衆議院

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第11号 平成17年3月17日(木曜日)

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平成十七年三月十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 実川 幸夫君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 野田 聖子君 理事 森山  裕君

   理事 安住  淳君 理事 大出  彰君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      佐田玄一郎君    自見庄三郎君

      柴山 昌彦君    田中 英夫君

      谷  公一君    谷本 龍哉君

      西田  猛君    平井 卓也君

      増原 義剛君    松本  純君

      三ッ矢憲生君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    稲見 哲男君

      菊田まきこ君    楠田 大蔵君

      小宮山泰子君    田嶋  要君

      高井 美穂君    寺田  学君

      西村智奈美君    松崎 公昭君

      山花 郁夫君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   総務大臣政務官      松本  純君

   総務大臣政務官      山本  保君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  武智 健二君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     柴山 昌彦君

  中村 哲治君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     萩生田光一君

  菊田まきこ君     中村 哲治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――

実川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、恩給法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長戸谷好秀君及び自治行政局長武智健二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 恩給法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 もう制度は随分経過をしておりますけれども、受給者の平均年齢も八十歳を超えているということでございますが、転給を除くと、今恩給の新規の請求件数というのはどれくらいになっているんでしょうか。また、今ごろと申しましょうか、随分たってから請求されてくる方の背景などについてお聞かせいただきたいと思います。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 新規請求件数でございますが、平成十五年度の数字を申し上げますと、全体で千二百件ございます。内訳は、旧軍人傷病恩給が約二百件、それから旧軍人の普通恩給が約百四十件、一時恩給が約六百二十件等、こういう数字でございます。

 どういう事情のもとにこういう請求がなされたかということでございますが、私どもで承知しているものを幾つか申し上げますと、かつて公務傷病で障害を受けたんですけれども、まだ恩給を受けることのできる障害の程度に達していなかったんだが、最近になってそれが増悪して重症になったので、これは恩給が受けられる障害の程度に達しているのではないかといって請求をいただくケース、あるいは、既に傷病恩給を受けているわけですが、もっと障害が悪くなったのではないかということで障害の程度を改定してほしいという請求ケースがございます。あるいは、法律そのものは御存じだったと思うんですけれども、現実に法律改正がいろいろ行われまして、恩給権が発生しているということをお知りにならずに、最近になってそういうことをお知りになって請求をいただいた、こういうケースもあるわけでございます。

 私どもとして、権利のある方から漏れなく請求が上がってくるように、これまでも広報とか県庁の窓口の相談とか私どもの相談とか、いろいろ対応に努めてきておるわけですが、こういうケースがあるということは、私どもも今後もまたあると考えておりますので、なお一層、広報や相談に努力してまいりたいと考えております。

山花委員 この改正案の内容の中で、恩給権者が失権事由に該当した場合、届け出義務及び罰則の廃止というものが盛り込まれております。これの背景として、住基ネットを利用して死亡確認ができるということがあるようですけれども、住基ネットには必ずしも参加していない自治体もあるはずですが、まず、その数はどれぐらいあるのかということについて、どのように把握されておりますでしょうか。

武智政府参考人 現在、住民基本台帳ネットワークに不参加または一部参加の市区町村は、福島県矢祭町、東京都国立市、東京都杉並区及び神奈川県横浜市の四団体であります。

山花委員 そういった団体については死亡確認が必ずしもとれない、把握できないことになろうかと思いますけれども、その自治体に住まわれている方の届け出義務というのもなくなるという理解でよろしいんですね。どうされるんでしょうか。

戸谷政府参考人 今回の恩給法の改正でございますが、恩給法上は住民基本台帳ネットワークシステム不参加団体に居住する受給者が死亡した場合についても、平成十七年度以降、罰則を伴う当該遺族に係る失権届け出義務は廃止されるということになります。

