いわゆる要介護者というのは一三%ぐらいしかなくて、八七%は元気、この辺にも元気なのがいっぱいいますけれども、そういう六十五歳以上の人がこれだけ元気という状況になってきますと、そういった元気な方々には、高齢者の方々にも現役世代と同じようにもう少し負担していただけませんかと言わざるを得ないような形に今多分なりつつあるんだと思うんですね。それが、この間の政府税調でも出た話なんですが、とにかく十八年度から三年間で段階的にやらないかぬのじゃないかということで、いきなり、やはり段階的にという条件をつけたというのは多分そういう背景なんだと思います。

 いずれにしても、少し時代とともに人口構成も変わってきたというところがこういったことになりつつある背景なんだと思いますので、おっしゃる意味は私もわからぬことはないんですけれども、少しいろいろな意味で御負担をお願いせないかぬことになりつつあるというように思っております。

松野(頼)委員 いや、それは大臣、もちろんお金持ちのお年寄りもいらっしゃいます。ただ、僕ら、選挙していると多くのお年寄りの方から聞く話は、老人医療費は上がりました、今回のこの縮減によって、今度は社会保障費にも降りかかってくるわけですよ。そして、週に一回病院にも行かなきゃいけないという状況の中で、税収が多く上がるならばそれは仕方ないことだと思いますけれども、百七十億ですよ。この百七十億のために百万人の人につらい思いをさせるのはいかがなものかなと私は思うんですよ。別の収入があったりする老人の方は、それはいいかもしれません。ただ、今回のはそういうわけじゃなくて、本当に苦しい層にも課税をされる。課税をしたにもかかわらず、税収は百七十億ですよ。これは私、ちょっと考えた方がいいと思いますよ。

 どうか、こういう形で出されたんですから、実行する、実行しないを含めて、このことに関しては私はもう一回再考してもらいたい。このことを強くお願いする次第でございます。

 そして、次に課税自主権に基づく法定外税。

 これは、豊島区の放置自転車税で随分大臣とやりました。大臣も、よくこのこともおわかりだと思います。ただ、実際に三位一体で税収が苦しくなっている中で、今全国の町村でどんどんふえています。あのときにも指摘をしましたけれども、あのときから比べても飛躍的な伸びを見ています。

 そういう中で、やはり企業のねらい撃ち課税が多いんですよ。一つ例に挙げました。この資料を見てください。福島県の核燃料税、これは法定外普通税です。そして、鹿児島県川内市の使用済核燃料税。確かに原子力関係には課税はつきものかもしれませんけれども、今現在でもべらぼうな税を、一兆円以上の税を業界で払っているわけです。その上に、自治体の課税自主権に基づいて課税をされている。

 何に使っているのかということを、どうか見ていただきたいと思います。

 最初のページ、4と書いてある資料ですけれども、これが福島県の例です。もう既に、さっきの電特から電源立地地域対策交付金というのを百二十億もらっているんです。その上に、この課税自主権に基づく法定外税をつくって、十七億円今回税収を上げている。そして、この税収の使い道がこの下の表です。ほとんど、体育館を建ててみたり、教育施設を建ててみたり、観光レクリエーションに使ってみたり、サケ資源の養殖、水産研究所、アワビ、ウニの養殖、こういうことに使っているんです。もう既に電特からちゃんと電源立地地域対策交付金というのをもらっているわけです。またその上に課税自主権によって税収を上げる。

 次のページは川内市が何に使おうとしているかというものですけれども、エコシティ川内市のイメージアップ、あと医療の充実した街づくり、安全性の向上。ほとんど、あえて新しい税金をつくってまでやるような内容なのか、私は理解に苦しむところです。

 ですから、前回も随分言いました。法定外目的税であれば、地方税法の七百三十三条、総務大臣の不同意要件、こういうものをしっかりとつくっていただいて、企業ねらい撃ちの課税をするのではなくて、私は、課税自主権に基づく法定外税をつくるというのは、これは地方分権の流れで大賛成なんですよ。どんどんやるべきだと思います。ただし、そのどんどんやる中での基本的なルールというのを決めて、税の性格であります、なるべく浅く広く税を取るということのルールを、あの不同意三要件だけでは足りないから、きちっとしたルールを決めるべきだと思いますよ。どうですか、大臣。

麻生国務大臣 まず最初に、この話で、鹿児島県の川内と福島県の話ですけれども、松野先生よく御存じのように、これは法定外普通税ですよね。あの自転車の方は法定外目的税。だから、これは少し扱いが違います。

 法定外普通税だから、基本的には福島と川内は何をやっても自由なんですよね。しかし、自由にしては、ちょっととぼけておりはせぬかと言いたいわけでしょう、使い方としては。それは、おっしゃる意味はわからぬわけじゃないんですが、法定外のこの種の話は、基本的には、川内市議会なり鹿児島県議会というものが決めて、それでやってくる、今言われたように、地方の自主権というのに基づいて。こっちは最大限尊重すると言わざるを得ぬ立場にいるのが総務省ですから、そういうことになるんだと思いますけれども、やはり、納税者として不満があるという点は、これは確かにいろいろ今後とも出てくるんだと思うんです。