山花委員 恩給の受給者に対する受給権の調査について、住民票記載事項の市区町村長の証明にかえて、総務省の外郭団体であります財団法人地方自治情報センターが、指定情報処理機関として本人確認を定期的に行っているということでありますけれども、二〇〇三年四月十五日の当委員会で、この財団法人地方自治情報センターの役員が総務省OBが多いのではないかという指摘があって、当時の片山総務大臣も、旧自治省といいますか、今の総務省OBだというのは、これは常勤ですよ、非常勤は全部地方自治体のいろいろな関係の方ですから、その辺は今後検討の余地はあるかな、このように私も思っておりますと答弁をされているんですけれども、これについては今どのようになっているんでしょうか。

武智政府参考人 財団法人地方自治情報センターの役員は、理事長を含む理事が九名、監事が四名ということになっております。

 まず、理事についてでございますが、平成八年九月二十日の閣議決定によります、公益法人の設立許可及び指導監督基準というものがありますが、その基準におきましては、所管する官庁の出身者が占める割合は理事現在数の三分の一以下とするとされております。そして、現在、地方自治情報センターの理事のうち、この指導監督基準に該当する所管官庁出身者、すなわち総務省出身者でありますが、これは理事長及び理事二名の合計三名ということになっております。したがいまして、九名中三名ということでありますので、指導監督基準に従った運用がなされているというふうに理解をしております。

 また一方、常勤の監事につきましては、平成十六年四月一日より、地方自治情報センターの方におきまして同センター職員を採用し、これにつきましては改善は図られたというふうに承知をしております。

山花委員 改善が図られたということで、それはそれとして評価はいたしますが、ただ、その三割以下とするというのは、アッパーで三割以下ということであって、別にそこまでは当該役所のOBで占めていいですよということの趣旨ともちょっと違うと思いますので、その点は申し上げておきたいと思います。

 ところで、住基ネットの関係もあるんですけれども、住民基本台帳法というものによりますと、今、いわゆる基本四情報ですか、住所、氏名、生年月日、性別というものは原則として閲覧ができるということになっているわけであります。住民基本台帳法の第十一条ということになろうかと思います。原則として閲覧ができるといいますか、閲覧するのが請求権という形になっておりまして、不当な目的に使用されるおそれがあること、その他当該請求を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは、当該請求を拒むことが市町村はできるということになっておりまして、原則として閲覧ができる、例外的にだめだということになっているんです。

 そもそもこの四月から個人情報保護法が施行されるわけでありまして、こういった情報については、本来的には、逆に、閲覧はできないというのを原則にして、例えば調査の目的だとかそういった正当なときに閲覧ができるというふうに改めるのが本来的な姿ではないかと思いますけれども、この点について、何か対応をとられるつもりはあるのでしょうか。

武智政府参考人 ただいま先生御指摘されましたとおり、住民基本台帳の閲覧制度と申しますのは、昭和二十六年の住民登録法の時代、そして昭和四十二年の住民基本台帳法の制定以来設けられている制度でございまして、これは居住関係を公証する唯一の公簿といたしまして、行政機関や弁護士等の職務上の請求のほか、世論調査、学術調査、市場調査等に広く活用されているものであります。

 一方で、個人情報保護の観点から、これまで昭和六十年と平成十一年に住民基本台帳法の改正が行われまして、御指摘のとおり、閲覧の対象を氏名、性別、住所、生年月日のいわゆる四情報に限定をし、請求する場合には請求事由を明らかにし、不当な目的やそのおそれがある場合等に市区町村長はその請求を拒否できるというふうに改正をされてきたところであります。

 そして、この四月に個人情報保護法が全面施行されることになりましたので、これを踏まえまして、先般、請求事由の厳格な審査等、住民基本台帳事務の取り扱いに係る留意事項につきまして地方公共団体に通知をしたところでありまして、まずその趣旨を徹底していきたいというふうに考えているところであります。

山花委員 審査の厳格化であるとかあるいは留意事項についてということは、それはそれとして理解はいたします。

 ただ、これは恐らく当委員会の委員の方なんかでも、どこか知らないところからDMが来たとか、むしろそういう経験がない人の方が少ないのではないかと思います。私も小さい子供がいるものですから、幼児教育だとか、どこで調べたのだろうと思うぐらい、母親の名前と子供の名前と連名でDMが来たりするのです。

 今御答弁されたことはある意味限界があって、あるNPOの研究、実態の調査があるのですけれども、特定非営利法人情報公開クリアリングハウス、コンピュータ合理化研究会というところが、これはいろいろな自治体の担当者の方から聞いたりとか、そういったものなんですけれども、市場調査とかDMとかで大体七割を占めているということです。DMは営業関係ですね。その他が調査、あるいは公用、先ほどお話があった弁護士からの照会等なんでしょうけれども。

 ただ、この市場調査というのも、学術的な世論調査ということには限らないわけですし、また、それが結果的に、法律の建前としてそれをやってはいけないとかどうとかということではなくて、実態として、そこでとられた名簿でまたDMが発送されるだとか、そういうこともあり得ることだと思います。

 自治体なんかでも問題意識を持っているところは結構あって、特に、最近新聞などで報じられたのは、東京の多摩の地域で閲覧の手数料を上げることで抑制しようという動きが報じられておりますけれども、聞いてみますと、手数料が上がった段階では閲覧の件数というのは一回落ちるんだそうです。ただ、また結局もとに戻っていくということで、自治体の担当者の方なんかは、むしろ、高いコストを払って集めた名簿なんだからということで、これで元を回収しようというような動きになって、業者がかえって悪質化するのではないかという懸念を持っているということです。

 今御答弁されたのは、法律をいじらないでできることをやろうという話かと思いますけれども、本来的には、先ほど指摘をさせていただいたように、むしろ、閲覧が請求権ということになっていますから、これは自治体の担当者からすると、法律で権利になっているものですから、これは拒むわけにはなかなかいかない。本人確認をせいと言われても、これはうそをつかれてしまうと、とことん、裁判所じゃありませんから、証拠を持ってこいとか審査するというわけにもなかなかいかない。こういうことだそうですから、逆に、本来的には、この法律の原則と例外を改めるべきではないかと思います。

 具体的な例を一つ挙げて申し上げたいと思います。

 性同一性障害に関する特例法というものが、最近、議員立法の形でできました。当時、自民党側は南野知惠子さんが責任者ということだったと思いますし、民主党側は私が南野議員とやりとりをしてまとめていったという自負もあるのですが、そのときに大変多くの当事者の方からお話を伺うことがありました。

 性同一性障害というのは、身体的なものと精神の性とが合致しないケースでありまして、日本精神神経学会の中でも疾患の一つという形で、精神的な問題であるということで分類をされているものであります。しばしば性的な嗜好と誤解をされるケースがあるのですけれども、そういうものではないということであります。

 こういった方たちは大変苦労をされておりまして、例えば、その特例法ができましたから、最終的に、性適合手術を受けて一定の判定があれば、そして二十歳以上であれば、戸籍の変更が認められることになっております。この住民基本台帳法も戸籍と連動していますから、その判定を受けてそこまでいった人については当然性別の変更ということがなされるのですけれども、そこまでいかないで苦しんでおられる方たちはたくさんいるわけであります。当事者の団体の内部ですら、今施行されています法律については、いや、それは本当に救済されるのは一部の人たちだけだと。また、法律が衆議院で、法務委員会で通ったときの委員長からの発言ということで、今回のこの法律というのはいわば人権の問題としては第一歩なんだ、そういう発言をしていただきました。