 今、核燃料税を例に引かれたんですが、核燃料税自体で全部で約三百、二百九十億ぐらいだと思いますので、そういった意味で、電源開発促進税の方は三千六百六十三億ですから、ちょっとけたが一けた違うところではあるんですが、今心配しておられるのは、この例を引かれましたけれども、会社というものをねらい撃ちにしておりませんか、取りやすいところから取っているんじゃないかというところが御懸念のところなんだと思うんですね。

 最近も、山梨県の水を使うものは金を取るというわけです。山梨県、ほかに水を使っているのはいっぱいいるじゃないですかと言うと、いや、ミネラルウオーターを使っているものからだけ税金を取るというわけです。山梨と名前が上にくっついているのはけしからぬみたいな話で、それはちょっとおかしいんじゃないですかと言われたんですけれども、そういう話がちらほら聞こえてくるんですけれども、何となく、山梨県にいて山梨の水を多分一番使っているのは、ミネラルウオーターを売っている人よりは、むしろ、その水をITに使ったり、ICに使ったりしている人の方がよっぽど使っているんじゃないかとは思いますけれども、そっちはどれぐらい使っているかわからぬから、わかりにくいから取らない。ボトル一個で幾らというのがわかりやすいからこっちから取るんだというふうに、私らから見るとそういうぐあいに見えますので、ちょっと待った方がいいんじゃないですかと正直思っていますよ、おなかの中では。おなかの中では思っているが、ここで言っては同じことですけれども。

 基本的には、何となく取りやすいところから取るというのは、ちょっと安易過ぎないかという点は確かにおっしゃるとおりなんで、ただ、この三条件のほかに、直ちに、今すぐ新しいこのルールをつくれと言われると、今それを考えているかといえば、今のこの段階で考えているわけではありません。

松野(頼)委員 確かに、電源立地地域は住民の負担がある、これはわかります。ですから、そのために電特というものをつくって地域補助金というものを出しているわけです。

 ただ、今の話でありますけれども、その上にまた、当然、大臣がおっしゃるように、法定外普通税ですから何に使ってもいいんです。ただし、さっき言ったように、今回も税制改正をやっているわけですから、地方税法を改正して、その七百三十三条、普通税であれば六百七十一条ですか、これの不同意要件をもっと明確にすればよかったじゃないですか。浅く広い税にするとか、受益と負担の関係がちゃんと合っているとか。細かく書くことはないんですよ、税の基本的な理念、ルールをきちっと法の中に書き込んでおけば、本来、こういうことを書き込まなくても、そんなことは起こらないだろうなという当時の想定だったのかもしれませんけれども、豊島区にしてもそうですし、非常に想定外のことが今起こってきている、そういう中で法改正を今回もしているわけですから、なぜその法文を改正しなかったんですかということを申し上げているんです。

 いずれにしても、大臣とは非常に私はやりづらいんです。思いは多分一緒なんだ、よくおわかりなんだと思いますし、経済の観念というものを、税のあり方というものをきっとよくおわかりだと私は思っています。ですから、非常に大臣とはやりづらいんですけれども、そういう中で、しっかりと課税というものの自律性だとか、公平性だとか、そういうものを、もう一度大臣の感性を思い切り発揮をして、思いを出していただいて、そしていい税をつくっていただきたい。このことを強くお願い申し上げまして、私もあと十分ありますけれども、もう夜が遅いですから、これで終わります。

実川委員長 次に、稲見哲男君。

稲見委員 四十五分、質問時間をいただきました。そもそも論から始めようと思ったんですが、安住、松野両理事からも同様の発言がありましたし、どうも、そこから始めますと、また全く質問と無関係なやじを受けそうなので、通告しております分、二問ほど割愛をいたします。

 ただ、感想としては、私、まだ民主党の活動に専念をしておったころですけれども、九七年のあの九兆二千億円の負担増、先行して特別減税をしていて、消費税が上がる時期についても予告をされていて、それと社会保険料の一部負担の増というところで、あれだけ上向いていた景気ががくっと冷え込んでしまった。確かに、本会議等でも、金融危機の問題、今はそうじゃないんだというふうなことを言われますけれども、個人消費としては非常に冷え込んだというふうな点、それから、先ほどもありましたけれども、恒久的減税というぶれ、ちゅうちょというところで参議院選挙に自民党が敗北をした、そういう点を非常に鮮明に覚えております。

 この定率減税がそういうことにならないことを何とか祈りながら、各論のところで少し御質問をしたいというふうに思います。

 まず、個人住民税の定率減税については、十八年度、しかも、賦課期日としては十八年の六月からですよね、まだあと一年三カ月ほどある。十八年度というのは、一方で、所得譲与税の問題、税源移譲予定特例交付金の問題、これを廃止して、個人住民税の比例税率化と所得税法の改正、こういうものを税法改正として行っていくんだ、こういうふうになっております。

 先ほど出ましたが、なぜこの予算国会で改正議論が必要なのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

麻生国務大臣 先ほど安住先生、松野先生、御同様の趣旨でありましたし、予算委員会でもほぼ似たような御質問があったんだと記憶しますけれども、この地方税法の改正案というのは、稲見先生、毎年やるわけじゃありませんけれども、地方税法の改正をやる年に当たりましては、施行日の異なるものというのが毎回幾つかあるんですけれども、そういったものはこれまで通例として一体化してやらせていただいてきたというのが経緯であります。

 先ほど安住先生にも御答弁申し上げましたけれども、こういった形でこれまでも国会で審議されてきた経緯もありますので、おっしゃるとおり、確かに、まだ一年待てばいいじゃないか、何も潜り込ませて、甚だ見識はいかがなものかという御指摘があっておりましたけれども、政府税制調査会やら、また経済財政諮問会議等々においてこの種の話がこれまでも出てきて、あるべき税制の形に向かってということで、一連の税制改正の一つとして位置づけられておりますものですから、ぜひ今回も一緒に御審議をいただきたいというお願いをさせていただいているという経緯であります。

稲見委員 私も税の実務をやっていたことがあるんですが、例えば、基礎控除を一万円上げるというときも、初年度、七千五百円上がるというようなことをよく経験したんですよ。四月からの実施だから四分の三を上げて、つまりは、三月までの国会で税法改正をして四月から実施をする、したがって七千五百円だということがあったわけですね。それからいうと、毎年毎年、税法改正はこういう形にしてきていますということはありますけれども、私の経験からいったら、余りにも早いんじゃないかという気はいたします。

 それから、これは二分の一の定率減税の縮減ですが、場合によっては、十八年度はそのまま二分の一でいって、十九年度の税源移譲の本番のときに、二分の一の定率減税を持ったまま税法改正をする、こういうことはあり得るんでしょうか。

麻生国務大臣 それも先ほど、そのときの判断によると安住先生のときだったかに御答弁をさせていただいたところなんですが、正直言って、稲見先生、今の段階であり得るという可能性は僕は十分にあると思います、正直なところ。ただ、そのときの景気判断がどうなるかというのが、何とも今の状況では申し上げられませんので、今の段階では、あり得るとも、そのままやめて全然別のものでやりますということになるのか、ちょっと正直、来年の景気判断というものを判断するときに一緒にさせていただくということになる。

 そのときは、基準は何だと先ほど松野先生が言われたから、二%というのが一つの目安になり得るであろうとは申し上げましたけれども、そのときの状況で、また同じように半分だけやるとか、四分の一やるとか、四分の三になるとか、いろいろな表現になり得る可能性はあると思いますので、そこのところは今、きちんとこれでフィックス、固定的に考えているわけではないというところであります。

稲見委員 なぜそのことを改めて聞いたかというと、先ほどの、二分の一実施が平成十八年六月だということもあるんですが、十五日の本会議とか二十八日の予算委員会なんかでずっと聞いておりますと、確かに景気の問題もおっしゃるんですよ。しかし、必ずそこへついてくるのは、所得税から個人住民税への税源移譲、平成十八年度税制改正との関連も含めてこういうふうにしたんだということが強調されるわけですよ。そうすると、まさに地方分権改革としての税源移譲と、それに全く別のこの定率減税の問題がどこかでミックスされてしまっているんじゃないか、本末転倒じゃないかという気持ちが非常にしております。

 端的に言うと、透けて見えるのは、ことし二分の一を縮減する、来年もう一度二分の一を縮減する、そして所得譲与税から税源を移譲した十九年の四月からは、定率減税という不確定要素をなしにして三兆円の税源移譲をする、こういうふうな階段がもうでき上がっているんじゃないか、うがって見れば。そういうふうに考えるわけです。その点、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 そこまで知恵が回った者がいるかなと今思いながら、さすが大阪市なんて言ったら皮肉に聞こえるかもしれませんけれども、そこまでちょっと、稲見先生、考えていないと思いますよ、正直なところ。

 今の状況でいきますと、一番みんな心配しているのは、これはやるけれども、景気は本当に予測どおりになるかなというのが多分一番の関心事であります。他の税法とは基本的には、何となく一緒に話をみんなされますので、聞いていて、正直、あれは本来別の話ですから、一緒に発言されると話がこんがらがってよろしくないなと私自身そう思って聞いておりましたから、本来はこれは全く別のものというように考えなきゃいかぬものだと思っております。

稲見委員 今申し上げたのは、単なる私の頭の中での妄想ではないんですよ。税源移譲に当たって、先ほど御説明もありましたけれども、所得税、個人住民税の税率ブラケットもありますよね、そこにどれだけの人がいるか。そういうふうになってくると、定率減税という不確定要素を含めて、住民税のふえた分を所得税どう減らすかという制度設計が非常に難しいというのが、これは実務的にも言われているわけです。そういうところへもってきて、もうどんどんと二年間でこの定率減税をやめてしまうということがあるんじゃないかというふうなことを考えたということであります。

 次に、資料をお配りしておりますけれども、一〇%の比例税率による偏在の影響ということを少しお聞きしたいと思います。

 二枚の資料をお配りしておりますが、これは、昨年六月二十五日の官報速報。それは、実は、都道府県と市町村、そして合計額、こういう三段になっておった資料を、自治総研の高木健二氏が、二〇〇一年のそれぞれの決算に従って、都道府県、政令市、中核市、特例市、その他の市、そして町村、こういうふうに割り振ってみた、こういうふうな表であります。数字が並んでおりまして、さらにそれを、むしろわかりやすいように棒グラフにしております。