 本当に苦しんでいる実態というのは、例えば、自分の身体的なものが、本当に心が受容していませんから、例えば、気持ちは男なんだけれども外貌が女だ、女性だという方なんかは、本当にお医者さんに行くのも嫌なわけです。つまり、見られますから。そういう自分を受容していないとか、私の知り合いの同一性障害の方のさらにお友達のケースなんですけれども、お医者さんに行くのもそういうことで嫌で嫌でしようがなくて、本当に体の調子が悪くて倒れて、病院に担ぎ込まれたら、もう末期のがんで、そのまま命を落としてしまった、そういうケースもあるわけです。

 また、病気のこともそうですが、就職に非常に困難を来しております。戸籍上といいましょうか、住民票もそうなんですけれども、その性別が外見と異なっておりますから、就職に行っても、何か変わったやつだということではねられてしまったりとか、これはいいとか悪いという話をしているのではありません、悪いことだとは思いますけれども、家が借りられない、賃借ができない。大体、不動産屋さんぐらいのところでは理解をしてくれる人もいて紹介してもらうんですけれども、実際大家さんと会うと、何か変なやつが住むのは困るということで断られる。変なやつという言い方は適切ではないですけれども、実態としてそういうことがあるということです。

 つらつらと申し上げてまいりましたけれども、こういう方たちは、住民基本台帳法によって閲覧されるということに、表現として少し大げさかもしれませんけれども、住民票が閲覧されるということに、すごく恐怖におののいていると申しましょうか、例えば、そうやって本当に理解ある店長さんなりお店の方にわかった上で雇われている人はそれはいいんでしょうけれども、そうじゃなくて、性別については必ずしも明らかにしない状態で雇用関係にある方たちもいるわけです。ばれたらこれは首になるかもしれない、そういう思いの方たちもいるわけであります。

 特に、先ほど、住所、氏名、生年月日、性別、これに限るようにしたという話でありますけれども、性別については、最近、性同一性障害の問題に対する認識が深まってきて、できるだけ行政文書には性別の記載をしないようにしましょうという取り組みをしている自治体もふえてきております。

 つまり、先ほど例として挙げました、家を借りるだとか、あるいは就職をするだとか何だとかいうときに証明書が必要ですけれども、性同一性障害の方々が証明書として一番重宝しているのは運転免許証なんですよ。運転免許証というのは性別の記載がありませんから。運転免許証を持っている方でも、この話をすると、あれ、そうだっけと言う人がいるんですけれども、恐らく通常は余りそういうことは意識しないんですが、当事者からするとそういうことは非常に大事なことであります。

 ですから、住民基本台帳法については、むしろ原則、例外をひっくり返すのが本来的な姿であると思いますけれども、特に性別だとか、もっと言えば、生年月日については居住関係を明らかにするという趣旨からすると必ずしも必須のものではありませんから、原則と例外の形についてはぜひ今後検討していただきたいと思います。

 今こういったことを申し上げました。これを受けて検討していただく余地があるかどうかということを御答弁いただきたいと思います。

武智政府参考人 法の原則をひっくり返す必要があるかということについてでありますけれども、現時点では、総務省におきましては、まだ法改正というものを考えるに至っておりません。

 そして、改正するといたしました場合には、先ほども申し上げましたが、現在非常に幅広く閲覧制度が活用されております。数字で申し上げますと、平成十五年度で千三百万件ぐらいの利用があるわけでありますが、こういった幅広い活用がなされているという状況も踏まえながら検討する必要があるんだというふうに思っております。

 それから、ただいま先生から性同一障害の関係の御指摘があったわけでありますが、これについても、同じ答弁にはなりますけれども、本件、大変重要な課題だというふうには認識をしておりますが、直ちに性別を外すかどうかということにつきましては、現在利用されている状況等を考えながら検討するということが必要であろうかと思います。

 なお、性同一障害の特例法に関しての取り扱いにつきまして付言させていただければ、戸籍につきましては父母との続柄の記載が変更されるということになっておりますが、それを受けまして、住民基本台帳法においても性別の記載の修正を行うということを昨年の七月の施行段階で各団体に通知し、実行しているところでございます。