 この資料、どうですか。お役人の方で結構ですが、基本的にこういう予想値になるというふうに考えておられますでしょうか。

麻生国務大臣 後で板倉の方から答弁させますが、これは、多分、総務省の資料じゃないんだと思うんです。

 この一番右側の下の隅の三兆、二兆九千、この三兆を町村と都市とで、従来の比例配分で割った数字がこれという資料ですね。ちょっと今、初めて見ましたのであれなんですけれども、評価しにくいので、一つの傾向を示しているんではないかと思いますけれども、細目については板倉の方から答弁させます。

板倉政府参考人 これは、今おっしゃいましたように、官庁速報に報道された資料だと思います。

 昨年のいわゆる骨太方針二〇〇四がまとまりました時点で、地方団体の方から、税源移譲三兆円を前提とした場合、一体どういうことになるんだろうかというような問い合わせがいっぱい参りましたので、考え方としてはこういうことなので、もし試算をされるのであれば、こういうことでやってみたら大体のところは出るかもしれませんねということで、私どもの方から申し上げました。

 それに従って各県の方で、例えば一番問題は、県と市町村の割合がどうなるか、これは全くわかりませんので、それは一定の、完全に前提を置かなきゃできませんけれども、そういういろいろな前提を置かれて、それぞれのところで計算されたのをある県でおまとめになったのを、どうもこの官庁速報、時事通信の方で報道されたというような経緯だと聞いております。

 そういうことでありますので、県、市の割合とか何かはこれからの話になりますので、全く、これでいいというふうには言えませんけれども、先ほど大臣から申しましたとおり、一つの傾向をあらわしているのかなと。例えば、東京都を見ますと、三千億強でございますから大体一割ぐらいになっておりますので、何となく、全体としてこういうような傾向になるよというような感じは示しているのではないかというふうに思っております。

稲見委員 これは前提がありまして、一〇%のフラット税率を、都道府県三、市町村七、こういうふうに分けてみた想定ですから、それは二対八になるのかどうなるのか、その辺も前提条件としては決まっていない。ただ、三と七にした場合に、こういう数値想定になるんじゃないかというふうに思います。

 その場合、次の棒グラフなんかを見ていただいたら非常に端的なんですが、政令市があるところ、いわゆる大都市を含んだところが非常に大きな税源移譲になっております。東京三千百億、神奈川二千四百億、大阪千九百億、愛知が千八百億、埼玉千八百、千葉が千五百億、兵庫千二百億、北海道千二百億、福岡一千億、こういうふうなことで、人口も多いということでありますが、果たしてこういうふうに税源移譲がされていくということでいいのかなというふうな気持ちがあります。

 確かに、一三%のところは一〇%になりますので、高額所得者が集中をしている大都市で偏在率が少し減るというふうなことが考えられますけれども、こういうことが行われていったときに、ことしの税法改正で法人事業税の分割基準の見直し、これが一つ行われる、まだ可決されていませんから行われる予定、それに加えて、交付税の問題、あるいは地方譲与税全体の問題、税源配分、税源の調整に相当な知恵を出していかなければならないのではないかというふうな気がしているわけですが、その点、今の段階でどういうふうなことをお考えでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のように、これは人口の頭割りでやるとどうしてもこういうことになるということ、これは人口比率とほぼ同じことになりますので、御指摘の点は正しいんだとは思いますが、それをどうやってある程度是正するかというところが、例の一律一〇%のフラット化が一つ。もう一つ、言われたように、法人事業税の分割の基準を、人数じゃなくて事業所割りで割る、あれがもう一つのことだと思っておりますが、それでもまだかなり差が出てくるところは間違いないと思いますので、その点につきましては、基本的には、従来どおり交付税、特別交付税、そういったような形で、平準化していく、いろいろ努力をしていく必要があろうと存じます。

稲見委員 麻生大臣、これは人口割りとおっしゃいましたけれども、そうじゃなくて、調定、現在の調定からそれを移していけばどうなるかということなので、むしろフラット化をしてやったときに、人口割りどおりなのか、あるいはもう少し偏在率が少なくなっていくのかという問題が、これは制度設計の中でこれから考えられていかなければならぬのじゃないかなというふうに思っております。

 それで、交付税の話が出ましたが、三兆円規模の税源が地方税に行くというふうになりますと、所得税が三兆円減る。そうすると、三二%交付税になっていますが、これが大体九千六百億円というんですから、約一兆円交付税としては減ってくるというふうなことだと思います。

 電卓を使った単純な計算で、所得税が約十四兆円とすると、交付税は四・四八兆円。それが、所得税が十一兆円になる、三兆円減るということで計算しますと、この四・四八兆を確保するためには、法定割合を大体四割、四〇%ぐらいにしないとその分の交付税が減ってくる、約一兆円の交付税が減ってくる、こういうふうなことであります。所得税だけでやるのかどうかというのもありますから、国税五税、三十七兆三千億円から逆算をしますと、大体全体で二・八ポイントぐらい交付税率をふやさないとそこが確保できない、こういうふうなことになっております。

 これは税源移譲後の問題でありますけれども、交付税をきっちりと確保していくために、国税五税の割合をどういうふうに変えていくのか、御認識があればお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、確かに三兆円を移すとこういうことになる。おっしゃるとおりであって、約九千六百億円、三二%でやりますとそういう数字になるんだ、私どももそう思っておりますが、この補てんの措置につきましては、稲見先生、当面は、例の国と地方との折半のルールというのがありますので、あのルールに基づいて、私どもとしてはこれはきちんと埋めるということになろう。これは、十七年、十八年に関しては、基本的にはそういうことで、地財計画の中できちんと対応させていただくということになります。

 それ以降どうするかというところが稲見先生の御質問のところなんだと存じますけれども、やはり、法定率の変更というのは、今二・八と計算していただきましたけれども、たばこ、酒、法人税、消費税、いろいろそれぞれ率が違うところなんですけれども、いずれにいたしましても、この法定率の見直しというのは、これは平成十九年度以降、いわゆる中期的には、この問題に手をつけていくということになるんだ、私どももそう思っております。

稲見委員 すべて十九年というところがキーワードになるんですよね。例えば、本年度、補助金改革をしていく。そして、交付税、税源移譲、当面は所得譲与税ということですが、平成十七、十八年度の補助負担金廃止に伴っては、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する、こういう形で去年の今ごろ議論をしていたことからいいますと、地方六団体とのいろいろな意見交換も含めて十八年度までは確保された。中期財政プランなんかも含めて、では、十九年からはばさっと発想を変えていきましょう、こういうふうに聞こえて仕方ないんですよね。

 交付税も、確かに今みたいにちんまい話で、法定の率を変えなあかん、それは交付税そのものをどう見ていくのかということの大きな中では埋め込まれてしまう問題なんですよね。しかも、これから地方としても、財政再建を、どんどん健全化していかなきゃならないということになると、そこで十九年から、どういうふうな分権改革、そして財源の確保、そして仕事をきっちりやっていくための体制づくりというのをやっていくか、これが第二期になるわけですけれども、さっきの定率減税も含めて、何かばさっといってしまうのではないか、そんな感じが私はいたします。

 その点、もし何かコメントがあればお願いをしたいと思います。

麻生国務大臣 ばさっという定義がなかなか難しいので、稲見先生の考えているばさっというのはどの程度か、私もちょっと理解できているわけではないんですが、基本的には、やはり稲見先生、これは、十七、十八年度までに関しては、昨年の三位一体の改革で、ここまでは地方に対して、少なくとも地方から案をもらったんだから、それにこたえるためには、三兆円、地方の方からいわゆる補助金というのを返してもらったのに対応して、返したはいいけれども何も来なかったということになると、これは地方としては話が違うではないかということになって、昨年は一兆出しましたけれども、お返しは四千しか来ませんでしたね、今回三兆出したら、お返しは一兆ですかというようなことになったら、とてもじゃないけれども地方との信頼はなくなりますから、この種の話は内閣としてはすべきではない。

 だから、三位一体といったって、三すくみが実態なんだから、黙って地方に対する税源移譲を最初にしてください、それが最初ですということで、総理の方から踏み込んで、ああいった三兆の税源移譲というのが最初に出て、それなら、初めてということで乗ってきたというので、十八年度まではあの約束どおりに実行しなければ、これは地方との間で約束したんですから、その信頼がなくなるのはいかがなものかというので、どうしても十八年度まではということになる。

 これが、十九年度、十九年度と言われますけれども、それは、どうしても十八年度まではそれでやらないかぬという約束なんだと思う。十九年度以降に関しては、例の、御党の場合は二十兆の補助金のうち十何兆円か出ていましたし、地方公共団体の方も八兆だか九兆だか出ていましたけれども、そういった内容について、補助金の削減等々を含めまして、さらに地方に対して、権限の移譲とか規制の緩和とか、そういったものをやっていかないかぬことになるんだと思うんです。

 それに対して、また同じように、今以上に町村合併が進んで、仮に二千を切るようなことになったとしても、それでも僕は、各町村によって、格差が全部なくなるということはあり得ぬと思うんですね。そうすると、その差を何で埋めるかといえば、やはり地方交付税、特別交付税、そういったものである程度是正する、調整するという機能、この機能は断固外せないと思っております。

 そういった意味では、今言われましたように、ばさっとやられるというのが、交付税なんかやらなくてもいいぐらいになるかと言われれば、それはとても一発でそこまではいきませんから、いろいろな形で、法定率の変更とか、ほかにも税率の変更等々、いろいろ考えないかぬところだと思っておりますれども、いずれにしても、国税と地方税の比率が一対一になるようにさらに近づけていく。今回で大分、五七、八対四二、三まではいったと思いますので、さらにそれを進めて、五対五まで持っていけるようにというようなことは十九年度以降も継続してやっていくということなんであって、それがばさっというような、何か特別大きなものがぼんと出てくるというのが今の段階から見えているわけではございません。

稲見委員 平成十九年、二〇〇七年というのは、私どものだんだん任期が迫ってくるということでありまして、恐らくそれまでには総選挙ということであれば、地方分権改革二期改革は民主党の手でさせていただく、こういうことで、きょうは質問を終わらせていただきたいと思います。