山花委員 ちょっと麻生大臣に御答弁をお願いしたいんですけれども、通告はしていないんですが、今の話であります。

 性同一性障害の話もそうなんですけれども、この閲覧制度が悪用されることによって、例えば、ここは母子家庭だということがわかって、実際犯罪も起きておりますし、また、お年寄りのひとり住まいとか、お年寄りしか住んでいない家庭だということがわかって、いわば成り済まし詐欺の標的にされる可能性があるわけでありますので、個人情報保護の観点からも、今後ぜひ今申し上げた課題について取り組んでいただきたい、つまり、改正等を含めて検討していただきたいと思いますけれども、この点、御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 性同一障害者の方々、あれは政調会長のときですから三、四年ぐらい前かな、よくこの方々とはお目にかからせていただく機会がありましたので、今の御質問の趣旨に関しては、よく交渉、話し合いというのをさせていただきましたので、結構わかっておる方だと思います。

 今、武智の方から話がありましたように、これは利用している人の数、絶対量はかなり多いというのが実態でもありますので、そういった意味では、利用者の範囲が極めて広いという状況を踏まえると、今すぐ、はい、やめますとはなかなか言えぬところだろうとは思っております。

 ただ、今言われましたように、一昨年の七月にこれは成立したんだと思いますけれども、今までのところ、成り済ましというような話が、予定外に悪用されている例というのがよく聞かれるようになりつつあるという状態でもありますので、本人確認やら何やらのところをきちんとする詰めが、結構各役場によってそこのところがえらくずさんというか簡単だったり、きちんとしていたり、いろいろ場所によって違うというところはいかがなものかという指摘は前からあっておるところでもあります。

 いずれにいたしましても、ちょっとこれは検討してみないかぬところだとは思っております。

山花委員 もう時間もなくなってまいりましたので、恩給法の話に最後戻りますけれども、恩給関係で調べていきますと非常に不思議な話を聞きまして、もともと恩給ということについては、例えば陸軍、海軍については、今当然陸軍省とか海軍省がないですから、厚労省の方に管理については移っているということなんですけれども、ところが、軍歴の管理は都道府県の事務となっております。

 私はこれは法定受託事務なのかと思っていたんですけれども、軍歴の管理は自治事務だという話になっておりまして、これは国と地方の役割分担の話からいってもおかしなことではないか。軍歴の管理は、例えば地方の自治体が何か裁量をもって、創意工夫をもって管理するなんという話では到底ないわけでありまして、このことを直ちに何とかせいということを申し上げるつもりはありませんけれども、いろいろなケースの一例だと思います。

 国と地方の役割分担について、こういったことも、九九年の地方分権一括法のときにも随分議論はあったんでしょうけれども、まだ今見るとあれっと思うものもありますので、こういう役割分担については今後とも、きっちりとといいますか、見つかり次第と申しましょうか、それについては検討していただきたいと思いますが、特にここのところ分権についてはいろいろ議論させていただいておりますけれども、この点についての御認識を大臣にお尋ねいたします。

麻生国務大臣 軍属を調べるというのに、陸軍省、海軍省がなくなっていましたので、それを法定業務として法務省もしくは厚生省等々でやるにはとても受け入れる体制ができていなかったんです。結果的に、そのときは、昭和二十年代、みんな各県にということで、県の方がいわゆる戸籍も残っていた、まあ広島みたいな例もありますけれども、県庁に戸籍が残っている等々で、きちんと対応できるのはむしろ地方の方であって、中央官庁はかなり消失していた部分が多かったなどなどの理由で地方事務ということになったという経緯だったと、私は昔の記憶ですけれども、たしかそうなっていたんだと思うんです。

 おっしゃるとおりに、数も大分少なくなってきましたし、もう六十年もたっておりますので、そういった意味では、きちんと分類をするべきではないかという御意見というのは、拝聴するに値する御意見だと思います。