実川委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 昨日、総理質問のときに、ちょうど、高齢者の非課税措置を廃止すると課税対象になる高齢者の中で負担が雪だるま式にふえていくんじゃないかと総理に質問していたら、麻生大臣の方が、雪だるま式と言われるほどのものではないという答弁でありました。

 しかし、実際は、いろいろな制度が皆重なってきますから本当は雪だるま式になるんですが、増税が、制度としてどんなところにどんな影響が出てくるというふうに大臣はお考えか、この点を最初に一点伺っておきます。

麻生国務大臣 きのう、総理出席のときの話で雪だるまが出ましたので、これは友釣りぐらいのところで雪だるまはなかろうという感じが正直、私の形容詞からいくとそっちになるんですが、国民健康保険料とか介護保険料等々に影響が出るということを多分言っておられるんだと思いますので、私どももそれは承知をいたしております。

 これは確かにそういうことになるので、今私どもの調べた範囲では、国民健康保険料に個人住民税を用いております大都市というのは、全国で四十九団体ございます。区、市とか、政令都市なんか入れて四十九団体ございます。こういった大都市を中心とした、まあ大都市ということになるか、区でもありますけれども、そういったところでは被保険者というものに、大都市を中心とした一部の区と市におきましては、国民健康保険料に影響が出るということなんだと思います。同様に、介護保険料にも影響が出るということになっておるんです。

 そういったことを具体的に個々に言うのは、なかなか算出の方法が難しいんですが、税額の何倍というような設定になっている市町村があるということは確かですので、その意味においては、それぞれの制度を運用される市と区、そういったところにおいてこれは検討していただかないといかぬところなんだと思いますので、一概にこれというようなことを申し述べることはなかなかできないんだと存じます。

吉井委員 国保と介護でもそうですが、総務省が担当していらっしゃる各自治体にはいろいろな制度があって、大体、非課税か課税かによって随分制度の運用が変わってきます。

 それで、友釣りどころの話じゃなくて、これはやはり雪だるま式になりますので、これはそういうものだということをよく踏まえて、総理の方は、やはり何らかの対策を考えないかぬというお話ですが、これは本当に、その考えなしにこれを強行するということはとんでもないことになってきます。これは考えても考えようがない影響が出るものですから、まず、そもそも、こういう非課税措置の廃止というのは考えるべきじゃないということを申し上げて、きょうは、耐震問題、地震対策です。

 この点では、中央防災会議専門調査会が、首都直下型地震災害で死者一万三千人、避難生活者は七百万人、経済的損失は百十二兆円に上るとの想定をまとめております。これは、いろいろな試算の仕方とか、またはされる方によってその違いはあるかもしれませんが、これに対して大臣は、首都直下型の経済被害想定に関連して、記者会見などで発言されたと伺っておりますが、どういうことを指摘といいますか発言しておられるかを最初に伺っておきます。

麻生国務大臣 あの出された資料をよく見られたんだと存じますが、この種の話は前提がいっぱいありまして、夕方六時とか、風が風速十五メーターとか、極めて最悪な事態というのを前提にして、百十二兆でしたか、ああいった額になっているというのが大前提なんだと思います。神戸のときはたまたま午前六時前だったとか、いろいろな条件が今回のときと大分違っておりますので、何となく最悪なことを考えて私どもは対策を考えておかねばならぬと思っております。

 いずれにしても、あの例を見てもわかりますように、これは、火災で亡くなる人より圧死して亡くなる数の方が圧倒的に多かったというのはあの神戸の例でもありますので、耐震構造というものに関しましては、これは村田大臣のところが主に担当しておられるんだと思いますが、私どもとしては、こういったことに関しましてはいろいろ考えておかねばならぬということで、今大体、逃げ込むべき消防署とか、また守るべき消防署とか、逃げ込まないかぬ予定の学校なんかというのは、耐震構造はどれくらい完全なものができているかといえば、約五割ぐらいしかできておらぬというようなところでもありますので、こういったところのきちんとした対応をしていかねばならぬと思っております。

 いずれにしても、何十年かに一遍ということで、あと三十年で起きる確率七割とかいう数字だったと記憶していますが、そういったものに対応して、私どもとしては、関東大震災以来、常にこういった話は我々の住んでおりますこの地域においては避けて通れぬところでもあろうと思いますので、いろいろなことを考えて、今、技術の進歩のおかげで耐震構造というのも随分昔とは変わっておりますので、そういったものを含めてきちんと対応していかねばならぬものだと思っております。

吉井委員 この間の会見でも今の趣旨で言っておられて、政府として早急に耐震強化に取り組む必要がある、これはまことに当然の話だと私も思っております。

 文部科学省のデータを見てみますと、公立小中学校の耐震改修率四九・一%。だから、五〇・九%、これがまだ改修をこれから要するところなんですね。現在の新耐震基準で建築されていない八一年以前の建物は全体の二〇・八%ということですから、前年の数字が一八・三ですから、一年間に大体二・五%ずつ進捗していく。このペースでいきますと二十年かかるんですね。