 地方と国と、どこの部分がどうするかというのは、今義務教育の話やら何やら出ていますが、御指摘のように、平成十二年のときに地方分権一括法できちんと仕分けというのは、随分御議論というのはありましたけれども、その段階で一応仕分けは終わったという形になっております。

 どうして地方分権をするかといえば、地方がもっと独立、自立、自主裁量というものでやっていくべきだという御意見からそうなっていった、私はこの流れは決して間違っていないと思うんです。そういう流れの中にあって、今、もう少し、この部分はやはり地方じゃなくて国じゃないかとか、いろいろ個別には御意見が一つ二つ、こっちはとかこれはどうだとかいろいろ、個別に見ると幾つか決してないわけではないんですけれども、私どもとしては、今おっしゃった意見を踏まえ、いろいろほかにもあるんだと思いますけれども、そういったものは少し精査してみる時期がいずれ来るであろうと思っております。

山花委員 時間が来たので、終わります。ありがとうございました。

実川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 恩給法について、恩給権者の死亡に伴う未支給金の請求に係る総代者選任届の廃止について、何点かお伺いしたいと思います。

 最初に、恩給権者の死亡に伴う未支給金の平均の支給額は幾らになるのか、お答えください。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 未支給金の額、一般的には、全恩給の一人当たり平均年額、約八十六万円でございますので、その一月分から三月分の約七万円から二十一万円、平均すると十四万円程度が未支給金の平均額になるというふうに考えております。

塩川委員 未支給金の請求は全体で何万件ぐらいあって、そのうち、総代者選任届が必要なもの、つまり請求権者が複数いる場合ですけれども、その件数というのは何件ぐらいになるのか、お答えください。

戸谷政府参考人 平成十五年度の実績でございますが、未支給金の請求が約六万五千件ございます。総代者選任届をいただいておりますのは約四万三千件、約六六%でございます。この差でございますが、この差につきましては、遺族または相続人が一名というものであるというふうに考えております。

塩川委員 対象の三分の二の方にも及び、金額そのものも平均で十数万ということでは、みなし措置によって遺族や相続人の方の負担を軽減するという配慮というのは必要な取り組みであろうと思っております。

 その点で一点お聞きしたいのが、金額の多い場合も当然あるわけですね。恩給支給の最高額というのは、現状では幾らぐらいになっているんでしょうか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 恩給の支給の年額の多いものというものになりますと、旧軍人等の公務員が公務のためにけがをし、または病気にかかり重度の障害を有することとなった場合に支給される増加恩給というのがございます。法律の中で額が出ておりますのは、例えば、障害の程度が一番重い第一項症では五百九十三万三千円という数字がございます。

 ただ、法律上、さらに重い特別項症というのがございまして、これにつきましては、今の第一項症にまた十分の七以内で割り増しをするということがございますので、今、最高額で申し上げますと年額千二百万円、増加恩給に普通恩給が入っているものでございますが、そういう給付をしているのが個別としては最高でございます。

塩川委員 五百九十三万という話もありましたし、千二百万円になる場合もあり得るというお話ですから、そういう点では、未支給金ですから、単純に四で割った数字でいえば千二百万の場合で三百万ということで、かなりの金額にも上るわけです。これは金額の多寡の問題ではないんですけれども、請求権者が複数いる場合に、やはり、一人の方が請求をされてみなしをする、その場合に後から私も請求権があるというふうに来た場合に、今回の新たな措置によってはどうなっていくのか、いろいろそういう点ではトラブルにならないかなという心配、懸念をするわけですけれども、その点どうでしょうか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 未支給金の請求に関する手続でございますが、この法律改正後になりますと、遺族、相続人から未支給金の存否等について問い合わせを受ける、あるいは私どもの方で通知をするということがありますが、未支給金がある場合には、当該遺族あるいは相続人に対し同順位者の方を代表して請求していただくこととなる、このことを伝えた上で、必要な請求書を送付し、請求を指導するという形になります。請求書でございますが、符号つきのもので、未支給金一件につき一通印刷するということでございますので、他の遺族、相続人からの請求というのは出てこない形になる。