 大臣も言っておられるように、実際に震災のときに避難する場所自身が壊れたり燃えたりしておったんじゃ大変だから、そこに全力をというお話ですから、今そのことに取り組まなきゃならぬと思うときであります。

 この点では、この問題も重要なんですが、一般住宅の耐震改修の問題に限って、学校はちょっとおいておきまして伺いたいと思うんですが、阪神大震災では、死者の八八%が家屋、家具類の倒壊による圧迫死と思われるものだと言われております。新潟中越地震でも、家屋の倒壊で大きな被害が出ました。

 揺れによる死者の数というのは、首都直下型地震で約三千三百人という想定がありますが、実は、東海地震はその二倍の六千七百人、それから南海・東南海では六千六百人、やはり大体首都直下型の二倍ぐらい想定されているんですね。ですから、地震による被害、特に死亡者を少なくするという点では揺れによる死者の数を少なくするということは特別重要なことだと思っているんです。

 これは政府として、耐震化の取り組みの中で、一つは補助の制度もあれば、あるいは融資の制度もあれば、税の減免制度とか、いろいろな誘導的な手法も使って、国を挙げて耐震化を進めるということでは、全力を挙げて取り組む必要があると思うんです。この点についての大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 阪神・淡路大震災以降、いろいろな方々がこの種の話を熱心にされておられるのは、私どもよく承知をしているところです。

 今言われた中で、吉井先生、難しいのは、個人の住宅に税ということになりますと、いろいろな形で、それは個人の所有物に対して補助金みたいな話になるので、これは非常に話が込み入るというのが昔からよく言われている話に対して、おまえ、田畑だって個人所有なのにちゃんと補助しているじゃないか、そっちはどうしたという話やら何やら、これは昔からいろいろ御議論の分かれているところなんで。いずれにしても、平成十七年において、例の補助金の整理で補助金制度が拡充されておりますが、やはりそのときも、税に関しては見送られたという経緯があるんです。

 私どもは、一番行ってみてわかるのは、あの阪神・淡路のときも、住宅の場合は、古い立派な、かわらの立派な家は全部いかれた。何となく、そうじゃない、屋根の軽そうなところはみんな残ったという例がよく引かれますけれども、家の耐震構造もさることながら、住んでおられる方々の意識の問題というのは、ちょっとコーナーを打つだけ、角を打つだけで全く違ったものになるとか、たんすが全く倒れないように、ひっかけるだけで全く変わったとか、いろいろな話があるので、そんなに金のかかる話ばかりでもないんですが、いろいろな意味で、意識が、もう全く私は関係ないと思っている人が一番亡くなっておられるのが正直な実感なんです。

 一番詳しいのは、多分、国会議員でも、あのとき現場にいた参議院の鴻池祥肇、まさに九死に一生を得て生き延びた運のいい人の一人なんですけれども、あの人の話を聞いていても、見ている目の前で人がばたばた圧死しておるわけです。

 そういったところをくぐってきた経験からいきますと、やはり、たまたまちょっととめてあっただけで自分は助かったとか、そういったのがありますので、私どもは、意識をきちんとしてもらうというのを、これはぜひ、啓発、啓蒙活動というのをやらないかぬのと同時に、やはり補助金というのは、いろいろな形、ちょっとしたことで済む話でもありますので、これは主に消防の話だったり防災の話だったり、いろいろするんですけれども、そういったところは今後とも積極的にやっていかねばならぬものだと思っております。

吉井委員 個人財産、私有財産についてのお話もありましたけれども、しかし、いろいろな制度はやはりあるわけで、例えば、公害対策、環境対策ということですと、自動車についても、これは個人の財産なんですが、税の減免という形も出てくるし、それから、太陽光発電施設なんかですと、個人の住宅につける、まさに個人の財産なんですが、普及のための補助制度というのもつくられてきました。ですから、個人の私有財産だから云々という話は、これはもうそれを突破して、本当に、政府としても、耐震改修をやはり進めていくための特別の手だてが必要だと思うんです。

 国交省に伺っておきますが、耐震改修促進法をつくって促進を図っているんですが、進展が余り芳しくないんですね。最近の大規模地震というのは、阪神にしても鳥取にしても宮城にしても、今度の中越とずっと続いてきているんですが、大規模地震の起きた地域というのは、歴史地震で被害のあった、まあ東海なんかもそうなんですが、必ずしもそういうところでないところで、想定地域でないところでも大きな地震が起こってきたわけです。ですから、いつ、どこで起こっても不思議じゃない。

 それだけに、政府もまあいろいろ対策を打とうとしているんですが、進んでいないということがありますから、やはり、国交省は、この間の新聞を見ていましても、耐震化率を九〇%にするということが出ていましたが、国庫補助制度の見直しも検討しているという話なんですね。だから、こうしたことを打ち出してくる背景、要因はどこにあるのかということを最初に国交省に伺っておきたいと思うんです。

山本政府参考人 我が国の住宅総数、人が住んでおります住宅は四千七百万戸ございまして、そのうち、建築基準法に基づく新しい耐震基準を満たしていないというふうに推計されるものが千百五十万戸、つまり、人が住んでいる住宅の四分の一は耐震性が不十分だというのが現状でございます。

 ところで、今御指摘がありました、阪神とか中越のような直下型の地震は、日本列島でいつ起こってもおかしくないわけでございます。そういう意味で、国民の皆様の命を守るという観点から、住宅の耐震化を全力を挙げて進めなきゃいかぬというのが国土交通省の認識でございます。

 国土交通省としましては、これを具体的に進めるために、耐震化の目標を定める。今、九〇%というのが報道されましたので引用されましたけれども、これは中央防災会議で、直下型ではなくて海溝型の大規模地震、東海とか東南海・南海を念頭に、減災目標を具体的に定めよう、例えば、死者を半分にしよう、十年で予想される死者を半分にするというようなことを考えておられまして、死者を半分にするためには、今七五%の耐震化率を幾らにすれば死者を半分にできるかという議論をしまして、それはちょうど九〇%でございます。もし耐震化率を七五から九〇に上げますと、死者が半分になる。ですから、これは一つのメルクマールで、決めているわけではございません。

 いずれにしても、耐震化のために、税制とか補助制度とか融資とか、御指摘になったような政策手段も総力を挙げて取り組まなきゃいかぬ。それも、国だけではなくて、地域とか公共団体、なかんずく市町村、前に立ってやっていただくことが必要だというので、大臣は、住宅・建築物の地震防災会議を先月発足させまして、できるだけ早く結論を出して取り組んでまいるという考えでございます。

吉井委員 今のお話で、認識はいいんですよ、目標もまあいいんですよ、やろうと。しかし、現実を見ると、国交省のアンケートで調べた結果によれば、耐震改修実績は、二〇〇四年三月三十一日現在、全国で約三千五百戸なんですね。さっき、一千百五十万戸必要と言っておられたんですが、実績としてはこれぐらいで、この数字自体も大きくないんですが、国庫補助で行ったものはわずか四十戸なんです。国庫補助で四十戸、なぜこんなに少ないのか。それから、戸建て住宅に至っては国庫補助ゼロですが、なぜなのか、国交省に伺っておきます。

山本政府参考人 一番の問題意識は、やはり補助制度ができたのがごく最近であるということと、これは地方公共団体が耐震診断をして、ハザードマップみたいなものをつくって、みんなに問題意識を持ってもらった上で耐震診断をする。問題があるものについて改修していただき、これを補助で助成するという構造になっているんですが、耐震診断については、かなり普遍的に補助制度を用意しております。

 したがって、これについては、かなりのオーダーの補助実績があるんですが、実は、先ほど総務大臣もお話しになりましたように、補助制度については、国の補助金としての非常に強い制約がありまして、今あります制約は、いざ地震が起きて、建物が倒壊をして、道路が閉塞状態になる、これを警戒しなきゃいかぬのに予算が要るんで、それならば、あらかじめ、倒れかからないように改修に助成していいという非常に強い制約がありますので、なかなか使えなかったということがありますが、今般、公営住宅建設費補助金を交付金にいたしまして地域住宅交付金になりましたので、これまで公共団体が地方単独事業でやっておられました改修費補助を、交付金で一般的に応援することになりましたので、ぜひこれを使って前に進めてまいりたいと思っております。

吉井委員 これは住宅の耐震化に向けて国や地方公共団体がやるべきことという、複数回答を求めた昨年八月のアンケート調査もありますが、今多くの国民の皆さんが求めているのは、耐震改修費用の負担、これは補助とか低利融資とか税金の減免ですね、一番たくさんの方が、六三・八%の方が求めているんです。

 だから、補助制度についての議論だとかいろいろな話もありましたけれども、やはり一番大事なことは国民が本当に求めているところにこたえることをやっていかないことにはうまくいかない。

 その点で、従来の制度の延長だけでは、今後十年程度で耐震化率を九割にするなどということにはなかなかいかない。だから、やはり、震災被害で住宅再建に自治体が助成するというのは自治体では当たり前の話になっているんですが、耐震化の促進のために新たな制度の導入とか、これまでの制度の抜本的見直しが必要だと思うんです。

 そこで大臣に、今度の国税の改正では耐震基準を満たす良質な中古住宅を住宅ローン減税の対象に追加する内容などもありますが、特に固定資産税などで、住みかえてとか新しく買っての話じゃなくて、やはり住んでいる家を耐震化工事する場合についても、固定資産税の面など、そういう税の面からも耐震改修を本当に促進していくという対策、これに大臣には意欲的に取り組んでもらいたいと思うんですが、この点についての大臣のお考えを伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 今の国土交通省の話にもあっておりましたように、補助金を交付金化ということで使いやすくする方向でいくというのは今一定の進歩なんだと思うんですけれども、地方税を軽減するという話になると、吉井先生、これはいろいろ出てくる分野がえらい広いことになりますので、補助金の方が適していやせぬかなという感じはしますけれども、いずれにいたしても検討はさせていただきます。

吉井委員 これは固定資産税についても、耐震改修すると固定資産の価値が上がるということで上がったりする場合があるんですね。それはやはり耐震化を抑制する方に働きますから、今検討するということですが、ぜひ検討していただいて、耐震化が進むように税の面からもよく取り組んでいただきたいと申し上げまして、時間が参りましたので、終わります。

実川委員長 次回は、来る八日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時十三分散会


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