 既に支給された未支給金について、他の遺族あるいは相続人から自分にも請求する権利があると申し立てをいただいた場合に、私どもとしては、未支給金は、法律の規定により、一人の権利者がした請求は同順位の方全員のため全額について行ったと今回の改正の法律に沿いましてみなしてありますということで、一人の請求者に既に支給済みであり、それぞれが平等に受給権を有していることをお伝えし、当事者間で調整していただくよう、これは私どもとして場面場面でお願いをするということになると思います。

塩川委員 従来は、国の方で請求権者の方にそれぞれ了解を得てもらって申請をしていただくということになっているわけですけれども、今度は、遺族、相続人の方にお任せしますと。そういう点では、確かに相続人の方の負担の軽減の面も出るんでしょうけれども、一方で、もしかするとそういったトラブルになるようなことが起こり得る。国が今まで対応していたものが相続人の方同士でよろしくやってくださいという格好にもなりかねないわけで、そういう点では、やはり国の責任を押しつけることにもなりやしないかなというふうに思うんですけれども、その点、どうでしょうか。

戸谷政府参考人 私どもとして、やはり総代者選任届、四万件余ということにつきましても、相当に負担をかけておるということでございますので、件数は相当少ないんだろうと思いますが、そういう未支給金の分配の議論というものが出てまいりますときには、私どもとしては、未支給金の受給権、同順位者が二人以上いる場合にはそれぞれが平等に有するということをよく周知することがこの分配をめぐるトラブルを回避する上で極めて重要であると認識しております。

 法律改正いただきましたその趣旨につきまして、請求窓口における電話相談等で丁寧に説明するとともに、請求者に申請書類を送付する際には文書の中にそういう規定になっておりますということも入れていきたいということで、今後とも、トラブルについては、基本的には、未支給金の受給権者の同順位者については平等の権利があるということを周知徹底するように努力してまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 最後に、麻生大臣からも一言お伺いしたいと思います。

 そういう点では、後から問題が起こらないとは言えないわけで、そういう点でも、国としても、あとは相続人の方でよろしくというだけではなくて、きちんとした対応が求められていると思うんです。そういう意味でも、トラブルにならないようにどのような対応策を国としてとられるのか、その点をぜひお伺いしたいと思っております。

麻生国務大臣 塩川さん、この種の話は、私は知っていたけれどもほかのきょうだいは知らなかった、余りきょうだいは仲がいいという保証はありませんから、教えていないのもありますし、私らの周りでもいっぱいありますよ、そういう話は。

 だから、そういった意味で、きちんと教えるということをやっていなかった、弟が悪い、姉さんが悪いという話になってごちゃごちゃするケースというのは、実はよくある話でありますので、この額は、相続というか受給者が四人いたら四等分ですよ、一人亡くなっていれば三等分ですよとか、いろいろな表現が、きちんとそこらのところを知らしめておくということがトラブルを避けることにもなるということは全くおっしゃるとおりだと思います。電話の窓口やら何やら、質問者に対しては、私は今まで受けていなかったんだけれどもだれが受けていましたかと言われて、きょうだいの仲がごちゃごちゃになるのを助長するのもいかがなものかと思いまして、事実を端的に申し上げる以外のことをする必要はないんだとは思っておるんですけれども、少なくとも、そういった権利が皆平等にあるということだけははっきりさせておくというのがトラブルを減らす大きな理由になると思っております。

 請求者に対して申請書の書類を送付するという段階におきましても、文書できちんと通知する。言った言わないという話になるのを避けるためにも、文書できちんと通知するというようなことで、今後とも、その種のことに関しましては、何となく余りおもしろい話ではありませんので、きちんと対応していく必要があろうと存じます。

塩川委員 しっかりした対応策をとっていただくことを要望して、質問を終わります。

実川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 恩給法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

実川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時四十三分散会


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